すきすきだいすきライスシャワー (パゲ)
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幼少期編
第1話 『俺』から『私』へ


初投稿です。この小説のような何かはアニメとアプリの設定が混ざったカオスなものとなっております。
アニメの視聴とアプリをプレイしておりますが、設定の破綻などが出てくると思います。その時は生暖かい目で「そうなんだ……」とスルーしていただけると幸いです。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 どうやら俺は死んだらしい。何も見えない暗い空間でそんなことを思う。

意外と冷静だな、さすがだな俺よ。

 ……いや、だいぶ混乱してるぞ……。ちょっと、なんで死んだか思い出してみるか。

 

 確かあの日は、120連勤を終えて久しぶりに休みを貰ったんだったか。

 とんでもねぇブラック企業だな。ふふっ……おっといかん、変な笑いが出ちまったぜ。るんるんウキウキで珍妙なステップを刻みながら家賃3万円のワンルームマンションへ帰宅した俺はアプリ『ウマ娘』を起動した。

「お疲れさま、お兄さま。……遅くまでお仕事させてごめんね。ライスも、もっとがんばるね……!」

 好き。あっ! ただいまライスちゃん! ライスちゃんはいつもがんばってるよ! お兄さまいっぱい褒めちゃうぞ! えらいっ! 好き! あぁ〜! 五感が幸福を享受するぅ〜!

 ……なに? 視覚と聴覚しかライスちゃんを感じられないじゃないかだって? これだから素人は……。いいか? まず視覚と聴覚はもちろん目の前にいる宇宙一かわいいライスちゃんの姿……あっ、お顔が綺麗……好き。まつ毛長い……好き。やだあたし死ぬわよ……。あ゛っ……どうやら致命傷で済んだな。次にこの世のありとあらゆる幸福が音となったお声を聴い……あぁ、なんと尊い……。好き。ワタクシ感動のあまりに咽び泣いております……。ここまでは素人でも理解るよね? 嗅覚と味覚と触覚を説明するよ? まず、ライスちゃんの存在を知覚します。簡単ですね? すると、なんということでしょう……爽やかな太陽とお花畑のような香りがしてきますね? それがライスちゃんの香りです。諸説あるけど私はそう感じました。そうすると自然と舌が空間に触れますね? 今、あなたは極上の甘味を口にしたような感覚を得ました。そう、それがライスちゃんオーラです。本物のライスちゃんを舐めるような事をしたら宇宙が滅びます。正確にいうと俺が滅ぼします。お兄さまに不可能はありません。いいですね? ……おや? ライスちゃんがこっちのことを心配そうに見てきますね? ごめんねライスちゃん、お兄さまは大丈夫だよ。微笑んでくれました、かわいいですね。慈しみを込めて頭を撫でてあげましょう。その絹のような髪の感触が、ひだまりのような体温が、その愛しさが感じられるでしょう。もうおわかりですね? ライスちゃんを五感で感知することが出来ました。これであなたも立派なお兄さまです。

 

 話が逸れてしまった……えっとなんだっけ、……そうだ俺の死因を思い出していたんだ。このあと確か「ただいま、ライスちゃん」って言った後、段々と意識が無くなって気づいたらこの暗黒空間にいたんだ。

 ……まあ何もできないから大人しくしておくか。この後は一体どうなるのだろうか。このまま意識が消えるのか、それとも転生するのか。

 もし、次に生まれ変われるとしたら、贅沢かもしれないが花か植物あたりがいいな。

 できれば青い薔薇がいい。もしかしたら、ライスちゃんに手に取ってもらえるかもしれない。

 個人的には白百合とかもいいと思う。ライスちゃんの好きな青い薔薇を調べている時にたまたま見かけたんだけど、なんというかすごく綺麗だった。

 花言葉も純潔や汚れなき心とか、俺とは縁のないものだけど、もし生まれ変われたのなら、また人として生きられるなら次こそは誰かを、俺を、あ……────

 

 

 

 誰かが俺を抱きしめている。暖かくて心が落ち着く。キラキラとした雫がこぼれ落ちてきて、それが人だと気づく。

 

「あぁ……はじめましてかわいいかわいい私の子……。私があなたのお母さんよ」

「君に似て、とてもかわいいね。はじめまして僕が君のお父さんだよ。……どうしたんだい、スズラン?」

「……名前が降りてきたの。あなたの名前は『シロノリリィ』。とっても素敵な名前ね」

「そうかい、もう名前が降りてきたんだね。それじゃあ、リリィ」

二人の声が重なる。

「「生まれてきてくれて、ありがとう」」

 

 今日ここで『私』は産声をあげた。

 

 

 

 ママ! おっぱい!!

 おっと、その通報は私に効く、やめてくれ。

 言い訳をさせてもらうとだね、私はどうやらウマ娘として転生したらしい。

 ベイビーである私は授乳を受ける権利を有しているのだ。合法なのだ許してくれ、などとくだらない事を脳内で考えながら乳を貪る。

 チラリと、私に母乳を与えてくれる人を見れば、どうしたの? と優しい顔で微笑んでくれた。

 穢れのない白い髪に馬のような耳を生やし、少し緑が混じった黄色い瞳は宝石のように美しい。シミひとつない肌に、極上の果実を思わせるその唇は、人々の視線を捉えて離すことはないだろう。

 ──美しい。私の少ない語彙力では、その美を表すことができない。

 ママぁ……しゅきぃ……。

 いかんいかん、昇天するところだった。

 彼女「シロノスズラン」は私の母であり、ウマ娘だ。最初はよく似た別の種族かな? なんて考えていたが、彼女の耳を眺めていた際に私達はウマ娘という種族なのよ。と教えてもらった。

 私達、ということは私もウマ娘だと告げているに等しい。

 頭の方に意識してみると、ピコピコと耳が動いた。前世の時にはない感覚だった。おもしろーい!

 まあそれはいい、むしろ幸運だった。

 社畜からウマ娘になったのだ。よくて畜生や植物になるだろうと予測していたから、これは嬉しい誤算である。

 120連勤して死亡した私を哀れに思った神様が、せめて好きな世界で新たなる人生を歩めるように慈悲をくれたのだろう。

 腹を痛めた時とガチャを引く時しか祈ったことのない神様に、初めてまともに感謝を捧げた。ありがとう神よ、今度はブラック企業に就職しないでウマ娘ちゃん達を推します。

 推しといえばそうだ、これが1番大事な事だ。

 ライスシャワーはいるのかどうかだ。

 前世で私はお兄さまだったのだが、彼女を推せないなら私は、神様に向かって中指を突き立てなければならない。唾を吐くのはちょっと心が痛むのでやめておいてやる。

 あぁ、ライスシャワー、私が愛したライスシャワー。

 また君に逢いたい。もし、また君と逢えたのなら私は──

 

 

 満腹になったのか、ウトウトとしだした我が子を優しく撫でながらシロノスズランは言う。

「お腹いっぱいになっちゃったのかしら? いいのよリリィ、たくさん食べていっぱい眠って、大きくなるのよ」

 かわいらしいゲップを出し、愛しい我が子はすやすやと眠り出した。

 その幸せそうな寝顔に思わず笑顔が溢れる。

「おや? リリィは寝ちゃったのかい?」

 最愛の夫がそう声をかけてくる。

「見て、この寝顔。天使としか言いようがないわ」

 我が子にデレデレな様子になんというか、母親なんだなぁと思いながらすやすやと眠る赤ん坊を見る。

「……この子はこれからどんな人生を歩むのかなぁ。……もしかしたら三冠ウマ娘になったりして」

 と冗談めかしていえば、クスクスと彼女は笑った。

「そうなったらすごいわね。……でもね、私はそんなのどうだっていいの」

 我が子を撫でながら彼女は言う。

「今ここで、生まれてきてくれて、生きているだけで、特別なの。……ねぇ、リリィ。私のかわいいリリィ。改めて言うわ」

 この世で最も尊いものに触れるかのように、慈しみを込めて撫でながら彼女は言う。

「生まれてきてくれて、ありがとう」

 その光景は、まるで絵画の中の聖母のようで彼の心に灼きついた。

 

 

 

 おぎゃってバブってすやすやポンして私は5歳になった。

 初めて「ママ」と喋って泣かれたり、よちよちとハイハイをしてキャーキャー騒がれたり、トテトテと歩けば宴が始まったりしたが、私は毎日元気に過ごしている。

 両親に(紹介を忘れていたが、父親は『白井賢司』という)レースを見たいとかわいらしくお願いすれば、「君も立派なウマ娘なんだなぁ」と笑いながらもテレビを見せてもらえた。

 前世のアプリで見たことのないウマ娘達がたくさんいて、どのレースも見応えがあった。おめめキラキラ幼女である。

 ふと、ウマ娘は、どこかの世界の名馬の魂を宿したとかどうとかいう知識を思い出し、己のウマソウルはいったいなんなのかと考えた。

 自分は人から転生したので、ウマソウルは入ってないと思ったが、馬車馬の如く働く社畜は馬みたいなもんだから、実質ウマソウルだなと、一人で納得して頷いた。

 名付けるとしたら「シャチクブラック」か「レンキンシャチク」あたりだろうか。

 そんな恐ろしい名前じゃなくてよかったと、アホな事を考えた後、自分の名を思い浮かべる。

『シロノリリィ』

 なんともまあかわいらしい名前だ。今の私にとても似合っている。

 私の見た目は母譲りの美しくも可憐な容姿をしている。

 自分で言うのもなんだが、お人形さんのような整いすぎた容姿をした私は、ご近所でも評判の美幼女である。ぶいぶい。

 肩まで伸ばした絹のような白毛。顔は神様が自ら手掛けたような、精巧で作り物のような愛らしさと美しさが両立した、まさに芸術的な仕上がり。

 白銀の睫毛と煌めくその瞳は、そこいらの宝石がただの石ころのように見えてしまう。…褒め出したらキリがないのでここらへんでやめておくが、私はとんでもなくかわいいのだ。

 初めて鏡で己の姿を見た時「このかわいいこはだぁれ?」と思わず呟いて、両親に笑われてしまったのは少々恥ずかしかった。

 

 そんな平和な日々を過ごしていたある日、両親の仕事の都合でお引っ越しをすることになった。

 どんな仕事をしているのかはよくわからないが、その健康そうな顔からして社畜ではないことだけは確かだ。

 社畜だったら泣いてしまう。私は今生の両親のことが大好きだ。健康なまま長生きしてほしいと思っている。

 今の私は少し思考することが多いぐらいで、精神は普通の幼女である。

 社畜in幼女故に不気味な子どもだとか思われないだろうかなどと思っていたが、精神は肉体に引っ張られるらしく、大人びているだとか神童だとかそんな転生主人公扱いを受けたことはない。寧ろめちゃめちゃ甘やかされている。ママもパパもだぁいすきっ!

 前世の両親は、私を音が鳴るDXサンドバッグか、500円置いておけば勝手に成長する穀潰しぐらいにしか思っていなかったようだが、もう関わることはないのでどうでもいい。

 いや、ウマ娘の世界に転生出来たから寧ろ産んでくれた事に感謝しよう。サンキュー!!

 引っ越し当日、ご近所さんに挨拶に行くことになった。おともだちができるといいなぁ…わくわく!

 そこで私は、前世で最も愛したあの子と出会うこととなった。

 

 

 

 

「おかあさま、きょうおとなりにあたらしいひとがおひっこししてくるってほんとう?」

「そうよ。もし歳が近い子がいたら、お友達になれるかもしれないわね」

「わぁっ……! あのねっ、おともだちになれたらね、ライス、いっしょにえほんをよみたいなっ!」

「ふふっ。それはとっても素敵ね」

 玄関のチャイムが来客を告げる。

「あら? もしかしてもうお引越ししてきたのかしら? ……ライス、一緒に確かめに行く?」

「うんっ! たのしみだなぁっ!」

 玄関の先から声が聞こえる。優しそうな男女の声と、かわいらしい小さな女の子の声だ。

「すみません。今日引っ越してきた、白井というものですが──」

 母親の背に隠れながらそっと声のする方を覗くと、そこには優しそうな眼鏡をかけた男性とお姫様のような綺麗な白毛のウマ娘と妖精のような可憐な小さいウマ娘がいた。その小さなウマ娘の美しさに目を奪われる。

「──ようせいさんみたい。……えっ?」

 目と目があったそのとき、その小さな少女はボロボロと大粒の涙をこぼした。

「リリィ!? どどどどうしたんだい!? お腹が痛いの?」

「リリィちゃん!? あっ、あの…そのすみませんこんなこと今まで一度もなかったのに…大丈夫? リリィちゃん?」

 その様子にライスシャワーの母親もあたふたとしている。

 引っ込み思案なライスシャワーはこういう事態に陥ったとき、いつもならば慌てて両親の後ろに隠れて気配を消すのだが、この時は自然と──寧ろ自分が、という運命的な何かを感じ小さな少女の手を取った。

「だいじょうぶだよ、なかないで……」

 安心させるように、優しくライスシャワーは言う。

 すると少女は、さらに大粒の涙を溢しながら想いを告げる。

「……あのねっ、わたしはねっ……あなたにあうために、うまれてきたの……」

 初対面でいきなりこんな事を言うものだから、両親達はとても困惑していた。だが、ライスシャワーはこの言葉をすんなりと受け止めた。──きっとこれは、運命の出会いなのだろう。

「ライスもね、そうおもうの。なんでだろう……はじめてあったのにね。ライスは、ライスシャワーっていうの。……ねぇ、あなたのおなまえをおしえて?」

 手のひらを合わせて指を絡め、お互いに見つめ合いながら問いかける。

「…わたしのなまえはシロノリリィ。あのねっ! わたしとおともだちになってくださいっ!」

「もちろん! ライスもね、あなたとおともだちになりたいなぁっておもっていたの!」

 そう告げると小さな少女は太陽のような満面の笑みで彼女に抱きついた。

「ライスちゃんっ! すきっ!!」

 いきなりの発言にライスシャワーは、顔をトマトのように真っ赤に染め、あわあわと慌てた。少女は動揺する彼女を気にする事なく、幸せそうにぐりぐりと胸に顔を押し付けていた。

 すきっ、すきっ……と想いを漏らしながら頬擦りする少女を見て、ライスシャワーはまだ真っ赤な顔に微笑みを浮かべて優しく頭を撫でる。

 その様子を見て両親達は苦笑しつつも仲良くなれそうだと思った。



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第2話 幸せな日々

実はタイトルを「すき♡すき♡だいすき♡ライスシャワー♡」にしようか迷っていたのですがくどいのでハートは破壊しました。


 ライスちゃん好き。

 ひと目見ただけでライスシャワーだと気づいたよ。

 小さな君は、まるで妖精のように可憐で美しい……。

 あぁ、ライスシャワー、私の愛したライスシャワー。

 想いが溢れ出る、心が漏れる。

 また君に逢えた、あぁ、ありがとう、ありがとう。

 開幕ポエムでこんにちわ。シロノリリィです。

 小さいライスちゃんもかわいいなぁ……。もちろんどんなライスちゃんもかわいいけどねっ!

 いきなりボロボロ泣き出して『あなたに逢うために生まれてきたの』なんて不審者発言をした私を微笑みながら受け入れてくれたライスちゃんは天使だね。

 ……幼女になった影響なのか、それともウマ娘になった影響なのか、最近は感情がポコポコ出るようになりました。

 あれからライスちゃんと一緒に絵本を読んだり、お人形さんを着せ替えたりたくさん遊びました。

 今日は一緒にテレビでレースを見ます。とってもたのしみです!

 

 

 

 

 テレビ越しのレースを、白と黒の小さなウマ娘が観戦している。

 幼い少女達が応援するウマ娘は、お世辞にも強いとは言えない選手だった。

 大舞台では入着出来ず、いつも勝ちきれないという印象のウマ娘だったが、少女達は、どんなレースでも決して諦めないその強い瞳に魅せられていた。

 今日も彼女は走る、勝利を目指して。

 

「「がんばれー!!」」

 

 彼女は今日もバ群に埋もれていく。

 

「「いけー! まけるなー!」」

 

 その姿が見えなくなる。

 

「「○○○○○○○○○ーー!!」」

 

 また今日も負けてしまうのか、そんな事を考えじわりと涙が滲み出す。

 彼女の姿が見えなくなってもレースは続く。

 ──そう、まだ終わってなどいないのだ。

 最終コーナーを曲がったその時、一瞬の隙を突いて彼女が飛び出した。

 

「「っ!!! いけいけー! ぶっちぎれー!!」」

 

 閃光のような末脚を発揮して彼女はゴールを駆け抜けた。

 レース場から弾けるような歓声が飛び出した。

 

『っっっ!!! アタシの勝ちだぁーーーー!!!』

 

 彼女は咆哮した。歓喜を、勝利を──その全ての感情を乗せて叫んだ。

 そんな彼女に釣られ、幼い少女達も声にならない叫びをあげる。

 お祭りの様に騒ぐ少女達を白い少女の両親が微笑ましそうに見守っていた。

「ライスちゃん、ライスちゃん! すごかったね!!」

「うん! あのね! うもれちゃったときにね、ライスもうだめかとおもったの……。だけどね! そのあとしゅばってとびだして、ずどーんっ! ってゴールしたのがほんとうにかっこよかったの!!」

「うん! ほんとかっこよかったぁ!! ……ねぇライスちゃん」

「どうしたの、リリィちゃん?」

 急に静かになった少女に、ライスシャワーは不思議に思いその顔を真っ直ぐ見つめる。

 興奮した影響か頬は赤くなり、瞳は宝石の様にキラキラと煌めいている。

 その綺麗な顔にどきりとしながら少女の口から言葉が出るのを待った。

「……わたしね、ライスちゃんとレースではしりたい!」

「……ふえっ?」

 純粋で穢れを知らない様な無垢な笑顔をこちらに向けて、少女は想いを告げる。

「レースってみてるだけでもわくわくするでしょ? だから、わたしもはしりたいの!」

 ライスシャワーの手を取り、もう少しで唇が触れてしまいそうな距離まで顔を近づけ少女は言う。

「だいすきなライスちゃんと、いっしょに!」

 弾けるような笑顔と共に飛び出したその言葉に心が、身体が、魂が歓喜した。

「っ!! いっしょにはしりたい! ライスも!」

 少女は破顔し、溢れ出る感情をぶつけるようにライスシャワーに抱きついた。

「ライスちゃんだいすきっ!!」

「ライスもリリィちゃんのことだいすきだよ!」

 お互いに頬擦りし、きゃっきゃっと騒ぐ少女達を見て両親達は苦笑を漏らす。

 仲が良すぎるなぁ……と。そんな事を思いつつちらりと時計を見ると少女を帰宅させる時間だと気づいた。

「ライスちゃん、そろそろお母さまが迎えに来る時間よ」

「ふえっ!? もうそんなじかんなの……」

 大きな耳を垂れさせて寂しげに黒い少女が言葉を漏らす。

 そんな少女を見て、くいくいと白い少女が袖を引く。

 黒い少女が瞳に涙を滲ませ振り返ると、母が子をあやす様に少女の頭を胸に抱きしめ優しく撫でながら白い少女は言った。

「きょうおわかれしても、あしたまたあえるから。だからだいじょうぶだよ」

「……それでもさびしいもん。リリィちゃんはさびしくないの?」

「さびしいよ、とっても。……あえないってかんがえるだけで、ないちゃいそうになるもん」

 涙声になりながら言葉を紡ぐ。

 少女を安心させる様に、心を込めて。

「あしたも、あさっても、そのつぎのひも、わたしはライスちゃんとあってあそぶの。これからさきも、ずっといっしょだから。……ライスちゃんがいやっていってもやめてあげないんだから」

「リリィちゃんとあうのに、いやなんてぜったいにいわないもん!」

 お互いに顔を合わせ顔を綻ばせる。

 温もりを確かめ合う様に、ぎゅっと互いに抱きしめ合いながら目を閉じる。

「ライスちゃんがさびしくないように」

「リリィちゃんがさびしくないように」

 そんな少女の様子に大袈裟だなぁ……と思い、両親はお互いに顔を合わせ微妙な笑みを浮かべた。

 願わくばこの小さな少女達の幸せが永く続きます様に。そんなことを考える大人たちなのであった。

 

 

 

 

 ライスちゃんとバイバイしたリリィちゃんです。

 今はママが作ってくれた美味しいご飯を食べています。

 さびしい……。ライスちゃんにあいたいよ……。

 いやいや、私は強い子なので大丈夫です。……早く明日が来ないかなぁ……。

 そういえば私とライスちゃんは歳が3歳ほど離れています。これは、私がトレセン学園に入学した際にちょうど中等部と高等部になる感じですね。

 ライスちゃんがデビューするのが高等部の時なので、多分私は同期としてデビューすると思います。いや、します、絶対です。

 ……これは運命です。ライスちゃんとバチバチにレースをしろという神様からのお告げですね。

 ライスちゃんは長距離が得意なステイヤーなので、私もステイヤーだったらいいなって思いながらご飯をもぐもぐします。

 ……あっ! 距離適性は遺伝するらしいですし、ママに聞けばどの距離が得意なのかわかるかもしれません!

 さすが私! 賢いのです! ふっふーん! 褒めてくれてもいいんですよ?

「ママ! ママはレースをはしるときどのきょりをはしるのがとくいだったの?」

「あらあらリリィちゃん。どうしたのいきなり?」

「もう適性距離のことがわかるのかい? リリィは賢いねぇ」

 パパが褒めてくれました! ふふーん!

「あのね! みじかいのからたんきょりと、マイルと、ちゅうきょりとちょうきょり! あとじめんがしばとダートでわかれてるんだよ!」

「正解よリリィちゃん! 本当に賢いわねぇ! さすが私のかわいいリリィちゃんよ!」

「えへへ! ……それでね、とくいなところはおやににてくるっていうからきになったの。ママはどんなかんじだったの?」

 そうねぇと呟いたママは昔を懐かしむ様に語りました。

「ママが得意だったのはダートのマイルね」

 ……なんですって?

「……しばははしれるの?」

「苦手だったわねぇ。……短距離はまだマシだったけど中距離と、特に長距離は苦手だったわ。……リリィちゃん?」

 ……まだ慌てる様な時間じゃない、落ち着くのですシロノリリィ……。

「リリィちゃん? ……どうしたの?」

「……芝を走れないかもしれないと思って固まってるんじゃないかな? ほら、有名なレースは芝ばかりだから……」

「……えっと、大丈夫よリリィちゃん! そこは本人次第だから、ね?」

 ……まぁいっか!

「……もししばではしれなくても、はしれるようになるまでがんばるからだいじょーぶ!」

「……リリィちゃん!」

「リリィはいいこだなぁ……」

 ここはゲームじゃないのです。だから、距離もバ場もできるようになるまで走ってやります! がんばるぞー、おー!

 

 

 

 

 

 次の日、早速ライスちゃんと走ってみるためにウマ娘用の公園にきました。

今日は私のママも一緒です。

 場所によって、芝とダートで分かれているのでこどものウマ娘の適性を大雑把に把握できるようです。さすがウマ娘ワールドですね!

「あんまり無茶して走っちゃだめよ?」

「「はーい!」」

 ライスちゃんは何度か走ったことがあるらしく、私にお手本を見せてくれると言っています。さすがライスちゃんです! 頼りになりますね!

 最初はダートの上を走ってみます。わくわく!

「すいすいうごけます! むてきです!」

 どうやら私はママと同じでダートが得意なようです。

「うぅっ…はしりにくいよぉ…」

 ライスちゃんがふにふにになってます。かわいいですね。

 次に芝の上を二人で走ってみます。リリィちゃん初芝です!

「う゛に゛ぃ゛ぃ゛。……はしりにくいよぉ……」

 どうやら私は芝の適性が低いようです……。まあこれから捻じ伏せるので構いませんが。

「みててリリィちゃん! しばはね、こうやってはしるんだよ!」

 ライスちゃんはトテトテと走り回っています。やはり芝の適性があるみたいですね! はしゃぐライスちゃんもかわいいです!

 私も負けていられません。いざゆかんウマ娘パワー!!!

 トモに力を込めるとドンッ! という爆発音と共に足元の芝が爆ぜました。その音に驚いてママとライスちゃんがこっちに慌てて向かってきます。

「リリィちゃん!? すごい音がしたけど怪我はない? 大丈夫?」

 ライスちゃんはあわあわしてます。かわいいですね。

「だいじょうぶだよママ。ほらみて、むてきだよ!」

 ママは私を座らせてトモを触り確認しています。

「……見た目と触った時に異常は感じないけど。……うーん」

 唸るママの様子に不安になり、ライスちゃんの手をぎゅっとします。

「……一回病院で診てもらいましょう。素人判断は良くないわ」

 ライスちゃんが不安そうにママに問いかけます。

「リリィちゃん、けがしちゃったの?」

「ううん、多分とっても力が強いだけだと思うわ。だから安心して」

 ライスちゃんを安心させるように、微笑みながらママが言いました。

「びょ、びょういんにいくならライスもついてくよ!」

「それは心強いわねぇ。それじゃあリリィ、一旦病院にいきましょう」

「……うん」

 

 

 

 

 

 病院で先生に診てもらい、結果が出ました。

「えー……調べてみたところ、まぁとんでもないバ鹿力だと判明しました。それと、骨の頑丈さも桁外れですね」

「異常などはありませんか?」

「えぇ、特には。寧ろとんでもない健康体です。私も見習いたいぐらいですよ」

 そうですか、と言いママは安心したように肩の力を抜きました。

 やっぱりリリィちゃんは強い子です!

「この子の筋肉は常人よりも細く強靭でなにより数が多いです。いわゆる超人体質といいましょうか。そしてその筋肉で潰されないように骨も常人の何十倍もの硬さになっています。これだけのパワーとなりますと日常生活で物を壊したりだとかが起きそうなものなのですが……。今までそういったことは無かったのですか?」

「……ありませんね。リリィちゃんは優しくていい子なので」

 やっぱりリリィちゃんはいい子です! ママすきっ!

はっはっは! と先生が笑っています。いい笑いっぷりですね! 褒めてあげます!

「それはそれは。……まあ一つ悪いところをあげるなら、この筋肉量と頑丈な骨のせいで体重が他の子よりも重くなってしまうことですかねぇ……。女の子にとってはだいぶ致命的だと思いますよ」

「だいじょうぶです! わたしはつよくてかしこくてかわいくてとってもいいこだからそんなちいさなことはきにしません!」

 胸を張って言うと、また先生は大きな声で笑いました。

 ひとしきり笑った後先生はママとお話しし始めました。

 難しい話はママに任せます。私は賢いので任せるべきところは任せられるナイスな判断力を持っているのです。

 隣にいたライスちゃんを見ると、安心したのか耳をふにゃりと垂らし、顔を綻ばせながら私に喋りかけてきました。

「よかったぁ……。リリィちゃんがけがしてなくて、ほんとうによかったぁ…」

 ライスちゃんは優しいです。えへへ、うれしいなぁ。

「しんぱいしてくれてありがとうライスちゃん」

「ライスのだいすきなおともだちだからね! どういたしまして!」

 嬉しくなったので手を重ねてライスちゃんの肩に頭を預け、上目遣いで訊ねます。

「……またわたしとはしってくれる?」

 指を絡め、私と顔を重ねながらライスちゃんは言いました。

「もちろんだよ。……きょうはちょっとしかはしれなかったけど、ライス、すっごくたのしかったの」

「わたしもすっごくたのしかった! …ライスちゃんといるとね、なんだかむねのなかがあったかくなるの。えへへ……『しあわせ』って、こんなかんじなのかなぁ……」

 顔を破顔させてライスちゃんが私に抱きつきました。

「ライスも! ライスもおんなじきもちだよ! …『しあわせ』って、こんなにもあったかいんだね…!」

 ライスちゃんはあったかいなぁ。……と思っているとママが微笑みながら喋りかけてきました。

「ふふっ……とっても仲良しさんでママ羨ましくなっちゃうわ。先生とのお話も終わったし、この後スイーツを食べに行こうと思うんだけどどうかしら?」

「「スイーツ!?」」

「わたしチョコケーキたべたい!」

「ら、ライスもたべていいの?」

「もちろんよ。あっ! パパ達には内緒よ?」

「じゃ、じゃあねライス、モンブランがたべたいな!」

「もちろんいいわよ! ママに任せなさい!」

 やったー! ママだいすきっ!!

 お大事にって言った先生にバイバイして私たちは病院を出ました。

 スイーツ! スイーツ! うっれっしいなぁ!

「パクパクですわー!」

 ライスちゃんもですわー! と真似してます。

 そんな私たちを見てママがくすくすと笑っています。

 ライスちゃんと出逢ってから、毎日が楽しいです。

 こんな幸せな日々がずっと続けばいいな。そう思うリリィちゃんなのでした。

 




○○○○○○○○○は架空のウマ娘です。この先特に出番とかも無いです。
ライスシャワーと出会ってから完璧に頭幼女になりましたね。素晴らしいです。


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第3話 約束

「多機能フォーム起動? ……うおぉぉぉ!? なにこれカッケェー!」


「位置について、ヨーイ……ドンッ!」

 

 白と黒の少女が駆ける。真っ直ぐに、ゴールを目指して。

 技術もなく、ただがむしゃらに前へと進むだけのそれは到底レースとは言えない。──しかし、ひたむきに駆ける少女達の表情は、眩しいほどの笑顔に溢れていた。

 お互いに競り合っていた少女達だが、徐々に黒の少女が抜け出しそのままゴール板─といっても目印として水筒が置かれた場所だが─を駆け抜けた。

 

「っ! ライスのかち、だよ!」

「うにに……! ライスちゃんはやいよぉ! ……あっ! ライスちゃんおめでとう!」

 全力で走った疲れか、お互い地面に仰向けになってぜぇぜぇと息をしている。

 悔しそうな言葉とは違いその表情はにこにこと楽しそうにしていた。

「ふぅ……ふぅ……ありがとうリリィちゃん。……リリィちゃんは、ライスにまけてくやしくないの?」

 黒い少女が疑問に思い問いかける。

 可愛らしく小首を傾げ、うに? と呟いた後少女は語った。

「くやしいよ。だけどね、かったひとのことはちゃんとほめてあげないとだめなの。だって、そのこがいっちばんがんばったんだから! ……それにね──」少し貯めて白い少女は言う。

「──もしもだれもほめてくれなかったら、きっとかなしいよ……」

 でもつぎはまけないよー! と明るく言う白い少女に、黒い少女は衝撃を受けた。

「……もし、ライスがかって……だれもほめてくれなかったら……」

 ──もしも自分がレースに勝利して、誰もそれを賞賛しなかったら。──そんな未来を考えて黒い少女は沈黙する。

 自分だったらきっと耐えられない。……それどころか走ることが嫌いになってしまうかもしれない。

 ──ありえたかもしれない未来。そんな暗い未来を夢想して黒い少女は瞳からボロボロと大粒の涙を流し始めた。

「……ライスだったら、きっとはしりたくなくなっちゃう。……そんなの……いやだよぉ……」

 ぼろぼろと大粒の涙を流す黒い少女に驚いた白い少女は、あわあわとしたあと起き上がり、きゅっと表情を引き締めその両手を優しく包み込んだ。

「ライスちゃんっ!」

「……ふえっ?」

 その真剣な表情に──満天の星よりもキラキラとした綺麗な瞳に釘付けになる。

 ──誰にも祝福されず、悪役(ヒール)と呼ばれる未来。だが、そんな未来はこの世界では決して訪れない。

「──わたしがいるから。だからだいじょうぶ!」

「……リリィちゃん」

 ──ドクンと、心臓が跳ねる。

「このせかいのぜんぶがライスちゃんのてきになっても、わたしがいるよ。だから──」

 ──ぜったいにまもるから!

 穢れの無い純粋な笑顔で少女は断言した。

あれほど流れていた涙はピタリと止まり、心が──魂が、温もりに満たされた。

「……ヒーローだ」

「……うに?」

「リリィちゃんは……ライスのヒーローだよ」

 ヒーロー? おぉー! かっこいいー! とキラキラした笑顔ではしゃぐ白い少女に黒い少女の心は熱を帯びる。

 ──心が熱い。

「……だいすきだよ、リリィちゃん」

 ──この気持ちは何なのか。

「わたしもライスちゃんだいすきっ!」

 ──この感情の名前を、黒い少女はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 えへへっ。ライスちゃんすきっ!

 つよくてかしこくてかわいいシロノリリィちゃんです!

 あれから毎日ライスちゃんとかけっこ……レースをしています。

 いやぁ〜……ライスちゃんはとってもはやいですね。なんどもレースをしていますが私は一度も勝てたことがないです。やっぱりライスちゃんはすごいです!

 でもですね、私には必殺技があるのです。聞きたいですか? そうですか聞きたいんですね! なら教えてあげます!

 その名は「リリィちゃんボンバー」! この前足元の芝生が爆発したアレですね!

 あの力を利用してスパートをかけるというチョーかっこいい技です!

 方向をコントロールできなくて真上に5メートルぐらいぶっ飛んだ時はママが慌ててキャッチしてくれました! 楽しかったです!

 それ以降リリィちゃんボンバーは禁止されてます。なんでだろ?

 そういえば私がトレセン学園に入学したらミホノブルボンさんとか他にも強い人たちと戦うことになりますね。

 きっと才能の無い私は何度も負け続けることになると思います。

 ……でも、リリィちゃんは例え負けまくったとしても最後には絶対に勝つのです! 絶対に諦めないのですよ!リリィちゃんはつよいこです!

 あっ! ママがこっちに来てますね。ママー!

 

 

 

 

「二人ともー! もうレースは終わりなのー?」

 お互いにきゃっきゃっと戯れている少女達をシロノスズランは呼びに行った。

 はじめて娘が──シロノリリィが走ったその日から、子ども達は毎日飽きる事なく元気に公園を走り回っている。

 ウマ娘である自分なら体力には自信があると思っていたのだが、子ども達の底なしの体力に流石に疲れが溜まっていた。

 ──もしかして、現役のステイヤーよりも体力があるのでは? などと冗談のような本気のような事をシロノスズランは考えていた。

「ママ疲れちゃったから、そろそろおうちに帰らない?」

 午後の1時から走り始め、現在は午後4時程だ。

 小さな子ども達が家に帰るにはいい感じの時間だろう。

 そう思い声をかけるが子ども達は、えー!? と不満そうに─まあとてもかわいらしいのだが─声をあげた。

「あといっかいだけ! ……ママ、おねがい?」

「ら、ライスももういっかいはしりたいの。……だめ?」

 子ども達のかわいらしいお願いに内心デレデレになりながらお願いを聞き入れた。

「……あと一回だけよ? これが終わったらお家に帰りますからね!」

 やったー! と叫び、子ども達はキラキラとした満面の笑みを浮かべながら全身で喜びを表した。

 この子たちに甘すぎるなぁ。と内心思いつつ、まあ可愛すぎるのがいけないんだけどね! と夫が聞いたら呆れるような事を考えながらスタート位置に戻るように促す。

 準備を終えた子ども達はスタートの姿勢をとった。

「それじゃあ位置について……ヨーイ、ドン!」

 

 ──白と黒の少女が駆ける。真っ直ぐに、ゴールを目指して。

 走るのはたったの2人。

 そのレースに観客は1人だけ。

 勝者に贈られるのはたったひとつの賛辞だけ。

 だが、その一言は、どんな名誉よりも、何よりも素晴らしく尊いものなのだ。

「────おめでとう!」

 

 

 

 

 春が終わる。白と黒の少女が出会った季節が。

 ──夏が来た。

 少女達の絆は強くなる。

 夏の日差しに負けぬよう天まで伸びる植物の様に。

 思い出は煌めく。

 眩しい太陽を反射した母なる海のように。

 ──秋が来た。

 少女達の心は育つ。

 厳しい寒さに備え、多くの栄養を蓄える果実の様に。

 世界は色を変える。

 赤々とした美しい紅葉に心を奪われる。

 ─冬が来た。

 少女達は温もりを知る。

 白く冷たい世界の中に確かな人の知恵がある事を。

 雪が降る。

 純白の世界を白と黒が駆けまわる。

 そして──

 

 

 

 

 

 ライスのだいすきなひと。

 とってもたいせつなおともだち。

 ほしぞらよりきれいで──

 たいようよりまぶしくて──

 だけどだれよりもやさしくて──

 ライスのだいすきなひと。

 とってもたいせつなおともだち。

 あなたがくれたぬくもりが──

 あなたがくれたおもいでが──

 ぜんぶ、ぜんぶたいせつで──

 だからきょうつたえます──

 こころをこめて──

 

 

 

 

 2月27日。シロノリリィがこの世界に生まれ落ちた日。

 今日で6歳になる白い少女をお祝いする為にささやかなパーティーが開かれた。

「「お誕生日おめでとうー!!」」

 白い少女を両親が祝福する。

 この世に生まれた奇跡を。

 健やかに育ってくれた嬉しさを。

 心を込めて伝える。

「えへへっ…! ママ、パパ、ありがとうっ!!」

 溢れんばかりの愛を受け止めた少女は顔を綻ばせる。

「今日のケーキはリリィちゃんの大好きなチョコケーキでーす!」

 ほんとうー!? やったー!! ママだいすきー!! と無邪気に抱きついてくる少女を優しく撫でながら夫の方に視線を向けさせる。

「パパからはプレゼントがあります! ジャジャーン!」

 そう言うと背中に隠していた大きな鳥のぬいぐるみを少女の目の前に差し出した。

「わぁー!! これ、ほしかったやつなの! パパありがとう! だぁいすきっ!」

 父親に抱きつき無邪気に頬擦りをする白い少女を優しく撫でる。

 普段シロノスズランに対して親バカだね。などと言っている夫だが、表に出さないだけで実は彼女よりも相当な親バカなのがこの男である。

 普段からすきすき言われている彼女に対して、自分ももっと言ってもらいたいし甘やかしたいと考えている始末である。

 ──まぁ、彼女にはバレバレなのだが。

 ご機嫌にぬいぐるみを抱き締めている少女にシロノスズランは言う。

「リリィちゃん。今日はなんと……特別ゲストが来ていますっ!」

「とくべつゲスト?」

「そうよ〜。リリィちゃんの大好きなあの子よ! どう? わかるかしら?」

 そう言った瞬間食い気味で少女は言った。

「ライスちゃん!!」

「おっほ……はやいわね。……それじゃあどうぞ!」

 その言葉を合図に扉の向こうで隠れていた黒い少女が登場した。

「おたんじょうびおめでとう! リリィちゃん!」

「ライスちゃん!! ありがとー!!」

 今日一番のいい笑顔で少女が答えるとそのまま黒い少女に抱きついた。

「あわわっ! ……きょ、きょうは、ライスからもプレゼントがあります!」

 ほんとう!? そう言ってさらに目をキラキラさせて黒い少女を見上げる。

「ほんとうだよ。ライス、おかあさまにおしえてもらいながらがんばっててづくりしたの。……リリィちゃんにきにいってもらえるとうれしいなぁ……」

 そう言うと黒い少女はプレゼントを取り出す。

 折り紙で作られた白い百合の花。

 シロノリリィ──少女と同じ名前の花。

「きれいで、リリィちゃんにピッタリだとおもったの」

 白い少女は破顔してそれを受け取った。

 愛おしそうに、決して傷つけない様に優しく胸に抱く。

「……リリィちゃんにつたえたいことがあるの」

 黒い少女が白い少女を見つめる。

「ライスね、リリィちゃんにあうまえはじぶんにじしんがなかったの。ほかのひとがこわくて、いつもおかあさまのせなかにかくれていたの」

 白い少女は聞く。一言も聞き逃さない様に。

「でもね! リリィちゃんとあったあのひから、まいにちがキラキラしているの! せかいはこんなにもきれいで、あったかいんだってきづけたのっ!」

 黒い少女は手を取る。溢れる心を伝える様に、優しく包み込む。

「ライスとおともだちになってくれて、ライスにやさしさをくれて、ライスにしあわせをくれて。……まだまだつたえたいこと、たくさんあるの。でもつたえきれないぐらいたくさんあるから……このことばをおくります」

 黒い少女は言う。心を込めて。

「おいわいできるひ、ずっとずっとまってたんだ。……あのねリリィちゃん。うまれてきてくれて、ありがとう──」

 ──だいすきだよっ。

 白い少女の瞳からポロポロと涙が溢れ落ちる。

 だが、その表情は太陽よりも眩しい笑顔だった。

「ありがとう……ありがとう、ライスちゃん!!」

 止まらぬ涙を黒い少女は指で拭う。

 そのままそっと抱き締める。

 温もりを確かめる様に。

 心を伝えるように。

 今日は2月27日。シロノリリィが祝福を受けた日。

 世界で一番優しい日。

 白と黒の少女はこの日を一生忘れないであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3月5日。ライスシャワーの誕生日。

 あなたがくれたプレゼント。

 紙でできた青い薔薇。

 あなたと出会えたこの奇跡。

 優しさと温もりを。

 ぜんぶ全部、詰め込んで。

 ありがとう、ありがとう。

 3月5日。私が生まれた奇跡の日。

 私の名前はライスシャワー。

 私の名前は祝福。(ライスシャワー)

 

 

 

 

 

 ──季節は巡る。

 春が来て、夏が来る。

 この夏を、少女達は忘れない。

 ──夏が来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……リリィ、大切な話があるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ライスシャワーには大切な友達がいる。

 誰よりも綺麗で、誰よりも優しい大切なお友達。

 この友情が、思い出が、永遠に続くと思っていた。

 

 

 

 

 

 

「──リリィちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──夏が来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──別れの夏が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──明日、シロノリリィはライスシャワーの元から去る。

 両親の仕事の都合による転勤によって。

 少女達にこれを止める術はない。

 夜空で光の花が咲き誇る。

 今日は夏祭り。

 白と黒の少女はただぼうっと空を眺める。

 

 

 

 黒い少女は隣に座る白い少女を眺める。

 ──夜空を彩る光の花よりも美しい。

 今すぐにでもこの少女を攫って世界の果てへと逃げ去りたいと、そんな事を考える。

 だが、それをすればこの少女は悲しむ。

 誰よりも優しい少女の事だ。きっと自分がいなくなった後の家族のことを考えて涙を流すだろう。

 それに、自分は子どもだ。何もできない、無力な子どもだ。

 ──何も抗えないのか。

 白い少女を見つめながら考える。

 ──どうすれば……。

「──こどもって、よわいよね…」

 白い少女が口を開く。

「わたしたちはよわくてなんにもできない…」

 光の花を見つめながら

「……でもね、みつけたの」

 その瞳に花と星が映る。

「ライスちゃんといっしょにいるほうほう」

 綺麗な顔がこちらを向く。

「──トレセンがくえん、トゥインクル・シリーズ」

 瞳の中に黒い少女が映る。

「……よわいこどものわたしたちがいっしょにいられるほうほう」

 キラキラ輝くその瞳が。

「──ターフのうえなら、いっしょにいられる」

 穢れを知らぬその輝きが。

「……だから、まってて」

 あぁ、その瞳が。

「──わたしがそこにいくから」

 ──私を狂わせる。

「──うん、まってる」

 

 

 

 

 

 

 お祭りの屋台で見つけたおもちゃの指輪。

 青と白の偽物の宝石。

 あなたとの約束を指輪に込めて。

 お互いの右手の薬指に指輪を嵌める。

 この温もりを忘れないように抱き締め合う。

 白いあなたの頭にキスをする。

 黒い私の髪にキスをする。

 この約束を忘れない。

 だから私はもう泣かない。

 あなたが死ぬまでもう泣かない。

 この指輪に約束を。

 




小学校の教科書っていっぱいポエムがありましたよね。この話を書いててそんな事を思い出しました。


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第4話 白と黒の少女

☆1 シロノリリィ
芝E ダートC
短距離D マイルC 中距離D 長距離E
逃げG 先行A 差しA 追い込みA
スピード+0% スタミナ+0% パワー+30% 根性+20% 賢さ-20%
領域『無し』


 今日も元気に芝を走っています。かわいくてかしこいシロノリリィです。……ごめんなさい、本当はちょっぴり元気がないのです。

 あれから私は新しい街に引っ越しました。この街にライスちゃんはいません、ライスちゃんと会えないのはとても寂しいです。でも、ライスちゃんは私と約束をしてくれました。

 トレセン学園のトゥインクル・シリーズ。そこで再会しようと約束しました。

 今の私はトレセン学園ではやっていけないぐらいのよわよわリリィちゃんです。だから毎日走ります。走って走って、走り続けます。つよつよリリィちゃんになって、ライスちゃんと再会した時にビックリさせてあげます!

 話は変わりますが、夏祭りの日にライスちゃんと約束の証としておもちゃの指輪を交換しました。

 自分達の色─ライスちゃんが青で私が白です!─の指輪を交換して、お互いの事を忘れないようにという事らしいです。とってもロマンチックですね! まぁ私がライスちゃんの事を忘れることは無いし、ライスちゃんが私の事を忘れるなんて事もあり得ませんけどね!

 でも指輪を交換した後、その……私の頭にライスちゃんが……えっと……き、キスをしたのはちょっと恥ずかしかったです。その後ライスちゃんの髪の毛に私も……キスをしました。……イヤじゃないし寧ろ嬉しかったんですけど、やっぱり恥ずかしかったですね。誓いの為だから必要な事なんだよ! ってライスちゃんに力強く言われました。ライスちゃんは私よりも色々な事を知っててすごいです! さすがライスちゃんですね!

 指輪の話に戻るんですけど、嵌める手と指の位置によって色々意味が変わるそうなんです。

 私が嵌めたのは右手の薬指です。……この意味が分かりますか?……分からない?そうですかそうですか……。ならかしこいリリィちゃんが教えてあげます!

 その意味はなんと……とっっっても仲良しさん! という意味です!

 ライスちゃんもそう言ってたし、なんならママにも聞いたから完璧な筈です!

 ふっふーん! リリィちゃんちょーかしこいのです! 褒めてください!

 

 

 

 

「それじゃあママ、走ってくるね!」

 

 あれから時は流れ、シロノリリィは12歳となった。

 後1年でトレセン学園の中等部に入学できると嬉しそうにしている。

 学園に入ると寮生活になるのだが、そうするとかわいい娘と離れ離れになってしまうので両親達は既に泣きそうになっている。

 まだ1年ある。と子どもなら感じるだろうが、大人の感覚だと1年などあっという間に感じてしまうのだ。

 あの日、ライスシャワーとの再会を誓った日からシロノリリィは毎日走り続けている。流石に台風の日は許可を出さなかったが──1日も休む事なく欠かさずに走り続けているのは、両親にも予想ができなかった事である。

 本音を言うのなら、トレセン学園など行かずにこのまま自分達の元で暮らしてほしい。だが、この小さな少女の本気の決意を目の当たりにして、親としてこの子を見守ると決めたのだ。

 そして、何かあった時は必ず助ける。白い少女の両親は決意したのだ。

 

「──リリィちゃん、大きくなったわねぇ……」

「そうだね……。それに、君に似てとても綺麗になった……」

「可愛すぎて、悪い虫が付かないか心配だわ……」

「……正直、リリィは綺麗すぎるんだよねぇ……」

 12歳となったシロノリリィはそれはもう美しく成長した。

 具体的に言うと、その姿を見ただけで視線を逸らすことが出来なくなり、微笑まれたらそのまま恋に落ちてしまう程だ。タチが悪い事に性別を問わず、だ。

 まるで神によって造られた至高の芸術、といったところか。

 最近は完璧に頭幼女になっているので忘れてしまいそうになるが、彼女は転生者である。

 ──まあ両親に愛され、さらにライスシャワーと出会った影響で、転生前の人格はもう完璧に『シロノリリィ』となっているのだが。

 ちなみに彼女の美貌は天然物である。なんて恐ろしい子……!

 転生前の知識はチート特典と言えるが、先ほど述べた両親の愛とライスシャワーと出会った衝撃でもう殆ど覚えていない。アホノリリィとしか言いようがない。

「……そういえば、ねぇあなた?ライスちゃんの事を覚えてる?」

「リリィの大事なお友達のことだね?もちろん覚えているよ」

「そう、あの可愛いライスちゃんよ。……あの子ね、リリィちゃんと約束の証として指輪をお互いに交換したんだけど、その時に右手の薬指に嵌めたのよ」

「……?こどもの頃の事だし意味なんて分かってないから、どの指でも同じだと思うけど……。それがどうかしたのかい?」

「……『とっても仲良しな人』 恋人だとかそういう意味はまだよく分かってなかったっぽいけど、本能的に理解してたわ。確実にね……」

「……そっかぁ」

 当時シロノスズランはかわいらしいリアクションを期待してライスシャワーに聞いたのだ。だが、そんな軽い事を考える彼女にライスシャワーは答えた。

「──リリィちゃんは、だれにもわたさないから」

 ──重い。9歳のかわいい少女が言う事じゃない。

 ……そう。としか答えられなかった。

 ちなみに、その重い想いを受けたシロノリリィ本人ははよくわかっておらず、「えへへ。……嬉しいなぁ」と純粋に喜んでいた。かわいいですね。

 

 

 

 

 

 

 白い少女は駆けていく。ひたむきに、あなたの元へ──

 

 

 

 

 

 ライスシャワーがトレセン学園に入学し、現在は中等部3年である。

 シロノリリィと約束をしたあの日から時は流れ、ライスシャワーは15歳になっていた。

 約束を果たす為、あれから弛まぬ努力と勉強を重ねトレセン学園へと無事に入学し、今は高等部へ進学する為の準備をしている。

 中高一貫校の為、余程のことが無い限り問題はないが、念には念を入れている。

 あと1年。──そうすればあの天使のような少女と再会できる。ライスシャワーの心は高揚していた。もしも来なかったら、などと疑いもせず。

 あの約束の日の後彼女と別れてから、実は一度も連絡を取ったことはない。

 あえて連絡先を交換せずに過ごすことで、お互いの決意を固める為だった。

 両親達は軽くビビっていた。かわいい娘達の重すぎる覚悟に。

 

 

「さぁ、ライス! 今日も張り切ってトレーニングしていくわよ〜!」

 彼女の名前は青路瑠流─『あおじるる』と読む。『あおじ』が苗字で、『るる』が名前だ─ライスシャワーの専属トレーナーである。

 ──本来の世界と違い、オドオドしておらず、寧ろストイックで鬼のようなメンタルになったライスシャワーのトレーナーだ。

 ハードだが、怪我はしないよう細心の注意を払っているトレーニングを考案した優秀な新人トレーナーで、今はライスシャワーの基礎トレーニングを指導している。

「うん! よろしくお願いします、お姉さま!」

 ──そして自分の事をお姉さまと呼ばせるなかなかやべー奴でもある。

 このライスシャワーにとって、『お姉さま』は別に必要な存在では無い。

 シロノリリィがライスシャワーの不安や悩みとか、そういったものを全て消し去ってしまった為である。

 だが、トレーナーはライスシャワーの覚悟を秘めた強い瞳に惹かれスカウトを決めたのだ。

 今日も彼女は己の愛バと勝利を目指す。この強い瞳に誓って。

 

 

 

 

「──よし、お疲れ〜! 一旦休憩にするねー!」

「は〜い。ライスはドリンク飲んでくるよ!」

 ──あぁ、今日もライスは愛らしい……。見てるだけで疲れが抜けていく……!

 真面目な顔をして常にこんな事を考えている彼女だが、今日は1つミスをした。

「そういえば来年には高等部に上がるんだっけ。なんだか時間が経つのは早いなぁ〜」

「ふふっ! お姉さま、ちょっとお年寄りみたいだよ」

「んなっ!? まだまだ若いんだけど!? 筋肉痛だって翌日に来るんですけどぉ!?」

「ふふふっ! もう…あんまり笑わさないでよ、お姉さま」

 ──この笑顔の為なら、私は何でもできる……! へへへっ! かわいいなぁ……!

「もう! お姉さま、怒っちゃうぞ!」

「はぁ〜い。ごめんね、お姉さま!」

「わかればよろしい! ……ライスが高等部に上がったら、中等部にはどんな子が来るのかしら?……名家の子とかも来るのかなぁ?」

 ──彼女が犯したたった一つのミスは……。

「──リリィちゃんが来るよ」

 ──シロノリリィに繋がる話をした事だ。

 ──あっ……。やっべ……!

「あ、あぁ……! 前にも色々聞かせてもらった子よね! ……そ、そうだ! ねぇライス、今度新しいトレーニングを取り入れようと思ってるんだけど、そっちの話にしない? ……ね?」

「やだ」

「ほわっ……!? ……即答されちゃった……」

「あのね、リリィちゃんはね──」

 ──愛バの事は最高に可愛いけど、この癖ウマっぷりはもうちょっとどうにかならないかなぁ……と思いながら、今日もシロノリリィの話をたっぷり聞くトレーナーなのであった。無事に入学してくれたら、もしかしてマシになるのか? などと思うが、まぁ考えても仕方がない。

 ──新人である自分の目で見ても圧倒的に才能があるこの愛バがそれほど執着するウマ娘だ。一体どれ程のモノなのか、個人的にはすごく興味がある。

 それに、この麗しの愛バ曰く、自分よりも圧倒的に綺麗だとか言っている。

 以前、どのような容姿をしているのかと聞いたことがあるが、「会ってからのお楽しみ、だよ♪」と可愛らしく言われ、教えてもらえなかった。くそぅ……ライスめ……くっそかわいい……死ぬ……。

 ──シロノリリィ。……果たしてどんなウマ娘なのか。ライスシャワーのおかげでモリモリハードルが上がってしまっているが、この黒い少女とその白い少女が戯れる未来を想像して、自然と微笑みが浮かぶトレーナーなのであった。

「──お姉さま、今別のこと考えてたでしょ?」

 ……おっと?そんなに可愛い瞳で……うそ? ハイライト無くなってる……?

「ソンナコトナイヨ、ワタシノカワイイライス! ……オネエサマウソツカナイ!」

「──その顔、嘘ついてる時の顔だよ。……お姉さま」

 ……あっ…やだ……お顔綺麗……睫毛長い……すき……。

「──悪いお姉さま、だね♪」

 トレーナーの顎を指でくいっと上げ、じっと見つめながら微笑む。

 ……あなたのほうがよっぽど悪い子よっ!! 好きっ!!

 ──これ、リリィちゃんにもやる気なのよね?……この子の話を聞く限りだとだいぶ純粋そうだから、結構心配かも。

 そうは思いつつも反応だけは正直な彼女だった。

「へっ! ひょっ!? ふひっ!? ふへへっ!! ふおっふぅ!!」

「ふっふふ! なぁにその笑い方!」

 賑やかな笑い声が響く──

 

 

 

 そして、季節は巡る──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──春が来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日、ライスはトレセン学園高等部へと進級しました。

 同室の生徒は居ません。本格化もまだ来ていません。でも、今日来ます。

 リリィちゃんが、ここへ。

 

 

 

 

 

 

 

 懐かしい香りがする。優しくて、とっても安心する香り。

 懐かしい音がする。穏やかで、とっても暖かい音。

 今日からまた、あなたと逢える。

 ずっと、ずっと待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ただいまっ! ライスちゃんっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「……おかえり! リリィちゃんっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 綺麗な瞳が私を写す──

 あなたの太陽よりも眩しい笑顔が──

 あなたの星空よりも綺麗な瞳が──

 あなたの優しい心が──

 嗚呼、なんて綺麗なの──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この気持ちを知っている──

 この心の温もりを──

 止まらぬ熱の衝動を──

 私は、知っている──

 この気持ちの名前は──

 




☆3 シロノリリィ
芝C↑↑ ダートA↑↑
短距離B↑↑ マイルA↑↑ 中距離B↑↑ 長距離C↑↑
逃げG 先行A 差しA 追い込みA
スピード+0% スタミナ+0% パワー+30% 根性+20% 賢さ-20%
領域『────────』


なんだか最終回みたいな雰囲気ですが、これで幼少編は終了です。
次からはジュニア期編に入りますが、だいぶゆるふわな雰囲気になると思います。


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キャラ設定という名の怪文書 幼少期編(1〜4話既読推奨)

本編のネタバレを含みます。
別に読まなくても問題ないです。


 シロノリリィ(オリジナル)

 本作の主人公であり、元社畜のTS転生白毛ウマ娘。

 前世では、120連勤の果てに死亡し、何の因果かウマ娘へと転生を果たした。

 アプリ「ウマ娘」ではライスシャワーを推し─つまりお兄さま─ていた。

 現在の両親、母親のシロノスズランと父親の白井賢司の愛を受けすくすくと育った結果、元男性としての意識などがほぼ消滅し、さらに最愛のライスシャワーとの出逢いにより頭が幼女に、つまり完全に『シロノリリィ』になってしまった。かわいいね。(以下、頭リリィちゃん)

 ちなみに使う予定はないが、設定上の人間名は『白井百合』である。そのまんまじゃねぇかっ! もうちょい考えろ!

 誕生日は2月27日。これは、シロノリリィのモデルとなったお花マドンナリリーの誕生花。(ネットで調べただけなので間違ってても気にしない)

 転生特典である原作知識は、頭リリィちゃんになった影響でほとんど覚えていない。唯一覚えている事は、ライスシャワーかわいい、ミホノブルボンはやいつよい、テイオーの足はよく折れる、パクパクですわー!、チームスピカのトレーナーは沖野、ぐらいである。あとはほんの少しだけ断片的に覚えている。ほぼ役にたたねぇ…。

 好きな食べ物は甘いもので、特にチョコ系の食べ物が好き。マックちゃんと気が合いそうですね。

 ライスシャワーに対する好意は家族愛に近い。まぁとんでもなく重くてデカい感情なのだが。

 外見の特徴は、一言で表すなら至高の芸術作品。母親のシロノスズランが元々すごい美人なのでそれを受け継いだ結果なんか凄いことになった。

 髪の色は白で長さは肩にかかる程度、耳の大きさは普通ぐらい。瞳の色は黄色。

 マドンナリリーでググった時に出てくる画像を適当に当てはめると色については何となく分かると思う。こいつのカラーパレット少ねぇな。

 幼女時の身長等の設定は特に考えていない。これは、作者がそこまで決めるのがめんどくさいと考えを放棄したせいである。

 トレセン学園入学時、つまり13歳の時は身長は138センチ。ちっちゃくてかわいいね。

 必殺技は「リリィちゃんボンバー」

 これは固有スキルではなくただの超人的なスパートであり、使用を禁止された為未完成のスキルである。いずれ完成するかもしれない。

 他に特徴として超人的な筋力と強靭な骨格が挙げられる。

 これは特に転生特典ではなく、生まれ持っての武器である。やったねリリィちゃん!それぐらい無いと勝てないとも言う。

 芝CダートA短距離BマイルA中距離B長距離Cとなかなか悲惨な適性を持っている。距離適性だけを見るとマルゼンスキーと一緒。すごいぞリリィちゃん!

 成長補正はスピード+0%スタミナ+0%パワー+30%根性+20%賢さ-20%。

 転生者特有の数字変更によって+が50%もある。パ、パワーが違いすぎるっ!! 賢さは触れるな。

 固有スキルは存在するが、今は扱うことができない。

 毎日走り回っていたおかげで芝と距離に慣れることができた。ちなみに風邪を引いた事は一度もない。とっても元気だよリリィちゃん!

 ライスシャワーと交換した指輪を毎日嵌めているし、なんなら眺めてニコニコしている。

 あの日約束をして以来メンタルがかなり強靭になっている。あぁ……リリィ、私の太陽。……。お前は世界を照らす光だぁっ!

 誕生日にもらった折り紙の白い百合は宝物として大事に保管している。

 一人称は私。調子に乗ってる時とテンションが高い時は一人称がリリィちゃんになる。かわいい。

 よく自分の事をつよい子と言うが、これは自分の才能がライスシャワーに対して及ばないのを本能的に悟っており、それに対して強がっているだけである。でもリリィちゃん諦めないのです! がんばるぞー、おー! がんばれ♡ がんばれ♡ オラもっとトレーニングしろやゴラァ!

 ちなみにママとパパがめちゃめちゃほめて甘やかした結果、自分のかわいさとかしこさにだけは絶対の自信を持っている。かわいいね♡

 正面から好意と善意でぶん殴ってくる。悪意は存在しない。なんだこいつ……。

 ライスシャワーに対してかける言葉に他意や打算といったものは一切存在せず、全て本心である。(そもそも嘘をつかないので全部本心)ライスちゃんだぁいすきっ! だからお前クソデケェ感情持たれるんだよ。

 

 ライスシャワー(原作キャラ)

 本作のもう1人の主人公。好き。

 プロフィールはアプリと同じ。好き。

 リリィちゃんセラピーによって浄化された、ある意味では被害者の少女。好き。

 祝福されない未来のフラグはリリィちゃんがバキバキにへし折った。よくやったぞリリィちゃん! ちなみにフラグブレイクはただのイチャイチャの副産物。芝生える。

 メンタルが鬼強化されたので一切おどおどしないし、初見だとクールでストイックな感じに見える。仲良くなるといつものかわいいライスちゃんになる。好き。

 いろいろ書きたいがネタバレになるので書けない。

 愛が重い。リリィちゃんが悪いんだよ……。

 

 

 シロノスズラン(オリジナル)

 主人公であるシロノリリィの母親。見た目は若くてかわいい白毛のウマ娘。

 身長151センチ、髪型はショートカット、瞳の色は黄色。体型はスレンダーな美ウマ娘。

 設定上の人間名は白井麗─しらい れい─で旧姓は優木である。

 娘を溺愛している優しい母親。トレセン学園に行った日は号泣して家事が手につかなかった。ちなみに1ヶ月ぐらい引きずった。リ゛リ゛ィ゛ち゛ゃ゛ん゛が゛い゛な゛く゛て゛さ゛び゛し゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!

 昔は地方のレースを走っていたが勝利したのは未勝利戦の1回だけである。

 トレセン学園に入学する為に毎日走っている娘に対し、親の才能は遺伝するのでもっと自分にレースの才能があれば……。と思っていたが、リリィちゃんの「? 私、不満なんてないよ?」と言う言葉により見事泣かされた。

 距離やバ場適性は☆1リリィちゃんと大差がない。

 逃げG先行C差しD追い込みG。顔の良さ+100%おっとこいつもチート枠か?ステ補正の+? そんなの無いよ。

 現役時代は実力は無かったが、マジで顔が良かったのでアイドル扱いされていた。本人はすごく不満だった。ぷんぷんスズランさんである。

 一人称は私。シロノリリィに対する呼び方はリリィちゃん。

 推しはミスターシービー。シービーに脳を焼かれた者の1人。今シービーが私のこと見たっ!!

 なんか書いてる時死にそうだなと思ったけどこの小説で死人は出ない。

 

 白井賢司(オリジナル)

 シロノリリィの父親。仕事の都合でめっちゃ引越した可哀想なやつ。ブラック企業じゃないよ?

 身長178センチ、髪型は特徴のないショートカットで眼鏡をかけている。結構イケメン。

 一人称は僕。シロノリリィの事はリリィと呼ぶ。

 穏やかな性格で普段はにこにこしている。なんだか裏切りそうとか言うなよ?

 シロノスズランと一緒で娘を溺愛している。トレセン学園に行った日は同じく号泣していた。芝。それから仕事が手につかず、無理やり有給を取らされた。

 推しはミスターシービー。夫婦揃って脳を焼かれている。今シービーが僕のこと見たっ!!

 

 ライスシャワーのお母さま(一応原作キャラ)

 絶対美人だよね。

 ほとんど出番がなかった。ごめんね?

 一人称は私。ライスシャワーのことはライスと呼ぶ。

 ライスシャワーとシロノリリィの仲を応援している。

 

 ライスシャワーのお父さま(一応原作キャラ)

 出番が……出番が無い!!

 一応考えていたが出す機会が無かった。

 一人称は私。ライスシャワーの事はライスさんと呼ぶ。

 趣味はカメラで可愛い娘を撮る事。スマホを購入したライスシャワーに「ライスとリリィちゃんの写真データあるよね?全部ちょうだい」と言われた。……はい、お父さま頑張ります。

 

 

 お姉さま(オリジナル)

 名前は青路瑠流。あおじ るる と読む。名前の元ネタは青汁。

 ライスシャワーのトレーナーで自分の事をお姉さまと呼ばせるやべーやつ。

 小さくて可愛い女の子が大好きで、さらにその子達がイチャイチャしているのを見るのが大好き。別に男が嫌いなわけでは無い。

 作者の思考とほぼ同じなので書いててすげぇラク。

 前髪ぱっつん黒髪ロングのストレートヘアー。瞳の色は黒。

 結構スタイルが良い。Cカップ。あと割と美人。

 彼氏はいない。




私の性癖の煮凝りである本作を読んでいただきありがとうございます。
感想等は楽しく読ませてもらっています。返信しないのは、私がなんて書けばいいか分からなくてビビっているからです。そっとしておいてくださるとありがたいです。
これからジュニア級編に入りますが、ソシャゲのイベント消化などで暫く更新が遅れると思います。今しばらくお待ちください。


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ジュニア級編
第5話 シロノリリィ登場!


本作を読んでくれてありがとうございます。
評価、感想、ここ好き、おきにいり、誤字報告等全てありがたく思っております。
この話からジュニア級編が開始されますが、これからレース描写をどうすればいいかと不安で震えています。


 桜が舞い散る中、少女達の希望に満ちた声が響く。今日、彼女達はここトレセン学園で新たなる夢への一歩を歩み始める。ここにいるのは「ウマ娘」と呼ばれる不思議な少女達だ。

 ウマ娘とは、人によく似た容姿をしているが人間とは異なる形状をした耳と、自在に動くしなやかな尻尾を持つ種族で、卓越した身体能力を持ち、特に走力は生物界の中でも上位に位置するという不思議な少女達の事だ。

 その中でも選ばれたエリート達が集まるのがこのトレセン学園である。

 日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園。ここにはウマ娘達に必要なありとあらゆる物、施設、全てが揃っている。

 日本各地から集まった生徒の数は2000弱。その中のほんの僅かな者だけが勝利と栄光を手にする事が出来る。

 今日は入学式。この中のどれだけの者が夢を掴むことが出来るのか、それは誰も知らないし分からない。だが、走らなければ未来はやってこない。勝利も、敗北も、全てを決めるのは己の脚のみなのだ。

 そんな少女達の中に一際目立つ存在がいた。白毛のウマ娘『シロノリリィ』。まぁ、目立つと言っても良い意味では無いのだが……。

 

 少女達が学園へと歩む中、大きく注目を集めている2人がいた。

 1人は黒鹿毛の小柄な少女、もう1人は白毛のさらに小柄な少女。出会った瞬間におかえり! とただいま! と言ったあたり、きっとこのトレセン学園で再会の約束をした関係なのであろうと推測できる。

 なるほど、感動の再会だ。きっとこの少女達の間にはドラマがあったに違いない。

 そう、それはいい。寧ろおめでとうと言いたいし、実際にその光景を見て涙ぐんでいる少女もいた。ウマ娘は優しくて大らかな性格の子が多くて良いですね。

 問題なのはその後だ。その問題の光景を見て、出した涙を戻したいと後悔している子がいたのは恐らく気のせいだ。

 

 

「すっき〜♪すきすきすきすきライスちゃん♪」

「すっき〜♪すきすきすきすきリリィちゃん♪」

「す〜きっ♪」

「す〜きっ♪」

「「だ〜いすきっ♪」」

 

 

 ──なんだこいつら……!?

 少女達が困惑するのも仕方がない。というかこんな小っ恥ずかしい歌を歌うな! 部屋でやれ!

 そしてさらに問題なのはその少女の容姿だ。ウマ娘は大体が見目麗しいという神秘的な種族だ。片方の黒い少女も可憐な容姿をしている。だが、その隣の白い少女はさらにヤバかった。

 ──美しい。一目見ただけで恋に落ちてしまいそうなほどに。

 タチが悪いことに、この小っ恥ずかしい珍妙な歌に釣られて振り向くと、その白い少女が目に映ってしまう。そして恋に落ちた瞬間イチャイチャを見せつけられるのだ。正に地獄だ。

 多くの少女達の脳が破壊されるなか、新たなる1日が始まりを告げた。

 

 

 

 ライスちゃんだいすきっ!! あのねあのね! ライスちゃんがすっっごく綺麗になってました! リリィちゃんびっくりです! あっ! かわいいかしこいシロノリリィです!

 約束の日から……え〜っと、7年ですね! それだけ時間が経てば綺麗にもなりますよね! まあ私の大好きなライスちゃんの事だから当然といえば当然ですね!

 ……ライスちゃんがかわいすぎて興奮しすぎてしまいました。まあリリィちゃんはちょーかわいいので問題ありませんが。

 ところで皆さん、このかわいいリリィちゃんを見て気付きませんか? ……ほらほら、もっとじっくり見ても良いんですよ?

 ……ふふん♪ 分かりましたね? そうです! リリィちゃんはトレセン学園に入学しました! ねっねっ! ほめてほめて!

 リリィちゃんはかわいくてかしこくてつよいこなうえにいっぱい頑張ったから、まあ当然の結果ですね! ……でもでも、ほめてくれていいんですよ?

 今はライスちゃんと別れて教室に向かっています。この後色々案内してくれるって言ってました。わくわくです! 確かこの後教室で待機して、入学式が終わったら教室に戻ってレクリエーションをして、その後寮の部屋割りを確認してルームメイトさんと挨拶をして、後は各自で施設の確認とかそんな感じでしたね。

 ルームメイトさんが誰になるか気になるなぁってライスちゃんに話したら「ライスだよ」って言ってました。ライスちゃんもまだ誰が来るか聞いてないのになんでわかるの? って聞いたら「リリィちゃんとライスの部屋が違うわけないよ」って言ってました。確かにそうですね! ライスちゃんかしこいです!

 なので今のリリィちゃんはちょーゴキゲンだから自然と鼻歌も出ちゃいます!

 ふふん♪ ふふん♪ ふふふふふ〜ん♪ ……あっ! 教室が見えて来ました! リリィ、いきまーす!

 ……あれ?なんか静かですね。……ふむふむ、なるほど、わかりました。

 リリィちゃんがかわいすぎてみんな言葉を失ってますね! かわいすぎるのも考えものです。かわいいは正義と言いますが、かわいすぎると罪になるのは世の中の不条理と言えますね。とりあえず席に座って入学式が始まるまで待っておきます!

 

 

 入学式が始まり、シンボリルドルフ会長のありがたい話やらなんやらが終わって教室に再び戻って来ました。なんだか難しい事ばかり言ってましたが、要するに元気もりもりでいっぱいレースしよう! って事ですね! さすがリリィちゃんかしこいです! 翻訳家になれますよ!

 今は教室で自己紹介とかをしてます。……ふむふむ、みんないろんな目標があるんですね。ダービーウマ娘になりたい、クラシック三冠を目指す、トリプルティアラ、目標が高いのはいいことですね!

 おっ?私の番ですね。最初の印象が大事だと言いますから、ここはビシッと決めましょう!

「かわいくてかしこくてつよいこなシロノリリィです! ライスちゃんが大好きです! クラシック三冠を目指しています! 皆さんこれからよろしくお願いします!」

 ふふーん♪ 完璧な自己紹介ですね! 皆さん私に圧倒されています! これで第一印象は最強です! さて、それでは私のライバルになりそうな子達を見ていきましょう。リリィちゃんアイはとってもかわいいだけじゃ無くて観察にも非常に優れた能力を発揮するんです! ……ふむふむ、よくわかりません! みんな強そうです! まあ私が1番ですけどね!

 ……大体自己紹介が終わりましたね。これからどんな生活が待っているのか、とってもわくわくします!

 

 

 私リリィちゃん、今は美浦寮の前にいます。そして聞いてください! なんと私とライスちゃんが同じ部屋だったんです! まあ当然ですね! リリィちゃんは毎日頑張って来ましたから! ……これから毎日ライスちゃんと一緒です。ずっと、ずっとこの日を待ってました。……えへへ、うれしいなぁ!

 いっぱい、いっっぱい話したいことがあるけど、まずはライスちゃんが施設の案内とトレーナーさんを紹介してくれるそうです。これからはずっと一緒だから、時間はいっぱいあります。かしこいリリィちゃんは慌てません!

 トレセン学園の施設がどんなところかとっても楽しみです!

 

 

 

「今日は噂のリリィちゃんが来る日か〜」

 そう呟くのは、ライスシャワーのトレーナーである自称お姉さまこと青路瑠流である。

 今はライスシャワーがシロノリリィを連れて施設を案内している途中だが、今日は何やら学園内で妙な噂が流れていた。「この世の者とは思えないほど可憐なウマ娘がいる」と。

 この自称お姉さまはトレーナーとしては新人だが、妙に勘が働くところがあった。

「……ライスが言ってた通りなら、この噂の張本人はシロノリリィということになるけど、まさかね……」

 流石にそんな事は無いだろうと思いつつも、まあ本当なら拝んでみたいなぁと、なかなか欲望に正直な女だった。

「ライスが私のこと紹介するって言ってたけど、良さげな子ならスカウトしてみたいなぁ。……と、噂をすればなんとやらね」

 こちらに近付いてくる気配から、己の愛バであるライスシャワーともう1人の少女の気配を察知する。

「ライス、今まで聞いた事ないくらい上機嫌な声してるわね……」

 彼女曰く、7年も離れ離れだったらしい。それなら納得としか言いようがない。

「さ〜てさて、噂のリリィちゃんはどんな子かしら……」

 目を凝らすと、そこに居たのは例の噂になっているシロノリリィ本人だった。

 ──……えっ? 天使? ……あたし、もしかして死んだの?

 きらきらと太陽の光を反射しながら、白い穢れ1つ無い絹の様な髪が風に揺れていて、その髪と同じ色をした耳がまるで天使の羽のようにそこに在る。その白い肌はシミひとつ無く、顔を見れば作り物の様に整いすぎている。まるで雪が乗っているような純白の睫毛は、その形の良い綺麗な瞳をより美しく強調している。上品な砂金色の瞳は、最上級の宝石が引き立て役にしかならない程の煌めきを放っている。小ぶりな鼻と極上の果実の様な唇は、整い過ぎた人形の様な顔に対して、それを和らげるが如く可憐な印象を与えている。

 ──圧倒されていた、その美貌に。

「あっ! お姉さま!」

 己の愛バの声すら耳を通り抜けてしまうほどに呆けていた。

 ──ちょっと、衝撃的すぎてヤヴァイ……。

 瀕死の脳を落ち着かせる為に視線を下に逸らしたが、おててを仲良く恋人繋ぎしているのを見て、お姉さまは死んだ。

「お、お姉さまー!?」

「うに?」

 

 

 

「ふぅ……。かわいいって人を殺せるのね……」

「かわいすぎてごめんなさい……」

 シロノリリィの美貌になんとか耐えられる様になったトレーナーは、改めて自己紹介を始めた。

「……よし! じゃあ改めまして。はじめまして、私の名前は青路瑠流。ライスシャワーのトレーナーです。よろしくね! ライスからは私のこと何か聞いてるかしら?」

「かわいいかしこいシロノリリィですっ! ライスちゃんが大好きです! トレーナーさんの事は自分の事をお姉さまって呼ばせる人だけど、とっても頼りになる人だって聞いてます!」

 ──突然の、と言ってもシロノリリィにとっては最早呼吸と同じ「ライスちゃん大好き!」でまたもや瀕死になりかけていた。

(……なんだこの愛おしい生き物はっ!? 自分でかわいいかしこいってなんだよ!? かわいいは事実だけどっ!! あといきなり『ライスちゃん大好き!』は反則だろっ! くそっ! 死ぬ!! あっ……ライスが私の事頼りになるって言ってくれてる。……嬉しい……すき……やっぱり死ぬ……)

 一瞬白目になりかけたが、気合いでなんとか持ち直した。

「そっかそっかー……。ねぇライス、この子かわいすぎない?」

「リリィちゃんだもん。当然だよ、お姉さま」

「ふふん♪ もっと褒めてくれてもいいんですよ?」

 ほっぺむにむにしてぇ……。などと思いつつ、当初聞こうと思っていた事をシロノリリィに訊ねた。

「えっと……リリィって呼んでいい? あなたはどこのチームに入りたいとか、何か希望ってあるのかしら?」

「いいですよ! チームはライスちゃんと一緒のチームがいいです!」

 よしきた! と心の中でガッツポーズを決めた。

 かわいい……死ぬ……。などと考えながら、トレーナーとしての観察眼は冷静にこの少女の事を観察していた。

(恐らくこの子はマイルの特にダートを得意としているわね……。そしてパワーが非常に優れている。なにより注目したいところは、徹底的に走り抜いて鍛えられたトモよ。……一目見ただけで分かるほどに、ね。この子ならダート路線で王者にだってなれるわ……。芝と中距離、特に長距離は苦手そうだから三冠路線は厳しそうだけどね……)

「じゃあ私のスカウトを受ける気はない? 私がライスの担当だし、ちょうどいいと思うの」

「……入学初日でスカウトっていいんですか?」

「いいのいいの! あなたが有望そうなのは見ただけで分かるわ。なにより私が気に入ったのは、走って走って、走り続けたであろうその脚よ」

「じゃあお願いします。これからよろしくお願いします、トレーナーさん」

 あっさりとスカウトを受け、少々驚いたトレーナーは思わず聞き返した。

「……えっ? 本当にいいの? 今更言うのもなんだけど、私、実績なんて何も無い新人トレーナーよ?」

 トレーナーの瞳を真っ直ぐに見つめながら答える。

「いいんです。……ライスちゃんが信用してる人で、私の頑張りをちゃんと見てくれているから、信用できると思いました」

「……嬉しいこと言ってくれるじゃない。あなたの期待に応えてみせるわ。じゃあリリィ、これからよろしくね! ……それと、もうちょっと気安く呼んでくれていいわよ?」

 差し出された右手を取り、しっかりと握りしめる。

「こちらこそよろしくお願いします!……えっと……じゃあ、るるちゃんって呼びますね!」

「お姉さまがスカウトしてくれなかったらどうしようかと思ってたけど、リリィちゃん、これから同じチームで一緒に頑張ろうね!」

 もちろんです! がんばるぞー、おー! とお互いにはしゃぐ少女を見ながら、トレーナーは決意した。

(この子達の為に、私にできる事を全力でやらなきゃね…)

 これから先、きっと困難があるだろう。だが、この少女達と一緒なら乗り越えられる。そう感じるトレーナーなのであった。

 

 

 

「トレセン学園はとっても広いねっ! 私、迷子にならないか心配です……」

「大丈夫だよ、リリィちゃん。迷子になったら、ライスに連絡してくれればいいし、もしライスと連絡ができなくてもここの人達はみんな親切だから、聞けば教えてくれるよ」

「おぉー! それなら安心ですっ!」

 時刻は夜。今は施設案内を終え、部屋へと戻って来たところだ。

 トレセン学園は広い。はじめて訪れた人なら確実に迷ってしまうほどだ。それ故に、午前中に始めた案内が夜までかかってしまうのも仕方がないと言える。

 行く先々でイチャイチャして時間がかかったのもあるが、それだけこの学園の広さを示しているとも言える。

 2000人弱のウマ娘達が練習をするのだ。これぐらいの広さはあって当然とも言うべきか。

「……あのね、本当は私、とっても寂しかったの……」

 ポツリと、隠していた本音が漏れる。

「……リリィちゃん」

「ママもパパもいた。……だけどね、私の日常にはいつもライスちゃんがいたの。……離れ離れになるなんて、想像できなかったくらいに」

「……ライスもね、あの日からずっと寂しくて仕方なかったの。……ずっと走って、走って、レースの勉強をして、この寂しさを無理やり抑え込んでいたぐらいに」

 ベッドに腰掛けるシロノリリィの隣へと移動し、そっと抱きしめた。

「……ずっと、この温もりが欲しかったの。あの時から、一度も忘れた事が無い、この温もりが」

「……あったかいね」

「……ライス、本当は今日からライバルだね。なんて言おうと思ってたの。……でも、今はただリリィちゃんをこうして抱きしめていたいの。……格好つけるのも忘れるぐらい」

「……私もだよ、ライスちゃん。……ねぇ、話したいことがいっぱいあるの。だから、いっぱいお話ししようよ」

「ライスも、お話ししたいこといっぱいあるんだ。……ねぇ、リリィちゃん……大好き。……これからは、ずっと一緒だよ」

「うん! ずっと一緒だよ。……私もライスちゃんのことだいすきだよ!」

 少女達の夜はまだまだ終わらない。今までの寂しさを埋めるには時間がかかるだろう。だが、これからは幸福な日々が続いていくだろう。二人が一緒なら、ずっと。

 




ジュニア級編はゆるふわでいきたいと思います。


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第6話 リリィちゃんパワー!

今回のイベントのライスちゃんのサポカがかわいいです。



 柔らかな朝日がカーテンから漏れ出し部屋を照らす中、いつもよりほんの少し早く目を覚ましたライスシャワーは、己の腕の中で眠る少女を見つめていた。

(……夢じゃない。本物の、リリィちゃんだ)

 シロノリリィ。己が求めてやまなかった大切な友人。それが今、かわいらしい寝顔を晒しながら幸せそうにすやすやと目の前で眠っている。

(──綺麗。……本当に)

 7年前、あの幼かった少女はそれはもう美しく成長した。必要以上に他人の視線を集めてしまうぐらいに。そんな少女を眺めていたライスシャワーはほんの僅かに魔が差した。

(ちょ、ちょっとぐらいならいいよね……)

 眠る少女のウマ耳のちょうど中心あたり、起こさない様に細心の注意を払いながら顔を近づけ、眠っている事を確認して香りを堪能した。(ゆっくりと息を吸った)

(……ちょっと、癖になっちゃうかも。も、もう一回……!)

 もう一度と思ったその時、スマホのアラームが鳴り、シロノリリィが覚醒する気配を感じたライスシャワーは、衝撃を与えない様に、かつ素早く身を離した。

 すると徐々に目を覚ましたシロノリリィがアラームを止め、ぼんやりとこちらを見ながらへにゃりと笑った。

「……おあよう、らいすちゃん」

「……おはよう、リリィちゃん」

 そのへにゃへにゃな笑顔にどきりとしたが、身を起こして軽く伸びをしていると、それをぼうっと見つめていたシロノリリィがふわりと抱きつき、ライスシャワーの頬にすりすりと頬擦りをした。

「……えへへ。ほんものだぁ」

 ふ、不意打ちは心臓に悪いよっ! などと思いつつ、動揺した姿は見せずに起きる様に促した。だが、その直後にまた眠りそうになっていたのでほっぺをむにむにして無理やり起こした。

 

 

 おはようございます。昨日は寝る前にライスちゃんといっぱいお話ししちゃったからちょっぴり眠たいシロノリリィです。昨日寝たのはなんと22時30分です! ふふふ、なんだか大人っぽいですね! 今は身支度を整えて朝食を食べています。

「リリィちゃん、なんだか嬉しそう」

「えへへ。だってね、これから毎日ライスちゃんと一緒なんだもん!」

「リリィちゃん……! ライスもね、とっても嬉しいよ!」

 ライスちゃんはきょうもかわいいです。それにしても、トレセン学園のご飯は美味しくて、さらに無料でおかわり自由というのは凄いですね。ママの作ってくれたご飯の方が美味しいですけどね! トレセン学園が100点だとしたらママのご飯は120点です!

「そういえば、ねえリリィちゃん。リリィちゃんはスマホって持ってる? 昨日はずっとお話ししてて、連絡先を交換し忘れちゃったから……」

「持ってるよ! ママが買ってくれたの!」

「よかった。リリィちゃんはLANEってやってる?」

「やってない!」

「じゃあ後でやり方教えてあげるね?」

「うん! ありがとうライスちゃん!」

 SNSとかはママがダメって言ってたからやった事がありません。わたしはいいこなのでママの言う事はしっかり守ります。でも入学前にライスちゃんに教えてもらったらやってもいい、とママから許可をもらいました。確か……ねっとりなんとか……そうそうねっとりジェラシーです! それが大事だと言ってました! やっぱりリリィちゃんはかしこいです!

「リリィちゃんのスマホの壁紙、初期設定からいじってないんだ」

「うん。ライスちゃんは変えてるの?」

「変えてるよ。ライスのはね……これだよ」

「おぉー! ちっちゃい頃の私とライスちゃんだ!」

「懐かしいでしょ? リリィちゃんは、写真とか撮ったりしないの?」

「撮ろうとは思ってたけど、まだ撮ってないよ。……あのね、はじめてはライスちゃんと撮りたかったの」

「……わぁっ! いいよ、撮ろう! ライス、とっても嬉しいよ!」

 ライスちゃんが喜んでくれてます! えへへ、うれしいなぁ!

 この後一緒に写真を撮って、スマホの壁紙を更新しました。これからいっぱい思い出が増えていきそうです。とっても楽しみです!

 

 

 ライスちゃんと別れて、今は教室で授業を受けています。トレセン学園はただレースの練習をするだけの場所ではありません。私達は競技者ですが、それ以前にまだ学生なのです。だからこそ勉強をおろそかにしてはいけません。

 トレセン学園のカリキュラムは、午前が一般的な学校と同じ一般教養の学習で、午後からはレース座学、ウイニングライブ、スポーツ栄養学、基礎トレーニングなど、レースを中心とした授業が組まれています。

 午後からのトレーニングで、まだ担当トレーナーさんが付いていないウマ娘は教官達がグループごとに分かれて指導を行っています。私は担当トレーナーさんがいるので、この時間はトレーナーさんの元でトレーニングが行えます。こんなにすぐ担当契約が出来るとは思ってなかったのでとてもありがたいです。この時期に担当契約している人はそうそういないので、これは明確なアドバンテージと言えます。

 本来の流れとしては、こうして練習を重ねて「選抜レース」に参加をし、そこで目に留まった子がトレーナーさんにスカウトされる。という感じです。

 選抜レースとは、チームに所属もしくは担当契約をしていないウマ娘だけが参加できるレースのことです。機会は年に4回。ここで結果を出せば、多くのトレーナーさんからスカウトされるでしょう。私は担当契約をしているので、もう参加できないのが少し残念です。

 この選抜レースで結果を出せず、そのまま学園を去る人もいます。トレセン学園に入学すること自体が難しいのですが、そこから更に勝ち残るのはもっと難しいことなんです。勝負の世界は厳しいです。ですが、だからこそレースの勝利には価値があると言えるのです。

 トレーナーさんと契約したウマ娘ははじめてのレースである『メイクデビュー』を目指してトレーニングをします。

 メイクデビューの時期は大体6月の後半ぐらいです。このメイクデビューに出る基準として、『本格化』というものがあります。

 本格化とは、そのウマ娘が持つ能力が開花し、競技者としてのピークを迎える時期に入った事を指す言葉です。

 前兆として身体の急成長や、身体能力の急激な上昇などがあり、大体10代半ばで本格化を迎えます。ちなみに本人にはなんとなく本格化が来たと感覚でわかります。理解すると書いて、わかると読むあれですね。

 人によって変化が大きく、普通の小学生体型の子が急に大人顔負けのつよつよボディになったりします。私は見た目の変化が無く、身体能力が上昇したパターンですね。

 さっき言っちゃいましたが、私とライスちゃんにも本格化が来ました。入学式で再会した時にビビッと来たので確実です。

 話を戻しますが、先ほど話したメイクデビューの基準と本格化の関係についてです。

 まず、メイクデビューの前提として本格化があります。これは、本格化する前と後で能力に隔絶した違いがあるからです。ゴリラと人間ぐらいに差があります。

 なので本格化する前にレースをするのはとっても危ないので、基本的には本格化前にはデビューしません。中には本格化前でも本格化したウマ娘と戦えるような子もいますが、それは例外中の例外です。

 本格化が遅れてやってきた子はデビュー時期を遅らせたりしますが、こういう子はそんなに多くありません。

 メイクデビューの時期がなぜ6月後半なのかというと、これは本格化した身体に慣れる為というのがあります。

 急激な身体の変化、身体能力の上昇などによって、力のコントロールが効かなくなったりするので、それを慣らすための期間が必要という事です。

 ウマ娘のパワーは人間よりも遥かに高く、本格化すると更に高くなるので慣らさないととっても危ないのです。

 私は本格化前からコンクリートをパンチで砕けましたが、今は握り潰せる様になりました。ライダーキックもできますよ!

 

 

 午後のトレーニングが始まりました。今日はるるちゃんが私の正確なデータを知る為に色々と調べるそうです。まずはダートと芝の適性、次に距離適性を確認するそうです。私の今まで走ってきた成果を見せる時が来ましたね! がんばるぞー、おー!

 

 

(……妙ね。この子はダートが得意で芝が不得意なはずなのに……)

 まだ本格化が始まったばかりなので、体力的に中距離と長距離は走らせずに1600mのマイルでタイムを測定したのだが、少々おかしい結果となった。

(ダートと芝でタイムに差がない…。普通、不得意なバ場で走るとタイムが遅くなる筈なのに……)

 どういう事だと思いつつ、シロノリリィの方を見ると芝とダートで走った後のある違いを発見した。

(……ダートの時は走り終わった後割と余裕があったけど、芝で走った後は明らかに疲れていた。……もしかして)

 ある可能性に思い至り、考察を開始する。

(この子には規格外のパワーがある。それを利用して無理やりダートで走るスピードで芝を走っているのかも……。その分リスクとして、スタミナの消費の激増が考えられる……。これは先ほどのダートで走り終わった時と芝で走り終わった時のリリィの疲労状態から考えてほぼ確定と見てもいい。……そして、これは恐らくだけど距離が中距離、長距離と伸びる毎に更にスタミナの消費が増えると考えられる)

 こんなウマ娘は今まで見たことがない。そう思いつつ、ふと聞き忘れていた事をシロノリリィに聞いた。今はライスシャワーからドリンクを貰い休憩をしている。

「ねぇリリィ、あなたは目標レースとかはあるの?」

 息を整えたシロノリリィがこちらを向きにこにこしながら告げた。

「ライスちゃんと同じ三冠路線を走ります!」

 ──マジか……。だいぶ茨の道だぞと思いつつ顔には出さなかった。

「そっかぁ。お姉さまとしてはダート路線をお勧めしたいんだけど……」

「や」

「ふわわっ。……即答されちゃった」

 どうしても? と聞いたら「やー!」と言われ、ちょっと母性を刺激されたが決意する。……かわいいなこいつ。

「……うん、わかったわ。目指すわよ、三冠路線!」

「……ありがとるるちゃん! ……でも、いいんですか?」

「担当の願いを叶えるのがトレーナーの仕事よ。ただし、めっちゃくちゃ厳しいわよ? あなたの適性だと中距離ですら厳しいんだからね? 長距離なんてそりゃもうやっばいわよ……」

「大丈夫です! 私はつよいこなので絶対に諦めないのです!」

 胸を張り腰に手を当てドヤ顔をするシロノリリィを見て、思わず笑ってしまったが、これからのトレーニング予定を2人に伝えた。

「まずはリリィね。ジュニア級はスタミナを徹底的に鍛えていくわ。サブとして賢さとスピードも並行して。逆にパワーはまず無視よ」

「えっ? いいんですか?」

「うん。まあ不安になるわよね? でも大丈夫よ。その理由はあなたのパワーがジュニア級という基準だと突出しているからよ。自覚がないのかもしれないけれど、正直に言うなら、パワーだけならシニア級でも余裕で通じるわ」

 ほぇ〜。とかわいらしい声を漏らしたのを見て吹き出しそうになったが続ける。

「スタミナを鍛えるのはもちろん、クラシックを見据えて中距離と長距離でも走れる様にする為よ。これは私の推測だけど、今のあなたは苦手な芝を走る為にスタミナを犠牲に無理やりパワーでスピードを引き出していると考えられるの。さっき芝とダートを走った後に明らかにレース後の疲労が違ったでしょう? 距離が伸びればさらにスタミナ消費が増えると予想出来るから、ここは徹底的に、ね。次に賢さなんだけど、これはレース時の位置どりを有利にする事でスタミナ消費を抑える目的と、身体の使い方を勉強して効率の良いパワーの出し方を覚えて余分なパワーを抑え、スタミナを節約できる様にする事よ。スピードは勿論、速くなきゃ勝てないっていう単純な理由よ」

「るるちゃんなんかかしこそうですね!」

「中央のライセンスは伊達じゃないのよ? 次はライス。あなたの場合はリリィとは違って、ジュニア級はスタミナは伸ばさないでパワーとスピードをメインにして、サブとして賢さを伸ばすわ」

「ライスはステイヤーで、今でも3000mは走れるし、今のところはスタミナには余裕があるからだよね。ジュニア級には長距離レースが無くて、短距離から中距離がメインで、ステイヤーの欠点であるパワーとスピードを伸ばしていくんだね。勿論レース時の位置どりも大事だから、賢さトレーニングも忘れないように。だよねお姉さま?」

 言おうと思っていた事を言われ思わず感心してしまった。

「正解よライス! 言おうとしてた事全部言われちゃったわ! とりあえずはこんな感じでトレーニングして行くからね!」

 はい! と元気よく返事をし、3人でがんばるぞー、おー! と気合を入れた。

 ひとまずはこのトレーニングをこなし、メイクデビューを勝たねばならない。未来への一歩の為に着実にトレーニングをこなしていくのだ。

 




のんびり更新します。
用語解説
LANE…ウマ娘世界のLINE。
存在してた事を知りませんでした。不勉強で申し訳ない。
※名称を公式のものに変更しました。
作者は友達と連絡を取る為のLINEしかやっておらず、数ヶ月に一度ぐらいしか使わない。なのでSNSはかなりエアプ。
※距離を間違えていたので修正しました。私の頭もリリィちゃんなりつつあります。1400→1600


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第7話 メイクデビュー! まずは一歩!

 狭い鉄の檻の中で、私はじっと解放の瞬間を待っている。

 ぐつぐつと腹の底から湧き出る衝動が私を焦がす。

 風が心地良い、日差しも穏やかだ。

 あなたの綺麗な瞳が、私を昂らせる。

 

『美しい青空が広がる、東京レース場。ターフも絶好の良バ場となりました!』

『名勝負になる舞台は整いましたね』

『3番人気には9番トロピカルスカイ。この評判は少し不満か? 2番人気はこの娘、2番ヴァイスグリモア。さぁ、今日の主役はこのウマ娘をおいて他にいない。本日の1番人気5番アッシュストーン!』

『みんないい表情を見せていますね』

『各ウマ娘、ゲートに入って体勢整いました』

 

 だから見ててね、私が勝つところを。

 

 

 ──────────

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 ──────

 ────

 

 

 桜が散り、蒸し暑さに悩む季節になりました。最近もりもりスタミナが付いてきて嬉しいシロノリリィです。今は1800mまでならスタミナが保つ様になりました。この調子ならクラシック級に上がるまでに5000mぐらい走れる様になりそうですね!

 トレセン学園に入学してから2ヶ月ほど経って、今は6月の初旬。あれから毎日のようにトレーニング漬け生活です。今はスタミナトレーニングの為にプールで泳いでいます。プールで泳ぐのは効率よく体力を増やせるとるるちゃんが言ってました。

 私はかしこいので、そういった専門的な事を考えるのは出来る人に任せます。信頼しているとも言えます。まあ、実際とっても頼りにしていますけどね!

 プールで泳ぐのは結構楽しいです。走るのとは違う感覚がなかなか新鮮だと感じます。楽しくてスタミナも付いて、まさに一石二鳥というやつですね!

 そういえばトレーニングが終わったら、一度トレーナー室に来て欲しいと言ってました。何かあったのでしょうか?リリィちゃん気になります。

 

 

「2人とも揃ったわね? さっそくだけど本題から入らせてもらうわ」

ホワイトボードの前で待っていたるるちゃんがペンで色々書き込んでいます。ライスちゃんと一緒にソファーに座って眺めていると、一通り書き終わったるるちゃんがこちらに振り向きました。

「まず、2人のメイクデビューの日が決まったわ。今から2週間後の6月後半のこの日で、まずリリィが先で後日にライス。場所は2人とも東京レース場で、距離はリリィ1600m、ライスは2000m。とりあえずここまでで質問は?」

 おぉ! 遂に来ましたね! まだ時間はありますが、より一層トレーニングに力を入れなきゃいけませんね!

「無さそうね? コースの細かい説明は後でするとして、リリィの方は有力とされてるウマ娘がいるの。それがこの子『アッシュストーン』よ」

 そう言って机の上に資料を置いてくれました。

 なるほど、大柄でパワー自慢のウマ娘さんのようですね。

「で、リリィ。今回のレースなんだけど……ぶっちゃけ作戦なんて無いわ」

「つまり私の好きな様に走れって事ですね!」

「……ツッコミとか欲しかったけど、まあ概ねその通りよ。今は作戦を考えるよりもシンプルに走りやすい場所を陣取って、脚を残して最後にぶっちぎる! ぐらい雑なやつでいいわ」

「リリィちゃんはまだ駆け引きが出来るほど経験を積んでいないからだよね? 経験が足りないのは、ライスも一緒だけど」

「そうね。模擬レースとかしたかったんだけど、私が新人トレーナーだから誰も相手してくれなかったのよね……」

 小声で「……舐めやがってあの野郎共」とるるちゃんが言っています。ウマ娘の聴覚だと、こういう小さい声も簡単に聞こえてしまいます。……聞かなかったことにしておきますね?

「……模擬レースが出来なかったのは残念だけど、そのかわりにリリィの情報は他のトレーナーにほとんど伝わってないと思うわ。ライスは高等部っていう事もあって大分情報が流れているけど……」

「大丈夫だよ、お姉さま。ライスが勝つから関係ないよ」

「頼もしくって何よりよ。……リリィは強さよりも、容姿の方が話題になってるというのもあるけどね。じゃあ次にレース場の説明をしていくけど──」

 それからはレース場の特徴などを説明してもらったりして解散しました。

 2週間。長い様で短い期間です。ママとパパにメイクデビューの日付を伝えたら、当日会場まで応援に来てくれる事になりました。お仕事で忙しいと思うのに直接応援に来てくれるなんて、とってもありがたいです! 2人には私の勇姿をお見せしなければなりませんね!

 そして時間はあっという間に過ぎて、メイクデビュー前日の夜になりました。

 今日のトレーニングは調子を整える感じで軽く済ませ、その後対戦相手のデータ確認とコースの再確認をしました。

 いよいよです。私のはじめてのレースが来ます。

 

 

「リリィちゃん、いよいよ明日だね!」

「うん! ちょっと緊張するけど、やっぱりレースは楽しみだよ!」

 今は私のベッドで向かい合いながらおしゃべりをしています。ちょーこうふんしてきました! いまの私はつよつよリリィちゃんです!

「やれるだけの事はやったから、後は全力でやるだけだよ!」

「後もう一つ大事な事、あるよね? ……それは」

「「全力でレースを楽しむ!」」

 顔を合わせて笑い合います。ライスちゃんの笑顔は綺麗です。

「なんだか不思議な気分。ライス達、本物のレースをするんだよ。……ずっとテレビで見ていた、あのレースを……」

「正直、実感なんて湧かないよね……。でも、やっとだよ……やっと、ここまで来た」

 ライスちゃんのお顔を見つめながら口を開きます。

「まだここは始まりに過ぎないけれど、やっとここまで辿り着いた。……2人で走るのはまだ先だけど、まずはここからだよ」

「リリィちゃん……。うん、そうだね。まずはここから……。ねえリリィちゃん……ライス以外に負けないでね?」

「ううん、ライスちゃんにも負けないよ?」

 お互いの真剣な表情になんだか可笑しくなって、お互いにくすくすと笑いが漏れました。

「……明日、いっぱい応援するからねリリィちゃん!」

「うん! ありがとうライスちゃん!」

 なんだかいい雰囲気ですね、これが青春というやつですか! ……そういえば、気になった事があったのでライスちゃんに聞いてみる事にしました。

「ねえねえライスちゃん」

「どうしたの、リリィちゃん?」

「あのねいつも朝起きる前の事なんだけどね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライスちゃんはどうして、毎朝私の頭の匂いを嗅いでるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 ライスちゃんのかわいいお顔が固まっています。睫毛長いですね。

「ごめんね、リリィちゃん。……あのね、ずっと前から思ってたんだけど、リリィちゃんってね、すっごくいい香りがするの。だからそれがすごく気になって……」

「嗅ぎたかったの?」

うん……あっ! ちがっ、リリィちゃんが嫌なら止めるから……」

「? ライスちゃんなら別に平気だよ?」

本当に?

「う、うん……。ライスちゃん、お顔近いよ……」

 なんだかライスちゃんの圧が強いです。私のママも時々「リリィちゃん成分が足りないっ!!」って言って私を抱きしめて全力で吸ってきました。ママに聞いたら、家族だし仲良しさんならこれぐらい普通と言っていたから、私の大好きなライスちゃんとこういうことをするのは別におかしくないと思います。

あれっ?ライスちゃんの目がちょっとこわ……

 

 

「…………リリィちゃんが悪いんだよ?」

 

 

 ……それから30分ぐらい匂いを嗅がれ続けました。流石にちょっと疲れました。頭皮とうなじと鎖骨が特にいい匂いがするって言ってたけど、私にはよくわからないですね。

 一緒に暮らしていると、こういった自分の知らないライスちゃんの一面を発見できて嬉しくなります。

 あとライスちゃんもいい匂いがしました。今日はよく眠れそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 ライスシャワーのやる気が上がった!

 

 

 

 

 

 

 私は今、東京レース場へと車を走らせているんだけど……なんか、今朝からライスがめっちゃツヤツヤしてるのよね。後なんかリュック背負ってるわね、何が入ってるのかしら?

「……ライス、絶好調だけど何かあったの?」

「……リリィちゃんのおかげだよ♪」

「……よく分かんないけど、まあ元気ならいいわよ」

 リリィの方を見たけど、特に覚えが無さそうなかわいい顔しかしてないわね? 2人とも調子が良さそうだし、まあレースに悪影響も無いからいいかしら?

「……なんか、2人とも距離が近くない?」

 これは確実に気のせいじゃないわ。だってお互いべったりなんだもん、隙間すらないわ。間に挟まれたシートベルト君が気の毒ね。

「……いつも通りだよ?」

 ……ね〜? じゃねぇよ。……息ぴったりだな。

「……そろそろ着くから、2人とも準備してね」

 正直眼福だけど、流石にブラックコーヒーが欲しいわね……。

 

 

 

 

「今回のメイクデビュー、お前は注目してる娘はいるか?」

「俺はやっぱりアッシュストーンだな。あのパワーの持ち主はなかなかいない。それに、色々デカくて興奮する」

「……そうか。俺としてはトロピカルスカイちゃんが気になるな。なんたって、可愛いからな」

「待て、アッシュストーンも可愛いぞ。実は炭酸ジュースが苦手らしくて……いや、そもそもウマ娘ちゃんはみんな可愛い」

「それには同意しかない。……ところで、このシロノリリィって娘は知ってるか? この中で唯一の中等部らしいんだが、いかんせん情報が少ない。なんか、噂によるとめっちゃかわいいと評判なんだが……」

「いや、俺も分からない。……おっ、パドックでお披露目が始まったな」

 

 実況の人達が、今日出走するウマ娘達を紹介し始めた。

 

『1番9番人気リボンオペレッタ。ものすごく緊張していますね』

『本番までに調子を取り戻せるといいのですが』

 

 観客達がそれに注目し、ウマ娘達が紹介されていく。はじめに紹介されたウマ娘は緊張のせいで手と足を同時に動かしていて、それが初々しくて観客達に微笑ましい目で見られていた。

 はじめてのレースだ、仕方がない。あの皇帝シンボリルドルフですら当時は緊張していたのだから。

 そんな中堂々とした様子で1番人気のウマ娘が現れた。

 

『5番1番人気アッシュストーン。堂々とした様子だ』

『いい仕上がりですね。まるで今日の主役は自分だと言わんばかりです。好走を期待したいです』

 

「……やはり、アッシュストーンは仕上がりからして違うな」

「そうだな。だが、それでもレースに絶対は無い。……まあ、トレーナーでも何でもない俺達が評価したところで何も意味はないんだけどな」

「急に冷静になるなよ……」

 少々虚しい気分になりながらパドックのウマ娘達を眺める。この中の誰かが未来のスターになるかも知れない。そんな事を考えながら紹介を聞いていた。すると、あるウマ娘がパドックに現れたのを機に、周りが急に静かになった。

 

『…………8番7番人気シロノリリィ。唯一の中等部からの参戦です』

『…………あ、仕上がりも中々なものです。高等部のウマ娘達に勝てるか、注目ですね』

 

 そこに居たのは、生きた芸術とでもいうかの様なウマ娘だった。

 穢れ一つも無い純白のウマ娘。その美しさに誰もが目を離せなかった。

 ベテランである実況の人達ですら一瞬見惚れてしまうほどの圧倒的美貌。当然周りの観客達も口をポカンと開け、それを見続けている。

 すると、「リリィちゃ〜ん!」と呼ぶ声に反応した白い少女は太陽の様な満面の笑みでその声の主、恐らく両親に手を振っていた。

 まるで天使の様な気品のある顔から一転して、年相応のかわいらしい表情にコロっと変わったのを見て、更に人々は魅了された。

「………………推すわ」

「………………俺も」

 

『ご両親を見つけて手を振ってますね』

『微笑ましいですねぇ』

 

 

 

 

 ─────────

 ──────

 ───

 

 始まります、私のレースが。

 聞こえます、風の音が。

 香ります、青々としたターフの匂いが。

 もうすぐ鉄の檻が開く。

 はやくはやく、もう待ちきれない。

 

 

 

 

 

 ガコンッ!

 

 檻が開くと同時に、私はターフを抉り、飛び出した。

 

 

『スタート!』

『各ウマ娘、そろってキレイなスタートを切りました!』

『誰が先頭に抜け出すか、注目しましょう』

『先行争いは7番レディアダマント、6番ファスターザンレイ、3番トモエナゲ期待通りの実力を出せるか? 1番人気アッシュストーン7番レディアダマント、快調に飛ばしていきます。ハナを奪っていったのは7番レディアダマント続いて3番トモエナゲ。7番レディアダマントと3番トモエナゲ、序盤からやりあっています』

『いいライバル関係になりそうですね』

『さあ、ハナに立ったのは7番レディアダマント。このままリードする事ができるのか?──』

 

 

 ──アッシュストーンさんは前方4番手で、私は現在後方の6番手。

 正直このまま何も考えずに全力で走り抜けたい気持ちが強いですが、そんな事をしたら私の足が残りません。

 今日は絶好のレース日和です。とても、心地がいい。

 ……だから私は我慢します。この昂りは、最後の直線で全部発散させてもらいましょう。

 ……おや、もうコーナーが来ましたね。私の脚は残っています。

 ……今日は何だか体が軽いです、もう何も怖く無い!

 

 

 

 アッシュストーンというウマ娘は才能に溢れていた。

 地元では負け知らず、恵まれた体格とパワー、そして獣の様なレースセンス。選抜レースを1着で駆け抜け、見事にスカウトを勝ち取った彼女は、今日も己の勝利を疑わない。

 

『アッシュ、君の走りなら今回のメイクデビューも確実に勝利できる』

『任せとけトレーナー! 祝勝会は焼肉で頼むぜ?』

『…………おう、任せろ! トレーナー様の財布に不可能はないっ!』

 

 

(……コーナーに入ったが、この白チビが微妙にジャマだな…。オレの外側で絶妙にブロックしてやがる……)

 この時、シロノリリィは特に何も考えておらず、ただ自分が走りやすいところにいただけなのだが、それがたまたまいい感じのブロックとなっていた。

(……が、問題ねぇ。脚は残ってる、オレのパワーなら問題ねぇ。……まだだ、まだ抑えろ……)

 

 

『──大ケヤキを超え第4コーナーカーブ! 内からくるか、外からくるか! 最後の局面です! まだ1バ身以上の差があるぞ! ここからとらえることができるのか! 勝負は最後の直線に持ち越された! 最終コーナーを曲がって最初に立ちあがったのは7番レディアダマント! 抜け出したのは7番レディアダマント! だが後続も追いすがる! 先頭はレディアダマント、変わらない!』

 

 

(……今だっ!!)

 彼女は今日も己の勝利を疑わない。この場に敵などいない、全て己の糧とする。

 残る力を脚に込め、暴力的なまでの加速で群れを飛び出した。

 

「あっはっはあぁぁぁぁ!!!」

 

 獣の如く叫びながらひたすらに前へと進む。あっという間に先頭を抜かし、1バ身、2バ身と差をつける。

(──最高だ! 誰もオレに追いつけねぇ!)

 ここから先の景色は己だけのモノだ! そう言わんばかりに進む彼女の後ろで、ターフが爆ぜる音がした。

(──……は? 何の音……)

 振り向いたのはほんの一瞬、だが、たったそれだけの間に己の横を白い小さな影が駆け抜けた。

(───…っっ!? 嘘だろっ!? 誰がっ!!)

 白い軌跡が己の遥か先を駆け抜けていく。まるで、自分など眼中にないかの様に真っ直ぐに。

(……ふっざけんなっ!! 勝つのはこのオレだっ!!)

 瞬間、その怒りに呼応するかの様に全身から今まで感じたことのない様な力が湧きあがる。

(──潰す潰す潰すっ!! そこは、オレの場所だっ!!)

 己のどこにこんな力が眠っていたのか、そう思う様な暴力的な加速だった。

──だが、届かない。

(くそっ! くそっ! ……くそったれぇっ!!)

 選抜レースでも模擬レースでも、彼女は本気になれなかった。その才能ゆえに、驕っていた。だが、己の先を行く気に食わない存在がその驕りを叩き潰した。

 

 

 

 

 

 ──最終直線でアッシュストーンさんがスパートをかけたのが見えました。

なんだか不思議な気分です。あの人はとっても力強くて、とっても速い。

 でもね、大丈夫。だから見てて、ライスちゃん。ママ、パパ、それにるるちゃん。

 

 

 ──私の方が、速いから!

 

 

 瞬間、轟音と共にターフが爆ぜた。

 最早少女の姿は見えない、白い軌跡のみがターフの上を描く。

 ──逃げる小動物など眼中にない、傲慢な獣など踏み潰す。

 その圧倒的な力で芝を蹂躙しながら、2バ身、3バ身と差をつけ、少女はゴール板を駆け抜けた。

 

『なんという末脚! ライバル達を薙ぎ倒し、見事ゴール板を駆け抜けた! 

これは見事な走り! メイクデビューを制しました! シロノリリィの完勝でした! 1着は8番シロノリリィ、2着は5番アッシュストーン、3着は6番ファスターザンレイ──』

 

 ──満面の笑顔と共に観客席に手をあげる。どうだ! 見ろ! 私が勝ったんだ! その想いに応える様に、レース場を祝福の歓声が包み込んだ。

 

 

 ──まずは一歩、これからです!

 

 

リリィちゃん!!! 最高にかっこいいよぉぉぉ!!!!

「よっしゃあぁぁぁ!!! リリィの勝ちじゃあぁぁぁ!!!」

リリィちゃんだいすきぃぃ!!!! あぁぁぁぁ!! すきぃぃぃぃ!!!

「うわー! ライスがおかしくなった!? ……あ、いつもこんな感じ……んなわけねぇだろっ!?」

「本当にリリィちゃんがかっこよくって……すき……ねぇ! お姉さま見たっ!? あの最終直線の加速っ! もうほんっとうにかっこよくって……いつものかわいいリリィちゃんも、もちろん最高なんだけど、あのキリッとした目がね、もう堪らないぐらいかっこいいの……。あぁ、すごいよリリィちゃん……!」

「……あなたウイニングライブ見て大丈夫? 気絶しない?」

「リリィちゃんの晴れ姿を見る為なら、ライス何があっても倒れないよ? ……あっ! お姉さま、ライブの時はこれを使ってね!」

 そういやなんかリュック背負ってたな……と思っていたらやたらとクオリティの高い手作りのハッピと鉢巻を手渡された。

「これって……」

「もちろんペンライトはリリィちゃんのイメージカラーの白だからね! ライブが楽しみだなぁ! ……あぁっ! リリィちゃんがライスに手を振ってくれてるっ!! リリィちゃぁぁん!!! だいすきぃぃぃ!!!!」

 シロノリリィが印刷された鉢巻とハッピを手に、愛バの豹変した姿に呆然としていた。

 この後行われたライブで、ライスシャワーはこれ以上のテンションでめちゃくちゃキレッキレのペンライト捌きを周りに見せつけ、その愛を知らしめた。

 余談だが、後日のライスシャワーのメイクデビューも無事勝利したが、先日のライスシャワーと同じような興奮具合のシロノリリィを見て、お似合いですね、としか感想が出てこなかった。

 

ライスちゃん!!! 最高にかっこいいよぉぉぉ!!!!

ライスちゃんだいすきぃぃっっ!! あぁぁぁ!!! すきぃぃぃ!!!

 

 

 

 



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【メイクデビュー!】メイクデビューウマ娘を語るスレ【初々しいウマ娘】

掲示板回です。
読まなくても大丈夫です。


1:名無しのウマ娘ファン

語るわよ

 

2:名無しのウマ娘ファン

出たわね

 

3:名無しのウマ娘ファン

みんな可愛いよね

 

4:名無しのウマ娘ファン

それはそう(真理)

 

5:名無しのウマ娘ファン

当たり前だよなぁ…

 

6:名無しのウマ娘ファン

可愛くないウマ娘ちゃんなんていないよ

 

7:名無しのウマ娘ファン

とりあえず推しを語ろうぜ

僕はマチカネタンホイザちゃん!

 

8:名無しのウマ娘ファン

俺の嫁じゃん

 

9:名無しのウマ娘ファン

>>8

久しぶりにキレちまったよ…

表に出な…

 

10:名無しのウマ娘ファン

>>9

返り討ちにしてやるよ…

とりあえずベイブレードでいい?

 

11:名無しのウマ娘ファン

>>10

俺のトライピオが火を吹くぜ

 

12:名無しのウマ娘ファン

糞雑魚フリスビーやめてください

 

13:名無しのウマ娘ファン

俺のドラグーン参加していいっすか?

 

14:名無しのウマ娘ファン

ウマ娘を語れよ!

 

15:名無しのウマ娘ファン

何だこのスレ(驚愕)

 

16:名無しのウマ娘ファン

じゃあ俺はレッドボンバちゃんの事語りますね?

髪の毛めっちゃモフモフで可愛い

 

17:名無しのウマ娘ファン

>>16

よおハゲ

 

18:名無しのウマ娘ファン

>>17

お前はこちら側に来るなよ?

 

19:名無しのウマ娘ファン

このスレ明るいね

 

20:名無しのウマ娘ファン

やだ…優しい

 

21:名無しのウマ娘ファン

落ち込んでる友人とかけまして私の頭とときます

 

22:名無しのウマ娘ファン

>>21

その心は?

 

23:名無しのウマ娘ファン

>>22

どちらも励ます(ハゲ増す)でしょう!

てるっちです!

 

24:名無しのウマ娘ファン

虚しい…

 

25:名無しのウマ娘ファン

不毛なやり取りだな

 

26:名無しのウマ娘ファン

元気出せよ?

 

27:名無しのウマ娘ファン

ハゲを語るよりウマ娘を語れよ!!

 

28:名無しのウマ娘ファン

エンピツダッシュちゃん好き

挙動不審で可愛いなでなでしたい

 

29:名無しのウマ娘ファン

>>28

通報した

 

30:名無しのウマ娘ファン

>>28

極刑!

遺言を忘れずにな!

 

31:名無しのウマ娘ファン

俺に対してみんな酷くない?

 

32:名無しのウマ娘ファン

残当

 

33:名無しのウマ娘ファン

慈悲はない

 

34:名無しのウマ娘ファン

失せろ!

 

35:名無しのウマ娘ファン

当然の結果ね!

 

36:名無しのウマ娘ファン

じゃあ僕はチョップスティックちゃんの事語りますね

 

37:名無しのウマ娘ファン

たまにとんでもない名前の娘いるよね

 

38:名無しのウマ娘ファン

差しが得意そう

 

39:名無しのウマ娘ファン

刺し箸(笑)

 

40:名無しのウマ娘ファン

あんた最低よ!

 

───────

─────

───

156:名無しのウマ娘ファン

ここまでほぼスレの無駄使い

 

157:名無しのウマ娘ファン

じゃあまじめに語るか

ミホノブルボンめっちゃ速くね?

あれは無敗の三冠狙えるわ

 

158:名無しのウマ娘ファン

すげぇ身体してるよね

チチガブルンボン

 

159:名無しのウマ娘ファン

>>158

お前を殺す

 

160:名無しのウマ娘ファン

>>158

ウマ娘ちゃんをそんな目で見るな!!

 

161:名無しのウマ娘ファン

>>158

この世に悪があるとすれば

それは人の心だ

 

162:名無しのウマ娘ファン

>>158

失望しました

フクキタルのファン辞めます

 

163:名無しのウマ娘ファン

また関係ないフクキタルが犠牲に…

 

164:名無しのウマ娘ファン

フクキタルは犠牲になったのだ

犠牲の犠牲に

 

165:名無しのウマ娘ファン

サクラバクシンオーは短距離の王になる器だ

 

166:名無しのウマ娘ファン

あの娘長距離目標らしいよ

 

167:名無しのウマ娘ファン

ええ…?(困惑)

無理でしょ…

 

168:名無しのウマ娘ファン

バクシンバクシン!

 

169:名無しのウマ娘ファン

地味にミホノブルボンと仲がいいらしいね

 

170:名無しのウマ娘ファン

なんでだよ(困惑)

 

171:名無しのウマ娘ファン

>>170

なんかバクシン魂を感じたらしい

短距離に勧誘したらしいよ

 

172:名無しのウマ娘ファン

なるほどわからん

 

173:名無しのウマ娘ファン

考えるんじゃない

感じろ

 

174:名無しのウマ娘ファン

バクシン!バクシン!

バクシンシーン!

 

175:名無しのウマ娘ファン

頭バクシンかよ…

 

──────

────

──

213:名無しのウマ娘ファン

じゃあ俺の推しを語ります

アッシュストーンちゃん!

 

214:名無しのウマ娘ファン

あの色々デカい娘か

メイクデビュー楽勝かと思ったらなんか負けてビビったわ

 

215:名無しのウマ娘ファン

俺もあのメンバーなら普通に勝つと思ってたわ

あの娘選抜レースも模擬レースも敵無しだったんだっけ?

 

216:名無しのウマ娘ファン

レースに絶対は無いのだよ

ところで例の娘の話してもいい?

 

217:名無しのウマ娘ファン

意図的に話さない様にしてたのに…

 

218:名無しのウマ娘ファン

めっちゃかわいいと噂になってたウマ娘ちゃんの話かな?(すっとぼけ)

 

219:名無しのウマ娘ファン

レースに出るまでめっちゃかわいいっていう情報しか無かったシロノリリィちゃん!

 

220:名無しのウマ娘ファン

中等部でデビューしたんだっけ?

それはまあ置いといて…

くっそかわいいよね

 

221:名無しのウマ娘ファン

わかる

現地で見て心臓止まったわ

 

222:名無しのウマ娘ファン

>>221

なんで生きてんだよ

 

223:名無しのウマ娘ファン

辛辣ゥー!

 

224:名無しのウマ娘ファン

 

225:名無しのウマ娘ファン

ひでぇこと言うじゃねえか…

 

226:名無しのウマ娘ファン

>>222

両親見つけてめっちゃニッコニコで手を振ってるの見て生き返ったわ

 

227:名無しのウマ娘ファン

現地勢裏山

 

228:名無しのウマ娘ファン

正直かわいすぎてCGかと思ったわ

本物だと分かったけど理解出来んわ

 

229:名無しのウマ娘ファン

かわいい以外情報無かったっていうけどまあそうだよねとしか言えんわ

 

230:名無しのウマ娘ファン

でもあの末脚やばくね?

ターフ弾け飛んだかと思ったわ

 

231:名無しのウマ娘ファン

ちっちゃくてかわいいのにパワータイプ

 

232:名無しのウマ娘ファン

見た目だけなら小さい細いでステイヤーに見えるのにな

蓋を開けてみればゴリゴリゴリラよ

 

233:名無しのウマ娘ファン

あんなかわいいゴリラがいるか!

 

234:名無しのウマ娘ファン

ゴリラは可愛いだろ?

 

235:名無しのウマ娘ファン

そうだね

 

236:名無しのウマ娘ファン

ゴリラは可愛い

シロノリリィもかわいい

シロノリリィはウマ娘じゃなくてゴリラだった…?

 

237:名無しのウマ娘ファン

ひでぇ風評被害

 

238:名無しのウマ娘ファン

ウマッターとかやってないのかな?

 

239:名無しのウマ娘ファン

その娘のトレーナーの垢なら見つけたよ

 

240:名無しのウマ娘ファン

まじ?

誰よ?

 

241:名無しのウマ娘ファン

>>240

青路瑠流で検索したら出てくるよ

 

242:名無しのウマ娘ファン

あおじるる…

入力めんどいから青汁って呼ぶわ

 

243:名無しのウマ娘ファン

青汁はひどいよ!

 

244:名無しのウマ娘ファン

うら若き乙女になんて事を…

 

245:名無しのウマ娘ファン

新人さんみたいね

もう1人担当してるのか

 

246:名無しのウマ娘ファン

ライスシャワーちゃんね

あの娘も可愛いよね

 

247:名無しのウマ娘ファン

ライスシャワーも強かったな

確かステイヤーなんだっけ?

 

248:名無しのウマ娘ファン

らしいな

菊花賞が楽しみだ

 

249:名無しのウマ娘ファン

他も楽しめよ

 

250:名無しのウマ娘ファン

だって長距離レースほとんどクラシック後半だし…

 

251:名無しのウマ娘ファン

そうね

 

252:名無しのウマ娘ファン

まあジュニアで3000走れって言われてもきついよね

 

253:名無しのウマ娘ファン

青汁のウマッターなんかおもしれーことばかり書いてあるわ

シロノリリィとライスシャワーが常にイチャイチャしてて毎日バケツプリン食わされてる気分だってよ

 

254:名無しのウマ娘ファン

キマシ?

 

255:名無しのウマ娘ファン

なんですって?

 

256:名無しのウマ娘ファン

興味しかないね

 

257:名無しのウマ娘ファン

私ユリ・スキー

詳細を

 

258:名無しのウマ娘ファン

説明を

私は今冷静さを欠いております

 

259:名無しのウマ娘ファン

百合が咲きます

大切にしましょう

 

260:名無しのウマ娘ファン

詳細って言っても…

スイーツ食べる時にあ〜んするのは当然

隣にいればおててを恋人繋ぎ

間近で見たら確かに砂糖吐きそう

 

261:名無しのウマ娘ファン

ガチなのか(困惑)

 

262:名無しのウマ娘ファン

私はいいと思う!

 

263:名無しのウマ娘ファン

百合

私の好きな言葉です

 

264:名無しのウマ娘ファン

百合営業だろ(震え声)

 

265:名無しのウマ娘ファン

あたしトレセン学園生だけどライリリはガチだよ

 

266:名無しのウマ娘ファン

こんなとこに来なくていいから

 

267:名無しのウマ娘ファン

帰って練習して?

 

268:名無しのウマ娘ファン

こんな掃き溜めに来ないで

 

269:名無しのウマ娘ファン

>>265

デビューしたの?

 

270:名無しのウマ娘ファン

同じ1年生なんだけどまじで四六時中イチャイチャしてるわ

ちなみにあたしの初恋はシロノリリィちゃんです

一目見ただけで好きになっちゃったよ

>>269

したよ

負けたけどな!

 

271:名無しのウマ娘ファン

あっ(察し)

初恋終わっちゃったね…

 

272:名無しのウマ娘ファン

俺も同学年なら好きになるわ

てか好きだ

 

273:名無しのウマ娘ファン

うわー!?

突然告白するな!!

 

274:名無しのウマ娘ファン

女の子同士なのに誰も突っ込まないのか

 

275:名無しのウマ娘ファン

しょうがねぇだろ?

好きになっちまったんだから

 

276:名無しのウマ娘ファン

時代は変わる

我々は適応しなければならない

 

277:名無しのウマ娘ファン

いい時代になったよね

 

278:名無しのウマ娘ファン

やらしい時代

 

279:名無しのウマ娘ファン

いつの時代もやらしいだろ?

 

280:名無しのウマ娘ファン

ライスシャワーとシロノリリィってお付き合いしてるの?

 

281:名無しのウマ娘ファン

>>280

直接聞いたけど付き合って無いって言ってたよ

でもあの距離感もう恋人同士としか言えんわ

ライスシャワー先輩はガチだったけどシロノリリィはたぶん恋心がわかってないっぽいわ

 

282:名無しのウマ娘ファン

純粋なシロノリリィちゃんはかわいいですね

 

283:名無しのウマ娘ファン

ライスシャワーってそんな娘なの?

ファンになります

 

284:名無しのウマ娘ファン

キャラが濃いのよ…

 

285:名無しのウマ娘ファン

シロノリリィのエピソードもっと聞かせて!

 

286:名無しのウマ娘ファン

ステイヤーってキスするときめっちゃ長そう(偏見)

 

287:名無しのウマ娘ファン

あのさぁ…

 

288:名無しのウマ娘ファン

青汁のウマッター見てるんだけどシロノリリィはママにSNSやっちゃダメって言われたからそれをキチンと守ってるんだって

いいこだね

 

289:名無しのウマ娘ファン

芝生える

 

290:名無しのウマ娘ファン

ママ大好きなのかな?

 

291:名無しのウマ娘ファン

パパはどうなんですかね?

 

292:名無しのウマ娘ファン

>>290

>>291

ママもパパもだいすきっ!らしいよ

 

293:名無しのウマ娘ファン

めっちゃいいこじゃん

俺ファンになっちまうよ

 

294:名無しのウマ娘ファン

反抗期になったらママとパパ泣きじゃくりそう

 

295:名無しのウマ娘ファン

あとライスちゃんだいすきっ!っていつも言ってるらしい

 

296:名無しのウマ娘ファン

まじかよ芝

 

297:名無しのウマ娘ファン

ライスシャワーはウマッターやってないのかな?

 

298:名無しのウマ娘ファン

そんな暇あるならイチャイチャするんじゃね?

 

299:名無しのウマ娘ファン

一緒のベッドで寝てそう

 

300:名無しのウマ娘ファン

なんか匂い嗅いでそう(偏見)

 

301:名無しのウマ娘ファン

そういやウイニングライブの時お互いのライブでめっちゃキレッキレのペンライト捌きを見せつけてたわその2人

 

302:名無しのウマ娘ファン

その隣にいたちっこいピンクのウマ娘ちゃんも凄かったわ

 

303:名無しのウマ娘ファン

よく見たらお互いが印刷されたハッピと鉢巻してたの思い出したわ

 

304:名無しのウマ娘ファン

相思相愛じゃん

 

305:名無しのウマ娘ファン

匂い嗅いでそうは芝

とんでもない風評被害じゃん

 

306:名無しのウマ娘ファン

ウマ娘ちゃんに対する風評被害はやめろ

 

307:名無しのウマ娘ファン

シロノリリィはダートが得意なマイラーらしいね

 

308:名無しのウマ娘ファン

ダート?(デビュー戦を見る)

 

309:名無しのウマ娘ファン

芝で走ってたよね?

 

310:名無しのウマ娘ファン

芝は苦手らしいよ

 

311:名無しのウマ娘ファン

苦手ってなんだよ?

 

312:名無しのウマ娘ファン

パワーで誤魔化してたんでしょ(ハナホジ)

 

313:名無しのウマ娘ファン

誤魔化すにも限度がある

 

314:名無しのウマ娘ファン

これはゴリラリリィ

 

315:名無しのウマ娘ファン

なんにせよこれからが楽しみなウマ娘ちゃんだ

 

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シロノリリィのヒミツ①
めっちゃいいにおいがする


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第8話 夏合宿! リリィちゃんパワーアップします!

 無事にメイクデビューに勝利したリリィちゃんです。ターフを駆け抜けるあの疾走感はたまりませんね! でもまだ1勝です、油断してはいけません。私はかしこいのでここで気を抜かずに練習に励みます。

 そしてライスちゃんも見事にデビュー戦に勝利しました! 普段のライスちゃんはとっても綺麗で可愛いのですが、レースをしている時はキリッとしててすっごくかっこいいんです! 私もついつい応援に力が入ってしまいました。あとウイニングライブで私にウインクしてくれました! こうなんというかですね、すっごく嬉しかったんだけどそれと同時になんだかいつもよりもドキドキしちゃいました。よくわかりませんがライスちゃんは綺麗で可愛くてかっこよくって最高です! ライスちゃんだいすき!

 

「ライス、リリィ、2人とも初勝利おめでとうー!」

「ありがとうお姉さま!」

「ありがとうるるちゃん!」

 

 今はライスちゃんとるるちゃんと私の3人でトレーナー室で打ち上げをしています。るるちゃんが作ってくれた特盛にんじんハンバーグをもりもり食べているのですがとっても美味しいです。

 

「るるちゃんってお料理できたんですね」

「いきなり言葉でぶん殴ってくるじゃない……。中央のライセンス持ってるトレーナーだから料理ぐらいできるわよ」

「ウマ娘の栄養管理もトレーナーさんのお仕事だもんね。いつもお仕事おつかれさま、お姉さま」

「いいのいいの、寧ろもっと頼ってちょうだい! あなた達は手がかからないからトレーナーとしてちょっと寂しいのよ……」

「私はいつも頼りにしてますよ?」

「ライスもだよ?」

「……ほんと、いい子達だわ。話は変わるんだけど、これから7月になるでしょ? だから夏合宿をしようと思うの」

「おぉー! リリィちゃんちょーパワーアップしちゃいますね! やりましょう!」

「ライスも賛成だよ! 夏のレースは暑くて大変だもんね……」

「乗り気で何よりよ。まぁ先に謝っておくけど宿はそんないいとこじゃないわ。ごめんね?」

 

 夏合宿とは、トレセン学園主導で7月〜8月にわたり、海辺近くの施設に泊まり込みで行われる合宿の事です。保健医などの学園のスタッフも帯同しているので、いざという時も安心なんですよ。

 普段とは異なる環境でトレーニングを集中的に行えるため、ほとんどのウマ娘とトレーナーさんがこの夏合宿制度を積極的に利用しています。

 るるちゃんは宿の心配をしていますが、泊まれるだけでありがたいと思います。山に放り出されてサバイバルをしろとか言われない限りは大丈夫です。私はつよいこですが、流石に大自然には敵いません。

 祝勝会兼夏合宿の打ち合わせが終わりひとまずは解散となりました。レースの後は暫くトレーニングは行いません。身体を壊してしまったらレースどころではありません。なのでライスちゃんと相談して、夏合宿の合間に遊ぶ用の水着を買いに行くことにしました。

 お店に買いに行ったのですが、最近の水着はなんかいっぱい種類があって困りますね。よくわからないからライスちゃんとお揃いのやつにしました。フリルがいっぱいついててかわいいやつです。ライスちゃんが黒で私が白です。

 夏の思い出をライスちゃんといっぱい作りたいです!

 

 

 

「と、いうわけで。やってきました! 夏合宿ぅー!」

「「きましたー!」」

「最初は宿に行って、荷物を置いてからトレーニング場の確認ね。それが終わったら早速トレーニングよ! 宿はこっちだから着いてきてね〜」

「「は〜い!」」

 

 やってきました! 夏合宿です! 真夏の太陽が私を昂らせます! わくわくしますね!

 るるちゃんが案内してくれた宿に着きましたが、思っていたよりずっときれいでした。壁が剥がれた廃屋を想像していたので寧ろ拍子抜けでした。

 

「想像してたよりもずっと綺麗ですね」

「どんなとこを想像してたか気になるわ……」

「ライスはテントだけ置いて宿と言い張ってると思ってたよ」

「流石にそれはやばいわよ……」

「私は廃屋を想像してました」

「あなた達のハードル低すぎない? そんなとこに泊めるトレーナーがいるわけないでしょ……」

 

 私の脳裏にかすかにですが廃屋みたいな宿に泊まってトレーニングをするウマ娘さん達の記憶があります。……なんでこんな事覚えてるんだろ?まあいっか!

 荷物を置いて、着替えをしてからトレーニング場に行きます。砂浜で走るのはダートで走る感覚と似ています。あとここだと足の負担が少ないので、より効率よくトレーニングが行えます。

 

「それじゃあ準備運動も終わったし、今からトレーニングを開始します。まずは砂浜でダッシュよ!」

「「はい!」」

「それじゃあ準備して……よし、はじめ!」

 ───────

 ──────

 ────

 

「お魚美味しいです! ねっ! ライスちゃん!」

「うん! 美味しいね、リリィちゃん!」

「いつも思うけど、あなた達めっちゃ食べるわよね……」

「オグリ先輩よりは少ないと思いますよ?」

「オグリキャップと比較したら誰だってそうよ……」

 

 トレーニングを終えて、今は宿に戻って晩御飯を食べています。このお魚の天ぷらが絶品です!

 るるちゃんが言ってましたが、私とライスちゃんは食べる量が多いそうです。私達が食べる量は具体的に言うと0.8スペシャルウィーク先輩ぐらいだと思います。……まあつよい身体を作るにはいっぱいご飯を食べなければいけないので仕方ありません。

 スペシャルウィーク先輩はたまに太り気味になっていますが、私はいっぱい食べても太り気味になった事はありません。たぶん私がかわいいから平気なんだと思います。

 

「そうそう、明日というかこの合宿中に併走トレーニングを手伝ってもらえる事になったわ」

「おぉ〜! どんなコネを使ったんですか?」

「コネなんて無いわよ……。アッシュストーンは覚えてる? あのトレーナーが手伝ってくれる事になったのよ」

「覚えてますよ! アッシュストーンさんはとっても強かったので!」

「未勝利戦もすぐに突破してたよね。でもなんでお手伝いしてくれるのかな?」

「リリィのデータが欲しいんじゃないかしら? まあ、手伝って貰えるならなんでもいいわよ。強い娘とのトレーニングはいい刺激になるしね。……ん? スマホに連絡が。……ちょっと電話してくるわ」

「「は〜い」」

 

 るるちゃんが電話をするために席を離れました。トレーナーさんはいろいろお仕事があって大変ですね。

 

「アッシュストーンさんは確か短距離とマイルが得意な娘だったよね? ライスも併走をお願いしたいけど、得意距離が合わないからダメそうだね……」

「私もまだ中距離を走れるだけのスタミナが無いから……。ごめんねライスちゃん……」

「気にしないで? その気持ちだけでとっても嬉しいよリリィちゃん」

 

 ライスちゃんの力になれないのはすごく残念です。るるちゃんが電話を終えて戻ってきました。……なんか微妙な表情をしてますね?

 

「……2人とも、さっきアッシュストーンのトレーナーが併走トレーニングに協力してくれるって言ったわよね? そのトレーナーさんの知り合いがこっちの併走に協力してくれる事になったわ」

「……いい事ですよね? なんで変な顔してるんですか?」

「だって怪しくない? まあ使えるもんは全部使うけど……」

「いきなりだもんね。もし変な人だったらライスがすり潰すから安心してね?」

「私も捻り潰します!」

「可愛い顔して物騒な事言わないでよ……」

「ふふっ♪ もちろん冗談だよお姉さま」

 

 変な人だったらリリィちゃんパンチを食らわせてやります! ご飯を食べ終えたので暫くみんなでおしゃべりをしてからお風呂に行きました。お風呂場は結構広かったです。疲れた身体に温かいお湯が染み渡ります。明日も頑張れそうです!

 


 

「2人ともぐっすりね。……それにしても、本当にいつも一緒に寝てるのね。合宿でも一緒だとは流石に思わなかったわ……」

 

 お互いに抱きしめあいながら寝てるわ……。寝づらくないのかしら?

 すっごい幸せそうな顔しちゃって……。いつものイチャイチャだと糖分過剰だけど、今ぐらいなら眺めるのに支障は無いわ。

 ……でもお風呂場でのイチャイチャは凄かったわね……。髪をお互いに洗うのは予想できてたし、寧ろ眼福だったわ。身体を洗いあうのもね。……だけど真正面から向き合って、密着しながら手で洗いあうのは流石にアレね……アウトよ……。

 いつもそうやってるの? って聞いたら「最初はこうじゃなかったんですよ? でもライスちゃんからこうやりたいって言われたからやり始めました!」なんて言われて思わずライスの方を見ちゃったわ……。あの娘、最近行動が大胆になりすぎよ。……そういうのは2人っきりの時だけにしておきなさい。

 

「ふぅ……私も寝るか。……おやすみなさい」

 


 

 おはようございます! 今日も元気なリリィちゃんです。今日は併走トレーニングをメインにやっていくみたいです。

 

「というわけで……今日私達に協力してくれる人達を紹介するわね。アッシュストーンとそのトレーナーの中村さん。こっちはその知り合いのキョウエイボーガンとトレーナーの本田さんよ」

「アッシュストーンのトレーナーの中村です。本日はよろしくお願いします。ほら、アッシュも挨拶して」

「……よお」

「よお、じゃないよ。……すみませんうちのアッシュが」

 

 アッシュストーンさんは前見た時よりちょっと雰囲気が柔らかくなってますね。トレーナーさんはなんかアッシュストーンさんに振り回されていそうな感じです。

 

「やあやあ、私はボー……じゃなくて、キョウエイボーガンのトレーナーの本田だよ。今日はよろしくね」

「……ワタシはキョウエイボーガンだ。よろしく」

 

 こっちの人達はマイペースな感じですね。アッシュストーンさんのお知り合いなのかな?

 

「私はシロノリリィです。ライスちゃんが大好きです! 今日はよろしくお願いします!」

「ライスはライスシャワーです。リリィちゃんのことが大好きです。こちらこそよろしくお願いします」

「この子達のトレーナーをしている青路瑠流です。こちらこそよろしくお願いします。顔合わせも済んだところで、今日の併走なんだけどリリィがアッシュストーンと、ライスがキョウエイボーガンとする事にしたわ」

 

 なんだかアッシュストーンさんとキョウエイボーガンさんの顔が引き攣ってますが大丈夫でしょうか?

 

「……オレの距離適正が短距離とマイル、ボーがマイルと中距離だからだな。シロノリリィ……長ぇからシロでいいか? 併走とはいえ手加減なんてしねぇからな?」

「いいですよ! じゃあ私はアッシュちゃんって呼びますね! アッシュちゃんは強いから手加減なんて考えてませんよ?」

「いや、アッシュちゃんはやめろ……」

「や」

「即答すんなよっ!?」

「……君がライスシャワーか。併走相手を探しているとアッシュちゃんに聞いて、ワタシとしても強い君との併走は良い経験になると思ってトレーニングに参加しようと思ったのだ。距離適正的に長距離は厳しいが中距離なら相手をやれるから、これからよろしく頼む」

「ライスも中距離の併走相手が欲しかったからありがたいです。お互い良い経験になるように頑張りましょう」

「おい! ボーまでオレの事アッシュちゃんって呼ぶんじゃねぇよ!」

「「「まぁまぁアッシュちゃん、落ち着いて?」」」

「なんなんだよお前らっ!?」

 

 アッシュちゃんはノリがいいですね! それは置いといて、こうして併走トレーニングができるのはありがたいですね。夏合宿中はレースに出る予定は無いのでこういうところでレース勘を補えるのは嬉しいです。

 

「併走トレーニングは午前と午後でそれぞれ行うわ。あまり多くやりすぎないように注意してね? それ以外は通常通りトレーニングをしていきます。……あっ、トレーニング内容は打ち合わせしてあるから心配しないでね?」

「青路トレーナーは新人と聞いていたけど優秀だから特に口出しする事が無かったよ。一応先輩だからなんかアドバイスしようかな〜と思っていたけど何も言うことがなかったねぇ……」

「俺も新人トレーナーだけど見習いたいところが沢山あったよ。こっちとしても良い経験になりそうで助かります」

「照れるからあんまり褒めないでくれます?」

 

 るるちゃんが照れてますね! とりあえず午前は私とアッシュちゃん、午後からライスちゃんとボーガンさんで並走する事にしました。充実した練習になりそうです。がんばるぞー、おー!

 


 

 オレは強い。ガキの頃から誰もオレに敵わなかった。生意気な同級生も、偉そうな態度の先輩も、地元のヤツらは俺の敵じゃなかった。

 オレは強い。トレセン学園に入ってからもそれは変わらなかった。模擬レースも、選抜レースも、オレがぶっちぎりで勝った。中央っていっても大した事ねぇなんて思っていた。

 ──だけど負けた。眼中にない、白くて小さいウマ娘に。

 はじめてだった、誰かに負けるのは。ムカついて、イラついて、でも悔しくて。同室のキョウエイボーガンに「やっと負けたのか? ざまあみろ」なんて煽られてクッソイライラしたが、思えばあの時はじめてあいつの事を意識したな。

 それからはアイツをボーなんて呼ぶぐらいには話すようになった。ルームメイトなのに今までほとんど話したことがなかった事に気づいたんだがアイツは「そんな事にも気付かなかったのか? 傲慢な獣め。だから足を掬われるんだぞ?」とかなんとか。いちいち煽らないと喋れないのかよボーのやつ……。まぁ、傲慢ってとこは認めるよ。直す気は無いけどな。

 未勝利戦はさくっと突破してトレーニングをしていたんだが、どうも白チビ達は夏合宿で並走相手がいないらしいって噂を聞いた。だからトレーナーにオレが並走相手になれるように頼んだ。……オレに勝ったくせにそれが理由で勝てませんでした。なんて言われたらムカつくからな。

 その事をボーのやつにも話したんだが、なんかワタシも連れてけなんて言い出したんだよな。やたらソワソワしてたけどもしかしてあれか? ソッチの趣味でもあるのか?

 白チビに惚れてんのか? って聞いたらやたら慌てて否定しやがったから面白かったぜ。……ライスシャワーとデキてるって噂があったけど、あいつ知らねえのかな?……まぁオレには関係ねぇけど。

 この夏合宿でオレはアイツの強さを超えてやる。次のレースはオレが勝つから覚悟しとけよ?

 

 


 

 

 

 あれから毎日のようにトレーニングをしました。併走をして、巨大なタイヤを引いたり早押しクイズをしたりビーチバレーをしたり……でも毎日トレーニングだけをしていると疲れが溜まってしまうので適度にお休みも挟みました。

 みんなでバーベキューをしたり海で泳いだり……他にもいっぱい。そうそう! キョウエイボーガンさんとも仲良くなれました! 今はキョウちゃんって呼んでます! みんなとLANEも交換しました。連絡先が増えて嬉しいです!

 そして今日は最終日です。そういえばるるちゃんが近所で夏祭りをやってるって言ってましたね。今日の練習が終わったらライスちゃん達を誘ってみるのもいいかもしれませんね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇリリィちゃん、ライスとデートしよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………でーと?」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 リリィちゃんとお別れした前日のあの夏祭りの日。お母さまが教えてくれた「あなたが大好きな人ともっと仲良くなれるおまじない」をライスは今でも覚えている。本当は別の意味があるけれどあえてそれを隠してたのも今なら分かるよ。

 リリィちゃんとお別れが決まった日から、ずっとライスは泣いていた。リリィちゃんは綺麗で、誰よりも優しくて……だから、お別れした先ですぐにお友達ができて、きっとライスの事なんて忘れちゃうんだって思ってた。

 でも違った、すぐに気づけたの……リリィちゃんも泣いていたから。あぁ、同じ気持ちなんだ……ライスもリリィちゃんも同じなんだって。

 あの頃のライスは小さな子どもで何もできなかった。でも、ほんの少しでもいいから2人の証を残したかったの。だからお母さまにどうすればいいか聞いてみて、それで教えてもらったのがあのおまじない。

 夏祭りの当日にライスはとっても暗い気持ちだった。明日が来たら、リリィちゃんと離れ離れになっちゃうって。でもリリィちゃんは違ったの。ずっと、ずっと考えていたの。2人でいられる方法を。

 「トレセン学園に行ったら、ターフの上でなら一緒に居られる」。小さな子どもの大きな目標。確かにこれなら一緒に居られるなって、ライスすっごくびっくりしちゃった。……普通なら無茶だって言われるんだろうなって思った。でも、不思議と出来るって思ったの。

 ……たった一言。これだけでライスの暗い気持ちなんて無くなっちゃった。……リリィちゃんは本当にすごいなぁって。……だからライスはあの時決めたの。あのおまじないを暗い気持ちでなんてやらない。本気の本気でリリィちゃんと再会する為の約束にするって。……その時、胸の奥がとっても熱くなって、ドキドキが止まらなかったなぁ。……あの時は分からなかったけど、今ならこの気持ちが何なのか分かるよ。

 それからライスは前を向いて毎日走り続けたの。リリィちゃんの隣にいる為に、リリィちゃんと笑って再会できるように。

 リリィちゃんとトレセン学園で再会した時、もう言葉に表せないぐらい嬉しくて、……それから毎日一緒でとっても幸せだったんだけど、ライスはね、もっとリリィちゃんと仲良くなりたいって思っちゃったの。

 


 

 夏祭りの会場から少し離れた場所で2人は花火を眺めていた。この場所は人があまり来なくて花火がよく見える所謂穴場と呼ばれている場所である。

 

「ねぇリリィちゃん、ライスたちが『約束』をした日の事覚えてる?」

「……うん。覚えてるよ。場所は違うけど夏祭りの日だったよね?」

「……あの後はリリィちゃんがいなくなっちゃったけど、今は違う。明日も、明後日も、その先もずっとずっとリリィちゃんがいる。……嬉しいなぁ本当に」

「私も同じ気持ちだよライスちゃん。……あの日見た花火は綺麗だったけどすごく儚く見えたの。……だけど今日の花火はすっごくキラキラしてて希望に満ちてるの」

「……そうだねリリィちゃん。……でもね、あの時とはちょっと違う気持ちもあるの。ねぇ、リリィちゃん……」

「……なぁにライスちゃん?」

 

 ライスシャワーはシロノリリィの頬に己の両の手を添え、その綺麗な瞳を見つめた。心なしかシロノリリィの頬が赤くなっているが、それが夏の暑さのせいなのかそれとも照れのせいなのかは分からない。

 

「え、えっと……ライスちゃん?」

「ライスはリリィちゃんともっと仲良くなりたいの」

「もっとって……どれぐらい?」

「2人でドロドロに溶け合うぐらい」

「よ、よくわかんないよ。……あとお顔近いよ」

「わざとだよ? ……ねぇリリィちゃん、このまま近づいたらどうなると思う?」

「……唇が触れちゃいます」

 

 今にも唇が触れてしまいそうな至近距離でお互いの吐息がかかる。ドクン、ドクンと、どちらのものなのか分からないほど心臓の音が響いている。

 甘い匂いでくらくらしそうになりながら、どれ程の時間が経ったのか分からないほど見つめあっていたが、沈黙を破るようにライスシャワーが口を開いた。

 

「……ライスの仲良くなりたいってのはこういう事。……リリィちゃんはどう?」

 

「……よくわかんないです」

 

「…………ねぇ、嫌?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………いやじゃないよ

 

 

 

 

 

 

 

 手のひらからジワリと汗が湧いて、心臓が壊れたかのように早鐘を鳴らす。最早誤魔化す事もできない程お互いに真っ赤になって、その瞳はうるうるとしている。お互いに見つめあい、永遠に続くかの様な沈黙の後シロノリリィがほんの僅かに斜め下に視線を逸らし、ゆっくりと瞼を閉じた。

 ごくりと喉を鳴らし、ゆっくり、ゆっくりと唇を近づけ、そして────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何やってるのよ、あなた達……」

 

 

 

 

 

 

 

──トレーナー(お姉さま)に見つかった。

 

 

 

 

 

 

 

お、お、お、ぉおねおねお姉さまっ!?!?!?

る、る、るるるるちゃんっ!?!?!?!?

 

「……ごめんね邪魔して。……焼き鳥そこに置いておくから食べていいわよ」

「ま、待ってお姉さま! 違うの! 合ってるけど違うの!!」

「あわわわわ! あばばあばばばあばばばばっ!!」

「……リリィが壊れちゃった。……遅くならない様に気をつけるのよ?」

「待って! 待って!? お姉さまぁー!!」

「ぴゃぴゃう! ぴぃっーー!!」

 

 祭りの喧騒よりも賑やかな少女達の叫びが辺りに響き渡った。この後他のトレーナー達と合流したが、その真っ赤な顔だけは元に戻らなかった。

 中村は苦笑し、本田はめちゃくちゃにやにやし、アッシュストーンは呆れた目で見て、キョウエイボーガンは訝しんだ。



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第9話 初重賞! サウジアラビアロイヤルカップです!

リリィちゃん達の出走レースは、アプリのレースを参考にしています。


 夏合宿を終えてパワーアップを果たしたリリィちゃんです。今の私なら2000mを走ってもへっちゃらです!

 そして新しいお友達ができました。アッシュストーンさんとキョウエイボーガンさんです(今はアッシュちゃんとキョウちゃんと呼んでいます)。この2人が私とライスちゃんの併走に協力してくれたおかげで私達はとっても強くなれました。これが友情トレーニングというやつですね!

 でもトレーニングばかりしてたわけじゃないんですよ? みんなでバーベキューをしたり、普通の水着を着て泳いだり……。そういえばアッシュちゃんは腹筋がバッキバキに割れていましたね。キョウちゃんはうっすらで、ライスちゃんは綺麗なラインが出てました。トレーニングの成果がこんなところにも現れていますね!

 ……私ですか? 私はライスちゃんと一緒で、割れてないけどとっても綺麗なラインが出ているタイプです。自信だってありますよ! だってライスちゃんが撫で回してきましたからね! リリィちゃんはかわいいだけじゃなくてスタイルもいいんですよ!

 最終日には近所でやっている夏祭りに行きました。最初はみんなで行こうと思っていたんですけど、ライスちゃんに……えっと、デートに誘われちゃいました。

 みなさんはデートってした事ありますか? 私はライスちゃんに誘われるまで一度もしたことがありませんでした。

 パパやママとのお出かけを含めていいならいっぱいあるのですが……。それは含めない? ……しょんぼリリィちゃんです。

 話を戻しまして……ライスちゃんにデートに誘われたんですけど、なんとライスちゃんもはじめてデートに誘ったそうなんです! お互いはじめて同士です! よくわからないけどいい感じですね!

 デートといっても普段とやってる事はあまり変わりませんでした。一緒に手を繋いで歩いたり、屋台でいろんな物を食べたり、綺麗な景色を見たり……。でも、「デート」だって意識すると普段よりもドキドキしちゃいました。

 ライスちゃんと一緒に花火を見ている時に、もっと私と仲良くなりたいって言われました。今よりももっと仲良しさんになるにはどうすればいいのかなって思っていたら、ライスちゃんと私のお顔がとっても近くなっていました。

 ……あの時はとっても恥ずかしかったですね。周りの時間が止まってしまったのかと勘違いしそうになるぐらい長い時間見つめ合って……。えっと、それで……唇が近づい……て……。

 …………もうちょっとだったのにな。

 ……えっと……そうです! その後るるちゃんやみんなと合流してお祭りを見て回ったんですね! アッシュちゃんが型抜きの難しいやつを一回でクリアしたり、キョウちゃんが射的で全部外して悔しそうにしてたり……とにかく色々ありましたね!

 他にもたくさん楽しいことがありました。でも9月からはいっぱいレースをする予定です。思い出と夏合宿の経験を糧にしていっぱいレースで勝ちます! がんばるぞー、おー!

 


 

 夏合宿によって大幅に成長した2人は、次走をシロノリリィは「野路菊ステークス」、ライスシャワーは「芙蓉ステークス」に決めた。レース当日、合宿の成果を見せつける様な強いレースをし、見事に勝利した。これで2人の勝利数は2勝となった。

 この2人なら更に上でも通用すると確信し、トレーナーは次の目標を重賞であるG IIIの「サウジアラビアロイヤルカップ」をシロノリリィに、「京都ジュニアステークス」をライスシャワーの目標に決めたのだった。

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「ぴっつんぴっつん! あたし達、重賞レースに出られるよ!」

「と、とうとう重賞なんだね……。サウジアラビアロイヤルカップ……き、緊張してきたぁっ……」

「まだレース当日じゃないよ? 緊張するのは早いって……」

 

 この2人のウマ娘の名前はレッドボンバとエンピツダッシュ。元気な方がレッドボンバで、挙動不審な方がエンピツダッシュだ。高等部1年で、今年デビューをしたウマ娘である。

 レッドボンバは赤い髪とモッフモフの髪が特徴で、性格は明るく元気でとても素直な娘だ。……表向きはだが。

 本当は誰よりも卑屈で、一度落ち込むと立ち直るまでにすごく時間がかかる性格をしている。この卑屈さを隠すために表向きには明るく元気なレッドボンバを演じている。この程度は他の癖ウマ娘に比べたら可愛いものだが、本人的には結構気にしているらしい。

 芝の短距離とマイルを主に走っており、先行と差しを得意としている。

 エンピツダッシュは極度の人見知りで、陽のオーラを感じ取ると死ぬ典型的な陰の者だ。

 レッドボンバと同じで芝の短距離とマイルを主戦場にし、逃げを得意……というよりもバ群に紛れるとやる気を無くし、最後方だと気が引けるという残念な理由から逃げ以外ができない癖ウマ娘だ。

 一見するとこの2人は相性が悪そうな気がするが、レッドボンバの表向きじゃない方の性格のおかげで仲間意識を持ったエンピツダッシュが勝手に懐いたのだ。彼女曰く「陽に焦がれる陰独特のオーラが心地良い」らしい。

 入学当初から同室である2人は、チームは違うがお互いに励まし合いながら今まで共に支え合ってきた戦友である。

 

「し、出走メンバーに強そうな人がいないといいけど。……ゔぁぁぁぁーーーー!?!?!?

「ちょっ!? どうしたのぴっつん! 出走メンバーにヤバい人でもいたの……ゔぇぇぇぇぇ!?!?!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「リリィちゃんがいるっ!?!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、シロノリリィに脳を焼かれた被害者だ(シロノリリィの大ファンだ)

 

「どうしよどうしよぼんちゃん!! 生リリィちゃんなんてわたし耐えられないよ死んじゃうよ!!」

「あわわわわ! あたしだって無理だよ死んじゃうよ!」

「夏合宿を終えてから更にパワーアップしてるし実力的な意味でもヤバいよ!! あと青汁のウマッターにアップされた水着写真えっちだった!! 全部としか言いようがないけど強いて言うなら特にお腹がえっちだった!!」

「分かる! でもあの細い太ももがあたしを狂わせる……頬擦りしたい……。あっ! 間違えたっ!! リリィちゃんの事そういう目で見ちゃダメっ! ……あたし達だって夏合宿したんだしなんとか……ならないよね。はぁ……せめてサインだけでも貰おっか」

「戦う前から諦めちゃ……せめて匂い嗅いでから死にたいなぁ」

「高望みしすぎだよぴっつん。……近づくだけで浄化されそう」

 

 全く関係ない話だが、ウマッターで「シロノリリィ」と検索すると候補に「いい匂い」や「かわいい」が出てくる。中央のウマ娘や世間の人々は一体何を考えているのでしょうか。

 SNSを禁止した両親は英断でしたね。

 

 

 

 

 

 10月前半、サウジアラビアロイヤルカップ当日。パドックでウマ娘達が紹介されていた。

 今回のレース出走者は9人。特に注目されているのはエンピツダッシュ、レッドボンバ、シロノリリィの3人であった。

 

 

『──1番、3番人気エンピツダッシュ。だいぶ緊張していますね』

『彼女にとって初の重賞ですからね。普段通りの実力を発揮できればいいのですが。好走に期待したいです』

 

(人……いっぱい……うひぃっ……助けて……ぼんちゃん……)

 

 涙目で固まっているし、緊張で吐きそうになっている。君が助けを求めているレッドボンバは今日は敵だぞ?

 そんなメンタルで大丈夫か?

 

『──3番、2番人気レッドボンバ。調子は良さそうですね』

『これはいい仕上がりですね。調子も良さそうですし、彼女の末脚なら優勝も狙えますよ』

 

(あわわわわ! めっちゃ人いるじゃん……。怖いなぁ〜)

 

 表情には出ていないが、緊張で震えそうになってる。解説の人達を欺くとは、恐ろしい演技力だ……。鉄壁の表情筋ですね。

 

『──5番、1番人気シロノリリィ。素晴らしい仕上がりです』

『初の重賞でも緊張している様子は見られません。現在2連勝中ですが、このまま記録を伸ばせるか注目ですね』

 

(今日もリリィちゃんは絶好調なのです!)

 

 ドヤ顔で腰に手を当て胸を張っている。

 リリィちゃんはかわいいですね。

 

 

 

 

「今回のレースはエンピツダッシュが引っ張って、それに他がついていく展開になりそうね……」

「どうしたのお姉さま急に?」

「リリィの末脚なら後方からでも問題なく差せるけど、レッドボンバの末脚も侮れないわ……。リリィには今回先行策で行かせたけど、果たしてどうなるか……」

「リリィちゃんが勝つよ?」

「……まあ信じるしかないわね。ただ、ちょっとイヤな予感がするのよね」

 

 シロノリリィは現在2連勝。実力的にも注目されている。

 

(も、もしスローペースだとスタミナを余らせたリリィちゃんに簡単に差されちゃう……。だから今日のレースは──)

 

(悔しいけど、あたしの技術だとリリィちゃんをマークしてもあんまり効果がない……。だから今回は──)

 

((──リリィちゃんを無視してガンガン前に行くっ!))

 

 この2人は真っ向勝負を避けた。だが、他の6人は違った。

 

『──ゲートイン完了。出走の準備が整いました』

『さあゲートが開いた。おっと? シロノリリィが少し出遅れたか?』

『誰が先頭に抜け出すか、注目しましょう』

 

 鉄のゲートが開き、各ウマ娘達が一斉に飛び出した。

 今回はシロノリリィが遅れたというより、他のウマ娘達全員が抜群のスタートを切った。エンピツダッシュはグングンと前へと進み先頭に躍り出た。その後ろをレッドボンバが3バ身程離れて追いかけている。そこから2バ身離れてシロノリリィを含む7人がポジション争いをしている。

 

(─エンピツダッシュさんがグングン前に行ってますね。それに続く形でレッドボンバさんも前の方で走っています。このまま離されると不味いので私も前の方に……あれ? 2人ほど私の前にいて……右斜め横に2人……。チラリと後ろを見ると右後方に2人──)

 

 ────リリィちゃん、囲まれちゃってますね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 他の6人全員が、シロノリリィをマークしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うっそ……まじか」

「……多分、たまたまだと思うけど、エンピツダッシュさんとレッドボンバさん以外全員がリリィちゃんをマークするなんて……」

「……無理やり抜け出せば接触しそうだし、ちょっと……いや、かなり不味いわね……。ここまでマークされる可能性を考えなかった私のミスだわ」

「……お姉さまは悪くないよ。ライスも、リリィちゃんがかわいすぎて注目されちゃうって気付いてたら……」

 

 シロノリリィが完全に囲まれた形でレースは進み、先頭がコーナーに到着した。

 

(……後ろでみんなが固まってる? ……リリィちゃんがマークされたのかな? ……こ、こっちにとっては好都合! このまま追いつけないぐらいに突き放すよっ!)

 

(ちらっ。……うわぁ……リリィちゃん、えぐいぐらいマークされてるじゃん……。あたし、マークしなくてよかったぁ……。あれに巻き込まれたらやばかったね。悪いけど、勝負の世界は非情なんだよ! このままぴっつんを追いかけて、あたしが勝つよっ!)

 

 2人はコーナーを曲がりながら徐々に加速し始めた。このまま後続を突き放し、優位を保ったままレースを進めるために。

 エンピツダッシュとレッドボンバの差は3バ身、そこから後続は4バ身離された。しかし、シロノリリィは焦っていなかった。

 

(……前はダメ、横もダメ。……先頭はもうコーナーに入ってる……)

 

 シロノリリィを絶対に前に行かせない。そんな鉄壁のマークを前に、彼女は考えた。

 

(体力は余ってる……脚も余裕がある。……なら私は──)

 

 シロノリリィが突然速度を落とし、最後方へと下がった。その様子に怪訝に思うが、好機と判断し6人は一斉に速度を上げコーナーを曲がり始めた。

 

 

「……リリィちゃん、まさか──」

「……普通はそこを通ろうなんて、思ってもやらないわよ──」

 

 

(……最終直線このままスパートをかけて、わたしが勝つ!)

 

(……末脚にはちょっと自信があるんだ。そう簡単に勝てると思わないでよ?ぴっつん!)

 

 2人は同時にスパートをかけた。距離的にも有利、最有力のシロノリリィは沈んだ。さあ、ライバル同士の対決だ。トモに力を込め、2人は風となる。

 きっとこのまま2人で競り合い、ゴール板を駆け抜けた先でお互いに抱きしめ合い、健闘を讃えるのだろう。

 だが、そうはならない。なぜならここには──

 

(はじめての重賞で、ライバルとの直線勝負。……なんだかドラマみたい。……でも、今日はわたしが勝つよ、ぼんちゃん!)

 

(逃がさないよ?ぴっつん!あたしは今日、勝つためにここにいるんだっ!)

 

 ──シロノリリィがいるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人の遥か後方で、ターフが爆ぜる音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……えっ? なに、今の音……)

 

(ひっ!? なに、今の……)

 

 

 

 あまりの轟音に無意識で振り向いてしまった。

 

 

 その足音は、ターフの悲鳴だった。巨大な音と共にナニかがこちらへ迫ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこに居たのは、恐ろしいほど綺麗で穢れ一つない、純白のウマ娘だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(リリィちゃん!? リリィちゃんなの!? どうしてここに!? 自力で脱出をっ!?!?)

 

(ぴっ…!? えっ!? ちょっ!? 嘘でしょ!? どうやってあのマークから逃れたのっ!?)

 

 

 完全に沈んだと思ったシロノリリィの復活に動揺し、2人は一瞬速度を落としてしまった。

 そんな2人を気にせず、シロノリリィは恐ろしい程のスピードで迫ってきていた。

 

(は、速すぎるっ! 映像と体感じゃ全然違うっ! このままじゃ……うひゃっ!? よく見たら顔怖いっ!! 綺麗すぎて怖いっ!!)

 

(い、いやだっ! あたしは負けたくないっ! 絶対に、絶対に勝つんだっ!)

 

 エンピツダッシュとレッドボンバの差が縮まりほぼ横並びになる。ゴールまであと50m。だが、シロノリリィとの差はもうほとんど無かった。

 

(やだやだやだ! 負けたくないっ! わたしだって勝ちたいんだっ!)

 

(くっそぅ! 負けたくない、負けたくないっ! 勝って、あたしは胸を張って生きるんだっ!!)

 

 シロノリリィはその勢いのまま、2人を追い抜いた。そして突き放す様に1バ身、2バ身と差をつけゴール板を駆け抜けた。

 

 

((─…あっ…))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

((────すごい、いい匂い……))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ターフを駆ける(ここにいる)全てのウマ娘に、想いがある。

 叶えたい願い、友や家族との約束。だが、それを叶えられるのはただ1人だけ。

 それら全てを踏み潰し、シロノリリィは勝利を掴み取った。

 

 

 

『強さを見せつけて、シロノリリィがゴールイン! 圧巻の走りでレースを制しました! シロノリリィ! 見事に完勝! サウジアラビアロイヤルカップを制しました! 2着レッドボンバ。3着はエンピツダッシュ──』

 

 

 

「……最後方に下がってマークを外し、沈んだと見せかけてから外ラチギリギリをあえて通ることで他のウマ娘の視界から消える。そして、皆の意識外からあの轟音スパートをかけて動揺を誘い、そのまま勢いで差し切る……。すごいわリリィ。まさかあの一瞬でそこまで考えるなんて……ん? ライス?」

「………………」

「ライス? ……お〜い、私の可愛いライスぅ? ……ライスちゃぁ〜……」

────かっこいい……

「えっ? 今なんて…」

 

あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!! リリィちゃんかっこいいよすてきだよ! すぅぅぅぅぅぅきぃぃぃぃぃぃぃ!!!!! すきすきすきすきリリィちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!

 

「うわぁぁっ!? 急に叫ばないでよ!?」

「だって!! お姉さま!! リリィちゃんが!! 好き!! 見たでしょ!! かっこいい!! 好きっ!!」

「わかったから! ほらリリィが手を振ってるわよ!」

「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」

「言葉を失ったわ……」

 

 トレーナーは、限界化した己の愛バにかける言葉が出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 サウジアラビアロイヤルカップで優勝したリリィちゃんです。自分で言うのもなんですが、今日のリリィちゃんはちょーかっこよかったと思います!

 最初囲まれた時はどうしようかと思いましたが、私は追い込みもできる事を思い出しました。それでするすると後ろに下がって、力を溜めてドッカンとスパートしました!

 ふふん! リリィちゃんはかしこいので、臨機応変に作戦を変えることができるのです! るるちゃんもいっぱい褒めてくれました! とってもうれしかったです!

 今はウイニングライブを終えて、学園に戻ってきたところです。祝勝会は明日やるそうなので、今はライスちゃんと寮に戻っているところです。

 

「リリィちゃん! 今日のレースほんっとうにかっこよかったよ! ライス、もう言葉も出ないぐらい感動しちゃったよ!」

「えへへ! ありがとうライスちゃん! ライスちゃんは11月の後半に京都ジュニアステークスだっけ?」

「うん! ライスもはじめての重賞レースだから、とっても楽しみなの! ……リリィちゃんに負けないぐらいかっこいいレースをするからね!」

「ライスちゃんのレース、楽しみにしてるね! ……ん?あれって……」

 

 ライスちゃんと歩いていると、向こうから私のお友達がやってきました。

 

「よお! シロ、重賞初勝利おめでとさん!」

「あ! アッシュちゃん! ありがとうございます! レース、見ててくれたんですね!」

「テレビでだけどな。あのアホみてぇな状況から抜け出して、全員ブチ抜いたのは見てて爽快だったぜ」

「ふっふーん♪ もっと褒めてくれていいんですよ!」

 

 あーすごいすごい。と言いながら私の頭をアッシュちゃんがわしゃわしゃしてきます。なんか犬みたいな扱いですね。

 私の髪の毛はちょーサラサラなので、その程度では乱れたりしないのです!

 

「わ……すっげ……まじ? めっちゃ手触りいいんだけど……。うおっ!? そんな目で睨むなよ、ライス……」

「…………」

 

 ライスちゃんが私を後ろから抱きしめてアッシュちゃんの方を見ていますね。ライスちゃんはどんな表情をしていたのでしょうか?

 

「……まあいっか。アッシュさん、ボーガンさんは一緒じゃないの? ボーガンさんならすぐにリリィちゃんの元に来ると思ってたんだけど…」

「お、おう。……ボーはなんかレース見終わったら気絶してたわ」

「……耐えられなかったんだね」

 

 キョウちゃんは私のかっこよさとかわいさに耐えられなかったんですね……。罪深いリリィちゃんです……。

 

「まあボーの事はどうでもいいんだけどよ……。夏合宿で聞き忘れちまったんだが……シロ、お前はこのままマイル路線に進むのか?」

「いいえ、私はライスちゃんと一緒に三冠路線に進みます!」

「……じゃあ、年末のGⅠはホープフルに出るのか?」

「るるちゃんに聞いてないので分かりませんが、多分そうなると思います!」

「……そっか」

 

 それからアッシュちゃんは何か考え込んで、真剣な表情で私を見ました。

 

「……オレはお前と戦いたい、あの日のオレを乗り越えるために。……だからGⅠの朝日杯フューチュリティステークスに誘おうと思ってたんだが、ホープフルが控えてるんじゃしょうがねぇか……」

「……えっと、その……」

 

 私が謝罪しようとしたら、その言葉を遮る様にアッシュちゃんが呟きました。

 

「──でけぇ舞台がよかったが、まあしょうがねぇか。……11月の前半、GⅡ デイリー杯ジュニアステークス。……それに出ろよ、シロ──」

 

 ──灰色の獣(アッシュストーン)は、穢れ無き純白(シロノリリィ)を喰い殺さんとばかりに獰猛な笑みを浮かべた。

 

「──今度はオレが、お前を殺す(倒す)……!」

 



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第10話 次なるレースに向けて!

各話一部のサブタイトルを変更しました。本文の内容は変更しておりません。


「ふむふむなるほど、リリィちゃんに『デイリー杯ジュニアステークスに出ろ』と、言ったと……」

 

 シロノリリィに対し宣戦布告したアッシュストーンは寮の自室へと戻ってきた。

 その『シロノリリィ』のレースをテレビで観て、興奮の余りに気絶したキョウエイボーガンが目を覚ましたので先程の件を話してみた。

 

「……もし、リリィちゃんのトレーナーにダメって言われたらどうする気だ?」

「…………どうすっかなぁ」

「アッシュ……。もし断られたら思いっきり笑ってやるよ☆」

 

 いい笑顔でサムズアップされ少々ブン殴りたくなったが抑える。

 アッシュストーンはその場のノリと勢いで言ったので、断られたらなんて事は考えてなかったのだ。

 ダメでした♡ なんて言われたら恥ずかしさで悶え死ぬ事になるだろう。

 

「ムカつくヤローだぜ……。シロがいない時にお前が『リリィちゃん』って呼んでる事本人にバラすぞ?」

「……は? やめろ! 恥ずかしいだろ! このおたんこにんじん!」

「それは言いすぎじゃね? ……つーか、なんで『リリィちゃん』って普通に呼ばねぇんだ? シロならそう呼ばれても別に気にしないだろ?」

「ワタシのキャラじゃないだろ?ワタシはcool(クール)で知的で頼れるお姉さんポジションだからな!」

「……fool(フール)で痴的の間違いだろ? あとてめぇみたいなチビはお姉さんってガラじゃねぇよ」

「あ??? リリィちゃんとライスよりはおっきいんだぞ!!」

「149センチしか無いだろ?」

「あっ!? おぁっ!? おぉん!!??」

「キレすぎだろ……」

 

 なんとなくお察しだろうが、キョウエイボーガンというウマ娘もシロノリリィに脳を焼かれた被害者(シロノリリィの大ファン)だ。

 アッシュストーンにはすぐに見抜かれてしまったが、本人的にはシロノリリィにバレたくないらしい。友達のファンだと公言するのが恥ずかしいらしいが、ライスシャワーという例があるのでその程度は問題ないし寧ろ喜ばれる。

「私はかわいいので当然です! でもとっても嬉しいです! ありがとうキョウちゃん!」なんて満面の笑みで言う場面が思い浮かぶ。

 彼女がファンになった理由は、ぶっちゃけると一目惚れである。学園内を歩いてるシロノリリィを見た瞬間に恋に落ちてしまったのだ。

 入学式のイチャイチャは見てなくてよかったな? ……いや、普段からあれぐらいイチャイチャしていたな……。

 

「ふぅぅぅ……落ち着け、coolになれワタシ……。アッシュよ、リリィちゃんの事を『リリィ』と呼んでいるのは理由があるのだよ」

「どーせしょうもねぇ理由だろ? 違ったら大樹のウロに埋めてもらっても構わねぇぜ?」

「言ったな? ふふっ……ならば教えてやろう。それは……呼び捨ての方が特別感があって興奮するからだ!」

 

 ドヤ顔でそう告げるキョウエイボーガンに呆れてしまう。

 シロノリリィが関わると途端に賢さGになるのが彼女の欠点だ。

 

「……控えめに言ってキモいわ」

「なんだキサマ……やる気か? ……まあ冗談は置いといて、だ。もしかしてだが……リリィちゃんは三冠路線に行くのか?」

 

 先ほどまでの残念な様子から、急に真面目になったルームメイトに少し驚いた。いつもこうだったら……と少し思ったが、それはそれでムカつくからこのままでいいなと考える。

 

「……よく分かったな? そうだよ。クラシック級に上がったらあいつとは闘う機会がほとんど無くなる。だから、今じゃなきゃダメなんだよ……」

「やはりか。……マイラーなのに中、長距離を走るのを目標にするとは。リリィちゃんは『ミホノブルボン』と同じような道を選ぶのか……」

「……あん? あいつってスプリンターじゃねえのか?」

「彼女と彼女のトレーナー曰く『スプリンターでもスタミナを増やせば中、長距離を走れる』だそうだ。正に脳筋極まれりだな」

「……シロも脳筋って事か?」

「リリィちゃんは別だ」

「……いや、変わんねぇだろ?」

「リリィちゃんはかわいくてかしこい! ミホノブルボンは脳筋ゴリ押し坂路の鬼! こんなにも違うじゃないか!」

「同じじゃねぇか!!」

 

 ギャーギャーと騒ぐ少女達だが、これはこれで楽しいと思っていたりする。その事を言葉に出したら揶揄われそうだからお互いに言わないが、この関係が何となく心地いい。

 

「……ところでアッシュよ」

「あ? んだよ……」

「『お前を殺す(倒す)』は負けフラグだぞ?」

「……マケフラグ? なんだよそれ?」

「ネタが伝わらなかったか……。知りたいなら今度一緒にアニメでも見るか?」

「お前が見てるやつは小難しくてやだ……」

「わがままアッシュちゃんめ……。モルカーなら君も気にいると思うぞ? まあ負けフラグは出てこないがな」

「なんだよ出てこないのかよマケフラグ……。あとアッシュちゃんはやめろ」

「リリィちゃんにはそう呼ばれても訂正しないだろ? ならワタシが呼んでも構わないよな?」

「お前はムカつくからやだ。シロは……やめろって言ったらめっちゃしょんぼりしてたから仕方なくだよ……。なんだよその顔、ニヤニヤすんなよぶん殴るぞ!」

「おおこわいこわい! ぷんぷんアッシュちゃんだぁ!」

「このクソボー!」

 

 その後、なんだかんだで一緒にアニメを見たがモルカーの事は気に入ったらしい。動物が好きと言ってたので、ゴールデンカムイでも見せてやろうと計画するキョウエイボーガンなのであった。

 

 

 

 

 サウジアラビアロイヤルカップの翌日、現在の時刻は丁度お昼。トレーナーは愛バ達の今後の出走レースやトレーニング内容を改めて確認していた。

 

「ライスもリリィもここまで負けなしね。トレーニングも最近ちょっと余裕があるし、少し内容を見直してみようかしら……。ライスは次の京都ジュニアステークスで勝てたら予定通りホープフルに行くとして、リリィは……」

 

 トレーナー室には自分以外に誰もいないので声に出す必要はない事に気づく。最近はいつも2人がいるので、その感覚で喋ってしまっていた。そんな自分に苦笑しつつ、気分を入れ替えるためにコーヒーでも淹れようかと思い席を立った。

 コーヒーを淹れるといってもインスタントだけどね。などと思いつつ電気ケトルに水を入れ、沸騰するのを待つ。味や香りは落ちるが、手間をかけずに飲めるので彼女はインスタントコーヒーを気に入っている。

 ……本当は専用の道具で淹れたコーヒーを飲んでみたいと思っているが、なんとなくハードルが高そうだと思い躊躇している。あと、そういう専門の道具を使いこなすのはかっこいいわよね。と考えてる間にお湯が沸騰したので、カップとインスタントコーヒーを用意して目的のものを完成させた。

 

(そういえばたんぽぽの根っこのコーヒーなんてものもあるんだっけ。どんな味がするのか気になるわね……)

 

 彼女が飲む時はいつもブラックだ。あの苦味と香りが頭をリセットするのに丁度いい。コーヒーをブラックで飲むのは日本人ぐらいらしいが、そんな事は彼女には関係ない、己の好きなように飲むのがいいのだ。

 コーヒーを啜りながら改めてシロノリリィのレース予定表を見る。次にGⅠに出るのはほぼ確定だが、3つの選択肢があるので少し悩む。

 朝日杯フューチュリティーステークスか、阪神ジュベナイルフィリーズか、ホープフルステークスか。

 

(……ホープフルかな。皐月賞と同じレース場で距離も同じだし、今後の事を考えるとここがいいわね)

 

 不安なところは、シロノリリィが今まで挑んだことのない2000mの中距離だという点だ。彼女は最長で1800mのマイルまでしか挑んだことが無い。だが、これからの挑戦──クラシック三冠を狙うには最低でも2000m、最長だと3000mに挑む事になる。ここを乗り越えねば、三冠など到底不可能だ。

 

(そうすると、リリィとライスの直接対決になるのか。……まぁいいか。あの子達も戦いたがってたし丁度いいわね)

 

 通常ならば同じチームのウマ娘の出走レースが被る事は避けた方が良いとされている。当然の事だが、同じレースを走れば必ずどちらかが負けてしまうからだ。ウマ娘とトレーナー両方の実績的にも損としか言いようがない。

 だが、走る本人には関係ないのだ。ライバルだからこそ戦わねばならない、理屈や感情などでは抑えきれぬのだ。時には実績などよりも大事なこともある。

 トレーナーにできるのは、そんな彼女達を全力で支える事だ。一生に一度の青春(トゥインクル・シリーズ)を、最高の思い出にする為に今日も彼女は全力を尽くす。

 そんな事を考えてると、トレーナー室に誰かが近づいてくる気配を感じた。今の時間に誰かが訪ねてくる予定は無かったと思うが、と思考していると気配から己の愛バ達だと気づく。

 はて? まだ祝勝会まで時間はあるが……何かあったのだろうか? そう思っているとノックと共に2人が部屋に入り、開口一番にこう言った。

 

「るるちゃん! デイリー杯ジュニアステークスに出たいです!」

 

 いきなりなんぞ? と思いつつとりあえず話を聞いてみることにした。

 

 

 

 

 

「……ほ〜ん、アッシュストーンからのご指名ねぇ。……もしもダメって言ったらどうする?」

「……とっても困っちゃいます」

 

 レースの予定を思い出し、スケジュール的にも余裕があったのでダメという気は無かったのだが、ちょっとした悪戯心からもしもの話をしてみた。

 すると、シロノリリィは耳を力なく垂れさせて、しょんぼりした顔でこちらを見つめ出したので、途端に罪悪感で胸が締め付けられた。自業自得である。

 

「じ、冗談だからそんな顔しないで?ね? ……スケジュール的には問題ないわよ、うん」

「本当ですか!? ありがとうるるちゃん!」

 

 しょんぼリリィからパァッ! と擬音が聞こえそうな笑顔になったのを見て安心する。やはり愛バには笑顔でいてほしい。……ライスシャワーがジト目でこちらを見ているが、恐らく気のせいであろう。

 

「……あんまりリリィちゃんの事揶揄わないでね? お姉さま」

「はい、誠に申し訳ございませんでした……」

「またやったら、ライスがお姉さまの事可愛がってあげるから」

「なにそれめちゃめちゃ興味あるんですけど……」

「なにそれなにそれ! どうやるのライスちゃん!」

「……リリィちゃんが見たいなら、見せてあげるね」

 

 シロノリリィが瞳をきらきらさせて無邪気に聞くと、ライスシャワーはトレーナーを椅子から立たせて、ソファーの近くまで来るように指示した。

 

「お姉さまドキドキしちゃう……」

「じゃあ、お仕置きしてあげるね、お姉さま♪」

 

 そう言うと、ライスシャワーはトレーナーに近づき太ももの間に足を入れ、腰に手を回し軽く力を入れて、ソファーの上へトレーナーを覆い被さる様に押し倒した。

 その姿勢のまま人差し指でトレーナーの唇に触れ、顔を近付ける。

 トレーナーの心臓はドクンドクンとうるさいぐらい鳴っており、ライスシャワーが微笑むと更にその音を大きくさせた。

 唇から手を離し、そのままするりと頬を撫でると、彼女はビクンッ! と反応しそれを見たライスシャワーはくすりと小さく笑った。

 

「……どう? お姉さま」

「……ふひょっ……」

「……ねぇ、抵抗しないの、お姉さま?」

「もっと……もっとしてください……!」

「年下の、しかも教え子にされるがままなんて……イケナイ人だね、お姉さま♪」

「あびっ! うぴっ! うぃっ!!」

「あっ……ちょっと心音凄い事になってる……。はい、おしまいだよ♪」

「ふわわわっ……」

 

 ライスシャワーがパッと手を離し、トレーナーから離れた。

 トレーナーは恍惚とした顔で痙攣しており、とても無事とは言えなかった。それを見て満足そうに微笑んだ後、くるりとシロノリリィの方を向き、楽しそうな表情で彼女の前まで来てにっこりと笑った。

 シロノリリィには刺激が強すぎたのか、顔を真っ赤に染めて惚けていた。

 

「どう? リリィちゃん」

「…………あっ。えっと……わ、私にはまだまだ早かったかもしれませんね……!」

「ふふっ♪ 大丈夫だよリリィちゃん。リリィちゃんにはやらないから安心してね?」

それはちょっと残念……じゃなくて! それなら安心ですね!」

「……だってね、リリィちゃん。……リリィちゃんにやるなら冗談じゃなくて……」

 

 そう言うとライスシャワーはシロノリリィへと近づき、そのまま彼女を抱き寄せて耳元で囁いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本気になっちゃうから♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ぴゃぅ……」

 

 

 

 

 

 

 シロノリリィのかわいらしい悲鳴に満足したのか、くすくすと笑って彼女の頬を優しく撫でる。

 少しむっとしたが、すぐに心地よさからへにゃっとした笑顔になりそのままポスッとライスシャワーの胸元に頭を預け、ウマ耳を揺らして撫でる様に催促する。

 シロノリリィを撫でながら髪とウマ耳の柔らかい感触を楽しんでいると、瀕死の状態から回復したトレーナーがこちらに気づき「ま〜たやってるよ……」とでも言いたげな表情で見ていたので、少々名残惜しいが撫でるのをやめてそちらへと近づいた。

 

「……いつも通りとっても仲良しね。そうそう、あなた達に伝えておくことがあったわ。本当は後で言おうと思ってたんだけど、まさかこの時間に来るなんて思ってなかったから、まぁ丁度いいわね」

「何かあったの? お姉さま」

「うん。レースの予定なんだけどね、ライスは京都ジュニアステークスに勝利したら次にホープフルステークスに。リリィも同じくホープフルステークスに出走する予定だったんだけど、アッシュストーンからのご指名が来たでしょ?だからデイリー杯ジュニアステークスに出走して、それからホープフルステークスって流れにするわ」

「おぉ〜! 遂にGⅠに出るんですね! リリィちゃんワクワクです!」

「わぁっ! ライスもGⅠだ、頑張らなくっちゃ! ……それにリリィちゃん!」

「「一緒のレース! だよ!」」

「……わくわくするなぁっ!京都ジュニアステークスは絶対に勝たなくっちゃいけないね!」

「私もいっぱい応援するね! ライスちゃん!」

「はいはい。盛り上がってるところ悪いけど、リリィはアッシュストーンの事も忘れずにね?」

「もっちろんです! 別の事に気を取られて勝てるほどアッシュちゃんは甘くないので! だからまずは全力でアッシュちゃんに挑みます!」

「ならばよろしい! ……あっ、それと最近トレーニングに余裕が出てきたでしょ? だから少しトレーニングのレベルを上げてくから覚悟しててね?」

「了解です!」

「うん! わかったよお姉さま!」

 

 元気な返事をする愛バ達を見つつ、対戦相手であるアッシュストーンの事を思い浮かべる。

 デビュー戦では危なげなく勝てた相手だが、夏合宿の並走で彼女は恐ろしい程の早さで成長を遂げた。

 最初はシロノリリィが9、アッシュストーンが1の割合で勝っていたのだ。だが、最後の週にはお互いの勝率が五分五分になっていた。

 あれから時間も経っている。ほぼ確実にあの頃よりも強くなっているだろうと確信する。それに、彼女もGⅢ小倉ジュニアステークスに勝利した重賞ウマ娘なのだ。油断など絶対にできない。

 きっと激しい戦いになるだろう。だが、勝たねばならん。いや、勝つのだ。

 

(時間は今から数えて1ヶ月も無いか……。アッシュストーンは間違いなく天才よ。……でもね、うちの子達だって負けてないんだから!)

 

 麗しの愛バを見ながら、トレーナーは心の中でむんっ! 気合を入れた。すると、ライスシャワーが可愛らしくこちらを見上げながら声をかけてきた。

 

「ねぇお姉さま。お姉さまはお昼ご飯は食べた? 食べてないなら、ライス達と一緒にどうかな?」

「ん? あ〜……まだ食べてないわね。それじゃあご一緒させて貰おうかしら」

「わぁっ! じゃあ一緒に行きましょう! るるちゃん!」

「やった! それじゃあ行こっか、お姉さま!」

 

 少し話し込んでしまったが、自分と愛バ達の時間には余裕があったので誘いに乗った。にこにこと嬉しそうにする2人に手を取られて食堂へと歩き出した。

 

「ふへへっ……! 2人のおててがすべすべで幸せだぜぇ……!」

「……お姉さまって、気絶しそうな時程そうやって誤魔化すよね」

「ほへ〜。……そうなんですか、るるちゃん?」

「ちょっ!? ライス、バラさないでよ!? いや、待って……いつから気づいてたの?」

「スカウトされて1週間ぐらいでわかったよ? お姉さま、わかりやすいもん」

「おぉ〜! ライスちゃん凄い! 私は全然わからなかったよ!」

「やだ、お姉さま恥ずかしい……」

「ほら、落ち込んでないで……。行くよ、お姉さま」

「よよよ〜……」

 

 この後みんなで食堂へ行ったが、調子に乗ったトレーナーが2人に「あ〜んして♡」と言い、悪ノリしたライスシャワーと普通ににこにこしながらやってくれたシロノリリィのあ〜ん♡ でまた死んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「おう、トレーナー。デイリー杯ジュニアステークスの件だが、シロのやつからOKが出たぜ?」

「そうか、わかったよアッシュ。……だけどねアッシュ、そういうのは俺にちゃんと許可を取ってからやって欲しかったな……」

「……悪かったよ」

「反省してるならいいよ。それに、俺も彼女にはリベンジしたかったからね。愛バの願いを叶えるのがトレーナーの仕事だ」

「愛バとか言うなよキモトレーナー……」

 

 口が悪いが、スカウトした当時よりはマシになっているなぁと思い、出会ったばかりの頃の様子を思い出した。

 

『なんでお前をトレーナーに選んだのかだって?……ハッ!チョロそうだからに決まってんだろ? ベテランとかエリート様は小煩くて鬱陶しいからな! 精々オレの為にこき使われてくれよ?』

 

 ……うん、だいぶ酷かった。シロノリリィに負ける前はいつもこんな感じなので、トレーナーの毛根に着実にダメージを与えていたのだ。

 そう考えると、言い方は酷いが負けて良かったと言える。あそこで負けるのが丁度よかったのかもしれない。自分を見つめ直すいい機会だったのだろう。

 もしもシロノリリィに負けずにこのまま勝ち続けていたら……そんなもしもの事を考える。きっと、彼女は勝ち続けるだろう。でも、いつの日か己よりも強大な敵に負けて、ポッキリと心が折れてしまうだろう。敗北を知らない者ほど、折れる時は簡単に折れるのだ。

 だが、今の彼女は違う。敗北を知り、それを糧に強くなったのだ。だから次は勝つ。シロノリリィに、勝つのだ。

 それに、シロノリリィと出会ってからの彼女はよく笑う様になった。他人を嘲笑するのではなく、年相応の可愛らしい─本人に言ったら蹴られるが─笑顔を見せる様になった。

 キョウエイボーガンやライスシャワーと言った友達もできた。他にも色々な人達と関わりを持つ様になった。そんな彼女の成長をトレーナーは心から嬉しく思っている。

 

「……んだよその顔。なにニヤニヤしてんだよ。……キメェ」

「いや、なに。アッシュも成長したなぁって思ってね」

「……セクハラを受けてるってたづなさんに相談するわ」

「冗談でもやめてくれ!? 本当にっ! マジでっ!」

 

 冗談とは言え、あの人にそんな事を言われたら原型を留めておけるか怪しいと恐怖で震える。アッシュストーンはそんなトレーナーを見てケラケラと笑った。本当にいい笑顔だ。と思っていると、アッシュストーンは真剣な表情でトレーナーと目を合わせた。

 

「……あと1ヶ月。頼むぜ、トレーナー。……オレはシロに勝ちてぇんだ」

「それは俺も同じだよ。……勝つぞ、絶対に!」

「ハッ! ……期待しといてやるよ? トレーナー!」

「任せろ! 俺の愛バが最強だって証明してやるさ!」

「……愛バはやめろ。……やっぱたづなさんに相談するわ」

「ちょっ!? 待ってくれアッシュ!! ストップ、ストォップ!! ……アッシュゥ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後1ヶ月。デイリー杯ジュニアステークスで、シロノリリィは己の限界という壁を知る。




namcoのゲームセンターとのコラボ商品であるライスちゃんのフィギュアをお迎えしてきました。通常版と笑顔版の両方です。
私がクレーンゲーム下手くそすぎて、店員さんが2度ほど位置を変更してくれました。コツを掴んだので2人目のライスちゃんは割とすぐに取れました。
とっても可愛いです。


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第11話 デイリー杯ジュニアステークス! 限界なんてぶっ壊します!

 サウジアラビアロイヤルカップの祝勝会を終え、疲労を回復させたシロノリリィはトレーナーとライスシャワーと共にアッシュストーンとの対決に向けての対策会議を開始した。

 

「じゃあ早速だけどデイリー杯ジュニアステークスの対策兼トレーニングの方針を発表するわ。まずこのレースの有力ウマ娘だけど、これはアッシュストーンとリリィ、あなたよ。他は無視していいわ。それを踏まえた作戦なんだけど……まず、今回のレースは先行策で行くわ。アッシュストーンよりも前を維持しつつ、早めに仕掛けて距離の優位を保ったままコーナーを回り、その勢いのまま最終直線でぶっちぎる! こんな感じね。そして、アッシュストーンに対するマークは一切しないわ」

「アッシュちゃん対策なのにマークしなくてもいいんですか?」

「そう、そこが肝心なの。いい? アッシュストーンはマイルも走れるスプリンターよ。今までの彼女が走って来たレースはメイクデビューを除くと全てが短距離なの。そして練習メニューはスピードとパワーに重点を置いたものとなっているわ。ここがリリィとの大きな違いよ」

 

 トレーナーはノートパソコンに纏めたデータを2人に見せる。そこにはアッシュストーンのこれまでのトレーニングデータやレースの結果などがわかりやすく纏めてあった。

 4戦3勝。勝ったレースは未勝利戦、GⅢ小倉ジュニアステークス、もみじステークスだ。敗北したレースはシロノリリィと戦ったメイクデビューのみとなっている。

 スプリンター故に短距離をメインで走っているがマイルも問題なく走れる。今回のレースは1600mのマイルなので経験で言えばシロノリリィの有利だが、アッシュストーンならば普通に対応してくるだろう。

 

「リリィは今はマイルをメインに走っているわね? そして将来的に中、長距離を走る為にスタミナに重点を置いて、サブにスピードを鍛えている。この事から恐らく最大スピードは現時点だとアッシュストーンの方が上だと考えられるの。あの娘はスプリンターだしね。で、だからこそさっき言った作戦に繋がるのよ」

「……スタミナの有利を活かして距離を稼いで、スピードに劣る不利をなんとかするんだね、お姉さま。マークをしないのは少しでも前に出るためだね」

「そう、その通り。さすがよライス。その事を踏まえてこれからデイリー杯ジュニアステークスまでのリリィのトレーニングはスピードトレーニングをメインにやっていくわ。アッシュストーンに負けないぐらいに仕上げてみせるから覚悟しててね!」

「わかりました! よーし、リリィちゃん頑張ります!」

「ライスもお手伝いするね、リリィちゃん!」

 

 打倒アッシュストーンの為に3人は気合を入れた。次のレースはこれまでの戦いの中で最も厳しいレースになるであろう。恐らくこれがシロノリリィにとっての最初の壁になる。そんな予感をトレーナーは感じていた。

 そして時間はあっという間に過ぎレースの前日となった。現在はデイリー杯ジュニアステークスの開催される地である京都のホテルに3人で宿泊している。

 やれるだけのことはやった。後は己を信じて進むのみである。

 

 

 

 

 

 決戦前夜。2人の少女は京都の夜空を眺めながらゆったりとした歩みでホテル周辺を散歩していた。楽しそうに歩くその姿は可憐な容姿も相まって、とても明日レースに出る者には見えない。

 当然のように繋がれた手はお互いの指を絡め繋ぐ、所謂恋人繋ぎと呼ばれるものだった。

 夜空よりも輝くその金色の瞳は煌めく星々の光を吸い込み、その美しさをより一層際立たせていた。

 純白の髪が月の光をきらきらと反射しシロノリリィを怪しいほど美麗に飾っている。ライスシャワーは見惚れていた。幻想の中から抜け出してきたかの様な美しい白い少女に。

 

「……リリィちゃんは、明日のレース……どう?」

 

 曖昧な質問をしてしまった。少し困らせてしまうかもしれないと思い訂正しようとするが、シロノリリィは気にする事なく言葉を紡ぐ。

 

「……? ……明日のレースはね、ちょっぴり怖いよ。でも楽しみなの」

 

 穏やかに微笑みながらシロノリリィは答える。彼女の笑顔を見るだけで、心が熱を帯びる。

 

「……メイクデビューも次もその次も。どのレースもみんな強かった。……でも、本当の全力──『命懸け』のレースじゃなかったの。……明日はきっと、そうなる」

 

「……リリィちゃんの最初の全力のレースがアッシュさんとだなんて……ずるいなぁ。……はじめてはライスが貰いたかったのに」

 

 それに対してシロノリリィは困った様に小さく笑った。釣られてライスシャワーもくすりと笑みを漏らす。

 

「……ねぇ、ライスちゃん。見ててね、私が勝つところ」

 

「……ライスがリリィちゃんから目を離すわけないよ?」

 

 ライスシャワーの紫水晶の様な瞳が真っ直ぐにシロノリリィを捉えた。嘘偽りのない曇りなき本心に顔が熱くなる。

 

「…………あんまりそういう事言われると、ちょっと……その……顔、赤くなっちゃうから……」

 

「……やめないからね?」

 

「…………」

 

 嬉しさと恥ずかしさから、シロノリリィは頬を赤く染め顔を横に逸らした。そんな愛おしい少女の頬に、ライスシャワーは宝物に触れる様に優しく手を添えて振り向かせた。2人が見つめ合い、白い少女は添えられた手に自分の手を重ねて瞼を閉じ温もりに浸った。

 ──どれぐらい時間が経っただろうか。この時間を永遠に……そう思うが明日に響いてはいけないと思いそっと手を離した。名残惜しそうに離れていく手を少し寂しそうな表情でシロノリリィは眺めていた。

 

「……戻ろっか」

 

「……うん」

 

 

 

 

 

 

 

 月光が2人の少女を照らす。その光は祝福か、それとも……。

 少女達は眠る。互いを抱きしめ温もりを分かち合う様に。

 夜が明けて暖かな太陽が京都の街を照らす。戦いが、始まる。

 

 

 

 

 

 

 レース当日、アッシュストーンは控室で静かに目を閉じていた。だが、その静寂とは裏腹に心の中は熱いモノに満たされていた。まるで噴火寸前の火山の様にぐつぐつと。

 コンコンとノックの音が鳴り、暫くの沈黙の後それを肯定と見做したトレーナーが一言確認してから部屋へと入ってきた。

 

「……気分はどうだい? アッシュ」

 

「……不思議なぐらい落ち着いてるよ。……オレも驚いてる」

 

「今日の君は、今までで一番の仕上がりだ。……うん、やっぱり君が最高だ」

 

「……いつもなら鼻で笑ってやるが、まあ今日は勘弁してやるよ。……トレーナー……」

 

「……なんだい?」

 

「……ありがとな」

 

「……アッシュ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……勝ってくる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 穏やかな微笑みと共にアッシュストーンは立ち上がりゆっくりと、だが力強い歩みでターフへと向かった。

 

「……君の勝利を、信じているよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 シロノリリィとトレーナーは共に控室にいた。今この部屋には2人だけがいる。ライスシャワーは会場で最も応援しやすい場所で待機している。

 

「るるちゃん、そこ座って」

 

 シロノリリィが椅子に座る様に指示し、トレーナーは素直にそれに従った。どうしたのだろうと思いシロノリリィの方を見ると、座ったのを確認してからトレーナーの上にちょこんと座った。

 

「……どうしたの、リリィ?」

 

「……ライスちゃんにはよくやってたけど、るるちゃんにはやった事無かったなぁって思ったので」

 

「あらあら、確かにそうね。……それで、ご感想は?」

 

「んー……ライスちゃんの方が好き」

 

「ありゃりゃ……お姉さま振られちゃったわ。……リリィ」

 

「……なぁに?」

 

「……あなたを信じてる」

 

「……えへへ」

 

 白く美しい絹の様な髪を優しく撫でる。気持ちよさそうに顔を緩めてそれを受け入れていたが、しばらくするとピョンっとトレーナーの上から降りて振り返ってにっこりと笑った。

 

「……いってきます!」

 

「……いってらっしゃい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「リリィもついにGⅡに挑戦かぁ……。時間が経つのは早いね……」

「本当にそう思う……。私のレースじゃないのにドキドキしちゃう……」

 

 シロノリリィの両親は娘のレースを応援する為に今日もレース場を訪れていた。2人はメイクデビューから欠かさずに全てのレースに駆けつけこうして応援している。

 仕事? そんな事はどうでもいい。愛する娘の為だ、有給を取るぐらいどうって事はない。

 

「私の現役時代の戦績、覚えてる?」

「……ん? いや、あんまり覚えてないね。……未勝利戦に1回勝った事だけは覚えているよ」

「……まあ、ずっと負けっぱなしだったからしょうがないけど。地方のレースで34戦1勝。あとは入着が1回でそれも最後の引退レースでギリギリの5着。……こんな戦績だったけどね、走るのはすっごく楽しかったの。もっと勝ちたかったけどね……」

「走っている時の君の笑顔は、本当に楽しそうで……すごく綺麗だったよ。……だから、君を好きになったんだ」

「ちょっ!? いきなりそんな事言うのダメっ! 禁止っ! ……その話は置いといて……。リリィちゃんがこんなにも強くなっちゃうなんて、私、全然思わなかったなぁ……。嬉しいけど、ちょっと寂しいかも……」

「確かにね。……子どもの成長は早いなんていうけど、リリィを見てると余計にそう感じるよ」

 

 2人が話しているとレース場に今日出走するウマ娘達が現れた。その中にシロノリリィの姿もある。今日の彼女はいつものにこにことした可憐な少女と言えるような表情はしていない。とても真剣な、正に戦士の顔をしていた。

 

「……遠いなぁ。……私達の声、届くのかなぁ」

「……届くよ、きっとね。……魂にまで届かせるよ」

「ふふっ。……そうだね! よっし、気合い入れて応援しなきゃ!」

「……リリィ、がんばって」

「……がんばれ、リリィちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デイリー杯ジュニアステークスが始まる。今回のレースの出走者数は10人。誰もがこの地に立つにふさわしい実力を持つ選ばれたウマ娘達だ。

 だが、たった2人のウマ娘に怯えていた。アッシュストーンとシロノリリィの発する圧に。

 2人は言葉を交わさない。ほんの一瞬だけお互いを見た後、シロノリリィは薄く微笑みそれに応えるようにアッシュストーンも小さく笑った。

 穏やかそうに見えるその場でアッシュストーンからは刺すような刺々しい殺気が、シロノリリィからは穏やかな闘志が溢れ出した。

 異様な雰囲気の中で少女達は鉄の檻へと入っていく。長い様な短い様な、そんな沈黙の中──ガコンッ、という音と共に鉄の檻から一斉にウマ娘達が駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レース序盤。まず逃げウマの2人がハナを奪おうと激しく競り合った所から始まった。シロノリリィは今までのレースの中で一番と言えるスタートを切り、当初の目論見通り先頭から3番目の位置に着いた。まずはアッシュストーンの気配を探りこの後の展開を思考する。

 

(……アッシュちゃんは……先頭から数えて7……いや、8番目ですね。じっくりと脚を溜める気ですね。……それなら私は今のうちに前へと行かせてもらいます……!)

 

 

 先頭を走る2人にジリジリと詰め寄りそのペースを狂わせる。シロノリリィに詰められることを嫌ったのか、先程よりもペースを上げ始めた。

 

(まだ……もっと……!)

 

 だが、更に距離を詰めるシロノリリィの圧に1人が掛かってしまった。苦悶の表情を浮かべながら速度を上げ、レースはハイペースな展開となる。

 先頭から1人が脱落し、掛かるウマ娘とそれを利用するシロノリリィの2人で後方と5バ身の差が開いた。

 ハイペースな展開だが、先頭のウマ娘の真後ろにピタリとつきスリップストリームを利用して体力を温存する。上り坂が近づいて来たところでシロノリリィは後方との差を更に開かせる為に仕掛け始めた。

 先頭のウマ娘を抜かし、徐々に速度を上げながら上り坂を進む。彼女にとって坂など大した問題ではない。圧倒的なパワーを持つ彼女からしたら、寧ろ後ろのウマ娘達を妨害する舞台装置でしかない。

 芝を抉り、その足跡を刻みながら加速する。下り坂からコーナーへと入り、遠心力で振り回されそうになる身体を無理やり筋肉で押さえつけながら更に加速する。

 蠢く筋肉が徐々に力を引き出し、コーナーの終わりと共にその力が最大限に達した。爆発的な力の奔流をそのままターフへと叩きつけようとしたその瞬間──ターフを駆ける全てのウマ娘に、尋常ならざる殺気が襲い掛かった。

 

(────っ!)

 

 シロノリリィ以外のウマ娘はその殺気に萎縮してしまった。純粋で暴力的なその殺意に。今まで抑え込まれていた感情、怒りを、悔しさを、全てを乗せてアッシュストーンの末脚が爆発した。

 

(────来る……!!)

 

 それに呼応する様にシロノリリィも力を解放した。2つの轟音と共に白い少女と灰色の獣がターフに軌跡を描きながら風となる。

 シロノリリィは前を見る。己の勝利を信じてひたすらに。

 シロノリリィは俯かない。己の前にしか道は無い。──だが、徐々に少しずつ距離は縮まり、そして遂に────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────アッシュストーンが、シロノリリィを追い抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シロノリリィは、諦めない──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、何の前触れもなくいつの間にか……シロノリリィは真っ白な空間に立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここは?」

 

 その空間は真っ白で他には何も見当たらない。なんとなく直感に従って歩いていると、そこにはこの空間と同じ真っ白な壁があった。

 その壁を見上げると天辺は見えず、横を見れば延々と真っ白な壁だけがあった。

 ──きっとこれは、私が超えなければいけない壁だ(今の私の限界だ)

 シロノリリィは迷わずその壁を──全力でぶん殴った。

 ドゴン! という轟音がするが、壁には傷一つ出来ない。

 深く呼吸し身体の隅々まで酸素を、力を染み込ませ──その力を爆発させ、乱打を開始した。

 殴る、殴る、殴る、殴る。

 殴って、殴って、殴って殴る。

 ぶん殴って、殴って、殴って殴って──

 どれだけ殴ろうとも壁はびくともしない。だが、その拳を止める事はしない。

 シロノリリィは知っている。何かを成す為には、ひたすらに歩み続ける事でしか結果は得られないのだと。途方もなく途轍もない道のりだとしても、結果が出るまで続けなければいけないのだと。

 どれ程殴り続けただろうか。延々と続く轟音の中、変わらぬ景色の中でほんの僅かに音がした。それは壁の壊れる音でも拳が壊れる音でもない。──あたたかくて、優しい音が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『─…─ぇ─!…─ィ──…─!』

 

 ──シロノリリィは知っている。このあたたかい声を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いっけぇぇ!! リリィちゃぁぁん!!!』

 

「──ママ……」

 

 

 

 

 

 

 

『いけっ!! リリィ!!!!』

 

「──パパ……」

 

 

 

 

 

 

『ぶちかませぇ!! リリィ!!!!』

 

「──るるちゃん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『リリィちゃぁぁん!! がんばれぇぇ!!!』

 

「────ライスちゃん……!」

 

 

 シロノリリィは、知っている。みんながいる。──愛されていると、知っている。

 

 

 ──心に火が灯る。あたたかくて、優しい光が。

 満たされる。この熱が、己の力になる。

 なんとなく今ならわかる。もうこんな壁なんて何でもない。

 再び壁の前に立ち、その拳に光を宿らせる。

 そして──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リリィちゃん…………パァンチッ!!」

 

 シロノリリィの力が、白い壁をぶっ壊した(己の限界を破壊した)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アッシュストーンがシロノリリィを交わした! そのままジリジリと距離が離され……』

 

 

 

 

 

『いや! 来た! シロノリリィが再び来た! 2人が並ぶ! どちらも譲らない! どっちだ!? どちらが先頭に立つ!!』

 

 

 

 

 

『そのまま2人が進む!! ゴールまであと僅か! 早い早い! 後ろの娘達は間に合わない! 先頭を進むのは2人だけ! そしてその勢いのままゴールイン!! 2人がほぼ同時にゴール板を駆け抜けました!! 勝ったのはどっちだ!? ──』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『シロノリリィだ!! 勝ったのはシロノリリィ!──』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全ての力を使い果たし、シロノリリィはターフに大の字で仰向けになった。汗は滝の様に流れ、息は乱れ、言葉を発することすらできない。

 だが、その表情は太陽よりも眩しい……煌めく様な笑顔だった。

 

「だあぁぁぁぁぁぁ!!!!! クッソォ!!! また負けたぁぁぁぁぁ!!!」

 

 悔しそうな言葉と裏腹に、アッシュストーンは満面の笑顔だった。シロノリリィと同じ様に滝の様な汗を流し、肩で息をしながら彼女の隣にドスっと座り込んだ。

 

「絶対勝ったって思ったのにさぁ……なんだよあの再加速! 訳わかんねぇ!」

 

 楽しそうに笑いながらシロノリリィの髪をくしゃくしゃに撫で回す。まだ息が整わない少女はにこにこしながらそれを受け入れてた。

 

「……あん? もしかして……喋れないぐらい力を使い果たしたのか?」

 

 何でわかったの? とでも言いたげに目をパチクリさせた後、ぶんぶんと頭を縦に振った。その様子が可笑しかったのか、アッシュストーンは大声で笑った。

 

「そこまでして貰えるなんてよぉ……負けたのに、すっげぇ嬉しいわ。ありがとな、シロ」

 

 ようやく息が整って来たシロノリリィがにこにこしながらアッシュストーンに語りかけた。

 

「……声が聞こえたの。私の一番の速さで、もうこれ以上速くならないって……それでも走り続けていた時に、声が聞こえたの。

──ママの声が、パパの声が、るるちゃんの声が……ライスちゃんの声が!みんなの声が聞こえたの! そしたらね! あれだけ進まなかった脚が、どんどん速くなって……それでアッシュちゃんに追いつけたの!」

 

 キラキラとした瞳に、声に、アッシュストーンは釘付けになる。

 

「みんながいたから……アッシュちゃんがいたから、私は限界を超えれたの! ……だから、ありがとう、アッシュちゃん! 私と走ってくれて、本当にありがとう!」

 

「……それはこっちのセリフだよ。お前と走れて、本当によかった……」

 

 アッシュストーンはスッと立ち上がり、シロノリリィに手を伸ばす。

 

「……立てるか?」

 

「むり!」

 

 あまりの即答にアッシュストーンは腹を抱えて笑った。ひとしきり笑った後、シロノリリィに近づきそのまま彼女を──お姫様抱っこの形で抱え上げた。

 

「おぉ! アッシュちゃん力持ち!」

 

「お前が軽……いや、結構重いわ。何が詰まってんだよこの身体……」

 

「筋肉です! リリィちゃんパワーなのですよ!」

 

「そうかいそうかい……なぁ、シロ……」

 

「なぁに、アッシュちゃん?」

 

「……走るのって、楽しいな」

 

「……うん!」

 

 ターフを大歓声が包み込む。それに応えるようにシロノリリィは満面の笑みで観客席に手を振った。

 戦いは終わった。激闘を制し限界を超え、シロノリリィは勝利した。この経験は彼女を更に強くするだろう。

 二人の激闘を讃えるように風が吹いた。その風は二人の少女の笑顔のように爽やかな風だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、限界を超えて全ての力を使い果たしたシロノリリィは全身を覆う酷い筋肉痛によってまともに動くことができなくなっていた。

 

「あばばばばばばば!」

 

「……動けないリリィちゃんを、今ならずっとお世話できる……」

 

「……ライス、目が笑ってないわよ……」



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【かわいいかしこい】シロノリリィを応援するスレ【リリィちゃん】

掲示板回です。


1:名無しのウマ娘ファン

今日はリリィちゃんがデイリー杯ジュニアステークスに出走します

みんなで応援しよう!

 

2:名無しのウマ娘ファン

もちろんさ!

 

3:名無しのウマ娘ファン

いいですとも!

 

4:名無しのウマ娘ファン

注目のウマ娘ちゃんはどうっすか?

 

5:名無しのウマ娘ファン

>>4

かわいいリリィちゃん!

 

6:名無しのウマ娘ファン

>>4

かしこいリリィちゃん!

 

7:名無しのウマ娘ファン

>>4

アッシュストーンじゃろ

最近調子いいしメイクデビューからの因縁もあるだろうしな

 

8:名無しのウマ娘ファン

噂によるとアッシュストーンからリリィちゃんに挑戦状を叩きつけたらしいぞ

 

9:名無しのウマ娘ファン

青春してるな

俺には無かったな

 

10:名無しのウマ娘ファン

悲しいこと言うなよ

 

11:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんのスレがあると聞いて来ました!

…何ですかこのスレタイは?

 

12:名無しのウマ娘ファン

何って…普通だろ?

 

13:名無しのウマ娘ファン

いいスレタイだよな

 

14:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんはかわいいですね

 

15:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんすき

娘にしたい

 

16:名無しのウマ娘ファン

>>15

なんでそんな酷い事言えるの?

 

17:名無しのウマ娘ファン

>>15

拷問より酷えや…

 

18:名無しのウマ娘ファン

>>15

人の心とか無いんか?

 

19:名無しのウマ娘ファン

>>15

あ…悪魔たん…

 

20:名無しのウマ娘ファン

俺そんな酷い事言ったかなぁ!?

 

21:名無しのウマ娘ファン

自覚の無い悪ほど恐ろしいものはない…

 

22:名無しのウマ娘ファン

自首しろ

 

23:名無しのウマ娘ファン

お前の娘になるって事はよぉ…リリィちゃんが大好きなママとパパから離れ離れになるって事なんだよなぁ…

こんな横暴許される訳ねぇよなぁ!

 

24:名無しのウマ娘ファン

ちが…!俺…そんなつもりじゃ…!

 

25:名無しのウマ娘ファン

などと言っております

同士スターリン

 

26:名無しのウマ娘ファン

なるほど

シベリア送りだ

 

27:名無しのウマ娘ファン

オラ!反省しろ!

 

28:名無しのウマ娘ファン

(僕も娘にしたいって思ってたなんて言えない雰囲気)

 

29:名無しのウマ娘ファン

お、俺が悪いってのか…?俺は…俺は悪くねえぞ

だって師匠が言ったんだ…そうだ、師匠がやれって!

こんなことになるなんて知らなかった!誰も教えてくんなかっただろっ!

俺は悪くねぇっ!俺は悪くねぇっ!

 

30:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんかわいいに戻ります

ここにいるとかしこくない発言に苛々させられる

 

31:名無しのウマ娘ファン

>>29…あんまり、幻滅させないでくれ…

 

32:名無しのウマ娘ファン

少しはいいところもあるって思ってたのに…

いや、やっぱいいところなんて無かったわ

 

33:名無しのウマ娘ファン

ところで今日の朝食はパスタにしようと思うんだ

 

34:名無しのウマ娘ファン

僕はホットサンド!

 

35:名無しのウマ娘ファン

>>28

(わかるマン)

 

36:名無しのウマ娘ファン

みんな朝食何食べた?

 

37:名無しのウマ娘ファン

>>36

ご飯とお味噌汁と納豆と卵焼き

 

38:名無しのウマ娘ファン

>>36

ベーコンエッグ、ワカメのみそ汁、さんまの塩焼き、山盛りのキャベツ、ごはん

 

39:名無しのウマ娘ファン

>>38

ご機嫌な朝食じゃん

 

40:名無しのウマ娘ファン

地上最強の血を引いてそう

 

───────────

─────────

──────

123:名無しのウマ娘ファン

そういえば今日のレースはみんな現地なの?

 

124:名無しのウマ娘ファン

>>123

俺は現地だよ

地元で助かるわ

 

125:名無しのウマ娘ファン

>>123

仕事です(憤怒)

 

126:名無しのウマ娘ファン

>>123

家で優雅に観るっす

これぞニートの特権よ

 

127:リュウグウノツカイ

>>123

現地

 

128:矢

>>123

現地に行きたかったが残念ながら寮で応援だ

 

129:名無しのウマ娘ファン

ネームドが二体…来るぞユウマ!

 

130:名無しのウマ娘ファン

誰!?誰なの!?

 

131:矢

名乗るほどのものではない

ワタシはただのリリィちゃんファンだ

 

132:リュウグウノツカイ

私は私

何者でもない

 

133:名無しのウマ娘ファン

なんだただのファンか…

 

134:名無しのウマ娘ファン

なら安心だな

 

135:名無しのウマ娘ファン

匿名掲示板の利点を捨てるとは…

まあいいか!!よろしくなぁ!

 

136:リュウグウノツカイ

名前書いちゃダメなの?

 

137:名無しのウマ娘ファン

だめかと言われたら…別に問題無いな

 

138:名無しのウマ娘ファン

こんなネットの深淵に来るやつなんてそうそういないしね

 

139:名無しのウマ娘ファン

最近はウマッターとかに人がいっぱい流れてるね

平和だからいいけど

 

140:リュウグウノツカイ

ウマッターはめんどくさい

チームの先輩にここを教えてもらった

 

141:名無しのウマ娘ファン

チーム…?

まさかウマ娘か?

 

142:名無しのウマ娘ファン

ははは…ご冗談を

 

143:矢

ワタシはウマ娘だぞ

 

144:リュウグウノツカイ

私も

 

145:名無しのウマ娘ファン

ウマ娘!?

 

146:名無しのウマ娘ファン

ウマ娘!?ウマ娘が何故ここに…

 

147:名無しのウマ娘ファン

こんな掃き溜めに来ないで

 

148:名無しのウマ娘ファン

掃き溜めは芝

否定できんが

 

149:矢

SNSも似たようなものだろ?

 

150:リュウグウノツカイ

SNS怖い

 

151:名無しのウマ娘ファン

匿名での殴り合いか仮面を付けての殴り合いかぐらいしか違いがないもんな

 

152:名無しのウマ娘ファン

進歩しねえな人類

 

153:名無しのウマ娘ファン

ウキャキャ?

 

154:名無しのウマ娘ファン

ウッキー!

 

155:名無しのウマ娘ファン

退化してんじゃねぇよ!

 

156:名無しのウマ娘ファン

繝ェ繝ェ繧」縺。繧?s縺ッ縺九o縺?>縺ァ縺吶?

 

157:名無しのウマ娘ファン

縺ィ縺」縺ヲ繧ゅ°縺励%縺?Μ繝ェ繧」縺。繧?s?

 

158:名無しのウマ娘ファン

人語を話せ

 

159:名無しのウマ娘ファン

ウワー!?バケモノ!!

 

160:名無しのウマ娘ファン

我々には早すぎた…

 

161:名無しのウマ娘ファン

「リリィちゃんはかわいいですね」と「とってもかしこいリリィちゃん!」って言ってるぞ

 

162:名無しのウマ娘ファン

なんでわかるの…?

 

163:名無しのウマ娘ファン

まるで意味がわからんぞ!

 

164:名無しのウマ娘ファン

しかし>>161よくこの謎言語が読めたな

 

165:名無しのウマ娘ファン

>>164

いいやまだ殆ど解読できてないんだ

 

166:名無しのウマ娘ファン

>>165

…?ではなぜ真実がわかった?

 

167:名無しのウマ娘ファン

>>166

?そんなことすぐわかるだろ?

何故なら俺はかわいいリリィちゃんを信じている!俺達は選ばれしスレ民!!リリィちゃんのファンだ!!

 

168:名無しのウマ娘ファン

>>167

おおぉぉぉぉぉ!!!!

 

169:名無しのウマ娘ファン

>>167

うおぉぉぉぉぉ!!

 

170:名無しのウマ娘ファン

>>167

おおおおぉぉお!!

 

171:名無しのウマ娘ファン

お遊びグループやめろ

 

172:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんに対する思いは本物だぞ!

 

173:名無しのウマ娘ファン

俺達よりライスちゃんの方が重い

 

174:名無しのウマ娘ファン

それは…そうなんですが…

 

175:名無しのウマ娘ファン

困った…ちょっと勝てない

 

176:名無しのウマ娘ファン

勝たなくていいよ…

 

177:名無しのウマ娘ファン

青汁のウマッターの断片的な情報だけでも分かるほどのクソデカ感情…いいよね

 

178:名無しのウマ娘ファン

わかるってばよ

 

179:名無しのウマ娘ファン

いくら仲が良くてもあそこまでは普通しないんよ

 

180:名無しのウマ娘ファン

だがそれがいい

ライスちゃんだけじゃなくてリリィちゃんもクソデカ感情持ってるのがもうなんというか本当に最高です(早口)

 

181:名無しのウマ娘ファン

距離が近いよね

常時肉体的に接触してるのは笑っちまう

 

182:名無しのウマ娘ファン

肉体的接触ってなんかえっち

 

183:名無しのウマ娘ファン

手を繋がないのは寧ろ不自然と言われるレベルだからな

 

184:名無しのウマ娘ファン

あの二人を見てると心が幸福に満たされるわ

 

185:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんのファンスレという名のリリィちゃんとライスちゃんのイチャイチャを見守るスレ

 

186:名無しのウマ娘ファン

ライリリはまだガンには効かないがそのうち効くようになる

 

187:リュウグウノツカイ

私もシロノリリィと仲良くなりたい

 

188:名無しのウマ娘ファン

キマシ…!?

 

189:名無しのウマ娘ファン

ほほう…

 

190:矢

ワタシはLANE交換してるぞ

 

191:名無しのウマ娘ファン

中央ウマ娘…だと!?

 

192:名無しのウマ娘ファン

ははは…ご冗談を

 

193:リュウグウノツカイ

シロノリリィは同じクラス

でも恥ずかしくて話したことがない

 

194:名無しのウマ娘ファン

矢はウマ娘だっけ?矢ネキって呼ぶわ

リリィちゃんの交友関係で誰か特定できそう

 

195:名無しのウマ娘ファン

まあやらないけどな

リリィちゃんに迷惑はかけられない

 

196:名無しのウマ娘ファン

俺はリリィちゃんの笑顔が見たいんだ

あの娘は俺の太陽だ

 

197:名無しのウマ娘ファン

>>193

話しかけられた事はないの?

 

198:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんに近づいたら溶けて死ぬからな

確かに太陽だ

 

199:名無しのウマ娘ファン

純白の太陽か

なんかめっちゃ強そう

 

200:リュウグウノツカイ

>>197

ある

でも動揺しすぎて一言返すので精一杯だった

 

201:名無しのウマ娘ファン

あらかわいい

 

202:名無しのウマ娘ファン

俺ならリリィちゃんに声をかけられただけで心臓止まるから>>200は寧ろすごいよ

 

203:名無しのウマ娘ファン

確蟹

 

204:名無しのウマ娘ファン

そう鴨

 

205:名無しのウマ娘ファン

しれな稲

 

206:名無しのウマ娘ファン

太陽よりゴリラの方が似合うけどな

 

207:名無しのウマ娘ファン

シロノゴリィ

 

208:名無しのウマ娘ファン

実際リリィちゃんのパワーってどんなもんなんだろうか?

 

209:名無しのウマ娘ファン

ウマ娘ちゃんは基本怪力だけどリリィちゃんは明らかにそのレベルを超えてるからな

 

210:名無しのウマ娘ファン

教えて矢ネキ!

 

211:矢

しょうがないにゃあ

・コンクリートぐらいなら素手で粉砕する

・貫手で厚さ10ミリの鉄板を貫く

・スチール缶を握り潰して指先でコネコネしてパチンコ玉ぐらいの大きさにした後指で弾いて壁にめり込ませる

・トラックのタイヤを紙のように引きちぎる

オフレコで頼むぞ?

 

212:名無しのウマ娘ファン

>>211

嘘でしょ…

 

213:名無しのウマ娘ファン

>>211

…ウマ娘?

 

214:名無しのウマ娘ファン

>>211

やっぱ人間どころかウマ娘やめてるよ…

 

215:名無しのウマ娘ファン

>>211

リリィちゃんかわいい

 

216:名無しのウマ娘ファン

>>211

格闘技の大会出た方がいいと思うよ

 

217:名無しのウマ娘ファン

>>211

つ、強すぎる…

 

218:名無しのウマ娘ファン

こんなんチートや!

 

219:名無しのウマ娘ファン

でもよぉ…かわいいぜ?

 

220:名無しのウマ娘ファン

じゃあ問題無いな

 

221:名無しのウマ娘ファン

かわいいは正義

 

222:名無しのウマ娘ファン

こんだけパワーがあるならもっと早く走れそうだけど

 

223:名無しのウマ娘ファン

範馬勇次郎だってマッハで走れるわけじゃないだろ?

たぶんそんな感じよ

 

224:名無しのウマ娘ファン

STR極振りかな?

 

225:名無しのウマ娘ファン

RTAならよくやるやつ

 

226:名無しのウマ娘ファン

FEでいう戦士タイプなんだろ

 

227:名無しのウマ娘ファン

斧持ったリリィちゃん…

デッカい武器持った幼女っていいよね…

 

228:名無しのウマ娘ファン

わかる

 

229:名無しのウマ娘ファン

幼女にデカい武器はロマン

 

230:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんは13歳だぞ!幼女じゃないぞ!

 

231:名無しのウマ娘ファン

138センチだっけ

9歳でそれぐらいのサイズらしいよ

 

232:名無しのウマ娘ファン

ちっちゃくてかわいいね

 

233:名無しのウマ娘ファン

やっぱり幼女じゃないか!(歓喜)

 

234:名無しのウマ娘ファン

このロリコン共め!

 

235:名無しのウマ娘ファン

そろそろパドックでウマ娘ちゃん達の紹介始まるぞ

 

236:名無しのウマ娘ファン

マ?

もうそんな時間か

 

237:名無しのウマ娘ファン

茶番はここまでだ

 

238:名無しのウマ娘ファン

ウマ娘ちゃん達出てきたね

 

239:名無しのウマ娘ファン

なんか静かですね〜

 

240:名無しのウマ娘ファン

ちょっといつもより雰囲気違うわね

 

241:名無しのウマ娘ファン

アッシュストーン来たけど…なんかいつもより静かすぎて怖いわ

オーラ見えるよ

 

242:矢

アッシュ…

 

243:名無しのウマ娘ファン

噴火寸前の火山って感じか?すっげぇ仕上がりだな

 

244:名無しのウマ娘ファン

おっリリィちゃん来たわ

 

245:名無しのウマ娘ファン

にこにこしてない…

やだ…綺麗…

 

246:名無しのウマ娘ファン

あっ…(尊死)

 

247:名無しのウマ娘ファン

こんな真剣な表情できるのね…すき…

 

248:リュウグウノツカイ

綺麗…

 

249:名無しのウマ娘ファン

心臓止まりそう…

 

250:名無しのウマ娘ファン

悪りい

俺死んだ

 

251:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんすきぃ…

 

252:名無しのウマ娘ファン

パドックだとアッシュストーンもリリィちゃんもめっちゃ仕上がってるけど果たしてどうなるか…

 

253:名無しのウマ娘ファン

我々には見守ることしかできない

 

254:名無しのウマ娘ファン

気合い入れて応援すっぞ!

 

255:名無しのウマ娘ファン

レースそろそろ始まるっすよ

 

256:名無しのウマ娘ファン

始まったな

 

257:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんガンガン前に行くわね

 

258:名無しのウマ娘ファン

めっちゃぐいぐいいくじゃん

俺ならドキドキしてレースどころじゃなくなるわ

 

259:名無しのウマ娘ファン

おっ?ペース上がってきたな

 

260:名無しのウマ娘ファン

先頭のウマ娘ちゃん掛かってるね

 

261:名無しのウマ娘ファン

ハイペースじゃん

リリィちゃん大丈夫か?

 

262:名無しのウマ娘ファン

上手くスリップストリーム利用してるね

 

263:名無しのウマ娘ファン

やっぱリリィちゃんはかしこいなぁ!

 

264:名無しのウマ娘ファン

おっ?もう仕掛けるのか

 

265:名無しのウマ娘ファン

抜いたな

どんどん加速するな

 

266:名無しのウマ娘ファン

上り坂なのに減速しないよね

やっぱパワーよ

 

267:名無しのウマ娘ファン

コーナーでも減速しねぇな

運動法則に筋肉だけで抗ってそう

 

268:名無しのウマ娘ファン

アッシュストーンも上がってきたな

 

269:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんコーナー抜けた!

 

270:名無しのウマ娘ファン

うおっ!?

 

271:名無しのウマ娘ファン

アッシュストーンとリリィちゃん同時にスパートしたぞ

 

272:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんはや…え?アッシュストーンはっや…

 

273:名無しのウマ娘ファン

徐々に差が詰まってきてるじゃん

やっば

 

274:名無しのウマ娘ファン

うあぁぁ!!リリィちゃんがんばれぇ!!

 

275:名無しのウマ娘ファン

がんばえー!リリィちゃんーー!

 

276:名無しのウマ娘ファン

アッシュストーンこんな速かったのか

 

277:名無しのウマ娘ファン

やばい追いつかれ

 

278:名無しのウマ娘ファン

あっ

 

279:名無しのウマ娘ファン

いっ

 

280:名無しのウマ娘ファン

ぬかれ

 

281:名無しのウマ娘ファン

ああああ

 

282:名無しのウマ娘ファン

うぎゃ

 

283:名無しのウマ娘ファン

ほあああ

 

284:名無しのウマ娘ファン

え?

 

285:名無しのウマ娘ファン

は?

 

286:名無しのウマ娘ファン

ま?

 

287:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんかそくした

 

288:名無しのウマ娘ファン

どうなってんだ

 

289:名無しのウマ娘ファン

いっけえぇぇぇ

 

290:名無しのウマ娘ファン

まけるな

 

291:名無しのウマ娘ファン

のびろ

 

292:名無しのウマ娘ファン

かて!

 

293:名無しのウマ娘ファン

ゴール!

 

294:名無しのウマ娘ファン

どっちだ!?

 

295:名無しのウマ娘ファン

わからん

 

296:名無しのウマ娘ファン

ほぼ同時だったような

 

297:名無しのウマ娘ファン

ふいぃ…見てるこっちが疲れた

 

298:名無しのウマ娘ファン

ウマ娘ちゃん達の方が疲れてるだろ

 

299:名無しのウマ娘ファン

それはそう

 

300:名無しのウマ娘ファン

あ結果出た

 

301:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん!

 

302:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんかった!

 

303:矢

うわあぁぁぁぁぁ!!!リリィちゃんすごいぃぃぃい!!!

 

304:リュウグウノツカイ

すっごい

 

305:名無しのウマ娘ファン

おめでとうリリィちゃん!

 

306:名無しのウマ娘ファン

アッシュストーンもすごかった

 

307:名無しのウマ娘ファン

二人ともにっこにこなんだけど

 

308:名無しのウマ娘ファン

お互い全力だっただろうしね

めっちゃ楽しそう

 

309:矢

は?おいアッシュ!!羨ましいぞ!!

 

310:名無しのウマ娘ファン

お姫様抱っこしてる!!

 

311:名無しのウマ娘ファン

ふぁー!!いけませんいけませんよ!!

 

312:名無しのウマ娘ファン

興奮してきたわ

 

313:名無しのウマ娘ファン

キマシ!

キマシタワー!

 

314:名無しのウマ娘ファン

遥か遠い理想郷

 

315:名無しのウマ娘ファン

わっふるわっふる

 

316:名無しのウマ娘ファン

いいですわぁ…女の子達の友情は栄養満点ですの

 

317:名無しのウマ娘ファン

二人とも本当にいい笑顔だわ

 

318:名無しのウマ娘ファン

綺麗なリリィちゃんも尊いけどやっぱりにこにこリリィちゃんが一番好きだわ

 

319:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんかわいいよリリィちゃん

てか最後の加速やばくね?

 

320:名無しのウマ娘ファン

限界突破って感じか?

 

321:名無しのウマ娘ファン

アッシュストーンの末脚もやばいよね

負けたかと思ったもん

 

322:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんが再加速しなかったら確実に負けてたもんな

 

323:名無しのウマ娘ファン

普通再加速ってできるの?

 

324:矢

無理だ

アッシュに抜かれるまではリリィちゃんは間違いなくトップスピードで走っていた

それを超えるのは正に限界突破としか言いようがない

 

325:名無しのウマ娘ファン

ウマ娘から見ても無理なのね

 

326:名無しのウマ娘ファン

そりゃそうじゃ

 

327:名無しのウマ娘ファン

ぽんぽん限界超えられたらそれこそやばいよ

普通は脚がポッキーよ

 

328:矢

リリィちゃんの強靭な肉体があったからこそ限界を超えても耐えられたのだろう

限界の更に先を超えたらどうなるかはわからんがな

 

329:名無しのウマ娘ファン

無理はしないでほしいよね

 

330:名無しのウマ娘ファン

元気なリリィちゃんを見ていたい

 

331:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんの骨って折れるの?

 

332:名無しのウマ娘ファン

 

333:名無しのウマ娘ファン

 

334:名無しのウマ娘ファン

想像できねえな

 

335:名無しのウマ娘ファン

まあ折れないならそれでいいよ

 

336:名無しのウマ娘ファン

何はともあれおつかれさまリリィちゃん!

 

337:名無しのウマ娘ファン

かわいいかしこいリリィちゃん!

 

─────────

────────

──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ネームド個体『リュウグウノツカイ』はリリィちゃんのクラスメイトです。ジュニア級編だとたぶん出番はないです。『矢』? ……知らんなぁ。
次話はたぶんゆるふわ回です。


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第12話 『だいすき』と『だいすき』!

いつも本作を読んでくれてありがとうございます。皆さんの感想やここすきは楽しく読んでおります。
いつの間にかお気に入りが2000を超えていてびっくりしました。本当にありがとうございます。これからもリリィちゃん達を応援してください。


 アッシュストーンとの激闘を制したシロノリリィ達三人は、ウイニングライブを終え、事前に予約していた旅館にやってきた。個室露天風呂付きのそこそこな値段のする旅館だ。

 当日応援に来てくれた両親達はシロノリリィを褒めちぎった後、明日予定があるからと半泣きになりながら帰っていった。

 旅館で出された料理に舌鼓を打ち、露天風呂で星空を眺め心と体を癒し、皆で仲良く就寝した翌日、シロノリリィは全身筋肉痛になっていた。

 

 朝起きたら全身筋肉痛のリリィちゃんです。全く動かないのでリリィちゃんびっくりです。声を出すのも辛いぐらいの痛みですね。……ライスちゃん! るるちゃん! たすけて!

 

「あばばば! あばばばあばばばばば!」

「……えっ? どうしたのリリィ?」

「『ライスちゃん! 体が動かないの!』って言ってるよお姉さま」

「あばばあばばば!」

「嘘でしょ……。なんでわかるの……」

 

 大好きだからだと思います。ママとパパもたぶん同じ状況なら何を言っているか分かると思います。

 るるちゃんも私のこともっと好きになっていいんですよ!

 あっ! 痛いっ! リリィちゃんマッスルが悲鳴をあげてます!

 

「あばばばばばばば!」

「……動けないリリィちゃんを、今ならずっとお世話できる……」

「……ライス、目が笑ってないわよ……」

 

 ライスちゃんが何か言ってましたが聞き逃してしまいました。ところで筋肉痛ってどうやれば治るのでしょうか? 筋肉痛というぐらいですし、いっぱいお肉を食べればいいのかな? ……お腹が空いてきました。今日の朝ごはんは何が出るのかな? リリィちゃん楽しみです!

 

「と、とりあえずマッサージでなんとか動けるように……なるかな?」

「あばばあばば」

「『お腹すいた』だって。……たぶん動けるようになるまで時間かかると思うよリリィちゃん」

「あばばー!」

「先に朝ご飯にする?」

「あば!」

「じゃあそうしよっか。あっ、その前に歯磨きしようねリリィちゃん。大丈夫だよ、ライスが全部やってあげるから」

「あばばばー! あばばば!」

「なんで意思疎通できるのよ……」

「大好きだもん」

「…………そうね」

 

 さすがライスちゃんです! 私はかしこいので、困った時はちゃんと周りの人に頼むことが出来ます。それじゃあお願いします!

 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

 シロノリリィを抱きかかえたライスシャワーは、二人の歯ブラシを持って洗面台へ行き、それはもう丁寧に歯磨きをしてあげた。その間シロノリリィはにこにこし、ライスシャワーは最高にいい笑顔であった。

 歯磨きを終え、ついでに洗顔も済ました三人は朝食を食べることにした。

シロノリリィは動けないので、当然のようにライスシャワーがあ〜ん♡ して食べさせた。なのでいつもよりもだいぶ時間がかかったが、トレーナーは慣れてきたので気にしなかった。寧ろ癒されていた。

 朝食を食べ終えたので、トレーナーは本命のマッサージに取り掛かることにした。

 

「じゃあ、いっちょやっか〜!」

「なんで悟空のモノマネしてるのお姉さま……。すごく似てるし……」

「オラ強えやつと戦いた……なんでリリィの服脱がしてるの?」

「マッサージするんだよね? だったら直接肌に触った方が効果ありそうって思ったから」

「別にそのままでも大丈夫……待ちなさいライス。あっ! 下着まで脱がさなくていいから! めっ!」

 

 とても手慣れた様子でシロノリリィの服を脱がしていくライスシャワーに、トレーナーは戦慄した。こいつらうまぴょいしたのか?

 正解はお風呂に入る前にじゃれあうフリをして、シロノリリィの服を毎回脱がしていたので慣れただけである。

 これは己の欲を満たしつつ、彼女に恋心を自覚させる為の策であるのだが、今のところはあまり効果は出ていない。まあ時間の問題だが。

 なんとか下着をひん剥くのは阻止したが、客観的に見て非常にまずい光景だった。

シロノリリィがこちらを見上げている。非常に艶かしい、下着姿で。児ポ……ではなく間違いなく事故だ。「これ、誰かに見られたら通報されるんじゃ?」と思い服を着せるようにライスシャワーに言ったが、断固拒否された。

 

「ライスが見たいからダメ」

「待って……人に見られたらお姉さま通報されちゃう……」

「……しないんですか?」

「まって……まって!」

 

 さっき朝ごはんを食べて少し回復したシロノリリィが、人に見られていたら確実にアウトなセリフを言った。本人にそういう意図は無いのでセーフです。……もしかして、ご飯を食べ続けたら回復するんじゃ……?

 

「大丈夫だよ。許可なくお部屋に入ってくる人なんていないから。だから早くしてお姉さま、リリィちゃんが風邪ひいちゃう」

「るるちゃんならいいですよ?」

「……くそぅっ! 中央ライセンス持ちエリートトレーナー様を舐めるなよっ!」

 

 覚悟を決めたトレーナーがマッサージを開始した。詳しい様子はプライバシー保護のために伏せておきます。ライスちゃんが食い入るように見ていたとだけ報告しておきます。

 30分程かけて丁寧にマッサージを施した結果、鋼鉄の如く凝り固まっていた筋肉を解したために発生した疲労と、人が来ないかビクビク恐れていた緊張感によって汗だくになっていた。だが、そのおかげでシロノリリィはだいぶ動けるようになっていた。具体的に言うと、マッサージ前を5fpsとして、マッサージ後は30fpsぐらいである。

 ちなみに筋肉のこり具合は、餡のかわりに鋼鉄を仕込んだ生八ツ橋との感想だった。

 

「おぉー! 動けるようになりました! ありがとうるるちゃん!」

「……ふふっ、どういたしまして」

「よかったねリリィちゃん♪ ……お姉さま汗すごいね。みんなでお風呂入りに行く?」

「そうね、このままだとレディー失格だわ」

「朝から露天風呂なんて贅沢ですね!」

 

 汗を流すため三人は露天風呂へと向かった。当然のようにシロノリリィの服をライスシャワーが自らの手で脱がしていくが、いつもよりも視線と手つきがねっとりしていた。

 

「ふい〜……あ゛〜……」

「リリィちゃん溶けちゃってる……」

「アイスが溶けた雪見だいふくみたいね……」

 

 シロノリリィの後ろからライスシャワーが抱きつく形で、そしてその隣でトレーナーが入浴していた。なんとなくトレーナーがとろけている彼女の頬に向かって手を伸ばすと、それに気づいたシロノリリィがその手に向かってほっぺをすりすりしてきた。

 

「犬みたい……」

「リリィちゃんは犬だけどネコだよ」

「……ライス」

「なんの話ですか?」

「……リリィはかわいいなぁって話よ」

「ふふん♪ それは当然です!」

 

 そのうち食われるぞ……。と思いながらそのまま頭を撫でた。よく分かってないリリィちゃんもかわいいですね。

 お風呂から上がるとライスシャワーがシロノリリィの髪をドライヤーで乾かし始めた。トレセン学園に入学してから毎日彼女がお手入れをしている。おかげでシロノリリィの髪はトゥルットゥルのサラサラである。

 お肌のケアも欠かせない。彼女の美貌はライスシャワーの尽力により維持されている。何もしなくてもその美貌は9割程維持されるが、ライスシャワーが毎日お手入れをしてから通常の1割増しで魅力がアップしている。ちなみに入学前はシロノリリィの母親が毎日お手入れしていた。

 

「リリィの髪はライスが乾かすけど、自分の時はリリィにやってもらわないの?」

「私がやるよりライスちゃんがやった方が上手なので。でも私にはやることがあります!」

 

 そう言うとシロノリリィはライスシャワーの胸の辺りに抱きついた。彼女の言うやる事とは、ライスシャワーに甘える事である。実質何もしてないように思えるが、ライスシャワーのやる気がアップするので問題ない。

 

「ライスちゃんはいつもあったかくていい匂いがしますけど、お風呂上がりはそれがいつもより増すんですよ!」

「へ〜、そうなの」

「リリィちゃんもあったかくていい匂いだよ?」

「私はライスちゃんが一番好き!」

 

 平和だなぁと思いながら、自分の髪を乾かし終えたトレーナーは「先に戻ってるね〜」と言って部屋に戻った。もう少ししたら部屋を退出するので、荷物などを整理し、この後新幹線が来るまでの暇な時間を使ってお土産などを買おうと考えた。

 部屋に二人が戻ってきたので、この後どうするか話し合うことにした。

 

「私はお土産とか買おうかな〜って思ってるんだけど、二人はどうする?」

「抹茶スイーツ食べたいです!」

「ライスはリリィちゃんについてくよ」

「ん〜……じゃあこの後解散して好きに遊んでていいわよ。お昼は各自で食べて、新幹線の時間までには駅に来るようにすること。何かあったら連絡してね」

「「は〜い!」」

 

 

 

 

 

 

 トレーナーと別れたシロノリリィとライスシャワーはお昼ご飯を食べ終え、目的の抹茶スイーツのお店を探していた。

 

「抹茶パフェ、抹茶バウムクーヘン、抹茶モンブラン、抹茶ティラミス……他にもいっぱいあるね!」

「いっぱいあって迷っちゃうなぁ……。じゃあとりあえずこのお店にする?」

「いいよ! では、突撃リリィちゃんです!」

 

 目についた店に二人で入ってみた。お店の中を見回すと、落ち着いた雰囲気の店でいい感じだと思った。メニューを手に取って確認してみるとお目当ての抹茶スイーツもあり、値段も高すぎないので「とってもいい感じです!」と楽しみになった。ふと、メニューを見るとこのお店の雰囲気に微妙に合わないモノを見つけた。

 

「ねえねえリリィちゃん、『カップル専用スイーツ』だって。これ、美味しそうだよ」

「おぉ〜、ほんとだね! でもカップルってどうやって証明するのかな?」

「……ここには書いてないね。まあライスとリリィちゃんなら問題ないよ。じゃあこれにする?」

「うん! ……えっと注文はこのタッチパネルで……。最近のお店は結構このタッチパネルが置いてあるよね」

「いつの間にかこっちが主流になったよね。そういえばお姉さまが居酒屋にもタッチパネルがあってびっくりしたって言ってたよね」

「時代の進歩を感じるね。お酒といえば、私達も二十歳になったらお酒とか飲むのかなぁ? なんだか想像できないよ」

「ふふっ。確かに想像できないね。でもその時になってもライスとリリィちゃんは一緒にいるって事だけは分かるなぁ」

「それなら私も分かるよ! 私とライスちゃんはずっと一緒だから!」

「そうだねリリィちゃん。……でもその頃には二人の関係もちょっと変わってるかもしれないよ?」

「……? どういうこと?」

 

 不思議そうに首を傾げるシロノリリィにライスシャワーは微笑み、自分の唇に指で触れ、その指をシロノリリィの唇に触れさせた。

 

「恋人、だよ♪」

「……んにゃっ!」

 

 顔を真っ赤にしたシロノリリィを見て満足そうに笑うと、もう片方の手も添えて彼女のほっぺをむにむにといじり始めた。

 

「……リリィちゃんはかわいいなぁ♪」

「……んもう」

 

 少しだけ恥ずかしそうな顔をしたが、心地良い手の感触にすぐにご機嫌になった。そうして時間を潰していると注文したスイーツがやってきた。

 カップルの証明をと思ったが、そのいちゃついてる様子を見られていたらしく「あなた達は既に答えを出している」と言われ、「サービスです」と抹茶ドリンクも貰えた。

「いただきます!」と手を合わせて二人はスイーツに手をつけた。すると想像していたよりも美味しかったらしく、瞳をキラキラさせながら二人はスイーツを食べていた。

 

「ねえねえライスちゃん」

「なあにリリィちゃん?」

「恋人になったら、今までとどう変わるの?」

 

 純粋な疑問からシロノリリィはライスシャワーに聞いてみた。少し沈黙し、彼女の顔を見ながら答える。

 

「……たぶん、今とそんなに変わらないかな?」

「……そうなの?」

「うん。だって、二人でデートもするし、一緒にお風呂に入るし、寝る時はいつも一緒だし……。恋人ですることはもう大体やってるよ?」

「じゃあ私とライスちゃんは恋人なの?」

「ん〜……。今のままだとちょっと違うってライスは思うよ。リリィちゃんの『だいすき』とライスの『だいすき』はちょっとだけ違うの。それが分かったら恋人同士になるんじゃないかなってライスは思うんだ」

「む〜……私には難しいです」

「焦らなくても大丈夫だよ。時間ならいっぱいあるから、ね?」

「う〜ん……まあいっか! とりあえず今は抹茶スイーツ祭りです!」

 

 その後二人は3軒ほどお店を回り、抹茶スイーツ祭りを楽しんだ後駅へと向かいトレーナーと合流した。

 大量のスイーツを摂取し、シロノリリィの筋肉痛は大体回復した。これでトレーニングも問題なく行えるだろう。……どんな体の構造してるんだ。

 この後はライスシャワーの重賞レースも控えている。そして、二人のはじめての直接対決であるホープフルステークスも。英気を養い、決意を改め、三人はトレセン学園に帰還した。

 

 

 

 ──シロノリリィの心はまだ幼い。今はまだ未熟な蕾だが、いずれ恋心という花を咲かせるだろう。

 

 



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第13話 わたしの青いバラ

 

『しあわせの青いバラ』

 

 あるところにふしぎなお庭がありました。そこには色とりどりのバラがさき、おとずれる人みんなにしあわせをあたえてくれます。

 

 ですがある日、そのお庭にだれも見たことのない真っ青なバラがつぼみをつけました。

 

 そんな青いバラを見て、まわりのバラたちも、お庭を見に来た人たちもみんな『青いバラなんて気味が悪い』『きっとふこうの花だ』と言いました。

 

 みんなにそう言われて、青いバラは『ぼくはだめなお花なんだ』とおちこんでしまいました。そして、だんだんとしおれてきてしまいました。

 

 そんなある日、しおれた青いバラの前に『お兄さま』がやってきました。

 

 お兄さまは青いバラを見つけると、とってもやさしい、おだやかなえがおで言いました。

『やあ、青いバラだなんてとってもすてきだ! きっときれいにさくにちがいない。ぜひ買い取らせてください!』

 

 しおれかけた青いバラを買い取ったお兄さまは、そのバラをあたらしい(はち)にうつしてあげて、毎日声をかけてあげました。

 しおれかけた青いバラは、お兄さまのやさしさにふれ、とってもきれいな花をさかせました。

 

 (うつく)しくさいた青いバラは、お兄さまのおうちの窓辺(まどべ)にかざられて、道ゆく人たちをたくさんしあわせにしました。

 

 

 

 

「……このえほんはね、ライスがいちばんすきなおはなしなの。ちっちゃいころにはじめておかあさまによんでもらって、いまでもだいすきなおはなし」

 

「とってもすてきなおはなしだね! わたしもこのおはなしがすきになっちゃった!」

 

「ありがとう、リリィちゃん。ライスもとってもうれしいよ。……ライスもね、このあおいバラみたいになりたいなぁって思ったんだ。みんなをふこうにしちゃう、だめなこじゃない……。みんなをしあわせにできる、あおいバラに」

 

 絵本を読み終えた黒い少女は、白い少女に自分の夢を語った。それを聞いた白い少女は、黒い少女をまっすぐに見つめ、にこにこと笑いながら答えた。

 

「じゃあ、わたしのあおいバラはライスちゃんだ!」

 

「……えっ?」

 

 太陽のようにキラキラとした笑顔で少女は言う。

 

「だって、ライスちゃんといっしょにいると、わたし、とってもしあわせだもん! だから、ライスちゃんはわたしのあおいバラだよ!」

 

「…………ライスが、あおいバラ……」

 

 穢れ一つ無い、その純粋な笑顔に、心が熱くなる。

 

「……リリィちゃんはすごいなぁ。リリィちゃんといると、こころがあったかくなるの。……ライスのあおいバラはね、リリィちゃんだよ」

 

「わぁっ! ……えへへ、うれしいなぁ」

 

 

 その笑顔が、その心が、その優しさが、本当に、ほんとうに綺麗で──

 

 

「だいすき……だいすきだよ、リリィちゃん」

 

「わたしもライスちゃんだぁいすきっ!」

 

 

─────────────────

──────────────

───────────

───────…

 

 

 

(……ちっちゃい頃の夢。……懐かしいなぁ)

 

 幼い頃の自分達の夢を見てライスシャワーは目を覚ました。懐かしくて温かい、とても大切な思い出。

 今日は彼女の初重賞レースである「京都ジュニアステークス」の開催日だ。事前に現地のホテルに泊まっていて、隣にはシロノリリィがすやすやと穏やかな寝顔を晒している。

 スマホのアラームが鳴ってないところをみると、どうやら少し早く目を覚ましてしまったようだ。二度寝をしようと思ったが寝つけそうにないので、ぼうっとシロノリリィの顔を眺めた。

 

(……綺麗だなぁ)

 

 彼女の顔を眺めながら、今までのレースを思い返した。

 彼女のレースは鮮烈で、眩しかった。ターフを抉る強烈な末脚は、まるで閃光のようで。彼女の眩い笑顔は、太陽よりも輝いていた。思い返す度に胸が熱くなる。

 今の彼女は重賞レースに勝利しているので、ライスシャワーよりも先に行っていると言える。トレセン学園に入るまでは自分が先を進んでいたのに、今では彼女の方が自分の先にいる。それが嬉しくもあるが、同時にもどかしくなった。

 

(……あの頃から……ライスがちっちゃい頃から、リリィちゃんはライスの憧れだった。でも、憧れるだけじゃ嫌だ。……ずっと隣で、歩んでいきたいんだ)

 

 ライスシャワーの瞳に、決意の光が宿る。

 

(……大好きだから)

 

 

 

 

 

 

 

 レース前、控室でトレーナーはライスシャワーの元に来ていた。今日のライスシャワーはどうやらご機嫌らしく、椅子に座り鼻歌を歌いながら足をプラプラさせていた。

 

「なあにライス、超ご機嫌じゃない。なんかいいことでもあったの?」

「〜♪ ……あのね、今日の夢でね、ライスとリリィちゃんがちっちゃい頃の夢を見たの。懐かしくて、とってもあたたかい夢。それがとってもうれしくて……。でもね、それだけじゃないよ。今日はライスの初重賞だから、リリィちゃんとお姉さまにかっこいいところを見せてあげられるもん」

 

 にこにことしながらライスシャワーは答えた。その様子にこちらも笑顔になる。

 

「そっかそっか。じゃあリリィと一緒に楽しみにしてるわね」

「期待しててね、お姉さま。……じゃあ、行ってくるね!」

「いってらっしゃい、ライス!」

 

 

 

 

 

 ──コツンコツン……地下バ道に軽やかな音が響く。その足音はとても楽しそうで、緊張など一切感じられない。

 

(天気は晴れ、お日様が綺麗。今日の風はちょっと冷たいけど、今のライスにはちょうどいいかも)

 

 冬の訪れを感じさせる冷たい風がライスシャワーを通り抜けた。その風から、青々としたターフの香りを感じる。

 ──血が滾る。だが、この熱は少々熱すぎる。冷風に感謝しながら歩みを進める。

 

(今日でこれだけ熱いのに、リリィちゃんとのレースだったら……。考えただけで火照ってきちゃう)

 

 微笑みを浮かべながらライスシャワーは進む。──コツンコツンと足音が鳴り、眩しい光の前に辿り着いた。

 

(……待っててね、リリィちゃん。すぐに追いつくから)

 

 黒い少女は進む。……さぁ、レースの時間だ。

 

 

 

 

 

 

 

『さあ、本日の注目ウマ娘の紹介です! 二番人気のマチカネタンホイザ!』

『手堅く掲示板入りしている実力派ウマ娘です。彼女が勝利を狙えるか、注目です』

『今日の主役は彼女しかいない! 一番人気ライスシャワー! ここまで無敗2連勝ウマ娘です!』

『彼女が出走したレースは、正に圧勝と言える強いレースをしていました。彼女を攻略することがこのレースで重要になるのは間違い無いでしょう』

 

 パドックでレースに出走するウマ娘達が紹介されている。ライスシャワーは有力候補として、出走者や観客からも注目されていた。

 

「おぉ〜! ライスちゃんかっこいい! るるちゃんみてみて!」

「今日の為にめっちゃんこトレーニングしたからね。ライスしか勝たん!」

 

 もちろんシロノリリィとトレーナーも応援している。彼女の実力は二人もよく分かっており、勝利を確信している。

 

「まっ、レースに絶対は無いから確実なんて言えないけどね。でもこの中ならライスが一番強いって断言できるわ」

「そうですね! それに、ライスちゃんは私の一番のお友達で、大切な人で……ライバルなので!」

 

 自信満々に胸を張るシロノリリィに、微笑ましくなったトレーナーは頭を撫でた。むふん! とドヤ顔になったのを見て更に笑みが溢れる。ファンファーレが鳴り、ゲートにウマ娘達が入っていく。

 

「さぁ、レースが始まるわ。……見て、リリィ。ライスの顔、すっごく楽しそう」

「本当ですね! こっちまでワクワクが伝わってきますよ!」

 

 二人が見守る中、静寂が訪れる。長いような短いような沈黙の中、ガコンッという音と共にウマ娘達が一斉に飛び出した。

 

「がんばれー! ライスちゃん!」

「がんばれライスー!」

 

 

 

 

 

 

 はじめての重賞レース。とっても緊張するって思ってた。けど、違った。今の気持ちは──

 

(──楽しいな)

 

 軽やかにゲートから飛び出したライスシャワーは、苦戦することなく前方3番手の位置につき全体を俯瞰した。

 

(今日のレースは9人で、ライスが注目しているタンホイザさんはライスの後ろをマークしている。うん、これなら大丈夫)

 

 ライスシャワーはこれまでのレースで先行策をとり、好位追走を得意としている。マチカネタンホイザは自分をマークしてからの差し切りを狙っているのだろうと考えた。

 

(リリィちゃんが見てる。お姉さまが見てる。……かっこ悪いとこ、見せられないなぁ)

 

 レースは一見普通の展開だった。ハイペースでもなく、スローペースでもない、正に普通の展開だ。しかし、コーナーを抜けたあたりで8人のウマ娘達は強大な圧を感じ取った。

 

 ──青々しいターフに、漆黒の狂気が降り注いだ。

 

 磨り潰されるような、黒い重圧。身体全体に鉛が纏わりついたかと思うようなプレッシャーに、ターフを駆けるウマ娘達は恐怖した。

 脚が重い、身体が言うことを聞かない、喉が乾く、呼吸が乱れる。──一体誰が……!? 唯一人、小柄な黒い少女だけは、その重圧をものともせずに走っていた。

 ──何故この少女だけが走れる……いや、違う! 違うのだ!! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

「──バレちゃった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、関係ないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ライスが勝つから」

 

 黒い少女が、先程までとは比べ物にならないプレッシャーを解き放った。

 

 

 

 

 

 

「…………嘘でしょ。圧倒的じゃない……」

 

 それからの展開は一方的だった。重圧に潰されたウマ娘達が、動きの精細さを欠いて徐々に体力を失い、それでも食らいつこうとしたが追いつけるはずもなく、ライスシャワーが後続に10バ身差をつけてゴール板を駆け抜けた。

 辛うじてマチカネタンホイザが10バ身差の2着だったが、それ以降の3着は大差をつけられていた。

 トレーナーは戦慄した、ライスシャワーの強さに。隠していた……いや、使う必要がなかったのだ。今までのレースは、本気ではなかったのだ。

 我が愛バながら恐ろしい。その強さに少々動揺し、冷や汗を流していた。そうだ、これを見てこの子はどう反応するのだろうか。と思い、隣にいるもう一人の愛バを見た。

 ──震えていた。だが、それは恐怖ではない……歓喜だ。

 太陽よりも眩しい笑顔が、満天の星よりも輝く黄金の瞳が、今、漆黒の少女だけを見つめていた。

 白い少女は言葉を発しない。顔が、胸が熱い。心が燃え上がる。大好きで、大切で、誰よりも愛おしい黒い少女から目を逸らせない。

 ──綺麗だ。夜を落としたような漆黒の髪が、紫水晶よりも煌めく瞳が、小柄で抱きしめたくなるような身体が、そして、誰よりも優しいその心が、全てが愛しくて仕方がない。

 白い少女の熱い視線に気付いたのか、黒い少女はこちらに振り向き、妖しく微笑んだ。──嗚呼、熱い。

 

 

 

 

 

 

 

 ──本当は使うつもりじゃなかった。でもね、我慢できなかったの。

 ずっと、ずっと待ってた。一緒に走るって約束してから、何年も待ってた。だけど、我慢できなかった。

 あともうちょっとだから我慢できるかなって思ってたんだけど、やっぱりできなかった。

 ねえ、リリィちゃん──

 

 妖しく煌めく瞳の奥で、()()()()()()()()()

 

 ──私だけを見て。

 

 

 




次回はたぶんホープフルステークスです。


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第14話 ホープフルステークス!① 私達のスタートライン!

 私はママとパパが大好きです。初めて私を愛してくれたあの人達が、家族の温もりを、優しさを教えてくれた二人が大好きです。

 私はるるちゃんが大好きです。私達の事をいつも見守ってくれるあの人が、私達の事を大事にしてくれて、とっても頼りになるあの人が大好きです。

 私はアッシュちゃんとキョウちゃんが大好きです。ライスちゃん以外で初めてお友達になれた二人が大好きです。

 あのレースで本気の感情をぶつけてくれたアッシュちゃんが、ちょっと口は悪いけど実は面倒見がいいアッシュちゃんが大好きです。

 キョウちゃんはとっても物知りです。私が知らない事を分かりやすく教えてくれるちょっぴりお茶目なキョウちゃんが大好きです。

 アッシュちゃんとキョウちゃんといると、お姉ちゃんがいたらこんな感じだったのかな?って思います。そんな二人が私は大好きです。

 でも、一番好きなのはライスちゃんです。優しくて、可愛くて、綺麗で……とっても温かいライスちゃんが大好きです。

 ……だけど最近ちょっと変なんです。ライスちゃんといると胸がドキドキします。前はこんな事ありませんでした。……でも、イヤじゃないです。この胸のドキドキは、熱さは……。

 もっと私の名前を呼んでほしい。……名前を呼ばれると嬉しくなるから。もっと私に触れてほしい。……あたたかくて安心するから。もっと私をだきしめてほしい。……その鼓動が心地いいから。

 この感情はよくわかりません。私にはまだわからないです。……でもこれだけははっきりと分かります。──私は、ライスちゃんが大好きです。

 

 

 

 ライスシャワーの京都ジュニアステークスが終わって今は12月の終わり頃。あれから約一ヶ月程経ちホープフルステークスの前日となった。

 明日のレースに向けて最終調整を終えた二人をトレーナーは呼び出し、本番に向けての話をした。

 

「はい、突然だけどお姉さまは今から無責任な事を言います」

「なぁにお姉さま?」

「なんですかるるちゃん?」

「お姉さまは明日のレースの作戦を……たてません!」

 

 トレーナーは勢いよく言い放つがなんとなく理由が分かる二人は特に動揺しなかった。

 

「ライスとリリィちゃんで思う存分戦えって事だよね?」

「手の内がバレるとつまらないからですね!」

「……二人がとっても優秀でお姉さま嬉しいけど悲しいわ。このレースで一番警戒しなきゃいけないのがライスとリリィだからね。まぁ、あなた達の事だからお互いを攻略する作戦をとっくに考えてそうだけど。……それは置いといて、このレースにはマチカネタンホイザも出走するから要注意よ。あなた達は強いけどこの子も油断ならない相手だわ」

「この前勝ったからって今回も勝てる。なんて事は無いからね。もちろんライスは油断なんてしないよ」

「私はどんなレースでも、どんな相手でも全力でやります!」

「頼もしくて何よりよ。じゃあ明日のレースに備えて今日は早めに休むのよ。夜更かししちゃダメよ? それじゃあ解散!」

 

 はーい! と元気よく返事をした二人は、その後食事とお風呂を済ませて自分達の部屋へと戻った。レースへ向けての調整は完璧だ。明日はきっと楽しいレースになる。そんな予感を胸に抱きながら二人はベッドの上で戯れあっていた。

 

「リリィちゃん、とっても楽しそうだね」

「えへへ。ライスちゃんもにこにこしてるよ!」

 

 お互い明日のレースが楽しみのあまりにその感情が表情に表れている。シロノリリィを膝枕し、愛おしそうに頭を撫でながらライスシャワーは告げる。

 

「ねぇリリィちゃん。ライス達がちっちゃい頃に『いっしょにはしりたい』って言ったの、覚えてる?」

「もちろんだよ! 一緒にテレビでレースを見てた時に私が言った事だよね!」

「やっぱり覚えててくれた。……あの頃はこんな風に一緒に走れるだなんて思ってなかったなぁ。しかもGⅠだよ?今でも夢みたいだなってライスは思うんだ」

「ほんとだよね。……でも、夢じゃない。私たちのはじめてのGⅠが、はじめて一緒に走ることになるレースだなんて。……なんだか物語みたい。……でも、勝つのは私だよ?」

「……それはライスのセリフだよ?」

 

 撫でていた手を止め、その手をするりと頬へと滑らせた。そのままお互いに見つめあい、微笑みながら言葉を続ける。

 

「……ライス達の夢、やっと叶うね」

「うん。だけど私思うんだ。夢が叶うけど、ここからが始まり……私達のスタートラインなんだって」

「そうだね。今までのレースも、もちろん大事だったけど、これから先は皐月賞、日本ダービー、菊花賞……他にもたくさんすごいレースがある。でも、まずは明日のホープフルステークスだね。……楽しみだなぁ」

「私もすっごく楽しみ! でも楽しみすぎてちょっと眠れないかも!」

「……ダメだよリリィちゃん? じゃあそろそろ寝よっか」

「うん!」

 

 ライスシャワーの膝枕からコロンと転がり、シロノリリィはそのまま枕まで移動した。それを微笑みながら見つつ、掛け布団を自分と彼女に掛けた。

 シロノリリィはライスシャワーに抱きつき、彼女も同じように優しく抱き返した。

 

「……おやすみ、リリィちゃん」

「……おやすみ、ライスちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇっ! リリィちゃんの! GⅠレース! やっば! 超興奮してきたっ!」

「スズラン。気持ちは分かるけど落ち着こうね」

「賢司さんも顔に出てるよ! 超ニヤニヤしてる!」

「仕方ないじゃないか。僕達のかわいいリリィがGⅠレースに出るんだよ? 嬉しくてしょうがないよ。……ふふっ、もう泣きそうだよ」

「涙出てるよ!? 涙腺ガバガバじゃん!」

 

シロノリリィの初GⅠレースを応援するために二人はレース場に来ていた。GⅠレースは出走するだけでもそれはもう名誉ある事なので二人は大興奮だった。

シロノスズラン(ママ)は興奮のあまりにテンションがおかしなことになっている。白井賢司(パパ)はシロノリリィが生まれた時から現在までを思い返していて、まだレースが始まってもいないのに涙がドバドバ流れている。

 

「今日のレースはライスちゃんも一緒なんだっけ。リリィちゃんがちっちゃい頃から一緒に走りたいってずっと言ってたから、きっと喜んでるんだろうなぁ。で〜も、今日勝つのは……」

 

「──リリィちゃんよ!」

「──ライスだから!」

 

「「…………ん?」」

 

 なんだか聞き覚えのある声がすると思い振り返ると、なんとなく見覚えのある夫婦がいた。さっきの『ライス』発言と自分の記憶を照らし合わせ、二人がライスシャワーの両親だと気がついた。

 

「あぁっ! ライスちゃんのお母さま!?」

「……リリィちゃんのママっ!?」

「おや……驚きましたね。偶然とは言え同じ場所で出会うとは。失礼、お久しぶりですね。お二人も娘さんの応援に?」

「こちらこそお久しぶりです。はい、そうです。かわいい娘のGⅠレースですから、来る以外の選択肢はありませんよ」

「すっごいびっくり! うわー超懐かしい! うわっはー!」

 

 ライスシャワーの両親は二人を見て「父親は少し老けたかな? と思うが、母親は全く老けてない」と感じた。お母さまもウマ娘なので老けにくい体質だが、彼女はレベルが違う。さすがはシロノリリィの母親だ。

余談だが、シロノスズランは高校生の頃から全く老けてない。親子三人で歩いていると、よく姉妹と間違われた経験があるほどだ。

 

「……ほんとにびっくりです。でもよく考えたら鉢合わせる確率も無いわけではないですよね。まあそれは置いといて、お二人は娘さんの勝負服は見せてもらいましたか?」

「まだ見せてもらってないです。リリィちゃんにどんな感じ? って聞いたら「楽しみにしててね♪」って言われちゃって……。その時のリリィちゃんがかわいくてかわいくて!」

「あらあら。うちのライスも「内緒だよ♪」って言ってて……。あぁ……かわいい……。あっ、そういえば勝負服のデザインなんですけど、ライスは自分のとリリィちゃんの両方デザインしたって言ってました」

「あっ! それリリィちゃんから聞きました! 確かリリィちゃんがURAにお任せしようとしたからライスちゃんに「ダメに決まってるでしょ?」って言われたとかなんとか。リリィちゃんは昔から服とかあんまり気にしなかったからなぁ……。まぁかわいいから何着ても似合ってたし、私がいろんな服を着せられたからいいんですけど……」

「まあ、そうなんです? うちのライスはオシャレには気をつかっていましたね。『リリィちゃんに相応しいレディになるんだよ!』って言ってましたっけ。あっ! そういえば──」

 

 思い出話に火がついた二人の会話は止まる気配がなかった。父親達はゆっくりと頷き、穏やかな笑顔で時間が過ぎるのを待った。

 暫くするとパドックでウマ娘達が紹介と共に勝負服をお披露目しだした。

 勝負服とは、トゥインクル・シリーズの重要なレース─GⅠレースなど─にて着用する特別な衣装である。衣装のデザインはウマ娘がデザイナーに希望を伝える時もあれば、デザイナーが1から手掛ける時もある。ウマ娘にとって自分の勝負服を得る事、勝負服でレースを走ることは非常に名誉なことであり、強い想いが込められた衣装となる。

たまにそれで本当に走れるの? みたいな衣装があるが、よくわからないが走れるので問題ない。ウマ娘は神秘的な種族なのだ。

 

「あっ! ライス! ライスよあなた!!」

「…………美しい」

 

 黒い少女が現れ、肩にかかっていたジャージを宙に投げた。其処には蒼黒を纏った漆黒のウマ娘──ライスシャワーが居た。

 漆黒の髪に、青が映えるその衣装は彼女を華麗に飾っている。華奢な体つきと露出した肩からは妖しい魅力が溢れ、見るものを魅了していた。柔らかな微笑みと共に、黒い少女はふりふりと手を振っていた。

 

「……ライスちゃん綺麗になったわねぇ」

「うぅ……ライスぅ……。すきぃ……」

「…………嗚呼、なんて……」

「……限界化してるね」

 

 ライスシャワーの両親が言葉を失ってるのを見て二人は「なんだか大変な事になってるな……」などと半ば他人事のような感覚で眺めていた。

 パドックを見守る観客達の興奮は、まだレースが始まってないというのにその最中かと感じるほどだった。そして、不意に観客達の声が止まった。

 

 コツンコツンと小さな足音が響く。やがてその足音は止まり、白い少女がその身を隠す邪魔な布を投げ捨てた。

 ──白だ。穢れなど何一つ無い、白。髪は白、肌も白、服も、何もかもが白い中で、その瞳だけは金色に煌めく。神秘的な輝きを放つ、白い──まるで聖女のような少女が其処にいた。

 白い長袖のワンピースは装飾が殆どなく、スカートの裾に目立たない程度に金色の糸で白百合が刺繍されているが、それ以外に特徴といったものはなく一見地味といえる衣装だった。脚は白いタイツで完全に隠れており、露出は皆無であった。

 だが、逆にそれがよかった。少女本人の圧倒的な美しさの前に、華美な衣装など邪魔にしかならない。この地味な白ワンピースが少女の美しさをより引き出していた。

 シロノリリィの美しさを前に誰もが言葉を失っていた。一部の者は感動の余りに無言で涙を流していた。それは両親も例外では無い。

 

「………………リリィちゃん」

「………………リリィ」

 

 止まることの無い涙を流す二人の脳裏に、シロノリリィとの思い出が駆け巡った。今まで彼女と過ごした愛しい記憶がまるで花火のように弾け、心を強烈に揺さぶった。──嗚呼、なんて尊い。

 ……まだレースは始まってないのにこの調子で本当に大丈夫か?

 皆がシロノリリィに圧倒される中、当の本人はそれを気にすることなく、肩幅に足を広げ、両手を腰に据えて軽く胸を張り──ドヤ顔をした。かわいいですね。

 惚けていた観客達も「あっ……いつものリリィちゃんだ」と思い、なんとか現実に戻ってきた。

 

「…………しゅっご」

「…………凄まじいとしか言いようがないですね」

 

 ライスシャワーの両親達も戦慄していた。小さい頃からとても美しい少女だと思っていたが、成長してここまで美しくなるとは思ってもいなかった。幼い頃からあの光を浴びてきた娘が夢中になるのも分かる。

 ちなみにこの勝負服に一番興奮していたのはその本人達だ。ライスシャワーがシロノリリィに似合うようにと10歳ぐらいの頃から考えていたデザインであり、それを最愛の彼女が着ているのだ。この勝負服が届いた当日は興奮しすぎて押し倒す寸前だった。もちろんライスシャワーの勝負服を見たシロノリリィも超興奮していた。興奮しすぎて語彙力が無くなり「あ゛ー!」しか言えなくなっていた。トレーナーも愛バの可憐な勝負服を見て死んでいた。

 

 

 ファンファーレが鳴りウマ娘達が続々とゲートへと入っていく。白と黒の少女の、最初のレースが始まる。

 

『誰をも魅了し、心を奪う希望の星が誕生する! ホープフルステークス! 3番人気はこの娘です、マチカネタンホイザ。この評価は少し不満か? 2番人気はこの娘シロノリリィ。さあ、今日の主役はこの娘をおいて他にいない! 1番人気はライスシャワー!』

『みんないい表情を見せていますね』

『ゲートイン完了。出走の準備が整いました。──ゲートが開いた! スタートです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 シロノリリィは今日のためにライスシャワー対策を考えた。彼女が放つ強烈なプレッシャー……所謂デバフだが、何度もレースを見返した結果、ライスシャワーから離れているほど効果が薄くなる事に気づいた。なので、とても単純な作戦を考えた。

 

(ライスちゃんから離れるほど効果が薄くなるなら……私は最後方からの追い込みで行きます!)

 

 出遅れない程度のスタートを切ったシロノリリィは、バ群の一番後ろにつきライスシャワーの姿を探した。恐らくライスシャワーは先行策で来るだろう。スタミナに不安がある自分があのプレッシャーをまともに受けたら最後まで脚が残らないと考えられる。なのでこうして距離をとりつつ脚を残すのが最善だと思っていた。

 

(…………あれ?ライスちゃんが……どこにもいない?)

 

 ──出遅れたのか? あのライスシャワーが? 彼女の実力を一番に理解している自分からしたら、そんなミスを犯すはずは無いと考えた。見間違いかと思いバ群を再度確認したその時──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──こっちだよ、リリィちゃん

 

 ──シロノリリィの背後から、粘ついた殺気が纏わりついた。

 

 

 ライスシャワーは……唯1人、シロノリリィだけをマークしていた。彼女を確実に潰し、勝利するために。──2000mの地獄が、始まる。

 

 

 

 




長くなりそうだから区切りました。許して……。


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第15話 ホープフルステークス!② 咲いた、咲いた…私の花が

 シロノリリィの対策を読み切ったライスシャワーが最後方でマークするという展開となった。この展開に驚いたのはシロノリリィだけではなく応援にきた五人……お姉さま、本田、中村、アッシュストーン、キョウエイボーガンの全員が驚愕していた。

 

「…………いやいや、えげつない事するねぇライスちゃんは。でもあの子って追い込みはできたっけ?」

「いや、彼女は先行策を得意としている。追い込みは併走の時もやらなかったと記憶しているぞ。二人の作戦は青路さんが考えたのか?」

「いいえ、私は一切手を貸してないわ。そうじゃないとフェアじゃないもの。ライスとリリィ以外の出走者のデータとかは叩き込んだけどね」

「無粋ですからね。……でもライスさんはなぜこの作戦を……いや、こうしないと勝てないと考えたのか」

「…………なんでかって思ったが、シロの対策なら確かにこれが最善か。スタミナを削って末脚を発揮させないように、ってか? ……でもこれ、もし失敗したら──そのまま負けるぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 ライスシャワーのプレッシャーの正体は、シロノリリィに対する狂気的といえる程の愛だ。それを解放する事で自分の周囲に圧を与えてスタミナを削る仕組みとなっている。これは自分と相手の距離が離れるほど効果が薄くなり、シロノリリィが考えた「離れるほど効果が薄くなる」という推測は当たっていたのだ。なのでライスシャワーは自分のプレッシャーの効果が見破られていると仮定し、それを前提に作戦を立てた。

 ……だが、様々な作戦を考えたがシロノリリィに勝てそうな作戦は思い浮かばなかった。いつものように前を走っているだけだと彼女のスタミナを削りきれずに差されてしまう。何度も頭の中でシミュレーションしたが結果は変わらなかった。

 ……ならば、どうすればいいか? ライスシャワーが出した結論は「()()()()()()()()()」だった。シロノリリィが追い込みで来ると予想し、そこを徹底的にマークしてスタミナを削り末脚を発揮させないというのが今回の策だ。

 シロノリリィの末脚には今のところ太刀打ちできない。どれだけ道が悪くても、どれだけ後ろにいても、スタミナさえ残っていればあの尋常ならざる加速力を持って差しに来るのだ。恐ろしいとしか言いようがない。──だから潰すのだ。徹底的に、確実に……その脚を。

 

 

 

 ──リリィちゃんなら、大丈夫だよね?……ライスの想い、全部受け止めてね。

 

 

 

 

(…………おかしいな? あのプレッシャーが来ない?)

 

 マチカネタンホイザは困惑した。京都ジュニアステークスでライスシャワーが放ったプレッシャーが何故か今は無いことに。ちょっと安心したが、油断してたらいきなりぶち込まれるかもしれないと思い気を引き締めた。

 ライスシャワーの姿も見当たらないのでチラリと後ろを見たのだが、正直見なければよかったと後悔した。

 

(…………()()()()()()()()()

 

 一目見てわかったのだが、ライスシャワーはあのプレッシャーの範囲を絞ってシロノリリィだけに狙いを定めていたのだ。ただでさえ強かったあの負荷がたった一人に対してのみ発揮されることに恐怖した。……なのに、だ。──シロノリリィは……笑っていた。

 その綺麗な顔には苦悶の表情が浮かび、夥しい程の脂汗が流れている。なのにその瞳はギラギラと輝き、頬は紅潮し、犬歯を剥き出しにして笑っている。苦痛と歓喜、相反する感情を同時に出している彼女を見てマゾなのか? と思うが、更に後ろで恍惚とした表情で追走しているライスシャワーを見てあながち間違いでは無いと確信した。

 

(そういうプレイはレース外でやってくれないかなっ!?)

 

 少々げんなりしながら視線を前に移すと、自分以外にもその光景を見て戸惑っているウマ娘達が何人かいた。周りを動揺させるという意味では効果的だと思うが、二人だけの世界に入ってもらっては困るのだ。ここにいる全員が主役なのだ、お前達の公開デートじゃないぞ?

 マチカネタンホイザは改めて気合を入れた。このカップルにペースを握られたら自分のレースができなくなってしまう。そうならないようにしっかりと前を見て走るのだ。……決して、見るのが恥ずかしいとかそういう理由では無い。

 

 

 

 

 

(……なるほどなるほど、これがライスちゃんのプレッシャーですか。……想像よりは大分マシですが……ちょっと苦しいですね)

 

 シロノリリィは今まで走ってきたマイルと比べ、中距離になるといつもよりスタミナの消費が増えると感じていた。それに加えこのプレッシャーである。とてつもないペースで減る体力に焦りそうになるが、焦ったところで回復などしないので冷静にレースを進める。

 恐ろしいほどの速さで減る体力だが、実はこのプレッシャーはシロノリリィに対してのみ効果が低くなっている。断じて手加減しているわけでは無い。そもそもこのデバフの正体は「シロノリリィに対する愛」なのだ。それ故に同じようにライスシャワーにクソデカ感情を抱いているシロノリリィがそれを受け入れられるのは道理だとしか言いようがない。

 

(……でも、なんでしょうか……この圧を受けていると、苦しいけど……満たされる? ……言葉にするのは難しいですけど……ふふっ、悪くないどころか……寧ろ嬉しいです!)

 

 苦しいはずなのに、辛いはずなのに……シロノリリィは笑う。その小さな身体に大きすぎる重い想いを受け止めて。白い少女の心に、黒い少女の心が染み渡っていく。

 

(……うれしいなぁ。私だけを見てくれる。私の大好きなライスちゃんが、今……私だけを見てくれている。顔が、身体が……心が熱い。……嗚呼、溶けちゃいそう)

 

 掛かりそうになる心を抑えてシロノリリィは走る。もっと、もっと……あなたの心に浸っていたい。……だが、シロノリリィのかしこすぎる頭脳が警鐘を鳴らし始めた。

 

(…………あっ、このままだと……スタミナがもちませんね)

 

 1コーナーから2コーナーに入り向こう正面に差し掛かる。現在の残りスタミナと消費速度を計算した結果、このままライスシャワーに削られ続けると3コーナー途中でスタミナが無くなってしまうことに気づいた。

 

(…………行くしかないですね)

 

 きっとこれもライスシャワーの狙いなのだろう。だが、関係ない。向こう正面を通過し、直線の途中で息を入れて覚悟を決めたシロノリリィが速度を上げ始めた。

 シロノリリィがライスシャワーを振り切ってゴール板を駆け抜けるのが先か、ライスシャワーがシロノリリィを削り切るのが先か……レースが動く。

 

『ここでシロノリリィが仕掛け始めた! グングンと位置を上げていく! その後ろにピッタリライスシャワー! それを見てマチカネタンホイザも仕掛け始めたぞ! 後続を突き放して現在先頭はシロノリリィ。二番手はピッタリマークしていますライスシャワー。そこから3バ身離れてマチカネタンホイザ。そこから2バ身離れて──』

 

 

 

 

 

(……すごいよリリィちゃん。ライスがこれだけ全力なのに、まだ走れるなんて……)

 

 目の前のシロノリリィの走りから徐々に余裕がなくなっていく。息は荒く、踏み込む力も弱々しい。あの力強い走りが、強大な足音が、見る影も無くなっていく。直線を抜けて3コーナーに入ると明らかに先程よりも速度が落ちていくのがわかる。

 もっと近づけ、もっと迫れ。圧を与えろ、息を入れる暇など与えるな。4コーナーを抜け最終直線に入ったその時、シロノリリィが最後の力を振り絞るように脚をターフへと叩きつけ──

 

(……でも、限界だよね?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────加速……できなかった。

 

『あっと! ここでライスシャワーがシロノリリィを交わした! グングンと突き放す! シロノリリィは伸びないのか!? このままライスシャワーが独走するのか!?』

 

 カクン、と力無く揺れるシロノリリィを交わしてライスシャワーが前へ出た。シロノリリィの息は乱れ、フォームはぐちゃぐちゃで、力強さの欠片もない。最早歩くことすら辛いであろう彼女を置き去りにしてライスシャワーは走り去った。……だが、一瞬だけ……ほんの一瞬だけ見たシロノリリィの瞳が……全く死んでない事に気づいた。──ゾクリと、ライスシャワーの身体に寒気が走った。虫の息と言えるシロノリリィの……爛々と光るその瞳に恐怖と……期待が湧きあがり、自然と口角が吊り上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 ──ライスシャワーは知っている。シロノリリィが絶対に諦めないことを。限界や理不尽を、全て捻じ伏せる強い意志を持っている事を。

 

 

 

 

 

 

 残り200……150。漆黒の軌跡となって駆け抜けるライスシャワーの背後で、最早動けるはずも無いシロノリリィが、その弱々しい小さな気配が……ターフを抉る轟音と共に復活した。

 

 

 

 

 

 

 ────やっぱり……来てくれた!

 

 

 

 

 

 

 シロノリリィの顔に、最早綺麗さなど無い。勝利を掴む為に必死の形相で歯を食いしばり、悲鳴をあげる身体を執念で無理やり黙らせて、只々前へと進んでいく。骨は軋み、心臓の鼓動は狂い、目の前の景色はぼやけ始め……それでも脚は止まらない。

 

 

 

『シロノリリィだ!? 力尽きたと思ったシロノリリィが再び息を吹き返した! 驚異的な加速と共にライスシャワーに追い縋る! なんという執念だシロノリリィ! そして……交わした!! 再びシロノリリィが先頭に立った! 残り50m!! 勝つのはどっちだ!?』

 

 

 

 

 

 

 ──リリィちゃん……リリィちゃん……リリィちゃん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気づけば二人とも真っ白な世界に立っていた。目の前にお互いがいて、少し手を伸ばせば簡単に触れてしまえる。

 何故ここにいるのか、此処がどこなのか……そんなことはどうでもよかった。今はただ、目の前のシロノリリィに聞かねばならぬことがある。期待と興奮で胸が高鳴る。

 

 

「ねぇ、リリィちゃん。ライスはね……全部削ったの。体力を……気力を……リリィちゃんの全部を削り切ったの。……なのにどうして……どうして走れるの? 走れるはずなんて無いのに……どうして?」

 

 

 それを聞いたシロノリリィは、何を言われたのか分からないとでも言うかのように小首を傾げた。そのまま目を伏せ、しばらくの沈黙の後真っ直ぐにこちらを見つめたシロノリリィは、太陽のような眩しくも温かい笑顔でこう答えた。

 

 

「ライスちゃんがいるもん。走れるよ」

 

 

 

 

 

 

 ──嗚呼……

 

 

 

 

 ──嗚呼……!

 

 

 

 

 ──嗚呼!!

 

 

 

 もう、抑えられない。この熱い感情が、この秘めた情熱が……抑えられない。どうして彼女はこんなにも自分の心を揺らすのか……どうしてこんなにも愛おしいのか。太陽すら燃やす衝動が、ライスシャワーから溢れ出した。

 

「ふっ、ふふっ……ふふふっ……あははははははは!!!」

 

 真っ白だった世界が……ライスシャワーによって染められていく。二人の世界をライスシャワーの想いが……心が包み込む。暴れ狂う心と感情がこの世界に……シロノリリィの中へと入り込んでいく。

 

「…………あっ……? ……ひっ!? …………っ!?!?」

 

 気が狂いそうになる程の甘美な衝撃が脳を、身体を、心を……魂を侵食する。今まで味わったことのない甘い痺れがシロノリリィを襲い、震えて立つことすらままならない。魂まで愛撫され動くことすらままならないシロノリリィは、ペタンと地面にへたり込み、潤んだ瞳で茫然と世界を眺めるしかなかった。……そして、真っ白な世界は……ライスシャワーによって塗り替えられた。

 かつて真っ白だった世界に最早面影はない。辺りにあるのは荘厳なステンドグラスが煌めくチャペルだった。一輪の白百合をモチーフとしたステンドグラスを背に、青いバラの花束を持ったライスシャワーがゆっくりとこちらに近づいてきた。

 

──愛してる

 

 ──ライスシャワーの左の瞳から、恋心が溢れ出た(青い炎が噴き出した)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 領域『ブルーローズチェイサー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──何ということだ!? 再び、再びライスシャワーが追い抜いた!! 執念の追い上げを見せるシロノリリィを交わしてライスシャワーが再び先頭に立った!! 恐ろしいほど加速していく! 強い! 強すぎる!! リードは1バ身! ライスシャワーがゴォール!!

ライスシャワー、一等星の輝きを見せクラシックへと繋がる道へ第一歩を踏み出した! 2着シロノリリィ3着はマチカネタンホイザ──』

 

 

 

 

 

「──っ!! …………はぁ…っ………はぁっ……」

 

 文字通り全てを使い果たしたライスシャワーは、ゆっくりと歩みを止めた。自分が勝利した事が信じられず、震える手でぺちぺちと頬を叩いてみたが、現実感が湧かずに茫然と辺りを見渡した。

 

「…………はぁっ……ひゅう……はぁ…………あっ……」

 

 そして同じ様に全力を出し切ったシロノリリィが、よろよろと生まれたての子鹿のような頼りない足取りでこちらに向かってきた。

 

「……ひゅひ〜…………ひっ……ふひ〜……」

 

 呼吸音すら頼りないシロノリリィが目の前に来たが、足がもつれて転びそうになった。それを慌てて支えようとしたが、こちらも同じように力を入れる事が出来ずにそのまま二人ともターフへと倒れてしまった。

 

「あびゃっ!?」

「わわわ!?」

 

 二人ともどうにか起きあがろうとするが、どうやっても起き上がる事が出来なくて次第に笑いが込み上げてきた。

 

「「…………ぷっ……ふふっ…………ふふふっ…………あはははは!!」」

 

 なんなのだこの状況は? さっきまでの全力疾走と修羅の如き形相は何処へ行った? おかしくて笑いが止まらない。笑いすぎて涙が止まらない。暫く笑い続けた二人は顔を合わせ、にっこりと笑って同時に叫んだ。

 

「────楽しかったぁ!!」

 

「ねえねえ! 最後のやつなにあれ!? なんなのあのおっきいチャペル? みたいなやつ! わけわかんない!! すっごい! すっごい!! わっはー!!」

 

「ライスもよくわかんない! だけどね! リリィちゃんの事を想ったらなんか出たっ!!」

 

「なあにそれ!? 嬉しいけどわっかんない!! あっ!! ライスちゃんおめでとう!!」

 

「ありがとうリリィちゃん!! もう疲れすぎてわけわかんないよっ!!」

 

 感情のままに叫ぶ少女達に祝福の歓声が降り注ぐ。慌てて応えようとするが、やはり力が入らずに立ち上がれない。──そう、一人なら。

 

「……リリィちゃん」

 

「──二人一緒なら……立てるよね?」

 

 互いに寄り添い、それを支えにしてゆっくりと立ち上がる。そしてライスシャワーは観客席へ……自分を応援してくれたみんなに誇らしげに手を振った。

─レース場が揺れる程の大歓声が、ターフへと響き渡った。

 

「……リリィちゃん」

 

「……なぁに?」

 

 隣にいる愛しい少女に、きっと今なら伝わるだろう。ライスシャワーは己の手をシロノリリィの頬に添えて、そのまま優しく撫でる。さらさらだった髪と肌は汗でしっとりとしてるが不快感などない。これは自分達が本気で走った証なのだ。寧ろ愛おしくて仕方がない。嬉しそうに微笑むシロノリリィに胸が躍る。伝えなければ……この熱を……貴方に。もう片方の手をシロノリリィの華奢な腰へと回し、お互いの息が当たる距離まで引き寄せた。

 きゃっ! っとかわいらしい悲鳴を出した少女と見つめ合う。お互いの心臓の鼓動が重なる。強烈な甘い匂いに陶酔しそうになる。……少し緊張した眼差しでこちらを見つめるシロノリリィに微笑み……額にキスをした。

 

「──大好きだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………あれ? やわらかい……? ……あったかい? ……なあにこれ? …………くちびる? ………………らいすちゃんの、くちびる???

 

その時、シロノリリィのかしこすぎる頭脳が覚醒した。

 

 ──夏祭りのキス未遂事件。

 

 ──止まらない胸の高鳴り。

 

 ──キスできなかった事を残念だと思う自分。

 

 ──「だいすき」と「だいすき」

 

 ──己の心に入ってきたライスシャワーの心と想い。

 

 ──ライスシャワーにだけ感じる特別な感情。

 

 ──今、この瞬間の「大好きだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──もしかして……私のだいすきは……ライスちゃんに対する気持ちは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────……「恋」……なのでは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──理解してしまった。この気持ちを……この熱を……この感情を。恥ずかしさと嬉しさと……最早言葉にできない感情の爆発に顔が真っ赤に染まる。そして、その瞬間……レース場に先ほどと比較にならない程の歓声が響き渡った。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。気づいた時にはもう遅い。野太い叫びと甲高い叫びと……とにかく多種多様の声が重なり、レース場は狂気の坩堝と化した。

 

「……わっ……凄いことになってる」

 

 他人事の様に呟いたが、これはあなたのせいですよ?

 

「──ねぇ、伝わった?」

 

 真っ赤な顔でコクンと小さく頷く。先程の衝撃でまともに頭が働かない。それを見たライスシャワーは満足そうに微笑んだ。

 

「ライスの『だいすき』の意味……今ならわかるよね?」

 

「えっと……その……はい……」

 

「嬉しいなぁ……長かったなぁ……ふふっ……ねぇリリィちゃん」

 

「……にゃ……にゃに?」

 

「これからライスの事……もっともっと……だいすきにしてあげるね?」

 

 ライスシャワーはシロノリリィを優しく抱きしめた。嗚呼……なんて温かいのだろう。──知ってしまった……わかってしまった……この感情を。白い少女は咲う。真っ白で可憐な……「恋」の花を咲かせて。

 

 




前世含めて初恋です。リリィちゃんはかわいいですね。
次回は掲示板回です。


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【ドキドキ☆デート】シロノリリィを応援するスレ【ホープフル】

マックちゃんとゴルシちゃんの水着来ましたね。……とっても可愛いですね。
……ちょっとチケットで引いてみましょうか──7枚消える。
……ふむ。
私の石貯金はシービーと別衣装タイシンちゃんのために貯めているんですよね。──ガチャッ
だからこんなところで──ガチャッ
使っちゃ──ガチャッ
ダメなんですよ。──ガチャッ
この前スイープで回しちゃったから──ガチャッ
天井分もないんですよ。──ガチャッ
だから我慢しなければいけませんね─。─ガチャッ
……皆さんは誘惑に負けずにちゃんと貯金するんですよ?


1:名無しのウマ娘ファン

今日はリリィちゃんとライスちゃんの初対決です

みんなで応援しよう!

 

2:名無しのウマ娘ファン

待ってたぜェ!!この瞬間をよぉ!!

 

3:名無しのウマ娘ファン

ヒャア!!たまんねぇぜ!!

 

4:名無しのウマ娘ファン

G Iレースってことはよぉ…つまりGⅠレースを走るって事だよなぁ?

 

5:名無しのウマ娘ファン

お前ら落ち着け

 

6:名無しのウマ娘ファン

煩悩を捨てるのです

ヒョオォォォォ!!待ちきれねぇっ!!

 

7:名無しのウマ娘ファン

ヤベェ奴しかいないなこのスレ

 

8:名無しのウマ娘ファン

まあ特級呪物の集まりだし仕方ないよ

 

9:名無しのウマ娘ファン

俺らが呪いだって言いたいのか?…否定できんな

 

10:名無しのウマ娘ファン

芝生える

ちゃんと否定しろ

 

11:名無しのウマ娘ファン

GⅠレースといえば勝負服だよね

…リリィちゃん勝負服着るの!?!?

 

12:名無しのウマ娘ファン

推しの勝負服姿が見れるなんて…俺もう死んでもいいわ

 

13:名無しのウマ娘ファン

死んだらこの先彼女達を見届ける事が出来なくなるぞ

だから生きろ

 

14:名無しのウマ娘ファン

勝負服を着る事なく引退するウマ娘ちゃんもいるからなぁ

あれ?目から目汁が…

 

15:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんの勝負服予想しようぜ

俺の予想はウェディングドレス!

 

16:名無しのウマ娘ファン

それはライスちゃんの前でしか着ないだろ多分

俺は白無垢と予想するぜ

 

17:名無しのウマ娘ファン

君たちはリリィちゃんをなんだと思ってるんだ?

 

18:名無しのウマ娘ファン

>>17

ライスちゃんの彼女

 

19:名無しのウマ娘ファン

>>17

ライスちゃんの嫁

 

20:名無しのウマ娘ファン

>>17

ライスちゃんのお嫁さん

 

21:名無しのウマ娘ファン

全員同じようなこと考えていて芝

 

22:名無しのウマ娘ファン

まあまずはリリィちゃんが恋心を理解するところからなんですけどね

ライスちゃんがチュッチュしてだいすき(はぁと)すればイチコロだとは思うが

 

23:名無しのウマ娘ファン

13歳なのに一度も恋愛とかした事ないのかな?

 

24:名無しのウマ娘ファン

>>23

だってライスちゃんにゾッコンだし…

 

25:名無しのウマ娘ファン

トレセン学園入った理由もライスちゃんと一緒にいられるからだしな

リリィちゃんは悪くないな(すっとぼけ)

 

────────

───────

──────

 

72:名無しのウマ娘ファン

そういやみんな今日は現地?

俺はもちろん現地だぜ!

 

73:名無しのウマ娘ファン

当たり前だよなあ?

ただ生リリィちゃん見て心臓止まらないかだけが心配だわ

 

74:名無しのウマ娘ファン

仕事です(憤怒)

今日ばかりは上司をぶん殴りたくて仕方がない

 

75:矢

ワタシは現地だ

トレーナーに駄々こねて頼んだ甲斐があったぞ

 

76:リュウグウノツカイ

現地

わくわく

 

77:名無しのウマ娘ファン

矢じゃんおっすおっす

駄々こねたは芝

 

78:名無しのウマ娘ファン

リュウグウノツカイもいるじゃん

やっぱみんな現地なんすね社畜さんはどんまい

 

79:名無しのウマ娘ファン

俺も現地で見る予定だけど生ライリリ見せられて尊死しそうで不安だわ

 

80:名無しのウマ娘ファン

死にそうな奴多すぎだろ

俺ほどのファンになれば青汁のウマッターから発信される微量のライリリ粒子で死ぬぐらい余裕だぞ

 

81:名無しのウマ娘ファン

ダメじゃないですか(呆れ)

でもはじめて一緒に走るレースだし走り終わった後感極まって抱きついたりしそう

 

82:名無しのウマ娘ファン

そんな事されたら俺死んじゃうよ?

二人が同じ空間にいるってだけで涙が止まらないのに

 

83:名無しのウマ娘ファン

よわよわなファンが多すぎる

もっと俺を見習え(リリィちゃんとライスちゃんのお揃いのパジャマ写真を見て気絶して会社に遅刻した経験アリ)

 

84:名無しのウマ娘ファン

ダメダメじゃないですかやだー!

 

85:矢

ワタシはリリィちゃんと一緒にゲームした事あるぞ

羨ましいだろう?

 

86:名無しのウマ娘ファン

>>85

羨ましすぎて血涙出るわ

なんのゲームやったの?

 

87:名無しのウマ娘ファン

>>85

多分ライスちゃんも一緒にやってそう

それはそれとしてくっそ羨ましい

 

88:名無しのウマ娘ファン

>>85

そのぅ…写真とかぁ…ないですかねぇ?

 

89:矢

>>86>>87

スマブラDXだ

ルームメイトとたまにやるんだがたまたまリリィちゃん達が遊びに来て一緒にやったのだ

>>88

ワタシの思い出として脳内フォルダーにのみ保存されているから見せられないぞ

 

90:名無しのウマ娘ファン

DXは芝

なんで最新じゃないの?

 

91:名無しのウマ娘ファン

DXってゲームキューブのやつか

Switchのやつじゃないのか(驚愕)

 

92:矢

実家から持ってきたのだよ

あとリリィちゃんはガノンとドンキーとクッパしか使わなかったぞ

 

93:名無しのウマ娘ファン

パワー系ばかりじゃないですか!

やっぱりリリィちゃんは脳筋(確信)

 

94:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんがポケモンやったらフルアタ構成にしそう

 

95:矢

ガノンで魔神拳(B)連打してきてかわいかったぞ

トレセンに入るために小さい頃から走り回って勉強ばっかりしてたからほとんどゲームやったことないって言ってたな

ゲームしてる時のにこにこリリィちゃんかわいいなぁって思ってたらライスのマルスに切り刻まれたけどな!

 

96:名無しのウマ娘ファン

マ?やっぱ中央入るのって大変なんだな

リリィちゃんってゲームやる時に体がぐいんぐいん動いてそうかわいい

 

97:名無しのウマ娘ファン

待ってリリィちゃんの過去ちょっと重くないですかね?

 

98:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんに会うために入った…小さい頃から練習ばっかり…なんか悲しい過去編始まりそう

 

99:名無しのウマ娘ファン

お前たちにも教えようリリィちゃんのライスちゃんへの執着の理由を

いや知らんわすまん

 

100:名無しのウマ娘ファン

ジレンコピペかと思ったら違ったわ

でも今は二人とも幸せそうでおじさん嬉しいよ

 

101:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんとライスちゃんには笑顔でいてほしいよね

オラ早く付き合え!(豹変)

 

────────

───────

──────

 

174:名無しのウマ娘ファン

この前暇だったからザリガニ食ったけど泥抜きすれば結構美味かったよ

 

175:名無しのウマ娘ファン

こちら現地勢これよりライリリ尊い作戦を開始する

 

176:名無しのウマ娘ファン

ふふふっ…うまぴょい!

 

177:名無しのウマ娘ファン

>>176

やめないか!

 

178:リュウグウノツカイ

到着

チームの先輩達と一緒に待機

 

179:名無しのウマ娘ファン

へへっ…オラワクワクすっぞ!

 

180:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんもGⅠか…感慨深いな

 

181:矢

ワタシもトレーナーと現地に着いたぞ

今日はトレーナーとルームメイトとそのトレーナーの4人で応援だ

 

182:名無しのウマ娘ファン

やっぱGⅠだと人いっぱいだな

これでもダービーとかと比べたら少ない方なのかな?

 

183:名無しのウマ娘ファン

例年よりは多いらしいぜ?

リリィちゃん効果でレース観にくる人が増えたらしい

 

184:名無しのウマ娘ファン

あっ…

まあ俺もそのうちの一人なんですけどね

 

185:名無しのウマ娘ファン

うちの姉上はリリィちゃんとライスちゃんのせいで目覚めたって言ってたわ

一体何に目覚めたんですかねぇ?(すっとぼけ)

 

186:名無しのウマ娘ファン

しょうがねぇよかわいいし

俺も百合なんて興味なかったのにいつの間にかそういう作品ばっかり買うようになったわ

 

187:名無しのウマ娘ファン

俺は最近ガーデニング始めたわ

お花さんキレイ

 

188:名無しのウマ娘ファン

一人だけ違うのに目覚めてるぅー!

 

189:名無しのウマ娘ファン

平和な趣味で芝

 

190:名無しのウマ娘ファン

レース始まってないのに緊張してきたわ

 

191:名無しのウマ娘ファン

緊張してる時は手のひらに天上天下唯我独尊って書いて飲み込むといいよ

 

192:名無しのウマ娘ファン

釈迦ゥー!

 

193:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんが2000走るのって今日がはじめてだっけ?

今までの最高が1800だからちょっと厳しいかもね

 

194:名無しのウマ娘ファン

でもリリィちゃんなら走ってくれるって俺信じてるよ

 

195:名無しのウマ娘ファン

そういえばこの前のライスちゃんの京都ジュニアステークスは凄かったですね

 

196:名無しのウマ娘ファン

なんかみんなバテバテになってたよな?

デバフ発動したんだろ多分

 

197:名無しのウマ娘ファン

ゲームじゃないんだからそんなことできるわけ…ライスちゃんならできるかも

 

198:紅茶

技術の一つとしてはあるジャン

パンはそういうの苦手だけど使える人は使えるジャン

 

199:名無しのウマ娘ファン

うわー!?なんだこいつ!?!?

 

200:名無しのウマ娘ファン

また新しいネームド個体か…

 

201:リュウグウノツカイ

何してんの先輩…

 

202:名無しのウマ娘ファン

安直な語尾によるキャラ付けはやめるザウルス

 

203:名無しのウマ娘ファン

そうナノーネ

一人称パンってなんだよ

 

204:名無しのウマ娘ファン

技術ってなあに?技術と書いてスキルと読むやつか?

 

205:紅茶

ゲームじゃねえけどまあそういう認識でいいジャン

上手くコーナリングしたり脚のバネを利用して加速したりとかそういうのがレースのテクニックなんジャン

ライスシャワーはプレッシャーで圧をかけて周りのヤツらのスタミナを削ってたんだジャン

>>201

レース始まるまで暇ジャン?

 

206:名無しのウマ娘ファン

ほお〜んそんなのがあるのね

リリィちゃんはゴリラパワーによる超加速かな?

 

207:名無しのウマ娘ファン

おいおいリリィちゃんにはかしこすぎる超頭脳があるだろ?

 

208:名無しのウマ娘ファン

あとめっちゃ顔が良い

それとすごくいい子

 

209:名無しのウマ娘ファン

めっちゃ甘やかしたい…

 

210:名無しのウマ娘ファン

両親友人周りみんなから甘やかされてるけどな

かわいいからしょうがねえけど

 

211:矢

ワタシもよくお菓子あげてるぞ

ちなみにワタシの好きなお菓子はホワイトロリータですっ!!

 

212:名無しのウマ娘ファン

>>211

う〜ん…これはセーフ

 

213:名無しのウマ娘ファン

>>211

アウ…セーフにしといてやるよ

 

214:リュウグウノツカイ

リリィちゃんはクラスでもみんなから餌付けされてるよ

 

215:名無しのウマ娘ファン

想像できて芝

俺もリリィちゃんにお菓子あげたい

 

216:名無しのウマ娘ファン

>>214

リュウグウノツカイは何かあげたの?

 

217:リュウグウノツカイ

>>216

テナガエビの素揚げ

おめめきらきらでかわいかった

 

218:名無しのウマ娘ファン

揚げ物をあげる者

…ふふっいい感じだな

 

219:名無しのウマ娘ファン

カイチョーは仕事に戻ってください

 

220:名無しのウマ娘ファン

女学生にしてはシブいチョイスっすね

 

221:名無しのウマ娘ファン

酒のつまみに最高なんすよ

 

222:名無しのウマ娘ファン

やだ…この掲示板加齢臭するわ…

アジフライ食いたくなってきたわ

 

223:名無しのウマ娘ファン

ほぼおっさんの巣だったからね仕方ないね

最近はウマ娘ちゃんがいるから平均年齢さがっちまったけどな!

 

────────

───────

──────

 

314:名無しのウマ娘ファン

そろそろパドックで紹介始まるよ

うおぉぉぉ!リリィちゃんとライスちゃんの勝負服見れるぞ!!

 

315:名無しのウマ娘ファン

やっぱり勝負服っていいよな

ウマ娘ちゃん毎に似合うデザイン考えるデザイナーは変態(賞賛)

 

316:名無しのウマ娘ファン

この前のミホノブルボンの勝負服すごかったね

こう…角度が…ね?

 

317:名無しのウマ娘ファン

本人が望んでたからセーフ

おっマチタンの勝負服ゆるふわでかわいいね

 

318:名無しのウマ娘ファン

むんむんしてきたわ

 

319:名無しのウマ娘ファン

ふーん…好き(小声)

 

320:名無しのウマ娘ファン

>>319

もっと大声で言え

 

321:名無しのウマ娘ファン

こういうゆるふわな服大好きです!!!!

 

322:名無しのウマ娘ファン

>>321

うるさい静かにしろ

 

323:名無しのウマ娘ファン

>>322

(´・ω・`)

 

324:名無しのウマ娘ファン

意地悪ばっかして…

もしかして好きなのかしら?

 

325:名無しのウマ娘ファン

>>324

はあーっ!?

べ、別にそいつの事なんて全然好きじゃないんだからねっ!!

 

326:名無しのウマ娘ファン

ツンデレ乙

 

327:名無しのウマ娘ファン

おっ!ライスちゃんきた!

あ゛っ…!か゛わ゛い゛い゛!!

 

328:名無しのウマ娘ファン

あっ…(即死)

肩出てるよちょっとえっちすぎません??

 

329:名無しのウマ娘ファン

鎖骨っ!!私鎖骨好きっ!!!!

 

330:名無しのウマ娘ファン

このままパーティ行けそうなぐらい綺麗なドレスね

好きですっ!!(クソデカ大声)

 

331:名無しのウマ娘ファン

あぁぁぁ!!今俺におてて振った!!

 

332:名無しのウマ娘ファン

>>331

は?今のは俺に振ったんだが??

 

333:名無しのウマ娘ファン

喧嘩するなよ…

さっきのは俺に決まってるだろ?

 

334:名無しのウマ娘ファン

めっちゃ似合ってる…すき…

 

335:名無しのウマ娘ファン

あ゛ー!!あ゛ーー!!あ゛ーー!!!

 

336:名無しのウマ娘ファン

限界化してる奴おるな…まあ可愛すぎるもんな仕方ない

 

337:名無しのウマ娘ファン

これ…リリィちゃん来たら耐えられる気がしないぞ…

 

338:名無しのウマ娘ファン

現地だけどみんな超興奮してるわ

 

339:名無しのウマ娘ファン

そろそろリリィちゃん来るぞ

 

340:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんき…

 

341:名無しのウマ娘ファン

ほひゅっ

 

342:名無しのウマ娘ファン

ぴゃっ

 

343:名無しのウマ娘ファン

ぴっ

 

344:名無しのウマ娘ファン

きゅ

 

345:名無しのウマ娘ファン

くぁ

 

346:名無しのウマ娘ファン

ぬっ

 

347:名無しのウマ娘ファン

にょ

 

348:名無しのウマ娘ファン

あびっ

 

349:名無しのウマ娘ファン

ま゛っ

 

350:名無しのウマ娘ファン

あ゛っ

 

351:名無しのウマ娘ファン

ふひゅー…

 

352:名無しのウマ娘ファン

お゛っ

 

353:名無しのウマ娘ファン

ふぉ

 

354:名無しのウマ娘ファン

あっ…すき

 

355:名無しのウマ娘ファン

かわいい

かわいい

 

356:名無しのウマ娘ファン

ぴー!ぴー!!

 

357:名無しのウマ娘ファン

俺は正気に戻った!

 

358:名無しのウマ娘ファン

ドヤ顔かわいいっすね

 

359:名無しのウマ娘ファン

ドヤ顔が無ければ即死だった…危ない…

 

360:矢

あ゛ーーーーー!!!!あ゛ーーーーーーー!!!!!あ゛あ゛あ゛ーーー!!!!!!!

 

361:リュウグウノツカイ

眩しい…

 

362:紅茶

本当に同じウマ娘か??かわいすぎるジャン

 

363:名無しのウマ娘ファン

露出度皆無だけどそれが逆にいいっすね

 

364:名無しのウマ娘ファン

真っ白じゃん

まじで真っ白じゃん

 

365:名無しのウマ娘ファン

ううっ…リリィちゃんすきぃ…

 

366:名無しのウマ娘ファン

デザインした人まじグッジョブ

 

367:名無しのウマ娘ファン

あの勝負服はリリィちゃんに対する理解度が高すぎる

もしかしてライスちゃんがデザインしたとか?

 

368:名無しのウマ娘ファン

白タイツすきっ!!

 

369:名無しのウマ娘ファン

>>367

そういや本人がある程度デザイン指定できるんだっけ?

ライスちゃんがリリィちゃんの代わりに描いてそうですね

 

370:名無しのウマ娘ファン

聖女様みたい…

時代が時代だったら神聖視されてそう

 

371:名無しのウマ娘ファン

今でも信仰は集めてると思う

ここのスレ民とかな

 

372:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんかわいいすると幸福が訪れます!!

さあ皆さんご一緒にっ!!

 

373:名無しのウマ娘ファン

怪しすぎて芝

リリィちゃんかわいい!!

 

────────

───────

──────

 

401:名無しのウマ娘ファン

あっあっ!レース始まる!!

 

402:名無しのウマ娘ファン

ふわぁ!緊張するっす!

この沈黙が怖いよね

 

403:名無しのウマ娘ファン

ドキドキしてきたわ

 

404:名無しのウマ娘ファン

────時は来た

 

405:名無しのウマ娘ファン

────さあ…始めよう

 

406:名無しのウマ娘ファン

その線ってどうやって出すの?

おいらがやるとーーーになるわ

 

407:名無しのウマ娘ファン

「けいせん」で変換すると出るよ

 

408:名無しのウマ娘ファン

──本当だ

──かっこいい

 

409:名無しのウマ娘ファン

あっ!始まった!!

 

410:名無しのウマ娘ファン

来たわねライスちゃんは先行…あれ?いないぞ?

 

411:名無しのウマ娘ファン

ん?…うわー!?リリィちゃんの後ろにいるっ!?!?

 

412:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんをマークしてるね

ライスちゃんって追い込みできるの?

 

413:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんの後ろにいるから実質先行なんだろ知らんけど

 

414:名無しのウマ娘ファン

(リリィちゃんがいる場合のみ)自在な脚質してるわね

 

415:名無しのウマ娘ファン

愛されてるな(白目)

これ展開的にどうなんだ?

 

416:紅茶

我慢比べジャン

先にイッた方が負けジャン

 

417:名無しのウマ娘ファン

なんか言い方が卑猥なんですけど…

 

418:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんの方がベッドの上だと強そう

 

419:名無しのウマ娘ファン

(ベッドで)リリィちゃんが勝てるビジョンが見えない

 

420:名無しのウマ娘ファン

スレが濁ってきたな

お前らレース見ろよ!

 

421:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんめっちゃ苦しそ…いや笑ってるんだけど!?

 

422:名無しのウマ娘ファン

マジじゃん芝

 

423:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんすごい顔してる…

こんなの実質うまぴょいじゃん

 

424:名無しのウマ娘ファン

野外プレイかな?

 

425:名無しのウマ娘ファン

セッ◯スのことうまぴょいっていうのやめなよ

 

426:名無しのウマ娘ファン

こら!オブラートに包みなさい!ここには未成年もいるんですよ!

 

427:紅茶

うちの後輩はレースに夢中になってるからセーフジャン

 

428:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん脂汗すごいな

 

429:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんめっちゃ恍惚としてるよ…

 

430:名無しのウマ娘ファン

マチタンが振り向いてギョッとしてるよかわいそ

 

431:名無しのウマ娘ファン

他のウマ娘ちゃんも何人か振り向いてたな

さすがに刺激が強すぎるな

 

432:名無しのウマ娘ファン

走る猥褻物

 

433:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん粘ってるけどこれやばくない?

 

434:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんのねちょねちょマークやばいなリリィちゃんトロトロにされてる

 

435:名無しのウマ娘ファン

言い方ぁっ!!

 

436:名無しのウマ娘ファン

最低っ!!

 

437:名無しのウマ娘ファン

おっ?リリィちゃんもう仕掛けるのか

ちょっち早くない?スタミナもつのか?

 

438:紅茶

逆ジャン

スタミナがもたないから無くなる前にゴールしようって魂胆ジャン

 

439:名無しのウマ娘ファン

まじかよライスちゃんのマークこっわ…

 

440:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん仕掛けてるけどライスちゃんピッタリくっついてるじゃん

 

441:名無しのウマ娘ファン

地味にマチタンもきてるね

その後ろに他のウマ娘ちゃんたちもいるな

 

442:名無しのウマ娘ファン

やばいなこれリリィちゃんヘロヘロじゃん

 

443:名無しのウマ娘ファン

いつものゴリラパワーが全く無いぞ…

 

444:名無しのウマ娘ファン

スピード落ちてきたか?

 

445:名無しのウマ娘ファン

うわあー!!がんばれリリィちゃん!!

 

446:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんー!がんばえー!

 

447:名無しのウマ娘ファン

あっ!

 

448:名無しのウマ娘ファン

うぎゃっ!

 

449:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃん交わした!

 

450:名無しのウマ娘ファン

あぁっ…リリィちゃん垂れてきた…

 

451:名無しのウマ娘ファン

それでも俺たちは応援をやめないぞ

リリィちゃんがんばれー!

 

452:名無しのウマ娘ファン

まだレースは終わってないぞ!いけー!リリィちゃん!!

 

453:名無しのウマ娘ファン

あぁ…どんどん離される…

 

454:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんがんばれ!

 

455:名無しのウマ娘ファン

がんばえー!

 

456:名無しのウマ娘ファン

うおっ!

 

457:名無しのウマ娘ファン

うびゃっ!?

 

458:名無しのウマ娘ファン

わおっ!

 

459:名無しのウマ娘ファン

来たっ!リリィちゃん来た!!

 

460:名無しのウマ娘ファン

どこにスタミナ残ってたんだ?まあいっかいっけー!!

 

461:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんはやい!がんばれっ!

 

462:名無しのウマ娘ファン

おお!追いついてきた!!

 

463:名無しのウマ娘ファン

すげぇ表情してる!

 

464:名無しのウマ娘ファン

二人とも必死だな

本気のレースマジ尊い…

 

465:名無しのウマ娘ファン

うおおお!!リリィちゃんいけぇー!!

 

466:名無しのウマ娘ファン

あっ!!リリィちゃん交わした!!

 

467:名無しのウマ娘ファン

すごいぞリリィちゃん!!

 

468:名無しのウマ娘ファン

よっしゃいけいけリリィちゃん!!

 

469:名無しのウマ娘ファン

えっ?

 

470:名無しのウマ娘ファン

ま?

 

471:名無しのウマ娘ファン

ぴゃう?

 

472:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんが再加速した!?!?

 

473:名無しのウマ娘ファン

ひょわっ!?早すぎる!?!?

 

474:名無しのウマ娘ファン

あっあっ!!負けるなリリィちゃん!!

 

475:名無しのウマ娘ファン

ああーー!!!がんばれ!!

 

476:名無しのウマ娘ファン

あっ!交わされた!!

 

477:名無しのウマ娘ファン

ふわあーー!!

 

478:名無しのウマ娘ファン

あーー!!!

 

479:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんゴール!!

 

480:名無しのウマ娘ファン

おぉん!

 

481:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃん強かったな!

 

482:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんおつかれさま!

おめでとうライスちゃん!

 

483:名無しのウマ娘ファン

すげぇ勝負だったな

オラ生で見れて感動したっぺ

 

484:紅茶

…まさか…いやマジか?

 

485:名無しのウマ娘ファン

二人ともすごかった!!

 

486:名無しのウマ娘ファン

あっ!リリィちゃんたち転んじゃった!!

 

487:名無しのウマ娘ファン

大丈夫か?怪我してない?

 

488:名無しのウマ娘ファン

…絡み合う二人…ちょっとえっち…

 

489:名無しのウマ娘ファン

なかなか起き上がれませんな

 

490:名無しのウマ娘ファン

そりゃあんだけ激しいレースしたからな仕方ないよ

 

491:名無しのウマ娘ファン

あっ!!二人で支え合って起き上がってる!!

 

492:名無しのウマ娘ファン

あ゛あ゛!?!?死ぬっ!!

 

493:名無しのウマ娘ファン

ふひっw

 

494:名無しのウマ娘ファン

興奮してきたわ

 

495:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんおてて振ってる!!かわいいきれいすきっ!!

 

496:名無しのウマ娘ファン

いい顔してる…涙出てきたわ

 

497:名無しのウマ娘ファン

おっさんになると涙腺が緩んでいかんわ…

 

498:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんがリリィちゃんのほっぺ撫でてる!!僕も撫でたい!!

 

499:名無しのウマ娘ファン

あら^〜

 

500:名無しのウマ娘ファン

いいですわ!興奮してきましたわ!!

 

501:名無しのウマ娘ファン

ん?抱き寄せたぞ?

 

502:名無しのウマ娘ファン

顔近っ!

 

503:名無しのウマ娘ファン

あっ!やめて!もう俺のライフは0よ!

 

504:名無しのウマ娘ファン

やばいやばいやばい興奮で死にそう

 

505:名無しのウマ娘ファン

いやお顔近すぎない?

 

506:名無しのウマ娘ファン

これもうちょっとでk

 

507:名無しのウマ娘ファン

ん?

 

508:名無しのウマ娘ファン

くちびる

 

509:名無しのウマ娘ファン

おでこにふれた?

 

510:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんの?

 

511:名無しのウマ娘ファン

おでこに?

 

512:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんが

 

513:名無しのウマ娘ファン

ぷにぷに

 

514:名無しのウマ娘ファン

んん?

 

515:名無しのウマ娘ファン

ん〜?

 

516:名無しのウマ娘ファン

ふむふむ…

 

517:名無しのウマ娘ファン

んにゃ〜?

 

518:名無しのウマ娘ファン

つまり

 

519:名無しのウマ娘ファン

どういう事だってばよ?

 

520:名無しのウマ娘ファン

 

521:名無しのウマ娘ファン

んん?

 

522:名無しのウマ娘ファン

…ねえ今のって

 

523:名無しのウマ娘ファン

おでこにちゅーした?

 

524:名無しのウマ娘ファン

したね

 

525:名無しのウマ娘ファン

きすしたってこと?

 

526:名無しのウマ娘ファン

そうだね

 

527:名無しのウマ娘ファン

そうだよな?

 

528:名無しのウマ娘ファン

え??

 

529:名無しのウマ娘ファン

ふむ…

 

530:名無しのウマ娘ファン

うわあああああああああ!?!?!?!?!?!?ちゅーした!!!!!!!!!!!

 

531:名無しのウマ娘ファン

ほわあぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?!?!?

 

532:名無しのウマ娘ファン

にゃーーー!?!?!?!?!?

 

533:名無しのウマ娘ファン

つまり!!!!キスしたってこと!?!?!?!?

 

534:名無しのウマ娘ファン

は?

は?

こんなの告白じゃん

 

535:リュウグウノツカイ

私耳が良いから聞こえた周りうるさいやばい

ライスシャワー「大好き♡」

って言ってた

 

536:名無しのウマ娘ファン

>>535

告白じゃん!!!!!!

 

537:名無しのウマ娘ファン

>>535

は?ほ?ほぉん!?!?!?

 

538:名無しのウマ娘ファン

あっ!!リリィちゃんの顔が!!!メスの顔になってる!!!

 

539:名無しのウマ娘ファン

あーあ…理解させられちゃったね…

 

540:名無しのウマ娘ファン

恋心…理解しちゃったね♡

 

541:名無しのウマ娘ファン

いやちょっと待て…

いや本当に待って!!

 

542:名無しのウマ娘ファン

キャパオーバーしたっす

 

543:名無しのウマ娘ファン

周りのウマ娘ちゃん達すっげぇ顔してるじゃん芝生える

 

544:名無しのウマ娘ファン

マチタン目の前で見せつけられてるじゃん芝3000

 

545:名無しのウマ娘ファン

やばいよやばいよ…

 

546:名無しのウマ娘ファン

いいのか?てかこれ電波乗ってるじゃん!!

 

547:名無しのウマ娘ファン

全 世 界 に 告 白 を 見 せ つ け た 女

 

548:名無しのウマ娘ファン

しかもGⅠレースですぜ?

ある意味伝説だよ

 

549:名無しのウマ娘ファン

この空気の中でライブすんの?

マジで?

 

550:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんとライスちゃんめっちゃ幸せそう…

おめでとう?でいいのかな…?

 

────────

───────

──────

 

801:名無しのウマ娘ファン

ウマッターのトレンドやばいね

リリィちゃんとライスちゃん一色だわ

 

802:名無しのウマ娘ファン

覚醒した人沢山いて芝

 

803:名無しのウマ娘ファン

刺激が強すぎる…

まさか恋もレースも1着とは

 

804:名無しのウマ娘ファン

ライブ始まったな

まだ周り若干動揺してて芝

 

805:名無しのウマ娘ファン

動揺しない方がやばいだろ

目の前で超特濃百合の波動食らったんだぞ?

 

806:名無しのウマ娘ファン

聞いてくれ

カカオ99%のチョコが甘い

 

807:名無しのウマ娘ファン

ブラックコーヒー甘ったるいんだが???

 

808:名無しのウマ娘ファン

いや…まあ…しょうがねぇだろ…

 

809:名無しのウマ娘ファン

うわー!?ライスちゃんとリリィちゃんでイチャイチャオーラ出てる!?!?

 

810:名無しのウマ娘ファン

もうキスするなよ?

 

811:名無しのウマ娘ファン

さすがにしないだろ?…しないよな?

 

812:名無しのウマ娘ファン

すれ違いざまにほんの少し手を絡めてるな

俺じゃなきゃ見逃しちゃうね

 

813:名無しのウマ娘ファン

くそぅ…めっちゃかわいい…すき…

 

814:名無しのウマ娘ファン

綺麗だな…

恋する少女は綺麗になるっていうけどその通りだったな

 

815:名無しのウマ娘ファン

恋を知ったリリィちゃんは一歩大人に近づいたな…

今までが幼女すぎただけかもしれんが

 

816:名無しのウマ娘ファン

でもかわいいだろ?

 

817:名無しのウマ娘ファン

うん!

 

818:名無しのウマ娘ファン

当たり前だよなあ?

 

819:名無しのウマ娘ファン

二人とも綺麗だ…

 

820:名無しのウマ娘ファン

そういやご両親も応援に来てるよな?

…見られちゃったの?あれを???

 

821:名無しのウマ娘ファン

でもちっちゃい頃からイチャイチャしてそうだし…

いやさすがにキスはしてないか…

 

822:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんとライスちゃんって同室なんだっけ

今夜はうまぴょいですね!

 

823:名無しのウマ娘ファン

>>822

ちょっと待てェ

リリィちゃんにそういう知識無さそう

 

824:名無しのウマ娘ファン

待て待てそういうのは順序というのが…あれ?普段からデートしてるし次はうまぴょいか…?

 

825:名無しのウマ娘ファン

やめなさい!

 

826:名無しのウマ娘ファン

キスで顔真っ赤で幸せオーラ全開のリリィちゃんにうまぴょいはヤヴァイ

 

827:名無しのウマ娘ファン

ご両親に挨拶を…もうしてるじゃん!

 

828:名無しのウマ娘ファン

次は結婚か…レース引退したらすぐに結婚しそう

 

829:名無しのウマ娘ファン

色んな意味で見逃せないな

 

830:名無しのウマ娘ファン

いやぁ…これからが楽しみですなあ…

 

 



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第16話 酒は飲んでも飲まれるな!です!

ほとんどトレーナー達が喋っている回です。
※タイトル変更しました。内容に変更はありません。


 焦点の合わない瞳で赤ら顔の女が大声で笑っている。その隣で同じように顔を赤くした男が顔面をくしゃくしゃにしながら咽び泣いている。それを死んだ目で女は眺めていた。時は年末。場所はどこにでもある居酒屋で、ここにいる三人の大人──トレーナー達は忘年会をしていた。

 飲み会で醜態を晒す姿はある意味風物詩とも言えるが、こんな光景は子どもたちには見せられないなぁ。なんて思いながら、私はコップになみなみと注がれた日本酒をグイッと一気に飲み干した。

 

「あ〜お〜じ〜くぅ〜ん! な〜ん〜で〜む〜し〜す〜る〜のぉ〜!!」

 

 いや、本当に見せられないな……。頭をぐりぐり押し付けてくる先輩トレーナーを無視してタコの唐揚げを口の中に放り込む。あぁ……タコうめぇ。若さゆえの特権か、まだ油物を食べても余裕の胃袋に感謝し、ついでに酒を追加するためにタッチパネルを操作する。

 

「あおじくん! わらしもおしゃけのむっ!」

 

 ぺちぺちと太ももを叩いてくる酔っぱらいを無視し、日本酒と天ぷら盛り合わせと刺身とお魚フライを追加で注文した。もちろん酔っぱらいに酒など飲ませない。ビールジョッキ3杯とハイボールジョッキ4杯と日本酒コップ3杯とウィスキーロックで1杯飲んだ自分は棚に上げておく。

 

「アルコール度数0でいっぱい飲んでも酔わない上に寧ろ酔い醒ましに効くヤツ頼んでおきましたよ〜」

「えぇ〜!! なにそれすっごぉい!! さっすがあおじくぅんたよりになるぅ!」

 

 ──ただの水である。酔っぱらいに正常な判断力など無いのでテキトーでいいのだ。そんな事は置いといて、ここにいる二人の酔っぱらい──キョウエイボーガンのトレーナーである本田さんとアッシュストーンのトレーナーである中村さんを眺めながら、どうしてこうなったのかを思い出してみた。

 

 

 

 リリィとライスのホープフルステークスが終わった後日、私は疲労でくたくたになっていた。理由としては私の愛バである二人が起こした事件「イチャイチャ☆ホープフル♡」と、その後のゲロ甘ライブとラブラブ勝利者インタビューがほとんどなのだが、幸せそうに寄り添う二人に何も言えず、静かに祝福した。

 いや、レースそのものは本当に素晴らしかったのよ。親友でライバル同士の対決にお姉さまの心は熱く燃えたわ。まあ、親友から恋人にランクアップしてしまったんだけどね。

 そんな二人なんだけど、今はトレセン学園にはいないわ。流石に年末は実家に帰るという事で新幹線に乗り帰省したの。ライス、別れ際にほっぺにちゅーするのはやめなさい、胸焼けがするのよ。「……待っててね♡」「……うん♡」じゃないわよ。

 最近は二人のイチャイチャに耐性ができていたのにこの短期間で急激なパワーアップを遂げた事で、耐性を凌駕するイチャイチャパワーによってお姉さまは死んだ。だがすぐに生き返ってまた死んで生き返って、それを延々と繰り返した。生と死の狭間を高速で反復横跳びする私に、流石に死神も哀れなものを見る目でこちらを見ていたわね。死神と言っても斬魄刀は持ってなかったわ。

 とはいえ今年のやる事は終わったので、今のお姉さまは暇そのものである。実家に帰る予定も友達と遊ぶ予定も恋人……そんな者はいないが、とにかく何も予定なんて無い。久しぶりに晩酌でもしようかなと思い、トレーナー寮から出かける為に上着を羽織ろうと手を伸ばした瞬間にピロロンとスマホから着信音が鳴った。誰からの電話だ? と思い見てみると、そこに「本田」という文字が表示されていた。

 

『やあやあ青路くん。ちょっと大事な話がしたいんだが今暇かい?』

「大事な話……愛の告白ですか? 私は今からお酒でも買おうかなぁと思ってコンビニに行こうとしてたぐらい暇なので大丈夫ですよ」

『ふっふっふ……。それはとても魅力的な話だが今回の件はそれとは関係無いよ。そうだねぇ……丁度いいし、忘年会も兼ねて居酒屋にでも行くかい? 青路くんがオシャレな店がいいって言うなら今から必死にスマホで検索させてもらうがね』

「オシャレな店より気楽な居酒屋の方が好きなのでそっちでいいですよ」

『そう? 嬉しいねぇ。どうやら私達は気が合いそうだ。お店の名前は○○、場所は後でLANEで送るよ。時間は……そうだねぇ……18時ぐらいでいいかな? 予約とかは心配しなくていいよ。私行きつけのお店なんだが、いつも客が少ないんだ。あぁ、あと中村くんもついでに呼ぶけど構わないかい?』

「大丈夫ですよ。でも女性二人に囲まれて気まずくならないかだけは心配ですね」

『美人二人に囲まれるんだ。寧ろ本望だろう? ……それじゃあまた後で会おう。じゃあねぇ〜』

「はい。ではまた後で」

 

 本田さんとの通話を終了して現在の時刻を確認すると時刻は13時ちょっと。なので飲み会までまだ時間がある事に気づいた。仕事があれば時間などいくらでも潰せるが、生憎もう終わらせてしまったのでやることが無い。

 

「…………ライスとリリィがいれば構ってもらえたんだけどなぁ。……マンガでも読むか」

 

 

 

 

 集合時間の5分前に目的の居酒屋に到着した私は、本田さんと中村さんがいないか周りを確認した。すると、少し離れたところからゆらゆらと片手を振る本田さんと、そこから少しだけ離れてついてくる中村さんの姿を確認できた。

 

「遅れてごめんね〜。もしかして結構待ってたりするかい?」

「大丈夫ですよ。私もさっき来たばかりなので」

「そうかい? ならよかった。……デートだと定番のやりとりだが、そうすると中村くんがお邪魔だねぇ」

「呼んだのはあなたでしょ……」

 

 くすくすと笑いながら「怒った? ねぇねぇ?」と揶揄うが、普段からよくやられているのか中村さんは慣れた様子で「いいからお店入りますよ。青路さんに迷惑でしょ……」と本田さんを店へ入るように促した。

 店に入ると確かにお客の人数が少なく、本田さんが言ってたように繁盛しているとは言い難かった。お姉さまにとっては気にすることじゃないのでスルーしたが。店員に席に案内されて四人席へ着くと、「青路くんの隣も〜らい!」と本田さんが隣に座った。私も中村さんも特に気にする事なくメニューを手に取った。

 

 

 

 

 

「──じゃあそろそろ本題に入ろうか。今日君達を呼んだのは『領域』について伝える必要があったからだ」

「「領域?」」

 

 バトル漫画かな? と思ったが、噂程度の話なら聞いたことがあったなと思い出した。中村さんもこちらと同じようなリアクションをしている。

 

「まあ名称なんて領域でもゾーンでもなんでもいいんだが……とにかくこれについて説明させてもらうよ。……といっても私達『ヒト』は基本的にこれを感知する事はできないんだがね。ウマ娘のみがこれを発生させたり感知したりできるんだ」

「……もしかして先日のホープフルステークス……ライスの最後の加速が関係しているんですか?」

「ややっ……正解だよ。よくわかったね? ……といっても多分なんだけどね。別に悪い事じゃないから心配はしなくていいよ。本当はこの話はしない予定だったんだが……まさかライスちゃんが領域を使えるようになるとは思ってなくてねぇ……。恐らくだがリリィちゃんも片足ぐらいは突っ込んでるよ」

「……その話って俺にも関係あるんですか?」

「もちろん。アッシュストーンも片鱗を見せているし、この前戦ったミホノブルボンだってそうさ。他にもチラホラいるよ。まあ完全に領域を出せたのはまだライスちゃんだけだと思うがね。今年は豊作すぎて困っちゃうねぇ…」

「…………ミホノブルボン、か」

 

 どうやら中村さんは先日の朝日杯フューチュリティステークスの事を思い出しているようね。アッシュストーンとミホノブルボンが対決し、惜しくも敗れてしまった苦い記憶を。私も偵察の為に当日一緒にいたんだけど、その時アッシュストーンは「そんなに気にするなよ。オレはまだ走れるんだ、次がある」って言っていたけど、やはり勝たせてあげたいと思うのがトレーナーという生き物だ。それが表情に出てしまっているわ。

 

「ほらほらそんな顔しないの。この領域というやつはね、才能のあるウマ娘のごく一部が使えるようになる代物でね。効果は個人によって異なるが限界を超えて加速したり、体力を回復したりとそれこそゲームのような効果があるんだよ。一説によると己の魂の具現だとかなんとか言われているが本当かどうかは知らないよ。時期的には早くてクラシック級の後半……大体秋頃、ほとんどはシニア級に入ってから使えるようになるんだ。条件として肉体と精神の成熟が必要でね。つまり何が言いたいのかというと、ライスちゃんは使えるようになるのが早すぎたんだ」

「……それじゃあライスの身体に負担がかかってる……という事ですか?」

 

 もしそうだとしたら、愛バの変調に気づけなかった自分を許せないと思ったが、本田さんはふるふると首を横に振った。

 

「いや、それがね……私もそう思っていたんだが……多分大丈夫だと思うよ。普通この時期には使えないんだが、あの時のライスちゃんはリリィちゃんに対する強い想いで領域を発動させたんだ。まだ未熟な肉体を、尋常じゃない精神力で補ったんだと思うよ。だから肉体的な負担はそれほど無くて、ライスちゃんも特に何事もなく今も元気だろう? まあこれはあくまで推測に過ぎないけどね。……正直、私にも詳しい事はわからないよ」

「…………うそん」

 

 荒唐無稽な話だが、普段のあのイチャイチャを見ているとあながち間違いではないと感じてしまう。言った本人の本田さんも「まあ、ウマ娘自体が不思議な存在だから」と若干呆れた顔をしていた。

 

「というわけで青路くんにわざわざ話したのは担当のウマ娘が領域に目覚めたからなんだけど、基本的に領域については話すべきじゃないんだ。さっきも言った通り私達には知覚する事が出来ず、またそれを習得するのは困難なのと、領域を習得するために変な特訓をさせてウマ娘を壊しかねないというのが主な理由だ。中村くんを呼んだのはアッシュストーンもそれに到達する可能性があるからだ。君が彼女に変な特訓をさせないって確信している故の信頼と言い換えてもいいよ。……まあトレセン学園に入学してる時点で全員が領域を使う資格があるようなものなんだけどね」

「もちろんです。俺はアッシュを信じてる。領域についてはよくわかりませんが、今は彼女をもっと強くする事が大事です」

「なるほど、よくわかりました。……ところで領域を使えるかどうかってどうやって見分けるんですか?」

「ん? う〜ん……カンだよ。意外とバカにならないよ? レジェンドと呼ばれるウマ娘達のレース映像をよく観察してみるといい。先輩からのアドバイスはこれでおしまいさ。長くなってごめんね?」

「わかりました。ありがとうございます本田さん」

 

 話に区切りがついたところで先程注文した料理がテーブルに届いた。それを見た本田さんが「待ってましたー!」とはしゃぎ出し、先ほどまでの頼り甲斐がある姿が一瞬でなくなったなぁ、などと呑気に考えていた。

「領域」の事はひとまず頭の片隅に追いやり、まずはこの料理をいただく事にしよう。せっかくの忘年会だ、難しいことは明日の私に任せよう。

 

「よしよし。難しい話は今は無しだ! とりあえず二人とも、乾杯しようよ! ほらほら! ……よし、いいね? それじゃあ今年もお疲れ様でしたー!」

 

 カンパーイ! とみんなで言い、それを見た本田さんは満足そうに頷いた後、喉を鳴らしながらハイボールジョッキを半分ほど飲んで「ぷはーっ!」とおっさんみたいな声を出した。

 

「本田さん……あんまりお酒強くないんだから、そんなに一気に飲んじゃダメですよ?」

「なぁ〜にぃ? 生意気だぞ中村くん。君だってお酒弱いじゃないか!」

「分かってるからあなたみたいには飲まないんですよ。……そういえば青路さんってお酒大丈夫ですか? 苦手なら頼まなくても大丈夫ですからね。この人に言われても気にしないでいいですから」

「大丈夫ですよ、お酒好きなので。中村さんはどうなんです?」

「正直ジョッキ1杯で限界ですね。でもお酒自体は好きなんですよ」

「そうなんですか。……そういえばお二人ってなんだか仲がいい気がするんですけど、普段からこうやって食事したりするんですか?」

 

 普段の親しい様子から気になり質問してみたのだが、それを聞いた中村さんは微妙な笑顔になった。……聞かないほうがよかったかもしれない。

 

「……まあ、本田さんから誘われてたまにこうやって飲みに行ったりはしますけど、仲がいいかと言われたら……微妙ですね。トレーニングのアドバイスとかはしてもらったりしますが」

「おやおや? 私とイイ仲だと中村くんは困っちゃうのかなぁ?」

「そんなんじゃないですよ。本田さん、青路さんに失礼ですよ」

 

 簡単に一蹴される本田さんを見て、普段からこんな感じなんだろうなぁと思った。そういえば自分はトレーナーになってからはこうして誰かと出かける機会が無かったなぁ。ライスやリリィとはよく出かけるんだけどね。主に保護者役としてだけど。

 

「私はトレーナーになってからはこうして誰かと遊びに行く機会が中々ありませんでしたね」

「おやおや? こんな美人さんなのにかい? 世の中見る目がないやつばかりだねぇ」

「私自身が断ってたっていうのもありますけどね。でも、たまにはこうやって気楽にお酒を飲むのもいいかもしれません」

「うんうん! そうだよそうだよ〜! じゃあこれからは遠慮せずに誘わせてもらうね〜!」

「青路さん、断っていいですからね。この人は調子に乗ると鬱陶しいので」

「……中村くぅん?」

「大丈夫ですよ。ちゃんと行けたら行くって返事しますから」

「それって行かない時の常套句だろう!? やだー!!」

 

 もう酔っ払ってるなこの人。なんか妙に気に入られてるのよね。別にいいけど。

 暫く談笑しながら食事を続け、お姉さまはハイペースでお酒を飲み続けた。それに釣られて本田さんと中村さんも飲むペースを上げてしまい、見事に酔っぱらい二人が出来上がった。お姉さまはウィスキーを瓶で一気飲みしても酔わない程度にはお酒には強い。(※危険なので絶対に真似してはいけません)私はお姉さまよ? 私を酔わせたければスピリタスでも持ってきなさい。

 どうやら本田さんは笑い上戸で中村さんは泣き上戸のようね。本田さんは啜り泣く中村さんを見て大声で笑っている。二人とも明日の朝は二日酔いで大変だろうなぁ。

 

「……大丈夫ですか? お水飲みます?」

「いらないっ! だっれわらし、ぜんぜんよっれないもん!!」

「……中村さんもお水どうぞ」

 

 暫く水を眺めていた中村さんは突然大声で泣き始めた。思わずぎょっとしたが、表情には出さずに優しく背中をさすっておいた。

 

「……俺は……アッシュのお荷物ですっ……! 勝たせて、あげられない……! ……ブヒッ!」

 

 今回は違うが、過去にアッシュストーンが敗北した相手がリリィであるため、お姉さまはかけてあげられる言葉がなかった。

 

「…………ライスとリリィは、何してるのかなぁ……」

 

 ぽつんと呟くが、その小さな声は酔っぱらいの笑い声と泣き声にかき消されてしまった。

 

 

 

 


 

 

 白い少女が真っ白な雪景色の中を軽やかな足取りで歩んでいる。その姿は、妖精のように可憐で美しい。金色の瞳が映す景色は、故郷を離れた時とほとんど変わらぬ様子で、その光景に少女は懐かしさを覚えた。

 

「久しぶりだなぁ……。トレセン学園に入ってからまだ一年も経ってないけど、すごく懐かしく感じますね」

 

 鼻歌を歌いながら暫く進んで行くと目的地にたどり着いた。そこには二人の大人が立っていて、少女を見つけた彼らは優しく微笑みながら声をかけた。

 

「……おかえり、リリィ」

「……おかえりなさい! リリィちゃん!」

 

 その声を聞いた少女は駆け出した。愛する両親の元へ。二人の胸へ飛び込みそのまま抱きしめ、そして少女の太陽のような笑顔が弾けた。

 

「──ただいまっ!」

 

 




ジュニア級編はこれでおしまいです。次回は怪文書です。


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キャラ設定という名の怪文書 ジュニア級編(5〜16話既読推奨)

前話の感想で私の小説が怪文書扱いされてて芝生えますね。
※後書きを加筆しました。


 シロノリリィ(オリジナル)

 本作の主人公で転生者の白毛ウマ娘。前世の知識はもうほとんど覚えていないが、記憶の片隅にほんの僅かに前世の記憶が残っている。おっぱいはAAカップ。通称聖壁(ホーリーウォール)。他にもウォールリリィなどの呼び方がある。13歳ならこれぐらい普通だよね! (ダスカやドトウから目を逸らす)なお成長の余地は無い。体操服はブルマ。世界から魂レベルで女の子認定されている。

 中等部一年。ルームメイトはライスシャワー。トレーナーは青路。

 ライスちゃんと再会した時嬉しさのあまりにすきすきライスちゃん♡のお歌を歌った。この珍妙な歌はリリィちゃんのママの影響である。

 基本的にライスちゃんがやる事は疑わない。なので匂い嗅ぎや素手密着洗いっこも疑問に思ったりしなかった。リリィちゃんのママが同じような事をしていたので疑問に思わなかったというのもある。

 基本的にチョロいのでちょっと優しくするとすぐに懐く。でも悪意には敏感。仲良くなるハードルはめっちゃ低いけど顔が良すぎるせいで話しかける人がいなかった。なので幼稚園〜小学校は友達がいなかった。

 前世+13年かけてやっと恋心を理解した。

 ライスちゃんにちゅっちゅ♡されて完全に女の子にされた。TS主人公特有のメス堕ち達成! かわいいね♡性欲はまだ無い。

 

 ライスシャワー(原作キャラ)

 本作のもう一人の主人公。リリィちゃんガチ恋勢。ネット情報で推定Cカップあると知って…… オレは ビックリした。体操服は短パン。

 一人称は基本的に「ライス」だが、ガチの時や精神的に追い詰められると「私」になる。

 高等部一年。ルームメイトはシロノリリィ。トレーナーは青路。

 シロノリリィに対する恋心を自覚したのは、幼少期の夏祭りで約束した日。それ以前から淡い恋心を抱いていたが、眩しすぎるリリィちゃんの光に当てられて完全に恋に落ちた。

 基本的なプロフィールはアプリと一緒。

 幼少期のおまじないの本来の内容は「約束して指輪を交換する」だけだったが、ライスシャワーがアドリブで「お互いの頭もしくは髪にキスをする」を追加した。おまじないを考えたのはお母さまだが、このアレンジのことは知らない。ちなみに頭と髪へのキスは「その相手を愛おしく思う」という意味だが、当時のライスシャワーはこの意味を知らない。今は全身にキスをしたいと思っている。

 この世界のライスちゃんはリリィちゃんのせいで男性に興味がなくなった。もっと詳しく言うとリリィちゃんしか愛せなくなった。お姉さまの事は大好き。リリィちゃんの事をえっちな目で見てる。

 もしもの話だが夏合宿でのキスを成功させた場合、そのままリリィちゃんが恋心を自覚してた。まあ、失敗したおかげで吹っ切れて大胆なアピールをするようになったのだが。

 ホープフルステークスで見事にリリィちゃんをメス堕ちさせた。

 

 アッシュストーン(オリジナル)

 ジュニア級編のチュートリアル兼中ボス担当。おっぱいが大きくて腹筋がバキバキ。体操服は短パン。

 一人称は「オレ」

 高等部一年。ルームメイトはキョウエイボーガン。トレーナーは中村。

 リリィちゃんにわからせられる前はかなり口が悪かった。今はキョウエイボーガンとトレーナー相手だと口が悪くなる。初期ベジータと魔人ブウ編以降のベジータみたいな感じ。(わからせ前→とげとげアッシュちゃん。わからせ後→やわらかアッシュちゃん)

 趣味は動物の動画を見る事。好きな食べ物は肉。炭酸飲料が苦手。

 実家でシベリアンハスキーを飼っている。名前は「わんた」で小さい頃から一緒に暮らしてきた。愛犬の写真をスマホの壁紙にしている。

 アッシュちゃんと呼ばれるのを拒否する理由は、両親と同じ呼び方だから。つまりただの反抗期。

 リリィちゃんがいないルートだとミホノブルボンに負けて心が折れて退学する。トレーナーは病む。

 キョウエイボーガンと一緒にゴールデンカムイを見た感想は「面白いけど…変態ばかりでやべぇな…」だった。リリィちゃんはヒグマより強い。この世界の「馬」要素は別のナニかに変換されているので安心してほしい。

 クラシック級編は多分ほとんど出番がない。

 

 キョウエイボーガン(原作だけど原作じゃない)

 小柄な栗毛のウマ娘。原作(競馬)にいるけど原作(アプリ)にいない。おっぱいはBカップ。体操服は短パン。

 一人称は「ワタシ」

 高等部1年。ルームメイトはアッシュストーン。トレーナーは本田。

 座学は上位……なのだが、作者が賢くないので賢い雰囲気を出してあげられない。ごめんね? 性格は(リリィちゃんが関わっていなければ)冷静で、友達を揶揄って遊んだりするお茶目ガール。現在の被害者はアッシュストーン。

 趣味はゲーム、アニメ鑑賞、ソシャゲ。たまにみんなで集まってゲームをする。実は家事が得意。

 初恋はリリィちゃん。リリィちゃんとライスちゃんのホープフルステークスで脳が爆発したが、なんとか復活して頑張って二人を祝福した。

 ウマチューブで「キョウボーチャンネル」という名で活動している。登録者数は343人。ソシャゲのガチャで毎回天井をぶん殴っている。

 お母さんが大好き。

 

 レッドボンバ(オリジナル)

 赤くてもふもふの髪が特徴のウマ娘。おっぱいはBカップ。体操服は短パン。

 陽キャに憧れる陰キャ。周りの人達は根が陰キャなのに気づいているが、本人が知ったら泣きそうなので気付いてないふりをしている。

 一人称は「あたし」

 高等部一年。ルームメイトはエンピツダッシュ。

 趣味はぬいぐるみ作り。最近ウマスタを始めてみようとしたが、陽の気が強すぎてアカウントを作る前にびびってやめた。ウマッターで自作のぬいぐるみを写真に撮ってアップしている。

 リリィちゃんの大ファン。脚フェチ。

 エンピツダッシュの事を「ぴっつん」と呼ぶ。相方に対する湿度は65%

 

 

 エンピツダッシュ(オリジナル)

 挙動不審の陰キャ。仲良くなると結構図々しい性格をしている。陽の気を当てられると死ぬ。おっぱいはCカップ。体操服は短パン。

 一人称は「わたし」

 高等部一年。ルームメイトはレッドボンバ。

 趣味はネトゲとソシャゲとアニメ鑑賞。FPSをよくやっている。キョウエイボーガンは友達だが、多分本編で絡むことはない。

 リリィちゃんの大ファン。美少女のおなかが好き。

 レッドボンバを「ぼんちゃん」と呼ぶ。相方に対する湿度は55%。

 

 リュウグウノツカイ(オリジナル)

 リリィちゃんのクラスメイト。リュウグウノツカイは掲示板で使っているハンドルネーム。口数が少なくシャイな性格。ダートウマ娘。マイルと中距離が得意。おっぱいはBカップ。体操服は短パン。

 一人称は「私」

 中等部一年。チームに所属している。

 趣味は釣り。実家の水族館を宣伝するためにトレセン学園に入った。作者の釣り知識は、漫画「放課後ていぼう日誌」のみ。

 リリィちゃんと仲良くしたいと思っているが、恥ずかしくて中々話しかけられない。

 本名は「スイプロ」名前の元ネタは某クソゲー水族館プ○ジェクト。

 リリィちゃんがダートウマ娘でマイルが得意と聞いていたので「一緒に走れるかも」とワクワクしていたが、三冠路線に進んだのでちょっとしょげている。

 

 紅茶(オリジナル)

 リュウグウノツカイが所属するチームの先輩。紅茶はハンドルネーム。ダートウマ娘で短距離とマイルが得意。体操服は短パン。

 シニア級のベテランウマ娘でGⅠでも勝利した経験があり、ホープフルステークスではライスちゃんの領域を見抜いた。

 一人称は「パン」で語尾は「ジャン」

 紅茶をこよなく愛する淑女。ちなみに種類とか値段は気にしない。「美味ければいいジャン」

 本名は「パンドラジャンム」名前の元ネタは自走式陸上爆雷ことパンジャンドラム。

 

 青路瑠流(オリジナル)

 ライスちゃんとリリィちゃんのトレーナー。通称お姉さま。ライスシャワーの才能を一目で見抜いた中々すごいやつ。

 一人称は「私」

 リリィちゃんが入学する前の話だが、ライスちゃんによるリリィちゃんすきすきトークを毎日聞かされていた。リリィちゃんが無事に入学してくれれば頻度が減るかな?と思っていたのだが…。確かに頻度は減ったが、その代わりに毎日イッチャイチャしてるのを見せつけられるようになった。

 前回の怪文書で死人は出ないと書いたが、お姉さまは結構な頻度で死ぬ。大人は嘘をつくのではありません。ただ間違えてしまうだけなのです…。

 デイリー杯ジュニアステークスでリリィちゃんがお膝の上に乗ってきた時、柔らかさと温かさといい匂いで死にかけたが、真面目な雰囲気だったので気合いで耐えた。あれ以降ライスちゃんがいない時限定(ライスちゃんがいたらそっちに甘えに行く)だが、お膝に座ったり抱きついたりほっぺすりすりしてきたりするようになったので何度も死んだ。彼女の死に顔はとても安らかな表情だった…。

 イチャイチャ☆ホープフル♡事件で、理事長とかに怒られたりしないかと内心ビビっていた。特にお咎めとかは無かったので安心している。「驚愕! ……さ、最近の娘達は……その……大胆なのだな……」「……あれは例外です」

 練習中などの真面目な場合を除き、ライスちゃんとリリィちゃんにデレデレである。かわいいからねしかたないね。

 三人で撮った写真をスマホの待ち受けにしている。

 

 中村(オリジナル)

 アッシュストーンのトレーナー。トレーナーとしては新人で、本田に色々と教えてもらっている。ヒトミミのオス。よくアッシュストーンに焼き肉を奢らされる。俺の財布はボロボロだ!

 一人称は「俺」

 とげとげアッシュちゃんの態度で胃と毛根にダメージがあったが、やわらかアッシュちゃんになってからは回復した。

 酒はあんまり飲めない。泣き上戸。

 アッシュストーンを中々勝たせてあげられないのを内心気にしている。

 

 本田(オリジナル)

 キョウエイボーガンのトレーナー。言動が微妙に怪しいが特に何も考えてない系のヒトミミのメス。一応ベテランなので新人達にアドバイスしたりしている。今のお気に入りはお姉さまと中村。おっぱいはAカップ。

 一人称は「私」

 お酒にはすごく弱い。笑い上戸でついでに絡み酒なので酔うとウザい。

 中村を気に入ってる理由は素直だから。お姉さまを気に入ってる理由はお世話してくれそうだから。

 暇な時はお姉さまにクソみたいなLANEを飛ばす。「あおじくぅん! まりも○こりってとんでもないほどストレートな下ネタだねぇ!」「あおじくぅん! おち○ちんとお賃金って発音が似てるよねぇ!」(……無視してぇなぁ)

 私生活は結構だらしない。たまにボーガンがやってきて家事をする。彼氏ができたことはない。

 夏合宿でリリィちゃん達の練習に協力してくれた理由は、ボーガンがリリィちゃんに会いたいと駄々をこねたから。なので当時お姉さまと練習予定だった中村に自分も協力すると話を持ちかけたのだが、本田と面識が無かったお姉さまに無駄に警戒されてしまった。本田本人は愛バの願いを叶えるため、そして後輩たちに対する純粋な善意で協力したので少しかわいそうである。

 

 シロノスズラン(オリジナル)

 シロノリリィの母親。リリィちゃんがトレセン学園に入ってからめちゃくちゃ寂しくて仕方がなかった。レースは毎回駆けつけて応援している。

 ホープフルステークスで偶然再会したライスちゃんの両親にすごくびっくりした。その後のライスちゃんのちゅっ♡でもっと驚くことになったが……。

 リリィちゃんの恋心が育たなかった原因その1。めっちゃ甘やかしたので精神的に成長しなかった。男が近寄る?……ゆ゛る゛さ゛ん゛!!(リリィちゃんはママに甘えられてご満悦だった)

 年末で娘と久しぶりに一緒に過ごせるのでテンションがヤヴァイことになっている。

 

 白井賢司(オリジナル)

 シロノリリィの父親。リリィちゃんがいない寂しさで毎晩枕を濡らしていた。

 週に一回はテレビ電話でお話ししていたが、本当は毎日お話ししたかった。もちろんシロノスズランも一緒に通話していた。

 リリィちゃんの恋心が育たなかった原因その2。……というよりもリリィちゃんが女の子が興味を示す恋愛ものに一切興味を示さなかった。なので一緒にドラゴンボールとかのアニメを見てた。「リリィはどのキャラが好き?」「ブロリー!」

 イチャイチャ☆ホープフル♡を目の当たりにして「……遂にこの日が来たか……」と静かに全てを受け入れた。

 

 ライスシャワーのお母さま(一応原作)

 ライスちゃんのお母さま。全く老けていないシロノスズランに美容の秘訣を聞いたが「特別な事は何もしていない」と言われ驚愕した。

 ライスちゃんがちっちゃい頃におまじないを教えたのだが、実は咄嗟の思いつきで考えたものだった。「…………えっと……お別れをする前にぃ……指輪を……えっと……交換してぇ……お互いの薬指に嵌めてぇ……再会を約束する……っていうおまじないよ!!」この後ライスちゃんがキスしたのは知らない。

 ライスちゃんの恋を応援していたので今回のイチャイチャ☆ホープフル♡でめっちゃガッツポーズした。

 

 ライスシャワーのお父さま(一応原作)

 ライスちゃんのお父さま。やっと出番が出た。娘の勝負服が綺麗すぎて泣いた。レース後にめっちゃ写真を撮らせてもらった。

 ライスちゃんがトレセン学園に入ってから、趣味の写真撮影が出来なくてしょんぼりしている。

 ホープフルステークスでライスちゃんがキスしたのを見て、びっくりしすぎてエネル顔になった。

 




いつも応援してくれてありがとうございます。皆様の応援のおかげでジュニア級編を無事に書き上げる事ができました。
次のお話からクラシック級編です。最初の方は年末+お正月にだらだらするので多分走りません。しばらくはイチャイチャ甘ったるいお話が続くと思います。クラシック級編はジュニア級編よりも甘ったるくなるように頑張ります。
リリィちゃんとライスちゃんのイチャイチャを書いてるともっといい感じの文が書きてぇなぁ、と感じます。こう……繊細でぇ……ふわっとしててぇ……みたいな。
書くのはすごく楽しいですよ?イチャイチャシーン書いてる時とか自分でも気持ち悪い顔してるなぁ…と思うぐらいにやにやしていますしね。でもね、もっと甘ったるくしてぇ!と欲張ってしまうのが人間です。もっと表現力が欲しいとか、語彙力が欲しいと小説を書くたびに思っています。もしも神龍にお願いできたら私は迷う事なく「金髪碧眼ゆるふわショートで不老の超健康体のロリ美少女にしてくれっ!」と叫ぶと思います。
話が逸れてしまいましたが頑張ってリリィちゃんとライスちゃんをイチャイチャさせたいと思います。これからもよろしくお願いします。


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クラシック級編
第17話 クラシック級の始まりです!


 ライスちゃんとの激闘を終えたシロノリリィです。冬休みという事で実家に帰ってきたのですが、今はママに後ろから抱かれながらこたつに入っています。とってもぬくぬくです!

 クラシック級に備えて一時の休息です。お休みはすぐに終わっちゃいますがしっかりと体を休め、この先のレースを戦い抜くために力を蓄えたいと思います。

 

「リリィちゃん。はい、あ〜ん♪」

「あ〜ん。……おみかん美味しいです!」

 

 今は晩ごはんを食べ終わってみんなでテレビを見ています。晩ごはんは年越し蕎麦を30杯食べました。とっても美味しかったです! やっぱりママの料理が一番美味しいです!

 絶対に笑ってはいけないトレセン学園という番組がやってて、黄金世代と呼ばれるウマ娘さん達が出演していますね。まだ現役だったと思うのですが、一体いつ撮影していたのでしょうか? 不思議ですね!

 ちょうど今マルゼンスキーさんがなんか高そうな車からシュバっ! と登場して、ドヤ顔のまま落とし穴に落ちたところです。お膝が心配ですね。

 スペシャルウィークさんが「マルゼンスキーさんっ!?」と叫んでいて、ほかのみんなはその光景に吹き出してしまいました。

 笑ってしまった皆さんを、サングラスをかけた黒スーツ姿のたづなさんが容赦なくおしりをしばいています。スパンッ! とすごくいい音がしました。

 あっ! 落とし穴の中で待機してたヒシアマゾンさんとタイキシャトルさんがマルゼンスキーさんを見事にキャッチしてました! アフターケアも万全ですね!

 ママもパパもにこにこしながらテレビを見ています。もちろんリリィちゃんもにこにこです!

 

 


 

 みんなでテレビを見ながら、トレセン学園ではどんな事があったのかを改めて両親は聞いた。通話をして色々聞いたりしていたが、やはりこういう話は直接聞きたいと思ってしまうのだ。

 シロノリリィは嬉しそうにさまざまな事を話してくれた。

 ライスシャワーと同室になったこと、そのトレーナーにスカウトされたこと。7年ぶりに会ったライスシャワーはとても綺麗になっていて、でもあの頃と同じでとても優しかったこと。トレーナーは自分達のことを理解し、見守っててくれる素敵な人だと。

 初めてのレースで強いウマ娘と戦った事、そしてライスシャワー以外にも友達が出来たこと。戦ったウマ娘とその友達が協力してくれたからもっと強くなれたこと。そして本気でぶつかった重賞レースで、自分の限界を超えられたこと。

 他にもたくさんのことを嬉しそうに話してくれた。

 にこにこと楽しそうに話すシロノリリィの話を二人は微笑みながら聞いた。娘をトレセン学園に行かせて、本当に良かったと心の底から思った。

 そこでふと、先日のレースの事を思い出し、シロノリリィにそのことを尋ねてみた。

 

「……そういえばリリィちゃん。ホープフルステークスの時のアレって…ライスちゃんとはもう恋人同士って事でいいんだよね?」

「うん!」

「超イイ返事だわ……。恋人になるって意味はちゃんとわかって……あれ?もしかして恋人になってからやる事もう全部やってるんじゃ……」

「もう全部やったよ!」

「……やっぱりかぁ。うん、でもリリィちゃんなら大丈夫そうね」

「えへへ、大丈夫だよ。恋人になる意味もちゃんと分かってる。……私もライスちゃんのこと、だいすきだから」

 

 いつものように無邪気な『だいすき』ではなく、はにかんで顔を赤くし、『だいすき』と言うシロノリリィに「大人になっちゃったなぁ……」と少しだけ寂しさを覚えた。

 

「そっかぁ……ちゃんと分かってたか……。リリィちゃんも成長したんだなぁ……」

「本当!? 今の私、大人っぽい?」

 

 瞳をきらきら輝かせながら尋ねてくるシロノリリィに「そんなに変わってないかも」と少しだけ思ってしまった。

 

「……やっぱり気のせいだったかな」

「えぇ〜!?」

 

 それに抗議するようにぷくっと頬を膨らませるが、一切の迫力が無く、寧ろ可愛くてしょうがない。そんな彼女に二人は大笑いしてしまった。もちろんシロノリリィも本気で怒ったわけではないので、笑い続けている二人を見て「えへへ……」とかわいらしく笑った。

 

「そうだ! リリィちゃん、一緒にお風呂入ろうよ!」

「うんいいよ! ママとお風呂入るの久しぶりだねっ!」

「やったぁ! えっへへぇ……! リリィちゃんとお風呂だぁ♪」

 

 そう言うとシロノスズランはシロノリリィと手を繋いでお風呂へと向かっていった。「「おっふろ♪ おっふろ♪ いっしょにおっふろ♪」」と二人で歌うのを見てパパは「【自主規制】歳と13歳の姿か?」と思ったが、「二人ともかわいいなぁ……」とすぐに思考が切り変わった。

 余談だがシロノリリィが小さい頃はパパと一緒に入浴していたが、彼女が8歳の時にシロノスズランによって一緒にお風呂に入ることを禁止されてしまった。理由は「リリィちゃんがかわいすぎるから」だが、それを言われたパパは悲しみのあまりに大声で泣いた。

 う、うう……う~うううあんまりだ……HEEEEYYYY!! その嘆きは両親を亡くした時よりも大きかったとかなんとか。

 

 

 

 

 グラスに注がれたウィスキーを白井はぼうっと眺めていた。久しぶりに会った娘が成長してた事は嬉しかったが、直接その姿を見守れないというのは少し寂しさを感じてしまう。まあ、少し精神面が成長しただけなので以前とそんなに変わってないのだが。寧ろ未だに反抗期が来ていないことを喜ぶべきだろうか? と自嘲気味に笑った。

 彼女はこれからもどんどん成長するだろう。ならば自分も彼女の成長に合わせなければならない。

 

「子離れする時が……来たのかなぁ」

「どうしたの賢司さん?寂しそうな顔しちゃって」

 

 心の中で呟いたと思っていたが、どうやら声に出ていたらしい。

 

「いや……リリィが僕の思っていた以上に成長していたから、そろそろ子離れの時期なんじゃないかなって思ってね。そう考えたらすごく寂しくなったのさ」

「あ〜……そういうことね。別にいいんじゃない? リリィちゃんは嫌がってないし」

「そうだけど、ライスちゃんと恋人同士になっただろう? やっぱり付き合い始めた頃が一番楽しい時期だろうなって思うとね。……だから、週一でしてた電話を……月一にしようかと考えてるよ」

 

 苦渋の決断だと言わんばかりに顔を顰める白井を見て、シロノスズランはくすくすと笑った。まるで一世一代の大決断とでも言うような真剣な表情に可笑しくなる。

 

「そういうのはまずリリィちゃんに聞かなきゃね。パパとママとお話しできないのはイヤー! って言われたらどうするの?」

「……確かにそうだ。うん、ちゃんとリリィに聞かなきゃね。……リリィの事になると冷静さを失ってしまうよ」

「そうそう! まあ一番子離れできないのは私なんだけどねっ!」

 

 お互いに顔を合わせて笑い合う。

 

「……本当に、いい子に育ってくれたよ。……そういえばリリィはもう寝ちゃったのかい?」

「寝ちゃったよ〜。22時以降に起きていられないのは昔と変わってないね。最後までテレビ見るー! って言ってたのに。まあそこもかわいいんだけどね」

「そういうところは変わってないんだね。ちょっと安心したよ。……じゃあ僕もそろそろ寝ようかな」

「ちゃんと歯磨きするんだぞ〜?」

 

 悪戯っぽく笑うシロノスズランに「わかってるよ」と返事をし、グラスの酒を飲み干した。

「あっ! 歯磨きの前にお水飲んでね?」と空のグラスを持って行き、水を入れてくれた彼女にありがとうと返事をした。

 

「お酒を飲んだ後で一番美味しいのは水だよね」

「わ〜お。……おじさんくさいね〜」

「僕ももういい歳だからね。仕方ないさ」

 

 

 

 


 

 

 あけましておめでとうございます! 今日はとってもいい天気ですね。初詣日和です!

 今日の午後で私はトレセン学園に戻る予定なので、ママとパパにはまたしばらく会えなくなってしまいます。……少しだけ寂しいですけど、お別れするまでいっぱい甘えちゃいますっ!

 話は変わりますが、見てください! このちょーかわいいリリィちゃんを! ママが買っておいてくれた振袖を着た私をたっぷり見てくださいっ!

 

「あぁ〜んもうかわいいよぉ! リリィちゃんこっち向いてっ! ああっ!! 世界一かわいいっ!!」

「ふっふーん♪ 当然です! でも世界一かわいいのはライスちゃんだよ!」

「私の世界一はリリィちゃんだからいいの! そういうのは個人で変動していいのよ!」

「確かにそうだねっ! 多様性というやつですね! ……ねぇパパ、どう?私かわいい?」

 

 くるんと回って上目遣いで見つめる私の悪魔的可愛さにパパは泣いちゃいました。

 

「うぅ……かわいすぎるっ……」

「ふっふっふーん♪ ……あっ! このかわいすぎるリリィちゃんの写真をライスちゃんにも見せてあげなきゃいけませんね! ママかパパどっちでもいいから写真撮って!」

「僕は今手が震えてるから、スズラン頼むよ」

「まっかせて!」

 

 ノリノリで写真を撮るママと、その指示に従いポーズをキメる私。なんだかとってもあざといような気がするポーズですが、リリィちゃんのかわいさの前ではよりかわいさを引き出すポーズでしかないですね!

 

「おぉ〜! やっぱりリリィちゃんはちょーかわいいですね! ママありがとう!」

「どういたしまして! あとでママにも写真送ってね?」

「僕にも送ってね」

「うん! ……あっ! そろそろいい時間だから初詣行こうよ! ライスちゃんには後で送ろ〜」

 

 

 

 

 

 

 神社に着いた私達三人は人混みを通り抜けて列に並び、他愛のない話をしながら自分達の番が来るのを待っていました。

 そして自分達の番が来たのでお賽銭を納め、私はママとパパの動作を真似しました。なんか色々ルールとかあった気がしますが細かいことは分かりません。

 去年はいろんなことがありました。まずは神様に報告ですが、三女神様? でいいのでしょうか? ……そういう神社っぽいし多分大丈夫でしょう! 

 ここで語りきれないほどいっぱいありますが、大変だけどとっても楽しい一年でした。今年はそれ以上の一年にしたいと思っています。三女神様は私達の事を見守っていてくれたのでしょうか? 私にはわかりませんが見守っていてくれたと思っておきます。三女神様、ありがとうございます。今年も私達のことを見守っていてください。

 それでは私からのお願いです。今年も私達の周りの人みんなが怪我をしたりすることなく幸せに過ごせることを願っています。私もいっぱい頑張るので、今年も一年よろしくお願いします!

 最後に深く一礼して終了です。「終わった?」と声を掛けてきたママに「うん!」と元気よく返事をして列から離れます。

 

「リリィちゃんすっごく熱心にお祈りしてたけど……もしかしてライスちゃんともっと仲良くなれるように……とか考えてた?」

「違うよ? それは自分の力でやるから別にいいの。私のお願いはね、私の大好きな人たちみんなが幸せで怪我なく過ごせるようにってお願いしたの」

「リリィちゃん…! 超イイ子!! うっへへぇ! リリィちゃん大好きっ!!」

 

 ママが私に抱きついてきて、少しだけくすぐったくて「んふふ」と声が漏れてしまいました。ママはとってもあたたかいです。心も体もぽかぽかです!

 

「私もママのことだぁいすきっ!」と言って抱きつき返し、嬉しさを表現するようにママに頬擦りをしました。

 ママに甘えていると「自分はしてもらえないのか」と、そんなしょんぼりとした表情のパパに気づきました。私は頬擦りをやめてパパの胸に飛び込みます。

 

「もちろんパパのこともだいすきだよっ!」

「……リリィ。……僕もリリィの事が大好きだよ」

 

 パパが私をそっと抱きしめ、優しい手つきで頭を撫でます。ママよりも大きな、でもあったかい手の心地良さに上機嫌に尻尾が揺れています。

 

「わ・た・し・を……忘れるなぁっ♪」

 

 パパに甘えていると、後ろからママが私達を巻き込むように抱きついてきました。こうしてママとパパに甘えられる日常がとってもしあわせです。今この瞬間を忘れないように、いっぱい甘えるリリィちゃんなのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私リリィちゃん。今新幹線の中にいるの。

 ママとパパにお別れをしてトレセン学園に戻っている最中です。また暫く会えなくなってしまいますが、今日たっぷり甘えたので大丈夫です。それに永遠というわけじゃありませんしね!

 トレセンに戻ったらみんなにあけましておめでとうとご挨拶をしなければいけませんね。まだみんな戻ってないかもしれませんが、確かるるちゃんはトレセンに残っているって言っていたので、その時はいっぱいかまってもらいます!

 あっ! みんなにかわいいリリィちゃんの写真をまだ送っていませんでした! うっかりしていました。私のかわいい振袖姿をみんなにお裾分けしなければいけません!

 ……ライスちゃんはもう戻っているのかな?早く会いたいなぁ……。

 

 

 

 

 お正月だから実家に帰って来たライスシャワーです。本当ならリリィちゃんと同じタイミングでトレセン学園に戻る予定だったんだけど、先日のホープフルステークスの疲労が思っていたよりも残っていたのと、お母さまとお父さまが寂しがっていたので一日だけ滞在する日を伸ばしました。

 お母さま達に会えるのは嬉しいけど、リリィちゃんと会えない時間は少しだけ寂しいです。だからね、リリィちゃんのかわいすぎる話を二人にいっぱい話してあげました。リリィちゃんだいすき!。

 今はソファーでくつろぎながらスマホで撮ったリリィちゃんの写真を眺めています。はぁ……かわいすぎるよリリィちゃん。

 

「うふふ……リリィちゃんかわいいなぁ。あれ? リリィちゃんからLANEだ。わっ……写真がいっぱい来てる。何の写真かな? え〜っと……」

 

 

 

「ぴやっぴょぽきゃぷくぷっぷるぷ!?!?!?!?」

 

 あ゛っ!?!? なにこれかわいずきるよぉっ!?!? ……変な声出ちゃった。

 あうぅ……ライスの変な声にびっくりしたお母さま達がこっちに来ちゃった。

 

「どうしたのライス!?」

「ふわぁ……びっくりしたぁ。何かあったのですかライスさん?」

 

 だめ、今のライス興奮しすぎてる! 過呼吸になっちゃった……。だって! 見て! この可愛すぎるリリィちゃんを! 振袖姿でこのあざといポーズ! たぶんリリィちゃんのママがお願いしたんだろうけど、だめだよリリィちゃんがやったらかわいいにかわいいが合わさってもうねだめだよライスおかしくなっちゃう!! すきっ!! ライスだから耐えられたけど普通の人が見たらかわいさに耐えられなくて爆発しちゃうよ! でも見てもらいたいからお母さまとお父さま見て!!

 

「「……なるほどぉ」」

 

 一瞬で理解ってくれた。

 …………ふぅ。なんとか落ち着けた。酸素さん美味しいね。……だめだ、やっぱり落ち着いてなんていられないよ! 今はちょっと「あ゛ー!」しか言えないけれど、ライスの魂が叫びたがってるんだ。 

 

「ちょっと待ってリリィちゃんかわいすぎるでしょなにこのあざといポーズ好き抱きしめたいキスしたいなにこれ愛おしすぎる私の理性消し飛んじゃうあぁんもうすきすきかわいすぎる尊い……」

 

「「早口すぎて何言ってるかわからない…」」

 

 




Q.他のみんな何してたの?

A.お姉さま以外は実家に帰ってた。
ボーガン お母さんと一緒にお料理したり、ゼルダの伝説 ふしぎなぼうしをやってた。
アッシュちゃん パパとママにアッシュちゃん呼びされてキレてた。あとローストビーフ食ってた。
お姉さま 酒ッ!

このお話からクラシック級編です。


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第18話 新たなるライバル!? ミホノブルボン登場!

フラウンスっていいですよね。


 シロノリリィがトレセン学園に戻ってから数日後、クラシック級に向けてのトレーニングが再開された。

 とは言っても初日から肉体的なトレーニングをするのではなく、まずは今後の目標や方針、有力バの情報共有から始まった。

 

「あけましておめでとうございます! みんな元気にしてた? 早速トレーニングと言いたいところだけど……まずは改めて今後の目標やトレーニングの方針などについて話し合っていくわよ!」

「「は〜い!」」

「まず私達の目標はクラシック三冠ね、これは変わらないわ。一番最初の皐月賞のトライアルレースに出るのを今の目標にしたいと思うの。ここまでで何か質問はある?」

 

 二人は首を横に振り、トレーナーは話を続ける。

 

「それでそのトライアルレースなんだけど…3つあるのは知ってるわよね?3月前半の『弥生賞』、3月後半の『若葉ステークス』、3月後半の『スプリングステークス』。ライスは弥生賞に、リリィはスプリングステークスを目標にするわ。……一緒のレースじゃないの? みたいな顔してもダメよ? ……そんなかわいい顔してもお姉さまは屈しません! あなた達が一緒のレースだとイチャイチャ(疲労とか無視して全力でレース)するからダメよ絶対。本番の皐月賞まで我慢しなさい」

 

 口では屈しないと言ってるが心は完全に屈している。鋼の意志で耐えてるのは流石としか言いようがない。

 

「次はトレーニングの方針ね。リリィは大きな変更は無いけど、これからはライスもスタミナトレーニングをしていくわ。これからは走る距離も伸びるし、スタミナはいくらあっても困ることはないからね。まあそれは他の能力にも言えるけど。

最後に、クラシック級で最大の障害になりそうなウマ娘の情報よ。彼女の名前はミホノブルボン。ジュニア級でも話題になってた娘ね。素質はスプリンターだけど、超ハードなトレーニングを積み重ねてスタミナを増やし、この三冠路線に殴り込みにきたロックなウマ娘よ。マイラーでクラシック三冠に挑むリリィに少し似てるわね。脚質は逃げで、上り坂でも平然と駆けていくパワーが自慢よ。……ここもちょっとリリィに似てるわね。彼女の並走や模擬レースは逃げしかやらなかったけど、デビュー戦は出遅れからの追い込みで勝利したから他の脚質も出来そう…なんて言われてるけど、基本的には逃げしかしないわね。まあとりあえずはこんなところね。何か質問はあるかしら?」

 

 一通り話し終わったので二人に何か質問がないか尋ねると、シロノリリィが「はいっ!」と元気に手を上げた。

 

「私とライスちゃんが別々のトライアルレースを走るのはわかったんですけど、それなら私は距離に慣れる目的で2000mの若葉ステークスでもいいんじゃないかなって思うのですが……何か理由があるのでしょうか?」

「あ〜……それね、私も迷ってたんだけどちゃんと理由があるのよ。スプリングステークスにはミホノブルボンが出走するってあっちの陣営が明言してたから、本番前に実戦で彼女のデータを集めようっていう算段よ。他のレースに出ずにトライアルレースから皐月賞に行くって言ってたから、データを集めるチャンスがそこぐらいしか無いのよ。だからそれが理由よ」

「ほへ〜。なるほど、わかりました。リリィちゃんに任せてください!」

「うん、任せたわよリリィ。ライスは何か質問とかはない?」

「えっとね、レースとは関係ないんだけど獲得賞金があるでしょ?あれをちょっと使いたいなって思って」

「……獲得賞金?」

 

 シロノリリィが小首を傾げたのでトレーナーが説明する。

 

「大雑把に言うとレースで勝つと貰えるお金の事よ。もしかして忘れてる?」

「…………そういえばそんなものありましたね。ライスちゃんと走れるのが嬉しくてすっかり忘れてました」

「あなた達が引退したら受け取るお金なんだから忘れちゃダメよ?レースに出走する条件でもあるんだからね。……もしかして自分が今どれぐらい稼いでるか知らないって事はないわよね?」

 

 トレーナーが恐る恐る聞くと、シロノリリィはあからさまに目を泳がせながら答えた。

 

「…………5万円ぐらい?」

 

 子どものお年玉かな?シロノリリィにとって一番の優先事項がライスシャワーだったので、獲得賞金のことなどすっかり記憶から抜け落ちていた。

 

「お姉さまが弾き出した計算によると二人の賞金は……ざっとこんなもんね」

「………………なにこれ?」

 

 今まで見たこともない金額にキャパオーバーしたようだ。宇宙猫のような顔で呆然としながら呟いた。

 

「……まあびっくりするわよね。でも自分の稼いだお金の事はちゃんと把握しておくのよ? それでライスは何か買いたいものでもあるの?」

「あのね、今度リリィちゃんのお誕生日だから、プレゼントを買おうと思うの。大丈夫かな? お姉さま」

「そういうことね、それなら大丈夫よ。まあ金額によってはお姉さまもそのお買い物に同伴することになるけど、それは構わない?」

「うん! 大丈夫だよ、お姉さま!」

 

 獲得賞金はトレーナーの許可があればある程度は自由に使える。許可制なのは、子どもに大金を自由に使わせたら金銭感覚が狂ってしまう可能性があるからだ。名家のお嬢様は元から金銭感覚が違うので大丈夫だが、シロノリリィのような一般家庭出身のウマ娘はこのような大金を扱う機会がないので、レースを引退するまでは一律で制限されている。

 

「リリィちゃん大丈夫?」

「…………はっ! びっくりしすぎて宇宙が見えました……。大丈夫です! リリィちゃんはつよい子です!」

「ふふっ、よかった。あのね、もうすぐリリィちゃんのお誕生日でしょ? だからプレゼントを買おうと思ったの。それでね、ライスのお誕生日もすぐにくるからお揃いにしたいなぁって思って。どうかな、リリィちゃん?」

「ライスちゃんとお揃い……! うん! 私、それがいい! ……ところでお揃いってなににするの?」

 

 シロノリリィがかわいらしく尋ねると、ライスシャワーは彼女の手を取り、真っ直ぐに見つめて微笑みながら告げた。

 

「──指輪、だよ♪」

「──……っ!」

 

 シロノリリィは驚いて目を見開くが、すぐにその顔は喜びに染まった。ライスシャワーに抱きつき、溢れる感情を伝えるかのようにすりすりと頬擦りをした。

 隙を見せた瞬間イチャイチャし出す二人を前に、お姉さまは「(……前よりもパワーアップしてる!? 早く慣れないと死ぬ……!)」と感じたそうな。

 

「……はいっ! やめやめっ、話は以上っ! 早速トレーニングをやっていくわよ! いいわねっ!?」

「「は〜い♪」」

 

 

 

 

 

 

「……ミホノブルボンについて知りたい? ふむ……多少ならワタシ達も知っているが、そう詳しい事は語れそうにないな」

「オレも似たようなもんだ。あいつはいつ見てもトレーニングしてる変態って事しか知らねぇな。オレが知ってる事と青路さんが知ってる事は大差ねえからあんまり力になれねえと思うぜ?」

「そうなんだ……。ライスはブルボンさんとほとんど話した事ないから、何も知らないんだよね……」

 

 トレーニング後にアッシュストーンとキョウエイボーガンの元へ訪れたライスシャワーは、ミホノブルボンの情報がないかを二人に尋ねた。

 

「アッシュは直接対決した分ワタシよりも多少は分かることがあるだろう。ほら、その赤点ギリギリの可愛らしい記憶力を振り絞って思い出してみろ」

「……赤点ギリギリは余計なんだよ。……ミホノブルボンなぁ……多分トップスピードだけならシロよりも上かなって思ったな。加速力はシロの方が上だが、パワーも相当なもんだ。あと弱点って言えるかは分からんが、掛かり癖があるって感じたな。デビュー戦を除いて基本的にはハナを譲らないレースをしてたから、前を取られるのに慣れてないんじゃねぇかな?」

「ワタシから言えるのはスタミナに不安があるかも……と言ったところか。元々スプリンター故に今でも中、長距離は不安視されているな。それを克服する為に彼女はハードトレーニングをしているんだがな。……ところで、今日はリリィは一緒じゃないのか?」

「リリィちゃんはちょっと調べたいことがあるって、一人でどこかに行っちゃったよ。……もっとリリィちゃんと一緒にいたいなぁ……」

 

 (いつもべったりしてるだろ…)と二人は心の中でツッコんだ。三人で談笑していると、ライスシャワーが自分のところにLANEが送られてきたことに気づいた。

 

「誰からだろ? ……あっ、リリィちゃんだ! ……内容は…………えっ?」

「どうした、タヌキでも見つけたのか?」

「それは見せられてもちょっと困っちゃうな……。じゃなくて……リリィちゃん、ブルボンさんのところにいるって…」

「「……マジ?」」

「……うん」

 

 

 

 

 ライスシャワーにLANEが送られる少し前に遡る。シロノリリィのかしこすぎる頭脳が「情報が無いのなら、直接聞けばいいんです!」と、完璧すぎる回答を出した。それ故に自信満々にミホノブルボンとそのトレーナーの元へ単身乗り込んだ。

 ミホノブルボンのトレーナーである黒沼は困惑していた。敵陣営であるはずのシロノリリィが、敵情視察と言って堂々とこちらに乗り込んできたことに。もちろん与える情報など無いので断ろうとしたが、なぜかノリノリのミホノブルボンが歓迎したので断れなかった。

 

「こんにちは、ミホノブルボンさん! かわいくてかしこいシロノリリィですっ! 今日は敵情視察に来ました! どうぞよろしくお願いします!!」

「こんにちは、シロノリリィさん。私はミホノブルボンです。本日はよろしくお願いします」

 

 本当に追い返さないんだ……。と内心思いつつ、二人のためにコーヒーとお菓子を用意していた。

 

「ミホノブルボンさんに質問があります! でも私から聞いてばかりだと不公平なので、一問一答の形で聞いていきたいと思います。でもダメだったら今から帰ります。……どうでしょうか?」

「私はそれでいいです。マスター、よろしいですか?」

「……好きにしろ。だが、それならこちらの質問から答えてもらうが……かまわないよな?」

「大丈夫です!」

 

 最初はどうなるかと思ったが、これはこちらにとっても有利な話だ。シロノリリィはもちろん、彼女と同じチームのライスシャワーも強力なウマ娘である。なので上手くいけばその二人の情報を手に入れられる可能性がある。ミホノブルボンはこの事を考えて話を受けたのであろうと黒沼は考えた。

 

「……ならばこちらから質問させてもら……どうしたブルボン?」

 

 ミホノブルボンが手を伸ばし、黒沼の話を遮った。その瞳には強い光が宿っていた。

 

「……大丈夫です、マスターの聞きたい事は分かっています。だからここは私に任せてください」

「ブルボン……。よし、お前に任せるぞ」

 

 どうやらこちらの考えも伝わっていたようだ。ならば、愛バを信じようではないか。

 

「はい、マスター。では、シロノリリィさんに最初の質問です。──ライスシャワーさんと恋人になったというのは、本当ですか?」

 

 ──ブルボンさん?

 

「はいっ! 私とライスちゃんはホープフルステークスの後に恋人になりましたっ! 今度一緒に指輪も買いに行くんですよっ!」

「なるほど……! 馴れ初めなども聞きたいですが、次はシロノリリィさんから質問をどうぞ」

「それじゃあ質問です! ミホノブルボンさんのスタミナの秘訣を教えてください!」

「分かりました。私のスタミナの秘訣は坂路トレーニングにあります。坂路トレーニングはとてもハードですが、その分メリットがあります。坂路を走るパワー、そして走り切るスタミナの両方を鍛え上げることができます。スプリンターのパワーを利用した荒技とも言えますね。シロノリリィさんはどうやってあのパワーを鍛えたのですか?」

「私のパワーは生まれつきなのでその質問には答えられませんね……ごめんなさい。他の質問はありますか?」

「いいえ、問題ありません。では質問を……ライスシャワーさんとは入学当初から仲が良かったと聞きましたが、もしかして幼馴染だったりするのでしょうか? それと質問ではないのですが、あなたのことをリリィさんと呼んでもよろしいでしょうか?」

「大丈夫ですよ! じゃあ私はブルボンちゃんって呼びますね! 私がライスちゃんと初めて出会ったのは5歳の頃でした──」

 

 その後、二人はガールズトークを1時間程して敵情視察(?)は終了した。黒沼は愛バの意外な一面を知ったが、シロノリリィによるライスシャワーの惚気話をたくさん聞かされたせいで胃もたれしていた。

 ──まさかこのような方法で情報戦を制するとは……。シロノリリィはパワーだけでなく、非常に頭のキレる賢いウマ娘だと評価した。

 

「……ブルボンも、他人の恋バナに興味があったんだな」

「はい、マスター。あの二人の関係は、非常に尊いものだと感じています。百合の間に割り込んではいけないと、そして百合の尊さを教えてくれた友人に感謝します」

「……その友達は、一体誰なんだ?」

「──ニシノフラワーさんです」

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜、ライスちゃん!」

「あっ、おかえりリリィちゃん。どう?ブルボンさんから何か聞けた?」

「ふっふーん!もちろんバッチリです!」

 

 寮に戻ったシロノリリィは、ベッドの上でゴロゴロしてるライスシャワーに今日の成果を報告した。

 

「ブルボンちゃんはですね……雷が苦手です! あと勝負服は昔見たアニメに影響されてデザインしたって言ってたよ! トレーナーさんをマスターって呼んでいるのは、さっき話したアニメに出てた人が『マスター』と呼ばれててかっこよかったかららしいです! 他にもスタミナとパワーの秘訣は坂路トレーニングで、三冠路線を目指した理由は、昔レースで見た三冠ウマ娘さんがかっこよかったからなんだって! 他にもあるよ!」

 

 もう仲良くなってる……。少々驚いたが、シロノリリィは可愛いので寧ろ当然だと思った。

 彼女がミホノブルボンと仲良くなったことに対して嫉妬したりはしない。昔のライスシャワーならちょっとジェラってほっぺをぷにぷにしただろうが、今の彼女は自分が一番シロノリリィを愛していると確信している(両親の愛情は別カテゴリー)し、彼女に一番愛されていると確信しているからである。要するにバカップルだ。

 今日アッシュストーンとキョウエイボーガンから貰った情報とシロノリリィの情報を合わせれば、トレーナーと何か対策が浮かぶかもしれないと思った。

 

「ねぇねぇリリィちゃん、ちょっとこっち来て」

「なぁにライスちゃん?」

 

 ベッドの上で起き上がったライスシャワーは、トテトテと無防備に近づくシロノリリィに抱きつくと、そのままくるりと回ってベッドへ押し倒した。

 

「うりゃっ!」

「うひゃぁっ!?」

 

 いきなりの事にびっくりしたシロノリリィにウマ乗りになり、ライスシャワーは彼女の頬に両手で優しく触れ、唇が触れる寸前まで顔を近づけた。

 

「……ライスね、ちょっとだけ気になることがあるの」

「……にゃ、にゃに?」

 

 彼女が触れた体の熱さに、柔らかさに……甘い香りにくらくらしそうになる。

 

「……まだ、リリィちゃんから……キスしてもらってない」

「…………あっ!」

 

 言葉は不満そうだが、その表情は全然不満そうではない。

 妖しくライスシャワーが微笑み、その美しさに夢中になる。ゆらりとその姿が視界から外れ、熱く柔らかい唇が自分の頬に触れた。

 

「……リリィちゃんからしてくれるの……待ってるから、ね?」

「……ひゃ、ひゃい……」

 

 顔を真っ赤にしてぷるぷるするシロノリリィに、こういうのはまだ先だなぁ……と感じるライスシャワーだった。それはそれとして……。

 

「……かわいいなぁ。ご飯までまだ時間あるから、もうちょっとこのままにするね?」

「……にゃっ!?」

 

 このあとめちゃくちゃちゅっちゅした。




お気に入りが3000超えててびっくりしました。本当にありがとうございます。この小説を書き始めた時は「お気に入り100いけたらいいなぁ…」と思っていたので本当に驚いています。
レース勝利後の獲得ファン数を万円に変えると賞金になるって最近気づきました。ファル子先輩の2兆マジパネェ。
本作のブルボンちゃんはスマホも使えるしセグウェイにも乗れます。
あと感想で「シロノリリィのイントネーションってどんな感じ?」と書かれていたので答えますが、自分はハーメルンの機能「きりたん」で読ませた時と同じイントネーションで読んでいます。


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第19話 あまあまバレンタイン!

 ──バレンタイン。それは、年に一度だけ訪れる少女達の為の特別な一日。

甘いチョコレートに特別な想いを込めて、「だいすき」を伝える大切な日。もちろん、トレセン学園でもそこは変わらない。普段は鬼気迫る表情でトレーニングに励む彼女達も、その日だけはふわふわな乙女に戻るのだ。

 

「──ねぇ、リリィちゃん。……チョコ、食べさせてあげるね?」

 

 

 

 

 

 

 とある日のこと。シロノリリィとライスシャワーは自室で寛いでいた。

 シロノリリィを膝枕し、艶やかな髪を手で梳かしながらその感触をライスシャワーは楽しんでいた。

 毎日彼女がお手入れしている事もあって、その髪は極上の絹糸と比較しても遜色ない。いや、シロノリリィの髪の方が美しい。と内心思いつつ、髪を指先でくるくると遊ばせていた。

 ふと、「もうすぐあの日が来るなぁ」と思い出し、シロノリリィのほっぺをつついてこちらに注意を向けた。

 

「ねぇねぇリリィちゃん、もうすぐバレンタインだね。ライスは自分で作ろうと思ってるけど、リリィちゃんはどうする? ライスと一緒に作る?」

「うに? ……そういえばもうそんな時期だね。いつもはママと一緒に作ってたけど、今年はどうしようかなぁ。むむぅ……ライスちゃんにサプライズしたいけど、一緒に作るのも捨てがたいですね……」

「ライスはどっちでも大丈夫だよ? リリィちゃんからチョコを貰えるだけで、とっても嬉しいもん」

「むむむぅ……よし、決めました! 今年はサプライズ大作戦です! どんなチョコレートかは当日のお楽しみだよ!」

「うん! じゃあライスのチョコも楽しみにしててね♪」

「もっちろん! リリィちゃんがんばります!」

 

 ライスシャワーは実は料理が得意だ。シロノリリィの胃袋を掴む為に、トレセン学園に入学する前にレースの練習や勉強の合間を縫って料理も練習していたのだ。その甲斐もあって、店頭に並ばせても遜色ないほどの腕前になっていた。

 対するシロノリリィの料理熟練度は普通と言ったところだ。料理自体は母親のお手伝いでよくやっていたので慣れているが、特別上手というわけではない。それに、お菓子などの凝った物を作った経験もそんなにない。

 なのでシロノリリィはネットでレシピを検索して調理を……と考えたが、素人の自分がやると失敗しそうなので素直にメッセージアプリで友達にヘルプを求めた。やはりリリィちゃんはかしこいですね。

 余談だが、シロノリリィの両親は毎年彼女から貰っていた手作りチョコが今年は貰えない事に気づいて咽び泣いていた。

 

 

 後日、シロノリリィは調理室へとやってきた。目的はもちろんライスシャワーへのバレンタインチョコを作る事である。ついでにトレーナーや友達の分も作る予定だ。

 

「というわけで……よろしくお願いします! キョウちゃん! フラワーちゃん!」

「あぁ、こちらこそよろしく頼む」

「はい! 今日はよろしくお願いしますね。ボーガンさん、リリィさん!」

 

 シロノリリィが助っ人を頼んだのはキョウエイボーガンとニシノフラワーだ。

 キョウエイボーガンは実は料理が得意なので助っ人をお願いした結果「任せろ」と承諾してくれた。ニシノフラワーはミホノブルボン経由で仲良くなり、彼女が料理を得意としていたので助っ人をお願いした。

 この世界のニシノフラワーは少しだけ恋に対して積極的になっている。セイウンスカイに淡い恋心を持っている彼女は「でも、やっぱり女の子同士だし……」とその好意を隠そうとしていたが、シロノリリィとライスシャワーの奇行を眺め「あっ……隠さなくていいんだ」と吹っ切れた。

 なのでこのフラワーちゃんはつよつよです。フラウンスこそが俺のジャスティス。

 

「まさかこのメンバーでバレンタインチョコ作りをする事になるとは思わなかったな。リリィとフラワーはこの前のミホノブルボンを敵情視察した件で知り合ったのか?」

「そうですね! その時ブルボンちゃんとLANEを交換して、それでお料理が得意な人を聞いたらフラワーちゃんを紹介してくれたんです。キョウちゃんはフラワーちゃんのこと知ってるんですか?」

「そうだな……ワタシはアッシュ経由で知り合ったんだ。スプリンター同盟だったか……確かそんな集まりで仲良くさせてもらっているよ。スプリンター同盟と言っても距離適正は関係ないがな」

「いわゆる同期組というやつですね。バクシンオーさんが私をお誘いしてくださって、それからアッシュさんやボーガンさん、最近はブルボンさんも仲良くしてますよ」

「アッシュのやつは最初な……『仲良しごっこなんてする気ねーよ』なんて言ってたんだぞ? 今じゃ普通にみんなで仲良くファミレスに行ったりするからなぁ」

「もう! ボーガンさん、アッシュさんにあんまりいじわるなこと言っちゃダメですよ!」

「アッシュちゃんも仲良しなお友達ができたんですね! よかったです!」

 

 シロノリリィが悪気なく言うと、キョウエイボーガンは吹き出し、ニシノフラワーはプルプルと肩を震わせていた。

 

「くっくっ……。ふぅ……そういえば二人は同じ中等部だろう? 知り合うきっかけはありそうなものだが…」

「……クラスが違ったので話す機会がなかったんです。それに、ちょっと綺麗すぎて……何というか、恐れ多い……みたいな……あっ! 今は違いますよ? 実際に話してみて思っていた印象とだいぶ違うって感じましたね」

「私がかわいすぎるのが悪いですね。でもこれからは仲良くできますよ!」

「はい! 私もいい機会だったなって思います!」

「友人の輪が広がるのは良いことだ。では、そろそろチョコ作りに取り掛かるとしよう。ワタシはガトーショコラを作るが、二人は何を作る予定なんだ?」

「私はチョコケーキを作ろうと思っています。リリィさんは何を作りますか?」

「私はトリュフチョコを作ります!」

「わかった。では各自調理開始といこう。フラワーは問題ないと思うが、リリィは分からないところがあったら遠慮せずに聞いてくれ」

「「はい!」」

 

 こうしてチョコ作りが始まった。キョウエイボーガンとニシノフラワーはさすがと言うべきか、特に苦戦することなくテキパキと調理している。シロノリリィは微妙にぎこちないながらも二人の手助けもあって無事にトリュフチョコを完成させた。

 

「おぉ! できました! 後はラッピングするだけですね。キョウちゃん、フラワーちゃん、お手伝いしてくれてありがとうございます!」

「いえいえ! チョコが完成したのはリリィさんが頑張ったからですよ! おめでとうございます!」

「うむ。これはリリィの頑張った証だ。ところでライスに渡す分にしては少々量が多いと思うのだが……。いや、彼女ならこれぐらいペロリと平らげるか…」

「こっちは義理チョコです。るるちゃんやお友達にあげる分ですよ! もちろんお二人にも差し上げます! バレンタイン当日を楽しみにしていてください!」

「わあっ……! とっても嬉しいです! ありがとうございますリリィさん!」

「ワタシも嬉しいよ。ありがとうリリィ」

 

 こうして三人はチョコを無事に完成させ、各自でラッピングを開始した。

 

「キョウちゃんのはなんだか義理っぽいですね」

「ん? まあ本命はいないからな。君に誘われなければ作る気も無かったしな。リリィは……うん、ライスに贈るっていうのがよくわかるよ」

「……確かにこれは、本命だと一目でわかりますね……!」

 

 黒いハートの箱に、青いバラが付いたリボンが巻き付けてあるそれは一目で本命チョコだと分かった。

 

「ふっふーん! どうですか! リリィちゃんの愛情たっぷりですよ! 見た目は既製品の方が良いかもしれませんが、私が作ったので世界一美味しいはずです!」

「すさまじい自信だな。見習いたくなるよ」

「私も見習わないといけないですね!」

 

 花の様に笑う少女(ニシノフラワー)の手の中にあるそれは、彼女の想いだった。浮雲のような白いリボンが青空のように綺麗な水色の包装紙を包み、デイジーを模した飾りがそのリボンを解けない様に留めていた。

 

 

 

 

 こうして三人はチョコを作り終えて自室へと戻った。自室に戻るとライスシャワーがいたので「ただいまー!」と元気よく言って、チョコを部屋の冷蔵庫に入れた。

 

「おかえりリリィちゃん。チョコはちゃんと作れた?」

「もちろんバッチリだよ! バレンタイン当日を楽しみにしててね!」

「ふふっ。ライス、とっても楽しみにしてるね。ライスのチョコもすごく上手に出来たから、リリィちゃんも楽しみにしててね」

「おおー! バレンタインが待ち遠しいです! あっ、そういえばライスちゃんはるるちゃん達のチョコは作ったの?」

「もちろんお姉さまの分も忘れてないよ。アッシュさんやボーガンさん、他の人たちの分も作ってあるよ」

「さすがライスちゃんです! バレンタインが楽しみです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 バレンタイン当日。お姉さまは愛バ達のためにチョコレートを用意していた。さすがに自作する暇は無かったので市販品だが、それ故に味は保証されている物だ。

 

「……うん。大事なのは気持ちだから手作りじゃなくてもセーフよ……」

 

 コンコンと部屋をノックする音が響き、「失礼します」という可憐な声と共に二人の少女がトレーナー室へと入ってきた。

 

「「ハッピーバレンタイン!」」

 

 トレーナーに向かってチョコを差し出す二人は、控えめに言って天使だった。

 

「ふっ、ひょっ! ……うん、ハッピーバレンタイン! チョコありがとね。これはお姉さまからのバレンタインチョコよ」

 

 緩んだ顔を引き締めてチョコを受け取り、代わりに二人にチョコを差し出した。

 

「わぁっ! ありがとうお姉さま!」

「ありがとうるるちゃん!」

「どういたしまして。……あら、これってもしかして手作り? ……いやん、お姉さま市販品だからちょっと恥ずかしいわ…」

「大事なのは気持ちだから大丈夫です!」

「そうだよお姉さま。それともライス達の事、好きじゃないの?」

「大好きですけど?? めちゃくちゃ大好きですけどぉ???」

 

 高速で返事をしたトレーナーに、二人はくすくすとかわいらしい笑顔を浮かべた。そして、ライスシャワーが何かを思いついたのか悪戯っぽい笑顔を浮かべた後、シロノリリィにこしょこしょと耳打ちした。

 

「なになに? お姉さまだけ仲間はずれは寂しいなぁ……」

 

 二人はにっこりと笑い合うと、トコトコとお姉さまの横まで歩いて近づき、椅子に座っているトレーナーに抱きついた。

 

「ひょっ!? ほっ!?!?」

 

 柔らかさと温もりと良い匂いで動揺するトレーナーの耳元で、二人はチョコレートよりも甘い言葉を囁いた。

 

お姉さま♪」「るるちゃん♪

「「だぁいすきっ♡」」

 

「っっっっっ!?!?!?!?!?!?」

 

 声にならない悲鳴をあげて、トレーナーは死んだ。

 

 

 

 その後、復活したトレーナーに見送られて二人はアッシュストーンやキョウエイボーガン、他にもお友達へと義理チョコを配った。

 

「「ハッピーバレンタイン!」」

「ん、オレにか? ……ありがとな。いや、チョコとか渡されると思ってなくて持ってねぇよ。……まあ、来年は用意しとくわ……」

 

「「ハッピーバレンタイン!」」

「ありがとう二人とも。これはワタシからのチョコレートだ。……このデカいやつは誰にだって? トレーナーだよ。くれないと拗ねるって駄々をこねられてな……」

 

「「ハッピーバレンタイン!」」

「バレンタインチョコですか。お二人とも、ありがとうございます。とても嬉しいです。……その手に持ってるチョコは何か、ですか。これはマスターに贈るバレンタインチョコです。とても美味しいのでマスターも気に入ってくれると思います」

 

「「ハッピーバレンタイン!」」

「わぁっ! リリィさんとライスさん、ありがとうございます! これは私からのバレンタインチョコです……! さっきですね、私も大切な人にチョコを渡せたんです! お二人のおかげで私も勇気を出せました。本当にありがとうございます! ……えっ?その勇気は私が頑張ったから出せたもの……。ううん、それでも私はあなた達にお礼を言いたいんです……。だから、ありがとうございます……!」

 

 

 

 

 

 

 チョコを配り終えた二人は自室へと戻ってきた。最後に渡すのは、本命のチョコレートである。

 

「それじゃあリリィちゃん……」

「うん、ライスちゃん……」

 

「「ハッピーバレンタイン!」」

 

 お互いにはにかみながらチョコを受け取り、その本命チョコを眺める。

目にするのはまずシロノリリィをイメージしたラッピングだ。白い箱に緑のリボンが交差して、その結び目にはリボンで作られた白百合がある。こんなところまで凝っているのかと思うが、その分ライスシャワーの想いが伝わってきて頬が緩む。

 

「リリィちゃん! これ、開けていいかな?」

「もちろん! こっちも開けるね!」

 

 丁寧に包装を外して中のチョコレートを見ると、まずそのクオリティに驚かされた。箱に8個ある艶やかな半球状のチョコレートは、お店に並べられているものよりも遥かに出来が良くて、まるで高級チョコレートの様だ。ライスシャワーの執念が伺える。

 

「わあっ!! すっごい!! 宝石箱みたい!!」

食べちゃいたいぐらいかわいいなぁ……あっ!? うん!! ライスすっごく頑張ったんだ! リリィちゃんのチョコもすっごく美味しそうだよ!」

「すっごいすっごい! ライスちゃんすっごい!!」

「えへへ……! ありがとうリリィちゃん!」

 

 はしゃぐシロノリリィを眺めつつ、ライスシャワーはシロノリリィの手作りチョコをうっとりと見つめていた。

 

「ライスちゃん! もう食べてもいい?」

「──ねぇ、リリィちゃん。……チョコ、食べさせてあげるね?」

「あーんしてくれるの? うん、いいよ!」

「──じゃあ、こっちに来て?」

 

 それを聞いたライスシャワーは妖艶に微笑み、シロノリリィをベッドに座らせた。その表情に少しどきりとしたが、言われた通りにライスシャワーの隣へと座った。

 

「じゃあリリィちゃん、溶ける前に食べてね?」

「うに? どういうこ……」

 

 シロノリリィの太ももに頭を預け、その手に持っている箱からチョコを取ったライスシャワーは、その瑞々しい唇の上にチョコレートを置いた。

 

「……ん」

「……にゅえっ??」

 

 ──その唇の上のチョコを、食べろというのか? 顔を真っ赤にして動揺するシロノリリィに、目線だけで「そう」だと告げる。

 

「(ぴ、えっ!? ……いやいや、違います! これはここから手で取って食べろという事ですねっ!! 私はかしこいのでわかりますっ!!)」

 

 シロノリリィが震える手で取ろうとすると、ライスシャワーはにっこりと笑ってその手を優しく逸らした。

 

「……くちでとるの?」

「……ん♪」

 

 その事を理解した瞬間、顔から湯気が出るほど真っ赤になった。

 

「あっ! あっ!? あっ?? あっ!?!?」

 

 真っ直ぐに自分を見つめるアメジストの瞳から目を離せなくなる。

 ドクンドクンと狂ったように鼓動する心臓が五月蝿い。

 その綺麗な顔から目を逸らさない。

 嗚呼、吸い込まれそう。

 

 へにゃへにゃな顔で覚悟を決めたシロノリリィは、ライスシャワーに徐々に顔を近づけた。

 

 その甘い香りは、チョコだけじゃない。あなたの匂いだ。

 あなたに近づくほど、温もりで溶けてしまいそうになる。

 

 鼻先がくっついてしまいそうな距離まで近づき、シロノリリィは震える唇でそっとチョコレートを咥えた。ゆっくりと離れて、チョコレートを咀嚼した。

 

「──どう、美味しい?」

「…………あまい」

 

 最早、味などわからない。ライスシャワーは、唇に残ったチョコを舌先でチロリと艶やかに舐め、熱のこもった瞳で彼女を見つめた。

 シロノリリィがチョコを食べ終えたのを見たライスシャワーは、起き上がってベッドに座り直し、ぽんぽんと自分の太ももを叩いて頭をこちらに預ける様に促した。

 

「次はライスの番だよ♪」

「…………えっ? ……えっ!?!?」

 

 にっこりと微笑み、動揺するシロノリリィの唇にチョコレートを乗せた。

 そして、じっくりじっくり……焦らしながら、シロノリリィの唇の上のチョコを食んだ。

 

「──ふふっ♪とっても甘いねっ♪」

「……ぴゃっ! ぴっ!?」

「リリィちゃんのチョコもライスのチョコも8個だったから……あと7回ね♪」

「っっっ!?!?!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ブルボン、これは?」

「さくさくぱんだです。今日はバレンタインという事なので、私のお気に入りのお菓子をマスターにあげたいと思いました」

「……そうか。ありがとう、ブルボン。…………ふむ、美味いな」



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第20話 あなたにあえたから

 穏やかな朝日に照らされて私は目を覚ました。今日の天気は晴れ、絶好のお出かけ日和。

 隣ですぅすぅと可愛らしい寝息を立てる真っ白なあなたの頭を優しく撫でる。さらさらとした髪が、撫でるたびに私の指をすり抜ける。

 撫でられた感触が心地良いのか、気持ちよさそうに小さく笑うあなたに私も微笑んだ。

 ──とっても綺麗。

 あの頃から、はじめてあなたと出会った時から私はあなたに夢中になっている。

 こうしていつまでも撫でていたいが、そういうわけにもいかないので撫でる手を止めてあなたの頬にキスをした。

 ピクン、とウマ耳が揺れてあなたは微睡から目を覚ます。寝ぼけ眼で周りを見回したあなたは、私を見つけてふにゃふにゃとした笑顔を浮かべた。

 

「……おあようライスちゃん」

「おはようリリィちゃん。ふふっ……お誕生日おめでとう、リリィちゃん」

 

 今日は2月27日。あなたが生まれた奇跡の日。

 まだ若干寝ぼけているあなたは、嬉しそうに笑って私に抱きついてきた。

 

「……んふふ。ありがとうライスちゃん」

 

 あなたのあたたかさが、この温もりが心地良い。

 あなたの匂いが、私の心を満たす。

 あなたの声が、私に安らぎを与えてくれる。

 

「ねぇ、リリィちゃん。今日はどこに行こっか? ……どこでもいいよ。リリィちゃんと一緒なら」

「う〜んとね。……じゃあ、わがまま言ってもいい?」

「もちろん大丈夫だよ。リリィちゃんのお願いなら、ライスはいつでも大歓迎だから」

「本当? ……えへへ。それじゃあね──」

 

 

 

 

 

 朝の支度を終えた二人は、寮を出て目的地を決めずに気が向くままに歩いていた。シロノリリィがお願いしたのは「細かいことは決めずに二人でお出かけすること」だった。どうしてだろう? と少しだけ思ったが、シロノリリィが上目遣いでお願いしてきたので光の速さで了承した。かわいいですね。

 

「ふんふんふふ〜ん♪」

 

 ライスシャワーと手を繋いで歩くシロノリリィはとってもご機嫌だ。「すっき〜すきすきライスちゃ〜ん♪」とかわいらしい歌を歌っている。今は2月なのでまだまだ肌寒いが、彼女と繋いでいる手はぽかぽかとてもあたたかい。

 そのまま歩いていると、シロノリリィが立ち止まってコンビニのものだと思われるのぼりを見つめ、そしてキラキラと目を輝かせながらこちらに振り向いた。

 

「あそこのコンビニ、ポテト半額だって! 行こーよ!」

 

 ……半額ポテトがなぜ彼女を惹きつけたのだろうか? よく分からないがシロノリリィがかわいいので「うん、いいよ!」と返事をしてコンビニへと向かった。

 

 

 

「……リリィちゃん、本当にそれ食べるの?」

「うん! だっておもしろそうだもん!」

「……食べものにおもしろそう……って感想は、普通は無いと思うんだけど…」

 

 ライスシャワーはシロノリリィが持っている商品に思わず顔が引き攣ってしまった。当初の目的通りにポテトを買おうとしたのだが、お菓子コーナーにあったソレにシロノリリィが気づいてレジへと持っていったのだ。

 その商品の名は「肉ガム」。その名の通り肉の味がするガムだ。

 なぜこんなものがコンビニに置いてあったのかは謎だが、正直言って絶対に不味いと思う。

 

「……ポテトを先に食べてからにしようね?」

「うん! でもこのガム、多分美味しくないよね!」

 

 分かってるならやめようよ……。と思ったが、彼女の好奇心あふれるきらきら笑顔を止めることができなかった。

 近くに公園があったので、ベンチに座ってポテトを食べることにした。

 

「ふ〜……ふ〜……。はい、あ〜んして」

「あ〜ん……もぐもぐ……おいしい!」

 

 二人で食べさせあってポテトを完食した。そして、にこにこしているシロノリリィが問題のブツを手に取った。

 

「どんな味なのかなぁ……。リリィちゃんわくわくです!」

 

 包装紙を剥がして肉ガムを口の中へパクリと入れた。もぐもぐと咀嚼する彼女の表情が笑顔から段々と変化し、虚無を見つめる様な表情へと変わった。

 

「……えっと……リリィちゃん、大丈夫?」

「…………あのね、肉汁の味がして……甘ったるくて……それが混ざって……。うん、おいしくない……」

「……さっき買ったお茶飲む?」

「……うん」

 

 この後がんばって全部食べた。

 

 シロノリリィのやる気が下がった。

 体力が10回復した。

 

 

 

 

「…………なんであれが商品化したんだろ。世の中不思議なことだらけです…」

「そうだね……。次は美味しいもの食べに行こ?」

 

 現在二人は電車に乗って移動している。肉ガムを食べた影響で若干耳がへにゃへにゃしているシロノリリィを自分の膝に乗せ、二人は窓の外の景色を楽しんでいた。

 

「……お〜。ねぇ見て、ライスちゃん! すっごい派手な車!!」

「えっ? どこどこ……わぁ、本当だ。真っ赤ですごい目立ってるね」

 

 街中を走る真っ赤なスーパーカーに二人は目を奪われる。なんだかイケイケなオーラを感じたが、その姿はすぐに見えなくなってしまった。

 

「そういえば、今はどこに向かってるの?」

「えっとね、○○駅で降りて、その近くにあるゲームセンターだよ」

「そうなんだ。リリィちゃんは何かやりたいゲームがあるの?」

「あのね、ちょっと見たいやつがあるの。……あっ! そろそろ着くみたいだよ!」

 

 電車が駅に止まり、二人はドアから降りた。

 当然のように二人は手を繋ぎ、互いに顔を見合わせて笑い合った後に出口へと向かっていった

 

 

 

 

「……どこにあるかな〜。……あっ! あったあった! ほら見てライスちゃん、私達のぱかプチだよ!」

「あっ……本当だ! ライス達のぱかプチがあるね!」

 

 ゲームセンターに到着し、シロノリリィは目的のものを見つけ出した。それは「ぱかプチ」と呼ばれるウマ娘達をモチーフにしたぬいぐるみだった。

 

「リリィちゃんが見たかったのってこれのこと?」

「うん。るるちゃんが私達のぱかプチの見本を見せてくれたでしょ? でも実際に並んでるところが見たいなぁって思って」

「そうだったんだ。ねぇ見てリリィちゃん、ライスとリリィちゃんのぱかプチが一緒に並んでるよ。こっちでも仲良しだね!」

「あっ、本当だ! ……えへへ、嬉しいなぁ! ……それじゃあ私が今から取ってみせるよ!」

「がんばって、リリィちゃん!」

 

 硬貨を投入してクレーンゲームをスタートした。慎重にアームの位置を調整して狙いを定める。

 

「……ここかな? よし、ここにするよ……!」

「……どきどきするねっ……!」

 

 ふわふわと独特な効果音と共にアームが下がってぬいぐるみを掴み……そのまま目的の物を掴み上げた。

 

「…………っ! よしよしそのままそのまま……!」

「わわっ……! もうひとつくっついてきた!」

 

 ゆらゆらアームが元の位置に戻り、見事に目的の物を獲得することに成功した。

 

「やったぁー!!」

「わぁっ! おめでとうリリィちゃん!!」

 

 クレーンゲームに成功した二人は大喜びしている。

 

 ライスシャワーとシロノリリィのやる気が上がった!

 

「えへへ……! それじゃあ……はい、こっちのやつはライスちゃんにプレゼント!」

「わっ……! えへへ……! ありがとうリリィちゃん!」

 

 シロノリリィが獲得したぱかプチは「シロノリリィ」と「ライスシャワー」だ。その「シロノリリィ」の方をライスシャワーへと渡した。

 嬉しそうにぱかプチを抱えたライスシャワーは、こちらを向いて「抱き心地は本物の方がいいね♪」と言い、シロノリリィもそれに力強く同意した。

 そんな二人の様子を見守っていた店員は尊死した。

 その後二人はゲームセンターを見て周り、興味を惹かれたものをやってみることにした。

 

「ダンスゲームだって。そういえば私、こういうのやったことなかったなぁ」

「じゃあやってみる? ライスもあんまりやった事ないけど、ウイニングライブやってるからいい点数が取れるかもしれないよ」

「そうだね! 私達のトレーニングの成果を見せてあげます!」

 

 早速シロノリリィがやってみると、なんとウイニングライブと同じ振り付けの曲があることに気がついた。

 

「おぉ〜……あの曲の振り付けがありますね。これならちょーかわいいリリィちゃんをお見せできますよ」

「ライス、応援してるね!」

 

 曲の始まりと共にシロノリリィが動き出す。ダンスゲームの初心者とはいえ彼女は重賞レースに勝利したウマ娘だ、大きなミスをする事なく可憐に踊り切った。

 

「……ふふん! どうですか私のダンスは!」

「あ゛っ!! かわいいっ!! 最高だよリリィちゃん!!」

 

 ドヤ顔のシロノリリィとそれに興奮するライスシャワー。自信満々だったシロノリリィだが、ダンス結果の点数を見てびっくりした。

 

「……っ! 私よりも上の人がいっぱいいます! すごいです!」

「わぁ……本当だ。えっと、一番上の人は……TEIO……『ていおー』って読むのかな? ……トウカイテイオーさん……じゃないよね?」

「……さすがに違う……とは言い切れないよね。本当にトウカイテイオーさんだったら面白いね!」

 

 その後シロノリリィはライスシャワーと交代し、同じように可憐なダンスを披露した。シロノリリィはライスシャワーのダンスにめちゃくちゃ興奮していた。

 

「あ゛っ!! ライスちゃんかわいいっ!! すきっ!!」

「えへへ……! ありがとうリリィちゃん!」

 

 

 

 

 

 ゲームセンターを出た二人は昼食を食べ、その後もぶらぶらと気が向くままに街を巡った。

 途中で立ち寄ったウマ娘グッズ販売店で自分達のグッズがある事に喜び、いくつか購入した。自分達もグッズが出るほどのウマ娘になったのだと感慨深いものがあった。

 服屋に行って春物の服を二人で見て試着した。なんとなくお嬢様っぽいコーディネートをシロノリリィにした結果、本物の深窓の令嬢っぽくなってしまいライスシャワーが悶絶した。

 おやつの時間になったので二人は直感で選んだお店でスイーツを食べることにした。何も調べずに選んだので少しドキドキしたが、とてもふわふわなパンケーキが出てきて二人はにこにこでそれを食べさせあった。彼女達の笑顔は、パンケーキよりもふわふわであまあまだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜……楽しかったぁ!」

「ふふっ。おつかれさま、リリィちゃん。今日はいっぱい遊んだね」

 

 部屋へと帰宅した二人は心地良い疲労感に包まれていた。シロノリリィはベッドにダイブしてゴロゴロしていた。それを見てライスシャワーは優しく笑い、机の中にしまってあった小箱を取り出した。

 

「……ねぇねぇリリィちゃん、今日はとっても楽しかったね! ……だけど、どうして何も決めずに行ったの? もちろん不満があるわけじゃないよ。でも、なんでなのかなって思って」

 

 ライスシャワーがそうやって聞くと、シロノリリィはゴロゴロするのを止めて手招きをした。

 

「……ん〜とね、特に深い理由とかは無いよ。本当になんとなく、何も考えずにそうしただけ。強いて言うなら、小さい頃を思い出したからかなぁ」

「小さい頃?」

「ん。……私達がちっちゃい頃って、『○○をするぞ!』とか何も考えずに好きなようにあっちこっち行ってたよね? ……そんだけめちゃくちゃでも、すっごく楽しかったって私は覚えてるの」

「ふふっ! ……そういえばそうだったね。……二人で泥だらけになって、お母さまやリリィちゃんのママを困らせたりしたよね。……懐かしいなぁ」

「そうそう! だからそうしたの! ……ライスちゃんは、今日楽しかった?」

 

 少し不安そうに尋ねるシロノリリィに、優しく微笑んで頭を撫でる。

 

「とっても楽しかったよ。……リリィちゃんと一緒なら、どこでも楽しいもん」

「そっかぁ……! えへへ……嬉しいなぁ!」

 

 ライスシャワーの返答に安心したシロノリリィは、ほっと胸を撫で下ろした。

 

「……あのね、ライスちゃん。私ね、はじめてライスちゃんと出会った日からずっとどきどきしてるの。ライスちゃんと一緒に過ごした日々がとっても特別で、大切で……きらきらしているの。……これはきっと、いつまで経っても変わらない」

 

 金色の瞳がライスシャワーを映す。

 

「──毎日が、特別。……どきどきして、きっと……いつまでも変わらない。……私ね、とっても幸せなの……ライスちゃんがいるから!」

 

 ……顔が熱い。なんて真っ直ぐで、綺麗な笑顔なんだろう……。

 

「……ライスもね、リリィちゃんといると……すっごく幸せなの。ふわふわしてて、あったかくて……とっても幸せ。……だからね、リリィちゃん。あらためて言わせてもらうね」

 

 穏やかに笑うシロノリリィの前に綺麗な小箱を差し出し、その蓋を丁寧に開けた。

 ──其処にあるのは、白百合を象った指輪だった。

 

「あの時……リリィちゃんとお別れしてから……またお祝いできる日、ずっとずっと待ってたんだ。……リリィちゃん。生まれてきてくれて、ありがとう。──だいすきだよ!」

 

 ライスシャワーはその指輪をシロノリリィの右手の薬指に優しく嵌めた。

 シロノリリィは愛おしそうに指輪を撫でる。彼女の顔から笑顔が溢れ、止まらない。

 

「……えへへ。……どうしよう……嬉しすぎて、お顔が戻らないよ……!」

「……左手にするのは、まだ先だよ? ……ふふふっ! ライスはもっともっと……リリィちゃんのかわいい笑顔が見たいな!」

「んもぅ……! ……なんだか私ばっかりどきどきさせられてて、ちょっと悔しいなぁ……」

「ライスだってどきどきしてるよ?」

「えぇ〜? 本当にぃ?」

「ふふっ。本当だよ? リリィちゃんがライスのことをだいすきなのと同じぐらい、ライスもリリィちゃんのことだいすきなんだもん」

「む〜…。あっ! いいこと思いついた! ……ライスちゃん! ライスちゃんのお誕生日楽しみにしててね! 私がライスちゃんのこと、すっごくドキドキさせてあげるから!」

「本当? ライス、楽しみにしてるね!」

 

 

 2月27日。あなたが生まれた奇跡の日。

 あなたがくれた幸せが──

 あなたがくれた温もりが──

 あなたがくれた優しさが──

 とてもとても大切で。

 心を込めて、祝福を。

 ありがとう、ありがとう。

 あなたと出逢えたこの奇跡。

 生まれてきてくれて、ありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、ライスシャワーの誕生日。彼女の希望で甘々ふわふわイチャイチャデートを終えて、現在は部屋へと戻ってきた。

 シロノリリィが「ドキドキさせてあげる!」と言ってサプライズを計画していたので、ライスシャワーは内心ものすごくウキウキしていた。

 

(えへへ……! リリィちゃんに指輪嵌めてもらっちゃった! ……嬉しいなぁ。ライス、嬉しすぎてふわふわしてきたよ! ……リリィちゃんの言ってた『ドキドキさせてあげる!』って、何をするのかな? ……ライスの方がお姉さんだから、今までもがんばってお顔に出さないようにしてたけど、今回はちょっぴりピンチかも……)

 

 シロノリリィがいつもと違い、ちょっぴり悪戯な表情でライスシャワーへと近づいてきた。普段と違う彼女の様子に内心大興奮していた。

 

(ふわぁっ!? リリィちゃんのお顔がちょっぴり悪戯っ子でかわいすぎるよぉっ!? ……だ、大丈夫! ライスは負けないもん! いくらリリィちゃんがかわいすぎるからって、そんなにすぐ負けたり……ふぇっ?)

 

 ライスシャワーに近づいたシロノリリィは、ベッドの上でちょこんと座っているライスシャワーの頭を優しく胸に抱きしめた。

 

(ふぇぇっ!?!? あ゛っ!!! すきっ!! あったかいやわらかいっいいにおいするっ!!!!! 待って!!!!! ライス興奮しすぎておかゆになっちゃうっ!?!?)

 

 ビクンビクンと悶えているライスシャワーの耳に、極上のスイーツよりも甘い声で囁いた。

 

「す〜きっ♡ す〜きっ♡ だぁいすきっ♡」

「あ゛っ!!!! あ゛っっ!?!? あ゛っっっ♡」

 

 

 



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【かしこさ53万】シロノリリィを応援するスレ【パワー1億2000万】

1:名無しのウマ娘ファン

立った!次スレが立った!

 

2:名無しのウマ娘ファン

よくやった用済みだ

 

3:名無しのウマ娘ファン

1乙リリィちゃんかわいい

 

4:名無しのウマ娘ファン

スレタイがフリーザ様の通常状態の戦闘力とフルパワーで芝

 

5:名無しのウマ娘ファン

フリーザ様のフルパワー初めて知ったわ

 

6:名無しのウマ娘ファン

53万が有名すぎるのが悪い まあ普通は知らんしな

 

7:名無しのウマ娘ファン

悟空の超サイヤ人は1億5000万だぞ

 

8:名無しのウマ娘ファン

フルパワーフリーザ様(フルパワーで戦えるのは数分でしかも直ぐに疲れて戦闘力が落ちる)

 

9:名無しのウマ娘ファン

おっさんばかりのスレ

 

10:名無しのウマ娘ファン

息子とこの前ブロリーの映画見たわ

 

11:名無しのウマ娘ファン

父親がリリィちゃんのファン(ロリコン)とか嫌だわ

 

12:名無しのウマ娘ファン

だだだ誰がロリコンじゃいっ!!

 

13:名無しのウマ娘ファン

失礼なやつめ俺は百合豚だ

 

14:名無しのウマ娘ファン

ライリリは俺のオアシス

 

15:名無しのウマ娘ファン

イェイイェイ!リリィちゃんかわいい!リリィちゃんかわいい!お前もリリィちゃんかわいいと叫びなさい!!

 

16:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんかわいい!

 

17:名無しのウマ娘ファン

控えめに言ってやばいスレ

 

18:名無しのウマ娘ファン

狂気のスレの始まりだぜー!

 

19:名無しのウマ娘ファン

やったぜ!リリィちゃんのタペストリー買えたぞ!

 

20:名無しのウマ娘ファン

こっちは売り切れだわ わりぃ…やっぱつれぇわ…

みんなはリリィちゃんグッズ買ったの?

 

21:名無しのウマ娘ファン

言えたじゃねぇか…

もちろん買ったぞ だけどかわいすぎて今の俺めっちゃキモい顔してるわ

 

22:名無しのウマ娘ファン

聞けてよかった…リリィちゃんがかわいすぎてネットで宗教画扱いされてるのは芝生える

 

23:名無しのウマ娘ファン

かわいいからなしょうがない

 

24:名無しのウマ娘ファン

①真っ白な髪②綺麗すぎるお顔③煌めく金色の瞳④聖なる壁⑤ライスちゃんとイチャイチャ

これらの特徴と見た目が神秘的すぎて信仰集めるっていうのはまぁよくわかるよリリィちゃんかわいい

 

25:名無しのウマ娘ファン

ところでリリィちゃんのブロマイドなんだけどさぁ…ちょっと綺麗すぎない?

 

26:名無しのウマ娘ファン

見た瞬間泣いたのが僕

 

27:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん知らない人にCG扱いされてたのは芝生えたわ

 

28:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんって普段はにこにこしててかわいいけど黙ってると綺麗すぎるよね

 

29:名無しのウマ娘ファン

顔が良すぎるんよ

 

30:名無しのウマ娘ファン

あれでお化粧とかしてないんだっけ まだ成長の余地を残しているというのが恐ろしい

 

31:名無しのウマ娘ファン

さりげなくリリィちゃんのおっぱいを褒めるな

 

32:名無しのウマ娘ファン

おっぱい?(AAカップ)

 

33:名無しのウマ娘ファン

どれだけ薄くても夢と希望が詰まっていればおっぱいなのだよ

 

34:名無しのウマ娘ファン

スレ民 どんな女がタイプだ?

 

35:名無しのウマ娘ファン

>>34

小さくておっぱいとおしりが薄い女の子がタイプです!

 

36:名無しのウマ娘ファン

>>34

小さくておっぱいとお尻が大きくてムチムチした女の子が好みです!

 

37:名無しのウマ娘ファン

>>35>>36

どうやら俺たちは親友のようだ

 

38:名無しのウマ娘ファン

薄汚い東堂やめろ

 

39:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんとライスちゃんを見守る壁になりたい

 

40:名無しのウマ娘ファン

僕は床になりたいです

 

41:名無しのウマ娘ファン

ぱんつ見る気だなドスケベ野郎

 

42:名無しのウマ娘ファン

開けろ 警察だ

 

43:名無しのウマ娘ファン

ガチのやつで芝

 

44:名無しのウマ娘ファン

まあ残当

 

45:名無しのウマ娘ファン

裁判長!判決は!?

 

46:名無しのウマ娘ファン

>>45

死刑

 

47:名無しのウマ娘ファン

えぇっ!?あんまりですよ!!

 

48:名無しのウマ娘ファン

そんな…ただ俺はウマ娘ちゃんを見守りたいだけなのに…

 

49:名無しのウマ娘ファン

でもぱんつ見るんでしょ?

 

50:名無しのウマ娘ファン

うん!

 

51:名無しのウマ娘ファン

極刑!遺言を忘れずにな!

 

52:名無しのウマ娘ファン

判決厳しくて芝

 

53:名無しのウマ娘ファン

変態どもは土に埋めるとして…リリィちゃんのフィギュア製造中止は芝

 

54:名無しのウマ娘ファン

原型師が「俺の実力ではこのかわいさを表現できない」って挫折したんだっけ

 

55:名無しのウマ娘ファン

そのうちライスちゃんが作るだろ

 

56:名無しのウマ娘ファン

本当に作りそうだからやめろ

 

57:名無しのウマ娘ファン

どのウマ娘ちゃんのグッズでも言えることだけどめっちゃクオリティ高いよね

まあURAの財源だし本気出さなきゃいかんよね

 

58:名無しのウマ娘ファン

重賞勝たないとグッズ出ないのだけはつらい

商売だから仕方ないけどさぁ…

 

59:名無しのウマ娘ファン

俺は公式でグッズが無いウマ娘ちゃんのやつは自作してるぞ

 

60:名無しのウマ娘ファン

クリエイティブニキで芝

愛が溢れてますね

 

61:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんグッズ(ライスシャワー監修)なのが芝生える

 

62:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃん「素人は黙っとれ──」

 

63:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんに対する風評被害はやめなさい

 

64:名無しのウマ娘ファン

言うはずないだろ!!ライスちゃんがそんな事っ!!

 

65:名無しのウマ娘ファン

君が一番リリィちゃんの魅力を引き出せるだろうけどさぁ…

 

66:名無しのウマ娘ファン

今思い出したけどライスちゃんがリリィちゃんのライブで着けてたハッピとかって自作っぽかったよね

 

67:名無しのウマ娘ファン

まあライスちゃんだし

 

68:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんだしね

 

 

 

 

 

 

214:名無しのウマ娘ファン

そういえばホープフルステークス以降のリリィちゃんとライスちゃんがイチャイチャしまくってる件について

 

215:名無しのウマ娘ファン

何か問題が?

 

216:名無しのウマ娘ファン

いいよね興奮する

 

217:名無しのウマ娘ファン

デート中に写真アップしないのがいいよね

 

218:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんが肉ガム食べてたのは芝生えたわ

 

219:名無しのウマ娘ファン

あれくっそ不味いよね 不味い通り越して不快だったわ

 

220:名無しのウマ娘ファン

言い過ぎだろと思ったがあれまじでクソ不味いよな

 

221:名無しのウマ娘ファン

肉ガム結構食ってるやついるのな

 

222:名無しのウマ娘ファン

好奇心には勝てぬよ

 

223:名無しのウマ娘ファン

デートした後青汁に色々お話ししてそう

 

224:名無しのウマ娘ファン

保護者かな?そういえばトレーナーって保護者だったな

 

225:名無しのウマ娘ファン

青汁がこの前のバレンタインで二人からチョコ貰ったってめっちゃ自慢してたの正直笑った

 

226:名無しのウマ娘ファン

バレンタイン以降フラワーちゃんとセイちゃんがおてて繋いでデートしてるの目撃されてるね

 

227:名無しのウマ娘ファン

やるねぇ…!

 

228:名無しのウマ娘ファン

普段割とお堅いウマートか二人の写真アップしかしないのにバレンタインの時はめっちゃウッキウキで書き込んでたの芝生えますよ

 

229:名無しのウマ娘ファン

青汁「ライスとリリィからチョコを貰ったんですよその時の二人がかわいくてかわいくてしかも手作りですよやだもうめっちゃ嬉しい二人とも大好き!」

 

230:名無しのウマ娘ファン

めっちゃ早口で書き込んでそう

 

231:名無しのウマ娘ファン

でも俺はあの二人からチョコ貰えたらこれより酷いことになる自信がある

 

232:名無しのウマ娘ファン

俺なら「フッヒョwフヒヒw」ってにやけ面で受け取る

 

233:名無しのウマ娘ファン

青汁ってリリィちゃんとライスちゃんにデレデレだよね

 

234:名無しのウマ娘ファン

だってかわいいし…

 

235:名無しのウマ娘ファン

素直でかわいくて慕ってくれるんだぜ?デレデレになるよ

 

236:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんって周りからめっちゃ甘やかされてそうだよね

 

237:名無しのウマ娘ファン

性格が素直すぎるかわいい

 

238:名無しのウマ娘ファン

めっちゃポジティブかわいい

 

239:名無しのウマ娘ファン

俺が親なら甘やかす

 

240:名無しのウマ娘ファン

実際に両親には甘やかされてそうだよね

 

241:名無しのウマ娘ファン

レース場に毎回両親来て応援してくれてるんだっけ?

 

242:名無しのウマ娘ファン

確かウマッターでも毎レース応援してくれてるとか書いてた気がする

 

243:名無しのウマ娘ファン

両親っぽい人とたまたま近くになったけど多分本物のご両親だと思うわめっちゃ「リリィちゃ〜ん!」って叫んでたし

めちゃくちゃ愛されててほっこりするわ

 

244:名無しのウマ娘ファン

そういやリリィちゃんがめっちゃおててブンブンしてる人いたなあれご両親だったのか

めっちゃ一般人っぽいから詳しくは書き込まないけどな

 

245:名無しのウマ娘ファン

ウマッターでちょっとだけご両親について書かれてたけどママはちょー綺麗だよ!とか書いてあったなパパはメガネかけてる!なのはちょっと笑っちまった

 

246:名無しのウマ娘ファン

そういやほとんど気にしてなかったけど白毛って珍しいよね?

 

247:名無しのウマ娘ファン

そういやそうだなかわいすぎてあんま気にしてなかったわ

 

248:名無しのウマ娘ファン

おっ?このウマ娘ちゃん白いな→芦毛です とかよくあるからな

 

249:名無しのウマ娘ファン

俺は芦毛だぞ最近髪の毛白くなってきたからな

 

250:名無しのウマ娘ファン

ただの白髪だろ!

 

251:名無しのウマ娘ファン

加齢っすね

 

252:名無しのウマ娘ファン

加齢の話とは…少しおつかれいのようだね ふふっ…

 

253:名無しのウマ娘ファン

野生の会長が現れた!

 

254:名無しのウマ娘ファン

絶対に笑ってはいけないトレセン学園とか変な企画やらないでください会長

 

255:名無しのウマ娘ファン

あれ会長発案だったのか…

 

256:名無しのウマ娘ファン

年末のおふざけ企画で気軽に他の三冠バ呼ぶのはやめなさい バスに乗り込んで来て台本無視したあげく満足して帰るシービーは流石に芝生えたわ

 

257:名無しのウマ娘ファン

やたら豪華なメンバーだと思ったら会長が集めたのか…

シンボリルドルフ、ミスターシービー、マルゼンスキー、オグリキャップ、タマモクロス、黄金世代…ドリームトロフィー並みに豪華だったわ

 

258:名無しのウマ娘ファン

会長が初めてドリームトロフィーに出走した時のメンバーめっちゃやばかったよな 生で見れて興奮したわ

 

259:名無しのウマ娘ファン

くっそ羨ましいわあの時チケット取れなかったんだよな…

 

260:名無しのウマ娘ファン

確かシンボリルドルフ、マルゼンスキー、ミスターシービー、トウショウボーイ、テンポイント、グリーングラス…他にもやべー奴らしかいなかったあれか?

 

261:名無しのウマ娘ファン

そうそうあれだよまじでやばかったわ三冠バが三人も出たやべーやつ

超特別ゲストがマジでやばかったやつね

 

262:名無しのウマ娘ファン

シンザンが特別ゲストだったのはマジでおったまげたぜ

シンザンを超えろ!→7冠でルドルフが超えた!→じゃあどっちが強いの?とかいうウマ娘界の禁忌を公式が「じゃあやるか!」で実現させたヤバいやつ

 

263:名無しのウマ娘ファン

シンザンとかもう走ってないしルドルフが勝つだろwからの全員纏めて撫で切ったのは流石に芝も生えんかったわ

 

264:名無しのウマ娘ファン

当時シンザンを知らない人多くておじさんは悲しかったよ

シンザンは俺の永遠の推しだよ

 

265:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんがシンザン好きらしいね

 

266:名無しのウマ娘ファン

まじ?結構渋い趣味してるな…

 

 

 

 

 

 

631:名無しのウマ娘ファン

こんにちは!いきなりだけど俺がクラシック級で注目してるウマ娘ちゃん達を紹介するよ!まずは1人目!ニシノフラワーちゃん!スプリンターで阪神ジュべナイルフィリーズに勝ってるウマ娘ちゃんだぞ!先行策を得意としているぞ!ちっちゃくて可愛いね!同室のミホノブルボンちゃんの保護者役でお料理も上手な可愛いウマ娘ちゃんだ!

 

632:名無しのウマ娘ファン

急にテンション高いやつが現れたな続けたまえ

 

633:名無しのウマ娘ファン

セイウンスカイにグイグイいってるウマ娘ちゃんじゃないか!

 

634:名無しのウマ娘ファン

ブルボンのママじゃん

 

635:名無しのウマ娘ファン

僕のこともお世話して♡

 

636:名無しのウマ娘ファン

きっしょ鏡見てそのセリフ吐けよ

 

637:名無しのウマ娘ファン

(´;ω;`)

 

638:名無しのウマ娘ファン

言葉キツすぎ…いやキショいな

 

639:名無しのウマ娘ファン

まあ当然の結果だな

 

640:名無しのウマ娘ファン

ニシノフラワーは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ

 

641:名無しのウマ娘ファン

赤いロリコンは帰れ

 

642:名無しのウマ娘ファン

続いて2人目!サクラバクシンオーちゃん!バクシンバクシン叫びながら駆け抜けるスプリンターだ!今でも強いがこの子は多分これから伸びるタイプだぞ!でもマイルはちょっと勘弁な?逃げを得意としているが多分先行も出来そうだと個人的には思ってるぞ!学級委員長を神聖視していて面倒見がよくってスプリンターズなる謎の集まりをしているぞ!将来的に長距離も挑戦するとかいってるぞ!よく見るとおっぱいがでっかいぞ!!

 

643:名無しのウマ娘ファン

めっちゃ元気だよね

ところでバクシンって何?

 

644:名無しのウマ娘ファン

何があろうと前へと進み続ける崇高なる意志だ知らんけど

 

645:名無しのウマ娘ファン

バクシンは…バクシンだ!

 

646:名無しのウマ娘ファン

元気な子だなぁ…ん?よく見るとおっぱいでっか…ってなるよね

 

647:名無しのウマ娘ファン

下半身に脳みそ付いてんのか?

 

648:名無しのウマ娘ファン

ちゃんとち○ぽって言え

 

649:名無しのウマ娘ファン

お○んぽ!

 

650:名無しのウマ娘ファン

おさんぽかおち○ぽか区別つかないやつ

 

651:名無しのウマ娘ファン

バクシン!バクシン!

 

652:名無しのウマ娘ファン

3人目はアッシュストーンちゃん!重賞に勝利しているスプリンターだ!マイルも走れるぞ!先行と差しが得意で短距離は先行マイルは差しで行く傾向があるね!ちょっと口が悪いけど最近は大人しくなったぞ!野良犬から室内犬になったねえらいね♡反抗期は終わったのかな?腹筋バキバキでおっぱいもでっかいぞ!!最近はスプリンターズで集まってるのがよく目撃されてるね!

 

653:名無しのウマ娘ファン

さてはお前おっぱい星人だな

 

654:名無しのウマ娘ファン

朝日杯は惜しかったね後ちょっとだったのに

 

655:名無しのウマ娘ファン

負けた相手がリリィちゃんとミホノブルボンだから相手が悪いと言われてるね

 

656:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんに分からせされて反抗期が終わったアッシュちゃん!リリィちゃんに分からせされて反抗期が終わったアッシュちゃんじゃないか!

 

657:名無しのウマ娘ファン

おっさんからしたら口が悪い子どもなんて「反抗期かな?かわいいね♡」で終わりだからな

 

658:名無しのウマ娘ファン

でもきもいって言われたら立ち直れないでしょ?

 

659:名無しのウマ娘ファン

おっさんは繊細だからな

 

660:名無しのウマ娘ファン

特に頭がな

 

661:名無しのウマ娘ファン

今俺の頭が薄いって言ったのはどいつだ?

 

662:名無しのウマ娘ファン

ハゲゥー!!

 

663:名無しのウマ娘ファン

4人目はミホノブルボンちゃん!スプリンターで朝日杯を勝ってるぞ!逃げを得意としていて坂でも減速しないパワーが特徴だ!もちろん末脚もすごいぞ!スパルタトレーニングでスタミナを増やしてクラシック三冠を狙っているぞ!とんでもない脳筋だな!この子もスプリンターズの集いにいるよ!勝負服がすっげぇえっちだ!!オッパイプルンプルン‼︎

 

664:名無しのウマ娘ファン

頭ち○ぽにゃ…

 

665:名無しのウマ娘ファン

勝負服がえっちは同意する

 

666:名無しのウマ娘ファン

スタミナ付けたスプリンターってやばいよね?

 

667:名無しのウマ娘ファン

やばいけど所詮は机上の空論よ

 

668:名無しのウマ娘ファン

本人もトレーナーも脳筋なのよ

 

669:名無しのウマ娘ファン

今度スプリングステークス出るんだっけ?

 

670:名無しのウマ娘ファン

ミホノブルボンに1800は無理

 

671:名無しのウマ娘ファン

なんで三冠目指してるんだろ?

 

672:名無しのウマ娘ファン

わからん でもウマ娘なら大体憧れるだろ知らんけど

 

673:名無しのウマ娘ファン

フラワーちゃんがママしてるブルボンちゃん!

 

674:名無しのウマ娘ファン

5人目はライスシャワーちゃん!ステイヤーでホープフルステークスを勝ってるぞ!先行策を得意としていてマーク戦術で相手のスタミナを削るぞ!ステイヤー故に中距離はどうなのかな?と言われていたがスピードとパワーを鍛えて対応したっぽいな!よくみると意外とおっぱいがあって推定Cカップあるぞ!ホープフルステークスはすごかったな!興奮したぞ!!

 

675:名無しのウマ娘ファン

出たわね

 

676:名無しのウマ娘ファン

黒くてちっちゃいやべーやつ

 

677:名無しのウマ娘ファン

その説明だとGちゃんみたいだからやめなさい

 

678:名無しのウマ娘ファン

ホープフルは…当時はネットが大騒ぎだったな

 

679:名無しのウマ娘ファン

まああれは衝撃としか言えんよ

 

680:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんの彼女

 

681:名無しのウマ娘ファン

かわいいよね勝負服が鎖骨と肩丸出しはちょっとえっちすぎるね

 

682:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんをえっちな目で見たやつは俺がコロコロする

 

683:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんとうまぴょいしろ(過激派)

 

684:名無しのウマ娘ファン

言われなくてもそのうちする(穏健派)

 

685:名無しのウマ娘ファン

青汁とリリィちゃんを揶揄う小悪魔め!すき♡

 

686:名無しのウマ娘ファン

最後はシロノリリィちゃん!俺の推しだ!重賞を勝ってるマイラーだぞ!ダートが得意らしいが一度もレースしてないね!先行差し追い込みとウマ娘離れした怪力が特徴だ!あとめっちゃかわいいまじでかわいい真っ白な髪の毛きれいでさらさらおめめぱっちり睫毛長いお肌ぷにぷにおててちっちゃいおっぱいぺたんこもうかわいすぎてやばいコロコロ変わる表情がかわいすぎるけどしゃべってないとお人形さんみたいでかわいすぎる声もかわいいし地上に舞い降りた天使だなだいすき♡ライスちゃんと毎日イチャイチャしているぞ!もっとイチャイチャしろお誕生日に指輪をお互いに送ってるからもう結婚したようなもんだな!リリィちゃんには白百合を象った指輪をあげてライスちゃんには青いバラを象った指輪をあげてるな!お互いを花に例えてるのが最高だな!尊い!!以上っ!!

 

687:名無しのウマ娘ファン

本性見せたわね

 

688:名無しのウマ娘ファン

ウワーッ!?ただのオタクだ!!

 

689:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんがかわいすぎて狂った挙句ライリリの光を浴びて最早人で無くなった憐れな怪物…

 

690:名無しのウマ娘ファン

百合豚の成れの果て

 

691:名無しのウマ娘ファン

おやおやおや

 

692:名無しのウマ娘ファン

ボ卿は帰れ

 

693:名無しのウマ娘ファン

まあ俺達も他から見れば狂人の集まりなんだけどな

 

694:名無しのウマ娘ファン

ボ卿って確かボンボボボって名前のやつだっけ?

 

695:名無しのウマ娘ファン

ボンボルドだゾ

 

696:名無しのウマ娘ファン

ボンドルドだよ!

 

697:名無しのウマ娘ファン

うろ覚えで芝

 

698:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんとライスちゃんの指輪事件はやばかったわね…

 

699:名無しのウマ娘ファン

当時はスレが大騒ぎだったからな

 

700:名無しのウマ娘ファン

あ゛ー!!結婚するっ!?!?

 

701:名無しのウマ娘ファン

指輪してるっ!!結婚した!!!

 

702:名無しのウマ娘ファン

やったあぁぁぁ!!!!ライリリ万歳っ!!

 

703:名無しのウマ娘ファン

当時のレス再現しなくていいから…

 

704:名無しのウマ娘ファン

デート写真でさりげなく指輪写すの芝生えるんですよね

 

705:名無しのウマ娘ファン

もう逃げられないゾ♡

 

706:名無しのウマ娘ファン

逃げる気ないだろいい加減にしろ!!

 

707:名無しのウマ娘ファン

そういやもうすぐスプリングステークスじゃん

 

708:名無しのウマ娘ファン

クラシック入ってからリリィちゃんの初レースだね応援しなきゃ

 

709:名無しのウマ娘ファン

ミホノブルボンとの初対決だな

個人的な予想としては2000走ったリリィちゃん有利と考えている

 

710:名無しのウマ娘ファン

でもミホノブルボンめっちゃ鬼トレーニングしてたらしいぜ?

 

711:名無しのウマ娘ファン

まあ勝負は始まるまで分からない

とりあえずリリィちゃんかわいいするぞ

 

712:名無しのウマ娘ファン

うおぉぉぉ!!リリィちゃんかわいい!

 

713:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんかわいい!リリィちゃんかわいい!

 

714:名無しのウマ娘ファン

もっとライリリ見たいですっ!!

 

715:名無しのウマ娘ファン

イチャイチャしろっ!!もっとちゅーしろ!!

 

716:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんは多分おはようとおやすみのちゅーしてる

 

717:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんからちゅーしろ!恥ずかしくてまだできない?かわいいね♡

 

718:名無しのウマ娘ファン

君達さぁ…

 

 




次はスプリングステークスです。


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第21話 スプリングステークス! 激突! ミホノブルボンとサクラバクシンオー!

口内炎が治ったので投稿を再開します。楽しみにしていてくれた皆様にはご迷惑をお掛けしました。



 みなさんこんにちは。14歳になったリリィちゃんです。ライスちゃんもお誕生日を迎えて17歳になりました。それでですね、なんと……ライスちゃんからお誕生日プレゼントで指輪を貰っちゃいました!! とっても嬉しいです! ライスちゃんだいすきっ!! 私もお返しにライスちゃんに指輪を贈ったちゃいました。えへへ! それでですね、ライスちゃんは先日、弥生賞に出走して見事に優勝しました。やっぱりライスちゃんは強いですね! レースを観戦していたのですが、ちょー絶好調って感じでしたね。タンホイザさんは2着でした。

 そして今日はスプリングステークス当日です。今年に入ってからみっちりトレーニングをしてきたので今の私はつよつよリリィちゃんです! ライスちゃん達に私のかっこいいところをお見せしなければいけませんね!

 バレンタインにお誕生日デートやら色々ありましたが、私だってライスちゃんと遊んでばっかりだったわけじゃないんですよ! 今日はブルボンちゃんと初対決なので私も気合が入ってます! むんっ!!

 実はですね、今日私が注目しているのはブルボンちゃんだけじゃないんです。スプリンター同盟のリーダー的存在であるあの人も今回のレースに出走しているんです。その人の名前は──

 

 


 

「ハイッ、サクラバクシンオーです!」

 

 私はサクラバクシンオーです! 見ての通り学級委員長をやっております!

 

「今回のレースは君にとって過酷なものとなるだろう。距離的な意味でも、ライバル的な意味でも、だ。……だが、この作戦が成功すれば……勝機はある!」

「ええ、分かっていますとも! ですから、この学級委員長が見事にバクシンしてみせましょう!」

 

 私のトレーナーさんはこの日の為にものすご〜く、頑張って作戦を考えてくれました。私は短距離ではバクシン的な力を発揮できるのですが、マイル以上の距離になるとスタミナ不足でバクシンできなくなってしまうバクシン的なスプリンターです。将来的に長距離まで走れるようになる予定ですが!

 練習の際にトレーナーさんが「バクシンオー、マイルでバクシンは使うなよ?」と言いましたが、己の内から溢れ出るバクシンを抑えられず「了解ッ! バクシンッ!!」と叫び全力で駆けてしまいました。……反省せねばなりません! 己の未熟さをッ!! 私はどうしてもこのバクシン癖を克服する事ができませんでした。

 ですが、トレーナーさんは私に言いました。「……逆に考えるんだ。バクシンしても、いいんだ。って……」と。一体どういことなのでしょうか?

 そして、トレーナーさんは私にある作戦を授けました。その作戦を伝えられて私は「ッ!! なんというバクシン的発想ッ!!」と驚愕したものです。いつも短距離レースしかさせてくれないし、私の目標である『長距離制覇』を本当に考えてくれているのか? などとほんの少し疑問に思っていたのですが、この作戦を伝えられた時はあなたにスカウトされて本当によかった! と思いましたね!

 

「……さぁ、君の力を……新たなるバクシンを皆に見せつけてやるんだっ!」

「お任せください! このサクラバクシンオー……いえ、(スーパー)バクシンオーの走りをご覧あれ!!」

 


 

 パドックでの紹介を終えた私達は地下バ道を進みます。

 

(ブルボンちゃん……すごい身体をしてました)

 

 改めて見た彼女の肉体を思い出し、私は武者震いしました。

 鋼の如く引き締まった肉体、まさしく筋肉の鎧とでも言うべき完成度でした。朝日杯から壮絶な特訓を重ねてきたのでしょうね。今回のレースも一筋縄ではいかないと感じました。でも、恐ろしいと感じた人がもう一人います。

 

(……サクラバクシンオーさん。この人も警戒しなければいけませんね)

 

 恐ろしい程堂々とした彼女の様子に、私は戦慄しました。──何か、確実に仕掛けてくる。……そう感じるほどに。

 

(でも、私だって負けてません。約3ヶ月、じっくりトレーニングしましたからね!)

 

 

 


 

(……やはり、リリィさんは強くなっていましたね)

 

 私は先程のリリィさんの様子を、パドックでの彼女を思い出していました。

 相変わらず綺麗すぎるリリィさんですが、その肉体はホープフルステークスの後とは比べ物にならないほど成長していました。見た目はほぼ変化がありませんが、中身──筋肉が格段にレベルアップしていました。

 

(リリィさんの肉体的な成長を観察するのは困難です。何故なら、とても綺麗なので他のところに目を奪われてしまうからです。ですが、私のハイパーブルボンアイは誤魔化せません。この3ヶ月、彼女も相当な特訓を重ねてきたのでしょう。……それでも勝つのは私です)

 

 そして、もう一人の事を思い浮かべました。

 

(バクシンオーさんは……まぁ、よく分からないので気にしないことにします)

 

 いつもより自信満々でしたが、いつも通りといえばいつも通りなので気にしない事にしました。

 

(私は、私の走りを貫くだけです。……見ていてください、マスター、お父さん)

 

 


 

 

『皐月賞への切符を掴むのは誰なのか。スプリングステークス! 天気は小雨、バ場は重となっています。3番人気はこの娘です、サクラバクシンオー。この評価は少し不満か? 無敗ジュニア級チャンピオンでありながら距離不安から2番人気となってしまいました、ミホノブルボン。そして本日の主役はこのウマ娘を置いて他にいない。色々と話題のウマ娘1番人気シロノリリィ! ゲートイン完了。出走の準備が整いました。──さあゲートが開いた。各ウマ娘、そろってキレイなスタートを切りました』

『誰が先頭に抜け出すか注目しましょう』

『先行争いはミホノブルボンとサクラバクシンオー! 二人が激しく競り合っているぞ! 注目のシロノリリィは前方から5番手の位置についています』

 

 ゲートが開きレースが始まる。シロノリリィはミホノブルボンを観察する為に前方から5番手の差しの位置についた。だが、今日のレースは今まで走ってきたレースと比べてある部分が違っていた。……そう、バ場が『重』なのだ。

 

(……なんでしょうか。違和感がある……じゃなくて、違和感が無さすぎる?)

 

 通常なら重バ場だと走る為にいつも以上にパワーが必要になるのだが、シロノリリィは自身の圧倒的なパワーによって逆に走りやすいと感じていた。……本人はよく分かってないようだが。

 

(……なんで走りやすいのかはよくわかりませんが、これはスタミナを温存するチャンスですね!)

 

 

 

 

 場面は変わって、レースはミホノブルボンとサクラバクシンオーがハナを奪い合う展開となった。二人が譲らず、他がそれに付いていく形だ。

 サクラバクシンオーはミホノブルボンに感嘆していた。自信に付いていくスピードと、それが落ちる気配のないスタミナに。

 

(そうッ! 今こそ、トレーナーさんからの作戦を実行する時ですッ!!)

 

 妙に自信満々なサクラバクシンオーだが、その作戦はというと「──バクシンオー。今回のレースは1800だ。君にとっては未知の距離であり、同時に厳しいものになるのは間違いない。……だが、この1800を2で割ると900になる。そう、900は短距離なんだ。だからね──900を、2回走ればいいんだよ」

 

(まさにバクシン的発想ッ!! トレーナーさんの思いに応えるために学級委員長として全力で……危ないところでしたッ! 最初の900は全力ではなく少しだけバクシンするのでした!! ブルボンさん、なんと恐ろしいバクシンッ! 思わず釣られてしまうところでしたッ!!)

 

 

 本当は全力でバクシンしたいところを寸前で堪えた。ミホノブルボンはサクラバクシンオーに構わず自分のペースで走っている。彼女は精密機械と呼ばれるほど正確なラップを刻んで走るウマ娘だ。むやみやたらとバクシンしては、後からバクシンする為のスタミナが無くなってしまう。

 二人が競り合いながら1、2コーナーを回るが、レース展開に大きな変化は無い。だが、直線に入ったところでバクシンオーに変化が起きた。

 

(──バクシンしたい。いえ、ダメですッ! 今ここでバクシンしたら、作戦が無駄になってしまいますッ!!)

 

 いつものレースならもうバクシンしている距離だ。それ故に身体がバクシンを求め出した。

 

(──ッ!?!? これは……自らのバクシンを……抑えられないッ!? …………ちょっとだけ……ちょっとだけなら……)

 

 バクシンしそうになったその瞬間、サクラバクシンオーはトレーナーとのトレーニングの日々を思い出した。

 

『バクシンオーっ! そうだ、己のバクシンに飲み込まれるなっ!! 自らのバクシンを制御しなければ、長距離など夢のまた夢だぞっ!』

 

『……くッ! バク……シン……ッ!! ……バクッ……シッ!!』

『いいぞ! そのまま抑え込むんだっ!!』

『…………バク……シ……』

 

 

 

「────バクシーンッ!!!!」

 

 ──サクラバクシンオーはバクシンした。

 

 

 

『サクラバクシンオーが掛かってしまいましたね。冷静さを取り戻せるといいのですが』

 

 

(バクシンオーさん……やはり掛かってしまいましたか。ですが、私は自分のペースで走り……少し、楽しそうですね)

 

 ミホノブルボンの中のバクシン因子がほんの僅かに疼いたが、気合いで抑え込んだ。

 シロノリリィは暴走するサクラバクシンオーを見てすごくびっくりしていた。

 

(……えっと、もしかして、作戦とかはなかったのでしょうか。……あの自信満々な雰囲気は何だったのかな……?)

 

 バクシンしたサクラバクシンオーが駆け抜けていくが、次第に体力を失い垂れてきた。

 

「…………バク……シン……シーン…………」

 

 ミホノブルボンがスッと避けて3コーナーへと突入する。それを見てシロノリリィは仕掛け始めた。

 外を回り他のウマ娘を交わしていく。ミホノブルボンとの距離は5バ身程だ。そして2番手まで上がったシロノリリィが彼女の背中を捉えようとしたその時……彼女の筋肉が隆起し、暴力的な加速を発揮した。

 

(確かに速いですね。……でも、私だって負けてませんよ!)

 

 

 ──ミホノブルボンの後方で、ターフが爆ぜる音がした。

 

 

『ミホノブルボンとシロノリリィが加速する! 勝負は二人の一騎討ちだ! 後ろの娘達は間に合うのかっ!? シロノリリィがミホノブルボンに追い縋る!』

 

 己の全力をターフへと刻み、シロノリリィは加速する。

 

(……やっぱり、とっても走りやすいです。……これなら、ブルボンちゃんにも追いつけますっ!!)

 

 徐々にミホノブルボンの背中を捉え始め、そして遂に彼女の背中に手が届くまでになった。

 

(あと……少し……っ!!)

 

(っ! ……素晴らしいです、リリィさん。まさか……ここまでとは、予想以上です)

 

 

『並んだっ! ミホノブルボンとシロノリリィが先頭争いだ! どっちだ!? どっちが抜け出すのかっ!?』

 

「……まだ、いけ……ますっ!!」

 

 その声に応えるようにシロノリリィの筋肉が躍動し、もう一段階ギアを上昇させた。

 その小さな足跡をターフへ刻み、シロノリリィが超加速する。

 

 

『抜けたっ! シロノリリィが抜けたっ!! 先頭はシロノリリィ! ミホノブルボンは──』

 

 

 

 

 

「────想定外でした。これを使うのは」

 

 ──世界が変貌る。ミホノブルボンによって染められる。

 

 彼女の周りにあるのは鉄の射出機(カタパルト)。遥か遠い彼処へと突き進む決意の具現。

 彼女の前方にあるのは儚き光が煌めく闇の海(無限に広がる宇宙)。生命など存在できぬ其処は彼女の覚悟の具現。

 光を纏って少女は進む。幼い自分の憧れを、父の、トレーナーを夢をその身に纏って昏い闇へと突き進む。

 決して止まらぬ。決して折れぬ。……其処に夢がある限り。

 

 領域『G00 1st.F∞;』

 

 

 

 

『──ミホノブルボンっ!? ミホノブルボンがシロノリリィを再び追い抜いた! 凄まじい加速力! シロノリリィは追いつけない! 3バ身の差を付けミホノブルボンがゴール! 1着はミホノブルボン! 2着はシロノリリィ! 3着は──』

 

 

 

「…………はぁっ……はぁ……」

 

 ぽつぽつと、雨がシロノリリィを濡らす。

 

(…………届かなかった……)

 

 少女は固く拳を握る。悔しさを忘れない為に、強く握りしめる。

 

「──リリィさん、お見事でした。……ここで使う予定では無かった奥の手を……『領域』を使わなければならないほど、あなたは強かった。……ですが、私には負けられない理由があります。例え誰であろうとも、私の夢の為に負けられないんです」

 

 二人は視線を交わし、決して目を逸らさずに見つめ合う。

 

「──私は、三冠ウマ娘になります。そのために、今ここで躓くわけにはいきません」

 

 彼女の瞳──ミホノブルボンの瞳の奥から、その強い覚悟を宿した光が溢れ出る。

 

「……まずは一言。おめでとうございます、ブルボンちゃん。とっても強かったです。……でも、次は──」

 

 未だ雨は降り止まず、少女達を濡らしている。差を見せつけられた、未だ自分が届かぬ『領域』を見せつけられた。だが……

 

「──私が勝ちますから」

 

 ──白い少女の瞳から、光は消えない。

 

 

 


 

 

 ミホノブルボンが控室へと戻ると、トレーナーが労いの言葉と共に彼女にタオルを渡した。

 

「まずはおめでとう。そして、よくやったなブルボン。風邪をひかないように直ぐにシャワーを……どうした、震えているぞ。……まさか」

「……いいえ、マスター。……これは武者震いと言うやつです」

「……あまり強がりを言うな。俺の前でぐらい素直になっていいんだぞ」

「……はい。今回のレースで、私はリリィさんに勝ちました。……でも、少しだけ……不安なんです。勝つためとはいえ、彼女に切り札まで見せてしまったのが、この選択が本当に正しかったのかどうか……」

「……ブルボン。──信じろ、俺達の今までを」

 

 そう言うとトレーナーが彼女の頭の上に優しく手を置いた。普段はスパルタの鬼と呼ばれる彼だが、今の表情はまるで娘を気遣う父親の様だ。

 

「俺の過酷なトレーニングに耐え、そうして身につけた強靭な肉体と強い精神力は、誰にも負けない、負けるはずがない。お前は誰よりも強い……後は勝つだけだ」

「……はい。……ありがとうございます、マスター」

「……ふっ。いい顔になったな。……だが、まずは風邪を引かないようにシャワー浴びて着替えるんだ。この後ウイニングライブも控えてるからな」

「了解しました。ミホノブルボン、これよりメンテナンスモードに移行します」

 

 

 

 

「お疲れ、リリィ。いいレースだったわよ」

「お疲れさま、リリィちゃん。とってもいいレースだったよ。身体冷えてない?」

「……ライスちゃん、るるちゃん。……ありがとうございます」

「……ふふっ。落ち込んでると思ったけど、大丈夫そうだね」

「あらあら。落ち込んでたらお姉さまがハグしてあげようと思ったんだけど……これなら大丈夫そうね」

「大丈夫です、落ち込んでる暇なんてありません! 私はとってもかわいくてかしこくて……つよい子ですから!」

 

 ──シロノリリィは諦めない。どんな強敵であろうとも、決して。




以前まで私は小説を書く時、スマホのメモ帳に大雑把なあらすじを書いてそれを見ながらブラウザで直接書き込むゴリラスタイルでした。でも小説を書く為のアプリがある事を知ったので、これからはそれを使って書いていこうと思っています。
あと今回から小説の書き方を少し変えています。過去に投稿した小説もそれに合わせて一部変更しましたが、話の内容はほとんど変わってないので読み直さなくても大丈夫です。


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第22話 私達の夢

 私がまだ幼い頃にお父さんに連れて行ってもらったレースを今でも覚えている。

 私の『憧れ』。ターフを駆ける偉大なる演出家。

 

 皐月賞。雨の中、不良バ場をものともせずに走り、泥すらあしらって、バ群を切り開き先頭に躍り出たあなた。

 最初の一冠、始まりの一冠。その綺麗な空色の瞳に夢中になる。

 

 日本ダービー。緑鮮やかな初夏。出遅れたあなたの表情に焦りは無い。

 当時の常識など無視して、終始後方に控える。そして、4コーナーを回りあなたの末脚は爆発する。直線一気、前を行くライバル達を、常識すら切り裂いてあなたは駆け抜けた。

 二冠目、強さを証明してみせた二冠。少年のように無邪気に笑うあなたに夢中になる。

 

 菊花賞。柔らかな日差しが心地良い。いつものように後方を陣取り、あなたは不敵に笑う。

 『タブー』。淀の坂は3コーナーからゆっくり上りゆっくり下る、それが常識だとされていた。だけどあなたは坂の手前で先頭に立った。

 誰もが無理だと言った。誰もが失望した。──だが、あなたにはそんなもの関係なかった。あなたの脚は衰えない、誰もあなたに追いつけない。大地が弾む。そして、全てを力で捩じ伏せた。

 三冠目、タブーなど存在しないと証明した三冠。ここは、あなたの為の一人舞台。あなたの強烈な生き様に私は夢中になる。

 ──嗚呼、ミスターシービー。私のヒーロー。

 

 私の夢は、『三冠ウマ娘になる事』。あの強烈な原風景が私を捉えて離さない。

 私はお父さんに言いました。

 

「お、お父さん、私……私、その……三冠ウマ娘になりたいです」

「……! ……そうか。そうか、そうか。ブルボンは、三冠ウマ娘になりたいか」

 

 私のお父さんは、昔トレーナーをやっていました。当時のお父さんの夢は『自分の手で三冠ウマ娘を育てる事』でした。

 それを聞かされた時は、とても驚きました。そして、それを語るお父さんの柔らかな笑顔も印象的でした。

 トレセン学園に入るまで、私はお父さんの特訓を受けました。特訓はとても厳しかったです。ですが、夢の為なら辛くありませんでした。でも、三冠ウマ娘を目指す私の前に壁が立ち塞がりました。距離適正という、壁が。

 

「ブルボンは、とても頑張り屋だね」

 

 短距離走者(スプリンター)。それが私の素質でした。クラシック三冠を目指すなら、それは致命的だと言えるでしょう。

 

「確かに君にはスタミナが足りない。でもね、スタミナは努力すれば伸ばせるんだ」

 

 私は諦めません。

 

「君の才能は、決して諦めない信念……努力し続ける意志だ」

 

 夢の為に。

 

 

 そしてトレセン学園に入学して、私はマスターと出会いました。

 初めの頃、周りのみんなは言いました。

 

「あなたには短距離の才能がある。適正外を走るのなんてやめた方がいい」「才能の無駄遣いだ、無謀にも程がある」「何故分からない? あなたの為を思ってるんだ」、と。

 

 どれだけ言われようと、どれだけ否定されようと私はこの夢を諦めませんでした。そして、そんなある日の事です。

 いつもの様にトレーニングをする私の元へ誰かがやって来ました。その人は私に言いました。

 

「……何故、三冠にこだわる?」

 

「私の夢だからです」

 

 真っ直ぐにその人の瞳を見つめながら答えました。すると、突然その人は大笑いしました。

 

「……そうか、そうか。……実はな、俺の夢も同じなんだ。三冠ウマ娘をこの手で育てあげること。……それが俺の夢なんだ」

 

 お父さんと同じ様に、柔らかく微笑んだその人は、私の前にゴツゴツとした手を差し出しました。

 

「……必ず一緒に、叶えよう」

「…………っ! はい、よろしくお願いします、マスター!」

「…………マスター?」

 

 

『私の夢』は、いつしか『私達の夢』になっていました。私と、お父さんと、マスター。3人の夢。

 負けられない、絶対に。

 

 だから私は──

 

 

 


 

 

 スプリングステークスでブルボンちゃんと戦って、私は考えました。どうすればあの強いブルボンちゃんを倒せるのか。

『領域』。──るるちゃんから教えてもらいましたが、私には使う事ができません。今から覚えようとしても時間が足りないと思います。それに、どうすれば使えるようになるかも分かりません。

 考えて、考えて。とにかくいっぱい考えました。……でも、何も思い浮かばなかったので、とりあえず走ることにしました。悩んだ時は走れば大体解決するってテレビでスズカさんも言ってましたしね!

 

 

「ライスちゃんも走るの?」

「うん。ライスもちょっと……そういう気分だったから」

 

 休日の朝、私が朝食を食べた後に走るための準備をしているとライスちゃんが話しかけてきました。どうやらライスちゃんも一緒に走りたいようです。もちろん大丈夫です!

 でもよく見るとライスちゃんのお顔がいつもよりちょっとだけ悩んでいるような感じです。きっと私と一緒で、ブルボンちゃんのレースで何か思うところがあったのでしょう。

 

「いいよ! じゃあ、一緒に走る?」

「……今日は一人で走ろうかな。でも、途中までは一緒に行ってもいいかな?」

「大丈夫だよ! それじゃあ行こっか」

「うん。行こう、リリィちゃん」

 

 

 ランニングコースに着いた私達はそれぞれ走り出しました。よーし、リリィちゃん頑張ります!

 

「それじゃあ、また後でね!」

「うん! いってくるね!」

 

 私達は達は走り出しました。迷いを振り切る為、何かを掴む為に。それぞれの道を走り出しました。

 

 


 この前のスプリングステークスで、ブルボンさんが見せた領域。……とっても強い覚悟だった。ブルボンさんの心が、こっちに伝わってくるぐらいのとっても強い覚悟。

 今のライスはとっても幸せなの。リリィちゃんに『だいすき』って伝えられて、同じレースを走ることができて。……でもね、今のふわふわライスじゃきっとブルボンさんには勝てない。……だから、リリィちゃんに甘えるのはちょっぴりおやすみするの。…………すっっっごく、辛いけど。

『三冠ウマ娘になる』。ブルボンさんの夢は、とっても強くて重い。覚悟も、その想いも。だけど、ライスだって負けられないんだ。

 ライスの夢は、リリィちゃんと走る事。だけどね、それより前から叶えたい夢があるの。それはね、『ライスの走りで、みんなを笑顔にする事』。

 まだリリィちゃんと出会う前、ライスがちっちゃい頃、お母さまに初めて連れて行ってもらったレース場。レース場は人がいっぱいで……迷惑かけたくないから、おうちでいつもじっとしてたライスのおめめ、ぐるぐるになっちゃったけど。

 でもね、それでもしっかり覚えてるんだ。周りの人みんな、レースをめいっぱいの笑顔で見てた。応援してる子が、がんばってレースで勝ったら……みんな、とっても幸せそうなお顔になってた。

 それでライスも……ライスもね、あんなふうになりたいなぁって、思ったんだ。みんなを不幸にするだけの、だめな子じゃなくて……みんなを幸せにできる、そんなウマ娘に。

 ……今はちょっと違うけど。リリィちゃんのおかげで、自分がだめな子なんて思わなくなったから。

 ライスにだって叶えたい夢がある。だから、この夢を叶える為に、この景色を見る為に……絶対に負けられないんだ。

 

 だからライスは──

 

 

 

 

 


 

 スプリングステークスで戦ったブルボンちゃん。その時見せられたブルボンちゃんの『領域』。とっても強いあの子の心。そして、私が聞いたあの子の夢。

 今の私はとっても幸せです。ライスちゃんがいて、ママやパパがいて、るるちゃんやお友達のみんながいて……。

 私の夢は、『ライスちゃんと走ること』。でもね、その夢はもう叶っちゃったの。ホープフルステークスでライスちゃんと走ったあのレース。とってもドキドキして、すっごく楽しかった。……別の意味でもドキドキさせられちゃったけど。

 じゃあ、夢が叶って終わりなの? ……そんなことありません。私の道は、私のレースはまだまだ始まったばかりです。これからもっともっといっぱいライスちゃんやみんなと走ります。それでね、私は思ったんです。『どうして私は走っているのか?』、と。……ちょっと哲学的ですね。

 私は小さな頃の記憶を辿りました。トレセン学園に入学する前、ライスちゃんとお別れしてからずっと走っていたあの頃まで遡りました。

 あの頃の私は毎日走っていました。ライスちゃんと再会するために、そして再会した時にかっこいい私を見てもらうために。毎日休まずに走っていました。

 そんなある日、ママが私に言いました。『リリィちゃんは、ライスちゃんとお別れして寂しくないの?』って。だから私は答えました。

 

『とってもさびしいよ。……いまでもないちゃいそうになるもん』

『じゃあ、どうして走り続けられるの?』

『ライスちゃんにあえないのはとってもさびしいよ。……だけどね……はしるのって、ちょーたのしいもん!』

 

 あの時のママはとってもびっくりしていました。でもその後優しく微笑んで私の頭を撫でてくれました。

 

『そっかぁ。そうだね、走るのって……ちょーたのしいもんね! ママも走るの大好きだから分かるよ』

『ママもそうおもうの? やっぱりおやこだからにてるんだね!』

『ふふっ! そうかもね。……だけどね、もし辛かったらママやパパに言ってほしいの。私達はね、あなたの事が大好きなの。とってもとっても大好きで、世界で一番あなたを愛してる』

 

 ママは私をふんわりと抱きしめました。とってもあったかくて、落ち着く匂いがします。

 

『リリィ、リリィ。……私達の可愛いリリィ。とっても強くて優しい子。……もしも辛くて泣きそうになったら私が抱きしめてあげる。その痛みが無くなるまでずっとずっと……抱きしめてあげる。私の心で、あなたを包み込んであげるから』

『………………ママ』

『心の痛みが消えるまで、私の愛をあなたにあげる。だからね、リリィ。……強がらなくていいのよ』

『……………………ママ。……ひっぐ……』

 

 私はママの胸の中で泣いちゃいました。本当はとってもつらくて、寂しくて……。ママはそんな私の心をお見通しだったみたいです。

 

『いっぱい泣いていいの。いっぱい悲しんでいいの。どれだけ辛い事があっても、私達があなたを守ってあげるから』

『…………うん。……うん!』

 

 とってもあたたかい、優しい記憶。私の宝物。そして泣き止んだ私はママに言いました。

 

『あのね、ママ。……わたしねライスちゃんとはしるいがいにもゆめができたよ。……ききたい?』

『とっても聞きたいな! 教えてリリィちゃん!』

『うん! あのね、わたしのゆめはね──』

 

 ……思い出しました、私の夢。……ブルボンちゃんの夢に比べたら、とっても小さな夢。だけど、私だけの大切な夢。

 

 そうだ、私は……この夢を、この景色を見るために走るんだ。だから私は──

 

 

 


 

 

 少女達は(私達は)走る。己の夢を(自分の夢を)叶える為に。

 

 私は────

 

 ライスは────

 

 私は────

 

 

 

 

 

 

 

 ────勝ちたいんだ。

 

 

 

 

 


 

 ……ふぅ。なかなか充実した時間でした。気分すっきり爽快リリィちゃんです! 走ってる途中でいい感じのブルボンちゃん対策も思い浮かびました。これなら皐月賞もバッチリでしょう、さすが私です! 今の時間はお昼ぐらいでしょうか? お腹が空いて来ました。今日のお昼は何を食べようか悩みますね。いっぱい走ったのでガッツリしたものが食べたい気分です。……む? あそこから来るのは……

 

「……あれって……あっ! ライスちゃんだ!」

 

 やっぱりライスちゃんです。かわいいのですぐに分かりました。さすが私ですね! ライスちゃんもこっちに気づいてくれました。ライスちゃーん!!

 

「……あっ、リリィちゃん! すごい偶然だね! ……あれ? あそこにいるのは……」

 

 おおっ! まさかここでライスちゃんに会えるとは、とってもうれしいです! ……おや? あっちから走ってくるウマ娘さんがいますね。何だか見覚えがあるような……あっ! ブルボンちゃんです! 手を振ったら気づいてくれるかな? ブルボンちゃーん! ……どうやらこっちに気がついたみたいです。びっくりしておめめぱちぱちしてますね。

 

「……お二人もランニングですか? 偶然ですね」

 

 特に待ち合わせとかしたわけじゃないのにみんなに会えるなんて……偶然どころか運命なのでは? まぁ、私とライスちゃんは運命すら超越しているのですが。それにしても……

 

「なんだかみんなすっきりした顔をしてますね!」

「……確かにそうだね。ランニングの効果があったのかな?」

「……こういう表情をしている人は強敵になると聞きました。……皐月賞が楽しみですね」

 

 みんなにこにこしてます。やっぱり笑顔が一番ですね! みんなで笑っていると、ライスちゃんが「そうだ!」と言って提案をしました。

 

「ねぇねぇ、みんなはもう走り終わった? もし、終わってるならみんなでご飯を食べに行きたいなって」

「いいですね! 私は大丈夫だよ! ブルボンちゃんはどうですか?」

「……そうですね、大丈夫です。この三人でご飯に行くのは初めてですね」

「確かにそうだね。それじゃあ何食べに行く? ライスはね、ラーメンが食べたいな」

「おぉ〜、いいね! 私、お腹ぺこぺこだよ!」

「私もそれで大丈夫です。では、これより補給任務に移ります」

 

 そう言ったあとブルボンちゃんがスタイリッシュなポーズをしました。……なんというスタイリッシュさ……! これは私も負けていられません! ライスちゃんと一緒にスタイリッシュなポーズをし、それに負けじとブルボンちゃんはさらにスタイリッシュさをマシマシにしてきました。……手強いですね! 

 

「この先に美味しいラーメン屋があります。この前スプリンター同盟で行ったお店です。もしよければご案内しますが……」

「うん! ライスは大丈夫だよ! じゃあお願いしてもいいかな? リリィちゃんはどうかな?」

「大丈夫だよ! じゃあブルボンちゃん、お願いします!」

「了解しました。これより、道案内のミッションを開始します」

 

 どうやらブルボンちゃんが案内してくれるそうです。それではお願いします、ブルボンちゃん!

 

「「ついてく……♪ ついてく……♪」」

「……かわいい」



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第23話 皐月賞!① 始まりは雨の中で

 みなさんこんにちは。今日もかわいいリリィちゃんです。今ですね、私はなんと……インタビューを受けています! もうすぐ皐月賞なので、出走する人達がトレセン学園の広いお部屋に集まっています。カメラさんがいっぱいでちょっと緊張しちゃいますね!

 GⅠレースなどの大きなレースの前には、こんな感じでインタビューをする事があります。特に今回はクラシック三冠の内の一つ、皐月賞です。インタビューをする記者さんもとっても気合が入ってます! しかも生放送ですよ! リリィちゃんの勇姿を世界中にお届けせねばなりませんね!

 それでですね、今日のインタビューは勝負服を着てするそうです。ホープフルステークスの時はレース前に初披露しようと思っていたので制服でインタビューをしたのですが、今回はどうやら勝負服を着て受けるようですね。周りのみんなもとっても気合が入っています!

 ところでみなさん、今日の私は普段とちょっと違います。どこが違うか分かりますか? ……どうですか、わかりましたか? ……正解はお化粧をしているのです! どうですか! ちょーキレイでしょ!

 お化粧はるるちゃんがやってくれました。私とライスちゃんをお化粧してる時、るるちゃんはずっと「顔が良すぎる……死ぬっ……ひぃん……!!」と叫んでました。まぁ私はちょーかわいいしライスちゃんは世界一かわいいので当然ですね。私達がお部屋に入った時、他の人達は私のかわいさとライスちゃんのキレイさに驚いてました。ふっふーん! でもみんなもとってもキレイでした。ライスちゃんが一番ですけどね!!

 

 

 インタビューが始まりました。どういう順番なのかは分かりませんが、私やライスちゃんやブルボンちゃんは後回しのようですね。

 

 

 …………どうやら私達は最後の方ですね。私としては最後でも最初でもどちらでも構わないのですが。そして、ブルボンちゃんの番がやってきました。……とても自信に満ちた表情をしていますね。

 

「ミホノブルボンさん! 皐月賞へ向けての意気込みはありますか!?」

 

「……私の夢は三冠ウマ娘です。その夢を叶える為に、まずは皐月賞を獲らせていただきます」

 

「出走メンバーの中で注目している選手はいますか?」

 

「特に注目しているのはライスシャワーさんとシロノリリィさんです。もちろん、他の人達を軽視しているわけではありません。この皐月賞へ出走している時点で、弱い筈がありませんから」

 

 ……ブルボンちゃんは私達のことを注目しているようですね。でも、大丈夫です。……私は負けませんから。

 その後色々話して次の人に交代しました。……おっ? 次はライスちゃんのようですね。ライスちゃんがんばれー!

 

「──ライスシャワーさんが注目しているのはどの選手でしょうか?」

 

「……リリィちゃ……シロノリリィさんとミホノブルボンさんです。後はマチカネタンホイザさんも油断できないなって思ってます。でも、勝つのはライスです」

 

 ライスちゃんちょーキレイ! ……じゃなくて、ライスちゃんはなんだか自信ありってお顔ですね。ブルボンちゃんはもちろん、ライスちゃん相手でも私は負けないですよ!

 

「では、ライスシャワーさん。最後に意気込みをお願いします」

 

 「……ライスの夢は、ライスの走りでみんなを笑顔にする事です。だからその夢の為に──ライス、走るよ」

 

 ライスちゃんが微笑みました! かわいすぎますね!! あ゛ぁ゛っ!! すきっ!!!! ……興奮しすぎました。ライスちゃんの夢の話は初めて聞きました。自分のためじゃなくて、誰かのために……みんなの笑顔のために走る……。優しいライスちゃんにぴったりの素敵な夢です。……嬉しいな。私の夢も、ライスちゃんと似てて。

 

「ありがとうございました。では次に、シロノリリィさんお願いします」

 

 おっ? どうやら私の出番ですね。それでは行きましょう!

 

 

 


 ──コツン、コツン。小さな足音が響く。優雅に歩く白い少女は、まるで妖精のようだ。化粧のせいだろうか、いつもの可憐な少女という雰囲気とは違いその神秘的な美貌が強調されている。

 ふわりと微笑む白い少女に人々は目を奪われる。だが、こちらもプロだ。早速仕事をまっとうするために質問をした。

 

「……シロノリリィさん。今回注目している選手はいますか?」

 

「ライスちゃ……おっほん。ライスシャワーさんとミホノブルボンさんです。でも全員が強敵だと思っています」

 

 やはり、今回のレースはこの三人――ミホノブルボンとライスシャワーとシロノリリィが特に注目を浴びていると思った。ミホノブルボンは先日のスプリングステークスでの圧勝が。ライスシャワーは現在無敗でかつシロノリリィにも勝利しているところが。シロノリリィは前述した二人には勝利した事が無いが、その爆発力が期待されていると感じた。……『ライスちゃん』と言いそうになったところは微笑ましかったが。

 

「今回のレースでの意気込みをお願いします」

 

「今回はリリィちゃ……私に秘策ありです! きっとかっこいい私を見せられると思います!」

 

「そうですか、それは楽しみですね。……では、最後に何か一言お願いします」

 

「はい! ……えっと、ちょっと長くなっちゃうけど大丈夫ですか?」

 

「えぇ、大丈夫ですよ。それだけ伝えたい事があるという事なので」

 

「ありがとうございます! ……それじゃあですね──」

 

 

 白い少女は真っ直ぐにこちらを――カメラを見つめる。余すことなく思いを伝えるために。

 

「……私はこの世界がだいすきです。……やさしくて、あったかくて、きらきらしてて……とってもしあわせなの」

 

 優しい声が紡ぐ。

 

「ライスちゃんがいて、ママやパパ、るるちゃんに大切なお友達……みんながいて。……すごく、すごくしあわせなの。毎日がとっても楽しくて……だからね、私思ったの。……私のしあわせを、みんなにお裾分けしたいって」

 

 今まで受けた優しさを、温もりを……分かち合う為に心を込めて紡ぐ。

 

「私の走りで、みんなをしあわせにする事。それが私の夢です。……だから──」

 

 白い少女の無垢な願い。──ひだまりの様な温かな微笑みに魅せられる。

 

 「────見てて」

 

 

 ……嗚呼、なんて──美しいのだろうか。

 

 

 「…………でも、一番大好きなのはライスちゃんです!」

 

 

 ……ちょっとずっこけそうになった。

 

「…………ありがとうございました。では次に──」

 

 

 

 シロノリリィがインタビューを終えた。なんとなく最後っぽい感じだが、実はまだ一人インタビューが残されていた。

 

(…………まじ? この後インタビュー受けるの!?)

 

 ──彼女の名はマチカネタンホイザ。どうして自分が最後なの!? と思いつつも、それを上手く隠して笑顔で返事をした。

 

「──マチカネタンホイザさん、お願いします」

 

「……はい!!」

 

 ……若干ヤケクソである。

 

「今回注目している選手はいますか?」

 

「全員がライバルですっ!! 誰一人として油断できませんから!!」

 

「なるほど、気合が入ってますね。それでは今回の意気込みをお願いします」

 

「ブルボンさんやライスさんやリリィさん……注目されている人達全員ぶっ倒します!!」

 

「……おぉ、まだ本番前だと言うのに素晴らしい気迫です。それでは最後に一言お願いします」

 

「皐月賞がんばるぞ〜!! えいっ!! えいっ!! むんっっ!!!!」

 

「素晴らしいです。マチカネタンホイザさん、ありがとうございました」

 

 

 この後チームのみんなに「やるじゃん! タンホイザ!」と褒められた。

 

 

 


 

 無事にインタビューを終えたリリィちゃんです。なかなかいい感じだったのではないでしょうか! 今はトレーナー室で待機しています。

 こういうインタビューとかがあると、もうすぐ皐月賞が来るんだなと実感しちゃいます。トレセン学園に入ってからほぼ一年経つと考えると、あっという間に時間が過ぎているんだなぁって思いますね!

 

 

「ねぇねぇライスちゃん。さっきのインタビューで言ってたライスちゃんの夢、私初めて聞いたよ!」

「えっ? あれ? ……ライス、言ったこと無かった?」

「うん。でもとっても素敵だなって思ったの! 優しいライスちゃんにぴったりだって思った! それでね、私の夢もライスちゃんの夢と似てるなぁって嬉しくなっちゃった!」

「えへへ……。ありがとう、リリィちゃん! ライスもね、リリィちゃんの夢が、リリィちゃんにぴったりの素敵な夢だって思ったよ!」

「えへへ! ありがとうライスちゃん! ……ライスちゃん、あのね……ライスちゃんに言い忘れてた事があったなって思ったの……聞いてくれる?」

「……? なぁに、リリィちゃん?」

 

 私はライスちゃんと目を合わせます。

 

「……世界で一番だいすきな私のお友達。……だけどね、今一番勝ちたい人はライスちゃんなの」

「……リリィちゃん」

「ブルボンちゃんよりも、誰よりも……ライスちゃんに勝ちたいの。とっても大事で特別な、私のライバル。……だから、皐月賞……私が勝つよ」

 

 私の特別、私だけの特別な人。世界で一番だいすきな私のライバル。

 

「……もう。今そんな事言われたら、ライスの体、火照っちゃうよ……」

「……んふふ。ブルボンちゃんもライスちゃんも、私が倒しちゃうからね!」 

 

 ふっふーん! かっこよくライバル宣言できました! あっ……そういえばライスちゃんにもう一つ聞きたいことがあったんでした。うっかリリィちゃんです!

 

「ねぇねぇライスちゃん! 雨乞いってどうやるの?」

「…………えっ? ……雨乞い? ……う〜んとね……海が関係する生き物のポーズをするとか、どうかな? お魚のポーズとか……。でもなんで雨乞いするの、リリィちゃん?」

「おぉ! それは確かに効きそうですね! 早速試してみます! 雨乞いをする理由はですね、皐月賞の秘策の一つだからです!」

「……そういうのはバラしちゃだめだよ?」

「…………えっと、内緒にしてくれる?」

「……うん」

 

 ……秘策がバレてしまいました。で、でも大丈夫です! 他にもあるから平気です! ……本当ですよ? リリィちゃんの作戦はいっぱいあるんです!!

 とりあえず今はライスちゃんと雨乞いをします。るるちゃんが戻ってくるまで暇というのもありますが。

 

 

 

「ただいま〜。……って、何してるの二人とも?」

 

「さ、さかなー! あっ、おかえりお姉さま!」

「ちんあなごー! あっ! おかえりるるちゃん!」

 

「……よく分かんないけどかわいいから写真撮っていい?」

 

「……えぇっ!?」

「いいよー!」

 

 

 

 

 

 

 私達が最後のトレーニングを終え、いよいよ皐月賞の日がやってきました。……遂に、この日が来ました。

 どうやらお天気は雨で、私の雨乞いが通用したようです。ライスちゃんも「本当に雨……降っちゃった……」ってびっくりしていました。私の秘策……『リリィちゃんスペシャル』をご覧あれです!

 

 


 遂に迎えた皐月賞当日、リリィとライスの調子は絶好調。私が……というよりあの子達が頑張ったから当然バッチリに調整したわ。パドックでは、ミホノブルボンと共にその鍛えられた肉体を周りへと晒し、注目を集めた。まあ、二人ともかわいいから注目されるのは当然なんだけどね。

 そんな私の周りには、本田さんと中村さんと4人のウマ娘が集まっていた。

 

「やあ青路くん。リリィちゃんとライスちゃんの調子はどうだい?」

「本田さん……。えぇ、バッチリですよ。ミホノブルボンだってぶっ倒しますから。優勝はうちの子達が頂きますよ」

「それは心強いね。……ふふっ、ちょっと緊張しているね?」

「……そりゃあ緊張しますよ。だって皐月賞ですよ? 新人トレーナーの自分がこんな大舞台に立てるなんて、昔は思ってもいませんでしたから。私と比べてあの子達は全然緊張してませんけど……」

「『昔は』……ねぇ。まぁ、頼もしくていいじゃないか。緊張してガッチガチとかよりは全然いいよ」

 

 とりあえずやれるだけやってきたけど、やっぱり緊張するわね……。どうして走る本人よりも見守ってるだけの私の方が緊張するのかしら。……あぁ、そっか……

 

「……見守ることしかできない、からなのかなぁ……」

「いつの時代も、トレーナーとはそう言うものさ。……ところで中村くんは今日のレース、君はどう見るのかな?」

「……いきなりですね。……そうですね、ミホノブルボンの逃げをどうにかしないと話にならないかな、と思います。俺の考えだと今回はライスさんがマークして、リリィさんは脚を温存するんじゃないかなって思いますね」

 

 中村さんの意見に私も同意ね。ただ、リリィが『雨が降ったら私のリリィちゃんスペシャルが炸裂します!』って言ってたのがちょっとだけ気になるのよね。……ところで、この子達は何をしているのかしら?

 

「……ミホが勝つににんじんゼリー1個」

「ならワタシはリリィの勝利に花京院の魂を賭ける」

「もう! アッシュさん、ボーガンさん! そういうのはよくないです!」

「そうですッ! 学級委員長の目が黒い内は、賭け事などさせませんよ!」

 

 ……いや、本当に何してるのよ……。

 

「賭け? いやいや、これは勝者に対する祝いの品を事前に申告しているだけだよ。だから断じて賭け事では無いよ、バクシンオー」

「ややっ!? 確かに、言われてみればそうですね! これはいけません、早とちりしてしまいました! 申し訳ありません!!」

「……多分騙されていると思います」

「こらこら君達……」

 

 本田さんが注意してくれるようね。なら私は何も言うことがないわね。

 

「私はライスちゃんが勝つにショートケーキ1個で」

 

 ……ダメだったようね。

 

「……じゃあ私はライスにモンブラン1個とリリィにチョコケーキ1個ね」

「青路さんっ!?」

「なに!? 2人選ぶのはずるいんじゃないのかな!」

「私の可愛い愛バ達だからセーフですぅ! ……私はあの子達のトレーナーですから」

 

 ……信じてるからね。ライス、リリィ。

 

 

 

 


 

 ファンファーレが鳴り響く。シロノリリィとライスシャワーとミホノブルボンの最初の対決が始まる。

 

『足元悪い雨の中、中山レース場芝2000。18人のウマ娘達が挑むのは、最も『はやい』ウマ娘が勝つという皐月賞! 成長を見せつけるのは誰だ! 3番人気にはシロノリリィ。この評価は少し不満か? 2番人気はこの娘、ライスシャワー。スタンドに押しかけたファンの期待を一身に背負って1番人気ミホノブルボン!』

『火花散らすデッドヒートに期待しましょう』

『ゲートイン完了。出走の準備が整いました』

 

 ザーザーと降る雨がウマ娘達を濡らす。

 

『──スタートです!』

『各ウマ娘、きれいなスタートを切りました』

『みんな集中してましたね。これは好レースが期待できそうですよ』

『先行争いはミホノブルボ……いやっ、シロノリリィだ!? 凄まじいスタートダッシュを決めたシロノリリィが逃げを選んだ?! これはいつもと違う展開だ! 果たしてこれは、彼女の作戦なのでしょうか!?』

 

 

「……は?」

「……まじかよ」

「……むむっ? これは……」

「……リリィさん」

 

 奇策か、それとも作戦か……。シロノリリィの皐月賞が幕を上げた。




皐月賞の後半は今週中に投稿予定です。月曜日は(間に合えば)掲示板回の予定です。
自分の小説を見直して文体がお堅いと感じたので、皐月賞と掲示板回を投稿し終えたらクラシック級の話とジュニア級の一部をゆるふわに修正します。
最近は投稿頻度が下がっていたので、これからは無理のない範囲で投稿を増やしたいと思います。目標は10月で菊花賞まで書くことです。




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第24話 皐月賞!② 雨の中の激闘

 皐月賞、今日の天気は大雨。バ場は不良で私が今まで走ったレースの中で最も悪いです。ですが、私の憧れの人……シービーさんの皐月賞と似たシチュエーションで少しだけテンションが上がります。

 こういう荒れたバ場はリリィさんのようなパワーがあるウマ娘にとって有利です。ですが、問題はありません。私のパワーなら不良バ場でも問題無く逃げられます。誰よりも速く駆け抜け、誰にも先頭を譲らずに勝利する。……そのためにもまずは落ち着いてスタートダッシュを決めましょう。

 私の全身に雨が降り注ぎます。眼球に当たる雨粒すら無視して私はゲートが開くのを待ちます。

 ……極限の集中。過去一番と言えるほどに私は集中していました。……それ故に、彼女の行動に一瞬気を取られてしまいました。

 

(……えっ?)

 

 まさか、まさかの選択です。白いバ体が……リリィさんが真っ先に駆け抜けてハナを奪った。……いや、ハナを奪われたのです。今まで彼女は逃げを選択したことは無かった。いや、無いと思わされていた? ……どちらかは分かりませんが、これは非常にまずい状況です。こうしている間にも彼女は先へと駆けていきます。前に……前に、出なければ……

 

 


「……リリィは逃げができたのか……? いや、彼女の脚質の多彩さなら考えられないこともないが……」

「……隠してたってことか? この日のために今まで使わずにいたってのか。……それにしてもすげぇ雨だな。走ってる奴らは大丈夫なのか?」

 

 反応を確かめるために青路トレーナーの方を見るが、一切表情に変化はなかった。当然か、担当ウマ娘の情報をわざわざ漏らす必要はない。

 

「……いえ、リリィさんのあれは逃げではありません! バクシン的直感がそう告げていますッ!」

「……? どういうことですか、バクシンオーさん?」

「ハイッ! 彼女の最初のスタートダッシュは完璧でした。私もレース中であればバクシンだと錯覚してしまうほどに。ですがッ! それ故に完璧すぎたのですッ! あれは誘っているんです、ブルボンさんをッ!! ……ッ!! 見てください! ブルボンさんがリリィさんからハナを奪おうとしています! 恐らくこれが彼女のバクシン的作戦なのでしょうッ!!」

「……お前ってさ、レースの最中じゃなければすっげぇ頭回るよな。……それを維持できればマイルも何とかなるだろうに……」

 

 シロノリリィからハナを奪うためにスピードを上げるミホノブルボン。しかし、その表情には焦りが見えた。

 

「レースをしていると、どうしても内なるバクシンを抑えられませんからね。私もまだまだ未熟ということです! ですが、いずれ必ず克服して見せましょう! 距離適正と共にッ! ハッハッハ!!」

 

 半分ぐらい呆れつつも視線をレース場に戻す。

 

「……まだレースは始まったばかりだ。お前の作戦、見せてもらうぜ」

「……リリィね、この作戦の事『リリィちゃんスペシャル』って言ってたのよ……」

 

 青路とサクラバクシンオー以外は吹き出した。サクラバクシンオーは「良いセンスです!」と頷いている。

 

「……えっと、リリィさんらしくてかわいらしい名前だなって思いますよ!」

「これが14歳のネーミングセンスか……? まぁ、そこも彼女の魅力だが……」

 

 


 

 今回のレースのために私が考えた作戦……『リリィちゃんスペシャル』は、まず雨が降ってバ場が荒れている事が前提でした。荒れていれば荒れているほど後の作戦が通しやすくなります。もしも雨が降ってなかったら根性と気合いで乗り切る予定でしたが。

 どうして荒れたバ場がいいのかというと、荒れたバ場を走るのにはパワーが必要で、かつ通常よりもスピードが出にくくてスタミナの消費も増えてしまうからです。私のスピードはブルボンちゃんには及ばず、スタミナはライスちゃんに及びません。ですが、私はパワーだけは誰よりも強いです。だから荒れたバ場である必要があったのです。さすが私、かしこいですね!

 そしてもう一つの理由なんですけど、私は荒れたバ場の方が走りやすいというのもあります。良バ場で走るよりも疲れにくいし、何より私のパワーならスピードが落ちたりしません。なのでバ場が荒れた方が都合が良かったのです。

 では作戦を説明します! まずは最初、スタートダッシュが肝心です。誰よりも早く前に出てブルボンちゃんからハナを奪う……『逃げと錯覚させる事』、これが最初の作戦です。

 そして次が肝心です。次の作戦は『ブルボンちゃんにハナを取らせる事』です。幸いにもブルボンちゃんは私の作戦をちゃんと『逃げ』だと誤解してくれたようです。この作戦が通らないと私がここで終わってしまう可能性があるのでドキドキしました。

 なぜせっかく奪ったハナを譲る必要があるのか? と思う人もいると思います。これは単純にブルボンちゃんを消耗させるためです。スタミナを減らし、思考を圧迫させることがこの作戦の目的です。だから譲っちゃってもいいんです。

 あと私は逃げが出来ません。前に誰もいないと寂しくなっちゃうからです。今もすっごくドキドキしています……。

 お? ブルボンちゃんが私からハナを奪いましたね。作戦は順調です! そしてこの作戦にはブルボンちゃんを前に出させる目的もあります。さぁ、まだまだリリィちゃんスペシャルは続きますよ!

 

 


『素晴らしいスタートダッシュを決めたシロノリリィですがミホノブルボンがハナを奪い返しました。1コーナーから2コーナーへ向かっていきます。現在先頭はミホノブルボン。その後ろぴったりくっついてシロノリリィ。3バ身離れてライスシャワー──』

 

 シロノリリィの作戦に翻弄されるミホノブルボンだが、ライスシャワーは冷静に状況を観察していた。

 

(……不良バ場は、やっぱりちょっと走り難いな。……リリィちゃんの最初の逃げは多分ハッタリだと思う。ブルボンさんを消耗させるため……かな? そう思う理由は前にリリィちゃんが『逃げは寂しくなるからや!』って言ってたから、多分だけど……)

 

 ライスシャワーは戦況を見ながらある疑問を抱いた。それは……

 

(どうしてライスに、ブルボンさんをマークさせないんだろ……?)

 

 ミホノブルボンを消耗させるだけならばライスシャワーにマークさせれば済む話だ。事実、シロノリリィのマーク技術はライスシャワーのそれには及ばない。今回は自分がミホノブルボンをマークする予定だったし、シロノリリィならば少し考えれば自分がマークをするという考えに辿り着いたはずだ。あえてそれをしないという事は、今回の状況はきっと何か狙いがあるのだろう。

 

(……何を狙ってるの……リリィちゃん?)

 

 だが、それならそれでいい。ここからでもできる事はある。

 ──ライスシャワーは前方の二人に向かってプレッシャーを解き放った。

 

(ブルボンさんもリリィちゃんも……纏めて潰してあげるね)

 

 

『第2コーナーを抜け、向こう正面に入った。順位を振り返っていきます。依然先頭はミホノブルボン……おや? 少し様子が変ですね? 続いてシロノリリィ。3バ身離れて内にライスシャワー──』

 

 

(……こ、れは……!?)

 

 ミホノブルボンの身体に重圧がかかる。噂に聞くライスシャワーのプレッシャーだ。

 

(……こんなものを、リリィさんはたった1人……それこそ18人分纏めてくらっていたなんて……! 恐ろしい人です……)

 

 ただでさえ走り難い不良バ場だというのに、オマケと言わんばかりにライスシャワーからのプレッシャーだ。一瞬だけ後ろを振り返ったが、シロノリリィはちょっと嬉しそうな表情をしていた。

 

(……重すぎますね、私には……)

 

 スタートダッシュの失敗、それを取り戻すために消費した体力、さらに襲いくるプレッシャー……。それらは確実にミホノブルボンから余裕と体力を奪っていた。そしてもう一つの想定外が……

 

(……いつもより、ラップタイムが遅れている。……やはり、不良バ場の影響がありますね)

 

 ミホノブルボンの走法は、ラップタイム走法と呼ばれるものである。ある一定の距離を一定のペースで走る走法で、スプリンター故にスタミナに不安のある彼女が長い距離を走る為にトレーナーと共に習得した走法だ。

 彼女の正確な体内時計と、尋常じゃないほど鍛えられた肉体によりその走法の完成度は非常に高いものとなっている。それ故に現在のスピードがいつもよりも遅くなっている事に気がついた。

 

(……本来のスピードならリリィさんを振り切れるはずでした。ですが、彼女は私に遅れる事なくついてきている。これではリリィさんの脚を削れません……)

 

 想定外が重なる。コースの直線を走り、3コーナーを目指す。だが、焦るミホノブルボンに追い討ちをかけるようなことが起こった。

 ライスシャワーからの重圧が消え、一瞬怪訝に思った次の瞬間、尋常ならざる程の熱が背後から襲いかかった。

 

 ──漆黒の少女の左の瞳から、蒼炎が溢れ出す。

 

(……っ!? まさか……領域った(はいった)!?)

 

 まだコーナーに入っていないのにライスシャワーは仕掛け始める。ミホノブルボンを捉える為にロングスパートを始めたのだ。

 

(……想定外が……多すぎるっ……!? いや、泣き言は言ってられません、これは『皐月賞』です。これぐらい起こって当然でしょう……!!)

 

『ライスシャワーがここで仕掛け始めた! まだ仕掛けるには早いかもしれないが大丈夫か!?』

『彼女のスタミナなら捉えきれると踏んだのでしょう。凄まじいレースになってきました』

 

(……大丈夫、私にはまだ『領域』がある。……冷静さを取り戻しましょう……)

 

 レースは終盤へと突入する。……決着の時は近い。

 

 

 

 ライスシャワーが領域を発動する前に遡る。彼女がシロノリリィに感じた違和感、ほんのわずかな違和感が小骨の様に引っ掛かる。

 

(……レースは順調。だけど、なんでだろ? 何かがすごく引っ掛かるの……)

 

 言葉にできぬ靄。通常なら気付かぬ筈のそれにライスシャワーだけは気付いていた。シロノリリィと常に一緒にいた彼女だからこそ気付く事が出来たのかもしれない。

 

(……多分、きっと……今までのリリィちゃんの行動は布石だ。最後に『何か』をするための……)

 

 ……分からない。だが、ここが分岐点になる。そう直感が告げた。

 

(……まだコーナーに入ってないけど……仕掛ける。そうしないと多分、大変なことになるから……)

 

 ここからのロングスパート……そして使うと決めた『領域』。脚にかかる負担は相当なものになるだろう。

 

(……もってね、ライスの脚)

 

 プレッシャーを引っ込め、精神を集中させる。――そして、己の想いを解き放つ。

 

 領域『ブルーローズチェイサー』

 

 蒼炎を纏ってライスシャワーは加速する。本来のスピードを超え、限界を超えた加速で先頭を目指す。

 

(……リリィちゃんにも、ブルボンさんにも……ライスは負けないっ! ……ライスだって、咲ける……っ!)

 

 

 

『第4コーナーカーブ! ウマ娘達がどう動くか目が離せません! この直線で勝負が決まるぞ! 内から来るか外から来るか、目が離せません! 中山の直線は短いぞ! 後ろの娘達は間に合うか?──』

 

(……先頭は……渡さないっ!)

 

 ジワジワと背後からプレッシャーが迫る。内からライスシャワーが、外からシロノリリィが己を追い越すために速度を上げる。

 確かに想定外が多かった。自分の体力も、思考力も確かに削られた。だが……

 

(私は屈しない……私は止まらない……私の……私達の……夢の為にっ!!)

 

 コーナーを抜け最終直線に突入する。

 負けたくないのだ、負けられないのだ。必ず勝たねばならぬ、その強い想いがミホノブルボンの心を具現させる。

 

(起動開始、リミッター解除…セット、オールグリーン。ミホノブルボン、始──)

 

 最高の集中力で『領域』を発動させようとしたその瞬間……

 

 ──それを待っていたんですっ!

 

 ミホノブルボンが最も集中力を高めたその瞬間、己の隣で雷鳴の如く轟音が轟き、それと同時にシロノリリィの姿が消えた。

 

 

 全力全開MAXフルパワーリリィちゃんボンバー!!

 

 

 シロノリリィの最後の作戦……それは、ミホノブルボンの領域を叩き潰す事だった(使用させない事だった)

 幼少期より母から使用を禁じられた必殺技……『リリィちゃんボンバー』が炸裂する。己の超怪力をターフへと叩きつけ、姿が消えたと錯覚するほどの超加速でシロノリリィがラストスパートをかけた。

 

「────っ!?!?」

 

 いくらウマ娘の聴力が優れていようとスパートの足音で怯む事はそうそうない。だが、シロノリリィの常識離れのパワーとここまで積み重ねてきた疲労と思考の圧迫、それに加えて最も集中しているときに放たれた爆音。それらが積み重なった結果、ミホノブルボンの領域は霧散した。

 

 ──領域、不発。

 

「…………あっ……」

 

 怯んだのは一瞬。だが、それは時速80キロを超える速度で走るレースにおいて致命的だった。その一瞬でシロノリリィとライスシャワーは己を交わし、遥か前方を駆ける。

 

「…………い、や……! ……いや!!」

 

 乱れた心と集中力……もう一度領域を出すのは、もはや不可能だった。……残されたのは己の身体と『夢』だけ。

 

「……いやだぁっ!!!!」

 

 それでも、ミホノブルボンは遥か前方の白と黒に追い縋る。

 

『シロノリリィここで抜け出した! ライスシャワーも上がってくる! 残り200、ミホノブルボン食い下がる!』

 

 白と黒の少女は咆哮する。

 

「「うああああぁぁぁぁ!!!!!!」」

 

『シロノリリィ! 脚色は衰えない!』

 

 泥すら跳ね除け、大雨の中を切り開く。

 

『シロノリリィ、リードは1バ身!』

 

 ──そして、白い少女がゴール板を駆け抜けた。

 

 

『強さを見せつけて、シロノリリィがゴールイン! 圧巻の走りでレースを制した! 勝ったのはシロノリリィ! 皐月を制し、三冠の一角を手に入れました! 2着はライスシャワー。3着に入ったのはミホノブルボン──』

 

 

 

 ミホノブルボンの夢が終わる。(勝ったのはシロノリリィ)

 始まりの一冠、皐月賞を制したのはシロノリリィ。白く輝く少女が雨と泥を化粧にし、始まりの一冠を勝ち取った。

 

 

 

 

「──はぁ……はぁ……」

 

 ゴール板を駆け抜けて、少女は歩く。いまだに心臓の鼓動はおさまらず、どこか夢を見ているような心地だった。

 

「……私、勝ったの……?」

 

 自分を祝福する声がぼんやりと聞こえるが、当事者だというのにどこか他人事のように感じる。恐らくとてつもない声量だと思うのに、その音は自分の耳を通り抜けていく。──だが、この声だけは何よりもはっきりと聞こえた。

 

「──おめでとう、リリィちゃん」

 

「……ライスちゃん」

 

 愛しい少女からの祝福。それだけははっきりと。

 

「…………私、本当に勝ったの……?」

 

「……そうだよ、リリィちゃん。リリィちゃんが勝ったの。……皐月賞で勝ったんだよ」

 

「…………夢みたい。…………信じられないよ……」

 

 勝ったと言われても未だに実感が湧かない。そんなシロノリリィをライスシャワーは優しく抱きしめた。

 

「……夢じゃないよ。……ねぇ、周りを見て?」

 

 シロノリリィが顔を上げると……そこには数え切れないほどの笑顔があった。誰もがシロノリリィを、このレースを走ったウマ娘達を祝福していた。

 

「おめでとー!」「すごかったぞー!!」「熱いレースをありがとうー!」「ライリリッ!! あ゛っ!!」「リ゛リ゛ィ゛ち゛ゃ゛ん゛さ゛い゛こ゛う゛だ゛よ゛ぅ゛ー!!」「最高のレースだったぞー!!」

 

「………………あっ……」

 

 ポロリとシロノリリィの瞳から大粒の涙が溢れる。

 

「…………あっ……あっ……!!」

 

「……おめでとう。……おめでとう、リリィちゃん」

 

 いつの間にか雨は止み、祝福を告げる太陽が優しくシロノリリィを照らす。

 

「…………っ……!! …………う、うああぁぁぁぁん……!!」

 

 感情が溢れる。涙が止まらない。わんわんと泣くシロノリリィを、ライスシャワーは優しく抱きしめ続けた。

 

 

 

 

「……リリィちゃん、もう涙は止まった?」

 

「……うん。ありがとうライスちゃん」

 

 嬉しさのあまりに大泣きしたシロノリリィだったが、これだけ泣けば流石にスッキリしたのだろう。今は目元がうっすら赤くなっているがにこにこと満面の笑みで観客席に手を振り続けている。

 

「……んふふ。……えへへ!」

「……負けちゃったなぁ。ちょっと……ううん、すっごく悔しいや」

「えっへへ! どう? 私の作戦、すごかった?」

「うん、とってもすごかった。……でも、次は負けないから!」

「私だって負けないよ! もっともっとライスちゃんに……みんなに勝ちたいもん!」

「ライスだって負けないもん!」

 

 お互いに見つめ合い、顔を綻ばせる。シロノリリィがライスシャワーに抱きついてきたので、ふんわりと抱擁しレースの影響で乱れた髪を手で梳かしながら頭を優しく撫でる。

 

(……ライス、本当に幸せだ。大好きな人と走れて、それをみんな笑顔で見てくれる……。本当に、本当に幸せだ……)

 

 気持ちよさそうに頬擦りするシロノリリィを撫でていると、不意に彼女がこちらの頬へと手を伸ばしてきて……

 

「……? どうしたの、リリィちゃ……」

 

 シロノリリィがライスシャワーの頬に啄む様なキスをした。

 

「……あのときのお返し♪」

 

 レース場の時が止まる。――そして、爆弾の様な歓声が破裂した。

 その様子を見ていたウマ娘達……もとい全ての人々が各々出せる限界の奇声を発した。言葉にできぬ感情を声に乗せ、場は混沌と化す。

 シロノリリィはとても幸せそうな表情でライスシャワーに身を預けていた。そして、ライスシャワーは──

 

「………………ぷぇ?」

 

 ……惚けていた。

 愛しい少女からの突然のキスに脳がオーバーヒートを起こしたようだ。かわいいですね。

 

 ターフに咲いた可憐な花に、虹が降り注ぐ。雨上がりの爽やかな空が人々を祝福していた。

 

 




次は掲示板回です。


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【皐月賞】シロノリリィを応援するスレ【みんなだいすき!】

間に合ったな(震え声)
みなさん連休はどうでしたか?私は仕事でした。


1:名無しのウマ娘ファン

立ったよ!スレが!

 

2:名無しのウマ娘ファン

でかした!

 

3:名無しのウマ娘ファン

よっしゃ!

 

4:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんかわいい!リリィちゃんかわいい!

 

5:名無しのウマ娘ファン

皐月賞ですよ!皐月賞!

 

6:名無しのウマ娘ファン

メイクデビューから応援し続けてきたから感無量だわ

あれ…目から汁が…

 

7:名無しのウマ娘ファン

>>6

ちゃんと涙って言え

 

8:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんのライスちゃんとブルボンに対するリベンジですね

楽しみですよ

 

9:名無しのウマ娘ファン

>>8

ライスちゃんにはホープフルでミホノブルボンにはスプリングステークスで負けてるからね

そういう意味でも楽しみな一戦だわ

 

10:名無しのウマ娘ファン

前評判はミホノブルボン>ライスちゃん>リリィちゃんだね

 

11:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんしか勝たん

 

12:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんの勝利にスターチップと俺の命を賭けるぜ☆

 

13:名無しのウマ娘ファン

そんなものに価値はない

 

14:名無しのウマ娘ファン

そういや今日のお天気悪いよねバ場すっげぇ荒れそう

 

15:名無しのウマ娘ファン

荒れたバ場ならリリィちゃん有利か?

 

16:名無しのウマ娘ファン

ちょっと畑と川と裏山の様子見てくるわ

 

17:名無しのウマ娘ファン

台風じゃないから別に平気なやつ

 

18:名無しのウマ娘ファン

おらの住んどるとこは晴れとる

 

19:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんはちょっとキツイかもね

リリィちゃんとブルボンはスプリングSで重バ場経験してるし有利かな

 

20:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんのゴリラパワーで芝破壊しろ

 

21:名無しのウマ娘ファン

そういやみんな皐月賞インタビュー見た?

 

22:名無しのウマ娘ファン

見た見たアレはずるいよ好きになる

 

23:名無しのウマ娘ファン

元から大好きだろ?

 

24:名無しのウマ娘ファン

>>23

うん!

 

25:名無しのウマ娘ファン

何故かトリに選ばれたタンホイザ

 

26:名無しのウマ娘ファン

>>25

多分常識人で戦績も悪くないからだろ知らんけど

 

27:名無しのウマ娘ファン

漬物的なポジションなんじゃね?

 

28:名無しのウマ娘ファン

タンホイザも十分個性的だと思うけど…

 

29:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんとライスちゃんがね…

 

30:名無しのウマ娘ファン

ちょっとかわいすぎて「ひょっwふひゃひゃ!!」って叫んじまってカーチャンに殴られたわ

その後「ママ大好き♡」って言ったら舌打ちされたわ

 

31:名無しのウマ娘ファン

かわいそ…お前の母親が

 

32:名無しのウマ娘ファン

辛辣だなw

 

33:名無しのウマ娘ファン

仕方ねぇよ気持ち悪いし

 

34:名無しのウマ娘ファン

事実陳列罪だぞ!

 

35:名無しのウマ娘ファン

お化粧してたよね

ちょっと綺麗すぎて3回死んだわ

 

36:名無しのウマ娘ファン

>>35

復活するとかクソゲーやめろ

 

37:名無しのウマ娘ファン

たいして強くないのに倒す方法がめんどくさいタイプの敵じゃん

 

38:名無しのウマ娘ファン

ちゃんと○ね

世界のルールに抗うな

 

39:名無しのウマ娘ファン

おれをナチュラルにエネミー扱いするのはやめろ

 

40:名無しのウマ娘ファン

散々な言われようで芝

 

41:名無しのウマ娘ファン

掲示板の住民なんてモンスター扱いで十分よ

 

42:名無しのウマ娘ファン

へっ!…化け物め!

 

43:名無しのウマ娘ファン

俺は普通だぞ

ただちょっと肌が緑色で不思議な術が使えて頭から2本触覚が生えてるけど

 

44:名無しのウマ娘ファン

>>43

ナメック星人ゥー!!

 

45:名無しのウマ娘ファン

ナメック星人も掲示板やる時代か…

 

46:名無しのウマ娘ファン

ナメック星人は掲示板でもレスバとかしないだろうな

サイヤ人は絶対顔真っ赤で突っかかってくる

 

47:名無しのウマ娘ファン

やーい!お前の母星綺麗な花火ー!!

 

48:名無しのウマ娘ファン

最低過ぎて芝

 

49:名無しのウマ娘ファン

へっ!汚ねぇ花火だ!

 

50:名無しのウマ娘ファン

おいおいリリィちゃんは14歳だぞ?あんまり幼女扱い…いや言動が幼女だわ

 

51:名無しのウマ娘ファン

見た目は天使中身は幼女

 

52:名無しのウマ娘ファン

見た目も幼女っすよ

 

53:名無しのウマ娘ファン

ウマッター見たら青汁がお化粧したらしいね

お化粧してる間に何回か死んでそう

 

54:名無しのウマ娘ファン

チーズ蒸しパンになりたい

それかアサリになりたい

 

55:名無しのウマ娘ファン

お化粧前→かわいい

お化粧後→かわいい

 

56:名無しのウマ娘ファン

>>55

何も変わってないじゃねぇか!!

 

57:名無しのウマ娘ファン

>>56

違うのだ!!

 

58:名無しのウマ娘ファン

話題散らかり過ぎてて芝

 

59:名無しのウマ娘ファン

まあ掲示板ってそういうとこあるし…

 

60:名無しのウマ娘ファン

各々が書きたい事殴りつけていく場所だと認識してる

 

61:名無しのウマ娘ファン

カオスだな

 

62:名無しのウマ娘ファン

くっくっくっ…我が名は【混沌のカオス】!!

 

63:名無しのウマ娘ファン

頭痛が痛いみたいなのやめろ

 

64:名無しのウマ娘ファン

†ダークネス・デス・パニッシュメント†

 

65:名無しのウマ娘ファン

痛い名前はやめろ俺の黒歴史を晒すな

 

66:名無しのウマ娘ファン

やだ…このスレにいると右目が疼く…

 

67:名無しのウマ娘ファン

俺は右腕に悪魔の力封印してたわ

 

68:名無しのウマ娘ファン

このスレ何のスレだっけ?

 

69:名無しのウマ娘ファン

>>68

リリィちゃんかわいいスレだぞ

 

70:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんかわいい!リリィちゃんかわいい!

 

 

 

 

254:名無しのウマ娘ファン

こちらスネーク

レース場に無事到着した

 

255:名無しのウマ娘ファン

雨強いっすね!薄毛の人は目立って大変そうだな

 

256:名無しのウマ娘ファン

なんで急にハゲ煽りした?おめぇライン超えたぞ??

 

257:名無しのウマ娘ファン

>>256

うるせぇハゲ

 

258:名無しのウマ娘ファン

生え際(ライン)

 

259:名無しのウマ娘ファン

超えるラインが無いぞ?ちゃんと線引きしとけ

 

260:名無しのウマ娘ファン

(´;ω;`)

 

261:名無しのウマ娘ファン

いつの時代も争いは無くならないものだ…

 

262:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんかわいいすれば心が穏やかになるぞ?

さあ皆さんご一緒に!リリィちゃんかわいい!

 

263:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんかわいい!!

 

264:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんかわいい!!リリィちゃんかわ……ぐはっ!!

 

265:名無しのウマ娘ファン

かわいいパワーに耐えられなかったのね…

 

266:名無しのウマ娘ファン

かわいいパワーってなんだよ(困惑)

 

267:矢

ワタシは今向かっているところだ

まあトレーナーが車出してくれてるから快適だけどな

 

268:名無しのウマ娘ファン

矢じゃんオッスオッス!風邪ひかないように気をつけろよ?

 

269:リュウグウノツカイ

私も

 

270:名無しのウマ娘ファン

リュウグウノツカイもいるじゃん

 

271:紅茶

パンもいるジャン

 

272:名無しのウマ娘ファン

ネームドが3体…くるぞユウマ!

 

273:矢

レース場に着くまではここで暇つぶしさせてもらうぞ

残念ながらスマホが防水じゃないのでな

 

274:リュウグウノツカイ

私のは防水

いえーい

 

275:紅茶

パンも防水ジャン

 

276:名無しのウマ娘ファン

現地勢はスマホで実況するのか?この雨の中でやるとか気合い入ってるなw

 

277:名無しのウマ娘ファン

オデ シゴト ジョウシ ツブス

 

278:名無しのウマ娘ファン

シャチクおるな

かわいそ…

 

279:名無しのウマ娘ファン

オッス!オラニート!仕事なんてしてねぇぞ!でもレースはわくわくすっぞ!

 

280:名無しのウマ娘ファン

>>279

work workしろ

 

281:名無しのウマ娘ファン

誰が上手い事言えとw

 

282:名無しのウマ娘ファン

お天気荒れてるよね

バ場は不良かな?

 

283:名無しのウマ娘ファン

>>282

公式によると不良バ場だとさ

珍しいよなこの荒れ具合

 

284:名無しのウマ娘ファン

多分リリィちゃんが雨乞いしたせいだと思う

 

285:名無しのウマ娘ファン

え?どういう事?

 

286:名無しのウマ娘ファン

kwsk

 

287:名無しのウマ娘ファン

青汁のウマッター見ろ

ほらよ【画像】

 

288:名無しのウマ娘ファン

何のポーズだよwww

 

289:名無しのウマ娘ファン

かわいいw

 

290:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんも巻き込まれてて芝

 

291:名無しのウマ娘ファン

ショート動画もあるじゃん!

はっ??かわいすぎるだろ??

 

292:名無しのウマ娘ファン

かわいい(さ、さかなー!ちんあなごー!じゃねぇよかわいすぎるだろ!)

 

293:名無しのウマ娘ファン

逆だよ!

 

294:名無しのウマ娘ファン

うぅ…リリィちゃんかわいい…

うぅ…ライスちゃんかわいい…

 

295:名無しのウマ娘ファン

「雨乞いです!」だとさ

なんで雨乞いしたのかは知らんが

 

296:名無しのウマ娘ファン

多分お天気の神様が可愛すぎて号泣したのかな

 

297:名無しのウマ娘ファン

神様「か゛わ゛い゛す゛ぎ゛る゛っ゛!!」

 

298:名無しのウマ娘ファン

まぁ神様って美少女に弱い逸話とかあるし…

 

299:名無しのウマ娘ファン

ありえそうな説やめろw

 

300:名無しのウマ娘ファン

でもなんで雨乞いしたのかね?良バ場の方がよくね?

 

301:名無しのウマ娘ファン

さあ?リリィちゃんのかしこい頭脳は俺には理解できんよ

 

302:名無しのウマ娘ファン

重バ場は走るのパワーいるからかな?

周りにデバフじゃい!

 

303:名無しのウマ娘ファン

ウマ娘ちゃん的にはどうなの?教えてアローリュウグウノツカイティー!

 

304:名無しのウマ娘ファン

悪魔合体やめろ

 

305:矢

>>303

ワタシは嫌だな

単純にパワーが足りない

 

306:リュウグウノツカイ

>>303

ダートは稍重ならいいけどそれ以上は走りたくない

 

307:紅茶

>>303

パンはダートウマ娘だけど結構重バ場得意ジャン

人によって得意不得意がはっきりするジャン

 

308:名無しのウマ娘ファン

ほえ〜

俺が走ると考えたら怖すぎて嫌だわ

 

309:名無しのウマ娘ファン

60〜70キロ出てスパートなら80キロ近いんだっけ?

そりゃ怖いよな

 

310:名無しのウマ娘ファン

俺より軽いな

 

311:名無しのウマ娘ファン

デブゥー!

 

312:名無しのウマ娘ファン

そっちじゃねぇよ!

 

313:名無しのウマ娘ファン

ズシーンw ズシーンw

 

314:名無しのウマ娘ファン

いけっ!>>310!じしん!

 

315:名無しのウマ娘ファン

ポケモン扱いはやめなさい

 

316:名無しのウマ娘ファン

モンスターってところだけはあってるな

 

317:名無しのウマ娘ファン

ウマ娘ちゃんはそんなにスピード出して怖くないの?

 

318:矢

特に怖くはないな寧ろ楽しい

 

319:リュウグウノツカイ

スパート気持ちいい

 

320:紅茶

怖がってちゃレースできないジャン

たまにそういう娘もいるけどジャン

 

321:名無しのウマ娘ファン

はえ〜そんなもんなのね

 

322:名無しのウマ娘ファン

ウマ娘ちゃんは基本的に走るの大好きらしいけどまあ苦手な娘もいるよね

男は基本的にでっかいおっぱいに弱いけど全員がそうってわけじゃないのと同じか

 

323:名無しのウマ娘ファン

急に低俗になるな

 

324:名無しのウマ娘ファン

私は薄い胸に興奮します

男でいいじゃん?って言ったやつはケツをブチ抜く

 

325:名無しのウマ娘ファン

>>324

○モ!

 

326:名無しのウマ娘ファン

>>324

ホ○はホ○サイトへ!

 

327:名無しのウマ娘ファン

へ、ヘイトスピーチ…!

 

328:名無しのウマ娘ファン

女学生の前で下ネタはやめなさい!

 

329:矢

ルームメイトが巨乳だから好奇心で鷲掴みにしたら頭叩かれたぞ

 

330:名無しのウマ娘ファン

ガタッ

 

331:名無しのウマ娘ファン

( ゚∀゚)o彡゚おっぱい!おっぱい!

 

332:名無しのウマ娘ファン

興奮しちゃうじゃないか…♡

 

333:名無しのウマ娘ファン

雑魚狩りピエロ座れ

 

334:名無しのウマ娘ファン

キマシ?キマシ??

 

335:紅茶

ノリで揉むことはあるけど別に興奮はしないジャン

 

336:名無しのウマ娘ファン

こらこらスレを濁らせるな我々は紳士だぞ?

 

337:名無しのウマ娘ファン

>>329

あたり前田のクラッカー

 

338:名無しのウマ娘ファン

僕もおっぱいもみもみしたいです!

 

339:名無しのウマ娘ファン

>>338

俺のでよければ触らせてやるよ

 

340:名無しのウマ娘ファン

>>339

うるせぇデブ!

 

341:名無しのウマ娘ファン

>>339

汚い乳首をウマ娘ちゃんに見せるんじゃねぇよ怖がってんだろッ

 

342:名無しのウマ娘ファン

>>339

何だその乳首は!!早く隠せ!!

 

343:名無しのウマ娘ファン

>>339

ふざけた乳首しやがって

 

344:名無しのウマ娘ファン

>>339

うるるる…

 

345:名無しのウマ娘ファン

実際触ったら警察だけどな

 

346:名無しのウマ娘ファン

そりゃそうよ

 

 

 

 

531:名無しのウマ娘ファン

そろそろレース始まるか?

 

532:名無しのウマ娘ファン

パドックではリリィちゃんもライスちゃんもミホノブルボンも調子良さそうだったわ

 

533:名無しのウマ娘ファン

タンホイザがんばえ〜

 

534:リュウグウノツカイ

わくわく

 

535:名無しのウマ娘ファン

ファンファーレ聞くとドキドキするわ

 

536:名無しのウマ娘ファン

レースによって色々違うよね

 

537:名無しのウマ娘ファン

しかし雨すごいな

 

538:名無しのウマ娘ファン

ひぃん…焼きそばに雨がトッピングされてるよぉ…

 

539:名無しのウマ娘ファン

>>538

雨の中で食うなよw

 

540:名無しのウマ娘ファン

>>539

周りの人に「何だこいつ?」って目で見られたわ

 

541:名無しのウマ娘ファン

ゲート入ってくな

 

542:名無しのウマ娘ファン

ひょえ〜!緊張しますなぁ!

 

543:名無しのウマ娘ファン

ドキドキ…!

 

544:名無しのウマ娘ファン

いよいよ明日が皐月賞本番ですよ!むっちゃドキドキしてきた…。出走者の皆さん、今日くらいはトレーニングは休んで明日に備えますよね?

 

545:名無しのウマ娘ファン

受験コピペやめろw

 

546:名無しのウマ娘ファン

実際の状況なら笑えないやつ

 

547:名無しのウマ娘ファン

始まった!

 

548:名無しのウマ娘ファン

いいスタートダッシュっす!

 

549:名無しのウマ娘ファン

やはりミホノブルボンが先頭に…あれ?リリィちゃんじゃん!?

 

550:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん逃げ?

 

551:名無しのウマ娘ファン

マ?逃げもできたの?

 

552:名無しのウマ娘ファン

先行…差し…追い込み

更に逃げも出来るとかさすがリリィちゃんかしこいな!

 

553:名無しのウマ娘ファン

あっ!ブルボンがハナ奪った!

 

554:名無しのウマ娘ファン

ピッタリ後ろについたな

 

555:名無しのウマ娘ファン

てっきり先行か差しで行くと思った

 

556:名無しのウマ娘ファン

逃げなのか?まあ俺にはよくわからん

 

557:名無しのウマ娘ファン

分からない…

俺達は雰囲気でレースを見ている

 

558:名無しのウマ娘ファン

なんとなく感じる違和感…

 

559:名無しのウマ娘ファン

ミホノブルボン先頭次リリィちゃん結構離れてライスちゃん

 

560:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんが先行なのはいつも通りか

 

561:名無しのウマ娘ファン

俺バカだからよく分からないんだけどよぉ…この展開ってどうなんだ?

 

562:紅茶

>>561

ん〜…リリィちゃんにちょっと違和感あるジャン?

でも概ねいい感じジャン

 

563:リュウグウノツカイ

(…よくわからない)

 

564:名無しのウマ娘ファン

おい現役w

 

565:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん掛かっちゃったのかな?

 

566:名無しのウマ娘ファン

>>565

お顔見てもかわいいとしか言えん

 

567:名無しのウマ娘ファン

それは確かにw

 

568:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんはブルボンをマークするのか?

 

569:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんちょっと走りにくそうね

 

570:名無しのウマ娘ファン

芝ビッチャビチャじゃん

 

571:名無しのウマ娘ファン

コーナー入ったね

 

572:名無しのウマ娘ファン

展開に変化はないね

 

573:紅茶

あ〜…もしかしてリリィちゃん先行かもジャン

 

574:名無しのウマ娘ファン

>>573

つまりどういうことだってばよ?

 

575:リュウグウノツカイ

>>573

教えて先輩

 

576:紅茶

>>574>>575

ミホノブルボンを単逃げさせて後ろから追跡する感じだと思うジャン

なんでわざわざそんな事してるのか分からんけどジャン

 

577:リュウグウノツカイ

ほ〜ん

 

578:名無しのウマ娘ファン

返事テキトーで芝

 

579:名無しのウマ娘ファン

逃げと先行で明確な違いってあるの?

 

580:名無しのウマ娘ファン

めっちゃ前なら逃げ!ちょっと離れてたら先行!

 

581:名無しのウマ娘ファン

なるほどわからん

 

582:名無しのウマ娘ファン

ぶっちゃけ大体の位置を言葉にしてるだけだし

 

583:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃん仕掛け始めたぞ!

 

584:名無しのウマ娘ファン

早くね?

 

585:名無しのウマ娘ファン

まだ3コーナー入ってないのに?

 

586:名無しのウマ娘ファン

…きっと作戦なのだろう(どういう事だ?)

 

587:名無しのウマ娘ファン

なるほど…そういうことか(わからん…)

 

588:名無しのウマ娘ファン

ふっ…なるほどね(誰が説明しろ

 

589:名無しのウマ娘ファン

お前らw

 

590:名無しのウマ娘ファン

だって外したら恥ずかしいし…

 

591:名無しのウマ娘ファン

誰も分からないのである!

 

592:名無しのウマ娘ファン

教えて紅茶かリュウグウノツカイ!

 

593:リュウグウノツカイ

助けて先輩

 

594:紅茶

しょうがないにゃあジャン…

パンにもわっかんね

 

595:名無しのウマ娘ファン

おいw

 

596:名無しのウマ娘ファン

まじかよw

 

597:名無しのウマ娘ファン

そろそろコーナー抜けるか

 

598:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんとライスちゃんあがってきた

 

599:名無しのウマ娘ファン

いつものやつどうぞ!

 

600:名無しのウマ娘ファン

中山の直線は短いぞ!

 

601:名無しのウマ娘ファン

最終直線きた!

 

602:名無しのウマ娘ファン

ここが一番の見どころだよね

 

603:名無しのウマ娘ファン

いけいけリリィちゃん!

 

604:名無しのウマ娘ファン

ぶっ潰せー!

 

605:名無しのウマ娘ファン

 

606:名無しのウマ娘ファン

おん

 

607:名無しのウマ娘ファン

あん

 

608:名無しのウマ娘ファン

 

609:名無しのウマ娘ファン

何だあの加速力!?!?

 

610:名無しのウマ娘ファン

過去最高じゃね?

 

611:名無しのウマ娘ファン

ぶっ飛んでったw

 

612:名無しのウマ娘ファン

ブルボンひるんだ?

 

613:名無しのウマ娘ファン

俺もびっくりした

 

614:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんもあがってる!

 

615:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんリード

 

616:名無しのウマ娘ファン

いけるか!?

 

617:名無しのウマ娘ファン

いけるいけるいけるぞ

 

618:名無しのウマ娘ファン

よしよしいけいけ

 

619:名無しのウマ娘ファン

ほあー!!

 

620:名無しのウマ娘ファン

いった!!

 

621:名無しのウマ娘ファン

ゴール!

 

622:名無しのウマ娘ファン

やったあああああああ!!!!

 

623:名無しのウマ娘ファン

勝ったぞ!!

 

624:名無しのウマ娘ファン

皐月賞勝っちゃった!

 

625:名無しのウマ娘ファン

おめでとうリリィちゃん!

 

626:名無しのウマ娘ファン

ほあっはあー!!

 

627:名無しのウマ娘ファン

泥まみれじゃんw

 

628:名無しのウマ娘ファン

そりゃあ(不良バ場で全力疾走すれば)そうよ

 

629:名無しのウマ娘ファン

泥まみれの美少女っていいよね…

 

630:名無しのウマ娘ファン

分かるけどちょっときもい

 

631:名無しのウマ娘ファン

わかるマン

 

632:紅茶

リリィちゃんおめでとうジャン!

 

633:リュウグウノツカイ

すごかったおめでとう!

 

634:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんぼんやりしてる

 

635:名無しのウマ娘ファン

もしかして勝った実感湧いてない感じ?

 

636:名無しのウマ娘ファン

あれだけ全力ならねぇ…

 

637:名無しのウマ娘ファン

ミホノブルボンとライスちゃんにリベンジかましたな

 

638:名無しのウマ娘ファン

そういや初GⅠじゃん!おめでとう!

 

639:名無しのウマ娘ファン

これからダービーと菊花賞獲って三冠ウマ娘になるんですねわかります

 

640:名無しのウマ娘ファン

ミホノブルボンの夢、終わっちゃったね…

 

641:名無しのウマ娘ファン

勝負の世界は非情なのよ

どれだけ強くてもちょっとした事で結果が変わるんよ

 

642:名無しのウマ娘ファン

トウカイテイオーは残念だったな

 

643:名無しのウマ娘ファン

いやぁ(距離的に)キツいでしょ!

 

644:名無しのウマ娘ファン

あっ!ライスちゃんがリリィちゃんだきしめた!!

 

645:名無しのウマ娘ファン

もっとくれ

 

646:名無しのウマ娘ファン

おいカメラもっと寄れ

 

647:名無しのウマ娘ファン

うひょひょw

 

648:名無しのウマ娘ファン

抱けー!

 

649:名無しのウマ娘ファン

この景色が見たかった…

 

650:名無しのウマ娘ファン

歓声すごいなw

 

651:名無しのウマ娘ファン

俺も生で見たかった…

 

652:名無しのウマ娘ファン

あっリリィちゃん泣いちゃった!?

 

653:名無しのウマ娘ファン

ふわぁ!?

 

654:名無しのウマ娘ファン

嬉し泣きかねw

 

655:名無しのウマ娘ファン

ワぁ……ア……

 

656:名無しのウマ娘ファン

泣いちゃった!!!

 

657:名無しのウマ娘ファン

ワ!

 

658:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんなでなでしてる!

 

659:名無しのウマ娘ファン

おじさんも涙出てきたわ…

年取ると涙腺緩くていかん…

 

660:名無しのウマ娘ファン

ちっちゃい子が頑張ってるのに弱いんよ…

 

661:名無しのウマ娘ファン

がんばったねぇ

 

662:名無しのウマ娘ファン

めっちゃ泣いてるw

 

663:名無しのウマ娘ファン

わしの娘の小かった頃を思い出すわ…

 

664:名無しのウマ娘ファン

じいじ金くれ

 

665:名無しのウマ娘ファン

じじいおるな

 

666:名無しのウマ娘ファン

すごかったぞおめでとうリリィちゃん!

 

 

 

 

 

 

721:名無しのウマ娘ファン

晴れてるじゃん

太陽に照らされたリリィちゃんが芸術的すぎて尊い…

 

722:名無しのウマ娘ファン

>>721

わかる

美しすぎて今泣いてる

 

723:名無しのウマ娘ファン

泣き止んだけどめっちゃにこにこでおてて振ってるw

 

724:名無しのウマ娘ファン

かわいい

かわいい

 

725:名無しのウマ娘ファン

今俺におてて振ったわ

 

726:紅茶

は?パンに振ったジャン?

 

727:リュウグウノツカイ

私だよ

 

728:名無しのウマ娘ファン

喧嘩するなw

 

729:名無しのウマ娘ファン

それにしても尊い

 

730:名無しのウマ娘ファン

ライリリは俺のオアシス

 

731:名無しのウマ娘ファン

もっと近寄れ抱きしめろ

 

732:名無しのウマ娘ファン

そういやライスちゃんちゅーしないね

 

733:名無しのウマ娘ファン

いつもはやるみたいな言い方やめろ

 

734:名無しのウマ娘ファン

二人でみつめあってにっこりするのやめろやめるな俺が死ぬ

 

735:名無しのウマ娘ファン

心がふたつある〜

 

736:名無しのウマ娘ファン

抱き合ってるふひひw

 

737:名無しのウマ娘ファン

ふぅ…

 

738:名無しのウマ娘ファン

百合豚どもめ…

 

739:名無しのウマ娘ファン

俺はイチャイチャ☆ホープフルで耐性をつけたのだこれぐらい大した事では本当にありがとうございます!!

 

740:名無しのウマ娘ファン

全然耐性無いじゃん

 

741:名無しのウマ娘ファン

ざあこ♡ざあこ♡毛根よわよわ♡

 

742:名無しのウマ娘ファン

髪は関係ないよね?

 

743:名無しのウマ娘ファン

もっとイチャイチャしろ

 

744:名無しのウマ娘ファン

このいちゃいちゃが俺のパワーになるのだ

 

745:名無しのウマ娘ファン

あっリリィちゃんちゅってした

 

746:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんのほっぺにちゅーしたね

 

747:名無しのウマ娘ファン

かわいい〜

 

748:名無しのウマ娘ファン

ん?

 

749:名無しのウマ娘ファン

は?

 

750:名無しのウマ娘ファン

かあ

 

751:名無しのウマ娘ファン

 

752:名無しのウマ娘ファン

わた

 

753:名無しのウマ娘ファン

 

754:名無しのウマ娘ファン

ほあ

 

755:名無しのウマ娘ファン

 

756:名無しのウマ娘ファン

 

757:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんちゅーしたの!?!?!?

 

761:名無しのウマ娘ファン

ちゅーした!!!!!!ちゅーした!!!

 

764:名無しのウマ娘ファン

アーッ!!アーッ!!

 

766:名無しのウマ娘ファン

ちょっとまてちょっとまて俺が死ぬ

 

769:名無しのウマ娘ファン

ほっほほほほほwww

 

772:名無しのウマ娘ファン

ぐああーーー!!!

 

775:名無しのウマ娘ファン

>>772ダインーー!!

 

778:名無しのウマ娘ファン

俺の体はボドボドだ!!

 

782:名無しのウマ娘ファン

裏返ったッ!!

 

785:名無しのウマ娘ファン

ままままておちけつ

 

788:名無しのウマ娘ファン

見間違いじゃないよな???

 

790:名無しのウマ娘ファン

やったあああああ!!!!!れ!

 

794:リュウグウノツカイ

周りすごいやばいやばくてやばい

「あの時のお返し♪」だって

 

795:紅茶

ちょっうるさすぎてやばいジャン

 

796:名無しのウマ娘ファン

>>794

リリィちゃんレベルアップしたな

 

797:名無しのウマ娘ファン

いつもライスちゃんがちゅっちゅってしてるから進化しちゃったのか…

 

798:名無しのウマ娘ファン

ひひひひひwww

 

799:名無しのウマ娘ファン

スレ民が狂ってる…

 

800:名無しのウマ娘ファン

まあここ狂信者のスレだし

 

801:名無しのウマ娘ファン

ライリリ万歳!!ライリリ万歳!!

 

802:名無しのウマ娘ファン

俺は今までリリィちゃんは右固定だと思っていたんだ

新たな扉が開けた

 

803:名無しのウマ娘ファン

ちょっとまてライスちゃんがリリィちゃん襲うんじゃ…

 

804:名無しのウマ娘ファン

青ぴょいはさすがにせんじゃろ

 

805:名無しのウマ娘ファン

だからうまぴょいはセッ○スの隠語じゃねぇよ!

 

806:名無しのウマ娘ファン

あれ?ライスちゃん固まってる

 

807:名無しのウマ娘ファン

お顔真っ赤じゃんw

 

808:名無しのウマ娘ファン

ま?ライスちゃん紙耐久じゃん!

 

809:名無しのウマ娘ファン

いつもはバリバリに攻めてるのに攻められると弱いとか芝

 

810:名無しのウマ娘ファン

お互いが好きすぎて弱点になってるパターン

 

811:名無しのウマ娘ファン

ざぁこ♡ざぁこ♡リリィちゃんによわよわ♡

 

812:名無しのウマ娘ファン

いけ!リリィちゃん!天使のキッス!

 

813:名無しのウマ娘ファン

いけ!リリィちゃん!ほっぺすりすり!

 

814:名無しのウマ娘ファン

タンホイザちゃんすげぇ何とも言えない顔してるw

 

815:名無しのウマ娘ファン

まーた至近距離で百合の波動くらってるよ…

 

816:名無しのウマ娘ファン

…美しい。これ以上の芸術作品は存在し得ないないでしょう

 

817:名無しのウマ娘ファン

>>816

ライリリに言ったのかブルボンに言ったのかで意味が変わるやつ

 

818:名無しのウマ娘ファン

前者はともかく後者は最低すぎんか??

 

819:名無しのウマ娘ファン

美の巨人おるな駆逐しなきゃ

 

820:名無しのウマ娘ファン

悪魔の末裔め…

 

821:名無しのウマ娘ファン

ライッリリッ!!ライッリリッ!!

 

822:名無しのウマ娘ファン

うぅ…リリィちゃん尊い…ライスちゃん尊い…

 

823:名無しのウマ娘ファン

スレもやべー事になっとるな…

 

824:名無しのウマ娘ファン

またネットが荒れるな…

ああもうめちゃくちゃだよ!

 

 

 



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第25話 復活のM!

 みなさんこんにちは! 皐月賞で優勝したリリィちゃんです! やりましたやりましたついにやりました! リリィちゃん初GⅠ勝利です!! いえーいぶいぶい!!

 なんというか、はじめは勝利したという実感が湧きませんでしたね。周りのみんなが強かったというのもありますが、ライスちゃんとブルボンちゃんがとっても強かったというのもあってゴール板を通過した後しばらくは頭がふわふわしていました。

 そしてライスちゃんとブルボンちゃんに今回はじめて勝利する事ができました。あの時のリベンジ達成ですね! でも今回のレースはギリギリの勝利でした。私の雨乞いと作戦、どれかひとつで欠けていたら結果は違っていたと思います。ですが、今回勝ったのは私です。……えへへ! 本当に嬉しいなぁ! 

 ……それとですね、皐月賞で勝った後に嬉しすぎてライスちゃんのほっぺにキスをしてしまいました。……やわらかかったなぁ。……あっ……えっと……い、今思うと少し大胆だったかもしれませんね! まあリリィちゃんはとっても大人なのでこれからは嬉しくなっても我慢できると思います! ……本当ですよ?

 あの後ライスちゃんはずっとぽわぽわしててとってもかわいかったです。ライスちゃんはいつでもかわいいですが。

 話は変わりまして、皐月賞を終えたということで次走は『日本ダービー』です。クラシック三冠の中で最も人気のあるレースです。皐月賞は出走せずにこちらに狙いを絞る人や、このレースで優勝する事を生涯の目標にしているウマ娘さんもいるほどの特別なレースです。私にとってはライスちゃんと走るレース全部が特別なので、日本ダービーであろうとなかろうと全力で走るだけなんですけどね!

 日本ダービー本番まで約一ヶ月ほどです。それまでに私も更なるパワーアップを果たさねばなりません。ライスちゃんもブルボンちゃんも私を倒すために更なる策を練ってくるでしょう。でも、私は負けません。次のレースで勝利するために、リリィちゃんがんばるぞ、おー! ……と、言いたいところなんですけど、ブルボンちゃんの事で気になる事があるんです。

 

 

「……ねぇリリィちゃん、最近ブルボンさんがスランプになってるって話……知ってる?」

「……うん、みんなから教えてもらったから知ってるよ。原因は……何となくは想像がつく、かな……」

「……そっか。……ライス達に何かできる事、ないのかな……」

「……『がんばれ!』とか『大丈夫!』とか……そういうのじゃきっとだめだろうなぁ。……うににぃ……」

 

 皐月賞は私が勝利しました。つまりブルボンちゃんの夢が叶わなくなったという事です。『三冠ウマ娘になる』というブルボンちゃんの夢、それはもう達成することはできません。

 もちろん私は後悔などしていません。勝って後悔するというのは打ち負かした相手に対して失礼です。レースで勝つという事は、倒した相手の夢を背負う事に等しいです。なので寧ろ堂々と胸を張らなければいけません。それが、勝利するという事なんです。……まぁ、これは私の持論なんですけどね。

 ……でも、ブルボンちゃんの調子が悪いのはイヤですね。日本ダービーで全力のブルボンちゃんと私は走りたいんです。だから私にできることは……

 

「ねぇ、ライスちゃん。……ちょっとだけブルボンちゃんのところに行ってもいい?」

「……ふふっ。もちろんだよリリィちゃん。ライスもね、同じ事考えてた」

「おおっ! ありがとうライスちゃん! じゃあちょっとトレーニングは中断して……るるちゃーん! ブルボンちゃんのとこ行ってきてもいいですかー!」

「ん? いいけど、あまり長居しちゃだめよ?」

「はーい! ありがとるるちゃん! ……それじゃあ行こっか、ライスちゃん!」

「うん! 行こう、リリィちゃん!」

 

 私の言葉で、本当の意味でブルボンちゃんを立ち直らせる事は多分できないと思います。でも、何もしないのは私がイヤなんです。今の私はわがままリリィちゃんです。だから待っててね、ブルボンちゃん!

 

 

 


 

 

『………………ブルボン、よくやった。悔しいが、この経験はきっとお前を強くするだろう……』

 

 ……どうして、そんな顔をしているのですか? ……マスター。

 

『…………お疲れさま、ブルボン。本当に、いいレースだったよ』

 

 ……どうして、私を叱ってくれないんですか? ……お父さん。

 

 …………私のせいで……私の夢が、私達の夢が……終わってしまったのに。

 

 …………どうして。

 

 

 

 皐月賞で私はリリィさんに敗北しました。私の夢……三冠ウマ娘の夢はそこで終わりました。とても、とても悔しいです。……ですが、まだ私達のレースが終わったわけではありません。次のレース……日本ダービーが待っています。

 私の無謀な夢を応援してくれたお父さんにマスター……みんなのためにも、私は走り続けなければいけません。……そう、走り続けなければ、いけないのに……

 皐月賞の後、私はトレーニングを再開しました。ですが、以前の様に上手く身体を動かせなくなってしまいました。

 

(……なんで? どうして……?!)

 

 フォームは乱れ、上手く息を入れられず、ラップタイムはバラバラで……私は、私の走り方は……

 

(…………思い、出せない)

 

 心の中にあった熱が、すーっと……無くなって。今はただ……痛くて、寒い。

 

(…………あれ? 私の夢は、もう終わっちゃったのに……)

 

 ──どうしてまだ、私は走っているの?

 

 

「……私は、私は……」

 

 

 

 

「「──ブルボンちゃーん(さーん)!!」」

 

 

 

 ……リリィさんと……ライスさん?

 

「……どうかしましたか? お二人とも。私は今、日本ダービーへ向けて特訓中です。今は少々調子が悪いですが、本番までに完璧に仕上げて皐月賞での借りを返させて──」

 

 「ブルボンさん」と、私の言葉を遮り、とても真剣な表情でライスさんが私を見つめてきます。

 

「……あのね、ライス達の言葉だけじゃきっとだめなんだと思う。それでもね、言わなきゃいけない事があるの」

 

 二人が柔らかく微笑みました。

 

「……ライスね、考えたの。……『もしも自分の夢が叶わなくなったら』って。ライスの一番の夢は、リリィちゃんと一緒に走る事。……これがもしも叶えられないんだとしたら……きっと、ライスはとっても辛くて耐えられないと思う。……でも、ライスはブルボンさんじゃないから、ブルボンさんの痛みを本当の意味で理解する事はきっとできない」

 

 ライスさんが私の手を優しく包み込みました。……とても、温かい。

 

「……ブルボンちゃん。ブルボンちゃんと走って、私はとっても楽しかったの。……ブルボンちゃんの夢を終わらせた私に言われても嬉しくないかもしれないけど、本当に楽しかったの。……落ち込んじゃって、とっても辛くて……立ち上がれ、なんて言えないけれど、だけどね……私達がいるよ」

 

 リリィさんの手が、私の空いている方の手を優しく包みます。……小さくて、とても温かい。

 

「……私達はあそこ……ターフにいる。だから──」

「信じてる。……なんて無責任な事はライスには言えない。……だけどね、ブルボンさんを支える事は出来る。だから──」

 

 二人が私をその華奢な胸の中に抱き寄せました。……トクントクン……と鳴る優しい鼓動と温もりが、私の痛みと寒さを解いていく。

 

「「──日本ダービーで、待ってる」」

 

 …………どうして私を信じられるの? なんで、なんで……! 

 

「…………どうして、みんなは……マスターは、お父さんは! ……優しいんですか? 私は……夢を……みんなの期待に……応えられなかったのに……」

 

 私の押し込めていた感情が、今まで隠していたものが溢れ出しました。

 

「頑張ってる娘を応援しない人なんていないよ。それにね……『三冠ウマ娘を目指すブルボンさんだから』じゃないよ。ブルボンさんがとってもがんばってるから応援してるんだよ」

「みんなブルボンちゃんの事が好きだから応援してるんだよ。もちろん私達もね!」

 

 ……私よりも小さくて、私よりも大きな心の二人。……あんなにも冷たくて痛くて、空虚だった私の心が満たされる。

 

「……一番好きなのは、ライスさんですよね?」

「もっちろん! ライスちゃんがいっちばんだいすき!」

「ライスもリリィちゃんがだいすきだよ!」

 

 私の夢は終わりました。……でも、あなた達のおかげで新しい道が見えてきました。

 

「ありがとうございます。ライスさん、リリィさん。……もう私は大丈夫です」

 

 ライスさん、リリィさん。……優しくて強いあなた達に、私は──勝ちたい。

 

「待っていてください。……今度は私があなた達に勝ちます。それと、リリィさん。……皐月賞優勝、おめでとうございます」

「ありがとうブルボンちゃん! でも次も私が勝ちますよ!」

「うん、待ってるね! でも、次はライスが勝つよ!」

 

 

 

 

 

 

 ライスさんとリリィさんが自分達のトレーニングをするために戻っていきました。わざわざ私のために時間を作ってくれたあの二人のためにも、私はより強くならなければいけません。

 今ならきっと、大丈夫。私はマスターから指示されたトレーニングをするためにグラウンドへと再び足を向け……

 

「……おい、ミホ」

「……アッシュさん?」

 

 私の名前を呼ぶ声に振り返ると、そこには友人の一人であるアッシュさんが立っていました。

 

「何かご用でしょうか? 今からトレーニングを再開する予定なのですが……」

「ん、いや……なんだよ、タイミング悪りぃな……」

 

 なんだか少し困った表情をしています。もしかして……

 

「……私を、励ましに来てくれたのですか?」

「……はっ? あ? ……まぁ、そうだよ。でも結構立ち直ってるっぽいじゃねぇかよ。……無駄足だったか?」

 

 少し、驚きました。まさかアッシュさんも私を励ましに来てくれるとは思っていませんでした。

 

「いいえ、アッシュさん。私は今温もりに飢えています。なのでもっと私を甘やかしてください。……かもーんです」

「……なんで腕を広げてんだ? お前の様子から察するに、シロとライスあたりが来たのか? まぁなんでもいいけどよ。……おい、腕を広げたまま躙り寄るんじゃねぇよ。いや、まじでどうしたお前?」

 

 アッシュさんは私をハグしてくれないようです。……とても残念です。

 

「ライスさんとリリィさんは私をぎゅっとしてよしよししてくれました。ですから、アッシュさん……かもーんです」

「断る。……つーか、オレはテメェのケツを蹴りに来たんだよ。そういうのは期待すんな」

「……残念です」

 

 こっちをジト目で見た後、アッシュさんはやれやれというかのように肩をすくめ私と視線を合わせます。

 

「……なぁ、ミホ。お前言ってたよな? ミスターシービーに憧れてるって」

「はい。シービーさんは今でも私の憧れです」

「じゃあよ、どこに憧れたんだ? もう一度オレに話してくれよ」

「……? 私がシービーさんに憧れたのは、その強烈な生き様が眩しかったからです。誰よりも何よりも自由を愛し、己の生き様を示したから私は憧れたんです」

 

 そう、だから憧れたんです。あの強烈な背中に。

 

「……なら、もしもミスターシービーが三冠ウマ娘じゃなかったら……お前は憧れたのか?」

「…………えっ?」

 

 もしもの話。もしも、ミスターシービーが三冠ウマ娘じゃなかったら。……そんな未来は私には考えられません。けれど……

 

「……きっと、変わりません。私は、『ミスターシービー』に憧れたんです。……あっ──」

 

 三冠ウマ娘だからじゃない。……彼女だから、私は憧れたんだ。

 

「……まぁ、なんつうか……あれだ。そういうのはよ、走った後に付いてくるんだ。……皐月賞を逃したとか関係無い、お前はお前だ。……それに、次にシロに勝ってダービーも菊花賞も獲れば実質三冠ウマ娘だろ?」

 

 アッシュさんはにやりと笑いました。……不器用な励まし方ですね。嫌いじゃありませんが。

 

 

「──憧れは、理解から最も遠い感情だよ」

 

 

 なんだかかっこいい言葉と共に私の友人の一人――ボーガンさんが登場しました。

 

「ボーガンさん? どうしてここに?」

「落ち込んでいる友を励ます為に来た、ただそれだけだよ。そこにいるアッシュと同じさ」

 

 くつくつと笑うボーガンさんがアッシュさんの事をニヤニヤしながら見ています。アッシュさんはとてもイヤそうな表情をしていますね。

 

「……んだよ、悪りぃかよ」

「悪い、なんて言ってないさ。……ふふっ! いや、まさかワタシよりも先に行くなんてね……優しいねぇ、アッシュちゃん!」

「てめぇ……くたばれクソボー……!」

「こらこら中指を突き立てるなよアッシュ。……いや、アッシュの演説は素晴らしかったよ。ワタシも感動で涙が止まらないね」

「……テメェのジャージ全部ブルマに変えてやるよ……! 覚悟しとけよ!!」

「はっ? やめろ! 恥ずかしいだろ!!」

「うっせぇ! シロもシノもブルマだろ! 同じにしてやんよ!」

 

 相変わらず仲がいいですね。確かにリリィさんとフラワーさんはブルマが似合っています。

 

「……おっと、アッシュと楽しくおしゃべりしに来たんじゃなかったな。……アッシュに言われてしまったが、ワタシも君を応援しているんだ。もちろん友として、だ。三冠を目指しているだとかは関係ない、己の夢の為に足掻く君が好きなんだ。……この『好き』は告白じゃないぞ?」

「……ボーガンさん、ありがとうございます。それに、アッシュさんも。……告白じゃないのは残念です」

「冗談を言えるぐらいには元気になったようだな。……ブルボン、君を励ましたいと思っているのはワタシ達だけじゃないんだ」

 

 そう言ってボーガンさんは穏やかに微笑みました。そして遠くから私を呼ぶ声が聞こえてきます。

 

「ブルボンさーん! ブルボンさーん!!」

「ブルボンさーん! あれ? アッシュさんとボーガンさんもいますね?」

 

 バクシンオーさんにフラワーさん……あの二人まで。

 

「ブルボンさん、もう大丈夫です! この学級委員長が来たからにはもう安心です! さぁ! 共にバクシンしましょう!!」

「ブルボンさんが最近元気がないから、心配になっちゃって。……すみません、もっと早く声をかけるべきでした」

「バクシンオーさん、フラワーさん、ありがとうございます。こうして気にかけてくれるだけで私はとても嬉しいです。本当にありがとうございます」

「……おや? とても落ち込んでいると聞いていたのですが……はっ!? そういう事ですね! 完全に理解しました!!」

「アッシュさんにボーガンさん、多分リリィさんとライスさんが来てくれたんですよね? ……ブルボンさんが元気になってよかったです……! でも、私にできる事があったらなんでも言ってください。ブルボンさんも私の大切なお友達ですから!」

「……なんでも? じゃあ、フラワーさん……私をぎゅってしてなでなでしてください。かもーんです」

「……えっ? それぐらいなら大丈夫ですけど、本当にそれでいいんですか?」

「はい、アッシュさんはやってくれなかったので。なので私に温もりを下さい」

「それじゃあ……はい、どうぞ♪」

 

 お父さん、マスター。──こんなにも素敵な友達が、私にもできました。

 

「はぁい♡ いいこいいこ♡ ブルボンさんはとってもがんばっててえらいですね♡」

「……この暖かさが、この感情を人は──バブみと呼ぶのですね」

 

「……なぁ、アッシュ。ワタシはどうすればいい?」

「……何も言うな」

「美しき友情、ここにありッ! ですね!!」




ブルボンちゃんの変な知識は大体ボーガンが仕込んでいます。


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第26話 日本ダービーへ向けて!

リリィちゃんに盛るペコ。


 日本ダービーへ向けてライスちゃんと一緒に猛特訓中のリリィちゃんです。今私達はるるちゃんが考えたど根性特訓の真っ最中です。

 その特訓の内容はですね、階段をいっぱい登る! というものです。……普通の特訓では? と思う人もいると思います。これが何故ど根性特訓なのかというとですね……

 

「――さっきと比べてタイムが落ちてるわね。二人とも、フォームを意識してもう一度よ」

「「はいっ!!」」

 

 ……ずっと、ひたすらに階段を駆け登り続けるからど根性特訓なんです。

 日本ダービーのコースには高低差2mの坂があります。そこに対応するためにこの階段トレーニングを行なっています。

 今いる場所はトレセン学園近くの神社です。そこにあるちょー長い階段でひたすら登って登って登りまくるのですが、さすがに大変ですね。

 でもそのおかげか私もライスちゃんも皐月賞の前よりも根性が鍛えられたと思います。このトレーニングなんですけど、実は私だけ少し内容が違います。

 

「……リリィちゃん、もうソレには慣れた?」

「うん。最初は本当に大丈夫なのかな? って思ったけど、今は割と大丈夫になったよ! ……キツいのは変わらないけどね……!」

「……あはは」

 

 最初は普通にやってたんですよ? だけど私のパワーだと階段ぐらいじゃ筋肉の負荷になりませんでした。これならずっとコサックダンスをしてた方がキツイぐらいです。

 これに困ったるるちゃんが「……悟空みたいに重りつけるか」って言い出して変な重りを装着したのが今の私です。この重りは確か……アンクルウェイト? みたいな名前でした。私が今着けているのはその中でも特別製らしくて、通常のやつと比べて莫大な負荷がかかるようです。実際とってもキツいです!!

 それでこの状態で走ってみたんですけど、なんとびっくり! 普通に走れてしまったんです。それでるるちゃんが「じゃあずっとそれ着けてやるか!」って言い出して今の状況になっています。

 ライスちゃんも一回試してみたんですけどすぐにギブアップしてましたね。でもすごく効果があったとは言ってました。

 

【シロノリリィは普通に走れているが、これは彼女の強靭な筋肉と骨格があるからできているだけである。普通のウマ娘ちゃんは絶対に真似してはいけない】

 

「リリィ、身体に異常はない? もし少しでも違和感を感じたらちゃんと言うのよ?」

「大丈夫です! リリィちゃんつよい子なので!」

「そう? ならいいけど。……でもそれを着けてトレーニングができるウマ娘がいるなんて、流石にびっくりしたわ」

「それってどういう事なの、お姉さま?」

「普通のアンクルウェイトはライスでも使えたでしょ? その特別モデルを考案したのはね……『シンザン』なのよ」

「「シンザンさんっ!?」」

「まあ、正確にいうと彼女の基準に合わせたら誰も使えなかったって話なんだけどね。それを一般向けに調整したのがこっちの現在流通しているアンクルウェイトなのよ。リリィの特別モデルは半分ジョークグッズ扱いされているわ」

「「……ほえ〜」」

 

 シンザンさんは史上二人目の三冠ウマ娘さんです。私の憧れているウマ娘さんの一人でもあります。

 

「シンザンは当時トレーニング嫌いだったのよ。それも相当な、ね。それに頭を悩ませたトレーナーが考案したのがアホみたいな重さの鉄下駄と重りを仕込んだトレーニングウェアだったの。その時の経験を活かして作られたのがこのアンクルウェイトってわけ。……で、シンザン基準だと誰も使えなかったんだけど、まさかリリィが使いこなせるとはねぇ……」

「そんな逸話があったとは……リリィちゃん知りませんでした」

「ライスも知らなかった……」

「まあ、普通知らないわよこんな事。でもね、シンザンの話は続きがあってね……その鉄下駄と重りの服のせいで余計にトレーニングが嫌いになってトレーニングをしなくなっちゃったのよ。それから彼女は本番前のレースを調整に使うようになったの。当時はすごい批判されてたらしいわ」

 

 ……私からすると信じられない話ですね。ライスちゃんもびっくりしてます。びっくりしたお顔もかわいいです。

 

「だからね、リリィ……嫌になったらすぐに言ってね。正直提案した私の方が怪我しないかビクビクしてるの……」

「大丈夫ですよ! ダービーはきっとみんなすごくパワーアップしてきそうだから、寧ろこれぐらいやらなきゃだめだと思います! ライスちゃんはもちろん、多分ブルボンちゃんも強くなりそうですからね!」

 

 そうそう! ブルボンちゃんの事です! 最近落ち込んでたブルボンちゃんをみんなで応援して、そのおかげか元気になったんですよ! とっても嬉しいです!

 ……なんですけど、最近は私とライスちゃんに会うと何故かハグを要求されるんですよね。別にいいんですけど。恐らく最近お誕生日を迎えて14歳になった私の大人な魅力にやられてしまったんでしょう。ライスちゃんは世界一かわいくて綺麗で優しいので魅了されるの仕方ないですが。……まあ誰にもライスちゃんは渡しませんけどね!!

 

「そっか。……それじゃあそろそろいいかしら? トレーニングを再開するわよ!」

「「はーい!」」

 

 日本ダービーは厳しいレースになると思います。でも、私は負けません。ライスちゃんにも、ブルボンちゃんにも勝ってみせます!

 

 

 

 


 

 

 ミホノブルボンです。現在はマスターと共に日本ダービーへ向けての会議中です。そして、今日は頼もしい助っ人をお呼びしました。

 

「ブルボン、今日は助っ人が来ると聞いたのだが、誰が来るんだ?」

「もうすぐです。…………どうやら到着したようです。では、この日のためにした練習の成果をお披露目します」

「……練習の成果?」

 

 失礼します! と複数人が言って部屋に入ってきました。そして各々が定位置につき、ポーズを取ります。

 

「──遥か遠くを夢に見て、いざ突き進めバクシン道ッ!!」

 

「──今はまだ蕾だけれど、花開く日を夢に見て……!!」

 

「…………邪魔な奴らはブッ潰し、切り開くは我儘に……」

 

「──通したい意地がある、刮目せよ我が生き様をっ!!」

 

「──無理不可能常識を、踏み越え乗り越え走り抜くっ!!」

 

 

「「「「「──スプリンター同盟、参上っ!!!!」」」」」

 

 

 …………決まりました。我ながら完璧だと思います。マスターも圧倒されていますね。

 

「…………助っ人は、この4人か。……そうか、そうか」

「マスター、どうでしたか? 今の口上は。みんなで一生懸命考えました」

「…………すごかったな。圧倒されてしまったぞ」

 

 やりました。練習した甲斐がありました。

 

「よし、では席に着こう。これからリリィとライス兼日本ダービーの対策会議を始めよう。トレーナーさん、今日はよろしくお願いします」

「あぁ、よろしく頼む」

 

 

 

「……では、まずは皐月賞の反省から始めよう。皐月賞は俺の見立てだと……そうだな、シロノリリィに振り回された……と感じたな」

「はい、確かにそれは感じましたね。私の嫌なところを的確に狙ってきたと感じました。レースを観戦してた皆さんから見てどう思いましたか?」

 

 これには皆さん同意のようです。一様に頷いたり肯定の意を示しています。

 

「……もしも、だ。もしもの体で聞いてほしい。……恐らくだが、リリィの作戦は雨ありきだったのではないかと思うんだ。根拠としては彼女のトレーナーのウマッターの1つの呟きなんだが……この雨乞いを皆は知っているか?」

「私は見ましたよ! お二人とも可愛らしいですよね!」

「あぁ〜……あの変なポーズか。……あれで本当に降ってきたのが笑えるよな」

「なるほど、そういう事ですねッ! あの雨乞いが……いえ、スプリングステークスでの対決が雨乞いに至ったという事でしょう!」

 

 あれはとっても可愛かったです。すぐに保存しました。

 

「……どういう事だ? 偶然ってわけじゃねぇのか?」

「結論から言うと天気の件は偶然だ。アッシュ、1月頃にリリィがブルボンの情報を探り来たのを覚えているか? 恐らくあの頃からブルボンを警戒していたのだろう。わざとスプリングステークスでぶつかり、そして情報を得た。……その時に彼女は自分の重バ場への適正と、普段よりもブルボンのタイムが遅くなっている事実に気づいたのだ。だから皐月賞前日に雨乞いをしたんだ」

「……シロノリリィは頭のキレるウマ娘だと思っていたが、まさかそこまで……」

「そして天気が荒れる前提で作戦を組んだ。……恐らく荒れてなくても同じような作戦は立てたと思うがな。それが最初のロケットスタートと最後のリリィちゃんボンバーだ」

「最初のロケットスタートはブルボンさんを釣り出すためのものでしょう。バクシンの気配が無かったので」

「……リリィちゃんボンバーってなんだよ?」

「説明しましょうッ! リリィちゃんボンバーとは、リリィさんのバクシン的なパワーによる超加速の事です! 0から一瞬で100のパワーを引き出せる驚異的な技ですが、その分バクシン的にスタミナを消費してしまう技です! 名前以外は推測ですけどねッ!」

 

 あの超加速はそんな名前だったのですか。いいセンスですね。

 

「……最後のアレは領域ではないのですか。……確かに何も変化が起きませんでしたが、凄まじいパワーですね」

「多分ですけど、あれは今まで出さなかったんじゃなくて出せなかったんだと思います。スプリングステークスはブルボンさんの領域にびっくりして出せなかったのかなって思いますけど」

「……なぁ、領域とは何のことだ?」

「「「「…………えっ?」」」」

 

 気まずい沈黙が流れます。……もしかしてボーガンさんのトレーナーは教えていなかったのでしょうか?

 

「……ボー、とりあえずトレーナーに電話して聞いてくれ。オレ達から迂闊な事は言えん」

「それを普通に話したのが君達なんだが? ……まあ聞いてみるよ」

 

 ボーガンさんがスマホを取り出して通話を始めました。

 

 モシモシボー? エッ? リョウイキ? モシカシテホカノヒトカラキイチャッタ? ウ~ン、マアダイジョウブカ!

 

「…………なるほど、理解した。私の実力が足りない事をな。まあそれはどうでもいい、ありがとうトレーナー。……なに? お礼は豚の角煮が食べたい……だって? また今度作るから待っていてくれ。それじゃあ……」

 

 ボーガンさんが通話を終えました。そういえばまだ彼女は重賞に勝利していませんでしたね。領域を使うような相手と戦ったことが無いから領域について教えてもらってないのでしょう。……たぶん。

 

「……リリィちゃんボンバーについては分かりました。では、領域は使えるのか? なんですけど、皆さんはどう思いますか?」

「そうですね……私は戦ったことがないから分からないんですけど、アッシュさんとバクシンオーさんはどう思いますか?」

「分かりませんッ! でも使えそうだとは思いますよ!」

「……たぶん、ふとしたきっかけで使えるようになる……って思うぜ? 今思うとオレと戦ったデイリー杯ジュニアステークスが不完全だけど領域を使ってやがったと思う。ほら、最終直線でオレが交わしただろ? そこからのシロの追い抜きは領域を使ってたと考えられるほどだった。あの時の一戦のおかげでシロが領域を掴み始めたのかもな」

「そしたらホープフルステークスもそうなのか? ワタシは領域はよく分からんが、あのスタミナが無くなってからの伸びは通常の走りとは明らかに違っていたと思うぞ」

「多分そうだと思います。それとリリィちゃんボンバーなんですけど、ホープフルではスタミナ不足、デイリー杯はそもそも最高速度に達していたから使わなかった、他のレースは使う必要がなかったと考えられますね」

 

 皆さんのおかげで色々と情報が集まりました。

 

「……皐月賞の反省はこれぐらいにしておこう。では、これを踏まえて作戦を立てようと思う。ブルボン、お前はどうしたい?」

「……そうですね。私の作戦は……まずハナを取ります。次に誰にも抜かされないように走ります。そして最後に1着でゴールします。……完璧ですね」

「流石だブルボン、正に完璧な作戦だな。……だが、これだと皐月賞の時と同じだ」

 

 ……確かにそうですっ……! 迂闊でした。

 

「……ミホは逃げ以外にやらねぇのか? デビュー戦は追い込みで勝っただろ?」

「…………逃げ以外だと掛かってしまうんです。デビュー戦は出遅れてしまったので。……あの追い込みはシービーさんを思い出してやっただけなんです。……でも、逃げにこだわるのは理由があります。それは、シービーさんのように一つの作戦だけで勝った方がかっこいいからです。これは譲れません」

「……おう」

 

 そういえば、アッシュさんに聞きたいことがありました。丁度いいですし聞いてみましょう。

 

「アッシュさん、あなたはあのときどうして私の事を励ましてくれたのですか? 失礼ですが、そういうタイプに見えなかったので」

「なんだよいきなり? ……まぁ、大した理由じゃねぇぞ? それでもいいなら話すが……」

「はい、聞かせてください」

「…………オレと同じだったからだ。ずっと勝ち続けてきて、初めて負けたあの時のお前が、オレと重なって見えた」

 

 アッシュさんはぽつりと呟きます。

 

「オレには夢が無い。走る理由もテキトーで、なんとなくでここに来た。……シロに負けるまでは、誰にも負けたことが無かった。でも、負けちまって……すっげぇ辛かった。……で、だ。こんな薄っぺらいオレでも辛えのに、オレと比べ物にならないぐらい重い理由で走ってるお前が負けちまったら……多分、オレには分からねえぐらい苦しんでるんだと思った」

 

 私の目を真っ直ぐに見つめるアッシュさんは、とても穏やかな顔をしています。

 

「だからお前を助けたいと思った。……ほら、大した理由じゃねぇだろ? ……それと、まだお前に勝ってないからな。シロもお前も勝ち逃げなんてさせねぇからな?」

 

 ケラケラと笑うアッシュさんに釣られて、私も笑ってしまいました。

 

「……アッシュ、君は本当に変わったなぁ……あんなにわがままだった君が、こんなにも立派になって……!」

「揶揄うなら尻尾引きちぎるぞ。で、どうよミホ。満足したか?」

「……えぇ、とても。私はいい友人に恵まれました」

「…………ハッ!! 閃いてしまいましたッ!! バクシン的な作戦をッ!!!!」

 

 どうやらバクシンオーさんが何か閃いたようです。

 

「バクシンオーさん、どんな作戦ですか?」

「ハイッ! 説明しましょうッ!! 作戦はですね──」

 

 

 

 

 

 

 

 …………確かに、この作戦が成功すればリリィさんどころかライスさんも倒せます……!

 

「…………なるほど、確かにこれは……!」

「……アホみてぇだが、成功すれば確かに勝てるかもしれん」

「確かにこれなら、リリィさんのリリィちゃんボンバーもなんとかなりますね……!」

 

 マスターも驚愕しています。ですが、今の私だと正直厳しいです。

 

「……ブルボン。お前はこの作戦をどう思う?」

「はい、マスター。私はこの作戦がいいです」

「そうか。なら、この作戦を前提にメニュー組む。……そうだな、このトレーニング名は……『ド根性作戦』、と言ったところか」

「……いいですね。私に相応しい名前です。バクシンオーさん、ありがとうございます」

「いえいえ! 学級委員長として当然の事をしたまでです!」

 

 リリィさん、ライスさん……待っていてください。必ずあなた達に追いついてみせます。

 

 




アンクルを盛るペコ。
クライマックスでお馴染みのアンクルウェイト君の登場です。リリィちゃんが実際にいたらクライマックス適正抜群ですね。

リリィちゃんボンバー(ノーマルスキル)
レースの最後の方でズドーンっ! って加速します! でもすっごく疲れるから体力が少ないと使えません!
(レース終盤で持久力をすごく消費し、すごく加速する。発動した際に周りのウマ娘をわずかに萎縮させる。このスキルは自分のスタミナが発動基準に満たないと発動できない)

リリィちゃんパワー(ノーマルスキル)
苦手なバ場でも距離でも私のパワーで捻り潰します!
(バ場適正と距離適性がAに満たない場合、適正Aと同じになるように補正される。この時Aから離れているほどスタミナの消費が増える)
※このスキルは最初から習得済みで育成が開始される。


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第27話 日本ダービー! 雲ひとつない青空の下で

難産でした。
10月で菊花賞まで書くって言ってたのに全然ダメでした。……えへへ。


 日本ダービーへ向けてのトレーニングが完了したリリィちゃんです。今の私は超つよつよリリィちゃんです!

 アンクルの効果ってすごいですね! 一ヶ月前と比べてなんかすごく強くなった気がします! ライスちゃんも私と一緒にアンクルを着けてトレーニングをしていたのですが、強くなった実感があるって言ってました。

 でも効果がある分負荷もかかってしまうので、長期間の使用は推奨されないってるるちゃんが言ってました。皐月賞からダービーは期間が短いので使うにはいいタイミングだと言ってましたね。

 そういえばブルボンちゃんも私達と同じようにアンクルを着けてトレーニングしていました。あれを装着しながら坂路トレーニングをするとは……さすがブルボンちゃんですね! 本番のレースが楽しみです!

 話は変わるんですけど、こういう重りを着けている時に私はやりたくなることがあるんです。それはですね、重りを外して「なにっ!? まさかまだ本気じゃなかったのか!?」ってやるやつです! 

 さっきブルボンちゃんと一緒にやってました。ブルボンちゃんもノリノリでやってくれてとっても楽しかったです! もちろんライスちゃんも一緒にやりましたよ! 

 せっかくなので動画に残しておこうと思ったのですが、この三人でやってると動画が撮れないことに気づいてしまいました。ですが、私はとってもかしこいのでこちらの様子を観察していたタンホイザさんに撮影をお願いしました。

 多分ダービーに向けての敵情視察中だと思います。タンホイザさんは私達のデータ収集が、私達は動画を撮影してもらえて一石二鳥だと思いました。うぃんうぃんってやつですね。さすが私です! とってもかしこいですね!

 そういえば。少し話を戻しまして、アンクルの効果の話です。アンクルを使ってからライスちゃんは私が見てすぐにわかるぐらい筋肉が付いてました。ブルボンちゃんも同じで全身バッキバキでした。……そう、私だけ見た目に変化が無かったんです。

 私のかわいいぷにぷにボディ……脂肪じゃないですよ? に変化がないのは少し残念でしたね。力を入れたらちょーかっちかちですけど。

 ライスちゃんはこの至宝が失われるなんて人類の損失だよ!! って言ってましたが、やはり何も変化がないのは少し残念です。

 そういえばライスちゃんは私達がアンクルを着けてトレーニングを始めてから前よりも私の身体を触ってくることが増えましたね。余分な筋肉が付いてないか確認してるって言ってました。そんなことも分かるなんてライスちゃんはすごいですね! でもなんか触り方がねちっこかったです。

 まぁその話は置いといて……いよいよ日本ダービーが始まります。パワーアップした私達に元気になったブルボンちゃん、そしてこのレースのために全力でトレーニングをしたウマ娘さん達……きっと一筋縄ではいかないレースになるでしょう。でも私は負けませんから! 優勝目指してがんばるぞー、おー!

 

 


 

「……今日は、とてもいい天気です」

 

 雲ひとつない青空を眺めながら少女は呟いた。少女の名はミホノブルボン。『三冠ウマ娘になる』という夢を持っていたが、シロノリリィに敗れその夢を叶える事が出来なくなった少女だ。

 

「こんな気持ちのいい天気の中で走れたら、きっと、とても楽しいレースになるでしょう」

「……楽しみか? レースが」

「えぇ、とても」

 

 だが、その表情に陰りはない。この東京レース場を照らす青空の様に穏やかな微笑を浮かべている。

 

「お二人には借りを返さなければいけないので」

「……いい顔になったな。大丈夫だブルボン、そのために今日までトレーニングをしてきたんだ」

「はい、マスター。それにスプリンター同盟の皆さんも応援してくれているので、今日の私はとても強いです」

「ふっ……頼もしいな。作戦は覚えているな?」

 

 もちろんです。と、返事をする少女の表情は明るく、もうすぐ始まるレースが待ちきれないと言った様子だ。

 

「それではマスター、行ってきます」

「あぁ、行ってこい」

 

 

 


 

「やぁやぁ青路くん、リリィちゃんとライスちゃんすっごくいい感じだったねぇ。過去一番じゃないかな? この仕上がり具合は」

「もちろんですよ。だって日本ダービーですから、生半可な仕上がりじゃ太刀打ちできませんからね」

「でも気になる相手はいるんじゃないのかな? 例えば最近リリィちゃんといるおかげで意外とアホの子だってバレてきてるあのウマ娘とか……」

「……リリィと関わると大体の子が頭ゆるふわになりますよ? なんて冗談は置いといて、ミホノブルボンの事ですよね?」

「せいか〜い。15本田さんポイントあげちゃうよ〜」

 

 そんなのいりませんよ……。とは思いつつも先程のパドックでの様子を思い出す。

 

「すっごい仕上がりでしたよね。それにあの表情から見るに皐月賞での敗北を引きずってる様子もなさそうですし、大変なレースになりそうだなぁ……」

「ね〜。敗北を乗り越えた娘は強いからねぇ。……ところでミホノブルボンの身体で特に気になったところを同時に言ってみない?」

「ライスやリリィのお友達目線だと元気になってくれてよかった! だけど、トレーナー目線だと『うわ……パワーアップしてる……』なんですよねぇ。気になってるところ……うん、それじゃあせーのっ……」

「「──お尻!」」

 

 


 

 地下バ道を進むのは三人の少女。

 カツンカツン……と蹄鉄が地面を打つ音が響く。

 少女達の表情はとても穏やかだ。今からレースに出るとは思えないほどに。

 

「来ましたよ、私は」

 

「「うん、待ってた!」」

 

 これ以上言葉はいらない。後は――レースで語るだけだ。

 

 

 

 

『全てのウマ娘が目指す頂点、日本ダービー! 歴史に蹄跡を残すのは誰だ! 3番人気にはミホノブルボン。この評価は少し不満か? 2番人気はこの娘、ライスシャワー。威風堂々とスタートを待つのはこのウマ娘、皐月賞ウマ娘シロノリリィ、1番人気です』

『二冠目をかけてダービーに挑みます! ゲートイン完了、出走の準備が整いました』

『――さぁゲートが開いた。各ウマ娘、キレイなスタートを切りました』

『誰が先頭に抜け出すか、注目しましょう』

『先行争いは――おっと!? ミホノブルボン、先頭を進みグングン後続を突き放す! まさかまさかの大逃げだ!?』

 

 

(……想定通り。とはいえ、やはりとても厳しいですね)

 

 風を切り、彼女は走る。誰にも追いつかれぬ様に、全てを置き去りにして。

 命を削り、命を懸けて彼女は走る。その先にある栄光を求めて。

 

 

 ミホノブルボンの大逃げにシロノリリィは驚愕した。それは他のウマ娘達も例外ではない。

 ある者は最初だけのハッタリだと思い、ある者は逆噴射するだろうと思う中、シロノリリィとライスシャワーはこう考えた。『絶対に垂れたりしない』、と。友でありライバルである彼女を信じているからこそこの考えに至ったのだ。

 

(最初、私は差しで行こうと考えていました。でもこのハイペースに着いて行ったらきっと末脚が残りません。……なら、私の選択は――)

 

 シロノリリィはスピードを緩めてバ群の最後方に位置取った。いくらトレーニングしたとはいえ、この超高速展開についていけるほどのスタミナは自分には無い。故に最終直線での直線一気に賭けることにした。

 

(大丈夫、大丈夫。私は私の脚を、みんなと一緒に鍛えたこの脚を信じるだけです……!)

 

 余分な力みを無くし、体力の消耗を最小限に抑える。例えどれだけ離されようとも己の加速力を持って差し切ってみせる。

 シロノリリィはその時が来るのを待つことにした。噴火を待つ火山の様に、静かに。――先頭から最後方までは約20バ身。

 

 

 

 マチカネタンホイザには今回のレースに向けて考えた作戦があった。その作戦は『ライスシャワーをマークし、その後方から差し切る』というものだ。

 ライスシャワーがミホノブルボンをマークすると想定し、その恩恵にあやかろうという作戦だったのだが、その思惑は外れてしまった。

 

(あれ? ライスさんがいない……?)

 

 そう、自分の前にライスシャワーがいなかったのだ。正確に言うとさっきまでいたはずなのに忽然と姿を消したというのが正解だ。

 

(あれれ? ちょっと嫌な予感がむんむんと――)

 

 ――その瞬間、己の喉元に妖しく煌めく短剣が突きつけられた。否、そう錯覚するほどの冷たい殺気が背後から襲いかかってきたのだ。

 

(はぐわぁっ!? ちょっ!? えっ!? なんでぇっ!?!?)

 

 殺気を放つ者の正体はライスシャワーだった。びっくりして一瞬振り返ってしまったマチカネタンホイザに対し、ライスシャワーは安心させるかの様に微笑んだ。

 

(あっ……きれい。……じゃなくて、怖いっ!! なんでこの状況でそんな表情なの!? 逆に怖いよっ!!)

 

 微笑んだのも束の間、一瞬にしてその表情が鋭利な刃物の様に変化する。

 

(もしかしてこれって……私が壁にされてる?)

 

 自分の作戦が一瞬にして崩されてしまったが、彼女はすぐに意識を切り替えた。

 利用されたから何だというのだ? その程度で屈するわけにはいかない。こちらにも意地があるのだ。

 

(上等っ! そっちがその気なら好きにすればいいよ。……なんかあのプレッシャーも来ないし平気なんだから!)

 

 

 

『以前先頭はミホノブルボン! 二番手との差は10バ身はあるぞ! 1000mを通過してタイムは……57秒4!? とんでもないペースだ!』

 

 

 これまでの彼女からは考えられないハイペースにレース場がざわつく。

 苦痛に顔を歪ませ、歯を食いしばり、それでもなおスピードを緩めずに駆けていく彼女を見守る者達がいた。

 ――スプリンター同盟とそのトレーナー達。彼女達はシロノリリィとライスシャワーを打倒する為にある作戦を立てた。

 話は約一ヶ月前まで遡る。その作戦がこれだ。

 

「────バクシンしましょう」

 

 その場にいたサクラバクシンオー以外の頭上に「?」が浮かんだ。

 

「いや、2400でバクシンするのは厳しいだろう? あまり否定的な言葉は言いたくないが、流石に無理があると思うぞ?」

「いいえ、いいえ! この作戦は普通のバクシンではありませんッ! そう! 何故なら通常のバクシンと違い、二回バクシンするのですからッ!!」

「……つまりどういうことだ?」

 

 サクラバクシンオーのバクシン言語をよく理解出来ずにアッシュストーンが尋ねると、自信に満ちた表情で彼女が答えた。

 

「いいですかアッシュさん? 2400を2で割ると1200になります。この数字が何かわかりますか?」

「……まさかと思うが、短距離になる。とか言わねえよな?」

「そのまさかです! つまりブルボンさんは1200を一度バクシンし、その後息を入れてもう一度バクシンすればいいのです!」

 

 一瞬だけ「バカみてぇな話だな」と思ったが、それを提案された本人が……

 

「……っ!! 素晴らしいです、バクシンオーさん。確かにこれならライスさんもリリィさんも対策ができます」

 

 瞳をきらきらさせて、フンスフンスと鼻息を荒くしていた。そしてトレーナーが口を開いた。

 

「……確かにこれならいけるかもしれん。ブルボンは元々スプリンターだ。だから中距離のペースではなく短距離のペースで走れば必然的に大逃げになる。ならば、出来ない理由など無い」

「はい。それに、大逃げをする事でライスさんのプレッシャー範囲から逃れ、更には高速展開でリリィさんのスタミナも削ることができます。まさに革新的……いいえ、バクシン的な作戦です」

「……確かにそうかもしれません。でもその分ブルボンさんの負担が凄まじいものになってしまいますよ?」

 

 ニシノフラワーが不安そうに聞くが、彼女の表情からその決断の固さが伝わってくる。

 

「――だから鍛えるんです。元々無茶だったものが少しだけその負担が増えるだけです。ならば、問題ありません」

 

 その考えはだいぶ危ないと思いますよ? と思ったがぎりぎりで堪えた。

 

「作戦はその方向性でいこう。ブルボン、坂路トレーニングだが……」

 

 そう言って立ち上がったトレーナーは、自身のスマホを操作してある画像を見せた。

 

「――アンクルウェイト。これを着けてやってもらう」

 

 ただでさえ辛い坂路に加え、アンクルウェイトの重量が加わるのだ。その負荷は計り知れない。……そのはずなのだが――

 

「──かっこいい(はい、マスター)」

「……心の声が漏れてるぞ」

 

 ミホノブルボンの瞳は幼女の如くきらきらしていた。流石にこれにはスプリンター同盟も少し呆れていた。

 

「やるぞ、ブルボン……!」

「了解です、マスター……!」

 

 

 

 

 ――そして現在に至る。

 この作戦は彼女の意地だ。彼女が歩んで来た人生の全てがここにある。

 苦しかろうが辛かろうが関係ない。どれだけの困難があろうと立ち止まる理由などないのだ。

 

(痛い……苦しい……辛い。でも、負けるのは……負けるのだけは――)

 

 ――――絶対に嫌だ!!

 

 

『現在先頭はミホノブルボン。おっと! ここでライスシャワーが仕掛け始めた! ジリジリと差を詰めにかかる! 注目のウマ娘、シロノリリィはどう動くのか!?』

 

(まさかブルボンさんが大逃げをするなんて。……少しも考えなかった……ううん、もっときちんと考えるべきだった。だけど、今はそれを考える時間じゃない)

 

 風除けに(マーク)していたマチカネタンホイザを交わしてライスシャワーが仕掛け始めた。

 想定外の大逃げによっていつものプレッシャーを避けられたが、それだけが彼女の武器ではない。スタミナ勝負なら誰にも負けない自信がある。

 

(……まだ、まだだ。領域はまだ使うべきじゃない。……使うのは、最終直線!!)

 

 ――ライスシャワーが普段から使っているプレッシャーには2つの弱点がある。1つは距離を取られると効果が薄くなる事。もう1つはこれを使っている時にスパートを仕掛けられない事だ。領域との併用も出来ないのだが、これは後者の弱点とほぼ同じなので実質的な弱点は2つだ。

 

 

『先頭との差を詰めるライスシャワー! このままミホノブルボンは逃げ切れるのか!? 大ケヤキを越え4コーナーへ。さぁ、いよいよ直線だ! 後ろの娘達は、シロノリリィは来ないのか!? いや――』

 

 

 先頭を駆けるミホノブルボンとそれを捉えようと進むライスシャワー。

 二人は確信している。彼女が――シロノリリィが来ると。

 

 

『――――来たっ!! シロノリリィだっ!! 純白の軌跡を描いてシロノリリィが大外から跳んできたっ!! 最後方からのごぼう抜きっ! 栄光まであと400!!』

 

 

 三人の少女は破顔う。

 今この瞬間、最高のライバルがいる事に。

 

「「「ああああぁぁぁぁ!!!!」」」

 

 

『先頭はミホノブルボン!! 最後まで押し切れるのか! ミホノブルボン、リードは3バ身! 残り200! 凄まじい脚で上がって来るのはライスシャワーとシロノリリィ!』

 

 

 肉体の限界を超え、ただ勝つために前へ駆ける。

 ――そして、世界が変貌る(かわる)

 

 ミホノブルボンの心が――

 

 領域『G00 1st.F∞;』

 

 ライスシャワーの心が――

 

 領域『ブルーローズチェイサー』

 

 ――世界を染める。

 

 

『ミホノブルボンとライスシャワーが抜け出した! 残り100! シロノリリィはここまでか!?』

 

 

 ――シロノリリィの世界が徐々に緩やかになる。まるで今の足りない自分に見せつけるかの様に、二人の背中が徐々に遠ざかっていく。

 ――それでもシロノリリィは諦めない。諦める理由など、存在しないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――そして、シロノリリィは真っ白な世界に立っていた。

 

「……ここは、あの時の? ……あれ?」

 

 アッシュストーンと戦った時に来た世界。そして、あの時破壊した真っ白な壁がある。

 そんな世界の中、彼女の視線の先には白い鎖で厳重に封じられた真っ黒でボロボロの扉があった。

 何かに惹かれて進もうとしたが、ガシャン……と、喧しい音を立てた物が己の進行を妨げている事に気がついた。

 そんな不届きものを見るために視線を下に向けると、真っ白な鎖が自分の手、脚、首に付いてる事に気づく。

 

「……なぁにこれ?」

 

 この白い世界から生えたソレは、恐らく警告だ。この先に行ってはいけない。あの黒い扉を開けてはいけないと暗に告げている。

 

「……たぶん、あれを開けたら……引き返せない」

 

 ――腕を振り、鎖を引きちぎる。

 

「……あの扉には何かがある」

 

 ――脚を振り上げて、勢いを付けて鎖を踏み潰す。

 

「……領域よりも、もっと恐ろしい何かが」

 

 ――最後に、首に巻きついてる鎖を握りつぶした。

 

 

 彼女を縛るモノは、もう何も無い。

 

 

 コツン、コツン……と小さな足音だけが世界に響く。

 一歩一歩近づいて、シロノリリィの小さな体が扉の前に辿り着いた。

 

「…………ぼろぼろです」

 

 白い鎖で厳重に封印された扉は、とても痛々しい雰囲気を放っていた。

 安っぽいデザインの、ところどころが傷だらけの黒い扉。傷ついて剥き出しになった所は無理矢理黒く塗られて誤魔化されている。

 

「……なんでだろ。とっても懐かしい、のかな?」

 

 見れば見るほどその感覚がやってくる。よく分からない感覚に彼女は不思議な気持ちになった。

 

「これはみんなが言ってた領域じゃないです。――でも、勝てる」

 

 扉を開ければ、知ってしまえば、必ず。そう断言してしまえる何かがある。

 シロノリリィは扉に向けて手を伸ばした。

 

 

 

 

 そして、シロノリリィはその扉に……ドアノブに手を伸ばし――そのままドアノブを握りつぶした。

 

 

「――だけど、いらない!」

 

 

 ――その瞬間、真っ白な世界に罅が入った。

 

 

 

 

 

 

 

 不完全領域『     』

 

 

 

『――先頭はミホノブルボン! だがその差は僅か! ライスシャワーが追い上げ……来たっ!! シロノリリィが加速する! ミホノブルボンか!! ライスシャワーか!! シロノリリィか!!』

 

 ミホノブルボンが信念の光を、ライスシャワーが蒼炎を、シロノリリィが純白の光を纏って駆け抜ける。

 

『ミホノブルボンが!! ライスシャワーが!! シロノリリィが!! 今っ!! 大接戦のゴォール!! 誰が勝った!? ほぼ同時に3人がゴール板を駆け抜けたぁっ!』

 

 

「「「はぁ……はぁ……はぁ……」」」

 

 ゴール板を通過した少女達は限界を超えて力を使い果たしたのか、よろよろと歩いた後地面に仰向けに倒れ込んだ。

 荒い息を吐いて大空を仰ぎ、息が整うのを待つ。

 

「…………ねぇ、誰が勝ったの?」

 

「…………分かりません」

 

「…………わかんにゃい。でも――」

 

 ――悔いはない。そう全員が感じていた。

 全力を出し切り、限界を超え、意地を貫き……そして、レースの結果が出た。

 

 

 

 

『お待たせしました!! 1着は……ミホノブルボン! 皐月賞の敗北を乗り越え、日本ダービーを制しました!! 2着はライスシャワー。3着はシロノリリィ――』

 

 

 ――ミホノブルボンの意地と執念が、二人に勝利した。

 

「……………………っ!!」

 

 天に向かって拳を突き上げる。見せつける様に、高々と。

 少女の頬から熱い雫が零れ落ちる。だがその表情は、雲ひとつない青空の様に爽やかな笑顔だった。

 

「――おめでとう! ブルボンさん!!」

「――おめでとう! ブルボンちゃん!!」

「――はい! ……はいっ!!」

 

 

 

 

 ふんすふんすと鼻息荒く手を振り続けるミホノブルボンとそれを隣で支えるシロノリリィとライスシャワー。今の彼女達は限界を超えたレースの影響で立つのも精一杯になっていた。

 手を離した瞬間に子鹿の様に震え出したので、先ほどレース場の観客達から別の笑いを貰ってしまった。

 

「ねぇねぇライスちゃん、ブルボンちゃん! すっごく楽しかったね!」

「うん! ライスもとっても楽しかった! ……でも、次はブルボンさんに負けないもん!」

「いいえ、次も私が勝ちます」

 

 少女達から笑顔が溢れる。そして、ミホノブルボンはじっと二人のことを見つめた。

 

「……どうしたの? ブルボンさん?」

「……なあに? ブルボンちゃん?」

 

 どうしたんだろう? と可愛らしく小首を傾げる二人を見つめながら言う。

 

「――私も、『ちゅー』をしたほうがいいのでしょうか?」

「…………えっ?」

「…………うに?」

 

 突然の言葉に二人は固まってしまった。真面目な顔をしながら彼女は続ける。

 

「ホープフルステークスの時と皐月賞の時、お二人はちゅーをしました。なので私もそうした方がいいのかと……」

「…………えっ??」

「…………うにゃっ??」

「……というよりも、この感情を処理しきれません。エラーコード発生、へるぷみーです」

 

 外見に反して中身は幼女なミホノブルボンの情緒が限界を迎えてしまった。――シロノリリィのせいで本来の歴史よりも中身が幼くなってしまった影響が出てしまったようだ。

 仲間と共に乗り越えた達成感、最高の勝利を決めた高揚、その全ての感情が溢れに溢れてミホノブルボンをオーバーヒートさせる。

 

「…………ライスさん」

「……えっ? ……えっ!?!?」

 

 ガシッと肩を抑えるミホノブルボンの瞳は、何だかよく分からないがぐるぐると渦を巻いていた。

 いきなりの出来事にライスシャワーはあわあわと慌て出した。――が、すぐさまシロノリリィの手によって引き剥がされた。

 

「だめっ!!!!!! ライスちゃんは私だけなのっ!!!!」

「――――エラー、エラー! ミホノブルボン、オーバーヒート……!」

「――リリィちゃんっ♡」

 

 嫉妬心を剥き出しにするシロノリリィにライスシャワーはキュンキュンしている。

 そのままの勢いでミホノブルボンを抱えて観客席まで走り出した。

 

 

「……ん? なんかシロがミホを抱えてこっち来てんぞ?」

「……何だか嫌な予感がするな。……あれ? フラワーがいない……?」

「バクシン的な速さでしたね!」

 

 いち早く危機を察知してニシノフラワーは避難した。彼女の唇はセイウンスカイ専用なのだ。

 

「――キョウちゃん! アッシュちゃん! バクちゃん! あとお願い!!」

「──ミホミホミホミホノブルブルボンボンボン……‼」

「んん? どういう事だリリィ……?」

「シロがぷんぷんしてんな。どういうこった?」

「――どうやらバクシン的エネルギーが行き場を失っているのでしょう。つまり、大バクシンですッ!」

 

 爆発寸前のミホノブルボンをスプリンター同盟に預け、シロノリリィはすぐにライスシャワーの元へ走り出した。……汚い悲鳴が聞こえたが恐らく気のせいであろう。

 日本ダービーというクラシック三冠の中で、勝てば最高の栄誉があるとされているレースだというのに、余りにも締まらない最後であった。

 




Qあの扉開けたらどうなるの?
A勝った! すきすきだいすきライスシャワー! 完ッ! リリィちゃんは死ぬ。
いわゆるBADエンドです。開けたら限界を遥かに超えた力を引き出せますが、心臓に負荷がかかってジ・エンドです。
私は愉悦部じゃないのでそんな酷い話は書けません。


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【日本ダービー】リリィちゃんを応援するスレ【必殺!リリィちゃんボンバー!】

掲示板回です。
※多機能フォームの掲示板形式テンプレートを使わないと安価に飛ばないようです。初めて知りました。
今回はそれを使わずに書いたので安価部分を押しても反応しないのですが、直すのが大変なのでこのままにします。
次の掲示板回を書く時はテンプレートを使用したいと思います。


1:名無しのウマ娘ファン

チャオズは置いてきた

スレ立てはしたがハッキリいってリリィちゃんかわいいにはついていけない…

 

2:名無しのウマ娘ファン

ああそのほうがいいスレ立て乙

 

4:名無しのウマ娘ファン

ついてかない方がいいと思う(正論)

 

7:名無しのウマ娘ファン

またチャオズが置いてかれてるよ…

 

10:名無しのウマ娘ファン

チャオズなんてどうでもいいんだよ(暴論)

今日はダービーだぜ!リリィちゃんは勝てるのかな?

 

13:名無しのウマ娘ファン

距離的にキツいんじゃね?とは言われてるけどゴリラアンクルでウホウホトレーニングしてるからわからん

 

15:名無しのウマ娘ファン

ちゃんとアンクルウェイトと言え

ライスちゃんも着けてるけどあれ重さ何キロなの?

 

17:名無しのウマ娘ファン

>>15

ライスちゃんのやつは50キロ×4個で200キロっぽい

あれ着けたままトレーニングするとかウマ娘ちゃんヤバ杉

 

19:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんをナチュラルにゴリラ扱いはやめろ

 

22:名無しのウマ娘ファン

ウマッターに重り外してまだ本気じゃないごっこ投稿するのは芝なんですよ

ライスちゃんとブルボンちゃんもノリノリでやってるのが更に芝2400

 

25:名無しのウマ娘ファン

ブルボンはともかくライスちゃんもノリノリなのが意外だったわ

まあかわいいから問題ないが

 

27:名無しのウマ娘ファン

ブルボン「やりますねリリィさん、ライスさん。…ですがまだ私は本気ではないのですよ?」

リリィちゃん「…それはこっちも同じです。…ね!ライスちゃん!」

ライスちゃん「ふっふっふ!フルパワーライスの力を見せてあげるよ、ブルボンさん!」

 

30:名無しのウマ娘ファン

ちゃんと外した後高い所から落とすのもやってたしね

スーパサイヤ人的オーラを編集で追加するのはやめろ腹が痛い

 

32:名無しのウマ娘ファン

誰が編集したんだよ…(呆れ)

こういう所見てるとまだまだ子どもなんだなって微笑ましくなるわ

 

34:名無しのウマ娘ファン

ごっこあそびするリリィちゃんとライスちゃんとブルボンちゃんかわいいね♡

ライスちゃんはちっちゃい頃におままごとでリリィちゃんをお嫁さんにしてそう(偏見)

 

36:名無しのウマ娘ファン

ブルボンちゃんってよぉ…もしかして見た目と違ってアホの子なのか?

 

39:名無しのウマ娘ファン

重り外してまだ本気じゃないごっことかよく分からんのだがおっさん世代の話か?

 

41:名無しのウマ娘ファン

>>34

私の性癖に合致してベネ

 

44:名無しのウマ娘ファン

幼少の頃からライスちゃんの性癖をぶっ壊すリリィちゃんかわいいね♡

あんなちっちゃくて綺麗で可愛くて天使な子にライスちゃんだぁいすきっ♡されたらまぁ壊れるわな

 

47:名無しのウマ娘ファン

>>36

お気付きになられましたか

俺も最初はストイックなサイボーグだと思ってたけどあれはちっちゃい頃からの夢を叶えるためにがんばる系幼女だわ

 

49:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんかわいい!リリィちゃんかわいい!

 

52:名無しのウマ娘ファン

>>39

なん…だと…!?

ドラゴンボールとナルトは少年時代の必須科目だろ!?

 

54:名無しのウマ娘ファン

ブルボンちゃんのパワーは今世代でもトップなはずなのにリリィちゃんというゴリラのせいでNo.2扱いなのが笑える

上り坂で減速しないとか意味わからないんですけど??

 

57:名無しのウマ娘ファン

傘持ってアバンストラッシュ練習したわ

 

59:名無しのウマ娘ファン

>>57

僕は魔神剣!

虎牙破斬で傘へし折ってママンにめっちゃ怒られたわ

 

63:名無しのウマ娘ファン

>>54

ブルボンちゃんの体バッキバキで興奮する

 

65:名無しのウマ娘ファン

リーが重り外して高速戦闘始めたとこまじで好き

第二部でガイの下位互換になったのマジ悲しい

 

66:名無しのウマ娘ファン

ガトチュエロスタイムッ‼︎

 

69:名無しのウマ娘ファン

>>52

何十年前の漫画だと思ってるんだよ?

思ってるんだよ…(半泣き)

 

72:名無しのウマ娘ファン

おっさんのすくつ

 

75:名無しのウマ娘ファン

心はいつまでも少年だからね仕方ないね

 

78:名無しのウマ娘ファン

ねえねえ

リリィちゃんのアンクルウェイトよくみたらシンザンモデルじゃね?

 

81:名無しのウマ娘ファン

今の子は○の呼吸なのかな?

霹靂一閃とか真似しやすそう

 

84:名無しのウマ娘ファン

>>78

嘘だろ承太郎?いやマジじゃんやっばまじやべぇな(語彙力)

 

86:名無しのウマ娘ファン

ハハハ…ご冗談を

冗談だろ?

 

88:名無しのウマ娘ファン

あのジョークグッズ着けて動けるやついたのかよ(驚愕)

 

92:名無しのウマ娘ファン

なになにそんなにやばいの?

 

95:名無しのウマ娘ファン

>>92

やばいなんてもんじゃないぞ

あれつけたままトレーニングするとかウマ娘じゃないわ

 

98:名無しのウマ娘ファン

その重さからジョークグッズ扱いされてるのがシンザンモデル

軽量化されたのが現行モデル

それでも合計200キロとか意味わからん

 

101:名無しのウマ娘ファン

さすリリ!

 

103:名無しのウマ娘ファン

やはりリリィちゃんはゴリラ(確信)

 

106:名無しのウマ娘ファン

>>92

説明しよう!シンザンモデルとは史上二人目の三冠ウマ娘シンザンの逸話を元に開発された試作型アンクルウェイトの事だ!その重さは150キロ×4個で600キロという意味の分からない重さだぞ!

その逸話というのが当時大の練習嫌いでよくトレーニングをサボっていたシンザンにキレたトレーナーが重りを仕込んだトップスと鉄ゲタを履かせて「トレーニングがいや?じゃあ普段からこれ身につけて練習がわりにするね?」とやった鬼畜エピソードだぞ!

トレーナーも頭おかしいけどそれを平然……嫌々こなすシンザンもおかしいぞ!まあそのせいで余計にトレーニング嫌いになったけどな!

 

109:名無しのウマ娘ファン

シンザン「いやじゃいやじゃ!トレーニングなどしとうない!」

 

112:名無しのウマ娘ファン

当時はのじゃのじゃ言ってないぞ

 

115:名無しのウマ娘ファン

ルドルフが試しに着けて無理(真顔)ってなったの芝3200

 

118:名無しのウマ娘ファン

>>106

ほぉ〜ん

………リリィちゃんはなんでそれで普通にトレーニングできるんですか?(愕然)

 

121:名無しのウマ娘ファン

>>118

だってリリィちゃんだぜ?

 

123:名無しのウマ娘ファン

>>118

リリィちゃんだよ?

 

125:名無しのウマ娘ファン

>>118

まあリリィちゃんだし

 

128:名無しのウマ娘ファン

パワーだけならシンザン超えてるなリリィちゃん

 

131:名無しのウマ娘ファン

シンザンとかいう根性以外がカンストしてるバケモン

 

134:名無しのウマ娘ファン

そういや>>22のまだ本気じゃないごっこって誰が撮影してるの?

 

137:名無しのウマ娘ファン

最 強 の 戦 士 シ ン ザ ン

 

141:名無しのウマ娘ファン

Q.シンザンさんが走る理由は?

A.金

 

143:名無しのウマ娘ファン

ハナ差でも勝ちは勝ちだろ?レコードとかアホだわ

本番じゃないから勝たなくてもいいだろ?

当時めっちゃ文句言われてたけど実績が化け物だから文句言える人がいないというね…

 

146:名無しのウマ娘ファン

>>134

たぶんタンホイザっぽい

ダービーの敵情視察してるところを捕まったみたいな事本人のウマッターに書いてあったわ

 

151:名無しのウマ娘ファン

>>36

ブルボンちゃんは精神が幼女だぞ

フラワーママと一緒にプリファイ見てるからな

 

153:名無しのウマ娘ファン

敵情視察で捕まるとかいう生存フラグ

そういやタンホイザ皐月賞4着だったなダービーもがんばれよ

 

156:名無しのウマ娘ファン

か わ い い か し こ い リ リ ィ ち ゃ ん

 

159:名無しのウマ娘ファン

フラワーママとかいう最近母性が高まってきたウマ娘ちゃん

セイちゃんといちゃいちゃしてるの興奮するからもっとやれ

 

162:名無しのウマ娘ファン

セイウンスカイとかいうフラワーちゃんに膝枕して甘えてるのがバラされたウマ娘

ちょっとセイちゃん横になりますね

 

164:名無しのウマ娘ファン

バラしたのがキングちゃんなのまじ芝2000

キングちゃんがセイちゃんのお部屋行ったらフラワーちゃんに膝枕されながら頭なでなでされてたのを目撃されるとかいう

 

167:名無しのウマ娘ファン

 

170:名無しのウマ娘ファン

おいたわしやセイちゃん…

 

173:名無しのウマ娘ファン

ブルボンちゃんもフラワーちゃんになでなでしてもらってたね

なんかリリィちゃんに関わったウマ娘ちゃんみんな知能下がってない?

 

176:名無しのウマ娘ファン

セイちゃん「フラワ〜♡もっとなでなでして〜♡」

フラワーちゃん「スカイさんは甘えんぼさんですね〜♡」

 

180:名無しのウマ娘ファン

キングちゃんの鬼畜!一流!もっとやれ!

黄金世代も5人揃うとアホになるよね

 

183:名無しのウマ娘ファン

ウマ娘ちゃん同士のいちゃいちゃからでしか摂取できない栄養がある

 

186:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんはかしこいからな

そのかしこさがみんなに影響を与えたんだろう

 

189:名無しのウマ娘ファン

グラスはケツがデッカいデース!

 

192:名無しのウマ娘ファン

>>176

皐月賞、菊花賞を勝った二冠ウマ娘の姿か?これが…

 

195:名無しのウマ娘ファン

めっちゃ痛ェ────けど!!取ったぞォーーーー!!(二冠)

 

198:名無しのウマ娘ファン

La victoire est à moi(調子に乗んな!)

 

201:名無しのウマ娘ファン

>>189

エル、腹を切りなさい

 

204:名無しのウマ娘ファン

そういやスレタイのリリィちゃんボンバーってなに?(唐突)

 

207:名無しのウマ娘ファン

>>195

もう…散体しろ!

 

209:名無しのウマ娘ファン

ここで来たか!

 

212:名無しのウマ娘ファン

>>204

その説明をする前に今の銀河の状況を理解する必要がある 少し長くなるぞ

 

215:名無しのウマ娘ファン

>>201

ケ!?

 

217:名無しのウマ娘ファン

サム8語録やめろ

 

219:名無しのウマ娘ファン

拙者、目が見えん

 

221:名無しのウマ娘ファン

お前もいずれ分かる時が来よう

 

223:名無しのウマ娘ファン

お前は物事をあせりすぎる

 

225:名無しのウマ娘ファン

>>217がどう思おうが語録を使うかどうかはオレが決めることにするよ

 

227:名無しのウマ娘ファン

まだまだ心眼が足らぬ

 

229:名無しのウマ娘ファン

>>204

皐月賞の最終直線あたりで見せたリリィちゃんの超加速だよ

ソースは青汁

 

231:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんスレを語録で埋めるのはやめろ

 

234:名無しのウマ娘ファン

ソースは青汁…

やだ…絶対不味い

 

236:名無しのウマ娘ファン

そっちじゃねぇよ!!

 

239:名無しのウマ娘ファン

俺は青汁ガチ勢(汁の方)

あの不味さがクセになるんだよ

 

241:名無しのウマ娘ファン

ネーミングセンスがかわいいよね

まあ存在がかわいいんだけど

 

245:名無しのウマ娘ファン

>>162

歳下にオギャってんじゃねえよ

 

249:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんかわいい!リリィちゃんかわいい!

 

254:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんってかわいすぎるよね。まずねお顔がいいの次にスタイルもいいの。ビジュアル面が天使すぎる存在が芸術だよ。それでねお声も綺麗なの鈴の鳴るような声ってリリィちゃんのために存在する言葉だよね。もうずっと聴いていられるお耳が幸せになっちゃうの。あとちっちゃいところとかがもうね最高すぎるの抱きしめるとちょうどいいフィット感で興奮しちゃう。お肌もぷにぷにでねほっぺたすりすりするともうかわいいの。やわらかくてあったかくてすっごくいい匂いでたまらなく幸せなの。性格の方も天使さんだよ優しくて思いやりがあってでもちゃんと芯があってすごくすごいの。リリィちゃんってね普段はにこにこしててかわいすぎるんだけど実はお顔は綺麗系なんだ。そういう表情はなかなか見れないんだけどふとした瞬間に目撃すると心臓止まっちゃうあぁもう好きすぎて語りきれないちょっとリリィちゃん成分不足してきたからリリィちゃん抱きしめてくるね!

 

257:名無しのウマ娘ファン

>>254

突然の公式怪文書やめろ

 

261:名無しのウマ娘ファン

>>254

ライスちゃんさぁ…いいぞもっとやれ

 

265:名無しのウマ娘ファン

>>254

リリィちゃんも同じような事言うの芝3400

 

269:名無しのウマ娘ファン

もっといちゃつけ世界よ百合に染まれ

 

274:名無しのウマ娘ファン

やっぱりライリリは最高だぜ!

 

 

 

 

 

 

441:名無しのウマ娘ファン

今日は矢来ないな現地で応援してるのか?

 

446:名無しのウマ娘ファン

矢が来ない…

言葉だけだと常に暗殺されそうになってる人っぽい

 

449:名無しのウマ娘ファン

今日は快晴だな

皐月賞の大荒れが嘘みたいだぜ

 

451:名無しのウマ娘ファン

あの時は天気ヤバかったからな

大雨味の焼きそばの不味さは忘れねぇよ…

 

456:リュウグウノツカイ

ダービーダービーダビダビダービー

 

460:名無しのウマ娘ファン

>>451

今日は普通に食えるじゃんよかったな!

 

464:紅茶

パンもダービー出たかったジャン

 

467:名無しのウマ娘ファン

おっ?リュウグウノツカイと紅茶じゃんまみむめもー!

 

471:名無しのウマ娘ファン

なんだそのクソみてぇな挨拶

 

474:名無しのウマ娘ファン

ダービーとかいう出走しただけで一生の自慢になるレース

 

479:名無しのウマ娘ファン

でもダービー勝って燃え尽きるウマ娘ちゃんもいるらしいじゃん

もう、これで終わってもいい。…だからありったけを。状態なのかな?

 

483:名無しのウマ娘ファン

ここにいる時点で聞いていいのかわからんがリュウグウノツカイと紅茶はダービー出ないの?

 

485:名無しのウマ娘ファン

(それ聞いていいのか?)

 

489:紅茶

>>483

パンは今シニア級だけど適正的に無理だったジャン

ダートの短距離マイルとか無理無理パンジャンドラムジャン

>>485

パンは気にしないジャン

 

493:リュウグウノツカイ

>>483

適性ない

いえーい

だからシロノリリィはとってもすごい

 

496:名無しのウマ娘ファン

ほお〜んそんな感じなのねありがとう

リリィちゃんってやっぱすげえな

 

500:名無しのウマ娘ファン

ブルボンもすげえぞ

スプリンターなのに無理やり適性伸ばして走ってるからな

 

503:名無しのウマ娘ファン

そもそも中央入れた時点でエリート

OP勝利ですらやばいのにリリィちゃんはGⅠも勝ったからな

 

506:名無しのウマ娘ファン

忘れそうになるけどそういやそうだったな

GⅠ連勝するやつとか頭おかしいもんな

 

510:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんの適性ダートのマイラーだっけ?

オグリキャップも芝ダート走れるマイラーだからリリィちゃんは実質オグリキャップだな

 

514:名無しのウマ娘ファン

>>510

リリィちゃんは追い込みもできるからタマモクロス要素もあるぞ

オグリキャップとタマモクロスで『オグリクロス』だな!

 

517:名無しのウマ娘ファン

オグリとタマちゃんの合体とか強すぎるだろ!加減しろ!

 

520:名無しのウマ娘ファン

今北産業

パドックどうだった?

 

524:名無しのウマ娘ファン

>>520

かわいい

かしこい

リリィちゃん

 

527:名無しのウマ娘ファン

>>520

ブルボンムキムキ

ライスちゃん綺麗

リリィちゃんかわいい

 

530:名無しのウマ娘ファン

>>520

えい

えい

むん!

 

535:名無しのウマ娘ファン

>>524>>527>>530

トンクス

まあいつも通りね

 

538:名無しのウマ娘ファン

ブルボンちゃん皐月賞負けて落ち込んでると思ってたけど前より元気になってたね

 

541:名無しのウマ娘ファン

フラワーちゃんにオギャってたしそりゃ元気になるでしょ(ハナホジ)

 

543:名無しのウマ娘ファン

俺が同じ立場なら立ち直れないわ

 

545:名無しのウマ娘ファン

僕もフラワーちゃんにオギャりたいです!

 

546:名無しのウマ娘ファン

おじさんの人参も元気になってきたぞ〜^^

 

548:名無しのウマ娘ファン

フラワーママぁ…

 

550:名無しのウマ娘ファン

>>546

消えろ

ぶっ飛ばされんうちにな

 

553:名無しのウマ娘ファン

フラワーちゃんを不埒な目で見てる奴が多い気がするが気のせいか?

 

555:名無しのウマ娘ファン

>>543

ナカーマ

実際すげぇよな

 

560:名無しのウマ娘ファン

>>553

セイちゃんが一番いけない目で見てるからセー…アウトだよ!

>>546は転がす

 

563:名無しのウマ娘ファン

フラワーちゃんに劣情を抱くのはやめろ

 

566:名無しのウマ娘ファン

ヒトミミはヒトミミ同士で、ウマ娘ちゃんはウマ娘ちゃん同士で恋愛するべきだと思うの

 

569:名無しのウマ娘ファン

過激なヒトミミ来たな…

 

573:紅茶

やべえやついるジャン…

 

575:リュウグウノツカイ

こわ

 

578:名無しのウマ娘ファン

ウマ娘ちゃんドン引きしてるぞやめないか

 

581:名無しのウマ娘ファン

俺らから見てもやべーやつら

リリィちゃんスレの住民は他のスレから狂信者と畏れられてるとか聞いたことあるわ

 

584:名無しのウマ娘ファン

俺らとか普通だろ?

リリィちゃんかわいいぐらいしかしないしな

 

587:名無しのウマ娘ファン

ライリリもするぞ!

 

590:名無しのウマ娘ファン

ところで紅茶とリュウグウノツカイから見てリリィちゃんってどうなの?

ちょっと気になるザマス

 

593:名無しのウマ娘ファン

うおおー!!リリィちゃんかわいい!

 

596:リュウグウノツカイ

>>590

太陽

 

600:紅茶

>>590

わざわざこんなスレに来るぐらいはファンなんジャン

色んな意味で目が離せないジャン

 

604:名無しのウマ娘ファン

>>596>>600

ほおんなるほどね

リュウグウノツカイの返答がちょっとあれですね…重い(直球)

 

607:名無しのウマ娘ファン

こんなスレだとぉ…?

一切否定できんな!

 

610:名無しのウマ娘ファン

太陽…ふぅん

なんかクソデカ感情持ってそうで興奮する

 

614:紅茶

>>596

えっ…そんな事考えてたジャン?

 

616:名無しのウマ娘ファン

紅茶引いてるじゃん芝

 

619:名無しのウマ娘ファン

リュウグウノツカイより拗らせてるのがウマッターというよりネットには大量にいるけどな

まぁあれは拗らせるよね

 

622:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんはかわいすぎる罪でライスちゃんに逮捕されてるからな仕方ないね

 

 

 

 

 

700:名無しのウマ娘ファン

そろそろレース始まるか?

 

704:名無しのウマ娘ファン

ふふふっ…興奮してきたな

 

707:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんはどんな選択をするか…楽しみだな

 

715:名無しのウマ娘ファン

ファンファーレ

 

719:名無しのウマ娘ファン

おっはじまた

 

723:名無しのウマ娘ファン

やはりブルボンが逃げ…あれ?…はやくね?

 

726:名無しのウマ娘ファン

いやいやはやすぎるだろペース考えろよ

 

729:名無しのウマ娘ファン

もしかしてぇ…大逃げですかぁ!?

 

731:名無しのウマ娘ファン

スタミナもつのか?

 

734:名無しのウマ娘ファン

いやーキツいでしょ!

 

737:名無しのウマ娘ファン

でもこのまま逃げられたらやばくね??

 

740:名無しのウマ娘ファン

沈むだろ…

沈むよな?

 

743:名無しのウマ娘ファン

うひゃーペースやべー

 

745:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん後ろまで下がったわ

ダービーポジションガン無視じゃん

 

748:名無しのウマ娘ファン

そんなもんシービーが壊した定期

多分最終直線でブチ抜くんだろ

 

750:紅茶

ほぉん…なるほどジャン

 

752:リュウグウノツカイ

ドン引き

 

755:名無しのウマ娘ファン

>>750

なんかわかったの?

 

757:名無しのウマ娘ファン

めっちゃ表情つらそう…

興奮してきた

 

759:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんはタンホイザを風除けにしてるね

 

761:名無しのウマ娘ファン

興奮するなおたんこにんじん

 

764:紅茶

>>755

ライスちゃんのプレッシャーとリリィちゃんボンバー対策ジャン

ライスちゃんからは距離を取ってリリィちゃんはスタミナを削って不発させるって言う合理的な作戦ジャン

 

767:名無しのウマ娘ファン

なるほどブルボンはなんて賢いんだ!

 

769:名無しのウマ娘ファン

なるほど完璧な作戦っすね!

 

772:名無しのウマ娘ファン

いやいやキツすぎだろ

 

775:名無しのウマ娘ファン

1000超えてタイムは…57秒4!?!?

 

777:名無しのウマ娘ファン

えっ??ちょっ!?!?

 

779:名無しのウマ娘ファン

ま?ヤバすぎない??

 

781:名無しのウマ娘ファン

でも私の方が速いです

 

783:名無しのウマ娘ファン

スズカさんのタイム思い出して怖いっピ!

 

785:名無しのウマ娘ファン

脚大丈夫か?

 

788:名無しのウマ娘ファン

>>781

最速の機能美ステイ

 

791:名無しのウマ娘ファン

でもこのペースで行けば確かに勝てるか?

 

793:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃん仕掛け始めた

 

795:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん動かないわね

 

797:名無しのウマ娘ファン

流石に垂れるだろ…

 

800:名無しのウマ娘ファン

でも全然落ちる気配ねぇぞ

 

802:名無しのウマ娘ファン

怖わ〜…

 

805:名無しのウマ娘ファン

お!リリィちゃん来た!!

 

807:名無しのウマ娘ファン

今のはリリィちゃんボンバーではない…スパートだ

 

809:名無しのウマ娘ファン

いっけーリリィちゃん!!

 

812:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんもがんばれー!

 

815:名無しのウマ娘ファン

3バ身!

 

817:名無しのウマ娘ファン

あと200!

 

819:名無しのウマ娘ファン

並びかけてきた!

 

821:名無しのウマ娘ファン

ブルボンとライスちゃんもうちょい!

 

823:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんもうちょっと!

 

825:名無しのウマ娘ファン

あっ!!

 

827:名無しのウマ娘ファン

おごぉっ!!

 

829:名無しのウマ娘ファン

ブルボンとライスちゃん抜けた!

 

832:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんがんばえー!!

 

834:名無しのウマ娘ファン

ブルボン先頭!!

 

836:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんもうちょい!!

 

838:名無しのウマ娘ファン

うおっ!?リリィちゃん伸びてきた!

 

840:名無しのウマ娘ファン

やっば!

 

842:名無しのウマ娘ファン

やったか!?

 

844:名無しのウマ娘ファン

あっ…おいバカ!

 

846:名無しのウマ娘ファン

ほぼ同時だったな

これは分からんぞ…

 

848:リュウグウノツカイ

すっご

 

850:名無しのウマ娘ファン

ブルボン走り切ったなすげぇ!!

 

852:名無しのウマ娘ファン

結果はどうだ?

 

855:名無しのウマ娘ファン

ブルボン1着!

 

857:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃん2着リリィちゃん3着か…

ちょっと残念だけどブルボンおめでとう!

 

860:名無しのウマ娘ファン

あぁ!惜しかった!

 

862:名無しのウマ娘ファン

いやすごかったわまじで

 

864:名無しのウマ娘ファン

おぉん!!

 

866:名無しのウマ娘ファン

あとちょっとだったな

でもみんな笑顔だからオッケーです!

 

867:名無しのウマ娘ファン

ブルボンちゃんも良い笑顔だな!

 

871:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんは少し残念だがいいレースだったわ

 

 

 

 

 

901:名無しのウマ娘ファン

そういやタンホイザ4着ね

 

903:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんもライスちゃんもブルボンも足ぷるっぷるで芝

 

905:名無しのウマ娘ファン

ブルボンちゃんめっちゃおてて振っててかわいいね

 

908:名無しのウマ娘ファン

ん?ブルボンの様子が…

 

910:名無しのウマ娘ファン

何だか風がおかしいのだ…

 

912:リュウグウノツカイ

聞こえる

ブルボン「私もちゅーをした方がいいのでしょうか?」だって

 

914:名無しのウマ娘ファン

>>912

??

 

916:名無しのウマ娘ファン

わかるように説明しろ…

 

918:名無しのウマ娘ファン

まるで意味がわからんぞ!

 

920:名無しのウマ娘ファン

あれじゃねライリリちゅっちゅ事件

勝った興奮でおかしくなってんだろ

 

922:名無しのウマ娘ファン

>>920

幼女かな?

 

924:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんの肩掴んだね

 

926:名無しのウマ娘ファン

えっ!?!?ブルボンちゃんがライスちゃんにちゅーだって!?!?

 

928:名無しのウマ娘ファン

ライリリの間に割り込むのは許さんぞっ!!!!

 

930:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんがひっぺがしてて芝

動きクッソはやかったわw

 

932:名無しのウマ娘ファン

さすが皐月賞ウマ娘だな!

 

934:リュウグウノツカイ

リリィちゃん「だめっ!!!!ライスちゃんは私だけなのっ!!!!」だって

 

935:名無しのウマ娘ファン

運ばれてて芝

 

937:名無しのウマ娘ファン

>>934

リリィちゃん嫉妬しててかわいいね♡

 

939:名無しのウマ娘ファン

>>934

あら〜♡

 

941:名無しのウマ娘ファン

>>934

ぷんぷんしてるリリィちゃんもかわいいね♡

ライスちゃんもキュンキュンしててお似合いですね

 

943:名無しのウマ娘ファン

ぷんぷんしてるリリィちゃんを見て…下品なんですが…その…やっぱやめときますね

 

945:名無しのウマ娘ファン

命拾いしたな

それはそうと嫉妬リリィちゃんかわいすぎひん???

 

947:名無しのウマ娘ファン

今日はイチャイチャ濃度低いっすね

タンホイザちゃんもほっとしてるよ

 

950:名無しのウマ娘ファン

うんうんいいレースだった

……で、ちゅーは?

 

952:名無しのウマ娘ファン

1着じゃないから無しです!

 

954:名無しのウマ娘ファン

やだー!ライスちゃんとリリィちゃんがちゅっちゅするところが見たいー!!

 

956:名無しのウマ娘ファン

ちゅーしろ!もっといちゃつけ!!

 

958:名無しのウマ娘ファン

抱けー!抱けー!

 

961:名無しのウマ娘ファン

どぼぢでぢゅーじないんだよぉー!!

 

963:名無しのウマ娘ファン

君達さぁ…

 

965:名無しのウマ娘ファン

ちゅっちゅっちゅー!!

 

968:名無しのウマ娘ファン

ライブに備えるぞ

それと次スレ立てないとな…

 

 

 

 




アンクルの重さはノリで決めました。
……大丈夫かな?
アンクルウェイトくんの重さについて活動報告でアンケートを取っています。
もしよければ書き込みに来てください。
※アンクルウェイトくんの重さを修正しました。


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第28話 乗り越えるべき課題です! 菊花賞に向けてがんばります! 

チャンミA決勝3位でした。
ライスちゃんを勝たせてあげることができませんでした。
弱いお兄さまでごめんね。
前話のアンクルウェイトくんの重さを、通常タイプは50×4=200キロ。シンザンモデルを150×4=600キロに修正しました。


 大接戦の日本ダービーを終えたリリィちゃんです。結果は3着で、ライスちゃんとブルボンちゃんに負けてしまいました。でも次の菊花賞では私が1着になってみせます。リリィちゃんはつよい子なのです!

 今私とライスちゃんとるるちゃんは、トレーナー室で菊花賞に向けてのトレーニング方針などを決めるミーティングをしています。

 菊花賞まではだいぶ期間が空いてしまうので間に何かレースを挟んだりするのでしょうか? するとしたら神戸新聞杯かセントライト記念でしょうか。まあ今考えても仕方ないですね。

 そして! 夏合宿ももうすぐあります! 今年はどんな合宿になるのかな? リリィちゃんとってもわくわくです! 去年と比べてお友達も増えたのでとっても楽しみです!

 あとるるちゃんが私達のためにオムライスを作ってくれました。包丁で切ると半熟のとろとろたまごが出てくるあれです! あれって普通に作れるんですね、てっきりお店だけだと思ってました。味はとってもおいしかったです。ありがとうるるちゃん!

 そういえばブルボンちゃん達はスプリンター同盟で勝利のお祝いとしてみんなで焼肉を食べに行ったみたいです。さっきLANEで写真が送られてきました。みんな楽しそうです!

 

 

 

「はい、というわけで今後の事を決めていくわよ〜。まずは目標だけど、これは『菊花賞』ね。ここの変更は二人とも無いわ。日本ダービーで負けたのは残念だけど、これなら菊花賞でも無事に通用するって証明できたからね」

「ハナ差なのはすっごく悔しかったです」

「うん。ライスもそう思った。でも次からライスの得意な長距離だから絶対に負けないよ!」

「ライスは問題ないけどリリィはそこが問題なのよねぇ。まあそこの対策は考えてあるから後で言うけど。で、菊花賞まで期間が空いちゃうでしょ? だから夏合宿の後にレースを一つ挟むけどこれはまあトレーニングの様子を見ながら決めてくわ」

 

 皐月賞は2000で、ダービーは2400。菊花賞は3000なので距離の増え方がすごいですね。私はダートが得意なマイラーですが、苦手な距離でもリリィちゃんは負けませんよ!

 

「でね、今後のトレーニングの話をする前にもう一度日本ダービーの映像を見てほしいの。二人ともいいかしら?」

「大丈夫ですよ!」

「うん。ライスも大丈夫だよ」

「それじゃあ今から映像を流すから、少し待っててね」

 

 るるちゃんがノートパソコンを操作して私達に日本ダービーの映像を見せます。……自分が負けるところを見るのは悔しいですが、ただ悔しがるだけではいけません。どうして敗北したのか、どこを改善すればいいのか、客観的に見て自分の経験にするのです。

 

「ブルボンちゃんの大逃げにはびっくりしましたね」

「ね。ライスもそう来る可能性をもっと考えとかなきゃって思ったよ」

「そこはトレーナーの仕事よ。私ももっと成長しなくちゃね。それで見てもらいたいのがここなんだけど……そう、この最後のゴールする瞬間よ。この時なんだけど、ミホノブルボンは最後に一瞬伸びて、ライスは変化無し、リリィは僅かに下がってるの。分かるかしら?」

「おお〜。確かにそうですね。……つまり私は体力を削られすぎて……」

「ライスは最後の伸びが足りなくて……」

「ミホノブルボンは根性で伸びた。ってところね。というわけで、それを踏まえて次のトレーニングなんだけど、夏合宿まではターフで走らないことにしたわ」

「「……えっ?」」

 

 …………どういうことでしょうか? リリィちゃんわかりません。

 

「……えっと、プールで泳ぐの?」

「いんや、違うわよ。長距離に備えてスタミナトレーニングはもちろんするつもりだけど、それは夏合宿からする予定よ」

「……う〜ん。まぁいっか! あっ! ねえねえるるちゃん、日本ダービーで走ってた時なんですけど、多分領域みたいなの出ましたよ!」

「えっ? まじ? どんな感じだった?」

「人によって領域の景色は違うんだっけ。なんか不思議だよね」

「ねー! あのね、真っ白な空間で私の手と足と首にゴッツイ白い鎖がついてて、それをちぎったり踏み砕いたり握りつぶした後に白い鎖でぐるぐるされてるボロボロな真っ黒の扉の前に立つの。それでね、なんかいや〜な感じがしたからドアノブを握りつぶしたの。そしたらなんかぎゅお〜って力がみなぎって速くなりました!」

 

 完璧な説明ですね! さすが私です、とってもわかりやすいですね!

 

「……リリィ」

「……リリィちゃん」

「なぁに?」

「「たぶん、それ領域じゃない(わ)よ?」」

「…………えぇっ!?」

 

 ……ちがうの? しょんぼリリィちゃんです。

 

「まあ、それは置いといて。今回のトレーニングの場所はここのプールでやるわ」

「あっ、プールでやるんだね。普通に泳ぐんじゃないんだよね? どんな感じなのかなぁ?」

「どんなトレーニングかは……やだ、一生懸命考えるリリィちょうかわいい……!」

 

 気を取り直して、リリィちゃんのかしこすぎる頭脳をフル回転させます。

 ――普通とは違う。――ターフを走らない。――場所はプール。ここから導き出される答えは……

 

「──何をするか全然分かりません!!」

「うふふ。かーわいっ♡ ……あっ! やめて! かわいいかわいいリリィのお顔を隠さないでっ!!」

 

 ライスちゃんが私を背中に隠しました。ライスちゃんの髪は先の方がくるんってしててかわいいんですよね。

 

「やだ」

「ライスのいじわる! すきっ! かわいいっ! 小悪魔!」

「リリィちゃんは?」

「すきっ! かわいい! 天使!」

 

 るるちゃんの表情が気になるのでライスちゃんの背中から覗いてみます。たぶんいつも通りのふにゃふにゃ顔だと思いますけど。

 

「……ちらっ」

「あ゛っ!! か゛わ゛い゛い゛!!」

「あっ……お姉さま白目向いちゃった。リリィちゃんがかわいすぎるから……」

「……罪深いかわいさですね」

 

 

 

 というわけでいつものプールにやってきました。どんなトレーニングなのかな?

 

「ねぇねぇお姉さま。ここでどんなトレーニングをするの?」

「今から説明していくわ。今日からやるトレーニングの目的はまず、身体の使い方を上手くする事よ。いわば技術(スキル)の習得ね。今までのトレーニングは肉体の強化……ゲーム風に言うならステータスの強化だったの。ミホノブルボンのトレーニングは究極のフィジカル特化で適性を破壊する事。それと差別化するために私達のトレーニングは別の方向から行くことにしたわ。ステータスではなく技術(スキル)を、肉体や動作の無駄を削ぎ落とすトレーニングね」

「……よくわかんないです!」

「分かりやすくいうとミホノブルボンが超ベジータやムキンクスで、私達のがスーパーサイヤ人の負荷に慣れるために常時スーパーサイヤ人で過ごした悟空と悟飯よ」

「おおっ! とってもわかりやすいです!」

「……お姉さま、最近またセル編読んだの?」

「お正月に暇で読み返したのよ。それであなた達はこう思ったんじゃない。『何がいつもと違うのか?』、って」

 

 確かにそうですね。普通に泳ぐだけじゃだめなのかな? どんなやり方をするのでしょうか。

 

「う〜ん。……水の上を走るとか?」

「……水中でシャドーボクシングとか?」

「概ね正解……いや、シャドーボクシングはしないわよ。気になる内容なんだけどね……はい、この水中用シューズを履いてプールの中を走ってもらいます」

「「……えっ? 走るの?」」

「そう、走るのよ。まぁとりあえずやってみれば分かるわ。二人とも準備して」

 

 ふむふむ。よくわからないけどとりあえずやってみましょう! 

 

 

 

「じゃあ二人とも、まずはゆっくりでいいからここのスタート地点から往復してここまで戻ってきてね」

「「はーい!」」

「うん、いい返事ね! それじゃ……ヨーイ、ドン!」

 

 るるちゃんの合図とともに私達は走り出しました。水中で走った経験はほとんどないのですが、なんというかですね……

 

「「…………すっっごく走りづらい!!」」

「でしょ? これが目的だからね」

「全然前に進めないよね。ターフの上と感覚が違いすぎるよ……」

「全力で進もうとしたらめっちゃ水飛沫飛びました……。なんか必殺技みたいでちょっとかっこよかったです!」

「そう、そこなのよ! ただ力を入れるだけじゃ前に進めなくて、だからこそ最適な力を出せるようにするのがこのトレーニングの目的なの。それとね、リリィの長距離対策にも関係あるのよ」

「私ですか?」

「リリィちゃんの?」

「うん。リリィは今までその超パワーで苦手なバ場や距離を走ってきたでしょ? 私がこれまで観察し続けてきた結果、そこに僅かな力の無駄を見つけたの」

「……ほほん?」

「……よく分かってないわね。う〜んとね、普通のウマ娘が走る時に『10』の力で走るとするわ。それは最適な力なので消費するスタミナはその数字通りの『10』となるの。でもリリィの場合は苦手だから消費スタミナが増えて『20』の力で走らなければいけないの。でも今のあなたは『30』の力で走っているから消費は本来よりも大きい『30』になってしまっているの。力があるが故に、ね。……どう? わかったかしら?」

 

 …………よくわかったようなわからないような。

 

「えっとねリリィちゃん。つまりね、歯磨き粉を本来の量より多くつけちゃってるの」

「──っっ!! なるほど!! そういう事ですね!!」

 

 とってもわかりやすいです! さすがライスちゃんです!

 

「…………まぁ、分かったんならいいわよ。だからこのトレーニングでその無駄を無くすの。そうすればあなた達は以前よりも遥かに強くなれるわ。最適な力を最小の消費で行う。特にリリィ、あなたはこの効果が絶大なはずよ」

「おぉ〜。なんかかっこいいです!」

「さっきはああ言って説明したけど、本当に最適な力で走れている人はほとんどいないわ。いたとしてもシニア級のごく一部やすでに引退したレジェンドクラスのウマ娘達ぐらいね。それだけ難しい技術なのよ、これって」

 

 言葉にすると簡単そうに見えますが、この技術を習得するのは凄まじい難易度です。でも……

 

「──私がこの先長い距離を走るためには、やらなければいけないことです」

「そうね、特に長距離のライスはめっちゃんこ強いからね。でも、このトレーニングならいけるって私は考えてるわ。……たぶん」

「……そこは言い切ってほしかったな、お姉さま」

「……えへへ。でもね、水中を走るのはただ力任せじゃダメでしょ? 足や手を動かす角度、他にも色々。私から見てあなた達の肉体はもうすぐピークを迎えるわ。だからこれからはフィジカルだけじゃなくてそういった技術も習得する必要があるって考えたの」

「生物的な限界もあるよね。……リリィちゃんのパワーはちょっとそれを超えちゃってるけど」

「ふっふーん! もっと褒めてください!」

 

 確かにこのトレーニングは難しいかもしれません。でも私はやります、やってみせます。……強くなるために!

 

「研ぎ澄ますのよ。薄く鋭く、刀のように。……リリィは刀っていうより芸術品だけどね」

「えー!? 刀の方がかっこいいからそっちの方がいいです! あとライスちゃんの方が私より綺麗です!」

「リリィちゃんの方が綺麗だよ?」

「はいはい、いちゃいちゃするのはだめよ? 二人とも私の大切な宝物なんだからね」

「「……えへへ!」」

「それじゃ、トレーニングの続きやってくわよ? もっともっとパワーアップして菊花賞取ってミホノブルボンにもリベンジじゃい!」

「「うん!」」

 

 

 それから私達は毎日水中ダッシュトレーニングをやりました。最初は全然タイムが出なかったのですが、だんだんと自分の動きの無駄が分かるようになってきました。

 腕の振り方、足の伸ばし方、連動する筋肉。どの角度で地面を踏むか、蹴り出す力はどの程度か。言葉ではなく感覚で理解る(わかる)ようになりました。

 このトレーニングは見た目と違ってとってもキツかったです。水の重さが私の動きを阻害して、地上で走っている時よりも遅くて回数も少ないはずなのに疲労がその比ではないほどでした。

 でもある日の事です、私達は唐突に理解しました。

 

 

「…………わぉっ」

 

 ――刃のように鋭くて、無駄のない動きを。

 

「……できちゃった?」

「……うん?」

 

 水中を切り裂く様な走り。地上と比べて少し速さは落ちますが、とても水中を走っている様には見えないです。

 

「……どう? 今の感覚?」

「えっと……言葉にするのは難しいけど、とりあえずターフで走ってみたいです!」

「うん、ライスも。今ならあの時よりももっと速く走れるよ!」

「ピッコロさんなら『俺はいま究極のパワーを手に入れたのだーっ!!!』とか言いそうね」

 

 これなら私も前より長い距離を走れそうです。そういえば……

 

「ねぇねぇるるちゃん。これってるるちゃんの想定してたペースと比べてどうなんですか?」

「……正直、想定以上よ。夏合宿の前に形にして、夏合宿はスタミナを大幅に強化して、菊花賞の本番前にレースを挟んで完成させるつもりだったから。あなた達の才能と努力を見誤っていたわ」

「でも、まだターフで調整してないよ。……夏合宿まで結構時間があるから大丈夫そうだけど」

「……うん、そうね。リリィ、夏合宿ではスタミナ訓練もしつつもう一つやる事が増えたわ。それはね、『リリィちゃんボンバー』を完成させることよ」

「おぉ! わくわくしますね!」

「それとね、夏合宿の後に神戸新聞杯かセントライト記念に出るつもりだったけど止めるわ。あなたの次走は――『ジャパンダートダービー』よ」

 

 

 はじめてのダート、はじめての得意なバ場。そして、パワーアップした私。……こんな気持ちははじめてです。こんなにも、自分の力を試したいのは。

 私のもう一つのダービーが始まります。

 




次はジャパンダートダービーじゃなくてブルボンちゃんがライリリに挟まれる話です。
書けなかったのでジャパンダートダービーにします……。


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第29話 ダートを走るならダーッとです!

サボってました。
小説のあらすじを変更しました。内容に変更はないよう。


 世間には夏休みというものがある。年齢にもよるが、大抵の人はこれを楽しみにしていることだろう。

 学生からすれば友達や恋人との思い出を作ったりする楽しい時間だ。勉強というしがらみから解放され、趣味に没頭したり、プールなどの施設へ行ったり、仲間とキャンプしたり楽しい時間を過ごすだろう。

 夏休み最終日近くで終わっていない宿題に四苦八苦するのも夏の風物詩だ。

 社会人もだいたい一緒だが、労働という罰を一時的に忘れ、惰眠を貪っていたらいつの間にかお仕事が始まる前日になっていて、自分の計画性のなさと現実に絶望した者も多いという。

 社畜に夏休みは存在しない。

 

 トレセン学園のウマ娘達にとって、夏休みというのは世間一般の認識とは少しだけ違う。思い出を作ったりするのは一緒だが、ここに夏合宿が加わるのだ。

 7月前半から8月後半までガッツリとトレーニングをするのだが、いつもと違って午前に通常の勉強はないので一日中トレーニングが出来るのだ。なので人によっては地獄を見たりする。

 自身に多大な負荷を掛けるアンクルをつけ、メガホンでドヤされ、よく分からないお守りを身につけ、疲労が溜まったら謎のドリンクやクソ不味い汁を飲まされ、下がったやる気はカップケーキで誤魔化し、体調を崩せば怪しいドリンクで治される。

 虐待一歩手前だろ! とネットでよく揶揄われたりするが、この厳しいトレーニングを乗り越えた先に勝利が存在するのだから文句を言うウマ娘はほとんどいない。

 ウマ娘達が勝利にかける想いは、それほどまでに重いのだ。

 

 今の季節はもうすぐ夏合宿が始まる初夏。地獄の猛特訓に備えて休養を取るのがほとんどで、街を見ればきゃっきゃっとはしゃぐウマ娘達をよく見かける。

 それはここにいる2人のウマ娘――ライスシャワーとミホノブルボンも例外ではない。

 だが、今日は珍しくシロノリリィの姿が見えない。いつも一緒にいるので、その光景を目にした人は違和感を覚えるかもしれない。

 今二人は小洒落たカフェに居る。店の外にあるテーブルで、互いに注文したスイーツが来るのを待っているようだ。

 いつもより浮かれているのか、ミホノブルボンのテンションが高めだ。ぱっと見では分かりにくいが、最近よく一緒にいるのでライスシャワーにも違いが分かるようになった。

 

「ここのスイーツは特にパフェが好評らしいです。マックイーンさんのウマッターで強くお勧めされていました」

「ライスのクラスでも話題になってたよ。マックイーンさんのウマッターって、スイーツの事ばかりウマートしてるんだっけ?」

「はい。レースの話題はほぼありません。まあ、ウマッターの使い方は自由ですから」

 

 穏やかな時間を過ごす二人から離れた別の席で、「パフェ……あぁ、至福のひとときですわ……」と芦毛のお嬢様が呟いたが気のせいだ。

 それに反応して「素晴らしいね、これは。これほどの一品、まさにパーフェクトだ」などと呟くウマ娘もいたがこちらも気のせいである。

 

「しかし、リリィさんがいないのは少し残念ですね。リリィさんも一緒に来れると良かったのですが」

「リリィちゃんはスイプロさんとお出かけしてるから。ライスもちょっとだけ残念だったけど、今度は一緒に行きたいね」

「はい。……ですが、そのおかげでライスさんと二人っきりでデートができるのは嬉しいです」

 

 彼女の冗談に「もう、ブルボンさんったら……」とライスシャワーは微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 時を少し遡り、シロノリリィの陣営が次走を発表した時に戻る。

 日本ダービーを終えた彼女の次走を世間は色々予想していたが、大方の予想は『夏合宿を終えてから菊花賞に備えて1レース挟む』というものだった。

 宝塚記念に挑む! と言っていた者も中にはいるが、さすがにシニア級のウマ娘に挑むのは厳しいだろうとほとんど冗談半分で言われていた。

 ちなみにだが、例年のお祭り騒ぎとして有名な宝塚記念のファン投票の結果、出走登録こそしていなかったがシロノリリィは上位10名の中に入っていた。

 現在の実力ではなく純粋なファン達の人気による投票とはいえ、シニア級ウマ娘達を抑えての結果にお姉さま達は驚愕した。

 「リリィちゃんすごーい!」と純粋に喜ぶライスシャワーにシロノリリィはドヤ顔だった。二人ともかわいいね。

 

 だが、そんな世間の予想を裏切り発表されたのが『ジャパンダートダービーへの出走』だった。

 クラシック三冠を狙っているウマ娘がダートのGⅠを狙いにいくのはあまり前例がない。「ダートなんて走らなくても……」などと心無い反応をするネットの住民もいたが、世間一般の認識として芝路線よりも露骨に格下扱いされているのでそういった反応も仕方ないと言える。

 シロノリリィのジャパンダートダービー出走はネットでちょっとしたお祭り騒ぎになった。

 純粋に応援する者、無謀な挑戦と嗤う者、リリィちゃんの動画を素材にしてMAD動画を作る者など様々な反応があった。

 彼女の挑戦に良くも悪くも大勢の注目が集まった。

 シロノリリィ、ダート路線に転向か!? などと事実無根のうわさが流れたが、訓練されたファン達は「ライスちゃんと走れなくなるからありえない」と一蹴した。

 

 そもそもの話、なぜトレーナーはジャパンダートダービーを走らせようと思ったのか。

 ジャパンダートダービーは夏合宿の時期と重なるため、ダート路線のウマ娘以外は避けるのが通例だ。(そもそも芝とダートの適性を持ったウマ娘が少ないのと、大多数のウマ娘がクラシック路線に集中するので選択肢にない)

 普通のウマ娘はレース後の疲労を抜くために1〜2週間程度、重賞レースならそれ以上にかかる。

 重度の疲労ならば、それを回復するのに数ヶ月以上かかったりする。

 夏合宿という最大のトレーニング効果を発揮するイベントと期間が重なる事、レース後は疲労回復期間を設けるため満足にトレーニングを行えない事。これらの理由により普通はクラシック三冠を狙うならばジャパンダートダービーは避けるべきだと言わざるを得ないのだ。

 

 そう、普通ならば。

 

 過去にアッシュストーンと戦ったデイリー杯ジュニアステークスで、シロノリリィはその翌日全身筋肉痛で動けなくなっていたが、いっぱい食べてマッサージをしたら1日で元気いっぱいになったのを覚えているだろうか?

 シロノリリィの幼少期、ライスシャワーとの約束を果たす為に毎日走っていたのを覚えているだろうか?

 

 シロノリリィの強みはとってもかわいくてかしこくて力が強くてかわいい――だけではない。彼女の強みは、その肉体の異常な頑丈さと回復力にあるのだ。

 先ほど『レース後のウマ娘が疲労回復にかかる期間は1〜2週間』と言ったが、シロノリリィはなんと1日休めば全快する。

 70回復どころか100回復+ライスシャワーといるからやる気も絶好調だ。すごいぞリリィちゃん!

 お休みを押して30回復と寝不足に怯えたトレーナーもいるだろうが、シロノリリィにそんな心配はないのだ。

 だが、そのかわりライスシャワーがいないと30回復と寝不足とやる気下げ(絶不調)が確定するのはご愛嬌。

 一緒に寝てくれる人がいれば50以上回復は確定だ。一人で寝るのは寂しいもんね仕方ないね。

 次に彼女の頑丈さだが、極端な話毎週走っても問題ない。連続出走したところでやる気下げも肌荒れもステータスダウンも一切起こらないどころか、走ったレースのバ場と距離の適性が上がるので寧ろやった方がいい。クライマックスローテ走ろうね♡

 まあそんな事したら世間からぶっ叩かれるのでやれないし、そもそもトレーナー含め周りの人達はそこまで頑丈だと気づいてないし、気づいても絶対にやらせないので安心だ。

 

 話を戻そう。なぜトレーナーがジャパンダートダービーを走らせようと思ったのか? その理由は二つある。

 一つはシロノリリィの驚異的な回復力があればレース後でもすぐにトレーニングに復帰できる事。もう一つは先日まで行なっていた水中ダッシュトレーニングの成果――スーパーリリィちゃんパワーを実戦で完成させるためだ。

 ダートというシロノリリィにとって有利なバ場、距離も2000と皐月賞と同じ。以上の事からトレーナーは挑む価値があると、挑むべきだと判断したのだ。

 

 正直、トレーナーは次走を発表した時ここまで反響があると思っていなかった。

 まぁ、世間が騒いでる理由は『シロノリリィが芝ばっかり走っているせいで一般人からはダートのマイラーではなく、芝のマイラーと思われている事』だとは、流石にわからなかったようである。

 

 

 

 

 

 

 

 世間がシロノリリィのジャパンダートダービー挑戦にわいわいしている中、ここにいる一人のウマ娘――スイプロは人生最大の興奮を迎えていた。

 彼女はシロノリリィのクラスメイトである。メタ的な事を言うと、掲示板回にいた『リュウグウノツカイ』が彼女――スイプロだ。

 スイプロはシロノリリィと同期でデビューし、共に走りたいと思いを募らせていた。だが、どれだけ想ってもそれは今まで叶わなかった。

 なぜならスイプロの適性はダートのマイル〜中距離。シロノリリィの三冠路線とは致命的に噛み合わなかった。

 ずっと、ずっと見ていた。シロノリリィが楽しそうに走る様を。彼女の隣で走りたいと願っていた。でも、それは叶わぬ夢だと思っていた。

 叶わぬのならせめて彼女を応援しようと思った。この胸に燻る熱を、尽きることの無い想いを火種にし、未練ごと燃やしてしまおうと思っていた。

 

 だが、そう思っていたら突然のジャパンダートダービー出走だ。これにはスイプロも驚き、桃の木、山椒の木だ。

 びっくりした。びっくりした。本当にびっくりした。

 あまりにもびっくりしたスイプロは出走発表の後日、教室にやってきたシロノリリィに開口一番こう言った。

 

「釣り、行こっ!!!!」

 

「いいですよ!」

 

 おそろしく早い決断。オレじゃなきゃ見逃しちゃうね。

 

 

 

 

 

 

 

 夏合宿を目前にした週末の休息日に二人は一緒に釣りに行くことにした。二人の予定が合う日がその日しかなかったというのもある。

 中央で走るウマ娘達のスケジュールは控えめに言ってギッチギチだ。

 トレーニングはもちろんレースは絶対で、人気のあるウマ娘はテレビ出演やインタビューにCM撮影やらグラビアと多忙を極める。これに加えて友人達と遊んだりすればもう枠が存在しない事はよくある事だ。以上の事から予定が合わない事も多いので、今回スイプロとシロノリリィの予定が合ったのは幸運だと言えるだろう。

 トレーナーは個人でこれを管理しつつトレーニングのメニューを考えたり、ウマ娘達が体調を崩さないように気を配ったりとめちゃくちゃ忙しい。

 まあ大体はサブトレーナーが補ったりするが、トレーナー側は常日頃から人手不足なのでどこも苦労してたりする。

 そう考えるとリギルのトレーナーは三冠ウマ娘やらGⅠレース連勝しまくりだというのに、一人で何の問題もなくチームを運営しているのでやばい。

 ハッキリ言ってリギルは異常っスよ。やっぱし怖いスねチームリギルは。

 

 

 

 一緒に遊ぶ約束をした日になり、シロノリリィとスイプロはトレセン学園の入り口で落ち合った。ここの生徒達が待ち合わせとしてよく使う場所だ。

 天気は晴れ。初夏なので気温は少々高いが、へばって動けなくなるほどではない。釣りをするにはいい感じだ。

 電車で遠出するため朝早くからの出発だが、シロノリリィは夜9時に寝てしっかり備えたので問題ない。元気いっぱいリリィちゃんである。

 部屋を出る前にシロノリリィにライスシャワーが日焼け止めを塗ってほっぺをもちもちしていたがいつもの事だ。

 ライスシャワーに見送られて二人は駅へと向かった。

 

 寮を出た二人は目的の場所――堤防へと向かっていた。

 今回の移動手段は電車だ。スイプロのトレーナーが「車を出しましょうか?」と聞いてきたが、今日は二人っきりで遊びたいので遠慮した。

 電車に揺られ窓から景色を眺める二人。今日は完全な休息日となっているのでなおさらご機嫌だ。

 スイプロは「そういえばクラスでたまに話す事はあるが、こうして二人っきりで話す機会は無かったな」と思った。

 ならばこの機にじっくり話を……と思うが、口下手な自分が話題を振るというのは正直言って厳しい。

 などと思っていたが、シロノリリィが色々話を振ってくれたので目的地に到着するまで話題に事欠かなかった。

 

 

 

「こっちの道から行く」

「……おぉ! ひまわりがいっぱいです!」

 

 駅を降りてしばらく歩き、スイプロが選んだ道は両脇にたくさんのひまわりの花が咲いている道だった。

 上から覗けば――シロノリリィの背だと見えないので4メートルほど跳んで一望した――あたり一面にひまわり畑が広がっていた。

 

「トレセン学園の近くにこんな場所があったんですね! とっても綺麗です!」

「近く……近くか?」

「電車で行けるなら近いです! ランニングコースと考えるとちょっと遠いですね!」

「そうかな? ……そうかも」

 

 スイプロは納得し、二人は歩き出した。

 現在の二人の格好は動きやすさを意識した私服である。

 実はトレセンジャージで行こうとしていたのだが、彼女達のルームメイトが「リリィちゃん、せっかくなら……」「なかなかいいジャン。でも……」と遊びに行くのに相応しく、なおかつ運動を阻害しないコーディネートにしてくれた。

 シロノリリィは白い襟付きノースリーブワンピースで、靴は白いハイカットスニーカー。麦わら帽子を被り夏らしい装いだ。

 いつもの様に髪を全部下ろしたセミロングではなく、ゆるくおさげにしている。パステルイエローのリボンが彼女の愛らしさをさらに引き出している。

 オタクはこういうのに弱い。

 スイプロは紺色の半袖ポロシャツに色のショートデニムだ。黒のスニーカーに、白のキャップを被って日差しの対策もバッチリだ。

 シンプルな装いだが、ウマ娘の顔とスタイルの良さでものすごくいい感じとなっている。さすがは神に愛された種族だ。

 

「スイプロちゃん! 今日は何を釣るんですか? 私は釣りをするのは初めてだから何にもわからないです! でもどうぶつの森でシーラカンスを釣った事ならありますよ!」

「今日は晴れてるから釣れないよ。今日はアジゴ……アジの小さいやつを釣る。簡単に釣れるから心配しなくていい」

「ちっちゃいアジ? 食べれるんですか?」

「余裕。しかもめっちゃ釣れる。素揚げにして食べると美味しい。いっぱい釣ってトレセンに戻ったら調理しよ」

「そんなに釣れるんですか!? とっても楽しみです! あっ、私もお料理するの手伝いますよ。ママのお手伝いしてたから多分大丈夫です!」

 

 会話を楽しみながら二人は歩く。

 彼女達が行く両隣にひまわりが咲いた道は、恐らく人の手が加えられた道だろう。これだけの規模だ、相当な手間がかかっているに違いない。

 だが、そのひまわり畑も目の前の少女の引き立て役にしかなっていないと思った。

 夏の日差しよりも眩しく、一面に咲いた花よりも綺麗な白い少女。こうしてただ歩いてるだけで絵になる。

 

「――それでですね、この前ブルボンちゃんがキョウちゃんに変なゲームをやらされていたんです。動く床に乗って進む場所だったんですけど、なぜか床だけ動いて自分は動かないんです。それで主人公っぽい人が落ちちゃってヴォァァー! って変な叫びを……どうしたんですか?」

 

 心ここに在らずのスイプロの様子に、シロノリリィは立ち止まって尋ねてきた。

 彼女の心配そうな表情に申し訳なくなり弁明を試みる。

 

「体調不良とかじゃない。……えっと、綺麗だったから、見とれてた」

 

 正直すぎる言葉だが、目の前にいる少女に嘘はつきたくない。ただ思った事をそのまま彼女に伝えた。

 それを聞いたシロノリリィは、安心した様にふにゃっと笑った。

 

「リリィちゃんはとってもかわいいので、見とれちゃうのも仕方ないですね!」

「うん、本当に。……あっ、写真撮りたい」

「いいですよ! ポーズとかとった方がいいですか?」

 

 そう言うとシロノリリィは両肘を頭部の高さまで上げ、手は前から見えない様に頭の後ろで組み、右足を少し前に出して左足は逆に少し下げたポーズ――アブドミナルアンドサイを繰り出した。

 腹筋と脚を強調するボディビルのポージングの一つだ。

 

「仕上がっているよ! ……じゃなくて、普通でいい。そのままのあなたが一番綺麗だから」

 

 普通でいい。あなたといる今が特別だから。

 特別で普通な一日を思い出のアルバムに収めるために、スイプロはカメラのアプリを起動した。

 ついでにさっきのアブドミナルアンドサイも写真に撮っておいた。

 

 

 

「おぉ〜! 海です! あっ、こんにちは!」

「こんにちは。自分から挨拶できてえらいね」

 

 ひまわりの道を抜けしばらく歩き、ついに目的地の堤防に到着した。

 シロノリリィ達以外にも先客がいた様で、それに気づいたシロノリリィは元気に――うるさくならない様にほどほどだが挨拶をした。

 のんびり一人で釣りを楽しんでいた中年男性がそれに気づいて「こんにちは」と返したが、返事をした相手がシロノリリィだと気付いてものすごくびっくりしていた。

 彼は良識のあるファンなので騒いだりしないが、GⅠに勝ったウマ娘――特にクラシック三冠を獲得したウマ娘の人気と知名度は凄まじいものがある。

 それを目の当たりにしてスッと空気に徹する彼はファンの鑑というものだ。拙者、お前の中に勇を見た。

 

 スイプロがいい感じの場所を見つけて荷物を下ろした。

 彼女がテキパキと準備をしている中、シロノリリィは好奇心に満ちた目でそれを眺めていた。

 

「まずはこれを着ける。落ちたら危ないから、安全のため」

 

 そう言って彼女はライフジャケットを手渡した。

 手渡されたそれを見ながらシロノリリィは説明を聞く。とは言っても普通に服の上から装着するだけなので特に難しいことはない。

 ブッピガン! と謎の音を発しながらシロノリリィは装着した。

 続いて竿と餌を用意する。

 餌はパン粉と海水とオキアミをかき混ぜて作るのだが、慣れていない人にとっては独特な匂いに感じる。

 近くで楽しそうに見ていたシロノリリィだったが、その匂いを嗅いで「にゃー!」と可愛らしい鳴き声をあげた。

 

 

 

「またまた釣れました! 本当にいっぱい釣れますね!」

「でしょ。だから初心者にもおすすめなんだ」

 

 スイプロに教えてもらいながら釣りを開始し、1時間ほど過ぎた。

 釣果は上々。スイプロはこの釣りが始まる前に心の中で「全然釣れなかったらどうしよう……」と思っていたが、それは杞憂に終わった。

 初めての釣りが大成功してシロノリリィもにっこにこだ。

 そんな彼女の傍ら、スイプロは少しだけ気まずそうに話を切り出した。

 

「えっと、今日はその……迷惑じゃなかった?」

「……?」

 

 全然迷惑じゃないしむしろ全力で楽しんでいる。シロノリリィの表情がそれを物語っている。

 なぜ彼女が突然そんなことを言い出したのかが分からなかった。

 

「とっても楽しいですよ。スイプロちゃんの教え方は分かりやすくて、初心者の私もいっぱいお魚が釣れました。道具も用意してもらって、釣りの場所も教えてもらって、むしろ私の方が迷惑をかけていると思います」

「そ、そんなことない……! 私はほら、口下手だから。それに、突然『釣り、行こっ!』なんて誘っちゃったから、その……何と言えばいいか」

 

 もごもごと何かを言ってるが、要するにこういう事だ。

 

「スイプロちゃんは私ともっと仲良しになりたかったんですよね?」

「……ん゛ん゛!? そ、そうだけど……」

 

 突然誘った事を彼女が不快に思っていないか。など色々考えてもごもごしていたが、そもそも誘いに乗っている時点で肯定的なのは明らかだ。

 真正面から断言され、スイプロは赤面してしまった。

 シロノリリィはスイプロを見つめながら続ける。

 

「今までの学生生活を振り返ってみると、私がスイプロちゃんとお出かけした記憶がありません。クラスでは結構お話ししていますし、お友達だと胸を張って言えますが、一回もお出かけをしたことがないのはちょっと寂しいと私も思っていました」

「まあ、トゥインクルシリーズを走ってるんだし、予定が合わないのはしょうがないでしょ」

「そうですそうです。だから今回のお誘いはとっても嬉しかったです。スイプロちゃんはよく釣りが好きと言っていたので、スイプロちゃんが好きな事を知れるいい機会だったとも思っています」

「私も、あなたに知ってもらえて嬉しい。……ねえ、私ってそんなに釣りの話してる?」

「リリィちゃんのかしこすぎる記憶によると、世間話1レース2お魚が7ですね!」

「……そんなに!? えっ、まじか……」

 

 釣りや魚の話はよくしていた自覚はあるが、まさかそこまでとは思っていなかったので愕然とした。

 クラスメイト達の「12月といえば?」という問いに対し、一般的には「有マ記念!」と返すところを「タラが美味しい。私もいつか釣ってみたい」と返答したのをシロノリリィはよく覚えていた。

 クラスメイトのお嬢様方は基本的に優しくて大らかなので、特に気にする事なく雑談に興じていたが。

 

「うん、そっか。…………ねぇ、聞いてくれる?」

「大丈夫ですよ!」

 

 消えるはずだった想いがあった。燻って消えてしまうはずだった火があった。

 自らその火種を踏み躙って消そうとしてたのに、火種は決して消えてくれなかった。

 あなたのせいだ。この火が消えないのは。

 もう我慢しなくていいんだ。だって、あなたが受け止めてくれるから。

 まっすぐに見つめる金色の瞳が、じっとこちらを捉えている。

 あぁ、綺麗だ。呑み込まれてしまいそうなほどに。

 

「あなたと走る機会が訪れるなんて、夢にも思ってなかった。だから、あなたがジャパンダートダービーに出走すると知った時、嬉しかった。すごく、すごく……嬉しかった」

 

 ――でも、呑み込まれるのは嫌だ。

 そんなの勿体無い。

 

「私は海が好き。釣りが好き。レースよりも、走るよりも好き。そこまで真面目じゃなかったんだ、ここに来た時は。……でもね、あなたを見て、あなたが走るのを見て、私の気持ちは変わった」

 

 目の前にあなたがいる。

 手を伸ばせばそこに届く。

 

「あなたと走りたい。やっと道が交わった。あなたからすれば寄り道かもしれないけど、世間からすればただの通過点かもしれないけど――」

 

 スッと片手を胸の高さまで上げて拳を握る。

 掴んでみせると、刻み込んでみせると白い少女に示す。

 

「ここが、私のダービーだ」

 

 伝わってくる。彼女の熱が。(あなたの想いが)

 ――パチンッと、何かが爆ぜる音がした。

 

 シロノリリィは知っている。この熱を知っている。

 遥かな昔より連綿と続く炎、闘争という炎を。

 焚き付けられたなら、応えよう。応えてみせよう、その心に。

 

「……寄り道なんかじゃありません。通過点なんかじゃありません」

 

 掲げられた拳に自分も合わせる。

 スイプロをまっすぐに見つめる表情から可憐さが消える。

 恐ろしいほど綺麗で、泣きたくなるほど秀麗で、悍ましいほど美しい。

 

「これが、私の道です」

 

 轟轟と燃え盛る音がする。

 気圧されれば一瞬で灰になってしまいそうな劫火。スイプロの心に呼応し、それはより勢いを増していく。

 あたり一面が炎で覆われる。その中心に立つ少女達の貌は、烈火よりも苛烈だ。このまま全て燃え尽きてしまいそうなほどに。

 ……だが、今から燃やし尽くすなんて勿体無い。相応しい場所はもう用意されている。

 そこで語ろう。走って、語ろう。

 二人は微笑み合い、拳をコツンと突き合わせた。

 

「……今の掛け合い、めちゃくちゃかっこいいと思います!」

「同感。でも、手の匂いが無ければもっとよかったと思う」

 

 餌をセットする際に素手でやっていたので、彼女達の手から素敵な匂いがぷんぷんと漂っていた。

 うんうん! とシロノリリィが頷いていると、スイプロは顔を赤らめ少し恥ずかしそうに口を開いた。

 

「えっと、その……リリィって、呼んでもいい?」

 

 ささやかな提案。だが、彼女からすれば大きな決断。

 その可愛らしい要望にシロノリリィは「もっちろんです!」と破顔した。

 

「呼んでください! いっぱい呼んでください! 呼ばれれば呼ばれるほどリリィちゃんは嬉しくなります!」

「ま、待って。緊張する。えっと…………その…………リ、リリィ……」

 

 そう呼ばれたシロノリリィは、パアッと表情を輝かせ更に呼ぶように催促する。

 

「もっと! もっと! もっとお願いします!!」

「うへっ!? リ、リリィ……」

「もっと!!」

「〜っ!! ……きょ、今日はもう勘弁して……!」

「え〜!!」

 

 おめめきらきらでぴょんぴょん跳ねるシロノリリィにスイプロはタジタジになった。

 残念な事にあまり友達がいないスイプロにきらきらリリィちゃんは少々刺激的すぎたようだ。

 

「はぁ……はぁ……。ねぇ、あなたは……」

「リリィ」

「ん!? ……リ、リリィはいつも丁寧な喋り方だよね?」

「そうですね! でもライスちゃんとかママとパパにはもっと砕けた感じで喋りますよ!」

「そうなんだ。……じゃあさ、私にもそういう感じで喋ってほしい」

 

 小声で「その、友達だし……」と呟くが、ウマ娘の聴覚ならそれを捉えるのは余裕だ。

 

「確かにそうです……そうだね! うおぉぉぉ! なんだか嬉しくて走りたくなってきた!」

「まだ釣りの途中だからだめ。……うん。いいね、これ」

 

 

 

 堤防に少女達の可愛らしい笑い声が響く。

 決戦までの穏やかな日常の一幕。二人はとても充実した時間を過ごしたのだった。




私がおっさんなので「リリィちゃんとスイプロちゃんの私服がダサい!」と言われると何も反論ができなくなります。


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第30話 ジャパンダートダービー! 純白の夜明け

「──正直舐めてたよ、シロノリリィの事」

 

 地方のトレセンの近くにある学生御用達のファミレスで少女は呟いた。

 彼女の名はハートシーザー。先日行われたジャパンダートダービーに出走したウマ娘の一人だ。今はインタビューのためにトレーナーと共に記者の質問に答えていた。

 

「デビューからずっと芝を走っていたウマ娘がいきなりダートに来たんだぜ? そんなのこっちを舐めてるとしか言えないだろ。だからシロノリリィの対策なんてしなかった。他の奴らもだいたい同じだったな。そんで、私はスイプロをマークしようとしてた。けど──」

 

 メロンフロートをストローでかき混ぜながら、どこか遠い目をして少女は言う。

 

「──その結果が、これさ……」

 

 その言葉に、絞り出された言葉に彼女のトレーナーが反応した。

 

「……シーザー。別にいつも通りで構わないよ?」

「え? でも、こんな感じの方が敗北者って感じしませんか?」

 

 きゃるん☆ とハートシーザーの表情が一変する。今までのは演技でこっちが彼女の本来のキャラだ。

 

「うん、そうだね。でもね、いつも通りの君の方が魅力的だし、記事にしたときに喜んでもらえると思うよ」

 

 記者の男が同意するように頷く。ハートシーザーは「マジかよ……」と小さく呟いた。

 

「こちらとしても素のあなたにインタビューをしたいので、いつも通りに答えてくれると嬉しいです」

「じゃあ、私がこの日のために特訓したこの演技の意味は……」

「ないね」

「──ぐっは!!」

 

 

 


 

 

 はじめてのダートレースにわくわくしてるリリィちゃんです。メイクデビューからずっと芝で走っていましたが、そういえば私はダートの方が適性がありましたね。ライスちゃんと走るのが楽しすぎて忘れていました。うっかリリィちゃんです!

 時期的に夏合宿と被っているので、私は夏合宿用特別メニューではなくレース前の調整だけをしていました。今回はどんな合宿になるのかわくわくしますね!

 ライスちゃんは私より一足先に菊花賞へ向けて本格的にトレーニングをしています。でも私は焦ったりしません。このレースで得る経験は、きっと私にとって大きな経験になるはずです。より気合が入りますね!

 

 るるちゃん考案の水中ダッシュトレーニングによって、今の私は日本ダービーの頃と比べてとってもパワーアップしました。ブルボンちゃんにも「綺麗ですね」って言われたから確実です! ふっふーん!

 今回のレースにはお友達のスイプロちゃんも出ます。スイプロちゃんは私のクラスメイトで、たまにお魚料理を私にくれるとってもいい人です。

 あとこの前一緒にアジゴというアジのこどもを釣りに行きました。私は何もやり方が分からなかったのですが、丁寧に教えてくれたからとっても楽しく釣りができました! また一緒に遊びに行きたいです!

 スイプロちゃんは私とずっと走りたかったと言っていました。今までは私がクラシック路線で走っていたので機会が無かったのですが、今日やっとその機会がやってきたととても嬉しそうでした。

 スイプロちゃんのバチバチの闘志に釣られて、私もこう……ぎゅわ〜っ! ってなっています。今の私はバーニングリリィちゃんです!

 スイプロちゃんはデビュー時からダート路線で走っている強敵ですが、私は負けません! ジャパンダートダービーがんばるぞー、おー!

 

 

 


 

 

 ジャパンダートダービー当日。シロノリリィを応援する為にお姉さまとライスシャワーは完全武装形態(リリィちゃん応援モード)になっていた。

 

「夜のレース場で応援するなんて、ライスはじめてだからわくわくするよ!」

「普段のレースは日が昇っている時にやるからね〜。……ところで、あなたは今日リリィの偵察に来たのよね?」

「はい。菊花賞に向けて、リリィさんの成長具合をこの目で確かめる為に来ました。もちろん他意などありません」

 

 そこには完全武装形態(同じような格好)をしたミホノブルボンがいた。

 

「……まぁ、別にいいけど。黒沼さんはリリィのハッピとハチマキはいりますか?」

「……いらん」

「マスター、私から提案があります。敵の思考を探る為に同じ格好をするというのはいかがでしょうか? 私のハイパーブルボンアイとマスターの観察眼が合わさり、敵情視察の効果が通常の3倍程になると予想します」

「……遠慮しておく」

 

 ミホノブルボンはぷくっと頬を膨らませた。

 ライスシャワーは餅のようなほっぺをツンツンしている。

 彼女が装備しているリリィちゃん応援グッズは自前で用意したものだ。合流した際におもむろに装着し出したのでお姉さまと黒沼はびっくりした。

 お姉さまは「……最初は警戒してたんだけど、なんか警戒して損したわ」と内心思っていた。

 

「あのね、この前ライスとリリィちゃんとブルボンさんでお出かけした時に買ったの。ブルボンさんも応援に来てくれてありがとう!」

「友達のためなら当然です」

 

 敵情視察という建前が崩れたがおそらく気のせいだ。ちなみにこの悪知恵を授けたのはキョウエイボーガンだ。シロノリリィの応援に行きたいと言ったら断られると思い、彼女の知恵を借りたのだ。トレーナーには敵情視察と言い張り応援に駆けつける完璧な作戦。もしも通らなかったらやだやだと駄々をこねるつもりだったのだが、あっさりと許可が出たのでやだやだモードは発動せずに済んだ。

 

「ブルボン、本当に敵情視察のために来たんだよな……?」

「はい、もちろんですマスター。この格好はリリィさんを応援してフルスペックを発揮できるようにするためのものです」

「……そうか、そうだよな。疑って悪かった……」

 

 

 ライスシャワーとミホノブルボンがきゃっきゃっとじゃれあっているうちにパドックでのお披露目が始まった。

 

「……そういえばダートレースはあまり観戦する機会がありませんでしたね。決して軽んじているわけではないのですが」

「ライス達はクラシック三冠路線だからっていうのもあるよね。でも聞いていたよりもお客さんがいっぱいいるような……」

「な〜んかいつもの3倍ぐらい来てるらしいわよ。多分リリィがかわいいからじゃない?」

「そんなに来てるんだ……! さすがリリィちゃんだね!」

「さすがです、リリィさん」

 

 実際この観客の数はシロノリリィのせいである。皐月賞ウマ娘である彼女が本当にダートを走れるのか? といった疑問。そしてなによりかわいいリリィちゃんを生で見られるということで、例年よりも客数が大幅に増加した。

 

「あの娘は……スイプロね。リリィのクラスメイトで今回注目のウマ娘ね」

「ダート路線で注目を集めているウマ娘だな。重賞勝利経験もあり、シロノリリィがいなければ最有力候補だっただろうと言われている」

「……ダートの事も調べてるんですね。クラシック三冠路線だけだと思ってました」

「芝ほどじゃないが、一応な。ダートから転向して芝で結果を出すウマ娘もいるかもしれん。厳しい戦いを制すためにもデータは多くあった方がいいからな」

「そんな変態みたいな所業、普通はやりませんよ」

「……勇者と呼んでやれ」

 

 その逆をシロノリリィがやろうとしているのだが? と思ったが、そんな黒沼の心の声を察知したライスシャワーが氷の様な微笑を浮かべていたので声に出さないことにした。

 

「あ゛っ!! 見てっ!! リリィちゃん!!」

「なるほど、素晴らしい仕上がりですね。ドヤ顔がとてもかわいらしいです」

 

 シロノリリィの仕上がりを見た黒沼は「……精錬されて、いや……その途中といったところか。ダービーの時よりも更に磨かれているが、まだまだ伸び代がある。それでも見事なものだ」と心の中で評価した。

 だが、「まだ先がある」と付け加えた。この短期間での成長は見事。これからの夏合宿の伸びを考えたらこの評価が妥当だろう。

 プールの中で走っていると聞いた時は「いったい何をやってるんだ?」と思ったが、彼女達の実力を更に伸ばす手腕に舌を巻いた。変なトレーニングだとは思ったが。

 

「……いい仕上がりだ。シロノリリィはどのレースも調子が良いが、何かコツでもあるのか?」

「確かにそれは私も気になります」

 

 あからさまな誘導なので簡単にこちらの思惑に気づくだろう。だが、それでいい。「恐らく誤魔化されるだろうが、僅かでも反応があればそれだけでこちらの有利に繋がる」と考えた。

 直接見たシロノリリィだけでなく、そのトレーナーから得られる情報というのはどんなに小さなものでも得難いものだ。

 

「……あぁ、あれはライスとイチャイチャしてるから調子がいいだけですよ。特別なことは何もしてませんね。まあ、ライスと過ごす日々全てが特別って言ってましたけど」

「ライスもリリィちゃんといられるだけでしあわせすぎて絶好調になるよ! ロイヤルビタージュースだってへっちゃらだもん!」

「……っ!! なるほどっ……!」

「…………そうか」

 

 黒沼は真面目に考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 地下バ道を進むシロノリリィに話しかけるウマ娘が一人いた。

 彼女の名はスイプロ。シロノリリィとのレースを切望していた者の一人だ。

 

「リリィ。ちょっといい?」

「……っ! うん、大丈夫だよ」

 

 スイプロに声をかけられたことに気づいたシロノリリィは、くるりと振り返り彼女の顔を見据える。

 互いに勝負服に身を包んだ彼女達の姿は、今から最高位のレース――GⅠを走るのだと理解させられる。

 スイプロはこの時を待ち望んでいた。シロノリリィという存在を目にした瞬間から、今までずっと。

 

「やっとだ。やっと、リリィと走れる」

 

 そう告げるスイプロだったが、にこにことこちらを見つめるシロノリリィに照れてしまい視線を逸らした。

 

「私もね、スイプロちゃんと走るの楽しみにしてたんだ! でも私はダートでも強いよ!」

「私はずっとダートで走ってきた。だから経験値的に有利」

 

 レース前の軽口に二人からくすりと笑みが漏れた。

 言葉で語るのはここまでだ。ここから先は……

 

「走れば分かる。行こう、リリィ」

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

『夜空の星々が見守ります、大井レース場ダート2000ジャパンダートダービー。14人のウマ娘達が挑みます。虎視眈々と上位を狙っています、3番人気はハートシーザー。この評価は不満か? 2番人気はこの娘、スイプロ。GⅠレース初勝利となるか注目です。スタンドに押しかけたファンの期待を一心に背負って、1番人気シロノリリィ。彼女の豪脚が芝だけでなくダートでも炸裂するのか注目です』

『私が一番期待しているウマ娘。気合い入れて欲しいですね!』

『ゲートイン完了。出走の準備が整いました』

『――今スタートが切られました! 各ウマ娘、そろってキレイなスタートを切りました』

『みんな集中してますね』

『ハートシーザーとイッツコーリングこのふたりが競り合っているぞ。期待通りの結果を出せるか? 1番人気シロノリリィ!』

 

 ゲートが開き、ウマ娘達が飛び出した。ハナを取ろうと2人のウマ娘が競り合う中、そこから少し離れてシロノリリィが展開を伺う。

 彼女が今回選んだのは先行策、まずは他のウマ娘達を観察する作戦だ。練習では何度もダートを走ったことがあるが、本番でも練習通りの実力が発揮できるのかは未知数であったが……

 

(……違う)

 

 シロノリリィの適性はダートのマイルだ。だが、メイクデビューから今まで走ってきたのは芝である。本来なら適性外のレースを走るのは無謀と言えるが、彼女は筋肉でそれを捩じ伏せてきた。

 つまり、これが彼女にとってはじめての適性バ場でのレースとなる。

 

(こんなにも違うなんて)

 

 馴染む、のではない。あまりにも自然。ここが彼女の本来の居場所だとでもいうかのような走りやすさにシロノリリィは驚いた。

 

(私は……超リリィちゃんです!!)

 

 絶好調のシロノリリィを、後ろからスイプロがマークする。

 他のウマ娘からの妨害などは特になく、あっさりとシロノリリィをマークする事ができた。

 

(リリィの走りに変なところはない。まあ、想定の範囲内。……寧ろ、芝の時よりいい感じ?)

 

 シロノリリィの様子を観察しながらスイプロが1バ身離れて追跡する。

 彼女はこのジャパンダートダービーで、他のウマ娘ではなくシロノリリィのみをマークすることに決めていた。ダートで走った実績こそないが、彼女が今回のレースで一番の強敵になるだろうとスイプロの勘が告げていた。

 彼女はその直感こそが大事だと思った。と同時に、自分と同じように他のウマ娘達もシロノリリィをマークすることを選ぶと思ったのだが……

 

(リリィをマークしてるのは私だけ。……まじ? 私だけ?)

 

『さあ、ハナを取ったのはハートシーザー。このままリードする事はできるのか? シロノリリィ少しペースが早いか?』

『冷静さを取り戻せるといいのですが』

『1コーナーから2コーナーへ向かっていきます。煌々と照明が灯る大井レース場をウマ娘達が疾走していきます。依然先頭はハートシーザー。続きましたイッツコーリング。少し離れてシロノリリィ。その後ろ1バ身離れてスイプロ――』

 

 

 

「──リリィちゃんには弱点があるジャン。スタミナが(比較的)少ないという弱点。今回はそこを徹底的に狙うジャン!」

「くくく……リリィちゃんの末脚は脅威の一言。恐らく今回のレースは皆が彼女をマークするでしょう。まあ、スタミナが無くなったらどんなウマ娘でも走れなくなりますが」

 

 この変な語尾のウマ娘と怪しい男は、スイプロが所属するチームの先輩とトレーナーである。

 

「スイプロのマーク技術はライスちゃんと比べたら未熟ジャン。それを数で補う合理的な作戦ジャン! ……スイプロと同期のライスちゃんのマーク技術はちょっと怖すぎるけどジャン。あんなのクラシック級の技量じゃないジャン」

「くくく……綺麗な顔して恐ろしいウマ娘ですよね、彼女」

 

 ここで二人は失態に気づいた。

 彼らの読みは『シロノリリィという最大の強敵に対し、ほぼ全てのウマ娘がマークするからそこに便乗する』というものだったが、現在の状況はむしろその逆だった。

 

「…………おかしいですね? うちのスイちゃん以外リリィちゃんをマークしてません」

「パァン? ……もしかして、ダート出走経験が無いから脅威と思われてないジャン?」

 

 スイプロ以外、寧ろスイプロが他のウマ娘にマークされている。シロノリリィはほぼ完全に放置状態だ。

 

「…………くくく、読み違えてしまいましたか。……おや? なんだかリリィちゃんのペースが早いような気が……」

 

 

『2コーナーまわって向こう正面。順位を振り返って……シロノリリィがペースを上げています。掛かってしまったのでしょうか? 現在先頭はシロノリリィ、続いてハートシーザー。あとからイッツコーリング、外からスイプロ――』

 

 

 逃げウマ娘2人がコーナーを抜けて直線に入ろうとしたその時、内側にできた僅かな隙間にシロノリリィがバ体を捩じ込みハナを奪った。

 

「う、お゛! なんか来た!?」

「どひゃー!?」

 

 イッツコーリングとハートシーザーを交わして先頭になったシロノリリィは、その勢いのまま速度を上げていく。一方で彼女をマークしていたスイプロは……

 

(マークを外されたのは痛い、かな。リリィは……掛かってる? ……仕掛けるにしては早すぎる。このままスタミナを使い切ってくれれば好都合)

 

 そう思ったところで、なんとなく、嫌な予感がした。

 何か致命的なミスを犯したような、じわりとした不安。

 

(…………いや、違う……?)

 

 2バ身、3バ身と距離が離れ更に加速する。減速する気配のないシロノリリィの様子に観客席が騒がしくなる。これでは掛かって暴走しているようにしか見えない。

 だが、彼女をマークしていたスイプロだけがその違いに気づいた。――気づいてしまった。

 

(掛かって、ない……!!)

 

 スイプロがシロノリリィを逃さぬよう距離を詰めるが、シロノリリィは更に加速していく。他のウマ娘も慌てて着いて行くが、その時にはもう遅すぎた。

 徐々にざわめきは収まり、その光景に息を呑む。

 

(あぁ、くそっ……! バカだ、私は……っ!!)

 

 先頭はシロノリリィ。そこから3バ身ほど離れてスイプロ。他のウマ娘達が全力のスパートをかけるがその差は縮まらない。3番手のウマ娘は5バ身離され、勢いは衰えるどころか寧ろ更に増していき、シロノリリィが最終コーナーに突入する。

 ざわめきは静寂に、静寂は困惑に。

 観客達は思う。自分たちは今、何を見せられている? 

 

『な、なんということだ! シロノリリィが止まらない! 後ろの娘達が全く追いつけない!?』

 

 そして、困惑は歓声に変わる。

 

(くそっ! ……こんなにも、こんなにも……っ!!)

 

 最終コーナーでも減速することなく加速し続け、遂に彼女だけが最終直線へと突入した。

 シロノリリィとの距離に他のウマ娘達の表情が歪む。だが、きっとこれが彼女の最高速だ。今から必ず捉えてみせると、彼女達は心を奮わせる。

 だが、そんな彼女達の淡い希望を踏み砕くように、シロノリリィがラストスパートをかける。

 華奢な脚が一回りほど膨らみ、ダートが爆ぜる轟音と共に彼女の背中が遠ざかる。

 

「──嘘でしょ……?」

 

 今も必死に脚を動かすスイプロの後ろから聞こえた小さな呟きが、やけに鮮明に聞こえた。

 

『シロノリリィ! シロノリリィ!! その差は10バ身、まだまだ伸びる! なんという強さだ! 後ろの娘達は追いつけない!!』

 

 シロノリリィの強烈な光――末脚に、届かないと思ってしまった。敗北が、灼き付いてしまった。

 闇など寄せ付けぬ白い少女の輝きが、人工物の光よりも眩しいその光に誰も目を離せない。

 人々はその純白い(しろい)バ体に、強烈すぎる光に――太陽を幻視した。

 

『――太陽だっ! 太陽が昇る!! 誰もその背に届かない! 誰も太陽に届かないっ!! 先頭はシロノリリィ、変わらない!』

 

 夜の闇を、輝く星空すら呑み込み、純白の太陽が全てを灼き尽くした。

 

『1着はシロノリリィ!! 大差をつけて圧勝です! 今、大井レース場に夜明けが訪れた!! シロノリリィが見事に新たな砂の王者に輝きました! 2着にはスイプロ。3着に入ったのはハートシーザー』

 

 後に人々はこう語った。

 ――「あの時、純白の夜明けを見た」と。

 

 

 

 

 

 ぜえぜえと肩で息をしながら、スイプロは疲労で言うことを聞かない脚を無理やり動かしてシロノリリィの元へ向かう。

 

「リリィちゃん大勝利ですっ!! いえーい!!」

「…………リリィ」

「ライスちゃ──スイプロちゃん!」

 

 愛しの少女の名を叫ぼうとしたが、スイプロの声と気配に気づいてこちらに振り返った。

 レースを終えた興奮からか、頬は赤く大粒の汗が流れている。キラキラと輝く黄金の瞳はレース場を照らす星々より煌めいていた。

 

「えっへへ! どう? 私強かったでしょ!」

「うん、本当に。まずはおめでとう。全然届かなかった、すごく悔しい。……でも──次は絶対に勝つ」

 

 スイプロは真っ直ぐにシロノリリィを見据える。

 確かに負けた。言い逃れのできない大敗北だ。だが、その程度どうって事ない。

 

「あなたがいて、私がいる。私は走れる、まだまだ走れる。今はまだ届かないけど、いつか必ずあなたに勝ってみせる。その心に、私を刻み込んでみせる」

 

 彼女の強い想いに、スイプロの宣言に、シロノリリィは眩い笑顔で応えた。

 

「うん!! でもね、次も勝つのは私だよ! スイプロちゃん、また走ろうね!」

「うん、また。…………あぁ、眩しいな」

「……うに?」

 

 その笑顔が、その心が鮮烈で。

 

 ――こんなにも、こんなにも……あなたの背中が遠い。

 

 

 

 

 

 シロノリリィの圧勝に皆が沸き立つ中、黒沼はシロノリリィが叩き出した時計に注目していた。

 

「リリィちゃあぁん!! おめでとうぅぅ!!!! かっこいいよおぉぉ!!」

「リリィさーん! おめでとうございます!!」

「おっしゃあぁ!! リリィの勝ちじゃい!!」

 

(18バ身の差をつけて1:59.5か。まるで良バ場の芝のタイムだ。ダートを芝と同じ速度で走る……いや、芝の速度でダートを走ったのか)

 

「あっ!! 今ライスの事見た!! あ゛あ゛あ゛あ゛!! だいすきぃぃっ!!!! 」

「心拍数の上昇を確認。このままではおこげになってしまいます」

「だって!! リリィちゃんが!! ねぇ!!」

「はい。──最高でした」

 

 普通は芝とダートでは走り方が変わるため同じタイムが出ない。それ以前に芝と比べてダートは時計が遅くなる傾向にあるのだが、シロノリリィの豪脚の前では常識など通用しないようだ。

 

(菊花賞は長距離故にライスシャワーを最大限に警戒すべきと思ったが、やはりシロノリリィも侮れん。……だが、勝つのはブルボンだ)

 

 シロノリリィの成長性。その脅威を再認識し、脳内のトレーニング計画を変更していた黒沼だったが、ミホノブルボンが彼の袖をついついと引っ張っているのに気がついた。

 

「どうしたブルボン?」

「マスター、気がついたことがあります」

「ほう? なんだ、言ってみろ」

 

 友人のレースを楽しみつつも、本命の敵情視察を忘れない愛バを頼もしく思う。さすが俺の愛バだ。

 ミホノブルボンは真剣な表情でこちらを見据え、ある重大なことを告げた。

 

「──ペンライトを使った応援のやり方を私は知りません。マスター、ご教授をお願いします」

「………………」

 

 

 

 この後めちゃくちゃキレキレのオタ芸を披露した。

 

「──さすがです、マスター!」



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第31話 眩しくて

スイプロちゃん視点のお話です。


 私は海が好きだ。青くて広くて深くてよく分からない。物心ついた時からずっと、その青い景色を見て育ってきた。

 私は太陽が好きだ。あたたかくてあつくて遠くて眩しい。青い海を太陽の光がキラキラ反射してすごく綺麗。

 遠くて広くて掬えない、私の原風景。

 

 小さな頃から私は海と共に過ごしてきた。

 実家が水族館だからというのもある。だから私にとって海は身近なものだった。

 私の両親は水族館を経営している。難しい話は私にはよくわからないけど、私の実家は水族館なんだ。なんかすごいよね。まぁ、別に有名だったりはしないけど。

 田舎の町のちょっとした水族館。人はそんなに来ないけど、私にとっては世界一の水族館。

 海は私の遊び場だった。砂浜を駆け、ナマコをぶん投げ、海に飛び込む。女の子らしくないと言われたが、私は私だ。そんなの関係ない。

 

 お父さんは私をよく釣りに連れてってくれた。最初は少しだけ怖かった。だって、あんなにビチビチ跳ねるんだもん。そりゃ怖がるよ。そんな私を見てお父さんは笑っていたな。

 隣にはお母さんがいた。微笑みながら私とお父さんを見守っていて、たまに私をからかうお父さんのお尻を蹴っていた。

 お母さんは、私とお父さんが釣った魚を捌いて色々な料理にしてくれた。お母さんが作る料理はとても美味しい。

 私はお母さんが料理をする姿が好き。ずっと見ていたいぐらいに。

 私はこの時間が好きだ。家族と過ごす、この時間が。

 だから、これは自慢。お母さんに教えてもらったから私は魚を捌けるし、色々な料理だってできる。すごいでしょ。

 

 水槽の中を優雅に泳ぐ魚達。変な顔のやつも綺麗なやつも怖い顔のやつもいる。怒りっぽいやつ、美味しいやつ、のんびりしたやつ、美味いやつ……いろんなやつがいる。

 みんな違う。でも、それって当たり前のこと。世の中に同じやつなんていない、違うのはただの個性でしかない。そんな当たり前のことを私はここで学んだ。

 

 私はウマ娘だ。でも、走るより釣りが好き。のんびり釣るのも好き。ランガンでガンガン釣るのも好き。泳ぐのも好き。素潜りして素手で魚を獲るのも好き。

 走るよりも釣りが好きなんて、変なウマ娘だと言われたこともあるけど気にしない。だって、好きなんだもん。

 

 ここが私の世界。太陽と海と両親と、時々魚。将来なんてよく分からないけど、大きくなったらこの水族館を継いで、たまに釣りをして。そんな人生を送れたらいいなって思いながら過ごしていた。……でも――

 

 

「ごめんな、スイプロ。……お前、好きだっただろ」

「……うん。でも、わがままは言えない」

 

 水族館をやめるらしい。

 経営不振。どこにでもある話。お客さんが来ないとかまあ色々あるけど、寂しい。……とっても。

 

「でも、まだ先の話なんだよね?」

「あぁ。でも、やめるのだけは確実だ。……しょうがねぇけど、つれぇなぁ」

「この人ね、あなたの思い出の場所が無くなるのが一番辛いって言ってるの」

「おいっ!? やめてくれよそういうのバラすのはよぉ!!」

 

 知ってる。分かってる。ずっと一緒にいたから。

 

「ねぇお父さん。お客さんがいっぱいきたら嬉しい?」

「ん? そりゃあ嬉しいけどよ、なんかするのか?」

「宣伝。いっぱいする。最後にいい感じの思い出にする」

「……ははっ、いいなそれ! 最高じゃねぇか! ……で、一体何をするんだ?」

「私はウマ娘。だから、走る。中央で」

 

 その時二人はすごいびっくりしてた。砂浜に打ち上げられたリュウグウノツカイを私が見つけた時よりもびっくりしてた。

 

「走って、伝えて、来てもらう。私の好きな場所に」

 

 永遠も、不滅も、絶対もありはしない。私はそれを知っている。

 キスの天ぷらを食べてそれを知った。あんなにも美味しいのに、永遠に食べ続けられるのに、食べ終えれば消えてしまう。あぁ、無情。でも、私の心にあの美味しさは残り続ける。

 誰かの記憶にここを残しておきたい。終わりが来るその時まで、誰かの記憶に刻みたい。全てが終わってしまった後でも、ほんの僅かでもいいからここを思い出して欲しい。

 これが、私がトレセン学園に来た理由。王冠もティアラもグランプリも関係ない、私だけの理由。

 

「じゃ、毎日勉強だな。ウマ娘用のシューズも色々買わないとなぁ!」

「釣り用具ばっかり買ってたものね。ウマ娘じゃなくてウミ娘って感じだったわぁ」

「…………勉強。うへぇ……」

 

 

 

 

 

 ――――それから月日が流れ、私はトレセン学園に入学した。自己採点したらテストの方はギリギリだったけど、なんとか入学できた。あっぶな……。

 そんな私だけど、実は今ものすごく緊張している。これから3年、いや、中等部と高等部だから6年か? まあ、結果が出せなかったら辞めることになるけど。

 ……じゃなくて。そう、これから6年以上ここで過ごすことになる。……だから、友達を作らなければいけない。……できるかは別として。

 自慢じゃないが今まで私に友達ができたことはない。これまで過ごしてきた13年間で、ただ一人も友達を作れなかったのだ。

 なのに、だ。……恐ろしいことにトレセン学園は寮でルームメイトと暮らさなければいけないんだ。

 練習よりこっちの方が辛いかもしれない。

 ……泣きそう。はぁ、憂鬱だ。

 まだクラスメイトは全員来ていないが、話が合う人がいたらいいなぁと思う。ルームメイトは面倒見がいい人か怖くない人がいいな。

 

 和気藹々としているクラスメイト達の声に耳を傾けながら時間が過ぎるのを待っていると、小さな足音と共にとても綺麗な音がしてきた。いや、音じゃない……誰かの鼻歌だ。

 こっちに向かってきている。……もしかしてクラスメイトかな?

 ずいぶんとご機嫌だな。曲はうまぴょい伝説か?

 あの電波ソング、いずれは私も歌うことになるのだろうか。うへ……。

 

 ぴたりと足音が止み、教室のドアが開けられた。今まできゃっきゃっと騒いでいたクラスメイト達は、そこに現れた一人の少女に意識を奪われた。

 ――姿を見せた。たったそれだけでクラスから音が消えた。たった一人の、白いウマ娘が来ただけで。

 真っ白で綺麗な小さな娘。今まで見たものの中で、何一つ及ばない美しさ。太陽よりも鮮烈な白毛のウマ娘。

 

 ……なんて、眩しいんだろうか。

 

 静まり返った教室をキョロキョロ見回した後、その子は黒板に書かれている自分の席を確認して歩き出した。

 

 教室中の視線を集めて彼女は歩く。周りなど意に介さず、自然体で。

 そんな彼女の席は、なんと私の隣だった。……まじで?

 なんでこんな綺麗な娘が、よりにもよって隣なんだ! と、心の中で叫んでみたが、叫んだところで結果は変わらない。

 なんか見た目と雰囲気がお嬢様っぽいなぁ。と思っていたら、金色の瞳がこちらをじぃっ……と見つめていた。

 やっば、美人すぎない?? えっ? 私なんかやらかした……?? 

 

「はじめまして! 私はシロノリリィです! これからよろしくお願いします!」

「…………スイプロデス。……ヨロシク」

 

 焦っている私を気にする事なく元気に自己紹介してきた。ちょっとほっとした。

 あとめっっちゃいい匂いする。なにこれ?

 だけど私は緊張してまともに顔を見れないし、ろくに返事もできなかった。こんなところでコミュニケーション能力の不足を実感し、今までまともに友人作りをしてこなかった事を後悔した。……最悪だ、私。

 そんな自分に自己嫌悪していたが、彼女はにこにこと嬉しそうな顔で「これからよろしくお願いします!」と言った。

 その表情はとても楽しそうで、わくわくがあふれているのがこっちにまで伝わってきた。かわいい。

 なんだかすごくドキドキする。こんな気持ちは初めてだ。

 彼女の事がとっても気になる。もっと彼女のことを知りたい。もっと話してみたい。

 いつもの自分ならこんな事を考えたりしないだろう。なのに、どうして……。

 ……まぁ、人見知りな私が自分から話しかけるなんてできないんだけど、これから仲良くなれたらいいなぁ。

 

 そんな感じで始まった私の学生生活。これからどうなるのか、どんなことが起きるのか。全くわからないけど、すごく楽しみだ。

 入学式が始まるまで暇だなぁと思っていたら、シロノリリィがにっこにこで喋りかけてきた。……いきなりは心臓に悪いんだけど??

 驚いた事に彼女は私と同じ一般家庭出身のウマ娘だった。うっそでしょ……? その美貌(かお)で?

 彼女の見た目からしてお嬢様かと思ったって言ったら、「リリィちゃんはとってもかわいいので、そう見えてもおかしくないですね!」と元気に言っていた。かわいい。

 周りで聞き耳を立てていたクラスメイトは「社交界でも見かけた事が無かったのは、そういう事でしたのね……」とか小声で言ってた。

 やば、周りお嬢様ばっかじゃん。お嬢様の群れかよ。

 その後ずっとライスちゃん――ライスシャワーというウマ娘の事を話された。その娘の事を話している時の彼女の表情は、とても綺麗で幸せそうだった。

 で、その後入学式を終えて、みんなで自己紹介をすることになったんだけど……

 

 

「かわいくてかしこくてつよいこなシロノリリィです! ライスちゃんが大好きです! クラシック三冠を目指しています! 皆さんこれからよろしくお願いします!」

 

 

 彼女がクラシック路線を目指している事がわかった。

 私の適性はダートだから、彼女と走れない事が確定した。……私は泣いた。

 

 

 そういえば、ルームメイトは変人だった。なんかパンパンジャンジャンうるさい人。

 変なキャラ付けしてると思ってたんだけど、名前が降りてきてからそういう話し方になったって言ってた。あとその時に髪の色と瞳が変わったらしい。なにそれ……? 知らん……怖っ……。

 

 

 

 

 

 トレセン学園での生活が始まった。

 レースの練習や勉強の毎日だ。

 午前は勉強、午後はレースの勉強と練習。歌の歌詞を覚えてダンスの振り付けを覚えてトレーニング。

 ……やばいねこれ、めっちゃキツい。中央は日本のトップだって知ってたけど、知ってるのと実際にやるのは違いがありすぎる。……正直舐めてた。

 あれからだいぶ経ったが私はまだチームにもトレーナーにもスカウトされていない。まぁ、名家の人間じゃないから仕方ないけど。

 私は一般家庭――寒門の出身だ。寒門のウマ娘をわざわざスカウトするトレーナーはほぼいない。

 ウマ娘の能力はほとんどの場合血統によって決まる。親が優れたウマ娘ならその能力は子どもに引き継がれる。だから名家のウマ娘は優秀な子が、高い身体能力を持った娘が多い。

 それはトゥインクルシリーズのレースを見ればわかる話。GⅠに勝ってるのは大体名家のウマ娘だ。

 しかも子どもの頃から整った設備や専門の家庭教師(レース関係のやつ)を雇ったりしてるんだって。なんか住む世界が違うなあ。

 

 皮肉だよね。血反吐を吐く努力をしてトレセン学園に受かっても、出身だけで見向きもされないなんて。この世は平等じゃないね。

 なんて、言ってみただけ。実は私はそこまで気にしてない。寧ろ私は誇りに思っている。両親から生まれたことを。

 この話から分かる通り、一般家庭のウマ娘と名家のウマ娘には大きな差がある。彼女達はより速く走るために長い年月をかけて血を繋いできたんだ。

 そこまでやるか? と思うが、それは私の様な一般人の感想でしかないのだろう。彼らにとって、勝利とはそれほどまでに重いらしい。

 

 怖い話は置いといて、私の適性はダートのマイル〜中距離。

 芝の中長距離がメジャーな日本だとあまり歓迎されないのが私の適性。

 だけど私にとっては正直大したことじゃない。クラスメイトにそう言ったら変な生き物を見る目で見られた。

 レースを見るよりおフィッシュくんさんの番組の方が好き。

 

 ウマ娘のレースは、言ってしまえば優秀な血を持つ者が勝つ。それが常識。

 優れた血に優れた血を掛け合わせて、更に優秀な者を作り出す。

 でも、たまに現れるんだ。血統なんて無視した突然変異ってやつが。

 

 

 あれから時間が過ぎてなんやかんやあって私はチームに所属することができた。

 チーム名は『スターゲイザー』。名前だけはかっこいいが、ニシンが生えたパイが元ネタと聞いて微妙な気持ちになった。

 誘ってくれたのはルームメイトのパンドラジャンム先輩。

 一人称と語尾と頭以外は常識人だ。ただ少しだけパンジャンに狂っている。

 

「いや〜、今日はリリィちゃんのメイクデビュージャン! めっちゃ楽しみジャン!!」

「くくく……とってもかわいいですよね、リリィちゃん。スイちゃん、お茶請けは何がいいですか?」

「かっぱえびせん」

 

 私達は今、チームルームでシロノリリィのメイクデビューを観ようとしている。

 このくくく……とか言ってる目つきが悪くてロン毛で背が高くて痩せたおじさんは私のチームのトレーナー。

 見た目と言動は怪しいけど、可愛いものが好きで家事が得意。ぱかプチも自作できるらしい。

 今は先輩が食べたいと言ったフィッシュ&チップスを作り終えたところだ。

 

「今日のメイクデビューはリリィちゃん以外にアッシュストーンが出るんジャン? ちょっと厳しいかもしれないかもしれんジャン」

「彼女は芝の短距離マイル路線で注目されていますからね。まあ、私達はリリィちゃんの実力を正確に把握していないというのもありますが。確か彼女はダートのマイラーですよね? 適性バ場じゃないのも響きそうです」

「かわいさだけは知ってるジャン!」

「いい匂いするよ」

「くくく……レースには余り関係ありませんね」

 

 時間が経ち、パドックでの紹介が始まった。

 トレーナーと先輩はなんか「この娘は調子よさよう」とか色々言ってるけど、私には正直よくわからなかった。

 トレーナーは私に「これも勉強です」って言って色々教えてくれた。

 

「スイちゃん、この娘を見てください。あなたから見てどう映りますか?」

「……悪くないように見える。元気そうだし」

 

 肌の色も悪くないし、表情もやる気に満ちてるように見える。好調よりの普通、と私は感じた。

 でもトレーナーはふるふると首を振って「一見そう見えますよね。ですが……」と続けた。

 

「この娘は不調です。スイちゃん、ウマ耳とウマ尻尾を見てください。耳は少し下がり気味で尻尾の毛艶があまり良くないのは分かりますか?」

 

 じっくり見てみると、確かにそうかな? と感じたが、正直よく分からない。私が唸っていると、フィッシュ&チップスを貪り食べていた先輩が声をかけてきた。

 

「あとは体の仕上がりもそんなに良くないジャン。メイクデビューだから緊張してるかもしれんジャン。表情の方もよく見てみるとやる気に満ちているっていうより、不調を隠すための空元気って感じジャン」

「お化粧で誤魔化されてますが、うっすらとくまがありますね。彼女が自分でやったのか、それともトレーナーがやったのかは定かではありませんが、こういったところも参考になりますよ」

「…………だめだ、さっぱり分からん」

「分からなくてもいいんです、分かろうとするのが大事なのですから」

「パンも完全に理解してるわけじゃないジャン。完璧に理解出来るとか人間辞めてるジャン。そんなの無理無理パンジャンドラム」

「ふぅん……」

 

 まあ、今は分からなくてもいいか。これから頑張ろう。

 次に出てきたのは今回のレースで最有力だと言われているウマ娘、アッシュストーンだった。素人同然の私でも簡単に分かるほどの仕上がりに「……おぉ」と声が漏れてしまった。

 

「くくく……やはり凄まじいですね。今年のスプリント路線有力候補と言われるだけはあります」

「私でも分かるぐらいすごいね。でも顔と雰囲気が怖い」

「パァ〜ン……おっぱいでっけぇジャン」

 

 胸だけじゃなくて体もデカい、競り合いにも強そうなムキムキウマ娘だ。何食ったらこんな体になるんだろ。

 こんな感じで色んなウマ娘達を見ていたが、ついに私達の本命が来た。

 全身が純白の、本当に同じ生き物なのかどうか疑うほど綺麗なウマ娘――シロノリリィが来た。

 いつもにこにこしてて、ひだまりの様に優しい娘。それが彼女の印象。

 だけど、レース前の真剣な表情はとても綺麗で、瞬きを忘れてしまうほど美しい。

 まるで天使様の様だ。見た事ないけど。

 実況の人達や観客席の人達、そして私達も彼女に見入っていたが、両親と思われる人に名前を呼ばれていつものかわいいシロノリリィに戻った事で、魅入られていた人達は正気を取り戻した。

 

「──この美しさ、パンジャンドラムに匹敵するジャン……」

「……くくく。……危うく死ぬところでした」

 

 美貌だけで圧倒されてしまったが、実力の方はどうなのだろうか。顔の良さで彼女の仕上がり具合が判断できない。

 

「シロノリリィの仕上がりはどうなの?」

「ふむ。そうですね……情報の無さと中等部で小柄な体格なので人気は下から数えた方が早いですが、完璧な仕上がり具合です。彼女のトレーナーは新人と聞いていたのですが、とても良い腕をしているのが分かります」

「今日のレースは1600のマイルジャン。短距離とマイルはパワーとスピードを求められるから、デカくて筋肉質なウマ娘が人気になりやすいジャン。まあ、小柄でもパワーがすごい人もいるけどジャン」

 

 ウマ娘は不思議だ。さっき言ったアッシュストーンのように大柄で見た目通りパワーがある人もいれば、小さくてもゴリラみたいなパワーを発揮するウマ娘もいる。

 そもそも少女のような見た目で成人男性――それもマッチョ達を遥かに凌駕するパワーを発揮できるのがおかしな話だ。

 科学的な視点で見ると、筋肉量とそこから出るパワーが全然釣り合ってないらしい。そのせいでファンタジーマッスルとか色々言われている。深く考えたことはないがウマ娘ってやばいよね。

 そういえば、ダートのウマ娘は芝で走るウマ娘よりもパワーに優れているんだっけ? もしかしたらシロノリリィもパワータイプだったりして。

 

 そんなこんなでシロノリリィのメイクデビューが始まった。不利なレースだろうけど頑張ってほしいとみんなで言っていたら、その認識はとてつもない間違いだと気付かされた。

 彼女にとって苦手な芝だというのに、その走りに淀みはない。本当に苦手なのか? と思ってしまうほどだ。トレーナーも「虚偽の情報を流し……いや、そう思うのはまだ早いですね」と言っていた。

 アッシュストーンがスパートをかけ、他のウマ娘達を交わして先頭にたった。抜かれたウマ娘達も追いつこうとしているが、その差は縮まらない。

 やはりというべきか、彼女の実力は他のウマ娘達と比べて頭一つ抜けている。加速力はもちろんスピードも速い。パワーとスピードに優れているのだろうと感じた。

 このまま彼女が勝つのだろうかと思っていたその時、何かが爆ぜる音と共に白いウマ娘――シロノリリィが後方から飛び出してきた。

 尋常じゃない加速力であっという間にウマ娘達を交わしターフを抉って蹄跡を刻みながら、先頭を走るアッシュストーンすら抜き去ってそこから3バ身の差をつけゴール板を駆け抜けた。

 一瞬だった、閃光のように。

 眩暈がする、太陽を直視したかのように。

 彼女の強烈すぎる光が、胸の内から溢れる熱が、私を焦がす。

 初めてだった。こんなにも、こんなにも……誰かと走りたいと思ったのは。

 

「……ねぇ、トレーナー」

「なんですか、スイちゃん?」

「私、もっと頑張る」

「……そうですか」

「──あの爆発力と美しさ……リリィちゃんはパンジャンドラムなのかもしれないジャン」

 

 彼女の走りを見て決意を新たにした私を、トレーナーは嬉しそうに見つめていた。

 先輩はいつも通りだ。

 

 

 

 そのあと少しして私もメイクデビューを迎えたが、結果から言うと彼女のように勝つことはできなかった。

 ダート1600メートル。8人出走して結果は7着。全然惜しくない、どこにでもあるありふれた光景。

 ……誰も、私を見ていない。

 私は当たり前のことを思い知らされた。レースに勝つ事の凄さを、その難しさを。……そして、悔しさを。

 1着を取った彼女は感極まって大泣きしていた。それに釣られてその子のトレーナーも子どもみたいに大泣きして、二人で勝利を分かち合っていた。

 おめでとうとみんなに言われ、祝福に包まれた彼女達を、私はどんな表情で眺めていたのだろうか。

 

 ライブのために控え室に戻った私をトレーナーと先輩は労ってくれた。

 負けてもバックダンサーやるのって、控えめに言って地獄だと思う。

 

「これは、私の失態です。あなたの力を引き出せなかった、私の」

 

 苦しげな表情でトレーナーは言った。

 そんな事ないのに。あなたが私のために全力を尽くしてくれたのを、ずっと私は見ていた。

 負けたのは私だけど、トレーナーは私よりも落ち込んでた。だって半泣きになってるもん。それを見て少し落ち着けた。

 自分より動揺してる人を見ると冷静になれるって聞いたことがあるけど、それは本当なんだなって思った。

 先輩はトレーナーを見てゲラゲラ笑ってた。……ひでぇ。

 

「もういいよ」

 

 伝わってるから大丈夫。

 バックダンサー上等、お前の勝利を讃えてやる。だけど、次はそこから引き摺り下ろしてやる。

 まだ私は何も残せてない。けど、まだ始まったばかりなんだ。いくらでも巻き返せる。

 ……うん、大丈夫だ。

 

「シャワー浴び……どうしたのトレーナー?」

 

 なんかトレーナーが目から汁を垂れ流してる。顔もしわくちゃですごい事になってる。

 ……いや、涙だこれ……! 先輩はさっきからずっと笑い続けてるし……。

 笑いすぎて過呼吸になってる先輩のお尻を蹴ると、「マーマイト!」とよく分からない叫び声をあげた。

 少し経って落ち着いた先輩が、どうしてトレーナーが泣いているのかを説明してくれた。

 トレーナーが泣いてるのはさっきの「もういいよ」を諦めの意味だと勘違いしたからなんだって。そんな事ないのに。

 私はトレーナーの気持ちは十分に伝わってきたからそれ以上言わなくてもいいっていう意味で言ったんだけど、どうやら簡潔すぎたようだ。

 日本語って難しいね。ごめんねトレーナー。

 

 

 それから私はたくさんトレーニングをした。

 途中で人類を英国面に堕とそうとする謎の組織とレースで対決したり、紅茶以外の飲み物を認めない謎の団体とレースをしたりと色々あったが、未勝利戦で遂に1着を取ることが出来た。メイクデビューの敗北を含め、3回の敗北からの勝利である。

 謎の組織と団体は先輩が全部倒した。

 本当に、本当に嬉しかった。自分の手で掴み取った勝利、みんなが協力してくれたから得られた勝利。みんなが私を祝福してくれた最高の瞬間を、あの時の景色を私は生涯忘れることはないだろう。

 

 勝利して改めて思った事なんだけど、私は多くの人に支えられている。両親、友人、チームの仲間、トレーナー、ファンの人達。みんなの応援がターフを駆ける力になるんだ。

 月並みな感想だけど、人の声は力になるんだと実感した。

 チームは先輩1人しかいないし、友人と呼べるのもシロノリリィしかいないが、数より質が大事だから問題ない。

 でも私はまだ1回勝っただけだ。私と違ってシロノリリィはすでに重賞に勝利している。

 未勝利戦で勝つのが精一杯の私からすれば、重賞で勝利するなど雲を掴む様な話だ。

 早く彼女に追いつきたい。焦るのはよくないが、勝利という熱が私の心を滾らせていく。

 次のレースはまだか、トレーニングは。はやく、もっと走りたい。

 

 

 

 時間が経つのは早いもんで、あれからひたすらにトレーニングやレースやなんやらしてたらいつの間にか私はクラシック級になっていた。

 最近の私はなかなか調子がいい。今までのトレーニングが身を結んだ結果、なんと重賞レースで勝利する事ができたのだ。

 ジュニア級の時は結果が出なかったが、この調子ならGⅠも目指せるかもしれないとトレーナーも褒めてくれた。やったね。

 実は私の先輩は、自分の身体は血液の代わりに紅茶が流れていると豪語するするのやばい人なんだけど、信じられない事にGⅠを2勝しているすごい人だ。信じられないけど、本当に。

 そんな先輩やトレーナーのアドバイスもあって、最近の私はだいぶ強くなってきている気がする。

 

 話は変わるが、私はシロノリリィのレースを全て欠かさず観戦している。先輩やトレーナーも一緒だ。

 できれば毎回現地で観たいが、こちらもトレーニングやレースの予定があるので全てを現地で見るわけにはいかず、たまにテレビでの観戦になるのは少し残念である。

 彼女のレースは人を惹きつける熱がある。私の贔屓目も大いにあるが、世間の話題――今年のクラシック戦線は彼女を中心とした話題が多い。

 良くも悪くも目立ちすぎる容姿。幼女の様に華奢で可憐な見た目からは想像もできない圧倒的なパワー。直視すると泣けてくるぐらいの眩しすぎる笑顔など。

 魅力的な点はありすぎるのでこれは一例でしかないが、彼女の魅力は語り尽くせないほどある。

 あとシロノリリィは見た目だけじゃなくて性格もとても魅力的で彼女の容姿はあくまで彼女の素敵なところを評価する上での一例でしかないと言っておく。

 

 彼女のレースは派手だ。あの凄まじい末脚は見ていてとても興奮する。だが、それよりももっと注目すべきところがある。

 それは、どんなレースも絶対に諦めないところだ。

 格上が相手でも、距離不安があっても、彼女ならぶち抜いてくれると、そんな期待を持ってしまう。

 彼女には人を惹きつける熱がある。まっすぐに前を見据える瞳が、決して折れない心が、私達の心を燃やし尽くすのだ。

 

 熱くて、眩しくて、まるで彼女は――

 

 

 

 

 

「…………ん、寝てた。なんか懐かしい夢見たな」

 

 ぼっーと釣りをしていたらいつの間にか眠っていたらしい。起きたばかりで微妙に頭が働かないが、状況を確認するために辺りを見渡す。

 

「おはよう〜。お魚さんはかかってないよ」

「ん……おはよう。そっか……今日は全然釣れないね」

 

 私に同意するように「ね〜」とリリィが言った。

 時間はお昼前。日差しは眩しいが、海は穏やかだ。

 今何してるんだっけ。…………そうだ、昨日のジャパンダートダービーの疲労を抜くために休養中なんだ。

 隣にいるリリィも私と同じ理由。なんだけど、明日にはもう練習に参加できるらしい。

 ……なんか回復力おかしくない?

 

「みんなにお土産が欲しかったけど、この調子だとダメそうかな?」

「ここからジャンプして、全力で海をぶん殴ればいっぱい獲れるよ!」

「冗談で……いや、いけるか……?」

 

 リリィのパンチ力なら不可能じゃないけれど、それをするのはさすがにやめておこう。面白くないし、何より負けた気がするから。

 リリィもさっきの発言は冗談だったらしく、「やらないけどね!」と元気に言っている。かわいい。

 

 変わらない海の景色。魚の気配はない。

 私たちが交わす言葉もない。けど、それが妙に心地よかった。

 

「リリィは次、菊花賞に出るの?」

「多分そう。夏合宿の結果次第ってるるちゃんが言ってたけど」

 

 クラシック三冠の最後の一冠――菊花賞。最も強いウマ娘が勝つと言われる過酷なレース。

 3000というクラシック級では最長の距離。京都レース場に聳える淀の坂。冷静に体力を温存し、過酷な坂を2回も越えなければいけないレース。

 “最も強い”ウマ娘が勝つと言われるだけはあるよね。私個人としては長距離なんてマゾ向けのレースは走りたくないのが本音だ。

 リリィの適性を考えれば不利なレース。でも……それでも、あなたが負ける姿なんて想像できない。

 

「リリィが勝つよ」

「おぉ……言い切ったね」

「当たり前。私は友達の勝利だけを願う」

 

 私は知っている。シロノリリィを知っている。

 温かくて、優しくて、眩しいあなたを。

 世界で一番綺麗な笑顔。眩しすぎて目が眩むほどの輝きを知っている。

 

「えへへ。ありがとうスイプロちゃん!」

 

 綺麗だ、本当に。

 だけど私は知っている。あなたが一際輝く瞬間を。

 

 それは私や他の友人達といる時じゃない。あなたがライスシャワーといる時だ。

 きらきらしている。満天の星や宝石すら霞んでしまうその笑顔が好きだ。その瞬間が、幸せに満ちたあなたの笑顔に心が蕩けてしまう。

 私じゃ決して見られない、その笑顔が好きなんだ。

 

 「うん。どういたしまして」

 

 あなたは太陽だ。

 遠くにいれば温かくて、近くにいると焼き尽くされてしまう純白の光。

 だけどそれで構わない。あなたが曇らないならば、それでいい。

 それでも、もしも、私のささやかな願いが許されるのならば。

 

「あのね、スイプロちゃん」

「ん。なに?」

 

 私の事を憶えていてほしい。

 永遠も、不滅も、絶対もありはしないけれど。

 あなたが私を憶えていてくれれば、私はあなたの永遠になれるから。

 だから――

 

「私、忘れないよ。スイプロちゃんと走った事、一緒に過ごした事。全部忘れない」

 

「私の道は、私の世界は、みんながいてくれるから輝いてるの」

 

「私だけじゃダメなの。みんながいるから、みんながいてくれるからきらきらしてるの」

 

「だからね、スイプロちゃん」

 

「また一緒に走ろうね!」

 

 

「…………うん。約束」

 

 

 嗚呼、シロノリリィ。

 ──私の太陽。




リリィちゃんに脳を焼かれた者の末路。
まあスイプロちゃんとリリィちゃんがレースする予定は無いのですが。
今回はここまでです。次は夏合宿で色々やる予定です。
半年より早く投稿できるように頑張ります。


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第32話 ライスちゃんイヤーは大きいです!

夏合宿です。
タイトルが雑なのはいい感じのやつが思い浮かばなかったからです。


 気がつくと私は真っ白な場所にいました。空も大地も全てが真っ白な場所。ここから端は見えず、天井も見当たらない。この場所がとてつもなく広いということだけは分かりました。

 漫画とかだとよく見る光景ですね。こういう場所で必殺技とかを覚えたりします。私はBLEACHを読んでるからそういうのは知っています。理解力のあるリリィちゃんです。

 それにしても、なんだか見覚えがあるような気がします。最近こんな場所に来た記憶がありますね。どこだったでしょうか? リリィちゃんのかしこすぎる記憶力を使って思い出してみましょう!

 

「むむむぅ………………はっ! 思い出しました! 日本ダービー(あの時)に見た謎の場所ですね! さすが私です、思い出すのも早いですね!」

 

 思い出せてすっきりしました! さすがリリィちゃんです! とってもかしこいですね! …………ところで、どうして私はここにいるのでしょうか?

 

 どうやら私が眠った後、理由はさっぱりですがこの謎の場所に連れて行かれた? みたいです。私が自分の意思で行ったわけじゃないので、連れて行かれたという認識でいいでしょう。

 この空間はよく分かりませんが、焦ってはいけません。リリィちゃんはかしこいので冷静に周りを観察することができます。

 ふむふむ。パッとみた感じだと、以前来た時と変わってないですね。あの時はなぜか私に鎖が付いていたりしましたが、今回はそれもないみたいです。また巻き付いて来たとしても握りつぶすので問題ないですけどね!

 鎖といえば、あの真っ黒な扉はどこに……おっ! ありましたね! 見たことがないはずなのに、知らないはずなのになぜか『懐かしく』感じたあの扉です。ちょっと近づいて観察してみましょう。

 

 扉の前まで来た私は、じ〜っと観察します。見た目は真っ黒など○でもドアです。でも、よく見てみると色々なところがボロボロで、傷を隠すようにべったりペンキが塗られているような感じです。

 ……ふ〜む。やっぱり知らない扉ですね。アニメや漫画で見たわけでもないし、私がちっちゃい頃に見たというわけでもなさそうです。でも、やっぱりこの扉を見ていると『懐かしい』と感じます。不思議ですね。

 こういう場所にある扉は開けちゃダメな事が多いです。よく分かりませんがそういうお約束なんです。私は良い子なので開けたりはしませんが、もしもやばそうだったらぶっ壊そうと思います。リリィちゃんパンチの3倍の威力を誇る、リリィちゃんキックが火を吹きますよ!

 ……あれ? よく見てみると、なんだか違和感がありますね。なんでしょうか、なんとなく微妙に違うような気が……

 

「――わかりました! 扉に付いてる鎖が減ってるんです! 以前と比べて半分ぐらいになってますね。さすがはリリィちゃんです! とってもかしこ…………あれ?」

 

 …………なんで鎖が減ってるのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 ――自分の名前が嫌いだ。『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』という、空虚な文字の羅列が。

 

 

 

 

 

 

 ……なんだか変な夢を見た気がします。でも何も思い出せないので、特に気にする必要はないでしょう。私に予知夢の能力とかはないですし、そもそも夢というのは記憶の整理だと聞いた事があります。気にするだけ無駄なので意識からポイってしちゃいましょう。

 本当に大事な事なら、かしこいリリィちゃんが忘れるはずないですからね! ライスちゃんに関する事なら全部覚えているのがその根拠です。

 

 気を取り直して。今日から本格的な夏合宿が始まります。どんなトレーニングになるかわくわくしますね! 夏の暑さにも負けない元気なリリィちゃんです。

 先日のジャパンダートダービーは私の特訓の成果を見るためのものでもあったのですが、結果はるるちゃんも文句なしの大勝利でした。ふっふーん! いっぱい褒めてください!

 ダートと芝。今回はいつもと全然違うバ場でしたが、特に問題なく走ることができました。むしろこっちの方が走りやすかったですね。スイスイ動けましたよ!

 ライスちゃんとるるちゃんが私のグッズを着て応援してくれるのはいつもの事なのですが、今回はブルボンちゃんもお揃いの格好で応援してくれていました。ライスちゃんとお出かけした時に買ったのでしょうか? とってもうれしかったです! 今度は私も一緒に行きたいですね!

 これからしばらく先はダートで走る予定はありませんが、スイプロちゃんともまたいつか一緒に走りたいです。しばらくというか、クラシックは全部芝になりそうなんですけど。

 そういえば昨日はスイプロちゃんもお休みだったので一緒に釣りに行ったのですが、結果はボウズでした。ちょっと残念でしたね。

 スイプロちゃんに「釣れなかった時はなんでボウズって言うの?」と聞いたら、「儲けがない……もう、毛が無い。だからボウズ。他にもあるけど、つまりハゲ」と言ってました。……容赦ないですね。

 

 

 

 今日はトレーニングを始める前にるるちゃんが今後の方針を話すそうです。

 目標を決めるのは大事ですからね。私もちっちゃい頃ライスちゃんと走りたくて、トレセン学園に入るという目標のために毎日走ってました!

 

「おはよう二人とも。今日も世界一かわいいわね。さて、リリィの今後の方針を話す前に一つだけ聞いておくわ。お姉さまから見てあなたの身体に不調は無さそうだけど、あなたから見て違和感とかはないかしら?」

「ないですよ! とっても元気です!」

「そう? それならいいけど。もし何かあったら、小さな事でも報告してね。それじゃあリリィの夏合宿の目標だけど――」

 

 るるちゃんからのお話をまとめると、大きな目標は二つ。

 まず一つ目はリリィちゃんボンバーの改良。もう一つは長距離に慣れること。この二つが大きな目標です。

 これらを目標に夏合宿用のスペシャルなトレーニングをするそうです。

 さすがるるちゃんです! 無駄がない目標ですね!

 

「――まぁ、目標としてはこんな感じね。トレーニングの内容は、午前は基礎能力を高めるためのトレーニング。午後は長距離に慣れるために色々やるって感じね。併走とか、長距離の模擬レースとかをやってくわ。じゃあ質問とかはあるかしら?」

「はい! 併走トレーニングは誰とやるんですか? 去年はアッシュちゃんとキョウちゃんが手伝ってくれましたけど、今年はいませんよね?」

「あぁ、それなら問題ないわよ」

 

 るるちゃんが、にこっと笑ってライスちゃんを見ました。ライスちゃんは小首を傾げています。

 今日もライスちゃんはかわいいです。

 

「おめぇの出番だぞ、ご飯!!」

「ライスです」

 

 ……なんでライスちゃん? るるちゃんの声真似がとっても上手です。

 

「不思議そうな顔してるけど、去年は適性が合わなかったから併走出来なかっただけでしょ? 今のリリィなら、中距離も走れるようになったあなたなら、ライスと長距離を想定した併走をしても問題ないからよ」

「……っ!! 確かにそうですね! なんの問題もなかったです!」

 

 今の私は2400でも走り切れるぐらいにスタミナがついています。3000はさすがにまだ大変かもしれませんが、スーパーリリィちゃんパワーとこれからのトレーニングで克服するから問題ないです。

 

「えへへ。トレーニングだけど、リリィちゃんといっぱい走れるね。ライス、とっても楽しみだよ」

「私もだよ! 長距離はライスちゃんの得意距離だけど、私も負けないからね!」

 

 マイラーの私と違ってライスちゃんはステイヤーです。今までのライスちゃんもとっても強かったのですが、本来の適性を発揮したライスちゃんはどれぐらい強くなってしまうのでしょうか?

 

「それじゃあ二人とも、まず午前のトレーニングなんだけどね……二人にはここで走ってもらうわ」

 

 そう言ってるるちゃんは海の方を見ました。

 綺麗な海ですね。今日は波が穏やかです。

 

「――海の上を走るのよ」

 

「「…………えっ?」」

 

 ……るるちゃんがなんか変なこと言いました。

 

 

 

 

 

「うりゃりゃー!」

「り、リリィちゃん、がんばってー!」

 

 私リリィちゃん。今海の上を走ってるの。

 信じられないかもしれませんが、私は今海の上を走っています。チャクラも気も霊圧も使わずに走っています。

 こういうのは漫画やアニメだけだと思っていましたが、実際にやれてしまうのが現実らしいですね。

 るるちゃん曰く、「ある程度の実力を持ったウマ娘ならみんなできる」らしいです。中央の過酷なレースをこなせるほどの肉体と、身体の使い方を熟知していればできる、とのことです。

 

『ふふふ……! このトレーニングは海の上を駆け抜けるためのスピード! 海に落ちないようにするためのパワー! 継続して走るためのスタミナ! 過酷な状況に抗う根性! 適切な身体の使い方を理解する賢さ! その全てを鍛えることができるパーフェクトなトレーニングなのよ!』

 

 先ほどるるちゃんが言ったように、このトレーニングは全ての能力が高い水準で求められるので、見た目以上の厳しさがあります。

 私もまっすぐ走るのは割と簡単にできたのですが、このように曲がろうとした瞬間……

 

「うにゃごぼぉっ!!」

 

「り、リリィちゃーん!!」

 

 ――ドボンです。ライスちゃんが慌てて浮き輪を投げるのが一瞬だけ見えました。

 むむむ……やっぱり曲がるのが難しいですね。身体の傾き、足が水面を蹴る角度、力の入れ具合……などなど。一瞬で切り替えなければいけないうえに、これを無意識でやらなければいけないのでとっても難しいです。

 でもやりごたえがあって楽しいです。水面を走るのは人類共通の夢ですしね! 私もちっちゃい頃は水面を走ったり、壁を走ったり、空中ジャンプをしたいと思っていました。それが実際に出来たので、夢が叶ったと言えるのではないでしょうか。

 

 このトレーニングは私とライスちゃんで交代しながらやっています。走るのと救助する人、交互にやるのが効率がいいからです。

 片方が走っている間は休憩をしながらも相手を観察することができます。自分と相手の走り方がどう違うのか、良い点を探して自分に活かすなど、『観る』ことも立派なトレーニングなのです。

 

『それじゃあ次はライスの番ね。準備はいい?』

「大丈夫だよ、お姉さま」

 

 ライスちゃんに救助されて交代しました。次は私がライスちゃんをお助けする番です!

 

「がんばって、ライスちゃん!」

「うん! じゃあ、行ってくるね!」

 

 軽やかに、そして力強く駆け出したライスちゃんは、そのまま海の上を走ります。真剣な表情のライスちゃんもかっこよくてかわいくて最高ですね!

 そういえば、るるちゃんが変なメガホンで指示を出しているのですが、このメガホンを使うと何故かトレーニング効率が良くなるらしいです。

 原理はさっぱりわからないのですが、この世界は不思議なことがいっぱいあるので気にするだけ無駄だと思います。

 

「リリィ、初めて海を走った感想はどう?」

「とっても楽しいです! でも曲がるのが難しいですね。ライスちゃんは曲がれてるようですけど、多分私は力が入りすぎてるんじゃないかな? って思います」

 

 実際に海の上を走れて、テンションが上がりすぎたのもあると思います。

 ……実はですね、るるちゃんに聞いたのですが『ウマ娘が海の上を走れる』のは割とみんなが知っている話らしいです。

 テレビではもちろん、ネットでもそういう動画などが出回っているらしいですが、私はそういうのには興味がなかったので知りませんでした。

 ちっちゃい頃の私はライスちゃんと遊ぶ方が楽しかったというのもあります。あと、ママやパパとアニメも見たりしていました。好きなアニメはドラゴンボールです! でも昔のやつは引き伸ばしが多いのが気になりましたね。

 

「ダメだったところが分かってればいいのよ。そこから直していけばいいんだからね。私はウマ娘じゃないからそういう感覚的なところは教えられないけど、他の事は教えられるからね」

「失敗ではなく、成功への一歩です! ……あっ、ライスちゃんがそろそろ限界ですね。リリィちゃんスタンバイです!」

 

 ライスちゃんが「ふえぇ〜っ!」とかわいい声をあげながらドボンしました。結構な時間走ってましたね。私はすぐに落ちてしまいましたが。

 

「リリィちゃん、行きまーす!」

「ネタが古いわよ、リリィ……」

 

 

 

 

 

 午前中のトレーニングが終わって、お昼ご飯の時間になりました。いっぱいトレーニングしたからお腹がぺこぺこです。るるちゃんとはいったんお別れです。

 ライスちゃんとお昼ご飯を食べに行く途中でキョウちゃんとブルボンちゃんを発見したので、一緒にお昼を食べに行くことにしました。

 ご飯はみんなで食べた方が美味しいですからね! アッシュちゃんはスプリンターズステークスに向けて、フラワーちゃんとバクちゃんと一緒に行動しているらしいです。

 

 みんなで席についてご飯を注文します。今日はガッツリ食べたい気分ですね。みんなも何を頼むのか決めたので、店員さんを呼んで注文をします。私はそうですね……

 

「焼きそば、からあげ、コロッケ、カレー、チャーハン、天津飯、にんじんハンバーグ、野菜炒めをお願いします。量はウマ盛りで!」

 

 多分足りないのであとで追加すると思いますが、とりあえずはこれでいいでしょう。ライスちゃんも私と同じような感じで注文しました。

 最近私とライスちゃんは食べる量が増えてきました。たぶん、以前よりも成長しているからいっぱい栄養が必要なのでしょう。それで食べる量が増えているんだと思います。

 まぁ、私もライスちゃんもちっちゃい頃からいっぱい食べる子でしたが。

 

「前々から思っていたが、君達の体のどこにそれだけの量の食事が入るのか、まるで理解ができないよ……」

「体格的にこの中で一番大きい私よりも食べますからね」

「最近は昔より食べる量が増えてきたんですよ。成長期ですね!」

「……身長は伸びてないんだけどね。ライス、もうちょっと大きくなりたいなぁ」

 

 ライスちゃんの身長は高等部になってから全く変わってないそうです。かわいいから問題ないと思います。

 私は中等部2年生ですが、これから伸びたりするのでしょうか? 今は138センチしかないので、もうちょっと大きくなりたいですね。できればライスちゃんと同じ目線ぐらいになりたいです。

 

「ウマ娘の肉体は科学じゃ解明できないことだらけだしな。そういえば、我々の名前……ワタシなら『キョウエイボーガン』だな。このウマソウル由来の名前だが、自身のヒトとしての名前と似ていない場合が多いらしいぞ」

「昔、そのような話を聞いたことがあります。ウマ娘としての名前は、三女神様から授かるものと言われていますね。私の場合は、小さい頃に突然頭の中に『ミホノブルボン』という名前が浮かんできました」

「ライスはちっちゃい頃お母さまに『あなたは今日からライスシャワーよ』って言われたの。突然言われた事だけど、それが自分の名前だって、すぐに受け入れられたよ」

「そもそもウマソウルも、ソウルってついてる割に魂とか関係ないらしいですね。私の場合は、私が生まれた時にママの頭の中に『シロノリリィ』っていう名前が突然出てきたらしいです。でも私のヒトとしての名前とウマ娘としての名前はすごく似ていますよ」

 

 ウマ娘の名前を授かるのは大体がちっちゃい頃と言われています。名前を授かるまではヒトとしての名前で生活して、授かってからはほとんどの人がウマ娘の名前で生きるそうです。

 昔テレビで見たのですが、ウマ娘名とヒト名のギャップがある人を探そうという企画がありました。そこで『キラキラプリンセス』というウマ娘さんが出てきたのですが、なんとヒト名が『七々扇 紫衣美(ななおうぎ しえみ)』という渋カッコいいやつだったんです! 見た目もカッコイイ系でしたよ。

 名前を授かるのって、不思議な話ですよね。こういうところもウマ娘がよく分からない(神秘的な)種族と言われる理由です。

 

「そうなのか? よければ教えてくれないか?」

「いいですよ! 私のヒト名は『白井 百合(しらい ゆり)』です!」

「いい名前じゃないか。君に似合っていて可憐だな」

「白井はそのまま“シロ”で、百合は英語で“リリィ”、もしくは“リリー”。そう考えると『シロノリリィ』はものすごく直球ですね」

「そういえばリリィちゃんって、初めて会った時からずっとリリィちゃんって呼ばれてたね」

 

 物心ついた時からずっと、周りからは『リリィ』と呼ばれていました。人によっては、“ちゃん”を付けて呼ばれていました。ヒト名で呼ばれた事はほとんどありません。

 『百合』という名前は、『百合の花にはたくさんの色や意味がある。だからどんな風にでも咲けますように』。という意味が込められているそうです。とっても素敵ですね!

 どちらの名前も私は大好きです! 私のために、私の事を想って付けてくれたとっても大切な名前ですから。

 この後みんなのヒト名を聞いたのですが、ウマ娘名と全然関係ない名前ばかりでした。ライスちゃんのヒト名は昔聞いたから知っていましたけどね。

 

 

 ご飯を食べ終えて、私達がやっていたトレーニングが話題になりました。どうやら私とライスちゃんが海の上を走っていたのをみんなに見られていたらしいです。まぁ、隠すようなことではありませんが。

 

「誰が走っているのか確認して、それが君達だと気付いて驚いたよ。思わず二度見してしまったね」

「楽しそうでしたね。私も後で、マスターに許可を取ってやってみたいと思います」

 

 そんな事を話していたら、外が騒がしくなっていることに気がつきました。みんなでそちらを見ると……

 

「あれは……リギルとスピカか?」

「どうやら海の上を走っているようです。見てください、重心にブレがありません。凄まじいですね」

 

 全員が当たり前のように海の上を走る姿は、ドリームシリーズに所属するウマ娘にふさわしい貫禄がありました。スピカの人達はイメージ通りなのですが、リギルの人達も走っているのはちょっと驚きましたね。

 マルゼンスキーさんが前傾姿勢で腕を組みながら走っています。たしか、十傑集走りというやつですね。キョウちゃんから教えてもらいました。

 ゴールドシップさんは海の上でコサックダンスをしていたのですが、沈む事なくその姿勢のまま縦横無尽に動いていました。なんで沈まないのでしょうか? これが不沈艦とよばれる由来ですね、きっと。

 シンボリルドルフさんもすごくいい笑顔で走ってます。とても綺麗なフォームのバック走で走るその姿は、さすがは無敗の三冠ウマ娘にして生徒会長を務めるウマ娘です。とても洗練された動きです。私もあんな感じで走れるようになりたいですね!

 

「ライスちゃんみてみて! バック走で爆走してる!」

「ふわぁ……すごいね」

 

「ブフォッ!?」

 

 ん? 近くにいたウマ娘さんが咽せてしまったようですね。飲み物が変なところに入ってしまったのでしょうか?

 あの人は……ナイスネイチャさんですね。カノープスに所属するウマ娘さんで、私と同期のマチカネタンホイザさんの先輩です。

 私はあまり接点がない人ですが、今回の合宿でキョウちゃんとカノープス――タンホイザさんが合同で練習をしているので、少しだけ話す機会がありました。そしたらなぜかスルメをもらいました。おいしかったんですけど、なんでスルメを持ち歩いていたのでしょうか?

 

 

 

 

 

「んにゃあ〜! にゃにゃにゃにゃあ〜!」

「ふふっ。お疲れ、リリィちゃん」

 

 午後のトレーニングを終えたリリィちゃんです。とっても疲れました! お風呂入ってご飯食べて寝たいです!! 

 ライスちゃんと併走したり、3000で模擬レースをしたり、とっても大変でしたがいい経験になりました。模擬レースの方はボッコボコに負けてしまいましたが、ライスちゃんの走り――長距離の走り方を観察できたのが今日の成果です。まあ、見ただけで実践できるようなものじゃありませんけどね。

 

「やっぱりライスちゃんは強いね! さすがライスちゃん! かわいい! すき! だいすき!!」

「えへへ。長距離は、ライスの得意距離だから。リリィちゃんにも負けないよ!」

 

 最初の3000は31バ身も差をつけられてしまいました。ガンガンにマークされてゴリゴリにスタミナを削られてしまったというのもありますが、単純に私のスタミナ不足も理由の一つです。

 私の前でも後ろでも横でも、どこにいてもスタミナを削る技術は驚異としか言いようがないです。さすが私のライスちゃんです! ……でもですね、そのせいで今の私はへろへろリリィちゃんです。

 だけど、本番までまだ時間はあります。その時までに強くなって、みんなに勝ってみせますよ! 毎日コツコツトレーニングです!

 

「うんうん。やる気があってなによりよ。お姉さまとっても嬉しいわ。……でもね、体力を使い果たして動けなくなるのはダメよ?」

「ふふーん! リリィちゃんとってもがんばりました! 今日は体力の配分を間違えてしまいましたが、明日からはきっと大丈夫です。リリィちゃんはとってもかしこいので!」

「もう……仕方ないわねぇ」

 

 そうは言ってますが、るるちゃんは優しく微笑んでいます。

 確かに今の私は動けませんが、問題ありません。なぜならライスちゃんがいるからです。

 

「ライスちゃん! だっこ!」

「うん、いいよ」

 

「あっ……待って、ライスもそろそろ限界――」

 

 るるちゃんが言った通り、体力の限界だったのでしょう。ライスちゃんが私を抱き上げた瞬間に全身の力が抜けてしまい、「ふにゃっ?」っとかわいい鳴き声をあげて二人とも倒れそうになりました。

 いけませんね。このままでは二人とも倒れてしまいます。ライスちゃんに抱きついた瞬間に少しだけですが体力を回復できたので、それを振り絞って奮起し、ウマ尻尾を地面に突き刺して私とライスちゃんが完全に倒れてしまうのを防ぎました。

 

「あわわっ! ……ごめんねリリィちゃん」

「大丈夫だよ! ライスちゃんこそ大丈夫?」

「えっ? 尻尾、地面に刺さって……えっ?」

 

 なぜかるるちゃんが地面を凝視していますが、ライスちゃんに怪我がなくて一安心です。でも移動する体力が無くなってしまいました。

 ライスちゃんも私と同じで体力切れなのでしょうか? 私の胸に顔を埋めてぐりぐりしています。

 

「えへへ。リリィちゃんすき」

「えへへへ。……るるちゃんるるちゃん、リリィちゃんそろそろ倒れちゃいそうです」

「体ぷるぷるだけどお顔ゆるゆるね。それじゃあ、お姉さまは百合の間に割り込み隊長させてもらうわ」

 

 るるちゃんが私とライスちゃんをそれぞれ片手に抱き抱えて持ち上げました。おお〜! るるちゃん力持ちですね!

 

「ライス達、重くない?」

「私はお姉さまよ? 愛バの二人ぐらいどうって事ないわ」

「るるちゃんすご〜い!」

「ふふふっ! もっと褒めていいわよ! 二人を抱えて、まさに“両手に花”ってとこかしら」

「ライス達のこと、落とさないでね?」

「落とすわけないでしょ。私はお姉さまよ? 全身全霊、魂を込めてお姉さまを遂行す……──ひゃわわ!?」

「えへへ。るるちゃんすきっ!」

「あっ……リリィちゃんのほっぺすりすりで、お姉さますごい顔になってる……」

 

 るるちゃんに抱きついてる時も私は安心します。一番がライスちゃんで、ママとパパが二番。るるちゃんは三番目ですけどね!

 

「はわわ! ふぐっ……! 耐えて、みせるわ……! 私は……お姉さまよ!!」

「ライスもするね。えいっ」

「えっ!? ライスも!?!? あっ♡ ちょっと死ぬ……♡」

 

 

 

 私達を抱えたるるちゃんがなんだかすごいことになっていますが、この後無事に戻る事ができました。

 夏合宿はまだ始まったばかりです。いっぱいトレーニングして、もっと強くなります! 菊花賞に向けてがんばるぞ、おー!




リリィちゃんのスキル解説です。
前回のジャパンダートダービーでスキルがパワーアップしました。

スーパーリリィちゃんパワー(レアスキル)
苦手なバ場でも距離でも私のスーパーパワーで捻り潰します! 得意なとこだとなんかいい感じになります!

・バ場適正と距離適性がAに満たない場合、適正Aと同じになるように補正される。この時Aから離れているほどレース中の持久力の消費が少し増える。
・適性がA以上の場合、バ場ならパワーが、距離ならスピードが少し増える。Sなら更に上昇する。

以前のスキルはこんな感じです。

リリィちゃんパワー(ノーマルスキル)
苦手なバ場でも距離でも私のパワーで捻り潰します!
・バ場適正と距離適性がAに満たない場合、適正Aと同じになるように補正される。この時Aから離れているほど持久力の消費が増える。
※このスキルは最初から習得済みで育成が開始される。

おまけ

「ライスちゃんみてみて! バック走で爆走してる!」
 
「──ッ!」
 
シンボリルドルフの賢さが更なる高みを目指して2上がった
シンボリルドルフのスキルポイントが30上がった
シンボリルドルフとの絆ゲージが15上がった
 
「ブフォッ!?」
 
ナイスネイチャの賢さが5上がった
ナイスネイチャのスキルポイントが30上がった
ナイスネイチャとの絆ゲージが15上がった


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第33話 リリィちゃんキックは破壊力!

「……またここですか」

 

 私リリィちゃん。今真っ白な場所にいるの。

 最近よく見る変な夢なのですが、なぜか頻度が上がって困っています。私の中の秘められたパワーが目覚める前兆でしょうか?

 しかもですね、この夢は起きたら記憶に無いんですよ。こうして“ここ”に来れば思い出すのですが、そういうところも不思議ですよね。寝不足とかにはならないから構わないのですが。

 

「今日で確か……4回目? 流石に飽きてきました。ライスちゃんもいませんし」

 

 特にここで出来ることもないですし、景色もほとんど変わりません。変わってるのも真っ黒な扉だけです。正確に言うと、扉に付いてる鎖が毎回少しずつ減っています。

 

「あと3本ですね。なんで減ってるのかは分かりませんが」

 

 ……もしかして、私の成長に合わせて減ってるのでしょうか? リミッターみたいな感じで、壁を超えるごとに鎖が外れていく仕様なのかもしれません。

 でも私、限界突破(はず)そうと思えば多分やれちゃうんですよね。壊れるって分かってるからやりませんが。

 レースで使ったらコケちゃいます。100%を超えるとそれだけでとっても負担になってしまいますからね。リリィちゃんボンバーも100%(げんかい)は超えないようになっています。

 

「――おっ? そろそろ起きる時間ですね!」

 

 私の意識がぼんやりしてきました。これは元の世界に戻る合図みたいなものです。さすがに4回目ともなれば慣れてきます。別に慣れたいわけじゃないのですが。

 

「やっぱり謎です。なんで私はこの場所に――」

 

 

 

 

 

 

 

 空っぽの器に、嘘という汚泥と醜い願望を込めたそれは、果たして皆の心にどう響いたのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 今は8月の初旬。私達の夏合宿もついに後半戦です。

 日焼け止めはきちんと塗って、お肌のケアも万全のリリィちゃんです。塗ってくれるのはライスちゃんですけどね!

 

 私達が海を走っていたトレーニングを覚えていますか? 長いので“海上走行トレーニング”と呼ばせてもらいますね。そう、あのトレーニングです。私達が始めたての頃は、ちょっと走って海にドボンっ! と落ちていました。ですが、今のリリィちゃんはですね……

 

『リリィー! その調子よ、頑張って!』

「はーい!」

 

 なんと……最大3分ほど維持できるようになりました! どうですか? すごいでしょう! ぱちぱちぱちー! いっぱいほめてください!

 ふっふーん! さすがはリリィちゃんです! でもライスちゃんは5分ぐらい走れます。ステイヤーとマイラーの差でしょうか? やっぱりライスちゃんはすごいです!

 このトレーニングのおかげで、以前よりも長距離が走りやすくなった気がします。でもライスちゃんとの併走は1回も勝てた事がないです。ぐぬぬ……悔しいです! 合宿中に勝ってみせます! あっ……そろそろ私のスタミナが尽きてきました。

 

「――にゃぼおっ!!」

『2分58秒! 惜しいわ、もうちょっとだったわね』

 

 ごぼごぼ……私の最長記録は『3分1秒』です。るるちゃんが言っていた『長距離に慣れる』という目標からすると、まあ概ね達成したと言えるでしょう。菊花賞の歴代優勝タイムも大体3分とちょっとですからね。

 合宿を始めた時と比べて、私のスタミナは大幅に成長したと思います。もちろん他の能力もです。今のリリィちゃんなら桃白白も倒せそうです。

 

「むむぅ……なかなかタイムが伸びませんね。私とライスちゃんの何が違うのでしょうか?」

 

 実際のレースとトレーニングではスタミナの消耗は違います。当たり前ですが、コースには坂があったり、大勢のウマ娘さん達がいたりします。ただ海上を走り続けるだけならともかく、本番のレースとなれば今の私のスタミナでは厳しい戦いになるでしょう。

 今の私に必要なのは技術だと思います。私と違って、ライスちゃんはそういうのが得意なのでよく観察しなければいけません。

 

「じ〜っ……」

「どうしたのリリィちゃん?」

 

 今日もライスちゃんはかわいいですね! すき!

 

「ライスちゃんすきっ!」

「えへへ。ライスもだよ」

『こらそこ、いちゃいちゃしない』

 

 おっと、これではいつもと同じです。ライスちゃんをよく見て、長距離のコツを探さなけれ……直接聞いた方が早いのでは?

 

「あのね、ライスちゃんを観察して長距離のコツを探してたんだけど、直接ライスちゃんに聞いた方が早いって思ったの」

「そうだったんだ。……ん〜とね、ライスが思うコツは息の入れ方かな」

「息の入れ方? 波紋の呼吸みたいな感じ?」

「そこまでじゃないけど、認識としてはそんな感じ。短い時間で効率よく呼吸したり、レースなら息の入れるタイミングを考えたりとか」

「ほほ〜ん……」

 

 私はそこら辺が結構雑です。ほとんどカンでやってます。

 そういう練磨された技能の事を『スキル』と呼ぶらしいです。かっこいいですね! 私のリリィちゃんボンバーもスキルと言えるのでしょうか?

 

「ライスちゃんライスちゃん! ライスちゃんのそれって、名前とかあるの?」

「な、無いけど……どうして?」

「だって名前あった方がかっこいいじゃん!」

「……そうかなぁ?」

 

 ライスちゃんにスキルのコツを教えてもらいます。今まであまり意識してなかった事なので、すぐに実践するのは厳しいと思いますけど。でも、菊花賞でみんなに勝つために覚えなければいけません。

 そういえば、スキルとは別なんですけど、強いウマ娘さんは二つ名が付けられます。例えばタマモクロスさんは『白い稲妻』、オグリキャップさんは『芦毛の怪物』、特に有名なのは7冠を達成した『皇帝』シンボリルドルフさんですね! 私もいっぱい勝ったら二つ名が付けられたりするのでしょうか?

 

 

 

 

 

「そういえば、キョウちゃんはこの後どのレースに出るんですか?」

「ん? あぁ、そういえば言ってなかったな。ワタシはセントライト記念か神戸新聞杯に出る予定だ」

「ということは……菊花賞ですか!? おぉー! 楽しみです!」

 

 お昼ご飯を食べ終え、みんなでおしゃべりをしていた時に私が尋ねました。今挙げられた2つのレースは菊花賞のトライアルレースです。リリィちゃんはちゃんと覚えていました。えっへん!

 

「ワタシがカノープスと合同練習しているのもそのためだ。君達に手札を晒さないようにし、さらに君達と近い実力を持つマチカネタンホイザ(彼女)の助力を得るためだ」

「言ってよかったのですか? 言わない方が本番で驚かせられたと思うのですが」

「甘く見てもらっては困るぞ、ブルボン。そもそもトライアルレースに挑んだ時点で意図が露出する。だから隠す労力が無駄なのだ。ならば、堂々と言った方が気分がいいだろう?」

「……一理ありますね」

 

 よく分かりませんが、多分高度な駆け引きというやつですね。リリィちゃんも、キリッとしたお顔をしておきましょう。

 

「……しかし、驚いたな。今の表情を見れば分かる。君達が、ワタシを侮っていない事にね。もう少し油断していてくれればこちらも楽になったのだがな」

 

「侮る理由がありません」

「油断なんてしません」

「そんな事しないよ」

 

 

『だって、(ライバル)だから』

 

 

「…………そうか。……そうか」

 

 そっちは分かります。キョウちゃんの頑張りはずっと見てきましたからね! リリィちゃんが油断なんてするはずありません!

 私達が断言した後キョウちゃんは目をパチパチ瞬き、少し赤くなった顔を逸らして立ち上がりました。

 

「どうやらワタシは、君達の事が大好きらしい」

 

「奇遇ですね、私もです」

「私もー!」

「ライスも、だよ!」

 

 一度こちらを振り返って、「では、トレーニングの時間なのでな」と離れていきました。周りでカノープスの皆さんがわちゃわちゃしていましたが、とっても楽しそうな雰囲気です。

 

「では私も。そろそろ『ミホノブルボンパーフェクトブーストバーニングファイアー』を完成させなければいけませんので」

「――ッ! なにそれ、ちょう見たい!!」

「さすがにそれは嘘だって、ライスでも分かるよ……」

 

 ……うそなの? リリィちゃん騙されちゃいました。……まあいっか!

 さあ、ここからライスちゃんとの併走トレーニングです。ライスちゃんから教わった息継ぎのコツを覚えましょう! がんばるぞ、おー!

 

 

 

 

 

 併走トレーニングを終えたので結果から言います。だめでした。

 前よりちょっと楽に走れる様になりましたが、まだまだというのが現実です。でも間近でライスちゃんを観察して、ちょっとコツが掴めてきました。

 そのおかげで以前まで18バ身差をつけられていたのが、なんと15バ身まで縮みました! 初日の31バ身差と比べるととっても進歩しています。さすがリリィちゃんですね! ライスちゃんも私と同じぐらい強くなってるんですけどね。

 

「絶対に追いついてみせるからね、ライスちゃん!」

「ライスも楽しみにしてるよ」

 

 今は寝る前のちょっとしたおしゃべりタイムです。お部屋には私とライスちゃんとるるちゃんがいます。お風呂もご飯も済ませたので、とってもリラックスしています。

 

「息継ぎのコツ教えてもらったけど、やっぱりすぐには実践できないね。合宿が終わるまでには覚えたいな〜」

「リリィちゃんは合宿の後レースの予定がないから、まだ時間的な余裕はあると思うよ?」

「……そういえばそうだったね。でも覚えられたらかっこいいじゃん!」

「なぁに? 何の話?」

「スキルの話! ライスちゃんに息継ぎのコツを教えてもらってるの!」

「……スキル? お姉さまは瞬間移動が欲しいわ」

 

 るるちゃんはスキルという概念は知っていた様です。割と有名な話なのでしょうか?

 

「そういうのって名前とかつけないの? 魔閃光とかおすすめよ」

「ライスだけど、それじゃあ悟飯だよ……」

「リリィちゃんはギガンティックミーティアがいいです!」

「……ブロリリィちゃん……なんちゃって。あ、えっと……スキルの事はね、ルドルフさんが色々説明してくれたの。あの時びっくりしちゃったな……」

「え? ルドルフって、シンボリルドルフ? なんで接点も無いあなた達に話しかけてきたのよ?」

 

 ルドルフちゃんが話しかけて来たのはお昼ご飯を食べていた時です。なんか「君から私と同じ“波動”を感じた」とかなんとか言われて少しだけお話ししました。すっごくびっくりして「はぁ、どうも」とそっけない返事になっちゃったのは失敗でした。なぜかその後ものすごくご機嫌になってましたが。

 その波動とやらは何か分かりませんが、スキルとか領域とかなんか色々ためになる話をしてもらいましたね。

 ルドルフちゃんと私が呼んでるのは、みんなにもっと親しみを持ってもらいたいと本人が言ってたからです。

 スキルは本人専用のやつと汎用スキルがあります。汎用スキルは様々な人が習得できる技能の事で、ドラゴンボールで例えると舞空術とか気功派ですね!

 私のリリィちゃんボンバーは専用技と言えるでしょう。ルドルフちゃんも真似できないって言ってましたからね!

 お話の流れでリリィちゃんボンバーを披露したら、「“君専用の技”という点では正しく専用技だ。……しかし、技能(スキル)と呼ぶにはゴリ押しすぎないかな?」との評価でした。リリィちゃんのパワーで無理やり加速してるだけなので正しい評価ですけどね。一目で見抜くとは、ルドルフちゃんはすごいです!

 でもこの後「しかし、このまま磨き続ければ、いずれ唯一無二の君だけの刃となるだろう」って言ってくれました。ルドルフちゃんに褒められゃいました。ふっふっふーん!

 

「なんかね、お昼ご飯食べてたら話しかけられたの。それで色々お話しして、ルドルフちゃんの経験を交えた話とかすっごくためになる事を教えてもらいました」

「『領域は、勝敗を決める一要素になるが、あくまで一つの手札でしかない。真に勝敗を決めるのは錬磨された肉体、精神、技術だよ』……とか。昔、ルドルフさんも領域を頼りにしすぎてそこから崩された事があるって言ってたの」

「お姉さまからすると領域って超サイヤ人的なイメージがあるんだけど、基礎戦闘力が低かったらいくら超サイヤ人でも大した事はないって事ね。無理やり潜在能力を引き出してるのも、共通点かしら?」

 

 『領域は、絶対では無い』。そう語るルドルフちゃんはどことなく嬉しそうでした。何か昔そういう出来事があったのでしょうか?

 でも勝敗を決めるための後一手とか、そういう時に使えるといい感じだと思います。私ははまだ使えませんけどね!

 人によっては領域の景色は様々らしいです。ライスちゃんはチャペル? 結婚式場? みたいな場所でとっても綺麗でした! 私は剣とかいっぱい出してズバババーッ!! ってやりたいです!! でもどういう原理であれを発動しているのでしょうか? 不思議ですね。

 

「さすがに超サイヤ人ほど強力じゃないよ? 言葉にすると、『ものすごくテンションが上がって幻覚が見えてちょっと足が速くなってほんちょっと力が湧いて元気になる』ぐらいだし」

「ちょっと言語化するのを憚られるわね、それ……」

 

 

 

 

 

 それから色々あって、8月の終わり頃。過酷なトレーニングをこなした結果、リリィちゃんは(スーパー)パワーアップしました! 今の私のパワーはすごいですよ! どれぐらいすごいのか見せてあげます!

 まず、地面に根を張る様にしっかりと立ち、なおかつ全身の無駄な力を抜きます。次に左足を軸にして上半身を前に倒し、右足を後方上部へと伸ばして力を溜めます。フィギュアスケーターの様なポーズですね。そして精神を集中させ……溜め込んだ力を解放! 鞭のようにしなる私の足が、目の前の海を破裂音と共に切り裂きました。

 上がる水飛沫。抉れる砂浜。そして、時間差で降り注ぐ海水。どれもがこの技の破壊力と完成度を物語っています。さすがリリィちゃんです!

 

「…………名付けて、『リリィちゃんウィップ』です!!」

 

「……海が、割れた……!?」

「ふわぁ……」

 

 ふふーん! 新たな必殺技獲得です! さっきは足でやりましたが、腕でもできますよ!

 今回の海上走行トレーニングにより肉体が満遍なく鍛えられ、この前の水中走行トレーニングで身体の効率の良い使い方を学習した結果、この必殺技ができました。もちろんレースの方もちゃんと上手くなりましたよ!

 そして、なんとですね……私の『リリィちゃんボンバー』の改良に成功しました! 先ほどのリリィちゃんウィップに使われた技術が、私のリリィちゃんボンバーを進化させる鍵だったのです。詳しくは秘密です。本番の菊花賞を楽しみにしてください!

 

「これでるるちゃんの言ってた目標も達成ですね! ライスちゃんに一回も勝ててないのは残念ですが」

「まあそれはしょうがないんじゃない? さすがに夏合宿のトレーニングだけで勝てるほどライスは甘くないわ。さすが私ね!」

「……お姉さまがそれを言っちゃうの? ライスとリリィちゃん、両方同じぐらい育てあげたのはすごいけど」

 

 複数のウマ娘を育成すると普通は偏りが出ます。トレーナーの得意不得意、育成するウマ娘個人の才能、他にも色々な要素がありますが、それらの要素全てをまとめてなんやかんや上手くやってしまうるるちゃんはとってもすごいですよね。

 

「まあ、ぶっちゃけ私は二人の能力をいい感じに伸ばしてるだけなんだけどね。そしたらお互い競い合っていい感じに刺激しあって、なんかいい感じに同じぐらい成長したってだけなのよ」

 

 ……それを実践するのが難しいのでは? リリィちゃんは訝しみました。

 適性とか伸び代とか、普通は見ただけじゃわからないのですが、るるちゃんは「()れば大体理解(わか)る」と言います。スカウターよりも高性能ですね。

 実際に私のお友達とカノープスさんを見てもらった時、全員の適性を言い当ててました。そういえば初めてるるちゃんと会った時も普通に私の適性をぴったりと言い当てられましたね。

 そういえば、るるちゃんにトレーニングを見てもらってからは大きな怪我とかをした事がありませんね。小さい頃の私は加減が分からずによく筋肉痛になったりしていましたが、今ではそれも起こらないです。レース後の疲労とかはさすがに防げませんが、普通はどれだけ見極めても大小問わず怪我が発生するそうです。

 壊れないギリギリを見極めて過酷なトレーニングをさせる。言葉にすると簡単ですが、実際にやるのはとっても難しい事です。リスクを負わなければ結果は得られない。当然の事ですが、失敗したら全てが水の泡です。それでも、強くなるためにそこへ手を伸ばし、そうして全てを失うのも珍しくない話です。

 私は私の事を頑丈に産んでくれたママとパパにいつも感謝しています。おかげで無茶に耐えられましたからね。私が普通の身体だったらとっくの昔に壊れていたと思います。

 トレーニング中に気になって「これ以上やったらどうなるの?」と聞いたら、「折れる。千切れる。走れなくなる」と、サラッと言われてあわあわしました。

 

「るるちゃんはすごいですね!」

「うふふ。ありがと、リリィ」

 

 

 

 

 

 トレーニング終えて色々済ませてお部屋に戻って来ました。明日は近所で夏祭りがあるので、みんなと一緒におでかけです! 去年はライスちゃんと一緒にデートして、途中で花火を見てライスちゃんとキ…………えっと、るるちゃん達と合流しました!! はいっ!!

 今年はブルボンちゃんも一緒に色々見る予定です。ブルボンちゃんは小さい頃にこういうのを不要と判断して行った事が無いから実質初めてだそうです。去年はずっとトレーニングしてたらしいです。ストイックですね。

 

「確か、浴衣持って来てたんだっけ? 去年も可愛かったから、お姉さま楽しみよ」

「かわいくて綺麗なライスちゃんが見れますからね!」

「かわいくて綺麗なリリィちゃんが見れるからね!」

 

 浴衣の着付けはライスちゃんがやってくれます。トレセン学園に入る前はママにやってもらってました。

 私の浴衣はライスちゃんが選んでくれたやつです。ライスちゃんの浴衣は、ライスちゃんが選んだ中から私が一番似合うと思ったやつです。なのでライスちゃんがとってもかわいいんです! 最高ですねっ!!

 というか、私の私服はほとんどライスちゃんに見繕ってもらってます。私自身、今まで服には余りこだわりがないのでママが選んだ服を着ていたのですが、ライスちゃんが「もったいない」と強く主張してきたので、それからはライスちゃんに選んでもらっています。

 正直自分で選ぶのがめんどくさいので助かってます。リリィちゃんはとってもかわいいので、よっぽど変なデザインじゃなければ大体の服が似合っちゃうのです。だから服にこだわりとかがもてなかったんですよね。

 トレセンに入る前はママの着せ替え人形で、今はライスちゃんの着せ替え人形です。楽しそうだからいいんですけどね!

 

「明日は晴れですよね? 花火がとっても楽しみです!」

「花火も楽しみだけど、ライスは屋台の方も楽しみ。焼きそば、綿飴、かき氷。にんじん焼きに、リンゴ飴……! えへへ、いっぱい食べたいなっ……! お姉さまは何か食べたいもの、ある?」

「焼き鳥とビール」

 

 パパもお祭りの時よく食べてたやつです。パパに分けてもらって、お膝の上で食べてたからよく覚えてます。

 甘いやつならわたあめとりんご飴が好きです! でもチョコバナナもおいしいんですよね……! おいしいものがいっぱいあるのも夏祭りのいいところです!

 お祭りといえば、射的とか他にも変な屋台もありますよね。私はくじ引きでゲーム機を当てたと喜んでいたら、パチモンの変なゲーム機もどきでがっかりしたことがあります。当てた時に嬉しくてパパに報告したら「粗悪な模造品だね」と言われてショックでした。なんですか、『威力棒○ii』って……

 

「お祭りのくじって、たまに変な当たりがありますよね。リリィちゃんはゲーム機のパチモン当てました」

「ライスはハズレばっか引いてたよ……」

「いつの時代も変わらないものね。私の時は、コピー用紙の“青眼の白龍(ブルーアイズホワイトドラゴン)”が当たりだったわ。もちろん当たらなかったけどね」

「しょぎょーむじょーですね」

 

 こういう理不尽を経験して、人は大人になっていくのでしょう。

 たまに悲しい事もありますが、お祭りは私にとって楽しい思い出がたくさんです。ちっちゃい頃はママやパパと。ライスちゃんと会ってからは私の家族とライスちゃんの家族と、それぞれお出かけしました。

 私がお引っ越ししたから、ライスちゃん達とお祭りに行ったり遊んだ時間は少ないですが、その分思い出はいっぱいです。これまでも、これからもたくさん増えますけどね!

 

「さっ、そろそろ寝ましょうか。明日も早いしね〜」

「そうですね。よい子は寝る時間です」

「うん。それじゃあ……リリィちゃん、お姉さま、おやすみなさい」

「おやすみ〜……」

 

 

 

 トレーニングはちょっぴりキツイですが、私は毎日とっても充実しています。

 そのトレーニングにしても、乗り越えれば達成感に満ちますし、自分が強くなってると実感できるから好きです。

 レースだって、ライバルのみんながいて、負けちゃったらとっても悔しいけど、勝った時はその分とっても爽快です。

 お友達がいて、私を応援してくれる人がいて、私を支えてくれる人がいる。……そして、ライスちゃんがいます。

 

(──……私、しあわせだなぁ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ? また来ちゃったみたいですね」

 

 私の目の前に、お馴染みの光景(真っ白な場所)が広がっていました。

 ふむぅ? さっき眠ったはずなのですが、またここに来てしまいましたか。明日はお祭りなので、正直来たくなかったのですが。

 

「ここ、やる事なくて暇なんですよね。広くて何もないとこだけ精神と時の部屋っぽいんですけど、何も負荷がかかったりしませんし、起きたら忘れちゃうから修行にも使えないんですよね」

 

 謎空間だというのにユーハバッ……斬月のおじさんもいないですし、白い私――私が白いので黒かな?――も出てきません。九尾も封印されてないし、洞爺湖仙人もいないです。ファラオもいないしシャドウもこんにちはしないです。

 

「あっ……両面宿儺だけはいやです」

 

 呪いの王はいらないです。さすがのリリィちゃんもあの人とは仲良くなれそうにないです。

 と、そんな事を考えていて気づいたことがあります。この場所でただ一つだけ変化していた例のあれ。そう、真っ黒な扉の鎖が完全になくなっている事に気がつきました。

 

「鎖、無くなっちゃいましたね。……ほほう? ……ふふん? ……何も起きませんね?」

 

 少し離れて注意深く観察します。もしかしたら近づいた瞬間に爆発するかもしれません。

 リリィちゃんアイに透視力はありませんが、見たところ変なところはありません。リリィちゃんイヤーは地獄耳というほどではありませんが、変な音は拾ってません。見た目に異常はありませんが、リリィちゃんはかしこいのでなんだかヤバそうなのは分かります。だから……

 

「──ぶっ壊しましょう!」

 

 ここでぶっ壊せば悩む事もなくなります。さすがリリィちゃんです! とってもかしこいですね!

 バックステップして扉から距離を取って構えます。余分な力は抜き、左半身を前にして、両手はあらゆる状況に対応するために自然体です。

 

「明日はみんなとおでかけでライスちゃんとデートなんです! こんなとこにはいられません! 私は元の場所に帰らせてもらいます!」

 

 そうです、私にはやらなければいけない事があります! みんなでお祭りも楽しみですし、菊花賞もまだなんです。長距離で最高の強さになったライスちゃんに勝ちたいし、まだまだいっぱいレースをしたいんですっ!

 

「うおぉぉぉ! トレーニングの成果をくらえぇ! リリィちゃん……キーック!!」

 

 全力ッ! 疾走ッ! 跳躍と共に放たれたリリィちゃんキックは、今まで繰り出したことのない威力(危ないから当然です)で見事に扉を粉砕し、私に勝利を確信させました。――けど、それは間違いでした。

 

 

(──やりました! リリィちゃん大勝利ですっ!!)

 

 

 浮かれる私の目の前に広がるのは、何も無い闇い(くらい)海。扉の向こうにあったのはさっきの場所と正反対の、真っ黒な世界でした。

 

「あわわっ!? なにこれなにこれゴバボボォッ!?!?」

 

 僅かな光すら無い黒い海に、私は勢いよく突っ込み……そして、そのまま沈んでいきました。

 




次回はキツくて重い内容なので、苦手な方は最初の方と最後の方だけ読めば問題ないです。


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第34話 『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』

 まっくらやみがここにある。つめたくて、かなしくて、さびしいだけのくろいうみ。

 

 わたしのあたまはどこにある? ては、あしは、からだは……どこにあるの?

 

 なにもみえない。なにもきこえない。ちからが、はいらない。

 

 うかんで、しずんで、ながされて。ここはどこなの? わたしは……わた、し……?

 

 

 わたし、は…………だれ……?

 

 

 

 

 

 

 なにかが、はいって、くる。

 

 

 

 ちが、う。これ、は……

 

 

 

 

 

 

 

 わた、し……が……わす……────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――自分の名前が嫌いだ。『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』という、空虚な文字の羅列が。

 『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』。苗字二文字、名前二文字のありふれた名前。俺という存在を区別するための記号。

 愛されれば祝福に、憎まれれば呪いとなるそれに、何も込められていないのならば。……それは、一体何になるというのか。

 

 

 

 物心がついた頃、俺の周りには二人の人がいた。

 父親と、母親。広いマンションに、三人だけの生活。それが俺の始まりで、俺が初めて見た世界だった。

 

 両親が俺に構う事は無かった。俺を見る事なく過ごす彼らに、俺は孤独を感じていた。義務的に、仕方なく、嫌そうに。挙動の節々に現れる彼らの感情を受けて俺は育った。

 俺を見て欲しかった。だけど、二人は俺を見てくれない。まるで、この世界の異物だとでもいうかのように、俺の存在を拒んでいた。

 俺がいるのにいない世界。俺のいない世界で二人は微笑う。ほんの一欠片でもいいから、“笑顔(それ)”を向けて欲しかった。温もりが、欲しかった。

 きっと、俺の何かがだめなんだろう。何がだめなのかは分からないけど、それでも振り返ってほしかった。

 だから何度も自分から話しかけた。けど、それを鬱陶しがった父に「黙っていろ」と押さえつけられた。大人と子どもの力の差、暴力の強さと怖さに怯える俺を見て、母はくすくすと嗤っていた。

 

 なにがだめなんだろう。どうして、なのかな。ごめんなさい。ごめん、なさい。

 

 俺のために用意されたご飯はいつも同じメニューで、俺は物足りなさをと空腹を覚えていた。食べるのはいつも俺一人で、一緒のテーブルにつく事は許されなかった。

 父と母の俺を見る目が怖かった。父が母と、母が父とだけいる時はあんなにも優しそうなのに。二人が俺を見ている時の目には何も映っていない。

 二人の視界に入らないように息を殺して、ひたすらに時間が過ぎるのを待っていた。時間が来れば飯を食う。呼吸を殺して部屋の隅で膝を抱える。そうして最後に、ぬるくなった湯船に浸かる。歯を磨いて、あとは体を丸めて布団の中で震えていた。

 明日が来るのが怖かった。このまま全部、終わっちゃえばいいのに。

 

 なんで、どうして。わからない。こわい、くらい、さむい、さびしい。ひとりは、いやだよ……

 

 

 

 

 

 両親は、側から見れば仲睦まじい夫婦だった。

 柔らかな物腰に端正な顔をした父と、魔性の美貌を持つ優しい母。おとなしくて手のかからない可愛いらしい息子。それが世間からの評判だ。

 父も母も、本性を隠すのが上手かった。俺が理不尽な目に合っていると主張したところで、世間の奴らの目には構ってほしいから(うそぶ)く子どもにしか見えないだろう。

 

迷惑かけないでね(良い子にしててね)

 

 俺と目線を合わせて、彼女は告げた。ゾッとするほど冷たい瞳に、真反対の柔らかな微笑を浮かべながら。

 俺が外へ出るために守らなきゃいけない事。まともに育児をしてない自覚はあったのだろう。俺の様子を見た周りに虐待だと騒がれたら面倒だから、そう俺に命令(お願い)した。

 嫌われたくなかった。だから、言う通りにした。そうすれば、俺を見てくれると思ったから。

 

 

 

 幼稚園に通うようになった頃、俺は自身の環境が普通じゃない事に気がついた。……いや、本当は薄々勘付いていた。

 きらきらした笑顔を向け合う家族を見てしまったから。それから目を逸らして、気付かないふりをしていた。

 遠くから見る親子のふれあい。言葉の節々から漂う、温かな感情。我が子に向ける慈しみの瞳。俺が知らない家族の温もりが、当然のように周りに溢れていた。

 目の前にあるのに、俺の手に届く距離にあるのに、決してそこには届かない。

 

 ……いいなぁ。

 

 

 

 目の前で見てしまったから、俺は望んでしまった。きらきらと輝く理想郷を、夢見てしまった。

 

「⬛︎⬛︎くん、とっても上手に描けたねぇ。お父さんと、お母さんに見せてみたら? きっと、喜んでくれるわよ!」

 

 幼稚園のみんなで絵を描いた。テーマは『自分の家族』。

 両親と手を繋いで満面の笑顔の俺と、それを優しく両側から見守る父と母。俺が憧れた家族の情景。心から渇望する寸景。

 先生が褒めてくれたのが嬉しかった。これを見せたら、何かが変わると期待していた。

 帰路の途中、いつも通り母は俺を見ていなかった。この冷たい瞳が変わってくれると、何の確信もないのに期待していた。

 

 

「あの……これ、みて、ください……」

 

 二人が揃った頃を見て、俺はあの絵を差し出した。

 怪訝な顔でそれを受け取った二人。中身を確認して僅かに目を見開き、数秒の沈黙の後に俺を見た。

 久しく見た感情のこもった瞳。その瞳がじいっと俺を睥睨している。

 緊張で心臓が高鳴る。喉がカラカラだ。怖い。けど、もしかしたら……

 

 父が手に持っていた絵をくるりとこちらに向けた。そして紙の真ん中の頂点を丁寧に摘み……ゆっくりと、俺の目の前で破り捨てた。

 

「不快だ。二度と見せるな」

 

 俺の目の前に散らばる“絵”だった物。「ゴミ(それ)、片付けておけよ」とだけ言って、二人がこちらを振り返る事は無かった。

 

 

 

「⬛︎⬛︎くん。あの絵、お父さんとお母さんに見せた?」

「……はい。とてもじょうずにかけていると、よろこんでくれました!」

 

 「まぁ! よかったわねぇ……!」と、我が身の様に喜んでくれる先生に嘘を付いた。申し訳なさで、胸がいっぱいだった。

 

 ご飯の味がしなくなった。

 

 

 

 

 

 小学校に入学した。

 

「必要なものがあれば、メモに書いておきなさい。あと、これは晩ご飯代」

 

 俺の目の前に置かれたのは、シンプルなメモ帳と500円硬貨だった。

 朝食は冷めたトーストと目玉焼きと水。自分達の朝食のついでに作られたものだ。お昼は給食を食べて、晩ご飯はコンビニで購入する。これが俺の小学生時代の生活だ。

 

 必要な事以外に会話はない。しつこいと殴られるから。痛いのは嫌だ。

 幼稚園時代にされていた、必要最低限の世話も無くなった。自分で出来るようになったからだ。

 娯楽は与えられない。俺には必要ないから。わがままは言えない。捨てられたくないから。

 

 

 

「自分の、名前の由来……?」

 

 小学校の授業で、自身の名前に付けられた由来を調べる事になった。

 子どもにつける名前というのはほとんどの場合、何か願いや希望などを込めるらしい。俺の名前は⬛︎⬛︎だが、これにも何か込められているのだろうか?

 

「先生の名前は『健志(たけし)』なんだが、意味は“健”康に、目標を“志”す。健康にすごして、目標をやり遂げてほしいという願いが込められてるんだ。どうだ? 良い名前だろう!」

「先生って名前あったの!?」

 

 誰かが茶化して皆が笑う中、俺は一人で僅かな希望を抱いた。既に裏切られたというのに、またしても期待したのだ。

 ほとんど呼ばれないこの名前だが、もしかしたら……などと、自分に都合の良い妄執に囚われて。

 

「⬛︎⬛︎くん。良い意味だといいねっ!」

 

 隣の席で無邪気に言うクラスメイトに、俺は微笑と共に頷いた。

 

 

 

「すみません、聞きたい事があるのですが」

 

 両親のことを、『父』と『母』と呼ぶ事はない。そう呼ぶと、酷く機嫌が悪くなるからだ。

 なので、外で家族ごっこをしている時にだけそう呼んでいる。

 母の返事はないが、拒否はない。彼女も放っておいた方が面倒だと理解してるからだ。

 

「学校の宿題で、『自身の名前の由来を尋ねてくるように』。と言われたので教えて欲しいのですが……」

 

 一瞬、目線だけをこちらに向けて沈黙した。

 いつもならばすぐに一言二言告げて終わるのに、珍しく考え込んでいる。それ故に、俺は期待してしまった。

 もしかしたら……もしかしたら、何かが――

 

「無いよ」

 

「……ない、のです、か……?」

 

「うん。ない。めんどくさいから、パッと思い浮かんだやつにした」

 

 唖然とする俺を尻目に、彼女は俺から顔を背けた。

 

「あぁ、理由がいるのか。……それじゃあ、好きなように書けば?」

 

 俺を見ずに彼女は告げた。興味もなさそうに、気怠げに。

 俺は礼を言ってそこから離れた。……さあ、どうしようか。

 

 

 

 後日、クラスで名前の由来を発表した。

 みんなは照れくさそうに、嬉しそうに、時には誇らしげに語った。

 

「俺の名前の由来は──」

 

「私の名前の由来は──」

 

「僕の名前の由来は──」

 

 彼らの話を聞くたびに、眩さに目を逸らしたくなった。自身の虚ろな名を、粉々に砕いて捨てたくなった。

 

「――うん、良い名前だな! それじゃあ、次は⬛︎⬛︎!」

 

 名前を呼んでほしかった。嘘でもいいから、意味が欲しかった。

 

「……はい。俺の名前の由来は──」

 

 

 空っぽの器に、嘘という汚泥と醜い願望を込めたそれは、果たして皆の心にどう響いたのだろうか?

 

 

 

 

 

 中学生になった。

 日常に暴力が増えた。

 いっそ⬛︎してくれればいいのに。

 会社の無能な上司や、ゴマスリだけが得意な同僚やらの相手をするのはストレスが溜まるらしい。

 皮肉な事に、彼と接した時間はこの頃が一番長かった。

 

 部活動はやらなかった。やりたい事がないから。

 勉強は多少難しくなったが、苦にはならない。現実を忘れられるから。

 趣味はない。特技はない。夢もない。

 早く⬛︎にたい。

 小学生時代と比べて、大きく変わった事はない。ただ少し、痛みが増えただけだ。

 

「……顔、似てきたな」

 

 鏡を見ながらぼやく。目の前に映る自分の顔が、最近父に似てきたと気づく。

 幼さが抜けて青年に近づいたこの顔が、嫌でも血の繋がりを示している。

 最近、特に父の機嫌が悪い。その理由の一つがこの顔なのだそうだ。自分に似てきたこの(ツラ)を見るのがムカつくだとかなんとか。

 お前達が、俺を産んだんじゃないか。なのに、それすら否定するのか。

 

 

 

 今日も俺は殴られる。毎日毎日殴られる。巧妙に、痣など残さぬ力加減で。

 だが、今日はいつもと違った。いつになく父は不機嫌で、俺を呼び出す声も些か低く感じた。

 この理不尽な暴力を振るう時が、唯一俺の名前を呼ばれる時だ。それ以外に呼ばれる事はない。

 

「……⬛︎⬛︎。ちょっと来い」

 

 すぐに行かなければ余計に反感を買う。そもそも、何もしてないからいつでも行ける状態なのだが。

 彼の前で正座させられ、俺は見下ろされる。視線だけで俺という存在を鬱陶しがってるのが分かる程に冷え切っていた。そうして彼は、己の中にある鬱屈とした感情を俺に叩きつけるのだ。

 声を荒げる事はない。俺の心を抉るように、丁寧に悪意を込めて、淡々と。

 目を逸らす事は許されない。心と、体。どちらも傷つけぼろぼろにするために。

 初めは耐えられなくて嗚咽した。そうすると、今度は暴力が来る。俺が限界を迎えるか彼が満足するまでそれは続き、今では一切の音を漏らさずに涙だけを流せるようになった。

 

「そうやって取り繕うのが上手いよな? あぁ、ムカつくぜ。俺と同じだよ、そういうとこ」

 

 正直なところ、もう限界だった。どうして今まで耐えられたのか不思議なぐらいに、俺の心は擦り切れていた。

 だから、襤褸(ぼろ)切れ同然の心は、隠されていた本音を吐露してしまった。

 

「…………どう、して……」

 

「……あぁん?」

 

 口答えされたと思ったのだろう。こめかみにミミズが這ったような筋が浮かぶ。しかし、次に吐かれた俺の本音が彼から表情を奪った。

 

「どう、して……俺を……産んだの……?」

 

 父はしばし呆然としていたが、次第に彼の貌が嗜虐に歪んでいった。吹き出しそうになるのを堪えてはいるが、弧を描く口元には隠せない悪意が滲み出している。

 

 言ってしまった。遂に、言ってしまった。

 言わなければよかったのに。言いたくなかったのに。

 聞きたくないのに。聞かなければよかったのに。

 俺は、言ってしまったのだ。

 

「……なんだ、そんな事か。大した事じゃねぇが、そんなに聞きたけりゃ教えてやるよ。それはな……避妊し忘れたからだ」

 

 

 ……………………違う。

 

 

「たまたま二人とも酔っててな、それが一発で大当たりしちまったんだ。世間体のために仕方なく産ませたが、参ったね。お前が産まれれば俺も父親の自覚が湧くかと思ったんだが、ところがそんなもん微塵も湧いてこねぇ。それは、アイツも同じだぜ?」

 

 

 ……………………やめ、て

 

 

「……ん? なに?」

 

「なんだ、聞こえてなかったのか? なあ、ちょっとこっち来いよ。……傑作だぜ」

 

 

 ………………いやだ

 

 

「だって、それで遊んでる時のあなた、怖いもん。……で、傑作って何やったの?」

「いいから、早く来いよ」

 

 

 …………もう、

 

 

 

「……あぁ、ホントだ。──酷い顔」

 

 

 

 やめて……

 

 

 

 

 

 

 高校生になった。

 不能になった。

 昼食と晩飯代が合計されて1000円になった。

 なんで俺は生きてるんだ。

 仮面を被るのは得意だ。

 バイトを始めた。

 早くここから出ていきたい。

 ここに俺の居場所はない。

 どうしてまだ⬛︎ねないんだ。 

 俺の醜く歪んだ本性に誰か気づいてくれればいいのに。

 ⬛︎にたいくせに⬛︎ぬ勇気がない。 

 怖いんだ。

 生きててごめんなさい。

 みんな嫌いだ。

 許してくださいもういやだ。

 

 でも、一番嫌いなのは俺だ。

 世界を呪うことしかできない卑怯者で惨めな俺が……大っ嫌いだ。

 

 

 

 先生に進学を勧められた。

 部活こそやってなかったが、成績も悪くないし普段の生活態度も悪くないから。そうした方が、将来有利になるから。

 未来なんて、いらないのに。

 

「大学よりも、やりたい事があるんです」

「……そうか、分かった。先生は応援してるからな。頑張れよ」

 

 嘘をついた。夢なんてないのに、また嘘をついた。

 

 ごめんなさい。

 

 ごめんなさい。

 

 うまれてきて、ごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――私はこれを知っている。この記憶を、知っている。

 傷ついてボロボロで。むりやり黒く染め上げた。

 そう、この黒い海は──私が忘れていた……過去(トラウマ)だ。

 

 

 

 

 

「……動く」

 

 黒い海の底に私は辿りきました。身体は……動きます。周りもちゃんと見える。

 

「……知ってる」

 

 私の目の前にあるのは、とあるマンションの扉でした。

 ワンルームの、狭くて何もない、囚人部屋みたいな場所。

 扉に鍵はかかってない。まるで、歓迎するかのように。

 

「ここに、()()()()()

 

 ドアノブに手を掛け確信と共にドアを開ければ、見知った男性が部屋の奥にいました。

 

 中に入ってドアを閉めて鍵をかけ、そのまま部屋の奥へと進みます。

 一歩一歩近づく度に、私の中に懐かしさが込み上げてくる。

 逃げ込んだ先、ここだけが()の居場所だった。

 

 身長170とちょっとの痩躯。髪は黒。瞳は光すら無い、濁った黒。

 そう、今ここにいるあなたは……

 

 

「──前世の、私……」

「──お兄さまだ」

 

 この世界に生まれる前の…………ん?

 

「俺は……──お兄さまだ」

 

 えっと……あの……?

 

「前世の私、ですよね?」

「違う。──お兄さまだ」

「……私のぜ「お兄さまだ。誰がなんと言おうと、俺はお兄さまなんだ」

 

 あっ……はい。そういう事にしておきます。

 ……えっ? どうしよう……どうすればいいのでしょうか?

 

「あの……私、どうすればいいんですか?」

「とりあえず座ろうぜ」




重くてキツい話はこれまでです。
『    』の中は『お兄さま』でした。
分かった人はたぶんシンパシーのスキルを持っています。

※後半部分を切り取って次話にぶち込みました。
修正した理由は「キツい話の後にギャグを入れたら感情がバグるんじゃないか?」と思い至ったからです。
急な修正をしてしまい申し訳ございませんでした。


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第35話 『シロノリリィ』

 はい。なんか前世のわた……お兄さまに会ったリリィちゃんです。……ライスちゃんたすけてっ!!

 

「えっと、お兄さま……で、いいんですよね?」

「そうとも言えるし、そうでもないとも言える」

「……おかしくないですか? だって、『私』=『お兄さま』ですよ? 存在するのがおかしいです」

「半分は当たってる。耳が痛い」

「なんでサム8語録なんですか!? まじめに答えてください!」

「お前もいずれ分かる時が来よう」

 

 リリィちゃんちょっと混乱してます……なんですかこれ!? 前世の記憶が蘇ってきたと思ったらお兄さまを名乗る不審者が現れたんですよ!?

 

「サム8もやめてください! あの漫画読んでると頭痛くなるんですよっ!」

「ククク……ひどい言われようだな。まあ事実だからしょうがないけど」

「……そっちは知らないです。なんかキョウちゃんに教えてもらったような……?」

「貴様ーッ! タフを愚弄する気かぁっ!」

 

 なんなんですかこの人!? 本当に何なんですか!? ……あれ? なんだか今までのやり取りに違和感があるような……?

 

「あの、お兄さまは本当にお兄さまなんですか? なんかものすごく違和感があるんですけど……」 

「その説明をする前に今の俺の状況を理解する必要がある。少し長くなるぞ」

「…………手短にお願いします」

「幻覚だ」

「短っ!?」

 

 幻覚なの!? どういう事なの!? もうわけわかんないっ!! るるちゃんたすけてっ!!

 

「俺は、君のウマソウル空間が見せている幻覚だ。君の記憶を参考にして生み出された、この異常事態を説明するための幻覚。記憶を参考にしている証拠は今までの会話だ。前世の俺は、ウマ娘以外の娯楽を知らない。語録やら何やらを使いこなしているのがその証拠だ」

「……ふざけてただけじゃないんですね」

「ぶっちゃけ推測だけどな。この世の不思議は大体ウマソウルのせいだ」

 

 つまり、この人は前世の私の姿を模した幻覚ですか。……なんで幻覚なのに会話ができるのでしょうか? 意味わかんないです。あとここってウマソウルが関係してるんですね。

 

「……ん? 異常事態? 私、何か変なところがあるんですか?」

「ああ。結論から言うと全部前世の記憶()のせいだ。君が領域を発動できないのも、この不思議空間ができたのも俺のせいだ」

「ほうほう。じゃあこの後はどうすればいいんですか? ぶん殴ればいいですか?」

「俺を倒したところで第二第三の俺が現れるだけだ。だから、君は思い出すだけでいい。君が忘れてしまった過去を思い出し、乗り越えればいい」

 

 過去を乗り越えてパワーアップする展開ですね! それにしてはだいぶ緩いですけど。

 

「殴り合う覚悟はしてたのでなんだか拍子抜けです」

「人間がウマ娘に勝てるわけないだろ? まあ、それは置いといて。……なあ、『私』()よ。君は自分の過去を見て、どう思った?」

 

「そういえばそんな事ありましたね」

「軽くね?」

 

 だって、もう過去()の事ですよ? 確かにちょっぴり思うところはありますが、今更気にしたところで……って感じです。

 

「ところで、この質問の意味は何ですか?」

「──ない」

「さっきから私の事からかいすぎですよね!?」

「許せサスケ……」

「リリィちゃんです!」

「お前たちにも教えよう。俺の社畜時代の話を」

「無視しないでください!」

 

 

 

 

  

 はい……お兄さま回想始めます。

 高校を卒業した俺は社畜になった。

 貯めたバイト代で一人暮らし。ニ○リで買った安い布団以外の家具はないワンルームマンションが俺の終身地(マイルーム)だ。

 バイト先のツテで、俺は俺のことを知る人が誰もいない場所で就職した。

 

 労働はいい。特に単純労働は。

 無駄なことを考えなくていい。働いてる間はそれを忘れられる。嘘吐きの何も無い俺が必要とされる。だから、俺は働くんだ。

 言われた事をやるだけで褒められる。そしてそれが評価され、対価(給料)になる。こんなにも嬉しい事はない。

 やる事なんてなかった。やりたい事なんてなかった。だから働いた。全部忘れられるように、ひたすらがむしゃらに。

 そして、俺の会社はそれを叶えてくれる場所だった。そう、いわゆるブラック企業というやつだったのだ。

 残業残業残業残業残業休出休出残業残業残業残業残業休出休出……休みなどいらぬ。働きたいのだ。働かせてくれ、頼むから。

 ちなみに残業代も休出手当もないぞ。記録上では全社員定時退勤休日出勤なしだからな。優良企業だね。

 あぁ、素晴らしきかな労働よ。クソッタレ(偉大なる)な上司よ、このまま我が身が朽ちるまで仕事を与え給え。

 

 しかし残念かな。我が身は無駄に頑丈だった。毎日最低4時間程度は無駄な仕事(残業)をして、休日も休まず働き続けても壊れる気配はない。上司も俺の頑丈さにビビって休みを強制的に取らせる始末だ。

 ふざけるなよ……俺は働いてないと頭が狂いそうになるんだぞ……っ!! ついでに言うなら、お前達が無駄にパワハラ☆モラハラ☆エトセトラ☆するから人手が足りないんだぞっ!!

 「人手足りねぇわw お前が(いないやつの分も)やれ(強制)」って命令して、特に何の問題もなく「できましたっ!!」って報告したらドン引きするのやめろ。お前らの命令の方がえげつないからな? 俺以外にそういうのしない方がいいぞマジで。

 

 そんな感じで、俺は虚無(たの)しく生活していた。

 たまにある休日も、基本やる事はない。布団の上で膝を抱えて過ごすだけの時間に、何の意味があるのか。

 水とコンビニ弁当とカロリーメイトだけが俺の燃料だ。味なんてしないから食事に楽しみも見出せないしな。

 ただ、以前とは違う事がある。それは、俺がスマホを所持している事だ。基本、上司からの嫌がらせ(ラブコール)しか飛んで来ないうえに店員からカメラぐらいしか進化してない最新型(無駄に高いやつ)やら無駄な料金を搾り取るプランを組まされて手に入れたそれは、なんか色々とできる事があったのだ。

 

「……えっ? 水平とか測れるんだ。……すげぇ!!」

 

 使いこなせるかは別だ。

 豚に真珠。ねこに小判。俺にスマホ。要するに、価値を知らないやつに持たせたところで意味のないものだ。今の俺が有効活用しようとするなら手裏剣代わりにしかならないだろう。

 だが、俺はあの時の薄っぺらい笑顔でカモってきた店員に感謝する事になる。たまたま持っていたこいつが、俺の人生を変えたんだ。

 

 

 

「なぁ、兄ちゃん。──ウマ娘はいいぞ」

 

「……うまむすめ?」

 

 『ウマ娘プリティーダービー』。これが俺の人生で最初に触れた娯楽だった。

 

 ある日の事、職場に新しく派遣のおっさんが来た。上司様の度重なるパワハラによって、人手不足アンド壊滅の危機にあっていたので貴重な戦力だ。おっさんの頭部が少々寂しい以外に不満はない。

 この重大な事態に危機感を覚えた上司様が、我々に慈悲を与えてくださったのだ。偉大なるクソッタレ(上司様)に感謝を。

 おっさんに仕事を教えるのは俺の役目になった。上司様は仕事を把握していないので仕方がない。いと尊き上司様の仕事は、ガムをくちゃくちゃ食べながらそこら辺を練り歩きつつ俺の仕事の粗を探していちゃもんをつける事だ。

 

 休憩時間中にカロリーメイトを貪る俺の都合など無視しておっさんは語った。それはもう楽しそうに、懇切丁寧に語ってきた。

 おっさんが語ってきた内容は割愛させてもらう。ウマ娘と競馬の話しかしてないからな。

 

「どうだい兄ちゃん? あんたもやってみねぇか?」

「そこまで言うなら、やってみます」

「そうこなくっちゃなぁ! アニメもいいぞ。今ならサブスクで観れるからな。いい時代になったもんだ……」

 

 俺はこの時、初めてサブスクという概念を知った。月額数百円から1000円ちょっとでアニメが見放題ってめちゃくちゃすごいよね。

 とりあえずアプリストアでダウンロードした。生まれて初めてゲームをやる事になった俺は、おっさんからリセマラという世界一虚しい作業を教えてもらった。

 

「兄ちゃん、ゲームした事ないんか?」

「はい。生まれて初めてです」

「……休日とか、何してたんだ?」

「明日が来るのを待ってました」

「…………そうかい」

 

 ドン引きしながらも、彼は「☆3引き換えはオグリキャップを選べ。☆3確定ガチャは有料だが、もしも引く気があるならそっちを先に引いてから引換券を使うんだぞ」と、非常に為になるアドバイスをしてくれた。

 だが、残念な事に仕事の時間になってしまった。一旦ウマ娘はお預けだ。

 

「リセマラはな、サポートカードを引け。キタサンブラックを完凸すりゃあなんとかなる。それとな……」

「何ですか?」

 

「…………この職場、まともじゃねえな。兄ちゃんも早いとこ辞めた方がいいぞ?」

 

 おっさんは次の日、会社に来なかった。

 上司様が怒り狂ってて草。

 

 

 

 

 

 休日になった。生まれて初めて何かをするための休日だ。俺はわくわくしながらアプリを起動した。

 

「ゲームなんてするの初めてだ。わくわくしてきたぞ……」

 

『ウマ娘! プリティーダービー!』

「うわぁっ!? びっくりしたぁ……」

 

 起動時に流れる例のトラップにガチビビりする俺。2○歳とは思えない情けない悲鳴をあげた。

 

「えっと……まずはリセマラ? とかいうのをやるんだっけ? ……なんか可愛い女の子達がいっぱいだな。最近のゲームって映像が綺麗なんだな。すごいね」

 

 そもそもゲームをやった事がないし、知らないので素直に映像に感動していた。なんかめっちゃ動いてる。すごーい!

 チュートリアルが始まり、画面の指示に従う俺。ダイワスカーレットのツインテールのデカさにビビる。あとめっちゃ耳が動いてるし表情とかコロコロ変わってる。すげぇ……

 

「――これで終わり? トレーニングして、強いウマ娘を育てるのか。……よく分からんな。まあ、色々やってみるか。どうせ暇だし」

 

 とりあえず☆3引換券で貰えるキャラを見てみた。リセマラは後でやる。なんかいっぱい試行する必要があるらしいし、まずはどんなウマ娘がいるのか見てみたかった。

 

「スペシャルウィーク……主人公っぽいね。サイレンススズカ……クールそう。トウカイテイオー……子供っぽい。マルゼンスキー……頼りになるお姉さん。オグリキャップ……おっさんのイチオシ。タイキシャトル……寒そう。メジロマックイーン……綺麗だね。お嬢様かな? シンボリルドルフ……すごく強そう。ライスシャワー……」

 

 衝撃だった。

 画面の向こうの少女に、心を奪われた。

 

「──かわいい。……かわいい。……めっちゃかわいい」

 

 蒼黒を纏う小さな少女。大きくて零れ落ちそうな紫水晶の瞳の奥で、決意の光が煌めいている。

 暗い焦茶色の髪。くるんとはねる毛先。片方だけ隠れた前髪が神秘的で、儚い印象をもたせる。

 大きな耳が可愛らしい。青いバラを飾る帽子が可憐だ。肩まで露出したドレスは、華奢で庇護欲を唆る。

 

『みんなを幸せにしたいから……ライス、走るよ!』

 

 NEW! [ローゼスドリーム] ライスシャワー ☆☆☆

 

 気がつけば、俺の元にライスシャワーがいた。

 

 

 

「……あっ。そういえば、リセマラとかいうのをやる必要があるんだっけ? この子、『ライスシャワー』っていうのか。かわいいね……」

 

 ライスシャワーに一目で心を奪われたクソチョロの俺。声めっちゃ可愛い……。しかし、かろうじてキタサンブラックとかいうカードを5枚集めるのが最重要だと言われたのを思い出した。

 

「ガチャを引くための石を集めて……これで引けるだけ引くんだっけ? 引けるといいなぁ」

 

 悪夢のBGMと共にガチャが回る。数多のトレーナー達を絶望させたサ○ゲの悪意。人類が生み出したパンドラの箱。俺はその洗礼を……受けなかった。

 

「おお……! キラキラしてる!」

 

 ネットを流離う紳士淑女諸君ならばご存知の『物欲センサー』が発動してなかった。恐らく、今までゲームどころか娯楽に触れてこなかったからだろう。見逃されたのだ、俺は。

 運良くキタサンブラックを3枚、他のSSRも数枚入手する事ができた。ビギナーズラックというやつだ。

 

「おっさんは5枚引けって言ってたけど……まあいいか。2枚ぐらいどうって事ないでしょ」

 

 完凸と2凸は大きな隔たりがあるのだが、当時の俺はド初心者ゆえに知らなかったのだ。後にものすごく後悔する事になる。

 そして、残されたのは有償ガチャだ。ライスシャワーの可憐さに脳をぶっ壊された俺に引かないという選択肢はなかった。

 

「有償ガチャは課金しなきゃ引けないやつだっけ? 値段は……えっ? ……こんなにするの?」

 

 有償石の値段にドン引きする。福沢諭吉(一万円)が、ガチャを30回と少し回すと消える狂気の世界。それがソシャゲの世界なのだ。

 

「まあ、使い道ないしいいか。葬式代にしかならんしな」

 

 

 コンビニでお金をおろして例のカードを購入した。これでいっぱいガチャが回せるぞ!

 貯金はそれなりにあった。残業代やらなにやらはないが、趣味も友達もないので使い道のない金が勝手に貯まるのだ。物欲などとっくの昔に死んでいる。愛と勇気も縁がない。ついでにソシャゲに手を出した時点で未来もない。

 

 早速課金して有償ガチャを回す俺は、サンタクロースを信じる子どものように純粋な瞳をしていた。何が出るかな? わくわく! 

 サンタさんからプレゼントをもらった事は一度もない。

 

「おっ? なんかちっちゃい子が出てきた」

 

 トレーナーならご存知の確定演出、理事長だ。とっても嬉しいね! 毎回出てこい。赤い扉もだ。

 だが、これはそもそも確定ガチャだ。この演出はただの茶番でしかない。大事なのはここから複数の☆3を引く事だ。ネタバレになるが、残念ながら今回は1人だけしか引けなかった。

 昇格演出はない。☆1☆2(いつものみんな)を9人引いて、遂に☆3が来た。俺が引いたのは……

 

『みんなを幸せにしたいから……ライス、走るよ!』

 

 NEW! [ローゼスドリーム] ライスシャワー ☆☆☆

 

 ──超絶可愛い俺の天使(ライスシャワー)だった。

 

「…………これって、もしかして……運命っ!?」

 

 俺は単純だった。そもそも当たりが分かってなかった。だから素直に喜んだ。やったー! ライスちゃん可愛いね!

 正直めちゃくちゃ嬉しかったが、トレーナー視点だと論外としか言いようがない。本当ならキタちゃんを完凸してオグリを引いてスタートダッシュガチャで被らずに☆3を引くのが理想だ。

 しかし、ゲームをやった事のない俺は何も知らない赤ちゃんのようなものだ。理想などどうでもいい。ライスシャワーがいればそれでいいのだ。

 こだわりがないなら初心者トレーナーの諸君は競技場のダートメンツを埋めるためにオグリを選べ。ダートはガチャ限定以外に入手手段が無さすぎる。反省しろサ○ゲ。

 

 こうして、俺のトレーナーライフが始まった。そして、残念な事にゲームをした事がない俺には、ウマ娘の全てがあまりにも新鮮な体験だった。

 

『あのね、お兄さま──』

「ん゛!!」

 

 劇薬だった。お兄さま呼びはずるい。

 俺はお兄さまになった。

 

 

 俺が初めて育成したのはライスシャワーだった。当然だが、育成のセオリーなど知らなかった。サポカの編成も、当時の天皇賞・春の鬼畜さも。

 

『ひゃ、ひゃい! ……ライスシャワーですっ』

「任せろ。俺はお兄さまだからな!」

 

 たづなさんの指示に従いトレーニングを選ぶ。友情トレーニングの事もよく分からず、どの能力をあげればいいのかも分からずに上げられたステータスはとても平坦だった。

 

『賢さが不足していますね』

「たづなさん……心強いぜ!」

 

 メイクデビューは緊張した。俺が育成した彼女が、彼女の努力を証明するために戦うのだ。

 

「頑張れ、ライス。君ならきっと勝てる!」

 

 スマホを持つ手が汗で濡れていた。呼吸が苦しい。

 そんな俺をよそに、メイクデビューは無事勝利した。満面の笑みで喜ぶライスシャワーを見て俺まで嬉しくなった。そして、初めてのライブが始まった。

 『Make debut!』――ウマ娘達の始まりの曲。俺が初めて聞く、彼女達の生きた証。

 ゲームは所詮作り物だ。本物じゃない。娯楽でしかない。だけど、俺の目にはそう見えなかった。

 彼女達が生きている。今、俺の前で……生きているのだ。走り抜いた証を、魂を歌声に乗せて彼女達は歌っているのだ。

 曲が終わった時、俺は自分が涙を流している事に気がついた。

 

「……ウマ娘、すげぇ……! よしっ! この調子で、ライスをURA? とかいうのに勝たせるぞ!」

 

 俺は『ウマ娘』の虜になった。

 そして、洗礼を受けた。……天皇賞・春という、洗礼を。

 

「な、なんだ……この強さは!? ……メジロマックイーン強くね?」

 

 目覚まし時計が消える。一つ、二つ、三つ。もう、後がなかった。

 

「はあ……はあ……っ! もう、時計が……ないっ」

 

 震える指で画面を操作する。祈るようにスマホを掴み、彼女達の生き様を見届けた。──結果は、目標未達成。俺達のレースは、ここで終わった。

 

「………………負けた。……ライスが、負けた? ……ごめんよ……ごめんよ、ライス。……俺が、弱いから。俺の、せいで……」

 

 目の前の少女と目が合った。涙を堪える小さな少女。華奢な肩を震わせながらも、気丈に振る舞うその姿。

 彼女の瞳が告げる。「次は、勝つ」。不滅の蒼炎が、俺の心を焼き焦がす。

 だから、誓った。目の前の少女に誓いを捧げた。

 

「──約束するよ。必ず、君と勝つ。俺達二人で」

 

 

 

「サポートカード……スーパークリーク? これでスキルを取ればいいのか」

 

「友情トレーニング? 絆ゲージをためて、得意なトレーニングでなんかすごくなるのか……」

 

「因子……? えっと、強いやつを……借りれば、いいのか? フレンド? 友達なんて作った事ないんだが……」

 

 長い戦いだった。何度も何度も負けた。

 だけど、俺の心が折れる事はなかった。俺が誓いを捧げた少女に無様な姿を見せるわけにはいかない。

 ──そして、遂に……俺は天皇賞・春を突破した。

 

『……っ! ライス、やったよっ!!』

「…………おめでとう。おめでとう、ライス……っ」

 

 いつの間にか辺りは真っ暗で、時間も忘れて夢中になってウマ娘をプレイしていた。朝から飯も食わずろくに水分補給もせずスマホに齧り付いていたというのに、俺は爽やかな達成感に包まれていた。

 

「えっ? もうこんな時間? ……怖っ。風呂入って飯食ってクソして歯磨いて寝よ」

 

 何かにのめり込むのは、これが初めてだった。時間も忘れて、食事も、何もかもを忘れて過ごしたのも初めてだった。

 他人からすれば誉められた行為ではない。だが、俺はこの時初めて『生きている』と実感したのだ。

 

「マックイーンも倒したし、後はURAファイナルズを乗り越えるだけだ。もっとやりたいなあ。……会社、行きたくねえなぁ……」

 

 初めて俺に、やりたい事ができた。

 

 

 

 後日。URAファイナルズを無事突破し、人生初の『うまぴょい伝説』を視聴した。一般的には電波ソングと呼ばれる曲だが、俺達トレーナーにとっては聖歌に匹敵するウマ娘を象徴とする楽曲だ。

 スポットライトを浴びて彼女達は踊る。感謝を、祈りを、駆け抜けてきた日々を音に乗せて歌う。ライスシャワーとの日々が俺の脳裏を閃光のように駆け抜け、俺は自分でも引くぐらい泣いた。

 うまぴょい伝説は最高だぜっ!

 

 次にライスシャワーの育成ストーリーについて触れようと思う。一言で言うなら……『尊い』。これに尽きる。

 可能ならば全て語りたいが、それをするには俺の寿命が足りない。定命の命しか持たない俺には、どれだけ言葉を選んだとしてもその全てを語り尽くすのに時間が足りないのだ。

 だからやれ。ライスシャワーはいいぞ……

 メインストーリーもやれ。ライスシャワーはいいぞ……!

 

 最初は彼女のビジュアルに惚れた。次に声。可愛いよね……あの声で『お兄さま!』『お姉さま!』って呼ばれた時、己の全てをかけて彼女を守護(まも)ろうと決意したね。

 儚げで庇護欲を唆る見た目。健気で可憐な、純粋で優しい心。全てが俺のツボだった。

 

『ライス、変わりたいの。みんなを不幸にするだけの、だめな子じゃなくて……みんなを幸せにできる、そんなウマ娘に』

 

 彼女の心が眩しかった。

 決意に脳を焼かれた。

 その生き様が、あまりにも尊くて……

 

「なんて……美しいのだろうか」

 

 

 

 

 

 社畜からお兄さまへと進化した俺は残業と休日出勤をこなす傍ら、ウマ娘をやる事に心血を注いだ。

 どうやってプレイ時間を確保したのか? 答えは簡単。睡眠時間を削ればいいのだよ。因子周回はいくら時間があっても足りないからね。

 次々と実装されるウマ娘達。ソシャゲ特有の季節毎の衣装替え。もちろんそれは可愛い可愛い俺のライスシャワーも例外ではない。

 

「マヤノのウェディングドレス可愛いね。エアグルーヴも綺麗だなあ」

「セイウンスカイ……可愛いね。石ないけど引いちゃおう」

「ウマネストってなんだよ。毒効かないの? ウマ娘強いね……」

「スペちゃんの水着、健康的で可愛いね。マルゼンスキーはすごく似合ってる」

「フルアーマーフクキタルってなんだよ。賢ネイチャ強そうだな。差しライスのために引くか」

「あ゛っ!! パワーライスかわいいっ!! ちくしょうっ!! 石が無いっ!! サ○ゲのバカ野郎本当にありがとうございますっ!!」

 

「──ヴァンパイアライス……だと……!?」

 

 今まで神に祈った事などなかった。嘘です、本当はお腹痛くて近くにトイレがない時とかに祈ってました。

 なのでこのヴァンパイアライスを引き当てるために初めて真摯に祈りを捧げた。

 石はちょうど100連分。覚悟はいいな? 俺はできている。

 10連……何もない(いつも通り)。20連……何もない(日常風景)。30連……何もない(変わらぬ景色)。40連……何もない(天井を覚悟する)。そして、50連目……

 

『噛んだら痛いから……噛みつくのは、勝利にだけ!』

 

 NEW! [Make up Vampire!] ライスシャワー ☆☆☆

 

 ──神はいた。サンキューゴッド! ファッキューサ○ゲ! 可愛すぎて泣いた。本当にありがとうっ……!

 パンプキンのお歌フルで聞かせろ俺にいたずらしてくれ一緒にお菓子を食べよう牙が可愛すぎるカプってしてくれお兄さま眷属になります俺を忘れないでくれ……

 

 

 こんな感じで、俺はそれなりに充実した日々を送っていた。しかし、この時の俺は本当の意味で『お兄さま』にはなれていなかった。それを自覚したのは、とある日の事だった。

 いつも通り仕事をこなし、帰宅して飯と風呂を済ませる。

 何年働いてるかは忘れたがもう慣れたものだ。早速アプリを起動し、俺の愛バ(ライスシャワー)の御姿を拝見する。今日も可愛いね! 因子周回頑張るぞい! 

 仕事よりマシな作業(因子周回)をするためにいつも通りに育成を選ぼうとした時のことだ。ホームのライスのセリフがいつもと違うことに気づいて画面を注視した。

 季節や何かによって変わる彼女達のセリフ。それがたまたまこの日で、俺はすっかりその存在を忘れていた。

 

『お祝いできる日、ずっとずっと待ってたんだ。……あのねお兄さま。生まれてきてくれて、ありがとう』

 

 今日が、俺の誕生日だった。

 意識すらしてなかった。ずっとずっと忘れてた。そもそも“ソレ”を祝われた事などなかったのだから。

 かつて、それは“呪い”だった。存在を否定され、名に意味も与えられず、愛すら知らぬ俺にとっては耐え難い苦痛だった。その日が来る度に心の中で呪詛と怨嗟を撒き散らし、己の醜悪さに絶望していた日が、彼女の祝詞によって“祝福”に変わったのだ。

 枯れ果てたはずの涙が頬を伝う。滂沱の如く流れるそれは、今まで押し込めてきた感情の発露。

 嬉しかった。只々嬉しかった。祝福を冠する少女(ライスシャワー)の純粋な言葉が、優しい心が俺を救ったのだ。

 

「…………ありがとう、ライス」

 

 画面の向こうの虚構に、電子情報の塊に、空想の世界に、俺は本気で感謝した。

 君に会えてよかった。君がいたから俺は救われたのだ。

 そして、俺は知った。この世界に自分が生まれてきた意味を。

 辛くて苦しいだけだった。いつか来る終わりを待つだけの人生だった。けど、違った。俺は……

 

 

「──お兄さまになるために、生まれてきたんだ」

 

 

 その日、俺は本当の意味で『お兄さま』になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、この後120連勤して過労死するんだけどな。

 

 

 

「──どうだった?」

「最後で台無しです」

 

 お兄さまの長話を聞き終わったリリィちゃんです。自分の人生ですが、ライスちゃんに出会うまでは控えめに言って最悪でしたね。

 

「ライスちゃんが世界一尊くてかわいいのは分かりました。やっぱりライスちゃんは最高ですね!」

「俺の愛バだからな。さて、それじゃあ今から君の身に起きてる異変を解決していこうと思う。それにはウマソウルとか色々説明しなければいけない事があるがちゃんと聞くように」

「はーい! ……でも、それと前世の記憶は何か関係があるんですか?」

「あるぞ。こいつを思い出すのが前提条件だ。まあ、この空間の異変はこれでほとんど解決したから、後は無駄に長い説明をしてなんかいい感じにフェードアウトするだけだ」

 

 ちなみに今私がいる場所は前世の自室です。布団と枕ぐらいしかなかったのですが、ウマ娘を始めてからはライスちゃんのグッズが増えました。冷蔵庫はありますよ!

 

「長くなりますか? 長くなるなら飲み物が欲しいです。あとクッションも欲しいです。正座するの疲れました」

「記憶にないものをこの空間で出す事はできない。冷蔵庫の中にコラボグッズが入ってるから適当に取り出していいぞ」

「わかりました! お兄さまも何か欲しいものありますか? それとも一緒に取りに行きますか?」

「一番いいのを頼む」

 

 冷蔵庫を開けて中身を確認します。電子レンジはコンビニ弁当を温めるために買ってあったので問題ありません。

 私は甘いやつにしましょう。お兄さまは『ゴールドシップの大盛ソースやきそば』と『ウマ娘のオリジナルカフェオレ』にします。

 あと、気合を入れたらリリィちゃんのお部屋にあるクッションを召喚できました。夢って便利ですね!

 

「君は『メジロマックイーンのやる気UPスイーツ』と『サイレンススズカのいちご大福』と『トウカイテイオーのはちみードリンク ~はちみつレモン風味~』か。甘いものばっかりだな。昔は俺の味覚も死んでたが、ウマ娘をはじめてしばらく経った頃に回復し始めたんだよな。あの頃の俺、ストレス溜まりすぎだろマジで」

「あれでストレスたまらない方がおかしいと思います。それでは、いただきます!」

 

 懐かしのコラボメニューです。現実でも私達のグッズはありますが、そういえばこういう仕事はした事がありませんね。

 あっちでマルゼンスキーさん監修ティラミスとナタデココは見た事があります。チョイスが謎ですね。

  

 

 

「――さて、まずはウマソウルについて話そう。君はウマソウルをどのように認識している?」

「不思議パワーの源。よく分からないけど私達ウマ娘にとって大事なもの。こんな感じですね」

「まあ概ねその通りだ。ウマソウルは人々の願いや祈りの結晶だ。君達ウマ娘の『名』は、異世界の人々のそういった想いが集まって形成される。元となった競走馬の魂が転生をするとかそういう事は基本起こらない。彼らの軌跡に能力などが引き寄せられることはあるが、その名を冠していても人生までは同じにならないんだ」

「エルコンドルパサーさんがあっちと違ってダービーに出たのが例ですね。そもそも私がいる時点であっちと全然違いますけど」

「そうだ。さっきは割愛したがアニメのウマ娘も最高だ。ライスちゃんまじ尊い。ヒトカスは滅びろ。……それでな、今からぶっちゃける。まず、君にウマソウルは存在しなかった」

「わかりますわかります! アニメのライスちゃんちょうかっこいいですよね! ……えっ? ……えっ!? ウマソウルないの!? 何でですか!?」

「だって俺、誰にも愛されてないし」

「あっ……納得しました」

 

 衝撃の事実ですが、あまりにも説得力がある理由ですね。

 

「ウマ娘の肉体に、虚ろの魂(『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』)を詰め込まれて生まれたのが君だ。本当なら君のウマソウルは存在しなかった。だけど、両親の想いがそれを昇華させた」

「……ママとパパが?」

「そう。『白井 百合(しらい ゆり)』。それが、君の根源。この世界に刺された楔。両親による無償の愛と献身が、君をこの世界に繋ぎ止めたんだ。……覚えているだろ? その名が持つ意味を」

「……『百合の花にはたくさんの色や意味がある。だからどんな風にでも咲けますように』」

 

 かつての祝詞。私に対する深い愛情の記憶。

 私の独白に反応するように、私達の目の前で在りし日の記憶が幻影として再生されました。

 

 

『――ママ、パパ。私の名前ってどういう意味があるの? 百合ってお花の名前だよね?』

 

 それは日常の一幕。どういった経緯でこんな事を尋ねたかは覚えていませんが、何を言われたかはしっかり覚えています。

 

『そうだね、君の『百合』って名前は、そのまま百合の花からとってるんだ。僕もスズランもその花が好きでね。名前の候補を考える時に色々な花の名前を参考にして、それで色々話し合った結果『百合』になったんだ』

『二人で色々考えたのよ。男の子だった時はどうしよう! とか、他のお花もいいわよね! とか。ちなみに、リリィちゃんが男の子だったら、“心”が“咲”くと書いて『心咲(みさき)』になる予定だったわ。こっちの名前も自信作よ!』

『男の子でも女の子でも、君が無事に生まれてくれればどっちでもよかったんだけどね。それで、色々な花の中から百合を選んだ理由は、僕達が一番好きな花だったからだよ。僕たちの一番好きな花の名前を、僕達の一番大切な君に贈りたかったんだ』

『百合の花はね、赤かったり黄色かったり橙色だったり黒かったり白かったり……色々な色の花を咲かせるの。咲いた色で花言葉の意味が変わってね。だから、『あなたがどんな風にでも咲けますように』って願いを込めたの。色によってはネガティブな意味になったりするけど、そんなの関係ないの。どんな色でもあなたは世界で一番可愛くて綺麗で、愛おしいから』

 

 覚えてる。蕩けるほどの愛を。二人がくれた温もりを。

 幻影は消え、この場にいるのは私とお兄さまだけになりました。

 

 

「はじめに彼女達は言った。『生まれてきてくれて、ありがとう』と。空っぽだった『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』は、たったそれだけで満たされた。傷ついてボロボロで擦り切れた真っ黒な魂は、優しくて温かい真っ白な愛情で染められた。そして世界は君に名を与えた。──『シロノリリィ』という名を」

「…………」

「これって、めちゃくちゃすごいんだぜ? たった二人の愛情が、数十万を超える人の想い(ウマソウル)を上回ったんだ。……本当に、本当にすごいよ」

 

 言葉が出てきませんでした。胸の奥がぽかぽかと温かくなって、こんなにも満たされている。

 

「……私、しあわせですね」

「よし、次行くぞ」

「余韻に浸らせてっ!?」

 

「この世界はウマソウルで形成されている。なんかレース中にぶわっと出てくる領域も同じようにウマソウルによって作られているんだが、まあどっちも似たようなもんだ。君のウマソウルがこの領域を作り出しているんだが、そのウマソウルに前世の記憶という異物があるせいで領域が不完全になってるんだ」

「ところてんの中にゼリーが5%入ってるような感じですね」

「あいつ賞味期限切れてるんだよな……。異物となっている前世の記憶を克服出来れば、君は完全な領域を扱えるようになる。だから君は前世の記憶を思い出す必要があったんだ。転生したての時はまだ覚えていただろ? 本来なら成長と共に克服し、領域が発現するはずだったんだ。けど、君はある日を境にほとんどの前世の記憶を忘れてしまった」

「……まさか、あの時……!」

「……そう。初めてライスちゃんと会った時、ライスちゃんの可愛さでほとんどの前世の記憶が吹っ飛んだ。そのせいで君はウマソウルがなんか変な事になったんだ」

「ライスちゃん、ちょうかわいかったですもんね……!」

「あれはやばい。宇宙誕生するわ」

 

 確かに、5歳ぐらいまで微かに残っていた私の『お兄さま』成分が、ライスちゃんと出会ってからほとんどなくなっていますね……! さすがお兄さまです。なんという的確な分析力っ……! そしてライスちゃんは宇宙一かわいいです!

 

「吹っ飛んだ記憶は君の魂の奥底に封印された。魂とウマソウルはまあなんか近いような近くないようなそんな関係だから、なんかやばそうと判断されて厳重に封印されたんだ。今の君は、『前世の記憶(トラウマ)を忘れているけど克服していない』状態だ」

「分かりやすく言ってください」

「ゲームで言うと必殺技を覚える条件があって、①レベルを上げる。②スキルを一定値まで上げる。③イベントをこなす。の条件のうち、③が終わってない感じだ」

「とっても分かりやすいです! ……じゃあ、もう終わっちゃった感じですかね?」

「そうだな。ちなみに封印が解除された理由は、君が肉体的にも精神的にも成長してウマソウルパワーが高まって封印がガッタガタになったからだ。そのせいで説明するのに都合がいい『俺』が出てきたってわけだ」

「最後だけ意味わかんないです……」

「だから言っただろ? 幻覚だって。……これで、俺からの説明は以上だ。ちなみに、夢から覚めたらここでの事は全部忘れるぞ」

「私にとって都合が良すぎませんか!?」

 

「──だってさ、もう過去になった(乗り越えた)だろ? じゃあ、この話はこれでおしまいさ」

 

 話を終えたお兄さまはとても穏やかな表情をしていました。私が今まで見た事のない、あまりにも穏やかな貌。

 

前世の記憶(トラウマ)を克服した君は、いつものように目を覚ます。側にはライスシャワーとお姉さまがいて、君は彼女達に甘えて日常が始まる。……そこに異物(『俺』)は必要ない」

 

 真っ黒な世界。僅かな光すらなかった闇い世界に変化が訪れました。

 私の体から白くて淡い光が滲み出し、足元からゆっくりと広がっていきます。かつて黒く染められた世界が、今度は白く塗り替えられていく。

 

「領域は、その人の心だ。想いや願い、祈りが(かたち)となって世界を創る」

 

 黒い泥の海が消えて、真っ白で何もない世界になりました。

 私が見ていたいつもの景色。──そこに罅が入る。

 

「真っ黒な世界は白いキャンバスとなり、君を形作ってきた思い出が世界に彩りを与える」

 

 徐々に亀裂が拡がり、そこから眩しい光が漏れる。

 罅割れが世界を覆い、溢れ出した光は直視できないほどの輝きを放っています。

 

「見ろ。これが、君の心だ。君が歩んだ心の軌跡だ」

 

 一瞬の静寂。──そして、ガラスが割れる様な音と共に真っ白な世界は砕け、私の心が咲き誇った。

 

 

 

 

 

「──……これが、私の領域(せかい)

 

 

 

 

 

 どれほどの時間が経ったのでしょうか。1分? 1時間? ……その間、私達は無言でこの世界は眺めていました。でも、そろそろ起きなければいけません。私には私のやる事がありますから。

 

「……どうですか? 私の領域。みんなにも負けてませんよね?」

「……綺麗だよ。元俺とは思えないほどにね。多分、俺の怨念が堆肥代わりになったんだろうな」

「……なんでそんなこというの? お兄さまのいじわる……」

 

 ()だからって遠慮なさすぎませんかね? リリィちゃん怒っちゃいますよ? 

 でも、私は気付いてしまいました。お兄さまの目元に小さな雫ができてることに。

 

「……泣いてるの?」

「……泣いてない」

 

 素直じゃないですね。もっとリリィちゃんを見習った方がいいと思います。

 

「……私とお兄さまって、全然似てないですよね」

「…………? まあ、そうだな」

 

「……お兄さまは男で、私は女の子で。大人と子ども。大きくて小さい。愛されてなくて、愛されていて。……もう、死んでいて、まだ生きている。……でも、一つだけ変わらないところがあります。これだけは、絶対に変わらない」

「……それなら分かるよ。それだけは、永遠に変わらない」

 

「俺は──」

「私は──」

 

ライスシャワーが、大好きだ(ライスちゃんが、大好きです)

 

 世界を隔てたとして変わらない唯一の誓い。かつて()は誓いました。『ライスシャワー(ライスちゃん)殉教者(お兄さま)で在る』と。

 ──私の魂は未来永劫変わらない。ライスちゃんがすきですきでだいすきな……不変不滅の『お兄さま』です。

 

 ふふん! リリィちゃん大満足です! これでやり残した事はありませんね! 

  

 

「…………なあ、シロノリリィ」

 

 徐々に、お兄さまの身体が透けていきます。

 

「……なあに?」

 

 かつて、自分と世界を呪った黒い魂がありました。でも、その澱んだ黒は、とても綺麗な黒に出会いました。

 純粋で、優しくて、とっても尊い黒。夜の様に優しい黒に、澱んだ黒は救われました。

 

 

「俺の人生、色々あったけどさ……」

 

 

 お兄さまが光と共に溶けていく。晴れやかで、清々しい――とっても満足した表情(かお)で。

 

 

「……生まれてきてよかったよ」

 

 

 ──もうここに、陰りはありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──リリィちゃん。起きて、朝だよ」

 

 ……もうあさなの? リリィちゃんまだねむいです。

 

「…………おやすみらいすちゃん」

「わっ。……もう、リリィちゃんったら」

 

 ライスちゃんあったかい。ぽかぽかする。……えへへ。……おやすみなさい。

 

「何これクッソかわいい起こすのもったいない。……けど、私はお姉さまなの。だから心を鬼にするのよ……さあ、目覚めなさいっ!」

 

 …………さむい。おふとんないの? ……じゃあおきる。

 

「…………うにゃ……さむいのや」

「あっ。リリィちゃん起きてきた」

「……む〜」

「寝不足かしら? 昨日、早めに寝たはずなんだけど……」

「むう。……なんかね、へんなゆめみたきがするの。だから、ねむい……の」

「あっ。また寝そうになってる」

「あらあら。リリィ〜……今日はみんなとお祭りに行くんでしょ? 起きないと、トレーニングのメニュー終わらなくて行けなくなっちゃうわよ〜?」

 

 ……はっ!? それはいけません!! 眠気さん吹っ飛びましたっ!!

 

「──リリィちゃん復活です! ライスちゃんるるちゃんおはようございます!!」

「おはようリリィちゃん。お祭り、とっても楽しみだね」

「おはようリリィ。今日も元気でかわいいわね」

「はいっ! リリィちゃんとっても元気です!」

 

 なんか変な夢を見てた気がするけどもう忘れました。そんな事よりお祭りですよ、お祭り! あとライスちゃんは今日もかわいいです!

 

「顔洗って歯を磨いてご飯食べて、その後いつも通りトレーニングよ。それじゃあ、今日も一日……」

 

『がんばるぞ、おー!』

 




これで夏合宿は終わりです。
リリィちゃんの秘密はもう無いですよ。お兄さまはおしまい! これ以降出る予定はありません。
お兄さまの転生に三女神は一切関与してません。彼はお兄さまなので気合いで世界の壁を超えてきました。
次は菊花賞ですね。話の量的に3〜4話ぐらいになると思います。
この後は閑話1話(ブルボン視点の夏祭り)と掲示板回を投稿する予定です。


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ぶるぼんのなつやすみ

ブルボンちゃん視点のお話です。
ぽんこつサイボーグ。


 皆さんこんにちは。ミホノブルボンです。現在私は、菊花賞へ向けて夏合宿の最終調整の最中です。

 本日のミッションは二つ。長距離を想定した身体能力向上トレーニングと、ライスさんとリリィさんと一緒に夏祭りへ赴く事です。

 非常に楽しみです。楽しみすぎてトレーニングが捗りました。

 私は幼少期からトレーニング漬けの日々を送っており、このようなイベントを友人と過ごした事はありません。そもそも友達もいませんでしたが。

 しかし、今の私はあの頃とは違います。ミホノブルボンver0.11だった私は、今ではミホノブルボンver2.84と大幅にバージョンアップしているのです。

 どの様な状況、困難であろうとも必ず適応できるでしょう。私のアップデートに協力してくれたフラワーさん、ボーガンさん……本当にありがとうございました。

 フラワーさんからいただいたデータは『花の愛で方』です。彼女のおかげで、私はライリリという至高の花を侵す事なく眺められるのです。

 「間に割り込んでいるのでは?」と言われた事がありますが、その点は問題ありません。誘ってもらってるだけなのでノープロブレムです。以前ライスさんと二人でデートしましたが、これも特に問題ありません。彼女の心はリリィさんのモノなので。

 ボーガンさんは私に『理不尽に対する対応、及び適応力』を授けてくれました。具体的にいうと数多のクソゲーです。このデータを分析し、レースにも見事対応してみせましょう。

 正直、精神的な負荷という点ではトレーニングよりもクソゲーの方が大きいです。もう一度やれと言われたら、流石に目から透明なオイルが漏れ出してしまいます。

 勘弁してください。もうクソエンカは嫌です。

 

 さて、本日のミッション『夏祭り』において、実は一つだけ懸念点があります。それは、私が夏季専用装備『浴衣』を所持していない事です。

 前述した通り、私は過去にこの類の季節系ミッションに参加した事がありません。それ故に各季節毎の専用装備を所持しておらず、汎用装備である『学園指定ジャージ』で任務に挑むことになりそうです。

 ライスさんもリリィさんもきっと浴衣を装備してきます。私だけ汎用装備だと周りから浮いてしまいそうで残念です。

 以前、ライスさんとデートした時に購入すればよかったのですが、楽しくてついうっかり購入するのを忘れてしまいました。

 その時にゲームセンターへ行き互いのぱかプチを入手して交換したのですが、「これ、ライスだと思って大切にしてね♡」と可愛らしく言われました。

 あれはずるいです反則ですかわいすぎますなんですかあの可憐さは顔も声も仕草も全てがかわいいです泣きますよ。

 次はリリィさんと交換したいです。休日の予定が合えばいいのですが。

 

 夏季専用装備『浴衣』。私の体格が近ければライスさんに貸してもらうという手がありましたが、残念ながら私とライスさんの体格には隔絶とした差があります。

 特に差があるのは胸部装甲ですね。リリィさんは超軽量級です。

 そういった事情もあって、今回の夏祭りは私だけ学園指定ジャージです。ですが、来年は絶対に浴衣にします。お揃いで写真を撮りたいので。

 他に夏用装備として『水着』があります。こちらはソシャゲ等で特に需要があるとボーガンさんに教えてもらいました。水着は私も持っています。こっちはちゃんと買いました。

 私の水着を選んでくれたのはライスさんです。私はこういうのに疎いので助かりました。ライスさんはリリィさんの服をいつも選んでいるので慣れている様子でした。とても心強いです。

 ……ここだけの話ですが、ライスさんとリリィさんの下着はお揃いです。フリルが付いていて可愛いのです。とても似合っていました。

 あとリリィさんを着せ替え人形にしたくなる気持ちはとてもよく分かります。

 ライスさんとリリィさんはお互いに似合う水着を選びあっています。それだけでもうたまらないのですが、可憐な二人が戯れる様子は最早芸術です。玉のような肌が触れ合い、やわらかにたわむ光景は至高としか言いようがないです。

 そんな宝石すら霞ませる彼女達の水着姿ですが、今回はお揃いのワンピースタイプを選んだようです。

 サイドレースアップフリルワンピースと言ってましたが、なんだか呪文みたいですね。あと透けてるトップスも着ていました。ちょっとえっちでした。

 色はライスさんが紺色でリリィさんが白色。彼女達のイメージカラーですね。トップスは互いに白のシースルー。

 正直、トップス越しに透けて見える華奢な肩が非常に唆ります。あと二人の小さいお尻が可愛いのです。

 ライスさんのポニーテールも興奮しましたが、リリィさんのツインテールは反則級の可愛さでした。なんですかあのかわいい生き物は。

 私の服は普段○まむらで買ってるので、こういうオシャレなものはデータにありません。ちなみにアッシュさんはド○キで、ボーガンさんはユ○クロです。

 いっぱい写真も撮りました。随時ウマッターにアップしていく予定ですが、もちろん許可は事前に取ってあります。判断するのはライスさんで、それ以外の写真は個人で楽しむ分なら問題ないと言われました。

 彼女は普段ウマッターなどのSNSはやっていません。なぜなら、そうするよりもリリィさんとの思い出を作る事が大事だからです。尊いですね。

 ですから、私が彼女達の尊い写真を電子の海に放流するのです。幸せのお裾分けです。

 

 

 

 さて、ミッション開始10分前となりました。私のトレーニングの話はどうでもいいので割愛です。

 私の方は準備万端。トレーニング後にシャワーも浴びたので匂いも問題ありません。

 ライスさんとリリィさんはすごくいい匂いがします。リリィさんは汗をかいてもいい匂いがするのがやばいです。

 時折、ライスさんがリリィさんを膝の上に置いて抱っこしながら吸っているのが非常に羨ましいです。私の膝の上も空いてますよ。

 

「ブルボンさ〜ん!」

「ブルボンちゃ〜ん!」

 

 耳に幸福を検知。ライスさんとリリィさんがやって来ました。美音のする方へ振り向くと、そこには地上に舞い降りた天使達が居たのです。

 

「……ブルボンさん? あ、あれ?」

「ブルボンちゃんフリーズしてるね。叩いたら直るかな?」

「機械じゃないからだめだよ。……機械もほんとは叩いちゃだめなんだけどね」

 

 いつもと違い、髪の毛をおろさずに編み込みアップスタイルにしていたのですが、控えめに言って最高でした。早速脳内メモリに保存しました。

 ライスさんは紺色に青いバラが描かれた浴衣を。リリィさんは白地に白百合が描かれた浴衣を着ていました。

 そして、彼女達の右の薬指にはお揃いの指輪が煌めいています。素晴らしいですね。

 可憐です、あまりにも。道行く人々は彼女達から目が離せなくなるでしょう。彼女達の美しさの前には、夜空の大輪すら霞んでしまうかもしれません。

 

「好きです(お二人とも、とても似合っています)」

「えへへ。ありがとう、ブルボンさん」

「えへへ! ありがとうブルボンちゃん!」

 

「自爆します」

 

「……ふえっ?」

「……えっ?」

 

『なんでっ!?』

 

「自爆シークエンス起動。爆発まで……4……3……2……1……」

 

 ……ですが。ああ、なんという事でしょう。お二人がこんなにも綺麗なのに、私は学園指定ジャージ。場違いにも程があります。

 小洒落たカフェで周りが呪文のような商品を頼む中、一人だけ筑前煮を注文するかのような恥ずかしさと気まずさ。最早、生きていられません。

 

「──0。キュイーン……ドッカーン」

 

「ぶ、ブルボンさーん!?」

「ぶ、ブルボンちゃん……」

 

 ミホノブルボン、ここに散る。死因は恥ずか死。

 

「……先行ってるね」

「ばいば〜い」

 

「やめてください泣いてしまいます」

 

 

 

 ライリリの間に物理的に割り込みながら夏祭りの会場を目指しています。はい、有罪(ギルティ)と思った方もいらっしゃるでしょうが、これには深いわけがあります。

 

 普段通り、私はお二人を見守るために一歩半ほど間隔をあけて進んでいました。この距離を私は聖なる一歩半と命名しました。

 しかし、お二人はこれが不満だったようです。今日のお祭りは『3人』で楽しむためのもの。彼女達にはこの一歩半がお気に召さなかったようです。ですから、私は不意を突かれてしいました。

 私がライリリウム(ライスさんとリリィさんの尊さから生成される物質。ストレスを抑える効果あり。あとガンに効きます)を摂取していた刹那……私のハイパーブルボンセンサーを掻い潜り、彼女達は懐へと潜り込んできたのです。

 

(──疾いっ!? 近いっ!?)

「あのね、ブルボンさん。ライス達ね、3人で遊ぶのすっごく楽しみにしてたの。だから、いつもみたいな距離じゃなくて……」

「もっと近くがいいです!」

 

 小さくてやわらかくて温かい手が、私の両手を包み込みました。

 右手にライスさん、左手にリリィさん。突然の事態に処理落ち寸前の私に、さらなる追撃がなされました。

 なんと、そのまま腕を組んで私の真横を位置取ったのです。必然、とある部位の感触が私を襲います。

 π=3.141592……ライスさんの程よい大きさの胸部装甲が私に押し当てられました。彼女の小柄な体型の割に立派なそれは、艶かしさを放つ至宝。対するリリィさんの胸部装甲は、驚くほど平坦。卑しさを微塵も感じさせない清廉さは、正に聖壁と呼ぶにふさわしいでしょう。

 (リリィさん)(ライスさん)が両方そなわり最強です。しかし、この時点で私のブレインが情報を処理しきれずにおかしくなりました。

 

「みぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」

「あわわ! ど、どうしたのブルボンさん!?」

「お〜! バイブルボンちゃんです!」

 

 ──アップデートを開始します。アップデートの最中は電源を切ったりしないでください。故障の原因に……上目使いは卑怯なのですが??

 

「──アップデート完了。ミホノブルボンver2.85……起動します」

「おっ? 戻りましたね!」

「も、元に戻った……のかな?」

「いいえ。戻ったのではなく、進化したのです。その証拠に、今手を繋いでも平気でしょう? これが、進化した私の実力です」

 

 バージョンアップした私に死角はありません。無敵です。

 胸部装甲を押し当てられようが、上目使いをされようが最早ふふふっ可愛いですね。

 あっ……リリィさん待ってください、頬ずりはいけません。まだ対応しきれて──

 

「みぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」

「おっ? また震えてますね。なんででしょうか?」

「…………」

 

 ジト目はやめてくださいライスさん。興奮します。

 この後めちゃくちゃアプデしました。

 

 

 

 ミホノブルボンver2.92です。現在、私達は屋台を巡ってエネルギーを補給しています。

 実はさっきくじ引きを引いたのですが、なんと私は当たりを引きました。とても嬉しいですね。

 ライスさんとリリィさんは、残念ながらはずれでした。しょんぼりしててもかわいいですね。

 ですが、わくわくしている私の前に訪れた現実は非情でした。

 景品はwiiとよく分からないゲームソフト3本。最新型じゃないのはまあ分かりますが、ソフトが聞いたこともないマイナーなものだったので正直困りました。

 『黄金の絆』と『メジャーWii パーフェクトクローザー』と『プロゴルファー猿』。……嫌な予感がするので、あとでボーガンさんにプレゼントしましょう。彼女ならば動画のネタにしてくれるはずです。

 

『あっちゅっちゅ!』

 

 ──ん゛!! ……なんですかそのかわいい鳴き声は。

 ギガウマ盛りのたこ焼きを頬張る二人。熱くて呂律が回ってないのが凶悪です。

 近くの屋台で買い漁った様々なメニュー。それはどれもとてつもない量で、ウマ娘向けの『ウマ盛り』を超えた『メガウマ盛り』を凌駕する『ギガウマ盛り』です。

 私は普通のウマ盛りですが、彼女達の小柄な体のどこに収まっているのか不思議です。

 

「本当に、いっぱい食べてますね。見ていて爽快です」

「ふえっ!? だ、だって、いっぱいトレーニングしたからお腹ぺこぺこで……」

「たこ焼き美味しかったぁ! 次は……焼きそばにしよっ!」

「あっ……リリィちゃん、ほっぺにソースが。動かないでね、拭いてあげるから」

「うに? ん〜」

 

 おや? リリィさんのもちもちほっぺに、先ほどのたこ焼きのソースが付着しています。かわいいですね。

 すぐにライスさんが気づいて、彼女の白魚のような指がリリィさんのぷにぷにほっぺを拭いました。

 互いに寄り添うその姿は、天使の晩餐と呼ぶに相応しいです。

 

「よし、取れた。もう大丈夫だよリリィちゃん」

「うん! ありがとうライスちゃん!」

 

 もっといちゃいちゃしてください。私の脳内メモリーが潤いますので。

 それにしても、いっぱい食べるお二人がかわいいですね。もっといっぱい食べて大きく……ならないでください。

 

「ライスさんもリリィさんも、そのままでいてくださいね」

「……? ブルボンさんって、たまに変な事言うよね」

「ね〜」

 

 全人類の総意ですが? 

 

 

 

「たーまやー」

 

『にゃー!』

 

 心とお腹のエネルギーを補給し、私達は本日のメインミッション『花火』を観ています。

 夜空に咲く光の大輪。

 とても綺麗ですが、咲くのは一瞬だけ。美しくも儚い、夏の風物詩です。

 

「ここは、花火がよく見えますね。確か、穴場なんでしたっけ?」

「うん、そうなの。去年もね、リリィちゃんと一緒に観たんだ」

「去年はライスちゃんと二人っきりでした。今年はブルボンちゃんも一緒で嬉しいです!」

「はい。私も、とても嬉しいです」

 

 今この場所で、この三人だからでしょうか。今まで見てきたどんな映像よりも鮮明で、鮮烈に感じています。

 あと、私の両隣でりんご飴をぺろぺろするお二人がかわいくて泣きそうです。

 

「……綺麗だなぁ」

「……うん。とってもきれい」

 

 彼女達の言葉に、私は黙して首肯しました。

 光の種子が(そら)で閃いて、快音を奏でて花開く。

 

「……もうすぐ、夏が終わります」

 

 この花火が終われば、私達の夏は終了です。

 ほとんどトレーニングに消えた時間ですが、私にとってはとても大切な思い出。

 

「分かっている事ですが、少しだけ寂しいです」

 

 この時間が名残惜しい。

 寄りかかってくる温もりが心地よい。

 

「……でも、それ以上に楽しみなのです。皆さんと進む未来が」

 

『おんなじだね』

 

 二人同時に、そう言って。金と紫の瞳が私を見据えた。

 

「ライスもね、とっても楽しかった。美味しいものを食べて、いろんな屋台を見て。ブルボンさんの知らなかった一面を見れて、もっともっと好きになれて。今日が終わるのはとっても寂しいよ。だけどね、大丈夫だよ」

 

 私の手を優しく包み込み、月明かりのように優しく微笑った。

 

「──明日はもっと、楽しくなるから」

 

 未来(あした)を選んだから、私達はここにいる。共に進んで行ける。

 

「みんなと過ごした日々が、私の宝物なの」

 

 微笑みながら手を取る、白くて小さな少女。

 

「私の始まりはママとパパの笑顔だった」

 

 だけど、その心は誰よりも大きくて。きれいで優しい。

 

「ママとパパが私を愛してくれた。ライスちゃんは私に光をくれた。るるちゃんが私達の手を取ってくれて、それからたくさんのお友達ができて、こうして隣にいられる。私ね、みんながだいすきなの。一緒にいると楽しくて、嬉しくて、とってもしあわせ」

 

 彼女の言葉から、今までの思い出全てを愛おしく思っているのが伝わってきた。

 ピョンと軽やかにベンチから離れて、くるりとこちらに振り返る。そして、夜空と星と大輪を背景にして、白百合が咲き誇った。

 

「──私はね、みんなに逢うために生まれてきたの!」

 

 ……ああ、眩しい。

 無垢で、純粋で。温かくて、やわらかい。

 穢れを知らぬ、満開の咲顔(えがお)

 

 私のそばの、太陽と月。

 世界一素敵な白と黒。

 

「……綺麗ですね」

「……ふふっ。リリィちゃん、初めて会った時みたいな事言ってる」

 

 ……なんですか、それは……?!

 

「詳しくお願いします」

「リリィちゃんがお引越しの挨拶にきたときに『……あのねっ、わたしはねっ……あなたにあうために、うまれてきたの……』って言ってくれたの」

「ライスちゃんに逢えたのが嬉しすぎたせいですね!」

 

 ──プロポーズでは? プロポーズですよ? プロポーズですよね!?

 

「結婚式の友人スピーチは任せてください。完璧にオーダーをこなしてみせましょう」

「ま、まだ早いから……」

「トゥインクルシリーズは走り切りたいですよね!」

 

 いつの間にか花火は終わっていて、それでも私達は喋り続けていました。

 帰りが遅い私達を皆さんが心配して迎えにきてくれて、おしゃべりに夢中だった私達は呆れられて。でも、その表情は優しくて。

 私達の夏は、これでおしまい。

 

 本日のメインミッション達成。ミホノブルボン、これより帰投します。




次は掲示板回です。


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【超ダート】シロノリリィを応援するスレ【ウマ娘】

掲示板回です。



1:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんの穢れなきこんにちは好き

 

2:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんのあのねすき

ライスちゃんのあのねすき

はやく結婚しろ

 

3:名無しのウマ娘ファン

俺はやばいことに気づいてしまった…今までのリリィちゃんの言動と今回のブルボンちゃんのウマッターの発言「私はね、みんなに会うために生まれてきたの!」のせいで全て繋がってしまった…

【シロノリリィ転生者説】

根拠1…ウマ娘離れした美貌と肉体

転生者特有の転生特典チートスペックの肉体

根拠2…好きなアニメが俺達と一緒

魂が俺達と同じおっさん

そして上記の発言からリリィちゃんはTS転生者だというわけだ

 

4:名無しのウマ娘ファン

長い1行で

 

5:名無しのウマ娘ファン

大丈夫?アルミホイル巻く?

 

6:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんは天然幼女だよ

合法ロリババアのシンザンにち○ち○が反応しない俺が保証するよ

 

7:名無しのウマ娘ファン

がんばって書いたんだねえらいね

 

8:名無しのウマ娘ファン

ウマ娘離れした美貌と肉体

↑これはママからの遺伝でゴリラなのはつよい子だから

好きなアニメが俺達と同じ

↑これはパパと一緒にアニメ見てたから俺もリリィちゃんお膝に乗せてアニメ見たいです

つまりリリィちゃんはかわいい!

 

9:名無しのウマ娘ファン

仮におっさんだとしても中の人の薄汚さと気持ち悪さが滲み出す

リリィちゃんの無垢で穢れないかわいさを見れば幼女だと分かるだろ

 

10:名無しのウマ娘ファン

俺が転生してウマ娘になったととしても絶対周りから浮くわ

みんなだいすきっ!なんて照れ臭くて言えんよw

 

11:名無しのウマ娘ファン

どっからどう見てもかわいいかしこい幼女(14)なのに…

 

12:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんの無邪気さはうちの姪っ子に似てる

うそですあいつ毎回会うたびにおこづかいせびってくるんだよふざけるなよ

 

13:名無しのウマ娘ファン

ポリスはよ

 

14:名無しのウマ娘ファン

いやあああロリコンよおぉぉぉ!

 

15:名無しのウマ娘ファン

>>12

財布乙

じっさい渡してるの?

 

16:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんにおこづかいあげたい

 

17:名無しのウマ娘ファン

>>15

今回だけだからな?って念押しして毎回渡してるが?

 

18:名無しのウマ娘ファン

クソ雑魚ロリコンおじさん!

 

19:名無しのウマ娘ファン

ちょっろ♡

 

20:名無しのウマ娘ファン

姪っ子ちゃんを僕にください!

 

 

 

 

56:名無しのウマ娘ファン

みんな七夕の短冊に何書いた?

俺は世界平和にしといたわ

 

57:名無しのウマ娘ファン

5000兆円欲しい

 

58:名無しのウマ娘ファン

>>56

非課税の3億

 

59:名無しのウマ娘ファン

美少女になりたい

 

60:名無しのウマ娘ファン

>>56

ウマ娘ちゃんの幸せ

 

61:名無しのウマ娘ファン

「それが君達の願いかい?」

 

62:名無しのウマ娘ファン

うわあああ!くるなあぁぁぁ!!

 

63:名無しのウマ娘ファン

帰れ畜生!!

 

64:名無しのウマ娘ファン

消さなきゃ…

 

65:名無しのウマ娘ファン

>>61

なにこれ?

 

66:名無しのウマ娘ファン

>>65

まどマギのキュゥべえとかいうド畜生ですよ

 

67:名無しのウマ娘ファン

ワグナス!!まどマギが10年以上前のアニメって本当なの?

 

68:名無しのウマ娘ファン

はははご冗談を…

 

69:名無しのウマ娘ファン

嘘だろって思ったらマジだった…

 

70:名無しのウマ娘ファン

あの頃から何も変わってない俺たち

 

71:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんかわいいなぁ…(現実逃避)

ライスちゃんかわいいなあ…(現実逃避)

 

72:名無しのウマ娘ファン

んあああああああああああリリィちゃんのツインテがわいいよおおおおおおお

 

73:名無しのウマ娘ファン

またか…

今日だけで何人目だよ

 

74:名無しのウマ娘ファン

>>70

俺はシワと脂肪が増えて髪と気力が減ったよ

 

75:名無しのウマ娘ファン

現実の話よりリリィちゃんかわいいする方が楽しいからみんなもっとリリィちゃんかわいいしろ

 

76:名無しのウマ娘ファン

暗い話題よりも明るい話題の方がいいよな

>>74を見ろよ眩しくてしょうがねえ

 

77:名無しのウマ娘ファン

また髪の話してる…

 

78:名無しのウマ娘ファン

ライリリは俺の太陽

ブルボンちゃんもなかよしで可愛いね

 

79:名無しのウマ娘ファン

ブルボンちゃんが写真テロしやがったからな

本当にありがとうございます!

 

80:名無しのウマ娘ファン

気軽に核兵器(リリィちゃん達のなかよし写真)投げるのいいぞもっとやれ

 

81:名無しのウマ娘ファン

水着可愛すぎて目汁溢れ出たわ

てかめっちゃおしゃれだよね

 

82:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんプレゼンツだからなそりゃ似合ってるでしょ

 

83:名無しのウマ娘ファン

ブルボンちゃんのウマッター最初の方は日記みたいだったのに途中からみんなの写真載せまくってて笑っちゃうんですよね

ほほえましいですわ

 

84:名無しのウマ娘ファン

浴衣なんだけどさぁ…ちょっと綺麗すぎて泣いちゃった

 

85:名無しのウマ娘ファン

>>81

ブルボンちゃんの水着はえっちでしたよねぶへへ

 

86:名無しのウマ娘ファン

社畜俺の荒んだ心にライリリの尊い画像が染み渡る…

これなかったら発狂してたわ

 

87:名無しのウマ娘ファン

最近の若者の水着はおしゃれすぎてようわからんぞい

白スク水を着ろリリィちゃん

 

88:名無しのウマ娘ファン

ラ イ リ リ の 間 に 挟 ま る ブ ル ボ ン

 

89:名無しのウマ娘ファン

クラシック三冠奪い合ってる割になかよしだよね

 

90:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんもライスちゃんもブルボンちゃんも幼女だよ

ソースは俺のち○ち○

 

91:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんもライスちゃんも水着えっちでした!

 

92:名無しのウマ娘ファン

ウマ娘ちゃん達みんなスタイル良いよね

 

93:名無しのウマ娘ファン

青汁はもっとライリリのなかよし写真を俺らに見せろ需要に対して供給不足だぞ

 

94:名無しのウマ娘ファン

青汁も水着になれ

やっぱならなくてもいいです

 

95:名無しのウマ娘ファン

>>93

でも青汁はリリィちゃんとライスちゃんの尊い動画貼ってくれるから…

ライスちゃんがリリィちゃんといちゃいちゃしながら御髪を整える動画はすごくすごくすごかったですよね(語彙力)

 

96:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんの髪の毛さらっさらで美味しそう

 

97:名無しのウマ娘ファン

ライスちゃんが毎日丁寧にお手入れしてるからな

 

98:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんとライスちゃんがべったりくっつきながら「あっついね〜…」っていちゃついてる動画好き

 

99:名無しのウマ娘ファン

ゆりん

ゆりりん

 

100:名無しのウマ娘ファン

>>94

青汁も美人なのに酷くて芝

 

101:名無しのウマ娘ファン

静止画のリリィちゃんを見た僕→わあ…すっごい美少女…

動いてるリリィちゃんを見た僕→かわいいね…

 

102:名無しのウマ娘ファン

>>88

3連ぷよみたいにほっぺくっついてて芝生えるんですよね

視力回復するからもっと気軽にくっつけ

 

103:名無しのウマ娘ファン

罪深ゆりりんバード

 

104:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんが人力でグルメスパイザーしてる動画好き

ポン!(石を粉々に握りつぶす)

クラッシュ!クラッシュ!(殴ってさらに細かくする)

パッパッパ!(地面に捨てる)

グルメスパイザー!(ものすごいドヤ顔かわいい)

 

105:名無しのウマ娘ファン

たぶんライスちゃんが着付けしたんだろうけどあの子リリィちゃんのためならなんでもできるな

 

106:名無しのウマ娘ファン

編み込みヘアーって言うんだっけあれ?お上品で素敵ですわ

 

107:名無しのウマ娘ファン

ぽにてもいいぞ

ぽにてもいいぞ

 

108:名無しのウマ娘ファン

黙せば妖精微笑めば天使しゃべるととってもかわいいリリィちゃん

 

109:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんツインテにするとょぅι゛ょ感が増すよね興奮します!

 

110:名無しのウマ娘ファン

ツインテの匂い嗅ぎたいです

 

111:名無しのウマ娘ファン

ライリリの水着はお世話になりました

 

112:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんはまじで顔が良すぎる

良すぎて視力上がるわ

 

113:名無しのウマ娘ファン

>>109

リリィちゃんの髪型アレンジからしか得られない栄養がある

 

114:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんのうなじおきれいですわ

 

115:名無しのウマ娘ファン

>>109

ツインテふぁさふぁさしたいよな

 

116:名無しのウマ娘ファン

闇のロリコンどもめ…

 

117:名無しのウマ娘ファン

あの華奢な身体と美貌が俺を狂わせる…

 

118:名無しのウマ娘ファン

>>116

もしもしポリスメン?

 

119:名無しのウマ娘ファン

過剰供給された餌で呪霊どもが活性化しやがった…

 

120:名無しのウマ娘ファン

光が強ければ闇も濃くなるからな…

 

121:名無しのウマ娘ファン

ポリスゥー!!早く来てくれぇー!!

 

122:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん顔はいいけどもっとタッパと乳と尻と太もも盛れば完璧になると思うんよね

みんなもそう思うやろ?

 

123:名無しのウマ娘ファン

>>122

ころすぞ

 

124:名無しのウマ娘ファン

>>122

死にたいらしいな

 

125:名無しのウマ娘ファン

>>122

風邪拗らせて死ね

 

126:名無しのウマ娘ファン

>>122

罪深いな

 

127:名無しのウマ娘ファン

>>122

お前は存在してはいけない生き物だ

 

128:名無しのウマ娘ファン

これより正義を執行する

正義ィー!

 

129:名無しのウマ娘ファン

はぁ〜…(クソデカため息)

リリィちゃんの魅力を分からんど素人め…

 

130:名無しのウマ娘ファン

盛ればいいってわけじゃないんだよ

最近むちむち太もも勢ばかりで肩身が狭いぜ…

 

131:名無しのウマ娘ファン

ケンガン界のクソポリスは帰ってください

 

132:名無しのウマ娘ファン

あのほっそりとした御御足が綺麗なのよ

 

133:名無しのウマ娘ファン

聖なる壁【ウォールリリィ】

 

 

 

 

178:名無しのウマ娘ファン

JDD見返してるんだけどリリィちゃんダートだとめっちゃ強くね???

 

179:名無しのウマ娘ファン

いつでもつよくてかわいいが??

 

180:名無しのウマ娘ファン

まあ本来の適正ですし(距離は見ないものとする)

 

181:名無しのウマ娘ファン

18バ身はやりすぎなんよ…

1分59秒5って芝のタイムかな?(すっとぼけ)

 

182:名無しのウマ娘ファン

現地で見てたけどぶっ飛んでくリリィちゃん見るの楽しかったわ

みんなでうおおお!って叫んでました

 

183:名無しのウマ娘ファン

当時の他のスレ民「芝のマイラーがいきなりダートとか無理だろw」

俺達「すごいことになりそう(わくわく)」

 

184:名無しのウマ娘ファン

実際当日のスレはあっちもこっちもめっちゃ盛り上がったよな

 

185:名無しのウマ娘ファン

セクレタリアトしろリリィちゃん…

 

186:名無しのウマ娘ファン

あの記録ってレコード?

 

187:名無しのウマ娘ファン

芝ばかり走ってるせいでダートウマ娘だと思われてなかったリリィちゃん…

青汁がウマッターで適性ダートのマイラーですよって呟いても信じられてなかったの芝1600

 

188:名無しのウマ娘ファン

JDD発表の時むしろ「やっと来たか…っ!」ってなったのが僕

 

189:名無しのウマ娘ファン

青汁は嘘つくかもしれんがリリィちゃんは嘘つかないからな

 

190:名無しのウマ娘ファン

俺ハートシーザー好き

 

191:名無しのウマ娘ファン

セクレタリアトとかいうウマ娘のようなナニカ

でもリリィちゃんなら勝てるよ(無責任)

 

192:名無しのウマ娘ファン

今まで芝で走ってた方が異常なんですよ

まあかわいいから問題ないが

 

193:名無しのウマ娘ファン

>>186

日本レコードだと思う知らんけど

世界は1:57.8だよ

 

194:名無しのウマ娘ファン

ベルモントステークスを走れリリィちゃん

 

195:名無しのウマ娘ファン

皐月賞もダービーも勝ったしリリィちゃんこれで二冠だな菊花賞勝てば三冠ウマ娘ですよ!

 

196:名無しのウマ娘ファン

ダート問題ないから凱旋門行けるな

坂も余裕で不良バ場はむしろ得意…あれ?まじでいけるんじゃね??

 

197:名無しのウマ娘ファン

>>195

そのダービーちょっと砂っぽくない?

 

198:名無しのウマ娘ファン

>>193

世界レコード速くね?

一体どういうことなんだってばよ?

 

199:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん日本の芝適性ないというかクラシック路線が適性あってないんですよ

このダートゴリラ具合ならアメリカで無敗三冠取れそう

 

200:名無しのウマ娘ファン

>>194

もう終わってマース!

 

201:名無しのウマ娘ファン

あっちは砂じゃなくて土なんですよ

 

202:名無しのウマ娘ファン

適性って本来パワーで誤魔化せるようなものじゃないんですけどね…

 

203:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんはかわいくてかしこくてつよい子だからな

 

204:名無しのウマ娘ファン

適性があってなくてパワーが出ないならもっとパワーを出せばいいじゃない

 

205:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん壁歩けるからな

ぱ、パワーが違いすぎるっ!

 

206:名無しのウマ娘ファン

138センチ138キロ 9戦6勝の超ダートウマ娘リリィちゃん!

 

207:名無しのウマ娘ファン

パワー・アントワネットやめろ

 

208:名無しのウマ娘ファン

>>197

日本のダービーだから問題ないぞ

変則二冠ウマ娘リリィちゃん!

 

209:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん自身は凱旋門眼中に無さそうだよね

世界よりライスちゃんだし

 

210:名無しのウマ娘ファン

>>206

体重が重すぎるッピ!

 

211:名無しのウマ娘ファン

>>206

あの超人体質だと割とありえそうなんだよなぁ…

 

212:名無しのウマ娘ファン

壁歩くとか都城王土かよ

 

213:名無しのウマ娘ファン

世界とライスちゃんを天秤にかけたらライスちゃんを選ぶのがリリィちゃん

 

214:名無しのウマ娘ファン

ダートのマイルも走れリリィちゃん

 

215:名無しのウマ娘ファン

>>213

ライスちゃんも世界も選ぶのがリリィちゃんだぞ

リリィちゃんかしこい!

 

216:名無しのウマ娘ファン

壁歩くやつ最初トリック扱いされてたな

ミスターサタンかよ

 

217:名無しのウマ娘ファン

トリックじゃなくてパワーなんだよなぁ…

 

218:名無しのウマ娘ファン

脚の握力で張り付いてるだけとか信じられんよな…

壁に突き刺して歩くディオ式でもやれるってまじ?

 

219:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんの裸足助かる

 

220:名無しのウマ娘ファン

やはり筋肉…!筋肉は全てを解決する…!

 

221:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんはつよい子です!(圧倒的筋肉)

 

 

 

 

318:名無しのウマ娘ファン

好きなウマ娘ちゃんを3人書き込むと性癖がわかるって聞きました!当ててみてください!

 

ダイイチルビー

ニシノフラワー

シロノリリィ

 

319:名無しのウマ娘ファン

ロリコン

 

320:名無しのウマ娘ファン

異常者

 

321:名無しのウマ娘ファン

社会不適合者

 

322:名無しのウマ娘ファン

>>319

>>320

>>321

なんでですか!?ちっちゃい子のブルマが好きなだけの至って健全な性癖ですよ???

 

323:名無しのウマ娘ファン

自首しろ

 

324:名無しのウマ娘ファン

黙れロリコン!愛読書LO!好きな漫画ワンピース!

 

325:名無しのウマ娘ファン

ゲーム開発部とか好きそうだね

 

326:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんのブルマ唆るよね

あの小さくて綺麗なお尻に興奮します

 

327:名無しのウマ娘ファン

ワンピースは関係ないだろw

 

328:名無しのウマ娘ファン

仲間がいるよ

 

329:名無しのウマ娘ファン

プリケツダァ

 

330:名無しのウマ娘ファン

ワンピース(意味深)

 

331:名無しのウマ娘ファン

麦わら海賊団(意味深)

 

332:名無しのウマ娘ファン

やっぱり海賊って最低っすね

 

333:名無しのウマ娘ファン

俺のロリコンセンサーによるとダイイチルビーは推定DニシノフラワーはBリリィちゃんはAA

 

334:名無しのウマ娘ファン

性癖暴露か私も開示しよう

 

スーパークリーク

タイキシャトル

ミホノブルボン

 

335:名無しのウマ娘ファン

>>334

ボ院

 

336:名無しのウマ娘ファン

>>334

バ院

 

337:名無しのウマ娘ファン

>>334

おっぱ院

 

338:名無しのウマ娘ファン

巨乳好き

 

339:名無しのウマ娘ファン

ジェットストリーム花京院やめろ

 

340:名無しのウマ娘ファン

ブルボンちゃんといえば

黒沼トレーナーが最近ネットのおもちゃになってる件

 

341:名無しのウマ娘ファン

ブルボンちゃんが変な動画ばっかりあげるから…

 

342:名無しのウマ娘ファン

キレッキレのオタ芸をする黒沼トレーナーBB

 

343:名無しのウマ娘ファン

止まらない黒沼トレーナーBB

 

344:名無しのウマ娘ファン

URAに反省を促す黒沼トレーナーBB

 

345:名無しのウマ娘ファン

ヤクザ扱いだったおじさんが愉快なおじさんになっちまったな

 

346:名無しのウマ娘ファン

んあー!クソコラクソMADばっかです!

 

347:名無しのウマ娘ファン

青汁も完璧なオタ芸披露してたよな

中央トレーナーはみんなやれるって勘違いされそう

 

348:名無しのウマ娘ファン

初見の僕→上半身裸のヤクザじゃん…こわ…

真実を知った僕→担当ウマ娘ちゃんにゲロ甘で芝

 

349:名無しのウマ娘ファン

上半身裸ムキムキグラサンヤクザ

 

350:名無しのウマ娘ファン

誓って殺しはやってません

 

351:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん!ライスちゃん!ブルボンちゃん!ジェットストリームオタ芸を仕掛けるぞ!

 

352:名無しのウマ娘ファン

ブルボンちゃんからお願いされてあの格好なんだっけ?

さ す が で す マ ス タ ー

 

353:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんライスちゃんブルボンちゃんの3人でやってるオタ芸動画好き

 

354:名無しのウマ娘ファン

ロリコンの青汁ヤクザの黒沼

 

355:名無しのウマ娘ファン

話変わるんだけどリリィちゃんの菊花賞楽しみですね

世間の評判だとライスちゃんが一番人気あるけど俺はリリィちゃんを信じるよ

 

356:名無しのウマ娘ファン

まあライスちゃんステイヤーだし皐月賞もダービーも2着の好成績だからね

あとライスちゃんが勝てば三冠をちょうど一つずつ分け合ってる感じになるのが世間的にはウケているらしいな

 

357:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃんしか勝たん!

 

358:名無しのウマ娘ファン

クラシック三強とか言われてるね

 

359:名無しのウマ娘ファン

タンホイザが地味に4着とってるよね

 

360:名無しのウマ娘ファン

幼女3に123独占されてるからな

 

361:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん最強!リリィちゃん最強!

 

362:名無しのウマ娘ファン

本領発揮したライスちゃんが怪物になりそう

 

363:名無しのウマ娘ファン

ブルボンちゃん昔はスプリンターだからどうのこうの言われてたけど今はそういうこと言われてないね

 

364:名無しのウマ娘ファン

>>363

ブルボンちゃんががんばってるのみんな知ってるからな

 

365:名無しのウマ娘ファン

そもそも傍観者でしかない俺らがケチつけていいわけないんだよ

 

366:名無しのウマ娘ファン

みんな命掛けてるからな

 

367:名無しのウマ娘ファン

大切なあの子に会うために6歳から毎日走り続けたとってもかわいいウマ娘ちゃんだ〜れだ?

 

368:名無しのウマ娘ファン

>>367

かわいいかしこいリリィちゃん!

 

369:名無しのウマ娘ファン

>>367

とってもかわいいリリィちゃん!

 

370:名無しのウマ娘ファン

リリィちゃん!

 

371:名無しのウマ娘ファン

はじめて聞いた時畏敬の念が湧いてきましたよ…

 

372:名無しのウマ娘ファン

おっも♡

最高だよね(歓喜)

 

373:名無しのウマ娘ファン

1年ぐらいしか一緒に過ごしてないのに重すぎだよね(褒めてる)

思う存分いちゃいちゃしてどうぞ

 

374:矢

今年の菊花賞はキョウエイボーガンがオススメだゾ

 

375:名無しのウマ娘ファン

>>374

自演乙

 

376:名無しのウマ娘ファン

(…誰?)

 

377:名無しのウマ娘ファン

刹那で忘れちゃった。まあいっかあんなウマ娘

 

378:名無しのウマ娘ファン

>>377

おいあんた!!ふざけたこと言ってんじゃ…

 

379:名無しのウマ娘ファン

やめろ>>378っちゃん!!!

 

380:名無しのウマ娘ファン

しってるぜブルボンちゃんのおともだちだろ

 

381:名無しのウマ娘ファン

そういえばこの前釣りしてたらリリィちゃんに挨拶してもらえたわ

 

382:名無しのウマ娘ファン

>>381

は???詳しく言え!!!!

 

383:名無しのウマ娘ファン

>>381

もう今世に未練ないよな?

 

384:名無しのウマ娘ファン

一生分の幸運使い切ったな…

 

385:名無しのウマ娘ファン

俺もリリィちゃんにこんにちはしてもらいたいです!

ところで…『穢れなきこんにちは』ってなんだよ…?

 

 

 

 

 

 

 




次は菊花賞です。
多分3話ぐらいになる予定です。


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第36話 シカク

(今年最後の更新に)間に合ったな


 少女は母を知らない。

 自分を産んですぐに亡くなったから。

 少女は父を知らない。

 生まれたばかりの自分を捨て、どこかへ消えたから。

 

 物心ついた頃、少女は施設にいた。

 同じような境遇のウマ娘達に囲まれながら、ぐずる子供達をあやすのが彼女の日常だった。

 

 少女は寂しさを知らない。

 気づいた時には独りだったから。

 

 別に構わないと思っていた。

 だって、分からないから。

 

 冷たくて、色褪せた日常。

 手足が悴んで、水の中に沈んでいるような、そんな感覚。

 きっとこれから先も、これがずっと続くと思っていた。

 

 

 

 ある日の事だ。

 施設の人に、いつもは入らない部屋に呼び出された。

 この施設でみんなに先生と呼ばれている人と、見知らぬ女性が一人いて、先生がこの見知らぬ女性の事を紹介してくれた。

 ぽわっとした雰囲気で、20代ぐらいだろうか? 少し緊張した様子だ。

 先生曰く、どうやら自分の事を引き取りたいらしい。詳しい事はよく分からないが、悪い話ではないだろう。

 でも、正直どうでもよかった。

 

「なんで、ワタシなの?」

 

 素直な疑問だった。

 自分は親に捨てられるような、不出来な人間だ。特別秀でているところもなく、ここから出て行きたいと思っている子達が大勢いる。乗り気ではない自分よりもその子達を選んだ方が喜ばれるだろう。

 

「……なんでって言われたら分からないけど、あなたがいいって思ったの。もしも運命というものがあるのなら、こんな感じなのかしら。……ありきたりな言葉で、ごめんなさいね」

 

 困ったように微笑む女性に、どう返せばいいか分からなくなった。

 嘘をついてる様子も、自分に対する悪意もない。彼女の真っ直ぐな心が伝わってきたからだ。

 

「……ワタシ、何もできないよ」

「若いんだもの。これからよ」

 

 初めての感覚だった。

 身体の中を血が巡るような、初めての感覚。

 

「……ワタシは、親に捨てられるような、悪い子だよ」

「あなたは悪くないわ。捨てた人が悪いの」

 

 初めての感情だった。

 色彩の欠けた世界に色が乗せられるような、初めての感情。

 

「…………ワタシで、いいの?」

「あなたがいいの」

 

 この日、少女は知る。

 

「私と、家族になりませんか?」

 

 やさしくて、やわらかくて、涙が出るほどあたたかい。凍えた心を包み込んでくれるひだまりを。

 

「………………うん!」

 

 

 

「そうだ! 改めて、自己紹介しましょ。今日からあなたのお母さんになった……いきなりは難しいわよね。そうね、あなたの呼びやすいように呼んでくれて構わないわ」

 

「…………お母さん」

 

「…………あらあら。あらあらまあまあ……!」

 

 その言葉に、彼女は心底嬉しそうに顔を綻ばせた。

 自分でも思うが、気を許すのが早すぎる。

 

「…………あっ……名前。ワタシの名前……『キョウエイボーガン』だって」

「あっ! 降りてくるってやつね。カッコいい感じなのね、あなたの名前。いいわね、素敵よ」

 

 だって、仕方ないじゃないか。

 知らなかったんだ、この温もりを。知ってしまったなら、もうだめだ。

 

「キョウエイボーガン……ボーガン……。それじゃあ、『ボー』って呼んでもいいかしら?」 

「……いいよ。いっぱい呼んで、お母さん」

 

 

 

 

 

 トレセン学園寮内の一室で、とあるウマ娘がモニターと睨めっこしていた。

 彼女はキョウエイボーガン。ぶつぶつと独り言を言いながら、独自にまとめた菊花賞に出走するウマ娘達のデータを眺める姿は尋常ではない。

 先日、トライアルレースの神戸新聞杯で1着を取ったので、彼女も今回の菊花賞に参戦する予定だ。

 食事とトイレと風呂と睡眠以外ここ最近はずっとこれなので、同室のアッシュストーンも多少は慣れてきたが、内心は「ちょっとこいつ怖い」と思っていた。

 

「――京都大賞典のライスとブルボンの勝敗から見るに、ライスは京都レース場に高い適性がある。恐らく、ライスは下り坂が非常に得意なのだろう。だが、この伸びはどういう事だ……?」

 

 今は本日行われたレース、GⅡ京都大賞典の分析中だ。

 このレースはライスシャワーとミホノブルボンが出走し、結果はライスシャワーが1着でミホノブルボンが2着だった。

 距離的にミホノブルボンが有利と思われたが、ライスシャワーがアタマ差で勝利を掴んだ。

 シロノリリィは二人を元気に応援していた。ライスちゃんがんばれー! ブルボンちゃんがんばれー!

 ライスシャワーのやる気が上がった! ミホノブルボンのやる気が上がった!

 

「――そうか……! 夏合宿のあのトンチキ……個性的なトレーニングか! 海上を走り続けるには脚の回転、すなわちピッチ走法を意識する必要がある。それと不安定な海上という足場を走るために体幹などが鍛えられた結果、彼女の坂適性が向上したのか……!」

 

 手元にあったエナジードリンクを呷る。

 彼女の机の周りには、ピラミッドのように積み上げられた空き缶が大量にあった。

 

「──アッシュよッ!! ワタシがリリィちゃんやライスやブルボンやタンホイザと比べて、何が足りてないと思う!?!?」

「才能」

「ライン超えたぞ貴様。……じゃあ優っているところは?」

「性格の悪さ」

「魔物か、ワタシは……?」

 

 椅子から立ち上がって伸びをする。

 ベキバキゴキ……と異音が鳴り、長時間座っていた疲労が伺えた。

 

「ワタシは最高にクールで知的でカッコいいが、彼女達と比べれば見劣りする。リリィちゃんには圧倒的なパワーが、ライスにはスタミナが、ブルボンにはスピードが、タンホイザには根性がある。根本的なことを言えば、君の言う通り才能が無いのだよ。……足りないものが多すぎる」

「例えば何よ?」

「情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ。そして何よりも……──速さが足りない」

「頭脳と勤勉さは足りてるだろ」

 

 皮肉気に告げる彼女の瞳は、昏い光を孕んでいた。

 

「こんな言葉を聞いたことはないか? 『トレセン学園に入れるだけで、既にエリート』。なんて、戯言を。入学おめでとう! とってもすごいね! 勝てなかった? 残念だったね! でもトレセン学園にいる時点ですごいよ! ……吐き気がするね」

 

 ここにいるのは、愉快で頼れる(?)ウマ娘では無い。勝利を渇望する、凡愚だ。

 

「天賦の才を持つ者が、命を、誇りを、魂を削り掴み取るのが勝利だ。凡人であるワタシが彼女らを上回る努力を重ねても、それを嘲笑うように簡単に捩じ伏せていく。……ムカつくなあ。だから――」

 

 (ひね)くれて、(ねじ)れて、(こじ)れている。

 

「――それを覆せたら、爽快だろう」

 

 でも、捩れすぎて真っ直ぐだ。

 曲げても叩いても、反動をつけて戻ってくる。

 

「ワタシにあるのは、性格の悪さと執念と小賢しさだ。だからそれで上回る。彼女達に勝ってやる。……ところでアッシュよ。君は何のために走っている?」

「……唐突だな。まあ、あれだ。勝ちてえから走ってる。勝って、歴史に名前を刻み込めりゃ特上よ」

 

 お前はどうだ? と聞き返せば、誇らしげに返された。

 

「大好きなお母さんに最高にカッコいいワタシを見てもらうためだ」

 

 雲ひとつない晴天のような、見事なキメ顔だった。

 

「マザコン……」

「よせ、照れる……」

「褒めてねーよ!」

「は?? じゃあ君はお母さんを愛していないのか??」

「うるせー、そこそこだよ。そういや、お前から親父の話聞いた事ないよな? そっちはどう――」

「そんな奴はいない」

「……そっか」

 

 不穏なものを感じたので会話を打ち切った。

 判断が早い。

 

「ところでよ、菊花賞の対策案はなんかあるのか?」

「勿論さ。そのために情報(ダーテン)を集めていたのだ。でなければ、こうして楽しくおしゃべりなどしていないよ」

「普通に情報って言え」

「しかし問題があってね。成功率が1%なのさ」

「低すぎんだろ……」

「0じゃないなら上出来さ。なあに、ソシャゲのピックアップ確率よりは高いから大丈夫さ」

「お前いつも天井叩いてなかったか?」

 

 アッシュストーンはソシャゲをやらないが、彼女の横で悶え苦しんでいるキョウエイボーガンを見て人間の悪意(ガチャ)というものを理解していた。

 やはりガチャは悪い文明!!

 

「――だから、その確率を上げる。くくく……菊花賞前のインタビューが楽しみだなぁ……!」

「……ろくでもねえ事考えてるんだろうなぁ」

 

 

 

 

 

 本日、菊花賞直前のインタビューのために本レースに出走するウマ娘達が集まっていた。

 皆一様に気合が入っており、身体の仕上がりも素晴らしい。

 GⅠや一部の重賞レース前の恒例ともいえるこのイベントを楽しみにしているファンも多い。

 いつもほんわかしているウマ娘達が、表面上は穏やかにしつつもバッチバチに殺気を飛ばしあっている姿を見られるからである。

 今年のクラシック戦線で主役扱いのシロノリリィ達は中身がほわほわちゃんなので、そういった場面はあまり見られない。そこを残念に思っているファンも少なからずいた。難儀な性癖だ。

 

(……クラシック三冠、最後の一冠というだけはあるな。正直言って、ゴリラの群れに放り込まれた気分だ)

 

 周りにいるウマ娘達は、皆一様に尋常ではない仕上がりだった。

 キョウエイボーガン自身も限界以上に自分を追い込んで仕上げてきた自信はある。だが、これが彼女の初GⅠなのだ。多少の萎縮は仕方がない。

 

「おぉ〜! キョウちゃんの勝負服かっこいいですね! あっ、こんにちは。今日も元気なリリィちゃんです!」

「やあ、リリィ。ワタシもお披露目できて嬉しいよ。勝負服(これ)に袖を通すのは、ウマ娘の憧れでもあるしな。もちろん、それはワタシもだ」

 

 周りのウマ娘達を観察していると、シロノリリィ達がこちらに気づいて声をかけてきた。

 共にいるのはライスシャワーとミホノブルボン。二人もキョウエイボーガンの勝負服を見て、お祝いと感想をくれた。

 彼女の勝負服は、黒を基調としたロングコート。雑に説明すると、○loodborneの狩人と同じような格好だ。

 まだ開始時間まで時間があるので、談笑しながら情報収集を続けた。

 特にこの3人――シロノリリィ達が菊花賞の中心となると考えているので、少しでも情報が欲しかった。

 

(やはりリリィちゃんは美しいな。……それに、いい匂いもする)

 

 夏合宿以降、シロノリリィはレースに出ていない。恐らくスタミナを徹底的に鍛えるためだろうと予測した。

 見た目に変化はないが、仕上がりはいつも通り絶好調だ。元気がない時はお耳がへにょへにょになっているから一目でわかる。トレセン学園に来てからはずっと絶好調なので、不調時の姿は誰も見たことがないのだが。

 

(尻、ごっついなぁ)

 

 ミホノブルボンの肉体は、一眼見ただけで分かるほどの筋肉だ。勝負服越しでも分かる戦車のような筋肉にちょっとびびっていた。

 こんな見た目でもシロノリリィの方がパワーが力が上なのは、正直理解し難い。ミホノブルボンがシロノリリィに腕相撲を挑み、こちらが両手というハンデがあってなお勝負にならなかったほどだ。

 手押し相撲もやったが、誰一人としてシロノリリィを揺らすことすらできなかった。数多のウマ娘達を正面から受け止め、微動だにしない姿はまさに不動。ちなみに彼女は片手でダンプカーを止められる。

 

(肩出しは卑猥なのでは?)

 

 今のライスシャワーはふわふわしているが、レースになると鬼に変貌する。そのギャップが癖に刺さると世間では言われている。私の性癖に合っています!

 肉体は研ぎ澄まされていた。細い身体は練磨の証。無駄な脂肪を削ぎ落とした姿は見事としか言いようがない。

 

 マチカネタンホイザはむんむんしていた。

 

(……ふふっ、やはりな。ワタシの能力では勝てそうにない)

 

 

 そうしてインタビューが始まった。インタビューの順番は概ね決まっており、今世代の主役であるシロノリリィとライスシャワーとミホノブルボンが最後の方で、トリはマチカネタンホイザだ。その他のウマ娘は最初の方で出番が終わる。

 大人の都合といえばそれまでだが、自分達が軽んじられているようで、彼女は好きになれなかった。

 今日の放送はいつも通りの流れで進行していた。台本――ざっくりとした流れは聞かされているので、皆それに従っている。

 インタビューの順番は知らされていないが、まあなんとなくいつも通りなのだろうと皆が思っていた。

 キョウエイボーガンも無難に答えていた。まだ、事を起こすには早いから。

 

「菊花賞は私にとって、一番辛いレースになると思います。きっと不安な人もいるかもしれません。だから、見ててください。みんなの不安も、ライバルも、私が全部ぶっ飛ばします!」

 

「クラシック三冠最後の一冠。ここで皐月賞ウマ娘であるリリィさんと、ステイヤーであるライスさんを倒し、私が最も強いと証明してみせましょう」

 

「応援してくれている皆さんやトレーナーさんに、笑顔を届けたいから。私が勝つところを、見ててください」

 

 キョウエイボーガンは知っている。今の時代の中心が彼女達なのだと。世間が望んでいるのは、この3人が三冠を分かち合う事なのだと。

 その方がドラマチックだから。その方が映えるから。話題になるから。数字になるから。

 

「では、最後にマチカネタンホイザさん。お願いしま――」

「──傲りが過ぎるぞ、君達」

 

 だから、これを利用する。

 生放送で、筋書きが決まっていて、世界中が注目している今を。

 

「最初から誰も、天に立ってなどいない」

 

 止めたければ、止めるがいい。

 でも分かるよ。いい子ちゃんばかりだと飽きるだろう? だから……

 

「リリィも、ブルボンも、ライスすらも。だが、その耐え難い天の座の空白も終わる。これからは──」

 

 

「ワタシが天に立つ」

 

 

 自分が刺客(ヒール)となろう。

 ここに立つ資格がないなどと宣うな。

 

「そうそう、ワタシは大逃げでいくぞ。じゃあ、タンホイザ。あとはよろしくゥ!」

 

「………………ほっ? ……ふぁっ? …………むんっ!?!?」

 

 ワタシはここに居る。

 刻み込んでやろう、己が生きた蹄跡を。

 

 かくして、菊花賞の幕はあがる。




今年もこれで終わりですね。皆さんお疲れ様でした。なんだか時間が過ぎるのが早くなった気がします。
私のこの一年のチャンミ結果は、アクエリアスとMILEとDIRTとCLASSICとLONGでプラチナを取れました。アクエリアスは今年でしたよね? 少々記憶が怪しいです。間違ってたら木の下に埋めてください。
LOHは勿論ライスシャワー英雄譚☆☆☆です。プラチナはかろうじて☆がついてます。川崎記念はやりたくないです助けてください。
ライスちゃんで優勝したのはDARTとCLASSICです。来年はもっとライスちゃんで勝ちたいですね。小説を書け? …おっしゃる通りです。
それでは皆さん、来年また会いましょう。良いお年を。


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