その鹿毛、芦毛好きにつき (ガラクタ山のヌシ)
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その鹿毛、芦毛好きにつき

ジャスタウェイものがあんまり無かったので書いてみました。


ここは、府中に存在する由緒あるウマ娘たちの集う名門校、『日本ウマ娘トレーニングセンター学園』略してトレセン学園。

今日も今日とて生徒たちは切磋琢磨し合い、ある者は三冠ウマ娘を、またある者はトリプルティアラを、そしてある者は海外をと、各々が夢に向かい文字通りひた走る姿は美しく、力強く、そして…。

 

「素晴らしい…」

 

そうこぼすのは、グラウンドの端に腰掛ける鹿毛のウマ娘。

格好は制服で、何やら双眼鏡を手にニヤニヤしている。

 

「ああ〜…あの子もいいですねぇ〜…あの子も、あの子も、それにあの子もぉ〜〜、ドゥフフ…」

 

その言動はどこからどう見ても不審者の極み。

そして、彼女の視線の先にいるウマ娘たちにはみな共通してとある特徴があった。

 

「あぁ〜…あの風に揺られる髪ッ…しっぽッ…素晴らしい…美しい…みんな違ってみんないいッッッ…」

 

そう、それは皆芦毛であると言うこと。

ある時は食堂での大食いで知られるウマ娘を見て飛び上がり

またある時はその隣でツッコミ役をしている、関西弁のウマ娘を見て感動し

名門メジロのスイーツ大好きっ娘を見てなぜだかヨダレを垂らし

大人気ウマスタグラマーを食い入るように見つめ

策士で知られる逃げウマ娘を陰ながら応援し

気がつけばトレーニングも終わる時間。

 

「ふぅ〜…今日も満喫しましたねぇ〜…」

 

夕焼けに染まるグラウンドの隅で、そのウマ娘はホクホク顔で寮に向かおうと荷物をまとめる。

なお、彼女は今日…というよりいつものライフワークで観察していたウマ娘たちのの写真は撮らない主義だ。

写真が苦手な子もいるし、証拠が残…ではなく、そういったものは心のメモリーに仕舞うべきと言う確固たる信念故だ。

 

「ジャぁ〜〜スぅぅぅ〜…」

「おや?」

 

背後の茂みから気配と共に恨めしそうな声が聞こえてくる。

 

ガッシ!!

 

振り返る間もなく、後ろからアームロックをかけられるジャスと呼ばれたウマ娘。

 

「おやシップ。今日は遠征だったのでは?」

 

声の主に落ち着いた声でそう返すジャス(仮名)。

 

「うるせぇぇぇ!!ゴルシちゃんをほっといてなぁぁぁによその芦毛に…」

「嫌ですねぇ。シップ以上の芦毛なんてこの世にいやしませんよー」

 

そう、穏やかな顔で言うのはジャスことジャスタウェイ。

 

「あ…シップ、あとで髪としっぽモフらせてください」

「あぁん!?しょうがねぇなぁ!?優しいゴルシちゃんに感謝しろよなぁ〜?」

「フフ…いつもしてますよ」

「オメェ〜の敬語は昔っからなぁんか信用ならねぇわ〜」

 

破天荒で知られるゴールドシップの生涯の盟友である。




多分続かない。


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何故続いたし

息抜きに書いてるつもりが楽しくなっちゃった♪


トレセン学園、その校舎裏の花壇付近にて、キャップにマスク、サングラスと言った見るからに怪しんでくれと言わんばかりの二人のウマ娘がひっそりと会っていた。

少なくとも、生徒会副会長エアグルーヴがこの場にやって来ていれば、間違いなく御用になっていたところだろう。

 

「例のブツは?」

 

そう言うウマ娘に、もう一人がスッと差し出す。

 

「ほらよ。にしても…」

「なんですか?」

「プレゼントくらい自分で用意したらどうだよ?」

「それではドッキリの意味がないじゃないですか」

 

寮でも同室なうえ、賢い友人…いや、盟友のことだ。

少しでも妙な行動をすれば何かあるのを察されてしまうのは火を見るより明らか。

だからこそ、ガラにもなくこうやって共通の知人に頼んで、色々と都合してもらっているわけだ。

 

「ったく…」

「ありがとうございます、ナカヤマさん」

「なに、刺激的な経験ができたさ、何せ…」

 

ヤキモチを焼くゴルシなんて滅多に見られるものじゃない。

バレるかバレないかの瀬戸際。

まして、()()()()()()その鬼気迫るゴルシの珍しい本気が見られるかもしれない。

ゾワリと全身が気持ちよく震えるこの感覚。

勝負のスリルを愛するナカヤマフェスタがこれに乗らない手は無かった。

 

「シップ、喜んでくれますかねぇ〜♪」

「知らねぇよ。私に聞くな」

 

元々思考の読みにくい彼女のことを(自覚無く)手玉に取るのが目の前のウマ娘。

ニマニマしつつ、手渡されたものを大事そうに持つ様は普段の変態ぶりからはかなり乖離している。

 

「なぁ、ひとついいか?」

「はい?なんですか?」

 

機嫌良さげにそう答えるジャスタウェイ。

 

「アイツも言ってたが…結局芦毛なら誰でもいいのか?」

「……ああ、そのことですか」

 

しばし考える素振りを見せるや、なんだとばかりに言葉を伝う。

 

「シップ以上の芦毛を見たことがないのは本当です。と言うか…」

「というか、何だよ?」

「シップの影響で私は芦毛スキーになったと言っても過言ではありませんね!!」

 

いい笑顔でそう言うジャスタウェイにナカヤマフェスタは苦笑を浮かべ

 

「…結局、誰でもいいんじゃねぇか」

 

と、軽く毒づくがしかし…。

 

「ナカヤマさん…昔の人はこう言いました」

「なんだよ?」

 

溜めるように、もったいつけるように、間を開け

 

「それはそれ!!これはこれ!!」

「はぁ?」

 

まさかの返答に間の抜けた声を発するも、興奮冷めやらぬ様子のジャスタウェイは気にせず続ける。

 

「ええ!!ええ!!確かにシップの毛並みは100点満点!!触れれば意識を持っていかれそうなほどに気持ちがよく、三女神の生まれ変わりの如く美しい!!ですが!!ですが!!だからと言って他の芦毛ちゃん達を蔑ろにしても良いのか!!否!!否ですよ!!むしろ!!むしろむしろ!!パーフェクトを知るからこその渇望なのです!!執着なんです!!愛情なんです!!」

「お、おう…」

 

あまりの熱量に、さしものナカヤマも引き気味にそう返すしか出来なかったのだった。

 

なお、その後どこからか話を聞いていたのか、ジャスタウェイは猛ダッシュでやってきたゴルシに拉致られたのは言うまでもない。




結構読んでいただけてて驚いてます!!

ありがとうございます!!


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二人はなかよし〜。

なんか続いた第三話。


それは、爽やかな朝に突如として舞い降りた…。

否、思いっきり全力疾走しながらやって来た。

 

「おや?」

 

ジャスタウェイが気がつけば、いつも寝ている寮のベッドでは無く、簀巻きにされて何者かに担がれていた。

 

「お、ジャスぅ〜♪目ェ覚ましたかぁ〜♪」

 

満面の笑みを浮かべ、自身を担ぐのは彼女の盟友ゴールドシップ。通称ゴルシ。

 

「おやシップ、おはようございます」

 

現状確認の前にまずは挨拶をば。

挨拶は大事だ。

御成敗式目にも書いてある。たぶん。

というより、なぜジャスタウェイはここまで落ち着き払っていられるのか、その理由は…。

 

「な〜んだよ!!ノリ悪りぃなぁ」

「慣れてますので」

 

そう、慣れである。

このジャスタウェイ、伊達に幼い頃よりゴルシの盟友をしてはいない。

彼女の急な思いつきに時には便乗し、時にはツッコミを入れ、また時には共に悪ノリする仲だ。

その度に生徒会…特に副会長殿の雷が落ちるのは、まぁご愛嬌。

某メジロのお嬢様ならば「何故ですの!?」と困惑するところを、彼女は軽々乗り越えるのだ。

 

「それで、今日はどこまで?」

 

顔に当たる芦毛の感触を満喫しながらジャスタウェイは盟友にそう問いかける。

なんやかんやで、こうして大好き(直球)な盟友に振り回されるのも彼女のささやかな楽しみなのである。

 

「おう!!聞いて驚け〜!?今日はなぁ〜?」

 

で、やって来たのがフランス。

あの凱旋門賞で有名なフランスである。

 

「まさか飛行機のチケット二人分取ってあったとは…」

 

まさに計画的犯行。

流石のジャスタウェイも思わず脱帽である。 

せいぜい新鮮なマグロ丼が食べたいからと漁船に乗せられるくらいかと思ったが、いやはや。

まさにジャスタウェイの予想の斜め上。

盟友の行動力に感嘆の声をもらす。

 

「こっちだこっち〜♪」

 

ついて行くと辿り着いたのは郊外の自然豊かな森である。

ジャスタウェイが街中で芦毛のフランスウマ娘を探そうと思っていたのは多分関係ない。はずだ。

 

「今日はここを冒険しようぜぇ〜♪」

 

言うなり、ウッキウキで霧の立ち込める森の中へ。

 

幼い時分を思い出し、クスリと笑って二人一緒にズンドコズンドコ入って行くと、ゴルシは興が乗ったのか

 

「お宝の気配がするぜぇ〜♪」

 

と元気に駆け出す。

 

「どれどれ〜?」

 

と、それに合わせていっしょに駆け出すのは流石といったところか。

 

それから一時間が過ぎ、二時間が経過して森を堪能した二人はゴルシ発案のキャンプをすることに。

 

薪を集め、魚を釣り、どこからか取り出したテントを張って、焚き火を挟んで二人は夜空を見上げる。

 

「シップ…ありがとう」

「ああん?ゴルシちゃんはただここに来たかったから来たってだけだぜ?」

 

そっけない物言いだがプイと顔を背けているところを見るに、照れているのだろうとジャスタウェイは直感する。

 

「わたしが最近トレーニング上手くいってないの、知ってたんですよね?」

「知らね。寝る」

 

そう言うなり、寝袋にさっさと入って寝入るゴルシ。

 

「星、綺麗ですねぇ…」

 

ポツリとそうこぼすと、寝たはずのゴルシのウマ耳がピクリと反応する。

 

「…シップの芦毛の次の次くらいにですよ?」

 

ジャスタウェイがフォローするようにそう言うと、今度は寝息が聞こえて来る。

 

普段のにぎやかさとのギャップに、少し寂しい感じもしたが…。

結局、ジャスタウェイもゴルシの隣で横になった。

 

なお、後日女帝様にお叱りを受けたのは余談である。




これからも気まぐれ投稿になるかと思いますが、ゆったりと待っててくれると嬉しいです。


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なんで続くのよ?

すみません。ウインディちゃん、ジャスおじの方はまだ少しかかりそうです…。


 

トレセン学園中庭にて、ひとりのウマ娘がベンチにダウンしていた。

 

「ど、どうしましたの?ゴールドシップさん?」

 

驚いたように…というか、驚いてそのウマ娘…ゴルシに声をかけるのはメジロマックイーン。

ジャスタウェイがいない時は大抵ゴルシに絡まれるある意味可哀想なお嬢様だ。

 

「…あぁん?」

 

ガラの悪い口調に反し、当のゴルシはかなり気落ちしている様子だ。

 

「…どうしたんですの?」

 

それに何か思うところがあったのか、普段の警戒する風とは正反対に心配そうに声をかける。メジロマックイーン。

 

「なんだ。マックイーンかよ」

「なんだとはなんですの!?」

「まぁいいや!!遊ぼうぜぇ〜!!」

「いや、あの…わたくし、これから外出予定…」

「レッツゴー♪」

「聞いてますの〜!?」

 

…ゴルシ節は意外といつも通りだった。

 

小鳥の声と、日差しの差し込む森の川。

 

そこには釣り糸を垂らして、いつに無く真剣な表情を浮かべるジャスタウェイの姿があった。

 

「……シップには、悪いことをしたでしょうか?いえ、しかしこればっかりは如何なシップとて譲れません」

 

本来、盟友といっしょに遊ぶ予定だったのを断ってまでここにいるのにはわけがあった。

それと言うのも、ジャスタウェイはとある魚を釣るために最適の日を数ヶ月かけて模索し、その条件に当てはまる天気、気温、水温全てを満たす日は今日、この日をおいて他に無かったのだ。

理事長やトレーナーに頼めば取り寄せてはくれるだろうがそれではダメだ。

欲しいものは自分の力で手にしなければどこかで甘えが出てしまう。

だからこそ、このためだけにわざわざ地元の漁協の許可を得て、東北にまで出張って来たのだ。

 

それに…と、ぼーっと空を見上げる。

少し曇りがちな、釣りにうってつけの天気。

ジャスタウェイはこの空が嫌いでは無かった。

 

「久々にひとりの時間を過ごすのもまぁ…悪くはないので」

 

賑やかな盟友のことを思い浮かべると、思わず笑みがこぼれてしまうが、しかし彼女は釣り人というより漁師の気質だ。

いっしょに…と誘おうものならば、せっかくの獲物が逃げてしまいかねない。

 

「ふふふ…早く来てくださいね」

 

その鮮やかな色の鱗、見事な赤い身は思い出すだけでも食欲を掻き立てられる。

天然物ゆえに脂は少ないが、その分味がしっかりと伝わる。

逆に養殖物は脂こそ多いものの本来の味がぼやけてしまう。

故に、舌の肥えたジャスタウェイは養殖物では決して満たされない。

 

「シップと鮭を食べるのです…」

 

シンプルな塩焼きをはじめ、ムニエル、ホイル焼き、フライ…スモークなどなど、鮭はどんな食べ方でも美味しいのだ。

その日の夜、ホクホク顔で学園に帰還したジャスタウェイが、寮の入り口でゴルシにドロップキックされそうになったのは余談である。




ウインディちゃんも、はよ実装されて…どうぞ。

なお、鮭の旬は九月ごろらしいでふ。


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たまたま続いた第五話

ふおおお!!久々にキマシタよーコレ〜!!


「フフフ…いいですねぇいいですねぇ…」

 

今日も今日とて、自らの心のメモリーに芦毛ウマ娘達の素晴らしさを保存しているジャスタウェイ。

 

「ま〜たやってんの〜?」

 

背後から声をかけられるも、ジャスタウェイは焦らない。

それと言うのも、ジャスタウェイからすれば別に盗撮だったり、なんだったりといったやましい事をしているわけでも無い。

彼女がグラウンドの端に陣取っているのも、そもそもからして、あくまで彼女らのトレーニングの妨げにならないようにするためという配慮だ。

 

「おや、貴女が声をかけてくるとは珍しいですねー。トーセンジョーダンさん」

 

振り返り、声の主を確認するなりジャスタウェイは意外そうな顔をする。

トーセンジョーダン。彼女の盟友ゴールドシップとは犬猿の仲とも言えるほどの不仲…と言うか、メジロマックイーンの次くらいにゴルシが絡んで行くウマ娘で、ある意味仲良し…と言えないこともないことも無いくらいの仲だ。たぶん。

 

「毎日毎日飽きないねぇ…」

「ええ、飽きませんとも。彼女らは毎日、毎分、毎秒変わっているのですから。あの燃えたぎる闘志、決して諦めない魂の煌めき、勝ってなお、或いは負けても次を見つめる気高い精神!!いつまでだって見ていられますとも!!あぁ〜…このまま時間が無限ループすればいいのに…」

 

うっとりした顔でそんなことを言うジャスタウェイに、ジョーダンは「相変わらずだねぇ」と苦笑い。

 

そんな時だった。

 

「ジャぁぁ〜〜スぅぅぅ〜!!」

 

ドドドドドドドド…と、土煙を上げて駆け寄ってくるのはゴルシことゴールドシップ。

ご存知ジャスタウェイの無二の盟友であり、なかなかのヤキモチ焼きちゃんだ。

 

「てめぇ!!ゴルシちゃんをハブってよりにもよってジョーダンと仲良くおしゃべりなんぞ、良いご身分だなぁぁ!?」

 

しかし、そんな怒れるゴルシを前にしても、ジャスタウェイはのほほん…としている。

 

「嫌ですねぇシップ。盟友だからこそ、貴女のトレーニングを邪魔すまいとする麗しい友情でしょう?それにお出かけは明日の約束なんですから、今のうちにシップニウムを絞っておかないと…」

「シップニウムって何よ?」

 

当然のツッコミを入れるジョーダン。

 

「良い質問ですねぇ!!」

 

それに食いつくジャスタウェイ。

 

「ほら、人間さんもウマ娘も栄養素とか酸素って無くなると生きていけないじゃないですか?」

「うん、ま、そうねー」

「私にとって、第三のそれがシップニウム…つまりはシップとのじゃれあいや掛け合い、競い合いでしか取れない養分と言いますか…」

「で?それが何でここ最近ゴルシのヤツに関わらないことに繋がんのよ?」

「ほら、お腹が空いてる時っていつもより美味しく感じるって言うでしょう?それをシップでやってみようかなぁと…」

「…マイペース過ぎじゃね?」

「って言うかシップ?別にそこまで極端に貴女を避けてる訳じゃ無いでしょう?毎朝のおはようのスキンシップも、休み時間の耳としっぽのお手入れも、おやすみの時のマッサージだって必要な分はちゃんとやってるじゃないですか。何が不満なんです?」

「いたれりつくせりじゃん…」

「シップはものぐさちゃんですからねぇ〜。昔っから基本やろうと思えば何でもできるのに面倒くさがってやらないので…お母さん心配です」

「あはは…」

 

などと、ゴルシに睨まれながらも談笑する二人。

肝が太いと言うか、これも慣れなのか…。

 

「というか、おはようのスキンシップが気になるんだけど…」

「ああ、それはですねぇ…」

 

ものすごい勢いでぐわしっと、トーセンジョーダンの肩を掴む

 

「おぉ〜っと!?ゴルシちゃんこれからジョーダンと話したいことがあるからまったなぁ〜☆」

 

すると、ゴルシはそのまま走り去って行ってしまった。

 

ぽつん…と残されるジャスタウェイ。

 

「むぅ〜…」

 

盟友とお話ししたと言うのに、その顔は不満そうだ。

 

「…そこ、連れてくのは普通私じゃありません?」

 

小さくそう呟くなり、珍しくほっぺを膨らませるジャスタウェイなのだった。




たまには、逆の立場ってのも…ね。


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六話目ですって

息抜きにできたお話。



ここはいつものトレセン学園。

しかし、いつもとは違う珍しい光景が広がっていた。

 

「も〜、シップ〜そんなに拗ねないで下さいよ〜…」

「………」

 

なんと、ゴルシことゴールドシップがガチ凹みしていたのだ。

 

時は一時間ほど前に遡る。

廊下を歩いていると、ジャスタウェイは通りがかった無二の盟友から提案を受けていた。

 

「ジャス〜、並走しようぜ〜♪」

「おやシップ。べつに構いませんが…」

 

で、お喋りしつつ二人で着替えも済ませターフへ。

 

「そんじゃあ、準備はいいかい?」

 

そう言うのは審判兼目印として呼ばれた美浦寮の寮長、ヒシアマゾン。

ルールはターフを駆けて、再び彼女の前を通った方が勝者だ。

両者頷き、数秒の間が開く。

 

「位置について〜…」

 

ぐっ…と脚に力をこめて、スタートダッシュに備える両者。

 

「よ〜い…ドン!!」

 

「よっしゃああああ!!」

 

ヒシアマゾンが手にした旗を上げると同時に勢いよく走り出したのはゴールドシップ。

 

「おやシップ。珍しく飛ばしますねぇ」

「ちなみに負けた方は勝った方の一日言いなりだかんなぁ〜!!」

 

後出しで追加ルールを投下するゴルシ。

 

「道理でやる気があるわけですねぇ…」

 

驚きはしたものの、そこは流石ゴルシの盟友。慌てない。

ゴルシはスタミナこそ並外れてはいるが、勢いに任せて逃げ気味に走っている。

中距離そこそこのこの距離で、脚質に合わない走りは却って己の首を絞める。

奇行こそ目立つものの、普段の賢いゴルシらしからぬミスといえよう。

勝利を焦ったのか、それとも盟友との一日遊ぶ…もとい、言いなりになって欲しかったのか、若干掛かり気味になってしまっていた様子。

ここで、ジャスタウェイもムキになってゴルシを追いかけていたなら勝負は分からなかった。

しかし…

 

「ゴ〜〜〜〜〜ル!!」

 

最後の最後、差し切ったのはジャスタウェイだった。

 

「ふぅ…ギリギリでしたねぇ〜」

 

スッキリした表情で汗を拭うジャスタウェイ。

 

「ちっくしょ〜〜〜!!」

 

反面、本気で悔しがるゴルシ。

不貞腐れたのか、単純に慣れない走法で疲れたのか、ターフの上にゴロンと大の字になって倒れている。

 

「シップ。ちゃんと汗拭かないとカゼひきますよ〜?」

 

そして、時は現在に。

 

「ほらほらシップ。いっしょに来てください」

「わぁ〜〜ったよ…」

 

渋々…と言った風ではあるが、少しばかり時間が経過して頭が冷えたのか約束は約束と言うことを聞くゴルシ。

と言うか、相手がジャスタウェイ以外ならまず間違いなくまだむくれていただろう。

 

「それじゃあシップ。いっしょにたい焼き、食べにいきましょうか。疲れた時は甘いものです」

「あいよ〜…ってか、そんなんでいいのかよ?」

「ふふっ…シップといっしょだからいいんじゃ無いですか」

 

はにかむようにそう言うジャスタウェイ。

 

「よっしゃぁ!!そんじゃあうめぇ店知ってっから腹パンッパンになるまで奢ってやらぁ!!」

「いえ、そこは適度でいいです」

 

いつもの調子を取り戻したゴルシに、ジャスタウェイはくすりと笑う。

 

結局、少しだけトラブルこそあったものの、普段とそう変わらない二人なのだった。




日常回みたいな。

一応史実ネタ。


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奇跡的に出てきた第七話

何と無く思いついたので


ここは天下に名高いトレセン学園、その栗東寮の一室。

ジャスタウェイが机に向かって何やらぶつくさ言っている。

 

「ふんふんふ〜ん♪次の観察はどの娘にしましょうかねぇ〜。見られると言う行為にかなり敏感な子も中にはいますし…とするならば、やはり更なる遠距離からの観察のため、双眼鏡は今使っているものよりも更に高性能なものをタキオンさんに新たに作ってもらう必要が…いやでもそうするとお小遣いが…」

 

とっておきの鮭の燻製を頬張りながら、いつもの如く何やら計画を立てている様子。

まったくブレない。

ドドドドドドドド…。

そんな彼女のところに、何やら足音が近づいて来る。

 

「ジャッスぅ〜〜!!タキオンに面白そうなクスリもらったから一緒に飲もうぜ〜〜♪」

「おやシップ。べつに構いませんが…」

 

判断が早い。

とはいえ、タキオン印のクスリならばある意味で安心できる。

少なくとも自身のトレーナー以外に飲ませることを躊躇わずにあっけらかんと渡したのなら、それほど実害の出ない類のものなのだろう。

彼女とて、トレーナーがついた以上、退学処分になることは避けたいはず。

何より、あのタキオンの寄りかかりっぷりを見るに、トレーナーという協力者は失うには惜しいとは思っているだろうことは想像に難く無い。

 

「それで?どんな効果なんです?」

「説明聞く前に飛び出して来たからしらね。まぁ、なんとかなんだろ!!」

「…そうですね!!」

 

ジャスタウェイは少しの間思考を巡らせるも、まぁいっかと適当に投げて渡された試験管からキュポンっとコルク栓を引き抜く。

瞬間、ドドメ色の煙が立ち上り、天井に消えた。

が、二人はそんなことを気にした風でも無く呷る。

さすがはマブダチ。似たもの同士。

五分とたたず二人の体から何やらモヤのようなものが立ち込め…。

 

それから十分後…。

 

「…お?」

「おや?」

 

モヤも晴れ、室内の様子が見える。

そこにはちんまりとした姿の二人が。

 

「…………」

「…………」

 

しばしの沈黙。

 

「…おいジャス」

「…ええシップ」

 

頷き合う二人。

 

そして…。

 

「ヒャッハ〜〜!!イタズラし放題じゃあ〜〜〜!!」

「フッヒッヒ〜〜!!どこへなりと着いていきますよ〜〜♪シップ〜〜!!」

 

ここで説明しておくと、ジャスタウェイの行動原理は主に二つ。

ひとつは芦毛ちゃんたちのため。

そしてもうひとつはゴルシのため。

もちろん世間一般的な倫理観も一応は持っているっぽいが、まぁそれはそれ。

であれば、ゴルシの提案に乗るのはジャスタウェイにとって水が上から下に流れるが如く当たり前のこと。

そして、それからふたりは童心にかえり、悪戯の限りを尽くした。

某芦毛のお嬢様が減量中にこっそり食べようとしていた秘密のスイーツを山分けし、先日トレーナーに親を紹介した几帳面なウマ娘の貯金箱に1円玉と5円玉を合計十枚ほど投入し、某理事長秘書が実はウマ娘?というありもしない噂を流し、某ガブガブいたずらっ子にはトレーナーにかまってもらえる方法と称して比較的安全な落とし穴をいっしょに掘ってみたり、某名門出身の新人トレーナーに誘われ、学園内のパルクール施設に同行したりなんかもした。

幼女であることをフルに活用し数々のイタズラをやってのけ、遊びに遊んで三時間ほどが経過し…。

目の前で薬の効果が切れたのを目撃した女帝によって案の定と言うべきか、こっぴどく叱られた二人なのだった。 

 




思いついちゃったモンは仕方ないよね!!


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いつの間にかできていた第八話

ふと、昔のバラエティで箱の中身を当てるやつを思い出したらできてました。


トレセン学園生徒会室。

そこで『女帝』エアグルーヴは頭を悩ませていた。

 

「まったく、こいつの行動原理はどうなっているのだ……」

 

こいつ…と呼ばれたウマ娘はジャスタウェイ。

普段の生活態度は至って真面目で品行方正。学業でもこれまで赤点は取ったことが無く、レースでもG1に勝利した経験ありと、正に優等生といって差し支えない。

…芦毛への偏愛と、学園きっての問題児、ゴールドシップの盟友であると言う点を除けば。

 

「いや、個人の趣味嗜好や、交友関係にどうこう言うつもりも無いが…」

 

何かと話題に挙がることも少なくないこの二名は良くか悪くか学園の名物のような扱いを受けている。つい先日などは…

 

「さああああ!!始まったぜ〜〜!!第564回!!芦毛でGO!!グランプリいいいいい!!」

「まぁ、参加者は私だけなんですけどね」

 

ステージ上にいるのはジャスタウェイとゴールドシップ。

両者とも楽しそうで何よりである。

そして、その前に集められたのは当学園所属の芦毛ウマ娘達の毛髪類(もちろん本人らの了承は得ている)。

そしてその周囲にはなんだなんだとわらわら集まる人だかり…いや、ウマ娘だかり。

なんやかんや、お祭りやイベントごとが好きなトレセン生達である。

突然のこのイベントにも割とすんなりと順応し受け入れていた。

 

「ルールは簡単!!ゴルシちゃんが持って行く芦毛が誰のものか言い当てるだけだぜ〜!!」

 

瞬間、周囲にざわめきが起こる。

 

「え、いや、無理じゃない?」

「いやぁ〜でもジャスタウェイさんだし…」

「面白そーだもん!!」

 

などなどステージ周りにはさまざまな言葉が飛び交っている。

 

「じゃあ、さっそくコレは誰の…」

「オグリキャップさんの前髪ですね」

 

即答。

 

「マジかよ…正解」

 

おぉ〜…!!

 

ゴルシの声に素で驚きが混じると言う珍事が。

 

「すげーなぁ〜!!じゃあコレは…」

「タマモクロスさんのもみあげですね」

「食い気味っ!?それに何で部位までわかるんだよ!!」

「えっ?見て分かりません?ハリや色の濃淡、ツヤなどなど…視覚情報だけでも判断材料は山とありますよ?」

 

ざわつく周囲をよそにこのままではつまらないと感じたのか、ゴルシはジャスタウェイに目隠しをし始めた。

要するにいつもの二人のじゃれあいがはじまったわけだ。

 

「よ〜し、それじゃあ、目で見ねぇで…コレはどうだ?」

 

ぱっと前に差し出す。

 

「スンスン…メジロマックイーンさんのしっぽの毛と見ました」

「なんでわかるんだよぉ〜!!」

「ふっ…愛故に…ですかね…」

 

何故かキザっぽく言うジャスタウェイ。

目隠しをされながらポーズを決めてそう言う様はシュールである。

 

「ムカチィィ〜〜〜ン!!」

 

そして、そのセリフに露骨に不機嫌になるゴルシ。

その様子に自分達は巻き込まれまいと、いそいそと帰り出すウマ娘達。

 

「じゃあぁぁ…!!コレはどうだァァァ!!」

「スンスン…おっ、これはシップの…」

 

どんがらがっしゃ〜〜ん!!

 

…………

 

と、言うことがあったばかりで…。

 

「まったく…あの後すぐに本人が報告に来なければどうなっていたか…」

 

ジャスタウェイというウマ娘のこう言う時の対応の速さと言うか、抜け目のなさもなかなかに侮れない。

 

トレセン学園生徒会は、今日も今日とて多忙であった。



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新キャラガチャがどっちも芦毛でジャスタウェイ的にお得だね。と言う感じの第九話

水着ガチャ、ジャスタウェイ得ですね。


ゴールドシップとジャスタウェイ。

二人の盟友は今、海に来ていた。

 

「シップ…遅いですねぇ…」

 

既に水着(パレオ)に着替えていたジャスタウェイ。

ビーチパラソルの下でのほほん…と待っている。

おかげで真夏の太陽に照らされた熱い砂の上でステップしないで済んでいる。

目の前には青い空に青い海。

ビーチは貸し切り状態で、まさにバカンスといった様相だ。

 

「そう言えば、シップ…わたしに見せたいものがあるとか何とか…」

 

優雅にトロピカルジュースを飲みつつふとそんなことを思い出す。

ちなみに今回はいっしょに水着を買いに行ったわけでは無いので、ゴルシがどんな水着を着ているのか、ジャスタウェイは知らない。

 

「ふふ…どんな水着で来るんでしょうねぇ…」

 

王道のビキニだろうか、それともトレーニングでも着ているスク水だろうか、いやいや、もしかしたらお揃いのパレオかも…そんなこんな考えごととも言えないしょーもないことばかり思い浮かべていると、不意に更衣室の方から声が聞こえてくる。

 

「ほらほらぁ〜!!恥ずかしがってねぇで、出てこいよ〜!!」

「い、いえ!!ゴールドシップさんならまだしも、ジャスタウェイさんにまで見られるとなると…!!」

 

どうやら、ゴルシの他にもう一人いるようだ。

 

「あぁん!?大丈夫だってぇ〜♪最近またスイーツ『パクパクですわ〜』し過ぎたことなんて言わなきゃヘーキヘーキ♪」

「今貴女が言ってるんですわ!?」

 

瞬間、ジャスタウェイの中の芦毛スキー細胞がピクリと反応する。

 

「おや?幻聴でしょうか?しかし、シップ以外の芦毛のかほりが…」

 

いやいや、そんな都合のいいことがあるわけ…と首を横に振り頬を叩く。

芦毛愛とは下心があってはならない。

純粋な想いにこそ、芦毛は更に美しく、艶やかに煌めくものだ。

 

「おぉ〜い!!ジャスぅ〜♪」

「おや?やっと着替え終わりましたか?シッ……」

 

瞬間、ジャスタウェイの時間が…否、世界が止まった。

その目に映ったのは恥じらいの表情を浮かべ、もじもじとお腹を抑えるメジロのお嬢様の姿。

 

「わ…」

「わ?」

 

ゴルシがなんだぁ?と言った様子で首を傾げる。

 

「我が生涯にいっぺんの悔い…以下略」ガクリ

「ちょっと〜!?ジャスタウェイさ〜ん!?」

 

ふわりふわりと宙に舞う感覚。

そこで見知った顔が。

 

「おや、同士デジたん。お久しぶりですねぇ」

「ジャスタウェイさん。はい、お久しぶりです」

 

二人ともペコリと会釈をし

 

「お互い…」

「尊いものを見ましたね…」

 

まるで悟りを開いたかのような静かな笑み。

互いに多くは語らない。

しかし、その瞳には…確かに愛が満ち満ちていた。

 

「しかし…これ以上は…」

「ですねぇ…心配をかけてしまいます…」

「それではまた…」

 

再びふわり…と宙に舞う感覚があったかと思うと、気がつけば意識は戻っていた。

 

「尊い…はっ!!」

「ジャぁぁぁスぅぅぅ〜…」

 

目の前にはぶっすぅ〜とむくれるゴルシの顔が。

 

「なんだよ、そんなにマックイーンの水着姿が良かったってーのかー?」

「いえ、そんなことは…ただ…」

「ただぁ?何だよ?言い訳なら聞いてやるぜぇ〜?」

 

笑顔を浮かべてはいるものの、返答次第では…と言った様子のゴルシ。

 

「いえ、シップはスタイルがいいのでどんな水着でも似合うのは分かりきってますし…」

「ほへ?」

 

間抜けな顔で間抜けな声を出すゴルシ。

 

「良かったですわね、ゴールドシップさん?」

 

ニヨニヨと表情を浮かべるメジロマックイーンに、ゴルシはそれを気にした風でもなく

 

「よっしゃぁ〜い!!そんじゃー水鉄砲で遊ぶぜ〜!!」

 

と元気良く叫ぶ。が…

 

「いえ、海水で愛しの芦毛ちゃんを傷めるくらいなら自害を選びます」

「よ〜し!!ジャスも参加するってよ〜!!」

 

結局、遊んだ後すぐにシャワーを浴びることを条件にジャスタウェイも遊びに参加したのだった。




なお、ゴルシとマックちゃんの水着はガチャのやつのイメージで合ってます。


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遊○王一発ネタって感じの第十話

なんかネタないかなぁって部屋を見回したらふと昔のデッキが目に入ったので。


ここは日本全国のウマ娘達の憧れトレセン学園。

その屋上で今、とあるバトルが繰り広げられていた。

 

「くっくっく…ジャス!!年貢の納め時だなぁ〜」

 

屋上に立つ両者の間には、なにやら謎の技術で実体化したモンスターが。

発言から察するに今はゴルシのターンなのだろう。

 

「ふふ…御託は結構。攻撃してごらんなさい…」

 

ジャスタウェイは手札で顔を半分ほど隠し、挑発するかのように不敵に笑う。

 

「そうかよ、それじゃあ…スイーツパラディンでダイレクトアタック!!これで終わりだぜ〜〜!!」

 

全身がフルーツで出来たような見た目のモンスターがジャスタウェイに突進する。

勝利を確信したトドメの一撃。

向かってくる敵に、ジャスタウェイはニヤリと笑う。

 

「リバースオープン!!増えないワカメ!!」

「なにぃ!?」

「更に、甘すぎた誘惑でコンボを発動!!シップのフィールド上のモンスターは何もできずに撃破ですよ!!」

 

バリィィィン!!と、ノリのいい音と共に破壊されるモンスター。

もうもうと立ち込める煙の向こうのゴルシは、しかし焦った様子などなく、むしろ……。

 

「ひゃははは!!ありがとよジャスぅぅ!!」

「…何がですか?」

 

怪訝な顔をするジャスタウェイにゴルシは続ける。

 

「ゴルシちゃんは待ってたのさ…オメェがそれを使うタイミングをなぁぁ!!」

 

そう言ってゴルシはリバースオープンを宣言。

 

「パクパクの儀式発動!!墓地のスイーツモンスターを生贄に…現れろ…スイーツ魔神!!マックチャン!!」

 

パクパクデスワ〜〜……!!

 

どこかの芦毛のお嬢様と、某くっちゃねポ○モンを合わせたような…本人に見せたら確実に怒るだろうデザインのモンスターが姿を現す。

 

「ククク…更に手札から思い出の体重計を発動!!マックチャンに装備するぜ!!」

 

その発言に目を見開くジャスタウェイ。

心なしか、モンスターは逃げようとしているように見える。

 

「…バカな!!それは自爆前提の破滅コンボ!!シップ…貴女まさかはじめから…」

 

今更気付いたのかと高笑いするゴルシ。

 

「おうともよ!!ゴルシちゃんはこれが…これだけが狙いだったのさジャスぅぅぅ〜〜…」

 

そんな二人を遠巻きに見守る二つの影。

 

「……何やってんだあの二人」

 

そう言うのはナカヤマフェスタ。

 

「負けた方が勝った方にプリン奢るんだって〜」

 

スマホをいじりながらそんなことを返すのはトーセンジョーダン。

しかし、その話を聞くや、ナカヤマフェスタはん?と首を傾げる。

 

「だが、自爆って…」

「そうね〜…」

 

トーセンジョーダンはスマホから顔を上げずにハァと一息つくなり

 

「友達と半分こしたいなら素直にそういえばいいのに…」

 

と、こぼしたのだった。




ほぼ勢いだけですはい。

モンスターのステータスはご想像にお任せします。はい。


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時には昔の話を的な十一話

続きできました〜。


とある朝。 

ちゅんちゅんと小鳥がさえずり、穏やかな一日が始まるだろうことを予感させるそんな時、事件は起こった。

 

「大変ですシップ〜〜〜!!」

 

ベッドの上で寝そべる盟友ゴルシに、ジャスタウェイは悲鳴ともとれるほどの大声で声をかけつつ、体を揺らす。

 

「うぅ〜ん…じゃすぅ?ゴルシちゃんはまだねみぃんだが…」

「ご迷惑をおかけするのは申し訳ありません!!ですがそのくらいの一大事なんです〜〜!!」

 

若干の涙声になりつつあるジャスタウェイの声色にゴルシはただならぬものを感じのそのそと起き上がる。

 

「んで〜〜…どーしたんだよ〜〜?」

「無いんです!!」

 

要領を得ない言葉に、ゴルシは訊ねる。

 

「無いって…何がよ?」

 

そして、返ってきた答えは……。

 

「魚拓が!!無いんです〜〜!!」

「あん?魚拓ぅ?そんなモン、幾つも持ってんだろ?」

「シップとはじめて釣り上げた魚のヤツなんですぅ〜〜!!」

 

その言葉に、ゴルシはガラにも無くハッとした様子になる。

 

「なんだオメー、まぁだ大事にしてたんか〜?」

「当たり前じゃあ無いですか!!だってあの魚拓には……」

 

そう言うなり、しょぼくれた様子になるジャスタウェイ。

それほど大切な思い出が詰まっていたのだろう。

 

 

…………………

 

幼い頃のジャスタウェイは、テレビを見て釣りに興味を持ち、当時は100均の釣り竿なんて無かったので適当にその辺の棒っ切れにたこ糸を結んで、その先には木を削って作った釣り針を使用。

金属製の釣針は危ないからと買ってもらえなかったが、ジャスタウェイなりに工夫して実家の近場の川にて釣りに臨んだ。

 

が…一向に釣れる気配は無い。

 

そんな時、背後から声をかけられたのだ。

 

「オウオメー、何してんだ〜?」

 

振り向いてみると、そこには見たことのない同年代と思しきウマ娘が。

 

「なにって…さかなつり?」

 

尤も、今のところボウズだが。

 

「ど〜れどれ〜?って、釣り餌つけてねーじゃん。コレじゃー釣れるモンも釣れねーよ」

 

かしてみ、と言われおずおずと気恥ずかしそうに釣竿を差し出す幼いジャスタウェイ。

同じくらいの年齢ながら、慣れた手つきで釣り餌をつけるウマ娘に驚き、そちらにも興味を持つことになる。

 

ほらよっ、と渡された釣り針には、なにやらうごうごとした虫らしき生物が。

気持ち悪くてこれ以上見たく無かったのもあり、先ほどと同じようにちゃぽん、と川に針を入れると、五分とせず魚が釣れた。

 

ぴちぴちとはねる名も知らぬ魚は正直小ぶりで拍子抜けしたが。

それでも初めての魚釣りへの興奮と、釣れたことへの達成感は大きかった。

 

「なぁ、知ってっか?釣り人はなぁ〜、釣った時のことを思い出すために魚拓ってのをとるんだぜ〜?」

 

ニコニコとそう言うウマ娘は、いつの間にやら用意していた墨汁と半紙を差し出す。

 

比較的平らな、大きい石の上で釣った魚を墨汁につけ、半紙の上に乗せる。

 

にひひと笑うウマ娘に、ジャスタウェイはひどく感謝すると同時に、いい友だちになれそうだと直感した。

 

…………………………

 

それから二人は学園内の思い当たるすべての場所に行った。

寮の部屋に始まり、カバンの中、教室、トレーナー室、ジャスタウェイのお散歩コースに、お気に入りの見守りスポットまで様々に。

 

「うぅ…シップぅ…」

「しゃーねーなぁ〜、ゴルシちゃんのヤツをコピーしてやるよ」

「え?いやでも…」

「遠慮すんなって、そんじゃーコピー機借りて来るわ」

 

ゴルシが寮の部屋から出ようとするとカタン、と硬質で軽いものが落ちる音が聞こえた。

 

「うん?」

「おや?」

 

振り返ってみるとジャスタウェイのベッドの方から聞こえて来たようだ。

 

「おかしいですねぇ〜、確かこの辺は調べ物とは関係ないはずですが…」

「んぉ?脇に落ちてるそれ…」

「…あっ」

 

それは、写真入れに入ったあの魚拓であった。

恐らくだが、何かの拍子にベッドとクッションの間に挟まっていたのが、徐々に緩んでついさっき落ちたらしい。

 

「そう言えば、ベッドのところに置いとく場所を変えたんでしたっけ…」

「ったく…大切ならもっとちゃんとしたとこにしまっとけよなぁ〜」

 

そういうゴルシもなにやらまんざらでも無さそうだ。

 

カチャカチャと、写真入れの後ろを開けジャスタウェイ。

 

「いやぁ〜、良かった〜コレも無事です〜〜」

 

そして魚拓の裏からピラリ、と何かを取り出す。

 

「あん?何だよそれ?」

「なんだって、推しの芦毛ちゃんバンドの激レアチケットに決まって…あっ」

 

しまったという表情のジャスタウェイ。

意味ありげに笑みを深めるゴルシ。

 

「あっ、いや…これは違うんですよ?」

 

必死に言い訳をしようとするが…。

笑顔で近づいて来たゴルシにチケットをパッと奪われ…。

 

ビリィッ…!!

 

「あああああ〜〜〜〜!!」

 

その悲鳴は、今朝のそれと大差無い大きさだったそうな。




ヤキモチゴルシちゃん。

アリだと思います。


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そういやジャスタウェイってデジたんとイベント参加してそうだよねって感じの十二話

おもいつき。
それ以上でもそれ以下でもないですはい。


ある、からりと晴れた日のこと。

外の青空に反して、なにやら物々しい様子の空き教室。

そこには二人のウマ娘が机を挟む形で向き合い、座っていた。

 

「…では、ジャスタウェイさん。本当にいいんですね?」

 

念を押すようにそう問いかけるのはアグネスデジタル。

トレセン学園が誇る『勇者』として知られる。

そしてもう一方は……。

 

「何をおっしゃいますか。水くさいですよ。同士の危機に駆けつけずして何が芦毛スキーですか」

 

フッ…と格好をつけてそう言うジャスタウェイ。

普段からこうならば女帝は頭を抱えていないだろうというのはまったくもって余談である。

 

「そして…これぞ我が力作…」

 

脇に置かれたカバンをゴソゴソとして、取り出したるは分厚い封筒。 

それを愛おしげにひと撫でして、机の上に置く。

 

「『アシゲノセカイ(もちろん全年齢対象)』、しめて五十ページです!!」

 

渾身のドヤ顔を決めるジャスタウェイ。

 

「うっひょ〜〜!!ありがとうございます!!ありがとうございます!!これで体調不良で抜けてしまわれた作家さんの穴は補填出来そうです〜!!」

 

嬉々として、宝物を扱うが如くゆっくりとそれを手に取るデジタル。

 

「いやぁ〜、助かりましたけど…少し意外ですねぇ…」

「?何がですか?」

 

小首をかしげるジャスタウェイに、アグネスデジタルはおずおずと言った様子で答える。

 

「いえ、普段こういったものは読み専だと伺っていたので…」

 

そもそもこの相談自体、書けそうな人材を求めてのことだったのを珍しく、(というかはじめて)ジャスタウェイが自分で書く、と言うので任せたのだ。

 

「…ああ、そのことですか。いえね、わたしも前々から興味はありまして…」

「そうなんですか〜…それじゃあ、これも全部独学で?」

 

封筒の中身を確認しつつ、デジタルが質問を投げかけるとジャスタウェイは頷く。

なお、ぺらりぺらりとページを捲る際、度々昇天しそうになっているものの、ジャスタウェイに迷惑をかけまいと気合いで耐えている様子だ。

 

「フフッ…芦毛ちゃん達のため、わたしにできることはただ、この身を粉にすることくらいですので…」

 

手を顔にかざし、変なポーズ(ジョセ○風ジ○ジョ立ち)をとりつつそんなことを言うジャスタウェイ。

若干テンションがおかしいが、恐らくはいわゆる徹夜ハイというやつだろう。

 

「そうですか…それでは、完売目指して頑張りましょう!!」

「ええ、お手伝いしますよ」

 

早速デジタルの父が経営する印刷所に持って行き、許諾をもらうことに成功。

とは言え、少なくない額が飛んでいったが。

 

イベントの準備等夜を徹しての作業は、しかし楽しさの方が勝った。

時折、ふとした推しウマ娘ちゃんの話題で盛り上がり作業の手が止まってしまうこともしばしばあったのはご愛嬌。

 

しかし、苦労の甲斐あってかそのイベント当日、新たなる芦毛スキーが少なくない人数生まれたのは言うまでもなかった。

そして、イベントからホクホク顔で帰ったジャスタウェイは、案の定寮の相部屋でゴルシに絡まれ、尋問を受けたそうな。

 




同人イベント、楽しそうだし参加してみたくなったり、やっぱり気が引けたり…。


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あけおめって感じの十三話

降って湧いてきたので。


元旦。

それは一年の幕開け。

また、一年の計は元旦にあり、と言われるくらいには重要な日でもある。

 

「シップ、新年明けましておめでとうございます。今年も仲良くして下さいね?」

 

緑色を基調とした和装をして、寮のベッドで寝起きのゴルシにお辞儀しつつそう言うジャスタウェイ。

なお、その手には彼女の好物である鮭がぴちぴちと跳ねている。

 

「お?ジャス、そのシャケどしたんだ?アレか?隠されし海賊王の秘宝への鍵ってヤツかぁ〜?」

 

寝起きとはいえ、ゴルシ節は本年も絶好調。

それに安心したのか、ジャスタウェイもシャケを手にした意図を語る。

 

「ふっふっふ…紅白の紅は紅鮭の紅ですからね。縁起ものってヤツです」

 

ゴルシに見せて満足したのか、それとも単純に腕が疲れたからか、ジャスタウェイは手にした鮭をちゃぽん…と大きめのバケツに戻す。

 

「シップの魚料理は美味しいですから、後で調理してくださいね♪」

「ふふ〜ん…ジャスよ、分かってんじゃねーか。安心しろ、ゴルシちゃんは必ずイクラの頂に辿り着いて見せるぜ!!」

 

上機嫌にそう返すゴルシ…要するに、任せておけと言いたいようだ。

 

「ふふ…ですねー。では、シップのお着替えが済んだら初詣と参りましょうか」

「あいよ〜」

 

そう言うなり、ジャスタウェイはゴルシの着付けを手伝いをはじめた。

 

…………………

 

そうして、神社に辿り着いた二人は配られた甘酒の入った紙コップを片手に列に並ぶ。

こういう時は意外と律儀な盟友二人である。

 

「うぅ〜…まだねみぃ…コレを例えるなら…火星でバスケをしながらちゃんぽん食ってるみてぇな…」

「ふふ…それは大変ですね〜…」

 

なかなか進まない列に、ついつい会話が弾む。

幼い頃の思い出話から、今年はいっしょにどこへ行こうかと言う話、ゴルシがしょっちゅう出入りしていると言うウマ娘の集いの話に、学園の食堂の限定メニューの話題などなど多岐に渡った。

 

「おや?美しい芦毛が…」

「ジャぁ〜スぅ…?」

 

途中、ジャスタウェイが他の芦毛ウマ娘に目を奪われそうになるたびにゴルシが笑顔(表情だけで目は笑ッテナイ…)で腕をつねり上げたりもしたが…今回のお出かけ全体で見ればおおむね盛り上がった。

やがて順番がやってきた二人は古式ゆかしい神社の賽銭箱にお金を投げ入れ、本坪鈴(ガラガラ鳴らすやつ)を鳴らして柏手を合わせる。

チラリ、と脇を見れば意外と真剣に祈る盟友の姿。

黙っていれば美人とよく言われるゴルシだが、ジャスタウェイからすればそんなものはゴルシではない。

若干の物足りなさと、しかしゴルシの良さを分かっているのは自分であるという謎の優越感を感じながら、ゴルシに合わせて次の参拝客に順番を譲る。

あとは例年に倣いおみくじを買って、枝に結び付けて帰寮。

 

「ふふふ…ゴルシちゃんは今年も大吉だったぜ〜」

「わたしも吉でした。今年もいいことがありそうでよかったです」

 

その後、二人の盟友達は二人で協力して作った鮭づくしを堪能したのはまた別の話。

 




鮭フレーク美味しいよ鮭フレーク。


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ジャスタウェイ。こりない。

出来ました〜


芦毛ウマ娘と一言に言っても、その描き出すコントラストや紋様は多岐にわたる。

その味わいは個々人によっても異なり、見ているだけでも面白い。

 

ゴールドシップは幼少の頃は茶髪だったと言うし、同じ芦毛と呼ばれるカレンチャンやセイウンスカイ、タマモクロスなどと見比べても、その違いは一目瞭然。

とは言え、うら若き乙女をそう見つめるものでもなく、せいぜいがレースやトレーニング中に目にするくらいだろう。

そう、例えば……………。

 

「フフフフフ…ついに開催されますは芦毛記念ッ!!まぁ…ただの模擬レースなんですが…この日、この時のために生徒会室前の目安箱に毎日毎日二十枚ほど要望を入れ続けた甲斐もあったと言うものです…」

 

双眼鏡を手に、参加者の芦毛を食い入るように見つめているのは、他でもないジャスタウェイである。

 

「ハヤヒデ先輩にマックイーンさんに…グフフ…壮観ですねぇ〜♪」

 

だらしない笑顔を向けて、双眼鏡を覗き込むその様は何かしらのハラスメントに引っかかりそうである。

 

「幸いシップは自身のトレーナーさんを簀巻きにして何処かに向かったそうですし…後はバレなければ何の問題もありませんよねぇ〜♪」

 

もはやフラグとしか思えない発言をするジャスタウェイ。

そうしてはじまった模擬レース。

ゲートが開き、各ウマ娘一斉に飛び出す。

 

「うっひょ〜〜!!キラキラと風にたなびく芦毛、香ってきそうなほどに美しい芦毛、コレだからやめられないんですよ〜♪」

 

わざわざ芦毛団扇まで持って来た甲斐がある。

内心でジャスタウェイは歓喜していた。

 

やがてレースは中盤から終盤に差し掛かる。

 

先頭を行くのはセイウンスカイ。

しかし、後方からオグリキャップが上がってくる…そして、さらに後ろからタマモクロスが末脚を炸裂させてカッ飛んで来て、先頭を捕らえにかかる。

かと言って、他のウマ娘とて黙ってやられはしない。

メジロマックイーン、ビワハヤヒデの両名は驚異的な粘りを見せて食い下がる。

が、しかし…そのさらに後方からやってきたゴールドシップに先頭を入れ替わり、ハナ差でゴールイン!!…ゴールドシップ?

 

双眼鏡から目を外し、ここにいないはずの盟友の姿を再認識してキョトンと小首を傾げるジャスタウェイ。

なお、隣にいる彼女の同士ことアグネスデジタルは途中からいつものごとく失神していた。

未だ呆けているジャスタウェイに、レースを終えた盟友がズカズカと歩み寄る。

 

「よぉ〜ジャスぅ〜面白そうなことやってんじゃねぇかよぉ〜?」

 

表情こそニコニコと笑顔であるが、放たれる圧は尋常では無い。

かと言って周囲はいつものことかと庇う様子もない。

まぁ、自業自得と言われればその通りではあるが。

 

「い…いやあの…シップ?これは違くてですねぇ…」

 

見苦しい言い訳をするも、盟友にはお見通しのようで……。

 

「ほぉ〜ん!?そんじゃあゴルシちゃんに付き合ってもらおうかぁ〜!?」

 

そう言っていつの間にやらジャスタウェイを簀巻きにするゴルシ。

 

「ごめんなさいシップぅ〜!!」

「フフフフフ…今日から三日間は連れ回してやっかんなぁ〜!?ナカヤマの行きつけの怪しい店によぉ〜!!」

「ヒィ〜〜ン!!あ、でもシップと一緒ならいいかも…」

 

そのままゴルシは俵担ぎでジャスタウェイを連れ去ったのだった。

 



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ヒーローなジャスタウェイ?な十五話

久しぶりに更新です〜


その日、ジャスタウェイはとある撮影現場に居合わせていた。

それと言うのも、学園側から来る学園祭に向けて各クラスや委員会などでそれぞれ何かしらイベントを催すこととなっており、今年ジャスタウェイのクラスはヒーローショーをする事となったのだ。

 

「オウオウお嬢ちゃん、アッシらにぶつかっといて謝罪もナシかぁん?」

「コレはちょっとばかしキョーイクが必要みたいっスねぇ…」

 

学ランにサングラス、それからマスク、時々ヒゲ眼鏡と、なかなか気合いの入った出立ちでちびっ子役(芦毛ウマ娘)を囲むクラスメイト達。

やがて恐怖と不安からか、芦毛ウマ娘は助けを求める。

 

「助けて!!アシゲスキー!!」

 

その次の瞬間、突如としてゴウ、と一陣の風が吹き、その場にいた誰のものでも無い声が響き渡る。

 

「ふっふっふ…芦毛の泣き声が聞こえますねぇ…」

「テメッ!!ナニモンだ!!」

「姿を表せゴルァ!!」

 

そこに颯爽と現れたのは緑と黒の市松模様というなかなか奇抜なヒーロースーツを着て嬉々として叫ぶは誰ぞ知るジャスタウェイその人。

 

「愛と勇気の芦毛の味方!!その名も…アシゲスキー!!」

 

ジャジャーーン!!(バックで爆発ドォォォォン!!)

 

「そこの貴女方」

「ンダコラ?」

「ヤンノカコラー」

 

古のヤンキーのような喧嘩腰でジャスタウェイを取り囲むチンピラ役の生徒たち。

そんな彼女らにジャスタウェイは優しく諭す。

 

「芦毛は世界の宝です。なので丁寧に扱ってあげて下さい」

 

「さあ行きましょう。芦毛の向こう側へ…」そう言って手を差し伸べるジャスタウェイだが……。

 

「ハァ?」

「寝ぼけたこと言ってんじゃねーぞ!!」

「って言うか芦毛以外はどうなってもいいのかゴルァ!!」

 

悪役から発せられるとはおよそ思えぬ正論からジャスタウェイがポカポカと叩かれるシーンが挟まる。

 

「くっ…このままではわたしの愛する芦毛ちゃんが…いや!!まだ諦めるには早すぎますよわたし!!」

 

ボロボロになった格好のジャスタウェイはふらふらと立ち上がると、パッと手を上げ叫ぶ。

周囲の不良ウマ娘役の生徒達はその瞬間何かを発見したような顔をして、ジャスタウェイから徐々に距離を取り始めている。

 

「芦毛のみんな!!わたしに力を分けて下さい!!」 グヘヘ…コレデ合法的ニ芦毛チャン達トフレアエル…。

 

特撮あるあるの感動大逆転シーンに入ろうと言うまさにその瞬間だった。

 

「ほ〜ん?そんなに欲しいのかよ?」

 

ジャスタウェイの聞き慣れた声がそう問いかけて来ていた。

 

「えぇもうもちろん!!早くしないとみんな大好きアシゲスキーちゃんがやられてしまいますよ〜♪」

 

役になりきっていたのか、それとも他の何かを考えていたのか…。

素直にそう答えるジャスタウェイ。

 

「そうかぁ…そんじゃあ、アタシの飛び蹴りを喰らわせてやるよオラァン!!」 

「ふぐぅぅっっ!!」

 

派手に吹っ飛んだものの、骨に異常を与えない程度の絶妙なパワーのドロップキックがジャスタウェイを襲う。

 

「んも〜ちょっとちょっと〜、流石にやり過ぎですよみんなぁ〜」

 

手袋を外し、素手でゴシゴシと目を擦るジャスタウェイ。

 

「せっかくシップに内緒で芦毛ちゃん達にモテモテ計画…を…」

 

ジャスタウェイはこの場にいないはずの盟友に一瞬フリーズして、パチクリと瞬きする。

 

「……………」

「……………」

 

方や青ざめるジャスタウェイ。

方や意味深に微笑むゴルシ。

 

「ゲェッ!?シップ、どうしてこんなところに!?」

「うっせぇ、今はそんなこたぁどーだって良いだろオォン!?」

「え〜っと…あっ!!ナカヤマさんが賭けダーツやってますよ!?」

「あん?」

 

ジャスタウェイは咄嗟にゴルシの後ろを指差し、取り敢えずその場から逃げようとするも努力空しくガッシ!!と襟首を掴まれる。

 

「それいいなぁ〜、とりあえず賭けるのは…オメェの秘蔵コレクションでいいなぁ!?」

「ひぃぃん!!ご勘弁を〜〜!!」

 

ジャスタウェイの芦毛ちゃんモフモフ計画は当然の如くおじゃんとなったのだった。

 



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ゴルシとドロワ?な十六話

ドロワイベ、取り敢えず完走出来たので。


『リーニュ・ドロワット』

 

通称ドロワ。

 

それはトレセン学園名物の、新学期前に生徒主導で行う行事であり…。

 

「ほらほらジャスぅ〜、ちゃんと着いてこいよ〜♪ワンツーさんしーほいほいっほほ〜い♪」

「シップぅ、早いですってぇ〜…」

 

参加者たちはそれぞれがそれぞれ、デートと呼ばれる特別なパートナーを組む。

 

ダンススタジオにて、珍しくやる気を出しているのはゴールドシップ。

そして、やはりと言うべきか…そのデートはジャスタウェイである。

 

「ほぉ〜れほれほれぇ〜♪普段振り回してくれてるお返しだぜ〜♪」

 

アクロバットで奇妙奇天烈、破天荒なダンスと言えるかも分からないリズムを刻むゴルシ。

 

「まったくシップは…まぁ、そんなところも大好きですけどッ…ね!!」

 

そして、なんやかんやいいつつも、それをしっかりカバーし支えるジャスタウェイ。

 

まさに、学園の問題児と優等生といった対比のある良いコンビ…もとい、デートに仕上がっている。

 

ちなみにゴルシが度々絡みに行く、芦毛のお嬢様ことメジロマックイーンは今年はトウカイテイオーとデートを組んでの参加とのこと。

 

どちらも育ちの良さや運動センスの高さから、ハイレベルに纏まっているだろうことは想像に難くない。

 

しかし、この二人とて阿吽の呼吸。

伊達に幼少の頃から互いを盟友だと思ってはいない。

 

「ところで…シップ?」

「あん?なんだよ?」

 

床に座り、休憩中の相棒にジャスタウェイは問いかける。

 

「ベストデート賞って狙うんですか?」

 

『ベストデート賞』

 

それはドロワに於いて、最も記憶に残るダンスを見せたデートに贈られる称号である。 

ちなみに先ほどのトウカイテイオーとメジロマックイーンは今年のベストデート賞候補の筆頭だとか…。

普通なら、それを狙って邁進するのだろうが…。

 

「ま、ゴルシちゃんは楽しけりゃいいや〜♪」

「同感ですね〜」

 

デートの二人は、そう笑いながら言う。

 

結果としてベストデート賞がもらえるんなら、ラッキーくらいの心持ちなのだろう。

 

とは言え…別に二人してドロワをなめている訳ではない。

まぁ、実際そのくらいの方が気楽と言えば気楽だし、気負いすぎてパフォーマンスが落ちてはそれこそ本末転倒だ。

 

無論、練習はきっちりやる。

やる気になった時のゴルシの集中力は凄まじいものがあるし、それに必ず付き合うのがジャスタウェイというウマ娘だ。

 

そして、ドロワ本番が近づいてきたある日のこと…。

 

「あ、そう言えばシップ?衣装ってどうするんですか?わたし、何も聞いてませんけど…」

「ふっふっふ…ついに聞いてきたなぁ?ジャスぅ〜…」

 

その時、ジャスタウェイは直感…というより確信した。

 

あ、ネタに走る気満々だな…と。




次回に…続く。


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ゴルシとドロワ?その2、な十七話

ドロワ回の続きです〜。


リーニュ・ドロワットには所謂ドレスコード…まぁ要はその場の雰囲気を壊さないようにするためのある一定の基準がある。

 

学校や職場での制服や、スポーツ選手のユニフォームみたいなモノだ。

 

そして、その衣装は大別して、学園から貸し出しされるものと、生徒が各々で用意して着るものの二種類がある。

 

大抵の生徒はせっかくの機会なのでと後者を選ぶのだが、前者の方でもなかなかに種類が豊富らしいので、それはそれでアリらしい。

 

そして、ゴルシとジャスタウェイのドロワで着る衣装は……。

 

「おぉ…どんなモノかとワクワク…もとい、心配していましたが、コレはなかなか…」

 

ジャスタウェイが来ているのは所謂タキシードのような衣装だ。

緑を基調として全体的にシックに纏められ、彼女の長い髪は首の裏辺りで束ねて邪魔にならないよう工夫されている。

その髪紐には、小さいながらも両端に金色の錨があり、それ単体でもなかなかオシャレポイントは高い。

総じて品のある逸品に仕上がっていると言っても過言ではないだろう。

因みにデザインはゴルシが一人で担当したらしい。

 

「ったりめーだろ〜?最初っからブッ飛ばしたらウケなんぞ取れねーだろーが」

 

寮の自室でゴソゴソと着替えつつ、そんなことを言うゴルシ。

 

「ふっふっふ…ジャスよ見さらせ!!そして驚け!!これが!!ゴルシちゃんの!!ドロワ衣装じゃ〜〜〜い!!」

 

バサァッと衣装をたなびかせ、堂々登場するゴルシ。

 

その衣装は、赤に黄色に青に緑に…と、さまざまな色が入り混じったグラデーション。

しかし、何故か統一感があり…。

そして、ジャスタウェイにはどこか既視感のある模様が入っていた。

 

具体的には…背中の辺りに立派な鯛が跳ねている様が見事に表現されている。

その様はまさに…。

 

「まるで大漁旗ですね。よく似合ってますよシップ♪」

「はぁん!?そんなんトーゼンだっつーの!!さぁさぁ!!いざ!!ドロワに乗り込むぜ!!野郎ども〜〜!!」

 

受付のナイスネイチャに参加の意思を告げて、いざ本番。

 

奇抜さと基礎の入り混じるそれはウマ娘達の視線を一時は集めたが……。

 

「いやぁ〜、負けましたねぇ」

「だなぁ〜」

 

体育館の外で、はちみーを飲む二人。

 

流石に本日の大本命が現れてからは、あっさりと注目をそちらに持って行かれてしまった。

やはり、あの二人は良いライバル同士であり、切磋琢磨し合える仲間なのだろう。

 

「それに、私としてもオシャレした芦毛ちゃん達も見られて眼福でしたし〜…って、あ痛ァァァ!!」

「よ〜し、ジャスぅぅぅ、負けたからにはゴルシちゃんとゴルゴル星で特訓じゃぁぁぁい!!」

 

先ほどの失言のせいか、ゴルシに首根っこを掴まれ明後日の方向へと連れられるジャスタウェイ。

 

それは正に、二人の友情の硬さと……。

 

「オラオラァァァ!!よその芦毛なんぞ考えてる余裕はねぇからなぁぁぁぁ!!」

「ひぃぃぃん!!勘弁して下さいよぉ、シップぅぅぅぅ!!!」

 

ゴルシの嫉妬深さの現れなのかも知れない。



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ジャスタウェイの遍歴?な十八話。

ちょっとしたスパイス?的な過去編。


誤解を覚悟の上で言うなら、ジャスタウェイというウマ娘にとって、トゥインクルシリーズというウマ娘のレースの祭典はさほど重要では無かった。

 

もちろん、ウマ娘の本能として走るのが大好きというのもあるが…彼女が走るのは、もっと他に大きな理由があった。

それは幼い頃より共に育ち、切磋琢磨しあってきた盟友ゴルシと共に走りたい。というシンプルなもの。

 

彼女と一緒にトレセン学園を受験し、共に受かったから通うようになった。ただそれだけのことだった。

 

しかし…いざ本格的にトレーニングをするに当たって、大きな壁にぶち当たることとなる。

彼女は生まれつき、片方の足に爆弾を抱えていたのだ。

 

そのためにスカウトを受けることこそ叶ったものの、ジュニア級のころからずっとまともにトレーニングを受けられず、同期であり、盟友でもあるゴールドシップの活躍をずっとずっと…歯痒い思いで見続けてきた。

 

幼い頃から付き合いのある大好きな盟友の活躍は嬉しかったし、誇らしかった。

自分とは違い頑強で、トレーニング嫌いだけれど、いざ走ればG1で6勝するというひときわ輝く才能を持っていた。

 

隣にいたはずの盟友が、いつからか遠い存在のように思えたことも一度や二度では無い。

結果、芦毛観察という趣味が出来たのは彼女にとって良かったのか悪かったのか…。

 

だが、そんな盟友が二冠ウマ娘を達成したその時に同じターフに立ちながらも、手も足も出なかった己の無力を…悔いない日は無かった。

 

『ジャスタウェイッッ!!この破壊力ッ!!見事に!!見事に夢のG1に届きましたぁぁぁ!!』

 

だからこそ…あの秋の天皇賞で、初のG1タイトルを取った時に…初めて競走ウマ娘として、偉大なる盟友に…ゴールドシップに並び立てた気がした。

 

あの時は…本当に心臓の音がうるさく、ともすればこのまま死んでしまうのではないかと思った。

いや…もしや自分はもうとうに死んでいて、これは三女神様が末期に見せてくれた夢なのかもしれないと…そんな、それこそ夢物語を思い描くほどの…夢見心地な浮遊感。その後に…とても大きな達成感があった。

 

それに、仮にその妄想が事実だったとしたら、シップが悲しむだろうからと…首を横に振り、なんとかそれを押さえつけて立っていた。

 

そして、そんなジャスタウェイは今…。

 

「シップぅぅぅ!!お許しを〜〜!!」

「ほ〜ら、ジャスぅぅ…ゴルシちゃんの焼きそばぁ…たらふく食えよぉぉぉ〜!!」

「もがぁぁ〜〜!!」

 

再びよその芦毛を追跡していたのが盟友にバレ、ご馳走という名の罰を受けているのだった。

 




シリアスにはならないのでご安心を。


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