祖父と孫 (森羅万象チョコ)
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炎上汚染都市冬木
召喚


 

考えてみると長かったようで短かったようにも思える。

自分の年齢が自身の父親を追い越し、80を越えた今ならわかる。

儂は◼️◼️◼️◼️◼️とは違う道を進めた。

目標も自分にとっての答えを見つけられた。

ただ一つ悔いがあるとすれば、

 

 

 

『おじいちゃん!』

 

 

 

孫のことをもう少しだけ見ていたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーー!」

 

誰かに呼ばれた気がしてふと目を開ける。

 

そこには一面の(地獄)があった。

その景色は自身の最も古い記憶に酷似していた。

 

「呼ばれたのか・・・?」

 

()はサーヴァントとなっていた。

 

「ーーーー!」

 

先ほど俺を呼んだ声は空耳などではなく、何を言っているのかわからないほどに離れた場所から聞こえているらしかった。

罠かもしれない。

そんな考えが一瞬だけ頭を過ったが、直ぐに俺は走り出していた。

いつぞや、誰かに『破綻者』と言われた己の性が明らかに切羽詰まっているであろうその声を無視することを許さなかった。

 

声のする方へと走る。

サーヴァントとなり強化された足は生前経験したことの無い速さで燃え盛る地獄を駆け抜けた。

そして、たどり着いた先には白髪の身なりの良い少女に西洋の鎧姿の少女、そして赤銅色の髪の少女がいた。

どうやら声の主は彼女達らしく、彼女達は全身が骨しかない存在、所謂竜牙兵に襲われていた。

俺は両手に一つずつ使いなれた剣を投影するとそれらを投擲する。

生前何度も世話になったその一対の剣の性質は良く理解していた。

全身が骨である以上斬撃よりも打撃の方が効果的ではあるのだろうがこの剣であれば問題はない。

投擲した二本の剣は寸分違わずに二体の竜牙兵の核を破壊すると俺の方へと戻る。

それを知っている俺は残っている竜牙兵へと駆け出す。

俺が竜牙兵の目の前にたどり着いた瞬間に二体の剣は手元に戻る。

俺はその剣で残っている竜牙兵を切り捨てると先程まで襲われていた少女達に向かい直る。

どうやら赤銅色の髪をした少女がマスターらしく、俺との間に魔力のラインが繋がっていることがわかる。

かつて契約していたサーヴァントも同じ感覚だったのだろうかと感慨に浸っていると、白髪の少女が俺に怯えたような目をして口を開く。

 

「あ、あんた何者よ・・・?」

「自己紹介がまだだったな。サーヴァント・セイバー。衛宮士郎だ」

 

俺は赤銅色の髪をした少女の方を向くと、

 

「お前が俺のマスターか。よろしくな」

 

そう言った。

すると、その少女はわなわなと震え出す。

他の二人の少女はその様子に彼女を心配する素振りを見せる。

そして、その少女は俺の方を指差すと叫んだ。

 

「おじいちゃんじゃん!!!!!」

「なんだ、お前立香か!」

 

誰が言ったのか。

 

「え?」

「「「ええええええええええ!?」」」

 

その場にいた俺と少女、それ以外の人間は死ぬほど驚いたらしい。

 

 

 




衛宮士郎
クラス セイバー
宝具 「無限の剣製(Unlimited Brade Works Beyond Fate)
ランクEX レンジ??? 最大捕捉???
自らの心象風景を展開し、その内部に取り込んだ敵に対して剣を無限に作り、ただ一つの剣として纏め上げ切りつける宝具。
その心象は歯車が空に浮き、剣が無限に突き刺さる草花に覆われた丘となっている。
彼がたどり着く境地ではほとんどの場合寂れた荒野になるのだが、彼の場合は自身の夢である『正義の味方』の守る相手に優先順位を設けることで大多数のために少数を犠牲にするのではなく、大多数も少数も助けることを選んだことにより守るべきものとして草花が彼の心象に追加され、その心が曇ることは無かったことから空は雲一つ無い青空である。






作者です。この衛宮士郎は家族を得た上で、それらと共に歩みながらも戦う以外の方法で『正義の味方』を全うする道を選んだ存在として書きました。
そして藤丸立香の実の祖父にすることで、FGOの時間軸等の設定を変更しています。
感想くれ。


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冬木にて

感想ありがとナス!


俺、衛宮士郎とマスターである藤丸立香が祖父と孫の関係であるという衝撃から回復した一同は俺と立香を問い詰めていた。

というか、俺も立香に問い詰められている。

 

「藤丸、あなた士郎さんの孫だったの!?」

「それはそうなんですけど、おじいちゃんってそんなにすごい人なんですか?」

 

オルガマリー・アニムスフィアと名乗った少女に立香がそう聞かれると不思議そうに俺のことを知っている理由を聞き返す。

正直、心当たり自体はあるが、自分で話すと自画自賛しているようであまり気分の良いものではない。

なので、誰かが代わりに説明して欲しかったのだが、それは通信越しに叶えられた。

 

『君のおじいさんの士郎さんは様々な魔術師が至ろうとしている最高クラスの魔術の使い手として有名なんだ。彼とその妻が提出した彼の魔術の論文は今でも魔術師の総本山である時計塔で多用されているほどだよ』

「まあ、論文に関しては、俺の功績は実験に協力した程度でしかないがな」

 

ロマニ・アーキマンと名乗った男の説明の通り、俺は生前時計塔にいくつか論文を提出していた。

そうでもしないと俺の命や周囲の生活に悪影響を及ぼしかねなかったので仕方なかった部分もあるのだが、これに関しては時計塔のロードの一人や名門魔術師の知り合いが口利きをしてくれたため、それほど大事には至らなかった。

 

「それだけじゃないわ。私の父がカルデアを創設する際の資金援助や英霊の召喚システムの確立にも大きく貢献して下さったのよ」

「アニムスフィアってどっかで聞いたと思ったら、あんたマリスビリーの娘か?」

「ええ、その通りです」

 

俺は生前カルデアの創設に際して、妻と共に召喚システムの確立などに対して手助けを行ったのだ。

まあ、資金援助に関しては妻が若い頃苦労していたことも関係していたりするのたが。

 

「なるほど、先輩のおじいさまはかなり有名な魔術師だったのですね!おや?では何故先輩は魔術について何も知らなかったのでしょうか?」

 

マシュ・キリエライトと言う少女がそう疑問を口にする。

 

「それは、あれだ。俺の子供の内立香の母親は魔術の才能を持っていなかったからだ。幸い兄の方が魔術師を継げたからそっちの血縁が今のところ魔術師を継いでるんだよ。娘にはうちの家系が魔術師だって言うのは伝えているけどな」

「なるほど・・・」

「それは私も魔術を知らない訳だね。それはそうとして、おじいちゃんどうして旧姓を名乗ってるの?」

 

そう、俺が衛宮士郎だったのは数十年ほど前までのこと。

 

「俺は衛宮士郎として英雄的な活躍をしたってことだ。姓が変わってからは『正義の味方』の方向性を結構変えたからな」

「でもおばあちゃん怒らない?結構そういうところ気にするよ?『なんで衛宮を名乗ってるのよ!』とか言いそうじゃない?」

「・・・確かに。じゃあ、一応死んだときの姓で名乗るかね、遠坂ってな」

 

俺、衛宮士郎は27歳の時より遠坂士郎となっていたのだった。




圧倒的説明回。
というか、作者が説明大好きなのです。


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サーヴァント

感想来てて嬉しいぜ!
もっとくれ(強欲)
評価もくれ(超強欲)


2004年の冬木にて、俺達は特異点の修復のため、拠点になりそうな場所ということで穂群原学園へと歩みを進めていた。

本当は衛宮邸を拠点に使いたかったのだが、燃えてしまっていたために、遠くからも建物が無事なのがはっきりとわかった学園を目指すことにしたのだ。

 

「そういえば、立香が俺を召喚したときになんで近くに召喚されなかったんだ?」

「いやーそれはですね・・・」

 

俺が質問すると立香が罰が悪そうにする。それを怪訝に思っていると、オルガマリーが呆れた様子で説明した。

 

「彼女は戦力の増強のためのサーヴァント召喚の詠唱を一言間違えてしまったんです。そのせいで、召喚の位置がずれたのではないかと」

「本当に()()()()してたよ・・・」

 

凛、どうやら立香はしっかり遠坂の血筋らしいぞ。

などと心の中で思っていると、

(誰がうっかりよ!誰が!)

(士郎君、うっかりを勝手に遠坂の遺伝ということにしないで欲しいのだが・・・)

キレる妻と微妙な顔をする義父の声が聞こえた気がした。

 

 

話をしながら歩いていると川に差し掛かる。

その川を上っていけば穂群原学園へと障害を少なくしてたどり着けるはずだった。

魔力の反応。

 

「っ!立香下がれ!」

 

その声にマシュの後ろに立香が跳ぶ。

そして、数瞬前まで立香が立っていた場所に鎌が突き刺さる。

 

『さ、サーヴァント反応だ!』

「な、なんなのよ!」

 

土手の上。

複数の人影の中にとてつもない魔力を放つ人影が1人。

 

「残念です。もう少しで久しぶりのご馳走にありつけたのに・・・」

 

汚染され、クラスも俺の知るものとは違うのだろう、だが確かに知った顔のサーヴァントがそこにいた。

 

「ライダー・・・!」

「生憎、今回の私はライダーではありませんよ、シロウ。私はランサーです」

 

どうやら、この特異点の俺も彼女と顔見知りだったらしく俺の名を呼ぶ。

 

「お、おじいちゃん?」

「下がってろ、こいつの相手は俺だ。マシュは立香とオルガマリーを頼む」

「は、はい!」

 

俺はいつもの二本の剣を投影し、構える。

 

「ふふ、人間のマスターが私に勝てるとでも?・・・おや?あなた、サーヴァントですね。どのような手を使って生き残ったのかと思いましたが、まさかサーヴァントとは。やはり聖杯はどこかおかしくなってしまっているようですね」

「喋りすぎだ、ランサー!!」

 

戦いの火蓋は切って落とされた。

最初に仕掛けたのは俺だった。

干将莫耶を投擲し、別の剣を投影し切りかかる。

ランサーは干将莫耶を弾くと同じく飛びかかる。

一合、二合、三合と武器を打ち合うものの、どちらも決定的な攻撃を出来ないまま一旦お互い距離を取る。

俺もランサーもどう攻めたものかと一瞬考えた瞬間だった。

 

「《アンサズ》」

「っ!?誰だ!」

 

炎がランサーを襲う。

 

「誰かってそりゃ、決まってるだろ」 

 

声の主が霊体化を解く。

ランサーはその姿に覚えがあるらしく、その名を叫ぶ。

 

「キャスター!?何故お前がそのはぐれものに力を貸す?」

「あ?んなの決まってるだろ、こいつらのがてめえらより百倍マシだからだよ!!」

 

キャスターはルーンを飛ばす。

 

「お前、ランサーじゃねえのか!?」

「俺だってランサーのが良かったさ!というか、セイバーのマスターの坊主、てめえなんで生きてやがる!?人間は全員消えちまったんじゃなかったのか!?」

「俺はサーヴァントだ!間違っても生き返った訳じゃねーぞ!」

 

ランサーと打ち合う。

 

「なるほど、生き返ったってよりかは現実味が出てきやがったな!それに魔力の気配がサーヴァントだ!」

「雑談とは余裕ですね!!」

 

ランサーに俺とキャスターは吹き飛ばされる。

 

「こりゃ、もう少し真剣にやった方がいいな」

「なら、俺が前に出る、キャスターは後ろを頼む」

「了解!坊主に任せるぜ!」

 

俺は剣を投影しなおすとランサーへ走り出す。

ランサーの間合いに飛び込むと俺は左手に持っていた刀を上空に投げると右手の剣でランサーの体に打ち込む。

ランサーもただではやられず、鎌で右手の剣を弾き飛ばす。

だが、

 

「ガハ・・・!」

 

霊核を砕いたのは、俺の右手に握られた刀だった。

俺が持つ刀は俺が上空に先ほど投げた刀だった。

 

ランサーが消滅する。

 

「やるじゃねえか、坊主」

 

キャスターが俺に近付いてくる。

 

「まあな。あとこれでも歳は80過ぎてるんだが」

「マジかよ!?ジジイじゃねーか!お前本当にサーヴァントなんだな・・・」

「おじいちゃん!」

 

キャスターの後を追って立香達がやってくる。

 

「おじいちゃんだあ?お前、自分の孫に召喚されたのか」

「まあな。立香、怪我はないか?」

「うん!マシュが守ってくれたから、所長も私も無事だよ」

 

どうやらマシュが守ってくれたらしい。

デミ・サーヴァントと言うのも伊達ではないらしい。

 

「それで、あなたはキャスターのサーヴァントなの?」

「おう。だがその話はもっと安全な場所でしようぜ。ここじゃあ魔獣が寄ってくる」

 

その言葉に同意した俺達は川を上流に向かって進んでいくことにした。

皆が、進むなか俺は先程戦っていた土手の上を見る。

 

「慎二・・・」

 

土手の上に見えた人影はランサーの魔眼により石化させられた人間の姿だった。

その中に親友の姿を認めた俺は、この特異点を救うことを決意したのだった。




特異点云々の話は道中でロマニ達から説明されていたりします。


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アーチャー

感想サンキュー!
もっとだ、もっと感想を寄越せえ・・・
そいつは俺のモチベーションの維持に必要なんだぜぇ(錯乱)


 

「それで、この特異点で何が起きたんだ?」

 

穂群原学園にて、俺達は休息をとっていた。

そして、休むついでにキャスターことクー・フーリンと情報公開をすることにしたのだ。

 

「俺にも詳しいことはわからねえ。わかってるのは、ある時一夜にして街が炎に包まれたこと、そして人間が消えたってことだ」

 

クー・フーリンが言うには、その後マスターのいない聖杯戦争を真っ先に再開したのはセイバーであり、セイバーによってアーチャー、ランサー、ライダー、アサシン、バーサーカーが倒され、汚染されたとのことらしい。

 

「アサシンとライダーは俺が倒した。ランサーはさっき倒したやつだな。バーサーカーは近づかなけりゃ襲っては来ねえだろ」

「問題はセイバーとアーチャーか・・・」

「真名はわかってるの?」

「アーチャーはさっぱりだな。赤い外套を纏った双剣使いってのだけはわかってるんだがな。そういや、ちょうど坊主が投影してた剣と同じやつを使ってやがったな」

 

クー・フーリンがそう言うと皆の注目が俺に向く。

 

「あの剣は干将莫耶。中国の物だ。」

「じゃあ、中国の英雄と言うことでしょうか?」

「いや、それは違うだろう。あいつは俺が参加した聖杯戦争で、凛のサーヴァントだった。俺と凛は協力関係だったし、あいつ自体とも因縁がある。赤い外套のアーチャーなんてあいつしかいないだろうな」

「あいつって?」

「詳しいことは言えない。でもそうだな、もしカルデアに召喚されたら聞いてみればいい」

 

アーチャーの真名は適当に誤魔化す。

特に理由はないが、そうした方が良かった気がした。

 

「何はともあれ、アーチャーは俺がやる」

「そうかい。俺としてもあいつとは白黒付けときたかったんだが、まあいい。今回は譲ってやるよ。それで、セイバーの真名だったな。あれは宝具を見れば誰だってわかる。何せ世界で一番有名な聖剣の使い手だからな」

「・・・エクスカリバーか」

「嘘でしょ・・・?あのアーサー王がセイバーだって言うの?」

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

柳洞寺の前にて

 

「ここの先にある大聖杯の前にセイバーはいやがる。覚悟は出来たか?」

 

全員が頷く。

 

「キャスター、ノコノコとやって来てなんのつもりだ」

「出やがったなアーチャー!」

「出やがったもなにも、私は常にここにいたはずだ

が?」

「うるせえよ!言っとくが今回はセイバーに用がある。てめえには興味ねえよ!」

「私が貴様らを大人しく通すとでも?」

「通すさ。俺達の相手をしてる暇なんてねえだろうからな」

「何を言って・・・っ!?」

 

立香達が走り出す。

アーチャーはそれを狙おうと弓を構えるが、俺が狙撃したことでそれは叶わない。

 

「よう、アーチャー。お前の相手は俺だぞ」

「小僧!?何故貴様が生きている?」

「見りゃわかるだろ。サーヴァントだよ」

「っ!!!」

 

アーチャーが激昂して襲ってくる。

恐らくだが、この世界の俺に対しても『正義の味方』を目指すのをやめるように言ったに違いない。

 

「守護者になったと言うのか!お前のその夢に意味などないと言ったはずだ!」

「俺はお前とは違う!」

 

アーチャーを吹き飛ばす。

 

「なんだ、この力は?貴様、何をした?」

 

アーチャーからしてみれば俺の強さは異常だろう。

アーチャーは守護者として戦い続けたことで今のサーヴァントとしての戦い方を学んでいたはずだ。

奴からすれば、俺は衛宮士郎としての素のステータスが高すぎるように感じたのだろう。

 

「この力がお前との差だアーチャー。」

「何?」

「このステータスの差は所謂知名度補正と言うやつだ」

「まさか、貴様守護者にならずに自力で英雄になったとでも言うのか!?」

「そのまさかだよ!」

 

干将莫耶で切りつけるが、アーチャーも同じく干将莫耶でそれを防ぐ。

 

「っ!これは!」

 

アーチャーは気がついたようだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()!?」

 

衛宮士郎の投影魔術は特異な魔術だ。

投影したものはどれ程時間が経っても消えずに残る。

そして、投影は特に剣の完成度が高い。

だが、宝具を投影するとどれだけ正確に丁寧に投影したとしても必ず()()()()()()()()()()()()

 

「何故だ?何故、ランクが落ちない・・・!」

「簡単だよ。俺はやり方を変えたんだ」

「やり方だと?」

「『正義の味方』のな」

「どういうことだ。貴様のその夢が破綻していることはすでに貴様も認めたはずだ」

 

確かに認めた。

俺は破綻者で、借り物の夢を語っていたに過ぎない。

 

「確かに俺の夢は借り物で偽物だったのかもしれない。だけどな、偽物の夢が叶わない道理は無いんだよアーチャー。今から俺がそれを証明してやる!」

 

魔術回路を起す。

 

「何をする気だ・・・?まさか!」

 

「『体は剣で出来ていた。』」

 




アーチャーがバカすぎるかも?
汚染されてるってことで許して!


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セイバー

この先セイバーがあるぞ(エルデン並感)


大聖杯。

それは極東の国、日本の冬木市に設置された巨大な魔術炉心である。

 

「これが大聖杯・・・?特大の魔術炉心じゃない。こんなものが極東にあるだなんて・・・」

 

立香達一行は大聖杯へと歩みを進める。

 

『止まれ!強力なサーヴァント反応だ!』

「ほう、面白いサーヴァントがいるな」

「あれが、セイバー・・・!」

 

大聖杯より現れたのは黒い鎧で身を纏ったサーヴァント、セイバーだった。

 

「その盾をどれ程使いこなせるのか試してやろう!」

「構えな、嬢ちゃん!来るぜ!」

「はい!マシュ・キリエライト、戦闘を開始します!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・私の敗けだ、衛宮士郎」

「そうか。もっと頑固かと思ったんだがな」

「フッ、あのような心象を見せられてはな。衛宮士郎(オレ)にあんな心象を抱くことが出来るとは思わなかった」

 

アーチャーは地面に倒れるも、どこか清々しそうな面持ちでそう言った。

 

「人間は変われる。俺だって人間だったってことだ」

「わかるとも。お前の宝具を見れば誰でもわかる。随分と慕われたな」

「ありがたい限りだが、それはお前も同じだろ?お前が見ようとしなかっただけでな」

「それもそうか・・・」

 

アーチャーの体が黄金の粒子に変わっていく

 

「どうやら、私はここまでのようだ。早くセイバーの元に行きたまえ」

「おう、もとからそのつもりだ」

 

俺はアーチャーの側を離れ、大聖杯の方へと歩みを進める。

 

「・・・ではな、衛宮士郎」

「ああ、またな。エミヤシロウ」

 

 

 

 

 

 

 

 

時は立香達の側へと戻る

 

「『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』!!!」

「っ!」

 

エクスカリバーの光が迫るなかマシュは大聖杯までの道中のクー・フーリンの言葉を思い出していた。

 

『宝具ってのは英霊の本能みたいなもんだ。まあ、命の危機が迫りでもすれば使えるんじゃねーか?ああ、あとはマスターの命の危機とかな』

 

(今、私が宝具を使えなければ後ろの先輩や所長の命が危険です!なら、私はっ!)

 

「マシュ、体の力を抜いて」

「先輩!?」

「ほら、緊張してたらできることも出来ないでしょ?大丈夫、私がついてる!」

「先輩、ありがとうございます」

 

マシュの魔力が膨れ上がる

 

「ハアアアア!!!」

 

マシュの盾を中心に青白い魔力の巨大な盾が造り出される。

そして、その盾はエクスカリバーの光を一身に受けた。

 

「マシュ!」

「盾の嬢ちゃんを信じてやりな!」

 

光が薄くなり、大聖杯のある空洞が元の暗さを取り戻すとマシュと立香の姿が見えてきた。

二人は無傷。

マシュは宝具を使用したことにより、多少消耗している様子が見られたが、傷自体は全くなかった。

 

「なるほど、今のを防ぐとはなかなかだな」

「何、余裕こいてやがんだ!《アンサズ》!」

 

クー・フーリンが攻撃し、マシュが防ぐ。

うまく二人の戦い方が噛み合い、大聖杯のバックアップを受けたセイバー相手でも互角に戦えていた。

 

「チッ、このままじゃあ埒があかねえな。盾の嬢ちゃん、俺が宝具を使うだけの時間を稼げ!」

「は、はい!」

「私がそれを見逃すとでも思ったのか!」

 

セイバーの攻撃が激しくなる。

マシュは次第に消耗していくも、懸命に耐えた。

 

「準備出来たぜ、食らいな!灼きつくす炎の檻(ウィッカーマン)!!」

「無駄だ、約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!」

 

宝具がぶつかる。

その威力は、それなりの時間準備したキャスターとろくな準備もせずに速射したセイバーで拮抗していた。

それは乱入者によって崩れることとなった。

 

「Iam the bone of my sword, 『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』!!」

 

セイバーに向かって飛んできた剣が爆発する。

それは宝具の爆発。

普通の英霊であればまずしないその攻撃は、一人の英霊の手によるものだった。

 

「おじいちゃん!」

「悪い、アーチャーに少し時間かけすぎた!」

 

そう、衛宮士郎である。

衛宮士郎の登場にカルデアの面々は安心したような反応をした。

しかし、セイバーの動揺は大きいものだった。

 

「シ、シロウ!?」

 

その動揺は致命的なものであり、その瞬間に勝敗は決した。

倒壊する炎の巨人とそれに巻き込まれるセイバー。

巨人が消滅した後には、確かにセイバーはまだ消滅してはいなかった。

だが、すでにセイバーは限界である。

真正面から宝具を受けたのだ、いくらセイバーとは言え、限界はあったということだ。

 

「セイバー」

「シロウ・・・?本当にシロウなのですか?」

「見ての通りだ。サーヴァントとして呼ばれたんだ。そこに関してはアーチャーとたいして変わらないな」

「先程の狙撃、見事なものでした。あの一撃にあなたの研鑽の全てが乗っていましたよ?強くなりましたね」

「伊達に80年も生きてねえよ、これでも正規の方法で英霊になってるんだからな」

 

いつの間にかセイバーの体の汚染は消えていた。

セイバーは眩しそうに目を細める。

その体はすでに消え始めていた。

 

「シロウ、どうかお気をつけて。聖杯を巡る戦い、グランドオーダーはまだ始まったばかりです。・・・最後にあなたにあえて良かった」

「待て、それは一体どういう意味なんだ!?」

 

それに答える前にセイバーは退去した。

最後の顔はきっと幸せそうであったことだろう。

 

「うお!?俺もここで終わりみてえだ!次に呼ぶときはランサーで呼んでくれよマスターの嬢ちゃん!」

「は、はい!ありがとうございました!」

 

キャスターも退去し、特異点は修復された。

 

「それで、これがこの特異点の原因の聖杯か」

「セイバーさんがお持ちでいらしたようですね。私の盾であれば安全に保管出来るようです」

「なら、任せるぜ」

 

ひとつ目の聖杯はカルデアに渡った。

残りの特異点は全部で7つ。

まだ、戦いは始まったばかりである。




次回で冬木終了です。


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帰還

冬木ラストスパート!


 

『特異点の修復を確認しました、所長』

 

通信越しにロマニが言う。

 

「ええ、こちらでも聖杯を確保したわ」

「はい、それでは帰還ということでしょうか?」

『まあ、そうなるかな。みんなお疲れ様』

「いやー、まさか魔術に片足突っ込んだあげく、タイムスリップすることになるとは思わなかったよ」

 

特異点の原因であった聖杯を回収し、和やかな雰囲気になりかけた時だった。

士郎のサーヴァントとしての勘が危険を知らせたのだった。

 

「まだだ。まだ終わってねえ」

「おじいちゃん、それどういう・・・?」

 

立香の質問を無視し、士郎は大聖杯の方を向く。

 

「出てこいよ、そこにいるのはわかってる」

「ほう?衛宮士郎、どれ程のものかと思ったが、案外勘が鋭いな」

 

そこにいたのは、レフ・ライノール。

カルデアの爆発の()()にいたはずの男であった。

 

『レフ教授!?』

「爆発で亡くなったんじゃ!?」

 

士郎はレフを睨みながら、マシュにボソリと呟く。

 

「マシュ、レフに見えないように聖杯を出しておけ。質問は後で聞く」

「は、はい」

 

マシュは士郎に言われたように盾の中から聖杯をレフに見えないように取り出した。

その間にもレフの演説は続いており、オルガマリーがショックを受けたりしていたりする。

 

「最後に君の願いを叶えてやろう」

 

レフは自らに近寄っていたオルガマリーに赤く燃えるシバを見せた後、彼女をそれに取り込ませようとした。

 

「嫌だ!まだ、死にたくない!まだ、誰にも認めて貰ってないのに!」

 

オルガマリーの悲痛な叫びが木霊する。

立香はレフの豹変ぶりに驚き、動けず、マシュは立香の守護と聖杯を保持していることから動けなかった。

だが、一人だけ、動くことの出来る男がいた。

その手はオルガマリーの手を掴んだ。

 

「死なせねえよ。それに、俺は認めてるぜ、オルガマリー・アニムスフィア。若いのによくやってる。だけどな、ここは年長者に任せておけってな!」

 

オルガマリーをカルデア側から引き剥がすとマシュの元に跳躍した。

もちろん、追撃されないようにレフに剣を投擲しながらである。

 

「英霊ごときが小癪な!」

「マシュ、聖杯を!」

「は、はい、どうぞ!」

「おう、サンキューな」

 

士郎は受け取った聖杯をそのままオルガマリーに渡すとこう言った。

 

()()、オルガマリー」

「え・・・?」

「聖杯に願え、生きたいってな。聖杯は特大の魔力リソースだ。死後間もない魂に仮の体を造ることぐらいなら一つだけでも出来る」

『ま、待ってくれ!士郎さんは最初から所長が亡くなっていたことに気が付いていたのか!?』

「当たり前だろ。カルデアのレイシフトのシステム組んだの誰だと思ってやがんだ。マリスビリーは魔術的な側面は完璧に一人でやってたが、機械だのなんだのってのがてんで駄目だったからな。レイシフトの適正なんかが数値化出来るようにしたのも俺だ。だから、オルガマリーの適正がレイシフト不可能なレベルなのにレイシフトしたなら自ずと答えはわかるって訳だ」

 

遠坂はアニムスフィアの研究に資金を援助していた。

それは、とある魔術師の手によりアインツベルンから盗み出された聖杯の製造方法から造られた亜種聖杯により起きた聖杯戦争の参加者であったマリスビリーとそれを解決に来た遠坂の取り引きの結果であるのだが、話の本筋には関係ないので割愛する。

ともかく、マリスビリーと遠坂に出来た縁により士郎は魔術と機械に強い稀有な存在としてカルデアに技術支援を行っていたのだ。

そんな士郎はレイシフトを行う際に、肉体を移動させることが一番の難点であり、逆に言えばレイシフト適正が完全に肉体に依存した物であることを知っていたのだ。

 

「俺は魂だけであれば誰でもレイシフト出来ること、そして聖杯が具体的に何を出来るのかを知っていた。だから、最初から解決する手段を手に入れるために特異点を修復する気だった。まあ、お前が出てきたから、ちゃんと陣を敷いてやる予定が崩れちまったけどな」

 

誰もが驚いた。

オルガマリーは自身の手にある聖杯を見つめ、覚悟を決めたようだった。

 

「わかったわ、士郎さん。聖杯を使います」

 

オルガマリーの覚悟を感じ取ったかのように聖杯が輝き出す。

 

「聖杯よ、どうか私に肉体を!」

 

その願いは叶えられた。

この時、オルガマリー・アニムスフィアは運命を越えたのだ。

聖杯の光が収まった時、レフ・ライノールの前には何者もいなかった。

 

「ふん、逃げたか。まあ、良い。どうせ奴らには何も出来ん」

 

レフは思った。

あれ?フラウロス名乗るの忘れてね・・・?

 




これからの予定だけど、士郎が絡んでたいして変わり無さそうな特異点はすっ飛ばしたいと思います。
正直、オルレアンに士郎行っても何も変わらないので。
後はアンケートお願いします。


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カドックと衛宮士郎

アンケート結果に沿って書いていくぜ!


カドック・ゼムルプスは魔術師である。

ポーランド出身の魔術師としては平凡で、特筆すべきところはない、そんな青年である。

さて、本来の歴史であれば彼はカルデアのレイシフトAチームに選ばれ、初めてのミッション開始直前に爆破され死亡するはずであった。

そんな彼の人生は本来の歴史と大きく変わっていたりする。

転機は彼がまだ6歳になったばかりの頃まで遡る。

 

彼が母親と共に訪れたコンビニ。

片田舎にあるその場所はたいした客もいない地元の住民が利用する程度のものでしかなかったのだが、何を考えたのかその店で強盗が出たのだ。

幼いカドックと戦闘向きの魔術師ではなかった母親は震えるばかりであったが、その店にいたアジア人の老人の手によりその事件は解決された。

後からカドックが聞いた話では、その老人こそ亡くなる数年前の英雄衛宮士郎であったのだ。

士郎はポーランドの地で起きた魔術師による連続殺人事件の捜査に協力しており、たまたま買い物に店によっていたのだ。

士郎の事情はともかく、幼いカドックにとってその経験は鮮烈で、その一件から彼は衛宮士郎の所謂ファンになっていたのだった。

 

 

 

時は現代に戻る。

レイシフトを終え、冬木より帰還した士郎は召喚室にいた。

 

「それじゃ、いっちょ召喚と行こうか!」

 

マスターである立香が新たな戦力となるサーヴァントを召喚するためである。

勿論、士郎とマシュも同行し、管制室で所長達によるバックアップも行われている。

床に置かれた星晶石(なけなしのカルデアの電力から生成された魔力の塊のことである)が光輝き、サーヴァントが召喚される。

最初に召喚されたのは

 

「サーヴァント、ランサー。クー・フーリンだ、よろしくなマスター」

「おお!兄貴だー!」

 

全身青タイツのランサー、クー・フーリンである。

 

「今回は聖杯戦争じゃねえらしいが、まあ人理の危機ってならしっかり働くぜ」

「はい、よろしくお願いします!」

 

続いて召喚されたのは、

 

「サーヴァント、アーチャーだ。よろしく頼むよマスター。って何故貴様がいる!衛宮士郎!」

「俺がサーヴァントだからだ、アーチャー」

 

赤い外套のアーチャー、エミヤである。

 

「おじいちゃんの知り合いなの?」

「おじいちゃん!?」

「こいつは平行世界の俺だよ。凛とも結婚せずに一人で戦い続けたらこうなるらしい」

「へー」

「んだよ、またこいつか。いい加減運命感じちまうぜ・・・」

「ちょっと待て、おじいちゃんとはどういう意味だ!」

 

なにやらエミヤが騒がしいが、直ぐに最後のサーヴァントが呼び出される。

 

「サーヴァント、セイバー。召喚に応じ参上した。問おう、あなたが私のマスターか?」

「騎士王だー!」

「セイバーも呼ばれたのか。なんにせよ味方なら心強いぜ!」

「おい、質問に答えろ衛宮士郎!」

「久しぶりだな、セイバー」

「ええ、英霊にまで至るとはずいぶんと強くなりましたね、シロウ」

『いやー、良かった良かった。召喚に応じてくれたサーヴァントは皆協力的ですね、所長』

『まあ、そうね。マシュ、取り敢えずそれぞれのマイルームに案内してあげなさい』

「はい、わかりました」

 

叫ぶエミヤに、兄貴と戯れる立香、二人だけの空間を作り出す士郎とアルトリアとかなりぐだぐだな雰囲気になりかけた召喚室であったが、ここで士郎が待ったをかける。

 

「いや、マイルームの前にコフィンまでセイバーと行きたい。ロマニかオルガマリーが来てくれると助かるんだが」

『それなら僕が行きますよ。所長はどうします?』

『・・・私も行くわ、多分大事な話でしょうし』

 

マシュと立香の案内によりエミヤとクー・フーリンがマイルームにいっている間、士郎達は冷凍睡眠させているマスター達のコフィンの前に集まっていた。

 

「この中で優先的に治療した方が良いやつは誰だ?」

「それは、症状的な意味で?それとも戦力的な意味でですか?」

「いや、どっちもだな。症状的に危険なやつから治療したいがな」

「それなら、戦力で見てもらって大丈夫です。皆ケガの具合は同じですので。でもどうやって治療する気何ですか?」

 

士郎はおもむろに鞘を投影する。

 

「こいつを使う。これとセイバーがいれば一人ずつなら治療できる」

「これ、アヴァロンじゃないの!?士郎さんが何故これを?」

「話すと長くなるんだがな・・・」

 

士郎が投影したのはアヴァロン。

一時期士郎の肉体を回復するのに、体内に埋め込まれていた物であり、騎士王アルトリア・ペンドラゴンの宝具エクスカリバーの鞘である。

 

「なるほど!確かに所有者の傷を治癒するアヴァロンであれば瀕死の人間も助けることができる!」

「なら、早速治癒するか?良いか?セイバー」

「私はいつでも構いませんよ」

「ああ、はい!まずはですね・・・」

 

 

そんなこんなで数日後。

アヴァロンによりひとまずAチームのメンバーであるキリシュタリア、カドック、オフェリア、ペペロンチーノ、デイビッドが蘇生された。

ベリルは士郎の知り合いが追っていた殺人者であることが判明したため蘇生が見送られた。

 

「ん・・・、ここは・・・」

 

始めに目覚めたのはキリシュタリアであり、まだベッドから動けないながらも蘇生に感謝していた。

次に目覚めたのは、カドックであった。

 

「医務室だ」

「キリシュタリア!?」

 

カドックは目覚めて早々に包帯グルグル巻きで絆創膏やガーゼだらけのボロボロな姿のキリシュタリアという衝撃的な映像を見せられることとなった。

 

「お前も怪我とかするんだな・・・」

「おかしなことを言うな?私も人間だ、怪我の一つや二つするさ」

 

いつもであれば何を冗談言っているんだとなるところであるのだが、今の姿を見るとそうも言っていられない。

カドックが衝撃を受けていると近くから声がかけられる

 

「おお、お前も目が覚めたのか」

「誰だ?」

「サーヴァントの衛宮士郎って者だ。お前が小さい頃に会ってなかったか?」

 

カドックは喜びと衝撃と怪我の痛みがいっぺんに来て倒れた。




こんな感じで良いですかね?


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医務室にて

評価バー赤いの嬉しいぜ!
感想もモチベーション維持になってるぜ!
助かる。


「いや、うん、わかりました」

 

再び目を覚ましたカドックは士郎から現状の説明を受けていた。

 

「今、まともに動けるのは非魔術師のマスターが一人でケガが一番酷いのはキリシュタリア。他のマスターも動けるようになるまでは時間がかかる、この認識で大丈夫ですか?」

「おう、幸いにもお前はケガは軽い方だし、3日も休めば大丈夫だろ」

「私は内臓なんかも結構酷い状態のようだからね。1ヶ月は大人しくしている予定さ」

 

ちなみに他のマスターも目が覚め始めていたりするのだが、程度の差はあれど誰もが直ぐに動けるようにはならないとのことだ。

と、そこで医務室にロマニが入ってくる。

 

「カドックも目が覚めたと聞いて来たけど具合は良さそうだね」

「まあ、お陰でな」

「士郎さんには敬語なのに私にはタメ口なんだね・・・」

「僕も尊敬している人には敬語を使うさ。あんたはサボりすぎだろ」

「酷いな・・・。っとそうだ、君にマスターを紹介しておこうと思って連れてきたんだ。立香ちゃん、入っておいで」

 

部屋の前で待っていたのかロマニに呼ばれ直ぐに立香が入ってくる。

 

「どうも、マスターやらせてもらってます、藤丸立香です!」

「ああ、よろしく。僕はカドック・ゼムルプス」

「はい!よろしくお願いします!それとキリ様もおはよー!」

「うん、おはよう立香。今日も元気だね」

「キリ様!?」

「おう、立香。冬木の疲れは身体的にも精神的にも取れたみたいだな」

「おじいちゃんの料理のお陰で完全復活だよ!」

「おじいちゃん!?」

「そりゃ、良かった。まあ、あんだけ食べてりゃな」

「ちょっと!?恥ずかしいからやめてよ!」

「よく食べることは良いことだよ、立香」

「全くもってその通り。ご飯は体の回復にとっても重要だからね。たくさん食べるべきだよ」

「私を食いしん坊扱いしないでよー!」

「「「はっはっは」」」

「僕を無視するなー!」

 

ちゃんとカオスである。

 

 

 

おまけ

本編に衛宮士郎が実装されたときのサーヴァント会話

 

クー・フーリン(ランサー)から衛宮士郎

 

「あいつは・・・。いや、昔とある聖杯戦争に召喚されたときに戦った敵のマスターの一人でな。俺が一度ゲイボルグで殺したにも関わらず蘇ったとか言うデタラメな奴だ。ん?あれ、あいつが自分で回復させた訳じゃねーのか!?」

 

エミヤ(アーチャー)から衛宮士郎

 

「む?貴様が何故ここにいる?ふむ、自力で守護者にならない道を選びその上で英雄となったのか。・・・やってくれたのか、遠坂。だが、それと貴様に対する対応を変えるのは別問題だ。シュミレーションルームに来い、衛宮士郎!」

 

アルトリア・ペンドラゴン(セイバー)から衛宮士郎 

 

「おや、彼もここにいるのですね。彼は私の元マスターです。どうやら、自分自身の力で英雄と呼ばれるに至ったようですね。あなたもマスターの先輩として彼から学べることもあるかもしれません。彼のサーヴァントに対するスタンスはあなたと似ているところがありますから。それはそうと、今夜のご飯は何ですか、シロウ?」

 

ギルガメッシュ(アーチャー)から衛宮士郎

 

「贋作者の雑種か。奴は不遜にも慢心していたサーヴァントの俺を生身の身体で倒した男だ。俺ほどではないが貴様の役に立つ位には優秀なサーヴァントだろうな。なに?らしくない、だと?気にするな、思うところが無いわけでも無いだけだ、たわけ。ふん、半端者か。言うではないか・・・」




気が向いたらオルレアンとかはやるかも。
バビロニアとキャメロットは士郎突っ込みたいからやりたいなーと思ってる次第です。


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神聖円卓領域キャメロット
第6の特異点


キャメロット開始です
感想、評価嬉しいのでどんどんください(貪欲)


カルデア管制室にて、

マスターである立香、そしてカドックに彼女らのサーヴァントが召集されていた。

 

「さて、第5の特異点アメリカを我々は3日ほど前に解決したばかりなのだが、第6の特異点へと赴くことにした」

「特異点の位置は中東のエルサレム付近よ。ただ、今回の特異点は今までとは違って完全な座標が出しきれていないの」

「そこで今回は私も同行することになったと言う訳さ!」

 

管制室にいたのは何人かのオペレーターとカルデアの所長であるオルガマリー・アニムスフィア、医療部門トップのロマニ・アーキマン、そして天才芸術家にして発明家のサーヴァント、レオナルド・ダ・ヴィンチだった。

 

「今回はダ・ヴィンチちゃんも一緒なんだね!」

「あんたがいると心強いな」

 

マスター達の反応からもわかるように、ダ・ヴィンチはその気さくな人柄から職員達からは好意的に受け入れられており、機械などの部分でも頼りにされているのだ。

まあ、見た目がモナリザ(あれ)になっている変人でもあるのだが。

 

「それでは、第6の特異点攻略ミッションを開始します。マスターカドックとマスター立香は直ちにレイシフトを開始しなさい!」

「「了解!」」

 

二人とサーヴァントはコフィンへと向かい、レイシフトの準備を済ませる。

 

「よし、準備オッケー!おじいちゃんもマシュも大丈夫?」

「当たり前だろ?サーヴァントに必要なのは心の準備だけだからな」

「私も準備完了です!」

「準備はいいか、アナスタシア」

「それは勿論。あなたこそ準備できてる?髪の毛が跳ねてるわよ?」

「な!?ど、どこだ!?」

「冗談です」

「おい、そういう冗談はやめろ!」

 

勿論カドックのサーヴァントはアナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァである。

このカルデアでは当初のAチームのように一人一騎のサーヴァントが契約している。

ただ、カルデアに協力的なサーヴァントは他にも召喚されていて、彼らは必要に応じてマスターのレイシフトに同行したり、令呪を通じて影を召喚させてマスターの戦闘を手助けしたりしている。

割り当てサーヴァントは、

 

藤丸立香 契約サーヴァント セイバー 衛宮士郎

カドック・ゼムルプス 契約サーヴァント キャスター アナスタシア

キリシュタリア・ヴォータイム 契約サーヴァント ランサー カイニス

オフェリア・ファルムソローネ 契約サーヴァント バーサーカー スルト

スカンジナビア・ペペロンチーノ 契約サーヴァント アーチャー アシュヴァッターマン

芥ヒナコ 契約サーヴァント ライダー 項羽

 

と、なっている。

ちなみにオフェリアの契約サーヴァントであるスルトは全てを焼き付くそうとしていたが、カルデアの人々の説得と本人の全てを焼き付くそうとした動機により現在ではオフェリアの後方彼氏面する変なやつになっている。

 

(クク、オフェリア)

 

他にも未だに目覚めないデイビッドや瀕死で冷凍されているベリルなんかがいたりするのだが、ベリルのAチームの席は立香に変わっている。

カドックはケガが一番軽かったので第4特異点の攻略から参加してたりもする。

 

閑話休題

 

「よーし、準備は出来たみたいだね!いざ、レイシフトと洒落込もうぜ!」

 

ダ・ヴィンチの掛け声と共にレイシフトが開始する。

立香達の体が霊子に変換され時を越えていく。

 

 

???内

 

「どうされました、王よ」

「・・・来るぞ」

「はい?何がでしょうか」

「私の鞘が来る。・・・ここまで来てください、シロウ。私は貴方を待っていた」

「王、シロウとは?」

 

それは質問には答えず沈黙する。

 

 

 

 

 

 

 

神聖円卓領域キャメロット 人理定礎値EX




祝・立香Aチーム入り決定!
ベリルが犯罪者なら、そこに立香入れるのではと思い、そういう風にしてみました。
デイビッドは現時点で情報とかキャラクターとかわからなすぎるので寝かしときます。
契約サーヴァントはあまり変わっていないと思います。
項羽さんは汎人類史の方ですね。


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ファラオ

感想評価ありがとうございます。
取り敢えず、暫くは休日に投稿していこうと思います。


突風の音で目が覚めた。

 

「ここは?」

「砂漠でしょうか・・・?」

 

よく見ると足元は砂にまみれており、突風も所謂砂嵐という奴らしかった。

 

「藤丸!気を付けろ、近くに何かいる!」

 

カドックがそう報告する。

レイシフトしたばかりの一行は警戒を強めるが、それは長く続かなかった。

 

「グルルルァァァァ!!!」

 

それが襲いかかってきたからである。

 

 

「なんとか倒せました・・・」

「しかし、最後に倒したやつなんか変じゃなかったかな?」

「私にはゴーレムの亜種のように見えたのだけど、カドック何かわかる?」

「騎士みたいな鎧だったな。もしかしたらこの特異点に関係あるかもしれない、覚えておこう」

「それにしても酷い砂嵐だな。マスターの二人は大丈夫か?俺達サーヴァントは大丈夫だろうが」

「私は大丈夫だよ。それはそうと、どこに進む?」

 

周囲を見渡すが砂嵐のせいでまともに視認することができない。

 

「ん?なんか、向こうの方にあるな。砂山とかじゃなさそうだが、神殿かあれ?」

 

士郎は生前から目が良かったため、他の人間が認知出来ないものも認知出来たらしい。

一行はその神殿らしきものに向けて歩みを進めることにした。

 

 

襲ってくる魔獣を倒しつつ、進むこと十キロほど。

時代も詳しい座標もわからない上、カルデアとの通信は断絶したままであった。

 

「マスター、もう十キロほど歩いてきましたが、大丈夫でしょうか?」

「うん、まだ大丈夫そうだよ」

 

そんな風に会話をしていると、また何かが襲ってくる。

 

「また来るぞ!アナスタシア!」

「ヴィイ!」

 

即座にカドックとアナスタシアが防御する。

 

「待て、こいつ魔獣じゃねえぞ!」

「これは、スフィンクス!?まずい、魔獣なんかと比べても天と地程の差があるぞ!?」

「今の攻撃で目を潰したわ!どうせ直ぐに回復するでしょうから、今のうちに逃げましょう!」

 

全員が一斉に走り出す。

しばらく走っていると今度は人影が見えてくる。

 

「おい!追っ手が来たぞ!」

「なに!?倒すぞ!」

「何やら勘違いされています!マスターどうしましょう!」

「こういうのって倒さないと話聞いてくれないから、取り敢えず峰打ちで!」

「了解です!」

 

相手は相当戦い慣れた集団らしく、数による有利を存分に生かして戦う。

 

「バルムンク!」

「グハァ!?」

「はあっ!」

「グゥ・・・!」

「こいつらまともな兵士じゃないですよ!それに、後ろからスフィンクスとよくわからない布を被ったのが来ています!」

「クッ、一旦作戦は中止だ!奪った食糧は忘れるなよ!」

 

相手はこちらがそれなりに戦えると知ると、即座に撤退を選択し、去っていった。

 

「あの方々はこの袋を運んでいたようですね」

「これ、人じゃねえか?昔、紛争地域で戦ってたときに女子供をこういう袋に入れて運んでるのを見たことあるんだがな」

 

士郎の言う通り中に入っていたのは一人の女性だった。

 

「ん、ここは?」

「あ、起きた」

「おのれ、無礼者達。私をファラオ・ニトクリスと知った上での狼藉か!」

「これ、完全に勘違いしてるやつじゃないか!」

 

ニトクリスは杖で地面を叩くと、複数の魔獣が現れ、襲ってきた。

 

「流石にサーヴァント相手はキツいね・・・!」

「ダヴィンチちゃん、大丈夫ですか!?」

「俺に任せな、I am the bone of my sword.『アイアス』!」

 

複数の魔獣の攻撃を士郎が防ぐが、ニトクリスの攻撃を受けたダヴィンチは少し後退する。

 

「これじゃジリ貧だよ!ニトクリスさん、私達は貴方のことを助けたんです!」

「このような場所で無償で人を助けるはずが無いでしょう!」

「聞く耳持たずか・・・!」

「行きなさい、スフィンクス!この者達に偉大なる太陽王の裁きを!」

 

少しずつマシュはスフィンクスに押されていく。

 

「スフィンクス!この状況で、あの神獣の相手はとても・・・!」

「いえ、どうか顔を上げて。貴方の盾はいかな神獣であろうと砕けない。そして、皆さんの正義は正しいもの。誤解から生まれた戦いなど、容易く乗り越えられるでしょう」

 

しかし、銀髪の男がマシュは助ける。

 

「何者・・・?」

「まだ名乗るほどの因果はありません。ですので、どうぞ敵とお考え下さい。」

 

その男はニトクリスにそう答え、立香の方を向くと、

 

「あなたがたがカルデアですね?私はルキウス。主のいないサーヴァントです。見るに見かねて手を出してしまいました。お節介にお思いでしょうが、そこは寛容に。私で良ければ助太刀致しましょう。我が剣存分にお使い下されば」

「正直に言って助かるな!アナスタシア、右だ!」

 

ルキウスも加わり、復活するスフィンクスに攻撃する。

 

「御免!」

 

ルキウスの右腕が輝き、スフィンクスを切り裂く。

すると、どうしたことだろうか。

スフィンクスが甦らないのだ。

 

「あれは、間違いない!ケルトの戦神ヌァザのアガートラムの輝きだ!」

「なんだと!?あのサーヴァントは神性並の神秘を武器にしているのか!?」

「そ、そんな。ファラオ・オジマンディアスの貴き神獣が・・・!」

 

ニトクリスはすっかり戦意を喪失していた。

 

「ですから、御免と。そうでもしなければ収まらないと思いましたので。そして、お聞きなさいホルス神の化身、ニトクリスよ。彼らがあなたを助けたと言うのは本当です。なにしろ私も見ていました。彼らは山の翁に連れ去られるあなたを義によって助けました。それが信じられないと言うのなら我が銀腕を再び振るう他ありませんが」

 

この後、ニトクリスが自身の間違いを認め、立香達を神殿に案内することになるのは、そう先の事ではなかったりする。




ニトクリスは普通に強い(確信)


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太陽王オジマンディアス

今週も投稿していくぞー!


「なんだ、このとんでも建造物ー!?」

 

神殿までの道中、ニトクリスと一悶着あったものの、カルデア一行は無事に神殿にたどり着いていた。

ただ、ルキウスはたまたま近くにいただけだと言って去っていってしまっていたが。

 

「あれが太陽王オジマンディアスの居城なのですね!」

「エジプト最強にして最大のファラオと言われるだけのことはあるな・・・」

 

マシュとカドックが各々感想を述べるなか、一行は神殿の奥へと歩みを進める。

神殿の奥には、眠そうに目を擦る褐色の肌の男がおり、玉座に座っていた。

 

「少し時間がかかっていたようですが、まあ良いでしょう。貴方たちは畏れ多くも王への謁見が許されました。さあ、そこに平伏しなさい!さすれば王は倦怠から身を起こし、貴方たちにお言葉をお掛けになることでしょう!」

 

言うが早いか直ぐに士郎は跪いた。

 

「こういうときは出来るだけ素早い方が良い。お前らも棒立ちはやめておきな」

「う、うん」

「私王女だったのだけど跪く必要あるかしら?」

「お前はもう好きにしろ・・・」

 

好きにしろと言われたものの、なんだかんだ命に関わることにおいてはカドックに気を遣うアナスタシアだったので、ここは大人しく跪くことにした。

 

「ふむ、カルデアの者共よ。既に貴様らも検討はついてはいるのだろうが、ここは敢えて余の名を教えてやろう。我が名はオジマンディアス。神であり太陽であり、地上を支配するファラオである。それは過去、現在、共に変わることは無い上、ライダーと呼ばれるのも些か飽きもした」

 

太陽王は語る。

ザックリ言うと、眠いので一回しか言わないからよく聞け。お前たちが五つの特異点を解決し、六つ目の特異点であるこの場所にやって来たカルデアの使者であることはわかっている、と。

 

「何故なら、汝らの探す聖杯は、この通り、余が手にしているからだ。」

 

聖杯は確かにオジマンディアスの手の中にあった。

当然、カルデア一行からは魔術王に味方しているのかと言う疑念が出るが、オジマンディアスはそれを一蹴する。

 

「これは余がこの地に降臨した際に、十字軍めからー」

 

ずるり

(((首ずれたぁぁぁぁぁぁ!?)))

この時マスター(元含む)の心は完全に一致していたと言う。

さらっと、首を元の位置に戻し話を続ける。

 

「十字軍めから没収したものだ。真の王足る余に相応しい物としてな」

 

(((いや、スルーして話続けんのかよ)))

 

「あ、あの、オジマンディアス王、それは衝撃的なのですが、あの!」

 

(((そこ突っ込んで良い雰囲気じゃないだろ!?)))

突っ込むマシュに、無言で同意するダヴィンチ。

アナスタシアは物珍しげに神殿を見回していた。

 

「首がずれたように見えたのですが・・・」

「あり得ぬ。旅の疲れであろう。不敬だが、一度のみ許す。余の首はなんとも無いのだからな。そして、聖杯を手に入れたことにより余はーおっと」

 

ずるり

また、首がずれた。

今度はオジマンディアスが無言で立香達を見る。

余計なことを言えば何が起きるかわからなかった一行は勿論黙った。

 

「ニトクリス!」

「は!何用でしょう、ファラオ!」

「余は調子が出ん!よって体を動かそう!眠気覚ましに火の精どもを呼ぶがよい!」

 

突如、玉座から立ち上がるとオジマンディアスはそう言い、立香達を見た。

 

「では、行くぞカルデアのマスターとやら!先程の沈黙、余は特に気に入った!」

「マスター!ファラオ・オジマンディアス、意味不明な理由で臨戦体勢です!」

「よし、想像通り・・・ッ!この王様、完全に自分ルールで生きてきた困ったちゃんだ!」

「それに巻き込まれるこっちの身にもなってくれよ!」

 

オジマンディアスが火の精と共に襲いかかってきた!

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、とある村

 

「わー!まてまてー!」

「きゃー!」

「おーい、そんなに走ってると転んでケガするぞ!」

 

二人の子供が広場で走り回っていると、通りがかった弓兵らしき青年にそう注意されている。

 

「うわあ!」

「言わんこっちゃない・・・。大丈夫か?」

「うう、いたいよぅ」

 

青年が見るに転んでケガをした部分は尖った石によって深く傷つけられていた。

 

「こいつは結構なもんだな・・・。取り敢えず応急手当だけでも・・・」

「その必要はありませんよ、アーラシュ様」

「お?姉ちゃん、ちょうど良いところに!頼めるか?」

 

青年をアーラシュと読んだのは東洋人の女性であった。その女性は美しい容貌しており、どこか神聖な雰囲気が感じられた。

 

「ええ!私にお任せを。では、ケガを見せて下さいな?」

 

女性は子供のケガを見るとその部分に片手をかざし、もう片方の手で印を結ぶとなにやら呪文のようなものを唱えだした。

すると、ケガがみるみるうちに直っていくではないか。

 

「もう痛くないですよ?次は気を付けて遊びなさいね」

「うん!ありがとう、お姉ちゃん!」

 

子供は女性に感謝を伝えるともう一人の子供と共に去っていった。

 

「ふう」

「いやー、助かったぜ姉ちゃん」

「もう、私にもれっきとした名前があるからそちらで呼んでほしいと言ったはずですよ!」

「悪い悪い、つい癖でな。()()()、これで良いか?」

「ええ!これからはちゃんとそう呼んで下さいね!」

 

サーヴァント、殺生院キアラ。

とある世界では獣としてカルデアの前に立ち塞がるその女性が今、キャメロットの地にいた。

 

「それにしても、士郎様はいつこちらにいらっしゃるのでしょうか?」

「まだ少しかかりそうだがな。まあ、気長に待ってな。会えない訳でもないしな」

「それもそうですわね!」




セッショウイン!()
次回 Fate/grand orderは!
「殺生院はまだでない」
次回もお楽しみに!


(士郎君なんかやらかしたんかなあ)


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聖都へ

感想ありがとうございます。
今週も投稿していくぞー!


カルデアの一行は砂漠をダヴィンチ製のバギー(オーパーツ)で走っていた。

 

「オジマンディアス王、戦った後にご飯食べさせてくれるとは思わなかったねえ」

「はい、カルデアの食堂でも見たことのない料理ばかりでしたが、とても美味しかったですね!」

「確か『我らは砂漠の旅路の辛さを知るものであるが故に、旅人を邪険に扱うことはない』だったか。僕自身、体験したからこそわかるよ。時計塔で魔術を勉強していただけじゃ気がつけなかったことだ」

 

一行はオジマンディアスとの戦いの後、丁重にもてなされ、一時的にお互い不戦を誓い、もう一つの都である聖都へと向かっていた。

アナスタシアは暑いので霊体化していた。

 

「そろそろ砂漠を抜けるよ!一際大きい砂丘を越えるから捕まっていて!」

 

ダヴィンチがそう言うとバギーに乗る一行は各々車体に捕まり、衝撃に備える。

そして、数秒の後衝撃が伝わり一瞬浮いた感覚がする。

無事に砂漠を抜けたらしくバギーは一時停車した。

 

「こいつは酷いな・・・」

「気温48度、湿度0%。とてもじゃないが人間の生きられる環境じゃないな、これは」

 

砂漠を抜けた一行の目の前に広がるのは真っ黒な大地の荒野。

所々、火のついた木々や焦げた匂いがすることからも、この土地が元々荒野ではなかった事がわかった。

そして、周囲の環境の酷さに言葉を失っていると岩影からボロボロのマントや服に身を包んだ人々が現れる。

 

「へっへっへ、食糧に水だ・・・」

「うまそうな女もいるぞ」

「きっと太陽王の化物から逃げてきたんだなあ」

「先輩!囲まれています!」

「マシュ、おじいちゃん戦闘準備!できる限り峰打ちでお願い」

「立香、お前ってやつは・・・。まあいい、アナスタシア、動けなくなる程度に凍らせてやれ」

「しょうがないわね。暑いので早く終わらせましょう」

 

戦闘は一瞬だった。

元より英霊と人間。普通に戦って勝てる相手ではなく、その上飢えて力がでない人間では勝ち目はなかった。

 

「痛みで逃げ出したのが大半で、それでも襲って来たのが一割ぐらいか」

「クソ!何で大人しく殺されねえんだ!」

「・・・」

 

地に伏せる人々。このまま放置すれば間違いなく死んでしまうであろう彼らを『正義の味方』の背中を見て育った彼女が見捨てられるはずもなかった。

 

「おい、立香行くぞ。聖都に何があるかわからない。早く行っておいた方が良いだろ」

「カドック、ダヴィンチちゃん。食糧と水ってどれくらい残ってる?」

「余裕で一週間は持つと思うけど?」

「この人たちに分けてあげられないかな」

「お前ってやつは本当に士郎さんの孫というかなんと言うか・・・」

 

クリプターのカドックであれば間違いなく却下していたであろう。

しかし、このカドックにとって立香は手のかかる友人で、その上憧れの人であれば間違いなく同じ選択をしていたであろうことが彼の考えを他者を思いやる方向へと導いていた。

 

「しょうがない、僕が食べる量を減らせばもっと持つだろう。渡すなら最低限だけだぞ」

「ありがとう、カドック!愛してる!」

「か、軽々しくそういうこと言うな!」

「なんだ、照れてるのかカドック?お前になら立香をやっても良いんだが」

「士郎さんまで!」

 

ちなみに、カドックは反応が面白いので、カルデアの弄られ役になっていたりするとかしないとか。

 

「よし、これだけあれば大丈夫だろ。聖都に向かうぞ立香」

「うん、行こうか、おじいちゃん」

 

そんなこんなで食糧と水を下ろして、聖都に向かおうとしたその時だった。

地面に倒れた男がこちらに話しかけてきたのだ。

 

「・・・あんたら、聖都に行くのか?」

「うん、まあね。君は聖都に行ったことが?」

「あるぜ。この地を焼き付くそうとした十字軍を倒した偉大な獅子王が治めるあそこには何でもある。正に楽園だ」

(また、獅子王。すると、ますますこんがらがってくるなあ)

「・・・気を付けな。綺麗なものほど恐ろしい」

「それはどういう意味だ?」

「とにかく、悪いことは言わねえ、壁には近づくんじゃねえ」

「ご忠告痛み入ります。では、行きましょうか」

 

この後、ロマニとの通信が回復して一悶着あったりするのだが、それは語るまでもないだろう。




カドックは書きやすいことこの上ないけど、アナスタシア難しすぎる・・・
弊カルデアではロマニは不眠不休ではないので、普通に忙しいオルガマリーの代わりに管制室にいたりします。


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妖弦

キャメロット長いなあ・・・


「鶴翼三連!」

「チッ、面倒な!」

 

二人の赤髪の男たちが戦っていた。

片方はよく知る衛宮士郎。

もう片方は白い服に身を包んだ長髪の男、トリスタンである。

士郎の背後には明らかにこちらから逃げているであろう一団がいた。

このような事態になったことを説明するには少し時をさかのぼる必要がある。

 

 

 

10分ほど前のこと。

回復したカルデアの通信を通じて、現状の確認とそれまでに何が起きたのかを報告していた立香達。

彼女らを乗せたバギーは順調に荒野を走っていたが、前方に人影を見つけたことで停車した。

つい数十分前に現地民に襲われたのだから、この警戒は当然のことであろう。

岩影に隠れ、人影を伺うとそれは複数人のものであった。

どうやら、集団をたった一人で追ってきた長髪の男に追い詰められているらしい。

それを見ていると集団のなかの一人が殺された。

長髪の男が弓の弦を弾いただけでだ。

人々を救うことを志し、それで英雄になった士郎は我慢出来なかった。

ダヴィンチの目測では士郎の能力では勝てないかもしれないと言ったが、彼の本領は格上との戦いにあった。

 

「クッ、我がフェイルノートの攻撃をことごとく邪魔するとは!」

 

長髪の男は苛立っていた。

本来彼の弓であるフェイルノートは弦を弾くだけで音の矢を飛ばして対象を攻撃する。

しかし、その矢はことごとく防がれていたのだ。

 

「あんたが諦めるまでは相手をしてもらうぞ!」

 

士郎はフェイルノートの攻撃を音の矢だと聞くや否やとある物を投影していた。

それこそマシュの盾である。

それを複数用意し、防壁を張ることで集団を守っていた。

結局、士郎の攻撃で致命傷を負った男は撤退していった。

 

「先程は我らをお助けいただき感謝します。私は煙酔のハサン、よろしければあなたの名をお教えして頂けないでしょうか」

「俺は衛宮士郎。セイバーのクラスで現界しているサーヴァントだ。あんたらは難民かなんかなのか?」

「ええ、我々は・・・」

 

ハサンの説明はこうだった。

山の方面で複数の村を守護していること。

他にもサーヴァントがいること。

そして、彼が連れている人々はその村に逃亡している難民の集団である。

士郎はその話を聞き、彼らであれば問題はないと判断をした。

岩影に隠れていたマスター達を呼び出して、自分達の目的と、聖都に行くことを伝えた。

 

「なるほど、わかりました。私はこれから彼らを安全地帯までつれていかなければなりませんので、我々のアジトにご案内することは出来ませんが、あなた方のことは仲間たちに伝えておきましょう。何かあれば煙酔のハサンの名を出していただければ」

「ありがとう。助かるよ。それと聖都について何か知っていることは?」

「そうですね、彼処を支配している者たちのことであれば多少はわかりますが」

「是非教えて貰いたいな」

「わかりました。彼らは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

円卓の騎士とアーサー王です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

「・・・」

 

車内は静寂に包まれていた。

アーサー王とは、アルトリア・ペンドラゴンのことであり、カルデアにとってはとても頼りがいのあるサーヴァントであった。

故に、その事実は重くのしかかった。

煙酔のハサンの言葉が思い出される。

 

『彼らは強力な力を得ています。その力の源は獅子王アーサーであると言われていますが、真偽はわかりません。どうかくれぐれもお気をつけを。円卓の騎士は情けなどかけてはくれないでしょうから・・・』

 

一行は進む。聖都に待つのは一体なんなのだろうか。

 

 

「行くのかい?嬢ちゃん。」

「ええ。カルデアは必ず今回の聖抜に現れます。私もお助けしなくては」

「そうか。なら、村の守りは任せておけ!嬢ちゃんがカルデアの奴らを連れ帰るまで守り通してやるさ」

「ええ、お願いします。必ずや彼らを連れて帰りましょうとも!」

 

そして、彼と彼女の邂逅は刻々と迫っていた。




英雄王相手に勝てたんだから、そんなやつに負けるわけないよなあ!


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聖抜


今週も書いていくぜ、オラァ!



「なんだかひどい目に遭った・・・」

 

立香が疲れたのか、バギーの座席に脱力して座る。

カルデア一行は聖都に向かうという難民の集団に出会い、彼らとともに聖都に向かうその道中で盗賊に絡まれてしまった。

まあ、特に英霊が関わっていた訳でも無かったので、苦労せずに退けることができたのだった。

 

「まあ、ああいう連中はどの時代にもいるものだ。セルハンとか言うやつも、もとは商人だったみたいだし、状況的にしょうがない部分もあるんだろうよ」

「あのおっさんも聖都に行くなって言っていたな。やはり、この特異点の問題は聖都にあるのか・・・?」

「なんにせよ、もうすぐ聖都につく頃合いだ。カドック君も今のうちに休んでおくことをお勧めするよ?」

「それもそうか・・・」

 

 

 

 

 

夜もふけた頃、聖都の正門前では聖抜が始まろうとしていた。

 

(なんとか潜り込めましたね)

 

マシュが小声でそう言う。

マシュ達は、聖抜を待つ難民達の端の方に紛れていた。

 

(ふむ、士郎君、見えてるかい?)

(ああ、騎士が難民を囲んでやがる。大方、魔獣だのなんだのから守っているんだろうが、戦闘になると不味いな)

 

なるほど、難民達をぐるりと囲むように甲冑姿の騎士が整列している。

どうやら夜ということもあり、賊や獣から難民を守っているらしかった。

難民達も騎士に守られている安心感からか、顔も明るく、ざわざわと賑やかであった。

しかし、そのざわめきはすぐに驚愕にとって変わった。

なんと、空が真昼になったのだ。

 

(急に空が明けた!?幻術の類いなのか?っておい!起きろ、立香!)

(ふわぁ・・・、あれ?もうお昼?そんなに寝てた!?)

(急に変わったんだよ、バカ!)

「いつの間に昼になったんだ?」

 

難民たちが困惑するなか、マスターズがわちゃわちゃしていると、何らかの魔術を使っているのだろう、男の声が響いてきた。

 

「落ち着きなさい。これこそ、獅子王陛下による奇跡・・・、常に太陽あれと私に下さったギフトの力です」

「あ、あの方は!ガウェイン卿だ!」

 

その声の正体は屈強な見た目の金髪の騎士、ガウェインである。

ガウェインは難民たちを見渡しながら、彼らをねぎらう。

曰く、地上には人の住める土地は残っていないということ、異教徒であろうと受け入れるなどなど。

そんなガウェインを見て、ダヴィンチは取り乱しており、士郎も苦い顔をしていた。

ダヴィンチはすぐにでもこの場を去ることを勧めた。

しかし、士郎はそう言わなかった。

言えなかった。

何かが士郎をその場から動くことを拒ませていた。

そんな時だった、城壁の上に人影が現れた。

 

「お、おい!あの人影は、まさか!」

「獅子王陛下だ!」

 

難民たちはその人影を獅子王と呼んだ。それは全身を西洋中世的な甲冑に身を包み、姿は見えなかった。

しかし、士郎には何故か確信があった。

あれはセイバーであると。

獅子王は難民たちに語りかける。

 

「最果てに導かれる者は限られている。人の根は腐り落ちる。故に、私は選び取る。決して穢れぬ魂。あらゆる悪にも乱れぬ魂。

生まれながらにして不変の、永劫無垢なる人間を。」

 

獅子王がそう言い終わると、周囲に魔力が満ちる。

難民たちが獅子王を見上げていると、この中の3人の体が光輝く。

 

「今回の聖抜はその三人を向かいいれて終了とします」

 

ガウェインがそう言うと、騎士が動く。

剣を振りかざし、無防備な難民たちへそれを向けた。

 

「残りは一人残らず殺しなさい」

 

そのガウェインの声とともに剣が振り下ろされた。

悲鳴は無かった。

()()()()()()()()()()()()

 

「!?何故殺さないのです!?」

「私が止めさせて頂きました、太陽の騎士、ガウェイン様」

 

突然、難民の群れを二手に割り、女が現れた。

その見た目はこの世のものとは思えないほど美しく、慈愛に満ち溢れていた。

 

「君は?」

「カルデアの皆々様、お初にお目にかかります。サーヴァント、セイヴァー。殺生院キアラです。この地には、人理の悲鳴を聞き、参上した次第です」




やっとこさここまで。
まじで長いw


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太陽の騎士

普通に忙しかったので遅くなりました。


『あ、あれはサーヴァントなの!?』

『霊基反応、確かにサーヴァントのものですが、規模がまるで違います!』

 

管制室は一時騒然となった。

マスター達の前に現れたサーヴァント、殺生院キアラの存在が原因である。

 

「セイヴァークラス。文献にもほとんど残っていないエクストラクラスじゃないか!」

「セイバー?剣士のクラスなら他にもあったことあるよね?」

「セイバーじゃない、セイヴァーだ。まだエルメロイ二世の講義にも出てなかったが、立派なエクストラクラスだ。セイヴァークラスなんて存在の規模で言えばグランドクラスと大差ないくらいだぞ」

「はえー、すごいんだねあのお姉さん」

 

件のキアラはと言うと、自身を中心として結界を展開し、そのため難民を襲おうとする騎士達は攻めあぐねていた。

 

「守りは完璧だが、このままだと逃げられないな。おい!キアラ、今のお前でどれだけ無力化出来る?」

「この場の騎士は全て宝具で行けます!ただ、円卓の騎士レベルになるとさすがにきついです!」

「なら、ガウェインは任せておけ!俺達で何とかする!まあ、獅子王が出てこないことを祈るしかないがな!」

 

士郎はキアラと知り合いらしく、声をかけるとすぐにガウェインの元に走る。

 

「おじいちゃん、援護するよ!」

「頼む!」

「私も行きます!」

「なら僕とダヴィンチは難民を戦線から離脱させる!キャスターは士郎さんと立香の援護を任せるぞ!」

「任されたわ」

 

各々が戦場で自身の役割を全うしようと動きだした。

 

「ならば、わたくしも宝具を開帳します。・・・涅槃寂静、あまねく全てを救いましょう。仮想展開『慈愛天・救世曼荼羅(ニルヴァーナラティ・ヘブンドライブ)』!」

 

キアラを中心として展開されていた結界が崩れ去る。この好機を逃すはずもなく騎士達は、難民へと襲いかかる。

やはり、攻撃は出来ない。

もちろんキアラの宝具の力である。

この宝具に出来るのは戦意の消失と精神の安寧。

ただ、この宝具も万能ではなく、仮想展開であれば強い意思を持つ英雄レベルの存在なら打ち破ることが出来てしまう。

故に、ガウェインへと士郎は走った。

他の騎士ならいざ知らず、円卓の騎士ならばキアラの宝具に耐える可能性があると判断したが故のことである。

 

「あの御仁の宝具、それが騎士達を操っていると見ました。陛下の命を実行することは私一人でもこと足りますが・・・」

「させるわけねえだろ!」

 

士郎は怒っていた。

結婚して子供も出来、一人の人間として成長した彼は第5次聖杯戦争以前と比べ、感情を出すようになっていた。

故に、怒っていた。

 

「さっきから聞いていれば、陛下陛下ってそればっかりじゃねえか!」

「何を言うかと思えば、そんなことですか。私は円卓の騎士です!ならば陛下に忠誠を誓うのは当然のことでしょう!」

「そう言うことじゃねぇ。お前が忠誠を誓っていると言うのなら何故止めなかった。何故否定しなかった。お前らがそんなだから、あいつは、アルトリアは一人で苦悩し続けたんじゃないか!」

 

ガウェインが後ろへ弾かれる。

 

「クッ、あなたに陛下の何がわかる!あなたはみる限りでは東邦の英雄だ。陛下との繋がりなどあるはずもないでしょう!」

「わかるさ!あいつは一人で苦悩して、抱え込んで、王の選定をやり直すことを聖杯に懸ける望みにするくらいには思い詰めていたんだ!」

 

ガウェインは知らなかっただろう。

いや、知ろうとしなかった。

士郎にはそれが許せなかったのだ。

 

「俺はぶん殴ってでもアルトリアを止める!いくぞガウェイン!Iam the bone of my sword.『勝利すべき黄金の剣(カリバーン)』!」

「なっ!?それは選定の剣!何故あなたがっ」

「隙だらけだ!」

 

爆発。

それは正しく宝具の真名解放。

カリバーンは彼の宝具の1つとなっていた。

 

「なんと、この私のギフトすら貫通して霊核に到達するとは・・・」

「今回は俺の方が強かった。魔力が尽きることはないしな」

「おじいちゃん、増援だよ!」

「私は悲しい、ガウェイン卿が逆賊の凶刃に倒れるとは・・・」

「トリスタン卿・・・私はここまでのようです。陛下、申し訳ありませんでした・・・」

 

ガウェインの霊基が崩壊する。

トリスタンはフェイルノートを構えると士郎に向き直る。

 

「ガウェイン卿の任は私が引き継ぎます。あなた方にもここで死んでいただきます」

「そうはさせません!」

 

今にも戦いが始まりそうなこの場に、一人の男が飛び込んでくる。

 

「ルキウスさん!」

「あなたは、何故そちらに立っているのです?」

「今の陛下に従うあなた方の行いが正しいものだとは思えないからです」

「知り合いか?だとするとあんたの真名も違うものなんじゃないかと思うんだがな」

「その通りです。私の真名はベディヴィエール。彼らと同じ円卓の騎士であり、わけあって獅子王の召喚には応じなかった騎士です」

 

ルキウス改めベディヴィエールはトリスタンと士郎達の間にはいると、撤退することを勧めた。

 

「難民の避難は完了したようです。あなた方のお仲間も着いていったようですし追いかけた方が良いのでは?」

「ならそうするか」

「私が魔術で保護しましょう」

 

士郎達はアナスタシアの魔術により姿を消し、その場にはトリスタンのみが残された。

 

「選定の剣、カリバーンですか。陛下にご報告せねばなりませんね」




この作品では原作のカルデアと同じく孔明の疑似サーヴァントになったエルメロイ二世がマスター達に魔術の講義をしています。
とはいえ、立香とマシュが主な生徒でカドックとかオフェリアがたまに顔を出してくれるくらいです。

士郎の使ったカリバーンは士郎の逸話に含まれるので魔力消費無しで投影は出来ます。ただ、真名解放はちゃんと魔力使いますし、本来のカリバーンからひとつランクの下がったものになるという設定です。


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第三の勢力

レディ・アヴァロン二枚抜きしたので初投稿です(自慢)
投稿が遅れた理由は謎の高熱に襲われてダウンしていたからですね。
コロナでもないし、まじでなんなんや・・・
感想くれ(唐突)


「それで、彼女とはどういった関係なんだい?」

 

難民たちがキアラの案内で避難していくなか、ダヴィンチは士郎にそう聞く。

 

「何てことはない、先生と生徒ってとこかね」

「そういえばおじいちゃん、お弟子さんみたいなのたくさんいたよね。もしかしたら私もキアラさんとあったことあるかも?」

「士郎さんは弟子をおとりになっていらしたのですか?」

「正確にはちょっと違うんだが、俺は生前紛争地帯のボランティアをやってただろ?その頃にとあるボランティア団体からそういう場所でのノウハウを若い奴らに教えてやって欲しいって頼まれてな。その時に世話した奴らが俺のことを色々話したらしくて、それで弟子というか生徒みたいなのになりたがる連中が出てきたって言う感じだったと思う。キアラもそのうちの一人であいつは精神とか心の傷を癒す方法を模索するのに俺のところに来たりとかはしてたな」

「なるほどねえ。君が英雄として成立してる理由の一端にはそういった自身の思想を後世に繋げたということも関係しているのかもしれないね」

「俺のやってることなんて、教師の真似事でしか無かったと思うけどな」

「皆さん、この峠を越えれば村です。長い道のりでお疲れでしょうから、今夜はゆっくりお休みになってください」

 

どうやら話している間に目的地には到着したらしく、谷間にある隠れ里のような場所の内の一軒に案内された。

 

「さて、今日は夜も遅いし、ゆっくり休むことにしようか」

「そうだな。アナスタシア、一応罠の類いが無いかだけ調べてくれ」

「わかったわ。マスターの安全には変えられないものね」

 

その日はその後特に何かが起こることもなく、朝を迎えた。

その朝、カルデア一行は村人から配給された朝食を食べていた。

 

「わかってはいたが、この村もかなり余裕は無さそうだな」

「食事ひとつとっても決して十分な量とは言えませんしね。随分長い間戦って来たみたいだし、僕らみたいな余所者に食糧を分けてくれるだけ上等ですね」

「全くだな。後で、キアラに食料事情がどうなってるのか聞いておくか・・・」

「お食事中失礼します。昨夜はよく眠れたでしょうか?この地は現代の人にとっては辛い環境です。休息が満足にとれるとは言い難いのですが・・・」

 

食事をしている途中、立香達のテントにキアラがやって来た。

 

「ううん、私昨日はぐっすり眠れたよ!だから今日は元気です!」

「ふふ、それは良かった」

「それで、君は我々のマスターの睡眠の質を確かめに来たのかい?」

「いえ、実はお願いがあってですね・・・」

 

 

 

 

1時間後、立香達は村の中心にある一際大きいテントにやって来ていた。

 

「失礼しまーす」

 

その中にいたのは服装も人種も違う人々、正確にはサーヴァント達だった。

 

「突然の呼び出しに応じて下さり感謝します」

 

以前出会った煙酔のハサンに比べると大柄なハサンが声をかけてくる。

 

「なに、此方はこの村に居候させてもらってる身だ。村の呼び出しなら私たちには応じる義務があるさ」

「このような状況です。騎士である以前に人として我々が受け入れるのは当然のことでしょう」

 

次に声をかけてきたサーヴァントは先程のハサンに負けず劣らず身長が高く大柄な白髪の騎士であった。

ベディヴィエールはその騎士の顔を見ると驚きつつも、嬉しそうに彼の名を告げた。

 

「あなたはパーシヴァル卿!円卓の騎士であるあなたがなぜここに?」

「話すと長くなるので、その話はまた後でしましょう。とはいえ、卿が来てくださったことは大変喜ばしいことです!再び卿と出会えるとは!」

 

そうしていると、部屋に呼び出された者が揃ったらしく、立香達も椅子に座るよう促される。

 

「さて、皆さんお揃いのようですね。では定例会議を始めます。今回の議題は言わずもがな、そこに座っていらっしゃるカルデアの方々についてです」

「まあ、簡単に言ってしまえば、俺達はこの特異点を解決して、この地に生きる人間達の歴史を続けさせようってのが目的だから協力したいってことだな」

 

キアラの話した議題について補則したのは、この地域の英雄であると一目でわかる弓兵の男であった。

 

「っと自己紹介も何もまだしてなかったな。俺はアーラシュ、アーチャーのクラスで現界したはぐれサーヴァントだ」

「私は呪腕のハサン。この村の管理を行っています」

「私は煙酔のハサン。先日はお世話になりましたね」

「私は円卓の騎士であるパーシヴァル。ランサーのクラスで現界しました。召喚は聖都の獅子王によってされました」

 

カルデア側も自己紹介をする。

 

「それにしても、ハサン・サッバーハにアーラシュ、それに円卓の騎士なんてすごい組み合わせだな。そもそも円卓の騎士は獅子王の配下じゃないのか?」

「それは違います。我々円卓の騎士は確かにアーサー王陛下にお仕えしましたが、それは獅子王ではありません。我らが王がこのようなことをなすのを見過ごせないと思った者は獅子王の配下にはなりませんでした。円卓の騎士は今のところギャラハッド卿とベディヴィエール卿以外の騎士は一度この特異点に召喚されています」

「なるほど、では獅子王に反旗を翻したのは誰なんだい?」

「生き残っている者だけであれば、私パーシヴァルとケイ卿だけです。我らと同じく召喚された騎士達の中にも反旗を翻し、我らと共に戦うことを決めた者が数多くいます。それでも獅子王の軍勢の1/5ほどですが。キアラ殿が助太刀してくださらねばもっと減っていたかと」

 

どうやら、特異点で円卓の騎士の反乱が起きた際、キアラが手助けしたらしく、その縁でハサン達に合流したようだ。

 

「ケイ卿は生き残っておられるとのことですが、今はどこに?」

「諜報活動に勤しんでいる他、とある勢力に協力を取り付けたとのことで、そちらで主に活動しておられます」

 

こうして、カルデア側が質問を終えると、会議は次の議題に移っていく。

カルデアと獅子王円卓、ファラオにハサン。

数多くの勢力が集うこの特異点。

何がどうなるのか、それは魔術王にすら未だわからなかった。

 




パーシヴァル登場!
キャメロットを書く上でかなり書きたかったシーンを書けました。
二部六章のお陰で彼のキャラクターもわかりましたし、どうせなら突っ込んでしまえと言うことです。
今のところ、殺生院が優秀すぎるw


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