超次元世界で優勝を目指す (超次元愛好会)
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メンバー1 菜花黄名子

気分転換作品です。
多分更新は不定期になります。


 この世とは到底思えない、どちらかと言えばあの世側の空間にて一人の人間が老人と相対した。

 あくまで外見が老人にしか見えないだけでその正体は不明だが、老人は眼前の人間にある物を手渡した。

 渡されたそれは一見ゲーム機にしか見えないような代物だった。

 ただ一つ違う事があるとするなら、人間にはそのゲーム機に見覚えが無かった事だろう。

 

「ではな、頼んだぞ。ある程度好きにして構わないからな」

 

 老人がそう呟くと人間はこの空間から消失した。

 

   ※

 

 死んだと思ったら神様の手によって超次元サッカー世界に転生させられた件について――――。

 夢でその時の出来事を思い出し、僕こと竜宮龍樹は自分が転生した存在であるということを自覚した。

 自覚した、というよりも自覚させられたといった方が正しいだろうか。

 僕を転生させた神様はそこら辺はちゃんとやってくれたようで、赤ちゃんの頃から人生をやり直す事にはならずに済んだ。

 

「しかし、どうしたものか…………」

 

 自らが置かれた現状を把握し、溜め息を吐きたくなる。

 あの神様もただで僕を転生させたわけじゃなく、幾つかの条件を与えて来た。

 それがフットボールフロンティア、中学サッカー日本一を決める大会で優勝すること。

 ならば原作通り雷門中学校に入学すれば良い、そう考えるのだがそうは問屋が下さない。何故ならばこの世界線はエルドラドが歴史改変に成功した世界だからだ。

 そのせいでこの時代の円堂守はサッカーが嫌いになってしまっており、セカンドステージチルドレンが誕生する未来にならなくなってしまった。ついでにいうとアレスの天秤ルートにもいかないらしい。

 加えて、僕が通うことになるのは離島にある中学校で生徒は僕一人なのだ。

 これでどうやって日本一になれというのか、無理ゲーにも程がある。

 ちなみに達成出来なかったら死ぬ。

 

「まぁ、流石にチート無しってわけじゃないからまだマシか」

 

 神様から貰った機械を操作し、画面に映ったものを見る。

 画面には様々な選手の情報が乗っており、そこにスカウトという文字が書かれていた。

 これこそ、僕が神様から貰った特典だ。

 原作のイナズマイレブンでは相手チームの選手をスカウトする事が可能だ。そしてこの機械はその機能が搭載されているのだ。

 過去未来、果てには宇宙人でさえも呼び出してチームに入れる事が出来る。しかも設定を変えて現実に帳尻を合わせる事も可能。化身やソウル、必殺技も覚えさせる事が出来る等、正しく夢のマシンだ。

 詳しい原理は良く分かっていない。ただパラレルワールドの共鳴現象を利用してこのマシンの力で現実に変えるらしい。

 尤も欠点も存在する。

 このマシンを使ってスカウトするには、その相手とサッカーバトルをして勝利する必要があるのだ。

 サッカーバトル、ゲームにおけるイナズマイレブンでのランダムエンカウントで戦う相手。

 要は四人でのサッカーで勝利すればその相手をスカウトする事が出来るという事である。

 尤も、僕の実力で戦えるぐらいに弱くなってしまっているので、スカウトすれば即戦力になるわけではないのだが。

 

「それでも皆無よりかはマシか」

 

 どうせ仲間にするならば可愛い女の子の方が良い。

 そう思いながら画面をタッチし、選んだ選手をスカウトする。

 スカウトする選手の名は菜花黄名子――――イナズマイレブンGOクロノ・ストーンにおけるヒロインにして、主人公格であるファイ・ルーンの実の母親でもある。

 ポジションはDFだが改変された世界ではエースストライカーであったらしく、どのポジションでも卒なく熟せるリベロでもある。

 そして化身使いでもあるわけなのだが、このマシンで呼び出した際に化身やソウルといった力は使えない状態になる。化身の力は催眠や洗脳を無効化出来るからだ。

 その為、化身使いじゃない状態で呼び出した上で洗脳をするらしい。

 

「っと、来たか」

 

 黄名子をスカウトした事で周囲の風景が変化する。

 サッカーのゴールが二つあるフィールド、ただその広さはサッカー場にしては小さかった。

 そして僕の眼前にはテンマーズのユニフォームを着た菜花黄名子と他数名居る。イナズマイレブンGOの松風天馬、フェイ・ルーン、西園信助の三人だ。

 

「成る程、こうなるんだ」

 

 初めてこのマシンを使ってスカウトしたわけだけどこんな風になるんだ。

 

「このサッカーバトルに勝利すれば、黄名子をスカウトして良いんだよね」

「ああ、勿論だよ!」

 

 僕の言葉に天馬は快活に同意する。

 

「黄名子もそれで良いんだよね?」

「良いやんね! でも、試合に勝たなきゃダメやんね!」

 

 本人に確認して本当にスカウトされるのかを確かめる。

 どうやらスカウトされる事に対して既視感とかは無いらしい。あるいはそのように洗脳しているのか。

 いずれにせよ僕にとっては好都合だ。

 デュプリ――――人型の化身を出して人数差を無くす。

 こういう時にデュプリは便利だ。滅茶苦茶疲れるからあまり使いたいとは思わないし、使ったら化身が使えなくなるから一長一短ではあるけど。

 

「それでは試合を開始します」

 

 審判役のデュプリ、ゼロがそう告げると同時に試合が開始される。

 勝利条件は先に一点を取った方、制限時間は15分だ。

 

「行くよ! セカンド!」

 

 此方のデュプリ、ファーストに支持を出しながらパスを出す。

 パスされたボールを受け取り、セカンドは相手ゴールまで駆け上がっていく。

 

「スパイラルショット!」

 

 そして放たれた必殺シュートは西園信助が守るゴールへと向かう。

 

「させないやんね!」

 

 だがそれを許さないのがDFの菜花黄名子。

 彼女はゴールへと突き進むサッカーボールの前に立ち、何処からか取り出したきな粉餅を振り回す。

 

「もちもち〜…………黄粉餅っ!」

 

 スパイラルショットは黄名子の必殺技、もちもち黄粉餅で受け止められ防がれたしまった。

 超次元世界とはいえ、あの黄粉餅は何処から取り出して居るんだろうか?

 

「キャプテン!」

 

 頭上にあるボールを器用に足下に下ろし、彼女は天馬にパスをする。

 

「そよ風ステップ! 今だ! フェイ!!」

「任せて!」

 

 ドリブルでセカンドを抜かし、流れるようにフェイにパスをを出す。

 そしてゴール前に立ったフェイが必殺技を発動する。

 

「バウンサー…………ラビット!!」

 

 ボールごと地面を数回跳ね、空中からオーバーヘッドシュートを行う。

 放たれた必殺技は地面を3回バウンドした後、自陣のゴールに向かって突き進む。

 バウンサーラビット。ゲームやアニメにおいてこの技は威力がそこまで高くない、最初に覚える初期技の一つだ。

 だがこうして受ける事になって分かる。初期の技であっても必殺技は必殺技だ。

 油断しなくても負ける――――だからこそ、全力で、死ぬ気でやらなければいけない!

 

「ファースト!!」

「はぁ! バーニングキャッチ!!」

 

 ゴールを守護するファーストは右手に炎を宿らせジャンプ回転、上からゴールに向かうボールに燃え上がる手を振り下ろし、地面に抑えつける。

 必殺技と必殺技。二つの技のぶつかり合いはファーストに軍配が上がり、ボールをしっかりと手中に押さえ込む事に成功した。

 視線を時計の方に向ける。残り時間はそう長くない。

 

「サード!!」

 

 ファーストがサードに向かってボールを投げ、サードがそのボールをトラップし流れるようにセカンドにパスをする。

 ボールを受け取ったセカンドは全力で駆け抜けシュートを放つ。

 

「スパイラルショット!」

 

 放たれたそのシュートを防ごうと黄名子が前に出て止めようとするも、そのシュートは逸れて僕の方に向かってくる。

 

「シュートチェイン!?」

「――――ドラゴンクラッシュ!」

 

 これから僕がしようとしている事を察知した天馬が急いで此方に戻ってこようとしているが時既に遅く、スパイラルショットをドラゴンクラッシュでチェインする。

 シュートチェインした事によって必殺技の威力は上昇し、西園信助が守るゴールへと突き進む。

 

「ぶっとびパンチ――――うわぁ!!?」

 

 ゴールに迫るボールを止めようと信助が必殺技を使うが、シュートチェインを重ねたシュートを止める事は出来ず、そのままゴールに突き刺さった。

 何処からともなく「ゴール!」という声が聞こえ、試合が終了する。

 同時に黄名子と共に現れた天馬、フェイ、信助の三人がこの世界から消失する。

 そしてスカウト対象者であった菜花黄名子の身体が淡い光に包まれる。身に纏っていたテンマーズの制服が分解され、全く別の、自分が通っている龍宮中学校のジャージに変わっていた。

 その際に彼女の裸体を見る事が出来たのだが、役得と思っておこう。

 

『――――設定を入力してください』

 

 音声がなると同時にスカウトマシンが僕の前に出現し、設定を打ち込むように要求して来る。

 未来の人間が過去の時代に来た際、立場を変える事が出来るという描写があったが、このマシンもそれと同様の事が可能だ。

 当然記憶や認識も弄る事が出来る。

 

「一先ず、幼馴染ということにして…………」

 

 後はそうだな、関係性は友好的一択にしよう。

 他には未来の記憶は消しておこう。あくまでこの時代で生まれ育った一人の人間として、ここに居る。

 あの神様はある程度好きにして構わない、と言った。

 なら僕がハーレムを作ったって別に良いだろう。

 設定の入力を終え、黄名子を包み込んでいた光が消失する。

 同時に周囲の風景もいつも通りの光景に戻り、日常に戻った。

 

「ふぁ…………今日も疲れたやんね」

「…………そうだね」

 

 黄名子の中では今日は二人でサッカーの練習をした事になっている。

 それは僕の中でも同様で、黄名子とサッカーをしていた記憶があった。

 恐らくスカウトマシンがそこら辺のすり合わせをやってくれているんだろう。

 兎にも角にも、日本一になる為の第一歩を踏み出したわけなのだけれど…………。

 

「頑張らなくちゃな…………」

 

 三年もの期間があるとはいえ油断は出来ない。

 中学サッカー界を牛耳ってる影山や他にも気を付けないといけない連中がゴロゴロ居るんだ。

 そいつ等を相手にしなくちゃいけないのだから本当に大変だ。

 ハーレムぐらい作らなくちゃやってられない。

 そんな事を考えながら自宅に戻る事になった。



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