~異次元大会~作者と愉快な仲間たち(乱入者視点) (バトルマニア(作者))
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とりあえず一日目
異次元大会の説明(ネタばれあり)


 タイトル通りの設定集です。


・大会ルール説明

 バトルロイヤル形式で大会は運営され、全員に評価点が配分されたのち、制限時間256時間でそれを奪い合い、点数がもっとも高かった者の優勝者とします。

 仮死亡や復活に必要な時間が制限時間をオーバーすると言った戦闘不能になった場合は強制退場により脱落判定が出ます。また仮死亡にならなくても、致命的なダメージが予想される場合も同様の処置を取ります。封印や追放などにより戦闘会場から姿を消した場合、時間内に回帰できなかった 又はできないと判断された場合には、同じく脱落判定を出します。ただしその場合は点数は消滅します。

 一番最初に入った者にのみ点数が配られ、点数持ちがやられた時点で分体などが残っていても脱落扱いします。また分身や作成物などの放出した存在の有無は、各能力の性質によります。

 戦闘会場の端には薄い光のカーテンを設置しており、これは時間が経つごとに徐々に狭まります。この外側に1分以上滞在した場合脱落者となり点数も消滅します。

 乱入者撃破時は、通常の10倍の得点が発生します。

 この大会での優勝景品は『願いの成就』です。

 

・その他の事項。

 当施設は破壊行為及び大会運営の妨害が発生しない程度に自由に使用できます。また観戦者と参加者の両者は、自身のいる観戦場や戦闘会場など以外の場所への出入りや干渉を行わないでください。これは大会の参加者及び観戦者、従業員など全員に適応されます。

 観戦者は食堂や戦闘室などの多種多様な施設が使用可能です。詳しくは担当の係員や従業員にお聞きください。

 用意された会場以外の安全の保障はできません。把握外への移動は自己責任でお願いいたします。

 

・点数ついて

 1~100点の中で、対象のスペックや単純な強さなどで決まる。とは言え強者しか集めていいないので、最低値は40点ぐらいである。

 実は、大会参加用の単体の魔魅さんを100点とした場合の基準で、魔魅さんが倒せそうとかめんどくさそうとかで点数を決めている。また相性や急成長などは一切考慮されていないので、点数差も覆せるかも?

 あと参加人数と強さの基準は大体こんな感じ

 

 100点 約1千人 インフレ作品の最強キャラ

 90点台 約5千人 チート持ちの主人公ぐらい

 80点台 約1万人 ライバルやボス級のキャラ

 70点台 約2万人 チートなし世界での最強

 60点台 約3万人 上澄みや一握りの強者

 50点台 約4万人 強者として知られている

 40点台 約6万人 弱めの主人公の取り巻き

 

 星の中での強者たちや惑星級の力を持った者、異世界を行き来する者などもおり、中には宇宙レベルの存在まで色々参加しているので、こんな感じになっている。

 

 

・主催者について

 とある事情からこの大会を開き、別世界から強者たちを招いたやつ。大会のルールもこいつが決めているが、特に変な仕掛けとかはしておらず、大会自体はちゃんと運営している。性格自体はあまりいとは言えないが、ルールは守るし不平等も嫌っている上、几帳面で嘘がキライである。用意周到で根回しや裏工作などの事前準備が得意だが、戦闘自体は真正面からするタイプ。そのため本人は悪人のつもりだが、悪役が向いてなさすぎる性格。

 なおルールには主催者側が参加してはいけないなどの表記がないため、普通に参加している。

 

 

・魔魅さんについて

 参加者を集めた張本人。主催者に大会の話を持ち掛けた人でもある。大会でのあらゆる運営や管理、警備などは彼女に一任されており、実質主催者と魔魅さんの二人だけで大会を運営している。なお彼女は無限増殖みたいな能力を持っており、その力を使って大会の運営をしている。変なことをすれば、すぐさま大量の魔魅さんが駆けつけてくる……と言うかその場で増えたりするので注意しよう。

 全員が本体で、性格や性質は個体ごとに若干違うので出会ったやつ次第。

 そして主催者同様参加しているが、本来参加できるほどの存在ではないため、能力を使わないなどいくつか制限付きでの参加になっている。

 

 

 

・多元存在について

 多元存在とは、もっとも存在密度が高くかつ流動体のように存在が、目まぐるしく変化し続けるもののこと。あくまで存在構造の変化であって、見た目や性質がと言う話ではない。要は成長や進化の類。

 またあらゆるものへの干渉と認識ができるため、格の違いからくる上位からの攻撃や見えない感じ取れないなどの一方的な干渉ができず、摩訶不思議な力が高度なマジックや手品と化している。だがあくまで同じ土俵に立つだけであるため、単純な技量差や物量によるゴリ押しは通じる。

 存在密度が高すぎるがゆえに隙が無く、同じ多元存在からの攻撃以外は大抵通じない。その密度差は重金属とスポンジぐらいある。特に特殊攻撃や状態異常、あらゆる支配や精神干渉、果てには乗っ取りや体内への攻撃などには高すぎる耐性があり、もし入り込めても変動し続ける存在構造に擦り潰されて大した影響は与えられない。そんな特殊能力を使うぐらいなら、外から殴った方が効果的である。

 無駄がなく効率が良すぎるため例外なく超ハイスペックだが、見た感じ元となったものと見分けがつかない。また燃費が良く環境への依存性が低いためどんな世界でも生存できる。

 しかし見た目相応の事しかできず極端な範囲攻撃は苦手だが、その範囲内に限って言えば絶大な力を発揮する。参加者は全員多元存在になる。

 

 

・乱入者について

 勝手に参加した狭間の住人たちのこと。約300人おり、最低でも65点からであり、多元存在として戦い方を熟知しているという強者揃い。兵器たちと参加者を取り合っている。

 

・狭間の住人について

 全員が超人の多元存在で戦闘狂。驚異的な学習能力があり、特に対応能力がずば抜けている。乱入者クラスになると、技術の範疇だと大抵のことは覚えて再現や調整ができる程度。

 自由や実力 生存などを重視しているが、それ以外の感情などの中身は普通の人間とあまり変わらず、大抵のことは人並み程度の奴が多い。ただ長く生きていたり、過酷な環境になれているので、本人がちゃんと悩んでいるつもりでも切り替えや判断が異常に早く、結果的にメンタルがクソほど強い。例として、どんな負傷を負ってもリアクションの有無にかかわらず大したことのないように見える。

 因みにだが狭間の住人は、すべてを出し切る戦闘を楽しむための『ゼンリョク』や手段を択ばず手加減をしなくなる『ホンキ』などがあるが、意識がない状態が一番強い。しかしそれでは戦闘を楽しめなくなるので、極力使ってこない。

 

 

・狭間の住人の種族について

 細かく説明すると長くなりすぎるので、これさえわかればって言う簡単な種族説明です。

 

 人族……平均的で可もなく不可もない人型の原点。身体能力は微妙だが、汎用性は随一でありやろうと思えばどんな能力でも持てる。

 

 獣人族……動物の特性を持った種族。基本的に身体能力が高く、本能で動きやすい。

 

 樹人族……植物の特性を持った種族。全体的に穏やかな傾向で、生命力が非常に高い。

 

 龍人族……龍の特性を持った種族。普段は人型だが、最終的にはドラゴンや龍になることが出来る。

 

 透人族……幽霊のような特性を持った種族。浮かんだりモノをすり抜けたりでき、気配も薄く、やろうと思えば透明化みたいなことも出来る。

 

 鉱人族……鉱石や結晶の混じった種族。体が重く硬いので耐久性は高いが、泳ぐことが困難。よく鉱石などを食べている。

 

 水人族……水中に適合した種族。ちょっとした液体の操作や水中呼吸なんかができる。水や液体が関わっているところでは調子がいいが、それがない場所だと調子がよくならない。

 

 血人族……血肉が操れる種族。血液や肉体の操作ができ、特に血液は大抵のものは溶かしてしまう毒みたいなものなので結構ヤバい。

 

 巨人族……身体が大きな種族。通常で2~3m程度の身長を持つ。更に巨人化で最大十倍までデカくなれる。

 

 小人族……手のひらサイズな種族。普通の人間の十分の一程度の大きさで、宙を飛び回れるようにと羽のようなものがついている。すばしっこく機動性に優れているが、通常での攻撃範囲が狭い。

 

 天人族……神や天使みたいな種族。漏れ出したエネルギーがそれっぽく形取り、見た目がそうだというだけで、実際のところはほぼ関係がなかったりする。空が飛べたり、放出系が得意。

 

 機人族……機械の混じった種族。機械と繋がったり、自己改造したりと色々出来る。記憶能力や演算能力に優れているが、合理的に動くかと思えば案外そうでもない。

 

 幼児族……見た目も中身も子供のような種族。無尽蔵の体力に高い成長能力を持っているが、どれだけ取り繕っても中身は子供であり、精神が不安定になると子供っぽくなる。

 

 武具族……武具などを生成できる種族。当人にとって最も最適な武具が生成でき、当人の実力に合わせて性能が上下する。武具は体の一部であり、壊されるとその分ダメージを受けるので注意。

 

 不滅族……圧倒的回復能力を持つ種族。小さな傷や欠損であれば戦闘中でも問題なく治せ、大きなダメージでも時間をかければ完治させることが出来る。

 

 粘体族……人に擬態したスライムのような種族。見た目は人と変わらないが、中身はスライムのようになっており、体を変幻自在に変形させる事ができる。硬質化で耐久の無さを補えるが、変形に制限がかかる。

 

 殊眼族……特殊な目を持つ種族。種族全体で目に関した何かしらの能力を持っている。

 

 表裏族……二つの人格を持つ種族。生まれながらにして二つの人格を持ち、いつでも交代可能。仲がいいかはさて置き、何やかんやでサポートしあっている為隙が少ない。

 

 頭角族……角の生えた種族。鬼人族などとも呼ばれているが、他にも種類がいたのでこれで統一された。角には色々と用途があるが、みんなからは頭突きが強そうだと思われている。

 

 異型族……異形の特性を持った種族。力を出せば出すほど異形の姿になる。いろいろと厄介な能力を持っている奴が多い。

 

 現霊族……現象そのものみたいな種族。自然現象などが人化したみたいな種族であり、上位はどいつもこいつも規格外に強力。

 

 原種族……個体数の少ない種族。他の種族と似ていたりする奴も多いが、組み分けが済んでいない、または研究が進んでいないやつら。探せばチラホラいたりする、珍しい程度の種族枠。

 (神族、悪魔、天使、吸血鬼、死人、書物、不滅鳥、人形、電脳、迷宮種、建築種など)

 

 と以下の通り大きく分けてもこれだけたくさんの種族が存在する。その他、血の濃さや混血など様々。

 

 

・狭間の住人の能力者の定義について

 様々な種族がいる狭間の住人だが、能力者と言われる者たちがいる。その定義は、通常その種族ではできないことが出来るようになった者のことを能力者だ。系統として大きく分けて二つあり、種族の限界突破か、全く別の特殊能力である。前者は強力で使いやすいが単純で、後者は扱いがややこしいが手札を増やすという意味では優秀だ。

 また能力者は、自己申告や周囲からの評価で決まる。なぜなら、種が混ざりすぎて細かな判別がめんどくさいからだ。

 

 

・一般流について

 狭間の住人の一般人なら誰でも使える、または狭間世界に一般的に流通している技術の総称。強さもそうだが便利さを重視したものが多いので、精度はさて置き出力では能力者や専門者には届かない。

 

 以下戦闘での基本系

 

 移動系の 瞬動 空動 乱動 無動

 

 斬撃系の 飛斬 空斬 乱斬 曲斬

 

 衝撃系の 重撃 空撃 乱撃 尖撃

 

 認識系の 感知 探知 察知 把握

 

 これらを戦闘が巻き起こる日常で特に苦労せず使いこなすのが基本となっている。技にしてまとめているのは、単に子供や初心者用にわかりやすくしたものだから。極めればチョットした感覚の延長や呼吸や歩行と同じレベルになる。

 他にも様々なものがあり、技を開発してネットに流している者たちもいる。しかし役に立つかどうか怪しかったり、見た目重視のネタ技など、遊びや日常生活で使うことに特化していたりするものも多い。

 

 

・兵器たちについて

 ステージギミック用に残しておいた兵器群。個人用の施設や町レベルのものもいくつもあり、どれも参加者を苦しめるには十分すぎる戦力を保持している。乱入者はライバル扱いで、見つけ次第排除対象。

 




・乱入者たちについて 改
 狭間世界には下から一~五級、特級、不明級と言う等級というものがあり、乱入者は全員二級の者たちである。これは一般人最強格と言われる等級で、一部の例外を除けば外から来た者たちの初期最高到達地点であるからだ。
 今回大会参加者は三~二級程度で、もっともと強くても一級一歩手前程度である。試合時間内では一級を超えられる者はいないし、超えられるとしても狭間世界の一級に勝てる者は非常に少ない。


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大会に参加予定の作者

 とある大穴が見える近くの建物付近で、三人の男たちが一人の少女の話を聞いていた。

 

「「「異次元大会?」」」

 

「そうだ。別世界から強い奴らを集めて大会を開くらしい。面白そうだろ?」

 

 汚れた茶色っぽいフード付きコートを羽織り、二振の刀を背中に背負った獣人族の少女は、そう言いつつニヤリと笑う。そこで少し顔を歪めた三人は、相談がしたいと少し離れた。

 

 

「どう思う?正直、魔魅さんの言うことはあんまり信用ならないんだよな」

「暇人もそう思うか?俺もなんだ。一般人Kはどうだ?」

「作者の言う通り僕もだ。嘘はつかないんだが胡散臭い」

 

 コソコソと相談する三人は、上から暇人、作者、一般人kの仲良し三人組だ。そいつらは魔魅さんと言われる目の前の少女に多少の不信感を感じていた。

 

「毎回酷い目に合わされるからな。前だって儲け話って言って危険地帯に放り込まれたし」

「作者。それは考えが甘かったお前が悪い。金欠だったからってさ」

「上辺だけで判断したお前が悪いわ。もう少し慎重に動けよ。だからいつも追い詰められるんだ」

 

 ダメ男の作者に、一般人Kと暇人が注意する。それに軽いショックを受けて、しょんぼりした顔をして黙り込む。

 

「とりあえず、どうする?俺は出たくない」

「僕も遠慮しとく。叶えたい願いも無いから」

 

 暇人と一般人Kは大会へ出ないことにしたようで、最後に作者の方を見る。

 

「……俺は出ようと思ってる」

「そうだろうな」

「そう言うと思ったよ」

 

 出場する気の作者に、二人は呆れたように吐き捨てた。

 

「どうせカネがないんだろ?」

「それとも借金でも作った?」

 

「ひどい言われようだな。流石にそこまで追い詰められてねえよ。まぁ金欠なのは事実だが」

 

 

 苦笑いをしながら理由を話し出す作者。

 

 

「実はな。最近ネタに困っちまってよ。進んでねえんだ」

「ああ、そういや最近見かけねえと思ったらそういうことだったのか」

「それで大会に出て気晴らしとネタ探しに?」

 

 そういうことだといい、二人は納得する。

 

「ま、いいんじゃね?作者は最近訛ってるだろうし、これを期に前線に戻ってこいよ」

「補助とか支援はありがたいけど、基本他人任せでずっと後ろで構えてるだけだもんな」

 

「それとこれはまた別だ。と言うか俺は前衛型どころか戦闘者ですら無いし……」

 

 一人で戦うか、支援しかできない作者。と言うかそれ以前にあまり戦いたくないのだ。弱いから……

 そんな話をしながら、作者は出場することを決め、魔魅さんに話しかける。

 

 

「出場は俺だけだ」

「そうか?わかった。じゃさっそく……」

 

 魔魅さんが転移用の道具を取り出し、使おうとしたその時

 

 

「なにをしておるんじゃ?」

 

「あ、あ――、霧原さん、か」

 

 突如として背の低い灰髪の少女が現れ、話しかけてきたのだった。

 

 




~おまけ~

・暇人は和服を着た機人族。
 作者の友達で一緒に旅をしている。貴重なツッコミ役。

・一般人kはコートのような旅人服を着た人族。
 作者の友達で一緒に旅をしている。何でもできて優しそうなやつ。


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どんどん増えるよどこまでも

 霧原さんに話しかけられ、ぎこちなく振り返る作者。

 

「で、何をしておるのじゃ?別に怒ってはおらぬから言ってみ」

「いや、その、今から大会に行こうかと……」

 

 言いにくそうにだが伝わらないと怒られそうなのでハッキリと口に出す。

 

「祭り事か。それは楽しそうじゃな。では、出て行く前に宿代を支払ってくれんかの」

「……わかった。いくらだったか?」

 

 当たり前のことだが、泊まっている宿を出るのなら支払いは避けられない。それを優しげに伝える霧原さんに、作者は料金を聞いた。

 

「一ヶ月……ようは300日ちょうどじゃから、360万じゃよ」

「……ちょっとまってくれ」

 

 日1万2000円程度の宿泊費であり、化物と怪物溢れるこの世界で、安全と生活の保証までついてるものの中では随分と安めの価格設定だった。だが財布の中を見た作者は、待ってくれと暇人と一般人kのところまで行く。

 

「暇人、一般人k。少しでいいから貸してくれないか?」

「やっぱ足りねえんじゃねえか!」

「これだから……」

 

 呆れる二人に、頼み込む作者。

 

「いくら足りないんだ?」

「60万ほど……」

「それぐらいなら出してやるよ。だがちゃんと返せよ」

 

 値段を聞いた二人は、30万ずつ出し合って作者に手渡す。

 

「ありがとう。俺が借金をしないのはお前たちのお陰だ」

「そう言うならさっさと稼いで返してくれ」

「いつもギリギリカツカツだからな。返せるのが不思議なぐらいだ。もう少し考えて動いてくれ」

 

 手渡された金をありがたそうに受け取り、二人はいつものように苦情を呈する。そして作者は、霧原さんの元へ向かい……

 

「ちょっきり支払ったぞ。じゃ……」

「お主はいつもそうじゃな。……ところで、ワシもその話を聞かせてくれんか?」

 

 キッチリと支払い、魔魅さんのもとへ向かおうとしたが、霧原さんに呼び止められていた。どうやら今回の話に興味があるようだ。

 

「お?霧原さんも興味あるのか?だが今回はダメだ。あんたじゃ強すぎる」

「ほ~、そうじゃったか。それは残念じゃの」

「じゃあ私は?」

「おい、どこから湧いて出てきやがった」

 

 霧原さんと魔魅さんがそう会話をしていると、どこからともなく声が聞こえて、周囲を見渡す作者。だが見つからずにキョロキョロしていると、いつの間にか暇人と一般人kの近くにそいつはいた。

 

 

「鏡華さんか、兄の見次はどうした?」

「兄貴は遅いから置いてきた。後悔も反省もしていない。で、大会ってどんなの?」

「また心配されることを……」

 

 神出鬼没の鏡華さんは、いつものごとく何も言わずに抜け出して来たのだろう。そしてニヤニヤしながら話を聞きに来ていた。

 

 そして内容を確認した鏡華さんは……

 

「なるほど、じゃ私が他の奴らも連れてくるね。多いほうが楽しいだろうし」

「おお、ありがとう。集める手間が省けたよ」

「心配だな……」

 

 参加者を連れてくると張り切ってその場から姿を消し、一時間も立たない内に続々と人が集まり出していた。そこへ帰ってくる鏡華さん。

 

「集めてきたよ。ざっと百人ぐらい」

「変なのも混じってるな」

 

「変なのとは失礼な。わたしは食い逃げをチャラに出来ると聞いて来たんだぞ」

「面白そうなので参加する事になりました」

「フッ、やっと俺たちの活躍場面が回ってきたか」

「黒龍さんがいるって聞いて来たんだけど……」

 

 一部騙された人が混じっているが、多くはちゃんと伝わっているようだ。そこで騙された者たちが鏡華さんに詰めかけている間に、一部の参加不可の者たちへと声をかける作者。

 

 

「そっちはわかったが、お前らは何なんだよ」

「あんたらも参加できないぞ。無双とか蹂躙なんて面白くもなんともないからな」

 

「大丈夫 大丈夫。アタシたちは参加しないからさ」

「ただの観戦要員よ。ゆっくり見させてもらうわ」

「ま、そういうことだ。ってことで投影式巨大画面の準備をするか」

 

 宿に住みつく迷惑三人衆の、科学者のアカネ、研究者のミドリ、技術者のアオイの女三人が、そう言いつつ準備をしだす。どうやら観戦する気満々のようで、仲間も呼び寄せどんちゃん騒ぎをする気のようだ。

 

「いいのか霧原さん?」

「ん~別にいいじゃろ。ちゃんと片付けはするんじゃぞ!」

 

 久々の祭り事なので今回は甘めに見るらしく、霧原さんは許可を出した。それに喜んだみんなは、次々と人を呼び寄せ、会場の準備をしていく。

 

「この調子だともっと集まって来そうだな」

「来るじゃろな。祭りごとはみな好きじゃしの。さて忙しくなるの」

 

 そう言って霧原さんも準備をするために一旦宿に戻っていった。

 

「さて、集まり切るまで待つとするか」

 

 そうして作者も、参加者が集まるまで待つとするのだった。

 

 




~おまけ~

・霧原さんは子供のような見た目の和服を着た現霊族。
 別世界と最も近い異界の穴付近の宿屋の女主。異界の穴の管理もしている。

・アオイは青髪青目で、普通の作業着を着た小人族。
 宿屋に住み着く技術者。火力重視の兵器が大好きで偶に宿屋を破壊することがある。酒とつまみと煙草が大好き。

・アカネは赤髪赤目で、黒っぽい帽子と服を着た迷宮種。
 宿屋に住み着く科学者。こいつのせいで宿屋が迷宮化して大変なことになっている。甘いお菓子が大好き。

・ミドリは緑髪緑目で、灰色っぽい和装をした樹人族。
 宿屋に住み着く研究者。一番大人しそうだが、実は一番厄介。水の飲み比べと日向ぼっこが趣味。


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集まったから大会行くよ

 あれから待っていると、追加で多くの参加者や観戦者がやってきてカオスな状況になっていた。

 

「「「俺たちも参加させてくれ!」」」

 

 そんな中、三人の少年たちが魔魅さんのところへ来ていた。

 

「ん~ダメ。お前らは弱いからな。流石にガキを出すわけにはいかない」

 

「そんな事言うなよ。俺たちだってそれなりには強いぞ」

「ガキにしてはだろ?」

「あ!作者!」

 

 作者も話に混じり、三人の少年たちが驚く。そんな少年たちを他所に作者と魔魅さんは話を続ける。

 

「魔魅さん。間違ってもこいつらを連れて行くなよ。流石に実力が足りなさ過ぎる」

「分かってるよ。狭間の住人だったらワンチャンあったが、外部の者だからな。子供が出る大会じゃない」

 

 今回の大会の主旨は、外部世界の住人を使った大会だ。そこに狭間の住人が勝手に入って行くのだから、何が起こるかわからない。狭間の住人だったらせいぜい勧誘(拉致)ぐらいで済むが、外部者だったらどうなるかわからず最悪死ぬ場合も有りえるだろう。そんなところにあえて知り合いを送るほど二人はバカではなかった。

 

 そんな話をして危ないと諭している二人だが、三人の驚いている理由はそこではなかった。

 

「作者がちゃんと喋ってる……」

「それも悠長に……」

「ありえない……」

 

「久々に会ったからってお前ら失礼すぎないか?」

「陰キャだし間違ってないだろ」

 

 陰キャの作者がちゃんと話せているところだった。

 

 

「まぁ対策はいくらでもあるんだ。で、行けない理由はわかったな。諦めろ」

「確かに作者たちに比べて俺たちは弱いかも知れないけど、そんなすぐすぐ殺されねえよ。危なくなったらトンズラするし」

 

 リーダーの少年がそう言い、後の二人もそれに同意するかのように頷く。

 

「いや無理無理、俺からすら逃げられないじゃねえか。なんなら今ここで証明してやろうか?」

「おういいとも!逃げ足なら自信があるぜ」

「それ自信ありげに言うことか?」

 

 作者の挑発に答えた三人は、呆れる魔魅さんを尻目に一斉に逃げ出す。だが次の瞬間には、陥没した地面に這いつくばり、動けなくなっていた。

 

 

「「「グググッッ!!!」」」

 

「あらら、やっぱこうなるのな」

「言っただろ、ムダだって。ってことで諦めろ」

 

 作者が能力を解くと、三人は残念そうに立ち上がる。

 

「ダメだったか」

「ああもあっさり」

「しかたがない」

 

 実力不足は事実なので、すんなり諦めたようだ。だがここで魔魅さんが余計なことを口にした。

 

「ま、勝手についてくるってんなら来ていいぞ。自己責任だがな」

「おい魔魅さん。せっかく諦めさせたのに余計な事言うな」

 

 軽く言う魔魅さんに、怒る作者。

 

「この世界のルールだろ?実力主義で自己責任ってのは」

「そうだが、それは最終的な話だ。なにもそこまで無情じゃない。あくまで他人のせいにするなってだけだろ」

 

 魔魅さんは少し怪訝な顔をしかけたが、何事もなかったかのように苦笑いをして

 

「ああ悪い悪い。大丈夫、私は連れて行く気はないから、あくまでも勝手にだ。まぁあの距離を座標移動以外で移動するのは何千年かかるかわからんが」

「こっちも行く気ねえよ。勝ち目の無さは十分に分かったから」

 

 分かっているのならそれでよろしいと言う顔をする魔魅さんに、作者は疲れたような表情をしていた。そして少年たちが帰って行き、しばらくしてから参加者たちが魔魅さんの周囲に集まってくる。

 

 

「お~思ってたより多い。二、三百人はいるな」

「それだけ暇なやつが多いってことだろ」

 

 ワイワイガヤガヤと各地から集った暇人たちがごった返し、宿の前も宴会会場のように改造されている。

 

「これどこまで集まるんだろうな」

「さぁ、ある程度集まると後は芋づる式に引っ張られてくるから、暇な知り合いが尽きるまでじゃね?」

 

 時間の持て余した者が多いこの世界ではよくあることだ。なんせ一般人ですら超人的な身体能力の高さに高度な知性?を持ち、地球換算で数百年は生きる奴らの集まりなので、楽しむことに余念がない。

 

 なお怪物や超兵器なども蔓延っているので、命がけではあるが……

 

「とりあえず、これで全員か?」

「そうだよ」

 

 確認していた鏡華さんが戻ってきて、魔魅さんにそう伝える。

 

「じゃ、送るとしますか。みんな楽しんできてな」

 

 そうして参加者たちは、一瞬にして会場へと転移したのだった。

 

 



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会場

 会場へと転移させられた作者は、若干驚き戸惑っていた。

 

「ああ、そういう感じね……、それにしても数多いな」

 

 気がついたら沢山の人がいる会場についていた上、魔魅さんや他の仲間たちの姿も気配も見当たらない。どうやら参加者の多さから会場が複数あり、そこへのランダム転移らしく、更に参加者と観戦者は別部屋らしいと納得する。

 

 

「へ~、いろんなやつがいるんだな」

 

 仕方がないので早速楽しむことにした作者は、周囲のようすを軽く探りどんなやつが参加しているのかを観察し始める。

 

「魔王に勇者、神に天使、悪魔に邪人、それに各世界の能力者たちも……」

 

 そこには様々な種族や能力者がおり、中には作者がまったく知り得なかった存在も数多く散見した。

 

「良い小説の材料になりそうだ」

 

 それを見た作者は、楽しそうにコソコソといろんなヤツの情報を軽く見て行く。

 

 その時だった…

 

 

 

「ちょっとそこの君」

 

「ッ!?なんだ?」

 

 

 

 まさか気づかれるとは思っていなかった作者に、結構美形の青年が話しかける。それに一瞬驚きを見せる作者。

 

「ダメじゃないか。勝手に人様の情報を覗き見ちゃ。まだ大会は始まってないんだぞ」

 

「いや、すまない。人が多くてつい興奮してしまってな」

 

 作者は一旦情報収集を止め、青年の対応をする。

 

「いやその気持はわかるよ。オレだってビックリしてんだからさ。こんなにたくさんの強者がいたなんてな。だがそれとコレはまた別だ。流石にモラルに欠るんじゃないか?」

 

「ごもっともで」

 

 敵対者同士や試合中ならまだしも、無闇矢鱈に解析をかけるのは失礼だと言う青年。それに同意し、認識を改める作者。

 

(流石は内部世界の最強格。少々甘く見てたな)

 

 存在の格ならまだしも、実力では自分を上回る相手もいるかも知れないと感じていた。そこで作者は、一瞬だけホンキを出して能力を使用する。

 

 

 

「ん?どうした?」

 

「……いやなんでも。そんなことより、お前の仲間が後ろで待っているぞ」

 

 そう言って青年の後ろに目を向け、青年を振り向かせる。だがすぐに元に戻り、作者の方に向かい戻った。

 

「いや大丈夫だ。話はついた。で、そういやお前はなんでこの大会に?」

「なに、面白そうだったからだ。それに金が欲しいってのもあるな。できるだけたくさん」

 

 正直に答え、それに納得する青年。

 

「確かに何でも願いが叶うんだもんな。オレは特に叶えたい願いはないが、面白そうだったんで参加したんだ。よろしく」

 

 そう言って手を差し出してくる。

 

「……ああ、こちらこそ」

 

 それに一瞬戸惑ったが、返しておいたほうがいいだろうと作者も手を差し伸べ握手をした。

 

「じゃ、俺はこれで」

 

 そう言って青年から離れ、近くのテーブルに行き軽く料理を食べる。そして疲れたようにため息をしながら、見た情報を整理確認しだした。

 

(内部世界じゃ、順当に成長すれば超位存在になるはず、多元存在なんて特異的なものには滅多にならないはずなのに……なんで深くは見れなかった?)

 

 気づかぬうちに驚愕する進化を遂げていたと言ったところだろう。それは超位存在を超え逸脱した存在、多元存在になったことを示し、狭間の住人と同等の存在になったことを示す。

 

 それに気づいてしまった作者は、嫌な汗を流す。

 

(……まさか全員か、そのまさかだろうな。話には聞いていたが、マジでこうなるとは……)

 

 直ぐすぐ慣れるわけではないものの、慣れるのに大した時間はかからない。よって時間が立つにつれて、作者が考えていた優位性は砂の城の如く崩れ去る。一方的に通じる力がなくなる上、同じ土俵で戦わざるおえなくなるからだ。

 

 特に作者の場合、能力相性を考えると優勝は絶望的になる。

 

(これは何か対策を考えないといけなさそうだ)

 

 今さっき出会った青年のような強者はまだまだいるだろう。そんなの相手してられないと、計画を立て直す作者。

 

「ん?始まったか」

 

 そこで会場が暗くなり、大会説明が始まるのだった。

 

 




 パソコンの調子が悪いので投稿が遅くなります。今しばらく気長にお待ちください。


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挨拶とルール説明

 暗くなった会場に、いくつかまばらに光が差し込む。

 その光の中には、天井からぶら下げられたモニターが設置してあり、ありがちな人型のシルエットが映し出されていた。

 

(そういや、大会主催者って誰だろうな?)

 

 姿を見せない主催者に対して、そう疑問に思う作者。

 

「どうもはじめまして、私はこの大会の主催者です。

 今日は本大会へご参加いただき、誠にありがとうございます」

 

 開会の挨拶が響き渡り、ザワついていた者たちが完全に黙り込み、辺りは静寂に支配された。

 

「まず、本大会の大まかな概要を説明します。この大会は、バトルロイヤルにて優勝者が決まります」

 

 違和感はなく、人に限りなく近いが、老若男女判別のつかない声。それが静かな会場に響き渡り、大会についての説明を開始する。

 

「バトルロイヤルは、全員に評価点が配られ、制限時間256時間でそれを奪い合って点数がもっとも高かった者が優勝者とします」

 

 長い制限時間に、参加者が多いためかと、会場内でどよめきが走る。

 

「この大会での優勝者には、どんな願いでも一つだけ叶えることが出来ます。ぜひ頑張って優勝を狙ってみてください。以上が大会の概要になります」

 

 最後の方に聞こえてきた話が、作者の耳に入る。

 

(何でも叶えられるね。俺には関係ないが、どこまで叶えられるのやら……)

 

 作者は、似たようなものをたくさん見てきたのだろう反応をする。

 

(まぁ、考えても仕方がないか)

 

 だがどれも、なんでもと言いながら限界や代償がある場合が殆どで、完全なものを見たことがなかったようだ。そして今回もそうだろうと聞き流していた。

 

 

「次に試合外についての説明をいたします」

 

(一応聞いておくか)

 

 それを聞いた作者は、主催者の声に耳を傾ける。

 

「本施設は、他のお客様や参加者などに迷惑がかからない程度であれば、自由に使用可能です」

 

(自由に使わせてくれるって、随分と太っ腹だな。もしかしてこの施設使って金策できるかも……)

 

 そんな呑気なことを考えながら、話の続きを聞く作者。

 

「なお、試合外での大規模戦闘や施設破壊などは、できる限りお控えくださるようお願いいたします。また、もしその様な事態に陥った場合、大会組織側はそれなりの対処をさせていただきます」

 

 大会の説明が終わり、その後もごくごく当たり前な説明が続く。その際にとある事に気がついた作者は、思考を巡らせる。

 

(やっぱ主催者は、狭間の住人側のやつか。多元存在でもなきゃコイツラ全員相手できないもんな。それにこの感じ、どこかで……)

 

 さっと周りを確認した作者はそんな事を考え、同時に主催者にも違和感を覚えた。

 

 

「最後に、本大会参加証明書の契約サインをお願いいたします。

 以上を持ちまして、本大会の説明は終了いた……」

 

「ちょっと失礼」

 

 最後の説明が終わろうとしたその時、画面が映り変わり、鏡華さんが映し出される。

 

(鏡華さん!?なんで出てきてんだ!?)

 

 驚く作者だったが、どうにか内面に止めていた。周囲もざわついているが、そんな事も気にせず鏡華さんは話を勝手に進めだす。

 

「まぁまぁ落ち着いて、別に大会を壊そうなんて考えてないよ。ただもっと楽しめるようにしようと思っただけ。ってことで、ちょっとルールの追加と変更をしていいかな?」

 

「……別に構いません。こちらが許容できる範囲なら」

 

 鏡華が主催者に話しかけ、主催者は渋々といった感じに了承する。

 

(あいつ主催者が誰かわかったんだな。で、あの反応からすると……)

 

 鏡華さんは主催者の存在をわかっているようで話を進める。作者もそこから推察するが、身に覚えが多すぎて絞り切れていなかった。

 

「ん~硬いね。こういう時はいつもそうだよなお前は、もっと楽しく気楽に行こうよ。せっかくの祭りなんだからさ。ってことで、私たち乱入者の評価点を倍増させるって事で願い。どうせならわかりやすくしてもいいよ。特定は済んだでしょ?」

 

「わかりました。では得点を十倍以上にして、点数表記を赤くしておきましょう」

 

(はぁ?あの野郎何勝手に……)

 

 残り時間や点数などは注視すればわかるようになっており、乱入者たちはその表示が赤くなるようだ。そうして少々の調整の後に参加者全員の目の前に、一つのウインドウが現れた。

 

 

「……仕方がないか、乱入者だしな。にしても細かい説明に禁止事項か。面倒だな……まぁ読んどくか」

 

 それを読み、おかしなことが書いてないかを確認した作者だったが、特にそのようなことは書いておらず、非常に常識的かつ当然の内容しか記載されていなかった。

 

「普通だな。ってことはあいつか?いやでもこれならあいつって可能性も……」

 

 そう思いながら、作者は契約書にサインをする。

 

 そしてそれと同時に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、優勝目指してがんばりますか」

 

 転移が発動するのであった。

 

 



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いきなり大惨事

 とある建物内に転移させられた作者は、急いで探知を使う。

 

「よし、一気に行かせてもらうか」

 

 一気に範囲を広げ、数キロ先にいる参加者たちを的確に認識していき――

 

「チッ!?こんな短時間でもうっ!」

 

 探知がところどころ失敗したことに、苦渋を舐めた顔をする。同時に近くに狭間の住人がいくらか混じっている事に気が付き、更に表情が険しくなった。

 

 

「他にも探知系使っているやつがいるな。それに反撃も怖いし一旦広範囲探知はよそう」

 

 最低限の情報が手に入ったことから、これ以上の踏み込みは危険だと探知の範囲を引き下げ、隠密と精密特化でことを進めるようにしたらしい。

 

「建物を壊すのは流石にバレるか」

 

 窓のない一棟の巨大な研究所のような施設内部に送り込まれた作者は、静かに行動を開始しようとした。

 

 だが……

 

「なにッ!?」

 

 いきなり建物が大きな揺れに襲われ、外の景色が破壊しつくされていく。そしてさらに面倒なことに……

 

『緊急事態にて機関の再起動を開始、確認……完了。直ちに侵入者の排除を開始します』

 

 停止していた研究所が動き出していた。

 

「ヤベェ!運なさすぎだろ!!」

 

 無機質な通路の色が変わり、無秩序に張られた光線が前後から迫りくる。それを回避するために、近くにあった扉を破壊してその部屋の中に入るが

 

「うわぉ……」

 

 平たいドローンのような機械が、銃口を向けて待ち構えていた。

 

「ちょっと話し合い、なんてムリだよなッ!!」

 

 転がるように入ってきた作者の着地点に向けて、発砲を開始するドローン。それを動き回り空動を用いて紙一重で回避し、必死に逃げ回る。

 

「おっと次の手か?それに増援とはキツイな。だからッ!」

 

 少し変形し攻撃手段が増え、実弾と光線を交えた高度な攻撃をしてくるドローン。更には複数の種類の増援が駆けつける中、作者は即座にドローンに接近し能力を使った。

 

「書き換えさせてもらう!」

 

 情報を回覧し、都合のいいように改変する作者。その瞬間、ドローンは到着した増援に攻撃をしだす。

 

 

「お~流石だな」

 

 不意を突かれた事も相まって、その恐るべき攻撃性が遠慮なく機械兵たちへと注がれる。それにより前線が崩壊するが、即座に別の作戦を実行する機械兵たち。

 

「効くかよ」

 

 死角に隠れ、手榴弾を放り投げてくる。だが改変強化されたドローンの障壁に防がれ、特攻したドローンが通路に避難した機械兵たちを葬っていった。

 

「さてと、このまま中枢部に行って乗っ取って……」

 

 施設を乗っ取り、巨大戦力とすべく中枢機関に向かって行動を開始しようと足を踏み出す。だがその前に二度目の揺れが施設を襲い、先導していたドローンごと施設の一部が大きく削り取られる。

 

「ってのはできそうにないな」

 

 その先に参加者の気配を感じ、施設も使い物にならなくなるだろうと思う作者だった。

 

 




 ~おまけ~
 ・施設について
 各地に勝手に建てられている施設たちの一つ。超高高度技術で建てられたそれらは、研究所や住居だったり、工場や保管施設などが大半。基本的に施設の耐久年数と住人の寿命が釣り合っておらず、所有者を失って廃墟となっている場合が多い。


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無茶苦茶なチャラ男

 高まり続ける力の本流に、こりゃ困ったと匙を投げたくなる作者。

 

「いくらなんでも無茶苦茶な……」

 

 そいつは誰かをぶん投げてそれを追いかけてきたらしく、追撃による一撃でこれほどの被害を出していたのだ。そう、たった一撃でである。そして姿が見え始め、そこには半分瓦礫に埋もれ倒れ伏す刀を持った少女と、ザ・チャラ男っぽい男が立っていた。

 

 

「なぁっ!ガァッ!?」

「おっ誰かいるなっと!?運がいいや!」

 

 そいつの足元に倒れていた少女が反撃するが、チャラ男はそれを安々とかわし、作者の方へと少女を蹴り飛ばす。

 

「両方とも倒しとくかッ!?」

 

 超高速で接近し振り出された拳だが、それは不可視の壁にぶち当たり、無残に周囲を炸裂させた。それに驚いたチャラ男は、空間が揺れるほどの連撃を壁に向かって放つ。

 

 

「硬って!やるな!」

 

 姿がブレ、回り込んでの打撃を叩き込もうとする。だが謎の結界に阻まれ、轟音と衝撃波だけが周囲を破壊し尽くしていく。

 

「とんでもねえ破壊力だな。大丈夫かお前?」

「あっ、ああ、助けてくれてありがとう、ございます?」

 

 少女を受け止めた作者は、次元を改変し断絶して結界を作り出していた。それに阻まれ続けるチャラ男は――

 

 

「いって!ホント硬てぇなこれ!」

 

 少々強く殴ったらしく、その反動で手首を捻った程度の軽症を負い、すぐに元に戻していた。

 

「どうしたら……あっそうだ」

 

 そこで何かを思いついたのかチャラ男は、次に同じ場所に猛攻を加え始める。すると結界が少しずつ揺れ始め、歪みだす。

 

 

「協力しないか?じゃなきゃキツそうだ」

「……わかりました。私もそうしたいと思ってたところです」

 

 そんなメチャクチャな攻撃風景を見て、作者は少女にそう話を持ち出す。すると少し考えたものの、すぐに協力関係が出来上がった。

 

 

「おっ!効いてるな!じゃあもっと威力を高めて、空間ごと破裂させてやる!」

 

 爆増させた力を一点に集めだし、空間や次元にまで干渉し始めたチャラ男は、それを結界に向かって振り切る。すると爆裂したような衝撃波が響き渡り、結界が盛大に破壊された。

 

 

「え~、なんじゃそりゃ……」

 

 ドン引きしながら咄嗟に距離を取る作者に、暴力的な力技により強引に能力壁を破壊したチャラ男は、その勢いのまま二人に殴りかかる。

 

「ウオッ!?」

 

 だがチャラ男はスレスレの所でなにかに躓き、体勢を崩した瞬間に作者に蹴り飛ばされていた。

 

「うぅ、これは……なるほど、わかりました」

「俺の能力だと分が悪いからな。頼んだぞ、アルトリア・クロノスさん」

 

 一瞬で情報共有を済ませ、二人は同時に動き出すのだった。

 

 




 応募キャラを使わせていただきました。

 ~おまけ~
 断絶結界……次元をいじくり発生させる結界。作者がとある人の技を真似て作った技だが、完全に模倣できずにただ異常に耐久の高いだけの結界となった技。


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チャラ男戦

 アルトリアは力を開放し雷撃を発生させ、作者と共に一気にチャラ男との距離を縮める。

 

「二人同時か?いいだろう!」

 

 チャラ男はそういい、目の前まで迫ってきていた作者と拳を交える。その衝撃波は、周囲を吹き飛ばし、建物を大きく揺らす。

 

「おうっ!?」

 

 拳を少しズラし体勢を崩させ、その隙をアルトリアが突く。

 

「ちょっ!?」

「「っ!?」」

 

 どこを狙われているのか悟ったチャラ男は、急いで踏ん張り腕を振る。その瞬間、一気に速度が爆増し衝撃波が二人を襲う。

 

「めんどいな~」

 

 高まる力の渦を制御し、超連撃のごとくアルトリアに拳を繰り出す。しかし壁に阻まれ、断絶された衝撃波がチャラ男に向かって返ってきていた

 

(技量は大したことないが……)

(単純に強すぎる!)

 

 煙の先にいる無傷のチャラ男を認識し、二人はそう感じた。

 

「わかりましたか?」

「エネルギーの変化とか移動の際に少しだけ隙がある。そこを突けばなんとかってところだな。しかしまぁ……」

 

 それをさせてくれる程、チャラ男は弱くない。そう続けようとしたが、その前に床が引き裂かれ、チャラ男が現れる。

 

「やっぱな!」

「ガッ!?」

 

 爆増した速度で作者を狙い、壁に阻まれた。しかし次の瞬間、それを足場にされ、反対側にいたアルトリアが施設の壁を敷き破り殴り飛ばされる。

 

 

「近くにしか張れないし範囲は対して広くない。それと移動できないってところか?」

 

 ニヤリと笑いながら、作者の前で自身の考察を披露するチャラ男。

 

「わかった所で……」

「そういう能力者とはやりあった事があるんだよな。確かに倒すのは面倒かったが、そういうやつに限って攻撃性が乏しい。だからあいつと組んだんだろ?」

 

 作者の能力が防御系だと思っているのか、そのまま話を続ける。

 

「じゃあ俺は、あいつを倒しちまえばほぼ勝ちってことだ。お前の結界も壊れないわけじゃなさそうだからな。へっ、期待はずれだぜ、乱入者さんよ」

 

 そう言い、結界を解かない作者を置いて少年の元へと足を向ける。

 

(安い挑発だな。解いた瞬間に攻撃を仕掛けるつもりか。そうじゃなくても、アルトリアがやられてしまうか)

 

 立ち上がりチャラ男に攻撃を仕掛けるアルトリア。だがその圧倒的地力の差により、瞬く間に不利な状況にされ追い詰められていた。

 

(無制限の対応能力に何にで触れられる干渉力。それにあの、複雑で高密度なのに変動し続ける存在構造……。多元存在になった証拠か)

 

 チャラ男の圧倒的速度にギリギリで追いつき、その高すぎる攻撃力にも対応しているアルトリアを見て、ここまでかと感じていた。

 

 

 

「……やるか」

 

 作者は結界を解き、チャラ男の元へと瞬動で近づく。

 

「なっ!?」

 

 一瞬で距離を詰められ驚いたチャラ男は、爆増で更に能力を引き上げ、アルトリアを吹き飛ばし作者に殴りかかる。

 

「っ!ッ!?」

 

 しかし壁に拳がぶち当たり、大きな隙を作ってしまう。そこに作者の重い連撃が入り、身体がグラつく。

 

「はぁッッッ!!」

「グッ!?その程ッッ!!?」

 

 帰ってきたアルトリアの斬撃が入り、眩しい雷撃とともにチャラ男が斬り裂かれる。それに驚き、振り払おうと反射的に動いてしまい、また作者の鋭い拳が入っていた。

 

「効く、ガハッ!!」

 

 痺れる身体を無視し、強引に衝撃波を撒き散らしながら床を破壊する。しかしそれでも逃れられずに、空動により更に増した速度で鋭い追撃をくらう。それに合わせてアルトリアの雷撃がチャラ男の身を軽く焦がす。

 

「なんだっ!?なんでだッ!?」

 

 何度も能力を重ねがけしながら、周囲に破壊を撒き散らすチャラ男だが、動き回る二人を捉えきれずに傷ばかりが増えていく。

 

 

「クソッ!!」

 

 だったらと、莫大な力を解き放ち、隙間なく衝撃波を放った。

 

 だが――

 

 

「ガァッ!?」

 

 

 張り巡らされていた結界に阻まれた衝撃が乱反射しチャラ男へと跳ね返り、反動と衝撃波の隙間から斬撃と雷撃に直撃し、盛大にダメージを受けて落下するのだった。

 

 




 ~おまけ~

 瞬動……直線状に超高速で動く技。瞬間移動のごとく一瞬で移動する便利で厄介な技もである。

 空動……空間を蹴って移動したり、その空間に滞空したりと簡単な空間移動ができる。移動速度はさて置き、機動性に欠ける。


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作者の本性

 気を失い動けなくなったチャラ男の元へと歩み寄った作者は、さっそくと言った風に作業を始める。

 

「なにをしてるんですか?」

「なに、お前が気にすることじゃねえよ。そっちで待ってろ」

 

 アルトリアの質問をそう流しながら、男を物理的に拘束し、意気揚々と能力を使い何かを書き込む。

 

「俺に逆らえない、仲間になる、友好的に接する……どれもダメだな」

 

 書いた文字が直ぐに弾かれ、どれもうまく行かない。やはり対象の意に反した事は非常に効きにくいようで、作者は軽いため息をついていた。

 

「行動制限とか目覚めないようにはできたが、はていつまでもつものか」

 

 かろうじて書き込めたことも徐々にだが消えかけてきている。これも定期的に書き換えなければならず、やればやるほど効果は薄くなるだろう。

 

「いっそのこと暴走させるか?でも逃げきれるかな?」

 

 一番簡単な方法を使おうかと考える作者。だがそれはリスクが大きく最終手段にしたいようだ。

 

「かと言って強引に書き込むのもリスクが高いし、少しづつ切り崩していくのも時間が掛かりすぎる。その間無防備だから邪魔されたら終わりだ。そもそもこいつが目覚めないなんて保証どこにもないし……よし後で考えよう!手を出さなきゃ動けないだろうし」

 

 狭間の住人は多元存在である。そのためやろうと思えば何でもできるのだが、それはあくまで理論上の話でしかない。現実はそううまく行かず、実力が足りない事は“出来はするが割に合わない”のだ。

 

 なおチャラ男は動けないようにがんじがらめに拘束された。

 

「あ~、楽にできると思ったんだがな。とんだ見当違いだ。情報の複写だけしとくか、細かいのは大会後に見ればいいや」

 

 作者の目的は金策とネタ探しである。大会に出場したのも他世界の情報を集める為で、都合がよかったからに他ならない。

 

 

「せっかくだしお前の情報も複写させてもらうぞ」

「……」

 

 作者の問いかけに答えないアルトリアは、どこか虚ろな目をしていた。

 

「隙があったから書き込ませてもらったが、こっちはうまく行くんだな。やっぱ無防備で友好的だとやりやすい」

 

 作者は共闘した際にそのようなことを書き込んだのだ。そしてそれは徐々に侵食し、アルトリアに大きな制限をかけていた。

 

「とはいえ完全に制御出来てるわけじゃないんだ。扱いを間違るとすぐ解けちまうから……っと慎重にしなきゃな」

 

 そう言いつつ情報を抜き出す作者。それは一瞬で終わる作業だが、その一瞬は非常に高い集中力と完全な無防備状態という枷が付きまとう。万が一支配が解ければ、致命傷ないし大ダメージは避けられない。

 

 

「さてどうするか?できるのは簡単な指示だけ。本人の意にそぐわない事は弾かれ、最悪即時解除か。多少の記憶ならまだしも、根本的なところには手が出せないからこっちが合わせないとな」

 

 そう言いつつ作業を再開した作者。

 

「結局やってること、手のいい誘導なんだよな。使い勝手も悪いしよ、ここで襲撃とかされたら敵増やすだけじゃん、ホント……」

 

 愚痴を言っているが、これもそれも作者が修行をサボっていたからである。事実狭間世界には、作者の上位互換など探せば普通にいるのだ。

 

「友好力と本人の強化は当たり前として、都合いいように記憶でも弄っとくか。認識操作できれば楽なんだが安定しないから駄目だし、違和感も持たれないようにしないと……」

 

 そうして都合のいいようにアルトリアを支配し直し、目の前でパチンと手を叩いたのだった。

 

 




 ~おまけ~
・洗脳や催眠、支配について
 多元存在は超高密度存在な為、つけ入る隙間がなく支配系や状態異常が完全に効くことはない。だが浅い部分はそうでもなく、専用の能力や特化型が頑張れば多少は効く。しかし根本は変えられないため、時間か効果の度合いかどちらかしか取れない。
 なお作者は、ムダなことを書き込んだり余計なことをするのと単に下手なだけである。


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うまくいかない

 

「ん?終わったんですか?」

「ああ、お陰様でな。わかると思うが、礼としてお前を強化しておいた」

 

 それを確かめるように軽く体を動かし、アルトリアは調子がよさそうに頷く。

 

「ありがとうございます」

「いいんだ。さて、とりあえずここから離れよう。他の参加者が来るかもしれない」

 

 チャラ男に関してはほっといてもいいだろうと思った作者は、そのままこの場を離れようとするが……

 

「そうです……ね?」

「どうした?」

 

 反応が鈍いアルトリアに、内心焦りながらそう聞き返す。

 

「いえ、ちょっと違和感がありまして」

「強化の影響かもな。ところで……」

 

 記憶をいじくったことに気付いたのかと冷や汗を流しそうになるが、少し安心する作者。そしてすかさずその話題から話をそらそうとしたその時

 

「……強化以外に何かしました?」

「いやなに……っ!?」

 

 しらばっくれようとする作者に、雷撃の混じった斬撃が放たれ、作者は即座に距離をとる。

 

 

「やってくれましたね」

「……はぁ~、もっとうまくいくと思ったんだがな。やっぱ苦手だ」

 

 さっそく支配が解けてしまったことにため息をつき、作者は構えなおす。

 

「あなたは危険です。ここで討たせてもらいます」

「はっ、できるもんならどうぞ」

 

 アルトリアが一気に距離を詰め、それに合わせて作者が振り落とされた刀を掴む。その瞬間、莫大な衝撃と閃光があたりを包み込んだ。

 

「なッ!?」

「どうした?攻撃が効かずに驚いてんのか?」

 

 無傷の作者に驚くアルトリア。それどころか刀はしっかりと掴まれており、少し動かすだけでアルトリアは体勢を崩してしまう。

 

「ま、おとなしく沈んでろ」

「ッ!?」

 

 そのまま拳が振るわれ、何かがつぶれる感覚とともに木々をなぎ倒しながら吹き飛ぶアルトリア。

 

「な、なんて重い……一撃を……」

「意識保ってんのは褒めてやる。だがそれじゃ何もできんよな」

 

 アルトリアがギリギリ意識を保っているところに作者が現れ、顔面に手をかざす。するとゆっくりと沈み込むように手が入り込んでいく。

 

 

「なっ!?ガァ!!?」

「おとなしくしろ」

 

 より深く書き換えるために強引な手法をとる作者。それに抵抗するアルトリアだが、ダメージが大きくまともに動けない。

 

「っ!?抵抗の仕方も知らねえくせに……これだから多元存在は」

 

 強い意志や根本にはほとんど手出しができない。たとえ実力が天と地ほど離れていても、そこには手が出せず、上書きしたところでそんな薄っぺらいものでは時間の問題だ。それでも、あらゆるものを度外視すればできないことはない。

 

「どうやって攻撃を無効化したのか教えてやろうか?いや、問題形式にしよう」

「っっ!!?」

 

 作業を進めながら作者はそう話し出す。

 

「お前の記憶にも入れたが一般流の中に“無動”と“乱動”って技がある。程度が低けりゃ一方は受けやすくなるだけで、もう一方は単にブレて見えるだけのもんだが、それを極めれば一瞬だけどんな攻撃でも受けきれたり回避できるんだよ。どんなけ強力でも、持続がなけりゃ通じねえ」

 

 自身が使った技の説明を続ける作者。

 

「ま、隙を突かれりゃ無防備になるっていう弱点もあるがな。で、どっちだと思う?」

 

 笑顔でそう聞く作者に、アルトリアは苦し紛れの攻撃を放った。だが全くの手ごたえがなく、空を斬ったかの感覚がアルトリアを味わう。

 

「そんな無理に出された攻撃が通るとでも?まぁもしくらっても俺にはこれがある」

 

 そう言い作者は、コートを軽く捲って腰につけているカードデッキのようなものを見せつける。

 

「“身代わり紙”って言ってな。俺の負った不都合を肩代わりしてくれんだ。スゲーだろ?これがある限り俺は無敵だ」

 

 自慢げにそう言い、苦し気に目を見開くアルトリアに更に追い打ちをかけた。

 

「で、俺がこんなことを話してる理由は、お前の隙を狙っての事だ。どうやらうまくいったみたいだな。因みに答えは、どっちもだ。受けた時に無動とさっきの攻撃で乱動をな」

 

 アルトリアの瞳から光が消え、虚ろになっていく。それを確認した作者は、安堵した顔になりこう思った。

 

(成功してよかったー!しくじってたらもっと面倒なことする羽目になってるところだったな、うん。やっぱ賭けはするもんじゃないな。身代わり紙の消耗もヤベーし。ま、やらなきゃ勝てん場面多いからやるけど)

 

 内心と外ずらはだいぶ違うようだ。

 

「とりあえず色々仕掛けるか。こいつらは暴走確定だが」

 

 無力化と支配は同義ではない。単に邪魔をしまくって動きを妨害したり誘導しているだけで、なんでも言うことを聞く人形を作っているわけではないからだ。そのことから、防衛本能からくる暴走が一番手っ取り早く再利用できる手段となる。

 

「俺も支配ができたらいいんだけど、消去でも上書きでもなくて、あくまで書き足しだから無理があるんだよな。やりようはあっても割に合わんし、なにより無茶が通じないってのには変わりないし……」

 

 ブツブツ呟きながら作業を進め、二人に条件を書き込んでいく。

 

 そして――

 

「よし、五分後または外部刺激があった場合に即座に暴走っと。あとはあの施設だな。ちゃちゃっと終わらせて巻き込まれないように逃げねえと」

 

 半壊した施設に足を運ぶのだった。

 

 




 ~おまけ~
 重撃……一度に二発以上の衝撃を放つ技。そのままなら打ち出した衝撃が対象を襲い、衝撃を重ねるようにして打ち出せば、超強力な一撃を繰り出せる。

 無動……一瞬動けなくなるが、あらゆる攻撃を完全に受けきることができる。失敗すると無防備になる。

 乱動……存在をブラすことにより、一瞬だけあらゆる干渉を受けなくする。失敗すると無防備になる。

 身代わり紙……作者のインチキ無敵術の一つ。これがあればどんな不都合も、一回につき一枚でなかったことにできる。その上量産も簡単で攻撃の質によって紙の壊れ方が違うので、どんな攻撃をされたのか大体わかってしまうクソ性能を誇っている。しかし攻撃の大小にかかわらず消費されたり、持続攻撃には弱い弱点がある。

 情報過多……作者が相手を無力化する際によく使う技。これを食らった相手は、混乱するほどの情報量を受けて身動きが取れなくなる。一発の大きさではなく量によるチマチマとした情報攻撃なので、それを超える外部刺激が起こると即座に解除される。

 強制暴走……多元存在は強引に捻じ曲げられそうになると自己防衛として暴走する特性がある。それを利用して暴走を誘発させる技。見境がなくなるので暴走前に逃げておかないと、仕掛けた本人が真っ先に襲われる。




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会場より

 大会が始まり、その光景が巨大スクリーンに映し出された。

 

「始まったの」

「いきなり範囲攻撃連発って」

「でもすぐ終わったぞ」

「邪魔されるんだから続くわけねえだろ」

 

 セッチングが終わり多くの観客が集まった会場では、飲めや歌えやのお祭り騒ぎでいたるところから会話や言い合いが起こっていた。

 

『え~今回本大会を実況させていただく、平見 教子(ひらみ きょうこ)と申します』

『解説の平見 解(ひらみ かい)です。本日はよろしくお願いします』

 

 そんな声が会場内に響き渡り、二人は大会と出場者についての軽い説明をこなしていく。

 

「実況好きの平見家まで来てんのか」

「まあこれだけの祭りだしな」

「ここいらの上位層が一斉に集まればそうなるじゃろ」

 

 祭りや争いごとなら、いつでもどこでも起こっているこの世界だが、これだけの強者が集まる祭りは珍しかった。そのため、芋ずる式に各地から人が押し寄せていたのだ。

 

「鏡華さんが集めたってのも関係してるかな」

「好感度はさておき顔だけは広いからな」

「……うちの妹がすまん」

「あ、見次さん」

 

 一般人Kや暇人たちが話しているところに、鏡華さんの兄である見次さんが来ていた。

 

「まぁ良いじゃろ。みな楽しんでおるようじゃし」

「霧原さんにそう言ってもらえるとありがたいです」

 

 そう二人が話していると、映像が移り変わり鏡華さんの姿が映し出される。それに鏡華さんが反応して、ニヤリと笑い、挨拶をしながら笑顔で手を振っていた。

 

 

「能力でこっちを確認して……呑気なもんだな」

「あいつは……」

 

 暇人と見次さんは少々呆れ気味にその映像を見ていた。

 

「ま、油断しとるわけじゃないからいいじゃろ、ほれ見てみ」

「相変わらず出鱈目だな。なんであいつ出場できてんの?」

「さあ、本人の主張はまだ実力不足だからって言ってたな」

 

 そんな周りに一切気を配らない鏡華さんに出くわした二人の参加者は、煉獄のような炎を出して一気に攻撃を仕掛ける。しかし鏡華さんにはダメージどころか傷や火傷一つない。

 

「埋田さんみたいな奴らだな」

「九尾じゃからってあの子たちに失礼じゃろ。あんな害悪の塊と比べるでない」

「見た目だけの話だ。にしても鏡華さんの、実体のない攻撃の反射、あれは厄介極まりないな」

「質量のある攻撃以外通じないからな。それ以外は大小も小細工も関係なく反射するし、あれ随時発動しているし」

 

 似た人物を思い出し例に挙げる暇人だったが、中身は全く別物であるために霧原さんに叱られる。そんな最中にも戦いは続いており、鏡華さんは一切手を出さずに観察しているだけだ。それもそのはずで、炎や光線に衝撃はもちろん、一部の魔法や能力などが一切通じないからである。

 

「接近戦も強いんだよな、あいつ」

「というかそっちが本命だろ」

「実力不足とか嘘ついているとしか考えられんだろ」

 

 ヒノエとヒノカと言った二人は、炎攻撃が通じないとわかると近接戦で決着を着けようと鏡華さんに迫る。しかし近接戦でも鏡華さんの方が格上で触れすらできていない。

 

「まぁこうなるだろうな。得意分野潰されれば」

「うわ、あの攻撃嫌だな。何度見ても慣れんわ」

「反射を利用して距離を取ったな。案外やるな」

 

 二人がかりの体術を軽々とかわし、反撃を叩き込む鏡華さん。すると殴られた場所から割れた鏡のようなものが生え、抉るように体を貫く。それに驚いた二人は、炎をまき散らし反射の反動で距離を取っていた。

 

「あ、あれやる気だな」

「あれか、避けずらいんだよな」

 

 広がる鏡をどうにかしようとした瞬間、一切の隙を許さず放たれた光線が二人を貫く。それが乱反射し、炎が弱まるとともに数が増え続け、最後には空間を埋め尽くす光線があらゆるものを貫き焦がしていく。

 

「周囲にあるエネルギーを収束させて光線を放つ技だな」

「そうじゃな。威力が周囲依存なのを除けば強力でコスパの良い技じゃ」

 

 立ち上がれないほどの負傷を負った九尾の二人を見下ろす鏡華さん。そして楽しかったと礼を言って、二人に止めを刺していた。

 

「手札の半分も見せずに終わったな」

「まぁなりたてだとこんなもんだろ」

 

 そうして鏡華さんの戦闘が終え、次の戦闘場面が映し出されるのだった。

 

 




~おまけ~

・平見 教子は実況者で殊眼族。
 夫婦で各地を旅して戦闘を中心にネットで色々投稿している実況配信者で解の妻。

・平見 解は解説者で殊眼族。
 夫婦で各地を旅して戦闘を中心にネットで色々投稿している解説配信者で教子の夫。

・見次さんは旅人で武具族と殊眼族のハーフ。
 鏡華の兄で人当たりがよく義理堅いヤツ。


 投稿キャラを使わせてもらいました。


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とんずら

 作者が仕掛けを終え施設から離れている時の事だった。

 

「お?さっそくか」

 

 そういった瞬間、施設から発生した黒い球体がすべてのものを飲み込んでいく。そして一定まで広がった空間は、そのすべてを消失させ消えていった。

 

「大層な自爆機能だな」

 

 狭間産の兵器には、そのほぼすべてに自爆機能が搭載されている。それも超がつくほど頑丈で高性能な施設を、完全に消し去るほどのものだ。無論そんなものを真正面からくらえば、いくら参加者と言えどただでは済まない。

 

 自爆装置を付ける理由は、技術流出を防ぐため……などではなく、基本ノリとロマン、嫌がらせやどうせなら派手に散ってもらおう、という思惑の元設置されている。そもそも超兵器などには莫大なエネルギーを使用するので、一部の機能が停止した時点で滞留するエネルギーのせいで、ただの爆弾へと早変わりする。それを助長、再利用させたのが自爆装置というわけだ。

 

 

「ふん~、これでも点数がはいるんか」

 

 作者が手を加えたからと言って、直接倒していないのに点数が入っていた。それに旨味を占めた作者は……

 

「見つけた先から仕掛けていくか」

 

 軽い罠を仕掛ける感じに、自爆装置に仕掛けをしまくることを決めていた。

 

「っと、じゃ取り敢えず離れるか。巻き込まれてもたまらねえし」

 

 気配を周囲に馴染ませ、能力で更に隠密の精度を高め、近づいてくる者たちに気付かれないように離れる。すると背後から大きな力のぶつかり合いが起き、戦闘が始まった。

 

 

「デケェ~、なんて規模だよ」

 

 初撃で傷を負ったらしい男が能力を使い巨大化を行う。そして追撃を仕掛けに来た他の参加者たちを吹き飛ばし、激しい戦闘が繰り広げられていた。

 

「能力は巨大化か。で、他は超越化とか冷却系、転移みたいなもんか」

 

 巨人は動くだけで地を荒らし、一撃一撃が地形を変えていく程の威力の攻撃を繰り出し続ける。その動きを止めたのは超越化を持った軍服の男で、長剣から放たれた光線で巨人を貫き、傷口を焼かせながら吹き飛ばした。

 

「どうやったらあんな威力出るんだか」

 

 だが巨人は倒れずに体勢を取り戻し、さらに巨大化をする。しかし一瞬の隙を突かれたようで、少年が周囲の気温を極低温下にし、巨人の足元を含むあらゆるものを強制凍結させようとした。

 

「邪魔されたか。あとちょっとで氷漬けだったのに」

 

 しかしいきなり現れた青年に邪魔され、中途半端に凍結が終わる。そこへ一歩遅れて凍結から解放された巨人が拳を振り落とし、地を鳴らす衝撃波は周囲の景色を一変させた。

 

 だが誰もその程度では止まらない。

 

 暴力を振りまく巨人、高火力攻撃をぶっ放す軍人、すべてを凍らし砕こうとする少年、転移を繰り返し周囲のものを移動させ続ける青年。誰しもが止まることなく勝利を掴もうと暴れていた。

 

 

 

「乱戦だな。混ざりたくない」

 

 破壊の限りを尽くす乱戦を遠くから観戦する作者は、そう感想をもらす。作者にとって冷却系と転移は対処に困る能力であり、巨大化と超越化に関しては地力が違いすぎて真正面からでは手に負えないのだ。しかも全員、チャラ男と違って技量が低いわけではないので、勝つとなればそれなりの苦戦を強いられる。

 

「加減って言葉を知らないのかな?」

 

 巨人は更に大きくなり、軍人は謎の光が染み出し、冷却使いは周囲を凍らせ破壊し尽くし、青年は転移を繰り返し理不尽を振りまく。

 

「逃げよ……」

 

 手加減も限界も知らないと言わんばかりに大規模戦闘が始まり、それを確認した作者は、そそくさと逃げ出すのであった。

 

 




 ~おまけ~
 ・施設の自爆について
 亜空侵蝕というもので、生み出した極小の亜空間を強引に拡張させてすべてを飲み込むことができる。これはワザと既存の世界と反発するようにできており、それをエネルギーが尽きるまで強引に広げ、最後には飲み込んだものごと亜空間の収束と世界の圧力の二重荷重により押し潰すもの。


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恐竜らしい

 津よそなやつを避けながら森の中を走り続けて約一時間。

 

「お?」

 

 丁度良さそうな相手を見つけて、隠れながら観察をする作者。

 

「赤色の瞳に銀髪で髪は長く結んでいる少女ってところか。名前はミュウで種族は恐竜族と」

 

 疑問視はついたが大体理解しフムフムと頷きながら、どう攻略しようか考える。

 

(参加者なだけあって隙はないが、戦いは好まなさそうな雰囲気だな。まぁ参加してる時点である程度は戦う気はあるんだろうが)

 

 接触が一番いいだけで別に接触しなくても、視界に入ればある程度の情報を盗み見れる作者は、そうやって次々に情報を見ていく。

 

(武器は特に持ってなくて体術得意で……うぇ、なんか反射持ってるぞ、こいつ……)

 

 何かわからないが、とにかく面倒の代名詞である反射持ちだと判明し、作者は顔を歪める。

 

「……これ以上は無理か。反射の条件とか範囲とか仕方とか見れればよかったんだが」

 

 すべてを反射するものもいれば、特定のものだけを反射するものもある。その中でもただ弾き返すだけなのか、ズラされるのか、制御を奪われるのかなど能力者の数だけ種類は豊富だ。これは反射に限った話ではなく、能力全体にも言える。

 

 

 

「じゃ、先手必勝っと」

 

 懐から針を取り出し、ミュウに投げつける。それに気づいたミュウが咄嗟に回避するが、続けて放たれた針に頬をかすめる。

 

「あなたはだっ!?」

「当たらなかったか」

 

 ミュウの問いに答えずに即座に次の針を飛ばす作者。それに反射的に避けるミュウ。

 

「さっさと終わらせるか」

「舐めないでくれる?」

 

 完全に敵だと思考を切り替えたミュウは、作者との距離を詰めようと走り出す。

 

「じゃあこれはどうだ?」

 

 こちらに向かってくるミュウに、作者は液体の入った瓶を投げつける。それは空中で割れ、中の液体が周囲に散らばった。

 

「効かないわよ!」

(弾かれた……けど大体わかった)

 

 液体はミュウに当たった瞬間に弾かれ、周囲が音と煙を立てながら溶かす。それで大体能力の予想がついた作者は、次の手を出した。

 

「なっ!?ぐうっ!!」

 

 その瞬間にミュウの拳が断絶結界に阻まれ、動きが止まる。そこへすかさず結界を消して重撃を叩き込んだ。

 

「衝撃もある程度返されるのか」

 

 手を払いながら怯むミュウを見る作者は、接触の際に手に入れた情報を元に対象にだけ効く即効性の猛毒を空気に書き足した。

 

「あっ、ガァッ!!?」

(効き目は上々だな。慣れられる前にさっさと始末するか)

 

 最初は効き目が良いように見えても、そんな都合のいい状況は長くは続かない。多元存在なのだから、油断していたら悪影響を抑えるだけ抑えてすぐにでも動けるようになるだろう。だから作者は即座に蹴りをくわえる。

 

「っ!?」

「距離は取らせねえよ」

 

 破撃は炸裂し、ミュウの体内に深刻なダメージが発生する。それも即座に回復に向かうが、その前に作者の腕がミュウの中へと入っていた。

 

「情報をも……ッ!?」

 

「グガッ!!」

 

 情報の引き出しと書き換えをしようとした瞬間に、ミュウの体が恐竜になり始め、驚いた作者は距離を取ってしまっていた。

 

(……やっちまった……)

 

 唸りを上げる恐竜を前に、追撃を加えなかったことを後悔する作者だったが、ミュウは待ってくれずに作者に襲い掛かる。

 

(力はあるみたいだが動きが単調だな)

 

 迫力と力強さは作者を超えていた。だが速度や機動力に劣るためか、簡単に避けられ続ける。

 

(エネルギー系は反射の対象内。物理も物体以外は不完全とはいえ反射される。体力面は多分あっちが有利か)

 

 恐竜化する前に仕留める気だったようだが、それはかなわず苦戦を強いられている。逃げることも考えたようだが、せっかくなので倒しておきたいという気持ちも大きく。

 

(反射限界を確かめてやる。その構造ごと破壊してな)

 

 ミュウからの猛攻を回避しながら、作者は一枚の紙を取り出し自身に馴染ませる。

 

「できたら耐えてくれよ」

 

 消えなければ情報を再度取り出せるので、できたらそうしたいとの思いで拳を握りしめていた手をミュウの方へ向け

 

「核融合砲!」

 

 周囲を焼き尽くすほどの光が、ミュウに放たれるのだった。

 

 




 応募キャラを使わせていただきました。

 ~おまけ~
 針……針手裏剣みたいなもの。作者は遠距離攻撃の一つとしてよくこれを投げつけてくる。

 液体瓶……中身はただの水だが、作者の能力により強力な溶解作用が付与された液体。

 破撃……衝撃を逃がさずに破壊力を重視した技。よって距離も取られる心配もない。

 核融合砲……作者の友人から教えてもらった超火力砲の一つ。格上の技を能力を使って無理矢理真似ているので、反動はかなり大きく制御もできていないが、とりあえず消し飛ばすだけならこれが手っ取り速い。


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集まる厄介者たち

 光が収まり、消し飛んだクレーターの中心でボロボロになって倒れるミュウ。

 

「腕が痛い……。で、こっちは気絶か」

 

 痛む腕を治しながら相手の方を見る作者。どうやら限界まで反射をして耐えたようだが、余波の衝撃にやられて気を失っていた。

 

「じゃ、ほいっと」

 

 それに近づき、簡単に内部へと腕を突っ込む。そして複写を済ませ

 

「そんでさよなら」

「ゴフッ!?」

 

 作者が内部を破壊した瞬間に、ミュウが口から血を吐き出し、何もできずに消え始めた。

 

「さて、次はどうしようかな。反射の部分だけ取り出して、目ぼしいところでもあったら反射札の強化にあてるかな」

 

 作者は、他人の能力や道具、武具の効果を部分的に取り出して、紙媒体の道具に変えることができる。他人の物語を読み漁る際に、ついでにそのようなことをしていた。

 

 

「……はぁ、その前にお前の処理をしなきゃな」

 

 高速で接近してきた高校生ぐらいの少女の飛び蹴りをかわす。そして逆に勢いよく蹴り飛ばしていた。

 

「いきなり攻撃とは」

「あんな攻撃撃っておいてよくそんなこと言えるね」

 

 核融合砲の余波にでもあったのだろう少女は、逃げることなく作者を倒すために襲撃をしてきたようだ。

 

「やっぱ範囲攻撃なんて撃つもんじゃないな」

 

 風が吹き、急激に大きくなった大気の流れにより竜巻が巻き起こる。しかし作者はそれを片手で消し飛ばし、二人目の襲撃者を見る。

 

「あなた危険。ここで始末する」

「この調子だとしばらく襲撃されそうだな。早くここから……離れないと」

 

「させるとでも?」

 

 一瞬で周囲に大きな影が差し、襲ってきた少女たちごと押しつぶす巨大な隕石が突如として発生する。だがこれも作者に届かず、取り出された光るカッターのような刃の剣で真っ二つに切断されていた。そしてその残骸が二人にも降りそそぐが、二人はそれらをたやすく壊していく。

 

「やめてくれよ。他の参加者が来ちまうだろ」

 

 大地は破壊しつくされ隕石の残骸が転がる荒野で、作者は自身を囲む三人にそう苦情を呈した。

 

「もう手遅れだと思うけど?」

「……同意ね」

「めんどくさいけど、その通りね」

 

 三人に囲まれ、困った顔をする作者はチラリと情報を盗み見る。

 

(名前はオロチで、闇と毒を扱う八岐大蛇。次はギーツって奴で、強力な風の力を操る風千龍。最後はブレスって子で、あらゆる魔法を操る龍か。現在人型で、各自龍の姿にもなれると……めんどい奴らだ)

 

 解析が終わると同時に全員が動き出す。

 

 まず一番最初に攻撃が届いたのはギーツだった。最速で放たれた無数の風刃が作者に迫り、次にブレスの大火炎がぶつかり、最後にオロチの放った無数の猛毒入りの闇である毒闇針が火炎の中を突っ切って――

 

「終わりか?」

 

 断絶結界に防がれる。

 

 

「じゃ、次はこっちだな」

 

「「「ッ!?」」」

 

 結界の解除と共に作者の姿が掻き消え、咄嗟に結界を張ったブレスごとぶった切られる。

 

「龍化なんてさせねぇよ」

 

 だが回避を同時に行っていたブレスは、ギリギリ命を繋ぎ止めており急いで再生と龍化をしようとした。しかし次に放たれた乱斬による斬撃の嵐により、無残にもバラバラにされて退場していく。

 

「はあぁぁっ!!」

 

 それが終わった瞬間に、背後からオロチが闇を纏った状態で殴り掛かってくる。

 

「不意打ちはもうちょい静かにな」

 

 後退しながら拳と触手のようになった毒闇の猛攻を弾き、受け流し飛斬を飛ばす。それにより体と視界がズレ、あっけなく崩れ落ちた。

 

「お前は来ないのか?」

「接近戦は、不利でしょ?」

 

 そう言いながらギーツは風の力を振りまき暴風を作り出しながら、龍化により体が膨れ上がり始める。

 

「龍化か。じゃあ、これならどうだ?」

 

「へ?」

 

 急に重力が無茶苦茶に書き換わり、体勢が取れなくなる。そしてそれは変身途中なだけあって、致命的な隙になり

 

「ほいっと」

 

「あ……」

 

 振るわれた刃が伸び、不規則に曲がり鞭や蛇腹剣のようになりギーツをズタズタに斬り裂いた。するといとも容易く龍化が解け、先の二人と同じように退場し始めるギーツ。

 

「まったく、危機感のない。待つわけねぇだろ、そんなの」

 

 それを見ながらそう思った作者は

 

「……これだから集団戦は嫌だな。写し取る暇がねぇよ」

 

 そう呟き、退場していく三人を放置してその場を離れるのだった。

 

 




 応募キャラを使わせていただきました。

~おまけ~

・源光刀……源力を利用した刃が出る武器。様々な種類があり、作者が使っているのは斬味重視の使い捨てブレード。あと伸縮自在で鞭のようにも使える。

・反射札……作者のインチキ無敵術の一つ。これがあればどんな不都合も、一回につき一枚で反射できる。この札に接触させなければ発動しないが、範囲攻撃などの対処が難しい攻撃用なので特に問題はない。

・書き足し……あらゆるものや現象に、追加で効果や出力を書き加えられる。本筋から離れれば離れるほどコストが増大する。作中の例として、重力の大きさや向き、その数などを書き加えた。

・飛斬……飛ぶ斬撃。低コストの便利な遠距離攻撃。斬味と飛距離は使い手次第。極めれば大抵のものは斬れるし、飛距離も馬鹿みたいに伸びる。

・曲斬……曲がる斬撃。源光刀や能力での斬撃、飛斬などを自在に曲げられる。変則的な攻撃ができるので厄介。

・乱斬……乱れる斬撃。斬撃を散らせ、嵐のようにできる技。範囲に比例して弱くなるが、至近距離で使えば無防備な相手を細切れにできるだけの威力はでる。


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ひとまず休憩

 完全に逃げ切り騒ぎから遠ざかった作者は、ほっと胸を撫でおろしていた。

 

「ふ~、今のうちに補充しておくか」

 

 そう言って、懐の収納空間から消費した装備の補充を行う。

 

「消耗が……はぁ~、この大会が終わったらまた作らなきゃな~。めんどい……」

 

 常に半月分のストックは余裕をもって作っているとはいえ、それは大して戦わないことを前提にしているため、こういう時に一気に減るのは作者的には痛手であった。

 

「格上のは作るのは大変なのに……やっぱ冷静さは欠くもんじゃないな」

 

 核融合砲の事を少々後悔する。道具の作成もただではなく、特に格上の模倣品は苦労するからだ。

 

「一応属性札も出しておこうかな」

 

 そう呟き、火や雷などの文字が書かれた色とりどりの札を取り出す。

 

「技札の方が使い勝手がいいから、こっちは最近は日常生活以外じゃ使ってなかったが、せっかくだし久々に使ってみるか。あと強化札も。どうせ簡単に作れるし」

 

 作者が作る道具の中で、この二つは比較的簡単に作れ量産できるものだ。仲の良い友人や子供たち、旅先で出会った者たちに友好の印として配っているぐらいだ。

 

「あと、次は技札使わずに戦ってみようかね。訛った感覚も戻さねぇとだし」

 

 先ほどの戦いは、実は作者の素の実力ではなかった。あくまで技札を使って、他人の技や行動の良い所取りして隙なく動けるようにしただけである。また事前に自身に書き込んでおくという手もあるが、これもこれで疲れるし後々の対応性にも欠けるのでやりたがらない。

 

「何より疲れる。自分の動きじゃないから」

 

 効率が悪く消耗が大きい。真似る作り替えるなどの工程を挟んでいるので当然だが、他人の力を使うというリスクはそこにあった。なんせ仕組みや構造を同じにできても、エネルギーは自前で準備しなければいけないからだ。格上のを使うとその影響はより大きく出て、体力がゴリゴリと削れてしまう。

 

「他の模倣系みたいにできればいいんだが……そもそも俺の能力はそこは主力じゃないから考えるだけムダか」

 

 作者の能力は、情報の観覧や抜き出し 書き加えを行い、物質化させた際に紙や書物などにできる能力である。それを主軸にして様々な応用をしているだけなので、本家にかなわなくても当然と言えば当然と言えた。

 

「てか、そんなことしたら戻れなくなっちまうな」

 

 完全に書き換えるということは、元の形を崩して組み替えるということだ。そこまでしてしまうと対象者は、実質的に死に別の何かに変わってしまう。そうやらないように安全策を付けているのだが、それこそが作者のような能力者の弱点ともいえる。

 

 

「まっそんなことより、隠れて休憩と行こうかな。これも読みたいし」

 

 そう呟き、あの参加者たちから抜き出した本を取り出す。

 

「虚空の先の世界。さて、どんなところだろうか」

 

 人生とは最大の物語だ。それは善悪問わず英雄や勇者、悪人や魔王などの異端者や上位陣たちであればある程壮大で面白いものになりうる。しかも自身の知らない世界のものとなるとなおさらで、読者はいつだってワクワクとドキドキで楽しみにしているものだ。

 

 だからこそ……

 

「面白い」

 

 作者はそれらを読み漁り、一般化させたり参考にして数多の作品を作り出してきた。

 

 そしてそれは……

 

「ああ、他の奴はどんな人生(物語)を歩んでるんだろうか?」

 

 彼の趣味としてこれからも永遠に続くことだろう。

 

 




 ~おまけ~
・道具の作成について
 他人を利用しているので許可がないと作りずらく、格上の場合はそれは必須になってる。一応参加者にやったように全部抜き出して作ることはできるが、時間も手間もかかり、許可を得て協力してもらった方が楽で速い。

・属性札について
 各属性を付与した札。使用すると、簡単な属性攻撃ができる。簡単に作れるので日常生活用にそれなりに持っている。時頼他人にあげたりもする。

・強化札について
 使用対象を強化する札。手間や隙の有無を考えなければ直接書いた方が調整が効くのでいいが、簡単な強化ならこっちの方が手早くできる。なおコスパはいい方。

・技札について
 他人から引き出した技を付与した札。改造したり組み合わせたり、行動や性質 能力なども使用できるが、自分から離れたり多く詰め込みすぎると負荷が大きくなる。


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知り合い

 本を読み終えた作者は、それをしまい近づいてきた相手の方を見た。

 

「誰かと思えば、作者さんでしたか」

「ミナトさんとミナヤか」

 

 金色の髪と瞳が特徴の二人、雷帝家が姿を現し、少し安心する作者。

 

「どうしたの?」

「いや、他の参加者だったらどうしようかと思ってな」

 

 気配的にはわかっていたとは言え、もしものことが起きなかったことに安心していた。

 

「大丈夫でしょ。あなた逃げ足は速いんだから……」

「言ってくれるな、ミナヤ。まぁ事実なんだが、雷の現霊に、それも非実体に比べるとそうでもないぞ」

 

 確かに作者の逃げ足は一級品だ。だが目の前の二人に比べると見劣りするだろう。

 

「私たちは逃げませんよ?」

「攻撃されたら……逃げないわね」

 

「いや、それはわかってるけど、例えだよ例え」

 

 ミナヤは戦闘を避けるぐらいめんどくさがりだが、それでも喧嘩を売られたり攻撃されたら黙っている奴ではない。ミナトに限っては、娘が生まれる前までは戦闘狂として暴れまくってたぐらいだ。

 

「だってほら、雷になれるしめっちゃ早いだろ?」

 

「そうですね。殴るにはちょうどいいですし」

「回避には事欠かないけど、それ非実体としては当たり前じゃん……」

 

 そして二人とも非実体と言われる類の能力者だ。それはその名の通り明確な実体が捉えられない能力者であり、変幻自在による理不尽なまでの回避力と全身凶器による攻撃能力を合わせ持った厄介極まりない存在の事を言う。おまけに二人は雷と言う威力も速度も申し分ない能力者だ。

 

 

「まぁとりあえず、俺はお前らと戦う気はないからな。そもそもせっかく内側の奴らの観察ができる貴重な機会なのに、同郷の奴と戦って消耗したくないし」

 

「それはこっちも同じよ」

「まぁせっかくの機会だしね」

 

 乱入者たちの目的は、あくまで内側から来た存在のあれこれである。めんどくさがりであるミナヤですら、せっかくだからと参加するぐらいなので、わざわざいつでも戦える同郷とは戦わないだろう。まぁケンカになったらどうかわからないが……

 

 

「そういやお前らの知り合いで出てる奴いるのか?」

 

「確か、山本家と機神家、あと雪ノ下家と砂鳥さんがいたわね」

「ほとんどみんな、やる気満々だったね……」

 

 思い出すように答えるミナトと、戦闘好きが多いなと思い返すミナヤ。

 

「機神のクレアールさんは積極的に戦う人じゃなかったと思うが?」

 

「娘のクレサナとは真逆ね。でも実力は本物だから、きっと娘についてきたんだと思うけど……」

「亡き夫との一人娘だしね。大切にしたいんじゃない?ま、私も人のこと言えないけど」

 

 こいつらの世界は危険な世界なので、死亡率が高い。町が壊れることはなくとも、建築物が破壊されることはザラにあるぐらいだ。そのため知人のみならず、家族や恋人 大切な人などを失うことが多々ある。

 

「そもそも親子で生活してる自体珍しいからな。親を知ってる奴の方が少ないし、大人になれば独り立ちするのが大半だし」

 

「ホントは自由にさせてあげるのがいいんだろうけど、どうしてもね」

「私は別にいいけど……居たくているわけだし」

 

 親子で生活している者たち自体が少ないためあまり見えないが、そういう者たちはその際に残った家族や我が子に執着することがある。それも我が子が独り立ちする前に起きた出来事なら、その可能性はさらに高い。

 

「まぁ結局、どこにいるのもそいつの自由だしな」

 

「そうそう、私が勝手にそこにいるだけだから」

「そうね。ならいいんだけど……いずれは独り立ちできるように、私もあなたももっと強くならなきゃね」

 

 それを聞いたミナヤは、少々顔がひきつったが、それと同時に何かに気が付いたのかチラリとそちらの方をみた。

 

「龍種系か?」

 

「それっぽい」

「水龍っぽいわね。どうする?私たちが相手しましょうか?」

 

 ミナヤは何か言いたげでめんどそうな顔をしているが、ミナトはやる気満々ですと言わんばかりの目をしていた。

 

「じゃあ頼んだ。俺は遠くから見とくわ」

 

「わかったわ。行くわよ!ミナヤ!」

「でもあの二人……って、え?マジ!?ホントに!?」

 

 そう言って雷と化したミナトは標的の元へと向かい。それを追いかけてミナヤも雷跡を残して消えるのだった。

 

 




 投稿キャラを使わせていただきました。

・狭間の住人の戦闘意識について
 基本的に狭間の住人は、好戦的で競い合いなどが好きな者たちである。特に戦闘に関しては、生活の中に入っているので、規模の大きさや意識の有無にかかわらず日常的に行っている。

 大好き……戦闘狂。

 好き……意識的に戦闘する。

 普通……意識的に戦闘しない。

 面倒……自分から戦闘しない。

 苦手……意識的に戦闘を避ける。

 なお重症(治らないほどの負傷)にならない程度の軽い手合わせ(遊び又は仕事など)を 本人たちは戦闘に含めていない事がほとんど。

・非実体について
 明確な実体がない、または掴めない者たちの事。主な特性として、明確な実体がないことによる変幻自在さを生かした、超回避や全身凶器などがある。個体、液体、気体以外にも現象や概念 その複合など様々で、構成体によってはそれ自体が危険物の場合も少なくない。

・現霊について
 狭間の住人の種族の一つ。自然や現象 災害や環境など 果てには概念まで存在する種族であり、言ってしまえば精霊みたいな奴らが人類になったもの。簡単な例えだが、風、暴風、大気など成長すればするほど規模や強度が桁違いに上がっていく者が多い。


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雷帝家の戦いの観察

 遠くから雷帝家の事を見る作者は、とあることを思っていた。

 

「水と雷だったら、相性的にどっちが強いんだろうか?」

 

 そう呟いた瞬間に、天に伸びる巨大な雷が発生し大爆発が起きる。

 

「いきなり攻撃か。流石に対処できてるみたいだが……」

 

 出会って自己紹介をした後に、あいさつ代わりに速攻で攻撃を仕掛けたようだが、流石にその程度ではやられるはずもなく両者ともに戦闘態勢に入る。

 

「さて、じゃあ情報でも見るか」

 

 目の前の相手に集中しているために、作者の干渉に気付かない水龍の二人は、いとも容易く情報を抜き取られた。

 

 

「ほうほう、親子か。母親がアクハってやつで、海の帝国を作った帝王と。で、その娘がアクサだな」

 

 狭間世界にはない『国家』と言うものに興味をそそられる作者。

 

「話には聞いたことあるが、ホントにこんなものがあるんだな」

 

 狭間世界には大きくても都市までしか存在しないため、国家関係に関しては内世界から落ちてきた情報を元に考察されたものしかなかった。そして今抜き取った情報と考察は大体合っている部分が多く、作者はそれに感心する。

 

「王ってこんなんなんだな。大会終わったらあいつらに教えたろ。まぁ無駄かもしれんが……」

 

 もちろんそんな世界では、『王』と言われる者たちなど存在しない。だが『王』を名乗る者も少ないがいた。それは『王』というものを勘違いして、勝手に名乗っている中二病どもだ。奴らは、見栄えやロマンを重視して、変な技を開発したりかっこよさそうなものを真似したりしている連中だ。

 

「で、本来の性格は……やる気はないが責任感はあるって感じか。それに対して娘は真面目で努力家ね」

 

 全員に言えることだが、大会に出ている時点で戦闘は避けられない。そのためある程度は戦う覚悟の元動いているようだが、元の性格は戦闘に向いているとは言い切れなかった。

 

 

「ほんで戦いの方だけど……ダメだな。完全に遊ばれとるわ」

 

 そう言って意識を向けた戦闘は、水撃と斬撃、雷撃と爆発が飛び交うものになっており、水龍側は得意の大剣も役に立っておらず、雷帝家に押されに押されて防戦一方になっている。

 

「そういや超純水って電気通しずらかった気が……まぁあれだけの火力だと無意味か……」

 

 電気の通しにくい超純水を大量に使っている水龍側だったが、雷帝家の特にミナトにゴリ押しされて無意味と化していた。なお本人は普通に攻撃しているだけなので、そんな意図は全くない。地力に差がありすぎるだけである。

 

「なのにミナトさんは手抜かないし。多分まだ策があると思ってる口だな」

 

 ギリギリで耐えているだけの水龍側に一切の手加減なしに攻撃を加え続けるミナト。どうやら相手にまだ策や手があると思っているようであった。

 

「ミナヤの方はなんか困ってるし、伝えた方がいいかね?」

 

 ミナヤももしもの時のことを考えて手は抜いていないが、実力差が離れすぎているのでは?と勘ぐっている。それに答えてやろうかと思った作者だが……

 

「いや、邪魔されたと思われても面倒だしやめとこ」

 

 元気よく戦っている奴の邪魔はするもんじゃないと黙っておくことにしていた。そして最終的には、現霊の力どころか非実体の本領発揮すらせず、格闘戦と電撃だけで戦いは終わっていた。

 

 

 作者はそんな二人の元へと行く。そこに広がっていた景色は、遠くから見ての通り、水溜りがポツポツとあるだけの焼け焦げた森林の跡地だった。

 

「なんか消化不良っぽいな。俺もだけど」

「思ってたのと違うね」

「私もそう思う」

 

 きっと色々と準備していたであろう策を一切使わず終わってしまった戦いに不満そうにする三人。特にミナトのガッカリぐわいは大きかった。

 

「三人ぐらいの参加者と戦ってきたけど、みんなこんなのなの?」

「みんなってわけじゃないけど、多分このレベルが一番多いと思う」

 

 この大会は、できるだけ多くの上澄みを集めてきてはいるが、あくまで強いのは一部の世界の最強や主役級であり、取り巻きたちやそこそこ強いだけのやつの実力を保証しているわけではない。むしろ数合わせとして、そういう存在を多く集めてきているのだろうとさえ思えていた。

 

「なんか動きが悪いというかね。隙だらけに見えるのが……」

「まぁ、俺たちみたいに常日頃からやりやってるわけじゃないだろうし、仕方がないだろ」

「でもこっちに来れるだけの実力が……あ、そうか。魔魅さんが連れてきたからそうでもなかったね」

 

 色々と見ている作者はそうい事を知っている。だが二人は……と言うか大半の狭間の住人はそれを知らないので、簡単に強者と戦えるのだとばかり思っていた。

 

「まぁでも、あれだ。強者も確かにいるんだから、勝ち残っていけば出会えるさ」

「そうね。出会ったやつ全員倒して、大きな気配のする方に行けばいいか」

「折角来たんだから一回は戦ってみたいしね」

 

 外から来た強者と戦えるのはごく一部かもしれないと、二人はまたやる気を見せる。なお作者は、弱い奴からチマチマ情報を集めるのであまり関係はない。

 

「てことで、二人とも。あっちの方にデカい気配があるんだが行くか?」

「ホント?でもいいの、譲ってくれて?」

 

 先ほど譲ってくれたのだから、今回は流石にと言うミナトだったが

 

「別にいいよ。俺も別の奴見つけたし」

「そう。じゃあここでお別れね」

「じゃあまたね」

 

 そう言い作者は雷帝家と別れて、両者は次の標的の元へと向かうのだった。

 

 




 ~おまけ~
・中二病たちについて
 見栄えやロマンを重視して、変な技を開発したり かっこよさそうなものを真似したりしている連中。別世界から伝わったものを、拡大解釈したり曲解したりしているため、正確なことを知るものは結構少ない。
 とにかくかっこいいや凄いが重要な者たちなため、効率が悪かろうが使いにくかろうがそれを多用して、あまつさえそれで優ればもっとかっこいいと頑張る事も多い。そして己がかっこ悪いと思っていることを決してしない。

・様々な対策について
 狭間の住人は当たり前のようにあらゆる対策を常に行っている。それは生き残るため、生活するため、戦うためと様々だが、共通しているのはどれも狭間世界以外からすれば桁違いに性能が高いということだ。そして狭間の住人はその対策を行っているという前提で色々と仕掛けているので、内側から来た大半の参加者と大きな差が生まれている。

・狭間世界へ来る者たちについて
 内世界から虚空を超えて狭間世界へ来る者たちがいる。その逆もしかり。そういう者たちはみんな強者なのと、また虚空を超えられる者たちは基本的に|碌なやつがいない(そういう奴が特に目立つため)ので、内世界の住人も狭間の住人も色々と勘違いしていたりする。


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森を抜け

 目的地へ向け走る作者は、森を抜け荒地で相手を補足していた。

 

「いたいた。丁度良さそうなのが!」

 

 そう言い属性札を使用し、視界を埋め尽くす火炎が空間に展開される。

 

「何者だッ!!」

 

 火炎の中から大声が響くが、それを無視して取り出した源光刀で即座に曲斬を放ち、何かを断ち切った。

 

「貴様ッ!!」

 

 体の一部を切り落とされた相手は、全力で火炎を払い除ける。そこには、驚いている堕天使っぽい親子と、触手の怪人っぽい奴が触手を斬られたせいか怒りをあらわにして作者を見ていた。

 

「ん~、50点前後か。それが三人」

 

 三人の点数をサッと見て、構える作者。

 

「大丈夫だな。よし、かかってこい。勿論三人一気でもいいぞ」

 

 そう言い三人を挑発し、攻撃されやすいように敵意をばら撒く。

 

 

「乱入者か。横槍を入れたことを後悔させてやるッ!」

 

「リンコ!あいつはヤバい!先にあいつをやるぞッ!」

「はい!お母様ッ!」

 

 一瞬で三人を手玉に取った作者に、触手や闇の斬撃が向かい三人から一斉に攻撃を受ける。

 

 だが……

 

「遅い遅い!」

 

 作者に攻撃が届く前に曲斬で切り落とされる。

 

「ッ!?」

「いっちょ上がりっと!」

 

 そして瞬動により怪人の目の前まで来た作者は、重撃を拳に乗せ放つ。それを諸にくらった怪人は、地面を削りながら吹き飛んでいった。

 

「っと、次はそっちだな」

 

 上空から降り注ぐ闇弾の雨を瞬動で回避し、仕返しと言わんばかりに曲飛斬で斬撃の嵐を巻き起こす。それにより相手の手が緩んだ隙に、作者は空へと飛び上がり、通りすがりに母親の方の堕天使を斬り裂き落とす。

 

「よくもッ!?」

「遅いんだって」

 

 リンコが怒りをあらわにしながら闇魔法を放とうとする。だが作者の方が圧倒的に早く、空動で距離を詰められたのちに親と同じく地面に斬り落とされていた。

 

「あっけなかったな。この程度なら素で十分だ。さて、回収するか」

 

 そう呟き、地面に着地した瞬間――

 

「おっ?」

「捕まえたぞ。このまま捻り潰してやる!」

 

 地面から飛び出てきた触手に拘束される。そしてそのままギチギチと軋みを上げて、作者は締め付けられていた。

 

「なんてやつ。よくもリンコを!」

「お母様。私は大丈夫です。それよりもお母様の方が……」

 

 闇を湧き上がらせ、武器である鎌を構える堕天使の二人。娘の方は軽傷だが、母親の方は特徴である漆黒の翼の片方を斬り落とされており、再生にはもう少し時間がかかりそうであった。

 

 

「ちょいとキツイな」

「なっ!?」

 

 自身を締め付けている触手に反発を書き込み、緩んだその一瞬で拘束から逃れる作者。

 

「だったらこれでどうだ!」

 

 別の触手で作者を串刺しにしようと、尖らせた触手が高速で作者に迫る。

 

「じゃあな」

「なにッ!?」

 

 そして当たる寸前に作者は一枚の紙を取り出し、触手がその中へと入っていく。そして抵抗の仕方も知らない怪人は、そのまま吸い込まれるように紙の中へと収納され、作者は紙を折りたたみしまった。

 

「あとでゆっくりやるとして、次はお前たちだな」

 

「「ッ!?」」

 

 上機嫌に堕天使の二人の方を見る作者に、二人は後ずさる。

 

「どうした、こないのか?逃がす気はないぞ」

 

 

「「――ッ!はぁぁっ!!」」

 

 逃げられないと悟った二人は、無意識で瞬動を真似て距離を詰めてきていた。しかもどちらもタイミングが違い、片方をやってももう片方の攻撃が当たる按排だ。

 

 これでは大きく避ける他ない……

 

「ガハァ!?」

「グゥッ!?」

 

 だがそれは使いこなしていたらと言う前提であり、見様見真似の技など隙だらけであった。

 

「流石は一般流。初見の相手でも使えるシンプル設計だな。まぁこの程度だが」

 

 危機感によりあらゆる能力が引き上げられ、本能がフル回転したことによる取得では、長年使いこなしてきている相手にはかなわない。現にそれなりの精度に届いていた瞬動も、作者にとっては容易に隙を突き斬り伏せられる程度のものだ。

 

 

「さてと……ん?」

 

 堕天使の二人から情報を抜き出そうとして、その手が止まる。そしておもむろに怪人を仕舞った紙を取り出し

 

「出て来られても厄介だし、ほいっと」

 

 微弱に震える紙を容赦なく破り捨てた。すると紙や隙間からバラバラになった怪人が出てきて

 

「貴様ッー!!」

 

 触手が集まり肥大化し、よりバケモノへと変貌していく。

 

「ここで――!!」

「やっぱ死なんか。ちょうどよかった」

 

 変形中の怪人に手を突っ込んで、容易く情報を抜き取る。そして続けて曲乱斬で細切れにした後、属性札による火炎により完全に滅却された。

 

「動揺しなけりゃもっと戦えただろうに、あと変形中の結合の弱さか……まぁいいや」

 

 思うところがあった作者はそれを切り捨て、残りの作業をするために堕天使たちからも情報を抜き取るのだった。

 

 




~おまけ~
・めんどくさいなどについて
 めんどくさい、キライ、苦手などと言う狭間の住人がいるが、鵜呑みにしてはいけない。飽きずに戦い続ける戦闘狂に比べてだったり、自分から積極的に戦わないというだけと言う、あくまで戦闘に入るハードルの話であって、入ったあとは戦闘狂化するのだ。同格以上と戦う際は特にそうなりやすい。

・収納について
 作者は、紙や本の中にものをしまいこむことが出来る。しかも閉じ込めた紙などを破壊すると、中のものも一緒に破壊される。対象がいる世界ごと壊されていることをイメージしていただければわかりやすいだろうか?そんな感じ。
 これがあると、無暗に触れると取り込まれると思われるので相手の戦術が大いに制限される。狭間の住人以外ならなおさらそう思う。


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久々の……?

 参加者を殲滅した作者は、一息つきながら道具の補充をする。

 

「中々に楽しめたな」

 

 そう思い返し、あの堕天使の急成長ぐわいを確かめるために本を開く。

 

「狭間細胞も因子を持ってないのにあれほどとは……多元存在ってだけでな」

 

 狭間の住人は全員が例外なく多元存在だ。なので純粋な多元存在の情報は貴重だった。細かい編集が必要だろうが、恐らくこの本一冊を研究者どもに売れば、軽く数億は稼げる程度には……

 

「まぁ上澄みを集めてきてるってのも大きいだろうが……」

 

 様々な理由が入り混じってこうなっている。それは理解しているが、これから先こういう相手が多くなってくると考えると、作者としては微妙な気持ちになる。

 

「戦いもいいんだが、情報も欲しいし」

 

 ただ戦いたいだけの乱入者であれば、喜ばしいのだろうが、作者にはネタ集めと言う目的がある。だから参加者が強くなりすぎて、情報を抜き取る暇がなくなれば困るのだ。

 

 

「ん~、ん?」

 

 そこで何かを感じ取り、そちらを確認する。すると遥か彼方から高速で何かがこちらに飛んできており、数秒もせずに近くにまでそれが来た。

 

「久しぶりだな!作者!」

 

「お前は……」

 

 そして話しかけてきたそいつは、古い友達にでもあったかのように親しく話しかけてきて、作者は誰だったかと記憶を探る。

 

「見た目が多少変わってる……と言うより若くなってる?みたいだが俺にはわかる。雰囲気からして作者だろ?俺だよ俺、鈴木だ。鈴木 賢治。いや~ホント久しぶりだ。そんであの時は悪かった」

 

「鈴木 賢治?」

 

 困った顔ををして、誰だったかと思い出そうとするが、なぜか思い出せない。だがどこかで会ったことのある既視感だけはあり、不思議そうにするのが限界の様だ。

 

「あれ?覚えてない?確かに随分会ってなかったし、短い間の付き合いだったけど、結構仲良かった気がするんだがな。ほら、一緒に色んな放棄施設行って仕事しただろ?で、最後には虚空へ発射された奴だ」

 

「ああ、そうだったか?」

 

 とりあえず話を聞くことにした作者は、相打ちをしながら鈴木に話させる。

 

「金がないってずっと言ってたからな、あの時のお前は。だから小稼ぎがてらにバイトしてたんだよ。ほら、一緒に兵器とか同業者に追い回されてただろ?いやあれは欲かいて上位の施設行ったからなんだが……」

 

「そうなのか……?」

 

 放棄された施設から機械などの金目のものを集める仕事を一緒にしていたのだと言う鈴木だが、作者は一切思い出せず困り果てる。

 

「容量もよくて強くて、でも口数が少なかったな。クールなんだか口下手なのかはわからなかったが」

 

「そうなのか……」

 

 そこはあまり変わっていないと思う作者。いや、能力で改善したが、内面は大して変わっていないと言ったところだろう。そして疑問に思ったことを口にした。

 

「俺は強くねぇぞ」

「……確かに、今のお前は昔みたいに強くなさそうだな。若くなったからじゃね?」

 

 若返りの方法などいくらでもあるので、そのせいではないか?と言う鈴木。なんせその大半は、そう言うデメリットがあるものばかりだからだ。

 

「まさかそのせいか?記憶ないの?」

「人違いの線は?」

 

 どれだけ記憶を探っても作者の中には鈴木の記憶はない。なので人違いじゃないかと言うが……

 

「ないない。気配がほぼ同じだし。模倣品って言った方がまだ説得力あるわ……そういやお前分身もできるって言ってたな。その線か?」

「いやできるが……そんな都合の良いもんじゃねぇぞ」

 

 自分の分身を作り出せるものは存在する。だが完全に自立行動できるほどの全く同じ存在や、調整された存在などは非常に少ない。中には独立して別の存在になるものもいるが、もちろん作者にはそんなことできはしない。強引に理由付けしても、他人にされたことぐらいしかないだろう。

 

「ん~、じゃあやっぱ人違いかね?そもそも3000万年前の話だし……流石にとは思ったけど、お前を見た瞬間に、生きてんじゃん!?と思ったんだけどな~。人違いか~」

「3000万年って、そんなの研究者とか上位の怪物レベルの話だぞ」

 

 いくら寿命に限界がない狭間の住人とは言え、それでも100年後生存率は1%を切るのだ。そこまで生き残った実力者も、10倍年数ごとに100分の1の生存率でふるい落とされ続ける世界なので、安全地帯にいるか相当な実力者でなければそれほどの長生きはできない。

 

「まぁ似た奴はそれなりにいるし、そう言うこともあるか。じゃあさ、友達になってくれるか?」

「いきなりか。まぁいいけど……」

 

 そう言って作者は、違和感を覚える。初対面ならこんなにフレンドリーに話せないのにと……だが、きっと自分も成長したんだとポジティブに捉え話を続ける。

 

「よし、じゃあ改めまして、俺は鈴木 賢治だ」

「俺は未崎 作者だ」

 

 別になんてことない挨拶。知人からいきなり友達へと昇格しただけの話だ。コミュニケーションが得意なやつなら、性格不一致でもなければこうなると言う典型例。作者はこういう事を幾度となく体験してきたが、それでも発生したモヤモヤは消えなかった。

 

 

「名前も同じなんだよな~。でも別人か……」

「どうかしたか?」

 

 鈴木がボソッと何かを呟き、作者はそれをなんだと聞き返す。

 

 だがその前に

 

「いや何でも。そんなことより……っと無理だったか。逃げきれたと思ってたんだが……」

「……兵器に手を出したな」

 

 次元が歪み、その先から何かが出てくる。

 それを見た鈴木は苦笑いをし、作者は呆れた顔をした。

 

「ちょっと昔の癖で、ハハ……」

「仕方がない……やるか」

 

 本来なら逃走案件なのだが、なぜかほっとけないと思った作者は 戦闘態勢に入る。その瞬間に、世界が大きく割れ、そこから漏れた激しい光が周囲一帯を包み込むのだった。

 

 




~おまけ~
・狭間の住人の寿命について
 不老長寿で老死はしない。だが世界自体の致死率は高く、100年後生存率は1%を切る。そこまで生き残った実力者も、10倍年数ごとに100分の1の生存率でふるい落とされ続ける世界なので、何かしらの対策を取ったり安全地帯にいるか、相当な実力者でなければそれほどの長生きはできない。
 またこれは狭間の住人だけでなく多元存在すべてに言えることだが、自身よりも密度の低い世界へ行くと、回復手段に乏しくなるので、弱体化の末に餓死のような状態になる場合がある(それでも長寿なことには変わりない)。
 そしてそれを対処しようとすれば世界へ大きなダメージを与えかねないので、速攻で排除対象にされることがほとんど。


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会場より その2

 観戦を楽しみながら飲めや歌えやの騒ぎが起きたり、賭けやケンカなどをして会場が騒がしい中、霧原さんはいつものように、霧で分身を作り宿の仕事の延長線上でせわしなく働いていると……

 

「なにしておるんじゃ、あやつら?専用の端末何ぞ用意して」

「さぁ、聞いてきてみてはどうじゃ?こっちは仕事しておるから」

 

 迷惑三人衆は、自分たち専用の端末で何かを見ていた。それを怪しげに眺める霧原さんAと霧原さんBは、片方が三人衆の元へ向かい、もう片方は分身を増やし仕事へと戻る。

 

「お主ら、何を見ておる?」

 

「霧原さん。ちょっとこれ見ててさ」

「この子よ。私の助手の」

「何言ってんだ。こいつはオレの弟子だぞ」

 

 一瞬、お前ら何言ってんの?そっちこそ。みたいな雰囲気になりかけたが

 

「はぁ、機道のやつか。なんともせわしなく動き回る奴よ」

 

 霧原さんが呆れたようにため息をつくと多少は大人しくなる。

 

 

「アタシたちが改造してやったのに、見てよこのザマを」

 

 そこで端末を持っていたアカネが、霧原さんに機道が映る映像を見せつける。そこには溢れれる力を制御できずに暴れまくる機道の姿があった。

 

「そうだな。オレの取り付けてやった装置を使い熟せてないとは、随分と未熟な奴だ」

 

 アオイがヤレヤレと煙草を吹かしながら言う。

 

「肉体面でも万全にしたつもりなんですけどね」

 

 ミドリが何が悪かったのかと静かに考え直していた。

 

「まぁいずれはお主らと同じ領域に辿り着くであろうから、そう焦らずともよいとは思うがの」

 

 恐らくロクなことしかしていないのだろうが、いつもの事なので霧原さんはスルーしていた。

 

「だと良いんだがな」

「まぁそうね。気長に待ちましょう」

「何百年でもね」

 

 いつものように納得するが、それはそれとして改造やちょっかいはされ続けるだろう。機道のように格上に好かれた奴はこうなりやすい。

 

 

 そんな話をしていると……

 

 

「あ!いいな~!私にもそれ貸して!」

「む、秋森か?久しぶりだの」

 

 何処からともなく元気いっぱいに首を突っ込んで来た狐人の女性『秋森』を止めた霧原さんは、まぁまぁと秋森を落ち着かせる。

 

「ちとせちゃん、久しぶり。帰ってきたの?」

「珍しいですね。帰省するには早かったと思いますが?」

「弟が変な大会に出るって聞いたからね~」

 

 ニコニコとしながら、アカネに端末をねだる秋森に

 

「ちょっと用意してやるから待ってろ」

「ありがとう!アオイちゃん!」

 

 アオイが溜息をつきながら端末の予備を取り出して来て手渡す。

 

「いつものことだが、その呼び方やめてくれねぇか?」

「ごめんごめん。ついねっと、出た出た」

 

 軽く謝りつつささっと弟を見つけ出す。

 

 

「あ~残念!戦い終わった後か~」

「余裕そうなのを見るに格下が相手だったかの」

 

 目立った負傷も息切れもなく刀を鞘に仕舞い、消えゆく相手を確認していた弟の姿を見た二人はそう言った。

 

「基礎だけで大技持たないくせによくやる」

「斬り刻むだけなら刀一本で十分でしょ。面白みに欠けるのはそうだけど」

「守君は堅実だからね」

 

 ちとせの弟である『守』は、派手な技やあっと驚くような技を好む迷惑三人衆とは違い、基礎を大切にする堅実家なやつだ。だが彼女らからすれば面白みに欠けることでも、実力は確かなものなので認められてはいる。

 

「守は真面目なんじゃよ。お主らと違ってな」

「うんうん、料理もおいしいし、仕事もたくさんしてるしね」

 

 姉であるちとせは旅人として出ていったが、弟の守は宿屋の従業員として働いていた。それに比べて迷惑三人衆は、宿屋を勝手に改造するわ壊すわ変な実験するわで、迷惑を煮詰めて固めたような奴らだ。

 

「人的被害は出してないじゃん」

「そうだぞ。ちゃんと片付けも修理もしてるだろ」

「後始末はキチンとしてますよ?」

 

「そうだが、そういうことを言ってるだけではないわ」

 

 そこまで悪いことはしていないと主張する三人に呆れる霧原さん。周囲の事を気にしない利己主義者であればすぐに排除できたのだが、彼女らはうわべ上だけとは言え、一応周囲を考慮できるちょっと危ういだけの個人主義者と言うギリギリのラインを彷徨っているだけのやつらなので、排除は難しいのだ。

 

「まぁまぁ霧原さん。今はこの大会を楽しもうよ。せっかくの祭りごとなんだからさ」

「む、そうじゃな。仕事もある。こ奴らの対処は後でもよかろう」

 

 不満そうな三人をほって霧原さんは仕事に戻り、秋森は三人の中に入っていき祭りの続きを楽しむのだった。

 

 




~おまけ~

・秋森 ちとせは、薄い橙色の髪と目をした一本の刀を携えた和装の女狐の獣人族。
 弟の様子を見に帰って来たやつ。普段は各地を旅している、元気一杯な陽キャ。


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 これまでの登場キャラ達(参加者)

 

・名前 未崎 作者(みさき さくしゃ)

 得点 68点

 容姿 旅人服の陰キャ(見た目は普通だが雰囲気的に)

 種族 原種族(書物)

 能力 書物(改作?)

 説明

 能力を使って普通の一般人だと装っている男。本性はオタク気質のある陰キャそのもので、仲間内以外では会話が特に苦手なので、能力であらかじめ会話などのパターンを決めて話している。

 戦闘は得意ではなくめんどくさがり屋で、基本は仲間に前線を任せて支援や補助に回ることが多い。他者や物の観察をするのが好きで、よく能力を使って対象の情報を説明書や物語形式で読んでいたりする。またそれらを使って小説を書いて周囲に配っていたりもする。一般人Kこと市瀬 静者(いちのせ きよひさ)と暇人こと仁科 和者(にしな たかひと)と共に旅をしている。

 能力は『書物(改作?)』で、対象から本や紙として情報を抜き取ったり、書き込んだりできる。抜き取った情報で道具を作ったりもできるが、書き込みに関しては何でも書き込めるが、自身や無生物 隙を突けた相手など以外には大きな制限がある。また可能性の度合いでコストや書きやすさが変わる。因みに対象を紙や本の中へ仕舞い込む技なども使える。これにより多くの持ち物を持ち歩けるようになっている。

 

 

・名前 大世渡 鏡華(おおせと きょうか)

 得点 100点

 容姿 白銀色の短髪とガラス玉のような瞳を持ち、ワンピースを着た悪戯っぽい笑みをした少女

 種族 殊眼族と武具族のハーフ

 能力 鏡映

 説明

 悪戯好きで頭の回る少女。ノリがよく悪戯をした時などはニヤニヤしているが、大抵どこか抜けている。放浪者であり、作者と同じ宿に泊まっていたところ、面白そうな話を聞いてお兄を置いてやってきた。

 能力は『鏡映』で、鏡や映るものを利用した、と言うかそれすらも自前で生み出せるインチキじみた能力を持っている。実は身体は硝子鏡でできた非実体であり、能力の一端として常に鏡面反射と言う状態で、質量攻撃以外すべてを反射させることが出来る。また非実体であるが故に物理攻撃もあまり効かない。

 

 

・名前 鈴木 賢治

 得点 97点

 容姿 作業着を着た金髪男

 種族 機人族

 能力 力場

 説明

 『宇宙へ到達した超戦艦のお話』の主人公。コミュ力が高く誰とでも仲良くなれる気のいいお兄さん。整備や修繕が得意な技術者で、廃施設を見つけては勝手に入って物色を繰り返していた結果、戦艦と共に虚空へ発射されたがどうにか帰ってきて、勘を取り戻すために大会へ参加した。

 大会ではたまたま見つけた兵器を いつもの癖で回収しようとしたが失敗し、逃げようとしたが結局逃げきれずに作者を巻き込んで戦いが始まった。作者の友人を名乗っていたが、その真実は定かではない。

 あと戦艦との連絡はダメだと魔魅さんから忠告が来たので、泣く泣く断念している(特に戦艦が)。なので鈴木は、戦艦が今何をしているのか知らない。観戦しながら施設を新調するとは聞いているので、恐らくそういう事なのだろう……

 能力は『力場』で、自身や周囲の力場(力の向きや大きさなど)を自由自在に操ることが出来る能力。

 

 

・名前 秋森 守

 得点 83点

 容姿 刀を持った和装男子

 種族 獣人族(狐)

 能力 解析

 説明

 冷静で几帳面で真面目な性格の獣人。異界の宿の従業員で、その宿の主である“霧原 結露”の弟子の一人。仕事人で、宿の仕事から畑仕事まで何でもやってのける優秀なヤツ。“ちとせ”という姉がおり、たまに返ってくる彼女の身の回りの世話をしたりよく料理を振舞っている。なんでも適当にやって気楽に生きている姉とは正反対なヤツ。

 能力は『解析』で、あらゆるものを解析する能力。非常に高い思考力と判断能力があり、解析と組み合わせる事で、常に最適解と学習を繰り返して戦うことが出来る。

 

 

・名前 機道 克哉

 得点 88点

 容姿 未来的な戦闘服を着た改造人間

 種族 機人族

 説明

 『迷惑三人衆』にこき使われている少年。盗難に会い宿代を払えなかった所を『迷惑三人衆』に助けてもたったのはいいものの、借りと借金返済のために一生懸命三人の相手をするのが日課。そして今回は、異次元大会に勝手に放り込まれていた。しかも試作品の試しにと、寝ている寝ている間に服も体も勝手に改造されてである。イカれた格上に好かれた哀れな被害者。

 能力は持っていないが、改造された事で無尽蔵のエネルギーと高火力兵器を搭載されている。だが制御しきれずに常に暴走状態である。

 

 

 

・名前 加陽 アスト

 得点 61点

 容姿 学ランを着崩した橙色目の金髪高身長のイケメンチャラ男

 能力 増幅

 説明

 元の世界は、異能が発生した現実世界のような場所から来た不良男。

 陽キャであり、強い奴と戦うのが大好きなやつ。異能での犯罪が多い世界なので、合法的にケンカするために犯罪者たちと戦っているが、グレーゾーンなのとたまにやりすぎてしまうことから警察などのお世話になることが多い。だから悪い奴ではないが、強いて言えば頭が弱い。

 不良相応の戦闘センスと『増幅』と言う強力な能力を持ち、圧倒的攻撃力ですべてを薙ぎ倒し、目にも止まらぬ速さで動き回ることができる。

 

 

・名前 セルム・アーキバイト

 得点 72点

 容姿 上位の軍人のような恰好のおじさん

 能力 超越化

 説明

 元の世界は、異界から怪物があふれてくる世界から来た男。その世界最強の帝国で軍人として、最前線で怪物たちと日々戦う大尉。

 仲間思いで責任感が強く、帝国及び世界を守ることならどんな手でもいとわない。また精神力が異常に強く、どれだけ傷つこうが仲間を失おうがその精神はすり減ることすらない。それどころか犠牲を無駄にしないために託された思いや覚悟が強くなり、限界を超えて強くなる。

 能力は『超越化』であり、限界を排除し自身のあらゆる能力を大幅に引き上げ一騎当千の戦闘能力を可能としている。

 

 

・名前 カムイ

 得点 70点

 容姿 上半身裸の大柄な大男

 能力 巨大化

 説明

 元の世界は、竜種と巨人種が争う世界から来た大男。巨人の王で神とも言われている。竜種とは世界の覇権を取り合って戦争しているが、現在は大会参加のために一時休戦している。

 豪快な性格でいいやつだが、ちゃんと王としての威厳や能力を持っている。

 能力は『巨大化』であり、自身を際限なく巨大化して戦う。

 

 

・名前 天上院 義明

 得点 67点

 容姿 ニッコリとした笑顔を張り付けた青年

 能力 転移

 説明

 元の世界は、能力が蔓延り犯罪が絶えない現実に似た世界から来た男。

 上っ面は優しそうで気の利く奴だが、その内情を知る者からすれば真逆に感じる性格。一応犯罪者を取り締まる側の人間だが、腹黒で何を考えているのかわからない。

 能力は『転移』で、自身や周囲のものを自由に瞬間移動させて戦う。

 

 

・名前 凍鉄

 得点 65点

 容姿 青髪のボロ付いたレインコートを羽織った少年

 能力 凍結

 説明

 天上院と同じ世界から来たが、所属組織どころか国も違う。犯罪組織側の人物で、その中でも危険な組織だと名の上がる組織に属しており、凍鉄はそこの幹部。

 陰湿な性格をしており人の苦しく姿を見るのが大好き。気まぐれで立ち寄った村や民家を氷漬けにしたり、他組織の施設を襲うために裏でコソコソと動いていることもあれば、戦闘となれば町中で堂々と能力をぶっ放す。その被害は甚大で、大量の死傷者を出したり町一つが機能不全に陥ることもある。

 能力は『凍結』であり、すべてを問答無用で凍らせ、最終的には粉々にすることができる能力。

 

 

・名前 タンテス

 得点 53点

 容姿 触手を生やした人型の怪人

 能力 触手

 説明

 元の世界は、凶悪な怪人とそれを倒すヒーローがいる世界。彼自身は悪の組織側で、幾度となくヒーローと戦い生き延びてきた強者。そのため古参なのだが、上に立つ才能もその気もないため幹部とかではなく下っ端をしている。普段は戦闘能力や雑務能力が高く信用も厚いため仲間から重宝されており、最近は人に化けてボスの娘の護衛をしていた。外面は悪役ムーブをしているが、内面は面倒見がよく優しいお兄さんである。

 能力は『触手』で、体から無尽蔵に触手を生やすことが出来る。しなやかで耐久性があり硬化もできるっを基準に、強度や形状を自由自在に変えられる。能力を全力使用することにより、異形化や巨大化などができる。

 

 

 

・アスカさんの投稿キャラ達

 

・名前 アルトリア・クロノス

 得点 45点

 性別 女性

 種族 人間

 容姿 金髪で髪は長く結んでいる。瞳の色は金色。巫女服を着ている。

 身長 160

 年齢 17

 説明

 世界を守る刀の勇者。礼儀正しく、誰に対しても敬語を使う。どんな相手でも油断せず、いつも冷静。かなり大食いでもある。千鳥という刀に選ばれ刀の勇者になった。剣術と体術の天才。

 

・千鳥 ちどり

 アルトリアを選んだ伝説の刀。選ばれ者は勇者の資格があるらしい。雷の力を宿している。雷を自由に操れる。一度持ち主を選ぶと本人が死ぬまで離れず他人には触れることは不可能である。

 

 

 

・名前 ヒノエ

 得点 50点

 性別 女性

 種族 九尾 きゅうび

 容姿 金髪で髪は長く普段は結んでいる。瞳の色は黄色。狐のような耳としっぽがある。

 身長 170

 年齢 1000歳[見た目は人間の二十歳ぐらい」

 異名 炎の破壊者

 説明

 九尾たちの頂点に立つ最強の九尾。無口で無表情で敵に対してはかなり容赦がないが本来は家族や仲間を大切にする性格で敵対さえしなければ何もしてこない。本来はかなりおとなしい性格。人間の男性と結婚しており、娘と孫がいる。その男性は病気で亡くなっているが、今でもその男性のことを大切に思っている。

 

 

・名前 ヒノカ

 得点 48点

 性別 女性

 種族 九尾 きゅうび

 容姿 ヒノエに似ているが髪は短い。

 身長 165

 年齢 20

 説明

 ヒノエの娘。九尾と人間のハーフで彼女も人間の男性と結婚しており、アヤネという一歳の娘がいる。いつも明るく、どんな時も前向き。母親のヒノエのことを尊敬しており、自分も家族を守るくらい強くなりたいと思っている。

 

 

 

・名前 ミュウ

 得点 50点

 性別 女性

 種族 恐竜族 きょうりゅうぞく

 容姿 銀髪で髪は長く結んでいる。瞳の色は赤。

 身長 165

 年齢 16

 説明

 恐竜族の少女。無口でおとなしい性格。あまり争い事は好きではないが、怒らせるかなり怖い。寝るのが大好き。

 

・恐竜族

 戦闘力がかなり高く。体術での戦闘を得意としている。魔法は使えないが、魔法などの特殊現象を跳ね返す能力を持っている。普段は人間の姿だか、恐竜の姿にもなれる。

 

 

・名前 オロチ

 得点 47点

 性別 女性

 種族 人工八岐大蛇 じんこうやまたのおろち

 容姿 黒い髪は長く結んでいる。瞳の色は黒

 身長 165

 年齢100歳[見た目人間の高校生ぐらい」

 説明

 かつて古代の時代に存在した八岐大蛇の細胞を使い人間が産み出した存在。強大な力を持っているが、本人には戦う気が全くなく、やる気もなく、人間のために戦うことにも興味がないため施設から逃亡。それから人間の男性と結婚している。その男性は病気で亡くなっているが、彼女は今でも大切に思っている。スズカという一歳の娘がいる。実は彼女ももとは人間であり、人間のときの名前は時崎レイである。

 

・人工八岐大蛇

 八岐大蛇の細胞を使い人間が産み出した存在。闇魔法を操り、毒を使い戦う。その姿は八の首を持つ龍である。その正体は人間の少女に八岐大蛇の細胞を移植し改造した八岐大蛇の兵器である。

 

 

・名前 ブレス

 得点 48点

 性別 女性

 種族 魔法龍 まほうりゅう

 容姿 銀髪に髪は短い。瞳の色は黒

 身長 160

 年齢 100歳[見た目は人間の高校生ぐらい」

 説明

 人間たちが生み出したあらゆる魔法を操る龍。無口で、めんどくさいことが嫌いな性格。その正体は人間の少女を改造した人間兵器である。人間だった頃の名前は山崎歩夢である。

 

・魔法龍

 人間たちはが生み出したあらゆる魔女を操る龍。魔法なら基本的になんでも使える。その正体は人間の少女を改造した人間兵器。普段は人間の姿だか龍の姿にもなれる。

 

 

・名前 ギーツ

 得点 47点

 性別 女性

 種族 風千龍 ふせんりゅう

 容姿 銀髪で髪は長く結んでいる。瞳の色は金色。

 身長 165

 年齢 17歳

 説明

 基本的に感情がなく、どんなときも表情を変えない。ただ根は優しい性格である。実はその正体はとある組織に体を改造された改造人間である。人間だった頃の名前は東光「あずまひかり」である。

 

・風千龍

 とある組織が人間の少女を改造して産み出した龍である。千の首を持ち、風魔法を操る。普段は人間の姿だが龍の姿にもなれる。

 

 

・名前 アクハ

 得点 49点

 性別 女性

 種族 水龍 すいりゅう

 容姿 水色の髪に髪は短い。瞳の色は水色。

 身長165

 年齢 50歳(見た目は人間の高校生ぐらい)

 異名 海の帝王

 説明

 一代で強大な帝国を作り上げた帝王と呼ばれる人物。ただ本人は敵を倒してらいつの間にか強大な帝国が誕生してたらしい。基本的にめんどくさいことが嫌いで、いつもやる気がなく、寝ていることが多いが、責任感は強く。帝国と呼ばれるだけの器と実力を持っている。アクサという娘がいる。娘に対しては過保護なところがある。

 

 

・名前 アクサ

 得点 45点

 性別 女性

 種族 水龍 すいりゅう

 容姿 アクハに似ているが髪は長く、普段は結んでいる。

 年齢 16歳

 説明

 アクハの娘。真面目な性格で、かなりの努力家。仕事をサボる母親をいつも説教しているが、なんだかんだ母親のアクハのことは尊敬している。

 

・水龍 すいりゅう

 海を拠点にする龍の一族。水魔法を操る。海の中でも呼吸が出来る。普段は人間の姿でいるが龍の姿にもなれる。大剣での戦闘を得意としている。

 

 

・名前 リンネ

 得点 50点

 性別 女性

 種族 堕天使族 だてんしぞく

 容姿 黒い髪に髪は短い。瞳の色は赤。黒い羽がある。

 身長165

 年齢 50[見た目は人間の二十歳ぐらい」

 異名 大空の魔王

 説明

 かつて人間を滅ぼそうとした堕天使族最強の実力者で魔王として恐れられた人物。だた先に攻撃してきたのは人間の方であり、彼女自身も心から愛した人間の男性を亡くしている。現在は人間と和解が成立りしたが彼女から言わせれば人間は今でも憎むべき相手である。

 誰に対して見下した態度を取り、無愛想な性格だか、仲間や家族を大切に思っており、本来は優しい性格である。リンコという娘がいる。

 

 

・名前 リンコ

 得点 46点

 性別 女性

 種族 堕天使族 だてんし族

 身長 158

 年齢 17

 容姿 リンネに似ているが髪は長く結んでいる。

 説明

 リンネの娘。堕天使族と人間のハーフ。礼儀正しく。真面目な性格。母親のリンネのことは尊敬している。父親は彼女が生まれすぐに戦争で亡くなっているために顔を知らないが母親のリンネから父親の話は聞いている。

 

・堕天使族 だてんしぞく

 黒い羽があり、空中戦を得意としている。闇魔法を操り、鎌を使う戦いを得意としている。

 

 

 

 

 以下狭間の住人投稿キャラ

 

・名前 雷帝ミナト らいてい みなと

 得点 80点

 性別 女性

 種族 現霊族

 容姿 金髪で髪は長く結んでいる。瞳の色は金色。

 身長 165

 年齢 50歳『見た目は人間の20代くらい』

 説明

 雷撃を操る雷そのものな少女。本気を出せば都市一つを壊滅されられるだけの雷撃を放つことが可能(邪魔が入らなければ)。格闘技を得意としている。礼儀正しく、落ち着いた性格だが、若い頃は狭間世界で暴れまくった人物。娘のミナヤが生まれてからはかなり落ち着いたらしい。

 

 

・名前 雷帝ミナヤ らいてい みなや

 得点 69点

 性別 女性

 種族 現霊族

 容姿 ミナトに似ているが髪は短い。

 身長 158

 年齢 16歳

 説明

 ミナトの娘『父親はすでに亡くなっている』。戦い方は母親に似ている。かなりのめんどくさいがりで、基本的にやる気がないが、母親に鍛えられたためかなりの実力者。

 

 




~おまけ~

・名前 狸塚 魔魅(たぬずか まみ)
 得点 100点
 容姿 全体的に茶色っぽく、長袖長ズボンにコートを羽織った普通の魔魅さん
 種族 獣人族(狸)
 能力 ???
 今回大会に参加することになった魔魅さん。沢山いる魔魅さんの中で、少し戦闘に寄ったタイプ。愛想よく大人しそうに見えるが、内心は好奇心と警戒心の塊。
 全ての能力がそれなりで、経験や技量がカンストしているバケモノ。こいつを基準に、点数がつけられている。


 投稿キャラは改変されている部分もあるとは思いますがご了承ください。こちらの世界観や他のキャラと対当に戦うための処置です。どうしてもと言う方は質問箱などに意見をお入れください。

 投稿者と読者の皆様、改めてありがとうございます。これからも本作品をお楽しみください。


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楽しくなってきた二日目
次元球戦 前編


 光が収まった後に残ったのは、遠くの方に少し何か見える程度の先まで消し飛ばされた大地と、歪みに歪んだ世界そのものであった。恐らくこの攻撃で、少なくない参加者が消えただろう。

 

「球型兵器の……次元球か。厄介だな」

「相性もあるが、大会参加者の大半はこれで完封できるヤツだからな」

 

 歪んだ金属質の巨大な球体状兵器が空に浮かんでおり、標的を定めたように二人を見下ろしていた。

 

「しかも最上位の攻撃特化か。どうしよ、かっ!」

「そりゃ倒すしかねぇだろっ!」

 

 見た目では分かりにくいが、二人の感知には明確に次元の歪みが見えており、咄嗟にその場から退く。

 

「こりゃ骨が折れそうだ!」

「バキバキにな!」

 

 見えずらい歪みから瞬動で逃げ回り、即座に反撃を飛ばす二人だが

 

「めんどくせー!動き続けなきゃいけないとか最悪だ!」

「次元属性だからな!生半可な攻撃じゃ、命中すらしねぇよ!」

 

 鈴木の撃った光線と作者の放った飛斬は、あらぬ方向へと飛び交いぐちゃぐちゃに捻り潰される。それどころか、一部は二人の方へと返ってきており、そのためにまた攻撃を放ちを繰り返す。

 

「密度が!密度がやべぇ!」

「増し続けるなんてな!」

 

 道筋を勝手に作り出せる次元球にとって、空間を貫くに足らない攻撃は脅威でも何でもない。おまけに攻撃に当たりそうになっても、別次元に逃げてしまえば背景のような扱いで終わると言う理不尽っぷりである。

 

「とりま二手に分かれるぞ!」

「そうだな!」

 

 力場を使い一瞬で周囲の攻撃を掻き消した鈴木合わせ、二手に分かれた二人は、両側面から攻撃を開始する。

 

 作者は素早く次元球に向かって斬撃を放ち、飛斬が空間を斬り裂き、鋭い音を立てながら次元球に迫った。しかし次元球は動くことなく、源光刀の斬撃は次元空間へと飲み込まれ消滅した。

 

 一方、鈴木は身の軽さを活かして次元球の周囲を素早く駆け巡り、光線を繰り出した。鈴木の周囲から放たれる光線は、次元球に直撃したように見えたが、極小の次元間内で歪み容易く消滅させられる。

 

「くそっ!次元結界は厄介だな!」

「あれをどうにかしねぇとな!」

 

 作者が吐き捨てるように呟くと、鈴木もめんどくさそうな表情を浮かべる。しかし、二人の表情は、諦めるどころか少し楽しげだ。

 

「ちょいと無理するか」

「久々にゼンリョクで戦える」

 

 作者は自身に強化を施し、身体能力が高まる。源光刀を振るう速度と威力が増し、斬撃の軌道もより精確になった。

 一方、鈴木は次元球の行動を予測し、力場による次元空間の支配をしようとする。同時に光線と力場を巧妙に組み合わせて攻撃の威力を高めていた。

 

「クッ!空斬強めにしたってのに!」

「チッ!流石に十八番は超えられんか!」

 

 だが次元球は二人の攻撃に対して、さらなる次元の歪みを発生させる。それにより常人でも見えるほど世界が歪み、至る所から次元光と言う光が触れ出していた。

 

 そしてそこから――

 

「うお!」

「やべぇ!」

 

 光線の嵐が飛び出し、問答無用であらゆるものを貫く。だが二人は能力と技を使ってそれを耐え凌ぎ、衝撃波によって吹き飛ばされていた。

 

「出力がバケモンじみてやがるな」

「空間の支配力が強すぎる。得意分野が使えないのはキツイな」

 

 着地視点で次元空間がゆがみ追撃がかけられるが、二人は適当に攻撃を弾いてそう呟く。そして今度は更なる猛攻を加えようと瞬動をしようとした、その時だった

 

『にゃはは!やるな!てめぇら!』

 

「は?」

「なんだ?」

 

 次元球から声が聞こえ、その上に何かが投影されたのは……

 

 




 ~おまけ~
・球型兵器について
 球型兵器は、宙に浮かぶ球状の巨大兵器。要塞兵器と言われるほど防御と攻撃に特化しており移動能力は微妙。汎用型としてよく見られるのは、空間力場を利用した移動と、多重結界、源力兵器、実弾兵器、物理兵器などが搭載された基礎品があり、そこからの派製品や改造品などがある。

・次元球について
 次元属性を主とした球型兵器。次元とそれにかかわるものの制御及び利用できる機械を搭載した超攻撃特化兵器。次元移動による移動や回避ができ、次元や空間などを打撃、斬撃、衝撃、光線などにして周囲へ撒き散らす。また随時発動している、次元結界や次元空間の歪みなどを利用し攻撃を防ぎ、ついでに周囲に歪みをまき散らしている。
 なお攻撃に特化しすぎているため防御面が若干貧弱だが、『やられる前にやれ』をモットーに開発されているため大した問題にはなっていない。
 製作者は、最後にホログラムで投影されたヤツ。


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次元球戦 中編

 攻撃が止み、二人は投影されたホログラムへと目を向ける。

 

『にゃあの最高傑作を相手にここまで粘るとは、中々見どころある奴らにゃ!』

 

「「誰だよ!」」

 

 そこには、堂々と腕を組み二人を見下ろす、ラフな格好をした毛深い目の猫獣人の少女っぽい姿のやつが投影されていた。それにツッコミを入れた二人に獣人は自己紹介を始める。

 

『にゃあは“猫屋敷 タマ”!この次元球の制作者であり、火力主義の技術者にゃ!』

 

「火力主義だと!?アオイさんと同じタイプか。かなりめんどくさいぞ」

「あの誰これ構わずぶっ放すやべぇ奴らか!?」

 

 火力主義又は威力主義などと言われる連中は、その名の通り攻撃性に振り切った兵器や技などを多用する者たちの事だ。目の前の次元球を見てわかる通り、総じて厄介者扱いされやすい者たちである。

 

『失礼にゃ!ちゃんと消し飛ばす相手ぐらい決めてるにゃ!』

 

「魔魅さんか?」

 

 作者がポツリとそう言い、猫屋敷はそれに反応する。

 

『そうだにゃ!魔魅さんににゃあの拠点を奪われそうになったから、戦って殺されたんだにゃ!辛うじて肉体を捨ててこの次元球の中に映したのはいいものを!魔魅さんは施設をスリープモードにしていきやがったのにゃ!酷いにゃ!』

 

 大会を開くにあたって現地人が邪魔になった魔魅さんは、一応勧告をして、従わなかった者たちを実力行使で黙らせていた。その被害者の一人がこいつなのだ。

 

「自分が弱かったくせに無謀にも挑んだせいだろ!どっちにしろ自己責任だ!」

 

『にゃあにはあそこしか居場所がなかったのにゃ!そもそも急に言われても困るだけにゃ!施設の移動だって楽じゃないにゃ!』

 

 こいつらの感覚では、挑むことも逃げることも個人の自由だが、それに関して自分で文句を言うのは違うだろ、と言うのが常識なので、最終的にはこういう結論になる。なぜならそれを言ったところで大抵はムダに終わるし、せいぜい愚痴程度にしておけという事だ。

 

「そういやお前、どっかで見たことあると思ったら、まさか賞金首か?」

 

『にゃ?知ってるかにゃ?そうにゃ!にゃあは賞金首500憶の賞金首にゃ!ちょっと借金が膨れ上がって返すのが遅れたのと、借金取りを追い返しただけで賞金首になるなんて酷い話にゃ!まぁにゃあの本体は死んだからきっと借金は帳消しにゃ!』

 

 世間は世知辛いと言わんばかりに呆れた顔をする猫屋敷だが、明らかにこいつが悪いだろう。まぁ奴らには悪気なんて一切ないわけだが。

 

「アオイさんと似たよなことを……」

 

『アオイさんにゃ?あんな奴と同じにしないでくれにゃ!自分の工房ごと消し飛ばすなんて正気のさたじゃないにゃ!それに賞金首も桁違いにゃ!70兆とかなにしたにゃ!?』

 

 その界隈で多少有名なアオイさんの話をだすと、自分はそんなバカじゃない!と反論する猫屋敷。それもそうだろう、いくら差し押さえさせられたからと言って、そいつらごと自分の拠点を消し飛ばして、報復するような奴と同じにされたくないだろう。

 

 

「にしても、ちっせいヤツはすぐに攻撃性を高めようとしやがるな。しかも喋り方も変だし、それが素か?」

 

『これは設定された言語プログラムの問題にゃ!にゃあの言葉に趣味を詰め込んだのと、一部の設定ミスのせいにゃ!そこまで調整する暇にゃんてなかったにゃ!魔魅さんは絶対に許さんにゃ!』

 

 見た目は生前のままだが、会話文はそうではないらしい。因みに大きさ的に攻撃力の低い傾向にある幼児族や小人族などの種族は、それを補うために過剰に攻撃にこだわる事がある。なので見た目によらず危険そうなやつは多い。

 

『ってことで、てめぇらにゃ、これからにゃあの次元球の性能実験と微調整に付き合ってもらうにゃ!そして魔魅さんへの嫌がらせがてらにこの大会を無茶苦茶にしてやるにゃ!』

 

 そう猫屋敷が言った瞬間に、次元振動が発生し、次元空間が崩壊を開始するのだった。

 

 




 ~おまけ~
・猫屋敷 タマについて
 借金取りと争い逃げきてきた先で隠れ家を作るが、数年も経たずに後からやって来た魔魅さんに、大会開催の際に邪魔者として始末された技術者の一人。
 すでに死んでいるが、執念で次元球の中へと意識を映してほぼ完全再現された存在。殺された事には恨んではいるが、次元球の中へと映ったことに関しては何とも思っていない。
 なお喋り方などは生前とあまり変わらないが、一部バグがあるので違和感を感じる時がある。
 因みに賞金首500憶は、二級の中ではそれなり。借金が帳消しになったかどうかわからない。


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次元球戦 後編

 幻想的に世界が崩れ、次元断層が丸見えになり、距離間や時空間、運動量や法則などが無茶苦茶になった戦場で、二人と一機は超高速で激しい戦いを繰り広げていた。

 

『にゃははは!やるにゃやるにゃ!にゃあの能力が混じった攻撃にここまで対処できるとは大当たりにゃ!』

 

 四方八方、全方位へ攻撃を飛ばしまくる猫屋敷は、大笑いをしながら量子コンピューターを軽く超える演算をこなしている。それに対して二人は……

 

「黙れこの猫野郎!」

「いい加減にしろ!」

 

『効かんにゃ!甘いにゃ!隙だらけだにゃ!』

 

 作者の曲斬と、鈴木の光線や波動など遠距離攻撃を全て対処しきり、的確に反撃を当てていた。

 

『にゃ?効いて無いにゃ?』

 

(共有しといてよかった!)

(貰っといてよかった!)

 

 だが二人が持っていた身代わり紙と反射札により無効化される。そして残念な話だが、反射された攻撃は即座に消え失せていた。

 

(流石は最上位兵器だな。兵器ってだけで高性能なのに、こいつは同等級とは思えない性能だ!)

(特化型だからな。特定の分野、これだと攻撃に関して見れば格上と渡り合う用のだぞ!)

 

 遠話でバレないように話し合う二人が言う通り、そもそもの積載量や目的に対する性能など、言ってしまえばキリがないほど差がある。そこに元人類の性能が一部とはいえ上乗せされているのだ。

 

 

『なにしたにゃ?見せてもらうにゃ!!』

 

 攻撃を無力化した方法を知るために、再度“次元斬振”という次元属性の斬撃性衝撃波をまき散らす猫屋敷。それと同時に高度な感知機構で情報収集をする。

 

『なるほどにゃ!そう言う能力かにゃ!』

 

(やっかいなことを!)

(俺の力場を超えてきやがった!)

 

 二人とも攻撃は防げたものの、情報を軽く抜き取られていた。これは手札の露呈であり、今まで以上に戦いずらくなったことを意味する。

 

『精度は同等で突破は不能ってところかにゃ。だったら予定通り物量でせめるにゃ!』

 

 猫屋敷はこう言っているが、勿論解析の手も止めない。攻撃の嵐はより激しく正確になり、計算しつくされた猛攻は二人を苦しめる。

 

(やべぇ、攻撃もそうだが時間の消費も同じぐらいヤバい!)

(時間の確認なんてしてる暇もないし、外の様子もわからんからな!)

 

 時空間までも歪ませる次元空間内部は、外とは流れる時間も違う。猫屋敷は大会を無茶苦茶にするために動いているので、極端な時間経過はないだろうが、一気に中盤戦ぐらいまで進む可能性はあった。

 

「「だったら!さっさと決着つけてやる!!」」

 

『にゃはは!できるもんならやってみるにゃ!』

 

 その場にいる全員が調子を上げ続ける。決して隙を見せず、どこまでもとめどなく激しい攻防が続いていた。

 

 そして――

 

『にゃ!?何が起きたにゃ!?』

 

「「ちっ!」」

 

 二人が猫屋敷の猛攻を超え始める。それはほんの少し、機体を掠らせる程の攻撃だったが、それでも十分と言わんばかりに

 

『にゃ!にゃ!!にゃ!?』

 

 少しづつ被弾が増えていくのだ。それに危機感を覚えた猫屋敷は即座に対策を講じるが、被弾は減ることはなく増え続ける。

 

『にゃあの防御結界が!対策が追い付かにゃい!?』

 

 二対一だからか、それともただの演算機でしかないからか、慌てだす猫屋敷。別次元に回避しようが、他の次元に攻撃を飛ばそうが、次元空間を捻じ曲げようが、防御結界の強度を上げようが対処できない様子だ。

 

『なぜにゃ!なぜこうも押されるにゃ!』

 

「たりめぇだ!お前は単なる演算機でしかない!生物の勘と経験なんざ理解できないんだよ!」

「精度の低い張り付けられた記憶でどうこうできると思うな!」

 

 二人は常にギリギリの脅威を与え続け、次元球の正確な判断を削ぎ落し続けている。同レベルの相手であれば対処が難しくても突破できないほどのものではないが、張り付けられた記憶しか持たない経験の浅い次元球では常に後手に回っていた。

 

『ッ!?』

 

 そして最終的には、二人の接近を許してしまい、目に見えて深手を負う部分が増え始める。これにより自動修復機能が発動し即座に元通りになるが、攻撃の手が緩んでしまい逆にダメージが多くなっていた。

 

『な!にゃ!?~~ッ!!』

 

 苦虫を嚙みつぶしたような顔で急速に学習を繰り返す次元球だが、一秒も待ってくれない二人の前では焼け石に水なのか、空間の支配権すら危うくなり始める。

 

『だったら!過剰次元!』

 

「「なっ!?」」

 

 あふれ出す無差別な光の衝撃波が、手傷を負わせようとする二人を跳ね除ける。

 

 

『にゃはは!にゃあも成長する必要があるみたいだにゃ!より正確に猫屋敷の……いや、にゃあが猫屋敷 タマにゃ!どんな形であれそれだけは変わらないにゃ!』

 

 近づくことも難しい極光の中でそう叫び、力が纏まってく。

 

「ありゃヤバいぞ。復活しかけてる」

「ああ、きっと残ってたんだろうな。単なる模倣品じゃなくて」

 

 二人は猫屋敷はすでに死亡しており、アレは単なるその意志を引き継いだ模造品だと思っていた。そうでなくても猫屋敷の情報を利用しているだけの人工知能かだ。

 

 だが違った。

 

 この戦いの中で、ありえないほどの試行錯誤を繰り返した人工知能は、残っていた猫屋敷 タマの情報をかき集めて融合して復活をしようとしていた。いや、復活してしまった。

 

『さぁ!今度はどうするかにゃ?』

 

 完全に強化回復された次元球の上に、二つの尻尾を持った猫屋敷 タマの姿が見える。そしてこれで終わらせると言う強い意志を込めて、極光の光を利用して、次元光を二人に向かわせた。

 

 

「「面倒だ!ぶっ潰してやる!!」」

 

 

 それを二人は今までにないほどの動きで回避し、光線を弾き、高速で猫屋敷へと迫る。

 

『無駄にゃ!ムダにゃ!!もう惑わされないにゃ!!』

 

 飛び交う斬撃と光線と衝撃波の数はすでに幾千億を超えて次元空間の果てに消えていく。猫屋敷の攻撃に隙はなく、先ほどのようなゴリ押しで埋め尽くしているようには見えない。

 

「「っ!」」

 

 ズレまくる世界と、完成系と言う名のスタート地点へと至った猫屋敷に押され気味になる二人。しかし諦めることなく挑み続け、着実に一歩一歩進んでいく二人に、猫屋敷は笑みを浮かべ

 

 

『フフッ!もう準備は整ったにゃ!にゃあの勝ちにゃ!喰らえ!過剰次元砲ッ!!』

 

 

 極大の光線を最高速で撃ちだした。それはきっと何もかもを圧し潰し、削り取り、消滅させるに足る程の攻撃なのだろうと思わせる程強大で、でも……

 

「「お前は二級だ!」」

 

『にゃ!?』

 

 光線を押し退け、あらゆるものを切断し断絶させる斬撃と、あらゆるものを貫く光線の嵐が次元球を襲う。それにより猫屋敷は驚いたような顔をして、左右に真っ二つになり、一瞬で穴だらけになった。

 

『にゃ!にゃに!?極系を使えるにゃんて!にゃが!これぐ――!?』

 

 急いで修復しようと破損部分に手を回す。

 

 しかし――

 

「させるか!」

「くたばれ!」

 

 攻撃の手が止んだコンマ一秒にも満たない間に、二人の追撃が放たれる。

 

『バカにゃ!?こんな、こんにゃところで――!?』

 

 衝撃波と斬撃の嵐、そして力場と空間の支配権を奪われた猫屋敷は、抵抗虚しくスクラップになるのだった。

 

 




 ~おまけ~
・極系について
 極系とは、極点、極線、極面などと言われる、極まった攻撃や行動の事。これらは非常に強力で、攻撃で言えば決まれば防ぐ手段がなく何でも破壊でき、防御や回避はその逆の絶対防御や回避と言う無茶苦茶な性能をしている。しかしその分使い熟すことは非常に困難で、乱入者たちである一般人最強格でも、狙って出すより偶然の方が確立が高いと言われるほど難易度が高い。
 また状況だとか相性だとかの前提条件もあるが、それはあくまで使うまでの話であり、極系自体は上限に達した動きなのでぶつかることはなく、どちらかの失敗にって判定が決まる。因みに相殺だとかは、どちらも失敗した状態とも言える。


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文句を言う猫屋敷

 戦いが終わり、日が昇り始めた時間帯で、スクラップと化した次元球を探る二人の姿があった。

 

「時間としては大して経ってなくてよかったな。で、ホントにあいつを回収するのか?」

「そうだ。他人に使われても厄介だし、ほっといたら復活しかねんだろ。だから先に回収しておくんだよ」

 

 次元球は完全に大破した。だが恐らく中にいた猫屋敷はやられていない。あそこまで成熟したのだ。きっと復活も時間の問題だろう。

 

「それにもったいない。技術者としてもほっとけない」

「確かに、なるほどな」

 

 鈴木は技術者だ。と言うか技術者に限らず、狭間の住人ほぼ全員に言えることだが、倒したいからと言って殺したいわけではないのだ。過酷な世界で生きる彼らにとって、利用できるものは利用したいと思う気持ちがあり、その一環と言うだけの話でもある。

 

「いたいた。で、どうしようか?」

「適当に端末にでも閉じ込めとけば?そうしないと逃げるだろ、非実体なんだから」

 

 演算コア部分の機関を取り出し、再起動させる。すると目を回したのか、ぶっ倒れている猫屋敷が掠れた映像で投影された。

 

『に、にゃ……どうしてにゃ……』

 

「おっ、起きたな」

「起こしたの間違いだろ」

 

 猫屋敷が気を取り戻して、周囲を確認してそう吐き捨てる。

 

「ショックを受けてるとこ悪いが、選択肢をやる。俺についてくるか、そのまま大人しくしておくか、消されるかどれがいい?」

 

『……そうだにゃ~、付いていくとしてどうなるかだにゃ』

 

 猫屋敷は人格としては復活をしたが、完全体ではない。ホントだったら時間をかけて霊体と言う名の非実体を得て、機械から独立した存在になるはずであったが、そんな時間的余裕などどこにもなかった。

 

「適当にこの端末の中にでも入ってもらう」

 

『にゃ……随分古いの使ってるにゃね。丁度いいにゃ、改造してやるにゃ』

 

 鈴木は端末を見せて、次に端末と演算機をバラいてササっと組み替えたりデータを移していく。凄く手際よくしているが、能力使ったり技術者でなければわからないようなことをしているため作者にはさっぱりだ。

 

 

「猫屋敷。お前次元の能力者だよな?」

『そうだにゃ、それがどうしたのかにゃ?』

 

 空間の軸をずらしたり重ねたりして、内部空間を拡張やら圧縮をしている猫屋敷に作者は声をかける。

 

「どうやってんだ?俺にはさっぱりだな」

 

『やってること自体は簡単にゃ。演算がめんどくさいだけでにゃ。やっぱ機械演算じゃダメにゃね。肉体があったときなら意識せずになんとなくでできたのににゃ』

「思考が演算に置き換わりすぎたら、そりゃそうなるだろうな。生物の脳ほど曖昧なくせにちゃんと扱えるのはないからな。人格付きの人工知能はバグとか乱数大量に使って再現してるみたいだが、やっぱ別もんだからな。基本的には……」

 

 猫屋敷は愚痴をこぼして、鈴木はプログラムや人工知能について話しだす。勿論作者にはさっぱりで、二人で勝手に盛り上がっていた。因みに作者も色々使えるが、利用しているだけで詳しく理解しているわけではない。

 

『能力は知識とアイデアにゃ。わかってたら色々と便利にゃよ』

「そうは言ってもな。詳しく知らなくてもなんとなく使えるし」

「まぁ大半の奴はそうだな。言語化できないだけで理解してない訳じゃないんだろうが。っとできたぞ」

 

 作業を終えた鈴木は端末を操作し、猫屋敷が映る画面を見せる。それに対し猫屋敷が、不便だのスペックがどうのこうのと文句を言うが、即席なんだから我慢しろと言い返され、にゃあならと言おうとした瞬間に画面と音を切られた。

 

「いいのか?」

「うるさいだけだし、そもそも閉じ込めるのが目的だ。勝手に成長されて端末の中から出て来られても困る」

 

 ため息をつきながら端末を仕舞う。実際その通りで、大半の力を削ぎ落しただけで、何もできなくなったわけではないのだ。隙さえあれば勝手に成長進化を繰り返すこいつらは、放置すると大変なことになる。

 

「そうだな。てかその中ですでに色々やってるかもよ?」

「だったら尚更これは使えないな」

 

 全く言ってその通りで、猫屋敷は文句をたらたらたれながら内部で独立するための作業を進めていた。現在端末類を媒体にしなければまともな存在維持ができないが、それを脱しようと頑張っているのだ。

 

「霊体を通りこして次元体とかになるかもよ?」

「やりそうで怖いわ。で、こっちに向かってくる奴どうする?」

 

 そう言い遠くの方を見る鈴木。

 

「あ~作業してて逃げる隙なくしたからな。当分は連戦かもよ?」

「だな」

 

 そう言った瞬間に二人は息を整え、向かってくる奴らに注目するのだった。

 

 




 ~おまけ~
・狭間の住人の生存感について
 狭間の住人は、生存のためになんでも利用する意識を持ち、次いでに他者のためにも行動します。これは、誰かが生存するという意味では効率がいいからである。彼らは現実主義であり、結果を受け入れることが多いが、自身が納得できない場合は改善しようと頑張り続けます。彼らは自己満足のために努力することを当然と考えている。


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増える敵って面倒だよね

 遠くから数にして100を超える敵が見え、作者は咄嗟に相手から情報を抜き出していた。

 

「戦闘員∞ね。能力は、無限増殖、負傷写し、削減呪で現在は125名と。本体は見えないな。身体能力は大したことないが、面倒な敵だ」

「呪い系か。嫌な力場してやがるぜ」

 

 相手の大体を把握し、嫌な顔をする二人。こういう生存に特化した嫌がらせ能力はいくらでも見てきたし相手もしてきたが、それでもめんどくさいと感じざるにはいられなかった。

 

「ま、対処法はいくらでもある」

「だな。相手はしたくないが」

 

 そう言った二人は、瞬動で一気に距離を詰め、前線にいた十数人を蹴散らす。

 

 

「チッ!端の方は間に合わんか!」

「呪いも思った以上に面倒だな!」

 

 戦闘員∞から溢れ出す呪いを退け、弾き、襲い掛かってくる戦闘員∞を斬り飛ばし吹き飛ばす。

 

「っ!?こいつ!」

「さっそくか!」

 

 だが戦闘員∞も負けておらず、間に合う範囲で“負傷写し”を使い増え続ける分体にダメージを押し付け、強引に突破しようと攻撃を仕掛け続けていた。

 

「どうする?一瞬で数十体倒せても、それと同等の速度で植え続けるんだが!」

「呪いも厄介だしな!増え続けると対処に困る!」

 

 増えることに専念している部分があり、このままいけば確実に物量に押し潰される。

 

「弱いだけに簡単に呪いばら撒くな!」

「ごもっともだ!この調子だとやりきる前に呪いを防ぎきれないかもな!」

 

 いくらチマチマとした呪いでも、数さえそろえば恐ろしい脅威になる。そして削減呪の対処をしながら戦うという事は……

 

「ちっ!?突破されるか!」

「減らねぇどころか増えてんだから当然だろ!」

 

 手が回らなくなり、危ない場面が出てくる。特攻してくる奴らに遠距離からの銃撃や手榴弾、その他様々な軍人や傭兵が使いそうな武器や戦術で攻め立ててくる戦闘員∞は、少しづつ二人を追い詰めていた。

 

 

「一旦盛り上げて焼き払うぞ!」

「じゃあ俺は狙い撃ちさせた貰おう!」

 

 作者が札を使い塔のように地面無作為かつ大規模に盛り上がらせ、それを覆いつくす程の大火炎が下層部を焼き払う。それと同時に鈴木が、負傷写しで耐えて追撃を仕掛けようとしてくる奴らを丁寧かつ一瞬で撃ち抜いて殺していた。

 

「やっぱムラがある攻撃は即座に負傷写しで耐えられるな。俺の手札大体通じないんだが?」

「近づいて能力を妨害して殺すしかないな。幸いあっちは一人ひとりにはあまり執着がないみたいだしよ」

 

 何百を超え、何千と言う単位で殺し続けるが減る気配がない。削減呪もどうにかして二人の中へ入り込もうと、視界を埋め尽くし濃くなり始めていた。これでは感知の方にも影響が出るなとため息をつく。

 

「そうでないだろ。代償ありきで言うならいけるはずだ」

「そりゃこの状況を一瞬で解決する手もあるが、流石にコストに合わねぇよ」

 

 技札は貴重だからあまり使いたくないのだ。所謂エリクサー症候群である。それに実力を超えた技や格上の技は反動が大きい。

 

「同格でも数分。格上だと相性が良くても一分だ。侵食の事もあるし死にかけなきゃごめんだな」

「格上だったら一分もあれば全滅できるだろ。ものによっちゃあいつらどころか、ここ一帯の参加者消し飛ぶぞ。やめた方がいいな」

 

 他人の現身を使う手もあるが、こちらも負荷が大きく最悪乗っ取られることもあるので嫌なのだ。そうでなくても、感じる感じないにかかわらずどこかが歪んでしまう。

 

「だろ?魔魅さんも何言ってくるかわからんし……っと、で、あいつらどうする?」

「上ってくるも銃撃も諦めて、しかもワザと焼死して呪い飛ばしてくるな」

 

 地形的に届かないのであれば、殺され続けて相手が動けなくなるまで弱らせようという魂胆なのだろう。

 

「ま、よじ登っても跳んできても撃ち落されるんだから当然か。数なんていくらでも増やせるんだから」

「あの身体能力でよく大会参加しようと思ったよな。能力なかったら最初の範囲攻撃で全滅してるだろうし」

 

 戦闘員∞の身体能力は、正式参加している参加者の中で最低値と言っていいほど低かった。こちらに来て超人レベルで強化されているとはいえ、一人一人は作者に瞬殺される程度の実力だ。あちらでの一般人の子供たちよりかはマシ程度のものでしかない。

 

「こんなんでも一般流を覚えれば戦力になるのか」

「多少厄介にはなるだろうな。ま、それでも届かないだろうが」

 

 因みに身体能力が最弱でも一般流を覚えれば、それなりの戦力になる。だがそれでも元の差が大きすぎると多少で終わってしまうのだ。なんせ一般流は誰でも使えるので、身体能力が高くて一般流を使う熟す奴が、作者たちの中では当たり前になっているからだ。真面にやり合うには、同じ技量で相手に近い身体能力か、ギリギリ追いつける身体能力と圧倒的な技量が必要になる。

 

 

 

「っと、多分万も超えたな。もうそろそろいいだろ」

「何する気だ?」

 

 作者は、属性札と強化札を取り出し、大空を埋め尽くす雷を作り出し、一瞬にして生き残っている戦闘員∞を感電死させる。勿論完全に殺し切れたわけではなく、生き残った一部がまた増えて二人の元へと向かおうと足を動かしていた。

 

「しぶといな。てかそれ元からそう作っとけばよくね?」

「いやいや、そうだと日常じゃ使えんだろ。使い分けも面倒だし、組み合わせの方が楽なんだよ」

 

 鈴木に突っ込まれるが、これでいいのだ。なぜなら日常でも使えるレベルでの汎用性を大切に作っているので、基本的に戦闘時では強化札などと併用して使う運用をしている。

 

「で、なんでこんなに殺したんだ?まだ足りなかったのか?」

「そろそろ炎も消えるし、もう一押しだと思ってな。我慢してくれよ」

 

 そう言い消えかけている炎と大量の死体の上を歩んでくる戦闘員∞を見ながら、苦笑いで目の前を埋め尽くす呪いを指差す。

 

「じゃあ、もうやるのか?」

「ああ、ちょっと無理して支配か暴走させてとも考えたが、数も多いしこれが邪魔でできそうにないからな」

 

 作者は、戦闘員∞の一人を支配か暴走させて同士討ちを狙おうと考えたが、あまりにも数が多すぎてそれを断面していた。

 

「呪いさえなければ一人に絞って、片手犠牲にして支配できたのにな」

「支配はマジで難しいからな。生かさず殺さずでしなきゃダメだし、普通でも抵抗激しいのに、少しでも隙を見せたら即解除にしかかるからな。死体を利用するのも変質するから別物になるしで」

 

 呪いが邪魔すぎるし、片手で戦闘員∞を相手するのは作者には少々身が重い。鈴木も流石に作者を守りながらでは上手く戦えず、負傷写しでのゴリ押しを許してしまうかもしれないのだ。

 

「ってことで、これをこうして……押し付けようか」

「手伝うぜ」

 

 自身の周りを取り巻く膨大な呪いを少し操作し、二人の元までたどり着き飛び掛かった戦闘員∞にぶつける。するとそれを諸に食らった戦闘員∞は、目の色を変えて苦しみ出し地面を転げまわり簡単に傷付いて、他の戦闘員∞もそれに続きバッタバッタと倒れて落ちていく。

 

「暴走付きの削減呪だ。内部で暴れまわって削られて弱っていく。厄災みたいなもんだな」

「厄災か、あのヤベェのよりかはマシだろうよ」

 

 自身の呪いに苦しみ、繋がっている個体にも急速に広がる呪いにより、戦闘員∞は何もできずに光と化して退場するのだった。

 

 




・投稿キャラを使わせていただきました。

 ~おまけ~
・多元存在に理不尽はないについて
 多元存在はあらゆるものの流れや構造的に見えると言うか、なんとなくわかって干渉できるので、確実な手段や絶対的な力は存在しない。持っていないものでも干渉だけはできるので、それによって何でも弾いたり壊したりできる。ただし初めてのものは後手に回ることが前提になる。
 なのであるのは、対処できるかとか防ぎきれるかとかであり、問答無用でくらうものはない。

・作者の技札について
 技以外にも他人にも成り切れるぞ。ただし長時間使うと侵食されて、作者の自我も情報も消滅してしまうリスクがある。これはコピー元から正確な力をもって来ようとして、能力に限らず感覚から経験、記憶などを引っ張ってくるのが原因。これを使うたびに作者は、自身の消滅を覚悟しなければいないクソみたいな技。時間制限ありでほぼ完全に体を作り替えることもあるが、格上の情報だとそれを無視してくることもあり、自殺行為なので相当追い詰められないとしない。実際過去に何度か使っており、作者は色々歪んでいる。


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増える気配。それは強者の気配

 休むついでにくつろぎながら頂上で周囲を軽く見渡す二人は、参加者が近づいているのを感じ取り、どうしようかと悩んでいた。

 

「これどれだけ続くんだろうな?」

「いなくなるまでだろ。こんなに戦ってんだから、この地域の参加者は軒並み集まって来て乱闘になるぞ」

 

 地形を変え、大地を焼き尽くし、轟音と共に視界を埋め尽くす雷を放ったりと、目立っているのだから当然である。そして、点数の高い二人を狙いに来る者やそのお零れ、中には漁夫の利を取りに来る者も多い。

 

「まぁこっちとしては願ったりかなったりだが」

「そうだな。ちょっときつそうだが、やっぱ戦いは楽しいな」

 

 狭間の住人は、根っからの戦闘狂だと分かる会話だ。

 

「戦闘職じゃないだろ、作者は」

「そう言うお前こそ。単なる技術者の一人だろ」

 

 どんな職でもどこまで行っても戦闘狂の彼らは、楽しそうに笑う。それが自分を殺しうる相手や状況であっても、変わらない。

 

「見える範囲でざっと40人はいるな。囲まれとるわ」

「様子伺ってるのと、いつでも来れる距離にいる奴はそれ以上だな。どうする?」

 

 別に数は問題ではない。60点以上の奴など数える程度しかいないので、全員が結託して戦いにでも来ない限り二人の脅威にはならない。だが勿論例外もいる。

 

 

「そいつら瞬間移動とかしてせめてこねぇよな?流石にそれは面倒だぞ」

「何人か入る。てか来ようか考えてるな。ただ鉢合わせしないように慎重な奴が多いわ」

 

 遠距離攻撃や認識範囲内であれば一気に距離を詰められる奴らは面倒だ。近距離から中距離戦が主な二人にとっては厄介な相手でしかない。

 

「問答無用でこっちに来ようとする奴もいるだろうから、空間に細工したし結界張ったけど、どれぐらい意味があるのやら」

「力場も張っといたし、遠距離対策はしたからこれでいいだろ。遠距離はな」

 

 鈴木は力場で容易に防ぐことが出来るが、作者はそうもいかない。精々回避か結界、相応の技札の使用を余儀なくされるだろう。だから鈴木は力場を広げて対応範囲を広げて、ついでに作者を守れるように動いていた。まぁこれも単なる気休めで、すぐに意味がなくなるのだが……

 

「誰かが動けば即乱戦だな」

「まだ二日目なのにな。血気盛んなもんだ」

 

 そう言って作者は体を解しながら見下ろすように端に立ち、鈴木は肩を鳴らしながら何もせずにそれを見ていた。それと同時に二人を狙っていたその場にいる全員が、比較的安全な場所から様子を見ているはずの参加者もが構える。

 

 

「さっやるか。上頼んだぞ、鈴木!」

「おう、分かってるよ!」

 

 作者が飛び降りたと同時に、空がバグった様に虹色に変色を開始する。それに向けて鈴木が飛び上がり、出てきた三人に攻撃を仕掛けたのだった。

 

 



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連戦1

 塔から荒野へ作者が飛び降りた瞬間、遥か遠くから複数の銃撃が放たれる。

 

「おっと!」

 

 だが作者はそれを斬り弾き、飛斬を返した。勿論それは回避され当たることはなかったが、相手のいた遥か遠く先の場所に深々と斬撃跡が残る。

 

「こっちもか!」

 

 背後が歪み、龍型の砂粒が作者を飲み込もうと一気に喰らいつく。しかし振り返った作者により、塔が切り落とされ空動で加速した殴打を塔に繰り出す。それにより、弾けるように土砂が空へとまき散らかされた。

 

「多いな。数間違えたか?」

 

 レーザーにミサイル、果てには魔法まで作者目掛けて飛んでくるのを見て、そう思う。だがどれも結界を張っている作者の脅威にはならない。

 

 

「まずはあいつらからだ。筋書通り退場してもらおうか」

 

 そう言うと強化札を使い自身と大量文字情報飛び交う結界の強度と性能を高め、瞬動で近くにいた魔剣使いたちへと一気に距離を詰める。

 

「ツキト!こいつはヤバい!本気で行け!」

「はい!」

 

 弾丸のような速度で跳んできた作者の斬撃を受け止めた魔剣族のツボネは、衝撃と地面の陥没を無視して自分の娘に活を入れる。それによりツキトは魔法剣である魔剣を作者に向けて全力で薙ぎ払う。

 

「おっと危ない」

「こっちもね!」

 

 しかし作者は滑り落ちるように回避し地面に着地し、即座に斬撃を繰り出すが、ツボネはそれを難なく弾き飛ばした。

 

「魔法で剣を作る魔剣族。その中でも最強と名高いツボネとその娘か。剣の才能はピカ一だな」

 

 ツボネの即座に踏み込み 強力な剣戟で追い立てるように激しく繰り出されるが、作者はどこ吹く風かで受けながす。そこに横からツキトが突き剣撃を加え参加するものの……

 

「そっちこそ!」

「お母さん!この人強いよ!」

 

 二人がかりの見事な連携プレイの剣戟を完璧に対処する作者。その差は圧倒的であり、剣術以外のすべてが二人を上回っていた。しかし二人も負けじと攻撃を繰り出し続け、その速度と激しさは増し続ける。

 

「ムダに属性を乗せずに、剣としての理想を具現化した魔法剣。お前ら二人の扱うそれは強いが、もう終わりにしようか」

 

「なにをッ!?」

「うそッ!?」

 

 一瞬の隙を突いて踏み込み、曲斬でツボネを真っ二つにし、速度を上げ驚くツキトも斜めに斬り落とされ、二人は光となって退場していく。

 

 

「中々に使ったな。多めに準備しててよかった」

 

 少し減った漂う文字を見ながら、気温が下がり凍り始める大地の先にいる二刀流の女性である人工精霊 フブキを見やる。

 

「強い奴だ。だが負ける気はないぞ」

「そうか。じゃあかかって来いよ」

 

 フブキは急速に大地を凍らせながら、作者に滑るように接近し斬りかかる。無論その程度は簡単に受け止められたが

 

「凍るか」

「チッ」

 

 作者の源光刀が素早く氷付き、腕に上がってこようとする。それを振り払った作者は速攻で首を斬り落とそうと斬り返すが、ギリギリで避けられ氷山に押し上げられる。

 

「規模がデカい」

 

 巨大化が止まらない壁のようにそびえ立つ氷山から滑り降りながら飛斬を放ち、ずり落ちる氷塊の陰に隠れてフブキとの距離を縮めようとするが、氷槍が無数に作者を襲い距離が縮まらなかった。

 

「こいつはめんどいな」

 

 あの二人に比べれば戦闘技術は大したことない。だが氷による環境変化が厄介で眉を顰める。現に気温は下がり続け、視界が悪く立ち止まると徐々に凍り始めるほどの吹雪が吹き始めていた。

 

「ッ!?防ぐか!」

「見えずらいがな」

 

 吹雪に混じって死角を取ったと思ったのか攻撃を仕掛けるフブキだが、普通に防がれ軽い反撃を受ける。

 

「だったら!」

「手応えがないな」

 

 空を斬ったようでまるで手応えがない。それに対しフブキは、全方位から斬撃を撃ちまくる。真面に受けても立ち止まっても氷漬けになる状況で、かつ氷山や氷槍が至る所から発生する空間を文字を減らしながら動き回りいくつか札を取り出す。

 

「一旦温めようか」

「させるか!」

 

 札ごと腕を凍らせようと周囲の極小の氷と冷気を作者へと向ける。それにより作者自身が氷に覆われそうになったところで、火炎札と強化札のコンボが炸裂し、氷の空間が溶かされ消し飛ぶ。

 

「あつっ!!?」

「そうだな、熱い」

 

 火炎を操り、逃げようとするフブキに囲い込むようにぶつけ、全方位から焼き尽くす。それを氷塊の中に籠ってやり過ごそうとしたようだが

 

「じゃ」

 

 火炎の先から飛斬でフブキを氷塊ごと刈り取り、氷が解け吹雪が収まりと共にフブキは光になり退場する。

 

 

「連戦自体はいいんだが、消耗激しいし情報も取れない。クソだな」

 

 そう愚痴を言い、次に襲撃をかけようとしている集団が来る前に結界の補充をするのだった。

 

 




 投稿キャラ使わせていただきました。


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連戦2

 目の前の戦闘が終わった瞬間に、再度また銃撃やミサイルなどの遠距離攻撃が再開される。それを動き回りながら防ぎ、弾き、回避し、地中と空の敵に手を出されないようにするために、紫の粒子を漂わせて戦闘服を着た魔導兵器の一族のキズナ、キリカ、キリエへと接近した。

 

「狩らせてもらうぞ」

「くっ!?」

 

 瞬動で、キズナの娘である双子の娘のキリカ、キリエを狙いを定めて攻撃を仕掛けるが、キズナがそれを障壁で防ぎ、吹き飛ばされる。

 

「あっちの攻撃が止んだな。まぁ次はお前らな訳だが」

 

「「よくもお母さんを!!」」

 

 母親が吹き飛んだのを見て、目の色を変えて襲い掛かる双子。その手にはいつ出したのか、紫色の剣が握られていた。

 

「おっと、それが魔導兵器と言われる由縁か?」

 

 乱動で躱し、背後を取って曲斬を放つ。だが障壁で防がれ、二人は振り返り、背後から帰ってきたキズナとで三人で作者を囲み斬撃を繰り出す。

 

「成程な。高粒子ブレードみたいなもんか。それがお前らの魔法と。だが障壁とかちょっとした空間ならまだしも、次元の壁は超えられないみたいだな。ってことで吹っ飛べ」

 

「「「ッ!?」」」

 

 防がれるとは思っていなかったのか、三人は一瞬動揺し動きを止めていた。勿論その次の瞬間には、断絶結界を越えようと魔法を構築しようとするが、その隙を突くように減った文字の追加ついでに新たな文字を加え双子を吹き飛ばす。

 

「まずお前からだ」

「やってみなさい!」

 

 断絶結界を解き、二人の武器が、斬撃がぶつかる。それにより作者の源光刀の刃が壊れ

 

「はっ?」

「終わりだな」

 

 即座に刃を新しく生やしながら、スッと背後を取り斬り伏せる。その一撃は、背中にあった飛行術式とキズナを守っていた魔法結界ごと彼女を両断し、キズナは光となって退場していく。

 

「空も飛べる、光線も撃てる。魔法ってのは凄いな」

 

 苦虫を噛み潰した怒りの表情で、莫大な紫の粒子を纏った双子が、高速低空飛行で光線を放ちながらこちらに向かってくる。

 

「大体分かったし」

 

 速度が増し、双子は今までにない高いパフォーマンスで剣技を披露し、作者とすれ違う。

 

「向かってくるんなら楽勝だな」

 

 それにより双子はぶった切られ、地面に落ちる前に光となった。

 

 

「で、また追撃か?」

 

 脳天に向かって撃たれた弾丸をかわし、避けた先に放たれた光線を掻き消しつつ、撃ってきた奴を見る。

 

「セナとエンプレスって奴か。さっきから狙ってきてたの」

 

 機械人間と都市防衛機能と言う種族の改造人間だ。どこの世界も、才能のある少年少女を使って物語を進めるのが好みらしい。まぁどこにでもある話だ。

 

 

「で、次はお前と。ムラサメさんよ」

「あなたの能力を見る限り自己紹介は不要そうですね。では全力で行かせてもらいます」

 

 妖刀を持った和服の少女が、素早く距離を詰めて斬撃を放つ。

 

「めんどくさいの持ってるな」

「殺して奪ってあげましょう。あなたの技も力も」

 

 普通にかわしたが結界が削れたをのを見て嫌な顔をした作者は、仕方がなくバックステップで向かってくるムラサメとの距離を保ちつつ、源光刀を片付け素手になる。

 

「こっちは相性が悪いみたいだから、とりま素手で行こうかな?」

「できるものなら……どうぞッ!!」

 

 加速系の技を使い、神速の速度で突きを放ち、続けて作者を斬り刻もうと妖刀を振るう。それをスレスレで避けて、タックルを食らわせながら掴み引き付け、強烈な腹パンを叩き込む。

 

「がっ!?」

「いくつ能力とか特性持ってるんだろうな?」

 

 そのまま手を突っ込み、高速で情報を見ていく。

 

「はっ!放しッ!?」

「おっと」

 

 薄黒いオーラが湧き出しながら妖刀を振るムラサメに、作者が驚きながら即座に掴んでいた手を放して顔面に拳を放つ。

 

「刀に集約してた力を身に纏ったな。なんで最初っからしなかったんだ?刀の性能が落ちるから?」

 

「ぐうぅ……見たならわかるでしょう?この力は使い勝手が悪いんですよ!」

 

 凄まじいい回復力で負傷を治したムラサメは、刀を斜めに斬り上げる。それにより、黒い死の暴風が発生し作者に迫る。

 

「は?」

「そうみたいだな」

 

 大地を殺し、大気を殺し、あらゆるものを死に至らしめる暴風を一太刀で消し飛ばす。その作者の手には、ムラサメの妖刀と同じ刀が握られていた。

 

「超性能な代わりに所有者に負荷を肩代わりさせる。死の力を使っているから当然か」

「見るだけに留まらずに!」

 

 瞬動により一瞬で目に作者の妖刀が迫る。それを急いで回避し、斬り返しをするが受け流されて、そのまま手加減なしの高速で斬り合い始める。

 

「くっ!片手で!まだ奪う気ですか!」

「俺は基本片手で振るんだ。それで十分だからな」

 

 両手でしっかり妖刀がを握っているムラサメに対し、作者は強く力を込める時以外は基本片手で武器を振るっている。それはムラサメの予想通り、別の技の用意のためだ。

 

「殺してから奪う、殺しながら奪う。言ってしまえば、切り崩しながら、その崩した部分を自分のものにする能力か。で義体を手に入れて自分で動けるようになった代わりに、押し付ける所有者がいなくなって、普段は性能絞らなきゃダメだと」

 

「ッ!?なんでッ!!」

 

 逃げられない。普通に、適当に、雑多に、振っているように見えるが、対峙しているムラサメは恐怖した。なぜなら何も感じないからだ。特徴もないし、特記することもない。なのに逃げられずに追い詰められる。

 

「おっと。属性攻撃か。ま、この妖刀の前じゃ効かんがな」

「そ、そんな……」

 

 打ち合った瞬間に爆炎が作者を襲い、距離を取りながら電撃を浴びせて、斬撃を飛ばすが、妖刀の死の力で殺され取り込まれる。

 

「同じの使ってるんだから当然だろ?お前の長所全部潰してんだぞ?あ、でもこの妖刀の負荷は全部こいつに負わせてるけどな。お前と打ち合うようだからそれ以上はいらんし」

「違うっ!なんなのッ!!あなたはッ!?」

 

 作者はそれらしい理由を並べる。だがどれも正しく、それも違和感とは違う。そんなことを考えていると、力を使いすぎたムラサメの体に限界が来て

 

「あっ……」

「あ~あ、あとちょっとだったのに」

 

 そのまま動けないでいるムラサメに止めを刺して、複写した妖刀と共に消えたのだった。

 

 




 応募キャラを使わせていただきました。


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連戦3

 地が揺れ、虹色にバグった空を見上げる作者。

 

「機械龍、虹龍二人、砂漠龍の四人か。今は龍型だが……ま、余裕だな」

 

 地面が砂漠、砂粒となり沈めようと開始する。同時に上空を飛んでいた透明化してた虹龍と堂々とし存在してた機械龍が光線を地上に撒き散らす。

 

「無差別に撃つなよ。こう使った方がいいだろ。光札っと」

 

 それに対し作者は懐から札を取り出し、針を落としながら光線を上空に向けて放ち、的確に狙い撃ちをした。

 

「効かねぇか」

 

 光線は言わずもがな、サラッと落として地面に突き刺さった針の効果も揺れるだけで通じない。やはり相手の得意分野をぶつけるのは愚策の様だ。

 

(射撃部隊も撃ってこねぇし。こりゃ、困ったな」

 

 地面が揺れる。それにより巨大な砂の龍が、作者を飲み込もうと大口を開けて顕現した。それを瞬動で横に避けながら乱斬でバラバラに斬り刻む。

 

(砂嵐に相変わらずの光線。どうすっかな?)

 

 逃げ回る作者に追いかけてくる砂の龍。あれは本体ではないのでいくら攻撃しても無意味だろう。上に行くにも敵が多くて上手く行かない。

 

(鈴木の相手してる奴らは別陣営だろうから気にしなくていいとして、こいつらの後にはまだまだ控えてるだろうし、まずは指揮官倒さなきゃダメかね?でもイマイチどこにいるか割り出せねぇんだよな)

 

 敵は多勢に無勢。次々と効率よく戦力を投入してくるだろう。せめてのも救いは、個人や少数で強い連中しかいないので、数の連携が無い事だ。

 

 

「ま、それ踏まえても余裕だがな」

 

 ミサイルを撃ちながら急降下してきた機械龍に飛斬を放ち、砂漠龍を無視して瞬動で飛び上がり、隙だらけな側面を取る。だがその瞬間に激しい電撃が空間を埋め尽くし、作者に向けて更に強力な電気のブレスが放たれた。

 

「どうも」

 

 無傷の作者に吸い込まれるように向かう電撃のブレスは歪曲され、砂漠に隠れていた砂漠龍を消し飛ばして退場させる。そして目を見開いて驚いている機械龍を一刀両断し、虹龍を仕留めるためにさらに上空へと飛び上がった。

 

 

「ってことで次はあいつらだな」

 

 空動で更なる加速をした作者は、小さい方の虹龍に刀を振る。

 

「誤認系かよ、めんど」

 

 虹龍をすり抜け、急転回しながら向かってくる虹色の光線を掻き消す。そして再度空動で空間を蹴り、虹龍がいるであろう場所へと斬撃を放ちに行く……が、すべて通じずあっけなく避けられていた。

 

(正確な位置が掴めねぇ。それに文字結界の消耗もヤバいんだが?)

 

 近づけばわかるが、虹龍の周囲には虹色に輝く空間が展開されており、光を通じた誤認、錯覚、幻惑などのあらゆる手段で自身の場所を隠して戦うスタイルらしい。そのせいで作者の攻撃はどれも簡単にかわされ続けている。

 

(さっきみたいに反射できれば一瞬なんだがな。警戒されてしてこねぇし、めんどうだな)

 

 ストックは消費するが、こういう相手には当人の本気の一撃を跳ね返した方が手っ取り早い。そのためにフェイントを複数かけているのだが、中々それをしてこないのだ。

 

「じゃ、全方位だな」

 

 札を取り出した瞬間に黒い煙幕が広範囲に発生する。そして次の瞬間には大爆発が起き、どさくさに紛れて虹龍に針を投げた。

 

「物理以外は強いんだろ?その虹の膜。でも直接撃ち込まれたらな。どうなるんだろうな?」

 

 虹龍は物理以外、特にエネルギーに近い攻撃に対して強い耐性のある虹色の膜を纏っている。だが内部はそうでもないらしく、撃ち込まれた針の部分がグチュグチュに溶けていた。

 

「咄嗟に止めたのは凄いな。で、場所割れた訳だが、次どうする?」

 

 侵食を止める事に一瞬の隙を作ってしまった虹龍は、作者に場所を割り出された挙句、逆に自分たちが見失っていた。しかも声は聞こえるのにどこにいるかわからないので、二人は余計に混乱し――

 

「何もできないか」

 

 大きい親の方の虹龍の首が斬り落とされ、続けて理解が追い付いていない小さい子供の方の虹龍を真正面から顔を真っ二つにされて退場していたのだった。

 

 




 応募キャラを使わせていただきました。


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連戦終了?

 明らかに消耗した結界をどうしようとかと悩みながら、地上に降り立ち周囲を再度確認すると

 

(やっぱ多い。補充が出来ないのは辛いところだが、まぁ行けるか」

 

 ぞろぞろと参加者たちが作者を囲むように現れ、遠くの方では調整を終えた射撃者たちも狙いを定めている。きっと先ほどまでのような楽な戦いはもうできないだろう。

 

「なんせ首謀者が出てきたんだからな」

 

「お初にお目にかかります。私は、邪神教 第十席のウラニ・アズーウと申します。貴方は中々強いですね。私の仲間になりませんか?」

 

 振り返り、そこに立っていた茶髪のゆったりとした民族衣装を着た貴族風の男を見ていた。

 

「マジで言ってんのか?この状況で?」

「はい、そうですよ。因みにここにいる人たちも全員、私と強力関係を結んだ同士です」

 

 温和で優し気な雰囲気を漂わせてそう言ってくる。だが周囲の状況を見れば、武力交渉もいいところだろう。

 

「へ~邪神教ね。それに見た目によらず……」

「戦わないのが一番ですからね。話し合いで解決するのならそれが一番です。私は見ての通り強くはないので」

 

 最低限は戦えるだろうが、アズーウの能力は自分で戦うためのモノではないのだろう。実際に作者から見ても、小細工なしで戦っても簡単に倒せそうと思われている。

 

「これ以上戦力を減らしたくない。倒せないのなら交渉して仲間に加えたいと?」

「それもありますね。否定はしません。でも損はさせませんよ?」

 

 ニコッと笑みを浮かべて近づいてくる。

 

「で、どうでしょうか?」

「……はぁ~、なるほどな。じゃあこうっ!?」

 

 確実に仕留められる射程に入った瞬間に、最速で刀を振るう。だが、刀から伝わる少しの衝撃に文字結界が反応し大きく距離を取らされた。どうやら何かしかけていたようだ。

 

 

「酷いですね、いきなり攻撃とは。まぁいいでしょう、少し考える時間が必要だと思うので、待ちましょうか」

「待たせる気ねぇだろ!」

 

 

 アズーウが攻撃の指示を出すと同時に最大火力の火炎札で周囲を焼き尽くす。これにより遠距離攻撃をはたき落とし、炎の中から飛び掛かって来た赤黒い目の男の拳を刀で打ち返していた。

 

「つえぇな!お前!遊んでくれや!」

「今はごめんだ!」

 

 瞬間的に近づかれ、無数の殴打が繰り出される。それを刀と体術で受け流し、炎の先から飛んでくる矢を避けるために、バク転で回転しながら反撃をして飛び退いた。

 

「数が多い、調整も済んだってことか!?」

「ご名答」

 

 矢が焼け仕込まれていた爆薬が盛大に爆炎を上げる。そして作者の隙を逃さずに細剣を持ったダンディーな爺さんが、神速の突きを作者へと放つ。

 

「なかなかの腕前ですな」

「うっせぇ!」

「邪魔すんな!俺の獲物だ!」

 

 ギリギリになったが、どうにか避けて目にも止まらぬ速さで打ち合う。そこに男が割り込むが、それでも耐え抜く作者。だが文字結界が凄まじい速度で消費され、明らかに焦っている事が分かった。

 

(やべやべ!切れる!こいつ、人の結界吸収しやがって!あとこの爺さん動き良すぎるだろ!技量特化か!てかこのままじゃ負ける!)

 

 周囲のエネルギーを吸収できる吸闘のバルドに策を無茶苦茶にされ、単純に強い剣聖のハドラスに追い詰められる。

 

「っ!?」

「あれも避けますか」

「だが纏ってるこれはもう限界みたいだぜ!」

 

 次は、光線と銃弾と矢が作者を撃ち抜こうと二人の隙間を縫って来た。これには作者も半分も防ぎきれずに喰らって、文字結界と力場や強化などが消えながら思いっきり殴り飛ばされる。

 

「お?火が消えていく?」

「でもまだ倒せていませんよ。気を抜かないように」

 

 バルドの反応にそう言うハドラス。するとバルドがハドラスに食ってかかり、ハドラスは見た目通りの老練さで、のらりくらりと話していた。

 

 

「どうでしょうか?考えは変わりましたか?」

「……」

 

 アズーウは消えていく炎の中から現れ、作者へと話しかける。しかし作者は何も答えずに、倒れたままだ。

 

「何か答えてくれませんか?流石に意思疎通ができないと交渉もしようがないんですが?」

 

 それでも答えも立ち上がりもしない。ボーと何かを考えているようで、呆けた顔で空を眺めている。

 

「……これはダメですね。倒しましょうか」

「そういやお前の能力、自分に付け入る隙を与えてくれる奴しか効かねぇんだったよな?不便だな、その能力」

「対価を支払い契約相手に利益をもたらさなければ発動できない力。その代わりに一度発動すれば、凄まじい拘束能力がありますがね」

 

 アズーウの能力は、主神邪神より与えられた恩恵『対価契約』が能力化したものだ。内容は二人が言った通りで、交渉対象の欲するものを与えられれば、それに応じた自身の要求を通せるようになると言うもの。

 

「で、最終確認だ、依頼主様。こいつは殺していいんだな?」

「はい、欲しい人材ですが、知っての通り私の恩恵は、交渉できない相手には通じませんので」

 

 最後通告を告げ、バルドは作者の止めを刺すためにちかづ――

 

 

「は?」

「へ?」

「ん?」

 

 三人の視界は暗転し、力が入らず消えていく。そんな三人が消える寸前に見たのは、全く知らない人物に書き変っていく作者の姿だった。

 

 





 応募キャラを使わせていただきました。

 ~おまけ~
・文字結界について
 結界のように大量の文字情報を展開する技。 結界内に侵入した者に対して、その者の現在の行動を強化する代わりに、次の行動が制限されることになる。これは重なればなるほど隙が大きくなり、対象の想定外だとその効力は最大化する。
 逆に結界を張った作者は、文字情報を利用して自身のあらゆる行動を強化できる。これにより認識外の攻撃にも適切な対応が可能で、文字が勝手に消費されることで効率的な守備が行われる。それが文字がなくなるまで続き、消耗速度はムリのある事であればある程増す。
 なお弱点として、格上には割に合わない、空間系や吸収系、無効系の技及びそれが出来る能力があれば対処しやすいなどがある。


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会場より その3

 丸一日経った会場だが、どうやら彼らには飽きの耐性でもあるようで、その騒ぎは変わらずだった。

 

「うわ~!何で僕がこんなことしなきゃダメなんだよ!」

「他の個体かやってることだろ!」

「そうだそうだ!異議を唱える!」

「黙って働かんか、このドアホども!」

 

 そしてたまたま会場に来ていたどこかの魔魅さんたちが、霧原さんに捕まって働かされていた。

 

 

「あいつらも飽きないな」

「あれが彼女たちの生存戦略だからね」

 

 呆れたようにそう言う目つきの悪い男の田中と研究者のミドリ。

 

「中堅、来てたのか?」

「中堅じゃなくて田中だ。宿前でこんな騒ぎがあったら嫌でも分かるだろ」

 

 酒をもって返って来たアオイが、田中を見てそう言う。

 

「中堅クンは子供たちの相手して疲れ切って寝込んでたのにね」

「だから中堅じゃなくて田中だ。仕方がないだろ、小原さんが混じってたんだから」

 

 小原さんとは、この大陸の守護者をしている人の一人で、霧原さんと渡り合う程の実力者である。中堅程度の田中では、勝負になっても勝ち目は薄い相手だ。

 

「ん?これは……」

「どうした?」

 

 そうして田中と三人で話していると、ミドリが何かに気付いたのか画面を操作して見る。それに合わせてみんなも目を向ける。

 

「作者の奴、中堅の力使ってるぞ」

「それほどの相手には見えないけどね」

「どうせ出し渋ったんだろ。いつもの事だ」

「中堅じゃなくて田中だって。ホントだ。あいつの悪癖だな」

 

 大空で激しい戦闘をしている鈴木から、地上で向かってくる参加者を斬り殺している作者を見た。その姿は田中その者であり、無言で無双している。

 

「使ってるくせに弱いね」

「そりゃ、飲み込まれないように調整してんだからこんなもんだろ」

「まぁこの大会なら、半分も再現出来たら敵なんて殆どいないみたいだけどね」

 

 迷惑三人衆はそう言い、作者の戦いをちゃんと見る。

 だいたい50点~最大で60点前半相手に無双しているようだ。だいたい通りすがった瞬間に相手がバラバラになって消えていく。みんなはどうにか対応しようとしているが、再生持ちや技量が高い参加者など以外は、防戦一方で反撃に転じる暇なく殺されていた。

 

「スッと攻撃するのが得意なんだよな、中堅って」

「中堅じゃないって。そうだな、まぁ通りすがりに、スッとこれで通してやれば大抵は斬り刻めるからな。切味いいから、食材切り刻むのとか楽だぞ」

 

 細長い剣を生成し見せる。そして地面に刺して横に動かすと、豆腐みたいに抵抗なく斬れていた。この斬味通り出ているなら、仕組みを知って技量で対応するか、避ける以外の方法などないだろう。

 

「動きも作者の上位互換だからね」

「中堅なんて呼ばれてるんだから普通でしょ」

「そうだな。あと俺は田中だ」

 

 作者タイプは、別に特記する思考も精神も技量も持っていない。天才的な動きや特徴を一切持たないので、どこまで行っても何もしても普通であり、それが故に認識しずらい。まるで何気ない日常動作の一つのように、攻撃して終わる。

 

「あ、挑んでくる奴いなくなったから攻め始めたぞ」

「ふらついてるね。意識途切れそうなんじゃ?」

「完全に塗り替わったら、能力切れるまで中堅になるのか」

「……それだと魔魅さんに殺されるだろ」

 

 五、六人斬り殺した後に、瞬動で近くにいた、配下を連れた乗馬したガタイのいい弓持ちの女の元へと向かう。

 

「へ~参加者の付き添いとかありなんだ」

「まぁ他人を戦わせるとかあるから、ありなんだろうね」

「武装とか兵器もありだから、主体以外はって話じゃね」

 

 取りすがりに真っ二つになったり、首を斬り落とされたりして消えていく彼らは、点数無しの付き添いだ。ある程度は戦えるようだが、サポート特化な為か戦闘力が大会の基準にまったく届いておらず、足止めにすらなっていない。

 

「あの女、え~とヴェスト・アハト・フォン・ハノーファーって人。どう思う?」

「点数の割に頑張ってるんじゃない?乗馬して弓主体だし」

「あ、馬やられた」

 

 短剣らしきもので応戦しながら乗馬して動き回って耐えていたが、数秒もしないうちに馬がやられて放り出される。

 

「「「あっ」」」

「あいつ、俺の情報使っておきながら剣を……」

 

 そこに追撃をされたが、防具として龍を象った飾りが備わった白い大鎧に刃が入った瞬間に体をズラす。それにより強引に力をかけられた細剣はへし折れ砕け、作者は嫌な顔をしながらヴェストを蹴り飛ばした。

 

「流石にこれで終わりか」

「当たり前だ」

 

 転がり体勢を立て直したヴェストは、短剣を構える。だがそこに再度生成し直した細剣の飛斬により首を斬り飛ばされて、力なく倒れながら消えていった。その後も、残った残党を一人残らず始末した後に技札の効果が切れ、空の戦いも終わったのか元に戻るのだった。

 

 




 投稿キャラを出させていただきました。

 ~おまけ~

・田中 堅示は、身長170程度の黒髪黒目で目つきが悪い旅人。あとボサついた短髪で耳が尖っている武具族。
 性格は荒いが面倒見がいいヤツ。みんなから中堅さんと言われる放浪者のお兄さん。耐久皆無で刺突と斬味特化の細剣のようなものを生成できる。


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とんずら……は許してくれないみたいです。

 作者も鈴木も敵を殲滅し終えた後に、全力でその場から逃げ去っていた。

 

「どうだった、相手さんはよ!こっちは最悪だったぜ!」

「俺もだ!瞬間移動に改変使い、おまけに上位次元の神様みたいな奴が出て来たわ!こういうのってどこ行ってもやっぱ厄介だな!」

 

 容易く音速を超えた速度で走って余裕そうにテンション高く話しているが、内心はそうでもない。作者は何の成果もなく、鈴木は手痛い攻撃を受けていたかだら。

 

「一番厄介だったのは狂気系の改変者だったな!無茶苦茶にするって前提で何でも書き加える、お前の上位互換だ!」

「そりゃやべぇ!俺でさえ書き込む時は、やり易い場所探して書き変えないといけぇのによ!専門の能力持って奴はいいな!」

 

 鈴木が戦っていたのは、改変系の使い手だ。対処法を知らないと一方的に他者や世界をいじくりまわせる、現実改変者だ。まぁこの世界はその程度いくらでも対処法はあるので、そこまで理不尽と言う訳ではないが、圧倒的有利に戦況を押し進められる事には変わりない。

 

「で、どうやって倒したんだ!?」

「なに、普通に斬り刻んだり押し潰したりしただけだが!?それでみんな死んだよ!」

 

 いたって単純である。大抵の相手は再生させないようにミンチにしたり、粉微塵にすれば死ぬのだ。ただそれを行う難易度が違うだけで。

 

 

「でも反撃受けたんだろ!?歪みまくってんぞ!」

「そうだよ!最後の最後にミスってな!このザマだ!」

 

 見た目は治しているが、中身が歪んでいる。先に挙げていた、改変者に体内を搔き回されたのだ。直撃しなかったのでこの程度で済んでいるが、そうでなかったと考えると怖いものである。

 

「でも治るんだろ!?」

「当然だ!今直してる!」

 

 その傷も高速で修正しているが、影響が雁字搦めに絡まった汚れ付きの糸のように残っており、しばらく能力の使用を控えなければいけない状況だった。

 

「でも回復するまでは守ってくれよ!俺は何もできないからな!」

「そうかよ!実は俺も能力使えねぇんだわ!やっぱ身に余る力は扱いが難しいな!」

 

 鈴木が能力を使えないよ、と報告すると同時に、作者も同じような事を言う。どうやら、格上の力を使って無茶したのが原因らしい。体の節々が軋んで仕方がない様子。

 

 

「は?ふざけんなよ!あの程度の相手にあれ使ったのか!?バカじゃねぇの!?」

「そう言うなってな!ほら、誰だってミスの一つはするだろ!?」

 

 勿体ない精神でケチっていたら、一番損をした形だ。こう言われても仕方がない。まぁこいつらは、能力失ったぐらいじゃヘコこれないので問題ではない。

 

「てかお前、さっきからテンションがおかしいぞ!」

「お前もだろ!てかさ、どうせ時間があれば治るんだからいいだろ!?」

 

 二人とも、戦闘や能力の反動でテンションがおかしいが、治るのは時間の問題だと楽観視している。それに主力や手札をいくつか失った程度で簡単に負ける程、彼らも弱くはない。

 

 

「でも相手は待ってくれねぇみたいだぞ!」

「そうみたいだな!チクショウ!」

 

 殺気を感じて、乱動で座標を狂わせながら回避する二人。

 

 そんな二人が視界に捉えたのは……

 

「おっとめんどくさそうだっッな!」

「あの神と知り合いかッ!」

 

 視界一杯に広がる無数の飛斬と、その先に立つ短剣を振り切った少女だった。

 

 



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時空の女神

 視界一杯に広がる無数の飛斬を凌ぎきった二人は、作者は曲斬で中距離から、鈴木は空動で接近し徒手空拳でと、己の武器を構え距離を詰める。

 

「おっと時間停止か!?」

「面白いことすんじゃねぇか!」

 

 敵である銀髪美少女で時空の女神こと「時空神」は、時間停止をして鈴木の攻撃をかわして反撃しようとするが、二人の攻撃を躱す軌道に差し掛かった時点で、時間停止が突破されていた。

 

「おっと、体術は得意じゃないか?あいつはそれなりに強かったぞ!」

「っ!?黙れ!」

 

 あまりにもあっさり自分の技が突破されたため、呆気に取られ鈴木に攻撃の隙を晒してしまう。そこに数十発の殴打を叩き込まれたが、どうにか致命傷は避けて距離を取ることに成功していた。

 

「時空断層!」

 

「ちょっ!」

「やめい!」

 

 歪んだ時空の境界線が時空神を中心に発生し、世界へと広がっていく。それにより作者の曲斬が破壊され、鈴木も若干の足止めを喰らう。

 

「死ねッ!」

 

「甘いんだよ!」

「そうだそうだ!」

 

 そのまま時間の進み方が無茶苦茶になった世界ごと、二人を圧殺しようと隔離し収縮させた。しかし空間が、世界がガラスのようにひび割れ、曲飛斬が時空神の頬を掠めた。

 

 

「集中しないと戦いにならないぞ!」

 

「くっ!?」

 

 鈴木の蹴りが身に纏っている時空を貫き、地面に叩き落とされクレーターが出来上がる。

 

「何怯んでんだ!これからだろ!」

 

「クソッ!!」

 

 倒れそうになる時空神に、伸ばした刃で刺突を放つ作者。それを間一髪で躱し、追撃を短剣で受け流し始めた。

 

「おう、どうした?出来る事が少ないな!時崎さんみたいに複雑で強力かともったんだが?そうでもなかったな!」

 

 曲斬で鞭のように繰り出され続ける高速の斬撃に 空間を斬られ乱され、上手く時空が扱えない様子。これにより強制的に打ち合いに乗らされているのだ。

 

「黙ッ!」

「これは隙か?」

 

 隙だらけの背後に回った鈴木は、軽く数発の打撃を動きを邪魔するように打ち込む。それにより肺から空気が抜けながら体勢を崩し、作者の斬撃を諸にくらっていた。

 

「で!」

「タフだな!」

 

 斬り裂かれながら踏ん張り時空を弄って、全方位へ飛斬の混じった時空嵐を発生させる。そこに追撃を仕掛ける二人だが、スレスレのところでズラされ惜しみつつも距離を取っていた。

 

 

「やっぱ動いてると調子がいいな!」

「ああ、だがこれどうするよ?無茶苦茶だぞ!」

 

 無茶苦茶に攻撃をばら撒く時空神に対し、対処し続ける二人は隙さえあれば攻撃を繰り出していた。だがどれも近くは通っても掠りやしない。

 

「そりゃな!突っ込むに決まってんだろ!」

「そうだよな!」

 

 瞬乱動で攻撃の嵐を潜り抜け、時空神へと打撃と斬撃が同時に届く。

 

「お?」

「あ?」

 

 だがその攻撃はすり抜け、背後から反撃を喰らう二人。勿論それを間一髪で躱して迎撃し返すが、時間軸をズラされているのか当たらない。

 

「本領発揮したのか!?」

「楽しくなってきたな!」

 

 眩い閃光が世界に走る。それにより周囲の環境が朽ち果て、閃光に混じった飛斬が空間を満たす。だが二人は、ニコニコ楽しそうに最小限のダメージに抑えて攻防を繰り返していた。

 

「能力が使えないのは厄介だな!解析に少々手間取る!」

「そうだな!ま、当たり始めたからいいだろ!」

 

 そんな中二人の攻撃は、時空神に届くまでに調整を済ませていた。未だに致命傷は与えられないが、嫌がって頻繁に行動を変える程度には影響のある攻撃の数々だ。因みに二人が雑談しながら戦っているのを見て時空神は、「ふざけやがって!」と内心毒づいていたりもする。

 

「でもっと!」

「任せた!」

 

 再度距離を取ると同時に、投げられた短剣が急激に巨大化しながら視界を覆いつくす。それを曲斬で真っ二つにし、二投目を投げられる前に鈴木が距離をゼロにして、拳に込めた尖撃で貫いた。

 

「時間の巻き戻し?過去の貼り付け?まぁ何でもいいか!」

 

 負傷がなくなり、生成させた短剣で間合いを無視した激しい連撃を食らわせてくる。言わずもがな、すべて何かしらの策が施された攻撃だ。それを適切に受け、流し、避け、的確に致命に繋がる殴打を叩き込み続ける鈴木。

 

「早い速い、直る治る!凄いな!これだけの時空使いとは久々に戦ったが、これは厄介だ!」

「ほざけッ!!」

 

 時空神はこの戦いの中で成長を続けていたが、鈴木に地力で負けていた。どれだけ能力を研ぎ澄ませ、使い熟そうが、関係なくその土俵に立たせてくれない。自分の得意分野まで持っていく力が決定的に欠けていたのだ。

 

 その上――

 

「俺のこと忘れんなよ!」

「嘘ッ!?」

「だから余所見すんなって!」

 

 上空から軽く全長100mは超えるであろう、巨大で細いロボットが振ってくる。それに驚いた一瞬の隙を取られて地面にめり込むまで叩き込まれ、ロボットの下敷きになる。

 

 

「どっから持ってきたんだこれ?」

「ちょっと遠くの方で殲滅活動してたから、隙だらけのここの時空使って引っ張って来たんだよ!いや~あいつが制御を取り戻す前でよかった!」

 

 時空神が鈴木にくぎ付けになっている内に、勝手にこの時空嵐を拝借して遠くから兵器を転移させてきたらしい。なぜ兵器かと言うと

 

「お前機人族だから乗っ取れるかなって思ってさ」

「俺今は自粛中なんだが!?」

 

 あ、そうだったわ!と時空嵐が収まり残骸だらけの地で笑い合い、兵器が動き出す。その目線は作者と鈴木に向いており、長方形の頭部にあるセンサーが光った瞬間に激しい懸鼓と爆炎で包まれる。

 

「やっべ!敵増やしちまった!」

「いや見て見ろ!心配しなくてよさげだぞ!」

 

 ロボットは二人を仕留めようと体勢を整え立ち上がりながら光線を連射するが、逃げ回る二人を捉えきれない。それどころか、時空神の怒りを買ったせいで宙に浮かべられ握りつぶすように丸められかけていた。

 

 

「あ~あ、勿体ねな~」

「装甲ペラッペラだからって、やっぱ空間系は厄介だな」

 

 ロボットは抵抗するように体を揺らし時空神に向けて光線を連射するが、どれも軌道を曲げられて当たらず周囲を赤く消し飛ばすだけだ。そして10秒も経たずにスクラップにしたロボットを捨てて、二人の方へと敵意剥き出しの冷ややかな目を向ける時空神。

 

 

「お~濃い時空染み出してるな、あいつから抜き出せばいい本が出来そうだ」

「出来やしねぇだろ。殺すのとは訳が違うんだぞ。ましてや能力が万全じゃないのによ」

 

「殺す」

 

 二人の雑談を無視するように、時空神が短剣を振る。それは破壊に特化した一振りで、時空間ごと切断され周囲のものを乱す。そこに続けて飛斬が放たれ、二人が回避した先に一瞬で回り込み斬撃を放っていた。

 

「もっとこう、手の込んだ一撃を期待してたんだが」

「出力上げただけとかないわ~」

 

「ッ!?」

 

 鈴木に短剣を摘ままれ、作者に顔面を蹴り飛ばされた。

 

「能力の暴走なんてガキでも出来るぞ」

「操作しなきゃこうなんだよ」

 

 首が折れそうで、意識も今にも飛びそうになるのを引き止めて能力を暴走させ、二人の行動を阻害してくれる事を祈った。無意識とは言え心の底から祈ってしまった。見透かしてくる実力者相手に、それをしてしまっていた。

 

 その結果は――

 

(終わった、ごめん……)

 

 茹で上がりそうなほど熱い頭とは裏腹に薄れゆく意識の中、仇を取れなかった事を悔やみながら、鈴木が止めの一撃を叩き込んで退場するのであった。

 

 




 ~おまけ~
・なんか作者が持ってきたロボットについて

・巨人型殲滅機『ビックロット』
・価格 一機当たり37億円
・概要
 装甲ガン無視の攻撃兵器。なので棒人間のような骨部分しかなく、耐久性も素材由来の最低限にしてコストを抑えている。巨大建築物や大規模土木建築用の作業用ロボットを改造し頭部に光線を取り付けただけの低コスト兵器。大量に配備し並んで歩きながら、頭部のレンズから超高火力の光線を照射し大地を焼き払うのが主な運用法。他には体を動かして敵を薙ぎ払ったりが精々。因みに遠距離からの範囲攻撃しかできないため、接近された時ようにドローンや歩兵ロボットなどで守っている。
 制作組織『廃品改造屋』より


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乱入者との出会い

 さっさとその場を離れた二人は、巨大な樹海に辿り着いていた。

 

「樹海さんとリョフや。ケンカでもしてんのかな?」

「知り合いか?」

 

 同じ乱入者である樹海家の二人とリョフを見つけていた。そのうち二人は、書物からあらゆる武器を取り出し、もう一人は機械製の植物を使って激しく戦っており、そこらかしこがボロボロになっていた。

 

「一緒に参加してる樹人族の人と、同じ書物族のリョフだよ」

「書物族と言えば原種族か。親戚みたいなもんか?」

 

 原種族は結構少ないので、同じ種族だったら親戚だったりすることが多い。特に原初に近い者は長い生きしているので親戚確率が高いのだ。

 

「まぁ繋がりがあるから、遡ればどっかにあるかもしれんな。俺もそこまで詳しく知らんが」

「書物族は珍しいあれだろ?なんせ書物庫由来なんだから」

 

 書物族は例外なく書物庫と言われる場所から生まれたか関係している種族である。なので、書物庫に行って調べれば大体の事が分かる。

 

「書物庫はめんどくさい場所なんだよ。俺ら書物族なら誰でも接続できるとは言え、それを使い熟せる奴なんでほぼいないし」

「容量釣り合ってないのか。そりゃ無限の情報をそう簡単に引き出せんよな」

 

 そう話し合いながら、緑の長髪と瞳が特徴の女性、樹海 イチケイへと近づく。

 

 

「ん?作者と、誰?」

「何してんだ?イチケイさん。あこいつは俺の友人の鈴木な」

「鈴木だ。よろしく」

 

 イチケイは意外な人物の登場に驚き、作者たちの方を見る。

 

「どうしてこんなところで戦ってるんだ?他の参加者と戦わなくていいのか?」

「私はニナイの付き添いだからいいの。あの子たちが戦ってるのは暇つぶしだよ」

「暇つぶし?」

 

 他の参加者が見つけられずに暇つぶしに手合わせでもしているのかと、聞き返す二人。

 

「そんなところ。この樹海から出られないし、偶に参加者と出会うぐらいなの。で、暇だからそれまで遊んでるってああやって戦ってる。勝った方が次出て来た参加者と戦うんだって」

 

「「は?」」

 

 サラッと爆弾発言をするイチケイに、呆けた顔をする二人。それもそうだろう、知り合いの気配がしたから様子を見に来たら閉じ込められているのだ。

 

「出れんの?」

「今の所ね。なんか森とか空間全体が蠢いてる感じで方向感覚わかんなくなるのよね」

「亜空間かよ」

 

 空間連結で同じ世界を繰り返させ続ける隔離空間である。仕組みを理解して破壊するか、隔離空間以上の規模で攻撃しなければいけない、時間も体力も浪費させられるクソ仕様だ。

 

「しかも迷いの森仕様で隙あらば分断しようとしてくるのよね。屋度さん一家もどっか行っちゃったし」

「ブラックホールの現霊のあいつらが?」

「重力特異点を閉じ込められるのかここ」

 

 出力ヤベェことブラックホールそのものである屋度家を閉じ込められているのかと、驚く二人。という事は、この樹海はすさまじいい規模を誇る隔離空間だと言う事が確定してしまっていた。

 

「それに相性の悪い相手をピンポイントでぶつけてくるから厄介なのよね。それで10人ぐらい倒したけど」

「まぁ負けないだろうな。俺たちは」

「点数的にもこの隔離空間で上澄みだろうし、ワンチャンとしか思われてねぇだろ」

 

 捕らえられるギリギリの強さであるこの場にいる乱入社組に、そこらの参加者をぶつけたところで勝ち目などない。目的は大会終了までここで足止めする事だろう。

 

「てか壊す気ないだけだろ。屋度さんもそうだけど、そっちもやろうと思えばどうとでもなるだろ」

「俺も本調子ならどうにかなったんだがな。ま、休憩できるからそれまでは付きやってやるかって感じだし」

 

 勿論壊せないわけではない。消耗覚悟であれば、屋度なら強引に破壊できるだろうし、時間をかければイチケイも解析して脱出ぐらいはできそうである。

 

 

「めんどくさいし、のんびりできるんならそれでいいかなって。私戦うの好きじゃないし」

「あ~お前そういうヤツだよな」

「樹人族は自分から動かなない奴多いからな」

 

 樹人族は呑気で受け身が多いのでこうなりがちだ。

 

「まぁ分かったよ。脱出はこっちで勝手にやるわ」

「そうだな。まぁその前にあいつらをどうにかしなきゃならんわけだが」

「ご丁寧に一人一人ずづね。まぁ仕方がないか」

 

 話を終えて行動を起こそうとしたが、その前に世界が歪み五人の参加者が各方向から現れる。それに対応するようにみんなは適当に配置につくのだった。

 

 




 投稿キャラ使わせてもらいました。


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