戦術人形になった男は今日も対物ライフルをぶっ放す。 (SUPER64)
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プロローグ

大口径スナイパーライフルってロマンありますよね。その中でも20ミリ口径の弾を発射するスナイパーライフルはロマンの塊だと思うんです。なのでドルフロの自分の推しの1人はNTW-20です


目が覚めるとそこは薄暗い部屋でした。いや、マジで何処だよここ。俺の部屋じゃないぞ。たしか昨日俺は休みだったから部屋でゲームをしたりしていてそのまま自分の部屋で寝ていた筈だ。なら俺が寝ている間に誰かに運ばれたのか?だが幾ら寝ていたとは言え運ばれれば起きる筈だ。となると睡眠薬的なものを盛られて無理矢理眠らせてここまで運んで来たのか?と言うか何で俺をここまで運んで来たんだ?誘拐か?

 

取り敢えず手足が縛られていると言うことはなかったのでここが何処か調べる為にも起きようと体を起こした時、身体に違和感を感じた。胸に妙な重さと膨らみを感じる。確認の為に視線を下に向けるとそこには大きな肌色の膨らみがあった。その膨らみのせいで自分の腹が見えない。

 

「・・・・は?」

 

数秒か、数十秒か分からないが俺は余りに意味不明な事態に暫くフリーズしていた。咄嗟にその膨らみを両手で触った。するとふにっとした柔らかな感触と胸を触られていると言う感触が同時に来た。

 

「こ、これって・・・・おっぱい?って声も⁉︎」

 

俺の大胸筋とかでは無い。こんなに膨らんだ大胸筋があってたまるかってんだ。到底信じられないことだが間違いない。このおっぱいは自分の身体から生えているもので本物のおっぱいだ。そして自分の声も聞き慣れた男特有の低い声から可愛らしさのある女みたいな高い声になっていた。「あーあー」と声を出してみるがやっぱりそうだ。声が変わっている。

 

「髪も変わってるし・・・」

 

さっきから視界の端にチラチラと見えていた髪の毛を一房手に取り目の前に持って来て見てみると黒色の短髪だった筈の髪は茶色の手触りの良い長い髪になっていた。

 

「まさか・・・」

 

一連の情報を総合して考えた結果俺は一つの可能性に辿り着いた。それを確かめる為に俺は部屋中を探し回って手鏡を見つけた。少し汚れていてヒビも入ったいたが充分に自分の姿を見ることが出来た。そして手鏡に映ったのは見飽きる程見て来た男の自分の顔ではなく茶色の長い髪と鮮やかな水色の目を持った見知らぬ美少女だった。もしかして女になっているのか?と言う俺の予想は最悪なことに当たっていた。

 

「って言うか私裸なんだけど⁉︎って、あれ?喋り方が・・・?」

 

一度に色んなことが起き過ぎて今の自分が服を一切着ていない裸の状態だと言うことに今更気がついた。そして、自分の喋り方がおかしい。いつも通り喋ろうとするが何故か無意識に女みたいな喋り方になってしまう。

 

「はぁ・・本当、何がどうなってんの?」

 

本当に訳が分からな過ぎる。だけど先ずは何か着る物を探さないといつまでも全裸のままである訳にもいかない。そう思って部屋に置いてあったロッカーの中を探してみるとパンツとプラグスーツを少しゴツくした様なみたいな見た目の服、と言うかボディースーツが出て来た。え、服コレだけ?他に無いかロッカーの中を探してみるがこれ以外に服らしき物は何も無い。

 

仕方ないので俺は飾り気の無い黒色のボディーショーツみたいな感じのパンツを履きそしてボディースーツを着て行く。こう言う服を着るのは勿論初めてだったので少し着るのに手間取ったが何とか着ることは出来た。ボディースーツらしく身体にピッタリフィットする服でサイズはピッタリだった。着心地はウェットスーツみたいな感じで悪くは無いが身体のラインがくっきりと出てしまうから恥ずかしい。グーパーと手を開けたり閉じたりしてみたりその場で軽く身体を動かしてみたりするが思ったよりこのボディースーツは伸縮性があるようでとても動き易かった。

 

着替え終わった俺は次に自分の身に何が起こったのか、ここは何処なのかとか色々と知りたいことがあるのでそれを知る為にベッドの横に備え付けてあったパソコンをダメ元で操作してみると何とパソコンは問題なく起動した。そのパソコンの画面には「試作型戦術人形アンツィオ」と書いてありその下には「起動」とも書いてあった。気になってその試作型戦術人形アンツィオについて更に詳細を調べてみると詳しいデータが出て来た。無駄に堅苦しい感じで長々と書いてあったが要約するとアンツィオ20ミリ対物ライフルと言う大型の対物ライフルを運用する戦術人形の試作型と言う事作られた戦術人形と言う事らしい。身長や体重、スリーサイズなどといったデータと一緒にその戦術人形の写真も載っていたんだがこれが驚いた事に今の俺の姿と全く一緒だった。 

 

つまり俺はどう言うことかドールズフロントラインの世界に転生し、さらにどう言う訳か戦術人形に憑依してしまったと言う訳だ。全く信じられないことだがどんなにファンタジーであり得ないことだったとしても俺が戦術人形になってしまったと言う事実は揺るがない。まだこの状況を信じきれては居なかったがずっとここにいる訳にもいかない。戦術人形と言うことは専用の銃もある筈だし先ずは身の安全を確保する為にもそれを探そう。そう思い着替えの服が入っていたロッカーの横にあった大きめのロッカーのドアを開けて中を見てみると中にはクソデカい銃とMP9サブマシンガンが入っていた。俺はそのクソデカい銃に手を伸ばし触れた瞬間、不思議な感覚がした。

 

何と言うか・・・探していた大切な物をやっと見つけた時の様な安心感、みたいな感じの感覚だ。初めて見るし触る銃になのに昔から使って来た物かの様に使い方が分かった。恐らくこれは戦術人形に備わっているスティグマの影響だろう。そしてスティグマに適応している銃と言うことはこれがアンツィオ20ミリ対物ライフルって言うことなんだろう。資料にはアンツィオの全長は2.5メールと書いてあったが実際に実物を見てみるとその長さに驚かさせる。なんせ自分の身長よりも銃の方が長いんだからな。

 

「よっと!」

 

ロッカーの中からアンツィオを取り出してみる。総重量は約60キロにもなると書いてあったけどこの女性の身体でそんなクソ重いのを持ち上げ切れるか?と思っていたが流石この銃を取り扱う為に作られた戦術人形と言うべきか簡単に持ち上げることが出来た。

 

「気分はハルクね」

 

試しにアンツィオを構えてみる。銃本体が長過ぎるせいでこの狭い部屋の中だと構え難い。ボルトアクション式の対物ライフルだって言うこともあるがこの長物を室内で扱うのは難しそうだ。

 

「そんな貴方にこれ、MP9!」

 

通販番組みたいな言い方をしながら俺はアンツィオを床に置いてMP9サブマシンガンを手に取る。これはスティグマ適応外の銃の様で特に手に取ってもさっきみたいな感覚は無かった。さっき見た資料の装備品の欄をもう一度確認してみるとサイドアームとして用意されたこのサブマシンガンは正確にはMP9-Nらしい。ただオープンタイプのドットサイトは付けられていたがストックやフォアグリップは付けられてない。そんな状態で毎分1100発にもなる連射の反動の制御を出来るのか?と思ったけど60キロの大型対物ライフルを持ち上げられるくらいの力があるならサブマシンガンのリコイル制御もお手のものだろう。

 

更にMP9-N用のホルスターまで用意されていて今着ているボディースーツの右横に付けれるようになっているとのこと。実際にMP9-N用のホルスターは右太腿の付け根辺りにカチッと付けることが出来た。更にMP9-N用のマガジンポーチも合計3つ付けることが出来た。反対側にはアンツィオ用のマガジンポーチを2つ付けることが出来た。

 

「って言うかマガジンデカ過ぎでしょ」

 

腰の左側のマガジンポーチに入れたアンツィオ用のマガジンを見ながら俺はそう呟いた。バルカン砲にも使われている20×102ミリ弾を3発入れているこのボックスマガジンは筆箱並みの大きさがある。銃の大きさも、弾の大きさも、マガジンの大きさも、何もかもがこの狙撃銃は規格外だ。流石に建物の中でアンツィオを振り回す訳にもいかないのでスリングを使って背負い手にMP9-Nを持つ。

 

「う〜ん・・・やっぱりデカ過ぎる」

 

自分の背丈より長い対物ライフルを背負う姿はまるでベ◯セルクだ。それは、銃と言うにはあまりにも大きすぎた。大きく、重く、使いづらく、そして大口径過ぎた。それは正に大砲だった。私は大砲よ。何て馬鹿なことを考えながら身支度を進めて行く。MP9-Nのチャージングハンドルを引いてチャンバーに初弾を装填して、セレクターレバーをセーフからオートに切り替える。これで後はトリガーを引くだけでぶっ放せる。

 

俺は部屋のドアの前に立つと一度大きく深呼吸をする。頭を振るい、頬を叩き気合を入れる。

 

「それじゃ、行きますか」

 

これからどうなるのか分からない不安と、ここから先新しい人生が始まるんだと言うワクワク感を胸に俺はドアを開けた。

 

「あり?」

 

意気揚々と部屋の外に出ようとするとゴッと言う音が上から聞こえ、前に進めなくなった。何でだ?と思い上を見てみると背負っていたアンツィオの銃身が入り口に当たって引っかかっていた。少し屈んでから俺は部屋の外に出た。せっかく覚悟を決めて出ようとしたのに締まらないなぁ。

 

「この調子でこの先大丈夫なのかなぁ?」

 

気を取り直して、俺は新しい人生に向かって一歩踏み出した。




アンツィオちゃんの簡単な説明


【挿絵表示】


・身長167cm
・スリーサイズ B85(F) W56 H89
・茶髪のロング
・目の色は水色
・服装 戦術人形用ボディースーツ。ある程度の防弾性もあり9パラ程度の弾なら何とか防ぐ事が出来る。
・メインウェポン アンツィオ20ミリ対物ライフル。
・サイドアーム MP9(ストック、グリップ無し)
・キャラ説明 全長2.5メートルにもなる長大な対物ライフルを使用する戦術人形。銃の長さもさることながら重量も約60キロと普通の人間であればまともに使うことが困難な大型ライフルであるが、彼女はこの銃を運用する事を前提に設計されたこともありこの銃を持って走り回ることが出来る程にはパワーがある。普段は誰とでも分け隔てなく話す明るい性格だが自分の使うアンツィオ20ミリライフルこそ最強の狙撃銃であると言う自信を持っておりそれ系の話になると負けん気を発揮する。


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第1話 出会い

お待たせしました。これからアンツィオちゃんの冒険が始まります。思っていたより多くの人に読んでもらって更に沢山の人にお気に入り登録をしてもらって感想も貰えたので超嬉しかったです。皆さんありがとうございます。


廃棄されたI.O.P社の研究施設から抜け出した俺は行く当ても無かったので適当に荒地を歩いていた。戦術人形と言うこともあり普通の人間より体力はある様で約60キロの対物ライフルはを背負っている状態で結構歩いたけどまだまだ体力に余力はある。

 

「同じ様な景色で飽きちゃうなぁ」

 

石ころを蹴りながら歩いていた俺は1人寂しく呟く。時計を持っていないから正確な時間は分からないけど結構な時間歩いた筈だ。最初の内は見慣れない景色にワクワクしながら歩いていたけどずっと同じ様な景色が続いていたお陰で流石に飽きていた。

 

適当に歩いているとは言ったが一応ちょっとは考えて歩いていて、少し前に車が複数台通った跡がある砂利道を見つけたからそれに沿って歩いている。だが車どころか人にも今の所出会えていない。泣けるぜ。研究施設から持って来た水と食料もそこまで多くは無いから飢え死にする前に人に出会うか人が居る所に行きたいけど見渡す限りずっと荒地が続いていて人が住んでいそうな建物も無い。

 

もしかして道を間違えたか?とも思ったが今更ルート変更しても遅いので諦めてこの道に沿ってひたすら歩くしかなさそうだ。それからもひたすら歩き続けていたが歩いても歩いても景色は殆ど変わらず誰にも会えない状況が続いた。体力的にはまだまだ大丈夫だったが暇を持て余しまくった俺はとあることを思いついた。

 

「どうせだから試し撃ちでもしてみよ」

 

せっかく戦術人形になったと言うのにまだ俺は銃をぶっ放していない。そして暇だったのでこのアンツィオ20ミリ対物ライフルの威力を確かめてみたくなった。それに今背負っているアンツィオは全くゼロイン調整をしていない状況な訳でゼロイン調整をする為にも試し撃ちをしてみることにした。弾はマガジンに入れているヤツ以外にもバラでリュックの中に10発入れているから少し撃つ程度なら問題ない。

 

背負っていたアンツィオを手に持ち折り畳んでいたバイポッドを展開して地面にアンツィオを置いた。実はこの銃には前に付いているバイポッド(二脚)の他にストックの近くにもモノポッド(一脚)がありこれらを使って銃本体を支える。

 

こんな大型の対物ライフルの反動なんてとんでもないに決まっているので伏せ撃ちの状態で銃を構える。後ろのモノポッドの高さ調整し先ず試しに目測約300メートル先の岩に狙いを定める。とある兵士の話によると素人なら100メートル先の的に2〜3発当てれば上手い方だそうだが戦術人形となった今の俺なら300メートル先のあの岩に当てる事は出来る筈だ。ボルトハンドルを前後に動かしてチャンバーに弾を装填する。この搭載されているスコープの最低倍率は5倍で300メートル先の岩もはっきり見える。狙いを定め、息を吐いてから呼吸を止めゆっくりとガク引きにならない様に気を付けつつトリガーを引いた。

 

ダゴォンッ‼︎

 

鼓膜が破けるんじゃないかと思う程凄まじい発砲音と共に強烈な銃の反動が右の肩に来る。そのあまりの反動に銃どころかうつ伏せになっていた自分自身が少し後ろにバックした。発射時の爆風とマズルから噴出された発射ガスによって俺の周りに大量の砂埃が舞う。次の瞬間にはクソ長い銃身から放たれた20ミリ弾が岩の手前の地面に当たり土煙を巻き上げた。

 

「す、凄い・・・」

 

威力もそうだが発射時の反動も凄かった。身体にガツンと来る感じでまるで人に右肩を思いっきり蹴られた様な感じだった。ただ岩の真ん中を狙ったのに手前に落ちたし右にもずれていた様に見えた。言うことでゼロインを調整する為に上と横のツマミを回して調整する。調整を完了するとボルトハンドルを前後に動かして空薬莢を排莢して次弾を装填する。もう一度息を吐いてから止め、狙い覚ましてトリガーを優しく引いた。

 

再び猛烈な発砲音と反動が来て目の前で大量の砂が舞う。飛んで行った弾は岩のほぼ真ん中辺りに着弾し当たった場所を抉り取り岩の表面に穴を作り上げた。本当に凄い威力だ。もしこれを生身の人間に撃ったらどうなってしまうんだろうか?想像出来ないはとてもグロいことになりそうだ。多分直撃したら原型を留めないレベルで吹き飛ぶ可能性がある。まぁ取り敢えずある程度の射撃練習と調整は出来たし弾もあんまり多くはないからこれ以上は撃たないでおこう。ボルトハンドルを前後に動かして空薬莢をだし、マガジンを抜いて新しく2発入れてから銃に戻した。

 

そんなことをしていると砂利道の奥の方から車が一台砂煙を巻き上げながら走って来ているのを見つけた。スコープを覗き込んでスコープの倍率を5倍から最大倍率の42倍まで拡大してその車を観察する。走って来ている車はどうやら古いアメ車の様だ。あんな古そうな車をこんなご時世にわざわざ走らせているってことは運転手は車好きなんだろうなぁと思いつつ運転手の顔を確認してみるとアンバーの髪の毛と頭の上にサングラスを乗せており、ネイビーブルーのジャケットを羽織っている。俺はその格好と顔に見覚えがあった。

 

「あれって・・・もしかしてグリズリー?」

 

まだ距離もあるのでただ格好とかが似ている別の人って言う可能性もあるけど、グリズリーに見える。まぁ兎に角誰であろうとやっと見つけた第一村人だ。流す訳にはいかない。地面に置いていたアンツィオライフルを背負い道の横に立って車が通るのを待つ。あの砂煙の巻き上げ方から察するにあの車は結構な速度を出していた。とするとそんなに待たずに車はここを通過するだろう。

 

そんなことを考えながら待っているとドルルルルッ!と言う独特なエンジン音を響かせながら銀色の車が結構な速度で走って来た。俺は人生で一度はやっておきたいことの一つだったヒッチハイクを実行。腕を水平方向にまっすぐ伸ばし、親指を立てる。が、車は速度を緩めることなくそのまま通り過ぎた。

 

「あり?」

 

止まってくれるもんだと思っていた俺は呆気に取られているといきなり車はブレーキをした様でガザザザザァァ!とこれまた派手に車体が見えなく程の砂煙を巻き上げながら停車した。ドアの開閉する音が聞こえ、こっちに歩いてくる足音も聞こえて来た。

 

「こんな所で何してんの?」

 

そう聞こえて来た声と砂煙の中から現れた姿は紛れもないグリズリーだった。敵意は無いことを示す為に手には何も持たずに俺はグリズリーの方へ歩み寄る。

 

「えっと、実は迷子になってて〜」

 

「迷子?」

 

俺はこれまでの経緯を簡単にグリズリーに説明した。勿論俺が元男の転生者だと言うことは言っていない。それを説明したら面倒な事になりそうだしそもそもこんなファンタジーじみた話を信じてもらえるとも思えないからな。だからグリズリーには目が覚めてからの話をした。

 

「で、今に至るって感じ」

 

「成る程〜つまりアンタは廃棄されていた筈なのに何でか目が覚めて行く当ても無かったから適当に道を歩いていたと」

 

「そう言うこと」

 

「それは丁度良かった。私はグリフィン&クルーガーって言う民間軍事会社に所属しているんだけどグリフィンは知ってる?」

 

「一応」

 

「なら話は早いね。私はそこに所属しているからアンタを保護して貰えるかこっちの指揮官に掛け合ってあげるよ」

 

「良いんですか?」

 

「良いってことよ。私はグリズリー。同じ戦術人形同士、仲良くやろ?」

 

と言ってグリズリーは屈託の無い眩しい笑顔を俺に向けて来た。あぁこう言う感じの姉が欲しかったなと思う今日この頃。

 

「私はアンツィオ。よろしく」

 

「よろしくね!アンツィオ!」

 

簡単な自己紹介を終えて俺とグリズリーは握手をした。グリズリーは元気よくブンブンと俺の腕ごと上下に揺さぶる。

 

「さ、乗って乗って!って、言いたい所だけど乗る前にそのデカい銃をどうにかしなきゃだね〜」

 

と言ってグリズリーは俺が背負っていたアンツィオライフルの方と車の方を交互に見ながら言った。一瞬何が言いたいのか分からなかったが直ぐに分かった。グリズリーが乗って来た車は2ドアの2人乗りタイプの車だ。車内は広いとはあまり言えない。高さもそこまである訳じゃないからどう見ても長さ2.5メートルあるアンツィオライフルを中に入れることは不可能だ。

 

「・・・そうだ!」

 

右手を顎に当てて考えていたグリズリーは何かを思いついた様で手をポンと叩いた。

 

「天井に縛ろっか!」

 

「え?」

 

予想外の方法に俺は疑問符を浮かべる。天井に縛るってど言うことだ?まさかアンツィオライフルを天井に置いて縛り付けるってことか?グリズリーに聞いてみると「そう言うこと」と言ってサムズアップされた。個人的にもうちょっと良い運び方があるんじゃないか?と思ったが実際他に良い考えも浮かばなかったので仕方なく天井に縛ることにした。車の屋根にアンツィオライフルを縦に置き落ちない様にグリズリーが固定用のベルトを4本使いアンツィオライフルをガッチリ屋根に固定した。

 

「なんで固定用のベルトを持ってたの?準備良過ぎない?」

 

「まぁ普段から大きい荷物を天井に乗せたりするからね」

 

「さいですか」

 

走行中に落ちないかなぁ?と不安に思いつつ俺は車の助手席に座った。車の内装はクラシックでオシャレな感じだ。車自体は砂によって汚れていたが車内はとても綺麗な状態だった。こまめに掃除をしているんだろうな。俺が車内を見回しているとグリズリーが嬉しそうに聞いて来た。

 

「どう?良い車でしょ?」

 

「ですね。このクラシックな感じがとても良いと思います」

 

「あ、分かってくれる?これの良さ。最新装備をゴテゴテつけた最近の車は便利にはなっているけどコイツみたいな良さは無いんだよねぇ。最近の車には無いアナログ式のタコ、スピード、油圧、水温、とかのメーターとか最高なんだよねぇ。古いからこその良さって言うやつだね」

 

なんかグリズリーは熱く語り始めたが車はあんまり詳しくないからよく分からない。取り敢えず愛想笑いをしつつ適当に返事をする。

 

「この車、何て名前なんですか?」

 

「エレノア。正確にはシェルビーマスタングGT500、67年モデルのエレノアカスタム」

 

「エレノアってあの60セカンズの?」

 

60セカンズって言うのは古いアメリカの映画だ。超高級車窃盗のエキスパートの主人公が仕事に失敗した弟の命と引き換えに4日以内に50台の超高級車の盗難を命じられる話。その映画で登場する車の一つにそんな名前の車があった筈だ。するとグリズリーは目を輝かせて俺に「あの映画知ってるの⁉︎」と聞いて来た。やべ、下手に言わなきゃ良かったかも。

 

「い、いえ、何か聞いたことあるなー程度で」

 

本当は昔車好きだった父さんと一緒に見たことがあるんだがそのことを言える訳も無いしな。

 

「そっか〜一度は見てみることをおすすめするよ。登場して来る車達がどれもカッコいいんだよ。特にこの車が警察もカーチェイスするシーンとか最高なんだよね!っと、いつまでも喋っててもダメだね。それじゃ、行きますか!」

 

と言ってグリズリーはいきなりアクセルを踏み込んだ。キャビンを揺さぶるかのようにエンジンが野太く咆哮する。一気に車は加速し速度をグングンと上げて行く。余りの加速に身体が座席に押しつけられた。

 

「ちょ、ちょっと速度出し過ぎじゃ?」

 

「どうせここは一本道でカーブも殆ど無い直線コースだがら大丈夫。それにフルパワーで走らせた方がこの子も喜ぶから」

 

と言いつつグリズリーはギアを上げて更に速度を上げる。既にスピードメーターは70キロを軽く突破し80キロからも更に伸びている。

 

「す、凄い加速」

 

「でしょ?V8エンジン舐めるなって話よ。このシャープに吹け上がって行く感じが堪らないんだよね。まぁ加速なら電気自動車の方が良いんだけどアレはちょっと物足りないんだよね。やっぱりこの身体を揺らす振動と腹の底から響く感じのエンジン音が無いと。時々環境保護団体の連中とかがこう言う古い車は排気ガスが大量に出るからとか言って環境破壊だとか地球にもっと優しく車にのれだとか色々文句言って来るけどクソくらえって話よ。地球の方が恐ろしいんだから優しくする義理は無いっての!」

 

結構な速度を出しつつグリズリーはテンションが上がっている様で休むことなく早口で色々と話して来るがその内容の半分以上は入って来ていない。

 

「こう言う車は吹かせてナンボ!エンジンパワーに物言わせて加速させるのが良いの。人間スリルを求めてしまう生き物だからね。スピードへの探究心は誰にも止めることは出来ないよ」

 

道も道で踏み固まって出来た道だったから結果凸凹しており速度も結構出ていると言うこともありエレノアはガタガタと揺れ時には小さくジャンプをしたりして俺はヒップハッピシェイクされた。若干車酔い気味になりながら俺はグリズリーの運転する車にはもう乗らないでおこうと思った。




アンツィオ20ミリ対物ライフルの射撃映像を見ていると本当に反動で撃っている人間ごと少し後ろにバックしてしまっているんですよね。一体どんだけ反動が強いのか。そしてアンツィオの搭載しているスコープはMarch-FX 5-42x56 Wide Angleと言うスコープをモデルにしています。最大倍率で約2キロ先の人の姿も確認出来る高倍率スコープです。

そしてグリズリーが登場した訳ですが車好きだと言う噂を聞いて実際古いアメ車とか似合いそうだなぁと思って私の趣味全開の車に乗せました。後悔はしていない。

次回は多分戦闘回になると思うのでお楽しみ!

ご感想も受け付けていますのでご気軽にどうぞ。



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第2話 なーんで狙撃銃使いの自分がカーチェイスしてるんかね?

お待たせしました!第2話です!前回は沢山の感想とお気に入り登場ありがとうございます!とても嬉しいです!


グリズリーの荒くも上手い運転によって誰も居ない道を爆走していたエレノアは気がつくとゴーストタウンの中を走っていた。人の気配は全く無くエレノアのエンジン音だけが静かな街の中に響き渡っている。街中を一時走っているとグリズリーが突然ブレーキを踏みキィィィィィッ!と派手なスキール音と白煙を撒き散らしてエレノアは停車した。

 

「っと、何で止まったの?」

 

「ちょっとここに用事があってね。元々ここに来ようと運転していてアンタと出会ったんだよね。直ぐに終わるから」

 

と言いつつグリズリーはエンジンを切りグリズリーはエレノアから降りると、腰に付けていたホルスターから同じ名を持つ大型拳銃を取り出した。一度マガジンを抜き弾が入っているかを確認するとマガジンを入れてスライドを引き、もう一度、少しだけチャンバーを引いてチャンバーチェックをしてから安全装置を外す。この一連の動作を無駄なく慣れた手つきで素早くやった。まさにプロって感じだ。しかしこうして武器を準備しているってことは今から戦いに行くってことじゃね?

 

「えっと、室内戦になる感じ?って言うか何と戦うの?」

 

「戦いに行くって訳じゃないんだけどね。ここの建物の部屋でとある人物と会ってお話しをする予定なんだけど最悪の場合銃撃戦になる可能性があるんだよね」

 

「一体誰と会おうとしてるの?」

 

「人形屋とか呼ばれている奴で人形のパーツとかを違法に売買していてね。まぁそんだけなら私が動くまでもないんだけどどーもそいつが鉄血製の人形のパーツとかも売買しているって言う情報を聞いてね。鉄血が人類に対し敵対したって言うのは知ってる?」

 

「知ってる」

 

「まぁそんな訳だから今現在鉄血工業製の物は一切使用も売買もダメになっているんだよね」

 

成る程。理解した。んで、今からその違法に鉄血製の製品を売買している奴を捕まえに行くって言うことか。

 

「ま、敵はそんなヤバい奴って訳でも無いからアンタはココで待ってても良いよ。アンタの使う銃的にも室内戦は無理そうだし」

 

と言ってグリズリーは屋根の上に縛り付けているアンツィオライフルを一瞥した。まぁこの銃で室内戦は無理ですな。かと言ってサイドアームのMP9-Nで戦おうにもスティグマ適応外だから素人が撃つのと変わらない様なことになると思う。つまりここはお言葉に甘えてここに待っていた方が良いだろうとIQ100の俺は考えた。

 

「それじゃ、お言葉に甘えてここで待っておく」

 

「分かった。一応もしもの為にいつでも撃てる様に準備はしておいて」

 

「ラジャー」

 

「それじゃ、ちょっくら行ってくる」

 

と言って俺の方に軽く手を上げたグリズリーは5階建ての廃墟の中へ歩いて行った。俺は一応言われた通りいつでも撃てる様にホルスターに入れていたMP9-Nを取り出しセレクターレバーをオートに切り替えてエンジンが停止して静かになったエレノアの助手席に座ったまま大人しく待つ。

 

溜め息を吐きつつ椅子に深く座りながら今までのことを思い出す。時間的にまだ半日しか経っていないが信じられない様なこととかが色々と起き過ぎて今だに現実感が無い。もしかしたら俺は凄いリアルな夢を見ているだけで次の瞬間にはいつのも自室のベッドで起きるんじゃ無いかと思ってしまう。だが試しに自分の頬をつねって見ると男の時より柔らかくなった様な感触と同時につねられた痛みがやって来る。痛みを感じるってことはこれは夢じゃなくて現実だってことだ。ドルフロの世界に転生ししかも俺自身が戦術人形になってしまっただなんて信じられない話だけどな。

 

 

 

ダンダンダン!ダダダダッ!っと、突然建物の中から破裂音が連続で聞こえて来た。花火とかの音とは違うこの破裂音は間違い無く銃声だ。どうやら話し合いでは解決出来なかったみたいだ。数秒間銃声と人の怒声が聞こえて来ていたが突然俺の乗っているってエレノアの上の窓、正確には3階の窓からグリズリーが黒いスーツを着た男を担いだままガラスを突き破って外に飛び出して来た。そして割れたガラスと一緒にグリズリーが地面に降って来ると綺麗に着地した。そして着地したグリズリーは左手に持っていた銃を上に向けるとグリズリーが飛び出して来た窓から顔を出して銃を撃とうとしていた敵を撃ち殺した。

 

「ちょっとそこの入り口見張っといて」

 

「ら、ラジャー!」

 

俺は窓を急いで開けるとMP9-Nを構えて建物の入り口の方を狙う。グリズリーは担いでいた男をトランクに無理矢理押し込み運転席に乗り込みエンジンを掛ける。それと同時に3階から降りて来た敵がこっちに向かって入って来た。俺は両手でMP9-Nをしっかりと持つとこっちに向かって走ってくる敵達に銃口を向けてトリガーを引いた。バラララララララッ!と毎分1100発の早さで9ミリパラベラム弾が撃ち出されて行く。高レート故の反動の強さがあったが元々アンツィオライフルを運用する為に作られたお陰か反動で銃が上に持って行かれると言うことも無く良い感じにリコイル制御が出来た。

 

それでも結構弾はバラついてしまったが敵との距離が近かったこともあり弾は敵に何発も命中。先頭を走っていた出来3人は腹に複数の拳銃弾を食らってそのまま床に倒れた。敵は物陰に隠れて撃ち返そうとしたがグリズリーがアクセルを踏み込んで後輪から白煙を出しながらエレノアを急発進させたことて敵の弾がこっちに飛んで来ることはなかった。

 

「ありがとう。助かったよ」

 

「結局銃撃戦になったね」

 

「いや〜話し合いで穏便に済ませようとしたんだけどねぇ。ダメだったよ。でもまぁ目的の奴は捕まえたし後は基地に帰るだけだよ」

 

そうじゃないかとは思っていたがやっぱりさっきグリズリーがトランクに押し込んだ男は鉄血製人形のパーツを違法に売買していた奴ご本人だったか。もう敵は来ていないかな?と思い後ろを見ると黒色のセダン一台と同じく黒色のゴツいSUVが猛スピードでこっちを追いかけて来ていた。

 

「その前に追っ手を撒く必要がありそうだけどね」

 

「ほぉ。このエレノアにカーチェイスを挑むとは良い度胸じゃん」

 

バックミラーで追っ手の車達を確認したグリズリーはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。その何処か楽しそうにしている笑みを見た俺は嫌な予感がして来た。さっきの運転でもなかなか荒かったのにカーチェイスとなったらどうなることか。さっきよりエレノアはグングンと加速していき80キロも超え始める。道には乗り捨てられた車や建物の瓦礫などが散乱していたけどグリズリーはそれをひょいひょいと躱して行く。だが相手方も運転は上手く同じ様に障害物を避けて追い掛けて来ている。

 

更に助手席側の窓から上半身を出してM4をこっちに向かって撃って来た!ガガガン!と車体に弾丸の当たる嫌な音が何度も聞こえて来て更には後ろのガラスにも穴が空き貫通した弾丸がフロントガラスにも穴を開けた。

 

「もしかしてだけどこの車って防弾装備は無し?」

 

「そりゃ軍用の装甲車とかじゃないアメ車だからね!撃たれたくなかったら撃ち返すのをおすすめするよ!」

 

「この銃スティグマ適応外なんですけど⁉︎」

 

と言いつつも何もしない訳にも行かないので俺は窓から体を出し後ろを向くとMP9-Nを1番近かったセダンに向かって乱射。激しく動く車から不安定な姿勢で撃ったこともあり命中率は悲惨なものになったがそれでも何発かはセダンに当たった。が、運転手に命中したり映画の様に車が爆発四散する訳でもなくセダンは喧嘩一杯に追いかけて来る。だが思っていたより敵の反撃が無い。何でだ?と不思議に思ったがそう言えばトランクに商人をぶち込んでいたんだった。だから敵さんは商人に当てない様に撃とうと慎重になってなかなか撃たないでいるのか。こりゃ良いある意味防弾装備だ。

 

俺は一度車内に戻ると空になったマガジンを抜いてマガジンポーチから新しいマガジンを取り出しMP9-Nに差し込みボルトリリースボタンを押した。このマガジンには30発の弾が入っているんだが高レート故に直ぐに全弾撃ち切ってしまうな。マガジン交換を終えたMP-9Nで再び撃つ。ボンネットやフロントガラスに複数命中し運転手はそれにびびった様で車の速度が落ちた。

 

しかし派手に撃ちまくったお陰様でMP9-Nのマガジンは今新しくMP9-Nに新たなを含めて残り2つだけになった。このままフルオートで撃ち続けていたら直ぐに弾切れになるのでセレクターレバーをオートからセミに切り替えて撃つ。

 

「こっちは後2マガジンで弾切れになりそうなんだけど!」

 

「そのまま撃ち続けて。敵を倒せなくてもビビらせて追跡を遅らせることは出来るから」

 

「ラジャー!」

 

敵の運転するセダンは後ろからだと商人に弾が当たる恐れがあるからと速度を上げエレノアの横に並ぼうとして来る。俺は横に並ばれない様に接近して来るセダンに向かってセミオートで撃ちまくる。車体に撃った分穴が開きセダンはこっちに撃ち返しつつ速度を落とした。

 

「何かに掴まっといた方が良いよ!」

 

「わっ⁉︎」

 

そうグリズリーは言うとブレーキを踏んでからハンドルを右に思いっきり回した。エレノアはドラフトしながら右に急カーブして俺は遠心力でグリズリーの方に身体が持って行かれそうになる。カーブし終えたエレノアは再び後輪を若干空転させながら急加速する。追っ手の2台も同じ様にドリフトしつつ曲がって来た。車体の大きいSUVは大きく傾きながらも曲がり終えた。曲がり切れずに事故ってくれないかなと期待していたがそんな都合の良い話はなかった様だ。

 

「思ってたより敵さん諦めが悪いねぇ。どうするか」

 

「振り切れないの?」

 

そうグリズリーに聴きながら俺はひとしきりセダンに対して撃ちまくった後一度車内に戻りマガジンを外し残弾を確認する。残り半分くらいだ。

 

「ここら辺は道に色々あり過ぎてあんまり速度が出せないんだよね」

 

「って言うかコレグリズリーが撃った方が当たるんじゃないの?」

 

「いや、私は運転に集中しなきゃだし?」

 

「ニコラスみたいなカッコいいところ見してよ」

 

「仕方ないなぁ。それじゃぁちょっと無茶するから掴まっててよ!」

 

グリズリーはサイドブレーキを引くと同時にハンドルを左に回した。エレノアはスキール音を響かせながら左に回転を始めた。そしたエレノアが180度回転して追いかけて来ていたセダンと正面を向き合った時、グリズリーはホルスターから抜いた拳銃を窓の外に出して構えると3発連続で発砲。グリズリーの撃った弾は3発もとセダンの運転手に当たった。そのままエレノアは更に180度回転して元の体制に戻った。後ろを振り返って見ると運転手を失ったセダンがあらぬ方向に走りそのまま歩道を乗り上げて建物に突っ込んで行った。

 

「やっぱり私が撃つより貴方がやった方が良かったじゃん」

 

「この技は車に無理させちゃうからあんまり使いたくないんだよねぇ。で、残るはあのSUVな訳だけど」

 

俺は残弾が残り半分になったMP9-Nを構えるとさっさと同じ様に窓から身を乗り出してSUVに向かってセミオートで撃った。グリズリーがなるべく当てやすい様にとエレノアを出来るだけ直線に走らせてくれるお陰で結構当たったがフロントガラスに当たった弾はそのガラスに蜘蛛の巣状のヒビを入れたが貫通することは無かった。車体に当たった弾も貫通していない様に見える。

 

「ちょ、アレ防弾みたいなんだけど」

 

「防弾かぁ。でもそんな防弾仕様のSUVなら重くなっているだろうから速度は出ない筈。ちょっとアイツを運転のテクニックで巻けるか試してみるよ」

 

「頼りにしてるからね」

 

「任せてよ」

 

そう言って俺にウィンクして見せたグリズリーはまた右に急カーブした。遠心力で車体が傾くのを感じる。この速度帯での急カーブを体感したことなかった俺はこのまま横倒しになるんじゃないかと言う恐怖感に苛まれるがエレノアはちゃんと曲がり切ってくれた。敵のSUVも重たげに曲がって来た。が、こっちの方がコーナリング性能では勝っているのか今のカーブで敵との距離が空いた。更に加速力に物を言わせてその距離を更に離しにかかる。

 

「お、アイツなかなかやるねぇ」

 

バックミラーでエレノアの加速に何とか追いついて来ているSUVを見たグリズリーは感心している様子だ。

 

「何敵に感心してるの。相手の車は重いから速度が出ないんじゃなかったの?」

 

「多分、あの車元々はあの商人が逃走する時とかに乗る車なんだろうね。それに今更気がついたけどあの車電気自動車だわ。それに出力を上げているんだろうね。そりゃ加速力高いわ」

 

「つまり?」

 

「カーブだと勝って直線だと追い付かれる」

 

「え、でもこの街を抜けたらあの一直線の砂利道だよね?」

 

「そうなんだよねぇ。一応奥の手はあるけどそれを使っても振り切れるのかちょっと微妙だし」

 

「奥の手って?」

 

「それは使う時までのお楽しみ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだ!良いこと思いついた」

 

「何?」

 

「アンタの銃を使おう!」

 

「これ?」

 

俺は残り一マガジンとなったMP9-Nを見て聞くがグリズリーは「違う違う」と言って首を横に振ると親指でクイクイと上を差した。

 

「アンタのメインウェポンの方だよ」

 

え、つまりアンツィオライフルを使おうってこと?確かに20ミリ弾なら幾ら防弾仕様とは言え20ミリ弾なら貫通させることは出来るだろうけど上に縛り付けているアンツィオライフルをどうやって構えて撃てば良いんだ?

 

「確かにアレなら貫通させることは出来るだろうけど、アレを車に乗った状態のまま構えて撃つのは流石に無理だと思うよ?」

 

「そこで提案なんだけどアンタが上に登って縛り付けている対物ライフルを撃てば?」

 

「・・・は?それってつまり私が天井に登って撃てってこと?」

 

「そう言うこと」

 

いや80キロ以上出てる車の上によじ登れって怖すぎるわ。振り落とされる未来しか見えないわ。

 

「で、でも銃は縛って固定しているから前にしか撃てないけど?」

 

「さっきの技覚えてる?」

 

「あー・・・理解」

 

反対したいが他に良い案も思いつかないし、グリズリーは本気の様だ。試しに聞いてみる。

 

「えっと・・・本気でやるの?」

 

「面白そうでしょ?」

 

「いや全く」

 

やっぱり本気の様だ。俺は溜息を吐くと「落としたら化けて出るからね」と言ってから窓から天井に向かってよじ登って行く。びゅうびゅうと強風が吹き荒れ髪がバサバサとはためく。チラッと後ろを見てみると車から出て来た俺を狙い撃ちにしようとSUVの助手席からMP5を持った敵が出て来た。俺は車から落ちない様にしがみつくのがやっとなので撃つことは出来ない。

 

「くそっ・・・・!」

 

撃たれるかと思い目をつぶろうとしたが、グリズリーが銃を構えて後ろに撃った。しかも凄いことにバックミラーで狙いを定めて撃って見事にMP5を構えていた男に命中させた。俺は更に別の奴から撃たれる前に落ちない様に気をつけつつ天井によじ登って行く。

 

「やっぱり怖い!」

 

時折車が曲がったりする度に振り落とされそうになるのを天井の隅を掴み何とか耐える。何とか天井によじ登った俺はアンツィオライフルのボルトハンドルを前後に動かし初弾を装填する。コレで後は狙いを定めてトリガーを引けば撃てる。俺は天井をバンバンと叩いたから「準備良いよ!」と叫んだ。

 

「了解!振り落とさらないようにね!」

 

グリズリーはわざと速度を落として相手のSUVを接近させた。そして「行くよ!」と言うとさっきと同じ様にエレノアをスピンさせた。俺はアンツィオライフルにしがみ付き遠心力で外に吹き飛ばされない様に踏ん張る。そして180度回転して銃口がSUVに向いた瞬間、俺はトリガーを引いた。ダゴォンッ!と言う相変わらず凄まじい発砲音を響かせて20ミリ弾が発射された。車体をぶん回して無理矢理狙って撃ったか

ちゃんと当たるのか不安だったが弾はフロントガラスに当たり、そのまま突き破った。撃たれたSUVは運転手が驚いたのか車体を大きく左右に揺らしたが運転手とかに当たった感じではない。流石にそう上手く当たる訳ないか。

 

そのままエレノアはスピンを続けたがその途中グリズリーが銃を構えると20ミリ弾が当たって開いた穴に向かって撃った。驚いたことにその射撃で運転手を撃ち抜いた様だ。SUVは急カーブするとそのまま横倒しになってクラッシュした。エレノアはその間に180度回って元の体勢に戻った。俺は車内に頑張って戻るとグリズリーが「いえーい」と言って拳を突き出して来たので俺はその拳に自分の拳をぶつけた。

 

「もう2度とこんなことやらないから」

 

何とか敵の車2台を撃退出来たがもうあんな走行中の車の上によじ登るなんてハリウッド映画みたいなデンジャラスなことしたくない。

 

「さてと、仕事も終わったことだし基地に帰りますか!」

 

グリズリーはそう言ってアクセルを踏み込みエレノアを爆走させた。




本当はもっと銃撃戦を沢山書くつもりだったんですが気がつくとカーチェイスになっていましたwやっぱりグリズリーはカッコいいなぁと今回の話を書きながら改めて思いました。 そして私の書くグリズリーの口調が安定しない問題。

次回の投稿はちょっとリアルが忙しくなりそうなので遅くなりそうです。

次回もお楽しみに。ご感想もお気軽にどうぞ!


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第3話 突撃!隣のグリフィン基地

お待たせしました。第3話です。前回は沢山のご感想ありがとうございます!そして気がついたらお気に入り登録者数と評価が凄い増えてて正直こんなに増えるとは思っていなかったのでとても驚いていますw皆さん本当にありがとうございます。凄い文章力がある訳ではないですが皆さんのご期待にお応え出来るように頑張ります!

(`・ω・´)


グリズリーの所属する基地に連れて来られた俺はグリズリーと共に基地の指揮官が居る執務室へやって来ていた。執務室に入り俺は開口一番こう言った。

 

「ここで働かせてください!」

 

目の前の大きな机越しにワークチェアに座っている赤色の制服を着た若そうな見た目の男性に向かって頭を深々と下げた。

 

「キミ、僕を相手の名前を奪って支配したりする老魔女か何かと勘違いしてない?」

 

緊張の余り咄嗟に出てしまった言葉だったがまさかこれの元ネタを指揮官が知っているとは予想外。

 

「すいません。ちょっと緊張して変なこと言ってしまいました」

 

「別に緊張する必要はないよ。この人はそんなに凄い人じゃないから」

 

隣に立っていたグリズリーが俺の肩を叩きそう言って来た。目の前の男はグリズリーの上司だろうにそんなこと言ってしまって大丈夫なのか?そう思い指揮官の方を見てみるが特にグリズリーに対して怒ったりしている様子は無かった。

 

「なんかそれ僕をdisってない?僕にも一応ここの指揮官としてのプライドがあるんだけど?」

 

「書類仕事中に居眠りしちゃって大事な書類に涎が付いてダメにしちゃった人がよく言うよ」

 

「そ、それは激務が続いていたから寝る時間があんまり取れなくて・・・」

 

「私達の指揮官であろう人が自分の健康管理も出来てないでどうするのよ」

 

「いや〜あははは・・・面目ない」

 

この2人のやり取りを聞いている感じ少なくともこの職場はブラックでは無さそうだ。指揮官とその部下がこうやって冗談や軽口を言い合える仲なんだから。

 

「で、キミをどうするかだけどまぁ別に断る理由もないし僕の性格上ほっとけないからこの基地で引き取るよ。キミの名前は?」

 

「えっと、アンツィオです。アンツィオ20ミリ対物ライフルです!よろしくお願いします」

 

「僕はここD55地区基地の指揮官アラン・スミス。よろしくね」

 

そう言って指揮官は椅子から立ち上がって俺に向かって右手を差し出して来た。僕は左手でその手を握り握手をした。こうして俺は思ったよりもあっさりとグリフィンの基地に拾ってもらう事が出来た。

 

「さて、それじゃぁ僕はキミを正式にここに所属する戦術人形と言うことで手続きをする必要もあるしキミ用のIDカードとかを作ったりする必要もある。諸々終わらせるにはちょっと時間がかかるから悪いけどそれまではこの基地内で大人しくしてて」

 

「ラジャーです」

 

「基地内だったら立ち入り禁止の場所以外何処に行っても良いから好きにして良いよ。そして部屋は・・・確かグリズリーの部屋が空いてたよね?」

 

「お、ついに私も1人寂しく寝る必要が無くなる感じ?」

 

「必要最低限の物は用意させるけど他に何か必要な物があったら遠慮なく言って。じゃ、部屋まではグリズリーが案内してあげて。あ、それと悪いけどグリズリーはアンツィオを部屋に届けた後に例の作戦の報告をしに来て」

 

「了解。それじゃ行こっか」

 

グリズリーに手を引かれて俺は執務室を後にした。そして廊下を歩いているとグリズリーが振り返って聞いて来た。

 

「優しそうな人だったでしょ?」

 

「まぁ・・・そうね」

 

「良くも悪くも部下思いの指揮官だからね。怖がる必要は無いよ」

 

「いや、別に怖がっていた訳じゃないから」

 

「でもまさかあんなに緊張するとは思わなかったなぁ」

 

面白いものを見たと言いたげな感じでニヤニヤと笑いながらグリズリーは俺を弄って来た。

 

「ああ言う目上の人と話したりするのはちょっと苦手なの」

 

「みたいだね。ま、これから何度も指揮官とは話す機会があるだろうからその内慣れるよ」

 

「そうね」

 

基地の簡単な説明や雑談つつ廊下を歩き俺は宿舎と呼ばれる所へ来た。そこはホテルみたいな感じで番号の振られた部屋が並んでいた。そして1番端のところにあった部屋がグリズリーと俺の部屋らしい。グリズリーは部屋のドアを開けると「どうぞ〜」と言って来た。

 

「お邪魔します」

 

何だかんだ女子の部屋にお邪魔するのは今回が初めてで少し緊張する。部屋の中はそんなに広くは無く右側には2段ベッドとタンスがあり左側にはデスクや椅子がありデスクの上にはパソコンが置かれたりしている。どうやらベッドの下の方をグリズリーは使っているらしく車の雑誌などが置いてある。思ったよりも女の子らしい物は置いてはいなかったが部屋の匂いがザ・女子の部屋って感じの良い匂いがする。

 

「ベッドは上を使って。基本的に私のベッドに置いている物以外は好きに使って良いよ」

 

「着替えも?」

 

「パンツ以外なら」

 

「マジ?」

 

冗談で言ったつもりだったんだけどパンツ以外ならマジで着ても良いらしい。いやまぁグリズリーから許可を貰ったからって本当にグリズリーの服を着ようとは思ってないけど。

 

「まぁ別に見られて恥ずかしい服がある訳でもないし」

 

「いや、流石に服くらい自分で用意するから」

 

「そう?もし着たいのがあったら遠慮なく言ってね。それじゃぁ悪いんだけど私はあの捕まえた男の後処理だとか報告書を書いたりしに行かなきゃだから。後は好きにしてて」

 

「分かった」

 

「それじゃ、また後で!」

 

そう言い残してグリズリーは部屋から出て行った。1人部屋に残された俺は持って来ていた荷物を床に置くとデスクの横にあった椅子にどかっと座って今日で何度目か分からない溜め息を吐いた。最初I.O.Pの施設で目が覚めた時はこの先どうなるのか少し不安だったがこうしてグリフィンの基地に保護してもらう事が出来て安心した。

 

「これからどうなるのかなぁ・・・」

 

基地に保護してもらうことは出来たがこれからのことは全く分からない。多分グリフィン所属の戦術人形として戦うことになるんだろうけど俺は戦うことは出来るんだろうか。そしてこの弱肉強食の世界で戦って生き残ることが出来るんだろうか。不安要素は沢山だ。

 

考えに耽っていると突然ドアをノックする音が聞こえて来た。「はい」と言ってから席から立ち上がると俺はドアを開けた。そこに居たのは白い髪と赤い目、そして黒と青のストライプ模様の長手袋とタイツが特徴的な少女だった。この娘は知ってる。トカレフだ。

 

「初めまして。指揮官の副官のトカレフです。指揮官から貴方の服を渡すように言われて来ました。ずっとその格好のままな訳にもいかないだろ?とのことで」

 

トカレフに言われて俺は視線を下に向けて自分の今着ている服を見る。言われてみれば確かに俺は今のところこのボディースーツ以外自分の着る服を持っていない。席から立ち上がってトカレフの所に行くとお礼を言ってから服を受け取った。どうやらジャージみたいで赤を基調に黒色のラインが入っていて胸の所にはグリフィンのマークが描かれてある。

 

「シャワールームは下の階にあるので好きな時間に利用して大丈夫ですよ」

 

「分かった。わざわざ渡しに来てくれてありがとうね」

 

「秘書としての仕事をこなしただけなので。あ、そうそう。何か困ったことが有れば気軽に言ってください。この基地のことならある程度分かっているので」

 

指揮官の秘書ってことは彼女の言う通り基地のことなら何でも知っているだろうし、どうしても分からないこととかが有れば彼女に聞くことにするか。

 

「ならもしもの時は頼りにするから。これからよろしくね。トカレフ」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

簡単な挨拶を済ませてトカレフは執務室に戻って行った。再び部屋で1人ぼっちになった俺はシャワールームへ行くことにした。今日は目が覚めてからずっと荒野を歩いたり戦闘に巻き込まれたりして身体は汚れている。それにこの身体になってからまだ自分の身体全体を見れていないから確認したいと言うのもあった。

 

俺がシャワーを浴びに行っている間にグリズリーが帰って来る可能性も考えてデスクの上にシャワーを浴びて来るとメモ用紙に書いて置いておく。そしてトカレフに貰ったジャージを持って俺はシャワールームへと向かった。

 

階段で下の階へ降りて適当に廊下を歩いているとシャワールームと書かれたドアを直ぐに見つけることが出来た。横にスライドさせるタイプのドアを開けて中に入る。ドアを通り抜けるとそこは脱衣所になっていた。まだ夕方だからか自分以外に人は居ないようだ。そして脱衣所の隅には姿見が置いてあった。俺はその前に立ってみる。

 

分かってはいたが姿見に写っていたのは見飽きた男の姿の俺ではなくゴツいデザインのボディースーツを着た少女が少し驚いた様な表情で立っていた。だがそこまで驚いたりはしなかった。まぁ女になった自分の姿を見るのはコレが2回目だしな。今は驚きよりも戸惑いや恥ずかしさの方が強い。

 

「こうしてみると凄い格好してるね」

 

やっぱりこの格好ちょっと恥ずかしいな。露出度的に言うとそんなに高くないんだけど伸縮性のある素材により身体にピッタリとフィットしているボディースーツのお陰で、全身タイツみたいに身体のラインはハッキリ見えてしまっている。そう言う趣味の人には受けそうだ。指揮官がジロジロと見てしまうのも納得だ。俺だってこんな格好した女がいたらジロジロ見てしまう自信がある。って言うかこうして改めて見ると割と胸デカいな。凄いデカいって訳じゃ無いが手で掴むことの出来る確かな膨らみがある。

 

「さて・・・脱ぎますか」

 

シャワーを浴びに来たなら当たり前だがこの服を脱ぐ必要がある。だが自分の身体とは言え今から女性の裸を見ることになると思うと凄いドキドキする。自慢じゃないが俺は今まで母さんと姉さん以外の女の裸を見たことなんてない童貞だからな。凄い緊張しちまうんだ。取り敢えず脱ぐ前に姿見から離れる。自分の脱ぐ姿を鏡で見ていたらそれこそ耐えられそうにない。

 

軽く深呼吸をしてからボディースーツを脱いで行く。だがここで問題が発生した。この服、どうやって脱ぐんだ?着るのは何とかなったけど今この服身体にピッタリくっついていて普通に脱ごうとしても脱げない。背中にジッパーがある訳でもない。

 

「はぁ・・・説明書くらい用意しろっての」

 

数分間何とか脱ごうと試行錯誤を重ねた結果、胸元にあるのがボタンになっていてそれを押すと首の部分が開きそこからウェストスーツみたいな感じで脱ぐことが出来た。ボディースーツの内側は熱が篭り蒸れていた。そう言えば調べた時に防弾性能とかを求めた結果通気性は犠牲になっているだとか書いていた様な気がする。このボディースーツの悪い所だな。

 

ボディースーツを脱ぎ終わると後は身につけているのは飾りっ気のないシンプルなデザインの黒色のパンツだけだ。それも脱いで俺は完全に全裸となった。下を見てみると肌色の膨らみがある。俺は無意識の内に胸を触ろうとしたが直前でそれをやめた。何か、後ろめたい事をしている感じがしたからだ。タオルを持って脱衣所からシャワールームへ入る。

 

「ひょえ⁉︎」

 

脱衣所に入ろうとドアを開けると目の前に肩にタオルを掛けた素っ裸の少女が居た。自分以外に人は居ないと思っていたし突然目の前に裸の少女が居たしで俺はとても驚き奇声を発してしまった。俺は反射的にこれ以上相手の姿を見ないように右手で自分の目を覆った。

 

「うぇ⁉︎わっ!ご、ごめん!」

 

悲鳴を上げて引っ叩かれると思っていたけど特に相手の方は何もしてこない。恐る恐る指の隙間から相手の様子を伺ってみるとジト目でこっちを見て来ていた。

 

「何で女の裸を見てしまった男みたいな反応してるんですか」

 

全くもってその通りなんだけどね。そして少女に言われてそう言えば今自分が女だってことを思い出した。突然のことだったから反射的に動いてしまった。と言うかこの娘誰だ?見覚えが無い。色素の薄い肌に肩辺りまで伸ばした銀髪。そして淡い紫色の眼。どっかで見た事があるような気がするけど思い出せない。取り敢えず今はジト目で俺の方を見ている彼女に言い訳をしないと。

 

「あ、あ〜ごめん。誰もいないと思っていて驚いちゃって」

 

「見慣れない顔ですけど新人ですか?」

 

「ま、まぁそんなところかな。今日からこの基地の所属になったんだよね」

 

「成る程。ボクはM200って言います。よろしくお願いしますね」

 

あー!この娘M200だったのか!普段は髪を後ろで結んでいるから分からなかった。やっぱり髪型が変わったら雰囲気変わるなぁ。って言うか小ちゃいな。今の自分の身長が167センチでそれよりも小さいから彼女の身長は160センチ以下の可能性がある。

 

「私はアンツィオ。アンツィオ20ミリ対物ライフル。同じライフル同士よろしく」

 

「同じライフル同士なら一緒に任務を遂行することもありそうですね。その時はよろしくお願いします」

 

そう言ってM200は脱衣所の中へ入って言った。取り敢えず特に怪しまれた様子も無く話せた事に胸を撫で下ろす。裸の少女相手に喋ることになるとは思っていなかったし視線のやり場に困ったぜ。

 

シャワールームは壁で区切ってあってカーテンで外から見られないようになっていた。適当にその中の一つに入るとシャワーのハンドルを回した。シャワーノズルから暖かいお湯が出て来て髪と体を濡らして行く。

 

まず先にこの長い髪をシャンプーで洗う。男の頃と違って倍以上髪が伸びているから洗うのも一苦労だ。シャンプーも男の頃よりも大量に使って洗って行く。一通り髪を洗うとお湯で流して行く。そして次は身体をボディーソープで洗う訳だがこれが問題だ。だって女の身体を直で触るってことなんだぞ?凄い緊張するわ!

 

これは自分の身体!何もやましいことは無いし問題は無い!だから緊張する必要もないし羞恥心を感じる必要もない!あ、でもおっぱい柔らかいな・・・って、そんなこと考えている場合じゃないっての。

 

 

「落ち着け私。素数を数えれば良いのよ。2、3、5、 7、11、13、17、 19、23、29、31、 37、41、43、47、53、59、61、67、71、73 、79、83、89、97・・・」

 

素数を数えたりしながら何とか気を紛らわしながら身体を洗い進める。さっきも感じたなんとも言えない罪悪感を感じつつそして緊張しながら何とか俺は身体を洗い終えることが出来たが精神的にとても疲れることになるのであった・・・・。




TSならやっぱりお風呂シーンも入れなきゃだよなぁ!と思い今回の話を書かせていただきました。そしてM200を登場させたのは個人的にスナイパーの中で好きなキャラだったからですね。

そして後1人オリジナル戦術人形を今後登場させようかなーと考えているのですが皆さんどう思いますか?良ければ意見を下さい。アンケートの期限は正確には決めていませんが1〜2週間の間ですね。それでは今回も読みに来て下さりありがとうございます!


ご感想などございましたらお気軽にどうぞ!



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第4話 長距離狙撃ってのは絵面は地味だけど当てるのは結構難しい。

お待たせしました。遅くなってしまい申し訳ありません。第4話投下します。

そして感想や高評価、誤字報告などありがとうございます!


この基地に来てから1日が経った。ベッドにくるまって気持ち良く寝ていた俺は先に起きていたグリズリーによって起こされた。寝ぼけ眼を擦りながら起き上がった俺はベッドから降りようとしたが寝ぼけていたのと自分の部屋の時の癖で今自分が2段ベッドの上で寝ていたことを忘れていた。だがそれに気がついた時は既に体はある筈のない床を踏み外して重力に引き寄せられて落下を始めていた。

 

「わわっ⁉︎あでっ!」

 

咄嗟に受け身を取るみたいなことが出来るわけもなく俺は頭から思いっきり床に落ちた。眠気なんか1発で吹き飛ばす衝撃が来た。痛みで少し涙目になりながら俺は痛む頭をさすりつつ起き上がった。

 

「いててて・・・」

 

「大丈夫?」

 

まさかベッドから落下するとは思わなかった様でグリズリーもちょっと笑ってしまっていた。

 

「結構痛かったけど大丈夫」

 

と言いつつ俺は床からのそっと立ち上がる。

 

「その様子だと目覚ましのコーヒーはいらないかな?」

 

言われて気が付いた。今俺のいる部屋の空間にコーヒー特有の香りが漂っていることに。両手にコーヒーカップを持っているのと今の発言から察するに俺にモーニングコーヒーを用意してくれたようだ。

 

「いや、貰う」

 

例を言いつつ俺はグリズリーから黒い液体の入ったコーヒーカップを受け取る。

 

「あ、それブラックだけど大丈夫?」

 

「大丈夫」

 

俺は自慢って訳じゃないが小さい頃から苦い味は得意、と言うか好きだった。だからブラックコーヒーも中学生の頃からちょくちょく飲んでいて友達から「よくそんなの飲めるよな」と言われたりもした。だから俺はコーヒーカップを少し傾けてコーヒーを飲んだ。

 

「ん゛⁉︎」

 

そしてその味を舌で感じた瞬間思いっきり顔を顰めた。苦い。ブラックコーヒーなんだから当たり前だろと言われるかも知れないが兎に角苦い。昔感じていたブラックコーヒーの苦味の良さなんて感じずただただ苦い。吐き出したい程じゃないけど飲めた物じゃない。口の中に残っていたコーヒーを無理矢理飲み込む。

 

「だから言ったじゃん。無理に大人ぶろうとしないで良いよ。ミルクと砂糖要る?」

 

「・・・ごめん。貰う」

 

グリズリーにミルクと砂糖を入れて貰い再び飲んでみると次はちゃんと飲めた。程良い甘さと苦味があって美味しい。もう一口飲んで一息ついて、俺は一つの疑問が生じた。何でいきなりコーヒーのブラックが飲めなくなったのか。考えられる理由は一つ。

 

「身体が変わったことで好みが変わった?」

 

「ん?何か言った?」

 

「あ、いえ、コーヒーありがとう」

 

「どういたしまして」

 

思わず声に出してしまった。まぁ兎に角、俺がブラックを飲めなくなった理由はやっぱりこの身体になったからだとしか思えない。と言うことは多分味の好み以外にも男の頃から変わっているのがあるんだろう。それは自分が自分じゃなくなるみたいでなんか嫌だな。だけど今の自分が本当に自分なのかとかそんなことを考え始めたらキリが無いから深くは考えないことにしよう。

 

グリズリーと雑談しながら共にモーニングコーヒーを楽しんだ俺は朝食を食べる為に食堂に向かうことにした。流石に寝巻き姿のまま食堂に行く訳にはいかないからいつものボディースーツに着替えた。でも割とこの格好は恥ずかしいから基地内用の服を今度買うか。

 

食堂に来てみると沢山の人と戦術人形が朝食を食べていた。俺とグリズリーも朝食が入ったトレーを受け取ると適当に空いていた席に座って食べ始める。俺が想像していたよりご飯はちゃんとしていた。まぁどっちかと言うと朝食は白米を食べる派の俺からすると朝食がパンってのは少し残念だけど。パンを一口サイズにむしって食べる。味は不味いって訳じゃないけど特段美味しいって訳でもない普通のパンだ。あえてダメ出しするならパサパサしている感じがする。

 

「どう?この基地には馴染めそう?」

 

ベーコンをパクパクと食べていたグリズリーが聞いて来た。

 

「うーんまだ昨日の今日だからなんとも。でも悪くないっては思ってる」

 

「それは良かった。基本的にこの基地にいる人も人形も仲間思いの優しい人達だから直ぐに馴染めると思うよ。特に同じライフルを使う戦術人形とはこれから会う機会も増えると思うし」

 

「あぁそれなら既に昨日1人出会ってる」

 

「誰と?」

 

「M200。まぁ挨拶して程度で会話は殆どしなかったけど」

 

「M200は礼儀正しい娘だし直ぐに仲良くなれると思うよ。それに彼女は長距離狙撃が上手いからキミのコーチになるかもね」

 

「それは楽しみね」

 

「むむ?見慣れない顔だね〜。新人?」

 

グリズリーと話しながら朝食を食べていると横から声をかけられた。声のした方を見てみるとそこには銀髪の髪をワンサイドアップにした黒色のジャケットを着た少女がいた。MDRだ。早速彼女は俺の姿を愛用のガラケーでパシャパシャと撮りまくっている。多分そのままネットに流すつもりなんだろう。

 

「昨日からここに配属になったアンツィオよ。よろしく」

 

「私はMDR。よろしくねアンツァオ」

 

「アンツィオ」

 

「ごめんごめんwアンツィオね。貴方の銃種は?」

 

「ライフル」

 

「ふむふむ。どんなライフルを使うの?」

 

「20ミリ口径の対物ライフル」

 

「20ミリ!結構大きい弾を使うんだね」

 

「まぁね」

 

アンツィオライフルの口径を聞いてMDRが驚く様子を見て俺は嬉しいと言うか、誇らしい感じがした。まるで自分が褒められたみたいな感じで悪い気はしない。寧ろ誇らしい感じがする。

 

「バルカン砲とかに使う20×102ミリ弾を1.9メートルの長さのバレルで撃ち出すから初速も速いよ。それに有効射程も4キロまであるから」

 

「バレルの長さが1.9メートルもあるってのも凄いけど有効射程が4キロって言うのは凄いね」

 

「まぁ最強の対物ライフルの一つだからね」

 

「そんだけの性能があるなら本当に最強って言えるかもね。まぁ正規軍の持ってるヤベー性能の兵器には負けるかもだけど」

 

「あ、すいません。ちょっと良いですか?」

 

「ん、私?」

 

突然後ろから声をかけられ振り返ると噂をすると何とやら。昨日シャワールームでバッタリ会ったM200が居た。

 

「はい。貴方です。指揮官から貴方の腕がどれ程か確かめて来てとちょっと頼まれたので。だから一緒に野外演習場へ来てください」

 

「分かった。これが食べ終わったら行く。グリズリーも来る?」

 

「お誘い嬉しいけど私はこれから別の用事があるから」

 

「分かった」

 

と言うことで朝食を食べ終わった俺はM200達に連れられてやって来たのは野外演習場という名前の場所。読んで字の如く野外の射撃練習場の様でその広さに驚かされる。話によると今見えている範囲は全部野外演習場の敷地になっているらしい。

 

「まぁ野外演習場とか呼んでいますけどただ単に広い荒地ですね」

 

「でもこんだけ広かったら狙撃練習にはうってつけだろうね。それで?私は何を狙えば良いの?」

 

「アレです」

 

M200に渡された単眼鏡を借りて彼女が指差した方を見てみるが的らしい物は見えない。

 

「どれ?」

 

「向こうに枯れた木が一本立っているのが見えます?」

 

「見えた」

 

「そこから左に視線をずらすと見えます」

 

言われた通りゆっくりと枯れた木の方から左に視線をずらして行くと地面の上に立てられたマンターゲットを見つけた。この単眼鏡にはレンジファインダーとしての機能もある様でレーザー測距でそのマンターゲットまでの距離が直ぐに出て来た。その距離直線で900メートル。

 

「あの900メートル先のマンターゲットに当てろってこと?」

 

「そう言うことですね」

 

「ひえ〜遠過ぎて肉眼じゃ見えないよ。私もあの距離は当たらないかな」

 

900メートル・・・900かぁ。当たり前だけどこんな距離を撃ったことなんて今までに一回も無い。今回が初めてだ。 MDRの言う通り遠過ぎて単眼鏡やスコープなどで見ないと的が確認出来ない距離だ。それにこの距離になると重力や風速、コリオリとかを考えないといけなくなる。正直、的に当てれる気がしない。だけどやる前から諦める訳にはいかない。

 

肩に掛けていたガンケースを地面に下ろして中から分解したアンツィオライフルを取り出す。収納の為に取り外していた銃身を取り付けて行く。そして2分弱でアンツィオライフルの組み立てが完了した。二脚を立てて地面にアンツィオライフルを一旦置く。

 

「って言うかM200はいつも練習でこの距離を撃ってるの?」

 

「そうですね。先ずは100メートルから初めて最終的に900メートル先の的を狙ったりしています」

 

「M200はいつも1人だけで射撃練習してるよねー。もしかして友達が居ないの?」

 

「失礼ですね。ボクにだってちゃんと居ますよ」

 

「そう言えば今ゼロイン100で調整していたから合わせなきゃ」

 

今のゼロイン調整のままだと例え照準線のど真ん中に狙いを付けれたとしても弾は下の方に飛んで行ってしまう。

 

「それも訓練の内ですよ」

 

「それじゃ最初にゼロイン調整もしたいから試射をして良い?」

 

「良いですよ。自分がスポッターをします」

 

俺は地面に伏せてアンツィオライフルを構える。スコープの倍率を上げて標的のマンターゲットを視認する。先ずスコープの上のツマミを回してゼロインを感で調整してみる。

 

「距離900メートル。風、1.8から2.4。左から右。微風ですけど距離が距離ですしコリオリの力の影響もあるので弾道が右にズレると思います」

 

「了解」

 

横に俺と同じ様に伏せた状態でスポッタースコープを覗き込んで色々と俺に教えてくれる。俺としては初めて聞く用語がチラホラとあるが不思議と意味が分かった。多分自分が戦術人形になった影響だろう。スコープを覗き込み照準線に的を捉える。軽く深呼吸をしてから息を8割ほど吐き、トリガーをゆっくりと引いた。

 

ダゴオォォンッ!と相変わらずとんでもない発砲音が射撃練習場に鳴り響き俺の周辺に粉塵が派手に舞った。隣に居たM200が「うわっ」と声を上げたので何だと思い見てみると発砲時の衝撃波で舞い上がった砂が目に入ってしまった様で目に入った砂を手で取ろうと目を掻いていた。

 

「うひゃ〜凄い音!」

 

MDRの方はその発砲音のデカさに驚いている様でマジやばかった!とか色々言っている。

 

「大丈夫?」

 

俺はまだ目を掻いていたM200に聞いてみる。もしかしてやばい箇所に入っちゃったりしたか?

 

「大丈夫です。でもすいません。着弾観測が出来ませんでした」

 

「まぁ仕方ないよ。気を取り直して行こっか」

 

「そうですね。もう一度お願いします。風速はさっきを変わっていません」

 

「ラジャー」

 

さっきと同じ様にスコープを覗き込んで的を照準線に合わせる。そして撃つ!強烈な反動で体が若干後ろにバックしてしまう。

 

「着弾確認。左上に弾道修正をしてください。右下の地面に着弾しました」

 

「ラジャー」

 

照準器と上と横にあるツマミをキリキリと回す。あんまり回し過ぎるとそれもそれで狙いがズレてしまうから回すのは程々に。調整を終わらせて再び狙いを定めて撃つ。

 

「的の上を飛び越えました。思ったより弾丸の低伸性が高いみたいですね。なので余り大きめに動かさない方が良いですね。弾速も早いです。多分ボクの銃の撃ち出す弾丸の初速と同じくらいですね」

 

「ラジャー」

 

もう一度上下を調整するツマミを少しだけ回して照準を下に修正する。M200曰く俺の撃っている弾は思ったより真っ直ぐ飛んで行くからそんなにツマミは回さなくても大丈夫とのことだったから多分上下の調整はこのくらいで大丈夫だろう。調整を終えると弾切れになったので空になったマガジンを外して新しいマガジンを装填して、もう一度狙いを定めて撃つ。すると的の後ろで土煙が上がった。

 

「惜しい。的の少し上を飛び越えて行きました。ゼロイン調整は問題なさそうなので後の調整は貴方自身でお願いします」

 

上を飛び越えたってことはその少し下を狙えば良いって話だが言葉だ言うだけなら簡単そうに聞こえるだろうけど実際はかなり難しい。例えば発射時の角度が0.1度でも違ったら着弾地点では2メートル以上のズレになる。そんなシビアな調整をしなきゃなんだからクソ難易度が高い。しかもこの銃はこの高過ぎる反動故に撃つと自身の体が後ろに下がる程の反動がくる。そしたら勿論銃の狙いがズレてしまう訳でますます的へと命中率が下がってしまう。続けて2発撃ったが同じ様に的の近くには当たるだけでまた本体には当たらない。

 

「反動が強過ぎるせいで狙いがブレちゃうわね・・・」

 

新しいマガジンに交換しながら俺はそうぼやく。

 

「確かにさっきから撃つ度に後ろにバックしてるもんね。伏せ撃ちで反動で後ろに吹っ飛ばされるの初めて見たよ」

 

「まぁ反動は仕方ないですね。でも反動の割に結構惜しいところに当たっているので頑張ってください」

 

「まぁここまで来たら何としてでも当てたいしね」

 

スコープを覗き込み的に狙いを定める。さっさと撃ちたいと言う焦る気持ちを抑えて冷静にゆっくりと狙う。

 

「風向き変わらず。風速1.5から2.1」

 

風は弱くなっていてもうほとんど気にしないで良いくらいのレベルだ。狙撃の条件は揃っている。後は自分の腕次第ってところかな。

 

「すぅー・・・・ふぅー・・・っ」

 

一度息を吸い、そして吐き出して息を止める。狙いは良い筈だ。次こそは当たってくれることを祈りながら俺はトリガーをゆっくりと引いた。秒速1003メートルもの速さで撃ち出された20ミリ口径の弾丸は空気の壁を突き破り音を置き去りにして飛んで行く。低伸性の高い20ミリ弾は殆ど弾道落下をせずに真っ直ぐに的の方へと飛んで行く。超音速で飛翔する弾丸は900メートル先の的にたった0.9秒で到達する。

 

スコープ越しにマンターゲットから火花らしき物が舞うのが見え、そして的の後ろの地面に弾が突き刺さったのが土煙で確認出来た。一瞬また外れたのかと思ったがそうじゃない。的に当たってそのまま貫通したんだ。

 

「命中。お見事。早かったですね。もう少しかかるかと思ってたんですけど」

 

「お、当たったの?凄いじゃん!」

 

イェーイ!とMDRがハイタッチして来たので俺もそれに応える。当たって本当に良かった。もしも当たらなかったら対物ライフルの長所の一つである長距離狙撃が出来ないってことになってたからな。

 

的に当てれて調子に乗った俺はその後も色んな距離の的を撃ちまくり、それにM200も参加してどっちが1番900メートル先の的に沢山当てれるかの競争を始めた。持って来ていた弾薬を全て撃ち尽くした頃には時間もかなり経っていた。そして指揮官からは「貴方達の弾代は安くないんだからあんまり撃ち過ぎない様に」と言われてしまった。話によるとM200の使用する弾薬は.408 Chey-Tac弾と言うM200専用の弾丸らしく1発辺りの値段がそこら辺のライフル弾と比べて馬鹿高いらしい。俺の使っているアンツィオライフルも20×102ミリ弾と言うバルカン砲などで使う弾種でM200程ではないけどこれもこれで高いらしい。その高い弾薬2種類を数時間に渡って撃ちまくったから練習で撃った弾代がそれなりの値段になってしまったそう。だが俺としては長距離射撃を成功させたことの喜びが多くまたM200と撃ちたいなと思っているのであった。




作中でも言った通りアンツィオライフルの有効射程は約4キロもありますがアンツィオの射撃動画を見ている感じやっぱり反動などが強烈なので実際に1キロ以上の距離の標的に当てようとした時はその強過ぎる反動のせいで当たらないんじゃね?と思う今日この頃。

ご感想などお待ちしております!


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第5話 Enemy engage

お待たせしました!第5話です!今回は初めて鉄血と交戦します。と言ってもそこまで派手な戦闘にはなりませんがね。


昨日一緒に射撃練習をしたことによりM200とは良く喋る仲になった。今日も暇を持て余して基地の屋上で外の景色を見ていたらM200と出会って暇つぶしに屋上に設置してあったベンチに座って彼女と雑談をしていた。音楽が好きだとか前に任務に行った時に子猫を拾って指揮官に頼んでそれを基地で飼える様にしてシュヴァルツって言う名前をつけて可愛がっていることとか色んなことを教えてもらった。因みに、子猫につけたシュヴァルツって名前の意味は黒って意味で何でその名前にしたのかを聞いてみたところその子猫が黒猫だからだそうだ。分かりやすくて良い。

 

そうして雑談している内に自然と会話の内容はスナイパーの話に切り替わって行った。やっぱりお互いスナイパーライフルを使う戦術人形と言うことでそう言う話題になる。M200から長距離狙撃の際に気を付けることとか実際に狙撃した時にあった出来事など色々と教えてくれた。

 

「任務で撃った距離で1番遠かったのは何メートルなの?」

 

「そうですね・・・少し前にテロリストの幹部を暗殺する任務があったんですけど目標がいた建物の周辺が見通しの良い平原だったので1100メートル離れた所にあった丘から撃ったのが最長ですかね」

 

「1100メートル!それは凄いわね。因みに弾は当たったの?」 

 

昨日俺が狙った900メートル先の的に当たるのだってかなり苦労したし何度も撃ってやっと当てれたのにそれよりも通り1100メートル、1.1キロ先の人間をしかも一撃で当てるとは腕は確かとはグリズリーから聞いていたけど本当に凄い娘なんだな。何か見た目は俺より身長の低い娘なんだけどとても大きい存在に思えて来た。

 

「はい。弾は肺を貫いたみたいでそのまま死にました」

 

そんな距離だと音よりも先に弾丸が飛んで来るだろうから撃たれた敵は銃声を聞くこともなく突然胸を撃たれたんだろうな。多分何が起こったのか全く理解出来なかっただろう。そう考えると可哀想に思える。

 

「私もその内そんな距離を撃つことがあるのかな?もしそうなったらあんまり当てれる自信が無いわね」

 

「長距離狙撃する時は焦らずここぞと言うタイミングが来るまでじっくり待つことですね。それと、目標が移動している時は撃たない方が良いですね。そもそも1キロ先の180センチ前後の大きさの窓に直径約10ミリの弾丸を当たるだけでも充分難しいことなのに不規則に動いている相手になんか当たりませんよ。だから相手が完全に止まった瞬間に撃つのを強くお勧めします」

 

「分かった。もし長距離狙撃する機会があったら思い出すことにするわ」

 

「ボクなんかの助言で良ければ」

 

「充分に役立つ情報だからしっかり覚えとくわ」

 

「そう言えばNTWさんにはもう会いました?」

 

「いえ、まだ貴方以外のライフルを使う戦術人形には会ってないわね」

 

折角こうして戦術人形になったんだから色んな戦術人形達と会ってみたいなとは思っているんだけどなかなか話したりする機会が無い。

 

「貴方と同じ20ミリ口径の弾丸を使う対物ライフルを使っているので話が合うんじゃないかと思うんですよ」

 

NTW-20か。俺がドルフロをやってた時は推しの1人だったな。あのクールな性格とビジュアル。そして持っているデッカい対物ライフルがカッコよくて好きだった。会って話が出来るのなら是非とも話をしてみたいが彼女は必要以上に他人とは喋らない無口な一匹狼なタイプの女性だった筈だからこっちから話しかけても無視されるか一言二言話してはい会話終了ってことになりそうだ。

 

「う〜ん。でも彼女あんまり他人とは話さないタイプだって噂で聞いたんだけど?」

 

「確かに他の人と比べると話さないですけど噂ほど全く喋らないってことでもなくて外交的なんですよ?」

 

「そうなの?それじゃぁ今度会った時に話しかけてみようかしら」

 

「同じ20ミリ口径の対物ライフル使い同士きっと仲良くなれると思いますよ」

 

「逆にどっちが強いかで言い合いになっちゃったりして」

 

確かNTW-20はプライドの高い娘だった筈だから同じライフルを使う戦術人形でしかも同じ20ミリ口径の対物ライフルを使っているとなると対抗心を燃やして来る可能性もあるかも。その時は受けて立つ。自分にも同じ様にアンツィオとしてのプライドがあるからね。

 

「その時はボクが仲裁に入りますよ」

 

そんな感じでM200と楽しく雑談を続けていると基地の放送が鳴り指揮官の声で俺が呼び出された。直ぐに執務に来る様にとのことだった。もうちょっと話していたかったが指揮官に直接呼ばれて無視する訳にはいかない。

 

「何かやらかしました?」

 

「何もやってないわよ」

 

そう反論してから俺は「よっと!」と言って座っていたベンチから勢い良く立ち上がる。

 

「それじゃまた」

 

「はい。また」

 

M200と別れた俺は指揮官の待つ執務室へ向かった。

 


 

ドアをノックして「どうぞ」と部屋の中から聞こえて来た指揮官の返事を聞いて「失礼します」と言ってからドアを開け執務室の中に入る。執務室には椅子に座ってついさっきまで書類仕事をしていただろう指揮官とその秘書、と言うか副官のトカレフが居た。

 

「それで要件は?」

 

「急に呼び出してごめんな。要件は2つ。まず一つがコレ」

 

と言って指揮官は机の引き出しから何かカード的な物を取り出して俺に渡して来た。受け取ってみるとそれは俺の顔写真が印刷されたカードだった。そう言えば昨日M200達と射撃大会した後にトカレフに呼ばれて撮った写真ってこのID用だったのか。成る程ね。

 

「やっとキミ用のIDカードが出来たから渡しておこうと思ってね。キミがこの基地に所属する戦術人形だってことを証明するヤツだから無くしたりしない様に気を付けてね」

 

「ありがとう。紛失したりしない様に気をつけるわ」

 

「そうしてくれ。そしてこっからが本題なんだけどね。キミ(アンツィオ)の性能、と言うか力?を確かめたいから実地試験も兼ねてとある任務に行って欲しいんだ」

 

「どんな任務なの?」

 

「心配しなくても超高難易度な任務とかじゃないから安心して。任務内容は逸れイージスを倒せってやつだから」

 

イージスと言うとアレだよな。鉄血のターミ◯ーター的な見た目の装甲ガチガチの二足歩行ロボット。なかなか耐久力が高いヤツだけど武器は手に持ったやら的なヤツしかないから近接戦闘しか出来ない。俺みたいな遠距離から攻撃して来る奴相手にはただただ攻撃を喰らい続けるしかない存在だが本当に耐久力が高いから面倒な敵だ。

 

「報告によると逸れイージスが一体、村に接近しつつあるそうだから村が襲われる前に倒して欲しい。イージス一体でもまともな武器を持っていない村が相手なら壊滅させることも出来るからね。手段は問わないから倒して来て。流石に1人で行くのは心細いだろうしもしものこともあるから護衛としてガリルを付けるから後で挨拶しておいて」

 

「分かった」

 

「それと幾ら20ミリ弾でも通常弾だとイージスの持っている盾とかに弾かれたり装甲に弾かれたりする可能性もあるから倒し易い様に数は少ないけどこれを渡しておくね」

 

そう言って指揮官はテーブルの上に弾頭が白色に塗装された20×102ミリ弾を6発置いた。

 

「これは・・・APDS?」

 

「流石だね。キミの予想通りこれは弾頭がタングステンで出来たAPDS弾だよ。これが有ればイージスの装甲も貫くことが出来ると思う」

 

「ありがとう。有り難く使わせてもらうわ」

 

「それと、村の近くってことでもしかしたら民間人が居るかもだから気をつけて。間違って撃ったりしない様に」

 

「ラジャー」

 

「現場まではヘリを用意しているからそれに乗って。もしも緊急事態が発生したら直ぐに連絡する様に。それじゃぁ幸運を祈るよ」

 

指揮官からの説明を聞き終わり執務室を出ると腕を組んで壁にもたれかかっている少女が居た。茶色の服と橙色の髪が特徴的な娘。指揮官の言っていた今日任務を共にするガリルだ。ガリルは俺の方を見ると「や!」と言って手を上げた。

 

「待ってたで。うちがガリルや。よろしゅうな!」

 

「よろしく。私がアンツィオよ」

 

「にしてもなかなか凄い格好しとるな〜」

 

ガリルは俺が今着ているボディースーツを興味深そうに見て来るが見られているこっちとしては恥ずかしい。別に露出している箇所が多いって訳じゃないけど水着みたいに身体にピッタリと張り付いているせいで身体のラインが丸わかりだからこうもまじまじと見られるのは恥ずかしい。

 

「やっぱり変?」

 

「いや、カッコいいと思うで。何かSF映画とかに登場するヤツみたいで」

 

「そう。ありがとう。貴方の服もいかにも軍人って感じでカッコいいと思う」

 

「せやろ?うちは最強のガリル様やからな!」

 

そう言ってニッと屈託の無い笑顔を見せるガリル。こう言う明るいキャラの姉が欲しかったなと思う今日この頃。

 

「ほな、ヘリもスタンバイしていることやしちゃっちゃと準備して行こうか」

 

「ええ」

 

と言うことで武器庫に向かった俺とガリルは武器庫からそれぞれ銃と装備品を取り出して準備を進める。俺は腰の左側にアンツィオライフルの予備マガジンを入れるケースを2つ付けてそれに指揮官から貰ったAPDSを込めたマガジン2つを入れる。予備として通常弾をアンツィオライフル本体が入っているガンケースの中にある予備の弾を入れられる様になっている隙間に入れておく。

 

同じ様にサイドアームのMP9の予備マガジン3つを腰の右側に付けて、MP9本体にも9ミリパラペラム弾が30発入ったマガジンを入れていつでも撃てる様にチャージングハンドルを引いて弾を装填しておく。一応安全の為にセーフティーは掛けたまま腰の右側に付けたMP9用ホルスターに入れる。最後にアンツィオライフルの入ったガンケースに付けられたスリングベルトを肩に掛けて準備完了だ。

 

「そっちの用意は?」

 

と言いつつガリルの方を見てみるとガリルも準備は終わっていた様で手には同じ名前のアサルトライフルが握り締められていた。

 

「そんじゃ、行こうか!」

 


 

ブラックホークヘリに乗って俺とガリルは村から5キロ程離れた所にある場所に来た。依頼して来た人の情報だとここら辺に例の逸れイージスが歩き回っていたそう。ここら辺は元々街だった様で崩れて原型を殆どとどめていない建物とかがあちこちにある。ヘリから降りた俺達は良い狙撃スポットがないか周辺を歩きながら探していた。

 

「ここら辺は起伏が殆どないから丘の上から狙撃!ってことが出来そうにないなぁ」

 

「そうね」

 

「となるとやっぱりあそこにある給水塔から狙うのがええんかな?」

 

ガリルが向いた方には街の中心部辺りに聳え立つここら辺では1番高い建造物の給水塔がある。長い年月が経って錆びているが崩れそうな感じでは無いから登っても大丈夫だろう。

 

「そこは私もさっきから考えているんだけど敵からしても私達の居場所を発見し易い場所だからもし反撃が来たらと考えるとあそこに登るのはちょっと気が引けるのよね」

 

もし狙撃に失敗した時に目立つ給水塔は敵の目に直ぐに止まる。そして狙撃された方向から俺達がそこに居るってのも直ぐにバレる筈。そうなった場合どんな反撃が来るか分かったもんじゃない。相手が近接武器しか持っていないイージスだとしても絶対に飛び道具が無いとも言い切れないしもし給水塔まで近づかれたら給水塔を倒そうとして来る可能性もある。

 

「せめて敵がどこを通るのかだけでも分かったら待ち伏せ場所も決め易いんだけど・・・」

 

今回の敵は報告によると特に目的もなく彷徨い歩いている様に見えたそう。目的も無く歩き回っているだけなら何処に来そうとか予想はしづらい。となるとやっぱり見通しの良い給水塔の上から辺りを見渡して探した方が見つけ易い筈。

 

「う〜ん・・・」

 

俺的には給水塔に登っても良いんじゃないか?と思っているんだが身体が拒否している感じがする。あそこから狙撃する事を想像すると嫌悪感と言うか不快な感じになる。多分これはこの身体、戦術人形アンツィオがあそこは不味いと警笛を鳴らしているんだと思う。

 

「ほなら、うちが上から偵察してあんたに相手の位置を報告するってのはどうや?」

 

「そうね・・・じゃぁお願い出来る?」

 

「おう!任しとき!」

 

そう言ってサムズアップして見せたガリルは給水塔に向かって走って行った。俺は敵が何処にいるのか分からない状況で下手に1人で動くのは不味いと思いその場に座ってガリルからの報告を待つことにした。待つ間に俺は肩に掛けていたガンケースを地面に下ろしてガンケースの中から銃身を取り外した状態のアンツィオライフルを取り出し組み立て始める。一度分解してしまうとせっかく調整したゼロインが多少ズレてしまうが狙う目標が近、中距離で正確に狙う必要がないなら別に少しくらいズレても問題無い。今回の任務でも狙うのはイージスの胴体で交戦距離も多く見積もっても200メートル以下だから問題なく撃てる。

 

組み立てた終わると腰の左側にあるマガジンケースからAPDSの込められたマガジンを取り出してアンツィオライフルに入れる。そしてガンケースに入っていた空のマガジンに予備の通常弾を込めて腰のマガジンケースに入れておく。出来ればこの予備の弾を使うことなくイージスを仕留めたい。予備の出番と言うことはAPDS6発を撃っても倒せなかったと言うことでそれは結構切羽詰まった状況だからね。

 

組み立て終わった俺はガリルから敵発見の報告が来るまで単眼鏡を使ってこっちから敵が居ないか探してみることにした。今思うと偵察用のドローンを持って来るべきだった。そしたらもっと簡単に効率的に敵を発見出来ただろうに。自分用のドローンを買っといた方が良いだろうか?そんなことを考えつつ敵を探しながら暫く待っていると突然ガリルの声が聞こえて来た。

 

『おったーっ!見つけたで!今位置情報を送る!』

 

人形用意無線でガリルが高風気味にそう報告すると目標の位置情報が送られて来た。こう言うのは戦術人形の良いところで小難しい座標とかをわざわざ覚えなくても戦術人形の電脳に直接敵などの位置情報を送ることで簡単に味方との情報共有が出来る。今の俺も頭の中のマップに何処に敵が居るのかが表示されてハッキリ分かる。便利なもんだ。

 

「確認した。回り込んで家の中から背中に狙撃する」

 

『分かった。うちもそっちに急いで向かうわ!』

 

アンツィオライフルを入れていたガンケースは今は邪魔になるだけだからここに置いておく。アンツィオライフルを持って目標のイージスが逃げてしまう前に目的地に向かって走る。約60キロあるアンツィオライフルを持って走れるのは戦術人形の身体あってこそだ。だが流石にそれなりの距離を走ると疲れた。若干息切れしつつもイージスの約100メートル後方の2階が半分倒壊している建物に到着した。瓦礫を乗り越えて2階に上がり窓から外にある道路を見てみるとイージスが一体ノソノソと歩いている姿が見えた。こっちの存在に気づかれた様子は無い。

 

近くにあったテーブルを音を立てないように慎重に窓のそばまで持って来るとそこに二脚を出したアンツィオライフルを置き、一度ちゃんと狙えるか確かめる。照準器にはバッチリイージスの後ろ姿を捉えているし銃口も何かに遮られたりしてない。撃てる。

 

「ガリルそっちは今何処?」

 

『もうちょっとでアンタの居る所に着くで!』

 

「分かった。こっちはいつでも撃てるから」

 

『んなら先におっ始めとってもええで!』

 

「ならお言葉に甘えて撃たせてもらうわ」 

 

『了解。気をつけてな!』

 

ガリルとの通信を終えて射撃許可を貰った俺はアンツィオライフルのコッキングレバーを前後に動かしてチャンバーに弾を装填する。装填した弾はAPDSだ。最初から出し惜しみはしない。スナイパーは最初の一撃が重要だ。完全に敵の不意を突くことが出来る最初の一撃で最悪倒せなかったとしても致命傷を与える事が出来ればこっちがとても有利になる。そして相手は重装甲が自慢のイージス。となると元々は戦車の装甲を貫通させる為に開発されたAPDSを使うのがベストだろう。

 

「すぅーーふぅーーっ」

 

一度深呼吸をして息を整えると同時に心を落ち着かせる。焦るな。緊張するな。大丈夫自分なら当てれる。何たって最強のアンツィオなんだから。スコープを覗き込みトボトボと歩くイージスの背中に狙いを定める。この距離なら弾道の落下や風、コリオリの影響なんかは考えなくて良い。ただ問題なのはゼロインを前の射撃練習の時に900メートルに合わせたままだから普通に照準線の真ん中を狙った場合上の方に弾が当たってしまうこと。だから感でスコープ上のツマミを回してゼロインを調整した。完璧とは言えないけどマシにはなった筈。準備を整えた俺はその無防備な背中に狙いを定めてトリガーを引いた。

 

辺りに積もっていた埃や砂が発砲時の衝撃波と勢い良く噴出した発射ガスで巻き上がる。秒速1000メートル以上の高初速で発射されたタングステン製のAPDSは発射直後に弾体を包んでいた装弾筒が切り離され、空気抵抗の小さい弾体のみが高速で飛翔して行く。弾はイージスの背中の装甲に命中し、金属同士が当たる甲高い音を響かせて同時に若干の火花を飛び散らせた。

 

「よし、当たった!」

 

と喜びつつコッキングレバーを後ろに引いて空薬莢を排莢してコッキングレバーを前に押し戻して新しい弾を装填する。APDSの当たった所には穴が空いていたがまだまだイージス自身は元気な様で撃たれた際に多少ふらついたが今は立っている。流石に後ろを撃たれたことで後ろに敵が居るのを認識した様で振り返って盾を構えた。思ったよりイージスが元気なことに俺は思わず舌打ちをした。

 

「お待たせ!状況は?」

 

次はどうしようかと考えているとガリルが来た。

 

「1発背中に当ててよろけさせたんだけど見ての通りまだピンピンしてる」

 

「あの構えてる盾ごと撃ち抜くことは出来んのか?」

 

「流石に無理ね」

 

幾ら装甲を貫通することに特化した弾丸と言っても口径はたかが20ミリ。対物ライフルからAPDS弾を撃ち出せるのは凄いことだが口径が小さいからそれだけ威力も下がると言ってもこの近距離なら40ミリ近い貫通力を期待出来るがイージスの構えているあの盾の分厚さを見る感じ抜けそうに見えない。

 

まだ敵はこっちの正確な場所を分かっていないみたいだけどもう1発撃ったらこちらの居場所は完全にバレるだろうから次弾はちゃんとダメージを与えることの出来る箇所に当てたい。

 

「ならうちが囮になろうか?」

 

「いや、アイツの足を狙ってみる」

 

今アイツは盾を構えたままその場に棒立ちしている。多分次の射撃に備えつつ敵の居場所を探してるんだろう。だがこっちとしては動いてないのは好都合。アイツの盾は大きいがあの巨体を全部覆い隠す程ではない。一部は盾に収まらずに見えてしまっている。その中の一つに足がある。人間で言うと膝から下が見えている。片足を壊してしまえはアイツも歩けなくなる筈。そうなったらこっちも楽に倒すことが出来る。装填している弾はさっきと同じAPDS。背中よりは装甲は厚いだろうけど流石にあの盾並みに固いいってことはない筈。

 

イージスの足の脛部分に狙いを定めて俺は撃った。ゼロイン調整がちょっと不安があったが弾はほぼ狙い通りの場所に当たった。弾は見事足を貫通して穴が空いていたがまだイージスは立っていた。

 

「チッ!」

 

1発じゃ足りなかったか!てか固すぎだろ!急いでコッキングレバーを動かして新しい弾を装填し撃とうとした時、イージスの異常に気がついた。今の発砲で完全にこっちの位置を特定したイージスはこっちに向かって走って来ようとした様だが撃たれた右足を一歩踏み出した瞬間撃たれた箇所から足が壊れて行きそして折れてしまった。どうやら重装甲を身に纏った自分の重量に破損した足が耐え切れなかった様だ。踏み出した足が壊れたことでイージスはバランスを崩してそのまま前のめりに勢い良く転倒した。

 

「おぉ!やったな!」

 

「起き上がる前にトドメを刺すよ」

 

盾を杖代わりにして起き上がろうとしているイージスの胴体に狙いを定める。足を壊したとは言えまだ完全に無力化した訳じゃない。この状態から手痛い反撃を喰らう可能性だって充分にあり得る。胴体の中央にもう1発APDSを食らわせる。一瞬後ろに倒れかかったがまだ倒れない。そして今ので弾切れになったから空になったマガジンを外してAPDSが装填されたもう一つのマガジンをアンツィオライフルに入れコッキングレバーを前後に動かし排莢と装填を行う。狙う場所はさっきと同じ胴体。ふらふらと立ち上がろうとするイージスにもう1発叩き込んだ。ガンッ!と言う金属音と共にタングステンの弾芯がイージスの自慢の装甲を貫き内部にまた到達する。撃たれたイージスは撃たれた穴からスパークを起こすと力が一気に抜けた様に崩れて落ち地面にドガっと音を立てて仰向けに倒れ動かなくなった。

 

「やったか?」

 

「それ相手が生き返るフラグにならない?」

 

「おっと。すまん。うちが見て来るけん待っててや」

 

そう言ってガリルは2階から下に飛び降りると倒れたイージスの元へ銃を構えつつ駆け寄った。そして銃口で恐る恐るイージスをちょんちょんと叩いてみるが反応は無い。そしてガリルは大胆にイージスの胴体の上に登ってその上でジャンプして見せた後こっちに向かってサムズアップした。どうやらちゃんと倒せているみたいだ。

 

「ふぅー。何とか倒せた」

 

俺はそう言って床に座って一息付いた。初めての実戦で結構緊張していたんだけど何とか目標を倒すことが出来て良かった。次は一撃で倒れてくれる相手が良いな。




と言う事でAPDSが登場しましたがAPDSが撃てる銃ってやっぱり少ないですね。まぁ普通銃で撃つ様なものでもありませんしねwでも上には上がいてドルフロにも実装されていますがAPFSDSを撃つとんでもない対物ライフルもあるんですよねぇ。

そしてまだ分からないんですかリアルの事情でこれから投稿頻度が遅くなってしまう可能性があります申し訳ないです。

ご感想などありましたらお気軽にどうぞ!


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第6話 Mock battle

皆さんお久しぶりです。投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。ちょっと最近リアルが立て込んでてなかなか書く暇が無いんですよね。まぁそんな現実は置いといて第6話です。今回は自分が前から登場させたかったキャラが登場します。

そして、いつも誤字報告や感想などをくださりありがとうございます!


この基地に来てから3日が経った。1日1日の内容が濃密だったせいかまだ3日しか経っていないのかよと思った。まだまだこの基地の生活には慣れていないことも多い。例えば、当たり前だがこの基地の戦闘員は全員戦術人形な訳で全員女だ。しかも全員美少女。かく言う俺自身も見た目は美少女だが中身は男だ。気分としては女子校とかに女装して潜り込んでいる様な感じだ。ちょっと疎外感と言うか俺だけ場違い感なのを感じる。中身が男だとバレるのを恐れてボロが出ない様に気をつけるのは疲れる。だがまぁ今の所は問題なく生活は出来ている。

 

「射撃訓練?」

 

昼食も食べ終わり、前回の任務以降よく話す様になったガリルと娯楽室で雑談をしているとM200がやって来て俺を射撃訓練に誘って来た。

 

「また長距離射撃の訓練?」

 

「いえ、今日はサイドアームの訓練です」

 

「サイドアームかぁ」

 

前みたいな長距離射撃の訓練ならまだ良かったんだけどな。俺がいまサイドアームとして使っている武器はサブマシンガンのMP9。もし近距離戦になった時、大柄で重く、ボルトアクション方式のアンツィオライフルでは太刀打ち出来ないならと言う事でこの銃が用意されている訳だけどこの銃はスティグマに適応していない。適応していないから何なんだと思うかもしれないが今まで銃を撃ったことも無かった俺がアンツィオライフルを問題無く運用して敵や長距離の的に弾を当てれたりしていたのは戦術人形と特定の武器を高度に連携させるこのスティグマシステムのお陰だ。ゲームで例えるならエイムアシスタントがスティグマに適応した銃を使っている時でエイムアシスタント無しで撃っているのがスティグマ適応外の銃を使っているみたいな感じだ。本当はもうちょっと違うが分かり易く表現するならこんな感じだ。

 

つまりスティグマ適応外のMP9を撃つとアンツィオライフルを使っている時と比べて命中率がかなり低下する。それに俺の使っているMP9は携帯性を上げる為にストックやグリップは外してある状態なのでフルオートで撃つ時なんかはリコイルコントロールが難しい。本来はな。このリコイルコントロールの問題はこの身体が解決してくれている。この身体は約60キロもある大型対物ライフルを運用すること前提に作られているから他の戦術人形と比べてもパワーがある。なのでMP9のリコイルはそのパワーで無理矢理押さえ込むことが出来てしまう。なので残るはエイムの問題なんだがこれが意外に難しい。

 

「その嫌な気持ち分かるで。なかなか的に当たらなくてイライラするもんな」

 

ガリルは俺の気持ちに共感してくれるらしく「分かる。分かるでぇ」と言いながら頷く。

 

「当たらないから訓練するんじゃないんですか。ガリルさんも来ます?」

 

「そうやなー。まだ時間はあるし行こうか!」

 

「あ、もう訓練に行くのは決定事項なのね」

 

と言う事で連れて来られたのは基地内にある屋内射撃練習場。四方を丈夫そうなコンクリートで固められた窓などは一切ない長方形の施設だ。主に拳銃やサブマシンガンの射撃訓練に使う所らしくレンジの長さは最大25メートルある。武器庫からそれぞれ自分のサイドアームを持って来た俺達3人は先ず先輩の2人がお手本を見せると言う話になり俺は2人の撃つ姿を見学する事になった。2人はそれぞれブースと呼ばれるディバインダーで区切られたスペースに入り射撃の準備をする。M200がホルスターから取り出したのはP239という名前の拳銃だ。

 

「珍しい拳銃使ってるね」

 

P239は決して失敗作だったり使い難い拳銃と言う訳ではない。小型で使い易いと言う事である程度の人気のある拳銃ではあるけどサイドアームとして使っているイメージは無い。どっちかと言うと護身用として隠し持っているイメージだ。

 

「銃自体が小さいし、マガジンがシングルカラクラムなので手が小さいボクには持ち易いんですよ。それにコンパクトな割に高威力な弾を撃てるのも良い所です」

 

「.40S&W弾だっけ?」

 

「ボクのはそのタイプですね。前は9ミリを使ってたんですけどストッピングパワー不足で倒し切れなかったことがあったのでそれからは40S&W弾を使ってますね」

 

身体が小さいM200が小型拳銃のP239を持っている姿は良く似合っているな。本人にそのこと言ったら身長が低い事を気にしてそうだから怒られそうだけど。

 

「ウチはそんな威力不足は感じておらんし弾数が多い方が好きやから9パラやな」

 

そう言うガリルの方を見てみるとジェリコ941を持っていた。同じIWI社製の拳銃だからだろうか?

 

「ガリルはジェリコなのね。やっぱり同じIWIだから?」

 

「まぁそうやな。使い易い良い銃やで」

 

そう話している間にも2人はマガジンに弾を慣れた手つきで込めて行く。因みに今2人が込めている弾はワッドカッター弾と言う名前の弾で弾頭の先端が平べったくなっているのが特徴だ。これにより的に当たった時に綺麗な丸い穴が開く。弾込めが終わり弾の入ったマガジンを銃に入れてスライドを引いた。

 

「ウチは準備OKやで」

 

「ボクも大丈夫です」

 

「それじゃ1マグ分撃つ感じか?」

 

「良いですよ」

 

「ほな始めようか!」

 

2人はほぼ同時に撃ち始めた。狙うは10メートル先のマンターゲット。パン!パン!パン!と一定のリズムで2人は撃つ。ガリルの方が指切りは早い。正確性のM200、最大12発と言う装弾数に物を合わせた高速連射のガリルと言った感じだ。装弾数が最大7発のM200のP239が先に弾切れになるかと思っていたがガリルの連射速度が早くM200が遅かったことにより弾切れになったのはほぼ同時だった。結果は2人とも上々と言える感じだった。ゆっくりと狙いを定めて撃っていたM200の方が命中率は良く的の中心に全弾命中していた。連射しまくっていたガリルの方は流石にM200よりは弾のばらつきがあったがそれでもほぼ中央に当たっていた。2人とも凄いよ。特にM200はスティグマ適応外の銃で撃っているとは思えない命中精度だ。

 

「流石と言うか何と言うか。2人とも結構当てるわね」

 

「まぁそれなりに練習したからなぁ」

 

「それじゃぁアンツィオさんも撃ってみてください。最初はセミオートで何5発ほど」

 

「ラジャー」

 

M200の使っていたブースにお邪魔してホルスターに入れていたMP9を取り出して予め弾を入れていたマガジンを入れてチャージングハンドルを引いて弾を装填する。そしてセレクターレバーをセミに切り替える。拳銃みたいな感じで両手で構えてドットサイトを覗いて狙いを定め5発連続で撃つ。命中率を上げたかったからガリルみたいに連射はせずに撃った。結果はまぁ当たりはしたが2人と比べると命中率は悪い。

 

「まぁ悪くは無いやけどなぁ」

 

「ですね。と言うとこで、TMPさん宜しくお願いします」

 

「え?」

 

M200がそう言うといつの間に来ていたのかおどおどとした様子のハイレグレオタード風のボディースーツの上からコートを着た、猫耳と尻尾が特徴的な少女が俺の前に歩いて来た。

 

「同じ銃を使うTMPさんなら僕達より上手く射撃の説明を出来ると思ったので呼びました」

 

成る程今日M200が俺をここに誘ったのは彼女と合わせる為だっか。M200の言う通り彼女の使っているサブマシンガンのTMPと俺がサイドアームに使っているMP9は殆ど同じ銃だ。じゃぁ何で名前が違うのかと言うと少し長い話になってしまうからここでは簡単に説明する。サブマシンガン界の王者となっていたMP5のシェアを奪う為にステアー社は打倒MP5の為に開発したのがTMPで性能の高さや価格の安さなど殆どの面でMP5に勝っていたが独特な操作性などが評価されず結局MP5のシェアを奪うことは出来なかった。シェアを奪うことに失敗したステアー社はTMPの生産を停止し、製造販売権はB&T社に売却された。そしてB&T社がTMPを少し改良して作ったのが今俺が使っているMP9で更に正確に言うと俺が使っているのはMP9の改良型のMP9-Nだ。

 

「え・・・えっと、ステアーTMPです。・・・その、貴方に射撃の説明をしに来ました」

 

気弱な性格のTMPは初めて会う俺に凄いビビっているのが分かる。俺は彼女を安心させる為にしゃがんでから出来る限り優しく笑顔を浮かべてから話しかけた。

 

「わざわざ来てくれてありがとうね。私はアンツィオ。よろしくね」

 

「は、はい。宜しく・・・お願いします」

 

何と言うか、彼女を見ていると護らねば!と言う気持ちにさせられるな。

 

「今の射撃を見て指摘する箇所があったら何でも言ってください」

 

「わ、わたし何かが他の人に教えるなんてそんな・・・・」

 

「もっと自分に自信を持っても良いと思いますよ。貴方は自分が思っているより強い戦術人形ですから」

 

「そうや。自信を持ってコイツにビシッと言ったれ」

 

2人に応援させて少し自信が付いたのか俯きがちに俺の方を向いたTMPは

 

「わ・・・分かりました。えっと、その・・・・先ず構え方が違います。拳銃みたいにグリップを両手で持つんじゃなくて、片方の手は、ハンドガードを持った方が安定すると・・・思い、ます」

 

「分かった」

 

こうして気弱な教官との射撃訓練が始まった。やっぱり初めて会う俺に緊張しているのかずっとオドオドしてはいたが教えてくれる内容はとても参考になった。それからガリルとM200も指導に加わり先輩3人から俺は射撃の指導を受けながら何十発と撃ちまくった。そうして射撃練習をし始めてある程度時間が経った頃、休憩していると突然ガリルが話しかけて来た。

 

「なぁどうせならこのメンバーで勝負せんか?」

 

そう提案して来たガリルは俺ではなく俺の横に立っていたM200に向かって挑戦的な笑みを浮かべていた。それに対してM200はガリル言わんとしていることが分かったのかこっちも挑戦的な笑みを浮かべて来た。

 

「良いですよ。チーム分けはどうします?」

 

「ウチとアンツィオチームとM200とTMPチームでどうや?バランスは取れてると思うけど」

 

「良いですよ。それじゃぁちょっと待っててください。指揮官にキルハウスの使用許可を貰って来るので」

 

「ウチも一緒に行くで〜」

 

と言うことで突然俺達は模擬戦をする事になった。って言うかグリズリーもトカレフも俺とTMPには参加するかどうかとか聞かずに参加する事前提で話していたよな。

 

「ガリルって意外に好戦的なの?」

 

俺は横に立っているTMPに聞いてみた。あのM200に向けた笑みはどう見ても好戦的な奴がする笑みだった。

 

「結構、色んな人と色んな勝負をしているのは・・見ます」

 

「やっぱりね」

 

ガリルとM200の2人が指揮官に模擬戦の許可とキルハウスの使用許可を取りに行ってから10分程経ち2人は戻って来た。意外に帰って来るのが早かったな。そして全員キルハウスに移動してから簡単なルール説明がM200からされた。制限時間は無くてTMP以外はサイドアームしか使用したらダメ。でも実戦を想定しての戦いだからスナイパーライフルは背負った状態で戦うこと。ナイフ(模擬戦用のゴム)などを使用したCQC戦闘もOK。相手チームが降伏するか全滅させたチームが勝ちと言う分かりやすいルールだ。戦う場所はここキルハウス。室内戦の訓練の為に建物の中を模して作られた訓練場だ。俺とガリルをAチーム。M200とTMPをBチームとして戦う。双方相手の姿が見えなくなるまで後退して準備を整える。

 

俺は手に持ったMP9に模擬戦用のゴム弾が装填されたマガジンを入れてチャージングハンドルを引き装填する。そしてセレクターレバーをオートに切り替える。トカレフ相手に勝つ事は出来ないかも知れないけどM200相手には勝ちたいところだな向こうの方が近接戦闘は慣れているだろうし油断は出来ないな。

 

「ごめん。結構ガリルに頼る事になると思う」

 

「大丈夫やって。確かに向こうにはTMPとかが居るけど、アイツはウチががなんとかする。M200も弱いって訳じゃないけどそっちは連射が出来るサブマシンガンを持っている分有利やろ」

 

「まぁせいぜい悪足掻きして見せるわよ」

 

そうこうしているとセットしていたタイマーがゼロになり、訓練開始を伝えるブザーが鳴った。

 

「よし、行くで!ポイントマン(先頭)は任せとき!」

 

「ラジャー!」

 

ガリルは同じジェリコ941を両手で持ち迷い無く走って行く。相手とはそんなに距離は離れていない筈だから今直ぐにでも敵とエンカウントする可能性がある。そう考えながら曲がり角に行こうとした時、ガリルは急に止まった。俺は急に止まったことを不思議に思いつつ歩いていたが直ぐに服を掴まれて無理矢理後ろに引っ張られた。何で引っ張られたのか分からなかったがその次の瞬間俺が立っていた空間を何発もの弾丸が通過して行ったのを見て敵が角待ちしていたことに気が付いた。

 

「ウチの前に出ない様にしといてや。金魚のフンみたいにピッタリ付いて来るんやれ

 

「わ、分かった」

 

そう俺に言うとガリルは角待ちしている敵に向かって大声で話しかけた。

 

「角待ちとかいやーなことして来るのは誰や⁉︎」

 

言葉による返事は帰った来なかったが敵の姿を確認しようと顔をそっと出していたガリル目掛けてまた複数のゴム弾が飛んで来た。直ぐにガリルは顔を引っ込めたからそれが当たる事は無かった。ガリルは身体を出さずに拳銃だけを出して敵が居るであろう場所に向かって撃ちまくった。ガリルが撃ち終わると向こうも撃ち返して来た。

 

「あんだけ弾をぎょーさん撃って来るのはTMPやな。今のウチみたいな感じで敵のいるであろう場所に向かって撃ちまくってくれ。アンタが牽制している間にウチは向こうに渡ってそのままアイツの後ろ横に回り込む」

 

「ラジャー!」

 

ガリルと場所を入れ替わり一瞬だけ顔を出して相手の位置を確認する。チラッとだが確かにTMPの姿が見えた。15メートル程先の曲がり角に隠れつつこっちに向かって撃っているみたいだ。俺はさっきガリルがやった様に銃だけを出してフルオートでTMPのいる位置に撃ちまくった。流石のTMPも毎分900発の連射速度で弾丸が飛んで来ている状況で顔を出せる訳も無くその間にガリルは走って曲がり角を通り過ぎて向こう側まで走り抜けた。それから直ぐにこっちも1マガジン分の弾丸を撃ち切った。やっぱり連射が高いのは良いけど30発を直ぐに撃ち切っちゃうのは問題だな。

 

マガジンを交換してもう一度ワンチャンを狙って撃とうとしたが隠れていた壁から顔を出そうとした瞬間、3発ゴム弾が飛んで来た。ギリギリ当たらなかったが危ないったらありゃしない。にしても流石と言うか何というか滅茶苦茶正確な射撃をして来るな。俺が下手に出れない様に今も牽制射撃をして来るし。

 

「あれ、そう言えばM200の姿が見えない様な?」

 

さっきから撃って来ているのはTMPだけだ。そもそも、M200の姿さえまだ見ていない。敵の位置が分からないっていうのは凄く不味い状況だ。って言うかトカレフがこんなに牽制射撃しまくって俺を下手に動けない様にしているのって、こっちの作戦と同じことを向こうの考えているからじゃないのか?つまり俺がTMPとの撃ち合いに集中している間に回り込んで来たM200が・・・。

 

「っ⁉︎」

 

俺は直ぐに後ろや横を確認する。何処から来てもおかしくない状況だ。取り敢えずガリルにこの状況を報告しておく必要があるな。俺は人形用無線を使いガリルに話しかけた。

 

「ガリル。どうやら向こうも同じ考えみたいよ。多分M200が私を倒そうと回り込んで来ている」

 

『分かった。ウチはこれからTMPとの撃ち合いになるからそっちは頑張ってくれ』

 

「分かった」

 

通信を終えてから直ぐにTMPのいた所で2つの発砲音が鳴り始めた。発砲音的にガリルとTMPの撃ち合いが始まった様だ。こっちはまだM200の姿も確認出来ていないし居場所も分かっていない。ずっとここに居るのもダメだと思い周囲を警戒しつつ移動していると、角からP239を構えたM200が飛び出して来た。直ぐ様俺はM200に向かってフルオートで攻撃。だがM200はそれを予想していたのか直ぐに横に飛び退いて銃撃を回避し、P239で撃ち返しながら物陰に隠れた。M200が撃って来た弾は横に飛び退いた後に無理な姿勢で撃ったからか俺に当たることはなかったが結構危なかった。俺の方もこれ以上撃たれない様に慌てて近くの壁に隠れる。お互いの距離は10メートルもない。今の射撃で多分マガジンの残弾は残り半分くらいになった筈だ。この距離でそれだけ残っていればフルオートでもM200に叩き込める。

 

チラッと顔を出してM200の姿を確認してみようとするが顔を出した瞬間に弾が飛んで来た。トカレフ並みの精密射撃では無いが充分に射撃が上手い。舐めていたら直ぐに弾を喰らうことになりそうだ。訓練の時にTMPが言ってた事を今こそ生かすべきだろう。物陰や角から撃つ時は予め敵のいる方向に銃口を向けといて敵が出て来た瞬間に撃つべし。多分M200はまだ俺が顔を出して来るのを待って銃を構えて待っているだろうから撃たれる前に撃つ。

 

「おりゃっ!」

 

M200の居る方向に予め銃口を向けつつ身体を傾けて銃と顔だけを出しす。ドットサイトのドットにM200の姿が重なる。もらった!トリガーを引きMP9が火を吹く。1秒の間にマガジンに入っていた残弾全てを撃ち出し十数発のゴム弾がM200に当たーーらなかった。

 

「はっ⁉︎」

 

何とM200は俺が撃つと同時に横に倒れて銃撃を全て回避した。M200は倒れた状態のまま撃ち返して来たので俺は慌てて壁の裏に隠れる。今の射撃でMP9は弾切れ。そしてM200もその事を分かっている様でこっちに向かって全速力で走って来る音が聞こえて来た。M200との距離を考えるとこっちがリロードし終わる前にM200が来てしまう。そうなったら俺は何も出来ずに撃たれてしまう。だがこのまま負ける訳にはいかないだろ。そう思った俺は馬鹿なことを思いついてしまった。そして他に良い案も思い付かないし考える時間も無いので実行することにした。

 

一旦手に持っていたMP9を床に落とし、そして背中に背負っていたアンツィオライフルを手に取る。そして壊れたりしない事を祈りつつ俺は走って来て目の前にまで接近していたM200を確認するとアンツィオライフルを持つ両手、特に右腕に力を込める。

 

「そぉい‼︎」

 

そして槍投げみたいな感じでアンツィオライフルを思いっきりM200をぶん投げた。名付けて竹槍戦法(物理)だ。流石にこれは予想外だったようでM200も驚く。

 

「うえっ⁉︎」

 

渾身の力を込めて投げたアンツィオライフルの銃口がM200の腹当たりに突き刺さる。60キロも重さのある鉄の塊の先端が腹に勢い良く当たったんだ。威力は結構ある。「ぐゔっ!」と苦しそうな声を上げてM200は後ろに倒れた。倒れたM200に駆け寄りP239を持っていた右手を踏み付けてP239を取り上げる。そして地面に倒れるM200の腹に1発撃ち込んだ。俺の勝ちだ。

 

「ごめん。大丈夫?」

 

俺は腹にアンツィオライフル(物理)とP239の銃撃を食らって悶絶しているM200を見て俺はちょっと罪悪感を覚えた。勝つ為にとは言え流石にやり過ぎたな。これは。って言うか何で腹に撃っちゃったんだよ俺。

 

「げほっごほっ!・・・・・大丈夫です」

 

そう答えるM200の声は苦しそうだった。後でもう一度謝った方が良いなこれは。だが今はまだ模擬戦の最中だ。ガリルの援護に向かった方が良いだろう。

 

「ごめんね。後で何かお詫びするから」

 

「気にしないで良いですから。早く行ってください。まだ戦闘中ですよ」

 

「本当ごめんね!」

 

もう一度謝ってから俺はアンツィオライフルを回収してMP9もリロードしてからガリルの元へ向かった。正確な位置は分からなかったがけたたましく鳴る発砲音が目印になった。そしてその発砲音は常に移動していることから察するに2人は移動しながら撃ちまくっている様だ。

 

ガリル達の進行方向を先回りした俺は物陰に隠れつつMP9を構えてTMPがやって来るのを待ち構える。2つの銃声がどんどん近づいて来てやがてガリルとTMPの姿が見えて来た。予想通り2人は走りながら撃ち合っているみたいだ。普通こんな撃ち合いはしない筈なんだけどな。そしてTMPの戦っている姿を見て俺は驚いた。さっきまでのオドオドとしていた気弱な感じは何処はやら。まるでその見た目通り猫みたいな俊敏な動きで動き回りながらガリルの射撃を障害物や壁を巧みに利用して避け、正確無比なフルオート射撃で反撃している。

 

俺はガリルとの銃撃戦でこっちに意識が向いていないこの今の隙を利用してTMPに狙いを定めてフルオートで撃った。だが、TMPが俺の存在には気づいていた様でなんと俺の射撃をスライディングで避けた。

 

「何そのカッコいい回避方法⁉︎」

 

俺が驚いている隙にTMPはスライディングしつつ俺にフルオートで反撃。回避が遅れてしまった俺は全身に十数発のゴム弾を食らった。初めてゴム弾を食らったけどコレ滅茶苦茶痛いなおい。初めて食らったゴム弾の痛みに悶絶している内にガリルが撃ち負けて試合は終わった。

 

「いや〜もう少しやったんやけどなぁ」

 

たはは〜と笑いながらガリルは言った。TMP以外のメンバーはゴム弾を食らったせいで当たった場所が赤く腫れていた。

 

「まさかライフルを投げ付けて来るとは思いませんでしたよ」

 

「本当にごめんね?あの時は考えるより先に手が動いてて」

 

「大丈夫ですよ。それに銃を相手に投げるって言うのは実戦でも時々やる技ですから」

 

「そうなの?」

 

「まぁ殆どそんなことしませんけど、緊急時の時とかに」

 

でも自分の半身とも言えるアンツィオライフルを投げ付けるなんてことは実戦ではしない方が良いだろうな。自らメインウェポンを捨てる様な物だし最悪アンツィオライフルが壊れてしまう可能性もある。

 

「にしてもTMPちゃんは強いなぁ。流石やで」

 

「確かに。戦っているところ初めて見たけど別人かと思った。私の撃った弾をスライディングで避けたのとか凄いカッコよかった」

 

「え、えっと・・・・ありがとうございます」

 

褒められ慣れていないのかガリルと俺に突然褒められたTMPは俯き恥ずかしそうにしながらも礼を言って来た。何だこの可愛い生物は?そんなこんなで互いの健闘を称え合いながら模擬戦は終了した。俺としても今日の射撃練習や模擬戦は良い経験になったと思うがもうゴム弾を食らいたくは無いなと思った。




と言うことでTMPが登場です。可愛いですよねTMP。これは自分の勝手な妄想なんですが普段はオドオドしているけどいざ戦闘になったら凄い強い女の子って言うギャップあったら良いなと思っています。

そして自分で書いといて言うのもなんですが約60キロの重さのある対物ライフルを槍投げみたいにぶん投げるって普通に考えてアンツィオちゃんの腕の力凄すぎますよねwこの竹槍戦術(物理)も前から書きたいなと思っていたシーンなんですよね。実際のゲームでもNTWなどを使って竹槍戦術やってました。

ご感想などございましたらお気軽にどうぞ〜。


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