幻想籠球録~低身長バスケ部の記録~ (Uさんの部屋)
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第一章 低身長バスケ部
第1話 身長差だけが全てじゃない!!


※本作品は2022年現在のルールに従っています。また、本作に出てくる学校、地名は実際のものとは一切関係がありません。


バスケットボール。アメリカで生まれたとされる球技であり、現在も数多くの選手が派手なパフォーマンスや圧倒的な技術を武器に競技に挑んでいる………ところで、バスケで大事な事はなんだろうか? シュート? ブロック? リバウンド? 一概にこれとは言えないが、重要な要素の1つとしては身長ではなかろうか? 確かにゴールが約3mあるこの競技、バスケットボールでは身長が高いほど有利であると言える。しかし、この世界のとある学校では、身長平均が低い中、様々な強豪校を相手に挑んだ学校があったという………

 

 

ここは巫魔(みま)高校。偏差値としては至って普通の高校だ。勿論、この学校にもバスケ部がある。今日はそのバスケ部が体育館にて練習をしていた。

 

?「よーし! 行くぜ!」

 

白髪の少年がジャンプシュートを撃つ………が、ボールはゴールの右ボードに弾かれた。

 

?「あれっ!?」

 

この光景に、傍で見ていた少女は呆れていた。

 

???「優くん、下手過ぎるよ………なんでジャンプシュートがまともに撃てないの?」

 

少年の名前は白宮 優。そして、そんな彼に辛辣な言葉を言い放ったのは、チームメイトの三木 あずさだった。

 

優「ぐぬぬ………」

 

優が悔しがっていると、3人の笑い声が聞こえてきた。

 

優「こらああぁぁ!! 笑うな!! 明日香! 伊吹! ほのか!」

 

笑っていたのは、夢野 明日香、佐野 伊吹、炎塚 ほのかの3人の少女だった。

 

??「だ、大丈夫だよ! 私もジャンプシュートは苦手だし………」

 

そう励ますのは、雷 美咲という少女が励ます………

 

優「そう言いながら、10本中8本決めてるだろ、美咲は………! それに、あずさの説明の意味が全然わからねえよ………!」

 

美咲「あ、あはは………」

 

美咲が苦笑いをしていると、美咲とあずさの2人の少女に、それぞれ少女が庇うように立ち………

 

???「あずさのせいみたいに言わないでくれる?」

 

??「美咲が嫌味言ってるみたいに言わないでくれる?」

 

優「おい!! のぞみ! レイ! なんでお前達はそういう時だけ息ぴったりなんだよ!?」

 

優に冷たく言い放った少女2人の名前は、時乃 のぞみ、闇光 レイの2人だった。そんな中、隣でスリーポイントシュートを決める少女と、それを見る少女がいた。

 

??「わああぁぁ………凄いです、あかり先輩!」

 

あかり「うふふ、ありがとう。」

 

あかりと呼ばれた少女のフルネームは宮野 あかり。そして、そんな彼女のスリーを凄いと言ったのは、水野 由香という少女だった。

 

あかり「いいや、春香ちゃんには及ばないわよ。」

 

あかりはそう言って、中央のゴールの方を見る。すると、綺麗なスリーポイントシュートを放つ白色の髪を束ねた少女が綺麗なフォームでスリーを放ち、ゴールリングにかすりもせずに決めた。彼女の名前は白宮 春香。優と同じ苗字だが、決して実の兄妹ではない。義理の兄妹である。そして………

 

春香「優さーん!!」

 

優「うわっ!?」

 

春香はスリーを決めた後、優に抱きついて押し倒した………そう、まるで恋人みたいな関係でもある。

 

 

 

………お気づきだろうか? このバスケ部、3年生があかりしか居ないのもそうだが、何より、優しか男がいない。この世界の高校バスケは男女混合形式ではあるが、こんな学校は珍しい。更に、身長170超えが優しかいないのも珍しかった。一応、過去に男子は何人かいたらしいが………

 

優「(はあっ………女の子怖い………前に、男子数人がいたけど、過去に万引き事件起こして、殆どが退学、転学しちゃったから、僕しか男子がいねーんだよな………)」

 

優は大変そうな顔をしていた。すると、体育館の扉が突如開いた。そこには、見た感じ身長が180cm越えしている男子が5人いた。

 

??「ここがバスケ部ですか? とりあえず………立ち退いてもらっていいすか?」

 

リーダー格の少年がそういう。

 

優「何の権利があってそんな事を………ってか、まず名を名乗れや。」

 

??「江野 積牙(えの せきが)。今日からバスケ部主将を名乗る男だ。」

 

伊吹「………生意気な一年坊が来たな。」

 

??「なあ、積牙。この部活、男子1人しかいねーじゃんか。」

 

そういう、見た感じ2mある男がそう呟いた。

 

積牙「よせよ、高柴。どうせ高校で名前も聞かない弱小校なんだ。ほっとけよ。」

 

明日香「なんか、態度でかいよね………」

 

優「………江野 積牙………ああ、監督がスポーツ推薦で入って来るって言っていた………中学バスケで名を馳せていた奴か。聞いた事はあったが………まさか、こんな性格悪い奴だったとは………」

 

優はそう言って呆れていると………

 

積牙「どうする? 立ち退くのか?」

 

あずさ「ど、どうするの? 優くん!?」

 

優「………試合で勝てたらいいよ。春香、ビブス持ってきてくれ。」

 

美咲「ええー!?」

 

積牙「………決まりだな、まあお前ら程度じゃ楽勝だろうけどな。さあ、こんな弱そうなチームが相手なんだ。100点ゲームで勝つぞ!」

 

4人「おお!!」

 

積牙達は気合いをいれていた。そして、春香が白と黒のビブスを持ってきて、積牙達は白、優達は黒のビブスを着ける事に。

 

優「のぞみ、審判頼む。」

 

のぞみ「………なんで私がやるのよ?」

 

優「お前が出たら試合にならねぇんだよ………頼むから。な?」

 

のぞみ「はあっ………仕方ないわね。」

 

のぞみはそう言うと、ビブスを脱ぎ………

 

のぞみ「今度、あずさの分と私の分のアイス、奢りなさいよ?」

 

優「分かってるって。」

 

 

 

今回の試合はフルコートにて行われる。ルールは現実世界の2022年現在のルールで行う。

 

 

 

優「普通はダメだけど、交代はキャプテンが審判に要求したら取れるルールとする。タイムアウトは無し。他のルールは、制定されているルール通りだ。いいね?」

 

積牙「ふん………」

 

今回のスタメンは、積牙達1年生チームは以下の通り。

 

1年生チーム

4番 SF 江野 積牙

5番 C 高柴

6番 PF 江本

7番 PG 角崎

8番 SG 須賀

 

優「まあ、分かっていたが、おおよそ180cm以上のメンバーしかいないな………あのCなんて、多分2mあるじゃんか………まあ、礼儀知らずな相手にはまず様子見と行こうか。皆、スタメンを発表するよ。」

 

優達バスケ部のスタメンは以下の通り。

 

巫魔高バスケ部

6番 SF 三木 あずさ

7番 PG 雷 美咲

12番 SF 夢野 明日香

13番 SG 宮野 あかり

14番 PF炎塚 ほのか

 

積牙「なんだあのチーム? Cがいねぇし、女子しかいねぇじゃんか。身長も全員めっちゃ低いし………これは勝ったな。」

 

優「さて、お手並み拝見と行こうか。」

 

優はペンチに座ってそう呟いた。今回の試合、ジャンプボールは、1年生チームは高柴、バスケ部はPFのほのかがする事に。

 

のぞみ「じゃあ、始めましょう。tip off(試合開始)!!」

 

こうして試合が始まり、ボールが投げられる。ほのかは必死に飛び上がるが、やはり身長差にはかなわず、この勝負は高柴が制した。そして、これを須賀が拾うと………?

 

積牙「よこせ!」

 

積牙は素早い速度で3Pラインの内部に移動しており、真っ先にそう叫ぶ。須賀は積牙にボールを渡す。積牙の前にはあずさが立ちはだかる。

 

あずさ「抜かせない!」

 

積牙「へっ、低い。低過ぎるぜ!」

 

積牙はそう言うと、その場でジャンプ。あずさもジャンプして追いつこうとするが、積牙の方が高くて届かない。

 

あずさ「(高い………! やっぱり身長差は大きい………!)」

 

積牙「はあっ!」

 

積牙は綺麗なフォームでボールを放ち、幸先のいい2点ゴールを決める。

 

由香「綺麗なフォーム………流石中学生で名を馳せていた人ですね………」

 

伊吹「認めたくはねえが、いい腕してるよ、あの4番。」

 

やはり中学で名を馳せていた積牙は1年生5人の中で1番上手かった。そして、積牙の実力は、ディフェンスでも大きく発揮された。

 

美咲「皆! 落ち着いて行こう!」

 

美咲はそう言って、歩いてドリブルしながら前に進む。

 

美咲「(しかし、相手は180cmばかり………これは厳しくなりそう………)」

 

美咲はそんな事を考えながら、誰にパスするか考えていた。相手のフォーメーションはマンツーマンのディフェンス。身長差による有利を図っているのだろう。美咲の前には江本が立ち塞がる、

 

美咲「(なら、ここは切り崩して………!!)」

 

美咲はそう考えてドリブルで江本を抜くが………

 

積牙「うおおおぉぉぉ!!」

 

積牙がドリブルで抜いた美咲のボールを、手を伸ばしてカットした。

 

美咲「うわっ!?」

 

積牙「速攻!!」

 

積牙はそう言うと、素早い動きで速攻をしかける。美咲も素早い動きでこれに追いつく。積牙は右側に移動し、美咲もそれに付いていくが、積牙は読んでいたとばかりに切り返してかわすと、それからすぐにジャンプシュートを放ち、2点を奪った。

 

鈴香「あの4番、高校バスケでも普通に通用するレベル………1人プレイで言ったら、うちの部活の中でもかなり上手い。」

 

優「そうだな………でもどこか………独りよがりなプレイだな………」

 

結局、第1Qは積牙がバスケ部を圧倒し、6vs25で1年生チームの優勢で終わった。

 

あずさ「はあっ、はあっ………相手が高いとキツイね………」

 

明日香「私のシュートも全然入らないし………身長差の暴力じゃん………」

 

鈴香「それに………あの4番だけで20得点も取ってる。まさにワンマンチーム………」

 

優「こりゃ、圧倒的だな………でも、アイツには弱点がある。独りよがりなプレイが多過ぎる。実際、他の4人も凄いが、まだどうにかなりそうな範囲だ。」

 

優はそう言うと………

 

優「もう少し様子を見るよ。皆、頼む!」

 

優はそう言って仲間達の背を押し、第2Qが始まった。バスケ部のスローインで試合再開するも、あかりがパスをする時に積牙にスティールされ、あっさりとボールを奪われた。更に素早い動きでスリーポイントラインの外側に立ち、シュートフォームに入る。

 

明日香「スリー!?」

 

そして、このスリーポイントシュートも綺麗に決め、1年生チームが第2Qも先制。バスケ部メンバーは攻撃で必死に決めようとするが………

 

あかり「はあっ!」

 

積牙「撃たせるか!!」

 

あかりがスリーポイントシュートを撃とうとすれば、積牙がジャンプして撃ち落とし………

 

明日香「はああっ!」

 

次のバスケ部の攻撃で明日香が放ったシュートはゴールのボードにぶつかって跳ね返った。

 

明日香「リバウンド!!」

 

明日香がそう叫び、ほのかがリバウンドを取りに行こうとするが、積牙はリバウンドのポジション取りも上手く、また、身長差も相まって取れない。今のバスケ部は完全に押されていた。

 

春香「第2Qも圧倒的ですね………」

 

優「ただの生意気なガキだと思って侮ってたら負けるな………春香、アップしといてくれ。後半から大逆襲を始めるから………!」

 

春香「はい!」

 

こうして、優と春香が準備運動を始めた。それを見ていた積牙は………

 

積牙「(そうそう、相手のキャプテンが出てくんなきゃ困るってもんだ。ま、俺の前じゃ関係ないけどな。)」

 

試合終了の笛がなる直前に積牙はジャンプシュートを放ち、見事ブザービーターを決めた。その差は18vs52。前半終了にして、約3倍程の差を生み出されている。

 

高柴「これはもう決まったな。」

 

積牙「まあ、俺達がこんなチームに負けるわけ無いからな。」

 

積牙達は勝利を確信していた。

 

ほのか「あああーー!! 腹立つー!! 口だけ達者かと思ったけどかなり強いし、リバウンドも取れないし!」

 

優「高い選手慣れしていないうちのチームの欠点が全面的に出ちゃってるな。まあでも、安心しな。」

 

優は春香と共にベンチから立つと………

 

優「教えてきてやるから。うちの部の………力をな!」

 

10分のインターバル(休憩)の後、遂にバスケ部側が交代。

 

のぞみ「黒、メンバーチェンジ! 13番から5番、14番から4番に交代!」

 

バスケ部からは、あかりに変わって5番SGの白宮 春香、ほのかに変わって4番の主将、PFの優がコートに現れた。

 

高柴「遂に来たな………しかし、1番高いキャプテンですら180ねぇのか………」

 

優「………ガキ共、点差を開いて調子に乗ってるかもしれないが………教えてやるよ。バスケは………身長差だけが全てじゃない!!」

 

積牙「ふんっ………」

 

こうして、第3Q開幕。1年生チーム姿のスローインで試合再開。ボールは角崎からCの高柴に渡った。

 

高柴「(もはや勝負はついた………!! 折角だ、俺もシュートを!!)」

 

高柴はそう言ってゴール下に移動し、ジャンプしてシュートを放とうとする。しかし………?

 

優「うおおおおぉぉぉぉ!!」

 

優が高く飛び上がる。それも、彼より30cmも上の高柴を上回る程に。

 

高柴「(な、なんだコイツ!? 何cm飛んでるんだよ!?)」

 

高柴は驚愕していた。高柴はプライドのせいか引く事が出来ずにシュートを放つが、優の右手によって叩き落とされた。

 

積牙「何!?」

 

優「速攻!!」

 

優は素早いスピードで速攻を仕掛ける。実際、このスピードに積牙含めて追いつけない。

 

積牙「は、速い………!?」

 

優「もらったー!!」

 

優はレイアップシュートをしかける………が、リングの外側にぶつかって外れた。

 

優「ありゃ!?」

 

伊吹「ああ………あのバカ………慣れないことするから………!」

 

これにはベンチの伊吹も呆れていた。そう、優はレイアップとジャンプシュート、どちらも下手なのだ。

 

積牙「(ヒヤヒヤさせやがって………まあでも、このボールを取れば………!)」

 

積牙はそう考えていた。しかし、彼の考えは優には通用しなかった。

 

優「ま、でも………取られる前にゴールに押し込めば、関係ないけど………ね!!」

 

優はそう言うと、積牙達に追いつかれる前にジャンプして空中でボールを掴むと、そのままゴールに押し込んだ。

 

積牙「あ、アリウープだと!?」

 

優のプレイは積牙を驚かせた。

 

レイ「始まった………これは相手が可哀想ね………せいぜいやり過ぎるんじゃないわよ………バカップルコンビ………!」

 

レイは不安そうに呟いた。そこから流れは大きく変わった。積牙達がシュートを決めようと、必ずと言っていいほど優の大ジャンプディフェンスに阻まれた。

 

積牙「(ダメだ………決まらなくなってきた………あの男が入ってから流れが変わった………)」

 

積牙はそう考えながらもシュートを放とうとするが………

 

優「うおおおおぉぉぉ!!」

 

優が大ジャンプして立ちはだかる………!

 

積牙「ぐっ………!!」

 

積牙は無理だと判断し、すぐさまパスに転ずる………が、美咲がこれをカットしてしまった。

 

積牙「しまった………!!」

 

美咲「行くよ!!」

 

美咲はドリブルで切り込んでいく。

 

積牙「(負けたくねぇ………!!)」

 

積牙は必死に戻る。美咲が持っていたボールは春香の手に渡る。

 

積牙「させねぇ!! 150cmの女が決められるものか!!」

 

春香「止められるものならどうぞご自由に………まあ、そんな距離感では………私の術中に大ハマりだけどね!!」

 

春香はそう言うと前に飛び、シュートフォームを左手で構える。

 

積牙「私の術中だと………? ふざけるなー!!」

 

積牙は飛び上がって防ごうとする………が、何か違和感を感じた。それは………

 

積牙「(こ、この女………前に飛んでやがる………!?)」

 

そう、春香はスリーポイントラインのギリギリ外側から前に飛んでいる。これでは後に飛んだ積牙が妨害しているような形となってしまう。当然、積牙は春香のスリーを妨害する形で接触してしまい、のぞみは笛を鳴らす………しかし、春香は表情をニヤりとさせると、左手によるシュートを放つ。そのシュートは見事ゴールに炸裂し3点をもぎ取った。そればかりか………!?

 

のぞみ「チャージング! 白4番! バスケットカウント、ワンスロー!」

 

春香はフリースローの権利を得る。

 

のぞみ「ワンショット!」

 

春香はボールを受け取ると、右手でボールを構える。

 

積牙「(な、なんだ………? さっきと構えが真逆………!?)」

 

積牙は違和感を感じていた。そして、春香はこのシュートも完璧に決めた。

 

積牙「(この女………4点プレイをしてくるのか………厄介だ………)」

 

積牙はそう睨んでいた。しかし、それが春香の策の罠とも知らず………

 

 

 

それから1分もしないうちに、ボールはまたしてもスリーポイントラインの外側に立つ春香の手に渡る。積牙はもう一度彼女の相手に回る。だが、今回はファールを取られないように、1歩後ろに距離をとる。

 

春香「いいのね………そんな遠くで………?」

 

積牙「何っ………!?」

 

春香「私のスリーの武器は………2つ………前に飛んで相手からファールを貰いながら左手のパワフルなシュートを叩き込む『パワースリーポイントシュート』、そして………」

 

春香はジャンプモーションに入る。積牙も足の動作からそれに気付き………

 

積牙「させるかー!!」

 

今度は春香よりも先に飛んだ。しかし、春香はそれを見越していたかのように後ろに飛んだ。

 

積牙「(フェイダウェイシュート!?)」

 

春香「相手へのファールをかわし、右手による精巧なシュートを放つ………『フェイダウェイスリーポイントシュート』!!」

 

積牙「(なん………だと………!? 両手でスリーが撃てるだけでなく………なんて………美しいフォームなんだ………!!)」

 

春香は積牙のジャンプ力を上回る程の高さとスピードを兼ね備えたフェイダウェイシュートを綺麗なフォームで放ち、リングにかすることもせずに決めた。

 

積牙「ぐっ………!」

 

第3Qは、前半で勢いづいていた積牙達1年生チームはらここに入って優と春香の2人に完膚なきまでにしてやられた。第2Q時点で18vs52だったスコアは一気に54vs61にまで追いつかれた。しかも、第3Qの総得点数の36点のうち、30点は優と春香の2人が決めている。

 

積牙「はあっ、はあっ………」

 

積牙達5人は優達に振り回された影響で疲れている様子だった。

 

高柴「ダメだ………第3Qに入ってから、全然点が取れねぇばかりか………ガンガン点を取ってきてやがる………特に、あの4番と5番だ………全然防げねぇ………」

 

積牙「………まだだ………後10分! ぜってえ勝つぞ!!」

 

積牙はチームの士気を上げるために声を上げる。反応するようにチームメンバーは声を上げるが、チームメンバーの戦意は完全に落ちていた。

 

積牙「(ダメだ………あんな奴らに押されてやがる………)」

 

積牙の不安はかなり強まっていた。そして、その不安は第4Qで爆発した。

 

春香「優さん!!」

 

春香のスローインで試合再開。優はボールを受け取ると………

 

優「速攻!!」

 

優は素早いドリブルで相手をゴボウ抜きする。だが、積牙にはまだどこか安心感があった。

 

積牙「(大丈夫だ………! あの男はレイアップが撃てない! リバウンドさえ気をつければ………!)」

 

積牙はそう読んでいた………しかし、優はゴール下辺りまで来た後、180度回転し、後ろに飛ぶ。

 

優「(勢いはある………後は………ゴールに放り込むだけ………!)」

 

優はそう考えながら、真上にゴールリングが来るのを待った。そして、彼の目からゴールリングが真上に見えると、優はボールを右手だけで持ち、真上に放り投げた。

 

積牙「(なんだ………!? あのフォーム………!?)」

 

積牙は驚きの表情を見せた。そして、真上に投げられたボールは最高点に上がるとそのまま落下し、ゴールリングに吸い込まれた。

 

明日香「決まった!! 『異次元レイアップシュート』!!」

 

優「その技名止めろ!!」

 

優は明日香の言葉に思わずツッコんだ。そして、これを最後に1年生チームの戦意は完全に崩壊した。その後も………

 

明日香「はああっ!!」

 

明日香はシュートを放つが、ゴールボードに弾かれた。

 

高柴「リバウ………!!」

 

高柴がそう言おうとした時、優は既に空中にて、明日香の零れ玉を手にし、そのままゴールに叩き込んだ。

 

高柴「くそっ………! アイツ何回アリウープを決めてるんだよ!?」

 

巫魔高校バスケ部は確かに、強力なCがおらず、身長差も他のバスケットチームと比べると明らかに差があるチームだった。しかし、そんな中、優の異次元過ぎるダンクやアリウープが相手の注意を引き付け、そんな彼を中心に守ろうとすれば、春香の2種類のスリーポイントシュートが炸裂する。他3人はあまり活躍していないように見えるが、優や春香のサポートに回ったり、隙あらば点を決めたりと、バスケ部チームの影の立役者として戦っていた。その為、残り30秒を切った時には、スコアは88vs70だった。

 

積牙「(ダメだ………負ける………!!)」

 

積牙も覆しようのない現実に打ちひしがれていた。その影響かジャンプシュートを撃った時、ボールはリングに弾かれた。

 

積牙「しまった………!」

 

1年生チームのメンバーがリバウンドを取りに行くが、そのボールは優が奪い取った。

 

優「トドメ、行くぞ!!」

 

優はそう言って素早い動きで攻める。

 

積牙「(ダメだ………追いつけない………どうして………俺が………こんな奴らに………!?)」

 

積牙は苦しそうに走りながらそんな事を考えていた。優は最後に大きく飛び上がると、ゴールに豪快にダンクを叩き込む。それと同時に、試合終了の笛が鳴った。

 

のぞみ「試合終了! 90vs70で、バスケ部の勝ち!」

 

春香「優さん、やりましたね!」

 

優「おう! 」

 

2人はハイタッチをかわす。積牙達1年生チームは呆然としていた。

 

積牙「(なんで………俺が負けたんだ………? 分からねえ………理解が………追いつかねぇ………!)」

 

積牙はそんな事を考えていた。すると、優は積牙の前に立ち………

 

優「言っただろ? 身長差だけが全てじゃないって。」

 

積牙「ぐっ………!!」

 

これが、後に全国大会に挑む事となる巫魔高校………その新学期の第1歩となったのだった………

To Be Continued………




次回予告
バスケ部に完膚無きまでに叩きのめされた江野 積牙。しかし、彼はバスケのスポーツ推薦で入学した為、嫌でもバスケ部に入ってバスケを続けなければならなかった。そんな中、巫魔高校バスケ部の監督がゲームをするように言い………?
次回「チームプレイなんてくだらない!!」

今回のバスケ用語解説
この話を読んでいる方の中には、バスケットボールの細かいルールを知らない人も多いと思うので、話の内容を分かりやすくする為に紹介しよう。今回のナビゲーターは白宮 優だ。よろしく頼む。今回はバスケのポジションについて語ろう。作中ではPGやPFといった、英語の表記で出てきたが、正直、何が何だかさっぱりな読者もいたと思われる。バスケは主に5つのポジションがある。他にも特殊なポジションがあったりするが、基本的にはこの5種類がバスケのポジションと考えていい。
まずはPG。読み方はポイントガード。主にコート上の司令塔を担うポジション。戦況を見て味方にパスを出したり、隙を見て速攻をしかけたりなど、コートを見る技術が問われる。主に身長の低い選手が担う事が多いが、背が高い人でもPGをポジションとするプレイヤーもいるんだ。作中では美咲が担っていたポジションだな。
次にSG。読み方はシューティングガード。PGのサポートをしつつ、スリーポイントシュートを決めに行くポジションだ。バスケでスリーポイントを決められる選手は重要な点取り屋とも言える。作中では春香、他にはあかりもSGを得意ポジションとしているんだ。
続いてSF。読み方はスモールフォワード。分かりやすく言えばオールラウンダーとも言える。長距離シュートやドリブルで切り込む力など、様々な形で点を取りに行く事が求められる。作中ではあずさと明日香が担っていたポジションだ。因みにこれは全くの余談だが、うちのチームはSFが多い傾向にあり、Cができる人物がいないので、主にSF2人が点取り屋として活躍する。
次はPF。読み方はパワーフォワード。主にリバウンドやダンクといった身体を張るプレイが求められる。僕が主に担っているポジションだな。僕は基本的にリバウンド、ダンク、アリウープを得意としているので、最も僕に最適なポジションであると言える。
最後にC。読み方はセンター。ゴール下の大黒柱で、主に背の高いプレイヤーが担うポジション。ゴール下に強力なCがいると安心感は全く違うのだが、うちのチームにはあいにくCがいないので、僕が二重業務的な感じで担っている。
………いかがだっただろうか? この解説で少しでもバスケについて興味を持ってくれたら嬉しい………ああ、1つ言い忘れたが、第2回はナビゲーターが変わるそうだ。僕の出番はいつになるのやら………では、また会える時まで。


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第2話 チームプレイなんてくだらない!!

前回までのあらすじ
基本シュートがまるで出来ない白宮 優が率いる巫魔高校バスケ部。そんなバスケ部を追い出そうとする、中学で注目されていたプレイヤー江野 積牙率いる1年生チーム。前半こそ1年生チームが圧倒していたが、後半投入の優と春香が流れを一気に変え、バスケ部が逆転勝利を収めるのだった………!!


それから1週間、そのバスケ部に………江野 積牙が入部してきた。

 

積牙「ちゅーっす………」

 

積牙はだるそうに挨拶をするが、そんな彼にボールを投げ飛ばして吹き飛ばす者が1人。

 

優「声が小さーい!! やり直しー!! あと、1年生はよろしくお願いしますだー!!」

 

積牙「ちっ………よろしくお願いします!!」

 

優「よしよし。今日は監督が来ているんだ。お前も挨拶しろ。」

 

積牙「監督………?」

 

積牙は首を傾げる。すると、パイプ椅子に座る女性が1人………

 

???「おっ、優くん、もしかしてその子が………?」

 

優「はい。新人です。例のスポーツ推薦で入った奴です。」

 

???「始めまして、私は雷 ゆうか。監督であそこにいる美咲の母で………こう見えて元バスケット選手なの。よろしくね。」

 

積牙「………雷 ゆうか………確か、元全日本女子バスケの方ですよね!」

 

ゆうか「知ってたんだ。それは嬉しいな。」

 

積牙「はい。しかし………なんというか、この学校のバスケ部は女子ばかりですね………身長も低いし………」

 

ゆうか「まあ、元々が男女関係無しの緩い部活だからね。今のチームの平均身長は大体、150後半くらいなんだけど、過去に主力足りうるはずの男子数名が問題を起こして、殆どが退学・転学しちゃったもんだから、身長190越えのバスケットマンが入ってくれたのは助かるよ! まあ、確かにこの部活は優くんと春香ちゃんが去年、1年生にしてレギュラーになっちゃう程、力の差があり過ぎるんだけど………皆もバスケットプレイヤーとして強いからね。まあでも、強力なプレイヤーとして頑張ってね。」

 

積牙「はい………! しかし、Cがいないのは厳しくないですか? その………この部活では1番背の高いこの人がやらないんですか?」

 

ゆうか「練習ではやってくれるけど………この子、ゴール下が入らないのよね。」

 

積牙「(成程、だからPFをやっているのか………だとしても、異次元過ぎるスタイルだが………)」

 

ゆうか「そうだ、積牙くんは頭いいかしら?」

 

積牙「え? いやその………」

 

ゆうか「この学校は赤点を4つ取ったら試合出場停止だからね? 覚えておくように。」

 

優「そういえば、他の4人はクラブチームに行ったんだっけか? お前は………勉強出来ないから推薦なのか………! あはははは! バカだー!!」

 

積牙「うるせぇ!」

 

優「先輩にうるさいとはなんだ、1年坊主がー!!」

 

ゆうか「はいはい! 喧嘩しないの。優くんだって去年、ギリギリだったでしょ………!」

 

優「ギクッ!? す、すいません………」

 

ゆうか「まあいいわ、それより今日は試合形式のゲームをしましょう。ルールはいつも通り、私が指定したチームで対戦よ。 13人だから………1人が審判で6vs6のチームで練習。春香ちゃん、審判頼めるかしら?」

 

春香「分かりました。」

 

ゆうか「じゃあ、メンバーを発表するわ。Aチームはビブス白でPG 7番美咲、SG 15番鈴香ちゃん、SF1人目 8番レイちゃん、SF2人 16番由香ちゃん、PF1人目 14番ほのかちゃん、PF2人目 4番優くん。別名 優くんチームよ。Bチームはビブス青で、PG 9番のぞみちゃん、SG 13番あかりちゃん、SF1人目 12番明日香ちゃん、SF2人目 6番あずさちゃん、SF3人目 10番積牙くん、PF 11番伊吹ちゃん。別名 あかりちゃんチームよ。交代、タイムアウトの権利は基本的にリーダーに委任するわ。」

 

2人「はい!」

 

2人はそれぞれ返事をすると、2つのチームに分かれ、ベンチに向かう………

 

 

優チームの方は………

 

優「チームのメンバーは………僕がまた様子を見ている感じでいいかな?」

 

美咲「うん、戦法はどうするの?」

 

優「うーん、相手さんの要注意人物はやっぱり積牙くんだな。この間の試合を見る限り、オールラウンダーって印象が強いな。でも、いきなり2つの事は出来ないだろうからね………美咲、PGの君の筋書きが最も重要になるよ。」

 

美咲「まかせて!」

 

優「後は………あかりも厄介だ。春香よりは劣る………いや、春香が凄すぎるだけなんだけど………こっちチームにいるわSGの才能がある鈴香とは違って、経験を武器にスリーを決めてくる………努力型の相手だ。下手にスリーを撃たせないようにね。」

 

………因みに、あかりはチーム唯一の3年生であるが、彼女の意向で、優は彼女を呼び捨てにし、タメ口で会話している。

 

優「さあ、行ってこい!!」

 

優はそう言って、チームメンバーを見送るのだった………

 

 

一方、あかりチームは………

 

あかり「優くんは間違いなく初手からは出てこないわ。私としては前半から点を取りに行きたいんだけど、のぞみちゃんはどう思う?」

 

のぞみ「相手チームはレイのシュートの決定力と、鈴香のスリーが強いけど、何よりほのかがリバウンダーだから、下手にリバウンドに持ち込ませないようにかつ、あまりシュートを外さずに決めるのが理想的かしら。それに、江野 積牙。貴方は絶対に相手に要注意されるはずよ。無理に攻めないように。」

 

積牙「くっ………そんな事はいいから俺にボールを回してくれよ。俺ならガンガン決められるんだから………!」

 

伊吹「おい、お前! バスケは一人でやる競技じゃねえんだよ!」

 

積牙「うるせぇ!」

 

積牙は伊吹を突き飛ばした。すると、物音から察知したのか分からないが、春香が後ろから出てきて………!?

 

春香「はいはーい、審判ですがー、次にまた暴力行為をしたなら、問答無用でテクニカル取るわよー?」

 

春香は笑顔ではあるものの、その笑顔は半ば積牙を脅している様子だった。

 

積牙「くっ………悪い。」

 

伊吹「それと………まず、口の利き方をどうにかしろよ?」

 

積牙「くっ………!」

 

積牙は悔しそうな素振りを見せた。しかし、なんだかんだであずさがベンチに残った事で、スタメンとして出る事は出来た………

 

 

 

そしてジャンプボール、ジャンプボールはほのかと伊吹が飛ぶ事になり、互いにジャンプ。先手を取ったのは、ほのか………即ち、優チームが先制。ボールはすぐに美咲に渡り、敵陣に颯爽と切り込んでいく。美咲はコート全体を見回す。やはり、レイと鈴香の2人はパスを出せないようにマークされている。

 

美咲「ここは………由香ちゃん!」

 

美咲は由香にボールを回す。由香の前には積牙が立っていた。由香はシュート体制に入ろうとする………

 

積牙「決めさせるか!!」

 

積牙は大きく飛び上がる………しかし、それを見越していたかのように、シュート直前に美咲にボールを戻す。

 

積牙「フェイク………!?」

 

美咲「はあっ!」

 

美咲はレイアップシュートを決めて先制。

 

優「上手いフェイクだ。確かに積牙くんは身長も相まって、飛べば高いが………無理に相手する必要は無い。バスケは5人でボールを回す競技なんだから。」

 

そんな中、あかりチームの反撃が始まった。のぞみがボールを手にし、上手く戦況を見極める。

 

のぞみ「(………やはり、宮野 あかりにパスを出すのは厳しい………それに、江野 積牙にダブルチームか………挙句、私の目の前には、スピードを武器に持つ美咲………ここは24秒をフルに使ってゆっくりと………)」

 

積牙「くそっ………! 俺に寄越せ!」

 

のぞみ「落ち着きなさい! 無理に攻められるわけ無いわ!」

 

のぞみはそう言い放つ………チームとしては、明日香のマークが甘かった………

 

のぞみ「明日香!」

 

ボールはノーマークの明日香に渡り、明日香はジャンプシュートを放つ………が、リングに当たって跳ね返った。

 

優「リバウンド!」

 

ほのか「私の出番だ!」

 

伊吹「ぐっ………! くそっ………!!(やっぱり、ポジション取りが上手いな………! )」

 

2人は押しあっていた。ボールが落下し始めたところで、2人は大きく飛び上がる………しかし、ボールを取ったのは、ダブルチームを無理矢理振り切った積牙だった。

 

ほのか「なっ!?」

 

のぞみ「あ、あのバカ………! 」

 

積牙「(所詮、コイツらのレベルなんて、たかが知れてる………! 勝つためには俺がいれば………!)」

 

積牙はボールを取ると、身体を振り向かせ、ゴール下シュートを放とうとする………ところが、突如何かにぶつかった感覚を感じた。

 

積牙「何だ………?」

 

積牙がぶつかった方角を見ると、なんと、積牙は鈴香を突き飛ばしていた。流石にこれには笛が鳴り………

 

春香「プッシング! 青10番! スローイン!」

 

のぞみ「(やられた………完全に罠だったわね………)」

 

のぞみはそう考えていた。肝心の積牙はそっぽを向いていた。

 

積牙「(くそっ………! どうして………分かってくれないんだよ………! やっぱり………チームプレイなんてくだらない!!)」

 

積牙はまたしても悔しそうな素振りを見せた。そんな彼はすぐに個人プレイに走り出した。まだ、身長差が武器になってくれている為に、ガンガンシュートは決まるものの、時折ファールをとられるなど、信頼と不安、どちらの面でもチームとして浮いていた。

 

 

 

………そして試合は進み………

 

優「………監督、タイムアウトお願いします。」

 

ゆうか「オッケー、優くんチーム、タイムアウト!」

 

時間は一気に進み、第2Q残り5分、伊吹がダンクを決めたところで、優チームがタイムアウトを取った。現在のスコアは22vs36であかりチームが優勢だった。

 

優「いやー、やはり1人プレイに走ったか。」

 

ほのか「でも、鈴香のお手柄だな。アイツ、自分勝手なプレイに走り出して、鈴香に気付かずにファール3つ取られたし。」

 

優「3ファールとまでくれば、彼も流石に1人の脆さを自覚してくるだろうが………取り敢えず、ここから僕が出る。ほのか、お疲れ様。」

 

ほのか「ああ、よろしく。」

 

2人はハイタッチをかわすと………

 

優「監督、ほのかを下げて僕が出ます。」

 

ゆうか「オッケー。それより、あかりちゃんチームは………荒れてるわね………!」

 

優「ええ………」

 

2人はそう言ってあかりチームのベンチを見る。すると、伊吹が積牙の胸倉を掴んでいた。

 

伊吹「いい加減にしろよ、お前! 自分勝手なプレイのし過ぎで3ファールなんだぞ!?」

 

積牙「俺にボールを回してくれないからちょっと強引になっただけだ。」

 

伊吹「てめぇ!!」

 

積牙「そっちこそいい加減にしろ! 今のままじゃ勝てねぇ!! あの男には………お前達だってそれは理解してるだろ!!」

 

積牙はそう言って伊吹を突き飛ばした。すると、春香の方から笛が鳴った。

 

春香「はーい、青10番、テクニカルファールよ。」

 

積牙「何!?」

 

のぞみ「本当にバカね………もうこれで4ファールよ。」

 

積牙「くっ………! くそ!!」

 

積牙は自分勝手なプレイのし過ぎで、4ファールの致命的状況に………果たして、このゲームの運命は………!?

To Be Continued………




次回予告
4ファールを持ってしても、個人プレイを止めようとしない積牙。しかし、その傲慢さを利用され、積牙は5個目のファールを取られてしまい………!?
次回「真の役立たずはどっちだよ」

今回のバスケ用語解説
はーい、初めまして! 今回のナビゲーターは、チームのSGにして、優さんの恋人(自称)の私、白宮 春香が解説します。今回はタイムアウトについて語りましょう。タイムアウトはバスケの試合を中断する事。監督・コーチのみが申請できるシステムになっています。タイムアウトの時間は、大会によって異なりますが、基本的には1分と考えていいです。では、この1分で何をするのか。主に、試合の流れを変えたい時、監督・コーチが作戦を伝えたい時、単に選手を休憩させたいだけなど、その時により様々です。ただ、ここからがこのタイムアウトのルールのややこしさです。まず、タイムアウトは試合で取れる回数が決まっており、第1、2Qで合計2回、第3Q以降で3回となっています。わかりやすく言えば、前半で2回、後半で3回と言った形でしょうか。ここで注意点なのですが、前半でタイムアウトを取らなかったからと言って、その回数が後半に引き継がれる事はありません。更に、残り2分となり、1回もタイムアウトを取ってない場合には、2回しか取れなくなってしまうので、タイムアウトを取るならば時間や回数には気をつけなければなりません。まあ、その手腕は監督・コーチに委ねられていますが………また、タイムアウトは時間が止まっている時しか取れません。更に更に、自分のチームがゴールを決めたとかの時は取れません。基本的に有利な時には取れないと覚えておきましょう………
今回の解説は以上です。ここから先の物語は難しい用語が沢山出てくるので、ここから先の話では、私達がそれらも分かりやすく解説していきますよ! では、私は次の機会にこの解説にやってきますので、次はその時にお会いしましょう!


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第3話 真の役立たずはどっちだよ

前回までのあらすじ
バスケ部の騒動から1週間、スポーツ推薦の為に、嫌でも部に所属することになった江野 積牙。ゆうかが提案した試合型のゲームが行われるが、第2Q残り5分の時点にも関わらず、鈴香への接触によるファール3本、テクニカルファールによる4本目を取られた積牙は大ピンチに陥っていた………


春香「テクニカルの為、フリースローから再開です。」

 

伊吹「(あの野郎………優が入ってきて苦しくなるって時にテクニカルを取られやがって………)」

 

伊吹もやはり不満を零していた。フリースローのシューターはレイがやる事に。

 

春香「ワンショット!」

 

レイは春香からボールを受け取り、何度か地面にボールを打ち付けた後、ボールを構えシュートを放つ。レイのシュートはゴールにしっかりと入り………

 

春香「白ボール!」

 

元々スローインをするはずだった優チームのボールとなって再開。

 

美咲「優くん! 速攻で攻めるよ!!」

 

優「おう!」

 

優は美咲からボールを受け取ると、素早い動きで速攻をしかける。彼のスピードには、部員の誰もが追い付けず、優はスリーポイントラインを超えた後、大きく飛び上がると、ゴールに力強いダンクを叩き込んだ。

 

ほのか「いいぞー!!」

 

のぞみ「(やはり、厳しいわね………それに、こっちは1人が4ファールだし………まあ、まだ11点はリードしているから、慎重にかつ、点差を近づかれないように攻めるとしましょうか。)」

 

のぞみはそう戦略を組み立てると………

 

のぞみ「こっちに回して!」

 

のぞみはゴール下にたっているあかりにそう呼びかける。あかりは言われた通りにボールをパスするが………なんと、その途中でボールを積牙が強奪した。

 

あかり「えっ!?」

 

のぞみ「あっ!?」

 

積牙はそのまま速攻を仕掛ける。

 

のぞみ「バカ!! 戻しなさい!!」

 

積牙「うるせぇ!! お前らみたいな役立たずにはうんざりだ!!」

 

積牙は自分勝手な事を言い放つと、1人で敵陣に切り込んでいく。

 

積牙「(あの影の薄い女にさえ気をつければいいんだろ!?)」

 

積牙はそう考えていた。しかし、これでは最早暴走にしか見えない。

 

優「あーあ、いいのかね。まあいいや。彼にはここで転がり落ちてもらおうか!!」

 

優はそう言うと、積牙との1on1に持ち込んだ。

 

積牙「お前なんかに………俺が負けたりするものか!!」

 

積牙はそう言ってドリブルでかわそうとするが、優もスピードで彼に追い付く。

 

積牙「(抜けない………!!)」

 

積牙は焦りながら、何とか頭をフル回転させて考えていた。

 

積牙「(なら、ここからシュートを撃てば!!)」

 

………本来、この場面を考えると、下手にシュートに行くべきではない。寧ろ、一旦戻すべきである。相手陣はマンツーマンディフェンスだが、PGであるのぞみをマークしている、スピード型のPG美咲を除けば、他3人の実力を考えて、ディフェンスをかわせないものでは無い。特に、鈴香の正面にはPFの伊吹がいる。彼女は身長差で鈴香に有利な為、この時点なら僅かに真上にあげてパスをするのが盤石と言える。しかし、彼にそんな選択肢は無かった。彼の中では、ゴールを決める自分の姿しか映っていなかった。彼は大きく飛び上がるとジャンプシュートを放つ………優はディフェンスの為にジャンプする………だが、ここで………!?

 

優「うわっ!?」

 

優は突如空中で体勢を崩し、尻餅をつく形で地面に倒れた。

 

積牙「何っ!?」

 

ボールはゴールに炸裂したが、春香が笛を鳴らし………?

 

春香「プッシング! 青10番! 5ファールにより、退場!!」

 

積牙「なんだと!? (ま、まさかコイツ………俺や審判に分からないようにわざと後ろに飛んで、尻餅をついたのか………!?)………当たってない! 俺は当たってないぞ!!」

 

春香「既に退場だから、もはや無駄だけど………それ、テクニカル取られるからね?」

 

優「………ありゃりゃ、開始17分にして退場とは………中学注目選手が聞いて呆れるぜ。」

 

積牙「なんだと!? 元はと言えばこの役立たずどもが………!!」

 

優「………いい加減にしろよ。さっきから勝手な事ばかり言いやがって………今のチームで真の役立たずはどっちだよ。」

 

積牙「………!」

 

流石の積牙も、顔を真っ青にする。

 

優「いくら優しい僕でもそろそろ怒るぞ。バスケはチームプレイでやるものだ。確かに、1人で攻めればいい場面もあるし、君は体格そのものはバスケットマンとして、十分適している。でも、勝手な事ばかり言ったって、どうにもならないんだ………罰として、体育館50周してこい。」

 

積牙「ぐっ………!!」

 

積牙は悔しそうな表情を浮かべて体育館を出て行ってしまった。

 

優「(………彼の持っている才能は確かに本物だ………中学の時の僕と同じ………いや、そんな事は忘れろ………! 中学の時の僕はもう死んだんだ………そんな事より、彼には………僕の二の舞は踏ませたくない………どうにか、彼をチームの歯車にはめる方法は無いものかね………)」

 

優は一瞬、嫌な事を思い出していたが、積牙をチームに溶け込ませようと彼なりに思考を巡らせていたのだった………

 

 

 

その後、積牙を失ったあかりチームが、優の高身長から形成されるパワープレイに勝てる訳がなく、いつしか点差は開き………

 

優「うおおおおぉぉぉぉ!!」

 

優のダンクが炸裂。それと同時に試合終了の笛が鳴った。

 

春香「試合終了!! 100vs55で、優さんチームの勝ち!」

 

10人「ありがとうございました!」

 

伊吹「しっかし、優が出たら途端に試合にならなくなっちまったな………春香でも出てくれれば、100点ゲーム防止は当然、そこからの逆転勝ちもあったかもしれないんだがなー」

 

優「あはは………流石にシューターとしては春香の方が強いからな………確かにそれは言えてるかも………」

 

春香「もう、優さんったら………!」

 

春香は人目も気にせず優の腕に抱きつく。

 

優「うわっ!? ひ、人前で抱きつくなー!?」

 

優は頬を真っ赤にしていた。

 

あかり「でも………あの子はどうするの?」

 

伊吹「ほっとけ。あんな奴いなくてもチームとしてどうにかなるさ。」

 

伊吹はそう言うと………

 

伊吹「明日香、1on1の練習するぞ。」

 

明日香「はいはい、今日は負けないからね?」

 

明日香と共に練習を始めてしまった。

 

鈴香「………伊吹、完全に彼を嫌ってる………」

 

ほのか「無理も無いよ。伊吹からすれば、アイツの自分勝手さが許せないんだよ。」

 

優「………」

 

優は何か考え事をすると………

 

優「監督、突然ですがお願いがあります。」

 

ゆうか「お、どうしたのかな?」

 

優「どこか強豪校相手に練習試合を組んで頂きたいのですが………」

 

ゆうか「これまた突然だね………あっ、そうだ! ちょっと待ってて!」

 

ゆうかは何かを思い付くと、体育館の外へと向かった………

 

 

 

………それから数分後、ゆうかが戻って来た。

 

ゆうか「練習試合を組んできたよ。」

 

優「早っ!? いや、確かに要求したのは僕ですけど………」

 

ゆうか「皆にも共有しておくわね………次の練習相手は、前回の県大会でベスト4を取った強豪、力豪高校よ。」

 

あずさ「力豪!? 確か平均身長が180cm越えしているとても強いチームじゃないですか………! それに………よくもまあ、かなりの強豪校相手に、昨年1回戦負けの弱小チームであるうちが練習試合を組めましたね………」

 

ゆうか「あそこは私の昔のチームメイトが監督をやってるからね。練習試合したいって言ったら、喜んで引き受けてくれたよ。」

 

美咲「これは………ボッコボコにされるかも………」

 

由香「あはは………」

 

優「皆!! 諦めるのが早いって!! 確かにうちの学校は身長差ではどこよりも不利だが………大会の後に厳しい特訓を乗り越えた僕達なら、例え力豪でも相手になる!!」

 

ほのか「さっすがキャプテン。バカだけど、誰よりも燃えてるな。」

 

優「なんてったってうちのチームには、強い個性を持っている皆がいる!! 足りない所は、自分の得意な事でカバーするよ!! 巫魔、ファイー!!」

 

全員「おおー!!」

 

突然の練習試合も、優の言葉一つで大きく気合が入った。ただ、優には1つ気がかりがあった。

 

優「(………さーてと、問題はこの先だ。後は、あの問題児………積牙くんをどうするかだ………)」

 

優は積牙の事を考えていたのだった………

 

 

 

………一方、外で走り込みを続ける積牙は………

 

積牙「………俺はバカだ………分かっているのに………どうして俺はあんな真似を………!」

 

………意外にも、どこか後悔している様子を見せていたのだった………

 

 

 

現時点で、唯一チームから浮いている江野 積牙。一部メンバーが既に彼を嫌う素振りを見せる中、果たして、彼はチームメンバーとして、どのような立場となるのか………?

To Be Continued………




次回予告
1週間後、開幕した力豪との練習試合。巫魔高校は主力メンバーを控えにスタメンを決めるが、力豪を前に苦戦を強いられる。そして、第1Q終了後、優は勝つ為には積牙の力がいると本人に語り………?
次回「勝つ為に君が必要なんだ」

今回のバスケ用語解説
………貴方と会うのは始めてかしら? 私は時乃 のぞみ。今回はファールとフリースロー、そして退場について解説をしていくわ。まず、バスケットは接触が多く見受けられるスポーツだけど、それらは審判が目撃すればファールとして取られてしまうので、自分のファールとして取られないようにしないといけないわ。ファールとして取られやすいのは、プッシングやチャージングといった相手を突き飛ばしたりする行動ね。特にディフェンス側は要注意。シュート中の相手を妨害してファールを取られてしまうと、バスケットカウント、すなわち、フリースローの権利を与えてしまうので注意する事。フリースローの投げられる回数は以下の通り。
・ファールを貰いながらシュートが決まったら1回
・スリーポイントエリア内でシュートを妨害されたら2回
・スリーポイントシュートを妨害されたら3回
と言った形になるわ。特に1番上が凶悪かしら。例えば、2点を決めながら、もう1点を決める3点プレイの破壊力は恐ろしいわ。そして、ファールは試合中に5回累積すると退場になってしまうので気をつける必要があるわ。また、ファールはチームで5回以上取られると、チームファールとなり、それ以降は攻守関係無しで、相手チームに無条件でフリースロー1回の権利が与えられてしまう点に注意よ。でも、チームファールは各Q終了と同時にカウントがリセットされるので、余程のファールプレイをしなければ、チームファールは珍しいわ。そして、ファールには悪質な物が主に2つ存在するわ。1つはアンスポーツマンライクファール。わざとファールを行った選手に問答無用でフリースロー2本の権利が与えられ、更にフリースローの成功に関わらず、フリースローを投げたチームのボールとして再開する重たいファールよ。しかも、このファールは2個取られると、問答無用で退場になるわ。自分だけでなく、チームにも迷惑がかかるので、絶対に取られないように。もう1つはテクニカルファール。1年生の新人が前話でやらかした行為ね。このファールはスポーツマンとして有るまじき行為をすると取られてしまうわ。主に審判への抗議、暴力、物に当たるとかをすると取られるわ。特に、最初の審判への抗議は絶対にやってはダメよ。バスケットボールは審判の判断が絶対という競技なので、絶対に止めること。なお、このファールは監督やコーチ、ベンチメンバーにも適用されるから、ベンチでもスポーツマンとしては油断しないこと………ああ、そうそう。バスケットボールは仮に退場しても、サッカーとかみたいに次の試合に出れないとかのペナルティーは無い点については安心していいわ………さて、ここまで長々と話してきたわけだけど、今回は貴方に、バスケットボールのファールについての知識が入ってくれると願っているわ。では、今回のバスケ用語解説はここまで………


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第4話 勝つ為に君が必要なんだ

前回までのあらすじ
ゲーム中盤、積牙は個人プレイに走ってしまったことで、優の罠にハマり最後のファールを取られてしまった。積牙に怒りと心配の様子を見せる優。部としても、積牙を受け入れられない雰囲気を見せ始める中、優は監督のゆうかに練習試合を組むよう依頼。そして決まった対戦相手は、選手身長平均が180cm越えの昨年の県大会ベスト4の相手、力豪高校で………!?


1週間後、優達は部活メンバー全員を引き連れ力豪高校へとやってきた。もちろん、積牙も一緒だ。学校の正門に行くと、力豪の選手数人と、監督が出迎えに来ていた。

 

ゆうか「今日は突然練習試合をお願いしてごめんね、由乃。」

 

由乃「ううん、気にしないで。元々今日は練習しか予定が無かったから、練習試合をしにわざわざ来てくれて嬉しいわ。」

 

そう言ったのは、ゆうかとはかつてのチームメイトだった、道標 由乃(みちしるべ ゆの)。現在は力豪の監督をしている。

 

??「よく来てくれた。キャプテンの滝川 秦(たきがわ しん)だ。」

 

優「白宮 優です。本日はよろしくお願いします。」

 

2人は握手をかわす。

 

積牙「(すげぇ………道標 由乃………強豪校で監督をやっているとは聞いていたが、まさかこの学校だったとは思わなかった………)」

 

積牙はそんな事を考えていた。

 

滝川「………? そういえば………優くん、だったかな?」

 

優「はい、どうかしましたか?」

 

積牙「男子は君だけなのか? 去年の大会では、1、2年にもまだ数人男子がいたはずだが………?」

 

優「その事ですか………僕以外の男子は集団万引きをやらかして捕まりました。」

 

滝川「しゅ、集団万引き………」

 

滝川は明らかに引いていた。なんなら、後ろにいる力豪バスケ部の部員は笑っていた。

 

滝川「うちのチームは背の高い男子の方が多いから、不公平かもしれないけど、まあ宜しく頼むよ。」

 

優「お手柔らかにお願いします。」

 

2人はそう言い合って挨拶をかわした………

 

 

 

その後、一行は体育館へと移動。今回の試合はフルコートで執り行われるようだ。今回のユニフォームの色は、優達が白、力豪高校が赤だった。

 

ゆうか「さて、今回の相手はかなり凶悪。高校バスケの中ではかなり強いよ。それに、まずは相手チームの出方を見ないといけないし、うちの主力の優くんと春香ちゃんのスタミナを考えて、第1Qは2人抜きで様子を見て、残り時間に向けての情報収集をするわよ。」

 

積牙「ちょっ、ちょっと待ってください! 第1Qを捨てるつもりなんですか!? 俺が第1Qから出ればその必要は………!」

 

ゆうか「別に捨てる訳じゃないし………そもそも君はスタメンじゃないよ。今日はベンチスタート。」

 

積牙「そんな………!!」

 

春香「勝負は第2Q以降………という訳ですね。」

 

ゆうか「そう、それにうちには戦力になるCがいないから、リバウンド勝負になったら、勝てるのは優くんくらいしかいない。うちのチームに最も足りない弱点を相手が突いてこない訳が無いわ。そこで………こっちは敢えてそれをバラして戦うわよ………! 今からスタメンを発表します。」

 

今回の巫魔のスタメンは以下の通り。

 

7番 PG 雷 美咲

11番 PF 佐野 伊吹

12番 SF 夢野 明日香

15番 SG 風野 鈴香

16番 SF 水野 由香

 

 

全体的に身長が低めで、主にジャンプシュートが武器となる編成だ。

 

ゆうか「試合の流れは私がしっかりと見るわ。皆は自分の役割をこなすように戦って。」

 

5人「はい!」

 

スタメンに選ばれた5人は高らかに返事した………

 

 

一方、力豪高校側は………

 

由乃「いい? 相手は確かに県でも聞いた事がない学校だけど、うちのチームのスローガンは『常に全力』よ。例え相手がネズミや兎でも全力で倒すわよ!」

 

選手達「はい!」

 

由乃「よろしい。では、今日のスタメンを発表します。」

 

由乃が選択したメンバーは以下の通り。

 

 

4番 PF 滝川 秦

5番 SF 月宮 誠

6番 SG 笹掛 美代

7番 C 鈴木 聖矢

8番 PG 山田 悠介

 

 

と、このチームのベストメンバーである5人を選択した。特徴としては、6番の笹掛が唯一の女子であり、4番の滝川、5番の月宮と共に、昨年レギュラーメンバーとして戦っていた強力な選手である。

 

月宮「しかし、相手は主力足りうるメンバーは殆どベンチだ。舐められているのか?」

 

笹掛「知らないわよ、そんなの。アンタこそ、相手が女の子だけだからって、鼻の下伸ばしてデレデレしないでよ?」

 

月宮「ふん、俺がそんな事………スルワケナイダロー!」

 

片言になったあたりで、月宮は完全に鼻の下を伸ばしてデレデレしていた。

 

鈴木「月宮さん、デレデレじゃないっすか………」

 

笹掛「第1、このチームには紅一点のあたしがいるんだからね?」

 

月宮「いや、お前の事は女としてみてねえから。」

 

月宮の無神経な言葉で、笹掛は問答無用で月宮を殴った。

 

笹掛「このクソ男が!! アンタ独身決定だよ!! というか、試合に出られなくしてやろうか!!」

 

月宮「痛い痛い! というか、女として見られたいならもっと女らしく振る舞え!!」

 

笹掛「うるさい!! デリカシー0のクソ野郎が!!」

 

滝川「落ち着けよお前等………喧嘩なら後でゆっくりやってくれ。相手さんはキャプテンすら出してこない状態なんだから………なら、嫌でも引きずり出すぞ。」

 

笹掛「そういえば………相手のキャプテンってあの白髪の人?」

 

滝川「そうだ。白宮 優くん。あれでまだ2年生らしいぞ。」

 

笹掛「白宮 優くん………アンタよりもずっと紳士そうね、月宮。」

 

月宮「誰に向かって言ってんだこの女が………!」

 

滝川「そうやってすぐ喧嘩すんなって………」

 

山田「………キャプテン、そろそろ出ないと本当にマズいかと………審判から『早くしろ』といわんばかりの視線を送られてます………!」

 

滝川「お、おう! そうだな………!」

 

滝川は1度大きく息を吐くと………

 

滝川「行くぞ、お前ら!!」

 

4人「おう!!」

 

こうして、力豪最強メンバーがコートに出場した。

 

優「いやあ………こりゃきついかもしれないですね、監督。」

 

ゆうか「元から楽に勝てるなんて思ってないわ。でも、力豪のあの5人は全国クラスの最強メンバーよ。多分、思ったよりも速く、最近組んだばかりのこっちのベストメンバーを引っ張りだされちゃうかも………」

 

積牙「ベストメンバー………? いったいそれはどの5人を………」

 

積牙が質問しようとした時、試合開始の笛が鳴り、ジャンプボールで試合が始まった。伊吹は奮闘するが、Cの鈴木には届かずに押し負けてしまった。

 

鈴木「山田!!」

 

ボールはPGの山田に渡り、すぐ巫魔高校メンバーがマンツーマンディフェンスで守りにつくが………

 

月宮「キャプテン、ここは1発ご挨拶をすべきじゃないか?」

 

滝川「ふっ、いいだろう。山田、回せ!」

 

伊吹「何っ!?」

 

滝川をマークしていた伊吹は目を丸くする。山田は軽く頷くと、ゴールの上辺りにボールを投げ飛ばした。

 

伊吹「(高過ぎる………! 高い身長でボールを取る気か………!?)」

 

伊吹はそう読んでいた。しかし、滝川の行動は予想外のものだった。滝川は大きく飛び上がると、空中でボールを受け取り、そのままツーハンドダンクでゴールに叩き込んだ。

 

伊吹「ア、アリウープだと………!?」

 

優「初っ端から派手なご挨拶だ………」

 

優は滝川の派手なパフォーマンスにある意味感心していた。と、同時に、PFとしてのライバル意識が芽生える。

 

のぞみ「(滝川 秦………身長193cm、体重78kg。PFとしては優と同格………いや、基本ができる時点で、優以上と見るべきか………)」

 

のぞみはPGとしての観察眼を活かして、力豪の各選手の様子を見る。彼女の観察眼が次に働いたのは、第1Q開始から2分半が経った頃。PGの山田が美咲を相手に上手く立ち回る。

 

美咲「くっ………!!」

 

山田「(………素早い。俺がこれまで対峙した敵チームのPGの中で振り切れない相手は初めてだ………)」

 

のぞみ「(山田 悠介。身長183cm、体重62kg。ベストメンバーの中で2番目に小柄ながらも、回転の速い頭でチームを回す強力な司令塔………そして………)」

 

山田が保持していたボールはSGの笹掛に回り、笹掛は素早いスピードでシュートを放つ。

 

のぞみ「(笹掛 美代。身長165cm、体重44kg。チーム唯一の女子であり、スリーポイントシュートまでのフォームが極端に速い。破壊力とボールのスピードが武器の春香とは違う意味で厄介………)」

 

ここまで3人の選手に注目したのぞみ。そして、次に注目したのは、巫魔のオフェンスリバウンドを力強く奪う力豪のC、鈴木だった。

 

鈴木「おっしゃあ! 山田!!」

 

のぞみ「(鈴木 聖矢………身長 198cm 体重81kg。2年生でありながら、県で一二を争う強力なセンターと呼ばれている。リバウンダーとしての基礎、パワーが兼ね備わったことから、強力なリバウンダーとも言われている………うちのチームであんな奴にリバウンドで相手になるのは………彼しかいないわね。)」

 

のぞみは優の方を向いた。優はポカーンとした顔で、のぞみを見返した。

 

のぞみ「(………こんな馬鹿面の奴だけがうちのチームで県トップクラスと相手になるなんて、バスケットの世界は分からないわね………)」

 

のぞみはそう考えながら優に呆れていた。すると………

 

山田「月宮さん!!」

 

ボールはSFの月宮に渡る。

 

月宮「ナイスパス………よっと!」

 

月宮は正面に明日香と由香の2人がいながらも、フックシュートを放ちこれを決めた。

 

のぞみ「(月宮 誠………身長191cm、体重77kg。県でも相手になる人物は殆ど居ないSF。例え2人や3人だろうと並の相手なら決めに来る。そして大抵の確率で入る。力豪のポイントゲッター………力豪はわかりやすく言ってしまえば、優を×3と春香を×2して合計したと言ってもいい程のチーム………ふざけてると言っても過言じゃない………しかし、県や全国クラスとなればそんなのは当たり前。やはり、レベルの差が目立ってしまう………)」

 

のぞみがそんな事を考えている間に、第1Q終了のブザービーターがなる………滝川がダンクを決めた直後の事だった………

 

 

 

そしてインターバル。第1Qというのに、14vs42の大量リードを許しており、美咲達5人の息も上がっている。

 

優「………監督、第1Qにも関わらず、美咲達の負担がここまで出ています………こっちもベストメンバーで行かないと負けます。」

 

ゆうか「そうね………いいわ、こちらもベストメンバーで行きましょう。」

 

ゆうかはそう言うと立ち上がり、テーブル・オフィシャルの方に行き交代を要求。

 

審判「巫魔、メンバーチェンジです。」

 

審判がそう言うと、ベンチから4人が立ち上がった。そして、優は積牙の前に立ち………

 

優「出番だ、積牙くん。」

 

積牙「俺が………ベストメンバーの1人………?」

 

優「出たがってたくせに何ポカーンとしてんだか。力豪はマジモンの強敵。ハッキリと言う。勝つ為に君が必要なんだ。出てくれるね?」

 

積牙「………また俺が個人プレイに走ってもいいのか?」

 

優「………珍しい。腐ってると思ってたんだが。」

 

積牙「………俺なりに反省して考えたんだ………昔も同じ経験をしたことがあったんでな………俺は中学3年の時に、ポイントゲッターとしてチームの中で大活躍していた。調子のいい時なんか、1人で60得点を上げてしまう時まであった程だ。しかし、いつしか俺はチームから浮いてしまっていた。味方がパスを回してくれなくなった………同中のメンバーのうち、高柴以外は着いてきてくれなくなった。」

 

優「高柴………あの時のCの男か。」

 

積牙「………そして、いつからか………俺が決めればいいという考えに至った。それが1週間前のあのザマって訳だ………ふん、こんな事、アンタに言ったって無駄だよな。」

 

優「………」

 

優はどこか不思議な表情を浮かべていた。バカにされたり、説教されたりすると考えていた積牙は疑問に感じていた。

 

積牙「………おい?」

 

優「………悪い、昔を思い出していた。それに………君の気持ちはよく分かる。僕も………バスケで仲間から孤立したくなんか無い。」

 

積牙「………まるで既視感満載の言い方だな。」

 

優「まさか。僕は君みたいにジャンプシュートすら出来ない。どうやって君と同じ孤立方法ができるんだ。」

 

積牙「それもそうだな………」

 

積牙はそう言って立ち上がると………

 

積牙「………それと、1週間前と2週間前………そして、今の今まで………生意気言ってすみませんでした………キャプテン!」

 

優「………!! まさかたった2週間足らずで改心するとは思って無かったよ………積牙………お前、ここまでの態度が全部演技だったとか言わないよな? 演技なら今すぐここで叩きのめすぞ?」

 

積牙「………ち、違いますって!! というか、それって俺に何の得があるんですか!?」

 

優「それもそうだ。」

 

優がそう言うと、2人は思わず笑い合ってしまった。そして、その様子を静かに見ていたゆうかは………

 

ゆうか「………話は纏まったみたいだね。PG 9番のぞみちゃん、SG 5番春香ちゃん、SF1人目 8番レイちゃん、SF2人目 10番 積牙くん、PF 4番優くん。貴方達5人が今回のベストメンバーよ! 力豪に見せてやりなさい! 私達の底力を!!」

 

5人「はい!」

 

上記の事を口にし、チームを送り出した。

 

滝川「おっ、来たか………ベストメンバー!!」

 

優「行くぞ、皆!!」

 

4人「おー!!」

 

遂に巫魔側もベストメンバーを投入。果たして、このピンチをひっくり返すことが出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
ベストメンバーの投入により、巫魔高校は力豪を相手にまさかの優勢に立ち回る。だが、第2Q中盤、タイムアウトを取った力豪の監督、由乃は策に出る………!!
次回「反撃だ!!」

今回のバスケ用語解説
初めまして! 今回の解説を取り扱う事になった江野 積牙です。皆さん、この前は大変お見苦しい所を見せてしまい大変申し訳ありませんでした。さて、今回はユニフォームについての話をさせて頂きます。ユニフォームには淡色と濃色の二種類が存在します。これはどういう意味かと言いますと、淡色は白色、濃色は色付きと考えて頂ければ分かりやすいと思います。そして、試合では淡色と濃色で両チームを見分けられるようになっています。何故こんな制度になっているかと言うと、1番は審判が見分ける為です。審判はバスケにおいて迅速な判断や判定を求められるので、チーム名やユニフォームでわかりにくいとなっては、混乱が生じてしまいます。その為、それらを分かりやすくしているのが、このユニフォームという訳です。濃色で選択出来る色は濃い色であれば何でも構わず、例えば、俺の所属する巫魔なら黒、力豪は赤だったりと、色については様々であると言えます。色については、淡色とはハッキリと違うものならば特に指定は無いので、青や黄色、緑にすることだってできるんですよ。
今回の解説はいかがだったでしょうか? 次回はチームメンバーの誰がバスケットボールについて解説してくれるか、非常に楽しみです! では、僕は今回はこの辺で! さようなら!


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第5話 反撃だ!!

前回までのあらすじ
巫魔高校と力豪高校の練習試合。力豪は第1Qにて巫魔を圧倒。しかし、巫魔は改心した積牙を加えたベストメンバーで、第2Qに挑む………!!


月宮「しかし、アイツらはCもいないのに俺達と渡り合えるのか?」

 

滝川「渡り合えないなら、そこで試合は決まったも同然。そうでないなら………また別の話になる。」

 

滝川はそう言うのだった………

 

 

試合は巫魔のスローインで第2Q開始。春香はのぞみにボールを渡す。

 

のぞみ「第1Q丸々観察に使わせてくれたのが、大きかったわね………お陰で相手の出方はまあまあ分かった………」

 

山田「何をブツブツ呟いているかは分からないが………そのボール貰った!!」

 

山田はのぞみからボールを奪おうとする。しかし、のぞみはこれを上手くかわした。

 

山田「何!?」

 

のぞみ「ボールに注意が行き過ぎてる。それでは、取れるものも取れないわ。」

 

のぞみはそう呟きながら前に進む。そして、優とアイコンタクトを取ると………

 

のぞみ「お返しよ………はあっ!!」

 

のぞみは突如、ゴールに向けてボールを投げた。しかし、これは無謀としか言えず、ボールは当然のようにボードに跳ね返った。

 

月宮「貰った!!」

 

月宮はボールを奪おうと飛び上がる………しかし、彼よりも高く飛んでいる者がたった1人だけいた。それは………

 

月宮「何っ!?」

 

滝川「むっ………!? 優くんが月宮を上回っている………!?」

 

そう、チームのPF優だった。優はボールを空中でとると、そのままゴールに叩き込んだ。

 

優「お返しのアリウープだ!!」

 

優は地面に着地すると、滝川達に向かってこう言い放った。

 

優「巫魔高校のベストメンバーを………舐めるなよ!!」

 

滝川「面白い………俺がこれだけ渡り合えそうな選手が無名の高校にいたとは………受けて立とう!! ただし、勝つのは俺達だ!!」

 

優「いいや、僕達だ………行くぞ、巫魔! 反撃だ!!」

 

優のアリウープとこの言葉で試合の火蓋は切られた。しかし、巫魔高校のペースは力豪の予想以上だった。力豪がオフェンス側の時、ボールはリングに当たってはね返った。

 

滝川「リバウンド!!」

 

鈴木「うおおおおぉぉぉぉ!!」

 

鈴木は跳ね返ってきたボールを取ろうとする………

 

積牙「させるものかーーー!!」

 

しかし、そこに積牙が飛び上がってきて、ボールを中央へと弾いた。零れ球はのぞみが拾い、素早いドリブルで前線へと切り込んで行く。

 

鈴木「何っ!?」

 

しかし、力豪はすぐさま下がり、守りを固める。

 

ほのか「戻りが早い!?」

 

ベンチのほのかは驚いていたが、のぞみは驚く事無く、スリーポイントラインの外側に立つ春香にボールを回した。春香の前には笹掛が立ち塞がる。

 

笹掛「おおっと、打たせないわよ!」

 

春香「………私のシュートを止める事が出来ますか?」

 

春香はそう言うと、シュートの為に大きく前にジャンプする。

 

笹掛「止める!!」

 

笹掛も追いかけるように飛び上がる………しかし、笹掛はシュートモーション中には罠と気づけなかった。罠だと気づいた時にはもう遅い。春香を妨害する形で接触してしまう。これにより笛が鳴るが、春香はその直前に左手によるシュートを放ち、見事にゴールに決めた。

 

審判「チャージング! 赤6番! バスケットカウントワンスロー!」

 

これにより、春香はフリースローの権利を得た。

 

笹掛「(やられた………!! 可憐な容姿をしているのに、大胆な真似をしてくるわね、この子………)」

 

笹掛は心の中で春香をそう評していた。

 

審判「ワンスロー!」

 

審判は春香にボールを渡す。春香は右手によるシュートを見事に決め、4点プレイを決めた。

 

笹掛「ごめん、滝川。」

 

滝川「気にするな。相手のスリーポイントシューターもかなり強いってだけだ。それより、点差を詰められると後半がキツい。ここは決めるぞ。」

 

笹掛「ええ!!」

 

滝川達はそんな会話をし、試合を再開させた。しかし、ここに来て流れは完全に巫魔に回ってきた………

 

 

 

第2Q中盤、のぞみを起点として相手陣への攻撃チャンスを伺うのぞみ。

 

山田「行かせるか!!」

 

山田がのぞみに立ちはだかるが、のぞみはなんとスリーポイントラインの外側にいるにも関わらず、その場で大きく飛び上がった。

 

山田「スリーか!? 打たせるか!!」

 

山田は追いかけるように大きく飛び上がる………しかし、のぞみは視線を自分から見て右に変えて、レイに回す。レイの前に対峙するのは、月宮だった。

 

月宮「おっと、そんな小さい身長で俺に勝てるかな!?」

 

レイ「………身長差だけで勝ったと言いたいなら、滑稽ね。」

 

レイはそう言うと、左側へのドリブルを仕掛ける。

 

月宮「逃がすか!!」

 

月宮はレイを追いかける。レイはそこからの切り返しを図るが、月宮はすぐに切り返してくる為、ドリブルで抜けるほどの隙が作れない。

 

レイ「(厄介………!)」

 

レイがそんな事を考えていると………

 

優「こっちに回せ、レイ!」

 

優が声をかける。しかし、そんな彼をマークする滝川がそれを阻んだ。

 

滝川「おっと、行かせないよ………!」

 

滝川はそう言うと、優の行方を阻む………

 

優「ぐっ………!」

 

頼みの優が動けない………この状況は敵味方問わず、場の流れが力豪に動き初めていると読めるものだった………しかし、それによって生じた力豪は、ある選手のマークが緩んだ。それは………

 

積牙「俺に回してください!!」

 

そう、彼をマークしていた鈴木を振り切った積牙だった。

 

鈴木「しまった!!」

 

レイ「………やっと敬語で話をするようになったわ………ね!」

 

レイは月宮の隙をついてボールを積牙に向けて投げる。積牙はボールをがっちりと受け止めると、すぐさまジャンプシュートを放ち、これを決めた。

 

鈴木「(油断した………あのチーム………ベストメンバーともなると、1人が抑えられてもそこまで問題ないのか………!?)」

 

鈴木は巫魔のベストメンバーの事をそう評した。そして、ボールは力豪のスローイン。笹掛がボールを山田に回そうとするが、そのボールはのぞみが上手くスティールで防いだ。

 

山田「何っ!?」

 

笹掛「しまった………!!」

 

のぞみ「レイ!」

 

ボールはレイに渡ると、レイはすぐにジャンプシュートで、ボールをゴールに決めた。これには、力豪ベンチに座っていた由乃も驚いていた。

 

由乃「(滝川くん達の自信が落ちてきている………これはかなり厳しい状況ね………それに、あの5人がまさかあそこまで強いとはね………)」

 

そして、巫魔側のベンチのゆうかは表情をニヤリとさせる。

 

ゆうか「(うちの今のチームは、優くんがPFとして相手へ存在感を向けさせて、春香ちゃん、レイちゃん、積牙くんの3人がガンガン点を取って、のぞみちゃんがPGとして冷静に場を見て、隙あらば速攻で点を取る………積牙くんが思ったよりもチームに入り込もうとしてくれたのは嬉しい誤算ね。でも、これだけで力豪が………ベスト4の牙城が崩れるようには思えない………)」

 

ゆうかがそんな事を考えていると、優がアリウープを叩き込む。それと同時に………

 

審判「力豪、タイムアウトです!」

 

第2Q、残り3分。力豪はこの試合初めてのタイムアウトを取った。現在のスコアは、巫魔のオフェンス力が爆発したのもあって、40vs54と圧倒的に点差を詰めたのだった………

 

 

 

力豪のベンチでは、ベンチで息を上げ始める選手達が由乃の話を聞いていた。

 

由乃「………正直、予想以上ね。相手がここまでやってくるとは思わなかったわ。」

 

滝川「中学生の頃から活躍していた江野 積牙はともかくとして、残る4人のメンバー………あれだけの力を持つメンバーでありながら、無名なのが不思議なくらいだ。」

 

由乃「そうね………でも、相手は身長差に苦戦している様子は見られるわ。どんなに点を取ってきても、それらをかわし続けるのはタダでは出来ない。そう考えると、この試合は貴方達の有利な点で戦うのが得策と言ったところかしら………」

 

滝川「つまり………身長の低い選手の上を突けと言うことでしょうか?」

 

由乃「そう。優くんや積牙くんはこんなんかもしれないけど、残る女子3人はそこまで身長は高くないし、ジャンプ力があるわけでもない。ここからはこの作戦で行くわよ。」

 

5人「はい!」

 

このタイムアウトで、監督の由乃は動いた。果たして、この作戦は巫魔高校側にどう影響するのか………!?

To Be Continued………




次回予告
力豪の身長差を突いた戦術は、巫魔を苦しめ、点差を詰め寄らせなかった。しかし、そんな中で優は敵の戦法を崩す為の執念を見せ………!?
次回「勝った気になるなよ」

今回のバスケ用語開設
………貴方が優達の言っていたこの作品の読者かしら………? 私は闇光 レイ。今回は、バスケでよく聞くベストメンバーとは何かを解説するわ。ベストメンバーとは言うまでもなく、そのチームが最大限力を発揮出来るメンバーの事を言うわ。と言っても、ベストメンバーによるチームの長所はチーム事にそれぞれ。例えば、私達巫魔高校は相手の意表を突き、点を取れるチームになるし、力豪ならバランス型のチームになるわ。また、チームによってはベストメンバーの背番号が4〜8に並んでいる事もあるらしいけど………この通りではないパターンが多く見られるかしら………? また、ベストメンバーであれば確実に勝てるという訳ではなく、選手の中にはスタミナが最後まで持たない選手がいたりして、40分持たない編成になってしまったり、ベストメンバーの控えの選手を投入した方が試合の流れがよくなるということもあるわ………その為、ベストメンバーというのは、あくまで様々な選手を相手にしても、最低限は戦えるメンバーというだけの事………そのことは覚えておいてもらいたいわ。では、今回はこの辺で。またどこかで貴方と出会えるといいわね………


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第6話 勝った気になるなよ

前回までのあらすじ
優達ベストメンバーが揃った巫魔は得点力を爆発させ、点差を一気に詰める………一方、力豪の監督、由乃に身長の低さを見抜かれてもいた………


第2Q残り3分。試合が再開し、力豪ボールで試合を再開。

 

滝川「月宮、お前がこの作戦のキーだ。」

 

月宮「おう!」

 

笹掛がボールを山田に回す。巫魔の守りは相変わらずマンツーマンディフェンスだった。しかし、優は滝川が、積牙には鈴木がおり、互いに動きづらい様子を見せた。しかし、これにより巫魔には1つの隙が生まれる。それは………

 

山田「月宮さん!!」

 

山田が月宮にボールを回した。

 

優「しまった!!」

 

月宮の前にいるのはレイ。その身長差は実に30cm。月宮のジャンプシュートを前にレイは歯が立たずに点を入れられてしまった。

 

レイ「っ………!!」

 

ゆうか「(やられた………! うちのチームの身長問題を突いてきたわね………でも………うちのチームにはあのメンバー以上に点をとれるメンバーは現時点いない………!)」

 

ゆうかが考えているように、シュートの決定力は今のメンバーが1番高い。今も、レイが綺麗にシュートを決めて、再び点差を戻した。

 

ゆうか「(でも、こんな調子がいつまでも続くと、先に力尽きるのはこっち………! このメンバーが崩れたら………最悪、勝ち目が無くなるかもしれない………!)」

 

第1Qの苦戦、第2Q中盤までの優勢を見るに、現時点で力豪を相手に戦える選手は限られている。しかし、優と積牙以外の選手は、誰にも身長差問題が出てくる。つまり、今のゆうかは高身長を相手にゴールを決められるメンバーを投入するしかない。だが、それは選手達の負担を増やし、消耗を早めている。分かりやすく言えば、巫魔は再び追い詰められていた。試合は互いに点をとりあう合戦だけが続き、第2Qは終了した。

 

審判「インターバル、10分!」

 

選手達はベンチに座り、束の間の休憩をしていた。しかし、5人全員が疲れているのは目に見えていた。

 

あずさ「だ、大丈夫………!?」

 

美咲「無理も無いよ。特にレイちゃんは苦しそう………」

 

レイ「………大丈夫。それに、現在のスコアは47対60。まだ巻き返しが聞くわ。」

 

ほのか「でも、流石にキツくなってきたよな………」

 

積牙「せめて、相手のボールを止められればまだ正気があるんですがね………」

 

優「………監督、僕から提案があります。」

 

ゆうか「何かしら?」

 

優「………僕がチームの壁になります。」

 

由香「そ、それって………ゴール下に付くの!?」

 

優「そうだ。」

 

明日香「そんな事して、後20分も持つの!?」

 

優「分からん。でも、このままだとこっちのシュートが入らなくなったらそこで詰みだ。バスケは延々と点を取り合ってたら試合が進まねぇ………やるっきゃ無いだろ。」

 

ゆうか「………そうね。こうなったら、優くんは守りに専念してもらうわ。他の4人で点を取るのよ。」

 

春香「そうなれば、私の出番ですね。」

 

優「ああ、頼むぜ、スリーシューターさんよ。」

 

春香「ふふっ………!」

 

2人はハイタッチをかわすのだった………

 

 

 

数分後に第3Q開幕。後半戦が始まった。笹掛のパスで試合が始まり、ボールは山田に渡る。

 

山田「(よし、まずは1点………ん? いつの間にかマークが変わってる。相手の4番がCの鈴木に着いたか………しかし、関係ねえ!)………月宮さん!!」

 

ボールは再び月宮に渡った。

 

レイ「ぐっ………!!」

 

月宮「貰った!!」

 

月宮はレイをかわすと、ゴール下近くでシュートを放つ………が、すぐさまボールは地面に叩きつけられた。

 

月宮「な、何!?」

 

そのボールを落としたのは、ゴール下で鈴木をマークしていたはずの優だった。

 

月宮「(まさか俺が打つと読んで、同タイミングで飛んでボールを止めたのか!?)」

 

優「はあっ、はあっ………おおかた、うちのチームの身長差を突いて勝った気でいるらしいが………勝った気になるなよ………力豪!!」

 

月宮「ぐっ………!」

 

滝川「(アイツ………フェイクで鈴木にボールが渡ってもおかしくない場面で………大した根性だ………)」

 

零れ球をレイが拾うと、既に前線に走っていた春香が彼女に向かって手を挙げた。

 

レイ「春香!!」

 

レイのパスが春香に渡った。

 

山田「何っ!? ま、間に合わねえ………!!」

 

相手のマーク無しという絶好のチャンスで春香はスリーポイントシュートを放つ。そして、リングにかすりもせずに綺麗に決めた。

 

伊吹「よーし! スリーポイントシュート!! ナイスプレーだ!!」

 

由乃「(………そう簡単には決まらないか………しかもゴール下にいるということは、生半可なシュートは入らない………)」

 

由乃はそう分析する。そして、同じ事を考えていたよう滝川は………

 

滝川「山田、笹掛に回せ。アウトサイドで切り崩す。」

 

山田「分かりました。」

 

試合再開、笹掛にも同様の命令をした滝川によって、チームはボールをパスしながら、笹掛にパスを回す隙を探ってきた。

 

あかり「相手………なかなか打たないわね。もう10秒経ってるのに………」

 

鈴香「でも何もしてこない訳が無い………何か理由が………って、ちょっと待って、この10秒間、あの6番にボールが渡った!?」

 

ほのか「いや、回してないけど………」

 

鈴香「なら、やはり相手の狙いは………!!」

 

鈴香が気付いた時には、一瞬の隙を突いた力豪は、笹掛に回っていた。

 

鈴香「遅かった………!」

 

笹掛「いただきよ!!」

 

笹掛は春香のマークをかわしながら、スリーポイントシュートの体勢に入る………しかし………

 

春香「(こ、こうなったら………一か八か………!)」

 

春香は突如、背中から押されたように倒れた。

 

笹掛「なっ!?」

 

笹掛はこの気の緩みからスリーポイントシュートを外す。そればかりか、審判の笛が鳴り………

 

審判「プッシング! 赤6番!」

 

ここで上手くオフェンスファールを引き出し、危機を乗り越えた。

 

笹掛「………大丈夫?」

 

笹掛は春香に手を伸ばす。春香はその手を掴むと………

 

春香「この場は私の勝ち………ですね。」

 

笹掛「………次は決めるから。」

 

スリーポイントシューター同士のプライドからか、2人の周辺は、まるで火花が飛び散っているようだった。

 

滝川「(やはりそう簡単には逃げられんか………やるな、巫魔高校………)」

 

こうして、試合の流れを何とか巫魔に戻そうと奮闘するメンバー、しかし、このままの流れがどこまで持つのだろうか………?

To Be Continued………




次回予告
第3Qを執念のプレイで戦い、第4Qを前にして、僅かな点差を詰めて行く巫魔、しかし、主に優と春香のスタミナが限界に迫っていた。だが、2人は最後まで戦う覚悟を見せ………?
次回「タイムアップまで諦めるものか」

今回のバスケ用語解説
………はじめまして。私は風野鈴香。余り目立たないけど………バスケの知識は豊富………今回はバスケでよく聞くバイオレーションルールを解説するよ………まず、バイオレーションルールは、ファールとはならないけど、ルール違反となる行為を指すもの。わかりやすいので言えば、トラベリングとか、〇秒ルールとかかしら? 全てを解説すると長くなってしまうので、今回はわかりやすく下記にまとめたわ。
・トラベリング(ボールを保持したまま3歩歩く行為)
・3秒ルール(フリースローラインを結んだ長方形、所謂ゴール下にボールを持ったまま3秒いてはならない。)
・8秒ルール(自陣でボールが渡ったら、8秒以内に敵陣にボールを持っていかなければならない。)
・24秒ルール(24秒以内にシュートをしなければならない。ただし、シュート後にゴールに入らずにボールが攻め側に再び戻った時、カウントはリセットされる。)
・5秒バイオレーション(パスを受け取ったあと、ドリブルやシュート、パスなどをしないまま5秒が経つこと。)
・バックパスバイオレーション(敵陣から自陣にボールが回ること。)
・イリーガルドリブル(規定違反のドリブルをする事。例としてダブルドリブルなど。)
・アウトオブバウンズ(ボールがコート外の地面に着くこと。ただし、コート外にボールが行っても、着地する前にコート内に戻せばこのバイオレーションは適用されない。)
・ピボットフット(ピボットという、片足を軸にするテクニックがあるが、ボールを手放す前にその足を動かすと適用される。)
・ヘルドボール(2人以上がボールを掴み、どちらも奪えないと適用される。)
・ゴールテンディング(シュートされたボールが落下中、リング上にある時に触れると適用される。これが適用されると、シュート成功に関係なく、シュートした側の得点になる。)
・インターフェア(リングを通過中、もしくはプレイヤーの手がゴールリングやネットに触れたりしてゴールを妨げる状態となった時に適用される。ゴールテンディングと同じく、シュート成功に関係なく、シュートした側の得点になる。)
………かなり多かったけど、分かってもらえたかしら? まあ、最後の2つは高校バスケではまず滅多に有り得ないんだけど………うちのチームなら、優がやりかねないから恐ろしいわね………では、私の解説は今回はここまで。また逢える日まで………


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第7話 タイムアップまで諦めるものか

前回までのあらすじ
身長差を突かれ、点差を詰められない巫魔高校だったが、優の決死のブロック、春香の懇親のプレイが再び点差を詰め寄らせる………!


その後の巫魔の戦いは、優をディフェンスの中心、春香を起点とした戦いを繰り広げる。途中、流れが悪くなりそうになると、ゆうかがすかさずにタイムアウトをとった為、第3Qにおいての失点は最小限に留める。そして………

 

優「させるかー!!」

 

優の懇親のブロックが炸裂し、ボールは地面に叩きつけられ、勢いよく転がる。

 

滝川「ひ、拾え!!」

 

力豪は必死にボールにくらいつくが、ボールはのぞみが上手く拾い………

 

のぞみ「春香!!」

 

既に前線にあがり、再びフリーになっていた春香にボールが渡ると、春香は綺麗なスリーポイントシュートを決めた。

 

美咲「やったー!! 遂に2点差!!」

 

遂に、ゴールの差はワンゴールのみとなった。それと同時に第3Q終了。試合は72vs74。巫魔は第3Qだけで25点をあげた。しかし、その代償は大きかった。

 

優「はあっ、はあっ………」

 

春香「だ、大丈夫ですか………?」

 

優「君こそどうなんだ………もうヤバいんじゃないのか………?」

 

春香「まだ………行けます………!」

 

のぞみ「(………ここにきて優と春香のスタミナトラブルが来てしまったわね………)」

 

優と春香のスタミナが限界を迎えかけていた。無論、レイや積牙、のぞみも疲れを見せているが、この2人と比べればまだまだ戦える。

 

ゆうか「2人とも………まだ戦える?」

 

優「勿論………!」

 

春香「大丈夫です………!」

 

しかし、ゆうかは2人を下げられない。今、優を下げれば、インサイドは一気に弱体化。春香を下げれば、アウトサイドのシュート成功率がガクンと落ちる。特に、前者は身長差問題も相まって、身長差を補えるジャンプ力を有する優以外のPFは押し負ける可能性が高すぎる。

 

あかり「危険だと思ったらすぐに出るから!」

 

一応、あかりがバックアップに入ってくれることになった。しかし、彼女のスリーは成功率こそ高いが、県トップクラスの相手を前に、そう易々と撃てるほどの強さはない。優達は薄々感じていた。今、自分達が下がれば負けると。更に、第3Qにおいて、悪い流れを断ち切るために、2度もタイムアウトを使用してしまっており、すでにタイムアウトのチャンスはあと1回。

 

伊吹「無理すんなよ、優。PFならうちにもまだいるからさ………!」

 

優「………そいつは、僕がぶっ倒れたら頼む。」

 

ほのか「優………まさか………倒れるまでやるつもりなのか!?」

 

優「やるさ………僕は諦めないぜ………タイムアップまで諦めるものか………!!」

 

優は内なる闘志を燃やす。それと同時に、第4Q開始の合図が。

 

優「よし………行くぞ!!」

 

4人「おおー!!」

 

優達は気合を入れてコートに戻るのだった………

 

一方、力豪は………

 

滝川「皆、この試合は勿論勝ちに行くが………第4Qは力を尽くせ! アイツらは強い。身長差こそあるが、攻撃力だけなら、俺達に匹敵すると言える。残り10分! 死ぬ気でぶつかれ!!」

 

4人「おおー!!」

 

こちらも気合十分だった。試合は巫魔ボールで再開。

 

レイ「のぞみ!」

 

ボールはのぞみに渡り、相手陣に攻める………相手は、マンツーマンディフェンスを展開する。

 

のぞみ「(マンツーマンで来たか………なら、隙を見つけて攻める!)」

 

のぞみはドリブルのフェイクを上手く混ぜながら、ゴールを奪いに行こうとする。しかし、相手はそう簡単に抜かせてくれない………

 

のぞみ「(守りが硬い………! それに、後5秒か………!)」

 

24秒ルールのタイムリミットが迫る。

 

のぞみ「(こうなったら、優を信じて行くしかない!!)」

 

のぞみはそう考えると、無理矢理スリーポイントシュートを放つ。当然、こんなボールが入るわけが無いが、のぞみはそれを承知で………

 

のぞみ「リバウンド!!」

 

ゴールにボールが入る前に優に呼びかける。Cの鈴木に押えられていた優だったが、のぞみの声を聞き、真っ先にポジション取りに動いた。

 

鈴木「何っ!?」

 

対応が遅れた鈴木はリバウンドポジションを押さえられ、不利に。ボールがリングに弾かれたと同時に、そのまま優は飛び上がると、ボールを空中でキャッチし、そのままダンクで押し込んだ。

 

明日香「よし、同点!!」

 

遂に、巫魔は同点に追いついた。しかし、優は地面に降りると同時に、突如、視界がグラついた。

 

優「や、ヤバい………もう限界が近い………!!」

 

ゆうか「………!! (とうとう優くんのスタミナ切れが来てしまったわね………! まだ始まって30秒しか経ってないというのに………)」

 

優のスタミナが完全に限界を迎えてしまった。だが、ゆうかは様子をみる事しか出来なかった。その隙に、試合は再開。優はスタミナ低下により集中力が一気に落ちてしまい、試合再開に気づいた時には、山田が速攻を仕掛けていた。

 

のぞみ「ぐっ………! 追いつけない!!」

 

山田「もらった!!」

 

山田はレイアップを決めに行こうとする………しかし!?

 

積牙「させるか!!」

 

積牙は力強くボールを弾いた。しかし、山田の手にも触れてしまい………!?

 

審判「チャージング!! 白10番! フリースロー!」

 

相手にフリースローの権利を与えてしまった。

 

積牙「す、すみません………!」

 

積牙か怒られる覚悟で謝る。しかし、優は彼の肩に優しく手を置き………

 

優「ナイスガッツ。」

 

とだけ言って、彼を励ました………

 

 

審判「ツーショット!」

 

山田はフリースローの1本目を放つ………しかし、ボールは外れてしまった。

 

山田「ぐっ!?」

 

滝川「外した………!?」

 

力豪選手達は驚く様子を見せていた。もちろん、1番驚いているのは山田だ。外した事に困惑していたその直後、足がガクガクと震え始めた。

 

山田「(ま、まさか………さっきの10番に防がれた恐怖心かよ………!?)」

 

山田はそう考えていた。しかし、口や頭で分かっていても、それを何とかしなければ、バスケにおいて不利でしか無い。

 

山田「(ぐっ………外すものか!!)」

 

山田は2本目のショットを放つが、これもリングにあたって弾かれた。

 

山田「何っ!?」

 

ほのか「よし、リバウ………!!」

 

ほのかがリバウンドの言葉を叫んでいた時だった。なんと、優達よりも一足先に、滝川が高く飛び上がっていた。そして、弾かれたボールを、ツーハンドタンクで押し込んだ。

 

優「何!?」

 

こうして、得点は再び2点差で力豪が逆転。

 

山田「キャプテン………すみません。」

 

滝川「落ち込むな。まだ試合は終わってないんだ。それに、お前がいないと、ウチが止まってしまう。頼むぞ。」

 

山田「は、はい!!」

 

山田の不調は、滝川のダンクと言葉で一時のものに終わった。

 

優「まだまだ! ここで返すぞ!!」

 

優がのぞみにボールをパスして試合再開。のぞみはなんとか再び同点を狙おうとするが………

 

月宮「させるか!!」

 

月宮がのぞみからボールを奪取した。

 

のぞみ「なっ!? しまった!!」

 

月宮はそのままジャンプシュートを決め、再び巫魔を引き離す。

 

のぞみ「(相手の流れが変わり始めてる………! このままじゃ、また押される………!!」

 

試合再開、巫魔は再びのぞみを起点にし、今度は積牙にボールを渡す。

 

積牙「(よし、このままシュート………!!)」

 

積牙はシュートを決めようとする………しかし、彼をマークしていた滝川が、突然後ろに向かって倒れた。それにより、笛が鳴り………

 

審判「プッシング! 白10番!!」

 

積牙「しまった………!!」

 

積牙はここで痛恨のファールを取られてしまい、試合はスローインから再開。だが、力豪の突破力は凄まじく、滝川による試合再開から、ボールは山田、笹掛、そして月宮に渡ると、月宮はジャンプシュート。これを見事に決めてしまった………

 

その後、巫魔は必死に食らいついて戦うが、試合は力豪が優勢。そして、残り1分半にして、点差は90vs96となっていた。

 

優「ぐっ………このままじゃ………!」

 

試合は、巫魔にとって悪い勢いになってしまった。ここで、ゆうかはやむを得ず、最後のタイムアウトを使う事に………

 

優「はあっ、はあっ………」

 

春香「はあっ、はあっ………」

 

5人………特に優と春香は無理して戦っているのもあって限界に近かった。

 

優「春香………あとどれくらいスリーを撃てる?」

 

春香「分かりません………そもそもあと1分も持つかどうか………そう言う優さんはどうなんですか………?」

 

優「僕も………あと1分も持つかどうか………」

 

ゆうか「………伊吹ちゃん、あかりちゃん。アップをしておいて。2人が倒れる可能性も否定出来ないから………」

 

あかり「は、はい!」

 

伊吹「分かった。」

 

こうして、2人はアップをする事に。

 

ゆうか「皆、………とても辛いとは思うけど………最後まで頑張って………! 私にはもう………そんな指示しか出来ないけど………」

 

優「………全力を尽くします。行くぞ!」

 

4人「おお!!!」

 

5人は気合を入れる。というか、彼等は最早自身を奮い立たせないと戦えない。それ程までに消耗しているのだ。

 

試合は残り1分半。しかも、力豪ボールで再開。試合再開直前、優は春香の傍に立つと………

 

優「………僕がここから死ぬ気で守る。だから………スリーをひたすら撃ってくれ………君をぶっ倒しちゃうかもしれんけど。」

 

春香「………負けるよりはマシです。」

 

2人はそんな会話をする。そして、試合再開。山田の手によってボールは中央まで進み、のぞみと対峙。

 

山田「………キャプテン!!」

 

のぞみ「(滝川の方か………!!)

 

山田「(と、見せかけて………!)」

 

山田はのぞみの隙を突いて、彼女を突破する。

 

山田「もらった!!」

 

山田はジャンプシュートを放つ………だが、撃たれたボールは途端に地面に弾かれた。その理由は………

 

優「はああああ!!」

 

山田「………な、なんだと!?」

 

優が懇親のディフェンスをしたからだ。しかし、山田は別の事に驚いていた。

 

山田「(こ、コイツ………本当にスタミナ切れ寸前かよ………!? さっきまで鈴木の相手をしてただろ………!?)」

 

そう、優はディフェンス寸前まで鈴木をマークしていた。既にスタミナ切れ寸前とは思えない粘り強さだ。

 

優「春香ああぁぁ!!」

 

優はすぐにボールを拾うと、優のディフェンスと同時に前線に上がっていた春香にボールを投げ渡す。春香はこれを受け取るが………

 

月宮「させるかー!!」

 

月宮が大急ぎで戻り、春香のディフェンスにつく。

 

春香「………いいんですか? そんなに遠くて………?」

 

月宮「何っ!?」

 

春香は後ろに飛んでスリーポイントシュートを放つ。

 

月宮「しまった!!」

 

ボールはリングにかすりもせずにゴールに吸い込まれた。春香のフェイダウェイスリーポイントシュートがこの土壇場で炸裂。

 

ほのか「よし! いいぞー!!」

 

月宮「くそっ………山田!!」

 

月宮は山田にボールを回す………しかし、山田の目の前に一人の人影が………

 

山田「な、何………!?」

 

あずさ「の、のぞみちゃん!?」

 

なんと、のぞみが山田のボールをスティールした。

 

のぞみ「アンタの動きは………もう見切った!! 春香!!」

 

ボールは再び春香に渡る。

 

滝川「させるか!!」

 

滝川が彼女の目の前に立ちはだかる。春香は迷いもせずにスリーポイントシュートを狙う。

 

滝川「止める!!」

 

春香のジャンプ直後、滝川は飛び上がる。しかし、春香の姿勢は前のめりであった事に、飛んだ時に気づいた。

 

滝川「し、しまった!!」

 

滝川は春香に激突。当然、この接触で笛は鳴るが………

 

春香「このボールだけは………絶対に………!!」

 

春香は左手によるスリーポイントシュートを放つ。ボールはリングに乗ると、ぐるぐると回ったが、ボールはリングの中に吸い込まれた。

 

鈴香「は、入った………!」

 

審判「バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

春香渾身のパワースリーポイントシュートは成功。同点と同時にフリースローの権利を得た。

 

由香「これで同点だ!!」

 

喜ぶ仲間達………しかし、仲間達が喜んでいると、審判の笛がまたしても鳴り響いた。

 

審判「レフェリータイム!!」

 

明日香「あ………!! は、春香!?」

 

なんと、滝川の前で春香は倒れていた。恐れていた事態が、遂に来てしまった。

 

優「は、春香!! 春香!!」

 

春香「はあっ、はあっ………」

 

優は必死に呼びかけるが、春香はもう立てそうになかった。

 

ゆうか「春香ちゃん!! ぐっ………!!」

 

ゆうかはやむを得ず選手交代を選択。春香に変わって、あかりが登場。フリースローのルールで、彼女がシュートを撃つことに。

 

春香「はあっ、はあっ………ごめんなさい………持たなくて………」

 

伊吹「そんな事ねぇ! 充分頑張ってたよ!」

 

春香「あ、ありがとう………伊吹ちゃん………」

 

白宮春香、残り時間1分にして無念の離脱。この試合での得点は37点。この試合で12本のスリーポイントシュートと、1本のフリースローを決めたのだった。

 

審判「ワンスロー!」

 

あかりはボールを受け取り、ボールを放つ。あかりは無事にこれを決め、巫魔は遂に逆転した。だが、まだ試合は終わっていない。力豪は悔しがる素振りなど全く見せず………

 

滝川「いくぞ!!」

 

山田から笹掛にボールを渡して試合再開。その後、ボールを山田に戻し、敵陣に切り込む。山田は敵陣に入ると、様子を見ながら先の作戦を考えていた。

 

山田「(相手はもう完全に消耗している……)………鈴木!!」

 

山田はボールを回す。鈴木はシュートを放とうとするが、優がディフェンスとして立ちはだかる………しかし、鈴木もそれをわかっていた為か、のぞみをかわした山田にボールを戻した。山田はジャンプシュートできちんと決めた。そして、これにより再び力豪が逆転。

 

優「ぐっ………! 攻めるぞ!!」

 

優達は春香の想いを無駄にしまいとばかりに攻め上がる。ボールは再びのぞみに渡り、敵陣まで進むが、再びマンツーマンディフェンスで簡単にボールが出せずにいた。すると………

 

優「のぞみ! 撃て!!」

 

のぞみ「………! (この状況で撃てとは………ここで決める気ね………!)」

 

のぞみは優の言葉を信じてその場でシュートを撃った。

 

山田「は、入るわけない! リバウンドの準備を!!」

 

実際、力豪はベンチを含めて入るわけが無いと考えていた。しかし、優が何も考えずに無謀に撃てなど言わない。何故なら………!!

 

鈴木「な、何っ!?」

 

シュートと同時に優が大きく飛び上がる。優はのぞみのシュートを空中で掴むと、そのままリングに押し込んだ。そして、このアリウープこそが、撃てと言った答えである。

 

あずさ「また逆転!! 凄いよ、優くん!!」

 

仲間達は歓喜していた。

 

優「はあっ………決まってよかった………な………」

 

だが、優は地面に着地したと同時に、そのまま倒れてしまった。

 

レイ「優!?」

 

積牙「キャプテン!!」

 

審判「レフェリータイム!!」

 

残り時間20秒………優もスタミナ切れによる戦線離脱………しかも、その消耗度は春香以上で、担架で運ばれる程だった。

 

山田「結構ヤバいっすね、キャプテン………」

 

滝川「ああ………しかも、残り20秒だ。だが、俺達の負けは許されん………勝つぞ!」

 

巫魔は伊吹を投入。試合再開と同時に、山田にボールが渡ると、山田は敵陣に颯爽と切り込んだ。だが、巫魔の選手達は気迫のディフェンスをすることで、山田に易々とパスを出させない。山田は様子を見ているが、タイムアップはもう目の前にまで迫っていた。

 

美咲「10! 9! 8!」

 

残り時間は10秒を切った。山田も攻めあぐねていたが………

 

滝川「山田! 勝負しろ!!」

 

山田「は、はい!!」

 

滝川の激励で、山田はシュートを放つ。だが、シュートは外れてしまった。

 

あずさ「リバウンド!!」

 

積牙「(このリバウンドだけは………絶対取る!!)」

 

残り5秒を切り、試合の決着はこのリバウンドに全て賭かっている。積牙と伊吹が大きく飛び上がって取ろうとする………しかし、彼等よりも早くボールを取ったものが………それは………

 

積牙「なっ!? た、滝川………!?」

 

力豪のキャプテン、滝川だった。

 

滝川「うおおおおぉぉぉ!!」

 

滝川はそのままダンクを決めた。その直後、試合終了のブザーが鳴った。試合は、99vs100で力豪が勝利した。

 

鈴木「よっしゃあ!!」

 

山田「勝った!!」

 

力豪の2年生は喜んでいた。しかし、3年生………特に滝川は喜ぶ素振りなど見せなかった。

 

滝川「(勝ったとはいえ………俺達が1点差………巫魔高校………もし………あの2人のスタミナが持っていたら………もし、強力なCがいたら………負けていたのは多分俺達だ。本当に、これが前大会1回戦負けのチームか………!?)」

 

滝川は巫魔高校をそう評価していた………

 

 

 

一方、巫魔の選手達は敗北の味を感じていた。

 

のぞみ「くっ………」

 

レイ「やはり県ベスト4………ここまでやっても………勝つのは困難………!」

 

積牙「くそっ………!! 俺が………あのボールを取ってれば………!!」

 

積牙はとても悔しく、涙を流した。そんな彼に伊吹は軽く蹴りを入れ………

 

伊吹「バカ、落ち込むなよ練習試合で………それと、お前は充分よくやったさ。」

 

積牙「伊吹先輩………」

 

悔しがる優しく彼を慰めるのだった………

 

 

 

練習試合終了後、校門にて優と滝川が握手をかわした。

 

優「参りました。やはり、県ベスト4は強いですね。」

 

滝川「いいや、君達も充分強かったさ。もし君達が更に強くなれたなら………俺達や他の強豪校とも渡り合える強さを得るかもな。」

 

優「………頑張ります。」

 

滝川「それと………俺はPFとしてはお前には絶対に負けねぇぞ。」

 

優「………望むところです。」

 

2人は最後に、対抗する意思を改めて見せ合うのだった………

 

由乃「今日はありがとう。しかし、久しぶりにヒヤッとしたわ。まさか本気のうちにくらいついてきたんだから………」

 

ゆうか「うちのチームは前回の敗北から、1年間必死に練習したメンバーと………頼りになる1年生が加わったからね………それに、もうすぐ彼も戻ってくるし………」

 

由乃「彼………?」

 

ゆうか「こっちの話。じゃあ、またの機会にね。」

 

監督同士でも会話をかわし、この日の試合は終わった………

 

 

 

試合そのものは敗れてしまったが、1点差での敗北は、昨年1回戦負けとは思えない大健闘だった………しかし、ゆうかが言った彼とはいったい………!?

To Be Continued………




次回予告
いつものように練習する優達。そこへ、先の事件で部活動参加停止処分を下されていた男が1人、バスケ部に戻ってきた。彼の名前は相田光一………
次回「俺が帰ってきたぜ」

今回のバスケ用語解説
おう、初めましてだな! 私は佐野 伊吹! 今回はダンクシュートとアリウープについて解説するぜ。まず、ダンクについては説明不要かもしれないが、ゴールリングにボールを叩きつける大技だぜ。と言っても、このシュートは手がゴールリングに届く程の高さが求められるから、体格に恵まれている選手程撃ちやすいって点があるんだよな。まあ、ダンクを決めるには、どんなに体格が良い奴でも練習あるのみだな。

次はアリウープだ。これは空中で受け取った味方のパスをそのままダンクで押し込む技………と、口で言うのは簡単だが、実際、これはかなり難しい。アリウープはコンビプレーみたいな技だから、パスをする方、ダンクをする方の息が合わないと、この技は成立しない。最も、優がのぞみと共にガンガン決めている様子を見ると、アイツらの才能が垣間見えてくるよな………

今回はここまでだ。次の機会でまた会おうぜ!


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第8話 俺が帰ってきたぜ

前回までのあらすじ
巫魔と力豪の試合は、優と春香を中心とした奮闘で、合計99点を獲得。しかし、優と春香のスタミナトラブルの影響で、試合は1点差で敗れてしまった。しかし、滝川達は巫魔の力を恐ろしく感じていた………


激動の試合から数日。優達はめげずに練習に取り組んでいた。しかし、監督のゆうかは痺れを切らしていた。

 

ゆうか「(………遅いわね………彼………まさか帰ったんじゃないでしょうね………!?)」

 

それを見ていた優達は………

 

ほのか「今日の監督、なんかピリピリしてるなぁ………」

 

優「しょうがないだろ。アイツが今日から部活動に参加出来るのに、遅刻してくるからさ。」

 

伊吹「全くな………まあそんな事より………私達は私達の練習をしようぜ。今日こそは優からダンクを奪ってやるからさ!」

 

優「やれるもんならやってみな!」

 

先の試合の敗北から、PF組は優を相手に1on1の練習をしていた。優が戦線離脱すると、インサイドが弱くなる欠点を失くすために。

 

積牙「はあっ!!」

 

レイ「………やはりシュート精度は随一と言っていいほどね。これでSFなんだから………中学時代のアンタの所属していたチームのCは何センチあったのよ………」

 

積牙「身長が高いので、一応PFやCも出来ますけど………ジャンプシュートの方が得意なので………」

 

あずさ「それは凄いね。私なんてレイアップやジャンプシュートしか出来ないし………」

 

積牙「あずさ先輩………その割にはさっきから外してませんよね?」

 

あずさ「努力しただけだよ?」

 

積牙「(俺でも100回撃ったら2、3本は外すのに………この人なら絶対に全部決める………基本がなってるって事なのか………これで身長が高ければどんなに驚異か………)」

 

積牙はじっとあずさを見つめていた。しかし、そんな彼に突然飛び蹴りが突き刺さる。彼を蹴ったのは、勿論のぞみ。

 

積牙「なんでー!?」

 

のぞみ「私のあずさを穢らわしい目で見ないで!!」

 

レイ「アンタのものじゃないでしょうが………」

 

レイはやれやれと呆れていた………のだが………

 

美咲「レイちゃーん! 1on1の相手してもらえないかな?」

 

レイ「美咲の頼みなら何でもするわ!」

 

レイは美咲の元に、走って駆けつけた。それを見た積牙は………

 

積牙「(に、似たもの同士じゃ無いか………!!)」

 

と、呆れていた………

 

 

 

SG組は相変わらずアウトサイドのシュート練習をしていた。3人とも、シュート成功率は高いのだが、ダントツで上手いのはやはり春香だった。確かに、相手のファールまで誘える彼女のシュートはチーム随一の点取り屋と言っても過言ではない。

 

あかり「しかし、何回やっても真似出来ないわね………ジャンプ後に手を構えるなんて………」

 

春香「まあ、頭だけじゃ出来ませんし、体が上手くついてこないと出来ませんからね………」

 

鈴香「いや、そもそもが困難なんだけど………」

 

 

 

そんな感じで、部員達はゆうかの様子を見ながらも、各々の練習に励んでいた。ゆうかはとうとう我慢出来ずに………

 

ゆうか「遅ーい!! 何してるの、あの子はー!!」

 

と、ガチギレした。これには優達も驚く様子を見せていた。それと同時に………

 

??「呼びましたか?」

 

と、男の声が聞こえてきた。声のした方を向くと、そこには、積牙と同じく………いや、それ以上の身長の男が立っていた。

 

優「光一!」

 

のぞみ「やっと来たわね。」

 

積牙「光一………? あの方は?」

 

あずさ「あの人は、相田光一くん。つい最近まで部活参加を禁止されていた人だよ。」

 

積牙「(ああ………成人誌を万引きして捕まったっていう人か………)」

 

その男………相田光一は体育館に入ってきて………

 

光一「待たせたな、優。俺が帰ってきたぜ。」

 

優「光一………なんで遅刻したんだよ? 監督がカンカンだぞ?」

 

光一「ん? ………あ。」

 

ゆうか「なんで遅刻したのかなー?」

 

光一「いや、あの………補習っす………!」

 

ゆうか「部活動参加禁止期間………何してたのよー!?」

 

ゆうかは光一に起こる様子を見せた。そして言うまでもないが、彼はバスケ部の問題児である。

 

伊吹「全く、また怒られてやがるよ。」

 

光一「おう、伊吹。相変わらず女らしくねぇーな。」

 

伊吹「せ、セクハラ発言をかますなー!!」

 

伊吹は光一にアッパーカットをぶちかました。そう、光一はオマケに変態という、ある意味最悪の問題児である。そのせいで、伊吹からは特に嫌われている。

 

光一「痛ってぇ………急に殴りやがって………って、うん? そこの190ある奴、もしかして1年か?」

 

積牙「は、はい。江野 積牙と申します。」

 

光一「そうか………おい、お前。この部活でタイプな女は誰だ?」

 

積牙「は!?」

 

光一「いいから教えろ。」

 

光一は積牙の肩に腕を乗せるとそう問い質す。その為、積牙は………

 

積牙「えっと………春香先輩………でしょうか?」

 

光一「春香か………むっちゃ分かるぜ! 容姿端麗、成績優秀、オマケに家事も得意っていう万能美人だからな! 俺も春香みたいな女がタイプなんだ。分かってるじゃねえか、セッキー!」

 

積牙「は、はい! 光一先輩!」

 

光一「俺の事はコウさんって呼びな。」

 

積牙「はい! コウさん!」

 

2人はいつの間にか盛り上がっていた。しかし、2人に向けた優の飛び蹴りが炸裂し、2人を吹き飛ばした。

 

優「人の未来の奥さんを取ろうとするな、お前ら!!」

 

積牙「怒るところそこですか………!?」

 

光一「因みに、両思いらしくて、夜も一緒に寝ているらしいんだ、これが。」

 

優「黙れお前マジで!!」

 

優は光一の頭をぶん殴った。彼の頭には大きなタンコブが出来上がる。

 

のぞみ「やれやれ、変な問題児が帰ってきたわね………」

 

部員達は、復帰したばかりの彼に、初っ端から怒っているなど、どこか不安が感じられる。しかし、彼の登場は、間違いなく、巫魔高校バスケ部の力を更に大きくさせるのだった………

To Be Continued………




次回予告
優達は、光一を加えて試合をする事になった。光一は持ち前の身長とパワーを持つCとしての力を見せ………!?
次回「巫魔の最強Cは俺だ!」

今回のバスケ用語解説
よう! 俺は巫魔に帰ってきた期待の星、相田光一だせ! 今回は俺の復活を記念して、ゴール下シュートについて解説しようと思うぜ! ゴール下シュートって言うのは、分かりやすく言うと、ゴールの真下からシュートを撃つ事。一見簡単そうに見えるが、実際は大変なんだぜ………ゴール下は基本的に、相手のCに妨害される事が多いからな。それをかわして決めなきゃならねぇ。更に、ゴール下は3秒ルールがあるから、迷ってる暇なんてロクに無い。つまり、3秒という制約の中で、シュートを決めるのが、ゴール下シュートって訳だぜ。ただ、このシュートが決まれば、インサイドでガンガン手を取れるようになるぜ! まあ、攻撃においての基本はこれ以外にもまだ2つあるんだけどな………

おっと、今回はここまでだな。次回は誰か解説するか、そして、俺の活躍も楽しみにしててくれよ!!


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第9話 巫魔の最強Cは俺だ!

前回までのあらすじ
力豪に敗れた巫魔だが、変わらずに練習に励んでいた。するとそこへ、部活参加を禁止されていた相田 光一が復帰する。しかし、彼はある意味かなりの問題児だった………


優「さて、やっと光一のバカが戻ってきた事で、ゲームをやるぞ。人数は14人だから………監督、審判をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

ゆうか「お易い御用よ。」

 

優「チーム分けは………」

 

優はチームを7人ずつに分ける。そのメンバーは下記の通り。

 

優チーム

PG 雷 美咲

SG 宮野 あかり

SF 三木あずさ、夢野 明日香、水野 由香

PF 白宮 優、佐野 伊吹

 

春香チーム

PG 時乃 のぞみ

SG 白宮 春香、風野 鈴香

SF 江野 積牙、闇光レイ

PF 炎塚 ほのか

C 相田 光一

 

優「………以上だ。僕のチームが黒のビブスを、春香のチームが白のビブスだ。番号はユニフォームのものと同じ番号のやつを着てくれ。」

 

光一「おっ、そうだ。優、俺の番号は何番なんだ?」

 

優「17番。」

 

光一「へぇ………17番………ってええ!? そんなに下の番号!?」

 

優「問題起こした罰と、人の未来の奥さん寝取ろうとした罰だ、バカ。」

 

のぞみ「(半分私怨が混じってるわね………)」

 

優「ルールなんかはいつもと一緒だ。タイムアウトや交代はチームキャプテン………僕と春香が、監督に申告する形で行う。」

 

こうして、試合の準備は整うのだった………後は両チームのスターティングメンバーを決めるだけだ。

 

優チームベンチ………

 

伊吹「今日も私が先発でいいかい、優?」

 

優「ああ、頼むよ。」

 

あずさ「SFはどうするの?」

 

優「初手はあずさと明日香にお願いするよ。由香はいつでも出られるようにしといてくれ。」

 

由香「分かったわ。」

 

こうして、優チームのスタメンは下記の通りになった。

 

7番 PG 雷 美咲

13番 SG 宮野 あかり

6番 SF 三木 あずさ

12番 SF 夢野 明日香

11番 PF 佐野 伊吹

 

一方、春香チームベンチ………

 

春香「恐らく、初手から優さんは出てこないわ。」

 

鈴香「となれば、こちらも無理に春香を出す理由は無い。私が先発で出る。」

 

春香「お願いね、鈴香ちゃん。それと積牙くん、君も初手から出てもらうわ。」

 

積牙「はい!」

 

春香「油断せずに、きちんと勝負していくわよ!」

 

春香チームのスタメンは下記の通りに決まった。

 

9番 PG 時乃 のぞみ

15番 SG 風野 鈴香

10番 SF 江野 積牙

14番 PF 炎塚 ほのか

17番 C 相田 光一

 

 

両チーム共にスタメンがコートに立つ、ジャンプボールは伊吹と光一なのだが………

 

優「まあ、まずジャンプボールは落とすだろうね。光一の身長は197もある。伊吹とは35cmもあるし、明らかに差があり過ぎる。」

 

由香「佐野さんじゃ全く相手にならないとなると、優くんくらいしか相手にできないんじゃないかしら、それ………?」

 

優「まあ、僕くらいしかアイツに真っ向から挑めないだろうな。でも、最初からアイツとマッチアップしてたら、スタミナが持たねぇよ。だから、こうして様子を見つつ、スタミナを温存しようって考えてるのさ。まあ、春香がスタメンに居ない時点で、相手もまだ本気とは言い難いけどさ。」

 

優がそんな事を口にしていると、ジャンプボールにより試合開始。勝負はやはり光一が勝ち、ボールは積牙に渡る。すると、光一は途端に前線に上がり………

 

光一「セッキー! 俺にボールを渡してくれ!」

 

積牙「は、はい!」

 

積牙は前線に走る光一にボールを渡した。

 

伊吹「何っ!?」

 

伊吹は意表を突かれ、光一をフリーにしてしまった。

 

光一「喰らえ! これが復活した俺の………ツーハンドダーンク!!」

 

光一はいきなりツーハンドダンクを炸裂させた。

 

優「初手からいきなり来るじゃんか………やはり、衰えてないな、あいつのパワープレイは………」

 

優は表情に微かな笑みを浮かべていた。すると………

 

生徒1「すげぇ………! アイツ、本当にバスケ部に復帰したんだな。」

 

生徒2「というか、この間のバスケ部凄かったらしいぞ。県ベスト4相手に1点差まで行ったんだってさ!」

 

バスケ部でない生徒10人くらいが、ゲームを見に来ていた。

 

由香「最近、バスケ部の練習を見に来る人が増えたわね………」

 

優「力豪戦であそこまで行けば、学校中も興味を持ってくれるよな。うちはバスケ部はそこまで強くは無かったからこそかもしれんが………」

 

優はそう語った。様子を見に来た生徒のうち、黒髪のロングヘアーに、清楚そうな美少女が、試合そっちのけで優の方をじっと見つめていた。優は彼女が自分を見つめてくる理由が分からず、目を点にして首を傾げた。

 

 

 

………話を試合に戻し、優チームの反撃が始まる。

 

美咲「(光一くんの壁が結構厚い………そう考えると、無理して攻めるのは危険………ここは様子を見ながら………!)」

 

美咲はそう考えると、自身を起点にしながら、ボールをメンバーに回していく。

 

優「そうそう、無理して攻めても光一の壁に阻まれるだけ。ここは様子を見ながら攻めるのが吉ってものよ。」

 

優も美咲と同じ考えをしていたようで、彼女のパスを繋ぐ選択を良く見ていた。しかし、いつまでもボールを回せる訳ではなく、ボールをパスしている間に、残り時間は10秒を切り、僅かにまで迫ってきた。そんな中、ボールはあずさに回る。

 

あずさ「(よし、ここで私が!)」

 

あずさはシュートを放つ。だが………

 

光一「この俺がいる限り………どんなシュートだって入れさせないぜ!!」

 

そのシュートは、ゴール下に立つ光一によって撃ち落とされた。

 

あずさ「うわわっ!?」

 

光一「反撃だ!!」

 

ボールはのぞみに渡ると、のぞみは素早い速度で上がる。優チームはマンツーマンで上手く押さえ込もうとしていた。だが………

 

のぞみ「あの男子2人の部分がほぼがら空きね………光一!」

 

のぞみは光一に向けて、やや高めのボールを放つ。光一はジャンプしてパスを受け取ると、1度地面に着地し、大きく飛び上がり………

 

光一「くらえ!!」

 

光一の鮮やかなゴール下シュートが炸裂し、点を入れる。

 

伊吹「くそっ………! (やはり身長差によるハンデは重たいな………そう易々と止められないぞ、コイツは………!)」

 

光一「どうだ! 巫魔の最強Cは俺だ!」

 

その後は、光一の独壇場だった。優チームのメンバーのシュートは尽く撃ち落とされ、結果的に第1Qは、0vs22というワンサイドゲーム状態で終わってしまった。

 

優チームベンチ………

 

伊吹「はあっ、はあっ………変態野郎だけど、やはりCとしては強いな………」

 

あずさ「そうだね………高さを取られると不利かも………」

 

あかり「おまけに、のぞみちゃんが上手い具合に私にパスを出させない指示をするから、スリーポイントシュートを打つ暇も無かったわね………」

 

優「………よし、僕が出よう。」

 

伊吹「頼む。悔しいが、お前くらいしかアイツには対抗出来そうにない………!」

 

2人はハイタッチをかわすと………

 

優「選手交代! 伊吹に変わって僕が出ます!」

 

ゆうか「OK、認めます。」

 

春香「………ここで優さんが来ましたね………光一くん、頼むわよ。」

 

光一「分かってらい。見てな、俺とアイツ、どっちの方がカッコいいか!」

 

春香「断然、優さんの方がカッコいいわね。」

 

光一「即答!? まあ、いいか………ん?」

 

光一はギャラリーの方を見ると、先程から優を見つめてる少女を目にし………

 

光一「おっ、あの子可愛いな………よし、俺のシュートとディフェンスでキュンとさせてやる!!」

 

と、光一は張り切っていた………

 

 

 

第2Q開幕、ボールは優チームであり、美咲がドリブルで上がる。

 

光一「よーし、守るぞ!!」

 

光一は優をマークする。流石の優も、身長差が27cmもある為、苦戦する………と、見られていたが………

 

優「まずは1本取って流れを取る!」

 

美咲達「おおー!!」

 

優達の気合いは充分だった。美咲はしばらく様子を見ていたが………

 

美咲「行くよ、優くん!!」

 

美咲はそう言うと、リングに向けてシュートを放つ。それと同時に、優は大きくジャンプし、ボールを空中でキャッチする。

 

生徒1「す、すげぇ!! アイツ何cm飛んでるんだ!?」

 

ゴールリングを超える高さまで飛んだ優のジャンプ力に、ギャラリーが驚く。

 

光一「そのままアリウープなんてさせてたまるか!!」

 

光一はジャンプして優のアリウープの妨害に出る。だが、優は途端にダンクを中断すると、ボールを左手に持ち替え、光一に触れないギリギリで彼をかわし、そのままアリウープを決めた。

 

光一「だ、ダブルクラッチだと!?」

 

積牙「す、すげぇ………!」

 

??「………!!」

 

これには、春香チームのメンバーやギャラリーは当然ながら、例の少女も驚き、顔を赤くしていた。

 

優「さあ、反撃と行こうか!!」

 

優のアリウープで、チームの勢いが変わった。光一に唯一無二対抗出来る優がダンクを駆使して戦い、隙を突いてあかりのスリーポイントシュートで攻める。この戦法によって、優チームは一気に点差を縮めていく。

 

光一「て、点が取られていく………な、なら! その分奪えばいいんだ!!」

 

光一はそう考えていた。やがて、のぞみからもらったボールを受け取ると、大きく飛び上がる。マッチアップの相手は明日香で、彼女は高さでは敵わなかった………しかし!?

 

明日香「うわっ!?」

 

明日香はわざと後ろに転んだ。ゆうかにはそれが接触に見えた為………

 

ゆうか「プッシング! 白17番!!」

 

光一「マジかよ!?」

 

明日香「ふふっ………身長高いからって調子に乗らないでよね………!!」

 

光一「ぐっ………!」

 

明日香のファールトラップにより、光一はファールを取られてしまう。

 

………結果、試合は優チームに良い風が吹き始め、第2Qにおいて、24vs32にまで追いつく大健闘を見せた………

 

ゆうか「インターバル、10分!」

 

優達はベンチに座り休んでいた。すると、例の少女が優の元にやってきた。

 

優「あれ? 君は………さっきまで僕を見てた子………だよね?」

 

??「は、はい! あの………私、1年の朝顔 結衣(あさがお ゆい)と申します。えっと………先輩が最初に決めたシュート………カッコよかったです!」

 

光一「な、何ー!? あの子も優に惚れやがったー!!」

 

積牙「あの子も………? どういう事ですか、コウさん?」

 

光一「アイツ自身、春香が大好きだから気づいてねぇが………アイツは結構モテるんだよ! この学校でも、俺なんかよりずっと好感度も高いし、信頼もされているとか、この世の中は間違ってるー!!」

 

のぞみ「まあ、アイツはアンタ達問題児よりかはずっと紳士だからね。オマケに顔もいいんだからモテるわよ、そりゃ。何を考えてるのかさっぱり分からないのが欠点だけど。」

 

のぞみがそんな事を語っていると、優は………

 

優「………ありがとう。でも、僕はそれしか能が無いから………」

 

と、半ば謙遜するような言葉を見せたのだった。

 

のぞみ「それより、作戦を考えるわよ………あら? 春香は………?」

 

のぞみは途端に春香がいなくなった事に、首を傾げる。優の方を見ると………

 

春香「はいはい、お話はおしまいよ。」

 

優「いだだだだだだ!?」

 

春香はニコニコとしていたが、優の背中を抓っていたので、ヤキモチを焼いていたんだろう。

 

のぞみ「全く………春香も優との恋愛絡みになると面倒臭いわね………」

 

と、のぞみは呆れていたのだった………

 

 

 

光一はCとしての力を発揮して、圧倒的な力を見せる。しかし、優もまた力を発揮し、光一に対抗するのだった………

To Be Continued………




次回予告
春香チームは、いよいよ春香が加入し、インサイド、アウトサイド共に隙の無いチームとなる。しかし、そんな相手を前にしても、優の力は爆発し………!?
次回「落ち着いて取りに行くよ!」

今回のバスケ用語解説
初めまして………かな? 私は三木 あずさだよ。今回は初歩のシュートとも言われている、レイアップシュートについて解説していくよ。レイアップは速攻なんかでよく使われるシュートで、ゴールの近くで飛び上がって、片手でゴール目掛けてボールを上げるシュート。特に力を込める必要が無く、1、2、3のタイミングで打つのが基本とされているね。このシュートは身長なんかとは無縁に近いとも言えるシュートで、他のシュートと比べると、特に難しい技術も無いから、初心者が最初に覚えるのに打ってつけってわけだね。まあ、優くんの自己流レイアップは、人間技とは言い難いけど………ただ、基本的に速攻や相手の守りをかわして、確実に決めたいって時に使う時が効果的だから、常に狙いに行くってシュートではないから気をつけてね。ここまでダンク、ゴール下、レイアップと説明されているみたいだから、次に説明されるのは何か………もう分かるよね? じゃあ、次の説明は別の人にバトンタッチ。いつか、このコーナーでまた会おうね!


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第10話 落ち着いて取りに行くよ!

前回までのあらすじ
復帰した相田光一を加えての試合形式のゲームが開幕。第1Qは、光一のプレイで、優チームから無失点を達成したが、第2Q序盤で見せた優のダブルクラッチからのダンクで、チームの勢いが上がり………!?


ゆうか「そろそろ第3Qを始めるわよ!」

 

春香「すみません、選手交代です。鈴香ちゃんに変わって、私が出ます。」

 

ゆうか「OK、認めます。」

 

ここで春香が満を持して登場。それを見た優は………

 

優「皆、気をつけろよ………! これからの春香チームはインサイドとアウトサイド共に隙が無くなるぞ………!」

 

と、チームメイトに声をかける。試合は春香チームボールで再開。

 

春香「のぞみちゃん!」

 

春香はのぞみにボールを渡し、のぞみは敵陣までドリブルで進む。優チームは、春香のスリー、積牙と光一のインサイドをそれぞれ警戒し、ゴール下を中心に編成を組む。春香のマッチアップにはあかりを付けておき、出来るだけスリーを撃たせないように対策を試みる。

 

のぞみ「光一!」

 

美咲「………! (やはり光一くんで攻めてくる………!?)」

 

のぞみ「(美咲にはインサイドと見せかけて、本命は………!)」

 

のぞみは春香にパスを回した。

 

美咲「し、しまった!」

 

あかり「撃たせないわよ、春香ちゃん!」

 

春香「そうですか………しかし、関係ありませんね。」

 

春香はそう呟くと、後ろに飛び上がる。

 

あかり「(フェイダウェイスリーポイントシュート!?)」

 

あかりは慌てて飛び上がるが、春香の素早いスリーを前には手遅れ。彼女の放ったシュートは、リングにかすりもせずに入った。

 

光一「よし! スリーに関してはやっぱり春香が1番上手いぜ!!」

 

優「(早速やられた………! 確かに春香のフェイダウェイからのスリーは、あの距離だけでも隙が少なかった………やはり、彼女のスリーを止めるのはそう簡単にはいかないか………!)」

 

優はそう考えると………

 

優「慌てるな! まだ取り返せる! 1本、落ち着いて取りに行くよ!」

 

優はそう言うと、美咲にボールを渡す。

 

美咲「(優くんの言う通りだね………! 取れないことを悔やむよりも………今、私達がすべき事は点を取ること………!)」

 

美咲はそう考えると、ドリブルで敵陣へと切り込んでいく。

 

のぞみ「ここで止める!」

 

のぞみは美咲の前に立ちはだかるが………

 

美咲「そう簡単には取らせないよ!」

 

美咲はそう言うと、左に動く。のぞみも連動して抜かせまいと彼女の前に立つが、美咲は直ぐに切り返してのぞみを抜いた。

 

のぞみ「(速い………!)」

 

美咲「あかり先輩!!」

 

美咲が渡したボールはあかりに渡る。あかりの前には春香が立ちはだかる。だが、彼女は優に僅かな視線を向け………

 

あかり「行くわよ!」

 

その場で大きく飛び上がり、シュートフォームを形成する。

 

春香「打たせません!」

 

春香もジャンプして、シュートコースの妨害を試みる。

 

あかり「ふふっ………優くん!」

 

だが、はなっからシュートをする気は無かったあかりは、ボールを優に渡すと、優はダンクに向かう。

 

光一「そう何回もダンクなんて打たせるか!!」

 

光一は大きくジャンプして妨害しようとする。その高さはほぼ互角で、優も無理してダンクに行くと、ファールを取られる恐れがあった………しかし、優はダンク寸前に、自分の左下にいたあずさにボールを渡す。

 

光一「何っ!?」

 

あずさ「はああっ!!」

 

そのままあずさがレイアップの体勢に………

 

積牙「打たせるものか!!」

 

積牙は大きく飛び上がり、あずさのレイアップを妨害。しかし、その時に彼女と接触してしまい………

 

ゆうか「チャージング! 白10番! フリースロー!」

 

シュートこそ防いだが、あずさにフリースローの権利を与えてしまった。

 

春香「あ、危なかったわね………積牙くんがいたから、まだ良かったけど………」

 

あずさ「やっぱり身長の壁は高いな………まあ、フリースローを貰えただけラッキーって感じかな………?」

 

優「春香が入ってきてから、相手の士気も変わってきたな………」

 

明日香「チームの最強メンバーと言える数はあっちの方が多いからね………というか、相手に優もいたら絶望だったよ………」

 

美咲「そうだね………」

 

優チームはフリースローの権利こそ得たが、春香チームの強さに、若干追い詰められているような様子を見せるのだった………

 

 

ゆうか「ツーショット!」

 

あずさは、ゆうかからボールを受け取ると、ゴール目掛けてシュートを放つ。まず、1本目は難なく決め、2本目も綺麗に決めた。

 

のぞみ「(バスケ部でシュート成功率が高いあずさが打っている事を考えれば、この2失点はやむを得ないわね………)」

 

のぞみを始め、春香チームはこの失点については深く考えずに、攻撃に気持ちを切り替えた。

 

のぞみ「(この1本も安定して奪うわよ………しかし、相変わらず優の存在感は大きいわね………こっちは190cm超えを2人抱えているはずなのに、優の前ではそれすら意味無いように感じるわ………)」

 

のぞみはそう考えると………

 

のぞみ「(なら、ここはアウトサイドから攻める!)………春香!」

 

のぞみがそう叫んで、春香にボールを投げた時だった。突如、あかりがインサイドの方に走り、優が春香の前に立った。

 

春香「ゆ、優さん………!?」

 

のぞみ「(マッチアップを変えてきた!? くっ………!)春香、戻して!!」

 

優「逃げるなんて、そんなの僕が許さねぇよ!」

 

優はそう言うと、美咲に目配せをする。それにより、美咲は春香寄りの方に立ち、簡単に戻せないようにする。

 

春香「(こ、こうなったら打つしかない………! 今の優さんとの距離が近いから、パワースリーポイントシュート一択だけど………幾ら優さんでもファールの網にかかるはず………!)」

 

春香はそう信じてスリーを放つ。しかし、優はここで予想外の動きに出た。優はジャンプこそした………しかし、わざと全然勢いをつけずに飛んだ為、春香の上半身くらいまでしか飛んでいない。

 

春香「なっ!?」

 

春香は優に気を取られてしまい、シュートを打ちはしたが、外した。そればかりでは無く、落下時に先に地面に降りた優と接触。春香が優を押し倒す形で、2人とも倒れてしまった。

 

ゆうか「チャージング! 白5番!」

 

春香「す、すみません! 大丈夫ですか!?」

 

優「な、何とか………」

 

のぞみ「(か、かなり無茶な真似に出たわね………! 春香の動揺を誘ってファールの網にかける。………ただでさえスリーポイントシュートのブロックに走りがちな場面においてそれを狙いに行くなんて困難にも程があるって言うのに………! しかし、アンスポーツマンライクファール………故意のファールと取られなかったのは不幸中の幸いって所かしらね………)」

 

のぞみはこの状況を、驚きながらもそう分析するのだった………

 

 

 

第3Q以降、春香達が加わっても、優がその分食らいついてきた。結果、ゲームは68vs68の同点で終わった………

 

 

優「つ、疲れた………」

 

積牙「流石キャプテン………それに、先輩方もキャプテンのプレイから勢いづいてましたね………」

 

美咲「あはは………なんというか頼りになるんだよね、優くん。基礎は全くダメなのに、タンクとかアリウープ。それに、凄いジャンプからのブロックとか………真似出来ないからこそ、そのプレイに勇気づけられるんだよね。」

 

あずさ「確かにね。流石にダブルクラッチからのダンクはびっくりだけど………」

 

優達は試合後に楽しそうに会話をしていた。そして、それを見ていたゆうかは………

 

ゆうか「(両チームの選手の皆がいい勝負を見せるようになってきたわね………これなら、次の大会も期待出来そうね………大会まで残り2ヶ月。練習あるのみね………!)」

 

そんなことを考えていた………

 

 

 

それから優達は、大会に向けて練習をする事になった。そんな中、一つだけ変化があった。

 

 

 

ゆうか「はいはーい、今日からマネージャーが加わるわよ!」

 

光一「マジか! ここにいる女子は皆、運動女子だからなぁ………マネージャー女子ってのも悪くな………」

 

伊吹「ふざけた事を言うなクソ野郎!!」

 

明日香「私達の何が気に食わないのよ、彼女なし男!!」

 

光一は軽はずみな言葉を口にし、伊吹を始めとした数人の女子から袋叩きにされた。

 

結衣「朝顔 結衣です、よろしくお願いします!」

 

光一「あっ、あの時の! 俺に憧れて入ってくれたんだよな!?」

 

結衣「いえ、違いますが………?」

 

光一「嘘だろ!? また優絡みか!?」

 

光一が頭を抱えている中、結衣は顔を真っ赤にしながら優に視線を向ける。それを見た優は首を傾げていたが、春香は優に抱きつくと、関節技を仕掛けてきた。

 

春香「ゆーうーさーんー?」

 

優「痛い痛い痛いー!!」

 

結衣「あ、あの………どうしたんですか?」

 

春香「優さんは私のモノだからね! 」

 

結衣「ふぇっ!? ど、どういう意味ですか、それ!?」

 

優「な、何でもいいから助けてーー!!」

 

ゆうか「うふふ………賑やかになってきたわね。」

 

優「僕の命に関わるんですがー!?」

 

積牙「せ、世紀末………ですね。」

 

マネージャーとして、朝顔 結衣が加わり、優達の練習は賑やかになりながらも、レベルアップの為に必死に特訓を繰り返していた………彼等が大会に挑み、全国への道を歩む為に………

To Be Continued………




次回予告
優達の県大会が近づく中、ゆうかは優と春香を誘って他県の試合を見に行くことに。だが、そのメンバー数人に優と春香は不思議な表情を浮かべ………?
次回「アイツはまさか………!?」

今回のバスケ用語解説
はじめまして、雷 美咲だよ! 今回は前回のあずさちゃんの解説に続く形で、ジャンプシュートを紹介するよ! 巫魔高校の選手の大半の武器が、このジャンプシュートだけど、改めて解説すると、このシュートは言うまでもなく、ジャンプしてシュートを打つこと。シンプルだけど、安定して成功させるには練習を積まないと出来ないんだよね。まあ、基礎も出来ないのに、あれだけダンクを連発出来る優くんは例外だけど………と、とにかく! シンプルだけど、安定して得点を狙うには、レイアップよりも練習が必要だけど、練習を積み続ければ、身長なんか関係無しに出来るようになるはずだよ! じゃあ、私からの解説はここまで! 次回からはまた違う説明がされるみたいだから、楽しみにしててね! じゃあねー!


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第二章 戦友対決
第11話 アイツはまさか………!?


前回までのあらすじ
後半戦、部活内でも最強メンバーを抱える春香チームを相手に、優の実力は大きく爆発。ゲームは同点に終わり、優達は試合に向けて特訓をする事に………


優達が練習をしていたある日の事………

 

優「試合を見に行く………ですか?」

 

ゆうか「そう、他県の方では既に県試合が始まっていて、速い所じゃ明日で決勝リーグが終わるところがあるらしいのよ。まあ、2位以下はまだ分からないけど、1位は既に決まったも同然とか言われているけどね。」

 

春香「では、監督の狙いは1位のチーム………ですか?」

 

ゆうか「友力高校………県大会ベスト4止まりだったのにも関わらず、去年において突然全国ベスト16にまでのし上がった………新規の強豪校よ。」

 

春香「友力………!」

 

優「………」

 

優はどこか浮かない顔をし、春香はまるで知っているかのような顔をして驚いていた。

 

ゆうか「これは、貴方達だからこそ、見に行って欲しいのよ。」

 

優「………わかりました。」

 

 

 

翌日、優達はトウキョウにある会場に来ていた………本当に今更だが、この世界での地名は、読み方はそのままだが、漢字は使われておらず、カタカナで表記される。優達巫魔高校があるのはイバラキである。

 

ゆうか「………まずったわね………バスが遅延して………第4Q最後が見れる程度になってしまったわ!!」

 

優「全く………ふざけてるぜ………!」

 

優達はバスの遅延によって、試合の大半を見られずじまいになってしまった。

 

優「な、何とか間に合った………」

 

春香「ええ………試合は………142vs41!? 友力が圧倒的に勝っているじゃないですか!?」

 

試合の流れは残り1分時点で完全に友力ペースだった。

 

観客「あっ! またボールが7番に渡ったぞ!」

 

観客の声にあった7番の男は、身長が190はある男であり、敵のディフェンスをかわして、力強いダンクをぶちかました。

 

観客「うおおおぉぉぉ!! またアイツのダンクだ! これで何回目だよ!?」

 

優「相変わらず強い………」

 

ゆうか「………確かにね。それに、今年は殆どのメンバーが一新されているわね。」

 

春香「優さん………」

 

優「………なんだい?」

 

春香「苦しくないですか………? かつての仲間の試合を見るなんて………」

 

優「苦しいよ………でも、僕は裏切ったんだ。文句は言わねぇよ。」

 

優がそんな事を呟いていた時、試合が終わった。結果は言うまでもなく、友力が勝利した………これにより、友力は決勝リーグ1位で全国大会、インターハイへの出場権を獲得した。

 

優「………帰ろう。ずっといるのは気分が悪くなる。」

 

優はそう言って帰ろうとした。しかし、ゆうかか優の服の襟を掴むと………

 

 

ゆうか「いいえ、彼等に会いに行ってもらうわよー!」

優「か、監督! それだけは嫌なんですー!!」

 

優達はいやいや引っ張られて行くことに………

 

 

 

優は春香と共に、止むを得ずに会場の廊下を歩いていた。ゆうかはわざと来なかった。

 

優「あの監督め………人にこんな作業を押し付けやがって………」

 

優が愚痴をこぼしていた。すると、友力のユニフォームを着た選手数人が廊下を歩いていた。

 

??「………! アイツはまさか………!? ミドレーユ………なのか!?」

 

先程、ダンクをぶちかました男が優に近付くと………

 

??「おい! お前、ミドレーユなんだよな!?」

 

優「………その呼び方はやめてくれないか。僕はもうミドレーユじゃない。白宮 優だ………修也。」

 

修也「………やっぱりな。この間のバスケ雑誌を見て、お前に似ている奴だとは思っていたけど………お前本人だったとはな。わざわざポジションまで変えてくるとは………そんなに自分を変えたかったのか?」

 

優「………ミドレーユとしての自分が嫌いだったからな。それに、バスケから逃げようとも思ってたよ。でも、僕は逃げなかった。バスケが大好きな仲間がいるからな。その仲間の為にバスケを続けた………それが悪いか?」

 

修也「その想いだけで、PFとして負けず劣らずの強さを得たという訳か………でも、それはSFの君から逃げているのでは?」

 

修也と呼ばれた人物………天野 修也(あまの しゅうや)は、詰め寄るように優に問いかける。

 

???「ちょっと、そんな詰寄るように言ったって、ユーを困らせるだけよ?」

 

先程から黙って話を聞いていた女子選手が1人、話に割り込んできた。

 

優「アリサ………!」

 

アリサ「あれ? 白宮春香もいる! 本物だー!」

 

話に割り込んできた少女、アリサ・ストライクはそう言うと、春香に近づき………

 

アリサ「えっと………このメモ帳でいいや、サイン頂戴! アリサ・ストライクちゃんへって書いてね!」

 

春香「え、ええ………」

 

春香はアリサへサインを書いた。それに続くように………

 

??「アリサちゃん、サインが欲しかっただけなんじゃ………?」

 

と、声をかける者が。彼女も優を見ると………

 

??「久しぶりだね、ミドレーユくん。いや、優くん? なんというか、全然定着しないな………」

 

優「芽衣………! というか、君達のユニフォームの番号………やはり、レギュラーになっていたんだな。」

 

芽衣「そうだよ。私達、頑張ってレギュラーの座を勝ち取れたんだよ!」

 

優「そうか………良かったな。」

 

優は2人目の少女、月渡 芽衣(つきわたり めい)がレギュラーになった事を、どこか素直に喜べない様子で語る。そう、彼等3人は優のかつての親友であり………優は、中学時代にトウキョウで名を馳せたという選手、ミドレーユ=ゴッドなのだ。ここまで言って、既に察しているだろうが、優の容姿から分かるように、優は日本人では無い。それを言うなら、アリサも日本人では無いのだが………

 

優「君達とまた会えたのは嬉しいけど………なんというか、合わせる顔がないと思っていたんだ。今も、心のどこかでそう考えている自分がいる………」

 

優はそう語る。すると、優達の会話に割って入って来るかのように、身長2mの男がやって来た。

 

??「おうおうおう、なんだ、コイツがミドレーユか!? 成程な………コイツが、例の女たらしのクソ野郎って訳か。」

 

春香「そ、それってどういう事ですか!?」

 

??「知らねぇのか? コイツはこんな可愛い幼馴染達を放置したクソ野郎なんだよ。」

 

優「………事実無根だ。第一、誰だお前?」

 

??「俺は林川 浩太(はやしがわ こうた)。トウキョウ最強のCだ。」

 

優「C………それで。なんでお前が僕を責め立てるのさ? 少なくとも、その権利は修也達にあるはずだ。」

 

浩太「それはな、俺はコイツらの味方だからだ。」

 

優「納得する訳ないだろ、そんな理由で。」

 

浩太「偉そうな事をいいやがって………! お前如きが偉そうな事を言うな!!」

 

優「………ブーメラン発言だよ、バカ。」

 

優は呆れるようにそう呟く。すると、浩太は優に掴みかかる。

 

浩太「てめぇ!!」

 

優「………殴りたいなら殴ってみろよ。お前が試合に出られなくなるけどな。」

 

浩太「ぐっ………言わせておけば………!」

 

修也「止めないか、浩太!

 

浩太「しゅっ、修也………!」

 

修也「そいつは何も悪いことはしていない。それに、お前が問題沙汰を起こせば、チームとしては問題だ。」

 

浩太「ぐっ………!」

 

浩太は悔しそうに、優から離れる………

 

優「県大会出場は素直におめでたいと思うよ。でも、僕達だって追いついてみせる。君達を相手に………!」

 

浩太「無理だな。俺達はトウキョウ1位。お前等には高いんだよ、全国のハードルは。」

 

優「乗り越えるさ。その全国のハードルとやらを。」

 

浩太「お前等のレベルなんてたかがしれている。俺達にバスケで勝負したら、ボコボコにされるだろうな。」

 

優「喧嘩をふっかけているつもりか?」

 

浩太「そうさ。」

 

優「………全国クラスが雑魚チーム相手に喧嘩とか………ダサいにも程があるぜ。」

 

浩太「そういうお前らこそ、もし俺達に勝てば、全国なんて余裕だろうな。」

 

優「ほう………いいだろう、敢えて受けてやるよ、その勝負。」

 

春香「しょ、正気ですか!?」

 

修也「まさかこんな形でお前と勝負をする事になるなんてな………楽しみにしてるぜ。」

 

優達は、かつての旧友、修也達との練習試合をする事になってしまった。しかし、今回の会話で出てきたミドレーユ=ゴッド………果たして、その過去は………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔vs友力の練習試合。ゆうかは第1Qは様子を見ようとするが、全国レベルの力を思い知らされる事になり………!?
次回「これが全国クラスだ………!」

今作のバスケ用語解説
やあ、第1話ぶりかな? 白宮 優だ。今回から、今作の用語について解説していこうと思う。まず、今作の特徴である、男女競合バスケというのは、男女関係無くバスケをプレイできるんだ。それ以外は実際のバスケと変わらない。つまり、ただ単に、男子のみ、女子のみになってない事だけしか違いが無いんだよね。え? それって体格的な差が出ないかって? 確かにそれはあるだろう。だからこそ、みんな努力しているんだ。僕だって身長は170cmしかないしね。さて、こんな感じで、次回からも作中の用語を語っていくぞ! では、また会う時に!!


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第12話 これが全国クラスだ………!

前回までのあらすじ
優と春香の2人は、トウキョウの友力高校の試合を見に行く事に。その選手のうち、3人は優の旧友であった。彼等との会話中に乱入してきた林川 浩太との対立で、練習試合をする事になってしまった。そして、彼等との会話で出てきたミドレーユとは一体………?


数日が経ったある日、トウキョウの友力高校は、巫魔高校へとやってきた。

 

ゆうか「奄美監督………わざわざすみませんね、選手達の口約束で試合を約束させてしまいまして………」

 

奄美「いえいえ、うちの学校は練習試合を依頼してくれる学校は中々ないからね、よろしく頼むよ。」

 

監督同士は以外と話し合えるようだった。寧ろ、対立が深いのは、優の方だった。

 

修也「おっ、背番号4。という事は、お前がキャプテンなのか………変わらねぇな。」

 

優「なんでもいいだろ。」

 

修也「それもそうだな。いい試合にしよう。」

 

優と修也の2人は握手をする………

 

 

 

だが、ゆうかは………

 

ゆうか「優くん、今回もベンチスタートよ。」

 

優「………はい。」

 

優を温存する為に、ベンチに下げる。しかし、優はある事を感じていた。

 

春香「優さんを下げるなんて………大丈夫なんでしょうか?」

 

優「はっきり言って、第1Qも持つかどうかって所だな。春香、アップはしとくぞ。いつでも行けるようにな。」

 

春香「は、はい!」

 

優と春香の2人は、ベンチの後ろでアップを始めた………

 

アリサ「ええ………ユー、スタメンじゃないのか………」

 

芽衣「確かに………それだけ自信があるのかな?」

 

修也「大丈夫さ、どうせすぐに出てくるさ。ミドレーユ抜きで、俺達を倒せるわけなんて無いからな。」

 

??「お前ら、話してないで並べ。」

 

修也「はい、キャプテン。」

 

 

この試合、両チームのスタメンは下記の通り。

 

巫魔高校(ユニフォーム黒)

9番 PG 時乃 のぞみ

13番 SG 宮野 あかり

10番 SF 江野 積牙

14番 PF 炎塚 ほのか

17番 C 相田 光一

 

友力高校(ユニフォーム白)

8番 PG 月渡 芽衣

6番 SG アリサ・ストライク

4番 SF 身軽 太一

7番 PF 天野 修也

9番 C 林川 浩太

 

 

優「しかし、驚きだな。相手のスタメンのうち、4人が2年生なんだな。」

 

積牙「確かに………」

 

優「頼むぜ皆………僕が出るまで何とか持ち堪えてくれ………!」

 

優は祈るようにそう呟いた………

 

 

審判は明日香が務めることになり………

 

明日香「じゃあ、始めるわよ!」

 

明日香が増えを鳴らすと同時に、ボールを打ち上げる。ボールが頂点に到達する直前に、光一と浩太が大きく飛び上がり、ボールに触れる。2人の手は大きく押し合うと、ボールを真上に弾いた。

 

光一「ぐうっ!!」

 

光一はもう一度ジャンプするが、ボールはその前に飛んでいた修也がキャッチした。

 

優「修也………!」

 

修也はボールを芽衣に渡すと、芽衣はドリブルで上がる。のぞみが芽衣の前に立ちはだかるが………

 

身軽「修也! 挨拶代わりに1発かませ!」

 

修也「はい!」

 

芽衣「はあっ!」

 

芽衣の的確なパスで、ボールは高く打ち上がり、修也はそのままアリウープを炸裂させた。

 

優「やられた………! 早速アリウープか………!」

 

優は驚く様子を見せた。しかし、優達はこの先、更に驚くことになる………

 

 

開幕から挨拶代わりのアリウープを決められた巫魔は、のぞみを起点に進み、攻撃しようとした時だった。

 

のそみ「積牙!」

 

積牙に向けたボールは、身軽 太一にスティールされてしまった。

 

積牙「何っ!?」

 

身軽「上がれ!!」

 

巫魔は、友力を相手に何とか自陣に戻って守りを固める。

 

身軽「芽衣!」

 

ボールが芽衣に渡ると、芽衣は相手陣を見ながら移動する。

 

のぞみ「そんなによそ見してたら………隙だらけよ!!」

 

のぞみは、芽衣からボールを奪おうとするが、芽衣はまさかのノールックでアリサの方に鋭いパスを出した。

 

のぞみ「(ノールックでパス………!? それにしては恐ろしい正確さね………背中に目でもついているかのような………)」

 

のぞみがそんな事を考えていた時、ボールを受け取ったアリサはそのままシュート体勢に入り、大きく飛ぶ。あかりも飛び上がるのだが、その時、春香は途端に………

 

春香「………! あ、あかりさん、飛んじゃダメです!!」

 

あかり「え………!?」

 

あかりのディフェンスを静止して来た。その理由は、あかりがアリサの飛んでいる方向を目にして分かった。

 

あかり「(ま、前に飛んでる!?)」

 

だが、時すでに遅し。あかりはアリサと接触してしまい、笛が鳴る。そして、アリサはそのままスリーを右手で放ち、リングの上にボールを乗せる。ボールはクルクルと回りながらも、リンクの中に吸い込まれた。しかも、そればかりか………

 

明日香「プッシング! 黒13番! バスケットカウント、ワンスロー!」

 

あかり「(ぱ、パワースリーポイントシュート………!?)」

 

なんと、まさかのファールをもらいながら4点プレイを決める、春香のパワースリーポイントシュートとほぼ同じシュートを決めてきた。

 

優「(すげぇ………)」

 

優は驚きながらも、感心する様子を見せていた………

 

 

 

明日香「ワンショット!」

 

明日香はアリサにボールを渡す。アリサはボールを構えると、綺麗なシュートを放つ。このシュートはリングに掠る事無く決まった。

 

春香「いきなり6点とは………厳しいですね………」

 

優「ああ、しかもアリサは多分………」

 

優が何かを言おうとした時、ボールは身軽に取られてしまった。

 

春香「またスティール………!?」

 

優「(あの4番、スティールが上手い………攻めについては正直、修也やアリサの方が強い。攻めるのが得意な奴が担当する事が多いSFではあまり見ないタイプだ………)」

 

優は身軽の事をそう評価していた。実際、彼のプレイは目立ちにくいが、相手の攻めを崩すのに長けた強さを持っている。つまり、守り専門とも言える強さを持っている。

 

芽衣「はあっ!」

 

芽衣の鋭いパスは、再びアリサに渡る。

 

アリサ「ナイス!」

 

あかり「打たせないわよ!! (距離を離せば、パワースリーポイントシュートは打てない………!)」

 

アリサ「嵌ってるね………スリーの沼に!!」

 

アリサはそう言うと、後ろに飛び、スリーポイントシュートを放つ。まさにこれは………!

 

あかり「ふぇ、フェイダウェイスリーポイントシュート!?」

 

春香の持つフェイダウェイスリーポイントそのままのシュートだった。打つ方の手も、やはり右手。

 

アリサ「私はね、レギュラーを取るまでに、白宮春香が編み出した、この2つのシュートを何度も練習して来たの。破壊力、得点力がとてつもなく強いこの2つのシュートこそ、私が全国を勝ち上がるのに、最も適した最強シュートよ!!」

 

優「春香のシュートを丸パクリ………しているとはいえ、それが出来るとすれば、今のアリサはかなり厄介だな………」

 

春香「そうですね………」

 

優と春香はそう考えていた。だが、それでも巫魔は諦めない。今度は、光一にボールを回し、ゴール下によるシュートを試みる。しかし、林川 浩太が大きく飛び上がり、上のコースを防いできた。

 

光一「(ぐっ………! なら、横から入れるだけだ!!)」

 

光一は浩太の横から決めようとする。しかし、それを瞬時に察知した浩太は、ボールを、シュート体勢中の光一ごと吹き飛ばして止める。だが、ここで笛が鳴り………

 

明日香「チャージング! 白9番! フリースロー!!」

 

光一を吹き飛ばしたのがマズかったのか、浩太はファールを取られてしまった。

 

浩太「ちっ………」

 

浩太はあからさまに舌打ちをした。

 

積牙「コウさん!!」

 

光一「やるぜ、アイツ………力だけなら俺より上だ………!」

 

光一はそう考えていた………

 

その後、第1Qは終始友力が有利であり、終了時の特典は、11vs26だった。

 

結衣「だ、大丈夫ですか………?」

 

ほのか「はあっ、はあっ………まあ何とかね………だとしても、全国出場経験チームは選手も全員強いな………」

 

優「皆が手も足も出ないくらいに強い………つまり………これが全国だ………! って言いたい訳か………」

 

ゆうか「そうね、でも、力豪を相手にギリギリまでくらいつけた貴方達なら絶対に勝てるわ。優くん、春香ちゃん、2人とも出てもらうわ。見せてきなさい、巫魔最強メンバーの恐ろしさを!!」

 

優達「はい!」

 

 

 

一方、友力のベンチでは………

 

浩太「やはり大した事は無いな、あのチーム。俺達を相手に殆どシュートが決められてない………やはり、1回戦止まりの雑魚って訳か。」

 

身軽「そうやってハメを外すなよ? 第1Qにも関わらず、お前は2ファールもらってるんだから。」

 

浩太「分かってますよ!」

 

修也「本当か? 多分、次のQで優が来る。アイツのPFとしての力はハッキリとは分かっていない。気をつけろよ?」

 

浩太「分かってるさ。」

 

浩太はそう言っていたが、心の中ではまだ余裕そうな素振りを見せていた。

 

こうして、両チームのメンバー共にコートに戻る。

 

優「さあ、落ち着いて行こう!」

 

4人「おおー!!」

 

優はのぞみにボールを渡すと、のぞみは前線に上がっていく。相手チームの守りはマンツーマンディフェンスのようだ。その為、修也が優をマークしている。

 

修也「お前がどういう気持ちでPFをやっているかは知らんが………本職を舐めるなよ!!」

 

修也はそう言っていた。しかし、優は落ち着いた様子を見せていた。優は修也の後ろからのぞみの方に向けて、パスをするようジェスチャーする。

 

のぞみ「準備万端ってわけね………優!」

 

修也「正気か!? このまま俺が取って………なっ!?」

 

修也はボールが自分の方に飛んでくるのを目にし、一時油断していた。その為、優はいつの間にか修也の前に立ち、パスを受け取る。

 

優「はあっ!!」

 

優はそのままダンクを狙う。

 

浩太「させるか!!」

 

浩太がすかさず止めにかかる。しかし、修也は何かを察知し………

 

修也「ま、待て! 飛ぶな!!」

 

慌てて浩太を静止するが、時すでに遅し。浩太は優に接触する形でぶつかってしまう。明日香の笛が鳴りながらも、優はダンクでゴールに決めた。その判定は………!?

 

 

 

明日香「………バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

このファールは浩太のファールとして取られ、浩太は第2Q開始時点にも関わらず、3ファールをもらってしまった。

 

浩太「何っ!?」

 

優「よしっ!」

 

優は喜ぶ素振りを、浩太は驚く様子を見せていた………

 

 

だが、この時点の巫魔にとってはあまり良くない。優はフリースローを決めた事がなく、逆によくない風がやって来ようとしていた。しかし………

 

優「よーし、ここからまた取るぞ!!」

 

そんなことを気にする暇もなく、フリースローに臨むのだった………

 

 

 

明日香「ワンショット!」

 

優は明日香からボールを受け取る。構えこそ上手ではあるが、フリースローの成功は、高校バスケ入部以降は1度たりとも成功していない。

 

優「(行くぞ………!)」

 

優はシュートを放つ。当然のようにこのシュートは外れてしまうが、全員が気がついた時には、何と優が大きく飛び上がっていた。

 

浩太「なんだと!?」

 

優はそのままダンクでボールを押し込んだ。

 

伊吹「いいぞ、優!!」

 

修也「(力強いダンクだ………まさかたった1年であれだけの強さにまで成長しているとは………)」

 

これには、修也も驚く様子を見せたのだった………

 

 

 

こうして、優の2連続ゴールによって戦いの火蓋が切られた第2Q。果たして、巫魔の逆襲はできるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優の圧倒的なプレイは止まらず、遂に浩太から4つ目のファールを奪う。更に、浩太はまさかの動きに出てしまい………!?
次回「バカヤロー!!」

今作のバスケ用語解説
お久しぶりです、白宮春香です! 今回は、私達が所属する巫魔高校についてお話しましょう。巫魔高校はイバラキにある学校で、部活動なんかは普通、学校偏差値も普通の、至って普通の学校。ただ、神道学に力を入れている学校であり、この学校の生徒の中には、神道を信仰する人も多いんです。バスケ部については、大会で1回戦負けが常の学校ですが、今年はどうなのでしょうか………?
とまあ、今回はこんな感じでお話は終了させて頂きます。次回の方はイバラキの強豪校を解説いたしますので、皆さんお楽しみに!! では、またお会いしましょうー!!


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第13話 バカヤロー!!

前回までのあらすじ
全国への出場経験があり、優の過去の友が所属する友力との対決。第1Qは選手のレベルの違いに苦戦を強いられるも、優の加入で、巫魔の流れが来ようとしていた………


芽衣「まだ点差は11点! 落ち着いていこう!」

 

芽衣はチームに落ち着きを促す。実際、現在の点数は15vs26。友力にとってはまだ慌てるような点差では無い。しかし、この状況で、ただ1人だけ過剰に興奮するかのように落ち着きの無い者がいた。そう、浩太である。浩太は前線に上がるや否や………

 

浩太「芽衣、こっちに回せ!!」

 

芽衣「(浩太くんに回したいのは山々だけど………いま、浩太くんは3ファール………下手に4ファールになってしまうと、うちのCが弱くなってしまう………ここは修也くんに回して安定を………)」

 

 

芽衣はそう考え、修也にボールを回す。マッチアップ相手は当然のように優。

 

結衣「ああやって見ると………優さんが小さく見えますね………」

 

伊吹「アイツ、身長は170cmだしな。なんなら、SFの積牙の方がデカいよ。でもな、アイツはすげぇんだよ。」

 

伊吹が話をする中、修也は大きく飛び上がり………

 

修也「ここで決めさせてもらうぞ!」

 

修也はここでジャンプシュートを放つ。しかし………

 

優「させる………もんか!!」

 

優は修也を超える高さにまで飛び上がり、ボールを打ち落とした。

 

修也「高い………!」

 

浩太「ちっ………ここで俺が!!」

 

なんと、この状況で浩太は、マッチアップしていた光一そっちのけで、こぼれ球を広い、ダンクを狙いに行く。

 

芽衣「ダメ、浩太くん!!」

 

芽衣が静止をするものの、浩太は聞く耳を持たず、そのままリングにボールを押し込んだ………のだが、突然笛が鳴り………

 

明日香「チャージング! 白9番!」

 

と、まさかのファール判定。浩太は驚いた様子を見せた為に

 

浩太「ま、待ってくれ! 誰に当たったんだよ、俺は!?」

 

明日香「下見てなかったの? 優に接触してたのよ。」

 

明日香は優を指差す。すると、優が仰向けに倒れていた。

 

鈴香「ボールを弾いた直後に、ダンクに当たったように見せかけるプレイ………上手い。」

 

結衣「ど、どうしてですか?」

 

伊吹「アイツは審判である明日香の死角を利用して、あたかも接触して倒れたように見せかけたんだよ。それに、あのCはこれで4ファールだ。」

 

結衣「となると、次のファールで退場………はっ!?」

 

伊吹「そうさ………退場を恐れて、まともなプレイが困難になってくるぞ。」

 

優のファインプレーがここで炸裂。すると、ここで両チーム共に予想外の事態が起きた。

 

浩太「ま、待て!! 俺は触ってないぞ!!」

 

アリサ「浩太!?」

 

修也「止めろ、浩太!!」

 

なんと、この場面で接触していないと抗議に出てきた。しかし、これはリレーで無ければ、水泳でも無い………

 

浩太「なんで触れても無いのにファールを貰わなきゃならねぇんだよ!!」

 

明日香「………はあ。」

 

明日香は溜息をつくと………

 

明日香「白9番、テクニカルファール! 5ファール退場!」

 

浩太「………!!」

 

バスケでは審判の判定が絶対。抗議すれば、テクニカルファールを取られる恐れがある。浩太は、この場面で何とも間抜けな退場をする事になってしまった。

 

身軽「何やってんだか………」

 

キャプテンの身軽は呆れ、芽衣は唖然、アリサは………

 

アリサ「バカ! 何くだらない理由で、前半も終わってないのに退場しちゃうのよ!!」

 

怒りを顕にしていた。確かに、まだ第2Qが始まって1分程度しか経っていない。なのに、友力は残る29分を、浩太抜きで戦う羽目になってしまった。

 

奄美「あのバカ………なんて事を………ウチには彼の前にもう1人全国と戦えるCがいたが………彼は去年の大会の敗北後に、海外留学に行ったきりまだ戻ってきていない………それなのに………この状況で強力なCを失う羽目になるとは………!」

 

奄美が頭を抱える程、この状況は友力にとって深刻な問題だった。このチームには一応、控えのCがいるにはいるが、まだ1年生であり、試合出場経験も無い天原太助という選手。身長も184cm、72kgと、浩太と比べれば小柄。友力は、チームを支える強力な柱を1人失った。

 

修也「何考えて審判に抗議したんだよ………あの人がいない今、お前がいなきゃCが弱くなるのに………バカヤロー!!」

 

修也は思わず彼を責め立てた。まあ、審判に抗議して退場という間抜けな理由での戦線離脱をしてしまったので、怒りたくなる気持ちも分かるが。

 

浩太「………」

 

浩太は何も言い返せずにベンチに下がった………

 

 

 

明日香「友力選手交代! 9番に変わって15番が入ります!」

 

友力は止むを得ずに、天原太助を投入。

 

修也「太助、急な出場ですまないが、今、Cをやれるのがお前しかいないんだ。ミスをしてもいい、全力で頑張ってくれ。」

 

太助「は、はい!」

 

本試合がデビュー戦となる太助は、やはり緊張していた。その緊張感は、巫魔のベンチ陣ですらハッキリわかるもので………

 

由香「緊張しているわね、あの子………」

 

鈴香「見た感じ1年生っぽいし………こんな状態で唐突に出ろと言われて緊張しない方が凄い………」

 

レイ「相手にとってはある意味最悪の誤算ね。相手の9番が間抜けな理由で退場をくらったんだから。」

 

伊吹「皆! 絶好のチャンスだ! 攻めて攻めまくれ!!」

 

伊吹の声を聞いた浩太は、はっきりと苛立ちを見せていた。しかし………

 

奄美「挑発に乗るな、林川。お前の退場はうちのチームにとってかなりの大損害だ。頭を冷やせ。お前抜きの今のチームでは、どんなに苦しくなるか………その理由を試合を見るんだな。」

 

奄美は怒りながらも、彼の為に試合を見るよう促すのだった………

 

 

試合が始まってしばらく経った時の事、巫魔ボールでのぞみがボールを持って敵陣の前に立つ。友力の守りはマンツーマンだったが、Cが薄く見えてしまっていた。

 

のぞみ「光一!」

 

のぞみのパスは光一に渡る。太助は何とか止めようとするが………

 

光一「お前なんぞに………俺のシュートが止められるか!!」

 

迫力とパワーで太助のディフェンスをかわし、ツーハンドダンクを炸裂させた。

 

太助「ぐっ………(つ、強い………!!)」

 

浩太「………!! さっき俺が止めれたCが容易く決めた………」

 

奄美「そういう事だ。天原はまだ高校レベルのCとしては未熟だ。恐らくだが、相手のCは並の選手など寄せ付けない強さがある。しかし、お前はCとしては全国クラスとも言える素質がある。だから、奴を止めることが出来た。分かったか? お前が外れた代償の重さが………」

 

浩太「………」

 

友力監督、奄美の指摘は最もだった。光一は部に出ていなかった為、試合経験自体は少ない。しかし、Cとしてはピカイチの強さを持っており、とても参加禁止を言い渡されていた人物の動きではなかった為、恐らく自主的な練習をしていたのだろう。

 

修也「(まずい………浩太の離脱が痛すぎる………相手のCが、実質ゴール下を支配していると言っても過言じゃない………!)」

 

修也がそんな事を考えていると、友力側の反撃が始まる。ボールを持った芽衣は、不用意にゴール下にボールを回すのは危険と判断し………

 

芽衣「アリサちゃん!」

 

ボールをアリサに渡す。マッチアップ相手は春香である。

 

アリサ「貴女とこうやって対決する事になるとは思わなかったよ。でもね、私だってスリーポイントシューターとしては、無敵に近いんだから!!」

 

アリサはそう言うと飛び上がる。飛んでいるのが前寄りなため、間違いなくパワースリーポイント狙いだろう。

 

春香「そうね………普通の相手ならまずどうしようも無い………けど、これを使い続けている私には、当然弱点もわかるのよ!!」

 

春香はそう言うと、わざと後ろに倒れるようにジャンプした。無論、これでは春香が背中から倒れてしまうのだが、それは、パワースリーポイントシュートを失敗したアリサも同じ。これに動揺したアリサはシュートを打つが、ボールはゴールの板に弾かれる。そればかりか、バランスを保てずに春香に接触してしまった。当然笛が鳴り………

 

明日香「チャージング! 白6番! スローイン!」

 

アリサのファールと取られてしまった。

 

積牙「(流石本家本元………弱点なんかもきちんと把握している………!)」

 

この光景に、積牙は感心していた………

 

 

巫魔の絶好調は止まらない。のぞみがスローインによってボールを受け取ると、速攻をしかける。

 

芽衣「速い………! 修也くん、太助くん! 止めて!!」

 

芽衣がそう呼び掛ける。それにより、のぞみがゴール下に入り、ジャンプシュートを打とうとした時に、修也と太助がジャンプしてシュートコースを塞ぐ………が、のぞみは積牙にボールを回す。積牙にはマッチアップ相手の身軽がいるが………

 

積牙「俺も………負けてられないぜ!!」

 

積牙はボールを受け取ると同時に、大きく飛び上がり、ジャンプシュートを放つ。これには、身軽の反応が遅れてしまい、積牙の放ったシュートは、綺麗にゴールのリングへと吸い込まれた。

 

光一「いよっしゃあ!! ナイス、セッキー!!」

 

積牙「はい!」

 

積牙と光一はハイタッチをかわす。それを見た修也は………

 

修也「(成程ね………彼、中々上手いじゃないか。シュートコースが完璧だった………)」

 

積牙の腕を素直に感心していた………すると、ここで………

 

明日香「友力、タイムアウト!!」

 

奄美はタイムアウトを取った。第2Q残り3分。現時点のスコアは28vs32。友力は何とか点を取ってはいたが、それ以上に巫魔のオフェンスが爆発し、友力に迫っていたため、奄美は止むを得ずタイムアウトを取った………

 

 

友力ベンチ………

 

奄美「あまり状況は良くないな。巫魔高校には、独自の強さがある事は認めるが………私はこのチームには今年こそ全国1位になって欲しいと思っている。この試合も負ける訳にはいかんのだ。いいな、確かにCが隙だらけかもしれんが………私達が負ける訳にはいかん。身軽、予定より遥かに早いが見せてやれ、お前の本当のプレイスタイルを………」

 

身軽「………分かりました。俺に任せてください………!」

 

身軽は、まるで自信満々な様子だった………

 

 

一方、巫魔ベンチでは………

 

美咲「しかし、Cがここまで隙だらけになるとは思わなかったね………」

 

のぞみ「それについては、相手の9番がバカだった事が幸いだったわね。」

 

あずさ「でも、相手がこのまま点の量産を許すはずが無いよね……… 」

 

優「………それに、今の所友力高校の中で1番分からないのは、4番の身軽太一だ………ねぇ、結衣ちゃん、相手の4番は何点決めたか覚えているかい?」

 

結衣「ふぇっ!? え、えーと………あれ? 決めてないような………いや、そもそもシュートした記憶が………」

 

優「そう、今の所1本もシュートしてないんだよ、あの人。相手の修也とアリサ………7番と6番の得点力が強いのと、本人がそこまで目立ったプレイをしていないから印象が薄いだけで………オフェンス力次第では………また苦戦するかも………」

 

優はそんな事を口にするのだった………

 

 

現時点、試合の流れは巫魔にあった。しかし、巫魔の流れを断とうとする不穏な空気を、微かに感じとる優であった………

To Be Continued………




次回予告
身軽太一は、遂にSFとしての本領を発揮。その強さはマッチアップ相手の積牙を翻弄するものだった。更に、それによる積牙のファールが増え始め………!?
次回「本領発揮と行きますか………!」

今作のバスケ用語解説
………久しぶりね、時乃のぞみよ。今回は、本作のイバラキにおける、イバラキ三大王者の話をしようと思うわ。まずは私達が戦った力豪高校。前の県大会ではベスト4だったらしいけど、全国大会に出た事もある強豪チーム。しかも、オフェンス力だけなら、三大王者の中で一番と言われているわ。
続いて守城高校。前の県大会では優勝している強力なチームで、守りの硬さは、三大王者最強。更に、全国大会出場経験も多い、まさにイバラキ最強のバスケチームね………
最後は爆速高校。県一番のスピードが持ち味のチーム。去年は2位で全国へ行ったけど、全国大会ではあまり猛威を振るえないらしいわ………これは完全に余談だけど、陸上部は20年連続で全国制覇中とのこと………
いかがだったかしら? 次回は全国のチームにちょっとだけ触れるみたいだから、楽しみにしているといいわ。では、今回はこの辺で………


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第14話 本領発揮と行きますか………!

前回までのあらすじ
巫魔と友力の練習試合。第2Qの優のプレイで、浩太を追い込み、更に抗議によるテクニカルファールで浩太は5ファール退場。流れは一気に巫魔に動く。しかし、ここまで1本もシュートを打っていない、友力4番の身軽が動きを見せようとしていた………


タイムアウトが終了し、残り3分。スコアは28vs32。友力ボールで試合再開。

 

美咲「優くん達………大丈夫かな?」

 

レイ「………気になっているの? 相手の4番について………」

 

美咲「優くんの言ってたことが不安になっちゃって………」

 

現在の流れを見れば、巫魔に有利な風だった。しかし、身軽が3年キャプテンのSFでありながら、ここまでシュートを1本も打ってないのは確かに不穏すぎる。そんな事を美咲が考えていた時………

 

ほのか「………! 4番にボールが渡った!」

 

身軽にボールが渡った。マッチアップ相手は積牙である。

 

あずさ「どっちが勝つかな………?」

 

あかり「体格だけなら積牙くんの方が有利だけど………」

 

伊吹「相手は3年だ………経験がある………!」

 

仲間達がそう分析していた。すると、身軽は………

 

身軽「さてと………本領発揮と行きますか………!」

 

そう言って大きく飛び上がった。

 

積牙「ぐっ!? させるかー!!」

 

積牙は大きく飛び上がると、ボールを叩き落とす体勢になる。

 

身軽「………甘いな、1年坊主。」

 

身軽はそう言うと、シュートをやめ、積牙の後ろで大きくジャンプしていた修也に、積牙の横からボールを渡す。修也はそれを受け取ると、そのままアリウープで押し込んだ。更に、積牙の叩き落とす為の手が、身軽の手に接触してしまい………

 

明日香「ブロッキング、黒10番! バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

積牙「ぐっ………!?」

 

積牙がファールを取られてしまう。また、修也が得点を決め、身軽がフリースローの権利を得る、コンビネーション3点プレイを決めてきた。

 

修也「キャプテン!」

 

身軽「浩太が抜けちまったからな………まずは、あの10番を追い出すぞ。皆、俺にボールを集めてくれ!」

 

どうやら、身軽の狙いは積牙をコートから下げる事だった。それを聞いた積牙は………

 

積牙「舐めやがって………」

 

と、思わず愚痴の言葉を零したが………

 

のぞみ「落ち着きなさい。貴方は防げるファールを減らしていけばいいわ。今の私達には、貴方がいないとこの有利を活かせないわ。」

 

のぞみが彼を上手く抑さえる。のぞみの言う通り、積牙が居なければ、チームの有利は活かせない。それを聞いた積牙は、なんとか気を抑える。しかし、身軽は………

 

身軽「防げるファールか………しかし、今後そいつがもらうファールは回避不可能なんだよ………俺が火をつけてしまった以上な………」

 

静かにそう呟いた………

 

 

 

身軽はその後のフリースローを決め、巫魔ボールに。のぞみを中心に敵陣を攻めていく。

 

積牙「のぞみ先輩!」

 

積牙はボールをパスするように促す。のぞみも積牙にボールを渡す。身軽とは僅かに距離が離れているため、接触の危険性は薄い。

 

積牙「(よし、これなら………!)」

 

積牙は大きく飛び上がろうとする。しかし………

 

光一「………!! セッキー、罠だ!! 飛ぶな!!」

 

光一が途端に静止をしてきた。しかし、積牙の頭はシュートでいっぱいだった。そのため、そのままシュートを打ってしまった。ボール自体はゴールに入った。しかし、積牙が下を見ると………

 

積牙「何………!?」

 

なんと、身軽がまるで突き飛ばされたかのように、後ろ向きに倒れるように飛んでいた。しかも、審判の明日香には、接触したように見える角度だった為に………

 

明日香「ノーカウント! チャージング、黒10番!!」

 

積牙、これで2つ目のファール。

 

鈴香「上手い………!」

 

奄美「(そうだ、それでいい………今の友力は、天野、アリサ、林川の3人が中心的な攻撃人物だ。そう考えれば、身軽は地味。しかし、その地味さが奴の最大の武器だ。道標くんが貸してくれた、巫魔と力豪の試合を見たが………うちのメイン主力3人を押さえるだけのオフェンス力が巫魔にはあった。天野には白宮 優、アリサには白宮 春香が。林川については、あのC、相田 光一がいる。最も、相田は予想外だが、白宮の2人は強い………下手をすれば全国クラスの実力がある………何故、無名の選手なのか、それが不思議なくらいだ。)」

 

友力の監督、奄美は優と春香の実力を認めていた。しかし………

 

奄美「(しかし、あのSFの1年はどちらかと言えば目立ちやすい攻めだ。うちの身軽のようなタイプとは真逆。先程の立て続けの2ファールで確信した。奴はまだ、身軽には及ばない………!)」

 

奄美は積牙の事を、身軽より低く見ていた。そんな事を考えていると………

 

明日香「プッシング、黒10番!! スローイン!」

 

残り1分にして、積牙が3つ目のファールを取られてしまった。

 

積牙「くそっ………!」

 

ゆうか「積牙くんがこれで3ファール………レイちゃん、いつでも出られるようにしておいて。」

 

レイ「はい………!」

 

レイは準備運動を始めた。結衣は鈴香に向かって………

 

結衣「あの………第2Qで積牙くんが3ファール………これって危険なんじゃ………!?」

 

と、思わず言葉をこぼした。すると、鈴香は否定せずに………

 

鈴香「今の積牙の危険は疑問形じゃない………確信の意味で危険………あの4番のファールトラップに綺麗に嵌っている。入部したてほどでは無くなったけど、積牙はファールトラブルに陥りやすい………そう考えると、あの4番と積牙は完全に相性最悪………でも、彼の身長と体格は、チームにとって大きい。安易に外れたら、巫魔は困る………!」

 

と、積牙の危険を語っていた。しかし………

 

奄美「悪いが、雷くん。その10番を締め出させてもらおう。」

 

奄美はそう呟いた。それと同時に、ボールは身軽に渡る。当然、マッチアップするのは積牙なのだが………

 

身軽「悪いな、1年坊主。お前の出番はここで終わりにさせてもらうぜ。」

 

身軽はシュート体制をとる………

 

積牙「(シュートか………!?)」

 

積牙はジャンプする………しかし、身軽はシュートをキャンセルし、ドリブルで積牙を抜く。

 

あかり「フェイク………!」

 

しかし、積牙は………

 

積牙「させるかー!!」

 

着地すると同時に、手を伸ばして身軽の背を追いかける。すると、身軽は途端に止まり、素早い動作でシュートを打つ。

 

積牙「なっ………!?」

 

しかし、積牙は途端に止まった身軽に驚き、勢いのまま、身軽を背中から押してしまう。それにより、笛が鳴るが、その間にも、ボールはリングの上でグルグルと回っていたが、最終的に、リングに吸い込まれた。

 

明日香「プッシング、黒10番! バスケットカウントワンスロー!!」

 

積牙「………!!」

 

ゆうか「やられた………これはもう仕方ないわ………」

 

積牙は、たった2分の間に身軽のファールトラップに嵌り、痛恨の4ファールを取られてしまった。後半丸々残っている中で積牙を下げたくはなかったが、4ファールでは、プレイに全力で取り組むのは、精神的に厳しい。これにはゆうかも止むを得ず、交代を選択した。

 

身軽「ベスト16とはいえ、全国を甘く見るなよ? 俺に勝ちたければ………もっと練習してくるんだな。」

 

積牙「ぐっ………!」

 

積牙と交代するのはレイ。積牙は結衣にタオルとドリンクを渡され、タオルを頭に被るとベンチに座ったが………

 

積牙「………しょう………ちくしょう………ちくしょう………!!」

 

積牙にとって、タイムアウトの後に、たった2分で下げられるまでにファールを取られた事は、中学バスケですら感じた事の無い、バスケ人生で最大の屈辱だった。この屈辱が積牙の精神を壊したといっても過言ではなく、涙を流して悔しがっていた。

 

伊吹「(苦しいだろうな………こんな所で挫折の洗礼を浴びせられたんだから………私も、どう声をかけたらいいか分からねぇよ………)」

 

力豪戦で彼を励ました伊吹も、こればかりは励ましようがなかった………

 

 

その後、レイか積牙の代わりに戦うが、身長差は勿論、レイにはない美味さを見せつけられ、第2Qの残り1分は終了。得点は28vs38だった………

 

 

 

巫魔ベンチでは優達が疲れを見せていたが、積牙が悔しがっている手前、あからさまに疲れている素振りは見せなかった。

 

光一「セッキー………」

 

積牙「すみません………俺………俺………!」

 

積牙が必死に謝罪の言葉を漏らす中、優は積牙の肩を強く叩いた。

 

優「泣き言を言うな! ………4ファールになっちまったもんは仕方ない。それより、チームを信じてくれ………お前が諦めたら、チームはそこで終わりだ………!」

 

積牙「キャプテン………」

 

優「確かに相手は全国クラスだ。元より勝てるなんて確定してねぇよ。だから、僕達は今出来ることをみつけ、そこから大会、インターハイの攻略に繋げていくぞ。」

 

積牙「………はい。」

 

優「皆、心が折れそうかもしれないが………最後まで戦うぞ! 僕も………倒れるまでダンクとディフェンスを続ける! 後半20分、頼むぞ!!」

 

春香達「おおー!!」

 

積牙「(キャプテン達は諦めていない………なんで、俺だけ勝手に負けた気になっていたんだ………)」

 

積牙以外のメンバーは気合を入れる。積牙はまだチームが諦めていないことから、自分の情けなさを実感していた……

 

 

 

そして、その様子を友力ベンチで見ていた修也を始めとした、優のかつての仲間は………

 

修也「まだまだやる気だな………流石だぜ。(以前までの、圧倒的な得点力で引っ張っていた今までとは違う………ミドレーユ………もしかして、まだあの時の事を引っ張っているのか………?)」

 

巫魔に感心する反面、複雑な心境を持っていた………

 

積牙の4ファールで、巫魔の流れは悪い方向に。果たして、後半を戦い抜くことは出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
身軽を中心とした攻撃は続くが、試合が進む中、優は彼のシュートを防いだが、芽衣は自身の体格を利用したプッシングファールを優から奪う。しかし、これが原因で、試合は衝撃的な展開になってしまい………!?
次回「選手失格だな」

今作のバスケ用語解説
………闇光 レイよ。ここで解説をするのは2回目かしら。今回は、全国のチームについて、少しだけ触れていくわ。今、私達が戦っている友力は、スタメン5人が全国クラスの強さを持っていると言ってもいいほどの強さを持っているわね。実際、トウキョウ大会の試合では、8試合繰り広げたけど、全て100点ゲームで勝つ程で、その総得点は1028点。そのうち、月渡 芽衣以外は、8試合の個人合計獲得点が200点を超えており、天野 修也に至っては300点を超える程で、8試合最低でも38点以上を決めている計算になるわ。こんなのがうようよいると考えると、全国への道のりはなかなか険しいわね………では、今回はここまで。全国クラスのチームと繰り広げた試合の結末は………次回に委ねるわ。


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第15話 選手失格だな

前回までのあらすじ
友力高校4番SF、身軽太一の本来のプレイにより、積牙は罠に嵌る。それにより、一気に4ファールを取られてしまい、無念の戦線離脱。巫魔は危機に陥っていた………


試合再会………

 

 

 

身軽は芽衣からパスを受け取ると、マッチアップ相手のレイに視線を向けた。

 

レイ「ぐっ………」

 

身軽「悪いな、俺を止めるには身長が足りねえぜ!」

 

身軽は大きく飛び上がってシュートを放つ。レイは止めようと奮闘するが、高さ故にボールを取れず、ゴールを奪われてしまった。

 

優「ドンマイドンマイ! 次止めるよ!」

 

巫魔は積牙の離脱と、身軽のプレイから流れを失い始めており、優の声で何とか首の皮一枚繋がっているような状態だった。

 

優「光一!」

 

続く巫魔のオフェンス。ボールは光一に渡る。

 

光一「おっしゃ、任せろ!」

 

光一は豪快なツーハンドダンクを叩き込もうとするが、太助のガッツあるディフェンスによって接触してしまう。

 

明日香「チャージング! 黒17番!」

 

光一「くそっ………やられたか………!」

 

修也「ナイスだ、太助!!」

 

このプレイにより、流れは完全に友力に動き、シュートは止められ、ゴールは量産されの負の連鎖が起きていた。

 

優「(マズい、チームの流れが良くない方向に流れ出した………ここで何とか1本止める………)」

 

優はそう考えると、レイの耳元に立ち………

 

レイ「………本気でやるつもり?」

 

優「ああ。もうこうなったら意表を突く!」

 

優はレイに作戦を伝える。しかし、その様子を芽衣は見ていた………

 

 

 

そして、ボールは再び身軽に渡る。

 

身軽「おっと、悪いがこのままもらうぜ………!!」

 

身軽は大きく飛び上がるとジャンプシュートを放つが、優はこの状況で無理矢理身軽のシュートボール目掛けて横に飛んでいた。

 

身軽「………!?」

 

その結果、優の指がボールに触れ、シュートの軌道が狂い、ボールが弾かれた。

 

ほのか「リバウンド!!」

 

すかさず優がジャンプし、ボールを空中でキャッチする。そして、のぞみにボールを渡すために、身体を動かすが、何かにぶつかった感触が………優はぶつかった方を見ると、なんと芽衣と接触し、彼女を腕で押し倒してしまっていた。

 

明日香「プッシング! 黒4番!」

 

優はファールを取られてしまった。しかし、優は芽衣のファールをもらいにいくプレイに感心していた。

 

優「………やられたよ。まさか僕のリバウンド着地点を予測して潜り込んでくるなんて………」

 

芽衣「体格差ゆえ………かな。」

 

これには、ベンチで見ていた奄美もニヤリと表情を綻ばせていた。

 

奄美「(月渡は確かにPG以外では力を発揮出来ない選手だが、それも相まって自分の役割を理解している………自ら死角の爆弾になる事で、相手のチャンスを潰した。せめて、林川もその事を理解し………ん? 林川がベンチに居ない………!?)」

 

突然、友力ベンチから浩太が消えた。そして、彼のいる場所に真っ先に気づいたアリサは途端に叫んだ。

 

アリサ「………! ユー! 避けて!!」

 

優「え………?」

 

優がアリサの声に驚いた次の瞬間、彼は気がついた時には既に殴られていた………林川 浩太に………

 

優「うあっ!?」

 

春香「優さん!!」

 

優は殴られた勢いで地面に頭をぶつけた。そして、審判の明日香はたまらず笛を鳴らし………

 

明日香「ちょっと、自分が何やったか分かってるの!?」

 

と、審判の立場から問い詰めるが………

 

浩太「黙れ! 芽衣が突き飛ばされたんだぞ!! コイツが悪い!!」

 

身軽「あのバカ………問題しか起こさないな………」

 

浩太は身勝手な言い訳をした。そして、まるで自分は間違ってないとばかりに………

 

浩太「芽衣、大丈夫か!?」

 

浩太は手を伸ばした。しかし、この行為に1番怒っていたのは、優ではない。芽衣だった。芽衣は浩太の手を拒絶するように右手で弾くと、

 

芽衣「勝手な事言わないで!! 私が押されたのは作戦による結果! 第一、私が狙ってなかったとしても、ミドレ………いや、優くんを殴る理由にはならない!!」

 

浩太「そんな………どうしてそんな男なんかに………!」

 

芽衣「私、今でも優くんの事は友達だと思ってるから………それに、普段の態度も本当は嫌だった! 優くんをバカにされるのが嫌だった!! 貴方なんて………最低な選手だよ!!」

 

芽衣にハッキリと怒りをぶつけられ、浩太はショックを受けた。それと同時に優は朦朧とする意識の中………

 

優「………芽衣を怒らせるなんて………相当だぞ………本当に………選手失格だな………お前………」

 

浩太「なんだと!?」

 

浩太は逆上して殴りかかろうとするが、光一と修也に羽交い締めにされて押さえられた。

 

浩太「離せ! 離せよ!!」

 

浩太は反省する事無く暴れ回った………優は意識が遠のき、そのまま気絶するのだった………

 

 

優が倒れたばかりか、暴力沙汰を起こしてしまい、ディスクォリファイングファウルという、コートから退場しなければならない最も重いファールを取られてしまった林川 浩太………というか、優の気絶から、試合続行など出来る訳もなく、試合は中止となってしまった………

 

 

 

その後、優は幸いにも怪我や出血などはなかった。しかし、巫魔メンバーの怒りは強く、友力もそれについて申し訳なさそうな様子を見せていた。

 

修也「本当にすまなかった!」

 

優「いや、もういいって………それに、全国のレベルが中々高い事を身をもって教えられたよ。」

 

芽衣「でも、ミドレ………優くんも強かったよ。PFとしてあれだけの強さを持っているし、修也くんに引けを取らない強さだったよ。」

 

優「まあ、まだ1年くらいしかないから、スタミナが持たないのが完全に欠点なんだがな。」

 

優は、かつての仲間と会話をかわしていた。一方、春香はアリサと会話をしていた。

 

アリサ「やっぱり本家本元は強いなぁ………」

 

春香「私もびっくりしたわ。アリサちゃんの強さに………全国には、強力なスリーシューターがいるってことを、頭に入れておくわ。」

 

アリサ「アンタも充分強いけどね。」

 

2人は握手をかわしていた。

 

そして、監督は………

 

奄美「本当に申し訳なかった、雷くん。私の監督不行き届きだ。」

 

ゆうか「………でも、こっちとしては意外な収穫がありました。」

 

奄美「意外な収穫………?」

 

ゆうか「うちのチームに………火がついた事ですね。」

 

奄美「………ある意味負けだな、うちの………」

 

そして、視点は再び優と修也に戻り………

 

修也「………暴力沙汰を起こしちまったチームになっちまったからな。今回は俺達の負けだ。」

 

優「………いや、そんな勝利嬉しくなんかねえよ………今回の試合結果は保留さ………全ての決着は………次回着けるよ………!!」

 

優はそう言うと、手を伸ばす。

 

修也「………おう!」

 

修也も手を伸ばし、2人は握手をかわすのだった………

 

 

 

こうして、試合は衝撃の幕切れに終わってしまった。しかし、この試合では、優を殴られた事も理由だろうが、巫魔メンバーに、火をつけるきっかけとなったのだった………

To Be Continued………




次回予告
全国を目指して特訓を重ねる巫魔高校。そこに、試合を見る小学生くらいの背丈の少女が。ひょんな事から一緒にやる事になったのだが………?
次回「あの子ならセンスあるよ」

今作のバスケ解説
は、はじめまして! マネージャーの朝顔 結衣です! 今回はこの友力戦の総得点をまとめました。得点王は一体誰なのか? 描写外でどんな得点があったのか!? では、下記にまとめましたのでどうぞ!!

総スコア
34vs45

巫魔側
4番 白宮 優 8点
5番 白宮 春香 4点
8番 闇光 レイ 4点
9番 時乃 のぞみ 2点
10番 江野 積牙 4点
13番 宮野 あかり 3点
14番 炎塚 ほのか 2点
17番 相田 光一 7点

友力側
4番 身軽 太一 11点
6番 アリサ・ストライク 9点
7番 天野 修也 10点
8番 月渡 芽衣 7点
9番 林川 浩太 8点
15番 天原 太助 0点

と言った形でした。実は描写外で身軽 太一さんが結構決めていました。思ったよりも春香さんが活躍できていなかったのは意外ですよね。まあ、今回の試合は第3Qの途中で止まってしまったので、仕方ないと言えばそれまでですが………では、今回はここまで。次回は新キャラ登場です! ………え? その人、私より背が低い人なんですか?


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第16話 あの子ならセンスあるよ

前回までのあらすじ
試合は友力の有利が崩れなかった。だが、浩太の暴力沙汰により、試合は中断。この試合は、巫魔高校の選手達に火をつけるきっかけとなったのだった………


試合から3日後、チームの練習は激しさを増していた。今は休憩中なのだが………

 

積牙「………お願いします!」

 

光一「おう!」

 

積牙と光一は熱くなっていたのか、まだ練習していた。先の試合での屈辱が原因だろう。

 

優「はあっ、はあっ………今日は積牙と光一が特段元気だな………こっちなんて試合じゃ40分も持たねえってのに。」

 

ゆうか「でも………40分フルで戦えるのは大きいと思うわ。うちのチームは、絶対的な得点力を持つ優くんと春香ちゃんはスタミナ問題があるし………SGはまだしも、PFの隙が大きくなっちゃうから、光一くんや積牙くんには最後まで残ってくれないと。」

 

春香「確かに………そうかもしれませんね。」

 

優「………そう言われると、なんか僕がすぐにへばる奴みたいに言われてる気がするんですが………」

 

美咲「あ、あはは………」

 

優「なんか悔しいな………のぞみ、空中パスくれ。アリウープやる。」

 

のぞみ「仕方ないわね………」

 

のぞみはやれやれといった表情を浮かべながらも、練習に付き合ってくれる事に。

 

のぞみ「行くわよ。」

 

のぞみはそう言うと、ゴール前にボールを高くあげる。優は大きく飛び上がると、ボールをキャッチ。そのままリングに押し込んだ。

 

あずさ「………優くんのアリウープが安定して成功するようになったのって、1年生の3学期ごろだよね。」

 

ほのか「懐かしいなぁ………」

 

伊吹「確か、最初は上手くいかなくて、優の足とかに当たってたんだよな。」

 

美咲「思ったよりも高く飛ぶからね、優くん。」

 

鈴香「でも………安定してアリウープ出来るようになったのは大きい事………」

 

ゆうか「そうね。今はこうして戦力となっているんだから、有難いものよ。」

 

ゆうかは儲けものだと言いたげな表情を浮かべていた。

 

美咲「お母さん………顔が怪しい人みたいだよ………」

 

流石に、美咲にツッコまれていたが。

 

優「はあっ!!」

 

そんなこんなで話しているうちに、優は3度目のアリウープを叩き込んだ。しかし、疲れてしまったのか………

 

優「はあっ………流石に疲れている時に連発はキツイな………休憩。」

 

のぞみ「………そんなんだからへばるのが早いとか言われるのよ………」

 

のぞみはどこか呆れていた………

 

優「うるせぇ! ………って、ん?」

 

優は体育館の外から、背丈が小さな少女がいる事に気づいた。巫魔高校の制服を着ているため、学生なのは分かるのだが………

 

優「あの子は………?」

 

優が首を傾げていると、1on1の練習中だった積牙が気づき………

 

積牙「あれ? あの子は………確か影美 優真(かげみ ゆま)さん………?」

 

優「積牙………知り合いかい?」

 

積牙「同じクラスの人です。」

 

光一「なんだ? 鈴香よりも身長が低いな………本当は小学生かなんかじゃないのか?」

 

優真「ひいっ!?」

 

伊吹「ビビらせてんじゃねえ、バカ!」

 

伊吹は光一を蹴飛ばした。光一は吹き飛ばされ、壁に激突した。

 

伊吹「大丈夫か?」

 

優真「は、はい………」

 

優「………どうしてそんなに怯えた様子なんだ………?」

 

積牙「あの………言い難い話なんですが………その………虐められているんです。同じクラスの女子達に………」

 

優「は!?」

 

優は思わず怒り寄りの声を漏らした。しかも、かなりヤバいレベルで。

 

積牙「男子には人気があるんですけど、それに嫉妬している女子数人が彼女を虐めているようで………」

 

優「なんていう連中だよ………」

 

春香「せ、積牙くん! ちょっといいかしら?」

 

積牙「春香先輩………? ………わ、分かりました。」

 

積牙は春香の方に向かうと、春香は一言だけそっと耳元で呟いた。

 

春香「優さんの前でその話は………本気寄りの制裁をしに行っちゃうから………」

 

積牙「(ほ、本気寄りの制裁!? や、ヤバそうな匂いしかしないような………)」

 

積牙はそう考えていた。だが、優は完全に怒り状態になる手前だったためか、落ち着きを取り戻し………

 

優「えっと………優真ちゃん………だったかな?」

 

優真「は、はい………!」

 

優「どうしてバスケ部を見てたんだい?」

 

優真「え、えーと………カッコいいなって思ったんです………バスケをする皆さんが………私は身長が140cmもないし、幼児体型だし………言いたいことも言えないから………とても出来そうにないので………せめて見るだけでも………って思ったんです。」

 

優「………バスケするのに体型なんか関係無いよ。うちのバスケ部は、自分達より背が高い相手なんて当たり前のようにいたさ。だから、一緒にやろうよ、バスケ。」

 

優真「いいんですか………? 私、ルールも分からないし、運動も出来ないので………」

 

優「まあ、最初は誰でもそんなもんさ。ささ、やってみよう。」

 

優はそう言って優真を引き込んだ。優真は体操服と体育館シューズに履き替えると、ボールを渡される。

 

優「まずはパスする練習からしよう。僕にパスをだしてみて。」

 

優真「は、はい。」

 

優真はボールを優に向けてパスする。

 

優「じゃあ、僕からもパスするよ。」

 

優はそう言ってパスを出す。真正面だったため、優真はパスをとれた。

 

優真「次、いきます。」

 

優真はパスをだす。優はそれを受け取ると………

 

優「よし、じゃあ次は横も織りまぜてみよう。」

 

優はそう言うと、左にパスをだす。普通の高校生なら取れるくらいのボールだが、手足の短さと足の遅さ。瞬発力の弱さなどが原因で、優真はボールが取れなかった。

 

優「あっ………ごめん………!」

 

優真「大丈夫です、はあっ、はあっ………」

 

優「(体力不足まで目に見えている………)」

 

優真「じゃあ、行きます。」

 

優真は右にボールを投げる。優はボールが投げられた時、それが鋭いパスである事を初動のみで察した。

 

優「………!? (速っ!?)」

 

優は全速力で走り、手を伸ばす事で何とかボールをキャッチする。

 

優「(………成程、パスを投げるスピードなんかはいいんじゃないかな。芽衣とはちょっと違うタイプだな。)」

 

優はそう考えていると………

 

優真「あの………1ついいですか? さっきの空中でパスとってダンク決める技………私、パスの方をやってみていいですか?」

 

のぞみ「アリウープをやるって言うの!? 」

 

優真「ダメ………でしょうか?」

 

優「まあ、やってみようよ。出来ようが出来まいが問題無い。僕達だって出来るようになるのに時間かかったし。」

 

優真「は、はい! ありがとうございます!」

 

こうして、優と優真はアリウープをする事に。

 

優「自分の思った通りに投げてみてくれ。こっちも取れそうなら取る。」

 

優はゴール下まで向かう。しかし、優真はスリーポイントラインよりも外側に立っていた。

 

優「あれ? そんな遠くていいのかい?」

 

優真「大丈夫です。では、行きます!」

 

優真はそう言うと、ハンドボールの投げ方で、ボールをリング上に投げた。

 

明日香「投げ方が無茶苦茶だよ、あんなの入るわけ………」

 

明日香がそう言い切る直前だった。なんと、大きく飛び上がった優は右手でボールをキャッチ。そのままダンクで押し込んだ………アリウープの完成である。

 

明日香「うそーん………」

 

美咲「出来ちゃったね………」

 

春香「優さん………あら?」

 

春香が優に近づくと、優は右手を見ながら硬直していた。

 

優「………! (完璧なタイミングだった………それに、高さも僕が無理でない領域で取れた。彼女にとっては実際に見たと言うだけでしかないのに………もしかしたら、ガチモンの才能を持つ子かもしれない………)………間違いない、あの子ならセンスあるよ。」

 

優はそう考えると優真に近づき、右手を伸ばす。

 

優「よかったら、一緒にバスケやろうよ。君のパス能力は凄い。勿論、部に入ったら色々基礎を教える事にはなるけど………君のパスを受けて感動しちまった。君のパスなら、もっとチームを強く出来るかもしれないし。」

 

優真「私なんかが………いいんですか?」

 

優「ああ。そういえば、まだちゃんと名乗ってなかったな。僕は………」

 

優真「白宮優キャプテン………ですよね。よろしくお願いします、キャプテン!」

 

優真は優の勧誘を快く引き受けたのだった………

 

 

こうして、優達バスケ部は、初心者でありつつも、大きなものを持っていると優に期待される優真を加えた15人となった。だが、大会までの日数もまた、刻一刻と迫っていたのだった………

To Be Continued………




次回予告
優達は優真の練習に勤しんでいた。まずは基礎体力作りから始まり、バスケというものを教えこんでいた。体力こそ不安だが、ゆうかは彼女が使えると才能を見抜いた。その才能は………!?
次回「これは使える!!」

今作のバスケ用語解説
はじめまして………新人部員の影美 優真です。今回はバスケでベンチ入り出来る人数について解説します………!

バスケは監督やマネージャーを除いてベンチ入り出来るのは15人程度となっています。無論、大会ごとによって違いはあるようですが………因みに今作ではスタメン5人+ベンチ10人のシステムを採用しています。そのため、本作は15人まで選手登録できるって事になりますね。私は今後の大会ではギリギリレギュラー登録される事になりますが………出番は当分先………もしかしたら出られないかも知れませんね………でも、バスケ部に入部した私は………背番号18番を背負って、頑張ります!! では、今回はここまで。またお会いしましょう………!



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第17話 これは使える!!

前回までのあらすじ
友力との練習試合により、心に火がついた巫魔高校バスケ部。そこに、バスケ部を見ていた積牙のクラスメイト、影美優真が現れる。臆病で運動神経もない中、センスを見出した優は彼女をバスケ部へ勧誘するのだった………


優真が入部して早1週間。優真は初心者だった為、基礎から徹底的に叩き込まれた。

 

優「まだまだ! 後3周!!」

 

優真「はあっ、はあっ………」

 

入部した優真にとって、体力が少ない事がまず第一の問題であった。無論、優や春香もスタミナには問題があるが、オフェンスの中心にならなければ40分は持つ。ただ、優真は走るだけでも体力が持たないタイプだった。優はマネージャーの結衣に協力してもらい、優真の事を徹底的に記録してもらった。

 

優真「ぜえ、ぜえ………はあ、はあ………」

 

そして休憩の時、優は優真の記録を見てみる。

 

優「うーん、色々問題だらけだな………それと、身長問題………まあ、身長問題は今に始まった事じゃない。どうにか対処していこう。それより、優真のユニフォームは届いたのかい?」

 

結衣「はい! 18番の白と黒のユニフォームを渡してます。」

 

優「それは良かった。監督がギリギリレギュラーに入れるって行ってたからな。ユニフォームが間に合ってよかった。」

 

優真「わ、私が………ですか!?」

 

優「うん、まあ大会は1週間後だからまだ優真の出番は無いかな。でも、出ないとは限らないかな。あの監督の事だ。いつ出ることになるかは分からねぇ。」

 

結衣「そうなんですか?」

 

優「ああ、僕がその典型的な例だ。僕は2年の中では1番遅くに入ったんだが、入って数週間で公式戦に出場させられたんだ。」

 

優真「ええ!?」

 

優真が驚いていると、同時に休憩に入った伊吹が面白そうに………

 

伊吹「そうそう、でもコイツ凄いんだぜ? 残り5分で出て………16得点。しかも全部ダンクで決めたからな………まあ、点差が開きすぎて負けたけど、コイツの才能が開き始めた瞬間だったって訳。」

 

優「あの時のダンクは荒削りだったのに、上手く決まるとは思ってもみなかったよ。」

 

伊吹「本当にな………そういえば、優真のポジションはどうするんだ?」

 

優「取り敢えずGにしようと思ってるんだけど………彼女、物覚えが早いからPGかSGにしようか迷ってるんだよね………」

 

伊吹「成程なあ………なら、PGがいいんじゃないか? 既にSGには優秀なスリーシューターが揃ってるし………仮にスリーが撃てるPGがいてもいいんじゃないか? 身長差によるミスマッチが日常茶飯事のうちに求められるのは圧倒的なオフェンス力だ。優真のパスにはセンスがあるんだろう?」

 

優「ああ、1発でアリウープに繋げられるのは相当だ。電光石火の速攻で攻める美咲、冷静な判断でチームを動かすのぞみ………優真には2人が持ってないプレイヤーになれれば………よし、分かった。監督にはPGとしてポジションを推薦しておこう。」

 

優がそう口にした時だった。監督のゆうかがご機嫌な様子で体育館へ入ってきた。

 

優「監督………ご機嫌だなあ。という事は………」

 

ゆうか「全員集合! 大会の話をするわよ!」

 

優達「はい!」

 

ゆうかはメンバーを集合させると、トーナメント表を見せる。

 

ゆうか「私達が戦うのはCブロック。1回戦の相手は川今高校よ。4番PGの浜崎くん、8番SFの営夜くん。この2人は要注意人物ね。」

 

優「まあ、大丈夫だ。僕が決めまくるから。」

 

ゆうか「あ、優くんは使わないから。」

 

優「ええ………!?」

 

ゆうか「伊吹ちゃん、貴女に出てもらうわ。」

 

伊吹「は、はい!」

 

優「出番が無い………そんなに頼りないのか、僕は………」

 

あずさ「いじけちゃった………」

 

優がいじけた事にやれやれと言った様子を見せるあずさ達。一方、春香はトーナメント表を見ていると………

 

春香「あら………? Cブロックの3回戦、条北高校がありますね。」

 

積牙「条北………確か昨年のベスト8チームですね。」

 

美咲「それもそうだけど………去年負けたチームが条北なんだよ。」

 

結衣「強いんですか?」

 

あかり「確かに強いチームだったけど………残り5分は優くんがガンガン決めてたわね。」

 

優「まあ………しかし、あの時はダンクができるようになって1ヶ月足らずの僕に出ろなんて無茶をよくもまあ言ってくれましたなぁ、監督………」

 

ゆうか「うふふ………」

 

春香「あら………? こ、これは………今年はイバラキ三大王者の一角、爆速高校もCブロックですよ!」

 

伊吹「な、なんだと!?」

 

結衣「あ、あの………イバラキ三大王者ってなんですか?」

 

鈴香「………ここ十数年、全国大会イバラキ県ベスト3を支配しているチーム。爆速高校は去年2位の高校。スピードとスタミナはイバラキ県で1番。」

 

ほのか「この間の力豪も三大王者に数えられているよ。力豪のオフェンス力は県1位とも言われてる。」

 

レイ「そして最後の王者、去年1位のイバラキ最強高校の守城高校。県予選じゃ力豪と爆速以外に得点を許さなかった程の圧倒的ディフェンス力を持っている。」

 

光一「改めて見るとやべえ面子だな………それに、お前ら本当に力豪に1点差だったのか?」

 

明日香「………」

 

優「まあまあ落ち着いて。相手がなんであろうと僕達は勝つぞ。修也達にコテンパンにされたままとか許せねぇからな………!」

 

のぞみ「燃えてるわね………」

 

優「よっしゃ、行くぞ巫魔!!」

 

春香達「おおー!!」

 

優の言葉で巫魔の気合いが入る巫魔高校。この日の練習はいつも以上にヒートアップしていたという。

 

優真「凄い………私も頑張ろう! ………キャプテン! 次の練習をお願いします!」

 

優「よーし、次はドリブルの練習だ!」

 

優真もまた、気合を入れて練習に望んだ………

 

 

その日の部活終わり、優は、春香、結衣と共に、ゆうかへ優真の事を報告していた。

 

ゆうか「ふむふむ………PGか。悪くないね。」

 

優「体力とかはまだまだ問題大ありで、パワープレイは無理だが、基礎はもちろん、レイアップ、ジャンプシュート、パスの3つは特に成長してますよ。まるで飲み込みが早いと言わんばかりに………」

 

ゆうか「ふむふむ………となれば………これは使える!!」

 

結衣「あの………監督?」

 

春香「大丈夫、いつもの事だから。」

 

ゆうか「………でも、少なくともしばらくは無しね。彼女は………うちの秘密兵器よ。」

 

優「秘密兵器ですか………今年も観察眼は絶好調か、それとも………」

 

迫る全国大会。果たして、巫魔の運命は………!?

To Be Continued………




次回予告
遂にやってきた夏の大会。巫魔高校1回戦の相手、川今高校が立ちはだかる。巫魔は初っ端から積牙がファールの沼に嵌ってしまい………!?
次回「行ってこい!!」

今作のバスケ用語解説
やっほー、はじめましてだね。私は巫魔高校監督の雷ゆうか。今回私からはメンバーのバスケ歴を解説していこう。まずは小学生から始めた子達はご覧の通り。

優、積牙、あずさ、美咲、明日香。

この辺は優くん以外は、小学生からやってるのが納得出来る強さの持ち主ね………続いて中学から始めたのはこちら。

春香、のぞみ、レイ、伊吹、あかり、ほのか、光一

この辺になってくるとスタメンになったことのあるメンバーが多いわね。因みにのぞみちゃんはあずさちゃんに、レイちゃんは美咲に影響されて始めたみたいよ。さて、最後に高校生から始めたのはこちら。

由香、鈴香、優真

由香ちゃんと鈴香ちゃんは意外にも高校から始めたのよね。優真ちゃんは前話でバスケ部に参加したからまあ言うまでもないわね。

さて、いかがだったかしら? 「この頃からやってたんだ!」っていう子はいた? さて、次回からいよいよ試合! 川今戦は優くん抜きで頑張るわよー!!


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第三章 巫魔高校の6ピース
第18話 行ってこい!!


前回までのあらすじ
新人、優真の育成の過程で、優真の問題点と尋常ではない飲み込みの速さが浮き出た。そして、トーナメント表から今後戦うであろうライバル達を目にする。しかし、巫魔バスケ部の気合いは十分で………?


そして月日は流れ、県大会当日。優達は会場となる体育館に来ていた。

 

優真「凄い………でも、いいんですか? 私なんてまだ入ったばかりなのに………」

 

優「バスケに歴は関係ない。うちのバスケなんてもっとだ。優真が入ってからまだ2、3週間だけど………それでも出てもらう可能性があるからな。」

 

優真「私が………」

 

優「あかり以外も、高校大会出場経験はないと思う。でも、緊張せずにいつもの気持ちで行くぞ!」

 

春香達「おおー!!」

 

優達は気合いを入れ、会場の中に入る………

 

 

 

優達が会場に入ると、既に多くの学校のバスケ部員がいた。

 

優「やっぱりここに来ると空気が違ってくる………」

 

優がそんな事を呟いていると………

 

??「おーい、優くん!」

 

春香「この声は………滝川さん。」

 

力豪高校のメンバーと遭遇した。

 

滝川「久しぶりだな、あの対決からしばらくか?」

 

優「お久しぶりです。」

 

滝川「君達のブロックは強敵だらけだと思うが、頑張ってくれ。再度戦えるのは決勝リーグ。それまで負けるなよ。」

 

滝川はそう語る。しかし………

 

??「………無駄だよ滝川。そんな奴らがベスト8突破をするのは無理だ。Cブロックは爆速が制覇する。」

 

と、優よりも背が高く、積牙より少し低めの男が話を遮ってきた。

 

結衣「あ、あの人は………?」

 

滝川「速野………」

 

優「ほへぇ………あの人が噂の爆速高校キャプテンか。」

 

優真「あ、あの人は誰ですか………!?」

 

優「速野信太(はやののぶた)。3年生にしてイバラキ最強のPGの1人とも言われる男。まさかこんな所で鉢合わせるとはね。」

 

速野「白い髪に薄めの青目………そうか、君が噂の白宮優。こんな小柄な体型で力豪から大量得点を奪った………実に興味深いな。それに、そこにいる白髪のお嬢さんが白宮春香。巫魔最強のスリーポイントシューター。2人のオフェンス力はイバラキでも随一と言っていいほどだ。しかし、他のメンバーは見た事もないメンバーで、公式戦でレギュラー経験があるのはそこにいる宮野あかりって人だけ。とてもじゃないがレベルが違いすぎる。」

 

明日香「むっ………勝手な事を言わないでよ! 私達だって必死に練習してきたんだから!」

 

速野「………その練習成果が出るといいんだけどね。」

 

速野が高々と語っていた。すると、彼の肩を掴む者が1人。その者は積牙よりも背が高かった。

 

??「やめろ。恥ずかしいと思わないのか、速野。」

 

速野「この声は………戦記じゃないか。」

 

優真「戦記………?」

 

優「守城の戦記良太………こっちもイバラキ最強の最強PG。でも、速野とは違って、守りについては超一流だ。なんなら、イバラキにおいて1on1で抜かれた事は無いっていう。」

 

のぞみ「(あれでPG………なら、Cなんてもっと大きいわね………)」

 

のぞみは推測するように考察する。

 

速野「おいおい、お前も教えてやれよ。イバラキは俺達がまたトップ3を取るってさ!」

 

戦記「………興味は無い。そんな事より勝利を掴むことを考えろ。もしやお前が先に脱落する………などと言わないだろうな?」

 

速野「まさか。俺は負けない。特に、こんな奴らになんかさ。」

 

優「………舐められたものだ。三大王者の一角が絶対に負けないと言いきる程自惚れているんじゃないだろうね?」

 

優は煽るようにそう口にする。それを聞いた速野は………

 

速野「………言ってくれるじゃないか。ダンクしかできない君が僕に喧嘩を売る。それがどんなに愚かな事かわかって言ってるのかい?」

 

優「………勘違いしないでもらいたいな。僕がダンクしか出来ない脳無し人間に思えるかもしれないが………僕はそんな単純じゃない。」

 

速野「よく言うよ。そう言って喧嘩を売ってきた奴等は皆バスケで返り討ちにした。君もそうしてやるよ。」

 

速野はそう口にする。優は一歩も引く様子を見せない。それを見た滝川は………

 

滝川「おいおい、こんな所で言い争っても………」

 

静止しようとしたが………

 

戦記「面白い。」

 

速野「は?」

 

戦記は興味を見せた………

 

速野「君は正気か? こんな1回戦も突破した事の無い学校のプレイヤーの言っている事に興味を持ったというのか?」

 

戦記「その男は本気でお前に喧嘩を売っている。今までの連中はお前を倒す覚悟がなかった。しかし、その男の目は本気だ。間違いなく。俺は実力と覚悟を持つ者には経緯を表する主義だ………名前は?」

 

優「………白宮優だ。」

 

戦記「白宮優………学校は?」

 

優「巫魔だ。」

 

戦記「巫魔………チェックしよう。お前達の実力を見る為にもな。」

 

速野「本気かい? 君程の選手が珍しい事もあるものだ。」

 

戦記「お前の話はどうでもいい。Cブロック。楽しみにさせてもらおう。」

 

戦記はそう言うと立ち去った。

 

速野「………いいだろう。そこまで言うなら証明してくれ。巫魔高校が僕達や守城に対抗しうる存在かどうか。」

 

速野はそう言って立ち去った。

 

滝川「いや、やるなあ、優くん! 速野に喧嘩を売るばかりか、戦記に興味を持たれるなんてさ。」

 

優「いえ………」

 

滝川「戦記に興味を持たれたら大変だぞ〜!」

 

優「あ、あはは………」

 

優は茶化してくる滝川に対して苦笑いを零すのだった………

 

 

 

その後、開会式を経て、優達はCブロック体育館へ。第一試合は優達巫魔高校と浜崎涼太率いる川今高校。

 

浜崎「よろしく。キャプテンの浜崎だ。」

 

優「こちらこそ。白宮優です、よろしくお願いします。」

 

2人は握手をかわす。しかし、その様子を見ていた1人が………

 

??「へぇ………そいつが2年生のキャプテン。」

 

態度の悪そうな選手が1人、優達に近づいてきた。

 

浜崎「止めろ、営夜。」

 

レイ「あの人が営夜隼太………川今のスコアラーって所かしら。」

 

営夜「その通り。俺は最強のスコアラー! 巫魔の点取り屋がお前だと聞いたのでな………特別に俺が勝負してやるよ。」

 

優「あ、僕の出番ないよ。」

 

営夜「何っ!?」

 

浜崎「………!?」

 

営夜は分かりやすく動揺した。勿論、浜崎もだが。

 

営夜「舐めてるのかてめえ!!」

 

営夜は優の胸倉を掴む。しかし、優はまるで動じず………

 

優「いや、まともだけど………というか、早く離した方がいいんじゃないの? 開始早々テクニカルもらう羽目になるぞ?」

 

営夜「ちっ………!」

 

営夜は悔しそうな表情で、優の胸倉を手離す。

 

結衣「大丈夫ですか!?」

 

結衣が大慌てで駆け寄る。

 

優「いやあ、大丈夫大丈夫。ガラの悪い奴は慣れてるさ。」

 

優はそう言うと、ベンチの方へ戻るのだった。

 

結衣「慣れてるって………?」

 

結衣は優の言葉に首を傾げながらも、ベンチの方へと戻るのだった………

 

 

そして試合開始3分前………

 

ゆうか「じゃあ、正式にスタメンを発表します。まずGは、PG、のぞみちゃん、SG、春香ちゃん。」

 

2人「はい!」

 

ゆうか「続いてFよ、PF、伊吹ちゃん、SF、積牙くん。」

 

2人「はい!」

 

明日香「いいなー、積牙が高校初大会でスタメンなんて。」

 

優真「凄い………同じ1年生なのに………」

 

優「SFとしては光るもの持ってるからね、積牙。まあ、それと同時に問題も多いんだけどさ………」

 

優真「問題………ですか?」

 

優「まあ、優真もいつか出番が来るだろうし………試合はよーく見ときなよ?」

 

優真「は、はい!」

 

ゆうか「言うまでもないけど、Cは任せたわよ、光一くん。」

 

光一「おう!」

 

こうして、巫魔のスタメンが決定。そして………

 

審判「1分前!」

 

試合開始1分前に迫った。

 

優「春香、僕がベンチにいる間は、試合中のチームを纏めてくれよ!」

 

春香「はい!」

 

優「よーし………行ってこい!!」

 

5人「おおー!!」

 

春香達はコートへと出てきた………今回の試合、互いのメンバー表はこうなっている。巫魔メンバーは先程ゆうかが言った通りだが、背番号とユニフォームの色確認を含めて、おさらいという形にさせてもらった。

 

巫魔高校(黒)

5番 SG 白宮 春香

9番 PG 時乃 のぞみ

10番 SF 江野 積牙

11番 PF 佐野 伊吹

17番 C 相田 光一

 

川今高校(白)

4番 PG 浜崎 涼太

5番 PF 島崎 透

6番 G 愛和 翼

7番 C 物林 達也

8番 SF 営夜 隼太

 

今回の川今高校選手だが、全員が身長175cm超えの高身長選手達だった。

 

浜崎「本当に彼は出ないのか………」

 

営夜「しっかし、高校バスケも堕ちたもんだな。混合バスケになってから、ミスマッチが多すぎるんだっつの。しかも男子が3人しかいないとか舐めてんだろ………」

 

浜崎「止めろ、営夜!」

 

営夜「まあでも………俺達が大差を見せれば………潰せそうじゃん。」

 

積牙「勝手な事を………!」

 

春香「まあまあ、落ち着いて。」

 

春香はそう言って積牙を宥めさせる。そして、ジャンプボール。光一と物林が対峙する。

 

光一「(コイツ、190cmあるな………セッキーと同じくらいなら、Cに選ばれるのも納得だな………まあ、この間の奴よりかは小さいが………)」

 

光一が分析をしていると、審判は笛を鳴らし、ボールを真上に上げる。2人は大きく飛び上がる。結果、ジャンプボールは軽々と光一が征した。

 

営夜「あーあ、何やってんだか………」

 

営夜は愚痴を吐いていた。その間に、ボールを拾ったのぞみは、ドリブルで攻める。

 

浜崎「行かせるか!」

 

浜崎はのぞみに立ち塞がる。のぞみはドリブルで抜こうとするが、浜崎は彼女の動きに追いつき、抜かせようとしない。

 

のぞみ「(動きが速い………なら………)伊吹!」

 

のぞみは伊吹にボールを渡す。

 

伊吹「早速貰った!!」

 

伊吹はダンクを決めようとするが………

 

島崎「させるか!!」

 

島崎は横からボールを弾き、伊吹からボールを手放させた。零れ玉は浜崎が拾う。

 

伊吹「くっそー!」

 

伊吹は悔しがりながらも、自陣へと走る。浜崎はドリブルで巫魔陣営に入り込む。それに対し、巫魔はマンツーマンディフェンスで対抗する。浜崎はのぞみをかわそうとするが、のぞみは浜崎に劣らないスピードで、彼の突破を防ぐ。

 

浜崎「(振り切れないか………)」

 

浜崎がそう考えていると………

 

営夜「こっちに回せ!」

 

営夜が叫ぶように指示を出す。浜崎は嫌そうな顔をしながら、営夜にパスをする。

 

積牙「抜かせるか!」

 

営夜「………来いよ、ウスノロ。」

 

積牙「何を!!」

 

積牙は挑発に乗り、強引にボールを取ろうとする。営夜はそれを利用し、シュート体制に入る。結果、ボールは営夜の手を離れて放たれたが、積牙はとっさに行動を止める事が出来ず、営夜と接触してしまった。

 

審判「プッシング! 黒10番!」

 

審判がそう叫ぶと同時に、ボールはゴールに入った。

 

審判「バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

これにより、フリースロー1本を許す事に。

 

伊吹「開始十数秒で何やってんだか。」

 

優「やっぱり始まった………」

 

優真「どうしたんですか?」

 

優「積牙は確かに光るものを持ってる………けどさ。デメリットがあるのよ。」

 

優はそう言うと、持参した2L保温水筒の中身をコップに入れて飲み始める。中身は熱々のお茶だ。

 

優「ファール率の高さだ。」

 

優真「ファール率の高さ………?」

 

結衣「ファールをしやすいって事ですか?」

 

優「そうそう。鈴香、アレ作って来てくれた?」

 

鈴香「作ったけど………お陰で眠い。」

 

優「あはは………そうか。なら寝てていいぞ。」

 

鈴香「なら寝てる………」

 

鈴香はそう言うと、ジャージを掛け布団代わりに、眠り始めた。

 

優「うん、分かりやすくて助かる。」

 

結衣「なんですか、それ?」

 

優「これまでの積牙のファール表だ。まず、僕達と入部早々に行った勝負では3ファールを貰ってる。次に力豪前のゲームでは5ファール退場。力豪戦でも3ファール。友力では4ファール………」

 

優真「多いですね………」

 

優「まあ、仕方ないファールの貰い方もあったが………って、あ。」

 

優が積牙の弱点を語っているうちに、また笛が鳴る。

 

審判「チャージング! 黒10番!」

 

優「あちゃ………またやったか。」

 

優は頭を抱えていた。

 

営夜「大した事ないな、お前………こんな奴がいるのに、よくあの白髪の奴をベンチに下げられるな。」

 

積牙「なんだと!?」

 

伊吹「やめろバカ!!」

 

伊吹は咄嗟に積牙の腕を掴む。

 

優「メンタルも弱いな………レイ、アップしといた方がいいよ。」

 

レイ「分かった。」

 

レイは準備運動を始める。

 

ゆうか「助かるわ優くん。まだ開始3分も経ってないのに、積牙くんは2ファール。下手したら交代も有り得るし………」

 

優「いえ………それに、監督にもこの資料をお見せしますが、こっちとしてはまだ積牙は不安材料のような状態ですね……」

 

優はそう言うと、資料を見せる。そして、積牙のファール率の高さを見て………

 

ゆうか「やっぱりか………」

 

結衣「やっぱりとは………?」

 

ゆうか「彼のファール率の高さは、練習試合の頃から気になっていたの。まさか公式戦になっても出てきてしまうなんてね………って、あ。」

 

ゆうかが疑問点を語っていると、またしても笛がなる。

 

審判「チャージング、黒10番!!」

 

開始3分。積牙、3つ目のファール。高校バスケではまず見ないファール速度である。

 

結衣「これで3つ………」

 

明日香「開始3分でファール3つって前代未聞なんだけど………」

 

あまりのファール速度で呆れ出すベンチ陣。

 

伊吹「(や、やべぇ………! いきなり積牙を失ったら身長問題に発展するぞ………!?)」

 

逆にフィールドの伊吹は慌てていた。積牙の離脱はチームにおいて確実に痛いからだ。

 

伊吹「なんとかしないと………!」

 

伊吹は焦るようにそう考える………

 

 

 

試合再開後、PGののぞみは冷静なドリブルでボールを運んでいく。

 

のぞみ「(3ファールで積牙が使えない………しかも、伊吹はさっき押し負けた………頼みの綱は春香だけど………)」

 

のぞみは春香の方に視線を向ける。当然のように、春香をGの愛和がマークしている。

 

のぞみ「(………パスすら出せない。なら、私がインサイドに切り込んで………光一に回す………!)」

 

のぞみはインサイドに切り込む。しかし………!?

 

浜崎「させるか!」

 

浜崎がのぞみをマークする。のぞみは振り切ろうとするが、浜崎のスピードはのぞみと互角であり、抜けない。

 

のぞみ「っ………! (抜けない………!)」

 

のぞみが苦戦する様子を見せていると………

 

あずさ「のぞみちゃん! 後5秒!!」

 

24秒のタイムリミットが迫る。

 

のぞみ「(こうなったら………!)」

 

のぞみは仕方無くシュートを放つ。しかし………

 

浜崎「はあっ!」

 

半ば強引に打った為に、浜崎の手によってシュートを撃ち落とされてしまった。

 

のぞみ「っ………!」

 

浜崎「速攻だ!」

 

浜崎がそう言うと、若今の選手達は巫魔のゴールに向かって走り出した。

 

春香「戻って!!」

 

春香が指示を出すが、巫魔の選手達は出遅れ、あっという間にボールは営夜に回り、営夜はシュート体制に………

 

積牙「撃たせるか!!」

 

積牙は懸命にディフェンスを試みる。しかし、営夜は打つと見せかけて、動きを止めた。

 

積牙「………!? (フェイク………だと!?)」

 

そして、営夜は積牙が飛び込んでくるのを目にし、大きくジャンプ。その時に積牙と営夜が接触し、営夜は押されてしまうが、シュートはきちんと放ち、綺麗にゴールへと決めた………

 

伊吹「なっ!?」

 

そして、この接触により、審判の笛が鳴り………

 

審判「プッシング! 黒10番! バスケットカウント、ワンスロー!」

 

………積牙、4つ目のファール。

 

積牙「あ………ああ………!」

 

積牙は言葉を失った。そして、営夜は積牙の後ろに立ち………

 

営夜「………大した事ねぇな、お前。」

 

煽る様にそう言い放つ。それを聞いた積牙はカッとなり………

 

積牙「なんだと!!」

 

営夜に殴りかかろうとする。これには、伊吹と光一が慌てて積牙を押さえる。

 

伊吹「やめろ! バカ!!」

 

光一「退場になるぞ、セッキー!!」

 

営夜「………ふん。」

 

積牙は4ファールに陥り、我慢の限界に陥った。これにはベンチ陣も慌てる様子を見せた。

 

あかり「あわわ………! 」

 

優「あーあ、もう無茶苦茶だよ。」

 

そんな中で呆れる優。すると………

 

審判「巫魔、タイムアウト!!」

 

ゆうかはこのタイミングでタイムアウトをとる。

 

優真「あの………この場面でタイムアウトをとるんですか?」

 

初心者の優真は首を傾げながら優に質問する。

 

優「まあ、仕方ないかな。積牙は4ファールだし、ここまでノーゴールだもん。」

 

優の言う通り、開始4分で現在は0vs13。積牙が4ファールと、あまりにも悪いスタートである………

 

 

 

ゆうか「………取り敢えず積牙くんは交代。レイちゃん、お願い。」

 

レイ「はい。」

 

積牙「待ってください! 俺はまだ………!」

 

ゆうか「………このままじゃ彼によって5ファール退場よ? なら、もう下げた方がいいわ。」

 

このままではどっちしろ積牙は退場になってしまうとゆうかに指摘され、積牙は言葉を失った。

 

ゆうか「それと、のぞみちゃんも交代よ。」

 

のぞみ「………分かりました。」

 

同時にのぞみも交代する事に。

 

伊吹「珍しいな………のぞみを下げるなんて。」

 

ゆうか「ここは美咲の方が相性が良さそうなのよね。という訳で、美咲、出場よ。」

 

美咲「う、うん!!」

 

のぞみの代わりに美咲が投入される事になった。

 

審判「そろそろタイムアウト終了です!」

 

審判の言葉で、春香達はコートに戻る。試合再開はフリースローからであるため、営夜がフリースローを放つ。営夜はシュートをしっかりと決めた。

 

営夜「余裕だな。」

 

営夜はもう勝利を確信していた。しかし、レイが美咲にボールをパスする。

 

美咲「………見くびってもらっちゃ困るよ。」

 

美咲はそう呟くと………

 

美咲「行くよ!!」

 

素早い動きでドリブルを始めた。

 

浜崎「っ!? 行かせるか!」

 

浜崎は慌てて止めようとするが、美咲は浜崎を上回るスピードであっさりと抜いた。

 

浜崎「なっ………!?」

 

浜崎は驚きのあまり動きが止まってしまった。美咲はあっという間にスリーポイントラインの中に。そこに島崎と物林の2人が立ち塞がる。無論、どちらも美咲より背が高い。

 

結衣「た、高い………!!」

 

どう見ても無茶な状況。すると、美咲は愛和にマークされる春香に目配せをする。

 

美咲「春香さん!」

 

美咲は春香に向けてボールをパスする。一見、無謀なパスだが………?

 

営夜「何やってんだ? このまま愛和がボールをキャッチするだ………」

 

春香「いつまでも私が抑えられると………思わないでください!」

 

しかし、春香はマークを振り切り、パスを受け取る。春香はすぐにスリーポイントラインの外に出ると、身構える。

 

営夜「打たすかよ!!」

 

すぐに駆けつけた営夜がブロックを狙うが………

 

春香「………ふふっ。」

 

春香もやや前に飛ぶ。これにより、春香と営夜がぶつかるが、春香は姿勢が崩れながらもシュートを放つ。春香のシュートはリングの上を回るが、少ししてシュートはリングの中に吸い込まれた。更に………

 

審判「………バスケットカウント、ワンスロー!」

 

ファールは営夜のものと判定され、春香は一気に3点を決めた。

 

営夜「何っ!?」

 

優「よしっ!」

 

光一「来たな!」

 

春香のスリーポイントシュートにより、流れが変わり始めた。

 

営夜「ぐっ………この女………!」

 

春香を睨む営夜。しかし、春香は特に気にする様子を見せず………

 

春香「………さあ、反撃行くわよ!」

 

力強くそう言い放つのだった………

 

 

 

遂に開幕。イバラキ大会。序盤、積牙の離脱などアクシデントはありながらも、春香のスリーポイントシュートで、巫魔に勢いが来ようとしていた。果たして、この状況を打開する事は出来るのか………?

To Be Continued………




次回予告
春香のスリーポイントシュートで一気に巫魔に流れが動く。続く第2Q、春香が1度ベンチに下がる事になり、巫魔に襲いかかる壁を乗り越える場面が到来し………?
次回「僕達がいなくても大丈夫さ」


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第19話 僕達がいなくても大丈夫さ

前回までのあらすじ
遂に始まった予選大会。イバラキ三大王者のキャプテンとの邂逅を経て、ゆう達は1回戦の相手、川今高校と対決。積牙がいきなり4ファールを取られるというアクシデントこそあったが、春香のスリーで流れが変わり始め………?


ファールを貰った春香によるフリースロー。春香は慌てずにシュートを放ち、フリースローを沈めた。

 

優「よし、まずは4点だ。」

 

そして、試合は川今ボールで再開。

 

愛和「浜崎さん!!」

 

愛和が浜崎に向けてボールをパスする。しかし、浜崎の前に美咲が立ちはだかった。

 

浜崎「くっ………!」

 

浜崎は左に移動。すると美咲が自分の方へマークをしてきた。

 

浜崎「(ここで切り返す………!)」

 

これに対し、浜崎は上手く切りかえそうとする………しかし、それを見た美咲は、浜崎を上回るスピードで追いついた。

 

浜崎「(何っ!?)」

 

自ゴールのあるコートにボールが出せない………その間に、8秒ルールの壁が迫ってきた。

 

浜崎「くっ………! 愛和!」

 

浜崎は、愛和へのパスを試みる。しかし、そこへ春香が手を伸ばしてパスカット。

 

愛和「何っ!?」

 

春香「速攻!!」

 

春香はそう言うと、美咲に向けてボールをパス。美咲はボールを受け取ると、すぐさま浜崎との1on1に。

 

美咲「無駄だよ!!」

 

美咲はそう言うと、右に移動。浜崎も美咲が右に動く………という所までは予測出来たが、彼女はその予測すら無に帰す程の素早いスピードで浜崎をかわした。

 

浜崎「しまった………!!」

 

美咲「はあっ!!」

 

美咲は浜崎をかわすと、そのままレイアップを決めた。

 

優「よーし、いいぞ! 美咲〜!!」

 

これには優達ベンチ陣も声を上げて賞賛。巫魔が一気に流れを掴み始めた………

 

 

 

少し経ち、営夜のマッチアップとなったレイは営夜との1on1に挑む事に。

 

営夜「お前もアイツと同じようにしてやるよ!」

 

営夜はそう言うと、レイに向かって立ちはだかる。レイはボールを手にシュート体制へ………

 

営夜「打たすかー!!」

 

営夜はジャンプしてシュートコースを塞ぐ………だが、レイはシュートをせずに姿勢を低くした。

 

浜崎「フェイク………!?」

 

レイはそのまま営夜をかわすと、ジャンプシュートを放つ。レイのシュートは綺麗にゴールに吸い込まれた。

 

営夜「なんだと!?」

 

これには驚きを隠せない営夜。レイは冷静に相手ゴールに向かって走り出した。そして、その様子を見ていた優は………

 

優「春香、美咲、レイ………この3人が上手く機能している………!」

 

そんな事を呟いた。そして、監督のゆうかは………

 

ゆうか「巫魔の選手達は皆いい所がある。その長所を活かして戦うのが巫魔だからね。こういう臨機応変に対応出来るのもうちの強みなのよ。」

 

巫魔というチームをそう評していた………そんなうちに、第1Qが終了。スコアは24vs17で巫魔有利と、巫魔のオフェンス力が爆発する結果に………

 

 

 

そしてインターバル2分。ゆうかは次の手に出る事に。

 

ゆうか「ここで春香ちゃんも下げるわよ。」

 

結衣「春香先輩まで下げて大丈夫なんですか………?」

 

巫魔のオフェンス力ダウンからか、心配する結衣。そんな彼女に優は………

 

優「僕達がいなくても大丈夫さ。チームの事を信じているからこそ、出来る真似なんだよ。」

 

と、彼女を安堵させる為の言葉を口にした。

 

ゆうか「頼むわよ、あかりちゃん。」

 

あかり「はい!」

 

ここで春香からあかりへと交代。そして………

 

ゆうか「続く作戦だけど………インサイド中心で攻めるわよ。つまり、光一くんと伊吹ちゃん。2人が鍵になってくる訳ね。」

 

積牙「でも、伊吹先輩は抑えられているんじゃ………?」

 

積牙が首を傾げた様子でそう言うと………

 

伊吹「うるせー!」

 

積牙に蹴りを入れた。

 

積牙「痛っ!?」

 

伊吹「大丈夫だって。確かに第1Qは丸々やられたけどさ、ゆう程強い相手じゃねえから。」

 

続けて、伊吹はそう言った。すると、試合再開を知らせる笛の音が………

 

優「よーし、頼むぞ!」

 

優はそう言って選手達をコートへ送った。その直後、優は積牙の隣に座ると………

 

優「まあ見てなって。伊吹はやられっぱなしで黙ってる奴じゃないからさ。」

 

優はそう言って試合を見守る事に………

 

 

 

そして始まった第2Q。川今は浜崎に対し、美咲を徹底的につける作戦で、川今の戦略展開を留めながら戦っていた。

 

浜崎「くそっ………!」

 

浜崎はパスをするが、伊吹によってパスをカットされてしまう。

 

伊吹「よし!」

 

伊吹はそのまま速攻で走る。だが、そこに彼女のマッチアップ相手、島崎が立ちはだかる。

 

伊吹「はあっ!」

 

だが、伊吹は物怖じせずにダンクを狙う。島崎は伊吹の高さを上回るジャンプし、伊吹のボールを弾いた。

 

伊吹「ぐっ!」

 

積牙「伊吹先輩!!」

 

積牙は心配そうな様子を見せた。しかし、零れ玉を駆けつけた美咲が拾い、伊吹にボールを渡す。

 

島崎「(コイツら………俺に勝てないと分かって何故パスを繰り返す………!?)」

 

島崎は困惑する様子を見せた。そして、伊吹はもう一度膝を深くさせる。

 

島崎「(またダンクか………!)打たすかよ!!」

 

島崎は再び高くジャンプする………しかし、伊吹はタンクにはいかず、島崎をかわした。

 

島崎「………!? (しまった! フェイク………!!)」

 

伊吹はそのままジャンプし、右手によるダンクを炸裂させた。

 

優「よーし!」

 

伊吹のダンクが初めて炸裂し、巫魔の調子は一気に好調。その後も伊吹と島崎による1on1が繰り広げられる事となったが………

 

島崎「(くそっ………ダンクかフェイクか………どっちだ………!?)」

 

島崎の頭の中にフェイクという変化球が登場した事で、動きにキレがなくなってきた。

 

伊吹は再び膝を低くする。

 

島崎「2度も同じではくうか!!」

 

島崎はフェイクだと考え、ここは飛ばなかった。しかし、伊吹はそのままジャンプした。

 

島崎「何っ!? 今度はダンクだと!?」

 

島崎は反応できなかった。そして、伊吹のダンクがリングに炸裂した。

 

ゆうか「(これはもう貰ったわね………川今の主力選手が誰1人太刀打ちできなくなってる………! 7番のCだって、光一くんに抑えられている………!)」

 

ゆうかは、伊吹の二度目のダンクで勝利を確信した………

 

 

 

その後、第3Qの途中にて春香が交代で戻ってきた。その後は一層川今を相手にワンサイドゲームを繰り広げた。スピードで相手をかき乱す美咲、とにかくスリーポイントを量産する春香、冷静にゴールを射抜くレイ、ダンクでチームの調子を上げる伊吹、ゴール下を支配する光一の5人の活躍により、川今を圧倒していた。これには観客席からも驚きの声が………

 

客1「巫魔強え………!」

 

客2「あそこって例年1回戦負けじゃなかったか………? なのに、なんであんなに強くなってるんだ!?」

 

そんな客の声が次々と現れる中、先程優に興味を持っていた守城の戦記は、試合の流れを見ていた。

 

戦記「巫魔には圧倒的なオフェンス力があるようだな………しかも、キャプテンのアイツを抜きにしてあのスコアだ………」

 

戦記はスコアボードを目にする。そのスコアは125vs32。巫魔が圧倒的に点を量産していた。そして、試合は残り5秒………

 

美咲「春香さん!」

 

美咲のパスを受けた春香がボールを受け取る。しかし、そこへ春香へ対抗意識を燃やす営夜がマークについてきた。

 

営夜「打たすかよ!! せめてお前のシュートを止めて終わりにしてやらあ!!」

 

春香「………無理よ。」

 

春香はそう言うと、後ろに大きく飛んだ。

 

営夜「(す、スリーでフェイダウェイだと!?)」

 

春香はそのままシュート。距離が離れていた為に営夜に止められるわけがなかった。そして、春香のシュートは綺麗にリングの中へと入り………

 

審判「試合終了!!」

 

ブザーが鳴った事で試合終了。スコアは128vs32という、クアトロスコアで勝利した。

 

美咲「やったー!!」

 

明日香「2回戦進出だ〜!!」

 

巫魔のメンバーは喜んでいた。そして、優や春香も嬉しそうな様子を見せていた。

 

営夜「俺達が負けるなんて………くそっ!」

 

営夜はコートに拳をぶつける。そこに浜崎がやってきて………

 

浜崎「お前にはまだ次がある。俺には………リベンジする機会もないんだ………」

 

目に涙を浮かべながら彼を励ました。

 

営夜「………わかってらい。」

 

営夜は浜崎の心情を理解しながらも、いつもの態度を見せた。浜崎はそんな彼にどこか安心感を覚えたという………

 

ゆうか「取り敢えず1回戦は突破ね………この先、かなり苦しい戦いが続きそう………だけどね。」

 

監督のゆうかはこの先に待つ戦いの激しさをそう予感するのだった………

 

 

 

一方、今回スコア0、4ファールという不名誉な記録を残した積牙は………

 

積牙「ぐうっ………何も出来なかった………」

 

悔しそうな様子を見せた。そんな彼の近くに優がやってきて………

 

優「気にすんなって。まだまだ次があるさ。」

 

優はそう言って積牙を励ました………積牙の苦戦記録はまだまだ続くとは知らず………

 

 

 

何はともあれ1回戦を大差で制した巫魔高校。その快進撃はどこまで続くのか………!?

To Be Continued………




次回予告
続く2回戦の相手は杉上高校。巫魔は優を出さずとも快進撃を続けていた。しかし、積牙だけはいい所無しのまま、また4ファールとなってしまい………!?
次回「俺って役立たずなのか」


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第20話 俺って役立たずなのか

前回までのあらすじ
春香のスリーを皮切りに巫魔は川今高校を圧倒。そして、最終的に128vs32というクアトロスコアで勝利を掴んだ。しかし、積牙はいい所無しの結果に悔しそうな様子を見せた………


続く2回戦。巫魔が激突したのは杉上高校だった。序盤、杉上高校はキャプテンにしてスコアラーの関空汰、8番にしてリバウンドを得意とする沢野伸一の2人によってインサイドで苦戦を強いられた。しかし、巫魔を舐めていた関の隙を突いた明日香が関を驚かせるシュートを連発し大活躍。澤野についても、伊吹よりリバウンドを得意とするPF、ほのかの懸命なリバウンドで徐々にペースを掴む。その後、のぞみを起点とした、春香、光一のシュートでペースを完全に支配。この試合においても優は終始出場せず、最終的に104vs48という、ダブルスコアで勝利を収めた………そして、積牙の戦績は………

 

審判「ファール! 白10番!!」

 

積牙「ええっ!?」

 

ゆうか「………交代。」

 

第1Q、7分の段階で4ファール。またしてもスコア0のまま、4ファールで交代させられたのだった………

 

 

 

その日の夜、積牙は体育館で懸命にシュート練習をしていた。

 

積牙「………はあっ。」

 

しかし、同時にあからさまに落ち込んでいた。

 

積牙「今日も第1Q持たずに4ファールか………懸命にプレイしてるだけなのに………これが高校レベルの厳しさなのか………いや、もしかしたら………」

 

積牙は嫌な事を考えていた。それは………

 

積牙「俺って役立たずなのか………?」

 

自分が役立たずでは無いのか………そんな懸念だった。するとそこへ、優と春香の2人が入ってきた。

 

積牙「キャプテン………! 春香先輩………!」

 

優「珍しいじゃないか、こんな時間に積牙がいるなんて。」

 

優はそう言うと、近くに置いてあった籠からボールを手に取る。

 

積牙「はい………今日もいいとこ無しだったので………」

 

優「そっか………まあでも、1年生ならまだそんなもんさ。それに、今後の試合になれば積牙の力も必要になってくるさ。」

 

優はそう言うと、ゴールに向けてジャンプシュートを放つ。しかし、ボールはリングに弾かれた。

 

優「ありゃっ!?」

 

優は地面に着地すると、頭をポリポリとかいていた。

 

積牙「そういえば………キャプテンも俺と同じFなのに、なんでファールにならないんですか?」

 

優「そうだねぇ………まあ、強いて言うなら、僕は相手をかわしてシュートを決めるプレイスタイルを取ってるから………かな。」

 

優はそう言ってボールを拾うと………

 

優「ちょっと相手になってよ。僕のシュートが入らなかったら君の勝ちだ。極端な話、ファールして止めてもいいから。」

 

積牙「は、はい!」

 

積牙はそう言うと、優と対峙する事に………

 

積牙「(キャプテンが1on1でゴールを決められるのはダンクだけ………変な決め方もあったけど、それができるだけの勢いは無い………なら、インサイドに入らせなきゃいい………!)」

 

積牙はそう考えると、優をインサイドに入らせないようにマークする。すると優は、ゴール下から少し離れた位置にて………

 

優「はあっ!」

 

ダンクを狙いに行った。

 

積牙「何っ!? (そこからダンク!? どんな跳躍力してるんだこの人………! まあでも、こんな強引なダンク、最悪ファールでも止められる………!)」

 

積牙はそう言うと、遅れながらもジャンプ。優のダンクコースを防いだ………かと思われたが、次の瞬間、優は空中で右に動き、ギリギリ当たらない形で積牙をかわした。

 

積牙「ダブルクラッチっ!?」

 

優はそのままボールをリングに叩きつけた。

 

積牙「………!!」

 

積牙は地面に着地した時、驚きのあまり言葉を失っていた。

 

優「まあ、こういうこと。とにかく相手をかわしてゴールを決めまくる。それが僕のオフェンススタイルだ。」

 

積牙「(す、凄い………というか、この人のオフェンス力、本当に高校生か………!? 高校生っていう枠を超えている………!!)」

 

積牙から見た優は高校生とは思えない超人的なものだった。優は積牙の肩をポンと叩くと………

 

優「君も見つかるさ。自分だけの武器が………」

 

そう言って、近くに落ちていたボールを手にし、シュート練習を始める。

 

積牙「俺だけの武器………」

 

積牙は掌を眺める。しかし、そう簡単には思い浮かばないもので、自分の武器と言われても中々答えは出なかった。

 

積牙「(………まあ、すぐには出てこないよな………こうなったら………試行錯誤あるのみだ………!)」

 

積牙はそう考えると、籠のボールを手にし、ひたすらシュート練習に打ち込むのだった………

 

 

 

今の積牙に出来ること………それは練習を繰り返す………ただそれだけだった。続く3回戦。果たして積牙は爪痕を残せるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
続く3回戦は因縁の相手、条北高校だった。前年ベスト8の強豪を前に、監督のゆうかは、遂に優をスタメン出場させる事に決め………!?
次回「リベンジの時だ」


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第21話 リベンジの時だ

前回までのあらすじ
2回戦もダブルスコアで勝利を収めた巫魔だが、積牙はまたしても4ファール交代でいい所無し。落ち込む積牙だが、優との1on1を経て、自らの武器を模索し始める………


2回戦から日が経ち、優達巫魔は3回戦に挑む事に。

 

ゆうか「3回戦の相手は因縁の条北高校。前やった時は52vs112のダブルスコアでボコボコにされたからね。今回こそは勝つわよ!」

 

優達「はい!」

 

ゆうかの言葉を前に返事をする優達。彼らの気合いは充分だった。

 

ゆうか「そして、今回のスタメンだけど………光一くん、のぞみちゃん、春香ちゃん、積牙くん………そして、優くん。この5人で行くわ」

 

そして今回のスターティングメンバーの中に、いよいよ優が入った。

 

伊吹「とうとう優がスタメンか………!!」

 

これには伊吹が思わずそう呟き………

 

優「いやあ、待ちくたびれましたよ」

 

そして、優もまたようやくスタメン出場となった事に心を踊らせた………

 

 

 

強豪条北高校を前に出し惜しみする気は無い監督ゆうか。彼女は遂に優をスタメン起用。果たして、これがどう影響するのか………?

 

 

 

しばらくしてコートに足を踏み入れた優達。すると、既に条北のメンバーがベンチでスタンバっていた。しかし、彼等が向けてきた視線は、強豪の目ではなく、対抗意識を燃やす目だった。

 

優「ありゃりゃ、めっちゃ睨まれてる………」

 

優は半分白々しい様子を見せる。

 

伊吹「そりゃ、お前があれだけ派手にやったからなぁ………」

 

伊吹は優にそんな事をボヤいた。優達がそんな会話をしていると、条北高校の4番のユニフォーム、そして、7番のユニフォームを着た2人の選手が優達の前にやってきた。

 

??「よう、白宮優くん」

 

最初に声をかけてきたのは4番の方の男だった。

 

優「貴方は………松田さん」

 

優に声をかけたのは条北高校主将、松田千という人物である。ポジションはCで、身長201cm、体重95kgの巨漢である。

 

伊吹「(あ、改めて見てもでけぇ………本当に高校生かよ、この人………)」

 

伊吹が驚く様子を見せていると………

 

??「おい、白宮優! 俺の事を覚えているか!?」

 

7番のユニフォームを着た選手が声をかけてくる。

 

優「えっと………誰だっけ?」

 

しかし、優は目を点にしながらそう返答した。

 

??「なんだとー!? 俺は浜野鋼牙だ! ほら! 去年13番の………!!」

 

7番の男は怒りながらヒントを出す。

 

優「13番………ああ、思い出した」

 

優は7番のユニフォームを着た浜野鋼牙の事を思い出したようだ。

 

積牙「その人………去年キャプテンと何かあったんですか?」

 

積牙は光一に過去の事を問いかける。

 

光一「去年、優が条北を掻き乱したのは覚えてるだろ? その時にマッチアップしてた相手だよ、確か」

 

光一は半分曖昧だが、浜野の事を語った。

 

積牙「そうだったんですね………」

 

積牙は浜野の体格を目にする。浜野は身長187cm、体重78kgと、大型なPFの選手なのだが、以前、20cm近く差のある優に圧倒され、屈辱を感じていた。

 

松田「これまでの試合見せてもらったよ。今回も試合に出ないなんて事はないだろうな?」

 

松田は半ば煽るようにそう問いかける。

 

優「まさか。貴方達の事を警戒しないわけないじゃないですか」

 

それに対し優はそう言って、試合に出る事を遠回しに宣言するのだった。

 

審判「試合、5分前!」

 

そんな会話をしているうちに、試合5分前に。

 

ゆうか「集合ー!!」

 

ゆうかの号令により、ゆう達は巫魔ベンチに向かい………

 

???「集合!」

 

条北の監督、加賀美優亜が、条北のメンバーを集合させるのだった………

 

 

巫魔ベンチ………

 

ゆうか「スタメンはさっき言った通りよ。そして………この試合、これまで以上に苦しいものになるはずよ。でも、決して諦めないように。じゃあ、優くん。号令をお願い!」

 

ゆうかの説明が終わった後、優に号令を指示する。

 

優「はい!」

 

優は立ち上がると、チームで円陣を組み………

 

優「今の僕達は去年までとは別物だ。チームの力を信じて………この試合に勝とう! リベンジの時だ! 行くぞ!!」

 

春香達「おおー!!」

 

優の言葉から、チームとしての気合を入れる。

 

 

 

一方、条北ベンチでは………

 

加賀美「巫魔高校は去年までとメンバーがかなり変わってるわ。それに、これまでの試合も大量得点で相手を破ってるし、決して油断しないようにね。よーし、行ってきなさい!!」

 

松田達「おう!」

 

条北の監督加賀美がチームを鼓舞し、選手達を試合へと送り出した。そして、ベンチに座ると、巫魔ベンチのゆうかに視線を向け………

 

加賀美「(ゆうか………今年も勝たせてもらうわよ………!!)」

 

対抗意識を見せる。それに気づいたゆうかは………

 

ゆうか「(今年こそは巫魔が勝つわ………! 見てなさい………!!)」

 

ゆうかも負けじと対抗意識を見せる。どうやら、2人の間柄はライバルのようだ。

 

積牙「あの………監督同士の空気がピリついてません………?」

 

積牙はコートから2人の様子を目にし、首を傾げる。

 

のぞみ「学生時代からの因縁だそうよ」

 

のぞみは2人の事を知っているのか、その理由を積牙に教える。

 

積牙「マジですか………!?」

 

積牙は意外であるかのような素振りでそう呟くのだった………

 

 

そして試合開幕。今回のスタメンは以下の通りである。

 

巫魔高校(白)

4番 白宮優(PF)

5番 白宮春香(SG)

9番 時乃のぞみ(PG)

10番 江野積牙(SF)

17番 相田光一(C)

 

条北高校(青)

4番 松田 千(C)

5番 秋葉原 裕二郎(PG)

6番 黒枡鈴(G)

7番 浜野鋼牙(PF)

8番 清和志乃(SF)

 

 

 

両チームのCが、センターサークルに立つと、審判の笛が鳴り響き、審判の手にあったボールは大きく打ち上げられたのだった………

 

 

 

因縁の3回戦。果たして、また条北が勝利を掴むのか、それとも、巫魔が勝利を掴むのか………!?

To Be Continued………




次回予告
試合が開始し、最初に流れをつかもうとしていたのは条北だった。しかし、優はそうはさせまいと序盤から攻める………!!
次回「流れを掴ませるかよ」


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第22話 流れを掴ませるかよ

前回までのあらすじ
県大会第3回戦、相手は因縁の相手である条北高校。そして、いよいよ試合が始まる………!!


打ち上げられたボールが最高点に達すると、2人のCは大きく飛び上がる。

 

松田「せりゃあ!!」

 

松田が一足先にボールへと触れると、ボールをPGの秋葉原へ回す。

 

光一「くそっ………!」

 

光一は悔しそうな様子を見せる。

 

のぞみ「(やられた………!) ディフェンス!!」

 

同時に、のぞみがすぐに指示をする事で優達の気持ちをディフェンスに切り替えさせる。

 

秋葉原「(ディフェンスへの切り替えが早い………どうしたもんか………)」

 

秋葉原が頭の中でそんな事を考えながら、マッチアップしているのぞみの目の前で戦術を組み立て始める。

 

のぞみ「(条北を乗せたら一気に点を取られる………後手に回さない………!!)」

 

のぞみは秋葉原の動きに注目しながら、秋葉原を逃がさない。

 

秋葉原「(うーん、この子厄介だな………振り切れないぜ………)」

 

秋葉原はのぞみの動きを振り切れず、攻めあぐねていると、残り時間は後5秒程に。

 

秋葉原「(しゃーねえ………)………浜野!」

 

秋葉原はゴールの上に向けて、ボールを高く上げた。すると、浜野はそれに応じるように高く飛び上がった。

 

のぞみ「なっ………!?」

 

これにはのぞみも予想外だったのか、不意を突かれていた。

 

春香「アリウープ!?」

 

条北が攻撃出来るチャンスは残り2秒。となれば、無茶でもこれに賭けるしかない。

 

浜野「先取点、貰ったー!!」

 

浜野がそう言ってボールを手に取ろうとした時、そこへ優が高く飛び上がってくる。

 

秋葉原「何っ!?」

 

ゆうはなんとか先にボールへと触れ、地面に叩き落とした。

 

あずさ「ナイスだよ、優くん!!」

 

このファインプレイに、ベンチのあずさが賞賛の声を口にする。優は地面に着地すると、零れ球をキャッチし………

 

優「速攻!!」

 

速攻を指示し、前線に走り出したのぞみにボールをパスする。

 

松田「マズイ、戻れ!!」

 

松田達は素早い動きでディフェンスに戻る。

 

のぞみ「(速い………!)」

 

その中でも浜野がのぞみを抜き去り、彼女の前に立ちはだかる。

 

浜野「行かせるか!!」

 

浜野のディフェンスを前に攻めあぐねるのぞみ。

 

優「こっちだ!!」

 

優が浜野の後ろ、ゴール近くからパスを呼びかける。

 

のぞみ「(優………!)」

 

のぞみは浜野の股を抜く鋭いパスを行い、ボールを優へ回す。

 

浜野「し、しまった!!」

 

浜野は完全に逆を突かれた。本来の優のマッチアップ相手である浜野の代わりに、優のディフェンスをしていた秋葉原が立ちはだかるが、優はそんな事など気にせずジャンプし、ダンクを狙う。

 

秋葉原「(た、高ぇ………!!)」

 

秋葉原も必死なジャンプを行うが、優のジャンプ力には届かず、優の手にあったボールはリングへと入った。

 

観客「うおおおっ!! 先取点は巫魔だ!!」

 

優のスーパーブロックとダンクに魅了された観客は、歓声をあげる。そして優は条北高校の選手達に視線を向けると………

 

優「アンタらを調子には乗せない………流れを掴ませるかよ………!!」

 

条北高校の選手達への挑戦とも取れる言葉を口にするのだった………

 

 

 

vs条北高校戦は、意外にも巫魔の先制で幕を開けた。果たして、このままリードを維持出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔の優を起点にした快進撃は止まらず、巫魔は点を量産する。優1人に翻弄されるという最悪の事態を前にした条北はタイムアウトを選択し………?
次回「彼の入った巫魔は強い」


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第23話 彼の入った巫魔は強い

前回までのあらすじ
遂に始まる巫魔vs条北の試合。最初に得点を決めたのは、意外にも条北の流れを掴ませまいとする巫魔だった………


優の初得点をキッカケに、その後も巫魔の攻撃は止まらなかった。

 

のぞみ「優!!」

 

のぞみのパスを受けた優はまたしてもダンクを狙う。

 

浜野「打たすかよ!!」

 

浜野が大きくジャンプし、優のダンク阻止を狙う。しかし、優はダンクと見せかけて、後ろから走ってきた積牙にパスをした。

 

浜野「な、なんだと!?」

 

浜野は驚きを隠せなかった。そして、パスを受けた積牙は走ってきた勢いをそのままにレイアップを放ち、ゴールを決めた。

 

伊吹「いいぞー積牙!! またポカやってファール重ねるなよー!!」

 

これには伊吹も絶賛と同時に、冗談半分でヤジを飛ばした。

 

積牙「か、勘弁してくださいよ伊吹先輩………」

 

積牙は絶賛こそ嬉しかったが、後半のヤジに少し落ち込んでいた………

 

 

 

そして、1分後、また巫魔の攻撃チャンス。のぞみのパスで、再びボールは優に。だがそこへ浜野と、8番のSF清和が2人がかりでディフェンスを行ってきた。

 

優「春香!!」

 

だが、そんな事など織り込み済みとばかりに優は、スリーポイントラインの外にいる春香へパス。春香はそのままスリーへ。

 

黒枡「撃たせるかああ!!」

 

春香のマークをしていた黒枡も飛び上がるが、これを見越してやや前に飛んでいた春香に接触してしまう。無論、審判の笛が吹くが、春香は体勢を崩しながらもシュートを放ち、ボールをリングの中へ沈めた。

 

審判「………バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

判定は当然の如くバスケットカウントワンスロー。3点と同時に春香にはフリースローが与えられた。

 

美咲「やった!!」

 

これには巫魔ベンチでも喜びの声が上がった。一方、条北ベンチでこれまでの攻撃に、大体優が絡んでいるのを見ていた監督の加賀美は………

 

加賀美「………彼の入った巫魔は強い………1、2回戦とは動きもチームの流れも違う………」

 

優の入った巫魔の強さを無意識に理解した。そして、ベンチを立ち上がり………

 

審判「………タイムアウト、条北高校!!」

 

悪い流れを断つ為にタイムアウトを選択した………

 

 

 

開始から8分。18vs4と巫魔のオフェンスが爆発し、巫魔ベンチでは喜びの声が上がっていた。

 

明日香「思ったよりも良いペースだね。積牙のファールもまだ1個だし」

 

オマケに普段はファールを重ねる積牙が、まだ1個しかファールになっていない事は、高さがある彼に1秒でも長くいて欲しい巫魔にとってはかなりいいペースだった。だが、優だけはタオルで汗を拭きながら、条北ベンチを目にすると………

 

優「(………あちらさんが去年と同じままなんて無いはずだ………一体、どんな作戦を取ってくるのかな………?)」

 

条北が今後どう動いてくるか、注目する様子を見せた………

 

 

 

一方、条北ベンチでは………

 

加賀美「………はっきり言うわ。今の貴方達は間違いなく白宮優を中心にして掻き乱されている。このままでは勝ち目など無いと言っても過言じゃないわ」

 

監督の加賀美が、優を中心とした戦術に圧倒されている事を指摘する。

 

松田「承知はしています。しかし、あの10番のSFよりも小さい体格で我々をあそこまで圧倒するとは………流石に侮っていたかもしれません」

 

キャプテンの松田も現在の状況は理解している。しかし、優が自身よりも小さい体格の選手である事から、無意識に慢心があった事を考えていた。

 

加賀美「………しかし、これは逆に言えば白宮優すら締め出せばいい話よ」

 

そんな状況の中、加賀美は現在優勢である巫魔の策の穴も見出していた。

 

松田「と、言いますと………?」

 

松田は加賀美に問いかける。

 

加賀美「白宮優は40分フルであんなパワープレイは出来ない。彼のプレイにスタミナが追いつかないのよ」

 

そして加賀美は答えた。策の最大の穴とも言える優の決定的な弱点を………

 

 

 

巫魔高校は序盤、優勢な流れを掴む。しかし、条北監督の加賀美はあっさりと優の弱点を読んでしまった。果たして、これを知った条北高校の対策は………!?

To Be Continued………




次回予告
条北の選手は常に優へダブルチームをしかけ、彼にボールを回させないと同時に、スタミナを削らせる作戦に打って出る。優が抑えられた事で、巫魔の流れが弱まり始め………!?
次回「白宮優潰しよ」


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第24話 白宮優潰しよ

前回までのあらすじ
優を中心とした戦術で条北を圧倒する巫魔。しかし、条北の監督加賀美は、優の弱点を見つける………


タイムアウト終了後、優達はコートへ戻る。ボールは巫魔高校からで、コートの中央から春香がボールをパスする形となったが………

 

春香「………!! (優さんにダブルチーム………!?)」

 

なんと、浜野と清和の2人が優をマークしていた。

 

優「(くっ………! ダブルチームかよ………!!)」

 

優は2人の選手にマークされ、動きを制限される。そして、春香がのぞみにボールをパスした事で試合が再開するが、すぐさま秋葉原が立ちはだかり、パスコースを上手く防いでいく。

 

のぞみ「(ぐっ………! パスが出せない………!!)」

 

のぞみはパスが出せずじまいだった。唯一フリーになっている積牙へのパスコースも塞がれ、パスが回らない。

 

優「のぞみ、上げろ!!」

 

キリがないと察知した優は、空中でボールを取る事を考える。のぞみもそれを承知すると、ボールを高く打ち上げる。

 

優「よし………!」

 

優がボールに合わせてジャンプ。しかし、そこへ浜野がジャンプし、ボールを取りに行くように見せて、意図的と取られないよう優に接触した。

 

優「うあっ!?」

 

優は浜野にぶつかった事で体制を崩され、そのまま地面に倒れてしまう。

 

審判「プッシング! 青7番!!」

 

当然浜野のファールとなるが、浜野は満足そうだった。

 

優「(成程………無理に空中へ行くならファールもしてくるって訳か………あまり意図的なファールには関心しないんだが、やるな………)」

 

優はしてやられたという心境だった。そして、条北監督の加賀美は………

 

加賀美「これで巫魔は白宮優が機能しなくなり、チームとしての調子も落ちていく………これぞまさに、白宮優潰しよ………!」

 

ニヤリとした表情で条北の作戦を見ていたのだった………

 

 

 

その後、第2Qに入っても尚、優に対してダブルチームを行い、優に自由を与えない条北。次第に優の息が上がり始め、監督のゆうかも焦りを見せていた。

 

ゆうか「参ったわね………このままじゃ優くんが持たないわね。それと………結衣ちゃん、積牙くんの今のファールは何個?」

 

ゆうかは積牙のファール数も問いかける。それと同時に審判の笛が鳴り………

 

審判「プッシング! 白10番!!」

 

積牙がファールを犯してしまう。

 

結衣「ええっと、今ので2つです」

 

この段階で第2Q開始から2分。まだ28分もある中で、優の消耗と積牙のファール2つは嫌な流れだった。

 

ゆうか「仕方ないわね………」

 

ゆうかはベンチを立つと………

 

審判「交代です!!」

 

ここでPFほのかを投入。優を下げるつもりのようだ。

 

ほのか「優、交代!」

 

優はほのかの言葉に頷くと、ほのかとハイタッチをしてコートからベンチへと戻った。

 

結衣「キャプテン、タオルとドリンクです」

 

すかさず結衣がタオルとスポーツドリンクを優に手渡す。優は頭にタオルを被せると、スポーツドリンクを口にする。

 

ゆうか「優くん、また出てもらうから試合をよく見ておいて!」

 

どうやら、ゆうかは一時優を下げたようだ。優もそれを理解しているのか、無言ではあるが首を縦に動かし、試合を見ていた。

 

優「(現在は25vs10。15点リードは大きいが、当たりがキツイ今の状態で逃げられるのか………?)」

 

だが、それと同時に圧倒的有利にも関わらず、今後の試合に危機感を持っていたのだった………

 

 

 

巫魔は去年の大敗が嘘のような優勢状況だった。しかし、優が抜けた今、巫魔は逃げられるのだろうか………?

To Be Continued………




次回予告
優が抜けた事で、条北のインサイド陣が流れを奪い取り、巫魔の得点を防ぎつつ攻め始める。それにより、15点の点差が徐々に狭まっていき………?
次回「俺達の反撃だぜ」


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第25話 俺達の反撃だぜ

前回までのあらすじ
条北は優を徹底マークする事で、彼を大きく消耗させ、巫魔は優をベンチに下げざるを得なくなる。巫魔は現時点15点のリードだが………?


15点リードから逃げ切りたい巫魔だが、優が抜けた事で巫魔は確実にインサイドが弱体化。そうなれば………

 

秋葉原「浜野!!」

 

ボールは必然的に条北のインサイドプレイヤーへと集まる。

 

浜野「いよっしゃあ!!」

 

浜野はパスを受け、ダンクを狙う。

 

ほのか「うあああ!!」

 

ほのかが懸命にディフェンスを行うが、浜野の体格を前には歯が立たず、ボールはリングに入れられる。

 

ほのか「ぐうっ………!」

 

ほのかは悔しそうだった………

 

 

 

攻守が交代し、のぞみがボールを地面に打ちながら頭の中で戦術を組み立てる。

 

のぞみ「(優がいない今、アウトサイドで切り崩したい所だけど………)」

 

のぞみは春香の方へと視線を向けるが、春香は黒枡と清和の2人にマークされてしまい、パスが出せない。

 

のぞみ「積牙!」

 

のぞみは積牙へパスを回す。

 

積牙「ここは俺が!!」

 

積牙はジャンプシュートを狙う。しかし、浜野が素早いスピードで積牙の前へ走り、大きく飛び上がる。

 

積牙「あっ!?」

 

積牙は動揺。シュートは撃ったが、ボールはゴールから外れてしまい、オマケに浜野へ接触してしまう。

 

積牙「しまった………!!」

 

当然、こうなれば笛も鳴り………

 

審判「ファール! 白10番!」

 

積牙はこれで3ファール。

 

積牙「くそっ………!」

 

積牙は落ち込む様子を見せる………

 

 

 

その後も巫魔にとっては苦しい展開が続く。条北の攻撃、ボールはCの松田へ渡る。

 

光一「撃たせるかよ!!」

 

光一は両手を大きく広げ、松田の前に立ちはだかる。

 

松田「良いディフェンスだ………しかし………経験が違う!!」

 

しかし、松田は光一の対応出来ないスピードで光一をかわし、ゴール下シュートを放つ。松田の正確なシュートは、綺麗にリングへと入った。

 

光一「なんだと!? くそったれ………!」

 

松田の経験の多さから光一は落ち込んでいた。

 

浜野「見たか巫魔高校!! これが俺達の反撃だぜ!!」

 

一気に優勢となり、それを巫魔に思い知らせるように浜野はそう言い放つのだった………

 

 

 

巫魔のインサイド選手が尽くやられ、巫魔は中々点が取れず、逆に点を取られ続ける展開となってしまう。そして、そんな最悪の流れの中、第2Qは終了。15点もあった点差は一気に縮まり、31vs28にまで縮まった。

 

ほのか「はあっ、はあっ………あのインサイド陣、かなり強いよ………全然シュートできないし、点は取られ続けるし………」

 

苦しい展開にほのかは思わずそう呟く。

 

光一「あのC、経験が違ぇ………参ったな………」

 

光一もかなり苦しそうな様子だった。

 

優「(こりゃ、長くは持たなそうだ………)」

 

優は現在の状況から、このままでは逆転されてしまう事を危惧していたのだった………

 

 

 

優が抜け、インサイドが弱体化した巫魔は、条北の強固なインサイドに圧倒される。果たして、巫魔はこの絶望的な状況をどう崩すのか………!?

To Be Continued………




次回予告
第3Q、条北の強固なインサイドによって巫魔は再び圧倒され、遂に逆転を許してしまう。だが、優がこれを許す訳はなく………!?
次回「やりたくは無かったが」


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第26話 やりたくは無かったが

前回までのあらすじ
優がベンチへと下がった影響で条北の逆襲が始まった。15点以上あった点差は31vs28と、3点差にまで追い上げられてしまい………!?


その後、第3Qが始まり、ボールは条北ボール。そして………

 

松田「はあっ!!」

 

開始15秒で、松田の豪快なダンクが炸裂し、巫魔はあっさり1点差に追いやられる。

 

はるか「のぞみちゃん!」

 

はるかのパスがのぞみに渡り、試合が再開されるが、そこへ浜野がのぞみからボールをスティールした。

 

のぞみ「っ!? しまった………!」

 

点差を追い上げられ、普段は冷静なのぞみにも少なからず精神的ダメージが入り、ボールはそのまま浜野に奪われてしまう。

 

浜野「これで逆転だ!!」

 

浜野はそのままダンクへ走る。

 

積牙「撃たせるものか!!」

 

積牙が懸命にディフェンスを試みる。しかし、その懸命さが仇となり、浜野に接触してしまう。

 

浜野「そんなディフェンスで………俺が負けるかよ!!」

 

だが、積牙と接触した浜野は体勢を保っていた。

 

伊吹「あ、あの7番、すげぇフィジカル………!!」

 

ベンチの伊吹も、浜野のフィジカルに驚きを隠せなかった。

 

浜野「だりゃ!!」

 

そして浜野はダンクを決め、遂に条北は逆転。更に積牙による接触の為、審判の笛が鳴り………

 

審判「………バスケットカウント! ワンスロー!!」

 

追加のフリースローが与えられる。

 

浜野「いよっしゃあ!!」

 

条北選手は逆転。更にフリースローが与えられ、一気に巫魔へ大ダメージを与えた。

 

あかり「逆転………! それに………積牙くんが4ファール………」

 

一方の巫魔は逆転された事と、積牙がまたしても4ファールに陥り、絶体絶命の危機に追いやられた。

 

ゆうか「(やられた………! 逆転と同時に積牙くんの4ファール………完全に大打撃だわ………)」

 

これにはゆうかも頭を悩ませる。だが、その直後優がベンチを立ち上がり………

 

優「監督、僕を出してください」

 

試合出場を直談判する。

 

ゆうか「でも、今出せば貴方は間違いなく最後まで持たないわ………!」

 

ゆうかは優のスタミナを心配し、許可を出そうとしない。

 

優「なら、その前に僕が突き放します!」

 

しかし、優は譲らない。それを聞いたゆうかは………

 

審判「タイムアウト! 巫魔高校!!」

 

1度タイムアウトを選択した………

 

 

 

巫魔ベンチ………

 

ゆうか「取り敢えず、積牙くんは下げるとして………明日香ちゃん、お願いね」

 

まずは積牙から明日香へ交代する事を指示。そして、優は………

 

ゆう「それと、僕もここから出る。それでお願いがあるんだ………この試合、オフェンスボールは全部僕にくれないだろうか………!」

 

仲間達に対し、頭を下げる。

 

のぞみ「珍しいわね。1人で全部攻める気?」

 

のぞみはそう問いかける。

 

優「その分の見返りはするつもりだ………やりたくは無かったが………」

 

優の狙いは、たった1人でオフェンスする事だった。

 

春香「………そうですね。分かりました、やりましょう!」

 

春香は賛成する様子を見せた。そして………

 

明日香「賛成。優はさっき上手く試合を動かしていたし………!」

 

明日香達も賛成する様子を見せる。

 

ゆうか「皆が賛成しているし………今回は仕方ないわね………」

 

ゆうかも渋々作戦を承諾。そしてタイムアウト明け………

 

審判「交代です!」

 

積牙とほのかの代わりに、コートへ優と明日香が入る。これには条北監督の加賀美も驚いていた。

 

加賀美「(この場面で白宮優………何を考えているの、ゆうか………?)」

 

加賀美はゆうかに視線を向ける。しかし、ゆうかは心配している様子しか見せていない為、加賀美が作戦の真意を知る事は出来なかった………

 

 

 

逆転されてしまった巫魔だが、ここで優がコートへ戻ってきた。果たして、優の独りよがりとも取れる作戦は成功するのか………?

To Be Continued………




次回予告
条北選手は、優1人のみで攻める作戦に驚きながらも、彼のシュートを止める作戦に打って出る。だが、この作戦にて、優の本気の片鱗が見える………
次回「1人で支配している」


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第27話 1人で支配している

前回までのあらすじ
条北選手の攻撃で、遂に逆転を許してしまう巫魔高校。しかし、これを目にした優は再び試合へ出場。彼が提案したのは、自分だけオフェンスを行うという、我儘に近い作戦だが………?


その後、浜野によるフリースローが行われる。しかし、ボールはリングから弾かれた。

 

浜野「ありゃっ!?」

 

浜野は驚いていた。すぐさま光一や松田がリバウンドに参加する。そしてこれを制したのは光一の方で、光一はボールを手にすると………

 

光一「行け、優!!」

 

光一は前線に上がる優へロングバスを行う。優はこれを上手くキャッチし、前線へと上がっていく。

 

浜野「待て!!」

 

しかし、浜野も負けていない。彼は自陣へと戻ると優の真横まで走った。

 

伊吹「あ、あの7番速い!?」

 

浜野の執念には巫魔のベンチ陣も驚いていたが、優はお構い無しに大ジャンプし、ダンクを狙う。

 

浜野「てりゃあああっ!!」

 

浜野も負けじとジャンプし、手を伸ばして優の手にあるボールを叩き落とそうとする。しかし、優はこれを人間技とは思えない横への回避という方法でかわした。

 

浜野「な、何っ!?」

 

これは予想外だったのか、驚きを隠せない浜野。

 

 

積牙「ダブルクラッチ………!」

 

ベンチの積牙もこれには驚いていた。そして、ゆうのダンクはそのままゴールへと炸裂した。

 

浜野「ちくしょう………また逆転かよ………!」

 

浜野は悔しそうな様子を見せた。

 

松田「腐るな。まだ逆転はできる。秋葉原!」

 

松田はコートの外から秋葉原にボールをパスする。しかし、そこへ優が走ってきて、パスをスティールした。

 

松田「何っ!?」

 

条北はまたしても防御側となってしまう。しかも、このスティールがゴール前で行われたのは非常にまずかった。何故なら………

 

優「だああっ!!」

 

優がすぐさまダンクへと向かい………これが入ってしまったからだ。この間、たった3秒の事である。

 

浜野「な、なんだと!?」

 

優のあっさりとした、逆転には、条北の選手達も驚きを隠せなかった………

 

 

 

たった1人で条北を圧倒する優。その光景を、観客席から見ていた戦記良太は………

 

戦記「圧倒的だ………たった1人で支配している………」

 

優のレベルに驚いていた。すると………

 

??「やあ、戦記」

 

守城高校のジャージを着た人物が戦記に声をかける。

 

戦記「………湯津か」

 

戦記に声をかけたのは、戦記高校5番の湯津播磨である。PGにしては高身長の戦記と比較してもかなり大きく、間違いなく2m以上はある。

 

湯津「お前の目当ては、あの4番かい?」

 

湯津はそう言って優を指さす。

 

戦記「………悪いか?」

 

戦記がそう問いかける。

 

湯津「別に。でも、あの4番くんイカれた強さだな。あ………またダンクだ」

 

そうしている間にまた優がダンクを決めて条北を突き放す。

 

戦記「確かに彼の強さは全国区だろう。だが、他の選手がまだついていけていない。何故あんな高校でバスケをしているのかが不思議なくらいだ」

 

だが、戦記は優の強さを勿体なさそうに見ていたのだった………

 

 

 

優は1人でオフェンスを繰り返し、巫魔の点を稼いでいく。果たして、このままどこまで逃げられるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優1人の力は圧倒的で、第4Q残り3分で遂に点差は20点以上にまで開く。同時に優には限界が来るが………?
次回「何故あんなに強いんだ」


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第28話 何故あんなに強いんだ

前回までのあらすじ
優1人で攻撃するというまさかの作戦を前に翻弄される条北。しかし、それを見ていた戦記は、優の実力を惜しむ様子を見せ………?


その後、第4Qに入っても優の無双は止まらない。松田、浜野、清和の3人が懸命にインサイドの守りを固めるが、それに対して優がダブルクラッチやファールを貰いながら、バスケットカウントワンスローを奪うという、高校生とは思えないプレイを連発する。

 

松田「はあっ、はあっ………」

 

優の強さを前に圧倒される条北選手は息を上げていた。

 

浜野「クソッ………! こんな馬鹿な事があるかよ………!! アイツ、何故あんなに強いんだ………!!」

 

浜野は地面に拳を打ち付ける。だが、そうしたくなるのも観客の人間は分かっていた。現在は第4Q残り3分で、65vs42と20点差以上にまで広がっていた。

 

伊吹「おいおいおい、マジかよ………結衣、アイツ何点とった?」

 

これには巫魔ベンチの選手達も呆然としていた。伊吹が恐る恐る優の得点を問いかける。

 

結衣「えっと………さっきので50点です………」

 

その得点は巫魔随一のシューターである春香や、インサイドに特化した強さを持った光一を差し押さえて圧倒的だった。

 

あかり「ダンク25本って事よね………もうあれ、高校生の領域じゃないんじゃ………?」

 

明らかに高校生離れした強さに、会場の空気は逆に静かだった。

 

優「はあっ、はあっ………ぐうっ………」

 

同時に優はスタミナ切れをおこし、その場に倒れてしまった。

 

春香「ゆ、優さん!!」

 

春香達が大慌てで駆け寄る。優の顔は熱中症を発症したかのように真っ赤で、痛みを訴えているのか、右足を触っていた。

 

優「ごめん………後頼むわ………」

 

その直後に審判によってレフェリータイムが取られ、優はベンチから走ってきた仲間達がゆうをベンチへと運んだ。その後、伊吹が交代で入ってきだがた、巫魔はほぼ勝ちが決まったと言っても過言では無い。

 

浜野「くそっ………これ以上やる意味があるかよ………!」

 

その為、浜野は戦意を喪失していた。すると………

 

松田「顔を上げろ!!」

 

松田は浜野に発破をかける。

 

松田「去年の白宮優を思い出してみろ。去年のアイツも負けが決まった試合で戦っていた。しかし、諦めずに最後まで戦って見せた………お前も条北のユニフォームを着ているなら、負けが決まっても最後まで戦え!!」

 

松田は諦めていなかった。それには、去年に敗北の経験がある優の姿が影響していた。負けが決まっても戦う彼の姿が、松田の中で焼き付いていた。

 

浜野「キャプテン………」

 

それを聞いた浜野も去年の優の姿を思い出していた。そして、彼は立ち上がった。

 

浜野「おっしゃあ!! だったら20点差なんてひっくり返してやろう!!」

 

松田達「おおー!!」

 

戦意を取り戻した浜野、そして彼の鼓舞からチームは20点開いているとは思えないレベルで勢いを取り戻していた。

 

伊吹「すげぇ勢いだ………去年の優を見ている気分だよ。」

 

伊吹は彼等の勢いに驚いていた。

 

春香「でも、こっちだってもっと点をとるわよ!」

 

明日香「そうだね。優が攻めまくったお陰で、スタミナは有り余ってるし………」

 

だが、春香達も勢いを見せていた。実際、春香達は優1人で攻めまくった影響で、現在スタミナが有り余っていた。

 

春香「よーし、この勢いで30点でも40点でも差を広げるわよ!!」

 

光一達「おおー!!」

 

副キャプテンである春香はチームを鼓舞し、試合へ望むのだった………

 

 

 

その後の3分間は一進一退の攻防が続いた。優が抜けているとは思えない程に両チームのシュートが入り、熱い試合が繰り広げられた。しかし、優による大量得点による差は覆る事は無く、試合は73vs55で終わった。

 

審判「73vs55で、巫魔高校の勝ち!」

 

春香達「ありがとうございました!」

 

春香達は挨拶をする。その際に浜野や秋葉原達は涙を流していた。その後、ベンチで2校の様子を見ていた優の前に松田がやって来て………

 

松田「………良い経験をした。しかし………全国に行きたければ、イバラキ三大王者を………少なくとも2校は倒さねばならんのだからな」

 

そう言って、優に手を伸ばす。

 

優「覚悟しています」

 

優はにこやかな様子でそう言うと手を伸ばし、2人は握手をした。そして、ゆうかと加賀美の2人も会話をしていた。

 

加賀美「………完敗よ。今回の私の敗因は、白宮優の全力を見抜けなかった事ね」

 

加賀美は自らの敗因を分析し、ゆうかに伝えた。

 

ゆうか「うん………まあ、私もあそこまでのプレイは初めてだったけれど………」

 

ゆうかはタジタジだった。だが、加賀美はゆうかの耳元に近づくと………

 

加賀美「けれど………今のままじゃ、貴方達は次の4回戦は制覇出来ても、爆速には勝てないわよ………白宮優が強すぎて、他の選手が埋もれてる」

 

現在の巫魔の弱点も呟いた。確かに、現在の巫魔は優が強すぎて、春香達が埋もれてしまっていた。

 

加賀美「ま、困ったらいつでも手伝ってあげるわ。こう見えて、アンタには現役の時の借りが沢山あるしね」

 

加賀美はそう言うと、この場を去ったのだった………

 

 

 

巫魔と条北の対決は、73vs55の18点差で巫魔は勝利を掴んだ。しかし、巫魔の問題も浮き彫りになった。果たして、この問題を前に巫魔はどうするのか………?

To Be Continued………




次回予告
条北戦で足を捻っていた優は、大事を取って次の試合には出られなくなってしまう。優が抜ける事に頭を抱える明日香と伊吹の2人は、偶然にも虐められている優真と、その不良達を目にする………
次回「ふざけんなよ」


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第29話 ふざけんなよ

前回までのあらすじ
優による大量得点で巫魔は圧倒的大差で勝利する。しかし、現在の巫魔は優だけが強すぎて他の選手が埋もれるという致命的な問題があり………?


試合から2日後、ゆう達は学校に登校した。しかし、彼は右足にテーピングをしており、松葉杖と万一の事態に備えて、春香が一緒にいた。

 

女子「ええっ!? その足どうしたの!?」

 

優の様子に慌てるクラスメイト。

 

優「ちょい、捻挫してしまってな。大丈夫、そんな長引く故障じゃないよ」

 

優は周りを落ち着かせようと事情を説明する。

 

男子「そっか、そこまで酷いものじゃないのか。良かったよ………」

 

それを聞いたクラスメイト達は落ち着く様子を見せた………

 

 

 

一方その頃、隣のクラスの廊下で明日香と伊吹の2人は優の捻挫について話をしていた。

 

明日香「監督が言ってたね。次の試合に優は出せないって」

 

どうやら、優の捻挫は酷いものでは無いが、怪我が悪化しないよう次の試合に優は起用できないようだ。

 

伊吹「仕方ねぇよ。幾ら優が圧倒的に強いとはいえ、再起不能になっちゃ意味ねえし………」

 

ゆうかの采配には2人も納得していた。

 

伊吹「それに、イバラキ三大王者に勝つには優がいなきゃ話にすらならないしな。それに、5回戦………事実上Cブロックの決勝戦は間違いなく爆速だ。4回戦くらいは優抜きで勝つしかない………」

 

2人は4回戦をどう戦うか、頭を悩ませていると………

 

??「や、やめて………!!」

 

下の階の廊下から聞き慣れた声が聞こえた。

 

明日香「え!? こ、この声って………!!」

 

2人は下の階へと走る………

 

 

 

下では、4人の不良から、優真が暴行を受けていた。

 

??「………お前さ、バスケ部入ったんだって? ………暫く見ないうちにムカつく事してんな、お前………」

 

不良を束ねる取り巻きが優真の髪の毛を掴んでそう呟く。

 

優真「あ………あう………」

 

優真は心が折れそうだった。

 

伊吹「な、何やってんだ馬鹿野郎!!」

 

そこに伊吹と明日香が介入し、優真の髪の毛から、取り巻きのトップの手を離させる。

 

優真「あ………先輩………」

 

優真は死にかけた目ながらも安堵していた。

 

??「………誰だよ、テメェら」

 

取り巻きのトップは睨みつけてくる。明日香は少し萎縮した。

 

明日香「ひっ………! ………って、あれ? この不良………名前なんだっけ………?」

 

だが、取り巻きの顔には覚えがあるようだ。名前は分からないが。

 

取り巻き「なんだと!? 姉御の名前を知らねぇとはいい度胸してやがるなゴラァ!!」

 

取り巻きは威圧をかける。

 

??「………いいよ、なら教えてやらあ。私は天野美矢。後は言わなくても………知っているだろうな?」

 

そして、トップは名乗った。どうやら学校では名が知れた不良のようである。

 

伊吹「天野………? なんかどっかで聞いた事あるような………」

 

一方、伊吹は不良としての名前というより、別の分野で聞いた事があるようなと言わんばかりの様子を見せる。

 

美矢「まあいいや、お前らが集まろうが関係ない。ここでボコしてやるよ」

 

トップの美矢はそう言うと、伊吹に殴りかかった。

 

明日香「い、伊吹!!」

 

明日香は伊吹を突き飛ばした。代わりに拳を受けた明日香は殴られた勢いで倒れてしまう。美矢はそのまま明日香の右足を踏み付ける。

 

明日香「あああっ!?」

 

明日香の右足に苦痛が走る。

 

伊吹「あ、明日香!!」

 

伊吹は青ざめる。すると美矢は………

 

美矢「………そういや、どっかで見た顔だと思ったけど………お前等バスケ部の人間じゃねえか。なら、尚更ボコしてやんねえとな………二度とバスケなんて出来なくしてやるよ………!!」

 

2人の顔を知っている様子を見せていた。

 

明日香「あああっ………!!」

 

明日香の右足はミシミシと骨の軋む音が聞こえた。だが、上履きで踏みつけられた右足は耐えられず………そして、骨は折れた。

 

明日香「あああああああああっ!!」

 

明日香は右足を押さえていた。

 

美矢「ふん、バスケなんてやってるからこんな目に遭うんだよ」

 

美矢は明日香を嘲笑っていた。同時にどこか寂しそうな様子を見せる………

 

取り巻き「あ、姉御!! う、後ろ!!」

 

美矢「ああっ? ふぎゃっ!?」

 

すると、そこへ松葉杖が飛んできて、美矢の顔面に直撃する。

 

優「なんかバスケ部の人間が巻き込まれているって聞いたけど………何してんだ………!」

 

美矢は一瞬意識が飛んだ錯覚をしていた。だが、彼女が松葉杖の飛んできた方角を目にすると、春香の肩を借りつつ、怒りの形相の優がいた。

 

美矢「へぇ………バスケ部の部長じゃん。大活躍中の………」

 

美矢は優達に近づく。

 

美矢「私に松葉杖投げるとはいい度胸してやがんな。ま、そんな事したら………」

 

美矢はそう言って煽ってくるが、優は口より先に手が出た。

 

美矢「ぐはっ!?」

 

美矢が気づいた時には、優に殴られていた。

 

優「ふざけんなよ………!!」

 

どうやらかなり怒り心頭の様子である。

 

春香「お、落ち着いてください!!」

 

春香は優の頬へ強烈なビンタをかました。

 

優「へぶらっ!?」

 

優は意識が一瞬吹っ飛んだ。

 

美矢「な、なんなんだ………?」

 

美矢は呆気に取られていた。優は少しして冷静さを取り戻したのか、美矢の顔を目にする。すると………

 

優「………あれ? アンタ………もしかして天野美矢………?」

 

優は取り巻きのトップである美矢を知っている様子を見せた。

 

春香「え? ご存知なのですか?」

 

春香は優が彼女を知っていた事に首を傾げていた。

 

優「うん。確か中学の時、神奈川では名の知れたバスケのスタープレイヤーだよ。チームはそこそこだったけど、名プレイヤーとして東京でもかなり名の知れた選手だったんだよ。」

 

優が言うには、なんと彼女はバスケット選手だったようである………

 

 

 

4回戦を前に優真のいじめの真実が発覚した。同時に、その主犯の天野美矢が優によるとバスケット選手だったという事も発覚する。果たして、主犯の美矢が優真をいじめたのは何故なのか………?

To Be Continued………




次回予告
美矢が優真をいじめていたのは、3年前の中学での出来事が原因だという。優は美矢の胸の内から、彼女のバスケに対する情熱は尽きていない事を見抜き………?
次回「未練タラタラじゃねーか」


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第30話 未練タラタラじゃねーか

前回までのあらすじ
優が次の試合へ出られない事に頭を悩ませる明日香と伊吹。すると、彼女達は優真が天野美矢達にいじめを受けている現場を目撃する。美矢にやって明日香は怪我をしてしまい、更に騒ぎを聞きつけた優の介入で、状況は悪化してしまう。そんな中、春香によって冷静さを取り戻したゆうは、天野美矢が元バスケットボール選手だった事に気づいた………


美矢「………お前がなんでそれを知っているのかは分からないが………そんなのは過去の栄光だ。今の私はこの学校の頂を奪わんとする者だ。そんな事なんて忘れちまったんだよ!」

 

美矢はそう言って優に近づくと、彼の胸倉を掴む。

 

美矢「もう腹が立った。お前もここでぶっ潰してやる!」

 

美矢はそう言うと、優に殴りかかってきた。優は右手で美矢の拳を止めた。

 

優「………確か僕が中学2年生の時、神奈川でも有数の強豪校であるはずのアンタの学校が1回戦負けしたって言う話を聞いた事があるんだけど………その試合にアンタがいなかったって話を聞いたよ。それ以降は県外に行ったとかで、その消息は不明って聞いたけど………まさか、こんな所で2年も留年して不良やってたなんてな………」

 

そして、優は彼女の事を語った。美矢は中学の時に神奈川の強豪校の選手だったこと。ゆうより1つ歳上であった事、そして、彼女が3年の時に試合に居なかった事を。

 

美矢「………飽きたんだよ、その時にはバスケ………!」

 

美矢はそう言って言い訳をするが………

 

優「嘘だね。テレビでアンタのプレイを見た事あるが、とてもバスケを愛していて、真っ直ぐなプレイだった。嫌いな奴がやるプレイじゃなかった!」

 

優はそう言って、美矢の言葉を嘘と言う。

 

美矢「うるせぇ!! お前に私の何がわかるんだよ!!」

 

美矢は優の胸倉を掴む力を強める。すると優は特に抵抗する様子を見せず………

 

優「………なんだよ、結局アンタ、未練タラタラじゃねーか」

 

逆に美矢がバスケに未練を持っている事を見抜いた。

 

美矢「な、なんだと!?」

 

当然、これには美矢も困惑する。ゆうは冷静に美矢の手を振りほどくと、彼女の手を目にする。すると、手にはマメが出来ていた。

 

ゆう「………僕の胸倉を掴んだ手で分かった。アンタ、今も誰もいないところでボールを触ってるだろう? それも沢山………」

 

どうやら、彼女のバスケの情熱を見抜いたのは、手のマメだった。

 

優「僕を甘く見るなよな。僕だってガキの頃からバスケやってるんだ。そして、東京中学バスケット界で、アンタの名を知る選手は沢山いた!! 僕だって憧れた!」

 

今度は逆に優が美矢の胸倉を掴み………

 

優「どうなんだよ、アンタ………! 結局バスケは好きなのかよ!? 嫌いなのかよ!?」

 

彼女の真意を問いかけた。

 

取り巻き「あ、姉御………?」

 

いつの間にか優と美矢の口論を見物する事しか出来なかった取り巻き達も、美矢の言葉に注目していた。すると、美矢は目から涙を零した。

 

美矢「………好きだよ………好きだけどよ!! 中3の時の事を未だに引き摺って………挙句不良になっちまった私に、今更バスケなんて出来るわけないだろ!! それに………私はお前のバスケ部員を傷つけたんだぞ! 今更出来るか!!」

 

美矢はバスケに対する想いを吐露した。しかし、彼女にはバスケをやる選択が出来なかった。堕ちる所まで堕ちてしまった彼女には………そして、美矢はその場を走って去ってしまった。

 

優「………出来ないか………その気持ち、少しだけわかるな………」

 

そんな彼女の背を見た優は、微かな同情を見せた。まるで、過去に自分も同じ目に遭ったように………

 

 

 

その後、美矢は優真へのイジメと明日香を怪我させた事を自白。結果、彼女は謹慎を受ける事となったのだった………

 

 

 

優との口論で、美矢にバスケに対する想いがあった事が発覚する。だが、美矢はバスケに戻る事は出来なかった。果たして、このまま美矢はバスケに対する想いを捨てたまま、罪の意識の中で生きていくのか………?

To Be Continued………




次回予告
謹慎から3日。美矢は明日香の病室へと招かれ、同時に明日香の病室を訪れていたゆう、優真と会話する事になる。その時に、明日香は美矢の中学自体のプレイを見た事を語り出す………
次回「アンタなら出来る」


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第31話 アンタなら出来る

前回までのあらすじ
優との口論で、美矢はバスケに対しての本音を吐露する。だが、堕ちるところまで堕ちた自分には出来ないと言って、自分からいじめ等のことを自白し、謹慎処分を受けるのだった………


それから3日、美矢は巫魔病院へ足を運んだ。無論、明日香の件で呼び出された為である。優によって心の内を明かされてしまった美矢はこれまでの悪評が嘘のように覇気を失い、萎れた様子で明日香の病室へと入った。

 

明日香「あっ、来た」

 

病室には明日香と、優と優真の3人がいた。尚、大人などはいない。

 

美矢「失礼する………しかし、何故お前達以外に人がいないんだ………?」

 

自分のような要注意人物なら、大人の1人や2人はいるものだと思っていた美矢は、意外そうな様子で首を傾げていた。

 

優「アンタと本気で話をする為に席を外してもらったんだ。ま、部屋の外からチラチラ覗いてきてるけどさ………」

 

優はそう呟くと席を立ち上がり………

 

優「ちょい黙らせてくるよ。明日香、優真。話したい事があるんだろ?」

 

そう言って後を明日香と優真に託し、病室を出た。3人とも、すぐに口を開ける状態では無かったが、少しして、最初に明日香が口を開いた。

 

明日香「………優の話を聞いてさ、天野さんの中学時代のビデオを見せてもらったんだ………凄かった。優が憧れるのも分かるなって思ったよ」

 

どうやら、この3日の間に優から美矢に関してのビデオを借りていたようで、彼女が大活躍していた時期のプレイを見て、単純に感心していたようである。

 

美矢「………昔の事だ。それに、もう3年近くバスケを離れて………情けない事に不良までやって影美の事をいじめちまったし………悪いが、何も凄い事じゃない。完全に過去の栄光でしかないんだよ、それは………」

 

美矢は先日の態度が嘘のように、申し訳なさそうな様子で明日香に言葉を返した。

 

明日香「………私にはそうは思わないよ。だって私の足を踏んでいた時、どこか悲しそうだったもの。自分の好きだったものを汚す申し訳なさみたいなのが感じられたから」

 

だが、明日香は美矢の言葉を否定した。

 

美矢「………確かに出来る事ならもう一度バスケがしたい。チヤホヤもされなくていい。ただ単純に、自分のバスケがしたい。けれど、どうせバスケ部では私の事で持ちっきりだろう? ………尚更入れない」

 

美矢は出来ないと言う理由を口にした。

 

明日香「………確かに難しいかもね。うちのチームは割と仲間想いだし。けど、私は思うよ………アンタなら出来る………少なくとも私は、アンタの………天野美矢のバスケが見たい」

 

すると明日香は彼女のバスケが見たいと呟いた。

 

明日香「私だってそう簡単にアンタの悪行を許す気は無いよ。けれど、自分の好きな物を嘘ついて欲しくは無い。だからこそ、私はアンタのバスケが見たい」

 

明日香はそう言うと、近くに飾ってあった12番のユニフォームを美矢に投げ渡した。

 

明日香「私も頑張って復帰する。だから、それまでそのユニフォームを守っていて欲しい」

 

どうやら、明日香は美矢の悪行は許さないが、バスケ選手としての彼女を知り、憧れた為に彼女のバスケ部加入を望んでいた。明日香の中では憎んでいる部分と望んでいる部分と、矛盾に近い感情だったが、それでもバスケ選手として彼女をチームに入れるべきと考えていた。

 

美矢「………アンタ、確か明日香って言ったっけ………良いのか………? これはアンタのユニフォームだろう?」

 

これには美矢も困惑していたが、明日香は迷わずに頷いた。それを聞いた美矢は………

 

美矢「………影美はどう思うんだ………? やっぱり私には相応しくないだろうか………?」

 

優真に自身が加入すべきかを問いかけた。美矢は彼女が嫌なら明日香の申し出を断ろうと考えていた。しかし、優真の答えは違った。

 

優真「ダメ………とは言いません………やるなら………条件が2つあります」

 

なんと、条件付きでそれを承諾するというのだ。

 

美矢「条件………?」

 

美矢は条件を問いかける。少しして優真は条件を答えた。

 

優真「これまで傷つけてきた人に謝る事………それと、本気で私を気にかけてくれているなら………私に………バスケを教えてください………!」

 

その条件は、これまで傷つけた人物達への謝罪、そして自分にバスケを教える事だった。優真の口からそんな条件が出ると思ってなかったのか、美矢は驚きを隠せなかった。

 

優真「天野さん、初めて私と貴女が顔を合わせた日は未だに覚えています………貴女が1人でバスケットボールを触っていたのが………初めて会った時でしたよね」

 

優真は困惑する美矢に対し、そう話しかける。

 

美矢「けど、その時の私は………練習を見られたっていうガキみたいな理由でアンタの事を………!!」

 

その直後に美矢はそう言って慌てる様子を見せるが………

 

優真「キャプテンとの言い合いで分かったんです。どうしてあの時ボールを触っていたのか………それは、バスケが今も好きだから………私だってこれまでの事を許すって言うのは難しいと思います。けれど、明日香先輩と同じで………私もバスケ選手としての天野さんが見たい。仲直りは………バスケをやっていくうちにしたいなって思うんです」

 

優真は優しい声で美矢にバスケをして欲しい事を願う。

 

美矢「影美………」

 

美矢は手元のユニフォームを再び目にする。すると直後に優が戻ってきた。

 

優「失礼。天野美矢、アンタの事で学校の教師からお達しだ。被害者の明日香と優真が彼女にバスケをやらせて欲しいと直談判した影響で、明日から謹慎を保留にするとの事だ………バスケ部部長、白宮優の責任において………と」

 

なんと、美矢の謹慎を、優の責任で保留にするという話だった。

 

美矢「どうして………どうしてそこまでするんだよ………!?」

 

優達3人の対応に困惑する美矢。すると優は美矢の手を掴み………

 

優「………単純にアンタのバスケが見たいからだよ。贖罪は僕も手伝う。それにアンタはまだ高校生だ。やり直すチャンスはまだあるよ。それに………僕も一発アンタに攻撃与えちゃったしな」

 

そう言って彼女を励ました。

 

美矢「(………もしもの話だけれど………こんなキャプテンと仲間の元にいれば………私も少しは真っ当な人間に戻れるかもしれない………)」

 

優達の心の広さに感服した美矢は優の手を掴み………

 

美矢「………こんな問題児だが………私を仲間に入れてくれ………キャプテン、優真、明日香………!」

 

3人に加入の意を見せる。

 

優「勿論。ようこそ、巫魔バスケットボール部へ………!」

 

優はそれを受け入れる。優真と明日香もまた、それに納得するように頷くのだった………

 

 

 

優達3人は美矢の真意を聞き、彼女の改心と共に、まだ蟠りこそあれども、彼女をバスケ部に入れる事となった。だが、積牙や光一以上の問題児とも言える彼女がバスケ部に入る事により、更なる問題が発生する事になるのだが、それはまた別の話………

To Be Continued………




次回予告
翌日、優は美矢をバスケ部に連れて行く。入部を認めた優達も覚悟していたが、彼女の加入には賛否が別れ………?
次回「俺は嫌だね」


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第32話 俺は嫌だね

前回までのあらすじ
明日香の病室に呼び出された美矢。明日香、優真との話し合いで、2人が美矢をバスケの世界に引き戻す言葉をかけ、美矢自身がバスケの世界に戻る事を望んだ事で、優達は巫魔高校バスケ部に彼女が加わる事が決まったのだった………


翌日、優は体育館に春香達を集め………

 

優「………という訳で、抜けてしまった明日香の代役として、天野美矢にバスケ部へ入ってもらう事になった」

 

美矢の事を説明する。積牙達は美矢のバスケ選手としての彼女を知らず、逆に不良としての面は知っていた為、少しざわめていていた。

 

のぞみ「………彼女、使えるの?」

 

のぞみがそう問いかけると………

 

優「こう見えて僕が中学にいた時はスタープレイヤーだったんだよ」

 

優はすぐにフォローをする。だが………

 

光一「そういう問題じゃねえだろ………!」

 

光一は怒っていた。

 

光一「そいつのせいで優真ちゃんが傷ついて、明日香が怪我したんだろ………!」

 

彼も美矢が起こした騒動を聞いたのか、かなり怒っていた。

 

優「………僕だって彼女の件を許したわけじゃない。あくまで明日香と優真の希望だよ。それに、監督にも許可は貰ってる。彼女の腕は本物だよ」

 

だが、優も冷静に理由を諭していた。

 

春香「そういえば、天野美矢さんは優さんが憧れてた選手ですものね………そうだ! 折角なら実演してみてはいかがですか?」

 

すると春香が美矢の実力について証明する場を提案した。

 

積牙「ま、まあ実力を見るだけならいいんじゃないですか、コウさん」

 

積牙も美矢の実力について単純に興味あったのか、光一にそう助言する。

 

光一「………まあ、見るだけならな………」

 

光一はそう言って美矢の実力を見る事は受け入れる様子を見せたのだった………

 

 

 

勝負は2vs2のタッグマッチで、優と美矢のコンビがオフェンスとして、積牙と光一のコンビを相手する事に。

 

あずさ「だ、大丈夫かな………? 優くんはまだ足の捻りが落ち着いただけで………それなのに光一くんと積牙くんの2人を相手にするなんて………」

 

あずさは心配そうな様子を見せていた。

 

優「まだ足に不安があるから全力は出せないが………さて、お手並み拝見と行くか………!」

 

優はそう言って何度もボールを地面に打ち付けていると………

 

美矢「キャプテン」

 

美矢が優に声をかけてきた。

 

美矢「キャプテンの腕は何となく知ったが………それを見込んで頼みがある」

 

どうやら美矢は優に頼み事があるようだ。

 

優「何かな?」

 

優は首を傾げる………

 

美矢「このプレイ、キャプテンも全力で頼む。キャプテンの足の事も知っているし、私は3年近くぶりに人とやるからブランクで失敗するかもしれないが………」

 

彼女は3年のブランクがあるにも関わらず、優に全力を求めていた。

 

優「え? ………いいけど、大丈夫なのかい?」

 

優は心配な様子を見せる。

 

美矢「キャプテンなら大丈夫だろう」

 

美矢はそう言うと、スリーポイントラインの外へ立つ。

 

伊吹「よーし、じゃあ始めるぞ〜!」

 

伊吹が審判となり、笛を吹く。笛の音を聞いた優は美矢にボールを渡す。優には外は無いので、嫌でもインサイドに入るしかないのだが、やはりインサイトに長けた実力を持つ積牙と光一は、優を相手に対処出来る位置で陣取る。

 

優「(………やはりインサイドとなると堅いな………さて、どうする………?)」

 

優はフォローに回りたかったが、積牙と光一が絶妙な位置をキープする為、ゆうはフォローに回れない。オマケに優には外が無いため、下手に外にも出られないと言う問題もあった。

 

美咲「やっぱり外が無い上に、まだこの間の怪我があるから優くんはインサイドじゃないと大きく活躍できないね………」

 

美咲は優が苦しそうな様子を見せた。 一方、美矢はボールをバウンドさせながら様子を見る。

 

のぞみ「………その割には彼女、様子を見ているような………?」

 

だが、のぞみは美矢が様子を見ている事に気づく。そして、勝負が始まって17、8秒経った頃、美矢は積牙の動きを理解したのか、鋭い動きで積牙をかわし、中へと入る。

 

積牙「なっ!?」

 

積牙は驚きのあまり反応できなかった。

 

のぞみ「………!! ペネトレイト………!!」

 

のぞみは美矢が見せたプレイに反応した。

 

結衣「ペネトレイト………? なんですか、それ?」

 

バスケのルールを詳しく知らない結衣は首を傾げる。

 

美咲「ペネトレイトは、インサイドに切り込むプレイの事だよ」

 

そこへ、美咲が解説を入れる。

 

美咲「でも、あそこまで綺麗なプレイは始めて見たなぁ………」

 

だが、美咲も美矢のプレイに引き込まれていた。

 

そのまま光一と美矢の対決になるが、美矢はゆうに一瞬視線を向けると、ゆうに鋭いパスをする。

 

優「おっ、よっと………!」

 

優はボールをがっちりキャッチ。しかも、まだ歩いていないのでそのままダンクへも狙いに行ける。優は右足の負担を考慮し、左足で大きく飛び上がった。

 

光一「(ダンクか………!?)」

 

光一は優の方へジャンプする。だが、それを見た優は地面にボールを投げた。

 

光一「何っ!?」

 

光一は驚く様子を見せた。そしてボールは、ゴール下へ走る美矢の元へ渡ると、美矢はそのままレイアップでゴールを奪った。

 

春香「(す、素早いパスワークです………! 元々優さんも攻めながらパスをするというプレイがお得意でしたが………まさか、もう1人同じタイプの方が加わるだけで、こんな高速プレイが可能になるのですね………)」

 

2人が見せた一瞬のように思える数秒のプレイは今の巫魔には無い新しいコンビプレイだった。

 

のぞみ「成程ね………まあ確かに、戦力としてなら有りね」

 

美矢のプレイには、のぞみも認める様子を見せた。光一もその実力を認めざるを得なかった。だが………

 

光一「確かにそいつの実力は認めるよ………けど、バスケ部員を傷つけるようなこんな奴と一緒にやるなんて………俺は嫌だね………!」

 

光一は美矢がバスケ部の人間となる事を認めず、その場を後にしてしまった。

 

優「………覚悟はしていたが………一筋縄じゃ行かないか………」

 

優は、美矢が受け入れられるまで時間がかかる事を覚悟するのだった………

 

 

 

こうして、美矢は正式にバスケ部に入ったが、先の事件が原因で、バスケ部の人間として受け入れるか、仲間の中でも賛否が割れる程の事態となった。果たして、美矢の立ち位置はどのように変わって行くのか………?

To Be Continued………




次回予告
それから数日程練習の内容を見た優は、美矢を受け入れているのは誰か、逆に受けいれていないのは誰かを知る。先の件もある為、どうすれば良いか頭を悩ませていると………
次回「ゆっくり考えればいいわ」


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第33話 ゆっくり考えればいいわ

前回までのあらすじ
美矢をバスケ部に連れて行くが、案の定彼女がバスケ部に入れるのに反対する者が、光一を始めとして出てくる。美矢の実力について、バスケ部にははっきりと伝わったが、光一はまだ受け入れられない様子で………?


それから数日、優はバスケ部の練習から、美矢が現在どの立ち位置にいるのかを見て、何か気になる事が出来たらすぐにメモをするようにした。そしてある日、優と春香が住んでいる豪勢な家の一室にて、優はマグカップに入った緑茶を啜りながらそのメモを見ていた。

 

優「………やっぱり割れるよな、こりゃ」

 

優のメモには、現在美矢に対するメンバーの様子をメモしていた。メモに書かれた状況は以下の通りである。

 

 

 

美矢を受け入れている

優、春香、明日香、のぞみ、レイ、優真、鈴香

 

美矢を受け入れるか迷っている

あずさ、あかり、美咲、ほのか、由香、

 

美矢を受け入れるのを拒否している

伊吹、積牙、光一

 

 

 

優「明日香や優真を除くと、美矢を受け入れているのはのぞみやレイや鈴香………大体冷静派の人間か。逆に受けいれていないのは………感情的な方だ。特に伊吹は積牙の時にも割と揉めてたし………」

 

優は頭を悩ませながら現在の状況を考えていた。

 

優「結衣ちゃんに美矢の事を聞いてみた限りだと、最近は本当に反省しているのか、問題を起こしたりはしてないみたいだけど………逆に嘘のように大人しくなったとも言ってたから怖いな………」

 

優は美矢が罪悪感から本来の自分を出せずにいるのでは無いかと考えていた。しかし、その真意は分からないし、現状では知る術も無い。

 

春香「どうなされたのですか、優さん?」

 

頭を悩ます優。すると、春香が紅茶の入ったマグカップを持って近くの椅子に座り、優に声をかけた。

 

優「春香………いや、キャプテンって大変だなって思うよ………確かに美矢の行為を簡単には許せないけど………逆に今の空気が彼女を押し潰しているんじゃないかとも思うし………」

 

優は春香に対し不安の声を漏らした。それを聞いた春香は………

 

春香「大丈夫ですよ。優さんは癖の強いメンバーが多い巫魔バスケ部を上手く率いておられるのですから!」

 

優に対し励ましの声をかける。

 

優「そういえばそうでしたわ………」

 

優は美矢以外のメンバーの癖も強い事を思い出し、吐き気を感じた。すると、近くに置いてあった優の携帯が鳴る。

 

優「ん………? ………あ、監督からだ」

 

どうやら、監督のゆうかから電話が来ていたようだ。優は電話に出る。

 

優「もしもし」

 

優がそう声をかけると………

 

ゆうか「夜遅くにごめんね、ちょっと美咲から最近の優くんが疲れてるって聞いて電話しちゃった」

 

ゆうかは、美咲から聞いていた優の様子を心配して電話をかけたようだ。

 

優「まあ、確かに最近美矢の件で頭を悩ませています………」

 

優は本心を吐露するようにそう呟いた。それを聞いたゆうかは少し考えている声を漏らしたうち………

 

ゆうか「まあ、そう簡単に解決する問題じゃないしね………ゆっくり考えればいいわ。チームが納得する方向へ決める方が1番だもの。」

 

そう言って、ゆうに励ましの言葉を口にした。

 

優「監督………」

 

優はゆうかに対して感心する様子を見せた。

 

ゆうか「じゃあ、これから特番だからまたね〜」

 

………だが、最後の一言で優は感心が失せた。ゆうかは上記の言葉の後、あっさりと電話を切ってしまった。

 

優「………いい人なのか、それとも適当なのか………」

 

優は半分呆れた様子でそう呟いた瞬間、優の携帯にはまたしても電話がかかってきた。

 

優「ありゃ? 今度は美矢からだ………」

 

優は再び電話に出る。

 

優「もしもし、美矢か?」

 

優がそう問いかけると………

 

美矢「キャプテン。夜遅くにすまないが、今すぐ巫魔第三公園に来れるか? 話があるんだ」

 

美矢は優を呼び出したいようだ。

 

優「………君だけかい?」

 

優は不思議とそんな事を問いかけた。

 

美矢「え? ああ、そうだが………何か不都合でもあるのか?」

 

美矢は優の空気が少しだけ変わった気を感じた。

 

優「………話によるな」

 

優は重い声でそう呟く。

 

美矢「ま、来れるなら来てくれ。じゃあ」

 

美矢はそう言うと、通話を切った。

 

優「美矢からの呼び出しだ。ちょっと巫魔第三公園に行ってくるよ」

 

優はそう言うと、近くにあったジャージを羽織る。すると………

 

春香「私も行っていいですか?」

 

春香もついていく様子を見せた。

 

優「え? まあ、いいけど………」

 

優はそれを受け入れると、春香もジャージを羽織り、2人は家を出るのだった………

 

 

 

美矢とチームの関係に頭を悩ませる優。ゆうかの励ましも束の間、優は美矢に呼び出される。果たして、その内容とは………?

To Be Continued………




次回予告
巫魔第三公園に向かった優は、美矢から話を聞く事に。美矢が優に問いかけたのは、意外過ぎるもので………!?
次回「アンタだったんだな」


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第34話 アンタだったんだな

前回までのあらすじ
美矢とチームメンバーの関係から打開策を見い出せず、頭を悩ませるゆう。そんな彼は、監督のゆうかからの励ましの電話を受け、少しは落ち着きを取り戻した優だったが、直後に美矢からの呼び出しを受ける。彼の様子は真剣なもので………?


優達は巫魔第三公園へとやってきた。そこにいたのは美矢1人だけだったが………

 

美矢「やあ、キャプテン。夜分遅くにすまないな」

 

美矢は少し雰囲気が違っていた。

 

春香「あら? 髪、切りました?」

 

どうやら、美矢は放置していた髪をばっさりと切り、ショートカットにしていた。

 

美矢「まあ、厄落としだよ………といっても、信じて貰えないだろうが」

 

美矢は少し暗い様子だった。

 

優「………それより、用件はなんだい?」

 

優は今の暗い話をするよりも、本件を聞く事に。

 

美矢「いやさ………キャプテン。どっかで見た事ある気がしたんだけど………思い出したよ………アンタだったんだな。ミドレーユ・ゴッドって」

 

………それは、優がバスケ部に隠している真実だった………

 

優「………え?」

 

優は突如、頭を強く殴られた錯覚を感じた。

 

春香「………どうしてその事を………? バスケ部の皆さんにもお話していないのに………」

 

これには部員の中で唯一真実を知っている春香も驚いていた。

 

美矢「いや、実は前から巫魔の試合を見ていて、キャプテンがイカれたオフェンス力してるなって思ってたけど………茨城のバスケ部が弱い宗教学校なんかで私の事を知っていたのを見て………確信したよ」

 

どうやら、優達の知らぬ間でバスケ部の試合を見ていた事、巫魔高校で唯一自分が元バスケ選手だった事を知っていた事から確信をしたようだ。

 

優「………まさかアンタに先にバレるとは………頼むからバラさないでくれよ? ………今の僕は白宮優だ」

 

優は半分慌てる様子で、自分がミドレーユである事を認めると同時に、言いふらさぬよう釘を刺す。

 

美矢「いや、バラす気はないけど………というか、分からねえよ。なんで中学までのシュート力を捨ててまで、ダンク戦術をしているのか………」

 

美矢はミドレーユとしてのプレイスタイルを捨ててまで、ダンクにこだわる優に理解が出来なかった。

 

美矢「練習じゃ当たり前のように外しているけど、本当は違うんだろ?」

 

美矢がそう言って優に問いかける。

 

優「………アンタには関係無いだろ。帰ろう、春香」

 

優はそう言って、春香と共に帰ろうとする。すると、美矢は優に向けてバスケットボールを投げてくる。

 

優「っ!? な、なんだよ………!?」

 

優は困惑する様子を見せた。

 

美矢「丁度そこにバスケットゴールがある。ダンク以外で決めろよ」

 

美矢は優にダンク以外のシュートを放つよう要求した。

 

優「嫌だよ。結果は見えてる」

 

優はそう言ってボールを返そうとするが………

 

美矢「外したらチームにお前の事をバラしてやる」

 

美矢は真剣な表情でそう呟いた。それを聞いた優は………

 

優「………喧嘩売ってんのか、美矢………!?」

 

珍しく怒りを顕にした。だが、美矢は動じない。それを目にした優は………

 

優「………いいよ。君に教えてやる、美矢………! 僕をおちょくる事がどんなに無駄な事か………!!」

 

優はそう言うと、スリーポイントラインの外に立ち、シュートを放った………

 

 

 

優は美矢にミドレーユとしての自分を見抜かれてしまった。更に、優に本来のシュート力を求める美矢。果たして、このシュートの行方は………!?

To Be Continued………




次回予告
公園での事から一夜明け、巫魔は県大会4回戦に挑む事に。ゆうかは、美矢を初っ端から使う事を決め………?
次回「意義は認めません」


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第35話 異論は認めません

前回までのあらすじ
美矢が優を呼び出したのは、優がミドレーユ・ゴッドだと気づき、それを真実か確かめる為だった。珍しく怒りを見せる優は、自分の事をバスケ部の人間にバラすかを賭けた勝負に挑み………?


翌日、ゆう達は県大会の会場である体育館に来ていた。そう、この日は田武高校との試合である。

 

 

 

そして、巫魔高校と田武高校はアップを行う。優は今回は出場しない為、ベンチで様子を見ていた。

 

湯津「田武か………また昨年ベスト8の強豪校が相手とは強豪だな………」

 

戦記と湯津も今回の4回戦を見に来ていた。

 

戦記「優抜きでこんな高校を倒せないようなら、巫魔は全国へは行けないだろう」

 

戦記は現在の巫魔の様子を見ていた。すると………

 

???「あれ? あの高校!」

 

突如、戦記達を指さす人物が。

 

戦記「………どこの高校の人間だ」

 

戦記は声の聞こえた方を向く。そこには3人のジャージを着た2人は女子、残る1人は男子がいた。

 

湯津「あ、確か東京の友力高校ってとこの選手だよ。ほら、昨年全国ベスト16の新興高校」

 

そこにいたのは、友力の高校の選手にして、元優のチームメイトであった修也、アリサ、芽衣の3人だった。

 

戦記「東京からわざわざ来るとはな。目当てはどっちだ?」

 

戦記はそう問いかけると………

 

アリサ「ユー目当てに決まってるじゃん」

 

アリサの言葉から優目当てだと理解した戦記は………

 

戦記「東京にもファンがいるとは、面白い学校だな、巫魔は」

 

フッと、微かにだか笑ってそう呟いた。しかし、直後、修也達は巫魔の12番のユニフォームを着る美矢を見て首を傾げた。

 

修也「あれ? あんな選手いたっけ? 12番は別の女の子じゃなかったか?」

 

修也がそう言うと、戦記達もそれに気づいた。

 

湯津「そういや、確か夢野明日香とかいう女の子が12番だったはずだよな? というかルール違反じゃねえのか?」

 

湯津は首を傾げた。

 

戦記「………大会委員会へ選手変更を申請し、正式な手続きを行えば、選手交代は可能だ。まあ、強豪校でもあまりやらないが」

 

戦記はそう言って、選手が変わった理由を語る。

 

芽衣「あの人、どこかで見た事ある気がする………」

 

芽衣は美矢を見て、どこか既視感を見せたのだった………

 

 

 

そして試合開始前、優達巫魔選手はベンチにてミーティングをする事に。だが、巫魔ベンチは珍しく荒れていた。

 

光一「な、何言ってんだよ………!?」

 

光一はゆうかに対し声を荒らげる。

 

ゆうか「………聞こえなかったかしら? この試合は美矢ちゃんを使うわ」

 

ゆうかは試合に美矢を起用する気だった。

 

光一「な、なんでこんな奴を使うんだよ!! 俺は反対だ!!」

 

光一はそう言って反対する様子を見せた。

 

ゆうか「異論は認めません」

 

しかし、ゆうかは引き下がらない。

 

光一「ぐうっ………!」

 

光一はゆうかを睨みつけるが………

 

ゆうか「文句があるなら貴方は使いません」

 

ゆうかがそう言うと、光一は嫌々黙った。そして、巫魔のメンバーは以下の通りとなった。

 

 

 

巫魔高校(黒)

PG 12番 天野 美矢

SG 5番 白宮 春香

SF 10版 江野 積牙

PF 14番 炎塚 ほのか

C 17番 相田 光一

 

 

 

優「………正直不安は大きいが………頼むぞ、美矢………!」

 

優はそう言って、試合を見守る事を決めたのだった………

 

 

 

第4回戦、田武高校との試合。巫魔内は荒れながらも、美矢を加えて試合に挑む事に。果たして、その行方は………

To Be Continued………




次回予告
美矢を加えた巫魔高校は最初から攻め、美矢は序盤から鮮やかな戦術とパスを魅せる。その様子を見た芽衣は、気になっていた選手が天野美矢だと気付き………!?
次回「天野美矢だ」


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第36話 天野美矢だ

前回までのあらすじ
県大会4回戦。ゆうがこの試合で使えない為、代わりに美矢を投入する事になった。チーム内で未だ反対のある中、試合は始まろうとしていた………


両チームのCが、センターサークルに立つと、試合開始の笛と同時に、審判の手にあったボールは大きく浮かび上がる。

 

光一「だあっ!!」

 

しかし、ジャンプボールは軽々と光一が制した。それを美矢が拾うと、素早いドリブルで敵陣へ切り込んでいく。それを観客席から見ていた湯津は………

 

湯津「へぇ………今まで見なかった割に上手いじゃん、あの12番」

 

美矢のプレイに惹き付けられていた。そして、芽衣は………

 

芽衣「うーん、12番の人、やっぱりどこかで見た事あるような気がするんだよなぁ………」

 

美矢に既視感を感じていた。すると修也も………

 

修也「そうなのか? ………でも、俺もなんか似てる人がいるんだよ、親戚に」

 

親戚に美矢そっくりの人物がいるという。

 

芽衣「親戚のお姉さん? でも、修也くん、名前教えてくれなかったじゃない」

 

修也は親戚に美矢そっくりの歳上の女性がいるようだが、名前までは優、アリサ、芽衣の3人には教えていなかったようで、芽衣は首を傾げるしか出来なかった。そうこうしているうちに、巫魔の最初の攻撃が始まった。敵陣はインサイドを主に守りを固め、Gだけをアウトサイドの春香につけていた。

 

アリサ「相手はいつも通り、春香をマークして、インサイド戦法だね。まあ、巫魔はアウトサイドシューターを並べて出す事はしないし、PGに外が無いからなぁ………」

 

アリサは巫魔の弱点をそう呟いた。実際、のぞみと美咲には外のシュートがない為、これまでの定石を考えれば、気をつければいいアウトサイドシューターはSGだけ。後はインサイドを固めればいい楽な配置というのが、田武の考えであった………だが、その考えはあっさり崩れる事になる。美矢は残り5秒を切ろうとする中、突如姿勢を低くし、素早いドリブルで敵をかわした。

 

田武4番「なっ………!?」

 

美矢をマークしていた4番の男は、美矢の不意討ちに近いドリブルに対応できなかった。

 

芽衣「ペネトレイト………!」

 

美矢は田武のインサイドへ侵入。

 

田武4番「か、囲め!!」

 

そこに3人がヘルプで入るが………

 

美矢「ボックスワン(4人でインサイドを固め、1人を外に配置する守り)か………でもな!」

 

美矢は一瞬で春香に目配せをする。春香をマークしていた5番の男は、4番の男が抜かれた事に気を取られ、その隙を春香に突かれて、春香と美矢のパスコースを作らせてしまう。美矢は大きくジャンプし、鋭いパスを春香に投げた。

 

芽衣「………!! 間違いない………! あの人は………!!」

 

それを見た芽衣は席を立ち上がる。そして、ボールを受け取った春香はそのままシュート体勢へ………

 

田武5番「………!! しまった!」

 

5番の男がすぐさまディフェンスに行くが、強引なディフェンスであった為に、春香と接触。春香はそれを受けてもスリーポイントシュートを放ち、ボールはリングの上を激しく回った後、ゴールに吸い込まれた。それと同時に審判の笛が鳴った。

 

審判「バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

結果、判定はバスケットカウントワンスロー。そして、芽衣は直後に声を上げた。

 

芽衣「天野美矢だ………!!」

 

そう、芽衣は彼女が天野美矢だと気付いた。

 

戦記「天野美矢………!?」

 

これには戦記も驚いていた。どうやら、彼も中学自体の彼女を知っていたようである。

 

戦記「3年前まで中学バスケ界を震撼させたあの天野美矢か………!」

 

戦記が珍しく驚いている事に、意外そうな様子を見せる湯津。すると、その直後に修也まで席を立った。

 

アリサ「………? どうしたの、シューヤ?」

 

アリサがそう問いかけると………修也は震えた様子を見せ………

 

修也「み、美矢姉!?」

 

なんと、バスケ選手とは異なる理由で美矢の事を知っている様子を見せた。そして、その声を聞いた美矢は………

 

美矢「………おっ、修坊じゃん」

 

修也の顔を見るなり、反応する様子を見せたのだった………

 

 

 

試合で思わぬサプライズが起きながらも、巫魔は先制点を掴む事が出来た。果たして、このままペースを掴み取れるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
美矢がPGとしてチームを上手くコントロールする事で、リードを奪う巫魔。だが、美矢と光一の間にはまだ綻びがあり………?
次回「ボールが繋がらない」


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第37話 ボールが繋がらない

前回までのあらすじ
美矢を加えて始まった田武高校との試合。美矢とした先述で巫魔が速攻。同時に観客席で美矢の存在をざわめいており………!?


その後、巫魔は美矢を中心として攻撃を続ける。田武選手は攻撃を防ごうと尽力し、時にはシュート体勢の美矢に向けてディフェンスをしようとするが、美矢はシュート体勢中でも強引にパスができる為、田武は巫魔の攻撃を防げず、第1Q7分の時点で19vs4と15点差にまで開いていた。

 

アリサ「あの人、さっきからめちゃくちゃな体勢でもパスしてる………」

 

アリサは、美矢のむちゃくちゃなパスに驚く様子を見せていた。

 

修也「あれこそ美矢姉の代名詞とも言える{自由なパス(フリーダムパス)}だよ。」

 

修也は美矢の無茶苦茶なパスについて説明する。

 

湯津「なんじゃそりゃ?」

 

アリサと同時に湯津も首を傾げた。

 

芽衣「美矢さんは身長165cm、体重50kgと優くんより小さいけど、体感は新体操選手も顔負けなレベルで柔らかい人なんです。好きな体勢からパスが出来て、自由過ぎるから、自由なパスだなんて言われているんですよ」

 

芽衣はその詳細を説明する。実際、美矢の体感は凄まじく、美矢は先程から常人では不可能な姿勢でのパスを繰り返すなど、戦記たちの度肝を抜いていた。しかし、1つだけ問題があった。それは………

 

光一「………っ!」

 

先程から光一が美矢からのパスを受け取れずにいた事だった。現在もパスが失敗し、ボールがコートの外に出てしまった。

 

光一「………ちっ」

 

光一は美矢に向けて舌打ちをする。美矢は何も言い返せずに俯いていた。だが………

 

戦記「………今のはあのCのミスだ。理由は知らないが、奴の天野美矢からのパスが渡らないせいで、巫魔にあるまじきミスが多すぎる」

 

このパスミスは光一側に問題があった。美矢のパスは正確なもので、光一なら取れるはずのものだった。しかし、美矢を受け入れられない彼の心が、チームに綻びを生じさせていた。そして、その流れは巫魔ベンチからもハッキリと見えており………

 

優「ボールが繋がらない………光一、まだ美矢の事を受け入れられないのか………」

 

優は光一の気持ちが、チームの流れが来ているようで来ていない理由である事を悟ってしまった。すると、監督のゆうかは席を立ち………

 

ゆうか「レイちゃん、出番よ」

 

突如としてレイを起用する事を決めた。

 

レイ「積牙と交代ですか?」

 

レイはそう問いかける。しかし………

 

ゆうか「いいえ………下げるのは光一くんの方よ」

 

なんと、下げるのはCの光一だという。レイは驚く様子を見せてはいたが、ゆうかの意図を悟ると………

 

レイ「………分かりました」

 

文句一つ言わずに受け入れた。そして、ボールが外に出たタイミングで………

 

審判「交代です!」

 

ここでレイを投入する事に。

 

レイ「光一、交代………! 」

 

レイは光一に対し交代を告げる。

 

光一「な、なんだと!?」

 

光一は驚きを隠せなかった。しかし、ファールを取られるのは間抜けとしか言いようがないため、渋々コートの外に出た。だが、ベンチに戻るとゆうかに詰め寄り………

 

光一「なんで俺を下げるんだよ!?」

 

最初にそう問いかけるのだった………

 

 

 

美矢の力でリードを奪う巫魔だが、光一のミスからチームの流れが掴めずにいた。ゆうかはこれを理由に大胆な交代を打ってでる。果たして、この作戦が吉と出るか凶と出るか………?

To Be Continued………




次回予告
光一の離脱、更に積牙がまたしても4ファールをやらかした事で高さを失う巫魔。しかし、この状況が逆に巫魔のリードを更に広げる結果となり………!?
次回「いない方が機能する事もある」


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第38話 いない方が機能する事もある

前回までのあらすじ
リードを奪う巫魔だが、光一のミスによって、チームは中々流れに乗れなかった。そこでゆうかは、光一を下げるという大胆な策に打って出て………!?


自身を下げさせられた事に不満を見せる光一。しかし、ゆうかは全く動じず………

 

ゆうか「座って試合を見てなさい」

 

落ち着いた様子でそう諭した。

 

光一「なんだと!?」

 

だが、この言葉で感情的になった光一は、ゆうかを殴ろうとした。

 

優「ば、バカ! やめろ!! また部活参加停止になりたいのかよ!!」

 

優達が咄嗟に光一を取り押さえた事で、暴行は未遂で終わったが、この騒ぎから、ボールが外に出たタイミングで、巫魔ベンチは審判に注意をされた。

 

湯津「ありゃりゃ、アホな事やってるねぇ………」

 

湯津は呆れた様子を見せた………

 

 

 

第2Q中盤、光一を下げた事へ追い討ちをかけるように………

 

審判「プッシング! 黒10番!」

 

積牙がまたしても4ファールを犯した。

 

戦記「またか………これで公式戦4連続4ファール………この3年間で、全国ですら聞いた事のない記録だな」

 

戦記曰く、積牙は公式戦で4試合連続4ファールという、前人未到の不名誉記録を達成してしまったようである。当然これにはゆうかも積牙を下げざるを得なくなり、巫魔は高さを失った。

 

湯津「あちゃあ、折角の高さが無くなってしまったな………現在、37vs18と20点近くリードしているのに勿体ないなぁ………」

 

これには湯津も苦言を呈した。そして戦記の代わりに投入されたのがPGののぞみだった。

 

アリサ「あの子………確かPGよね? PG2人体制?」

 

アリサは、インサイドの選手が下げられたのにも関わらず、出したのはGの選手だった事に首を傾げる。そして、のぞみの登場で、巫魔の戦術は変わりだした。それは………

 

湯津「………!! 天野美矢がF!?」

 

なんと、先程までGを担っていた美矢が、積牙のポジションについた。

 

戦記「ほう………」

 

驚く湯津に対し、戦記は興味深そうな様子を見せる。

 

修也「美矢姉は別にPG専門じゃねえんだよな。中学時代にPGがいちばん上手かったのが美矢姉ってだけで、実際はほぼ何処でもポジションをこなせるオールラウンダーなんだよ」

 

修也はこの事態について説明。そして、修也の言葉通り美矢はSFとして、とにかく点を取りまくるプレースタイルを展開。しかし、シュートが狙えないと判断すると、先程の{自由なパス(フリーダムパス)}を行い、味方にパスを回して確実に点を奪っていく。

 

アリサ「高さが無いはずの巫魔が圧倒している………!」

 

アリサは、積牙を失った事をハンデと思わせない巫魔の攻撃力に驚きを隠せなかった。

 

戦記「確かにバスケは高さがある程有利な競技だ。巫魔で言えばあの10番や17番、ギリギリだが白宮優が該当するだろう。しかし、今の巫魔は高さ問題などなんら問題に当たらない。時にはいない方が機能する事もある………」

 

戦記は現在の巫魔を見てそう呟いた。そして第2Q終了時点では、既に48vs22と26点差にまで引き離していた。そして、それを見た戦記は席を立った。

 

戦記「………帰るぞ、湯津」

 

なんと、まだ前半終了にも関わらず帰るつもりだった。

 

湯津「おい、まだこれから後半だぞ?」

 

湯津は戦記に対し、当然そう問いかける。すると戦記は口元に笑いを浮かべ………

 

戦記「結果は見えている」

 

そう言うと、席を後にし、湯津はやれやれといった様子で戦記の後を追いかけた。そして修也もまた席を立ち………

 

修也「もう結果は見えたし………俺も美矢姉に会ってくるよ」

 

そう言って、観客席を後にしたのだった………

 

 

 

それからは戦記達の予想通り、巫魔が田武を引き離し続け、試合が終わった時には126vs42と、巫魔のトリプルスコアによる圧勝で終わった。5回戦、事実上Cブロック決勝戦への切符を手にした巫魔選手達は喜びを見せていた。そして、優は………

 

優「いよいよ………爆速か」

 

遂にやってきた爆速との対決に思いを向ける。そして、今回珍しくいい所無しの光一は自らの掌を眺め………

光一「………本当はわかってるんだよ………」

 

まるで自分を責めるようにそう呟いたのだった………

 

 

 

苦戦するかに思われた田武戦は、最終的に巫魔の圧勝に終わった、だが、まだチームとしての不安点は残っているが、果たして、昨年県大会2位の強豪、爆速高校を相手に、巫魔は太刀打ち出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
控え室に戻る中、修也は優達と会い、美矢の事についてこれまでの事を説明する。美矢の問題行動に修也は美矢に対しての怒りと、優達への申し訳なさを告げると同時に爆速についてアドバイスを送り………?
次回「スピードに気をつけろよ」


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第39話 スピードに気をつけろよ

前回までのあらすじ
光一、積牙と立て続けで主力が抜けた巫魔だったが、結果を見ればトリプルスコアで圧勝してしまった。巫魔は遂に爆速高校との対決を行う事に………!!


優「美矢、今日は良かったよ。公式戦初出場とは思えないレベルだった」

 

優は美矢に声をかける。

 

美矢「キャプテン………私はまだまだだ。それに、まだ相田には毛嫌いされているみたいだしな………」

 

だが、美矢は自身の力を自慢しなかった。いや、できなかったの間違いだろうか。すると、そこへ春香がやってきて………

 

春香「大丈夫よ。光一くんもなんだかんだいい人だから」

 

美矢に励ましの言葉をかける。言葉遣いや声色から、すっかり美矢を受け入れているようだ。

 

美矢「そうだといいんだが………」

 

美矢がそう呟いていると………

 

??「あっ、ここにいたか………!」

 

優達の元に友力のジャージを着た人物がやってきた。

 

優「修也………!」

 

優の前に現れたのは修也だった。

 

美矢「修坊………!」

 

これには美矢も驚いていた。

 

修也「………高校も教えずに何やってたんだよ。心配していたんだぞ………!」

 

修也は美矢を問いつめる。

 

美矢「いや………あの………うん………」

 

美矢が珍しくタジタジだった。

 

修也「ミドレーユ、すまないが高校での美矢姉の事を教えてくれないか?」

 

修也は、高校での美矢の事を問いかける。

 

優「うーん、長くなるし驚くかもしれないんだけど………」

 

優は修也に美矢の事を説明する。不良をやっていた事、明日香を怪我させたこと、優真を虐めていた事、実は2回留年してるなど諸々………それを聞いた修也は美矢の頭を掴むと、地面に叩きつけ………

 

修也「本っ当に申し訳ない!! うちのバカ親戚がほんとうに申し訳なかった!!」

 

申し訳なさそうに謝罪する。

 

美矢「痛い!? あ、頭割れる!!」

 

美矢は悶絶していた。

 

優「いや、まあうん………そこまでしなくても………気づかなかった僕もだし………うん」

 

優は修也の申し訳なさに同情すると同時に、過剰な行動に言葉を失っていた。

 

優「ま、まあ美矢が次に問題起こさないように僕が責任もって様子見てるからね。気にしないでいいよ」

 

優はそう説明する。だが、それを聞いた修也は………

 

修也「そ、そうなのか………!! 尚更申し訳ねえ………!!」

 

修也は再び頭を下げた。

 

優「いや、うん………(この情報は余計だったか………!)」

 

優は今の情報を教えた事を少し後悔していた。

 

修也「そのお詫びになるかは分からないが………俺からは爆速高校についてのアドバイスだ。爆速は全員速い。スピードに気をつけろよ………!」

 

修也は美矢の頭から手を離すと、爆速についてのアドバイスをしてその場を去った。

 

美矢「いてて………修坊め………」

 

美矢は頭を痛そうに押さえていた。一方、それを聞いた優は………

 

優「スピード………か」

 

次の相手、爆速のキーワードであるスピードという言葉が頭を巡るのだった………

 

 

 

修也と再会し、美矢の事を説明する事となった優。その謝罪代わりとして修也から爆速高校についてヒントを貰ったゆう達。果たして、このヒントは役に立つのか………?

To Be Continued………




次回予告
翌日、優達は練習そっちのけで昨年の爆速が行った試合を見ていた。爆速の選手達のスピードはとても恐ろしく、力豪や爆速以上なもので………!?
次回「どんなスピードしてんだよ」


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第40話 どんなスピードしてんだよ

前回までのあらすじ
試合終了後、優達は修也と出会い、美矢の事を説明する事に。修也から美矢の悪行を謝られ、その代わりに爆速についてのヒントを与えてくれたのだが………


翌日。この日は祝日で学校は休み。本来なら練習日なのだが………

 

優「うーん、やっぱり速い。どんなスピードしてんだよ、コイツら………」

 

優と春香が練習そっちのけで、去年の爆速高校の試合を部室で見ていた。

 

ゆうか「こーら、優くんに春香ちゃん。いったい何してるの?」

 

あまりに練習へ来ない2人に、ゆうかは直接部室へやってきた。

 

優「監督。勝手にサボってすみません。ただ、昨日試合後に修也と会いまして………爆速のスピードに気をつけるよう警告されたので、去年の爆速の試合を見ていました。曲がりなりにも全国出場チームですからね、爆速は」

 

優は謝罪と同時に爆速のビデオを見ていた事を説明。それを聞いたゆうかは………

 

ゆうか「そうね。今年も全試合100点ゲームで全勝してるみたいだし………試合は次の日曜日。プランを組み立てないといけないわね。相手は全国区だし」

 

優の説明から、分析と作戦も必要と考えた。

 

春香「しかし、どうしましょうか………ビデオを見ただけで分かりますが………爆速はまるで美咲ちゃんを5人同時に相手しているかのようなスピードのチームでして………今から走り込みをしても絶対に間に合わないレベルのチームなんです」

 

しかし、春香の説明から、爆速選手に走力によるスピードで対抗するというのはほぼ不可能に近い。

 

ゆうか「そう………となると、うちのジョーカーをそろそろ切るべきかしら」

 

それを聞いたゆうかはそう言って考え込む様子を見せた。

 

春香「ジョーカー………ですか?」

 

春香が首を傾げながらそう問いかける………

 

ゆうか「もう練習に行きなさい。ビデオ分析も大事だけど、まずは練習あるのみよ」

 

しかし、ゆうかはここで話を打ち切り、優達2人へ練習に行くよう促した。

 

優「分かりました。行こうか、春香」

 

優はそれに文句1つ言わず、春香と共に練習へ行く事を決めた。

 

春香「はい」

 

ゆうの言葉を聞いた春香もまた、練習に行く事を決め、2人は体育館に向かって走り出した。ゆうかは2人を見送った後、近くのパイプ椅子に座り、腕と足を組むと………

 

ゆうか「(この学校で唯一バスケ選手としての情報が知られていないのはただ1人………影美優真ちゃんだけ………彼女のスキルはまだたった1ヶ月の初心者とは思えない脅威のもの………恐らく、彼女のあの技術が………爆速戦攻略の鍵となるわ………)」

 

唯一公式戦記録も、バスケ選手としての記録も無い優真が、爆速戦攻略の鍵となる事を考えていたのだった………

 

 

 

迫る爆速戦を前に分析を始める優達。果たして、爆速に対しての有効打はあるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優真の力は初心者とは思えない程急速に成長し、簡単なゲームにおいても、節々で活躍が見れるようになってきた。それを見た優は優真に対して大きな期待を見せ………?
次回「初心者とは思えない成長だ」


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第41話 初心者とは思えない成長だ

前回までのあらすじ
優達は練習そっちのけで昨年の爆速戦のビデオを見ていた優達。スピードでは対抗出来ない巫魔の対抗手段はいったい………?


練習に戻った優達。そこには5vs5のゲームをする積牙達の姿が………

 

由香「あっ、2人とも!」

 

審判をしていた由香が優の元へ駆け寄ってきた。

 

由香「2人が居ないから、もうゲーム始めちゃったわよ」

 

由香は優達の遅刻に少し怒っていた。

 

優「ごめんごめん」

 

優は少し申し訳なさそうに謝る。だが、その直後にボールによる空気音が聞こえた。

 

春香「………!? 今のは、優真ちゃんのパス………!?」

 

優真は鋭いパスを鈴香に向けて放った。鈴香はすぐさまスリーポイントシュートを放ち、ボールをゴールに入れた。鈴香は優真に近づくと………

 

鈴香「いいパスだった………成長してる」

 

優真に対し、褒めの言葉を口にする。

 

優真「ありがとうございます………!」

 

優真は嬉しそうな様子だった。

 

優「驚いたな………パスがめっちゃ鋭い。初めてまだそんな経ってないのにあそこまで上手くなるとは………初心者とは思えない成長だ」

 

優は優真のパススキルに驚いていた。少ししてゲームが終わり………

 

優「凄いね、優真。知らない間にとても上手くなってるじゃないか」

 

優は優真を褒める様子を見せた。

 

優真「キャプテンみたいにジャンプしながらというのは出来ないですけれど………」

 

優真は謙遜した様子でそう言い放つ。

 

伊吹「コイツのはレベル違うから。真似出来ないから」

 

すぐに伊吹が訂正する。

 

優「僕のそのスキルは美矢のプレイスタイルを参考にしたんだが?」

 

優は美矢に対し視線を向ける。

 

美矢「いや、真似されるとは思って無かったから………」

 

美矢は言い訳をする。しかし、2人ともパスを行える理由は、超人的な強さの為に行える為………

 

鈴香「人外コンビ………」

 

鈴香は思わずそう呟いた。

 

優「誰が人外コンビだ!!」

 

優は思わずそう言い返す。

 

のぞみ「まあでも、あれだけのスキルなら、所々で活躍するかもしれないわ………メインPGとしてはまだ不安材料もあるけれど………」

 

彼女のスキルには、巫魔の正PGとも言えるのぞみすら認めていた。

 

優「あのパススキルは僕が見てきた選手でも全国クラスのものだ………もしかしたら試合に出されるかもよ? 巫魔高校は年齢関係無しだからね」

 

優は優真に対して期待を見せていた。昨年の自分程では無いにしても、このパススキルは優が知る限りでも、自身や美矢、友力高校の芽衣くらいしかない。

 

優「ま、そうなるまでには………まず体力作りだな」

 

しかし、初心を忘れさせないために、優は優真に対してそう呟くのだった………

 

 

 

優真の急激な成長に驚く優。この強力なスキルが試合で日の目を浴びる事はあるのか………?

To Be Continued………




次回予告
遂にやってきた爆速高校との試合。久々にやってきた全国区との試合に巫魔の緊張感も強まる。そして、選ばれたスターティングメンバーは………?
次回「挑戦の開幕だ」


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第四章 激闘! vs爆速高校!
第42話 挑戦の開幕だ


前回までのあらすじ
練習に戻った優達。そんな彼等の目に映ったのは、強力なパススキルを駆使する優真の姿だった。彼女の成長速度には、優も期待の目を見せ………?


そして、1週間の時間はあっという間に過ぎていき、遂に爆速戦当日に………

 

この日は残る8校はすべてAブロックの体育館で行う事に。そして、観客の人数も多かった。何故なら、この日はイバラキ三大王者全校が試合をするからだ。最初に行われたAブロックには守城高校と川徳高校。だが、試合の流れは終始守城のペースであり、試合は78vs0と、まさかの1得点も許さない試合運びで守城が圧勝した。

 

 

 

続いてBブロックは力豪高校と田織高校の試合。この試合では滝川を始めとした力豪選手達の強烈な攻撃力を前に田織高校は圧倒され続け、試合は132vs37で力豪が圧勝した。

 

 

 

そしていよいよ、Cブロック。爆速高校と巫魔高校の対決が始まろうとしていた。両チーム共にアップを終えた後、互いにベンチへ集合した。

 

ゆうか「さて、相手は爆速高校というわけで………こっちとしては出し惜しみはゼロで行くわよ! という訳で、スタメンを発表します。スタメンは、優くん、春香ちゃん、光一くん、積牙くん、美矢ちゃん。この5人で行きます」

 

ゆうかはこの試合、全力でぶつかる事がまず勝つ事に必要だと考えていた。

 

優「分かりました。よーし、皆行くぞ! 挑戦の開幕だ!」

 

春香達「おおー!!」

 

そして、この日の為に練習を続けてきた優達の気合いも十分だった………!

 

 

 

一方、爆速のベンチは………

 

速野「監督、今回の指示は何でしょうか?」

 

爆速のキャプテン、速野が今回の指示を自チームの監督、羽端翔子(はねはたしょうこ)に聞いていた。

 

羽端「まあ、第1Qは様子見かな。相手は練習試合とはいえ力豪と1点差のゲームをしてるらしいからねぇ………」

 

監督の羽端は多少なりと巫魔を警戒していた。やはり力豪と1点差だったという事実が影響しているからだろうか。

 

羽端「細かい指示は速野くんに任せるよ。何かあったら私も指示を出すから」

 

羽端は巫魔を観察する為に、第1Qは特に大きな指示をするつもりは無かった。速野はそれに頷くと………

 

速野「さあ、行くぞ。確かに相手は強いチームだろう。しかし、俺達は負けない。このスピードがある限り………! さて、行こうか!」

 

そう言って爆速選手の気合を入れる。

 

選手達「おおー!!」

 

速野の言葉に、爆速選手達も気合十分だった。そして、両チームの選手達はコートへと歩き出すのだった………

 

 

 

いよいよ始まる爆速高校との試合。優は爆速の選手達を目にしながらこんな事を考えていたという。それは、ここから始まる40分はとても長く、苦しい戦いになるだろうというものだったという………

To Be Continued………




次回予告
いよいよ試合が開幕。しかし、爆速高校のスピードはとてつもなく速かった。それを目の当たりにしたゆう達は………!?
次回「まだ速い」


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第43話 まだ速い

前回までのあらすじ
試合当日。イバラキ三大王者のうち、2校が圧倒的な実力を見せる中、優達はいよいよ爆速高校に挑む。強豪校を相手に巫魔はスタメンから全力の姿勢を見せ………!?


互いのチームのスターティングメンバーは以下の通りである。

 

 

巫魔高校(白)

PG 12番 天野美矢

SG 5番 白宮春香

SF 10番 江野積牙

PF 4番 白宮優

C 17番 相田光一

 

 

爆速高校(緑)

PG 4番 速野信太

SG 6番 岡崎羽柴

SF 5番 映鳴清太郎

PF 8番 野村由美子

C 7番 野田真澄

 

 

両チームの選手が位置につき、互いのCがセンターサークルに立つと、審判は試合開始の笛を吹き、ボールを上に打ち上げた。

 

光一「うおおおりゃあっ!!」

 

ジャンプボールは光一が制し、ボールが春香の方へ回ってくるが………

 

速野「はっ!」

 

春香がキャッチしたボールはすぐさま速野に奪われてしまった。

 

春香「ああっ!?」

 

春香は一瞬何が起きたか分からなかった。

 

優「積牙! 美矢! 急いでディフェンス!!」

 

すぐさま優達3人がフォローに入る。しかし、速野は積牙と美矢をあっさりと抜いてしまった。

 

美矢「しまった………!!」

 

そして、優と速野の2人が対決。速野はレイアップシュートを狙う。

 

優「決めさせるものか!!」

 

それに対抗してゆうもすぐさまジャンプ。その高さは速野のジャンプを一瞬で超えるものだった。

 

伊吹「よーし! シュートコースは防いだ!!」

 

優のディフェンスに巫魔のベンチから沸きあがる声が聞こえた。しかし、シュートコースが目の前から消えたというのに速野は冷静だった。

 

速野「(コイツ………確かに高い………情報は収集していたが、データ以上だ………!)」

 

速野も優のジャンプ力自体は褒めていた。

 

速野「だが、まだ俺を止めるには………まだ速い!!」

 

しかし、速野はそこからダブルクラッチをして優をかわした。

 

優「なっ!?」

 

これには優も驚いていた。速野はダブルクラッチによって生まれたシュートコースへ、ボールを放り込んだ。結果、ボールは綺麗にゴールへと入った。試合開始からたった10秒程の出来事である。

 

ゆうか「(くっ………やはり最初に流れを掴んだのは爆速か………!)」

 

ゆうかはそう考えながら、爆速監督の羽端を見る。しかし、彼女は大きく欠伸をしながら、呑気にバスケ雑誌を読んでいた。

 

ゆうか「(翔子は呑気に雑誌を読んでいる………という事は本気ではないという訳ね………)」

 

ゆうかは爆速監督の羽端とも知り合いのようで、彼女の様子から、まだ爆速が本気ですら無い事を悟った。

 

ゆうか「………爆速に勝つには、まず爆速陣を本気にさせなきゃって事か………」

 

ゆうかは、爆速に勝つ為にはまず速野達を本気にさせなければならない事を悟ったのだった………

 

 

 

優達は初っ端から先制され、不安の幕開けに。しかも、勝つ為には爆速を本気にさせなければならない。果たして、巫魔に対抗策はあるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
先生を許した巫魔だったが、優達は美矢と優の2人を起点に攻撃を仕掛ける事に。果たして、その戦術は………!?
次回「対策ならしてるぜ」


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第44話 対策ならしてるぜ

前回までのあらすじ
遂に始まった巫魔と爆速の試合。開始10秒間の爆速のスティールからの速攻に先制を許す巫魔。巫魔は苦しいスタートとなったが………?


スタートから苦しい展開となったが、優は美矢に駆け寄ると………

 

優「こりゃ、初っ端からやる必要があるみたいだ」

 

優は美矢と組み立てた秘策があるようだ。

 

美矢「分かった。頼む、キャプテン」

 

2人は短い会話の後、2人は横に距離をとった。

 

 

 

一方、観客席へ守城の戦記と湯津がやってくる。すると、2人が座った席の隣には………

 

修也「おや、戦記さんに湯津さん」

 

修也、アリサ、芽衣の友力高校の3人が座っていた。

 

戦記「お前達か」

 

戦記は3人の事を覚えているようで、一言だけそう呟いた。

 

湯津「ありゃ、スタートからやられてるなぁ………爆速のスピードを相手になんとかなるのか………?」

 

湯津は不安な様子を見せた。しかし………

 

修也「大丈夫ですよ。アイツは先制されてもやられっぱなしで終わらない………!」

 

修也は優がここから逆転して見せると確信していた。そして、春香が美矢にボールをパスして試合が再開すると………

 

美矢「行くぞ、キャプテン!!」

 

美矢はそう言うと、ドリブルにあがる。

 

岡崎「止める!」

 

SGの岡崎が美矢の前に走ってくる。すると、美矢はその場でジャンプし、素早いパスを優に回した。

 

速野「(パスを使った速攻戦術か………だが………!)映鳴!」

 

すぐに映鳴が優の前に立つ。すると優は映鳴の前でジャンプし、美矢に向けてパスを出す。

 

美矢「よし!」

 

美矢にボールが渡り、再び美矢がドリブルであがる。

 

速野「な、何!?」

 

速野は優と美矢の素早く、奇想天外のパスに爆速選手は翻弄されていた。

 

羽端「おっ………ふーん、対策してきたんだ」

 

優と美矢のパス戦術に、羽端も反応する様子を見せた。そして、戦記も反応を見せ………

 

戦記「成程………確かに素早く、タイミングを読まれないようにパスを出せば爆速と言えどボールは取れない。しかし、行うには互いの息、そして{自由なパス(フリーダムパス)}を使えるだけのスキルが必要だ。白宮優と天野美矢。あの二人だから出来る戦術だな」

 

2人が行っている戦術について考察をしていた。その考察は当たっており、優達は爆速選手を素早いパスワークでかわしていく。

 

速野「ぐっ………! いきなりカードを切ってきたか………!」

 

速野は、初っ端から戦術を展開する巫魔に驚いていた。しかし、速野は美矢の前に立つと………

 

速野「だが、調子に乗るなよ!!」

 

パスをさせまいと体を広げて立ちはだかる。

 

優「そりゃ、チームとしてのレベルや個々の強さは貴方達の方が上でしょう………けれど………!」

 

その直後、優の声が聞こえる。美矢は突如、真上にボールを打ち上げる。美矢のボールの軌道には、既に大きくジャンプしていた優がいた。

 

優「アンタ達に勝つ為の………対策ならしてるぜ!!」

 

優はそう言って空中でボールをキャッチし、そのままダンクで押し込んだ。

 

アリサ「初っ端からアリウープ………!! 豪快なやり返し、いいぞ〜ユー!!」

 

素早いパス連打からのアリウープで巫魔は同点まで戻した。優は地面に降りると………

 

優「これが僕達の新戦術、{双翼のパス(ダブルウイングパス)}だ!!」

 

優は速野達に向けてそう言い放つのだった………

 

 

 

先制された巫魔だったが、優達の新戦術であっさりと同点に戻した。巫魔は苦しい展開を幾らか押し戻したのだった………

To Be Continued………




次回予告
巫魔は{双翼のパス}を駆使しながら、なんとか爆速に食らいついていく。だが、美矢から光一へのパスがどうしても繋がらず………!?
次回「どうしてなんだ」


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第45話 どうしてなんだ

前回までのあらすじ
先制を許した巫魔だが、優と美矢による新戦術を展開。その戦術の名は{双翼のパス(ダブルウイングパス)}というもので………?


序盤、巫魔は爆速のスピードに押されるかと思われたが………

 

美矢「キャプテン!!」

 

美矢のパスが優に上手く渡り………

 

優「よし!」

 

優はそのままダンクを狙う。

 

速野「野村、4番!!」

 

速野はすぐに的確な指示を送る。そして、8番の野村が優の前に立ちはだかるが………

 

優「(そう来ると思ったぜ………)春香!!」

 

優はダンクを突如中断し、外の春香に回した。

 

野村「あっ………!?」

 

ボールは爆速の予想を外し、春香の方へ回る。

 

春香「はあっ!」

 

そして、春香は綺麗なスリーポイントシュートを決め、巫魔は3点を獲得。開始5分で13vs14と、負けはしているが必死に食らいついていた。

 

速野「(ぐっ………厄介なパスが出来るのが2人もいるのは少しキツイ………まあでも、まだ巫魔には落とし穴がある………!)」

 

速野達は{双翼のパス}に振り回されていたが、まだ余裕が崩れなかった。その理由は40秒程経った時にわかった………

 

美矢「相田!」

 

今度は美矢から光一へのパス。しかし、光一は以前の時のように自身のミスでパスが取れず、零れたボールを拾ったCの野田が速野に対してパスを出した。

 

光一「くそっ………どうしてなんだ………!!」

 

パスが取れず悔しがる光一。速野はこの状況をほくそ笑んでおり………

 

速野「(理由は分からないけれど、PGの天野からCにボールが繋がらない………これが、巫魔の穴だ!!)」

 

そう言うと、素早い動きでインサイドへ切り込む。すぐに優が速野の前に立ちはだかるが、速野は後ろにいた羽柴にバックパス。羽柴はすぐにスリーポイントシュートを決め、巫魔を突き放す。

 

美咲「どうしよう………逆転出来ない………!」

 

これには巫魔のベンチでも不安の声が。すると、監督のゆうかがベンチを立ち………

 

審判「巫魔、タイムアウト!」

 

ここでタイムアウトをとった………

 

 

 

両チーム共にベンチへ戻る。爆速側は………

 

羽端「うーん、まあ現状維持でいいんじゃない? あの4番くんと12番の天野美矢は気になるけど、4番くんにはスタミナ問題がある。じきに限界が来るよ」

 

{双翼のパス}を警戒しながらも、現在の作戦を続行するよう指示し、速野達もこれに頷くのだった………

 

 

 

一方、巫魔のベンチでは………

 

伊吹「さっきから光一のミスが多いぞ、どうしたんだよ?」

 

伊吹が光一にミスの多さを問いかけていた。

 

光一「うるせえ!」

 

光一は逆ギレするように言い返した。それを聞いた伊吹は怯えて言葉を失った。しかし………

 

優「光一………人に当たるようならコートから出て行ってくれ」

 

春香「ゆ、優さん!?」

 

なんとここで、優が光一に対し、そんな事を言い放つ。これには、春香達も驚きを隠せなかったのだった………

 

 

 

美矢と光一のパスが繋がらず、逆転が出来ない巫魔。ミスにストレスが溜まる光一に対し、優は珍しく突き放すような事を言い放った。この言葉は、巫魔を崩壊させるのか、それとも………?

To Be Continued………




次回予告
優の言葉に激高する光一。そんな彼に優は美矢を恨む事そのものを否定する気は無いが、それを試合にまで持ち込むなと言い………?
次回「今は試合中だぞ」


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第46話 今は試合中だぞ

前回までのあらすじ
{双翼のパス(ダブルウイングパス)}でなんとかくらいつく巫魔。しかし、美矢から光一へのパスが繋がらず、光一にも苛立ちが生じる。だが、タイムアウトの中、優は突き放すような言葉を光一に浴びせ………!?


光一「なんだと!! お前まで俺にそんな事を言うのか!?」

 

光一は優に詰寄る。だが、優は酷く冷静だった。

 

優「君が美矢を酷く憎んでいるのはわかるさ。僕だって明日香を傷つけられた事を許した覚えは無いしね」

 

続けて優は光一に対して口を開いた。それは、光一の気持ちそのものを否定する気が無い意思を見せるものだった。

 

優「………けれどな、今は試合中だぞ………自らの感情を試合にまで持ち込むな!!」

 

その上で、その感情を試合に持ち込むなと怒った。光一も言われた直後は優に対して怒りが沸いてきたが、少しして優の手が震えている事に気がついた。

 

光一「優………すまねぇ………」

 

優の様子を見て我に返った光一は謝罪。優は光一に対して背を向けたまま………

 

優「これは僕が許す許さないの問題じゃない。ただ、本気で申し訳無いと思うなら………行動で示してくれ………!」

 

優は光一に対してそう言い放つ。それを聞いた光一は静かに頷いた。

 

審判「タイムアウト終了!!」

 

ここで審判からタイムアウトの終了が告げられ、ゆう達はコートへ戻る。試合は巫魔ボールから再開。

 

春香「美矢ちゃん!」

 

春香のパスで美矢にボールが渡る。すぐに速野が美矢の立ちはだかるが………

 

美矢「キャプテン!」

 

ゆうとの連携技{双翼のパス}を発動し、再び爆速選手をかわしていく。

 

速野「そう来ると思ってたぜ、皆!」

 

速野は合図を出す。すると、優から美矢にボールが渡った時点で、映鳴達は美矢と光一のパスコースを除く、他の3人へのパスを防ぐ場所へと立った。

 

速野「(さあ、繋がんない相手しかいないけれど、どうする?)」

 

速野は巫魔を精神的に追い詰めるつもりだった。

 

美矢「………速野信太。イバラキ三大王者の1つと言われる爆速でPGをやっているって聞いていたからどんなもんかと思ったけど、人を愚弄するのが本質が………ちょっとガッカリだ」

 

だが、そんな中で美矢は速野を毒づいた。

 

速野「強がりも大概にして欲しいね。今の君に何が出来る。神奈川では天才プレイヤーと持て囃されていた君のその栄光も、今や昔の話。ここで俺が完全にへし折ってやるよ」

 

速野はそう言い返した。

 

美矢「なら、同じPGとしてアドバイスしてやるよ」

 

美矢はそう言うと、ボールをバウンドするのをやめ、両手で掴むと………

 

美矢「バスケにだってイレギュラーはあるんだよ………定石通りやれば勝てる程………楽なスポーツな訳ねえだろうが!!」

 

美矢はそう言うと、光一に向けて鋭いパスを出す。

 

美矢「光一! 私自身を信じなくていい………でもせめて………私のプレイだけは信じてくれ!!」

 

美矢は光一に対して自らの想いを告げた。それを聞いた光一は驚き、そして………

 

速野「なっ………!? ボールが………!」

 

美矢が投げたボールは、光一の両手がガッチリとキャッチした。

 

伊吹「ボールが………繋がった………!!」

 

これには、この場にいた者の殆どが驚いていた。光一の近くでマークしていた野田も驚いており、気がついた時には、光一がシュート体勢だった為、慌ててブロックするも、シュートが放たれてしまい、野田は光一に接触してしまう。結果、シュートが決まると同時に………

 

審判「………バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

光一はシュートが成功すると同時に追加でフリースローを獲得したのだった………

 

 

 

優の言葉、そして美矢の想いを受けた光一は美矢のパスを遂に取った。これにより、巫魔は1歩、爆速へ勝つ為の歩みを見せたのだった………

To Be Continued………




次回予告
美矢、光一のホットラインが完成し、第2Qでも爆速にくらいつく巫魔。しかし、優のスタミナが限界に差し掛かる事態に。それを見たゆうかは、遂に切り札を切る事に………!
次回「切り札を使うわ」


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第47話 切り札を使うわ

前回までのあらすじ
優の怒り、そして、美矢の想いを知った光一。これにより、美矢のパスが取れるようになった光一は、シュートを決めると同時にワンスローをもらい………!?


バスケットカウントワンスローのコールに、光一は無言でガッツポーズをする。

 

美矢「光一………!」

 

美矢は光一に駆け寄る。

 

光一「………勘違いすんなよ、俺はまだお前を許してねえからな………美矢」

 

光一は美矢に対して突き放すような事を口にした。しかし、その割には嬉しそうだった。それを目の当たりにした美矢も思わず嬉しさをこぼした。

 

美咲「や、やった! パスが繋がったよ!! しかも、フリースローまで!!」

 

そして、美矢から光一へのパスが初めて繋がった事に、巫魔のベンチでは喜びの声が。更に………

 

戦記「ボールが繋がったな………これで、巫魔の穴が1つ繋がった。舐めているとお前が負けるぞ、速野………」

 

戦記は巫魔の成長を感じとり、同時に速野が持っていた慢心を指摘していた。

 

速野「ま、まだたかが2点だ! 俺達のプレイなら、こんな連中に負けはしない!!」

 

だが、速野は巫魔を相変わらず認めなかった。これには爆速監督の羽端も………

 

羽端「(速野くんはプライドが捨てられずじまいのようだね、さて、これがどれだけ持つかな………)」

 

速野の心中を見抜き、そう考えると共に少し首を傾げた………

 

 

 

美矢と光一のホットラインが形成された事で、巫魔の{双翼のパス(ダブルウイングパス)}は更に強固なものへと進化した。結果、第2Q中盤、巫魔は28vs31と、3点差が崩せないながらも、爆速に大きくプレッシャーを与えていた。

 

速野「(ダメだ………さっきから突き放せない………!)」

 

このプレッシャーに1番苦しんでいたのは速野だった。彼は巫魔の真っ直ぐで強いバスケに押されていたのだ。

 

速野「ぐっ!」

 

それでも速野はレイアップを決めようとするが………

 

優「だりゃっ!」

 

優の懸命なディフェンスに阻まれ、ボールはコートの外へ。

 

審判「緑ボール!!」

 

再開は爆速側のボールとなったが、速野はイバラキ三大王者でもないチームが、自分達に喰らいついているのが、信じられずにいた。

 

羽端「こりゃ参ったな………まあ、巫魔にも問題はあるみたいだけど………」

 

羽端は参った様子を見せると同時に、ニヤリと口元で笑みを浮かべながら優へ視線を向ける。

 

優「はあっ、はあっ………」

 

そう、優にはスタミナの限界が来ていた。これには、観客席の修也も気づき………

 

修也「優の息が上がっている………あのパスを行使しまくったせいか………!」

 

その原因が{双翼のパス}にある事も気づいた。

 

芽衣「巫魔にとっては優くんの離脱はとても重たいはず………困ったね………」

 

芽衣はそう言って、巫魔の危機を予感していた。

 

ゆうか「………優くんを先発させるとどうしてもこの問題が出てしまうわね………しかし、素早くパスが繋がらなければ、爆速戦は勝てない」

 

ゆうかも、優が離脱すれば、高速パス戦術が使えなくなる事を察知していた。

 

あずさ「じゃあ、どうすれば………!!」

 

あずさ達は縋るようにゆうかを見つめる。するとゆうかはベンチを立ち………

 

ゆうか「………切り札を使うわ」

 

そう言って優真に視線を向けると………

 

ゆうか「優真ちゃん、出番よ」

 

ゆうかは優真を指名した。

 

あずさ「え、ええっ!?」

 

優真「わ、私が………!?」

 

これに対して優真は驚き、あずさ達も驚いていた。

 

ゆうか「そうよ。勝つ為に貴女を使うの。さあ、準備して」

 

ゆうかがそう言うと、優真は………

 

優真「は、はい!」

 

信じられない様子を見せながらも、軽く準備運動をする。そして、それから1分もしないうちに………

 

審判「プッシング! 白10番!」

 

積牙が2つめのファールをしたタイミングで………

 

審判「交代です!!」

 

ゆうかの指示で巫魔は選手交代。18番の白いユニフォームを着た優真は、緊張しつつも、コートへ足を踏み入れたのだった………

 

 

 

巫魔は爆速へくらいついて行くも、優のスタミナ問題が浮上してしまう。果たして、優真との交代で、流れを変える事は出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優真の登場には、その場にいる者の殆どが首を傾げる。しかし、優真は巫魔の高速パス戦術を存続させる為の重要な選手で………!?
次回「なんだコイツは」


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第48話 なんだコイツは

前回までのあらすじ
必死にくらいつく巫魔だが、優のスタミナが限界に差し掛かる。監督のゆうかは、切り札として優真を試合に出す………!!


優真「きゃ、キャプテン………! 私が入ります………!」

 

優真は緊張した様子で優に声をかける。優は交代の為にベンチへ向かう。

 

優「任せたよ、優真。後、リラックスね」

 

優は優しい声で優真を落ち着かせようとする様子を見せ、彼女の肩を優しく叩いた後、コートを後にする。ゆうの言葉を聞いた優真はハッとした様子を見せた後、軽い深呼吸をして、落ち着きを見せた。

 

湯津「おいおい、勝負を投げたか、巫魔?」

 

しかし、データに無い無名の新人の起用は、会場の人間殆どへ驚きと困惑を与えた。

 

羽端「データに無い新人………確かに疲労している4番くんを起用し続けるよりは、マシなようにも思うけど………それは彼を下げるよりも必要な事なの、ゆうか………?」

 

あまり表情を変えない羽端も、今回の作戦には驚いていた。そして、試合は爆速ボールで再開。パスを受け取った速野は、早速優真とマッチアップ。

 

速野「(さて、どんな実力かな………)」

 

速野はそう言うと、右に動く。優真も速野の進行方向にくいついてきたが………

 

速野「甘い!」

 

速野はそこから切り返し、優真を抜いた。

 

優真「あっ………!」

 

優真はあっさり抜かれた事に驚いていた。

 

速野「(なんだ、雑魚か………)」

 

速野は拍子抜けする様子を見せた………

 

映鳴「………!! 速野! 前! 前!」

 

映鳴は油断する速野に対し、危機を知らせる。

 

速野「んっ………? って、うわあっ!?」

 

速野が気づいた時にはもう遅かった。美矢が速野の隙を突いてスティールした。美矢は鋭いドリブルで爆速のゴールへ向かう。

 

映鳴「野村! 野田! 止めるぞ!!」

 

そこへ映鳴達、インサイドプレイヤーが立ちはだかる。

 

優「今だ! 優真に繋げ!!」

 

ベンチに座る優はそのタイミングで、美矢は優真へのパスを指示。

 

美矢「ああ! 優真!!」

 

美矢は優真に対して鋭いパスを回す。

 

速野「今の巫魔に{双翼のパス}は使えない! 落ち着いて対処するんだ!!」

 

速野はそう言って、落ち着いた対処を指示する。しかし、優真はボールを手にした途端、走り込んでいた積牙を目にし、鋭いパスを送る。急いで映鳴がヘルプに走るが、パスのあまりのスピードには、俊敏さが特徴の爆速選手である映鳴でも間に合わなかった。

 

映鳴「何っ!? は、早すぎじゃねえか!?」

 

あまりのスピードに動揺する映鳴。積牙もあまりのスピードに驚いていたが、すぐにレイアップを放ち、1点差へ追い上げた。

 

修也「す、すごいパススピードだ………! それも、優や美矢姉を上回る程に………」

 

あまりにも早いパススピードは、優や美矢すら上回っていた。

 

戦記「これは、隠れた才能の持ち主がいたようだな………」

 

戦記は、美矢が見せた超速のパスに興味を見せた。一方、速野は優真の超人的なパスを目の当たりにし………

 

速野「………なんだコイツは………!?」

 

優真の鋭すぎるパスに、動揺を隠せなかったのだった………

 

 

 

優の代わりとして投入された優真のパスは、恐ろしく早いものだった。爆速選手すら置いていくこの素早いパスは、爆速選手をどこまでかき乱すのか………!?

To Be Continued………




次回予告
美矢の鋭いパス。そして、練習の中でモノにしていたアウトサイドジュードで、爆速に大きな混乱を与える。そして、遂に巫魔の反撃によって、爆速を相手に逆転してみせ………!?
次回「パスだけじゃないです」


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第49話 パスだけじゃないです

前回までのあらすじ
優の代わりに起用された優真。彼女は、速野との1on1にはまだ歯が立たないものの、優や美矢を上回るスピードのパスで、会場の人間に衝撃を与え………!?


その後、爆速は岡崎が速攻で反撃を試みるが、優真のパスを見た衝撃に引きずられ、レイアップを外してしまう。

 

岡崎「しまった………!」

 

すぐにボールを拾おうとする岡崎だったが………

 

光一「おっしゃあああ!!」

 

光一は気合いと共にリバウンドボールをガッチリとキャッチ。

 

光一「優真ちゃん! 頼むぜ!!」

 

光一は優真に対しパスを回す。優真は光一のパスをガッチリとキャッチする。しかし、優真の前には速野が立ちはだかり、春香達3人にも映鳴達がマンツーマンでマークしていた。

 

速野「どうする? これでさっきのパスは使えない!」

 

速野はそう言い放つ。しかし………

 

優真「私の武器は………パスだけじゃないです!」

 

優真は冷静な様子でそう言い返すとその場でしゃがみ、そして、そこから膝を伸ばす事で発生するバネの勢いで速野の背を越す高さを飛んだ。

 

速野「な、なんだと!?」

 

速野は完全に意表を突かれた。妨害が無いため、優真はそのまま綺麗なフォームでスリーポイントシュートを放った。

 

羽端「ありゃ………悔しいけれど、綺麗なフォームだなぁ………」

 

羽端は敵を褒める事について少し気に食わない様子だったが、優真のシュートフォームの綺麗さだけは認めていた。そして、シュートは綺麗にリングの中へ沈んだ。

 

伊吹「よっしゃ〜!! これで逆転だ!!」

 

第2Q残り2分で33vs31。巫魔はとうとう逆転した。

 

芽衣「あの凄いパスにアウトサイドシュート。初心者かつ、背が低いとは思えない程の選手だよ、あの子。まだ1on1に弱いのが欠点だけど、あの子は凄い選手になれるよ! 私も背の低さというハンデに悩まされてたから分かるもん」

 

全国において新鋭と言える強豪、友力高校で正PGを任され、優真と同じく身長差によるミスマッチがよく起きる芽衣も、優真の長所を絶賛していた。流れが巫魔に傾き、追い詰められる爆速。すると、先程まで試合そっちのけでバスケ雑誌を読んでいた羽端は、バスケ雑誌をベンチに置くと、気怠そうに立ち上がり………

 

審判「爆速高校、タイムアウト!!」

 

この試合で初めて、爆速側からのタイムアウトが宣言された………

 

 

 

巫魔ベンチ………

 

優「初めてにしてはナイスだよ、優真!」

 

優は優真に対し、褒め言葉を送る。

 

優真「ありがとうございます、キャプテン!」

 

優真はとても嬉しそうだった。

 

美矢「こりゃ、PGを取られちまうかもな………優真、アンタはPG向きだよ、どう見ても」

 

そんな彼女に、美矢もそう言って優真の実力を認めていた。

 

優真「美矢さん………!」

 

優真と美矢は先の因縁が嘘のように通じあっていた。その様子を見ていた優は微笑ましそうで、光一も表情には出さなかったが、少しは美矢を睨まずに、2人が仲良くする様子を見れた………

 

ゆうか「はいはい、お楽しみのところ悪いけど、これからが本番よ。あっちの監督がタイムアウトをとったということは………何か仕掛けてくるわ。彼女は、本気を出した時こそ怖いのよ………!」

 

だが、ゆうかはこれからが本番だと伝え、さらに気を引き締めるよう支持するのだった………

 

 

 

一方、爆速ベンチでは………

 

羽端「いやぁ、コテンパンにやられたねぇ、速野くーん?」

 

羽端は呑気そうに見えるが、速野に強い圧をかけていた。

 

速野「は、はい………すみません………」

 

速野は羽端に怯えていた。羽端は顎に右人差し指を当て………

 

羽端「………本当はリーグ戦まで使いたくなかったんだけどなぁ………」

 

羽端は半ば惜しむようにそう呟くと………

 

羽端「決行しようか、切り札」

 

そう言って、爆速の切り札を決行するよう指示するのだった………

 

 

 

とうとう巫魔が逆転して見せたが、それを爆速は黙っていなかった。果たして、爆速が切らざるを得なかった切り札とは………!?

To Be Continued………




次回予告
爆速はスピードを活かしたオリジナル戦術で巫魔を翻弄。これにより、巫魔は大きく突き放されてしまい………!?
次回「本気にさせやがって」


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第50話 本気にさせやがって

前回までのあらすじ
優真のシュートにより、遂に逆転する巫魔。しかし、これを見た爆速監督の羽端は、速野に対して切り札を使うよう催促する………!


結衣「第2Q残り2分です、頑張ってください!」

 

マネージャーの結衣は、残り時間を伝えた。それを聞いた春香達はこくりと頷き………

 

優「よーし、このままペースを掴むぞ! 行ってこい!!」

 

優は春香達の背中を軽く押して、春香達を送り出す。

 

春香達「おおー!!」

 

春香達も気合を入れ、コートへ戻る。対して、爆速の選手達が放つ空気はとてつもない緊張感に包まれていた。

 

優「(本気の爆速はやはり一味違うか………さて、どこまでくらいつけるか………!)」

 

優はその緊張感に危機感を感じた。そして、爆速ボールで試合が再開。ボールが速野に渡ると、速野は素早い動きで切り込んでいき、すぐに速野の前に立った優真を軽く抜き去った。

 

優真「あっ!?」

 

優真を抜いても、速野の動きは止まらない。

 

美矢「こんにゃろうが!!」

 

美矢がすぐさまヘルプに入るが、速野は美矢のスティールも素早い動きで回避した。

 

美矢「なっ!?」

 

速野はそのままインサイドに切り込むと、積牙の前で急停止し、そのままジャンプシュートを狙う。

 

春香「ジャンパー………!!」

 

積牙「決めさせるか!!」

 

積牙は負けじとジャンプするが、速野は一足先にシュートを放つ。更に、積牙は勢い余って速野と激突。そのため、シュートが入った後に………

 

審判「バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

速野に1本のフリースローが与えられた。

 

結衣「積牙くん、これでファール3つです………」

 

結衣はまたしても積牙に不穏な空気を感じていた………

 

 

 

そして、速野はフリースローをあっさりと沈め、33vs34で再び逆転。

 

春香「まだ1点差よ! 皆、落ち着いて返しましょう!」

 

春香はチームを鼓舞すると、美矢に対してボールをパスする。

 

美矢「よーし!」

 

美矢がこれからどうするかを考えようとした時だった。

 

速野「………お前達みたいなチームを相手に切り札を使わざるを得なくなるなんてな………本気にさせやがって………」

 

速野は半ば恨みに近い言葉を口にすると………

 

速野「フォーメーション! {素早き一対一戦術(マッハマンツーマンタクティクス)}実行!!」

 

速野は作戦名を口にする。すると、映鳴達はそれぞれ春香達4人をマークし、速野は美矢の前に立つ。

 

速野「巫魔、お前達はもう詰んでいる」

 

速野は早くも勝利宣言を口にする。

 

美矢「はあ? 詰んでいるだって? そんな馬鹿な事あるものか………!」

 

美矢はそう言うと、ドリブルで速野をかわす。しかし、その直後に速野は美矢を上回るスピードで、再び美矢の前に立ちはだかった。

 

美矢「何っ!?(ふ、振り切れない………!!)」

 

速野のスピードに美矢は驚いていた。更に、他4人も中々マークを振りきれず、苦しい状況だった。

 

優「(これは………オールコートマンツーマンディフェンスか! 普通ならスタミナをゴリゴリ削られるはずだが………)」

 

優は速野を始めとした爆速の選手を見る。5人ともロクに疲れた様子を見せていない。

 

優「(これまでもある程度は全力だったと考えるならば………恐らく、スタミナ切れによる攻略はまず望めないかな………)」

 

優はそう考えると、顎に手を当て………

 

優「(めんどくさい戦法をぶち込んできやがったな、あの監督………)」

 

そう考えながら、羽端に鋭い視線を向けたのだった………

 

 

 

ゆうせいは再び爆速に動き、更に爆速の切り札、{素早き一対一戦術}によって、巫魔は苦しい状況に。果たして、これを攻略する術はあるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
戦記は爆速の策を前に、今の巫魔では苦しいと指摘する。そんな中、懸命にマークを振り切ろうとする積牙だったが………!?
次回「痛恨だな」


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第51話 痛恨だな

前回までのあらすじ
爆速は切り札の戦術{素早き一対一戦術(マッハマンツーマンタクティクス)}を展開。巫魔は振り切れないマークを前に戦う事になり………!?


マークが振り切れない巫魔を観客席で見ていた修也達は………

 

修也「うわあっ、かなりキツイな、爆速は速いだけじゃなくて粘り強いからなぁ………」

 

爆速の戦術の激しさを感じていた。

 

湯津「そういえば、お宅らが去年爆速と全国で戦ったんだっけ。そん時はそっちが勝ったんだったか」

 

湯津は、修也の言葉から、昨年度に爆速を下したのが友力であった事を思い出す。

 

戦記「爆速のスピードとスタミナは、イバラキでもトップクラスだ。爆速に通用する選手が限られている巫魔にとって、これはかなり苦しいな………まだ辛うじて優を温存出来ているのが大きいが………」

 

戦記は爆速の戦術と、巫魔のレベルから自身の感想を述べる。そんな中、マークを振り切れない1人である積牙は………

 

積牙「くそっ! こんなディフェンス………!」

 

どうにかマークを外そうと走り回るが、彼をマークする映鳴は………

 

映鳴「おっと、逃がさないぜ」

 

積牙を決して逃がそうとはしない。

 

積牙「くそっ………!!(振り切るのは無理か………なら、パスで通してもらうしかない………!)こっちに回せ!!」

 

積牙は攻めあぐねる美矢に対して、パスを要求。

 

美矢「江野!!」

 

美矢はどうにかパスを積牙に送る。

 

積牙「決める!」

 

積牙はシュート体制に入るが、映鳴にあっさりとボールを奪われてしまう。

 

積牙「くそっ!!」

 

積牙はすぐさまスティールをし返そうとするが、彼の手は映鳴の手を叩いてしまい………

 

積牙「ファール! 白10番!!」

 

結果、4ファールを誘発させられるという最悪の事態に………

 

アリサ「ああ、あのF、また4ファールだ………」

 

アリサはやれやれといった様子を見せる。

 

戦記「………痛恨だな」

 

そして、戦記は積牙の4ファールを痛恨と称した。

 

積牙「しまった………」

 

積牙は大きく気を落としてしまう。それを見たゆうかは………

 

ゆうか「レイちゃん! 試合に入って!!」

 

やむなく交代を決意した。

 

審判「交代です!」

 

そのため、積牙の代わりにレイが入るが、その後、春香達は結局速野達のマークを振り切れないまま、第2Qは終わってしまった………

 

 

 

巫魔ベンチ………

 

優「参ったなぁ、積牙の離脱が痛すぎる………」

 

優はベンチで困った様子を見せる。

 

積牙「す、すみません………」

 

積牙は申し訳なさそうだった。

 

優「起きたもんはしょうがないよ。それに、あのフォーメーションだって無敵な訳はない。取り敢えず、僕が戻るまでの間にどうにか点を離されないようにしてほしいんだ、頼む」

 

現在の状況は33vs36。前半の大健闘のお陰で現在3点差だが、果たして、この差はどう転がってしまうのか………

 

 

 

爆速の{素早き一対一戦術(マッハマンツーマンタクティクス)}によって、積牙が4ファールを犯すという最悪の事態に。絶望的な状況の中、果たして巫魔に勝機はあるのか………?

To Be Continued………




次回予告
爆速は{素早き一対一戦術}で次々と点差を開いていく。巫魔は一気に絶望的状況に叩き落とされるが………!?
次回「もうダメなのか」


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第52話 もうダメなのか

前回までのあらすじ
{素早き一対一戦術(マッハマンツーマンタクティクス)}を振り切ろうとする積牙だったが、結果として自身の4ファールを招くという最悪の事態に。巫魔は何とか前半を3点差で終えたが………?


試合は巫魔ボールで再開するが、試合が始まれば、速野達の{素早き一対一戦術}が展開。結果、ドリブルもパスもスティールで崩されては、爆速の速攻で点を取られるを繰り返す展開に。

 

湯津「あーあ、こりゃ参った事になったな。さっきから点を取られっぱなしだ。こりゃ、勝つのは爆速かな?」

 

湯津はそう言って、巫魔には勝ち目がないと考えていた。

 

戦記「俺はそうは思わないけどな」

 

しかし、戦記はまだ爆速の勝利を確信していなかった。

 

修也「戦記さんもそう思いますか」

 

そして、修也も同じく爆速の勝利を確信していなかった。

 

湯津「………2人とも頭のネジが飛んだか? どうやってあの戦術を崩すんだよ?」

 

湯津は首を傾げる様子を見せる。すると戦記は………

 

戦記「巫魔としては限られた攻略法になるが、不可能では無い。それに、優だってあれが無敵でない事くらいは前提条件として理解している」

 

そう言って{素早き一対一戦術}が無敵でない事をすぐに見抜いた。しかも、戦記は攻略法すら見つけている。

 

アリサ「限られた方法?」

 

アリサは首を傾げる。

 

戦記「それは………」

 

戦記が説明をしている中、巫魔はどんどん爆速に突き放され、5分経った時には33vs48と、15点差にまで追いやられていた。

 

積牙「(一気に15点差に………! それに、春香先輩達も疲れが見えてきている………もうダメなのか………!!)」

 

積牙はベンチで歯痒い思いをしていた。すると優は積牙の背中を強く叩いた。

 

積牙「痛っ!? ………きゃ、キャプテン………!」

 

優「諦めるには早すぎるだろ、積牙」

 

優はそう言って積牙を励ます。積牙を励ます優の表情はまだ諦めていなかった。

 

積牙「しかしどうすれば………」

 

積牙は優に対し、攻略法が無いと言いたげな様子だった。実際、先程から美矢から先へパスが繋がらない。

 

美矢「(ダメだこりゃ、さっきからパスが繋がらねぇ………それに、皆との距離が離れてパスがカットされちまう………もういっそ、無理矢理シュート狙うか?)」

 

美矢は半分ヤケになり、ハンドボールのようにゴールリングにボールを投げた。当然、こんなボールが入るわけなく、ボールはリングに弾かれ、コートの外へ転がってしまったが………

 

速野「何っ!?」

 

その際に速野から予想外と言わんばかりの驚きの声が漏れた。

 

美矢「(………! 今、驚いていた………!?)」

 

美矢は速野の困惑を見逃さなかった。そして、優やゆうかもそれを目にしていた。

 

優「(今の美矢がやったヤケクソの攻撃に驚いていた………という事は、爆速からすれば今の攻撃はありえないという事………つまり………)」

 

優はそこから何かが思いつき………

 

優「監督、タイムアウト取ってください。あの戦術を崩せるかもしれない策が思いつきました」

 

ゆうかにタイムアウトを取るよう要求。

 

ゆうか「分かったわ」

 

ゆうかはそれに頷くと、審判団の元へ行き………

 

審判「巫魔、タイムアウト!!」

 

後半1回目のタイムアウトを取ったのだった………

 

 

 

爆速の{素早き一対一戦術}に苦戦する巫魔。しかし、戦記はその攻略法を理解し、優も攻略法を編み出した。果たして、その答えは………?

To Be Continued………




次回予告
優はスピードではどうあがいても崩せない事を口にする。しかし、爆速の{素早き一対一戦術}は、予想外の動きには対応出来ない弱点がある事も口にした優は………?
次回「相手の裏をかこう」


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第53話 相手の裏をかこう

前回までのあらすじ
爆速の切り札、{素早き一対一戦術(マッハマンツーマンタクティクス)}に苦戦する巫魔。打つ手なしと思われた所で見えた爆速の思わぬ隙。それに目をつけた巫魔はタイムアウトをとる………


巫魔ベンチでは、優を中心に円形に座ると、小型のホワイトボードを使って説明を始める。

 

優「まず、爆速のあの戦術だが、これはマンツーマンディフェンスであると同時に、あの5人が持つスピードを活かして、マークしている相手を360度、全ての角度から逃がさないようにする戦術だ。まあ、分かりやすく言うと相手を逃がさないマークってわけだな」

 

優は{素早き一対一戦術}の原理を説明。

 

光一「それって相手が持たないんじゃねえのか?」

 

光一は優に対し質問をする。

 

優「いや、相手さんは今のところあんまり疲れていない。恐らく、試合終了までスタミナ切れという希望は無いだろうね」

 

優がそう言った為、春香達の不安を煽ってしまうが………

 

優「まあでも、マンツーマンディフェンスは無敵じゃない。なんせ、相手の動きをよく見ないといけないからね。実際、さっき美矢が放った適当なシュートには驚いてたし………多分、予想外には対応出来ないタイプの戦術だよ、あれは」

 

優はそう言って、冷静に{素早き一対一戦術}に求められるスキルと、これは選手の予想外の動きには対応が難しい点がある事を予想する。

 

優「多分、フェイクやダブルクラッチを織り交ぜられれば、上手くいくと思う気がするんだ。つまり………相手の裏をかこう………って訳だね」

 

優はそれに対し、ダブルクラッチやフェイクを織り交ぜることを提案する。

 

春香「成程………分かりました、試してみましょう!」

 

春香達はこれに頷く。そして………

 

ゆうか「それじゃあ、優真ちゃんをここで下げるわ。そして………優くん、行けるわね?」

 

監督のゆうかは、ここで優を再度出場させる事に。

 

優「はい!」

 

優は体を冷やさないよう羽織っていたジャケットを脱ぐと、ベンチから立ち上がり………

 

優「後15分、15点差はかなり重いけど、まだ覆せる。行くぞ、皆! 相手の切り札を崩して、逆転しよう!!」

 

春香「おおー!!」

 

諦めない姿勢と共に、チームを鼓舞した。それを爆速ベンチから見ていた速野は………

 

速野「まだ諦めていない………? バカか、アイツらは………? そんなの不可能に決まっている………!」

 

優達が諦めていない事を鼻で笑った。しかし、監督の羽端は………

 

羽端「うーん、これはまだ勝ち確とは言い難そうだね………」

 

速野の様子から、まだ勝利を確信してはいなかったようだった………

 

 

 

15点差という絶望的な状況の中、優は苦しい展開を覆そうと、作戦を仲間に伝えた。果たして、優の作戦は吉と出るか、凶と出るか………?

To Be Continued………




次回予告
優は早速自身の作戦を展開する事に。マークしてくる選手達を翻弄するという作戦を展開。その中で、優は新たな発見をし………?
次回「思い通りになんてさせねぇ」


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第54話 思い通りになんてさせねぇ

前回までのあらすじ
{素早き一対一戦術(マッハマンツーマンタクティクス)}に苦戦する巫魔。優はこの戦術の性質を見抜く。そして、攻略の為の作戦を仲間に伝え………?


審判「タイムアウト、終了です! 同時に巫魔、交代です!」

 

審判の言葉でタイムアウトが終わり、同時に優真と交代する形で優がコートに戻ってきた。

 

アリサ「あっ、ユーが戻ってきた!」

 

優が戻ってきた事で、修也達も試合への興味を再熱させた。

 

戦記「優が戻ってきてどうにもならないようであれば、巫魔の負けは決定的だ。しかし、 これを覆せるならば………まだ試合は分からないな」

 

戦記は、優の帰還した今が勝負の分かれ目だと読んでいた。そして、ボールは爆速のスローインで再開。ボールは速野に渡ろうとしていたが………

 

美矢「させるかー!!」

 

美矢が強引にボールの起動を別方向へ弾く事でスティールし、優がこぼれ球を拾うと、左手の人差し指を掲げ………

 

優「行くぞ! ここで爆速の戦術を崩す!」

 

改めてコートの上で、爆速の{素早き一対一戦術}を崩す事を宣言する。優はこの宣言の後、姿勢を低くし、インサイドへ切り込んだ。

 

速野「ぐっ! 無駄なあがきを………!!」

 

すぐに速野が走り込んでくる。しかし、優は臆せずにそのままダンクを行う為に、フリースローラインから大ジャンプをする。

 

湯津「あ、あれってレーンアップじゃねえか!? あんな大技出来るって幾つだよ、あの4番………!」

 

湯津は、優が見せた超高校級のプレイに驚いていた。当然、これを目の前で見ていた速野も驚きを隠せなかったが………

 

速野「………止める!!」

 

速野も負けじとジャンプし、右手を伸ばす。流石にこれをかわすのは無理………と、会場にはそのような空気が流れる中、ゆうは柔軟性を活かし、速野を中心の軸とするように、右回転のダブルクラッチでこれをかわす。

 

速野「なっ!?」

 

速野は驚きを隠せなかった。

 

優「確かにアンタらの戦術を真正面から戦ったら9割負けるだろう………でもね………」

 

優はボールを持った右手を振り上げ、そこから力任せにリングへボールを叩きつけた。

 

優「アンタ達の………思い通りになんてさせねぇ………!!」

 

直後に得点の笛がなり、35vs48に。ようやくの後半初得点である。

 

美咲「やった! 後半初得点だよ!!」

 

これにより、巫魔ベンチの美咲を始めとした選手達が盛り上がっていた。

 

映鳴「やられたな………やっぱ、あの4番は違うな、速野」

 

映鳴は、優のポテンシャルを素直に評価していた。しかし、速野は………

 

速野「いや、まだ大丈夫だ………それに、俺達の{素早き一対一戦術}は死んでいない。ここで、巫魔を更に突き放すぞ!」

 

速野は半ば焦りながらも、それを隠すようにそう言って勝負を続行する。そんな彼の様子を見ていた優は………

 

優「(………もしや、速野信太は………焦ってる?)」

 

速野の焦りを察知する素振りを見せたのだった………

 

 

 

ゆうの華麗な攻撃で、遂に後半初得点をあげる優達。更に、優は速野の焦りを察知する。優はその予感をどう利用するのか………?

To Be Continued………




次回予告
速野が焦っている事を利用するべく、優は積極的に速野とマッチアップする。その度にフェイクを使ったり、使わなかったりして速野を翻弄し………!?
次回「利用するまでだ」


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第55話 利用するまでだ

前回までのあらすじ
爆速の{素早き一対一戦術(マッハマンツーマンタクティクス)}を破る為に、優達はフェイクやダブルクラッチを織りまぜた作戦を展開する。優はその中で、速野が焦っている事を悟り………?


優は速野が焦っていると察知した瞬間、美矢に近づき………

 

優「なあ美矢、マッチアップ変わってくれないかな?」

 

速野の相手をしていた美矢にマッチアップ相手を交代してほしいと依頼する。

 

美矢「キャプテンならまあいいけど………策はあるのか?」

 

美矢は首を傾げながら優に策を問いかける。

 

優「勿論」

 

優は即答した。それを聞いた美矢は………

 

美矢「じゃ、信用する。頼むぜ、キャプテン」

 

そう言って、ゆうがマッチアップしていた野村をマークする事に。

 

速野「………どういうつもりだ」

 

速野はマッチアップが変わった事に首を傾げるが………

 

優「別に。利用出来るものは、利用してやるまでだ………そんな気持ちなだけですよ」

 

優は強気な様子でそう言い返す。

 

速野「クソガキが………!!」

 

速野は優の挑発に乗った………これが、優の狙いと気付かず………

 

 

 

そして、試合は爆速ボールで再開。速野はボールを受け取ると、ドリブルを行って攻めるが………当然、そこへ優が立ちはだかった。

 

速野「(俺が………こんな奴に負けるものか………!!)」

 

速野はそう考えながら優を左から………と見せかけて右からかわそうとする。しかし、優は冷静に速野の足を見て………

 

優「(左………にしては勢いが弱すぎる………フェイントか………!)」

 

速野の動きについて行き、彼のボールをスティールした。

 

速野「何っ!?」

 

フェイントを看破された事に速野は激しく動揺する。

 

優「速攻! 上がれ!!」

 

優はドリブルで深く切り込み、ゴールに近づいていく。だが、速野も持ち前の瞬足で優の前に立ちはだかる。

 

速野「(落ち着け………! コイツにはダンクしかない………コイツには………!!)」

 

速野は優に対し冷静に対処しようとするが、優はボールを右手に持ち、膝を曲げる………

 

速野「(来る………!!)」

 

速野は大きく飛び上がる。しかし、優は飛ばなかった………何故なら、彼は膝を曲げた後………そのまま静止して飛ばなかったからだ。

 

速野「なんだと!?」

 

速野は深く動揺する。そして、優は外の春香にボールをパスする。

 

岡崎「撃たせない!!」

 

岡崎が春香の前に立ちはだかるが、春香は冷静にフェイダウェイによるスリーポイントシュートを放つ。気付いた時にはもう岡崎は対処できず、春香の綺麗なスリーは見事に決まった。

 

速野「ぐうっ………!!」

 

そしてこのスリーが、有利なはずの爆速に、不穏な空気を齎した………

 

 

 

それから1分程経ち、ボールは再びゆうの元に。マッチアップ相手は当然速野。

 

速野「(落ち着け、俺………! 実力は俺の方が上だ………!!)」

 

しかし、今の優にとって速野は敵じゃなかった。優は速野信太という人間を、理解しかけていた。そして、優は再び膝を曲げる。

 

速野「(またフェイクだな………! 騙されるか!!)」

 

速野はこれをフェイクと考えたが、優は直後に大ジャンプした。

 

速野「何っ!?」

 

速野は激しく動揺。優はゴールへと向かう中で、こんな事を考えていた………

 

優「(速野信太………確かに実力は県でも屈指だ………でも、この人には致命的問題がある………それは、自分に対して無茶苦茶な驕りがある………! そして、その驕りは………この人の弱点だ………!!)」

 

そして優はダンクを決め、2点を追加するのだった………

 

 

 

速野の動揺を利用したプレイで、点を詰めていく優達。果たして、優達はこのまま逆転出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
速野の隙を突いたプレイで点を量産する優。結果として、爆速のリードは遂に崩れかけていた。それに気づいた爆速監督の羽端は………!?
次回「君がしっかりしないと」


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第56話 君がしっかりしないと

前回までのあらすじ
速野の焦りを察した優は、それを突くように速野とマッチアップを狙う。結果、優の戦術は次々と爆速のリードを崩していき………?


その後も優は絶好調とも言える程に速野を圧倒していた。

 

湯津「こりゃ驚きだな………去年の県大会じゃ戦記か、力豪の滝川くらいしか相手にならなかったというのに、知名度の無い高校の一選手に圧倒されるとはねぇ………」

 

湯津は、速野が優に圧倒されていた事にかなり驚いていた。

 

戦記「15点リードによる慢心だな」

 

戦記は冷静な様子でそう呟く。

 

芽衣「………成程、大量リードした事で、元々速野さんにあった慢心が更に大きくなった………そういう事ですね」

 

直後に戦記の言葉の意味を察した芽衣は、言葉の意味を語る。

 

修也「あそこまでブーストがかかったアイツはそう簡単に止められねえぞ………ましてや、慢心が晴れないようじゃ、尚更優の方が有利だ………」

 

修也の言葉は事実だった。この時の速野は優とマッチアップしては、抜かれるの繰り返しだった。この光景に、会場の空気は驚く程静かだった。これまで2年間、イバラキ三大王者同士の試合でしか見れなかった、王者の崩壊が目の前に迫っていた………

 

速野「くそっ………俺は………俺は負けるものか!!」

 

速野はそう言って、再び優とのマッチアップに挑むが、優は冷静なターンアラウンドで速野をかわした。

 

速野「なっ!?」

 

速野はそのまま尻もちをつくように転んでしまう。そして、優はそんな速野を置き去りにするように、ダンクで追加点を決めた。

 

伊吹「いよっしゃあー!! いよいよワンゴール差だ!!」

 

そうこうしているうちに、点差は50vs52の一点差になった。同時に第3Q終了のブザーが鳴り、試合は残すところ、あと10分に………

 

 

 

巫魔ベンチでは喜びの声が上がっていた。第3Qで一気に点を離される事態になったが、優の策によって、巫魔はそれが嘘のように巻き返したので、喜ぶのも無理は無いが。一方、爆速ベンチの空気は最悪だった。

 

映鳴「参ったな………速野が通用しないんじゃお手上げだよ………あの4番、化け物か………」

 

爆速は優が止められないという絶望的な状態に、意気消沈していた。速野もそれを分かっているからこそ、何も出来ない今の状況に苦しんでいた。

 

速野「くそっ………俺は………」

 

速野が自身の中で苦しんでいると、監督の羽端は速野の肩に触れる。

 

速野「………! 監督………!!」

 

速野はまた叱られると考え、脅える様子を見せる。しかし、羽端は………

 

羽端「落ち着きなよ、速野くん。君がしっかりしないと………!」

 

速野に対し優しい言葉をかけた………

 

 

 

優の作戦によって、とうとう巫魔はワンゴール差にまで追いついた。追い詰められる爆速、そのキャプテンの速野に、羽端がかける言葉は………?

To Be Continued………




次回予告
羽端は、速野の努力を認めた上で、勝つ為に速野の頭が必要だと諭す。それを聞いた速野は落ち着きを取り戻し………?
次回「私に全国制覇の夢を見せてよ」


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第57話 私に全国制覇の夢を見せてよ

前回までのあらすじ
優の策により、巫魔はとうとう2点差にまで追いついた。速野達はこの事態に意気消沈するが、監督の羽端は速野に対し優しい言葉をかけ………?


速野は、羽端の言葉に対し、呆気に取られて言葉を失った。

 

羽端「これまで結構厳しく指導してきたけどさ、速野くんは私が爆速で見てきた子の中で1番の子だよ」

 

羽端は続けて話をする。

 

羽端「1年の頃からもうレギュラーだし、去年はイバラキでも、守城の戦記良太と並ぶ程の名PGにまで成長したよね」

 

羽端が速野に語ったのは、過去2年彼女が見てきた速野の事だった。

 

速野「監督………そんな事、今になって何故………?」

 

速野は、羽端の厳しい面ばかり見てきたのか、今の羽端の言葉に驚きを隠せずにいた。

 

羽端「………私が入部した新入生に対して、いつも何を言ってたか………覚えてる?」

 

羽端は続いて速野に対し、問いかけをする。

 

速野「………全国制覇をする………ですか?」

 

速野は入部時に聞いた言葉を思い出す。

 

羽端「そう。そして君がいれば、それも夢じゃないなって思ったんだよ」

 

羽端はそう言うと、速野の頭に手を伸ばし、彼の頭を撫でる。

 

羽端「私に全国制覇の夢を見せてよ。君達になら出来る。そう信じてるから」

 

羽端は、選手達に期待を寄せる。それを聞いた速野は目に涙を浮かべ………

 

速野「………うっす………!」

 

羽端の言葉に頷いた。そして、涙を拭き取ると………

 

速野「皆! 確かに今は2点差と苦しい状況だが………俺達の闘志はまだ死んじゃいない!! 寧ろ、ここからが本番だ!!」

 

速野は映鳴達に言葉をかける。意気消沈していた映鳴達は、速野の発破に驚いていた。

 

速野「そして、俺は認める………相手は守城や力豪クラスだ。そのつもりで戦う。いや、初めからそう戦うべきだったんだろう………」

 

速野は右手で握り拳を作ると………

 

速野「俺達は慢心しちゃいけねえ。相手は強いチームだと認めた上で戦う。それこそ今の俺達、爆速に求められている事だ」

 

速野はそう言うと、握り拳を胸に当て………

 

速野「それと、監督に見せてやろうぜ………全国制覇した俺達を!!」

 

羽端への恩から、この場で全国制覇を誓う様子を見せた。

 

映鳴「速野………!?」

 

映鳴は、速野の言葉と様子に驚いていたが、彼の様子からそれが本気だと察し………

 

映鳴「………そうだな、監督には沢山の恩があるしな………俺達で成し遂げようぜ、全国制覇………!!」

 

映鳴達も戦意を取り戻した。

 

速野「よーし、行くぞお前ら!! あと10分! 全力を持って巫魔を倒す!!」

 

速野は、闘志が復活した映鳴達と共に、残りの10分を全力で戦う事を決めたのだった………

 

 

 

残り10分。羽端の言葉で復活した速野達は、残る時間を全力で戦う事を決めた。果たして、残り10分。勝負を制するのはどちらか………!?

To Be Continued………




次回予告
いよいよ始まる第4Q。油断や慢心を捨てた爆速は、再び巫魔を突き放し始める。そして、ゆう達は爆速に再び苦戦する事となり………!?
次回「これが本気の爆速か」


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第58話 これが本気の爆速か

前回までのあらすじ
羽端は速野を鼓舞した上で、全国制覇の夢を速野に託した。速野達は羽端の夢を叶える事を決め、慢心を捨てたのだった………


審判「第4Q、始めます!」

 

審判の言葉でいよいよ第4Qが開幕しようとしていた。巫魔に勝利の希望が見える中、速野を始めとした爆速選手達は落ち着いていた。

 

戦記「………速野が落ち着いている………先程のインターバルで何かあったようだな………しかし、確実に分かる事は1つ………巫魔が勝つ為には、もう1つ試練を乗り越えねばならぬという事だ………!」

 

戦記はその様子からその事を予感していた。そして、爆速ボールで試合が始まったのだが、速野にボールが渡った瞬間、速野は先程よりも素早い動きで巫魔のコートへ走ってきた。

 

優「(………!! 速い!?)マーク! 絶対にパスを回させないで!!」

 

速野のスピードに驚きつつも、優達はマンツーマンで守りを固める策に打って出る。

 

速野「マンツーマン………都合がいい………!!」

 

速野はそう呟くと、マッチアップ相手の美矢の前に立つなり、1秒もしないうちに姿勢を低くし、美矢の真横を走り抜けるドライブで美矢を抜き去った。

 

美矢「うわっ!?」

 

美矢は驚きを隠せなかった。

 

春香「美矢ちゃんが抜かれた………!?」

 

優「ぐっ!」

 

優がすかさずヘルプに入ったが、速野は先程圧倒されていた優を目の前にしても動じる事は無く、寧ろ、冷静な様子で優を左から抜いてしまった。

 

優「何っ!?」

 

速野の動きに優は動揺する。そして、速野がそのままレイアップを決めた事で、点差は再び4点差に。

 

速野「(勝つ………! 俺達は絶対に………!)」

 

速野はすぐにディフェンスの為に自身へと走る。その様子を見た優は………

 

優「(………さっきと比べてとても落ち着いている………あの様子は、まるで僕達を全力で狩ろうとでも言わんばかり………今のプレイでよく分かった………これが本気の爆速か………!)」

 

優は、今のプレイから、爆速は正真正銘の全力状態となった事を察した………

 

 

 

それからの爆速のプレイは凄まじいものだった。

 

速野「映鳴!!」

 

PG速野がこれまでに無い程絶好調となった事で、映鳴達4人のプレイもキレが増していた。結果、速野を起点としたインサイドへボールを運ぶ戦術で、爆速が再びペースを掴み始める。それにより、巫魔はなんとか点差を繋ぎ止める苦しい展開へと追い込まれる。

 

春香「はあっ、はあっ………」

 

美矢「ぜえっ、ぜえっ………」

 

第4Q5分に差し掛かった時には、56vs62の6点差。巫魔が勝つ為にはもうこれ以上突き放される訳にはいかない。

 

優「(あと5分………これでどうにか6点差を逆転しないと………!)」

 

優は苦しい状況で、巫魔に残された時間が少ない事を感じさせられるのだった………

 

 

 

速野がチームの主軸として復活した事で、爆速は勢いを取り戻す。6点差を追う巫魔に勝つ術はあるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
勝つ為にはこれ以上突き放される訳にはいかない巫魔。しかし、チームの疲労は激しいもので………
次回「倒れらんねえよ」


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第59話 倒れらんねえよ

前回までのあらすじ
爆速のPG、速野の復活で再び流れを掴もうとする爆速。巫魔は6点を追う苦しい展開となり………!?



湯津「また爆速が盛り返し始めた………目まぐるしい試合展開だな………」

 

湯津は数分感覚で変わる試合にハラハラさせられていた。

 

戦記「それは速野が調子を取り戻した事が大きいな。調子のある奴は、かなり脅威だ。それに、巫魔の限界が近い………」

 

戦記は速野の絶好調と、巫魔の限界が間近に迫っている事を指摘する。戦記の指摘は最もで………

 

春香「はあっ、はあっ………」

 

美矢「はあっ………くそっ………!」

 

主に春香と美矢の2人に、スタミナの限界が近づいていた。

 

優「2人とも、大丈夫かい?」

 

優は肩で息をしながら2人にそう問いかける。

 

美矢「………そういうキャプテンはどうなんだ?」

 

美矢は優が残しているスタミナを問いかける。

 

優「うーん、試合が終わるまでは持つかな………ってとこかな………」

 

どうやら優は試合が終わるまでは持つらしい。

 

美矢「私は結構やべぇ………と言いたいが、最後まで戦うつもりだ………今、私がバスケ出来るのは………キャプテンや優真、そして、ここにいない明日香のお陰なんだ………倒れらんねえよ………!!」

 

美矢は苦しそうだったが、今自分がバスケを出来る理由から、自分が倒れる事を許せなかった。

 

優「………体調を崩す程に無理はするなよ」

 

優は美矢の背中を軽く叩く。すると、美矢はふらつく様子を見せた。

 

優「大丈夫か、美矢………?」

 

優は心配を隠せなかった。春香はろくに会話も出来ないほど疲れていたが………

 

優「………頑張ったら、後で何でもご褒美あげるよ」

 

優は春香を励ます言葉をかける。すると、春香は息をあげながらも、優の耳元に近づき………

 

春香「その約束、忘れないでくださいね………!」

 

春香は半ば誘惑するように、優へ言葉を返すと、ゴールの後に地面に転がっていたボールの方へ走り出す。

 

優「春香も大丈夫かな………まあ、いいか。とにかく、6点差を崩さないと………!」

 

優は春香と美矢のおかしい様子に首を傾げるが、今は6点差を崩す事に尽力する事を決意する。そして、ベンチで優達の様子を見ていた積牙は………

 

積牙「キャプテンは………勝つ事を諦めていない………」

 

優がまだ諦めていない事を悟った。

 

積牙「俺もキャプテンの助けになりたい………こんな所で見てるだけなんて………そんなの嫌だ………!」

 

それを見た積牙もまた、優に触発される様子を見せたのだった………

 

 

 

巫魔が追い詰められる中、ゆうはチームを励ましながら繋ぎ止めていく。この光景を見た積牙は、そんな彼に大きく触発されるのだった………

To Be Continued………




次回予告
積牙は4ファールという状況にも関わらず、試合に出る事を訴える。監督、ゆうかが下す決断は………?
次回「思いっきりやりなさい」


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第60話 思いっきりやりなさい

前回までのあらすじ
6点差を前に限界が迫る巫魔。優の鼓舞を受け、なんとかコートに立ち続ける春香と美矢。そして、それを見たベンチの積牙は………?


積牙はベンチを立つと、ゆうかの前に立ち………

 

積牙「監督、俺を出してください!」

 

出場を直談判する。それを聞いたゆうかは………

 

ゆうか「今更貴方が出て、この状況をひっくり返せるの? それ以前に、貴方は4ファールじゃない」

 

そう言って、今の積牙に何が出来るのかを問いかける。

 

積牙「それは………分かりません。けれど、このまま見てるのだけは嫌です! それに………他力本願な気持ちで全国になんて行けるわけが無い………俺は、俺の持っている力をぶつけて………今の状況を振り切る! 出来るかは分からないけれど………それが今の俺がやるべき事だと言うのだけはハッキリしています!」

 

積牙はそう言うと頭を下げ………

 

積牙「お願いします、 俺を出してください!」

 

再度試合の出場を懇願する。

 

ゆうか「………」

 

ゆうかは少し悩む様子を見せる。そして、いつの間にか再開していた試合にて、ボールがコートの外に出る。

 

審判「白ボール!」

 

巫魔ボールとなったタイミングでゆうかはベンチを立ち………

 

審判「交代です!」

 

積牙を出す事を決めた。

 

積牙「監督………!」

 

本当に試合に出してくれる事に驚く積牙。

 

ゆうか「何ポケーってしてるのよ。速くジャージ脱いで行きなさい」

 

ゆうかはそんな彼に対し、コートに行くよう支持する。

 

積牙「は、はい!」

 

積牙はジャージを脱いだ後、軽く体を動かした。すると、ゆうかは積牙の耳元に近づき………

 

ゆうか「………頑張った結果、退場したっていいわ。思いっきりやりなさい………貴方のやり遂げたい事の為に………!」

 

そう言って、積牙の背中を優しく叩く。

 

積牙「………はい!」

 

積牙は強く返事をすると、コートに走り………

 

積牙「レイ先輩!」

 

レイと交代する事に。だが、ここで4ファールの積牙を出す事に、会場は驚きを隠せなかった。

 

湯津「ここで4ファールの10番!? 勝負を投げたか、巫魔!?」

 

湯津は驚きを隠せない。

 

戦記「………普通に考えたら幾ら高さがあると言っても、ここで10番を出す事は良い事じゃない。だが………もしだ………もし、あの10番にこの状況を覆せる力があるならば………話は別だ………!」

 

だが、戦記は冷静に試合を見る姿勢を崩さない。

 

レイ「………よろしく」

 

レイは素っ気ない気持ちで積牙の肩を触り、ベンチへと歩く。

 

優「積牙」

 

その直後、優は積牙の元へ近づく。

 

積牙「キャプテン………」

 

積牙は何を言われるが分からず、ビビっていた。しかし優は積牙の背中を叩くと………

 

優「思いっきりやれよ。フォローするから」

 

積牙を鼓舞してポジションに着く。それを聞いた積牙は………

 

積牙「………はい!」

 

返事を返した後、ポジションに着くのだった………

 

 

 

この土壇場で積牙がコートに戻ってきた。4ファールの積牙はすぐに退場してしまうのか。それとも………!?

To Be Continued………




次回予告
積牙をすぐに退場へ追い込もうとするが、積牙は前半とは別人のようなプレイを見せる。積牙は今まで以上に試合へのめり込んでおり………?
次回「他がどうでも良くなる」


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第61話 他がどうでも良くなる

前回までのあらすじ
積牙は監督のゆうかに出場を直談判する。それを受け入れたゆうかは、積牙を4ファールの身の中出場させる………!!


速野「(ここで10番………何を考えている?)」

 

速野は首を傾げる。

 

羽端「(私がゆうかの立場なら、幾らか決定力のある8番ちゃんを下げてまで4ファールの10番くんは使わない………まだ巫魔側に勝ち目がある場面で一体何を考えているの………?)」

 

この大事な場面で積牙が出てきた事には羽端も首を傾げる。そして、審判の笛が鳴り、試合再開。ボールをコートに投げ入れるのは優。

 

優「皆! ここは確実に1本取るぞ!」

 

優がチームを鼓舞すると、ボールをコートに投げる。これを受け取ったのはなんと積牙。受け取った直後、ドリブルに転じるが………

 

速野「10番を締め出す!」

 

それを受けて速野は積牙を5ファールにすべく指示を出し、映鳴と野村の2人をつける。

 

芽衣「あの10番くんを退場に追い込む気だね………」

 

積牙のファール率の高さは過去の試合から証明済み。そして、きついマークをし、パスする間も与えなければ、積牙は十中八九ファールする。会場の誰もがそう思っていた。

 

速野「よし! 無理して取りに行かなくていい! そいつからパスをさせなきゃ上出来だ!」

 

速野もそれを理解していた為、映鳴達に無理なプレイをさせず、24秒のバイオレーション、もしくは積牙のファールが成立する事を最優先にさせた。結果、積牙は攻めあぐねてしまい、いつの間にか時間は5秒を切る。爆速のベンチ陣も、24秒ルールが成立するまでの時間をカウントする。

 

爆速選手「5! 4! 3!」

 

時間は残り3秒。

 

羽端「(もらった………!)」

 

羽端が24秒経つのを確信したその瞬間だった。積牙は研ぎ澄まされた目をしながら姿勢を低くし、映鳴達の僅かな隙間を抜ける神業的なドライブでかわした。

 

速野「何っ!?」

 

芽衣「ええっ!?」

 

これには、会場中で驚きの声が漏れた。ダブルチームを抜いた積牙は残り1秒のタイミングでジャンプし、シュートを放つ。シュートは綺麗にゴールへ吸い込まれた。

 

伊吹「よーし! 4点差だ!!」

 

巫魔は喜びの声をあげる。

 

光一「やったぜ、セッキー!!」

 

光一や美矢は積牙に近づく。しかし、積牙は褒め言葉が耳に入っていないのか、表情を変えなかった。

 

優「おーい!! ディフェンス!! すぐ来るぞ!!」

 

優は爆速が試合を再開させようとしているのを見て、すぐにディフェンスを指示。

 

美矢「分かった! ………何はともあれ、良かった」

 

美矢は積牙のプレイを褒めると、ディフェンスに戻る。積牙もディフェンスポジションにつく。

 

積牙「(あの数秒………5秒にも満たない間だったかな………1本決める。その為なら………他がどうでも良くなる………そんな気分だった………俺がバスケを初めてからの数年………こんな事は初めてだ………)」

 

その時、積牙はあの5秒にも満たない時間の中でそんな気分になっていたのだった………

 

 

 

積牙のスーパープレイで4点差に追いつく巫魔。果たして、今の積牙のプレイは追い風となるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
4ファールとは思えない積牙の絶好調状態で、残り1分。遂に巫魔は同点に追いつく。その際、積牙は速野相手に今試合1番のドライブを見せる………!
次回「勝つんだ」


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第62話 勝つんだ

前回までのあらすじ
4ファールである事から積牙を締め出そうとする爆速。しかし、積牙は4ファールとは思えない神業的なドライブを決め、4点差に詰める………!


観客席で試合を見ていた戦記は、先程積牙が見せた神業的なドライブを思い出していた。

 

戦記「あの10番………今までは高いだけだと思っていたが………この土壇場で覚醒したな………」

 

戦記は積牙が見せたドライブから、彼の成長を読み取った。

 

修也「そういえば………前やった時はうちのキャプテンを相手に歯が立たなかったもんな………まさかあそこまで成長しているなんてな………」

 

以前、身軽を相手に完膚なきまでに叩きのめされた積牙の姿を見ている修也は、積牙の大成長に驚いていた………

 

 

 

それから積牙の快進撃は止まらず、オフェンスにおいて強烈なドライブを連発。優や光一へのパスを挟みながら、巫魔は爆速を相手に健闘していた。そして、残り1分。とうとう2点差に詰めた巫魔。積牙はまたしても素早いドライブを決めると………

 

積牙「キャプテン!」

 

積牙はボールを高く打ち上げる。直後にゆうは大ジャンプすると、ボールをキャッチしてそのままゴールに押し込んだ。

 

あずさ「アリウープ!! そして………同点!!」

 

巫魔はいよいよ同点に追いついた。

 

光一「よーし!!」

 

光一の喜びの声が吠えるように体育館に響く。

 

速野「まだだ! あと1分! 気を抜かずに行け!」

 

速野は冷静に残る時間を戦う事に。

 

岡崎「速野!」

 

岡崎は速野に向けてパスをする。

 

優「勢いを止めさせはしない!」

 

なんと優はリスクを顧みずにスティールし、ボールはコート内に零れた。

 

速野「何っ!?」

 

速野は驚きを隠せずにいた。

 

優「ボールを拾え!! ここで逆転する!!」

 

優は混乱する状況の中、落ち着いて指示を出す。ボールはコートのライン内側のギリギリをバウンドし、コートの外に出る。

 

美矢「まだだ!!」

 

そこに美矢が飛び込み、ボールをなんとか内側に戻した。戻ってきたボールを積牙がキャッチする。

 

速野「逆転なんてさせない!!」

 

速野は積牙の前に立ちはだかる。速野は相手が積牙だからといって手を抜くつもりは無かった。積牙はボールを地面にバウンドしながら何とか逃げようとするが、速野は必死にディフェンスをして逃がそうとしない。だが、積牙は集中しきっているのか、ディフェンスを苦しいとは思っていない。

 

積牙「すうっ………」

 

積牙は息を漏らす。そして、この時の積牙には彼から見て速野の左側に光が見えていた。

 

積牙「(………行ける!)」

 

積牙は速野の一瞬の隙を突き、光に向かって姿勢を低くしてドライブをする。

 

積牙「絶対に………勝つんだ!!」

 

強く硬い、決意の言葉を口にしながら………

 

速野「(は、速い!?)」

 

速野の左スレスレをかわす積牙。今試合1番のドライブを前に、速野は尻もちをつくように転んでしまう。

 

優「(すっげえドライブ………! もしかしたらあれが………積牙の隠れていたスキル………!)」

 

積牙の覚醒に優は強く感心する様子を見せる………だが、この時に審判の笛が鳴る。

 

審判「………白10番、プッシング!! 5ファール!!」

 

なんと、審判から見て速野が転んだのは積牙が接触したからと取られてしまい、積牙の5ファールで退場が決定してしまう。

 

伊吹「な、なんだよそれ!? 触ってねぇだろ!!」

 

観客「そうだ!! ファール取り消せ!!」

 

この判定には会場中から抗議の声が飛んでいた。

 

優「………! 珍しい事もあるもんだ………しかし、積牙の退場は覆らないか………」

 

優はそう呟くと積牙に近づく。積牙は大人しく右手をあげ、退場を受け入れる。

 

優「積牙………ナイスファイト」

 

優は積牙の肩を優しく叩く。そして、速野も積牙に近づき………

 

速野「………最後のドライブだけは認めてやる」

 

積牙の最後のドライブを認める様子を見せた。積牙は純粋に嬉しそうな表情を見せた後、交代要員としてレイがコートの方へ走ってくるのを目にすると………

 

積牙「………皆さん! 後は任せます!!」

 

そう言ってコートを後にした。試合は残り41秒で得点は66vs66。同点の中、試合は最終局面に突入したのだった………

 

 

 

積牙の大活躍でついに同点へと追いついた巫魔。1分を切った最終局面。果たして、勝負を制するのは巫魔か爆速か………!?

To Be Continued………




次回予告
爆速のボールで試合再開。優達はラストアタックで逆転する為に懸命なディフェンスをする。しかし、速野達爆速も勝つ為の執念を見せ………!?
次回「執念だ」


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第63話 執念だ

前回までのあらすじ
積牙の活躍が加わり、巫魔はとうとう同点にまで追いつく。だが、ドライブを決めた積牙はファールを取られてしまい、退場してしまうのだった………


速野「残りは41秒! この1本を決めて、爆速が決勝リーグに行くぞ!」

 

速野はそう言うと岡崎のスローインで試合再開。速野はボールを受け取るが、直後に美矢が速野をマークする。

 

速野「(厳しいディフェンス………! ならパスで………なっ!?)」

 

速野はパスをしようとするが優達3人が映鳴達をマーク。羽柴がフォローに走ろうとするが、そこに春香が駆けつけ、羽柴へのパスコースを封じる。

 

優「ここを死守する!」

 

優はそう言うと、速野達を絶対に抜かせまいとする懸命なディフェンスを繰り返す。

 

戦記「………両チームとも理解しているようだな………次の1本を決めた方が、この試合を制する事を………!」

 

観客席で見ていた戦記達は、次の1本が結果を決める事を呟く。両チームともそれを理解しているからこそ、爆速は慎重に攻めの時を待っており、巫魔は懸命なディフェンスをしていた。結果、20秒近く経っても爆速は珍しく攻めあぐねていた。そして、時間は残り20秒。爆速の24秒まで後3秒にまで減っていた。

 

羽端「速野くん! 攻めなさい! ここで点を取って、勝つわよ!!」

 

爆速監督の羽端は珍しく攻める事を求めた。それを聞いた速野は、点を取りに行くと同時に頭を冷静にさせる。それにより、懸命なディフェンスを行う美矢のほんの一瞬の隙を見た。

 

速野「(ここだ………!)」

 

速野は一瞬の隙を突き、鋭いドライブでかわす。

 

伊吹「残り2秒!!」

 

速野「まだだ!」

 

速野はなんと、たった2秒にも関わらず大ジャンプする。

 

光一「決めさせねぇ!!」

 

光一はジャンプし、速野のシュートコースを防ぐ。

 

速野「くあああ!!」

 

速野はダブルクラッチで光一をかわす。しかし………

 

優「まだだぁ!!」

 

速野のかわした先には、大ジャンプした優がブロック体勢に入っていた。

 

速野「優………俺はここで負ける気は………ねぇんだよ!!」

 

だが、速野はまたしてもクラッチを行い優をかわしてしまった。

 

美咲「と、トリプルクラッチ!?」

 

速野「はあっ!!」

 

速野は0秒になる前にボールをゴールに向けて放り投げた。速野の放ったボールはゴールに入った。同時に24秒を知らせるブザーが鳴るが、スコアボードには爆速側のスコアが2点加わる。

 

映鳴「よーし! やったぜ! 速野!!」

 

爆速の選手達は喜びの声を見せていた。残り17秒、速野が奇跡のトリプルクラッチを決め、爆速が2点リード。

 

芽衣「と、トリプルクラッチなんて高校生で出来る人、初めて見ました………!」

 

観客席の芽衣は、速野の奇跡のプレイに驚いていた。

 

戦記「速野が勝利の為に見せた………執念だ………」

 

戦記も速野の執念のプレイには、珍しく驚いていた………だが、修也は優の顔を目にした時、速野のプレイとは違う理由で驚いていた。

 

修也「優………まだ諦めてねぇのか………!?」

 

優の目はこの絶体絶命の危機に燃えていた。優は両手を力強く叩くと………

 

優「まだだ!! 後17秒!! ここで1本決めればまだ勝てる!!」

 

優はそう呟くと、ゴール近くのボールを拾い、ベンチに視線を向ける………

 

優「ベンチの皆も声を上げろ!! 暗い気持ちで逆転出来るものか!!」

 

優の言葉に驚くあずさ達だったが………

 

あずさ達「巫ー魔! 巫ー魔!!」

 

巫魔への応援の声をあげる。

 

ゆうか「優くん………!」

 

優の勝利を諦めない姿に、ゆうかは感心する。

 

戦記「絶望で流されそうになるこの場面を一瞬にして変えて見せた………流石、巫魔を束ねるだけの事はある………!」

 

優の鼓舞で巫魔の闘志が保たれた事に、戦記はまた感心を見せたのだった………

 

 

 

66vs68の厳しい展開の中、巫魔は残る17秒に全てを賭ける事に。果たして、長きに渡るこの勝負の行方は………!?

To Be Continued………




次回予告
余力が無い優達が勝つには、スリーポイントシュートを決める事が絶対条件。それを理解している爆速は、スリーが撃てる春香を中心に徹底マーク。絶体絶命の巫魔を救うのは………!?
次回「奇跡」


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第64話 奇跡

前回までのあらすじ
勝利の1ゴールを狙い、巫魔も爆速も互いに必死なプレイをする。だが、速野の執念のトリプルクラッチによって、爆速が逆転した………


優「美矢!」

 

優は美矢にボールをパスして試合再開。

 

アリサ「巫魔のラストアタックだね………!」

 

観客席のアリサは緊張する試合の最終戦を見届ける事に。

 

戦記「だが、巫魔には問題が1つある。巫魔には余力が無い………つまり、延長戦になれば確実に爆速が勝つ」

 

だが、戦記は巫魔の問題点を指摘。彼の言う通り、今の巫魔に延長戦を戦えるだけの力は残っていない。

 

修也「つまり………巫魔はスリーを決めるのが絶対って訳ですか………」

 

巫魔の残された勝ち筋はただ1つ。ここでスリーを決める事だけである。だが速野は美矢の前に立ちはだかり………

 

速野「岡崎! 野村! 5番にダブルチームだ!! 巫魔にスリーを撃たせなければ勝てる!」

 

春香を徹底マークさせる。どうやら、巫魔にスリーを撃たせなければ勝てる事は速野も理解しているようだ。

 

美矢「(くそっ………! 一か八かで私が撃つか!? いや、速野のマークがしつこ過ぎる………!)」

 

美矢は焦りを見せる。だが、そうしている間に時間は刻一刻と無くなっていき、とうとう5秒を切った。

 

美矢「(くそっ! どうやっても春香にはボールが回せない………私が撃つしか………!!)」

 

美矢は無理矢理にもシュートを撃つしかないと考えていた。

 

優「(このままでは負ける………ダンクをしようにも距離が足りない………)」

 

それと同じ頃、ダンクしか出来ない優にはマークがついていない。そして、優も自分に人員が割かれていない事はどうでもよく、それよりも考え事をしていた。

 

優「(でも、ここから勝つ方法が………1つだけある………けど、それは………僕がまた孤立するきっかけになるかもしれない………)」

 

しかし、優は1つだけこの状況を打開する方法を知っていた。だが、彼はそれを恐れていた。どうやら優には、その逆転の手段について、トラウマがあるようだった………だが、残り時間は3秒。もう猶予は無い。

 

優「………美矢!」

 

優はパスを要求。今の彼は思いっきりフリーなので、美矢からのパスはあっさり通ったが、残り2秒を切る。

 

湯津「バカな! 彼に外が無いのは明らかだ………!」

 

湯津は美矢の選択をミスと考え、巫魔の負けを予感した。

 

修也「(まさか………!)」

 

だが、修也はこれから優がやろうとしている事を知っていた。直後、優はスリーポイントラインの外で大きくジャンプし、そこからシュートを放つ。この時、優のフォームは恐ろしく綺麗だった………だが、巫魔の選手はシュートが外れると考えており、顔を俯かせる。

 

速野「(勝った………!!)」

 

速野は勝利を確信する。だが、コートの上で、春香と美矢は諦めた様子を見せていなかった。そればかりか、美矢は4回戦の前に、優へ勝負を仕掛けた時の事を思い出していた………

 

 

 

美矢「丁度そこにバスケットゴールがある。ダンク以外で決めろよ」

 

その時の夜、巫魔第三公園にて、美矢は優にダンク以外でシュートを決めるよう求めた。

 

優「嫌だよ。結果は見えてる」

 

優はそれを断ろうとしていたが………

 

美矢「外したらチームにお前の事をバラしてやる」

 

美矢が脅しをかけた為、優は………

 

優「………喧嘩売ってんのか、美矢………! ………いいよ。君に教えてやる、美矢………! 僕をおちょくる事がどんなに無駄な事か………!!」

 

優はそう言って、今と同じくスリーポイントラインの外に立ち、シュートを放った………その時に放ったシュートは………

 

 

 

………入った。今、この爆速戦で優がスリーを決めたのと同じ結果だった………

 

積牙「えっ………!?」

 

優がまさかのスリーを決めた事に会場は動揺。試合終了を伝えるブザーの音がそれを助長していたが、審判が人差し指から薬指の3本の指を立て、それを下に向けた………それにより、スコアボードは69vs68に変動。それ即ち………

 

光一「か、勝った………!?」

 

巫魔の勝利である。

 

あずさ「う、嘘じゃない………よね………?」

 

会場にいる殆どの人間が、この光景を夢と思いかけていた。だが、春香と美矢が優に駆け寄り………

 

春香「優さん!!」

 

美矢「キャプテン!」

 

3人でハイタッチをした姿から………これは現実だと確信した。

 

光一「よっしゃあああ!! 爆速に勝った!!」

 

美咲「優くんがダンク以外を初めて決めた………! 奇跡………奇跡だよ………!!」

 

巫魔は大きく盛りあがっていた。

 

湯津「ま、マジか………スリーを決めちまうなんて………とんでもねぇまぐれが起きちまったな………」

 

湯津は奇跡のスリーポイントシュートをまぐれと評した。だが………

 

戦記「その割にはフォームが綺麗だったが………それにあのフォームなら、最低でもミドルが5割は入るはずだ………寧ろそれで外し続けられるのはある意味才能でしかない………」

 

戦記は優の綺麗なフォームから、偶然とは考えていなかった。

 

戦記「何故あんなフォームを持ちながらダンクにこだわるのか………」

 

戦記は、何故優がダンクにこだわるのか首を傾げる。一方、修也達は………

 

アリサ「………あの一瞬だけ出てたね………昔のユーが」

 

まるで、優ならスリーを決めるのもあり得ると言わんばかりの様子だった。

 

芽衣「でもまさか、このギリギリでスリーを放つなんて………」

 

芽衣は、優がこだわっていたスタイルを捨ててまで勝利を掴む事に選んだ事に驚いていた。

 

修也「アイツは昔から負けず嫌いだしな………多分、負けるよりマシだと思って昔のプレイスタイルを解禁したんだろ」

 

修也は、優の心情を悟ってそう呟いた。どうやら、中学時代の優はスリーが撃てた事もこの発言で判明する。しかし、修也は優を見やると………

 

修也「けど、昔のスタイルを捨てたままじゃ、全国なんて行けねぇぞ………ミドレーユ」

 

昔のスタイルを捨てた今のスタイルについて、不満を顕にするのだった………

 

 

 

一方、爆速の選手達は………

 

映鳴「俺達が………負けた………?」

 

自分達の敗北に動揺する者や、涙を流す者など、多種多様だった。だが、速野は………

 

速野「………結果はどうあれ、巫魔は奇跡を起こした………俺達はその奇跡には敵わなかった………という訳か………」

 

そう呟き、自らの敗北を受け入れた………目に涙を浮かべながら………

 

 

 

その後、優達と速野達は整列する。

 

審判「69vs68で、巫魔高校の勝ち!」

 

優達「ありがとうございました!」

 

両チームは審判の号令の後に挨拶。その後、優と速野は握手をかわし………

 

速野「………俺達を倒せたのは認めるが………まだ俺達と同等の力豪、そして………俺達より上の守城が待っている………負けるなよ」

 

速野からこれから先に待つ更なる強敵がいる事を警告される。

 

優「分かってます。それに………僕達は勝ってみせます!」

 

優は速野の警告を受け止めた上で、今後の試合に対する勝利への意志を告げた。これにより、長きに渡る試合はようやく終わりを告げた………

 

 

 

その後、ゆうかと羽端が2人きりで会話をしていた。

 

羽端「負けたよ、ゆうか………巫魔は強いチームみたいだね」

 

羽端は巫魔の強さを認める様子を見せる。

 

ゆうか「翔子………!」

 

ゆうかは褒められた事に嬉しそうだった………だが………

 

羽端「でも、あの4番くん………白宮優くんは何かを隠しているよね?」

 

同時に羽端は優が秘密を抱えていると推測した。これにはゆうかも驚きを隠せない。

 

羽端「彼の最後のスリー、偶然と語るには無理がある………一体何を隠しているの?」

 

羽端は、優の最後のスリーを偶然とは思っていなかった。

 

ゆうか「………本人に口止めされているから言えないわ」

 

ゆうかはゆうの秘密を黙秘する。

 

羽端「そう………でも、この試合を見て分かった事は1つある………白宮くんはまだ本気じゃない………本当の力を隠している………そんな事で、守城や力豪に勝てるの? 仮に勝てたとして、全国で戦えるの?」

 

羽端は優が本当の力を隠している事、そして、隠したままではこの先勝てないと考えていた。ゆうかは羽端に背を向けると………

 

ゆうか「………全てはゆうくん次第かしら………私にどうこう出来る問題じゃないから………」

 

そう呟いて、その場を後にするのだった………

 

 

 

長きに渡る試合はとうとう終わり、優達は爆速高校に勝利。決勝トーナメントへ進出が決定する。だが、この先優達には、爆速戦以上の死闘が待ち構えていたのだった………

To Be Continued………




次回予告
翌日、優は再びスリーを撃つよう求められるが、全部外れてしまい、まぐれかと考える。そんな中、ゆうかから決勝トーナメントで最初に当たるチームが決まる。そのチームは………!?
次回「最初の相手は」


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第五章 王者! vs守城高校!
第65話 最初の相手は


前回までのあらすじ
2点差を追う巫魔。延長戦を戦える余力が無い巫魔は必死にスリーを狙うが、爆速は春香と美矢への執拗なマークでスリーを狙わせない。だが、完全ノーマークだった優がまさかのスリーを決め、巫魔は決勝トーナメント進出が決定する………優の秘密に疑問を抱える者が増えると共に………


翌日、優はあずさや美咲達にもう一度スリーを撃つよう依頼された。だが………

 

優「………ありゃ!?」

 

10本程撃った結果、全部外れた。

 

伊吹「………やっぱまぐれか〜」

 

結果として優が放った爆速戦でのスリーはまぐれだと確信された。

 

優「みたいだね………あはは………」

 

優は苦笑いを浮かべたが、美矢は………

 

美矢「よく言うよ………というか、あの場面でスリーが望めない奴にパスなんてするもんか………」

 

春香にのみ聞こえる声でそう呟いた。

 

春香「あはは………」

 

春香は美矢の呆れ発言に苦笑いを浮かべる。そんな中、ゆうかが体育館に入ってくる。

 

ゆうか「皆、集合! リーグ表が決まったわよ」

 

どうやら、決勝トーナメントのリーグ表が決まったようだ。優達はゆうかの元へ集まる。

 

ゆうか「まず、決勝トーナメントに上がってきたチームは覚えているかしら?」

 

ゆうかは優達に問いかける。

 

積牙「巫魔、守城、力豪、利毛ですよね」

 

積牙はその4校を口にする。

 

ゆうか「そう。そして、最初の相手は………守城よ」

 

そして、巫魔が激突するのは、三大王者最強と名高い守城高校だった。

 

美咲「しゅ、守城高校!?」

 

優真と結衣を除くメンバーは、いきなり対峙する相手に驚きを隠せない。

 

結衣「あの………それ程強いんですか、守城高校って………?」

 

バスケ知識の薄い結衣は首を傾げる。

 

伊吹「強いってレベルじゃねぇよ………県大会2連覇中で、昨年全国2位の全国でも四強って称された、高校バスケトップクラスのチームだよ………」

 

伊吹は震えるようにそう呟く。

 

美矢「しかも守城は、守りがとてつもなく固いチームだもんな。しかも、戦記良太が加わっている一昨年から無失点記録を量産中。一昨年と昨年、そして今年も今の所県大会では力豪と爆速以外には無失点っていう、化け物クラスのチームだ」

 

美矢は守城の特徴を説明。力豪、爆速クラスのチームで無いと得点も出来ず、その両チームとも昨年、一昨年は敗れている。

 

結衣「で、でも決勝トーナメントは2位以上なら全国に行けるんですよね?」

 

結衣は決勝トーナメントについての疑問を問いかける。だが………

 

春香「行けるけど………決勝トーナメントにはもう1つの王者、力豪高校がいるわ。つまり、最低でもどちらかの王者に勝たないと全国には行けないわ」

 

春香が語ったもう1つの王者、力豪高校の存在が、2位以上の難しさを物語る。

 

優「………全国には行くぞ。王者に勝てないようなら全国なんてもっと無理だ。それに………守城を攻略出来れば、全国制覇も夢じゃない」

 

だが、優は前向きだった。どうやら守城という最強の壁が現れた事で、全国が一気に近くなったように感じたようだ。優のこの言葉に、不安を感じていた面々は、少し驚いていた。

 

優「それに、修也達友力高校ともケリを付けたい。その為にも負ける訳にはいかない!」

 

同時に、優は友力高校との再戦を望んでいた。その想いから、尚更王者を前に勝利を望んでいた。

 

ゆうか「流石優くん、その意気よ。皆に言っておくけど、決勝リーグを制覇したければ、その前提として勝ちたいって意欲が無いと無理よ」

 

ゆうかは優の勝利への意志を褒め、春香達に勝利への執念を持つよう言い放つ。

 

ゆうか「………さて、次は守城の話をしようかしらね」

 

その後、ゆうかは守城高校について話し始めるのだった………

 

 

 

優達の元へ飛び込んでくる、次の対戦相手情報。王者守城高校の詳しい情報はいったい………?

To Be Continued………




次回予告
ゆうかから守城高校の事を説明される優達。優達に課せられる課題は爆速よりも多く………!?
次回「課題だらけよ」


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第66話 課題だらけよ

前回までのあらすじ
優のスリーがまぐれと落ち込む中、次の対戦相手が守城だと告げられる巫魔高校。最強クラスの相手が持つ特徴とは………?


ゆうかはこれまでの試合データを纏めたプリントを持ってくると、それを優達に見せる。

 

ゆうか「決勝トーナメントまで来ると、守城は間違いなくベストメンバーで来るわ。そうなると、要注意人物が3人出てくるわ」

 

ゆうかはデータから、要注意人物が3人いる事を語る。

 

ゆうか「1人目は言わずもがな、4番の戦記良太くんね。彼のオフェンス力、ディフェンス力は県内どころか、全国でもトップクラスよ。特に彼を1on1で抜いた選手は、今大会では今の所0。これまで守城と戦ったチームは、戦記くんとマッチアップした途端、味方にパスをするしか対策出来なかったわ」

 

ゆうかが挙げた1人目は戦記良太。

 

ゆうか「2人目は5番、Cの湯津張磨くんよ。彼は戦記くんとは違って、インサイドで大きく力を発揮する選手よ。ディフェンスとリバウンドは全国クラスとの定評があるわ」

 

2人目はこれまで戦記と共に巫魔の試合を見てきた湯津張磨。彼も全国区の強さがあるようだ。

 

ゆうか「3人目は7番の山野理香ちゃん。2年生でスタメンに入ったのは今年かららしいのだけど………これまでマッチアップしたスリーポイントシューターに何もさせない程のディフェンス力を持っているわ」

 

3人目に挙げたのは2年の山野理香。彼女が得意とするのはスリーポイントシューターを働かせないディフェンス。つまり………

 

優「春香の天敵になりうるタイプか………」

 

優は春香を見やる。巫魔としては、強力なスリーポイントシューターの春香を止められるのはかなり痛手。

 

ゆうか「幸い、オフェンスは4試合で6点だけ、シュート成功率は2割以下と素人同然だから、オフェンスはそこまで意識しなくていいわ」

 

オフェンスが苦手な所が不幸中の幸いだが、次の試合は春香の働きが落ちる前提で戦わなければならないのが巫魔に求められる点である。

 

ゆうか「守城が相手となると正直、課題だらけよ………」

 

ゆうかは、巫魔が守城を倒す為には、幾つもの問題を乗り越えなければならない事を理解していた。同時に守城攻略を達成するには、爆速戦以上の奇跡を起こさなければならない。

 

積牙「苦しい戦いになりそうですね………」

 

積牙は不安そうに呟く。

 

優「まあでも、爆速戦では面白い収穫があったから、もしかしたら………対策が用意出来るかもしれない」

 

だが、優は諦める様子を見せない。

 

美矢「面白い収穫………?」

 

そして美矢は優の言葉に首を傾げる。

 

優「………積牙が速野さんを抜いた時のドライブ。あれを技に昇華させる」

 

優が提案したのは、積牙のドライブを技にするというものだった………

 

 

 

守城攻略に向けた課題を前に、ゆうは爆速戦の経験を思い出す。その1つが積牙の技提案。果たして、爆速戦時に見せたドライブを技に昇華出来るのか………?

To Be Continued………




次回予告
積牙のドライブは不安定さこそあれど、決まれば抜いた相手を置いてけぼりに出来る程のスピードがあった。それを見た優が提案したのは………?
次回「スピードを活かしてみようよ」


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第67話 スピードを活かしてみようよ

前回までのあらすじ
優達は守城高校で注意しなければならない選手3人の説明を受ける。それを聞いた優は、積牙が爆速戦で見せたドライブを技に昇華させる事を提案し………?


それから優達は、優と積牙の1on1にて、積牙のドライブを技に昇華する為の試行錯誤を繰り返した。のぞみと美矢の2人が積牙のドライブを見る事で、彼のドライブの傾向や特徴、癖を見てもらう。マネージャーの結衣は、のぞみと美矢の意見や言葉を次々とメモしていく。

 

積牙「はあっ!」

 

優「うわっ!?」

 

もう何十回目ともなるドライブ。優は積牙と接触し、転んだ。

 

美矢「うーん、またファールだな………何度目だ、これ?」

 

美矢は積牙がドライブ時に何度もファールを犯しているのに目をつける。

 

結衣「18回目ですね。ここまで60回近くやっているので、3割程の確率でファールを犯しています」

 

結衣のデータによると、その確率は3割。実践で使うには中々アグレッシブな確率と言える。

 

春香「3割………40分スポーツのバスケでは、中々リスクがありますね………」

 

事実、巫魔は全校区のチームが相手となると、対抗出来る選手は大きく限られる。積牙は高校選手としてはまだ未熟だが、それでも上手さはチームの中では上の方で、同時に190cmからなる恵まれた体格は、平均身長が低い巫魔ではかなり大きなアドバンテージである。

 

優「うーん、でもそのリスクを含めてもこれを技にすれば、使い道はあると思うよ。そうだな………積牙は割と足が速いからな………そうだ、スピードを活かしてみようよ」

 

春香達がリスクに頭を悩ませる中、優はそのリスク込みで、ドライブを技にする事を考えていた。そして、技にする案として、積牙のスピードを活かす事を提案。積牙は優の提案を試してみる事に。

 

積牙「(スピード………スピードか………)」

 

積牙はボールを地面に打ち付けながら、優の様子を見て、優を素早い動きで左側から抜き去る。

 

優「っ!? 」

 

優が積牙の方へ視線を向けた時には、もう積牙はシュート体勢に入っており、見事なジャンパーでゴールを決めた。

 

優「………半ば思いつきで提案したつもりだったんだけど………まさか言った通りのものを見せるとは………驚いたよ」

 

優は積牙が今見せたドライブを賞賛した。同時に、積牙ならこれを技に昇華できると確信した。

 

光一「(すげぇな、セッキー………)よーし、俺も負けてらんねえや! 今手が空いてる奴はいないか? 俺も必殺技を編み出してみせるぜ!!」

 

一方、これを見た光一は、影響されるように自分の必殺技を生み出そうと、練習を決意するのだった………

 

 

 

決勝トーナメント最初の相手、守城を前に練習を重ねる優達。果たして、優達のこの練習が守城を相手にどこまで通用するのか………?

To Be Continued………




次回予告
練習を積み重ねる優達。あっという間に守城高校との対決は翌日にまで迫っていた。その前夜、優と春香の元に海外の文通友達から手紙が届き………?
次回「お手紙です」


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第68話 お手紙です

前回までのあらすじ
積牙のドライブを技に昇華する為、何度もドライブを繰り返す。その中で積牙の癖、そしてスピードを活かすドライブを実演してみせ………!?


時間はあっという間に過ぎていき、試合前夜………

 

優「………時間が経つのは早いもんだ。とうとう明日か………」

 

優はいよいよ目の前に迫ってきた守城との対決に思いを馳せる。するとそこへ、春香が手紙を持ってやってくる。

 

春香「優さん、アメリカのシュガーちゃんから手紙が届きましたよ」

 

手紙の主はアメリカのシュガーという人物。

 

優「そっか、そういえば1ヶ月おきにやってる文通の日か。そろそろ手紙書かなきゃだな」

 

優はそう言って春香から手紙を受け取ると、手紙を開いた。

 

「ミドレーユ、ハルカ、お元気ですか。アメリカの空はミドレーユと一緒にいた頃からヒューラヒューラと動いているように思います」

 

手紙の内容によると、なんと優とシュガーという人物は顔見知りのようである。しかも、優の以前の名前すら知っている事から、昔からの友人である事が伺える。

 

優「………相変わらず書いている事は意味不明だな………」

 

優は手紙の内容の意味不明さに首を傾げる。

 

「………ところで、今度ニホンに来ます。前の手紙でバスケの大会中と聞いていたので、2人の活躍が楽しみです」

 

だが、その直後にシュガーという人物がニホンへ来る事を手紙で書いていた。

 

春香「………! シュガーちゃんがニホンに………!?」

 

春香はシュガーの日本訪問に驚いていた。

 

優「そういえば春香は会った事ないんだっけ」

 

それを聞いた優は、春香とシュガーが顔を合わせた事が無いのを思い出した。

 

春香「ええ。だからとても楽しみです」

 

春香はシュガーのニホン訪問に嬉しそうな様子を見せる。

 

優「………あれ? まだ続きが………」

 

「PS.イバラキの美味しいソフトクリーム店はどこですか? ニホンに着いたら教えてください」

 

イバラキのソフトクリームについて求める手紙だった。

 

優「あはは………相変わらずソフトクリーム好きだな………」

 

優は苦笑いを零す………

 

春香「これは………明日は負けられないですね」

 

シュガーからの手紙を受け取った優達は、翌日の試合に負けられないと、明日への意気込みを更に強める。

 

優「そうだね。よーし、じゃあ明日の試合に向けて最後のミーティングだ………もう1回、最後のミーティングをしようよ! ………2人きりだけど」

 

優は明日の試合に向けて、春香と2人きりで最後のミーティングを行う事に。どうやら、シュガーから送られた手紙によって、ゆう達はより一層、勝利を求めるのだった………

 

 

 

翌日に迫る守城との対決。果たして、優達巫魔は守城を相手に勝つ事は出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
いよいよ迎える守城との対決。巫魔も守城も共にベストメンバーで試合に臨む姿勢を見せ………!?
次回「最大の挑戦だ」


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第69話 最大の挑戦だ

前回までのあらすじ
試合前日、ゆう達の元にアメリカの友人からの手紙が送られる。それを見た優達は、より一層、勝利を求めるようになり………!?



翌日、遂に試合当日の日がやってきた。決勝リーグはAブロックが行われた体育館にて行われる事に。最初に行われた試合は力豪高校と利毛高校の試合。優達はコート外からこの試合を見ていたが、試合内容は四強同士の対決とは思えない程に力豪が圧倒的だった。滝川、月宮、笹掛の3人はボールを手にするとガンガン点を取っていく為、利毛はガンガン突き放される。

 

積牙「………やはり力豪は凄いですね………」

 

優達は力豪の強さを改めて実感させられる。そして、あっという間に試合は終わり、スコアは134vs65のダブルスコアで力豪が圧勝した。

 

春香「力豪のオフェンス力は相変わらず高いですね………」

 

春香は力豪のオフェンス力に驚かされる。優は春香の肩を優しく叩くと………

 

優「大丈夫。僕達だって強くなっている。そして、守城と戦えるチャンスが今ここにある。この決勝トーナメントは巫魔にとって過去に例の無いもの………最大の挑戦だ………!」

 

優は春香を優しく励ます。その際に、力豪の滝川達が優達の元へやってくる。

 

滝川「やあ、巫魔の皆。守城との対決、楽しみにしているよ」

 

滝川は純粋に巫魔と守城の対戦を楽しみにしていた。

 

優「期待の結果になるかは分かりませんが………全力を尽くします」

 

優はそう言いながら滝川の言葉に頷く。

 

優「よーし、行くぞ!!」

 

春香達「おおー!!」

 

優達は気合を入れベンチへと行く。その後の軽いチーム練習を経て、両チームはベンチでミーティングを行う………

 

 

 

巫魔ベンチ………

 

ゆうか「………言うまでも無いけど、相手は全国最強クラスの守城高校よ。絶対に苦しい戦いになるけれど、間違っても守勢に回っちゃダメよ! 後は練習した事を思い出して! ………今言えるのはここまでね。またなにか作戦を伝える際はタイムアウトを取るわ。頑張って!」

 

ゆうかは優達に対し、軽い指示をした後、彼等を見送った………

 

 

 

一方、守城ベンチでは監督の夢流真矢が戦記達を集め………

 

夢流「………相手は巫魔高校。実績は無いけど、曲がりなりにも爆速高校を倒した相手。力豪、爆速クラスの相手と戦っているつもりで当たりなさい………それ以外の指示は戦記くんに任せるわ」

 

夢流は特に指示は出さなかった。

 

戦記「………言われずとも。スタメンはベストメンバーで来るだろう。特に4番の優、5番の白宮春香は得点能力が圧倒的に高い。この2人には強く注意しろ。12番の天野美矢は俺が徹底的に叩き潰す」

 

戦記は要注意人物を挙げてそれを共有すると………

 

戦記「よし………行くぞ!」

 

湯津達「おおー!!」

 

湯津達を引き連れてコートへ向かうのだった………

 

 

 

遂に始まる巫魔vs守城。無名校だった巫魔が実現させた最大の対決が、今始まる………!

To Be Continued………




次回予告
試合開始早々、巫魔は攻めに回り続ける。最初の速攻をブロックされる巫魔だったが、巫魔は必死に守城から得点を許さないようにディフェンスを行う………!!
次回「積極的に行け」


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第70話 積極的に行け

前回までのあらすじ
試合当日。優達は守城との試合に挑む事に。巫魔は全国最強クラスの相手を前に、攻めの姿勢を見せる事に………!


そして、両チームのスタメンがコートに立つ。今回の両チームスタメンは以下の通り。

 

巫魔高校(黒)

PG 12番 天野美矢

SG 5番 白宮春香

SF 10番 江野積牙

PF 4番 白宮優

C 17番 相田光一

 

守城高校(白)

PG 4番 戦記良太

G 7番 山野理香

SF 8番 井間紀伊

PF 6番 栗原敷無

C 5番 湯津張磨

 

 

 

両チームのCがセンターサークルに立ち、審判が試合開始の笛を吹くと共にボールを打ち上げ試合開幕。ボールが最高点に到達する直前、光一と湯津の2人が大きく飛び上がった。

 

光一「はあああっ!!」

 

光一は懸命に飛び上がるが………

 

湯津「だりゃああっ!!」

 

ボールに触れたのは湯津だった。湯津が弾いたボールは、守城7番の山野に渡る。

 

湯津「よーし!!」

 

湯津が競り勝ったと言わんばかりの表情を見せていたが………

 

優「はあっ!」

 

その直後、優が山野の下からボールを浮かせた。

 

山野「っ………!?」

 

湯津「なっ!?」

 

優の奇襲に驚く、戦記を除いた守城選手達。上に弾かれたボールを優はすぐにジャンプし、美矢に向けて押し渡す。

 

優「皆! 積極的に行け! 守勢に回るな!!」

 

美矢の手にボールが渡った直後、巫魔は攻めの姿勢を見せる。思わぬ奇襲に驚く湯津達だったが………

 

戦記「ディフェンス! 湯津! すぐにゴール下に行け!」

 

戦記がすぐに指示を出した事で冷静さを取り戻した。

 

ゆうか「(やはり戦記くんは冷静ね………優くんが上手い奇襲を仕掛けてくれたんだけど………)」

 

優によって始まった奇襲は上手く行かなかったが、ボールはまだ巫魔にある。

 

美矢「積牙!」

 

美矢は積牙にボールをパスする。マッチアップ相手は8番の井間。

 

積牙「(よし………! 練習の成果を見せてやる!)」

 

積牙は優達との特訓を思い出すと、井間の左側に隙が出来た瞬間、積牙は素早いドライブをかけて井間を突破。直後に積牙は大きくジャンプし、シュートを放つ。抜かれた井間は慌ててディフェンスしようとするが、ボールに手が届かなかった。

 

伊吹「よーし! 積牙が練習で編み出した{ソニックジャンパー}だ!!」

 

伊吹は、積牙が編み出した必殺技、ソニックジャンパーを目にし、点を決めた………! と思った直後、Cの湯津がボールと同等の高さにまで飛び上がり、力強く積牙のシュートを叩き落とした。

 

積牙「何っ!?」

 

積牙の必殺技はあっさりと止められてしまい、こぼれ球を井間が拾うと、戦記にパスをした。

 

戦記「あがれ!」

 

守城は反撃に出る。優達は走ってディフェンスへ戻った。

 

美矢「行かせるかよ!」

 

美矢は戦記の前に立ちはだかり、抜かせまいと懸命なディフェンスを行う。だが戦記は、美矢の右側に出来た僅かな隙を見つけると………

 

戦記「湯津!」

 

湯津に対し、鋭いパスを送った。

 

美矢「な、何っ!?」

 

美矢は呆気にとられていた。

 

湯津「よーし! 今回も先取点もらったぜ!」

 

湯津はそのままゴール下シュートを放とうとする。

 

光一「そんな事させねぇぞ! うおおおお!!」

 

だが、この場面で光一は両腕を大きく広げ、湯津のシュートコースを防いだ。

 

湯津「うおっ!?」

 

隙の無い光一のディフェンスに驚かされる湯津。その結果、ボールを持ったまま、シュートせずに着地してしまい………

 

審判「白5番! トラベリング!!」

 

湯津はトラベリングを取られてしまった。ここまでの試合経過は30秒程だったが、既に両チームの試合は白熱していた。そして、この試合には修也達3人もまた試合を見に来ており………

 

修也「驚いたな………まさかたった30秒でここまでの早い展開が起きるとは………」

 

この激しい展開に驚く様子を見せたのだった………

 

 

 

開始30秒で白熱する巫魔vs守城。果たして、先に点を取るのはどちらか………!?

To Be Continued………




次回予告
守城に対し懸命にくらいつく巫魔は、開始2分でなんと0vs0を維持していた。動かぬ試合展開の中、最初に先制点を決めるのは………!?
次回「勝利は譲らん」


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第71話 勝利は譲らん

前回までのあらすじ
試合が開幕し、守城を相手に攻めの姿勢を見せる巫魔。積牙、光一の奮闘で、何とか無失点に抑える………!


それから試合時間が2分に到達しても、両チーム共に無失点だった。

 

修也「驚きだな………守城が巫魔を相手に無得点とは………いくらロースコアが多いチームとはいえ、ここまで無得点が続くのは珍しいな………」

 

観客席の修也は、ここまで全く進まない試合展開に驚きが隠せない。しかし、芽衣は………

 

芽衣「どうだろう………戦記さんは全然苦しくないみたいだよ。それに………守城からすれば、失点でもしない限り苦しくもなんともないと思う。守りが主軸の守城じゃ尚更ね………」

 

守城にとってこの緊迫状態は何も苦しくなかった。寧ろ、苦しいのは巫魔だった。

 

優「(ここまで無失点は正直キツいな………思いの外積牙や光一が頑張ってくれているけど………)」

 

優はこの緊迫状況を変えられない事に苦しんでいた。

 

優「(それに、春香がフェイスガード(べったりマークされる事)されているから、スリーを簡単に狙えないし………どうすれば………)」

 

優の苦しみが見え始める中、戦記が美矢からボールをスティールし、零れたボールをすぐさま拾う。

 

戦記「上がれ!」

 

戦記の指示で、湯津達は攻撃ラインを上げる。

 

優「ディフェンス!!」

 

優達はディフェンスに戻るが、張り詰める緊張の糸から、冷汗をかいていた。戦記はそれを見逃さず………

 

戦記「湯津!」

 

湯津にパスをする。

 

光一「行かすかよ!! うおおりゃああ!!」

 

光一は身体を大きく広げながらジャンプする。

 

伊吹「{ウォールブロック}!!」

 

光一はウォールブロックを発動させる………が、湯津はジャンプしなかった。

 

光一「何っ!?」

 

優「フェイク………!」

 

なんと湯津はフェイクをかけた。これでは、光一が着地した時には湯津がシュート出来てしまうため、光一のウォールブロックは不発に終わる。 それを見た優は慌ててゴール下の方へ走り出す。

 

湯津「もらった!!」

 

湯津は優のフォローが間に合わないと踏み、光一が地面に落下し始めたタイミングでジャンプし、シュートを放つ。

 

優「させるか!!」

 

だが優は大きく飛び上がり、ボールよりも先に、ゴールの高さへ到達した。

 

湯津「な、なんだ!?」

 

湯津は優が追いついた事に驚きを隠せなかった。優はそのまま力強くシュートを叩き落とした。

 

あずさ「やった!!」

 

巫魔選手達は胸を撫で下ろす………だが、零れたボールを拾ったのは………!?

 

優「………!! 戦記さん!? バカな………!!」

 

なんと、一瞬の隙を突いて、美矢から離れた戦記だった。戦記は零れ玉を拾うと、そのままジャンプシュートを放つ。

 

戦記「絶望的な場面でも懸命にディフェンスを行ったのは賞賛に値する。だが………勝利は譲らん!!」

 

戦記のシュートはリングに吸い込まれた。先取点を決めたのは、守城高校だった………

 

 

 

0vs0の緊迫状態は、戦記の得点によって崩れた。果たして、この動きが試合にどう影響するのか………!?

To Be Continued………




次回予告
戦記の得点により、守城のペースが上がり始め、優達は苦戦を強いられる。守城が次々と点を重ねる中、巫魔は中々初得点が出来ず………!?
次回「始めようか」


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第72話 始めようか

前回までのあらすじ
0vs0のまま、試合は2分進んだ。優達にとって苦しい中、その均衡を破ったのは戦記のシュートだった………


先取点を取られた巫魔。この初得点によって、守城はペースを上げ始めた。

 

戦記「はっ!」

 

戦記が美矢からボールをスティールすると、湯津達に指示を出して、攻撃を行う。戦記は現実主義なのか、速攻こそしなかったが、時間を上手く使って、確実な得点をしていった。

 

戦記「湯津!」

 

戦記は湯津へパスをする。

 

湯津「おっしゃあああ!!」

 

湯津は光一をものともしない豪快なダンクで点を奪う。

 

アリサ「守城のペース………何やってるのよ、ユーや春香は………!」

 

アリサは焦れったいと思っていた。試合開始から5分経った頃にはまだ10vs0だったが、無得点な為、巫魔にとって苦しい事には何も変わらない。そして巫魔の攻撃。だが、戦記が突破出来ない美矢は、焦りを見せていた。

 

美矢「(くそっ………! 守城が全国区のチームって時点で嫌な予感はしてたが………このPG、堅実でやりやがる………!)」

 

美矢は戦記の実力を認める様子を見せる。だが、それと同時に………

 

美矢「(けど、私がコイツを何とかしねぇと、巫魔は勝てねぇ………!)」

 

戦記攻略に囚われる様子を見せた。

 

優「(美矢………!)」

 

優はそれに気づいたのか、マズいといった様子を見せる。

 

美矢「(こうなったら………これでどうだ!)」

 

美矢は姿勢を低くし、鋭いドライブをかけて突破しようとするが………

 

戦記「無駄だ!!」

 

自身の斜め真後ろに向けて手を伸ばす形でスティールするバックチップで、美矢の手からボールを離させる。美矢は何とかボールに再度触れるが、無理に触った為、ボールが手からこぼれてしまう。

 

美矢「(くそっ! 掴めねぇ………!)」

 

ボールはコートラインから出かけるが………

 

優「はああっ!」

 

そこに優が駆けつけ、偶然近くにいた井間の足に向けてボールを弾く。

 

井間「あっ!?」

 

井間の足に当たったボールは、コートの外に弾かれ、そのままボールはバウンド。

 

審判「黒ボール!」

 

結果、間一髪巫魔ボールでスローインを獲得した。

 

戦記「おっと………そう簡単にはいかないか………」

 

優のファインプレイを前に、戦記も少し驚いていた。優は美矢に近づくと………

 

優「らしくないね………大丈夫?」

 

心配する様子を見せながら、美矢に優しく声をかける。

 

美矢「すまない、キャプテン。私が機能しなきゃいけないのに………」

 

美矢は申し訳なさそうな素振りを見せる。

 

優「別に戦記さんをかわす事だけが攻略法じゃないぜ。もっと仲間を頼りなよ………ね?」

 

優はそう声をかけると、審判からボールを受け取る。

 

優「まずは点をとろう! 美矢!」

 

優が美矢にボールを渡し、試合再開。優は走ってスリーポイントラインの中に入ると………

 

優「(さあ、始めようか………! 初得点を狙いに行く為の攻撃を………!!)」

 

まずは初得点を狙いに行く事を目標に立てるのだった………

 

 

 

巫魔は中々初得点が取れず苦戦を強いられるが、なんとか初得点を得ようと奮闘する。果たして、巫魔差初得点を取れるのか………?

To Be Continued………




次回予告
巫魔高校の初得点を目指す為、懸命に攻める巫魔。パスを繰り返す巫魔のボールが最終的に行き着いたのは優だった。果たして、優のダンクは初得点を掴めるのか………?
次回「絶対に決める」


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第73話 絶対に決める

前回までのあらすじ
守城が先制してから、守城の選手達は調子を上げていく。逆に点が取れない巫魔。だが、巫魔ボールのスローイン。優は初得点を狙いに行く事に………!


ボールを受け取った美矢は、ボールを地面にバウンドさせながら………

 

美矢「(何を迷ってたんだ、私………そうだ、私がやるのは戦記に勝つことじゃねえ………! 点を取る事だ!!)」

 

美矢は迷いを振り切る。そして………

 

美矢「積牙!」

 

美矢はパスを選択。積牙はボールを受け取るが、井間が立ちはだかり、積牙にシュートをさせない激しいディフェンスを行う。

 

積牙「ぐうっ………!」

 

なんとかここで点を取りたい巫魔にとって、ミスは避けたい。積牙は思わず流行って攻めかけるが………

 

優「積牙! 一旦戻せ!」

 

優の指示で積牙はハッとしてボールを美矢に戻した。

 

戦記「(冷静にボールを戻させた………PFとは思えない視野の広さと判断力だ)」

 

戦記は優の冷静さに感心する。

 

美矢「キャプテン!」

 

美矢は優にボールを回す。

 

戦記「栗原!」

 

優の前に栗原が立ちはだかり、ボールをスティールしようとしてくる。優は美矢に対しバックパスを行い、ボールは再び美矢に。

 

ゆうか「(優くん、かなり冷静ね………けど………)」

 

ベンチに座るゆうかは、優の冷静さに感心しつつも………

 

伊吹「後8秒だぞ!」

 

残り時間が8秒を切った。ここで優はゴールに向けて走り出し、栗原から距離を取った。

 

美矢「(ディフェンスをかわした………!)キャプテン!」

 

美矢は再び優にボールを回す。優はボールを受け取ると、すぐに大きく飛び上がった。

 

アリサ「ユーのダンク!!」

 

優はダンクを狙う。しかし………

 

湯津「決めさせるかよ!!」

 

ゴール下という事で、湯津が大きくジャンプしてくる。

 

美咲「だ、ダメなのかな………!?」

 

これには優を除く巫魔の選手全員が不安を見せた。だが………

 

優「絶対に決める!!」

 

優は引き下がらず勇敢にダンクを狙う。そして、優と湯津が衝突。優はダンクを決めたが、リングを掴んだ上での接触をしたため、彼の体勢はかなり不安定で、湯津も接触で地面に崩れ落ちた。当然、審判は笛を吹いた。

 

光一「ど、どっちだ………!?」

 

両チーム、審判のコールに注目を集める。

 

審判「………白5番!!」

 

審判がファールを取ったのは、湯津の方だった。

 

春香「(と、という事は………!)」

 

湯津のファールというコール。それ即ち………

 

審判「………バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

優のシュートが得点となり、更にフリースローを与えられた。それ即ち………

 

観客「しゅ………守城の牙城が破られたあああっ!?」

 

守城の無失点記録が途絶えた事を意味していた。戦記以外の守城の選手達が呆然としていると………

 

審判「守城、タイムアウト!」

 

守城監督の夢流は、8点リードしながらも、ここでタイムアウトを取ったのだった………

 

 

 

冷静さを取り戻した美矢、そして優の渾身のダンクが炸裂し、巫魔は遂に守城の無失点記録を崩した。果たして、この初得点が、巫魔にどのような空気をもたらすのか………?

To Be Continued………




次回予告
優の初得点は守城の選手達に大きな動揺を与えていた。しかし、監督の夢流は守城の選手達のペースを戻そうと………?
次回「相手は強いわ」


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第74話 相手は強いわ

前回までのあらすじ
優の冷静な指示が加わり、巫魔は気を伺いながらボールをキープする。そして、優のダンクと湯津のディフェンスが激突。結果、優はバスケットカウントワンスローをもぎとり、守城の無失点記録を崩したのだった………!


守城の無失点記録が途絶えた事に殆どの観客は動揺を隠せなかった。その一方………

 

アリサ「ええー? ここでタイムアウトなんか普通取らないでしょ、まだ守城が8点有利なんだし………」

 

アリサは、守城が初失点と共にタイムアウトを取った事に首を傾げていた。

 

芽衣「守城からすれば、優くんの2点がとても重いよ。守城は県大会において力豪と爆速以外から失点したのは、3年振りなんだから………」

 

逆に芽衣はチームの空気が動揺に包まれている今だからこそ、タイムアウトを取るのは適切と考えていた。

 

修也「守城にもかすかな驕りがあったって事か。ま、俺は信じていたよ。中学のアイツは、俺が憧れちまうような、どんな相手からも点を奪うようなスコアラーだったんだからな」

 

修也は嬉しそうな様子でそう呟いた………

 

 

 

その頃、観客席の別の場所にて………

 

映鳴「いやー、意外だな。守城が俺達や力豪以外で失点するとはな………」

 

爆速のスタメン選手達は、守城の無失点記録崩壊に驚いていた。だが、速野は………

 

速野「当然だ。巫魔は1点差とはいえ俺達に勝ったんだ。得点ができなきゃ困るってもんだ」

 

胸を張るようにそう呟いた………

 

 

 

そして、守城のベンチでは………

 

湯津「戦記、すまねぇ。4番………白宮優はダンクしかねぇと慢心してたから、本気で決めてくるとは思わなかったよ」

 

湯津が戦記に対して謝罪する。

 

戦記「気にしていない。それだけ優のレベルがあるという事だ………」

 

戦記は、優が湯津を相手にシュートを決めた事については、優の実力によるものと考え、怒る様子は全く見せなかった。

 

夢流「そうそう、その冷静さは大事よ。湯津くん達もね」

 

そこに夢流が口を開き、湯津達に冷静であるよう呟く。

 

湯津「うっす! 監督!」

 

夢流の言葉で、湯津達は落ち着きを取り戻す。

 

夢流「………相手は強いわ。特に4番の白宮優くんはね。うちに欲しいくらい。でも、巫魔には問題点や不安要素も多い。ここから後35分弱。貴方達の全力を持って叩き潰しなさい!」

 

夢流は、巫魔への警戒をもう一度挙げた上で、巫魔を叩き潰すよう指示する。

 

戦記達「おおー!!」

 

戦記達は納得するように声を上げる。巫魔ベンチから、スポーツドリンクを飲みながらそれを見ていた優は………

 

優「(すぐに立て直してきた………流石に精神を揺さぶって勝てる相手じゃないか………)」

 

守城が調子を取り戻した事に、また苦しい戦いを予感していたのだった………

 

 

 

守城は動揺するかと思いきや、戦記や夢流によってすぐに立ち直した。巫魔にとってはまだまだ苦しい戦いが続くのだった………

To Be Continued………




次回予告
守城の堅実な攻めや守りに苦しむ巫魔だが、優がなんとか点を取ってチームをつなぎとめていく。その様子から、夢流は巫魔のとある事実に気づく………
次回「優くんは」


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第75話 優くんは

前回までのあらすじ
巫魔の初得点に守城の選手達は動揺するが、戦記と監督の夢流の言葉によって、守城選手は調子を取り戻す。優は、まだまだ苦しい戦いが続く事を予感する………


審判「タイムアウト終了です!」

 

タイムアウトが終わり、優達はコートに戻る。試合は優のフリースローで試合再開だが………

 

光一「(優はフリースロー入んないし………リバウンド取らねぇと………!)」

 

ゴール下やレイアップすらまともに入らないシュート力0の優のフリースローは間違い無く外れるので、光一はリバウンドを取ろうと意気込む。優は審判からボールを受け取り、審判の笛が鳴った………するとその直後、優は片手でゴールに向けてボールをぶん投げた。

 

湯津「なっ!?」

 

リバウンドを狙っていた湯津達守城選手達は呆気にとられていた。ボールはやはりリングに直撃して跳ね返ってきたが、そのお陰で………

 

光一「おっしゃあああ!」

 

光一が一番乗りでリバウンドを取りに行けた。光一はボールをキャッチすると………

 

光一「よーし!! このまま行くぜ!!」

 

そのままダンクを狙いに行くが………

 

湯津「調子に乗るなよ!!」

 

湯津は光一の手からボールを離させるブロックを放ち、こぼれ球となってしまったが、なんと優がこぼれ球を拾い………

 

優「はああっ!」

 

優は強烈なダンクを炸裂させ、追加点を奪う。

 

湯津「なんだと!?」

 

隙を突かれた湯津は悔しそうだった。しかし、戦記は冷静な目で優を見ていた………

 

 

 

それから4分程経ち、得点は16vs10に。守城有利は変わらないが、優が得点を重ねる事で何とか食らいついていた。だが………

 

優「はあっ、はあっ………」

 

優の負担は爆速戦以上で、かなり疲弊していた。

 

春香「だ、大丈夫ですか、優さん?」

 

春香は優に心配の声を漏らすが………

 

優「大丈夫。それより、今日も春香のスリーに期待しているから………!」

 

優はユニフォームで顔の汗を軽く拭き、春香に期待を寄せる言葉を告げる。それを見た守城監督夢流は………

 

夢流「(………白宮優くん。彼は確かに強い………けれど、彼は巫魔の中で浮いている程の強さを持っている………)」

 

優の強さは確かなものだが、その強さが巫魔の中で浮いているとも評した。

 

夢流「(優くんは………巫魔の強さを大きく左右する。巫魔にとって爆弾とも言える選手だわ………)」

 

夢流の指摘通り、巫魔にとって優は最高戦力であり、彼が外れるだけでインサイドは大きく弱体化してしまう。更に、優の並外れた強さは、春香達が安心してプレイする気力となる。その為、優が抜けるのは、精神面でも大きく弱体化してしまう。

 

優「はあっ、はあっ………」

 

あがる優の息。優のスタミナ切れはもうすぐに近くなっていた………

 

 

 

開始10分、巫魔は自分達の知らぬ中で危機に追い込まれていた。果たして、巫魔はこの苦しい状況の中、どうなってしまうのか………?

To Be Continued………




次回予告
第1Qが終了すると同時に、優のスタミナは限界に近づいていた。それを見たゆうかはやむなく優を下げる事になってしまったが………!?
次回「悔しいわね」


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第76話 悔しいわね

前回までのあらすじ
守城を相手に、優がなんとか点を取ってつなぎ止めていた。だが、守城監督夢流は、優の強さを巫魔にとって爆弾とも言える選手と評し………!?


湯津「うおおおりゃああ!!」

 

試合開始から10分。湯津は豪快なダンクをまたしても決め、18vs10と巫魔を突き放していく。そして、同時に第1Q終了の笛が鳴り、優達はベンチへと戻る………

 

 

 

優「はあっ、はあっ………!」

 

ベンチに戻った際の優の息はとてつもないものだった。

 

ゆうか「(優くんの息、かなり激しいものだわ………無理も無いか………今日の得点は優くんのダンク5本しかないものね………)」

 

オフェンスで点を奪えるのが優しかいないというのは巫魔にとってかなり致命的で、その肝心の優がスタミナ切れを起こしかけているのは絶体絶命としか言いようがない。だが………

 

ゆうか「(今無理して優くんを出して試合に出られなくなったら、この試合には絶対勝てない………仕方無い………!)」

 

ゆうかはベンチを立つと………

 

ゆうか「………ここで優くんを下げるわ。伊吹ちゃん、お願い!」

 

やむなく優を下げる事に。

 

伊吹「お、おう! 優、暫くは私が何とかするからゆっくり休んでてくれ!」

 

伊吹は強がりながらも、優に対し後は任せろと言った様子を見せる。優は息が上がっていた為声が出ず、頷く事しか出来なかった………

 

 

 

インターバルを経て第2Qが開幕。試合は巫魔ボールでスタート。巫魔はパスを繋げ、伊吹にボールを渡す。

 

伊吹「行くぜ………!!」

 

伊吹はダンクを狙うが………

 

湯津「甘いぜ!!」

 

湯津の手によって、簡単にブロックされてしまった。

 

ゆうか「………!! (やっぱり優くん以外じゃ、5番の湯津くんすらまともに攻略出来ない。でも………!)」

 

ゆうかは優に視線を向ける。優はタオルを被りながら息を上げ続けていた。

 

ゆうか「(悔しいわね………優くんしか対応出来ないのに………その優くんに頼れないなんて………!)」

 

ゆうかは頭を抱えていた。そうしている間に巫魔がディフェンスを行うが、優の代わりに入った伊吹は湯津どころか、PFの栗原すらまともに対応出来なかった。

 

伊吹「くそうっ………!(なんだコイツら………! 私じゃ手も足も出ねぇ………!!)」

 

伊吹も守城選手達とのレベル差を思い知らされる。

 

夢流「(あの11番の子は何ら問題は無い………白宮優くんが下がっている今こそ、守城は冷静に、かつ確実に点を取りに行くべきなのよ………!)」

 

夢流は、優が抜けた今のうちに、巫魔を突き放そうと考えていたのだった………

 

 

 

優の離脱で一気に苦しい状況となる巫魔。果たして、守城は何処まで巫魔を突き放すのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優が抜けた事でインサイドに余裕が生まれた守城は、次々と点を重ねていく。一方、巫魔は点を取り返す事も出来ず………!?
次回「今こそ堅実に」


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第77話 今こそ堅実に

前回までのあらすじ
スタミナ切れ間近の優を下げざるを得なくなってしまった巫魔。代わりに入った伊吹は守城選手にはまるで敵わず………!?


優が離脱した後の巫魔は押されっぱなしだった。優が抜けた事でインサイドが弱体化した結果、インサイドは完全に湯津が支配していた。そして、美矢が点を取る為になんとかパスを回そうとするが、その度に戦記にスティールされてしまう。

 

美矢「くそっ!」

 

巫魔は先程からずっと守備を強いられていた。逆に戦記達守城は攻撃の機会が増えたものの、戦記は至って冷静かつ慎重にゲームメイクを行い、確実に点を奪っていた。その結果、第2Q終盤には32vs10と、完全なワンサイドゲーム状態に。

 

夢流「流石戦記くんね………もうずっと巫魔の得点が無いのにも関わらず、いつも通りのプレイをしている………」

 

夢流は、圧倒的大差を形成してもブレる事はない戦記のプレイを快く思っていた。そして戦記も美矢を前にしながらこんな事を考えていた。

 

戦記「22点差………ここまでくれば普通は安心したくなるが………スポーツは最後まで油断してはならない………大量得点で更に攻撃チャンス………今こそ堅実に………点差を広げるまでだ………!」

 

戦記は大きくリードしている今だからこそ堅実に戦う姿勢を見せる。そして、美矢から少し距離を取ると、戦記はスリーポイントシュートを放った。

 

積牙「スリー!?」

 

戦記のスリーに驚く春香達。

 

美矢「くそっ!!」

 

美矢はジャンプして手を伸ばすが、ボールには届かず、戦記のスリーは虚しくゴールに入った。同時にブザーが鳴り………

 

審判「第2Q終了!!」

 

ブザービーターを決めた守城は35vs10と、25点差のリードを広げて前半を終えた………

 

 

 

第2Q、優の抜けた巫魔が、赤子のように全く歯が立たなかった事について、会場は唖然としていた。

 

映鳴「おいおい、巫魔がまるで歯が立って無いぞ………? 巫魔ってあんな弱かったか?」

 

優が抜けただけで一気に点が取れなくなった事に首を傾げる映鳴。その原因について速野は………

 

速野「違う………守城が強すぎるんだ。そして、優はそんな守城を相手に戦えるだけの強さがある………つまり、レベル差のある中で、頼みの綱が切れた巫魔は、全国トップクラスとの実力差が浮き彫りになったんだ」

 

守城が巫魔より遥かに格上である事が理由だと考えていた。

 

速野「俺の見立てじゃ、巫魔は俺達爆速より少し下くらいで、レベルは高い方だ………それだけ守城のレベルが高くなっているという訳か………」

 

速野は、それだけ守城のレベルが高い事を予感していたのだった………

 

 

 

優が抜けてしまった巫魔は、第2Qを前に圧倒されてしまっていた。果たして、巫魔は守城を前に敗れてしまうのか………!?

To Be Continued………




次回予告
後半戦、巫魔はこれ以上無失点が続けば逆転が難しい状況に追い込まれる。それを見た優は、スタミナ切れを覚悟で試合に戻る事を望み………!?
次回「温存する意味が無い」


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第78話 温存する意味が無い

前回までのあらすじ
優が抜けた巫魔は全く点を取れず、逆に守城は堅実な戦術で点を重ね続け、第2Q終了時、得点差は25点差にまで広がり………!?


インターバル、春香達はベンチで俯いていた。第2Qで無得点だった事が重く突き刺さり、絶望的な状況に………

 

鈴香「10vs35………守城からの得点を守りながら25点差を引っくり返すには、もう無得点は許されない………」

 

鈴香は逆転をする条件を頭の中で整理。結果、もう無得点は許されないという。

 

ゆうか「(ここで無得点を避ける方法………あるとすればもう一度優くんの投入だけど………守城を相手に優くんが後20分持つ訳ない………)」

 

ゆうかは優の投入を考えていたが、そうすると残り20分間、優が立てるとは限らない。ゆうかは頭を抱えていると、優はベンチを立ち………

 

優「………監督。僕を出してください」

 

試合に出場する事を直談判する。

 

ゆうか「優くん………でもそれじゃあ最後まで持たないじゃない………!」

 

ゆうかは優に対し、今出る事のデメリットを口にするが………

 

優「相手は守城です。僕を温存する意味が無い。それに………ここで温存する程巫魔には余裕なんかありませんよね?」

 

優は温存の余裕など無い事を指摘。それを聞いたゆうかは………

 

ゆうか「勝てる算段はあるの?」

 

ゆうかは優に対し、勝利の算段を問いかける。

 

優「算段ですか………まあ無い訳じゃないですけど………1番は気持ちの問題です」

 

優は策を思いついてこそいたが、それ以前に気持ちの問題だと語っていた。

 

優「皆、何俯いているんだ」

 

優は、敢えて突き放すようにそう呟いた。

 

光一「何だと………!?」

 

光一は立ち上がり、優に掴みかかろうとする。

 

優「イバラキ三大王者に勝つという意志が無きゃ、決勝リーグなんて突破出来ない。君達は勝ちたくないのか!?」

 

優は春香達に対し、勝利への欲望を問いかける。

 

美矢「勝ちてぇよ………でも、どうやって勝つんだよ、キャプテン!!」

 

美矢は勝利の意志こそあったが、勝ち目がないと反発する。

 

優「………どうやって勝つか。確かにバスケじゃそれは大事だ。でも………それ以前に気持ちがいるんだ。チームで勝つって………!」

 

優は自身の胸に軽く右拳を当てる。優の言葉に春香達は驚く様子を見せる………

 

優「………でも強制はしない………それをして人に嫌われた事があるから………」

 

………あくまで優は強制はしなかった。どうやら、同じ事をして人に嫌われた事がトラウマになっているようだ。

 

春香「………私はやります。やらせてください! 私は確かに今日無得点ですけど………まだ追いつけるはずです! 私にはまだ………スリーがありますから!!」

 

そんな中、最初に名乗りを上げたのは春香だった。それを聞いた積牙達もハッとした様子を見せ………

 

積牙「俺もやります、キャプテン!」

 

光一「勝ちてぇのは俺も一緒だ!!」

 

美矢「それは私も同じだ!!」

 

3人は闘志を取り戻した。それを目にした優は………

 

優「………ありがとう。よし、これから1分で作戦を説明する。先に言うと、チームの皆を信じて欲しい試合だ………!」

 

そう言って、作戦を伝え始めるのだった………

 

 

 

絶望的な状況の中、優が再度試合に戻る事になり、俯いていた春香達も闘志を取り戻す。果たして、優が提案する作戦とは………?

To Be Continued………




次回予告
巫魔は奇策として、優をPGに置くという作戦に出る。戦記は強力な攻撃力を捨ててまで優をPGにする理由に首を傾げるが、その真意は………!?
次回「僕じゃない」


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第79話 僕じゃない

前回までのあらすじ
第2Q終了時のインターバル。無得点が許されない状況に陥った巫魔の危機に、優が出場を決意する。優はチームの闘志を鼓舞して復活させた後、チームに作戦を伝える………


審判「第3Q始めます!!」

 

審判の言葉で第3Qが始まる。そして、伊吹との交代で優がコートへ戻ってきた。

 

戦記「戻ってきたか……」

 

唯一守城から得点を決めている優が戻って来た事で戦記の緊張感が一層強まる。そして第3Q開幕と同時に、山野から戦記にボールが渡る。

 

戦記「(巫魔としては25点をひっくり返す為には優がいるのは絶対条件だが………まあ、俺達のやる事は変わらんな)」

 

戦記はそう考える中、美矢とマッチアップ。美矢はフェイスガードで戦記にスリーを撃たせないようにする。

 

優「(そうだ、美矢。作戦の為にはまず戦記さんにスリーの選択肢を捨てさせなきゃ行けない。そして、戦記さんは無理に攻める事はほぼしない。この場合………!)」

 

どうやらこのフェイスガードは優の作戦の1つだった。そして、優が予想した選択は………

 

戦記「湯津!」

 

優「(よし………!)」

 

優の予想通りパスだった。ボールは湯津に渡り………

 

湯津「もらった!!」

 

湯津がゴール下シュートを狙う。

 

光一「何度も決めさせてたまるか!!」

 

光一は体を広げ、大きく飛び上がる………

 

湯津「うおっ!?」

 

湯津はこの土壇場で{ウォールブロック}を発動。湯津は苦し紛れにシュートを撃つが、ボールはリングに弾かれる。

 

光一「優、リバウンド頼む!!」

 

ジャンプから落下中の光一は、待機していた優がいち早くジャンプし、リバウンドボールを奪取する。

 

優「よし、上がれ!」

 

優は上がるよう指示。春香達は相手コートへと上がる。戦記達もディフェンスに戻る………

 

優「(よし、作戦はここからだ………!)」

 

優は半ば歩きながらドリブルをする。一方、春香達4人は前線に上がっていた。この形を見た戦記や夢流は驚愕していた。

 

夢流「なっ………!? 白宮優くんがPG!?」

 

なんと、優がPGを務めているのだ。

 

戦記「(優がPGなどやってもオフェンス力が落ちるだけだ。勝負を投げたか………?)」

 

戦記は首を傾げながらも、優のボールに対し手を伸ばしてスティールしようとする。だが、その直後に春香が動き、パスコースが出来る。

 

優「春香!」

 

優は春香にボールを渡す。山野は春香にボールが渡ったのを目にし、フェイスガードでスリーを撃たせまいとしてくる。だが、春香はお構い無しにスリーを狙いに行こうとジャンプする。

 

戦記「(強引なスリー………無駄だ………!)」

 

戦記ははそう考える。そして直後に山野はジャンプして春香のスリーを止めようとする。

 

優「(確かにフェイスガードされている中でシュートを狙うのは苦しい。でも、うちの正スリーポイントシューターは………只者じゃないぜ!!)」

 

そのような状況の中、優は春香を信じていた。その理由は、山野のディフェンスは、春香が{パワースリーポイントシュート}を決める為の条件を整えてしまっていたからだった。結果、春香の目論見通り、山野は春香と衝突してしまう。

 

山野「あっ………!?(しまった………!)」

 

審判の笛が鳴ると同時に、春香はスリーを放つ。ボールはリングの上を強い勢いで回った後、ゴールへ吸い込まれた。

 

審判「………バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

春香のスリーは決まり、更にフリースローを1本獲得した。

 

積牙「やった!! 春香先輩が決めた………!!」

 

春香がスリーを決めた事で、巫魔は22点差に詰め寄ると同時に、微かな希望を見いだした。それと同時に………

 

戦記「………成程、君のPG作戦の意味が分かったよ。白宮春香。彼女のスリーで追いつく為………か」

 

巫魔の奇策の意味を悟った。

 

優「そうです。逆転の起点になるのは春香です………僕じゃない………!」

 

優は、作戦を悟った戦記に対しそう言い放った………

 

 

 

優の作戦によって、優がPGをしつつ、春香のスリーで追いつく事が巫魔の作戦だった。果たして、残り22点差を詰められるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
春香の異次元なスリーを前に、山野は動揺。巫魔はその隙を突いた攻撃で、次々と点を重ねていく………!
次回「こっちです」


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第80話 こっちです

前回までのあらすじ
優をPGに使うという奇策。守城に通用する攻撃力を失うと思われたが、巫魔は春香のスリーで追い上げる作戦を見せる………!


審判「ワンショット!」

 

春香はフリースローを投げる事に。ボールを受け取ったはるかは特に秒を置く事無くフリースローを投げる。

 

ボールは綺麗にリングへと入った。

 

優「(あと21点………)」

 

まだ先は長かったが、優は冷静さを保とうとする様子を見せる。そして試合は山野がボールを投げ入れる所から試合再開。だが、春香にスリーを決められた影響か、山野の手は震えており、ボールは近くにいた戦記の真横へバウンドし、そのままこぼれ球となってしまう。

 

積牙「(パスの軌道が滅茶苦茶だ………!)」

 

積牙は、山野のミスに驚いていた。こぼれ球は積牙が拾うと………

 

積牙「キャプテン!」

 

すぐさま優へパスを回した。パスを受け取った優の元へすぐさま戦記が走ってきた事で、優はまたしても戦記と1on1に。しかし、戦記とまともにやり合う気が無い優は………

 

優「美矢!」

 

美矢へボールを渡す。美矢はキャッチした直後に春香へ鋭いパスを回す。それにより、ボールはもう一度はるかの手に渡る。

 

山野「(またさっきのシュートが来る………!)」

 

山野はパワースリーポイントを警戒し、無意識に距離を取る。だが………

 

春香「こっちです!」

 

山野と距離が出来た事を利用し、後ろへと飛んだ。

 

山野「あっ………!!」

 

山野が春香のパワースリーポイントに取り憑かれた山野は距離を取ってしまい、春香は軽々とフェイダウェイスリーポイントシュートを発動。春香のスリーは見事にゴールへと吸い込まれた。

 

光一「よーし! これで18点差だ!!」

 

春香のスリーでまたしても3点を得た巫魔。まだ苦しいながらも18点差へ追い上げた。その際、優は山野の様子がおかしいのを目にする。

 

優「(………あの7番、春香のスリーが決まった時から慌ててるな………)」

 

山野の様子のおかしさに、優はそんな事を考えていた………

 

 

 

その後、守城の攻撃を塞いだ巫魔。またしても優にボールが渡り、優は頭の中で策を構築する。そして、戦記とのマッチアップ時に、春香へボールを回した。

 

山野「………!! (前………? それとも後ろ………? )」

 

山野は、パワースリーポイントシュートとフェイダウェイスリーポイントシュート。どちらがくる分からず慌てていた。春香は山野の守りが甘い事から、普通にスリーポイントシュートを放った。

 

山野「しまった………!」

 

春香が放った綺麗なスリーポイントシュートはゴールへと沈み、巫魔は15点差へ追い上げた。

 

美矢「よーし!」

 

ゆう達は喜びを見せる。そして、点を次々と決められる事に動揺する山野は………

 

山野「あ、ああ………!」

 

精神的にかなり追い詰められていた………

 

春香のスリーで追い上げる巫魔は、15点差にまで追い上げた。果たして、このまま巫魔は追いつけるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
山野の調子が落ち始め、巫魔は春香のスリーでとにかく点を稼いでいく。だが、得点差が1桁となった時、戦記は………!?
次回「認めよう」


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第81話 認めよう

前回までのあらすじ
山野の調子が落ちた事も加わり、春香のスリーでひたすら点を稼ぎ続ける巫魔。点差は15点差に詰め寄り………?


山野の調子が崩れた事で、山野のディフェンスに隙が生じ始める。その結果………

 

優「春香!」

 

春香へのパスが通りやすくなり………

 

春香「はあっ!」

 

春香は調子を上げるようにスリーを放つ。山野は春香を相手にまるで歯が立たず、春香のスリーがまたしてもゴールへ入った。

 

湯津「おいおい、どうしたのさ山野? あのスリーシューターは確かに強いけど、お前なら止められるんじゃないのか?」

 

これには湯津も困惑し、声をかける。しかし、湯津の声は今の山野には聞こえなかった………

 

 

 

春香のスリーによる追い上げは、巫魔の調子を上げるきっかけとなっていた。

 

戦記「湯津!」

 

戦記から湯津のパス。そこへ………

 

積牙「はあああっ!!」

 

積牙がパスをスティール。こぼれ球を優が拾い………

 

優「春香!」

 

既に前線へ上がっていた春香へボールをパスする優。山野が大慌てで春香の後ろからディフェンスしようとする。だが、春香がシュートを放つのは防げず、オマケに後ろからぶつかってしまい………!?

 

審判「プッシング! 白7番!」

 

そして、肝心のシュートは綺麗にゴールへと決まり………

 

審判「………バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

審判のコールで、春香はフリースローを獲得。巫魔は9点差に追いつくと共に、第3Q開始から4分。脅威のスリー5連打で流れを戻した。

 

光一「やったぜ、春香!!」

 

光一は喜び、春香の肩を優しく叩く。

 

春香「はい!」

 

春香も喜ぶ様子を見せる。対して山野は………

 

山野「わ、私のせいだ………」

 

春香から短時間でスリーを5回も許した事に山野は責任を感じてしまっていた………すると戦記が山野の肩を優しく撫でると………

 

戦記「気を落とすな。お前のせいでは無い………」

 

彼女を励ますと共に………

 

戦記「………俺を本気にさせる程の策士でもあるという事だ………白宮優という男は………!」

 

優の策と、それを行える回転の速さも認める様子を見せた………

 

 

 

審判「ワンショット!」

 

春香は審判からボールを受け取ると、3秒と経たずにシュートボールは綺麗にゴールへと吸い込まれた。これにより8点差。スコアにして35vs27。守城相手に奇跡の追い上げを見せた巫魔の調子は最高潮だった。

 

映鳴「おいおいマジかよ………第3Q、守城が無得点なばかりか、巫魔が17点だぞ………」

 

観客席の爆速は守城の停滞に驚きを隠せない

 

湯津「くっそう………!」

 

湯津は悔しそうにボールを手にする。

 

戦記「俺に渡せ、湯津!」

 

戦記が湯津へボールを要求。

 

湯津「お、おう!」

 

湯津はボールをパスする。

 

戦記「認めよう、巫魔高校。お前達が全国へ行ける………その可能性はある………!!」

 

戦記はそう呟くと、先程までの守勢とは打って変わって、猛スピードで接近してくる。

 

美矢「な、なんだと!?」

 

戦記らしからぬプレイに驚きを隠せない美矢。

 

優「マズイ………!!」

 

優が大慌てで戦記とマッチアップ。しかし、戦記は迷うこと無く優をドライブで抜き去った。

 

優「………!!」

 

優は戦記のスピードに衝撃を隠せなかった。

 

修也「ゆ、優が抜かれた………!!」

 

そして修也も、優があっさり抜かれた事に動揺を隠せなかった。戦記は優をかわした直後、スリーポイントシュートを放つ。迷いの無い綺麗なシュートはゴールへと吸い込まれた。

 

優「戦記さんらしからぬプレイ………まさか、別の策を持っていたのか………!?」

 

戦記の一転したプレイを前に、優は驚愕を抑えられなかった………

 

 

 

8点差まで詰め寄ったのも束の間、戦記のとてつもない速攻で11点差に戻される。巫魔を前に、戦記良太は本気の姿勢を見せたのだった………!

To Be Continued………




次回予告
戦記のプレイと激励で守城の調子が戻る。戦記は巫魔に対し、勝つ為の必要条件を突きつける………
次回「お前が」


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第82話 お前が

前回までのあらすじ
春香のスリー連発で8点差まで追い上げた巫魔。だが、戦記はらしからぬプレイスタイルで11点差に離される。戦記のプレイに優は驚愕を隠せず………!?


戦記はスリーを決めた後、湯津達の方へ振り返り………

 

戦記「守城の選手達よ! 俺はお前達のミスを咎めるような真似はしない。ちょっとしたミスなど気にするな! 足りない部分は俺か補う! だから………思い切り戦え!!」

 

湯津達へ激励を飛ばす。それを聞いた湯津達は驚いていた。だが、それを聞いた優は、戦記の激励に危機感を覚えた。

 

優「(マズイ………戦記さんのこの激励は………!)」

 

何故なら、戦記の激励で守城の選手達は顔を上げ………

 

湯津「(戦記の野郎………そう言われるのはちょっとムカつくけどよ………やっぱお前は………俺達のキャプテンだわ………!!) ………よっしゃあ! やろうぜ皆! 戦記が頼れって言うんだ! 思いっきり頼らせてもらおうじゃねえか!!」

 

山野「おおー!!」

 

調子を取り戻してしまったからだ。

 

春香「優さん、これって………!」

 

春香は危機を感じるように優へ声をかける。そして………

 

優「ああ。守城が調子を取り戻してしまった………」

 

優達も、守城に調子が戻ってしまった事を察してしまった………

 

戦記「………それでいい。お前達はミスを気にしなくていい。バスケに限らず、人間は悪い事を引き摺らずにやる方が上手く行く………!」

 

戦記は、湯津達の調子が戻った事に微笑みを零す。その光景を見た優は………

 

優「(チームが困った時に、チームを立て直せるリーダーシップ。仲間を励まし、力を上げられる優しさ………理想的なキャプテン像だ………!)」

 

戦記のキャプテン像を理想と見ていた。戦記はその後、優に近づき………

 

戦記「こうなれば守城はもう簡単には敗れん。俺達が勝つだろう」

 

優に対し、実質的な勝利宣言をする。

 

光一「な、なんだと!?」

 

戦記の実質的な勝利宣言に光一は乗せられる。

 

戦記「………だが、100%勝てるとはまだ言えない。何故なら、まだ俺が危険視している奴が残っているからな」

 

ところが、戦記自身はまだ勝利を完全に確信してはいなかった。その原因について、戦記は優を指さした。

 

戦記「今ここではっきり言おう。俺達に勝ちたければ、お前が………俺に勝たねばならぬのだ、優!」

 

戦記が危険視していたのは優だった。そして、同時に戦記が突き付けたのは、巫魔が勝つ条件。その内容は、優が戦記良太を倒さなければならないというものだった………!

 

 

 

戦記の激励で復活した守城の選手達。そして同時に突き付けられたのは、優が戦記を相手に勝たなければならないというものだった。果たして、優は戦記を相手に勝てるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
戦記に勝たなければならない。全国最強選手相手に課せられたその条件はとてつもなく難しいもので、優は戦記に苦戦を強いられてしまい………!?
次回「全国最強は強いや」


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第83話 全国最強は強いや

前回までのあらすじ
戦記の激励で、守城選手の調子が戻る。同時に、戦記は突き付けた。巫魔が勝つには優が戦記を倒さなければならないという事を………!


戦記から突きつけられた優達。

 

積牙「きゃ、キャプテンが………!?」

 

春香達は戦記が突き付けた条件に驚きを隠せなかった。だが、優だけは微かに笑いを見せ………

 

優「………なら超えてみせます。貴方を………!」

 

戦記へ宣戦布告をする。それを聞いた戦記も口元に笑みを零すと………

 

戦記「面白い男だ………ならばやって見せろ………!」

 

そう言って優の肩を優しく叩く。その光景を見たアリサ達は………

 

アリサ「………相変わらず強敵を前にすると挑戦したがるよね、ユーは………」

 

芽衣「あはは………」

 

昔からそういう正確なのだろうか。優の挑戦したがる性格に呆れる素振りを見せる。だが………

 

修也「アイツは負けず嫌いだからな。でも、昔より生き生きしてる気がするよ………!」

 

修也だけは優が生き生きしている事を面白そうに見ていた………

 

 

 

その後、春香が優へボールをパスして試合再開。優PG作戦を続行する巫魔。必然的に優vs戦記の構図ができる。

 

優「(しかし、戦記さんはディフェンスにおいて美矢を完膚無きまでに叩きのめしているし………どうしたもんか………)」

 

だが、相手はディフェンス面においてトップクラスの選手。巫魔の中では異次元クラスなオフェンス力を持つ優でも、そう簡単に勝てそうな策が思いつかない程、戦記の影響力は恐ろしいものだった。実際、優が戦記の隙を伺おうとしても、戦記は隙1つ見せない。

 

優「(ぐっ………! なんて隙の無いディフェンスなんだ………! ドライブにすら持っていけないぜ………!)」

 

優が攻めあぐねていると………

 

戦記「………はっ!」

 

戦記が一瞬の隙を突き、優からボールをスティールした。

 

優「なっ………!?」

 

ボールが零れ、戦記は零れたボールを拾った。だが、優がすぐに戦記の前へと駆けつけた。

 

戦記「やはり挑戦を止めぬか。その姿勢は尊敬に値する………だが………!」

 

戦記はそのままシュート姿勢を取る。

 

優「………! 撃たせるか!」

 

優はすぐさま大ジャンプして戦記のシュートコースを防ぐ………

 

戦記「………甘いな」

 

だが、戦記のシュート姿勢はフェイクだった。戦記は鋭いドライブで優をかわした。

 

優「何っ!?」

 

春香「(フェイク………!!)」

 

戦記はそのままスリーポイントシュートを放つ。戦記のスリーは見事に決まった。

 

優「マジかよ………全国最強は強いや………」

 

優は戦記の強さに圧倒されると共に、感心する様子を見せたのだった………

 

 

 

戦記良太を倒すという厳しい条件を前にしても挑戦する事を諦めない優。果たして、優に攻略する術はあるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
戦記への挑戦を諦めずに挑み続ける優だが、優のスタミナは削られるばかり。優が激しく消耗していくと共に第3Qは終わりを迎え………?
次回「このままでは」


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第84話 このままでは

前回までのあらすじ
優が戦記に勝たなければ巫魔は勝てない。無謀ながらも燃える優は挑戦を続ける。しかし、戦記は優を翻弄する程の強敵だった………!


その後も優は戦記へ挑戦を続けた。しかし、優は戦記を抜けなかった。途中でパスという方法も考えたが、優の動きを読み始めた戦記は、優のパスすらスティールするようになった。

 

優「はあっ、はあっ………」

 

また、戦記への挑戦には最大の問題点があった。激しい勝負を繰り返し、優のスタミナが切れかかっているという点である。

 

優「くそっ………! このままじゃスタミナが持たねぇ………!」

 

優は疲労のあまり、辺り一面がぼやけて見えた。するとその直後………

 

審判「第3Q終了!」

 

第3Qの終わりを告げるブザーと共に、審判のコールが響いた………

 

 

 

その後、ベンチへ戻った優達。しかし、優の息はとてつもなく、オマケに疲労による視界のぼやけに悩まされており、かなり危険水域に陥っていた。

 

ゆうか「(優くんはもう限界に近い………でも、彼を下げたら間違いなく巫魔は勝ち目を失う………)」

 

ゆうかはスコアボードを見る。スコアは47vs27。差は再び20点差に追いやられ、絶望的な状況はまだ続く。この状況に爆速の選手達は………

 

映鳴「また20点差か………相変わらず守城は恐ろしいねぇ………」

 

映鳴は、守城の容赦の無さを見て、巫魔に同情する素振りを見せる。

 

速野「それに守城がめんどくせぇのは守城の戦略がロースコアのものって事だ。つまり、守城は最後まで手を抜かねぇ。例え20点の余裕があろうとも、守城は最後まで敵の逆転を予測する。奴らには舐めプなんてワード、一切ねぇんだよ………」

 

速野は守城は決して手を抜く事は無いと言いきった。彼の言う通り、守城選手達は20点リードしていても緊張感は途切れない。寧ろ、巫魔の様子を伺う程の緊張感を見せていた。そして、巫魔ベンチの雰囲気は絶望的なものだった。

 

春香「優さんのスタミナはあと僅か………それに、得点差は20点差に逆戻り………このままでは………」

 

頼みの綱の優がスタミナ切れ寸前かつ、20点差という絶望的な空気に、誰しもが頭を抱える中、優はスポーツドリンクをただ飲み続けていた。

 

優「………もう一本くれ………」

 

しかも、缶一杯分を飲んでもおかわりを要求する程。

 

結衣「は、はい!」

 

結衣は2本目のスポーツドリンクを手渡す。

 

優「………僕は勝つ………絶対に諦めるものか………!」

 

優は震えた手でスポーツドリンクの缶のプルタブを開けると、2本目を勢いよく飲み出した。

 

積牙「キャプテン………」

 

優がまだ諦めていない。その事実に春香達は驚きを隠せなかったのだった………

 

 

 

絶望的な中、優は諦めない。だが、戦記に勝つ術も無い優に勝機はもう無いのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優はまともに歩くのも困難な状況に陥っていた。戦記も驚いていたが、この状況下で優は奇跡的なプレイを見せる………!?
次回「なんだと」


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第85話 なんだと

前回までのあらすじ
戦記へ挑戦を続ける優だが、スタミナが切れかかる事態に陥る。だが、優はまだ諦める姿勢を見せず………?


審判「第4Q、始めます!」

 

審判のコールで第4Qが始まろうとしていたが、優は完全にフラフラで、立っているのもやっとだった。

 

戦記「………大丈夫か?」

 

これには流石に戦記も心配を見せる。優は聞こえていないのか、息を上げながらただ戦記を見つめていた。

 

戦記「(スタミナ切れは明白だ。しかし、目に浮かぶ闘志はまだ死んでいない………)」

 

それを見た戦記は、優の闘志が死んでいない事を悟った………

 

 

 

巫魔ボールで始まる第4Q。春香が優へパスをする形で試合が再開された。しかし、優のスピードは目に見えて落ちており、ドリブルをしているのは最早奇跡に近かった。

 

湯津「(おいおい、あれは流石に交代させるべきだろ………!)」

 

これについて湯津は、優が逆に可哀想に思えたという。だが、手を抜くつもりは毛頭ない戦記は、優の前に立ちはだかり………

 

戦記「(貰った………!)」

 

優が持つボールへ手を伸ばした………だが、その瞬間だった。優が横へ体を傾ける形でのドリブルを見せた。これにより、戦記のスティールが不発に終わる。

 

戦記「なんだと………!?」

 

優がスタミナ切れを起こす寸前に起こした奇跡か………優は遂に戦記を抜いた。

 

湯津「戦記が抜かれた………!?」

 

湯津は戦記が抜かれた事に驚きを隠せなかった。そしてこれは、観客席の誰もを驚かせた。

 

速野「崩した………県大会において、ドリブルでの突破を100%止めてきた戦記の不敗神話を………!」

 

それを1番驚いていたのは、爆速の速野だった。彼の様子から、速野ですら戦記に1on1でドリブル突破は出来なかったようだ。しかし、優は速野すら出来なかった事をやって見せてしまった。あまりの衝撃に、コートの選手達の空気が凍りつくように静かになったが………

 

山野「………!! 湯津先輩!!」

 

我に返った山野が湯津に声をかける。湯津が我に返った時、優が残る体力全てを賭けたダンクの真っ最中だった。

 

湯津「なっ!? くそっ………!!」

 

湯津はディフェンスをしようとするが、慌てていたせいでゆうの腕を叩いてしまった。優はお構い無しにダンクを決めると、背中から地面に落ちた。直後に審判の笛が鳴り………

 

審判「………バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

優のダンクが決まり、追加でフリースローまで与えられた。

 

光一「よ、よっしゃあああ!!」

 

試合開始20秒弱、巫魔は後半初得点かつ、フリースローまで得る最高の展開を引き寄せた………だが、ここで問題が起きた。

 

春香「優さん………!!」

 

先程地面に倒れた優がピクりとも動かず、意識を失っていた。

 

ゆうか「体力の限界が来たんだわ………これ以上はもう………!!」

 

ゆうかは優が倒れたのを目にし、交代を申し出る。審判側も、優の意識が飛んでしまった事について、プレイ続行不可能と判断。怪我をした場合と同じ扱いとし、交代を認めた。優は春香や光一が肩を貸す形でコートを去る事となった。

 

修也「優………最後の最後でとんでもねぇもん見せてもらったよ………やっぱりお前はすげぇ奴だよ………!」

 

修也は、優の勇姿を素直に賞賛する様子を見せたのだった………

 

 

 

優が戦記を抜いた事で、守城の牙城を崩したものの、優は倒れてしまった。果たして、優抜きの巫魔で守城は倒せるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優のミラクルプレイが炸裂したものの、優を欠いた巫魔にもう策は無かった。そして、巫魔の健闘も虚しく………
次回「決着か」


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第86話 決着か

前回までのあらすじ
スタミナ切れ寸前の優。しかし、戦記を相手にドライブでの奇跡の突破を成功させ、得点を挙げた。だが、スタミナ切れに陥った優はとうとう意識を失ってしまい………!?


審判「交代です!」

 

その後、優の代わりに伊吹が入ったが、優を欠いている以上最早巫魔に勝機は無かった。春香達も何とか諦めまいと奮闘するが、戦記と湯津を中心とした戦略を前にまるで歯が立たなかった。結果、巫魔は1得点も取れないまま、点だけを取られ続け………

 

審判「………試合終了!」

 

第4Q終了を鳴らせるブザーの音がなり、試合は終わってしまった。

 

戦記「………決着か」

 

戦記は一言そう呟くと、スコアボートを目にする。56vs29。ギリギリダブルスコアを回避したが、結果として巫魔は惨敗を喫したのは言うまでもない。

 

光一「くそっ………!!」

 

リーグ戦初戦。巫魔は1敗。全国の舞台へ行く為には最早敗北の許されない状況に陥った。

 

湯津「いやぁ、1度はどうなるかと思ったが、結果的に勝ててよかったな」

 

湯津は戦記にそう言って近づく。しかし、戦記は喜ぶ素振りなどまるで見せなかった。

 

湯津「どうしたんだよ戦記? 俺達勝ったんだぜ?」

 

これには戦記も首を傾げながらそう問いかける。すると戦記は口を開いた。

 

戦記「………もし優のスタミナがまだ続いていたら………もっと早く俺を突破する術を見つけていたら………俺達はここまで大差をつけて勝てなかった。もし、最初から全力で挑んでいなければ、俺達は危なかった………勝てても2桁差など到底無理だっただろう」

 

戦記は、もし優がまだ戦えていた場合を想定していた。もし彼がまだ残っていたら、守城は危なかった。戦記は少なくともそう考えていた………一方、春香達は悔しがる様子と共に………

 

春香「優さん………ごめんなさい………!」

 

試合に負けた事に、優への申し訳無さを、はるか達は抱える様子を見せたのだった………

 

 

 

その後、巫魔と守城の選手達は挨拶をする。

 

審判「56vs29で、守城高校の勝ち!」

 

春香達「ありがとうございました!」

 

春香達は礼を終えると、コートを去ろうとした。しかし、春香達に駆け寄り………

 

戦記「………恐れ入った。イバラキで俺達を相手に29点も決めたのは、力豪や爆速を除いてお前達巫魔が初めてだ」

 

戦記は巫魔の事を素直に賞賛していた。

 

春香「………その29点は優さんがいて取れた点数です。私達だけじゃ取れませんでした………」

 

だが、春香はその得点は優がいたからと口にした。それを聞いた戦記は………

 

戦記「………気に病むな。お前達の力は全く無駄なんかじゃない。寧ろ、伸び代は大きいはずだ。俺はそう感じているけどな………」

 

春香達の事を優しく褒めるのだった………

 

 

 

その頃、観客席では………

 

速野「………流石に守城を倒すまでは行かなかったか………まあでも、アイツらにしてはよく頑張ったな………」

 

速野が巫魔へ同情するようにそう呟くと、映鳴と共に観客席を後にした。しかし、速野達から少し離れた所に、何も考えてなさそうな、ぼーっとした表情の銀髪アメリカ人少女が座っており………

 

????「………頑張った………いいや、それは違う………寧ろ、周りのせいでミドレーユの強さが活かせていない………」

 

巫魔の敗因が、春香達にあると考えていた………同時に、その少女は何故か優のかつての名前を知っている人物だった………

 

 

 

巫魔は守城に敗れ、リーグ戦は1敗の苦しい展開に。果たして、この先の巫魔はどうなるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
控え室にて、優はようやく目を覚ますが、春香達の雰囲気は暗かった。だがそこへ、例の銀髪アメリカ人少女が尋ねる。優はその少女を見るなり驚き………!?
次回「久しぶりだね」


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第87話 久しぶりだね

前回までのあらすじ
優を欠いた巫魔は守城に敵わず、56vs29で敗れてしまった。しかし、戦記は優がまだいたパターンを想定し、素直に喜ばなかった。その頃、試合を見ていた観客席のアメリカ人少女は、優が活かせていないと、巫魔への問題点を呟き………?


優「ううっ………」

 

優はようやく目を覚まし、体を起こした。彼が目を覚ましたのは巫魔の控え室だった。

 

春香「優さん………大丈夫ですか?」

 

春香は心配するように優へ声をかける。

 

優「うん、もう大丈夫………それより試合は………?」

 

優は試合の結果を問いかける。だが、春香の俯く様子、積牙達が座り込んで落ち込む様子から、結果は分かりきっていた。

 

春香「56vs29………優さんが抜けてから力及ばず無得点で………すみませんでした! 私達が力不足だったせいで………!!」

 

春香は申し訳なさそうに頭を下げる。

 

優「あ、謝らなくていいよ! 寧ろ僕が早く戦記さんを攻略出来ていれば………!!」

 

それを聞いた優は慌ててそう呟く………だがその直後、ノックも無しに控え室の扉が開いた。

 

スタッフ「お、お客様、困りますって!!」

 

扉を開いた先には、先程試合を見ていた銀髪アメリカ人少女だった。スタッフが必死に止めようとしていたが、少女は全く聞き入れない。だが、優は少女を見るなり驚いた。その理由は………

 

優「………!! シュガー!? シュガーだよね!?」

 

このアメリカ人少女こそ、優の文通友達シュガーだったからだ。

 

積牙「えっ!? この人、キャプテンの知り合いなんですか!?」

 

これには春香や、積牙達も驚いた。

 

シュガー「久しぶり、ミドレーユ」

 

優「久しぶりだね」

 

優達は再会を喜んでいた。しかし………

 

あずさ「………ミドレーユ?」

 

春香と美矢、この2人を除いて事情を知らない積牙達は、ミドレーユという名前に困惑する。

 

優「あっ………! ………くそっ、隠してたのに………」

 

優は思わぬ形で隠していた秘密をバラされた。その事に頭を抱える。

 

光一「おい、どういう事だよ優!」

 

これにより、積牙達に詰め寄られ、説明を行う羽目になった………

 

優「………僕はこの学校に来る前、東京の友力中学にいたんだ」

 

優は隠す事を諦めて説明を始める。

 

のぞみ「友力はエスカレーター式の学校だって聞いた事がある………つまり天野修也達とは元々同じ学校だったという訳ね?」

 

その事から、必然的に修也達との関係も問われる。

 

優「ああ。小4の時、ニホンに来た際からの仲だ」

 

優がそう説明すると………

 

伊吹「優がニホン人とは思えない見た目だなとは思ってたけど………そういう事だったのか………」

 

部員達がふと考えていた疑問が晴れるように、伊吹はそう呟いた。

 

優「そして、僕が白宮優を名乗るようになったのは中学の終わりだ………」

 

そして、優の話はいつの間にか中学の話へ遡っていく事となった………

 

 

 

思わぬ形で優の秘密はチームに露呈する事になる。果たして、優の過去に何があったのか………?

To Be Continued………




次回予告
中学2年生。この頃の優は修也と共に最強コンビとして東京で名を馳せていた。そして優達の代になった時、キャプテンを決める事となり………?
次回「キャプテンに相応しいのは」


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間章 中学の苦い記憶
第88話 キャプテンに相応しいのは


前回までのあらすじ
目を覚ました優だが、チームの雰囲気はとても暗かった。そこへ、優の文通友達シュガーが現れた。彼女によって、巫魔のメンバーに隠し続けていた秘密がバレてしまった優は、現在に至るまで、過去についてを語り出す………


話は現在から3年前、優が中学2年生だった時の頃に遡る………

 

 

 

この年の夏のインターハイ。友力は惜しくもベスト8で敗退してしまい、3年生は引退。優達の代となり、この日は当時の友力中学監督晴原の元で、友力中学のキャプテンを誰にするかを話し合っていた。

 

晴原「友力のキャプテンに立候補、もしくは推薦したい者はいるか?」

 

晴原は2年生の部員15人へそう問いかけた。

 

梶原「俺は修也の方が相応しいと思います」

 

荒木「俺も同じです」

 

その中の2人、梶原と荒木は修也をキャプテンに推薦した。

 

晴原「天野か………確かに天野がキャプテンをやるのも悪くないな」

 

晴原は、修也に対し視線を向ける。

 

修也「………申し訳ないんですが、俺はキャプテンをやるつもりはありません」

 

だが、修也はキャプテンになる気は無かった。それを聞き、梶原達は驚いていた。

 

晴原「そうか………まあ確かに強制はしないが………なら天野、キャプテンに相応しいのは………誰だと考えている?」

 

晴原は落ち着いた様子で、修也に誰がキャプテンへ相応しいかを問いかける。

 

修也「俺は………キャプテンに相応しいのはミドレーユだと思っています」

 

修也が挙げたのは、ミドレーユこと優だった。

 

優「修也………!?」

 

この時の優は当然驚いていた。

 

修也「2年の中で一番上手いのはミドレーユだろ? それに、練習とかも一番真面目にやってたじゃないか」

 

修也は、優の努力や真面目さから、キャプテンへ推薦したようだった。

 

アリサ「私もユーがいいと思うな」

 

修也の推薦をきっかけに、アリサも優を推薦する。

 

芽衣「私も修也くんやアリサちゃんと同じ意見です」

 

芽衣も優を推薦。3人は小4からの仲である優の幼なじみだった事もあってか、バスケが一番上手かった優を推薦した。

 

優「ほ、本当に僕を推薦するのかい………?」

 

優は困惑しながら3人に問いかける。

 

修也「俺は本気さ。そして、アリサと芽衣もな」

 

修也は本気だった。それと同時にアリサ達も同調するように頷く。

 

梶原「そいつがキャプテンになるなんて俺は反対だ!」

 

これに対し、修也をキャプテンに推薦した梶原達は猛反対の姿勢を見せる。

 

晴原「………まあ、スタメンとして不動の存在となっているのは天野とミドレーユの2人だ。キャプテンになるならその中の2人だろう………そして、天野がやろうとしない以上、必然的にミドレーユがやるべきだろうな」

 

だが、監督の晴原は優がキャプテンをやるべきと判断し、優をキャプテンに決めた………後に大変な事になるとも知らずに………

 

 

 

過去の最初の話はキャプテンを決める話にて、優が中学時代にキャプテンとなった過程が語られた。果たして、何が優を変えたのか。その話はもう少し先の話………

To Be Continued………




次回予告
キャプテンとなった優だが、修也達幼なじみの仲間以外は全く話を聞いてくれない。自主練の時間に頭を悩ませる中、修也達は………?
次回「僕じゃダメなのか」


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第89話 僕じゃダメなのか

前回までのあらすじ
中学2年。当時の3年が引退し、キャプテンを決める事となった友力中学。修也を推す声がある中、修也の希望でキャプテンは、当時、まだミドレーユを名乗っていた優となった………


友力中学のキャプテンとなった当時の優は、先輩達のキャプテン像や練習メニューを参考にしながら必死にやる。しかし………

 

梶原「俺達はお前達をキャプテンだとは認めてねぇ。勝手にやらせてもらうぜ」

 

修也、アリサ、芽衣以外の2年生は話を聞いてくれなかった。1年生についても、梶原達によって既に根回しされているのか、優の話を聞いてくれない。

 

修也「待てよ………! ………くそっ、勝手な奴らだな………!」

 

修也は、優の言う事を無視する事に苛立つ様子を見せる。優は何も言えず、俯く様子を見せたのだった………

 

 

 

優がキャプテンになった事について、また問題が生じた。それは、他の部員達が普段の練習を終えた後の自主練に参加しなくなった。強制じゃないとはいえ、優や修也達以外は残らなくなった事に、修也やアリサは苛立っていた。

 

アリサ「なんなの皆………! ユーがキャプテンになったのがそんなに気に入らないの………!?」

 

アリサの苛立ちの言葉が飛び出ると………

 

優「………僕じゃダメなのか………?」

 

優は不安な様子を見せる。

 

芽衣「み、ミドレーユくんは頑張ってるよ! それに、自主練習は強制じゃないし………!」

 

芽衣はなんとか優をフォローしていた。

 

修也「だとしてもこれは異常だろ………! ミドレーユが日本人じゃないから毛嫌いしているんだろうけど、そんなのおかしいだろ………!!」

 

だが、修也は怒りを沈められなかった………

 

優「ま、まあ………僕も頑張ってみるよ………! だから落ち着いて………ね?」

 

この時の優は、日々苛立ちを募らせる修也やアリサのフォローに追われていた………

 

 

 

特に修也は、監督の晴原に対し、何度も梶原達の事を相談したが………

 

晴原「しかし………ミドレーユだけを擁護する訳にも行かんしな………」

 

晴原は対応に困っていた。優の事も気にしたいが、梶原達の事を蔑ろにしたり、彼等の意思を無視して練習させる訳には行かないと考えていた為、晴原はこれと言った対応が全く出来なかった。

 

修也「………とにかく何とかしてくださいよ! 」

 

修也は何度もそう言って対応を求めた。しかし、結果として翌年になっても全く状況は変わらなかった。そればかりか………

 

優「………なんだこれ」

 

優は梶原達から嫌がらせを受けるようになった。机を落書きされたり、ロッカーを荒らされたり………

 

優「でも、修也達に迷惑かけたくないし………」

 

しかし、優はこれらの嫌がらせを抱え込んでいた。後に優はこの行動を大きく後悔する事になると知らず………

 

 

 

キャプテンになった後のゆうは壮絶な日々を歩いていた。だが、そんな彼は中学で運命の出会いを果たす事となるのだった………

To Be Continued………




次回予告
中学3年のインターハイ予選。巫魔の対戦相手は、大会初参加のお嬢様学校、白宮中学だった。その試合にて、優は運命の出会いをする。
次回「貴方のファンです」


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第90話 貴方のファンです

前回までのあらすじ
優がキャプテンになってから、優と修也達3人以外はまともに練習しなくなってしまう。修也が梶原の事を訴えるも、晴原は対応に困る。更にゆうは追い討ちをかけるように嫌がらせをされるようになり………


肩身の狭い日々を強いられる優。だが、そんな彼が待ち侘びていたインターハイ予選の日がいよいよやってきた。

 

優「(1回戦の相手は白宮中学………結構なお嬢様学校らしいから、名前は聞いた事あるけど、試合に出るのは初めてなんだっけ………)」

 

相手は大会初出場チームだが、優は油断しないように心がける。そして、試合のコートへ向かうと、既に白宮中学の選手達が集まっていた。

 

梶原「お、相手は可愛い女の子達ばっかじゃんか!!」

 

梶原達は白宮中学の女子に見とれていた。

 

アリサ「はあ………バカはこれだから………」

 

アリサがそう言って呆れていると、白宮中学の4番のユニフォームを着た長い白髪の女性がやってくる。

 

荒木「おおっ………!? 彼女は確か白宮家のお嬢様の白宮春香って子じゃないか!?」

 

彼女はまだ優に会う前の春香だった。梶原や荒木は照れる様子を見せるが、春香は優へ近づくと、優の手を掴み………

 

春香「はじめまして、ミドレーユさん!」

 

キラキラした目で優に声をかける。

 

優「ど、どうも………」

 

優は反応に困る様子を見せる。

 

春香「私、貴方のファンです! 貴方の影響でバスケを始めたんです!」

 

どうやら春香がバスケを始めたのは、優のプレイに魅せられた事が理由らしい。

 

優「それは嬉しいよ」

 

それを聞いた優は純粋に嬉しくなった。自分のバスケを理解してくれているのが修也達しかいなかったと思い込んでいたので、春香の言葉はとても嬉しかったようだ。

 

春香「それでは、お話はまた後で。いい試合にしましょう」

 

春香は優に対し手を伸ばし、握手を求める。

 

優「うん、そうだね」

 

優も手を伸ばし、握手を交わした。

 

修也「へぇー、ミドレーユのファンか。いいな」

 

修也はその様子を微笑ましそうに見ていた。すると………

 

梶原「あ、あの! 俺梶原です! 俺にも握手を!!」

 

荒木「ずるいぞ、梶原!!」

 

梶原達が出しゃばって来た。

 

春香「え、ええっと………」

 

春香がどうすればいいか困っていると………

 

椿「春香様に認知されていないのに言いよるな、下衆共!!」

 

5番の椿という少女が、梶原達へ怒る様子を見せた。

 

梶原「ひ、ひえっ!?」

 

梶原達は怯える様子を見せると、その場を後にした。

 

優「………うちの部員が申し訳ない………」

 

優は申し訳無さそうに謝る。

 

春香「い、いえ、大丈夫です。椿さん、ベンチに戻りましょう」

 

春香は特に気にする様子を見せず、椿と共にベンチへと戻った。

 

優「………はあっ」

 

優の心労はまた増え、困った様子を見せたのだった………

 

 

 

と、ちょっとした出しゃばりこそあったが、この時が優と春香が面を合わせて邂逅した瞬間だった。果たして、2人の試合は………?

To Be Continued………




次回予告
いよいよ試合が開幕。白宮のテクニックレベルは低く、そこまで苦戦しないか………と思われたその時、春香のスーパープレーが連発される………
次回「凄いスリーだ」


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第91話 凄いスリーだ

前回までのあらすじ
インターハイ予選の日。友力中学1回戦の相手は、春香率いる白宮中学だった。この時、優は春香と運命の出会いをし………!?


そんな事がありながらも、優達は試合を行う事に。しかし………

 

椿「あっ………!」

 

白宮中学の選手達はそこまでレベルが高くなかった。たった今、優が椿からボールをスティールした事からもそれは明らかだった。

 

アリサ「もしかして………そんな強くない………?」

 

アリサはそれに気づいてしまい、思わずそう呟いた。

 

修也「(1回戦は安定して勝てそうだな………)」

 

友力の選手達は勝利を確信した………だが………

 

春香「椿さん! こっちへ!」

 

第1Q開始から6分程経った時、椿から春香へボールが渡る。

 

アリサ「撃たせない!」

 

アリサが春香の前に立ちはだかる。しかし………

 

春香「はっ!」

 

なんと春香はフェイダウェイをしながらスリーポイントシュートを放った。

 

アリサ「ええっ!?」

 

春香のスーパープレイを前に驚きを隠せないアリサ。春香が放ったスリーは見事決まった。

 

芽衣「フェイダウェイしながらスリーって………NBA選手でも難しい技だよね………!?」

 

春香のプレイに驚きを隠せない芽衣。

 

優「そうだけど………彼女、それをさも当然のようにやって見せたぞ………」

 

春香の代名詞{フェイダウェイスリーポイントシュート}は、どうやら中学の頃から可能だったようだ。この時、まだバスケ歴約2年の春香が、こんな大技を容易に行えるのは天才と言わざるを得ないだろう………

 

 

 

それから1分もしないうちに、またしても春香へボールが渡る。

 

アリサ「(さっきのは凄かったけど………ようは後ろへ飛ぶ意味を無くせばいいんでしょ………!?)」

 

アリサはそう考え、春香との距離を詰める。春香はそれを目にすると、気にせずにジャンプする。

 

アリサ「今度こそ………!」

 

アリサはスリーを止めようとする………しかし………

 

アリサ「(………!? 前に飛んでる………!?)うわっ!?」

 

春香はアリサが自分へぶつかるよう、やや前に飛んでいた。結果、アリサは春香に思いっきりぶつかり、審判による笛が鳴る………だが、春香は笛が鳴る前にシュートを放り込んだ。結果、春香のシュートはゴールへ入り………

 

審判「バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

春香のもう1つのスリー、{パワースリーポイントシュート}が決まった。

 

アリサ「よ、4点プレイ!?」

 

アリサは春香のシュートに驚きを隠せない。そして………

 

優「凄いスリーだ………!」

 

優は春香の2種のスリーに関心を見せたのだった………

 

 

 

白宮はチームレベルこそ高くないものの、春香のスーパープレイは友力を驚かせるものだった。果たして、これを前に優達は………!?

To Be Continued………?




次回予告
優は春香を相手にマッチアップする事に。優は春香のスリーを封殺する為の策に出る………!
次回「君のスリーを破る」


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第92話 君のスリーを破る

前回までのあらすじ
白宮中学はそこまでレベルが高い学校では無かったが、春香の代名詞とも言えるスリーはこの頃から現在だった。それを見た優は関心を見せた………


春香が得意とする2種類のシュートに、友力は珍しく翻弄されてしまう。結果は20vs18と、優が主軸となって点を稼ぎ続けた結果、一応友力がリードを奪っていたが、春香にスリーを6本決められるという驚きの展開だった。

 

芽衣「正直びっくりだよね………白宮春香さん、お嬢様とは思えないスリーの連打だよね」

 

春香のスリーには芽衣も驚いていた。

 

アリサ「あれはまさに理想系のスリーポイントシューターだよ………私がああなりたい位に………」

 

アリサにとって、春香のプレイスタイルは理想系に見えた。

 

修也「こりゃ、対策立てねぇと厳しそうだな………」

 

修也は頭をポリポリとかく………すると………

 

優「あのさ、僕に彼女の相手をさせてもらえないかな? 彼女のスリーを破ってみせるから」

 

優が春香との対決を申し出た………

 

 

 

その後、第2Qが開幕。白宮ボールで試合が開幕する。

 

椿「春香様!」

 

椿は春香にボールを渡す。その直後、優は春香の前に立ちはだかる。春香は驚きこそしたが………

 

春香「………光栄です。貴方と直接戦えるなんて」

 

優との対決を楽しみにしていた。

 

優「僕もだ。しかし、ここで宣言するよ………君のスリーを破る………!」

 

優も楽しいと感じていたが、同時に春香のスリーを破るつもりだった。それを聞いた春香は………

 

春香「………勝負です!」

 

そう言って姿勢を低くする。優は春香の足元へ視線を向けていた。

 

修也「(ミドレーユ、何故相手の足元を見る………!?)」

 

優の行動に首を傾げる修也。しかし、この困惑の謎は少しして解けた。

 

春香「(………後ろ!)」

 

春香が膝を上げた時、少しずつ春香の体は後ろへ飛んだ。

 

優「(………やはり!)」

 

だが、優は春香が後ろへ飛んだ原理を理解しており、春香に近づくように前へと飛んだ。

 

春香「っ!?」

 

優「君は沈み込んだ後、前か後ろに飛ぶ事で、2つのスリーを使い分けていた。悪質なのは、飛ぶまで分からないという所だが………膝を見ればよく分かる!」

 

優は春香のスリーを見破った原理を語ると、春香のシュートをブロックした。優がブロックしたボールはコートの外に出た為………

 

審判「アウト・オブ・バウンズ、白ボール!」

 

白宮ボールとなったが、優が春香のスリーを破ったという事実が、会場を驚かせていた。そして、1番驚いていたのは春香だった。

 

春香「………何故私のスリーの原理を見破れたんですか?」

 

春香は優に対し、自分のスリーを破った理由を問いかける。

 

優「………バスケにおいて、跳躍の基本は足だ。特に君のシュートは、膝や筋力の基本を大事にしなきゃ出来る訳無いさ」

 

それは、春香が自在に行ってきた跳躍の基本がそれを可能にしてると見抜いたからだった。

 

優「………まあ、僕には真似出来ない芸当だけどね。あはは………」

 

同時に、自分には春香のスリーは真似出来ないとフォローを入れる優だった………

 

 

 

優は春香のスリーを見事に攻略して見せた。この勢いで試合を制する事が出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
その後、試合は友力が制した。春香は優に対し連絡先交換を求めるなど、更に仲良くなったものの、それを見た梶原達の嫉妬は強まり………
次回「なんだよアイツ」


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第93話 なんだよアイツ

前回までのあらすじ
優は春香との1on1を希望し、実際にマッチアップする。結果、優は春香のスリーの原理を見事に見破って見せたのだった………!


その後も試合は白熱したが、83vs69で友力が終始有利の状況で逃げ切った。しかし、この試合においてフル出場では無かったが、春香1人でスリーを14本も決めており、フリースローも4本沈めて見せた事で、総得点は脅威の46点。また、この試合で春香が放ったスリーは17本。80%の成功率に加え、3本を止められたのは優にブロックされたからという理由である為、友力からすれば白宮春香は最後まで恐ろしい相手だった………

 

 

 

優達「ありがとうございました!」

 

優と春香は挨拶を終えた後、2人で会話をしていた。

 

春香「参りました。やはりミドレーユさんは強いですね………」

 

春香は優の勝利を素直に讃える。

 

優「いや、君のスリーも凄かった。というか、スリー17本中14本だから………80%以上か………FIBAやNBAでもトップクラスの成功率だろ………」

 

優も春香のスリーを褒めたが、あまりの成功率に驚いてもいた。

 

春香「………そうだ。ミドレーユさん、連絡先交換しませんか? 折角試合して頂いたのに、これっきりっていうのも悲しいですし」

 

その後、話題はバスケから離れ、連絡先交換に変わった。

 

優「それはそうだね。じゃあ交換しよう」

優は春香との連絡先交換を受けいれる事に………

 

 

 

そんな2人の様子を、修也達は少し離れた所から見ていると同時に………

 

修也「なあ、あの2人結構仲良くないか?」

 

どこか面白そうに修也がそう呟いた。

 

アリサ「まあそれは確かに。というか意外だなぁ………あんなにスリーが上手いのに、バスケ始めたきっかけだったり、憧れている選手だったりがユーなんだから」

 

アリサは修也の言葉に頷く。同時に、春香のバスケ人生に大きな影響を与えているのが、SGでもスリーポイントシューターでも無い優である事を、珍しそうに見ていた。

 

芽衣「まあ、私とアリサちゃんがバスケ始めたのも修也くんの影響だし、全然おかしくはないと思うよ。バスケの世界で憧れたり影響を受けたりするのは………プレイヤーによって違うだろうし………」

 

芽衣はそう言って、春香の憧れや影響を否定する様子は見せなかった。自分達も修也の影響でバスケを始めた為だった。しかし………

 

梶原「………なんだよアイツ………俺達を差し置いてあんな可愛いお嬢様と………! ふざけんじゃねぇ………!」

 

梶原達はそれに不満気な様子を見せたのだった………

 

 

 

無事に第1回戦を勝った友力中学。春香とかなり仲良くなった優だが、この事が中学で最大の絶望をするきっかけとなる事は知る由もなかった………

To Be Continued………




次回予告
順調に試合を勝ち上がる友力中学。遂に全国出場をかけたリーグ戦まであと一歩の試合前、梶原達は最悪な行動に出てしまう………
次回「俺達は出ない」


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第94話 俺達は出ない

前回までのあらすじ
友力と白宮の対決は、83vs69で逃げ切って勝利した。その後、優と春香は仲良くなったのだが、その様子を喜ばない者も………?


その後の友力は、優、修也、アリサ、芽衣の4人が主となって活躍し、無事4回戦まで突破した。この快進撃に監督の晴原も………

 

晴原「よくやってくれた。特にミドレーユと修也、2人はよく頑張ってる。この調子で今年こそ全国を頼むぞ!」

 

優と修也の2人を主として褒めてくれた。

 

修也「よし、ここまで来たら全国だ! ミドレーユ、小学生からの夢がもう少しで手の届く所まで行くぞ!!」

 

修也はいつになく興奮していた。ようやく見えた全国という舞台に………

 

優「ああ、そうだね」

 

優も修也と共に喜ぶ様子を見せた。しかし、梶原は優を見て………

 

梶原「(………あんな奴がいなくても全国に行ける………)」

 

嫉妬による優への敵対心を見せたのだった………

 

 

 

そして練習後の自主練時間。やはり優達4人以外は残らなかったが、この日は珍しく晴原が様子を見ていた。

 

優「はあっ!」

 

優が高いジャンプによるレイアップをする。その時、結構高く飛んでいたのを晴原は目にする。

 

晴原「(ミドレーユのジャンプ力が高い………他のシュートも上手いし、今後ダンクも出来るようになれば、SFとして敵無しだな………)」

 

晴原は優の更なる成長に期待していた………だが、そんな中で晴原の携帯が鳴る。

 

晴原「………私だが」

 

晴原が電話に出る。

 

梶原「監督、今度の試合、ミドレーユを出さないでください。そうじゃなきゃ………俺達は出ない」

 

電話の相手は梶原だった。その梶原は、次の試合に優を外さないと試合に出ないと脅してきた。

 

晴原「ミドレーユを下げろだと? ………なら他の部員を………」

 

晴原は他の部員に変えればいいと思っていたが………

 

梶原「他の部員も同様だ。さあどうする………?」

 

梶原はそう言ってきた。それを聞いた晴原は頭を悩ませた………

 

 

 

その後、晴原は優に近づくと………

 

晴原「………ミドレーユ、すまないが次の試合は………起用出来ない」

 

梶原の脅しに屈してしまったようだ。

 

優「ど、どうして………!?」

 

優は困惑を隠せなかった。それを聞いた修也達も驚いた………

 

修也「な、何故ですか!? 次は全国常連校が相手なんですよ!? ミドレーユ抜きじゃ苦し過ぎます!!」

 

更に優を外せば次の試合は苦しむ展開。修也達は焦っていたが、この時、優の頭では梶原達の事が思い浮かんだ。そして彼等のせいだと悟り………何かが壊れた。

 

優「………もう、もういいです………僕はもう次の試合どころか………バスケ部自体やめてやりますよ………!!」

 

修也「み、ミドレーユ!?」

 

優はそう言うと、この場を後にしてしまった。そしてこの時に、一時バスケへの情熱を失ってしまったという………

 

 

 

梶原達の脅しで、優の中で遂に何かが壊れてしまった。果たして、優を失った友力の行方は………!?

To Be Continued………




次回予告
優が抜けた理由が梶原である事を知った修也とアリサはガチギレし、試合を放棄。残ったメンバーで試合に勝てる訳がなく、試合に敗れ去ってしまい………!?
次回「何も出来ないんだな」


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第95話 何も出来ないんだな

前回までのあらすじ
試合を勝ち上がっていく友力中学。しかし、梶原がしかけた脅しによって、優はバスケ部をやめると言い出し………!?


そして、それ以降優は練習へ来なくなってしまったどころか、部に退部届を渡してバスケ部をやめてしまった。修也達は必死に話をしようとするが、優は3人に関わらないように避け続けてしまったせいで説得もできず、試合当日の日になってしまった。

 

晴原「じゃあ、ミーティングを………」

 

晴原がミーティングをしようとするが、修也やアリサは試合が出来る空気では無かった。

 

晴原「………ミドレーユの離脱は大きなダメージになっているのは私も重々承知している………でも、今はミドレーユ抜きでやるしかないんだ。全国はもう少しだ、頑張ってくれ」

 

晴原もなんとか励ましの言葉を探すが、それで修也達の元気が戻る訳ないと分かっている為、頭を悩ませる。すると………

 

梶原「任せてください! 俺達ならミドレーユ抜きで勝てますから!」

 

梶原達はこんな状況でも勝てると考えている様子を見せる。

 

晴原「それならいいんだが………」

 

晴原は不安そうな様子を見せていた。しかし………

 

後輩「あ、あの………! やっぱり梶原先輩がキャプテンを試合に出させないよう監督を脅したのは間違いだったんじゃないですか………!?」

 

ここで1年生の勇気ある部員が例の件を暴露した。このままでは勝てない。そう考えたからだ。

 

修也「なんだと!?」

 

それを聞いた修也は大激怒。

 

アリサ「ユーがやめるなんて騒ぎ立てたのは………アンタの仕業だったわけ!?」

 

同時にアリサも激怒した。

 

修也「………ふざけんな! そんな事でミドレーユを追い詰めていたのかよ………呆れてものも言えねぇよ!! ………俺はこの試合を降りる!!」

 

真実を知った修也は試合を放棄。荷物を持って体育館を去ろうとする。

 

晴原「天野!」

 

晴原は止めようとするが、直後にアリサも荷物を持ち………

 

アリサ「私もこんな状況で試合とか無理。もう勝手にやって………!」

 

試合を放棄してしまった。

 

荒木「お、おい! どうしたんだよ!?」

 

梶原や荒木は言葉を失っていた。しかし、もう試合までの時間は無く………

 

芽衣「監督………! 私かなんとか頑張ってみます! とにかく試合を………!!」

 

現在、確実なスタメンポジションの中で、唯一残っていた芽衣が残って試合に出る事を決めた為、なんとかなると梶原達は思っていた………しかし、現実は残酷で、試合は39vs85でボロ負けした。

 

梶原「そ、そんな………!」

 

絶望する梶原達に対し、対戦相手は………

 

相手「最近強くなってきてたから期待してたのに………それはミドレーユとか天野とか、元々のスタメン陣が強かっただけか………アイツらがいないと何も出来ないんだな………」

 

落胆するようにそう言い放った。友力の全国への道は、このような形で終わってしまったのだった………

 

 

 

優、修也、アリサ。主力3人が抜けた友力は全国に行けず敗れてしまった。果たして、この事実が優達にどう影響するのか………!?

To Be Continued………




次回予告
高等部への推薦を受ける優だが、バスケに情熱を失っていた彼は、推薦を蹴ってしまう。その後、自分の進路をどうするか悩む優の前に、春香が現れ………?
次回「私と遠くへ行きませんか」


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第96話 私と遠くへ行きませんか

前回までのあらすじ
優の離脱原因の真実を知った修也とアリサは大激怒し、試合を放棄。主力3人を欠いた友力が勝てる訳も無く、全国へは行けずに敗れてしまった………


友力が全国へ行けずに敗れてから2ヶ月程経ち………

 

教師「どうかな、ミドレーユくん。君に高等部へのスポーツ推薦の話が来ているんだ」

 

優は担任の教師から高等部への推薦の話を受けた。しかし………

 

優「………申し訳ないですが、このまま高等部には行きたくありません………」

 

優は推薦の話をあっさり蹴ってしまった。バスケへの情熱が失せてしまった優は、自分を推薦してもらうのはお門違いだと思い込んでいたようだ。その後、職員室を出ると、1、2年生のバスケ部の後輩達が立っており………

 

後輩達「きゃ、キャプテン………今まで練習サボったり………無視したりして………すみませんでした!!」

 

優に対しこれまでの非礼を詫びる。しかし優は彼等に背を向け………

 

優「もう遅いよ。僕はこれから進路の事を考えなきゃ行けないし………君達に今更謝られても納得出来ない」

 

冷たい言葉で突き放し、その場を後にした。後輩達は、優の怒りを彼の空気から悟ったのか、何も言い返せなかった。

 

優「(………本当は分かってる。どうせ梶原や荒木が脅して根回ししてたんだろうなって。練習すればよかっただけのはずなのに、どうして僕を貶める事で何かを掴もうとするのか………理解に苦しむな………)」

 

優は、後輩達を恨む気は無かった。実際彼の予想通り、後輩達が優の言う事を聞かなくなったのは梶原達の根回しだったのだから………

 

 

 

将来の道がまるで見えなくなった優は、俯いたまま校門を出る。するとそこには………

 

春香「ミドレーユさん」

 

以前対戦した春香が、椿や執事の男と共に立っていた。

 

優「白宮さん………!」

 

優は春香と偶然顔を合わせた事に驚いていた。

 

春香「もう。春香でいいって言ったでしょう?」

 

春香は分かりやすく頬を膨らませながら名前呼びを求める。

 

優「す、すまない。それよりどうしてここへ? 白宮中学からここまでそこそこ距離があるはずなのに………」

 

優は、春香がここへ現れた事に驚いていた。

 

春香「まあ、外で話をするのもなんですから、お車の方でどうでしょう?」

 

春香はそう言って近くにある白のリムジンを指差す。

 

優「リムジン車なんて初めて見たんだが………」

 

優は改めて、春香が白宮家のお嬢様だという事を突きつけられた………

 

 

 

それから車に乗った優達は、リムジンの中で話をする事に。

 

優「それで………僕に何の用なんだ?」

 

優は春香に本題を問いかける。

 

春香「実はミドレーユさんがまだ進路をお決めになっていないと言うのを耳にしまして」

 

春香は、優がまだ進路を決めていない事を知った話をする。

 

優「………どこから仕入れたんだよ、その情報」

 

修也達にすらそんな話はろくにしていないのに、何故目の前の彼女はそれを知っているのか首を傾げる。

 

春香「まあ、ちょっと情報網を駆使すれば………です」

 

どうやら情報を仕入れたルートはあるらしい………

 

優「要は………なんやかんやで僕の進路が分かったと」

 

優は深く追求しない上で、春香が自身の状況を知っている事を認知した。

 

椿「ミドレーユさんはかなり物分りがよろしいようですね」

 

春香が情報を仕入れた経路を追求しない優に対して、椿はそう呟いた。

 

優「なんか嫌な予感がするからね………」

 

優は真実を知らない方が良いと考えて、この判断をしたようだ。

 

優「それで、僕の進路が決まってないのを聞いてなんなのさ」

 

優は本題を求めた。それを聞いた春香は………

 

春香「………ズバリ言います。中学卒業後、私と遠くへ行きませんか?」

 

本題を語るのだった………

 

 

 

進路に悩む優の前に現れた春香。彼女の語る遠くとはいったい………?

To Be Continued………




次回予告
春香は、優にイバラキへ行かないか誘う。悩む優だったが、春香が様々な協力をする事を申し出た事で………?
次回「ミドレーユは死んだ」


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第97話 ミドレーユは死んだ

前回までのあらすじ
高等部への推薦を蹴り、バスケへの情熱を失っていた優は進路に悩む。そんな彼の元に現れた春香は優に対し、遠くへ行かないかと誘われる………


優「遠く………? どういう事かな?」

 

優は首を傾げる。

 

春香「実は、イバラキに白宮家が持っている家があるんです。一緒にイバラキの高校を受験するっていうのはどうですか?」

 

春香が誘ったのはイバラキの高校だった。

 

優「イバラキか………」

 

イバラキならある程度は優を知らない者もいる。トウキョウにいたらまたバスケをさせられるに違いないと考えていた優にとっては、いい条件だった。

 

優「それはいいかもね。でも、僕勉強そこまで得意じゃないからなぁ………」

 

優は納得しつつも、学力の事で頭を悩ませる。

 

春香「なら、学力がそこまで必要無い学校にしましょう。お父様やお母様は、私の行きたい学校ならどこでもいいと言ってくださったので」

 

すると春香は、そこまでレベルの高くない学校を提案する。

 

優「君はそれでいいのかい………? 白宮中学って私立だから結構レベル高いはずじゃ………?」

 

優は春香の勉強レベルが落ちてしまう事を指摘するが………

 

春香「大丈夫です。学校とは別に塾にも通っていたので、高校レベルの勉強はほぼ理解しているつもりです」

 

春香は既に勉強への興味を無くす程勉強を重ねていたようだ。

 

優「………なら、いいの………かな?」

 

優は首を傾げながら、春香の提案を受けようと考えていた………そして………

 

優「………分かった、君と同じ学校に行こう。でも条件が2つある」

 

提案を受けると共に、条件が2つあると呟いた。

 

春香「条件ですか?」

 

春香は首を傾げる。

 

優「まず、僕はバスケを続けるか迷っている。高校に行ってバスケをやるかどうかは………自分の意思で決めさせて欲しい」

 

1つ目は、バスケに関する事だった。春香も、優がバスケに関係した悩みをもっているのは知っていたのか、黙って頷いた。

 

優「もう1つ………名前を変えたい」

 

優はイバラキへ行くなら改名をしたいと考えていた。

 

椿「改名………今の名前じゃダメなのですか?」

 

横で聞いていた椿は優に対し疑問を投げかける。

 

優「うん。正直さ、ミドレーユって名前は少し有名になり過ぎたかなって思うんだ。名前を変えてしまえば、イバラキの人間にはほぼバレないと思ってる。だから、名前を変える手続きがしたい………その手伝いをして欲しいんだ」

 

優は春香に頭を下げる。

 

春香「………分かりました。それで構いません。じゃあ、一緒にイバラキの高校を探すと共に、いい名前を考えましょうね」

 

春香は優の条件を受けいれ、共に行動を起こす事にした………

 

 

 

それから数ヶ月。受験シーズンが終わり、卒業を控える日々。この日も、優は校門を出ると、そこで春香が待っていた。

 

春香「今日も一緒に帰りましょう、優さん」

 

春香は、現在の彼の名前である優という名前で呼んだ。

 

優「ああ、そうだね春香」

 

優はそう言って春香の横に立ち、一緒に下校する。この2人が共に帰る様子に、友力中学の面々はザワついたようだが、この時の優は、頭の中でこう考えていたという。

 

優「(改名手続きも終わったし………これでミドレーユは死んだ………今の僕は、白宮優だ………!)」

 

名前を変え、優は過去の自分を捨てた。これこそが、今の優が白宮優を名乗る理由だった………

 

 

 

イバラキへ行く事を決め、更に名前も変えた優。彼は過去の苦しみから目を背ける。そう決めたのだった………

To Be Continued………




次回予告
優と春香の様子に、梶原達はまた嫉妬で突っかかってくる。しかし、優はそんな彼等を冷めた様子で突き放す………
次回「君には関係ないだろ」


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第98話 君には関係ないだろ

前回までのあらすじ
春香からイバラキの高校へ行く事を誘われる優。優はバスケを続けるかを自分に決めさせる事、改名をする事を条件にそれを受け入れ………?


卒業が近い頃、優は学校の中で春香と付き合っている噂が広まった。当然、そんな噂が広まれば、梶原達が文句を言わないはずは無い………

 

 

 

春香「………あっ、優さん!」

 

この日も春香が学校の前にやってきた。

 

優「やあ」

 

優は右手を挙げ、2人で帰ろうとした時………

 

梶原「おい! お前!!」

 

優達の前に、梶原と荒木が現れた。

 

優「………君達か」

 

優は呆れるように溜息を吐いた。

 

梶原「その子、白宮中学のお嬢様だろ………!? なんでお前なんかが付き合ってるんだよ!?」

 

梶原は優に対し、春香と付き合っている事を詰め寄る。

 

荒木「そうだそうだ! 俺達に劣っている奴のくせに!!」

 

荒木も便乗してそう言い放つが………

 

優「………それで?」

 

優が言い放ったのは、冷たくて、梶原達の言葉などどうでも良いと言いたげな呆れた言葉だった。

 

荒木「な、なんだその返しは!?」

 

この返しには荒木も想定外だったのか、狼狽える様子を見せる。

 

優「僕と彼女が付き合う事の何が悪い? 君には関係ないだろ」

 

優が正論を口にすると、荒木は言葉を失った。

 

梶原「う、うるせぇ!! というか、お嬢様もなんでこんな奴と付き合ってんだよ!?」

 

優に対して梶原はそう言い放つ。

 

優「(まだ言うか………)」

 

優は完全に呆れる様子を見せた。すると、春香はニコニコと笑顔を浮かべながらも、あからさまに怒っている様子を見せると………

 

春香「貴方に関係あります………!?」

 

春香の声色がドスの効いた声に変わり、梶原を突き放す言葉を口にする。

 

優「(は、春香怖え………)」

 

優は春香の怒る様子に驚いていた。その後、春香は優の腕を掴むと………

 

春香「帰りましょう。こんな人達相手にする必要無いです」

 

そう言ってこの場を後にする事を促した。

 

優「………そうだね」

 

優は春香の言葉に同調し、その場を後にしようと決めた。

 

梶原「あっ………! ちょっと待てよ!!」

 

梶原は慌てて優達を引き留めようとするが………

 

優「あっ、そうだ………もう関わんないでくれないかな………知ってるんだ、君達が僕の事を貶めようとしていたのを………僕、イジメとか嫌いなんだよね」

 

優は冷めた目でそう言い放った。

 

梶原「………」

 

この日から、梶原達は優に何も言葉を言えなくなった。優からすれば少しは住み心地が良くなったが、逆に孤立しているようにも感じたようだが、最早気にする気も無かったのだった………

 

 

 

この日、優と梶原達の因縁は一先ずケリがつく事に。しかし、修也達とは未だ話がつかないままだが果たして………?

To Be Continued………




次回予告
遂に卒業式の日がやってきた。修也はメールで優を呼び出す。優は修也達の前に現れ………
次回「お別れの時だね」


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第99話 お別れの時だね

前回までのあらすじ
優が春香と付き合っている事を詰め寄る梶原達。しかし、優達はそんな彼等に呆れると共に冷たく突き放し………


そして、卒業式の日。式が終わった後、修也は携帯を手に体育館裏側へ来ていた。携帯の画面には、優に対し体育館裏側に来て欲しいと連絡しているチャットアプリの画面が映っていた。優は返信こそしなかったが、既読と書いているので把握はしているのだろう。

 

修也「あの日からもうずっと口を聞いてもくれない………何がお前を変えちまったんだよ、ミドレーユ………」

 

修也は今も尚、優を心配し続けていた………不安の声を漏らしていると、体育館裏側に人影が見せる。修也が人影の方を向くと、左頬が腫れた優がやってくる。

 

優「………やあ、修也」

 

優は修也の元へ近づく。修也は優の左頬に気づくと………

 

修也「………その頬、どうしたんだよ?」

 

怒りつつも、どこか心配した様子でそう問いかける。

 

優「アリサに殴られた。高校からは僕達も離れ離れになるからね………後、芽衣にも泣かれた。理由は勝手に皆の元から離れると決めたから………らしいよ」

 

優は修也と目を合わせようとしない。それに気づいた修也は………

 

修也「………お前、俺と目を合わせてくれないよな………?」

 

優に対しそう声をかける。

 

優「合わせられないんだ………バスケ部から逃げたあの日から………ごめん」

 

優は自然と目を合わせられなくなっている事を呟く。

 

修也「………お前は今後どうするんだ? 俺とアリサと芽衣はこのまま高等部へ行くつもりだけど………」

 

修也達は現在のように、高等部へ内部進学する事に。

 

優「僕は他県に行くよ。幸い、知り合いはいるからね」

 

優は知り合いがいると語る。

 

修也「………白宮さんか?」

 

修也はそれを春香だと察した。優は黙って頷いた。

 

修也「彼女と付き合ってるって噂は聞いてたけど………彼女なら安心だな………」

 

修也はどこか安堵する様子を見せる。

 

優「まあ、頼りにはなるよ。色々手伝ってもらったからね」

 

優は春香に感謝する様子を見せる。そして優は修也に背を向けると………

 

優「………お別れの時だね、修也………長い間ありがとう」

 

優は修也に別れを告げる。修也は優の背を見て………

 

修也「ミドレーユ………! ………今度は敵同士でもいい………バスケを続けてくれよ………!!」

 

修也は優に対しバスケを続ける事を望んだ。

 

優「………それを決めるのは自分だ………でも、もし続けていたら………また会えるかもね………」

 

優はそう言い残して、修也と別れた………彼としては今後、応援する気持ちになっていたが、後に2人はコートの上で邂逅する事になるのだった………

 

 

 

こうして、優の苦い中学時代は終わった。しかし、彼はそれから少ししてバスケに復帰する事になる。果たして、何故彼はバスケの世界に戻って来たのか………?

To Be Continued………




次回予告
巫魔高校へ進学してから1ヶ月。優はバスケ部を見に行く事はしても、入部する気力が沸かなかった。そんな彼に、監督のゆうかが声をかける………
次回「君のやりたいようにやればいい」


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第100話 君のやりたいようにやればいい

前回までのあらすじ
卒業式の日、優は修也と最後の会話をかわす。修也は優に対し、バスケを続けて欲しい事を願うが、優は答えをはぐらかしたのだった………


そして、現在通っている巫魔高校へ進学した優。進学後は見た目と名前から珍しがられたが、春香のフォローもあって、中学よりは話せる相手も出来た。しかし、どうしても心地良くはなかった。そして、その心地が悪い理由はすぐに分かった………未だ残っているバスケへの未練が、優の心地を悪くしていた………

 

 

 

それから1ヶ月。優はバスケ部の練習の日に、こっそり体育館を覗きに行っていた。バスケ部には、男女問わず十数人の部員がおり、その中には今のバスケ部の部員も混じっていた。優にはバスケ部のバスケが楽しそうに見えた………

 

春香「優さん、何してるんですか?」

 

すると、体育館の中から春香が出てきた。春香はバスケの面白さに目覚めた影響で、高校に入ってすぐバスケ部へ入部した。

 

優「ああ、いや………放課後暇だったから応援に来たんだよ………うん」

 

優はそう言って誤魔化したが、春香には優が嘘をついているようにしか見えなかった。

 

あかり「春香ちゃーん!」

 

春香が首を傾げていると、この当時2年生だったあかりが春香へ声をかける。

 

春香「はーい! ………じゃあ、戻りますね」

 

春香は練習の方へと戻った。優は優しく見送ったが、虚しい気持ちになった。優は少し俯いて、帰ろうとしたが………

 

ゆうか「あら、入部希望者かしら?」

 

その時、巫魔の監督であるゆうかと邂逅した。

 

優「ふえっ!?」

 

優は思わず驚きの声を漏らす。するとゆうかは優を見るなり………

 

ゆうか「………君、もしかしてミドレーユ君………だったりする?」

 

優がミドレーユだと速攻で見抜いた。

 

優「ひ、人違いでは………?」

 

優は誤魔化そうとするが………

 

ゆうか「………去年の東京県大会1回戦は面白かったわよ。春香ちゃんといいゲームしたの、直接見たもの」

 

ゆうかには完全に確信されてしまった。春香との試合を挙げられた優は………

 

優「………そうですよ。でも今の僕は白宮優です。ミドレーユという名前は捨てました」

 

今の名前を伝えた上でそれを認めた。

 

ゆうか「おっと、これは失礼………噂のスター選手が東京のどこにもいないって言うんでちょっとガッカリしてたんだけど………まさかこんな辺鄙な学校に入学していたとは………」

 

ゆうかはうんうんと頷きながら、楽しそうにそう呟く。

 

ゆうか「ねぇねぇ、バスケ部入ってくれないかしら? 貴方が入れば間違いなく戦力アップだと思うんだけど………!!」

 

ゆうかは優を勧誘する。しかし優は………

 

優「………無理です。今の僕には中学のプレイは出来ない………いや、正確にはやりたくないんです………」

 

今の自分に中学の時みたいなプレイが出来ないとして断る様子を見せる。優の暗い表情から過去に何かあったのだろうと悟ったゆうかは………

 

ゆうか「………分かった。じゃあこうしよう。優くんは小学生の頃から東京でバスケをやってたという点だけ公表して、ミドレーユくんだって事は内緒にしてあげる。プレイスタイルも君のやりたいようにやればいい………それでどう?」

 

優にいくらか譲歩する形で入部を申し出た。それを聞いた優は少し考え………

 

優「………僕がミドレーユなのは春香も知っています。彼女にだけはこれを共有してもらえますか? それなら入部します」

 

ゆうかの譲歩案に頷き、バスケ部の入部を決めた。

 

ゆうか「………! やった! ありがとう、優くん!」

 

ゆうかは優が加入してくれる事に大きく喜んだ………

 

 

 

それから優はバスケ部に入り、物語が始まる前の1年生時代、高校バスケの公式大会を経験した。条北との試合に敗れこそしたが、ダンクのみで16得点をあげるという華々しいスタートを切った………のは良かったのだが………

 

優「はあっ!? 先輩達と光一達が万引きで捕まっただあ!?」

 

大会からしばらくして、優以外の男子が万引きをやらかしたという情報が入り、優達は緊急で話し合いをする事に………

 

ゆうか「………困ったわね、優くんを除く男子は全員学校側から部活参加禁止を言い渡されたわ。皆、復帰出来るかも未定だし………何人かは部活をやめる事になったわ………」

 

その為、この時に部員は、積牙達1年生が入学する前、まだ美矢が不良をやっていた時の為、現在のスタメン4人を除いたメンバー状況になっていた。

 

ゆうか「色々言いたい事はあるけど………速急にキャプテンを決めなきゃだわ。2年生はあかりちゃんしか残ってないし………あかりちゃん、お願い出来る?」

 

ゆうかはあかりにキャプテンを依頼する。しかし………

 

あかり「………私は優くんの方が相応しいと思います」

 

あかりは自分ではなく、優の方がキャプテンにふさわしいと意見を述べた。

 

優「み、宮野先輩!?」

 

当然、優も困惑の表情を浮かべたが………

 

あかり「優くんのダンクを見ていると元気が出てくるし………2年生の中ではよくチームを見ていると思うから、私は優くんが相応しいと思うけど………皆はどう?」

 

あかりは周りに優がキャプテンに相応しいかを問いかける。

 

伊吹「私は賛成だよ。優は誠実だし、あんなバカ共とは違うしさ」

 

鈴香「確かにね………」

 

優をキャプテンにするという案を否定するものは珍しく誰もいなかった。その為ゆうかは………

 

ゆうか「じゃあ、優くんにお任せするわ」

 

そのまま優をキャプテンに指名。優は思わぬ形でまたキャプテンをやる事になった。またしてもキャプテンをやる事に思わず中学のトラウマが蘇りかけるが………

 

春香「じゃあ、副キャプテンは私がやります! 中学の時にはキャプテンをやってたので、幾らかノウハウもありますし………!」

 

春香が副キャプテンを担ってくる事から、その不安は幾らかマシになったのだった………

 

 

 

そうして、時は守城に敗れ、シュガーが控え室に入ってくる所までに至った。果たして、シュガーの登場は、巫魔にどのような空気を与えてくるのか………?

To Be Continued………




次回予告
優の過去に驚く積牙達。しかし、話題はすぐにシュガーが感じた巫魔の問題点に変わる。シュガーは、春香達のせいで優が活かせていないと指摘し………!?
次回「周りが役立てないなら意味無い」


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第101話 周りが役立てないなら意味無い

前回までのあらすじ
優は巫魔高校入学後、バスケに未練を抱えていた。ゆうかの譲歩案を受け、優はバスケ部に入部。その後にバスケ部内の事件を経て、キャプテンを任され………?




優「………という訳だな」

 

そして現在に至り、優は過去を積牙達に全て話しきった。

 

積牙「そうだったんですね………」

 

積牙達は優の過去に驚いていた。

 

シュガー「………? なんで急に過去話?」

 

だが、優がミドレーユという事をバラしたシュガーは、優が過去話をした理由が分からず首を傾げる。

 

優「いや、君が僕の前の名前をバラしたからだよ? というか、前に手紙にも書いたじゃん。僕は名前を変えたって」

 

優はシュガーに経緯を語る。

 

シュガー「ああ、あれ芸名だと思ってた」

 

シュガーはゆうの改名を芸名だと勘違いしていた。

 

優「何故そうなる!?」

 

優は当然困惑する。そんな中、積牙達は首を傾げる。

 

積牙「あの人………英語でなんて言ってるんですか?」

 

そう。ここまで敢えて書いていなかったが、シュガーは英語を喋っていた。つまり、仲間達はミドレーユというワードで驚いていたからこそ、こんな事になったのだ。

 

優「………僕の名前を芸名だと勘違いしていたらしい」

 

優は半分不満げにそう呟く。

 

春香「ま、まあまあ………あ、そうでした」

 

春香はシュガーに近づくと………

 

春香「はじめまして、シュガーちゃん。私は白宮春香です」

 

英語で自分の名前を説明する。

 

春香「よろしく、春香」

 

シュガーはそう返すと、握手を求める。春香は手を伸ばし、2人は握手をかわした。

 

シュガー「………ミドレーユが急にダンクしかやっていないって言い出したからビックリはしてたけど………割と何とかなるんだね………」

 

その後、シュガーは優の戦術に驚いた事を呟く。

 

優「まあね………問題も多いけどさ………」

 

優は英語で不安点を語る。しかし、積牙達は英語会話に全然ついていけない為………

 

積牙「………すみません、翻訳機使わせてください」

 

スマホの翻訳機能を使わせて欲しいと頭を下げた………

 

 

 

という訳で、ここからシュガーは翻訳機を経由して会話をする事に。

 

シュガー「今日の試合、元々相手が強かったって聞いてはいたから、その辺はあまり言わないけれど………それにしても今のこのチームには問題があるよ」

 

その後、話題は巫魔の問題点に移った。

 

優「問題点………?」

 

優はシュガーについて、問題点を問いかける。

 

シュガー「………ミドレーユ以外」

 

シュガーは、優以外の春香達を指さす。

 

春香「………ど、どういう事ですか?」

 

春香達は首を傾げる。

 

シュガー「………春香達が弱過ぎるせいでミドレーユの強さが殺されてる」

 

シュガーが指摘したのは、春香達が弱いからだと言う。

 

シュガー「ミドレーユには、ダンクしかしないっていう問題点はあるけどまだ誤差の範囲………けれどそれ以前に、周りが役立てないなら意味無い………全国制覇が夢だって聞いているけど………こんなんじゃ無理だよ」

 

シュガーは現在の問題点から、全国制覇は無理だと言い放った。

 

光一「な、なんだと!?」

 

光一はこれに噛み付いた。

 

優「やめろ光一!!」

 

優達は必死に光一を止める。その様子を見たシュガーは………

 

シュガー「………まあ無理とは言い切れないよ。次の試合までは時間があるんでしょ?」

 

まだ全国制覇出来る可能性はあると言う。

 

積牙「な、なんですか!?」

 

積牙は縋るようにそう呟く。

 

シュガー「春香達のレベルアップ。それが出来ればまだ読めないと思う………」

 

シュガーはそう言うと、再び春香達を指差し………

 

シュガー「私が日本にいる間、皆の事を扱くから」

 

はるか達のレベルアップに付き合う事を決めるのだった………

 

 

 

シュガーに問題点を指摘され、はるか達は本格的なレベルアップを求められる事に。次の試合は1週間後。果たして、はるか達はどこまでレベルアップ出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
シュガーによる地獄の特訓が始まった。オマケに優はスタミナ増強の特訓が主となる為、春香達は優抜きの特訓となり………!?
次回「地獄の特訓始めるよ」


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第六章 シュガーの地獄特訓
第102話 地獄の特訓始めるよ


前回までのあらすじ
優の過去が明かされた後、シュガーは、現在の巫魔の課題を口にする。春香達のレベルの低さを指摘したシュガーは、彼女達のレベルアップを求め………


翌日、巫魔高校の体育館にシュガーがやって来て………

 

シュガー「地獄の特訓始めるよ」

 

特訓を始める事を呟く。

 

シュガー「じゃあまず………前にあるコーンに当たらないで、右、左とかわすこと」

 

定番のコーンをかわす練習となったのだが、コーンの感覚が爪先立ちでなんとかなるくらいしか隙間が無かった。

 

光一「ち、小さ過ぎだろ!?」

 

光一が早速文句を口にするが………

 

シュガー「いいからやって」

 

シュガーは軽くあしらう。

 

光一「何っ!? 口を開けば辛辣な事しか言わねぇな………!!」

 

光一はまたシュガーに噛み付いた。

 

伊吹「やめろバカ!」

 

光一「ぐえっ!?」

 

伊吹が真横から飛び蹴りを放ち、光一を吹っ飛ばした。

 

シュガー「………春香はもうやっているよ?」

 

シュガーはコーンの方を指さす。すると、春香は爪先立ちを求められる感覚を右、左と交互にかわす………しかし、感覚の狭さに足を滑らせ、転んだ。

 

春香「はうっ!?」

 

春香は顔を地面にぶつける………

 

積牙「春香先輩!?」

 

積牙が慌てて駆けつける。すると、春香は体を起こし………もう一度挑戦する事に。

 

シュガー「(………そういえば彼女、昨日の試合で結構凄いスリーをやってたような………そう考えると結構努力家なんだろうなぁ………)」

 

この頃からシュガーは春香に興味を持ち始めていたという。そんな中、美矢は周りを見回し………

 

美矢「そういえばキャプテンはどうしたんだ?」

 

優がいない事に首を傾げる………すると………

 

優「うおおおっ!!」

 

優は体育館の外を走っていた。

 

ゆうか「優くんはスタミナ増強を図っているから、走り込みしてるわ。つまり、皆とはしばらく別練習ね」

 

優本人もスタミナの弱さを自覚し、スタミナ増強を考えていた。それを見た美矢は………

 

美矢「おっし………! 私も特訓頑張るぜ!!」

 

美矢もコーンをかわす特訓に参加する。美矢の参加を受け、あずさ達も参加する。その様子を見た積牙と光一は………

 

積牙「俺達もやりましょう、コウさん」

 

光一「………そうだな」

 

同じくコーンかわしに参加する。その光景を見たシュガーは………

 

シュガー「………ミドレーユって凄いんだね………皆クセ強いもん………」

 

ゆうかに対しそう呟いた。

 

ゆうか「そうね………彼はいつも私の想像を超える子よ………貴女が指摘した問題点も………それ故かもね」

 

ゆうかは頷くと共に、想像の難しい優の強さに仲間達が突き放されてしまった事を感じるのだった………

 

 

 

春香達と優の2人は、それぞれの方向性で特訓を始める。果たして、1週間でどれだけレベルを上げられるのか………?

To Be Continued………




次回予告
2日程必死に特訓をし、全員がコーンを軽々とかわせるようになる。それを見たシュガーは次の特訓を開始する………
次回「次の特訓は」


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第103話 次の特訓は

前回までのあらすじ
優抜きで始まったシュガーの特訓。爪先立ちしか許されない感覚のコーンの回避に、春香達は挑み………


特訓開始から2日程経ち………

 

光一「ほっ………! はっ………! ………どうだ!!」

 

シュガー「………全員合格かな」

 

春香達はたった2日にも関わらず、コーンをかわせるようになった。

 

積牙「やりましたね、コウさん!」

 

光一「おう!!」

 

積牙達は大きく喜んでいた。しかし………

 

シュガー「まだこれは第1ステップだよ。それに、試合まであと4日。それまでに第2ステップを攻略してくれないと困るんだよね」

 

シュガーはまだこれが第1ステップだと告げる。

 

優真「次は何をやるんですか?」

 

優真は次にやる事を問いかける。

 

シュガー「簡単な事だよ………次の特訓は私が相手をする」

 

シュガーはそう言うと、上着を脱ぎ捨てる。服の中には運動服が隠れており、シュガーはコートの中心の端へ立つと………

 

シュガー「5人がかりで、私からボールを奪えたら第2ステップはクリアだよ」

 

シュガーからボールをスティールするのが第2ステップのようだ。しかし、人数は春香達が圧倒的に有利であり………

 

美矢「そこまで難しくもなさそうだけどな………」

 

美矢はすぐに終わると思っていた………だが、春香達がコートに入ってまもなく、春香達は第2ステップも恐ろしく難度の高いものだと思い知らされる事になる。

 

シュガー「………行くよ」

 

シュガーはそう呟くと、普段見せている呑気な雰囲気が嘘のように素早い動きで走り出した。

 

美矢「何っ!?」

 

真っ先に対峙したのは美矢だが、美矢は反応する間もなく抜かれてしまう。

 

春香「(美矢ちゃんが………!?)………積牙くん! 優真ちゃん!」

 

春香は2人に声をかけ、積牙達はすぐさま美矢のフォローに回る。だが………?

 

積牙「うわあっ!?」

 

優真「えっ………!?」

 

必死のフォローも虚しく、積牙達は軽くかわされてしまった。

 

春香「なら私が………! ………ああっ!?」

 

続いて春香がディフェンスを試みるも、やはり歯が立たずに抜かれてしまう。

 

光一「くそっ! こうなったら俺が!!」

 

光一は最後の壁として立ちはだかり、シュガーのジャンプタイミングに合わせてジャンプする。シュガーはゴールに向けてシュートを放つ。しかし、その回転はめちゃくちゃなものであり、あまり回転していない。

 

光一「(回転がめちゃくちゃだ………入るわけねぇ………!!)」

 

光一はそう考えていたが、そのめちゃくちゃなシュートはゴールに入ってしまった。

 

光一「何っ!?」

 

光一達は驚きを隠せない。

 

シュガー「はい、次やろうか」

 

シュガーはすぐに2回目を行う事になった………そして、この日はシュガーからボールを全くスティールできなかった春香達だった………

 

 

 

第2のステップに到達するも、初日は全く試合まで残り3日となってしまった。果たして、想っていたよりも高い難度の特訓を攻略出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
シュガーの素早い動きと意味不明なシュートに、春香達は苦しめられる。だが、そんな中で、シュガーにはとある癖がある事を春香は見抜き………?
次回「そんな傾向かしら」


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第104話 そんな傾向かしら

前回までのあらすじ
春香達の特訓は次のステップへ。それは、シュガーからボールをスティールする事。しかし、春香達が5人で挑んでもシュガーからボールは全くスティール出来ず………!?


それから2日程経ったが、春香達はシュガーからまるでボールを取れず、シュートされ続けるという苦しい状況が続いた。

 

光一「くそっ………! 全く取れねぇ………!」

 

そして、再び光一とシュガーがマッチアップ。シュガーはまたしてもシュートを放つ為にしゃがみこみ、ジャンプする。

 

光一「はあっ!!」

 

光一はシュートをディフェンスする為に大きくジャンプする。しかし、シュガーは最高点まで達してもジャンプせず、落下し始めたタイミングでボールをゴールへ放った。そしてシュートは綺麗に入った。

 

光一「またかよ!?」

 

光一はシュガーから1本もブロックができず、イライラを募らせていた。

 

積牙「シュガーさんのシュート、まるで読めませんね………」

 

積牙は春香に近づくと、シュガーのシュートが止められない事を呟く。

 

春香「そうね………それに、間髪入れずに相手を抜き続けるから、反応する間もないし………」

 

春香は、シュガーの迷いの無いドリブル連打に驚いていた………だが、その直後、彼女の頭の中で何かが引っかかる。

 

春香「(………シュガーちゃんはさっきからマッチアップした時にすぐドライブを行っている………そんな傾向かしら………これはよく言えば迷いの無い戦略だけど、逆に言えば無鉄砲すぎる………)」

 

春香はここまで見せたシュガーの動きについてそう考えた。

 

シュガー「じゃあ、もう1回」

 

シュガーはもう一度コートの端まで歩くと、そこから春香達の方へ走り出す。

 

美矢「こなくそおっ!!」

 

美矢はシュガーからボールをスティールしようとするが、シュガーは美矢の左側から抜いた………が、その直後、シュガーがバウンドするボールに手を伸ばす者が………

 

シュガー「っ………!!(………春香!)」

 

その手は春香のものだった。春香はシュガーが美矢をかわす事を読んだ上で、抜いた直後を狙ってスティールを狙う。

 

シュガー「………はっ!」

 

しかし、シュガーは咄嗟にボールを上に放り投げた。サッカーで言うヒールリフトのような、ボールを上にあげる事で相手をかわすという方法で、春香の真上にボールを通す。春香があっけに取られている隙に、シュガーは春香をかわし、ボールをキャッチ。このままドリブルするとダブルドリブルになってしまう為、シュガーはすぐさまシュートを放つ。積牙達がブロックしようとするが、ボールは思いっきり上がった後、突然ゴール下で落下して、ゴールの中へ入った。

 

シュガー「………危なかった」

 

だが、今回はシュガー側が危機感を感じていた。それを見た春香は………

 

春香「やっぱり………! 後は対策さえ見つけられれば………!!」

 

シュガーの第2のステップ攻略に希望を見出す春香。しかし、この日はその攻略法が見つけられず、残る日は1日となってしまうのだった………

 

 

 

苦戦続きの中、春香はシュガーの戦略を見抜き始めた。だが、試合に向けて練習出来るのは僅か1日。果たして、攻略方法は見つけられるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
翌日に試合を控える巫魔。未だ第2ステップを攻略出来ない春香達だが、春香は積牙達4人に、捨て身の作戦を提案する………
次回「賭けに出ましょう」


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第105話 賭けに出ましょう

前回までのあらすじ
苦戦を強いられる中、シュガーの戦略を見抜いた春香。だが、シュガーの機転を効かせた回避によって、攻略はならず………?


そして、いよいよ練習最終日。普段の巫魔は、試合前日ではあまり体力を使う練習はしない。しかし、この日の春香達は未だシュガー攻略に時間を費やしていた。

 

結衣「あ、あの………まだやるんですか?」

 

結衣はゆうかに対し、シュガー攻略をまだ続けるのかを問いかける。

 

ゆうか「………私がやめろと言ってもやめないわよ。皆、強くなりたいんだから」

 

ゆうかはそう呟く。事実、春香達は全くやめようとせず、シュガー攻略に時間を費やしていた。そして、日が進む度にシュガーの汗が落ちる時間は速くなっていた。

 

シュガー「(皆のレベルが上がっている………私に引っ掻き回され続けたからかな………?)」

 

シュガーは5人の成長を実感させられる。というより、優抜きでここまでやれている事に驚く。だが、未だシュガーのボールをスティール出来ていない事に、積牙達は焦りを見せる。

 

光一「はあっ、はあっ………シュートを止めるのは無理だ………パターン化出来ねぇ………」

 

光一は弱音を吐く。しかし、春香は諦めず………

 

春香「皆さん、賭けに出ましょう!」

 

何か作戦を思いついたのか、積牙達に作戦を説明する。

 

シュガー「何考えているんだろう………あ、ソフトクリームの雲………」

 

その間、シュガーは体育館の外の雲を見ていた………

 

 

 

春香「………作戦は決まりました。シュガーちゃん、もう一本お願いします!!」

 

それから数十分。春香は勝負再会を続行。シュガーはそれを耳にし………

 

シュガー「じゃあ、始めようか………」

 

シュガーはそう呟くと、素早い動きで走り出す。直後、優真と美矢の2人がダブルチームで走ってくる。

 

シュガー「(ダブルチーム………悪くないけど、小さい子の方は完全にスタミナ切れ………かわせる!)」

 

シュガーはスタミナ切れを起こしている優真を狙ってかわす。

 

優真「(私のスタミナなんてどうせとうの昔に切れています………だから………!)」

 

優真はそんな事などとうに想定していた。というか、分かっていた。

 

積牙「そこだ………!」

 

その為、すぐさまヘルプに入る。シュガーは、先日春香をかわしたスキルで避けようとするが、そうはさせまいと、光一がヘルプに入る。

 

シュガー「(………! 上にあげてかわせない………! だったら………!!)」

 

シュガーはボールにスピンをかけながら、積牙と光一の真横に放る。シュガーはボールと逆の方向に走ると、積牙達をかわす。そして、スピンがかかっていたボールは、シュガーの方にバウンド。一人ワンツーの応用で、2人まとめて抜こうというという作戦だった。

 

伊吹「ど、どんなかわし方だよ!?」

 

伊吹はシュガーのとんでもプレイに圧倒される。シュガーもこれでシュートへ繋げようとした………しかし………

 

春香「今です!!」

 

光一の陰に隠れていた春香が突如飛び出し、ボールをコートの外まで弾いた。

 

シュガー「………!?」

 

光一の陰に隠れていた春香。それを見落としていた事に、シュガーは驚いた。ボールはコードの外を出た後、体育館の壁に思いっきり直撃。その音に気づいた走り込み中の優は………

 

優「おおっ!? や、やったのかい………?」

 

優は靴を脱いで体育館の中へ入ると、春香が優の方を向いて、軽いガッツポーズを見せた。

 

優「………!! やったね、春香! 皆!!」

 

優は春香達が一本取れた事に喜んだ………だが、その直後、春香達5人は糸が切れたようにバタバタと倒れた。

 

優「ふえっ!? 春香!? 皆!? しっかりして!!」

 

優は大慌てで5人に駆け寄る。その光景を見たシュガーは………

 

シュガー「………第2ステップ………合格だよ」

 

優しい声でそう呟くのだった………

 

 

 

ようやくシュガーからボールをスティールし、春香達は第2のステップをクリア。だが、シュガーの様子からまだステップはある模様。果たして、それは………?

To Be Continued………




次回予告
試合当日。シュガーは手紙を使う形式で最後のステップを伝える。それは、優抜きで次の相手、利毛に勝つというもので………!?
次回「次が最後のステップだよ」


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第106話 次が最後のステップだよ

前回までのあらすじ
シュガー攻略の為、春香達は五人で連携を取った作戦を決行。疲れが多い中、見事シュガーからボールをスティールした春香達だった………


翌日。シュガーの第2ステップの後、春香達は残る時間を休息に使った為、試合の時間直前には、普通に試合が出来る程まで回復した。

 

優「皆の体調は万全そうだね」

 

控え室にて、優は春香達5人に対しそう問いかけた。優の質問に5人がほぼ同時に頷いた。その直後、控え室に監督のゆうかが入ってくる。

 

ゆうか「優くん、シュガーちゃんから手紙を預かったのだけど、速急に読んで欲しいって」

 

シュガーからの手紙をゆうかから受け取る優。手紙は英語で書かれている為、優が読む事に。

 

優「えっと………皆、よく頑張ったね。次が最後のステップだよ………ミドレーユ抜きで今日の試合勝ってね………え?」

 

手紙の中には最後のステップが書かれていた。それは、今日の対戦相手、利毛相手に優抜きで勝てというもの。

 

ほのか「なんで今になってそんな手紙を送ってきたのさ!?」

 

流石にこれにはほのかを始め、普段ベンチにいる選手達に困惑を与える。だが、昨日のステップをクリアした春香は………

 

春香「………やってみましょう。もし、優さん抜きでやって利毛に全く通用しないなら、全国へは到底行けません。でも、逆に通用するのであれば………全国へ行くのは夢じゃありません!!」

 

シュガーの最終ステップへ挑戦する事を決める。

 

積牙「春香先輩………」

 

積牙は少し驚いていたが………

 

光一「春香の言う通りだ………やってやろうぜ! 優抜きでも俺達は戦えるって証明してやらあ!!」

 

光一はやる気だった。

 

美矢「だな。今日、キャプテンはベンチでも暖めといてくれ」

 

美矢もそう呟き、優抜きで戦う事を決めた。

 

優「ええっ!? 僕ベンチ!? そんな………」

 

優は試合に出られる空気では無いと悟り、しょぼくれる。あずさ達がそんな優を優しく慰めた。すると春香は手紙の中身を見て………

 

春香「優さん優さん、追伸が書かれてますよ?」

 

まだ続きがある事を優に知らせる。

 

優「追伸………? えっと………この試合終わったら、授業料としてソフトクリーム奢ってね。3個で我慢するから」

 

最後の文は、これまでの授業代を請求するかのような内容で、バスケと関係無かった。

 

優「ソフトクリーム奢りか………って、普段何個食ってんだシュガー!?」

 

シュガーの3個で我慢するという文に、驚きを隠せない優。すると………

 

春香「じゃあ行きましょう!」

 

積牙達「おおー!!」

 

優が試合に出ない為、春香が勝手にチームの指揮を上げる言葉をかけた。それに気づいた優は驚き………

 

優「台詞取られた………」

 

そう呟いた。この試合、とことん貢献が出来ない優は、この時からしばらく、分かりやすいように落ち込むのだった………

 

 

 

シュガーの最後のステップは、利毛に優抜きで勝てというもの。四強の一角である利毛相手に、この条件は響いてくるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
遂に開幕する巫魔vs利毛。優抜きという不安なスタートだが、それとは裏腹に、春香達は利毛を圧倒する………
次回「意外だな」


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第107話 意外だな

前回までのあらすじ
試合直前。シュガーから送られた手紙に記された最後のステップは、優抜きで利毛に勝てというもの。だが、春香達はその最後のステップへ挑戦する様子を見せ………?


審判「これより、巫魔高校vs利毛高校の試合を始めます! 礼!」

 

春香達「よろしくお願いします!!」

 

そしていよいよ試合が開幕。スタメンは春香、積牙、光一、美矢、伊吹の5人。優の代わりに伊吹が入っただけで大きく変わりはしない。その様子を、コートの端からチームメイト達とみていた戦記と湯津。

 

湯津「おいおい、優くんは今日お休みか?」

 

湯津は優が出ない事を不思議がる様子を見せ、戦記は沈黙を続けながら試合を見ていた………

 

 

 

だが、この試合は会場にいる殆どの人間の予想を上回った。

 

利毛4番「くそっ………!!」

 

利毛の4番は、Cとして光一とマッチアップし、シュートを放とうとするが………

 

光一「遅せぇんだよ!!」

 

シュガーにコテンパンにされた為にレベルが上がっており、あっさりブロックした。零れ玉は積牙が拾い………

 

積牙「美矢さん!」

 

積牙から美矢にボールが渡る。

 

美矢「おっし!」

 

美矢はそこから素早いドリブルを展開。利毛の選手達をごぼう抜きしていく。

 

利毛5番「撃たせるか!!」

 

美矢の前に利毛の5番が立ちはだかった。しかし、美矢はスリーポイントラインの外に立っている春香へ素早いパスを送る。

 

春香「はあっ!」

 

すぐさま春香はスリーポイントシュートを放ち、利毛を突き放す。その光景を見ていた湯津は驚いていた。

 

湯津「おいおい、アイツら速くなってないか!? 1週間前にうちと戦った時より明らかにレベルアップしてるぞ………!?」

 

湯津が春香達のレベルアップを驚く中、戦記も口を開いた。

 

戦記「意外だな………巫魔と利毛なら、優が加わって僅かに巫魔が有利かと思っていたが………巫魔の監督はどんなトリックを使ったのか………最早巫魔からすれば、利毛など同等かそれ以下と言える強さだ………まだ全国を諦めている訳では無さそうだな」

 

戦記も意外そうな様子を見せた。だが同時に、巫魔が上がってくる可能性が再び浮上し、どこか楽しそうだった………

 

 

 

そして、試合はあっという間に進み、112vs66で巫魔が快勝した。途中、積牙がいつものように4ファールをやらかすも、巫魔が終始圧倒する形で勝利を掴んだ。

 

光一「いよっしゃあ!! まず1勝!!」

 

美矢「まだ巫魔は終わっちゃいねえ!!」

 

光一達は声をあげて喜んでいた。春香は優の元へ駆けつけると………

 

春香「まずは1勝ですね。まだ希望はありますね………!!」

 

優に対しそう声をかける。優は観客席の方に視線を向け………

 

優「………シュガーに感謝だな」

 

そう言って、シュガーへ感謝の気持ちを向ける。そして、観客席で試合を見ていたシュガーも………

 

シュガー「皆、大きく強くなった………私の特訓が無駄にならなくて………よかった」

 

そう呟き、嬉しそうな様子を見せるのだった………

 

 

 

シュガーの特訓を経て、遂に巫魔はリーグ戦を1勝する。だが、今日の試合はもう1つある。それは、守城と力豪の試合だった………

To Be Continued………




次回予告
決勝リーグ2日目の第2試合。試合は守城と力豪という、王者同士の熱い好カードだった。優達はシュガーと共に、観客席からその試合を見届ける事に………
次回「事実上の決勝戦だ」


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第七章 事実上の決勝戦! 守城vs力豪
第108話 事実上の決勝戦だ


前回までのあらすじ
優を抜いた巫魔高校は利毛に挑む。シュガーとの特訓を乗り越えた春香達のレベルが大きく上がっており、圧勝。リーグ戦の戦績は1勝1敗となるのだった………!!


巫魔が優抜きで勝つというサプライズが見られた第1試合。だが、観客の雰囲気はそれ以上に盛り上がろうとしていた。優達が観客席にやってくると、その雰囲気を強く実感させられる。

 

積牙「す、凄いですね………王者同士の衝突は………」

 

初めて最強と最強の対決を目にする積牙達は驚きを隠せない。

 

優「まあ確かにね。戦記さん率いる守城高校、滝川さん率いる力豪高校。イバラキのディフェンスとオフェンスの最頂点が対決する………そして、両校は共に1勝。もしかすれば………これが事実上の決勝戦だ」

 

優はそう言って観客席を歩く。すると、後ろの相手いる席にシュガーが座っていた。

 

シュガー「あっ、ミドレーユ」

 

シュガーは優達に気づいたのか、声をかけてくる。

 

優「やあ、シュガー」

 

優達はシュガー座っている周りの席へ座った。

 

シュガー「ねえミドレーユ。さっきより活気があるけど、この試合はそんなに期待出来るものなの?」

 

シュガーは優に対しそう問いかける。

 

優「期待出来ると思うよ。守城高校のディフェンスは全国有数だし、力豪のオフェンス力も、守城相手には通じる強さだ」

 

優はそう言って説明する。するとシュガーは………

 

シュガー「………明日の試合、今日皆が戦った相手は間違いなく守城には勝てない………そう考えると、出来れば試合は守城に勝ってもらった方がいいね………」

 

現在の巫魔の状況を見て、守城が勝つ必要があると考えていた。

 

春香「それは確かに………」

 

その話を聞き、春香もそう頷く。

 

優「そうだな………でも、僕としては王者同士の対決を見たいな」

 

優は純粋に試合を楽しもうとしていた。

 

美矢「じゃあ、キャプテン。この試合はどっちの方が勝ちそうだ?」

 

そんな彼を見て、美矢は優に対してどっちが勝つかを問いかける。

 

優「そうだな………守城の方が勝つかな………と言いたいが、力豪と対決した経験を踏まえると………力豪が守城のディフェンスを崩せば崩すほど、力豪有利になるかなと………まあ、今すぐは言えないかな」

 

しかし、優はどちらが有利か分からなかった。

 

優真「それだけ予想するのが難しいんですね………」

 

優が悩む様子から、バスケ初心者である優真の目からも、予想が難しい試合だという事が分かるのだった………

 

 

 

その頃、コートでは両チームのキャプテンが顔を合わせていた。

 

滝川「戦記、今年は俺達が勝たせてもらうよ。去年は負けちゃったけど、今年はチームだけでなく俺もレベルアップしたつもりなんでね」

 

滝川は戦記に対し、割と挑戦的だった。

 

戦記「………分かっている。お前達の総合レベルは巫魔よりも安定しているしな。手を抜く気はさらさらない」

 

戦記は冷静に言葉を返す。そして、審判が試合開始を宣言すると、両チームのスタメンがコートへ走り出すのだった………

 

 

 

最強と最強。トップクラスの両チームがぶつかる試合の行方は一体どのようなものとなるのか………?

To Be Continued………




次回予告
守城と力豪の両チームによる試合がついに開幕。守城有利と思われた試合は、意外にも力豪有利の展開に………
次回「これが俺の必殺」


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第109話 これが俺の必殺

前回までのあらすじ
2日目第2試合。守城vs力豪という事実上の決勝戦が始まろうとしていた。優すら予測の難しい試合の行方は………!?


両チームのスタメンは以下の通り………

 

守城高校(白)

PG 4番 戦記良太

G 7番 山野理香

SF 8番 井間紀伊

PF 6番 栗原敷無

C 5番 湯津張磨

 

力豪高校(赤)

PG 8番 山田 悠介

SG 6番 笹掛 美代

SF 5番 月宮 誠

PF 4番 滝川 秦

C 7番 鈴木 聖矢

 

両チームは安定のスタメンで対決する事に。

 

積牙「どっちもスタメンで行くんですね」

 

積牙は両チーム、選手を変えた作戦をしない事に驚いていた。

 

美矢「付け焼き刃でメンバーを変える事は相手のレベルが高い程悪手なんだよ。両チームの監督はそれをわかってるからスタメンで行ってるんだろうな」

 

美矢はそう言って両チームの監督を見る。守城監督の夢流、力豪の由乃は冷静な様子でベンチに座っていた。

 

優「………そろそろ始まるな。両チーム主将がどれだけ活躍出来るか………実に楽しみだよ」

 

光一「ええ………? コート内はピリピリしてるってのに性格悪いな、優………」

 

コート内はピリピリしつつも、優だけは楽しそうだった。春香以外の巫魔の部員が少し引く様子を見せていると、審判の笛が鳴る。

 

湯津「おっしゃあ!!」

 

ジャンプボールを制したのは湯津。ボールは戦記に渡り、両チームの選手は守城が攻めるゴール周辺に集結する。

 

戦記「(力豪は巫魔より瞬発性は薄いが安定性はある………まずは)………山野!」

 

戦記は山野にボールをパス。すぐに湯津へパスしようとするが………

 

笹掛「はあっ!」

 

山野とマッチアップしていた笹掛がボールをスティールする。

 

山野「ああっ!?」

 

山野は驚きを隠せなかった。

 

笹掛「山田くん!!」

 

笹掛はPGの山田にボールを渡す。その直後に滝川達は上がり始める。

 

戦記「皆戻れ! そして湯津! すぐにゴール下につけ!!」

 

湯津「あいよ!!」

 

しかし、戦記も冷静に指示を飛ばす。特に湯津は全速力で戻り、滝川達を追い抜く形でゴール下につく。それを見た山田は驚くが………

 

滝川「山田! 構わない! 俺に出してくれ!!」

 

キャプテン滝川の言葉を信じ、滝川にボールをパス。滝川はそのまま大ジャンプをして、ダンクを狙いに行く。

 

湯津「撃たせるわきゃ無いだろうが!!」

 

湯津はそう言うと、滝川のダンクを防ごうとする。

 

光一「ダンクを止める気か………!?」

 

湯津を相手に手を焼いた光一は、滝川のプレイが無謀に見えた。

 

優「(その割には迷いの無いダンクだ………)」

 

しかし、優は滝川の迷いの無さを感じていた。そして、湯津が滝川のダンクを正面から防ごうとする。しかし、滝川のダンクはビクともしない。

 

湯津「(な、なんだ………!? お、重てぇ………!?)」

 

湯津はそのまま滝川に押され、滝川のダンクが決まった。更に、審判の笛が鳴り………

 

審判「………バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

湯津のプレイをファールとして取り、滝川にフリースロー1本が与えられる。滝川のダンクを防げなかった事に驚く湯津に、滝川は近づき………

 

滝川「………これが俺の必殺、{炎のダンク(バーニングダンク)}だ!!」

 

これが滝川の必殺であると言い放つのだった………

 

 

 

力豪と守城の試合。初得点は意外にも滝川の必殺技{炎のダンク}だった。このスタートは試合展開にどう影響するのか………?

To Be Continued………




次回予告
滝川のダンクから、力豪の調子は大きく上がる。そんな中、春香は、力豪のSG笹掛が大きく機能している事に目を付け………?
次回「スリーが撃てないのに」


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第110話 スリーが撃てないのに

前回までのあらすじ
守城vs力豪の試合がいよいよ開幕する。だが、予想外にも試合は滝川が先制を奪い取り………!?


力豪が先制したという事実が、月宮達の調子を上げるきっかけとなった。

 

月宮「よし、そこだ!!」

 

月宮は湯津を前にしても、得意のフックシュートを放つ。これにより、湯津は分かっていても止められずに得点を許してしまう。

 

湯津「くそっ………! (俺、フックシュートは苦手なんだよな………)」

 

どうやら湯津はフックシュートを撃たれると苦しいようだ。

 

光一「あの5番、フックシュート上手いな………今のは俺でも止めれたかどうか………」

 

月宮のシュートは湯津と同じCの光一も認める程に、厄介なフックシュートのようだ。それから20秒も経たず、守城の攻撃で、井間が放ったシュートがリングに弾かれる。

 

笹掛「滝川! 鈴木くん! リバウンド!!」

 

そうなればリバウンド勝負。湯津もリバウンドに加わろうとするが、滝川が湯津を相手に上手いスクリーンアウトを行い、徹底的に湯津を働かせようとしない。

 

湯津「く、くそったれ………!!」

 

湯津はなんとかかわそうとするが、滝川のマークがしつこくかわせない。その隙に鈴木がリバウンドを制する。

 

湯津「(くそっ………!? 俺が飛べなきゃ、あの8番の方が有利になっちまうって事か………!?)」

 

湯津は、自身が機能しないと、力豪相手にリバウンドが取れない事を痛感させられる。

 

戦記「(成程………確かにインサイドが強い力豪なら湯津を止めてしまえば、ある程度は善戦出来る。考えてきたな、滝川………だが………!!)山野! 6番を徹底マークだ。スリーシューターの対処は任せる」

 

戦記は力豪のアウトサイドを潰そうと、春香を散々苦戦させた山野で、スリーシューターの笹掛をマークさせる。

 

美矢「アウトサイドで攻めさせない気か………!」

 

戦記の戦略に美矢はそう呟く。そして、山野のマークで、PG山田は、笹掛にパスを出せない。オマケに相手は戦記。まともに戦えば、山田では完全に荷が重いが………

 

笹掛「山田くん! 月宮にパス! 月宮なら高さで有利が取れるわ!」

 

笹掛が山田に声をかける。山田は落ち着きを取り戻して月宮にパス。井間が対処しようとするが、月宮は高さの優位を活かして、滝川にパス。

 

滝川「よし! ならもう一発!!」

 

滝川は再び{炎のダンク(バーニングダンク)}を発動。湯津は懸命に止めようとするも、滝川のパワーに押し負けてしまい、得点を許してしまう。

 

積牙「また力豪のリードが一歩前進………ですね」

 

意外にも善戦している事に驚く積牙。

 

春香「それもそうだけど………優さん、笹掛さんがいい仕事をしていましたね。山野ちゃんの厳しいマークのせいで、スリーが撃てないのに………」

 

だが春香は、それ以上に笹掛のナイスアシストに驚いていた。

 

優「そうだな………でも、SGとしては理想的なプレイだよ、ありゃ」

 

優はそんな彼女のプレイを理想的と評した。すると結衣が首を傾げる。

 

結衣「あの、キャプテン。SGって、スリーポイントシュートが求められるボジションじゃないんですか?」

 

優に対し結衣が問いかけたのは、SGの役割についてである。

 

優「確かに、SGに求められるのは、長距離シュート………所謂スリーポイントシュートの成功率だ。でも、SGはいつだってスリーが狙える訳じゃない。だから笹掛さんは、こういう事態を見越して、SGに求められるもう1つの役割を担っているんだ………PGの補佐っていう、もう1つの求められるプレイをね。それによって、7番と8番。あの2年生コンビが伸び伸びとプレイ出来る環境を作り出しているんだ」

 

そう、スリーポイントシュートだけを狙うのがSGの仕事では無い。SGにはPGの補助という役割も求められる。それを理解している笹掛は、満足に動けない今は黒子に徹し、まだ未熟な2年生コンビをフォローしているのだ。それを見た春香は………

 

春香「(………私も、こういう時にフォローが出来るSGになれれば………チームにもっと貢献出来るかもしれないわ………!)」

 

自身も同じプレイを出来るようになりたいと考えるのだった………

 

 

 

力豪は、滝川、月宮、笹掛の3年生が大奮闘し、守城を相手に大健闘。果たして、この有利はどこまで続くのか………!?

To Be Continued………




次回予告
滝川達3年生の奮闘で、第2Q終了時点で守城相手に12点差をつける力豪。だが、前半のうちに今年度の力豪の戦術を理解した戦記は、反撃の手を打つ為に策を立てる………!
次回「後半こそ本番だ」


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第111話 後半こそ本番だ

前回までのあらすじ
滝川の初得点から調子を上げる力豪。そこから力豪3年生達が奮闘する事で、守城を相手に互角以上に立ち回るのだった………


力豪有利の展開が続いたまま前半戦はあっという間に終了。第2Q終了時のスコアは24vs36と、12点差で力豪が勝っている展開に………

 

 

 

力豪ベンチ………

 

由乃「………思っていたよりも上手く行っているわね。正直、出来すぎと言いたくなる程に………」

 

インターバルにて、由乃は滝川と会話をしていた。しかし、由乃は、12点リードの状況でも、緊張感を崩そうとはしない。

 

滝川「………そうですね。俺も同じ事を考えていました。戦記程がこのまま負けてくれるとは思えません」

 

滝川も由乃と同じ緊張感を見せながら、守城のベンチを見る………

 

 

 

守城ベンチ………

 

湯津「くそっ………前半は10得点に1リバウンド、3ブロックだけか………滝川のせいで思ったよりも貢献出来なかったな………」

 

湯津が悔しそうな様子を見せる中、戦記は落ち着いた様子で手を叩き、湯津達の注目を集める。

 

戦記「いや、試合展開は上手く行っている。元より、前半は奴らの傍観をするつもりだった。お陰で今年の力豪がどのようなチームかはっきり見れた」

 

戦記はそう言うと、近くのベンチへ腰かけ………

 

戦記「まず5番月宮。奴の高さを活かしたシュートや、器用なフックシュートは脅威。だが、奴は手を読みやすい傾向にある。フックシュートを読むのは難しいかもしれんが、それには幾らか慣れたはず。湯津ならまあ何とかなるだろう」

 

まず、月宮のプレイングを話す。そして、湯津に任せておけば大丈夫だと考えていた。

 

戦記「続いて6番笹掛。彼女は山野の徹底したマークでスリーこそ防げているが、PGの補助という形で役割は果たしている。ただスリーを撃たれたら意味は無い。山野、君は今のプレイ続行で構わない。笹掛にスリーを撃たせない事が最優先事項だからな」

 

次に笹掛のプレイングについて。これも、山野の徹底マークを優先する事に。

 

山野「けれど、4番滝川さんはどうするんですか………? 湯津先輩ですら止められないのに………」

 

山野は首を傾げながらそう問いかける。

 

戦記「問題は無い。滝川のあのダンクは対処法がある。もし滝川がダンクに行こうとした時、俺に任せて欲しい」

 

戦記はそう言って、滝川対策を立てた事を口にする。滝川はイバラキにおいてトップクラスの選手なので、湯津達は不安そうな様子を見せるが………

 

戦記「まあとにかくだ………俺達の試合は後半こそ本番だ。気を引き締めろ………!!」

 

湯津達「おおー!」

 

湯津達は戦記の言葉で調子を上げるのだった………

 

 

 

力豪の思わぬ善戦に守城は追い込まれたと思いきや、守城側も力豪の戦術を理解し始める。果たして、守城の反撃が始まるのか………?

To Be Continued………!?




次回予告
戦記と滝川の両チームキャプテンがそれぞれマッチアップ。滝川が{炎のダンク(バーニングダンク)}を狙う中、戦記の取った対策は………?
次回「簡単な事だ」


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第112話 簡単な事だ

前回までのあらすじ
24vs36と12点差でリードを維持する力豪。だが守城は、力豪3年生組のプレイングを見抜き始め………!?


審判「第3Q、始めます!!」

 

インターバルを経て、試合は後半戦に突入。両チームの選手がコートに立つと、山野が戦記にボールをパスする事で試合が開幕する。戦記は落ち着いた様子でドリブルし、ハーフコートをあっと言う間に突破。

 

戦記「さて………まず手をどうするか………」

 

戦記が頭を回していると、力豪PGの山田が立ちはだかる。

 

滝川「よし、いいぞ山田!」

 

山田の懸命なプレイを褒める滝川。

 

戦記「いい? ………甘いな滝川………!」

 

戦記はそう呟くと、山田の隙を突いてスリーを放ち、綺麗にゴールへと沈めた。

 

笹掛「なっ!?」

 

戦記「俺を止めたいならもっとぶつかってくるんだな」

 

開始から10秒も経たぬ内に決まった戦記のシュートに圧倒される力豪。力豪監督の由乃も驚く中、守城の監督夢流は………

 

夢流「始まったわね………戦記くんによる攻略………!」

 

ここから戦記の反撃が始まる事を予感した………

 

 

 

それから少しして、力豪ボール。山田が月宮にボールを渡すと、月宮の前に湯津が立ちはだかる。

 

月宮「ぐっ!? くそっ!!」

 

ゴールが少し遠く、得意のフックシュートに持ち込むには距離が足らない。

 

滝川「月宮!」

 

戦記とマッチアップする滝川が声をかけた。滝川を信じた月宮は、滝川へ鋭いパスを送る。

 

滝川「1年振りのマッチアップだな。前回はお前にコテンパンにされたが………これならどうだ!!」

 

滝川は助走をつけた上で、{炎のダンク(バーニングダンク)}を狙おうとする。しかし、滝川がジャンプをした瞬間、先にジャンプしていた戦記が、滝川の手からボールを落とした。

 

滝川「な、何っ………!?」

 

これにはコートも衝撃を受ける。零れたボールは湯津が拾い………

 

戦記「速攻!!」

 

この場面で守城は珍しく速攻をかける。そしてそれを見た優は守城の状況に気づいた。

 

優「………!! 8番がもうハーフコートラインに………!!」

 

守城のSF、井間が既にハーフコートラインの位置にいた。

 

湯津「井間、頼むぜ!!」

 

湯津は、既に走り出していた井間にボールをパス。滝川と月宮の2人が井間から離れた距離にいる状態となってしまう。慌てて山田が井間をおいかけ、ボールをスティールしようとするが、井間は追いつかれないように逃げ切り、レイアップを決めて更に2点詰め寄る。だが、1番の衝撃は、滝川を戦記が止めた事だった。戦記は滝川に近づき………

 

戦記「{炎のダンク}は初動でゴールへ向けた踏み込みをする。その影響でその一瞬はボールに対する力が弱くなる。とどのつまり撃たせなければいい。簡単な事だ………」

 

戦記は滝川に対しそう言い放つ。それを聞いた滝川は自分の技を破られたばかりか、一瞬の隙を見破られた事に驚きを隠せず………

 

滝川「(………やはり手強い男だな………戦記良太………!!)」

 

戦記の恐ろしさをまた1つ感じ取るのだった………

 

 

 

戦記vs滝川という対決は、戦記が滝川の必殺を止めてしまった。あっという間に5点を奪う守城の反撃が、力豪に大きく突き刺さるのだった………

To Be Continued………




次回予告
守城の堅実なディフェンス。更に遅れながらも湯津の本領が発揮され始め、試合の流れは守城有利へと傾き始めた………!
次回「流れがひっくりかえった」


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第113話 流れがひっくりかえった

前回までのあらすじ
戦記が力豪の動きを見抜き始め、守城の反撃が始まった。更に戦記は、滝川の{炎のダンク(バーニングダンク)}すら止めてしまい………!?


滝川「皆! まだ7点差がある! 落ち着いて攻めていこう!!」

 

力豪キャプテン滝川は、選手達が焦らないよう、声をかける事で落ち着かせる。そして、PG山田にボールが渡って試合が始まったが、すぐに戦記がマッチアップしてくる。

 

優真「速い………!!」

 

戦記の速すぎる対応に、山田は思わず月宮へパスを出す。

 

月宮「お、俺!?」

 

月宮はボールをキャッチすると共に、驚きを隠せないようだった。

 

笹掛「(い、今はまだ月宮にパスすべきじゃない………! 山田くん、はやったわね………!?)」

 

笹掛にとってもこのプレイは悪手に見えた。なんせ、月宮はスリーポイントラインの内側にいるものの、まだゴールまでは微妙に遠い。

 

月宮「(並の相手ならそのまま撃ってもなんら問題ねぇけど………湯津が相手じゃ話が全然ちげえ………!!)」

 

湯津という強力Cがいるチーム相手では、流石の月宮も攻めあぐねる。

 

滝川「(まずい、チームが焦り始めた………!)月宮! 回せ!!」

 

滝川はチームの焦りを感じ取ると、月宮へパスを要求。月宮は月宮に向けてボールを投げるも、そこへ駆けつけてきた戦記がパスコースへ手を伸ばしてボールをスティール。零れ玉を湯津が拾い………

 

湯津「戦記!」

 

すぐにボールを戦記へ戻した。

 

戦記「よし! ここでもう一本を取る!」

 

そして戦記は、攻撃の宣言をするのだった………

 

 

 

その様子を見ていた優達は、先程まで優勢だったはずの力豪の隙を突いた、戦記の手腕やゲームメイクに驚きを隠せなかった。

 

美矢「流れがひっくりかえった………やっぱり恐ろしい相手だな、戦記良太………!」

 

美矢がそう呟くと、優は………

 

優「そうだね………でもまだ………まだ戦記さんはこれだけじゃない気がする………」

 

戦記が真の意味で本気では無い事を予感した。

 

光一「おいおい、まだあの上があるってのか?」

 

光一は優の言葉に首を傾げる。

 

優「あの人は全国でも頂点クラスの選手だ。滝川さんも強いけど、戦記さんは別格が過ぎる。守城は5番湯津さんの目立ちやすいプレイが多いけど、湯津さんも戦記さんをキャプテンとして認めている………あの人が隠している力はいったいなんなのか………?」

 

はっきりと断定出来る事実はまだ何も無いが、優はその予感が真実だと考えていた。そして、試合は湯津の豪快なダンクが炸裂し、試合は5点差、31vs36へと詰め寄るのだった………

 

 

 

守城の反撃が始まる中、優は今の戦記の更に上を考えていた。果たして、優の予想は妄言なのか? それとも真実なのか………!?

To Be Continued………




次回予告
守城の反撃が止まらず、更に力豪側も焦りが見え始め、試合は遂に1点差に。だが、滝川は諦める様子を見せず、なんとか{炎のダンク(バーニングダンク)}を狙おうとするが………!?
次回「もうお前に撃たせるものか」


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第114話 もうお前に撃たせるものか

前回までのあらすじ
戦記と湯津が本領を発揮し、力豪への反撃を続けていく。更に力豪は、焦りを見せだし………!?


戦記の策を前に、力豪は最早追い詰められていた。笹掛のスリーは、山野のせいであてに出来ず、インサイドは湯津が支配。そして司令塔の戦記もスティールや、無言の威圧で力豪の戦意を削ぎ落としていき、第3Q残り2分。気がついた時には、35vs36の1点差。

 

滝川「(まずい………守城がスローペースだからこそまだ逆転されていないけど………皆の戦意が崩れかけている………)」

 

滝川はチームが瓦解しかかっている問題に頭を悩ませる。今の力豪にとっては1点差の有利などあってないようなもの。

 

積牙「守城が完全に試合を支配していますね………これは完全に力豪の負け………でしょうか?」

 

これを見た積牙は、守城の勝利を嫌でも感じ取ってしまう。しかし優は、滝川の諦めない様子を目にする。

 

優「滝川さんが戦記さんに勝てるか………それで全てが決まるよ。無理なら………守城が勝ち、守城の優勝は確定するだろうね………」

 

力豪が勝てるかは、滝川が戦記を倒せるかに賭かっている。これが無理なら力豪は勝つ事など出来ない。

 

滝川「皆! 焦る気持ちは分かるがここはクールに行こう! 俺がこの状況を何とかする」

 

滝川もそれを分かっているのか、手を叩いてチームを鼓舞し、自分に注意を引きつける。

 

戦記「………賭けてきたな、滝川………!」

 

それを見た戦記は迷わず確信した。滝川はここで勝負を仕掛けるつもりだと。

 

山田「キャプテン!!」

 

そして、力豪ボール時に、山田が滝川に迷わずパスを送る。滝川はゴール下でボールを受け取るが、そこへ戦記が駆け込んでくる。

 

滝川「(絶対にここでゴールを決める!! 俺の{炎のダンク(バーニングダンク)}で、チームを鼓舞するんだ………!!)」

 

滝川は引こうとはしなかった。そして、迷わず飛び上がると………

 

滝川「行くぞ戦記! これが俺の………{炎のダンク}だ!!」

 

滝川は渾身の{炎のダンク}を放つ。しかし、滝川が飛んで間もなく、滝川は戦記と接触。戦記は地面に倒れた。

 

滝川「なっ!?」

 

湯津「戦記!?」

 

これには両チーム共に驚きを隠せなかった。そこへ審判が笛を鳴らし………

 

滝川「プッシング! 赤4番!!」

 

滝川のファールと取った。

 

滝川「なっ………!?」

 

つまりこのダンクは失敗に終わったばかりか、滝川のファールだけが増えた。戦記は少しして立ち上がると………

 

戦記「最後のダンクが封殺されてしまったな、滝川」

 

挑発するようにそう言い放つ。

 

滝川「最後………!? どういう意味なんだ、戦記!?」

 

戦記の挑発に首を傾げる滝川。

 

戦記「………簡単な事だ。もうお前に撃たせるものか………!!」

 

戦記はそんな彼に、挑発的な言葉を返したのだった………

 

 

 

滝川渾身の{炎のダンク}まで完璧に封殺され、更に戦記の宣言。勝負の流れが力豪不利と誰もが感じるのに、そう時間はかからない絶望的な状況なのだった………

To Be Continued………




次回予告
守城の超防御力によって、滝川にボールが渡らなくなってしまい敗北は免れない事態に。それでも滝川は諦める様子を見せず………!?
次回「まだだ」


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第115話 まだだ

前回までのあらすじ
諦める様子を見せない滝川。だが現実は非情なもので、滝川渾身の{炎のダンク(バーニングダンク)}は失敗に終わる。状況は更に絶望的なものへと変わり………!?


守城のスローインで試合再開。山野から戦記にボールが渡ると………

 

戦記「まずは逆転からだ。トドメはそこから刺せばいい………!」

 

戦記はそう言うと、素早い動きでドリブルする。

 

優「速攻………!」

 

戦記の珍しい速攻。山田がブロックを試みるが、戦記にはあっさりかわされ、戦記はそのままスリーポイントシュート。ボールはゴールへ沈み、第3Q残り1分20秒。とうとう38vs36となり逆転。更にこの第3Qでの力豪の得点は0。王者同士の戦いとは思えないレベルの一方的な展開が続いていた。これには力豪監督由乃も驚きを隠せなかった。

 

由乃「(王者同士の戦い………ここ2年間はチームのレベル差はそこまででもなかった。けど今年は違う。戦記くんが1年生の頃から築いていた超防御戦術。それが完全に洗練されたものとなった事で、今、他の王者すら寄せつけない戦術として発揮されている………!!)」

 

そして同時に確信した。今や守城は他の王者を寄せ付けない最強の戦術が洗練されたものとなって、この絶望を生み出していた。

 

戦記「形勢逆転。そして始めるぞ………ここで力豪を無得点の網に引っ掛ける!」

 

湯津達「おー!!」

 

そして戦記もそのまま終わらせる気はなかったのだった………

 

 

 

その後、第3Qは第4Qへと移り変わるが、それから7分間、力豪の出る幕は完全に無かった。笹掛はまともにスリーポイントシュートが打てないし、月宮についても、マッチアップ相手の湯津が対処に慣れてしまったせいで、湯津の弱点を突けない。2年生コンビも、経験さから歯が立たず、キャプテンの滝川も戦記の罠に嵌められていた。

 

審判「プッシング、赤4番!」

 

月宮「よ、4つ目だ………!」

 

気がつけば滝川のファールは4つに増幅。退場一歩手前である。更にスコアは48vs36。これでは試合の結果など素人でも分かる。

 

美矢「終わりだな………」

 

それは優達にも伝わってくる。

 

のぞみ「大黒柱の滝川が4ファールなら周りの士気は嫌でも落ちる。幾ら王者でも勝負になるわけが無い………」

 

誰もが守城の完全勝利に頷こうとした状況。しかし………

 

滝川「………まだだ!!」

 

滝川は諦めようとしない。

 

滝川「確かにこの試合、勝つのはもう難しいだろう………だけどな、皆! 俺達がここで落ち込んでどうする! それじゃあ、明日の巫魔戦、優くん達相手に負けるぞ!!」

 

滝川もこの試合に勝つのは絶望的だと分かっていた。しかし、今のまま負けるつもりは無かった。同時に彼は好敵手の優を思い出していた。守城戦では絶望的な局面でも諦めずに挑み続け、遂に戦記を抜いた。そんな奇跡を彼は起こそうと言うのだ。

 

優「………滝川さん、最後に爪痕を残すつもりだな………!」

 

そんな彼の様子へ、優は面白そうに呟くのだった………

 

 

 

力豪が絶望的な状況の中でも、滝川は諦めない。残り3分。力豪は大きな爪痕を残せるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
滝川は4ファールに思えない強気のプレイを見せ、守城のディフェンスをかわしていく。そして再度起きる戦記vs滝川。果たして、この勝負の行方は………!?
次回「ラストバトルだ」


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第116話 ラストバトルだ

前回までのあらすじ
守城の逆転により、力豪の勝利は絶望的なものに。だが、滝川はまだ諦めずに………!?


試合は守城のスローインで再開。山野は戦記へボールを渡そうとするが………

 

笹掛「はあっ!」

 

笹掛が手を伸ばし、ボールをスティールした。

 

笹掛「滝川!!」

 

笹掛は滝川にパスをする。

 

戦記「………やはりそう来たか………!」

 

笹掛にボールをスティールされた時から、戦記は滝川にボールが渡る事を予感していたのか、再びマッチアップする。

 

滝川「行くぞ、戦記!! ラストバトルだ!!」

 

滝川は戦記の手が届かない距離からダンクの体勢に。

 

戦記「(止める………!)」

 

戦記は大きく飛び上がる。だが、滝川は物怖じせずにゴールへと向かう。その途中で2人は接触。戦記は吹き飛ばされ、滝川はボールをゴールへ叩きつけた。この接触に審判の笛が鳴り、会場の空気は静まる………

 

優「ど、どっちだ………?」

 

勝負の行方は審判に委ねられていた。審判の下した判断は………?

 

審判「………赤4番!」

 

滝川のファールだった。戦記を吹き飛ばしたダンクが強引なダンクと見なされたのが原因だろう。

 

滝川「ダメだったか………まあでも、一矢報えたかもな………」

 

滝川は面白そうにそう呟くと、右手を挙げてコートを去った。

 

戦記「滝川………」

 

戦記は体を起こし、コートを去る滝川を目にすると………

 

戦記「今のはファールに助けられた………もしやお前も全国に行けるだけのレベルがあるかもしれんな………滝川………」

 

戦記はそう呟き、その場を去るのだった………

 

 

 

その後、滝川の抜けた力豪が守城に勝てる訳がなく………試合は52vs36で守城の勝利に終わった。

 

審判「52vs36で、守城高校の勝ち!」

 

戦記達「ありがとうございました!」

 

これにより、守城は2勝負。力豪が巫魔と同じ1勝1敗。この試合で守城の全国出場が確定し、残る一枠を巫魔と力豪が争う展開に。それを理解した優は席を立ち………

 

優「………帰ろう、皆」

 

会場を去る事に決めた。

 

光一「ど、どうした優?」

 

光一は優が帰ろうとする様子に首を傾げる。

 

優「まだ3時だから………今からなら少しだけ練習が出来る………皆、明日の試合は絶対に勝つ。その為の練習は幾ら積んだっていいはずだ」

 

その理由は練習の為だった。それを聞いた光一はハッとした様子を見せる。

 

光一「そうか! 明日の試合に勝てば、俺達は全国へ行ける! だから練習して少しでもレベルを上げるって事か!」

 

光一は、優が練習をする事を望んだ理由に頷く。春香達もそれに頷くと………

 

春香「じゃあ帰って練習………ですね!」

 

学校へ戻る事を決める。

 

優「シュガーも協力してくれないかな?」

 

そして優は、巫魔のレベルアップに一役買っているシュガーにも協力を依頼。それを聞いたシュガーは少し考え………

 

シュガー「………ソフトクリーム2つ追加ならいいよ」

 

報酬の割増を条件に引き受けてくれるのだった………

 

 

 

決着した守城vs力豪戦。そして、明日にやってくる、全国の椅子を巡る最後の対決。巫魔はその追い込みに奔走する事を決めたのだった………

To Be Continued………




次回予告
巫魔の体育館で練習をするゆう達。そんな彼らの様子を、休日にも関わらず見ている生徒の姿がいくつもおり………?
次回「応援団だよ」


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第117話 応援団だよ

前回までのあらすじ
戦記vs滝川の対決は、滝川の5ファールで戦記の勝利。そのまま守城の勝利となり、全国のもう一枠を争うのは巫魔と守城に。ゆう達は練習の為に学校へと戻るのだった………


巫魔高校の体育館へ戻った優達は、翌日の試合に向けてひたすら反復練習を繰り返す。

 

優「よーし! 次はパス&シュート100本ずつ!」

 

優はダンクしか出来ないので、指示に徹していた。そんな彼の様子を見るシュガーはソフトクリームを舐めながら………

 

シュガー「………ミドレーユって意外と視野広いよね」

 

優に対しそう呟いた。

 

優「………そうかね? まあ、美矢の動きを参考にし始めてからは以外と周りが見えるようになったのも事実だけど………」

 

優はそう呟く………すると、体育館の外から多くの視線を感じた。

 

優「………なんか見られてるな………」

 

優は体育館の外に目を向ける。するとそこには女子生徒数人がいた。

 

春香「どうしたんですか優さん? ………あっ、同じクラスの赤薔薇さん達………!」

 

練習そっちのけで外を見る優。そんな彼に近づいた春香も、女子生徒達に気付いた。

 

赤薔薇「明日、優くんや春香ちゃんの試合だって聞いてね。だから私達結成したの。私達は今日から応援団だよ!」

 

その纏め役に当たる赤薔薇は、優達の為に応援団を組んだと言う。

 

優「応援か………とても嬉しいよ。ありがとう赤薔薇さん! 皆も………!」

 

優は応援してくれる存在が出来た事がとても嬉しそうだった。

 

光一「ほえー、さしずめ巫魔高校応援団ってところか。俺達の活躍を是非応援してくれよ!」

 

そこから光一が顔を伸ばしてそう呟いたが………

 

赤薔薇「………勘違いしないで欲しいんだけど、私達は優くんと春香ちゃんの応援団だから」

 

赤薔薇達は先程の優達への反応が嘘のように、光一に対しては塩対応を見せた。

 

光一「ま、また優かよ………!?」

 

光一は酷くショックを受けた。その様子を見た優は………

 

優「ま、まあ………明日の応援に応えられるように頑張るよ!」

 

光一の肩を優しく撫で、応援に対する感謝を見せる。

 

赤薔薇「頑張ってね、2人とも!」

 

赤薔薇達はそう言うと、優と春香を応援する為に作った応援旗を広げる。旗には「頑張れ! 優! 春香!」と書いてあった。

 

春香「な、なんというか………恥ずかしいですね………」

 

春香は苦笑いを浮かべる。だが、優は応援団という存在が嬉しかったのか、特に嫌そうな様子を見せず、手を叩き………

 

優「よーし! じゃあ、練習再開だ! 明日の試合、余計に負けられなくなったからね!!」

 

練習に対し精を出すのだった………

 

 

 

迫る力豪との試合。思わぬ応援を得たゆう達は、それに応えるように練習を積み重ねる。果たして、力豪戦に勝つ事は出来るのだろうか………!?

To Be Continued………




次回予告
練習を終えた後、美矢は家に帰る前に寄り道をする。彼女が向かったのは、明日香が入院をしている病院で………?
次回「久しぶり」


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第118話 久しぶり

前回までのあらすじ
力豪戦に向けて練習をする優達。そんな彼等を、優達のクラスメイトである赤薔薇達が応援団として駆けつけてくれて………?


練習後、優達は体育館の片付けを経て、各々家に帰る事に。

 

優「じゃあ、明日は力豪戦だ。各自、しっかり休んで明日に備える事! 解散!」

 

優の解散指示から、積牙達は帰る事に。

 

美矢「おーい、キャプテン。ちょっと………」

 

そんな中、美矢が優に用件がある様子を見せるが………

 

赤薔薇「優くん、春香ちゃん、バスケのルール教えてくれないかな? 応援するとは言ったけど、バスケのルールとかは全く分からなくて………!」

 

赤薔薇達応援団が先にゆう達へ声をかけた。それを見た美矢は………

 

美矢「………まあいっか」

 

赤薔薇達との会話を優先させてあげるかと、1人学校を後にした………

 

 

 

だがそんな彼女が向かったのは自宅では無く、明日香が入院している巫魔病院だった。彼女は明日香の病室へ足を運ぶ。そして、明日香の部屋の扉をノックして病室へ入った。

 

明日香「あっ、美矢! 久しぶり」

 

明日香はベッドの上でバスケ雑誌を読んでいた。怪我をしている右足にはまだ包帯が巻かれている。

 

美矢「久しぶり………右足はどうなんだ?」

 

美矢は真っ先に明日香の足を心配をしていた。

 

明日香「普通に歩けるくらいには回復したよ。今はまだ保険って事で包帯を巻いているけど骨はくっついたらしいから、そう遠くないうちにバスケ部に戻って来れると思う」

 

明日香はそう言ってベッドから降りて、美矢の方に歩いてくる。特に痛そうな様子は見せていない為、明日香の右足が殆ど回復している事は美矢でもすぐに分かった。

 

美矢「そうなったら………12番のユニフォームを返す日も近いかもな」

 

美矢はそう呟く。しかし明日香は………

 

明日香「いや、それは美矢のユニフォームだよ」

 

12番のユニフォームをそのまま美矢に譲るつもりだった。

 

美矢「でも………! これはアンタが必死に努力して掴み取ったユニフォームじゃないか! 私がそれを奪うような事になって本当にいいのか………!?」

 

美矢本人は、明日香の努力を考え、受け取る事を躊躇っていた………

 

明日香「私が譲るって言ってるんだからいいんだよ。私は美矢程上手くも無いし………それに、前に言ったじゃん。私はアンタのバスケが見たいって。中継だけど試合も見たし、イバラキの高校バスケ雑誌だって何回も見返した。その度に思うんだ。私の選択は間違ってなかった………ってさ」

 

しかし、明日香自身はユニフォームを譲った事に後悔を持ってはいなかった。

 

美矢「明日香………」

 

そんな彼女の言葉に、美矢は驚くと共に感心する様子を見せていた。

 

明日香「ほら、行った行った。明日も試合なんでしょ? 力豪戦、期待してるからね!」

 

明日香はそう言うと、美矢を暖かく見送る事に決めた。それを聞いた美矢は思わず泣きそうになるが………

 

美矢「………任せとけ! 絶対に巫魔高校を全国大会に連れて行ってやらあ!!」

 

明日香に対しそう意気込みを口にして病室を後にする。明日香は美矢を見送った後、バスケ雑誌を手に取り………

 

明日香「………頑張ってよ、皆………!」

 

優達に対し、密かにエールを送るのだった………

 

 

 

迫る力豪戦を前に、美矢は1人明日香の元を訪ね、明日香の元で全国大会出場を誓った。果たして、美矢の誓いは現実となるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優達が家へ帰ると、ミドレーユとして面識があった人物、椿が優達の住む家へやってきた。彼女は、優達を応援する為に東京からわざわざやってきたようで………?
次回「頑張ってください」


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第119話 頑張ってください

前回までのあらすじ
練習の後、美矢は入院中の明日香を訪ねる。明日香は美矢にユニフォームを譲る意思を明かし、それを聞いた美矢は、彼女の期待に応えようと、全国大会出場を誓うのだった………


一方、ゆう達は赤薔薇達の質問をしばらく聞いていた為、帰路についたのは日が落ちてからだった。

 

優「赤薔薇さんに結構質問されてしまって帰るのが遅くなっちゃったな………」

 

優は少し疲れた様子でそう呟く。

 

春香「帰ったらすぐにご飯作りますね」

 

そんな彼を元気づけようと、今日の献立を考えていると、2人の生活する家の玄関にこの地域では見かけない制服を着た女学生がいた。

 

優「………? お客さんかな?」

 

優は首を傾げながらその女学生に近づく。

 

優「すみません、何か御用で………って、君は………!!」

 

だが優は、女学生を見るなり驚く様子を見る。優の驚く様子に首を傾げる春香だったが、女学生の顔を見ると春香も驚く様子を見せた。

 

春香「つ、椿さん………!?」

 

なんと、中学時代春香とチームメイトだった椿がその女学生なのだ。

 

椿「お久しぶりです、お2人とも。こうしてお会いするのは久しぶりですね」

 

椿は2人との再会を嬉しそうにしていた………

 

 

 

その後、椿を招き入れて家に入ると、3人でお茶を飲みながら会話をする事に………

 

椿「そういえば………明日の力豪戦に勝てば全国大会へ行けるんですよね?」

 

その際、椿は明日の試合について問いかける。

 

優「まあね。でもかなり大変な事になりそうだよ。今日の守城と力豪戦はかなり凄かった………それに力豪は前の練習試合とは比にならない強さで相手してくるんだ………死に物狂いで頑張らないとね」

 

優は明日の試合が大変なものになる事を予感していた。

 

椿「でも、明日は優さんと春香様のお二人が大健闘なさるのでは無いでしょうか?」

 

だが、椿は2人の活躍を期待していた。

 

優「ふええ………椿ちゃんにそれを言われちまうとな………ねぇ?」

 

期待されている事を恥ずかしがる優。同情を求めるように春香へ視線を向ける………

 

春香「そうですね………でも、明日の力豪戦。優さんの相手は間違いなく因縁の滝川さんですよね? そうなると………燃えません?」

 

春香は優の気持ちに頷きながらも、優の明日における対戦相手が滝川である事を考えると、明日の試合が燃えないかと問いかける。

 

優「それは確かにね………!」

 

それを指摘され、優の気持ちは燃える様子を見せる。優達2人の様子を微笑ましそうに見る椿は………

 

椿「明日の試合、頑張ってください! 私も明日の試合は見に行って応援しますから!」

 

そう言って椿は、優達の応援に行く事を伝える。それを聞いた優達は………

 

優「ああ、ありがとうね、椿ちゃん………!」

 

椿に対し感謝する様子を見せるのだった………

 

 

 

迫る力豪戦。またしても応援を得た優達は、明日の試合に思いを馳せるのだった………

To Be Continued………




次回予告
翌日、遂に力豪戦が始まろうとしていた。両チームのスタメンは、これから始まろうとする試合に気合十分で………!?
次回「最後の試合だ」


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第八章 全国を掴め! vs力豪高校!
第120話 最後の試合だ


前回までのあらすじ
優達が家に戻ると、彼等の家を椿が訪ねてきた。椿はゆう達の応援の為にわざわざ来たようで………!?


翌日、リーグ戦最終日。会場の体育館では既に守城と利毛が試合を行っていたが、その差は圧倒的で、64vs0と、守城の無失点で残り5秒。ボールは戦記が持っていた。

 

利毛4番「止めろ! なんとか戦記からボールを取れ!!」

 

利毛は最後のあがきとして、戦記からボールを奪おうとするが、戦記は軽々とディフェンスをかわし………

 

戦記「これで終わりだ………!」

 

戦記はスリーポイントシュートを放ち、これを見事に沈めた。同時にブザービーターが鳴り、試合は67vs0で終了。

 

観客「守城高校優勝だああ!!」

 

守城高校はリーグ戦を全勝で見事優勝。湯津達は喜ぶ様子を見せるが、戦記にとっては優勝などどうでも良かった。

 

湯津「おいおい、戦記。優勝だぜ! もっと喜べよー!!」

 

湯津は茶化すようにそう声をかける。

 

戦記「………俺達の優勝は今日の大会においては前座に過ぎん。むしろ本番はここから………巫魔と力豪。勝った方が全国へ行く事になる。俺の興味は既にそっちにあるさ………」

 

だが戦記の注目は、優達の試合だった。それを聞いた湯津は………

 

湯津「とことん自分の勝利は喜ばないな、お前は………」

 

やれやれという様子を見せながらも、彼らしいと納得するのだった………

 

 

 

それから数十分経ち、この日の本丸、巫魔vs力豪の試合が始まろうとしていた。巫魔のベンチでは、優達が最後のミーティングをしていた。

 

ゆうか「さて、今日の力豪戦の指示だけど………言うまでも無く、それぞれのポジションの選手を相手してもらうわ。優くんなら滝川くん、積牙くんなら月宮くんみたいにね」

 

ゆうかの指示は特に変哲の無いマンツーマン。しかし………

 

優「でも、勝ちたければ滝川さん達に勝つ事が絶対条件………ですよね?」

 

ただマンツーマンをやっていれば勝てる訳では無い。勝つ為には、滝川を始め、力豪の3年生メンバーを何とかしなければ巫魔に勝ち目はない。

 

ゆうか「そうね………前の練習試合ではある程度は渡り合えたからなんとかなったものの………あっちが私達との試合を経て、何も対策しないとは思えないわ………」

 

しかし、ゆうかは力豪が策を取ってくる事を予感していた………

 

 

 

その頃、力豪ベンチでは………

 

由乃「巫魔選手は、前と大幅にスタメンを変えてくるとは思うけど………間違いなく優くんは出してくる。滝川くん、月宮くん、今回の試合、如何に優くんを仕事させないか。それが影響してくると思うわ。そこで………」

 

力豪監督の由乃は巫魔を、特に優を警戒していた。だが、巫魔は強豪校相手には優を出さざるを得ない事を理解している由乃は、滝川と月宮に策を伝えるのだった………

 

 

 

そうして、両チームが大きな緊張感に包まれる中、審判が試合開始を宣言する。それを聞いた優は………

 

優「全国大会出場を賭けた最後の試合だ………必ず勝つぞ!!」

 

リーグ戦最後の試合にて、チームを鼓舞する。

 

春香達「おおー!!」

 

春香達は優の鼓舞に声を上げて気合を入れる………

 

 

 

滝川「行くぞ、皆! 今回も巫魔高校に勝って、全国へ行くぞ!!」

 

だが同時に滝川もチームを鼓舞する。

 

月宮達「おう!!」

 

そして月宮達も気合を入れる。両チームの気合いは誰が見ても十分なものだった………

 

 

 

遂に始まろうとする巫魔vs力豪。果たして、全国大会出場を賭けた最終ゲームの行方は………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔vs力豪の試合がいよいよ開幕。光一がジャンプボールを征するが、滝川と月宮の2人は初っ端から巫魔を抑える行動に出る………
次回「君を働かせはしないよ」


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第121話 君を働かせはしないよ

前回までのあらすじ
守城vs利毛の対決は守城の勝利に終わり、守城高校は優勝。そして全国へ行ける残り一枠を賭け、巫魔と力豪の激突が始まろうとしていた………


両チームのスタメンは以下の通り………

 

巫魔高校(黒)

PG 12番 天野美矢

SG 5番 白宮春香

SF 10番 江野積牙

PF 4番 白宮優

C 17番 相田光一

 

力豪高校(白)

PG 8番 山田 悠介

SG 6番 笹掛 美代

SF 5番 月宮 誠

PF 4番 滝川 秦

C 7番 鈴木 聖矢

 

どちらもチームの最強メンバーで今回の試合に挑むようだ。観客席では、やはり戦記と湯津、そして………

 

修也「またお隣失礼しますよ」

 

修也、アリサ、芽衣の3人がやってきた。

 

湯津「やっぱり来た。っていうか、お宅らトウキョウの学校だろ? よくもまあ、飽きずに巫魔の試合を見に来るよな〜」

 

湯津は修也達が巫魔の試合をわざわざ県外から見に来る事を不思議がっていた。

 

修也「まあ、前に練習試合したのでね」

 

修也は一応事実を交えた理由を語る。実際はもっと異なる理由で試合を見に来ているのだが。

 

?「あの、私もお隣いいですか?」

 

そんな修也達の隣へ座りたがる女学生の声が。

 

芽衣「どうぞ………って、貴女は確か………白宮高校の!?」

 

芽衣はその女学生を知っているようだった。何故なら………

 

椿「椿です。ご無沙汰してます、天野修也さん、アリサ・ストライクさん、月渡芽衣さん」

 

その女学生は椿だったからだ。椿と修也達が顔見知りという様子から、戦記は椿がトウキョウの人間だと気付き………

 

戦記「………優の知り合いは意外にもトウキョウの人間が多いようだな」

 

そんな事を呟いた。するとその直後、戦記達が座る観客席の近くへ、巫魔高校の赤薔薇達応援団までやってくる。例の優と春香を応援する為の旗を目の前の柵に引っ掛け………

 

赤薔薇達「優くーん! 春香ちゃーん! 頑張れー!!」

 

数人がかりの応援をする。それを見た戦記は珍しく驚いており………

 

戦記「………個性豊かな人間がいるのだな、巫魔高校は………」

 

どこか引いた様子でそう呟いた………

 

 

 

そして、コートに立つ両チームのスタメンが位置に着く。

 

優「頼むぞ、光一!」

 

優はジャンプボールを光一に託し、少しでも前に出られるよう位置する。しかし、その近くには滝川と月宮の2人がいた。

 

優「(なんか滝川さんと月宮さんの距離が近い………2人が近くにいて利点があるとはあまり思えないのだが………)」

 

滝川と月宮の待機距離が近い事に首を傾げつつも、審判が笛を鳴らし試合は開始。高く打ち上げられたボールは、光一が触れ、ボールは春香の元へ。

 

春香「美矢ちゃん!」

 

すぐに美矢へボールを回して巫魔の攻撃、その第1打が始まろうとしていた。

 

美矢「(よーし、最初はキャプテンを使って先制だ………!)」

 

美矢は優による先制攻撃を狙う。しかし………

 

滝川「月宮!」

 

月宮「おう!」

 

その直後に滝川と月宮が動いてきた。なんと、前線へ上がろうとしていた優をインサイドへ入らないよう、2人がかりで囲んでくる。

 

優「なっ!? ダブルチーム!?」

 

なんと、力豪が最初から行ってきた作戦は、優へのダブルチームだった。

 

滝川「前は君にこっぴどくやられたからね………今回は君を働かせはしないよ………!!」

 

力豪は前の巫魔戦で考えた反省点を活かし、優を抑える作戦に打って出た。それを見た巫魔監督のゆうかはハッとする様子を見せ………

 

ゆうか「(やられた………! 優くんはゴールに近づかなきゃ仕事が出来ない………!)」

 

優の弱点を突かれた事に頭を悩ませるのだった………

 

 

 

全国大会出場を賭けた最後の試合がいよいよ開幕するものの、初っ端から優の行動を潰しにかかる力豪。自身のプレイを潰された優はいったいどうするのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優がオフェンスで全く活躍出来ず、ディフェンスでも滝川の{炎のダンク(バーニングダンク)}によって押されるというまさかの展開に。しかし、美矢と光一が奮闘する事で、何とか有利な点差に持ち込む事ができ………?
次回「俺達の出番だな」


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第122話 俺達の出番だな

前回までのあらすじ
試合が開幕し、ジャンプボールは光一が征する。その直後に力豪が取ったのは、優をインサイドへ入れないようにする、滝川と月宮のダブルチーム作戦であり………!?


美矢は、優へパスが出せない事に頭を悩ませるが、ゴール下の光一が、鈴木を相手にいいポジションに立っていた。

 

美矢「(あの7番、下手じゃないが………)………光一!」

 

美矢は光一にパスを回す。光一はそれを受け取ると、ゴール下シュートを放つ。鈴木は何とか止めようとするが、光一のシュートを防げず、得点を許してしまう。

 

美矢「(よし、光一が一枚上手だ………!)」

 

美矢は光一と鈴木は、光一の方に軍配が上がると考えてパスを出していた。実際その予想は当たり、先取点は巫魔が取った。

 

滝川「どんまいどんまい! 次取り返すぞ!!」

 

だが滝川はこんな程度では動じない。冷静な様子でチームにオフェンスへ気持ちを切り替えるよう鼓舞する………

 

 

 

続く力豪の攻撃。山田がボールを運ぶ中、美矢とマッチアップ。山田は軽く動いてかわせるかを伺うが、美矢は惑わされる事無く着いて行き、かわすのは難しいと判明。それを見た山田は笹掛にボールを回した。

 

春香「撃たせません!!」

 

笹掛をマークする春香は、笹掛にシュートを撃たせまいと立ちはだかる。

 

笹掛「今は撃たないわよ!」

 

笹掛はそう言い返すと、滝川にパスを回した。そして滝川の前には優。練習試合以来のマッチアップである。

 

滝川「ここまで上がって来た事は素直に賞賛するよ優くん。その証として、君に対しても全力で挑もう! 行くぞ! 俺の{炎のダンク(バーニングダンク)}をくらえ!!」

 

滝川は優に対し全力で挑む事を宣言し、守城の湯津を苦しめた{炎のダンク}を狙う。優は高くジャンプする事で、滝川の高さに追い付き、そのままボールをはじこうとする。しかし、優が触れた滝川が持つボールは、鉄の塊のようにビクともせず、逆に優の手が弾かれた。

 

優「なっ………!?」

 

優はボールに弾かれた威力で地面へ叩き落とされ、滝川はダンクを決める。

 

ゆう「ぐっ………!」

 

辛うじてファールのコールが無かった為、2点の失点のみで済んだが、優は{炎のダンク}を止められなかった。優は掌を眺めると………

 

優「(なんて力が込められたダンクなんだ………!)」

 

未だ弾かれた時の痺れを感じると共に、{炎のダンク}がどのようなものかを思い知らされた………

 

光一「意外だな………優は初っ端から活躍してるイメージあるのに、今回は仕事すらさせてもらえないとは………」

 

優は普段、試合開始早々活躍を見せる事が多かったのだが、今回は珍しく圧倒されていた。チーム内でも驚きが見える中、美矢は光一に近づき………

 

美矢「でもある意味チャンスでもある。力豪はキャプテンを止めるのに、主力2人を使っているからな」

 

今の状況がチャンスだと述べた。

 

光一「言われてみれば確かに………」

 

力豪で厄介な3年生トリオのうち、滝川と月宮の2人が優の封殺要員として動いている。更に………

 

美矢「あの7、8番。私達ならなんとかなるはずだ。キャプテンがあの2人を引き付けている隙に、点差を開く………!」

 

2年生コンビ相手に、美矢や光一は劣っておらず、先程は2人とも互角以上に戦えていた。

 

光一「おっし、じゃあ今は俺達の出番だな!」

 

美矢と光一のコンビは、今のうちに点を稼ぐ作戦に出た………

 

 

 

そして、再び訪れる巫魔の攻撃。優はまたしても滝川と月宮の2人に阻まれ、インサイドに入れさせてくれない。

 

優「くそっ………!!」

 

優が動けず苦しそうな様子を見せる中、ボールを持つ美矢の前に山田が現れ、スティールを狙うが………

 

美矢「遅い!」

 

美矢はこれをあっさりかわした。

 

美矢「(こちとら、速野やら戦記やらとんでもねぇ相手と連戦させられたんだ………コイツなら負ける気はしねぇ!!)」

 

どうやら、トップクラスのPG2人と戦った経験が、美矢のレベルを上げていたようだった。美矢は隙の無い動きで光一へパスを出す。これを受け取った光一は………

 

光一「いよっしゃああ!!」

 

そのままツーハンドダンクを狙う。鈴木は僅かに出遅れ、慌ててジャンプするが、光一と接触してしまう。だが光一はそれをものともせずにダンクを決め………

 

審判「プッシング! 白7番! バスケットカウントワンスロー!!」

 

光一「よっしゃああ!!」

 

そのままフリースローをもぎ取って見せたのだった………

 

 

 

優がオフェンスでもディフェンスでも圧倒される中、優封じによる力豪の隙を突いた光一と美矢が奮闘。試合開始から1分程。巫魔は王者を相手にリードを奪うのだった………

To Be Continued………




次回予告
光一と美矢のコンビが大活躍し、開始5分で点差を開いていく巫魔。後の展開を考えたゆうかは、早くも優をベンチへ下げる事を決め………!?
次回「今は試合を見ていて」


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第123話 今は試合を見ていて

前回までのあらすじ
優がオフェンスでもディフェンスでも活躍出来ない苦しい展開に。だが、光一と美矢のコンビが大活躍し、巫魔はリードを奪っていた………


試合開始から5分。

 

美矢「そこだ!」

 

美矢はスリーポイントシュートを放つ。弧を描く綺麗なシュートは見事に決まり、スコアは19vs10。王者相手に9点差とリードを奪っていた。

 

結衣「光一先輩と美矢さんが活躍しているお陰で9点リードですね!」

 

マネージャーの結衣は、嬉しそうに監督のゆうかに対しそう呟いた。

 

ゆうか「そうね………でも………」

 

ゆうかは優へ視線を向ける。優はダブルチームをされっぱなしな為、スタミナはまだまだ残っているが、得点もリバウンドも0。珍しく全く機能していなかった。

 

ゆうか「(優くんが珍しく動けないわね………今の段階だと9点差は大きいし………一旦下げるべきかしら………?)」

 

ゆうかは早いうちに優を引っ込める事を考えていた。すると………

 

審判「イリーガルユースオブハンズ! 黒10番!!」

 

積牙が1つ目のファールを犯してしまう。

 

伊吹「あーあ、今日もか」

 

ファールのコールに、伊吹がまたやったなと言いたげな表情を見せていると………

 

ゆうか「伊吹ちゃん、優くんと交代」

 

試合が止まった今のタイミングで伊吹との交代を決める。

 

伊吹「えっ? お、おう! (優の交代がいつもより早いな………)」

 

伊吹は困惑しつつも、軽く運動し………

 

審判「交代です!」

 

交代でコートに入る事に。

 

伊吹「優!」

 

伊吹の声を聞いた優は早い交代に驚くが、納得してベンチの方へ向かった。

 

湯津「ありゃ? もう交代か………」

 

優が出場した試合の中では最速の交代に湯津は首を傾げる。

 

戦記「まあ仕方ないな。優はインサイドに入って真価を発揮する選手だ。ここで無駄に消耗させるより、後半まで休ませた方が良い。俺が監督でもそうする」

 

戦記は優を下げたゆうかの意図を悟り、納得する。だが、修也は納得していなかった。ただ、彼が納得していないのは、優の交代などではなく、今のプレイスタイルだった。

 

修也「(お前が完全に抑えられるなんて有り得ねぇ………昔のお前ならあんなダブルチームでも攻略できただろ………! ………何がお前にひたすらダンクするプレイスタイルに拘らせてんだよ………!!)」

 

ミドレーユ時代の優のプレイスタイルを知っている修也からすれば、今のダンクに拘る戦術は全く理解が出来なかった。修也がそう考えているとは知らぬ優は何も言わぬままベンチへ座った。

 

ゆうか「こんな序盤で下げて申し訳ないけど………優くんには後半で頑張って欲しいの。だから今は試合を見ていて………!」

 

ゆうかは優に対しそう声をかける。優はゆうかの言葉に黙って頷き、試合を見る事に専念するのだった………

 

 

 

前半で上手くリード出来ている展開の為、優は早くも後半に備えて下げられる事に。果たして、巫魔は優抜きの中で前半戦を戦い抜けるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
リードのまま逃げようとする巫魔だが、優が抜けた事で滝川と月宮が本領発揮。何としてもリードを維持したい巫魔は、ここでスーパーサブの優真を投入する………!
次回「絶対に逃げ切るのよ」


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第124話 絶対に逃げ切るのよ

前回までのあらすじ
光一と美矢のコンビが活躍し、19vs10とリードを奪う巫魔。この有利から、ゆうかは早くも優を下げる采配を見せ………?


伊吹が入って試合再開。力豪のスローインで試合が再開するが、山田へボールが渡って間もなく、美矢がボールをスティールした。

 

美矢「よし! 皆あがれ!!」

 

美矢は速攻で追加点を狙う。だが、そんな巫魔の攻撃を見越していたのか、まだ後ろに残っていた滝川と月宮が美矢の前に立ちはだかる。

 

美矢「ぐっ………! (さっきはキャプテンがいたからこの2人はあまり動いてなかったけど………キャプテンがいなくなった今、この2人の動きも本気って訳か………!!)」

 

美矢は攻めあぐねる様子を見せる。

 

積牙「美矢さん!!」

 

積牙がパスを要求した為、美矢は積牙へパス。

 

月宮「行かすかよ!」

 

すぐさま月宮が積牙のマークに着いた。

 

積牙「(戻りが早い………! でも俺は、これを決めてみせる!! 俺の{ソニックジャンパー}で………!!) 」

 

積牙はまけじと月宮の左肩側へ潜り込み、ドライブからのジャンパーを狙う。しかし、積牙はドライブの最中に月宮と激突してしまう。

 

積牙「うわっ!?」

 

月宮「うおっ!?」

 

2人は衝突によって倒れた。直後に審判の笛が鳴り………

 

審判「プッシング! 黒10番!!」

 

積牙のファールをコール。これによりこの試合、2度目のファールを犯してしまった。

 

月宮「おいおい、大丈夫か?」

 

だが、月宮は激突してしまった積牙に対し心配する様子を見せる。

 

積牙「大丈夫です………」

 

幸い、積牙は特に怪我などはしなかった………しかし………

 

積牙「ダメだったか………」

 

{ソニックジャンパー}の失敗に落ち込む様子を見せた。そして、優が抜けた事により、滝川と月宮のディフェンスが本領発揮しようとしているのを目にしたゆうかは………

 

ゆうか「………優真ちゃん、出るわよ!」

 

優真「は………はい!!」

 

ここで優真を投入する事に決める。

 

審判「交代です!!」

 

優真「伊吹先輩………!」

 

優真は伊吹と交代する形でコートへ入った。爆速戦ぶりにコートに立った優真の登場は、会場を湧かせた。

 

湯津「おっ、爆速ぶりに出たな、あの子………!」

 

戦記「彼女には強豪校相手にも強く出られるパスとシュートがあったな。優抜きで前半を逃げ切るなら、ここでスーパーサブを投入するのは選択肢として有りだな………」

 

芽衣「そうですね。美矢さんは攻めのPGとしては強いですけど、あの子は私と同じように味方を活かしたプレイや、遠くから点を奪うプレイが得意みたいですからね」

 

優真の登場により戦記達は、巫魔が前半を優抜きで逃げ切るつもりなのを悟った。

 

ゆうか「皆! 今のリードはかなり大きいわ! 前半戦は最低でも1点差で絶対に逃げ切るのよ!!」

 

ゆうかのビジョンは、このまま前半をリードで逃げ切る事だった。それを聞いた春香達は、ゆうかの作戦に頷く様子を見せるのだった………

 

 

 

優が抜けた弊害が生まれ始める中、巫魔はスーパーサブの優真を投入。果たして、前半をリードのまま逃げ切る事は出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
ディフェンスでは苦戦を強いられる巫魔だが、オフェンスでは優真が攻撃の起点となって、必死に力豪を追いつかせまいと奮闘する………!
次回「守れないなら攻め続けろ」


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第125話 守れないなら攻め続けろ

前回までのあらすじ
優を下げた事で、滝川達が本領発揮し始める中、リードを維持する為に優真を投入。ゆうかは、前半をリードで逃げ切る事を指示し………!?


力豪のスローインで試合再開。PGの山田はボールを受け取るが、やはり美矢が立ちはだかり、力豪を攻撃させまいと奮闘。

 

月宮「山田!」

 

だがこの状況で月宮が動き、パスコースを作った。それを見た山田は月宮へパスを出す。

 

積牙「止める!」

 

積牙が月宮のマークに着くが、月宮は素早いドリブルで積牙をあっさりかわした。

 

積牙「なっ!?」

 

積牙を抜いた月宮は光一と対峙。月宮がジャンプをした所で………

 

光一「撃たすか! {ウォールブロック}だ!!」

 

光一は体を大きく広げ、月宮のシュートコースを防ぐ。だが、月宮は口元をニヤリとさせる。

 

月宮「そう来ると思ったぜ!」

 

月宮はそう言うと、近くに走り込んでいた滝川へパスをだす。

 

光一「な、なんだと!?」

 

この連携プレイを目の当たりし、光一は月宮が囮だった事に気づいた。しかし気づいた時にはもう遅く、滝川はそのままツーハンドダンクを決めた。

 

光一「くそっ………! 流石オフェンストップクラスのチーム………守るのは苦しいな………」

 

光一は苦言を呈しながらユニフォームで顔の汗を吹くのだった………

 

 

 

ディフェンスでは苦戦させられる巫魔。だが、オフェンス面では巫魔も本領を発揮していた。

 

美矢「優真!」

 

美矢から優真へパスし、これが通ると優真は………

 

優真「ここは絶対決めましょう………!!」

 

勝ち逃げの為に確実に点を取っていく事をチームに言い聞かせる。

 

美矢「(それは確かにな………力豪のオフェンス力はキャプテン抜きの今じゃ止められない………守れないなら攻め続けろって事か………勝ちたいならって話だとすれば………!)」

 

美矢はそう考えると………

 

美矢「よし! なら私がインサイドに入って決める! パスくれ、優真!」

 

得意のペネトレイトで攻めると言い出す。優真はこれに対し、軽く頷き、ボールを持つ手を軽く動かす。

 

笹掛「月宮! 12番!」

 

力豪はもう1人の司令塔笹掛が、ディフェンスに必死な山田の代わりに指示を飛ばす。だが、優真は笹掛が指示を飛ばしてから1、2秒も経たぬうちに、春香の方へボールを渡した。

 

笹掛「っ………!? (しまった! 指示に気を取られて………!!)」

 

笹掛が気づいた時にはもう遅く、春香はパスを受けた直後にフェイダウェイスリーポイントシュートを放つ。気づいたと同時に後ろへ飛ばれては笹掛でも反応出来ず、春香のシュートを許すばかりかシュートが決まり、巫魔は3点差を離した。

 

優「よし! いいぞ、優真! 春香!」

 

優も応援の声をかけ、3点の追加を喜ぶ。優真も微かに喜んでいる様子を見せていると、美矢が優真に近づき………

 

美矢「優真も隙を読むのが上手くなったな」

 

笹掛の隙を突いた絶好のパスを出した事を褒める。それを聞いた優真は………

 

優真「美矢さんが隙を作ってくれたお陰です!」

 

嬉しそうにしつつも、笹掛の隙を作ってくれた美矢のお陰だと謙遜する様子を見せるのだった………

 

 

 

守りで苦戦する巫魔だが、オフェンスにおいては負けずに奮闘し、点差を縮めまいと奮闘する。果たして、このまま前半を逃げ切れるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優真を起点にした作戦は、巫魔のオフェンススピードを上げ、第2Qに入っても良いリズムを作っていた。しかし、この場面でもファールをやらかす積牙は、第1Q時点で3つファールを犯していたにも関わらずにファールを犯してしまい………!?
次回「悪くは無いんだけど」


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第126話 悪くは無いんだけど

前回までのあらすじ
ディフェンス面では苦戦を強いられる巫魔。しかし、点差を縮められないようオフェンスでは優真を起点に奮闘する様子を見せ………!?


第1Qでは積牙がまたファールを犯し、3ファールとなりながらも、第1Qは27vs18と9点差のリード。

 

伊吹「よーし! いいぞいいぞ!!」

 

有利な展開を前に、チームの雰囲気が上がる。しかし、優はベンチに腰かけたまま考え事をしていた。

 

優「(皆のプレイ、悪くは無いんだけど………何だこの不安は………? まるで、まだ滝川さん達には奥の手があるとでも言いたげな様子を見せているように感じる………)」

 

優には、滝川達力豪が追い詰められるようにはまだ見えず、寧ろ苦しいのはここからでは無いかと考えていた。そしてその嫌な予感は現実となる………

 

 

 

第2Qに入ってから3分程。ボールは力豪の山田から………

 

山田「キャプテン!」

 

滝川に渡ってしまった。

 

滝川「このままもらうぜ!!」

 

滝川はそのままダンクを狙う。

 

積牙「絶対に止める!!」

 

積牙が必死に止めようとジャンプ。しかし、積牙はこの場面でも滝川にぶつかってしまい、審判の笛が鳴る。だが滝川は特に体勢を崩さないままダンクを決めてしまい………!?

 

審判「プッシング! 黒10番! バスケットカウントワンスロー!!」

 

審判のコールで滝川はフリースローを獲得。だが、問題はそこでは無い………

 

結衣「積牙くんがファール4つ………!!」

 

積牙がいつものように4ファールになった点が大きな問題だった。となれば、積牙を使い続ける事は難しく………

 

審判「交代です!」

 

再び伊吹をコートへ戻す事になった。

 

積牙「すみません、お願いします………!」

 

積牙は申し訳なさそうに頭を下げながら後を託す様子を見せる。

 

伊吹「後は任せな!」

 

伊吹はそう言うとコートへ入る。しかし、積牙は自分の弱点の大きさに悔しがる様子を見せる。

 

優「積牙………」

 

流石の優も、すぐには積牙を褒める言葉が見つからなかった………

 

 

 

その後、積牙が抜けた事でインサイドが完全に弱体化した巫魔。その隙を突くように滝川、月宮の2人がガンガン点を入れ、開いていた点差が縮まり始める。

 

優「まずい………!!」

 

優は握りこぶしを作りながら焦るように試合を見ていた。しかし………

 

あかり「でも相手はスリーポイントシュートを撃ってこないわね………」

 

鈴香「………あの6番以外撃てないんだと思う………たぶん」

 

同時に力豪は笹掛さえ上手く潰せれば、スリーが狙えないのではという話になった。だが、結局試合が苦しい事に変わりは無かった。

 

優「(………試合に出たい………ダンク以外のシュート手段は僕にはいくらでも………!!)」

 

優は心の中で、ミドレーユ時代に普通に使っていたシュート達の事を思い返す。しかし、ハッと我に返ると、首をブンブンと横に振る。

 

優「(ダメだ………! またそれをやってチームから引かれたりしたら………孤立したら………!!)」

 

しかし、優にはミドレーユ時代のトラウマが頭を離れないのか、未だ出来る自信がなかった。美矢はコートを見回している際に、偶然頭を抱える優を目にする。

 

美矢「キャプテン………」

 

美矢は優に対し、心配する様子を見せたのだった………

 

 

 

第1Qを有利に逃げ切る巫魔。しかし第2Qに入り、積牙の4ファールをきっかけに力豪の反撃が始まった。その中で葛藤する優。そんな彼を見た美矢は何を思っているのか………?

To Be Continued………




次回予告
積牙が抜けた代償で高さが弱体化し、第2Qは滝川と月宮のコンビが全く止められないまま。辛うじて1点差で第2Qを逃げ切る巫魔だったが、このままでは負けると考えた美矢はインターバルにて苦悩する優を連れ出し………?
次回「隠すのはもうやめろよ」


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第127話 隠すのはもうやめろよ

前回までのあらすじ
第1Qを9点差で終わらせるが、第2Qにて積牙のファールが4つとなりやむなく交代。だがこれにより高さを失った巫魔は苦戦。チームのピンチを救いたい優も、過去のトラウマが足を引っ張り、打開策になり得る昔の戦術を出来る自信がなかったのだった………


第2Qは滝川と月宮の2人から大量に点を奪われてしまった。しかし、決めるべき点ではしっかりと点を決めるなど巫魔も死に物狂いで食らいつき、第2Qは41vs40の1点リードで逃げ切ったのだった………

 

 

 

巫魔ベンチ………

第2Qを1点差で逃げ切る巫魔だが、その代償は大きかった。光一と伊吹はまだスタミナに余裕があるものの、春香、美矢、優真の3人は大きく削られていた。特に優真は疲れ切った様子であり、誰の目から見てもプレイ続行は不可能に近かった。

 

ゆうか「(なんとか1点差で逃げきれたけど、春香ちゃん達3人がかなりスタミナを失ったわね………特に優真ちゃんはもう厳しそうだし………)」

 

ゆうかは打開策を考える。そんな中、スポーツドリンクを飲んでいた美矢は………

 

美矢「はあっ………足らねぇ。キャプテン、一緒に買いに行かないか?」

 

優を誘って近くの自販機に行こうとしていた。

 

優「ああ、いいよ」

 

美矢がかなり疲れているのを理解している優は着いていく事に。

 

ゆうか「第3Qが始まるまでには戻るのよ!」

 

ゆうかは2人に対しそう声をかける。そして、優達の背を見る春香は心配そうな表情を浮かべていた………

 

 

 

会場の廊下、自販機前にて美矢はスポーツドリンクを2つ購入し………

 

美矢「ほら、キャプテン」

 

優に手渡した。

 

優「ありがとう」

 

優はスポーツドリンクを受け取った。美矢はスポーツドリンクを一口飲むと、その直後に………

 

美矢「なあ、キャプテン。もう隠すのはやめろよ」

 

突如として、優に対しそう言い放った。

 

優「え………? な、なんの事かな?」

 

優は首を傾げる様子を見せた。

 

美矢「アンタの秘密を早いうちから知っていた私だから確信している事だが………アンタ、別にレイアップもジャンプシュートも………なんならスリーだって出来るはずだろ?」

 

美矢は優に対し、ダンク以外のシュートが出来るのでは無いかと問いかけてきた。

 

優「………無理なんだ。前の爆速戦は負けたくなかったから思わずやって出来ただけだし、修也達や春香みたいに僕のプレイを認めてくれる人もいるのは分かっている………それでも、自分のプレイで周りの人がいなくなったら嫌だなって………前に友力でそうなったから………」

 

優は友力中学の時のトラウマを語る。しかし美矢は優に詰め寄り………

 

美矢「………それは修坊達以外のバカに見る目が無かっただけの話だ。でもな、私達は巫魔高校なんだ。アンタに憧れる事はあっても、それを妬むなんて事は無い! 寧ろアンタの本来の姿があって、巫魔は全国でも戦えるチームになるはずだ!」

 

優が出来る本来のプレイこそ、巫魔に必要だと言い切った。それを聞いた優は美矢に対し驚く様子を見せる。そして、右手を軽く震わせると………

 

優「………信じていいんだね………?」

 

震えた声でそう問いかける。

 

美矢「ああ! ………もし間違いなら、私は責任取ってバスケ部を辞める。そして別の方向でチームへ償う方法を見つける」

 

美矢は間違っていた際に責任を取る事も決めた。それを聞いた優は少し考え………

 

優「………分かった。やるよ………チームを信じて………ね」

 

本来のプレイをすると決めた。そして………

 

優「………隠れてんだろ、春香。もう出てきてくれよ」

 

優は気配を察知していたのかそう呟く。すると、春香が曲がり角の方から出てきた。

 

春香「すみません………心配になってしまいまして………」

 

どうやら春香は、優達2人が心配になって追いかけてきたようだ。

 

優「それはごめん………まあでも、僕は決めたさ」

 

優はスポーツドリンクのプルタブを空けると、一気にスポーツドリンクを飲み干した。

 

優「よし、行こうか!」

 

優はそう言うと、コートの方へ歩き出す。彼を前向きにした。その事に春香は驚きつつも、美矢へ近づき………

 

春香「ありがとう、美矢ちゃん」

 

と、感謝を告げるのだった………

 

 

 

第2Qで1点差に詰め寄られ、追い詰められる巫魔だったが、美矢の言葉で優は覚悟を決めた。追い詰められた局面の中、優はこの状況を乗り越えられるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優はチームに対し、自分本来の戦い方をすると告げる。そして始まる第3Q。またしてもダブルチームを取る力豪を前に、優の反撃が始まる………!
次回「僕はもう迷わない」


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第128話 僕はもう迷わない

前回までのあらすじ
41vs40と1点差にまで追い詰められる巫魔。しかし、美矢の説得を受けた優は、遂に覚悟を決め………?


ベンチへ戻ってきた優達。試合開始までは後3分に迫っていた。

 

ゆうか「やっと戻って来たわね。じゃあ、後半の方針を………」

 

優「待ってください。その前に僕から1ついいですか?」

 

ゆうかが作戦を伝えようとすると、優が手を挙げて話をしたがっていた。

 

ゆうか「え? ………まあ構わないけど」

 

ゆうかは少し驚きながらも優の話を優先した。

 

優「………皆に謝りたい事がある。今までダンクに拘っていたけど………僕は別にこれしか出来ないからって訳じゃない………これをする事で、僕自身を中学のトラウマから誤魔化し続ける為だったんだ………でも、それはもうやめる………そして宣言するよ。爆速戦に見せたスリーは奇跡なんかじゃない。僕の実力で決めたものだって」

 

優はそう言って、自分のシュート力が本来どのようなものかという事を証明するつもりだった。それを聞いた積牙達は驚いてこそいたが………

 

光一「分かった。お前を信じる。なんだかんだ、いつもチームを助けてもらってるしな」

 

光一の一言をきっかけに、他のメンバーも頷く様子を見せる。

 

ゆうか「そう………やる気なのね。分かった、なら私は何も言わない。後半は優くん本来のバスケをやって」

 

ゆうかは優が本来のプレイを隠す事をやめる決意を聞き、黙って見送る事にしたのだった………

 

 

 

そして試合後半。美矢と伊吹の2人をベンチに下げ、レイと優を投入する事に。

 

アリサ「あっ、戻ってきたね」

 

優が再び試合に戻ってきた事で、会場の雰囲気も上がり始める。

 

戦記「だが、まだ問題は解決していない。問題は滝川と月宮の2人をどうするかだ」

 

しかし、戦記の呟いた不安点はまだ解決していなかった。修也は黙って試合を見るばかりだった………

 

 

 

そして試合再開。巫魔ボールで第3Qが始まるが、やはり優には滝川と月宮のダブルチームで、徹底的にインサイドに入れようとしない。

 

優「(やっぱりこう来るよね………でも………!)………行くぞ、美矢!!」

 

優はそう言うと、なんとスリーポイントラインの外へ走った。

 

月宮「何っ!?」

 

優の奇行とも取れるプレイに目にし、滝川達は驚きのあまり動けなかった。しかし美矢は、そんな彼に迷わずパスを送った。

 

湯津「おいマジかよ! 優くんがあんな所でボール持ったって何も出来ねぇはずだろ!?」

 

力豪だけでなく、観客席も優に対し不安を見せる。しかし、優の様子から、戦記と修也の2人は不安な様子を見せない。

 

優「僕はもう迷わない………! 巫魔の皆と………全国に行くんだ!!」

 

優はスリーポイントラインの外に立つと同時にそう言い放つと、素早いクイックリリースでスリーポイントシュートを放つ。

 

滝川「入るわけが無い! リバウンド!!」

 

滝川達はリバウンドに走る。しかし………

 

戦記「………綺麗なシュートだ。惚れ惚れする………」

 

戦記は優のシュートが綺麗な狐を描いているのに注目していた。そして、優のシュートは綺麗にゴールリングへ沈んだ。

 

優「(決まった………!!)」

 

優がスリーを決めた事は会場に衝撃が走った。しかし、優は静かに右手を上げ、人差し指を天高く掲げるのだった………

 

 

 

覚悟を決めた優が試合へ戻ってきた。そして彼が放った綺麗なスリーポイントシュート。恐怖で力を隠し続けた巫魔のキャプテンは、最強のシューターとして復活を遂げたのだった………

To Be Continued………




次回予告
優がスリーを決めた事に一喜一憂する会場の観客達。しかし、優の快進撃は止まらない………!
次回「復活したんだ」


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第129話 復活したんだ

前回までのあらすじ
チームに対し、本来のプレイをする事を宣言した優。そして始まる第3Q。優は再びダブルチームに阻まれるが、隠し続けた本来のシュート力を見せつけ、見事スリーポイントシュートを決めたのだった………


観客「は………入ったー!?」

 

長きに渡る沈黙は、とある観客の声によって驚きの声へと変わった。

 

光一「ま、マジかよおい………!!」

 

積牙「キャプテンがスリーを………!?」

 

優本来のシュート力は、巫魔のメンバーに対し衝撃を与えた。

 

月宮「あ、有り得ねぇ………!」

 

滝川「今までの戦術が嘘のようなシュート力だ………!」

 

優はダンクしかできないと考えていた力豪も当然困惑。それだけでなく、観客も一喜一憂する様子を見せた。

 

赤薔薇達「ナイスシュート! 優くーん!!」

 

赤薔薇達応援団は素直に賞賛する様子を見せる。そして、湯津は驚きのあまり口が塞がらなかった。

 

修也「ミドレーユ………!!」

 

その一方で、修也達は驚きつつも、かつての優が復活した事を嬉しそうに見ていた。

 

戦記「ミドレーユ………優の事か?」

 

戦記は修也が思わず発したミドレーユというワードに反応する。

 

湯津「し、知ってるのか………?」

 

少しして我に返った湯津は、戦記に対しそう問いかける。

 

戦記「名前と噂はな。だが、まさか優がそうだったとは………」

 

戦記はミドレーユを個人的に知っていたようだが、それが優だと言うのは今知ったようだった。しかし、彼はどこか楽しそうな様子を見せ………

 

戦記「………ウチとの試合であのプレースタイルを出されていたら勝てなかったかもな」

 

と、もしもの話を口にしたのだった………

 

 

 

会場に衝撃が走った優のスリーポイントシュートだが、力豪は諦めずに食らいついていく。優は滝川をマークするが、パスを出させまいと必死にマークする。

 

笹掛「山田くん! 月宮にパスよ!」

 

笹掛のアドバイスから、ボールは山田から月宮に渡る。月宮はマッチアップ相手のレイをかわし、光一の前に立つと、フックシュートを放つ。光一は懸命に止めようとするが、ボールは光一の手が届かない高さに伸びた。

 

光一「くそっ………!!」

 

月宮「(もらった!!)」

 

月宮のフックシュートが決まる………そう思われた瞬間、光一の後ろから1人の右手が伸びる。

 

滝川「なっ!? 優くん………!?」

 

なんと優は、滝川のマークをやめ、月宮のフックシュートを止めに来た。優の手は月宮の放ったシュートを捉え、地面に向かって叩き落とした。

 

月宮「なんだと!?」

 

シュートを止められた月宮は驚きを隠せなかった。幸い、優がブロック時に弾いたボールはコートのラインを超えてバウンドした為………

 

審判「アウト・オブ・バウンズ! 白ボール!!」

 

力豪ボールでの再開に。しかし、前半とは打って変わって、優は試合の流れに乗り出していた。それを見た修也は………

 

修也「(ミドレーユ、遂に復活したんだ………本来持っていた広く正確なシュート力と、相手のシュートを止める迷い無き心を持って………!!)」

 

優の完全復活を心の中で喜ぶのだった………

 

 

 

本来のシュート力が明らかとなるばかりか、それに合わせて試合の流れを掴む優。このままリードを維持して逃げ切れるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
まだ続く力豪の攻撃。滝川は{炎のダンク(バーニングダンク)}を狙い飛び上がる。しかし、優は{炎のダンク}へ真正面から挑戦し………!?
次回「破ってみせる」


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第130話 破ってみせる

前回までのあらすじ
復活した優のシュート力に、会場内で衝撃が走った。更に優は、光一を超える高さから月宮のフックシュートも止めてみせるのだった………!!


だが、力豪のスローインで試合は再開。笹掛が山田にボールを回すが、美矢が山田の前につく。

 

山田「(本当は月宮さんに回したいが………またあの4番に止められるのはゴメンだ………! ならば………!!)」

 

山田は美矢をかわして滝川へパスした。

 

滝川「さっきのでよく分かったよ、今の君を倒すのに相応しいのは………このシュートだって事を!!」

 

滝川はそう言うと、軽い助走を挟んで勢いよくゴールへと飛んだ。

 

湯津「{炎のダンク(バーニングダンク)}………!!」

 

滝川のダンクに散々苦戦させられた湯津は、自分よりも小柄な優に対し心配する様子を見せる。だが………

 

優「(来た………!)………そのバーニングダンク、破ってみせる!!」

 

優はそう言ってジャンプ。1vs1の構図に持ち込む。しかし、この時の優は誰もが想像しない動きを見せた。

 

滝川「(………!! 右腕の位置が低い………!?)」

 

なんと、優は右腕を自身の頭くらいの高さにしか挙げていなかった。そして間もなく、滝川の持つボールを横から勢いよく叩いた。

 

滝川「なあっ!?」

 

これにより、滝川の持っていたボールはあっさりコートの外へ弾き飛び、バウンドした。

 

審判「アウト・オブ・バウンズ! 白ボール!」

 

またしても力豪側のスローインだが、優が{炎のダンク}を止めた事で、会場が沸きあがる。

 

赤薔薇「きゃー!! ナイスブロックよ、優くーん!!」

 

優を応援する赤薔薇達のテンションも最高潮だった。

 

修也「ミドレーユ………!!」

 

優のスーパーセーブは修也達や湯津を驚かせていた。 そして戦記は………

 

戦記「………成程、優はあのダンクの原理を見抜いたのか………!」

 

{炎のダンク}の原理に気づくと同時に、一足早くそれに気づいて見せた優に驚いていた。

 

湯津「原理? なんだそりゃ?」

 

湯津が原理について問いかける。

 

戦記「滝川のダンクはゴールに向けて力が加わっていたんだ。そして滝川のパワーはお前よりも強い。だから真正面からのブロックはまるで意味がなかったんだ。しかし、ゴールのある方へ力をかけすぎているせいで、真横は無防備だった。それに気づいた優は、真横からボールを叩き落とすという方法を選んだんだ」

 

どうやら、{炎のダンク}はゴールに向かって力がかかっているようだった。しかし、他の方向からの力はかなり脆い。だからシュートを防げたのだという。

 

戦記「………次は俺も真似するか………!」

 

優の咄嗟に生み出した攻略法に、戦記も思わず真似をしたがる様子を見せたのだった………

 

 

 

依然危機の続く展開の中、優は滝川の{炎のダンク}も止めてしまった。力豪の2大プレイヤーを止めてしまった巫魔は、このまま勢いを伸ばせるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優のスーパーセーブ2連発で、巫魔の勢いは最高潮に。更に、優のオールラウンダーとしての腕が本領発揮し始め………!?
次回「最早敵無しだな」


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第131話 最早敵無しだな

前回までのあらすじ
力豪は、滝川の{炎のダンク(バーニングダンク)}で得点を狙ってくる。しかし、優は{炎のダンク}をも止めてみせ………!?


スローインボールは再び力豪。笹掛から山田にボールが渡ってスタートするが、優が2連発で滝川と月宮を止めてしまった事により、山田はどうすれば得点出来るかが見えなくなっていた。

 

美矢「もらった!」

 

山田「ああっ!?」

 

迷っている際に生じた隙を突いた美矢のスティール。零れ玉を美矢が素早く回収し………

 

美矢「速攻!!」

 

速攻を仕掛ける事に。そこから、優達もゴールへ向けて走り出す。

 

滝川「マズイ! 戻れ!!」

 

滝川達は急いでディフェンスに戻る事に。

 

優「美矢! こっちだ!」

 

そんな中、優がパスを要求。優はスリーポイントラインの外にいるが、今の彼はどこに立とうとシュートを撃つ。それをわかっている滝川は優の前に立ちはだかり………

 

滝川「撃たせるか!」

 

優のスリーを止めようとする。だが、この時優が思い描いていた得点方法は自らスリーを狙うものでは無かった。優は、まだ笹掛が春香のマークに戻れていないのを目にし………

 

優「はっ!」

 

春香の方へ鋭いパスを送った。

 

笹掛「あっ………!!」

 

笹掛は大慌てで春香の持つボールへ飛びつこうとする。だが、一足早く春香がスリーポイントシュートを撃つ。飛び出した笹掛は思いっきり春香へ激突してしまった。

 

春香「うっ!?」

 

笹掛「がっ!? (しまった………!)」

 

春香と笹掛が共に倒れた直後、審判の笛が鳴り、シュートは綺麗にゴールの中へ沈んだ。

 

審判「プッシング! 白6番! バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

結果、バスケットカウントワンスローを獲得。春香は偶然にも4点プレイを狙える展開に。

 

優「よーし! ナイスシュート、春香!」

 

優は春香の元へ駆け寄り、倒れた春香の手を引いて起こす。

 

春香「優さんのパスのお陰です!」

 

2人はハイタッチをかわし、互いのプレイを賞賛する。そして、観客席でこれを見ていた戦記達の中で、戦記と芽衣は優のプレイに着目していた。

 

芽衣「今のパスはいいですね。春香さんがギリギリフリーであると気づいて良いパスを送り、4点プレイを形成する。PGとしては十分に上手い動きです」

 

戦記「そうだな」

 

そんな2人の会話を聞いていた湯津は首を傾げ………

 

湯津「でも優くんってPFじゃなかったか?」

 

優がPGでは無い事を指摘する。

 

戦記「そうだ。しかし、PG以外で広い視野を持つ選手がいるのは良い事だ。それに元々、奴はダンクに行けない時はパスを選択していたし、天野美矢とも息が合っていた。もしや奴はPGも出来るかもしれん………まあ、それは一度置いておくとして………今の優は最早敵無しだな」

 

だが、戦記はPFでありながら広い視野を持つ優を高く評価。そればかりかPGも出来るのではと注目を見せていたが、この場面ではっきりしている事はあった。それは、今の優は最早敵無しとも言える強さを得てしまった事だった………

 

 

 

優の勢いは止まらず、チームの士気を上げるばかりか、着実に力豪を突き放していく。巫魔の攻撃はまだまだ止まらないのか………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔の攻撃は止まる事を知らず、遂に点差は15点差に。追い詰められる力豪だが、滝川は諦める様子を見せず………!?
次回「まだ第3Qだぞ」


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第132話 まだ第3Qだぞ

前回までのあらすじ
滝川と月宮のシュートを止めた優達巫魔は反撃。優の鋭いパスからの春香がスリーポイントシュートを決めて、更に点差を広げたのだった………


春香がフリースローを沈めた後、巫魔は次々と点を伸ばして行く。

 

滝川「ぐっ………! まだまだ!」

 

そんな中でも滝川は諦めずに勝負を挑むが………

 

審判「ホールディング! 白4番!」

 

懸命なディフェンスは虚しくも滝川のファールが積み重なるだけだった………

 

 

 

そして第3Q開始から8分。59vs44と巫魔と力豪は点差が15点差にまで開いた。

 

由乃「(まずい………巫魔との点差は15点。そればかりか………)」

 

力豪監督、由乃の不安は強まる。更にその直後………

 

審判「プッシング! 白4番!」

 

滝川が3つ目のファールを犯してしまう。

 

由乃「(………滝川くんのファールが増えるばかりね………)」

 

前日の滝川のファールトラブルが由乃の頭を更に悩ませた。一方、優は滝川のファールが3つになった事に目を向ける。

 

優「3つか………」

 

優がそう呟くと、美矢が近づいてきて………

 

美矢「どうしたんだ、キャプテン?」

 

優に対し声をかけた。

 

優「いやあさ、滝川さんがこれでファール3つじゃないか? これをモノに出来たらかなり大きいと思うんだよね」

 

優はこの場面で、滝川のファールトラブルが利用出来るのではと考えていた。

 

美矢「キャプテンにしては強かだな………まあいいか。確かに滝川の力を抑えられればこちらの有利になるのは確かだな。よし、じゃあ私がサポートする。今のキャプテンが滝川に負けるとは思えねぇしな」

 

美矢は優を信用し、優と滝川をとことんマッチアップさせる事に決めた………

 

 

 

そうとは知らず、滝川は………

 

滝川「皆! 15点離されたけど、まだ第3Qだぞ! 逆転を最後まで諦めちゃダメだ!!」

 

チームの鼓舞をしていた。月宮達はそれに頷く様子を見せる。しかし、笹掛は滝川に近づくと………

 

笹掛「逆転を狙うのは勿論だけど………アンタも気をつけなさいよ。もうファール3つなんだから」

 

滝川にファールを気をつけるよう警告をする。

 

滝川「ああ、気をつけるよ」

 

滝川は笹掛の警告を聞き入れる。しかし、笹掛の不安は晴れない。

 

笹掛「(………滝川を疑うわけじゃないけど………さっきから4番、白宮優くんがそれ以上の力を見せている………それが気がかりで恐ろしいのよね………)」

 

笹掛は優に対し、強烈な危機感を感じていた。そしてその危機感は事実となって現れる事を、この時の力豪選手達は誰1人知らなかったのだった………

 

 

 

最大15点差のリード。そして滝川が3ファールという、巫魔にとってとてつもないアドバンテージがあるこの状況。更に優は滝川のファールを利用しようとする。様子も見られる中、第3Qはどのような終わりを迎えるのか………?

To Be Continued………




次回予告
滝川とのマッチアップ。優は更なる得点を増やす為にダンクを狙う。これを打ち落とそうと滝川は勝負へ挑むが………!?
次回「勝たせてもらう」


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第133話 勝たせてもらう

前回までのあらすじ
力豪相手に15点差のリードをつける巫魔。更に滝川が3ファールになった事で、優達は更なる策に動こうとしていた………


巫魔のスローインで試合再開。ボールは美矢へ渡り………

 

美矢「速攻! まだまだ点を取っていこう!!」

 

美矢は速攻をかける。それを受けて優達も走る。

 

滝川「ここは何としても死守するぞ!」

 

これ以上点差を離されないよう、力豪も必死に応戦する。

 

美矢「レイ!」

 

美矢は自身より少し先を走るレイへ声をかける。

 

月宮「(そっちか………!)」

 

月宮はレイの方へ走り出す。しかし美矢は………

 

美矢「なーんてな!」

 

そう言って優へパスを出した。これにより、優と滝川の1vs1に。

 

優「行くぜ、滝川さん!!」

 

優はそう言うと、ボールを右手で掴んで勢いよく飛び上がった。

 

笹掛「(ダンク………!!)」

 

滝川を相手に強気の攻め。それを見た滝川は………

 

滝川「受けて立つ! うおおおおっ!!」

 

優のダンクに対してジャンプで対抗。しかし………

 

優「(不本意だけど………この方法で勝たせてもらう………!)」

 

優はここで滝川を締め出すつもりだった。実はこの時の優は、滝川の軌道を予測しながらジャンプをしていた。そして、優の予想は当たり………

 

滝川「………!? あっ!?」

 

優と滝川は接触。審判の笛が鳴る。優は体制を崩されながらもボールをゴールに向けて放り込んだ。優が放ったボールはゴールリングの中へと吸い込まれ………

 

審判「プッシング! 白4番! バスケットカウントワンスロー!!」

 

追加の2点にフリースロー。そして………

 

月宮「よ………4つ………!!」

 

滝川の4ファールが加わった。力豪にとっては最悪の事態だった。

 

美矢「よーし! ナイスだぜキャプテン!」

 

一方、巫魔にとってこれはとてつもない追い風。勝ち逃げをするにはこの上ない最高の状態だった。その直後………

 

審判「交代です!」

 

力豪は滝川を止む無く下げる事に。力豪は9番の安元というPFの選手を出すが………

 

戦記「バックアッププレイヤーを出すしかないのは明らかだが………PFは優。今の巫魔相手ではレベルが落ちてしまう事は明らかだ。ただでさえ17点差なのにこれは厳しいな………」

 

観客席の戦記がすぐに分かるくらいには力豪も絶望的盤面だった。しかし力豪監督の由乃は………

 

由乃「皆! 第3Qは残り1分! 勝つ為にはこれ以上の失点が許されないわ! 絶対に守って………そのうえで点を入れて!!」

 

力豪を勝たせる為にまだ諦める様子は見せない。

 

優「相手監督はまだ折れていれないか………」

 

と、由乃の諦めない様子を目にするのだった………

 

 

 

滝川を4ファールで下げる事に成功し、更に17点差プラスフリースロー1本の圧倒的な巫魔有利。しかし、まだこの時はコートの誰もが知らなかった。ここから波乱の展開が続く事を………

To Be Continued………




次回予告
優がフリースローを沈め18点差。力豪にとってこれ以上の失点は最早許されない。滝川が抜けた盤面の中、月宮と笹掛の3年生コンビが敗北に抗うプレイを続け………!?
次回「負けられねぇんだよ」


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第134話 負けられねぇんだよ

前回までのあらすじ
滝川を相手に優はダンクを狙う。滝川もこれに応戦するが、優が真に狙っていた滝川の4ファールにより、巫魔が大きく有利な展開に………


優野フリースローから試合再開。以前までの優ならここで外していたが………

 

優「………ふっ!」

 

優は綺麗なシュートでフリースローを沈め、18点差に。

 

月宮「18点………こうなったら………笹掛!」

 

月宮はボールを拾い、試合再開の笛と主に笹掛へボールを渡した。

 

優「(笹掛さんのスリー狙いか………!?)春香!!」

 

春香「はい!」

 

笹掛が力豪唯一のスリーポイントシューターである事から、優は春香に対し、強い緊張感を持たせる。だが、笹掛にパスを出した月宮は、その後にゴールに向かって走り出した。

 

月宮「上がれ上がれ! 守るのも大事だが、攻めなきゃ勝てねぇぞ!!」

 

月宮は滝川程のリーダーシップこそ無いが、滝川の不在を埋めようと彼なりにキャプテンシーを見せる。それを見た優は………

 

優「………光一! 笹掛さん以外の誰かが撃ってくる可能性もある! そっちも警戒してくれ!」

 

笹掛以外のシュートもあると見て指示を飛ばす。

 

光一「おう!」

 

光一はゴール下で警戒する様子を見せる。そしてボールを持つ笹掛は春香とマッチアップするが、お互いに慎重なのか、笹掛はシュートを撃とうとしないし、春香もブロックに行かないで体を大きく広げたまま様子を見るばかり。

 

美矢「(今の状況でスリーが決まるとやばい………! 相手さんもそれを分かってっから時間かけてんだろうな………けど………!)」

 

だが、こんな膠着状態はいつまでも許されない。美矢が両者の駆け引きを軽く見ている間に力豪の攻撃に許された時間はたった5秒になった。これを見たベンチの滝川は………

 

滝川「あと5秒でバイオレーションになる! 笹掛! 勝負だ!!」

 

笹掛に対し勝負へ行くよう声をかける。しかし、春香の懸命なディフェンスを前に、笹掛はスリーへは行けない………4、3………最早バイオレーションがコールされると思ったその瞬間、月宮が光一の正面へと走り出した。

 

光一「なっ………!」

 

美矢「月宮!?」

 

巫魔の選手達は驚きを見せる。その隙を突いて、笹掛は月宮に鋭いパスを送る。

 

月宮「俺達は………負けられねぇんだよ!!」

 

月宮はボールを受け取ったと同時にレイアップシュートを狙う。

 

光一「くそおおっ!!」

 

光一は止めに行こうとするも、ボールには届かず月宮と接触。月宮は背中から倒れた。審判の笛と共にボールはゴールへと入り………

 

審判「プッシング! 黒17番! バスケットカウントワンスロー!!」

 

月宮と笹掛の土壇場で見せた連携。これが3点プレイに結びついた。

 

滝川「よし! 良いぞ! 月宮! 笹掛!」

 

これには滝川も賞賛の声を挙げた。そして、月宮達の連携を見た優は………

 

優「こりゃ、そう簡単には勝たせてもらえなさそうだ………」

 

と、まだ油断が出来る状態では無い事を予感する。そしてこの時、春香と美矢の息がかなり上がっており、光一もファールは2つ。巫魔は知らぬ所で消耗し切る寸前に追い込まれていたのだった………

 

 

 

月宮と笹掛は執念を見せて点を奪った。そして巫魔に見え始める危機の予感。第3Q残り37秒。この37秒の中で、巫魔を揺るがす大きな出来事がすぐそこにまで迫っていたのだった………

To Be Continued………




次回予告
巫魔は追加点を狙いに行くが、力豪による懸命なディフェンスが立ちはだかる。それでも春香がシュートを狙いに行くが、パワースリーポイントシュートを撃った春香は、スタミナ切れでそのまま立てなくなり………!?
次回「危機が始まったわ」


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第135話 危機が始まったわ

前回までのあらすじ
滝川が抜けて18点差。追い詰められる力豪だが、月宮と笹掛が執念で3点プレイを成立させて見せた。一方、巫魔にも危機が迫っており………!?


優「取られたら取り返すだけ! 皆、ここで点を取るぞ!」

 

春香達「おおー!!」

 

優達は点を取られたら取り返すと言わんばかりに反撃の姿勢を見せる。

 

月宮「皆! ここ守るぞ! 何としてもここを15点差で終わらせる!!」

 

力豪は守勢を見せる。月宮は優につき、彼にパスが回らないようディフェンスする。

 

美矢「(くそっ………キャプテンに回せねぇ………こうなったら………!)春香!」

 

美矢は春香にボールをパスする。

 

春香「(ここを決める!)」

 

春香はそう考えながら前に飛んだ。しかし………

 

春香「っ………!? (ダメ………! 足が思うように動かない………!!)」

 

スタミナ切れが来たのか、思うように飛べない。それでも何とか構えを見せる。

 

笹掛「決めさせない!!」

 

笹掛は大きく飛び上がり、春香の持つボールに触れる。

 

春香「うあああっ!!」

 

しかし、春香はそのままシュートした。笹掛はボールに触れこそしたものの、軽く指が当たっていただけなので、シュートは問題なく放たれるが、笹掛によって精度が狂っており、ボールはリングへ弾かれる。

 

春香「そんな………」

 

春香は外した事に絶望しつつコートに倒れた。

 

優「(まずい、リバウンド!)」

 

優はリバウンドに走ろうとするが、月宮がリバウンドそっちのけで優のマークを続ける。

 

月宮「おっと! お前にボール持たせる方が危ないんでな!」

 

月宮はそう言うと、優を動けないようにしつこくマークする。

 

光一「俺を忘れてもらっちゃ困るってもんだ!!」

 

リバウンド自体は光一が、鈴木と安元を相手に制して見せた。しかし、直後に笹掛がスティールを狙ってくる。笹掛がマークしていた春香は倒れたまま。

 

光一「(くそっ………! 春香ちゃんが倒れたからスティールに来たのか………!!)」

 

光一は美矢にボールを戻す。しかし、レイに安元がつき、ミスマッチが生まれてしまった為にレイにもパスが出せない。頭を悩ませているうちに山田がスティールに来たのを見た美矢は………

 

美矢「光一!」

 

やむなく光一に戻す。この時点で第3Q残り3秒。

 

光一「もらった!!」

 

光一はツーハンドダンクを狙う。しかし、笹掛が光一のダンクに対してジャンプしてブロックしようとする。笹掛のジャンプこそ届かないものの、光一のジャンプの勢いは、完全に笹掛をかわせないものになってしまっていた。

 

光一「(やべぇ………!!)」

 

結果、光一は笹掛を押し飛ばしてしまった。光一はダンクこそ決めたものの、審判の笛が鳴り………

 

光一「ファール! 黒17番!!」

 

光一は3つ目のファールを取られてしまった。同時に試合のブザーが鳴った為、第3Qは終了。

 

月宮「よーし! ナイスだ笹掛!!」

 

月宮達は笹掛のファインプレーを喜んでいた。一方、巫魔は………

 

優「は、春香………!!」

 

先程から倒れたままの春香に駆け寄る。春香は最早立てず、荒く呼吸をする事しか出来なかった。その様子を見た巫魔監督のゆうかは………

 

ゆうか「(春香ちゃんが倒れた………それに美矢ちゃんもスタミナ切れが見え始めてきたし、光一くんも3ファール………折角の15点差も………これじゃ殆ど意味が無い………!! ………危機が始まったわ………)」

 

優を除いた巫魔の主力がボロボロになり始め、15点リードの意味が薄くなってしまった事を感じていたのだった………

 

 

 

第3Qを15点リードで逃げ切った巫魔だが、優以外の主力は戦線離脱、もしくは崩壊寸前の危険状態。残る第4Q。この先に待つとてつもない展開は………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔は春香と美矢を下げ、力豪に通じる主力は優と光一のみという事態に。だが第4Q開始早々。月宮のシュートによって光一はまたファールを犯してしまい………!?
次回「主力はもう」


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第136話 主力はもう

前回までのあらすじ
力豪の執念の守りにより、15点差で第3Qを終える巫魔。しかし、優以外の主力はボロボロの危険状態に陥っており………!?


第4Q前のインターバル。巫魔ベンチでは………

 

ゆうか「………春香ちゃんの交代は止むなしとして………美矢ちゃんにも一度下がってもらうわ」

 

ゆうかが選手交代を決めた。

 

美矢「ま、待ってくれ! 今の状況で私が抜けたらチームのレベルが大きく下がってしまう………!!」

 

美矢も薄々主力が半壊している事に気づいていたのか、交代を嫌がる様子を魅せるが………

 

ゆうか「本当の意味で主力が尽きたらお手上げよ。それに、貴女のスタミナだって危うい。15点リードの今、休んでおくべきなのよ」

 

美矢が倒れる事態を避けたいのか、交代すると譲らない。それを聞いた美矢は………

 

美矢「………分かったよ」

 

諦めて交代を受けいれた。

 

ゆうか「のぞみちゃんとあかりちゃん。2人をコートに入れるわ。何とか耐え抜いて………!」

 

交代で入るのはのぞみとあかり。2人も下手では無いが、春香や美矢達と比較するとレベルは下回っている為、巫魔に迫る危機は大きいままだった………

 

 

 

そして始まる第4Q。巫魔側が2人交代を入れて来たのを見た由乃は………

 

由乃「月宮くん、笹掛ちゃん、ちょっと」

 

コートに出ようとしていた月宮と笹掛を手招きすると、2人の耳元で小さく呟いた。

 

由乃「17番の光一くんにもう1個ファールを積ませて。そうすれば、幾ら優くんがいてもインサイドの防御力はガクンと落ちるだろうから………」

 

由乃は巫魔のインサイドを戦力的に崩そうとしていた。2人はそれを巫魔に聞かれぬようにか、黙って頷くのだった………

 

 

 

改めて第4Q開幕。力豪ボールで試合は始まり、ボールは山田に渡る。

 

のぞみ「止める………!」

 

のぞみは山田の持つボールへ手を伸ばすが………

 

山田「笹掛さん!」

 

山田はのぞみとの対決もスルーし笹掛にパス。しかし、笹掛はまだスリーポイントラインからは幾らか遠く、あかりがマークしている為にスリーは狙えない。

 

笹掛「………いい判断よ、山田くん。今はスリーを狙う場面じゃないからね」

 

しかし、真の狙いがある笹掛は今の山田のプレイを褒めると………

 

笹掛「月宮!」

 

インサイドへ走り込む月宮にパスを送った。

 

優「マズイ!」

 

優は月宮のマークへ走ろうとする。すると、鈴木と安元の2人がダブルチームで優を近づかせない。代わりにレイが月宮のボールをスティールしようとするが、月宮はドリブルであっさりかわして見せた。

 

レイ「なっ………!?」

 

優「(レイが抜かれちまった………!!)………光一! 頼む!!」

 

優達は嫌でも光一を頼るしか無くなった。この状況を待っていた月宮は大きく飛び上がる。

 

光一「(フックシュートか………!? )撃たせねぇぞ!!」

 

光一は手を広げ、月宮のボールを叩き落とそうとする。だが、月宮は一足早くボールをゴールへ向けて放った。その直後に現れた光一の手は、月宮の手を思いっきり叩いてしまい、審判の笛が鳴る。月宮が放ったボールはゴールリングの上で2、3秒程回っていたが、リングの中へと吸い込まれ………

 

審判「イリーガルユースオブハンズ! 黒17番! バスケットカウントワンスロー!!」

 

月宮にフリースローが1本与えられ、更に………

 

光一「………!!」

 

4ファールの宣告が与えられた。

 

積牙「コウさんまで4ファール………!!」

 

これには巫魔ベンチ陣も動揺。そして監督のゆうかは頭を抱え………

 

ゆうか「もう、限界か………」

 

止むなしと言わんばかりに交代を決める。

 

審判「交代です!」

 

光一の代わりに入るのは伊吹。しかし、この場面ではどう考えてもチームレベルは主力によるフルメンバー時と比べてガクンと落ちてしまっていた。

 

湯津「おいおいおい、主力がもう優くんしかいねえじゃねえか………!!」

 

これには湯津も驚愕。そして戦記は………

 

戦記「………幾ら優が残っているとしても、巫魔に主力はもういない。13点差など最早意味を失ったも同然だ………!」

 

今の巫魔の戦力と力豪の戦力差から、大量リードの意味は遂に失われてしまった事を語るのだった………

 

 

 

光一まで4ファールによって交代し、主力は優を残して遂に崩壊。開始から12秒しか経っていないにも関わらず、巫魔は絶望的な事態へと落ち込んでしまったのだった………

To Be Continued………




次回予告
攻撃力・防御力が落ちてしまった巫魔は、月宮達に翻弄されてしまう。更に由乃は、4ファール状態の滝川を再投入しようと考えており………!?
次回「逆転のチャンスは今よ」


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第137話 逆転のチャンスは今よ

前回までのあらすじ
開幕する第4Q。しかし、月宮と笹掛の2人が見せた連携で、光一は4ファールを取られてしまう。結果、主力は優だけとなってしまい………!?


月宮はフリースローにてシュートを撃つ。だが、シュートはリングに弾かれ、外れてしまった。

 

月宮「ありゃっ!?」

 

月宮は驚いていた。

 

優「(しめた………!!)」

 

優はリバウンドボールを取りに行くが………

 

月宮「行くぞ! 鈴木! 安元!」

 

月宮達が3人体制でリバウンドに参加してきた。ボールへ最初に触れたのは優だったが、月宮達3人もボールに触れ………

 

月宮「もらった!!」

 

月宮はボールを、力任せに自分の方へ引き込んだ。

 

優「うわあっ!?」

 

優は背中から地面に落下。月宮は地面に着地した直後、すぐにシュートを撃ってゴールへと押し込んだが、審判はシュートの直前に笛を鳴らしており………

 

審判「ノーカウント! 白5番ファール!!」

 

月宮のファールを取った為、何とかこの場を死守したが………

 

優「(こ、光一がいなくなるだけでこんな苦しくなるなんて………!)」

 

優はインサイドでまともに戦えるのが自分だけという事態を実感させられた………

 

 

 

続く巫魔の攻撃。優はボールをのぞみに回すが………

 

笹掛「インサイド固めて! 今の巫魔は優くんと13番以外にスリーは無いから! 月宮! 優くんへフェイスガード!!」

 

笹掛は、優とあかり以外の3人が外のシュートを撃てない弱点を突き、インサイドを徹底ガード。更に………

 

月宮「よーし、お前にボールは持たせねぇぜ!」

 

月宮が優に対しフェイスガードをする事で、優にボールを持たせようとしない。

 

のぞみ「(パスが回せない………!)」

 

主力をほとんど失った巫魔は、力豪相手に手も足も出ない。

 

美矢「くそっ………! 幾らキャプテンだからってなんでも出来る訳じゃねぇのに………私達がこんな不甲斐ないせいで………!!」

 

美矢は悔しそうにベンチに拳を叩きつける。そしてそれは、光一や積牙も同じだった………

 

ゆうか「(力豪相手に優位な点を持つ選手が優くんだけ………そんな場面がこんな時にやってくるなんて………もしここで滝川くんまで加わったら………!!)」

 

そして監督のゆうかも、巫魔の危機を実感していた。一方、力豪監督の由乃は………

 

由乃「(要注意人物が優くんだけの場面は幾らかやりやすいわね。今のメンバーなら巫魔は嫌でも優くんのワンマンチームになってしまうのだから………)」

 

巫魔の危機をチャンスと思っていた。そして………

 

由乃「滝川くん、次に試合が止まったら出て」

 

由乃は4ファールの滝川を出す事を考えた。

 

滝川「お、俺出すんですか………!?」

 

これには滝川も驚いていたが………

 

由乃「逆転のチャンスは今よ。それに13点差を崩すには貴方の力が必要なの」

 

由乃は今がチャンスだと考えた故の考えを見せたのだった………

 

 

 

嫌でも優のワンマンチームとなってしまった巫魔。この状況を力豪は絶好のチャンスと判断し、滝川をも加えた戦術による逆転を狙うつもりだった………

To Be Continued………




次回予告
ボールが外に出たタイミングで滝川を投入する力豪。4ファールのハンデを抱える滝川が選んだ戦術は………!?
次回「勝つ事を優先するさ」


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第138話 勝つ事を優先するさ

前回までのあらすじ
優以外の主力を失った巫魔は攻めでも守りでも苦戦を強いられる。また、力豪監督の由乃は滝川を再投入する事に決め………!?


滝川と由乃の2人が会話をしていると、ボールがコートの外に出た。

 

審判「アウト・オブ・バウンズ! 白ボール!!」

 

ボールが外に出たのを見た由乃は………

 

審判「交代です!!」

 

このときを待っていたと言わんばかりに交代を決めた。

 

由乃「滝川くん、出番よ! ただし優くんと下手に戦うのは禁止! 貴方が退場したらどうしようもないからね!!」

 

投入するのは勿論滝川。しかし、4ファールである為、優と対峙するのは固く禁じる。

 

滝川「分かりました!!」

 

滝川は由乃の言いつけを頷き、コートへ戻るのだった………

 

 

 

そして試合は再び力豪のオフェンス。

 

優「(滝川さんが戻ってきた………! 幾ら4ファールだからって油断はしないようにしないと………!!)」

 

優は滝川が4ファールである事を考慮しても危機を持つよう考えていた。そんな考えをしているうちに、山田から滝川にボールが渡る。

 

優「(来た………!!)」

 

優は姿勢を低くし、滝川の前へ立ちはだかる。監督の由乃から優との対決を固く禁止されている滝川は、無理に攻めに行こうとはせずに、冷静に様子を伺う。

 

由乃「頼むわよ、滝川くん………!」

 

由乃は静かに様子を見ながら、逆転の兆しを待っていた。

 

滝川「(まだだ………今は耐えるんだ………!!)」

 

滝川は静かに時を待つ。そして優もまた、はやらずに守り続ける。そうこうしているうちに、力豪の残り時間は迫っていき、5秒を切った。

 

光一「あと5秒でバイオレーション! 守れよ!!」

 

光一は残りの時間、シュートを撃たせずに守りきるようゆう達に呼びかける。

 

優「(言われなくともそのつもりさ………!!)」

 

優は心の中でそう考えながら、守備を続ける。

 

笹掛「滝川………!!」

 

笹掛は不安な様子を見せる。しかし、この時の滝川は酷く冷静だった。

 

優「(………いつもの滝川さんならこの場面ともなれば攻めてくるだろう………しかし不思議だ………今の滝川さんからは………猪突猛進さをまるで感じはしない………!!)」

 

優は冷静な滝川に違和感をかんじる。そして、残り3秒を切った時、滝川は優の一瞬の隙を突き、月宮に向けて鋭いパスを送った。

 

優「何っ!?」

 

優達は一瞬の隙に起きた出来事へ驚きを隠せない。そして月宮はそのままレイアップ。ボールをゴールの中へ沈め、その点差を11点へ抑えていく。

 

月宮「よっしゃ!! これで11点差だぜ!!」

 

月宮は点差が縮まった事を喜ぶ。そして、優は滝川がチームの勝利を優先した事に驚きを隠せなかった。

 

滝川「………本当は俺が決めたかったんだけどさ………そうも行かねぇんだわ………ここはまあ………勝つ事を優先するさ」

 

滝川はそう言うと、自陣へと戻った。

 

優「………やってくれる………!!」

 

優はそう言って、思わず笑ってしまう………

 

 

 

滝川がここに来て復活し、主力が優しか残っていない巫魔は絶体絶命の危機に陥る。果たして、この11点差は埋まってしまうのか………!?

To Be Continued………




次回予告
力豪の3年生トリオを相手に1人で耐えるのは流石の優でも困難だった。これにより、点差はどんどん縮まっていき………!?
次回「1人では無理がある」


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第139話 1人では無理がある

前回までのあらすじ
力豪は4ファールの滝川をコートへ戻した。滝川は下手に優との勝負をせずに、勝ちに行く事を優先し………!?


その後、優はインサイドを守ろうと1人奮闘するが………

 

滝川「月宮!」

 

滝川が上手く月宮へパスを出した事で優をかわし、月宮がこれを綺麗に決める。観客席でこれを見ていた観客席のアリサは、力豪の3年生トリオに圧倒される光景を見て………

 

アリサ「もう、さっきから防戦一方じゃない!!」

 

巫魔の防戦一方を怒っていた。

 

芽衣「アリサちゃんが怒りたくなるのは分かるけど………滝川さん達3人はかなり厄介だよ。流石の優くんでも1人じゃ厳しい………主力がせめて後1、2人くらいいれば………!」

 

しかし、芽衣は苦戦する優達に同情する様子を見せる。

 

修也「シュート力が復活したアイツは確かにオールラウンダーだ。でも、1人では無理がある………バスケは5人でやる競技なんだからさ………」

 

修也はこの状況を静かに分析する。そして、修也の言葉通り、優1人で滝川と月宮を相手取るのは困難である。仮にリバウンドになれば………

 

滝川「うおおおっ!!」

 

滝川と月宮コンビが優を圧倒する。現在の巫魔メンバーでリバウンドが出来るのは優だけの為、優が抑えられれば力豪からすればリバウンドなど簡単だった。

 

滝川「よーし! 速攻!!」

 

インサイドを圧倒される巫魔。しかし、アウトサイドも油断が出来ない。何故なら………

 

観客「うわあああ!! 笹掛のスリーだぁ!!」

 

油断すれば笹掛のスリーが飛んで来る為である。これにより、折角開いていた点差も一気に詰められていき………

 

 

 

第4Q残り5分………

 

滝川「うおおおおっ!!」

 

滝川渾身のダンクが炸裂。巫魔との点差は遂に65vs63の2点差にまで迫った。

 

観客「2点差だ! これは力豪の逆転勝利も全然あるぞ!!」

 

時間が多く残っている中で、点差はたったの2点。会場は完全に力豪を応援する声が多くなっていった。

 

湯津「うわっ!? す、すげぇ………力豪を応援する声ばっかりだぜ!?」

 

これには湯津も驚いていた。

 

戦記「滝川の復活が大きいだろうな。奴は4ファールだが、自分の役割に徹して、隙あらば点を獲得する。イバラキのPFとしてなら、間違いなくNO.1かもしれないな………」

 

戦記は滝川の強さを褒めていた。一方、巫魔ベンチは焦りで一杯だった。

 

積牙「いったいどうすれば………!!」

 

光一「監督! 俺達を出してくれよ!! このままじゃ優達が潰れちまう!!」

 

積牙達は慌てるが、監督のゆうかは解決方法を探るばかりで沈黙を続けるばかりだった。巫魔は絶体絶命の危機に瀕していた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「………何やっているのよ!!」

 

だが、突如として巫魔に向けた叱責の声が観客席から響く。

 

優「えっ!? ど、どこから………!?」

 

優は慌てながら周辺を見回す。すると観客席には………

 

優「あ………明日香!?」

 

ずっと入院を続けていた明日香が、観客席から大声を上げて叱責の声を飛ばしていたのだった………

 

 

 

遂に点差が2点差にまで詰められる巫魔。だが、そこへ駆け付けた明日香が巫魔を叱責してきた。果たして、明日香の登場は巫魔にどのような空気を与えるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
明日香は追い詰められる巫魔を叱責しつつも、全国への道を応援する。それを聞いた優はそれに応えようとオフェンスで底力を見せ………!?
次回「負けらんねぇな」


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第140話 負けらんねぇな

前回までのあらすじ
力豪の3年生トリオに圧倒される巫魔。その点差は遂に2点差にまで迫られてしまう。だが、そこに明日香が駆け付け、今の巫魔を強く叱責し………!?


明日香「さっきから試合をちゃんと見てたけど………! 後半は圧倒されっぱなし!? そんなので全国に行けると思ってるの!? 皆で全国へ行くんじゃないの!?」

 

明日香は優達が自分に気づいたのを確認すると、叱責の声をひたすら飛ばした。

 

美矢「明日香………」

 

明日香の声を聞き、巫魔の慌てようは嘘のようにとどまった。

 

滝川「ど、どうしたんだろうか………?」

 

一方の力豪は明日香による巫魔への叱責に驚いていた。だが、この叱責は巫魔………特に優へ大きく響いた。

 

優「………試合再開だ。あかり、こっちに回してもらえるかな?」

 

優は滝川のダンク後に地面へ転がっていたボールを拾い、あかりに投げ渡す。

 

あかり「えっ………? わ、分かったわ………!」

 

試合再開の笛が鳴ると、あかりは優へパス。するとその直後、優はいきなりスピードを上げたドリブルを見せる。

 

滝川「な、なんだ………!?」

 

当然これには会場の誰もが驚いていた。最初に山田と笹掛の2人が2人がかりでディフェンスに来るが、優は姿勢を低くして二人の間を突っ切った。

 

笹掛「なっ!?」

 

優に抜かれた2人は、一瞬何が起こったか分からないと言わんばかりに驚いた。次に月宮がディフェンスに来るが、優は右へ軽いフェイントを入れた後、すぐに左から抜き去った。

 

月宮「なあっ!?」

 

月宮はフェイントにまんまと騙され反応出来なかった。優はそのまま大きく飛び上がる。

 

滝川「止める!!」

 

滝川と鈴木の2人がかりで優のディフェンスに来る。しかし優は、空いていた滝川の右側へ姿勢を倒し、2人をかわした。

 

滝川「(だ、ダブルクラッチ!?)」

 

そのまま優はダンクでボールをリングへ押し込み、67vs63の4点差へ追い上げた。

 

湯津「うおおおっ!? マジかよ! 5人抜きだぜ!?」

 

湯津は優の五人抜きに驚いていた。その様子を見ていた明日香は強ばらせていた表情が落ち着き………

 

明日香「………やっぱりね。皆は凄いんだから………!」

 

優が見せたスーパープレイを嬉しそうに見ていた。ダンクを決めた直後の優は右手で握り拳を作り、その握り拳を明日香に向け………

 

優「負けらんねぇな!! 皆を全国へ連れて行く為にも!!」

 

優はそう言って、全国へ行く事を明日香へ誓った。それを見た伊吹は………

 

伊吹「よーし!! 私達にも出来る事をしようぜ!! 明日香の前でカッコつけねぇとな!!」

 

チームに対し、勢いを持たせようとする声を上げるのだった………

 

 

 

明日香の叱責から見せた優のスーパープレイ。巫魔の勢いは勝利を掴めるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優のスーパープレイで勢い付く伊吹達。4人の連携は、ディフェンスでもオフェンスでも活躍を見せ………!?
次回「主力じゃなくともな」


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第141話 主力じゃなくともな

前回までのあらすじ
明日香の叱責に動揺する会場。だが、それを受けた優はスーパープレイを見せ、チームへの勢いを戻そうとしていた………


優のスーパープレイが決まり、力豪の反撃が始まる。

 

滝川「大丈夫! 点差はまだ4点! それに要注意人物は優くんだけだ! 落ち着いて行こう!」

 

滝川はチームを諌め、落ち着いて点を取りに行こうとする。しかし、滝川のこの発言で、伊吹を始めとした4人の闘志に火をつけた。

 

山田「………!!」

 

まずのぞみが山田の前に立ち塞がる。笹掛にはあかりがフェイスガードでくっつき、笹掛へのパスを許さない。

 

山田「月宮さん!」

 

山田は月宮へパス。

 

月宮「よーし、こうなりゃ俺がシュートを………!!」

 

月宮はジャンプシュートを撃とうと構えるが、その構えを攻めようとレイがジャンプしてブロックに行く。

 

月宮「(やべえっ………!!)」

 

月宮は咄嗟に滝川へのパスに切り替える。しかし、強引なパス切り替えだった為………

 

伊吹「させるかよ!!」

 

伊吹がこれをスティール。零れ弾をのぞみが拾う。

 

優「よし! いいぞ、皆!!」

 

これには優も思わず褒める様子を見せる。

 

のぞみ「速攻!!」

 

のぞみは速攻をかけ、優達を上がらせる。

 

滝川「まずい! ディフェンスだ!!」

 

力豪は急いでディフェンス戻る。しかし、のぞみがあっさり山田をかわすと………

 

のぞみ「伊吹!」

 

伊吹にボールを回す。

 

伊吹「よっしゃあ! 全国行く前にかますぜ!!」

 

伊吹はダンクを狙いに行く。

 

滝川「させるものか!」

 

滝川がブロックにやって来るが………

 

伊吹「私は囮さ………それ!!」

 

なんと伊吹はここでパスを出した。ボールの行先は、スリーポイントライン外のあかりだった。

 

笹掛「スリー狙い………!?」

 

笹掛は驚いていた。そしてボールを受け取ったあかりは迷わずスリーポイントシュート。笹掛がブロックの為にジャンプするが、届かずにシュートは狐を描く。

 

伊吹「確かに私達は要注意人物じゃねえかもしれねえ………優とか春香とか………バケモンみたいに強い奴が一気に増えたからさ………でもな、主力じゃなくともな、出来る事はあるんだよ! 例えば………今みたいにお前らの意表を突くようなプレイとかな!!」

 

伊吹が力豪に対してそう言い放ったと同時に、あかりのシュートは綺麗に決まった。しかもスリーポイントシュートが決まった事で、点差は7点。一気に巫魔のペースが戻ってきた。

 

積牙「凄い………!! 皆さん、凄いです!!」

 

伊吹達4人の奮闘により、巫魔ベンチは喜びの声を上げたのだった………

 

 

 

力豪側から完全にノーマークだった伊吹達4人の奮闘により、力豪との点差は一気に7点へ開いた。果たして、巫魔の勢いはどこまで再熱するのか………!?

To Be Continued………




次回予告
伊吹達のプレイを見た積牙達は改めて再出場を申し出る。同じく伊吹達のプレイに心動かされたゆうかは、それを受け入れ………?
次回「暴れなさい」


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第142話 暴れなさい

前回までのあらすじ
優のスーパープレイを見て反撃に転じる力豪。しかし、優のみをマークするあまり、伊吹達4人の奮闘により、点差は7点に広がった………


審判「力豪! タイムアウト!!」

 

力豪はタイムアウトを取り、残り4分22秒の間における作戦を考えていた。そして巫魔のペンチでは………

 

ゆうか「優くんが取った2点、伊吹ちゃん達が4人力を合わせて取った3点。これは間違いなく巫魔に大きな流れを引き戻すきっかけになってくれたわね」

 

優達が取った5点の大きさについて、ゆうかが絶賛していた。

 

優「はい。でもまだまだです。後4分22秒。力豪側にだって逆転のチャンスは全然ある。油断せずに点を取るべきです」

 

しかし、優は警戒心を崩さずに攻めの姿勢を見せる。すると、それを聞いた美矢は………

 

美矢「そうだな………監督、充分だろ? 私達を温存するのはもう………」

 

そう言って試合への再出場を要求する。

 

光一「俺も出させてくれ。4ファールだろうが下手なプレイはしないからよ!」

 

それを合わせて光一まで再出場を要求。2人が再出場を申し出ると………

 

優真「あの………! 私も力になれませんか!? ここにいて充分体力も戻ってきました………!!」

 

次に口を開いたのは優真だった。優真は第2Q終了後のインターバルから今に至るまでずっと休息していたお陰で、体力はある程度戻ってきていた。

 

ゆうか「そうね………分かった。今はこの試合を逃げ切る事が先決だもの………3人の出場を認めます」

 

ゆうかは3人の出場を許可する事に。それを見た積牙は………

 

積牙「あの………!! 俺も出させてください! 皆さんと比較してまだ足手まといかもしれませんけれど………!!」

 

自身も再度出場を申し出た。

 

ゆうか「はいはい、そう言ってくれると思っていたわ………優くん以外全員交代よ………思いっきり暴れなさい!」

 

積牙も加えた4人をコートに出すと決めたゆうかは、優以外のメンバーチェンジを決め、4人をコートへ出す事に。

 

積牙「あ、ありがとうございます!」

 

積牙と優真の2人は頭を下げる。そして、優は積牙達4人の元に駆け寄り………

 

優「あと4分。個人的には積牙と光一の4ファールが心配なんだけど………土壇場の2人は何とかしてくれると信じているよ」

 

積牙、光一への不安な様子をかすかに見せたものの、2人への期待を見せた。

 

美矢「キャプテン、本音漏れてるぞ………まあ、不安なのは間違いないが………」

 

美矢は優が本音を漏らした事を指摘したが、内心は優と同じく積牙達2人に不安を見せていた。

 

光一「うるせー!! やるんだよ、俺達は!! 観客の女の子全員メロメロにしてやらあ!!」

 

光一はそんな事を意気込んでコートへと向かう。

 

優「元気で何よりだよ」

 

そんな彼の下心丸出しの意気込みを聞いた優はそれを流し、彼の強いやる気を素直に褒めるのだった………

 

 

 

力豪戦残り4分22秒。刻一刻と無くなっていく試合時間の中、スコアは70vs63。果たして、巫魔はリードを守り切れるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
試合再開。何としても点を取りたい力豪は攻めるが、4ファールになってもキレのある動きを見せる光一が奮闘。それに負けじと積牙も渾身のプレイを見せ………!?
次回「4ファールなんざ知らねぇ」


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第143話 4ファールなんざ知らねぇ

前回までのあらすじ
優と伊吹達4人の奮闘に心を動かされた巫魔。巫魔は優を残したメンバーチェンジで、積牙達をコートへ戻すのだった………


力豪ボールで試合再開。美矢がSGのポジションに入った為、PGは優真。しかし、ドリブルとディフェンスが未熟な優真では山田を止められずにかわされてしまう………

 

山田「チョロいぜ………!」

 

山田はあっさり抜けた事で喜ぶ………と同時に、積牙が走り込んできた。

 

山田「やべっ!!」

 

山田は咄嗟に月宮へパスを回す。

 

月宮「よーし、行け鈴木! そのCは4ファールだ! トドメ刺せ!!」

 

月宮から力豪Cの鈴木にボールが回り、鈴木はゴール下からシュートを狙うが………

 

光一「うるせー!! 4ファールなんざ知らねぇ!!」

 

光一は、4ファールとは思えない程にキレのあるブロックで鈴木のシュートを防いだ。

 

鈴木「なあっ!?」

 

鈴木は驚きを隠せなかった。零れ玉を優が拾うと………

 

優「速攻!!」

 

優がボール運びの中心としてドリブルをし、他の4人を上がらせる。

 

伊吹「よし! 優のPG作戦だ!!」

 

優は素早いドリブルで上がっていく。それを観客席から見ていた戦記は………

 

戦記「………やっぱりアイツはPG向きだな………」

 

と、優にはPGがピッタリであると確信したようだ。そして、フロントコートに到達した優は、月宮にマークされている積牙にボールを回した。

 

滝川「月宮、止めろ!!」

 

滝川は月宮に声をかける。

 

月宮「任せろぃ!!」

 

月宮は体を大きくして積牙のコースを塞ぐ。

 

積牙「………決める!!」

 

積牙は目を研ぎ澄ませる。そして、月宮が見せた一瞬の隙を突き、月宮の左側に潜り込み、月宮を綺麗にかわしてみせた。

 

月宮「なあっ!?」

 

積牙はそのままジャンプシュート。滝川がブロックに走るも手が届かず、積牙のシュートは決まった。

 

伊吹「よーし!! 公式戦初の{ソニックジャンパー}が決まった!!」

 

これまで公式戦では強敵続きやミスで決まっていなかったソニックジャンパーが見事に炸裂した。

 

光一「やったぜ、セッキー!!」

 

光一は勢いよく積牙に抱き着いた。

 

積牙「はい………!!」

 

積牙は喜ぶ様子を見せる。

 

優「おーい! ディフェンス! ディフェンス!!」

 

しかし、試合は直ぐに再開されたので、優は急いでディフェンスに戻るよう促す。

 

光一「よーし! 最後の1秒まで走るぞセッキー!!」

 

積牙「はい!!」

 

2人は走ってディフェンスに戻る。それを見た優は………

 

優「(2人ともファールのハンデを感じさせないナイスプレイだ………これなら行ける………!!)」

 

この試合に勝つ希望を見たのだった………

 

 

 

積牙と光一のナイスプレイでスコアは72vs63。果たして、このまま逃げ切れるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
力豪も負けじと点を加えてくるなど、油断は出来ない状況で時間が進む中、疲労が落ち着いた春香は、残る時間でチームへの応援に残る力を注ぐ事に決め………?
次回「ベンチも盛り上がりましょう」


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第144話 ベンチも盛り上がりましょう

前回までのあらすじ
積牙達が交代でコートに戻り試合再開。4ファールというハンデがある積牙と光一だが、2人はそれをものともしない強気のプレイを見せ………!?


9点差をつける巫魔。しかし………

 

滝川「まだだ! まだ諦めるには早い!!」

 

滝川達力豪は諦める様子を見せない。

 

PGの山田がボールを運び、月宮に向かってパス。月宮がフックシュートを狙いに行くが………

 

積牙「撃たせない!!」

 

積牙が大きく飛び上がり、月宮のシュートコースを防ぐ。

 

月宮「うおっ!?(お、俺のフックシュートに着いてきただと!?)」

 

月宮は驚きつつも、何とか笹掛にパス。笹掛はパスを受け取ると、マッチアップしている美矢の不意を突く形で素早くシュートを撃つ。

 

美矢「くそっ………!! (なんちゅうクイックリリースだ………!!)」

 

笹掛のシュートは綺麗に決まり、点差は6点差に縮まる。

 

優「まだ油断は出来ないか………皆! 気を引き締めて!!」

 

優はチームの気を引き締めようと声をかける。そんな中、ベンチでは、とてつもない疲労でベンチに寝かせれ、頭に濡れタオルを乗せていた春香。彼女の疲労がようやく落ち着いたのか体を起こす。彼女は体を起こしてすぐスコアボードを見る。

 

伊吹「は、春香………! 大丈夫なのか!?」

 

伊吹は春香を心配する様子を見せるが、春香は自身の疲れなど気にもせず………

 

春香「優さん! 皆さん! 頑張って!! 後3分48秒です!!」

 

すぐにチームの応援をする。

 

優「春香………!!」

 

ある程度回復して間もなく応援に力を注ぐ春香の姿に驚く優。ベンチのメンバー達も困惑を隠せずにいたが………

 

春香「ベンチも盛り上がりましょう!! 応援の力で優さん達を勇気づけるんです!!」

 

春香はベンチメンバーにも応援するよう声をかける。最初こそ驚く様子を見せたが………

 

鈴香「皆、頑張れー………!」

 

鈴香はボソボソとした声ではあるものの、チームを応援する。それを見て………

 

あずさ「皆〜! 頑張れー!!」

 

美咲「頑張ってー!!」

 

ベンチメンバーは応援の声をあげる。それを見た優は………

 

優「よーし、反撃の1本取るぞ!」

 

そう言って、追加点を取る事をチームに共有。積牙がボールを優真に回すと、優真はパスを受け取った直後に美矢へ鋭いパスを送る。そして、美矢もパスを受け取った直後にボールをゴール近くに打ち上げる。

 

優「よし来た!」

 

優は空中でボールを受け、アリウープを狙う。

 

滝川「決めさせないよ!!」

 

だがここで滝川がブロックに来た。

 

優「絶対決める!!」

 

優はそう言うと咄嗟にダンクを中断し、ボールをゴールに向けて軽く放ち、確実に2点を奪った。

 

滝川「なっ!? それアリか!?」

 

優のとにかくゴールにボールを投げ込む姿に滝川は驚きを隠せなかった。しかし、結果として8点差に広がった為………

 

優「よーし! 後3分半! 逃げ切るぞ!!」

 

優はこのまま逃げ切る事を宣言するのだった………

 

 

 

一進一退の攻防の中、試合は74vs66に。果たして、残り3分半の試合の行方は………!?

To Be Continued………




次回予告
時間は次々と無くなっていき、3点差で残り45秒となる。その時、笹掛のスリー、月宮のフックシュート、滝川の{炎のダンク}とシュートの連打が襲いかかる。しかし、優達はそれぞれゴールを許すまいと懸命なディフェンスをし………!?
次回「これが最後だ」


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第145話 これが最後だ

前回までのあらすじ
一進一退の攻防が続く終盤戦。疲労が落ち着いた春香をはじめとする声援を聞いた優達は、力豪を相手に何とか点差を離していき………!?


その後も一進一退の攻防は続く。力豪が点差を詰めよれば、巫魔が近寄らせまいと点差を突き放す。そんな攻防は3分程続き、残り30秒。78vs75と点差は巫魔が3点有利の展開に。しかし油断は出来ない。延長を戦う余力の無い巫魔にとっては同点となる失点もまた敗北同然。巫魔は同点にならないよう上手く逃げ切るしかない。そんな場面の中………

 

山田「笹掛先輩!!」

 

山田から笹掛にボールが渡る。笹掛は同点に詰め寄る為にスリーを放つ。

 

美矢「決めさせる訳ねーだろ!!」

 

美矢が懸命にジャンプ。何とか美矢の中指がかすり、笹掛のシュートは微妙に高さを失う。

 

美矢「シュートは狂わせた! リバウンド頼む!!」

 

美矢は後を優達に託す。優、積牙、光一は、滝川達3人を相手にリバウンド勝負。しかし、優は滝川にスクリーンアウトをされてしまい、望みが薄まる。

 

優「ぐうっ………!!」

 

そんな状況の中、笹掛のシュートは弾かれた。

 

滝川「もらった!!」

 

ボールを1番にキャッチ出来そうなのは滝川だった。

 

光一「させるか!!」

 

しかし光一はキャッチを諦め、リバウンドボールを地面に向けて叩き落とした。

 

光一「おっし………!!」

 

光一は安堵する様子を見せる。しかし、そこに地面へ着地した月宮が、落とされたボールを拾い、すぐにフックシュートを狙いに来た。

 

光一「嘘だろ!?」

 

この時の光一は落下中でどうしても月宮のシュートを防ぐ事は間に合わなかった。

 

月宮「もらったぜ!!」

 

月宮はフックシュートを狙う………

 

積牙「決めさせるもんか!!」

 

しかしそこへ積牙が駆けつける。月宮が放ったフックシュートを何とか初動で防ぐ事に成功。しかし………

 

滝川「まだだ!!」

 

なんとこの場面で滝川が零れ玉を奪取。これは巫魔にとって最悪の事態だった。

 

滝川「これが最後だ!!」

 

滝川はこの場面で{炎のダンク(バーニングダンク)}を狙いに来た。

 

美矢「嘘だろおい………!!」

 

巫魔メンバーもこれには絶望を感じる。

 

戦記「滝川………」

 

そして観客席の戦記も、滝川の執念に驚かされる。だが………

 

優「うあああっ!!」

 

それ以上に会場を驚かせる事があった。なんとこんな絶望的な場面の中で、優が見事に滝川の{炎のダンク}に追いつけたのだ………!

 

滝川「なあっ!?」

 

優「負ける………もんか!!」

 

優は横からボールを叩き、滝川の{炎のダンク}を止めた。この時、残り時間は既に10秒を切っていた。零れたボールは優真が拾い………

 

優「よし! そのまま上がる!!」

 

優は残る体力を振り絞り、一足早くフロントコートへ走った。

 

滝川「まずい! 戻れ!!」

 

滝川達は慌てて戻るが、とても優には追いつけない。

 

優真「キャプテン!!」

 

優真は素早いパスで優にボールを回した。優はこれを受けとると、勢いよく飛び上がり………

 

優「はああああっ!!」

 

彼にしては珍しいツーハンドダンクでボールをゴールへと叩き込んだ。優が決めた豪快なダンクはゴールのリングを破壊する程の威力で、優がリングを破壊した事で、背中から地面に激突。その直後、試合終了のブザーが鳴り響くのだった………

 

 

 

永遠に続くと思われ試合はいよいよ終わりを迎えた。果たして、終わりを知った選手達の心境は………?

To Be Continued………




次回予告
試合終了し、巫魔は全国への切符を得た。その閉会式を持って、長かった県大会は遂に終わりを迎えるのだった………
次回「県大会は終わりだね」


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第146話 県大会は終わりだな

前回までのあらすじ
力豪戦終盤。3点差の中で力豪による怒涛の攻撃を受ける巫魔だが、巫魔のメンバーがそれぞれ奮闘してゴールを守りきる。そして優が、ゴールを壊す程のダンクを決め、試合は終わりを迎えたのだった………


優「痛てて………って、やばい、ゴール壊しちゃった………!?」

 

優はゴールのリングを壊した事に慌てていたが………

 

美矢「キャプテン!! 勝ったぞ!!」

 

積牙達は試合の勝利に喜んでいた。それを聞いた優は最初、いつの間に試合が終わったのかと驚く様子を見せていたが、スコアボードを目にした事で試合が終わったのを目にすると………

 

優「………やった!! 全国だぞ、皆ー!!」

 

持っていたゴールのリングを投げ捨て、仲間達と勝利を喜んだ。

 

アリサ「巫魔が勝ったって事は………ユー達も全国だー!!」

 

そして、観客席で見ていた戦記達や修也達も嬉しそうな様子を見せていた。

 

戦記「県大会は終わりだな………そして、全国へ行くのはやはり巫魔か………益々楽しみになって来たな………そして、俺も奴とのケリをつける最後の試合になるな………」

 

戦記はそう言って観客席を立つと………

 

戦記「さあ、行くとするか………閉会式が始まる」

 

そう言って、湯津と共に観客席の真後ろで待機していた守城メンバーと共にコートの方へ向かいだした。そして修也達も席を立ち………

 

修也「(ミドレーユ………全国の舞台でお前達と戦う時を待っているぞ………!)」

 

そう心の中で考えて会場を後にするのだった………

 

 

 

運営委員「優勝、守城高等学校」

 

そして始まった閉会式。優勝は県大会の全試合無敗である守城高校。そして………

 

運営委員「準優勝、イバラキ県立巫魔高等学校」

 

準優勝は、度重なる激闘を制した巫魔高校。優と春香が代表で賞状を受け取った。

 

運営委員「続きまして、個人表彰を行います。今大会MVPは………守城高等学校、戦記良太くん」

 

そして大会MVPは戦記だった。戦記は今回の県大会でほぼ無敵クラスの強さを見せた為に、誰もがその称号授与に納得していた。

 

運営委員「続きまして、今大会の得点王です。5位、力豪高等学校、月宮誠くん。4位、力豪高等学校、笹掛美代さん。3位、巫魔高等学校、白宮優くん、2位、守城高等学校、湯津播磨くん、1位、力豪高等学校、滝川秦くん」

 

そして得点王ベスト5。殆ど三大王者の選手だが、その中に優も含まれていた。

 

光一「おっ! 選ばれたぞ優!!」

 

これには巫魔選手も当然ながら、三大王者の選手達も面白そうな様子を見せていた。

 

運営委員「………以上で、大会を終了致します」

 

そして、運営委員のこの言葉でこの大会は終わりを告げたのだった………

 

 

 

その後、賞状を持った優達は楽しげな会話をしていた。すると………

 

大会スタッフ「すみません、白宮優くんですか?」

 

大会スタッフが優に声をかけてきた。

 

優「そうですが………?」

 

優が首を傾げていた。

 

大会スタッフ「シュガーっていう女の子から手紙を預かったの。どうぞ」

 

スタッフは優に対しシュガーからの手紙を渡すと、優の元から離れた。優は首を傾げながら手紙を開ける………

 

「ミドレーユ、大会準優勝おめでとう。最初はかなり不安だったけど、春香達とのプレイはとても見事だったよ。それに、アメリカで一緒にバスケしていた時よりも真っ直ぐなミドレーユのプレイとても面白かった。それを見て、私も益々バスケがやりたくなった。だから、これから国に帰る。全国制覇頑張ってね。それともしもの話だけど、もしミドレーユが全国制覇をしたら、アメリカにいる私のチームと対戦しようね。最も、巫魔高校が勝てるかは分からないけどね」

 

その中にはシュガーからの賞賛、別れの言葉があった。どうやら、アメリカに帰る事にしたらしい。

 

優「賞賛したかと思えば挑戦的な言葉………相変わらずバスケの話になると強気だな………」

 

優は苦笑いを浮かべる………すると、最後の方に追伸があった。

 

「ps.ソフトクリームの形した雲の写真があったので送ります」

 

しかし、その内容は唐突に意味不明なものになっていた。

 

優「………相変わらずのソフトクリーム好きだな………あれ? まだ追伸………?」

 

シュガーの人間性を知っている優は苦笑いを浮かべる。だが、手紙にはまだ追伸があった。

 

優「………!? これは………!!」

 

その追伸は、優を驚かせるものだった………

 

 

 

長きに渡る県大会は、守城高校と巫魔高校が全国への切符を掴んだ。そして、巫魔の新たな挑戦が始まろうとしていたのだった………

To Be Continued………




次回予告
試合から数日、全国への切符を掴んだゆう達だったが、全国大会のインターハイに向けた練習をしようとした矢先、巫魔バスケットボール部に意外な事態がやってくる………!?
次回「追試だと」


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第九章 熱い夏の練習
第147話 追試だと


前回までのあらすじ
力豪との激闘を制し、優達は全国の舞台へ行く事が確定した。長かった県大会は漸く終わりを迎えたのだった………


大会から数日、優と春香はクラスメイトと楽しく会話をしていた。

 

赤薔薇「全国大会ってどこでやるの?」

 

優「東京の大きい体育館だよ。近くに友力学園があって、僕にとっては久しぶりにそこで試合するっていうなかなか因果のあるものでね………まあ、明日香も無事に復帰したし、益々練習に精を出さないと………!」

 

優達の今の話題は全国大会だった。更に激しくなろうとする戦いに心を踊らせていた………が。

 

先生「はーい、席に着いて〜! テスト返すわよ〜」

 

教室に入ってきた先生の言葉で優達は一瞬のうちに青ざめた。

 

赤薔薇「………? どうしたの?」

 

赤薔薇が首を傾げる様子を見せる。

 

優「バスケ部の危機だ………」

 

優は思わずそう呟いた………

 

 

 

放課後、普段ならバスケ部は練習をするのだが………

 

ゆうか「はーい、テストの赤点数をチェックしまーす」

 

ゆうかはニコニコと笑っていた。しかし、去年も同じくチェックされた優達は知っていた。ここで赤点が多いと大変な事になる事を………

 

積牙「あの………赤点が多いと何の問題が………?」

 

積牙は恐る恐る伊吹に問いかける。

 

伊吹「バカ! 4つ以上の赤点を取ったら部活動参加禁止になるんだぞ!?」

 

伊吹は恐れるように積牙に教えた。その後ろからゆうかが顔を出し………

 

ゆうか「2人はどうだったかしら………?」

 

赤点の数を問う。2人は恐る恐る赤点の数を見せる事に………

 

 

 

その後、ゆうかはやれやれと言った様子を見せ………

 

ゆうか「やっぱり赤点4つ者はいたわね………積牙くんと光一くん、美矢ちゃんが対象者よ………まさか主力が該当するなんてね………」

 

4つ以上の赤点を取った人物は3人、積牙、光一、美矢の3人だった。

 

伊吹「ふう………危なかった………」

 

伊吹は安堵する様子を見せる。

 

ゆうか「因みに赤点3つ以下は伊吹ちゃんとほのかちゃんよ」

 

尚、ゆうかは容赦無く赤点があった人物の名前を挙げた。当然、名前を出された伊吹とほのかは驚いていた。

 

明日香「伊吹、赤点3つだったもんね………」

 

伊吹がギリギリだった事を微かに呟く。

 

伊吹「というかおかしいだろ! なんで優が赤点0なんだよ! 去年は赤点組だったじゃないか!!」

 

赤点を取った事を晒された伊吹は、優の赤点が無い事に怒る。

 

優「ふっふー! 今回は全教科60点以上なのだ!!」

 

優はそう言ってテストを見せる。彼の言うように、最低点は60点と、赤点とは完全に無縁の点数だった。

 

伊吹「な、なんで急にそんな高得点を………?」

 

伊吹は、昨年まで赤点を取りまくっていた優の突然の好成績に驚きを隠せなかった。そんな伊吹が春香の方を見やると、春香はニコりと微笑む。

 

伊吹「(………春香の仕業か………)」

 

それを見た伊吹は原因をあっさり理解した。そして………

 

ゆうか「………赤点4つ以上の3人は部活参加禁止。そして、追試を受けに行きなさい!」

 

ゆうかは赤点4つ以上の積牙達に追試を受けに行くよう命令する。

 

積牙達「つ、追試だとー!?」

 

積牙に迫る追試。これには驚きを隠せなかったのだった………

 

 

 

全国大会に向けたバスケ部に迫る思わぬ危機。果たして、積牙達3人は追試を乗り越えられるのか………?

To Be Continued………




次回予告
追試に向けた勉強の為、優と春香の家で勉強をする事になる積牙達。3人は勉強に悪戦苦闘し………!?
次回「分からねぇよ」


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第148話 分からねぇよ

前回までのあらすじ
全国大会が迫る巫魔高校バスケットボール部。しかしそんなバスケ部に、赤点4つ以上者の登場という大問題が発生。これに該当した積牙達3人は追試に追われる事となってしまい………!?


春香「はーい、それではこれより、地獄の勉強会を開催しまーす!!」

 

部活の後、積牙達は優と春香が暮らす家に連れていかれた。理由は言うまでもなく追試勉強の為である。

 

積牙「あの………地獄とは具体的にどのような………?」

 

積牙は恐る恐るそう問いかける。

 

春香「地獄と言っても大した事じゃ無いわ………ただ寝る時間無くなるだけよ?」

 

春香は満面の笑みでそう答えた………しれっと地獄に該当する事を呟きながら。

 

美矢「なーんだ、寝る時間無くなるだけか、あはは………って、なるわけねーだろ!?」

 

美矢もこれにはノリツッコミを見せる。しかし………

 

春香「早くやってください………!!」

 

春香はニコニコとしながら威圧をかける。

 

積牙達「は………はい………!!」

 

積牙達は涙目になりながら勉強に取りかかる。その光景は、勉強会へ手伝いに来たあかりや優真も………

 

優真「(春香先輩ってあんな威圧かけられたんだ………)」

 

と、先程の威圧から春香への恐怖心をのぞかせるのだった………

 

 

 

その後、マンツーマンという形で3人は勉強。積牙はあかり、光一は春香、美矢は優真が担当する形に。

 

美矢「………そういや、キャプテンはどうしたんだよ?」

 

美矢はこの時に、優がいなくなっている事に気づいた。

 

春香「私の家が経営している、近くの体育館に行ったわ。多分自主練ね」

 

その優はまた練習に行っていた。まあ、春香の協力で全教科60点以上を取った男がいても余り役立たないと思われるのである意味いないのは正しいとも言えるが………

 

光一「だああ!! 分からねぇよ!!」

 

3人は勉強に苦戦させられていた。

 

あかり「参ったわね………ここが分からなきゃ、次の試験も苦戦するわよ?」

 

そもそも3人の勉強力には根本的な問題があった。それは、基本的な問題の解き方が分かっていないという事。更に、3人とも暗記が苦手であり、特に歴史系は散々だった。

 

春香「参ったわね………優さんは飲み込みが早かったから割とすぐに教え終わっていたんだけど………」

 

これには春香も難色を示していた。

 

光一「アイツ飲み込みも早いのかよ………」

 

光一はゆうに対し、どこが嫉妬心を持っていた。

 

あかり「そういえば、優くんって今回の歴史はどうだったの?」

 

そんな中、あかりは春香にそんな話題を問いかける。

 

春香「100点でしたよ。しかも私、歴史は何も教えてませんしね」

 

春香はそう返した。優はどうやら歴史だけは得意な模様。それを聞いた美矢は………

 

美矢「キャプテンって歴史得意だったのか!?」

 

優が歴史の勉強を得意としている事に驚きを隠せなかった………

 

 

 

追試に追われる積牙達だがその雲行きは怪しかった。果たして、積牙達に追試を乗り越える術はあるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
休憩時間。興味本位で優の部屋に入り込む積牙達。彼の部屋にある本棚にはバスケ雑誌だけでなく、歴史漫画が置いてあり………!?
次回「そんな勉強手段」


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第149話 そんな勉強手段

前回までのあらすじ
追試の勉強に追われる積牙達。優が不在の中、勉強における彼の得意な部分が発覚し………!?


悪戦苦闘が続く勉強会。すると、春香の携帯に優からのメッセージが届いていた。

 

春香「………優さんが帰ってくるみたいです。夜ご飯作らないといけないのでちょっと休憩しましょう。皆さんの分のご飯も作りますから是非食べて行ってください」

 

優が体育館から戻ってくるという内容のメッセージが来た為、家事をしなければならない春香は一度勉強会を中断することに。

 

美矢「ふいー………疲れた」

 

美矢は疲れた様子を見せる。最も、勉強はまるで進んでいないが。

 

光一「なあセッキー、美矢、ちょっといいか?」

 

そんな中、光一が積牙と美矢に声をかける。3人は廊下に出ると………

 

光一「優の部屋見に行かね?」

 

突然光一は、優の自室を見に行く事を誘った。

 

積牙「えっ、流石にそれは怒られますよ………! 春香先輩の許可も無いのに………」

 

積牙は反応に困っていたが………

 

美矢「それいいな、行こうぜ!」

 

美矢は男子高校生みたいなノリであっさり承諾。

 

光一「美矢は話がわかるなー!」

 

光一は美矢と肩を組んで喜んでいた。最早、最初の不仲さはどこへやらといった仲である。

 

美矢「密告するなら、お前の都合に悪い噂を流すぞ〜!」

 

更に美矢は積牙を脅してきた。それを言われた積牙は頷くしか無かった。それと同時に………

 

積牙「(あ、悪友コンビ………!!)」

 

心の中でそう考えて恐れたという………

 

 

 

その後、積牙達は優の部屋にこっそり潜入。優の部屋には数個のバスケットボールやこれまで着てきたバスケ部のユニフォームが飾られており、それと共に幾つか写真があった。修也達との写真や、巫魔高校時代の写真、果ては小さい頃の優とシュガーの写真まであった。

 

積牙「キャプテン、本当に色んな人と交流しているんですね………」

 

積牙が、思ったよりも広い優の人脈に驚いていると………

 

美矢「おわ、本棚はバスケ雑誌ばっかりだ………! しかも、もう手に入んねえバックナンバーまである!!」

 

美矢は本棚に着目した。優がこれまで集めてきた雑誌は、美矢にとってお宝の山に見え、勝手に読み始めた。

 

積牙「(本当にバスケ好きだな、この人も………)」

 

美矢の態度に呆れる積牙。すると光一が本棚を漁る中で………

 

光一「………ありゃ? なんだこりゃ………?」

 

明らかにバスケ雑誌ではない本が隠れていた。その本は………

 

光一「れ、歴史漫画だ! アイツ、こういうのも好きだったのか………!」

 

バスケとはまるで関係ない歴史漫画だった。しかも綺麗に日本編、中国編、西洋編など、シリーズのものを全巻揃えている。

 

美矢「まさかキャプテン、歴史の勉強方法って………そんな勉強手段なのか………?」

 

それを見た3人は、優が歴史を得意とする理由を理解するに至った。

 

?「なーにやってんだバカども」

 

………だが、突如3人に聞き慣れた声が聞こえた。3人が恐る恐る部屋の入口を向くと………

 

優「人の部屋でなーにやってんだバカどもがー!!」

 

自主練帰りの優が立っていた。その後の3人は言うまでも無く、優からキツく絞られることとなったのだった………

 

 

 

優の自室に忍び込んだ積牙達は、優が歴史を好む理由を知った。が、同時に優から怒られるという末路を辿ってしまうのだった………

To Be Continued………




次回予告
食事をとる優達。楽しく会話をする中で、優は自主練の際に戦記と会った事を口にし………!?
次回「戦記さんに会ったよ」


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第150話 戦記さんに会ったよ

前回までのあらすじ
勉強会の休憩時間。積牙達は優の部屋へ潜入した。そこで、 優のバスケに対する情熱、そして、彼が歴史を得意とする理由が明らかとなり………!?


優は、自室に潜入した積牙達3人に説教をした後、春香達と共に食卓を囲う事になった。

 

美矢「ううっ、キャプテン………悪かったよ………」

 

元不良の美矢は涙目になりながら、頭に大きいタンコブを作っていた。そして大きいタンコブは積牙と光一の頭にも出来ていた。

 

優「人の部屋を覗くなんて悪趣味だなぁ………誰だ、言い出しっぺは………」

 

優は呆れながら部屋に入るきっかけを作ったのは誰だと問いかける。

 

光一「せ、セッキーだよ!」

 

光一は罪を積牙に擦り付けようとする。しかし………

 

優「お前か、言い出しっぺは!」

 

優は一瞬で光一が嘘を言ったのを見抜き、再びゲンコツをお見舞いする。

 

光一「ううっ………痛ってえ………」

 

流石の光一も落ち込む様子をみせた。

 

あかり「なんというか、優くんも堂々としたキャプテンらしくなったわね。あの時、優くんを指名した私の目に狂いはなかったわ」

 

あかりはそう言って味噌汁を啜る。

 

優「まあ嫌でもこんな連中相手にしてたらな………」

 

優はあかりの言葉に対し、呆れ気味にそう返した。

 

春香「うふふ………!」

 

春香はそれに思わず笑いを零した。

 

積牙「わ、笑い事なんですか、それ………?」

 

積牙は首を傾げる。

 

優「まあ春香からしたら笑い事だろうね………僕からすれば頭を悩ます事案だけど」

 

優は思わずそう愚痴を零した。

 

積牙「ううっ、面目ないです………」

 

積牙もまた落ち込む様子を見せていた。

 

美矢「ふええ………試合の時以上にキャプテンが怖い………助けて優真〜」

 

積牙が落ち込むのを見ると、美矢は優真に泣きついた。

 

優「優真に逃げるなよ………」

 

優はやれやれと言った様子を見せる………だが、味噌汁を啜った直後、ゆうは先程までの会話から一点、真剣な表情を見せる。

 

優「そうだ。今日あそこの体育館で、戦記さんと会ったよ」

 

優真「えっ!?」

 

優は、自主練の際に戦記と対面した事を呟く。

 

美矢「それで………何の話をしてたんだよ?」

 

同じく全国大会に出る強豪のキャプテン戦記と、優の邂逅はその場にいる春香達を驚かす。

 

優「全国で戦う時のプレイスタイルについて話してたのさ。今後、今まで通りのプレイだけじゃダメだって言われてさ」

 

優は、戦記との会合時に指摘された事を語った。

 

春香「戦記さんがそんな事を仰ったのですか………?」

 

優を褒める場面が多かった戦記にしては珍しい指摘………春香がそう考えを見せていると………

 

優「まあ最後まで聞いてくれよ。戦記さんから言われたのは、僕の新たな戦い方について。そして、その戦い方を現実的にする為の特訓をさっきやって来た………って訳だよ」

 

優はそう言って席を立つと、戦記と対面した時の事を思い出すのだった………

 

 

 

楽しげな会話から一変、優は自主練に行った時の事を春香達に共有した。果たして、戦記との会話はどのようなものだったのか………?

To Be Continued………




次回予告
体育館での練習時、戦記と対面した優。PFらしからぬ練習をする優に首を傾げる彼に対し、優はシュガーの手紙を見せ………?
次回「実は僕」


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第151話 実は僕

前回までのあらすじ
楽しく会話をする中、優は自主練中に戦記と会った事を語る。その際、優は戦記との会話を思い出しており………?


時は遡ること数時間前。

 

優「はっ!」

 

優はスリーポイントラインの外からシュートを決めた。

 

優「ふうっ………」

 

疲れから息を漏らす優。だが優は、もう一度スリーポイントシュートを放つ。

 

優「(………決まった!)」

 

優の放ったこのスリーも見事にリングへ沈めた。それを見た優は………

 

優「(スリーの精度はあまり狂っていない………)」

 

力豪戦で公にした本来のシュート力が衰えていない事を悟る。その後、近くのベンチに座り、スポーツドリンクを飲みながら、シュガーの手紙を読んでいた。

 

優「(でも………シュガーの手紙にはこんな事が書いてあった………巫魔において、ミドレーユがPFをやるのはやむを得ない事だろうけど、ミドレーユはPGだって得意なはずだよ。それだけの広い視野、遠くからでも決められる正確なシュート力、そして、全国クラスの強敵達を突破出来るドリブル力。この3つを活かして外で戦うのもいいんじゃないかな………って)」

 

実はシュガーの手紙にあったもう1つの追伸には、優にPGでのプレイを勧める内容が書いてあった。

 

優「(しかし、僕は美矢の動きを元に今のプレイスタイルを作ったけど………まだ足りないものがある。チームに指示できるだけの頭脳力。これがPGでは必要不可欠だ………)」

 

優は自身の足りない点を自覚し、どのようにすればその解決策が見つけられるか考えていた。優が頭を悩ませていると………

 

??「隣、失礼するぞ」

 

優の隣に座る男子学生らしき声が聞こえた。

 

優「どうぞ………ん?」

 

優も最初はその声を気にしていなかった。しかし、優にとってその声は聞き覚えがあったようで、声の聞こえた方に視線を向ける。

 

優「えっ………せ、戦記さん!?」

 

なんとそこには守城高校の戦記がいた。

 

戦記「………そんなに驚く事か?」

 

戦記は優の驚きように首を傾げていた。

 

優「驚きますよ! ここから守城高校って遠いはずじゃ………?」

 

優はわざわざ遠くから戦記がやってきた事を驚いていた。

 

戦記「そんな事はどうでもいい。それより、何を悩んでいたんだ?」

 

戦記は自分がやってきた手段や経緯から、優が悩んでいた事に話題を移す。

 

優「えっと………実は僕、アメリカにいるバスケ友達からPGに向いていると言われまして………どうしたらいいのかなって………」

 

優は自身の悩みを吐露する。すると………

 

戦記「アメリカのバスケ友達………お前、そんな友人もいたのか?」

 

戦記はそもそも優にアメリカ人の友人がいた事に驚いていた。

 

優「そこからですか………」

 

優は呆れた様子で、アメリカのバスケ友達シュガーについて話す事となったのだった………

 

 

 

シュガーの手紙に書いてあったもう1つの追伸を読み、PGとしてのプレイスタイルも本格的に覚えようと考えていた。果たして、優の悩みを聞いた戦記のアドバイスは………?

To Be Continued………




次回予告
優の悩みを共に考える戦記。二人で悩む中戦記は、優が他人のプレイから得たものによって今のプレイスタイルが確立した事を知り………?
次回「お前のバスケを探せ」


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第152話 お前のバスケを探せ

前回までのあらすじ
シュガーの手紙に書いていたPGとしてのプレイスタイルを確立させようとする優。その際に偶然戦記と遭遇し………?


戦記「成程………そんなに凄いアメリカ人だったのか。1度手合わせしたかったものだ」

 

戦記にようやくシュガーの説明が済み、話は本題へ。

 

戦記「お前がPGのプレイスタイルを覚えるというのは有りだろうな。インサイド主体ながら異様にパスが上手い選手がいる例も多い。それにお前は外からもシュートが撃てる。尚更活用すべき事だ」

 

戦記は優がPGのスキルを身につける事に賛同してくれた。

 

優「でも、僕はどうすればいいのかなって。戦記さんみたいに堅実なスタイルをすべきなのか、優真や芽衣みたいにパスに重点を置いたスタイルをすべきなのか、美矢や速野さんみたいに自分から積極的に攻めるスタイルをすべきなのか………参考に出来そうな選手が多いぶん、かなり悩まされます」

 

優はそう言って、自身が参考に出来そうなPG達を挙げる。優が挙げた選手達はそれぞれ得意な点を活かした選手達揃いであり、優もそのプレイスタイルを尊敬していた。

 

戦記「そうだな………」

 

戦記は優の選手としての強さを頭に浮かべて考える。

 

戦記「………別に無理に他選手をリスペクトする必要は無いと思うが?」

 

そうして出た結論は、別に他選手の真似事をする必要は無いとのものだった。

 

優「え………?」

 

この返答には優も驚いていた。戦記はベンチにおいてあったバスケットボールを手にするとコートに立つ………

 

戦記「お前が挙げた選手達は確かに強力なPGなのは間違いない。俺も速野や天野美矢のようなプレイスタイルは認めているつもりだからな。しかし、お前はそいつらのようなプレイスタイルに合わせる必要は無い。どの選手にも得手不得手はあるからな」

 

戦記はそう言うと、正確なスリーポイントシュートを放ち、これをゴールに決めた。

 

戦記「俺は湯津や速野からニホントップクラスのPGなどと持て囃されているのは分かっている。しかし、俺はインサイドプレイが苦手だ。ダンクは勿論リバウンドすらそこまで上手くない。だからそういうのは湯津達に任せて俺は基本的にパス、時にはスリーで突き放すスタイルを取っている」

 

戦記は自身のプレイスタイルが形成された理由を語りながらゴール下へと歩き、落ちたボールを拾い上げる。

 

戦記「………だがお前は俺にないインサイドで戦えるテクニックを持っている。それにアウトサイドでも幾らか戦えて天野美矢に近いパス技術だって持っているんだ………それに、巫魔の主力達の強みだってお前には引き出せる」

 

戦記は優の良い点を語りながら彼にボールをパスする。

 

戦記「………全国大会は1ヶ月後。その1ヶ月の間に、お前のバスケを探せ」

 

戦記はそう言うと、優の元へ近づいて彼の右肩を優しく叩く。

 

戦記「………俺が教えられるのはここまでだ。全国大会、期待しているぞ」

 

戦記は優しい声でそう言うと、体育館を後にした。

 

優「戦記さん………」

 

優はそんな戦記の背中を見送る。そして、手に持ったボールに目を向け………

 

優「自分のバスケ………か」

 

そう言って戦記から受けた言葉を胸に刻むのだった………

 

 

 

戦記からのヒントを得た優は、全国大会開催までに自らの答えを探す事を決める。猶予は1ヶ月。その間に優が己を貫けるバスケスタイルは見つかるのか………?

To Be Continued………




次回予告
全国大会に向けた特訓をする為に、積牙達は追試に臨むことに。果たして、追試の行方は………!?
次回「追試の結果は」


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第153話 追試の結果は

前回までのあらすじ
自分の求めるPG像に悩む優。そんな彼に対し、戦記は自分のプレイスタイルを求めるよう助言し………?


それから時間が経ち、積牙達3人の追試日がやってきた。優は体育館でボールをバウンドさせながら、追試の報告を待ち続けていた。

 

優「(全国制覇する為には今以上のレベルアップが必要不可欠だ………その為にも、あのバカ3人には頑張ってもらわないと………!)」

 

優にとってはようやくやってきた全国の舞台。この先に待つ強豪達と戦う為には更なるレベルアップが必要。だからこそ、積牙達の追試による脱落は許されなかった。

 

結衣「キャプテン、積牙くん達大丈夫でしょうか………?」

 

マネージャーの結衣も不安な様子を見せる。

 

伊吹「信じるしかねぇだろ。幾らアイツらがバカだったとしてもバスケ部にとってはいなきゃダメな奴等だからさ」

 

そこへ伊吹が3人を信じるよう促してきた。

 

優真「伊吹先輩、積牙くん達を真っ先に信頼しているんですね」

 

優真はそれを珍しがっていた。まあ伊吹が積牙達に対して見せる態度はお世辞にも良いものでは無いため、優真が不思議がるのもおかしくは無いが。

 

明日香「こういう時、伊吹は信じてるのよ。なんだかんだ、あのバカ集団に結構優しいからね」

 

明日香は伊吹が心の内に秘めている優しさを暴露した。

 

伊吹「う、うっせえ!!」

 

伊吹は顔を真っ赤にしながらそっぽを向いた。

 

優「あはははは!」

 

その光景に優は思わず笑ってしまう。

 

伊吹「笑ってんじゃねぞ優!」

 

伊吹は優に対しても強くあたる。するとそこへ、追試の様子を見に行っていた春香が走り込んできた。

 

春香「はあっ、はあっ………」

 

走り込んできた直後の春香は息を上げていた。しかし、積牙達3人の追試結果は重要。それを理解している優は………

 

優「追試の結果は………?」

 

春香の息切れをそっちのけで、追試結果を問いかける。

 

春香「はあっ、はあっ………全員合格です………3人とも、追試をパスできました………!」

 

結果は3人とも追試をパス。巫魔バスケ部の危機はどうにか乗り越えられた。

 

あずさ「やった!!」

 

ほのか「これでなんとか全国は戦えるぞー!!」

 

あずさ達もこれに喜んでいた。そして優も小さくガッツポーズを見せると………

 

優「なんとか全員で行ける事になってよかった」

 

不安視していた事態を免れた事に対する嬉しさを口にするのだった………

 

 

 

積牙達もなんとか全国大会に出られる事になり、最大の危機を乗り切った巫魔バスケ部。全国大会まであと1ヶ月。この1ヶ月の間、巫魔バスケ部に求められるレベルアップに向けた練習の日々が始まろうとしていたのだった………

To Be Continued………




次回予告
追試を乗り越えた光一達は、バスケ部で合宿を行ってほしいとゆうかに依頼する。ゆうかは今以上のレベルアップが必要であると理解し、自分に場所を指定させるという条件下のもとこれを了承する………
次回「合宿しようぜ」


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第154話 合宿しようぜ

前回までのあらすじ
積牙達の追試。全国の為にも落とせないこの試験をなんとか全員乗り越え、巫魔バスケ部は最大の危機を乗り切ったのだった………


光一「合宿しようぜ、優! 監督!」

 

優達「………え?」

 

追試から戻ってきた3人のうち、光一が真っ先に語ったのは意外過ぎるものだった。

 

光一「え? じゃねえよ! 折角追試を乗りきったんだ。褒美くらいあってもいいじゃんか!!」

 

光一は威張るようにそう言い返した。

 

優「図々しいな………どうします、監督?」

 

優は首を傾げながらゆうかにそう問いかける。

 

ゆうか「うーん、まあいいんじゃないの? 全国大会開始まで時間はあるし………それに皆のレベルアップだって必須事項だもの。合宿をやる価値はあると思うわ」

 

ゆうかはそう言って合宿を了承する。

 

ゆうか「………ただし、場所は私が決める………その条件でいいなら合宿に賛成するわ」

 

一応条件を付けてきたが、大したものでは無いだろうと光一は黙って受け入れる。

 

光一「いよっしゃあ!!」

 

光一は合宿に喜んでいた。

 

美矢「合宿か………中学ぶりだよ」

 

それと同時に美矢も喜んでいた。しかし、ゆうかが合宿をすると言った事について、春香達はどこか暗い表情を見せる。

 

積牙「あの………皆さんの様子がおかしいのですが………?」

 

積牙は首を傾げながら恐る恐る優に問いかける。

 

優「………確かに監督の合宿は効果こそ出る。でもそれは果てしなく過酷なものさ………多分、夜は死ぬぜ?」

 

優はゆうかの合宿方針を口にする。

 

美矢「ああ、それで皆あんなに嫌そうなのか………」

 

どこか他人顔の問題児集団。そんな中、優真は優が涼しい顔をしている事に気付いた。

 

優真「そういえば………なんでキャプテンは落ち込まないんですか?」

 

優真がそう問いかけると………

 

優「生憎とそんなヤワに鍛えられてないし………アメリカや友力で地獄の特訓と称された特訓なんか沢山やって来たしな………」

 

優はそう返した。どうやらゆうかの合宿が地獄である事について、今更なんだとでも言いたげな様子だった。

 

伊吹「優真………コイツの価値基準とかは期待すんな………本当にしんどかったんだからさ………」

 

優の感覚をおかしいと感じている伊吹は、優真に対し優の感想を真に受けないよう助言する。

 

優真「まあ………身構えてはおきます………」

 

なんだかんだ部の中でまともな伊吹のアドバイスを受けた優真は、元気に終わる事は無いのだなという事を予測しながら合宿の日まで待ち続ける事を考えるのだった………

 

 

 

光一の突発的な要求で合宿をする事になった巫魔バスケ部。しかし、ゆうかの合宿は春香達が一瞬にして暗くなる程過酷のようだ。果たして、その過酷さは………!?

To Be Continued………




次回予告
合宿のため、イワテを訪れる巫魔バスケ部。優達が向かったのは、同じく全国大会出場を決めた強豪校で………!?
次回「こりゃ地獄だ」


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第155話 こりゃ地獄だ

前回までのあらすじ
光一達が優とゆうかに合宿をするよう提案。ゆうかは自らが行き先を決めるという条件でこれを快諾したが、昨年の合宿を経験した優以外の部員達の空気は明らかに暗くなるのだった………


合宿をする事が決まってから数日。優達はイワテにやってきた。

 

ゆうか「着いたわ」

 

そして、ゆうかの案内で優達が向かったのは、イワテの奥泉(おういずみ)高校だった。

 

美矢「奥泉ってかなり名門校じゃないか。今年も全国行くとは聞いていたが、そんな凄い学校に知り合いでもいるのか、監督?」

 

美矢は興味本位でそう問いかける。

 

ゆうか「全日本時代の知り合い。あまり頼りたくはないんだけど………」

 

ゆうかがそう呟くと………

 

??「誰が頼りたくないだって?」

 

ゆうかのぼやきについてドスの効いた声で問いかける女性の声が聞こえた。ゆうかが恐る恐る後ろを振り向くとそこには………

 

ゆうか「げえっ!? 沙美!?」

 

ゆうかの知り合いと思われる女性が立っていた。

 

優「………お久しぶりです、姪原監督」

 

ゆうかが驚く中、優は普通に声をかけた。

 

沙美「あら、白宮優くん。1年ぶりね」

 

沙美は優に対しては優しく答えを返した。

 

光一「ええっ!? 知り合いなのか!?」

 

光一は優達の会話に驚いていた。

 

春香「言ってませんでしたっけ………去年の合宿はこちらでやったんですよ?」

 

春香達は2人の普通の会話について理由を述べる。どうやら去年の合宿はこの奥泉高校で行っていたようだ。優と沙美の2人が再会の挨拶をしていると………

 

??「ようこそ、巫魔高校の皆さん」

 

お嬢様のようなロール型の髪型をした女性を始め、3人の女性が優達の元へやってきた。

 

優「お久しぶりです、山吹さん、朱桜さん、伏谷さん」

 

優はその3人も知っているようだった。先程のロール型の髪型をした女性が山吹琴乃、ポニーテールに髪を束ねているのが朱桜三玖、ショートカットの女性が伏谷氷である。

 

琴乃「もう、琴乃でいいって言ったじゃない、優くん」

 

そのリーダー格である琴乃は優に対しそう言った。

 

優「キャプテンとはいえまだ自分は2年ですから………」

 

優はあくまで琴乃達より年下なのもあってか、どこが遠慮していた。

 

春香「琴乃さん、お久しぶりです」

 

次に琴乃へ声をかけたのは春香だった。

 

琴乃「お久しぶり、春香ちゃん。SGとしてはかなり腕を上げたみたいね。イバラキの県大会で行われた試合、春香ちゃんのシュートフォームとかしつこく見てたわ」

 

琴乃は春香とも良好な関係だった。実は琴乃もSGであり、同ポジション故にライバルであると共に仲が良かった。

 

琴乃「そういえば優くん、今回のチームはスタメンがガラッと変わったみたいね」

 

そんな中、琴乃は優に対しスタメンが変わった事を問いかける。

 

優「はい。今年に入ってから強力な仲間達が加わったんです」

 

優はそう言って積牙達の方を向く。

 

琴乃「ふーん。でも、私達に及ぶレベルかしらね?」

 

しかし、琴乃は積牙達のレベルを自分達よりは無いと見ていた。

 

光一「な、なんだと!?」

 

光一は挑発に乗っかるようにそう返答する。

 

琴乃「優くんや春香ちゃんの2人は去年一緒にやった時から全国クラスの資質が見えたけど………その新メンバー達のレベルはいかなるものかしらね」

 

琴乃は積牙達を計るように問いかける。

 

光一「この女があ!!」

 

だが、光一があっさり挑発に乗った為に殴りかかろうとしていた。それを阻止しまいと積牙と美矢が必死に押さえる。そして………

 

優「馬鹿な真似すんなよ」

 

優は呆れるように光一を軽く蹴飛ばした。

 

優「………すみません。このバカ、結構挑発に乗りやすいんです。勘弁してやってください」

 

優は申し訳なさそうに頭を下げる。

 

琴乃「貴方も苦労しているわね………まあでも、そういうキャプテンシーは大事よ。問題児なら尚更ね」

 

琴乃は優に同情すると共にそう言って校舎の方へ歩き出した。

 

光一「なんだとテメー! このやろー!!」

 

光一がまだ琴乃に対し喚き散らかす為………

 

優「いい加減にしろ!」

 

流石の優も怒りのあまり光一にゲンコツをした。

 

光一「痛ってえ!?」

 

光一は頭を抱えながらのたうち回っていた。そして優は………

 

優「(こりゃ地獄だ………色んな意味で)」

 

この先の合宿に対する不安を見せるのだった………

 

 

 

全国大会にも出るイワテの強豪、奥泉高校へやってきた優達。所々で悪い空気が見え、優は不安な様子を見せるのだった………

To Be Continued………




次回予告
奥泉高校の体育館で軽いウォームアップを済ませた後、巫魔と奥泉は練習試合をする事に。しかし、琴乃は巫魔に対し優と春香抜きで試合をしろと言ってきて………?
次回「計ってさしあげますわ」


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第156話 計ってさしあげますわ

前回までのあらすじ
イワテの強豪校、奥泉高校へやってきた優達。だが奥泉の山吹琴乃達3人の選手と光一の雰囲気が悪く、優は頭を悩ますのだった………


不安な部分はあるものの、奥泉の体育館に移動した優達は、まず軽いウォームアップをする事に。しかし………

 

光一「(くそったれ! あの女共〜! )」

 

光一は先程の因縁を根に持っているのか、レイアップ練習の時に………

 

光一「うおおおっ!!」

 

光一は琴乃達に見せつけるように勢いよくダンクをした。

 

優「こら! 光一! 独りよがりな事するなー!!」

 

当然優は光一の勝手な行動に怒る。

 

朱桜「白宮優くん、かなり大変そうですね………」

 

朱桜や伏谷の2人は、優の強い負担に不安な様子を見せる。

 

琴乃「………まあ、彼はその分チームをよく見てると思うわ。私だったら扱いに困るというか………」

 

しかし、琴乃は優のキャプテンシーを評価していた。確かに問題児を含んだチームを引っ張れるのはある意味優の良い所とも言える。そして琴乃はボールを地面に置くと………

 

琴乃「ウォームアップは済んだかしら?」

 

優の方へ声をかけてきた。

 

優「体は温まって来ました」

 

優はそう言ってウォームアップの切り上げを決める。

 

琴乃「よろしい。ではこれから練習試合をしましょう」

 

それを聞いた琴乃は練習試合に誘う。

 

優「分かりました」

 

優も、全国クラスの相手と戦えるこのチャンスに挑む事を決める。

 

琴乃「………ただし、優くんと春香ちゃんは出場禁止。それをお約束して欲しいですわ」

 

………しかし、琴乃は優と春香を抜いた上での練習試合を要求した。

 

積牙「キャプテンと春香先輩抜きで………!?」

 

これには積牙達も驚いていた。

 

光一「なんだお前ら!! 優と春香がいたら勝てねぇとでも言いたいのか!!」

 

光一は優と春香を外せという要求に対しそう問いかけた。

 

琴乃「勝てない………? ふふっ、何か勘違いなさっているみたいだけれど………貴方達の強さはまだ発展途上もいい所よ」

 

しかし、琴乃は負けるからという理由で優と春香を外しはしていない。寧ろ巫魔側に問題がある故にそうしたとばかりに言い返した。

 

光一「なんだとこの女共〜!!」

 

光一はまた殴りかかろうとし、積牙達が懸命に取り押さえていた。

 

優「やれやれ………参ったな」

 

優は光一の行動に頭を悩ませていると………

 

琴乃「じゃあ優くんは審判ね」

 

琴乃はホイッスルを優に渡し、審判をするよう要求した。優はそれに黙って頷いてホイッスルを受け取ると………

 

優「………容赦無い感じで叩き潰して貰って結構ですので」

 

と、琴乃にだけしか聞こえない声でそう言った。

 

琴乃「ええ。元よりそのつもりよ………!」

 

琴乃はそう言い返すと………

 

琴乃「計ってさしあげますわ。現代の巫魔高校の実力を………!!」

 

優と春香を抜いた巫魔を計るようにそう呟くのだった………

 

 

 

奥泉高校と練習試合をする事になった巫魔。しかし優と春香抜きというハンデを背負わされる。果たして、巫魔高校はこの試合で奥泉相手にどこまで通用するのか………?

To Be Continued………




次回予告
優と春香を欠く中でついに試合が開幕。しかし、全国でもかなり強豪の奥泉に序盤から圧倒され………!?
次回「ベスト8の強さよ」


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第157話 ベスト8の強さよ

前回までのあらすじ
奥泉高校の体育館でウォームアップをした後、練習試合をする事に。しかし、この練習試合で巫魔は優と春香を参加させる事を禁じられ………!?


ゆうか「それじゃあ、スターティングメンバーを発表します。今回は相手側の要望で優くんと春香ちゃんは使えないので………美矢ちゃんがPG、SGにあかりちゃん、積牙くんはSFで伊吹ちゃんはPF、Cは光一くんね」

 

巫魔は変則的なスタメンで試合に挑む事に。

 

光一「よし! 俺達だけでもやれる所を見せつけてやろうぜ!」

 

光一はそう言って意気込んでいたが………

 

伊吹「どーだかな………相手は去年全国ベスト8だぜ………?」

 

伊吹はあからさまに落ち込んでいた。というのも、これから戦う相手である奥泉高校は昨年全国ベスト8の強豪。それを知っている伊吹やあかりは不安そうだった。

 

美矢「おいおい、落ち込んでどうすんだよ。私達だってかなりレベル上がったじゃねえか! やってやろうじゃねえか!!」

 

美矢はそう言って戦う意思を見せるが、昨年合宿を経験した部員達の不安は強かったのだった………

 

 

 

それから両チームのスタメンがコートにスタンバイ。両チームのスタメンは以下の通り。

 

巫魔高校(白)

PG 12番 天野美矢

SG 13番 宮野あかり

SF 10番 江野積牙

PF 11番 佐野伊吹

C 17番 相田光一

 

奥泉高校(青)

PG 5番 朱桜三玖

SG 4番 山吹琴乃

SF 7番 伏谷氷

PF 6番 涼月沙耶

C 8番 美屋葉月

 

奥泉高校のスタメンは身長平均が158cm、全員女子選手というハンデを感じるようなスタメンである。

 

優「じゃあ、始めるぞ!」

 

優はそう言ってボールを真上に打ち上げる。

 

光一「だりゃ!!」

 

光一はジャンプボールを制し、ボールは美矢に渡る。

 

美矢「(よし、まずはこっちが先制だ………!!)」

 

美矢はそう言うと先制を狙いに行く為にドリブルで上がろうとする。しかし………

 

琴乃「はっ!?」

 

琴乃は美矢の隙を突いたスティールを見せた。

 

琴乃「速攻!」

 

琴乃は朱桜にパスを回す。

 

優「(………やっぱ速いな)」

 

審判の優は思わず1バスケ選手として試合を見ていた。

 

朱桜「琴乃さん!」

 

朱桜はスリーポイントシューターの琴乃にボールを回す。

 

琴乃「はあっ!」

 

琴乃はジャンプし、最高点でシュートを放つ。琴乃のジャンプは決して高くは無いが、ボールは天高く打ち上がった。

 

あかり「ぐっ!」

 

あかりは懸命なジャンプでボールを取ろうとするが、ボールには到底届かなかった。

 

あかり「(ダメ………! 優くんくらい飛べないと取れない………!!)」

 

高く打ち上がったボールはそのままゴールに決まった。

 

優「おおっ! {アドバンスハイスリーポイントシュート}!!」

 

優は琴乃のシュートを楽しんでしまっていた。

 

明日香「優ー!! 貴方審判でしょー!?」

 

すぐに明日香から怒られ、ハッと我に返るとすぐに笛を吹いた。

 

琴乃「ふふっ、別にいいわよ。ちゃんとファールのコールとかやってくれれば」

 

琴乃は寛容な様子でそう言った。

 

優真「速すぎる………! 美矢さんがあっさり取られて、あんな高いシュートを打てるなんて………!!」

 

とてつもないシュートに優真も驚きを隠せなかった。

 

春香「………優真ちゃんや結衣ちゃんも見ておくといいわ………あれが全国………ベスト8の強さよ」

 

去年の合宿から見てきた春香は、守城や爆速以外では知らなかった全国クラスの強さを見るよう優真達に教えるのだった………

 

 

 

全国クラスの強敵を前に早速圧倒される巫魔。果たして、積牙達はどこまでくらいつけるのか………?

To Be Continued………




次回予告
奥泉には3人の必殺技持ちがいるというとてつもない相手だった。その強力な相手を前に巫魔は翻弄され続け………!?
次回「貴方達の特権じゃないわ」


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第158話 貴方達の特権じゃないわ

前回までのあらすじ
昨年全国ベスト8の強豪、奥泉高校との試合。優と春香を抜いた巫魔は、初っ端から強豪の力を見せつけられ………!?


美矢「なめやがって………積牙、こっちだ!」

 

美矢は開始早々の奇襲に多少イラつきながらも、積牙にパスを要求。

 

積牙「は、はい!」

 

積牙が美矢にボールをパスして試合再開。

 

優「(速攻か………!)」

 

美矢は素早い動きでフロントコートに入る。そこへ朱桜が立ちはだかるが………

 

美矢「積牙!」

 

ボールを積牙へパス。積牙の前には伏谷がおり、積牙のボールをスティールしようと手を伸ばす。

 

積牙「(今だ………!)」

 

しかし、積牙はその隙を突いて伏谷を右側からかわし、そのままジャンプシュートを放つ。積牙が放ったシュートはリングの上を数秒回った後、リングの中へ吸い込まれた。

 

光一「よーし! {ソニックジャンパー}!!」

 

積牙が点を取り返し、点差は1点に。

 

琴乃「必殺技ね………三玖ちゃん、氷ちゃん。見せつけてやりなさい!」

 

巫魔の必殺技を目にした琴乃は、朱桜と伏谷の2人に指示を飛ばすと、朱桜に向けてボールをパスする。

 

春香「三玖さんと氷さんの攻撃………! 皆さん、気を付けて!!」

 

春香は朱桜と伏谷の2人の恐ろしさを知っているのか、警告を促す。

 

美矢「(春香は何を恐れているんだ………? まあいいか、こんな相手、私達が止めてやらあ!!)」

 

春香の警告に首を傾げながら、朱桜のボールをスティールしようとする。しかし、朱桜は突然地面にボールを強く叩きつけ、その反動でボールを高くあげた。

 

美矢「なんだと………!?」

 

突然の事態に困惑する美矢。そこからノーバウンドで美矢を飛び越すボール。朱桜は呆然とする美矢をかわし、落下してきたボールのバウンドを一度挟んだ後、再びドリブルを再開する。

 

優「({バイバウンドリブル}………!! 普段よりも強くボールをバウンドさせて、それによる反動で生じた高さでボールが相手をかわし、自身も相手をかわすことで完成するドリブルだ………!)」

 

優はそれが朱桜の必殺技である事を知っていたようだ。

 

朱桜「氷ちゃん!」

 

朱桜は伏谷にボールをパス。ボールを受けた伏谷はインサイドへ切り込み、ボールを持ってジャンプ。

 

光一「くそっ! 撃たせるか!!」

 

光一は高く飛び上がる。しかし、伏谷はボールを右手で掴むと、ボールにスピンをかけながら、ボールを浮かせるように高く放り投げた。

 

春香「ティアドロップ………!!」

 

遥かに身長差があるとは思えない程の伏谷のシュートは、光一のジャンプによる高さを超えてしまった。

 

積牙「まだだ!!」

 

しかし、戻ってきていた積牙がボールの軌道を捉えた。そこからボールを叩き落とそうとするが、ボールは突如急降下してゴールに入ってしまった。

 

積牙「なあっ!?」

 

積牙が手を振り下ろした時に、既にボールはゴールの中だった。

 

優「(やっぱり………!! {スピニングティアドロップ}だったか………!)」

 

優は伏谷の必殺技についても知っていたようだった。

 

春香「スピニングティアドロップ………! 高く放り投げて相手をかわした後の二段構え対策として予め掛けておいたスピンが時間差でゴールに突き刺さる必殺技………!」

 

春香もこれを知っていたのか、必殺技の詳細について口にする。

 

光一「ちょっと待てよ………奥泉って必殺技持ちが3人もいるのかよ!?」

 

そんな中、光一は必殺技持ちが3人もいる事に困惑する様子を見せた。

 

琴乃「勘違いなさっているようだけど………必殺技は別に貴方達の特権じゃないわ。全国にはゴロゴロいるわよ、必殺技持ちなんて………!」

 

そんな彼に対し、琴乃は全国における現実を叩きつけるのだった………

 

 

 

琴乃の他にも朱桜と伏谷の2人が必殺技を持つ強敵奥泉高校。果たして、巫魔はこの苦しい相手を前にどこまでくらいつけるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔も必殺技を駆使して挑むが、対策を講じられてしまい、思うようにプレイができない。同時に、優と春香がいない事による問題点が浮き彫りになり………!?
次回「隙が見えてきましたわよ」


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第159話 隙が見えてきましたわよ

前回までのあらすじ
琴乃の必殺技に対し、巫魔も積牙の{ソニックジャンパー}で反撃。しかし、奥泉は朱桜と伏谷の必殺技で反撃し、巫魔は突き放されるのだった………


その後………

 

美矢「はあっ!」

 

美矢がレイアップを狙う場面。そこに涼月と美屋の2人が立ちはだかるが………

 

美矢「光一!」

 

美矢はシュート体勢にも関わらず、強引に光一にボールを回す。

 

琴乃「({自由なパス(フリーダムパス)}………! けれど無駄よ………!)」

 

琴乃はそれを見て美矢の必殺技{自由なパス}の発動に反応しつつも、特に心配を見せなかった。

 

朱桜「はあっ!」

 

何故なら朱桜がパスの最中でスティールをしてしまったからだ。

 

美矢「何っ!?」

 

{自由なパス}を止められ、美矢は驚きを隠せなかった………

 

 

 

それから数十秒程、今度は伏谷と光一の1on1に。伏谷が大きく飛び上がると共に………

 

光一「うおおっ! {ウォールブロック}だ!!」

 

光一は体を大きく広げながら飛ぶ事によって相手のシュートコースを防ぐ{ウォールブロック}を発動する。しかし、伏谷は口元に笑みを見せると、再び{スピニングティアドロップ}で、光一の上に向けてボールを放ってしまった。

 

光一「なあっ!?」

 

正面に対しては無敵のウォールブロックも、上からのボールを防ぐ事は出来ない。光一は呆然としながらボールがゴールに入るのを見る事しか出来なかった………

 

 

 

それからまた数十秒後、ボールは積牙に渡り、朱桜と再び1on1。

 

積牙「(今度も決める………!)」

 

積牙はそう考え、再び朱桜の横からドリブルで抜いてからのジャンプシュートを放つ{ソニックジャンパー}を狙う。しかし………

 

積牙「あっ………! うわあっ!?」

 

横への距離感を間違え、朱桜と激突してしまう。

 

優「プッシング! 白10番!!」

 

当然これは積牙のファール。巫魔はここまで3連続で必殺技に失敗してしまった。

 

優真「必殺技が尽く通用しないなんて………これが全国ベスト8の強さなんですか………?」

 

まだ初心者な優真にもわかる程に、現在の巫魔による必殺技は尽く失敗してしまっていた。

 

春香「必殺技が通用しないのもそうだけど………」

 

春香は必殺技が通用しない点も苦戦の理由とは考えていたが………

 

明日香「………! また山吹琴乃の{アドバンスハイスリーポイントシュート}が決まった………!!」

 

再び琴乃のアドバンスハイスリーポイントシュートが決まった事で、春香は苦戦の理由を確信する。

 

春香「今の皆は琴乃さん達が作っている、高身長選手すらかわす高さのシュートに対応出来ていない………去年の時点でもあの御三方の必殺技に対抗出来たのは優さんだけだし………」

 

そう、今の巫魔は琴乃達による3種の必殺技の軸とも言える高さに対応出来ていなかった。春香によると、これを攻略できたのは優だけとのこと。

 

結衣「キャプテンは対応出来るんですね………」

 

逆に優だけは対抗出来る事に結衣は驚いていた。

 

明日香「彼はまあ………規格外だからね………」

 

明日香は答えに困る様子でそう呟いた。一方、巫魔の苦戦を見た琴乃は………

 

琴乃「(ふふっ………隙が見えてきましたわよ………!)」

 

巫魔の隙が浮き彫りになり始め、内心喜びを見せていたのだった………

 

 

 

巫魔は高さで主導権を取られ、苦戦を強いられてしまう。果たして、このまま高さで圧倒されてしまうのだろうか………!?

To Be Continued………




次回予告
高さで圧倒され、ここで優に頼れない苦しい状況に悩まされる巫魔。それでも懸命にくらいつくが………!?
次回「勝負ありましたわね」


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第160話 勝負ありましたわね

前回までのあらすじ
奥泉には3人の必殺技持ち選手がいた。巫魔も懸命に必殺技で挑むが、尽く封殺されてしまい………!?


その後、第2Q、第3Qと続き、積牙達は懸命に琴乃達の必殺技を防ごうとするが………

 

優「プッシング! 白10番! バスケットカウントワンスロー!!」

 

シュートは防げないばかりかチャンスを与えてしまう始末。第4Q残り1分。点差は114vs36と点差はトリプルスコアに広げられていた。

 

美矢「くそっ………!」

 

それでも諦めずにくらいつく巫魔。しかし、高さの面で巫魔は圧倒され、普段ならいるゆうもこの試合では頼れず、高さを譲る事となってしまう形で失点を繰り返していた。

 

美矢「(この試合ほどキャプテンの高さが欲しいと思った事はねぇ………! それ程高さという面で試合の流れ握られちまってるし………!!)」

 

美矢は試合の現状を理解し、そのように呟いた。そして、試合終了間際、ボールは琴乃に渡る。

 

琴乃「勝負ありましたわね………!!」

 

琴乃はそう言って再び{アドバンスハイスリーポイントシュート}を放ち、ボールを高く打ち上げる。当然の如くあかりはこれに届かない。

 

美矢「まだだ!!」

 

美矢が辛うじてヘルプに回る。しかし、間一髪ボールには届かずにボールは無慈悲にもゴールへ吸い込まれてしまうのだった。

 

優「試合終了! 117vs36で奥泉高校の勝ち!」

 

試合は奥泉高校の圧勝。

 

光一「くそっ!!」

 

光一は悔しさのあまり地面に拳を打ち付ける。

 

琴乃「優くんや春香ちゃんがいないとこのザマなのね。まあでも、良い機会になったと思うわ。全国っていうのはそう簡単に勝てる世界じゃないってことは………」

 

琴乃は積牙達に対し現実を叩きつけた。

 

伊吹「だとしても本気過ぎねぇか? 最後まで舐めプもなかったし………」

 

伊吹は試合終了まで手を抜かなかった琴乃達奥泉高校の選手達に向けて首を傾げた。

 

琴乃「ああ、だって叩き潰すつもりだったもの。貴方達のキャプテンもそれを理解した上でこんな試合の審判をやっているのよ」

 

琴乃達は、この試合で徹底的に巫魔を叩き潰すのが目的であると、ようやく積牙達の前で明かした。

 

光一「そうなのか!?」

 

光一は驚きのあまり優に視線を向ける。

 

優「………積牙や光一、美矢………それに優真や結衣ちゃんには知っておいて欲しかったんだ。全国の厳しさを………その強さを………」

 

優は、昨年奥泉との合宿を経験していない彼等に全国の現実を知ってもらう為に了承した事を明かす。

 

優「だから………この合宿には死ぬ気で取り組んで欲しい。全国制覇を本気で信じるなら………尚更ね」

 

優はそれを踏まえた上で合宿に本気で取り組む事を依頼するのだった………

 

 

 

合宿という形で全国の厳しさを知る事になった巫魔高校。果たして、この合宿においてどれだけのレベルアップが出来るのだろうか………?

To Be Continued………




次回予告
合宿にくらいつく形で取り組む巫魔の選手達。そんな中、積牙達は優と琴乃達の1on1対決を目にし………?
次回「負ける気がしない」


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第161話 負ける気がしない

前回までのあらすじ
奥泉との試合にボロ負けしてしまう巫魔。優にとって、この試合は巫魔が全国の厳しさを知るきっかけとする為に黙って受けたものであり………!?


奥泉との試合で全国の厳しさを知った巫魔。これによって練習に一層熱が入る。

 

光一「うおおっ!!」

 

光一も真面目にレイアップの練習など、基礎をするようになった。目立ちたがり屋の彼の以外な変化に優は驚いていた。

 

琴乃「巫魔は1つ成長したわね」

 

琴乃は、優にそう声をかける。

 

優「まだまだですよ。昨日の練習試合はあくまでチームの精神を成長させただけ。次は実力を伸ばさないとって感じです………僕含めて」

 

優はそう言って、自分も含めてチームのレベルアップを考えていた。彼の向上心を見た琴乃は………

 

琴乃「優くんのレベルアップか………ならちょっと1on1に付き合ってよ。うちにとって、優くんは強敵なんだよね」

 

優に対し1on1の対決を依頼。

 

優「分かりました」

 

優はそれを快く受け入れた………

 

 

 

美矢「はっ!」

 

その頃、春香が主体となってシュート練習を繰り返していた。

 

春香「(光一くんが珍しく文句無しでやってくれているのは助かるわね………)」

 

副キャプテンからしても、光一の地道な練習は負担が減って助かるようだ。

 

光一「ああっー!!」

 

しかし、光一はすぐに別の方向を指差した。

 

春香「(………前言撤回かしら)」

 

春香は内心その安堵を撤回しかけた。しかし、光一の指差す方を見ると、春香達の注目は自然と変わった。春香達が見たのは、優と朱桜が1on1をしている光景だった。

 

朱桜「(マークが手堅い………!)」

 

朱桜は巫魔戦で見せた強気の攻めが嘘のように慎重だった。

 

朱桜「(こうなれば………!)」

 

朱桜は強くボールを打ち付け、高いバウンドでゆうの上からボールをかわさせる{ハイバウンドリブル}を発動………

 

優「そう来るのを待っていたんだ!!」

 

しかし、優は持ち前の高い跳躍力で高く打ち上がったボールをキャッチしてしまった。

 

朱桜「ああっ!?」

 

これにより、朱桜の必殺技は軽く防がれてしまった。

 

美矢「私が止められなかったドリブルをいとも容易く………!?」

 

美矢は優の跳躍力に驚きを隠せなかった………

 

 

 

更に続く優と伏谷の1on1。伏谷は上手くインサイドに入り込むと………

 

伏谷「決める!」

 

伏谷は高く飛び上がり、右手でスピンをかけたティアドロップを放つ。

 

積牙「{スピニングティアドロップ}………!!」

 

光一と積牙の2人がかりでも止められなかった伏谷の必殺技。しかし、ゆうはこれに対しても持ち前の跳躍で高く飛び上がるとボールをキャッチ。そこからスピンがかかるものの、優は力をかけるのみでそれを止めて見せた。

 

伏谷「くっ………!」

 

自慢の必殺技が止められ、伏谷は悔しそうだった。

 

光一「嘘だろ!?」

 

一方の積牙や光一達も、優の実力に驚いていた。

 

 

 

そして優と琴乃の1on1。琴乃は優からボールを受け取ると………

 

琴乃「(初っ端から行きますわ!)」

 

スリーポイントラインの外に琴乃は奇襲のように高いスリーポイントシュートを放つ。

 

春香「{アドバンスハイスリーポイントシュート}………!」

 

あかりがまるで取れなかった琴乃のスリーポイントシュート。

 

優「目の前で見ると確かに凄いシュートだ。でも、不思議と負ける気がしない!!」

 

しかし、フリースローラインに立っていた優はその場からジャンプ。なんと、これでも圧倒的なジャンプ力でボールの高さに届いて見せた。

 

美矢「嘘だろマジかよ………!?」

 

ここまで来ると最早春香以外の巫魔の選手達ですら理解出来ない境地だった。優はボールをキャッチし、これを上手く止めて見せた。

 

琴乃「くうっ………! 参りましたわ!」

 

これには流石の琴乃も敗北を認めた。

 

優真「凄い人だとは思っていましたけど………まさかここまでなんて………」

 

そして、巫魔の選手達も驚いていた。優の強さが抜きん出ていたのは理解していたが、その強さは全国ベスト8相手にも引けを取らないものだった。

 

春香「優さんは中学時代までの経験、そしてこのバスケ部に入った時の必死な特訓であの実力を身に付けて………巫魔のエースとして全国でも遜色ない強さを手に入れたのよ」

 

優の理解者である春香は、優の全国区の強さをそのように評した。しかし、これを聞いた巫魔メンバーは………

 

積牙達「(貴女もスリーポイントシュートに限ってはおかしいだろ………)」

 

春香のスリーポイントシュートの異次元さから、優だけ強そうに語る春香の語りに、どこか納得のいっていない様子を見せたのだった………

 

 

 

優の実力が思わぬ形で今の積牙達に明らかとなった。果たして、これを知った積牙達の目標はどのようなものとなるのか………?

To Be Continued………




次回予告
練習を終えた後、巫魔の選手達は寝室代わりの校舎で睡眠をとっていた。しかし、そんな中で優と春香の2人は、自主練習をしていた。そこへ琴乃が駆け付け………?
次回「練習熱心ね」


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第162話 練習熱心ね

前回までのあらすじ
練習試合の大敗から、真面目に練習へ取り組む巫魔バスケ部。そんな中、春香達は優が琴乃達3人の必殺技を破ってしまう圧倒的な強さを見せたのだった………


それから数時間。日が落ちた事でこの日の特訓は終了。優達は校舎の教室などを借りる形で睡眠をとる事になっていた………

 

 

 

だが、優と春香の2人は体育館に戻ってきていた。そして、体育館の扉を閉めると、2人とも自主練習を始めた。

 

優「(昼間は思ったように自分の練習出来なかったからな………今からは個人練習だ………!)」

 

優は戦記に言われた自分のバスケを見つける為、フットワークとドリブルの基礎練習。そして、シュートはレイアップ、ジャンプシュート、スリーポイントシュート、ダンクと、様々なものを練習していた。黙々とスリーポイントラインの外からシューティングをしていた春香は、優が新たなプレイスタイルを求める姿を応援しつつも、優のプレイを見ていた。すると………

 

琴乃「あら、やっぱりいた」

 

そこに琴乃が訪ねてきた。

 

優「琴乃さん………!!」

 

優達は琴乃がやってきた事に反応する。

 

琴乃「相変わらず練習熱心ね。それに春香ちゃんも」

 

琴乃は2人の練習熱心な様子を褒めた。

 

優「分かっていたんですか………? 僕達が自主練していたこと………」

 

優は何の前触れもなく現れた琴乃に対しそう問いかける。

 

琴乃「まあね。2人はどんなに強くなっても更に強くなろうとするのは知っているから」

 

琴乃は2人の性格を考慮した結果、わざわざこんな時間に来たらしい。

 

琴乃「それで、今年の2人はどんな成長を望むのかしら?」

 

琴乃は優達に対し、今求める成長が何かを問いかける。

 

優「僕は………PGのスキルを身につけたいんです」

 

優は琴乃に対し今の自分が目指すスキルを語った。

 

琴乃「PG………!? ………去年の優くんからは想像も出来なかったわ」

 

去年の優を知っている琴乃からしても、PGのスキルを求める優は想像していなかったようだ。

 

優「はい。守城の戦記さんとも話して、やっぱり僕はPGのスキルも身につけたいと思いまして………」

 

優は経緯を説明。すると琴乃は………

 

琴乃「戦記くんと話せるの!?」

 

戦記の名前が出た途端、優が戦記と会話できる存在である事に驚いていた。

 

優「あ、あはは………」

 

優は琴乃の言葉に驚きながら、苦笑いを浮かべていた。

 

琴乃「………おっと、失礼。取り乱したわ」

 

少しして琴乃は落ち着きを取り戻し………

 

琴乃「春香ちゃんはどうかしら? またスリーポイントシュートの練習?」

 

今度は春香に対して成長目標を問いかける。

 

春香「私は………」

 

春香は少し黙り込んだ後………

 

春香「………PGの補助も出来るSGになりたいです」

 

自分の目標を口にするのだった………

 

 

 

自主練習の中で優は自分のバスケを探し求めるように練習をしていた。1人黙々とシューティング練習をしていた春香も、これまでの試合経験から、SGとしてスリーポイントシュートだけでなく、PGの補助スキルについても求めるようになっていた。果たして、それを聞いた琴乃の反応は………?

To Be Continued………




次回予告
琴乃は春香の目標には驚きつつも、その協力をすると申し出てくれた。そして琴乃は、SGの補助がどのような意味を持つのかを春香に説明しだし………?
次回「SGってのはね」


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第163話 SGってのはね

前回までのあらすじ
練習が終わった後、優と春香は自主練習をしていた。そこへやってきた琴乃は、2人の求める成長を聞き………?


琴乃「………へぇ、意外。ピュアシューターとしてなら間違いなく全国トップクラスなのに、別の進化を求めるのね」

 

春香の求める成長が、PGの補助をするSGというものであった。これには琴乃も意外そうな様子を見せるが………

 

春香「はい。これまでの県大会、マークされなかった試しが無いですし………相手によってはスリーが狙えない場面もありましたし………」

 

春香はピュアシューターのままでは、この先のマークが厳しくなった時に対処が出来ないと考えていた。

 

琴乃「確かにそうね………仮に春香ちゃんが相手なら私も対策するでしょうね」

 

琴乃は春香の考えを理解する。

 

琴乃「じゃあホワイトボード持ってくるわね」

 

直後、琴乃はホワイトボードを取りに行った………

 

 

 

その後、ホワイトボードを持ってきた琴乃は、マグネットを使いながら説明をする事に。

 

琴乃「SGってのはね、外からのシュートによる得点力とPGの補助が求められるポジションなの。そして、春香ちゃんの言う通り、得点力のあるスリーポイントシューターはマークされがちなの。特に巫魔にとって春香ちゃんの得点力はとてつもなく大きい存在だから春香ちゃん1人が自由に動けなくなるだけで巫魔の得点力は落ちるのよ。でも、もしこの時春香ちゃんが補助出来たとしたら………巫魔の流れは大きく変わってくるわ」

 

琴乃はSGとはそもそもどのようなポジションなのかを改めて春香に説明する。それを聞いた春香は改めて理解をしながら琴乃の話を聞いていた。

 

琴乃「そして、指示や補助の出来るSGにはとあるものがある。それは何か分かるかしら?」

 

琴乃は春香に対し、補助が出来るSGとあるものを問いかける。

 

春香「えっと………頭脳力ですか………?」

 

春香は頭脳力と答えた。

 

琴乃「残念。まあ確かに頭脳力も大事だけど他に必要なものがあるのよ」

 

琴乃は春香の答えに一部納得しつつも、必要なものは他にあると考えていた。

 

春香「必要なもの………?」

 

春香は首を傾げる。

 

琴乃「………視野の広さよ」

 

琴乃が答えたのは、視野の広さだった。

 

琴乃「優くんや戦記さんとかがそうなんだけど、視野が広い方が補助しやすいし、相手にとっては奇襲にもなりうるのよ。視野が広い事の便利さは優くんもよく分かっているはずよ」

 

琴乃は優に対し視野の広さの利便性を問いかける。

 

優「確かに………」

 

優は琴乃に対し頷くように答えた。

 

春香「でも………視野の広さなんてどうやって………?」

 

春香は首を傾げる。

 

琴乃「こういうのは、実際にやってみた方が早いわ。2人とも、カラーコーン持ってきて」

 

琴乃は春香に広く視野を持ってもらう特訓をすると決めた。その為に、優達は準備を始めるのだった………

 

 

 

春香の求めるSG像作成の為、琴乃が協力する事に。果たして、視野を広く持つ為の作戦とは………?

To Be Continued………




次回予告
カラーコーンを両チーム選手に見立てて視野の広さについて特訓する春香。視野の広さというものが分からず悪戦苦闘するが………?
次回「目で追いかけちゃダメよ」


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第164話 目で追いかけちゃダメよ

前回までのあらすじ
春香の求めるSG像を説明する為、改めてSGというものを確認する優達。そして、視野の広さを知る為に実戦練習をする事に………?


琴乃「さて、視野の広さを求める為に優くんに相手をしてもらうわ」

 

琴乃はカラーコーンを置いた後、優と春香の1on1形式でやることに。

 

琴乃「ルールは簡単。私がスリーポイントラインの内側に入ったら、私にパス出せばOKよ」

 

琴乃は簡単に特訓ルールを説明した。

 

春香「簡単なルールですね………?」

 

春香はあまりにも単純なルールであるため首を傾げた。

 

琴乃「でも、カラーコーンを置きながらやるとそう簡単には行かないわよ? それに、相手は優くんだからね………」

 

琴乃は単純である事は認めつつも、難度が高い事を指摘する。

 

琴乃「じゃあ、行くわよ!」

 

琴乃はそう言うと、春香にボールをパスし、インサイドに入る。

 

春香「(よし、ここでパスを………!!)」

 

春香はそう考えてパスを出そうとする。しかし………

 

優「おっと、させないぜ!」

 

優は体を広げ、パスをさせない。

 

春香「っ………!」

 

春香はパスを出せずにいた。そんな中、インサイドの所々に置いてあるカラーコーンが春香の視界に映った。

 

春香「(………琴乃さんの言う通り、カラーコーンが置いていると見えにくい………!)」

 

そんな中琴乃が右斜めの方にいる事に気付く。

 

春香「(琴乃さん………!)」

 

春香は琴乃にパスを出そうとするが………

 

優「だりゃっ!!」

 

優は春香の手からボールを叩き落とした。

 

春香「ああっ!?」

 

春香は驚きを隠せなかった。

 

琴乃「………流石ね」

 

琴乃は優の容赦の無いスティールに感心を見せる。

 

琴乃「はい、もう1回! あと、目で追いかけちゃダメよ!!」

 

琴乃はアドバイスをしながらもう一度やるように呟く。

 

春香「(今度こそ………!)」

 

春香はボールを手にすると………

 

春香「(今度は動いてかわしてみよう………!)」

 

今度は動いて優の隙を突こうとする。

 

優「遅い!」

 

しかし、優のスピードの方が速すぎてかわせない。

 

春香「ぐっ………!」

 

それでも何とか隙を突こうと優の左脇の方へ動いてみせるが………

 

優「………うわっ!?」

 

その際に優と接触。優は後ろから倒れてしまう。

 

春香「あっ………!」

 

これが実際の試合なら文句無しでプッシング。春香も足が止まってしまう。

 

春香「だ、大丈夫ですか!?」

 

春香は慌てて優に駆け寄った。

 

優「大丈夫大丈夫………」

 

優は軽く体を起こした。

 

春香「(………スリー以外で貢献した事はあまり無いから、視野を広く持つのがとても難しい………そう考えると、優さんやPGの皆さん、力豪の笹掛さんのように広い視野を持つ人って凄いのね………)」

 

この特訓の中で、春香は広い視野を持つ選手達を改めて尊敬する様子を見せたのだった………

 

 

 

春香は広い視野を求める特訓をする中で、その難度の高さを知る。果たして、春香は広い視野を身につける事が出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
夜が更けるまで特訓が続くが、春香は優に勝てずにいた。しかし、周りを見る目はいつしか自然と広くなっていて………!?
次回「広く見えます」


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第165話 広く見えます

前回までのあらすじ
視野を広く持つ為の春香の特訓が始まる。優との1on1から琴乃にパスするという単純にして難しい特訓に春香は大苦戦し………!?


それから数時間、夜が更けるまで特訓を続けるが………

 

優「はあっ!」

 

結果として春香が琴乃にパスすることは1度たりと出来なかった。

 

優「ふう………」

 

理由は言うまでもなく、優が春香のボールを全てスティールして見せたからだ。

 

春香「はあっ、はあっ………」

 

春香は苦しそうに息をあげる。

 

琴乃「じゃあ、今日はここまでにしましょう。夜ももう遅いしね」

 

琴乃の言葉で、この日は終わりにすることに。

 

春香「はあっ、はあっ………」

 

春香は疲れのあまり立てずにいたが………

 

優「………大丈夫か?」

 

優は春香に手を伸ばした。

 

春香「ありがとうございます………!」

 

春香は優の手を掴んで立った。

 

琴乃「近所にいいお風呂屋さんがあるの。今日はそこで汗を流しておくといいわ」

 

琴乃は近所に銭湯がある事を教えた。

 

優「銭湯か………たまにはいいかもね」

 

優は久しぶりの銭湯を楽しそうにしていた。

 

春香「………あら?」

 

そんな中、春香は何か視線を感じた。

 

優「うん? どうしたんだ、春香?」

 

優は首を傾げる。春香は視線を感じた方に歩き出す。するとそこには………

 

春香「あっ! 美矢ちゃんが無くしたって言ってたタオル! よかった、ここに落ちてたのね………」

 

美矢のタオルが落ちていた。置いてあったのは体育館の端にあった為、優達も気づいていなかった。

 

優「よく分かったな………僕は気づけなかったよ」

 

優は、春香が美矢のタオルを発見したことを褒める。

 

琴乃「でも、普通は気づけないところにおいてあったじゃない。なんで分かったの?」

 

琴乃はそう言って問いかける。

 

春香「なんというか………広く見えます。この体育館の中が………」

 

春香の返答は、視野が広くなったというものだった。それを聞いた琴乃は………

 

琴乃「………特訓は大成功ってことね」

 

特訓の成功を認めた。

 

春香「せ、成功………なんですか!?」

 

春香は思わぬ形での特訓成功に驚いていた。

 

優「成程………あの特訓の成功の有無は正直どうでもよかったと………本当の目的は春香に広い視野を持たせること………そうですよね、琴乃さん?」

 

優は琴乃が課した特訓の真意を問いかける。それを聞いた琴乃は頷き………

 

琴乃「SGはPGみたいに長くボールを持つわけじゃないしね。本当に必要なのは、実践の中で視野の広さを活かしてどのようにチームに貢献するかが必要なのよ。まあそれは春香ちゃん次第だけどね」

 

SGの在り方を春香に伝授するのだった………

 

 

 

特訓の課題を達成する事は出来なかったものの、春香は広い視野を手に入れた。果たして、この広い視野を活かせる日はいつ来るのか………?

To Be Continued………




次回予告
翌日、ミニゲームを行う優達。その中で春香の視野の広さが活きてきて………!?
次回「こりゃ驚きだ」


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第166話 こりゃ驚きだ

前回までのあらすじ
優との特訓で、遂に彼をかわして琴乃へパスは出来なかった春香。しかし、春香は特訓の中で広い視野を手に入れていて………!?


翌日、優達は5vs5の試合形式によるゲームをしていた。両チームのメンバーは以下の通りである。

 

優チーム(黒)

PG 18番 影美優真

SG 13番 宮野あかり

SF 9番 闇光レイ

SF 19番 夢野明日香

PF 4番 白宮優

 

春香チーム(白)

PG 12番 天野美矢

SG 5番 白宮春香

SF 10番 江野積牙

PF 11番 佐野伊吹

C 17番 相田光一

 

優「よし! いいぞ!! 攻めろ!!」

 

このゲームにおいて優は、優真のサポートに回りながら、他の選手達を活かすプレイをしていた。スリーポイントラインの外にいた優は、優真からのパスを受けた。

 

伊吹「(スリーか………!?)打たせねえ!!」

 

伊吹が優のシュートをブロックしに走ってきた。しかし、これによって明日香がフリーになったのを優は見逃さず、鋭いパスを送った。

 

明日香「ナイス!」

 

明日香はそのままレイアップでゴールを決めた。

 

美矢「(いや、参ったな………キャプテンに外があるせいで、注意を強くしなきゃなんねぇ………キャプテンが味方でよかったって思えるくらい脅威だぜ、ありゃ………)」

 

美矢は優がオールラウンダーとして機能するようになり、更にシュート、オフェンス、ディフェンスのどれも最強クラスの強さを持っている事を恐れていた。しかし………

 

春香「まだまだ! 1本! じっくり返しましょう!!」

 

そこで春香が声を出し、チームの士気を維持する様子を見せる。

 

光一「(そういえば、ゲームの中でやけに春香ちゃんの口数が増えたな………まるで力豪のSGみたいだ)」

 

光一にとって、その光景は力豪のSG笹掛を思い出させていた。そして春香から美矢にボールが渡り………

 

美矢「よし! 速攻!!」

 

美矢は速攻をかける。

 

優「戻れ!」

 

優も素早い判断で優真達をディフェンスの意識へと変える。そして美矢の前に優真が立ちはだかるが………

 

美矢「甘いぜ!」

 

美矢は優真を軽々と抜いた………

 

優「どっちがだ!!」

 

だがそんな事など優にとっては織り込み済み。美矢がドライブで優真を抜いた際に生じる一瞬の隙をスティールで突こうとしていた。

 

美矢「やべっ!」

 

美矢は強引に春香の方へパスをする。

 

優「あかり! 春香にスリーを打たさせるな!」

 

優は春香にボールが渡ったのを見て、すぐに警戒心を見せる。優の指示を受けたあかりは、春香にシュートさせまいと立ちはだかる。

 

春香「ふうっ………」

 

だが、あかりのディフェンスを前に、はるかは恐ろしく冷静だった。

 

美矢「よし! こっちだ、春香!」

 

そんな中、優から距離を取り、体制を立て直した美矢がパスを要求。

 

優「させるか!」

 

優は美矢のマークを続行。しかし、春香は美矢そっちのけで積牙にパスをした。この時の積牙はフリーだった。

 

優「しまった!」

 

美矢を囮にした春香の策に嵌ってしまった優達。積牙は冷静にジャンプシュートで得点を決めた。

 

積牙「よーし!」

 

積牙は得点を決めた事を喜んでいた。しかし、それ以上に春香のプレイングに、体育館にいる選手達が驚いていた。

 

優「(こりゃ驚きだ………積牙がフリーである事を見抜き、美矢を囮に使うなんて………昨日の特訓の効果は想像以上だな………)」

 

優は先日の特訓の効果が出ていると賞賛すると共に、春香の恐ろしい成長速度を実感するのだった………

 

 

 

特訓の成果を存分に発揮する春香。その力は優達を大きく驚かせるものだった。春香の大成長により、巫魔はまた1つレベルを上げたのだった………

To Be Continued………




次回予告
春香の視野が大きくなった事を危惧する優は、珍しくディフェンスで春香とマッチアップをする。優の激しいディフェンスを前に、春香は苦し紛れにシュートを放つ………
次回「今の手応えは」


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第167話 今の手応えは

前回までのあらすじ
試合形式によるゲームをする優達。その中で春香の広い視野が優チームを引っ掻き回し………!?


その後、前半戦が終わった時にはスコアは22vs34で春香チーム有利という意外な展開に。

 

琴乃「(面白い展開になってきたわね………)」

 

琴乃は、春香の視野が存分に活かされている事を面白く見ていた。

 

明日香「参ったね………春香に翻弄されてばかりだし………」

 

優チーム内では春香に翻弄されている事を驚いていた。そんな中、優は………

 

優「なあ、僕に春香との1on1をさせてもらえないかな?」

 

春香との1on1を希望する。それを聞いた4人のうち、優真とあかりは何も言わず首を縦に振る。

 

レイ「策はあるの?」

 

それに対しレイと明日香の2人が首を傾げる。

 

優「まああるっちゃあるよ」

 

どこか曖昧な言い方だが、優はレイと明日香の2人に対しそう説得するのだった………

 

 

 

そして始まる後半戦。

 

美矢「春香!」

 

美矢は春香にボールをパス。それと同時に優が春香の前に立つ。

 

朱桜「優くんと春香ちゃんのマッチアップ………!」

 

優と春香の2人がマッチアップし、注目が集まる。

 

春香「(優さん………!!)」

 

流石の春香も優が相手となると緊張感を強めた。優は春香からパスができないよう春香にフェイスガードで対抗。春香は視野の広さを活かそうとするが、視野が広いのは優とて同じ。春香の手を先読みしながらパスを出させないようにディフェンスする。

 

美矢「(春香が攻めあぐねている………! 流石にキャプテンとのマッチアップはキツイか………!?)」

 

美矢から見て、優vs春香となれば優の方が有利なのは予想出来ていた。その為、攻めあぐねる春香を見て焦ってはいたが………

 

美矢「(かと言って私が優真からマーク外すわけにはいかないし参ったな………)」

 

だからといって優真へのマークを外す事も出来なかった。初心者ながらもパスやシュートが一級品の彼女を放置すれば、春香チームにとって不利益になりかねない。

 

春香「(こうなったら打つしか………!)」

 

春香は苦し紛れにスリーを打つ。その打点は恐ろしく高くなっていた。

 

優「(高過ぎる………!!)」

 

普通のスリーなら難なくブロック出来る優でも打点が高過ぎるせいで、ブロックが困難だった。

 

明日香「リバウンド!!」

 

春香本人含めてこんなシュートが入るわけないと考えていたが、春香の苦し紛れなシュートは偶然にも入ってしまった。

 

優「うええっ!? そんなんありかよ!?」

 

流石の優も驚きを隠せなかった。それと同時に春香も驚いていた。同時にシュートに大きな手応えを感じ………………

 

春香「(今の手応えは………!?)」

 

春香が放った高打点シュートは、偶然で片付ける事が出来ないものであった………

 

 

 

春香の視野を活かさせない為に優が動く中、春香は高打点のスリーに確かな手応えを感じていた。果たして、この手応えを活かせる時は来るのか………?

To Be Continued………




次回予告
春香の奇跡的なスリーを見た優も負けじと反撃。その際、力豪戦の時と同じようにツーハンドタンクを決めたのだが、その威力は大きなもので………!?
次回「必殺技にできるかも」


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第168話 必殺技にできるかも

前回までのあらすじ
視野の広さを活かした春香に振り回される中、優が春香にマッチアップ。上手く抑え込めたと思いきや、春香が苦し紛れに打ったスリーが決まり………!?


優真「だ、大丈夫ですか、キャプテン………?」

 

優真は慌てる様子を見せる。

 

優「………面白ぇじゃねえか………!」

 

しかし、負けず嫌いの優は燃えていた。

 

琴乃「流石優くんね………」

 

優の諦めない姿勢を賞賛する琴乃。

 

優「優真! こっちもやり返すぜ!!」

 

優はそう言うと、珍しく自分から前線に走り、春香達が戻れない中で、優は完全にノーマークで前線に走っていた。

 

優真「キャプテン!!」

 

優真は優に素早いパスを回す。

 

優「よし来た!!」

 

優はボールをキャッチすると、完全にノーマークの中でツーハンドダンクを叩き込む。

 

優「よし………! って、あれっ!?」

 

だが、リングにぶらさがって2秒程。ゴールリングが壊れてしまった。

 

優「あああっ!! ご、ごめんなさい!!」

 

優は大慌てで琴乃達に頭を下げる。

 

琴乃「だ、大丈夫よ。寧ろ、うちのゴール壊せるなんて凄い破壊力よ………必殺技にできるかも………!!」

 

琴乃も流石にゴールが壊れたのには動揺した。

 

琴乃「ちょ、ちょっと待ってね………三玖ちゃん、電話を繋いで頂けるかしら………!?」

 

琴乃は慌てた様子で朱桜に電話を取らせると………

 

琴乃「………もしもし、貴女がたの作ったゴール壊れたんですけど!? 耐久性どうなっているんですの!?」

 

バスケのゴールを作った業者に苦情を入れた。

 

琴乃「………え? お相撲様がぶら下がっても壊れないように作ってる? ………まあとにかく! 近いうちに修理お願い致しますわ!!」

 

だが、業者からはゴールが壊れたという苦情が想定外に思える程耐久性には自信があったようで困っていたようだ。

 

優「ええっ………僕かなりマズイことしたんじゃ………!?」

 

優は大きく取り乱していた。

 

琴乃「だ、大丈夫だから………!!」

 

ゴールを壊したのが故意ではなく、それも壊したのが優だったのもあって、琴乃は怒りたくても怒れなかった。優も必死に謝り続ける中、頭の中で先程の琴乃の言葉が頭をよぎった。

 

優「………必殺技………?」

 

優は首を傾げる。

 

琴乃「お、収まった………?」

 

優が落ち着いた事に安堵する。

 

優「琴乃さん、必殺技ってどういう事ですか!?」

 

だが直後、優は琴乃に必殺技に昇華できる事を聞く。

 

琴乃「え、ええ………そうね………まず優くんがどうしてゴールを破壊できる程の破壊力があるのか………その考察から始めましょう………」

 

琴乃はそう言って、困惑しつつも優の疑問に協力する事になるのだった。そうなった事から、ゲームの結果は中断のまま有耶無耶になってしまったのだった………

 

 

 

ゲームの結果こそ有耶無耶になってしまったが、春香の成長と更なる潜在意識が露見した。更にこれまで厳密に必殺技が無かった優に必殺技が誕生する可能性が見えたのだった………

To Be Continued………




次回予告
光一よりも華奢な優の方がダンクの威力は上だった。その理由は優の体幹や筋肉の使い方が理由で………?
次回「そういう事か」


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第169話 そういう事か

前回までのあらすじ
優はツーハンドダンクによって思わずゴールを破壊してしまう。しかし、その威力は必殺技に昇華出来るものであると見られ………!?


それから1時間後、琴乃は先程のゲームのビデオ、そして、同じくゴールを破壊した力豪戦時の映像を確認して戻ってきた。

 

琴乃「先程のダンクなんだけど………はっきり言って17番くんのダンクより威力があると分かったわ」

 

琴乃が真っ先に触れたのは、光一よりも優のダンクの方が強い威力を持っているようである。

 

光一「はあっ!? んなアホな!! 優は俺よりずっと小柄なんだぞ!? どうしてそんな結論が出るんだよ!?」

 

光一は半分怒るようにそう返した。

 

琴乃「そうね………そもそも不思議だったんだけど、優くんはPFとは思えない華奢な体格で、よくもまあパワープレイ出来るなと思っていたのだけど………しっかり調べて見たら原理が理解出来たわ」

 

琴乃はそう言って、優がパワープレイの出来る選手である理由を理解した。

 

琴乃「優くんは体幹が強いのと筋肉の使い方がとてつもなく上手いのよ」

 

その理由に、体幹の強さや筋肉の使い方を挙げた。

 

美矢「体幹の強さに筋肉の使い方………ああ、成程、そういう事か」

 

この理由について真っ先に納得したのは美矢だった。

 

積牙「えっと………つまりどういう事ですか?」

 

積牙は首を傾げる様子を見せる。

 

美矢「キャプテンは全身の力を満遍なく使ってるって事だよ。確かに単純なパワーなら光一の方が上だ。筋肉量も含めてな。でもキャプテンは全身の筋肉を適切に、そして最大限に使えるだけのテクニックがある。だからこのお嬢様はキャプテンのダンクの方が強いって言ったんだよ」

 

美矢は琴乃の言葉について解説を入れる。

 

春香「そうだったんですね………ダンクのみしか決めていない優さん時代の時点で、相手からファールを貰いながらシュートを決めるのが上手いなと思っていましたけど………」

 

その言葉で春香は、優が俗に言う3点プレイを得意とする選手であった理由を理解する。

 

優「昔、修也からリバウンドの事とかインサイドのプレイングについて教えられた時に筋肉の使い方や腰の落とし方なんかを教えられてはいたんだけど………そういう事か」

 

琴乃と美矢の説明を聞いた優は、過去に修也から聞いたアドバイスを思い出していたが、そのアドバイスがこんな形で活きてきた事を実感する。

 

琴乃「そして、優くんが先程ゴールを壊してしまったダンク。あのダンクはそこから優くんの跳躍力と腕の使い方が合わさった為に瞬間的な爆発力を持ってしまっているのだと思われるわ」

 

そして琴乃は、優のダンクがゴールを破壊してしまった理由について、そのように考察を行うのだった………

 

 

 

優のダンクが持つ威力は計り知れないものであり、恐ろしく強いものだった。果たして、このダンクをどのように必殺技へ昇華させるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
自分なりのPG戦法の模索、新必殺技の完成などインターハイ本戦までに行う課題が積み重なる優。そんな中、春香も新必殺技開発の為にこの日も自主練習をする様子を見せ………?
次回「3つ目のスリーにしたいんです」


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第170話 3つ目のスリーにしたいんです

前回までのあらすじ
優のダンクは光一のダンクを上回る威力を持っていた。その理由は、優の体幹や筋肉の使い方などが影響しているようで………?


その日の夜。優は例のツーハンドダンクを必殺技に昇華するために、壊れたゴールを相手に、勢い高く飛んではツーハンドダンクの練習をしていた。

 

優「うおおおっ!!」

 

尤も、リングが無いため優はそのまま真っ逆さまに落下してしまうのだが、優のダンクの際に、ゴール板にボールがぶつかり、未だゴール板が揺れている事から、その威力は確かにあるのだろう。

 

優「(威力があるのは確かなんだろう………しかし、今までろくに意識したことなかったな………ツーハンドダンクをやったらどうなるのかって………)」

 

優はこれまでとにかくゴールに入れる事を優先していた為、ワンハンドダンクを多用していた。その為、ツーハンドダンクの出る幕が無かったのだが、このツーハンドダンクも間違いなく優の武器に成りうる存在だった。

 

優「(………とにかく、これを必殺技に昇華してみよう。試行錯誤あるのみ!!)」

 

優は地道な反復練習でしか技は生まれないと考え、とにかく練習あるのみとして、練習を再開しようとする。すると………

 

優「………うわっ!?」

 

突如、優の後ろから、大きなボールの落下音が聞こえた。

 

優「す、凄い音したな………」

 

優は慌てて後ろを振り向く。するとそこには、スリーの練習をする春香の姿があった。

 

春香「はあっ、はあっ………」

 

春香は疲れる様子を見せながらも自分の疲れを顧みずにシュート練習をしていたのだ。

 

優「す、凄い音したけど………今日はなんの練習をしてるのかな?」

 

優は春香に対し、今日の特訓内容を問いかける。

 

春香「………今日のゲーム、覚えていますか?」

 

春香はこの日のゲームの事を口にした。

 

優「そりゃ勿論」

 

優は頷く様子を見せる。

 

春香「その際、私が苦し紛れに撃ったスリーを覚えていますよね?」

 

春香はその中で、苦し紛れに撃ったスリーの事を口にした。

 

優「ああ、あの時の………」

 

その際のシュートは、優にとっても奇想天外だったため、よく覚えていた。

 

春香「私はあのシュートに希望を見出したんです。あのシュートを………3つ目のスリーにしたいんです!!」

 

春香はそのスリーを目にし、{パワースリーポイントシュート}、{フェイダウェイスリーポイントシュート}。この2つに加わった3つ目のスリーとして、今の超高度スリーポイントシュートを開発しようとしていた。それを聞いた優は春香の努力を感心する。

 

優「凄いや、春香! そのスリーがあれば、どんな敵が現れても百人力………」

 

優は春香を褒めていたが、この際、頭の中でふと、春香が敵だった場合の事を考えていた。

 

優「………君が味方でよかったよ、本当に………」

 

優は春香に対し、思わずそう言葉を返した。この時の春香には、優の言葉の意味が伝わらず、首を傾げる様子を見せたのだった………

 

 

 

優と春香は、全国大会に向けて必殺技を開発しようとしていた。果たして、全国大会までに2人の必殺技は完成するのか………?

To Be Continued………




次回予告
合宿最終日、優は夜の自主練で磨いていた強力なツーハンドダンクを見事必殺技に昇華させた。その威力はディフェンスを吹き飛ばす程の威力で………!?
次回「これが僕の必殺技だ」


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第171話 これが僕の必殺技だ

前回までのあらすじ
ゲーム時のダンクを必殺技に昇華しようと奮闘する優。その中で春香は第3のスリーを開発しようとしており………!?


夜遅くまで必死に自主練習を重ねた優。その結果は合宿最終日のゲームに現れていた。

 

優「行くぞ、速攻だ!」

 

優はそう言うと、自身が起点のPGとなって前線に上がる。

 

美矢「止める!」

 

美矢が優の前に立ちはだかる。相手が美矢であるため、優もそう簡単には攻められずにいたが………

 

優「(………ここだ!)」

 

優は美矢の一瞬の隙を突いたドライブで美矢をかわして見せた。

 

美矢「何っ!?」

 

優の鋭いドライブに美矢は驚いていた。しかしゴール下には光一、積牙、伊吹の3人が立っていた。

 

優「(何とか1人くらいディフェンスを削れればいいんだが………)」

 

優はそう考えながら周辺を見回す。すると、明日香が立っているのを目にする。

 

優「(………おっし、いい事考えた!)」

 

優は頭の中で作戦を考案。

 

優「明日香!」

 

優は明日香に声をかける。

 

伊吹「させねえぜ!」

 

伊吹が明日香のマークに付いた。積牙と光一もそのまま明日香にパスするだろうと読んでいた。しかし、優はそのままドライブを続行。

 

美矢「ち、違う! キャプテンは明日香を囮に使ってるんだ!!」

 

最初に気づいたのは美矢だった。美矢の言葉で光一と積牙は我に帰るものの、この時点で優は跳躍の寸前であり………

 

優「決める!!」

 

優は大きく飛び上がり、ツーハンドダンクを狙う。

 

春香「優さんのダンク………!」

 

光一「決めさせねぇ!!」

 

光一がその妨害に来た。

 

積牙「俺も止めます!!」

 

そこに積牙も駆け付ける。

 

優「無駄だ!!」

 

しかし優は物怖じしない。その際、積牙が優にぶつかり、審判の笛が鳴る。積牙より小柄な優はバランスを崩す………事は無く、寧ろ積牙をぶっ飛ばした。

 

積牙「えっ!?」

 

積牙は驚きながら地面に尻もちを着いた。優はバランスを崩す事無く、そのままツーハンドダンクを決めた。

 

光一「うおおっ!?」

 

その際、ダンクの勢いによって生まれた風圧が光一を吹き飛ばしてしまった。優のツーハンドダンクはゴールこそ破壊しなかったが、ディフェンスを軽々と吹っ飛ばしてしまうものであり………

 

琴乃「プッシング! 白10番! バスケットカウントワンスロー!!」

 

積牙のファールによって優の3点プレイが形成された。

 

美矢「おいおい、マジかよ………」

 

これには、離れて見ていた美矢は驚きを隠せなかった。

 

優「見たか! これが僕の必殺技だ!」

 

優は必殺のダンクを見せつけた。これを実際に受けた光一は………

 

光一「すげぇ………これが優の必殺技………{究極のダンク(アルティメットダンク)}か!!」

 

優のツーハンドダンクによる必殺技を勝手に名付け、大感心していた。

 

優「{究極のダンク}………? なんか知らん間に名付けられているけど………まあいいか………」

 

優は困惑しつつも、光一の名付けを黙って受け入れるのだった………

 

 

 

元々持っていたポテンシャルを最大に活用し、たった一晩で完成させてしまった優の必殺技。果たして、この必殺技は全国大会でどのように活躍するのか………!?

To Be Continued………




次回予告
合宿が終わり、優達はイバラキに戻る事となった。優達は琴乃達と全国の舞台での再会を約束し………?
次回「今度は全国で」


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第172話 今度は全国で

前回までのあらすじ
一晩の自主練習で、優はツーハンドダンクの必殺技を生み出す事が出来た。その必殺技の名は{究極のダンク(アルティメットダンク)}だった………


そして、3日に渡って行われた合宿はとうとう終わりを迎えた。

 

優「ありがとうございました、皆さん。この3日間、とても有意義でした」

 

優は確かに疲れこそしていたが、この特訓が終わってもなお普通に歩ける程には余裕があった。

 

琴乃「気にしないでいいわ。私達も今度の全国において更にチームのレベルを上げる為のいい機会になったわ」

 

琴乃達奥泉高校側にとっても大きく有意義なものだった。

 

優「………今度は全国で。その時にケリをつけられたらいいですね」

 

優は次に会うのは全国だとして、琴乃に手を伸ばした。

 

琴乃「その時勝つのは私達奥泉高校ですわ」

 

琴乃は勝つのは自分達だとしたうえで、優の握手に応じた。

 

優「………あれ? 姪原監督はどちらへ………?」

 

優は奥泉の監督、沙美にも挨拶をしようとしていたのだが………

 

優「………また口喧嘩してんのか、あの2人………」

 

優はまたしても口論を繰り広げる2人に対し呆れる様子を見せた。

 

優「監督ー! 帰りますよー!!」

 

優はゆうかに対し、帰ると声をかけることに………

 

琴乃「ところで………こっちも気になってたんだけどさ………」

 

琴乃は首を傾げる様子を見せる。その理由は………

 

美矢「う、動けねぇ………」

 

積牙「筋肉痛が………!!」

 

積牙達が疲労や筋肉痛で動けなくなっていた為である。

 

優「去年の時点で予想してたんで、春香の実家からバスを借りるよう頼んでます」

 

優は春香の実家である白宮家に送り迎えしてもらえるよう手配済みであり、帰りの足は確保しているようだ。

 

光一「お、おい優………なんでお前そんなに元気なんだよ………いでででで………!」

 

光一もまた筋肉痛に苦しんでいたが、優は特に筋肉痛に苦しんでいなかった。

 

優「レベルが上がったと考えれば安いものだよ」

 

優は割とポジティブな思考をしている為に、疲労や筋肉痛の表情を見せていなかった。

 

優「あ、そうそう。」

 

優は光一に対し、言い忘れたと言わんばかりにある事を思い出した。

 

優「帰りのバスでは反省会やるからな、お前ら?」

 

優はそのまま反省会をする事を宣言する。

 

美矢「ええっ!? 流石に休ませてくれよ、キャプテン!!」

 

これには美矢も抗議するが………

 

優「巫魔の合宿は楽に終わらねえんだよ………寝たらどうなるか分かってるだろうな、お前ら?」

 

優は休む事も許さない反省会を決行する事を決めた。

 

光一「あ、悪魔め〜!!」

 

休む間を与えない優を、光一は悪魔と評した。その光景を見た琴乃は………

 

琴乃「………優くんも中々スパルタなのね………」

 

温厚そうに見えるキャプテン優が持つ、バスケへの強い執念を理解するのだった………

 

 

 

3日に渡る長い合宿はとうとう終わりを迎えた。どうじに全国大会開催までの時間も刻一刻と迫っていた。果たして、残る時間で巫魔はどれほどの成長を遂げられたのか………!?

To Be Continued………




次回予告
合宿終了後も優達は特訓を続けていた。そして、全国大会開催2日前。この日、巫魔は最後の練習をしており………!?
次回「全国へ乗り込むぞ」


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第173話 全国へ乗り込むぞ

前回までのあらすじ
奥泉での合宿を終えた巫魔はイバラキへ帰る事に。しかし、優以外は疲労困憊で動けない様子を見せたのだった………


合宿後、優達はインターハイ本戦2日前まで練習を続けた。特に主力である優、春香、積牙、光一、美矢のスタメン陣、今やスーパーサブにまで成長した優真の6人が大きく成長。特に優真は彼女が持つ物覚えの良さが現れ、ドリブルやディフェンスも幾らか様になってきていた………しかし、身長のハンデが大きいのは相変わらずのようだ。

 

優「(よし、皆のレベルも大きく上がって来てる。この夏の全てを………明後日にぶつけるぞ………!!)」

 

優はチームのレベルアップを感じていた。そして、明後日に迫ったインターハイ本線の為、この日は早めに練習を終える事になっていた。

 

優「よーし、集合!!」

 

優は春香達部活メンバーを集める。

 

優「インターハイ本線は明後日! トーナメント表はこの後公開だからどこと当たるかは分からん………けど、どこが来たって僕達は勝つ!」

 

優はチームに明後日に向けた言葉を投げかけた。そして………

 

優「行くぞ! 巫魔、ファイトー!!」

 

春香「おおー!!」

 

優の言葉でチームの士気が上がる。するとそこへゆうかがやってくる。

 

ゆうか「トーナメント表が出たわ」

 

ゆうかはトーナメント表を優達に見せる。

 

優「これは………!!」

 

優はトーナメント表を見て驚いていた。

 

春香「どうなされたのですか………?」

 

春香は首を傾げる。優は春香達の方へ視線を向けると………

 

優「1回戦の相手なんだけど………友力高校だ」

 

1回戦の相手を告げた。その相手はなんと、修也達が所属し、インターハイ前の練習試合で巫魔が苦戦を強いられた友力高校であった。

 

光一「友力か………あまりいい思い出ないんだよな………」

 

光一は友力戦での苦い記憶を思い出していた。その際は苦戦したのも勿論だが、林川浩太が暴力沙汰を起こした事を思い出していた。

 

積牙「俺もいい思い出は無いですね………」

 

積牙も苦い思い出を感じていた。

 

優「ま、まあまあ………でも、僕達にとってはリベンジの時だ! 気を引き締めて行くぞ!!」

 

優はチームの雰囲気を落とさない為に、チームの士気を上げる為の声をかけるのだった………

 

 

 

翌日、優達は電車で揺られながら東京へと向かっていた。

 

春香「いよいよですね、優さん」

 

優の隣に座る春香は、優に声をかけた。それを聞いた優は………

 

優「ああ。とても楽しみだ………!!」

 

優は楽しそうな様子を見せる。そして、優達を乗せた電車が止まり………

 

駅員「友力学園前〜! 友力学園前〜!」

 

電車は友力学園前駅に到着した。

 

優「よし! 全国へ乗り込むぞ!!」

 

春香達「おおー!!」

 

優達はインターハイ会場の東京へとやって来たのだった………

 

 

 

長きに渡る特訓の日々を終え、インターハイ本線の舞台へやってきた優達。果たして、インターハイで待つ強敵はどのような相手達なのか………!?

To Be Continued………




次回予告
駅の近くにある友力高校にて、修也達と再会する優達。しかし、友力高校バスケ部の雰囲気は険悪なもので………?
次回「最悪そうな雰囲気だ」


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第十章 戦友対決再び! vs友力高校!
第174話 最悪そうな雰囲気だ


前回までのあらすじ
全国大会2日前まで特訓をする優達。そして全国大会前日、優達は友力学園前までやって来た………!


優達は駅を出ると、友力学園の門へやってきた。

 

優「懐かしいな………同時に苦しい思い出だ」

 

優は門の前に立ち、懐かしい思い出と苦しい思い出を同時に頭に浮かべていた。

 

??「………ミドレーユか?」

 

するとそこへ、優にとっては聞き慣れた声が聞こえた。

 

優「修也………!!」

 

そこに立っていたのは、現在休憩中の修也だった。

 

修也「まさかこんな形でお前が戻ってくるなんてな………でも、来てくれて良かった。明日はいい試合にしようぜ」

 

修也はそう言うと、優に向けて手を伸ばす。

 

優「ああ、楽しみにしてるよ」

 

優は修也と握手をする。

 

光一「なあ、折角だから高校の中見て行かねえか?」

 

そんな中、光一は学校の中を見たいと言い出した。

 

修也「………いいけど、何も面白くないぞ?」

 

だが、修也は途端に表情が暗くなっていった。

 

美矢「それでもいいだろ。修坊の学校見るのは私も初めてだし」

 

美矢も練習風景を見たがっていた。

 

修也「………好きにしてくれ。美矢姉とか2mのお前とか文句言うなよ」

 

修也は呆れた様子で、優達を高等部の体育館へ連れて行くのだった………

 

 

 

友力高校バスケ部は層が厚い分、巫魔と同等クラスの過酷な練習があった。しかし、それ以上に巫魔とは違う問題点があった。

 

浩太「おーい! パスくれよ! 芽衣!!」

 

友力バスケ部の問題児、浩太はゲームの中で芽衣へパスを要求。しかし、芽衣は先の巫魔との練習試合が原因で、明らかにフリーな浩太をガン無視し、アリサに回した。

 

アリサ「えっ!? うーん………よっと!」

 

アリサは困惑こそしたが、なんとかスリーを決めた。しかし、芽衣の様子がおかしい事には前々から気付いていたのか………

 

アリサ「ねえ、最近どうしたの? さっきだってアイツが思いっきりフリーだったじゃん」

 

アリサは芽衣に声をかける。

 

芽衣「………アリサちゃんなら決めてくれると信じただけだもん」

 

芽衣はそれっぽい理由こそ口にしたが、まだ先の件を根に持っているのか、怒りを隠せずにいた。

 

優「………最悪そうな雰囲気だ。芽衣が怒ってるってあからさまに分かる………」

 

体育館の外からこっそり見ていた優は、チームの険悪さを悟っていた。

 

修也「キャプテンが放任主義なのもあって、最近の芽衣は浩太にパスをしない事が半ば黙認されちまってるし………なあ、ミドレーユ。もしお前がこの学校のキャプテンだったらどうする?」

 

修也は、険悪過ぎる今の友力に対し、現役キャプテンである優の意見を問う。

 

優「身軽さんのやり方を否定する気はないさ。でも、チームが険悪じゃ纏まるものも纏まらない………僕だったら、チームの不破を何とかしたいと思う………」

 

優は友力キャプテンの身軽太一のやり方を理解しつつも、自分だったらチームの不破を何とかしたいと答えた。

 

修也「………相変わらず優しいな、ミドレーユは」

 

修也は優の優しさを改めて悟っていた。すると、ゲームをしていたメンバーの中で、最初にアリサが優達の姿を目にし………

 

アリサ「ああっ! ユー!?」

 

優を指差して声を上げた。

 

芽衣「み………優くん!?」

 

先程まで静かな怒りを露わにしていた芽衣も、この時ばかりは驚くと共にどこか安堵していた。

 

優「ひ、久しぶり………」

 

優はどう言葉を返していいか分からなかった。だがその際、優の登場を見た林川浩太は優を見るなり………

 

浩太「て、てめぇ………!!」

 

優の元へ駆け出し、彼の胸倉を掴んだ。

 

春香「ゆ、優さん!!」

 

再び訪れた一触即発の空気。しかし、優は恐ろしい程に冷静な表情を見せるのだった………

 

 

 

全国大会前日、巫魔高校は全国の舞台である東京へやってきた。しかし、その過程で訪れた友力高校ではチームの険悪さが見られ、更に優に因縁を付ける林川浩太によって一触即発の空気が訪れる。果たして、この最悪の事態はどのような結末となるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
修也達と険悪な仲になった事について優を責める浩太。優は冷静な様子で言葉を返す。浩太が優の言葉を受けて殴りかかろうとした時、放任主義の身軽が珍しく動き………?
次回「そこまでにしなよ」


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第175話 そこまでにしなよ

前回までのあらすじ
友力学園の門で修也と再会する優達。しかし、友力バスケ部部の雰囲気は最悪だった。また、優達とアリサ達の再会。その結果、林川浩太は優に因縁をつけてきて、一触即発の空気に………


優「………いきなりの挨拶だな」

 

優は冷静に呟く。

 

浩太「お前のせいで………俺の信用はガタ落ちだ!!」

 

浩太は巫魔との練習試合以後、修也達から信用を失った事を憎んでいた。

 

優「………僕を殴ってしまった君のせいだろうが」

 

優は冷めた様子で言葉を返す。

 

浩太「………!! てめぇ………!!」

 

浩太は優を殴りかかろうとする。

 

光一「ゆ、優!!」

 

これには春香達も慌てる様子を見せる。だが、浩太の右手を、身軽が止めた。

 

浩太「あっ!? きゃ、キャプテン!?」

 

これには浩太も驚いていた。

 

身軽「そこまでにしなよ。殴ったら明日の全国大会では使わないぜ」

 

浩太が暴力沙汰を起こすのは流石に問題視したのか、浩太を止めた。

 

浩太「………っ!」

 

浩太は出場停止を避けるためか、嫌々ながら殴るのをやめた。

 

身軽「………いや〜、流石に暴力沙汰はシャレになんないからね。アイツが帰ってくるまでに浩太が出場停止なんてなったら、ウチのC終わりだから」

 

身軽はあくまでチームの弱体化を避ける為にこれを止めたようだ。

 

優「アイツ………? ………まあいまはいいや。それより身軽さん。1つお伺いしたい事が」

 

優は、身軽が呟いたアイツという単語に首を傾げたが、それよりも気になる事が1つあった。

 

優「………どうして友力の雰囲気が悪い中で平然としているんですか?」

 

それは友力の険悪さだった。しかし、身軽は飄々とした様子で意に介しておらず、チームの仲が悪いことを嫌がる優にとっては疑問でしか無かった。

 

身軽「………俺には俺のやり方がある。君に指図される必要は無いよ」

 

しかし、身軽はあくまで自分のやり方を貫くつもりのようだ。

 

身軽「まあ、そういう事だ。仮にチームへ不破があったって、明日の試合に負ける気は無いよ」

 

身軽はそう言って、チームの険悪な雰囲気は自分が解決する事では無いと言わんばかりに話を切り上げてしまう。

 

身軽「まあ、かつての仲間と触れ合うのは好きにすればいいさ。俺の知った事じゃ無いからね」

 

身軽はそう言うと練習へ戻ってしまった。優は複雑な心境を持ちながらも………

 

優「アリサ! 芽衣! ………少しだけ話をしてもいいかな?」

 

優はアリサと芽衣、かつての仲間達と話す時間を作る事に決めるのだった………

 

 

 

身軽の介入で一触即発の空気は免れたが、彼の放任主義な性格には疑問を感じる優。しかし、今の優にはその答えなど分からず、今は修也達かつての仲間との再会の時間を過ごす事を選ぶのだった………

To Be Continued………




次回予告
優は修也達と1回戦、全力で戦う事を約束してくる。チームの険悪さを疑問視する優だが、勝負に情けは無用と修也は返してきて………!?
次回「それは俺達の問題だ」


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第176話 それは俺達の問題だ

前回までのあらすじ
一触即発の空気は、身軽が仲裁に入る。しかし、チームの険悪さについて身軽はノータッチな様子を見せたのだった………


優は春香以外の部員達には一度学園の外へ出てもらい、修也達3人と体育館裏へやってきた。

 

優「………あの練習試合以降、こんな調子なのか?」

 

優は修也達に自身の抱えている疑問を口にする。

 

修也「まあな………」

 

修也は困った様子を見せる。

 

アリサ「………悪いのはアイツだもん」

 

アリサは浩太に対し怒りを見せていた。

 

優「君達の怒る気持ちは分かる。でも、それじゃあチームワークなんて形成されないよ………!!」

 

優はそう呟いたが………

 

修也「それは俺達の問題だ………今のミドレーユには関係無いだろ!!」

 

修也はそんな彼を突き放してしまった。

 

優「修也………」

 

優は言葉を失う。

 

優「………ごめん、勝手な事言って。僕はもう君達の仲間でも無いのに………」

 

優は申し訳ない様子を見せる。

 

優「春香、行こう………3人とも、呼び止めて悪かった。明日はいい試合にしような………」

 

優はそう言って、諦めるようにその場を去る事に。

 

春香「え………? は、はい………」

 

春香は優の後ろ姿を追いかける。

 

芽衣「ま、待って………!!」

 

そんな中、芽衣は優の背を追いかける。

 

優「芽衣………どうしたの?」

 

優は芽衣の方へ視線を向ける。

 

芽衣「優くんの事は今だって仲間だと思ってるよ………! 修也くんだって、アリサちゃんだって………私だって………!!」

 

芽衣は先程の会話についてフォローをしてきた。

 

優「そっか………」

 

優は芽衣の言葉を受け入れる。しかし、芽衣の心の内にも怒りが存在している事は確かであり、優は複雑な様子を見せる。

 

優「………頼むから芽衣も憎しみに負けるなよ。そんな君を見たくないから」

 

優は立ち去る際にそう呟いた。優が立ち去った後、芽衣は俯き………

 

芽衣「………優くん相手には誤魔化せないよね………」

 

自分にしか聞こえない声で、1人そう呟くのだった。

 

 

 

そして優と春香の2人が積牙達の元へ向かう際、優は春香に対して口を開いた。

 

優「………ねぇ、僕って甘い奴なのかな………? 僕って………過干渉な奴なのかな………?」

 

優は自分が甘く過干渉な人間なのかを問いかけていた。

 

春香「私は好きですよ。優さんのキャプテン像。それに、修也さん達の皆さんと楽しい戦いをしたい………だからこそ修也さん達に干渉していたのでしょう?」

 

春香はそう言って優の心の内を解き明かした。

 

優「………こういう時の君の言葉が暖かくて助かる。ありがとう」

 

優は春香の言葉で幾らか落ち着きを取り戻した。

 

優「………春香。僕は腹を括る事にする。僕は全力で明日の試合に臨む………例え友力の体制がボロボロでもね………!」

 

そして覚悟を決めた。例え友力の心がバラバラだったとしても、全力で叩き潰すと………

 

 

 

再会した修也達との雰囲気は最悪だった。果たして、これが明日の試合にどう影響するのか………?

To Be Continued………




次回予告
全国大会中に宿泊をする予定である白宮家にやって来た優達。白宮家はお嬢様である春香の実家なだけあって大きく………!?
次回「でっけえ家だな」


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第177話 でっけえ家だな

前回までのあらすじ
修也達と会話をした優達だが、その空気は最悪だった。春香の言葉で落ち着きを取り戻した優は、そんな友力相手でも全力で戦う事を決めた………


その後、積牙達と合流した優達は、今回の全国大会中に宿泊する事になる、春香の実家、白宮家に来ていた。

 

光一「おおー!! でっけえ家だな!!」

 

光一は子供のようにはしゃいでいた。

 

美矢「でもいいのか?」

 

美矢は春香の実感へお世話になる事が邪魔にならないか不安な様子を見せた。

 

春香「大丈夫よ。お父様もお母様もご友人が宿泊する事には寛容だからね」

 

春香はそんな不安の声を気にしていなかった。そして家の中に入ると、部屋の広さはとてつもなく、優達巫魔高校バスケ部のメンバーが全員入っても余裕で部屋が余る程だった。

 

積牙「春香先輩がお嬢様な事は知っていましたけど………まさかここまでとは思っていませんでした………」

 

積牙は、春香のお嬢様レベルがとてつもない事を改めて思い知らされる。

 

優「よーし、じゃあ部屋の割り振り決めるぞー」

 

優達は部屋の割り振りを決める事に。基本的には男女に別れていたのだが、優と春香だけは異性ながら同室になった。まあ付き合っているのでいいかと誰もが納得していたが。

 

優「それじゃあ夜ご飯は6時半からになってるから、それまで各自自由時間。6時半には食堂に集合だ」

 

優はそう言って、夕食まで部員には自由にさせる事に。一時解散をした後優と春香は部屋に向かったのだった………

 

 

 

優「はあっ………疲れたな」

 

部屋に入った優達。優はこの時になって漸く安堵の声を漏らした。

 

春香「お疲れ様です。今日は大変でしたね」

 

春香は優に対し労いの言葉をかけた。

 

優「東京に来て早速友力の険悪な様子を見ちゃうし………修也達とも気まずくなるしで良い事ないな………」

 

優は東京に来てから災難にしか遭っていない事を呟いていた。

 

春香「まあまあ。今は明日の試合に向けての準備やミーティングしましょう? そうしたら辛い事だって幾らかマシになるはずですよ」

 

弱気になる優に対し、春香は優しくフォローをする。それを聞いた優は………

 

優「………本当、君には助けられてばかりだ。すまないね」

 

自分の精神を支えてくれる春香に感謝の言葉を口にする。

 

春香「優さんはいつも頑張っておられますからね。だから今くらいは沢山甘えてください」

 

春香は普段の優の頑張りを理解しているからこそ、こういう時の支えになろうとしていた。

 

優「………じゃあ、今は甘えさせてもらおうかな」

 

優は今の自由時間から夕食の時間まで、春香に甘える事に決めたのだった………

 

 

 

東京に来て災難に遭う優にようやく訪れた休憩時間。もうすぐ訪れる試合の時まで、優は休む事になるのだった………

To Be Continued………




次回予告
遂にやってきた全国大会の時。優達は外の体育館で戦記達と再会する。その際、全国的に有名な選手達との邂逅をする事に………
次回「貴方は」


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第178話 貴方は

前回までのあらすじ
春香の家で世話になる事になった優達。一時的な休息の中、優は春香に甘える事にし………?


翌日。遂に試合本番の日がやってきた。

 

光一「ふああ………遂にこの日が来たな〜」

 

巫魔メンバーの中で光一は眠たそうにしていた。

 

優「シャキッとしてくれよ。今日は光一が重要ポジションなんだから」

 

優はそう言って、眠たそうな光一に不安を覚える。すると………

 

??「おい、巫魔高校」

 

優達に声をかけてくる人物が。声の聞こえた方に視線を向けると………

 

優「戦記さん………!」

 

そこには戦記達守城高校のメンバーがいた。

 

戦記「お前達とは違うブロックなのは残念だが………もしぶつかる事になった場合は容赦しないぞ」

 

戦記はそう言うと、優に対し手を伸ばす。

 

優「こちらこそ今度は負けませんよ」

 

それに対して優は手を伸ばして握手に応じたが、相変わらずの強気な言葉を返した。そんな中、優達の元へ別のチームの選手が歩いてきた。

 

??「おっと、久しぶりに会えたと思ったら先客がいたのか」

 

その中で1番背の高いリーダー格の男が口を開いた。

 

??「久しぶりだな、良太」

 

戦記を名前で呼ぶその男は軽そうな様子で声をかけた。

 

戦記「………大河か」

 

戦記が認知している人物のようで、声をかけてきた人物を名前で呼んだ。

 

優「大河………もしかして貴方は………!」

 

優は大河と呼ばれた人物の事を知っているようだ。

 

光一「お、大牧大河じゃねえか!! 京都の絶対王者、魔帝高校のキャプテンだ!!」

 

優が口を開こうとした直前、光一が興奮しながら大河と呼ばれた人物の名前を口にした。

 

優真「大牧大河………?」

 

優真は首を傾げる様子を見せる。

 

光一「大牧大河は高校バスケでCをやってる奴なら知らねぇ奴はいないくらいのニホンの高校ナンバーワンCだよ!!」

 

光一は大牧大河について説明をする。なんと彼は最強クラスのCのようだ。

 

優「戦記さんが東ニホンのトッププレイヤーだとするならば、大牧さんは西ニホンのトッププレイヤーだ。それくらい凄い人だよ」

 

優も大牧の事は知っていたようで、戦記と並ぶトッププレイヤーと評した。

 

大牧「良太、コイツ等はどこの学校だ? 見ない連中だが………」

 

大牧は優達の顔を見るなり首を傾げていた。

 

戦記「前に話した巫魔高校だ」

 

戦記は優達の事を説明する。

 

大牧「巫魔高校………はっ! そうか………!」

 

大牧はそれを聞いて何か思い出した様子を見せる。

 

大牧「例の白髪くんが所属する学校か………!!」

 

大牧はそう言って優のことを指差す。

 

優「ぼ、僕………?」

 

西ニホンのトッププレイヤー、大牧にすら認知されているという事実に優は首を傾げる様子を見せるのだった………

 

 

 

インターハイ本戦当日。戦記達と再会した優達は、京都の王者魔帝高校。その主将である大牧大河という新たな人物と邂逅する。しかも、大牧は優の事を知っている様子。果たして、この出会いはどのような展開を見せるのか………?

To Be Continued………




次回予告
優の事を知る大牧。その理由は戦記の情報や、ミドレーユ時代の優を知っているのが理由らしく………?
次回「お前の事知ってるぜ」


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第179話 お前の事知っているぜ

前回までのあらすじ
インターハイ本戦当日。戦記達と再会する優達の前に、京都の王者魔帝高校主将大牧大河が現れ………!?


大牧「初めましてだな。お前が噂のミドレーユ=ゴッドだろ? お前の事知っているぜ」

 

大牧は優に声をかけるなり、彼がミドレーユ=ゴッドである事を知っている様子を見せる。

 

優「そ、そうですけど………」

 

優は何故知っているのかと言わんばかりの表情を見せる。

 

大牧「いやあ、良太から県で唯一俺をドリブルで抜いた男がいるとか言われてたからどんな奴かと思っていたら、中学時代、幻のプレイヤーとか言われてたミドレーユだったとは。こりゃ驚きだぜ」

 

大牧は、戦記をドリブルで抜いた男が優だった事を知った際の嬉しさを口にしていた。

 

優「あ、あの………今は白宮優って名乗っているので、そっちの名前で呼んで頂けると………」

 

優は大牧に対し、今の名前を伝える。

 

大牧「白宮優………それが今の名前か。分かった、覚えとくぜ」

 

優が改名した事を聞いた大牧は、これからは今の名前の方で覚えようとする様子を見せた。

 

結衣「(キャプテンって本当に凄い人なんだ………私がバスケについてよくわかっていないからかもしれないけれど………なんだがキャプテンが遠い雲のような存在に思えてくるな………)」

 

マネージャーの結衣は、優が高校バスケ界の大物プレイヤーにも認知される程に凄い人物である事を改めて実感させられる。

 

光一「こういう話になるといつも優が目立つよな〜」

 

光一は優と大牧の様子を見て、いつものように嫉妬深い事を口にする。

 

美矢「仕方ねぇだろ。キャプテンは昔からスタープレイヤーの名声あるしな」

 

早い段階で優がミドレーユだと見抜いていた美矢はそう言って、優の知名度を口にする。そんな中、優との会話を楽しむ大牧は………

 

大牧「成程、巫魔とぶつかるのは決勝なのか………ふーむ………」

 

巫魔高校とは大きくブロックが異なる事を知った様子を見せる。

 

大牧「よし、なら決勝に来た際は俺達が相手してやるぜ!!」

 

大牧はそう言って、優達と戦いたい様子を見せる。

 

戦記「その言葉は心外だな。まるで俺達を準決勝で倒せると言いたげそうでな」

 

その言葉に異を唱える戦記。彼が珍しく口を挟んだのは、もし、守城と魔帝が順調にぶつかった場合、準決勝でぶつかる事が理由のようだ。

 

大牧「勿論お前と決着をつけるのも楽しみさ。この高校三年間で、お前達守城相手に2連覇。今年は3連覇目指して更に特訓してきたからよ。お前もPGとして腕を上げたんだろうが………俺はもっと違うベクトルで腕を上げてきたぜ」

 

大牧は戦記を相手に強気の姿勢を見せる。その自身は、過去に2回、守城高校に勝っているのが理由のようだ。

 

戦記「今年は俺が勝つ。俺達はお前達に軽々負ける程、容易いチームではないからな」

 

戦記も挑戦的な様子を見せる。それを見た優は………

 

優「(全国トップレベルの対決か………僕達も負けてられないぞ………!!)」

 

心の中で闘志を燃え上がらせるのだった………

 

 

 

遂に始まろうとするインターハイ本戦。果たして、巫魔高校は全国の舞台でどこまで戦えるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
インターハイ本戦の開会式を経て、第1試合の巫魔vs友力の試合が幕を開ける。両チーム共に気合いは十分であり………!?
次回「全国デビューだ」


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第180話 全国デビューだ

前回までのあらすじ
西ニホントップクラスの選手、大牧大河にすら認知されている優。大牧と戦記は優を含め対峙した際の話をし………?


司会「これより、全国高校バスケットボール大会を始めます。」

 

全国大会の開会式。体育館のA館には全国のチームが集まっていた。

 

優「(………いよいよ全国大会か………!)」

 

優はとうとうやってきた全国大会に胸を踊らせていた………

 

 

 

開会式の後、巫魔はC館に移動。このC館では巫魔と友力の対決が始まろうとしていた。

 

ゆうか「よーし、じゃあ最後のミーティングを始めるわよ!!」

 

監督のゆうかは最後のミーティングをすると言い、優達はゆうかの元に集まる。

 

ゆうか「言うまでも無いけど相手は友力高校よ! 前回は試合結果が有耶無耶になってしまったから、ある種のリベンジマッチよ! この前の借りをしっかり返して来なさい!!」

 

ゆうかはそう言って、優達の士気をあげる。

 

優達「はい!」

 

優達は声を上げて返事をした。

 

ゆうか「じゃあ今回のスタメンを発表するわ。優くん、春香ちゃん、光一くん、美矢ちゃん、積牙くんよ。良いわね?」

 

今回のスタメンはいつも通りスタメンで挑む事に。

 

優「よーし! 行くぞ!! 僕達の全国デビューだ!!」

 

春香「おおー!!」

 

優がいつものように鼓舞し、春香達が声を上げる事で士気を上げる。巫魔はいつも通り協調性が強かった………

 

 

 

一方、友力ベンチでは………

 

奄美「集合だ!」

 

奄美の元に友力選手が集まる。

 

奄美「相手の巫魔高校は激戦区のイバラキを乗り越えてきた………今や彼らの実力は練習試合の頃から大きくレベルアップしている。油断せずに行け!」

 

奄美は巫魔の事を甘く見る事をせずに、全国クラスのチームとして当たる事を考えていた。

 

身軽「………アイツはどうしたんですか? 今日帰ってくるんじゃなかったんですっけ?」

 

そんな中、身軽は現在の友力で欠けている1人の人物の行方について問いかける。

 

奄美「………奴は確かに今日帰って来た………しかし、今学校に来てしまったと連絡が来た………今ここに来るよう急がせているが………どう頑張っても前半には駆けつけられないだろうな………」

 

奄美はその人物に対し、現在慌てて体育館に来るよう支持したようだが、前半には間に合わないようだ。

 

奄美「………とにかく、今いるメンバーで何とかするしかない。いいな!」

 

奄美は今いるメンバーで何とかするしかないと考え、現状を修也達に託す事を決めた。

 

身軽「よーし、行こうか」

 

身軽は呑気な様子で声をかける。

 

修也達「おおー!!」

 

修也達はそれに合わせて声を上げる。しかし、声は微妙にバラバラで、チームの険悪さを微かにのぞかせるのだった………

 

 

 

遂に始まった全国大会。そして、巫魔vs友力の試合が始まろうとしていた。再び訪れた友情対決はすぐそこにまで迫っていたのだった………

To Be Continued………




次回予告
遂に始まる試合。ジャンプボールは友力が征したが、優は初っ端から挨拶代わりの反撃を見せ………!?
次回「挨拶させてもらうぜ」


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第181話 挨拶させてもらうぜ

前回までのあらすじ
遂に始まる全国大会。そして、始まろうとする巫魔vs友力の対決。試合に臨む試合は同じでも、両チームの雰囲気は異なっており………!?


今回のスタメンは以下の通り………

 

巫魔高校(白)

PG 12番 天野美矢

SG 5番 白宮春香

SF 10番 江野積牙

PF 4番 白宮優

C 17番 相田光一

 

友力高校(紫)

PG 8番 月渡 芽衣

SG 6番 アリサ・ストライク

SF 4番 身軽 太一

PF 7番 天野 修也

C 9番 林川 浩太

 

両チームの選手はポジションにつく。審判はボールを持ち、笛を口に咥えると、ボールを真上に放り投げた。

 

光一「うおおおっ!!」

 

浩太「うあああっ!!」

 

両チームのCが手を伸ばす。

 

浩太「しゃあ!」

 

ジャンプボールを征したのは浩太だった。弾かれたボールは身軽へ渡り………

 

身軽「芽衣!」

 

身軽は芽衣にボールをパス。

 

優「させるか!」

 

しかし、優はそこに手を伸ばしてボールをスティールする。

 

芽衣「えっ!?」

 

これには芽衣も驚いていた。

 

優「行くぞ!!」

 

優はそう言うと、1人ゴールへ直行する。

 

美矢「おっと………キャプテン、早々にかます気か」

 

いつもならPGの美矢にボールが渡る所を、優が単独で速攻した事から、優の行動を察した。

 

優「挨拶させてもらうぜ! はあああっ!!」

 

優はフリースローラインを越えると、大ジャンプと共にツーハンドダンクを決める。

 

光一「うおおっ!! {究極のダンク(アルティメットダンク)}だ!!」

 

光一は興奮の声を上げる。優がゴールから降りた後も、優の{究極のダンク}が与えたゴールの揺れは未だ続いていた。

 

観客1「す、すげぇ………! 未だにゴール揺れてるぞ!?」

 

観客2「とんでもねぇ奴だ………アイツの跳躍力とパワーどうなってるんだ!?」

 

観客は大きく驚いていた。

 

芽衣「す、凄い………!」

 

アリサ「嘘………!?」

 

アリサや芽衣は驚く様子を見せる。

 

浩太「ま、まぐれだ!! まぐれに決まってらあ!!」

 

浩太は受け入れられない様子を見せる。しかし………

 

修也「………やってくれるぜ、ミドレーユの奴………!!」

 

修也は優に対し、対抗意識を見せると共に興奮した様子を見せる。そんな彼を見た身軽は………

 

身軽「よし、じゃあやり返してきなよ。4番、白宮優くんは修也に任せるからさ」

 

修也に対し助言をする。

 

修也「………分かりました。見てろよ、ミドレーユ………!!」

 

身軽の助言を聞いた修也は、反撃をしようと、燃える様子を見せるのだった………

 

 

 

遂に始まった巫魔vs友力の対決は、初っ端から優の必殺技である{究極のダンク}によって巫魔が先制する。会場で驚きが見られる中、修也は反撃をしようとする様子を見せる。果たして、修也の反撃とは………!?

To Be Continued………




次回予告
友力の反撃。優の{究極のダンク}を見た修也は、反撃として自身の必殺技をお見舞いする………!!
次回「お返しだぜ」


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第182話 お返しだぜ

前回までのあらすじ
遂に開幕する巫魔vs友力の試合。ジャンプボールを友力に奪われるも、優によるスティールからの{究極のダンク(アルティメットダンク)}によって、巫魔が先制点を奪い………!?


アリサから芽衣にボールが渡り試合再開。芽衣かハーフコートを越えると、彼女の前に美矢が立ちはだかる。

 

芽衣「名PGの美矢さんと戦えてとても嬉しいです! けれど、試合では負けません!」

 

芽衣は憧れの美矢と戦えて嬉しそうだが、試合では負けないと意気込む様子を見せる。

 

美矢「よし、来い!」

 

それを聞いた美矢も全力で立ち向かうと決めた。芽衣は美矢を前に隙を伺うが、美矢の体を広げたディフェンスと、体格差によるミスマッチで、芽衣を抜かせようとしない。

 

優真「あの人………私と同じくらい………美矢さん相手じゃ身長的に不利なんじゃ………?」

 

ベンチで試合を見ていた優真は、自分と同じくらいの体格である芽衣の方が不利なのではと考えていた。実際、芽衣は10秒以上美矢を抜けない様子を見せていた。

 

芽衣「(流石美矢さん………守りが堅い。ドライブで抜くには時間が足りないかな………)」

 

残り時間が10秒を切り、ドライブでは美矢を抜けないと判断した芽衣は、美矢の左肩スレスレを通るパスを修也に送った。

 

美矢「何っ!?」

 

針に糸を通すような繊細なパスには、美矢も驚きを隠せなかった。

 

修也「お返しだぜ!」

 

修也は大きく飛び上がる。

 

優「ダンクか………!?」

 

修也の姿勢から、それがダンクだと察した優。

 

光一「俺が止めてやるぜ! {ウォールブロック}だ!!」

 

光一は体を大きく広げて修也の前に立ちはだかる。その結果、修也と光一は接触するが………

 

光一「ぐはっ!?」

 

吹っ飛んだのはなんと光一だった。接触によるホイッスルが鳴り響く中、修也はそのままツーハンドダンクでボールをゴールに叩き込んだ。

 

積牙「あれは………キャプテンの{究極のダンク}と同じ………!?」

 

優をはじめ、巫魔の選手や観客は、修也のダンクが優の{究極のダンク}そっくりである事に驚きを隠せずにいた。そして、長く響いていたホイッスルは止まり………

 

審判「………バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

審判はこのファールを光一のものとして取り、修也はバスケットカウントを得た。

 

アリサ「ナイス!!」

 

アリサと芽衣は修也の元へ駆けると、3人でハイタッチをしていた。そして修也は優の元へ近づくと………

 

修也「これが俺の必殺技………{強靭なダンク(タフネスダンク)}だ!!」

 

今修也が見せた反撃のツーハンドダンクが、彼の必殺技である事を見せつけるのだった………

 

 

 

優だけでなく、修也もツーハンドダンクによる必殺技を会得していた。優と修也の戦友対決は、両者のツーハンドダンクによる必殺対決から始まったのだった………

To Be Continued………




次回予告
開始から5分。強力なシューターと司令塔を有する友力が試合のリードを奪う。しかし、春香とのコンビによる優の反撃は友力のリードを大きく狭め………!?
次回「逃げさせやしないぜ」


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第183話 逃げさせやしないぜ

前回までのあらすじ
優の{究極のダンク(アルティメットダンク)}による先制に対し友力も反撃。その反撃で修也は必殺の{強靭なダンク(タフネスダンク)}を見せ………!?


両チームの必殺ダンクで始まった試合。試合の流れは友力がリードを見せており………

 

アリサ「はああっ!」

 

開始5分が経つ頃には、アリサによるスリーポイントシュートが炸裂。8vs16の8点差を形成した。

 

春香「流石に差が開きだしましたね………芽衣ちゃんのパスから修也さんやアリサちゃんの2人がシュートを決める………息がぴったりなのもあって手がつけられませんね………」

 

修也、アリサ、芽衣の3人組による得点が目立つようであり、友力の高いオフェンス力と安定した司令塔によって、速いゲームを展開されてしまっていた。

 

優「ならこっちは追いつくだけだ。春香、夏の練習の成果、たっぷり見せてやろうぜ!」

 

しかし優はめげない。それを見た春香は………

 

春香「そうですね………!」

 

そう言って、微笑みを見せた………

 

 

 

そして巫魔の攻撃。美矢と芽衣がマッチアップするが、芽衣も全力のディフェンスで美矢を抜かせようとしない。

 

美矢「(くそっ! この子、中々出来るぞ………!)」

 

美矢も、芽衣の上手さを理解したのか苦しそうな様子を見せる。

 

春香「美矢ちゃん!」

 

この場面で春香は美矢に声をかける。

 

美矢「(春香が自分からパス要求なんて珍しいな………よし、お手並み拝見と行くか!)」

 

春香が自分からパスを要求する様子を珍しがった美矢は、彼女の考えを見ると言わんばかりに、鋭いパスを送った。しかし、春香の前にはアリサが立っていた。

 

アリサ「スリーは撃たせない!」

 

友力にとって春香のスリーは危険な存在。アリサのマークも必然的に強くなるが………

 

春香「はっ!」

 

なんと春香はスリーを狙わずに、マッチアップしていた修也をかわした優にパスを回した。

 

アリサ「なっ!? ユーへのパス!?」

 

春香の広い視野を活かしたパスに、アリサは驚いていた。修也も春香のパスを見て………

 

修也「(春香さんは今の時点でスリーを撃つことなど眼中に無かった………つまりミドレーユへのパスが目的だったわけだ………!)」

 

春香の狙いを察知したが、気付いた時には既に遅かった。パスを受けた優はそのままレイアップを狙いに行く。

 

浩太「止めてやらあ!!」

 

浩太は体を広げて立ちはだかる。だが、浩太は勢い余って優と激突してしまう。

 

浩太「うあっ!?」

 

優と浩太は姿勢を崩す。その際に審判の笛が鳴るが、笛がなると同時に優はボールをゴールへ向けて放っていた。

 

修也「ああっ………!?」

 

姿勢を崩されてもボールを投げた優の執念に、修也も驚きを隠せなかった。そして、放り投げたボールは綺麗にリングへ入った。

 

積牙「入った………!!」

 

ボールがゴールに入った為、会場内はどちらのファールか注目を見せた。

 

審判「プッシング! 紫9番! バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

判定は浩太のファール。2点からのバスケットカウントワンスローで3点プレイを形成する。

 

伊吹「よっしゃー! 優!!」

 

優の強気の3点プレイに巫魔のベンチは沸きあがる。

 

春香「ナイスプレイです、優さん!」

 

優のアシストをした春香は、優の元に駆け寄り、2人でハイタッチするのだった………

 

 

 

その後のフリースロー。優はボールを受け取ったあと、ボールを軽くバウンドさせた後、冷静な様子でシュートを撃つ。結果、シュートは決まり11vs16の5点差に。

 

光一「よし、5点差!!」

 

見事に3点プレイを決めた優。優はフリースローを沈めたあと、修也とすれ違う際に………

 

優「勝ちを求めているのは僕達だって同じ………逃げさせやしないぜ………!」

 

強気な様子でそう言い放つ。5点差のリードを持つ友力だが、優の3点プレイとこの言葉は、このリードが大した差でも無い事を理解するきっかけとなったのだった………

 

 

 

試合開始から5分。スコアは11vs16で友力がリードを見せる。だが、優の3点プレイや春香の広い視野を活かしたプレイによって、その差は大きくも大した差では無い事を、会場の選手達に思わせるのだった………

To Be Continued………




次回予告
優の3点プレイによって奮起した光一。以前苦戦した浩太との対決において、光一はレベルアップした自らの力を見せる。
次回「借りを返すぜ」


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第184話 借りを返すぜ

前回までのあらすじ
開始5分。勝負は友力が有利であったが、優と春香のコンビによって、その点差を上手く縮めていき………!?


光一「(やっぱ優は化け物じみてやがるな………まあ、そのお陰で………ちょっと元気が戻ってきたな………!)」

 

優の3点プレイを目にし、光一は調子を取り戻した。そして、試合再開。芽衣にボールが渡った後、身軽から浩太にボールが渡ると………

 

浩太「うおおおっ!」

 

浩太がゴール下シュートを放とうとする。

 

優「させるか! だりゃっ!!」

 

しかし、優が上手くシュートを止めて見せた。

 

浩太「なっ!?」

 

浩太はシュートを止められた事に驚きを隠せない。

 

優「速攻! 上がれ!!」

 

優はブロック後に零れ球を拾い、美矢に投げ渡すと共に速攻をかける。

 

美矢「よし!」

 

美矢はドリブルで上がっていく。

 

浩太「く、くそっ!!」

 

浩太は大慌てで戻る。美矢は浩太が戻ってくるのを目にする。

 

美矢「(あのC、パワーはあるが慌ててるな………よし!)」

 

美矢は浩太の様子を見ると………

 

美矢「よし、光一!!」

 

美矢は光一にボールを回した。

 

光一「おっしゃあ! ここで借りを返すぜ!!」

 

光一はボールをキャッチ。この場面で浩太が戻ってくるが、光一は物怖じせずにツーハンドダンクを狙う。

 

浩太「うおおっ!」

 

浩太は手を伸ばしてシュートを防ごうとするが………

 

光一「だりゃっ!!」

 

先に光一がツーハンドダンクを決める。その直後、浩太は光一の右手を叩いてしまった。当然、これには審判の笛が鳴り響き………

 

審判「イリーガル・ユース・オブ・ハンズ! 紫9番! バスケットカウント、ワンスロー!」

 

ここで浩太、2つ目のファール。更にバスケットカウントワンスローで3点プレイが形成される。

 

優「よし! いいぞ、光一!」

 

優は光一の背中を優しく叩く。

 

光一「優………俺、上手くなってるのか………?」

 

光一は驚きのあまり、優に対しそう声をかける。

 

優「ああ、上手くなってるよ。練習試合とは大違いだ」

 

優は優しく声をかける。そしてフリースローが行われる事に………

 

優「よし、フリースローだ。頼むぜ、巫魔最強C!」

 

優は光一に望みを託す声をかける。

 

光一「最強C………おっしゃあ!!」

 

光一は優の言葉を聞き、調子を上げる。

 

優「(よし、チョロいな)」

 

あっさり調子を上げた光一を目にし、流石の優もチョロいと感じていた。

 

審判「ワンショット!」

 

審判からボールを渡される光一。普段はあまりフリースローが入りづらい光一だが………

 

光一「はあっ!」

 

ボールが綺麗にゴールに入り、フリースローを決めた。

 

光一「しゃあああ!!」

 

光一はとてつもなく喜んでいた。

 

優「(14vs16か………いいくらいに差が縮まったな………)」

 

光一の調子が上がり、点差も最早2点差。いい具合にリードが縮まってきた。

 

美矢「(2点差か………よし、光一でここからも攻めるぞ………!)」

 

PGである美矢は、光一の絶好調を利用する事に決めるのだった………

 

 

 

14vs16の友力2点リード。しかし、今は巫魔に流れがきていた。果たして、この流れに乗って巫魔は逆転出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
浩太が何とか得点を取ろうとするが、優に止められる。この時、美矢は浩太がゴール下においてはパスを選ばない事を見抜き………!?
次回「奴を占め出せるかも」


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第185話 奴を占め出せるかも

前回までのあらすじ
優の3点プレイに触発された光一が大奮闘。浩太を相手に3点プレイを決めた光一だった………


芽衣「修也くん!!」

 

芽衣は修也にボールをパス。しかし、浩太がそこへ無理やりボールを奪取する。

 

芽衣「えっ!?」

 

修也「はあっ!? 何やってんだお前!?」

 

修也達は驚きを隠せなかった。

 

浩太「くそっ!! このまま負けられっかよ!!」

 

浩太は完全に独断プレイへうって出た。そのままゴール下シュートを放とうとするが………

 

優「させるか!」

 

優が上手くシュートを止めた。

 

優「よし、もういっちょ速攻だ!」

 

優は速攻をかけようとする。

 

浩太「ま、待てよ!!」

 

浩太は手を伸ばすが、浩太の手は優の顔面に直撃してしまった。

 

優「へぶらっ!?」

 

優はひっくり返り、頭をぶつけて目を回してしまった。

 

春香「ゆ、優さん!?」

 

思わぬハプニングが発生し、審判の笛が鳴る。

 

審判「アンスポーツマンライクファール! 紫9番!」

 

流石に優が目を回す事態になった為か、審判は重い判定を下した。

 

身軽「ありゃ………流石に当然か」

 

浩太3つ目のファール。更にアンスポーツマンライクファールであるため、再度アンスポーツマンライクファールかテクニカルファールを取られれば退場という危機に陥っていた。

 

修也「てめぇ!!」

 

優の負傷は修也の怒りを強め、浩太の胸倉を掴んだ。

 

浩太「あ………うあ………その………」

 

浩太が言い訳出来ずに口ごもる様子を見せる。だが、修也の手を身軽が掴んだ。

 

修也「っ!? きゃ、キャプテン………」

 

修也も身軽が介入した事に驚いていた。

 

身軽「そこまでにしなよ。今度は修也がテクニカル取られるぞ」

 

どうやら、修也がテクニカルファールを取られるのは、身軽からして損失である事から介入してきたようだ。そこに春香達が駆け付けてきて………

 

春香「め、目を回してますね………監督!!」

 

優の状態を確認。流石にプレイ続行は不可能のようで………

 

審判「交代です!」

 

交代をする事に。代わりに入るのは優真のようだ。

 

美矢「(となると、私がFか)」

 

抜けた優のポジションには美矢が入る事になった。そして美矢は光一に近寄ると………

 

美矢「光一、ちょっと来い」

 

光一の肩に腕を回すと共に声をかけた。

 

光一「お、おう?」

 

光一は首を傾げる。そして………

 

美矢「あの9番、自分から攻めに来る傾向にある。まずパスはねぇ。だからあとはシュートのタイミングさえ分かればなんとかなる。ワンチャン、奴を占め出せるかも………!」

 

美矢は浩太について気付いた事を光一へ助言する。

 

光一「そうか………よし、任せろやい!」

 

浩太の事を聞いた光一は、更に意気込む様子を見せるのだった………

 

 

 

優の離脱という痛い状況に追い込まれながらも、浩太の弱点に気付いた美矢。果たして、この弱点を利用出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優真が優の代わりに出場し、2本のフリースローを沈める。そして、友力の反撃。浩太の傾向を聞いた光一は、浩太相手に上手いディフェンスをして見せ………!?
次回「負けるかよ」


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第186話 負けるかよ

前回までのあらすじ
浩太のシュートをブロックするが、浩太の悪質なファールにより一時離脱してしまう。それと同時に美矢は光一に対し、浩太の傾向を伝えるのだった………


優の代わりに出た優真が、アンスポーツマンライクファールによるフリースロー2本に挑む。シュート力については安定している優真は、1本目を難なく沈め、続く2本目も苦戦する事無く沈めて見せた。

 

伊吹「よし、同点だ!!」

 

試合開始から6分。スコアは16vs16の同点になった。

 

身軽「大丈夫大丈夫。落ち着いて戦う気持ちを忘れるなよ」

 

身軽は同点になったものの落ち着いた様子を見せ、チームを落ち着かせようとする。そして、巫魔ボールによる試合再開。美矢からボールは優真に渡るが………

 

芽衣「もらった!」

 

まだ未熟な優真では芽衣相手に苦戦させられ、ボールをスティールされてしまった。その零れ球を拾ったのは浩太だった。

 

修也「またアイツにボールが渡った………!?」

 

修也は浩太がボールを拾った事にイライラする様子を見せる。

 

浩太「(俺が………俺が決めなきゃいけないんだ! そうすれば、アイツらだってつまんねー意地を捨ててくれるはずだ………!!)」

 

浩太からすれば、この行為は険悪になった修也達の信用を取り戻す為の懸命なプレイだった。しかし、それが修也達のストレスを押し上げている事には気づいていない。そして、浩太は再びシュートを狙うが………

 

光一「俺がお前に負けるかよ!!」

 

光一は浩太のシュートをブロックした。美矢が予測したように、浩太にはパスをする選択肢が無い。光一からすれば後はタイミングを読めばいいだけなので楽なものである。

 

浩太「なあっ!?」

 

浩太は驚きを隠せない様子を見せた。しかし、零れ球は修也が拾うと、すぐさまダンクを決め、再び友力の2点リードに。

 

修也「たくっ、余計な事しやがって………」

 

これには修也も思わず苦言を呈した。浩太も何か言い返したかったが、再び乱闘になる未来が見えたのか、何も言い返せなかった。

 

光一「すまねぇ、皆………」

 

光一はボールを押し込まれた事を謝るが………

 

春香「大丈夫。光一くんの方が有利だって分かっただけで大きな収穫よ」

 

同時に浩太よりも光一の方が流れを掴んでいる証明にもなり、春香達はたかが2点の失点と考えて気にする様子は見せなかった。

 

春香「よーし、反撃行くわよ! 優さんが落ち着いて戻ってくるまで、なんとかこの場を死守しましょう!!」

 

積牙達「おおー!!」

 

優不在の中、春香が声をかける。積牙達も声を上げた事で、巫魔の士気は一層強まる様子を見せたのだった………

 

 

 

浩太の動きの傾向が判明し、光一に益々流れがやって来た。優不在の中、この局面でどれだけの活躍を狙えるのだろうか………!?

To Be Continued………




次回予告
優真を起点とした攻撃を行う巫魔。巫魔の鋭いパスに真っ直ぐな光一のプレイにより、試合開始7分の段階で、巫魔が有利になる展開が訪れる………!!
次回「初っ端から大チャンスだ」


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第187話 初っ端から大チャンスだ

前回までのあらすじ
フリースロー2本を決め、同点に持ち込む巫魔。その状況に陥っても浩太は独断プレイを止めない。結果として修也にダンクを決められ2点差にされるが、C対決は光一が流れを掴んでおり………!?


春香「美矢ちゃん!」

 

春香が美矢にボールをパスし、試合再開。

 

美矢「よし、行くぜ!」

 

美矢は素早いドリブルで上がっていく。美矢と春香がハーフコートラインを越えた辺りで………

 

美矢「優真!」

 

美矢は優真にボールをパス。その直後に美矢は修也とマッチアップ。春香もアリサとマッチアップする。そして優真は………

 

芽衣「またマッチアップだね………!」

 

芽衣とマッチアップ。必然的に2人の読み合いになるのだが………

 

観客1「おおっ!? ちっこい同士の対決だ!!」

 

観客2「まるで小学生のバスケみたいな低さだなー!!」

 

優真と芽衣の背が低い事から、観客が面白がって声を上げた。

 

芽衣「(好き放題言わないでほしいんだけど………!!)」

 

それを聞いた芽衣は分かりやすく頬を膨らませて怒っていた。

 

修也「(やっべ、芽衣がキレる寸前だな………)」

 

芽衣と付き合いが長い修也は、芽衣が怒っている事にすぐ気付いた。優真も幾らか気分は良くなかったが………

 

優真「背が低いからって………負けるとは限りませんけどね!!」

 

優真はそう言って芽衣の一瞬の隙を突いた鋭いパスを光一に回した。

 

光一「うおおっ!?(す、すげぇ速いし、手が少しビリビリすっけど………なんかチャンスになってるぜ………!?)」

 

光一も受けたパスに困惑していたが、結果としてこれがチャンスになっていた。光一はそのままダンクを狙いに行く。

 

浩太「うあああっ!!」

 

浩太が懸命にディフェンスを行おうとする。しかし、その際に光一に接触してしまう。

 

浩太「うあっ!?」

 

しかし、今の光一に浩太の当たりなど通用せず、浩太は大きく吹き飛ばされてしまう。光一が豪快なダンクを決めたと共に審判の笛が鳴り………

 

審判「プッシング! 紫9番!! バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

光一のバスケットカウントワンスローが再び成立。更に、浩太は4ファールになってしまった。

 

身軽「あちゃあ………浩太が4ファールねぇ………」

 

身軽は呆れた様子でそう呟いた。そして………

 

奄美「あ、あのバカ………!!」

 

友力監督の奄美も頭を悩ます様子を見せ………

 

審判「交代です!」

 

友力は15番の天原太助を投入する事になる。しかし、前回光一にしてやられた彼は、とてつもない緊張感を見せていた。一方………

 

光一「優真ちゃん、ナイスパスだぜ!! あの鋭いパス、名前付けようぜ! そうだ………{音速のパス(マッハパス)}!!」

 

光一は優真の鋭いパスを喜び、名前を付けていた。

 

優真「{音速のパス}………あはは………」

 

光一のネーミングに思うところがあったのか、優真は苦笑いを浮かべる。そして、美矢は18vs18となったスコアボードを見て………

 

美矢「(開始7分であのCが離脱した………初っ端から大チャンスだ………!!)」

 

と、巫魔に大きな有利が来ている事を予感するのだった………

 

 

 

光一の活躍で同点に押し上げるばかりかバスケットカウントワンスローを得て、浩太を追い出す事に成功した巫魔。果たして、このままチャンスとしてしまうのか………!?

To Be Continued………




次回予告
光一はフリースローを撃つが、シュートは外れてしまう。だが、この外れたボールを拾った修也は、浩太離脱のハンデを感じさせないプレイを見せつけ………!?
次回「俺達は負けねぇよ」


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第188話 俺達は負けねぇよ

前回までのあらすじ
巫魔の反撃。優真の{音速のパス(マッハパス)}からの光一渾身のダンクで浩太を4ファールに追いやる事に成功。巫魔は一気に有利な展開を掴んでみせ………!?


そして、光一のフリースロー。光一は審判からボールを受け取り、軽く地面にバウンドさせた後にシュートを撃つが、シュートはリングに嫌われたのか弾かれてしまった。

 

光一「ありゃっ!?」

 

光一は驚き声を漏らした。

 

積牙「コウさん! リバウンド!!」

 

しかし、積牙がすぐに声をかけた事で調子を取り戻し………

 

光一「おし、任せろやい!!」

 

光一はすぐにポジションへ着き、太助を相手にスクリーンアウトを取った。太助では光一を相手に何も出来ず、苦しそうな様子を見せる。

 

光一「よし、貰った!!」

 

ボールが落下し始めたタイミングでジャンプし、ボールを取ろうとする。

 

修也「うおおおっ!!」

 

しかし、この場面でリバウンドボールを取ったのは修也であった。

 

修也「いつまでも調子に乗るなよ、巫魔!!」

 

ここまで両チームのCが目立つという展開になっていたが、ここに来て修也がその頭角を現した。

 

美矢「マズイ! 戻れ!!」

 

美矢はディフェンスの指示をする。しかし、修也はその前に攻撃に走っており、この時点で戻れたのは積牙だけだった。

 

積牙「決めさせない!!」

 

積牙はゴール前で大きく体を広げたディフェンスを行う。

 

修也「俺達は負けねぇよ!!」

 

しかし、修也は強い気合いと共にボールを持って大ジャンプ。ブロックに来た積牙を弾き返すほどのパワーと体幹を見せ、そのままツーハンドダンクを決めた。同時に審判の笛が鳴り………

 

審判「プッシング! 白10番! バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

判定は積牙のファールに。結果として2点追加からのフリースローを得る。

 

芽衣「ナイス、修也くん!」

 

友力は、有利が維持できている事を喜ぶ。一方、美矢は………

 

美矢「(くっそ………さっきから修坊がいい所で仕事してきやがるな………知らんうちにここまで成長しているとはな………まあでも、落ち込んでちゃ出来るものも出来なくなる………!)」

 

先程から修也が上手い形で活躍をしている事に目を向けた。しかし、落ち込んでいても仕方ないと考えた美矢は………

 

美矢「ドンマイドンマイ! 次取るぞ!」

 

この失点を忘れさせられるように声をかけた。そして、春香に近付くと………

 

美矢「なあなあ、春香。残り3分、{パワースリーポイントシュート}で上手くファールを誘発してくんねぇかな?」

 

春香に対し戦略を共有。次の手に出るようだ。

 

春香「えっ? で、出来ると思うけど………?」

 

春香は首を傾げていた。しかし美矢は………

 

美矢「(この第1Qで、友力はチーム合計4個のファールを犯した。あと1個あれば………!!)」

 

浩太の犯したファール4つを利用した手に出ようとしていたのだった………

 

 

 

友力は修也が上手く機能している影響で、巫魔は逆転打が得られない。しかし、美矢はそれを踏まえて次の手に出ようとしていたのだった………

To Be Continued………




次回予告
巫魔の反撃。巫魔は春香を使った戦術に出る。そして春香が{パワースリーポイントシュート}を決めた時、巫魔に追い風がもたらされる展開が訪れる………!
次回「チームファール」


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第189話 チームファール

前回までのあらすじ
光一が齎したチャンスは、修也のプレイによってまたしても友力有利の流れを生み出してしまった。しかし、美矢は次の策を狙っており………!?


その後、修也が安定してフリースローを沈め、スコアは3点差の18vs21に。

 

光一「3点差がなんだ! まだまだ行くぜ!!」

 

光一は美矢にパスをし試合再開。そして………

 

美矢「2点ずつやっても埒があかねえ………! 春香、アンタのスリーで追い上げるぞ!!」

 

美矢は春香のスリーを起点に攻める事を宣言する。

 

春香「ええ!!」

 

春香もそれに応じ、もう既にフロントコートのスリーポイントラインの外側にスタンバイしていた。

 

アリサ「させない!」

 

しかし、友力の中で春香の技を最も理解しているアリサは当然のようにマークに来る。しかし、美矢はお構い無しに春香へボールをパス。

 

アリサ「(地味に距離がある………来るとしたら{フェイダウェイスリーポイントシュート}………?)」

 

春香とアリサの間に生じた幾らかの距離。そこから春香の狙いは{フェイダウェイスリーポイントシュート}だと予測するアリサ。春香が膝を曲げて跳躍する寸前、アリサは僅かに早く前の方に跳躍する。だが、春香は前の方へ飛んだ。

 

アリサ「なっ!? {パワースリーポイントシュート}!?」

 

アリサは読みが外れて動揺。そのまま春香に接触してしまい、審判の笛が鳴った。当然のように春香のスリーは決まった。

 

審判「プッシング! 紫6番!」

 

春香のパワースリーポイントシュートが形成される。

 

美矢「よし………!」

 

美矢はこのファール成立と共にガッツポーズを作った。その理由は………

 

審判「………チームファール!! フリースロー!!」

 

第1Qにおける友力のファール数が通算5つとなり、チームファールが成立したからだ。

 

結衣「チームファール………? なんですか、それ?」

 

結衣は聞き慣れないコールに首を傾げる。

 

あずさ「チームファール。1つのQでチーム合計5つ以上のファールを犯してしまうと、ファールの内容に関係なくフリースロー2本が成立するの。一応1本目を外したら2本目は無くなるけど………」

 

あずさはチームファールについて説明。そのかていでデメリットについても話はするが………

 

審判「ツーショット!」

 

審判からボールを受け取った春香は、難なく1本目のフリースローを沈める。

 

伊吹「まあ春香には無縁の話よな………」

 

元からシュート成功率の高い春香には無縁の話であるようだ。これにより22vs21で1点リード。続いて2本目。春香はこれも冷静に沈めてみせ、23vs21の2点リード。

 

美矢「(よし、春香の決めた3点と併せて2点追加。この5点は悪くないぜ………!)」

 

美矢はチームファールを利用した5点プレイで、一気に逆転を見せた。そんな中、美矢のガッツポーズを目にし、これが彼女の策略である事に気付いた………

 

芽衣「(やっぱり美矢さんは凄い頭の回る人だなぁ………でも、私には私にしかない武器があるから………!)」

 

しかし、芽衣は心の中で強く意気込む様子を見せたのだった………

 

 

 

試合は23vs21の2点リード。まだ第1Q開始から7分半。試合は始まってまだ時間の経たぬ中、一進一退の展開を見せていたのだった………

To Be Continued………




次回予告
2点リードを得た巫魔。しかし友力も負けじと反撃に転じる。その中で芽衣は彼女のスキルをフル活用し………!?
次回「なんだ今のパスは」


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第190話 なんだ今のパスは

前回までのあらすじ
美矢の策略により、春香は{パワースリーポイントシュート}を決め、チームファールを成立させる。結果、スコアは23vs21の2点リードとなり………!?


友力ボールで試合再開。ボールは身軽から芽衣にボールが渡る。

 

芽衣「反撃………行くよ!」

 

芽衣はそう言ってドリブルでボールを前線へと運ぶ。そしてフロントコートに到達した場面で優真とマッチアップする。

 

芽衣「(この子のディフェンス………まだ拙いところはあるけど………美矢さんが上手い具合にヘルプに入れる距離にいるからドライブで抜くのは危ないかも………)」

 

芽衣からすれば優真は格下でこそあるが、それを計算に入れた美矢の位置は、ギリギリヘルプをかけれる位置だった。

 

芽衣「(そうなると………)」

 

芽衣は右手でボールをバウンドさせる様子を見せる。

 

美矢「優真、このままディフェンス続けてくれ! 相手の動きを制限出来るだけ大きいぞ!!」

 

美矢は優真を鼓舞し、この均衡状態を維持出来る事を狙っていた。

 

芽衣「制限………? それはどうですかね………!」

 

芽衣はそう言うと、優真を見つめながらボールを右手で掴んで背の方へ持ってきた。そして………

 

優真「………あっ!?」

 

芽衣は背中からノールックでボールを打ち上げた。

 

伊吹「な、なんだ今のパスは!? でも打ち上げ過ぎだ!!」

 

芽衣のノールックパス。しかし、高く打ち上がったボールによって、誰もがパスミスと見なした。

 

修也「うおおおっ!」

 

………たった1人を除いて。

 

美矢「修坊………!?」

 

なんと修也はコート上の誰もが不意を突かれる形で大ジャンプ。そのまま空中でボールをキャッチし、ダンクを決めた。

 

積牙「あ、アリウープ………!?」

 

芽衣の放ったパスはミスでは無く、これを考えていた為だった。

 

光一「嘘だろ………あんな背の小さい子がこんなコンボを形成するなんて………!」

 

光一は芽衣の予想外の動きに驚きを隠せなかった。しかし、光一が芽衣の背を小さいと言った為、芽衣はまたしても露骨に頬を膨らませた。

 

光一「ええっ!? なんか怒ってる!?」

 

光一は芽衣がどうして怒ったのか分からない様子を見せた。

 

修也「芽衣は背の低さを指摘されるとキレるぞ。俺も昔弄って無茶苦茶キレられた………」

 

その理由を修也が説明。先程の観客の声からも分かるが、芽衣にとって背の低さはコンプレックスを持っているようだ。

 

アリサ「ユー程紳士じゃないもんね、シューヤは」

 

修也は過去の事をアリサに毒づかれた。

 

修也「勘弁してくれ………今試合だろ………」

 

修也はそう言って逃げるようにディフェンスへ戻った。芽衣もディフェンスに戻りながら………

 

芽衣「紳士………か」

 

そう呟いて過去の優との会話を思い出すのだった………

 

 

 

芽衣の思わぬ奇襲により、23vs23とまたしても同点の展開へ。第1Q残り2分。乱打戦の続く第1Qを制するのは果たしてどちらのチームか………!?

To Be Continued………




※次回の投稿は2024年1月4日です。また、次回から『幻想籠球録』は7:30からの公開となります。

次回予告
過去に芽衣は、優に自身の背が低い事を相談していた。しかし、優はそれを貶す事無く、寧ろ褒める様子を見せ………?
次回「君の武器さ」


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第191話 君の武器さ

前回までのあらすじ
チームファールのフリースローで2点リードを得た巫魔。しかし、芽衣のパスから修也のアリウープにより、得点は再び同点へ振り出しとなったのだった………


これは今から3年程前のこと。優が友力中学のキャプテンになって間もなくのある日………

 

 

 

修也「はああっ!!」

 

この日は修也と芽衣が1on1練習をしていた。しかし、芽衣は特別1on1が上手い選手では無い為、あっさり負けてしまった。

 

芽衣「ううっ………また負けた………」

 

芽衣は悔しそうな様子を見せる。

 

修也「やっぱ背が低いとこっちの方が有利だよな〜」

 

修也はこの1on1の勝因として、身長を理由に挙げた。確かにこの時の修也は身長173cmで、芽衣は身長142cmだった。しかも芽衣はそこから3年の間に3cmしか伸びていない。コンプレックスを持ち始めたのもこの頃のようだ。

 

芽衣「む〜!!」

 

背の低さを指摘され頬を膨らませる芽衣。

 

優「そう油断していると修也の方が負けるぞ」

 

そこへ優が会話に入ってきた。

 

芽衣「ミドレーユくん………!」

 

芽衣は優が会話に絡んで来た際、自然と頬の膨らみが収まった。

 

優「この間の1on1、僕が勝ったじゃないか。10cmくらいのハンデ背負ってさ」

 

この時の優は身長164cm。しかし、これ以前の1on1では修也相手に勝利を収めているようである。

 

修也「………ごめん、芽衣」

 

優に負けた事実があるからか、修也は半ば掌返しの形で芽衣に謝る様子を見せた。

 

芽衣「う、ううん。私も意地になっちゃってごめんね………!!」

 

芽衣も露骨に機嫌を悪くした事を謝罪するのだった………

 

 

 

その後、優と芽衣は片付けの際に2人きりで会話する機会があった。

 

芽衣「さっきはごめんね。私が背の低さについて機嫌悪くなったりしちゃって………」

 

芽衣は、先程仲裁に入ってくれた優に改めて謝罪する。

 

優「いや、別に謝らなくて大丈夫さ。僕はあくまで仲裁しただけだし」

 

優は特に気にする様子も見せていなかった。

 

芽衣「………ミドレーユくんはさ、背の低いブレイヤーって活躍できないと思う?」

 

そんな中、芽衣は素朴な疑問を優に投げかけた。

 

優「背の低いプレイヤーねぇ………確かにバスケで高さを重視される事はよくあるね。でも、僕はそう思わないかな。背の低い人が活躍する可能性だってあるさ。背の低い人が視野を広く持っているなんて話もあるくらいだし」

 

優はそう言って背の低いプレイヤーが活躍する可能性を否定せず、寧ろそれらのプレイヤーが持つ利点についても口にした。

 

優「背が低い人はインパクトが弱いとは言うけど………弱いから奇襲同然の力になる。芽衣の背の低さは君の武器さ。だから、芽衣はそんなプレイヤーになったらいいんじゃないかな。小さいけど相手を驚かせる影のビッグプレイヤーとか………あはは、流石にこれは押し付けみたいになっちゃったかな。ごめんね」

 

優にとっては励ましになるか分からない妄言のようなアドバイスだが、この言葉が芽衣のバスケット人生を大きく変えたと言う。

 

芽衣「それ………それだよ、ミドレーユくん!!」

 

優のアドバイスを聞いた芽衣は大きく喜んだ。優は芽衣の喜びように驚いていたが………

 

優「………役に立てたのなら何よりだ」

 

嬉しそうにそう言葉を返すのだった………

 

 

 

芽衣の人生を変えた優とのやり取り。このやり取りが、今の芽衣に繋がったきっかけであったのだった………

To Be Continued………




次回予告
芽衣は背の低さを感じさせないファインプレイで巫魔からボールをスティールする。更に、珍しく彼女を主とした速攻を行い………!?
次回「背の低さは武器だよ」


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第192話 背の低さは武器だよ

前回までのあらすじ
背の低さにコンプレックスを持っていた中学時代。そんな彼女が今のプレイスタイルを形成したのは、優から受けた言葉が理由のようで………?


美矢「ドンマイドンマイ! 取り返すぞ!」

 

ボールが美矢に渡って試合再開。そして………

 

美矢「優真!!」

 

美矢が再び優真にボールをパスした時、芽衣が上手い形で手を伸ばし、パスを弾いた。

 

積牙「スティール!?」

 

この時の巫魔にとって、このスティールはだいぶ不味かった。何故なら、この時点でバックコートにいたのは光一だけだったのだから。

 

美矢「も、戻れ!!」

 

美矢が慌てて後退を指示するが………

 

芽衣「………速攻!!」

 

芽衣はこの場面で速攻をかける。芽衣は零れ玉を拾うと、単独でドリブル速攻。素早いドリブルで光一の前に立った。

 

春香「こ、光一くんと芽衣ちゃんの1on1………!」

 

これにより、光一vs芽衣の1on1に。しかし………

 

観客1「おい! あの2人の身長差、めっちゃあるぞ!?」

 

観客2「ミスマッチってレベルじゃねえ!!」

 

その差は高校バスケではまず見ない約60cm。どう考えても光一有利の展開であり、普通に考えたらミスマッチもいい所である。

 

美矢「(身長差は光一の方が圧倒的に上だ………! 何考えてやがる、あの8番………!)」

 

芽衣の動きに戸惑う美矢。しかし、芽衣は恐ろしい程に冷静だった。

 

光一「あんまり小さい子相手に背の高さで勝つのは好きじゃないが………まあ悪く思わないでくれよ?」

 

光一はそう言って芽衣を見下ろしながら、彼女の背の低さを突く。

 

芽衣「………また私の背の事バカにしたね」

 

芽衣はまた頬を膨らませる。しかし………

 

芽衣「でも、背の低さは武器だよ。それに気づかないなんて、何時かの修也くんみたいで滑稽だ………ね!!」

 

芽衣はそう言うと同時に、再びノールックパス。しかも今度は真後ろへ高く打ち上げる。

 

光一「(またノールックパス!?)」

 

光一は驚きを隠せなかった。その直後、芽衣の真後ろへ天高く打ち上がったボールは、修也が再びアリウープでねじ込んだ。

 

優「っ………!?」

 

このアリウープの時、偶然かは分からないが、目を回していた優は正気を取り戻したと言う。

 

観客「うおおっ!! 2連続アリウープ!!」

 

芽衣のファインプレイから、再び奇襲のパスによる攻撃。これを見た光一は………

 

光一「き、{奇襲のパス(サプライズアタックパス)}………!」

 

また勝手に必殺技名を付けて驚いていた。

 

芽衣「{奇襲のパス}か………ある意味そうかもしれないね」

 

芽衣はしてやったりと言わんばかりの表情で喜んでいた。

 

積牙「こ、コウさんが出し抜かれた………でもどうして………!?」

 

積牙は、光一が芽衣を相手に出し抜かれてしまった事に驚きを隠せなかった。

 

美矢「身長のミスマッチだよ………光一はあの8番を見るのに視線を下げた………彼女はそれを利用し、光一から見て恰も奇襲されたように見せつけたんだ………!」

 

美矢は、芽衣が光一に見せた奇襲のトリックを説明する。しかし、光一が対処出来た可能性を述べても、それは結果論に過ぎない為、芽衣のバスケIQの高さが伺える上手いプレイだった。

 

美矢「(名前は確か月渡芽衣だったっけ………守城の戦記や爆速の速野とは違う意味で厄介なPGだぞ、彼女は………!!)」

 

このプレイングから美矢は、イバラキ屈指のPGである戦記や速野とは異なる強さを持つのが芽衣だと認めざるを得ない程に恐ろしい選手と認識させられたのだった………

 

 

 

芽衣の奇襲アシストにより、スコアは23vs25。友力2点リードとなり、巫魔はまたしても苦しい状況へと追い込まれるのだった………

To Be Continued………




次回予告
芽衣の奇襲アシストはまだまだ続き、今度はアリサの{パワースリーポイントシュート}による4点プレイを献上してしまう。だが、この場面で正気を取り戻した優がコートに戻ってきて………?
次回「流れを変えるよ」


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第193話 流れを変えるよ

前回までのあらすじ
芽衣のスティールから速攻。光一との1on1も、背の低さを利用した奇襲のアシストを見せ、スコアは23vs25の友力2点リードとなったのだった………


そして、巫魔ベンチ。正気を取り戻した優は体を起こし、スコアボードを見た。

 

優「(第1Q残り1分44秒で2点負けてる………! )」

 

優は試合状況を瞬時に把握した。それと同時に………

 

芽衣「はあっ!」

 

芽衣がまたしても美矢のパスをスティールした。

 

観客1「おおっ! また8番のスティールだ!!」

 

観客2「さっきから目立ってるな8番。いいぞー!!」

 

芽衣の低身長を感じさせないプレイングは、観客すら味方にしてしまうほどだった。

 

美矢「おっと、今度は私が相手だぜ!!」

 

ここまで芽衣にしてやられると、美矢も動かざるを得なかった。芽衣は再びボールを背に持っていく。

 

美矢「(また修坊とのアリウープか………!?)させるか!!」

 

美矢は修也とのアリウープと踏んで、先にジャンプした。しかし、芽衣は上ではなく真左のアリサにパスをした。

 

春香「アリサちゃんへのパス!?」

 

突然のアリサへのパスを目にし、春香は反射的に前へ飛んでしまう。アリサはそれを利用し、前に飛んで春香と接触。姿勢を崩しながらも見事にスリーを決めて見せ………

 

審判「プッシング! 白5番! バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

必殺の{パワースリーポイントシュート}を完成させ、4点プレイを形成した。これにはベンチで試合を見ていた優も………

 

優「(やられた………芽衣は確かに派手な選手では無いけど、サポートなら戦記さんに劣らない強さだ………!)」

 

心の中で芽衣にしてやられた事を実感した。そして、試合の流れを見ていた監督のゆうかは………

 

ゆうか「優くん、あの6番ちゃんがフリースロー打ったら優真ちゃんと交代よ」

 

次のフリースロー後、優を再出場させる事に決めた。

 

優「分かりました。結衣ちゃん、スポドリくれ!」

 

優はそう言って頷くと、スポーツドリンクの入った缶を結衣から受け取り、勢いよく飲み始めた。それを見た修也は………

 

修也「おっ、次で戻る気だな………!」

 

かつての相棒にして戦友が戻ってくる事を嬉しそうにしていた。そして、アリサのフリースロー。春香の技を自己流に覚えているだけあって、フリースローは安定して沈めて見せた。

 

審判「巫魔、メンバーチェンジ!」

 

審判の言葉で、優はコートに戻ってきた。

 

優「優真、交代だ!」

 

巫魔は、優真の余力があるうちに一度優を出し、途中でまた出られるように対策する事となった。

 

優真「お願いします」

 

優真は優とハイタッチをかわす。

 

優「おう、任せろ!」

 

優はそう返すと、小走りでコートへと入った。

 

美矢「キャプテン、顔は大丈夫なのか?」

 

美矢は心配そうに優を見る。

 

優「大丈夫。軽くショックを貰ったようなもんさ」

 

優は平然とした態度でそう言い返す。そして、美矢や駆けつけてきた春香の肩を優しく叩くと、2人の耳元で………

 

優「………流れを変えるよ。第1Qを離されないように落とす為に………!!」

 

そう言うと反撃の流れを生み出す為の策を考え始めるのだった………

 

 

 

芽衣の{奇襲のパス(サプライズアタックパス)}からのアリサの{パワースリーポイントシュート}で4点プレイが形成され、23vs29と一気に6点リードを得た友力。しかし、ここから優による反撃が始まろうとしていた。試合時間残り1分30秒、果たして、優の作戦は………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔は、優が攻撃の起点としてボールを持ったドリブルを見せる。友力はそれを「優PG作戦」と考えたが、なんと優は本気でPGを務めており………!?
次回「PG白宮優だ」


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第194話 PG白宮優だ

前回までのあらすじ
芽衣の連続アシストにより、6点差に離されてしまう巫魔。だがこの場面で優がコートに戻る。彼の狙いは、試合の流れを変えることで………?


優「よし、反撃の流れを取り返す!」

 

優はそう言うと、美矢からパスを受けて試合を再開する。

 

芽衣「(優くんがPG………これまでみたいに優くん起点の作戦かな………?)」

 

芽衣は、優PG作戦が決行されたと考えた。しかし、今回の優は少しだけ違った。

 

優「はあっ!」

 

優は芽衣とマッチアップした瞬間、素早いドライブで芽衣をかわした。

 

芽衣「なっ!? (なんの迷いもなくドライブに行った………!?)」

 

芽衣は優がドライブで抜き去った事に驚いていた。

 

修也「打たせるか!!」

 

芽衣が抜かれた直後、修也が優の前に立ちはだかる。しかし優は冷静な様子でレイアップを狙いに来た。その際に修也と衝突するが………

 

修也「うああっ!? (痛ってえ………って、なっ!?ミドレーユの奴、体勢が崩れていない………!?) 」

 

修也の身を呈したディフェンス。しかし、優の姿勢はまるで崩れていない。優はそのままレイアップを決める。そして審判の笛が鳴り………

 

審判「プッシング! 紫7番! チームファール!」

 

巫魔は再びチームファールによるフリースローを得た。

 

美矢「いよっしゃあ!! ナイスだぜ、キャプテン!!」

 

美矢は大きく喜びながら優に近づく。

 

優「チームファールって………どんだけ相手さんファール犯してんの………?」

 

チームファールが成立したのは優の意識が飛んでいた時。知らぬ間に味方がファールを貰っていた事に気付いたのか、優も驚きを隠せていなかった。だが、それ以上に芽衣は………

 

芽衣「優くんの動きが速い………でもそれでいて………他の4人はそれぞれがシュートを狙える位置にいた………これまでのPG作戦ではそこまで優くんが大胆に攻める事はしていなかったはずだけど………?」

 

優のPGポジションにおける強気のプレイングに驚いていた。

 

優「まあその辺はシュート力の復活もあるけど………これが僕のPGとしてのプレイング………もう優PG作戦なんかじゃない………PG白宮優だ!!」

 

それに対して優は言い放った。自分は作戦上のPGではなく、正真正銘PGのプレイヤーだと。

 

修也「(ミドレーユ、また俺を置いていくような成長を遂げたな………あんな才能、俺にはねぇよ………)」

 

そんな中、優のライバルである修也は、優との才能の差に落ち込む様子を見せたのだった………

 

 

 

その後、試合は優の復帰により追い上げを見せ、第1Q終了時点では31vs32と1点負けていながらも、試合の流れを取り戻せて見せたのだった………

 

 

 

優の新たなプレイスタイルが開花した事で、一気に流れを取り戻した巫魔。しかし、この先の第2Q以後、試合は更に波乱な展開が続く事を、この時の優達はまだ知らなかったのだった………

To Be Continued………




次回予告
インターバルの中で、スコアメモなどから試合の状況を把握する優。その中で、またしても身軽のスコアが軒並み0である事を怪しみ………?
次回「また身軽さんか」


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第195話 また身軽さんか

前回までのあらすじ
優がPGとしてのプレイングを見せつけ、31vs32の1点差で第1Qを終える巫魔。しかし、まだ勝負は前半戦に過ぎず………!?


第1Qは優の一時的な負傷退場や、浩太の4ファールなど序盤とは思えない波乱の展開が多く、スコアも第1Qとは思えない30点台。

 

優「ふうっ………ちょっと飛ばし過ぎたかな………思ったより善戦したとも言えるが………」

 

優はスタミナの消費が第1Qにしては大きい事を予感する。それと同時に結衣から借りたスコアメモを目にすると………

 

優「積牙、光一、春香のファールが1個ずつか………3人とも、ファール気をつけろよ」

 

3人のファールに気付き、ファールしないよう声をかける。

 

美矢「あー、確かにあの3人のとこは不安よな。積牙は言わずもがな、修坊と6番のスリーシューターがファールを誘発する可能性あって厄介だもんな」

 

美矢は3人のファールを警戒する意図に気付き、そう説明をした。

 

積牙「俺はもうファールする前提なんですか………」

 

積牙はそれを言われて落ち込む様子を見せる。そんな中、スコアメモを見た優は………

 

優「スコア0は………また身軽さんか………」

 

練習試合の時と同じく、身軽が第1Qでは大人し過ぎる程に何もしていないことに気づく。

 

優「積牙。例え身軽さんが突っかかってきても熱くなるなよ。それこそあの人の思う壷だから」

 

優はこの先にまた身軽が動き出すと見てそう指示をする。

 

積牙「は、はい!」

 

以前してやられた経験から、積牙もいくらか身構える素振りを見せた………

 

 

 

一方、友力ベンチでは………

 

奄美「巫魔は思った以上に善戦しているようだな。それに、まだ白宮優がスタミナを幾らか残しているのも警戒せねばならない。天野、今の友力で奴に真っ向から挑める相手はお前しかいない。変わらず白宮優へのマークを続行しろ」

 

奄美がチームに指示をしている真っ最中だった。

 

修也「はい!」

 

第1Qでは確実な得点仕事が多く、優とあまり勝負が出来なかった修也。そんな彼の闘志は熱く燃えていた。

 

奄美「それから身軽………この試合、お前には練習試合の時以上に働いてもらう。第3Q前に着くであろうあのバカが帰ってくるまでに………巫魔のスタメンの誰でもいい。1人コートから追い出せ」

 

更に奄美は身軽に、巫魔の主力を切り落としていくよう指示した。

 

身軽「分かりました………ああ、そうだ。修也とアリサ。2人もガンガン相手のファールを貰っていってくれ」

 

それを聞いた身軽は、巫魔の主力陣からガンガンファールを誘発する事を指示する。

 

身軽「チームファールなんてやられたんだ。こっちもやり返してやろうじゃん」

 

普段放任主義の身軽も、この試合の時は心の中で闘志を燃やす素振りを見せたのだった………

 

 

 

初っ端から両チームの強い熱さを見せた第1Q。しかし、この時の会場で予感する者は少なかった。この第2Qもまた、激しい展開が続くということを………

To Be Continued………




次回予告
開幕する第2Q。初っ端から身軽が突っかかる様子を見せると、積牙からのファールを誘発してきて………!?
次回「前回の二の舞さ」


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第196話 前回の二の舞さ

前回までのあらすじ
31vs32の1点負けた状況で第1Qを終えた巫魔。前回のように身軽はスコア0であり、第2Qで動きを見せ始めようとしていた………


審判「第2Q、始めます!」

 

審判の言葉で試合再開。両チームの選手がコートに戻り、巫魔ボールで試合再開。

 

春香「美矢ちゃん!」

 

春香は美矢にボールをパス。美矢は素早いドリブルで前線に切り込んでいく。そこに芽衣がディフェンスにやってくる。

 

美矢「積牙!」

 

美矢は積牙へボールをパス。そこへ身軽が走り込んできた。

 

身軽「おっと、行かせないよ」

 

前回は積牙を完膚なきまでに叩きのめした身軽。

 

積牙「(冷静になれ………この人だって無敵じゃないはずだ………!)」

 

積牙は冷静に左側へ動く。

 

身軽「(これは………)」

 

身軽は積牙を追いかけるように右側へ動く。

 

積牙「(よし、今だ!!)」

 

積牙はそこから右側へ切り返し、身軽を抜こうとした。

 

伊吹「よし、そのまま{ソニックジャンパー}だ!!」

 

伊吹がそう声をかけたその直後………

 

身軽「ふふっ………予想した通り………だ!」

 

なんと身軽の右移動はフェイントだった。直後に左移動に切りかえ、積牙のフェイントを無力化した。

 

積牙「あっ!?」

 

動揺する積牙。この動揺によって思わず身軽と激突した。

 

身軽「うあっ!?」

 

身軽は積牙に押される形で倒れた。当然、審判の笛が鳴り………

 

審判「プッシング! 白10番!!」

 

積牙が2つ目のファールを取られた。

 

身軽「ふうっ………ナイスファール」

 

身軽は挑発するようにそう呟いた。

 

積牙「なっ………!?」

 

身軽の挑発に積牙は思わず熱くなりかけたが………

 

優「やめろ、積牙」

 

優がフォローをする形で声をかけた。

 

身軽「………先に言っておくよ。俺がディフェンスする限り、君は俺の掌の上で踊らされるだけ………即ち、前回の二の舞さ」

 

しかし、身軽はそう言って挑発を強める。

 

積牙「ぐっ………!」

 

身軽の挑発に、積牙は軽くではあるが乗ってしまう様子を見せる。これを危惧した優は………

 

優「美矢、ちょい来て」

 

美矢に声をかけた。

 

美矢「どうした、キャプテン?」

 

美矢は首を傾げながら優に近づく。

 

優「積牙にパスを回すのはフリーの時に頼む。これ以上積牙のファールを増やさせるわけにはいかない」

 

優は美矢にのみ聞こえる声でそう呟いた。

 

美矢「………了解。任せとけ」

 

美矢は静かに頷いた。しかし………

 

身軽「(対策してこようとしてるな………でも何をしたって無駄さ………俺の前では操り人形のように踊り狂うしかないのさ………)」

 

身軽は2人の秘密の会話を前にしても自信を崩さないのだった………

 

 

 

第2Q開始早々、積牙が2つ目のファールを取られてしまう。優達も作戦を取るが身軽の余裕は崩れない。果たして、身軽が余裕を見せる理由は何故なのか………!?

To Be Continued………




次回予告
積牙と身軽をオフェンスでマッチアップさせないように美矢は策を張り巡らす。しかし、身軽による積牙へのファールトラップの毒牙がまたしても突き刺さり………!?
次回「そんなの無駄さ」


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第197話 そんなの無駄さ

前回までのあらすじ
第2Qが始まり、巫魔は美矢を起点に攻撃を仕掛ける。積牙が身軽とマッチアップし、必殺の{ソニックジャンパー}を狙うものの、身軽によって2つ目のファールを取らされてしまい………!?


積牙のファールである為、友力ボールで試合再開。身軽は芽衣にボールをパスする。

 

芽衣「修也くん!」

 

芽衣は修也に向けて高くボールを打ち上げた。しかし………

 

優「させるか!!」

 

優はボールの高さに脅威的な跳躍力で食らいつき、ボールを叩き落とした。

 

芽衣「っ………!? (これが届くの………!?)」

 

かつてのチームメイトであった芽衣は、優の脅威的な跳躍力に驚きを隠せなかった。零れ玉は美矢が拾い………

 

美矢「よし、反撃行くぜ!」

 

美矢はドリブルで上がって行く。そこに身軽が立ちはだかる。

 

美矢「(身軽………!! 取り敢えずコイツと積牙をオフェンスでマッチアップさせる訳には行かねぇ………!!)」

 

美矢はそう考えながら、積牙が身軽と距離を離すのを確認しながらどう突破するか考えていた時、身軽は横から美矢のバウンドしていたボールを弾き飛ばした。

 

美矢「なっ!?」

 

これには美矢も驚きを隠せなかった。身軽は零れ玉を拾い、珍しくドリブルで上がる。

 

積牙「っ!? 行かせない!」

 

積牙は慌ててヘルプに入り、懸命に身軽の前に立ちはだかる。

 

身軽「俺とこの10番をマッチアップさせたくないのは分かるけどね………」

 

身軽は喋りながらスリーポイントラインから幾らか離れているにも関わらずシュート体勢に入った。

 

積牙「撃たせない!」

 

積牙はブロックに入る。

 

優「っ………! 早まるな、積牙!!」

 

優は嫌な予感を感じた。直後に身軽はさっさとボールを放り投げ、積牙の手が自身の左腕に当たるように左手を上げた。結果、見事その目論見が当たったかのように積牙は身軽の左腕を叩いてしまった。

 

積牙「あっ………!?」

 

積牙は動揺を隠せなかった。しかも身軽が放ったのは本当に適当なシュートであり、ゴールにすら届かなかった。しかし、スリーポイントシュート中のファールであった為に………

 

審判「イリーガル・ユース・オブ・ハンズ! 白10番! フリースロー、スリーショット!!」

 

身軽に3本のフリースローが与えられる。

 

結衣「3つ目………!!」

 

マネージャーの結衣は積牙のファール数が3つ目になった事に動揺しつつも記録へ残した。

 

身軽「………どんな小細工をしたってそんなの無駄さ。俺のファールトラップはそう簡単に抜け出せない。1度ハマったら抜け出すのは困難さ」

 

身軽は巫魔に対しそう言い放った。それを聞いた優は………

 

優「(流石、全国クラスの選手が多い友力でキャプテンなだけの事はある………この人も紛れも無い全国クラスの選手だ………!!)」

 

身軽の実力の高さを改めて思い知らされるのだった………

 

 

 

身軽の策により、3つ目のファールが形成される積牙。果たして積牙はまたしても4ファールに陥ってしまうのか………!?

To Be Continued………




次回予告
積牙を何としても4ファールに落とし込みたくない巫魔。しかし、身軽の毒牙は避けられず………!?
次回「これで終わりさ」


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第198話 これで終わりさ

前回までのあらすじ
積牙と身軽をオフェンスでマッチアップさせまいと策を張る2人だが、身軽は積牙を3ファールへ追い込んでしまい………!?


身軽はフリースローを3本撃つ事に。1、2発目は上手くゴールへ沈めた。そして3本目のフリースロー。

 

身軽「………あ」

 

身軽が放った3本目のシュートはリングに弾かれた。

 

優「リバウンド!」

 

優達はリバウンド勝負をする事に。優は修也をスクリーンアウトで飛ばせないようにする。

 

光一「おっしゃあ!!」

 

その隙に光一が太助を相手にリバウンドを征した。

 

優「よし、ナイスだ!」

 

優はそう言って巫魔の反撃を始めようとする。

 

芽衣「こっちだってやり返すよ!!」

 

しかし光一が落下してきたと同時に芽衣がボールを手放させる形でスティール。

 

優「ぐっ!?」

 

芽衣のスティールを見た優は慌てて引き返し、ボールを取り返そうとする。

 

芽衣「身軽さん!」

 

芽衣は苦し紛れながら身軽にボールをパス。ボールを受け取った身軽はそのままレイアップを狙う。

 

積牙「撃たせるか!!」

 

積牙はディフェンスの為にジャンプする………

 

美矢「っ………! バカ! ディフェンスすんな!!」

 

美矢は積牙に対し声をかけるが、もう時既に遅し。積牙はジャンプの際に前へ飛びすぎたせいで身軽に激突してしまった。

 

身軽「ふっ………! (これで終わりさ………!!)」

 

審判の笛に身軽は笑いを零した。身軽が放ったレイアップは外れてしまったものの………

 

審判「プッシング! 白10番! フリースローツーショット!!」

 

結果として身軽はフリースローを獲得する事になった。オマケに………

 

優「4つ目………!!」

 

積牙が4ファールを取られてしまった。これを見たゆうかは………

 

ゆうか「………これはもう交代しかないか………」

 

やむなく交代を決める事に………第2Q開始から1分55秒の事だった。

 

 

 

積牙との交代で入ってきたのは優真だった。優真が再びPGで入った為、身軽とのマッチアップは美矢が務める事に。

 

美矢「………やってくれたな、アンタ」

 

美矢は身軽に対しそう呟いた。

 

身軽「ふふっ………こっちも困る相手は追い出しておきたいからね」

 

身軽は開き直る形でそう言い返した。それを聞いた美矢は………

 

美矢「………ぜってえ倒す」

 

美矢はそう言って反撃をする決意を見せた。そして、積牙が4ファールで交代した様子に目にし………

 

優「(身軽さん、何を企んでやがる………? そう考えるとこの第2Qで逆転する必要がありそうだ………!)」

 

身軽が企みを隠していると考え、第2Qの目的を逆転に定めるのだった………

 

 

 

試合は31vs34の3点負けた状況。果たして、優の目標である逆転を狙う事は出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優は逆転を図る為、攻めに転ずる事を決める。しかし、芽衣のプレイングによって優真が苦戦を強いられる事になり………
次回「まだまだだね」


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第199話 まだまだだね

前回までのあらすじ
なんとしても積牙を4ファールにしまいと奮闘する巫魔。しかし、身軽の策に三度ハマる事となり、積牙は4ファール交代となってしまうのだった………


その後のフリースロー。身軽は1本目は綺麗に沈めたが………

 

身軽「………やべ」

 

2本目は外してしまった。そしてリバウンド勝負となり………

 

優「うおおおっ!!」

 

この場面は優が上手くリバウンド対決を制した。

 

優「(積牙が抜けてしまったのは確かに痛手だ………でも、いつまでも翻弄されてばかりでいられるか………!!)」

 

第2Qで逆転を狙う優の熱い闘志が、リバウンドを取る機動力となったようだ。

 

優「攻めるぞ! 積牙が抜けたこの場面、なんとしても切り抜ける!!」

 

優はそう宣言すると、優真にボールをパスした。

 

芽衣「(反撃が来た………!)」

 

ドリブルで上がる優真に対し、芽衣は素早く戻ってボールを奪取した。

 

優真「ああっ!? (な、なんて戻りの速いディフェンス………!!)」

 

これには優真も驚きを隠せなかった。

 

芽衣「(あの優真ちゃんって子、前と比べてドリブルはずっと上手くなってる………でも、まだまだだね)」

 

芽衣は優真の成長こそ認めていたが、まだ自分のレベルまで上がってはいない事を見抜いた。

 

芽衣「アリサちゃん!!」

 

芽衣はボールを持つと共にアリサに対し声をかける。

 

美矢「は、春香! 6番気をつけろ!!」

 

美矢はアリサにパスが行く事を警戒し、春香に声をかける………

 

芽衣「(………そう見せかけて………!)」

 

しかし、芽衣は隙を突き、ボールを高く打ち上げた。

 

美矢「………! し、しまった! 真の狙いは修坊へのパスか………!!」

 

これには美矢や春香も驚いていた。しかし打ち上がったボールに対し真っ先に反応したのは優だった。

 

芽衣「っ………!? 優くん!?」

 

優は修也が取るよりも前にジャンプし、ボールをキャッチした。

 

優「優真、上がれ!!」

 

優はそう言うと、前線の優真に向けてボールをパス。優真は既にゴール近くまで上がっていた。

 

修也「速攻か!?」

 

修也やアリサは、優真の速攻に驚いていた。しかし、芽衣はこの場面でも冷静にディフェンスへ戻り、優真を追いかける。

 

美矢「逃げ切れ、優真!!」

 

美矢は優真に対し声援をかける。優が投げたボールが優真の手に届くと、優真はそのままレイアップを狙う。

 

芽衣「させないよ………!!」

 

しかし、芽衣が間一髪で追いついて見せ、優真の手からボールを叩き落とした。叩き落とされたボールはコートのライン外へバウンドし………

 

審判「アウト・オブ・バウンズ! 白ボール!!」

 

巫魔ボールのスローインとなった。

 

春香「あ、あの場面から追い付いた………!?」

 

光一「おいおい、あのちっこい子、あそこまでやるのかよ………!?」

 

これには巫魔メンバーも驚きを隠せなかった。しかし………

 

優真「まだまだ………こんな所で諦めません………!!」

 

優真は諦める気など全く無かったのだった………

 

 

 

逆転を目指して攻撃に転ずる巫魔だが、優真が芽衣に対して苦戦を強いられていた。果たして、優真はこの状況を打開できるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔のスローイン。優真が勝つ事を信じる優は再びボールを優真へパス。優の意図に首を傾げる芽衣だったが、2度のディフェンスから優真はまた1つ成長を見せており………!?
次回「3回目は違います」


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第200話 3回目は違います

前回までのあらすじ
逆転を目指す為に攻めに転ずる優達巫魔。しかし、優真が芽衣に苦戦する形で、思うように攻める事が出来ていないのだった………


巫魔ボールによるスローイン。ボールを投げ入れるのは優。

 

優「(ここまで2度、優真を抑えてきた芽衣は、奇襲力の強いパスと併せて見ると紛れも無く強い選手だ………数年一緒にいたからそんな事は嫌でも分かる。堅実さの面では、経験の劣っている優真がこの試合中に勝つ事は出来ないだろう………)」

 

優はそう考えながらボールを手に構え、コートを見る。

 

優「(でも………)」

 

その後、優は優真にボールをパスした。

 

優「優真には芽衣が持っていないモノもある………!! それがあるからこそ………僕は優真の勝利を信じているんだ………!!)」

 

………優真の勝利を信じて。

 

芽衣「(………優くん、どういうつもり? 確かに優真ちゃんにはPGとしてのポテンシャルがある。けれど、まだ明らかに私レベルでは無い。そんな事くらい気づいているはずなのに………どうして、優真ちゃんが私との対決に勝つ事を拘るの………?)」

 

芽衣は、優が何度も優真にボールをパスする事へ首を傾げる様子を見せた。

 

優真「今度は越えてみせる………!!」

 

優真は闘志を燃やしながら芽衣とマッチアップ。優真は慣れないドライブで抜こうとしているのか、左足を浅く左に踏み込む。

 

芽衣「(足の踏み込みが浅すぎる………ドライブかな?)」

 

しかし、芽衣はそれを見抜くと、同じく浅く右足を踏み込み、ドライブに来たと共にスティールしようとした。しかし、優真は………

 

優真「(ドライブまで読んできた………今だ………!!)」

 

芽衣が読んできた事を察すると同時に右へ切り返し、芽衣が左に切り返してきたタイミングで、優真は左手で、インサイドにいる優目掛けてボールを高く打ち上げる。

 

芽衣「えっ………!?」

 

アリサ「あ、アリウープ!?」

 

これには友力メンバーが呆気にとられる様子を見せた。優はそのままボールをゴールへ叩きつけ、アリウープを決めた。

 

美矢「よし!! いいぞ、優! 優真!!」

 

この場面で巫魔は第2Q初得点を決めた。優真が芽衣を抜いて見せた事に、芽衣も驚いていた………そんな彼女に優真は近づき………

 

優真「………3回目は違います。前に2回抜かれたのを見て、芽衣さんならどうするかを考えながら動きましたから………!!」

 

2度抜かれた事で今がある事を口にした。それを聞いた芽衣は………

 

芽衣「(臨機応変に策を組み立てる瞬発力は優真ちゃんの方が上。それを読んでいたから信じていたって事なんだね、優くん………!)」

 

優が優真の勝利を信じていた理由を察する様子を見せるのだった………

 

 

 

優真が3回目にして芽衣を上手く出し抜いて見せた。これにより、勝負の流れは友力一辺倒では無くなった。果たして、巫魔はこの状況を打破出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
芽衣を1度出し抜いた事で、優真の調子が上がって行く。そして、優真が隙を突いたスリーポイントシュートを決め………!?
次回「調子が出てきました」


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第201話 調子が出てきました

前回までのあらすじ
優はあくまで優真vs芽衣の勝負を、優真が勝つと信じていた。そしてその目論見がはっきりとしたように、優真は3度目にして芽衣を出し抜いて見せ………!?


アリサによる芽衣へのパスで試合再開。芽衣は即座に前線へ上がっていた修也に向けてボールをパスした。

 

美矢「何っ!?」

 

この時、まだディフェンスに戻りきれていなかった巫魔は追い詰められる。

 

修也「貰った!」

 

パスを貰った修也はそのままレイアップを狙うが………

 

優「させるか!」

 

優が間一髪修也のレイアップをブロック。

 

修也「ミドレーユ………!!」

 

優が素早く戻ってきた事に修也も驚いていた。零れ玉を美矢が拾うと………

 

美矢「優真!」

 

すぐに優真へボールをパス。優真は速い動きで前線に上がる。

 

芽衣「………! (優真ちゃんのスピードがさっきより上がっている………!!)」

 

芽衣は、試合の中で優真が成長している事に気付いた。すぐさま芽衣がディフェンスに駆けつける。優真がスリーポイントシュートの体勢に入ると、芽衣はジャンプしてブロックしようとする。しかし、優真はそこでは飛ばずに動きを止めていた。

 

芽衣「(フェイク………!?)」

 

芽衣は再び優真に出し抜かれてしまった。芽衣が落下を始めたタイミングで優真もジャンプし、スリーポイントシュートを放つ。

 

優真「芽衣さん………でしたよね」

 

その直後、優真は芽衣に対し声をかけた。

 

優真「不思議なんです………貴女を相手に初めて出し抜いた時から………調子が出てきました………!!」

 

優真は自身の調子が上がってきた事を芽衣に向けて口にした。それを表すように、優真のスリーポイントシュートは見事にゴールリングの中へ吸い込まれた。

 

伊吹「よーし! 決まったぞ!!」

 

優真のスリーポイントシュートが炸裂し、巫魔は36vs35で逆転。この逆転にはベンチ陣も盛り上がっていた。

 

芽衣「(さっきの言葉………あれを信じるのならば………優真ちゃんの中に隠れている強かな意志が私を相手にする事で強く現れたって事だよね………)」

 

そんな中、芽衣の頭の中では優真の言葉が巡っていた。それを優真の強かな意志であると推察した芽衣。

 

芽衣「(その強かな意志を前に私の心が熱くなってきている………そうか、そうだったんだ………)」

 

同時に自身の心が熱くなっている事から芽衣はとある事実に気づくと、優真に近づき………

 

芽衣「修也くんと優くんが、アリサちゃんと春香さんがライバル関係であり………私にはそんな関係の相手は現れないと思っていたけど………私にもしっかりいたんだ、ライバル関係の相手。それは………」

 

芽衣は優真を指差すと共に言い放った。

 

芽衣「………優真ちゃん、貴女だよ」

 

優真が自身のライバルであると………

 

 

 

優真の活躍で遂に逆転した巫魔。しかし、芽衣は優真に2度出し抜かれた経験から、ライバルであると認識して闘志を燃やし始めた。果たして、この2人の対決はまだ盛り上がりを見せるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
芽衣が優真をライバルと認めた事で闘志を燃やし、本来以上のパフォーマンスを発揮するようになる。優真もそれに応えるように更なる成長を遂げていき………!?
次回「100%なんてものじゃない」


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第202話 100%なんてものじゃない

前回までのあらすじ
優真が再び芽衣を出し抜いてみせた事で逆転に成功する巫魔。それと同時に芽衣は優真をライバルと認め………!?


身軽から芽衣がパスを受ける形で試合再開。芽衣は素早いドリブルで上がって行く。

 

優真「行かせません!!」

 

これに優真な食らいついてきた。

 

芽衣「優真ちゃん………!」

 

芽衣は最早優真を自分よりレベルの低い相手だとは考えていなかった。同等、もしくはそれ以上………今の芽衣にはそのように見えており、これまで以上に警戒して無闇にドライブへ行かない。

 

優「(芽衣の動きが慎重になった………マズイ、こりゃ相当スイッチ入っちゃったっぽいな、優真の活躍によって………)」

 

今の芽衣に対して優も強い警戒心を見せた。どうやら今の冷静な様子は、芽衣の調子が乗っている証拠とも言えるようだった。

 

優真「(ここで止める! シュートも撃たせないしドライブもさせない!!)」

 

優真の闘志も十分燃え上がっていた。芽衣はほんの一瞬、自身の視野を広げ、友力の仲間と敵である巫魔の選手達の配置を把握する。そして、右に軽くフェイントを入れる。

 

優真「(フェイントからのドリブル………!!)」

 

優真はそう読んだ。しかし芽衣は右に軽く踏み込むと共にノールックでスリーポイントライン外のアリサへパスした。

 

優「なっ!? (ドライブフェイントと見せかけてパス………! さっき優真が見せた技じゃないか………!?)」

 

これには巫魔選手の誰もが驚いた。春香が慌ててアリサのスリーを止めようとするが、このときを待っていたとばかりにアリサは前に飛びながらスリーを放つ。この際に春香側から接触した事でパワースリーポイントシュートが完成。シュートは見事にゴールへ沈み………

 

審判「プッシング! 白5番! バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

4点プレイを形成。再び2点リードに突き放した。

 

修也「よし! ナイスだ2人とも!!」

 

芽衣のプレイングに巫魔の面々が驚かされる中、優真は………

 

優真「(私だって負けない………!!)」

 

心の闘志を強く燃やしていた………

 

 

 

その後、アリサはフリースローを難なく決めて3点差。続く巫魔の攻撃。再び優真がドリブルで上がる中、芽衣が立ちはだかってくる。

 

優真「はあっ!」

 

しかし優真は迷わずドライブで抜いて見せた。

 

芽衣「あっ!?」

 

そのまま上がった先には、184cmの太助が立ちはだかる。優真の身長が139cmであることから45cm差のミスマッチ対決になった。しかし、優真は構わず自身の背から真後ろに向けてノールックパスをする。

 

芽衣「………!! (あれって………!!)」

 

芽衣は今の優真の動きに見覚えがあった。優真の真後ろへ飛んだボールは、優真の後ろから追いかけてきた優がジャンプしてキャッチ。そのままダンクで沈めた。

 

観客「うおおおっ!! 巫魔もやり返したー!!」

 

そう、これは第1Qで光一とマッチアップした芽衣が決めて見せた技である。

 

光一「す、すげぇ………両方ともPGが凄い活躍してるじゃねえか………!!」

 

この攻守で2人は本来以上のパフォーマンスかつ、完璧とも言えるトレースプレイをして見せた事に、光一も驚いていた。

 

美矢「今やあの2人が発揮している実力は100%なんてものじゃない。120%か、あるいは………それ以上だ………!!」

 

美矢には2人が発揮している力が、120%以上に見える程に2人のパフォーマンスが大きく感じられたのだった………

 

 

 

両チームのPGが大きく力を発揮し、チームの得点へ結び付けていく。このような状況下で、果たして巫魔の逆転は結び付くのか………!?

To Be Continued………




次回予告
PG対決が白熱する中、優vs修也のライバル対決が再び再熱。しかし、実力は僅かに優に傾いており………?
次回「互角に見えるけど」


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第203話 互格に見えるけど

前回までのあらすじ
優真と芽衣のパフォーマンスは大きく上がる。2人が発揮している力は美矢から見て100%を超えており………!?


続く友力の攻撃。芽衣はドリブルで上がった後に修也へボールをパスする。

 

修也「うおおおっ!!」

 

修也はボールを受けた後、ダンクを狙いに行くが………

 

優「はああっ!!」

 

優は大きく跳躍し、修也のダンクをブロックした。

 

修也「なっ!?」

 

修也は驚く様子を見せる。優が零れ玉を拾うと………

 

優「上がれ!!」

 

優がドリブルで前線に上がって行く。

 

修也「くっ、ミドレーユ………!!」

 

修也は悔しそうな素振りを見せながら慌てて優を追いかける。

 

優「優真!」

 

優は優真にボールをパスし、さっさとインサイドへ入った。修也もすぐさまインサイドへ入ったが、優真は特に迷うこと無くインサイドの優へボールをパスした。

 

優「行くぞ!」

 

優はシュート体勢に入る。

 

修也「(シュートが来る………!!)」

 

修也はブロックしようとジャンプするが、優は途中で動きを止めた。

 

修也「フェイク………!?」

 

優のフェイクに修也はまんまと引っかかってしまった。優はドライブで修也をかわした後、冷静にレイアップを決めて2点を加え、40vs39で巫魔が再び逆転。

 

優「よーし!」

 

優は小さくガッツポーズし、近くにいた優真とハイタッチをしてディフェンスに戻る。

 

修也「くそっ………芽衣、もっかい俺にボール回してくれ!」

 

修也はめげずに優と戦う姿勢を崩さず、すぐに前線へと上がる。芽衣もそれを分かっているのか、身軽からのパスを受けた直後、前線へ上がった修也にボールをパスした。

 

修也「行くぞミドレーユ! 俺の必殺をくらえ!!」

 

修也はそう言うと、ゴール前で強く踏み込むと共に大きくジャンプした。

 

美矢「あれは………{強靭なダンク(タフネスダンク)}か!?」

 

修也の必殺技{強靭なダンク}で巫魔から得点を奪おうとする修也。優はディフェンスに飛ぶが、まだハッキリとした攻略法は分からないのか、修也に吹っ飛ばされてしまう………が。

 

審判「ファール! 紫7番!」

 

修也のファールとなった為、事無きを得た………というか、優が意図的にそうしたのか、安堵する様子を見せる。

 

結衣「あ、危なかったですね………それにしても2人とも、凄い戦いです………」

 

再熱するライバル対決にヒヤヒヤする様子を見せる結衣。しかし監督のゆうかは………

 

ゆうか「凄いのはわかる………でも、この勝負、一見互角に見えるけど………実際の実力は優くんの方が少し上よ」

 

優と修也を計った時、実力は優の方が上だと気づいていた。そしてこのゆうかの考えは、修也のある部分で核心を突いていたのだった………

 

 

 

再熱する優vs修也の対決。しかし、実際の実力は優に軍配が上がろうとしていた。その事実に対し修也の心境は………?

To Be Continued………




次回予告
修也の中には大きなコンプレックスがあった。それは、体格に恵まれずも大きな才能を持つ優への微かな嫉妬であり………!?
次回「正直俺は」


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第204話 正直俺は

前回までのあらすじ
PG対決と同時に、優と修也のライバル対決も再熱した。しかし、ゆうかは実力では優の方が上だと評しており………?


ゆうかの予測に首を傾げる中、巫魔が再び攻撃。ボールを持ってシュートを狙う優の前に修也が立ちはだかるが、優はそれを見るやダブルクラッチでかわそうとする。

 

修也「ぐっ!!」

 

修也もダブルクラッチまでは読めたが、優がボールをゴールへ投げた方が一足早く、ブロックの為に伸ばした修也の手は優の右手を叩いてしまった。

 

審判「イリーガル・ユース・オブ・ハンズ! 紫7番!」

 

審判は修也のファールをコール。そして、優が投げたボールは見事ゴールに沈み………

 

審判「バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

偶然にも3点プレイを形成した。

 

光一「よーし! やったぜ優!!」

 

優達は喜ぶ様子を見せた。その一方、修也は悔しそうな様子を見せる。

 

芽衣「3つ目………修也くん、ファール抑えて!」

 

芽衣は修也のこれ以上のファールを警戒して声をかけたが、今の修也は自分と優の実力差について考え出しており、芽衣の声は聞こえなかった。そして、優がフリースローを行う場面の中………

 

修也「(俺はバスケが好きだ………でもバスケをやる上で避けては通れない道がある………才能だ)」

 

修也はバスケの現実について考え出していた。確かにバスケをやる上で才能の面は避けては通れない。

 

修也「(俺は体格に恵まれ………実力も今や県のFの中では敵無しと言えるくらいにまでなったと考えている………その一方でミドレーユは体格こそ恵まれ無かったが………バスケのスキルについては俺なんかよりもずっと凄い才能があった。まあ、その才能が開花したのは、アイツがひたむきに努力を続けてきたからだってのは俺も知っている………)」

 

修也は自身と優を当て嵌めて考えた。2人の才能はまるで逆のように異なっていた。

 

修也「(でも、それを認める事で………俺がミドレーユに一生追いつけないと考えるのが怖くて仕方が無かった………楽しくて好きなはずのバスケに………才能で現実を見せられるのが嫌でたまらなかった………!!)」

 

修也は内心、優に対し実力の面からコンプレックスを抱えており、本人の知らぬ間に嫉妬へ繋がっていた。

 

修也「(俺は中学の時の連中とは違うと考えてたけど………正直俺は奴等と同じ………ミドレーユに嫉妬していたんだ………)」

 

修也は今の自分と中学時代のバスケ部員は同じだと自嘲する。そんな事を考えている間に、優のフリースローが見事決まった。

 

芽衣「修也くん、オフェンス!!」

 

その直後、芽衣の声が聞こえた。それを聞いた修也は何も言わずにオフェンスへ向かうが………

 

修也「(こんな気持ちで………俺はミドレーユの親友でいていいのかよ………!)」

 

修也は自らが優との友情に傷をつけているのでは無いかと、気を落とす様子を見せたのだった………

 

 

 

修也の裏に隠れていた密かなコンプレックス。その思いは試合の最中ではっきりと表れ出していた。果たして、この修也の暗い想いは試合にどう影響するのか………!?

To Be Continued………




次回予告
修也の心が暗くなった事は、修也本人のプレイングにも影響していた。そして修也は痛恨の4ファールを犯し………!?
次回「しまった」


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第205話 しまった

前回までのあらすじ
修也の内心には優に対する才能面でのコンプレックスを抱えていた。そのコンプレックスが、優への嫉妬を生み出しており………?


友力ボールで試合再開。芽衣は前線へ上がり、優真と対決をする事に。

 

優真「(今度は抜かせない!)」

 

優真は今度は負けないと身構える。

 

芽衣「(優真ちゃんの瞬発力が上がってきている………そろそろ優真ちゃんの体格差を読んだプレイングも無理があるようになってきたかな………だったら………!)………アリサちゃん!!」

 

芽衣はアリサに声をかける。

 

優真「(アリサさん………6番………!!)」

 

優真はアリサに視線を向ける。しかし、芽衣はその隙に修也へボールをパスした。

 

優「(また修也か………!)」

 

優は再び修也にボールが来た事を考えつつも、冷静に修也を見ていた。

 

修也「(ここは絶対決める! 例え俺に才能が無かったとしても、この勝負に負けるわけにはいかない………!)」

 

修也はそう考えると優と1on1でマッチアップ。

 

修也「俺は………負ける訳にはいかない!!」

 

修也はそう言い放つ。それを聞いた優は修也を抜かせまいと距離を詰める。

 

優「(修也には外どころかミドルシュートすらない。ダンクやレイアップ、偶にゴール下がある程度で、基本は距離のあるシュートは無い………パスの可能性がまだあるけど………)」

 

優は頭の中で修也の手を考えていた。すると修也は、軽く左足を動かした。

 

優「っ………! (左足を動かした………この時の修也は………!)」

 

優はそれを見ると、頭の中で修也の次の手を絞り始めた。そして修也が右足を軸に体を180度回転させた………

 

修也「っ………!?」

 

しかし、優もそれを読み、体を右へ動かした。

 

修也「う………おおおっ!!」

 

しかし修也は引こうとしなかった。

 

優「えっ、ちょっ………!? うわあっ!!」

 

流石にここまでは読んでなかったのか、優は修也とおもいっきり激突。優は倒れてしまった。

 

修也「(しまった………!!)」

 

修也は目の前で起きた事態に驚きを隠せなかった。そして………!

 

審判「プッシング! 紫7番!!」

 

修也は4つ目のファールを取られてしまった。

 

芽衣「4つ目………って、優くん!!」

 

修也の4つ目のファールに驚く芽衣だったが、それ以上に優が心配になり、彼の元に駆け寄る。修也も持っていたボールを放り投げ………

 

修也「ミドレーユ!! 大丈夫か!?」

 

倒れた優の元に駆け寄る。

 

優「だ、大丈夫………いてて」

 

優に怪我は無かったが………

 

修也「本当に………申し訳ねぇ!!」

 

修也は罪悪感から優に対し頭を下げた。

 

優「謝るなよ修也、こういう事もあるさ」

 

優は特に気にしていなかった。だが………

 

審判「交代です!」

 

伊吹「優! 一旦下がれ!」

 

ゆうかがこの接触を危惧したのか、伊吹を出す形で一度優を下げる事に。

 

優「ま、この勝負は一時お預けみたいだな」

 

優はそう言うと、修也の肩を優しく叩いた後、ベンチへ戻った。そして………

 

審判「交代です!」

 

友力もメンバーチェンジ。4ファールの修也を下げ、身長178cm体重68kgの10番、槍三郎を投入してきた。

 

ゆうか「(これでお互いに主力を2枚下げた。後は、この盤面でどう第2Qを乗り越えるかね………!)」

 

現在の状況から、ゆうかはそう考えるのだった………

 

 

 

友力のPF、修也が4ファールで一時ベンチへ下げられた。果たして、この状況は巫魔にとって追い風となるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
修也の一時離脱で、インサイドの支配は光一の独壇場と化した。それにより、巫魔メンバーの調子は同時に上がる事となり………!?
次回「俺がインサイドの支配者だ」


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第206話 俺がインサイドの支配者だ

前回までのあらすじ
修也の優に対するコンプレックスは彼のプレイングにも影響を及ぼした。その結果、修也は4ファールとなり、一時ベンチへ下げられたのだった………


奄美「林川に続いて天野もか………」

 

友力監督の奄美はまずいと言わんばかりの様子を見せる。友力インサイドの主力、修也と浩太の離脱は大きすぎた。その理由は………

 

光一「おっしゃああ!!」

 

光一がインサイドの支配を簡単に出来るようになってしまった事だ。

 

伊吹「よし、また光一がリバウンド取った!」

 

巫魔の選手は喜ぶ様子を見せる。その一方、友力は苦しい状況が続いた。

 

光一「相手の主力が一気に下がったのは気に食わねぇが………今や、俺がインサイドの支配者だ!!」

 

光一はそう言うと、返しの攻撃でツーハンドダンクを決める。太助と槍の2人は懸命にディフェンスするも、レベルが違い過ぎる為に、光一に軽く弾き飛ばされてしまった。

 

美矢「(よし、修坊とあの9番が抜けた今、インサイド最強は光一だ………!)」

 

美矢はそう考えると………

 

美矢「よーし! ここからはインサイド! 光一主体で攻めるぞ!」

 

コート上で聞こえるようにそう宣言する。

 

身軽「参ったね………」

 

身軽は参ったような様子を見せるのだった………

 

 

 

そして試合再開、芽衣はアリサにパスをしようとするが、優真がそれを読み、スティールに成功する。

 

芽衣「あっ! (やっぱり読まれた………!!)」

 

芽衣は今回、ほぼ消去法でアリサを選択した。インサイド2人には光一の相手は荷が重すぎる。仮にかわせた所で、伊吹が止めに来る。レベルが劣る2人ではまだ無理だと悟った芽衣。それを優真に読まれたのだ。

 

優真「速攻です!」

 

優真は速攻を宣言。すると、それを聞いた春香が前線に上がり出した。

 

アリサ「まずい………!!」

 

アリサも慌てて戻るが、春香との距離が幾らかあった。春香なら大丈夫と読んだ優真は素早いパスで春香にパスをする。

 

芽衣「({音速のパス(マッハパス)}………!!)アリサちゃん、ダメ!!」

 

芽衣はアリサを静止する為に叫ぶ。しかしアリサがそれを聞いた時には既に遅かった。春香はパスを受けると共にすぐさまシュート。アリサはボールに届かず、春香と衝突してしまった。

 

審判「プッシング、紫6番! バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

これでアリサは春香と同じ2ファール。チームでのファールも修也の3つと合わせて4つ目となる。

 

アリサ「ううっ、悔しい………!」

 

アリサは悔しそうな様子を見せる。

 

美矢「よく走った、春香! この4点プレイはでけぇ!!」

 

インサイド主体の流れに、突如4点プレイという大砲をぶち込んだ春香のスリープラスフリースロー1本。これが友力に大きなダメージを与える事となったのだった………

 

 

 

修也の離脱で光一が1人インサイドを支配するようになり、春香もそれに紛れる形で4点プレイを形成した。これにより、流れは完全に巫魔が奪っていったのだった………

To Be Continued………




次回予告
その後、第2Qの流れを完全に巫魔が掴み、残り30秒で55vs42の友力が苦しい展開に。更に春香によって再びチームファールが形成された時、アリサがそれに反撃する様子を見せ………!?
次回「負けてらんない」


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第207話 負けてらんない

前回までのあらすじ
修也の離脱で、光一が1人インサイドを支配するようになってしまう。更に、春香がアリサのファールを貰った4点プレイで突き放して見せたのだった………


春香の4点プレイを機に巫魔は第2Qの流れを完全に掴んだ。そして第2Q残り30秒を切った時………

 

伊吹「よし、オフェンスだ!!」

 

巫魔はオフェンスに走っていた。優真は疲れこそ見せているものの、好調な様子を見せ続け、芽衣と互角以上に渡り合って見せた。

 

芽衣「(ここまで抜いたり抜かれたりの繰り返し………優真ちゃんの成長速度はかなり早い。まだスタミナと安定性は無いけど、一定時間ならもう私と充分やり合える領域にまで至った………!)」

 

芽衣もそれをしっかりと自覚していた。そして残り12秒を切ったタイミングで、優真は春香にボールをパス。

 

アリサ「撃たせない!」

 

アリサは飛び上がるが、春香はそれを予測して前に飛ぶと、アリサと接触。体勢を崩しながらも見事に決めて見せた。

 

審判「プッシング! 紫6番! チームファール!」

 

春香は友力がまたしても1つのQで5個のファールを犯した事で、2本のフリースローを得た。

 

美矢「よし! ナイスだ!!」

 

巫魔の空気は最高潮に到達した。

 

優「(よし、これでアリサはファール3つ目、如何にアリサでも春香相手ならこの3つは重いはず………!!)」

 

優も思わず小さなガッツポーズを見せた………

 

アリサ「………冗談じゃないわよ」

 

しかし、優は1つだけ勘違いをしていた。それは春香が2本のフリースローを決め、60vs42の場面に持ち込んだ残り8秒のことである。

 

アリサ「芽衣〜!! パス!!」

 

なんと、他の巫魔メンバーが戻れていない場面で前線に上がっていたのだ。

 

光一「おいおい嘘だろ!?」

 

驚きを隠せないうちに、芽衣は身軽からパスを受けると迷わずアリサへボールをパスした。

 

アリサ「こんなところで………負けてらんない!!」

 

アリサは優の予想とは裏腹に闘志を燃やしてしまっていたのだ。

 

春香「ぐうっ!」

 

春香は何とか戻り、ディフェンスを試みるが、アリサは春香が後ろから来ると読み………

 

春香「っ!? {フェイダウェイスリーポイントシュート}!?」

 

フェイダウェイスリーポイントシュートを選択。アリサがボールを放ったタイミングで、アリサと春香が衝突してしまう。審判の笛と共に少しの間静寂が続くが………

 

審判「………白5番! チームファール!!」

 

なんとここで巫魔もチームファールをとられてしまった。なんと残り1.8秒のことである。

 

アリサ「やっ………たあ!!」

 

アリサは少し貯めた後に大きく喜んだ。そして、ベンチからこれを見ていた優は………

 

優「くっ………! やられた………!!(アリサがここまで闘志を燃やしていたとは………読み違えたな………)」

 

自らの読み違いに嫌々ながら頷く様子を見せたのだった………

 

 

 

その後、巫魔が完全に第2Qの流れを掴んだものの、アリサが見せた執念の5点プレイで、第2Q終了時には60vs47の13点差で折り返す事に。そして………

 

??「ふうっ、ようやく着いた………」

 

コートの友力入口が開くと共に、そこには紫5番のユニフォームを着た2mの男が立っていたのだった………

 

 

 

巫魔は第2Qを良い流れで折り返す事が出来た。しかし、まだこの時の巫魔は知らなかった。友力との激しい勝負はまだ終わってなどいない事を………

To Be Continued………




次回予告
友力へ現れた紫5番ユニフォームの男。彼こそ試合に遅刻していた例の人物であり………!?
次回「お待たせ」


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第208話 お待たせ

前回までのあらすじ
第2Qは完全に巫魔が流れを掴んでみせた。しかし、土壇場でアリサがチームファールの5点プレイを決めて見せた。そして………?


コートの友力側入口が開いた時、そこに立っていた2m超えの男が立っていた。

 

??「お待たせ」

 

その男を友力選手達が見ると………

 

芽衣「………! 秋山さん!」

 

大きく喜ぶ様子を見せた。

 

身軽「やっと来たか〜」

 

身軽はやっと来たとだけ考えていた。そして、監督の奄美は………

 

奄美「やっと来たか………秋山、第3Qから出てもらうぞ」

 

奄美は秋山という5番の男に第3Qから出るよう指示した。

 

秋山「………了解。アメリカで鍛えた腕を見せてやるよ………!」

 

秋山はそう言うと、戦う姿勢を見せる………

 

奄美「特に天野と林川が4ファールでベンチだからな、頼むぞ」

 

奄美は修也と浩太がベンチに下げられている事を説明する。

 

奄美「え? マジで………!?」

 

それを聞いた奄美は少し引いてる様子を見せたのだった………

 

 

 

その頃、この試合に守城の戦記達や魔帝の大牧達がやってきた。

 

湯津「いやー、1回戦は余裕だったな。まあそれは、魔帝もそうみたいだけどなー」

 

どうやら両チームとも別の会場で試合をし、見事勝利したようだ。

 

戦記「試合は巫魔が有利か………もう少し互角になるかと思ったんだがな………」

 

戦記は不思議がる様子を見せる。すると………

 

山野「今の状況を聞いてきました。どうやら7番の天野修也と9番の林川浩太が4ファールで交代したらしいです」

 

山野が聞き込みで得た情報を伝える。

 

戦記「4ファール………また優が上手い具合に圧倒したのかな………?」

 

戦記はこれがまた優の実力によるものと考えていた。実際には少し違うのだが………そして、そんな彼等の元に大牧達魔帝の選手達もやってきた。

 

大牧「よう良太、巫魔は絶好調のようだな」

 

大牧は戦記に対しそう呟いた。

 

戦記「そうだな………む?」

 

戦記は大牧の言葉に頷いた直後、友力5番の男秋山に首を傾げた。

 

大牧「どうした良太………ん? アイツ、どっかで見たような………」

 

大牧も首を傾げたが、見覚えがあるようだった………

 

 

 

そして、秋山の登場について、巫魔にも軽い騒ぎが起きていた。

 

伊吹「なんだあの2m男………!? あんな奴いたっけ………!?」

 

秋山の存在は巫魔のデータに無い為、軽い騒ぎになっていた。そして優も………

 

優「(あの2mの人が空席の5番だったのか………それにしても、あの威圧感は何だ………? 何となくだけど分かる………あの人、絶対只者じゃねえ………!!)」

 

直感ではあるが、秋山に対し強い危険視をするのだった………

 

 

 

13点差のリードを得た巫魔だが、友力に現れた秋山という男。果たして、彼の実力は………!?

To Be Continued………




次回予告
遂に姿を見せた友力の帰国子女秋山翔太郎。彼は光一どころか湯津にも匹敵するCであり………!?
次回「ヤバい人が来たな」


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第209話 ヤバい人が来たな

前回までのあらすじ
友力ベンチに突如現れた友力5番の秋山。彼の存在が今まで明かされなかった事で、場に大きな困惑を与え………?


審判「第3Q始めます!」

 

ここで第3Qが開幕。ここで試合には例の5番、秋山が入る事に。一方の巫魔は優真を一時下げ、SFにレイを投入。優はまだベンチに下げられたままであるが………

 

優「………結衣ちゃん、ちょい」

 

優はマネージャーの結衣に声をかける。

 

優「頼みがある。あの5番の人の名前を審判団から聞いてきてくれ。それを聞くくらいならルール違反じゃねーだろ」

 

優は秋山の名前を聞いてくるよう依頼。

 

結衣「はい!」

 

結衣はすぐに審判団の元へ行き、秋山の名前を聞いてくる事に。そしてスコアメモにその名前をメモすると、すぐに戻ってきた。

 

結衣「名前が分かりました、秋山翔太郎さんと言うらしいです!」

 

結衣はその人物の名前を聞いてきた。それを聞いた優は驚いた。

 

優「あ、秋山翔太郎………!? 本当にあの人がかい………!?」

 

優は確認するように問いかける。どうやら、個人的に秋山の事は知っていたようだ。

 

結衣「間違いないです、審判団の人に確認しました」

 

結衣がそういった事で、優は5番の男が秋山翔太郎だと納得させられる事に。

 

優「(マジか………1年前に突然海外に行ったってバスケ雑誌には書いてあったような気もするけど、ヤバい人が来たな………というか、1年で容姿が変わりまくってる!! あの人、元は180cm後半くらいだったはずだけど………!?)」

 

どうやら優は、秋山の体が1年で大きくなっていた為に気づけなかったようだ。

 

優真「そんなに凄い人なんですか………?」

 

優真は恐る恐る優にそう問いかける。

 

優「凄いなんてレベルじゃねえよ。あの人は………」

 

優は秋山について危険度を強めた………そして試合再開。芽衣にボールが渡って10秒程経った後………

 

芽衣「秋山さん!」

 

芽衣は秋山にボールをパスする。

 

光一「俺が止める!」

 

光一が秋山の前に立ちはだかり………

 

光一「うおおっ! {ウォールブロック}!!」

 

体を広げてシュートコースを防ぎながらジャンプする。

 

秋山「ふっ、甘い!」

 

しかし秋山はボールの軌道を光一の最高地点を超える高さで放り投げた。このシュートは見事ゴールに落とし込んだ。

 

光一「なんだと!?」

 

光一は驚きを隠せずにいた。

 

秋山「本場のアメリカじゃお前みたいな奴はごまんといる。今更俺に通じるかよ。なんせ俺は………大牧を倒す為に戻ってきたんだからよ………!!」

 

秋山にとって光一はアメリカによくいる相手程度しか思っていなかった。そして、これと同時に優は秋山の強さをこう評した。

 

優「光一どころか………守城の湯津さんにも匹敵する相手だ………!!」

 

守城の湯津に匹敵する強さと………

 

 

 

守城から離脱していた秘密兵器秋山翔太郎。彼の力は光一を凌駕するものであった。果たして、巫魔はこの秋山を相手に戦っていけるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔も負けじと光一による反撃を狙う。しかし、秋山の実力の真価はディフェンスにあり………!?
次回「脳筋でゴールが取れると思うな」


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第210話 脳筋でゴールが取れると思うな

前回までのあらすじ
第3Qにていよいよ現れた5番秋山翔太郎。その強さは光一どころか湯津に匹敵するレベルの強さであり………!?


光一「まだまだ! 俺はそう簡単に負けやしないぜ!!」

 

光一は諦めない様子を見せる。そして、巫魔の反撃。美矢が中心となってオフェンスを仕掛け………

 

美矢「光一!」

 

光一が鋭いパスで光一にパスする。

 

光一「くらえ!!」

 

光一は豪快なダンクを叩き込もうとする。

 

秋山「あめぇよ!!」

 

しかし、秋山は軽々と光一の手からボールを叩き落とした。

 

光一「なあっ!?」

 

これには光一は勿論………

 

美矢「バカな!? 光一の単純なパワーはキャプテンとは比にならねぇはずだ………!!」

 

美矢も驚きを隠せずにいた。

 

秋山「俺を相手に脳筋でゴールが取れると思うよ。それにさっき言っただろ? 本場のアメリカじゃお前みたいな奴はごまんといるってさ………!」

 

秋山にとって光一は相手では無かった。しかし、レイが零れ玉を奪取すると………

 

レイ「春香!」

 

春香にボールをパス。彼女の前にアリサが立ちはだかるも構わずフェイダウェイスリーポイントシュートを選択。これをパスを受けたと同時に行った為にアリサは反応出来ず、春香のスリーが綺麗に決まった。

 

伊吹「よし、ナイス!!」

 

レイのファインプレイでなんとか3点に繋げた巫魔。これで63vs49の14点差である。

 

優「ふうっ………今のはレイのナイスアシストだ」

 

優はこの場面でなんとか点を拾えた意味を大きく理解していた。そして、春香のスリーを見た秋山は………

 

秋山「………いいスリーポイントシュートだ。あれならアメリカでもシュートだけでいくらかやれそうだ」

 

純粋に褒める様子を見せたのだった………

 

 

 

それから3分、友力は秋山を主軸とした戦い方を見せた。光一は懸命に戦うものの、秋山との力の差を思い知らされる形で1度も止める事は出きず、次々と点差を縮められ、66vs57の9点差。その中でまた春香がスリーを決めた事で何とか逃げ続けているが、光一が押されているという事実を、ベンチで見ていた優が問題視していた。

 

優「監督、ここは1度タイムアウトを取るべきです。光一が精神的に潰れてしまう………!」

 

優は光一のメンタルへダメージが来ないか心配する様子を見せた。ゆうかもそれを考えるとベンチを立った。そして、ゆうかが審判団にタイムアウトを告げたと同時に、秋山がダンクを決め2点を追加したタイミングで………

 

審判「巫魔、タイムアウト!」

 

タイムアウトを取る事となった。

 

優「さて、どうしたものかね………」

 

優は現在の苦しい状況に首を傾げる様子を見せたのだった………

 

 

 

秋山に翻弄される光一。この苦しい場面の中、巫魔はこのまま追いつかれてしまうのか………!?

To Be Continued………




次回予告
タイムアウトを挟んだ巫魔だが、今現在では秋山に勝つ方法は分からないという。しかし、優は秋山の弱点を見つける為に時間が欲しいと言い出し………!?
次回「3分ほしい」


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第211話 3分ほしい

前回までのあらすじ
大きな実力差から秋山に翻弄される光一。何とか逃げ続ける巫魔だが、光一の精神を考え一時タイムアウトを取り………!?


タイムアウト、友力ベンチでは………

 

身軽「いやあ、かなり成長して帰ってきたね。相手さんのCが手を焼いているよ」

 

身軽は秋山の成長を珍しく褒めていた。

 

秋山「………つまらん。巫魔はこんなものか?」

 

秋山は巫魔戦に退屈を覚えかけていた。

 

修也「退屈と決めつけるにはまだ早いかもしれませんよ」

 

しかし修也は退屈と決めつけるには早いと口にした。

 

秋山「どういう事だ、修也?」

 

秋山は修也の言葉に首を傾げていた。

 

修也「相手の4番、今はベンチですけど………間違いなく俺なんかより強いです」

 

修也は優と秋山の差をまだ確信していなかった。

 

秋山「そいつはどれだけ強いのさ?」

 

秋山は首を傾げる様子を見せる。

 

奄美「守城C、湯津を相手に数度ダンクを沈めた男だ」

 

監督の奄美は優の事をそう評した。

 

秋山「ふうん………なら、引きずり出さなきゃだな………!」

 

秋山はニヤリと笑みを零すのだった………

 

 

 

一方その頃、巫魔ベンチでは………

 

伊吹「あの秋山って奴、どうやって倒すんだよ?」

 

伊吹は優に対し、攻略法が無いか問いかける。

 

優「………わからん、ありゃ完全にアメリカ仕込みの選手だ………」

 

しかし、優にも攻略法が分からないと言う事態だった。

 

伊吹「そんな調子でどうするんだよ!?」

 

伊吹もこれにはツッコむ様子を見せたが………

 

優「………今のところはな」

 

優は諦めるつもりなど無かった。

 

優「3分ほしい。それで5番、秋山さんの隙を見つける」

 

優は秋山攻略の為、3分の猶予を求めた。

 

美矢「………大丈夫なのか、3分で?」

 

美矢は首を傾げる様子を見せた。

 

優「それが出来なきゃ僕が戻ったって同じだろ?」

 

優は出来る出来ないでは無く、やらねばならないと考えていた。そして………

 

優「そこから3分、何点取られたっていい。僕がコートに戻る時、秋山さんの事で幾らか裸に出来れば………巫魔は勝てる」

 

優はこの試合、秋山を攻略出来るかで友力戦攻略の可否を考えていた。それを聞いた巫魔メンバーの殆どは不安な様子を見せていたが………

 

春香「私は優さんを信じます! 優さんならそれが可能だと………!」

 

春香が信用する様子を見せた事で、巫魔メンバーもそれを信じる事に決めた。

 

光一「………頼む」

 

この時ばかりは光一も優に依頼する様子を見せる。

 

優「落ち込むなよ光一、お前は巫魔ナンバー1のCなんだからさ」

 

しかし優は光一を褒める形でそう呟いた。それを聞いた光一は………

 

光一「………おう! 任せろい!!」

 

少しだけいつもの調子を取り戻したのだった………

 

 

 

巫魔は秋山を攻略出来るかで勝敗が決まる事に。果たして、優は3分で秋山の弱点を炙り出す事は出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
少しばかり調子を取り戻した光一は、秋山を相手に軽い時間稼ぎは可能となった。その中で、優は秋山について1つ、気になった様子を見せ………?
次回「あの人」


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第212話 あの人

前回までのあらすじ
タイムアウト時点では秋山に対する対処方法が優ですら思いつかない事態。しかし、優は3分で攻略方法を探る事を宣言。それが友力戦の勝敗を分ける事となる………


巫魔の攻撃、再び光一vs秋山の対決に。

 

秋山「さあ、来い!」

 

秋山は体を大きく広げ、ディフェンスしてくる。

 

光一「ぐっ………! (ここは一時下げるか………!)」

 

光一は美矢にボールを戻した。

 

秋山「どうした、戦わないのか?」

 

秋山はそう言って挑発してくる。

 

光一「うるせー! 戦略的撤退だ!!」

 

光一は少し機嫌が悪そうにそう返すが、幾らか冷静さは戻ったのか、結果として時間稼ぎにはなっていた。

 

優「(体の使い方が上手い………思ったよりも簡単には崩せなさそうだ………!)」

 

優は秋山の動きに逐一着目していた。そんな中、美矢からのパスがスティールされ、巫魔のディフェンスに。そして、芽衣のパスは秋山に渡る。

 

秋山「よっし、決めるぜ!」

 

秋山はそう考えると、ボールを持って構える。光一が体を広げると共に、秋山は跳躍しようとする。

 

秋山「もらった!」

 

秋山はそう言ってシュートを放とうとするが………

 

美矢「させるかよ!」

 

美矢が間一髪ブロックに成功した。

 

優真「ほっ、よかった………」

 

ベンチの優真は落ち着く様子を見せる。そして、それを離れて見ていた優は………

 

優「っ………!!(あの人、シュートと跳躍のタイミングがあからさまにズレてる………! そういえば、最初に光一と対峙した時もそうだっけ………)」

 

優は秋山のシュートフォームに気付いた。

 

優「(少し非効率な気もするが………まあ様子を見るとしよう………!)」

 

優は首を傾げながら攻略法を考えていた。そしてそれから数秒経たず、再び秋山にボールが回ってきた。

 

秋山「もらった!」

 

しかもこの場面はいくらか距離があるフリーという最悪の場面。

 

優「レイアップか………!?」

 

優はレイアップが来ると考えていた。しかし、秋山はレイアップに行かず、ゴール下に立つと大きくジャンプ、最高点に達すると同時にダンクを決めた。

 

優「(ダンク………!? あの場面はレイアップを決めるべきだったはずだ………!!)」

 

しかし、それはいくらなんでも効率が悪すぎる方法だった。今の場面は大半がレイアップを決めるべき場面だった。

 

優「(………アメリカでどんな仕込みを受けたか知らんが………とりあえず、秋山さんのシュートフォームが独特なのは分かった………!)」

 

優はその異常とも取れるシュートフォームに対し、活路を求める事に決めたのだった………

 

 

 

優による分析の中、秋山の独特なシュートフォームが判明する。果たして、これが攻略のヒントへ繋がるのか………?

To Be Continued………




次回予告
秋山のディフェンスに対し、攻略する手段を探る優。すると、秋山のプレイングに対し、新たな発見が………!?
次回「行けるかもしれない」


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第213話 行けるかもしれない

前回までのあらすじ
秋山を観察する優。その中で秋山のシュートは跳躍とボールを放るタイミングが完全にズレたスタンスである事を見つけたのだった………


そして、優が約束した3分が経つまで残り1分を切った。

 

光一「決める!!」

 

光一はゴール下シュートを放つ為に大ジャンプする。しかし、秋山はそこに追いつくようにジャンプ。

 

光一「げっ!?」

 

これには光一も驚きを隠せなかった。結果、秋山のシュートブロックで、ボールは地面に転がった。

 

レイ「まだ………!」

 

しかし、レイが零れ球を拾ってレイアップを狙う。

 

秋山「なっ!?」

 

これには秋山も不意を突かれてしまった。

 

優「………!! (秋山さんが驚いている………って事は………!)」

 

それでもギリギリ反応したためにブロックを狙うが、誤ってレイの左腕を叩いてしまった。

 

レイ「っ………!?」

 

レイは秋山のパワーにぶっ飛ばされ、地面に倒れた。

 

審判「イリーガル・ユース・オブ・ハンズ! 紫5番!」

 

無論、これは反則に。しかし………

 

レイ「っ………」

 

レイの左腕に痣が出来ていた。恐らく、先程叩かれた際に出来たものだろう。

 

ゆうか「マズイ………! あずさちゃん、準備しておいて!!」

 

ゆうかはすぐにあずさを出られるようにしておく事に………そして、試合はレイのフリースロー2本に。最初に放った1本目は難無く成功したが、問題は2本目の際に起こった。

 

レイ「………ううっ!?」

 

ボールを放る直前、レイの左腕に痛みが走った。そのままシュートを放つが、ボールはリングに弾かれてしまった。

 

美矢「くそっ、リバウンド!!」

 

美矢がリバウンドを呼びかけるが、結果としてこのリバウンドは秋山が取ってしまった。

 

秋山「反撃だ!」

 

秋山は芽衣にボールをパス。ここで芽衣とアリサの2人が速攻に走った。

 

春香「まずい………!!」

 

春香が慌ててディフェンスに戻る。しかし、芽衣はアリサになんの迷いも無くパス。アリサはスリーポイントシュートを放つ。

 

春香「させないわよ!!」

 

春香はブロックを狙う。しかし、春香の手はアリサにぶつかってしまった。これにより、審判の笛が鳴り………アリサのスリーは綺麗に決まってしまった。

 

審判「イリーガル・ユース・オブ・ハンズ! 白5番!」

 

これによりまたしてもアリサの4点プレイが成立。更に………

 

美矢「春香が………ファール4つ………!?」

 

巫魔の最強シューター春香のファール4つ目がコールされてしまい、完全に後が無くなってしまう。

 

ゆうか「最悪な事になったわ………」

 

これにはゆうかも絶望を感じるしか無かった。しかし………

 

優「(ここは絶望的場面だけど………行けるかもしれない………!)」

 

優だけは逆に絶望ではなく、希望を感じていたのだった………

 

 

 

巫魔は春香が4ファールに追いやられ、絶体絶命の危機に。しかし、同時に優の中で策が完成した。果たして、優はこの絶望を打ち破る事が出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
アリサのフリースローにより、友力はとうとう同点に漕ぎ着いた。だが、ここで優が戻ってきて………?
次回「貴方を倒す」


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第214話 貴方を倒す

前回までのあらすじ
秋山の観察を続ける優。しかし、その過程でレイの負傷と、春香の4ファールが立て続けに起きてしまう。しかし、優の中で策は完成し………!?


その後、アリサが放ったフリースローは綺麗に決まり、とうとうスコアは70vs70の同点となった。

 

湯津「いよいよ分からなくなってきたな………どっちのチームも凄いのはわかるんだけど、どっちも主力が削れ過ぎだ………!」

 

湯津は、違いに削れゆくチームの状況にヒヤヒヤしていた。しかし………

 

戦記「………まだ分からないぞ。巫魔は優をベンチに下げたままだからな」

 

戦記はまだ勝敗を下す気は無かった。

 

大牧「そんなに凄いのか、あの優って奴は………?」

 

大牧は優のプレイをまだ見ていないので首を傾げていた。するとその直後………

 

審判「巫魔、メンバーチェンジ!!」

 

巫魔が交代を選択した事を告げるアナウンスが。戦記達がコートを見ると、そこには春香の代わりに入るあかりとレイの代わりに入るあずさ、そして………?

 

戦記「………来たな」

 

ジャージを脱ぎ捨て、再びコートに入る優の姿があった。

 

修也「(ここで戻るか、ミドレーユ………!)」

 

修也は、この場面で優が戻ってきた事に反応を見せた。これにより、巫魔は春香、レイ、伊吹が下がり、3人のポジションにあかり、あずさ、優が入る事に。

 

美矢「キャプテン! 分析は終わったのか………?」

 

美矢は首を傾げる。

 

優「まあ何とかね。とは言っても、そう何度も使える策じゃない。その前に秋山さんを締め出す」

 

優は一時的な策と考えつつも、それが通用する自信があった。

 

美矢「よし、分かった。教えてくれ」

 

美矢は優の話に頷き、優から作戦を聞いた。

 

美矢「成程………でも、意図的にそれを引き出せるのか?」

 

美矢は首を傾げる様子を見せるが………

 

優「引き出すさ。あの人は独特なプレイスタイルを持っていて、初見という面では恐ろしいくらいに読めないようにも思える。でも、タネが分かれば話は別さ」

 

優は作戦においてのある点を引き出してみせると口にした。優と美矢がそんな会話をしていると、優達の元に秋山がやってきた。

 

秋山「お前が修也の言ってた奴か………案外小さいんだな」

 

秋山は、優の体格が自分より遥かに劣るものである事を実感する。

 

優「まあ、それは否定しませんよ。でも………僕は貴方を倒す。その気持ちでいっぱいですから」

 

優は体格の小ささは否定しなかったが、それでも秋山を倒すつもりだった。

 

秋山「………受けてやる」

 

優の強気の戦線布告を受け、秋山はそれを受ける姿勢を見せたのだった………

 

 

 

春香の4ファールという重い事態になりながらも、秋山の攻略法を見出した優が、第3Q残り4分弱でようやくコートに戻ってきた。果たして、優の策とは………!?

To Be Continued………




次回予告
秋山のプレイスタイルを読んだ優は、秋山に勝負を挑む。しかし、優は真っ向から戦うのではなく………?
次回「貴方の隙だ」


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第215話 貴方の隙だ

前回までのあらすじ
危機的状況の中コートに戻ってきた優は、秋山への攻略法を立てて戻ってきた。遂に、優と秋山の対決が始まろうとしていた………


試合は巫魔ボールで試合再開、美矢はボールを受けると………

 

美矢「行くぞ、キャプテン! {双翼のパス(ダブルウイングパス)}!!」

 

美矢の言葉に優は頷くと、美矢は優に素早いパスを回し、美矢からいくらか離れた位置にいた優がドリブルで上がる。

 

芽衣「{双翼のパス}………!!」

 

芽衣は優の方へ走るが、優は芽衣が近づいてきたタイミングで、離れた場所を走る美矢にボールをパス。

 

芽衣「ぐっ………! (やっぱり速い………! 私1人じゃ捌ききれない………!!)」

 

芽衣からすれば、実質PG2人とやり合っている感覚にさせられ、苦戦させられる。そして、2人揃ってインサイドに入った所で………

 

美矢「キャプテン!」

 

美矢が優に鋭いパスを送り、優と秋山をマッチアップ。PFの槍がフォローに入ろうとするが、優が秋山との対決で何かしようとしているのを察した光一は、槍をマークする。

 

秋山「来い!」

 

秋山は体を広げると、優とマッチアップ。ここで優はあからさまにレイアップを狙う。

 

秋山「(レイアップ………? そんなの決まる訳が………!)」

 

秋山は止めようとジャンプ。そのタイミングで、優は近くまで潜り込んでいた美矢にパスをした。

 

秋山「(パス………!?)」

 

秋山は驚きを隠せずにいた。美矢はボールを受けた途端レイアップでゴールを狙う。しかし、秋山はこの場面でもジャンプを挟み、ディフェンスを狙ってきた。

 

美矢「なっ!?」

 

これには美矢も驚いたが………

 

優「美矢、止まるな!!」

 

優は美矢にそのままレイアップを決めるよう指示。美矢は驚きこそしたが、秋山の手がぶつかる直前、何とかボールを放り込めた。その直後、秋山の手が美矢の右手にぶつかる………

 

美矢「………ってぇ!!」

 

美矢も秋山の手の力に痛みを感じていたが、レイアップによって放られたシュートは綺麗に決まり………

 

審判「イリーガル・ユース・オブ・ハンズ! 紫5番! バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

秋山2つ目のファールを掴み取った。

 

美矢「しゃあー!!」

 

美矢は大きく喜ぶ様子を見せた。

 

光一「よーし! ナイスだ美矢!!」

 

光一や美矢は大きく喜んでいた。

 

優「(思った通りだ………あの人のディフェンスはボールに飛びつく習性がある。よく言えばディフェンス反応が強いが、逆にそれがファールに結びつきやすい………!)」

 

優は秋山の習性を読み切っていた。それを見た優は秋山に視線を向けると………

 

優「(ボールにくらいつけるディフェンス力は凄いが、それが貴方の隙だ、秋山さん………!)」

 

優はその習性こそ、秋山の隙だと口にするのだった………

 

 

 

優vs秋山の対決。初戦は優が勝利した。しかし、秋山は知らなかった………ここから優の策は次々に進んで行く事を………!!

To Be Continued………




次回予告
対秋山への策は1つでなく、優本人からの反撃もあった。その際に、巫魔にとって思いがけない幸運がやってきて………!?
次回「思わぬ幸運だ」


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第216話 思わぬ幸運だ

前回までのあらすじ
秋山攻略に策を張り巡らせる優。結果、美矢との連携で秋山から2つ目のファールを貰うことに成功したのだった………


美矢のフリースロー。彼女は冷静なボールコントロールで見事にこれを沈めた。

 

美矢「よーし!」

 

73vs70と巫魔がまたしても逃げる形になった………

 

 

 

そして、友力の反撃。

 

秋山「こっちだ!」

 

秋山はボールを持っていた芽衣にパスを要求する。

 

芽衣「秋山さん!」

 

芽衣はボールをパスする。

 

秋山「よし!」

 

秋山はそう言ってゴールの方へ視線を向けるが………

 

優「光一、10番マーク!」

 

優が光一に槍のマークを任せる形で秋山と対峙する。

 

秋山「おっと、お前が俺のシュートを止められるとでも言うのか?」

 

秋山は、自分よりも30cm以上離れている優相手に恐れを感じていなかった。そして、優を無視するようにゴール下シュートへ行こうとするが………

 

優「………そこだ!」

 

優は高く、そして素早いジャンプで秋山の持っていたボールに手を伸ばし、秋山のシュートをブロックした。

 

秋山「何っ!?」

 

これには秋山も驚きを隠せずにいた。美矢がこぼれ玉を拾った事で………

 

美矢「上がれ!」

 

巫魔は反撃に転ずる。

 

秋山「くっ………!」

 

美矢がドリブルで友力側のコートに立つも、芽衣が立ちはだかる。その隙に、秋山を再びゴール下に戻してしまった。

 

美矢「(くそっ………この子のプレイングが上手すぎる………お陰で速攻が中々狙えねぇ………!)」

 

美矢は困った様子を見せる。だが、優は美矢に軽く視線を向けた後………

 

秋山「なっ………!?」

 

スリーポイントシュートラインの外に向かって走り出した。

 

秋山「(何を考えている………!?)」

 

秋山は驚きを隠せずにいた。

 

アリサ「まさか………スリー!?」

 

優の狙いを察知したアリサは、急いで優のディフェンスに走った。しかし………

 

美矢「キャプテン!」

 

美矢は素早いパスで、優にボールをパス。優はパスを受けた後、素早いクイックリリースでスリーポイントシュートを放つ。アリサは止めようとするが、優の手には届かないばかりか、勢い余ってシュート後の優を押し倒してしまう。審判の笛が鳴って間もなく、優のスリーは見事に決まり………

 

審判「ブッシング! 紫6番! バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

3点プレイの形成と、アリサに4つ目のファールを与える事に成功した。

 

アリサ「嘘………!?」

 

これにはアリサも衝撃を受けざるを得なかった。倒れていた優もこの展開は意図していなかったようではあるが………

 

優「(これは………思わぬ幸運だ………!)」

 

これで3人の友力主力をファールトラブルに追い込んだ事を幸運と感じるのだった………

 

 

 

秋山相手にディフェンスでも反撃し、アリサの4ファールを引き寄せる事が出来た優。巫魔が勝利を掴む流れは、もうすぐそこにまで迫っていたのだった………

To Be Continued………




次回予告
3人の主力を下げざるを得なくなった友力の士気は大きく落ち始めていた。しかし、修也は諦めに屈するつもりは無く………!?
次回「まだ諦めるには早いだろ」


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第217話 まだ諦めるには早いだろ

前回までのあらすじ
優はディフェンスにおいても秋山を翻弄して見せ、更にスリーを狙う優。そこにブロックへ来たアリサを偶然にも4ファールに追い込んでみせ、友力主力の半分をファールトラブルへ陥れたのだった………


優がフリースローを見事に沈めた後、友力は………

 

審判「交代です!」

 

アリサを下げる事になり、代わりに14番の秤九郎を投入してきた。

 

優「(また控え選手か………とうとう友力も追い詰められてきたみたいだ………)」

 

優は友力が追いつめられてきた事を悟っていた。というのも、友力はチームレベルが全国的な視線で見て弱い訳ではないものの、主力と控えであからさまにレベル差が開きすぎていた。

 

奄美「(………全国1回戦にして、勝利が怪しくなってきたな………)」

 

この問題には当然、友力監督の奄美も気づいていた。

 

奄美「(うちのオフェンス力ははっきり言って、全国でも上位クラスだろう。しかし、その代償かファールトラブルが起きやすすぎる。主力3人が4ファールに陥ったのがわかりやすい例だ………)」

 

奄美はそう言ってコートに目を向ける。その時には、秋山相手に優が見事なレイアップを決めていた。

 

優「よーし!」

 

優は大きく喜ぶ様子を見せる。

 

秋山「くそっ………!」

 

対して秋山は悔しそうな様子を見せていた。その様子を見ていた奄美は………

 

奄美「(白宮優………彼は紛れもなく全国最強クラスの選手だ。守城の戦記良太相手にまぐれが意図的かは分からんが………1度ドリブルで抜いて見せた実力は………間違いなくうちの選手達を超えた存在だろうな………)」

 

この時点で奄美は悟っていた。優は友力選手を超えた実力者である事を………そして、友力ベンチでは、優1人に試合を支配されている事に、諦めの様子を見せていた。

 

修也「分かるぜ、ミドレーユ………お前の実力は、俺達じゃ足元にも及ばないってさ………」

 

優のライバルである修也も、優の実力は最早レベルが違う事を察していた。

 

修也「でもな………!! まだ諦めるには早いだろ!!」

 

しかし、それは諦める理由にはならないとも考えていた。

 

アリサ「シューヤ………!?」

 

これにはアリサも驚いていた。

 

修也「皆もしょぼくれた顔をすんな! そんな顔してたら、益々ミドレーユの思う壺なんだ!」

 

修也は、戦意を喪失しかけていた仲間達に発破をかけた。

 

修也「皆の気持ちは分かる。俺だって、真正面からミドレーユに勝つ難しさをよく知っているつもりだ。でも、気持ちで負けたらそれこそ終わりだろうが!!」

 

修也は気持ちで負けぬよう、友力ベンチの士気を上げようと奮闘する。その様子を離れてみていた身軽は………

 

身軽「(おっと、俺の知らぬ間にチームの指揮を上げようとしているとはねぇ………こりゃ、次期キャプテンは修也かねぇ………)」

 

次期キャプテンは修也が相応しいと考える様子を見せたのだった………

 

 

 

友力の主力3人がベンチに追いやられる中、まだ諦めない様子を見せた修也。果たして、この修也の行動は、大きな意味を与える事になるのだろうか………?

To Be Continued………




次回予告
修也の鼓舞により、ギリギリ精神を繋げた状態で第3Qが終了。絶望していたチームを生き長らえさせる修也のカリスマ性を前に優は………?
次回「僕には無かった才能だ」


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第218話 僕には無かった才能だ

前回までのあらすじ
主力3人をベンチに下げざるを得なくなる友力。しかし、修也の鼓舞でチームの士気は辛うじて維持され………


試合時間残り10秒、81vs76で友力の攻撃。しかし、優は秋山をマークしている為に、秋山へのパスは難しい。芽衣もどうすべきか悩んでいたが………

 

修也「芽衣! シュートだ! 外したって構わない!!」

 

修也がシュートを撃つよう説得。それを聞いた芽衣は………

 

芽衣「(一か八か………!!)」

 

珍しく自分からスリーを撃った。

 

美矢「何っ!?」

 

芽衣のスリーに美矢は驚きを隠せなかった。芽衣が放ったスリーはリングの上に乗った後に2秒程回っていたが、結果としてスリーは決まった。

 

芽衣「や、やった!!」

 

芽衣は決まると思ってなかったのか、とても喜んでいた。残り3秒、友力は81vs79と最高の展開に持ち込んだ………

 

優「光一! こっちに飛ばせ!!」

 

しかし、優はそこに生まれた友力の隙を突いてきた。光一も優の指示に驚いていたが、すぐにゴール下のボールを拾い、コート外から前線に上がる優へボールをパスした。

 

アリサ「速攻!? でも間に合わないはず………!!」

 

優の最後の攻撃には誰もが驚いていたが、残り1秒、ハーフコートでパスを受けた優はシュートを放った。

 

修也「(幾らミドレーユだからって、あんなヤケクソなシュートが入るはずは………!)」

 

修也も流石に不可能と考えていたが、優の放ったヤケクソと思われたスリーはリングの上に着弾。1秒半程リングの上を回った後、ブザーが鳴る中、ボールはリング内へ沈んだ。

 

修也「なあっ!?」

 

春香「ブザービーター!?」

 

この優のシュートには誰もが驚きを隠せなかった………

 

 

 

しかし、スコア自体は84vs79と十分逆転が出来る範疇である為………

 

修也「さっきのミドレーユのシュートには驚いたけど………まだ逆転出来る! 5点差なら割となんとかなる!!」

 

修也はチームを鼓舞。実際、巫魔側も幾らかダメージを負っているような状態である為、修也の鼓舞も意味を成していた。その様子を見ていた巫魔ベンチは………

 

美矢「修坊のせいで友力はまだ倒れきった訳じゃ無さそうだ………どうしたもんかね………」

 

修也の鼓舞に微かながら圧倒されていた。その中で優は………

 

優「修也は昔からチームメンバーを惹き付けるカリスマ性があったんだよ」

 

修也には昔からカリスマ性があった事を呟く。それと同時に顔を俯かせると………

 

優「………僕には無かった才能だ」

 

自らに無かった修也の才能であると自嘲気味に呟いたのだった………

 

 

 

修也の鼓舞で士気を保たせる友力。友力の士気が意地されるという展開は、試合にどのような影響を与えるのか………?

To Be Continued………




次回予告
巫魔vs友力の第4Q。試合展開こそ巫魔が有利な展開だが、友力の士気は上がって行き………?
次回「有利に思えない展開だ」


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第219話 有利に思えない展開だ

前回までのあらすじ
第3Qは芽衣と優がそれぞれ見せた思わぬプレイで、84vs79の5点差に終わる。そんな中、チームを保たせる修也のカリスマ性に優は………?


審判「第4Q、始めます!」

 

審判が第4Qの開始を宣言。ボールは巫魔側で再開。

 

あずさ「美矢ちゃん!」

 

あずさが美矢にボールを投げ渡す事で試合再開。

 

美矢「よし、行くぜ皆!!」

 

美矢が声を上げ、巫魔は初っ端から攻撃を狙う。

 

修也「気持ちで負けるな!! 巫魔側だって確かにダメージを受けてるんだから!」

 

友力ベンチの修也は、チームを鼓舞する様子を見せる。それを見た優は………

 

優「くっ………!(修也が声をかけているせいで、友力の士気を落とすのが困難になってしまった………!)」

 

修也の鼓舞は、友力サイドの命綱として大きな力を発揮していた。それを断ち切るだけのきっかけがあればまだ良かったが、修也は4ファールなのもあって開き直っていた。

 

優「(ベンチにいる4ファール選手がある意味困る相手だ。コート上ではその力を発揮できなくなるけど、ベンチでは余程アホな事しない限りは無害だもんな………)」

 

優はそう考え、完全に開き直ってる修也に関心を見せる。

 

美矢「キャプテン!」

 

美矢は優にボールをパス。優はそれを受けると………

 

優「まあ、勝ちを譲る気はねぇけどな………!」

 

あくまで勝利を譲らないとしながら、ボールを受けると、優はレイアップを狙う。

 

秋山「止める!!」

 

秋山はそこへディフェンスをかけてきたが、優は全く物怖じしない。その際、2人は衝突するが、優は秋山を軽々と吹き飛ばしてしまった。

 

秋山「ぐああっ!?」

 

秋山は尻餅をつくように地面に倒れた。優はそのままレイアップを決め………

 

審判「プッシング! 紫5番! バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

優は秋山から3つ目のファールを得た。

 

光一「よし!!」

 

光一は優がフリースローを貰った事に喜ぶ様子を見せた。秋山が優相手には通用しないという決定的な瞬間を叩きつけたにも関わらず………

 

修也「どんまいどんまい! まだまだファール3つです! 芽衣も恐れずに秋山さんにパスしていけ!!」

 

修也は声をかけ、友力のメンタルを保たせる。

 

優「(くそっ………また修也がメンタルを保持させてきた………有利に思えない展開だ………!)」

 

修也の行動には、寧ろ巫魔の方が焦っていた。何故なら消耗しているのは巫魔だって同じなのだから。

 

美矢「キャプテン、どうかしたのか?」

 

美矢は優に声をかける。

 

優「………この試合、まだ油断しない方がいい。この先何が起こるか………読めたもんじゃないからさ………」

 

優は、まだこの試合の流れを狂わせる展開が来るのでは無いかと考える様子を見せる。美矢は首を傾げる素振りを見せていたが、優はまだこの試合における危機感を募らせていたのだった………

 

 

 

修也の影響が、友力の士気を繋ぎ止めていた。果たして、修也の鼓舞は、再び友力に良い流れを与えるきっかけとなってしまうのだろうか………!?

To Be Continued………




次回予告
友力の士気が強まる中、優は今のうちに秋山を潰す事を考える。そんな優の考えに、光一が名乗りを上げ………!?
次回「俺にやらせてくれ」


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第220話 俺にやらせてくれ

前回までのあらすじ
第4Q開幕。先制は巫魔が制するものの、修也の鼓舞によって友力の士気は高まっており………!?


フリースローに入る前、優はゆうかに向けてTのジェスチャーをする。

 

ゆうか「(タイムアウト………!? 確かにまだ使えばするけど開始20秒ほどのタイミングで………?)」

 

ゆうかは優がタイムアウトを求めた事に驚きを隠せない。なんせ、第4Qとはいえまだ始まったばかり。タイムアウトを取るにしては速すぎる。しかし、優はフリースローのボールを受け取る際、ゆうかにタイムアウトを取るように頼み込む視線を向けた。

 

ゆうか「………仕方ないわね」

 

優がふざけてタイムアウトを取るよう頼むとも思えないので、仕方なく審判団の方へ行き………

 

ゆうか「すみません、タイムアウト」

 

タイムアウトを依頼。

 

審判「え? まだ20秒くらいですけど………?」

 

これには審判も首を傾げる。

 

ゆうか「いいから」

 

ゆうかはこれが本気である様子を見せる。それを受けた審判は慌てる様子こそ見せたが、優が見事にフリースローを沈めたタイミングで………

 

審判「巫魔、タイムアウト!!」

 

審判はタイムアウトを宣言。これには優やゆうかを除いて驚いていた。

 

修也「(早過ぎる………!! 何考えてんだ!?)」

 

修也は早過ぎるタイムアウトに大きく驚く様子を見せる。

 

奄美「(開始20秒のタイムアウトなど普通に考えて愚行だ………雷くんの作戦か………?)」

 

早過ぎるタイムアウトは、友力監督の奄美すら動揺する様子を見せたのだった………

 

 

 

巫魔ベンチ………

 

春香「タイムアウト取るの早すぎません? 何考えてるんですか?」

 

春香は疑問を口にする。

 

優「………正直、友力による大番狂わせがまた起きそうなんだよね。だから今のうちに秋山さんを潰しておきたいんだ」

 

優は友力の大番狂わせを危惧し、秋山を潰す事を考えていた。

 

美矢「秋山をね………まあ確かにここで潰すのは得策かもしれないな………」

 

美矢は秋山を潰す事に賛成した。優がどう秋山を潰そうかと考えていると………

 

光一「なら、それを俺にやらせてくれ」

 

なんと光一が名乗りを上げた。

 

優「………大丈夫なのか?」

 

優は光一が秋山に勝てるかを問いかける。

 

光一「俺がやられっぱなしで終わると思うか?」

 

光一は優に対しそう返した。特に根拠は無い意見だったが………

 

優「………わかった、頼むよ。僕もフォローに回れるようにはする」

 

優はフォローに回る事を頭に入れつつも、光一を信じる事に。

 

優「(ここで挽回されないまでに追い込んでしまった方が都合がいいだろうな………)」

 

優はここで逆転出来ないようにするまで追い込んでしまうべきと考えるのだった………

 

 

 

優の早過ぎるタイムアウトにて、第4Qの方針が固まる事になる。果たして、この作戦は上手くいくのか………?

To Be Continued………




次回予告
光一は秋山を追い込む為に突っかかる様子を見せる。そして、秋山による攻撃時、光一は強気のディフェンスを見せ………!?
次回「俺にもプライドがあんだよ」


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第221話 俺にもプライドがあんだよ

前回までのあらすじ
第4Q開始20秒でタイムアウトを取るという異常行動を取る巫魔。優はこのタイムアウトで秋山を追い込む事を画策し………!?


審判「タイムアウト終了!」

 

審判のコールでタイムアウトが終了。優達はコートに戻り………

 

優「………さあ、ディフェンス行くぞ!」

 

優は何事もなかったかのように声を上げる。

 

修也「(何も無かったような言い方だ………いや、それにしては………凄まじい集中力だ………!)」

 

しかし、修也は優の研ぎ澄まされた集中力を恐ろしく感じていた。

 

芽衣「秋山さん!」

 

その間に芽衣は秋山へボールをパスする。

 

秋山「………おっ?」

 

ボールを受けた秋山。すると彼の前には光一が立ちはだかっていた。

 

秋山「リベンジマッチって事か………17番!」

 

秋山は光一がリベンジに来た事をすぐに理解した。

 

光一「来いや………!!」

 

光一はこの試合最高の集中力を見せていた。

 

秋山「(すっげえ集中力………でも、俺は負けねえ!!)」

 

秋山はそう言って高く飛び上がる。しかし、同時のタイミングで光一もジャンプしていた………!

 

美矢「同時にジャンプした………!!」

 

2人の同タイミングジャンプは、会場の殆どの人達を驚かせていた。

 

春香「(後は読み合い………! 秋山さんの行動に光一くんが読めるかどうか………!!)」

 

残るは読み合い。秋山の行動を光一が読めるかどうかに賭かっている。

 

秋山「(こっちはシュートとジャンプをステップして撃てる………! つまり、シュートそのものに100%の力を注げるって訳だ………!!)」

 

秋山は自身に分があると考えていた。しかし………

 

光一「うおおおっ!! 俺にもプライドがあんだよ!!」

 

光一は手を大きく伸ばし、シュートコースを殆ど防いだ。

 

秋山「な、なんだと!?」

 

秋山は驚きを隠せずにいた。秋山は苦し紛れにシュートを放つが、そんなシュートが入る訳がなく、オマケに光一と衝突してしまった。

 

秋山「あっ………!?」

 

秋山は衝撃を隠せずにいた。秋山が苦し紛れに放ったシュートは外れ………

 

審判「プッシング! 紫9番!!」

 

ここに来て秋山のファールは4つ目に到達。秋山は衝撃を隠せずにいた………

 

光一「おっしゃあああ!!」

 

光一は大きく喜ぶ様子を見せた。

 

美矢「ナイスだ、光一!!」

 

美矢は光一に近付き、肩を強く叩く。

 

光一「おおおっ!!」

 

その直後に光一は美矢とハイタッチを行った。

 

優「有言実行しやがるとは………やってくれるぜ………!」

 

優は2人の会話を微笑ましく見ていた。そして、秋山4ファールの事態に修也は………

 

修也「(………まだ諦めない。俺は………まだ4ファールなんだ………!!)」

 

まだ諦めない様子を見せるのだった………

 

 

 

光一渾身のプレイを見せつけ、秋山を4ファールに追い込んだ。しかし、修也はまだ諦める様子を見せる事は無かったのだった………

To Be Continued………




次回予告
秋山4ファールの危機ながら諦めの見せない修也。ハイリスクが乗っかる状況に、監督奄美の選択は………?
次回「負けるよりマシだ」


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第222話 負けるよりマシだ

前回までのあらすじ
友力の大番狂わせを危惧し、今のうちに秋山を倒す事を画策する優達。光一の好プレーにより、なんと秋山を4ファールに追い込む事に成功し………!?


審判「友力、タイムアウト!」

 

秋山の4ファールは友力にとってとてつもない大打撃。流石にこれはタイムアウトを取った。

 

奄美「うむ………まさか主力4人が4ファールとはな………」

 

あまりの事態に友力監督奄美は頭を悩ませる。

 

奄美「残り時間は9分強、この場面で何か手を打たなければ、友力の敗北は免れられない………!」

 

奄美はチームの危機を感じていた。それを聞いた修也は………

 

修也「………なら、俺を出してください!」

 

自らの出場を希望する。

 

奄美「しかし………4ファールの君を出すのは………」

 

奄美は、修也が4ファールである事を気にし、出場を認められずにいた。

 

修也「何もしなきゃ俺達は負ける! それなら、4ファールだろうと主力の方がいい! その方が………負けるよりマシだ!!」

 

修也はこの場面で敗北を選ぶより、勝利を掴むべきであると考えていた。

 

芽衣「修也くん………」

 

芽衣は修也の姿勢に驚いていた。しかし、修也の覚悟は本気だった。それは彼の迷い無い様子から明らかだった。

 

身軽「………なら好きにさせればいいんじゃないですかね。どうせ後が無いのは事実ですし」

 

そんな中、普段は放任主義の身軽が、修也の出場を後押ししてきた。

 

奄美「身軽………珍しい事を言って来たな」

 

身軽のこの言葉は奄美にとっても予報外のものだったらしく、奄美はそう返した。

 

身軽「俺は基本ハイリスクを取りたくはないんですがね。でも、修也の言葉にも一理あると思いましてね」

 

どうやら身軽は安定派の思考をしているようであるが、今回ばかりは勝ちを優先し、修也を投入する事を賛成した。

 

アリサ「それなら、私だって出る権利はあるでしょう?」

 

身軽の賛成を聞いたアリサは、同時に自らの出場を希望した。

 

修也「アリサもか………!」

 

修也はアリサも出場を希望した事に驚きつつも、どこか喜ぶ様子を見せる。

 

浩太「………」

 

それを見ていた浩太は、自らも出場を希望したかった。しかし、修也達との関係が悪化している事から、出場したいと言いたくとも言えなかった。

 

秋山「………まあいいか。そういえば修也のプレイを生で見ていなかったからな………この際5ファールになっても悪いとかねーだろ」

 

秋山も賛成する様子を見せた事で………

 

奄美「………わかった、天野、アリサ、2人の出場を認める。やりたいようにやれ」

 

奄美は2人の出場を認めるのだった………

 

 

 

やむなく取らされた友力のタイムアウト。しかし、リスクを前にしても勝利を求める修也とアリサは試合に戻る事となった。果たして、この2人の出場は、友力の逆転を呼び起こせるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
試合に戻ってきた修也とアリサ。4ファールが3人いる状況は巫魔にとって有利に思われたが、修也の集中力は4ファールのものとは思えず………!?
次回「甘いぜ」


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第223話 甘いぜ

前回までのあらすじ
4ファールが4人という絶望的状況。しかし友力は修也とアリサの2人を再投入する事に決め………?


審判「タイムアウト終了!」

 

第4Q2度目のタイムアウトが終了し、再び両陣営に選手が戻る事に。友力は槍と秤の代わりに、修也とアリサをコートへ戻してきた。

 

湯津「目まぐるしい展開だねぇ………まだ1分も経ってねえのに2回もタイムアウトって珍しいぜ………?」

 

観客席の湯津は、この目まぐるしい展開に驚いていた。

 

戦記「だが、まだ試合は終わりとは言い難そうだ。友力が4ファールの2人を戻した………ここがこの試合の分岐点になりそうだな………」

 

しかし、戦記からすればそんな事はどうでもいい。問題は残る9分のタイミングで戻ってきた修也とアリサである。

 

大牧「あの2人と5番が退場すれば友力は後がないって訳ねぇ………」

 

大牧も戦記の言いたい事を理解した。この場面で友力が勝てるかどうかはこの場面の4ファールの修也達に賭かっている。

 

あかり「美矢ちゃん!」

 

巫魔のスローインで試合再開。しかし………

 

アリサ「はあっ!」

 

4ファールのアリサがファールを恐れずに強気のプレイでボールを手で弾き、ボールは芽衣に渡った。

 

あかり「えっ!?」

 

これにはあかりも驚かされた。ボールを受けた芽衣は美矢とマッチアップするが………

 

芽衣「修也くん!!」

 

芽衣は美矢が僅かに反応出来ないスピードで鋭いパスを送ってみせた。

 

美矢「なあっ!? きゃ、キャプテン! 光一!」

 

修也にボールが渡ってしまった為、彼を止められるのは優と光一の2人に。

 

優「止める!」

 

優がディフェンスに回ろうとするが、そこへ秋山がスクリーンに入り、優が修也の方へ行けないようにする。

 

優「ぐっ、光一頼む!!」

 

これには優も光一を頼らざるを得なくなる。

 

光一「おうよ!」

 

光一はそう言って身構える。対する修也は何の迷いもなくツーハンドダンクの必殺、{強靭なダンク(タフネスダンク)}を狙ってきた。

 

光一「(すげえ集中力………! でも、俺だって負けねぇ!!){ウォールブロック}!!」

 

光一も負けじと必殺技で対抗………しかし、光一は修也と衝突した際に、大きく吹き飛ばされてしまった。修也のダンクは見事に決まると共に審判の笛が鳴ると………

 

審判「ファール! ………白17番! バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

審判は光一2つ目のファールをコール。更にバスケットカウントワンスローで、修也はフリースローを得た。

 

アリサ「やったああ!!」

 

これには友力陣営も大きく喜んだ。

 

光一「おいおい、マジかよ………!?」

 

これには光一が1番に驚いていた。修也は光一に近付くと………

 

修也「俺が4ファールになってるからって姿勢を見せてただろ? ………甘いぜ」

 

そう言い放つのだった………

 

 

 

コートに戻ってきた修也は4ファールとは思えない強気のプレイングを見せる。そして、修也のプレイは、巫魔に対し、僅かながら確かな揺らぎを与えたのだった………

To Be Continued………




次回予告
逆転を狙う修也の好調は止まらず、光一を3ファールに追い込む修也。その時、優の中で確かな不安が生まれ………!?
次回「マズい事になった」


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第224話 マズい事になった

前回までのあらすじ
友力は4ファールの選手3人をコートに出すハイリスクな策に出てきた。しかし、修也の集中力は4ファールなど知らぬと言わんばかりのものであり………!?


光一からファールを貰った事が影響され、修也の快進撃は止まらない。

 

光一「うおおおっ! 決める!!」

 

続く巫魔の攻撃では光一がダンクを狙う………

 

修也「させるか!!」

 

しかし、修也はキレのある動きで光一のダンクをブロックした。

 

美矢「な、なんて強気なディフェンスなんだ………!?」

 

美矢は強気な修也のプレイに驚きを隠せずにいた。

 

春香「(普通4ファールなら、接触のリスクがあるプレイなんて避けたくなるはず………今の修也さんには、そんなリスクなど気にしていないって事なの………!?)」

 

それもそのはず、現在の修也は4ファール。1発でもファールを取られれば退場のレッドゾーン間近なのである。普通なら接触のリスクがあるプレイは困難になる。しかし、修也は勝つ為に自らのリスクをも賭けていた。

 

優「(まさかここで100%集中した修也が出てくるとは………こりゃ、マズい事になった………!!)」

 

優もこの事態には危機を感じていた。そして芽衣が零れ球を拾い………

 

芽衣「速攻!!」

 

この場面で速攻を仕掛けてきた。

 

優「ぐっ、美矢! ディフェンス!!」

 

優は美矢にディフェンスを指示した声をかける。

 

美矢「おうよ!」

 

美矢はディフェンスに回る。芽衣も美矢を前にすると、足を止めてしまうが………

 

アリサ「芽衣、こっち!!」

 

アリサがパスをするよう声をかけてきた。

 

優「スリーか………!?」

 

アリサのスリーを危惧した優は、アリサの方へ走り込むが、芽衣はそれを目にした後、ノールックで身軽へパスをした。

 

優「なっ!?」

 

そして身軽に渡ったボールは、すぐに修也へパスされた。

 

光一「今度こそ決めさせねぇ!!」

 

修也の前に光一が立ちはだかり、今度こそ止めると意気込む光一。しかし………

 

修也「今の俺は止まらねぇ!! 何があろうとな!!」

 

修也はそう言い放つと、再び{強靭なダンク(タフネスダンク)}を狙いに行く強気のプレイングを見せる。

 

光一「もう一度だ………{ウォールブロック}!!」

 

光一はもう一度体を広げたディフェンスで止めようとする。しかし、修也はそんな光一を軽く吹き飛ばしてダンクを決めてみせ………!?

 

審判「………バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

再び光一のファールに修也のフリースローが乗った。これにより、光一のファールは3つに。

 

優「(本格的にマズい事になってしまったな………)」

 

優は、本気で友力が大番狂わせをするのでは無いかという危機を感じ始めていたのだった………

 

 

 

集中した修也のプレイは止まらず、友力のチームプレイも力を発揮し始めていた。果たして、本当に友力は逆転を掴んでしまうのか………!?

To Be Continued………




次回予告
友力をこれ以上乗らせない為に、優も強気のプレイングを見せる。一方、友力ベンチの浩太は………?
次回「俺に出来る事は」


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第225話 俺に出来る事は

前回までのあらすじ
修也の研ぎ澄まされた集中力により光一を圧倒した修也。巫魔が有利のはずが追い込まれてしまっており………!?


修也は冷静な様子でフリースローを沈めた。これにより、87vs85の2点差に。

 

優「あかり、こっちだ!」

 

この2点差に危機を感じた優は、最初からボールを持つ事を考えた。

 

あかり「え、ええ………分かった!」

 

あかりは優にボールを投げ渡す。

 

優「よし、上がれ!!」

 

優は上がる事を指示する。そして、試合を見ていた友力ベンチの浩太は………

 

浩太「(修也達が大活躍している………でも、俺はあの時………手を挙げられなかった………俺に出来る事は無いのか………?)」

 

修也達の活躍を見ていたと共に、先程修也達が出場を訴えた時、自分も出場したいと言えなかった事を後悔していた。そんな中、優は………

 

優「ここで絶対に点を取るぞ!!」

 

絶対に点を取るよう指示。汗を流しながらもそれを気にしない動きを見せる優は素早い動きでインサイドに入り込んだ。

 

修也「ミドレーユ!! お前を行かせねぇ!!」

 

修也は優を行かせまいと必死な様子を見せる。

 

優「僕はここで止まる訳には行かねぇ!!」

 

しかし、優は止まるまいと華麗なドライブを見せ、修也を抜き去った。

 

修也「くっ!?」

 

修也は優の華麗なドライブに驚く様子を見せる。

 

秋山「来い!!」

 

修也を抜いた優の前に、秋山が立ちはだかる。

 

優「悪いが秋山さん、あんたの見せ場はここまでだ!!」

 

しかし、優は強気な様子でツーハンドダンクの大技、{究極のダンク(アルティメットダンク)}を狙う。秋山は体を大きく広げたディフェンスでダンクを止めようとするが………

 

優「うおおおっ!!」

 

優は気合いの入った声を上げる。そして、2人は強く衝突………その結果は………!?

 

秋山「うおおっ!?」

 

優が秋山を吹き飛ばし、ゴールを揺らす強烈なダンクを決めた。

 

審判「………バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

更に優にはフリースローが与えられる事となった。そして、秋山は………

 

審判「紫5番5ファール!! 退場!!」

 

5ファールによって退場が宣告されてしまった。

 

奄美「あ、秋山が退場………!?」

 

第4Q残り8分、秋山翔太郎退場………!!

 

湯津「た、退場!? マジかよおい!?」

 

秋山退場は会場内に大きな衝撃を与えた。

 

大牧「こりゃ驚いたな………まさかあの5番が退場とは………」

 

大牧もこの展開は予想外だったようで、驚きを隠せずにいた。

 

戦記「末恐ろしい男だな、優………!!」

 

そして戦記は、優の恐ろしさを改めて思い知らされる様子を見せたのだった………

 

 

 

優の活躍によって秋山を退場にまで追いやって見せた巫魔。果たして、これで勝負は決まってしまうのか………!?

To Be Continued………




次回予告
秋山退場で、代わりのCを出さなければならなくなった友力。絶体絶命の危機で名乗りを上げたのは………!?
次回「俺がやる」


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第226話 俺がやる

前回までのあらすじ
2点差の危機に対し、優が攻撃を狙う。その攻撃で優は秋山を5ファールの退場に追い込み………!?


奄美「参った事になったな………直ぐにCを出さないといけないとは………」

 

奄美は困った様子を見せていた。

 

奄美「(順当に行けば天原を出すべきだろうが………天原では白宮優や相田………下手をすれば天野美矢すら止められない………唯一対抗出来るとすれば………)」

 

奄美は浩太に目を向ける。しかし………

 

奄美「(林川は4ファール………ただでさえファールの可能性が高いのにこの場面で採用するのはとてもリスキーだ………)」

 

浩太のファール率の高さは友力では強く知れ渡っていた。後3分も無いならまだ投入する意味も見えてきそうだが、試合はまだ8分も残っており、安定性に欠ける浩太を出すのは余程のギャンブル行為と言っても過言じゃない。誰を出すべきか悩む奄美に対し………

 

浩太「監督、俺を使ってください………!!」

 

なんと浩太は4ファールである事を理解しつつも、自らを使う事を訴えてきた。

 

奄美「林川………!? 正気か………?」

 

これには奄美も浩太の正気を問いかけてきた。

 

浩太「大真面目です………!」

 

浩太は本気の様子を見せる。そこにはこれまで見せてきたどこか横暴な性格を見せていた人物と同一人物には思えないものだった。

 

奄美「………林川、お前は残る8分で役に立つのか?」

 

奄美は浩太に対し、試すように問いかける様子を見せる。

 

浩太「………役に立ちます。俺、やっと分かったんだ………なんで修也達がアイツの事を強く信頼していたのか………どうして俺はアイツらに嫌われてしまったのか………ここで何も出来ず退場するようなら………俺は正真正銘の大馬鹿者………レギュラーから外されたって文句は言いません………! だから俺がやる………! やらなきゃならないんだ!!」

 

浩太はこの試合の中で優と修也達の信頼関係について本当の意味で理解した。その上で今自分が何をすべきか理解した浩太。今自分に課せられているのは何か。4ファールで追い詰められている自分だからこそ出来る事は無いのか。それを理解した浩太は恐ろしいくらいに落ち着いており………同時に勝利への強い意志を持っていた。

 

奄美「………分かった、お前も何かを掴んだようだしな………」

 

浩太の内心を汲み取った奄美は席を立ち………

 

審判「友力、交代です!!」

 

とうとう交代の意思を見せた。

 

奄美「………出番だ、林川。お前にもこの試合の勝敗の手網を握ってもらうぞ………!」

 

奄美はそう言って浩太に出場を促す。

 

浩太「………はい!」

 

浩太はシャツを脱ぎ捨てると、9番のユニフォームが姿を見せ………

 

浩太「行くぞぉぉ!!」

 

浩太は雄叫びを上げながらコートへ戻るのだった………

 

 

 

秋山の5ファールで絶体絶命の危機に陥る友力。しかし、浩太は退場のリスクを抱えてコートに戻ってきた。果たして、このリスクを背負った浩太は逆転のきっかけを作る事が出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
危機的状況で戻ってきた浩太。彼に対する不信感を隠せない修也達だが、彼はプレイで自身の気持ちを伝え………!?
次回「これが俺の誠意だ」


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第227話 これが俺の誠意だ

前回までのあらすじ
秋山の5ファール退場で代わりのCが必要になる友力。そんな中、浩太が出場を直訴。修也達と仲が悪くなった理由を理解した浩太は、自身のやるべき事を理解し………!?


優「(ここに来て9番、林川浩太が戻ってきた………?ここでファールしやすい 4ファールの奴を戻したってリスキーなだけだ………何を考えている………?)」

 

優にとっても浩太の復帰は疑問だった。そして、修也も首を傾げる様子を見せる。

 

修也「………何しに戻ってきた?」

 

修也が浩太に対しそう問いかけると………?

 

浩太「………これまでの無礼は後で謝る。だから今は………戦わせてくれ………!」

 

浩太は修也に対し土下座をする。これには修也どころかアリサや芽衣も驚いていたが………

 

身軽「皆、次は浩太優先で攻めていこう」

 

身軽が浩太中心の攻めを指示。

 

身軽「本気がどうかなんて、次のプレイで分かる。本気じゃないならどうせ退場するし」

 

身軽はそう言って半ば浩太を試すようにそう呟く。

 

芽衣「………分かりました」

 

身軽の言葉に芽衣は頷いた。まだ内心は困惑しているようだが、試合という場である以上、私情は捨てるようだ。

 

修也「物は試しか………」

 

修也はそう言って試す事に乗る。だが、その前に優のフリースローである。

 

優「はあっ!」

 

そしてこのフリースローは当然外す事無く見事に沈めた。

 

身軽「さあ、審判の時だ。俺達の勝敗を賭けてな………!!」

 

だが直後、ボールを拾った身軽は芽衣に向けてボールをパスした。

 

芽衣「速攻!!」

 

芽衣はここで速攻をかける。

 

優「速攻を決めさせるな!! ここを守りきる!!」

 

現在のスコアは90vs85。巫魔にとってもあまり押されたくはない。そして、光一と浩太の2人がゴール下でマッチアップ。

 

芽衣「………浩太くん!」

 

芽衣は浩太にボールをパスする。

 

光一「今更お前が相手になるかよ!!」

 

光一はそう言ってディフェンスの構えを見せる。

 

浩太「………俺は愚か者だ。修也達の逆鱗を触り続けたバカだ………」

 

対して浩太は、ブツブツとそんな事を呟く。

 

浩太「なら、俺がやるべき事は………1つだけだろ!!」

 

そして、浩太はボールを持ったまま強気のダンスを狙う。

 

光一「なっ!? (ここでタンクだと!?)」

 

光一は驚きを隠せなかった。体は反射的に跳躍したものの、中途半端なディフェンスとなってしまい、光一はぶつかってしまう。

 

浩太「これが俺の誠意だ!!」

 

浩太はそう言うと、豪快なダンクを炸裂させた。審判の笛が鳴った後………

 

審判「プッシング! 白17番! バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

浩太はフリースローを得る3点プレイを形成。そして、光一は4ファールに追い込まれてしまうのだった………

 

 

 

コートに戻ってきた浩太は、1プレイで確かな誠意を見せつけた。友力の敗北は、まだ間近に迫ってはいないのだった………

To Be Continued………




次回予告
巫魔は、優のオフェンスで何とか耐え続けていた。しかし、他の選手達は限界が迫っており………!?
次回「追い詰められた」


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第228話 追い詰められた

前回までのあらすじ
コートに戻ってきた浩太は、光一相手に誠意を持ったプレイングを見せ、活躍とともに光一を4ファールへ追い込むのだった………


優「(光一が4ファール………! でも、ここで光一を下げたらCは間違いなく苦しくなる………!)」

 

優は光一の4ファールに慌てていたが、彼を下げれば浩太に太刀打ちできる選手は一気に限られてしまい、インサイドが弱体化してしまう。その為、巫魔は交代したくても交代出来なかった。

 

優「(それに………美矢の体力もヤバい………!!)」

 

そんな彼等に追い討ちをかけるように、試合全体的を通して美矢の体力も大きく減ってしまっており、最後まで体力が持たなくなりかけていた。

 

優「(追い詰められた………なら、僕がなんとか点を取り続けるしかない………!!)」

 

優はチームの危機を感じた。それと共に自分が点を取る事で逃げ切る事を考えた。浩太のフリースロー。しかし、浩太のシュートは残念ながら外れてしまった。

 

浩太「し、しまった………!!」

 

浩太は慌てる様子を見せた。

 

修也「何やってんだ馬鹿野郎!!」

 

修也が慌ててリバウンドを取りに行くが………

 

優「はああっ!!」

 

リバウンドを制したのは優であり、優がボールを取ると………

 

優「(僕が………点を取る!!)」

 

優は1人速攻に走る。

 

美矢「きゃ、キャプテン!? 一旦こっちに………!!」

 

美矢はパスを要求するが、優は美矢の体力を慮り、これを無視して走り切り、素早い動きでレイアップを放つ。

 

アリサ「は、速い!?」

 

優が放ったレイアップは綺麗にゴールへ入った。

 

伊吹「よーし! 入った!!」

 

これでスコアは92vs87。5点差へ広がった。

 

美矢「おい、キャプテン。今のは無理に攻めるべきじゃなかったんじゃないか?」

 

だが、美矢はパスをガン無視してレイアップを打った事に疑問を感じていた。優は美矢に視線を向けると………

 

優「無理すんなよ。体力、危ないんじゃないのか?」

 

彼女のスタミナを心配する言葉をかけた。

 

美矢「え? あ、ああ………!」

 

美矢は優が自分を心配した為に独りよがりのプレイングを行った事を察知する。優がディフェンスの為にインサイドへ入る中、美矢は疲労によって重くなった自身の足に視線を向け………

 

美矢「(キャプテンは私達を心配して1人でシュートを打ったのか………マズいな、このままじゃ力豪戦の時と同じ………キャプテン1人に無理をさせちまう事になる………)」

 

またしても優に無理をさせる事を申し訳なく感じていたのだった………

 

 

 

疲労やファールトラブルで追い詰められる巫魔。優が辛うじて点を取って耐え忍ぶも、その限界はすぐ近くにまで迫っていたのだった………

To Be Continued………




次回予告
友力は怒涛の攻撃を見せつけ、次々と点を奪っていく。そして、友力の攻撃によって遂に巫魔は逆転されてしまい………!?
次回「遂に逆転だ」


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第229話 遂に逆転だ

前回までのあらすじ
主力である美矢の疲弊と光一の4ファールで大きく追い詰められる巫魔。優が点をとる形で何とか耐え抜く巫魔だが………?


続く友力の攻撃。芽衣が素早い動きでドリブルし、インサイドに切り込んで行く。

 

美矢「(くそっ………! 足が重てぇ………!!)」

 

美矢は自身の疲労を強く感じていた。足の疲弊を頭の中で強く感じる中、その隙を突いた芽衣がアリサにボールをパスする。

 

美矢「っ………!? しまった………!!」

 

美矢は驚きを隠せなかった。そして、アリサはあかりを前にしても前へ跳躍したスリーを放つ。あかりはこれを止めようとするが、やはり接触してしまう。アリサのスリーは見事に決まり………

 

審判「プッシング! 白13番! バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

遂に点差は2点差に詰められた上に、フリースロー1本を与えてしまった。

 

優「やられた………!!」

 

これには優も悔しそうな様子を見せるのだった………

 

 

 

その後、アリサがフリースローを沈め、とうとう92vs91の1点差に。

 

優「美矢!」

 

優はすぐさま美矢へボールをパス。しかし、美矢はボールを受けた瞬間、視界が霞んで見えた。

 

美矢「あっ………!? (やべぇ………力が入んねぇ………!!)」

 

美矢は自身の限界を理解していた。そして零れたボールを修也が拾うと、そのままダンクを狙う。

 

光一「(止めねぇと………でも………!!)」

 

光一はディフェンスしようとする………しかし、光一は飛べなかった。

 

光一「マズい………もうファールできねぇからなのかビビっちまう………!!」

 

光一は5ファール退場をビビって飛べなかった。結果、修也はそのままダンクを決めてしまった。これにより………

 

修也「よーし!! 遂に逆転だ!!」

 

友力は見事に逆転を決めた。この展開は巫魔に大きなダメージを与え………

 

美矢「くそっ!!」

 

美矢は地面に強く拳を打ち付け、光一は黙って俯くだけ。そして優は髪の毛によって目元が見えなかったが、悔しそうな様子である事は間違いない様子を見せていた。

 

ゆうか「ここは1度止めるべきだわ………!!」

 

ゆうかはこの流れのマズさを感じ取り………

 

審判「巫魔、タイムアウト!!」

 

このでこでタイムアウトを取った。そしてこの試合を見ていた観客席の戦記は………

 

戦記「この土壇場で友力が追い上げてくるとはな………いよいよ、友力にも勝ち目が見えてきたという訳か………」

 

友力にも勝ち目が見えてきた事を予感するのだった………

 

 

 

友力の逆転により、巫魔は絶体絶命の危機に陥った。果たして、このまま友力の逆転劇が完成してしまうのだろうか? それとも………!?

To Be Continued………




次回予告
チームの疲弊により、絶体絶命の危機に陥る巫魔。しかしそれでも諦めない優の様子から、春香達もそれに同調する様子を見せ………!?
次回「まだ試合は終わってねーだろ」


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第230話 まだ試合は終わってねーだろ

前回までのあらすじ
巫魔の疲弊は試合に大きな影響を与えた。そして、とうとう友力は逆転してしまい………!?


巫魔ベンチの空気は暗かった。試合時間残り6分45秒での逆転はかなり厳しい展開であり、有利のまま逃げたかった巫魔にとっては最悪の展開だった。

 

ゆうか「これはマズい事になったね………オマケにこっちも半壊状態だし………」

 

ゆうかもチームの危機を強く感じていた。

 

美矢「はあっ、はあっ………ぐっ!?」

 

更に、美矢は疲れに限界が来てしまったのか、地面に膝を着いてしまう。

 

光一「だ、大丈夫か、美矢!?」

 

光一は心配しながら駆け寄る。

 

優真「監督………!! 美矢さんはもう………!!」

 

優真はゆうかに美矢の限界を訴える。

 

ゆうか「そうね………優真ちゃん、出れる?」

 

ゆうかもそれを理解していたのか、優真に出場を依頼する。

 

優真「は、はい!」

 

優真はそう言うと、出場準備を行う。

 

積牙「でも………こっからどうやって………?」

 

しかし、巫魔の危機という根本的な問題は解決していない為、チームの雰囲気は悪いままである。

 

優「………まだ諦めるには早い………まだ試合は終わってねーだろ………!!」

 

だが、そんな悪い空気を壊す言葉を口にしたのは優だった。

 

伊吹「ゆ、優………!?」

 

これには誰もが驚きを隠せずにいたが………

 

優「まだ時間は残っている。そんな中で諦めるバカは全国で勝てない!! 僕は………まだ諦めないぞ!!」

 

優は諦めない様子を見せる。気を落とせば掴める期待も掴めなくなる。そう考えた為に放たれた優の一喝だった。

 

春香「優さん………そうですよね………!!」

 

それに真っ先に同調したのが春香だった。

 

春香「監督、私も出してください。4ファールだからって黙って試合を見てるなんて嫌です………!!」

 

同時に春香は試合への出場を要求。4ファールのハンデよりも、試合に勝ちたい思いの方が勝った為か、自らの危機など気にはしていなかった。

 

積牙「俺も………! 俺も出場させてください! 俺も春香先輩と同じ気持ちです………!!」

 

そしてそれは積牙も同じだった。ゆうかは2人の出場を認めるべきか悩んでいる様子を見せていた。

 

優「この試合に勝てなきゃ全国制覇なんて到底無理だ。全国制覇を目指す為にも………この逆境、絶対に跳ね除けてみせる!!」

 

しかし、優がそう言い放つ事によって、ゆうかは優達の本気を強く感じた。

 

ゆうか「………分かったわ、結果が退場になったっていい。皆、大暴れしてきなさい!!」

 

その為、ゆうかは春香達の要求を受け入れる事に。

 

優達「おおー!!」

 

そしてゆうかの指示に、優達は気合を入れて答えを返すのだった………

 

 

 

絶体絶命の巫魔は優の言葉で立ち直る事が出来た。果たして、この先の対決の行方は………!?

To Be Continued………




次回予告
フルメンバーが戻ってきた巫魔は、本気の友力とぶつかり合う事に。その中で優vs修也が三度再熱し………!?
次回「今度こそケリをつける」


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第231話 今度こそケリをつける

前回までのあらすじ
追い詰められた巫魔。しかし、優の諦めない姿勢がチームを復活させた。結果、巫魔はフルメンバーで勝負に行く事になり………!?


審判「タイムアウト終了!!」

 

審判によってタイムアウトの終了が宣言され、両チームの選手が試合に戻ってきた。

 

奄美「(ここで選手を大きく変えてきたか………!! しかし、4ファールの選手は3人………! あちらとで有利な展開では無い事は確かだ………!!)」

 

友力監督奄美は巫魔の主力も半壊状態である事を考え、大きな動揺は見せなかった。コートの外でボールを受けた優は………

 

優「さあ、反撃開始と行こうか」

 

一言だけそう呟き、優真にボールをパスする。優真は静かにドリブルで上がっていく。

 

芽衣「行かせないよ!」

 

そこに芽衣がディフェンスへやってくるが、優真は迷わず、まだこの時点で後ろにいた優に素早いパスを送った。

 

芽衣「なっ!?」

 

これには芽衣も驚きを隠せずにいた。その隙に優真は芽衣をかわし、優は優真に鋭いパスを行う。

 

芽衣「(ワン・ツーパス………!!)」

 

芽衣は驚きを隠せずにいた。優はスピードを上げ、インサイドに切り込むと………

 

優真「キャプテン!!」

 

優真は鋭いパスを送り込む。だが、優の前には修也が立ち塞がる。

 

修也「行かせねーぞ、ミドレーユ!!」

 

修也はとてつもない気迫で優の前に立ちはだかる。

 

優「今度こそケリをつける………!! 行くぞ、修也!!」

 

優はそう言って修也を相手に立ち向かう。修也は良いディフェンスを行い、優に攻撃のチャンスを与えようとしない。

 

優「(流石修也………全然攻めさせてくれねぇ………!!)」

 

優は修也のディフェンス力を素直に認める様子を見せる。だが………

 

優真「キャプテン!!」

 

そこに優真が駆け込んできた。

 

優「(優真………! よし!)」

 

優は優真にボールをパスしようとする。

 

修也「(パスか………!?)」

 

修也はそう考えると優真の方へ寄る。だが、優が思い描いていたシナリオは別であり、優はそこからレイアップを狙った。

 

修也「(レイアップ………!?)」

 

これには修也も想定外だった。優の放ったレイアップは見事にゴールへ沈んだ。

 

あずさ「やった!! 優くんがまた逆転のシュートを決めたよ!!」

 

巫魔のベンチ陣は優による逆転シュートに大きく喜んだ。一方、修也は優の動きを目にし………

 

修也「(ミドレーユの動きにキレが戻り始めてきた………仲間達が戻ってきたからか………?)」

 

優の動きにキレが戻り始めてきた事を察知するのだった………

 

 

 

春香達が戻ってきた後、巫魔は息を吹き返し、三度発生した優vs修也の対決も、優がこれを制して見せた。果たして、巫魔はここから勢いを戻せるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
息を吹き返した巫魔に対し、修也が負けじとチームの指揮を上げる。それを見た優は、内に隠していた思いを吐露し………?
次回「前から思ってたんだ」


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第232話 前から思ってたんだ

前回までのあらすじ
春香達の復帰により息を吹き返した巫魔。それと同時に優のキレも戻り始めており………?


修也「よーし、まだまだ! 1点逆転されただけだ! まだ巻き返せる!」

 

修也はそう言ってチームの士気を保たせる。そして、ボールを芽衣に回す。

 

芽衣「ここ1本! 慎重に取るよ!!」

 

芽衣はそう言うと、このオフェンスにおいての身長な攻めを口にする。

 

優「………流石」

 

優は小さくそう呟くと、修也の前に立ち、彼をマークする。

 

優「なあ、修也………前から思ってたんだ」

 

その直後、優は修也に声をかける。

 

修也「ん? なんだ?」

 

修也は試合中に優から声をかけられた事を珍しく思い、首を傾げていた。

 

優「………昔から君の人望は凄いなって。正直嫉妬してたよ」

 

優はずっと心の中に秘めていた想いを吐露した。それを聞いた修也は、優の中でまだ中学のトラウマが残っている事を察する。

 

修也「………まだ引き摺っているのか? 中学の時を」

 

修也は優のマークをかわそうとしつつも、彼を重んじる言葉を口にする。

 

優「正直ね………僕はキャプテンに向いてないんじゃないか………なんて今でも考えるんだ」

 

優は自身のキャプテンとしての才覚に悩んでいた。修也は溜息を吐くと………

 

修也「………バカだな。中学ん時はアイツらがお前の才能についていけないゴミみたいな奴らだっただけだ」

 

優がキャプテンに相応しくない訳では無く、周りがついていけないだけだと考えていた。

 

修也「中学時代、お前をキャプテンに推薦したのは誰だと思ってんだよ。俺はお前のキャプテンシーは低くなんかねぇと考えてるよ。というか、巫魔でキャプテンやってるお前を見て強く感じるよ………お前がキャプテン向いていないって説明する方が無理だわ」

 

修也は優が完全にキャプテン向きである事を考えていた。

 

修也「お前ももうちょっと自信を持てよ、ミドレーユ。俺は、お前の才能をずっと尊敬してたんだぜ………!」

 

修也は彼自身が持っていた優への思いを口にする。それを聞いた優は驚く様子を見せていた。そして、その隙に飛んできたボールは修也がカットした。

 

春香「優さん!!」

 

春香の心配する声が響く。それを聞いた優は我に返り………?

 

優「はあああああっ!!」

 

力強い雄叫びと共に優は修也からボールをスティールした。ボールはコート外に転がった。

 

修也「(そうだ………お前はそれでいい………お前は絶対的な強さを見せてチームを引っ張れ………!! 巫魔の連中は………そんなお前にもついてこれるんだからな………!!)」

 

しかし、修也は優のプレイに惚れ惚れしていたのだった………

 

 

 

修也への想いを吐露した優。その逆で修也も優への想いを伝えた。想いを語り合う事で優は再びキレのある見せたのだった………

To Be Continued………




次回予告
迷いの無くなった優vs修也の対決。修也は{強靭なダンク(タフネスダンク)}を狙いに行くが、優はそれを止めに行き………!?
次回「負けるものか」


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第233話 負けるものか

前回までのあらすじ
修也の言葉で負けじと息を吹き返す友力。そんな中で優と修也はそれぞれ想いを吐露する。それにより、優は再びキレのあるプレイングを見せつけ………!?


審判「紫、スローイン!!」

 

アリサがコート外に立ちボールを芽衣にパスする。

 

芽衣「修也くん!」

 

芽衣はすぐさま修也にボールをパスする。

 

修也「迷いは晴れたな? ミドレーユ………!!」

 

修也は優に対しそう問いかける。優は静かながらも鋭い目を見せていた。そこに迷いは無い。それがわかっているからこそ、修也は地面を強く踏み締め………

 

修也「今のお前には………この技が相応しい!!」

 

修也はそう言うと、高く飛び上がり、ボールを両手で持つ。

 

光一「なっ!? {強靭なダンク(タフネスダンク)}だと!?」

 

これには巫魔のメンバーは驚いていた。しかし、冷静な様子の優は………

 

優「………! そこだあああ!!」

 

優はこの試合の中で最高潮の高さにまで飛んだ。しかもスピードも後から飛んだにも関わらず、修也を軽く追い越し………修也の持つボールに触れる。

 

修也「………! (やはり追いついてきたか………!!)」

 

修也は驚きつつも、優が追いついてきた事は想定内らしい。

 

アリサ「パワーならシューヤの方が上! 幾らユーが相手でも………!!」

 

アリサは単純なパワーなら修也の方が上と考えていた。しかし、優は修也のボールを押し返し始めた。

 

修也「なっ!?」

 

これは修也も想定外だった。

 

優「負けるものか!!」

 

優はボールを押し返し、叩き落とした。

 

美矢「キャプテンが{強靭なダンク(タフネスダンク)}を破った!!」

 

美矢は驚きの声を上げる。会場内で驚きの様子が見えながらも、優は冷静に零れ玉を拾う。

 

優「春香ぁ!!」

 

優はいつの間にか前線に上がっていた春香にボールを回す。

 

芽衣「っ!? いつの間に春香さんが前線に………!?」

 

完全に不意を突かれてしまった友力。アリサが春香を追いかけるが春香のシュートに対しディフェンスしようとする。しかし、既に4ファールである事から飛べなかった。

 

アリサ「くっ………! (ダメ………ここで退場する訳には………!!)」

 

アリサは諦めるように飛べなかった。春香は綺麗なスリーポイントシュートを放ち、綺麗にゴールへ沈めたのだった………

 

積牙「よし、これで4点差だ!!」

 

積牙はこの点を突き放す展開に喜んでいた。そして優の方へ戻ってきた春香。2人は手を挙げると、ハイタッチをかわした。

 

修也「(春香さんは信じていたんだな………ミドレーユが俺を止めると………!)」

 

修也はその中で、優と春香の強い信頼関係を感じていたのだった………

 

 

 

迷いの無くなった優は、とうとう修也の{強靭なダンク(タフネスダンク)}を攻略した。果たしてこの流れが試合の勝利に結びつくのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優vs修也が熱い勝負を見せる中、積牙も身軽にリベンジする事に。果たして、積牙に待つは退場か、それとも………?
次回「俺の運命は」


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第234話 俺の運命は

前回までのあらすじ
迷いの晴れた優は、修也との一騎討ちで彼の必殺{強靭なダンク(タフネスダンク)}を見事ブロック。春香との連携で一気に4点差まで逃げたのだった………


そして試合再開、再び芽衣がボールを運び………

 

芽衣「アリサちゃん!!」

 

芽衣が上手い形にアリサへボールをパスする。

 

アリサ「貰った!!」

 

アリサがシュートの為に飛び上がるが、春香もアリサにぶつからないよう飛び上がり、彼女の手からボールが放たれる前にブロックした。

 

アリサ「あっ………!?」

 

これにはアリサも驚いていた。すかさず零れ玉を優真が拾うと………

 

優真「速攻!!」

 

優真は速攻をかける。

 

修也「ディフェンスだ! 特にミドレーユと春香さんは要注意だ!!」

 

しかし修也も声をかける事によって容易にシュートされないよう動く。特に修也とアリサの2人はそれぞれ優、春香へのマークをする事でパスすら出来ないようにする。

 

優「(ぐっ!? 流石修也だ………でも………!)」

 

優は修也の指示を褒める様子を見せる。だが………

 

優「優真! 積牙へパスだ!!」

 

優は積牙へのマークが甘い事に気付き、積牙へボールをパスするよう指示。

 

優真「積牙くん!!」

 

優真はそれに応えるようにボールをパスする。

 

積牙「………!? お、おう!」

 

積牙はパスを受ける。だがその直後、身軽が立ち塞がり………

 

身軽「悪いけど、このまま退場してもらおうかな」

 

身軽はそう言うと、両手を広げて身構える。

 

積牙「(俺の運命は………ここで決まる。ここでダメなら役に立てないまま退場………)」

 

積牙はボールを地面につき始めると、右に動く。身軽も積牙の前に立つように動いた………

 

積牙「だけど俺は………こんな所で絶対終わりにするものか!!」

 

積牙がそう言い放った時、なんと積牙は切り返して左に動いた。

 

身軽「………!! (フェイント………!?)」

 

身軽はこの時になって、これが積牙のフェイントである事を悟った。

 

積牙「これが俺のチームに対する想いだ!! {リバースソニックジャンパー}!!」

 

積牙は普段の{ソニックジャンパー}での動きとは逆方向に動いた反対版{ソニックジャンパー}こと、新必殺技、{リバースソニックジャンパー}を発動。積牙は鮮やかなドライブで身軽を抜いた後、素早くシュートを放つ。積牙が放ったシュートは綺麗に決まり、ここで6点差に差を開いた。

 

身軽「ありゃりゃ………まさかここで俺を出し抜いてくるとはね………」

 

これには身軽も微かながら驚きを見せたのだった………

 

 

 

積牙はこの土壇場で身軽を出し抜いて見せた。これにより勝負の流れは完全に巫魔の方へ戻ってきた。果たして、このまま巫魔は勝利をモノに出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔vs友力の対決は遂に残り1分の終盤戦に突入。友力によるシュートで2点差という苦しい場面の中、両チームは激しいプレイングを見せ………!?
次回「ここに賭かっている」


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第235話 ここに賭かっている

前回までのあらすじ
再び激化する巫魔vs友力。その中で、土壇場ながら身軽を出し抜いた積牙。これにより、巫魔の流れは完全に押し戻ったのだった………


その後も巫魔と友力は一進一退の攻防を繰り広げた。しかも誰1人ファールを犯す事は無く、それでいてどちらも点を取り続けるというイレギュラーな展開に、両チームは驚きの連続だった。そして、気がつけば残り1分………

 

修也「うおおおっ!!」

 

そしてこの場面で修也渾身のダンクが炸裂し、108vs106の2点差に。

 

修也「よし、試合はあと1分! ここでまた点を取って逆転だ!!」

 

修也はそう言って残り1分でも攻めの姿勢を崩そうとしない。

 

優「まだだ! 全てはここに賭かっている!!」

 

しかし、優も負けじと声を上げる。友力にとってチャンスなように、巫魔にとってもこの場面は絶好のチャンスである。

 

優「優真!」

 

優が優真にボールをパスし、試合再開………

 

芽衣「今だよ、修也くん、アリサちゃん!! 優真ちゃんについて!!」

 

しかし、この場面で芽衣は修也、アリサと共に優真へトリプルチームのプレスをしかけた。

 

優真「………!?」

 

これには優真も驚きのあまり足が止まってしまう。

 

美矢「なっ!? この場面でトリプルチームだと!?」

 

美矢も驚きを隠せず、ベンチから立ち上がる。そして………

 

美咲「もうすぐ8秒ルールがコールされちゃうよ………!!」

 

ボールを持った優真がフロントコートに行けてない為、巫魔に8秒ルールのバイオレーションが迫る。

 

優「優真! 高く上げろ!! どこに着弾する事になってもいい!!」

 

そこに優が指示を飛ばした。この時点で6秒が経とうとしていた事から、優真は一か八かで素早くも、高くボールを打ち上げた。

 

浩太「高い………!! でもこれは………!!」

 

誰もがボールの高さに驚き、ボールは無事フロントコートのインサイドに入りこそしたが………

 

積牙「(ゴールに入る前に落ちてしまう………!!)」

 

このままではゴールには入らない。積牙は取りに行こうとするも、そこに身軽がやってきて、彼の前に立つと共にその場でスクリーンアウトをとる。

 

積牙「なあっ!? (こんな時に身軽さんが………!?)」

 

積牙は絶望的局面に追い込まれた。だがそこに、白のユニフォームを着た人物が飛び上がる。その人物は4番のユニフォームを着た男………

 

修也「っ………!? ミドレーユ………!!」

 

そう、優だった。なんと落下予測地点どころか、落下軌道を読んで大きく飛び上がったのだ。優は空中でボールをキャッチし、そのままダンクで押し込んだ。

 

浩太「ああっ!?」

 

流れるように完璧なプレイングを前に、浩太は1歩も動けなかったのだった………

 

 

 

巫魔vs友力もいよいよフィナーレが迫っていた。得点は110vs106。残り時間は49秒となったのだった………

To Be Continued………




次回予告
点を取られた友力だが、最早失敗の事など考えない反撃の姿勢を見せる。慎重ではありつつも相手を読むPG芽衣の頭は、この土壇場で強く冴え渡り………!?
次回「こういう時こそクールだよ」


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第236話 こういう時こそクールだよ

前回までのあらすじ
試合時間はとうとう1分。2点差の最中で両チームの激しいプレイングが見えたが、この場面で巫魔が点を取り、110vs106の4点差に広がったのだった………


修也「まだまだ! 反撃行くぞ!」

 

修也の号令で反撃に転ずる友力。点を取られた事など気にはしていないようだ。

 

身軽「芽衣!」

 

身軽から芽衣へのパスで試合再開。芽衣は素早い動きでフロントコートへ上がっていく。

 

優「ディフェンス! ここはマークを強めて!」

 

優も指示を飛ばし、芽衣に好き勝手行動されないようマークを強める。そして、各選手がマンツーマンで隙を作らないようにした上で優真を芽衣につける。

 

優真「ここで止めます!!」

 

優真はこの試合で1番とも言える気迫を見せる。

 

芽衣「………ふう」

 

それとは対称的に芽衣は落ち着いていた。余裕な訳では無いが、自身の空気が感情的にならないよう冷めた雰囲気を見せる。

 

優「(芽衣の空気が恐ろしいくらいに冷めている………)」

 

優もそれに気づいた。そして………

 

芽衣「この試合における私から優真ちゃんに対する最後のアドバイス………こういう時こそクールだよ………!!」

 

芽衣はそう言うと、優真の中にあったほんの僅かな隙を突き、鮮やかなドライブで優真をかわした。

 

優真「っ………!?」

 

これには優真も驚きを隠せずにいた。芽衣はそのままスリーポイントシュート。芽衣の放ったシュートは美しい弧を描いてゴールに沈んだ。

 

浩太「よし! これであと1点差だ!!」

 

スコアは110vs109にまで縮まり、残り30秒、再び先の分からない展開に。

 

戦記「あの8番、この土壇場で魅せるな」

 

芽衣の魅せるプレイに、戦記も思わず褒めの言葉が出てくる。

 

湯津「やっぱ、友力もかなり強いな………」

 

それと同時に湯津も友力の強さを認める様子を見せた。

 

優「まだまだ! 残り30秒! ここを攻めきれ!!」

 

しかし、優はこの失敗を深く引きずる事はせず、反撃に転ずる姿勢を見せる。

 

アリサ「(まあ、ユーがこんな事でめげる訳無いよね………!!)」

 

優の諦めない姿勢に、アリサは安心感を覚えたかのように笑いを零す。

 

優「優真!!」

 

優は優真にボールをパス。優真は素早い動きで上がって行く。今回の友力はマンツーマンの姿勢を見せ、先程みたいにトリプルチームなどは仕掛けてこなかったが………

 

修也「よーし! マークかけろ!!」

 

修也達は強くマークをかける。これにより、優達4人は容易にパスを受けられなくなった。

 

優「(………この場面、相手さんも必死に来たな………! でも、ここは絶対取るんだ………!!)」

 

しかし、巫魔はこのオフェンスチャンスを捨てる訳には行かなかったのだった………

 

 

 

残り時間は25秒、最早猶予も残されていない巫魔は相も変わらず苦しい展開が続いていた。果たして、このオフェンスをモノに出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
勝利を確実にする為にもこの場面は絶対落とせない巫魔。優は咄嗟の場面で奇策に打って出る………!
次回「やってみるしかないか」


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第237話 やってみるしかないか

前回までのあらすじ
友力の反撃。芽衣が土壇場で冷静なプレイングを見せつけ、110vs109の1点差に。しかし、優は諦める様子を見せず………!?


試合時間は残り25秒、猶予は最早残されてはいない。優真が再び中心となって攻めるが、彼女の前に芽衣が立ちはだかる。

 

芽衣「ここで絶対逆転するよ!!」

 

芽衣はそう言って優真の隙を伺う。

 

優真「くうっ………!!」

 

優真は苦しそうな声を漏らすが………

 

春香「優真ちゃん!!」

 

ここで春香が本来のポジションを捨ててまで走ってきた。

 

芽衣「(スイッチ………!?)」

 

芽衣は春香にボールが渡るのではと考えた。しかし、優真はそれを利用し、芽衣に生まれた隙を突き、積牙にボールをパスする。

 

芽衣「………!! (違う! 10番くんへのパス………!!)」

 

積牙へのパスに対し、完全に隙を突かれる。

 

身軽「おっと、撃たせないよ!」

 

しかし、身軽がディフェンスに入ってきた。元々積牙を抑え込める強さを持つ身軽がディフェンスに来た為、積牙はやむなく光一へパスする事に。

 

光一「うおおっ!!」

 

光一はシュートを狙う。しかし………

 

浩太「止める!! うおおおっ!!」

 

浩太が光一の持っていたボールを叩き落とした。

 

光一「しまった………!!」

 

光一は驚きを隠せずにいた。落とされたボールを身軽が拾おうとしたが………

 

優「させるか!」

 

優が土壇場でボールを拾い上げ、身軽をかわした………

 

修也「ミドレーユーー!!」

 

しかし、ここで修也がディフェンスに来た。試合時間は既に10秒を切っており、ここでボールを取られれば友力の逆転打に繋がってしまう。

 

優「(この場面でボールを取られたら終わりだ………やってみるしかないか………!!)」

 

優は即席の作戦が頭に浮かんだのか、試す事に決めた。

 

優「春香!」

 

優はスリーポイントラインの外にいる春香に声をかける。

 

修也「(春香さんへのコール………いや、またブラフな可能性がある………!!)」

 

修也はそのブラフの可能性を見る。実際優はボールをパスする事は無かった。

 

修也「(………よし、予想通りブラフだ………!!)」

 

修也はブラフを読んだ。しかし………

 

優「パスがブラフだと見抜かれる………そんなの想定内だよ………!」

 

優にとってはそんな事など想定内。優はここで強気の攻めに出る。

 

修也「なあっ!? ダンクだと!?」

 

なんとここで優は強気の{究極のダンク(アルティメットダンク)}に来た。春香へのパスブラフを読んだ際に生じた修也の一瞬の隙を突いた1回限りの作戦である。そして、修也は今現在4ファール。ここでファールしてしまえば退場どころか逆転出来なくなる。

 

修也「(くそ、飛べねぇ………!!)」

 

修也は黙ってダンクを許すしか無かった。優はダンクを叩き込んだ事で、スコアは112vs109の3点差に離されたのだった………

 

 

 

残り時間5秒。巫魔は3点差のリードを掴んでみせた。果たして、このまま逃げ切る事が出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
残り5秒の中、友力は逆転打に走り出す。しかし、巫魔も全身全霊でディフェンスし………!?
次回「最後の勝負だ」


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第238話 最後の勝負だ

前回までのあらすじ
何としても点を取りたい巫魔。パスを繋げるも、上手い具合にシュートが打てない。そこで優は修也の思考と彼の状況を利用した1発限りの作戦でなんとか点を奪うのだった………


修也「まだまだ! 残り5秒! 最後の勝負だ!!」

 

残り5秒しかない中でも友力は諦めない。そう、まだ3点差である事から友力には延長戦を選ぶ選択肢も残っている。

 

優「ディフェンス! アリサと芽衣にマーク!! 絶対スリーを撃たせるな!!」

 

しかし、優はすぐにそれを悟り、友力でスリーが撃てるアリサと芽衣にマークをするよう指示。最早2点取られても問題無いこの状況で、積牙と光一も加わって、春香、優真との連携でアリサと芽衣にそれぞれダブルチームに着いた。

 

修也「ふっ、まだ甘いぜ!!」

 

しかし、修也は気にせず、身軽にボールをパスした。身軽は素早いドリブルでフロントコートに入り、残り2秒でスリーポイントラインの外側から飛んだ。

 

積牙「なっ、スリー!?」

 

ここまでロクにシュートへ行かなかった身軽がここでスリーを狙っている事に驚きを隠せなかった。

 

奄美「(相手が身軽をノーマークにしてくれて助かった………そうだ、普段シュートを撃たない身軽だが………奴にも5割程の成功率を持つスリーがある。賭けではあるが、今の状況では充分………!!)………でかした!!」

 

身軽をよく知る友力監督の奄美は思わず喜びの声を漏らした。そう、身軽にはアリサと芽衣には劣るものの、スリーを撃てる腕があった。

 

湯津「おおっ!? 延長戦にもつれ込むのか!?」

 

観客席で見ていた湯津は大きく驚いていた。しかし………

 

優「読んでいた………こうなる可能性も!!」

 

なんと大急ぎで戻ってきた優が身軽の後ろから先に飛んでおり、身軽がシュートを撃つ前にファールスレスレながら初動でボールを叩き落とした。

 

身軽「っ!?」

 

この時、身軽はこの試合初めての動揺を見せた。そして、修也も驚きの声をかすかに漏らしたが、声は上がらなかった。ボールが地面で無常にバウンドし………ブザービーターが鳴り響いた。

 

優「はあっ、はあっ………」

 

試合が終わった直後、優は疲労が限界に達したのか、勝利の余韻に浸る事よりも、苦しそうに呼吸を続けていたが………

 

春香「優さん!!」

 

嬉しそうな笑顔で真っ先に春香が優へ抱きついた。

 

優「うおっ!?」

 

優はそのまま押し倒されてしまう。しかし………

 

優「………勝ったのか」

 

優はボソッとそう呟く。そして、積牙達が喜ぶ姿、巫魔ベンチの喜びの声から優は勝利を実感し………

 

優「………やったな、春香」

 

そう言って、掌を広げる。

 

春香「………はい!!」

 

春香は優の掌を叩き、ハイタッチを交わすのだった………

 

 

 

巫魔vs友力の極限の死闘。長きに渡ったこの対決は、112vs109でとうとう幕を閉じたのだった………

To Be Continued………




次回予告
勝負に敗れた友力。しかし、修也達は優達の勝利を素直に認め、褒めの言葉を口にするのだった………
次回「お前達の勝ちだ」


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第239話 お前達の勝ちだ

前回までのあらすじ
残り5秒の中、友力はスリーによる延長戦を狙う。ここでも身軽に翻弄されるが、優が間一髪でこれを読んでブロック。試合は112vs109の3点差でなんとか巫魔の勝利となったのだった………


勝利を喜ぶ巫魔。それに対して、友力ベンチからは試合に敗れて悔しがる声が聞こえ、コートに出ている修也達は言葉を失っていた。

 

修也「………負けたのか、俺達」

 

少しして修也が口を開いた。そこから芽衣が負けた事に涙を流し、アリサも涙こそ見せなかったが悔しそうな様子を見せた。

 

修也「でも、悔いは無い。ミドレーユとここまで極限の試合を行えたんだ。俺にとっては最高だ」

 

修也も涙を見せはしたものの、同時に敗北を受けいれ、満足気な表情を見せた。

 

修也「アリサ、芽衣、ミドレーユんとこ行くぞ」

 

修也は2人の肩を叩き、春香の肩を借りる形で立ち上がった優へ近付くと………

 

修也「ミドレーユ………お前達の勝ちだ」

 

自身の敗北宣言をする。そして、修也は優の空いている肩に腕を回し………

 

修也「ここから先も負けんなよ!!」

 

笑顔で優にここから先の期待を口にした。

 

優「修也………おう!!」

 

優はそれに応えるように笑顔で返事をする。するとその直後、アリサと芽衣の2人も駆け寄ってきて………

 

修也「よーし、負けはしたが、今日はミトレーユを巻き込んだ焼肉だー! あっ、春香さんもどうだ?」

 

優を連れた勝負後の宴会について話し始めた。その様子を見ていた身軽は………

 

身軽「(………友力はこれから明るくなりそうだな。それに、修也達2年組が主力として残るんだ。来年にも期待が出来そうで楽しみだ………!)」

 

今後の友力について楽しそうな期待を寄せるのだった………

 

 

 

その後、両チームの選手が整列。

 

審判「112vs109で、巫魔高校の勝ち!」

 

優達「ありがとうございました!!」

 

挨拶をする事で、巫魔vs友力の対決は真の意味で終わりを告げた。激動の勝負を見届けた観客席の戦記は………

 

戦記「やはり巫魔が上がってきたか。これは、今後も楽しみだな」

 

巫魔の今後の対決に期待を見せながら席を立った。

 

湯津「じゃあ、俺達は宿に戻りますか〜」

 

湯津もそう言って席を立ち、戦記と共にその場を後にした。そして大牧は………

 

大牧「成程な、珍しく良太が興味を示すわけだ………」

 

巫魔の強さを幾らか知ると、席を立ち………

 

大牧「もし決勝まで昇ってこられたら楽しみだな。特にあの4番、白宮優は………!」

 

巫魔に対する期待、そして優への好奇心を覗かせて観客席を後にするのだった………

 

 

 

長きに渡って続いた巫魔vs友力対決はようやく終わりを告げ、2回戦へコマを進めたのは巫魔となった。これにより、巫魔は更なる全国の猛者と戦う事となるのだった………

To Be Continued………




次回予告
第1回戦が終わった後、優達は修也達に連れられ夜ご飯を共にする事になる。修也はその中で、優の迷いが完全に晴れたことを口にし………?
次回「昔のお前に戻ったな」


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第240話 昔のお前に戻ったな

前回までのあらすじ
激闘を制した巫魔。修也達は敗北に涙しつつも、優達の勝利を素直に認め、彼等を賞賛するのだった………


それから数時間。激しい対決が続いた1回戦がようやく終わった。守城や魔帝は勿論、巫魔と練習試合をした奥泉高校も1回戦を突破したのだった………

 

 

 

修也「よーし! 巫魔の全国大会1回戦突破を祝して………乾杯!!」

 

そして都内の焼肉屋にて優と春香は修也達3人組に連れられて祝勝会に参加させられた。

 

優「………なんで君が音頭とってんだ」

 

優は修也が乾杯の音頭を取った事に首を傾げる。

 

修也「細かい事はいいんだよ。それに、こうやって飯に来たのは2年振りくらいだしな」

 

修也は細かい事を気にしない様子でそう突っぱねると………

 

芽衣「そうだね、ミド………優くんと食事するのは久しぶりだもんね」

 

芽衣が修也の意見に賛同するように呟く。その際にかつての名を呼びかけようとするが、やっぱり優呼びに戻した。

 

優「………別に無理して優って呼ばなくていいよ。修也なんか最早気にしてないっぽいしな」

 

だが、優は無理して優と呼ばなくても良いとフォローをする。それを聞いた芽衣は………

 

芽衣「………じゃあ、ミドレーユくん」

 

かつてのようにミドレーユ呼びに戻した。

 

優「ああ」

 

優は優しげな表情で返事する。

 

修也「………なあミドレーユ。今一瞬、昔のお前に戻ったな」

 

そんな彼に、修也は思わずそう呟いた。

 

優「………そうかな?」

 

優は首を傾げてそう問いかける。

 

修也「ああ。俺の知ってるミドレーユそのものだ」

 

修也は自信を持ってそう言った。

 

優「そっか。君達にはそう見えるか………それはよかった」

 

優はピンと来ないものの、納得はしているのか笑顔を見せる。そして、そんな会話の中で春香は………

 

春香「昔の優さんについてはあまり理解してはいませんけれど………でも、迷いが完全に晴れたのはよく分かります」

 

昔の優がどのようなものだったかは分からないものの、今の優に迷いがない事だけははっきりと理解していた。

 

修也「あと俺から1つ言っとくぜ。お前は昔っから不安でどこか内気ではあったけど………もっと自分を出せよ? 特に巫魔の連中はありのままのお前を嫌ったりしないはずだからな」

 

そして修也は、そんな彼にもっと自分を出すよう追加でアドバイスする。

 

優「自分を出す………ねぇ」

 

優は首を傾げる様子を見せる。修也は優に自身のアドバイスが伝わらなかった事に少し慌てたが………

 

修也「………丁度いい、今ここで練習しよう」

 

修也は何としてもそれを伝えたいのか、練習を促すのだった………

 

 

 

修也達との食事に誘われた優。その中で修也はアドバイスを理解させようと優に練習をする事を提案。果たして、その練習とは………!?

To Be Continued………




次回予告
修也は優が自分を出せるよう、料理の注文をするよう言う。しかし、修也のアドバイスを理解する以前に話についていけず………!?
次回「さっぱり分からん」


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第241話 さっぱり分からん

前回までのあらすじ
修也達と食事をする優。かつての優に戻っている事を喜びあうものの、途中で優に自分を出させる為の練習をするよう言われ………!?


修也「よし、じゃあミドレーユ、なんか頼め」

 

修也は優にメニューを渡す。

 

優「えっ………? じゃ、じゃあ牛ロース………」

 

優は無難なロースを提案するが………

 

修也「馬鹿野郎ー!!」

 

修也からメニューを取り上げられた。

 

優「えっ!?」

 

何が何やら分からず、優は困惑した。

 

修也「お前、定番に逃げたな。定番に逃げる奴は自分を出せやしねえ!!」

 

修也は優が逃げたと指摘を行う。しかし、優は全く意味が分からないのか、目を丸くして唖然としていた。

 

優「さ、さっぱり分からん………」

 

何とか捻り出して出せた言葉がそれだった。

 

修也「いいかミドレーユ! 人に配慮するのも大事だが、自分を出せないと流されるばかりの人間になるぞ!」

 

修也は優に対しそう力説をする。まあ、優は唖然として話が頭に入らない為にロクに伝わっていなかったが。

 

春香「あの………修也さん、完全に伝え方を間違えてないですか………?」

 

これには春香も伝え方が悪い事を指摘する………

 

修也「まあまあ、春香さんは黙って見てなって」

 

だが、修也にその指摘をガン無視されてしまい、修也は変わらず優にどこか外れた練習を続行させた。

 

アリサ「無駄無駄。こういう時のシューヤは頭のネジがどっか飛んでいってるんだよ」

 

アリサは今の修也について、頭のネジが外れていると比喩する。

 

芽衣「修也くん、バスケセンスとかバスケIQは高いんですけどその………頭の回転が悪くて………」

 

芽衣も修也の頭の悪さを言いづらそうに説明する。

 

春香「………修也さん、素はあんな感じだったのね………」

 

これまでバスケ選手としての修也は何となく理解していた春香ですら、修也の頭の悪さが良く分かる程には呆然としていた。

 

芽衣「まあでも、ミドレーユくんが自分を出せるようにする事自体は良い事だと思いますけどね。高校からのミドレーユくんはサポートに回っていた傾向から、最近は遠慮がちになっていたようにも見えましたし………」

 

しかし、芽衣は優が自分を出せるようになる事自体は良い案だと考えてもいた。

 

アリサ「シューヤからすればこのままユーに全国を勝ち進んで欲しいから故のアドバイスなんだろうね………やり方は絶対おかしいけど」

 

アリサは修也の内心を理解してはいた。しかし、やり方については相変わらず批判の姿勢を崩そうとはしなかった。

 

春香「ふふっ………お優しいのですね、修也さん」

 

アリサ、芽衣の話を聞いて思わず笑みを零してしまう春香。その理由には、修也の持つ優しさを感じ取った事が理由としてあったからだった………

 

 

 

修也の理解不能な練習に振り回される優。しかし、その中には確かに優への期待や優しさ。そして、優の更なる成長への意味があった事は間違いないのであった………

To Be Continued………




次回予告
翌日、全国大会2回戦の日がやってきた。巫魔の対戦相手はアイチの強豪鯱高校であり………!?
次回「2回戦行くぞ」


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第十一章 全国を進め! 2回戦〜準決勝編
第242話 2回戦行くぞ


前回までのあらすじ
修也のズレた特訓に着いていけない様子を見せる優。しかし、修也の優しさというものははっきりと現れており………!?


それから時間が経ち、翌日。全国大会は2回戦が始まろうとしていた。修也達3人組は観客として会場に来ていた。

 

修也「今日から俺達のやる事はミドレーユ達の応援だ。俺達を倒したんだ。巫魔にはめちゃくちゃ期待しているぜ………!」

 

修也が持っていた期待はとてつもなく大きく、優達が大会を制してくれることを信じていた。そして少しすると、巫魔高校とその対戦チームがコートへ出てきた。

 

芽衣「対戦相手はアイチの鯱高校だね」

 

その相手はアイチ代表の鯱高校たった。

 

アリサ「ねぇ芽衣。私鯱高校なんて知らないけど………?」

 

しかし、アリサは全然知らない様子を見せた。

 

芽衣「去年は出てなかったもんね。というか、去年まではアイチ予選で条北良くてベスト4止まりくらいのチームだったのは知ってるんだけど………」

 

芽衣曰く、昨年には全国大会に出ていなかったチームらしく、その詳細はよく分からないらしい。

 

修也「まあでも、ミドレーユ達なら何とかなるだろうぜ」

 

詳細がよく分からないチームではあるものの、修也達は特に気にする素振りを見せなかった………

 

 

 

一方、巫魔のベンチでは………

 

優「よし、次の相手はアイチの鯱高校って所だ。個人的にはビッグマンが何人かいるのが気になるが………インサイド中心に上手く戦うぞ!」

 

優がチームを盛り立てる事により、未知の強敵相手にも物怖じしないよう体制を立てる。

 

優「よーし、2回戦行くぞ!!」

 

優は迫る2回戦に向けて、声を上げる。

 

春香達「おおー!!」

 

春香達も同調するように士気を上げる。

 

ゆうか「あ、言い忘れていたけど今回優くんベンチスタートよ?」

 

しかし、監督のゆうかは優が今回ベンチスタートである事を今になって告げた。

 

優「は、はい!?」

 

これには優も驚きを隠せなかった。

 

春香「なにか作戦でもあるのですか?」

 

春香はゆうかに作戦を問いかける。

 

ゆうか「そうだね………ここから先、優くんのみが強くても優勝は困難になる事間違いなしだわ。だから、今回の試合は基本的に優くん抜きで頑張ってもらうわ」

 

彼女は他選手のレベルを上げる必要がある事を考えていた。

 

光一「おおっし! なら尚更ここで気合い入れてかなきゃだな!!」

 

光一はそれに同調する様子を見せる。優は今回出場を禁止されてしまったので落ち込む様子を見せていたが………

 

優「………まあ頑張ってくれ」

 

この場では納得せざるを得ない様子を見せたのだった………

 

 

 

2回戦、優抜きで戦う事になった巫魔。果たして、アイチ代表の鯱高校を相手に戦えるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優抜きという珍しい状況でスタートする巫魔。キャプテン抜きという事態に、春香が仕切り………?
次回「1本行きましょう」


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第243話 1本行きましょう

前回までのあらすじ
2回戦、巫魔はアイチ代表鯱高校と戦う事に。しかもその中で優抜きで戦う事となり………!?


今回のスタメンは以下の通りである………

 

巫魔高校(黒)

PG 18番 影美優真

SG 5番 白宮春香

SF 10番 江野積牙

PF 12番 天野美矢

C 17番 相田光一

 

鯱高校(白)

PG 5番 平野 雀

SG 7番 郷原遊塚

SF 10番 妻引豪太

PF 15番 社寺 沼

C 4番 大原将太

 

修也「ありゃ? ミドレーユは出番無しか?」

 

修也は優の出番抜きに驚いていた。

 

芽衣「それに優真ちゃんがPGを務めるということは………美矢さんがミドレーユくんのポジションに着くんだね」

 

加えて優真がPGに入った為に、美矢はPFに入った。

 

修也「しっかし………美矢姉が入るとはいえ、ミドレーユ抜きで何とか出来るのか………?」

 

だが、友力戦で圧倒的な力を見せつけた優を抜いたメンバーで勝てるのか不安な様子を見せたのだった………

 

 

 

そしてジャンプボール。光一と鯱のキャプテンでありCの大原が立ちはだかる。

 

光一「(………また強そうなCが相手か)」

 

光一はまたしても強力そうなCの存在に微かながら不安を見せる。

 

優「光一! 気合い入れて行けよー!!」

 

しかし、優が激励を飛ばすと………

 

光一「………おおっし! やるぜ!!」

 

気合を入れて迷いを吹き飛ばした。相変わらずチョロい男である。そして、審判がホールを高く打ち上げ………

 

光一「うおおおっ!!」

 

すかさず光一がボールに触れ、ボールは春香の方へ落ちる。

 

春香「ナイス、光一くん!」

 

春香はそう言って光一を褒める。そして………

 

春香「まずは1本………1本行きましょう!!」

 

キャプテン優がベンチの為、春香は自ら積極的に指揮を執る事に。

 

アリサ「春香が指揮を………!?」

 

アリサは驚く様子を見せる。

 

芽衣「まあそうだろうね。今はキャプテンのミドレーユくんがベンチなんだから、自ずと春香さんが指揮になるよ」

 

一方、芽衣は友力で司令塔を務めている事から、春香が中心となる戦術に納得する様子を見せていた。

 

春香「(優さんがいない今、副キャプテンの私が中心にならないと………!!)」

 

春香からすれば、優がいない今は自分しかチームをまとめられないと考えていた為の行動だった。

 

伊吹「今回は春香中心なんだな………でも大丈夫なのか?」

 

伊吹は春香中心の戦術に対し、不安そうな様子を見せる。

 

優「………頑張ってもらうしかないかな」

 

そんな伊吹の不安に対し、優は一言だけそう呟いたのだった………

 

 

 

2回戦鯱高校との対決。優抜きの対決という苦しい状況の中、それぞれがそれに対する動きを見せる。果たして、優抜きの巫魔はどこまで戦えるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
友力相手に翻弄され、開始5分では圧倒される展開に。その中で春香が特に焦っている事に気づいた優は………?
次回「どうしたんだろう」


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第244話 どうしたんだろう

前回までのあらすじ
優抜きで戦う事になった2回戦の鯱戦。その中で春香が中心になろうとする様子を見せるのだが………?


そうして始まった巫魔vs鯱だが、優抜きであるという点が影響しているのか、開始5分段階では意外にも8vs14と圧倒されていた。

 

あずさ「なんというか………意外だね。優くんが抜けたとはいえ、あの5人もかなり凄いはずなのに………」

 

あずさは巫魔の苦戦に驚いていた。

 

優「なんというか………バラバラだな」

 

その中で優は、現在の巫魔がバラバラである事に気付いた。

 

のぞみ「成程………確かにチームとして纏まっていない。というか………司令塔が上手く機能していないのが正しいかしらね」

 

その原因を詳しく呟く事を口にする。

 

優「………そうなると、春香に原因があるかな。さっきからなんか焦ってるみたいだ。どうしたんだろう………?」

 

優は首を傾げる様子を見せる。そして、再び鯱の大原が豪快なダンクを炸裂させる。

 

優「ありゃりゃ、また決められるとはね………」

 

優はシュートを決められた事について、小さく頭を抱える。

 

明日香「どうするのよ。これじゃこっちが舐めプしているって思われるだけよ?」

 

明日香はこの苦戦と優のベンチスタートから、巫魔が波に乗れないばかりか、このままでは巫魔が舐めプしているだけという状態になりかけていた。

 

優「………1度春香に落ち着きを与えるべきかね」

 

優はそう呟くと………

 

優「監督、1度春香を下げて貰えませんか? 彼女に話す事があるんです」

 

ゆうかに春香の交代を要求する。

 

ゆうか「えっ? ………いいけど………数分だけね」

 

ゆうかはそう考えると審判団の方へ行き………

 

審判「交代です!」

 

ここで巫魔が交代をする事を会場に知らしめる。交代で入るのはあかりであり………

 

あかり「春香ちゃん!!」

 

春香との交代となった。

 

修也「ありゃ? 春香さんまで下げるのかよ?」

 

観客席から見ていた修也は驚きを隠せなかった。そして、春香は困惑しながらベンチへ戻ってくるが、優はすぐに春香を自身の方へ引き寄せた。

 

春香「ふえっ!? ど、どうなされたのですか………!?」

 

春香は頬を赤く染め、驚きを隠せない様子を見せるが………

 

優「………伝える事があってベンチに下げさせてもらったよ。いいか? 時間がねーからさっさと伝えるぜ」

 

優はそう呟くと、春香の耳元である言葉を口にした。少しして春香は驚きを隠せない様子を見せはしたものの………

 

優「………頼んだぜ」

 

優は優しい声でそう呟いたのだった………

 

 

 

思ったよりも押される展開を見せる巫魔。そんな中、まとめ役として動けていない春香にとある言葉を優は投げかけた。果たして、その言葉とは………!?

To Be Continued………




次回予告
少ししてコートに戻ってきた春香。すると次の瞬間、春香は副キャプテンとしての腕を見せる。優に対して何を言ったのか問いかける仲間達だが………?
次回「何を言ったんだ」


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第245話 何を言ったんだ

前回までのあらすじ
開始5分。鯱相手に押される巫魔。特に春香が機能していない事に目をつけた為に、優は春香にとある言葉を伝え………?


春香は優の言葉を受けた後、軽い水分補給を行う。そして、ボールがコートに出たタイミングで………

 

審判「交代です!」

 

再び巫魔は春香をコートに出す事に。

 

春香「あかりさん、交代です!!」

 

交代相手は当然あかり。実に1分程度の出場から一転して交代に。

 

優「よーし、頑張れよ春香〜!!」

 

優は春香を励ます言葉を投げかける。そして春香は悩みを晴らした様子でコートに出た。試合は妻引のスローインによる再開だが………

 

春香「はあっ!」

 

なんと春香が上手い形でスティールした。

 

平野「な、何っ!?」

 

春香のファインプレーに驚く鯱の選手達。その直後、春香は優真にボールをパスし………

 

春香「優真ちゃん、攻めるわよ!!」

 

ここで攻めに転ずる事を伝える。

 

優真「はい!」

 

優真はそれに頷き、ドリブルで上がっていく。

 

伊吹「おおっ、春香がいきなり大活躍だ!!」

 

伊吹は喜ぶ様子を見せる。そして、一気に春香の調子が高まった事について伊吹は………

 

伊吹「なあ優、お前春香に何を言ったんだ?」

 

春香に何を言ったのかを優に問いかける。

 

優「えっ? この勝負に勝ったら今日の夜イイコトしてあげるって言っただけだよ?」

 

しかし、その内容はとてつもなくしょうもないものだった。

 

あずさ「ええっ!? そんな事を言ったの!?」

 

これにはあずさも頬を紅く染めながらそう問いかける。

 

優「そもそも春香の司令塔能力やリーダーシップは前から完成していだんだ。春香に必要だったのは、僕抜きでもやれるメンタルだったんだよ。だからご褒美をチラつかせたってわけ」

 

優が何故そんなふざけた事を口にしたのか。それはシンプルに春香が機能していなかったのは、優がいないため、彼女が強いプレッシャーを感じていたのが理由だった為である。

 

あかり「でも………優くんがベンチで春香ちゃんがコートにいるパターンは既に何回だって経験してるはずだけど………?」

 

しかし、そんなパターンは過去に何度もあったはずだ………あかりはその点を指摘。

 

優「そりゃあな。でも今回は訳が違う。基本は僕がスタミナ回復の為に下がっているだけだからな。だけど今回は僕をメインに出さないから、僕に期待した戦いってのはまず出来ない。これが格下か同格ならまだしも、相手は全国に来てるんだ。まず弱いわけない。そうなりゃ春香だってプレッシャーを追うよ」

 

優はこれについて、過去の状況とは訳が違うと説明。つまり、春香は過去に無い状態にメンタルをやられていたというのが真実である。

 

優「さて、こっから反撃してくれるといいんだけどね………!!」

 

真実を語った後、優は春香の復活から、巫魔の善戦を期待するのだった………

 

 

 

巫魔vs鯱の対決。誰もが予想していなかった優の言葉で春香の調子が戻る事となり、同時にここから巫魔の反撃が始まろうとしていたのだった………

To Be Continued………




次回予告
春香のメンタルが安定し、反撃に転じる巫魔。その中で先程までの苦戦が嘘のようなチームワークを見せつけ………!?
次回「読んでいました」


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第246話 読んでいました

前回までのあらすじ
優の言葉で立ち直ると共に活躍を見せる春香。優は春香がメンタルをやられていた為の苦戦であった事を見抜いており………!?


視点はコートに戻り、巫魔側の攻撃。優真がドリブルで上がって行く中、鯱の選手達がディフェンスとして立ちはだかる。

 

春香「優真ちゃん! ここ、冷静にね!」

 

春香は司令塔としても、SGとしても役割をこなし始める。

 

大原「(巫魔の流れが変わった………あの5番がキーマンとして機能し始めたからか………!!)」

 

鯱のキャプテン大原は、春香が機能し始めた事を察する。しかし、鯱のPG平野は優真の持つボールをスティールしようとする。

 

優真「(来た………!)春香先輩!!」

 

だが、ここで春香へボールをパス。春香はボールを受ける。

 

郷原「(5番へのパス………! 確かコイツは………間違ってもスリー撃たせちゃ駄目な奴だ………!!)」

 

郷原は春香にスリーを撃たせてはならないという情報だけが先行し、反射的に飛んでしまう。

 

春香「………読んでいました」

 

すると春香は沈みこそしたが、郷原が飛んでいる場面では飛ばずに、郷原が落下し始めたタイミングで春香は飛んだ。

 

郷原「(し、しまった………!!)」

 

郷原は自身のミスに動揺していた。春香は冷静にスリーを放ち、3点を詰めた。

 

美矢「よし、ナイスだ春香!!」

 

美矢は春香の元に駆け寄り、春香とハイタッチを交わす。

 

優「ふっ、やっと動いてくれたね………遅いよ」

 

優は口が悪いものの、嬉しそうな様子を隠しきれていなかった。

 

春香「皆、ディフェンスよ! ここを守って点を詰めていくわ!!」

 

春香は美矢とハイタッチをした後、ディフェンスを指示し、ここで点差を詰めて逆転を狙いに行く事を選択する。

 

優「おっと、ロクに指示してないのにディフェンスを始めたね。春香のリーダーシップも中々だな」

 

Uは春香のリーダーシップへ強い関心を向けていた。

 

大原「天才的なスリーを持つ白宮春香………まさか指揮系統も天才なのか………!?」

 

大原は春香の強さに驚きを隠せない。それを聞いた春香は自分が天才と囃し立てられるのを耳にする。その直後、春香は大原が真横を通り過ぎるタイミングにて………

 

春香「………天才? そんな事ありませんよ。私は真の天才の背中を追いかける事しか出来ませんから………」

 

自身が天才では無いと口にする。

 

大原「なんだと………?」

 

この言葉で大原は春香が自身の才を謙遜していると考えた。しかし、春香の頭の中ではかつての記憶が蘇ってきていたのだった………

 

 

 

春香の活躍は、最早天才であると思わせるものだった。だが、春香は自身を天才と認めようとは頑なにしなかった。果たして、春香は何故自身を天才と認めないのか………?

To Be Continued………




次回予告
中学2年の時、優に憧れてバスケの世界に入ったものの、初心者だらけで弱小チームだった春香達白宮中学。春香は自身の才の無さに涙を見せており………?
次回「私に才能なんてない」


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第247話 私に才能なんてない

前回までのあらすじ
春香の活躍に圧倒される鯱高校。春香の才を天才と評する大原の言葉から、春香はそれを否定するような様子を見せ………?


これは、春香が中学2年生の時である。優に憧れてバスケの世界に入った春香だが、彼女は練習試合を経験する度に苦悩していた。

 

春香「28vs92………またトリプルスコアでボロ負けですね………」

 

白宮中学バスケ部で副キャプテンをしていた椿との会話時、春香は大敗に悩んでいた。

 

椿「難しいものですね………バスケ部に入ってくれた皆さんもバスケ初心者だらけですから………」

 

椿は春香の苦悩を理解していたが、彼女もバスケ初心者だったらしく、解決策が分からなかった。

 

春香「せっかく憧れて入ったのに………私に才能なんてない………ないからこんなに苦しむ事になってしまっているんだわ………」

 

春香が才能に劣等感を有していたのは、この中学時代が大きく影響していたようだ。

 

椿「………春香様、一旦、今週のバスケ雑誌を読んで休憩しませんか? 今週はミドレーユ様が取材されているらしいですから………!!」

 

解決策が分からない椿はせめて励まそうと、優が採り上げられていたバスケ雑誌を渡す。春香は暗い表情が崩せないまま読んでいた。だが、春香の表情は、優のインタビューページで驚きのものになる。

 

「………天才だから上手いなんて事はありませんよ。僕より上手い人なんてこの世に沢山いる。僕はそんな人達を見る度に思うんですよ。なら僕はそれ以上に努力して、自分だけの武器を見つけてやるってね。そりゃ、必ず超えられるとは限りませんけど、上手くなるには理不尽クラスに上手い天才を目標に超えてやるって気持ちで努力を続ける。まずこれが1番目に必要な気がしますね」

 

天才だからバスケが上手いわけじゃない。寧ろ、天才を超えてやるって気持ちで努力する事が最初に必要だと考えていたようだ。

 

春香「(ミドレーユさん………)」

 

優の言葉を見た春香は雑誌を閉じると………

 

春香「椿さん、今日の放課後も練習しましょう………! 天才じゃなくても………天才に追いついてやる………そんな気持ちで頑張りますから………!!」

 

立ち直ったのか、練習に力を入れる事を決めた。それを聞いた椿は驚きこそしたが………

 

椿「………はい!」

 

再び特訓する事に同意するのだった………

 

 

 

それから春香は優を目標にただ追いかける形で練習を続けた。優を天才と定め、自分を凡人だと考える思考のせいで、自身のレベルを全然理解していないものになってしまったのだが………これが春香の必殺技誕生に繋がったとの事である………

 

 

 

才能を持たない側の人間だと考えていた春香。彼女の成長は果てしない苦悩の先に成り立っていたのだった………

To Be Continued………




次回予告
春香が自身を天才と考えない思考は巫魔メンバーから総ツッコミを受ける。しかし、そんな思考が優の強さを体感出来ていない鯱高校を翻弄する………!?
次回「基準おかしいだろ」


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第248話 基準おかしいだろ

前回までのあらすじ
春香は中学時代、自身の才のなさに苦しんでいた。しかし、優の言葉で救われ、必殺技を生み出す程の特訓を重ねたのだった………


そんな記憶が春香の頭を巡っていると、春香とマッチアップする郷原にボールが渡った。春香は頭の中で記憶を回想していたとは思えない程のディフェンスを見せ、スリーを撃たせないディフェンスをする。

 

郷原「(くっ………ならこうするしか………!!)」

 

郷原はここでパスをしようとするが、春香は読んでいたと言わんばかりにディフェンスをする。

 

伊吹「よし、やるぜ春香!!」

 

伊吹が褒める声を飛ばす。

 

優「流石春香。天才………なんて言ったらそうじゃないって怒るだろうけどね」

 

優は春香の上手いプレイングの中で、そう呟いた。

 

鈴香「………それ嫌味? 春香が天才じゃないなら私達凡人以下なんだけど?」

 

しかしこれを聞いた鈴香は珍しく嫌そうな顔を見せていた。

 

ほのか「言われてみれば………判断基準おかしいだろー!!」

 

伊吹「そうだそうだー!!」

 

鈴香の言葉から、巫魔メンパーが総ツッコミを入れ始める。それを聞いた優は言わなきゃ良かったと言わんばかりの表情を見せたが………

 

春香「速攻! 反撃よ!!」

 

春香は構わず速攻。そして、この様子は幸運にも鯱高校に動揺を与えていた。

 

大原「くそっ! ここはなんとしても死守だ死守!!」

 

大原はディフェンスによる死守を指示するも………

 

春香「美矢ちゃん!!」

 

春香は美矢にパス。美矢は素早い動きでゴールへ向かっていく。

 

大原「(ま、まずい………! 誰も追いつけない………!! し、しかし………5番の時点でこれということは………4番白宮優はもっと強いというのか………!?)」

 

大原は頭の中で優の強さを数段上と考えさせるきっかけとなっていた。大原の考えは実際の優の強さと比較して肥大化しすぎてはいるものの、結果として戦意にダメージを与える事は出来た。そして、美矢はレイアップを狙う。

 

平野「決めさせるものか!!」

 

平野がレイアップの阻止に来るが、美矢はそれを見込んでいたのか、冷静に後ろから走ってきていた優真にボールをパス。優真は冷静なジャンプシュートで2点を追加した。

 

優「よし、いいぞ! 美矢! 優真!」

 

優は美矢と優真の好プレーを褒める。そして、春香も優の方に視線を向けて来た為、優はナイスと言わんばかりに親指を立てる。春香はそれを見て、ぱあっと嬉しそうな表情を浮かべた。

 

優「(春香からすれば、一生僕の背中を追いかける方が成長するんだろうな………こりゃ追いつかれないように頑張るしかねぇな………!!)」

 

これに対し優は、春香の考え方こそ彼女の成長に繋がるのだと考えるのだった………

 

 

 

鯱高校攻略のキーマンとして動く春香は、確実に良い流れをもたらしていた。果たして、このまま逆転出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
春香の大活躍で第1Qは逆転どころか良い点差を広げていた。しかもこの流れは第2Qでも続き………!?
次回「侮るなかれだな」


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第249話 侮るなかれだな

前回までのあらすじ
自身を天才と認めない春香。その思考には総ツッコミがあったものの、結果として鯱高校に混乱を与える展開となり………!?


そのまま勢いに乗った巫魔は、そこから鯱に1点も許さずに25vs16の9点差へ広げることが出来た。

 

伊吹「凄いな………前半押されていたのが嘘のような展開だぜ………」

 

伊吹は驚きのあまり言葉が見つからなそうだった。

 

ゆうか「この様子なら、第2Qも優くん抜きで戦えるわね。だけど、気を引き締めて戦ってね」

 

春香達「はい!!」

 

春香達は第2Qも変わらず戦う事になった。優はベンチに腰かけながら鯱高校のベンチを見る。鯱高校の選手達は必死に対策を話している様子が見られているが………

 

優「(まだ様子見継続かな。正直今こっちの懸念点は少ないし………)」

 

優はまだ動かない様子を見せるのだった………

 

 

 

そして始まった第2Q。優は再びベンチで様子を見るだけなのだが………

 

春香「美矢ちゃん!!」

 

第2Qは春香がサポートに回り始め、積牙、美矢、光一の3人を中心に点を稼いでいった。開始3分で33vs16と圧倒していた。

 

優「おいおい………ここまで圧倒するなんて驚きだよ。監督、もしかしてこうなるのを読んでたりしたんですか?」

 

優はあまりにも圧倒する展開に、これを読んでいたのかと言いたげな様子で問いかける。

 

ゆうか「春香ちゃんの調子が悪かった事は想定外よ。でも、優くんが立て直してくれたお陰で、今やこっちの思い通りよ………!!」

 

ゆうかはニヤリとした表情を浮かべながらそう呟く。

 

優「………腹黒い監督。でも、侮るなかれだな………」

 

優はゆうかの笑う様子を思わず腹黒いと呟いていた。しかし、結果として巫魔有利の展開に持ち込んで行ったのは事実な為、流れは確実に巫魔へ渡っていた。観客席の修也達も驚きが止まらないようで………

 

修也「ミドレーユ抜きであそこまでやれるとは………春香さん上手すぎるな………!!」

 

優がいない中で最大限機能する春香に驚きを隠せなかった。

 

芽衣「春香さん、今やSGの役割を完全に理解しているんだろうね。敢えてサポートに回る事で、巫魔の得意な戦術に持っていけてる………!!」

 

芽衣は今の巫魔が持って行った流れを理解する。再び春香にボールが渡ったタイミングで………

 

春香「美矢ちゃん! 優真ちゃん!」

 

美矢と優真に声をかけると、春香はボールを高く上げてパスする。

 

美矢「おし!!」

 

美矢は空中でボールを受ける。そして………

 

美矢「優真!!」

 

美矢は落下する前に優真にボールを回す。

 

優真「(………ここ!!)」

 

そして優真はボールを受けて間もなく、ディフェンスをかわすように走る積牙へボールを回す。

 

平野「なっ、なんだと!?」

 

平野は三連パスに驚きを隠せずにいた。そして、積牙はレイアップで点を追加し、35vs16へ点差を広げるのだった………

 

 

 

第2Qになっても勢いの止まらない巫魔。果たして、この有利はどこまで続くのか………!?

To Be Continued………




次回予告
春香、美矢、優真の3人によるスピードパス戦術で有利を形成する巫魔。これを分析する芽衣は、まだ未完成ながら鯱相手に通用する力を持っており………!?
次回「まだ不完全だけど」


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第250話 まだ不完全だけど

前回までのあらすじ
第1Qを有利に終えた巫魔。しかもこの流れは第2Qでも継続する形となり………!?


その後も春香、美矢、優真の3人がスピードパスによる高速戦術で鯱高校を翻弄する。

 

修也「さっきから巫魔の攻めが速くなってるな」

 

修也は巫魔の攻めが速くなっている事を体感した。

 

芽衣「美矢さん、優真ちゃんの2人は元々パスが得意な選手。そこに起点として春香さんが加わった事で、美矢さんと優真ちゃん、どちらを次点に持ち込んでも繋がるようになったんたよ。まあ一応欠点はあって、春香さんに高速パスの技術は無いから、美矢さんと優真ちゃん同士のパスを立て続けにするのは読まれるリスクが出てきちゃうんだよね。今はまだ不完全だけど鯱が慣れていないからなんとかなってるんだよ」

 

芽衣は冷静に春香達3人の戦術を分析。同時に欠点も見つける辺り、その点は流石強豪のPGと言える。

 

芽衣「(今は鯱高校が慣れていないから何とかなってるけど、まだ未完成でこの先通じるかは分からない。もう1人くらい高速パスができる人………ミドレーユくんが加わった時に、このパスは完成するんだと思うけど………)」

 

芽衣は改善点についても考えており、優が加われば解決するのでは無いかと考えていた………何はともあれ、今の段階ではこの戦術は鯱高校が慣れていない為に通用し、鯱高校を翻弄していた。

 

アリサ「そんなリスクがあるなら今のうちに点を取りまくるべきじゃないの? 逆転不可にしてしまえば通用するしない以前の問題に持って行けるし」

 

アリサは、このまま逆転が不可能になるレベルにまで点を離せばいいと考えていた………コート上の春香達も薄々悟っていたのか今のうちに点を稼ぐように考えた。積牙や光一もシュートには参加し、次々と点を稼いでいた。だが、この戦術にはまだ落とし穴があった。

 

春香「はあっ、はあっ………」

 

第2Qが残り3分を過ぎた時、春香、美矢、優真の様子がおかしくなってきた。

 

優「(春香達3人の様子がおかしい………メンタルはさっき治ったばかりのはずなんだが………まさか、スタミナ切れか………!?)」

 

真っ先に異変へ気づいたのは優だった。そう、春香達はスタミナ切れを起こしかけていた。次に芽衣もこの異変に気づき………

 

芽衣「(スタミナ切れが来ちゃった………!! 正直嫌な予感はしてたけど、まさかこのタイミングで来るなんて………!!)」

 

巫魔の危機を予感していたのだった………

 

 

 

有利に事を進める巫魔。第2Qでも圧倒する様子を見せていたものの、その有利に陰りが見え始めていた。果たして、この先巫魔はどうなってしまうのか………!?

To Be Continued………




次回予告
なんとか第2Qを逃げ切る巫魔だが、春香達3人の疲労は明白だった。しかし、監督のゆうかは頑なに優を出そうとはせず………?
次回「優くんは絶対使わないわ」


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第251話 優くんは絶対使わないわ

前回までのあらすじ
春香達3人の戦術で圧倒する巫魔。しかし、春香達3人の疲労が蓄積した影響でスタミナ切れが近づいてしまい………!?


その後、第2Qを53vs20の33点差で逃げ切った。だが、春香達主力3人のスタミナが尽きかけている為に、完全に有利とも言えないのが現状であった。

 

春香「はあっ、はあっ………すみません。体力がもう無くて………」

 

春香達の疲労により、主力は半壊状態に陥っていた。

 

ゆうか「………積牙くんと光一くんの2人は続投よ。でも、積牙くんはこの前半戦の間でファール2つになってるから気をつけてね?」

 

ゆうかは積牙と光一の2人を続投させる事を第1に告げると………

 

ゆうか「ここはのぞみちゃん、あかりちゃん、伊吹ちゃんの3人を出すわ。点差は大きいけど気をつけてね」

 

次に春香達3人を下げ、のぞみ、あかり、伊吹の3人を入れる事に。

 

美矢「ちょ、ちょっと待て! キャプテンは使わないのかよ!?」

 

しかし、相変わらず優を使わない所は美矢に疑問を与えた。

 

ゆうか「ダメよ。理由はさっきも言った通り優くん抜きで勝てないなら、全国なんて勝てない。だから優くんは絶対使わないわ」

 

ゆうかはチームのレベルアップが無い限り全国を乗り越えるなど不可能と考えていた。

 

春香「はあっ、はあっ………やっぱり私、まだ我慢して………!!」

 

この試合は優が使えない。その状況に春香は無理して出場しようと考えた直後………

 

優「止めとけよ、春香」

 

なんと、出場を禁止されている優が春香の出場を拒んだ。

 

春香「優さん………どうして………?」

 

春香は試合に出たがる傾向のある優が自身の出場禁止を受け入れるばかりか、春香を止めて来た事に困惑を隠せない。

 

優「悔しいが監督の言い分も理解出来る。僕のワンマンで全国なんか戦えるわけない。皆が全国の場を経験してレベルが上がっていく。それによって巫魔の強さが少しでも上がるならば、僕は喜んで監督の指示に従うさ」

 

優もこのままでは全国を勝てない。そう悟った為にゆうかの策に従っていた。そして優は春香の肩に触れると………

 

優「君は一度休め。無理してもパフォーマンスが落ちたり、後で悪い影響が出るから」

 

そう言って、今は休むよう諭した。それを聞いた春香は………

 

春香「………分かりました。監督の指示に従います」

 

優と同じくゆうかの意見に従う事に決めた。

 

美矢「春香………わあったよ」

 

春香が従う事から、ゆうかも黙って受け入れる事に。

 

ゆうか「第3Qも全力で戦ってもらうけど、失点を恐れずにガンガン行きなさい!」

 

第3Q内では失点を気にせず戦う事に決めた巫魔。

 

積牙達「はい!!」

 

ゆうかの指示に、積牙達は大きな声で返事を返すのだった………

 

 

 

春香達の疲労で主力が半壊してもなお優を使わない巫魔。果たして、鯱相手に渡り合う事は出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔は春香達の離脱で一気にパスワークとアウトサイドが弱体化。これにより、鯱は得意のインサイド戦術を仕掛けてきて………!?
次回「今度はインサイド勝負だ」


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第252話 今度はインサイド勝負だ

前回までのあらすじ
春香、美矢、優真の3人はスタミナが切れかかった為に交代を余儀なくされる。だが、巫魔は頑なに優を使う事は無く………!?


こうして始まった第3Q。しかし、春香達3人が抜けた弊害は大き過ぎた。

 

平野「もらった!」

 

まず、優真と美矢が抜けた事でパス戦術は当然弱体化。そして、のぞみのレベルは今や2人に劣っている為に、全国クラスの平野が相手となると、まるで勝負にならない。

 

のぞみ「………!! (速い………!)」

 

のぞみは驚きを隠せずにいた。

 

春香「のぞみちゃんが軽々抜かれるなんて………!!」

 

春香も思わず声を荒げた。その後は大原がシュートを決めて点を奪った。

 

大原「よーし! 奴等の主力は一気に削れた! 今度はインサイド勝負だ!!」

 

大原はチームに向けてそう言い放つ。それを聞いた美矢は………

 

美矢「な、なんだと!?」

 

美矢には挑発に聞こえたようで思わずベンチを立ち上がった。

 

優「………落ち着けよ美矢。春香達が抜けた事でうちのアウトサイドが弱体化したのも事実だからな」

 

そして、優が今呟いたように現在の巫魔にはまだ問題があった。それは、アウトサイドの弱体化だった。春香達3人は巫魔の中でもレベルが高いアウトサイドシュートの技術がある。しかし、その3人が一気に抜けた事で,アウトサイド攻めが困難になってしまった。

 

春香「参りましたね………まさかこの場面でインサイド勝負に持ち込まれてしまうなんて………」

 

春香は焦った様子を見せる。

 

優「鯱高校はインサイド面ではレベルも高さもある。正直言うと、光一や積牙がどこまで戦えるかに賭かっているかな?」

 

優は冷静な様子でそう分析する。

 

美矢「くそっ………! このままじゃ今の有利もどこまで続くかどうか分からねぇじゃねえか………!!」

 

美矢は30点以上の有利な点差がどこまで続くか不安で仕方無かった。そんな事を話している間に、またボールを奪われた巫魔。これによって鯱の反撃が始まった。

 

優「ありゃりゃ、またやられたね。流石にインサイドで戦うには数が少ないかね」

 

優はおどけたようすでそう呟く。

 

美矢「………なあ、本当にこのままキャプテン抜きでなんとかなるのか?」

 

美矢は困った様子を見せる。

 

優「監督はこの試合意地でも僕を使って勝ちたくないんだろうね。そうなりゃ僕に出来るのはサポートと応援だけだ。皆に頑張ってもらうしかないよ」

 

優はゆうかの意思が揺るがない事を悟り、そう呟く。その直後に再び鯱によって2点が追加され、スコアは53vs24になるのだった………

 

 

 

巫魔の主力が半壊した事で、鯱はインサイドで強い力を発揮する。果たして、優抜きの巫魔はこの状況を覆せるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
大原達ビッグマンのプレイングに苦戦する積牙と光一。2人は苦戦するばかりか、積牙が3ファールで追い詰められ初め………!?
次回「こりゃやべぇぞ」


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第253話 こりゃやべぇぞ

前回までのあらすじ
アウトサイド戦術を潰された巫魔。これにより鯱高校得意のインサイド戦術に持ち込まれてしまい………!?


インサイド対決に押し込まれる巫魔。のぞみ、あかりではまずインサイド勝負など出来ず、伊吹は勝負にならず、唯一戦う事の出来る積牙と光一も苦しめられていた。

 

大原「うおおおおっ!!」

 

光一「や、やべぇ!? うわあっ!!」

 

インサイド勝負となった事で、キャプテンでありCの大原が光一を圧倒し始めていた。光一は大原の勢いに飲み込まれてしまい、再び得点を許してしまう。

 

光一「くっそ………!」

 

光一は悔しそうな様子を見せる。

 

美矢「光一と相手の4番は同格くらいのはずだ………! なのに光一が流れに飲まれちまってる………!! こりゃやべぇぞ………!!」

 

美矢は光一の苦戦に焦る様子を見せる。

 

優「………それだけじゃない。まだ不安要素はある」

 

そんな彼女にそう呟く優。そして追い討ちをかけるように、数秒経って審判の笛が鳴り………

 

審判「プッシング! 黒10番!!」

 

積牙が3つ目のファールを取られてしまった。

 

積牙「ぐっ………!」

 

積牙は悔しそうな様子を見せる。

 

優真「積牙くんのファール………って事は………!」

 

結衣「3つ目………!」

 

積牙のファール3つはチームに多大な不安を与えた。

 

優「まずったね………積牙が3つ目のファール取られなかった試しが無いからもうこの時点で不安になる」

 

優は不安の理由を口にする。そう、これまでの試合で積牙が3ファール以下で終わった試合は現時点存在しない。更に………

 

結衣「しかもこれまでの試合は、力豪との練習試合、守城高校との対決以外全て4ファール………このままじゃ高確率で4ファールになっちゃいます………!!」

 

そこから4ファールになった確率も高い。つまり、巫魔のメンバーはそこから高確率で4ファールになる。そんな事を考えていたからこそ、チームは不安な空気に包まれていた。

 

優「光一と積牙の2人が敵わないんじゃこの試合はどうにもならない。それじゃ現在の有利はまやかし同然だ」

 

優は現在の状況でも光一と積牙の動向を探っていた。この時点で何も出来ないようなら現在の有利の意味は無い。それが優の考えだった。

 

春香「つまり、あの2人が敵うのであれば………巫魔は勝てますよね?」

 

春香は優に対してそう返した。優の言葉を裏返すのであれば、積牙と修也が敵うなら巫魔は勝てるという事である。優は特に否定する様子を見せなかった為、この説は確かであると見て間違いないだろう。

 

優「………さあ、どうなるかな」

 

優は試合の運命を探るようにそう呟くのだった………

 

 

 

巫魔vs鯱の対決。果たして、積牙と光一の2人はこの対決を勝つ流れを掴む事は出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
光一は押され続ける展開に苛立ちを覚えてしまう。しかし、積牙の諦めない様子に奮起させられ………!?
次回「俺は諦めない」


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第254話 俺は諦めない

前回までのあらすじ
インサイド勝負に持ち込まれる巫魔。更に、積牙と光一も押される事となり………!?


それから試合は進み、いつしかスコアは第3Q残り2分で59vs40にまで迫られていた。

 

美矢「おいおい………まだ有利が崩れないとはいえ、めちゃくちゃ点取ってくるじゃねーかよ、鯱高校の連中………!」

 

美矢は鯱高校の追い上げに驚いていた。優は無表情であったが、チーム内に焦りが見え始めている事には薄々気付き始めていた。

 

光一「くっそ………! 思ったように行かねぇ………!!」

 

光一は試合が進む中で苛立ちを見せ始める。

 

積牙「まだだ………!!」

 

しかし、そんな雰囲気をぶち壊そうとする声が1つだけ聞こえた。

 

光一「………!! せ、セッキー………!!」

 

声を上げたのは積牙だった。これには光一が驚きを隠せずにいた。

 

積牙「キャプテン達に頼ってばかりいられるか………! 俺は諦めない………絶対に諦めないぞ!!」

 

積牙は例え優達がいなくても諦める気がなかった。寧ろ頼り続けていた事を苦しんでいた程だった。

 

春香「積牙くん、凄い気合いですね………!」

 

積牙の大きな気合いを感じ取る巫魔メンバー。優も思わずフッと笑いを零した。

 

優「積牙の奴、気合い入りまくってるなぁ」

 

優は一言だけ、そう呟いたが今の状況でこれがどれだけ良い事かも理解していた。

 

光一「セッキー………! (俺は大バカ野郎だ………セッキーがあんなに頑張ってるのに、イラついて調子を狂わせて………)」

 

光一は感情的になりかけていたことを反省する様子を見せると、一度大きく深呼吸をした後に………

 

光一「よーし! 俺も気合いいれてやるぜ、セッキー!!」

 

雄叫びのように大声でそう言った。

 

美矢「光一も声をあげている………!!」

 

美矢は、光一の士気も回復した事を今の言葉で察知した。

 

優「………これで2人の士気が回復した。後は、この場面をどう切り抜けるか………だね」

 

優は、2人の士気が復活した事によって、この先の勝負がどのように転がるのかを楽しみにしていた。

 

美矢「そんな事言ってるけど、まるで結果が分かっていそうな様子が見えてるぞ、キャプテン?」

 

美矢は、優が結果を知っているかのような様子を見せていたことを見抜き、そう呟いた。

 

優「そりゃまあ信じてるさ。特に積牙と光一の2人はね………あの2人も充分強いさ。あんな高校くらい軽く蹴散らしてもらわなきゃ」

 

優はそう言って、2人に対して向けている期待を口にするのだった………

 

 

 

諦めない姿勢を見せる積牙。そしてその思いは光一すらも蘇らせた。果たして、この勢いが鯱高校を倒すきっかけとなるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優は鯱高校には弱点がある事を見抜いていた。実は鯱高校のビッグマンにはある弱点が存在しており………!?
次回「あそこの弱点はね」


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第255話 あそこの弱点はね

前回までのあらすじ
苦戦に苛立つ光一。しかし、積牙の諦めない姿勢に光一の士気も復活し………!?


光一「うおおおりゃあ!! くらえ!!」

 

それからしばらくして、積牙と光一の2人が奮闘。特に光一は大原達3人がかりのディフェンスすらも、ダンクで蹴散らした。

 

優真「す、凄い………! 3人がかりのディフェンスを吹き飛ばした………!!」

 

優真は、光一のパワープレイに驚きを隠せずにいた。

 

優「光一本来のプレイングが見えてきた………やっぱり鯱高校相手なら全然通用するわな」

 

優はそう呟く。それを聞いた春香は驚く様子を見せる。

 

春香「しゃ、鯱高校相手なら光一くんが負けないって分かってたんですか………!?」

 

春香は優の観察眼の鋭さにそう問いかける。

 

優「実はこの試合に挑む前に調べたんだけどさ、相手さんの10番と15番、1年生なんだよな」

 

優は事前に調査した事を口にする。どうやら10番の妻引、15番の社寺は1年生のようだ。

 

結衣「それがいったいどう結びつくんですか………?」

 

結衣は首を傾げる。優はフッと笑いを零した後………

 

優「2人とも高さはあるけど、細かい技術はまだまだ拙いんだよ。あそこの弱点はね、全国相手に通用する選手が少ないから、それを誤魔化すようにビッグマンを入れまくっている事なんだよ」

 

2人の実力がまだ低い事を口にする。その直後、積牙が妻引からボールをスティールした。

 

伊吹「よし、いいぞ積牙!!」

 

積牙のプレイを褒める伊吹。積牙はその後、素早い動きでインサイドに入り込み、郷原とマッチアップしても尚冷静な様子を見せる。

 

積牙「………行くぞ!」

 

積牙は一言だけそう呟くと、素早い動きでドライブをかける。それにより、郷原を相手に抜き去り、そのままシュートを放つ。

 

光一「よし! {ソニックジャンパー}決まった!!」

 

積牙の{ソニックジャンパー}が炸裂。これにより、更に点差を広げる事に成功する。

 

優「………これではっきりしたね。積牙と光一の2人は鯱相手に通用する。のぞみ達3人は苦戦するかもしれねぇけど、積牙と光一がガンガンディフェンスしてくれればその辺の問題もなんとかなると思う………監督、貴方の目的は達成されそうですよ」

 

優は勝負の流れを理解すると共に、巫魔監督ゆうかの目論見が達成されかかっている事を口にする。それを聞いたゆうかは口を開きこそしなかったが、笑いを隠しきれていなかったのだった………

 

 

 

士気の復活により、本来のパフォーマンスを見せ始める積牙と光一。鯱の弱点も判明した事で、勝負の流れは完全に巫魔へ手繰り寄せられたのだった………

To Be Continued………




次回予告
第3Q、第4Qと勝負は続くが、流れは完全に積牙達が支配していた。そして、試合終了の時間がやってきて………!?
次回「勝負ありだ」


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第256話 勝負ありだ

前回までのあらすじ
積牙と光一が本来の実力を発揮し始める。また、鯱高校はまだレベルが低い1年生2人がいる点が弱点として存在しており………!?


その後、勝負は第3Q第4Qと動いたが、積牙と光一の2人が圧倒する形で鯱を翻弄していた。そして、2人による攻めとディフェンスにより、点差は大きく広がった。

 

審判「………プッシング! 黒10番!!」

 

………途中、積牙が例によって4ファールとなったが………

 

積牙「まだまだ! もうファール犯さなければいいだけだ!!」

 

流れに乗った積牙にとって今更ファールは何ら問題ない。残りの時間、本当にファール抜きで残りの時間を駆け抜けた。そして………

 

審判「………試合終了!!」

 

試合終了時には、114vs52とダブルスコアで巫魔が逃げ切っていたのだった。

 

伊吹「よっしゃああ! 3回戦だ!!」

 

巫魔のメンバーは大きく喜んだ。

 

春香「やりましたね、優さん!」

 

春香は優に対して喜びながらそう呟いた。

 

優「………正直監督の思惑がここまで当たるのは不吉だけど、まあこの際いいか」

 

優はゆうかの思惑が大成功した事を不気味がってこそいたが、フッと笑いをこぼすと、勝利に繋がった為にそれ以上問い詰める事をやめた。そして、試合を見ていた修也は………

 

修也「すげぇ………! 本当にミドレーユ抜きで逃げ切るなんて………!」

 

優抜きで逃げ切った事に喜びの混じった驚きを見せていた。

 

芽衣「まあ、鯱高校のレベルは悪くないけど巫魔程高いわけじゃないからね」

 

芽衣は、鯱よりも巫魔のレベルの方が高かった事を呟く。

 

アリサ「ま、ユー達は私達を倒したんだもの。あんなチームに負けられたら困るわ」

 

アリサは当然とばかりにそう呟く。そして、他の会場で試合を終えたばかりの守城高校や魔帝高校が会場に駆けつけたが、巫魔の圧倒的な勝利を目撃し………

 

戦記「フッ………見に来るまでもなかったな」

 

口元で笑みを零しながらそう言ってその場を去った。大牧もまた、フッと笑いを零して会場を後にするのだった………

 

 

 

挨拶の後、優達がベンチで帰り支度をしていると………

 

春香「優さん、この後この会場で奥泉高校の試合が行われるらしいですよ」

 

春香が優に対して、直後に奥泉高校の試合が行われる事を伝える。

 

優「折角だし見ていくか。このまま行けば4回戦で琴乃さん達と当たるしな」

 

優はそう言って、試合観戦に賛成するのだった………

 

 

 

結果として、鯱高校相手に大勝した巫魔。その次に会場内で行われるのは、巫魔と合宿をしたイワテ代表の奥泉高校だった。果たして、巫魔はこのまま奥泉高校へのリベンジマッチへ挑む事が出来るのだろうか………!?

To Be Continued………




次回予告
奥泉高校の相手はエヒメ代表蜜柑高校。鯱高校と同じく今大会初登場である蜜柑高校だが、その実力はとてつもなく高く………!?
次回「なんなんだあの学校」


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第257話 なんなんだあの学校

前回までのあらすじ
鯱高校との激闘を大勝で制した巫魔。その後、優達は大会前、共に合宿したイワテ代表奥泉高校の試合を見る事に決めた………


審判「これより、奥泉高校と蜜柑高校の試合を始めます!」

 

それからしばらくして、イワテ代表奥泉高校と、エヒメ代表蜜柑高校の試合が始まった。

 

結衣「蜜柑高校………冗談みたいな名前の学校ですね………」

 

巫魔メンバーは、蜜柑高校の存在に首を傾げていた。

 

優「僕も正直聞いた事は無かったな。多分、うちや鯱と同じ初出場だ」

 

優はそう言って、蜜柑高校に対してはノーマークだった………この時までは………

 

 

 

しかし、試合が始まってみるとその結果は衝撃的なものだった。琴乃、朱桜、伏谷の主力3人がメインとなって攻めるが、3人の力を総動員しても、蜜柑の方が点を多くとっていた。

 

美矢「………!! 意外だ………あの3人が苦戦してやがる………! なんなんだあの学校………!?」

 

実際に彼女達と対峙した美矢は驚きを隠せずにいた。

 

優「こりゃ完全にノーマークだった。特にあそこの4番」

 

これには優も驚きを隠せていなかったようである。そして、蜜柑高校の4番を指さす。蜜柑高校のキャプテンはストレートヘアーの女性であり、彼女はパスを受けた後、ミドルレンジによるシュートを放つ………

 

優真「………!? ボールが向かってるのは、ゴールの真横………!?」

 

しかし、その軌道はゴールから離れた方向だった。

 

積牙「ファンブルだ………!!」

 

これには誰もがミスだと考えていた。だが次の瞬間、ボールは突如弧を描くような軌道へ代わり、ゴールへ入った。

 

光一「な、なんだありゃあ!?」

 

これには会場の誰もが呆気に取られていた………

 

??「相手を惑わす独特な軌道による必殺技、{蛇のシュート(スネークシュート)}だよ」

 

そんな凍りついたかのような環境で、棒付きの飴を舐める制服の少女が優の隣にやってくると共に席へ座って、先程のシュートを解説する。

 

美矢「{蛇のシュート}………って、誰だお前!?」

 

美矢は突然現れた人物に驚いた。

 

??「………鈴原美香。蜜柑中学3年生」

 

少女は中学生であり、蜜柑高校と同じエヒメからの観客であるようだ。

 

優「蜜柑………さては彼女等と知り合いだね?」

 

それを聞いた優は知り合いだという事を見抜いた。

 

美香「………流石巫魔キャプテンの白宮優先輩。そうだよ、私は蜜柑高校キャプテン、鈴原風夏の妹だもん」

 

美香の正体は、蜜柑高校のキャプテンであり、先程必殺技を決めた女性、鈴原風夏の妹だった………

 

 

 

昨年全国ベスト8の奥泉高校を苦戦させる謎の高校蜜柑高校。その強さは、とてつもない強さを持った高校であったのだった………

To Be Continued………




次回予告
奥泉高校は蜜柑高校相手に終始苦戦する事になる。そして、試合終了時のスコアは………!?
次回「予想出来なかった」


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第258話 予想出来なかった

前回までのあらすじ
イワテ代表奥泉高校vsエヒメ代表蜜柑高校との試合。しかし、奥泉高校は蜜柑高校相手に苦戦を強いられており………!?


その後、両校は激しい勝負を繰り広げた。

 

審判「試合終了!!」

 

しかし、試合が終わってみれば、88vs98の10点差で蜜柑高校が勝利した。

 

積牙「奥泉高校が負けるなんて………予想出来なかった………」

 

試合を見ていた優達は、奥泉が敗退するという衝撃の事態を目の当たりにした。

 

春香「………もし3回戦を突破出来たら………4回戦は蜜柑高校が相手になるのでしょうか………?」

 

春香は優に対しそう問いかける。

 

優「そうなるかな………ウチをコテンパンにしてくれた奥泉すら凌駕する蜜柑高校………こりゃ大変な事になりそうだな………」

 

優は春香の問いに対しそう答えた。

 

春香「………私がもっと強くならないとダメですよね」

 

優の言葉に対し、更なる強さを求めだす春香。それに対し優は首を傾げる様子を見せるのだった………

 

 

 

翌日、優達は宿屋として部屋を借りている春香の家から出かける形で会場へ向かおうとしていたのだが………

 

美矢「はあっ!? 春香がいない!?」

 

家を出るタイミングで春香がいない事に騒ぎを起こしていた。

 

優「………本人から聞いた。今日は欠場させてくれってね」

 

優はそう言って、春香不在の話をする。

 

光一「なんでよりにもよって今日なんだよ………!?」

 

これにはチームの誰もが首を傾げていた。

 

優「さてな。でも今日は春香抜き。監督も既に了承しちゃってる以上、どうしようもねぇよ」

 

優はそう言って、春香が抜ける事はどうにもならないと呟くのだった………

 

 

 

一方この頃、春香は1人巫魔のものではないジャージを着てフードを頭に被ると、近くのバスケットコートにやってきていた。

 

春香「………お待たせしました」

 

春香はバスケットコートに1人の人物を呼んでいた。それは奥泉高校のキャプテン山吹琴乃だった。

 

琴乃「………試合はそっちのけでいいの?」

 

琴乃は春香に対しそう問いかける。

 

春香「3回戦は優さん達がなんとかしてくれますよ。2回戦も優さん抜きで勝てたんですから………それより、私は蜜柑高校以降の激しい戦いに目を向けているんです。だから………私はまだ完成していない3つ目のスリーポイントシュートを完成させてしまいたいんです」

 

しかし、春香は巫魔の仲間達がなんとかしてくれると信じており、同時に準々決勝にあたる4回戦以降の過酷さから、以前合宿の中で希望を見いだした3つ目のスリーポイントを完成させる事を優先する事に決めた。

 

春香「………タイムリミットは今日まで。ですから………それまでご協力お願い致します!!」

 

春香は琴乃に頭を下げる。春香の想いを聞いた琴乃は頷くと共に………

 

琴乃「厳しく指導するわよ………合宿以上にね………!!」

 

春香への指導に対する強いやる気を見せたのだった………

 

 

 

奥泉高校の衝撃的な敗北に、春香は技の完成を急ぐ事を決めた。果たして、優達は春香抜きで3回戦を制する事が出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
3回戦の相手はカナガワ代表の鈴川高校だった。そしてこの高校は美矢と因縁のあるメンバーが多いチームで………!?
次回「お前は」


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第259話 お前は

前回までのあらすじ
奥泉と蜜柑の対決は、蜜柑の勝利に終わった。更なる成長を求める春香は、3回戦そっちのけで第3のスリーポイントシュートを生み出す為の練習へ行く事を選び………?


春香がいない中、優達は会場へと向かう。

 

積牙「3回戦の相手はカナガワの鈴川高校ですよね。確か結構強いところだと聞いています」

 

積牙が言うように3回戦の相手はカナガワ代表の鈴川高校。昨年ベスト16であり、奥泉程では無いものの、やはり強いチームである。

 

光一「どんな相手だろうと関係ねぇ! 俺達が勝つ!」

 

光一は気合十分でそう呟く。

 

??「そう言って、俺達に敗れたチームが沢山あるんだけどなぁ」

 

光一の言葉に対し、それを嘲笑うかのように声をかけてきた男が、横から現れた。

 

美矢「………! お前は………!!」

 

その人物を美矢は知っているようで、驚きを隠せずにいた。

 

光一「てめぇ、どこの奴だ!?」

 

光一は美矢の様子に気づかないまま、男と一触即発状態に陥るが………

 

美矢「………鈴川だろ。ジャージにもそう書いてるし………会いたくはなかったけどな………種馬」

 

美矢は男の名前を言うと共に、その男が鈴川の選手である事を口にする。

 

種馬「………天野か。てっきりもうやめたと思ってたんだけどなぁ」

 

種馬は美矢に対して煽り返す。そして………

 

種馬「俺は種馬蕗(しゅばふき)。鈴川高校の7番でポジションはPFだ」

 

種馬は自身の名前を口にして自己紹介する。

 

優「まさか美矢の知り合いだったとはね………ここまでとは思ってなかったけど」

 

一触即発の中、優が口を開く。

 

種馬「フッ、お前が巫魔キャプテンの白宮優。俺はお前すら超える逸材だ。覚えておけ………!!」

 

種馬は優に対しても大きい態度を取る。

 

優「はいはい、覚えとくよ………で、名前なんだっけ?」

 

しかし、優は全く意に介さないばかりかそのまま煽り返した。

 

種馬「な、なんだと!? 俺は種馬蕗だ!!」

 

種馬は煽りに乗ってそう言い返すも………

 

優「すば………?」

 

優は種馬を間違って聞き取ったのか、それともわざとなのか、煽りが止まらない。

 

種馬「て、てめぇ!!」

 

種馬は怒りを顕にする………

 

???「やめろ、種馬!」

 

しかし、そんな種馬を止める声が聞こえた。

 

種馬「………ちぇ、介入してくんなよ天野宮」

 

制止の声に舌打ちをする種馬。種馬の後ろからは、彼より小柄な男が姿を見せる。

 

美矢「………! お前、浩二なのか………!?

 

美矢はまたしても登場した知り合いに対して驚きを隠せずにいた。そして優達の前に現れた男、天野宮浩二は美矢を目にし………

 

天野宮「………久しぶりだな、美矢」

 

一言、そう呟くのだった………

 

 

 

巫魔の3回戦の相手はカナガワ代表の鈴川高校であり、美矢のかつての知り合いがいるチームだった。果たして、彼等と美矢の関係はどのようなものなのか………!?

To Be Continued………




次回予告
天野宮と種馬は、中学時代に美矢とチームメイトであった。果たして、美矢達との因縁はどのようなものなのか………?
次回「だからやめたんだ」


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第260話 だからやめたんだ

前回までのあらすじ
3回戦はカナガワ代表鈴川高校である。この高校には美矢のかつての知り合いが所属しており………!?


光一「そ、そいつも知り合いか?」

 

光一は驚いた様子を見せながら美矢に問いかける。

 

美矢「………ああ、天野宮浩二。前にチームメイトだった奴だよ」

 

美矢はそう言って、天野宮について軽く説明する。

 

天野宮「ずっと行方が分からなかったけど、まさかバスケを続けてたとはな………」

 

天野宮は、美矢がバスケを続けていた事に驚いていた。

 

美矢「しばらく落ちぶれていたけどな。まあでも、キャプテン達のお陰だ」

 

美矢はそう言って、自嘲するようにそう呟く。

 

種馬「こんなチームに所属してる時点でたかが知れているけどな」

 

しかし、2人の会話へ種馬が割り込んで来た。会話の雰囲気が悪くなり始める。

 

天野宮「………なんで美矢に執着する………そういう態度のせいで、美矢がやめたんだろ………!!」

 

天野宮は怒りを顕にしながらそう呟く。

 

美矢「………別に嫌がらせでやめたわけじゃねえ。私が馴染める空気じゃなくなって嫌になっちまった。だからやめたんだ」

 

美矢はそう言って、自らがバスケから離れたきっかけを口にする。

 

優「………同情するよ」

 

美矢と似たような境遇で1度バスケを離れた優は思わずそんな言葉が出てきた。

 

美矢「でも、試合になったら話は別だ。そうだろ、浩二?」

 

しかし、美矢はそう言って試合に対する想いを口にする。それを聞いた天野宮は………

 

天野宮「それはそうだな………」

 

美矢の言葉に納得すると共に優の前へ立つと………

 

天野宮「改めて………鈴川キャプテンの天野宮だ。正々堂々、いい試合にしよう」

 

そう言って優に握手を求める。

 

優「巫魔キャプテンの白宮優です。よろしくお願いします」

 

優は挨拶して握手に応じた。

 

種馬「へっ、せいぜい俺に潰されない事だな」

 

種馬はそう言って、また空気が悪くなる発言をする。

 

天野宮「………すまないな。種馬は昔からこうなんだ」

 

天野宮は種馬の無礼な態度へ謝罪を見せる。

 

優「いえ別に………そんな奴飽きるまで見てきましたから」

 

優は恐ろしく落ち着いた態度でそう返す。

 

優「さあ、行こうか。バカの相手をしても時間の無駄だよ」

 

優はそう言って、遠回しに種馬を煽ると、積牙達と共にその場を後にした。

 

種馬「てめぇ………誰がバカだこの野郎!!」

 

種馬は当然激怒するが、優は無視を決め込むのだった………

 

 

 

一触即発の空気が張り詰める巫魔と鈴川。既に危険が付きまとうようなこの状況は試合にどのような影響をもたらすのか? そして、これから始まる試合はどのような展開を見せるのだろうか………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔はまたしても優を出さず、優真も今回は出さないと決まった事で、主力が半壊したまま試合に挑む事に。優が出ないことに種馬は怒りを抑えられず………!?
次回「なんでお前が出ないんだ」


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第261話 なんでお前が出ないんだ

前回までのあらすじ
天野宮と種馬は、美矢の過去のチームメイトだった。空気が悪くなる中、優は冷静にその場からチームメイトと離れるのだった………


その後、両チームは試合会場へ移動。ベンチで作戦を立てる中、試合を見に来た修也達はいつものように席へ腰掛けるが、その際に春香がいないことに気付いた。

 

アリサ「春香がいない………なんで?」

 

アリサは首を傾げる様子を見せる。

 

芽衣「作戦かな………? でも、春香さんが抜ける意味が分からないし………でも体調不良にしては急過ぎるし………なんでだろう?」

 

芽衣は自分の中で理由を考えてみるが、どれもが当てはまらず、首を傾げた。

 

修也「まあ、まだミドレーユいるから何とかなると思うけどな………」

 

修也はそう言って優に期待する様子を見せるが………

 

優「ええっ!? 今回も出場禁止!?」

 

なんと今回も出場を止められてしまったのだ。

 

ゆうか「まだ様子見でいくわ。それと、優真ちゃんも今回はお休み。試合を見て勉強をするようにね」

 

オマケに優真も今回は出場しない事が決まった。春香がいない事もある為、今回の試合は主力が半壊している状況で試合に挑む事となった。

 

優「………仕方ねぇ。美矢、光一、積牙。君達が頼りだ。頼むぞ………!」

 

試合に出られない優は、主力3人に望みを託す事に決めたのだった………

 

 

 

その後、両チームのスタメンがコートに出る。両チームのスタメンは以下の通り………

 

巫魔高校(白)

PG 12番 天野美矢

SG 13番 宮野あかり

SF 10番 江野積牙

PF 11番 佐野伊吹

C 17番 相田光一

 

鈴川高校(緑)

PG 4番 天野宮浩二

SG 5番 鮫肌翔

SF 6番 大肌庄司

PF 7番 種馬蕗

C 8番 大河毅

 

 

 

天野宮「(………2回戦と同じで優くんを出さないとは………様子見されているのか?)」

 

天野宮は首を傾げる。

 

種馬「おいおい! なんでお前が出ないんだ!!」

 

一方、種馬は優を指差し、彼が出ない事に不満を漏らしていた。

 

優「………」

 

優は無言を貫くばかり。それを見た種馬の苛立ちは大きくなり………

 

種馬「おおーい!! あれだけやっといてこのザマか!? てめぇは口だけか!?」

 

種馬はそう言って喚き散らすが、優の表情は全く変わらない。

 

種馬「くそがぁ………!!」

 

種馬の怒りは最高潮に達するが………

 

審判「君! 過激な私語は慎みなさい!」

 

審判が警告をかけてきた。それを聞いた種馬は流石にこの場は引き下がる事に決めるのだった………

 

 

 

またしても主力が揃わず、半壊する状態で挑む事となった巫魔。美矢と因縁があるメンバーが所属するカナガワ代表鈴川高校相手に、積牙達は勝利を掴む事はできるのだろうか………!?

To Be Continued………




次回予告
遂に試合が始まり、先制は鈴川高校が得る事に。鈴川はキャプテンの天野宮がスピィーディーな戦略を見せ………!?
次回「お前の動きは」


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第262話 お前の動きは

前回までのあらすじ
一触即発の空気の中始まろうとする巫魔vs鈴川の試合。この試合では優と優真が出ない事から、主力が半壊したまま挑む事となり………!?


そして、互いのC、光一と大河の2人がセンターサークルに立つと、審判は少ししてボールを高く打ち上げた。これにより、両チームのCが飛び上がるが………

 

光一「負けるかよ! だりゃっ!!」

 

ジャンプボールを制したのは光一であり、あかりに向けてボールを叩き落とした。あかりがボールを受けようとした時、素早い動きで天野宮がボールを奪取してしまった。

 

あかり「ええっ!?」

 

光一「んなバカな………!?」

 

これには巫魔の中で驚きの声が上がる。天野宮は冷静な様子を見せると………

 

天野宮「よし、先制攻撃だ!」

 

そう言って、ドリブルを始めようとする天野宮。即座に美矢が天野宮の前に立つと、光一達がディフェンスにつき、速攻を潰す体制に。

 

天野宮「俺を攻めさせない気か、美矢」

 

天野宮は美矢に対しそう言い放つ。

 

美矢「あったり前だろ! お前の動きは速攻に秀でた動きだ。絶対攻めさせちゃ行けねぇ相手だ!」

 

美矢は天野宮の動きを知っていたようで、今の動きが通用していた事からも、戦術が大きく変わった訳では無い事も美矢は悟ったようだ。

 

天野宮「まあ、それはそうかもな………でも、甘いぜ………!」

 

天野宮は口元をニヤリとさせると、SGの鮫肌にボールをパスする。

 

美矢「なっ!?」

 

これに驚く美矢。次の瞬間には天野宮が美矢をかわし、鮫肌からボールをパスされる。

 

美矢「しまった………!!」

 

美矢はかわされてしまった事に動揺する。

 

光一「セッキー! 伊吹! 止めるぞ!!」

 

光一はディフェンスを呼びかけ、積牙と伊吹にもこれを共有する。

 

天野宮「ふっ、無駄だよ………!!」

 

しかし、天野宮は構わず突っ込んできた。

 

積牙「止める!!」

 

積牙は手を伸ばしてボールをスティールしようとするが、天野宮は逆を突いたドライブで積牙をかわす。

 

積牙「なっ!?」

 

積牙は驚きを隠せなかった。

 

伊吹「任せろ!」

 

伊吹がそこへ走ってくるが、天野宮は伊吹をもかわす。

 

伊吹「な、なんだと!?」

 

伊吹も驚きの声を漏らす。そして天野宮はシュート体制に………

 

光一「決めさせるか!!」

 

光一は跳躍してシュートコースを塞ぐ………が、天野宮はここで飛ばすにフェイクを入れてきた。

 

光一「(し、しまった………!!)」

 

光一は天野宮に翻弄されてしまった。そして光一が落下し始めたタイミングで天野宮は冷静にジャンプシュートを決めた。

 

優「1人で攻めて決められるだけの技量がある………こりゃ厄介かもな………」

 

それを見た優は、天野宮のプレイングを厄介と評するのだった………

 

 

 

開始早々に天野宮によって苦戦を強いられる巫魔。果たして、巫魔はこれに対抗出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
美矢を起点に反撃を試みる巫魔。だがそんな巫魔に対し、鈴川のPFである種馬が立ちはだかり………!?
次回「俺に勝てると思うなよ」


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第263話 俺に勝てると思うなよ

前回までのあらすじ
巫魔vs鈴川の対決が開幕。ジャンプボールを制した光一だが、ボールはあっさりと天野宮にスティールされてしまう。そして、天野宮のプレイングにあっさり先制されてしまうのだった………


美矢「まだまだ! ここから反撃行くぞ!!」

 

美矢はあかりからパスを受けると、右手の人差し指を挙げ、チームを纏める。

 

結衣「今チームで司令塔が出来る人は美矢さんしかいない………そう考えると、かなり大変なんじゃないですか………!?」

 

結衣は優に対しそう問いかける。

 

優「今回は僕や優真がベンチで、春香もいないからな………まあ、それでも頑張ってもらうしかないよ。美矢だってそれを承知の上でコートに立ってるはずだしね」

 

優はそう言ってこの状況を変えようなどとは微塵も感じない様子を見せた。そして、美矢が起点となってドリブルで攻め上がっていると………

 

天野宮「行かせないぞ!!」

 

天野宮が彼女の前に立ちはだかる。

 

美矢「甘いぜ、浩二!」

 

美矢はそう言うと、高く飛び上がる。

 

天野宮「(シュート………! スリーだとしてもまだ遠いんだぞ………!?)」

 

天野宮は困惑こそするが、対抗するように飛び上がる。だが次の瞬間、天野宮の右脇にボールを持ってくると………

 

美矢「積牙!」

 

そのまま積牙へボールをパスする。

 

天野宮「ぐっ………! (やられた………! 相変わらずフリーダムなパスだ………!)」

 

天野宮は美矢のパスを知っているようだが、出し抜かれた事には悔しくも、どこか懐かしいように笑っていた。そして、積牙はボールを受けると………

 

積牙「もらった!!」

 

積牙はレイアップで点を取ろうとする………が、そこへ種馬が駆け込んでくると………

 

種馬「でやああ!!」

 

積牙が右手に持っていたボールを勢いよく叩き落とす。落とされたボールは勢いよくコートに叩きつけられた。

 

積牙「ぐっ………!」

 

積牙は地面に膝を着く形で着地する。そして、コートに降りた種馬は優を指差し………

 

種馬「どうだ、白頭!! 俺が種馬一番のパワーファイター、種馬蕗様だ!!」

 

そう言って勝ち誇った顔を見せると………

 

種馬「俺に勝てると思うなよ、巫魔高校!!」

 

意気揚々とそう言い放ったのだが………

 

優「なあ、結衣ちゃん。現在ファール状況どうなってる?」

 

優はガン無視して、結衣に話しかけていた。

 

結衣「え? まだ誰もファールしてませんけど………?」

 

まだ試合が始まったばかりの為、当然困惑を隠せない。

 

種馬「聞け白頭〜!!」

 

種馬は怒りを顕にする。

 

美矢「(キャプテンはそういうの気にしないからな………)」

 

美矢は優の態度に、どこか呆れた様子でそう返すのだった………

 

 

 

鈴川の2大選手に苦戦させられる巫魔。果たして、この状況を巫魔は覆せるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
第1、第2Qと戦う巫魔と鈴川だが、苦戦を強いられ続けてしまう。そして、試合の中で美矢と種馬にアクシデントが………!!
次回「危ない」


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第264話 危ない

前回までのあらすじ
巫魔vs鈴川の対決。反撃に転じる巫魔の攻撃も、種馬のディフェンスに阻まれ、苦戦を強いられてしまうのだった………


その後、第1、第2Qを戦う巫魔と鈴川だが、スコアは32vs38と巫魔が6点ビハインドだった。

 

美矢「(マズったな………このままじゃいつまで経っても逆転の兆しが見えねえ………!)」

 

美矢は慌てた様子でそう考えていた。美矢にボールが渡った際、すぐさま天野宮がマークに来たが………

 

美矢「なら、これはどうだ!!」

 

美矢はそう言って天野宮の不意を突いたドライブで彼をかわす。

 

種馬「おいおい、何やってんだよ!!」

 

種馬はそう言って美矢の前に立ちはだかる。種馬はボールをスティールしようとするが………

 

美矢「ここだ!」

 

美矢は種馬が伸ばしてきた右手をかわし、彼の左側から突破を図る。

 

種馬「なっ!? くっそおお!!」

 

種馬はそう言って左手を伸ばす。

 

伊吹「あ、アイツ無理矢理ディフェンスに!?」

 

優真「………!! 危ない、美矢さん!!」

 

しかし、これは無理矢理なディフェンスであり、優真達は慌てて声を荒らげる。しかし、既に遅く彼女を押してしまう。

 

美矢「がっ!?」

 

美矢は種馬に押されてしまう。そして、この際、美矢は大きく吹き飛ばされた上に、コートラインギリギリで押されてしまった事で、審判団の机に頭から激突してしまう。

 

優「み、美矢………!!」

 

ここまで表情1つ変えていなかった優も、こればかりは青ざめていた。ベンチにいた優達は慌てて美矢へ駆け寄るが………

 

結衣「しゅ………出血してます………!!」

 

美矢は額から血を流していた。先程机に激突した際に傷が開いてしまったのだろう。こればっかりは種馬も愕然としていた。そして、そんな彼に審判が笛を鳴らして近づく。審判は左手で右腕を掴むジェスチャーと共に宣言する。

 

審判「アンスポーツマンライクファール!! 緑7番!!」

 

悪質なファールとされるアンスポーツマンライクファールを。

 

芽衣「あ、アンスポーツマンライクファール………!!」

 

観客席で見ていた芽衣は、失態とも取れるファールの宣言に驚きを隠せなかった。

 

修也「当然だろ。美矢姉を傷付けたんだから」

 

修也は美矢が怪我を負わされた怒りから、それが当然であると口にした。そして、コートでも天野宮が激怒の表情を浮かべており………

 

天野宮「ふざけんな、種馬!!」

 

これまで種馬を抑えていた彼も、今回ばかりは種馬に怒りをぶつけていた。

 

種馬「お、俺は………!!」

 

この時の種馬は、いつものお調子者としての顔が消えてしまっていたのだった………

 

 

 

鈴川相手に苦戦する巫魔。更に種馬によって美矢が頭から出血する大怪我を負ってしまう。果たして、この絶望的な状況を巫魔は乗り越えられるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
美矢の怪我により、彼女をベンチに下げざるを得なくなってしまう巫魔。すると、優が出場をゆうかへ直談判し………!?
次回「叩きのめしてやる」


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第265話 叩きのめしてやる

前回までのあらすじ
第1、第2Qを戦う巫魔と鈴川。巫魔が押されている状況の中、種馬によって美矢が大怪我を負ってしまい………!?


あまりの非常事態に巫魔はタイムアウトをとる事に。美矢は頭に包帯を巻いて止血を行っていたが、流石にすぐ試合へは戻せない。

 

ゆうか「………流石に美矢ちゃんは下げさせてもらうわ。激しい運動をしたら大変な事になってしまうから………」

 

監督のゆうかは美矢を下げざるを得ない事を口にする。つまり、ここで新たなPGを投入しなければならないのだ。

 

ゆうか「(参った事になったわね………美矢ちゃん程のPGを下げざるを得ないとなると、間違いなくチームのレベルは落ちる………)」

 

しかし美矢程のPGなど今の巫魔には殆どいない。そうなればレベルが落ちてしまうのは不可避であるとゆうかは考えていた………

 

優「………ざっけんな」

 

しかし、そんな状況で優はそんな言葉を漏らす。

 

優「………監督、僕を出してください」

 

そして、優はゆうかに対し出場を直談判した。それを聞いたゆうかは驚き………

 

ゆうか「で、でも………出来ればここで優くんは使いたくないわ………!」

 

ゆうかは優の出場を渋る様子を見せる。しかし………

 

優「そんなの知りません。ただでさえ春香がいないのに、美矢まで怪我ってなったら僕か優真のどっちかは絶対使うべきです。別に心配する事なんでロクに無いはずです。僕が簡単に負けるはずないですから………!!」

 

優は主力の半減を考えると共に、自らが負けないという自信を口にする………表向きはそんな事を呟いた優だが、巫魔のメンバーには今の優の内心が強く理解出来た。

 

優真「(キャプテン、あの人がとても許せないんだ………美矢さんを傷つけられた事がとても苦しくて………!)」

 

優真は優の内心をそう考えていた。ゆうかはかなり悩んでいたが………

 

ゆうか「………わかった。ここは君に任せるわ………!!」

 

最終的に優の出場を認める事に決めた。それを聞いた優は羽織っていたジャージを脱ぎ捨て………

 

優「………行くぜ!」

 

タイムアウト終了間際、優は気合を入れるようにそう呟いた………

 

 

 

そして両チームの選手がコートに戻る。種馬のアンスポーツマンライクファールにより生じた2本のフリースローを優が投げる事に。

 

種馬「………やっと出てきたなこの野郎。思わぬアクシデントを起こしはしたが………結果オーライだ」

 

種馬は強がるようにそう呟いたが………

 

優「………叩きのめしてやる、クズ野郎」

 

優はボソッと一言だけ、種馬にそう言い放つのだった………

 

 

 

美矢が戦線離脱に追い込まれてしまった巫魔。そんな中、ゆうかを押し切って優が試合に出場した。果たして、優の登場は試合にどのような影響を与えるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
怒りに燃える優は美矢に劣らぬPGのプレイングを見せる。そのプレイングで鈴川を引っ掻き回し………!?
次回「止められるわけねぇ」


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第266話 止められるわけねぇ

前回までのあらすじ
頭の出血により、戦線離脱を余儀なくされる美矢。それに怒る優はゆうかの反対を押し切って出場し………!?


その後、アンスポーツマンライクファールによる2本のフリースローを優が放つ事となったが、優は外すこと無く綺麗に決めた。アンスポーツマンライクファールであることから、巫魔ボールによる試合再開に。

 

あかり「優くん!」

 

あかりは優に対しボールをパスする。優は地面にボールを打ち付けながらゆっくりと歩いていく。

 

天野宮「………悪いが、幾ら君とて俺には構わないよ」

 

天野宮はそう言って優からボールのスティールを狙う。しかし、優は天野宮が走ってきたタイミングで突如走り出し、天野宮の隙を着いたドライブで、彼をかわしてしまった。

 

天野宮「えっ………!?」

 

天野宮は驚きの声を漏らした。

 

種馬「おいおい何やってんだ………!!」

 

種馬はそう言って優の前に立ちはだかる。しかし、優はノールックで種馬の意表を突いたパスを行い、ボールを積牙へ回した。

 

積牙「はあっ!」

 

積牙はそのままレイアップを決めた。

 

種馬「な、何が起こったんだ………!?」

 

種馬は困惑を隠せなかった。そして優は冷静な様子を見せながら………

 

優「皆、ディフェンスだ!」

 

ディフェンスを指示して鈴川の攻撃に備える。

 

天野宮「(戻りの指示も速い………! あのプレイングは美矢に負けず劣らずだぞ………!!)」

 

天野宮は優のプレイングに驚いていた。彼は仲間からボールを受けた後、反撃をするようにドリブルで駆け上がる。そこへ優がディフェンスへやってくると………

 

天野宮「(ここを抜いてやる………!)」

 

天野宮はそう考えながら優を突破しようとするが、そこへ優が手を伸ばし、天野宮からボールをスティールしてしまった。

 

天野宮「な、何っ………!?」

 

天野宮は驚きの声を漏らした。優はそのままドリブルでカウンターに打ってでる。優は少し走るとレイアップを狙う………

 

種馬「決めさせるか!!」

 

そこへ種馬が走ってくる。

 

優「お前なんかに………僕は止められるわけねぇ………!!」

 

だが、優はお構い無しに攻める。これにより優と種馬はぶつかった。しかし………!?

 

種馬「うあっ!?」

 

種馬は優に吹き飛ばされてしまう。審判の笛が鳴る中、優は構わずレイアップを決め………?

 

審判「………バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

得意の3点プレイを見せつけた。

 

伊吹「よーし! 優の3点プレイだ!!」

 

伊吹は喜ぶ様子を見せる。

 

天野宮「な、なんてプレイングだ………!!」

 

対して、天野宮は優のプレイングに驚きを隠せずにはいられなかった………

 

 

 

美矢と交代でコートに立った優は、美矢が抜けたとは思えない強気のプレイングを見せつける。ここから巫魔の逆襲が始まるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
途端に場を支配する優の姿を、エヒメ代表蜜柑高校は目にしていた。キャプテン鈴原風夏は彼のプレイングを前に………?
次回「異次元のプレイヤーね」


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第267話 異次元のプレイヤーね

前回までのあらすじ
美矢と交代でコートに入った優。美矢が抜けたハンデがある中、優はたった1人で鈴川を圧倒するのだった………!


1人で試合の流れを変えてしまった優。その光景は観客席の方でも驚きがあった。そして、この勝負を見ている高校が1つあった。

 

風夏「………白宮優さん………異次元のプレイヤーね」

 

それはエヒメ代表の蜜柑高校である。仮に4回戦へ進めば対戦するのは巫魔か鈴川。そう考えて試合を見に来たようであるが、ここまでやや鈴川が押していた所を、一気に押し返した優の姿に、キャプテンの鈴原風夏はそう呟いた。

 

風夏「夜々さんもそう思わない?」

 

風夏は隣に座っていた蜜柑高校のPG、夜々露華に問いかける。

 

夜々「強いとは聞いていたけれど、あの人だけその次元がおかしすぎる。守城の戦記さんが認めるのもよくわかるかな」

 

夜々はそう言って、優の圧倒的過ぎる実力を認めざるを得ない様子を見せた。そして、風夏の逆隣に座っていた風夏の妹、美香は………

 

美香「オマケにあの5番の人もいない中であれだもんね。お姉ちゃん達、勝てる?」

 

春香が現在離脱している事も指摘し、それを踏まえて勝てるのかを問いかける。

 

風夏「それは勿論。幾ら憧れの人だとしても………ね」

 

風夏はそう言って優の圧倒的な実力を前にしても、自信を崩すことは無かったのだった………

 

 

 

その後、第2Q終了まで試合は優の独壇場だった。スコアは44vs40と、優登場後の鈴川は2点しか取れなかった。

 

結衣「凄いですね、キャプテン………さっきまでの劣勢が嘘みたいです………!」

 

マネージャーの結衣は、優の圧倒的な実力に驚かされていた。

 

伊吹「強い奴と渡り合える強さだもんな、アイツ」

 

伊吹はそう言って優を肘で突っつく。

 

優「いじるなよ………」

 

優は少し恥ずかしそうな様子を見せる。どうやら先程と比較して冷静なようだ。

 

優「それより………美矢、頭の傷は大丈夫か?」

 

優は美矢に声をかける。

 

美矢「なんとかな………すまねぇ、キャプテン」

 

美矢は悔しそうな様子を見せながらそう呟く。

 

優「後半戦、後は任せな」

 

優はそう言って美矢を休ませようと考えていた。しかし………

 

美矢「………待ってくれ!」

 

美矢は優の腕を掴む。

 

優「美矢………?」

 

優は首を傾げる様子を見せる。

 

美矢「浩二や種馬との戦いをこんな形で終わらせたくない………頭の怪我がなんだ! 私はまだ諦めたくねぇ!!」

 

美矢は諦めたくなかった。それを聞いた優は驚きながらもニコリと微笑むと、彼女の肩を優しく叩いてゆうかの前に立ち………

 

優「………監督、僕はここで降ります。美矢を出してやってください」

 

優はそう言って美矢の出場を依頼するのだった………

 

 

 

一瞬にして流れを変えてしまった優。しかし、諦めたくない美矢を目にし、優は彼女の意を汲み取って出場させようとゆうかへ直談判をする。果たして、美矢の出場は認められるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
一方その頃、春香は第3のスリーを生み出す為にひたすらスリーを打ち続けていた。疲労も気にしない春香はガムシャラに取り組み続け………?
次回「休んでられません」


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第268話 休んでられません

前回までのあらすじ
優の大活躍により、巫魔有利で前半戦を終えた。しかし、諦める意志を見せない美矢に対し、優は彼女の出場を促し………!?


一方その頃、3つ目のスリー開発に春香は勤しんでいた。それに付き合っていた琴乃はメモを取りながら春香のスリーを記録していた。

 

琴乃「(シュート成功率はまだ6割程度………高く打ち上げる分、流石の春香ちゃんでも精度が狂ってしまうのね………)」

 

琴乃は現在の春香の状況を頭の中で整理。かつて自力で2つのスリーを産み出した春香でも3つ目のスリーを産み出すのは中々難しいのか、疲労が隠しきれなかった。

 

春香「はあっ、はあっ………」

 

春香は近くに転がっていたボールを拾い上げようとするが、手の力も無くなってきたのか、ボールは零れてしまう。

 

琴乃「一旦休憩しましょう? 疲れが隠しきれていないわ」

 

琴乃は春香を気遣う様子を見せる。

 

春香「………嫌です」

 

しかし、春香は休もうとはしない。

 

春香「皆さんが頑張っているのに………休んでられません………!!」

 

春香は、優達が戦っている中で自分だけ休む事は出来ないと考えていた。

 

春香「折角貰った時間を1秒だって無駄には出来ないんです………それに、もう少しで何かが掴めると思うんです………何かが………!!」

 

春香はそう言って、ボールを手に持つ。

 

春香「はあっ、はあっ………さあ、続きをやりましょう………!!」

 

春香は疲れを見せながらも練習を再開しようとする。

 

琴乃「………しょうがない子ね」

 

琴乃はそう呟きながらもフッと口元に笑いを見せると………

 

琴乃「付き合うわ。満足するまでね」

 

春香の練習に付き合う事を決める様子を見せるのだった………

 

 

 

そして視点は優達に戻り………優の訴えを聞いたゆうかは………

 

ゆうか「美矢ちゃんは頭を怪我しているのよ? ………正気なの?」

 

ゆうかは優の言葉に驚いていたのか、そう問いかけた。

 

優「嘘つくメリットなんて無いと思いますが?」

 

優は真剣な様子でそう返した。それを聞いたゆうかは驚きを隠せずにいたものの………

 

ゆうか「………異常を感じたら即座に下げる。それならどうかしら?」

 

ゆうかはそう言って条件付きで試合出場を認めた。

 

優「………どうも。さて、後は任せる」

 

優は美矢の肩を叩くと、彼女に後を任せる事に。それを聞いた美矢は驚きながらも………

 

美矢「………おう!!」

 

そう言って、試合へ戻る事を示すかのようにその場を後にするのだった………

 

 

 

春香と美矢は追い詰められながらも先へ進もうとしていた。果たして、それぞれに立ちはだかる壁に対し、苦しみながらも乗り越える事は出来るのだろうか………!?

To Be Continued………




次回予告
美矢が戻る形で試合が再開。頭に傷が出来ても美矢は積極的に攻め………!?
次回「他に気にすべき事あるだろうが」


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第269話 他に気にすべき事あるだろうが

前回までのあらすじ
琴乃と共に第三のスリーを開発する春香は休む間もなく練習を続ける。そして、美矢も優を通して出場が認められ………!?


審判「第3Q、始めます!」

 

審判は第3Qの開始を宣言。ここで美矢が頭に包帯を巻いたまま戻ってきた。

 

修也「美矢姉………! 頭怪我してるのに大丈夫なのか………!?」

 

観客席の修也は心配した様子を見せる。

 

天野宮「美矢………どうして戻ってきた………!?」

 

そしてそれは鈴川キャプテンの天野宮も同じ考えだった。巫魔ボールで試合が再開し、美矢にボールが回ってくる。

 

天野宮「頭の怪我はタダで済んでないはず………君は無理しないでベンチに戻るべきだ………!!」

 

天野宮は美矢と対峙し、慌てた様子で安静にするべき旨を告げる。それを聞いた美矢は………

 

美矢「………お前が心配してくれているのはよくわかるよ、浩二………でもな、他に気にすべき事あるだろうが!!」

 

天野宮の気遣いを受けつつも、意表を突いたドライブで天野宮をかわした。

 

天野宮「っ………!! (しまった………!!)」

 

天野宮は自身の甘さを突かれた事を悟った。

 

種馬「くそっ! 俺が止めてやる!!」

 

次に種馬が駆け込んでくる。しかし、美矢は一瞬でコート内を見回すと………

 

美矢「………伊吹!!」

 

種馬のマークから離れていた伊吹にボールが回る。

 

種馬「なっ!? 撃たすか!!」

 

種馬は素早い瞬発力で伊吹の方へ走り出す。しかし、伊吹はそう来ると予感していたのか、美矢にボールを戻した。

 

種馬「ば、バカな!?」

 

種馬は自身が翻弄された事に動揺。パスを受けた美矢はジャンプシュートを放ち、これを見事に決めた。

 

結衣「やった! 美矢さんが決めましたね!!」

 

結衣は喜ぶ様子を見せる。優は美矢の活躍に笑みを浮かべる。そして、美矢は天野宮達の方へ視線を向けると………

 

美矢「いいか、鈴川高校! 私の事をどう思おうが勝手だ! しかしな、手を抜いたら容赦しねぇぞ! 怪我人だからってナメンな、この野郎が!!」

 

彼等に向けて挑戦的な言葉を口にする。

 

天野宮「………!!」

 

この言葉は特に天野宮へ響いていた。するとそこへ審判が笛を吹きながら美矢の元へやって来て………

 

審判「12番! 発言に気をつけなさい!」

 

先程の言葉が暴言に聞こえたのか注意をしてきた。

 

美矢「へいへい」

 

美矢はそう言って自陣の方へと走っていった。優達は呆れた様子を見せつつも………

 

優「………美矢なら大丈夫そうだね」

 

優は美矢に安堵する様子を見せたのだった………

 

 

 

コートへ戻った美矢は、怪我を気にしないプレイングを見せつけた。そのプレイングによって、巫魔は追い風をキープする事が出来たのだった………

To Be Continued………




次回予告
美矢の活躍でオフェンス面で圧倒する巫魔。ディフェンスにおいても奮闘する様子を見せ………!?
次回「根性見せるぞ」


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第270話 根性見せるぞ

前回までのあらすじ
第3Q開幕と共にコートへ戻る美矢。彼女は怪我を気にしない強気なプレイングを見せつけ………!?


天野宮「まだまだ! ここで反撃するぞ!!」

 

天野宮はそう言って、ドリブルで上がっていく。だが、そこに美矢が駆けつけ………

 

美矢「ディフェンス! 根性見せるぞ、皆!!」

 

チームにディフェンスの意識を与える。

 

天野宮「(くっ………! 流石美矢だ………!)」

 

天野宮は美矢の実力を認め、どうにか突破方法を探るも、そう簡単には動けない為停滞状態に。

 

種馬「くそっ! 何やってんだ天野宮の野郎………!!」

 

種馬はそう言って2人の方へ駆け込んで来て、天野宮からボールを強奪した。

 

天野宮「あっ!? 何するんだ種馬!?」

 

天野宮は動揺を隠せずにいた。

 

伊吹「私を放置するなぁ!!」

 

しかし、ボールに視線が行き過ぎた為に伊吹の存在を見落とし、彼女にボールをスティールされてしまった。

 

種馬「なあっ!?」

 

種馬は驚きの声を漏らす。

 

美矢「よし、上がるぞ!!」

 

美矢がすかさず前線へ走り出す。

 

天野宮「させるか!」

 

しかし、天野宮はディフェンスを指示し、自らも美矢を前に立ちはだかるが………

 

美矢「はあっ!」

 

美矢は迷いなく天野宮を抜き去った。

 

天野宮「っ!? (あっさり抜かれた………!?)」

 

天野宮は驚きを隠せずにいた。

 

美矢「あかり!!」

 

美矢はすぐにスリーポイントラインの外側に立っているあかりへ声をかける。

 

天野宮「………! 鮫肌!」

 

天野宮は鮫肌へ声をかける………しかし、美矢はパスをせずにそのままレイアップを狙いに行った。

 

天野宮「………!! フェイク………!?」

 

天野宮はまんまとフェイクに騙された。

 

種馬「くそがああっ!!」

 

種馬はディフェンスへ走ってくるが、美矢は途端に光一へパスする。

 

優真「{自由なパス(フリーダムパス)}………!」

 

美矢は最高のタイミングパスを挟み………

 

光一「よっしゃあああ!!」

 

光一はすかさずツーハンドダンクを決める。

 

明日香「決まったー!!」

 

巫魔の雰囲気は大きく盛り上がる。そして、光一も地面に着地すると………

 

光一「やったぜ、美矢!!」

 

光一は美矢と力強いハイタッチを交わす。

 

美矢「うおっ!?」

 

美矢は光一の力に少し押された為に軽く後ずさった。しかし、チームに調子が来たのを悟ったのかフッと笑いを零すと………

 

美矢「………その調子で頼むぞ、光一!!」

 

光一の調子を更に上げる為に彼を褒めた。それを見た優は………

 

優「美矢も光一を扱うのが上手くなったな」

 

と、笑いを混ぜながらそう呟くのだった………

 

 

 

ディフェンスでも美矢達が奮闘し、スコアを伸ばしていく巫魔。果たして、このまま巫魔が勝利を掴めるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
流れを捕まれ、完全に押されてしまう鈴川。同時に天野宮は美矢への劣等感を見せ始め………!?
次回「俺はどうせ劣ってるんだ」


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第271話 俺はどうせ劣ってるんだ

前回までのあらすじ
美矢を中心とした巫魔は、鈴川相手にディフェンスでも奮闘。スティールの後に、スコアを伸ばしていくのだった………


天野宮「はあっ、はあっ………」

 

天野宮は苦しそうに息を吐く。だが、休む間もなく彼へボールが飛んできた為、天野宮はこれをキャッチする。

 

天野宮「皆、攻めるぞ! このまま突き放される訳にはいかない!」

 

天野宮はそう言って、どうにか差を縮めようと奮闘する。しかし………

 

美矢「もらった!」

 

今度は美矢が天野宮からボールをスティールしてしまった。

 

天野宮「なっ!? バカな………!?」

 

このスティールは天野宮へ強い精神ダメージを与えてしまった。零れ玉は慌てて戻ってきた鮫肌がボールの方へ飛び込むと、咄嗟に横のラインの外へ強く押し投げた。

 

審判「アウト・オブ・バウンズ! 白ボール!」

 

巫魔ボールにはなってしまったものの、間一髪で速攻反撃される事態は免れた。

 

鮫肌「天野宮………大丈夫か?」

 

鮫肌は天野宮へ心配の声をかける。

 

天野宮「ああ………助かった」

 

天野宮はどうにか冷静な様子でそう返した。鮫肌はすぐさまあかりのマークへ戻るが………

 

天野宮「俺は美矢程上手くは無い………俺はどうせ劣ってるんだ………」

 

天野宮は美矢に対し劣等感を抱いていたのか、独り言としてそう呟いて美矢の方へ走り出すのだった………

 

 

 

試合再開。ボールを投げ入れるのは伊吹であり………

 

伊吹「美矢!」

 

伊吹は美矢へボールをパスする。美矢はボールを受けたが………?

 

天野宮「行かせるか!」

 

直後にマークしていた天野宮がボールのスティールを狙ってきた。

 

美矢「………! よっと………!」

 

しかし美矢は間一髪でこれをかわした。だがこの時、偶然にも天野宮は汗によって濡れた床に足を取られて転んでしまう。

 

天野宮「あっ………!?」

 

その最、偶然にも美矢の方へ倒れてしまい………!?

 

美矢「………うおっ!? 」

 

美矢は巻き込まれる形で倒れてしまう。

 

審判「プッシング! 緑4番!」

 

当然これは天野宮のファールと取られた。

 

光一「美矢!!」

 

美矢への心配の声が漏れる中、美矢は………

 

美矢「平気だ………! 浩二も大丈夫か?」

 

特に痛そうな様子は見せず、逆に天野宮を心配する様子を見せた。

 

天野宮「俺は大丈夫だ………すまない、美矢」

 

天野宮も怪我は無いようで、美矢へ謝罪をする。

 

天野宮「(くそっ………! 美矢を相手に焦ってしまった………俺のバカ野郎………!!)」

 

しかし、彼女への申し訳なさはそう簡単に晴れず、自らを責めたてる様子を見せたのだった………

 

 

 

巫魔が調子に乗る中、鈴川は調子を落としてしまっていた。特に動揺が起きている天野宮は、このまま調子を崩してしまうのか………!?

To Be Continued………




次回予告
その後も天野宮は美矢を相手に圧倒され続けてしまう。それを見た美矢は、天野宮に異変が起きている事を悟り始め………?
次回「お前らしくないな」


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第272話 お前らしくないな

前回までのあらすじ
流れに乗る巫魔に対し、鈴川は押されてしまう。特に天野宮は美矢への劣等感も見せ始め………!?


巫魔のスローイン、伊吹が再び美矢へボールを回すと………

 

美矢「よし、行くぞ! 走れ、積牙! 伊吹! 光一!!」

 

美矢はインサイドの3人を前線へ走らせる。

 

天野宮「行かせるか!」

 

天野宮は美矢へマークをするも………

 

美矢「行くぞ! はあっ!」

 

美矢は構う事なくシュートを打つ。

 

種馬「バカな!? 距離が遠すぎるだろ!!」

 

しかし、そこはスリーポイントラインから大きく離れており、まず入る訳が無いところだった。案の定、ボールはリングに辛うじて届きはしたが、弾かれる。

 

天野宮「やっぱり………! リバ………!」

 

天野宮はリバウンドを取るように指示しようとしたが………

 

光一「おっしゃあああ!!」

 

光一はすかさずリバウンドボールをダンクでねじ込ませた。

 

種馬「な、なんだと!?」

 

種馬は入る訳が無いと考えていたのか、大きく驚いていた。

 

優「やってくれるぜ………信頼してなきゃできねぇよ、ありゃ………」

 

そして優もあっけにとられていたのか、苦笑しながらそう呟くのだった………

 

 

 

そして続く鈴川の攻撃。天野宮がドリブルで攻めるが………

 

美矢「はあっ!」

 

美矢は再びこれをスティールした。

 

天野宮「(ダメだ………! またボールを取られた………!!)」

 

天野宮は流れを完全に美矢へ奪われ、思った通りのプレイングが出来ない。

 

美矢「積牙!」

 

美矢は積牙にパス。積牙はジャンプしてボールをキャッチするも、落下の直後に誤って近くにいた大肌を押してしまい、大肌を倒してしまった。

 

審判「プッシング! 白10番!」

 

積牙はもはや恒例行事とも言えるようにファールを犯した。

 

優「ありゃ………あれで何個目だ?」

 

優は積牙のファール数を問う。

 

結衣「………3個目です」

 

どうやらこの試合でも3ファールを犯してしまっているようだ。

 

天野宮「(た、助かった………)」

 

鈴川は幸運にも積牙のファールに助けられた。しかし、美矢は天野宮へ近付くと………

 

美矢「どうしたんだ浩二? お前らしくないな………」

 

彼を心配する言葉をかける。

 

天野宮「………いや、なんでもない。第3Qもあと少しだ。こっちは負けてられないぞ………!」

 

天野宮は焦りを押し殺し、冷静を装ってそう返した。

 

美矢「………無理すんなよ?」

 

美矢は心配が隠せないのか、そう返してその場から走り出すのだった………

 

 

 

鈴川に押し寄せる不安の風は、美矢にも感じられる程にまで増大していた。試合時間は第3Q残り1分30秒と第4Qの10分。果たして、この勝負の行方は………!?

To Be Continued………




次回予告
第4Qへ突入後も巫魔の有利は崩れようとしない。それによって、鈴川のチーム内の空気は悪くなり始め………!?
次回「何やってんだよ」


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第273話 何やってんだよ

前回までのあらすじ
天野宮から漏れ出した美矢への劣等感は完全に試合の流れへ影響していた。そんな彼の様子に美矢も心配を見せ………?


そして第4Q。気づけばスコアは82vs54であり、試合は完全に巫魔有利の展開に。

 

美矢「積牙!」

 

美矢は最早頭の怪我など気にせんとばかりに、試合を有利に進める攻めを見せる。そして、ボールを受けた積牙はスリーポイントラインの内側で大肌と対峙する。

 

積牙「(今度は決める!)」

 

積牙は右側へ動く。大肌はそれに釣られるように動くが………

 

積牙「(………そこだ!)」

 

積牙はすぐさま左へ動き、大肌を抜くとすぐさまシュート。ボールは綺麗にゴールへと入った。

 

光一「よし! {リバースソニックジャンパー}だ!!」

 

積牙の必殺技が決まり、スコアを84vs54の30点差に伸ばす。これを見ていた修也は………

 

修也「………この勝負、決まりだな」

 

試合の流れを悟り、巫魔の勝利を確信した。

 

天野宮「はあっ、はあっ………(くっ………! このまま終わる訳にはいかない………!!)」

 

天野宮は懸命にドリブルで上がるが、またしても美矢がこれをスティールしてしまう。

 

種馬「な、何やってんだよ!!」

 

種馬は慌てて美矢のディフェンスに走るが、美矢はこれを見逃さず、フリーになった伊吹にパス。

 

伊吹「ナイスだぜ!」

 

伊吹はそう言って、ゴール下からシュートし、2点を追加。すると直後にブザーが鳴り………

 

審判「鈴川、タイムアウト!!」

 

鈴川の監督による判断で、タイムアウトが挟まれる事となったのだった………

 

 

 

しかし、鈴川のチーム内雰囲気は最悪でしかなかった。

 

種馬「おい、てめぇ! 天野宮!! さっきから取られてばかりじゃねえか!!」

 

種馬はそう言って天野宮に詰寄る。

 

天野宮「黙っててくれ………! 俺だって必死なんだ!」

 

天野宮もイライラが溜まっているのか、強く言い返した。

 

種馬「必死だと!? ふざけてんのか!!」

 

種馬も強くそう言い返す………

 

鮫肌「やめろ2人とも!!」

 

鮫肌が必死に仲を取り持とうとするが、2人は言い争いをやめようとしない。その様子は巫魔のベンチからもはっきり見えた。

 

優「………ありゃもうダメだ。チームとしての形が崩壊しかかっている」

 

これには優も苦言を呈する。しかし美矢は………

 

美矢「………なあキャプテン、キャプテンはあのままでいいのか………?」

 

優に対しそう問いかけた。それを聞いた優は………

 

優「………仮に止めたいとしてもそれは僕が解決すべき事じゃない」

 

厳しめにそう言葉を返すのだった………

 

 

 

鈴川の雰囲気は最早最悪であり、チームとしての体裁も形だけだった。果たして、このまま鈴川は崩れてしまうのか………!?

To Be Continued………




次回予告
タイムアウト終了後も、チームの雰囲気は悪いままだった。すると美矢が天野宮に対し怒りを顕にし………!?
次回「試合中に争うなよ」


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第274話 試合中に争うなよ

前回までのあらすじ
鈴川の雰囲気は最早最悪であり、天野宮と種馬に至っては口論を始めてしまう始末。鈴川のチームとしての体裁は最早形だけであり………!?


天野宮と種馬が口論を続ける中、タイムアウトが終了。天野宮達は試合へ戻るものの、相変わらず雰囲気は最悪であり、これでは試合どころではない。巫魔は今のメンバーのままで行く事になるが、ベンチに座る優はスポーツドリンクを飲みながら考え事をしていた。

 

優「(………修也達との件が僕にもあったから、美矢の気持ちは物凄いわかる。でもあの時と違って今の僕には何も出来やしない………出来るとすれば君しかいないんだ、美矢………)」

 

どうやら優は内心美矢に同情していたものの、自身は鈴川のメンバーとは何も関わりがない。その為に敢えて突き放す答えをするしか彼には出来なかったようである。そして、試合再開と共に、天野宮へボールが渡り、彼がドリブルで攻めていくと、美矢と対峙する。

 

美矢「………さっきの喧嘩、こっちにまで届いていたぜ」

 

美矢は天野宮に対しそう問いかける。

 

天野宮「………それはこっちの問題だ。美矢はほっといてくれ………!」

 

天野宮はそう言って美矢を抜こうとするが………

 

美矢「………ふざけんな!」

 

美矢はそう言って天野宮からボールをスティールする。

 

天野宮「美矢………!?」

 

これには天野宮も驚きを隠せず、思わず足が止まる。

 

美矢「別にお前らの関係なんざ今の私にはどうでもいい事さ………でもな、それをこの場で持ち込むなよ!」

 

美矢はそう言うと、再びドリブルを行う。

 

美矢「今は試合中だぞ………! 私達はお前達の喧嘩を見に来たんじゃない! お前達と勝ち負けを争いに来てんだ!!」

 

美矢はそう言うと、1人速攻でゴール下まで走り、ボールを片手に持ち替えて大きく飛び上がる。

 

美矢「だから………試合中に争うなよ!!」

 

美矢はそう言ってレイアップを決めた。

 

天野宮「美矢………」

 

天野宮は動揺していた。そして、美矢は振り向くと………

 

美矢「浩二! 種馬! お前達の仲は知らねぇ! だが、そんな喧嘩に夢中になってたらこっちが絶対勝つぜ!」

 

天野宮と種馬に向けてそう言い放つ。それを聞いた2人は言葉を失った。

 

審判「………12番! さっき警告しただろう!? ………次やったら問答無用でテクニカル取るよ!!」

 

審判は笛を鳴らして再び美矢へ暴言に近い私語を警告。しかも次注意する際はテクニカルファールを取ると警告する。

 

美矢「………へいへい」

 

美矢はやれやれと言った様子で軽い返事をするのだった………

 

 

 

最悪だった鈴川の雰囲気は、美矢の言葉で空気に変化を与えた。果たして、美矢の言葉は天野宮と種馬へどのように届いたのか………!?

To Be Continued………




次回予告
美矢の言葉を聞いた天野宮と種馬は、仲が悪いままだが、一時的に喧嘩をしない事を約束。すると2人は意外な連携を見せ………!?
次回「喧嘩は後だ」


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第275話 喧嘩は後だ

前回までのあらすじ
鈴川の険悪さ、特に天野宮と種馬の口論はチームの崩壊を招きかけていた。だが、美矢はそんなチームの雰囲気を変えるかのように、怒りを顕にして………!?


その後、試合は鈴川ボールによる再開。ボールはまた天野宮に渡る。

 

天野宮「(美矢………まさか君から説教を受けるとはね………)」

 

天野宮の中では、目の前にいる美矢の言葉が強く響いていた。その直後に美矢とマッチアップする。

 

美矢「行くぞ、浩二!」

 

美矢はボールをスティールする為に、激しいディフェンスを行う。天野宮は美矢のディフェンスによって攻めあぐねていた。

 

天野宮「(俺は美矢を超えようと努力を積み重ねてきたつもりだった。でも実際は違った………俺は知らず知らずのうちに、ずっと美矢の背を走っていた事を忘れてしまっていたんだ………)」

 

自分の劣等感を見せ、更にライバルとなったはずの美矢の言葉で、天野宮は自らが美矢の背を追いかけ続ける者であった事を思い出した。

 

天野宮「(チームの問題児を率いて、美矢と同等になった気だったんだ………情けないや、俺は………)」

 

天野宮はそう考え、心の中で自らを嘲笑った。

 

天野宮「(………しかし、俺は美矢に劣っていたとしても、自分の持つ手札で戦うしかない。例え美矢を抜く事が出来ずとも………!)」

 

だが、天野宮は現在が試合中である事から、自らの持つ技量全てを手札と見立てると、美矢の一瞬の隙を突き、種馬にボールを渡す。

 

種馬「っ………!?」

 

これに1番驚いていたのは種馬だった。

 

天野宮「決めろ、種馬!!」

 

直後の天野宮の言葉で我に返った種馬は振り向くと共にシュートを放つ。マークしていた伊吹が止めようとするが、身長の差で届かず、種馬が2点を加えた。

 

種馬「………どういうつもりだ、天野宮」

 

種馬は今起きた事象が信じられず、天野宮へ思わず問いかける。

 

天野宮「喧嘩は後だ、種馬。今は俺達で連携して美矢を………巫魔高校を倒すんだ!!」

 

天野宮は種馬に対し、今は試合に集中し、協力する事を持ちかけた。それを聞いた種馬は驚きながらも、満更でもない表情を見せ………

 

種馬「………俺の足を引っ張るなよ、天野宮!!」

 

そう言って、種馬は天野宮の考えに賛同した。その光景を目にした美矢は………

 

美矢「フッ………遅せぇよ馬鹿野郎………!!」

 

毒づきながらも、嬉しそうな様子を隠せずにはいられなかった。そして、ベンチで見ていた優も………

 

優「(互いに不安要素は無くなった………後は、どっちがこの試合を制するかだね………!)」

 

互いのチームに迷いが無くなった事を悟るのだった………

 

 

 

鈴川の雰囲気が回復し、遂に両チームが試合への不安を持つ事は無くなった。果たして、残る時間で勝利を掴むのはどちらのチームなのか………!?

To Be Continued………




次回予告
一方、スリーの開発を続ける春香は、シュートの成功率が安定しない理由を模索していた。メモを続けていた琴乃の言葉と彼女のメモで、春香は成功率を上げる方法に気付き………!?
次回「シュートを成功させるには」


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第276話 シュートを成功させるには

前回までのあらすじ
美矢の言葉で一時喧嘩を止める事に決めた天野宮と種馬。2人が見事な連携を見せた事で、どちらのチームも迷いが無い状況となり………!?


一方、第3のスリーの開発を続ける春香は、今になってもシュートを放つのだが、シュートの成功率はあまり安定しなかった。

 

春香「はあっ、はあっ………(シュートフォームは間違っていないはず………なのに、シュートの成功率がまるで安定しないわ………)」

 

春香は汗を拭き取りながらそう呟く。

 

琴乃「春香ちゃん、ちょっといいかしら?」

 

そんな中、琴乃が春香に駆け寄る。

 

琴乃「さっきから取ってるメモが面白い状況なんだけど………見る?」

 

琴乃はそう言って、春香に対しメモの話をする。

 

春香「メモ………ですか?」

 

春香はそう言うと、琴乃からメモを見せてもらう。するとそこには、春香のシュートの成功率と、成功の際に琴乃が独自にきづいたことがびっしりメモされていた。

 

春香「(相変わらず凄い分析力………あら?)」

 

春香はメモの量と的確さに驚きながらも、ある点に着目した。

 

春香「シュートが決まっている際、沈み込みが長い………?」

 

それは、シュート成功時、春香はいつもよりも長く沈み込んでからジャンプしている事についてであった。

 

琴乃「面白いわよね、その記録」

 

琴乃はそう言って、記録の内容を面白がっていた。春香には何が面白いのか分からず首を傾げていたが………

 

春香「………!! つまり、シュートを成功させるには………! 」

 

春香はメモから何かヒントを得たようで、再びボールを掴む。そして、春香はメモの通り、長く沈み込む形で跳躍力を得ると、普段より高く飛び上がり、シュートを天高く放つ。高く打ち上がったボールは綺麗で巨大な弧を描き、リングへ入った。

 

春香「で、出来た………!!」

 

春香はシュートが決まった事に驚いていた。

 

琴乃「あら………まさか本当にこれを決めるとは………」

 

琴乃はそう言ってクスッと笑う。

 

春香「琴乃さん………!」

 

春香は琴乃に対して喜ぶ様子を見せると………

 

春香「………後は反復練習あるのみ………! また何か気づいたら教えてくださいね!」

 

春香はそう言うと、再びシュート練習を行う事に。それを見ていた琴乃は………

 

琴乃「全く………休む気のない子ね………まあ、思わず褒めたくなるけど………」

 

春香の休憩しようとしない努力の鬼っぷりに苦言を呈しながらも、彼女を褒める言葉を口にするのだった………

 

 

 

第3のスリー開発に苦戦していた春香。しかし、琴乃のメモで成功率を大きく上げるきっかけを見つけた。果たして、このまま第3のスリーを完成させる事は出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
春香が練習を続ける裏で、巫魔と鈴川の対決も白熱していた。そして、この対決にようやく終わりが訪れ………!?
次回「長かったな」


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第277話 長かったな

前回までのあらすじ
シュート成功率の不安定さに悩む春香。しかし、琴乃のメモを見た春香は、そのコツを掴み………!?


視点は巫魔vs鈴川へ戻り………両チームの選手達は一進一退の攻防を繰り広げていた。タイムアウト以前までいい所が無かった鈴川も、続々と点を重ねていく。しかし、途中の大量リードが響いてしまい………

 

審判「試合終了!!」

 

ブザーが鳴り、第4Qは終了。94vs70で巫魔の勝利になった。

 

光一「よっしゃああ! 3回戦突破だ!!」

 

巫魔のチーム内では大きく盛りあがっていた。ベンチに腰掛けていた優も………

 

優「長かったな………でも、無事に勝った。春香、約束は守ったぞ………!」

 

この場に居ない春香へ想いを呟くのだった………

 

 

 

種馬「負けた………」

 

一方、鈴川の選手達は敗れた事に涙を流していた。そして、天野宮も目から涙を見せていた。

 

天野宮「俺達の夏は終わりなのか………」

 

天野宮はそう呟く。そこに種馬が駆け寄ると………

 

種馬「………こんな事なら、もっと真面目にやるべきだったな、俺達」

 

後悔の混じった言葉を口にする。

 

天野宮「種馬………」

 

天野宮は種馬の言葉に驚いていた。そこに美矢が近付くと………

 

美矢「………今回は私の勝ちだな」

 

そう言って、握手を求める様に手を伸ばした。

 

天野宮「………俺達は君を大怪我させたんだぞ………? 握手なんて………」

 

天野宮は驚きを隠せずにおり、握手を拒否しようとするが………

 

美矢「あれは仕方ねぇ事だ。それに………いつまでも昔の事を引き摺るのはやめにしないか………?」

 

美矢はもう過去の蟠りを攻め合うのはやめるつもりだった。それを聞いた天野宮達は更に驚くが………

 

美矢「………私達がこの先喧嘩するんだとしたら………バスケで白黒つけようぜ。それが、バスケ選手たる私達が決められる方法だろ?」

 

美矢はそう言って、喧嘩をするならバスケ………というように、バスケ選手としての顔でそう返した。それを聞いた2人は美矢の手を掴み………

 

天野宮「………悪かった………次の対決はなんの蟠りもなくやりたいな」

 

天野宮は次にクリーンな対決を求め………

 

種馬「………次は俺が勝つからな」

 

種馬は次の対決では勝つと宣言。それを聞いた美矢は………

 

美矢「………おうよ!」

 

笑顔を見せながら応じる。そして、試合を見ていた修也達は………

 

アリサ「色々解決したみたいだね」

 

美矢達の関係が修復された事を予感する。

 

修也「よかったな、美矢姉………!」

 

修也は美矢に対し、そう呟くのだった………

 

 

 

3回戦、巫魔vs鈴川の対決は巫魔の勝利を得た。巫魔は4回戦へコマを進めるのだった………

To Be Continued………




次回予告
優は春香の様子を見に行く為に1人で会場を後にする。残った積牙達は次の試合を見る為の移動の際、次に試合を行う蜜柑高校のメンバーと出会い………!?
次回「蜜柑高校です」


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第278話 蜜柑高校です

前回までのあらすじ
巫魔vs鈴川の対決は、巫魔が逃げ切る形で勝利した。そして美矢と天野宮達も無事に和解出来たのだった………


巫魔がベンチで片付けをする中、優はさっさと荷物を纏め………

 

優「悪いが僕は先に帰るよ。春香の様子見に行かなきゃ」

 

春香の様子を見る為に先に帰る事を告げた。

 

美矢「おう。私達もぼちぼち経ったら帰るよ」

 

一方で他の巫魔メンバーは残る事に。優は1人さっさと会場を後にする。

 

光一「おーし、俺達は試合見てこうぜ」

 

一方、美矢達は会場を出て廊下を歩いていると、前から、ジャージの下に見た事のあるユニフォームを着たチームが歩いてきた。

 

積牙「………! 蜜柑高校………!!」

 

積牙が思わず名前を口にすると………

 

風夏「………あら、巫魔高校の皆さんですね」

 

蜜柑高校キャプテンの鈴原風夏が声をかける。

 

風夏「顔を合わせるのは初めてですね。改めまして、私達はエヒメ代表の蜜柑高校です。そして、私がこのチームのキャプテン、鈴原風夏です」

 

風夏が自己紹介をすると、後ろから夜々が顔を出し………

 

夜々「蜜柑高校、副キャプテンの夜々露華です」

 

自らが副キャプテンである事を名乗った。

 

美矢「PGのやつか………!」

 

美矢は彼女がPGである事を覚えていたようで、そう呟く。

 

風夏「………あら? そちらはキャプテンも副キャプテンも不在なのですか?」

 

そして風夏は、優と春香の不在に首を傾げる。

 

美矢「………キャプテンはさっき帰った。春香は今日はいねえよ」

 

美矢は2人の不在理由を口にする。すると………

 

??「なーんだ。例のスリーポイントシューターは今日いないのか………宣戦布告したかったのにな」

 

髪をツインテールに束ねた少女が、風夏達の後ろから顔を見せる。

 

美矢「………誰だアンタ」

 

美矢が名前を問いかけると………

 

??「天野美矢………案外貴女とも戦うかもね。いいよ、名乗ってあげる。私は冬野佳代。蜜柑高校のGだよ」

 

少女改め冬野は自らについて名乗った。

 

光一「へっ、お前なんかが春香に勝てるかよ」

 

光一がそう毒づいたのだが………

 

冬野「………誰?」

 

冬野は光一を認知していないのか、首を傾げた。

 

光一「何っ!? 俺は巫魔高校ナンバーワンCの相田光一だ!」

 

光一は怒りを見せながら名乗るも………

 

冬野「………眼中に無いよ。というか、巫魔って有名選手以外は影薄いもんね」

 

冬野は逆に喧嘩腰とも取れる言葉を返した。

 

光一「なんだとー!?」

 

そんな彼女の態度に、光一は思わず殴りかかろうとし、美矢達は慌てて光一を取り押さえるのだった………

 

 

 

美矢達は偶然蜜柑高校のメンバーと顔を合わせるが、優と春香がいない中で一触即発の空気を生み出してしまう。果たして、巫魔と蜜柑の雰囲気はどうなってしまうのか………!?

To Be Continued………




次回予告
一触即発の空気は、風夏が仲裁に入った為に難を逃れた。しかし、風夏は巫魔にまとめ役が少ない事に対して苦言を呈し………?
次回「少しは自立してください」


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第279話 少しは自立してください

前回までのあらすじ
優は春香の様子を見に行く為先に帰宅。美矢達が残る事になったが、途中で鉢合わせた蜜柑高校の選手と一触即発の空気になってしまい………!?


冬野「………呆れた。キャプテンがいない巫魔ってこんなに煽り耐性ないんだね」

 

冬野は呆れた様子でそう吐き捨てるが………

 

風夏「冬野さん、はしたないですよ」

 

風夏はそう言って冬野を窘めた。ここまで憎まれ口を叩いていた冬野だが、風夏の言葉を聞いた途端………

 

冬野「………はーい」

 

先程の態度が嘘のように素直に応じた。

 

美矢「(あっちのキャプテンの言葉であの生意気女が黙った………! 相当キャプテンシーもあるんだな………)」

 

それを見た美矢は、風夏のキャプテンシーに思わず感心してしまう。そして風夏は美矢達の前へやって来ると………

 

風夏「………でも大変失礼な話ですが………キャプテンの優さん抜きで争いを起こしかけるのではとても心配になります………少しは自立してください」

 

薄々持っていた巫魔への苦言を口にした。

 

美矢「お、おう………すまねぇ」

 

美矢は思わず謝罪の言葉が出てしまった。

 

風夏「………それでは、こちらはそろそろ試合ですのでまた」

 

そして風夏達は、試合へ向かう為にコートの方へ歩き出した。

 

光一「あー! ムカつく! こうなったらアイツらの試合見てこうぜ!! まだアイツらが4回戦の相手とは限らねえし!!」

 

光一はムキになったのか、風夏達蜜柑高校の対決を見ていこうと言い出した。

 

美矢「………ま、見に行くのはありかもな。キャプテンと春香への手土産にするぞ」

 

美矢は見に行く事自体は賛成し、巫魔高校メンバーは試合を見に行く事に決めたのだった………

 

 

 

そして蜜柑高校の3回戦。巫魔高校メンバーは試合を見る事になるが、相変わらず技巧と言えるシュートに美矢達は驚きを隠せないばかりだった。

 

美矢「相変わらずとんでもねぇシュートを撃つチームだ………」

 

美矢は1度目にしているにも関わらず、そのような事を呟いた。

 

光一「ふん、こっちだってなんとかすると思うぜ………優が」

 

光一は舐めているように見せて、どこか優頼みの事を口にする。

 

積牙「キャプテン頼みじゃないですか………」

 

積牙は呆れた様子でそう返す。そんな中、冬野は相手のスリーポイントシューターのシュートをブロックした。

 

優真「あの人、凄いですね………まるで守城高校の山野さんみたいです………」

 

優真はその光景を見て、守城高校のG山野理香を思い出していた。

 

美矢「………こりゃ本当に、キャプテンにも出てもらうべき相手かもな………」

 

そして美矢は、蜜柑高校相手に優の力も必要である事を呟くのだった………

 

 

 

蜜柑高校の選手達はレベルが高く、巫魔も優を温存する余裕は消えかけていた。果たして、巫魔との対決に近づいている蜜柑高校に対し、巫魔の精神はどのように変わっていくのか………!?

To Be Continued………




次回予告
蜜柑高校の3回戦は、蜜柑高校が大差で勝利を掴んだ。これにより、4回戦の相手は蜜柑高校に決まり………!?
次回「やっぱり蜜柑高校か」


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第280話 やっぱり蜜柑高校か

前回までのあらすじ
蜜柑高校の冬野は、風夏によって口を閉じたが、風夏には苦言を呈される。まんまと煽りに乗った光一の意見で、蜜柑高校の試合を見に行く事になるが、相変わらずその強さは果てしなく………!?


審判「試合終了! 114vs48で、蜜柑高校の勝利!」

 

結果として、試合は風夏達蜜柑高校が勝利した。

 

美矢「やっぱり蜜柑高校か………4回戦、これは奥泉に当たった時より厄介な事になったぞ………」

 

美矢は、試合の結果についてそう呟く。

 

優真「やっぱり明日はキャプテンがいないと厳しいのでしょうか………?」

 

優真は美矢に対してそう問いかける。

 

美矢「ああ………それに、春香の力もな」

 

美矢はそれに付け加える形で、春香の力も必要だと口にするのだった………

 

 

 

その頃、琴乃と練習を続ける春香。この頃にはシュート成功率が9割程にまで向上し、10回に1回外すか外さないかの安定したものに。

 

琴乃「(疲労困憊でこれだけの成功率………万全なら成功率は99.9%にまで向上しそう………これはもう、実質的な完成ね………)」

 

琴乃から見て、春香の第3のスリーは実質的に完成していた。春香はここまで休憩無しで撃ち続けていた為、琴乃がそう考えていた直後に、とうとうボールを掴む握力もなくなるばかりか、フラッと倒れかけた。

 

琴乃「あっ………! 春香ちゃん!!」

 

琴乃が慌てて走り出そうとした時、突如駆けつけてきた巫魔ジャージを着た白髪の男が春香の体を支えた。

 

春香「はあっ、はあっ………ありがとう………ございます………優さん………」

 

春香を助けたのは、先に会場を後にしていた優だった。

 

優「辺り一面ボールだらけとは………こりゃ相当投げたんだな」

 

優は春香に対しそう呟く。春香は息を上げながら………

 

春香「はあっ、はあっ………試合には………役立ちそうです………!」

 

自信を持った様子でそう返した。

 

優「………そっか」

 

優は一言だけ、優しくそう返した。

 

琴乃「………試合はどうだったの? 見た感じ、全然疲れてなさそうなきがするけれど………」

 

琴乃は優に対し、巫魔の3回戦の結果を問いかける。

 

優「無事に巫魔の勝利です」

 

優は巫魔の勝利を伝えた。

 

琴乃「春香ちゃん抜きでよく戦えたわね………」

 

琴乃は巫魔が勝った事に驚いていた。

 

優「まあ、皆頼りになりますから」

 

優は仲間達のお陰と口にする。それを聞いた琴乃は………

 

琴乃「………その思考も相変わらずみたいね………」

 

そう言って優に対し、クスッと笑う様子を見せたのだった………

 

 

 

巫魔が4回戦に戦う相手は蜜柑高校に決まり、同時に春香第3のスリーも完成した。続く4回戦も激戦が予想され、優の知らぬ所で巫魔と蜜柑の因縁も生まれるなど、波乱の展開となったのだった………

To Be Continued………




次回予告
屋敷に戻った優達。だが、戻った直後に蜜柑高校のメンバーと口論になった事を知ってしまい………!?
次回「馬鹿な真似してくれてさ」


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第281話 馬鹿な真似してくれてさ

前回までのあらすじ
蜜柑高校が試合を制し、巫魔の4回戦の相手は蜜柑高校に決まった。一方、春香の方も第三のスリーを実質的に完成させ………!?


その後、優は春香をお姫様抱っこしながら白宮家の屋敷に戻ってきた。

 

春香「お姫様抱っこされなくったって自分で歩けますよ………それに、私の汗で蒸れちゃいますよ………?」

 

春香は首を傾げる様子を見せる。

 

優「うそつけ。ボールすら持てない君が歩けるわけないだろうが」

 

優はそう言って頑なに春香を下ろそうとしなかった。屋敷の中へ入ると、そこにはあかりが立っていた。

 

あかり「優くん………春香ちゃんと共に今戻ったのね?」

 

あかりは優に対しそう問いかける。

 

優「あかりじゃないか。でもどうしてここにいるんだ?」

 

優は不思議そうな様子を見せる。

 

あかり「………言おうか迷ったんだけど………話があるの」

 

あかりは優に対し、4回戦の相手は蜜柑高校になった事………その蜜柑高校の選手と光一が口論になった事を優に話した。

 

優「………おいおい、あの馬鹿野郎………馬鹿な真似してくれてさ………」

 

優は呆れる様子を見せると………

 

優「あの馬鹿は後でシメるとして………教えてくれてありがとうな、あかり」

 

優はあかりに対し礼を語る………

 

あかり「………ごめんね。私が止められなくて………」

 

あかりは申し訳なさそうに優へ謝罪する。

 

優「………あかりが謝る事じゃない。このチームの問題児共は癖が強い。その事は僕がよく知っているからな」

 

優はあかりを励ます。

 

優「………取り敢えず光一の野郎には明日謝らせるとして………あかりは休んでおいてくれ。明日、春香がフルで出ない可能性も充分有り得る話だからな」

 

優はあかりに対しそう言うと、春香を連れて部屋に戻る。あかりは優の背を見て………

 

あかり「貴方をキャプテンに選んでよかった………私には、皆をまとめる事なんて出来ないからね………」

 

優をキャプテンに推薦した事を、嬉しそうに呟いていたのだった………

 

 

 

部屋に戻った優は、春香をベットに寝かせる。

 

優「次の相手は蜜柑高校か………まあ予想通りな気もするけどね」

 

優は春香に対して自身の考えを語る。

 

春香「………琴乃さん達を倒したからですか?」

 

春香は、優がそう予測する理由を問いかける。

 

優「それもあるけど………あの変化球のシュートが気になる。研究が必要だ」

 

優はそう言って近くのモニターの電源をつけると、蜜柑高校の試合を見る。

 

春香「試合は明日ですけど………攻略出来るんですか?」

 

春香は不安な様子で問いかける。

 

優「フッ………するさ」

 

優はどこか自信を持ってそう返すのだった………

 

 

 

4回戦の相手である蜜柑高校攻略を始める優。果たして、優は攻略法を見つける事が出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
次の日、ようやく巫魔高校と蜜柑高校の試合が始まる事に。そして、両チームのキャプテンがいよいよ直接対面し………!?
次回「運命の時ですね」


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第282話 運命の時ですね

前回までのあらすじ
白宮の屋敷に戻った優達。優は帰って間もなく、明日に向けた準備を始め………!?


翌日、優達は試合会場へやってきた。

 

優「………さて、覚悟を決めて行こうとするか」

 

優はそう言うと、仲間達と共に試合のコートにやってきた。その後、優達が自分達のベンチで準備をしていると………

 

風夏「こんにちは、巫魔高校の皆さん。それに………初めましてですね、巫魔高校キャプテンの白宮優さん」

 

蜜柑高校キャプテンの鈴原風夏が、副キャプテン夜々を引き連れてやってきた。

 

優「………アンタがキャプテンか。色々調べさせてもらったよ。蜜柑高校は創部2年目のチームだが、その実力はとてつもなく高い………まさか、 僕と同学年だったとは思わなかったよ」

 

優は風夏に対してそう返した。そして、会話の中で風夏が2年生であった事もこの時明らかとなった。

 

風夏「………そこまで調査しているとは恐れ入ります」

 

風夏は優の調査力に感心を見せていた。

 

優「ああ、それと………」

 

優はノールックで光一の耳を掴んで引っ張る。

 

光一「いでっ!? な、なんだ!?」

 

光一は何がなんやら分からず騒いだ。

 

優「このバカがそっちのチームと口論になったと聞いてな。大変申し訳ない」

 

優は先の光一の事を風夏に謝罪する。

 

風夏「いえ、お気になさらず」

 

風夏は特に気にしておらず、笑ってそう返した。

 

風夏「それよりも、いい試合にしましょうね。私達は決して容赦はしませんから」

 

風夏はそう言って、優達に宣戦布告とも取れる言葉を言い放つ。

 

優「………こちらこそ容赦はしない。アンタ達の事を叩き潰す………そのつもりで戦わせてもらう………!!」

 

負けじと優も強気な様子でそう言い放つ。その後、優と風夏は握手を交わした後、風夏達は自分達のベンチへと戻る事に。

 

夜々「………思ったより強気に返して来たね」

 

夜々は優の言葉に多少驚いていたのか、意外そうな様子で風夏へ声をかける。

 

風夏「流石としか言いようがないわね。あの人らしい………」

 

風夏はどこか嬉しそうに呟いた。そして、一度深呼吸をすると………

 

風夏「さあ、運命の時ですね。私達が勝つか、巫魔が勝つか………全てをこの試合で決めましょう………!」

 

巫魔との試合に挑む覚悟を混ぜた言葉を口にする。そして、優も風夏の後ろ姿を目にし………

 

優「………悪いが、アンタの{蛇のシュート(スネークシュート)}の原理は分かった。この試合でまともに決めさせると思うなよ………!」

 

風夏の必殺技、{蛇のシュート}について理解したかのような様子でそう呟くのだった………

 

 

 

遂にやって来た巫魔高校vs蜜柑高校の対決。ベスト8を賭けたこの試合の勝者が、次の準決勝に進めるこの勝負。果たして、これを制するのはどちらなのか………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔高校のスタメン発表。久しぶりに優がスタメンとして起用される中、その中に春香の名前は無かった。ゆうかとしてはまだ春香を温存する理由があるようで………?
次回「春香ちゃんは温存よ」


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第283話 春香ちゃんは温存よ

前回までのあらすじ
遂に巫魔高校と蜜柑高校の試合が始まろうとしていた。両チームのキャプテン同士では普通に会話しつつも、火花を散らす様子を見せ………!?


そして巫魔はベンチ内でスタメンを発表していた。

 

ゆうか「今回のスタメンは………美矢ちゃん、光一くん、積牙くん、あかりちゃん。そして………優くんよ」

 

今回のスタメンは美矢、光一、積牙、あかり、そして久々にスタメンとして出場する優だった。

 

光一「ここに来て優をスタメンで出すのか」

 

光一は優が久々にスタメン出場する事についてそう呟いた。

 

積牙「でも………春香先輩はスタメンじゃないんですか?」

 

しかし、ここで春香を出さない事に積牙は首を傾げた。

 

ゆうか「春香ちゃんは温存よ。正直、あっちにいるGの8番ちゃんが、今の春香ちゃんにとって天敵になり得そうなのよね………」

 

ゆうかは、蜜柑高校の8番にしてGの冬野佳代の存在が目に止まっていた。もしや春香対策のGではないか。そう考えたのか、スタメンから出すのはリスキーと考えて出さないようだ。

 

優「春香対策ならどこの学校もやってるとは思うけど………まあ、詳細がはっきりしてないんだ。理にかなってはいる」

 

優はゆうかの策に賛成し、春香を下げたまま試合に挑む事に覚悟を決めていた。

 

春香「優さん、それでも私はこの試合、必ず途中で出ると思いますよ?」

 

春香は優に対し、自分は必ず出る事を宣言する。

 

優「………知ってる。だから、準備して待っていなよ」

 

優はそう言うと、春香の前で、蜜柑ベンチの冬野を指さした。春香は一瞬のうちに彼の意図を察し、にこやかな表情の中、静かに頷くのだった………

 

 

 

一方、蜜柑高校のベンチでは、優が出てくるという事で小さくざわついていた。

 

風夏「どうやら今回は初めから出てくれるらしいですね、優さん」

 

風夏は嬉しさを隠せない様子でそう呟いた。

 

冬野「でも、あの白髪のスリーポイントシューターが出ないんじゃ、結局フルメンバーではないじゃん」

 

その一方、冬野は春香が出場しない事に不満を見せていた。

 

風夏「どうやら巫魔の監督は恐ろしいくらいの慎重派みたいですからね。どうやら春香さんを引っ張り出したかったら、実力で引っ張り出すしかないようですね………」

 

風夏はゆうかの性格をそう認識すると、実力で春香を引っ張り出す事を決め、強かな表情を見せながらそう呟く。それを見た冬野は………

 

冬野「………風夏のそういうとこ、たまに怖いなって思うよ」

 

風夏に対して抱いていた恐怖の感情を、思わず覗かせるのだった………

 

 

 

今回の試合では優が出る代わりに春香が下がる為、結局ベストメンバーでは無い巫魔。果たして、蜜柑高校の実力とは………!?

To Be Continued………




次回予告
いよいよ開幕する巫魔vs蜜柑の対決。インサイドにおいては強い巫魔は先制点を奪う事が出来たが、それによって風夏がいきなり必殺技で反撃を行い………!?
次回「手を抜く気はないですから」


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第284話 手を抜く気はないですから

前回までのあらすじ
巫魔は優を出す代わりに春香を出さない戦術で挑む事となった。それに対し蜜柑の冬野が文句を言う中、風夏は実力で引っぱり出す事を決め………!?


今回の試合における両チームのスタメンは以下の通りである。

 

巫魔高校(黒)

PG 12番 天野美矢

SG 5番 白宮春香

SF 10番 江野積牙

PF 4番 白宮優

C 17番 相田光一

 

蜜柑高校(白)

PG 5番 夜々露華

G 8番 冬野佳代

SF 4番 鈴原風夏

PF 7番 保谷翼

C 6番 十夜龍我

 

今回も試合には修也達3人が駆け付けた。

 

アリサ「あれ? 春香、今日はいるけどスタメンじゃないの?」

 

アリサはこの日、春香がいる事は目にしつつも、スタメンでなかった事には首を傾げる。

 

??「らしいですね。こっちが折角特訓したのに………」

 

アリサの隣に座る人物は、自身の不満を呟く。

 

修也「確かに………って、誰!?」

 

修也はその人物が突然現れた事に驚いていたのだが………

 

芽衣「あっ………! 確か奥泉高校の山吹琴乃さんですよね!?」

 

芽衣はその人物………琴乃の事を知っていたようだ。

 

琴乃「今回の相手………蜜柑高校は実績のないチームながら、その実は全国クラスのとても厄介なチームよ」

 

琴乃は蜜柑高校の強さをそう評した。そして、コートのセンターサークルでは光一と、蜜柑高校スタメンで唯一の男である十夜が立っていた。

 

光一「(コイツ、俺より背が低いな………)」

 

光一は十夜の背が低い事を目にする。そして審判がボールを打ち上げた事で試合が開始。

 

光一「もらった!」

 

光一は上背の対決で勝利し、ボールを美矢の方へ叩き落とす。

 

美矢「キャプテン!」

 

美矢は即座にボールを蜜柑ゴールの真上に上げる。

 

冬野「ど、どこ投げてるの!?」

 

冬野は美矢のプレイに驚きを隠せなかった。直後、優がゴールの方へ走り込み、強烈なアリウープを決めた。

 

夜々「アリウープ………!」

 

優と美矢の見事なプレイングでいきなり先制点を得た巫魔。こによって蜜柑に衝撃を与えた………風夏を除いて。

 

風夏「夜々さん!」

 

風夏は優どころか、巫魔メンバーがろくにディフェンスポジションに立ててない中で、中央の夜々にボールを渡し、すぐに自身も前線へ走り出した。突然の動きに思わず出遅れてしまった優達は………

 

優「まずい………!咄嗟にディフェンスに走れるのは光一だけだ………!!」

 

光一以外まともにディフェンス出来ないという危機に押されていた。夜々から再び風夏にボールが戻ると………

 

風夏「お見せしましょう! {蛇のシュート(スネークシュート)}を!!」

 

風夏は強烈なスピンをかけると、ゴールの真横へボールを放る。

 

光一「(やべぇ………! 例のシュートか………!)」

 

光一は何とか止めようとしたが、ボールは突如ゴールへ方向転換し、ゴールに沈んだ。

 

修也「すげぇ………あんなシュート撃てるのかよ………!!」

 

観客席で見ていた修也は、思わずシュートの凄さに驚いていたのだった………

 

 

 

巫魔vs蜜柑の対決は、どちらも点を取る激しい展開から始まった。果たして、最初に流れを掴むのはどちらなのか………!?

To Be Continued………




次回予告
両チームが流れを取ろうとする中、優は風夏の{蛇のシュート}を止めに行く事を決め………!?
次回「あっちの必殺を止めに行く」


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第285話 あっちの必殺を止めに行く

前回までのあらすじ
巫魔vs蜜柑の試合が開幕。美矢から優へのアリウープで先制点を奪う巫魔だが、風夏は必殺の{蛇のシュート(スネークシュート)}で同点に追いついてきて………!?


優「まだまだ! ここから流れを奪わせるな!!」

 

優はそう言って、流れを取られないように声を上げ、ゴール下から美矢へボールをパス。

 

美矢「あたぼうよ!!」

 

美矢はそう言うと、素早い動きで攻め上がる。

 

夜々「行かせません!!」

 

そんな彼女に夜々がディフェンスを狙ってくるが、美矢は後ろから、バックコートバイオレーションにギリギリ抵触しない位置に入ってきた優に対し、鋭いパスを送った。

 

夜々「(バックパス………!? でも笛が鳴らないという事はギリギリセーフってこと………!?)」

 

夜々は美矢のギリギリを突いたバックパスに動揺。その隙に美矢が夜々をかわすと………

 

優「美矢!」

 

優はすぐさま美矢にボールを返した。

 

美矢「ナイスだ、キャプテン!!」

 

美矢はそう言って再び前線へ。

 

美矢「光一!」

 

すぐさま美矢は光一へボールをパス。光一はパスを受け取ると直後にシュートを放つ。一応ディフェンスに来ていた十夜がブロックしようとするも、ボールには届かず、巫魔が2点を追加したのだった………

 

 

 

風夏「流れを取らせるつもりが無いのはこちらとで同じです!」

 

負けじと蜜柑高校も反撃。夜々と美矢が互いに読み合うように様子を見ていたが………

 

夜々「………風夏さん!」

 

一瞬の隙を突いて、風夏へボールをパスした。

 

積牙「撃たせない!」

 

風夏とマッチアップしていた積牙がディフェンスに走ったが………

 

風夏「無駄です! {蛇のシュート(スネークシュート)}は、貴方には止められません!!」

 

風夏は{蛇のシュート}を放ち、その軌道は当然ゴールの真横へと飛んで行った。無論このボールはゴールの真横で突如としてゴールの方へ軌道を変え、リングの中へと沈んだ。

 

積牙「(くそっ、厄介なシュートだ………!)」

 

積牙は{蛇のシュート}の厄介さに苦しんでいた。そして、再び蛇のシュートを目にした優は………

 

優「………やっぱり実物を見ると映像とは全然印象が変わるもんだな………」

 

{蛇のシュート}を2度も目にし、思わずそう呟いた。だが………

 

優「………いいか! 巫魔の皆! 僕はこれからあっちの必殺を止めに行く!!」

 

直後、優は{蛇のシュート}を止めに行く事を宣言した。試合開始してまだ1分程度しか経っていない中での宣言だった為、風夏も驚いてはいたが………

 

風夏「………やれるものならやってみて下さい………!!」

 

風夏は挑発するようにそう返すのだった………

 

 

 

一進一退の攻防を繰り広げる巫魔と蜜柑。その中で優が{蛇のシュート}を止めようと動き始める。果たして、そんな事は可能なのだろうか………!?

To Be Continued………




次回予告
蜜柑高校の攻撃。その中で優は風夏とマッチアップする。{蛇のシュート}を放つ風夏に対して優が行った対策とは………!?
次回「あんな止め方を」


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第286話 あんな止め方を

前回までのあらすじ
互いに一進一退の攻防を見せる巫魔と蜜柑の試合。その中で、優は、風夏の{蛇のシュート(スネークシュート)}を止めに行く事に決め………?


続く巫魔の攻撃は、美矢からあかりのパスが風夏にスティールされてしまい、風夏がそのままドリブルで攻め上がる。

 

優「積牙! 4番の鈴原さんをマークだ!!」

 

優はここで積牙を風夏へマークさせる。

 

風夏「そう来ますか………なら、こちらも………!」

 

風夏はそう言うと、積牙の目の前でゴールの真横に向けて、行列スピンのシュートを撃つ。

 

春香「{蛇のシュート(スネークシュート)}………!!」

 

春香は驚く様子を見せる。だが、その直後………

 

優「そのシュートを待っていた!!」

 

優は直後に{蛇のシュート}の軌道で飛び上がり、ディフェンスへ来た。

 

美矢「………! そうか!!」

 

美矢は何かに気づいた。そして優はボールを力強く叩き落とした。

 

風夏「っ………!!」

 

風夏もこれには驚かされる。尚、ボールはコート外へ落下した為………

 

審判「アウト・オブ・バウンズ! 白ボール!」

 

審判のコールが入った。

 

優「ふうっ………」

 

優は息を吐く。そこに美矢が駆けつけてきて………

 

美矢「成程、{蛇のシュート}は初見殺しなだけで、軌道はどっちか読めれば丸わかりって訳だ」

 

優が理解した原理についてそう説明する。

 

優「そゆこと。まあ、初見殺しの厄介なとこは知らないと不利な所だからね………侮れないや」

 

優は{蛇のシュート}の厄介さを理解しつつも、軌道は決まっている為、それが分かればただのシュートである。こうした攻略法に夜々は驚いており………

 

夜々「まさか、あんな止め方を………!」

 

思わず優の止め方に驚いていた。しかし、風夏はどこか喜んでいた。

 

風夏「………そうこなくては………!」

 

風夏は独り言でそう呟くと………

 

風夏「優さん、お見事です。私の{蛇のシュート}を止めたのは素直に賞賛していますが………まだ私はこれで終わりませんよ………!!」

 

優の活躍を賞賛しつつも、まだ自分がこれで終わりでは無い事を匂わせてきた。

 

優「………別にこっちは油断する気は無い。そっちのシュートを止めて良い気になる程………僕はお調子者じゃない………!!」

 

優はそう言って調子に乗る気はさらさらない事を口にする。

 

風夏「そうでしたね………これは失礼しました」

 

風夏は謝罪するような口ぶりをしつつも、その内はどこか挑戦的なものだった………

 

 

 

優が{蛇のシュート}を止め、風夏の手を1つ潰す事が出来た。しかし、風夏の底の知れなさはまだ消えない様子だった。果たして、風夏の様子の理由は何か? そして、試合の流れはどのように動くのか………!?

To Be Continued………




次回予告
風夏の必殺技を止めたものの、巫魔は冬野によってアウトサイドシュートが狙えなかった。試合は不思議な程に一進一退の攻防は終わらず………!?
次回「びっくりするほど動かないな」


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第287話 びっくりするほど動かないな

前回までのあらすじ
風夏にボールをスティールされる巫魔。しかし、優が風夏の{蛇のシュート(スネークシュート)}を止めるプレイを見せつけ………!?


風夏の{蛇のシュート(スネークシュート)}を止めたのは大きな点だった。しかし、蜜柑高校はそんな事態にあまり驚かなかった。それは巫魔に攻撃チャンスが回ってきた際、その理由が明らかとなる………

 

美矢「今度こそ………あかり!」

 

再びの巫魔の攻撃。美矢は再びあかりへのパスを試みる。今度ばかりはスリーポイントラインの外にいたあかりへパスを通し、あかりがシュートを狙う………

 

冬野「おっと、撃たせないよ!!」

 

しかし、冬野はあかりが飛ぶ前に、脅威的な跳躍力を見せつける。

 

あかり「ええっ!?」

 

これにはあかりも驚きの声を漏らすしかなかった。慌てる彼女の隙を突き、冬野はボールを叩き落とした。

 

美矢「(マジか………! キャプテンと同じ跳躍力タイプ………!!)」

 

優のプレイングを思わせる冬野の跳躍力。これには巫魔メンバーも驚きを隠せなかった。

 

優「狼狽えるな!!」

 

しかし、優が冬野の隙を突き、いつの間にあかりの後ろへ回っていた。

 

冬野「なっ………!?」

 

優は零れ玉をインサイドの方へ弾く。これをキャッチしたのは積牙だった。

 

積牙「(よし………!)」

 

積牙は風夏と対峙。積牙は右側へ軽く踏み込む………

 

風夏「(右への踏み込みが浅い………{リバースソニックジャンパー}を狙っていますね………!!」

 

風夏はそれが積牙の必殺技、{リバースソニックジャンパー}と見抜き、彼女も左への踏み込みを浅くし………

 

積牙「はあっ!」

 

積牙が逆に踏み込んだ際、風夏も右へ大きく踏み込み、積牙の進むルートを塞いだ。

 

積牙「なっ!? うわあっ!!」

 

これにより、積牙は思いっきり風夏にぶつかってしまい、風夏を倒してしまう。

 

審判「プッシング! 黒10番!」

 

積牙はまんまとファールを取らされてしまうのだった………

 

 

 

そして、試合を観戦する修也達は、びっくりするほど流れが動かない試合に驚いていた。

 

修也「驚いた………びっくりするほど動かないな」

 

修也もこれには現状を思わず呟いてしまう程である。

 

芽衣「ミドレーユくん達にとってはある意味1番苦しいだろうね………逃げたいのに逃げられない………巫魔にとってはこういうどっちつかずが1番苦しいよね………」

 

芽衣は巫魔の内心を読むと、そのように呟いたのだった………

 

 

 

風夏の{蛇のシュート}を止めてもリードまでは取れず、未だに一進一退の攻防を続けていた。果たして、巫魔にとってある意味苦しい展開は偶然のものなのか? それとも、蜜柑の策略なのか………!?

To Be Continued………




次回予告
あまりに苦しすぎる膠着状態に、巫魔は思わずタイムアウトを取る。そんな中、優がチームに提案したのは………?
次回「流れを変えないとマズい」


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第288話 流れを変えないとマズい

前回までのあらすじ
優が{蛇のシュート(スネークシュート)}を止めてもなお、巫魔と蜜柑の試合は膠着状態。この状況は巫魔にとってとても苦しいものであり………!?


それからしばらく巫魔と蜜柑は点を取ったり取られたりの一進一退展開が未だ続いていたが、第1Q開始8分………

 

美矢「(くっそ〜!! 精神的に疲れる!! )」

 

美矢は精神的に参り始めた。そしてそれは光一や積牙も同様だった。

 

優「(マズったな………あの3人は割と短気だ………こういう膠着状態は逆転への気持ちで燃えないし、有利でもないから楽では無い………)」

 

優は3人の性格を理解している為、今の状況が巫魔にとって一番マズい事はよく知っていた。今の所、あかりが精神的に落ち着いているものの、彼女は試合に出ている巫魔メンバーの中で1本もシュートが決められず、いいとこ無しだった。そして、冬野のスティールでボールがコート外に出た所で………

 

審判「タイムアウト、巫魔高校!」

 

監督のゆうかもこの状況を察し、タイムアウトを取ったのだった………

 

 

 

光一「くっそ………突き離せもしないし、逃げられもしない………!!」

 

光一はイライラしている様子を明らかにしていた。

 

優「落ち着けよ光一。そうやってキレたら相手さんの思う壷だよ」

 

優は冷静な様子でそう呟き、スポーツドリンクを飲む。

 

春香「でも………現在のスコアは14vs16。実質互角状態の今をどう乗り越えるんですか………?」

 

春香は優に対してこの状況の攻略方法を問いかける。

 

優「………正直今の流れを変えないとマズい。そこで………こっちは速攻戦術を仕掛ける。僕のスタミナが切れる覚悟でだ」

 

優が提案したのは、速攻で戦う事だった。

 

美矢「速攻………もしかして{双翼のパス(ダブルウイングパス)}を使うのか?」

 

美矢は優に{双翼のパス}の解禁を問いかける。

 

優「足りない。それだけじゃ足らん」

 

しかし、優はそれだけでは足りないと口にする。

 

優「………優真、君の高速パス戦術を加える」

 

優が提案したのは、{双翼のパス}に優真の{高速のパス(マッハパス)}を加える事だった。

 

優真「私が………? でも、それじゃあ私とキャプテンのスタミナが無くなっちゃいますけど………?」

 

優真は優に対し、優と優真のスタミナ切れ問題を問いかける。

 

優「心配無いさ………こっちにはまだ切り札がいるからね」

 

優はそう言って春香へ視線を向ける。

 

春香「………?」

 

春香はキョトンとした様子で首を傾げるのだった………

 

 

 

膠着状態で苦しい中、優は速攻戦術で対決する事を賭ける事に。優と優真のスタミナを犠牲した戦術は果たして蜜柑高校相手に通用するのだろうか………!?

To Be Continued………




次回予告
あかりに変わって試合に入る優真。巫魔は{双翼のパス}を進化させた新戦術を展開し………!?
次回「音速の双翼パス(マッハダブルウイングパス)」


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第289話 音速の双翼パス

前回までのあらすじ
膠着状態の巫魔は思わずタイムアウトを取る。優は流れを取る為に速攻戦術を提案する。しかも優が提案した策は巫魔の速攻戦術{双翼のパス(ダブルウイングパス)}を上回る速攻戦術であり………?


審判「タイムアウト終了! そして、巫魔メンバーチェンジ!!」

 

タイムアウト明け。巫魔はあかりを下げ、優真を出場させる事に。

 

芽衣「ここで優真ちゃん………何か狙ってるみたいだね」

 

観客席の芽衣は、優真の登場から巫魔の反撃が始まる事を予感するのだった………

 

 

 

巫魔ボールによる試合再開。ここは積牙が美矢へスローイン。

 

美矢「よーし! 行くぞ、キャプテン!!」

 

美矢は優に声をかけると、ドリブルで上がる。

 

優「よし来た!」

 

優はこれに応じる。美矢は夜々と対峙すると、大きくジャンプし………

 

美矢「キャプテン!」

 

美矢は優へボールをパス。優はパスを受け、目の前に保谷が現れると、優は美矢へバックパスをする。

 

風夏「(………成程)」

 

しかし、風夏はこれを研究していたのか、2回見るだけで状況を理解した。美矢がドリブルで上がっていると………

 

風夏「冬野さん、天野さんをマークです!」

 

風夏は冬野をマークするよう指示。

 

美矢「(私をマークするだけじゃ止まらないんだがな………)」

 

美矢には問題がないようで、優に視線を向いた………しかし、彼女の視線には風夏の姿が映っていた。

 

美矢「(………そう来るか)」

 

美矢は風夏の立ち位置から頭を巡らせる。そして、観客席に座っていた芽衣は風夏のプレイングを目にし、ハッとした様子を見せる。

 

芽衣「あの人………巫魔の{双翼のパス(ダブルウイングパス)}の弱点に気づいたんだ………!!」

 

芽衣が口にしたのは{双翼のパス}の弱点についてである。

 

アリサ「弱点?」

 

アリサは首を傾げる様子を見せる。

 

芽衣「あの戦術はミドレーヌくんと美矢さんの2人しか選択肢が無いから、2人のパスコースを理解してスティールすれば止められるんだ………!」

 

芽衣は{双翼のパス}の弱点を口にする。

 

風夏「(あの戦術の弱点を理解すれば攻略は容易………!」

 

風夏はそう考え、巫魔の{双翼のパス}を止めたと考えていた。

 

美矢「………甘ぇよ!!」

 

しかし、美矢は途端に優の位置とは関係ないバックパスをする。

 

風夏「(バックパス!?)」

 

突然の方向転換に風夏は驚いていた。後ろには誰もいないはず………そう考えていた風夏の考えはすぐに覆る。

 

芽衣「ゆ、優真ちゃん!? って、そうか………!!」

 

芽衣は驚いた様子を見せると共に、何かに納得する。突如、現れた優真は前線にいる優へ強烈なパスをする。

 

優「よし!」

 

優はパスを受け、そのままスリーポイントシュートを撃つ。まさかこんな形で渡るとは思っていなかったのか、優は完全フリーで撃つ事が出来た。

 

優「これが巫魔の新戦術………{音速の双翼パス(マッハダブルウイングパス)}だ………!!」

 

優は新戦術の名を叫ぶと共に、放ったシュートはゴールへ沈んだのだった………

 

 

 

優が提案した新戦術、音速の双翼パスは蜜柑に動揺を与える事となった。果たして、このまま巫魔は有利を掴めるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優達3人の{音速の双翼パス}で蜜柑を圧倒する巫魔。しかしこの場面で風夏は耐える事に主軸を置き始め………?
次回「耐えますよ」


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第290話 耐えますよ

前回までのあらすじ
巫魔は優、美矢に優真を加えた超速攻戦術で蜜柑を翻弄。その新戦術の名は{音速の双翼パス(マッハダブルウイングパス)}というものであり………!?


その後も巫魔はスタミナ枯渇を惜しまない{音速の双翼パス}で次々と点を稼いでいく。

 

冬野「はあっ………思ったよりハードでスタミナ持ってかれる………」

 

そして、蜜柑高校にもスタミナでのダメージをきっちり与えていた。

 

芽衣「巫魔の強みがはっきりと出始めたね。お陰で巫魔にとってはいいペースだよ」

 

観客席の芽衣もこれには良いペースだと頷いていた。

 

修也「これならミドレーユ達も相手を突き離せそうだな」

 

修也が続けてそう呟いた。だがその直後………

 

風夏「皆さん!」

 

突如、蜜柑キャプテンの風夏が声を上げた。

 

風夏「無理に攻めてもこちらのスタミナと点差がやられるだけ………今は耐えますよ!!」

 

なんと風夏はここで守りに重点を起き始めた。

 

芽衣「なっ!? まさかこの数プレイだけでその判断をしてくるの………!?」

 

これには芽衣も想定外であった。

 

アリサ「………何かマズいの?」

 

アリサには何が何やらと首を傾げていたが………

 

琴乃「巫魔の消耗を待ってそこを突くって事よ」

 

近くに座っていた琴乃が解説を挟む。それを聞いた修也は………

 

修也「今は無理しないで守りを主軸とし、後で点差を埋めに行く反撃狙いって事ですか?」

 

自分の思い立った考えを琴乃に問いかける。

 

琴乃「分かりやすくいえばそうね。ある意味、ベストメンバーで無かったのは偶然にも助かったと言うべきかしらね………?」

 

琴乃は頷くと共に、偶然にもベストメンバーでは無かった事にどこか安堵するような事を口にするのだった………

 

 

 

そして、そこから蜜柑高校は攻撃は軽く流して、守りに重点を起き始めた。音速の双翼パスの特性上、守りに重点を置かれた程度では得点力が下がる事は無いのだが………

 

優「(やられたな………相手さんは無理に同じ土俵で攻めてもしょうがない事に気付いて、自分達が戦える時を待ち始めた………そしてこっちはスタミナをそこそこ持ってかれている………とてもじゃないが引き下がれる状況ではない………!)」

 

優が幾らかスタミナを失っているこの状況こそ問題だった。今更{音速の双翼パス}戦術をやめても中途半端な攻撃に落ちるだけ。巫魔からすれば嫌でも攻めるしか無い。

 

優「(こりゃ、気が抜けないぜ………)」

 

優は気の抜けない状況から、肝を冷やす様子を見せたのだった………

 

 

 

巫魔の超速攻戦術に対し、無理をしない戦術を見せる蜜柑高校。一筋縄ではいかない相手を前に、{音速の双翼パス}のデメリットはどこまで影響するのか………!?

To Be Continued………




次回予告
第1Q残り5秒で8点差を得ながらも、思ったよりも点が取れない巫魔。優の消耗が激しい中、優は何としても2桁差で終わらせようと考え………?
次回「絶対に2桁差にする」


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第291話 絶対に2桁差にする

前回までのあらすじ
{音速の双翼パス(マッハダブルウイングパス)}で優位に立ったと思いきや、蜜柑高校はこの場面を耐える事を選択。これにより、巫魔は気が抜けず………?


そして第1Q残り15秒、蜜柑高校の攻撃。スコアは26vs18で{音速の双翼パス(マッハダブルウイングパス)}の効果は出ていたが、それでもここで点を取られるのは得策ではない。

 

優「皆! ここディフェンス! なんとしても点を取られるのだけは阻止だ!!」

 

優は絶対に点を取られないよう指示を飛ばす。

 

風夏「(8点リードにも関わらず油断をしない姿勢………優さんがいるだけで巫魔は全国クラスの顔を見せるのはかなり厄介ですね………)」

 

優の用心深さのお陰で、蜜柑高校も気軽には攻められない。しかし、第1Q終了まで残り10秒を切る。

 

夜々「くっ………」

 

今現在ボールを持っているPGの夜々は、優真をかわしきれない中、必死に頭を回転させ………

 

夜々「風夏さん!」

 

夜々は苦し紛れの中で風夏にボールをパス………

 

優「………! そこだ!」

 

だが、そこへ優が強引に割り込んでスティール。蜜柑の攻撃を防いだ。

 

風夏「割り込んで来ましたか………しかし時間はもうありません!」

 

しかし、巫魔にとっては蜜柑の加点を止めただけに過ぎず、今や時間は5秒を切った。

 

美矢「マズい! もう時間が無いぞ!!」

 

美矢は慌てた様子で声を上げる。しかし優は汗を流しつつも、全く動揺する様子はない。

 

優「(ここで決める………! 第2Q以降の事を考えて………絶対に2桁差にする………!!)」

 

寧ろ優は燃えていた。しかし時間は残り3秒を切り、優は中央のセンターサークルに走るのが精一杯だった。

 

優「くそっ! こうなったらもう投げるしかねえ!」

 

優はそう言うと、センターサークルからシュートを狙うという、傍から見れば無謀過ぎる策に走る。

 

冬野「センターサークルから放り込むなんて………幾ら白宮優でも入る訳が無い!」

 

こんな無謀なシュートが入る訳が無い………そう考えていた会場の期待を優は軽々と裏切ってシュートを決めてしまい、スコア29vs18となった所でブザーが鳴り響いた。

 

観客「うわああっ!? ブザービーター決まったぁぁ!?」

 

まさかのブザービーターに会場は驚きの声が上がる。

 

優「ふうっ………危っねえ」

 

なんとかブザービーターを決めた優もまさか決まるとは思ってなかったのか、割と冷や汗をかいていた事が見て分かる。そして、観客席の修也達もこんな形でシュートを決めた優を目にし………

 

修也「………やっぱアイツおっかねえシュート力持ってるな」

 

優のシュート力に圧倒されていたのだった………

 

 

 

優の思惑通り2桁差で第1Qを終えた巫魔。最後に大サプライズを魅せるという流れを引きつける結果となったが、巫魔はまだ油断が許されない状況である事を、この時の巫魔はまだ知らないのだった………

To Be Continued………




次回予告
第1Q終了後、優を休息させる為、ここで1度優を下げる巫魔。これに対し、蜜柑高校は次の手に出ようとしており………!?
次回「アレを解禁するしかないですね」


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第292話 アレを解禁するしかないですね

前回までのあらすじ
第1Q残り時間わずかの場面。優の無謀に思えるかのようなプレイングによって、なんとか2桁差に終わらせる事が出来たのだった………


第1Q終了後。巫魔ベンチでは、最後に魅せた優の会心のプレイを喜んでいた。

 

伊吹「やっぱ優のシュート力には恐れ入るわ。あんな場面で放ったシュートが入るって相当のシュート力だな!」

 

伊吹はそう言って優の左肩を強く叩く。

 

優「痛ってえ!! ………まあ、たまたまだよ」

 

優は謙遜する様子を見せながらそう返す。チームが2桁差の有利に喜んでいると………

 

ゆうか「はいはい。まあでも、ここで一旦優くんは交代よ」

 

巫魔監督、ゆうかの指示で一時的に優を下げる事に。

 

優「分かりました」

 

優は交代を受けいれ、静かに頷いた。

 

ゆうか「優くんの代わりに入るのは、あかりちゃんよ。いいわね?」

 

代わりに入るのはあかりに決まり、自然と美矢が優のポジションに入る事が決まった。

 

優「皆、2桁差あるとはいえ基本的には油断しないように頼むぞ!」

 

優は有利な状況においても油断しないように呼びかけるのだった………

 

 

 

その一方、蜜柑高校ベンチでは珍しく押される形で四分の一が終わった事に小さく動揺していた。

 

冬野「………驚いた。まさかあんなに善戦してくるとはね………」

 

冬野は巫魔が思った以上に健闘してきた事に対し、そう呟いた。

 

風夏「そうですね。でも、こちらだって全ての手を出し尽くした訳じゃないですから」

 

風夏は余裕を見せながらそう呟く。

 

夜々「………まさか、アレを使うんですか?」

 

それを聞いた夜々は何かを察したようである。

 

風夏「………そうです。アレを解禁するしかないですね」

 

夜々の察知は当たっており、風夏にはまだ奥の手が隠れているようである。

 

風夏「正直、{蛇のシュート(スネークシュート)}は見せすぎたと考えています。ここで優さんに見抜かれるという事態に陥りましたからね………でも、まだ私は全てを使い尽くした訳じゃありません………!」

 

風夏はそう言って強い自信を見せる。そして、第2Qが始まろうとする中、優がベンチに深く腰かけている様子を目にし………

 

風夏「(巫魔高校は優さんを一時的に下げるみたいですね………)」

 

巫魔が優をベンチに下げるつもりである事を見抜いた。

 

風夏「そんな余裕を噛ましている暇はそうそう長くありませんよ。まあ、今のうちに少しでもスタミナを稼いでおくといいですけどね………」

 

それを見た風夏は、独り言を呟くように、巫魔に対して挑発の言葉を口にするのだった………

 

 

 

11点差のリードで第2Qに入る巫魔だが、押されているはずの蜜柑高校にはまだ策が残っていた。果たして、風夏が余裕を見せ続ける理由である奥の手とはいったい………?

To Be Continued………




次回予告
第2Qに突入する試合。再び風夏にボールが渡り、彼女の{蛇のシュート(スネークシュート)}を警戒する巫魔。しかし、彼女が出したのは奥の手であり………!?
次回「これが私の切り札です」


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第293話 これが私の切り札です

前回までのあらすじ
11点リードで第1Qを終えた巫魔。しかし、蜜柑高校のキャプテンである風夏にはまだ奥の手があるようであり………?


そして始まる第2Q。巫魔高校は優の代わりにあかりが入り、優雅いたポジションには美矢が入る。

 

冬野「あれ? もう下げちゃうんだ………なんだかバカにされた気分」

 

冬野は不貞腐れた様子でそう呟く。風夏はポジションに着く前に美矢へ近づくと………

 

風夏「………後悔しますよ。優さんを下げたこと」

 

優を下げた事に対する挑発か、風夏本人の感情が………どこか後悔を誘うような事を口にする。風夏が立ち去った後、美矢は彼女の背を見て………

 

美矢「………キャプテンがフルで出せたらこっちだって惜しまず出してるさ」

 

優をフルで出せない事情についてぼやくのだった………

 

 

 

試合は蜜柑ボールで再開。夜々にボールが渡ると、ドリブルで攻め上がっていく。

 

優「皆、ディフェンスしっかり固めろよ!!」

 

ベンチに下がってもなお指示をする形でチームに貢献する優。巫魔は思ったよりもインサイド寄りのフォーメーションで守りを固めていた。

 

風夏「(インサイド寄りの守り戦術ですか………成程、そう来ますか………)」

 

巫魔の戦術を前には迂闊な戦術は狙えない。それを悟った風夏は………

 

風夏「夜々さん、こっちです!」

 

風夏はパスを要求。

 

夜々「風夏さん!」

 

夜々は迷うこと無く風夏へボールをパス。ボールを受けた風夏は目の前にマッチアップしていた積牙と対峙するが、風夏は素早い動きで積牙をかわした。

 

積牙「ああっ!?」

 

それを受け、光一と美矢の2人は警戒心を強める。

 

風夏「どうやら私の{蛇のシュート(スネークシュート)}を警戒しているようですね」

 

風夏は2人の様子を悟る。事実、光一と美矢の懸念点はそこだった。

 

風夏「………でも私にはまだ奥の手があります………!」

 

風夏はそう言うと、シュートを放つ体勢に入る。

 

美矢「光一! ここ止めるぞ!!」

 

美矢は光一と連携を取って止めようとする。

 

風夏「これが私の切り札です!! はあっ!」

 

風夏はシュートを放つ。シュートの軌道は光一の方であった。

 

光一「(俺の軌道か………! 止められる………!!)」

 

光一は手を伸ばしてボールを捉えた………

 

光一「………なっ!?」

 

しかし、光一の手に当たったボールは何故か軌道を変え、小さく弧を描いてゴールに入った。

 

優「な、なんだって!?」

 

これには優も席を立ち上がって立ち上がった。

 

風夏「これが私の奥の手………{サイドワインダー}です!」

 

風夏の奥の手というは、もう1つの必殺技{サイドワインダー}であったのだった………

 

 

 

リードを広げていた巫魔に対し、もう1つの必殺技を解禁した風夏。果たして、彼女の必殺技{サイドワインダー}はいったいどのようなシュートなのか………!?

To Be Continued………




次回予告
サイドワインダーはブロックしようにも防げない無敵のシュートであった。これを見た優はどうにか解析が出来ないかを試み………!?
次回「突貫で解析するしかない」


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第294話 突貫で解析するしかない

前回までのあらすじ
優を下げて挑む第2Q。それに対して蜜柑高校のキャプテン風夏は、奥の手に当たる必殺技、{サイドワインダー}を放ってきて………!?


優「{サイドワインダー}………まさかあんな奥の手を持ってるなんてな………」

 

これには優も幾らか驚いていた。

 

結衣「ど、どうするんですか………!?」

 

マネージャーの結衣が優に対し慌てて問いかけると………

 

優「………そりゃあ突貫で解析するしかない。じゃなきゃ、この試合には勝てない………!!」

 

優はこの場において解析し、攻略法を模索する事に決めた。その為、あらためて座り直すと、彼の視線はより一層試合へ集中し始める。そして、再び風夏にボールが渡った時のこと。彼女の前に美矢が立ちはだかるが………

 

風夏「もう一度お見せしましょう………{サイドワインダー}を!!」

 

風夏は再び{サイドワインダー}を放つ。

 

美矢「止めてやる!!」

 

美矢は大きく飛び上がり、右手でボールに触れるが、やはりこれも美矢の手に触れた途端、途端に方向転換し、横に弧を描く形でシュートはゴールリングへと入った。

 

美矢「(ぐっ!? ダメかよ………!!)」

 

美矢は防御不能に思える{サイドワインダー}へ驚きを隠せなかった。

 

優「(スピンの類か………? にしては特異すぎないか………?)」

 

優は仮説を立てながら様子を見ているが、流石の彼でも1度や2度では理解が難しいようだ………それから1分程経ち、再び風夏にボールが渡った際には、積牙とマッチアップ。その後ろには保谷をマークする美矢もおり、実質2人体制である。

 

美矢「さあどうした! またさっきのシュートを撃って見やがれ!」

 

美矢が風夏に対して挑発をしかける。しかし風夏は冷静な様子を見せ………

 

風夏「まあまあ。撃つタイミング位はこちらで調整させて頂きたいですね………!!」

 

風夏はそう言って、鮮やかなドライブで積牙を突破。続く美矢の前で素早くシュート体勢に入り、ジャンプ後にシュートを放つ。

 

美矢「うおおおっ!!」

 

美矢はジャンプしてシュートを止めようとし、ボールに触れる事は出来たが、美矢の手に触れた途端に方向転換をして、横に小さく弧を描いてからゴールに入ってしまう。しかし、この一連の動きの中で優はある事に気付いた。

 

優「(………彼女、なんでわざわざ積牙を抜いてから{サイドワインダー}を撃ったんだ?)」

 

それは、風夏が実質2人体制の時に{サイドワインダー}を撃たなかった事である。

 

優「(………何かしら制約があるのかな………?)」

 

その様子から優は、サイドワインダーには何か制約があるのでは無いかと考えるのだった………

 

 

 

{サイドワインダー}攻略に奔走する優。しかしその原理は難解で難しいものだった。果たして、優に解析は出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔の{サイドワインダー}攻略は困難を極めていた。同時に、冬野の存在でアウトサイドシュートが全く決められずにおり………!?
次回「詰みかかってる」


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第295話 詰みかかってる

前回までのあらすじ
風夏の切り札{サイドワインダー}を解析しようとする優。しかし、無敵に思える風夏の必殺技に巫魔は苦戦を強いられてしまい………!?


それから数分経ったものの、風夏の{サイドワインダー}は全く止められず、優も中々解析が出来ずにいた。

 

春香「参りましたね………さっきから巫魔が全然攻められていません………!!」

 

春香は、巫魔のピンチを口にする。

 

優「それだけじゃない………アウトサイドシュートがロクに入っていない。というか、美矢やあかりが全くスリーを決められていない………!」

 

それに付け加え、優は巫魔がアウトサイドシュートを決められていない事も指摘する。実際、あかりがスリーを狙おうとすると、冬野が尽くブロックしてしまった為、全く決められずにいた。

 

優「マズったな………」

 

現在の光景に優の表情も険しくなる。

 

結衣「マズったとは………?」

 

結衣は恐る恐る優の呟いた言葉の意味を問いかける。

 

優「………こっちが詰みかかってる」

 

優が口にしたのは、巫魔が詰みかかっている現実だった。

 

伊吹「嘘だろ!?」

 

これには巫魔ベンチの中で騒ぎを起こしていた。

 

優「落ち着けよ。まだ完全に詰んだ訳じゃない………!」

 

優はそう言って巫魔のメンバーを宥める。

 

伊吹「でもどうするんだよ………!!」

 

伊吹が焦りながら優にそう問いかける。

 

優「{サイドワインダー}の方はどうにか解析を進めるしかない。でも、あの8番はどうにか出来るはずだ」

 

優が口にしたのは、{サイドワインダー}はまだ解析が必要であるものの、冬野の方は何とかなると考えていた。

 

優「こっちは最強のスリーポイントシューターがいるんだからよ」

 

優はそう言って、春香の肩に手を置いた。

春香「………はい!」

 

春香は優の言葉に頷くと共に、自信に溢れた様子を見せる。

 

優「この第2Qはやられるかもしれない。でも、まだこっちが負けたわけじゃない。皆、諦めるにはまだ速いぜ………!!」

 

優はまだチームに諦めないよう期待を持たせる。

 

伊吹「本当にどうにか出来るんだろうな………?」

 

伊吹は不安な様子を見せながら優に問いかける。

 

優「出来ると信じてるさ」

 

優はそう言って自信を見せる。しかし、伊吹は不安な様子を見せ………

 

伊吹「(………優を疑う気は無いが………本当に大丈夫なんだろうな………?)」

 

伊吹は不安な様子で首を傾げるのだった………

 

 

 

それから第2Q終了に至るまで、巫魔は思った通りの反撃がまるで出来ないままスコアを逆転され、35vs42という点差で第2Qを終えてしまうのだった………

 

 

 

蜜柑高校の本領が発揮された事で、巫魔は押されてしまう。しかし、冬野を攻略する事に目処が立っている春香への心配はいったいどこから来ているのか………!?

To Be Continued………




次回予告
ハーフタイム。逆転された巫魔は、前半で温存していた春香をここで出す事になり………!?
次回「最終兵器投入だな」


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第296話 最終兵器投入だな

前回までのあらすじ
風夏の{サイドワインダー}と冬野のアウトサイドシュートを封殺するブロックに苦戦する巫魔。しかし、冬野の方は攻略する術が春香にあるらしく………!?


美矢「参ったもんだ………あんなシュートを隠してやがったとは………」

 

美矢は{サイドワインダー}の存在に苛立ちを見せ始めたのか、ベンチを叩きながらそう言い放った。

 

優「腐るなよ美矢。こっちの策が尽きている訳じゃないんだ」

 

優は冷静な様子で言葉を返した。

 

光一「どんな作戦があるんだよ………?」

 

光一が表情を強ばらせる。

 

優「………こっち側で最強のスリーポイントシューターを出すんだよ」

 

優はそう呟く。それを聞いた巫魔メンバーは一瞬で誰かを悟った。

 

積牙「この場面で春香先輩を!? ………しかし、あの8番の人のディフェンスはどうするんですか? あの人、思いっきりキャプテンのようなプレイングしてますけど………」

 

積牙は不安な様子で優に対し問いかける。

 

春香「大丈夫。前回お休みした分をカバー出来るだけの策があるから」

 

春香は自信を持った様子でそう呟いた。

 

優「その言いようは………最終兵器投入だな? 春香」

 

優は3回戦で春香の欠場理由を唯一知っていた為、茶化すようにそう問いかける。

 

春香「はい!」

 

春香は笑顔で返事をする。しかし、美矢や光一等の巫魔メンバーには訳が分からず、首を傾げるのだった………

 

 

 

その頃、蜜柑ベンチでは………

 

夜々「第2Qは巫魔相手に善戦できましたね」

 

第2Qの善戦について話し合っていた。

 

風夏「そうですね………でも問題はありますよ」

 

しかし、風夏は今の状況下でもまるで油断する様子を見せない。

 

風夏「まだあちらは本気では無い。5番、白宮春香さんが出てないのが気になりますね」

 

その理由は春香がここまで全く出ていない事に起因していた。

 

冬野「大丈夫だよ。2つのスリーポイントシュートは分かってる。それに、あれはどちらに飛ぶのかを読む事が出来れば、私のジャンプ力を持ってして止める事が出来るから」

 

冬野はそう言って自信を見せていた。

 

風夏「その自信は頼もしいですが………あの人は冬野さんみたいなスリーポイントシューターをブロックするのが得意な相手と戦った経験が1度………守城高校の試合の際にあります。それに、前回の意味深な欠場………油断は禁物ですよ?」

 

しかし、風夏は不安要素を感じていたのか、春香への警戒心を緩めないよう忠告をするのだった………

 

 

 

一進一退の攻防を経て、巫魔はいよいよ温存していた春香を投入する事に。果たして、今の春香に冬野の守りを突き崩す策はあるのか? そして、その策とはどのようなものであるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔はいよいよ春香を投入し、冬野とマッチアップさせる。春香のスリーを封殺する事を狙う冬野だが、春香はこれまでとは違うスリーを狙っており………!?
次回「無敵のスリーポイントシュート(インビンシブルスリーポイントシュート)」


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第297話 無敵のスリーポイントシュート

前回までのあらすじ
押される巫魔は、いよいよ春香を投入する事に決める。その様子から、風夏は未だ警戒をしており………?


ハーフタイム後、巫魔はあかりを下げ、春香を投入。巫魔ボールで試合を再会することに。

 

冬野「やっと出てきた。ようやく私のやる気が上がってくるってものよ」

 

冬野はそう言うとやる気を出して身構える。

 

春香「………行きますよ!」

 

積牙達「おおー!!」

 

春香はそう言ってチームの士気を上げた。そして試合開幕。積牙が優真へボールをパスする。

 

優真「行きます!」

 

優真は素早い動きで上がっていく。蜜柑高校はマンツーマンディフェンスであり、冬野は当然のように春香に付いた。

 

冬野「アンタのスリー、止めてやるから」

 

冬野は自信を見せながら挑発する。しかし、春香は冷静な様子だった。その直後、優真は春香へボールをパス。早速春香vs冬野の構図が実現した。観客席のアリサはこの構図を目にし………

 

アリサ「春香………幾ら春香でも無策で敵うはずが無い………どうするの………!?」

 

流石の春香でも無策では敵わないと読んでいた。そんな中、春香は深く沈み込み、タメを作る。

 

冬野「(思ったよりタメが長い………でも、それは私にも強い踏み込みをするチャンスになる………!!)」

 

しかし、それは冬野にもタメを作るチャンスとなった。その為、春香が跳躍した際には、冬野はそれよりも高く飛び上がる。

 

冬野「(真上に飛んできたようだけど………弧を描く軌道ならもう封殺した………!!)」

 

冬野は春香のシュートコースを防いだと確信していた。

 

冬野「アンタのシュートコースは封殺したわ!!」

 

冬野は勝利への確信から春香に対してそう言い放つ。しかし、春香はその状況下でもパスをする素振りが無い。

 

春香「まだありますよ。私のスリーのシュートコースは………!!」

 

春香はそう言うと、ボールを勢いよく真上に放り投げた。

 

冬野「なっ………真上!?」

 

予想外過ぎる軌道に驚きの声を上げる。しかし、ボールは天井ギリギリまで飛んだ為………

 

修也「幾らなんでも無茶苦茶だ………!! あんなの距離感が読めでもしない限り無理だ………!!」

 

観客席の修也もこれは無茶苦茶と評した。しかし、高く打ち上がったボールは勢いよくゴールに向かって落下。綺麗にリングの中へ入った。

 

冬野「う、嘘………!?」

 

これには会場の誰もが驚きを隠せなかった。冷静な空気を見せる春香は背を向ける際に呟いた。

 

春香「………あれが私の第3のスリー………{無敵のスリーポイントシュート(インビンシブルスリーポイントシュート)}です………!!」

 

完成させた第3のスリーの名前を………

 

 

 

投入された春香は、密かに完成させていた第3のスリーを決めて見せた。その破壊力は会場の空気を変えるにはあまりにも十分であったのだった………

To Be Continued………




次回予告
{無敵のスリーポイントシュート}を決めた春香に対し、蜜柑高校の警戒は最大限のものとなった。春香へのマークが強まると共に、美矢と優真は蜜柑のある隙が生じた事に気づき………!?
次回「流れが動いた」


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第298話 流れが動いた

前回までのあらすじ
第3Q開幕と共にいよいよ試合に投入される春香。春香は第3のスリー、{無敵のスリーポイントシュート(インビンシブルスリーポイントシュート)}を披露して冬野の守りを崩すのだった………


春香が{無敵のスリーポイントシュート}を決めた事は蜜柑高校に強い緊張感を与えた。

 

風夏「皆さん、相手チームの5番春香さんは異次元のスリーポイントシュートを身に付けてきたらしいです。そこで………私達は春香さんを必ずダブルチームにしますよ!」

 

事実、風夏は春香へのマークを強め、常に春香をダブルチームでマークする事を決めた………

 

 

 

そして試合再開。春香を直接マークする冬野と、冬野のフォローに回れる位置に風夏が立つ事で、実質的に2人係のダブルチームを強いてきた。

 

春香「そう来ましたか………しかし、私ばかりマークしてて大丈夫ですか………?」

 

春香は驚きこそしていたが、強かな様子でそう返す。

 

冬野「………どういう意味よ?」

 

冬野は首を傾げる。そんな中夜々がパスしたボールを、優真が見事にスティールした。

 

優真「行きます、速攻!!」

 

優真は速攻を仕掛ける事を宣言。優真はドリブルで上がって行き、それを聞いた春香達は攻め上がっていく。

 

風夏「ディフェンス! 特に5番春香さんには撃たせないでください!」

 

風夏は冷静に指示を出す。春香には冬野を付かせ、風夏もやや春香に注意を向けつつも、積牙をマークする。

 

優真「(さっきのシュートで春香先輩は完全に警戒されている………でも!)」

 

優真は鋭く早いパスで美矢へボールを回す。

 

美矢「ナイスパス!」

 

美矢はそのままレイアップを狙う。そこに保谷と十夜の2人がディフェンスに来たが………

 

美矢「光一!」

 

美矢お得意の{自由なパス(フリーダムパス)}がここで発動。レイアップを撃つという直近でボールをフリーの光一へパスした。

 

風夏「………! インサイドで来ましたか………!!」

 

風夏もこれには驚いていた。しかし、今更風夏、夜々、冬野の3人には何も出来ず、光一は強烈なダンクを叩き込み、2点を加えた。

 

優「成程。インサイド攻めか………流れが動いた」

 

優は納得した様子でそう呟く。

 

結衣「インサイド攻め………?」

 

結衣は訳が分からないと言わんばかりの様子を見せる。

 

あかり「つまり………敢えて春香ちゃんを使わないって事よ」

 

あかりは結衣に分かりやすく説明をする。

 

優「春香にダブルチームするッていうのは、絶対にスリーを撃たれたくないという気持ちの表れだ。でも生憎、今年はインサイドにおいて強い戦力の方が多いからな………!!」

 

優達は春香が攻撃に参加出来ない状況を利用し、今回の策に出ていた。これにより、巫魔はインサイドの攻撃において隙を突く事が出来たのだった………

 

 

 

春香へマークを強める蜜柑だが、巫魔はそれを突いた戦術に打って出る。果たして、押されているこの状況をひっくり返す事は出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔は勝利の流れを引き寄せる希望を見いだし始める。しかし、風夏の{サイドワインダー}だけは未だ攻略出来ておらず………!?
次回「まだ勝てるとは言いきれませんよね」


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第299話 まだ勝てるとは言いきれませんよね

前回までのあらすじ
春香の{無敵のスリーポイントシュート(インビンシブルスリーポイントシュート)}を目にした蜜柑高校は春香にダブルチームを張る。しかし、巫魔は逆にインサイドを攻める事で対抗するのだった………


美矢「よし、逆転の兆しが見えてきた! 一気に逆転するぞ!」

 

美矢はそう言って逆転のチャンスが見えてきた事を口にする。積牙や光一達も勝利の道が見え始めていた………しかし、そこへ風夏がすれ違った際………

 

風夏「もう勝利を期待し始めているのですね………喜ぶのは勝手ですが、まだ勝てるとは言いきれませんよね?」

 

美矢に対して、まだ巫魔の勝利が確定になった訳では無い事を指摘する。その様子をベンチから見ていた優は………

 

優「………そうだ、参ったな。まだこっちは確実に勝てるとは言い難いんだったな」

 

まだ巫魔が確実に勝てるとは言えない状況にいる事を悟った。そしてそれを誰もが理解するのは、次の蜜柑高校の攻撃時だった。夜々のドリブルで蜜柑高校はボールを前線へ運ぶと、夜々は風夏にボールをパスする。

 

風夏「行きます! はあっ!」

 

風夏は素早いクイックリリースでシュートを放つ。

 

積牙「速い………!!」

 

風夏をマークしていた積牙は反応が間に合わず、ボールに触れる事すら出来なかった。

 

光一「クソッタレ!!」

 

光一が何とかジャンプしてブロックを狙うものの、やはりボールが光一の手に触れると、ボールの軌道が変わってしまい、ゴールに決められてしまう。

 

風夏「どうですか? 私の{サイドワインダー}を止められない中で、勝てると言いきれますか?」

 

風夏はそう言って巫魔を煽ってくる。

 

結衣「ああっ………!! 折角いい流れになったと思ったのに………!!」

 

良い流れを掴んだ巫魔は、未だ風夏の{サイドワインダー}が止められない今の状況を思い知らされ、マネージャーの結衣は思わずそう呟いた。

 

優「………例え春香がスリーを決めてくれるとしても、相手さんの主力攻撃………{サイドワインダー}を攻略しない限り僕達は100%とは言わないけど、負ける可能性が高い。多分、相手さんもまだこっちが勝利を確信出来ていない事には薄々気づいているんだろうな」

 

優はまだ負ける可能性の方が高い事を呟き、それを蜜柑高校側に察せられている事を考えていた。

 

優「………でも、あっちの{サイドワインダー}は破れるはずだ。あのシュートにだって穴はある………そう信じているからな」

 

しかし、優は{サイドワインダー}は決して無敵等では無く、必ず落とし穴がある事を考えており、それを信じるように、答えを必死に模索するのだった………

 

 

 

第3Q開幕の2プレイで流れを掴んだのも束の間、風夏の{サイドワインダー}が破れない問題に改めて直面する巫魔。果たして、本当に{サイドワインダー}を破る方法はあるのか………!?

To Be Continued………




次回予告
{サイドワインダー}をブロックしようにも、軌道を変えられてしまう為に止められない巫魔。そんな中、優はその軌道が変わるという点に視点を向けていると………!?
次回「視点を変えてみよう」


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第300話 視点を変えてみよう

前回までのあらすじ
希望が見え始める巫魔だが、風夏の{サイドワインダー}を止める術はなかった。この事から巫魔はまだ勝てるとは言えない状況だった………


その後も積牙、美矢、光一の3人が風夏の{サイドワインダー}を止めようと奮起するが、全く止められなかった。

 

優「(あの3人が何度止めようとしても、手にボールが触れた途端軌道が変わってしまい、止めようにも止められないな………)」

 

優は{サイドワインダー}をブロックしようとすると、何故軌道が変わってしまうのか。それについて悩み続けていた。そんな中、風夏が再び積牙相手に{サイドワインダー}を放つ。案の定、積牙はボールに触れる事は出来たが、途端にボールの起動が変わってしまう。

 

積牙「だ、ダメなのか………!?」

 

止める事は出来ないのか………積牙がそう呟いた時………

 

春香「はああっ!!」

 

春香は軌道が変わったタイミングで、冬野を放置してボールの方へ走り出し、ジャンプする。

 

風夏「なっ………!?」

 

これには風夏も驚いていた。春香渾身のジャンプによって、何とか中指がかする。するとボールは突如として高さを失い、ゴールリングにぶつかった後、地面に転がった。

 

優「………! {サイドワインダー}を落とした………!!」

 

偶然にも{サイドワインダー}を不発に終わらせた春香。しかし、風夏はなんとか落下したボールを拾い、素早くレイアップで点を取った。

 

伊吹「ああっ、惜しいな………!!」

 

結果として点を取られてしまった巫魔。しかし、これを見た優には確かな閃きが走った。

 

優「成程………! 軌道を変えるというのはそういうデメリットもあるのか………!!」

 

優は思わずベンチを立ち上がる。

 

伊吹「ど、どうしたんだよ優………?」

 

伊吹は驚いた表情を浮かべる。その直後優は席に座り直すと………

 

優「{サイドワインダー}はボールが相手にぶつかった際に勢いを犠牲に軌道を変えていたんだ。どういうスピンをかけたらこうなるかはよく分からないけど………軌道を変えた後のボールはゴールに入る事しか想定していないから、ボール自体の威力は弱い。この辺は{蛇のシュート(スネークシュート)}に似た性質だな」

 

そう言って、軌道が変わった後の{サイドワインダー}について説明をする。

 

優「そういう原理なら視点を変えてみよう。どうしたら真正面から止めるのかでは無く………軌道を変えた後を狙ってみるとかね」

 

優はそう言って、{サイドワインダー}攻略の方法を考えるのだった………

 

 

 

春香の見せた偶然のディフェンスによって{サイドワインダー}攻略の糸口を見出す優。果たして、{サイドワインダー}を止める事は出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
優は{サイドワインダー}の特徴から策を立て、コートに戻ることに。果たして、優の策は通用するのか………!?
次回「攻略法はこれだ」


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第301話 攻略法はこれだ

前回までのあらすじ
{サイドワインダー}が止められずに苦戦する巫魔。そんな中、軌道を変えたボールに春香が偶然触れた事から優は攻略の糸口を見出し………!?


審判「交代です!」

 

その後、監督のゆうかは攻略の糸口を見出した優をコートへ戻す事に決め、優は再びコートへ戻ってきた。

 

優「優真、交代だ!」

 

交代するのは優真。これによりPFのポジションにいた美矢はPGへ戻り、PFには再び優が着いた。

 

風夏「(ここで優さんを戻してくるとは………)」

 

風夏は優が戻ってきた事に警戒心を見せる。そして、まずは巫魔の攻撃。相変わらず春香への警戒態勢の強い蜜柑だが、優、積牙、光一は構わずインサイドからの攻めを狙っていた。

 

美矢「よし、行くぞ!!」

 

美矢はそう言うと、ゴールに向けて高くボールを飛ばす。

 

優「よし来た!」

 

優は高く飛び上がってボールをキャッチすると、そのままダンクを決める。

 

風夏「(アリウープ………! 優さんが加わった事でインサイドが厄介になりましたね………)」

 

優が加わった事で、巫魔インサイドの厄介さを改めて痛感する風夏。

 

風夏「(しかし、{サイドワインダー}はまだ攻略されていない………巫魔は確実に勝てる段階にはまだ至っていないはずです………!)」

 

だが、まだ{サイドワインダー}があると考えており、続く蜜柑の攻撃では夜々からのパスを受けると、積牙の目の前で{サイドワインダー}を放つ。

 

積牙「うおおっ!」

 

積牙はジャンプして止めようとするが、ボールに触れるとやはり軌道が変わってしまう。

 

風夏「(例え優さんが加わっても止められるはずは………!!)」

 

{サイドワインダー}が決まる………と思われたその時、なんと軌道が変わったタイミングで優はボールに向けてジャンプしていた。

 

優「軌道が変わる必殺{サイドワインダー}の攻略法はこれだ!!」

 

優はそう叫ぶと、ボールの位置を捉え、上から手を振り下ろす。優が振り下ろした手はボールを軽々と叩き落とし、ボールはコート外の地面に落下した。

 

審判「アウト・オブ・バウンズ! 白ボール!!」

 

試合としては再び蜜柑ボールにはなるものの、会場は優が{サイドワインダー}を止めたという事実に驚いていた。

 

光一「ゆ………優が止めた!! 止めたぞー!!」

 

巫魔メンバーは優が止めてくれた事に喜びを上げる。その一方で蜜柑メンバーは風夏の切り札が止められた事に衝撃を受けていた。

 

風夏「まさか{サイドワインダー}まで止めるなんて………!」

 

風夏もこれには驚いていた。しかし、この驚きの中には不思議と喜びの表情も見えていたのだった………

 

 

 

攻略の糸口を見つけた優は、有言実行とばかりに風夏の{サイドワインダー}をブロックした。これにより、巫魔の勝利の可能性は一気に引き寄せられたのだった………

To Be Continued………




次回予告
巫魔が{サイドワインダー}を止めた事で、巫魔は優勢寄りの互角へ持ち込む事が出来た。その影響は第4Qに入っても続き………!?
次回「勝利を取りに行くぞ」


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第302話 勝利を取りに行くぞ

前回までのあらすじ
コートへ戻ってきた優。風夏が放った{サイドワインダー}に対し、優は軌道を変えた所をブロックする2段構え戦術でブロックに成功するのだった………


無敵と思われた{サイドワインダー}を止める事で、巫魔は一気に流れを掴んだ。

 

修也「強いな、今の巫魔。もしかしたら俺達と戦った時よりもずっと強くなっちまったかもな………」

 

試合を見ていた観客席の修也は、嬉しくも、どこか寂しそうな様子でそう呟いた。

 

琴乃「今の巫魔は全国でも遥か上の立ち位置にいるチームなのは間違いないわね………」

 

同じく観客席で見ていた琴乃も頷いてそう答えた。全国常連の奥泉高校のキャプテンの目から見ても、巫魔は昨年の予選1回戦負けイメージを払拭し、全国区の名高と肩を並べる程に成長していた。そしてこの有利の流れは第4Qに入っても続いていた。

 

美矢「よーし! 勝利を取りに行くぞ!! キャプテン!」

 

美矢はボールをゴール下へ走った優へパス。優はパスを受けて間もなく両手でボールを掴み、高く飛び上がる。

 

優「くらえ!」

 

優は強烈なツーハンドダンクを決める。

 

光一「よーし! {究極のダンク(アルティメットダンク)}決まったぁ!!」

 

優が決めた{究極のダンク}により、68vs56の12点差に開く事が出来た。

 

夜々「まさか逆転されるばかりか12点差にまで広げられるなんて………」

 

夜々は逆転され、追い詰められている今の状況に対してそう呟く。

 

風夏「確かに苦しいですが………まだ試合が終わっていない今の段階で………諦めては行けません!」

 

風夏は押されている状況においても諦めないようそう呟く。

 

夜々「風夏さん………」

 

夜々は諦めようとしない風夏に対し、少し驚く様子を見せる。

 

夜々「(この追い詰められている場面でも諦めないなんて………相当意志が強いのかな………?)」

 

夜々は風夏の意志の強さに感心する素振りを見せる。

 

風夏「(ここで負けるとしても………私は諦めません! あの1回戦で諦めなかった優さんのように………!)」

 

どうやら風夏は心の中でそう考えており、追い詰められている今の状況でそう考えていた。この信念は昨年巫魔が1回戦負けした際の優の諦めない姿勢から得たものであるらしく、この追い詰められている状況で風夏がプレイを続ける支えとなっていたようだ。

 

風夏「………皆さん、この勝負まだ諦めませんよ!! 最後の1秒まで、戦い抜きましょう!!」

 

風夏はそう言ってチームを奮い立たせる。それを聞いた夜々達は崩れかけていた気持ちを抑え、集中力を取り戻すのだった………

 

 

 

巫魔vs蜜柑の対決は巫魔有利へ動いたが、蜜柑高校も諦めようとはしなかった。果たして、試合の行方は………!?

To Be Continued………




次回予告
巫魔vs蜜柑の対決は、巫魔が勝っているが油断は許さない状況だった。風夏渾身の{サイドワインダー}に対し、優は1人で挑み………!?
次回「蛇を掴む」


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第303話 蛇を掴む

前回までのあらすじ
{サイドワインダー}を止めた事で、一気に流れを掴む巫魔。しかし、蜜柑高校は諦めずに食らいついてくるのだった………


巫魔は有利を維持する油断の出来ない状況にあり、必死に食らいつく。

 

優「うおおおっ!」

 

優は強烈なダンクを決め、残り時間2分のタイミングで74vs66の8点差に広げる。

 

風夏「まだまだ! ここは一気に攻めます!!」

 

風夏は指示を飛ばす。そして、ボールが夜々に渡ったタイミングで………

 

夜々「風夏さん!」

 

なんと、前線に上がっていた風夏に対し、夜々はボールをパスする。

 

美矢「なっ!?」

 

この場面で、巫魔はあまり戻れていない状況だった。

 

優「させるか!!」

 

………優ただ1人を除いて。

 

風夏「読んでいましたか………!!」

 

風夏は驚きつつも、どこか嬉しそうな様子を見せる。そして、優と風夏の1vs1がここで実現する。

 

風夏「先程は驚きましたが………1vs1なら止められはしないはず! {サイドワインダー}!!」

 

風夏は必殺の {サイドワインダー}を放つ。

 

積牙「さっきは2段構えでやっと止めたのに………!」

 

積牙は絶望的な表情を見せる。

 

優「舐めるなぁ!!」

 

優は高く飛び上がり、両手でボールを掴む。これにより優の両手は強烈なスピンによる激痛が走るが………

 

優「ここで絶対………蛇を掴む!!」

 

優はそう言うと、力任せにスピンを止める。そしてこのタイミングで地面に着地する。

 

光一「と………止めた………って、止めたぁぁぁ!?」

 

誰にも止められないと考えていた{サイドワインダー}を止めたこの状況に、会場の誰もが驚いていた。

 

冬野「そんな………! あのシュートを止められるなんて有り得ない………!!」

 

これは蜜柑高校内でも強い動揺を与えていた。しかし、その動揺を優は利用し、春香へボールをパスした。

 

風夏「………!! 冬野さん!!」

 

風夏は慌てて冬野に声をかける。冬野が気づいた時には既に春香は飛び上がっていた。

 

冬野「しまった………!」

 

冬野は大慌てでディフェンスの為にジャンプするが、誤って春香にぶつかってしまう。これにより審判の笛が鳴る中、春香はボールを放り、ゴールへ沈めた。

 

審判「………バスケットカウント、ワンスロー!!」

 

これにより、春香はスリーを決め、更にフリースローを1本得た。

 

美矢「よし、4点プレイだ!!」

 

巫魔メンバーは大きく喜ぶ様子を見せる。

 

優「ぶっつけ本番でよくもまあ止めれたもんだな………」

 

そんな中、優は先程のディフェンスが大きく考えずに起こしたものであった事を呟き、自分でも意外そうな様子を見せるのだった………

 

 

 

逃げる巫魔と追いかける蜜柑の激闘。その中で優は{サイドワインダー}を単独で止める事に成功。遂に、無敵のシュートを掴んでみせたのだった………

To Be Continued………




次回予告
巫魔vs蜜柑の対決はいよいよクライマックス。果たして、勝利を掴むのは………!?
次回「終わりの時だ」


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