バッドエンドから逃げるために (落ち着けおさかな)
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設定系
ちょっとした設定
と言っても設定自体は考えながら書いたので今までの話との矛盾点が発生していると思います。
そう言う点を考えると主にこれから書く際の資料としての意味が強いですかね。
【アーティフィシャルフラワーガーデン】
概要:主人公であるサクラを中心としたストーリーと、番外編の男主人公の■■■の二作で構成された作品。だが両方プレイしなければストーリーが分からないというわけでもなく、こちらではサクラ版の説明を説明します。
ストーリー:敵性生命体【黒渦】が出現するようになったのは人類が地球を捨てて【箱舟】を使い宇宙に出てから10年も経過しない不安定な時期。
権力争いをしていた【箱舟】の制作者たちは目の前に危機に対抗するため、その頃例外的に設立された【プラタナス】により特殊な装備を開発。同時に【花の巫女】が出現したことも合わさり苦戦しながらも防衛、そして今後の戦闘の安定性のために、戦える人間を育成するための機関を設立。多くのものを失いながらも徐々に【黒渦】の安定撃破を可能になり、断続的な襲撃はあれど人類は元の平和な生活に戻ることが出来るようになっていった。
そして約200年後、主人公サクラが学園に入学するところから作品が始まる。
概要
花の巫女:上位の【黒渦】に対抗できるものの通称。男女どちらでもこの名は変わらない。
ある一定の齢になるとその才能を開花し、力を得る。メインスキルはその能力の一片であるが、最も大きな能力はレベルを上げられるようになる点。
蕾:花の巫女としての才能が開花する前の通称。
才能開花前は一般人と大差ないが、ごく稀に開花前なのに能力の一片を使用することのできるものもいる。
宿主に力を貸し【黒渦】を狩る手助けをしてくれるが、その目的は依然として不明である。特徴として基本的には12歳以上にならなければその能力を貸すことがないという特徴があり、一部の例外はあれど学園へ入学する人間の多くが12歳以上なのはそれが原因である。
しかしその能力は20歳を超えると低下していくという傾向があり、ベテランと言っても17歳の少女である。
第1部隊:
その特徴である【白いリボン】は「自らの信念を突き通し、いかなる戦闘でもこのリボンを汚さない優雅な戦闘をする」と言った意味でつけられたいる。
現在は6代目。全員が生存できたわけではないが、生存した部隊員のほとんどは、先生だったり隠居してたりして余生を過ごしている。
6代目第1部隊:現存する第1部隊。
4人で構成されていた現在の第1部隊。現在は3人だがその理由は一人が治療中だからで決して死んでいるわけではない。
実は復活前に第1部隊全員の好感度をある程度上げておくことで第1部隊への仮入隊のイベントがあり、その際に全員のステータスを確認することが出来るが全員80レべというやる気になればクリアできるレベルである。もうこいつらだけでいいんじゃないかな?
とはいえ戦場で一つの部隊が強くても勝てはしないため、黒渦には攻勢に出ることのできない受け身的な状況である。
第241部隊:主人公であるサクラたちが所属している部隊。
最初は4人で編成された部隊だったが、後半になるにつれて増えていき、最終的には8人編成になる。部隊を構成する人員はプレイする人によって左右され、場合によっては他の部隊から人を引き抜くこともある。
初期部隊長〈アイビー〉〈サクラ〉〈ヤルマ〉〈フリージア〉
箱舟:人類が暮らしている宇宙船のようなもの。しかし作中にこれが活かされることはあまりなく、「そういう舞台です」という感じで覚えておけば問題なし。
一応説明すれば、箱舟は形状は筒状をしている。いわゆるガンダムなどのコロニーのような形状であり、作中空に地面があるのはこれが理由。
両端に壁があり、そこから外に出ることが可能であるが、外は宇宙空間なので一部の職種の人間以外が外に出ること自体がタブーと化している。
黒渦:【箱舟】内に突如出現した原因不明の現象。
実は黒渦自体は敵の名称ではなく、黒い渦の中から出てくる敵性生命体全般を表しており、細かく【バッファロー】などの正式名が存在する。
一応、知的生命体らしい。小型の敵にも思考能力があり、決まった基本的には決まった指揮官役の黒渦からの指示の下行動を起こす。
小型(初級)であれば通常兵器での撃破が可能であり、中型(中級)以降から花の巫女が出動する。大型(特級)は撃破自体が困難となっており、戦闘に慣れているはずの先輩達でも返り討ちにあうことが多い。
人類を狙う理由は不明。
プラタナス:【黒渦】襲撃初期に例外的に設立された開発チーム。
元は新たな移住地を探すために設立されたチームだったのだが、【黒渦】の存在とその特徴を最も早く調べ上げて戦うことのできる武器を制作することが出来たという功績もあり、改めて設立されたという経緯がある。
安定した今でもその功績からチームが解体されることはなく、今もその研究を続けている。
組んでいる花影を守り、その援護を受けながら敵を倒す。前衛があるスキルを持っていると後衛も攻撃が可能となる。
主に組んでいる前衛の補助としての役割が多く、バフをまいたりするのが仕事である。
司令部:学園の校舎に併設された【花の巫女】たちに指示を出す場所。
戦闘:本作の戦闘はアクティブタイムバトルシステム、通称ATBを軸とした戦闘システム(イメージ的には軌跡シリーズ)を参考にしており、キャラそれぞれを組み合わせて前衛四人と後衛四人の合計八人での戦闘を行う。
前衛と後衛でタッグを組み戦闘するシステムは、それぞれにステータスを足した合計値が戦闘では参照され、ステータスが決定される。(そのため初期バージョンだと主人公サクラと組むとめっちゃ弱くなった)
キャラクター:
一年生
サクラ
使用武器:〈杖〉
スタイル:〈後衛〉
オリジナルスキル:〈純粋な精神〉消費(HP):5割 最初から使用可能
範囲LLの全体回復(強)と状態異常の回復。
〈■■■■■■〉消費(HP):9割 イベント〈■■■■〉後使用可能
単体蘇生(蘇生後500回復)
サブスキル:〈支援〉系
ステータス:
レベル:1(99)
HP :80(5000) MP:30(800)
力:8(380) 耐久:12(490)
知力:28(740) 精神:17(680)
速度:7(200) 運:80(85)
詳細:本作の主人公である淡いピンク色の髪をした少女。
とある人物に家族を助けてもらったことから【黒渦】を狩る者を目指し学園に入学した元気のいい少女。
性能:戦闘面ではステータスは賢さが上昇しやすい援護職型。メインスキルである〈純潔な精神〉は全体回復(強)、〈■■■■■■〉は単体蘇生となっており、それらを軸にしたヒーラーとしての運用をされることが多い。
しかし他のステータスは決して高くなく、メインスキルである全体回復と単体蘇生は本人のHPを消費して使用するため、自分を回復することは出来ない。
アプデによってステータスが全体的に強化され安定性がアップ、しかし相変わらずメインスキル使用時は自分のHPを削ることに変化はなく、自分の回復は出来ない。
装備できるスキルも回復やバフばかりであり、下手に攻撃させるよりも味方の補助に使用した方がいいだろう。
しかし強制加入のキャラクタであればもう少し性能を高くしても問題はなかったのではないだろうか?
アイビー
使用武器:〈大剣〉
スタイル:〈前衛〉
メインスキル:〈友情は不滅!〉消費(MP):42 レベル12より使用可能
自分に防御力(弱) 味方に防御力(中)のアップを付与
サブスキル:〈防御力アップ〉系 〈ヘイト上昇〉系
ステータス:
レベル:1(99)
HP :120(8760) MP:10(450)
力:15(400) 耐久:38(820)
知力:15(300) 精神:24(780)
速度:10(520) 運:38(40)
詳細:サクラの幼馴染であり友達である241部隊の初代部隊長。
緑の髪に白い瞳をしており、少し過度なスキンシップが目立つがそれ以外は基本的に元気な少女。
性能:戦闘面では大剣を振りヘイトを取るタンク役。ステータスも丈夫さと精神力が上がりやすく、全体的に防御力低い241部隊では重宝する。メインスキルである〈友情は不滅!〉を使用すると味方には防御力(中)を付与し、自分に防御力(弱)を付与する。序盤の防御力が低い間は彼女のスキルをどのタイミングで使用するかが円滑な攻略には重要である。
ヤルマ
使用武器:〈ライフル〉
スタイル:〈前後〉
メインスキル:〈繊細で優雅に〉消費(MP):50 レベル20より使用可能
次に自分が発生させた攻撃のダメージを三割上昇
サブスキル:〈火力アップ〉系
ステータス:
レベル:1(99)
HP :100(6400) MP:17(560)
力:12(280) 耐久:30(690)
知力:31(700) 精神:8(480)
速度:28(840) 運:64(64)
詳細:241部隊の初代部隊員。
紫色の長い癖っ髪が特徴的なお嬢様的な話し方をするトラブルメーカーな少女。
とにかく気になることは調べなければ気が済まないという性格であり、ヤルマイベントの2ではそんな彼女の性格のせいで大事件を起こしそうになってしまう。
それからは反省したのか、調べようとする前にしっかりと考えてから行動するようになり、ストーリー終盤ではそんな彼女のおかげで重要な情報を入手することが出来る。
戦闘:実弾のライフルは通常攻撃では単発狙撃で敵を貫くが、技を使用するとフルオートで乱射する(その際の彼女のセリフは驚くほど楽しそうに笑っている。もしかしてトリガーハッピー?)。
メインスキルの【繊細で優雅に】は次に行う自分の攻撃で発生するダメージを三割上昇させるというものなのだが、序盤の彼女の持つ技はフルオートのみのため序盤の相性は悪い。
物理系への耐性は高いが術系への耐性が低く、そこらを理解して運用しなければあまり活躍することのできない難しいキャラになっている。
フリージア(まだ本編には出てきていない)
使用武器:〈鎌〉
スタイル:〈前衛〉
メインスキル:〈???〉
サブスキル:〈ステータス上昇〉系
ステータス:
レベル:5(99)
HP :120(6400) MP:34(560)
力:42(280) 耐久:30(690)
知力:31(700) 精神:8(480)
速度:28(840) 運:64(64)
詳細:赤い髪をした寡黙な少女。
自らのことをあまり語りがらないのは過去のトラウマからであり、それが解消されてからは主人公のサクラにべったりになる。
初代241部隊に最後に所属した人であり、新入生の中では珍しい実戦経験者である。
戦闘:花の巫女でも珍しい鎌使い。使用者の少ない鎌だが、その特殊能力として一定確率での即死能力を持っており、雑魚戦では優秀な部類だが力と知力の両方で火力が上昇するため上昇率自体は低い。
メインスキルは彼女自体が使用したがらないため、ストーリーの序盤は使用することが出来ない。
二年生
スミレ
使用武器:〈光学銃〉
スタイル:〈後衛〉
メインスキル:〈小さな幸せ〉消費(MP):50 最初から使用可能
次の攻撃を必ず命中&クリティカルにする
サブスキル:〈火力アップ〉系
ステータス:
レベル:20(99)
HP :1200(7400) MP:76(650)
力:54(340) 耐久:42(420)
知力:87(600) 精神:84(550)
速度:130(910) 運:60(60)
詳細:先輩部隊の一人、所属は54部隊の黒い髪が特徴な少女。
楽しい今を大事にするという刹那主義者であり、好感度が高くにあるにつれ「訓練も大事だけどボクと遊びに行かないかい?」と言いながら主人公であるサクラを誘いに来る。勘違いされがちだが、彼女は騒がしい場所が好きというわけではなく、楽しめるのであれば静かな場所も好きである。(スミレイベントの3を参照)
戦闘:エネルギー管理の難しい狙撃用の光学銃を使用しており、その腕は学園内でも上位に位置している。
メインスキルは〈小さな幸せ〉は次の攻撃を必ずクリティカルにする能力を持っている。
装備できるスキルが自己強化用のバフが中心ということもあり、バフをかけまくって一発ぶち込むという若干脳筋気味な性能をしている。
追加キャラ
ミナミ
使用武器:制限なし
スタイル:〈前後〉
オリジナルスキル:〈我、救いに足掻くものに力を与えたまえ〉消費(■■■■):0~100 最初から使用可能
何かを得る。何かを掴む。それが何を意味するかは未だ本人にも理解できない。
〈
不明
サブスキル:制限なし
ステータス:
レベル:40(99)
HP :2580(3000) MP:200(250)
力:380 (400) 耐久:250 (300)
知力:230(300) 精神:190(230)
速度:300(310) 運:50(50)
詳細:DLC〈オトギリソウ〉の購入後に登場する追加キャラ。
白い髪をしたオレンジっぽい黄色い瞳の少女。
数個の武器を使用する珍しい戦い方をし、サクラたち174代目新入生の戦闘部門で最優秀者として入学した。
あまり話すことはないが、空を見ていたり気になるものをジッと見つめるとか少し子供っぽいところがある。
性能:序盤から高いレベルを誇るバランス型キャラで、加入時ステータスは驚異のレベル40、ステータスもすべてが高くバランスの良い構成となっている。
高難易度での序盤の救済用キャラ的位置づけのこのキャラだが、メインスキルの説明欄に明確な効果の載っていない謎スキルであり、これにより実質メインスキルは意味をなしていないことになる。
その代わり、このキャラにも特有の特殊性能があり、役割関係なくスキルを装備することが出来るという技能を所持している。これにより味方にバフをまいたり回復したり、自分で殴りに行ったりと色々できる。
しかし、彼女自身がとある理由により、レベルが上がらない。それを解消してレベルを上げても、そもそもステータスが一部を除いて加入時から碌に
オトギリソウ
使用武器:■■
詳細:DLC〈オトギリソウ〉を購入すると登場するようになる黄色い髪をした少女。
ミナミと似た見た目をしており、その差は髪の毛の色のみである。その関係性は不明、しかし見た目も相まって関係が全くないとは言い切れない。
戦闘:メインスキルは〈■の呪い〉。対象■永遠と■る■い。■■が■く限りそれ■治ることはな■、■方が■を忘れることは■い。...現在設定中
あくまでゲームとしての詳細です。
この小説としての詳細は割と変わってしまうので、軸として考えてもらえればありがたいと思います。
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本編
入隊式(出ない)
桜が私たち新入生を祝福するように、校門を彩るように舞い続ける。
多くの学生が新たな生活に胸を躍らせてこの校門を通って行った。そんな光景を木の上から眺めている私は鼻で笑いながら空を見上げる。
そんな当たり前のことに違和感を覚えるのはきっと自分だけなのだろう。
筒状に形成された私たちの住むこの世界は、記憶に懐かしい地球の環境とは似てはいるが大きく異なっている。それを象徴するのが、この空にある地面だ。どこぞの機動戦士よろしくなこの環境を形成するためにいったいどれほどの時間をかけたのか。詳しい設定があるらしいが私にとってはどうでもいいことだ。
この世界で最初に目覚めたときから随分と時間が経過した。
所持金もなく情報も、所属もない私が糸にも縋るような苦肉の策で選んだこの道が、この道こそが唯一の希望であり絶望の始まりである学園だったのだから酷い話だろう。
そして得た情報は【アーティフィシャルフラワーガーデン】と呼ばれていたエロゲの世界であること。
内容は百合モノ。一般学生である主人公、サクラと呼ばれる少女が戦いながらも部隊員たちと仲良くなりなんやかんやで世界を救う。そんな話だったこの作品は有名でも名作と言えるほどの作品でもなかったがそれでも固有のファンの居る作品だった_____最後までは。
この作品の終点は敗北だ。
全力で守ろうとした主人公も、ヒロインたちも、その他の仲間たちも最後は全員敗北するのだ。
否、もとから戦いにはなっていなかったといっても過言ではない。
この作品で登場する敵性生命体、【黒渦】と呼ばれる存在は彼女たちが想定していたよりも大きく、強力すぎた。それは最新の兵器をもってしても、最強の部隊をもってしても意味をなさずすべてを飲み込んでしまう。終盤の彼女たちにできたのは少しでも長く生き残るために誰かが囮になり、仲間を逃がすこと以外は出来なかった。最終的にはもっとも好感度の高かったヒロインと二人で【黒渦】に飲み込まれてエンドを迎える。
唯一のハッピーエンドさえ、全員で戦闘を放棄し逃げ続けるというもの。だが、それも最終的には全滅してしまう。戦わないということは抵抗することも出来ないのだから彼女たちは何もできずに最後は敗北する。
こんな世界になぜ私はいるのだろうか。
性別まで変えられ、名前も、家族もすべて失った私にこの世界で何をしろというのか。
時計は十時を回っている。
主人公であるサクラたちは既に室内運動場__体育館的な施設で入隊式を受けているのだろう。
同じ新入生である私も本来であれば同じように入隊式に出る必要があるが、どうも行く気にはなれなかった。
内容を知っているから、入隊式自体に大した意味がないから、理由を挙げるならいくらでも挙げることが出来るが、今は木の上から感じることのできる光が暖かいから以上の理由は浮かばない。
太陽の光ではない偽りの日光はそれでも私たちに朝をくれるのだから、わざわざ日を遮る室内に行くのは勿体ないだろう。
「ふぁぁ...」
あくびが漏れる。
この作品、序盤こそ平和なものだ。
現れる【黒渦】も弱い個体が多く、仮に主人公たちがやられそうになったとしても先輩の部隊が助けに来る。逆に全滅する方が難しいなんていわれるレベルの難易度だと掲示板でも言われていた。
たとえ私が主人公たちに関わらなくても問題はない。関わってしまった方が状況が変わり対応しづらくなってしまうだろう。
そう考えれば私が入隊式に参加しないのも立派な理由になるかもしれない。
そんな言い訳を考えて笑う。
もしこの考えを何かしらの形で発表しようものなら私が送られるのは戦場から研究所に変わってしまうだろう。それが未来を知る異世界人か、それとも未来を語る狂人かはわからないが。
「時間、か」
気が付けば随分と時間が経過していたらしい、遠くからチャイムが聞こえ木から飛び降りる。
転生の特典か強化された身体そこらの人間に負けることはない圧倒的な能力を保持していると自負している。それは初期の主人公たちを凌駕している物であり、戦い方によっては中盤でも戦える能力値であり、私が持つ唯一の特典だ。能力値的な成長の見込みがないのがいささか問題ではあるが、いささか程度の問題でしかない。
序盤の【黒渦】たちは弱い。それは間違いない事実だ。
だがそれは序盤のみ。中盤からはその難易度は大幅に上昇する。ゲーム時代では装備を整えてないとボスの攻撃一発で死ぬなんてざらにあった。その際にサブヒロインが一人犠牲になるのが確定しているのだがソレはまた後の話でいいだろう。
しかし敵が強化されると同時に主人公組も強化される。
それは装備だったり戦略だったり、内容は多岐にわたるが中盤になれば終盤までは私が戦闘をしなくても問題はない。
とりあえず今やるべきことはステータスの上昇は諦めて自分自身が強くなることだ。
主人公たちと接するよりも裏で暗躍している方が数倍動きやすい。幸いこの作品で所属している部隊には裏があるなんてこともないため素直に訓練をし続けるで十分だ。誰かに目を付けられて動きづらくなるなんてことも起こらない。
「確か、集合場所は教室だっけ」
おぼろげな記憶を引っ張り出す。
新入生の約40人ほどが集まる新入生の教室は六階建ての白が特徴的な校舎の一番下の階に位置していたはずだ。
私たちの集合場所はその教室であり、今後私たちが行動する拠点のような場所だ。ゲームではそこで装備の変更や作戦の説明などが受けられた。装備の変更には部隊長と呼ばれるクラス委員長みたいな存在の許可が必要だが...単独行動が中心になるであろう自分にはあまり縁のない場所かもしれない。
だが出席だけはしなければならないだろう。
その考えは新入生としての最低限の行動であり、私の一番のミスだった。
....
大学の講義室のような構造をしている教室。
出来てからの長い年月を思わせる重々しい内装の席を埋める様に初々しい部隊員が座っており、なんとなくその一番後ろに座る。
周囲を見渡せばその中に見覚えのある姿もある。それは主人公だったり、その相棒枠だったり、チョロインだったり、きっと未来を知らないなら喜んでいたであろう光景は、未来を知っているからこそ喜べなかった。
私は知っているのだ。
彼女たちの願いを、その最期を。
それが画面の向こう側の出来事だったら無視して見て見ぬ振りが出来たかもしれない。だが目の前で起こりうる惨劇に目を背けるなんてできるわけがない。
「だ、大丈夫?」
「サクラ...?」
可愛らしい声、最も聞いたことのある声が横から聞こえて、反射的に声が漏れてしまった。
「えっ、わたしの名前何で知ってるの?」
なんで私の横にいるのかと、そう聞きたくなるその少女の名はサクラ。
名は体を表すを体現したような淡いピンク色の髪をした彼女が驚いた表情をしたときには手遅れだった。
反射的に漏れた言葉は小さいながらもしっかりと少女の耳に届いており、内心「しまった」と思いつつも何とかこの場から脱する方法を模索する。
「ねぇなんでわたしの名前知ってるの!?もしかして、やっぱりわたしたちどこかで会ったことあったりするのかな?」
「...」
驚いた表情はすぐになくなり、興味マシマシでこちらに話しかけてきているその姿は淡いピンクという髪色からは想像できない積極的な性格。
「わたしサクラ!あなたは?」
知ってるよ。そう言いたくなるが聞こえないふりをして無視をする。
出来れば関わりたくはなかった。
彼女はまっすぐで、だからこそ主人公なのだ。
私のような異物が混入して変化してしまってはいけない。
「むぅー、無視するのはいけないと思うんだけどー」
頬を膨らませて不満そうにこちらを見てくるその姿は可愛らしいものだろう。
それが私に向けられたものでなければ写真でも撮って保存していたかもしれない。
名前くらいならいいのでは?
そんなことを考えてしまう思考を排除して無視を続ける。
そう、この先にあるのは主人公であるサクラとその親友たち__初代241部隊の結成イベントだ。
4人で構成された最初の部隊は序盤のみの登場だったが人気は高い。それは構成のバランスの良さだったり、純粋に人気だったりと理由はいろいろだがそのイベントを避ける様に逃げれば問題なく移動できるだろう。
「あ、教官が来たみたいだよ」
なぜそこまでして私に話しかけるのか。
無視されても諦めずに話しかけてくるサクラの姿はまるで遊んでほしそうな小動物のようだ。
正直今すぐにでも構いたいし、話したいが、ここは鋼の意思で我慢するしかない。
「さて、全員来ているみたいだな」
なぜだろうか?
話し始めた教官はなぜかこちらを睨みながら話を進める。
話の内容は知っている。
この学校の成り立ち、その役割。
【黒渦】を狩る者たちを育成する学校であり、女性は女性、男性は男性と別れている校舎は間違えを起こさせないために別れている。
方針は40人それぞれが4から6人のチームを組み【黒渦】の討伐を行うというのが基本方針。そしてその他の割とどうでもいい校舎内の設備の情報などは正直覚えるだけ無駄だ。
「ふぁぁ...」
隠す気のない大きなあくびが出る。
知っている情報など聞く必要はないのだから少しくらい眠くなるのも仕方ないことだと、そう言いたい。
「ちょ、ちょっとこのタイミングであくびはまずいよ」
驚いた表情半分、不安そうな表情半分な顔でこちらを見てくるその姿もかわいらしいが別段問題はないはずだ。
私が今座っているのは一番後ろ。いかに教官がこちらに睨みを利かせていてもこの遠さでは見えないだろう。
「ミナミ特例兵」
教室に教官の声が響く。
名を呼ぶ声だ。それも私の名前を。
「...なんです?」
隠す気のない睨みを聞かせた瞳を教卓に立つ教官に向ける。
だが流石は教官というべきか、返すようにこちらを睨みつける。
「あなた、入隊式に出ていなかったでしょう?なぜですか」
「出る理由がありませんでした」
吐き捨てる様に答えて席を立ち上がれば、驚いた表情をした少女たちが私に視線を向ける。
それはサクラも同じようで、心配そうな表情をしながらも驚きを隠せていないようで目を大きく見開いている。
「本日よりあなたもこの部隊の所属なのよ。それだけで入隊式に出る理由にはなりうるわ」
「...誰が好き好んで死にに行くかよ」
「なにか?」
「いいえ、別に何も」
教官から目をそらして窓から見える空を見る。
相変わらず澄んだ青い空は、うっすらと地面が見えている。
雲一つないというより雲を作る必要がないこの世界は、やはり私が生きていた世界とは大きく異なっているのだと、そう理解するには十分すぎた。
「それで、入隊式に行かなかったからって何か問題があるんですか」
「問題だらけよ。あなたたちのこれからの行動や部屋割りの話もあったんだから」
横から「そんな説明あったの!?」なんて驚いている声が聞こえるて、チラリと横を見れば声の主であるサクラがさっきよりも驚いた表情になっていた。
キミは入隊式に出てたんじゃないのかね。なんて言ってしまいたくなるが、我慢して視線を教官に戻せばやはりその視線は私を向いている。
正直そんな話をしていたのかと私も驚いている。
「なら、今後は参加します」
諦めの言葉を吐き捨てる。
教官に向けての話し方とは思えないこの話し方は私が他の人と関わる気がないという意思表示に近いものだが、それは教官が相手だとしても変えるつもりはない。
一度強めに睨んだ後、教官は私から視線を外した。
いったんこの話は終わりでいいのだろうか。
安堵の息を吐きながら椅子に座れば、教官からの視線との交代と言わんばかりに横からの視線が刺さる。
言わずもがな、視線の正体は横に座るサクラだ。
何を気に入ったのか私と関わろうとしてくる少女は無視されているというのに話しかけてくる。
いったい何を感じたのかは知らないがいい迷惑だ。私は好きでここにいるわけではないし、結果として生き残りたいからここに入隊をしただけの身。原作というわかりやすい枠の中で動いてほしい私にとって、彼女が私と関りを持つという状況は好ましくない。
「___で、その時助けてくれたのが___」
何かを話していたのだろう。
内容こそまったく聞いてはいないが楽しそうに話していたサクラの表情は脳裏にしっかりと刻んでいる。できればもう少しその話に付き合っていたいが、
時間が来る。
時計を見ればその時は迫っている。
終わりを告げるチャイムが鳴り、教官が教室から退出すれば私の時間が始まる。
時間は有限である。
誰が最初に言い出したかは知らないが、この言葉だけは真実だと私は言う。
終盤の【黒渦】の出現。ほぼ負けイベントのような狂気の始まりはストーリー進行ではなく一定の時間経過で発生するイベントだ。
だからこそ、そこに勝機がある。
負けイベだというのに最後の最後まで彼女たちが抗うことが出来たのは、主人公であるサクラを中心とした友好関係があったからだ。そしてその友好関係は彼女たちが勝手に築くだろう。
彼女たちに足りなかったのは戦力だ。
最強の部隊、私たちから二つ上の学年を中心に編成された6代目の第1部隊。彼女たちは結果的には負けてしまったが、終盤の【黒渦】相手に善戦していた数少ない存在だ。守るべき存在が多すぎてその戦力を分散させ敗北してしまっただけで、全員がまとまってさえいれば負けることはない。
つまり分散原因であった防衛戦力さえ足りるのであれば本当のハッピーエンドを目指すことが可能ではないかという可能性の話ではあったが、絶望の中で輝く希望としては十分に輝いているのだから下手にそれ以外の選択肢を目指すよりは確実な道だろう。
他の人が新たな友達を求めて会話を始める中で席を立ちあがる。
心配なのか、それとも別の要件があったのか。サクラの瞳に映る私の姿は多少揺れていた。
「...どこ行くの?」
飼い主に捨てられた犬のような悲しそうな雰囲気を出す少女の姿はさながら悲劇のヒロインとでも言えばいいのか。お前は主人公だろうと言ってやりたくなるが、グッとこらえて一歩出口に足を進める。
「訓練」
「えっ?」
「じゃ」
一言だけ答えて廊下に出る。
彼女の質問に答えた理由。それは無視し続けることに罪悪感を覚えたからという純粋な理由が4割、多少は繋がりを得ておきたいというのが6割の行動だった。
彼女はこの先多くのキャラクターたちと絆を紡ぐ。
それは今後のストーリーを大きく変化させるために必要な繋がりであり、そもそも彼女がいなければストーリーはバッドエンド一直線になるというレベルで重要な仕事だ。そして彼女を通じて様々なキャラが繋がり、最後はサクラを中心にした
「上手くいってくれればいいが」
この世界におけるイベントの情報を完全に網羅しているわけではないからこそ、ここから始める行動はほとんど神頼みに近いものだった。
ミナミ:転生した本作主人公。
ステータス的には中盤の原作キャラクラス。しかしとある理由でレベルアップがないためステータスの上昇は他の手段を使用しないといけない。
サクラ:原作主人公。主に受け
能力は原作キャラの中でも決して強い方ではないが、専用スキルが便利。ゲーム内では強制的にTPに入れていないといけない。
【黒渦】:実はどう読むか決めていない。そのまま【くろうず】でもいいのではないかと密に考えている。
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刹那主義者 そして自主訓練
廊下の端で思い思いに話す同じ制服姿の生徒を横目に足を進める。
彼女たち視線が私に刺さる。いや、私というより、私の腕についている【赤いリボン】にだろう。
新入生であり、訓練生であることを表す赤いリボンを付けた生徒。それを先輩たちが奇妙そうな目で見ているのは、向かっている場所が訓練場だからだ。新入生が初日に来るような場所ではないのだから無理もない。
この施設には大きく分けて三つの設備が整っている。
一つは校舎。先ほどまでいた真っ白な校舎はこの学園内で最も歴史の浅い建造物であり、私たち部隊員が中心に動くことになる拠点である。その役目は先述したとおりだが、部隊運用のために必要な設備の揃った基地のような役割だ。私たちの知識の補完や主な指揮系統はここに集っており、ゲームでは武器や装備を扱う売店もここに存在した。
もう一つは学寮。私たちが休むことのできる唯一の場所であり、主に二人一組の部屋を割り当てられる。ゲーム内では主人公が対象を部屋に呼んで仲を深めるイベントや、ちょっと言えない素晴らしいイベントなんてものもあった。一部特殊な理由で専用の部屋を割り当てられることもあり、そういったキャラクターは決まって面倒くさい性格をしているなんてもとの世界の掲示板では言われていた記憶がある。かく言う私も専用の部屋を割り当てられている身ではあるが、少なくとも面倒な性格をしているとは思えないので所詮は掲示板の噂程度の話だったのだろう。
そして最後の一つ。私が今向かっている先にある設備は訓練場。入隊式の行われた室内運動場と同じ構造の建物であるこの建物は他の建造物とは大きく異なる役目を持っている。
それは疑似的に敵を再現した機械人形の有無。
【黒渦】の動きを真似ることのできる訓練用の機械人形である【くろまる】君が数機配備されているのは現在この学園のみだろう。少なくともゲーム内では他の場所にも存在するなんて言う話も上がっていなかったし、そもそも【黒渦】に対抗できる存在である私たち以外が扱ったとしても資材の無駄でしかない。大型のトラクター程度のサイズゆえに対人での使用程度はできるだろうが、そもそも人が争っている場合でもないためその用途で使う人間はいないだろう。
「ちょっとキミ」
後ろから話しかけられ足を止めた。
その姿を見て最初に目に入ったのは漆黒の髪。光を吸収してしまいそうなほど黒い髪は、まったく整えられていないのかぼさぼさで乱雑に伸びてしまっている。そんな髪を揺らしながらこちらを見てくる少女を、特徴的故にすぐに思い出すことが出来た。
「先輩か」
「そうだね、ボクはキミからすれば先輩にあたるだろう」
何の用かと、そう聞きたくなる口を閉じて目の前にいる少女を見る。
正直、あまり関わりたい人物ではないと舌打ちしたくなる。
【青いリボン】を付けたこの人物は148部隊に所属している先輩の一人___スミレと呼ばれる人物を私はどうも好きにはなれなかった。楽しい思い出を大事にする思想、刹那主義者と呼ばれる彼女は何事もなければ共に楽しい思い出を作るのもありだったのかもしれないが、今はその彼女が大きな障害になる。今を楽しむその思考は未来のために今を犠牲にする私の思想とは真逆を行くもの。私たちが相いれない存在なのは関わる前から分かることであり、だからこそ私は関わらないようにしなければならなかった。
「用がないなら行く」
だが、運命のいたずらか出会ってしまった。少しでもかかわりを減らそうと、そう言って身体を反転させて進もうとして腕を掴まれる。
「なに」
少し、キレそうになる心を抑えて後ろを見れば、スミレが私の腕をつかんで移動を阻害しているのが見えた。
「いやなに、新入生がこんなに早く訓練場に行くのは珍しいと思ってね。少し、ボクと話をしていかないかい?」
「断る」
そう言ってウィンクをする彼女の姿はとても絵になるものだ。ファンからすれば黄色い悲鳴でもあげるであろうその姿は、私にとっては邪魔でしかない。しかし即座に断るとは思っていなかったようで、唖然としたのち信じられないような表情でこちらを見てくる。その姿はきっと本編でも珍しい表情だっただろうが、すまない。私の推しはサクラだけだ。
忙しい表情筋は最後に真剣な顔で止まり、私に一言疑問を投げかける。
「キミは死にたいのかい?」
と。一瞬、私は彼女が何を言ったのかと脳が理解を拒んだ。
私は死にたくない。それは生物として当然の思考だと思う。そして私は死にたくないから、今を足掻いている。そんな人間に死にたいのかと聞く彼女の思考が、まったくもって理解できなかった。
「キミがなぜ訓練場に行くのかは知らないけど、その先はまだキミのような子が行く場所じゃないんだ。今を、まだ楽しんでいてほしい」
そう言う彼女の瞳は何処か濁っている。
それは精神を疲労したからか、それとも真実を見た代償か。
だが、だからこそ、私は先に進まなければならないのだと思う。そんな状況でも人の心配をすることのできる人をこれ以上不幸にしないために。
人は極限状態に陥ると他のものを犠牲にしてでも生き残ろうとする。それは絶対ではないが、多くの人間がその行動を起こすのは間違いないだろう。私だって、そうはならないと胸を張って言えるかと聞かれれば答えられない。きっと自分だけでも生き残ろうとしてしまうだろうから。
義務感のような、強迫観念のような感情であることは理解している。しかし私はそれを悪いことだとは思わない。異物一つで世界を救う、等価交換とはかけ離れた計算式が成り立つのであればそれは実践すべき可能性の一つなのだから。死にたくないという行動理念自体は変わらないが、それでも覚悟はすべきなのだと思う。
「楽しむだけじゃ世界は救えない」
ただ一言そう言って、優しい彼女に背を向けた。
....
スミレから逃げる様に足を進めて十数分。
体育館のような建物には似合わない重々しい見た目の扉の前に着いた。目的地である訓練場で間違いはないかと耳を澄ませれば、中から戦闘音が聞こえる。それはつまり、間違いなく目的地である訓練場に無事に到着したということであり、私よりも先に誰かが訓練を行っているということでもあった。
そもそも私が訓練場に向かう理由は一つしかない。
最強の部隊___6代目の第1部隊との接触こそがその目標だ。
作中最強の部隊と名高い部隊は、他の部隊の追従を許さない圧倒的な戦力を保持している。
それは人数によるものではない。隊員それぞれが強く、隊員それぞれが常に考え、隊員それぞれが最善の行動をする。全員が第一線で活躍できるすべてを兼ね備えているからこそ、彼女たちは第1部隊であり不動の最強なのだ。
しかし彼女たちだけでは戦力は足りない。せめて今の二倍はいなければ守りきることは不可能である。それは私の想定している敵の数が正しければの話だが、おそらく間違ってはいないだろう。だからこそ私は行動する。戦力を少しでも増やすために、本当のハッピーエンドを目指すために、足りない戦力を少しでも増やす。そのためにまずは私が強くならなくてはならない。レベルではなく、私自身が最強と肩を並べて戦える存在に成りあがらなくてはならない。
ドアに手を当て、そして押す。
重々しい見た目とは裏腹に少しの力で開くドアは、小さな音を立てて動きを止めた。
「___いた」
三人で構成された部隊。部隊の制限として四人以上と書かれているというのに三人で構成された部隊を、私は一つしか知らない。だから運勝負に勝ったと、そう確信して頬が無意識に上がり、そして、この学園に四人しかいなかった特徴的な【白いリボン】が確信になる。
他の人とは違う特注の装備を纏った三人はくろまる君を用いた訓練を行っている。
その動きは今の私でも完全に目視することは出来ず、大まかには見ることは出来るがフレームレートの落ちたゲームのみたいに角ばった映像が何となく理解をさせてくれるだけ。これがステータスの差だと丁寧にわからせてくる光景に、まだ私が目指す上は遠いのだと改めて理解する。
彼女たち6代目第1部隊は、その名前の通り第1部隊の
その力は歴代の第1部隊と遜色ないと評価されている。と言っても資料でしか確認できない歴代第1部隊と、実際に見ることのできる今代の第1部隊が本当に歴代と遜色ないのかは不明だが。ゲーム内でも歴代の第1部隊は最初のプロローグに少し出た程度で、表に出たことは一度もなかったのだから元プレイヤーとしても彼女たちがそれほど強いかの明確なランク付けは出来ない。
だが、間違いなく彼女たちは現存する部隊内では最強だ。たとえ私がいかに努力をしても、すべての内容で彼女たちを超えることは出来ないだろう。
「...」
私が彼女たちに話しかけることはない。ただ訓練を行っている第1部隊を遠くから眺めているだけ。
もとから話しかけるために探していたわけではなかった。その動きを知るため、その動きを見るために私は第1部隊を探していた。
話しかけるという行為は、単独での行動をするためには下手に友好関係を広げるよりも一人でいる方が楽、私のこれからの目的からすればリスキーな行動だ。無論友好関係を持つことの利点も存在する。だが、それは今必要なものではない。世界の流れを変えるというのはそれだけで未来を変えてしまう行為なのだから慎重に検討すべきだ。
だから私は第1部隊に話しかけることはない。遠くでその戦闘を見て、学ぶ。そしてそれを今後の私の戦闘に活かす。話しかけて教えてもらうだけがすべてではない。
目を凝らし、第1部隊の動きを見る。
彼女たちの戦闘スタイルはその圧倒的殲滅力で端から端まで掃除と言わんばかりの速度で敵を倒していくもの。裏に配備されているであろうくろまる君も総動員しているはずなのに片っ端から撃破しているのだからその能力は恐るべきものだ。最もそれを利用する頭がなければ囲まれてやられるだけだから、脳筋というわけでもなく思考と動きのバランスが重要である。細かな動きを見ることは出来ないが、そちらはそもそも参考にする気がないから問題はない。
「行こう」
自分を奮い立たせるように一言だけ呟いて、第1部隊から視線を外し武器庫に歩き出す。
訓練で使用される武器は、基本的に貸し出されている武器を使用することになっている。主にくろまる君を壊さないようにという何とも夢のない理由がなのだが、一応他にも訓練をしている人への負担を減らすために訓練用のダミー武器での訓練をするようにという理由もある。わざわざそのために剣の類は刃を潰し、槌の類は当たる部分を柔らかい素材にし、銃の実弾はゴム弾だったりビームはレーザーポインターを使用しているのだから資材に余裕がないというのも噂ではないらしい。
大量の武器をしまっている武器庫、その中から一本の刀を手に取る。
銘は【無斬】。斬れないからこんな名前をしているらしいこの刀は訓練用に配備されている武器の一本で、その分類は刀。ゲーム内で初期ステータスでは最も技量の高いキャラがようやく持てるレベルの要求ステータスの癖に武器の性能はそこまで高くないという色々悲しみを背負っている武器だ。だからゲームでも装備するキャラがいなかったが、それはここでも変わらないらしい。案の定武器庫の最奥に埃をかぶっていた姿で見つかった。
何度か振って感覚を確かめる。
武器を振ることが初めてというわけではないが、久々であることに間違いはなく身体が忘れていないか不安だった。だがそんな心配は不要だったらしい。無意識に刀を構える姿はそれなりに様になっており、振る感覚も空気を切り裂くように透き通っている。
これなら戦える、そう安堵して武器を降ろす。
私のステータスはバランス型だ。すべてのステータスがほぼ平均的に上がる成長をする特徴を有する私はすべての武器が使えるといっても過言ではない。しかしそれは同時に弱点でもある。特化出来ないということは同時に瞬間火力では特化型に後れを取ってしまう。戦術の幅が第1部隊並であっても、戦闘能力自体は最終的にはどのネームドキャラにも劣る。だからこそ
刀を鞘にしまいベルトで固定し、新たに別の武器を取る。ショットガンは左手に持ち、ダガーは足にセット。最後に大剣を背中に背負えばお試しフル装備の完成。それなりに重いがステータスのごり押しで無理やり動けば戦えないことはない。
一つの武器の扱いが劣るなら大量の武器を使用すればいい。単純な思考だがその分効果も高いはずだ。
一歩歩くたびにその重さを実感する。武器の重みは大剣以外はそんなに重くはないが、さすがに数が多くなれば重い。身体が悲鳴を上げることはないが、それでも負荷がかかっているとわかるほどに装備が重い。だがそれも強くなるため、生き残るため。手段を選んでいる暇は、もうそろそろ無くなってしまうから文句は言えない。
訓練場、その一角に立つ。
長い間訓練に使われているためそこら中に傷がついている訓練場は200メートルの正方形で10分割されており、それぞれにくろまる君が配備されている。その内の一機を起動し、ショットガンを左手で突き出し、刀を右手で牙突の構えを取る。
片方のだけなら上手く使えるかもしれないが、それを両方使うというのは非現実的かもしれない。しかしそれを試すのも訓練の醍醐味だろう。私たちがどんな戦い方ができるのか、それを知るためのチャンスが訓練なのだから。
ちなみにくろまる君にはいくつかの難易度設定がある。ゲームの様にレベル1とか2とか分かれており、確か最大でレベルは90あたりまであった。と言ってもその頃にはくろまる君を使うよりも普通に戦闘に出た方が経験値を貰えるため、くろまる君は倉庫番になってしまうが。
私が起動したのはレベル32モードのくろまる君。
私自体のレベルで言えば既に40ほどだが、訓練自体一人で行うためのものではない。そのため通常よりもレベルの低いモードで訓練をすることになる。あくまでくろまる君自体がチームでの訓練を目的としている存在だからだ。多少なり慣れ始めればもっと高いレベルで起動するのもありだろうが、それはもう少し後の話だろう。
大きく息を吸う。
目の前に待機しているくろまる君はこちらが動き出すのを待っている。私が一歩前に進めば戦闘が始まるだろう。
最後に戦ったのは大体1年ほど前なのだから戦闘自体久々なものだ。できれば戦わないで済む方向に、そんな方針で進んでしまったがゆえに、気が付けば戦うという選択肢が私の選べる唯一の選択肢になってしまった。
態勢を少し落とす。
一歩歩けば戦闘は開始される。私とくろまる君、互いに見合うこの状況は私が苦手とする状況であり、最も大事なタイミング。だから私は___
「____チッ」
大きく踏み出しショットガンを2発打ち込む。
だが巨体には意味はない。くろまる君が動きを止めることはなくこちらに突撃してくる様子を見て舌打ちをする。
そもそも現在戦っている【くろまる君】は中級の【黒渦】である【バッファロー】を再現したものだ。初級である小型の奴らは一般人でも銃さえあれば倒せなくもない能力であり、正直私たちが出なくても正規の軍人だけで対処が出来てしまう。それこそ自動制御のタレットでも対処できてしまうのだから訓練の必要性はあまりない。問題は中級以上の【黒渦】だ。奴らは一般的な銃での対処は不可能、大砲などが運よく弱点にあたったとしても多少怯む程度で決定打どころかダメージにもなっていない。上級でえあればそもそも一般人は近づくことさえできなくなる。私たちの武器でも対処は困難となり、最悪十人以上の先輩が戦って敗れたなんて戦闘結果さえも存在する。そしてその上位に君臨する
「くっ」
突撃してくるバッファローを避けて、ショットガンと刀を投げ捨てて大剣を両手で持つ。
刀に関しては一切使っていないが相手が悪い。バッファローという名は動物のアメリカバイソンに由来する。それは対峙した初期の部隊員が仮名としてバッファローと名付けたからだ。何故そんな名を付けたかと言われれば、強固な装甲と巨体から繰り出される突撃を見て脳内で直感が言ってきたと言っていたらしい。正直わけが分からん。
話を戻すが、バッファローの突撃を止める方法は少ない。
壁に激突させる方法や、疲れるまで回避し続ける方法とないわけではないが200メートルの長方形で構成された訓練場ではどちらも非現実的だ。部隊を組んでの行動であればヘイトを取っていない部隊員が攻撃をしてヘイトを取れば回避に専念するという戦法で戦うのが一般的だが、私一人の現状ではそれも不可能。別の答えが必要になるのは明白だ。
すれ違うようにバッファローに一撃を入れてみるが、その装甲に傷が入ることはない。逆に大剣が弾かれ腕が痛くなる始末、この方法でも倒せなくはないかもしれないが時間がかかるし何より腕が持たない。
回避ついでに投げ捨てたショットガンを回収する。2発しか弾を入れられないため既に弾は切れている。リロード用のゴム弾でも持ってくればよかったのだが見事に忘れていたのだからもう射撃することは出来ない。...なんで拾ったんだろう私。
もう一度、今度は拾うことがないようにもっと遠くに投げておく。具体的には私の使ってる訓練場の外、移動用の通路がある場所に投げておいた。
ここからどう戦うか。そう思考する。
突撃してくる巨体を避け続けるだけの闘牛のような戦いでは互いに疲労するだけ、戦闘が終わっても、もし次があるなら疲労した状況で次に向かわなければならなくなる。
「___〈強固な身体を〉」
一つ、
汎用スキル。そう呼ばれる装備は武器についているスロットを埋めるだけで誰でも使用できる便利な代物だ。しかし代わりにその分出力は低く、オリジナルであるスキルの所有者には遠く及ばない。私が使用したのは[単体の防御力アップ(弱)]のスキルだが、もし本来の使用者が使ったのであれば私以外の人にもその効果が適応される全体バフになっていたはずなのだから、その性能の低下率がよくわかるだろう。
大剣を地面に突き刺す。
強度の上がった身体が地面に突き刺した大剣の衝撃を受けても痛まないことから、スキルの効果がしっかりと適応されていると安堵する。
近づいてくるバッファロー、残り15メートル。
その姿を目視して態勢を低く、衝撃を受けても態勢を崩さないアメフトのような構えをする。
残り10メートル。
地面に足を突き刺して固定用のバンカーの代わりにする。
残り5メートル。
あとは奴を真正面から受け止めるだけ。
「___ッ」
声にならない声。
まるで巨大なハンマーに潰されているかのような衝撃が身体全体を襲う。痛みよりも先に脳が揺れて飛んでしまいそうになる意識を全力でつなぎ留めながら、地面に足を刺したはずなのに押されている再度身体に力を入れる。
だが意識が安定してしまえば次に来るのは身体を襲う数々の痛み。
自身に防御のバフをかけているにも関わらず身体の関節のすべてが悲鳴を上げる様に叫んでいる。現状に顔を歪め、そして新たなバフを用意する。
「〈鈍感な愚者よ〉」
身体に装着されたスキルが起動する。
その[効果はダメージの鈍足化]。ゲーム内では受けたダメージを次のターンに持ち越すという性能だったが、この世界では十秒後に痛みが来る。鎮痛剤のような効果かと期待して使ったときの私はひどく落胆したものだ。
しかし今はその効果を発揮するには十分な状況だ。十秒あれば、奴を倒せる。
「〈我、救いに足掻くものに力を授けたまえ〉」
最後に腕につけられたスキルが起動され、何かが上昇するのを感じる。
ソレの効果は微妙なものだ。火力を上げるわけでもない、防御力を上げるわけでもない、何か特殊な状態異常を与えるわけでもないスキル。ただ[何かを得る]だけの、私のオリジナル。
「ハアァァァァァァッッ!」
その瞬間、身体に残る力すべてを使い切ったような気がした。
全力で上に投げられたバッファローは、空に投げられて宙を舞い。そのままの勢いで地面に叩きつけられて動かなくなった。それと同時に訓練終了のブザーが鳴り響く。
勝った。
そう言っていいのかはわからないが、少なくとも私はバッファローを倒せたらしい。
倒れ込むように地面に座り込み、乱れた息を整える。
少し消耗をしすぎた。
そう言いたくなるほどに疲れている現状に、そんな状況にならないと勝てない自分に、少し苛立ちを覚えた。
スミレ:刹那主義者である原作での先輩キャラの一人。
先輩であるためか全体的にステは高く、レベルも最初から高い。原作では主人公たちが危機に陥った際に助けてくれる部隊の一人である。スキル構成は速攻型、火力は高いが消費が重い。
スキル(装備):武器や防具につけることのできる誰でも使える特殊効果。
その便利さゆえに付けない人はいないレベルだが、その効果のオリジナルとなったスキルよりは劣っている。
スキル(オリジナル):本人の素質により使用できる特殊な効果。
その強さは意志や性格によって変化すると言われており、どれも効果は一級品。全員のHPを全部回復するものもあれば、速度が上がり目視出来ないレベルで攻撃が可能になるスキルもある。しかしその分の代償がいる。...と言ってもそこまで重い代償ではない。
訓練場のレベルは、単独で戦う場合は自分のレベルの半分を目安にしてください(訓練場使用時の注意より
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入学式(サクラ視点)
「あ、行っちゃった」
話しかけても一切返事を返してくれなかった不思議な女の子。
先生からの話が終わったと思えば少女はすぐに「訓練」と一言いい残しどこかに行ってしまった。
「わたし、何かしちゃったのかな...?」
少し伸びた髪を触りながら、少し不安になった自分自身の行動を考える。
何かあの子の気に障る行動を起こしたのであれば謝った方がいいと、そう思うけど。
「まったくわからない...」
そもそも少女は何故か最初からわたしを無視していたのか。その理由にまったく心当たりはなく、考えても考えてもそれらしい答えが出てきてくれることはない。
「でもなんでだろう?どこかで会ったような気がするんだよなぁー」
白い髪をした少女。
あんなに特徴的なのだから一度見れば記憶に残っているはずなのに、どこかで見たことがある気がする程度にしか彼女を見た気がしなかった。
だけど、彼女もわたしに見覚えがあったのか話自体は無視していたがこちらを見ていた。だから話を終わらせることもなく話し続けていたのだけど、それを聞く前に何処かに行ってしまった。
「訓練」そう言って廊下に出たあの子は何処に向かったのだろうか?
これから【黒渦】と呼ばれる存在と戦うのがわたしたちの運命というのであれば、それはきっとあの子も同じ。だからはきっと、わたしたちは共に手を繋げるようになれるはず。それまでに、仲良くなれるといいな。そう思い、彼女がしていたように空を見上げる。いつも通りの空がそこにある。わたしたちの日常の象徴である青い空が、わたしたちを包むように広がっている。きっと彼女もこの空を守りたいんだ。
「よう!」
「うひゃぁっ!?」
後ろから聞こえる声と共に腰に手が巻き付けられて、お腹のあたりを愛でるようにソッと触れられたわたしの口からは情けない声が出てしまう。それだけでも恥ずかしいのに妙な声が聞こえたからか周囲の視線が一斉にこちらを向き、顔が赤くなっているのが実感できるほどに顔が熱くなっているのが分かる。
恥ずかしい気持ちに冷静さを取り戻す間もなく、そんなことをしてくるであろう知り合いの名前を言う。
「アイビーちゃんっ!いつもいきなりそういう事をするのはやめてって言ってるでしょ!?」
「ありゃ、バレちゃった?」
「もう...」
アイビー、わたしの幼馴染。その特徴的な緑色の短い髪と白い瞳をした少女は、わたしの記憶と同じように悪びれる様子もなく楽しそうな笑顔を見せていて、それにつられるようにわたしも笑う。
普通の学校の様にクラス分けされるわけではないこの学園でアイビーと再会するのは予定調和のようなものだと言える。互いにこの学園に入学するのだと別れる前から言っていたのだから再会しない方がおかしいのだけど、実際に再会すると安心する。やっぱり知り合いがいるかいないかで新しい場所での生活は大きく難易度を変えるから。
「____それで、サクラは部隊どうするのさ?」
「へ?」
少し話した後に出たアイビーの話に気の抜けた声が出る。
部隊、その言葉の意味は知っているけどこの学園においてこの言葉がどんな意味を持っているのかわたしは知らない。
「そんな話してたっけ...?」
「してたしてた。まったく、また寝てたんじゃないだろうな?」
「そ、そんなことはないけど」
「じゃあどんな話してたよ」
「うぐっ」
図星を疲れてまた変な声が漏れる。
「い、いやまったく聞いていない訳じゃなかったんだよ?でもあの子に話しかけてたら、気が付いたら先生の話が終わっていたっていうか...」
「言い訳をしない。ってかあの子ってミナミのことだろ?」
不思議そうに首を傾げながらアイビーちゃんは聞いてくる。
あの子、私の横にいた話を無視する女の子。そういえば確かにミナミ特例兵と呼ばれていた。
「アイビーちゃんはミナミちゃんのこと知ってたの?」
「んー?いや、知ってたというかそれなりに有名な子だぜ?」
「有名?」と返しながら記憶をたどってみるが、わたしの記憶にはミナミという名前はない。
有名というなら知っていてもおかしくないんだけど、なんでわたしは知らないんだろう?
「学力は並、だけど戦闘技能は新入生の中ではトップクラス。一部じゃ先輩方よりも強いなんていわれてるらしいからな彼女」
「にしたって先生に対してあの態度は驚いたけど」とメモ帳を取り出して確認しながらアイビーちゃんは話す。
昔からメモ帳に色々書いていたと思ったけどこういう時のためのメモ帳だったんだね...。
「まぁあいつのことはいいだろ。で?部隊はどうするんだ。サクラ」
「え、あ、うーん。部隊、だよね?」
「あぁ、これから【黒渦】と戦うためのチーム。これから一か月はその部隊固定で戦うことになるからしっかり考えないと駄目だぞ」
顔の前に人差し指を出して「一か月!」と改めて言うアイビーちゃん。特に悩む様子もなく話しているけどアイビーちゃんは、既に部隊を決めているのかな?
「ちなみにアタシはサクラと一緒の部隊に入るからな」
「えぇっ!?」
「なんだよ嫌なのか?」
「そういう訳じゃないけど...そういえば、アイビーちゃんは素質検査どうだったの?」
わたしには才能がない。
厳密には少し違うかもしれないけど、入学前の素質検査でのわたしの能力は支援を除いてすべてが最低値。後方支援の部隊に入るならまだしも、前線で戦うような能力はない。もしアイビーちゃんの素質が後衛向きだったら一緒に組めるかもしれないけど、多分そんなことはないから、きっとわたしはアイビーちゃんと一緒の部隊に入ることは出来ない。
「おうっ!耐久マシマシのバリバリ前衛だった」
「あはは...アイビーちゃんらしいね」
ドンと、その大きな胸を叩きながらそう答えるアイビーちゃんの表情に影はない。もしわたしみたいに後衛だったら、と一瞬でも考えてしまったけど、きっとアイビーちゃんの能力を欲しがっている部隊はいるはずだし、それならわたしと一緒の部隊よりも他の部隊に入った方が活躍できる。
「そういうサクラはどうだったんだよ?」
「うぅっ...コンナカンジデス」
一応持ち歩いていた検査報告書を見せれば、先ほどまで満点の笑顔だった表情が苦笑いに変わった。
一緒に組もうと言っていた人がびっくりするほど支援しか適性がないのだからそうもなる。わたし自身ここまで適性がないと笑うしかなかった。初めてこの結果を見たときはもう唖然として、そのあと結果を脳が理解してからは五分くらい笑ってしまうほどには予想外だったし。
「うっへー、これは酷いな」
「何も言い返せないのが悔しいです」
何の反論も出来そうにない検査結果は今のわたしの2番目の悩み事。
一番は間違いなくミナミちゃん、どうすれば仲良くなれるのかを現在絶賛考え中。強いらしいし、何でかわたしをすっごく見つめてきてたし仲良くなれないなんてことはない!...多分。
「でもごめんね、アイビーちゃん」
「...?なんだよ急に謝ったりして」
「だって、わたしの適性じゃ一緒の部隊に入るのは難しそうだし」
折角わたしと組むって言ってくれたのに、わたしのせいで組めない。心苦しいけどアイビーちゃんにはもっといい部隊があるはずだし。わたしもわたしで活躍できそうな部隊を見つけなきゃ。
「いや、別に普通にアタシ達で部隊結成するけど?」
「へ?」
突拍子のない言葉。
予想外すぎるアイビーちゃんの言葉は、それでも心の何処かでは言ってくれそうな気がしてたのか、脳はするりと理解した。
「い、いやわたしの適性見たよねっ!?支援だよ?支援?支援しかできないのに前衛のアイビーちゃんと同じ部隊は無理があるよねっ!?」
「でも襲われたときに守れるやつがいた方がいいからな」
「...それは、そうだけど」
「なんだぁ?アタシと一緒の部隊は嫌だってのかぁ?」
「おっさん臭いよその絡み方」とジト目で言ってみれば「そんなバナナ!?」と言って倒れ込むアイビーちゃん。正直そのネタも相当古いものだと思うんだけど、いったいどこからそういうネタを拾ってくるんだろう?前だって待ち合わせしてた時に「今北産業!」とか言いながら登場してたし、ネットに変な影響を受けてなければいいんだけど。
「でも本当にいいの?支援と前衛の組み合わせって前例は少ないと思うんだけど」
「何事も最初はお試しからだから」
「というか、そんな部隊編成になる部隊に入ってくれる人、いるのかな...?」
「...(プイ)」
「....アイビーちゃん?」
わたしから目をそらすように顔を横に向けるアイビーちゃん。ご丁寧にわざわざ口で効果音を言いながら顔を動かしてるあたり確信犯だ、これ。
「まさか、他の部隊員考えてなかったとかないよね...?」
「...ソ、ソンナワケナイジャナイカー」
「目を合わせようね?」
「ハイ、ゴメンナサイ」
少し虚ろな瞳でわたしに目を合わせないようにしながら謝るアイビーちゃんは、頭を下げたのちに少し考え込むようなポーズを取り始める。いったい何を考えているのかなと思いつつ、わたしは教室を一周ぐるりと見渡すことにした。
大学の講義室のような巨大な教室は、先生からの話が終わった今でも多くの生徒が残っている。それはこれからの部隊を決める話だったり、旧知の仲を改めて深める話だったり、わたしたちの様に他愛のない話をしている人が多い。...彼女は、ミナミちゃんはそのどれにも該当していない。ただ一人、誰とも話すことなく教室から出ていった彼女は多分、今も一人で何処かにいるのだと思う。
「ねぇ、アイビーちゃん」
「どしたよ?そんな何かいいことを思いついたかのような顔をして」
だから、一ついいことを考えついた。
「____ミナミちゃんをうちの部隊に入れられないかな?」
「なぁ、昔から思ってんだけどさ。サクラは冗談が下手だよな」
「冗談じゃないよっ!?」
わたしの言葉を冗談か何かかと思っているのか、呆れたような顔をしながら答えるアイビーちゃん。
わたしはそこまで冗談にしか聞こえないような提案をしたのだろうか?部隊を結成しなければしなければいけないのだから、ミナミちゃんも何処かの部隊に所属することになる。それはつまりわたしたちにもそのチャンスがあるということなのだから、そこまで夢物語というわけでもない筈なのに。
「あのなぁ、あいつはおそらく新入生内だと最強だぞ?それがアタシたちのバランスが悪い部隊に入ってくれると思うか?」
「...自分からバランスが悪いって言っちゃうんだね」
しかしその通りなのだろう。
ミナミちゃん、実際に戦いを見たわけではないけど情報通であるアイビーちゃんがそういうのであれば間違いなく彼女は新入生の中では最強なんだと思う。
でも___
『サクラ...?』
『訓練...じゃ』
そう言って出て言った彼女の表情は、やっぱりどこか引っかかる。
昔を懐かしむような、何か覚悟を決めたようなあの瞳はわたしの記憶に引っかかる。本当に、わたしたちは何処かで出会ったことがあるのではないかと、そう思ってしまうほどに。
「どうしたよ?」
「あ、うん。やっぱりミナミちゃんに」
「いまミナミさんと申しましたかっ!?」
わたしの言葉を遮るように大きな声が教室に響き渡った。
若干低い、しかし安定した鋭い声の主ははわたしたちの会話を正面から断ち切るように現れた。制服を改造したのかロングのスカートはまるでドレスのようで、その服の一部にはベルトが付いている服を身に着ける。なのにその髪型はお嬢様のようなロールは青色の髪をしていて、なのに不思議とその姿に似合っていて、表情は自信に満ち溢れている。アンバランスなのに完成された見た目をした少女は、その瞳をわたしたち二人に向けていた。
「お二方、いまミナミさんと申しましたね」
「え、あぁ話してたけど、アンタは?」
目を輝かせながらこちらにアイビーちゃんに顔を近づけていくお嬢様チックな少女は、きっと悪い子ではないんだと思う。嬉しそうに、楽しそうに笑顔でいるその姿は創作物によくいる悪役とは大きく異なったイメージを連想させる。
「紹介が遅れましたわ!わたくしはヤルマ!この部隊に入れてくださいませ!」
「そうか、アタシはアイビーだ。んでこっちが」
「あ、サクラです...へ?」
お嬢様...ヤルマさんの自己紹介の後に驚くべき言葉が入っていたような気がして、自分の耳を疑った。『この部隊に入らせてほしい』その言葉は今もっともほしい言葉であると同時にもっともありえない言葉なのだから無理もなかった。
アイビー:サクラの幼馴染であり初代241部隊の一人
能力は作中に書かれている通りの耐久高めの前衛。攻撃力は決して高くはないが、ヘイトを上昇させるスキルが多くヒーラーとの相性がいい。
ヤルマ:初代241部隊の一人
能力は前衛アタッカー。高い火力を活かした単発火力が優秀である。火力以外は並で自分へのバフもないため支援なしでの戦闘は少々弱め。
PS.えっと、何でこんなに伸びたのか不明なのですがいったい何があったのですか?あまりにも急に伸びたため驚きよりも恐怖の方が上に行ってしまって...でもお気に入りや評価は嬉しいです。できれば、感想とか頂ければこれからの方針も固まってやりやすくなると思います。
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小話休止(お茶濁し)
人に見られないで行動できる夜という時間帯は、あまり人と関わりたくないという私にとっての最大の自由時間である。
時計が両方12を指す時間からは人通りが少なくなる街中は、少数ながら深夜に仕事のある人もいるが、仕事を機械に頼る場所が多くなり通常よりは人目が少ない。いたとしても、制御している機械の責任者や夜勤の人間などの仕事を行っている人間がその大半を占めており、それ以外の人間はほとんどが外には出てこない。理由は単純で危険だからだ。
偽物の太陽が昇るこの世界は、別名【箱舟】と呼ばれている。筒のような形状で、住めなくなった【地球】を捨てて遠い安息の地を見つけるために暗い世界を進み続ける船。多くの人を乗せて動き出した【箱舟】は200年ほど前から稼働しているが、それでも人同士の格差は無くならなかった。
それはそうだろう。あの広い地球でも無くなることのなかった格差が、その意識が、この狭い大地になったからと急に消えるわけがない。
それどころかその意識は深く根強く無意識のうちに受け継がれてしまっているのだ。
現に今も【箱舟】の制作に関わった人間の一族は裕福な暮らしをしており、当時ギリギリで入ることのできた人間の末裔たちである人間は泥水を啜るように毎日を生きている。そんな差があるからか街の治安は決していい方ではなく、それこそ学園の制服を着ていようものなら喧嘩を売られるなりするほどに治安は悪い。
「...」
そんな中、私は一人で外に出ている。
無論制服は着ていない。黒いフードのついたパーカーは入学前から使用していた戦闘用の服だ。一般の服と見た目の変わらないはずのこの装備でも、周囲の視線が鋭く感じる。若い女性が一人で動いている。それだけでここまで狙われるのだから笑ってしまうだろう。エロゲ世界の裏にここまで酷い設定があるのだ。語られていないのか、原作とは異なる世界なのかはわからないが設定が多すぎて知れば知るほど嫌になる。
だが、私にとって彼らの存在は危険たり得ない。それはレベル的な意味であり、同時に思考の差でもある。彼らは弱者だ。何とかしようとする気もなく、ただ現状だけでことを進めようとしている。持っている力を伸ばそうとすれば軍隊に入るなどやりようがあるというのにそれを行わないのだから、無駄でしかなく、構う必要もない。
問題のある言い方かもしれないが、私からすれば彼らがどうなろうとどうでもいいのだ。
彼らの有無が生存する道に関係するなら助けることになるだろうが、そんな彼らを助けて利点になることが一切浮かばないのだから構うこと自体が時間の無駄でしかない。
意識を路地裏から目の前に戻す。
街灯や建物の光に照らされて、夜でも明るい街並みは現在進行形で未確認生命体に襲われている生物であるとは感じさせない文明の発達具合である。決して元の世界と比べて物資が潤沢ではないというのに電気も水も食料も不足自体はしていない。そういう設定の不自然さが、この世界が創作物の中なのだと再確認させてくれる。違和感を覚える私は異物なのだと、そう再確認させてくれるのだ。
「____日課になっちゃったな」
寮から一時間近く走り続ければ遠くに見えてくる巨大な壁。そそり立つこの世界の端はこの世界における外に通じる唯一の出入り口であり、地獄の始まりである扉。
レーダーで観測できない数の【黒渦】によって崩壊する予定の壁は現状では立ち入り禁止区域である。しかしこの時間帯はその警備は甘くなる。ゲームの設定曰く警備の入れ替わりらしい。自動制御のタレットと監視カメラ、そして少数の警備員の目を盗みつつ向かった先の壁が今日も通常通りに稼働していることを確認して安堵の息を吐いた。
「今日も大丈夫、か」
街の端、世界の端。大量の機械に繋がれた巨大な壁の外は視覚を潰すようにライトで照らされて存在をアピールしている。それは正常に動作しているという証拠であり、【黒渦】が入り込んでいないという意味でもある。
未来を知る私からすれば、この壁はいつ壊れてもおかしくはない。それはこの世界がゲームと全く同じ動きをする確信がないから故の不安から来る行動であり、最悪を回避するために入学してから毎日ここへ様子を見に来ている。それこそ〈日課〉と言えるほどには来ていた。
彼女たち原作キャラが寝ている間に侵略でもされようものなら、出撃前に数多くの人が犠牲になるのが目に見えているからこそ、唯一それを理解している私が動く以外の選択肢は存在しなかった。警備の甘い時間帯に侵略でもしてこようものならそれこそ地獄は加速する。たとえ最強がいたとしてもそれは避けられない事実になる。だから私がなるべく行動するしかないのだ。
気負いすぎ、そう言われてしまえば確かにそうかもしれない。すべてを一人でできるなんて考えは愚かな考えだ。人がなんでも一人でできるのであれば人である意味がない。人は単独で生存できるような強固な生物ではないのだ。様々なものと関わりようやく生きていけるのだから、今の私の考え自体は間違いそのものだろう。誰にも頼ることなく裏で動くことで状況を好転させる、そんなことをするにも私一人では力不足であることは火を見るよりも明らかであった。
時計を見る。
この世界ではその役目を譲ったアナログの腕時計が示す時間は一時少し前。壁の警備が戻りきる前に少し離れて、もとの強固な防衛力に戻るのを遠目で確認してから、家路へ足を進める。
誰にも見つからないように家路を急ぐ。
ステータスの暴力ともいえる人ならざる道での帰宅は、普通の人には不可能とされる道。建物の屋根などを乗り移って移動したりできるのだから、一般人である警備員の目を盗んで部屋に戻ることは簡単だった。忍者のように影に隠れつつ移動し、今の私の拠点となる自室に窓経由で入る。学園に入学してから何度も行ってきた道のりは、問題が発生することもなく一時間近くでの帰宅を可能としていた。
「...ハァ」
部屋に戻れば誰もいない部屋が私を迎える。
「ただいま」なんていう余裕もなく、汗のかいた服を脱ぎ棄てベッドに倒れ込めば、安物の硬いベッドが身体を追い出すように跳ねた。
「...」
本来二人部屋である私の部屋は、一人分空いている。しかしその一人分を埋めるものを私は持ってはいないのだから当たり前だ。本来ある筈の荷物は、この世界に来た瞬間にすべて失った。それでも何かを新しく得られたかもしれなかったけど、私はいつ死ぬのかわからないこの世界で何かを新しく持つ気にはなれずに今に至る。
ずっとそうだ。
何かを失うのが怖くて、手に入れられるはずのものがあるのにそれに手を伸ばせない。たとえ手を伸ばされても、離されるのが怖くてその手を掴めない。
「駄目」
暗い部屋は憂鬱な思考になってしまう。
この世界では見えることのない星空、それを見るのは昔から好きだった。暗い部屋の中で家族と見た星空は今でも覚えている。だから星を見る分には暗い部屋は好きだ。だけど、思考するという点では暗い部屋は嫌いだ。昔から先の見えない未来の様に暗い部屋で考えるのは先の暗い未来のみで、明るい未来なんて一切考えられなかったから。
でも、それ以上に暗闇にはいい思い出がないから暗い部屋は嫌いだ。
どこまでも続く暗闇、すべてを飲み込んでしまいそうな底のない闇はトラウマの様に脳裏にしみついている。それは俺が私になっても変わることはなかったから。
「...そういうところだけは、変わらないな」
他人事のように呟く言葉は、間違いなく私に対しての筈だ。
____________________
この世界に来てからの私の目覚めは速いもので、目覚まし時計が鳴るよりも前に太陽の光で目を覚ます。
元の世界と比べ、季節による日の出や日没の時間差が発生しないこの世界で最も正確な時計は太陽だろう。一定の時間で自動的に出現、消失する偽りの太陽は目覚まし代わりにはちょうど良く、気が付けば目覚まし時計よりもそちらを中心に生活するようになっていた。
「おはよ...あ」
目覚めた部屋、私が暮らすこの場所に私以外の人間がいないことを思い出して小さく声を漏らす。
二人用の部屋に一人しかいない。そんなさみしさを加速させるかの様にこの寮は外の音が聞こえない。防音がしっかりしているのだろう、私以外誰もいないのではないかと錯覚してしまいそうになる。実際そんなことはありえないが、それでもこの先のことを考えてしまうとぞっとする。一人一人徐々に消えていき、最終的には誰も残らないという本来の未来。最終的にはそれが真実になってしまうという恐怖が私を覆う。
それを何とかするために今まで努力してきた。しかし現状では現実的な手段が見つかっていない。だけど、ただ茫然と見ているだけが嫌だからここに入学をした。その恐怖を誤魔化すように、目をそらすために。
「...気分転換しよう」
マイナスな思考を無理やり中断するためにシャワー室に足を運ぶ。
鏡映る傷だらけの身体は、記憶から消えてしまった元の俺としての身体からは遠く離れた美しい見た目。だが、見慣れてしまった私の身体に今更見惚れるなんてこともない。
いつからだろうか?
最初のころは赤面していた自分の身体にも慣れてしまった。別に何の感情も懐かなくなってしまった私の身体は、本当は私の身体ではない。なのに、興奮の一つでも感じていいはずなのに今となっては何の感情も湧いてこないのだから悲しいものだ。
私本来の身体は既に何処にもなく、今の偽りの身体が私を無理やりこの世界に留まらせている。
この身体を制作した名前も思い出すことが出来なくなってしまった彼女の言葉は、思い出せないのに呪いとなった。呪いの杭は抜くことが出来ず、その杭に繋がれた私は逃げることが出来ない。だからこうして足掻いている。
逃げ場のないこの世界で、バッドエンドから逃げるために足掻き続けている。
「ハァ」
ため息を吐き濡れた身体をタオルで拭けば、事前に用意しておいた制服に袖を通す。
この服、学園の制服は同時に訓練服でもある。だが私たち新入生にとっては学校の制服というイメージの方が大きいだろう。訓練でも使用するが最初の方は訓練も軽いものしか行わないのだから、訓練服というイメージは付きづらい。しかし戦闘に耐えうる性能を有しているのも事実である。強度は鉄並みに高く、それでいて伸縮性も高い。元の世界には存在しないであろう素材を使用したこの服は数少ない異世界的なものだと言える。
実際の戦闘はそれぞれに調整された特殊装備を使用するため制服で戦うわけではないが、防御能力だけで言えばその性能はほぼ同じだ。追加で特殊効果や能力補助が付く以外に差はない。
そう言う意味ではここは異世界らしい技術力を持っていると言えるが、しかしそれでも【黒渦】には勝つことが出来ないのだから、敵がどれほど強力なのかがよくわかる。戦場において装備が絶対正義というわけではないのは理解しているが、それでも恐ろしい。
制服に着替えて一息つく。
座り込んだベッドはやはり安物で、身体を包み込むこともなく逆にかけた体重をそのまま返そうとバネが動くがそれはもう慣れてしまった。
そんなことを思いながら学校が開始するまで時間と現在の時間を見比べて、またため息をつく。
学校の開始時刻まではまだ時間がある。その暇な時間をどう潰そうか。そう思い、いつも通りに訓練でもしよう考えるが、残念なことにこの時間に訓練場は開いていない。
管理人が居なければ使用できないというルールのある訓練場。何故かこういうところだけは現実的なのだから困ってしまう。
「...一週間か」
壁にかけられた機械のカレンダーが今日の日時を示す。
入学式から一週間経過した今日は、本来であれば本格的な訓練の開始時期だ。それも部隊単位での訓練、今まで行ってきた知識面での訓練は今日より数を減らし、部隊での運用を中心とした戦術訓練が中心になっていく。
ゲーム内でも語られていたがこの時期にはほぼすべての新入生が部隊に所属している時期である入学一週間後は、私を除いて全員が部隊への所属が完了していた。
そう、私を除いた全員が部隊への所属を完了したのだ
なぜこんなことになってしまったのか。
初めのうちは主人公や他原作キャラに関わることのない部隊に所属することを考えていた。
しかし、初日で行った自主訓練は誰が広めたが次の日には噂になっていた。
入学初日でレベル32相当のくろまる君の撃破。
良くも悪くも注目の的になるには十分すぎる功績だ。そんな情報が広まってしまえば同じである筈の新入生が私を部隊に誘うというもの難しい話になってしまう。歴代の学生でも初日でもここまでの無理は行わなかったのだから当然だ。そういう意味では先輩方にも目を付けられてしまったと考えるべきだろう。
しかしそのせいで、主人公の部隊以外に入ろうとしていた私の計画はすべてが無駄になった。誰かに話しかけてもらいそこから部隊に所属しようという計画は一切叶うことなく。結果は主人公以外からの誘いはなし。それどころか他の人からは怖がられてしまったのか話しかけられることもなくなった。
人との交流は最低限と考えてはいた。しかしここまで酷いことになるとは考えていなかったためショックが大きいものだった。幸いその感情を表に出すことなく今に至るが、結果的にどの部隊にも参加することなく単独での行動が出来るようになったのは喜ぶべきだろうかと、内心複雑な気持ちである。
だが、一度そうなってしまえば方針は固められたも同然であった。
私一人での行動は、この瞬間から確定したのだ。生き残るという目的外に誰も巻き込むことなく目的を達成するという新しい方針が決定されただけで、向かうための道が変わっただけで目指すゴール自体は変わらないのだ。喜ぶことはあっても、迷うことはあっても、この現状は諦める理由になり得ない。
【黒渦】、その進行がある一線を越える前に目的を果たす。それ自体が決定打になることはないが、少なくとも行動しないよりはマシであることに間違いない。たとえその行動に代償が必要だとしても、私が払える代償であればなんだって払う。そんな思考を何年もし続けていれば、気が付けば【死】以外に怖いものなど無くなってしまった。
借り物の身体に一度死んだ魂という正気とは程遠い存在だから。そんな私は最も近い【死】以外を考える余裕がなかったともいえる。だから真正面から来るくろまる君を受け止めるなんて言う暴挙に出ることが出来るし、たとえ死にかけだとしてもそれが最も生き残れる方法であれば手段を選ぶことなく行動することが出来る。人であったころの思考回路がある筈なのに、人であった頃の感性からは遠く離れた存在に成ってしまったのだと自らを鼻で笑った。
「どうしてこんなことになっちゃったんだか」
ため息のように愚痴を吐く。
願っていたわけでもない転生は私にとって最悪であることに間違いはない。一度死んだのだから、もう一度死ぬなんて怖くはないなんて言える程狂っているわけでもない。狂っていないから今こうして抗っているわけだし、もし狂っていれば死ぬことを恐れないで入れたのかと思えば、こういうところだけ正気な私が嫌になる。
いっそ狂ってしまえば、そう思ったこともある。自暴自棄になって行動していたこともある。だけど狂気に堕ちることは出来なかった。
狂おうとすればするほど、正気が私の意思を抑えるように現れた。正気こそ狂気なのだと思うほどに、狂ってしまいそうな私は堕ちる寸前に正気に戻ってしまった。
だけど、それでこんなに悩むのだったらいっそのこと____
「____折れればよかったのに」
壁:外と内を繋ぐ唯一の扉であり、ストーリー終盤を示すあるイベントの開始地点。
箱舟の問題:三段構造的な格差があり、上層部と言われる彼ら、下層部と言われる彼ら、そして中層部と言われる私たちと変わらない生活を送っている一般人が存在する。割合が最も大きいのは中層部だが、次に下層部が多く、最も少ない上層部は【箱舟】の制作者だった者たち。彼らは一族で箱舟のメンテナンスなどを行っており、それは現在も変わっていない。...そういう意味では上層部が上層部たる所以はある筈だが、それを下層部の全員が理解して納得できるかは別の話である。
本音より
主に私のメンタル次第で作品を消す可能性があります。「というか消す?」そう考えてしまうほどにはなぜ評価を得たのか不明でしたから、私の実力ではないのがわかりきっている以上、正直書いていて苦しい部分が多いのです。
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小さなズレ
雨だ。それも大雨で、まるでバケツをひっくり返したかのような雨が空から降り注いでいる。
だから空はあいにくの空模様で、偽物の太陽さえ何処からも顔を出しては来ない。最近では珍しいほどに分厚い雲、その重厚な見た目の雲から降ってくる雨は想像以上に酷いものだ。
「雨だねー」
「訓練休みにならないかなー」
なんてクラスメイトの声を聞き流しながら空をじっと見つめ続ける。
偽りの太陽があるにもかかわらずその光を一切通すことのない厚い雲は、空にある上の街並みも隠している。そう考えると雨の降るような厚い雲の時だけは、私の知っている元の世界に限りなく近い見た目をしていると言ってもいいだろう。空に、空がある。空しかないこの風景は、私以外の人間が懐かしいと思うことはないだろうが。
自動化された【箱舟】の天気は相応の理由がない限り自動的に制御されている。天気予報という形で詳しい時間を知ることは出来るがそれだけだ。
そこまで制御できてしまうなら人は好き好んで雨を降らせないだろう、そういう思いで実装されても使用はされない天気制御装置を思うと少し可哀そうな気になってしまう。
「全員集まったようね」
コンクリートのような素材で作られた通路の向こうから、コツリコツリと足音を出して教官が現れた。
その身に白い軍服をまとう姿はまさに戦う人だろう。既に二十歳を超え前線から下がった身ではあるがそれをふまえても彼女は強い。おそらく、今の私でも勝つことは出来ないほどに。
空気が変わる。
先ほどまでの緩んだ空気が引き締まった空気、誰もが今から戦うという強い意志を感じさせるこの空気をこの一瞬で作り出すことが出来るのは教官の教官たる所以だろう。
新兵である私たち新入生は全員が戦闘に慣れているわけではない。その素質があるからここに来たという人間も多少なり存在するのだから当たり前だ。そんな彼女たちが初めての戦闘で逃げ出さないように、怖がらないようにと教官たちは先導する。そういう能力も必要になるのだから、私たちの教官がそういう能力を持っていたとしても不思議ではない。逆に好都合だ。
「本日より部隊単位での訓練を開始します」
「皆さん、それぞれの部隊で集まってください」と教官が言えば私以外に全員が動き出す。
それもそうだろう。私以外は全員部隊に所属しているのだから、私以外が動くのは当然だと言える。しかし、この場合の私はどうなるのだろうか。無論、単独での戦闘で訓練を終わらしてしまうのも悪くはない。今後のためを思えばそういう訓練だって行った方がいいだろう。一対多である戦闘はこれから嫌でも経験することになるのだから。
しかし、部隊での戦闘を経験しておいた方がいいというのも確かな話である。
中盤以降からは単独での戦闘は難しい。いや、無理だとはっきり言ってしまった方がいいだろう。おそらく中型にも苦労することになるであろう私が単独で戦闘をしたとしてもできることは時間稼ぎ程度、それも生存確率は著しく低い方法を取ってようやくそのレベルでしかない。戦うという選択肢自体が選べなくなる。
問題があるとすれば、既に私を誘ってくれるであろう部隊が一つを除いて存在しないことだろう。
241部隊___サクラたちの所属するその部隊以外が私を誘うというのは非現実的すぎる。それはこれまでの状況から簡単に察することが出来た。だから、苦肉の策だが今回ばかりは彼女たちの手を借りるしかない。
「ミナミさんミナミさん」
「...サクラか」
そんな思考を知ってのことか、救いの手だと言わんばかりに話しかけてきたサクラを少しまぶたを細めて見る。他の部隊員は周囲にはいない。おそらく別の場所で集合しているのだろうが、そんな中サクラはいつも通りと言わんばかりに私を誘いに来た。
「私は貴女の部隊には入らない、そう言ったはず」
「それは分かってる...でも、納得したわけじゃないよ」
少し大きくジェスチャーのような動きをしながらそんなことを言って、最後は私に指をさすような動きで止まる。
何度も繰り返される同じような内容の会話は、無視をするのが面倒になって多少の受け答えをするようになってしまった。それもそうだろう。こちらは無視をしているのにもかかわらず、それを気にしないと言わんばかりに話しかけてくるのだから可哀そうにもなってくる。そんなに私を誘いたがる理由があるのだろうか。入学式後に少し話した程度の人間にそこまで執着する理由は私には想像がつかない。
「絶対にミナミさんは私たちの部隊に入ってもらうから!」
「...はぁ」
また勧誘か、そう思いながら隠すことなくため息を吐く。
サクラの方はいつも通りの私の反応を見ながら「フンス」と胸を張ったような動きをしてどや顔をする。何故どや顔なのかという理由は分からないが、そんな表情も愛らしいので些細な問題だ。
「...それで、何か用があったんでしょ?」
「あ、そうだった」
サクラの可愛らしい顔が見れて笑顔になりそうな自分の表情筋を無理やり固定する。そんなことに意識を集中しながらサクラに問えば、本来の目的を思い出したのだろうか、真剣そうな表情になる。
「実は、今回の訓練で私たちの部隊に入ってくれないかな」
「部隊には入らないって言ってるはず」
「あ、いや違って...そう仮入隊!私たち一人足りなくって」
は?なんて声を出す前に、その違和感の正体に気づけたのは数少ない今回の幸運だったのだと思う。
サクラたちの部隊である241部隊に一人、部隊員が足りないという衝撃的な言葉は、間違いなくこの世界の異物によってできてしまったタイムパラドックスなのだろう。
本来であれば彼女たち241部隊は既に4人の部隊員を集めてその方針をまとめているはずだったのだから、目を丸くして驚いたとしてもそれは決して悪いことではない。逆に正しい反応の筈だ、未来が変わってしまっているのだからそれ相応の驚きは発生する。
「
「うん、実はまだ揃ってないんだ」
「わたしと、アイビーちゃんと、ヤルマさん。今はその三人かな」と言いながらこちらを見るサクラの視界から外れるように、私は表情を見せないように背を向けた。
焦り、そして恐怖。
この世界が明らかに知らない方向へと進んでしまっているという現実。いや、早すぎる変化への驚きというべきだろう。遅かれ早かれ原作というレールから外れてもらう予定だったが、それが早すぎるのだ。それも間違いなく悪い方向に変わっている。
原作通りに進んでいるという決めつけがまずかった。彼女たち以外の流れの確認はしていたが、まだ大丈夫だと思っていた彼女たちが既にレールから外れ始めていたとは考えていなかった。
そして、その原因となる何が悪かったのかと考えれば可能性はいくつか思いつく。
「もう一人、最後の部隊員はどうするつもり?」
「ミナミさんに入ってもらえればそれが一番いいんだけど」
「それは断ってるはず」
「だよねー」
彼女との、サクラとの関りが多くなってしまったのが最たるミスなのは明白だ。
今こうして目の前に立っているサクラが原作通りの流れからズレ始めているのは、入学式後に私と関わったという原作にないイベントが挟まってしまったから。そのズレは何処からか歪みを生んで、今こうして大きなズレを生んでしまった。
「私のことは諦めて、フリージアという少女ならきっと部隊の力になるから」
「フリー、ジア...ちゃん?」
不思議そうな表情をするサクラは、その頭の上に疑問符でも出していそうなほどに首を傾げている。
少し強引な方法だがこのズレを認識していて直すことが出来るのは私以外に存在しない。
もし他に転生者に類する存在がいるとすればその前提条件は無くなるが、少なくとも私がその手の人間を見たことは一度もない。チート転生者でもいればこの先が楽になるとどれほど思っただろうか。それでも現状ではないものねだり他ならない。それならば自分自身が出来る行動を一つ一つ行っていくしかない。
「そう、フリージア。同じクラスにいるはず」
「フリージアちゃんかぁ...わかった、今度探してみるよ」
了承するサクラに安堵の息を小さく吐く。
これでどれほど流れが戻ってくれるかはわからないが、何もしないよりはマシな結果が待っていると願いたい。
「でも、ミナミさんのことは諦めないからね!」
「思うだけならタダか」
「んなっ!?」
言い返しが来るとは思っていなかったのか驚いた表情で、少し大げさに反応するサクラ。
...そんな彼女を見て私も少しだけ笑みをこぼす。私は彼女の概要を知っているから、彼女の過去に何があって、どういう思いをして、何故ここにいるのかを知っているからこそ、私は彼女を好いている。そのサクラという人間の持つ人間性を好いている。そんな彼女とこうして話すことが出来るという非現実的な現状が、今の私にとっては唯一の幸せだ。
「あ...」
「なに?」
「いやー、ミナミさんもそうやって笑うんだなって」
私をなんだと思っているんだ。そう思いながらサクラから顔をそらす。
照れているわけではない。少し頬が熱い気がするが、きっとそれは笑うのを我慢しているからだ。
「___今回限り」
「えっ」
「私も、部隊での戦闘訓練はしておくべきだから、あくまで私のため」
「ほんと!?」
「やったぁ!」なんて喜びながら他の部隊員のところに走っていくサクラの足音を聞いて、いつものように空を見た。いつの間にか晴れていた青い空はその上空にもある街を見せながら偽りの太陽で私たちを照らしている。
「...暑くなりそう」
そう呟いて、少し遠くから走ってくる三人の姿を横目に見てからため息をついた。
_____________________________
少し移動して訓練場。
先ほどまでいたコンクリート製の通路から数分歩いた先にある屋外の訓練場は室内訓練場に近い場所にある。その特徴は森。森林を模して造られたこの場所は待ち伏せや突撃、様々な戦術を試すのに適している。一応その横に市街地を模した訓練場もあるが、そもそも市街地まで【黒渦】が来るようなことがあれば、そもそも私たちの役目である防衛は失敗という扱いになる。それゆえに私たちの主な訓練は森林であり、市街地での訓練はあまり行われない。
「さて、この森に【くろまる君】を放ったわ。本日の訓練はそのすべての【くろまる君】の撃破。文字通りすべてよ、一体でも逃せば一般人に危害が及ぶと考えなさい」
作戦の詳細を話す教官がこちらを一瞬見たような気がした。
安堵だろうか、詳しい表情を読み取ることは出来ないが少なくとも敵意はない。それどころか優しそうな表情を一瞬して顔をそらすが、私には教官のその行動の意図がよくわからない。
しかし、この訓練の真の目的は戦闘訓練ではない。その目的自体に気づくことが出来るかという一種の注意力テストのようなものだ。
教官の話を聞いた何人がこれに気づいたかは知らないが、教官は放った【くろまる君】の数を一切明言していない。それがこの訓練の目標だからだ。数の分からない殲滅戦、ゲームではありえないかもしれないが現実的な訓練だ。どの戦場でも敵の数が明確にわかっている場合の方が少ないのだから。仮に今から教官に【くろまる君】の数を聞いたとしてもはぐらかされるだろう。
それらをふまえればこの訓練が戦闘向けではないことが分かる。
その証拠としてこの訓練で使用される【くろまる君】のレベルはどれも低レベルであり、主に出てくるのは小型のみ。一応ボスとして中型が一機だけ出されているだけだ。それも部隊員全員でしっかりとサポートし合えば問題なく倒すことのできるレベルの弱い設定での配置なのだから、正直私が居なくてもサクラたち三人で問題なくクリアできるはずだ。
「まずは、自己紹介しようか」
サクラのそんな一言から私たちでの自己紹介が始まった。
が、私としては別に自己紹介は必要ない。原作として知っているのだから全員の名前程度は知っているのだが、楽しそうに話すサクラの姿を見ると断るのが酷に思えたから止めはしない。
「まずはわたしから。知ってると思うけど、名前はサクラ。適性は後衛の支援役だよ」
そう言いながら持ってきていた【杖】を展開して私に見せる。
訓練用として貸し出されている杖は量産型らしくシンプルな装飾をしている。その名を【
「アタシはアイビー、話は聞いてるぜ。戦闘部門主席さんよ」
少しギザな言い方をしながら、彼女はその巨大な大剣を片手に地面に突き刺す。
特徴的な緑色の短い髪が揺れ、その特徴的な白い瞳がこちらに鋭く見つめてくる。...白い瞳、創作物においても珍しいものだろう彼女の大きな特徴だ。【アイビー】という植物をモチーフに創作された彼女は花言葉と同様に友情を重視する性格をしている。それは彼女のメインスキルにも表れていた。
〈友情は不滅〉そう彼女が呼んでいるメインスキルは彼女自身の心の表れ、大切なものを守るという願いからできた能力だ。手に握られた巨大な大剣は、いざという時に仲間を守るために選んだものだ。そういう、彼女たちの本音を知っているからこそ信じられる人間だと胸を張って信じることが出来る。
...だが、
「わたくしヤルマと申します。ミナミさん、貴女を探しておりましたの」
そう言って握手を求めるヤルマという少女を、私は信じることが出来ない。
握手を求める手を無視して彼女を見る。特徴的な明るい紫色の髪、人によっては青に見えるが私は元である花を知っているからこそ、明るい紫色の髪だと思う。【
そう、私は彼女が疑り深い人物であることを知っているからこそ、彼女を信じることが出来ない。いや、彼女も私も、互いに互いを信じることが出来ないのだ。そんな相手に背中を預けられるはずがないし信じることもできるはずがない。
「探していた、か。私は探される理由に心当たりがない」
疑いの目を向けながらヤルマを見る。
よく立ち絵で使われていた澄ました顔でこちらを見る少女はお嬢様らしい見た目だと思う。しかし、それでも彼女が何かしらの目的で私を知っていて、私を探していたという事実があまりにも不明確で警戒度を上げるには十分な理由をしていた。
互いの視線が交差する。
私はヤルマの瞳を、ヤルマは私の瞳を見る。一歩の譲らない視線の攻防は私たち以外に気づけるものはいない。
「えぇ、実はわたくし__」
「___241部隊、そろそろ出撃よ。準備しなさい」
「...はぁ、間が悪いこと。ミナミさん、話はあとで
「っ...そう」
教官からの言葉に、遠回しながら「あとで話をしよう」という少女の姿に違和感を覚えたのは私が彼女について多少なりの知識を持っていたから他ならない。
彼女はそんな性格をしていただろうか、目標があればソレに一直線に突き進むという性格をしているはずの彼女は教官からの言葉があっても止まるような常識を持ち合わせた人間だっただろうか。今目の前にいる目標の前に役割を果たそうとする彼女は、やはり大きく異なっている。
お前は誰だ?そう言いたくなる口を閉じ、サクラたちと歩き出したヤルマの背中を睨む。
何とも言えない嫌な予感。小さなズレの一つ一つが大きな歪みを生み出し始めている。紛れもない現状を表す事実が私にとっては重い真実になる。
この歪みは既に直すことが出来ないのだから、余計に重くのしかかる。
修正を図った241部隊員の話はあくまでこれからのものだ。未来という今後の行動で修正を図ることのできるイベントは、当たり前だがこれからの意識でその方向を調整できる。
しかしヤルマという少女の性格の変化は既に変わってしまったというこの変化は過去の出来事になるもの、つまり修正は不可能なのだ。いったい何故彼女が変わってしまったのかはわからないが、過去に干渉する能力なんて持ち合わせていないのだから彼女の性格を原作に合わせて修正するということは出来ない。人間は過去に戻ることが出来ないのだから当然だ。
「鬼が出るか蛇が出るか」
これから先にある漠然とした未来は、未だに想像することが出来ない。
今回はあまり語る内容がないです。
強いて言えば箱舟に関して
箱舟:人類の暮らしている巨大な船。なるべく地球と同じ環境を再現しているがそれらは200年経過した今でも不完全であり、すべてを再現しきれているわけではない。
一応、天気を操作するパネルが管理室には存在するが「自然な天気」を再現するために使用されることはあまりない。あったとしても大事な式典があるとき程度である。
___しかし主人公さん?サクラに対してデレデレすぎではないでしょうか。
PS.今更ですが、感想や評価ありがとうございます。自分自身ここまで伸びるとは思っていなかったこともあり不安になっていました。
今も不安であることに間違いないですが頑張ってみようと思います。
ただ、一定の場合になってしまった際はおそらく投稿をやめると思います。
この作品を書いていて思ったのですが、RTA系の小説みたいだなと少し思いました。目標は異なりますがある程度速度を求められるものですし。別に参考にしようとは思っていませんが、似てるなーと作者的に笑っていました。(RTA作品を読み漁りながら)
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戦闘訓練:1
なので描写練習用と割り切りました。
森。
多くの草木により視界の確保が難しいこの地形は戦闘時の周囲警戒を学ぶには最も適した環境だと言える。それは敵への警戒だけではなく足場への警戒も合わせた意味だ。さらに言えば武器のリーチを考え木に引っかからないようにするなどの意識も必要になるため、味方との連携などをふまえれば少なくとも4つ以上は意識をしながら戦わなければならない。
そう言う意味では私にとっても初めての経験だと言えるだろう。
今まで単独での戦闘しか行ってきていない私は味方との連携など全くしたことがない。ついでに言えば木に引っかかろうとも木ごと切ってたので武器のリーチによる武器の引っかかりなんて言う部分も意識したことがなかった。
その点に関しては間違いなく悲しいことだが私は素人同然の半端ものだ。
なまじ力があるだけ厄介極まりない。胸を張るほどの力はないと口では言っていながら、頭の中では胸を張っているのだから矛盾している。
そう、矛盾している。
この勢いに畳みかけるように私は私に刃を向けよう。
私は矛盾しているのだ。誰かが言った救いを求めるだけならば誰かに助けを求めればいいという発想そのものは間違いではなく正しい選択だと、そう脳では理解しているしそうした方がいいと思っているのに実行に移せないあたり、私は矛盾を隠すことが出来ていない。
何故そんな話を急に始めたかと言われれば純粋に暇だからだろうか。
学園の訓練場として使用される森の広さは、東京ドームで表すことは出来ないが大体東京の某ネズミ―ランド一個分程度のサイズがあるとどこかに書いてあった。それが公式の設定かはわからないが、いろいろ調べてみた結果それしか記憶に残っていないというのはつまりそういう事なのだと、もう調べることが出来ないからそう言い聞かすことしかできなくなってしまった。
「全員、体力は大丈夫か?」
若干先行しているアイビーが確認として私たちの聞く。
いや、私には聞いていないのか、その視線はサクラにしか向いていない。ヤルマに関しては聞く必要がないほどにイキイキと動いているし、私に関してはそもそも眼中にないのかもしれない。一切視線を向けられた気がしないことから予想する。
しかしそれも仕方ないだろう。私は今までの訓練で結果を出してしまっているし、ヤルマも同様だ。それらと比べてサクラはまったくもって訓練での結果を出しておらず、それどころか体力テストの類でも最低レベルで突破出来ている程度の能力のみ。今の様な前線に移動して戦闘を行うという戦い方自体が彼女のスタイルには全くあっていないと言っても過言ではない。
「ハァ...ハァ...だい、じょうぶ」
「いや何処がだよ」
息切れを起こしているサクラの言葉にツッコミを返すアイビーの言葉に心の中で同意する。
既に見た目て分かるレベルで持久走大会を走りきった後の帰宅部みたいな息切れを起こしているのだから、仮にアイビーでなくとも同様にツッコミを入れるはずだ。
移動し始めて十数分しかたっていないというのにもかかわらず彼女の膝は笑っているし、頬には汗が流れいる。それだけでなく心なしか目の焦点も合っていないように見える。
この世界においてサクラの様子は何度か見たことがあるが、ここまで酷いものなのかと唖然としたのは記憶に新しい。何度か行われていた戦闘訓練でも彼女は同じような状況になっていた。何故それほどまでに貧弱なのか、彼女に何らかの設定であって、それによってこれほどまでに貧弱になっているという設定は過去調べたことがあるが書いていなかった。だが、だからと言ってそれが彼女の身体能力のせいだとは信じることが出来なかった。
足場がぬかるんでいる地面は先ほどまで降っていた雨が原因だと容易に想像することが出来る。
一歩歩くたびに身体が沈むのだから余計に体力がとられてたまったものではない。ただでさえ動きづらい森がさらに動きづらくなるのは面倒以外の何物でもなく、部隊員それぞれの身体能力の差がより大きく出てしまうという難点も存在する。
運動能力が高い人はそれなりの速度で前に進めるが、運動能力の低い人間にとっては通常時でも移動が大変な森だ。しかも今はその地面がぬかるんでいる。そんな状態で進もうとすれば足を捉えてまともな移動は難しいだろう。私だって元の身体で今の速度での移動ができるかと聞かれれば答えは間違いなく「ノー」と答える。今こうして動けるのはこの身体があってこそなのだ。
そんな立地でも他のものと比べて無意識に前へ先に進んでいるアイビー。それはきっと素の能力と性格ゆえだろう、歩みと同じように無意識で斥候のような役割を担ってしまっている。
それを危険だと知っていながら注意することのできない私は、きっと裏切者なのだ。その問題点を、そして改善点を知っているというのに伝える勇気がないのだから。そしてそれが後の危機を呼ぶと知っているのに目をそらしてしまっている私は、きっと彼女たちに顔向けすることが出来ない。知っているからこそ、その先にあるものを理解しているからこそ、私は一を犠牲にすることを選んでしまったのだから。私では十のすべてを救うことは出来ないと、納得してしまったから、その犠牲を許容してしまっている。
「おいおい、戦闘部門主席がそんな顔してて大丈夫かよ?」
「___っ!べ、別に...問題ない」
思考に耽過ぎていたらしい。
気が付けば前に出すぎていたらしく、目の前にいたアイビーの顔に驚きながらも、意図的に行っているポーカーフェイスが崩れないように意識を集中する。
ポーカーフェイスをしている理由は純粋にうれしいからだ。
元々好きだったキャラたちと同じ戦場に立つことのできる夢のような展開に私は自分の表情がニヤケないでいられる自信がない。
誰だって憧れている人物や好きな人物がいる。私にとって彼女たちがソレに類する存在なのかと聞かれれば明確な答えはないが、それでも憧れに近い感情を抱いていたのは事実であり、そして現在そんな彼女たちと共に行動できている今を喜んでいるのは疑いようのない事実だ。しかし彼女たちとの接触はあまりいい状況を作るとは思えないからこそ、私は彼女たちに内心を悟られないようにしなければいけない。そのためのポーカーフェイスだ。
多くの関わりの結果の先で話の流れが変わってしまえば、間違いなく私の知らないイレギュラーが発生する。
ただでさえ難しいバッドエンドへの対応にそれらイレギュラーが混ざれば、私の力では間違いなく目的を果たすことが出来ないだろう。
だからと言って、私が未来を知っているという話をしても信じてくれる人はいない。誰もが憧れる能力だからこそ無理だと理解も出来ている。正確には未来予知の類ではないが、途中経過を知らない人間にとっては同じなのだ。【未来予知】それと全く変わらない結果を持つ私の言葉を他人が信じてくれる可能性はゼロに近い。
それでもサクラたちならば、そう考えたことは何度もある。
彼女たちは主人公だ。選択肢によって大きく変わるが基本的には真偽を見抜く能力があり、きっと私の話もしっかりと聞いてくれるはずだ。だが、それがイレギュラーの基になってしまう。
考えたことはあるだろうか、もし未来を知ったらどう動くだろうと。
未来の知識を得た人間が真っ当に働くだろうか。それこそ宝くじなどで一発当ててしまった方が楽だと、そう思ってしまうのではないだろうか。それと同じだ。
すべてを話してしまえばある一定のラインまでは楽に進むことが出来るだろう。犠牲を一つも出すことなく、被害を一切出すことなく、原作よりも設備の整った状態で最後を迎えることが出来るのは間違いない。だが、その結果彼女たちの能力は原作に劣ることになる。犠牲の上に成り立った覚醒イベント、どのゲームにもある話だがソレはこの世界の原作も同様で一部のキャラクターは誰かの犠牲なくしては強化できない。そして私はそれを回避する方法を思いつけなかった。
【黒渦】との戦闘ではあまり役に立たない設備の万全と戦闘で前線を張ることになる【花の巫女】の強化。どちらを取るかと言われれば後者を取るのが安定だろう。設備が重要なのは承知しているが防衛という点においては戦力の方が重要だろう。
【花の巫女】と呼ばれる私たちの役目は重要なのだ。
宿る【
「___いたぞ」
川が近い小さな花畑の真ん中。斥候の役割を果たしたのかアイビーの声がインカムを通して鼓膜を震わせ周りを見れば、その特徴的な四つの羽と針を持った【くろまる君】がいた。
おそらく昆虫系に類するその形状は【ビー】と呼ばれている種類の【黒渦】を模したものだろう。
花の付近に多く出現していた【黒渦】で、今こそ数が減ったが昔は空を埋め尽くすほど出現したという設定がある敵だ。【ビー】つまりは蜂だが、そのサイズは成人男性の平均身長の半分ほどもある。それが空から襲ってきたと考えれば当時の人間はちょっとどころではないトラウマになったことだろう。
しかし現在、時間にして約二十分の索敵の結果ようやく接敵できた【ビー】は一体だけ、それもこちらには気が付いていないらしい。
花を中心に飛び回っている光景は記憶に懐かしい虫に似た行動かもしれないが、悲しきかな花とのサイズ差的に花に止まることは出来ないだろう。
「...?一体だけか、なんだよ拍子抜けだな」
「でも敵が隠れてるかも」
「そうだな、警戒するに越したことはないか。ヤルマとサクラは後方で援護してくれ」
サクラの言葉を肯定しつつ二人に確認したのち「それでいいか?」そう私に聞いてくるアイビーに頷きを返す。
ヤルマは前衛と後衛、その両方が出来る数少ない人物だ。いざという時にサクラを守ることが出来るし、いざということがなければ私たちの援護が出来る。それをふまえれば今の配置するのは間違いではない。
そもそも実力を把握できていない私を唯一無二の役割に配置していないことからそう言った考えなのだろう。仮に私とアイビーが逆の立場だとしても彼女と同じ配置をしていたはずだ。実力を知らないものがミスをしても自分がカバーすればいいという思考、そこに至る思考が違うだけで私たちは根本が似た者同士なのだろう。
「背負ってる大剣は使わないのか」
「飛んでる相手には当たらない」
背負った大剣ではなく、腰に差さっている刀を手に取った私を挑発するように言うアイビーの言葉に返答した私の言葉は悲しいが事実だ。
多種の武器を扱おうとしている私は、一つ一つの武器の扱いがお世辞にも上手とは言えたものではない。
初日のの自主訓練で私が選んだ銃がショットガンだったのはそのせいだ。拡散する弾を撃つことのできるショットガンは私のような射撃が苦手な人間にも扱うことが出来る。少なくとも他の銃よりは当たりやすいはずだという想像からの選択をした。その結果大したダメージを与えられていない点から分かるだろうが、私の射撃技術は高くない。近接においても私は正しい剣の振り方が出来ているわけではなく、斬ることのできるはずの敵も斬ることが出来ない。【バッファロー】との訓練の際に大剣で歯が立たなかったのはそれが原因だ。
「敵を倒せればそれで充分」
「まっ、それはそうだな」
だが斬れなくても倒すことは出来る。
握られた刀は入学初日の訓練で使用したものと同じ【無斬】。相変わらず使用された様子はなく奥の方にしまわれていた不遇な武器だが安定して残っているのだから、私はこれを選び続けるだろう。
「行くぞ主席さんよ!」
叫ぶアイビーを横目に、彼女より前へ先へ、私は踏み出した。
彼女の戦闘スタイルは覚えている。
自分へのバフをかけつつ、敵からのヘイトを全て受け入れる。そんなタンク型の戦闘を行う彼女はこの世界においても同様の戦闘スタイルを取る。それは何度か行われた訓練で確認することが出来た。そしておそらく今回の戦闘でも彼女は同様の戦闘スタイルを取るだろうと予想できる。だからこそ、私は彼女より前に出る。
「アタシの戦い方、分かった上でか?」
「...来る前に全部狩る」
「へっ、もうちょっと言い方があるだろ」
こういう戦い方もある、そう教えるように。私は彼女の盾になるように前に出た。
その意図に気づいてくれたかはわからない、それでも苦笑いしながら了承してくれたアイビーはサブスキルを一つ起動した。
〈傾注の招き猫〉そう呼ばれるサブスキルの効果は[ヘイトの集中]。使用者以外に意識を向けられなくする効果を持っているこのスキルは他とは違い使用者が動けなくなるという難点がある。名前についている招き猫が動けるものではないからだろうか、ゲーム内でもスキル使用中はそのキャラは攻撃などの行動が一切できなくなっていた。そういう意味では、アイビーは私を信用しているということなのだろうか。
「ありがとう」
ただ一言、そう言って刀を構えた。
両手でしっかりと握られた刀を剣道の様に構える。武術に類する知識をあまり持っていない私が分かる剣の構え方などこれしかない。付け焼刃であることは間違いないがそれでも何も知らないで持つよりはマシなはずだと、そう考えている。
敵が来る。
ただ一直線に私の方へ、私の後ろの彼女の方へと飛んでくる。
「___ッ!」
それを避けるという選択肢はなかった。
真正面から来る突撃を刀で受け止める。
避けることは容易だが、【ビー】の目的は私ではない。そのヘイトの先は後ろにいるアイビーだ。もし私が避ければ彼女に攻撃が行く。
それならば動けなくしてしまえばいい。
刀に込めた力を強くし、そのままの勢いで【ビー】を地面に叩きつける。
地面にヒビが入るほど強く押し込まれたその敵はビクリとも動かなくなった。それを撃破と言っていいのかはわからないが、それでも今は倒せたと考えていいはずだ。
叩きつけられ動かなくなった敵を横目に、悔しさに刀を持つ手が強く握られる
決して刀の戦い方ではない。刀は切るためのものであり、剣と比べ強度が劣っている。今のような戦い方をすれば長くは持たないと理解しているのにそれを行動に移すことのできない私の技量は、まるでそれが今の私にとっての限界であると丁寧に教えられているようで気分が悪い。
「ふぃー、無事倒せ__」
「___フンッ!」
「...倒せたみたいだな」
終わった戦闘に安堵するアイビーの言葉を遮るように【ビー】に止めを刺す。
これで安心していいだろう。訓練用だからちゃんとした止めではなく動かないように羽の部分に刀を刺しただけだが、これで十分だ。だが、
「まだ終わってない」
足に装備されたダガーを取り出してサクラたちの居る方角へと投擲した。
「なっ!?お前!」
その光景を見て最初に動き出したのはアイビーだ。
投げられたダガーを横目に、私に近づいて胸ぐらをつかんでくるまでにそう時間はかからなかった。それが私を警戒していたからか、戦闘後の残心があったからか、詳しくは分からないが彼女の反応は私よりも早い。
「お前、何で!?」
「敵はまだいた、それだけ」
呟くように答えた言葉に、アイビーはゆっくりと反応を返した。
そう、ゆっくりと。まるで再生速度をゆっくりにした映像の様に、ゆっくりとサクラたちの居る方向に視線を向ける。
そこにあったのは隠れていた一体の【ビー】。
サクラたちを後ろから襲うような形で現れたソレは私の投げた投擲したダガーが命中し、刺さりはしなかったが空中でバランスを崩してそのまま地面に墜落している。そんな【ビー】を冷静さを取り戻したヤルマが止めを刺すように一撃銃弾を撃ち込んでいた。
そんな光景を見たからか、怒りに身を任せそうになったアイビーは冷静になった。
表情から分かるほどに怒っていた彼女の表情は驚きへ変わり、そして安堵の表情へと戻っていく様は少し面白い。
「わ、わりぃ」
最終的にばつの悪そうな表情になった彼女はこちらに謝るが「気にしないで」と一言言って私は周囲警戒に意識を戻した。サクラの警戒していた隠れている敵がいるかもしれないという話、それは紛れもない事実だ。知っているからこそ私は警戒をしていた。そして、知っているからこそ行動を起こした。
回避したとしても問題がないイベントはなるべく回避させたい。
ただそれだけの考えで起こした行動だ。
このイベント、訓練での不意打ちはゲーム内では不利な状況から始まる戦闘を教えるためのものだ。だが、それ自体はそこまで重要なものではない。それ以上に彼女たちが傷を負うのを避けてほしいという願いの方が強かった。
矛盾は理解している。それでも行動を起こしてしまう自分に苦笑いをするが、そんな表情を見ていたアイビーは不思議そうに首を傾げるだけだった。
「...ほ、ほかに敵がどこにいるか、分かるのか?」
「いや」
私は未来が見えるわけじゃないから、敵がどこから襲ってくるのかはわからない。
先ほどの不意打ちだって、そういうイベントがあったから知っているだけでイベントがなければ知り得ない情報だ。この先発生するランダムエンカウントの明確な情報など知り得るはずがない。
「ははっ、流石にそうだよな...」
頭部を掻きながら、やはり何処かばつの悪そうな表情で返答する彼女は居心地が悪そうに少し早歩きでサクラたちの方へと向かって行った。
「...はぁ」
空を見た。いつもの癖だ。
いつものように空を見る。元の世界とは大きく異なるこの空を、もとの世界に思いをはせながら見上げ続ける。先ほどまで戦闘していたとは思えない花畑に吹く風は甘いにおいを感じながら、私は空に思いをはせる。
「私は、ここにいる」
誰かに理解してほしい。
小さいけれど大きい、そんな一つの思いを。
___何も話さないのに理解してもらえるとか甘えたことを言ってるんじゃないですよ主人公。
今回は何というか、戦闘描写を少し練習したい感じだったので話すことはあまりありません。なので登場した敵の説明でも、
【ビー】:蜂型の【黒渦】。一般的な兵器でも倒すことのできる小型に分類される敵であり、本来であれば【花の巫女】が出るほどの敵ではない。
しかし訓練にはちょうどいい強さのため、【ビー】を模した【くろまる君】の出番は割と最初の方の訓練にある。
基となったのは初期のころに斥候として送り出された【黒渦】の一種であり、戦闘能力は低め、使用する武器もしっぽの部分についている針だけであり近づかれなければ問題なく倒すことが出来る。
PS.良くも悪くも、そのステータスと同じく成長途中で止まってしまった主人公、それが本作の主人公のイメージです。
作者より
誤字報告など本当にありがとうございます。
わたし自身何度も見直していますが、それでもこういった誤字脱字が発見されるのを見ると足りていないのだなと実感します。
実は明確な予定もなしに書いているので、これからこれまで以上に作品のストーリー自体に問題点が出てくると思います。ストーリー考える人は大変ですね(他人事)。
...僕はね。刀使ノ巫女やアサルトリリィの小説が、書きたかったんだ(震え声)
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