ダンまちの世界で生きてみた。 (排他的経済水域)
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1章
第1話 はじまり


意見や誤字指摘よろしくお願いします。


英雄が好きだ。

逆境を覆す姿に、絶望に抗う姿が、仲間を助ける姿が、何度も努力を重ねる姿が、奇跡を掴み取る姿が……好きだ。

自分が嫌いだ。

言い訳ばかりで努力しない事が、何度も失敗を繰り返す事が、反省を生かさない事が、人に迷惑しかかけない事が……嫌いだ。

 

だから僕は僕がなれない英雄に憧れた。

 

 

「ここは…」

 

目を開けるとそこは平原だった。周りには特に何も無いが少し先にはちゃめちゃに高い塔がある

 

「マジで俺転生したのか……」

 

いきなり転生すると言われて実感がわかなくても、実際にしてみるとだいぶ印象が変わるし、実感も湧いてくる

 

「てことはマジであいつ神なのかよ」

 

僕がここに来た理由を思い出す。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

目が覚めるとそこは真っ白な世界だった。

「ここ、どこだ?」

目の前のみなれない光景に困惑した。

なぜなら昨日寝ていた部屋とは全く似つかないどこまでも広がる空間だからだ。

 

「や!おはよう」

 

「え!?」

 

突然声をかけられた後ろを見ると人影のような存在があった。手が届くくらい近いはずなのに、顔が分からない。その姿に困惑していると、目の前の存在にまた声をかけられた。

 

「突然声かけてごめんね、君が起きるのをずっと待ってた身としては起きてくれてほっとしてさ」

 

困惑しながら僕は声を出す

「あなたは、誰ですか?」

 

 

「ん、僕は君たちの世界の神的なものさ、ちなみに君は死んだんだ!」

 

「へー、神様なんですか……は?俺死んだの?」

 

「うん、死んだよ僕の手違いで」

 

「はーそうですか……え?手違い?」

 

「うん僕が間違えて殺しちゃった!てへ♡、てか君随分と落ち着いてるね」

 

「そりゃあ起きたら、いきなり死にましたって言われても現実感ないわ

てかあんたのミスで死んだの俺?」

 

「うんそう、でもさすがに、僕もちょっと悪いと思ってこうして君を呼んだんだ、ちょっとした罪滅ぼしってやつかな?」

 

「なんかくれるの?」

 

納得はいかないけど、とりあえず罪滅ぼしの内容を僕は聞く。

 

「君を好きな世界に転生させてあげるよ、もちろんちょっとした特典付きでね」

 

「まじ!?俺も異世界転生できるの?てか特典って何?」

 

「その世界で使える好きな能力をあげるよ、さすがに強すぎて世界観壊す系の能力はNGだけどねー、これでも僕神だし」

 

「能力か……」

 

「で、どこの世界に行きたい?君の好きな本の世界にでもするかい?」

 

「じゃあダンまちでお願いします。能力は………………」

 

 

こうして俺はこの世界に来た。

 

「さてと、とりあえずオラリオに向かうか。早く金稼いで泊まるとこ確保しなきゃだしな〜」

 

こうして俺はオラリオに向かい歩いていく

 

 

 

 

 

 

 




なるべく早く書けるよう頑張ります


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第2話 とりあえずオラリオに向かう

誤字指摘、感想よろしくお願いします

主人公のステイタス
Lv1
アビリティall0
スキル 今のところ2~3個ほど予定、次回で現時点でのステイタスを明かす予定です



少し歩いて、というかだいぶ歩いて、俺はオラリオの巨大な石壁の門前の行列まで来た。

 

「しっかしこの壁たっけーな」

 

仰げば首が痛くなるほど高い壁を前に、そんな言葉が出る

行商人やら冒険者志望者?やらで行列ができていて、目立っていたので入口が見つけやすくて、助かったな〜と改めて思う、入口が分からなくて入るのに時間がかかるなんてことは無かった。

 

「さてと、どう誤魔化そう…」

 

俺には神の恩恵(ファルナ)が刻まれてる

しかも通行証もない

なぜ神の恩恵(ファルナ)が刻まれるのかは、後で言うとして

つまり門番のギルド職員の神血(イコル)に反応する魔道具(アイテム)で引っかかる可能性が大だ。どうしよう、反応するのかも分からないし、反応した場合どう言い訳していいか、思いつかない…

 

「次の者!」

 

あっやべ、考えてたら次の次まで迫ってるじゃないか!?

まぁ、流れに任せてみよう。最悪逃げてどうにかして入ろう、人生は勢いだ!

「よし、入れ、次の者!」

 

「はい!」

 

覚悟を決めて俺は返事をした、なるべくいい印象にしたいから、敬語で行こう。そう思いつつ俺は二名の門衛の前に歩み出た。

 

「通行証はもっているか?」

 

「いえ、持ってないです。冒険者になるために来ました。」

 

ここら辺のやり取りは原作知識があるので難なくいけるはず…

 

「なら大丈夫だ、君のような、冒険者志望は山ほどいるからな、しかし君荷物も何も無いが、どうやってここまで?…まぁいい背を向けてくれ」

 

やべ、荷物もないことも怪しまれた、まずい本格的にまずい…

緊張を隠しながら背を向け、神血(イコル)に反応する魔道具(アイテム)を掲げられる。

 

「また、随分と若くて痩せっぽいのがきたな」

 

一目でわかった、彼は冒険者だ、しかもかなり強い…あ!てかこいつハシャーナだ!ガネーシャのとこの殺されたやつ!こいつ今回も門衛なのかよ、もし神の恩恵(ファルナ)バレたらどうしよ、Lv4から逃げれる能力この体にないぞ……

 

「どうしてオラリオに来たんだ?食い扶持か?金か?名声か?それとも…女とか?」

 

俺がここに来た目的か…なんとなくてこの世界に来た訳では無いが果たしてこいつに目的を言っても、支障はないか?

まぁいいや、そんなこと気にしてたら原作登場人物の近く歩けないし、フィーリングでいこ!

 

「英雄を探すためです。」

 

「英雄?そりゃ随分と珍しい理由だな、見たとこ小人族(パルゥム)でもないから勇者(ブレイバー)目的でもないだろうし、なんで英雄なんだ?」

 

「えーっと正確には英雄の誕生を見たいんです、この世界の災厄を倒してくれる英雄の…だからそれを見るために、オラリオに来ました。」

 

「そうかい、俺にはよくわからん信念だが……。まぁ頑張れよ、その英雄とやらを見るためにも」

 

「ハシャーナ、勤務中だ。以前にも言ったぞ」

 

「へいへい」

 

そんな話をしていると俺を調べていたギルド職員が調べを終えたらしい

どうやら俺の背中は引っかからないらしい、これはいいな。利用出来るかもしれない。

 

「さて君、冒険者になるにはギルド本部に言ってくれ、そこで説明も受けられる」

 

「分かりました。」

 

「ただ、冒険者登録を受けられるのは神の恩恵(ファルナ)を持っているものだけだ、注意してくれ」

 

「分かりました、ご忠告ありがとうございます。」

 

「おい、若造今ならなんでも答えてやるが、なにか質問はあるか?」

 

冒険者改めてハーシャナが僕に聞いてきた。聞きたいことか、何個かあるが、1番重要なのは…

 

「じゃあ剣姫を知っていますか?」

 

「ああ、剣姫かそりゃあ知ってるさ、ここにいて知らないなんてやつは居ないだろうな、剣姫がどうしたんだ?」

 

いるのかアイズ、まぁフィンの2つ名を言ってたことから、原作からそんな遠くはないとは思っていたけど、ちょっとまずいな。

 

「それじゃあ剣姫のLvを…いや剣姫と勇者のLvと何年前にランクアップしたのかを知りたいですけど、教えてもらえますか?」

 

「まぁ、公にされてるやつしか知らんが、いいぞ、確か剣姫がLv5、勇者がLv6だったかな?剣姫の方は3年前にくらいにランクアップしたはずだ、勇者の方は知らんな…結構前だったと思うぞ」

 

なるほど、つまりこの世界は多分原作と同じくくらいの時系列ってことか、本格的にまずいな、こりゃあ《アイツ》に追いつくのは大変そうだ。

 

「教えてくれて、ありがとうございます。じゃあ門衛頑張って下さい。」

 

「ああ、お前も頑張れよ!そういや名を聞いて……行っちまったか」

 

こうして僕、いや俺の物語が始まる。




小説書くのって大変…


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第3話 現状確認と方針

だんだん書くのに慣れてきました。
誤字指摘、感想よろしくお願いします。


さてと都市内には入れたな。なんにも聞かれなくてよかった…まぁ神の恩恵(ファルナ)をもっていても、偽物みたいな扱いなんかな?このスキル…神からもらったスキルの性質を考えつつ、俺は街目の前の景色に目を向ける。

 

眼前に広がったのは、壁の外からでは想像できないほどの美しい街並みだった。現在地である門前広場から、真っ直ぐ伸びるメインストリートである目抜き通りに、整然とした石畳の上を行き交う馬車、立ち並ぶお店の数々。

視界の奥の荘厳な白い塔を中心に栄えるオラリオの街並みは、前いた世界でもお目にかかることの出来ない、綺麗で不思議な光景だった。

 

「前の世界では外国とかも言ったこと無かったしな〜、まぁとりあえずギルドに行くか、でも金なし、所属ファミリアなしじゃ冒険者登録は出来ないよな…」

 

そんなことを考えながら今後の方針を立てていく。俺の目的を叶えるために必要な条件は大きくわけて3つだ。

1.単純に強くなる、現時点の目標はLv4くらい

 

2.ベル クラネルの存在を確認する、やっぱ主人公は見ておきたい。

 

3.、金を稼いで、衣食住を確保する

 

こんなもんか?まぁ最優先としては3だよな。

さすがにこのままだと餓死する…ベルを見つけるには、まずは今が何巻の時系列かを確認しなきゃだし(アイズがLv5ってことは1巻より前、又は1巻の時系列なのは確定)ってことはまだ時間的に余裕がある。

 

まぁ1はコツコツやるしかないよな、まぁ俺の場合スキル(神の偽能)があるから普通よりは早いだろうけど…と思考を加速させていると前から来る獣人らしき人とぶつかった。

 

「いてぇな、おいてめぇどこ見て歩いてんだ!?」

 

「あ!すいません」

 

あっやべこれもしかして裏道に連れてかれるパターンか?結構不味くない?今の俺最弱だよ?

 

「チッ、気をつけろ、ガキが」

 

あれ?思ったよりあっさりしてるな?裏道に連れてかれボコボコにされて

奴隷として売り払われるぐらいは想定してたから、逃げる準備万端だったんだけど?

と思っていると後ろにガネーシャファミリアの仮面を着けた人がいた、俺が助かったのはあの人のおかげってことかな?

そりゃあ、警察の前でカツアゲするやつはいないわな、頭のおかしい奴以外

 

「まぁ二の舞になりそうだから歩きながら考えるのはやめよ」

 

そう呟き俺はメインストリートからそれて横道を通り、少し歩いた先の人があまり来ない裏道まで来た。

 

多分ダイダロス通りの近くなのかな?奥の方に道端で寝ている人影が見えた。まぁここなら多分人は来ないだろ。

さてと考え事もしなきゃだけど、まずは俺の現状のステイタスを確認するか…とっ考え、俺は神?から貰ったスキルを使う

 

「ステイタス・オープン」

 

そう呟いた瞬間、目の前にゲームのステータス画面のような物が出てきた。

 

 

 

〖アマミヤ・レイ〗

所属 :【なし】

ホーム【なし】

種族:ヒューマン

職業(ジョブ):なし

 

ステイタス

Lv1

力:I0

耐久:I0

器用:I0

敏捷:I0

魔力:I0

 

《魔法》

【サンダー・ボルト】

詠唱 なし

・付与魔法(エンチャント) 威力調整、部位調整可能

 

《スキル》

【神の偽能】・ステイタス更新を自分で可能

・ステイタスを刻んでいる人間のステイタスを視認可能

 

【大賢者】・地図、思考加速、身体操作補助、並列思考、思考補助

 

【英雄追想】・成長速度を対象にしている人物と同じになる。

 

【闇の権能】・装着時全能力上昇、闇の触れたものの感覚を共有可能

・自由に闇の姿形を変更可能、削除作成自由

 

って感じにでてきた、ちゃんと指定した通りになっていて少しほっとしている。

我ながらなかなかにチートだと思う、まぁ使い方次第で変わるんだろうが、上手く使えるよう頑張ろう。

名前は前世と同じらしい、うーん改名しようかな?この世界に会う感じのいい名前でも思いつけばいいが、如何せんネーミングセンスには、自信が無い

「まぁ、レイって名乗ればいいか?いや、異端児(ゼノス)のレイと被るな、まぁいいや同じ名前がいても、違和感はないだろ、ステイタス・クローズ」

 

そういい、俺はステイタスを閉じる。

 

「さてと、とりあえずギルドに行くか、いや、その前に《あの神》にあって名前を借りられないか交渉しよう、あの神ならある程度は、信用できるしギルドには今日中に行ってさっさと冒険者になりたいしなー、現状の情報を得られるだろうし」

 

俺は、冒険者になるための準備として神と交渉に向かう。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

時を同じくて石壁の門への道での話

 

 

 

「おい、坊主。見えてきたぞ」

ガタゴタ、と。

車輪の音と衝撃に体を揺すられながら、夢から目を覚ました。

膝を抱えて寝ていた少年は、御者から声をかけられ、荷馬車から顔を出した。

その少年は、大きな壁と差に囲まれてる巨大な都市に、蒼穹に向かって伸びる白亜の巨塔を見て、見惚れていた。

 

「すごい……!」

 

 

 

レイと時を同じくして、この世界の主人公である、ベル・クラネルの物語が始まろうとしていた。

 

 

 





スキルの名前、横文字でいいのがあったら案ください、ネーミングセンスが無さすぎてやばい。

スキルは自分の好きなキャラの能力を元にしてます。
転〇ラ、メリ〇ダスが一応の元にしてるキャラです。


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第4話 冒険者登録

今更ですが、主人公の外見
身長 180cm、年齢18歳
体型 痩せ型、意外と筋肉はある
黒髪、両目とも黒
イメージとしてはキリト辺りが多分近い
運動関係のセンスは皆無
顔は転生特典でそこそこ良い
服装 決めてない、戦闘装束(バトルクロス)は入手イベ作るつもり
前世とは顔以外はほぼ同じです。


誤字指摘、感想お願いします。


道に迷った…すぐに見つかるかと思ったら大間違い、死ぬほど迷った…なんでオラリオってこんな道多いの?標識も読めないし…

こんな街で迷ってる様じゃダンジョンで絶対迷子になる…というわけで早速スキルを使う

《大賢者》使用、地図、思考補助起動

 

すると視界の右上に地図が表示される、円形で半径は500m程度だろうか?範囲は調節は出来そうなので、用途によって変えよう。そして文字も読めるになった。今更だがまじで便利だなこれ

とりあえずこれは必需だな、これがなくなった瞬間俺の冒険者人生は詰む、絶対スキル消す呪詛(カース)なんて喰らわない!ていうかあるのか?まぁいいやまずは聞き込みだ!人がよさそうな人に声をかけよう。そう思い俺は道端の女の人に声をかけた。

 

「あの?すいません。」

 

「はい?なんでしょう?」

 

「実は少し聞きたいことがありまして、青の薬舗というお店をご存知ですか?ミアハ様という神のお店なのですが?」

 

「ああ、知っていますよ?そこの道を道なりに進むと多分見えてくると思いますよ?」

 

「ありがとうございます。このお礼はいつかさせてもらいます。生憎今は1文無しでして笑」

 

「いえ、お礼なんて大丈夫ですよ。ミアハ様にはお世話になってますし」

 

「そう言って貰えるとありがたいです。では」

 

よし!最初の人で場所がわかるなんて運がいい。1文無しを言ったあとの女の顔がすごい可哀想な奴を見る目だったが気にしない!そんなの気にしてたら生きていけない!……はぁ早く金稼ご。

こうして俺は青の薬舗、いや神ミアハの元へと向かう。

 

数十分ほど歩いて薬舗に着いた。うん。外観はボロいなんというかちょっと入りづらい、前世のゆとり世代気質がここででてくる、しかし俺はこれから冒険者こんな気質捨てよ!と思い覚悟を決めて薬舗にはいる。入るとそこには犬人(シアンスロープ)の女性がいた。ミアハ・ファミリア団長のナァーザ・エリスイスだ。可愛い。アニメではそんなに好きな顔じゃなかったが、実際に見るとおっとり系で可愛いな、やべぇ緊張してきた。

 

「いらっしゃい、御用は?」

 

「あっすいませんミアハ様はいらっしゃいますか?」

 

「ミアハ様に何か用?」

 

あっなんか警戒されてそう、急に声が1段階低くなった。

 

「えっと先程ミアハ様に助けられましてそのお礼を言いに来たんですが…」

 

「ああ、いつものやつか、まぁいいよちょっとまってて」

 

ふぅ…何とか会えそうだ、よかったここで門前払い食らったら普通に詰む気がする、ミアハ様以上に俺の求める条件に合いそうな神いないだろうしな。俺の求める条件は

1.見返りを求めてないで、俺の頼みを聞いてくれる

 

2.ベルクラネルと繋がりがあり、今後会う足がかりになる

 

3.愉快犯じゃない神

 

うん。普通にミアハ様以外いない、だって3で八割の神がいなくなるもん……

そんなことを考えていると奥から青髪のイケメンが来た。彼こそがミアハ・ファミリア主神のミア………いや想像以上にイケメンだな!?なに神ってこんな顔いいの?えぐ…そりゃあ神に恋する女が多いわな

 

「私がミアハだが、そなたは?」

 

「僕の名前は、レイと言います。今日はミアハ様にお願いがあってきました。」

 

「お願いとな?私にできることなら、協力してもいいが、生憎と私にできることなぞ少ないぞ?」

 

「名前を貸してほしいんです。ミアハ・ファミリアの」

 

「ほう?名前を?」

 

「実は事情がありまして、本来の神の名を使い、冒険者登録をしたくなくて名前だけでもミアハ・ファミリア所属の冒険者として冒険者登録をさせてもらえばなと…」

 

「ふぅむ…ナァーザどう思う?」

 

うっ…まずいかもしれない、ミアハはともかくナァーザは否定的な顔をしている。

 

「正直怪しいので関わりたくないです。」

 

フッ。なら奥の手を使うか!

 

「では、名前を貸してくれたら一日につき1万ヴァリスを払います。冒険者になったら青の薬舗を積極的に利用しますし、冒険者登録以外では、ミアハファミリアの名前も使いませんし、迷惑をかけた場合切り捨ててもらって構いません」

 

「名前くらいなら使わせていいと思います。」

 

恐ろしく早い手のひら返し…俺でなくとも見逃さないね!

 

「ナァーザがいいなら、私としても反対はしない。しかし良いのか?そなたは金に困ることになりそうだが」

 

「まぁ大丈夫です。初日はさすがに無理だと思うので、数日待ってもらうことになりますが…」

 

「まぁそのことは気にしなくてもいい、我が薬舗を利用してくれれば文句もない」

 

「ありがとうございます。」

 

こうして俺はミアハ様の許可を経て冒険者登録への足がかりを手に入れた

 

 

そんな交渉を経て、俺は今ギルドに来た。

アニメのおかげで外観は知ってたし、《地図》も使っていたので思ったより余裕でつけた。

「よし、中に入るか」

 

中に入ると、アニメで見たまんまの光景があった。そのまま歩いて受付の列まで行き、順番が来るのを待つ。前世では役場とかも行く機会はほぼなかったし少し緊張している。そんなことを考えていると順番が来た俺の対応をしてくれるのは……エイナさんじゃん!うーん、これはどうなんだ?

正直勉強会は面倒臭いぞ、てかハーシャナといい、エイナさんといい初日のベルと同じなのかよ、まぁベルの場合はギルドに来た日は別日だけど、まぁ普通に対応してアドバイザーは断ればいいや。

「ようこそ、冒険者ギルドへ、本日はどのようなご要件で?」

とっそんなことを考えているとエイナさんに声をかけられる。

「冒険者登録をお願いしたくて手続きをしに来ました。」

てかこの辺の原作知識ないから、行き当たりばったりになってしまうが、しょうがないな 

「確認ですが、新規の冒険者、登録の方で間違いありませんね?」

 

「はい。」

 

「では、この羊皮紙に必要事項の記入をお願いします。」

 

指示通り、名前や所属ファミリア、種族、年齢などを書いていく。

 

「お願いします。」

 

「はい、お受け取りします、所属はミアハ・ファミリアですね、明日はダンジョンに潜る予定ですか?」

 

「はい、そのつもりです。」

 

その後必要事項を教わり、アドバイザーの話になる。

 

「では、アドバイザーはどうされますか?」

 

「同じファミリアの先輩に教わる予定なので大丈夫です。」

 

「分かりました。では明日からのご活躍を期待しています。」

 

「はい、ありがとうございました。」

 

そう言って俺はギルドでの用を済ませたので、出口へと向かう。

 

ギルドからでて、ふぅーと息をつく

 

「なんか疲れるな、まぁ今日は色々あったしな。まぁまだ肝心のダンジョン探索が残ってるけど…」

 

今日起きたことを振り返りつつ、目の前の巨塔へと視線向ける。

目の前にあるのは様々な施設のある巨塔(バベル)、そして何百、何千年もの間、人類が踏破出来ないダンジョンの入口。

自分がこの怪物(ダンジョン)を踏破できるとは思えない、ただ、このダンジョンを踏破した時それを横でみれる存在にはなりたい。前世だったらそんなの無理だと諦めていただろう、ただ俺にはそんな願いを叶えることのできる素質(チケット)がある、なら努力しよう、いつか英雄(ベル)の隣で踏破を喜び合い、最悪(黒龍)を打倒すことの出来る存在の1人になれるよう。

今日はその第一歩だ、エイナさんには明日からと言ったが、そんな余裕はない、なんせ追いかけるのは最速兎だ、一緒に走り出したら絶対負ける、ならどうする、簡単だ、先に走り出せばいい。そう思い俺はダンジョンへ向かう。

 

 




主人公がもし宿に泊まる金があれば普通に明日から潜ることになりました。主人公の決意なんてそんなもんです。


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第5話 初めてのダンジョンと装備揃え

ここから戦闘パートが入るんですが、如何せん初めてなので、ご容赦を
感想、誤字指摘よろしくお願いします。
主人公、かなりチートからそこそこチートに変更しました。
武器とバトルクロスに名前を付け加えました。某黒の剣士と同じです。第1級相当の武器の名前はちゃんと、自分で考えるつもりです。


気持ち悪い。その一言で表すとそんな感じの空間だった。

前世では洞窟なんて小学校の頃、どこかの山の水路を通ったぐらいしか覚えがない、でもそれとは全然違う、少なくとも前世の洞窟は多少楽しかった。マイナスイオンだがなんだか知らないが、気持ちも落ち着くこともあった。しかしここは、周りを見ればどこまでも、続いていそうな不気味な道、その上に…

「出てきたか」

 

壁から何体かモンスターがでてきた。あいつはゴブリンか。初めての戦闘相手としていいな。

冷静に分析できてるのはあくまで《大賢者》の思考補助のおかげだ。前世ならきっと逃げることを選択してただろう、それくらい俺は臆病だった。だが今の俺には対抗出来る力がある。そう確信しつつ素人なりに、構えをとる。

ゴブリンが1体、真っ直ぐに向かってきた。俺はゴブリンから目を離さず、スキルを使う

 

 

《大賢者》 起動、思考加速、身体操作補助

《闇の権能》起動

 

俺はスキルをふたつ起動する、思考加速を行いつつ、《闇の権能》で剣を形作る、刃渡りはゴブリンを両断出来て、投げられる程度のサイズに設定

それを使い、俺は向かってくるゴブリンを両断する。その後ろから2体のゴブリンが左右から来る、俺は左のゴブリンへと剣を投げ、首を突き刺し

空いた片手で同じような剣をもう一本つくる、剣を投げている間近ずいてきた右のゴブリンからの攻撃を剣で防ぎ弾く。力は俺の方が上のようだ。まぁこの体格差で俺の方が力が弱かったらちょっと絶望だが、そんなことを考えながらゴブリンの首を切る。

 

「ふぅ、戦えるな。」

 

初戦にしてはいい出来なのではないだろうか、ゴブリン三体を捌けたことに自分自身で驚いた、自分の思ったように体が完璧に動いた。身体操作補助の恩恵は思ったよりデカそうだ。そして俺はステイタスの更新をする。

 

力I0⇒I15

器用I0⇒I12

 

いきなりかなり伸びた、初回ということもあるのだろうが、やはり《英雄追想》の効果が大きいのだろう、ちなみに設定している人物はリアリス・フレーゼの取得初日のベルだ。そりゃあ伸びるだろう。魔石を回収しながらこの後の行動を考える……よし!とりあえず疲れるまで戦ってみよう、今夜の宿代程度は稼げるように!

 

「さてと、次は魔法を使ってみるか…」

 

《サンダーボルト》起動

 

心の中で言うと身体中に電気が流れ、バチバチと激しい音を鳴らしている。俺はその流れを調節し、全身から左手に流れを制御する。すると雷が左手に集まりさらに強い音を鳴らしている。一旦付与(エンチャント)

を解く。すると体に疲労感が募る。これは…今は多用できなさそうだな…少なくとも、もう少し制御できるようになってからだ。こいつは今はセーブだな。

俺はそんな調子で1層、2層、3層と順当に攻略していく、きちんと1層ずつ完璧にマッピングはしておく。3層を攻略し終えた後にステイタスを確認する。力G220、耐久I65、器用G250、敏捷F320、魔力I25

 

うんエグイな、《英雄追想》ていうかベルくん、そりゃあ第1級冒険者がビビるわ。

えげつない伸び方をする、この調子ならLv2になるのも早いかもな〜

なんてことを考えながら俺は魔石をまとめ、地上への帰還の道を辿る。

 

ギルドにつき換金をする、5500ヴァリスになった。

まぁ初日にしては重畳だろう、宿代は稼げた。

明日6層位まで潜れば、倍位は稼げるだろうし、本日の稼ぎを確認しながら俺は忘れていたロキ・ファミリアの遠征状況を見た。これがないとベルがいつ来るかわからん。

資料を見るとロキ・ファミリアは今日遠征から帰還したようだ、つまりベルクラネルは今日この街に来たということになるのかな?

今度、エイナさんにそれとなくベルの特徴を聞いておこう。ていうか夕方にダンジョンに入ったから今は早朝なんだよな、まぁ眠くはないし、このまま食事をしたらエイナさんにベルのことを聞いてダンジョンに潜ろう。

そんな風な生活をして2週間ほどたった。

 

朝、宿で起きる⇒ダンジョンに向かう⇒夜まで稼いだらギルドで換金⇒飯を食べて寝る(主にじゃがまるくん)

 

そんな生活を繰り返し、11階層まで踏破することが出来た。稼いだ金は合計45万ヴァリス、青の薬舗に15万渡すのと宿代、食事代で3万ほどで結果的に、28万ヴァリスの金を稼いだことになる。

ステイタスは

力S989、耐久B720、器用SS1028、敏捷SSS1189、魔力B701

までに上昇した。

そんな順調な冒険者ライフだったが、今日はこの都市に来て初めてダンジョンに向かっていない。何故かと言うとそれは昨日換金に行ったギルドでの話。

 

 

「レイさん?今日も換金ですか?」

 

「はいそうですが、何か?」

 

「何階層まで行ってるんですか?」

 

ウッまずいこれは11階層まで行ってることがバレたら怒られる気がする…

 

「7階層ですが?」

 

「嘘ですよね?最近魔石を鑑定しているものから、連絡があって11階層でしか出現しないモンスターの魔石を持ってくる人がいるそうなんですよ?でもその人は鎧も武器も持ってない、黒髪の人物だそうです。」

 

これは多分詰んでるな……正直に言うか。

 

「すいません、それは僕ですね。でもそれが何か問題がありますか?」

 

「問題だらけです!?なぜ冒険者に登録して2週間しか経っていないのに、11階層まで行ってるですか!死にたいんですか!?」

 

はちゃめちゃにキレられた。

怖っ…でもここで言い返さないと、のちのちめんどいぞ。頑張れ俺

 

「あなたは僕のアドバイザーでは無いので、あなたの言うことを聞く必要は無いですよ。進む階層は僕が自分の力似合ってるのがそこだと思ってるからですよ?Lv2ですし」

 

俺は冒険者登録をする際Lvを偽って登録した。どうせすぐあげるつもりだったし問題ないと思ってたんだが…

 

「いくらLv2と言ってもソロで、ダンジョン初心者の状態で11階層まで行くのは危険です。ギルド職員として潜るのはおすすめできません。」

 

エイナさんに俺の行動を縛る強制力はない、ギルドとしては俺の安全よりも、魔石を優先している。

まぁ要は自己責任ってやつだ。ただ彼女に嫌われて得をするかと言うと、そうでも無いむしろ、デメリットの方が大きいだろう。ここは多少譲るか、やりたいこともあるし

 

「分かりました。では最低限戦闘装束(バトルクロス)と武器を揃えます。そろそろ借りた剣も切れ味が悪くなりましたし」

 

俺はダンジョンに潜った次の日ギルドから剣と胸当てをローンで貰った。もちろん金は返し済み。だがどちらも剣を使ってますよーのポーズをとるためと防御方面で不安なため購入したものであるため、ほぼ使用してない。

 

「分かりました。そういうことでしたらいいでしょう。ただし11階層へはもっとしっかりと準備をして挑んでください。お願いします私はあなたに死んで欲しくないです。」

 

こういうことを素で言ってしまうから、この人はモテるんだろうな。

 

「分かりました、善処します。」

 

このような理由があって今日の俺は休日だ。

しかしベル君みたいに一緒に着いていくと言わない辺り俺は嫌われてるのだろうか?

いや!たまたまただ予定が合わなかったのか、それともベルが気に入られてるだけか。

多分最後だな。さてとそんなことを考えながら、俺は巨塔(バベル)の下級鍛冶師たちの作品があるテナントに来ている。俺の予算を考えるとこの辺から探すのが、妥当だ。剣に関しても本当にマトモな物が欲しいと思っていたし、服についても破れるのを気にして、回避ばかりして耐久の上がりが遅かったりと弊害が出てきている。それに…この先中層で武器なしは危険だというのは自覚している。1度で切れていたモンスターしかいなかった1〜5階層と違い6階層からは何回も切らないと行けなくなってきている。スキルに関しては、俺の成長度合いで能力が強化されるからつまるのところ、そろそろ限界が来ている。Lvをあげる機会で、しっかりとあげれるよう準備は完璧にしておきたい。その準備のひとつが今回というわけだ

テナントを見て周り良さげのなものを探していく。

 

「と言っても俺の場合どんな剣がいいとかはないしな〜頑丈なものとか、ミスリルだと魔法適性が高いから魔法と相性いいかもな。」

 

最初の頃制御が不安定で使うことを避けていた。

《サンダー・ボルト》もやっと制御ができるようになってきた。

今は火力を10段階に分けて扱う訓練と部位ごとに雷を集める訓練をしている。もう少し訓練すれば対人戦や格上相手の戦闘でも使えるだろう。

 

まっ今は武器と戦闘装束(バトルクロス)だな、一応武器はメインとサブで2本欲しいんだが…と俺は思考をまとめるを終えて、テナントの武器を見回す。少し見回してると樽の中に刺されている1本の剣が目に付いた。

引き抜いてみると片手剣にしては少し重い、頑丈そうな見た目で装飾などは一切無し、長さは1M程で、片手剣の両刃系、軽く振ってみると手によく馴染む。値段は…3万ヴァリス、安いな、よしこれをメインとして使うか。名前は《アニール・ブレード》か。次はサブ用の武器だな...すぐ出せるように軽いのにしたいんだが…そんなことを考えながらテナントを回っていると、少し値段の高いエリアに来た。そこで壁にかけてある短剣に目がついた。色は刃の部分が銀色、柄が黒、手に取ってみると意外と大きい、0.6M程だろうか、名札を見てみるとミスリル製ということが分かる。値段は5万ヴァリス、先程の剣より高いが、まぁミスリル製ならこの程度はしてしまうのだろう、名前は《スティレット》というらしい。

よし、これにしよう。

 

あとは戦闘装束(バトルクロス)だな。そう考え、鎧などのテナントに行く、そこには沢山の服や鎧があった。

フルプレートアーマーやライトアーマー、胸当てなどもある、男のが見たら喜びそうな場所だ。柄にもなくはしゃいでしまいそうだ。

まぁ怒られそうだからはしゃがないけど、見回していいものを探すが、なかなか良さげなものがない。諦めてもう少し高いエリアまで見てみようと思い出口へ向かうと、端の方の重厚感のある鎧の隣に紺色のコートがかかっていた。手に取ってみるとかなり軽い、動きやすそうだな、内側にはナイフなどを付けられそうな紐も着いていた。某黒の剣士が最初の頃きていたものに、似ている、かっこいいな。これにするか、いや少し防御方面が怖いか?と考えているとコートの下に肩と胸を守るようのに鎧のようなものが一緒に装備されている。ギルドで買ったものより頑丈そうだな、これも一緒に着いてくるらしい。値段は45000ヴァリス、コートの名前は《ミッドナイト》というらしい。名前まで似てる、変な偶然だな。まぁいいこれにしよう。

 

3つ合わせて12万5千ヴァリス…痛い出費だがこの先進むのに、必要なものなので目をつぶる。その3つをもって会計を済ませ外に出る。外は夕日が綺麗なこと以外この2週間とほぼ変わらない街並み。色々選んでいるうちに1日使ってしまったようだ。さっさと帰って明日の準備をしなければ。そう思いつつ宿に帰る前に、夕食用のじゃが丸くん抹茶クリーム味と青の薬舗でポーションを3、4本ほど購入し宿に向かう。ちなみに青の薬舗ではお金を払ってからナァーザさんの態度が軟化した、色々買わせて来るオマケ付きだが、嫌われるよりマシだろ。いざと言う時頼られる程度には仲良くしたいし、嫌われていいこともないし。そんなこんなで初めての休日が終わる。

 

ちなみにエイナさんに白髪で赤い目の少年とベルの特徴を聞いた結果分からないと返答されたが、次の日にはベル君のことですか?と聞かれたので、偶然?にも俺はベル・クラネルと同じ日にこの都市に来たらしい。

あの神?が狙ったのか知らないがまぁ悪いことではない。つまり原作通りに行けばあと3週間ほどでロキファミリアの遠征帰りに《ベル・クラネル》と《アイズ・ヴァレンシュタイン》が会うということだ。

 

それまではベルに会わないようにしなければ、下手をすると原作改変してしまう可能性もある、この出会いだけは絶対に成功させなければならない。下手をすると、ダンまちが始まらない可能性すら出てきてしまう。まぁそうなったベルも見てみたいかもしれないが、弱いベル君は解釈違いなのでNGだ。

そんな考えをしながら、俺は宿のベットで眠りについた。

 

 

 

 

 




主人公はベル×アイズ推しです。ベル×リューも好き
主人公は2週間、1日三百匹ペースでモンスターを狩り続けています。まぁお金は溜まりすぎな気もする。
原作だとベル君は冒険者としての才能がないと言われてた気もしますが、今作の主人公は才能なんて欠けらも無いです。今のところは原作知識でどうにかしてますが冒険者としてはもちろん素人です。


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第6話 昇華Ⅰ

誤字指摘、感想よろしくお願いします。


目を覚ますと、2週間毎日見ている天井が見えた。

この世界でもう半月も過ごしているのに、感覚ではとても短く感じている。まぁ前世の世界じゃ1年すら短く感じていたので、それに比べれば可愛いものかもしれない。それにこの世界に来てからの生活はとても充実しているので短く感じるのは、当然なのかもしれない。まぁダンジョンに行って、ダンジョンから帰って、ダンジョンに行っての生活だがそれでも充実しているということには、変わりないだろう。俺は別にこの世界で何かを遂げたいという目的はない。せいぜいベル・クラネルと仲間になって英雄となるところ見届けたいくらいだろうか?あとは推しと仲良くなれたら嬉しい?かな、だが仲良くなれる自信はない。推しと喋れる自信すらない。まぁ会おうと思えば会えるんだよな推しと……ちょっと行きたくなってきたな。まぁ行く予定ではあるんだよな、ベルと確定で会える場所ではあるし、まぁ今は強くなるのが最優先。頭を切りかえ、ダンジョンに向かう準備をする。顔を洗い、昨日買った武器の装備を身にまとい入口の鏡の前に立つ。改めて見るとなかなかかっこいい気がする。前世ではあまりオシャレに気を使っていなかったし、今世では気を使おうかな…まぁ冒険者という役職上最低限しか出来なそうだが。そんなことを考えつつ、俺は扉を開けてダンジョンに、その前にギルドに向かい、エイナさんに挨拶と装備の話をする。

 

「おはようございます。エイナさん、約束通り装備買ってきました。」

 

と買ってきた装備を見せる。エイナさんはクスッと笑い

 

「わざわざ見せに来てくれたの?」

 

「あっ、確かに装備を見せるだけなら帰りでも良かったですね笑」

 

別にわざわざ見せに来なくても、ギルドに来るついでに済ませればよかったのだ。そう考えると恥ずかしくなってきた笑

 

「でも話しておきたかったこともあったし、ちょうど良かったね」

 

「そうなんですか?」

エイナさんからの話…これはお叱りか?昨日の今日で怒られるようなことはしてない気がする

 

「もうすぐロキ・ファミリアが遠征から帰還する時期だから、興味があっても喧嘩うったりしないでね?レイくんに限ってそんなことは無いと思うんだけど。」

 

なるほど、大派閥への注意喚起か、こう考えるとギルドの人ってやること多くて大変だよな、しっかしさすがに喧嘩売るつもりは無いが少し見てみたいな。アイズとかどんくらい可愛いんだろ?

 

「さすがに喧嘩売ったりはしませんけど、確かに興味はありますね」

 

「かなり前に大派閥の主神に話しかけて反感をかって、都市外に追い出されたファミリアもあるんだから本当に気をつけてね?」

 

背中に冷や汗が垂れる、僕そのファミリア知ってます。多分半年後くらいに喧嘩するファミリアですね…

 

 

「それと絶対ソロでこれ以上の階層には潜っちゃダメだからね!最近中層のモンスターが10層まで上がってきたっていう報告も来てるから本当に。」

 

という厳命をもらいつつ、ダンジョンへ送り出される。今日は元々8階層程度で装備を試す予定なので潜らないが、いつかは潜るのでこの厳命は半々程度に聞いておくことにする。

挨拶を済ませたせいで少しいつもより遅れてしまったので駆け足でダンジョン入口に向かい、ダンジョンに入る。

 

 

 

 

 

レイがダンジョンに向かったあとのギルド、昼休憩での会話

 

「エイナなんか嬉しそうだね?」

 

彼女の親友である。ミィシャ・フロットがエイナに声をかける、どうやら親友の機嫌が良いことが気になったらしい。

 

「そう?さっきレイくんが来てね、昨日買った装備を見せてくれたの」

 

「あーあの黒髪の人?Lv2だっけ、18歳なのにすごいよね。礼儀正しいし」

 

「うん。確かに礼儀正しいんだけど、なんというかいつも敬語で取っ付きづらかったんだけど、今日は嬉しそうに装備を見してくれてね、なんというか初めて年相応の反応を見せてくれた気がして、多分それが嬉しかったのかな?」

 

エイナがレイとの会話内容を話すとミィシャがジト目でエイナを見る。エイナがその反応に対して、

 

「な、何?」

と反応すると、

 

「いや〜、エイナってもしかして年下好きなのかなーって。ほら例の弟くんとも仲良いし」

 

「なっ!?そういうのじゃないよ!ただ少し仲良くなれた気がして嬉しかっただけ!ベル君とも担当冒険者ってことで話す機会が多いだけで、レイさんともこの前注意した時のつながりで話だけだし!」

 

と勢いよく否定するエイナを見て、ミィシャは面白く感じたのか、茶化そうとするが、少し考えて別の話する。

 

「でもエイナやっぱりあんまり冒険者の人と仲良くするのは気をつけた方がいいよ?」

 

「うん。でも私に出来ることは全部やっておきたいの、前みたいな思いは後悔したくないし」

 

「そっか、頑張りすぎないでね?」

 

冒険者というのは命懸けの職業である、モンスターを狩ると言うことはモンスターに狩られるか可能性も当然あるということ、しかもダンジョンはただでさえ異常事態(イレギュラー)が置きやすい場所、そういうこともあって昨日まで喋っていた冒険者が次の日に死体になって見つかるなんてことギルド職員にとってはぼぼ日常として化していた。だからギルド職員は冒険者と1歩距離を置く、エイナの行っている勉強会などはエイナ個人の行いであり、ギルド職員にとってはかなり異端な行為と、エイナ自身認識している。しかしそれが諦める理由にはならないとエイナは考えている。自分のできる限りのサポートをしようと。そうしてエイナは冒険者は冒険をしては行けないや勉強会をめげずに担当冒険者に対して行っている。レイは勉強会はしていないものの外のLv2ということは相当才能がある青年ということだろう、そんな青年でも自分の意見を一応だが聞いてくれている。自分のやっていることは決して間違いではないと認めてくれている。そんな気がしたのかもしれない。

今思えば彼は普段は落ち着いているが、ダンジョンではどうなのだろう?と思った、いや彼だけでは無い、ベルやほかの冒険者であるドワーフのドルムルやエルフのルヴィスも地上と地下では変わってくるのだろうか?そんなことを考えてると昼休憩の終わりを先輩が告げに来た。

「エイナ、ミィシャそろそろ昼休憩も終わりだ、前に出ている奴らと変わってやってくれ」

 

「はい、分かりました、ほら行くよミィシャ」

 

隣の親友に声をかけ頭も切りかえて仕事に移る。

 

 

 

 

 

ダンジョン8階層

 

「ほい!」

勢いよく縦に《アニール・ブレード》を振り、キラーアントを両断する。想像よりも軽く切れて少し驚いた。これが切れ味の差か。自分で《闇の権能》で作った剣と重さくらいしか違わないのに、格段に戦いやすくなったことを実感できる。これはスティレットにも期待できそうだ。

目の前からウォーシャドーが2匹、キラーアントが1体出てくる、

キラーアント>ウォーシャドー2

発見した瞬間即座に倒す優先順位をつける。こうすることで迷うことなく攻撃できる、この2週間で効率よく狩るために考えて身につけたことの一つだ。ただ多勢に無勢なのは変わらない、しかし距離は5Mほどあるこういう時は…

《サンダーボルト》

魔法を行使する、その瞬間手に雷が発生そのまま雷がキラーアントに向かって放出されキラーアントを焼き尽くす、ただ出した雷の量が多すぎてそのままウォーシャドーも焼いてしまった…

 

「やっぱり火力調整が課題だな、放出はかなりスムーズにできるけど」

 

出しすぎは今はまだいい、魔力の消費も多くなるし、味方がいた場合巻き込んでしまう危険性もあるが、今のところはどちらもそこまで気にしなくていいことだ、ただ火力が小さかったりして倒せないと問題なのでそこは気をつけることとする。ちなみに《サンダーボルト》は付与属性(エンチャント)だが放出もできることは使っているうちにわかった。最初はベルの《ファイヤ・ボルト》のように速攻魔法として使えると思ったが、色々と制限も多い、飛距離を伸ばそうとすると威力も距離と比例して下がる、しかも距離が長ければ長いほど制御が難しくなるまっすぐ飛ばせなかったのはそれが理由だ。逆に威力を出そうとすると、飛距離が落ちもう踏み込んで切った方が良くね?となる今のところ安定した火力で飛ばせる距離はせいぜい5Mが限界だ。まぁこの辺は魔力の上昇と練習だな、そう思いつつ先程倒したモンスター共の魔石を回収、《ステイタス》を更新していく。力が5、魔力2ほど上がっている、だが最初の頃ほどは上がらない。まぁそれは仕方ないことではある、《ステイタス》は最初は上がりやすいが、上がっていく事に上がりにくくなっている、それはベルクラネルの憧憬一途(リアリス・フレーゼ)でも同じだ、その恩恵を借り受けている俺も例に漏れず上がりづらくなっている。

 

「まぁSSなんてステータス他の人間じゃ出せなさそうだし、それだけでもでかいけどな…」

 

自分のステータスについて考えてると下からいきなり大きな振動がきた。

いきなりの振動に驚きながら周りを警戒する、周りには何も起きてない

つまり音と同じ下の階層で何かあったということだろう。

俺は走って下の階層への階段に向かう、向かう途中大きな足音が何個も聞こえて来た、その音に気づいてた瞬間横のルームに移動先を変える。

ルームの真ん中に立ち警戒しつつ原因を考える。

 

「今日あたりはロキファミリアが遠征が帰ってくる時期、そしてベルが最初に襲われたミノタウロスは、ロキファミリアのミスで上層まで進出してきたはず…」

 

つまりこの音は大量のミノタウロスがロキファミリアから逃げている音だろう、

 

作戦1ここで俺が一体のヘイトを買って戦う。

《リスク》ベート、アイズと鉢合わせる可能性あり、ベルが襲われるのが無くなる場合がある

 

却下だな、ダンまちが始まらないのはやだ。

 

作戦2 このままこのルームでミノタウロス、ロキファミリアが去るのを待つ。

 

《リスク》Lvアップの機会が無くなる

 

多分これが最善だな、Lvアップの機会はまた作ればいい。それこそ中層の最初で戦っていればあがるだろ。よし、作戦2で行こう、方針を決めルーム内で警戒しながら息を潜める…何体ものミノタウロスの足音が階段の方で走っていく。その後2体ほどこちらの方に向かって……向かってきてる!?えーなんでこっち来るの…ミノタウロスの走る足音がこちらに近づいて来る。俺は身を潜めるのをやめて、作戦1に切替える、ここでミノタウロスから隠れ切るのは無理だ、俺は身を隠す道具をもちあわせていないならいっその事本気で対抗した方がいい、負けそうになったら後ろから向かってきているフィンたちの方に助けを求めればいい。そう俺は頭を整理して目の前の通路から来るミノタウロスを迎え撃つ準備をする。怪我はない、武器は新品同然、ポーションは4本、魔力にも余裕あり、奥の手もある、万全に近い。よし、いける!

そう思い覚悟を決めている間に通路からミノタウロス2体が顔をだす。

ミノタウロスがルームに入った瞬間俺は《闇の権能》で入口を塞ぎ、色を変えて洞窟とおなじ色にする、ミノタウロスが驚いているがすぐに目の前の俺に視線を向けてくる。

よし、これでベートが匂いに気づく心配はない匂いがあろうがその先に道がなければいくら第1級冒険者でも気づければしない。案の定2人は気づかず上の階層の階段に向かっていく音がする。よしこれで邪魔は入らない、目の前のミノタウロスに意識を向ける、2体とも外傷なし、走ってきたことで少々疲れている程度だろうか、今の俺は間違いなくLv1のベルと同程度がそれ以上、ミノタウロスはベルと戦った個体よりは確実に弱いだろうだがミノタウロス自体が単体で俺と同じか俺以上、勝てる可能性はかなり低いのかもしれない、でも何故か怖くない、それ所かワクワクしているかもしれない。ミノタウロスがこちらを涎を垂らしながら見ている当たり前だろうさっきの鬼のように強い冒険者から、自分達と同格かそれ以下の冒険者に変わったのだ、ジリジリと近づいてきているようにも見える。

ならばこちらも全力で御相手しよう…

 

「さあ、冒険をしようか」

 

俺の一言を境にミノタウロスが2体同時に突進してくる。俺もミノタウロスに向かい疾走し、《大賢者》の身体操作補助を起動、魔法を唱える。

「サンダーボルト!」

威力重視、射程や範囲なんて考えない。

ミノタウロスは少し皮膚が焼けた程度…なら!

ミノタウロスの懐に潜り込み、《アニール・ブレード》で腕を切りつける、切断まではいかずとも、多少動きを阻害出来ればいい。その間、もう一体のミノタウロスに向かい《闇の権能》を使用。足を拘束し転ばせる。

その瞬間目の前のミノタウロスから拳を振り下ろされ、これを《アニール・ブレード》で受けるが、受け止めきれず右腕に《アニールブレード》が刺さり、拳の衝撃が腕に奔る。俺は歯を軋ませながら、思いっきりミノタウロスの拳を弾く、ミノタウロスが仰け反っている間に怪我をしていない左腕で腰から《スティレット》を取りミノタウロスの腹に刺す、そのまま、あの時のベル・クラネル(ミノタウロスを倒した英雄)のように《スティレット》に向かい、

 

サンダーボルト(焼き尽くせ)!!」

 

ミノタウロスの体内を焼き尽くす、魔法を受けたミノタウロスは口から血を吹き出す、が倒れないまだダメージが足りてないのか?なら!

「サンダーボルト!!」「サンダーボルト!!」「サンダーボルトー!!」

3度の最大火力の魔法によりミノタウロスが倒れる、倒れた瞬間に《スティレット》を引き抜き胸の辺りの魔石目がけて《闇の権能》で作成したナイフで刺し込む、ミノタウロスが砕けた魔石と灰に変わる。

次だ。

拘束しておいたミノタウロスに視線を向ける、ミノタウロスは拘束をとき立ち上がり始めいた。対する俺は先程の攻防で右肩が少し上がりづらい、魔力もかなり使った。ならば《スキル(闇の権能)》で殺そう。

《闇の権能》最大(フル)起動!!

道を偽装するための《闇の権能》が消える、そして俺の背後に5本の剣をでる。その剣をミノタウロスの向かって射出する、2本弾かれ3本がミノタウロスの両足に刺さる。ミノタウロスが止まった瞬間に疾走、ミノタウロスの角をつかみ跳躍、ミノタウロスの頭上に来る、今使える《闇の権能》を集約。1本の槍を作るそれをミノタウロスの、頭、目掛けて投げミノタウロス体を串刺しにする、ミノタウロスが叫びながら頭上の俺の腹にツノを刺し振り回す。

「くっ…そが!さっさと死ねぇ!《サンダーボルト》!!」

槍に最大火力の雷を流しミノタウロスの体内を焼き切る。ミノタウロスは倒れ魔石と灰に変わる。それとほぼ同時の俺の体も膝をつく、息が切れる、頭がクラクラする。腹と腕の傷が痛ってぇ…これやばくないか。死ぬかも…とりあえずポーションを1本飲み、腹と腕に1本ずつかける、血は出なくなって動けるようになったがまだまだ体が軋む上、重い、精神力(マインド)が無くなりかけてるのかも…一旦深呼吸を何回かして《ステイタス》を更新する。

 

ステイタス

Lv1

力S994⇒SS1081

耐久B720⇒A851

器用SS1028⇒SS1091

敏捷SSS1189⇒SSS1199

魔力B703⇒A846

 

ランクアップ可能

発展アビリティ、精癒or耐異常

 

 

《魔法》

【サンダー・ボルト】

詠唱 なし

・付与魔法(エンチャント) 威力調整、部位調整可能

 

《スキル》

【神の偽能】・ステイタス更新を自分で可能

・ステイタスを刻んでいる人間のステイタスを視認可能

 

【大賢者】・地図、思考加速、身体操作補助、並列思考、思考補助

 

【英雄追想】・成長速度を対象にしている人物と同じになる。

 

【闇の権能】・装着時全能力上昇、闇の触れたものの感覚を共有可能

・自由に闇の姿形を変更可能、削除作成自由

 

 

どうやらランクアップが可能らしい。渋る理由もないのでランクアップをする。

 

ステイタス

Lv2

力I0

耐久I0

器用I0

敏捷I0

魔力I0

 

発展アビリティ 《精癒》

となる、新スキルなどは無いらしい。発展アビリティはレアな精癒を選択した。これで帰還分の魔力は確保できることを願う、まぁそれはいいとして、当初の目的は達成することが出来た、あとは帰還だけだ。そう楽観的に考えつつ、ある程度体が動くようになったので立ち上がりミノタウロスの魔石を回収する。そして出口に向かおうと足を進めると、目の前から足音が聞こえてきた。ロキファミリアか?そう思い多少警戒しながら歩みを進めると奥からとんでもなく濃い血の匂いがした…違う、この足音は味方(ロキ・ファミリア)では無い、あれは、なんだ…?

目の前の洞窟の暗がりから血濡れた毛皮の後ろに黒い塊の着いている犬が出てきた。

 




補足、レイは今のところ精神力《マインド》消費を抑えるために《サンダーボルト》を速攻魔法のように使っています。Lvが上がってきたらずっと付与できるようにするつもり。
闇の権能の効果を使用時ではなく、装着時にしました、ちょっと解釈違いがあったので、急な能力変更すいません。


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第7話 昇華Ⅱ

誤字指摘、感想よろしくお願いします。


ダイダロス通りの地下、現在は闇派閥(イヴィルス)が潜伏している、名工ダイダロスの一族が生涯をかけて作り続けている人造迷宮クノッソス、その中を歩いている1人の女がいた、毛皮付きの長外套(オーバーコート)を羽織い、左手にはミスリル制の球体、背中には歪な大剣を背負っている、彼女の名はヴァレッタ・グレーテ、闇派閥(イヴィルス)の幹部をしているLv5だ。そんな彼女に1人の白い装束を身にまとった男が話しかけた。

「ヴァレッタ様、報告がございます。」

 

「んあ?なんだよ、私はタナトスに用があるんだ、早くしろ」

 

「はい先日、ミュラー様が作った異質怪物(キメラ)の件なのですが」

 

「あのクソガキの作ったバケモンがどうしたんだよ?」

 

「実験で作られたモンスターの失敗作のヘルハウンドと食人花、バトルボアを合成したキメラが脱走してしまい、中層の入口から上層の方へ逃げたようで」

 

「あ!?それが見つかってフィン達に怪しまれでもしたら、どうするんだ!?さっさと殺してこい」

 

「いえ、そうしようとしたらミュラー様が「失敗作だから1日もしたら灰と魔石になるからいい」とおっしゃっていて」

 

「あの糞ガキの野郎勝手にしやがって…まぁいいならもうすぐ死ぬんだな?」

 

「はい、逃げ出したのが昨日ですのでもうすぐ死ぬかと、ただ失敗作とはいえ《Lv3の冒険者》程度なら殺せるレベルのモンスターらしいので一応ヴァレッタ様に報告をと」

 

「まぁ、冒険者が何人死のうが関係ねぇしな、見つかったとしても、ダンジョンの謎として処理されるだろ、一体程度なら」

 

「わかりました、では予定通り放置します。」

 

男が報告を終え、通路の奥へと消える

 

ヴァレッタは全てを察することすら可能としそうな自分が憎み殺したい(フィン)を思い浮かべ殺意を抱きながら、キメラが多くの冒険者を殺すことを思い、タナトスの元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ…あの黒いヘルハウンド?」

 

正面からの見た目はヘルハウンドに見える、だがしっぽ付近には黒い異物がついているそして10M以上離れているにも関わらず、はっきりとわかる血の匂い、その匂いと見た目を見た瞬間全身に鳥肌がたった、レイは軋む体を起こし動ける体制をとったその瞬間《キメラ》が口から炎を吐く、炎は容易くレイとの距離を瞬速で詰め眼前まで届く、が《大賢者》による身体操作補助、思考加速そしてレイ自身のレベルアップによる身体能力の上昇そのすべてを使って、最大限の警戒を払っていたおかげでどうにか届く寸前、《闇の権能》による壁を展開、炎を止めようとするが

容易くそれを貫通され、レイの左半身に炎が奔る。

 

「クッ!」

 

左腕が焼かれ皮膚が爛れた、痛い痛い痛い…レベルアップしていても先程の戦闘での怪我と今回での火傷、正直ボロボロだ、心が折れそうになる…だがそこで諦めたら終わりだ。そう心を奮い立たせ、キメラに向かって疾走する、キメラはそれに反応して炎を吐く姿勢になる、それを見て回避の準備をする予め予測していたため大きく横に回避する、ヘルハウンドと似た姿をしたモンスターはやはり炎を吐くのに貯めがいるらしい、モンスターと言えどやはり生物らしく制限はあるようだ、炎を吐いている間、キメラに接近し触れレベルアップにより強化された魔法を唱える

 

「サンダーボルト!」

 

キメラの体に雷が流れる、が効いている様子が全くといってない…

 

「まじかよ…なら!」

 

Lv2になったおかげで先程の戦闘(ミノタウロスとの戦闘)よりも体良く動く気がする、だがそれでもその力は全く通じていない。雷を流すだけではダメなら、雷を集約してぶつける。俺は《スティレット》を鞘から抜き、《サンダー・ボルト》の電気を全て右手に集中させ、《スティレット》に集約させ、《スティレット》キメラに切り付ける!

 

「せゃああああ!!」

 

切り付けた瞬間《スティレット》が折れ、集めた《サンダー・ボルト》が散る。

 

「はぁ?」

 

そんな間抜けな声が出た、殺せるとは思っていなかった、確実に今俺のできる最大火力ではあった、ならばダメージは与えられる!!そんな確信があった、だが現実は違かった。俺の全力の一撃はあっけなく弾かれ《スティレット》が折れた。嘘だろ…こりゃ無理だ、そんな声が自分の頭の中に

聞こえてきた、そして落ち込む隙もなくキメラの追撃が迫る。それに気づき既にやけどで動かなくなってきている左腕に、《闇の権能》を全力展開

してどうにか防ごうとするが、《闇の権能》で守った左腕に噛みつかれる

そしてスキル(闇の権能)を噛み砕かれ、こう投げ飛ばされて壁に激突する。

 

「ぐっはぁ…!!」

《闇の権能》での防御など無意味と思えるほどの隔絶的な差が俺とコイツ(キメラ)にはあることを今更ながら理解する…生物としての格が違う、

無理だ、勝てるわけが無い、早く逃げろ、そんな言葉が聞こえてくる気がする実際逃げるべきなんだろう、だが速さでも、力でも負けてる相手にどう逃げる…隙を作ろうにも作れるほどの余裕もない、ならばロキファミリアは?もうすぐこの階層に来るか?いや…こんな考えになってる時点で俺は負けている、能力でも精神でも負けている相手に勝てるわけない…ベル・クラネルはこれに勝ったのか、こんな圧倒的な絶望に?そりゃあ英雄になれる訳だ。

 

「ああ、しにたくない」

 

当たり前の感情なのかもしれないその生存本能を感じた、まだベルとすら会ってないのに2度目の俺の人生はここで終わるのか?アイズ、ベート、ティオナ、ティオネ、ロキ、フィン、ガレス、命、ヴェルフ、リリ、春姫、ヘスティア、アキ、ラウル、リヴェリア、ゼウス、フィルヴィス、レフィーヤ、アリシア、エルフィ、リーネ、ヘディン、へグニ、フレイヤ、オッタル、アレン、アルフリッグ兄弟、ヘルメス、アイシャ、アスフィ、ルルネ、タケミカヅチ、桜花、千草、イシュタル、レナ、サミラ、ダフネ、カサンドラ、フェルズ、ミィシャ、ウラノス、ヘファイストス、椿、ガネーシャ、シャクティ、デメテル、ディアンケヒト、アミッド、ゴブニュ、アルテミス、モルド、アポロン、ヒュアキントス、ソーマ、アレス、アストレア、ニョルズ、カーリー、アルガナ、バーチェ、アフロディーテ、プロメテウス、イリア、エピメテウス、ヘラ、ミア母さん、シル、アーニャ

クロエ、ルノア、リュー……

 

「ああ、くそっ死にたくねぇ!」

 

まだ始まってすらいないのだ、この世界の物語は、なのに今死ねるか?

 

死ねるわけがない!

 

会いたいヤツらが山ほどいる、

隣で一緒に戦いたいやつ(ベル・クラネル)がいる、

諦めてたまるか!

絶対に生きて帰ってやる!!ならどうする、

魔法は通じず、剣も弾かれ、攻撃が全く通じてない。

今のステイタスではどうやっても勝てないだろう。

今のステイタスなら?奥の手ならある、まだやってないことがある、なら全て出し切ろう。

可能性はゼロに等しいだが、やらなければゼロのままだ、ならやってやろう最後まで足掻き続けてやる!!

覚悟を決め目の前にいるキメラに目を向ける。

やつはこちらを見て動かない、そして気のせいか笑っているようにすら見える。完全に加虐者の目だ。俺の行動を見て楽しむ気か?

 

「クソが」

 

でも都合がいい、とことんやってやる、残っている最後のポーションを飲み奥の手を使う。

 

《闇の権能》装着

 

そうスキルに命じ俺は《闇の権能》を体に纏う。変化は少ないだがこのスキルは自分に纏っている間全能力が上昇する。火傷で動かない左腕もスキルを纏い無理やり動かす。さらに

 

《神の偽能》使用。ステイタス更新。

 

 

力が100、耐久129、器用115、敏捷215、魔力123上昇

 

 

「さあ、行くぞ、犬っころ!」

 

そう言いながら俺は疾走する。キメラはそれを見て炎を吐く準備をする、そこまでは俺も先程の戦闘で予測済み、炎を吐く瞬間に左に跳躍し避ける、スキル(闇の権能)とステイタスアップのおかげで先程よりは動きやすい、着地の瞬間、足に最大限の力を入れ前に跳躍、キメラに迫り、《アニール・ブレード》を抜き、それを《闇の権能》で保護、さらにその上から

《サンダー・ボルト》を使い火力をあげ、それにキメラに向かって振り抜く。

 

「はぁあああ!!」

 

キメラにはほぼ刃が通らず、薄皮が1枚切れた程度だった。普通ならこの圧倒的な差に絶望するのだろう、だが俺の場合ここからだ。

 

《神の偽能》使用ステイタス常時更新

 

力24、敏捷21、魔力15上昇

 

まだ足りない、振り抜いた勢いを利用し回転、キメラの後ろの触手からの攻撃をどうにか避け左手でキメラの横顔を殴る!!

 

「シッ」

 

キメラはそれをまともに受けるがダメージはほぼなし、逆に殴った俺の手が痛い。

 

力21、器用28上昇

 

キメラが炎を吐く姿勢をしたような気がした。

《サンダー・ボルト》を足に纏いキメラが炎を吐こうとする瞬間の頭目がけて踵を落とす。

タイミングがよかったおかげてキメラの口の中で炎が暴発、余波で俺も吹き飛ばされるが、キメラは口の中で炎が爆発しダメージを負っていた

 

力5、器用12、耐久31、魔力34上昇

 

俺の方も元からボロボロの体が吹き飛ばされたせいでさらに傷ついた。

だがその程度だ、まだ生きている、まだ戦える、気合いを入れろ、相手を殺すことだけ考えろ!!

 

俺は再びキメラに向かって攻撃を始める。

何度も何度も攻防を繰り返す

キメラを殴り殴られ、蹴り蹴られ、炎を吐かれようが何度もギリギリでよけ、ひたすらに戦い続ける、何回でも何十回でも、切りつけ、殴りつけ、魔法を放つ、その度に噛まれ、炎を吐かれ、触手を叩きつけられる、

最初は5回のうち1回の反撃、それが4回のうち1回、3回のうち1回、2回のうち1回、そして1回のうち1回と変化していく、戦えている、戦えるようになっている。精神力(マインド)はほぼゼロ、《精癒》のおかげでマインドダウンにはならない。

傷はないところを探すのが難しい、だがそれは相手も同じなら勝てる!!そう思ってしまった……

俺は油断し一瞬の隙を疲れ左腕を触手に捕えられる、どうにか《アニール・ブレード》で触手を切り離そうとするが、その前にキメラに右手を噛まれ、噛み砕かれ投げ飛ばされる、壁に激突した瞬間意識が飛びそうになるが何とか耐える。立ち上がろうとするが上手く立てない。何故だ?キメラに目を向けるとキメラの横に剣を握っている腕があった…そうか切り離されたのか、他人事のように自分が右手を失ったことに気づく。

それでも立ち上がろうとするが立てない…キメラはゆっくりと近づき、

膝を着いている俺に止めを刺そうとしてくる……

 

心の中で少年(ベル・クラネル)少女(アイズ・ヴァレンシュタイン)の声が聞こえた。

「人は隙を見つけると、動きが単純になることがある。」

 

「止めの一撃は、油断に最も近い。」

 

「追い込まれたその先が、一番の好機にもなる。」

 

少年が刻んだであろう言葉が、それを読んだ俺の中にもたしかに残っていた。だから((ここから))

 

キメラが噛み砕こうとする瞬間俺は残っている左手に全てを注ぎ込む、スキル(闇の権能)魔法(サンダー・ボルト)、限界まで上げたステイタス、その全てを左手に集約。そして眼前に迫ったキメラの顔、その口の中に腕を突っ込む。

 

「せゃああああ!」

 

 

キメラは瞠目し俺の腕を噛み切ろうとする、関係ない!

そう覚悟を決め魔力を解放する、精神力(マインド)を使い切る勢いで思いっきり全力で魔法を使い、腕を振り抜く。左腕を噛まれながら壁に思いっきり叩きつける!だが、まだ生きている、なら《闇の権能》の集約を一瞬だけ解除、すぐに剣をイメージして形を形成、それをキメラに体内で振り抜く。

 

「死ねぇぇぇええええ!」

 

キメラが灰と魔石となる。

終わったのか…倒せたのか?よく見ると灰の中にあると思っていた自分の左腕は無くなっていた、

 

「ああ、やっぱり体内で焼かれてたか。」

 

《闇の権能》を解除した瞬間一瞬だけ熱さを感じた、どうやらキメラは体内で炎を作っていたらしい、少しでも殺すのが遅かったら焼かれていただろう…そう思っていたら体が倒れた、両腕がない、両足もダメになっているかもな…これ俺生きて帰ってまた冒険者できるのかよ笑。

そんな自分の惨状を認識していると瞼が落ち、意識が遠のいてきた、精神疲弊(マインドダウン)が迫っているらしい、おいおいこんな場所で両腕なしで倒れたらまじで死ぬぞ。

やばい…そう考えても意識が遠のくのを耐えられず、意識が無くなる。

 

 

 

 

 

水の中に落ちてるような感覚がした。

どこまでもどこまでも深く、暗い水の中を落ちていく、上に向かおうとして動けず永遠に落ちていく…ああ、死ぬのかな?俺…

きっとこれは死なのだろうと勝手に考える。

そんなことを考えているといきなり光が俺を照らす、緑かがった優しい光だった。気がつくと体が動くようになった、俺はその光に導かれるように上に昇る。

 

 

目が覚めた?のか、ここは…さっき倒れたダンジョンの中だ、

なんで目が覚めたんだ?俺は辺りを倒れながらどうにかして見る、隣に緑色が見える?ロキファミリアの誰が治癒魔法でもかけたのか?そう考えるが、俺はほぼ死にかけ、生きてるのが不思議なくらいな状態だ、治癒魔法で直せるレベルじゃないだろ?と考えていると、予測通りまた意識が遠のき始めた、どうやら緑色の人物の治癒魔法のおかげで意識が少し回復しただけだったらしい、まぁありがたい話だが力が足りない、回復魔法を発現するくらいだ、きっと優しい人なんだろうな……自分に魔法をかけてくれた人物のことを思いながら俺はまた意識が落ちる。

 

《神の偽能》起動 ランクアップ

 

魔法 《リライフ》を発動。

 

 

忘れるな己の罪、果たしきれ己の願い

全てを守り、全てを救い、全てを果たせ

 

 

 

 

 

 

 




レイのLv2での最終ステータス

ステイタス
Lv2
力S920
耐久SSS1143
器用A853
敏捷SS1005
魔力SS1054

 発展アビリティ精癒H

《魔法》
【サンダー・ボルト】
詠唱 なし
・付与魔法(エンチャント) 威力調整、部位調整可能
 
《スキル》
【神の偽能】・ステイタス更新を自分で可能
・ステイタスを刻んでいる人間のステイタスを視認可能
 
【大賢者】・地図、思考加速、身体操作補助、並列思考、思考補助
 
【英雄追想】・成長速度を対象にしている人物と同じになる。
 
【闇の権能】・装着時全能力上昇、闇の触れたものの感覚を共有可能
・自由に闇の姿形を変更可能、削除作成自由


武器
スティレット 短剣 破損
アニール・ブレード 片手剣 紛失
装備
ミッドナイト コート

こんな感じです。2話連続レベルアップしました。こんくらいじゃないとベル君に負けそうなのであげときました。



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2章
第8話 生還


誤字指摘、感想よろしくお願いします。


目が覚めるとそこはダンジョンの床などではなく、暖かいベットの上だった、窓からは日差しが差し込みここが外だということが分かる。

 

「知らない天井だ」

 

とりあえず言ってみたいセリフを言ってみる。

さて現状確認だ、ベットから起き、周りを見る、ここの場所は分からないが、寝台と小さな棚、少し奥に扉があって水回りはないけど、部屋としてワンルームと言ったところか?てか俺の体に両腕がある!?なんでだ?あの緑色の人物の治癒魔法か?でもそのレベルの回復力ならダンジョンで目が覚めてもいいだろうし

この部屋なんか見覚えがあるんだけど、なんでだろ?そう思考を整理して現状確認をしていると奥の扉が開く。

 

扉から出てきたのは薄鈍色の髪をしたヒューマン女性だった。

 

「あ?起きたんですね?良かった」

 

あっやばい、会いたいけど、会いたくないランキング上位に来るシル・フローヴァさん…だと?じゃあここは豊穣の女主人かな?これ俺助けもらった担保に店員になるの?

その未来は良さそうだけど、もうちょっと冒険したいな〜…いやここからの対応次第で変わるはず!!

そう頭を切りかえ目の前のシルとの会話をはじめる。

 

「あのあなたが僕を助けてくれたんですか?」

 

こいつに小細工は無駄なので敬語で普通に話す

 

「いえ、私の同僚が助けて連れてきたんです」

 

「そうなんですか?では、お礼が言いたいのでその同僚の方に会わせて貰えませんか?」

 

話を聞く限りだと俺を助けてくれたのは豊穣の女主人の店員らしい、そして俺の見た緑色の影、ってことはー…ふぅ落ち着けまだ慌てるような時間じゃない

 

「いいですよ!今呼んできますね。」

 

そう言いシルはたったと早足で部屋の外へと出ていく。

 

「ふぅ〜正体わかってるとちょい緊張するな…まぁ気を抜かないでおこう」

 

 

そう彼女(シル)への対応を考ていると人が入ってきた。俺を超えそうな長身な上に俺を超える横幅の女性、この辺でそんな体格をしているのは一人しかいない。

 

「やっと、起きたいのかい、寝坊助、一日中寝てたから死んだのかと思ったよ」

 

過去は元フレイヤ・ファミリア団長、今は豊穣の女主人の女将、ミア・グランドだ、それにしてもでかい、俺も180だが、それでも大きく感じる。女性でこの身長は彼女くらいだろう、てか死んだは失礼だな、死にかけたのは事実だけど、ここは初対面感出しとくために、誤解をしておこうか

 

「あなたが俺を助けてくれたんですか?」

 

「あ?アタシじゃないよ、なんでそう思ったんだい?」

 

まぁそうだろうとは思ってたけど、ミアさんがダンジョンに潜る理由もないし、毎日お店で忙しいだろうしな〜、つまり俺を助けてくれたのは…

 

「いえ、さっきほどのシルさんと違って、立ち姿が恩恵を持ってそうな感じがしたので、そうなのかな?と」

 

「へぇ〜、見ただけでわかるのかい、あんたそんな上級冒険者でもないのにすごいね」

 

「あはは、ほぼ見た目で判断してますけどねー笑」

 

「ははは、しばくよクソガキ」

 

「さーせんしたー!!」

 

土下座した。床に頭を擦り付ける!

 

「まぁいいけどね、もうすぐあんたの恩人が来るから、立って起きな。」

 

ふぅ、ミアさんが優しくて良かったー。さぁ俺の推しが来るぞ……

 

「ミア母さん、彼が起きたとシルに聞いたのですが?」

 

「おおきたね、リュー、おい坊主、挨拶しな」

 

綺麗な碧色の瞳に綺麗な緑色の髪、そしてエルフの証である細長い耳、そして整っている顔立ち、ああ、可愛い。

 

「あの、この度は助けていただいてありがとうございます。」

 

ミアさんありがとう!話しかけるチャンスをくれてありがとう!!

おお!神!今回だけは感謝するぜ!

 

「いえ、通りがかりを助けてただけですので」

 

うーん、この塩対応さすがリューさん、初対面だと結構塩だよねこの人。

まぁこの先頑張って仲良くなろう、機会はあるだろうし

 

「何か、僕にできることはありませんか?恩返しをしたいのですが」

 

「いえ、本当に大丈夫です。私が助けなくても、あなたはダンジョンから帰還出来たと思いますよ、怪我も自力で治していましたし」

 

ん?怪我を治した?俺が?どうやって?

 

「あなたが治してくれたのではないんですか?」

 

「いえ、見つけた時は両腕がなくて焦りました、魔法を使い治療しましたが、私では治しきれない怪我でした。ですがいきなりあなたが光出して傷を一瞬で修復してしまったので驚きました、あなたのスキルか何かだと、予想していたのですが?」

 

ん?まじで?とりあえずステイタス見てみよう

 

ステイタス

Lv3

力I0

耐久I0

器用I0

敏捷I0

魔力I0

 

 発展アビリティ 精癒H、耐異常I

 

《魔法》

【サンダー・ボルト】

詠唱 なし

・付与魔法(エンチャント)

・感情の丈によって威力上昇

 

【リライフ】

・死亡時のみ自動発動

・超回復

精神力(マインド)がある限り発動可能

 

詠唱文・忘れるな己の罪、忘れるな己の願い、全てを守り、全てを救い、全てを果たせ

 

 

《スキル》

【神の偽能】・ステイタス更新を自分で可能

・ステイタスを刻んでいる人間のステイタスを視認可能

 

【大賢者】

・地図、思考加速、身体操作補助、並列思考、思考補助

 

英雄追想(ベル・クラネル)

・成長速度をベル・クラネルと同じとなる。

・ベル・クラネルへの憧れが無くなった時効果を失う。

 

【闇の権能】

・『纏』時全能力大幅上昇

・闇の触れたものの感覚を共有可能

・自由に闇を形成可能

 

超感覚(ハイパーセンス)

・五感強化

・第六感発現

 

ん?レベルが上がってるな、戦闘時に使っていた《神の偽能》の能力で自動的に上がったのか?それにスキル(英雄追想)の名前が変わってる?あとスキルが増えてるな、そしてこの魔法(リライフ)、恐らくこれが俺が生きれた理由だろう、死ねない魔法か、俺らしいな…とりあえず誤魔化そう。

 

「あー、実は内容が不鮮明なスキルがあって、それが発動したのかもしれません。」

 

さぁ、ごまかせるか?

 

「そうなのですか?不思議なものですね?」

 

「なんにせよ、生き残れて良かったじゃないか、ダンジョンなんて生き残れたもん勝ちだよ。」

 

ミアさんがフォローしてくれた?のかな、まぁこれで俺が大派閥所属で厄介事になったらめんどくさいだろうからな…これはありがたい。

 

「それじゃ、坊主、恩返ししたいって言うならあたしの店で1杯飲んできな」

 

ほぅこれはいいかもしれない、一日中寝てたってことは、原作通りなら今日がベル・クラネルがこの酒場に来てあの出来事が起きるはず

 

「わかりました。じゃあ軍資金を作るために魔石を換金してますね」

 

今の俺はそんなに金を持ってないはずだし、お金を作ってこないとな、今は夕方だからまだベルが来るのは時間がかかるから、あの現場を見逃す心配はないだろう

 

「それなんですが、シルに頼まれて換金しておきました。では下の酒場にどうぞ」

 

絶対これ助けて貰った時から、店で食わせる気だったな…

そんなことを思ったが口に出さず、下の酒場に案内されたレイであった。

 

 




レイはリュー推しです。


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第9話 英雄(ベル・クラネル)の始まり

誤字指摘、感想お願いします。
ここから原作に絡むので、原作改変、解釈違いあるかもです。頑張りますけどよろしくお願いします。


下の酒場に来るとそこ落ち着きつつ俺の酒場のイメージを崩さない、明るい空間だった。

艶かしい雰囲気はないが、免疫のないものだと少し落ち着かない空間でもあるだろう、全員が美人or美少女(女将さんは除く)、その美少女達がはきはきと元気よくウエイトレス姿で働いている。

天国だなここ……

前世ではメイドカフェすら行ったことない俺にとっては女性に囲まれるだけでも緊張する。

今も少し手が震えている。

慌てるな俺、今の俺は前世の姿じゃない、普通にイケメンなはずだ?多分!ほら、自信を持って胸を張って歩こう!

そう自分に言い聞かせ、

リューに案内された席に座る、案内された席はベル・クラネルが座っていたであろう席から2つ離れた席だった、ここならベルに悟られずに見られそうか?

いや、あいつ意外と視線に敏感だしな〜誰かさんのせいで…

まぁいいやとりあえず飯食お、飯!!一日中寝てたわけだから最初は大人しいものからいこうかな〜

 

「はいよ、とりあえず酒だよ!」

 

大人しいものが良かったな〜ハハハー

まぁ文句を言わず食おう。とりあえずスパゲティとハンバーグのような食べ物を注文する。

待っている間周りを見渡す…んーみんなレベル2、3くらいかな?《神の偽能》を発動して周りのステイタスを見る。

てか、新しいスキルを試すか!

 

そう考え超感覚(ハイパーセンス)を起動する。

起動した瞬間、全神経が反り勃つ様な感覚がした。

 

うっわこれヤバ、耳キンキンするし、目が良すぎて窓の外のテラス席男女の顔まではっきり見える、鼻も匂いがどれから出てるか、なんとなくわかるくらいになって違和感がやばい、触覚も強化されておりなんか気持ち悪い…味覚はまだ分からないが試さない方が良さそうだな。

これは扱いがムズいな、とりあえず《大賢者》で補助しつつスキルを操作をしてみる。ひとつずつの感覚にゲージを設定し全感覚を少しずつ低下させておき、視覚だけを強化する。

すると段々外の景色が細かく見えるようになっていき、さっきより遠くの通りがかった冒険者の剣の柄のマークまでわかるようになった。これは…常に最低値にしておいていいな。ほかの感覚のコントロールは別の時に練習しよ。

そう能力の使い道を模索していると

 

「ほいよ、お待ち。」

 

「ありがとうございます。」

 

頼んでいたスパゲティとハンバーグが来た、おぉ〜美味しそう〜

よしいただきます!!

うまいな〜、この世界に来てからほぼじゃが丸くんで乗り切ってたから余計うまく感じる。

この世界の味に感動しながら、料理と酒を楽しむ。

 

そして俺の待ち人(ベル)が来た。

彼は原作通り白髪に深紅(ルベライト)の瞳をしている可愛らしい少年だった。

ショタコンのお姉さんがいたらぱっくり食われてるだろう。

そして彼はあたふたしながら俺とひとつ離れた席に座り、その隣に座ったシルと楽しそうに会話しだした。

ああ、こういう所を見ると改めて俺がダンまちの世界に来たことを実感する。

この光景を壊したくないな、やはり原作改変には気をつけよう、まぁ俺という存在がいる時点で変わるとこは変わってしまうんだろうが、そんな原作の光景を見れたことに感動していると、愉快そうな女性の声が聞こえた。

 

「ミア母ちゃーん、来たでー!」

 

その声を聞いてウェイトレス姿の女性のひとりがで迎えに行く

おお、この声。来たな

その声の主は道化の神であり、天界きってのトリックスター、今は2大派閥のうちの一つロキ・ファミリアの主神。ロキである

 

その後ろを続々と眷属達が歩いてくる

1番前にはパルゥムの少年、ドワーフの男、ハイエルフの女性、アマゾネス、ウェアウルフ、そして金髪、金色の瞳をしているヒューマンの美少女、彼女こそがベルの憧れの相手、【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインだ。

周りからは『えれえ上玉ッ』などと声が聞こえるが、エンブレムを見てその声は、軒並み怯え声に変わっていく。

そりゃあそうだ、なんせ相手は第1級冒険者、どんなに顔が良くてもダンジョンでは山ほどのモンスターを狩りまくっている存在、同じ同業者(冒険者)でも積極的に関わって痛い目を見たくないだろう、積極的に関わろうとするのは同じファミリアの第1級冒険者たちか、バカくらいだろう。

しっかしやはりロキ・ファミリアは男女ともに美形だな、

ここいるヤツらがほぼ全員外国に行けば英雄扱いされるような存在なんだもんな。オラリオが、都市外への冒険者の脱走を抑制していなければ、外国は戦争だらけになるんだろうな。

そんなことを考えているとウェアウルフの青年であるベート・ローガーがでかい声で喋りだした。

 

「そうだ、アイズ!お前のあの話を聞かせてやれよ!」

 

「あの話……?」

 

「あれだって、帰る途中で何匹か逃したミノタウロス! 最後の1匹、お前が5階層で始末しただろ!? そんで、ほれ、あん時にいたトマト野郎の!」

 

おお、ついにベル君の話が来たな、てかベート声でか!こいつ酒場中に聞こえる声で話すやん。そりゃあベル君が恥ずかしくなるわけだ、まぁベルの場合、別のことで怒りを覚えるんだけど

 

「ミノタウロスって17階層で襲いかかってきて返り討ちにしたら、すぐ集団で逃げ出して言った?」

 

ベート同じレベル5の第1級冒険者、ティオネの確認に対し彼は大袈裟にジョッキを卓に叩きつけながら頷く反応する。

 

心無しかアイズの顔が少し青くなってる気がする

反対にベルの場合は下を向いて顔が見えないが、耳が赤い。

 

「それそれ!奇跡みてぇにどんどん上層に上っていきやがってよっ、俺達が泡食って追いかけていったやつ!こっちは帰りの途中で疲れていたってのによ〜」

 

「それでよ、いたんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせぇ冒険者(ガキ)が!」

 

「抱腹もんだったぜ、兎みたいに壁際へ追い込まれちまってよぉ!可哀想なくらい震え上がっちまって、顔引きつらせてやんの!」

 

「ふむぅ?それで、その冒険者どうしたん?助かったん?」

ロキがベートの話を広げるように質問する

 

「アイズが間一髪ってところでミノを細切れにしてやったんだよ、なっ?

 

「それでそいつ、あのくっせー牛の血を全身に浴びて……真っ赤なトマトになっちまったんだよ!くくくっ、ひーっ、腹痛えぇ……!」

 

「うわぁ…」

ティオネが顔を顰めて呻いた。

 

「アイズ、あれ狙ったんだよな?そうだよな?頼むからそう言ってくれ……!」

 

「…そんなこと、ないです」

アイズが喉から振り絞るように言った。

 

聞き耳を立てているほかの客たちも忍び笑いを始める。

その声を聞いてベートは目に涙を溜めながら、話を続ける

 

「それにだぜ?そのトマト野郎、叫びながらどっか行っちまってっ…ぶくくっ!うちのお姫様、助けた相手に逃げられてやんのおっ!」

「……くっ」

「アハハハハッ!そりァ傑作やぁー!冒険者怖がらせてまうアイズたんまじ萌えー!!」

「ふ、ふふっ…ご、ごめんなさい、アイズっ、流石に我慢できない……!」

どっとロキ・ファミリアの連中が笑い声に包まれる。

レフィーヤが、ロキが、ティオネが、誰もが堪えきれず笑声を上げた。

 

ああ、嫌だ、こいつらはアイズへ行われた対応を笑っているのだ、決してダンジョンで脅威(ミノタウロス)から逃げたベルの行動を笑っている訳では無い。それは理解しているだが、ベルが可哀想に思えてくる。

そんなことを考えていても、話続く。

 

「ああぁん、ほら、そんな怖い目しないの!可愛い顔が台無しだぞー?」

アイズに対してティオナが話しかける。

アイズを見るとその目は怖いというか暗い目をしていた、確かアイズはベルとの出会いで夢を思い出してベルとの出会いに安らぎを得ていたんだっけか?

その自分の思い出を汚されたら、しそりぁそうなるか…

しかしそんな彼女の心情を知らず、ベートは話続ける。

 

「しかしまぁ、久々にあんな情けないヤツを目にしちまって、胸糞悪くなったな。野郎のくせに、泣くわ泣くわ」

 

「……あらぁ〜」

 

「ほんとざまぁねえよな。ったく、泣き喚くくらいだったら最初から冒険者になんかなるんじゃねぇっての。ドン引きだぜ、なぁアイズ?」

 

「ああいう奴がいるから俺たちの品位が下がっていうかよ、かんべんしてほしいぜ」

 

「いい加減そのうるさい口を閉じろ、ベート。ミノタウロスを逃がしたのは我々の不手際だ。巻き込んでしまったその少年に謝罪することはあれ、酒の肴にする権利などない。恥を知れ」

 

ベルを貶し始めるベートにリヴェリアが叱咤を飛ばす。その発言を聞いて先程笑った他のメンツは気まずそうに視線を逸らしたが、ベートは止まらなかった。

 

「おーおー、さすがエルフ様、誇り高いこって。でもよ、そんな救えないヤツを擁護して何になるってんだ?それはてめぇの失敗をてめぇで誤魔化すための、ただの自己満足だろ?ゴミをゴミと言って何が悪い」

 

「これ、やめぇ。ベートもリヴェリアも。酒が不味くなるわ」

ロキが見兼ねて仲裁に入るも、彼の唾棄は言葉を緩めない。

 

「アイズはどう思うよ?自分の目の前で震え上がってるだけの情けねえ野郎を。あれが俺たちと同じ冒険者を名乗ってるんだぜ?」

 

「あの状況じゃあ、しょうがなかったと思います」

 

「なんだよ、いい子ちゃんぶっちまって。…じゃあ、質問を変えるぜ?あのガキと俺、ツガイにするならどっちがいい?」

 

その問いに今まで静観し続けたフィンが軽く驚く。

「…ベート、君、酔ってるの?」

 

「うるせぇ。ほら、アイズ、選べよ。雌のお前はどっちの雄にしっぽ振って、どっちの雄にめちゃくちゃにされてえんだ?」

 

うわぁ…この問いをすることを知っていたが、直に聞くとひくな。

そりゃあアイズも嫌悪を覚えるわ…

 

「…私は、そんなことを言うベートさんとだけは、ごめんです」

 

「無様だな」

 

「黙れババアッ。…じゃあ何か、お前はあのガキに好きだの愛してるだの目の前で抜かされたら、受け入れるってのか?」

 

「…っ」

 

ああ、それは彼女(アイズ・ヴァレンシュタイン)には無理だ。

彼女に弱者を顧みる余裕はない。それは俺も、ロキファミリアも彼女のことを知っている人間なら誰しもが理解できるだろう。

 

「はっ、そんな筈ねえよなぁ。自分より弱くて、軟弱で、救えない、気持ちだけが空回りしてる雑魚野郎に、お前の隣に立つ資格なんてありはしねぇ。他ならないお前がそれを認めねぇ(、、、、、、、、、、、、、、、)

 

そして(ベート)は言う。少年(ベル)が進むきっかけになる言葉を。

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねぇ」

 

その言葉の直後、俺の横から1人の少年が駆け出し、店の外へと逃げ出す。

その隣をシルが追いかけるが少年はすぐに夜に溶け込む。

 

ああ、カッコイイな。絶望する訳でもなく、諦めるわけでもない、自分への怒りを燃やし立ち上がろうとする。彼は…

 

そんな憧れをベル・クラネルに改めて抱く。レイであった。

 

 

 

 




原作を写すのって疲れるね。
ちなみにレイくんは戦闘でコートの両腕が切られましたので、今は半袖状態のインナー1枚です。まぁ裸に胸当てつけてるような人いるし不自然じゃないよね?
次回ベートvsレイ
ディエルスタンバイ!


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第10話(ベート)vs青年(レイ)

誤字指摘、感想よろしくお願いします。
色々忙しいので次の更新は遅くなるかもです。


ベルが去った後。

 

「何?食い逃げ?」

 

「よりにもよってミア母ちゃんの店で、アホなヤツもおるんやなー」

 

ティオネとロキがベルのことを見て食い逃げだと考えているとき、ベルの後をアイズとその後ろからシルが駆け足で追おうとするが、ベルは既に店の前から姿を消していたためアイズは店の入口で止まり、セクハラしてきたロキに粛正をしていた。

 

シルは店から出てベルを探そうとするが、如何せん恩恵がないためベルを追いかけることはできないため少し落ち込んだ様子で帰ってきた。

 

それを見ていたら後ろから木刀と小太刀を持ってリューさんが…え?なんでこの人武装してるの?そんな疑問を他所にリューはほかのウエイトレス達の静止を無視して店から出ようとするが、シルに止められ武器を戻しに後ろに戻った。

 

 

シルが止めなきゃベルは死んでたってミアさんが言ってたのって冗談じゃなかったんだ…

 

そう考えて、俺は見たい光景も見たので帰りの支度をしてミアさんに声をかける

 

「ミアさん、ごちそうさまでした。美味しかったです。値段はいくらですか?」

 

「ああ、お粗末さま。5800ヴァリスだよ。」

 

おおっ意外と安いな、これなら…

 

「あと俺の隣の白髪の人の分も払わせて貰えませんか?」

 

「なんだい、知り合いなのかい?」

 

そんなことをミアさんが睨みながら聞いてきた。

怖っ…

 

「はい、一応、だから立て替えさせてください。」

 

「そういうことなら、うちとしては問題ないよ。えっと4200ヴァリスだね」

 

そう言い、ミアさんが値段を教えてくれた。

 

「では、合わせて1万ヴァリスですね、これでお願いします。」

 

そうやり取りをして帰り支度をすると後ろから声をかけてきた。

 

「おい、てめぇ?さっきの食い逃げ野郎と知り合いなのか?」

 

ベートがそう荒々しく聞いてきた。

 

「いや?これから知り合いになる予定」

 

「あ?なんだそれ?」

 

正直に言うとベートが呆気に取られたような声を出す。心無しか後ろミアさんからも は?という声が聞こえた気がする。

 

まぁそれは気にせずにいると、ベートはまた話しかけてきた。

 

「はぁ…あんなやつの知り合いになんてなりてぇのか?」

 

は?なんかムカつく言い方だな。さっきのも少し腹の立つ話だったし

ちょっと言い返すか。

 

「まぁ、自分の恥を棚に上げて、人のことを酒の肴にするやつよりいいんじゃない?」

 

「クク」

 

野良の冒険者の方から笑い声が聞こえた。それに対してベートは

 

「あァ?俺の何が恥だって??」

 

「お前のその行動と言動が恥そのものって言ってんだよ、脳みそあんのかてめぇ?」

 

「あぁ!?てめぇ?ロキやらフィンがいるからって、てめぇに手出せねぇとでも思ってんのか?表出やがれ、三下!」

 

うわ〜、一方通行みたいな言動になったなー、そして後ろのラウルやらアナキティから哀れみの視線がくるな〜、代わってくれてもいいんだぜ?ラウルくん。

 

まぁ俺は喧嘩なんてする気ないけどね

 

「ヤダよ。なんで俺がお前と喧嘩しなきゃ行けないの?勝てるわけないじゃん」

 

その発言を聞いて、ロキファミリアが全員呆気に取られ、ベートが吹き出す。

 

「ハ!やっぱりてめぇも口だけの雑魚じゃねぇか」

 

「そんな雑魚から提案、凶狼(ヴァナルガンド)俺と賭けをしない?」

 

「あ?賭けだ?嫌だね?雑魚なんかの提案なんか乗る価値もねぇ」

 

まぁそう言うと思ったよ?でもねベート君、俺は知ってるんだ、君は煽り耐性皆無ってことをね!

 

「へー、ベート・ローガは雑魚との賭けすらできないんだ?凶狼じゃなくてビビり野郎にでも二つ名変えたら?」

 

「チッ、いいぜ、やってやろうじゃねぇかその賭け、何でかけるんだ?」

 

はい。釣れたね、やっぱりツンデレなんだな〜ベート君って

 

「賭けの内容は君が言ってたトマト野郎、もといベル・クラネルがランクアップするまでの期間。近い方が勝ち、勝者は敗者になんでも命令できるってことでどう?」

 

そう言うとベート後ろのアイズの目が少しだけ目を開いた。

多分ベルの名前が聞けたからだろう。よしよし、このレベルなら改変しても大丈夫だろうし、ベルとの関係が早く始まるかもだし、いいだろ

 

「いいぜ。俺は…そうだな3年だ。てめぇは?」

 

ロキの前でベートにここまで言わせることができたので、この賭けはどうやっても無効にできない。そんなことをすれば俺はともかく、ベートのメンツ強いてはロキファミリアのメンツが潰れる。そのうえで俺は爆弾を投下する。

 

「1ヶ月」

 

「あ?てめぇ何言ってんだ?」

 

「1ヶ月って言ったんだよ。狼人なのに聞こえなかったか?」

 

ベートを含め、酒場の人間全員が驚く。そりゃあそうだ、現在のランクアップ最速はアイズの1年、後にも先にもそれより早く昇華を果たした人間は神時代以降存在しない。

 

そのうえでの1ヶ月。

 

単純に考えれば俺は馬鹿野郎だろう。

 

「いいぜ?聞いたなロキ、この賭け忘れんじゃねぇぞ?」

 

ベートは俺の返答を確認し、ロキに賭けの正当性を証明させる。

 

「ええでー。ウチがこの賭けを証明したる。でも青年、本当に1ヶ月でええんか?今なら特別に返させてやるで?」

 

「いや、1ヶ月でいい。」

 

そう、俺はロキの目を真っ直ぐに見て告げる。

 

「わっははは!おもしろい青年やな〜、そうかい、じゃあええわ〜」

 

ロキは涙をうかべ笑いながら俺の発言を受け取る。

さてと賭けもロキへのフラグも建てれて今回は重畳。帰るとするか

 

そう考え、ミアさんにお礼を告げ帰ろうとするとフィンから声をかけられる。

 

「君、少しいいかい?」

 

「ん?なんだ?」

 

「なぜ、君は彼に肩入れするんだい?まだ知り合ってすらいないんだろ?」

 

「ああ、そうだな…俺は英雄を見るためにこの都市に来た。」

 

「英雄?」

 

「ああ、英雄だ。黒龍を討伐し、ダンジョンを踏破する英雄を真近で見るために。」

 

「その英雄が、彼だと?」

 

「ああ、この都市で初めて。英雄になり得る人間だと感じたんだ」

 

「それ…はつまり、僕を含めここにいる人間は英雄にはなり得ないと?」

 

フィンとしては英雄、もしくは勇者としての立場は絶対必須。それを否定されたらそりゃあ興味も出るか、

 

「ああ、少なくとも今は、ここにいる奴らは英雄にはなり得ない。それはお前も含めてだよ。人工の英雄(フィン・ディムナ)

 

そう発言した瞬間、ロキファミリアの全員が、俺を睨みはじめる。特にティオネ、俺のことを今にも襲う勢いで睨んでくる。だがそれをフィンが制止し俺へと目を向ける。

 

「そうかい、ありがとう、引き止めて悪かったね。賭けの件、僕も興味ができた。楽しみにしてるよ」

 

さすが勇者様、どんな時でもスマートだな。

 

「ああ、俺も楽しみにしている。急に喧嘩をふっかけて悪かった。」

 

そう俺はフィンに謝罪をする。フィンはそれを仕草で返し俺は店の外にでてダンジョンに向かう。

 

 




誰かー!ダンメモフレンドになってくれませんか!?

プレイヤーID1608567296

一応2周年からやってますが、あまりガチ勢では無いのでよろしくお願いします。

周年イベガチで神。いつかフィアナ関連の話も描きたいんですが、風呂敷広げすぎてもアレなのでとりあえず、この作品頑張ります。

あと私事ですが2次元用のTwitter作りました。

https://twitter.com/Qd9Kol

ちょいちょい原神、ダンまち、よう実関連について呟く予定なので良ければフォローしてくれるとありがたいです。


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第11話 出会い

長い方がよさそうなので今回はちょっと頑張って6000文字です。
なるべく書き込むつもりですが、話はキリのいい所で終われるよう頑張ります。


畜生、畜生、畜生っ!

 

ベルは走る。歪められた眦から水滴が浮かんでは、背後へと流れていく。

頭の中を過ぎるのは先程の出来事。

惨めな自分が恥ずかしくて恥ずかしくて恥ずかしくて、笑い種に使われ侮辱され失笑され挙句の果てには庇われるこんな自分を、初めて消し去ってしまいたいと思った。

(馬鹿かよ、僕は、馬鹿がよっ!!)

青年の放った全ての言葉がむねをえぐる。

惰弱、貧弱、虚弱、軟弱、怯弱、小弱、暗弱、柔弱、劣弱、脆弱。

彼女と親密になるために「何をすればいいか分からない」では無い。

「何もかもしなければ」、自分は一人の少女の前に現れることさえ許されない。

殺意を覚えるのは蔑んだ青年でも馬鹿にしていた他人でもない。

何もしてないくせに無償で何かを期待していた、愚かな自分に対してだ。

(悔しい、悔しい、悔しいっっ!!)

青年の言葉を肯定してしまう弱い自分が悔しい。

何も言い返すことの出来ない無力な自分が悔しい。

彼女にとって路傍の石に過ぎない滑稽な自分が悔しい。

彼女の隣に立つ資格を、欠片も所持してない自分が、堪らなく悔しい。

 

深紅の双眸が遥か前方を睨みつける。

迷宮の上に築き上げられた摩天楼施設が、地下に口を開けてベルを待っていた。

目指すはダンジョン。目指すは高み。

吊り上げた瞳が涙を溜め、ベルは闇に屹立する塔に向かってひた走った。

 

 

 

豊穣の女主人を後にし、レイは今後の方針を考えながら歩いていた。

 

先程ロキファミリア(ベート)に喧嘩を売った。まぁ後悔はないし印象をつけれたと思う。

これを経てフィンが多少変わるかもしれないが、まぁそれはそれだ。悪化するようなことはないだろうし。

今後俺はどこに向かうべきだろう…

 

ロキファミリアに参加し、高みを目指す?

 

高みを目指すつもりはあるが、それはロキファミリアでなくてもいい。それこそベルとともに進めばいい、俺にはそれが出来るスキル(英雄追想)がある。

 

ならばヘスティアファミリアに入るか?

 

いや、今俺が入れば、ベルの成長の機会を潰してしまう可能性もある。入るにしてもそれはまだ先でいいだろう。

 

闇派閥にでも入るか?いや顔バレして都市の敵になるのはやだな、殺したいやつもいないし…いや?

あれなら可能だ。

いいかも知れない、今の俺なら可能だ。よしそうと決まれば…

 

そう今後の方針を考えていたが頭を切り替える。

 

「まぁ今は一応ベルのところに向かうか、死にはしないだろうけど」

 

そう未来の英雄を心配4割、ワクワク6割の心情で見に行くことを決め、

レイはベル・クラネルの戦いを見るためダンジョンへと向かった。

 

 

 

 

「はっ!せや!」

 

ダンジョンに入りかなりの時間がたった気がする。

ここは5階層?いや6階層か…頭に昇った血が段々と落ち着き初めてようやく自分の現在地を把握する。

目の前の壁が割れ始め、ウォーシャドウが2体でてきた。新米殺しの異名を持つ奴らは160c程で僕と同じぐらいの体躯をしている。

僕は唯一の武器であるナイフを手に構えを取りウォーシャードを相手に疾走する。

前の方のウォーシャードを切りつけ魔石をごと体を裂く。

その後ろから向かってくるウォーシャードには蹴りをお見舞し、全力疾走の速力を乗せた拳で顔をなぐりどちらも灰に帰る。

 

(ぼろぼろだ…)

 

どうして僕は生きてるんだ?

強くなってる?

以前の僕なら勝てなかったはずだ…

でもまだ足りない…もっと早く、強く、あの人と同じ高みに!

自分の力の上昇を感じつつ足りないと嘆く。そうしていると

周りの壁がいっせいに割れだす。

まるで逃がさないとでも告げるかのように…

 

「5階層と6階層ではモンスターの出生頻度が格段に上がる。」

 

自分のアドバイザーであるハーフエルフの女性のことはを思い出しつつ、先程屠ったウォーシャドウの死骸へ腰を折る。

灰に変わった肉体とその中に埋もれているドロップアイテム「ウォーシャドウの指刃」へ手を伸ばし即席の武器を左に手に装備する。

 

━━━━━やってやる。

 

辿り着きたい高みがある。

こんな場所で躓いている暇はない。

自分を包囲し始めているモンスター達から威嚇の声が上がる中、想いを新たにする。

そうして僕はモンスター達と激突する。

 

 

 

 

 

ダンジョンの入口まで来た。

2回の昇華を果たしたことによって俺の身体能力は大幅に以前と違う。

キメラとの戦闘でLv2時点のズレは修正することができた。

だがLv3にランクアップしたことによってまたズレが生じてしまった。

まぁそれは仕方ない、ランクアップすること自体は喜ばしいことなのでまぁいい。

ダンジョンの前の守衛に会釈をしつつ、摩天楼の地下に入る。

守衛には少し変な顔をされたが特に何も干渉されなかった、恐らくこの時間帯にダンジョンにはいる人間が珍しいのだろう。

 

1階層へと向かう螺旋階段を下りながら自分の戦闘面での課題を探すためステイタスを確認することを決める。

大賢者に記憶させておいた自分のステイタスを現在のLv3のステイタスを合計させる。

 

力2001

耐久1994

器用1944

敏捷2204

魔力1900

 

これが今の俺の合計値だ。

こうしてみるとなかなかにいいペースだと思う。本来その人がいちばん得意とすることでA、つまり800弱いけばいいほうというのが前世で色々なステイタスを見た俺の考えだ。

その考え方に基づけばこのステイタスはかなり高い数値となる。多分原作のLv2時点のベルを越しているのでは無いだろうか?

このペースでステイタス、Lvをあげることが出来れば、Lv5時点でLv6の敵と相対することも出来るかもしれない。

だがそもそもどれくらい貯金が反映されるかも不明なんだよな〜

ランクアップでどれだけ成長するかは分からないがそれは100.200という数字ではないだろう。

 

仮に計算してみるか

Lv2時点でのベルのステイタスの合計値は?

そう《大賢者》に問うと俺の頭の記憶を調べ、結果を表示する。

はー、便利な力だ。

そう自分のスキルの利便性を改めて認識しつつ計算に戻る。

 

ベル・クラネル

Lv2時点の合計値

力2070

耐久1929

器用2082

敏捷2351

魔力1634

 

という結果になった。耐久と魔力以外負けてるだと…?おいおいまじで?ベル君えぐ過ぎない?超えてるなんておこがましい。

まだまだ負けているってことか…これからはランクアップできるようになっても限界までステイタスを鍛えよう。

今の俺が唯一勝ってるのは時間だけ、ならばそれを最大限利用させてもらう。

まぁ+スキルもあるから単純には比較できないよな〜

 

俺には《闇の権能》による身体能力上昇、武器作成

《大賢者》による操作補助や思考補助

サンダー・ボルト》による火力

 

ベルには現時点ではないが

《英雄願望》によるチャージ

《ファイヤ・ボルト》という速攻魔法などがある。

 

さらに技や駆け引きも絡んでくるのでどちらが勝つとかはまだ判断できない。

ならば努力するしかないだろう、隣にたつのが目標とはいえ、足でまといなんてまっぴらだ、どうせならベルを助けられるぐらいになりたい!

まぁまずはベルに強くなってもらうのと俺も負けないくらい強くならなくちゃいけない。

 

1変化したスキルの性質を理解する。

2新しい武器の調達

3俺自身のステイタス以外の能力の上昇

 

俺が今後やらなければ行けないことはこんなとこか?

そう考えを改めているとようやく1層の入口の階段まで着く。

 

「ベルが死んでてもやばいし、さっさと行くか!」

 

そう頭を切りかえ1層へ足を踏み入れ走る。

 

加速、加速、どんどん自分が早くなってることがわかる。

これでもまだ全速力では無いのだから本当にすごい。

Lv1では5階層まで行くのに2時間ほど要していたが、今なら1時間を切るかも知れない。

 

これがランクアップ、器の昇華による効果か。

Lvがひとつ変わるだけでもかなりの差がある、それこそ肉体と精神がズレるくらいの差が、Lv5の状態では勝てない敵でもLv6になれば圧倒できるようになったりする。

そう考えると戦闘中やダンジョン内でステイタス更新をすることの出来る《神の偽能》はかなり有能な能力なんだろう、それこそ戦況をひっくり返せるくらいのレベルの。

神を探すのが面倒でこの能力を作ったがそれがここまで便利とは思わなかった。冷静に考えて戦闘中強くなり続けるやつなんて敵からしたら恐怖以外の何物でもないだろうしな〜

 

自分の力の飛躍、そして能力の有能性を感じながらベルの現在地を予測する。

 

俺とベルの速度はかなり違う、一応軽めに走ってダンジョンに向かったとはいえそれはベルの全力疾走と変わらないだろう。そしてこのまだ残っているモンスターの灰と魔石からしてベルがここを通ったのはわかる。てか魔石もったいないし危ないな、回収しておこう。

だがベルの今現在の細かい位置は分からないな。ならば…

 

《大賢者》使用、地図 ベル・クラネルをマーカーを設置

 

《大賢者》に命令を下し俺より下にいるであろう、ベルに対して位置のわかるマーカーを設置、色を白。マーカーの横にベル・クラネルと書いてある。

 

はーーー、《神の偽能》も大概チートスキルだが、《大賢者》は利便性においては都市最高のスキルだろう、自分の位置、思考、操作全てを補助してくれている。

この地図なんて盗賊(シーフ)からしたら泣いて欲しがるスキルだろう。

それがスキルの中の能力のひとつでしかないと…エグイなほんと。

まぁ便利なので使わないなんて選択肢はないが。

原作内で魔法を封じる呪詛は登場したがスキルを封じる呪詛は登場していない。もしスキルを封じられたら俺は他の冒険者以上に弱体化するだろう、ステイタスはともかく技と駆け引きにおいては、スキルを使用しなければ今のベルにすら劣るだろう。

スキルをしない状態で訓練するのもありだな、今後どんな奴が出てくるかもわからん。

 

さてととりあえずベルは今…6階層か、原作通りの場所だな、よし近くまで行こう。せっかくだから全速力で!

そう自分の体を最大限動かすため、何度か軽く跳ねて助走姿勢を取り、疾走を開始する。

 

 

 

 

はぁはぁ、あれからどれくらい戦い続けただろう?倒した数はとうに10を超え、もうすぐ20に届きそうだ。

 

「せぇやぁー!!」

 

最後のウォーシャドウをナイフで切り裂き、どうにかこの戦いを切り抜けた。

 

そして倒したことで気が抜けたのか、床に背を打ち付ける。

ああっくそ体がもう動かない、身体中に切り傷、そしてウォーシャドウの返り血。手は抜き身を持っていたため血だらけで感覚も少し鈍い。

頭に昇っていた血が完全に落ちたせいか、冷静に思考し始めると自分の行った行動の愚かさを自覚する。

ダンジョンに防具もつけず、準備もせずナイフ1本で未到達の階層に進出か…エイナさんが聞いたら鬼のように怒るだろうな。

 

そういえば豊穣の女主人にお代を払っていない、シルさんには悪いことしたな…謝ったら許してくるかな?

神様にも何も言わずここまで来てしまったし、もしかして心配してるかもな…

怒りに染まり滞っていた思考が、やっと機能し始める。

考えていると自分の頭の悪さに嫌気がさす、問題しか起こしてないでは無いか…

 

「か、帰らなきゃ…帰って神様に謝って、シルさんにも、お店の人達にも…謝らなきゃ」

 

どうにか自分の体を立たせ、深呼吸をする。

そして周りの警戒に戻ろうとすると

 

「おい、貴様」

 

知らない男の人から話しかけられた。

服装は冒険者とは思えないもので白い装束のような格好をしている、その男の人以外にも2人ほど同じ格好をしている

ファミリアで服装を合わせているのかな?

そんな的はずれな考えをしていると男の人から再度声をかけられる。

 

「貴様、最近犬のようなモンスターを狩ったことはあるか?」

 

「犬?ですか?いえ、知らないです。」

 

「そうか、お前でもないか…」

 

素直に答えたあと、男の人から血の匂いがすることに気づく。

よく見るとあの人手が血だらけだ、怪我…かな?

 

「あの?手怪我してるんですか?大丈夫ですか?」

 

「ああ、これは返り血だから平気だ。」

 

返り血?この近くに赤い血を出すモンスターはいないはず、それになぜ拭かないだ?

違和感が募り始め、自然とその男たちから距離をとる。

それに気づいたのか、男が距離をつめ、話しかけられる。

 

「少年」

 

「はい、な、なんですか?」

 

「悪いが、我々のため、尊い犠牲となってくれ」

 

「は?」

 

何を言ってるんだ?この人。

言葉の意味がわからず一瞬思考が停止する、その瞬間白装束の男が間合いを詰め、腰からナイフを取り出し斬りかかってきた。

 

「くっ!」

 

僕はまだ鞘に納めていなかったナイフでどうにかその攻撃を防ぐ。

重い!!

明らかに僕と男では力の差がある、今の一撃でそれを如実に感じる。

しかもその男の仲間が2人もいる、勝ち目はほぼ無いに等しい

 

「い、いきなり何をするんですか!?」

 

「聞こえなかったか?我々のため犠牲となれ、貴様がキメラの存在を知らなくても、我々は貴様に姿を見られた時点で殺すつもりだった。」

 

な、何を言ってるんだ?この人は?

 

「貴様に不備はない。だが、そうだな…強いて言うなら運が悪かった。それだけの事だ」

 

くっ…話が通じる気がしない。

どうする?戦うか、いや勝てるわけが無いただでさえ先程の戦いで消耗している、その上で防具すらまともに付けていない状態で勝てるわけ…

男がまた向かってくる、後ろのふたりは見ているだけだ。

舐められてるのか?一体一なら勝てるか?思考をめぐらせていると男がどんどん近づいてくる。

 

畜生!

そう思い男に向かって刃を向け、斬りかかる。

男はそれを軽く防ぎ、僕に蹴りをお見舞する

 

「ぐはっ!!」

 

蹴られた衝撃で胃の中のものがでてくる、床を転がり男から距離ができる。どうにか勢いを殺し、口を拭い体勢を立て直す。

はぁはぁ、息が切れる。クソ、こんな所で死んでたまるか、まだあの人の隣に立ててない、あの人に認識すらされてない。そんな中死にきれるか!

 

心の中の憧憬を思い出しながら目の前の男を見る。

男はニヤニヤと顔を歪めながら僕を逃がさないよう見てくる。

畜生!!、死んでたまるか!

 

僕は全力で男に疾走を開始する。

今までダンジョンで鍛えた2週間そのすべでを乗せて、思いっきり男をナイフで斬り掛かる!

 

「せぇやーー!!」

 

「ふ…駆け出しにしてはやるが…だが遅いな。」

 

男は僕の渾身の一撃を軽くナイフで弾き、僕の喉元にナイフを向け刺そうとする。

 

くそ…こんな所で…

 

自分が殺されると自覚し後悔が募る。だが遅い…

 

神様ごめんなさい…

 

キィン!!!

 

金属がはじかれるような音がした

音と共に男が僕から距離をとる。

ナイフが弾かれた…?なんで?

男を見ると困惑した様子で僕を見る、僕は自分の喉元を見ると黒い闇のようなものが僕の喉に張り付いている。

なんだ?これ?

自分に起こった異常を確認しようと闇に触れようとすると

後ろから首を叩かれ、意識が飛びそうになる

 

「よく頑張ったな。あとは任せとけ」

 

後ろから知らない男の人の優しい声が聞こえた、僕はその男の声に何故か安心し抱えれながらゆっくりと気絶する。

 

 

 

「き、貴様何者だ!?」

 

「あ?俺か?うーん…名乗るほどの者じゃないけど、こいつのファンかな?」

 

「は?」

 

白装束の男が困惑した様子で俺を見てくる。

だがそんなことはどうでもいい、どうせ殺す。

 

「さて、俺の推しを殺そうとしたんだ、死ぬ覚悟はできてるだろうな?」

 

俺は困惑している修道服の男たちを睨みながら、怒りに任せてそう告げる。

 




一人称
俺 レイ

僕 ベル

このふたりは一緒に書くことが多くなりそうなので、もし誰が喋ってるのかわからなくなったら一人称で判別してください。


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第12話 VS闇派閥

冷静に考えて、1万文字って原稿用紙25枚分なんだよね。
0から内容を考えつつ、それ以上をかける先生方ってホントすごいわ


レイの去った後の豊穣の女主人

 

先程まで笑いあっていたロキ・ファミリアは全員黙ってしまっていた。

その原因は先程の黒髪の青年の発言に寄るところが大きいだろう。

 

そんな中2人…いや1人と1柱だけが思考を回転させていた。

 

1人は先程青年から人工の英雄と告げられた、フィン・ディムナ

彼は英雄…いや一族の希望になろうと努力した。

立ち振る舞いを変え、言葉遣いを変え、主神に願い出て、二つ名まで勇者にしてもらった。

その行いが間違っているとは考えていない

たとえ後ろ指を刺されようと自分は進み続けることを決めている、だが、見ず知らずの初めて会う青年から人工の英雄か…随分手厳しい一言だね…

 

 

片やロキ・ファミリアの主神、ロキ。

彼女としては自分のファミリアの人間がある意味では馬鹿にされたのだ。

本来なら発言者をファミリアごと潰す選択をとっても可笑しくない。

それくらい彼女にとって、自分の子供とは愛すべき存在だ。

だが青年への怒りと同じくらいその発言に対して興味があった。

冒険者になる理由は様々だ。金、名誉、女。その他にも

居場所を求める者(ティオネ、ティオナ)強さを求める者(ベート、アイズ)名声を求める者(フィン)、本当に様々であろう。

だが、その目的と同時に冒険者になるということは、英雄を目指す道に入るという意味を持つというのは等に忘れられているのだろう。

昔は限られた者しか自ら器を昇華させることは出来なかった。

しかし神が降臨して以降、器を昇華させることは昔に比べればかなり簡単になった、要は誰でも英雄になる資格を得られるということだ。

だが、実際に英雄をめざして世界を救おうとしている者など数える程度しかいないだろう。

太古の昔、多く英雄たちが世界を滅ぼす災厄を退けようと名を挙げ、英雄と呼ばれるような存在へと至り、神智を超えたダンジョンに、モンスターに敗れていった。

その意思は長年の年月により途中でねじ曲がり、今や多くの英雄候補(冒険者)達は一獲千金を狙ってダンジョンに挑んでいる。

それを悪い事だとはロキは思わない、子供とはそもそも欲深い者が大半だと理解しているからだ。

ロキ・ファミリアで英雄を目指しているのはフィン位のものだろう、しかもそれは世界を救うためではなく一族を再興する為だ。

真っ当に英雄を目指しているのはロキ・ファミリアにはいない。

それは都市最強のもう一角フレイヤ・ファミリアでも同じであろう。

そんな中あの青年は英雄を探していた、そしてここにいる都市最大派閥を差し置いてどこの所属かも分からない、少年こそが英雄に相応しいと啖呵をきった。ああ、面白い。これも下界の醍醐味か?

そんな薄ら笑いをうかべそうになる。

だが、今は…

 

「ほらほら〜、なにみんな黙ってしまってるん?騒ごうや〜せっかくの宴やで〜?、ほらラウルご自慢で1発芸でも見せてぇや〜!」

 

「ちょっ!?ロキ?自分そんな1発芸なんて持ってないすよ!?」

 

ファミリアで1番いじりやすいであろう、ラウルを使い場を盛り上げる。

それと同時にフィンに目線をやり、意志を伝える。

フィンはその目線に気づき、正確にロキの神意を汲み取り席を立って発言をする。

 

「みんなに言っておきたいことがある、今回の彼の言葉に不満を覚えた者もいるだろうが、もし今後街中で彼をみかけても今回の事を使い、問いつめたりはしないように」

 

フィンは特にティオネを見やり、そう告げる。

ティオネは先程までの怒りを無くしたように団長の言葉に大きく頷く。

これならば、彼に突っかかるような真似をするものは居ないだろう…

 

「まぁ、そんな真似をするものはここにはいないだろうけどね、さっ!みんなまだまだ夜は長いんだ、羽目を外しすぎないように、楽しもう!」

 

フィンは最後に宴を促すような発言をし、席に座る。

それと同時にロキ・ファミリアのメンバーは先程のように雑談をしながら宴を楽しみ始めた。

ロキ・ファミリアの空気が変わったことで他の客も騒ぎ始め、元の酒場の空気が戻る。

 

あの青年には興味がある、だがそれよりも今は宴会を楽しまなければ損やもんなー。

 

そんなロキの思いがあり、ロキ・ファミリアはベートが先程の騒動の仕置としてリヴェリアに吊るされたり、リヴェリアの胸を揉む権利をかけガレス、ラウル、ロキ、他男衆が飲み比べをし盛り上がったり、まだ入団して日の浅い者がアイズに酒を飲ませようとして一悶着あったり、そんな色々な騒動がありつつ、楽しい夜を酒場で過ごした。

 

 

 

ベルと闇派閥が戦う直前

 

ふぅ、6階層まで来れた。だが6階層までかなり早く来れたな…全力疾走とはいえ疲れもそれほど感じていない。

このペースで行けばこの先1人で中層へもいけそうだな。

さてとベルは…この辺にいると思って走るのをやめたんだが…

ん?戦闘音が聞こえる…だがおかしいな?音的に金属同士だ。

この辺に金属を使うモンスターはいないはずなんだが、てことは……

推測を立て少し急ぎめにベルを探す。

戦闘音を追いかけていると、男の話し声が聞こえ始め息を潜め通路の壁に沿う、ベルは……

 

見つけた!

 

ようやく見つけたベルはかなりボロボロな姿で白装束の男にナイフを突き刺されようとしている。

 

やばい!

 

俺は反射で《闇の権能》を使用しベルの首元まで闇を伸ばす。

伸ばした闇はどうにかベルへの一撃を防ぐことに成功する。

俺はすぐベルの元まで駆け付け、倒れそうになっているベルを抱える。

そして少し迷った後、ベルの首に手刀を当て、気絶させる。

今俺の姿を見られていいことは無い…助けたと知られるのは今でなくてもいいのだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

このような経緯を経て、俺はこいつらの前に立っている。

 

「は!何が覚悟はできてるか?だ、貴様もそこのガキと一緒に殺してやる」

 

ベルと戦っていた男の後ろ男が俺に対して煽るように言ってくる。

 

「おい!落ち着け。」

 

ベルと戦っていた男は冷静に俺を見ながら仲間を諭す、こいつらは十中八九闇派閥の連中だろう。

だがなぜここに?まぁいい、1人残して聞けば済む話だ。

 

まずは戦力を調べよう、カッコつけたが相手が全員Lv3ならベルを抱えて全力疾走するつもりだ、勝てるわけないし…

 

《神の偽能》起動 対象のステイタス(Lv)を表示。

 

すると3人の頭の上にステイタスが表示される。

ラクリスLv1

リオラLv2

バルカLv1

 

とでてくる。よし、Lv2が1人なら十分に勝算がある。

 

「さて、青年。一応聞いておくが、貴様最近犬のようなモンスターを狩った記憶はあるか?」

 

犬?あのキメラのことか?だが正直に答えることは無い、誤魔化してしまおう。

 

「知るか、お前らの質問に答える義理もない。さっさとかかってこいよ」

 

「そうか…ではその少年と共に犠牲となれ!」

 

3人同時に向かってきた。

1人は先程のナイフを構えるLv2、ほか2人も同じようなナイフを装備している。

このまま普通に戦ってもいいが、ベルを抱えいるので右手が空いていない上に相手は爆発する装備を持っているかもしれない、

ここは距離を取ろう。

 

俺は後ろに向かって全力で跳躍し、腕に《闇の権能》を集約させ腕程度の太さになったらそれを伸ばす。集約させた闇は3M程度の長さに落ち着く。男たちはそれを警戒するが、既に向かってきているので止まることはできない。

俺は闇を鞭のように振る。

 

「フッ!」

 

ビュン!!という音と共に闇の鞭が男たちの脇腹を的確に突く。

3人に当たり吹き飛ばすが、Lv2の男だけはどうにかナイフで防いだようだ。

だがLv1のふたりは壁際で痛みに悶えている、戦闘を継続することは出来ないだろう。

 

Lv2の男は後ろに飛び、2人に声をかけに行った。

 

「おい、生きているか?」

 

「はぁはぁ何とか…だが痛ってぇな、このガキが…」

 

「自分も何とか…でももう戦えそうには…」

 

二人の男は俺の予想通り、もう既に動けそうにないなこのままLv2の男も制圧してしまおう。

そう考え距離を詰めようとしたが、Lv2の男が何かをしようとしたので、

距離を詰めるのをやめ、観察を続ける。

 

「ラクリス」

 

「はぁはぁ、なんですかい…?」

 

「この場で犠牲になってくれ…」

 

「は?」

 

ラクリスの返事を待たず、Lv2の男もといリオラがラクリスの頭を掴み、俺に思いっきり投げて飛ばしてきた。

 

俺は、投げ飛ばされたラクリスをどうしようか一瞬迷ったが、リオラが腰から赤い短剣を取り出そうとしていることに気づく。

なるほど、恐らくこいつに着いている爆破装置を魔剣で引火させて、俺ごと爆発させるつもりだろう。

 

ならば…俺は腕に集約させておいた《闇の権能》を飛んでくる男目掛けて飛ばす、そして男に当たりそうになる瞬間、集約を解除、そのまま男を囲むドームのようなものを作り捕まえる。

 

リオラはそれに対して、一瞬動揺したが、まぁいいと思ったのかそのまま俺と抱えられているベル目掛けて赤い短剣を振る。

俺予想通り、赤い短剣は魔剣だった。

引火用の魔剣なのだろう、予想していた火力より弱い火力だった。

だが食らったらLv3の俺ならともかく、Lv1のベルは火傷どころでは済まないだろう。

ベルを巻き込むのはNGだ。

ベルが起きても困るし、何よりこれ以上怪我させるのも忍びない。

俺は魔剣の炎が俺達に届くまでの間に考えをまとめ、行動に移す。

 

「《サンダー・ボルト》!!」

 

俺は自分の唯一の攻撃魔法(付与魔法)を唱え、雷を腕に集約させ手から放つ。

よっぽどの魔剣、それこそクロッゾの魔剣くらいでないとLv3の魔法職と同等レベルのステイタスを持つ俺の俺の魔法の火力には勝てないだろう。

その予想通り炎は雷に負け霧散し、雷は炎を越えて男たちに当たる。

 

男達に当たったと思った瞬間、男達を起点に2回の爆発が起こる。

あっ…やべ、あいつらにも爆破装置がついてたんだった、まぁいいか…どうせ殺そうと思ってたし、尋問するにも3人じゃ多いし。

俺は雷を切り離し、ラクリスを拘束していたドーム状の闇を壁状にして通路を完全に塞ぐ。

 

塞いだ瞬間爆発の余波が闇の壁に当たるが、Lv3になりスキルも強くなったのか危なげなく、防ぐことが出来た。

 

「あっ、あれ?なんで俺が助かってんだ?」

 

助けてやった男が自分の状態に困惑している。

俺はその男に声をかける。

 

「おい」

 

男もといラクリスは俺の声に反応し、驚く。

 

「ひっ!お前、なんで…生きてるんだ!?」

 

あの一瞬の攻防は俺でもLv3の動体視力+《大賢者》による思考補助による効果で判断できる程度だった、Lv1がわからなくなるのも無理はないか…

 

「俺があいつらより強かっただけだろ?」

 

俺は闇を解除し霧散させ、奥の通路の2人の死骸に向けて指を指す。

男は指を指した方向を見て、顔を青くし、俺の方を見る

 

「た、助けてくれ、何でもする」

 

ほう、何でもするとな…じゃあ色々聞かせてもらうか

 

「わかった。じゃあ着いてこい。近くのルームまで行くぞ」

 

ラクリスは俺の指示にビビりながらも従い、俺はラクリスから爆破装置を取り除き、今回の件の原因に着いて聞く。

その結果

ラクリス達が予想通り闇派閥所属なこと、キメラの魔石を回収するためキメラの事を聞いて回っていたこと、これからの予定、そして聞いた人間や自分たちを見た人間は全て殺したことを聞いた。

 

うん。やっぱりこれ、ベルが死にかけたの俺が原因だわ…

薄々察していたが、やはり俺がキメラを殺したことが原因らしい、うーんどうしよう、こいつは殺してもいいけど、もう気は晴れたし殺す理由もないのでこいつはギルドに捕まえてもらうことにしよう。

ベルはホームに送り届けた方がいいよな?ここに放置する訳にもいかないし…

てかこの事が他に影響する可能性もあるよな。

まぁ作中で成長イベがない奴らはともかく、レフィーヤ、アイズ、ベル周りは結構注意しておいた方がいいな。

原作よりさらに成長するならともかく、原作より弱くなったらオラリオ滅ぶ可能性すらあるぞ…

まぁレフィーヤやアイズはともかくベルは最悪俺がボコってステイタスあげていけばいいか?

まぁこの辺は必要に応じて対応していけばいいだろう。

 

さてと話を聞かせてもらったが、こいつにはまだやってもらうことがある。

 

「おい、ちょっとこっちに来い。」

 

「え、え!?なんでだよ?全部話したろ!?」

 

ラクリスは意味がわからないように、俺に疑問をぶつけるが、俺は優しめの声でラクリスを説得する。

 

「安心しろ、殺す気はないよ、ちょっとお前の仲間の死体を片しに行くだけだ」

 

「わ、わかったよ…このガキはどうするんだ?」

 

「こいつは…ほい!」

 

俺はラクリスの疑問を解決するのと、ベルを守るのを同時にする。

 

《闇の権能》を使用し、ベルをドーム状の闇に閉じ込める。

ベルはまだ気絶してから、そんなに経っていないし、ここに閉じ込めておいても平気だろう。

周りのモンスターもこれを壊せるやつは居ないだろうし、壊せたとしても俺が速攻で向かえばいい…

よし、大丈夫、行こう。

 

俺はラクリスを手招きして呼び、一緒に仲間の死体を片しに行く

 

男たちの死体は黒焦げている上、爆破の影響で原型を留めていない。

敵とはいえ、埋葬しておこう。

俺はルームから持ってきおいた蔦を薪代わりに置く。そして

 

「《サンダーボルト》」

 

俺は雷を集中して、雷で炎をつける。

炎は蔦を焼き、男たちの体を焼いていく…

思えば自分の意思で人を殺したのは、これが初めてか…思いのほか自分に心境が落ち着いていることを知る。

この落ち着きはランクアップによる器の昇華の影響か、はたまた俺が元から人に対して冷徹なのか…どっちもかな?

まぁ今回に限っては雷を当てただけで、剣で切ったり、心臓を潰したりもしてないからなのもあるだろう。

この先も俺は人を殺すのだろうか…

まぁ殺すだろうな、闇派閥然りこれからモンスター以外にも戦う機会はあるだろうし…

まぁこの辺は仕方ない、この世界に来て、冒険者になることを決めた時点でこういうことをするのは予想出来たし覚悟もしていた。

俺は正義の味方にはなれないし、なる気もない。

ベル(英雄)の隣に立ち、その活躍を見届ける努力はするつもりだ。だが、俺自身が英雄になれるとは思えない、俺にはそんな資格も才能も無い。

でも守りたいひと(リュー・リオン)もいる、その人を守るためなら俺は人を殺す、いや殺さなくちゃいけない。

それだけは覚悟しておこう。

俺のエゴで大事な人を殺すことになるなんて死んでもゴメンだ。

 

自分が初めて殺した人の死体を焼きながら、俺はそんな覚悟を決める。

 

「なぁ、お前?」

 

「は、はい。なんですか?」

 

俺は隣に立って燃え尽きるのを見届けていたラクリスに声をかける。

 

「お前に選択肢を与える、ここで死ぬか、ギルドに突き出されるか」

 

「な!?お前約束しただろ!?俺を助けてくれるって」

 

「俺が約束したのは、あくまでお前の命を助けるってことだけだ、お前が望むなら殺さないし、もし追いかけたい奴がいるならここで俺が苦しみがないよう殺してやる。さぁどっちか選べ」

 

ここで俺はこいつを殺せるだろうか?まぁ殺せるはずだ…あくまで敵として会話している分には問題ない。

ただ…もし友人と殺し合うことになったら?俺はそいつを殺せるんだろうか?

 

無意味な仮定だな、そうならないように対処すればいいだけだ。

 

「わ、わかったよ…俺を…殺してくれ」

 

「いいのか?後悔はないか?」

 

「後悔がなきゃこんな組織に属してねぇよ」

 

そりゃあそうか、悪いことを聞いた。

 

「ああ、そうだな、悪いことを聞いた…すまん」

 

「いいよ…気にしちゃあいねぇさ、さあやってくれ」

 

俺はラクリスのおでこに指先を当て詠唱を唱える。

 

「《サンダー・ボルト》」

 

おでこから脳内に過剰な電流を流す。

流した瞬間ラクリスが倒れた…死んだな。

 

俺はラクリスを一旦寝かせ、服を剥ぐ。

俺がこいつを助けるか否かを提案した時点で、服を剥ぐことは決めていた。

こいつの服と顔を利用して闇派閥に潜入して情報を得ることも出来るだろう。

 

俺は白装束を剥ぎ、ラクリスはパンツとインナー姿になる、このまま放っておく気もないので、ラクリスをだき抱えて仲間の死体のそばに置く。

そしてまだ燃え尽きていない仲間と共にもう一度、魔法(サンダー・ボルト)の雷で炎をつけラクリスごと燃やす。

今度は先程とは違い人の肉を生で焼いたからか、異臭がした。

俺はその異臭を嗅いだ瞬間吐き気を催してしまい、死体から少し離れた場所で吐いてしまう。

 

「ウォェェー…。はぁはぁ…」

 

吐いたのなんて何年ぶりだろう、この匂いにもなるべくなら慣れておかなければ…慣れたくはないが。

 

俺は死体を燃やした場所から少し離れ、燃える光景を見届ける。

全員灰になったことを確認し、道に穴を掘り、灰を埋める。

 

これで大丈夫だな、これからも殺した敵はなるべく時間がある時は埋葬してやろうかと考えるが、そんな暇がある状況なんて珍しいだろうな…

 

ふぅーー…よし!

ベルが起きててもまずいし、早くベルを回収してヘスティア様の元に送り届けよう。

 

俺はルームに戻りベルを回収し、白装束や爆破装置、魔石などの荷物をまとめ、なるべく揺れのないようにしながらダンジョンから、地上へと帰還する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




6000字くらいだけど切り良いんでここでとめます〜


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第13話 処女神(ヘスティア)

投稿遅れてごめんなさーい!
待ってた方(いたら)おまたせしました!


ベルを背負いながら、ダンジョン5階層をベルを起こさない程度で走り続ける。

本来ならこの場所には他の同業者(冒険者)がいるので、異常事態(イレギュラー)が起きないよう、なるべくモンスターを狩って移動するのだが、今に関しては時間帯が早く、他の同業者(冒険者)が居ないため気にせずモンスターを無視するつもりだった、だが後ろから聞こえてくる足音の数が多いな…

1回やっとくか。

そう判断して加速を中止、後ろを向き状況を確認する。

後ろからは色々なモンスターが2〜30匹ほどいた、物理で相手をしてもいいのだが背負ってるベルの事もあり、時間がもったいないので魔法で潰すことにする。

 

『サンダーボルト』

 

付与魔法を起動。それを片脚に集約して思いっきり振り抜く

 

「ふっ!」

 

脚に集約した雷がモンスターの方にぶつかっていき、雷に当たった傍からモンスターはやけ始めて5秒ほどで殲滅する。

思えばLv1ではあまり火力のなかった雷もLv3になったことでかなり火力が上がった気がする、火力があがったのはいいが、これからは手加減もできるようにならなければいけなさそうだ、殺すことの出来ない戦いもあるだろうし。

まぁ今は魔石を回収しよう、強化種が出来たら事だ、その後灰の山から魔石を回収し、袋に入れてると声が聞こえてきた。

 

「おい!見つかったか!?」

 

「いや!見つからねぇあいつらどこ行きやがった!?」

 

声的に男の冒険者だろうか?何やら焦っているらしい。

通路の壁に身を隠しながら顔だけだし、様子を確認する。

男が2人、格好から見てやはり冒険者のようだ、まぁ冒険者以外がいたら問題なんだろうが。

 

「たくよ、どうする?あいつら置いて戻るか?」

 

「いや、置いてはまずいだろ、捕まってロキファミリアにでも勘ぐられたらヤバいって言われてるだろ?」

 

これは…闇派閥の連中なのか?とりあえずステイタス見とくか。

 

Lv3 ラウス

Lv3ガリム

 

え?Lv3が2人かよ、これは勝てないなうん、無理。

てかステイタスの詳細も見れるのだろうか?見てみるか。

《神の偽能》を使用しLvと名前の先、詳細のステイタス、スキル、所属ファミリアの情報を見ようとしてみるが…

 

Lv3 ラウス→これ以上は表示出来ません。

 

Lv3 ガリム→これ以上は表示出来ません。

 

ん?表示ができない、これは力の差が近いと見れないって事なのか…?

それとも俺がそもそも知らないファミリアだと機能しない?

どんな理由かは分からないが、とりあえず今得られる情報はこれ以上ないってことか…

だがどうする、全力を出して戦えばいけるか?いや…

1VS1ならともかく1VS 2は勝てる気がしない

でもこいつらがここにいたら4階層まで行けないんだよな…

ここで時間を食うのはいただけない、よし、急いで走ってやり過ごそう

追いかけられたらそれはそれだ。

 

一旦壁から離れ、ベルのことをしっかりと背負い直し、助走を初め全力疾走を開始する。

風の音ともにぐんぐんと速度を上げ横の通路に壁を蹴り飛ばし通り、男たちの横を通る。

 

「ちょっ!?」

 

「なんだ!?」

 

男たちが驚いたような反応をしているが無視する。

勝てない相手とて認識が追いつく前に逃げてしまえばいいのだ。

もちろんこいつらが闇派閥ではなく朝からダンジョンに潜った上級冒険者

もあるだろう、だが話の内容、先程の闇派閥の存在を鑑みて用心するに越したことはない。

 

「おい、てめぇまて!?」

 

「あいつだろ絶対!?おうぞ!」

 

待てと言われて待つバカがどこにいる!てか絶対あいつら闇派閥じゃん。

しかも俺を探してるヤツらかな?どうやらキメラを倒したのが相当お気に召さなかったらしい。

しかし何故だ?どうしてこんなに未来が変わっている?いや、今はとりあえず逃げ切ることが最優先だ。どうせなら本気で逃げよう

 

俺は思考を取り止め、前に進むことだけを考えさらに加速していく。

 

そのまま30分ほど走っただろうか?後ろから声が聞こえなくなり、モンスターもなるべく最低限の動きで邪魔になるやつのみを殺しダンジョン1階層、『始まりの道』の入口まで来た。

 

「よっと!」

 

勢いよく階段を駆け上がり、ダンジョンの入口、摩天楼バベルの1階まで来る。

ダンジョンを抜けたことで警戒度を一段階下げつつ、周りの様子を確認する。

「朝…か」

日が昇り始めており摩天楼の入口が少し明るかった。

 

このままヘスティアの元までベルを送ればとりあえず俺の今日やることは終わりだな、さてとヘスティアの元まで行こう。

ヘスティア・ファミリアの場所は…知らん。

え、どうしよう…これ送り届けられなくないか?

 

そうこう悩んでいると

 

「う、う〜ん…ここは?」

 

ベルが起きたようだ。本当ならまだ顔を見せる必要は無いのだが仕方ない。

ベルにホームの場所を聞くか。

 

「おお、起きたか?」

 

「あの、あなたは?というかここは?」

 

「ここは、地上だ。お前が6階層で倒れてたからここまで連れてきたんだが…」

 

今闇派閥の話をする必要はない、ベル自身の危険に繋がるし、未来が変わることもあるだろう、まぁ未来に関しては俺がいることでもう宛にならない可能性もあるが

 

「え?そうなんですか?その、ありがとうございます。」

 

「いや、それはいいんだけど、お前のホームまで送りたいんだが…場所を教えてくれないか?」

 

「え、いやここまで送って貰ってそこまでは悪いですよ!?自分で帰ります!」

 

「あのな?お前今滅茶苦茶ボロボロなんだぞ、まともに歩けるか?そんな状態のやつが自分で帰ります。って言って、はい、そうですかってなるとでも?」

 

「うぅ、すいません、じゃあお願いします。」

 

「ああ、気にすんなこんなのただの気まぐれだから」

 

「はい、絶対いつか恩返しします」

 

「おう、じゃあ今度飲みにでも付き合ってくれ、1人飲みばっかで寂しいんだ笑」

 

そのままベルの指示に従ってホームまで歩いていく。歩いている間何も喋らないのもアレなので話をすることにする。

 

「あのさ?なんであんな無茶してたんだ?」

 

「え?」

 

「装備もなしでなんでダンジョンに潜ったんだ?俺あの店に居てお前が食い逃げした時もびっくりしたけど、お前がダンジョンに向かっていった時は本当に驚いたぞ?」

 

「え!?その…」

 

「まぁ人間誰しも事情があるんだろうけどな、とりあえずこんな無茶の仕方はやめとけよ?」

 

「は、はい…すいません。」

 

そんな風にベルを話しているとホームが見えてきた。

 

「べ、ベル君!?」

 

ホームの前にヘスティアが立っていたのか、俺らを見かけてきたようだ。

 

「ど、どうしたんだいその怪我!もしかして彼に…いや違うね君じゃないんだろう?」

 

さすが神、本質を見抜く目があるってことなのか?まぁ釈明をせずに済むのは楽でいいね。しっかしこの人も可愛いな。

マジでこの世界に来てから顔面偏差値の高さにビビるわ、まぁ声には出さないが

 

「俺はこいつをダンジョンで助けただけですよ。まぁ事情は本人から聞いて下さい。」

 

「ダンジョン!?何をしているんだい君は!」

 

「ご、ごめんなさい」

 

俺は背負っていたベルを降ろしながらヘスティアに対して説明をする。

 

「じゃあ俺はこれで、ベル・クラネル。お前の気持ちは知らない、ただ命を失ったらどんな努力も無駄になる、そのことだけは覚えとけよ?」

 

「う…はい、すいません、ありがどうございました。」

 

「ああ、それとちょっと目をつぶれ。」

 

「え?あ、はい。」

 

俺は目を瞑ったベルの頭の上からダンジョンに向かう途中で買ったポーションをかける。

かけたそばからベルの傷が治っていく、深い傷は治らないだろうが最低限動ける程度には治っただろう。

 

「あの!」

 

「ん?なんだ?」

 

「名前を聞かせて貰えませんか?」

 

ああ、そうかまだ名乗ってなかったか。

 

「アマミヤ・レイ、それが俺の名前だ。」

 

「アマミヤさん、本当に色々とありがとうございました」

 

「レイでいいよ、俺もベルって呼ぶし」

 

「レイ君、僕からも礼を言わせてくれ」

 

「いえいえ、それじゃあまた」

 

俺はベルとヘスティア様に手を振りながらベルたちのホームを後にする。

 

 

レイが去った後

 

「ベル君?」

 

「は、はい」

 

「どうして装備もなしに、ダンジョンに行ったんだい?こんな自暴自棄な真似君らしくもないじゃないか」

 

「……………」

 

「わかった、何も聞かないよ。君は意外と頑固だしね、ボクが無理矢理聞き出しても無駄だろうし、」

 

「ごめんなさい…」

 

「なに、いいさ。さてシャワーでも浴びてきな。怪我はさっきかけて貰ったポーションある程度治っているかもだけど、傷の汚れも落とさなきゃだし、まだ怪我があるかもだから一応治療もしよう。」

 

「…はい、ありがとうございます」

 

ベルを支えながら一緒に地下まで行き、ベルにシャワーを浴びさせておき、その間ベルの治療の準備をする。

それと同時にベルを運んでくれたレイについて考える。

 

彼は…不思議な子だったな。このオラリオに来てから色々な子供たちを見てきたがその誰とも違う感じがした。

どちらかというと僕達()に近いような…まぁあくまでそんな感じがするだけってだけで明確になにかが違うって感じでもないんだよな〜、下界の未知ってやつなのかな?

ベル君についても気にかけてくれたし悪い子ではないのかな?ベル君にもヴァレン何某とかよりああいう男友達が出来るといいな。

 

後にヘスティアの期待を裏切りベルが着々とフラグを立て続けるのは別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第14話 手続き、そしてダンジョンへ

頑張った(頑張ってない)

なんか気に入らなかったので14話の名前を返させてもらいました。
今後はこんな風に変えることのないようしっかり名前考えます!
ごめんなさい



さてと、これからどうするか…まずは服と装備かな〜、さすがにこのボロボロの服を着続けるのはやだし。

今現在俺はキメラにボロボロにされた服を来ている。

隠すべきところは隠れてるし、闇の権能を使って普通の服みたいに偽装しているので通報はされないが、さすがにこの格好は俺自身が嫌だ。

それに折れたスティレットやボロボロのアニール・ブレードの代わりを見つけなきゃだしな。

新しい服と装備、スティレットの代わりとなる短剣、ボロボロになり使いにくい上、Lv3になったことで少し身の丈に合わない剣。

今日は金が飛ぶな〜。今現在の所持金はミノタウロスの魔石とキメラの魔石を回収していたおかげでそこそこある。

ただLv3相当の武装を買えるかと言われると否だ。そこまで金はない!

てかそもそも俺に剣って要る?闇の権能で作れば良くない!?

いやそれだと怪しまれる上、スキルが封じられた詰むって話で…

はぁ…憂鬱だ。ランクアップって本来嬉しい筈なんだけどな…本来なら所属ファミリアの先輩なりなんなりに武器を借りたりして自分の新武装を揃えていくのだろうが…ここでソロの弊害が出てきたな。

 

あ、ランクアップのことギルドに報告しなきゃか。そう考えると今日めっちゃ忙しいじゃん。

今日と明日で分けることにするか?いやダンまちの過密スケジュールで一日でも無駄にすると詰む可能性が出てくる。今日できる用事は今日やるべきだろう。

なら…

 

俺はとりあえず早朝でも開いている冒険者用の服屋に服を買いに行った。

沢山ある服の中からとりあえず自分のサイズに会うものを取っていく

インナー、ズボン、軽めの胸当て、その上に黒い色のコートを買う。

よし!これでいいや。真っ黒だけどまぁ冒険者で服に気を使ってるやつの方が珍しいのだ。

とりあえず最低限街で生活出来てダンジョン探索に支障が出ない服ならいい、別に想い人とデート行く訳でもないしな…デート…できるのか前世彼女すらいなかった俺に?いや第1級冒険者になればモテるだろう、うんそうに違いない。

 

現実逃避をしつつ、服を新しくしたのでギルドに向かう。

ギルドは早朝だからか想像より混んでおらずそこまで待つことなく、受付嬢に会うことができた。この人は確か…ミィシャさんだっけかな?

 

「ようこそ、冒険者ギルドへ今日はどのようなご要件で?」

 

「えっと…」

 

「あ!レイくんじゃん!」

 

ん?俺この人に名乗っていたっけ?

 

「はい、レイですよ。あの僕、あなたに挨拶しましたっけ?」

 

「ううん?多分あたしが勝手に知ってるだけだよ?エイナに何回か怒られてたから印象に残ってて色々聞いたんだ〜」

 

「そうでしたか、お恥ずかしい所を…では改めてアメミヤ・レイと申します、これからよろしくお願いしますね」

 

「うん!よろしくね、でなんの用で来たの?」

 

「ランクアップの報告を」

 

「ん?ごめんもう1回聞いてもいいかな?」

 

ん、聞こえなかったかな?もうちょいしっかり言うか。

 

「Lvがランクアップしたのでその報告をギルドにしに来ました。」

 

「えぇぇー!!」

 

ミィシャがいきなり叫び出した。おいおい…ここで叫んだらダメでしょ

 

「声が大きいですよ、あまり大きい声で言って欲しくないんですが…」

 

「うぅ…ごめんね、でも君、最近オラリオに来たばかりだったんじゃないの?」

 

今の俺はLv2の状態でオラリオに来たって設定になっている。守衛の人にチェックはされたがスルーできたし、今後急速にLvをあげる関係上、最初からLv2の方が今後都合がいいと思っているから、まぁそれに関してはベルと同程度で上がっていくから怪しまれるは、怪しまれるだろうがそれは後々の話だ。

 

「はい、でもオラリオに来たのは結構前ですよ?冒険者になったのは最近ですが、3年ほど前にLv2になったのでランクアップの期間は2年程度ですかね」

 

今後ほかの派閥に移ることを考慮してステイタス自体は前から持っている設定にしておいた方がいいだろう。

 

「そっか、ならおかしくはないね、最近冒険者になったのはどうしてなの?」

 

「えっと…ごめんなさいちょっと言いたくないことなんです。」

 

誤魔化さず別に理由を考えて言ってもいいのだが、その場合嘘に嘘を重ねることになる。今更嘘をつかないようにする必要は無いだろうが、このオラリオで俺の姿を見たことがある人間は当然ながら2週間前までしかいない、そもそもオラリオにいなかったわけだしな。

ランクアップの期日、ステスタスの内容自体は見られなければ分からないだろうが、ここにいなかったのは調べられたら分かるだろうしな。一応注意しておかなければ…

 

「そ、そっかなんかごめんね」

 

どうやら誤魔化せたようだな。

 

「いえいえ、そちらも仕事なら仕方ないですよ」

 

「ありがとうね、じゃあ最後、ランクアップの理由を教えて貰えます?」

 

キメラとミノタウロスの話をする訳にも行かないが、ある程度ランクアップするに相応しい理由を言わなければ

 

「あー、13階層でモンスターパーティを討伐しまして、そこにミノタウロスやらヘルハウンドやらもいて、それが理由だと思います。」

 

「そっかそっか、13階層でのモンスターパーティの討伐ね。所属ファミリアに変化はありますか?」

 

「いえ、変わらずにミアハ・ファミリアです。」

 

「はい、ありがとうございました。これでランクアップに際しての質問は終了です。」

 

「こちらこそありがとうございました。」

 

「えっと、今日はこれからダンジョン探索?それとも他に用事とかあるの?」

 

用事か…フェルズには会いたいが今ウラノスのところに連れていけと言っても無駄だろうし、それはある程度宛がある。今やるべき事でもないしな

となると…特にないな

 

 

「いえ、特にないです。一応ダンジョンには行こうと思ってますよ?」

 

「そっか、じゃあ…エイナでも呼ぼうか?」

 

何を言ってるんだこの人は…俺の後ろに結構人がいるのですが?しかもエイナさん仕事中では?サボりたいって事なのかな?

 

「いえ、悪いので大丈夫ですよ?それより次の人を処理するのが先では?」

 

半笑いでいうとミィシャはギクリっとした表情をした。

 

「うぅ、レイ君もエイナと同じで真面目だね…はーい仕事しますよ…ではこれにて手続きは終了ですね、お疲れ様です。これからのダンジョン探索でも成果が出るのをお祈りします。」

 

「はい、ありがとうございました」

 

俺はミィシャに改めて礼を告げ、列を後にする。

 

さてと、ダンジョンに行くか!

 

俺はダンジョンに向かう。

 

〜〜

 

「おい、どけって」

 

「誰かー、俺の仲間を知らないか!?」

 

「早く行くぞ!着いてこい」

 

「そこ!搬入を急げ!」

 

様々な声が聞こえてくる、ここはダンジョン1階層へと繋がる階段のある螺旋階段、ダンジョンに向かうもの。地上に帰還するものが交差している。

しかし…なんかみんな声デカくないか?心做しか周りの声が以前よりはっきり聞こえる気がする。

Lvが上がったことによって五感の性能が上がってるのか?それとも《超感覚(ハイパー・センス)》のおかげなのか…昨日酒場で試した時は視覚がとんでもなく良くなって遠くのものが見えるようになったよな。

 

新しいスキルについても調べなきゃだし、《闇の権能》の『纏』ってのも気になるんだよな。全能力が上がるって言ってもぶっつけ本番でやってデメリットがあってそのせいで負けたら目も当てられないし

 

 

そういえば結局、武器は買わずに来た。

今買える中途半端な武器じゃ戦っている最中壊してしまうだろうし、金の無駄だ。

さてととりあえずダンジョン15階層まで潜ってみるか、今は丸腰だけど、Lv3の膂力なら十分対応できるし、いざとなれば武器を作ればいい。

そう考え、前を進んでいた冒険者達の横をするりと通り、走り始める。

 

 

「シッ!」

 

隣を通る瞬間、《闇の権能》を纏わせた手刀でオークの首を両断する。

首を切ったオークの体が灰になるのを確認したら、すぐに魔石を回収しポーチに入れる。

周囲を見るとコウモリ型のモンスターが複数いたのでそれも魔法で撃ち落とす。

 

「サンダー・ボルト」

 

手に纏わせた魔法(サンダー・ボルト)をコウモリ達に向かって発射し迎撃する。撃ち落とすだけのつもりが、雷はコウモリ達を焼き切る。

焼き切れたコウモリの死体から魔石が落ちてきたのでそれを回収し、疾走を開始する。

 

やはり魔法の威力は以前よりかなり上がった。中層上部のモンスターだけなら魔法だけで焼ききれるだろう。それに《闇の権能》、闇派閥の爆発を防ぐときにも使ったがかなり頑丈になっている。しかも扱える質量も以前より多い。

ベルを追いかけるときにも感じたが、やっぱりランクアップの恩恵というのは相当大きいらしい、以前とは体の動きがまるで違う。

そりゃあ上級冒険者は調子に乗るわけだ。

でもまだ本調子じゃない気がするんだよな、まだ上がある…そんな気がする。これが肉体と精神のズレってやつなんだろうか?Lvが一気に2つもあがったんだし、その分ズレも大きいんだろう。

まぁこれに関しては戦っていれば治るだろうか?

 

「逃げろ!?」

 

自分の能力を考えていたらいきなり声が聞こえてきた。

声の方を見てみると男女3人のパーティーが走っている、その後ろにはモンスターがかなりの数いるな…

介入しても問題ない…かな?

 

俺はそのパーティー助けることを決め、追いかけられているパーティーに向かって走り、そのパーティとすれ違う。

 

「おい、あんた!死にたいのか!」

 

失礼な、死にたくないに決まってる。

返答するのも面倒なので無視して戦闘を開始する。

追いかけていたモンスターはオークやらインプやらがいてその後ろにはインファント・ドラゴンもいた。こりゃあ逃げるわな、本来ならインファント・ドラゴンだけでも逃げることを考えるパーティーがほとんどだ。

まぁ俺の場合は…問題ないかな。

ついでだ、ズレも修正できるか試そう。

 

《闇の権能》起動。

 

「サンダー・ボルト」

 

俺は《闇の権能》を使い、剣を2本作成、その上に魔法をエンチャントする。そして作った剣を向かってくるモンスターを斬り付ける。

 

「シッ!」

 

切りつけたモンスターを焼き斬りながら、それを何回か繰り返す。

モンスターはいきなり集団に入ってきた異物に驚愕しつつ反抗してくるが無駄だ。

俺は剣を振り回し、インプを焼き斬る。そして両手を合わせ闇の剣を重ねその形状を変化させ、斧に変更。それをオークに叩き込む。

 

「セィヤ!」

 

上から斧を叩き込まれたオークは両断されそのまま倒れる。

続けて斧を横になぎ払い、周りのモンスターを蹴散らしていく。

インファント・ドラゴン以外のほとんどをなぎ払い終わる。

さらに闇の斧の形状を変化、槍に変更。

それを思いっきりインファント・ドラゴンに投げつける。

雷を纏い飛来する槍はインファント・ドラゴンの頭を正確に貫きながらその体を焼く。

インファイト・ドラゴンは悲鳴にも似た声を上げながら倒れる。

 

俺は上に軽く跳躍、天井に足をかけ手にまだ纏っておいた雷を下に叩き込む。叩き込まれた場所から周りに広がり、なぎ払いから逃れたモンスターを雷が焼き灰に還っていく。

 

「ふぅ…」

 

溜息をつき、俺を止めたパーティーに目を向ける。

パーティーの冒険者は揃って目を丸く広げ驚いているようだった。

俺はパーティーの方に行き、声をかける。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あぁ…」

 

「それなら良かった。ちょっと待ってて下さい。今魔石を回収してくるので」

 

見たところモンスターから攻撃を受けたわけでは無さそうだ。それなら治療はいらないな今はポーションも持ってないし、良かった。

俺は話を終わらせ倒したモンスター達の魔石を回収を始める。回収した魔石は2つに分けて置く。回収が終えたら先程のパーティの元に戻り、半分に分けた魔石の袋を渡す。

 

「はい、どうぞ」

 

「え?」

 

「あなた方の取り分です」

 

「いや貰えねぇよ、あんたが倒してくれたんだろう?」

 

たしかにこのモンスター達は俺が倒した。しかし同時に彼らの獲物でもあったそれなら半分にするのが1番だろう、ここで恩を売っておけば後々の俺の役に経つかもしれない。

もちろんもっとよこせ要求してきた場合、渡す気は失せるが…

 

「いえいえ〜、こちらが横取りした形ですし、さすがに悪いですよ」

 

「そうか?それなら貰っていいか?」

 

「はい、どうぞどうぞ。」

 

多少強引に魔石をリーダーらしき人物に押し付けていると後ろからヒューマンの女性とエルフの男性が話しかけてきた。

 

「ありがとね!」

 

「この恩は決して忘れません。」

 

「いえ、当然のことをしただけなので」

 

俺の現在の目的は真の英雄を誕生を見ることだ、あとは彼女作ってイチャイチャするくらい…まぁそれは置いといて、英雄を見る云々以外にもこれから起こる闇派閥との戦いを考えても、冒険者の数は少しでも多い方がいい、あとは…見過ごしたら夢見が悪いってのもあるな…まぁその程度の理由なので感謝されても…いや嬉しいな、満足感がある。これがエレボスの言ってた事なのかな?

 

そんなことを考えながら俺は3人を見送る、怪我もないのでイレギュラーさえなければ地上に帰還できるだろう。

 

さてとダンジョン攻略再開するか!

俺は気合いを入れ直し、ダンジョン15階層まで歩き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 



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第15話 人助け、そしてダンジョンへ

ダンジョンってなんなんだろう…

原神もやりたい、小説も書きたい、ダンメモもやりたい、夏休みの課題も進めなきゃいけない。バイトもいかなきゃ!


体3個くらいに増えないかな




レイが助けたパーティー

ドルク Lv1 男ヒューマン ランクアップ間近
リーリエLv1女ヒューマン
コルトLv1 男エルフ

このメンツ、一応居たなー位に思っておいてほしいかも

名も無き小派閥って感じの設定です。


ダイダロス通りの一角。あるファミリアの拠点

 

「おい!?まだバグのやつは来ねぇのか!?」

 

「うるさいですよ、もうすぐ来るはずです。黙っていて下さい」

 

「はははっ!あの男が時間より遅く来ることは無い。静かに待ってろ」

 

部屋では男達が騒いでいた。合わせて40人程度だろうか?

男たちは急な召集につき、全員ファミリアのホームに来ていたが、呼び出したら本人がまだ来てないため、1部が鬱憤を貯めているようだ。

 

コツコツコツ…

 

そんな部屋にひとつの靴音が響く。

その音が聞こえた瞬間、部屋の中が静寂に包まれる。

話していた男達が一切喋るのを辞め、足音の主が来るのを待つ。

数秒した後扉がゆっくりと開き、男が入ってきた。

 

男は片手サイズの本を読みながら、ゆっくりと歩き、男たちの間を通っていく。自ら呼び出しをしたのにも関わらず、読書しながら来ると言った行動に周りの男達は抗議の視線を向けるが、男は全く気にした様子はない。

男の名前はバグ・ソトース、このファミリアの団長の立場にいる者だ。

歩いていたバグは部屋にある台に腰をかけ、読書を続ける。

さすがにこの様子には周りの男達も(は?)と言った顔をする。

 

 

「おいバグ、その読書をやめて今回の召集の訳を話してくれないか?」

 

周りの男たちの中、最近加入したLv2の新参者、そして先程バグに文句を垂れていた男。その男が部屋に入っても読書を続けていたバグに対して声をかける。

その瞬間…周りの男、全員に緊張が奔るが、

 

「……」

 

返事のないバグに男は言葉に怒りすら滲ませ、もう1度声をかける。

 

「おい!バグ!」

 

「……」

 

まだ返事にない、バグにさすがに男も怒りに任せ行動し、バクに詰め寄り、本を取りあげようとする。

 

男が本に触ろうとした瞬間、バグが視界から消えバグを注意した男、その男が吹き飛ばされ、壁に激突。さらに追撃により、その横の柱が切断される。

 

それを見て誰もが唖然とするが、誰も声をあげることはしない。

次にバグの機嫌を損ねるのは自分かもしれないから。

この男、バグ・ソトースはLv4の第2級冒険者。

幼少期から恩恵を受け、オラリオ南部の紛争地帯で人を殺し続け、紛争の原因だったリーダー格を暗殺。その紛争地帯は今は落ち着きはじめはいるが、当時のその行いが1部では英雄視すらされている程の男である。

 

「おいおい〜、バグ?あんまり眷属殺しはやるなって言ってんだろ〜?」

 

緊張が奔る部屋の中に一人の男、いや一人の男神が入ってくる。この神がこのファミリアの主神、ヨグである。

主神の登場により、バクもさすがに多少視線向けながら話す。

 

「殺してはいない、ただ分からせてやろうとしただけだ。」

 

「ほぉー、そいつが何したんだ〜?」

 

「俺の読書を邪魔した。」

 

周りの男達の2割は唖然と8割はまたか…という顔をした。

 

バクにとって1番許せないのは自ら行動の邪魔をすること。

バクの邪魔をすることは絶対にしてはいけないと最近所属したメンバー以外は知っていた。

主神も勿論そのことを知っていたが、自分が止めなければ収拾がつかないだろうと出てきたのだろう。さすがのバクも余程のことがなければ神に対して無礼を働くことは出来ない。

 

「まぁ、バグ。その辺にして話だけでもしてやれよ、読書は仕事のあとでもいいだろ?」

 

「……わかった。」

 

バグは主神の命令でようやく落ち着き、バクは台に座り直し、話を始める。

 

「今回の召集の理由は闇派閥から依頼があったからだ」

 

 

「実験的に作られたキメラを殺した奴を始末、又は拘束して欲しいとの事だ。」

 

「なにか質問があるやつはいるか?」

 

バグが周りの人間の質問を聞こうとする、バグは行動の邪魔をしなければ、そこまで暴君ではない、それを理解している古参のメンバーが質問をしだす。

 

「キメラ?ってのは何なんだ?」

 

「その名の通り実験的に作られた様々なモンスターを融合させたモンスターらしい、強さで言えばLv3の冒険者を軽く葬れるらしい。」

 

「は?おいおい俺らじゃそいつ相手には勝てないんじゃないか?」

 

Lv4クラスを倒すことが出来たということは最低でもLv3かそれ以上の実力を持っているということになる。この場にいるバグ以外にはLv4は居ない。せいぜいLv3が数名いる程度。それで勝てるのか?と周りの者は疑い始める。

 

「ああ、だから俺がそいつの相手をする、できるなら無力化して仲間にするのが最善だな」

 

「できるのか?」

 

「誰にものを言っている。Lv4なら確実に俺が勝つ」

 

その言葉を聞いて、周りの者は一応の納得を示す。

 

「他に質問がある者は?」

 

「居ないか…では準備を始めろ。おい、お前はギルドに行って情報を集めてこい、お前はまだギルドでは怪しまれてない。」

 

バグは先程の騒動で吹き飛ばした男を指先し、指示を出す。

 

「わ、わかった」

 

殴られた男も返事をしてギルドへ向かう。

 

「さて、どうなるか…」

 

バグたちの様子を見て、ヨグは今後どうなるかと目を細めた。

 

 

〜ダンジョン15階層〜

 

「シッ!、ハッ!セィヤァァァ!」

 

15階層のモンスター、その代表格の一体であるミノタウロスを縦、横と大剣状にした闇で斬りつける。ミノタウロスは仰け反りながらもその眼はしっかりとレイを捉えていたが、体が動かなければ意味は無い。

 

「ほっ!セイ!」

 

軽く跳躍し、ミノタウロスの頭にかかと落としを喰らわせ、ミノタウロスは灰へと還す。

 

「よし」

 

ミノタウロスを最後に一帯のモンスターを倒し終えたため、一息つく。

うーん…闇の形状変化自体はかなり理想通りだが、思ったより形成速度が遅いな。頭で考えて実行するまでが結構遅い。もちろんLv2相手なら苦戦はしないが格上相手だとちょっと弱点に成りかねない。

これを解決するためには…予め形を設定しておいてそれを作ればいいか?

よし、やってみよう。

 

まずは剣からいくか。

俺は《闇の権能》で剣を作っていく。

いつもは速さ優先でそんなに形にはこだわっていなかったが、今回は時間をかけてそれなりのものを作っていく。

(よし、こんなもんでいいだろう)

ある程度納得のいくものができたので、それを《大賢者》を利用し保存する。それを何回か繰り返し、剣の他に斧、槍、双剣、短剣、籠手(ガントレット)などを作り、それに番号を降っておく。

それを《大賢者》を使い設定しておく。

これで番号を呼ぶだけで俺の手に武具を出せるというわけだ。もちろん時と場合によって使い分ける必要はあるだろうが、それでもかなり簡略化できただろう。

 

武具の設定をしていると壁からまたモンスターが出てき始めた。

数は…ミノタウロス4、ヘルハウンド3、コウモリ多量、ライガーファング1か。少し多いがまぁいけるだろう、早速武具を使うか。

 

俺はモンスターの集団に向かい、疾走を始める。

 

「《闇の権能》武具・七番(短剣)3本」

 

走りながら短剣を3本生成、上にいるコウモリに投擲する。

3本とも命中し、コウモリたちの動きが少し鈍くなる、その隙に1番前にいたミノタウロス接近、軽めに跳躍し蹴りを入れる。

蹴りを入れたミノタウロスは大きくのけ反り、後ろミノタウロスの動きも阻害する。それを確認したあと

 

「武具・二番()

 

作った槍を大きく振りかぶってミノタウロスに叩き込む。

 

「グヴォアァァァ!!」

 

前にいたミノタウロスを貫通に後ろにいたヘルハウンドに槍が刺さる。

ヘルハウンドが体内に貯めていたであろう炎が暴発、後ろのモンスターを巻き込み炎が広がり始める。

 

「武具・五番(大剣)

 

俺はそれに突っ込みながら、死にかけのミノタウロスに向かって大剣を振り抜く。その勢いを利用し燃え広がり動きが鈍くなっていた。モンスター共をまとめて薙ぎ払う。

モンスターが灰になったことを確認し、一旦後退。

 

「武具・三番()、《サンダーボルト》」

 

武具生成により作った斧に魔法を纏わせ、それを上に残っていたコウモリに向かって振り抜く

 

「ふん!」

 

振り抜いた斧から雷が飛び、コウモリたちを焼き切る。

 

「ふぅ…、終わりかな?」

 

モンスター達を掃討し終えたことを確認し、一息つきつつモンスターの戦利品を回収していく。ようやく体のズレも無くなってきたようだ。

バックパックも一杯になってきたし帰還するかな?

その前に…

 

《神の偽能》 ステイタス更新

 

〖アマミヤ・レイ〗

所属 :【ミアハ・ファミリア】

ホーム【なし】

種族:ヒューマン

職業(ジョブ):冒険者

 

ステイタス

Lv3

力I0→F352

耐久I0→E448

器用I0→H192

敏捷I0→G219

魔力I0→I98

 

発展アビリティ 精癒H、耐異常I

 

《魔法》

【サンダー・ボルト】

詠唱 なし

・付与魔法(エンチャント)

・感情の丈によって威力上昇

 

【リライフ】

・死亡時のみ自動発動

・超回復

精神力(マインド)がある限り発動可能

 

詠唱文

・忘れるな己の罪、果たしきれ己の願い

全てを守り、全てを救い、全てを果たせ

 

 

 

 

 

《スキル》

【神の偽能】

・ステイタス更新を自分で可能

・ステイタスを刻んでいる人間のステイタスを視認可能

 

【大賢者】

・地図、思考加速、身体操作補助、並列思考、思考補助

 

英雄追想(ベル・クラネル)

・成長速度をベル・クラネルと同じとなる。

・ベル・クラネルへの憧れが無くなった時効果を失う。

 

【闇の権能】

・『纏』時全能力大幅上昇

・闇の触れたものの感覚を共有可能

・自由に闇を形成可能

・武具設定

一番 剣

二番 槍

三番 斧

四番??

五番 大剣

六番 短剣

七番??

八番??

九番??

十番??

 

 

 

超感覚(ハイパーセンス)

・五感強化

・第六感発現

 

 

 

 

 

まぁステイタス自体は今までよりはあがってはいないが、それでも充分過ぎるほど伸びているだろう。まぁ一般冒険者と比べれば無茶な事してるし当然と言えば当然だろう。

このままいけばいずれ…いやもっと質をあげなければ、いやどうせならオールSを目指そう。

さて次は『纏』だな。周りには人は…いないな。

 

「『纏』」

 

そう呟いた瞬間、体に闇が纏い始め全身を覆う。

 

とりあえず体を動かすか。

 

 

ーそうして10分ほど体を動かしたー

 

 

 

 

ハァハァ…これは強いは強いが難しいな…

 

試したみた『纏』に対してそんな感想を抱く。

強い能力なのは間違いない、ただそれ以上に使い所を選ばないといけない能力だとも感じた。

感じ的にはフィンのヘル・フィネガスに近いかもしれないな。

でもこれを使いこなせれば…

そう考え、強くなっていることを実感し、成長を続けようと考えたレイであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





武具。急に作った設定ですが、実はそんな意味ないです。
でも武器を呟きながらどんどん作るのってカッコよくないですか!?
鋼錬の錬成とかめちゃめちゃに好み。

ダサいと思ったらアンケートで書いて欲しい。


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第16話 オラリオの現状と目標

オリジナルストーリー2話目




「よし、こんなもんでいいだろ」

 

周りの魔石を回収し終え、俺はそう呟く。

魔石用の袋の中には今までで1番と言える量が貯まっている、これならしばらくは高い買い物さえしなければ、持つだろう。

よし、上に戻ろう。

そう考え、俺は地上へ向かう。

 

地上までの探索の間で片手間でこれからの方針を考えていく。

 

まず大前提として俺は原作より死人を少なくしたいと考えている。

オラリオは今ゼウス・ヘラファミリアがいた時代より確実に弱体化している。Lv9、Lv8が居ない上Lv7、Lv6クラスであったであろうメンツがまとめて消えたのだ。そりゃあ弱くなっているに決まっている。

もちろん、ロキ・フレイヤファミリアは少しずつは強くなるだろう。オッタルなんて放っておいてもあと1年以内にはLv8にでもなってそうだし。

だがその程度なのだ。

たかだかLv8が一人増えようが、意味が無い。

なぜ7年も経っているのに

 

ロキファミリア首脳陣はランクアップが出来ていない?

なぜフレイヤファミリア幹部はランクアップが出来ていない?

 

最初に読んでいて、そう疑問に思ったものだ。

ロキ・ファミリアに関しては首脳陣が導く立場である以上、Lv6に見合った冒険があまりできていないのだろう。その証拠にほか幹部は順調にランクアップを果たしている。おそらくあと4、5年もすれば首脳陣はLv7or8、幹部もLv7。他のメンバーもランクアップを果たせるのではとも思う。しかし現状を見るとどうしても…

 

フレイヤ・ファミリアに関しては単純に興味が無いのだろう。

フレイヤ・ファミリアは要は主神ガチ恋勢だ。オッタル以外は純粋に強さを求めるのではなく、(主神が恥をかかない立場→都市最大派閥)という立場さえ守れるならどうでもいいと思っているのでは無いだろうか?

 

勿論どちらも俺の憶測だ。だが、そこまで間違えていないとも思っている。

 

要はどちらも黒竜を討伐しようと本気で思っていないという事だろう。

俺も別に黒竜を討伐してやる!なんて考えてない。

その人の人生だ、自由にすべきだとは思う。大体の人間は黒竜を討伐しよう!なんて考えて冒険者になんてなっていない。

 

俺も自分ができるとも思えん。しかし原作のダンまちでは下界にはもう時間が無い等のセリフが(ヘルメス)達から零れている。

つまり遅かれ早かれ黒竜討伐、ダンジョンの最下層攻略はしなければならないことは確定している。

もしあと一年後に黒竜がオラリオを襲撃したら?ダンジョンが急に活性化でもしてLv7クラスのモンスターしか出なくなったら?

こんなこと考えだしたらキリがないが現状それが起こる可能性があるのだ。もしそうなった時対抗できる戦力、協力できる体制が必要になる。

 

俺の人生の目標は…

1 オラリオ全体の強化

 

2 オラリオ全体の協力関係の構築

 

この2つをなるべく早く実現するのが目標としよう。

 

どちらも俺が与える影響は大きくないだろう。

1に関してはこれから死ぬ人間を助ける等の行動をしていくくらいしか思いつかない。

 

だが2に関してはベル・クラネルがいる。最後の英雄とも呼ばれるようになる彼が居れば2大派閥を始め、様々な派閥が協力する体制を作ることも出来るだろう。あいつはそういう存在だ。

その存在になるまであいつを最低限守る、その上で俺もあいつと共にオラリオに対する新たな英雄の1人になれるよう頑張る。

 

それが出来なれば 英雄(ベル・クラネル)と共に戦うことなんてできない。

 

しかしどうするか…

 

ベルとアイズ、この2人は原作の半年の間で激動の日々を送っている。

 

もちろん、2人の全てのイベントに関わるつもりは無い。

無理に関わって、原作と大きく変わってしまったら修正がつかない可能性もある。

ただ原作を変えたいところもある。

直近で言えば、中層でのヘルメス・ファミリアvs闇派閥だろう、あそこでヘルメス・ファミリアのメンバーがかなり減ってしまっている。Lv3やLv2とは言え、居ないよりはいいだろう。

確かあの事件が起こるのが

ベルがリリルカを助けた時でアイズがLv6になった直後だったはずだ。

 

となると…まずはベルと日常的に会えるようにした上でリリルカが仲間となったことを確認。

その後すぐに中層に行き、闇派閥に潜入すれば良いだろう。

となるとそれまでにやっておきたいことがあるな。

 

そんなことを考えながら歩いていると、ダンジョンの入口。

バベルの階段まで来ていた。

 

さてとまずは換金からだな

 

そう思いギルドへと向かう。

 

「全部で17万ヴァリスですね」

 

「ありがとうございましたー」

 

おお!17万にもなったか。やっぱり上層と中層じゃ稼ぎの効率が違うな…普通に生活したらこれで2〜3週間は生活出来る。まぁ基本的に冒険者は金を使うから1〜2日ももたないが…

 

「あー!レイくんだ!おーい」

 

換金後のヴァリスを見て使い道を考えていると声をかけられた。

顔をあげて周りを見ると、受付の所からミィシャさんが声をかけてくれていた。

おいおい、貴方まだ仕事中では?もう夜 ギルドが閉まる時間だから人が少なくなっているとはいえそんな大声出したら…あー

 

そう思っていると後ろから

 

「こら!ミィシャ。もうすぐ就業時間が終わるとはいえ、まだ仕事中だよ!」

 

と後ろからエイナさんが来て注意されている。

あーまぁうん仲が良さそうで何よりです。

 

「あ、レイくん。聞いたよLv3にランクアップしたんだってねおめでとう!」

 

「ありがとうございます。」

 

もう一日くらいたったし、そりゃあ知ってるか…

てことは周りの冒険者とか神にも俺がランクアップしてるってことは分かってるってことか

ある程度わかっていることではあるが、少し不安ながら嬉しいな。

 

「レイくん、ランクアップしたとしても今まで以上に慎重にならなきゃダメだよ?何度も言ってるけど」

 

「「冒険者は冒険をしてはいけない」」「でしょ?」

 

予想出来た言葉を一緒に言うとエイナさんがはっ!とした顔をしたあと少し顔を赤くした。イタズラ成功ってとこかな?

 

「もちろん、わかってますよ、俺は俺なりに良い冒険者をめざします」

 

「もう!それなら私から言うことは無いね」

 

そんな言葉を言われた後、俺はギルドを後にする。

さてと今日はもう寝るかな?明日は早朝から活動をする事にしよう。

そう考え宿へと向かう。

 

〜ダイダロス通り、ヨグファミリアホーム〜

 

「さぁ調べたことを報告しろ」

 

バグはこの場に集まった面々にバグは箱の上にたって告げる。

 

「俺らが調べた限り、じゃあそこまでの情報はねぇな、最近10階層に潜ったやつを虱潰しに当たったがロキ・ファミリアの遠征帰りがあったろ?それのせいで人の通りが激しくなってやがったせいか大した成果はねぇな」

 

バグの次の古参の男が調べた結果を報告する。その流れで他に調査してたメンバーも調査結果を話す。

 

「俺らの方も同じだな、あんまり大きな成果はねぇ」

 

あまり情報の成果がないことを確認しながら、バグはギルドの情報を調べさせていたメンバーに声をかける。

 

「おい、お前ギルドの方はどうなった?」

 

急に声をかけられたことで驚きながら、男は情報を報告する。

 

「ギ、ギルドの方を調べた限りじゃ、キメラらしきモンスターの報告は来てないが、最近ランクアップしたやつはいたぜ。」

 

「ほう…名前は?」

 

「えっと、アメミヤ・レイ。Lv2→3になってるな。所属はミアハ?ファミリア。何処だか分からねぇし、多分弱小ファミリアだと思う」

 

アメミヤ・レイか…聞いたことがないが、容疑者としては妥当だな。

そう考えバグは主神であるヨグに声をかける。

 

「おい、ヨグ。ミアハという神について知ってることを話せ」

 

「あー、ミアハか…知らねぇ(´>؂∂`)てへ☆」

 

「もう一度言う、ミアハという神について話せ。次はない」

 

ヨグのふざけた態度に怒りを多少滲ませながら、バグはもう一度質問をする。

 

「あーはいはい、わかったよ」

 

「確か…少し前まで、大手の医療系ファミリアを運営してたはずだぜ?1時はディアンケヒトの野郎と競り合うくらい大きいファミリアだったはずだ。」

 

「続けろ」

 

「でもその後眷属絡みで借金を作ったんだっけな?今はかなり弱体化して小さめの店を運営してたはずだ。」

 

「そうか…」

 

数秒考えたあと、バグがこれからの方針を伝える。

 

「これからの方針を伝える。まずはキメラ殺しの犯人はアメミヤ・レイとしてこれからの行動を起こす。恐らくだが、レイはミアハ・ファミリアに何らかの契約で所属している。」

 

「契約?」

 

「黙ってきけ。レイは明らかな冒険者志望。冒険者志望なら基本的にダンジョン攻略を効率的に進めるためにダンジョン攻略を仕事とする派閥に所属するはずだ。」

 

途中で口を挟んで来たものを注意しながら、バグは話を続ける。

 

「それをしないということは何らかの理由でミアハ・ファミリアに所属していることが予測できる。まぁその仔細は調べずとも良いだろう。」

 

 

「おい、レイがLv2になったのはいつだ?」

 

バグはギルドで調べさせていた男にまた質問する。

 

「えっと…分からねぇ。情報がしっかりと明記されていない。分かるのは所属ファミリアの今のレベルだけだな。」

 

「そうか…今回レイの派閥を襲うことはしない。レイ個人を狙う。お前らはレイの宿泊先を特定し、俺に報告しろ。そのうえでレイを発見した場合には監視をつけろ。」

 

ある程度その指示に不満を示しつつ、ファミリアのメンバーは頷く。

 

「その後の作戦はレイの行動を把握出来てからにする。では解散」

 

そうして解散の合図を出し集会を終わらせる。

 

「おいおい、なんでミアハの方には手は出さないんだ?」

 

皆が去った後、ヨグがそんな疑問をバグに問いかける。

バグは鬱陶しそうにした後仕方なく答える。

 

「先程の話は聞いていただろう、レイは契約によってファミリアに入っている可能性があると」

 

「ああ、聞いてたぜ?それがどうして襲わないって選択肢になるんだ?」

 

ミアハ・ファミリアは先程、零細ファミリアだと話したばかり。襲ったとしても返り討ちに合うリスクはかなり低い。ならば襲って人質にでもすればいい。そう考えるヨグだったが、その考えはバグによって否定される。

 

「レイにとってミアハ・ファミリアが人質になり得ない可能性があるからだ。」

 

「あーなるほど。そういう事か」

 

つまり要は今回の対象である、レイにとってミアハ・ファミリアの人間が重要かどうかが分からないのだ。

もしミアハはただの契約相手。それ以上でもそれ以下でもない場合、それは人質にはならず、ただ自分らへの警戒を高めるだけになってしまうのだ。

 

「さらに、ミアハ・ファミリアが零細になった原因は俺の記憶によれば、先程の話の通り。眷属によって借金が発生したためだ。そしてその借金先はディアンケヒト・ファミリア…敵意を買うのはリスクが高い。」

 

ヨグ・ファミリアは闇派閥では無いが、一応ギルドに怪しまれる程度には闇を匂わせているファミリアだ。そのファミリアが自分たちの得意先を潰したらどうなるか?最悪ディアンケヒト・ファミリアづてにギルドまたはロキ・ファミリアにでも目をつけられる可能性すら出てくる。そうなった場合、今計画している闇派閥への協力関係を見つけられ投獄される事になる。その危険を減らすため、ミアハ・ファミリアへの襲撃はなしということだ。

 

「もちろん、神ミアハ達の重要性が高まった場合は潰すという選択肢はあるが…今のところ優先度は低い。納得はしたか?」

 

 

「あー納得したぜ、ありがとな〜」

 

その言葉を最後にヨグは奥の闇へと姿をくらます。

 

「全く、相も変わらず食えない神だ。」

 

バグはそう一言呟いた。

 

 



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第17話 酒場での一幕そして死亡

なんか最近モチベがない。オリジナルストーリーって難しいね


さて皆さん、これから僕はどこに向かうでしょうか?

ギルドでの換金を終え、お金がある程度ありダンジョン帰りでお腹が空いている。そんな僕が行くところは…そう。豊穣の女主人しかねぇよなぁ!

という訳で現在、食事のために豊穣の女主人に向かっております。

あの場所はベルがかなりの頻度で通うことになる場所だ。

ミアさんやほかの店員に顔を覚えてもらうことも出来る。そして何より…リューさんが居る!!それだけで週7はいく価値があると思う。

そんな馬鹿なことを考え、メインストリートを歩いていくと、豊穣の女主人の前まで着き、店の中に入る。

 

「いらっしゃいませだにゃ!何名様かにゃ?」

 

「あ、1人です」

 

店の中に入ると、茶髪の猫人に声をかけられる。

確か彼女は…アーニャだったよな?アホなのは覚えてるけど、原作だと結構可哀想なんだよな…優しくしておこう。

店の様子を見るとそこそこ混んでいるようだ。俺の座る席はまだ有りそうだが…

 

「わかったにゃ!」

 

アーニャから元気の良い返事を受け、アーニャが周りを見はじめる。

 

「じゃあ、あそこの席にお座り下さいだにゃ!」

 

そう言われながら、カウンターの席に案内された。別にどこでもいいのでとりあえず返事しておく。

 

「分かりました」

 

「あ、アーニャ?あそこはベルさんに座ってもらうから、その隣の席に案内してもらっていい?」

 

席に向かおうとしたら横のシルさんから声がかけられた。

ん?この日ってベルって来るっけ?確か来なかったはずなんだが…

まぁ‪気にするだけ無駄か、原作イベの無いこの日に酒場に来たところでそこまで大きくは改変されないだろ。結局はベルの行動全てを操るのは不可能な訳だし

 

「分かったにゃ!じゃああそこの席に変更させてもらうにゃ!」

 

アーニャから先程案内された2こ横のカウンター席に案内される。

例のごとく別に不満もないのでそこに向かう。

 

「はーい。じゃあそこに座らせてもらいますね」

 

案内された席に座るとカウンター席なので、目の前にミアさんがいた。

 

「おお、あんたかい。頻繁にここに通ってるじゃないかい、なんだい?常連にでもなりたいのかい?あんた?」

 

 

「んー、まぁここの料理美味しいですし、俺いまだに宿なんで飯作るのめんどいんですよね〜大した料理も作れませんし」

 

宿には寝具と小さめの机くらいしかない。しかも自慢じゃないが、料理は得意ではない。まぁこれから少しずつでも習得していきたいとは思うが、まずはファミリアのホームに住めるような立場を得なきゃという問題にぶち当たる。

 

「へー、珍しいね。ファミリアで暮らさないで宿暮らしなんて」

 

「まぁ…色々ありまして」

 

さすがにミアハファミリアのホームに居座るのは申し訳なさすぎるし、闇派閥関連で迷惑をなるべくかけたくない都合上、今は宿で住む場所をすぐ変えれる方が都合がいい。

 

「へーそうかい、まぁアタシとしちゃあ金をしっかり落としてくれりゃあ言うことは無いよ」

 

「まぁ、それはもちろん!」

 

「あ、でも昨日みたいな騒ぎを起こしたらタダじゃ置かないからね?」

 

昨日の騒ぎ…ロキ・ファミリア(ベート)に喧嘩を売った件か。まぁあれは酔ってたからってのもあるよな、初酒で感情の整理がつきづらかった気がする。まぁ後悔はないが

 

「アハハ…それに関しては【凶狼(ヴァナルガンド)】に言ってください」

 

「は!まぁアタシとしちゃあ、騒ぎを起こしたやつは全員たたき出すだけだよ!」

 

「お強い…ですね」

 

「それくらいじゃなきゃ、このオラリオで酒場なんて出来ないよ」

 

何ともない一言に少し俺は認識を改める。

オラリオの冒険者とその他の溝は俺が考えているよりずっと深いのかもしれない。

やっぱり市民の立場に立つことでいろいろわかることもあるのだろうか?まぁここは聞かない方がいいかな…こういう事に関しては俺の目で確かめていけばいいんだし。

 

そんなことを考えながら、メニューを見て、昨日食べなかった。魚のフライ?みたいなのを注文する。「酒は?」と聞かれたので、1番度数の低いものを頼み、食事を中心に楽しむことを伝える。

 

「はいよ」と注文した酒を渡されてそれを飲みながらフライを食べる。

思っていたより脂が乗っていてうめ〜となりつつ、《大賢者》を使用し、地図機能のベルの位置を探す。

 

目の前の地図が見えないミアさんが怪訝な目を向けてくるが見えない振りをしつつ、ベルの位置を見るとふむふむ、メインストリートを歩いて本当にここに向かってきてるみたいだな。

てかもう着くな…3…2…1…

心の中でカウントダウンしながら0のタイミングで入口を見ると白髪、深紅の瞳の少年が見えた。

その少年はシルと話しながら、店の中に入り俺の目の前の女将に謝罪をはじめた。

女将はしっかりと次はないと告げたあと、俺の2つ隣に座るよう促し、それに従い、来たベルが俺の存在に気づく。

 

 

「あ!レイさん。ご無沙汰してます!」

 

俺に向かってベルが礼儀正しい挨拶をしてくる。

 

「ん、どうもどうも。そんな畏まった挨拶しなくていいから座りな」

 

俺は別に恩人として扱われたい訳では無いので、軽めに流してベルを席に座らせる。

 

「は、はい!」

 

何も聞かないのもあれなので、ベルに今回の食事のわけを聞く。

 

「ベルは今日はここで食事なのか?」

 

「はい、実は前にここでお金を払わずに出ていってしまって…朝謝罪に来たら、シルさんから今度こそしっかり食べてお金を払ってくださいと言われまして…」

 

なるほどね、俺が金を払ったからその代わりにこの店に来ると…大きな原作改変になっていないことを確認し少しほっとする。

そんなことを考えながら話を続ける。

 

「あーそういえば食い逃げしてたな、まぁ良かったじゃん許してもらえて」

 

「はい、あ、そういえば、僕のお代を払ってくださったのはレイさんなんでしたよね?今お金返しますね」

 

「いやいいよ、俺が好きでやったことだし」

 

今の零細(ヘスティア)ファミリアのベルから金を貰うほど俺はお金に困ってない。それならばその金を使って少しでもダンジョン攻略に活かしてもらった方がいい。

 

「え?でも…さすがにそれは申し訳ないというか」

 

まぁそれはさすがにこのお人好し(ベル・クラネル)には通じないかな?

なら…

 

「いいからいいから、じゃあ。これから定期的に俺と飲もうよ?1人飲みって意外と寂しいんだ。」

 

これから定期的に2人で飲まないか?という提案を聞いてベルが顎に手を当てて考える。

 

「分かりました。僕でよければお付き合いします!」

 

そんな了承を受け、俺はベルと飲み友達になることに成功する。

 

「おう、よろしく」

 

そんな返事をして、ある程度の雑談をしながら酒を飲む。

 

2〜30分ほど経っただろうか?周りの客が少し先程より減ってきただろうか?お互いに少しづつ顔が赤くなっていたがまだ大丈夫だろう。一応深夜にはならないよう気をつけながら食事を続けようとすると

後ろから声が聞こえた。

 

 

「ベルさん、レイさん。楽しんでますか?」

 

後ろを振り返ると先程まで忙しそうにしていたシルとリューさんがいた。

どうやら仕事がある程度片付いて、こちらに来たらしい。

 

「ええ、お陰様で。シルさんとリューさんはもうお仕事はいいですか?」

 

「はい!」

 

「シル、嘘はいけません。私達は頭から入っていたので今は休憩です。30分ほどしたらまた仕事なのですが…」

 

シルから元気な返事が聞こえてきたが、隣のリューから訂正が入る。

後ろのミアさんから睨まれでもしたのか、はにかんだ笑顔で舌を出して笑っている。

 

「私がそれならベルさん達とおしゃべりしようって行ってきたんです!レイさんともお話してみたかったですし」

 

多分ベルと話したかっだんだろうな〜とは思うがそれはそれでいい。俺はリューさんと喋りたかったし。うんうん。

そう考えを前向きに改める

 

「なるほど、それならどうぞどうぞ。ベルも大丈夫だよな?」

 

「はい、レイさんが良ければ僕も大丈夫です」

 

ベルの了承もあり、俺はベルの横を譲る。

 

「じゃあ失礼しますね」

 

一言いい俺の隣にリューさん、その隣にはシルそしてシルの隣にはベルが座る形になった。

 

「ベルさんとレイさんはさっきどんなお話をしてたんですか?」

 

ミアさんからお茶を貰いながら、シルが俺たちに話を振る。

 

「まー普通の話ですよ?お互いが冒険者になった理由なりなんなりを話してましたかね」

 

「へーそうなんですか、ベルさんはなんで冒険者様になったんですか?」

 

「僕は少し前におじいちゃんがいなくなってしまって、悲しかったけどその時思い出したのがおじいちゃんの言葉だったんです。」

 

『他人に意志を委ねるな、誰の指図でもない。自分で決めろ。お前がしたいことをしろ。これはお前の物語(みち)だ。お前が紡ぐーお前だけの英雄譚(ものがたり)だ』

 

「その言葉を信じて僕はオラリオに来ました。」

 

話が終えたあと、シルが少し興奮した様子でベルに話しかける。

 

「…カッコイイですね!ベルさんもベルさんのおじいさんも!」

 

「貴方がその言葉を忘れない限り、きっとあなたの想いは届きますよ」

 

心無しかリューさんも穏やかそうにベルを褒める。さすが我らが主人公。

この一瞬で2人もの女性を手玉に!?でもまぁこれがベルだよな〜、これで一途なのも推せる

 

「ははは、ありがとうございます。あのレイさん?どうかしました?」

 

主人公の存在に感動?しているとベルから不思議そうな目で見られた。

どうやら俺の視線に気づいたらしい。

 

「いや、お前はやっぱりベル・クラネルだなって思っただけだよ」

 

「え?」

 

あーやべ、なんも考えず本心言ったけど、これだと意味がわからないよな…。うーんあの賭けの件を言うか?でもベルに言っても良かったっけ?

 

「あーえっとな、ん?」

 

何だ、あいつ?

 

ベルの後ろに黒フードの男が1人いた。

水以外飲んでなく、些か酒場では異質な気がする。

てか?ずっと俺の事見てないか?リューやシルを侍らせてるように見えてるからそれの嫉妬か?いや一応見とくか

 

そう考え、《神の偽能》でステイタスを確認する。

 

Lv2 ヨグ・ファミリア

 

ヨグ・ファミリア?聞いたことは多分ないな?

一応周りも確認しておく。周りには同じファミリアのやつは居ないかな?

闇派閥の件もあるしな、ちょっと怖いな。ベルに危険が及んでも困る…

 

「レイさん?」

 

「いやなんでもないや、急で悪いんだが俺そろそろ帰るな。急用が出来た」

 

「え?」

 

リューさんにお代を手渡しつつミアさんに「ご馳走様でしたー」と告げ

店の外に出る。

外に出てメインストリートに歩くと店から先程の男が出てきた。

 

そのままある程度歩いて色々な道を通るとその男も着いてくる。

これは…黒かな?

そう思い、裏路地に入り、男を待ち伏せする。

 

1分ほど待つと男が入ってきた。

 

「は?」

 

男が驚いている隙に顔に1発軽く入れて仰け反らせ、拘束する。

 

「グハァッ…」

 

「ほいっと、おいあんた何の用だ?」

 

拘束を続けながら、尋問を始める。

 

「こ、答えるか」

 

「そうかそうか、なら…」

 

拘束している腕を曲げ、骨を折る。

 

「ぐっ…!!」

 

「お前の目的を…ツッ!」

 

尋問を続けようとしたら後ろからいきなり後ろから衝撃が来て頭を殴られた。

その衝撃の後すぐに頭を捕まれ、壁に投げ飛ばされる。

 

「チッ!」

 

どうにか壁に着地し、投げられた方向を見る。先程の男がたおれている。そしてその横には外套を被っている男がたっていた。

 

「はぁはぁ、誰だ?あんた」

 

「ほう?意識を奪う気でやったのだが、やはり強いな」

 

話しながら《神の偽脳》を使いステイタスを確認する。

 

バグLv4 ヨグ・ファミリア

 

あ、これヤバいやつだ……

Lvを見てそう思いながら、頭がクラっとした、嫌な予感がしながら手で支えて見るとべチャリと嫌な音がした。手を頭から離すと掌が赤く染まっている。

 

「その傷では俺に勝てない。黙って俺らと共にこい。」

 

バグが俺が傷を確認するのを見てそう言ってくる。

 

「共にこい?何の話だ?」

 

「そうか、そこまでは聞いていなかったか……そうだな。」

 

バグは俺の言葉を聞いてから考えるような仕草をとり目を閉じる。

 

今だ!その隙に俺は全力で後方に跳躍。すぐ近くの屋根に飛び乗り逃走を試みる。こんなやつとこの状態で戦っても勝ち目は薄い。どうにかして傷を治してから戦闘をしなければ

そう考えての撤退だった。しかし…バグはそれを予想していた。

 

「はぁ」

 

そんなため息が聞こえた瞬間、屋根に登ろうとしてきたレイに炎が直撃する。

 

「あっつ!」

 

跳躍した屋根には男どもが短剣を構えて待っていた。

魔剣か!?そう判断するが遅い。

致命傷ではないが先程の頭の傷含めさらに深手をおうが…まだ動ける。どうにかにけ

動きが読まれてる?そう考えたがもう遅い、魔剣を構えていた男どもの後ろからドワーフたちが鎖をなげつけてきた。

 

「くそっ!」

 

どうにか避けようとするが空中のため回避のための足場がなく動くことが出来ない。

そのまま鎖に捕まり下へと落ちる。

うつ伏せになった俺の周りに20を超える男共が集まってきた。

 

男どもは下卑た笑み浮かべながら俺を見るがただ1人。バクだけは俺の事を冷酷な目で見てくる。

 

こりゃあさっきのは釣りだな…こうなったら。

 

このままでは死ぬ事が確定しているため、踏ん切りをつけ魔力を解放しようとする。

 

「サンダー・ボル、うっ!…」

 

魔力を練り上げ、放つ瞬間。胸に痛みが奔る。

視線を下に向けると俺の胸に剣が刺さっていた。剣の柄のほうを見るとバグが俺を仲間ごと突き刺していた。

 

「させない、貴様のそれは危険だ。」

 

おいおい、まじかよ文字通り最短を着いてきやがった。クソ…

最後にどうにか魔力放とうとするがその前に意識が飛んだ。

 

「おい!バグ!?お前何して?」

 

いっけん、バグの暴走に見えた光景に男たちが意義を唱える。

 

「貴様らこそ近くにいても気づかなかったのか?奴は今何らかの奥の手を使おうとしていた。それを防いだ迄だ。」

 

バグの正論に男共は反感していた気持ちを抑えられ呻き声をあげる。

 

「うっ」

 

 

「それより早く、そいつと負傷した者を担げ、ファミリアに帰還するぞ」

 

「わっわかったけど、こいつもう息がないんじゃねぇか?」

 

胸にバグの刺した剣が刺さっているレイは間違いなく致命傷だ。この様子ではたとえ万能薬(エリクサー)を使ったとして生きるかどうかと言ったところだろう。

 

「死体だけでも回収…」

 

 

そう指示を出そうとするが、瞬間レイの死体が光りに包まれた。

周りにいた男達も刺さっていたバグの剣もそしてバグ自身も軽く吹き飛ばされる。

 

「なんだ!」

 

忘れるな己の罪、果たしきれ己の願い

全てを守り、全てを救い、全てを果たせ

 

『リライフ』

 

周りに異物がなくなりレイの肉体は回復…いや修復される。

胸の傷はなくなり、魔剣の炎による火傷も頭の傷も消えた、その光景に周りのものは唖然とするが、バグだけは驚きに似た高揚をしていた。

 

「ふ、ふはは。おいこいつを早く担げ。これは凄いぞ!」

 

「わっわかったよ。オイおまえらヅラかるぞ」

 

バグと男たちは闇夜に消え、路地にはレイの血のみが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヨグ・ファミリアの行動ー
レイを見つけた⇒監視を始める。⇒監視にレイが気づく。⇒路地に入ったしバグもいるしこのまま襲っちゃお!

こんな感じ

良ければ高評価、お気に入り登録よろしくお願いします!


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第18話 死亡からの反逆

戦闘描写って難しくないですか!?

評価、感想よろしくお願いします!


「ここどこだ?」

 

目が覚めたら暗闇でした。どうもレイです。

てかなんで俺はここに…あっ!バグ・ファミリアのヤツらに捕まったんだ!となるとここは奴らのホーム?周りを見ると真っ暗で殆ど何も見えない。

四肢には鎖と錠が繋がれており、動きが封じられている。

 

「《大賢者》マップ」

 

現在地を確認するため目の前にマップを表示する。が…うーん位置が分からない。どうやら俺が来たことの無い場所らしい。どうするか…

 

思いっきり鎖を引っ張ってもビクともしない。アダマンタイトか?これ

そんなことを考えていると目の前の扉が開き、光が入ってきた。

目を窄めながら見ると、1つの影が見えると同時に声が聞こえてきた。

 

「おお、どうやら起きていたようだな?」

 

扉を開けてきたのはバグだった。

 

「お陰様で?って言った方がいいのか?鎖外してくんない?」

 

皮肉を込めた一言を言うが、バグはなんのリアクションもせず、こちらに歩いてくる。

 

「俺の話を呑むなら外してやる」

 

話?まぁあるだろうと思っていたけど、殺されてないってことはまぁそういう事だろう。

 

「わかった。話を聞かせてくれ」

 

「俺の部下になれ」

 

「正気か?」

 

いやほんとにこいつ正気?

なんで俺のこと殺そうとして置いて仲間に勧誘してくるの?

そんなこと言われたところで…

 

「断っ…」

 

「言っておくが断った場合は殺す。」

 

「チッ」

 

そりゃそうか断ったら俺を生かす価値は無いもんな。

 

「なんで俺の事を仲間にしようとする?いくらでもいるだろ。アンタの仲間になりたいやつなんて」

 

まぁいくらでもはいないだろうが、いない訳では無いだろう。

暗黒期に比べて落ち着いているとはいえ、こういう派閥があるのだオラリオに不満がある連中、混沌を求めている人間はいるだろう。

 

「最初に1つ訂正だ。俺が欲しいのは仲間ではなく部下だ。」

 

「は?何が違う」

 

「おい?俺の話を遮るな。俺の邪魔をするな」

 

話を遮って質問するがいきなりバグの様子が豹変し俺の髪を掴んでそう告げてきた。

 

おお、怖っ。

こいつの話を遮るのはNGってことか?目の前のバグを睨みながらそう考えているとバグは俺が理解を示したと思ったのか話を続ける。

 

「俺のファミリアは俺以外そこまで使える人間が居ない。これからは人手がいる依頼も来る。」

 

要は周りに指示できる人間が欲しいってことか?でもそれだと俺以外にも候補ならいるだろう。

 

「貴様は使える。酒場で我らの監視に気づき、すぐに対応して見せた。あのレベルならここではかなり貴重な人材だ。だから勧誘する、元からキメラを倒したことであがっていた貴様の価値がさらに上がった理由がそれだな」

 

こいつらが俺を認識したのはキメラの件のせいらしい。やっぱりキメラを倒したのは不味かったかな…まぁ倒す以外で方法がなかったから仕方ないな。

 

「貴様はこの都市に不満は無いのか?ギルドという力のない連中が我が物顔で仕切り、自由にも行動できないこの都市に?貴様くらいの強者なら分かるだろう?俺たちはオラリオから出て他の国で戦争にでもでてみろ?俺たちが手を貸してやった国はたちまち有利になり、戦況を一変される。」

 

それはそうだろう。実際Lv4ともなればほとんどの人間が到達できない境地だ。オラリオがおかしいだけで

 

「俺はこの都市が気に入らない。だから壊す。俺たちの依頼主の計画が成功したら間違いなくオラリオは崩壊する。そして始まるのだ!力こそ全ての新時代いや旧時代の始まりが!」

 

こいつらの計画ってのは多分ソードオラトリアの事件の件なんだろう。このファミリアはあれに協力するってことか、いやしかし何でこいつ原作に出てこないの?Lv4とか結構の強者よ?大森先生どうなってるんですか!?

 

「さぁ俺と共にこい。新しい世界を見せてやる!」

 

そう言いながらバグは俺に手を差し伸べてきた。先程よりも高揚しておりおれが鎖で縛られてるのを忘れているのだろう。

まぁなにをいおうと俺の返答は決まっている

 

「断る」

 

「何?」

 

「断るってんだよ」

 

「一応理由を聞こうか?」

 

「てめぇの考えと俺の考えが違いすぎる。俺は英雄を見たい。人の笑顔が見たい。そういう光景を望んで俺はオラリオに来てる。オラリオが崩壊するなんてのは望んでない。」

 

「は?このオラリオに?貴様は何を言っている」

 

「てめぇこそ、何言ってんだ?そもそも世界を壊すって厨二かよ。現実味が全く無さすぎる。仮に成功したとしてその先に何がある?ステイタスのない人間が死に絶え、全ての人類が武器を持つ。最悪の時代になるのか?ふざけんな。俺はそんな時代ごめんだ。」

 

アルゴノゥトが始めた英雄の時代を…

 

フィンが繋いだ人類の反逆を…

 

ユーリがガルムズがエルミナがフィアナ騎士団がその後を継ぎ、戦い続け守ってきたこの世界を。

 

フィーナ、オルナ、リュールがその歌を歌い、人類の希望となり得た英雄たちが守ろうとし戦い続けたこの世界を…

 

その結果である。神時代を俺たちがまた、あの最悪の時代に戻していいのか?いい訳がない!

それだけはあの物語を知った俺が絶対にさせない。俺は…英雄が好きだ。俺ができないようなカッコイイ事をする主人公やその仲間たちが大好きだ。

 

でも俺にはそんなことはできない、戦局を左右する活躍や皆を奮い立たせるようなことなど出来るはずがない。

だが、英雄たちの想いを無駄にすることは絶対にしたくない。

それは俺がこの世界に来た時に自分に誓ったことだ。

 

「だから俺はお前の部下にも仲間にもならない、他を当たれクソ野郎」

 

俺はバグの目を真っ直ぐとみてそう告げた。

 

「そうか、そうか…それは残念だ。」

 

バグはその言葉ともに俺に蹴りを入れてくる。

 

「グハァッ…」

 

鎖に縛られている俺はそれをモロに受け仰け反るが鎖に戻される。

 

「まぁいい。その前にこれを見ておけ」

 

そう言いながらバグは指を鳴らす。

 

指を鳴らす音が響くとほぼ同時に後ろの扉から2人の男が出てきた。

男たちは袋を持っているようだ。

 

「なんだ?それ」

 

袋は全部で3つあり、大きさは男たちが持てる程度。

てかなんか血の匂い?がして…まさか?

 

「貴様に見せておこうと思ってな」

 

俺が考えをまとめ終える前にバグの部下が袋の中身を床に落とす。

その中には…

 

「な、なんで…」

 

俺が以前助けた3人の首が入っていた。

 

「どうして…なんで?」

 

「ふっ、ふははは!その顔だ!?その顔が見たかったんだ!その悲壮か?苦痛か?なんでもいい!?その歪んだ顔が見たかった!」

 

睨む俺を見てバグの顔が笑い、種明かしを始める。

 

「ギルドで俺の部下が貴様の情報を探っていた際。貴様の話を聞いてきたそうだ、貴様がダンジョンで助けたそうだな?」

 

そうだ。彼らは俺がダンジョン攻略の際に助けた人達だ。それがどうして…?

 

「別に殺す必要はなかったが、どの道貴様の関係者は貴様が仲間になろうがならまいが殺すつもりだった。」

 

あー関係者は殺すってやつか…つまり俺のせいか…

 

「一応聞いておくこれが最後だ、俺の部下になれ。そうすれば貴様の命だけは助けてやる。」

 

倒れながらバグから視線を落とし落とされた首を見る。

名前も知らない。たった1度助けただけの関係。

だがもし彼らを助けなかったら?

助けた後俺が助けたことを黙っているように伝えておけば?

 

こうはならなかったんじゃないか?

 

「この誘いを断るなら、貴様を殺し、貴様のファミリアの人間も含め貴様の関係者全員を殺す。」

 

昔読んだ漫画の展開にこんなのがあったな。

仲間のひとりを殺され…怒った主人公が仲間の仇を打つ!みたいな展開が…コテコテの展開で面白みがないなとかあの時は思ってたな。

 

でも実際その立場になってみると色々考えてしまう。

 

無関係の人間を巻き込んでしまったことへの自分への叱咤。

リューやベルを殺すと脅された怒り。

 

漫画の主人公のように一直線にはいけないな。だが…あんたらの仇はうつよ。

心の中で首だけになってしまった3人に告げ、バグへと向き直る。

 

「さぁ!返答を聞こうか?」

 

「『纏』」

 

自らに闇を纏う解号。

それをすることでレイの身体に闇が纏いはじめ身体中が真っ黒に染まる。やがて全身に纏った闇をレイの身体に吸収されレイの顔が見える。

見え始めた顔は先程とは違い、黒髪黒目の青年から白髪白目の青年へと変わる。どこかベル・クラネルを彷彿とされる外見になったレイにバグは警戒し距離をとる。

 

レイは顔を伏せ、鎖を触れずに外す。

 

「なっ!?」

 

アダマンタイト製の鎖を簡単に外したことでバグと後ろに待機していた部下から驚きの声を上がる。

 

レイの姿を見て警戒していたバグはすぐに腰にさしていた剣を抜き、その瞬間に後ろの扉まで殴り飛ばされる。

 

「なっ!?」

 

バグが急に後ろに移動したことに部下が少し遅れて驚くと先程までのバグの位置にいつの間にかいたレイに気づき、自らの得物を抜き、攻撃をする。

 

しかしその全てはレイの後ろから生えている?謎の闇に防がれ、壊される。

 

「に、逃げろ!?」

 

勝てないと判断し攻撃した部下のひとりがレイに背中を晒す。

レイはそれを後ろに生えている闇で刺し殺す。

他のものも全員似たような行動をしていたが、全員ほぼ同時に闇に刺殺される。

 

殺しはしないだろうと判断していたバグは驚愕するが、レイが告げた一言で驚愕が消える。

 

 

「ぶっ殺してやるよ」

 

それがレイがこの世界にきて始めて人間に向けた殺意だった。

 

 

 

 





特になし!


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第19話 VSヨグ・ファミリア

オリジナル・ストーリー1部 ~完~


 

(なんだ?なんなんだ?あの変化は!?)

 

突然自分たちに起こった出来事にバグは驚愕していた。

あの謎の再生能力以外にもスキルや魔法があることは想定していた。

オラリオの冒険者…いや神からの恩恵を授かっている場合、基本的にスキルや魔法、ステイタス等が最適化される。

獣人なら獣化のスキル。

ドワーフなら力のステイタス

エルフなら魔法、魔力のステイタス

と種族ごとにステイタスの上がりやすい項目や魔法やスキルが発現しやすい傾向にある。

例外的にヒューマンやパルゥムは上がりやすい項目が人それぞれで器用貧乏になりやすいが、それでも奴はLv2の身でキメラを殺した男。レアな魔法やスキルを持っていることは想像できる。

だからこそ警戒し、ディル・アダマンタイト製の鎖で縛っていた。

だが奴は、それをいとも簡単に外し俺の反応できない速度で攻撃をしてきた。

しかも先程とは様子が違いすぎる、純粋なステイタスの強化?それとも何らかのスキルを発動したのか?クソガキが…!?

 

 

対してレイは怒りこそあるにすれ冷静だった。

 

『纏』の効果は

 

1 全ステイタスの大幅上昇

2 闇の性能上昇

 

このふたつだ。

ステイタスの上昇に関しては現状ではLv4のステイタスとほぼ同程度なれると以前の使用で確かめられた。要はLv1分の強化というわけだ。さらに闇の性能に関しては強度、操作性の向上が確認できた。

俺の闇は形状を固定すると強度が増す、逆に固定しなければそこまで固くはならない。

それは今までの戦闘で学んだ事だ。しかしこの形態でなら闇を固定することなく自由に形を操作しながら、十分な強度を維持できる。

それを利用し今は東京喰種の赫子のようにして闇を操っている。

この力はかなりの利便性を秘めていると改めて実感する。だが、

任意発動のスキルのためリスクが少なく見えるが、以前確認した時にかなりのリスクがあることがわかった。

 

そのリスクは

1 発動時、体力及び精神力の大幅減少

2『纏』の使用中の闇の分離不可

 

ステイタスを確認した通り、この力は俺自身の体力及び精神力をかなり消費する。しかもその消費量は使えば使うだけ減っていく。

今もガンガン体力、精神力を消費させてこの形態を維持している。

全力戦闘ならコンディションが万全でも10分程度が限界だと俺と《大賢者》は計算した。

それを今のコンディションが万全とは到底言えない状況で使っている。

 

(《大賢者》『纏』の使用可能時間を計算)

 

俺は《大賢者》を使用し時間を調べる。その結果

 

312秒

 

5分か…

長いようで短い。少なくとも短期決戦にすべきだな。

 

 

瞬間、レイがバグに向かって突っ込む

 

「チィ!」

 

舌打ちをしながら、バグが剣を使いその突撃を防ごうとする。

 

「武具・八番(籠手)

 

レイは両腕に籠手を作り、バグの剣に拳を叩き込む。

 

「グッ!」

 

レイの拳をバグは剣で受けとめるが、止めきれず肩に剣が刺さる。

何とか剣を止め、バグは渾身の力でレイの拳を弾く。

 

弾かれたレイは一旦距離を置くためか踏み込む。

 

(ここだ!)

 

バグはその踏み込みを隙とみて、レイに剣を振り抜く。

 

「武具・(四番)

 

「なっ!?」

 

バグがレイへと振り抜いた剣はレイが作り出した闇の盾によって防がれる。

 

「ふん!」

 

レイは勢いよく盾を振り剣を弾く、そして好きだらけになったバグの腹に腰に作っておいた闇の赫子で刺す。

 

「ぐはぁ!」

 

バグは腹に赫子が刺さったことで血を吐き、体を屈める。

 

「武具・二番()…おら!」

 

レイはその隙だらけの体に容赦なく槍をぶんまわしバグの体を吹き飛ばす。

 

吹き飛ばされたバグは部屋の扉を壊しながら、壁へと激突し床に落ちる。

 

バグを追い、壊れた扉の中に入る。

 

「なっ!?てめぇ。なんで!」

 

レイが出てきたことにより、部屋の中にいた男集が騒ぎ出す。

どうやらレイが拘束されていた部屋の隣にはファミリアが集結していたらしい。

 

「ちょうどいい、お前らもだ。」

 

「お前ら!そいつを殺れ!」

 

バグがメンバーに指示を出し、レイを殺すよう命令する。

部下たちは動揺し固まったがレイの姿を見て只事では無いと理解し、各々が剣、槍、斧、魔剣を持ち、レイに詰め寄ってくる。

 

「悪く思うなよ?」

「もう1回焼いてやるよ」

「お前は運がねぇな!?」

 

周りからこんな声が聞こえてくる。

レイはそれに対して、はぁー…とため息をついた後に

 

「来るならさっさと来い雑魚共」

 

最大限の煽りで対応する。

その言葉を聞き、部下たちは声を荒らげながらレイに突進してくる。

 

レイに様々の武器が炎が雷が迫る。

普通なら回避を選択するであろうその攻撃たちに対しあえてレイは迎撃を行う。

 

 

「サンダー・ボルト」

 

 

その詠唱と共に腕を軽く振るう。

瞬間。視界が光に包まれ、凄まじい轟音と共にバグ含め、部下全員が吹き飛ばされる。

 

「な、なんだ!今のは?」

 

数秒たったあとバグが周りの状況を確認した。

 

 

 

「ギャァァァー!」

 

「腕がぁぁぁぁぁ!?」

 

「いてぇ!痛てぇよ!?」

 

そこは地獄だった。

ある者は体を雷に焼かれた痛みに絶叫を上げ

ある者はレイの近くにいた事で雷に腕を消し飛ばされ、失った事実を受け入れられない者。

ある者は全身に火傷を負い、痛みに悶えている。

 

バグ自身は距離が離れていたことで傷は浅かったがそれでも左腕には火傷がありまともに使うことは厳しそうだ。

 

「くそ、なんてバカげた魔法だ。」

 

「ああ、そうだな。これは俺も予想外だ」

 

この状況を一瞬で作りだした魔法に対しそんな言葉を吐くが、その言葉に対して予想外にも魔法の使い手自身が反応している。

 

そんな反応にバグは驚くがレイはそのまま話を続ける。

 

「ここまでの威力になるのは俺も想像していなかった。一応最大火力に設定したから前にいた奴らは焼き殺すことになるとは考えいたが…1番後ろにいたアンタにまで熱が届くとはな」

 

「ハッ!俺もこんな怪物に手を出したことに後悔しているよ」

 

淡々と魔法について語るレイに恐怖を覚えながらバグはレイとの会話を始める。

 

「ああ、そうだ始めたのはお前達だ。俺は自分にかかった火の粉を払い除けただけだしな」

 

「チッ!どこまでも冷静だな?案外慈悲でもくれると思っていたのだが」

 

「慈悲?それはお前らの行動を見て与える奴がいるかって話だな。少なくとも俺は与えない。それに…

俺は自分のやりたいようにやる。そのためのこの力だ。それを邪魔するやつは誰とでもやってやる。力に屈したら男に生まれた意味がねぇ」

 

自分が好きなセリフを最後に混ぜながらレイは自分の意思を語る。

 

「そうか、そうだな、ならば全力で抵抗してやるよ!」

 

そう言いながらバグは剣を構える。

 

「ああ、次で終わりだ。」

 

それに対しレイも籠手を構える。

 

数秒たったあとバグが剣を構えレイに突進する。

レイもそれとほぼ同時にバグに向かい突進を開始、2人の距離が縮む。

4M、3M、段々と2人の距離は縮み、ついに2Mとなる。そして2Mになった瞬間バグが腰から火傷でほとんど使えない左手で短剣を取りだした。

 

(魔剣!?まだ持っていたのか)

 

取り出された短剣を見てレイは内心で驚く。そのうえで突進続ける。

 

レイは今かなり追い詰められている。ただでさえ多数対1

『纏』の使用による体力、精神力の消費

先程の魔法(サンダー・ボルト)の使用による精神力の消耗。

 

最初にあった300秒は今や100秒を切っている。

この機会を逃せば俺は負ける。そんな確信がレイにはあった。

 

「喰らえ!」

 

負傷している左手で魔剣を振り、今まで1番の豪炎がレイに向かって放たれる。

 

四番()で防ぐことは可能だ。だがそれをすれば動きが阻害され、バグに対して隙が生まれてしまう。なら…

 

レイはあえて豪炎に突っ込む。

 

「なっ!」

 

通常であれば喰らえばひとたまりもない豪炎。しかしレイはそれを一瞬で突破し拳をバグに向ける。

 

「化物が!?」

 

(うるせぇ、実際、熱いし痛いわ)

 

心の中でそんな文句を言いながらレイは拳をバグに叩き込む。

バグは剣で拳を弾こうとするが、剣ごとレイは拳を叩き込む。

 

「グハァ!」

 

渾身の一撃がバグの腹に当たる。

 

「まだ…だ」

 

だがそんな攻撃を受けてもバグは意識が残っており、レイへの抵抗を続けようとする。レイはそんなバグに最後の言葉を告げ、とどめを刺す。

 

「いいや、終わりだ。」

 

「サンダー・ボルト」

 

籠手にのみ、雷を集約。レーザーのようになりバグの腹を貫く。

 

戦闘が終わり、周りが静寂に包まれる。だがその静寂は直ぐに終わりを迎える。

 

「バグが殺られた!逃げろ!」

 

そんな声を部下のひとりがあげる。その声を皮切りにまだ動ける部下は逃げようと走り出す。

 

「逃がすわけ…「そこまでだ!」

 

レイが部下たちが逃げようとするのを阻止しようとすると、この建物の入口であろう扉が勢いよく開く。

 

「全員動くな!逃げようとする者には容赦はないと思え!」

 

開いた扉からはガネーシャ・ファミリアの衛兵たちがどんどん入ってきて部下たちが拘束される。

 

俺は『纏』を解きながら、バグの死体を抱え、リーダーらしき人物の元に向かう。

 

いやリーダーらしきでは無い、俺はこいつがこの軍団のリーダーであることを知っている。だが、一応初対面だ。お決まりのやつをやっておこう。

 

「あんた、誰だ?」

 

俺のそんなぶっきらぼうな質問にリーダーは眉を顰めるが、すぐに真面目な顔に戻り、俺の目を見てこういった。

 

「私はシャクティ・ヴァルマ。ガネーシャ・ファミリアの団長だ。」

 

 

 

 

 

 




次回!レイ投獄!? ディエル・スタンバイ!


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第20話 うるさすぎる正義の神

評価、感想お願いします!


「私はシャクティ・ヴェルマ。ガネーシャ・ファミリアの団長だ。」

 

「君は?」

 

 

名前…さてどうする?ここで偽名を名乗るべきだろうか?いや、この先シャクティと話す機会は増えていくだろう。

なら強さがバレるリスクを取ってでも顔を売っておくべきだ。しかも今は俺は容疑者扱いだろうし、尚更本名を言っておいた方がいいだろうし。

 

「レイ…アメミヤ・レイです。」

 

「そうか、ではレイ。これはどういう状況だ?今は早朝。我々は近隣住民からの通報できたが君はこのファミリアでは無い筈だろう?このリストにない」

 

シャクティは槍を持っている手とは逆の手で器用にリストを確認し、俺の素性を質問してくる。

 

「それは…」

 

俺は少し言い淀む。

ここでベルやリューに関して話してもいいだろうか?

今、リューがシャクティと関わることは歴史を大きく変えることには繋がらないだろう。

だがベルは?まだ先だが、もしアイズとの特訓イベントがなくなりでもしたら、かなり後々に影響が出てくるだろう。

それなら…

 

「俺は昨日。酒場で酒を飲み、宿に帰る途中にこのファミリアの連中に襲われました。先程まで拘束されていたのですが、どうにか隙をついて逃げ出そうとしていました。それをこの男にみつかり、戦闘になり今に至ります。」

 

俺はなるべくベルに触れないよう、そして俺の実力に関しても多少伏せておきつつ、今回の顛末を簡潔に説明する。

これならベルへの影響は考えなくていいだろう。

 

「そうか…おい!どうだ?」

 

俺の証言を聞いたあと、シャクティが俺の後ろで敵を拘束して尋問しているガネーシャ・ファミリアの人間に声をかける。

 

「ここにいるヤツらとほとんど証言は一致してますね。ただこいつが急に暴れだしたとは言ってます。」

 

声をかけられたガネーシャ・ファミリアの団員はそう答える。

良かった。どうやら嘘の情報で撹乱されるような真似はされないようだ。

それなら俺の殺しは無罪になるか?

 

「そうか、君。我々と一緒にガネーシャ・ファミリアまでついてきてもらっていいか?」

 

「それは…」

 

シャクティの言葉に俺は少し言葉が止まる。

 

「安心してくれ。今の状況では君の証言は間違っていないだろう。だがまだ分からないことも多い。証言を聞きたいので、一緒に来て欲しいだけだ。」

 

その様子を見てかシャクティからそんな言葉を言われる。

それなら問題ないだろう。よし。

 

「そういうことなら、大丈夫です。」

 

「では、私たちのファミリアまで着いてきてくれ」

 

シャクティはそう言うと赤髪の冒険者、彼女は…イルタだったか?に話しかけに行った

 

(大賢者、あの冒険者を俺の記憶から検索)

 

俺は大賢者に指示をして彼女を調べる。

 

イルタ・ファーナ Lv5

 

やっぱり合っていた。

確か異端児編でアステリオスにやられていた人だよな?

この人もLv5…つまりこの場にはLv5が二人もいるわけか、逃げる選択をしたところで逃げれなかっただろうな。それはそれとして…

俺は先程まで捕らえられていた部屋まで行き、その部屋に転がっている頭を3つ回収しバグの部下が持っていた麻袋に入れる。

さすがに死んだ顔を見られるのはこの人達もそれを見るガネーシャ・ファミリアの人間も嫌だろう。

それなら少しでも人目を隠した方がいい。

その作業をしながら…

 

「大賢者超感覚(ハイパーセンス)聴覚強化」

 

小声で大賢者に指示をして《超感覚》のゲージを調節。

イルタとシャクティの会話を聞く。

 

「いいのか?姉者あいつは危険なんじゃ?」

 

「まぁ大丈夫だろう。Lv4を倒せるからと言って私たち以上の強者なら顔が割れていないのはおかしいしな。」

 

「だが…危険では?」

 

「そもそもそれほどの実力者なら私たちが来た時点で逃げるだろう。」

 

「それもそうか…まぁなんにせよ気をつけてくれよ?姉者」

 

「わかっている。お前こそ気をつけろ?仮にも闇派閥との繋がりがある派閥だ」

 

「ああ、わかっている」

 

話が終わったらしくシャクティが俺を探し始める。

俺は回収した頭をガネーシャ・ファミリアの人間に捕らえられていた人達の死体ですと伝え、渡しながらシャクティの元へと向かう。

まぁイルタの疑いは最もだろう。

俺は経歴上はLv3しかも最近オラリオに来た。要は証人のいないような状態だ。傍から見たら疑うのも無理はない。

 

「待たせた。では行くとしよう。」

 

「分かりました。」

 

シャクティと数人の部下と共に俺はガネーシャ・ファミリアに向かった。

 

そこそこ歩いたあとかなり目立つホームが見えてきた。

あーなっているのは知っていたが実際に見ると面白いな笑

クスッと笑いながら見ると部下二人が俺を睨んできた。

 

やっべ、そりゃあ自分のホームが笑われたらいい気はしないよな

俺は軽めに部下たちに頭を下げておく。

そうしていると前のシャクティから声をかけられる。

 

「済まない、あのようなホームで…」

 

その諦めに満ちた声を聞いて ああ、この人も苦労人なんだろうなって改めて思う。

 

「いえ、そのー…すごく個性的でいいホームだと思いますよ!」

 

そんな言葉でフォローを入れるが、シャクティはその言葉でさらにげんなりする。

 

「あの神には我々も苦労していてな…悪い神ではないのだが…」

 

「あはは…お手柔らかにお願いします」

 

そんな会話をしながら俺はホームへと入る。

 

 

「俺が!ガネーシャだ!!」

 

うるせぇ…とりあえず挨拶を

 

「あ、どうも。初めまして アメミヤ・レイと言います。」

 

「そうか!俺がガネーシャだ!!!」

 

 

…帰っていいかな?これ?まじで想像以上にうるさい。

 

「ガネーシャ…そろそろ話を進めても?」

 

見かねたシャクティがガネーシャに話を促す。ナイス!シャクティ!

 

「俺が!ガネー「ガネーシャ?」」

 

「ああ、大丈夫だ」

苛立ったシャクティが怒気の孕んだ声でガネーシャを黙らせ話を続けさせる。

おお、シャクティさん意外と怖いな。逆らわないでおこ

 

「レイ、このうるさいのが我々の主神ガネーシャだ。」

 

「時間も勿体ないので話を勧めさせてもらう。」

 

シャクティがそういうと俺の尋問(2回目)が始まった。

 

「レイ、先程の証言をもう一度この神の前で言ってくれ」

 

きた。これを乗り切れば晴れて釈放?だろう、だが相手は神。

あれ?これ嘘はついてない…よな?

あ、俺逃げようとはしてないわ…でも違うこと言ったらシャクティに指摘されるだろうし…よしもう言っちゃおう。訂正すればまぁ大丈夫なはずだ。

 

「 俺は昨日。酒場で酒を飲み、宿に帰る途中にこのファミリアの連中に襲われました。先程まで拘束されていたのですが、どうにか隙をついて逃げ出そうとしていました。それをこの男にみつかり、戦闘になり今に至ります。」

 

「どうだ?ガネーシャ」

 

「ほとんど間違いはないだろうな。だが…なにか隠しているな?」

 

うっ、やっぱり嘘がバレたか…まぁ正直に言ってしまおう。先程と違い俺の実力を隠す必要も無いし

 

「すいません、実は隠していたことがありまして、本当は逃げようとはせず、拘束されていた時から戦闘が始まりまして…」

 

一応多少申し訳なさそうに言う。

 

「ガネーシャ?」

 

「うむ、今回は嘘は着いていないぞ」

 

良かった。ベルのことは隠し通せそうだな。

 

「なぜ嘘を?」

 

「えーっと今は実は目立ちたくない、理由がありまして…」

 

実際の所はベル関連以外には深い理由はない。

ただ俺の実力がバレたら今後動きづらくなるかもしれない、そんな理由だ。

 

「そうか…まぁ深くは聞かない。ただ…」

 

「私と戦え」

 

「え?」

 




次回vsシャクティ!?


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第21話 シャクティVSレイ

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「戦う?」

 

「そうだ」

 

「俺とシャクティさんが?」

 

「ああ」

 

「えっと、理由を聞いても?」

 

今の俺にとってはかなり無茶な要求だ。

こちらは外傷がないとはいえ疲れ気味のLv3対して相手はLv5しかもその最上位とみていいだろう。正直いって勝負になるとは思えない。

理由くらいは聞いてもいいだろう。

 

「ヨグ・ファミリアを単身でそれも無傷で半壊させたのは明らかに異常だ。大抵の場合少しは傷なりおうだろう。」

 

確かにその通りだろう。Lv3vsLv4であれば確実にLv4が勝つ。それが今のオラリオの常識と言ってもいい。そんな状況であの状態を見たなら疑問を覚えても不思議ではない。

 

「レイ。ちなみに君のLvは?」

 

この質問で俺は少しハッとする。

思えばバグ戦後ステイタスの更新をしていない。

今のうちしておくべきだろう。

 

(大賢者。《神の偽能》を使用。ステイタス更新)

 

 

【アマミヤ・レイ】

所属 :【ミアハ・ファミリア】

ホーム【なし】

種族:ヒューマン

職業(ジョブ):冒険者

 

ステイタス

Lv3

力F352→D542

耐久E448→C628

器用H192→F311

敏捷G219→E427

魔力I98→G248

 

 発展アビリティ 精癒H、耐異常I

 

《魔法》

【サンダー・ボルト】

詠唱 なし

・雷属性・付与魔法(エンチャント)

・感情の丈によって威力上昇

 

【リライフ】

・死亡時のみ自動発動

・超回復

精神力(マインド)がある限り発動可能

 

詠唱文

・忘れるな己の罪、果たしきれ己の願い

全てを守り、全てを救い、全てを果たせ

 

 

 

 

 

《スキル》

【神の偽能】

・ステイタス更新を自分で可能

・ステイタスを刻んでいる人間のステイタスを視認可能

 

【大賢者】

・地図、思考加速、身体操作補助、並列思考、思考補助

 

英雄追想(ベル・クラネル)

・成長速度をベル・クラネルと同じとなる。

・ベル・クラネルへの憧れが無くなった時効果を失う。

 

【闇の権能】

・《纏》時全能力大幅上昇、闇の分離不可、発動毎に体力及び精神力大幅減少

・闇の触れたものの感覚を共有可能

・自由に闇を形成可能

・武具設定

 

 

超感覚(ハイパーセンス)

・五感強化

・第六感発現

 

ステイタスを更新しつつ、自分のLvを確認する。どうやらステイタス自体は伸びてはいるが、ランクアップはしなかったらしい。

まぁ当然と言えば当然だろう。スキル(英雄追想)があるとはいえ、そこまでポンポンランクアップするはずもない。

 

「えーっと一応Lv3です」

 

「ふむ、ますます君は謎だな。尚更興味が湧いてきた」

 

まぁそりゃあ謎だよな。

シャクティの立場上ある程度の第2級冒険者のことは把握しているだろう。ただし俺は約2週間前に急に現れたLv3。謎扱いされるのは無理もない。

だが、今は正直戦いたくない。《纏》の消耗もそうだが、シャクティと闘うと俺の実力が多少でも広まる可能性がある。それは避けたい。

 

「断ることは可能ですか?」

 

「もちろん強制はしない。君の容疑は9割以上晴れていると考えている。今すぐ無罪放免とはならないだろうが、のちのちの調査が終われば、君の言う通りならすぐ無罪になるだろう。」

 

なら、戦う必要は無いな、断ろう。

 

「それなら「だが」

 

「最低限…そうだな3日ほどここに拘束されてもらうことになるだろう。」

 

うっ、そう来るか、確かにそうだろう。安全か分からない人物を手元で監視したい気持ちは分かる。だが今は情報が欲しい時期だ。3日も拘束されるのは正直痛い。

 

「要は、戦うことをしないならその分の証拠を集める時間目の届く範囲にいろってことですか?」

 

「そういうことになる。申し訳ないとは思うが、君が本当は殺戮犯で市民たちに被害が及ぶことがあっては困るからな」

 

シャクティの考えは理解した。

ここで戦わず、3日無駄にするか

戦って実力が広まるリスクを取るか

ここは…

 

「…分かりました。戦います」

 

こちらを選ぶべきだろう。

 

「ありがとう。では訓練場があるのでそこに行こう」

 

「分かりました」

 

訓練場に向かう途中、先程の赤髪の冒険者。イルタ・ファーナが扉の横にいた。

 

「イルタ?帰っていたのか?」

 

扉の横にたっていたイルタにシャクティが話しかける。

 

「ああ、もう残党共の拘束は済ませたんでな。証拠は集めきれてないが、あとは別の部隊に任せた。」

 

「そうか、ご苦労だった」

 

「姉者はどうしてそいつと訓練場に?」

 

「彼の実力を測るためだ、本人も了承してくれた。」

 

その話を受けてイルタはシャクティに詰め寄る。

 

「なっ!なんで姉者がそんな事を?」

 

「理由はそこまで多くはない。今のこの場で自由の効くLv4以上の強者が私以外居ないことが1つ。」

 

「なら!私が」

 

「それはダメだ。もう一つの理由は私が個人的に彼の実力に興味があることだ。なので私がやる。」

 

「うっ…なんでお前なんかが姉者と…」

 

イルタが俺を睨んでいるが、俺にとってはどうしようもない。

そちらで解決して欲しい案件だ。そんな願いを込めてシャクティを見るがシャクティは大して気にする様子はない。

 

「話は終わりだ。時間がもったいない。行こうかレイ」

 

「あ、はい」

 

そう声をかけられ、俺はシャクティと共に訓練場への扉をくぐる。

 

 

 

ガネーシャはファミリアの訓練場は前世の体育館程度の広さがあった。

もちろん床は砂だし、周りには観客席のようなものもあった。

観客席にはあまり人はいないが、先程シャクティさんと一緒にいた部下さん達。イルタとガネーシャもいた。イルタが俺を睨んでいる気がするが気にしないでおこう。あとが怖い…

 

「さて勝負を始めるとしよう。好きにかかってきてくれ」

 

シャクティは中央付近たつと槍を構えて俺にそう告げた。

だが俺には確認すべきことがある。先にそれを済ませよう。

 

「シャクティさん、その前に何個かいいですか?」

 

「ん?なんだ?聞こう」

 

「まず前提としてシャクティさんは俺の本気を確かめたいんですよね?」

 

「ああ、そうだな。」

 

シャクティは俺が本当に実力のみでバグを倒したか確認したい。

と言っていた、先にそれについて言い訳を挟んでおこう。

 

「なら、申し訳ないんですが、今の状態では俺は本気ではほとんど戦えません。なので2分程度になってしまうんですがいいですか?」

 

これは事実。今の体力では《纏》を数分維持するのはかなりキツイ。

 

「ああ、そのくらいならばちょうどよかろう。どの道その程度で切り上げる予定だった。」

 

よし、これは了承を貰えた。向こうもそのつもりだったってことは俺程度なら2分で制圧できると判断してるってことだ。

良かったとは思うが、なんとなくムカつく。

 

「それと今回の対戦、外部には一切漏らさないで欲しいんです。俺は目立つのが嫌いなので」

 

これは最大限優先すべき点だろう。今の俺は目立つ訳にはいかない。

最低限ベルがLv2になるまでは俺は表舞台には立つことはしないつもりだ。

 

「ああ、了承しよう」

 

「そして最後に、この後ガネーシャ様とシャクティさんと俺の3人で話がしたいんですが、その場を設けて貰えますか?」

 

「ふむ…それは「いいだろう!」

 

シャクティが少し悩んでいると観客席からでかい声が聞こえてきた。

 

「俺は群衆の主ガネーシャだ!冒険者とはいえ民が話がしたいと言うなら喜んで話を聞こう!」

 

「だ。そうだ、私も構わない。話は終わりか?」

 

よし、これを了承してくれたのはデカい。これで上手く行けばあいつに会うことができそうだ。

 

「はい、我儘を聞いていただいてありがとうございます」

 

「ああ、では始めようか。イルタ!合図を!」

 

合図を頼まれたイルタは観客席の一部にあるゴング?いやあれは確かドラだったか?それに近づいてバチを持った。

 

イルタはそれをドラに振りつつ大きな声で合図をだす。

 

「はじめ!」

 

ドガーンとおおきな音ともに合図がだされる。

 

「《纏》」

 

俺はその合図とともに《纏》を開始。

 

シャクティも槍を構えて俺を見ている。

 

「シャクティさん」

 

俺はシャクティに声をかける。

シャクティは少し驚いた声をだしたが返事をせずこちらを見続けている。

俺は返事を待たずにシャクティに声をかける。

 

「本気で来てくださいね」

 

その言葉共に俺はシャクティへの突撃を開始した。

 

 

 




主人公調子乗ってね?


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第22話 上澄み

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シャクティに突撃をしている最中。

俺は違和感に気づいた。

今回で三度目になる《纏》には明らかに1、2回目とは差があった。

 

(動きが鈍い?)

 

感覚ではあるが今回の《纏》はいつもより動きが遅い気がする。

もちろん普段よりかは早くなっているのだが、それでもいつもより確実に遅い。

原因は…体力が足りてないってことなのか?

1、2度目と3度目の違いを考えたらそうだろう。

この辺も後で実験が必要だな。

その前に…!こっちを倒すのが先だ!

 

一番()

 

闇の権能により作り出した剣を両手でもちシャクティに向かって振り抜く

 

「ふっ!」

 

それをシャクティが槍の先端で受ける。

 

「まだまだ!一番()2刀」

 

両手に剣を作り、双剣のようにする。

そのままシャクティに向かって連撃(ラッシュ)を開始。

何度も切り付けるが、全て軽く受け流される。

 

なら!これでどうだ!

俺は二刀を同時に振りかぶりクロス斬りをする。

シャクティはそれを先程と同じように軽く受ける。

 

全ての攻撃を予想より軽く受けられ、自力の差を感じる。

今の一撃で少しでもひかせされないかと考えたが甘い考えだったようだ。

 

(やっぱり簡単にはいかないかーーーっ!)

 

次の攻撃に移ろうと考え始めた瞬間、シャクティが予想外の反撃をしだす。

受けたと思った瞬間、槍を回転。

剣ごと体をひっくり返される。

予想外の行動に一瞬思考が止まる。

 

(嘘だろ)

 

ある程度の反撃なら予想が出来ていた。

なので対応できるように盾を出そうとしていた時にコレだ。

体格なら俺の方が大きいので誤解していたが彼女はLv5の最上位

俺が力負けしても何も不思議では無いが…

誤解していた、いやまだ理解しきれていない。

ここはオラリオ、体格などなんの判断基準にもなりはしない。

ステイタスのみが判断基準として成立する事を改めて知る。

 

「ふん!」

 

シャクティはひっくり返したレイの体に拳打つ

 

「ぐはっ!」

 

拳を腹にモロに喰らい、吹き飛ばされる。

 

どうにか着地しようとするが衝撃が思ったより強く地面を何回転かしながら着地をする。

 

着地した姿勢から立ち上がり、シャクティの位置を確認しようとした前を見た瞬間。シャクティが目の前に来る。

 

「まじかよ!? 四番()!」

 

左腕に盾を作成、目の前に盾を構える。

 

「ふっ!」

 

大降りに振られた槍をどうにか受け止め…切れない!?

 

「くっ!」

 

俺は受け止めきれないことを察知した瞬間、盾を壊しながらさらに後ろに後退。

どうにか槍を避ける。

 

剣も盾も壊しながら戦う羽目になるとは…筋力お化けかよ

シャクティのバカげた力にそんな感想を抱く。

 

「先に言っておく、私は一応手加減するつもりだった。だがお前は本気で来いと言った。だからそれに全力で答えよう。」

 

シャクティは先程と変わらず、槍を構えながら俺に話しかけてくる。

 

「だからお前も全力で来い。出し惜しみなどするなよ?」

 

一瞬ゾクッとする。

これが第1級冒険者。オラリオの上澄みの派閥の団長か…

すげぇな。本当に…!

 

だが俺はこいつらを超えていかなきゃならない。英雄(ベル)の隣に立ち一緒に歩むためにはこの程度じゃ足りねぇ。

 

だがどうする?このままじゃあ勝ち目なんてない。

しかもその前に…

 

(大賢者、俺が《纏》を使える時間はあと何秒だ?)

 

(112秒)

 

まぁそんなもんか。想像よりは使えそうだが…

これは今の状態を維持するならって話だ。魔法でも使えばゴリゴリ減っていくだろう。

だが魔法を使えないならこのまま押し切られるだけ。

それなら自滅覚悟で行こう。

 

俺が方針を決めるとシャクティがまた問いかけてきた。

 

「作戦は決まったか?なら見せてみろ」

 

シャクティのその言葉に反応するように俺は自分の魔法を解放する。

 

「《サンダー・ボルト》」

 

瞬間、俺の全身を電撃が纏われる。

 

「エンチャントか…なかなかいい雷だな。だがそれでも私には通用しないかもしれないぞ?」

 

ああ、その通りだ。これでもシャクティに通用する保証は何処にもない。

だから…いつもよりもっと集約する。

 

俺は全身の雷を全て片腕に集約させる。

 

 

今までの俺は最大でも5割程度の雷を集約させることしかしなかった。それで充分だったし、それ以上使えば精神力が減りすぎて自滅しかねない。

だが今なら!

 

相手は格上、しかも俺たちがやっているのはあくまで模擬戦。

ならば試せる。最大火力の雷の全ての威力を!

 

一番()

 

俺は片腕に闇の権能を用いて剣を作成。

その剣に雷の全てを付与。

 

中腰になり剣を構える。

それに合わせてシャクティが槍を前に構え直す。

 

「いくぞ」

 

 

「こい!」

 

俺は全力で加速しながら、シャクティに向かう。

シャクティもそれを見て、ほぼ同時に加速。槍で剣を受けようとする。

 

思えばこの世界に来て初めて必殺技と呼べる攻撃かもしれない。

 

確か必殺技の名前を唱えれば威力が上がるんだっけかな?

 

ロキがアイズに言っていた事を思い出す。

ならば俺もそれに習うとしよう。

 

雷鳴(ブロンテス)

 

そう唱えながら、雷鳴を纏った剣を振り抜く。

その瞬間、轟音と共に雷がシャクティに向かって放射される。

 

 

 

 

「はぁはぁ…はぁ」

 

剣を縦にして杖のようにしながら、なんとか立つ。

この技は精神力をかなり消耗するな…

《纏》ももう切れてしまっているようだ。

 

さてシャクティはどうだ?少しはダメージを与えられただろうか。

そう考え、攻撃の余波で土煙が立っている、方を見るがシャクティがいる様子はない。

もしや倒してしまったのではないか?そう心配したがその心配は徒労に終わる。

 

「凄まじい一撃だったな」

 

土煙の奥からシャクティがでてきた。

 

「ははは、まともに受けてその程度ってマジですか?」

 

シャクティは戦闘装束(バトル・クロス)こそ焦げてはいるが、傷は焼け傷が軽めについている程度だった。

 

「そう落胆するな。お前の一撃は間違いなく私に通じる一撃だった。だが…私としてもさすがに身の危険を感じたのでな。完全に受けるのではなく、少し後退し回避したんだ。」

 

回避しようと思って回避出来るのもそれはそれで傷つくな…

そんな俺の感情を無視してシャクティは話を続ける。

 

「まぁ君の実力は充分みせてもらった。これで終わりにしてもいいのだが、どうする?」

 

模擬戦を続けるかどうかか…そんなのもちろん続けるに決まっている。

この状態でもやれることはある。

 

「もちろん続け…」

 

そう返事をしようとするが、体が前に倒れる。

 

(やば…)

 

どうにか姿勢を戻そうとするが、それも出来ず前に倒れる。

 

「お、おい!大丈夫か!?」

 

シャクティの声が聞こえるが、それも聞こえなくなり俺の意識が落ちる。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「精神疲労か…」

 

口元に手を当て呼吸ができていることを確認するとシャクティが倒れた理由に当たりつける。

 

「それにしても…化け物じみた力を持っているなこの少年は」

 

長く戦えないと言っていたことから彼の白髪になる力は精神力or体力、もしくはその両方を使う強化なのだろうとシャクティは考えていた。

ここまでならば持っている冒険者(同業者)はいる。

有名な人物で言えば、ヒリュテ姉妹のバーサク、フィンのヘル・フィネガスもその1種だろう。

だが彼の力はその上がり幅が1Lv、もしくはそれ以上のステイタスの強化がされていた。

 

「それゆえのデメリットがあるかもしれないが、それでもこの力は強すぎる。」

 

今はLv3だからいいだろう。

だがLv4、Lv5にでもなったら?この力はどんな相手にも通じる力になるだろう。

 

 

「敵にならないのを祈るしかないか」

 

もしくはガネーシャ・ファミリアに入ってもらうのも良いかもしれない。

後でそれとなくガネーシャに聞いてみるか…

 

そんなことを考えたシャクティだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第23話 ガネーシャとの会合

ガネーシャ・ファミリアってLv5が11人いるからしいですね。え?えぐない?


レイとの戦いが終わったあとのシャクティ

 

「おいお前ら!こいつを救護室に運んでくれ」

 

客席部分にいた部下にレイを救護室に運ぶよう指示をする。

慌てて部下たちが急いでおりて来る。

 

「シャクティ団長!」

 

部下たちが降りてくる前に、先程前いなかった部下が訓練場に入ってきた。

 

「どうした、お前達?」

 

「実は先程の騒動で捕縛したファミリアの人間が不可思議なことを言っておりまして…一応団長に報告をと」

 

「不可思議な事?」

 

「ええ、そこにいるアメミヤ・レイについてなのですが…」

 

「レイについてか?」

 

ふむ、先程の会話と戦闘で彼の事はだいたい分かったが、一応聞いておくか

 

「わかった、今から行こう。」

 

「お前たちはこいつを救護室に運ぶ事とここ(訓練場)の直しを頼む」

 

「分かりました。」

 

部下にそう指示を残し、シャクティは尋問室へと足を運ぶ

 

「さて話してみろ」

 

この男はヨグ・ファミリアの末席の人間だったな

 

「あ、あいつは化け物だ…人間のはずがねぇ…」

 

「あいつとはアメミヤ・レイの事か?」

 

「ああ、そうだ!アンタなら分かるだろう!?あいつの異常さが!?」

 

異常?確かに強さはLv3にしては異常と言えるがその程度だったはずだが…

 

「なぜそう思う?」

 

「え?」

 

「なぜそう思うと聞いている」

 

「なぜって…」

 

「あんな馬鹿げた野郎だぞ!?」

 

「魔剣を何十発受け、剣で腹をぶっ刺されても、回復…いや再生しやがる。その上髪髪色が変わった途端強さが別格にもなりやがる」

 

「待て。再生だと?」

 

髪色が変わり、強くなることは知っていたが再生とは初耳だ。

 

「ああ、俺らが最初に襲った時に勢い余って殺しちまったと思った…なのに急にひかりやがってそれをすぐ治しやがったんだ、あんなのは回復魔法じゃねぇ…文字通り再生したんだ…あんなの見た事ねぇ…」

 

死んでも再生する魔法か…

 

「あとは任せる」

 

シャクティは部下に尋問を引き継ぎ、部屋を後にする

 

髪色が変わった途端身体能力が向上したのは私の時に使っていたスキルだろう、だが再生?そんな魔法もレイは持っているのか?

本来、魔法とはマジックユーザーのエルフはともかく、ヒューマンや獣人などは1つ持っていればいい方というレベルの希少なものだ。

しかもそれはエルフであっても攻撃魔法か支援系の魔法かでどちらかに偏りがでるものだ。

オラリオは大半のものが冒険者という荒くれ者であり、エルフにおいても他の地域のエルフよりもその気質が多い。

なので基本的には攻撃魔法が発現しやすい環境といえる。

だからこそ、このオラリオでは回復魔法が希少とされ、ヒーラーの価値が高いと言われている。

ディアンケヒト・ファミリアの戦場の聖女(デア・セイント)であり、銀の聖女と言われいるアミッドやフレイヤ・ファミリアの満たす煤者達(アンドフリームニル)の顔役の黄金の魔女のヘイズ。

この2人がオラリオ最高峰のヒーラーと言えるだろう。

そのふたりは回復専門職だが黄金の魔女は死の三歩。

前銀の聖女はは死の一歩手前まで治療できると聞いたことがある。

オラリオ内のヒーラーはその2人が別格であろう。

戦闘のできるヒーラーなどリヴェリアやリュー程度しか知らない。

その2人は治療は出来るものの最高峰の2人には及ばないレベルだと言う事も本人たちが零していた。

それなのに、Lv3の段階であの火力の雷付与魔法と死の1歩手前まで再生できる魔法?を扱えるとは…あいつはオラリオの中でも別格…いや異端という事だろう。

 

ますます、うちに欲しくなるが…

 

そんなことを考えながら、シャクティは救護室にと足を運んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「俺が!ガネーシャだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「うわぁ!?」

 

声うるさ!?てかここ何処だ?

俺はガネーシャのうるさい声で目が覚め、周りを見渡す。

どうやら救護室のようだ。

 

「ガネーシャ様、俺はどのくらい寝てました?」

 

「ふむ、だいたい3時間くらいではないか、そして俺がガネーシャだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ガネーシャ様、ここでは静かにしてください、次やったら追い出しますからね?」

 

ガネーシャ・ファミリアのヒーラーらしき人に脅され、ガネーシャが小さくなる。

こんなんでも、オラリオの中ではかなりの神格者なんだよな…

 

「さて、レイ。俺に言いたいことがあるのではないか?」

 

そうガネーシャが聞いてきた。

ああ、言いたいことはあるのだが、この場で言いずらい…

 

そんなことを考えるとガネーシャが

 

「もう動けるなら、俺の部屋で話すか?」

 

気を利かせてくれたのか、そう提案してくれた。

これはありがたい、お言葉に甘えさせてもらおう

 

「それができるなら、お願いします」

 

「ガネーシャ、了解!!」

 

俺とガネーシャは救護室を後にし、途中でシャクティと会い、ガネーシャの部屋へと入った。

 

「さて!聞かせてもらおう」

 

「ガネーシャ様、俺からあなた…いえあなた達にお願いがあります」

 

「ふむ」「ガネーシャが聞こう」

 

この事を言ったら俺は後戻りはできない、今ならまだ、田舎にでも逃げれば、転生者特典とこの力で遊び呆けることが出来る。

だがこれをガネーシャに言ったら間違いなく、オラリオの冒険者として世界の波乱に巻き込まれて生きる事になる。

それに対して後悔はないと言えば、嘘になるかもしれない。

だが、もう決めた。あの光景(酒場での一幕)を見てから腹は決めた。

 

「俺をウラノス…そして愚者(フェルズ)異端児(ゼノス)と会わせてください」

 

「レ、レイそれをどこで…」

 

その発言でシャクティはかなり動揺する。

当然だろう、異端児(ゼノス)達の情報はオラリオの最高機密と言っても差し支えない。

それ程までにこの情報は重い。下界の真理は歪ましかねない事なのだから

 

「何故と、聞いてもいいか?」

 

ガネーシャがそう聞いてきた。

 

「俺はアイツらと会って話がしたい。そして自分の目で判断したい。」

 

何故か、アイツらのことを知りつつ、この世界に来た時、俺には2つのプランがあった。

 

1.異端児(ゼノス)を巻き込み、救済を完遂するか

 

2.異端児(ゼノス)を滅ぼし、ベルに会わせず、英雄を作るか

 

だがそのプランはすぐに破綻した。

原作のベルは異端児(ゼノス)を乗り越え、偽善者という形で成長した。

神の想像を超えた。異端を持つ英雄へと、足を踏み入れた。

俺が好きなのは全てを助けようと足掻くベルなのだ。

異端児(ゼノス)を捨て、ヘルメスの作ろうとした。英雄(ハリボテ)のベルなんて俺は望んでない。

なら俺も手伝おう、異世界の住人としての視点を持つ俺なら、異端児(ゼノス)に対しても嫌悪感抱かない、そんな確信もある。

俺は原作通りのでありつつ、原作以上を目指す。

そう決めたのだから。

 

「わかった。ガネーシャがウラノスの元まで案内しよう。」

 

「ガ、ガネーシャいいのか?会わせても」

 

「この子供は嘘はついていない、ならば会わせるべきだ。それがあのモノ達の願いでもあるのだから」

 

良かった。これで愚者(フェルズ)を通じてソードオラトリアに干渉もしやすい上に、異端児とも話せる。ベストの結果と言えるだろう。

 

「お願いします」

 

そう、俺はガネーシャへと頭を下げた。




シャクティのレイへの心情の変化

怪しい→すごい→化け物?→お前何者なんだよ?


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第24話 不満


遅れてすいません!


コツコツコツ…

洞窟…いやトンネルを3人が歩いていた。

 

1人目はアメミヤ・レイ

彼の願いを聞いて残りふたりはここを歩いている。

 

2人目はガネーシャ

ウラノスと愚者(フェルズ)にレイを会わせるのは、想像以上に難しい。

ウラノスは都市の創設神。ギルドの最高権力者と言ってもいい。

もちろん都市の運営自体はギルド長である。

ロイマンが取り仕切っているが、彼もウラノスの神威には基本的には従っている。

その都市の創設神に会うことは基本的には出来ない。

ウラノスが送還されればダンジョンが暴走を始め、下界は滅ぶ。

そのため、会うことが出来る者は限られる。

一般人は当たり前として、各ファミリアの団員、団長も不可

さらには同じ神ですらウラノスに会うことは出来ない。

そんな彼に会うことが出来るのはギルドの方針や指示を聞くためのロイマン。秘密の抜け道を知っているウラノスに協力している神くらいなものだ。

その協力者の1人がガネーシャというわけだ。

 

レイとしてはウラノスとは絶対に会うべきだと考えいた。

 

その理由は大きくわけて2つ

 

1つ目はウラノスと会うことは絶対に今後に必要不可欠だと考えいた。

これから動くことに関しても、俺が調べられる情報はたかが知れている。

その情報を元に動くにしても、それで失敗した場合目も当てられない事になる。

少しずつではあるが、俺の存在のせいで未来が変わり始めている。

先日のキメラにしてもそうだし、ガネーシャ・ファミリアの1部に顔を見られているという事も今後に影響してくる可能性は十分にある。

これからどんどん原作キャラに絡んでいる関係上、今以上に未来が変わることは絶対。

原作通りの予測できる未来ならともかく、俺の存在で変わり続ける未来で情報もなしに動けるとは思えない。

だからこのオラリオで最も情報が集まるギルドのウラノスとの関係が俺には必須という訳だ。

 

 

2つ目に

そしてギルドと敵対しないためでもある。

俺にとって原作キャラは身近な存在。外見、性格も知っている。しかもその過去も明かされている情報は基本的に知っていると言っていい。

そんな存在が急に目の前に現れたらどうなる?多くの者は気持ち悪いと思うだろう。

何も分からない相手が自分の性格、外見、Lv、そして知られたくもない過去…その全てを知っていたらどうだろう?

俺の場合不思議に思い、そしてその人物が怖いまたは気持ち悪く思えるだろう。

そして最悪の場合、危険な人物にも思えてしまうだろう。

ウラノス相手にそんな状況になり、もし愚者(フェルズ)異端児(ゼノス)達を差し向けられることになったら目も当てられない。

だからこそ、俺は色んな原作キャラと関係を構築し、信用を得なければ自由に動けない。

もちろん純粋に仲良くなりたいキャラも居る。まぁそれは後回しになってしまうが…

 

まじでダンまちって過密スケジュールなんだよな…頑張れ。俺…

将来過労死しそうな俺に心の中でエールを送る。

 

一応ガネーシャを選んだのにも理由がある。

まぁそもそもとして選択肢がないんだよな…

俺が知ってるウラノスと関係があり、抜け道を知っている神って

ヘスティア、ヘルメス、ガネーシャの三神

それ+一応関わりができるロキ

その四神くらいなのだ。

ヘスティアは今は関わりがないから却下

ヘルメスは今オラリオにいないからそれも却下

ロキに関しては可能性があるだろうが、きょうりょくしてもらえたとしても秘密の抜け道を使っていないので、めちゃくちゃに目立つ。

なので却下

結果、1番良いのがガネーシャというわけだ。

まぁガネーシャはオラリオ内では善神寄りだし、悪い選択肢ではないとは思うし不満はない。

不満があるとしたら、ここにいる3人目だな

そう思いながら、3人目に目を向ける。

 

「なんだよ?」

 

「いえ、何も」

 

睨みながら言われすぐにイルタさんの顔から視線を横に向ける。

 

「ガネーシャ!!!こんな暗い中でも叫ぶぞ!」

 

「俺がガネーシャだ!!!!!!!!」

 

うるせぇ。

まぁ何も喋らないよりマシだが…なんでこのメンツなんだ…

恨むぞ…シャクティさん…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「レイ、済まないが私は君に同行できない。」

 

「え?」

 

まじか、ということはガネーシャと二人きり?それは…うん、キツくない?でも部外者の俺に護衛を任せるわけが無いから、誰か別の人が来るのだろうか?

 

「ガネーシャを連れていくこと自体は必要だし許可しよう。ただ、派閥の団長と主神が一緒に動くと、どうしても目立ってしまうからな」

 

「なるほど、それじゃあ他にどなたかが?」

 

できるなら事情の説明が必要ないか、説明しなくても良い人物がいいが…

 

「ああ、私の妹分のイルタを行かせる。Lvは私と同じLv5なのでまぁ護衛としては充分だろう。副団長でもあるが、私よりは目立つことは無いだろうしな」

 

「そうですか、なら良かった。」

 

イルタさんか…

 

(大賢者、ガネーシャ・ファミリア イルタ・ファーナについて現在わかる。全ての情報を開示しろ。)

 

(了)

 

イルタ・ファーナ

ファミリア副団長のアマゾネス。Lv.5。二つ名は【赤戦の豹(パルーザ)】。シャクティと義姉妹の契りを(強引に)交わしており、彼女を姉者と呼び慕っている。

 

まぁ俺が知っている情報はこんなもんか…強者との繋がりは俺が最優先すべきものだ。仲良くなれたらいいな。

 

「だが、何となくなんだが、君に対して敵意?のようなものを向けている気がするんだが…なにか心当たりはあるか?」

 

「敵意ですか?心当たりは無いですけど」

 

敵意か…話したことはない?はずだし、シャクティ関連か?でも何が原因で?

 

「そうか、ならいい。まぁ急に攻撃したりはしないだろうから安心してくれ。それと君は異端児(ゼノス)についてどこで知ったんだ?」

 

それは…これを話すと色々面倒になりそうなんだよな…話にしても今じゃない。

 

「言えないです。すいません」

 

「…分かった。これ以上は聞かないでおこう。私も実際には会っていない。君は勇気があるな、冒険者である以上、避けたいと思う人間も多いだろうに」

 

ふぅ。良かった。追求されても答えられないしな。引いてくれて助かる。

それにしてもまぁこの世界にとってはそりゃあ異端児(ゼノス)は危険な存在なんだろうけど、俺にとっちゃあ作中のキャラ達でしかないからな〜

言ってみればシャクティやイルタと同程度の存在でしかないのだ。その認識の違いはまぁ仕方ないんだろうな。

 

「俺の場合、冒険者になる前に知ったんで、それに…俺はアイツらとも仲良くなりたいんですよ、ほんとに」

 

「そうか…まぁ頑張ってくれ。君の目的が叶うことを祈るよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「だが、その目的が私達の治安維持の邪魔になると判断した場合は…分かるな?」

 

「ええ、もちろん。俺もあなたとは戦いたくないんで」

 

これはマジ、ほんとに戦いたくない、この人ガチ強い。

誰だよLv5は弱いみたいに考えてたやつ。俺だよ。

まぁ17巻時点のベルでもLv5と渡り合える程度には強いからな〜

それで認識が甘くなってたんだろう。でも…これじゃ足りないんだよなー

 

「それならいい」

 

そう言いながら、シャクティは後ろをむくとイルタが歩いてきていた。

 

「よし、イルタも来たな。ではよろしく頼む。」

 

イルタに対してそういうとシャクティはホームへと帰っていった。

 

「よろしくお願いします。イルタさん。」

 

俺はとりあえず挨拶がてらイルタに笑いかけると

 

「…ふん」

 

と彼女に顔を背けられた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

はぁマジで先が思いやられる。

 

「おい、お前」

 

イルタが急に話しかけてきて慌てて返事をする。

 

「はい、なんです?」

 

「なぜだ?」

 

「え?」

 

「なぜ、貴様はそんなに早く強くなっている?」

 

スキルのことは言えない。でもガネーシャの前だから嘘は言えない。なら嘘じゃない嘘をつけばいい。

 

「なぜって言われても…頑張ったから?」

 

これは嘘じゃない。本質的な答えでは無いが、割とマジで頑張った。

 

「ふざけるな!貴様の力は明らかに異常だ。なぜLv3の分際で姉者と戦える?なぜ姉者を避けさせる威力の魔法を放てる!」

 

うーん。スキルに触れずにこの人の納得できる答えは…用意できないかな〜そう考えているとガネーシャが助け舟を出してくれた。

 

「イルタ。それ以上は問い詰めるな、お前も知っての通り他者のステイタスを聞くのはタブーだ。」

 

「だが!こいつは危険だ!オラリオの外にいた人間が1ヶ月も立たずLv3になり、姉者と少しでも戦えるなんて異常にほかならない!しかもオラリオに来る以前の素性はまるで分からない!なぜ姉者やガネーシャは信用している?私は信用出来ない!」

 

そんなガネーシャの意見を跳ね除け、イルタが俺に対しての不満を爆発させる。要は俺がシャクティ達に急に信用されたからそれを怪しんでいるってことか?まぁ理解はできるが…

 

「俺もお前たちほどは信用していないぞ!だが彼は異端児(ゼノス)達の存在を知り、会う意思を持っている。俺はそれを尊重してやりたいだけだ!」

 

「だ、だが!「イルタさん」

 

ここは俺の本音を言おう。これで納得してくれると良いのだが

 

「俺の素性は言えません。俺のステイタスも言えません。でも俺が強くなる理由は言えます。」

 

「俺には叶えたい願いがあるんです。絶対に護りたい人が、物語があるんです。それを護るために俺には強さがいるんです。その強さを得るためになら俺は何でもします、俺には時間が無いんです。一分一秒が勿体なく感じるほどに。」

 

あと半年もないのだ。原作には着々と追いついている。

 

「それがあなたと俺の違いです。シャクティさんと並びたい貴方と俺じゃあ賭けてる想いが違うんだよ。」

 

少し熱くなってしまったが、これが俺の本質であり本音だ。

 

「な!?私だって」

 

そんな俺の高圧的な言葉にイルタは顔を赤くしながら反論しようとする。

 

「強さを求めていると?」

 

その言葉先読みして発言する。

 

「ああ、そうだ!私もこのLvに満足なんてしていない!ふざけたことを抜かすな!」

 

強さを求めている?その言葉は本当なんだろうが、俺には軽く思えた。

そして脳裏にあいつらのことを思い出してしまった。

この世界のために犠牲になった。会ったこともない英雄達(暴喰と静寂)を。それを思ってしまった瞬間頭に血が上る。

 

「ふざけているのはどっちだ?」

 

「は?」

 

「お前らはそうやって口だけでどれだけの時間を無駄にしてきた?Lv5が11人?すげぇファミリアですね?今のオラリオにしてみれば」

 

だがそれよりも上がいた。

 

「ゼウス、ヘラファミリアがいた時Lv5なんてゴロゴロ居たんじゃないのか?Lv6やLv7、そしてLv8.9の化け物共がいたんじゃないのか?」

 

彼女が彼女なりに頑張ったことは事実だろう。でもそれでは足りないのも事実なのだ。

 

「お前らは何をしてきたんだ?7年前のあの時からお前らはなぜ成長してねぇんだよ?」

 

7年だ。俺はその7年間を生きていない。経験していない。だから偉そうな事を言うべきでは無いのだろう、だが言う必要がある。

 

「時間ならあったよな?あんたがいつLv5になったかは知らねぇ、知りたくもない。時間の無駄だ。」

 

たかだかLv5なのだ。この世界の上澄みがまだLv5なんだ。

 

「どうしてそこまで弱さに甘えられる?何が第1級冒険者だ?」

 

あいつら(ゼウスとヘラの生き残り)の犠牲で得た力がそれか!?ふざけるな!もっと強くなってろよ!」

 

これも俺の本音だ。あいつらの気持ちを知っている、読んでいる俺だけが思うことだろう。

もっと強くなって欲しかった。

こう思わずにはいられないのだ。

 

「はぁはぁ、これが俺の本音です。俺なんてまだまだなんですよ」

 

本当にまだまだだ。強くならなくちゃ英雄(ベル)の隣に立てない。

強くならなくちゃ恩人(リュー)を護ることも出来ない。

 

「俺はあんたらと違って本気でダンジョンを踏破して、黒竜を殺そうとしてるんですよ。それの邪魔をしないでください。」

 

いつの間にか歩いていた足は止まり、イルタを見ながらはっきりとそう告げた。

イルタはそれを黙って聞き、俺を睨んでいた。

 

「レイ、イルタ。言い合いはそこまでだ。着いたぞ」

 

ガネーシャがそう言うと扉が見えていた。

 

「入るぞ」

 

ガネーシャは扉を開けて中へとはいる。それに続き、レイとイルタも中に入る。

 

 

中に入るとそこには巨大な玉座のようなものがあった。

少し前に見た事がある石でできた玉座だった。

 

「ガネーシャ、そのもの達は誰だ?」

 

玉座の上に座っていた老神がガネーシャにそう質問をなげかける。

ガネーシャは答えようとするが俺がそれを制し前に出る。

 

「俺はレイ。アメミヤ・レイ。アンタと愚者(フェルズ)にお願いがあってきた。」

 

そう、はっきりと超越存在(デウスデア)に告げる。




めちゃくちゃ遅くなった割に5000文字しか書けませんでした。まじですいません。もうちょっとペースあげなきゃ…


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第24.5話 イルタ・ファーナとシャクティ・ヴェルマ

ちょっと箸休め話です。


最初はむかつくやつだった。

憧れの存在(姉者)と一緒に来て、急に姉者から戦うといいだした上に勝てなかったが、善戦していた。

あの男がLv3と聞いた時、ワタシは驚いた。

当たり前だろう、Lv3だぞ?

Lv3のアイツに対して姉者はLv5、その上にLv5になってからの7年間分の経験値を溜め込んでいる。

ワタシはLv5になった。だが姉者に勝てるかと言ったら話は別だ。

ワタシと姉者では経験値以外には技と駆け引きも一歩も劣っている。

今の私ですら勝てない姉者にLv3の状態で戦えるか?まず間違いなく負ける。

もちろんアイツも負けた。

だが負け方としては見事と言わざる負えない。

あまりある差をアイツは魔法と気迫で突き詰めた。

あの一撃は間違いなく姉者に対して怪我を負わすことのできる一撃だった。その証拠に姉者は冷静にそれを避けた。

なんだアイツは?本当にムカつく。

なんだあの勝ったあとの姉者の清々しい顔は?私と訓練する時の姉者はもっと厳しい顔をしていた。

1度もあの男と戦った後のような顔をしていなかった。

それがムカつく、ムカつく、ムカつく!!!

はぁーーーー強くなってやる。あの男のように姉者を楽しませるような強さを手に入れてやる。絶対に!

そう考えていた…

トンネルを通っていた時、奴に問い詰めた。

なぜ、貴様はそれほどに強い?どうすれば、早く強くなれるか?と

最初、奴ははぐらかしてきた。

それに腹を立てもっと問いつめてしまった。

ガネーシャがステイタスは他人に明かすものでは無いと止めてきたが、そんな事よりも私は奴がはぐらかしたことが気に食わず、頭に血が昇っていた。

今思うと少し申し訳なくも思っているが、次の瞬間やつは豹変した…

丁寧な言葉遣いは段々となくなり、凶狼(ヴァナルガンド)女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)のような粗暴な口調になった。

最初の私の信念をバカにするような発言に私はさらに頭に血が昇り、手がでそうになった。

そんな私に一切も怯まず、奴は…いや彼は私に本音を吐いた。

 

「ふざけているのはどっちだ?」

 

「お前らはそうやって口だけでどれだけの時間を無駄にしてきた?Lv5が11人?すげぇファミリアですね?今のオラリオにしてみれば」

 

「ゼウス、ヘラファミリアがいた時Lv5なんてゴロゴロ居たんじゃないのか?Lv6やLv7、そしてLv8.9の化け物共がいたんじゃないのか?」

 

「お前らは何をしてきたんだ?7年前のあの時からお前らはなぜ成長してねぇんだよ?」

 

「時間ならあったよな?あんたがいつLv5になったかは知らねぇ、知りたくもない。時間の無駄だ。」

 

「どうしてそこまで弱さに甘えられる?何が第1級冒険者だ?」

 

「あいつらゼウスとヘラの生き残りの犠牲で得た力がそれか!?ふざけるな!もっと強くなってろよ!」

 

彼の言った言葉は一言一句私の心に刻まれた。

そして感じた。私は奢っていたのではないか?

どこかで停滞していたのではないか?

どこかで諦めがあったのではないか?姉者よりは上に行けないと

姉者と並べればいいと

 

そんな奢りをぶった切られるような発言でそれはある種の真実だった。

 

それを気づかせてくれた彼に感謝を

そして絶対に彼の期待に応えよう。

オラリオの第1級冒険者として、ガネーシャ・ファミリアの副団長として

そして姉者の妹分としてではなく、対等になれるような冒険者に!!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

第一印象は不思議なやつと言った感じだった。

ダイダロス通り付近の市民の通報で私達、ガネーシャ・ファミリアは来た。

私は先行し守衛を倒しながら、ホールまで突入し、そして圧倒された。

中では二人の男がたっていた。

1人は突入前の調査で顔が割れていた。ヨグ・ファミリアの団長、バグ・ソドース

そしてもう1人は顔も知らぬ白髪の青年だった。

 

そしてバグは白髪の青年に腹を貫かれていた。

一目で見て助からないことを悟るが、今は白髪の方だと意識を変えた。

正面から見た青年は光がないようなあるような瞳をして、髪色が白から黒へと変えながら、バグの死体を抱え私の元へと歩いていた。

私は得物に手をかけながら青年に対して警戒していたが、青年はそれを気にしていないようにぶっきらぼうに聞いてきた。

 

「あんた、誰だ?」

 

初対面、そしておそらく年下の青年からのいい気のしない問いかけに私は不満を覚えたが、それを気にせず一旦名乗っておく。

 

「私はシャクティ・ヴァルマ。ガネーシャ・ファミリアの団長だ。」

 

これが青年、レイとの出会いだ。

 

ホームに戻った際、私はレイに戦闘を申し込んだ。

断られると思ったが、奴は少し考え私に質問したあと、了承してくれた。

本気のレイの実力はLv3とは思えないほどの強さだった。

身体能力はLv4の中位

魔法の瞬間火力だけならLv5に届くとも感じた。

ただ一方で技や駆け引きは素人に毛が生えた程度。

ステイタスによるゴリ押しだった。

 

だがそれは仕方がないことだとも理解した。

恐らく彼は凄まじい速度で成長している。

急激に上がるステイタスに技術が追いついてないのだろう。

ステイタスに技術が追いつき、レイがLv5にでもなれば、猛者(オッタル)勇者(フィン)剣姫(アイズ)などと並ぶ冒険者になるだろう。雷の付与魔法、再生能力、そして身体能力をあげるスキル。

剣姫(アイズ)以来の常識外れが生まれるな…

まぁ敵対することはないだろう。

 

そして1番に驚いたのは彼の性格だ。

彼は異端児(ゼノス)にあうと言った。

冒険者なら誰もが避けるであろう、あの異端児(ゼノス)に…

私が彼の立場なら言えるだろうか?

彼がどのように知ったのかは分からない。

だが私は彼のように仲良くなりたいとは言えるとは思えない。

そんな彼に…レイに私は神と似たような視点を感じた。

私達とは違う超越存在(デウスデア)のような雰囲気を

その雰囲気を感じた時私は彼を尊敬した。

冒険者ではなく、一人の人間として異端児(ゼノス)と向き合う覚悟がある彼に…

 

 

 

 

 

 

 

 



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3章
第25話 交渉


メリークルシミマス!


「お願いだと?」

 

「ええ、お願いですね、ところで愚者(フェルズ)さんはどこに?」

 

説明の手間も省けるので、できるなら一緒に説明したい。

 

「…フェルズ?一体誰のことだ?」

 

んー?ウラノスが愚者(フェルズ)を知らないはずないんだけどな〜?

異端児(ゼノス)達の存在をガネーシャが知っているってことはウラノスが知らないはずないし、つまり愚者(フェルズ)の事を知らないはずないんだけど…ガネーシャとイルタにはまだ愚者(フェルズ)の事を知られたくないってことか?ならそれに配慮するべきだろう。

俺としてもこれから話す事は人に聞かれたくない。

 

「あー、神ガネーシャ、イルタさん。ここまで連れてきてくれてありがとうございます。悪いんですが、あとは俺と神ウラノスの1対1で話させてくれませんか?」

 

「俺から事情を説明しなくていいのか!」

 

「ええ、あとは俺一人で大丈夫です。」

 

ここに残ってもらっても、俺もウラノスも聞いて欲しくない話が多いからな。

 

「なっ…そんなこ「ガネーシャ、了解!」」

 

「いいのか!?ガネーシャ」

 

「ああ!!レイの願いはウラノスに会わせるところまでということらしい!本人の意思を俺は尊重しよう!なぜなら俺は群衆の主!ガネーシャなのだからな!」

 

「さっ!行くぞ。イルタ!」

 

「お、おい待てガネーシャ!」

 

群衆の主とその眷属が俺たちが入ってきた扉へと姿を消す。

 

「さて、1対1になったところで…愚者(フェルズ)には会わせてくれないんですか?」

 

「…何度も言わせるな。フェルズとは誰だ?」

 

うーん、まだシラを切るか、面倒だし俺の持ってる情報を多少開示しよう。

 

「はぁー、あんたの唯一の私兵、永遠の命を得て骨になっちまった、賢者の成れの果てだよ。そっちこそ何回も言わせないでくれ」

 

愚者(フェルズ)は今居ない。」

 

お、愚者(フェルズ)がいることを認めてくれたか。

 

「…貴様は何者なのだ?」

 

何者…か。うーん前世にしても今世にしても特に何物でもないんだよな。

 

「俺か?俺は…ただの人間(ヒューマン)だよ、無力なくせに身に合わない願いを求めているただの馬鹿野郎だ。ただしこれから起こる事件を知っている。それだけだ」

 

「その願いを叶えるために、あんたの力を貸してほしい。」

 

ウラノスはレイの目を見続けながら、少し考える。

 

「…それを助けて、私になんの得がある?」

 

得か、都市が助かるってだけじゃ足りないよな…信用のない俺がそんなことを言ったところで信じてもらえるはずもない。

 

「俺があんたの私兵になってやる。」

 

今俺が交渉できる賭け金(チップ)は俺自身しかない。

今はこれがベストだろう。

 

「生憎、私は私兵をもたない。」

 

あー、そうか表向きはそうなんだよな。ならそれを暴こう。

 

「いいや、あんたは私兵を持っている。愚者(フェルズ)異端児(ゼノス)そしてヘルメスとの協力関係。そこら辺のファミリアなんて目じゃない戦力だ。」

 

愚者(フェルズ)のことの上に異端児(ゼノス)の名前をだすことでウラノスにかすかに動揺がはしる。それをあえて無視しながら話を続ける。

 

「だけど、それでも都市の2大派閥(ロキ、フレイヤ)には勝てない」

 

事実、ウラノスの派閥の最高戦力は現状、リドやグロスのLv5程度の戦力しか有していない。

Lv6のロキ、フレイヤの派閥幹部には到底勝てない。

Lv6の戦力が欲しい。ウラノスたちは少なからずそう思ってるはずだ。

そこに付け入る隙は必ずある。

 

「俺が、そいつらへの切り札になってやる。勝てるとは言えない、だが確実に抑止力にはなれるはずだ」

 

「Lv3の貴様がか?」

 

もっともな疑問だろう。だから俺はそれに説得力を持たせる方法を持っている。

 

「俺には早熟するスキルがある。俺はこのスキルで他の冒険者とは隔絶的な速度で早く成長している。」

 

俺のスキルを全て開示する気は無い。

だが早熟するスキルである英雄追想(ベル・クラネル)はこれから明かしておいて損するものじゃない。むしろ明かすことで俺の言動に説得力を持たすことができるだろう。

 

「希望的観測になってしまうが、Lv4、Lv5、Lv6となっていけばあんたの役にもたつはずだ。」

 

今ここで戦力になれると言えるのはあくまで未来の話だ。

今の俺には戦力になれるような強さはない。

 

「俺からあんたに出せるのは、これから起こる事件の大まかな内容と俺という戦力、それだけだ。」

 

「私に何を望む?」

 

「情報が欲しい。ダンジョンでの異変などの情報が俺にはない、だからその情報を今後提供して欲しい。情報が貰えたらその都度俺が知っている関係ある情報をあんたらに教える。」

 

今全てを明かすことは出来ない。ベルやアイズ、ロキ・ファミリアの成長の機会を奪うことは絶対にしたくない。

 

長い沈黙の後ウラノスが口を開く。

 

「貴様の目的はなんだ?」

 

俺の目的か…この世界に来てこれだ!って目的は…うーんあれだな。

 

「ダンジョンの完全攻略、黒竜の討伐、そして俺が気に入ってる人達を護ることだな」

 

「…」

 

返答は沈黙。ならもう一押ししよう。

 

「もちろん、それには異端児(ゼノス)も含まれてるぞ」

 

「…!?」

 

「俺は異端児(ゼノス)たちと仲良くしたい、笑い合えると信じてる」

 

散々言っているが、異端児(ゼノス)とは友好関係を気づきたいと考えている。戦力としても、俺個人の感情としても、そして未来の英雄(ベル・クラネル)の選択を大事にしてやりたい。

 

「まぁ、向こうからは拒絶されるかもしれないが、それはそれだ。」

 

少しの沈黙の後、ウラノスがまた口を開く。

 

「貴様の持つ情報の内容は?真実である証拠は?」

 

証拠か…うーん難しい。

開示する情報によっては嘘になってしまうんだよな。

敵の戦力や場所の情報とかはそこまで変わらないだろうし、その辺を開示していくとして。根拠は俺の能力ってことにしとけばいいだろうか

 

 

「これから起こる事件の概要、対策方法。証拠は…俺の能力かな?」

 

「能力?」

 

「ああ、俺は未来を知っている。全てでは無いけどな」

 

嘘では無い、本当に断片的な未来を知っている訳だしな

 

「……」

 

愚者(フェルズ)…出てこい。」

 

「いいのか?ウラノス?」

 

「ああ、隠すことは無意味のようだ。」

 

あーやっぱりいた。

ここで引き篭ってまで外部との接触を避けてるウラノスが護衛も付けずに(不安要素)と会うとは思えなかったんだよな。

 

「驚かないのか?」

 

「何に?」

 

「私が骨とローブだけの事にだ。」

 

まぁ元から知ってますし

 

「それの何が?」

 

「なっ…!」

 

そんな俺の返事に愚者(フェルズ)は少し驚く。

まぁ骨だけの姿に驚きもしない人間なんていなかっただろうしな。

まぁこの驚きをありがたく利用させてもらおう。

 

「だから言ってるだろう。俺には未来の断片がわかる。当然あんたのことを少なからず知っている。」

 

「ほう?例えば?」

 

愚者(フェルズ)が質問してくる。まぁ当然だはな

 

「あんたの能力、ステイタス、交友関係、どんなことをどのくらいできるか?ぐらいはある程度知っている。」

 

「すごいな、それはどの程度正確でどの程度まで見れるんだ。」

 

愚者(フェルズ)がさらに質問してくる。

 

「簡単に言えば俺未来の断片を知っているってところか?これから先何が起こってその先でどうなるのかを知っている。」

 

ここで喋ることは本当であり嘘である必要がある。

慎重に言葉を選ばなくては

 

「ただし、それは俺が関わらない場合しか見えてない。俺が関わった場合は分からないんだ。だから未来の断片ってところだな」

 

「それでも凄まじい権能だな。それが本当ならば」

 

愚者(フェルズ)がウラノスを見る。

ウラノスは厳かな様子で頷いている。

よし、嘘発見器には引っかからなかったな。

さらに畳み掛けるぞ

 

「なら試しにこれから起こる事件の概要を伝えよう。」

 

「ほう?」

 

俺は食糧庫(パントリー)出起こる事件を話すことを決める。

直近で起こる問題だし、ヘルメス・ファミリアも助ける必要があるしな

利用させてもらおう。

 

「それの制圧に力を貸してほしい。」

 

「「聞かせてもらおう」」

 

愚者(フェルズ)とウラノスが同時に返事をしたことを確認し俺は事件の詳細として欲しいことを言う。

 

1時間程度の説明と作戦会議を終え、とりあえず今回の協力は取りつけることが出来た。

重畳、重畳。

さて次はベルだな。

 

酒場で先に帰った件を謝って置かないと

 

 

 

 

 

 



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第26話 実力把握

遅くなりました


愚者(フェルズ)とウラノスとの作戦会議を終え、俺は宿へと帰った。

宿の店主には「おい!あんた大丈夫か?」などと言われたので改めて自分の姿を確認したら、めちゃくちゃ体調悪そうな顔をした男がそこに立っていた。

 

あー、街を歩いてた時妙に視線があると思ったらこういうことか。

今の見た目は人間と言うより幽霊とか妖怪とか言われた方が納得いく程度にはゲッソリしてる。

 

店主には「疲れてるだけですよ」というと店主は昨日ヨグ・ファミリアの連中が宿に来て俺の事を嗅ぎ回っていたことも伝えてきた。

 

あいつら俺をつけるだけでなく、宿とかも調べていたらしい。

いつから付けられていたかは分からないが、これはちょっと対策をしておいた方が良さそうだな。

青の薬舗(ミアハ・ファミリア)やヘスティア・ファミリアが無事かも確認しておこう。

豊穣の女主人はまぁ大丈夫だろう。俺より強い人ばっかだし、最悪Lv6の女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)もいるし気にしなくても大丈夫なはずだ。

 

ということは…まぁミアハとヘスティアファミリアは明日確認すればいいだろう。

今はとにかく休みたい。

色々疲れた。

「あー、その件は大丈夫なんで」

 

軽く店主にそう告げ、部屋の扉を閉じベッドへと倒れ込む。

 

作戦開始まではまだ数日ある。それまでにあいつとた……

 

考え事も終わらず、そのまま眠りにつく。

 

ーーーー

 

「はぁ〜バグのやつマジで死にやがっちまったな〜」

 

ここはダイダロス通りの奥。ほとんど人の寄り付かない通路。そんな通路を一人の神が通っていた。バグの主神ヨグである。

 

「今から良い奴を探そうにももう10年以上育てるのはだりぃしな〜。どうしようかねぇー?」

 

バグとヨグは10年以上の付き合いがあった。紛争地帯で拾いヨグ自身が育てたと言っても過言ではない。いくら神が永劫の時を生きると言っても10年も過ごせば多少の愛着は抱く。

 

(今から新しい子供を育てるか…無理だな…)

 

「やぁヨグ」

 

そんなヨグに声が掛けられた。後ろを振り向くと2人の男?がたっていた。1人は自分を呼び止めた神、タナトス。

実質的な闇派閥全体の主神と言って差し支えない親玉である。

 

「オーオー、忙しそうなタナトス様が俺の元まで来るなんて珍しいこともあるもんだな〜」

 

ニヤニヤと口を歪めながら、しかし心の奥底には思慮を潜ませ、タナトスの意図を調べる。

 

「ちょっと用事でね。じゃあやっちゃって」

 

「あ?」

 

その声と同時にヨグは床に組み伏せられていた。

 

「はぁ?」

 

「ごめんねヨグ〜?」

 

「なんのつもりだ?タナトス?」

 

睨みながらタナトスに問うヨグだがタナトスはそれをひらりといなし道化のように振る舞う。

 

「僕のお気に入りが君は不安因子だから消しといた方がいいって言うからさ〜まぁ運が悪かったと思っといて?」

 

「フッざけんなよ?」

 

「まぁ殺しはしないからさー、じゃあね!!」

 

その言葉と共にヨグは意識を失う。

 

「えっとこれでいいの?」

 

その言葉にヨグを組み伏せていた者は頷く。

 

「そっかァ、まぁ君のおかげで計画が上手く言ってるからこのくらいのわがままは聞いてあげるけどさー、これからも活躍期待してるからね?」

 

お前のわがままを聞くのは、計画が上手くいっている間だけだと言外に告げる。

 

男いや怪物は返事もせず、そのまま神を抱えながら歩き出す。

 

「あ!置いてかないでよぉー、僕の護衛今は君しかいないんだよぉ!?」

 

そのまま雑談をしながら2人の神と怪物が姿を消す。

 

 

ーーーーー

 

 

 

はっ!

勢いよく、眠りから目を覚ます。

今何時だ?うげ、昼過ぎじゃねぇか…はぁーやっちまった。貴重な鍛練時間が減った…うーんでも睡眠も必要だし。

そうだ!こういうのなら…

 

(大賢者、こういうのってできるか?)

 

俺は自分のやりたいイメージを大賢者へと伝える。

 

 

……可能

 

よし、なら今日の夜からそれを実行してくれ。

 

俺はベッドから飛び起き、身支度を済ませ、外へと出る。

そして道の途中でじゃが丸くんを食べながら、ヘスティア・ファミリアへと向かった。

 

 

コンコンコン

 

「ベルー?いるか?」

 

扉を叩きながら、地図(マップ)で確認済みで中にいることを知っている。ベルへと声をかける。

 

「あ!レイさん、どうかされたんですか?」

 

「いやー、おととい急に居なくなっちまって悪い事をしたと思ってな、すまなかったな」

 

「あ、その事ですか、全然大丈夫ですよ。」

 

ベルははにかんだ笑顔を見せながら俺のフォローをしてくれる。

 

弟がいたらこんな感じがいいな。

そんなことを思いながら、話を続ける。

 

「そういえばあの後変わったこととかなかったか?」

 

「変わったことですか?」

 

「ああ、誰かに付けられたとか?そんな感じの」

 

これでヨグ・ファミリアのことを言われたらあいつらに関連する組織相手に対処する必要があるが…どうなるかねー

 

「いえ、そういうのは…変わったことと言ったら神様が宴に行ったきり帰ってこないことくらいですかね?」

 

問題はなし。そして今はヘスティア土下座タイムってことか、まだ余裕はあるな。恐らく2週間くらいかな?

 

「あー、多分それは俺の件とは関係ないかな?あと数日で帰ってくると思うぞ」

 

ヘスティアナイフのことを教える訳にはいかないので適当に誤魔化す。

 

「そうだといいんですけど、神様から数日空けると言われてはいるんですが、少し不安で」

 

「まぁそうだよな…もし心配ならほかの神様にでも聞いたらいいんじゃないか?確か…ヘスティア様とヘファイストス様は仲がいいって聞いたことがあるしな。」

 

これくらいは伝えても問題ないだろう。もしベルがヘファイストス・ファミリアに行ったとしてもヘスティアナイフが渡されるのが早くなるだけだし、アイズとのフラグは…まぁもう既に立ってるし遅かれ早かれ直接喋る機会はできるだろう。

 

「そうなんですか…わかりました。もし帰る様子がなさそうなら聞きに行ってみます。」

 

「そういえば、お前今日はダンジョンには行ってないのか?」

 

ベルは毎日早朝にダンジョンへ行き、夕方に帰る生活をしていたはずだ。怪我は俺のポーションで直したし問題は無いはずなんだが…

 

「あ、はい。レイさんに助けてもらった時に神様から数日ダンジョン探索は行かないようにって言われてまして…一応明日には探索を再開しようかなと」

 

まぁヘスティア様らしいっちゃらしいよな。

こいつは波乱万丈な冒険をするし、そのくらい過保護なくらいがいいだろう。

 

「あの…」

 

ベルが俺の目を見て話しかけてくる。どうやら真剣な話のようだ。俺も真剣な顔をして、ベルの言葉を待つ。

 

「レイさんさえ良ければでいいんですが、僕に戦い方を教えてくれませんか?」

 

「俺に?」

 

なんで俺なんだ?フラグがズレてアイズと俺の師匠ポジがズレた?いやそもそもベルが戦い方を学ぶのはまだ先のはず…

 

「リューさんから聞きました。レイさんは僕よりLvが上だって」

 

あ〜、リューさんが…恐らくミノタウロスやキメラを倒したことをリュー

さんは魔石やドロップアイテムで知ったのだろう。だが…うーんこれは…

 

「僕は強くならなきゃいけないんです。どうしても追いつきたい人がいるんです!」

 

少し悩んでいるとベルがさらに言葉をかけてくる。

真剣な目で俺を見続けている。

 

「分かった。でも条件がある。」

 

その目に観念して俺は稽古をつけてやることを承諾する。しかし条件は必要だ。時系列はなるべくずらさないように…このくらいか

 

「教えるのは2週間、それ以上は無理だ。」

 

俺が食料庫(パントリー)行くまで、ベルがアイズと会う日までの期間は恐らく2〜3週間くらいだろう。

 

「それに先に言っておくが俺にはお前に伝えられることはない。俺はLv3だが、Lv3になったのは最近だし、このオラリオにも最近来たばかりだ。俺にお前に教えられるほどの技と駆け引きはない。」

 

「だからとにかく実戦を行う。そこでお前自身で何かしら掴んでもらうしかない。」

 

ベルには実戦経験が足りない。原作がいくら進もうとそれは変わらない。

だからそれを補強出来ればいいだろう。

 

「それでもいいなら引き受けよう」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

「よし、じゃあ今からやってみるか」

 

「え!今からですか!?」

 

「おう。怪我は治ってるだろ?なら早い方がいい。」

 

「わ、分かりました。すぐ準備します!それでどこで訓練を?」

 

準備しているベルを待ちながら、場所を考える。まぁあそこしかないよな。

 

「ダンジョン」

 

「え?」

 

「ほらほら、早く行くぞー!」

 

「ええ!は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第27話 理論

最近UAの伸びがすごい。
普段の3倍くらい伸びるんですよね。
アニメ効果かな?


ーーーーーダンジョン5階層

 

「さてと、やりますか。」

 

「よろしくお願いします。」

 

「とりあえず…」

 

六番(短剣)×2」

 

「俺との訓練はそれを使いな、今の武器が壊れても困るだろうし」

 

 

「わ、分かりました。えっとレイさんのそれもスキルの一種なんですか?」

 

 

「うーん、まぁそうだな。そういえばベルはスキルがまだないんだよな?」

 

 

「は、はい。」

 

「まぁ基本的にすぐでるものじゃないから焦らなくていいものではあるな、第一級、第二級冒険者は2〜3つくらい持ってる人が多いイメージだな。」

 

「そうなんですか…」

 

「だがスキルや魔法よりも重要なものもあるぞ?」

 

「え?」

 

「そもそもスキル、魔法の2つはその人の内面的なものが大きく影響する。俺であれば闇の権能というスキルがある。これは俺の好きな形の闇の物質を生み出すスキルだ。俺はこれで剣を作ったりしている。これを作り様々な武器で戦いつつ、雷の付与魔法(エンチャント)である《サンダー・ボルト》を使い火力を上げて戦う。」

 

「要は【様々な武器、戦い方×雷魔法による火力の底上げ】これが俺の戦闘スタイル」

 

剣姫アイズ・ヴァレンシュタインなら

【卓越した剣技×風の付与属性(エンチャント)

 

同じロキ・ファミリアの九魔姫(ナイン・ヘル)リヴェリア・リヨス・アールヴなら

【高火力、高機動の移動砲台×9つの選択肢(魔法)

 

「この3人の共通点がわかるか?」

 

「魔法を戦闘スタイルに組み込んでいることですか?」

 

「ああ、大事なのは組み込んでいるってことだ。こいつらの強みはあくまでも魔法だろう。だがそれを生かすためのしっかりとしたステイタス、それはどんな戦い方でも重要だ。俺や剣姫なら力、敏捷。九魔姫(ナイン・ヘル)なら魔力」

 

「高いステイタスがあるから強みを発揮できる。」

 

 

「そして魔法を主軸にしていない強い奴らもいる。」

 

ロキ・ファミリアの重傑(エルガルム)ガレス・ランドロックなら

 

【オラリオで屈指を争う力、耐久×それをさらに上げるスキル】

 

 

フレイヤ・ファミリアの猛者オッタルなら

 

【オラリオトップを誇るステイタス×獣化のスキル、経験に基づく絶対防御】

 

 

「こういうヤツらがスキルや技術を主軸とした戦い方をする連中だ。」

 

 

「こいつらの場合もスキルや技術の土台としてステイタスがしっかりしているから強いんだ。」

 

 

「つまり…レイさんが言いたいのはスキルや魔法を生かすためにはしっかりとステイタスが重要だと…?」

 

 

「そう、そういうこと。強い魔法、スキルももちろん大事だがそれをどう活かすかが重要ってこと。」

 

 

「それに関係するのが技と駆け引き、そしてステイタスって訳だ。だから今はとにかくステイタスを上げておけ、魔法やスキルに目覚めた時、それを活かす土壌を作っておけ。」

 

そもそもこのダンまちの世界における、強さの指標として最も正確なのはステイタスを参考とすることだろう。潜在値や魔法、スキル等の不確定要素はあるがそれでも絶対的な基準となることは間違いないだろう。

 

 「はい、わかりました。」

 

「よし、まぁしっかりと詳しいことはエイナさんに聞けば問題ないよ、知識をつけるならあの人以上はそういないし」

 

 

「は、はい…」

 

 

「よし、じゃあ行くぞ」

 

そうして3時間ほど俺とベルは打ち合った。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「おーい、ベル大丈夫か?」

 

「は、はい何とか」

 

打ち合いを終えたベルと俺はダンジョンから帰還、そのままヘスティア・ファミリアのホームへとベルに肩を貸しながら歩いている

 

打ち合い中、俺はlv1のステイタスまで《大賢者》を使って低下させたが、1000体以上のモンスターを倒した俺の実戦経験のある俺のほうがまだ分があるようだ。とはいえ…

 

「俺とあれだけ打ち合えれば今は十分だろう」

 

「は、はいありがとうございます。」

 

「明日はもうちょいペースを上げるからそのつもりで。」

 

「ははは、わかりました。」

 

ベルを送り届けた後、俺も宿へと戻り自分の部屋の寝台に寝転がる。

さてとやりますか、

 

「大賢者、やれ」

 

その言葉と同時に俺の意識はなくなり視界が暗闇に染まる。

 

数秒後、目を開けると俺は白い世界にいた。

見渡す限りの白い地平線、周りには何も…いや一人の人形がいた。

顔はなく、俺と同じくらいの人形というよりマネキンに近いそこにはいた。

 

「大賢者、対象【アイズ・ヴァレンシュタイン】を再現」

 

 

俺の言葉に大賢者が反応したと同時に目の前のマネキンが形を変え、アイズ・ヴァレンシュタインへと変化していく。

 

頭からは金色の髪が、顔は目鼻立ちの整った顔に、体は女性らしく変化していく。

 

ベルが見たら喜びそうだな。

ふとそんなことを思ったが、この世界は大賢者に作らせた精神世界、俺以外の誰も入っては来られない。

 

時間が限られた中、修行と休息を平行して進めるための方法それがこの世界だ。

ここなら俺の知る実力者を大賢者に再現させ、好きなだけ打ち合うことができる。

 

「大賢者、タイマーを朝6時に設定」

 

 

「さぁ、いくぞ!!剣姫!」

 

その言葉と同時に俺は全力で突っ込む

それに合わせるようにマネキン…剣姫も剣を構えながら走ってくる。

 

「まずは…」

 

一番()

 

剣を作成し剣姫に向かって振り抜く。

 

それを剣姫が軽く受け止め…つつ捌き、顔目掛けてデスぺレートを刺突する。

 

どうにかかわそうと顔を曲げた瞬間、意識が飛ぶ。

 

いきなり視界が飛び、周りをよく見るとすぐそばに俺の胴体が…

 

(主死亡、即蘇生。)

 

「は!」

 

意識が飛んで…まさか死んでた?あの一瞬で?

 

 

「大賢者、俺は何をされた?」

 

(剣姫の攻撃を避けた瞬間、剣姫が攻撃方法を変更。首を切られました。)

 

「はぁー?」

 

俺が攻撃を避けた瞬間に、それを見て俺の反応できない速度に切り替えて首を切ったってことか?どんな反応速度だよマジで…

 

オラリオの第1級冒険者とそれいがいでは雲泥の差がある。

Lv1でも違えば相手にもならない。

俺はその差をスキルや魔法で埋めてどうにか戦ってきた。

でもこの精神世界ではそれを使うことは出来ない。いや使うこと自体はできるがそれに制限をかけていると言っていい。

これから先、呪詛(カース)を使う相手や己の力のみで戦わなくては行けない相手が現れるかもしれない。

だから、最低限大賢者無しでも戦うことの出来る技と駆け引き…

魔法を使うことがない戦闘スタイルを磨く必要がある。

だからこの精神世界では制限をかけてやるつもりだったんだが…

 

「大賢者、次の一戦のみ制限解除」

 

(了)

 

この1戦だけは制限なしでやってみよう。

今の俺の全力と剣姫がどれほどの差があるのか確かめるのに、絶好の場所だ。

 

「《纏》《サンダー・ボルト》」

 

闇の権能を体に纏わせ、その上に雷を纏う。

この状態での活動限界は約10分。

だが剣姫相手に10分も戦えるわけもない。

 

「だから!最初から全力で行くぞ!剣姫!」

 

全力の加速。先程とは比べものにもならない速度で剣姫へと突っ込む。

闇の権能を背中に集約、バグ線の時のように腰に触手を4本生やし、手には剣を作成。

 

その全てに雷を宿す。

 

現状の最高威力を剣姫へと打ち込む。

剣姫はそれを余裕で受け流すと、剣をレイピアのように刺突してくる。

先程のような一撃ではない、相手を崩すための何十、何百もの連撃を打ち込んでくる。

それを《大賢者》にてあげた反応速度、触手、剣を使いどうにかして防ぐ。

どうにかして作った隙を見て剣のみに雷を集約。

必殺の一撃を打ち込む

 

雷鳴(ブロンテス)!!」

 

剣に集約させていた雷を一気に剣姫へと降り注がせる。

 

はいった!そう確信するが、剣姫は上へと跳躍、俺の一撃を回避する。

 

「はぁ!?」

 

嘘だろ!クッソ!触手で少しでも動きを阻害すべきだった。

 

圧倒的な戦闘経験不足。ベルと同様自分にもそれがあることを改めて実感する。だが…

 

「剣姫もシャクティさんも避けたってことは当たったらまずいってことだよなぁ!!」

 

自分の必殺技、雷鳴(ブロンテス)の威力を改めて実感する。

俺の技は通じる。ならそれを高めて届かせてやる!

 

「続けるぞ剣姫!俺の糧になりやがれ!!」

 

戦闘での興奮。それによって変化した荒々しい口調と共に剣姫に全力で挑む。それを見て剣姫が…《大賢者》に作られた人形の剣姫が微かに笑ったように見えた。

 

 

 

 




読んでくれてありがとうございます!
感想や評価をいただけると作者が暴れ回りながら喜びます。


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第28話 成果

原作ストーリー端折っちゃいました!


それから2週間

俺とベルとの特訓生活が開始した。

 

精神世界での訓練を早朝まで行い、ベルと5階層で合流。

その後夕方になるまでひたすら実戦形式の打ち合いを行った。

最初はベルのステイタスを《神の偽能》を用いて盗み見て、《大賢者》で俺のステイタスを制限をかけて戦っていたが、どんどん成長していくベルに押され一日に2、3回負けそうになり、ステイタス制限を解除することをしてしまった。

まぁベルには悪いが俺を上に考えて貰わないとこれから先ベルにとっての冒険者の先輩という立場が崩れてしまう可能性もあるので負ける訳にはいかないのだ。

決して俺のプライド的な意味ではない。

うん絶対ない。

 

 

訓練から数日後の怪物祭(モンスター・フィリア)

この日はベルに一日ダンジョンには入るな。休暇はまじで大事だぞ^^

とでもいいベルとヘスティア・ナイフの出会いのイベントをしっかり踏ませた。

 

一応命の危険があれば助けようと思い、ベル達をつけていたが俺の危惧するような危険はなく、原作通りシルバー・バックを倒し、ベルとヘスティアの物語のスタートを見ることが出来た。

てかあの時結構な数のフレイヤ・ファミリアのことを確認した。

おそらく奴らのせいで、シルバー・バック討伐が遅れたのもあるだろうなとその時理解した。

俺もつけているのが、バレていないかめちゃくちゃヒヤヒヤしながら見ていた。

今はなるべく目をつけられたくないんだよな特にフレイヤには…

 

今襲われたら一溜りもないし、せめて抵抗できる戦力が用意できるまで気をつけなければ…

まぁその日は原作通りの道筋を進むことが出来たので大成功と言えるだろう。

踏まなければいけない原作イベントを踏ませつつ、ベルの成長を促すか…我ながら忙しい目標だな〜と改めて感じた。

 

 

俺との打ち合いでベルは確実に力を増していた。

魔導書(グリモア)によってファイヤ・ボルトも習得!

順調に成長していくベル。

俺も俺で精神世界での訓練、それを実践で試せる場所があることで確実に力をつけることが出来た。

 

1週間ほど経った時だろうか?ベルからサポーターを紹介したいと言われた。

これはと思ったので承諾。

後日会ってみると皆さんご存知のリリルカ・アーデだった。

それを確認した俺は訓練を一旦中止、探索で実践を積むという名目でダンジョン探索へと方針を切替える。

 

基本的には俺は手を出さず、後ろから見ているのみ、しかし駆け出しのLv1とは思えない速度でベルはダンジョンを攻略し、1日に1層のペースで進み11階層まで攻略することが出来ていた。

リリルカが驚いた顔をよく覚えている。

 

頃合を見計らい、俺は用事が出来てしまったと言いベルとリリルカを二人きりでダンジョンへ送り出した。

その前日にソーマ・ファミリアのリリルカを脅していた男をみつけ、リリルカが冒険者を騙そうとしているという情報を流した上で…

 

ひどいことをした自覚はあるが、ベルに救ってもらわなければリリルカはソーマ・ファミリアに結局殺されていただろうし、仕方ない事だと思うしかないだろう。もちろんいつかはリリルカに謝るべきではあるんだろうな。

ベルとリリルカを二人きりにした後、後ろで潜伏しながら様子を見て、案の定10層でベルがリリルカにヘスティア・ナイフを盗まれてしまった現場を確認。

ベルがオークに苦戦し、リリルカを追いかけられずにいたので、顔を隠しながらベルの助けに入る。

 

「す、すいません!」

 

そう言いながらベルが空いた空間に割り込み、離脱していく

残りのモンスターを切り飛ばし少し考えた。

 

あれ?これアイズ・ヴァレンシュタインの役割じゃね?と…

 

…やばいこのイベントが無くなるのはやばい。アイズとの訓練が無くなるのは非常にまずい…

 

 

はぁーーー、まぁ仕方ない事だと思っておこう!後で埋め合わせすればどうにか戻せるはずだ。どうせアイズとは24階層の食料庫(パントリー)で会うし!うんその時どうにかすればいいや!

 

 

 

 

 

次の日。

リリルカが神妙な顔で、ベルがそのリリルカを心配そうに見る顔で会いに来た。

様子を見ていると

急にリリルカは俺に謝罪をしてきた。

 

「今まで騙していて申し訳ありません。リリはベル様とレイ様に盗みを働く気でいました。」

 

あー、俺も標的だったのね…

でしっかりとケジメをつけるため俺にも謝罪をってことかな?まぁ許す以外選択肢ないだろ。俺なんの被害もあってないし、今回の事件の首謀者だしね?むしろ俺が謝罪すべきだし

 

リリルカの精神的な介錯はヘスティア様がやってくれたはずだし、俺がするべきじゃないだろう。そう思い俺もリリルカの謝罪を受け、むしろ気づけず済まないとベルに謝罪を入れた。

 

「そ、そんな!僕が雇ったサポーターですし、レイさんは悪くないです!」

 

さすが底抜けの善人。俺のせいとは毛ほども思ってないようだった。

騙す側からしたら最高のカモなんだろうな。ベルって…

 

まぁそれはそれとして1、2巻でのベルの成長イベントはしっかり踏めたのでよしとしよう。

あとはアイズ・ヴァレンシュタインとの訓練発生イベントだけだが…

まぁこれは俺がどうにかできるだろう宛はある。

 

さて感のいい方ならお気づきだろうがベルがリリルカを助ける話は実は原作通りならあと数日後ということを気づいているだろう。

 

怪物祭(モンスター・フィリア)魔導書(グリモア)を貰うイベントはほとんど正規の時間通りだったが、本来ならリリルカを助けるイベントとアイズがベルの成長を認識するイベントは同じくらいのはずだった。しかし俺という存在のせいでベルがリリルカを助ける日取りが3日ほどズレてしまったのだ。そのためアイズはまだ深層で探索中。ベルと会うことは無くなってしまった。

まぁこれはしょうがない。ズレるのは覚悟していた事だし。そのためにウラノスと愚者(フェルズ)との協力関係を結んでズレがあってもイベントを知ることができるようにしていたわけだしな。

 

そして2週間が経過した日。

 

「発見したぞ。レイ」

 

眼晶(オルクス)から連絡が来た。

深夜の連絡のため訓練をしていた精神世界から離脱。現実世界での肉体に戻る。

寝台から体を起こしながら眼晶(オルクス)を手に取る。

 

「本当か?愚者(フェルズ)

 

「ああ、君の言う通り24階層でモンスターの大量発生が起きた。原因のある食料庫(パントリー)もか確認済みだ。」

 

「了解。じゃあ俺はそこに向かう」

 

今回、俺がギルドに提供した情報は

 

1,怪物祭(モンスター・フィリア)でモンスターが脱走する、そこに食人花(ヴィオラス)が出現すること

 

2,24階層でモンスターの大量発生が起きる。原因は食料庫(パントリー)が敵に苗床として利用されているため。

 

この2つの情報を渡した。そして…

 

この2つの情報の整合性が取れた場合、レイの単独潜入を認めること。

 

これを条件として情報を提供した。

 

「情報は整合性が取れた。君の言う通り単独潜入は認める。だが本当にいいのか?」

 

「何が?」

 

愚者(フェルズ)の質問の意図を理解した上であえて聞き返す。

 

「君はLv3なのだろう?君の話では護衛として食料庫(パントリー)にはLv6並の敵が二人いるとも言っていた。はっきり言って危険すぎる。」

 

「だからこそだ、今回の事態を一番知っている俺が一番危険なことをする。それが俺にできる最大限のお前らへの誠意だ。」

 

「しかし「それに、お前が援軍を呼ぶ手筈だろう」

 

愚者(フェルズ)には俺が潜入している間に剣姫、ヘルメス・ファミリアを呼ぶことをお願いしてある。

これで原作のメンツ+俺を作ることができる。

原作よりも多少有利に事を進められるはずだ。

 

「そして…愚者(フェルズ)。俺の強みは成長速度って言ったよな?」

 

その発言を聞いて愚者(フェルズ)の問答が止まる。

 

「見せてやるよ、その成長速度を」

 

「わかった、そこまで言うなら止める墓はやめよう。頼まれていた魔道具(マジックアイテム)に関してはダンジョン内で渡す。」

 

「了解、それじゃダンジョンで」

 

その一言とともに眼晶(オルクス)の通信を切る。

 

「さてと、行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回思いっきって原作の1.2巻のストーリーを端折りました。
理由としては正直関与すべき点が見つけられなかったからというのがいちばん大きいです。
力不足で申し訳ない。


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第29話 潜入

テスト終わったー自由だー


加速。加速。加速し続ける。

 

ここはダンジョン21階層

 

《大樹の迷宮》

 

「ふっ!!」

 

銀色の長剣を使い、モンスターの急所を的確に切り裂いていく。

 

(止まるな、止まるな。次の動作を意識しろ。)

 

頭の中では多岐に渡る思考を並列に考えその中で一番良い選択肢を取り続ける。

それにより、疾走を続けながら、モンスターを狩り続ける事が出来ていた。

 

(俺の思考はまだ甘かった)

 

精神世界での訓練。約100時間もの時間を経てレイの思考は以前とは全く別のものになっていた。

 

ベルに対して言ったこと「どんなスキル、魔法にしてもそれ活かすためには基本的なステイタス、技と駆け引きが重要」これを俺は実践できているか?

 

今までの俺は魔法やスキルに頼りすぎていたのではないか?

 

そう考えたあとの行動は早かった。

 

まず、ヘファイストス・ファミリアのテナントに向かい、前回買いに行った時とは違い、上級鍛冶師(ハイ・スミス)のテナントで剣を購入した。

 

背中に備えた剣の名は【インペリアル】

 

素材は魔力の伝導率が高い精錬金属(ミスリル)

 

切れ味、耐久性共に今まで使っていた武器や《闇の権能》を用いた武器とも一線を画する剣、第二等級武装。値段は1000万ヴァリス…

 

ちなみに金に関しては愚者(フェルズ)のポケットマネーから買ってもらった。もちろん返すよ、うん。絶対絶対

 

基本はこの剣をベースに戦う。

そのうえで状況を見て魔法やスキルを使う。

それを意識して訓練を行った。

そのおかげで片手剣の扱いに関してはLv3の冒険者と遜色ないはずだ。

 

(次に《サンダー・ボルト》)

 

目の前にバク・ベアーの群れが見える。

ちょうどいい、試しだ。

魔法は使わなければいい訳では無い。

然るべき時、然るべき使い方をするのが正解。今は時間が無い、使うべき時だろう。

 

「《サンダー・ボルト》」

 

Lv1の時点では何度か使うと精神力(マインド)をごっそり持っていかれほとんど使いきれずにいた。

Lv2、3でようやく付与魔法(エンチャント)として武器に付与することが出来た。

しかし精神力(マインド)の消費量は変わらず、多用は避けてきた。

 

おかしいと思わないか?同じ付与魔法(エンチャント)でもアイズ・ヴァレンシュタインのエアリエルなら?

 

アリーゼ・ローヴェルのアガリス・アルヴェシンズなら?

 

作中で知っているキャラで付与魔法(エンチャント)を使うキャラたちは

戦闘開始と同時に使い、最後まで維持できる精神力(マインド)があった。ならどうして俺の《サンダー・ボルト》は維持できない?

 

精神世界での訓練中、剣姫のエアリエルを見て気づいた。

俺の魔法(サンダー・ボルト)、その特徴は範囲

Lv3の現在その射程は30Mある。

この有効射程は付与魔法(エンチャント)としては破格もいい所だろう。

俺が発射できると考えていた《サンダー・ボルト》は発射できたわけじゃない。単純に広範囲なだけということだ。

だからこそ精神力(マインド)の消費も大きくなる。

 

つまり…

 

「これを活かすなら、こういう使い方だろ!!」

 

バグ・ベアーにインペリアルを振り抜く。

それと同時に《サンダー・ボルト》の範囲拡大。

攻撃射程を延長。後ろにいたバグ・ベアーまで焼き切る。

振り抜く時のみ火力と範囲を上げてなるべく精神力(マインド)の消費を抑える。

当たり前に思いつくことだが、それを迅速にやることで精神力(マインド)の消費を抑える。

 

そして最後に《闇の権能》

 

これに関してはそこまで変わらない。

ただ武具を予め決めておくことはやめた。あれの利点は形を決めておくことで早く武器を用意できる点だが、その分自由度が下がる。それなら全ての武器を素早く作れるようにすればいい。

100時間の訓練でそれも可能にした。

 

さてと…なるべく早く、食料庫(パントリー)まで行かなければ…

 

魔石を回収し、移動を再開する。

 

 

 

ーー24階層ーー

 

「あれが入口か…」

 

訓練の成果か

想像よりも食料庫(パントリー)まで来ることが出来た。

食料庫(パントリー)入口には原作あったような入口を塞ぐ肉壁は無い。

今なら入れるが…どうするーん?

あれは…闇派閥(イヴィルス)の連中か?ちょうどいいアイツらと一緒に入れば疑われることは無いだろ。

 

方針を決め、奴らに話しかけに行く。

今の俺は以前ベルを襲った闇派閥(イヴィルス)の白装束を着ている。

傍目から見ても闇派閥(イヴィルス)の連中に見えるだろう。

 

「お、おいあんたら!」

 

「あ?なんだ貴様何処のものだ?」

 

「済まない、かなり前にここを出た者なんだが、一緒にいた連中がモンスターにやられちまいやがった。ついて行ってもいいか?」

 

リーダーらしき男が俺をじろりと見てくる。

疑われている?他に出た部隊はいなかった?

いやここは賭けるべき場面のはず…

 

「そうか…わかった一緒に来い。」

 

「ああ、悪いな」

 

よし、なんとか疑われずに潜り込めそうだな。

そのまま、後ろについていく。

 

しばらく歩いていき、大きな広間にきた。

 

「ここまででいいだろう」

 

「ああ、ありがとう」

 

ここまでつれてきてもらった礼をいいつつ、そいつらと別れる。

 

(さてさて、ヘルメス・ファミリアが来るまで情報収集だな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




文章量少なくて、すいません。
次回はもう少し書くつもりです。


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第30話 伝令神の派閥

前回少なかったので早めに投稿です。


食料庫(パントリー)に潜入して行ったことそれは情報収集だ。

ヘルメス・ファミリアが来るのが、いつになるかわからないがそう時間があるわけじゃない。 

少しでも闇派閥(イヴィルス)の情報、特に戦力的に変化がある場所がないか探さなければ。

しかし情報収集って言っても書類があるわけでもなく、かっちりと組織ってわけでもないからな…

今のところ集められる情報って言っても闇派閥(イヴィルス)に所属している奴らのステイタスの収集、闇派閥(イヴィルス)と繋がりのある派閥、商人のチェックくらいだろう。

 

はー頑張りますか!愚者(フェルズ)がヘルメス・ファミリアを連れてきてくれるまで。

 

 

 

 

 

 

ーダンジョン10階層ー

 

「…貴方は、誰?」

 

「なに、しがない魔術師(メイジ)さ。…以前ルルネ・ルーイに接触した人物、言えばわかってもらえるだろうか?」

 

剣を構える剣姫と黒衣の魔術師が対峙していた。

 

ルルネが証言していた依頼人(クライアント)と情報が一致していたためアイズは剣を下げる。

 

「…私に、何か?」

 

「アイズ・ヴァレンシュタイン。先に確認しておきたいのだが、君はLv6に至ったか?」

 

その質問にアイズは驚く。

自分がLv6に至ったことはまだギルドに報告していない、知っているのもロキや派閥(ファミリア)のみんなだけ…

 

どうしてそのことを、この人物は知っているの?

でも隠しておくべきことでもない…

教えても問題は、多分ない。

 

 

「はい。Lv6になりました」

 

「そうか、それならば、この先の話ができる。」

 

愚者(フェルズ)は今回レイからある条件を言われていた。

それはアイズ・ヴァレンシュタインがLv6になっていることの確認。

この条件を満たしていなければアイズではなくリヴェリア、ガレス辺りを連れてくるようにとも言われていた。

要は確実にLv6以上の戦力が必要。そう念押しされていた。

 

 

「アイズ・ヴァレンシュタイン…君に冒険者依頼(クエスト)を託したい。」

 

ーーーーーー

 

あいつはLv2、あそこのデカイのは…以外にLv1か。でも呪詛(カース)持ちと…あと厄介そうなのは…特にかな?

 

後は繋がりのある商人さえわかれば目標はほぼ達成なんだけど…

 

まわりの様子を見て《神の偽能》で相手のステイタスを盗み見る、ある程度情報が集まったので後方に下がり、荷物を漁りどこの商品かを特定しようとしていた。

 

(荷物の種類、内容である程度絞り込めるといいんだけど…そう簡単にはいかないか…)

 

当然ながらか、証文などもなくとくていは難しいだろうなと考えていた。

 

「おい、お前」

 

「は、はい!」

 

調べるのに夢中で、背後の警戒が疎かになっていた。まずいな。

 

「何をしている?」

 

「えーっと」

 

どうする?誤魔化すにしてもどう誤魔化せば…

 

「まぁいい、ここに侵入者が来る可能性があるらしい、早く配置につけ」

 

どうやら追求されないらしい。焦っている?

 

「侵入者?どこの所属のファミリアはわかっているんですか?」

 

これは重要。ヘルメス・ファミリアの派閥以外なら…悪いが助けずに放っておくのも考えなくちゃならないが…

 

「んあ?確か…ヘルメスッ!?」

 

「そうですか、ありがと」

 

その言葉と共に男の首を絞め落として気絶させる。

 

よし、来ているのはヘルメス・ファミリアで確定。

とりあえず1人戦力を削ぐ。

 

「お、おい!お前?何をしている!?」

 

(まだ居たか、でもまぁ1人くらいなら)

 

瞬時に距離を詰め、首に衝撃を与える。

予想通り、男は気絶する。

 

「なるべく殺しはしない。」

 

これは俺が俺に課したひとつの制約。

 

【ベル・クラネルはお人好しだ】

 

これはベルに会った人間、見た人間。全てが思うことだろう。

あいつは天性のお人好し。

荒くれ者の冒険者には似合わない人間性をしている。

だからこそ、あいつの仲間になりたいやつが人殺しを許容してもいいのか?仕方ない時はそれはある。

だがあくまで殺しを許容すべきではない。

ベルと喋り過ごした中で俺はそう感じた。

だから殺しは極力避ける。殺したいわけじゃないしな。

 

「さて、表に出るか」

 

荷物を集めていたルームから出て食料庫(パントリー)に戻る。

 

「早く集まれ貴様ら!冒険者共が来るぞ!」

 

「なぜ、侵入を許した!?」

 

戻った食料庫(パントリー)では闇派閥(イヴィルス)が騒がしく動いていた。もうすぐ来るらしいな。

 

食人花(ヴィオラス)だけではあの侵入者共に歯が立たん。しかし剣姫は分断した」

 

その声を発したのは白髪の男。

他のものとは違い、白装束を着ずに上裸。そしてモンスターの頭の骨を被っている。間違いないこいつが白髪鬼(ヴェンデッタ)オリヴァス・アクトか…

 

「仕事をしろ、闇派閥(イヴィルス)。【彼女】を守る礎となれ」

 

その言葉と共に、白装束の男たちは白刃を構える。

 

食料庫(パントリー)の入口から冒険者が見えた。

空色の髪…アスフィで間違いないな。となると…ヘルメス・ファミリア側での戦力低下はなし。俺の動きは変えずにいいな。

 

だが…予想よりロキ・ファミリアの援軍(ベートとレフィーヤ)が遅い。まだ着くのには時間がかかるか…

 

酒場での1件以降、あの場にいた全てのロキ・ファミリアにはマーカーをつけて位置がわかるようにしてある。地図(マップ)を見るに着くのは想定より遅い。

 

「侵入者共を生きて帰すなぁ!!!」

 

教祖の怒号が飛ぶ。その声を呼応し白装束の男たちはヘルメス・ファミリアに向かっていく。

周りの壁からは食人花(ヴィオラス)がどんどん湧き出てくる。

 

(わぉー、地獄絵図だな、こりゃあ)

 

とりあえず…白装束共が走り出した瞬間。後方にいたレイは最前線の1歩手前まで行く。

 

ヘルメス・ファミリアにはバレない位置取り、しかし闇派閥(イヴィルス)の連中にも俺が裏切っているとは分からないようギリギリの距離を維持する。

 

《闇の権能》にてナイフを作成。色は白へと変えておく。

 

「殺せぇ!!!!」

 

怒号とともに進む白装束へナイフを滑り込ませる。

斬るべき箇所は腕又は足、動きを鈍らせる。

とにかくヘルメス・ファミリアに向かう戦力を少しでも減らす。

 

それと…

《闇の権能》で姿を元に戻す。

白装束も覆い、普段の服装に近い姿に戻す。

 

その姿で最前線へ。後ろから白装束の男…Lv2の男を頭を地面へとたたき落とす。

 

「なっ!」

 

驚くエルフの男。確か名前は…忘れたな。まぁいいや。

 

「き、貴様ァァ!!」

 

たたき落とした男は服の中に仕込んだ爆薬を起動。

自滅する。

 

(狙い通り。)

 

爆発が起きる瞬間、瞬時に後退。

後退しながら、服装と顔を戻す。

 

これで俺の場所はもう分からない。

 

「自爆っっ!!?アスフィ!こいつら死兵だ!」

 

「全員後退!距離を離しながら、戦いなさい!」

 

おっ!いいね。さすがは万能者(ペルセウス)判断が的確だな。

 

さて自爆した男は死んじまったかな…悪いな…ほんとに…

 

「なるべく殺しはしない」

 

この言葉は忘れてない。

 

ただ優先順位は存在する。

ヘルメス・ファミリア>闇派閥(イヴィルス)

 

それだけの事だ、俺は英雄(ベル・クラネル)にはなれない。

あの底抜けの善人にはなれない。だから手段は選ばない。

だが許して欲しい。

あんたの犠牲を必ず次の成功へと生かすから。

 

さて、続けるか…

 

その覚悟とともにナイフをまた創り出す。

 

 

(敵が仲間割れをした?)

 

そんな中、高台で指揮をしていたアスフィはひとり混乱していた。

どういうこと?先程の男。

あれはヘルメス・ファミリアの団員ではなかった。しかし闇派閥(イヴィルス)を攻撃し、自爆させ我々に自爆の存在を知らしめた。

あれがなければ、1人2人は団員がやられていたのかもしれない。

そう思うと冷や汗が出てくる。しかし…

 

食人花(ヴィオラス)

 

白髪鬼(ヴェンデッタ)の声に反応し食人花(ヴィオラス)が向かってくる。

 

「前衛!守りに専念しなさい。中衛、後衛は魔剣、魔法で応戦。白装束の男たちも近づけないように。」

 

いや、今はほっておくべきこと。このままで戦線は崩壊する。

 

(あの、悪趣味な白い男…恐く、調教師(テイマー)あの男を無力化出来れば、生存できる可能性がぐんと上がる。)

 

前線に余裕はない。私が直接やる。

 

アスフィはそのまま加速。

器用に白装束を切りつけながら、白い男に迫る!

 

食人花(ヴィオラス)に大人しくやられていればいいものを…」

 

男は地面から大量の触手を生やし、迎撃をする。

 

「やれ」

 

「くっ!」

 

アスフィはそれを見て緊急回避。どうにか触手を避ける。

 

「いい動きをするな、万能者(ペルセウス)

 

「だが、死ね」

 

回避不可能なタイミングでの触手攻撃がアスフィに迫る。

アスフィは舌打ちと共に靴を撫で、飛翔する。

 

「ほう、やはり空中に飛ぶか。」

 

白い男は予測していたように触手を空中へとはしらせる。

 

(やはり?予測されていた?だが、この状況なら!)

 

アスフィはその触手を全て迎撃、爆炸薬(バースト・オイル)を落下させ、大爆発を起こす。

 

「ちっ!!」

 

男は触手を盾にし、爆発をどうにか回避。だがそれにはどうしても隙が生まれる。

 

「もらいました。」

 

アスフィはその隙を逃がさない。背後に飛翔、その加速を乗せた短剣の一突をくりだす。

 

 

だが

 

「なっ…!」

 

短剣を素手で掴まれ、止められる。

 

「ぬんっ!」

 

短剣を掴まれたまま、アスフィの腹に拳が叩き込まれる。

直後。グシャリ、と

アスフィの胴体から、おぞましい音が鳴る。

 

 

「アスフィ!?」

 

その様子を遠方で見ていたルルネの悲鳴が響く。

 

「冒険者のしぶとさは昔から知っている。もう甘さなど見せぬ。確実に息の根を止めてやろう。」

 

アスフィへと拳が届こうとする。

 

ヘルメス・ファミリアの誰もが助けようと行動する。しかし誰も届かない。

 

そう彼以外は。

 

拳が届くその瞬間、雷鳴が轟き、白髪鬼(ヴェンデッタ)へと雷を纏った蹴りが繰り出される。

 

「くそ、予定外だ。」

 

雷を纏った青年は助け出したアスフィを抱き抱えながら、エリクサーをかける。

 

「誰だ!?お前は?」

 

いきなりの邪魔者に白髪鬼(ヴェンデッタ)は怒りながら、蹴りを繰り出した青年に問う。

 

「俺はレイ。お前の相手をしに来た者だ。覚悟しとけクソ白髪野郎。」

 

その問いにレイは真っ向から答えた。

 

 

 

 

 

 




なるべく早く更新するとは言ったから頑張ったけど、結局結構時間かかっちゃった(ノ≧ڡ≦)☆


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第31話 VS白髪鬼(ヴェンデッタ)

うん、頑張った


おいおい、不味くないか?

場面はアスフィが白髪鬼(ヴェンデッタ)に特攻をしかけている最中レイはひとり焦っていた。

本当ならもうすぐロキ・ファミリアの援軍(ベートとレフィーヤ)が来るはず、しかし今奴らの位置を検索しても24階層に入ってきたばかり、このままでは間に合わない位置にいる。

 

アスフィが短剣を掴まれ、拳を腹に貰う。

 

これは…本気でまずいかもな、そもそもの地力が違いすぎる。

本来ならここでベートが白髪鬼(ヴェンデッタ)を、レフィーヤー、フィルビィスが食人花(ヴィオラス)の相手をするはずだった。

だが…このままじゃどっちも…

 

てか迷ってる場合じゃねぇな!

考えるのを捨て、後退しルームの端まで来る。

そのまま壁に足をつけ

 

「《サンダー・ボルト》」

 

雷を全身に纏う。精神力(マインド)の節約など考えない。

そんな余裕をもってる場合じゃない。

全身に纏った雷を足に集約。壁を蹴り、全力の突撃を行う。

雷鳴をまといながら、凄まじい速度で戦場の空中を横断。

 

そのまま白髪鬼(ヴェンデッタ)を蹴り飛ばす。

 

「なっ!?」

 

いきなりの特攻に攻撃がないと考えていた白髪鬼(ヴェンデッタ)が隙を見せる。

 

その隙をついてアスフィを回収。

そのまま愚者(フェルズ)から貰った2本のエリクサーの内の1本をかける。

 

「誰だ!?お前は?」

 

いきなりの邪魔に白髪鬼(ヴェンデッタ)戸惑いながら問う。

 

「俺はレイ。お前の相手をしに来た者だ。覚悟しとけクソ白髪野郎。」

 

 

うーん、カッコつけたのはいいが、このままじゃ俺死ぬぞ。とりあえず…

 

「【纏】」

 

額に手を当てながら、自らを強化する呪文を唱える。

 

瞬時に白へと変わる髪色、明らかに変わった雰囲気に白髪鬼(ヴェンデッタ)はさらに驚くが、殺すべき敵と瞬時に判断、拳を叩き込もうと振りかぶる。しかしそれは予想通り。

 

「なっ!?」

 

地面から予め伸ばした《闇の権能》を起動。白髪鬼(ヴェンデッタ)の動きを阻害する。

 

「この程度で!」

 

それはすぐに破られる。だがこの少しの時間が欲しかった。

 

背中に携えた《インペリアル》を引き抜き、足に集約にしておいた雷を《インペリアル》へと移し替える。

 

攻撃が届く前に雷を集約した剣を一気に振り抜く。

 

雷鳴(ブロンテス)

 

凄まじい轟音とともに雷が白髪鬼(ヴェンデッタ)に降り注ぐ。

 

 

(これで倒れないなら俺に倒す手段はないが…)

 

 

「ふふふ、そんなもの効かんぞ!?」

 

立ち上がった土煙が晴れるとそこにはほとんど無傷の白髪鬼(ヴェンデッタ)がいた。

 

「諦めて俺に…は?どこだ!?」

 

つき煙があるうちに移動したレイ

まだ目の覚めないアスフィをルルネに預けてに行っていた。

 

「よっと!おい、泥犬(マドル)こいつのこと頼む。」

 

いきなりのことで驚きながら、アスフィを受け取る。

 

「へ!?あ、ああわかった。」

 

「おい?あんたは誰なんだ?」

 

ファルガーは謎の人物であるレイの正体を問い詰めようとする。

 

「それ今必要か?ここを生き残ったあとでいいだろ。」

 

答えてもいいが、今は時間が惜しい。早くロキ・ファミリアの援軍(レフィーヤ、ベート)が来る時間を稼がないと

 

「そ、そうだな」

 

「あいつは俺が相手をする。他を頼むぞ?」

 

俺は白髪鬼(ヴェンデッタ)を見ながら、ファルガー達に頼んでおく。

 

「わかった!」

 

ルルネ達の返事を確認し、白髪鬼(ヴェンデッタ)に向かおうとする。

とその前に…白装束は全員焼いとくか。

 

「《サンダー・ボルト》」

 

雷を腕に集約。轟雷をそのまま天井に向けて放射。

雷を周りに降り注がせる。

雷は白装束と食人花《ヴィオラス》を貫く。

 

白妖の魔杖(ヒルド・スレイブ)?」

 

そんな声が後ろから聞こえてきた。

 

(そんな正確でもないし火力も足りてない。)

 

その言葉に内心で答える。

俺の魔法は付与魔法(エンチャント)。射程距離が明らかに違いすぎる。

まぁLv6になれば火力のみは再現可能かもしれないが、あの正確性と射程は再現できないだろうな。

 

「じゃああとよろしく。」

 

その言葉を残し、跳躍。

白髪鬼(ヴェンデッタ)の元まで戻る。

 

「さて、あんたの相手は俺だ。」

 

【纏】を解除する。

 

「ふっ、さっさとかかってこい。貴様程度、数瞬で沈めてやろう」

 

「いや?たっぷり時間をかけさせてもらう」

 

「何?」

 

当たり前だ。俺ではこいつを倒せない、火力が、Lvが足りないのだ。

こちらは時間をかければLv5の援軍が来る。

なら時間を精一杯稼がせてもらう。

 

「何を余裕ぶってるんだ?白髪鬼(ヴェンデッタ)いやオリヴァス・アクト」

 

 

「お前らにもう余裕はないんだぜ?最大戦力であるレヴィスはアイズが相手をしている。ヘルメス・ファミリアにはアスフィが戻り白装束の邪魔がない今食人花(ヴィオラス)だけなら時間をかければ負けることは無い。」

 

「あとはお前を俺が援軍が来るまで抑えておけばゲームセット。お前らは負ける」

 

「なんでそんな余裕を保てるか、理解に苦しむぞ?クソゴミ白髪野郎」

 

全力の煽り。それと同時に状況を理解させる。

 

「っっっ!!?貴様ら全員を殺せば済む話だ!」

 

オリヴァスが俺に向かってくる。

 

「バカだな!それをさせないために俺がいるんだよ!!」

 

これでオリヴァスの意識は俺に向かう。ヘルメス・ファミリアに向かっていくようなら、【纏】を使い全力で止める。それまで【纏】は使わない。

 

剣と拳の乱舞がはじまった。

 

「ほらほら!?どうしたこの程度が糞ガキ」

 

Lv5相当VSLv3。一瞬でその勝負は着くと思われた。

しかし…

 

(せ、攻めきれない?)

 

オリヴァスが内心で驚愕する。

 

(動きは遅い、恐らくLv3の中位相当。ならすぐにでも仕留めることが出来るはず)

 

レイはオリヴァスの拳を《インペリアル》を用いて逸らしながら回避をする。

 

一瞬でも躊躇う事なく、全てを防ぎ切る。

 

「ふ、ふざけるな。そんなこと出来るわけが!?」

 

技と駆け引きはあくまで戦闘を有利にするだけ、それだけLv差を覆せるほど万能ではない。それは全ての冒険者の共通認識

 

(俺の場合は話が別だけどな)

 

 

ーーーレイの精神世界ーーー

 

 

「このままじゃだめだな」

 

訓練開始から合計50時間がたった頃、アイズに一太刀浴びせることは出来たが、それしかできなかった。

 

「《大賢者》訓練相手を変更。剣姫から白髪鬼に変更。」

 

その命令を聞き、目の前の人形が剣姫から白髪鬼へと姿を変える。

 

このままじゃだめだ。

このままじゃ白髪鬼(ヴェンデッタ)を倒すことが出来ない。

ならどうすればいい?

決まっている。白髪鬼(ヴェンデッタ)を俺一人で抑えられるようにすればいい。

全てを攻撃を見切り、防ぐことができるようになればそれは可能。

普通なら無理だろう。だが俺にはこいつが…この精神世界がある。

慣れてやる。Lv5の力

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「な、何故だ!?ふん!」

 

拳を振り下ろすオリヴァス、その拳に《インペリアル》を当てながら、絶妙にずらし、回避をするレイ

 

それはもう21回くらった。

 

「これならどうだ!」

 

《インペリアル》を縦向きにしているところに回し蹴りをする。

これで回避も防御も不可。レイは絶対にくらい…なっ!??

 

レイは体を横にしながら跳躍。

《インペリアル》を当て、滑るようにオリヴァスの足の上に回避。

 

それももう見切ってる。

 

 

Lv5の猛攻。普通ならLv3の能力で全て見切ることなど不可能だろう。

 

 

(遅すぎる。剣姫はもっと速かった。全てがお前を超えていた。)

 

 

だがレイには精神世界での100時間がある。

剣姫の相手を50時間…千を超える敗北をした剣姫と比べれば明らかに遅い。

そしてその後の50時間…オリヴァスの動きは全て覚えた。

その蹴りも何もかもがレイにとっては見知った動き、予測できる動き、ならば対処もできる…いや対処出来なければ話にならない。

 

 

「ゲームセットだ。オリヴァス」

 

「何?」

 

入口付近の壁から衝撃音が響く。

 

「あ?何だこの状況?」

 

確認するとベートとレフィーヤ、そしてフィルヴィスがいた。

これで戦力差は五分から逆転した。

 

これで俺らの勝ちは揺るがない。

あとはアイズがレヴィスを倒し、ベートがオリヴァスを倒せば終わる。

食人花は俺とレフィーヤで対処すればいい。

 

唯一の不安点はフィルヴィスだが、あいつはまだ動かない。

動いたとしても、最悪フェルズには異端児(ゼノス)たちを動かせるように伝えてある。

俺を殿に異端児(ゼノス)が裏からサポートしてもらえば、逃げきれないことは無いだろう。

 

また衝撃音が響く。粉砕された壁。そこから赤髪の女が壁に吹き飛ばされる。

 

「なっ!?」

 

次はレヴィスとアイズ。

 

数々の切傷を負い、それを再生しながら、吹き飛ばされたレヴィスが立ち上がる。

 

「口だけか?レヴィス。情けない。」

 

「貴様もだろう、なぜ冒険者が生きている。」

 

「ふん、やはり頼りになるのはあいつだけか」

 

あいつ?フィルヴィスのことか?いやフィルヴィスのことはまだ知らないはずだろ?

 

「あの、小娘が【アリア】というのなら、【彼女】がそれを望むというのなら」

 

巨大花(ヴィスクム)

 

「おい、止めろ」

 

「止めるなよ、レヴィス。貴様の手に負えない相手を片付けてやる。」

 

動き出す巨大花(ヴィスクム)それに反応に対応しようとする冒険者。しかしレイだけは動かない。

 

これの対策は必要ない。そういうように

 

目覚めよ(テンペスト)

 

その言葉ともに一閃が振られ、巨大花の首が落ちる。

 

(さすが、剣姫。)

 

内心で賞賛を示す。

 

「飛んだ茶番だ。」

 

レヴィスがオリヴァスの胸を突き刺す。

 

「な、何をする。レヴィス…?」

 

「周りを見ろ、より力が必要になった。」

 

「まさか、よせ!?私はお前と同じ。【彼女】に選ばれた人間…」

 

「選ばれた?お前はあれが女神にでも見えているのか?」

 

「あれが、そんな崇高なものであるはずないだろう。」

 

「お前も私もアレの触手に過ぎん。」

 

レヴィスがオリヴァスのが魔石を喰らい、アイズへと突撃する。

 

さて…アイズはまだ大丈夫。負けはしない。なら俺はフルヴィスの分身を止めるか…

 

そう思い、周りを見渡すと黒ローブが走っているのをみつけた、あれだな。

 

黒ローブを止めようと向かうと、

その後ろにもう1人…ローブを被った俺の知らない男がたっていた。

 

は?あれは…誰だ?

 

あんな男は知らない。この場に現れる敵戦力はフルヴィスの分身のみ。そのはずだろ?

 

瞬間、俺は蹴り飛ばされた。

 

「は…!?グッっ!、!!!?」

 

凄まじい勢いの蹴りを喰らい、俺は反対側の壁まで吹き飛ばされた。

 

(な、なんだ?今の?け、蹴り?)

 

「へぇ?今ので生きてるのか?殺す気で蹴ったが…」

 

蹴り飛ばされた衝撃で空いた穴。そこには俺の後にもう一人入ってきた。

 

「お、まえ誰だ?」

 

「お前こそ誰だ?」

 

俺を蹴り飛ばした男は俺が全く知らない男だった。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい!ここから原作改変です!


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第32話 知らない人

うん、オリキャラまた出しちゃた。


 

男は黒のローブを被っているが体格は俺よりでかい。

2Mに届くだろう。

 

 

 

「もう一度聞く。お前は誰だ?」

 

 

は?なんで?てか速すぎだろ?

あの蹴り、間違いなく纏使用時の俺より強い。

Lv6?もしくはLv7?なのになんで俺はこいつを知らない?

現時点で1番可能性があるのはナイト・オブ・ナイト

やつはLv7のはず…でも…こんなところにいるはずがない。

本編に出てきていないキャラ?いやそれでもおかしいだろう。

なんでここに?

クソ、頭が回られねぇ、左腕もおられてやがる。

とにかくどうにかしないと…

 

「どうした?早く答えろ」

 

名前か、答えてもいい。でも知られない方がいい

 

「俺の名前は…名乗るほどのもんじゃねぇよ!」

 

(【纏】、《サンダー・ボルト》)

 

現状出せる最大火力。

【纏】による超強化×魔法による火力強化

 

「そうか」

 

気の抜けた返事。そんなの関係ない!

格上相手に手加減する余裕は今の俺にはない!

全力でこいつを仕留めろ!

 

相手は格上、無傷。

自分は既にボロくずのような姿。

先程の蹴りで左腕が折れている。

しかし負ける気などない。

 

閃光(ステロペス)!!!」

 

選択したのは新技。閃光(ステロペス)

 

雷を手に収縮。

全方位ではなく、掌の前のみに放射することでレーザーのように使う技

まともに喰らえば第一級冒険者でも傷がつくことは剣姫を経て検証済み。

渾身の一撃。そのはずだった…

 

「ふん」

 

男はそれを正面から掌でガード。そして消し飛ばす。

 

「…は?」

 

俺の渾身の一撃…Lv5の冒険者にすら通じた必殺技を掌でかき消した?

 

「悪くない…だが…」

 

 

「圧倒的に足りない」

 

男は俺を見下ろし、つまらなそうに呟いた。

 

「う、うそだろ?」

 

奢っていた?

自分なら今の自分なら第1級にも通用するそう考えていた俺が確かにいた。

だが目の前の相手には通用しない。まるで子供と大人だ。

地力が違いすぎる。

 

「そんなに不思議か?」

 

「俺がお前の閃光を消し飛ばした。それだけだ…目の前事象をさっさと既知へと変えろ。それが出来なければ死ね」

 

その言葉(セリフ)聞いたことがあったな…

 

「クッソがァァ!!!」

 

言葉ともに全身で跳躍。そのまま男に向かっていく。

折れていない右手で斧を作成。

力任せに振り下ろす。

 

「遅い…」

 

次の瞬間。斧は粉々に砕かれる

 

「くっっ!」

 

そして男はまたつぶやく。

 

「もうお前への興味は失せた」

 

男が手刀を作り、それを振る。

4回振られた?

知覚できない手刀が何回振られたか俺は自然とわかった。

 

「あぁぁぁぁぁあ!!!!!?」

 

気づいた瞬間、腕が脚が全て切り飛ばされたから

 

腕が!!!?

脚が!!?

 

 

ショックで叫び声が出る。

だが相手はそんなこと気にもとめない。

 

「最後に聞いておく。お前の名前は?」

 

「くっぁぁがぁ!!?はぁはぁはぁはぁ…」

 

男の前にいた人はもう人と呼べるか分からないほど疲弊していた。

確かにあった自信をボロボロに砕かれ、腕と脚の無くなった痛みでまともな思考回路はなかった。

 

「そうか…じゃあな」

 

男もそれを察し、トドメをさそうとする。

 

「リル・ラファーガ!!」「喰らえェェ!」

 

しかしそれを2人の第1級冒険者が阻止する。

 

炎と風。ふたつの魔法が男に襲いかかる。

 

「Lv5が2人?いやLv6とLv5か…随分とふざけている」

 

苛立ちを感じる声と同時に男は2人の渾身の一撃をぞんざいに腕に着けた篭手ではじき飛ばす。

 

「おい!生きてんだろうな!?白髪雑魚!!」

 

しかし2人にはそれで充分。

ベートは生まれた隙をレイを助ける事に使い、アイズはベートとレイを守るように男との間に立つ。

 

凶狼(ヴァナルガンド)?」

 

「離脱するぞ!アイズ!」

 

「はい!」

 

そのまま2人は入ってきた穴から離脱。

男は追撃も何もせず、ただ2人を眺める。

 

「レヴィスのやつか?ここを壊したのは…まぁいい。あれは回収できている。問題はなかろう。」

 

そんな声が聞こえた気がするが、もう何も分からない。

そのまま俺は凶狼(ヴァナルガンド)に背負われながら、食料庫(パントリー)を後にした。

 

 

ーーーーーー

 

 

「知らない天井パート2…てか」

 

起きた俺がいたのは病院のような白い部屋だった。

 

「起きましたか?」

 

声が聞こえた方を見ると天使がいた。

 

いや天使のような白衣を着た女性がいた。

 

「あなたは確か?」

 

「初めまして、私はアミッド・テアサナーレ。ここの治療院の治癒術師です。」

 

治療院?あぁ、あの男に…

そうだ!腕と脚は?

俺は視点を下げ、自分の寝ていたベットの上にある体を見る。

 

そこにあったのは腕も脚もなく、だるまになった体だった。

 

アミッドの方を見るととても申し訳なさそうな顔をしている。

 

「申し訳ありません…力が足りず。このような有様になってしまい…」

 

「あー、俺の腕と脚なくなっちゃたんですか?」

 

「…はい。切り飛ばされたと言われた腕と脚もダンジョンに放置されて繋げることも出来ず…」

 

まぁあの状況なら回収出来ないこともしょうがない。

命が助かっただけでも御の字だろう。

 

「…ですが!我がファミリアには義手や義足もありますから。ダンジョンは無理でも日常生活を送ることは可能です。」

 

「あ、はい。」

 

どうしよう…俺の事めちゃくちゃ元気づけようとしてるから言いづらいけど多分《リライフ》で治ると思うんだが…

 

「お若いのにこのようになってしまい、さぞ落ち込んでいると思います。ですが、あなたの人生はここからです…無理とは思いますがどうか気を落とさないでください…」

 

…この人まじで天使だな。

俺がもし治らない状況ならこのファミリアに入ってこの人に一生尽くすくらいしたくなったぞ。

 

「あの…すいません少し目を閉じて貰えます?5秒とかでいいので」

 

「え?…わかりました。では…」

 

よし、閉じてもらった

やるか!

 

俺は闇の権能に似て腕を作成。その腕を尖らせそのまま首を切りつける。

吹きだす血…そして発動する魔法。

 

 

 

忘れるな己の罪、果たしきれ己の願い

全てを守り、全てを救い、全てを果たせ

 

《リライフ》

 

全身から光が湧き上がり、腕と脚の形になっていく。

 

「もういいですよ」

 

「はい。え?えぇぇぇ!!?」

 

天使が大声を上げた。

 

「な、なんで治って?」

 

「えっと僕自分のみに治癒魔法を使えて…」

 

「……」

 

天使…いや聖女が絶句した。

 

そりゃあそうだ。部位欠損…エリクサーでも簡単には治らないであろう傷を即座に治す魔法など反則もいいところだろう。

 

実際は死なないと治らないし、効果がどこまで届くかも分からない。

しかも精神力(マインド)の消費が桁違いと色々と制約があるが…それでも破格の性能をしているだろう。

 

「…一応聞くのですが、効果が届くのは貴方のみなんですよね?」

 

「あ、はい。そうですね。治せるのは自分だけです。」

 

「そうですか…」

 

聖女は少し残念そうな顔をしながら、「もし他人も治せるならどうにかして当院に閉じ込める気でしたが…」

 

わーお、すごい言葉が聞こえる〜

聖女さん。悪いが僕は監禁趣味は無いんで遠慮しときます…

 

「えっと?僕治りましたんでお暇しても大丈夫ですか?」

 

治療費を払う必要があるだろうから、それは愚者(フェルズ)の方に請求してもらおう。

うん。許してくれるさ、四肢が無くなるくらい頑張ったし。

死傷者も多分ないはず?だし。目的は達成した。

 

「はい。ですが少々お待ちしていただいてもいいでしょうか?」

 

「えっとなぜ?」

 

「あなたから話を聞きたいと仰るお方がいるのでその方をお呼びします。」

 

俺から?誰だろ?

 

「えっと?どなたですか?」

 

聖女は綺麗な声でその名前を言う。

 

勇者(ブレイバー)フィン・ディムナ様です。」

 

今会いたくないランキング堂々の1位の名前が言われた。

 

 

 

 




オリキャラを好きなって貰えるようにしたい


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第33話 休む暇なんて無い

早めに投稿〜


「どうも、こんにちは。会うのは二度目だね?」

 

病室の入口から金髪の少年ーいや勇者(フィン)が入ってきた。

 

その後ろにはベート…そしてレフィーヤもいる。どうやらあの件の関係者を連れてきた感じだろうか?それだとアイズやアスフィがいないことが気がかりだが…まあとにかく話を聞いた後で判断すればいい。

 

 

「怪我の具合は…どうやら治ったようだね?」

 

フィンは俺ではなく、アミッドの方を向いて質問する。

まぁ俺の魔法を知らないフィンがアミッドに聞くのは通りだ。

だが、その質問はNG。

 

「はい。アミッドさんのおかげでどうにか治りました。それでそちらの要件は?」

 

答えようとするアミッドを遮るように俺はフィンに話しかけた。

当然だ。ここで《リライフ》の性質を明かすのはなんのメリットもない。

俺はまだ大口を叩く謎のヒューマンでなければいけない。

少なくとも今はこのスタンスは維持する。

 

「そうか、それは良かった。怪我が治ってすぐで悪いんだが、こちらから君に聞きたいことがあるんだ。」

 

フィンは俺がアミッドを遮ったことを気づきながら、俺と話しを合わせる。

 

「聞きたいこと?それはなんですか?」

 

話せる内容はある程度考えてある。

情報を渡しすぎても渡さなすぎてもこちらの立場が危うくなるのだ。

なるべく慎重に選ばなければ…

 

「君はあの男たちの正体を知っているのかい?」

 

あの男たち…恐らくレヴィスやオリヴァスのことだろう。

もちろん知っているが…ここは…

 

「あの白髪の男と赤髪の女についてですか?」

 

「そうだ。」

 

「…正体と言ってもただとてつもなく強い人間。しかも冒険者出ないってことしか知らないですね。」

 

「…」

 

「個人的な感想なら…あの人たちの力は魔石によるものだとも思いましたけど」

 

「ほう?それはどうして?」

 

まず冒険者では無い点。

これは簡単、ベートやアイズと張り合える人間は間違いなく第一級冒険者として名前と顔を知られているから。

それを知らないのはここに来たばかりの人間だけだろう。

名前と顔が分からないのなら奴らは冒険者では無い別勢力の人間。そう考えるのが妥当。

 

魔石による力だと思った理由も簡単。

赤髪の女レヴィスが魔石を食らって強くなったから。

ならば奴らの強さの要因は魔石によるものだろうと考えた。もちろん魔石を食べて強くなる方法は分からないが…

 

そのような説明をフィンにした。

フィンはこのくらい想像しているだろう。

ここで大事なのは俺が全てを知っていることを悟らせないこと。

俺が無知なただの巻き込まれだと知らしめることだ。

 

「ちなみに聞くが…君はなぜあの場に?」

 

「ある人物からの依頼です。極秘裏にあの場所を調べて欲しいと…依頼人は言えません。」

 

これも簡単。|愚者の存在を隠しながら依頼を受けたと言えばいい。

Lv3というのは相手にバレているかもしれない。

だが、あの深さならギリギリとはいえLv3でも通用する。

潜入目的なら1人でも危険はあるが納得できないレベルではないだろう。

 

その後も数度俺は質問を受け、なるべく情報を喋らないよう返答した。

 

「そうか…ありがとう。レフィーヤ彼にあれを」

 

「は、はい。」

 

フィンは満足したのか後ろに控えていた、レフィーヤに声をかける。

レフィーヤの腕の中には俺が持っていたであろう剣…《インペリアル》があった。

 

(良かった。無くしてなかった。)

 

 

そう、素直に思った。

さすがの俺も1000万のものを無くすのは愚者(フェルズ)に申し訳ない。

 

「あ、僕の剣…ありがとうございます。」

 

「これはあの場でアイズが拾ったものだ。礼ならアイズに言ってあげてくれ」

 

「わかりました。」

 

「では、僕達はこれで…」

 

「あの!」

 

「ん?なんだい?」

 

俺はフィンに質問する。

この質問は今回の事件で一番大事だ。

 

「あの事件で死傷者は?」

 

「重症が数人…そして死傷者は2名」

 

…やはりか、あの男が現れてから俺以外にも対応を押し付けてしまった…だからこぼれ落ちる可能性もあるだろう…

 

「君は全力を尽くした。君が気に病む必要は無いよ」

 

そう言い残しフィンが病室から出ていく。

それに着いていくようにレフィーヤがそしてずっと黙ってこちらを見ていたベートも俺を睨むように見ながら、病室を去っていく。

扉が閉まり、フィンたちが去った後、アミッドが零す。

 

「私の力不足です。すいません…」

 

「あなたのせいじゃない」

 

俺のせいだ、俺がもっと強ければ…

守れなかった…くそ!!!

あれだけ知っておきながら最後の最後で失った!

 

「申し訳ありません。1つ質問を…なぜ、その魔法を隠すのです?少なくともフィン様には話しても問題ないかと」

 

は?何を言っているんだ?こいつ…いまそれどころじゃ…いや冷静になれこの怒りは意味が無い。

魔法やスキルを隠すのは当たり前のことだ。

手の内を晒すことそれにメリットはほとんどない。

アミッド視点ではフィンは味方だからこの発言ができるのだろう。

しかし俺にとっては話は別だ。

 

「これから敵になるか、味方になるか分からない人に手の内は晒したくないでしょ?」

 

「敵とは…大袈裟では?」

 

俺にとってはそうでも無いんだよなぁ〜フィンは異端児(ゼノス)にとっては現状明確に敵な上に…味方になるのも状況が味方したからと思ってしまう。なら隠すべきだろう可能な限り。

 

「そうでも無いですよ…少なくとも今は…」

 

裏のある発言だと考えたのがアミッドは別の話をしだす。

 

「そうですか。では1つ質問を。あなたの魔法、その発動条件は?」

 

俺は怪訝な顔をしてしまう。

先程スキルや魔法は隠すべきと話した後で魔法の発動条件を聞くなど普通は考えないだろう。

 

「これからあなたを治療する時…あなたを治す手間を削減できるのでお伺いしたいのですが?」

 

アミッドはアミッドなりの考えがあって質問したわけか…別に問題は無いだろう。アミッドは9割9分9厘味方。

てかこいつが敵だったらオラリオが崩壊する。

まず間違いなく。

 

「俺の魔法の発動条件は俺が死んだ時です。」

 

「は?」

 

「俺が死んだ時、精神力(マインド)がある場合のみ発動する魔法です。」

 

「答えはしました。お願いですから他言は避けて下さい。それと…ありがとうございました。」

 

俺はサラリとそう言いながら荷物をまとめ、病室を後にする

 

 

 

レイの去った病室…その中でアミッドが悶々と考える。

 

死んだ時?…死亡?そんな…ことが…有り得るの?

魔法とは詠唱…魔力の貯めがいるもののはずでは?

自分の死なんて人が最も受け入れられない行為じゃないの?

 

様々な思考が巡る中ひとつの結論へ至る。

 

『アメミヤ・レイは壊れている。』

 

第1級冒険者はどこか壊れている。

それは昔…治療院の先輩に聞いた言葉だったはずだ。

実際に第1級冒険者であるヒュリュテ姉妹、アイズと話してその片鱗を知ったつもりでいた。

しかし彼は別の意味で壊れている。

あの一瞬、私が目を瞑ってすぐ…彼は自分を殺した?

自殺すら回復の手段として使っている?

そんな人間が存在できるの?

 

生きる活力…それは少なくない影響をその人に与える。

復讐に燃える想い。

弱い自分への怒り。

野望をやり遂げる想い。

その全ては生きる意思として活力となる、それが人間だ。

しかし…もし死すらも手段として使える人間がいるのなら…果たしてそれは…本当に人間なのだろうか?

ある種の狂人…人ならざるものになってしまうのだろうか?

 

そんな考えをしていたアミッドだがやがて思考は打ち切られる。

 

「急患です!治療をお願いします!」

 

「…!!わかりました。すぐ行きます。」

 

 

 

ーーーストリートを歩くフィン、ベート、レフィーヤーーー

 

(情報は整理できた。彼は知っている。僕達より奴らのことを)

 

フィンはレイの態度…その機微や発言からそう結論づける。

まぁ彼が敵に回る可能性はかなり低い…少なくとも奴らの仲間ではないだろう。だから今は放っておいてもいい…しかし…

 

「で?どうだい彼は?」

 

フィンはベートにそんな言葉を投げかける

 

「折れちゃいない。あいつはまだな」

 

ベートが零す。

 

「そうだね」

 

フィンもその言葉に賛同する。

レフィーヤは1人。

2人の言葉に困惑する

 

「あの…折れるとは?」

 

「あーそうだね。簡単に言えば…彼は立ち直ったのさ。あの絶望から」

 

「絶望…?」

 

「俺やアイズの一撃を余裕で受け止めやがったあの男だ」

 

「…!!」

 

「ベートや万能者(ペルセウス)の話だと彼は完膚無きまでに潰されたはずだ。Lv6以上の実力者に腕や脚を切り落とされ…自分の極めてきたものを全て…否定された。」

 

普通のものならその絶望で落ちる。

最悪死に至るものをいるだろう…しかし

 

「彼は折れていなかった。体が治ったといえ、全てを折られてなお、目から闘志が見えた。」

 

ベートが今日着いてきたのはレイが折れているのかを確かめるためだった。

 

男に敗れた瞬間…レイは喚き散らし泣き叫んでいた。

あの時確実にレイは完膚無きまでに叩き潰され絶望していた。

仮にも自分を煽った男がそんなになりベートは腹が立った。だから病室でのレイが絶望していたら罵倒(発破)をかけてやるつもりだった。

しかし…病室でのレイは絶望なんてしていなかった。

目の奥に絶対に借りを返すという意思があった。

 

「ベートの言葉借りるなら…彼は弱者のまま終わる気は無いということかな?」

 

「雑魚が雑魚のまま終わんなきゃいいがな」

 

ベートのその言葉にフィンはかすかに笑っていた。

 

 

ーーーバベルの前ーーー

 

足りない…圧倒的なまでに

 

レイは己の不甲斐なさに怒りを覚えていた。

あの時あの瞬間俺は最高の準備をしていたはずだ…

なのに負けた。

不甲斐ないあれだけ未来を知っておきながら、ボロ負けしたんだ俺は…

被害は減った。それがなんだ?あの時あの瞬間人を死なせた。

全てを知りながら、それを隠し…人を死なせたんだ俺は

ふざけるな…何様だ俺は…

 

怒りが溢れる。自身への怒りが途方もなく…そして……

 

 

次は勝つ。

 

 

そう心に決め、剣を持ちダンジョンへと走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今更ながら主人公の性格がムズい


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4章
第34話 白兎と剣姫


遅くなってすいません!


塔の前に行くとアイズとエイナさんが話していた。

 

ん?アイズがこっちを見て…え?こっちに来たんだけど

 

「あの…怪我…」

 

「ん?あぁ怪我ですか、お陰様で完全に治りました。剣も持ってきてもらって本当にありがとうございます。」

 

「…なら…良かった」

 

「レイくんアイズ・ヴァレンシュタイン氏と知り合いなの?」

 

 

これは…どう説明すべきだろう?

たしかに知り合いなのだが、知り合いと言っていいのか?

 

「少し前に助けてもらったんですよ。ですよね?」

 

アイズに目線をやりながら返事をする。

 

「…うん…この前…中層で…」

 

あーまずい。エイナさんには中層には言ってないことにしていた気が…

 

「中、中層!?レイくん!!君もうそんなところまで!!」

 

やっぱり…これはお叱りコースか?

これから愚者(フェルズ)への報告もあるし、急いでるんだが…

 

「だめじゃない!ソロで!君はまだオラリオに来て1月も経ってないんだよ!?」

 

はぁやっぱりお叱りコースかよ…心配はありがたいし、この人の教えてくれるダンジョンの情報は価値があるし、正しいんだが、いかんせん生き急いでる俺とは相性が悪い…

 

 

「わかってますよ、だから最近はベルと訓練したりしてますよ?」

 

アイズの顔が一瞬驚きに染まる…

ベルという名前に反応したらしい

これは…ベルとくっつけるいいチャンスかもしれない

 

「大体、あいつの方が異常ですよ、あいつもう11階層ですよ?成長しすぎですよ」

 

「それは…そうだけど…あ!話をそらさないの!」

 

アイズの興味をそそりながらエイナに対して煙を巻く。

 

「…どうして?」

 

そんなことをしていると…アイズが呟く。

 

「どうして貴方は…貴方たちはそんな速く成長できるの?」

 

どうしてか…ランクアップの話なら俺は例外だけどな、設定では2年くらいたったことにしてたはずだ。

 

「俺はそんなに速く成長できてないですよ。ランクアップに結構かかりましたし」

 

ここははっきりと言っておく。

 

「…ううん…そういうことじゃない」

 

アイズは否定する。

 

「貴方はあの人と戦って生きてた…あの黒衣の人と」

 

黒衣…あの男のことか…

 

「…」

 

「それに…貴方は立っている…こんなに早く」

 

立っている…か。そりゃあリライフがなければ死んだも同然だったが、そういうことじゃないんだろうな

 

「その理由を知りたい…貴方は何者なの?」

 

「…」

 

ふざけるな、立つに決まっているだろ…

ヘルメス・ファミリアが二人死んだ。

原作通りなら10人以上死んでいた。それが二人になった…

その結果だけ見れば俺の作戦をやる価値はあったのかもしれない。

だが…ふざけるな。

その二人が死んだのは俺のせいだ。

俺がもっとうまく事を運ぶことができたら、二人死ぬこともなかったんだ。

もっと力がいるんだ…だからあんたにかまってる暇はない。

 

「剣姫…あんたのきもちはわかった。だがわるいが…俺の詮索はするな」

 

「…!」

 

強めた語彙。それを聞いた剣姫は目を見開きすぐに俺に謝罪してくる。

俺の気を害したことを悪く思ったんだろう。

 

「ご…ごめ「ただ…お前の興味の1つ。ベル・クラネルへの紹介。それだけはできる」

 

そこに割り込むように挟む。

直接こいつにかかわるメリットは殆どない。

だがこの状況を利用しない手もない。

それに俺の個人的な感情でアイズに強くあたってしまった。

これで詫びにはなるだろう。

 

「理由は本人に聞いてくれ」

 

あくまで俺は関与しない。

それを含めて伝える。

 

「どうする?」

 

アイズは少し考えた後、俺の目を見て言う。

 

「…会いたいです」

 

「おっけー、今から呼ぶ」

 

先程とは一変した軽い返事をしてベルの位置を小声で探す。

 

「《大賢者》マップ。ベルの位置検索」

 

マップに表示されたのはこちらの方に向かってくるベルだった。

 

(おっ。丁度いいタイミング。さすが原作主人公)

 

「少し待っててくれ」

 

アイズとエイナに一言伝えてベルの方へと軽く走る。

 

「ベル!」

 

メインストリートの端に見つけたベルに声をかける。

 

「レイさん?」

 

「時間あるか?あるならちょっと着いてきてくれ」

 

「え?あっはい。わかりました?」

 

返事が聞こえたと同時に手を引っ張りながらエイナさんとアイズのもとへと戻る。

 

「あのなにか用…え!!?あ、あ、あ、アイズさん!?」

 

アイズが見えた瞬間、オーバーリアクションで逃げようとするベルだがしっかりと手を抑えながら引っ張る。

 

「ほい、おまたせ。あとは自分で頼むわ。」

 

アイズにそう声をかけ、エイナさんとこの場を去る。

 

「ベル君!逃げちゃだめだよ!」

 

エイナさんも声をかけ俺について来る。

 

「ところで…レイくん?」

 

少し離れたところにきた俺とエイナさん。

エイナさんは仕事に戻るだろうと俺は│愚者《フェルズ》の指定した店まで向かおうとしたが声をかけられる。

 

「はい?」

 

気の抜けた返事をしながら後ろを向くとそこには美人のエルフには似つかわしくない怒気を感じた。

 

「ヒィ…。」

 

悲鳴が周りの冒険者から聞こえた。

 

「24階層に行った件の話がまだ終わってないよ?」

 

あー…終わった。

 

その後のお叱りは1時間ほど続いた。

途中戻ってきたベルも巻き込まれ、(巻き込んだという方が正しい)

ギルドのロビーで二人の冒険者は正座させられ怒られた。

逃げることもできたがしなかった。

不思議とその時間は苦ではなかったから。

自分への不甲斐なさまみれの俺は叱られたかったのかもしれない。

 

 

ただ…エイナさんを怒らせるのはもうやめよう。

そう、心に誓う日でもあった。

 

 

お叱りが終わった後、ベルからアイズと特訓することになったと伝えられた。

これで原作と同程度には親密になれるだろう。

 

ベルはダンジョンへ

俺は愚者(フェルズ)に指定された店へと向かった。

 

 

「いらっしゃい」

 

オラリオの中心から少しそれたノームの貸金庫…

その中から予めもらった鍵の金庫を開け、中身を見る。

中身は今回の協力料+ローブだった。

これは…

 

俺は店を出て裏路地へ

人がいないことを確認後そのローブを着る。

  

「やっぱり透明になれるローブか」

 

そのローブは原作でベルたちが借りていた透明になれるローブだった。

これでウラノスのところまで来いってことかな?

 

そう考えウラノスのもとまで向かう。

途中エイナさんに気づかれそうになってヒヤヒヤしたが、それ以外は問題なくウラノスのもとまでたどり着くことができた。

 

「よく来たな、レイ…」

 

中に入ると祭壇の上から話しかけられる。ウラノスだ。

 

「ご無沙汰です。」

 

軽くお辞儀しながら返事をする。

 

「今回の件ご苦労だった。」

 

ウラノスからそう言われて俺は少し腹がたった。

ウラノスではなく、自分に。

 

「任務は失敗だけどな」

 

そう吐き捨てるようにいうと左の暗闇から声が響く。

 

「そのようなことはないだろう…君の活躍で確実にヘルメス・ファミリアの被害は減った。」

 

愚者(フェルズ)だ。

 

「でも…」

 

その言葉を聞かされ俺はまた自分の不甲斐なさに嫌気が刺す。

確かに被害は減った。

でも亡くなった人が二人もいる。

あれだけの準備をしながら結末を知っておきながら…俺は失敗したんだ。

 

 

「完璧を求めすぎるなレイ、君は多くを望みすぎている。それは君の美点でもあるが…悪癖でもある。」

 

何百年も生きてきた上での愚者(フェルズ)の経験則なんだろう。

 

「ああ…」

 

気の抜けた返事をしながら、頭を切り替える。

 

「それで君の話に出てこなかった男…あれは誰だ?」

 

愚者(フェルズ)が聞いてくる。

男…おれの手足を切り飛ばした男か…

 

わからない。それが俺の答えだろう。

でも…

それがいますべき正解か…

すべてを話すべきことか?

少し考えた後…答えを決める。

 

 

「それを話す前に1つ伝えなくちゃいけないことがある。」

 

愚者(フェルズ)(ウラノス)が俺の目を見ている。

 

「俺は異世界人なんだ。」

 

この世界に来て初めて俺はその事実を明かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公の気持ちの出し方がムズい


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第35話 異世界人

週一投稿したいけどギリできない。

【修正】遠征開始まで2週間→1週間でした。
ストーリーには影響しないようにします。


「…?」「…!?」

 

ウラノスと愚者(フェルズ)の頭の上に?が浮いていた。

 

(そっか…この世界の人間は異世界ってもの自体が知らないのか…)

 

当たり前の事を失念していた。

 

(てか、神も異世界については知らないのか…なら俺を転生させたあの男はなんなんだ?分からないことが増えたな)

 

「…えっとつまりはな…」

 

ここで事情を全て説明しても理解を得られないかもしれない。なら最初に重要なことを教えるべきだろう。

 

「騙しているようで悪かったが、正確には俺には未来が見えてるわけじゃないんだ。」

 

「なっ!?」

 

俺の発言に愚者(フェルズ)が驚く。

当然の反応だろう。

俺は未来が見えるというアドバンテージを売り込み、ウラノスと契約を結んだ。

しかし未来が見えていないとなると俺の価値はただのLv3。

のみになってしまう。

 

「いや待て、それはおかしい。しかし君の提供した情報はほとんどあっていた。」

 

さすが愚者(フェルズ)

賢者の成れの果てと言うだけあって飲み込みが早い。

そう、向こうからすればそれがおかしな点だろう。

 

「それは…」

 

さて、どう説明すればいいか…未来を知っているがその変化までは観測できない?そう説明すればいいか?

 

…いや、こいつらには全てを明かすべきだろう

それがこいつらへの誠意だ。

 

「俺は歴史を知っているだけなんだ。」

 

「歴史…だと?」

 

今度はウラノスが反応を示す。

 

「ああ、要は…」

 

そのまま説明を続ける。

まずは俺の知っている事と知らない事

そもそも俺はどういう存在か

俺が知っている理由は俺の世界では未来を示せる人がいてそれを聞いたからだと伝えた。

未来を示せる人というのは要は作者のことをぼかして伝えた。

当たり前だがこの世界が俺の世界では小説の中の世界ということは伏せるべきだろう。

そもそも異世界というもの自体、謎が多すぎる。

ここが小説の中なのか、小説に限りなく近い世界なのか

それも分からないままなのだ。

 

「つまり君の知っている歴史は君が存在していない時であって、君がいる状態での歴史は全く分からない。そういうことか?」

 

ウラノスと愚者(フェルズ)が確認をしてくる。

1000年間生きているだけあって2人とも理解が早くて助かる

 

「ああ、本来ならまだ明かす気はなかったんだが…情報を伝えることで未来を変えることに繋がると思っていたいからな」

 

「あの男の存在か…」

 

ウラノスがつぶやく

 

「ああ」

 

「あの男…あの男だけは俺は知らない。未知の存在だった。」

 

Lv2、3の俺の知らない人なら俺が把握していないだけという可能性もあったが…Lv6の攻撃を余裕でいなせる実力者…それなやつを把握していないはずがない。間違いなく…やつは本来の歴史にはいない人物だ。

それが俺の結論。

 

「そういえば愚者(フェルズ)やウラノスは心当たりないか?」

 

ふと思いつき、2人に視線を向ける。

 

「私はないな、そもそも情報が少なすぎる、外見の特徴のみではな。」

 

愚者(フェルズ)が顎に手をやりながら、つぶやく。

それにウラノスも肯定を示す。

 

「だよなー」

 

このふたりが把握していないってことはまず間違いなく敵ということでいいだろう。

勿論このふたりが俺に隠している可能性は0ではないが…そんなことをしてもこいつらにはメリットがないのでやっていないと信じておきたい。

まぁ愚者(フェルズ)やウラノスが知っているが…まだ思い出せていない可能性もある。

考え出したらキリがないな。

 

「まあいいや、とりあえずこの件は今後調べていくことにしよう。愚者(フェルズ)異端児(ゼノス)と会う件はどうだ?」

 

俺はここに来た時から伝えてある、異端児(ゼノス)達との接触許可は取れるのかに話を移す。

 

「ああ、それならば問題ない。しかし本当にいいのか?あってしまえば後戻りはできないぞ?」

 

後戻りか…まぁ今ならギリギリ知らないフリが出来るという意見は理解はできるが…俺も舐められたもんだ。

 

「今更そんなくだらないこと聞くなよ?俺の理想を叶えるためには必要だし、異端児(ゼノス)たちとも友好的に接したいって言ってるだろ?」

 

愚者(フェルズ)の顔を見ながら、まっすぐと告げる。

 

「そうか、済まない。」

 

俺の顔をしっかりと見たあと愚者(フェルズ)が謝罪を入れてくる。

 

「いいよ、気にしてないし」

 

「それですぐに出発できるが、どうする?」

 

愚者(フェルズ)は話を戻す。

 

「いいのか?ロキ・ファミリアの遠征を確認してからでなくて?」

 

確かあと1週間もすればロキ・ファミリアの遠征が始まるはずだ。

あれは精霊の関与を知れる初の機会だ。

俺の情報の整合性を取るためにも確認すべきとは思っているのだが…

 

異端児(ゼノス)たちは現在下層の隠れ家にいる、普段の物資の受け渡し、君の紹介だけならば遠征が始まる前に帰ってこれるだろう。」

 

下層への行き帰りで7日程度だろうか。

それならギリギリ間に合うか

俺としてもベルのランクアップの機会は見逃したくないので都合がいい。

 

「了解、じゃあさっさと行っちまおう。」

 

問題がないことを頭で確認し、愚者(フェルズ)に賛同を示す。

 

「わかった。では今夜ダンジョンの入口で待っていてくれ。勿論ローブは忘れずな」

 

ローブ…透明化出来るやつのことだろう。それなら今も持っている問題ないな

 

「他に用意しておくものとかは?」

 

「特には…ないな。普段ダンジョンに行く装備で問題ない。」

 

初の下層だが、Lv4の愚者(フェルズ)がいるなら問題ないだろうし、俺の実力も別に通用しないわけじゃない…安心していいか。

 

「了解…あーそういえば頼みたいことがあったんだ。ウラノス」

 

あることを思い出し、ウラノスへと目を向ける。

 

「なんだ?」

 

「俺の所属しているファミリアの所属期間を1年以上に直ししといてくれ」

 

俺は今規定上はミアハ・ファミリアに所属しているということにはなっている。しかし今後別の派閥に入る必要があった時、この規定は邪魔だ。

最低でも1年経過していて派閥移動可の状態にしておきたい。

 

「…別のファミリアに所属する気か?」

 

ウラノスが確認を取ってくる。

 

「ああ、心配しなくてもこっちの仕事に影響しない場所を選ぶから安心してくれ」

これは本当にそうするつもりだ。候補としてはふたつなんだがどうするべきかね…まぁこれを選ぶのにまだ時間はあるし気にしなくても大丈夫だろう。

 

「よかろう、後でロイマンに指示しておこう。」

 

ウラノスからの承諾を得て予定変更をしなくていいこと確認。

 

「おっけー、じゃあまた後で」

 

夜にまた会うことを約束し、ローブをかぶり祈祷の間を出る。

 

 




PCで書いてるんだがめちゃくちゃタイピングおせぇ


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第36話 異端児(ゼノス)

筆がのっている!!!気がする

ロキ・ファミリアの遠征始まるまでの期間2週間ではなく1週間くらいでした。すいません


ダンジョンに行く前に俺は青の薬舗によった。

 

ミアハ様とナァーザさんに今までの金と今後ファミリアを変える可能性があることを伝える。

 

ミアハ様は「そうか」といっただけだがナァーザさんは酷かった。

「そんな事言わないでまだいなよ?」

とか言ってきた…大方1日1万ヴァリスが無くなるのが痛いのだろう。

 

そのため手切れ金として100万ヴァリスを置いていったら、手ひら返しされたのが面白かった。

 

「さてと…この辺にいると思ったんだけど」

 

場所は変わってダンジョンの入口…バベルの前の広場。

深夜ということもあり、人は見える限り居ない。

 

「レイ」

 

背後から声をかけられる、後ろを振り向くと微かに気配を感じる。

 

「このままダンジョンに潜る。着いてきてくれ」

 

「了解」

 

愚者(フェルズ)の声だとはっきりとわかりその声の元についていく。

 

(透明化していても足音や匂い…気配は消せないか)

 

第一級冒険者たちが透明化していても認識できるのはこういったものを見逃さないからだろう。

 

 

「ここなら大丈夫だろう。では下層に向かうぞ。」

 

1層の中間の辺りで愚者(フェルズ)はローブを脱ぎ、俺に確認を取る。

 

「その前に…私は魔術師なので後衛なのだが…前衛は君がやって貰えると思っていいだろうか?」

 

「それなんだが…前衛後衛云々の前に俺一人でやらせて貰えないか?あんたは最低限の自衛だけで」

 

ちょうどいい機会だ、最近ベル関連のことをしていて、作業を最近できていなかった。

やるなら俺一人のほうが効率がいい、これの前にステイタスを更新しておこう。

 

〖アマミヤ・レイ〗

所属 :なし

ホーム【なし】

種族:ヒューマン

職業(ジョブ):冒険者

 

ステイタス

Lv3

力D542→C685

耐久C628→B775

器用F311→E427

敏捷E427→C621

魔力G248→F328

 

 発展アビリティ 精癒H、耐異常I

 

【ランクアップ可能】

 

《魔法》

【サンダー・ボルト】

詠唱 なし

・雷属性・付与魔法(エンチャント)

・感情の丈によって威力上昇

・超長距離。距離により威力減衰

 

【リライフ】

・死亡時のみ自動発動

・超回復

精神力(マインド)がある限り強制発動

 

詠唱文

・忘れるな己の罪、果たしきれ己の願い

全てを守り、全てを救い、全てを果たせ

 

 

 

 

 

《スキル》

【神の偽能】

・ステイタス更新を自分で可能

・ステイタスを刻んでいる人間のステイタスを視認可能

 

【大賢者】

・地図、思考加速、身体操作補助、並列思考、思考補助

 

英雄追想(ベル・クラネル)

・成長速度をベル・クラネルと同じとなる。

・ベル・クラネルへの憧れが無くなった時効果を失う。

 

【闇の権能】

・《纏》時全能力大幅上昇、闇の分離不可、発動毎に体力及び精神力大幅減少

・闇の触れたものの感覚を共有可能

・自由に闇を形成可能

 

 

 

 

超感覚(ハイパーセンス)

・五感強化

・第六感発現

 

 

 

 

(え?ランクアップできるの?俺…)

 

気づいていなかったが、どうやらランクアップ出来るらしい。しかし…

 

(ステイタスが上がりきってないのにランクアップするのは惜しい)

 

「それは…本当にいいのか?君の負担がかなり」

 

「大丈夫だ。」

 

愚者(フェルズ)の追求を避けるように遮る。

下層までの道のりでallBまで行ければ上出来か?

まぁやってみるしかないだろう

 

「よし。行くぞ」

 

「…わかった」

 

愚者(フェルズ)の返事が聞こえた瞬間【闇の権能】を起動。

愚者(フェルズ)を背負うように体を固定する。

 

「ほい!」

 

「なっ!!?」

 

急に背負ったことで愚者(フェルズ)は驚くが、無視する。

説明がだるい。

 

「行くぞ」

 

「レイ!この格好は少々…」

 

愚者(フェルズ)から抗議の声が聞こえるがそのまま加速を始める。

 

「別にいいだろ?どうせみえてない!」

 

「なっ!!?」

 

思考を一旦取りやめ、加速を始める。

 

数秒後最高速度(トップスピード)になりその速度に愚者(フェルズ)は瞠目する。

 

(は、速い!!これがLv3が出せる速度か? )

 

しかしレイの加速は終わらない。

 

(ここからは実験していく…《サンダー・ボルト》)

 

詠唱を唱え、体内に雷を纏い出す。

極限まで威力を下げ、体内の電気信号と同程度にしそれを制御する。

そうすることで本来実現不可能な速度で人体を操作…さらに加速する。

 

(細かい操作は全て【大賢者】に丸投げしろ、俺はやりたいことをやる。それに必要な操作を【大賢者】が判断して信号として送る。)

 

並の努力ではあの男を越えられない。

努力と才能、貰った力を全て使いこなす。

それがあいつを倒すための1番の方法だ。

 

雷を制御した瞬間の速度

その速度は本来の身体能力の倍を超える。

結果ーLv4の愚者(フェルズ)すら知覚できない速度が生まれた。

 

「なっっ!!?」

 

声にならない悲鳴が愚者(フェルズ)が漏れる。

 

最高速度は上層のモンスターでは近くできない速度まで達し、予定の倍早くレイたちは中層までつく。

 

「はぁはぁはぁーーーー。」

 

中層の入口まで来て愚者(フェルズ)は息をついていた。

 

「そんなキツかったか?あれ」

 

背中に背負って運ぶのがそんなにお気に召さなかっただろうか?

しかしあの状態は俺の目がギリギリ追いつけるレベルだからもっと目を慣らさなきゃダメだな。

速度は問題ないとしてあとは…火力かな

そんな考えをレイが巡させるが、愚者(フェルズ)としてはそれはまぁいいと思っていた。しかし

 

「…長年生きてきたがあんな雑な扱いは初めてだ…」

 

「…お姫様抱っことかの方が良かったか?」

 

背負う以外で運ぶ手段なんてそれくらいしか思いつかないが、それだと非常時に対応が遅れるしなーとレイが無駄な考えを思いつく。

 

「そういうことを言ってるんじゃない!?」

 

今まででいちばん大きな声を出され驚くレイ、対する愚者(フェルズ)は骨なのになんとなく頬が赤い気がする。

 

「お、おう。まぁここからはさすがにモンスターを相手しなきゃまずいから下ろしたわけだけど…いけるよな?」

 

話を戻そうとレイが確認をとる。

 

「ああ、言いつけ通り私は自己防衛しかしない。それでいいんだな?」

 

愚者(フェルズ)もそれに乗っかり、今後の方針を擦り合わせる。

 

「ああ、問題無し。本気でまずいと思ったら手を出してもいいが、なるべくは出さないで欲しい。」

 

「…わかった。自己判断でやらせてもらう。」

 

「よし、じゃあいこうか」

 

2人はそのまま中層へと足を踏み入れ始めた。

 

 

 

 

ーーーー

 

《インペリアル》を振り抜き立て続けにモンスターを狩り尽くす

 

「ほっ!やっ!せい!」

空いた手を使って残りの周りのモンスターを殴り飛ばし殺す。

目の前のモンスターを狩り尽くし、周りを確認する。

すると耳煩い音が聞こえてきた。

 

(ん?ちと量が多いな…早めに処理しよう)

 

左から様々なモンスターが走ってくる。しかし処理できない量ではない。

 

「《サンダー・ボルト》」

 

威力は最大、射程は20M、それを腕振り抜きながら距離をから伸ばしていく。

 

ヴァァァァァ!!!!!

 

悲鳴とともに灰になっていくモンスターを確認する。

それと同時に周囲にも警戒…あれは…

 

 

 

(バグベアーにデッドリー・ホーネットが…10以上。異常事態(イレギュラー)か。早めに潰すか)

 

「《サンダー・ボルト》集約。」

 

伸ばしていた雷を一気に手に集約。

ここでひとつ思いついた…

 

(やってみるか)

 

以前は掌で放射していたが、それを掌ではなく指に集約。

安定性を考えまずは2本指。

イメージは…魔貫光殺砲やデスビームが近い。

腕を前に出し2本の指を立てる。

 

閃光(ステロペス)

 

声ともに集約していた雷を2本の指から放射

レーザーが目の前のモンスターを貫く。

 

(ふむ、掌から放射した時より威力が少し高いかな?でも範囲は縮小と)

 

一体一の場合はこちらの方がいいか…

次は一本指で試すか

 

 

(凄まじいな…)

 

戦闘を続けながら実験を続けるレイを見ながら愚者(フェルズ)はそう感じた。

そもそもの戦闘能力もそうだが、圧倒的に駆け引きが上手い。

既にその技量は第一級冒険者に少なからず通用するのでは無いか?

愚者(フェルズ)の目から見てもLv3の冒険者とは思えないほど卓越した技量がそこにはあった。

しかもそれは才能ではなく純粋な努力…基礎を極めたものだとも感じた。

 

「本人がこれに全く満足していないとは」

 

そのうえで彼は自分の出来ること、やりたいことを天秤にかけ最善を見つけ続けている。

それが彼の強さの根幹なのだろう。

しかしどれだけ努力しても満足しないというのは危うさもあるのでは…

長年生きてきたが彼のような戦い方…考え方をするのはあまり見ない。

 

「あ?なんか言ったか?」

 

「いいや、先に進もう。」

 

内心を悟られぬよう、愚者(フェルズ)は話をそらす。

 

「了解」

 

レイもそれに気づきながらも気付かないふりをした。

 

 

 

 

 

 

 




次回異端児(ゼノス)との会合!!


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第37話異端

めちゃくちゃ久しぶりの更新です!
新しい学校が忙しくて書けませんでした!!ごめんなさい!


順調に足を進め、レイと愚者(フェルズ)は下層の未到達領域。異端児(ゼノス)の達の住処の前まで来ていた。

 

「ここでいいのか?愚者(フェルズ)

 

通路の変哲のない岩石、その奥に異端児(ゼノス)たちの住処があるらしい。

 

「ああ、間違いない…ここだ」

 

「なるほどな…そりゃ見つからないわけだ…」

 

本当にその奥に通路があるのか、言われた今ですら認識出来ない、自然に存在する地形そのものだな…実際自然生成されたものだけど…

 

「ああ、私も覚えているだけで、判別できるわけではない。」

 

賢者ですらわからない未到達領域か…そりゃあ誰にも見つからない。

 

「じゃあ…壊していいんだよな?」

 

一応愚者(フェルズ)に確認を取る。

 

「ああ、人が来る前にやってしまってくれ」

 

「ん」

 

了承を得て、拳を岩石に向かって構える。

 

「ふん!」

 

全力ではないが、岩石を壊しうる力を調節し、拳を振るう。

的確に打たれたそれは岩石を砕く。

 

「おおー」

 

砕かれた岩石の奥には薄暗い通路があった。

 

「さあ、行くぞ」

 

 

「おう」

 

奥の通路へと進む愚者(フェルズ)

一歩遅れてその背中についていく。

数秒後、岩石がもとに戻っていくのが、遠目に見えた。

 

「暗いな…」

 

元の通路の光が届いていた通路だったが、岩石がもとに戻り、光が届かなくなってからかなり暗くなってしまった。

 

そう思いながら、数分歩き広間についた。広すぎて奥が見えないがここが住処ってことでいいのかな?

 

 

(大賢者…超感覚(ハイパーセンス)で暗視+聴覚強化)

 

(了)

 

超感覚(ハイパーセンス)を大賢者で調節する。

 

(自分で調節すると、変に聞こえたり、遠くが見えすぎたりしちまうからな…超感覚(ハイパーセンス)の調節は大賢者に任せていいとしても、自分で調節もできるようにしなければなぁ…てか暗すぎないか?住んでいるやつがいるとは…)

 

 

「おい愚者(フェルズ)ここで本当にいいのか?」

 

考え事をしながら歩いていたせいかいつの間にか、後ろに行ってしまった愚者(フェルズ)に声をかける。

  

ん?返事がない、

愚者(フェルズ)?」

 

今度は後ろに振り向く…ローブをかぶった骸骨はそこにいなかった。

 

「…あれ…っつ!!」

 

振り向いていた俺に後ろから大剣が振り下ろされた

それにギリギリで気づけたため、跳躍し回避する。

 

 

後方に下がりながら、大剣が振り下ろされた方向を見る。

そこには緑の鱗を纏った竜人…リザードマンがいた。

 

(リドだよな?なんで攻撃を…)

 

リドの背後には石竜のグロス、蜘蛛のラーニェがいた。

 

(全員殺気立ってる?)

 

異端児(ゼノス)達は決して友好的な態度ではなかった、それどころむしろ敵対的な態度すら感じる。

 

「お前ら…やる気か?」

 

言葉が通じるはず、それなのに返ってくるのは言葉ではなく、鋭利な刃のみ…

 

「…」 

 

訪れる思考

《サンダー・ボルト》で牽制すれば…否、それは向こうに怪我をさせる恐れがある。

 

全力で回避すれば…否、もう間に合う距離ではない。

 

【闇の権能】や《インペリアル》による防御は…否防いだところで防ぎきれず被害は出る。

 

俺の目まぐるしい思考に《大賢者》が答えを出す。

そして剣が届くギリギリで俺が選んだ選択は…

 

無防備に立ち、目を閉じることだった。

 

そのまま振り下ろされる剣…それが俺の後頭部をかすり、吹き飛ばされる。

 

受け身を取らず、受けたため衝撃により壁に激突。

 

「くはぁっっ!!」

 

内臓が少し傷ついたためか、口から血を吹き出す。

 

「はぁはぁ…」

 

どうにかして立ち上がろうとするが、頭からの出血のせいか上手く立ち上がることが出来ない。

 

腕も使い、倒れそうになりながらどうにかして立ち上がる。

やっと前を向いた先にあったのは、石竜の爪だった。

 

(告、反撃可能)

 

《大賢者》から声が聞こえた。しかしそれを意識的に無視。

そのまま爪を腹で受ける。

 

腹から内臓と骨が壊れる音がした。

 

俺はそのまま攻撃を受けづつけた。何度も何度も

10度ほど受けたあとだろうか…俺は死ぬ1歩手前の状態で床に倒れていた。

内蔵ボロボロ、俺は20本は折れている。

片目を潰れた。しかし意識は《大賢者》に保たせていた。

 

(告、何故反撃しないのですか?)

 

大賢者から声がした。てかこいつ喋れたのかよ…

 

(あいつらは俺の敵じゃない。)

 

(否、明確に敵意を持って主を攻撃してきています。反撃すべきです。)

 

(そうだな。俺は歓迎されてない。それは事実だな。)

 

(では…)

 

(でも反撃はなし。少なくとも1回は殺されてもいい。どうせ復元できる。)

 

(…)

 

(そう怒るなよ…)

 

(理由の説明を求めます)

 

(あいつらは…異端児(ゼノス)は人間に虐げられてきた。意識的にも無意識的にもな…特に仲間を失っても反撃することがままならない、あいつらの気持ちも理解出来る。そんな時期に来た異端の存在…それが俺だ。わかるな?)

 

(…)

 

(あいつらは多分知りたいだよ…俺が敵でないことを。だから反撃はしない、)

 

(防御しない理由は?)

 

(なんとなくだけど…今は罰が欲しいんだ。救えなかった罰が)

 

(?)

 

(この前の食料庫の戦いでも、バグとの戦いでも…俺は何人か殺しちまっている。)

 

(否、直接的な原因は)

 

(ああ、わかってる…でも、俺がこの世界に来たから起きた事ってのは確かだ。ほんとは死ななかったやつが、死んだ。それは変わらない。)

 

(あいつらの人生をめちゃくちゃにしたのは俺なんだ)

 

自罰的…傍から見ればそうだろう。しかしレイにとっては自分が原因だと自覚している。自分が…異世界人が原因なのだ。ならば自分は居なくなるべきなんだろう。しかし…自分はもう世界に関わりすぎた。

世界を、周りの人を守りたい…そう考えてしまっている。

これは俺の欲望(エゴ)だ。

だから罰が欲しかった。

 

(だから俺の欲望(エゴ)に付き合ってくれ、頼む)

 

(了)

 

その一言と共に《大賢者》の声は消えた。

そして背中から少し変化があった。

か細い変化…しかし確かな変化が

 

閉じていた片目を開ける。倒れながら見えた景色は半分が地面…半分の空には竜人が写っていた。

 

「殺すなら優しく頼むぜ?リド」

 

刃を振り下ろされると思った俺は最後にひと声かける。

どうせ死ぬことは無いが…首を落としたことは多分ない…もしかしたら魔法が発動しないかもしれない。

だから遺言…いや呪いを残しておく。

 

刃を振り下ろそうとしている竜人の顔が少し歪んだ気がした。多分気の所為だろう。

 

 

「そこまでだ!!!」

 

刃が俺の首元の直前で止まる。

この声は…

 

「もういいだろう?グロス、ラーニェ!」

 

愚者(フェルズ)?か?

 

「いいや!まだだ!!まだ納得出来ん少なくともこいつを1度殺す!」

 

「しかし…」

 

女の声がする…確か蜘蛛人のやつだったよな?

 

「俺っちからも止めされせてくれ!!グロス、ラーニェ」

 

「…わかった。マリィの血を使え…」

 

剣が下げられ、代わりに血を飲まされた。

マリィ…マーメイドの生き血…つまり

 

飲んで数秒後、俺の傷は全て治り…片目を治った。

 

全快かよ…すげえな生き血。

 

すぐ立ち上がり自分の状態を確認して驚く。

 

驚いたあと隣にいた竜人…リドの方を向く。

 

リドは顎をかきながら、何かを考えるようにした後…土下座した。

 

「悪かった!!ほんとに死にかけにしちまって!」

 

え?

 

初手で謝罪が来ると思っていなかった俺は驚いたが、すぐリドを立ち上がらせる。

 

「平気だから、顔を上げてくれ」

 

「なら良かった…とはならねぇが…改めて…おっほん!!」

 

「俺っちがリドだ!ここの頭領をみたいなもんをやらせてもらってる!」

 

「俺はレイだ…アメミヤ・レイ。よろしく」

 

挨拶の後手を差し出す。

 

リドはそれに少し驚くが…すぐに俺の手を取った。

ゴツゴツした鱗の手…しかし確かな温かみがある。

 

これが俺の…俺と異端児(ゼノス)達の最初の…最悪で最高な出会いだ。

 

 

 

 

 




新情報
大賢者さん喋れる。


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