インフィニット・ストラトス-落ちてきた歌姫- (シャムロック)
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1:生まれしは罪

思いっきり見切り発車の作品です。

よろしくお願いします。


「集……取って?」

 

アポカリプスの空間で私は赤いあやとり……命を集に差し出す。

私が集が背負う罪を引き受ける。

それで少なくとも集は救われる。

自己満足なのかもれないけど、私はこれでいいんだと思う。

 

集があやとりを受け取る。

これで私はアポカリプスウィルスと共に消えていく。

 

集……ごめんね……。

 

「いのりーーーーーーーっ!」

 

意識が消える直前、私は集の声を聞きながら消えていった。

 

 

 

_________________________________

 

 

「織斑先生、学園の海岸で所属不明のIS反応が出ました。」

 

「何……?」

 

報告しに来た山田真耶に対して織斑千冬が不審な声を上げる。

 

「ISコアは全て登録されている。

不明なIS反応などあるはずが……」

 

と、そこで気がつく。ISコアの1つや2つ、束なら勝手に作りかねんと。

 

「ハァ……分かった。

私が確認してこよう。」

 

ため息を漏らしつつ千冬は自衛用のIS刀を携え、反応があった海岸に向かった。

 

 

 

 

 

海岸につくと、そこには見知らぬ女子が倒れていた。

ピンク髪でやけに露出部の多い服。

 

千冬がその子の肩を揺らすも、起きる気配は無い。

 

「やれやれ……厄介事が続くな……。」

 

弟のIS起動に加えて、今度は不明IS持ちの女子。

 

(今年は荒れた一年になりそうだ……)

 

そう考えつつ、千冬は女子を担いで学園に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

私は夢を見ていた。

死んだはずなのに何で夢なんか見るのかなんて考えてはいないけれど、そんな感じだった。

 

目の前には集や涯。

 

「集……。」

 

私が近づこうとする。

 

だが……。

 

「来るな!化け物!!」

 

「っ!?」

 

あの時、集が錯乱していた時の言葉が再生される。

 

しかもそれが何度も。

 

化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物

 

………ワタシハ……バケモノナノ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「違うっ!!」

 

私は跳ね起きた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

汗が頬を伝う。

さっきの夢は一体……。

 

「……あれ?」

 

ここはどこ?

私はなんで生きてるの?

 

様々の疑問が生じて頭がパンクしそうになる。

と、そこで部屋の扉が開いた。

 

「……気がついたか」

 

スーツを着た女性が此方に来る。

 

「お前は何者だ?なんの目的でここに着た?」

 

そう問いかけられる。

 

「……分からない」

 

「……何?」

 

「分からない……私は確かに死んだ……なのに気がついたらここに居た……」

 

そうとしか言えなかった。

 

「……コレはお前が持っていたものだ」

 

そう言って取り出したのは髪飾り。

 

私がいつも着けていた赤い髪飾りだ。

 

「それは……っ!」

 

「これからは未登録のISが検知された。」

 

「I……S……?」

 

聞いたことがない。

エンドレイヴじゃ無いことは確かだけど……。

 

「……一つ聞こう。

この世界での主力兵器はなんだ?」

 

「……エンドレイヴ」

 

「知らんな……」

 

エンドレイヴが無い……?

ここは同じ世界じゃないの?

 

「GHQとか葬儀社って聞いたこと……ある?」

 

「教師には敬語を……まあいいか。

少なくともGHQは無いし、葬儀社なんぞ葬儀事業のことをいってるのか?」

 

これで分かった。

ここはあの世界じゃない。

 

ならなんで……。

 

「はぁ…とりあえずコレはお前に返す。

解析しようにも妙なプロテクトで解析出来んのだ。」

 

私はそれを受け取る。

すると……。

 

「っ!?」

 

次々と脳に送られる情報。

あまりの多さに処理が追いつかない。

それが過ぎ去った時、これだけが残った。

 

__インフィニット・ストラトス ギルティ、起動します。

 

光の粒子が私を包み、それが収まった時私はそれを身につけていた。

 

____ISを。




やっぱ見切り発車すぎたかなぁ……

ご意見ご感想お待ちしています。


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2:平穏と騒動

いのりって無口としゃべる時が激しいからセリフとかが難しい。


「何……これ……?」

 

訳が分からなかった。

ただ、この機体がこの世界の事、操作方法全てを頭に叩き込んできた。

そして最後にこの言葉を残した。

 

おはようございます、マスター。

貴方の罪を背負いましょう。

 

まるで最初から知ってたみたいに。

 

基調は紫に染まり、赤のラインが特徴の機体。

スラスターは足と腰、肩に姿勢制御用のスラスターがあった。

 

武装は槍とハンドガン。

ただし、名前は私とって忌まわしい名前だった。

 

アポカリプスランス

 

私は……まだ呪縛から解き放れてはいない様だった。

 

 

「ふむ……やはり起動したか……」

 

さっきの女性が言う。

 

「これで決まりだ。

お前はここ……IS学園に入ってもらう。」

 

「!?」

 

「何を驚く。ISは現在最強の兵器だ。

それを野放しには出来んのでな。

それに、何処かに行くアテでもあるのか?」

 

「それは……」

 

この人の言う通りだ。

この世界は集のいる世界とは違う。

郷に入っては郷に従えということだろう。

 

「分かった……」

 

「では、名前を教えてもらおうか。

ああ、私は織斑千冬。教師だ。」

 

「……楪いのり。」

 

「分かった。楪、学園へようこそ。」

 

そして、私はIS学園に入る事になった。

 

 

 

 

__________________________________

 

 

長い入学式が終わり、クラスへと移る。

私は1組所属だ。

 

「私が1組担任の山田真耶です。皆さん、よろしくお願いしますね!」

 

担任という山田先生が自己紹介をし、次にクラスメイトの自己紹介に移る。

 

次々と終わり、唯一の男子である織斑一夏に移る。

でも、織斑は固まっていて、動こうとしない。

 

「織斑くん?織斑くん!」

 

「はっ!?はい!?」

 

「今織斑くんの番なんだ。だから、自己紹介お願いできる?」

 

「はい……」

 

織斑と呼ばれた男子が立ち上がる。

 

「え~と……織斑一夏です。」

 

そして沈黙。

次に何を言うのかと思っていると、

 

「……以上です!」

 

私以外の女子がずっこけた。

 

そこに音もなく忍び寄る人が。

 

ズバン!と音がすると、一夏は頭を抱えて悶絶していた。

 

「まともな自己紹介も出来んのかお前は。」

 

織斑先生だった。

 

「さて、お前たち、まずは入学おめでとう。

今年の1組はイレギュラーなことに専用機持ちが3人いる。」

 

クラス中がざわめく。

 

「まずイギリス代表候補生のオルコット。」

 

後ろに座っていた供奉院亞里沙みたいな人が立ち上がって一礼する。

 

「次に織斑。お前は唯一の男子ということで専用機が与えられる。」

 

「お、俺が!?」

 

ズバン!

 

「敬語を使え馬鹿者」

 

「はい……」

 

また食らって一夏が撃沈する。

 

「最後にとある事情で専用機持ちの楪いのり。」

 

私は静かにお辞儀をしておいた。

 

「楪、お前はまだ自己紹介していなかったな。」

 

「はい。」

 

立ち上がって自己紹介する。

 

「楪いのりです……趣味は……歌。よろしくお願いします。」

 

そうして座る。

 

織斑先生が一瞥する。

 

「今日からISを使う者としての責任を学んでもらう。

お前たち、覚悟しろよ!」

 

 

「「「「はい!!」」」」

 

そうしてHRは終わり、休み時間となる。

 

「ちょっとよろしくて?」

 

終わるやいなや、さっきのオルコットさんがこっちに来る。

 

「……なに?」

 

「……さっきの話し方からそういう性格みたいですのでいいですわ。

貴女、どこの代表候補生ですの?」

 

「……答えられない。」

 

「なんですって!?」

 

「……機密だって、織斑先生が……。」

 

「そ、そう……なら仕方有りませんわね。

セシリア・オルコットですわ。

よろしくお願いしますわ。」

 

そういって手を差し出してきた。

 

「……楪いのり……よろしく」

 

私もその手を取る。

 

「では、私は用事があるので失礼しますわ。」

 

そういって、セシリアは一夏の所に向かっていった。

 

 

 

 

「集……。」

 

私は休み時間の間、この世界には居ない彼の事を考えていた。

無事なのか。

私をどう思ってくれているのか。

 

不安は尽きない。

 

 

気が付くと次のHRが始まっており、いつの間にか専用機持ちで対戦をすることになっていた。

 

 

 




何でだろう。
いのりがぶっきらぼうキャラみたいなしゃべり方になってしまった気がする。

ご意見ご感想お待ちしています。


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3:持つ者、持たざる者

いのりの戦術とシャルのラピッドスイッチを組み合わせたら最強何じゃないかと思う。

VSセシリア戦です。


一週間後、第三アリーナ

 

私はアリーナのピットにいた。

 

あの後、話を聞いてみたらクラス代表を決める際に専用機持ち三人が推薦された結果、模擬戦によって代表を決めることになったと聞いた。

そんな訳で私はピットで出撃準備をしていた。

 

「楪」

 

織斑先生が声をかけてくる。

 

「お前にとって最初の戦闘だ。

無理はするな。」

 

「大丈夫です。」

 

そう言って、私はカタパルトの前に立ち、ISを呼ぶ。

 

(来て……ギルティ。)

 

するとあの時みたいに粒子が体を包み、ISが展開される。

 

カタパルトに足を乗せ出撃準備を整わせる。

 

「……行きます!」

 

カタパルトで加速され、射出される。

若干のバランスを崩したけど何とか定位置に着いた。

 

「先ずは貴女からでしたわね。お手柔らかにお願いしますわ。」

 

対戦相手のセシリアがこちらを見る。

 

ISが相手の情報を呼び出し、表示する。

IS ブルー・ティアーズ

遠距離型のISで主武装はビームスナイパーライフルのスターライトmkIIIとビット。

 

情報を目にすると葬儀社で培った戦闘経験からどうすればいいが頭に次々と展開される。

 

 

ブザーが鳴り、試合が開始される。

 

「行きますわよ!」

 

開始早々ビームを撃つセシリア。

 

ハイパーセンサーのお陰で私は難なくビームを避ける。

此方の武器はハンドガンと槍一本。

どう考えても此方が不利。

でも、近接戦に持ち込めば逆転できる。

 

そう考えた私は、ブルーティアーズの狙撃を避けつつ、チャンスを伺う。

 

「良くも避けますわね……ならコレはどうなさいます?」

 

焦らしたセシリアがビットを射出。数は4基。

私を囲む様に展開し、撃ってくる。

 

この時を待っていた!

 

私はあるシステムを起動させる。

 

次の瞬間、私はセシリアの前に居た。

 

「っ!? 瞬間加速(イグニッション・ブースト)!?」

 

そう、ISの能力 瞬間加速を使ってビットの隙間から接近した。

私は右手に槍を。左手にハンドガンを展開し、斬撃と銃撃を叩き込む。

 

だが……

 

 

「っ!! 好きにはさせませんわ!!」

 

ブルーティアーズの腰の右バインダーが跳ね上がり、中からミサイル弾頭が覗く。

 

「くっ!!」

 

私はすぐにセシリアから離れ、回避行動に移る。

 

ミサイルはしつこく私を狙ってくる。

なら……!

 

私はビットの一基に接近する。

ビットが撃ってきて被弾するけど、構わない。

 

私はそのビットを踏み台に方向を180度変えた。

 

 

「なっ!?」

 

セシリアが驚愕する。

 

そして私はハンドガンでミサイルを後ろから撃ち、踏み台にしたビットを爆風に巻き込んで破壊する。

 

「良くも私のブルーティアーズに傷を付けましたわね!」

 

ビットの攻撃が激しくなる。

でも、1基減り、隙間が増えた事で隙は大きくなる。

 

私は槍で一基ずつ破壊していく。

 

1基をハンドガンで撃ち、砲門をずらせてビームの照準に隙を作り、そこで槍を刺して破壊する。

 

残り2基。

 

そこからはもう苦じゃなかった。

実戦で実際の命の削り合いをした者と、そうじゃない者。

ビットが全滅するのにそう時間はかからなかった。

 

私はセシリアのISまで急加速で接近する。

 

「くっ!」

 

慌ててセシリアがスターライトを構えて撃つも既に得意レンジを過ぎている。

難なくビームを避けて、セシリアに槍を突きつける。

 

「お願い……降伏して?」

 

「……その様……ですわね」

 

セシリアが観念したかのようにスターライトを下げる。

だが……

 

「かかりましたわね!!」

 

左の腰バインダーが上がり、最後のミサイルが発射される。

 

セシリアと私の間で爆炎が上がり……セシリアが吹っ飛ばされていた。

 

「な……なんで……。タイミングは完璧だっはずですのに……?」

 

煙が晴れた時、いのりはハンドガンを向けていた。

 

 

もちろん無傷じゃなかった。

でも、最初の1発が右から出ていたのは確認していたため、もう1発が左から出ることを予想し、すぐに撃てる様にしていたお陰で、セシリアを爆発に巻き込め、こっちのダメージを直撃ではない量まで減らしていた。

 

「……バカな人。」

 

勧告はした。

それを破った。

 

私はセシリアを倒すことにした。

 

瞬間加速を使って踏み込み、その勢いで槍を刺す。

 

その威力だけで、セシリアのISのシールドエネルギーは尽きた。

 

『勝者!楪いのりさん!』

 

ブザーが鳴り、私はピットに戻っていく。

 

 

「流石だな、楪。

伊達に戦場に出ていないな。」

 

織斑先生が話しかけてくる。

先生には私の事情は話してあるからだろう。

 

「少し休憩を挟み、織斑との模擬戦に入るがいいか?」

 

「はい……。」

 

私はその間にシャワーで汗を流しておくことにした。

 

 

 

 

 

 

「すげぇ……」

 

観客席で織斑一夏は感動していた。

 

流れるような接近しての斬撃。

ビットを踏み台にしてのミサイルへの銃撃。

戦術を知っていたかの様な動き。

 

全てが一夏の目に焼き付いていた。

 

「あんな相手とやれるのか……」

 

セシリアの多方向からのビット攻撃。

 

楪のスピードアタック。

 

どれもが男子である一夏の戦闘欲をかきたてた。

 

「織斑、次はお前の番だ。ピットに来い。」

 

千冬に呼ばれ、ピットに向かう。

 

納入された白式を纏い、フィッティングを行う。

 

それらが終わり、出撃準備が終わった頃にちょうど時間となった。

 

カタパルトに足を乗せる。

 

「織斑。」

 

千冬が声を掛ける。

 

「油断するんじゃないぞ。」

 

「……はい!」

 

そうして白式は出撃していく。

 

 

 

 

 

シャワーを終え、ピットに戻る。

 

戦っていた時、私は自然とあの世界の思い出を思い出していた。

戦闘。出会い。自分の役割。そして恋。

 

(……集。)

 

生きているのなら会いたい。

そう、思ってしまう。

 

私はそれを振り払ってISを展開し、カタパルトに足を乗せる。

 

(集……私は、この世界でどうしたらいいの?)

 

不安を抱えつつ、私は空に飛ぶ。




次回はVS一夏戦となります。

そろそろある人sideの描写入れようかな……


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4:順応と変化

おまたせしてすいませんでしたああああっ!!

テストラッシュで全然やる暇が無いんです(泣)

必修科目1つやばいし……


とりあえずどうぞ


再びアリーナに私は上がる。

 

今度の対戦相手は唯一ISを動かしたという織斑一夏。

苗字からして織斑先生の弟だろう。

 

私は槍を構え、開始に備える。

 

織斑も刀を構えて備えてきた。

 

その様子からあまりいい射撃武器が無いのだろうと思った。

そうなればハンドガンがある私のほうが少し有利。

 

取る戦術はハンドガンと槍を混ぜたヒット・アンド・アウェイで決まった。

 

 

『では、始め!』

 

ブザーが鳴り、いきなり織斑が突撃してくる。

何も考えない力任せの突撃。

私は槍で受け流すと、背中にハンドガンを全弾撃ちこむ。

 

そのまま追撃しようと槍を構えて加速する。

 

すると、織斑はすぐに刀でそれをガードしてきた。

 

「クソッ!流石に力任せじゃダメか」

 

そんなことを言うと、今度は完全接近での連撃を叩き込んできた。

 

とはいえ、所詮素人。

 

その動きは単調過ぎて隙だらけだった。

 

斬撃を避けるか槍でガードすると、突きを繰り出して距離を置く。

 

そして今度は私が反撃に出る。

 

加速して側面に回り、ハンドガンを撃って牽制。

織斑が避ける隙に接近し、槍で斬撃を加える。

そしてトドメに斬り下ろしからの1回転踵落としで地上に落とす。

 

これで殆どエネルギーは削ったはず。

 

と、思ったらそうじゃなかった。

 

落ちたところから出てきたのは純白の機体。

前の世界で綾瀬が乗っていたシュタイナーみたいに真っ白な機体だった。

 

どうやらファーストシフトを終えたみたい。

 

「ここからが本番だ!」

 

そう言うと持っていた刀が変形し、エネルギーの刃を作り出す。

 

そして斬りかかる。

 

さっきと同じと思って、ガードする。

だけど……

 

(槍が……少しずつ斬られている!?)

 

そう、槍がエネルギーの刃に少しずつ少しずつ食い込んでいた。

 

つまり、威力が桁違い。

 

逃げろ。

 

そう思うけど、力で押され、思うように動けない。

 

そして、今度は私が押し切られて槍が砕け散り、地面に落ちた。

 

 

 

 

 

……暗い。

私は暗い所に居た。

どこからか声がする。

 

 

____《   》及び《       》とのリンクを完了。

 

 

____《         コア》再起動シークエンス開始。

 

 

____ファーストシフトを開始します。

 

 

 

 

____頑張りなさい。フフッ。

 

 

 

 

そして私は再び光に包まれた。

 

 

 

 

 

「……やったか?」

 

零落白夜で押し切って落としたけどブザーは鳴らない。

 

ということはまだ残っている。

 

俺は反撃に備えて待ち構える。

 

すると、土煙から何かが飛び出し、それに吹き飛ばされる。

 

「っ!? なんだ!?」

 

機体を立て直し、見ると楪が居た。

 

……さっきとは違う形態で。

 

 

 

 

 

「コレは……」

 

さっきと違い、全ての性能が上がっているのを実感した。

 

そして、武器も変わっていた。

持っていた槍は2つに別れて浮遊し、私の手には私の【心】……ヴォイドの剣が握られていた。

2つのウィンドウが上がり、表示される。

 

 

ファーストシフト完了。

 

マスターの健闘を祈ります。

 

 

 

そうして、私の武器が表示される。

 

アポカリプスランスビット

 

ヴォイドバスターブレード

 

 

 

集が私を使って取り出す剣……私の心を具現化した剣が右手に握られ、陽の光を反射して輝く。

 

 

「コレって……」

 

この世界に来てまでヴォイドの剣が出てくる。

もしかするとまだ私はアポカリプスを抱えているのかと思い、ゾッとする。

 

けど……

 

(集……。まだ、私は……)

 

忌まわしいモノであると同時に、集と歩み、幾度と無く使ってきた剣。

その思い出が、私を押し出してくれた……気がする。

 

「集。私は……やるよ!」

 

決めた。

何があっても、もう一度、あの世界に戻ってみせる!

 

そう決めた私の体は心なしか、軽かった。

 

「い、今までファーストシフトも無しにやってたのかよ!?」

 

織斑が驚いてる。

 

「……そうみたい。」

 

「みたいって……自分の機体なのにわかってなかったのか……?」

 

そんなこと言われても設定とかは付けた時から終わってたし、ファーストシフトがまだなんて思っていなかった。

 

「まあ……いいや。

仕切りなおして行こうぜ!」

 

織斑が刀を構え、突っ込んでくる。

 

「行って!ビット!」

 

即座にランスビットに指令し、左右から貫かせようとする。

 

「くっ!」

 

織斑が紙一重でかわし、なおも突っ込んでくる。

 

私はそれを剣で受け止め、鍔迫り合いになる。

 

今度は剣に食い込むことはなく、拮抗していた。

 

そして……

 

「ぐあっ!?」

 

さっきのランスビットをすぐに呼び、がら空きの背中に当てる。

 

力が弱まった所を膝蹴りで上に打ち出す。

 

「……終わり!」

 

そして、剣を横薙ぎに払い、織斑のシールドエネルギーは尽きた。

 

 

『勝者!楪さん!』

 

ブザーと共に私の勝利が宣言された。

 

 

 

 

 




近いうちにISの設定を出す予定です。

それと、今後の展開についてアンケートを活動報告に出しましたのでご協力お願いします。


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5:私室と同居人

今回は日常パートです。

ちょっと短いですがゴメンナサイ。


試合が終わり、ISスーツから着替えて戻る。

ISスーツは私が着ていた金魚服と同じオレンジだったこともあって少し気に入っていた。

 

「楪。」

 

織斑先生が声をかけてくる。

 

「さっきの試合、見事だった。

だが、姿勢制御とビットの扱いがまだまだだ。

これにいい気になどなるなよ?」

 

「……はい。」

 

「それと、クラス代表の件だが……やる気はあるか?」

 

クラス代表……要は草間 花音と同じ位置づけなのだろう。

向こうにいた時だと葬儀社の任務で天王州第一高校にはいっただけだからやる気も無かった。

 

今は……葬儀社もない、唯一の目的はあの世界に戻るだけ。

 

「はい。」

 

「……そうか。

では、無礼を承知で言う。

織斑に譲ってくれないか?」

 

「何故ですか?」

 

「アイツは、現状世界唯一、男でISを動かすヤツだ。

何処かの組織、国から狙われるのは明白だ。

だから、実力を付けさせたい。」

 

そこで理解した。

これは教師としての反面、肉親であることの配慮だと。

 

今や唯一ISを動かせる男である一夏はその生体データを欲しがる国や組織から狙われれるリスクを持つ。

IS学園が原則的に他国などの干渉を受けないというのがあるが、テロ組織などが襲撃する可能性は捨てきれない。

そうなれば、一夏の身が危うい。

 

ならば、一夏自身を強くし、せめて援軍が来るまで持たせるようにしたいのだろう。

 

 

「分かりました。」

 

「済まないな……代わりに、楪は副代表としてアイツを支えてやってくれ。」

 

 

________________________________________

 

 

 

織斑先生と別れ、寮に行く。

今までは一人部屋だったけど、今日から相部屋になると、山田先生から言われていたのを思い出した。

なんでも、私の戸籍作成等でゴタゴタしていて、ここまで回らなかったらしい。

 

 

あてがわれた部屋に行くとルームメイトらしい人が部屋の前に居た。

 

「えっ……!?」

 

……セシリアという英国美女のルームメイトが。

 

 

 

 

部屋に入り、ベッドに座る。

 

「貴女がルームメイトだなんて……驚きですわ。」

 

「私も……。」

 

「さっきの試合、見事でしたわ。

教官を倒したというだけで良い気になっていた自分が恥ずかしいですわ。」

 

「そんな事無いよ……?

ミサイルの発射タイミングがあっていたらやられていたかも……」

 

「負けは負けですわ。

 

……そういえば本国から届いたばかりの茶葉がありましたわね。

楪さんもどうです?」

 

「じゃあ、もらおうかな……」

 

そう言うとオルコットさんはキッチンに茶葉の缶を持って行った。

 

 

 

 

 

 

数分後、2つのティーカップを持って戻ってきた。

 

「どうぞ、私が好きなストレートティーですわ。」

 

そう言ってカップが置かれる。

 

「頂きます……」

 

一口。

軽い苦味と豊かな香りが鼻孔を駆け抜け、喉を滑り落ちていく。

 

「……美味しい」

 

「当然ですわ。

紅茶はイギリス名物。

 

そこらの市販なんかには負けません。」

 

そう言ってカップを口につける。

 

 

「そういえば貴女、歌が好きと言っていましたわね。」

 

「うん」

 

「でしたら、何か1曲、簡単なものでいいので歌ってくれません?」

 

「……いいよ」

 

 

カップを置き、すこし考える。

 

「……ここに証そう お前の名を……」

 

原罪の灯

 

集を想い、作った曲の一つ。

アポカリプスによって暗く、GHQによって先が見えない日本を振り払う光として集を置いた歌。

この歌に、私の覚悟も込めて作り、結局集には渡せなかった歌の一つ。

 

「来る日まで共にあらん……共にあらん……」

 

集と共に生きる事を決めた部分。

結局……できなかった。

 

 

 

歌い終わると、オルコットさんは真剣に聞いていた。

 

「素敵ですわね……でも…何処か悲しい歌……。」

 

「なんで……そう思うの?」

 

「だって、貴女……」

 

その一言が私の心を揺さぶる。

 

「……泣いてますわよ?」

 

「!?」

 

慌てて手を目にやる。

そこにあるのは透明な雫。

 

(やっぱり……。)

 

私は……集に会いたい。

 

自分から別れてしまったとしても、もう一度……彼に。




筆者はISではオルコッ党ゆえか原作より物腰やわらかくなっている気が……

Q:セシリアが紅茶を旨く作る件

A:英国貴族だからです。

それと、アンケートも引き継き実施中です。
現在、2対1で集介入ルートが優勢です。

アンケートは活動報告よりどうぞ。


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6:コアの謎

この投稿でアンケートを締め切ります。

結果は集介入ルートとなりました。

次回より集サイドの描写をいれていく予定です。


翌日のSHR。

 

「では、クラス代表は織斑君、副代表は楪さんに決定しました!」

 

「なん…だと…!?」

 

目の前の黒板にはデカデカとその事実が書かれており、一夏は愕然とする。

 

「なんでだよ!? 楪さんにも負けたのにどうして俺が!?」

 

因みにあの後、行われた一夏vsセシリアはセシリアの勝利だった。

私の近接戦が生きたのかセシリアはビットを上手く使って接近を許さず、徐々に削って勝利した。

 

「私と楪さんが辞退したからですわ」

 

セシリアが立ち、一夏に言う。

 

「私が勝つのは経験の差と、先の模擬戦で接近戦のノウハウを掴んだからですわ。

そうなれば勝敗は明白。

故に、貴方を専用機持ちとして鍛えるため、辞退しましたわ」

 

「因みに、楪が副代表としてお前をサポートするそうだ。」

 

そこで織斑先生が入ってきて補足する。

 

「さて、今日は実機訓練を行う。

各自、ISスーツに着替えて第2アリーナに集合。以上だ。」

 

 

 

 

 

第2アリーナ

 

1組の生徒は全員ISスーツで集合し、待っていた。

 

目の前には複数の訓練用IS『打鉄』が鎮座している。

 

そこに織斑先生が現れた。

 

「さて、今日はまず専用機持ちによる急上昇及び急降下からの完全停止をやってもらう。

 

織斑、楪、オルコット、ISを展開しろ。」

 

「「「はい」」」

 

すぐに私とセシリアはISを展開する。

 

展開が終わった時、一夏はまだ展開できていなかった。

 

「遅いぞ。他の専用機持ちは1秒足らずで展開するのだぞ。」

 

「っ!白式!」

 

ようやく展開が成功し、白式が展開される。

 

「よし、まずは適当な高度までフルスロットルで上昇しろ。」

 

「「「はい」」」

 

そして私達は飛翔する。

 

 

 

最大加速で上昇した際、一番速いのはスピード特化の私。

その次にセシリア、織斑と続く。

 

『織斑、スピードが上がっていないぞ。

楪のISはともかく、スペック上ではオルコット機より上だ。』

 

「んなこと言われたって……加速のイメージが上手く……」

 

「イメージは所詮イメージ。

自分なりのやり方が一番ですわ。」

 

「じゃあセシリアが教えてくれよ。」

 

「PICの重力制御理論から始めますがよろしくて?」

 

「勘弁してくれ……楪はどうやってんだ?」

 

「え…と…感覚?」

 

「参考にならねえよ……」

 

そんな事を言いながら高度を上げてゆく。

 

 

学園の塔と同じぐらいまで到達すると通信が入る。

 

『よし、今度は急降下からの完全停止だ。

目標は10cm。始めろ。』

 

「では私から行きますわね。」

 

そう言ってセシリアが落ちてゆく。

 

ハイパーセンサーの望遠で見ると見事に停止しているのが見えた。

 

『8センチ。いいだろう。

次、楪。』

 

「はい」

 

返事をして降下を始める。

すぐに加速が始まり、猛スピードで降下する。

 

 

加速し、迫る地面。

それを見ているとGHQ収監所での事を思い出す。

 

『集……』

 

『いのり……もう一度…君を信じていいかな?』

 

あの時言っていた集の言葉。

私は、全てを覚えてる。

あの時から、私の心は集で一杯。

でも…今はあの時みたいに寒くはない。

 

集が無事だから?

そんな確証も無いことにすがっている私は……。

 

 

「2センチ。見事だ。」

 

気が付くと既に地上にいた。

無意識に停止動作をやっていたみたい。

 

 

「次、織斑。」

 

『はい!』

 

元気に返事をすると、降下に入る。

その元気を具現化したみたいな早さで。

 

 

 

その時、アリーナにクレーターが出来た。

 

「馬鹿者。誰がクレーターを作れと言った。」

 

「い…ってて……」

 

織斑がクレーターの中心で伸びていた。

 

「やれやれ……次は「ちーーーーちゃーーーーーーん!!」はぁ……」

 

織斑先生が言おうとした矢先、誰かの声が響く。

そして上空から、巨大な人参……いや、人参型のメカ?が落ちてきた。

 

そして、その扉?が開くと

 

「はーい!元気一杯ニコニコ一杯!束さんだよ~!」

 

フリフリの服を着た人が出て来た。

 

「ちーちゃん、会いたかっフゴッ!?」

 

織斑先生に飛びついた束という人がアイアンクローで捕まる。

 

「時と場所を考えろ馬鹿者。」

 

「いや~、ちーちゃんのアイアンクローは強烈だね~」

 

……それでも普通に会話してる辺り、只者じゃないのは分かった。

 

「はぁ……楪、ちょっと来い。」

 

そんな中、織斑先生に呼ばれた。

 

「紹介する。篠ノ之束だ。お前のIS解析をするため呼んだ。」

 

「はぁ~い。いーちゃん。束さんって呼んでね~!」

 

「他の者は訓練に戻れ。時間になったらISを片付けて終了だ。

オルコット、後は頼んだ。織斑にクレーターの始末をさせておけ。」

 

「分かりました。」

 

 

 

 

 

整備室

 

「さ~てさて、いーちゃんのISを見ましょうか!」

 

「えっと……」

 

ワキワキしている束さんにどうすればいいか困っていると、

 

「大丈夫だ。こんな変態だが、これでもISの開発者だからな。」

 

って言ってくれた。

 

「じゃあ、ISを展開して整備台に置いてね。

そしたら私がやっておくから~」

 

「はい」

 

言われた通り、ISを整備台に置いておく。

すると、束さんは物凄い速度でコンソールを展開、処理を始めた。

 

「ふんふん、拡張領域がちょっと特殊になってて……」

 

何か色々言っていたけど、突然、束さんの様子が変わった。

 

「何これ……こんなの私はプログラムしていない!」

 

「どうした、束。」

 

「んーとね、束さんが作ったISコアには進化するための思考ルーチンを組んでいるんだよ……それも人間に近い思考パターンでね。」

 

「で、それがどうした?」

 

「そのプログラムは束さんにしかいじれない領域の一番奥に閉まってあるんだけど、そこが開けないの。」

 

「……なんだと?」

 

「思考のログも束さんが組んだような思考していないし、何か変異してるみたい。」

 

「楪への影響は?」

 

「んー……現状、搭乗者に影響するような動きは無いし、大丈夫だよ~」

 

「……他に変わった事は?」

 

「拡張領域の性質がさっきのプログラムのせいか、変わっていてね。

重火器は積めない仕様になっていたよ。」

 

「……妙だな。」

 

「うん。すっごく妙。

束さん、久々に燃えてきちゃった!」

 

「とりあえず束、詳しい解析を頼む。」

 

「りょーかい!じゃあ、このデータは束さんハウスでじっくり調べるね~!」

 

そして文字通り、脱兎のごとく行ってしまった。

 

「……楪。」

 

「はい」

 

「現状、ISに乗っているのは許可するが……もし、危険を感じたらすぐに報告しろ。いいな?」

 

「分かりました。」

 

そして私と織斑先生はアリーナに戻っていく。

 

 

 

 

 

_________________________________________

 

 

「……イヴ。ようやく見つけました。」

 

何処か、人には見えない空間で誰かがつぶやく。

 

「貴女の使命と意思。共に果たすまで、その力を貯め続けなさい……」

 

そして誰かはその気配を消した。

 

 





ご意見ご感想お待ちしています。



ここから筆者のスペース
英語のテストなんて嫌だぁぁぁあ……

必修科目じゃなきゃどんなに楽か……

あと5日で艦これイベ始まりますし、乗り切って先日ケッコンした嫁の陸奥と突破したいです。

いのり「嫁……?」

あ、いのりさん。
大丈夫です、最大の嫁は貴女で(血で読めない


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7:王、再臨

どうも。ロッカーの鍵を無くしたあげく合鍵もどっかにやった上、Vitaソフトを1本どこかに無くした筆者です。

テスト前なのにやっちゃいました。
もう、どうにでもなーれ♪(ヤケ

今回、ついにアイツが出てきます。


東京24区 GHQ本部跡地

 

あの戦いから1年が経った。

日本は徐々に持ち直し始め、他国の支援ももうすぐ要らなくなってくるだろう。

 

そんな中、僕たちはあの場所に集まった。

 

「いのり……」

 

「いのりん、会いに来たよ……」

 

綾瀬、ツグミと共に、僕……桜満集はこの場所に来ていた。

 

GHQの本部があり、僕達の最終決戦があった場所。

そこの瓦礫は徐々に撤去され、今はただのコンクリートの更地……らしい。

らしいってのは、綾瀬達から聞いた話だ。

僕はもう……景色を見ることは出来ない。

あの戦い以降、僕は視力を失い、ヴォイドが無くなった事で、右手も義手になった。

正直、ここに来るまでもすごく苦労した。

 

でも、そこは僕らにとって、大切な場所。

いのりと僕らをつなぐ最後の場所。

来ないわけにはいかない。

 

「じゃあ……黙祷しようか。」

 

「うん……」

 

何もない平地で僕らは静かに祈る。

いのりの冥福を祈って。

 

 

「じゃあね、集。帰り道、気をつけなさいよ」

 

「大丈夫だよ、じゃあね。」

 

綾瀬と別れ、再び跡地を見る。

 

「いのり……」

 

その時、回りの音が途絶えた。

空気も変わった気がする。

 

「久しぶりですね、桜満集。」

 

その声、中性的な声には聞き覚えがあった。

 

「っ!?その声は!?」

 

ユウ。

ダァトの総意として存在し、僕の前にヴォイドを駆使して立ちはだかった男。

それが何故、今になって出てくる!?

 

「おや、やはり視力は失っていましたか。

ですが、声で思い出す辺り、流石です。」

 

「ユウ……お前は僕があの時倒したはずだ!」

 

「確かに、僕はあの時あなたに敗れました。

しかし、僕はダァトの意思そのもの。

ダァトが消えない限り、僕は消えません。」

 

「今度は……何をする気だ……っ!」

 

「いえ、今回はあなたに敵対する気は毛頭ありません。

むしろ、こちらからあなたに頼みがあるのです。」

 

「何……?」

 

「あなたが愛した楪いのりは……生きています。」

 

「なんだって!?」

 

「それと同時に真名の意識も。」

 

「真名が……!?」

 

「正確には真名の意識の残滓と言ったところでしょうか。」

 

「……それで、いのりはどこなんだ!」

 

「この世界とは違う並行世界に彼女は飛ばされています。

そして、それを追いかけ、我がダァトから離脱した危険分子も。」

 

「危険分子……?」

 

「名をソウと言い、我がダァトの幹部でした。

彼は真名を利用し、世界を進化させるのではなく滅ぼそうとするダァトの総意からは逸脱した者でした。」

 

 

「それが……いのりに!?」

 

「ええ、だからあなたに止めてもらいたいのです。

成功すれば、あなたと彼女をこの世界に戻しましょう。」

 

「お前は……それでいいのか?」

 

「ダァトは真名の消失により、意思を変えました。

いずれ、ダァトは無くなり、総意の僕も消えるでしょう。

ですが、この非常事態にダァトはあなたに託すことを決定しました。」

 

 

いのりが生きている……

だったらやるべきことは決まっている。

今度こそ……っ!

 

「分かった……行くよ。」

 

「その答えを待っていました。

では、頼みますよ。」

 

その瞬間、僕の意識は途切れた。

 

 

 

_____________________________________________

 

 

 

ドサッ!!

 

「いてっ!?」

 

気がついた途端、僕はどこかに投げ出されていた。

 

機械の作動音……適度な温度……何処かの研究所?

 

「君、どこから入ってきたの?

この束さんのセキュリティを欺くなんて。」

 

「ここは……どこですか?」

 

「……ちょっと待ってね」

 

そして女の声は遠ざかる。

 

 

 

「お待たせ。

どうやら君、別の世界から来たみたいだね。」

 

「どうして……それを!?」

 

「この束さんにわからないものなんてないんだよ~♪」

 

「はぁ……」

 

なんというか……天才なのか変人なのかわからない人だった。

 

「ん~……キミ、もしかして目が見えないのかな?」

 

「あ、はい。

昔ちょっとあって……」

 

「じゃあ、この束さんがなんとかしてあげよう!」

 

「え!?」

 

視力を戻すってこと!?

そんなの出来るわけが……。

 

「ちょっと待っててね~」

 

そう言って足音は遠ざかって行く。

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ~

ちょっとチクっとするかもだけど、我慢してね~」

 

束さんが戻ってくる音がした。

 

そして、後ろ首に何かの器具を取り付けられる感触がする。

 

「てっ!?」

 

取り付けられた直後、本当にちょっと鋭い痛みが走る。

 

だが……

 

「これは……?」

 

見えなかった視界が見えていた。

細部までくっきりと。

 

だが、その視界は過去に僕が見ていたのと少し違う感じがした。

 

「それはね~束さん特製センサーで、専用化したハイパーセンサーと高精度の集音器がキミの周囲の情報を集めて内蔵コンピュータに転送して映像化、それを首の神経を介して脳にダイレクト投影しているんだよ~。」

 

ハイパーセンサー?

少なくとも僕達の世界より技術が進んでいる事は確かだ。

 

「ありがとうございます……。

桜満集と言います。」

 

「篠ノ之束。気軽に束さんって呼んでね♪」

 

「それで束さん、一つ聞きたいことが。」

 

「何かな~?」

 

「……楪いのりという人を知っていますか?」

 

そういった途端、束さんの顔が真面目になる。

 

「多分、キミが言っている子ってこの子でしょ?」

 

そう言ってモニターに出される画像。

間違いなくいのりだ。

 

「そうです!!

彼女は今どこに……っ!」

 

「……その前に、一つ確かめたいんだけど、いい?」

 

「……はい。」

 

「これに触れてみて。」

 

そう言って出されたのは丸い黒色の球体。

言われた通り、触ってみる。

すると、球体は黒色から少し紫色が加わった色になる。

 

「やっぱり……」

 

「なにがですか?」

 

「君たちは……やっぱり特異な存在だよ。」

 

「……どういうことです?」

 

「端的に話せば、これはISコアっていう女性にしか動かせないマシーンのコアなんだけど、キミやいーちゃんが触ったコアは変異してその人専用コアになっているんだよ……たとえ、男でもね。」

 

 

「つまり、このコアは……」

 

「うん。しゅーくん専用コアに変異しているね。

……しゅーくんはいーちゃんのどんな存在?」

 

「僕は……いのりが好きなただの高校生です。」

 

「その割には修羅場をくぐったようなオーラだよね~」

 

「っ!?」

 

どうもこの人にはごまかしとかは効かないみたいだ……。

 

「僕は……いのりが好きで結局守れなかった。

でも、今度こそ僕はいのりを守りたい!」

 

「うん!そのセリフ気に入った!!

じゃあ束さん、しゅーくん専用IS作ってあげる!」

 

「え?」

 

「キミ専用ISを作ってあげるって言ってるの。

どのみち、そのコアはもうしゅーくん専用だしね。

 

その代わり、しゅーくんがいーちゃんを守りきれるって判断できるまではここで訓練すること。いいね?」

 

「はい!」

 

 

こうして、僕は束さんのところでISの訓練をすることになった。

 

待ってて、いのり。

今度こそ僕はキミを守って見せるから……!

 

 





はい、集復活&視界復活しました。
束さんにかかればなんでも出来ちゃうんですね~(おい

とはいえ、いのりと再開するのはもう少しあとになりそうです
ヒロインズまだ3人出てないし……。


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8:獣の覚醒

ようやく出来ました。
戦闘描写力が欲しいと思えた回です←

※心理描写を追加しました。



私の朝は走り込みから始まる。

 

朝5時に起きてジャージに着替え、セシリアを起こさないように部屋を出る。

 

そして人気が無いコースを探して数キロ走る。

 

私の体はどういう理由でか身体能力は飛び抜けて高く、エンドレイヴのクローや銃撃を避けながら飛び越えた事があるくらいに高い。

 

そんな事で私は体力を維持する為、こうして走り込みをする。

 

途中、グラウンドで篠ノ之さんを見かけたけど走るのに集中しているせいか、こっちには気付かなかった。

 

走り込みを終えると部屋に戻り、シャワーを浴びて汗を流す。

ベトついた肌を温く設定したお湯が心地良く流してくれる。

この感触は前の世界ではあまりしなかった感覚だけに好きだった。

 

シャワーから上がり、制服に着替える辺りにようやくセシリアは起きる。

 

「おはようございます。楪さん。」

 

「おはよう、セシリア。」

 

二人とも制服に着替えると食堂に向かう。

セシリアはトーストとサラダに紅茶。

私は具がランダムで入ったおにぎり数個とお茶。

 

ここの食堂におにぎりがあって良かった。

他にも和食等はあったが、私はやっぱり集に作ってもらった時からおにぎりが一番の好物だった。

 

セシリアと話しながら食べていると一夏がトレーを持って来た。

 

「ここ、いいかな?」

 

「構いませんわよ」

 

「うん」

 

一夏が私達のテーブルに座る。

 

「セシリア、楪、折り入って頼みがある」

 

「何でしょう?」

 

一夏が物凄く真剣な顔で話しかける。

どんな大事な内容なのかと思っていると……

 

「俺にISの訓練をしてくれ!!」

 

「「え?」」

 

あまり重要な内容じゃなかった。

 

 

 

 

あれから一夏の話をまとめると、

 

・1週間後にクラス対抗戦の代表マッチがある。

 

・当然、一夏が出るわけだけど、まだまだ弱い。

 

・そこで私達に訓練してもらいたいとのこと。

 

こんな感じだった。

 

「だから頼む!」

 

そう言って一夏が懇願する。

 

「まあ、私は構いませんが……楪さんは?」

 

「私も……大丈夫。」

 

「ありがとう!今度何か奢るよ!」

 

そう言って一夏は笑顔を向けた。

 

 

 

 

 

 

所変わって朝のSHR。

織斑先生が伝達事項を話している。

 

「……以上だ。

それと織斑、もうすぐクラス代表戦だが訓練はしているんだろうな?」

 

「は、はい!」

 

「1組代表として無様なマネはするんじゃないぞ」

 

なるほど、これは焦るのも無理は無い。

何かと代表とか言うのは重責だ。

涯も幾度と無く輸血の時等に、その重みを私に漏らしてきた。

 

 

 

「ねえ、代表戦誰が勝つと思う?」

 

「織斑君じゃない?専用機持ちなんだし」 

 

「だよね~。他のクラスには専用機居ないしこれは勝ったも同然じゃない?」

 

 

 

織斑先生が出て行った後、近くの女子がそんなことを話している。

と……

 

「その情報、古いわよ!」

 

ドアの方から大声で制する声がする。

 

そこには見知らぬ女子が居た。

 

ツインテールの小柄な女子。

 

「お前……鈴か!?」

 

一夏が驚いた様子で鈴と言われた女子に向く。

 

「ええ、久しぶりね。一夏。」

 

「お前、いつ戻ってきたんだ?」

 

「昨日よ。IS学園に中国代表候補生として編入してね」

 

「凄ぇな!」

 

どうやら友達だったみたい……。

 

その後の会話を聞くに、あの鈴という人は2組の代表ということらしい。

これで、一夏の訓練の必要性は更に増した。

 

私はどうやって一夏を教えるか考えながらその日の授業を過ごした。

 

 

 

放課後、アリーナ。

 

一夏駆る白式が私に零落白夜を繰り出す。

私はそれをバスターブレードで受け流す。

 

「クソッ!何で避けられる!」

 

「動きが単調。それだと避けてくれって言っているようなものだよ」

 

「じゃあ、どうするんだ?」

 

「こうする」

 

「へ?」

 

機体を加速させ一夏に迫る。

 

バスターブレードを横に振る。

一夏はどうにか雪片弐型でガードする。

そこに蹴りを一夏に繰り出し、体勢を崩させる。

そこに一度バスターブレードを引いて、素早く袈裟斬りに繋げる。

流石に斬りはせず、寸止めに留める。

 

「……こんな感じに普通は数で攻撃を仕掛ける。

一夏のワンオフアビリティは強すぎるから最大限に警戒する。

だから、最後の切り札にしておいたほうがいい。」

 

「なるほど……わかった!

もう一回頼む!」

 

「うん……」

 

そうして、私は基礎的な近接戦闘を。

セシリアが射撃者への訓練を行い、一夏の戦闘スキルはどうにか実戦レベルまでは行った。

 

 

_________________________________

 

代表戦当日。

 

私は一夏のオブザーバーとしてピットの管制室にいた。

1週間の成果を見てて欲しいという一夏の希望だ。

まあ……1週間でどうにかといったところだから目に見えて変わったという訳でもないんだけど……

 

 

 

______________________________________

 

 

俺は白式を纏い、アリーナに上がる。

 

鈴のISは既におり、こっちを見ていた。

 

「随分と特訓していたみたいね」

 

「当たり前だ。曲がりなりにも代表だからな」

 

「じゃあ……見せてもらおうじゃない!」

 

ブザーが鳴り、戦闘が開始される。

 

まず鈴が接近して青龍刀を振りかざしてくる。

すぐに俺は雪片弐型でガードするが、その重さに少し飛ばされる。

 

「ぐっ!! 重いっ!」

 

「ほらほら!行くわよ!!」

 

鈴がすぐに追撃を仕掛けてくる。

 

俺は今度はそれを真っ向から受け止めはせず受け流して回避する。

 

すると、鈴がこっちを向いた途端、何かに吹き飛ばされた。

 

「っ!?何だ!?」

 

「へえ、龍咆を耐えるなんてやるじゃない」

 

そう言うと、肩の砲門から歪みが発生し、不可視の弾丸を撃ってくる。

 

「くっ!!」

 

スラスターを全開にしてそれを避け、逃げまわる。

 

「逃げてばっかりじゃ話にならないわよ!!」

 

「だったら!!」

 

一度壁を蹴って方向を変え、直ぐに瞬間加速を使って接近し、零落白夜を発動する。

 

「喰らえ!!」

 

雪片弐型を振り、当たるかと思った瞬間、アリーナのシールドを突き破って何かが落ちてきた。

 

「!? なんだ!?」

 

視界が失われ、見えなくなる。

 

視界が晴れた時、その落ちてきたモノが明らかになる。

 

 

青い装甲板が目立ち、

 

頭が平べったく、赤いツインアイが光り、

 

足にキャタピラが付き、

 

ISより遥かに大きいその機体。

 

エンドレイヴ・ゴーチェの姿がそこにあった。

 

 

 

__________________________________

 

「あれは……っ!?」

 

間違いない。

エンドレイヴ!

なんでこの世界に!?

 

そんなことを考えていると、ピットのシャッターや観客席のシャッターが締まり始める。

 

「くっ!!ギルティ!」

 

直ぐにISを呼び出し、シャッターが閉まる前にアリーナに飛び出す。

 

「一夏君!下がって!!」

 

バスターブレードを呼び出し、ゴーチェに向かって斬りつける。

 

「はああああああっ!!」

 

キンッ!

 

甲高い音が鳴り、

 

バスターブレードはその刃を通せなかった。

 

「……え?」

 

ゴーチェが直ぐに反応し、クローで私を壁に叩きつける。

 

「きゃあっ!!」

 

「楪さん!!」

 

叩きつけられ、銃撃が私を襲い、意識が遠のく。

薄れゆく意識の中、一夏達の戦闘が見える。

 

 

一夏がゴーチェに雪片弐型で攻撃を仕掛けるも、右手にマウントされた銃で反撃され、思うように近づけない。

鈴さんが龍砲で攻撃しても、衝撃砲だけにゴーチェにはあまり効いていない。

 

それどころか、ゴーチェは肩のミサイルや銃を巧みに使い、一夏や鈴さんをジリジリ削って行く。

 

(私は……また……失うの……?)

 

そう思いながら、意識を失った。

 

 

 

___________________________________

 

 

______マスターとの同調率、良好。

 

(ここは……?)

 

また、暗い所に私は居た。

どこからか、声が響く。

 

______ワンオフアビリティ、解放シークエンススタート。

 

ワンオフアビリティ?

それって……

 

目の前にいつの間にか結晶が浮かんでいた。

アポカリプスの結晶。中にはヴォイドゲノムの象徴で集の右手にあったマークが入っている。

 

《みんなを守りたい……?》

 

不意に男のような女ような声が響く。

 

《ねえ…?みんなを守りたい?》

 

「私は……守りたい!

今度こそ、失いたくないの!!」

 

《なら……それを取りなさい……

守る力を貴女に貸すわ。》

 

(私は…っ!)

取れば私の身に何かしらの影響が出るのは明白。

それでも…私はその結晶を、取った。

 

たとえ、これが禁忌や罪の果実だとしても、私はその罪を背負って行く。

そう決めた。

どれも、集の元へ帰る意志に比べれば安いもの。

そう、思えた。

 

 

______ワンオフアビリティ『ノゥネーム・モンスター』起動します。

 

その瞬間、私の意識は浮上する。

 

 

 

________________________________

 

「くそっ!!

どんだけ固いんだよ!」

 

突然現れた、巨大な機体。

その防御力はISでさえも通さない未知であり、ISの概念を覆す性能だった。

 

楪さんは簡単に倒され、俺と鈴もシールドエネルギーがヤバイ。

 

どうすれば……っ!

 

 

「あああああああああああああああああああっっっっっ!!」

 

突然、雄叫びが響き、楪さんが居たところが紫色に光る。

 

光が収まった時、何かが飛び出した。

 

「はあああああああああああああっっっ!!」

 

ソレは敵の右手を簡単に斬り裂く。

 

その姿をハイパーセンサーが捉える。

 

 

それは、全く違う姿をした、楪さんだった。

 

俺はその姿、行動を見た時、思わずこう言ってしまった。

 

「まるで……獣だ……」

 

___________________________________

 

 

私の意識が回復し、ワンオフアビリティが起動すると、ISはその姿を大きく変えた。

 

スラスターを残して、殆どがトゲと化し、体の各所から生えた様に配置される。

両手からは長大な剣が伸び、背中の肩甲骨辺りからも長いトゲが伸びる。

 

それは、私が力を解放した時とほぼ同じ外観を持っていた。

ISスーツさえも吸収され、体を薄く覆うように変えられる。

 

(これって……っ!?)

 

どう考えても、理解が出来なかった。

今、頭にあるのは、

敵を破壊し、二人を守りたい。

それだけが頭を支配する。

 

「はあああああああああああああっっっ!!」

 

力の限りの声を出し、ゴーチェに肉薄する。

ゴーチェは反応出来ないまま、右手を切り落とされる。

 

着地し、直ぐに反転してスラスターを吹かしつつ剣を構える。

 

ゴーチェが肩のミサイルを大量に撃ってくるも、私はソレを斬るか、ジャンプで避けながら接近する。

 

「うああああああああああああああああああああっっ!!」

 

裂帛の気合と共に、跳躍し、胴を両断する。

 

背後で爆発するのを感じながら、私は着地する。

 

(やっぱり……私は……)

 

そして、ISが解除され、1つの真実が私を絶望に落としつつ、私は倒れた。

 

 

 

 

_______________________________________

 

「ふむ。ゴーチェの改良は上手く行きました。

ISの攻撃を耐えるのであれば良好です。」

 

人には認識出来ない空間で誰かはつぶやく。

 

「真名の意識は徐々に復活している。

もうすぐだ……もうすぐ、我がダァトの想いは完遂される!!」

 

薄気味悪い笑いを残しつつ、誰かは消えた。




ようやくいのりのワンオフアビリティが出ました
詳細は後ほど

ゴーチェの銃ってパルスライフルっぽいけど、何なんでしょう?

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9:歌姫の復活

お待たせしてすみませんでしたあああああ!!

リアルが本当に忙しくて書く時間とれて無くて……

今後、なるべくペースを上げたいと思います。


気がついた時始めに目にしたのは、白い天井だった。

 

清潔そうなベッドに仕切りのカーテン。

どうやら気を失った後、私は誰かに保健室に運ばれたみたい。

 

起きた直後のポーっとした感覚に泳いでいると、誰かが入ってきた。

 

「あ、起きたか。」

 

一夏だった。

手には赤く熟れたリンゴと皿に果物ナイフ。

 

「楪さん……ホント、ごめん!」

 

一夏がリンゴや皿をテーブルに置くと、いきなり謝ってきた。

 

 

「俺が不甲斐ないばかりに…鈴や楪さんまで危険に晒して……ごめん!」

 

なんで私に謝るのか全く理解出来なかった。

アレは自分が引き寄せたようなモノ。

一夏が謝る道理は無いはず……なのに……。

 

「どうして……」

 

「え?」

 

「どうして私に謝るの?」

 

「どうしてって……そりゃあ……」

 

何かを言おうとして、声が途切れた。

 

「……俺は……力が欲しかった。」

 

さっきと打って変わって重い声。

一夏の暗い部分だというのが直ぐに分かった。

 

「俺は、小さいころに誘拐されてね。

奴らの目的は千冬姉のモンド・グロッソ連覇を阻止することだった。

 

結果、千冬姉は俺を助けるために大会を棄権してまで助けに来てくれた。

俺は……その時悔しかった……。

俺に力があれば連覇も出来たはずなんだって……。

 

今は、守れる力を手に入れた。

なのに……同い年の女の子一人守れなかった自分が歯痒いんだ……。」

 

一瞬、その姿勢が集と被った。

守りたい力を求めてる。

集もそんな時があった。

その結果、校条 祭を失い、集は闇に染まった。

考えうる最悪の展開。

私は、無意識のうちに一夏を集と同じ状態にはさせたくないと思えた。

 

なぜ?

……集が居ないから?

わからない……。

 

でも、本当に、そう思えた。

 

「大丈夫……。」

 

一夏の肩に触れる。

 

「決意は無駄にはならない……でも、それに実力が追いついてないだけ……。

だから……これからも訓練、がんばろう?

 

そうして強くなったら……守ってもらおう……かな?」

 

そう言うと、一夏は少し元気を取り戻したみたいに言った。

 

「そう……だな。

よし!これからも訓練頼むよ!」

 

「うん……」

 

そう言い合った時、また誰か入ってきた。

 

「起きたか」

 

「あ、千冬ね(ry」

 

ドゴッ!!

 

「織斑先生と言え」

 

……織斑先生だった。

 

 

「……楪、ちょっと来い。

織斑、お前もだ。」

 

「「え?」」

 

そう言われるがまま、私達は織斑先生の後を着けて行く。

 

 

 

_______________________________________

 

 

エレベーターで地下まで下がり、暫く歩くと、扉が見えてくる。

 

織斑先生がカードキーを通すと、扉が開き、中が明らかになってくる。

 

「……これって……っ!?」

 

私が壊したエンドレイヴ・ゴーチェ。

その残骸が整備台と思われる台に集められ、整理されていた。

 

「……っ!!」

 

ゴーチェを見た途端、あの時の状況が脳裏に蘇る。

 

アポカリプスの能力を模したあの姿。

通常のISでは考えられない形態変化とその威力。

 

さらに、あの夢の中での声……。

何らかの形であの世界の要素……それもこの世界にマイナスとなるようなモノを持っているのは感づいていた。

それと同時に……自分への恐怖も。

 

供奉院亞里沙を負傷させた時同様、また誰かを傷つけてしまうかもしれない。

それを恐れるあまり、私の感情は一気に揺らぎ、流れだす。

 

「あっ……グッ……!?」

 

痛い。苦しい。

 

怖い。

 

それらに襲われ、押しつぶされそうになる。

もういっそ、全て吐き出して逃げてしまいたくなるくらいに。

 

「楪さん!?」

 

異変を感じたのか一夏が支える。

 

「大丈夫か!?」

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

息が絶え絶えになり、視界がクラクラする。

 

「織斑、楪を椅子に座らせろ。」

 

「う、うん」

 

一夏が椅子まで運び、座らせる。

 

「楪、これを飲め。」

 

そうして織斑先生が差し出すのはマグカップに入ったコーヒー。

 

 

一口。

 

苦味が広がり、頭に冴え渡る。

 

そうして思考を少し確保した私は、コーヒーの苦味に縋る形で飲み干す。

 

「……ふぅ」

 

「大丈夫か?」

 

織斑先生が話しかけてくる。

 

「はい……すみませんでした……」

 

「ああ。しかし、あの様子。お前、アレにPTSDをもっているのか?」

 

「いえ……でも……」

 

「でも……?」

 

「アレは……私の世界の兵器なのです。」

 

「やはりか……」

 

薄々気付いていたみたい織斑先生は頷く。

 

「織斑、オルコットと鳳を呼べ。

対策を練る。」

 

「わ、分かった!」

 

 

 

__________________________________

 

暫くして、一夏がセシリアと鈴さんを連れて戻ってくる。

 

「さて、対策会議を始める。

今回の襲撃してきた機体。

解析の結果、この世界には無い技術が使われていた。」

 

「「「え!?」」」

 

「具体的にはあの機体を遠隔操作かつ、その感覚をダイレクトに伝えるシステム。

いわばラジコンのようなシステムだ。」

 

「そんなこと……可能なんですの?」

 

「現に出来ている。

 

楪、可能な限りでいい。

この三人に話せ。」

 

 

「はい。」

 

落ち着きを取り戻した私は告げる。

 

「私はこの世界の人じゃないの。」

 

「「「はあ!?」」」

 

「あの機体はエンドレイヴ・ゴーチェ。

私の世界での兵器だった……」

 

そこから、エンドレイヴの事、葬儀社とGHQとの戦い等、私に何があったのかを大まかに話した。

 

私だけ知っていても怪我のリスクが増えるだけ。

そう思ったから伝える。

失いたくないという思いがあったせいか、次から次へと言葉が出てくる。

 

 

「こんな所かな……」

 

「そんな……信じられませんわね……未来から来た事や、この国がそんな事になっているなんて……」

 

「まるでSFの世界ね……厄介だわ……」

 

「一人でそんなになるまで戦って……楪さんはその人と別れることになるなんて……」

 

 

話し終わると、三者三様の反応を返す。

ヴォイドの事や集の事はあまり知られたくないから、別れた時は私が庇って死んだ様に話した。

そのせいか、余計に悲壮感が出てしまったけど……仕方ない……かな?

 

「ふむ。では、エンドレイヴの話だが、アレの対策はあるのか?」

 

「一応、エンドレイヴレベルの火器か、ある特殊な兵装なら通ると思う……」

 

「その兵装とは……?」

 

「この世界じゃ出来ない物……」

 

「そうか……」

 

戦車にある徹甲弾ぐらいの威力と貫徹力でないと倒せない。

エンドレイヴとは戦車に代わる兵器として運用されているからそのぐらいの防御力はあった。

 

「……あ。まだ……ある」

 

「それは?」

 

「後ろ首の……配線を斬る。」

 

ルーカサイト基地攻略時に涯がエンドレイヴの首にある配線を拳銃で切断して倒したと集から聞いたのを思い出した。

ISの機動性なら出来なくはない……かな。

 

「ほう。ならば決まりだな。

当面の間、対エンドレイヴの戦法として、高機動戦闘が主体になるだろう。

各自、訓練をしておけ。

 

新しい情報が入り次第、また伝える。

では次だ。」

 

織斑先生がモニターにデータを呼び出す。

 

「これは楪のISの戦闘ログとそのデータだ。

 

あの時、楪のISは形態変化を起こしていた。

その時のデータは大幅な性能変化を示している。」

 

通常時とあの時の姿……いわば獣形態のデータが出る。

 

「通常時に比べ、飛行能力は失うが、脚部スラスターと連動してバランサーの大幅な性能向上が見られた。

また、兵装も両腕の剣だけになっているのだが……これが問題だ。」

 

今度はその解析データが出る。

 

「シュミレートの結果、その威力は一撃でシールドエネルギーを持っていくものだった。」

 

「一撃!?」

 

「ああ。だが、これは通常時でだ。もし、最大限に威力が出た場合……搭乗者も殺害しかねない威力ということがわかった。」

 

!?

 

「そんな……なんでそんなに……?」

 

「原因は分からん。

だから、楪。当面、あの形態になることを禁止する。

もし、なった場合、此方がお前を止める(・・・)ことになるかもしれない」

 

それは、殺すかもしれないという暗示。

 

「……。」

 

私は正直、戸惑った。

やっぱり、ここでも私はバケモノで、淘汰されていくのか。

そう考え始めて、負の思考ループに入りそうな時、

 

「させない……っ!楪さんをそんな事にはさせない!」

 

一夏が声を張り上げた。

 

「俺が守ってみせる!

たとえ、そうなっても俺が助けだしてみせる!」

 

「そうですわ。私だって黙って見てるわけにも行きませんわ。」

 

「エンドレイヴの事だってまた来るかもしれないしね。

来るたびに楪がああなっちゃ困るわ。」

 

他の二人も同じだった。

 

「だがお前達、事は生命にかかわる。

お遊びじゃないんだぞ?」

 

「そんなことは分かってる。

俺はあの時、楪さんに救われた。だったら今度は俺が楪さんを守る!」

 

その言葉は男だからというプライドのセリフだというのが見て取れる。

でも、そのセリフが不思議と染み入った。

 

と、織斑先生の目が少し…和らいだ…気がした。

 

「……分かった。

だが、その言葉嘘にするんじゃないぞ。」

 

「……はい!!」

 

「という事だ。

楪、オルコット、鳳。

お前たちも含めて有事に備えて訓練を怠るな。

今後、楪暴走時に備え、織斑を戦力の中心に据えて訓練しろ。いいな?」

 

「「「はい!」」」

 

こうして、私の位置がすこし変わって会議は終わった。

 

 

 

 

 

「一夏君。」

 

帰り道、地上の廊下を歩く時、私は一夏を呼び止めた。

 

「なんだ?」

 

「ありがとう……正直、嬉しかった。」

 

「いや、こっちもそう言わなきゃなんか……納得出来ないというか、俺の心が許さなかったんだよね。」

 

「でも、ああいうの……普通は言えないよ?」

 

「まあ…そうだな」

 

そう言って少し笑った。

 

「一夏君。」

 

「ん?」

 

「その……これからは名前で呼んでもいいよ?

そんな他人行儀、私もちょっと息苦しいから……」

 

「……わかった!

これからも頼むな!いのりさん!」

 

……やっぱり少し他人行儀だ。

 

 

 

______________________________________

 

 

 

その夜。私室。

 

私とセシリアが紅茶で雑談をしている時。

 

「そういえば、楪さん。

貴女、部活はどうしますの?」

 

「部活?」

 

「はい。このIS学園は部活も活発なのですよ」

 

そっか……部活……。

ずっと葬儀社に居たし、天王州高校に居た時も集を見張ることから始まって、殆ど集の近くに居たから部活なんて考えても居なかった……。

 

「セシリアは……?」

 

「私はテニス部ですわ。

テニスはイギリス発祥ですし、嗜みですわ。」

 

「そう……。」

 

やっぱり、好きなことが出来る部活に入るのがベスト……。

そう考えた私は、この部活に決めた。

 

「じゃあ……軽音楽部にしようかな?」

 

「いいですわね。

楪さんが入れば、ステキなライブが出来ると思いますわよ。」

 

「そうかな……?」

 

「ええ。絶対。」

 

「そう……。

じゃあ、明日行ってみるね。」

 

 

_________________________________

 

 

翌日・放課後

 

私は軽音楽部が活動している教室に行く。

そこでは何人かの部員がギターなどの準備をしているところだった。

 

「お?見学かな?」

 

「え、新入生?」

 

何人かが気づいてこっちに来る。

 

「えっと……軽音楽部に入りたいのですが……。」

 

「いいよいいよ!えっと、所属と名前、教えてくれる?」

 

「一年一組 楪いのりです。」

 

「えっ!?あの専用機持ちの!?」

 

「凄い凄い!

うちに専用機持ちが来るなんて!」

 

どうやら専用機持ちが来ることに意外だったようで……。

 

「ゴメンゴメン。ちょっと舞い上がっちゃった。

アタシは部長の井上京子。3年2組ね。」

 

そう言って一番先に話しかけてくれた人が言う。

 

「それで、楪さんは何が得意かな?」

 

「……ボーカルと…作曲です。」

 

「ほえ~。凄いね! ちょうど固定ボーカル居なかったから助かるよ!

じゃあ、何か今歌えるかな?

あ、無理しない範囲でね?」

 

「じゃあ……これ、かけてもらえませんか?」

 

そう言って一枚のCDを渡す。

中身は昨日急ピッチで作ったインストバージョンの曲。

 

「曲持ち込みとは気合入ってるね!

分かった、ちょっと待っててね。」

 

京子先輩がプレーヤーまで行く。

私はその間に、教室の壇上まで上がる。

 

「いくよ~」

 

「はい」

 

カチッとボタンが押され、曲が流れ出す。

 

「……もうあなたから愛されることも

必要とされることもない

そして私はこうして一人ぼっちで…」

 

Departures ~あなたにおくるアイの歌~

 

一番最初に作った集宛の歌。

 

その時、集はヴォイド恐怖症で曲が入った記録媒体ごと私を突き飛ばしたせいで聞いてもらえなかった曲。

昨日、何を入れるか考えた時、直ぐにこれに決まり、譜面もすぐに思い出せた。

 

思えば、この曲が一番集への思いが一番濃い曲と思いながら打ち込んでいた。

 

 

 

「…もう一度だって笑ってくれないの

あなたの温もりが消えちゃう前に

抱きしめて…」

 

歌い終わり、部員達の方を見ると、全員の目が見開いていた。

 

「……す…凄い…」

 

「なにこれ……本物の歌手?」

 

「こんな逸材がいたなんて……」

 

なぜかみんな固まっている。

 

「えっと……どうですか?」

 

「……ハッ!?

もちろん!大歓迎だよ!

こんなうまい子が入ってくれたらウチはもう安泰だ!」

 

「じゃあ、今日は歓迎会しますか?部長?」

 

「うん!ちょっとジュース買ってきて!

 

…これからよろしくね!楪さん!」

 

「…はい!」

 

こうして、私の歌はこの軽音楽部でまた歌える事になった。

ここで……いっぱい曲作って……帰れた時に集にいっぱい聴かせてあげよう!

 

 

 

 





いのり、EGOIST復活(違

集のISを考えてると出したくて仕方ないです←
でもまだ先なんだよな……。

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10:新たな影とバスケットの中身

どうも
艦これ夏イベに全力出撃で死にかけたシャムロックです。

E5クリアでもう資材もバケツも尽きました。E6?知りませんね。


次はEGOIST東京ライブへワクワクが止まりませぬ。


私が軽音楽部に入部してから数週間後。

 

この数週間で私の立場は大きく変わった。

 

試しということで開催したミニライブ。

これが想像以上の反響を呼んで、軽音楽部はIS学園内で一躍有名になり、次のライブはいつという声が相次いでいた。

そして、ボーカルを務めた私は学園内でも有名になり、昼休みの私の机には一夏達の他に何人かのクラスメイトが相席するようになった。

 

そして、ある日の事。

 

「ねえ、いのりちゃん。」

 

「何ですか?」

 

「バンド名……決めない?」

 

今までは軽音楽部という部活名で細々と活動していた。

でも、今回のライブで一気に有名になり、ここでバンド名を決めたいという京子部長の意向だった。

 

「バンド名は…いのりちゃん、キミが決めていいよ」

 

「良いんですか?」

 

「そりゃ、ウチの部が有名になったのはいのりちゃんのお陰だしね。

このぐらい、当然さ。」

 

「じゃあ……」

 

バンド名、それはあの世界でも使っていたネーム。

私の心を体現する居場所。

 

「…EGOIST。」

 

「EGOIST……いいね!ミステリアスなネーム!気に入ったよ!」

 

こうして、バンド EGOISTはIS学園で知らぬ者は居ないほど有名になっていくのだけど…それはまた、別の話で。

 

 

__________________________________________________

 

 

その日、私はいつもの走り込みを終えて部屋に戻ると、珍しくセシリアが起きていた。

 

「お早うございますですわ、いのりさん」

 

「おはよう、セシリア」

 

因みに…私達の部屋は、ほとんどがセシリアが持ち込んだ家具等に置き換えられている。

私のベッドまで簡単な天蓋がつくほど模様替えに本気を出していた。

 

『やっぱり、私はこのような家具がないと落ち着きませんの』

 

…と、模様替えの時に言っていた。

 

私は、特に異論は無かったからそのままにしていたけど…いずれ、シンクやバスルームも変えてしまうんじゃないかと思ってしまう。

 

「早いね…どうしたの?」

 

「ええ、ちょっと早く目が覚めてしまいまして……」

 

「そう……」

 

時々ある、意味もなく早く起きてしまうアレだろうと思い、私は汗を流すべく、バスルームに向かう。

 

「ですから、今朝は自分でお弁当を作ろうと思いますの。

いのりさんのも作りましょうか?」

 

せっかくセシリアが作ってくれる…これを断るのは野暮と思い、返事をする。

 

「じゃあ…お願い。」

 

「分かりましたわ、お昼を楽しみにしていてくださいね!」

 

後にこれを後悔するなんて思ってもいなかった…

 

 

___________________________________________

 

朝のHR。

今日は普段と少し違った。

 

「今日は転入生を紹介する。」

 

織斑先生の一言にクラスがざわめく。

 

「えー、転校生?誰だろ?」

 

「この時期って…なんかタイミング外れてない?」

 

 

 

「ボーデヴィッヒ、デュノア、入って来い」

 

そして廊下から入ってくる二人の生徒。

一人は銀髪の小柄な子。

もう一人は金髪のボーイッシュな子。

 

「シャルル・デュノアです。

フランス出身で二人目の男子操縦者といことで編入されました。

皆さん、よろしくお願いします」

 

金髪の子が笑顔でそう言った。

……男子?

 

 

「だ…」

 

「だ…」

 

「「「「「「「男子ィィいいいいィいいいい!?」」」」」」」

 

クラスが騒然となり、うるさくなる。

 

「ちょ、二人目の男子って!」

 

「金髪の王子様系男子!! ヤバイ、お姫様抱っこされたい!」

 

「一夏×デュノア……いや、デュノア×一夏も……グフフフ」

 

 

…想像以上にカオスになっていたのかも。

 

「お前ら、少しは静かに出来んのか…次、ボーデヴィッヒ」

 

「ドイツ所属、ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「「「「……」」」」

 

ボーデヴィッヒの次の言葉を待っていると…

 

「以上だ。」

 

ズドドドッ!

 

一夏の時みたいにクラスの皆がコケた。

 

と、ボーデヴィッヒが一夏の前まで行く。

 

「お前が…教官を…」

 

「な、何かな?」

 

次の瞬間、一夏は平手打ちをボーデヴィッヒから食らっていた。

 

 

 

_____________________________________

 

その後の休み時間。

 

一夏は涙目で頬を撫でていた。

 

「イテテ……なんだよアイツ、いきなり叩きやがって…」

 

「大丈夫?」

 

デュノアさんが一夏の頬を心配そうに見る。

 

「あ、ああ。大丈夫。」

 

「そう…」

 

と、今度はこっちを見た。

 

「えーと…楪いのりさん…だよね?」

 

「うん…」

 

「これからよろしくね。あ、デュノアとかの他人行儀じゃなくて名前呼び捨てで全然構わないからさ」

 

「よろしく…シャルルさん」

 

そうして私はシャルルさんに微笑んだ。

 

_______________________________________

 

お昼休み。

いつものメンバー+シャルルさんで食事を取る。

でも、今日はセシリア特製ということで私の分はセシリアが持っている。

 

「へえ、今日はセシリアがいのりさんのもつくったのか」

 

「ええ、今日のは私の得意料理でしてよ?」

 

そうしてバスケットを開ける

 

「おお~」

 

「…美味しそう」

 

中身は色とりどりの具がサンドされたサンドイッチ。

綺麗に詰められ、見るからに美味しそう。

 

「じゃあ、ちょっともらっていい?」

 

「ええ、どうぞ」

 

一夏がサンドイッチを一つ取る。

 

「いただきます」

 

思い切りかぶりつく。

 

と…一夏の様子がおかしい。

汗が吹き出し、心なしか顔色が青くなりつつある。

 

「どうですか?」

 

「う、うん。旨いよ」

 

顔面蒼白で一夏が答える。

その時点で、私の脳内サイレンが鳴り渡る。

 

これはヤバイ。

食べるなと。

 

でも、昼食はこれだけ。

今から購買に行く隙はない。

 

次にシャルルが取る。

 

「じゃあ僕も頂くね。あむっ」

 

と、シャルルは瞬時に口を抑えた。

 

「あら?どうしましたの?」

 

『ふぁ、ふぁいりょうふ! ほほひしゃるふひゅはっははけらはら!(だ、大丈夫!喉に軽く詰まっただけだから!)』

 

シャルルさんも必死に堪える。

 

…これはどうも逃げられないみたい。

 

「いのりさんもどうぞ」

 

差し出されるバスケット。

私はそれを、手に取り、食べた。

 

 

 

集…私…もうダメかも。

 

 

そこから私の記憶は休み時間終わりまで途切れている。

 

______________________________________

 

 

 

 

放課後、アリーナ。

 

私はセシリア、一夏と日課の訓練を始めていた。

 

一夏はこの数週間でメキメキと技術を吸収し、高機動での近接戦は完全に習得していた。

とはいえ、対遠距離機戦は未だに対応が取れず、撃墜判定をもらい続けている。

更に、近接戦を習得したとはいえ、雪片弐型をを扱いきれず、押し負ける事も多々あり、剣術と戦略面はまだまだと言えた。

 

そんな時、アリーナにIS姿で出てくる者がいた。

 

「あれ、織斑君達何やっているの?」

 

「訓練さ。俺はまだまだ未熟だからな。」

 

「へえ、じゃあ今は忙しいかな?」

 

「あ、いや大丈夫。何ならシャルルも入るか?」

 

「え、いいの?」

 

「戦う相手は多いほどやりがいはあるからな」

 

「言うね。僕も簡単には負けないよ?」

 

ちょっとした雑談で挨拶代わりにしていると、他の所で訓練している生徒の声が聞こえてきた。

 

「え、あれってシュヴァルツァ・レーゲン?」

 

「ドイツの第三世代IS?もう出来てたんだ…」

 

向くと、ピットから出てくる黒い機体。

所々、赤いラインがあり、肩には巨大な砲門。

私にはそれがエンドレイヴのゴースト部隊の機体と重なって見えた。

 

無機質に死を与える、無人エンドレイヴ。

その空気がボーデヴィッヒさんから出ていた…気がした。

 

「……フン」

 

カタパルト端に居たボーデヴィッヒさんは、肩の砲門を展開、砲口を一夏に向けてきた。

 

「っ! 危ない!!」

 

発射される音速の弾丸。

それが一夏に着弾……しなかった。

 

「いきなり撃ってくるなんて…ドイツ人は頭の沸点が低いのかな?」

 

シャルルさんが実体盾で弾丸を防御していた。

 

「貴様…私の邪魔をする気か?」

 

「問答無用で撃ってくるヤツなんかにやらせたくないからね」

 

「いいだろう…お前から潰してやる」

 

ボーデヴィッヒがグラウンドに降りると、シャルルさんを見据えた。

まさに一瞬即発。

どっちが先手を出すかと思っていると…

 

 

『そこの生徒!!何をやっている!!』

 

響き渡る声。

 

どうやら巡回の男性教師の声のようだ。

 

「チッ…仕方ない。

今日の所は見逃してやる。」

 

そう言ってボーデヴィッヒはピットに戻っていった。

 

「ふう…それにしても、一夏君なにかやったの?」

 

「いや…俺、何か気に障らせちゃったかな…?」

 

そうして頭を掻いた。

 

私は、ボーデヴィッヒが一夏への態度とさっきの事態を見て、少し得も言えない不安がよぎっていた。

 





艦これイベしていて、たまに艦これのも書きたくなっています。
しかし、ストーリーが思い浮かばん…っ!

何はともあれ、ようやくヒロイン全員出場。
え、楯無さん?
…知りません(目を逸し

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Ex1:EGOISTライブ

どうも。
EGOISTの東京ライブで感動しまくってきたシャムロックです。
今回はライブの影響で少し本編をはずれた内容です。




私がEGOISTとして軽音楽部で活動する前、有名になったきっかけであるミニライブ。

 

それは小さくやるつもりで1曲だけの予定だった。

これは、そんな時に起きた出来事。

 

 

______________________________

 

 

視聴覚室

 

「…よし、機材の設置完了!

いのりちゃん、そっちはどう?」

 

「…大丈夫です。マイクは正常に使えます。」

 

視聴覚室を借りてやったゲリラライブ。

部屋の使用許可は事前に申請してあったけど、告知はせずに当日まで秘密にしていた。

京子部長いわく、1曲だけならあまり集める意味はないと言っていた。

そんなことで、当日の昼に数枚のチラシを廊下に張り出すだけだった。

 

 

 

結局、聞きに来た人は数人。

でも…

 

「ん~、まあこんなもんだよね。

うん。今回はあくまで練習だから空気慣れしとかないとね」

 

って、京子部長は言っている。

 

 

開始時間。

 

「じゃあ、始めよっか?」

 

「はい」

 

そして演奏が始まる。

 

ギターの音色。

そこからドラムの音が加わり、イントロが完成する。

 

「…突然降り出した雨

土煙をあげて

この街に落ちてきた…」

 

 

『雨、キミを連れて』

 

元の世界で発表までには至らなかった曲。

 

私と集の思考、思惑がズレ続けた頃に思いついていた曲。

それをここに来てきちんと作曲、作詞して完成した曲。

 

「…途方にくれる世界の隅っこ

小さなトンネルに閉じこもって

ついたため息 あくびで答える

キミの手を強くぎゅっと握った…」

 

集が自分の殻に閉じこもって出てこなかった始めの頃。

どれだけ私が居ても出てきてくれなかった…

 

「…当たり前の言葉が欲しくって

わからずや キミは臆病者

私の気持ちなんか知らないで

もっと強く

その手で握りしめて…」

 

私の想いを殆どダイレクトに綴った歌詞。

本当は集と居たい。それもお互いの体をくっつけるくらいに居たかった。

でも…結局、集は気づいてくれなかった。

 

 

「…ゆるく繋いだこの手

降り止まないこの雨

途方にくれた二人

小さなこのトンネル

キミの顔を見上げて

見つけたこの感情

頼りなくて温かい

遠くで轟く雷が

キミの手を強くぎゅっとさせた…」

 

集がだんだん私に歩み寄ってくれた時。

集は私を信頼してくれた。

そして、守ってくれていた。

でも、私が求めた言葉は出てこなかった。

 

「…世界がモノクロのまま走る

増してく激しさ 二人ぼっち

言葉探し またため息をついた

わからずや キミは臆病者

私の気持ちなんか知らないで

もっと強く

その手で握りしめて…」

 

集が私に好意を抱いていることは自分でも分かっていた。

でも、集は私に必要以上に言葉を発しなかった。

…やっぱり臆病者だったのかな…?

 

「…もっと強く

その手で握りしめて

 

その手でもっと握りしめてよ」

 

私の一番の願いであり、集に求めたこと。

離れ離れにならないくらい、一緒に居たかった。

 

でも…今は…。

 

 

 

「…すごい」

 

え?

 

 

観客でいた女子が目を丸くしていた。

 

「ねえ、キミ何処の所属!?」

 

その女子がいきなり問い詰めるように聞いてきた

 

「…一年一組 楪いのりです」

 

「そっか…キミがあの…」

 

女子はなにかブツブツ言っているけど…

 

「あ、ごめんね。

私、2年、整備科の黛 薫子。

新聞部に入っているんだ。

普段、ライブなんてやらない部活がどういう吹き回しと思って来たら…とんだ特ダネね」

 

そんなことを言っていると、視聴覚室の扉がにわかに騒がしくなった。

 

「ねえ、さっきの歌ってキミが歌ったの?」

 

「へー、ライブなんてやっていたんだ。

え~とイス、イスは…」

 

ぞろぞろと入ってくる生徒たち。

視聴覚室は防音のはずなんだけど…なんで?

 

「あ」

 

不意に京子部長が声を上げた。

 

「ゴメン。窓一個閉じるの忘れてた。」

 

見ると引いたカーテンの一部が小さく揺れている。

換気のために開けて、そのままみたい。

 

「いい歌だったよね~」

 

「遠くからいい声が聞こえてきて、つい来ちゃった」

 

皆、ライブを聴きに来たみたい。

とはいえ、今回曲は1曲のみ。

どうしよう…

 

「いのりちゃん」

 

困っていると、京子部長が声をかけてきた。

 

「これ、使っていいよ」

 

渡してきたのは、原曲のデータチップ。

練習と、リズム把握にと渡したもの。

 

「もう、ここでいのりちゃんの歌を知ってもらうチャンスだと思うの。

だから、歌ってもらえない?」

 

「…はい」

 

どちらにせよ、もう後戻りは出来ない。

なら、私は今できることをやるだけ。

 

データを選択して、セットする。

 

 

--・-・ -・・-- ・・- --・-- ・- --・-・ ・-・-- -・--・

 

いきなり流れるはモールス信号。

ここに私の想いを埋め込んだ。

意味は『集、愛してる』

モールスを使ったのは、私が自分の口で集に告白することが出来なかったから。

せめて、何かの記録としておいておきたい。

そんなことから思いついた。

 

『Planetes』

 

私がここに飛ばされてから作った曲。

ここにはいない集へ会いたい気持ちを綴った曲。

 

「…静かの海に一人

拾った貝殻耳に当てた

じっと耳を澄ませば

ほら

聴こえてくる

君のメッセージ…」

 

幻想でも、集への思いが伝わるように、私へ集の思いが伝わるように、と思った日々。

それは、辛く、悲しい日々。

 

「…言えなかった想いを

砂に書いては

波がさらってゆく…」

 

どれだけ、集への思いを連ねても、それは徒労になるだけ。

それでも思わずには居られない。

それだけ、私が集を愛しているのだから。

 

「…Hello Hello

ここにいるよ

この物語の始まりの場所で

約束だけが繰り返しても

あなたの記憶に私はずっと生きてる…」

 

私という存在が居なくても、集の記憶には私が居続ける。

そんな、願望じみた歌詞。

私は、あの時、集を救った時から私の本当の物語は振り出しに戻っている。

それを戻すには戻るしか無い。

その時までは、私の存在は集の記憶のなかで生き続ける。

 

「…私は宇宙から流れ

この物語の始まりの場所へ

その時再び会えるだろう

あの青い地球であなたに辿りつくから」

 

私が集の元へ戻る思いを綴る歌詞。

集と再会した時、どんな顔をするだろう?

でも、それがどんな顔でも私の物語は再び進み始める。

 

…集と会う、その時まで私は始まりに居続ける。

 

 

 

 

歌い終わった時、観客は鎮まりかえっていた。

 

「す…すごい…」

 

「私達が聞いていた歌って一体…」

 

「これは…素晴らしいですわ」

 

徐々にざわつき始め、駆け出していく。

でも、みんな出て行く時に決まってこう言っていた。

 

『ありがとう』

 

何故、お礼を言われるのかわからない。

 

「あなたが目を覚まさせたからよ。」

 

黛先輩が来る。

 

「ISの出現で音楽も随分変わってね。

男より女ウケする曲ばかり作られてるの。

 

その結果、ハッピーエンドな曲ばかりが乱立。

楪さんのような悲恋歌は少ないの。

 

それに…いのりさんの歌は、心に直接届くような歌だからね。

それが彼女達に響いたのじゃないか?」

 

「私の…」

 

「…ねえ、私の取材受けてみない?」

 

「え?」

 

「楪さんの歌、置いとくには惜しいもの。

宣伝して、楪さんの歌をもっと広めたいの。

だらけきった今の音楽業界に楔を撃てるかもしれないの。」

 

私の歌が…そう。

 

「…分かった」

 

「ありがとう!

それじゃ………」

 

こうして、黛先輩の新聞に私が取り上げられ、視聴と来た人に歌い、その人気がさらに上がると、私達の部は学園でも有名な存在になっていった。




生で聴く声はやっぱり違いましたね。

書きながらEGOIST聞いてると涙腺が…


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11:拡張領域


今回はいのり成分少なめです。
いわば準備回ですね。


ボーデヴィッヒと私達との衝突の翌日の放課後。

私達はいつもの様にアリーナに居た。

一夏はセシリアと対遠距離戦の訓練。

私はシャルルさんが私のISと射撃に興味があるみたいで、射撃訓練をすることに。

 

「じゃあ、30秒でいい?」

「うん」

「じゃあ、始め!」

 

アリーナの一角に展開される的。

私はそれをハンドガンで見る間に打ち抜いていく。

ヘッドショットをするより遥かに簡単。

 

「そこまでっ!

…63って…」

 

結果にシャルルさんの顔が引きつる。

…すこしやり過ぎた?

 

「どうやったらそんなに撃てるの?

ハンドガン2丁でなんて僕にはとても…」

「リロードのタイミングとエイミング…。

ISのセンサーを使えば大分楽…かな」

「それでもそこまでの早撃ち、僕には真似出来そうにないよ…」

 

シャルルさんが項垂れる。

 

「でも…」

「でも?」

「やっぱり、対IS戦だと…少し火力不足…」

 

そう。

強固なエネルギーシールドに装甲。

スラスターを活かしたIS戦において、このハンドガンは火力不足を私は感じていた。

ただの兵士ならヘッドショット1発で終わる。

でも、IS戦ではあまり意味がない。

IS戦に求められるのは継続できる高火力と戦術。

だからハンドガンだと、あくまで牽制にしかならなかった。

 

「うーん…いのりさんのISって拡張領域が結構あったよね?」

「うん…」

「そこにアサルトライフルとか、グレネードを入れればいいんじゃないかな?」

「でも…どうやって手に入れれば…」

 

葬儀社みたいに涯や、メンバーが確保してくれるわけじゃないこの世界では武器の取得にも困っていた。

整備は幸い、学園がやってくれているけど、武器やオーバーホールをするとなれば、何処かの本格的な整備所や支援が必要。

…束さんに頼めばやってくれるかもしれないけど、いちいちそんなのを頼むのは心苦しい。

 

「…じゃあ、僕の国にあるIS関連会社のを使ってみる?」

「…いいの?」

「うん、そこはISのパッケージとか武器も売っているからどうにかもらえると思う」

 

どうしよう…

ISについて勉強して得た知識だと、ISは各国に所属しているのが原則。

私みたいな番外個体は何処にも所属していない。

今のところはIS学園所属ということになっているみたいだけど、いずれ何処かに所属するかもしれない。

そこにフランスの会社から武器を買っているからとか何とかでフランスに強引に引き込まれる可能性もある。

GHQがそうであったように、こういうのはどこも強引な手を使ってでもやるのは明白だった。

 

「うーん…やっぱり、遠慮しておく…。」

「そっか…じゃあ、しばらく僕の予備の武器を貸してあげる」

「いいの?」

「うん、グレー・スケールのは無理だけど汎用武器なら予備があるからね」

 

そう言いながら、シャルルさんはISのモニターで色々操作をする。

 

「…はい。ひとまず基本的な兵装の共有を許可したから渡すね」

 

そう言って武器をどんどん出してくる。

アサルトライフル、サブマシンガン、グレネードランチャー、物理シールド…etc.

それらをISに格納すると、シャルルさんが告げる。

 

「僕やいのりさんは決定打になる武器が少ない。でも、いのりさんがやっているみたいに戦術次第でどうにでも出来る。

それがこれらの持ち味だと思うんだ」

 

確かに、私がハンドガンで多くのアンチボディズと対峙したように、涯がハンドガンでゴーチェに挑み、勝ったように、私達が使ってきたものは殆どが型遅れか心もとない物だった。

でも、それを補うのが私の身のこなしや涯の戦術。

少ない戦力や火力でもアンチボディズに挑めたのはそれらに寄るものが大きい…。

 

「そう…だね」

「だから、僕はいのりさんの戦い方には注目しているんだ。

…いつか、父さんにちゃんと会いたいし…」

「え?」

 

後半の言葉は小声で上手く聞き取れず、思わず返してしまう。

 

「あ、ううん。何でもない…そろそろ戻ろっか?」

「う、うん…」

 

そうして私達は各々、ピットに戻っていく。

因みに…一夏はセシリアにビットでブースターを狙われて落ちていた。

 

「メインブースターがイカれた!?

狙ったか、セシリア!」

「私の華麗なる攻撃の結果ですわ!」

 

 

_______________________________________

 

数日後、私と一夏は、シャルルさんでアリーナに向かっていた。

 

「うーん。やっぱり白式、燃費悪すぎじゃない?

これじゃ、継戦能力ガタ落ちじゃないかな?」

「そうなんだけど…俺に整備なんか出来ないし、開発元の倉持はデータが足りないってんで駄目だったし」

「う…やっぱり初の男子操縦機だとノウハウとかが違ってるのかな…?」

「かもなぁ…」

 

一夏とシャルルさんで話しているとアリーナに着く。

更衣室に向かうため、通路を歩いていると他の生徒の声が聞こえてきた。

 

「ちょ、ちょっと…やり過ぎじゃない?」

「う、うん…あれ、ちょっとヤバくない?」

 

なにか緊迫した空気を感じて、私達もアリーナの様子を見に観覧席に行く。

 

 

そこには

 

 

ボロボロのISを纏ったセシリアと鈴さんが居て

 

 

ボーデヴィッヒが二人を滅多打ちに殴っていた。

 

「酷い…あれじゃ、ISのエネルギーが持たない!

そうなれば、命に関わる!」

 

シャルルさんが危惧する。

 

 

「その手をどかしやがれェええええええええ!!!」

 

 

 

 

一夏が激昂して白式を展開し、零落白夜でドームシールドを切り裂いて進入路を作る。

そのまま一夏は先行してボーデヴィッヒに突っ込んでいく。

 

「いのりさん!僕達も!」

「うん!」

 

直ぐに私達もISを展開して侵入する。

でも、目の前の一夏はなぜか途中で止まっている。

 

その一夏に向けてボーデヴィッヒが右手を向ける。

 

「させない!」

 

私とシャルルさんが突っ込みながらランスビットとショットガンを発射。

ボーデヴィッヒの右手を弾くかと思ったら…

 

「…フン」

 

ランスビットとショットシェルの子弾がある位置で止まってしまい、動かなくなる。

 

「クソッ!」

 

その間に一夏が動けるようになり、距離を取る。

 

「お前たち、なんの様だ。」

「その状況で私達が出てきたのが分からない?」

「…フン。いいだろう、お前たちから潰してやる」

 

完全にこちらを向き、対峙する。

そのまま戦闘が始まると思い、身構えていると…

 

 

ズドォ!

 

 

何かがピットから飛んできて私達とボーデヴィッヒの間に突き刺さる。

 

「っ!何だ!?」

 

一夏が驚いて見ると、実体のIS刀だった。

 

 

「お前たち、どういうことか説明してもらおうか」

 

響き渡る声。

黒のスーツを着た女性。

 

織斑先生だった。

 

「ち、千冬姉!?

生身でアレを投げたのか!?」

「織斑先生と言え!」

 

確かに、IS刀はそのままでは生身では両手で持ち上げるのがやっとの言わば、バーベル。

それを投げて、それをここまでの威力にするなんて…常人には無理なことぐらいわかる。

織斑先生…どこまで身体能力高いんだろ…。

 

「やれやれ…これだからガキの相手は疲れる…

模擬戦をやるのは構わん。

だが、ドームシールドを破壊するような事態は黙認出来ん。

何があったのか知らんが、決着は後日の大会でやってもらおう。

いいな?」

「教官がそうおっしゃるのなら」

 

ボーデヴィッヒが素直にISを解く。

 

「織斑、楪、デュノア。お前たちもそれでいいな?」

 

「あ…ああ」

「教師には『はい』と答えろ、馬鹿者」

「は、はい…」

 

「分かりました…」

 

「僕も依存は有りません」

 

「では、学年別トーナメントまで一切の私闘を禁止する。解散!」

 





次回から色々原作から逸れていくと思います。
箒の出番ェ…


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12:似た者同士

お待たせしましたああああ!
そろそろ部屋がいのりグッズでやばい筆者です。

ようやく書き上がりました…
今回は戦闘回ですが…描写力を下さい(切実)



保健室。

あの後、気絶しているセシリアと鈴さんを一夏と運び込んで寝かせている。

 

二人は表情こそ穏やかに寝ているが、その頬や手には傷の手当がされていた。

そんな二人の顔を見ながら私はさっきの戦闘を思い返す。

 

(あの時、私のビットとショットシェルが止まっていた…

…物体を停止させる能力か…。

となると、コレに対抗する戦闘プランは…)

 

ボーデヴィッヒのIS能力は単純に物体を停止させる能力。

でも、それは近接戦が主になり、1対1のIS戦では厄介な能力。

それでも、私はそれに対抗するプランを今までの経験から導きだそうとしていた。

と…

 

「いのりさん、二人はどう?」

 

一夏が入ってきた。

 

「手当ては終わった…。

ひとまずは大丈夫。」

「そうか…よかった」

 

一夏が安堵した。

でも、気になる事が…

 

「でも、なんでラウラは二人をあんなに攻撃したんだろ?

普通、あんなになるまでやるなんてどうかしているよ」

 

今度はシャルルさん。

…思ってたこと代弁してくれた。

 

「あ…アイツが…」

「私達を…挑発して…きたのですわ…」

 

唐突な声。

振り返ると、セシリアと鈴さんが目を覚ましていた。

 

「おい!無理すんな!」

「この程度…怪我の内には…」

「そうよ…アイツを…1発殴らなきゃ…気がすまないわ…」

 

一夏が慌てて制するけど、二人は無理に起きようとしていた。

と…

 

ドドドドド…

 

 

「?」

何かが集団でこっちに来るような音がする…?

 

「「「「一夏君!!」」」」

「「「「デュノア君!!」」」」

 

「「はっ、はい!?」」

 

大勢の女子が保健室に詰めかけてきた…

 

「「「「「「私とタッグ組んで!!」」」」」

「「はあ!?」」

 

タッグ?どういうこと?

 

「「「「「「これ!」」」」」

 

一気に出される一枚の紙。

それは学年別トーナメントの要項。

その最後にこう書いてあった。

 

『ただし、今年度は二人一組でのトーナメント戦とする。』

 

…なるほど。

これは彼女達が詰めかけるのも無理無いかな…

 

「あー…えっと…」

 

一夏は視線があちこち泳ぐ。

と、視線がこっちに向いた?

 

「ゴメン!俺、いのりさんと組む事になっているから!」

 

……え?

 

「うーん…そっかあ…」

「まあ…普段から一緒に訓練してるしね…」

 

「じゃあシャルル君は!?」

 

「ゴメンね。今回はラファールの換装パッケージのインストールと調整が被ってパスなんだ」

「うー…」

 

そう言うと女子たちは項垂れて出て行った。

 

「えっと…タッグ…本当に組むの?」

「ああ言っちゃったし…ゴメン!頼める?」

「いいけど…」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

「私達だってまだやれま「それは無理です」っ!?」

 

今度は山田先生が入ってきた。

 

「あなた方のISのダメージレベルはD。

どう考えても修復に数週間はかかります。

よって、今回のトーナメント出場は認められません」

 

「う…」

 

セシリア達が項垂れる。

 

「心配すんな。俺達が敵を取ってやるから!」

 

「仕方有りませんわね…」

 

「頼んだわよ…一夏!」

 

「ああ!」

 

 

________________________________

 

その日の夜。

 

夢を見た。

 

 

何もない暗闇。

そこから声がする。

 

 

______ねえ、完璧なものって何?

 

 

完璧なもの?

 

______そう。完璧なもの。

 

…分からない。

 

______フフッ。誰かはこう言ったわ。『まあるい円こそが完璧なもの』って。

 

円…?

 

______笑っちゃうわよね。『結局、その円も無数の点と線の集まりでしか無い』のに。

 

…どういうこと?

 

______この言葉の意味、自分でよく考えなさい…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…」

 

光。カーテンから漏れる光。

 

朝。

 

「まあるい円…」

 

夢の中の会話を思い出す。

 

完璧なもの。

円も完璧じゃない。

じゃあ、本当に完璧なものは?

 

考えても答えは出なかった。

 

 

________________________________________

 

数日後。学年別トーナメント当日。

 

私と一夏は控室で打ち合わせをした後、モニターを見ていた。

 

「ラウラは箒と組んだそうだ。箒には悪いが、何としても敵は取らないとな。」

「うん…」

 

『それでは、これよりトーナメント表を表示します』

 

トーナメント表が出る。

そこには、

 

「うそ…だろ?」

「…」

 

第1回戦

楪、織斑ペアvsボーデヴィッヒ、篠ノ之ペア

 

 

いきなり当たっていた。

 

 

_________________________________________

 

アリーナ

 

「ほう、よく逃げなかったな。

あのまま逃げ出すかと思っていたがな」

「ここまで特売された喧嘩は無いからな。

買わせてもらったぜ。」

 

フィールドで私達は対峙する。

片や、シュヴァルツァ・レーゲン駆るボーデヴィッヒ。

片や、打金駆る篠ノ之さん。

 

性能差、コンセプト共に相性が悪い機体達。

恐らく、ボーデヴィッヒは連携無視の単独戦闘を行うつもり。

連携を怠れば、内側から部隊は瓦解する。

でも、向こうにはAICやワイヤー等の中距離以降の武装があり、こっちは私のビットとシャルルさんから借りた火器が幾つかだけ。

でも、勝てない戦いじゃない。

 

それに、向こうは一夏に目が行ってる。

すなわち片方の戦闘には介入する事が少ないと言うこと。

つまり、どちらかの戦闘決着が片方の決着も左右するということ。

方針は決まった。

 

「一夏、ボーデヴィッヒをお願い。

私は篠ノ之さんをやる。」

「大丈夫か?」

「うん…すぐ終わらせるから…」

 

そして鳴り響くブザー。

戦闘が始まる。

 

 

 

 

「行って…ビットッ!」

 

開幕からランスビットを飛ばし、篠ノ之さんに攻撃を仕掛ける。

明確な対象攻撃で分断させようと思ったのだけど…

 

「邪魔だ」

 

ボーデヴィッヒがワイヤーで篠ノ之さんを掴み、後ろへ投げやった。

 

「ぐっ!?」

 

そのまま篠ノ之さんは放っておかれ、ボーデヴィッヒは私達にワイヤーを数本飛ばしてくる。

 

「クソッ!仲間意識も無いのかよ!」

「一夏!手筈通りに!」

「ああ!」

 

一夏がAICの範囲に入らないよう飛行しながら離れ、私は篠ノ之さんの所へ向かう。

 

「はぁっ!」

 

態勢が崩れている隙を狙ってバスターブレードを振る。

 

「くっ!」

 

篠ノ之さんはすぐにIS刀でガードし、後ろに下がる。

 

「当たって!」

 

ランスビットを再度飛ばしつつ、正面から大上段から斬撃を叩き込む…けど

 

「ふっ!」

「!?」

 

ランスビットは最低限の動きで回避され、バスターブレードはIS刀でいなされ、逆に斬撃を食らう。

 

「悪いが…刀では負ける訳にはいかないのでな」

 

ここで思い出す。

篠ノ之箒は中学時代、剣道全国優勝していることを。

いくらIS適正が低くて、専用機持ちでないから細かい動きは出来ないとはいえ…剣術ならその動きは高いレベルに到達出来る。

 

ターゲットのプロファイリングとIS適正の関連を考えなかったミスに悔やむ。

でも…

 

「だったら…」

 

ランスビットを呼び戻し、ブレードの代わりにハンドガンをコールする。

たとえ近接がダメでも…そのリーチ外からやればいい。

 

「行くよ…篠ノ之さん!」

 

ハンドガンを連射し、突撃する。

 

「くっ!?」

 

そのままでは回避される。

でも…

 

「ぐあっ!?」

 

ランスビットがその進路に展開し、ダメージを与えんとする。

ランスビットで姿勢が崩れた所に一気に踏み込み、右手の武装を変える。

 

「当たって!『レイン・オブ・サタデイ』!」

 

シャルルさんから借りた連装ショットガン『レイン・オブ・サタデイ』

中身のシェルはバックショット弾。

大量の子弾が大量に吐出され、それが全て篠ノ之さんのISに直撃する。

 

「くそっ!まだだ!」

 

破れかぶれに出した篠ノ之の攻撃。

私はそれを…

 

「…私はこっちだよ?」

 

さっきまで居た場所の反対側、つまり篠ノ之さんの後ろに回っていた。

 

「なっ!?」

 

やったことは簡単。

ただ、足のスラスター全開で上昇し、空中で転回して立っただけ。

地上戦という事に頭を取られ、アクロバットな動きはしないという考えを逆手に取っただけ。

 

「…ごめんね」

 

マガジン最後の弾を撃って篠ノ之さんのシールドエネルギーは0になった。

 

 

 

___________________________________________

 

「一夏は…?」

 

篠ノ之さんがダウンし、ボーデヴィッヒと交戦している一夏の様子を見ると…

 

「クソッ!」

「ようやく捕まえた…さて、どうされたい?」

 

一夏がAICに捕まっていた。

 

「一夏!」

 

ランスビットを撃ち、ハンドガンも撃ってボーデヴィッヒの気を引き付ける。

 

「フン…もう来たか」

 

ビットと弾はAICに阻まれて届かない。

と、同時に一夏の捕縛が解けて離脱する。

 

(持続じゃない? …まさか)

 

一つの疑問が浮かぶ。

ボーデヴィッヒがこちらに反応したと同時にこちらにAICがかかり、一夏はAICが解けた。

つまり、AICは一方向にしか使用できない?

それが事実なら、AICは多対一には不利なスキルとなる。

私はランスビットをボーデヴィッヒの後方左右から撃ち、正面からショットガンを撃つ。

 

「ちっ!!」

 

するとボーデヴィッヒはAICを使わず、身を捩って回避する。

間違いない。

AICは特定方向にしか使えない。

なら、やることは単純。

私が全方向から攻撃を加え、AICを封じて一夏の零落白夜を当てさせる。

 

ランスビットを多角的に動かし、ボーデヴィッヒの回りを封じさせ、ショットガンでさらに動きを封じる。

ショットシェルを止めればランスビットが当たり、ランスビットを止めればショットシェルともう一つのランスビットが襲う。

 

「ぐ…。調子に乗るな!!」

 

ボーデヴィッヒが全てのワイヤーブレードを展開、急速回転して刃の渦を作りビットとシェルを無理やり吹き飛ばす。

でも、その行動が命取り。

 

「しまっ…!?」

 

一夏が後方から瞬時加速を使ってボーデヴィッヒに肉薄。

零落白夜を叩きつける。

 

「これで、終わりだ!!」

 

ブザーが鳴った。

 

 

___________________________________________

 

「一夏、お疲れ様。」

「ああ。サポート助かったぜ。あと少し来るのが遅かったらやられてたかもな…」

 

一夏と合流し、互いに労う。

初戦で立ちはだかった壁だけど、なんとか突破出来た。

このまま行けば…

 

と…。

 

「ああああああああああああああああああああああああっっっっっ!!」

 

ボーデヴィッヒの悲鳴が響く。

 

「何だ!?」

「何!?」

 

ボーデヴィッヒのISからスパークが走り、次の瞬間にはISそのものが溶けて黒いゲル状となってボーデヴィッヒを飲み込んだ。

 

「一体…何が…」

 

警戒しているとサイレンが鳴り響いた。

 

『緊急事態発生。状況をレベルDと断定。全てのトーナメントを中止し、生徒は直ちに避難を。教師部隊は至急急行せよ。

繰り返す…』

 

アナウンスと同時に全てのシェルターが閉まる。

ここに残ったのは試合をした三人と…ボーデヴィッヒを飲み込んだアレだけ。

 

ゲルは徐々に形を作り、やがてマネキンのような容姿のISを作った。

 

「何なの…?」

「アレは…っ!」

 

見ると一夏が怒りの表情で居た。

そして、一人で不明ISに突っ込んだ。

 

「このォおおおおおおおおおお!」

 

雪片を振るうも不明ISの刀に弾かれ、取り落とす。

 

「グッ!?」

 

そして、不明ISが二の太刀で一夏を斬ろうとした。

 

「一夏!」

 

すぐに瞬時加速を使用。

バスターブレードでそれを受け止める…でも…

 

(重い…っ!)

 

ただ受け止めただけなのに全身の骨が軋み、悲鳴をあげる。

2撃目は耐え切れないと判断して一夏を抱えて後ろに素早く下がる。

 

「一夏、どうしたの!?」

「あれは…千冬姉の動きをトレースしていやがる!」

「だからって、一夏がやる必要は…」

「あの太刀筋と技は…千冬姉だけのものなんだ!」

 

一夏は織斑先生の技をマネするアレを討ちたいと言っている。

つまり、敵討みたいなもの。

本当なら、リスクを考えて下がるべきなんだろうけど…。

 

「…分かった。手伝う。」

「え?」

「どちらにせよ、一人で行ったんじゃ同じ結果。

なら、私がバックアップする。」

「…ああ!頼む!」

 

再び一夏が立ち上がり、雪片弐型を拾って構える。

私も、バスターブレードを構え、不明ISに対峙する。

 

「一夏…」

「え?」

「私のワンオフアビリティ…使わせて。」

「え!?」

「あの剣を止めるにはそれしか無い。

そしたら、一夏が懐に飛び込んで。」

「でも、あれは…」

「大丈夫。今度は見失わない。」

「…分かった。」

「ありがとう…」

 

ワンオフアビリティ ノゥネームモンスター起動。

ISが形態変化し、デュアルブレードに変化する。

 

私が走りだすのと、不明ISが動くのは同時だった。

 

「はあああああああああああっっ!!」

 

デュアルブレードを交差し、太刀を受け止める。

今度は…行ける!

 

「そこっ!」

 

左ブレードを動かし、太刀を持つ手を貫き、太刀を落とさせる。

 

「一夏!」

「了解っ!」

 

すぐに一夏が踏む込み、零落白夜で振り下ろす。

 

「はあっ!」

 

袈裟斬りにすると、ISはスパークを発しながら溶け、切れ目からボーデヴィッヒが抜け落ちてくる。

ただ…その一瞬、ISが崩れ落ちていく時、私の意識が別の視界をとらえた。

 

最初から兵士になるために作られ、兵士になるために叩きこまれた日々。

ISの台頭。

転換試験での不適合。

出来損ないの烙印。

 

その風景が一瞬で頭をめぐり、私に確信させる。

これは…ボーデヴィッヒの記憶。

私は…事情を知ってしまった私は、一つやりたい事が出来た。

 

 

______________________________________

 

夕方。保健室。

 

ボーデヴィッヒがここで寝ていると聞いてやってきた。

扉を開けようとしたら…

 

「なんだ。楪か。」

 

織斑先生が出てきた。

 

「大方、ボーデヴィッヒに用があるんだろう?」

「はい…」

「…ま、大丈夫だろう…」

「え…?」

 

よくわからない意味深な言葉を残して去っていった。

 

 

 

ボーデヴィッヒがいるベッドに向かう。

 

「なんだ。誰かと思ったらお前か。」

 

相変わらずの上から口調。

体調は悪く無いみたい。

 

「…済まなかった。知らずとはいえ、あんなものを呼び出してしまうなど…」

 

うつむき加減にボーデヴィッヒが謝った。

 

「仕方ないよ…。あなたの事情からすれば、それは当たり前。」

「私の過去を知ったような口だな?」

「あの時、あなたの過去が見えたの。」

「!?」

「それで…一つ話したい事があって…」

「話…とは?」

「私も…あなたと似た存在ということ」

「ッ!?」

 

ボーデヴィッヒが驚きの色になる。

 

「私は…ある計画の素体として造られた。」

「本当なら、そのまま私は塗りつぶされてしまっていた。でも…ある人が、私を救ってくれた。」

「ある…人?」

「その人は私に世界を見せてくれた。歌を教えてくれた。そして…恋を教えてくれた。」

「…」

「結局、その恋は実らなかったけど…私はあきらめない。絶対あの人()の元へ戻る。」

 

似たもの同士、同情を誘おうとは思っていない。

まして、慰めるという感情は無い。

でも…想いが先行しすぎた結果がここにいるボーデヴィッヒの状態を作ってしまった。そう、思った。

そんな感情からか、話さずには居られなかった。

 

「…話はそれで終わりか。」

「うん…」

「ならば…今日はもう帰れ。私は眠る。」

「わかった…おやすみ。ラウラさん(・・・)

 

 

____________________________________________

 

翌朝のHR。

 

山田先生が何か言いにくそうな表情を出していた。

 

「えーっと…今日は転校生…なのかな?を紹介します…」

 

クラスメイト達から疑問の声が上がる。

そして入ってきたのは…

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします!」

「デュノア君は、デュノアさんということでした…」

「え、ちょっと待って。昨日は男子が浴場使ったよね?それじゃあ…」

 

確かに昨日は男子が浴場使うって通知が来てたけど…つまり昨日の時点では男子だったシャルルさんと…

 

と、誰かが教室の壁を壊して入って来た。

 

「い~~ち~~か~~!!!!」

 

甲龍を纏った鈴さんだった。

多分、噂を聞きつけて一夏に制裁しに来たのだろうけど…流石にISはマズイんじゃ…

そう考える内に甲龍の龍砲がチャージされ始める。

 

「いやいやいや!死ぬ!それは死ぬ!!」

 

その時、私は無意識にISを展開。借りたままだった物理シールドで守ろうとしていた。

でも、その前にまた誰かいた。

 

「…フン」

 

AICを展開したラウラだった。

 

「ラ、ラウラ!いのりさん!助かったムグッ!?」

 

気が付くと、私はラウラさんに抱きかかえられ、一夏はラウラさんとキスをしていた。…え?

 

「お、お前は私の嫁だ!そして、いのりは私の最愛の友だ!これは決定事項だ!異論は認めん!」

 

「「「「「「はあああああああああああああ!?」」」」」」」

 

 

この日、最大の声が学園に響いていた。

 

 

________________________________

 

束の研究所。

 

「しゅーくん。ちょっといい?」

「なんですか?」

 

訓練を終え、戻ってきた僕に束さんが呼んでくる。

 

「一つ、実戦をやってきて欲しいの。」

「…大丈夫なんですか?」

「うん。ISはフルスキンにするし、声もボイスチェンジャーを使うからばれないと思う。それに、これはしゅーくんの試験も兼ねてるからね。」

「! じゃあ!」

「うん。大丈夫ならいーちゃんの所に連れて行くよ。」

「分かりました。内容は?」

「VTシステムを極秘開発したドイツの研究所の破壊」

 





ということで、ラウラはいのりに懐きました←
ラウラの中では一夏といのりの好感度が同レベルということになっています。

そして、次回はついに集のISお披露目回とさせていただきます!

ご意見ご感想お待ちしています。


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13:王は何を求める

お待たせしました
今回はサントラのΒασιλευζ辺りを聴きながら呼んでいただけるといいかもしれません(筆者の偏見セレクト)

夢中で書いたからおかしな点はご都合主義と流してください(切実)



数日後

ドイツ国内のとある森林地帯。

そこにVTシステムを開発した研究所があった。

真っ白い建物が多く並ぶ研究所。

表面上は製薬会社と言う事になっており、時折薬品を運び込むトラックが入っていく。

だが、束の調査で実態は地下にあるVTシステムの開発がメインとなっていた事が判明。

 

離れた丘から研究所を観察する。

ここまでは飛行機と徒歩で来た。

流石にISで飛ぼうものなら直ぐにドイツ軍が迎撃に来るからね。

そこに通信が入る。

 

「しゅーくん、様子は?」

「今のところ、問題はありません」

「じゃあ、作戦に変更は無し。

しゅーくんが設置した束さん特製ジャマーで周囲一帯の通信網を遮断して突入。

内部で地下施設の構造をスキャンもしくは構造データを入手後、地下施設に突入。

VTシステムに関するデータを入手後、全て破壊して脱出」

「了解」

「地下施設は完全な電波暗室だから気をつけてね」

 

そう言って通信が切れた。

 

ISの拡張領域からジャマーを取り出し、設置する。

ちなみに僕のISは待機時には右腕の義手を取っている。

一見、生身の腕と遜色無い出来に最初は驚いた。

 

ジャマーを設置完了。

これを起動した瞬間から作戦開始となる。

…そういえば単独での作戦ってこれが初めてだ。

いのりもヴォイドゲノム奪取作戦の時…つまり僕と初めて会ったあの時も単独でやっていた。

孤立無援な作戦。

失敗すれば死は見えている作戦をいのりはこなしていた。

正直、尊敬する。

僕は…いくら作戦をこなしていても単独での作戦は怖い。

でも…これは僕がやらなきゃならない。

このぐらい乗り越えなきゃいのりは守れない。

…やってやるさ。

 

「ロストクラウン、全身装甲形態で起動」

 

その瞬間、義手が消えてISが展開される。

黒を基調としたカラーリングで所々に青緑のラインが走る。

背にはマントの様に広がる展開装甲。

そして右腕は…あのヴォイドがそこに収まっていた。

束さんが設定したのか、コア自身がそうしたのかは分からない。

でも、僕はまだ守れる力があるという追い風になってくれた気がした。

 

 

 

「…作戦開始」

ジャマーを起動し、周囲一帯の通信を遮断。

展開装甲からエネルギーを放出して一気に研究所に突入する。

 

まずは研究所の見取り図の取得。

なら地上部の中心でハイパーセンサーを使い、スキャンが最適。

そう結論づけ、本部らしい大きな建物に向かう。

立ちはだかるは堅牢な鉄の扉。

 

「颯太!」

 

右手に呼び出す武装。

それは颯太のカメラ型ヴォイドそっくりな形をしていた。

それを扉に向け、トリガーを引く。

扉は円形な穴が開き、突入口を開く。

そこをノンストップで通過し、中心部を目指す。

侵入を告げるサイレンが鳴り響く中、目標地点に向かう。

 

…そう。

僕のIS、ロストクラウンはヴォイドを象った武装が占めていた。

ほとんどは効果が違ったけど、颯太のみたいにほぼ同じ機能のもあり、驚いた。

でも…いのりやハレのヴォイドはここには無かった…。

 

そんなことを考える内にほぼ中心に到達したのでスキャンを開始する。

ハイパーセンサーが高速で建造物を走査し、それをマップに3D表示してくれる。

構造的には地下へのメインシャフトがさっき入ってきた入り口の反対側にあって、そこから地下に試験場らしき大型の部屋に大小の研究室?が広がっていた。

 

「よし…」

 

次は地下に降下、情報を収集後に破壊…と考えていると、警備員が慌てて追いかけてくるのが見えるけど…かまっている暇はない。

すぐにスラスターを吹かし、シャフトの入り口に向かう。

 

___________________________________

 

シャフトの入り口を見つけ、颯太のヴォイドで扉を破壊し、降下する。

ここからが本番。

非合法ゆえにどんな抵抗を示すかわかったものじゃない。

と、ここでこの施設に流れる独自回線を拾い始めたから録音を開始する。

 

『ISだと!?ドイツ軍にしては早過ぎる!』

『いえ、ドイツ軍じゃありません!』

『だったら何だというのだ!』

『分かりませんよ!ですが、あの形は見たことがありません!』

『ええい!とにかくメインコンピューターのデリート作業急がせろ!

アレの起動もさせとけ!』

 

アレ?

何か防衛手段があるというのか?

でも、ISのスピードならそれに間に合う。

 

研究室の一つ。

ここからでもメインコンピューターへのハックは可能。

コンピューターの一つにケーブルを繋ぎ、束さん手製のハックプログラムを起動。

電子防壁、ファイアウォールを次々突破し、データの奪取を開始する。

 

(VTシステムに関するデータ…強化素体との適合率上昇…外道だ…っ!)

 

送られてくるデータに脳内で流し読みしていると反吐が出そうになる。

と…ここで警備兵が到着し、サブマシンガンで撃ってくる。

ISに効くはず無いけど…まあ、圧倒させておきますか。

 

「亞里沙!」

 

手に毬型ヴォイドが出現、展開され丸い扁平な盾が作られて銃弾を全て弾く。

供奉院亞里沙のヴォイド。

裏切られ、敵の盾にもなったヴォイド。

その結果も僕の罪の結果なのだから…何も言えないけど…。

 

(ん?)

 

頭の傍らで流し読みしていたデータに気になるファイルを見つけた。

 

強化素体E57に関する処分

ドイツ上層部より提供された素体E57はVTシステムとの適合率低により保存槽にて冬眠処置。

以後、E57はVTシステムの思考制御試験に使用することを決定。

 

しかし、VTシステムは思考のみで制御出来る事はほぼ不可能との結論に達したため、殺処分とする。

 

 

どう考えてもこのE57というのは人間だろう。

それを殺処分なんて…っ!

アンチボディズのような文面に怒りが出る。

でも…この日付、決定したのはつい先日の事のようでまだ処理はさせていない様だ。

 

なら…次のやることは決まった。

E57を救い、ここを破壊する!

 

ハックが終わり、証拠となるデータは十分集まった。

 

すぐにE57が囚われているであろう部屋をサーチする。

 

(…見つけた!)

 

この部屋からそんなに離れていない部屋にいる様だ。

盾を展開したまま部屋を出て警備兵をどかし、その部屋に急行する。

 

 

部屋に到着すると、そこには円柱状のカプセルに一人の少女が浮かんで眠っていた。

流れるような銀髪。

可憐な少女はそのままでは目覚めることのない眠りについていた。

僕はカプセルに近寄り、躊躇なくそれを殴り割る。

カプセルが砕け、中から保存液と共に少女が倒れる。

それを受け止め、バイタルをスキャンする。

 

≪脈拍安定、バイタルサイン良好≫

 

ISからの回答にほっとする。

さて…。

後はここを壊滅させて破壊するのみ。

潜りこませているハックプログラムに付随してあるウイルスを解凍させて電子的にデータを破壊。

後は、持ってきた爆楽を柱に仕掛けて崩壊させよう。

と…この子を持ったままじゃ出来ないな。

 

「ツグミ!」

 

今度はツグミのステッキを呼び出し、僕の分身を作る。

この分身、武器はアサルトライフルしか無いけど、展開装甲の防御は使えるから十分守ってくれるだろう。

分身に少女を渡し、随伴飛行させながら柱に爆薬を張り付けていく。

後は脱出して爆破するだけ…と思っていた。

 

『ダメです!システムの破壊止まりません!E57も奪取されました!』

『クソッ!エンドレイヴはまだか!』

『起動完了して地上で待機しています!』

『よし!ここは現時点をもって破棄、全員脱出しろ!』

 

(エンドレイヴ!?)

 

束さんからIS学園にエンドレイヴが襲撃したのは知っている。

でもなんでここに!?

そうこうするうちにメインシャフトを抜け、入り口に到達する。

すると…

 

(あれは…ジュモウか?)

 

モスグリーンのくすんだカラーリング。

逆足関節の歪な足。

頭部の上にある傘状のミサイルポッド。

間違いない。エンドレイヴ・ジュモウだ。

 

でも…僕はここで止まるわけにはいかない。

立ちふさがるなら破壊して進む!

 

ジュモウは3機編成でこっちを狙っている。

3機ならどうということはなさそうだ。

でも…後方からは警備兵が脱出を兼ねて追ってきている。

悠長に戦闘していれば追いつかれてE57を射殺されかねない。

展開装甲でもそこまではカバーしきれない。

 

…仕方ない。

 

「ワンオフアビリティ ヴォイドフルバースト起動」

右腕のラインの光が強まり、ISのリミッターが解かれる。

そして視界に表示される数字。

30秒。

それがこの能力の限界。

十分だ!

 

「行くよ!」

 

踏み出すと同時に展開する綾瀬のヴォイド。

飛躍的に飛行能力が上がり、ジュモウの上空まで瞬時に上がる。

 

「八尋!」

 

八尋の鋏ヴォイドを呼び、急降下しながら左の一機を縦に斬り裂く。

2機が反応してガトリングを撃つもそこには僕はもう居ない。

 

「アルゴ!」

 

急旋回しながらアルゴのペンライトを使って右の一機のセンサー類を一時的にダウンさせる。

そのまま一機のガトリングを展開装甲のシールドビットを使って防御しながら突撃、保持したままの鋏ヴォイドで切り裂いて上昇。

 

最後は…

 

「涯!」

 

鋏ヴォイドの代わりに呼び出したのは涯のライフル。

ライフルを構え、復帰したばかりのジュモウに3発撃つ。

逆関節にと肩に当たるとそれだけで機体はバランスが揺らぐ。

そこに突撃し、右手を構える。

 

「はあああああああああああっっ!!」

 

右手に展開されたヴォイドの円陣がジュモウを軽くふっ飛ばし、建物にめり込んで停止する。

 

そこでタイマーが0を指す。

苦もなく制圧し、分身を呼び戻して少女を回収すると、施設の爆薬に爆破トリガーを送る。

 

施設は爆破され、窓から火が吹き出す。

 

任務完了。

そう結論づけて、僕はISのまま飛行し、帰路についた。

…もちろん、どの国にもちょっかい出されにくいルートでね?

 

 

 

 

 

 

その日、一つのニュースが駆け巡った。

ドイツにあったVTシステム研究所が顕になり、そこが謎のISによって破壊されたというもの。

各国はドイツを激しく非難する一方、謎のISが何なのかに奔走した。

だが…どのデータも激しく壊れているか映像にノイズばかりが走り、分かるのはどの国にもないISが居たということだけだった。

 

 

 

_________________________________

 

「で、この子が研究所から救ってきた女ってわけね」

「はい」

 

束さんの研究所に戻って来た後、少女を束さんに渡すと、くまなく検査して寝かせていた。

今はソファに服を着せて眠っている。

 

 

しばらくすると少女は目を覚ました。

 

「ん…」

「起きた…?体は大丈夫?」

「ここは…?」

「ここは篠ノ之博士の研究所」

「確か…私は…」

「貴方の眼の前にいるしゅーくんがVTシステム研究所に突入して破壊するときに貴方を見つけて助けたんだよ」

 

束さんがコーヒーをもって来た。

 

「で、貴方の名前は?」

「…クロエ・クロニクルです」

「クーちゃん。いい名前だね」

「…」

 

いきなりアダ名で呼ぶのってどうかと思うけど…まあ、いつものことだしいいか…。

 

「大丈夫。私はクーちゃんに酷いことはしないから。

ずっとここに居ていいんだよ?」

「ずっと、ですか?」

「そう。クーちゃんは束さんとしゅーくんが守るからね。」

「はい…」

 

まだ冬眠処置から目覚めたばかりのせいかあまり状況を把握してないみたいだった。

クロエはそのまままた寝てしまい、僕たちはそのまま寝かせておくことにした。

 

「で、戦闘ログを見た結論なんだけど…」

「はい…」

 

ついに来た審判の時。

 

「…合格。約束通り、いーちゃんのとこに送ってあげる。」

「!!…ありがとうございます!」

「とはいえ、こっちもちょっと準備があるからね…行くのはIS学園が臨海学校の時かな…?

まあ、その時までにISの調整と整備やっておくね」

「はい!」

 

いのり…やっと会えるよ…。

今度こそ…キミを…。

 

「ああ、それと」

 

束さんが一枚のメモリスティックを渡してきた。

 

「これは?」

「キミが今回頑張った報酬♪」

「?」

 

疑問符を出しながら携帯に差し込み、ファイルを開く。

そこには…

 

『…途方にくれる世界の隅っこ

小さなトンネルに閉じこもって

ついたため息 あくびで答える

キミの手を強くぎゅっと握った…』

 

いのりがIS学園の制服で歌っているのが写っていた。

 

「これって…!」

「いーちゃん、学園でEGOISTってバンド立ち上げたみたいだね。

で、そのライブ風景をこっそり撮っておいたのさ」

 

と、束さんが得意げに胸を張る。

 

「いのり…」

 

画面の中のいのりはあの頃と変わらず、歌で皆を魅了し、自分を余すところ無く表現していた。

その光景に僕は、安心を覚えていた。

 

(良かった…いのりは…いのりのままだ…っ!)

 

変わらない歌姫の光景は僕は安心と決心を与えてくれた。

もう一度与えられたチャンス。

いのりを守り、あの世界に帰る決心は最早揺らぐ事のないものへと変わっていた。




集のISは次の戦闘後に設定を出す予定です。

ご意見お待ちしています。


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IS設定

次の戦闘後に出すと言ったな?
アレは嘘だ。




IS・ギルティ

 

いのり専用IS

コアに不明なプロテクトが掛けられており、解析不能。

 

性能

機動性、加速性能、最高速度、小回りは第四世代に追随する性能。

スピード特化機体になっている。

 

しかし、機動性重視のせいか装甲は薄く、ラファールのパイルバンカー1.2発でほぼ0になっていまうくらいに薄い。

 

ワンオフアビリティ ノゥネーム・モンスター

兵装がすべて使用不可になる代わりに全ての出力上昇。

いのりが獣化した時の姿が再現される。

威力は未知数。(高すぎて測定不能。)

故に対人戦では相手を殺害する恐れがあることから使えない。

 

 

武装

アポカリプスランスピット

アポカリプスの結晶で構成されたような槍型ビット

小剣サイズが2つ、常にいのりの周囲を浮遊している。

スラスターは無く、何で飛んでいるのか不明。

 

いのりの思考で飛び、貫いて攻撃する。

威力はその時の速度準拠。

 

 

ヴォイドバスターブレード

ギルクラ中のあの剣

 

威力

雪片弐型より下

双天牙月より上

切れ味は打鉄のIS刀より少し勝る程度であるため、原作の様にエンドレイヴを一刀両断には出来ない。

 

 

ISのサポートにより片手でも振るうことが出来る。

 

ハンドガン×2

作中で使ったハンドガン

型はM1911タイプ

 

威力は微々たるものだが、二丁全弾当てればそれなりのダメージになる。

ストッピングパワーが高く作られており、要所要所に当てれば姿勢を崩して隙を作ることも可能。

 

 

拡張領域

ラファール・リヴァイヴより下回るがかなりの拡張領域を持つ。

ただし、バズーカの様な重火器は収納できず、アサルトライフルぐらいまでの個人携行火器レベルの大きさまでしか収納できないという制限がかけられている。

 

容姿

ラファール・リヴァイヴカスタムⅡの脚部をより薄くした感じ。

 

胴体はISスーツが露出し、腕は二の腕まで覆われている。

 

腰と肩部から大型スラスターが伸び、足に補助スラスターが付属。

 

配色はいのりの金魚服準拠。

 

待機時

髪飾り

 

 

 

 

集専用IS ロストクラウン

 

性能

全てにおいて水準以上の性能。

しかし、突出するべき点が無い。

 

つまり、

攻撃力は白式の零落白夜の次点。

速度は紅椿より次点。

 

要はマルチロール機である。

また、武装はヴォイドを模した武器であり、その効果も事実に則したものが多い。

ただし、平常時は1つしか展開できないため状況に応じた物を使えなければならない。

 

尚、いくつかの武装はISバトル用と実戦用のモードがあり、能力も異なる。

実戦モードはその威力故に束が監視している。

(目に余ると束がISを強制フリーズさせる機構付き)

 

武装

ハートカットシザー

八尋の『鋏』ヴォイドを模した武器。

当てた対象の能力、威力を最低値まで一時的にダウンさせる能力を持つ。

威力はIS刀と同等。

実戦モードではエンドレイヴを切り裂けるほどの威力

 

ワールドオープンレンズ

颯太の『カメラ』ヴォイドを模した武器。

相手の装備を強制解除が出来るが、ロックオンが出来ない上、かなり精密に照射しないと解除出来ないのでレールカノン等の大型武器にしか使えない。

実戦モードでは原作同様に物体の消去が可能。

 

 

レーダーレンズ

花音の『メガネ』ヴォイド(ry

ハイパーセンサーとロックオン機能と望遠距離を強化するもの。

ライフル系と併用するのが普通。

 

ストライクハート

涯の『ライフル』ヴォイド(ry

セミオートライフルで、ダメージは中。

ストッピングパワーが高いため、相手の隙を作れる。

要はライフルだが、ショットガン並みのパワーがあるということ。

 

レィディガード

亞里沙の『盾』ヴォイド(ry

攻撃を完全ガードする。

耐久値があるが、ISバトル程度では耐え切れるので問題無し。

 

デコイステッキ

ツグミの『ステッキ』ヴォイド(ry

対象の分身を1体創りだす。

耐久値はそこそこ。

集のデコイの場合、アサルトライフルのみ持って出現。

 

ダークライト

アルゴの『ペンライト』ヴォイド(ry

対象のセンサー類を一時的にダウン。

『鋏』より効果時間は無いが、中距離から使える。

当てるのは難しい。

 

フリーダムソール

綾瀬の『ブーツ』ヴォイド(ry

スラスターを強化し、赤椿より飛翔能力が高くなる。

 

グラビティゼロ

研二の『重力銃』ヴォイド(ry

当てた物の重力を奪い、PIC制御や姿勢制御を困難にさせる。

ISの場合、効果時間は短い。

 

 

 

拡張領域

余剰無し。

但し武装では無い物で両手で抱えるくらいの大きさまでなら収納可能。

 

 

 

ワンオフアビリティ

ヴォイドフルバースト

全ての武装を展開し、その能力を得る。

但し、白式以上に燃費から悪く、持って1分しか維持できない。

 

 

 

待機時

義手

 

容姿

右手は集の右手ヴォイドの形を取り、ソレ以外はISの形を取る。

左は薄い装甲。

肩から伸びるコート状の展開装甲が特徴。

この展開装甲は紅椿とは違って、スラスター、シールドビットの機能となっている。

色は黒を基調に青緑のラインが流れる。

 

簡単に言えば、後期集のコート姿を模した形である。

 

 

 

 

 



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14:少女たちの休日

お待たせしました
今回は日常回です。


徐々に夏の香りが漂い始めた初夏のある日。

不意にシャルロットから買い物の誘いが来た。

 

「買い物?」

「うん。もうすぐ臨海学校もあるし、いのりさん自分の服はあまり持ってないよね?

だからそれも一緒に買いに行かないかな〜って」

 

そういえば…確かにここに来た時の金魚服以外は学園から支給された制服とジャージ、寝間着しか無かった。

今までは学園に篭もりきりだったから…私服の事をすっかり忘れていた。

 

「いいよ…いつ?」

「次の土曜でいいかな?」

「うん」

 

 

 

その週の土曜。

学園と本土を繋ぐモノレール駅前に向かう。

今は服が無いから制服を着てる。

良いのがあれば向こうで着替えも済ませようかな…。

 

駅にはシャルロットと…ラウラさん?

 

「おはよう!…って二人共制服…」

「コレしか無いのだ。仕方ないだろう。」

「うんまあ…そうなんだけどね…。3人中1人だけ私服っていうのも何かね…」

 

アハハ…と言って苦笑するシャルロット。

まあ…こればかりは仕方ない。

そんな事で私達三人はモノレールに乗り込んだ。

 

______________________________

 

 

IS学園の島からモノレールで本土に行った所にある駅ビル。

そこに入っているファッションショップに向かう。

 

「そういえばいのりさんはどういう服が好みなの?」

「んー…ワンピースとか…かな」

「へえ、良いね。清楚な感じで似合ってそうだよ」

「いのりはこの容姿なのだ。どんな服を着ていようと似合うに決まっている。」

 

そんな他愛もない事を話しながら歩く。

そういえば…元の世界だとこうやって、同性同士で他愛もないこと話して、買い物に行くなんて無かった…ね。

そんな時間も無かったというのもあるけど…。

やっぱり私はこんな幸せ、享受してていいのかな…

 

 

 

 

その日、ファッションショップの店員は目を疑った。

なにせ、三人の美少女達が揃って来店したのだから。

1人は金髪のボーイッシュな子。

デニムとかを履かせれば美少年と間違えるほどに中性的な美形だ。

 

もう一人の銀髪は背は小さいけれど、綺麗な銀髪に眼帯。

属性多すぎてどんな服を着せようか興味が尽きない。

 

そして最後のピンク髪の子はおしとやかで控えめな印象を受けた。

派手目な髪色に対しての性格。

ワンピースや、チェック柄のスカートなどが合いそうな感じだった。

 

金髪の子以外がIS学園の制服で来たことから恐らくファッション関連に疎いと考えた。

 

「い、いらっしゃいませ。本日はどのような服がご希望でしょうか?」

 

努めて平静に対応する辺り、日本人としてのプライドが生きた。

 

「この子の服を決めてくれませんか?」

 

そう言って金髪の子が銀髪の子を押した。

つまり、合う服を好きに決められる。

店員は燃えに燃え上がり、銀髪の子をあれよあれよと着せ替え人形にしていった。

…気がつけば、試着室の回りは他の客で人だかりが出来ててファッションショーになっていたのは仕方ない。

 

 

 

 

 

ラウラが店員によって着せ替え人形にされている間、私とシャルロットは二人で私服を見ていた。

 

「ねえ、こういうのはどう?」

「うーん…ちょっと派手かな…?」

 

シャルロットが色々な服を出しては合わせてくる。

ほとんどは派手だったり、あまり好みじゃないデザインで却下したけど。

そんな中…

 

「あれ…?」

 

ハンガーラックに掛かった服の中からふと気になった服を取る。

それは…あるワンピース。

黒の生地に赤いリボンを正中線と胸の下で十字に組み合わせ、裾に白のレースをあしらったもの。

そう、私がよく着ていたワンピースにそっくりなデザインがそこにあった。

 

「…。」

 

これも…何かの縁だと思い、カゴに入れた。

 

 

_____________________________

 

その後、いくつかの服やスカートを買って店を出る。

それから水着店で水着を買ったり、アクセサリーショップなどを回って歩いた。

 

その時間はとても楽しくて、幸せで…今までに経験したことのない1人の女の子としての買い物を楽しんだ。

 

最後にと寄ったカフェで飲み物を頼むとラウラは机に倒れた。

実を言うと、ファッションショップから先の店でも大体着せ替え人形にされてカフェに入るときにはフラフラしてた。

それを見かねたシャルロットが休憩にしようと言って入ったのが顛末。

その原因はシャルロットにあると思うんだけど…。

 

「私ね…男だって嘘言っていたのは父に言われたからなんだ。」

 

運ばれてきた飲み物を飲みながらシャルロットが急に切り出してきた。

 

「…え?」

「僕、デュノア社の社長…つまり父の隠し子なんだ…。

イグニッションプランに乗り遅れていたデュノア社は、一夏のデータ、白式のデータを欲しがった。

そこで僕に白羽…なのかな? とにかく抜擢されたんだ。」

「それなのに…どうして女に戻したの?」

「一夏のお陰。

元々、一夏に僕の…その…女ってバレる事があってね。それから一夏が色々親身に相談に乗ってくれたんだ。」

「そう…」

「だから、僕は父に真っ向から意見を出して、女として居れる事が出来た。一夏には本当、感謝してもしきれないよ。」

 

そんな事が…。

でも、一夏らしいのが笑えてくる。

一夏は、誰にだって優しくて…1人で背負い込もうとする。

今はまだ大した問題じゃないから大丈夫だけど…これが手に負えなくなったら…。

 

「…っ」

 

一瞬、暗い瞳をしていた頃の集が浮かぶ。

怖い…?一夏がもし集と同じ状態になったら…。

ふと湧き出た不安が大きくなって思考のループに入りそうだった時、声が入ってきた。

 

「ねえ…ちょっと良いかな?」

 

我に帰って見上げると、そこには女性店員の姿。

いや…ネームプレートに店長と書いてあるから店長だった。

と、その店長がいきなり手を合わせてきた。

 

「この店でちょっと働かない?」

「「「え!?」」」

 

 

__________________________________

 

「…よしっ」

 

最後のリボンを結んで鏡を見る。

そこには…メイド服を着た私の姿。

とはいえ、派手なフリル等無く、実用的な本当の意味でのメイド服だった。

店長の話だと、数人が風邪で休んでしまい、手が足りなかったそう。

そこに私達に目が止まってスカウトされた…というのが今まで。

今は渡された服に着替えていた。

 

「こ…こんな服を着るなど…」

 

ラウラが顔を真っ赤にしてメイド服を着て、

 

「うーん…僕もメイド服が良かったのに…」

 

シャルロットがしょんぼりしながら執事服を着ていた。

シャルロットは中性的だからと店長からプッシュされ、押し負けたので執事服になった。

 

「じゃあ、行こうか」

「うん」

 

数時間だけのアルバイトが始まった。

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ。ご注文は…お決まりですか?」

 

つつがなくお客から注文を取り、商品を運ぶ。

ここでも葬儀社の頃の経験が生きた。

…こんなので生きたのかはわからないけど。

 

「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」

 

ふと、シャルロットを見ると中性的な美少年と思われているのか女性客のコールが立て続けになっていた。

表面上はにこやかにしているけど…なんとなく引きつっている…気がした。

 

「い、いらっしゃいませ…」

 

一方のラウラは恥ずかしさか、接客に四苦八苦していた。

でも、その愛らしさからか、応援されながら働いていた。

 

その後、どんどん客が増えて、佳境になった頃…事件は起きた。

 

荒々しく入り口のドアが開かれ、3人の男が入ってくる。

その身なりは黒の服で統一され、顔は目出し帽で覆われている。

 

「おらぁ!全員動くな!」

 

1人が天井に持っていた拳銃は発砲。

店内が一瞬鎮まり、パニックに陥る。

 

どう見ても強盗。手に持つバッグから札束が見えていることからも分かった。

 

「うるせえ!静かにしねェと撃つぞ!」

 

また発砲。

今度こそ静かになる。

 

『聞こえる…?』

 

とっさにカウンターに隠れた私はコアネットワークで二人に連絡を取る。

 

『聞こえるよ』

『ああ』

 

二人からの返事に少しホッとする。

 

『敵の武装はどう?』

『2人が拳銃。1人がサブマシンガンで武装』

『OK、サブマシンガンの方をα1、残り二人はα2、3としよう』

 

そこにいるのはメイドと執事ではなく、レジスタンスと軍人のオーラを持つ者だった。

すぐに状況を確認し、プランを練る。

 

『外に警察が多数。銀行強盗でここに立てこもったみたいだね』

『制圧はたやすい。だが、こんなに人質がいるとなると…厄介だな』

 

店内には客が多くいる。

もし、誰かに狙いが行けば…間違いなく被害が出る。

 

「へっ、脱出はたやすいみだいですぜ」

「だな。おい!メイド!喉が渇いた!水持ってこい!」

 

強盗が偉そうに呼んでいる。

 

『チャンスだ。いのり、シャルロット、私が奴らの気を引く。その間にα2、3を制圧してくれ。α1は任せろ』

 

ラウラが動き出す。

お盆にコップいっぱいの…氷?

それを3つ持って行く。

 

「なんだこれは?」

「水だ」

「テメエ…なめてんじゃ」

「黙れ、飲め。…飲めるものならな!」

 

ラウラがお盆を投げる。

氷が空を舞う。

ラウラはその氷を空中で的確に強盗に向けて弾き、額に当ててよろけさせる。

 

「今だ!」

 

すぐに飛び出し、α2に向かってハイキックをかける。

顎を蹴られ、よろめいた所を右腕を取って関節を極めて銃を落とさせる。

 

「α2制圧」

「α3制圧完了。そっちは?」

「問題ない。α1制圧」

 

他に強盗も昏倒するか床に倒されていた。

 

「く…そっ…こうなったら…道連れにしてやる!」

 

α3が何かを持っている。

あれって…起爆装置!?

よく見れば上着の下に見えるのはC4爆弾にその起爆装置。

こんなところで起爆されたら…!

とっさに拳銃を拾う。

全てがスローモーションに見えた。

拳銃を構え、起爆装置に向けて撃つ。

その事がひどく遅く見えていた。

弾丸は起爆装置に向かって飛び、スイッチを壊す。

 

「な!?」

 

すぐにα3の頭に向け、構えた。

 

「次に妙なマネをしたら…撃つ。」

「チェックメイトだ」

 

ラウラやシャルロットも同様に拾った銃で完全に制圧していた。

 

 

___________________________________

 

警察に犯人を引き渡すのは店長に任せ、私達はバレないように逃げ出す。

あのままだったら事情聴取にも捕まるし、IS学園生徒というのもあって逃げるのが得策だった。

 

その夜。

 

「…これって」

 

私室には私とシャルロットにラウラ。

シャルロットがこっそりパジャマを買ったらから着ようという話になって参加したら…

動物を象ったパジャマ。

よくあるツナギの形をしたパジャマでフードまで付いている。

私のは…トラ?

 

「そう!ね、ね。がおーって言ってみて!絶対可愛いから!」

「ぐ…私がこんなのを…」

 

ラウラは黒猫。シャルロットは白猫のパジャマだった。

なんで私だけトラなのかと聞きたかったけど…今のシャルロットには無駄みたい。

 

「が…がおー…」

 

トラのマネをしながら鳴いてみる。

…やっぱり恥ずかしい。

 

「可愛い!!」

 

シャルロットが夢中で抱きついてくる。

今日の夜は…あまり寝れなさそう…。




次回、皆様が待っていた再会の話を予定しています。

いましばらくお待ちください!



以下作者の心境

艦これ、E3がムズいです…


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15:歌姫と王、再会せし刻

お待たせしました!
待ち焦がれた再会回です!

遅くなったのは3週間も中間テスト期間があったのがいけないんや…。

とりあえずブラックコーヒーの用意をお願いします←


「見えてきた!アレが泊まる旅館かな?」

「海キレイだね~!早く泳ぎたい!」

 

バスの中でクラスメイト達が賑やかに話している。

IS学園1学年は臨海学校で私有地の旅館とビーチに向けて走っていた。

私は窓側でボーっとその流れ行く光景を見ていた。

 

「楽しみですわね、海」

 

隣のセシリアが声をかけてくる。

 

「うん…」

 

少し、心に引っかかりを覚えながら返事をする。

何か…モヤモヤした違和感が海を見た時から出ている…。

 

「そういえばいのりさんって泳げるの?」

 

私の席から斜め前のシャルロットがこっちに身を乗り出して聞いてくる。

いくら普段静かにしていても、運動神経は悪くないと自負している。

 

「勿論…。正体不明なISパイロットがカナズチは…笑えないよね?」

「あはは…それはごもっともで…」

「そろそろ目的地だ。全員ちゃんと席につけ」

 

シャルロットが苦笑いしてると、織斑先生の言葉に皆が従った。

 

「……。」

 

視線を海に戻すとざわつきをまた覚える。

あそこに…何かあるの…?

そんな不安とも言えない感情を抱えながらバスは旅館にひた走っていく。

 

_______________________

 

旅館 花月荘。

IS学園が臨海学校でいつも使っている旅館だそう。

バスから生徒が出てきて、クラス順に整列する。

 

「ここが今日から3日間お世話になる花月荘だ。各自、旅館側に迷惑になるようなことはするなよ。」

 

よろしくお願いしまーすという生徒たちに混じって挨拶する。

旅館の女将さんは軽く笑うと何かを思い出したように袖からメモを織斑先生に渡した。

 

「……なるほどアイツか。各自、部屋に荷物を置いたら夕食まで自由時間だ。但し専用機持ちと篠ノ之はロビーに集合すること。解散!」

 

集合って…それも専用機ばかり…。

流石に生徒を自由時間にするのだから戦闘ということは無いと思うけど…。

 

 

部屋に荷物を置いた後、ロビーで待機する。

ちなみに、私の部屋はセシリアと同室。

基本的には寮と変わらない構成みたい。

 

「よし…全員揃ったな。なら行くか」

「あの…何処に連れて行くのですか?」

 

シャルロットがもっともな質問をする。

と、織斑先生が一瞬こっちをちらっと見てニヤッと笑ってこう言う。

 

「ちょっとしたサプライズだ」

 

____________________________________

 

 

ビーチから離れた岩がむき出しの磯。

そこに釣り竿が2本とパラソルが見える。

 

1人は派手なドレスにウサミミ。

どう考えても束さんだろう。

ただ、もう一人はちょうど岩に隠れて見えなかった。

と、束さんがこっちに気づいて飛びついてくる。

 

「ちーちゃん、久しぶりだフガッ!?」

「お前はまともに会い方も出来んのか」

「これが束さん流なんだよ~」

 

束さんが織斑先生に飛びついてアイアンクローで制裁されるという前に見た光景を経て二人がこっちを見る。

 

「お前たちを呼んだのはコイツが原因だ。」

「はろはろ~。いっくん~。いーちゃん~」

「はあ…」

 

一夏が間の抜けた声を出す。

 

「今日呼んだのはね~、報告といーちゃんに良い事をもたらすためなんだ~。束さんマジ神さま!」

 

えっへんと言わんばかりに胸を張る。

同時に豊満な胸が揺れて一夏がたじろぎ、鈴さんやラウラが憎たらしい目を向ける。

でも、そんなことはどうでもいい。

 

「いいコト…?」

「うん、いいこと。しゅーくん、来ていいよ」

 

え…?

 

 

今、集って…

 

 

 

そして、釣り竿に居たもう一人の人物が姿を現す。

立ち上がった姿は白のパーカー来た青年。

ショートカットの黒髪が特徴のその後姿。

私は、その姿を知っている。

 

青年がこちらを向く。

その顔、その姿、そして…

 

「いのり…」

 

その声を……私はとても良く知りすぎていた。

 

「集…?」

 

あまりの事に頭が回らず、ようやく出せた声が、名前。

青年が答える。

 

「ああ。いのり。僕だよ。」

 

その次の言葉で私の感情が爆発した。

 

 

 

 

「桜満 集だよ」

 

 

 

 

「集!!」

 

駆け出す。

そして集を抱く。

なんで!?なんで集がここにいるの!?幻覚?幻?

そんなごちゃまぜの感情が体を渦巻く。

でも、私を抱く腕と、右手を握るその手が現実を見せてくれた。

 

「いのり…会いたかった」

「集…っ!」

 

そこからは、ただひたすらに泣きじゃくった。

渦巻く想いを吐き出すように泣きじゃくった。

少なくともあの世界に帰らない限り会えないと思っていた集がここにいる。

それだけが私の心を満たす。

その間、集はずっと私を抱いてくれていた。

 

 

涙がようやく止まった後、改めて集を見る。

最後に見た時より…ちょっと大きくなった気がする。

でも、その顔、その瞳は間違いなく集そのものだった。

 

「集…なぜこの世界に来れたの?」

「もう一度、キミを守るためにある人の手を借りたんだ」

「ある人?」

「ゴメン…名前はまだ言えないんだ」

「そう…」

 

話をはぐらかされた。

でも…今は集がいるからいい…。

そう思った。

 

 

 

 

二人で束さん達の所に戻る。

 

「じゃ、感動の再会をしたところで紹介するね~。

この子は桜満集。いーちゃんと同じ世界から来た人で…二人目の男性操縦者だよ」

 

「「「「「えぇええええええ!?」」」」」

 

さらっととんでもない事を言った束に全員(千冬除く)が驚く。

 

「そして、今日から1組に転入となる」

「「「「「えぇええええええ!?」」」」」

 

織斑先生の追い打ちにまた驚く。

 

 

「二人目って…どういうことですか!?」

「使えたんだからどうもこうもないよ~。それより、次は束さんから箒ちゃんに良い物を上げまーす!」

 

そこからは篠ノ之さんにIS【紅椿】をあげるという出来事があったけど、私はどうでもいいってくらいに集にくっついてた。

 

___________________________

 

夕食時。

その時間まで部屋で一緒にいた後、食堂に向かう。

因みにセシリアは気を使ってくれて部屋には居なかった。

そして、集は改めて生徒全員に紹介された。

 

「臨海学校中だが、今日から転入ということで合流してもらった生徒だ。」

「桜満集です。二人目の操縦者ということで、皆さんよろしくお願いします」

 

その後はシャルロットの時と似た状況だったけど、織斑先生の一喝で鎮静。

 

集が私の隣で食べている間、周りの女子から質問攻めに遭っていた。

集は苦笑いで対応してたけど…なんか悔しい。

 

 

その後、夜の海岸に出る。

寝る部屋は流石に一緒には出来ないというのでギリギリまで居たかった。

 

「ねえ、集。集はなぜここに来れたの?」

「…キミをもう一度守りたいと思ったんだ。そのチャンスが訪れた。だから来た。」

「私は…あの時から集のもの…それ以上に私は集が好き。…私だって元の世界に帰りたいって、集にまた会いたいって思ってた。」

「いのり…」

「まだ元の世界に帰れたわけじゃないけど…お願い。

今はここで…」

 

私は…言いたかった言葉を出す。

 

「愛して。」

「いのり…」

 

そして感じる、集の体のあったかさ。

それは私が欲していた暖かみ。

求めていたもの。

あの鈍感だった集が今こうして私の、私への愛を交わらせてくれる。

それがとてつもなく嬉しくて、私が私じゃないと思えるほどに集に抱きついていた。




どうでしたか?
ラブラブPartが苦手な筆者が出せる最大のやり方です←



次回は海回&福音戦の予定です。

ご意見ご感想評価お待ちしています。


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18:光と闇、それぞれ

24日です
クリスマスです
ロストクリスマスです!←

というわけで、ギルクラに馴染み深いこの日に投稿するため急ピッチで上げました。

短いし、クオリティも低いけど勘弁してくだしあ(泣)


翌日。

その日、私達は海に繰り出した。

午前中は自由時間、午後はISの実機訓練という流れ。

 

集たち男子と一旦別れて更衣室に入る。

正直、昨日からドキドキが止まらない。

色々起こりすぎて頭の処理が追いついてない。

でも…だからこそ、私は集ともう一度大島の時以上に楽しみたい。

私の思考はその一点に終結しながら、買ってきた水着に着替え始める。

 

________________________________

 

集side

 

いのり達と別れてササッと水着に着替え、ビーチにパラソルなどを差して待つ。

それだけなんだけど…さっきからあの織斑っていうもう一人の男子がやけにこっちを見てるような…。

今は何もしてこないから無視してるけど、もし事が起これば…。

と、そこでハッとする。

 

(何を考えてるんだ…僕は…)

 

仮にもいのりの友達を傷つけるような思考に入りかけてた自分を恥じる。

…少しソウの件で頭が行き過ぎてたのだろう。

今度は僕だけじゃない、束さんもいる。

王の力は無いけど…ISもある。

いや…厳密には王の力も無いわけじゃないけど…。

 

そう考えていると後ろから声が聞こえた。

 

「集。」

 

いのりだ。

とりあえず、今はこの時間を楽しもう。

そして振り返る。

そこには…

 

「…っ!」

 

大島のときと同じ、あの水着を来たいのりが居た。

 

「どう…かな…?」

 

いのりが不安そうに見てくる。

その挙動は大島の時より積極的になっているものの、その姿から大島の出来事がフラッシュバックし、駆け巡る。

そして、何かが欠けた様な違和感に気づく。

巡ったフラッシュバックの中で、何かが…誰かが居なかったような…。

 

「ああ…すごく、似合ってるよ」

「本当?」

「ああ…すごく。」

「…よかった」

 

思考半分に返事をする。

すると、いのりが嬉しそうに微笑む。

前の世界じゃ見れなかった顔。

そんな顔を見れただけで、僕は最上の幸せを感じていた。

同時に、感じていた違和感は何処かに忘れてしまった。

 

「集、いこ?」

 

いのりが手を差し伸べる。

いのりがここまで積極的にしてくる事は予想外だった。

僕が居ない間、何があったのかというのも気になったけど、一つ分かるのは。

 

いのりが、1人の女の子としてここにいるということ。

 

僕にはそれで十分だった。

 

______________________________

 

集と一緒に海で遊ぶ。

ただそれだけなのに、感じたことの無いほど楽しくて、心が暖かくなるような感じがする。

あの時は私も、集も、どこまでお互いが好きかなんて分からなくて、私もあまり集に行ってなかった。

…葬儀社の任務があったのもあるけど。

 

でも、お互いが好きだって分かった今なら、自分がしたい事を出来る。

以前の私なら出来なかったと思う。

だって、こうやって集を引っ張って海に誘って行くなんて、恋人じゃなきゃ出来ない。

少なくとも私はそう。

そうして集といっしょに居れる事に幸せを感じながら海へ向かう。

 

 

 

でも、私を蝕む影は…静かに動き始めているのを私は知る由もなかった。

 

_______________________________

 

 

アメリカ・ハワイ島沖

 

同時刻、米軍では新型軍用ISが稼働試験を行っていた。

IS 銀の福音。

シルバリオ・ゴスペルとも呼ばれる機体は海上の空を縦横無尽に飛び回る。

 

その姿は白い天使をも思わせる優雅で無駄のない動き。

 

そのパイロット、ナターシャ・ファイルスは安心した面持ちでISを駆っていた。

彼女は開発時からずっとテストパイロットとして一緒に居た。

もはや家族同義に愛している機体に福音も応えている…気がした。

 

『OK、ナターシャ。全システム正常、次に射撃試験をやるけど…いいかい?』

 

オペレーターから通信が入る。

 

「大丈夫よ、データを送って」

『了解、模擬プログラムを起動、仮想敵のデータ転送…完了だ。確認してくれ』

「受信確認。…ん?なにかしら」

 

データが受信され、視界に仮想敵が表示された途端、視界がブレる。

 

「オペレーター、ISに不具合発生。そちらでモニター出来てる?」

『……!ナ…シャ…!お………しろ……』

 

返ってきたのはひどいノイズ。

そして、ISから送られてくる…正確にはコアネットワークを介した映像と音が私を遮る。

 

「なによ…これ…」

 

フィードバックで送られてくる映像。

1人の少女が1人の少年を撃つ。

少女から放たれる波動。

人々が結晶と化して砕け散る。

狂気とも言える惨状。

 

そして、その映像が消えたあと、その少女が囁く。

 

____私に、それを貸しなさい

 

 

「ああああああああああああっ!!!」

 

その直後にISが異常をきたす。

全ての通信をシャットアウト、操縦者の操縦権剥奪に始まり、その操縦者であるナターシャには思考が狂気で汚染され、自我を失う。

 

オペレーターがシャットダウンを試みるも、IS側から拒まれ、やむなしに放たれたミサイルは全て落とされる。

 

そして、福音は西に進路をとって加速していく。

 

_________________________________

 

そして、闇は交差する。

 

 

 

 

「ああ…なるほどね。わかったわ」

 

とあるホテルの一室。

美麗な女性が携帯を閉じる。

 

「どうしたスコール」

 

同じ部屋にいたロングヘアの女性が問いかける。

 

「あの方からのプレゼント♪」

「…なるほど、そういうことかい」

「そういうこと」

 

二人は部屋を出て行く。

待機形態のISを身につけて。

 

__________________________________

 

 

「…っ!」

「大丈夫?いのり」

「うん…」

 

一瞬、髪飾りから痛みが走る。

ほんの一瞬で、もう消えたけど…その痛みが何か危機を知らせてくれたような…気がした。





さて、今回でギルクラ要素を絡め始めました。
次回から戦闘となります
因みに集のIS,まだ隠してある機能あります←



今週末にEGOISTライブに行ってくるので早ければその翌日にあげるかも。
では、行く人は現地で会いましょう!←


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19:相対するは蝶の花

お待たせしました
無事、懸念していた単位は何とかなり、ようやく書く余裕が出来たので投稿。
急ピッチで上げたので短めです。

それと、お気に入り数が500を超え、恐縮の限りです。
これからもよろしくお願いします。


全てを飲み込むような青い空。

風を切ってゆく音が心地よく耳を通ってゆく。

 

「いのり…大丈夫?」

 

前を飛ぶ集からそんな気遣いが聞こえてくる。

 

「大丈夫…もう、守られてばかりじゃないから…」

「そっか…。じゃ、早く終わらせて帰らないとね」

「うん。」

 

私達はISを駆って海の上を飛んでいた。

何故そうなったのかは少し前に遡る。

 

 

午後の訓練を開始しようとした矢先に来た政府からの出撃要請。

イスラエルとアメリカ共同開発中のIS『銀の福音』が制御不能になって逃走、アメリカや日本側から迎撃ミサイルを放つも音速を超す速度に振り切られるか迎撃された。

予測ではここの沖が通過点らしく、そこで専用機による迎撃をせよという内容。

 

本来なら全機で当たるはずが、同時期にその通過点付近に向かって未確認IS2機が接近中と情報が入る。

そこで、一夏、箒、ラウラ、シャルロット、鈴で福音を迎撃、私と集で未確認機を迎撃する事になった。

今頃、一夏と箒さんが先行して別ポイントに向かっている。

そこで福音を止め、合流を阻止する為だ。

その後、後続のシャルロット達と連携して撃破の手筈。

私と集はそれとは別のポイントで未確認機を迎え撃つ。

 

_______________________________

 

やがて、ハイパーセンサーに未確認機が捕捉される。

1機は『サイレント・ゼフィルス』…イギリス開発のISで『ブルー・ティアーズ』の2番機。

蝶の羽根のようなスラスターが特徴的な濃い青の機体。

 

ある時、何者かによって強奪され、行方不明…。

 

そしてもう1機はデータベースに無い機体だった。

金を主体とするカラーリング。

太いしっぽのような物が特徴で下半身が過剰なまでにゴツく、その分上は殆どISスーツむき出しの歪な機体。

 

ただ一つ分かるのは…あれが敵だということ。

 

「見えた。いのり、準備はいい?」

「うん」

「よし…行こう!」

 

それを合図に私と集は速度を上げ、敵機に向かった。

 

 

『敵機捕捉。…片方は『ギルティ』もう1つは不明』

『あら、話題の出処不明のISがわざわざ迎えてくれたのね、嬉しいわ』

『戦闘データが殆ど無い。楽しくなりそうだ

『殺しちゃダメよ、生かして捕らえれば一石二鳥よ』

『チッ…』

 

そんな通信が聞こえてくる。

集の機体は全身装甲で中身が男だって分からない。

だから、向こうは片方は新型辺りとでも思ってるのだろうか。

とは言え、むざむざ負けてあげる訳には行かない。

 

「行くよ…ギルティ」

『僕は金色の方を、いのりは『サイレント・ゼフィルス』の撃破を頼む』

「了解」

「…作戦開始」

 

その言葉はかつての涯のように冷静な声をしていた。

 

_________________________________

 

まず取り出したのはショットガン。

それを無造作に敵機2機に向かって撃つ。

それをあざ笑うかのように2機は回避する。

でも、それが狙い。

 

2機が別れた隙を狙って集がブーツヴォイドを使って急加速し、金色のISに肉薄する。

それを助けるように『サイレント・ゼフィルス』がライフルを向ける。

 

「させない…っ!」

 

瞬間加速を使って『サイレント・ゼフィルス』の前に出ながらバスターブレードで斬りつける。

 

「っ!」

 

『サイレント・ゼフィルス』はとっさにナイフを取り出し、ガードする。

その瞬間にがら空きとなった左脇を蹴り当てる。

『サイレント・ゼフィルス』はすぐに態勢を立て直し、6機のビットを射出する。

セシリアと違い、ビットを操作しながらも自分はライフルで撃ってくる。

 

「行って、ビット!」

負けじとこちらも2機のビットを打ち出す。

ビットは互いに牽制しながら交差する。

それでも止められるのは2機。残りの4機がこちらに向かって撃ってくる。

 

「クッ!」

 

回避し、ブレードで弾く。

そして隙を縫ってライフル弾を撃つ

そんな応酬が続く。

でも、こちらが近接メインの機体に対して『サイレント・ゼフィルス』は射撃メイン。

この状況はどう見てもこちらが不利だった。

 

 

(…このままじゃジリ貧。だったら別の手段!)

 

すぐにブレードからデュアルハンドガンに切り替え、突進する。

ビットが当然撃ってくるけど、それを狙っていた。

 

「フッ!」

 

腰のスラスターを前面に向かせ、無理やり機動を変えてビームを避ける。

そして、そのままスラスターを操作して背面飛行しながらデュアルで撃ってきた2機に向けて銃弾を放つ。

弾丸は寸分違わずビットの銃口に向かい、破壊する…でも、そのビットは違った。

普通より大きな爆発が起こり、爆風が当たる。

 

「うああああああああっ!」

(っ!?爆薬内蔵型のビット!?)

 

その威力から自爆も攻撃前提のビットだと知る。

相手もそれをバレたと知ってか、残り2機を特攻するように向けてくる。

 

(至近距離じゃ自爆されて当たる…っ!このままじゃ…!)

 

迫るビット、当たるの覚悟で身構える。

でも、それは当たらなかった。

 

(…?)

 

ビットは引き返し、敵機2機が射撃武器でこちら側に弾をばら撒いてくる。

 

『ゴメン!仕留められなかった!』

 

集がそう言いながらシールドヴォイドで弾を防いでくれる。

集でさえ、仕留め切れなかった敵。

それはかなりの手練ということ。

 

そして、山田先生の通信がさらなる状況悪化を知らせる。

 

『っ!織斑班、壊滅!各機共に戦闘続行不能!福音がそちらに向かっています!』




次のEGOISTライブは香港だそうで…。
行けねえ…orz

でも、年末のライブは楽しかったなぁ…
BRSとか良かったです。


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20:力は誰の為に

前回投稿から五ヶ月経ってた…

大体レポートによる忙殺と、光の戦士やってました(白目)


それはさておき、今回はあの力が出ます。
あの曲をかけてお楽しみください。


織斑班の壊滅、福音の合流。

その2つは絶望ともいえる状況を表していた。

 

唯でさえ、2機に手間取っているのにここにきて福音が追加。

質でも、数でも劣勢な私達に勝てる術は残されていなかった。

通信からは山田先生の撤退命令が幾度となく繰り返される。

なのに……集は敵を見据えて動こうとしなかった。

 

「…束さん。」

「はいよー!何だねー?」

「あのシステム…使わせてもらいます。」

「…分かった。機体とバイタルデータは常時監視しておくから、危なくなったら止めるからね。」

「ありがとうございます。」

 

集が束さんとの通信を終える頃、敵2機は福音との接触をする為に遠ざかっていた。

既にこちらの望遠カメラで福音を確認できる程度に接近している。

だけど……不思議と危機感は感じなかった。

状況的には圧倒的劣勢。

普通なら全力で撤退しなければならないのに、そういう気持ちにも…そうしなければならないとも思えなかった。

それは多分…集が居るから。

集が戦うというなら私は全力でそれを支えよう。

集が前に出るなら私もその隣にいよう。

集が…もしも倒れるというのならその前に…私が今度こそ助けよう。

 

私は、もう集と一緒に居ると決意したんだ。

もう、その手は離さない。離したくない。

そう思ってるからこそ、ここに居る。

 

「いのり…。」

 

集が不意に話しかけてきた。

その顔は一つの決意をした表情で…私にはとても嬉しくなるような感じが、した。

 

「僕は…君を必ず守ると決めた。その気持ちは決して揺るがない。」

「うん…。」

「だから…受け取って欲しい…。僕の覚悟を。

そして…僕に渡して欲しい。いのりの…本当の気持ちを。」

 

そうして私のISに送られてきた一つのウィンドウ。

 

 

 

僚機 ロストクラウンより双方向リンクシステムの受諾依頼が来ました。

 

承諾しますか?

 

YES No

 

 

 

 

双方向リンクシステム。

それがどんなものかは分からない。

でも、私の気持ちは本物だ。

集とずっと居たい。ずっと守ってあげたい。

だから……私は迷わずYESを押した。

 

 

 

双方の受諾を確認。

双方向リンクシステム《ギルティクラウン》起動します。

 

 

そのアナウンスのあと、私達のISに変化が起こる。

お互いが光に包まれ、その中で私と集の右手が赤い糸状の物で結ばれ、二人の腕に絡みつく。

そして、集の右手が私の胸元に迫ると、そこに光の穴が開く。

 

「んっ……ああっ!」

 

懐かしい感覚。

私の中の本質が掴まれ、取り出される感覚。

その感覚に苦しくも心地よい気持ちを抱き、身をよじらせる。

 

「……フッ!」

 

そして集の右手が引き抜かれ、ソレは頭上に突き出される。

初めは光の柱だったソレは紫の結晶と化し、先端からパリパリと弾け飛ぶ。

結晶が全て取り払われた時、私達を包む光は消え去り、代わりにソレは世界に光の柱を見せながら顕現する。

 

 

ヴォイド。

 

 

私の心を具現化させた、あの剣が、集の手に握られていた。

 

 

 

 

 

 

ふと、意識が集に向いてたのを周りに戻すと、私はいつの間にか集に抱えられていた。

まるで、収監所の時みたいに。

 

そして、私の機体と思考が大きく変わっていた。

まず機体のシールドエネルギーは通常の二倍になり、武装はさっきまでは無かった集の武装がリストに加わっていた。

そして、もっとも変わったこと。それは。

 

『いのり…聞こえる?』

 

集の思考が伝わってくる。

コアネットワークを介した通信じゃなくて、もっとこう…集の考えがダイレクトに伝わってくる…。

 

『うん…大丈夫。』

『これは僕といのりを精神レベルでリンクするシステムだ。だからISのシールドエネルギーは2機の合計になり、武装は共有され、思考は言葉を介さず、ダイレクトに伝わる。そして…僕はもう一度、君を守る力を手に入れた。だから…』

『集。』

 

そこから先は何て言うのか分かってた。

だから…私も言いたい。言わせてもらいたい!

 

『私は、守られてばっかりじゃない。今度こそ、集を守って、一緒に居たい!

だから…私も戦う。』

『いのり……。ありがとう…。じゃあ……一緒に、生きて帰ろう!』

『……うん!』

 

そして私達は動き出す。

目の前の障害を倒し、あの世界へ帰るために。

今度は、二人で肩を並べて帰るために!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リンクシステムによるヴォイドは擬似再現であるため、原作と同等の性能ではありません。

とはいえ、かなり破格の性能をもっていますが、詳細は福音戦の後に。


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21:ヴォイド

おまたせしました。

またかなり間が空いてしまった(白目)
エタった訳ではないのです…EGOISTライブがあったのと戦闘立ち回りが思いつかなかったのです(言い訳)

まあ、戦闘はひとまず落ち着いたので次回からは日常とギルクラ要素の話が主体になると思います

リローデッド早くフル聴きたい…


一夏side

 

「く…そっ…っ!」

「一夏さん!今動くのは無理です!」

「だけど…このままじゃあの二人まで…!」

 

俺たちの班は壊滅的だった。

箒のISによって白色を運び、零落白夜によって叩き落とす短期決戦。

それでケリをつけるつもりだった。

だけど、箒のスラスター制御が接敵直前で崩れ、零落白夜の太刀筋は福音に当たることが無かった。

その後はもう一方的な蹂躙。

援護にシャル達が来てくれたけど、驚異的なスピード、反応速度の前に無意味だった。

速度に機体を見失い、捉えて撃っても避けられる。そして死角から攻められ、落とされていった。

今はまだかろうじて飛行可能なセシリアに肩を貸して浮かんでいる。俺のシールドエネルギーはISを展開維持するだけしか残ってない。

どうにかしていのりさん達の方へ向かおうとしても、機体は既に限界でどうしようもなく、只々見てるだけしか出来なかった。

 

だけど、そんな時いのりさん達の方角に光の柱が伸びた。

 

「なんだ…!?」

 

最初は福音の機能かと思った。あんな兵装や性能だ。光の柱を伸ばすことをやっても不思議じゃなかった。

だけど、その光が少し紫を帯びていたことで確信した。あれは、いのりさんのだと。

その光を見てるうちに段々意識が遠のき、視界は閉ざされていった。

 

 

せめて……あの二人が無事に帰ってくるよう願いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いのりside

 

集が大剣で福音に斬りかかり、私がストライクハート(涯の銃)で退路を制限して援護する。

当然、他の2機がさせないとビットや炎を纏った鞭で割り込む。

 

「甘い…!」

 

足元にヴォイドの円陣を出して上に飛び上がり、攻撃を回避しながら姿勢を下へ向け、円陣を出して足場にし、スラスターの加速と共に福音めがけて突撃する。弾丸の様に加速されたロストクラウンに福音は反応を示して反転するも大剣は背部スラスターの左翼を断ち切る。

 

「…!」

「なんだ…!?さっきとスピードが違う!?」

「不味いわね…エム、目標Sを回収、離脱。再優先よ!」

「了解」

 

サイレント・ゼフィルスが福音に接触しようと加速し始める。

でも、させない!

 

「加速…っ!」

「なに…!?」

 

フリーダムソール(綾瀬の足)と最大出力のスラスターでサイレント・ゼフィルスの前に立ちはだかる。敵からすれば瞬時加速(イグニッションブースト)を使ったかに見えると思う。

 

「どけっ!」

「行かせない!」

 

サイレント・ゼフィルスが近接用のナイフシースで斬りつけるがハートカットシザー(八尋のハサミ)で受け止め、同時にナイフの威力・耐久をダウンさせて断ち切る。

 

「なんだと!?」

「はあああああっ!」

 

切ったハサミをそのままサイレント・ゼフィルスに突き出し、IS自体を無力化させようとするが、咄嗟に手刀で弾くとそのまま後退する。

 

「スコール!」

「仕方ないわね…行くわよ」

 

後方に控えていたISがこっちに瞬時加速で接近し、火球を撃とうとする。

それをレイディガード(亞里沙の盾)で守る…それが間違いであったのがその後に分かった。

 

「終わりだ」

「っ!」

 

同じように瞬時加速で脇に接近したサイレント・ゼフィルスが銃剣をこちらに突き出そうとする。

盾を展開しようとして両腕を突き出していた私にそれを防ぐ術は無い。

やられると思った。

 

でも、銀色の風がそれを吹き飛ばした。

 

「いのり!」

「集!」

 

後退しつつ後ろを見ると動きを止めた福音を抱えたロストクラウン…集が居た。

 

「こっちは福音を確保した。後は、あの2機だけだ」

「クソッ!スコール、どうする!」

「ここは下がるしかないようね……あなた達、覚えてなさい。いつか、借りは返させてもわうわ」

 

そう言って、敵は撤退を始める。

でも…そうはさせない!

 

「集!」

「分かってる!」

 

集の使ってた大剣を私が持つ。

体験を横に構え、敵機に狙いをつけて集中する。

これは普通の兵器じゃない。

この剣は私のココロ。

その刃はまっすぐにそのモノを貫く。

だから…届いて!

 

「はあああああっ!」

 

横一文字に振りぬいた大剣から銀色に輝く刃が放たれ、敵ISに向かって飛んでゆく。

それに気づいた敵機は回避するけど、もう遅い。

刃はサイレント・ゼフィルスの左翼スラスター、金色ISの尻尾を刈り取っていく。

それでも敵は飛行を止めず、飛び去っていくが暫くの間は作戦行動は取れなくなったと思う。

 

「これで……良いよね、集。」

「いのりがそう思うなら、それが最善さ。帰ろう……いのり。」

「…うん」

 

そして私たちは、福音を抱えて帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、あの後は福音を引き渡すと即時IS学園への帰還が生徒に言い渡された。

一夏たちの手当と、ISの実戦投入という事態を鑑みた措置というのが表向き。

でも、それ以外にも福音の件や集のIS『ロストクラウン』や『紅椿』の加入というのもあるだろう。

束博士による番号外のISコアによる第四世代…もしくはそれ以上の機体がIS学園下に。

それは国際的にデリケートな問題となるだろう。

一機で師団規模の軍と渡り合える性能を持つIS。

それが唯でさえ多くあるIS学園に既存のISを凌駕する機体が多く入れば世界は危惧するだろう。

 

 

 

 

IS学園という世界最強の国が成立しかねないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく出てきたか…桜満集。ドイツから送られたアレを使うのも、そう遠く無いな…」

 

誰も居ない、何もない空間。

部屋、といえる要素が何もなく空間だけが存在するその世界で男はつぶやく。

そうして振り向くと、一つの生体ポッドが浮かんでいる。

栗色の髪を揺らして眠るその個体は胴体に紫の結晶を付着させながら浮かぶ。

そして一際多く泡を出しながら無意識に言葉に反応した。

 

 

『……集。』

 

 

 

 

 

 

 

 




ライブにいくたび思いますね、まだいのりは生きているんだって
そのたびに執筆欲が出るのですが、それと速度は比例しませんが(白目)

いつかいのり生存ルートでリメイクされることを期待しつつ、のんびり書いていこうと思います。(出なくても自分で書いて自己満足させる気がガがg)

感想、評価お待ちしております。


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22:守る力

お久しぶりです
あけましておめでとうございます

ようやくまとまりましたので投稿を。
ここから話が一気に広がっていくと思います。




「あー……やっと事情聴取終わった…」

「連日、随分聞かれたからね……帰ってシャワー、浴びたいよ」

 

福音の事件から1週間。

あれからというもの、機密事項の説明や状況の説明などで連日の事情聴取が参加メンバーに行われ、お陰で全員疲労困憊していた。

 

特に実戦記録が無い白式とロストクラウン(どちらかと言うとロストクラウンの戦闘記録が欲しがっていたが)について機密事項以外のことでかなり聞かれた。

 

「少し休むか、ジュース奢るよ?」

「おっ、悪いね」

 

寮への帰り道の途中、自販機の前を通りかかるときに集が言い出し、一夏がそれに乗った。

 

「…ふう。そういえば、集はなんであんなに強いんだ…?」

「僕?」

「ああ、俺が敵わなかったヤツを、集は簡単に倒してみせた……。集のISが俺の白色より特別だってのも分かる。だけど、それだけじゃあの状況はひっくり返せない。だから…。」

 

一夏が真剣な表情で集を見る。

その目は強い意思を秘めている事がまじまじを感じられた。

 

「頼む!俺に訓練をやってくれ!このままじゃ千冬姉や皆も守れない…っ!」

「一夏…」

 

集は考える。

力を持つ者にはそれ相応の責務が生じる。

敵を倒す、人を正しい方向へ導く……その責務にも多種多様だ。

なら、一夏の責務は何だ?当然、誰かを守る力だ。

白色を手に入れた時からそれは付いていくものだ。

だが、一夏にそれを成す為の実力が伴っていないのも確かである。

なら、自分がやることは一つだ。

 

「い「いいよ……私も手伝う」っていのり!?」

 

いいよ、と言うつもりがいつの間にか近くに居たいのりに奪われてしまった。

 

「いのり、君もいいのか?というか、私『も』って?」

「だって、集なら…」

 

一度言葉を止めて集を見上げて笑い掛けてくる。

 

「……断らないって、思ってたから」

「……参ったな、いつの間にか僕の思考も読むようになってたなんてね」

「エクソダスの後から、集みたいに自分らしくない事をやるって事を…考えるようになってきたから。私も、たまには自分らしくないことを…ね?」

「僕のせいか…ハハッ。なら僕も自分らしくない事をやろうかな…。というわけで、一夏。君の訓練、受けよう。」

「ありがとう…!なら明日の放課後からよろしく頼む!アリーナの申請は俺がやっておくよ!」

「ああ、それじゃ。」

 

飲み終わってた缶をゴミ箱に入れ、集は寮へ歩みを進める。

その隣には勿論、いのりも居る。

 

「そういえば、こうやって二人で家に帰るって事、あまり無かったね」

「うん……あの頃は葬儀社の事が主体だったから…」

「確かに。でも、僕はずっと思ってた。こうやって二人で普通に帰れるようになりたいって。」

「それは……私も、思ってた」

「そして、今こうやって一緒に帰れてる。僕はこんな事がとても嬉しいんだ。」

「集…」

「だからいのり。絶対、あの世界へ二人で帰ろう」

「……うん!」

 

そんな会話をしながら二人は寮へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

翌日のアリーナにはスラスターの噴射音が響き渡っていた。

 

「くそっ!ビットを見る余裕が無い…!」

「落ち着け!ビットを見て避けるんじゃない、当たらない様に動くんだ!」

 

白式駆る一夏がブルー・ティアーズのビットからひたすら避けている。

操作を行うセシリア自身は主兵装であるスターライトMarkⅢを持っておらず、上空からビット操作に集中している。

 

「一夏さん!もっと多角的に!出ないと動き読まれますわよ!」

「無茶言ってくれる…!でも…やってやるさ!」

 

そう言って一夏は更に回避機動を上げていく。

しかし、途中からその動きは急に鈍くなり、ビットからの被弾が増えていった。

 

「…そこまで!一旦休憩しよう。」

 

僕の合図で訓練は一時中断となる。

まず一夏に不足している物として三次元機動が絶対的に不足していることが判明している。

福音戦のログを見るに高度は殆ど変わらず、横軸線上での戦闘となっており、完全に動きを見られている状態だった。

地上戦と違い、ISバトルは空中での戦闘が殆ど。よって三次元戦闘になるのは必至だ。

そこで生きるのが高度、スラスター調整によるアクロバティックな機動だ。如何に相手を惑わし、自分が優位な位置、機動を得るかが戦闘に置いてアドバンテージとなり得る。

一夏はそこが致命的なまでに欠落していた。零落白夜の一撃必殺であることも如何に即取り付きからの斬撃という男の子らしい戦闘スタイルになった要因でもあるだろう。

だが、ISバトルは殆どが軍人無いし一定の訓練を受けたパイロットが相手だ。子供のチャンバラごっこやゲームとは違う。まずはその思考と戦術を一夏に入れることが必要だった。

訓練としてはセシリアのビット攻撃からとにかく避け続けるというだけ。しかし、ビットは全方位あらゆるところから撃ってくる。それをレーダーや自分の思考で把握しどんな機動をすればいいかという思考と動きを叩き込む訓練になっている。

ビットのビーム自体は威力を落とし、衝撃が来る程度にしてあるからシールドエネルギーが切れる心配も無い。しばらくはコレが主となりそうであった。

 

「ゼェ…ゼェ…。駄目だなぁ。どうしても三次元機動に入ってスピードを上げると自分がどこに居るのかが分からなくなる。」

「そこも含めて、慣れていくしか無いね。一夏にはそれが今一番必要なのだから。」

「整備班に掛けあってきた…。後で白色のエネルギー配分調整やってみるって。」

 

一夏と集が話しているといのりが入ってきた。

いのりには整備班に掛けあって白式の燃費調整を依頼してもらっていた。

今の白式は燃費が最悪という問題もある。そこも改善すべきだと僕は思っていた。

 

「思った以上にヤバイ状況だったんだな…俺は。」

「自覚出来てるなら良いよ。それが伸びしろになるんだから。」

「それもそうか…!よし!もう一回だ!」

 

その日は夕暮れまでスラスターとビットの音がアリーナに響いていた。

 

 

 

 

 

 

そんな訓練をしていること数日。

その日のクラスは少し様子が違った。

 

「ん…?どうしたの?」

 

やけにザワつくクラスメート達が気になり、僕は近くに居た子に聞いてみた。

 

「なんかまた転校生が来るって話なんだって。」

「最近多いよね…。ここまで多いと何か仕組まれてるとしか思えないよ…。」

「IS学園はどんな権力からも守られてるから大丈夫でしょ…。」

 

そんな会話が広がっていた。

転校生…?1組ばかりに…?

明らかに怪しいと思えるがそれが何なのかが分からない以上、僕はいのりの傍にいるしか出来ない。

まずはその転校生を見てみない限り…。

 

 

 

ややあって、織斑先生が朝のHRでやって来た。

 

「おはよう諸君。早速だが…えー、また転校生を紹介する。」

 

クラスがザワつく。いよいよ転校生の登場か。

 

「校条、入って来い。」

 

……え?

今、校条(めんじょう)って…

 

次の瞬間、僕の思考は止まった。

 

濃い栗色の髪を赤いリボンで結び、優しそうな顔立ちをしている女の子。

 

「初めまして…」

 

その口から発せられる声。快活そうで優しさを秘めた声。

僕は

 

「事情で編入が遅くなりました…」

 

その人物を

 

「皆さんとこれから勉学に励みたいと思います…」

 

彼女を

 

「名前は…」

 

『私ね…集はきっと…いい王様になれると思うの。』

 

目の前で僕を助け、砕け散った彼女を

 

校条 祭(めんじょう はれ)と言います。」

 

 

 

知っていた。

 




先日、EGOISTツアーFINALに参加してきました。
和風金魚服、最高です。
いのりがどこまで行くのか、楽しみです。
延期となった虐殺器官、待ち遠しいですね。

それと会場にてギルクラの再編成を独自に書いていっしゃる方とお会いしました。
とても哲学的な内容を含んでおりますが、ギルクラの世界を緻密に考えていらっしゃる方です。
今回はその人の情熱に動かされたと思います。

感想、評価お待ちしております
評価等あればモチベに繋がりますのでよろしければお願いいたします。


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23:同一存在

祝!ギルクラブルーレイBOX発売決定!&カバネリの主題歌にEGOIST!

もう嬉しさではち切れそうです。
これからも、私はギルクラを愛し続けますよ。

この作品も完結まで持っていけるよう頑張りたいです。
また、1話の量も少ないですが温かい目で応援していただけたらと思います


「なんで……なんでハレが……」

 

僕は視線が彼女に釘付けになり、声は震えていた。

確かに目の前でアポカリプス結晶に覆われ砕け散っていった彼女。

死んだはずのハレが今、目の前に存在する。

この時の僕は、冷静さを欠いていた。

 

「校条は家庭の都合でドイツからの帰国子女だ。当初は入学式に間に合わせるはずだったが…急病にかかり

、医者から帰国を止められていたそうだ。皆、校条をサポートしてやれ、いいな?」

「大丈夫です。もうお医者さんからは問題無いと言われてるので。」

「そうか。ああ、席は桜満の右隣だ。」

「はい、分かりました。」

 

そう言ってハレがこっちに近づいてくる。

 

「よろしくね!桜満君!」

「あ、ああ。よろしく」

 

対外的に返事を返す。その笑顔、その声。間違いなくハレだ。

でも何故?ハレは僕の世界の人間。しかも既に死んでいる。既に死んだ人間がこの世界では生きている?ありえない。いくら何でも名前だけ同じとか、ちょっと似てるというのが精一杯だろう。だけど…

 

僕はその日、思考のループから抜けだせないでいた。

 

 

 

 

 

その日の夜、僕といのりは僕の部屋で束さんに連絡を取っていた。

 

『校条祭?』

「そう。その人物について調べて欲しいんです。」

『いいけど、何で?』

「校条祭は私達の世界で既に死亡している。同一の人物が居るのは怪しい。」

『成る程ね……分かった。当たってみる』

「お願いします。」

 

通信を切った後、僕といのりはベットに腰掛け、お互いを見ていた。

 

「いのり……今回の件、どう思う?」

「多分、何者か……恐らく私達の世界から来たソウって敵の刺客だと思う…」

「やっぱり……だけど、僕はハレが殺しをしに来るとは到底…思えないんだ。」

「集……。」

「中学の頃から、ハレは優しかった。あの頃、閉鎖的だった僕に友達の手を出してくれたのは……ハレなんだ。ハレが手を差し伸べてくれたから、僕は多少なりとも友達を作ることが出来たし……何より、君に出会えた。」

 

俯きがちに言い、最後にいのりを真正面から見る。

 

「だから、僕は確かめたい。彼女が本物なのか。何をしようとしているのか。」

 

もし、ハレが僕らに何かする目的で居るのなら……僕は彼女を討てるのだろうか?

いや……討つんじゃない。ハレの罪も僕が引き受ける。彼女を殺した引き金を引いたのは…僕だ。なら、それが僕の罪であり、贖罪なのだから。

 

「集……。」

 

ふいに、いのりの手が僕の手に添えられる。

 

「あなたは一人じゃない。私も背負う。だから……抱え込まないで。」

「いのり……。」

 

その言葉が、僕の心を少し和らげてくれた気がした。

 

 

 

 

 

「桜満君。」

 

翌日の放課後。いつも通りに一夏の訓練を行っていると、後ろから声を掛けられた。

 

「…何かな?面条さん。」

 

振り向くと、打金を纏ったハレが居た。

 

「お願いがあるんだけど……ISの動き、少しレクチャーしてくれないかな?私、向こうで基本的な歩きとかしか出来る時間なくて……少しでも取り返したいから、手伝ってくれないかな?」

 

いま此処にいる彼女が、たとえ別人だとしても……僕はハレへの恩を返せるなら…。

そう思った僕は了承することにした。

失った時間を取り戻すかのように。

 

 

 

 

 

結論だけ言えば、ハレは走る動作で10回は転んだ。

 

 

 

 

 

 

 



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24:背反する想い

前回投稿から半年ほど経ってしまいすみません!
ライブやらコミケやらで忙しかったので(殴

それはそうと今日はギルクラがアニマックスで再放送だそうで
私の部屋にはBSは無いのですがね
だが私にはブルーレイBOXがあるので悲しくない!(涙
あと、カバネリ本編と新曲で嵌っていました(
ライブの旗振りマジかっけえ…



その日、私はまた夢を見た。

 

____300と10の鐘が鳴り、また生命が誕生する。

 

(誰……?)

 

真っ暗な空間。

天と地すら分からなくなる程の闇の空間。でも前は見えてる、そんな不思議な空間。

 

 

____皆、その瞬間から死へと向かっていって、終わりへ進む。

 

(誰なの…?)

 

声がどこから聞こえてくるのかも分からないその空間。

 

 

____前に出した問題の答えは出たかしら?

 

そして思い出す。

その問いかけは、『完璧なものとは何か』

学年別トーナメント前に見た夢で問いかけられたあの問題。

 

(……分からない。ただ…)

 

____ただ?

 

(この世に完璧なものなんて、無いと思う)

 

____……その理由は?

 

(皆誰だって、誰かに愛され、憎まれ、生きている。

ヒトやヒトが生み出した物は、必ずどこかが綻びている……だけどそれがヒトがヒトであるがための摂理だと……思う。)

 

あの日、自我を真名から取り戻したあの時、集の思いが私にも伝わっていた。

 

『僕を憎んだ人も……誰かに愛されていたんだ』って……

 

ヒトは、必ず心の底では誰かを憎んでいる。

何かが自分より上手い、強い……

他者を憎む一方でその人や他からは愛され、また憎まれている。

そんな堂々巡りとしたこの世界は歪で、でも一つの円として動いている。

私は、そんな世界を見てきて、集と出会って、恋をした。

その中で誰かを恨んで、誰かを愛して、ヒトとしての心が満たされた。

だから……世界は定義出来るほどに完璧なものではないのだと思うの。

 

____そう……貴女がそう思うならそれでいいわ

 

(一つ聞かせて……貴方は…誰なの……?)

 

____私?そうね……

 

微かな沈黙が続き、暗闇はまた声を伝える。

 

____『    ろ』……かしらね

 

(え……?)

 

重要な部分が聞き取れず、聞き返そうとしたところで急にその声が遠のく。

 

____お目覚めね……貴方が愛す人を…支えて…

 

 

 

 

 

 

          ☆

 

 

 

 

 

「ん……。」

 

カーテンから漏れる朝日に目を細めながら目が覚める。

ベッドに横たわったまま寝返りを打つように横を見るとセシリアがまだ寝ていた。

 

(夢……。)

 

そう、夢。

夢であるはずだったのにその記憶ははっきりしてて……だけどその声だけはぼやけて何を言っていたのかだけが頭に残っていた。

 

(私が愛す人……集…。)

 

夢とは脳が前日の記憶を整理する過程で見るものだと何処かで見た事がある。

それなのにそれとは全く関係がなくて……まるで誰かと話に出かけていたような感覚が残る。

 

(関係あるなら…校条祭の件…?)

 

突如として転入してきた校条祭。

同姓同名がいるというのは異世界において十分に考えられる。

でも…いくらなんでも姿まで全く同じというのは怪しいとしか考えられない。

昨日今日でクロだと判断するのは早計だと分かっていても……胸騒ぎが収まらない。

それに……もし彼女が集の敵だったとして、私は……彼女に刃を振り下ろせるの……?

 

 

 

  

      ☆

 

 

 

 

かつて、僕の目の前で砕け散ったハレは何を思ったのだろうか。

直前まで意識を失っていた僕を治療し、何らかの理由で急速なキャンサー化してしまった彼女。

微かな意識をたどると何かを言っていたのはわかってたけど、そこまでで彼女の真意までは分からなかった。

そして今、彼女は目の前で生きている。

 

「どうしたの?桜満君?」

「あ、いや……何でもないよ」

 

昼食の時間、皆で食事を摂っているとハレがこっちを見ていた。

どうも考え込んでいて箸が止まっていたようだ。

 

「いや、ちょっと考え事をね」

「今度の期末テストのことでも考えてた?一般教養なら私が教えても…」

「大丈夫だよ。校條さんはIS科目のことをやったほうがいいと思うし、そこまで迷惑かけれないよ」

「そっか…そうよね。」

 

僕の前に現れてからというもの、ハレはこちらへの接触をよくやってきている。

それは生前と同じようでもあるけど……僕はそれに対して、一歩引いたような反応を返していた。

やっぱり目の前のハレが同じハレと結論付けるのは早いと思ってもいるし…何より、僕が殺してしまったようなものでもある罪の意識が自然とそうさせていたのかもしれない。

だけど、このハレが本物である証拠が無いように、偽物である証拠もない。

今は……ただこのギクシャクとした関係でいるしか無かった。

 

 

 

 

それから数日後、期末テストが近づいてクラスメートがそわそわし始めた頃にハレからISについてのお願いが来た。

 

「ISの飛行訓練?」

「うん、私どうしても飛行が苦手で……ホラ、期末の実技試験に飛行もあるでしょ?だから少しでも飛べるようにしときたいなって…」

 

確かに、ハレの飛行技術はお世辞にも良くなかった。

浮かぶまでは良いものの、ホバリングからの移動(体を水平にせず、重心をずらしてゆっくり移動するだけ)がどうにも出来てなかった。

ISの実技試験ではその辺までが試験となってるためこのままでは評価は低くなってしまう。

幸い、僕は筆記試験に関しては対策は大方終わっているため余裕はあったため引き受けることにした。

その迂闊さが後でどうなるかなど知りもせずに…

 

 

 

     ☆

 

 

 

放課後、僕はいのりを連れてアリーナのハンガーへ向かった。

いのりは自分のISのメンテナンスと言っていたけど…多分、ハレの監視が目的だろう。

ハンガーへ行くとハレは既に着替えて待っていた。

 

「あれ?いのりさんも来たんだ。」

「うん…ちょっとISのメンテナンスしにね」

「そっか、じゃあ桜満君お願いね」

 

そういうと打金を装備して歩いてアリーナに出て行った。

 

 

 

 

練習を始めて1時間ほど経つとハレはホバリングしながらの移動がほぼ形になっていた。

元々、人一倍努力家でもあった彼女だ。そうなるだろうとは思っていた。

 

「私ね…時々不思議な夢を見るんだ」

「夢?」

「うん。優しい王様だけど皆から嫌われてひとりぼっちで、それでも優しい王様であろうとする……そんな夢。」

「王様…ね」

「その王様はね、不思議なチカラを持ってたの。人のココロを形にするチカラ。」

「……。」

「そのチカラで王様は国を統べた。そしてソコからはそのチカラで国を良くしようとしたの。でも、国民はそんな王のチカラを恐れ、疑心暗鬼になり、国は荒れた。王様は嘆いた。『どうしてこうなったのだろうって』。そして気づいたの。人のココロは願いや恐れなんかを詰め込んだパンドラの箱だったって。」

「それの何処が優しい王様だったの?」

「王様はね、チカラを持つ前は人を大事にする性格だったの。それがいつしかチカラに酔ってしまった。そして気づいた時にはもう遅かった。だから王様はチカラを封印して国を立てなおそうとした。けどそれを成し遂げる前に死んでしまったの。」

「力は時として人を変えてしまう…お金の力だってそうだね。」

「そう。王様は優しい王様であろうとしたけどそれをするにはもう遅かった。」

「…なんでそんな話を僕に?」

「そのチカラの名前がね…『ヴォイド』って言われてるの」

「っ!!」

 

思わずハレから飛び退き、距離を取る。

その一言で全てを察した。彼女は…僕の知っているハレだ。

 

「なんで私がここにいるのって顔してるね……簡単な事。私は生き返った…ううん、生き返えさせらせたと言うのかな。」

「それをやった奴は誰だ…っ!」

「分からないわ。ただ私を生き返らせたヒトはこう言った。『桜満集を殺せ』と」

「お前は…っ!ハレじゃない…ハレはそんなことに従わない!」

「そう、死ぬ前の私ならするはずがないよ…。でもね、従わなきゃ私は消えてしまう…。」

「っ!」

「私だって集を殺すなんてしたくないよ…でも…怖いのよ。」

 

ハレが涙を流しながら叫ぶ。

 

「私が私でなくなるのが!!」

 

その姿が姉…桜満真名がロストクリスマスを起こした時の姿を重なった。

 

「だから私は戦う。例えそれが集を殺す結果になっても…!」

 

ハレの打金がIS刀を抜き放つと同時に上空から何かが2つ、シールドを破って落下する。

青い塊だったソレは変形し、エンドレイヴ・ゴーチェへ姿を変えた。

 

「今のアナタに私は一人じゃ勝てない。だから…ごめんね?」

 

ゴーチェの銃口がこちらに向けられる。

今からじゃ展開は間に合わない…このままじゃ…!

 

「集!」

 

声がしたと同時にゴーチェのレールガンが火を吹く。

だけどその光は目の前で何かに防がれてかき消された。

 

「いのり!」

「良かった…間に合って…!」

 

IS『ギルティ』を纏ったいのりが飛んで来る。

そこへ帰っていく砲弾を防いだのであろうビット。

危機を察知して直ぐに来てくれたみたいだ。

 

「やっぱり、邪魔するのね。いのりさん。」

「集を守るのが私の信念!」

「なら、二人とも相手してあげる…行って!」

 

ゴーチェ2機がこちらへ向かってくる。

IS展開を終えた僕はいのりと共にスラスターを吹かして立ち向かった。

ハレを救うために。

 




今回は集がメインですが次回はいのりメインになります

ご意見、感想お待ちしています


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25:理想と現実

お久しぶりです。
前回から2年もの時が過ぎてました。
リアル的にも精神的にも比較的落ち着きが出て来まして、再び筆を取ろうと思った次第です。

もっとも、コレを覚えてる読者さんがいるのか……
完結までのプロットは出来上がってるのでゆっくりでも完結させようと思います。


医者の間ではこんな忠言がある。

『身内あるいはソレに近しい人の手術はするな』

それは手術の成功率に大きな影響を与えるとされているからだ。

失敗した時の心理的ダメージ、ソレを恐れるあまりのメンタルの変化。

人はどのように鍛えたとしても近しい人を傷つけ、まして殺しかねない状況では真の実力は振るえないだろう。

 

僕も……そうなのだろうか。

 

 

 

        ☆

 

 

 

「ハアッ!」

 

ハレの振るうIS刀が目前に迫る。

ソレをシザーで受け流し、スラスターを吹かして距離を取る。

 

「止めてくれ、ハレ!僕達が争う必要なんか無い!」

「私だってそうしたいよ……でもね、集。コレは意思なんかじゃない。しなきゃならないっていう『使命』なんだよ。」

「……っ!」

 

ハレが刀をコチラに突き出す。

 

「止めるなら……私を倒す他無いんだよ!」

「ハレ…っ!」

 

刀をシザーで防ぎ、弾く。

ハレの動きは優しいハレがするような動きではなかった。

織斑千冬(ブリュンヒルデ)ほどでは無いものの、代表候補生……もしくは国家代表レベルに近い動きをしていた。

使用している機体が打金という量産機だけにワンオフアビリティを使うトリッキーな事をしないのが救いだった。

しかし、その分安定しながらも防ぎにくい刀さばきをしてくる。

大上段からの斬撃で防御を誘い、直ぐに返し手で下から切り上げ、直後に蹴りで隙とダメージを与える。

完全に実戦を予期した動きだった。

 

「なんでこんな……なんでハレなんだ…!」

「なんでかって?それを知ったところでどうにもならないよ!」

 

剣戟がシザーを弾く。

咄嗟に武器をコール。ほぼ反射的に取り出されたのはストライクハート。即ち、涯のライフルだった。

至近からの発砲でハレを後退させ、態勢を整えつつライフルを構える。

 

「そうだよ、集。それでいいの。」

「くそっ……っ!」

 

ライフルを持つ手が震える。照星の先に見えるのは知った顔。いのりと同じくらい知った顔に向けて銃を向けてるのだ。

模擬戦なんかじゃない。本物の戦闘。殺し合い。

まさしく、これを仕向けてきたであろうソウは余程の強かさのは間違いなかった。

 

(どうする……どうすれば……!)

 

一度は自分の手で殺してしまったようなもの。

今度は……本当に僕の手で殺すのか?

 

(絶対に嫌だ…!僕はもう、何も失いたくない…!)

 

救う為ならこの身はいくらでも罪を背負おう。

助かるのならこの身はいくらでも差し出そう。

 

そうやって救ってきた。だが、それは『こうすれば助かる』と分かってたからだ。

分かってることを実行するのは容易い。しかし、今は完全に手詰まりであった。

ISを無力化したところで、ハレの催眠ないし洗脳は解けない。

と、ここで一つの案が頭をよぎる。

だが、かなり分が悪くましてやその予想が当たってる保証なんかない。

だけど、不思議とある種の確信を抱けた。

 

「いのり!」

 

ゴーチェと交戦中のいのりへ声と飛ばす。

 

「集!」

 

その声に応じていのりが返す。

そうすると、ISのシステムが一変していく。

 

_GuiltyCrownSystem___Rady

 

双方向リンクシステムを起動させ、王の力を呼び覚ます。さらに、

 

「……っ!ようやく本気になったみたいね。」

 

ワンオフアビリティ:ヴォイドフルバーストを起動させ、ヴォイドを展開させる。

その姿にハレはニヒルとでも形容する表情でIS刀を構える。

 

「ああ……僕は、君を殺す。そうでしか君を救えないのなら!」

「いいじゃない……やってみなさい!その化けの皮がどこまで保つのか!」

 

その刀を受けるようにシザーを構える。

他のヴォイドは手に持たない。

 

「どうしたの!それだけで受けるつもり?」

「ああ……これが、僕の……答えだ!」

 

そして、僕の体にIS刀が突き刺さった。

 

 




今回は2年前に書きかけのを進めただけなので短め。
次回から長めに書こうと思います。

また、本作品の文書を修正、加筆するつもりです。
かなり稚拙な文書でしたので……
修正状況はあらすじに書く予定です。
ご意見、ご感想お待ちしております。
皆様の感想が筆者のガソリンです。


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26:歪んだヴォイド

戦闘プロットは思い浮かんでもセリフなどで持たせるのが難しいですね
ココ最近はずっとFGOやらに逃げてました。
ちょっとイベント最後のアレはズルいです…。

シトナイ引いたからヘラクレス来て(懇願)




人は知らず知らずのうちに定められたルールに則って動くものだ

ゲームだろうが、草野球だろうが、公なレフリーも居ないのにそれらは成り立ち、動いている。

戦争だってそうだ。ハーグ陸戦協定なんて大仰に定めたルールは存在し、それらに則って今日での戦争はABC兵器などは使われていない。……もっとも、僕たちの世界では使われたようなものだけども。

とにかく、人は気が付かぬうちに最低限のルールを守っている。

それを破れるのは訓練を積んだ人か、精神破綻者……あるいは覚悟を持った者だろう。

 

 

 

     ☆

 

 

「獲った……っ!」

 

IS刀が僕目がけて突き出される。

速度、角度、重量共に文句がない突きだ。食らえば絶対防御作動域まで到達し、シールドエネルギーを空にすることだって出来るだろう。

 

現にハレは勝ったと確信した声を上げた。

 

確かにこのままなら間違いなくシールドエネルギー枯渇で僕のISは機能停止するだろう。

……これが()()()I()S()()()()()I()S()()()()であったのなら。

 

ガギィン!と硬質な音を立ててIS刀が突き刺さる。

しかし、ハレの顔は浮かぬ顔だった。

 

「なんで……なんで刀が()()()()()()!?」

 

ハレのIS刀はIS本体には突き刺さらず、手前で静止していた。

スパークを上げてはいるものの、IS自体にはダメージは無い。

 

「ハレ……やっぱり君は変わってない。僕のISが普通のISだって思ったことがそもそもの間違いだ!」

 

左手でIS刀の峰を掴んで固定し、右手のハサミでハレを袈裟斬りにする。

その一撃は容易く打金のシールドエネルギーを削り取る。

 

「きゃあああああああ!」

 

ISがシールドエネルギー枯渇と絶対防御作動によって解除される。

ハレはその勢いのまま飛ばされた。

 

「う…く…!」

「僕のISが束さん手製のものだということにもっと気をつけるべきだったんだよ、ハレ。」

 

そう言いつつIS刀を投げ捨て、ハレに近づく。

僕がやったことは単純だ。相手が絶対防御にまで追い込む攻撃をするのなら、それに耐えるだけのシールドを張ればいい。

つまり、絶対防御に割くエネルギーを攻撃が当たる部位に一極集中展開したんだ。

普通のISならそんなことは出来ないだろう。それをすればIS神話も、ISバトルのルールさえも覆すのだから。

だけど僕のISは束さん手製だ。仕様変更はお手の物である。

僕のISは通常のISバトル用と実戦モードの2通りで出力制御がある。

実戦モードならパイロットの意向に合わせてフレキシブルにコンピューターが出力変更を行う。

GCシステムを起動した時に出力を実戦モードで開始。後はこの通りハレが狙った場所に絶対防御を束ねたバリアを展開したという訳だ。

だけど、これは諸刃の剣だ。しくじったらほぼ間違いなく死が待っている。

そんな賭けを僕は昔のハレを信じて賭けた。

 

「集……あなたはどこまで自己犠牲なの……!」

「僕は……この手で救えるのならいくらでも手を伸ばすだけだ!

だから今度はハレ、君を救ってみせる!あの時救えなかった君を!」

「集……。」

「それに、この賭けは100%ギャンブルって訳じゃなかったんだ。

ハレ、君の優しさならなるべく苦しまずに一撃で倒す部位を狙ってくる。君の優しさを、僕は信じたんだ。」

「そんな……私は……本気で集を……!」

「だからだよ」

「!」

 

ハレはどんな時だって僕の側にいてくれた。助けてくれた。

僕はハレに何度救われていたのだろうか。ハレが居なければ涯たちを助けに空港まで向かったのかも分からない。

道中だってハレのヴォイドが無ければ海に落ちていたか、迂回で涯を、いのりを助けられなかったかもしれない。いや、間違いなく間に合わなったのだろう。

そんなハレだから、僕は信じたんだ。

 

「集……!」

 

ハレの顔が涙で滲む。

今こそ、ハレを……助ける。

 

「ハレ……もう一度、僕を王様にして。」

 

右手を伸ばし、ハレの胸元へ向ける。

右手はヴォイド能力が起動し、光を放ち始める。

 

「集……もう一度、あなたの側にいてもいいの……?」

「いいに決まってるさ……僕は、君に救われたのだから。」

「集……!」

 

ヴォイドが彼女のココロを形作り、猛烈な閃光を放った。

 

 

 

    ☆

 

 

 

「クッ……!」

 

ゴーチェのパイルを掠めるように回避する。

そこへランスビットを飛ばすものの、装甲で弾かれてしまう。

APウイルス由来であろうビットを。

 

(このゴーチェ、普通じゃない……!)

 

2機を相手取っても私なら圧勝出来る。

そう思ってたのが間違いだった。

このエンドレイヴ、形こそゴーチェだけどその武装と装甲はとんでもなく強化が施されていた。

レールカノンは弾頭に榴弾を使ってるのか、着弾で爆発が起こり、ISのシールドを細かく削る。

パイルは発射機構を改良したのか、初速が早く、威力と利便性が上がっている。

そして極めつけは肩にマウントされたモジュール…。

方やガトリングとサイドにマイクロミサイルポッド。もう一方はレールガン。

弾幕とミサイルで回避機動を制限し、そこに必殺に一撃であるレールガンを叩き込むツーマンセルの戦いを想定した機体だった。

 

仕留めようにもビットは牽制程度にしかならず、他の武装も無意味。集を戦いに集中させるためにヴォイドは全部集に渡している。

これじゃ……!

 

(こうなったらワンオフアビリティを使うしか……!)

 

暴走もありあえるワンオフアビリティの使用を視野に入れた時、アリーナは突然の閃光に包まれた。

 

「集!?」

 

そちらに目を向けると、集が祭さんからヴォイドを抜き取ろうとしていた。

システムの中にもなかった祭さんのヴォイド。すべてを癒す包帯のヴォイド。

それが今、集の元へ行こうとしている。

胸元から抜き出されたAP結晶がパキパキを音を立てて砕け散る。

そこにあったのはまさしく包帯のヴォイドだった……でも……。

 

(色が……!)

 

そこにあるのは当時あった純白のカラーなどではなく、黒と暗い赤に塗れた包帯だった。

抜き出した集はそれをゴーチェに向ける。

包帯はまっすぐにゴーチェへ飛翔し、2機に絡みついた。

絡みついた包帯は暗く光ると巻き付いた所から装甲を腐食させていく。

次々に機体を腐食させられたゴーチェは為す術もなく崩れ落ちた。

 

「終わったよ……いのり。」

 

祭さんを抱えた集が戻ってくる。

 

「集……アレは…。」

「多分……ハレの心情がすこし変わったせいだと思う。ハレは僕への感情を歪められたようなものだから……。」

 

そう言った集の顔は俯き、苦い表情だった。

 

「帰ろう……いのり。」

「うん……。」

 

 

 

 

   ☆

 

 

 

ピットから出る時、集は歩きながら言った。

「僕はもう一つ目的が出来たよ。」

「もう一つ……?」

「いのりと、ハレを一緒に連れて帰るんだ。

もう会えないと思った二人に会えたんだ。僕は絶対にいのり達を連れて帰る。」

「集……。」

「だから……いのり、力をおわっ!?」

 

言いかけた集の顔を無理やりこっちに向かせた。

 

「そこからなんて言うつもりだったか、当ててあげる。

『力を貸してくれ』……でしょ?」

「う……。」

「そんなこと聞かれるまでも無いよ……私だって、集と帰りたい。またあの部屋で集のおにぎり、食べたいから。」

「いのり……あははっ。」

 

苦笑しながら集はすっきりした顔を見せた。

 

「いつのまにか、いのりも言うようになったんだなぁ。」

「集のことを想えば、そうもなるよ…。」

「僕の負けだよ。いのり、一緒に皆で帰ろう。」

「うん……!」

 

 




そういえば私が好きになるキャラって大体ピンク髪だなぁと思ったり。
いのりと集がサーヴァントになったFGOSSとか書いてみたい気も


感想、評価お待ちしてます。


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27:g術コウkan

お久しぶりです。

筆をようやく取ることが出来ました。
ここから完結まではなるべく空けないようにしていきたいと思います。

EGOISTは不滅。


ハレとの戦闘から数日後。

ソウの尖兵であると判明したハレはIS学園側に拘束……される事は無く、普通に学生として過ごしている。

集は束さんにハレをこちら側に引き入れた事を事後報告で言い、束さん経由で千冬先生を納得させたのだ。

かと言って野放しには居られないとして、束さん特製の発振器兼盗聴器を身に着けておく事が条件だった。

しかしハレは

 

「このくらいで集の所に帰れるなら、安いものだよ」

 

といって承諾。そのままハレはこちら側へと合流を果たした。

 

先に戦いで急襲してきた2機のゴーチェは集のヴォイドによって腐敗した鉄屑へと成り果てたため、そのまま廃棄。情報なんかは殆ど取れなかった為、私と集の戦闘データから解析が進められている。

 

 

そうして過ごしている平穏な学園生活。

そんな中、束さんから私達に内密な通信が飛んできた。

 

「やぁ3人とも。エンドレイヴ戦闘データの解析が終わったよ~。」

「ありがとうございます、束さん。それで、あのゴーチェはやっぱり……」

「うん、しゅー君の見立てはほぼ当たり。あのエンドレイヴはゴースト……要は無人機に可能性が高い。」

 

ゴースト

かつてGHQがエンドレイヴパイロットを必要とせずにエンドレイヴを稼働させるために開発した無人操作装置。

パイロットへの痛覚フィードバックが無いから無茶な機動、戦術をも可能にし、貴重だったエンドレイヴ戦力を飛躍的に増加させる。

とはいえ、技術にAPウイルスが使われているため、オーバーロードで結晶が生え、暴走しかねないリスクをも孕んでいた。

綾瀬たち曰く、「穢れた操り人形。あんなものがエンドレイヴであるはずがない。」と言っていた。

 

問題は、そのゴーストが人間が入ってるかのように稼働出来ていた事。

 

「並行して以前のゴーチェの装甲板解析もしてたんだけどねー……。既存のIS兵装じゃキツイんだよねこれー……。」

 

束さん曰く、装甲板にはIS系統の技術とAPウイルス系統の技術をハイブリットさせた装甲板で、接触時に微小なAP結晶を生成。硬度と耐久性を瞬間的に増加させるものとの事。

基本的に既存火器をIS用にスケールアップさせただけのIS兵装はほぼ効かないというのが束さんの見解。

例外的に通じるのはブルー・ティアーズのビーム兵装やラファール・リヴァイヴのシールド・ピアースなどの近接大威力な兵装くらいとの事。

 

「けど、しゅー君やいのりんのISは別。そのISにはAP技術を盛り込んでるからね~。」

「なるほど……でもこれじゃ、戦力としてはかなり……。」

「ふっふっふ……この束さんがそんな事も考えてないと思った?」

「いやそんなことは」

「だから!この束さんが!ハレちゃんにISを作ってあげることにしたのだ!」

 

ハレに……ISを……?

 

「ハレ専用IS?」

「そう。しゅー君たちはアポカリプスウイルスによってISコアに対して特異的なまでに親和性があるの。

だから、既存機よりも高性能に作れるし、あの装甲板にも通用する。でもソレを活かすには既存のISじゃ到底発揮し得ない。かといってそのまま戦力にしないのも惜しい。だからいっそ束さんが作ってあげようじゃないか!ってわけ」

「それは有り難いのですが……いいのですが?一応敵だった私に専用機なんて……」

「しゅー君が絶対に大丈夫って言ってるからね。私はそれを信じるよ。」

「束さん……。」

 

この人は集に全幅の信頼をしてる。

天災と言わしめた人がここまで……。やっぱり集は「王」の素質あったんだと思った。

 

「でも束さん、なんでわざわざ内密になんて?千冬先生にも言わないなんて。」

「んーーーーー。それなんだけどねぇ……。まぁいいか……。」

 

頭ではなくウサミミをポリポリと掻いた束さんから発せられた言葉は私達を絶句させるのに十分だった。

 

 

「ソウと思われる動きを捉えた。多分近いうちに大きな事を仕掛けてくる。」

 

 

 

 

      ☆

 

 

 

 

同時刻、某国にて。

 

 

真っ白に塗装された廊下。本来であれば目が痛いくらいの明度を発するであろうその色は本来の色を発していない。照明は最低限に落とされ、靄すらかかる廊下をソウは歩く。

 

「側室は王の元に戻りましたか。でしたら好都合。」

 

誰も居ない廊下で誰に聞かせるでもなく一人語る。

 

「もうまもなく、ボクの計画は極点へと至る。最後に残ったピースを完成させましょう。」

 

そう言うと、一つのゲートを潜る。

扉を過ぎた先にはダァトの制服を身に纏った研究員らが忙しなく部屋を徘徊している。

その中心にはシリンダー状の装置があった。

 

「最後のピース……偽りの王は果たしてどちらなのか……。『外典』の完成は近いでしょう。」

 

そこに浮かぶ物……右腕らしき物体を見てソウは呟いた。




これが完結したらFGO系で短編作るつもりです。

感想、お待ちしています


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EX:木漏れ日のある日

どうも。
先日、いのりの声優さんこと茅野愛衣さんの耳かきボイスなるものを発見しまして、即買いして聴いたところ声質が割といのり寄りで思考がビーバー化した作者です。

というわけで速攻で書き上げました。



 

ある日の午後。

何も予定が無い休日。

 

僕は唐突にいのりに散歩に誘われた。

 

気候は夏を過ぎて秋になりかけた少し暑くもあり、出歩くには心地よい晴天。

二人で学園の遊歩道を歩く。

……そういえばこうやってゆっくりした時間を過ごしたのはいつ以来だっただろうか。

 

そんなことを思っては消えていく状態を繰り返しながら歩いてると、傍を歩いていたいのりがツンツンとつついてきた。

 

「集、あそこ……座ろ?」

 

指差したのは一つのベンチ。

ちょうど樹木の影が重なってて日差しの影響も受けない、休むには絶好の場所。

 

「いいよ、なら何か飲み物も持ってこようか?」

「じゃあ、お願い。」

 

 

 

 

 

 

           ☆

 

 

 

 

 

 

そよぐ風が心地よく撫でていき、秋の始まりを感じさせる匂いを運んでくる。

ベンチに腰掛け、買ってきた飲み物を飲みながら瞼を閉じて季節の変わり目を感じていた。

思えば、春からここまで季節の移り変わりを思う暇も無く動いていたから、この時間はとても貴重で、心が安らぐ。

隣でいのりは何か新しい曲でも考えてるのか、僕の知らないメロディを鼻歌で奏でてる。

制服ではなく、白いワンピースを来ている彼女はとても眩しく、その存在を主張する。

隣ににいのりが居る。その事実だけで僕はとても満たされ、心は踊る。

再び掴んだこの手を、絶対に離さない。そのために僕は何としても……

 

 

そこまで考えたとき、唐突にいのりの手が僕の頭を掴んでぐいっと引き倒してきた。

 

「ちょ、いのり何をうわっ!?」

 

ボフッという音の後に遅れて感じる柔らかい感触。

これってまさか……

ゆっくり瞼を開けると見える景色は90度横向き。そしてその視界の隅には見覚えのある脚。

つまり……僕はいのりに膝枕されている!?

 

「そのまま。」

 

急いで起きようとするといのりに制されてしまった……。

珍しく有無を言わさないような声音で諭されてしまい、大人しく膝枕されるがままになる。

 

 

 

 

風はそんなことお構いなしに心地よい風を運んでくる。

ちょうどいい気温、気持ちいい風、いのりの膝枕という天国もかくやという状況。

図らずも睡魔に襲われかけ、意識が揺らぐ。

 

 

「あ……集の耳、結構汚れてる。」

「なっ!?」

 

唐突に言われたショッキングな一言に思考が一気に戻る。

そんな……風呂の度に耳もきちんと洗っていたのに……!?

 

「だから耳かき、してあげる。」

 

 

 

 

 

 

 

しゅりしゅり、カリカリと耳にダイレクトに音が伝わり、そこから得も言われぬ快感が襲ってくる。

 

どういうわけか、僕は今『ベンチでいのりに膝枕されて耳かきされている』という状況になっている。

なんで耳かき道具なんか持ってるの、とかそもそも膝枕なんてなんで、とか色々聞きたいことはあったけど、膝枕の心地いい感触と体温の温もり、耳かきの快感にそんな気力はAP結晶が砕けるかのように霧散する。

 

「集…気持ちいい?」

「あ、ああ。物凄く良いよ…。」

「なら、よかった……。」

 

時折、そんな風に会話はするものの。大半は耳かきの音だけが響く。

そんな時、ふと音が途絶えた。

 

「右耳、終わり。集、今度は逆向いて。」

 

!?!?!?!?!??!!!?

 

逆ってことは、お腹の方に、視線をむけ……!?

いやいやいやいや、それは不味い!いくら耳かきとはいえ、それだけは……!

 

「早く」

「はい」

 

またもや有無を言わさない声に従うしか無い僕だった。

 

 

 

 

 

目の前は真っ白な布。

僕は今、いのりのお腹を目の前にしている。

これほど近くで見たことがあっただろうか、いやない。

 

既に僕の思考はオーバーヒートしかけつつ、左耳を耳かきされてる。

 

「寝たかったら寝ても、いいよ?」

 

そんな優しい声が上から降ってくる。

さっきであればその声に甘えている所だが、今は状況が状況。

心拍は上がり、思考は暴れている状態で寝れるほど、僕は出来てない……。

 

結局、終わるまで眠れることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

            ☆

 

 

 

 

 

その夜、なんで耳かきなんかと聞いた所、箒さんに『嫁が耳かきを夫にするのは夫にとって天上の幸せ』というのを聞いたからだという。

いや、確かに天上の心地ではあったのだけど……。

 

「集は、耳かき……嫌い?」

「いや、そういうわけじゃ……。」

「なら、これからもたまにはしてあげる。」

 

……自分で耳かきすることは今後無くなりそうだ。

 

 




気になる方は「茅野愛衣 耳かき」で調べれば出ますので是非に


え、本編?
……もうちょっとお待ち下(殴


感想などあれば火付け剤になって早く書き上がるかもしれません。


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