底辺ギャンブラーの異世界放浪記 (スマキン)
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ギャンブルは熱くなりすぎると失敗する

はぁはぁ…はぁはぁ…

ここで決めれば俺の勝ち…このヒリつき…たまらねえ…!

 

俺の手番、これで勝負が決まる…!

 

「勝負」

 

「くっ…! なんつう目だ、俺はこんな所で負けらんねえ! ここで負けたら全て終わりなんだっ!!」

 

「熱くなってますねえ、カードは大事に扱わないと…運気が逃げますよ」

 

相手が焦ってやがる、これはツキが回ってきた!

 

「では、両者よろしいですか?」

 

「うぉぉぉ!俺の勝ちだぁぁぁ!」

 

相手が出したのはハートのエース

 

「1番でけえ数字だ、有り金全部よこせや!!」

 

俺は静かにカードをめくる

 

「だから、熱くなりすぎたら運気が逃げると言ったでしょう…」

 

俺のカードはスペードのエース、マークの差で俺の勝ち、このヒリつき!!やっぱギャンブルはたまらねえ…!

 

「な、な、な…なん…」

 

「いよっしゃあああああああ!!!」

 

勝った!勝った!シンプルながらも、一瞬で勝負が決まるこのゲーム掛け金1000万の大勝負俺の勝ちだ!! このヒリつきたまんねえ!!

 

「では、この勝負久津様の勝利になります。 振込はいつもの口座でよろしいですか?」

 

「あぁ、いつものとこで頼む」

これで、俺の借金もチャラだ!まあ、すぐにマイナスになりそうだが…とりあえず今日は宴だ!

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!?!?」

俺が、ビールでも買って帰るかと考えていた時、対戦相手の狂った叫びが聞こえた。

 

「おい! 何してる!? あいつを止めろ!!」

 

グサリと背中に感触が走り、急に熱を持ち出す。 そして、痛みが襲い出す。

 

「がっは…っ…」

 

「お前が悪いんだッ! お前さえいなければ!?」

 

対戦相手が何か叫んでるが、よく聞き取れない。痛みで呼吸もできない。 あー、これはもしかして恨み買って刺されちゃったか、刃物は入店時にチェックされるはずなんだけどな…

 

黒服の店員さん達に、取り押さえられてる男はまだなにか喚いてる。 これであいつの人生もほんとに終わりだな(笑) まあ、俺の人生も終わりそうなんだが。

 

笑い事じゃなかった。

 

「久津様っ!大丈夫ですか!くっ、おい! 早く救急車を!」

 

黒服の店員さんが、何か言っているがよく聞き取れない…ほんとにもうダメなのかもしれない。

 

あー、もっとヒリつく勝負がしたかった。

 

『まだヒリつき足りないのかい?』

 

そんな言葉が聞こえた気がした。

 

あぁ、まだ足りないこんな所で終わりたくなかった…

 

俺の意識はそこでブラックアウトした。プチュン

 

 

 

 

 

「アハハハッ! いや、最後フリーズしてるじゃん!マジでクズじゃん!おもしろーい」

 

「 せっかくだからこっちに招待してあげよっかなー、きっと彼も気に入るはず」

 

「それにしても、最後までギャンブルのこと思って死ぬなんて、ほんとクズだなぁ」

 

「えーと、名前はーと…『久津八(ひさずはち)』アッハハハッ! クズパチじゃんウケるー! まじでクズじゃん!! 」

 

そんな独り言は誰にも拾われることなく消えていった。

 



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