iron hom (ほむらばーす)
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時間ならいくらでも繰り返す
出来るだけ双方の設定を取り入れて、守って行きたいのですが、マルチバース関連が、アレです。頑張ります。
ーーーーー
何から話せば良いのかしら? とりあえず、
……いや、お好み焼きにタバスコはいらないわ。まどか、この悪戯っ子を見張っといて。というか、あの私、お好み焼き作るの上手いわね……。
話を戻すわ。多分、分岐点はそうね。私は科学の力を手にしたところね。
iron hom
第一話 時間ならいくらでも
暁美ほむら、彼女は同じ時間を繰りす時間遡行者である。その目的はただ一つ、鹿目まどかを救う事。それは、魔法少女という最悪な存在にさせないで、彼女の住む街を襲う最悪の魔女、ワルプルギスの夜を倒すことに等しい。
しかし、どんなに繰り返してもワルプルギスの夜に勝てなかった。
仲間を頼っても、魔法を鍛えても、武器を集めても、何をしても、勝てなかった。幾つもの時を超え、何度も繰り返し、戦略を練った。
それでもあの魔女には勝てなかった。勝てる気がしなかった。唯一の勝つ手段はまどかに契約させることだが、それでは意味がない。何度も挑んでは負けてを繰り返すウチにほむらはある事に気がついた。
——勝てないのは単純に実力差が大き過ぎるからだ。
相手が強すぎるから勝てない。ならば、自分も強くなるしか道はない。幸いなことにほむらはの戦闘力は現代兵器に依存しているし、盾への収納機能は未だに底は見えず、さらに次の時間軸へと持ち越せる。だから、収集したのだ。
この世のありとあらゆる武器を集めた。政府はもちろんの事こと、スタークインダストリー、ハマー社などの民間企業、S.H.I.E.L.D.、テンリングス、ヒドラなどの組織、ありとあらゆる場所から武器を集めた。
それだけではなく、自らも作り上げる事にした。さまざまな技術を研究し学び、組み合わせ、魔法による強化を前提とすることにより、すべての効率を上げ、ほむら専用の武器を作った。
幸いなことに時間ならいくらでも
そして、今回こそはと、意気込んでほむらはこの時間軸へとやってきた。
◆
「暁美ほむらです。」
ほむらの前にいつもの光景が広がっていた。彼女を見るクラスメイト達は今日から加わる新たな仲間に興味津々なようで、次の言葉を待っているようだ。無論、ほむらが守ると約束した鹿目まどかもその1人で有る。まどかは初対面の転校生相手にぐいぐいと話しかけるタイプでは無いが、それでも新たなクラスメイトとは仲良くなりたいと考えている。
(いつもなら、短く言うだけだけど、今回は違う。)
ほむらは少し意気込みながら、かけている太縁の眼鏡をツルを触った。すると、レンズに数行の文章が映し出され、それを読み上げた。
「暁美ほむらです。この間まで入院していたため、皆さんにご迷惑をかけてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします。」
転校初日の自己紹介というものは、口下手な彼女には何度やっても慣れることが無かった。そのため、回数を重ねるごとにどんどんと簡素になってしまい、しまいには名前だけになってしまった。けれども、これでは良くない、と、思い直し、丸一晩かけてこと当たり障りのない自己紹介を考えたので有る。
『お見事です。噛まずに言えましたね。』
骨伝導を利用し眼鏡からほむらの元へと女性の声が届いた。これは彼女がトニースタークの J.A.R.V.I.S.をモデルに開発したAI、サタデイである。彼女の声は別の時間軸のマミにお願いして収録したモノをモデルに使用している。
(うるさい。)
どういう訳か上から目線で生意気に育ったAIへ苛立ちを募らせながらほむらは先生の言われた席へと移動した。隣の席の中沢を適当にあしらっていると授業が始まった。
授業は何回も受けているため丸暗記してしまっている。そのため、やることがないため、メガネを使い視線と瞬きによりインターネットで様々な論文へとアクセスし読み漁る。
(人工衛星か……。確かに、一般回線だと情報伝達にラグが生まれてしまう、けと、私には必要なわね。)
ほむらの扱う機械類は彼女のソウルジェム、魔法少女の魂とリンクしている。そのため、魔力を消費してしまうが、テレパシーの応用で情報を超高速でやり取りする事が可能なのである。
それに、そもそも人工衛星は伝達範囲を広げるためのものだ。見滝原 でしか戦わないほむらには無用な長物である。電波を宇宙まで届ける時間があれば見滝原 全域に既に電波は届いていることだろう。
しかし、宇宙とはある意味ロマンである。ほむらには全く必要なくても憧れのような感情は持ってしまう。そのためなのか、自然に数学のノートに落書きレベルだが設計図を書き始めてしまった。
『そのシステム、マスターには必要ですか?』
サタデイの言葉でほむらは鉛筆を止めた。彼女が書いていたシステムとは、普段は人工衛星として宇宙に存在しており、必要な時に必要なアイテムを宇宙から射出して届けてくれる。というものだ。盾に無限に近い収納スペースを持つ彼女には全く必要のない。
『うるさい。黙って。』
サタデイにテレパシーで応える。すると機械的で無感情なはずなのに妙に神経を逆撫でする声が返ってきた。
『それはそうと、そろそろ、休み時間となります。まどか様への忠告はこちらで問題ありませんか?』
レンズに文章が映し出された。それを目を通したほむらは小さく頷いた。
『ええ、問題ない、はずよ。ところで……。』
そんな話をサタデイとしながら、ネットの記事を読んでいると授業は終わり休み時間となった。いつも通り、クラスメイトに囲われてしまうが、体調が悪いのを理由に抜け出し、保健係のまどかへと接触し保健室へ案内してもらう事を頼んだ。
「……暁美さん……その。」
道中、まどかはほむらに話しかけた。その弱々しい雰囲気はほむらが
しかし、
「その、ほむらって名前、……カ、カッコいいなぁなんて」
まどかはまどかである。同じ部分も見え隠れしてしまう。その差異と共通部分がほむらの心を荒立たせる。
「まどか、家族や友達を、大切にしてる?」
それを堪えてほむらは口を開いた。しかし、そこでハッとしてしまった。間違えてしまった。まどかへの忠告は自己紹介以上に慎重に考えてきた。視界にもカンペが映し出されている。
だが、間違えて、1番長く使っていた前までの忠告を口にしてしまったのだ。
『マスター落ち着いて、まだ、修正できます。』
サタデイの声が耳に入る。しかし、ほむらは基本的に口下手だ。誰かと会話することは得意ではない。そんな彼女が出だしから間違えたのだ。当然のように頭が真っ白になってしまった。
「う……うん、大切にしてるよ。家族も、友達のみんなも。大好きで、とっても大事な人達だよ」
突然の脈略はないほむらの問いに真剣に答えてくれるのはまどかの優しさなのだが、ほむらには彼女を慮る余裕はなく、あらかじめ考えていたカンペにどう戻すかで必死である。
しかし、そんな心のうち様子もは1ミリも表情には出さないあたり、彼女の鉄仮面は完璧だ。
「そう、なら、気をつける事ね。貴女の軽はずみの行動が周りを巻き込む事になる。」
「……そ、それって、どういうこと?」
まどかの返しにほむらは言葉を詰まらせた。慌てて繋いだ言葉のため、今の言葉はほむらの本音だ。しかし、インキュベーターの事を隠した忠告としてどう伝えるかなんて考えていなかった。
『どういう事なの?』
『マスターの言葉です。このままでは墓穴を掘るだけです。会話を辞める事をお勧めする』
『! まどかとの会話をそう易々と辞められる訳ないわ!』
『なら、カンペに戻るべきです。』
その戻り方が分からないんだ。と、心の中でAIに悪態をつきつつほむらはまどかを見据えた。彼女はまだ、ほむらの言葉を待っててくれている。その変わらない優しさを感じ、ほむらは少し気分が落ち着いた。
「あなたが善意で助けた人が善人とは限らないということよ。」
「……?」
『だから、どういうことよ。』
『マスターが吐いた言葉です。』
『言葉が汚いわよ。』
『今はそれどころでは無いかと。』
更に混乱してわけが分からなくなっていくほむらだが、そんな様子を1ミリも出さない。まどかにカッコ悪いところを見せたく無いと、何回も繰り返すうちに身につけたポーカーフェイスとなる。
「……もし、それが理解でないなら、あなたと、あなたの周りの人は全てを失う事になる。気をつけて、騙されてる人は、騙されている事にすら気づいていないのだから。」
「え? そ、それって」
ほむらはそれだけ言うと、足早で廊下を曲がりまどかの死角へと逃げた。そして、繰り返しの時間で身につけた
(止まれ!)
そして、時を止めた。
ほむらと、彼女とリンクした機械を除いて全てが静止した世界を走り逃亡した。
◆
(失敗した……。うそ、混乱してて自分でも何を言ってたのか分からない。)
午後の授業は既に始まっており、校庭では体育の授業を受けている生徒の声が聞こえている。しかし、そんなことはどうでもよく、ほむらは保健室のベットで丸くなっていた。こういう時は病弱設定が便利である。
『こうして、あの謎の忠告が生み出されたわけですか。』
『うるさい、黙れ』
以前まで使っていた「鹿目まどかのままでいい」や「自分の人生が尊いと思ってる?」などの、忠告も今思えば会話の脈略が読めない。それはさておき、このままじっとしているわけにもいかない。
(それはさておき、切り替えないと。今日はキュウベぇがまどかに無理矢理にでも接触しようとする可能性が高い。)
インキュベーター、通称キュウベぇの目的はまどかと契約して魔法少女にすることだ。魔法少女とは魔女と戦い世間を守る存在だ。魔女から世界を守るため飛び切り強力な魔法少女の才能があるまどかを仲間にしたい。というのは表向きの理由だ。
し魔法少女というシステムに隠された闇が存在している。
キュウベぇの真の目的はエネルギーを集めることだ。魔法少女が希望から絶望へと反転した時、魔女と呼ばれる化け物に生まれ変わる。その際に発生する膨大なエネルギーを宇宙に還元することが奴らの目的だ。
魔法少女の最後とは魔女になるか魔女に殺されるかがほとんどなのである。
さらに、最悪なことに強力な魔法少女の才能があるということは、最悪な魔女になるという事だ。まどかが魔女になったら誰も勝てない化け物になってしまう。
(けど、キュウベぇはそんなことはお構いなし。エネルギーを手に入れられればそれでいいんだ。)
まどかを守るために、と、ほむらは身体を起こした。そして、保健の先生に礼を言って教室へと戻ったら。
◆
放課後、ほむらはCDショップへと来ていた。特に彼女は音楽を聴く訳では無いが、今までの経験上、まどかとさやかがこの場所に来る確率は高いのである。
『マスター、来られました。』
サタデイの言葉にほむらは視聴用のヘッドホンを外し、2人の方を見た。予定ならここで話しかけ、合流するはずである。その後は
しかし、ここで重要なことを思い出した。
(あれ、どうやって話しかけたら……)
話しかける方法がわからないのだ。いや、話しかけることは出来る。しかし、その後が怖くて話しかけられない、というのが正しい。
保健室に行く、など、目的があれば別だが、今回はそんな口実がない。何も口実がなく2人と行動したい、なんてどう言えば良いのだろう?
『マスター、いつ、インキュベーターが接触してくるかわかりません。話しかけるべきです。』
『分かっているわ。』
意を決して2人に近寄ると、ほむらが話しかけるよりも前にさやかが気がついた。
「あ、転校生だ。こんな所で何やってんの?って、CDショップだから聴くまでも無いか。」
誰にも気さくに話しかけられる彼女の気質は、ほむらも好感を持っているし、今もそうだが何度も助けられている。しかし、反面、一度マイナスなイメージがついてしまうととことん警戒されてしまう。
そのため、仲良くしたいとは思ってはいる。
「……いえ、散歩よ。転校してきたばかりだからこの辺りの土地勘を掴もうと思って……。」
魔法少女として活動しめいると、どうしてもクラスメイトなどに、街中で話しかけられると事がある。それを繰り返すうちに自然とテンプレ的な言い訳が身に付いてしまった。とはいえ、1ヶ月もぐるぐると歩き回っている様子を目撃され続けているため、周囲からどう思われているかは彼女も想像したくない。
「……それなら、この辺、案内しよか? 今日は特にやる事ないし、まどかも良い?」
「え? うん、良いよ。」
さやかの言葉にまどかは頷いた。この流れをほむらは予想だにしていなかった。ほむらは、さやかが入院している幼馴染のもとへお見舞いに行くつもりだった事を知っていた。そのため、わざわざわ予定を変えるとは思っても見なかったのだ。
「……せっかくなら、お願いしようかしら。」
とはいえ、2人に近づくチャンスである。逃さない手は無い。しかし、その時、まどかは奇声を上げた。
「え? 何?誰?!」
そのまどかの様子にさやかは驚いた様子だが、ほむらにとっては予想通りだ。キュウベぇはまどかと契約しようとする。奴らは無理強いはしないが、誘導はすのだ。例えば、魔女の結界の中へと呼び出す程度のことは平気でするのである。
(しかし、この作戦はうまくいかない。)
キュウベぇが狙っているのか居ないのか分からないが、近くには先輩魔法少女である巴マミが来ている筈である。とはいえ、なんらかのイレギュラーで彼女が来ていない可能性もあるため気は抜けない。
「誰?こっち?」
そう叫ぶとまどかは突然走り去ってしまった。さやかは止めようとしたが咄嗟のことで間に合わなかった。
「……ちょ、まどか?! ああ!ごめん転校生!まどかを追ってくる!」
一歩遅れて、さやかも走り出した。その背中を見つつほむらは、これから始める
◆
「君は……。」
「何この生き物……。」
まどかとさやかは地面に倒れる白い生き物、キュウベぇを発見した。身体はボロボロとなっており、見るからに弱っている。しかし、この怪我はわざと魔女の結界に入ったからによるもので、自作自演である。
「ま、まどか、さやか、助けて……。」
キュウベぇは弱った声でそう言った。突然、名前を呼ばれた2人は驚いたような様子だが、しかし、すぐに、それどころではなくなった。
突如、空間が歪み、道が変わり、景色か移り変わっていったのだ、そして、見たこともない、生き物かどうかも怪しい化け物に囲われてしまった。
「な、なにこれ!」
「ま、まどか……。」
さやかとまどかは身を寄せ合うことしか出来ない。恐怖に身体は震え、思考は停止する。しかし、そんな状態の2人の元に1人の少女が駆け寄ってきた。県内記録並みの走力で化け物の間を突っ切り、まるで風のように2人の前に立った。
「ほむら、ちゃん?」
まどかの呟きにほむらは小さく笑った。そして、スクールバックを開いた。その中にはバックとピッタリサイズの金属製の紫の鞄が入っており、その上面には円状の窪みが存在している。
(結界が作られるのが思ったよりも早かった……。)
ほむらもさやかに続いてまどかを追っていた。しかし、魔女の結界のせいで目の前にいたにも関わらず、距離を引き離されてしまったのである。
(それより、マミはまだ来ないの? なら、仕方がない!)
「サタデイ!戦闘準備!」
ほむらはそう叫んで、制服のポケットから紫色に輝く
これはスターク社のアークリアクターを真似て作ったほむら専用のエネルギー源だ。リアクターの核にほむら自身のソウルジェムを使用しており、グリーフシードのレプリカを用いて穢れと魔力を循環させることにより、膨大なエネルギーを生み出す装置である。
これを生み出した際にほむらは、認めたくはないがインキュベーターが感情エネルギーにこだわる理由が分かってしまった。それ程にエネルギー効率が良いのだが、反面、作成時にソウルジェムを改造してしまい指輪形態にすることが出来なくなってしまった。
『了解!』
サタデイの言葉を聞きつつ眼鏡を外し制服のポケットにしまった。すると箱の蓋が開き足を乗せる台が出現し、彼女はその上に移動した。そして、箱の両端にそれぞれ手を入れて一気に胸元まで引き上げた。
そして、箱は変形していきほむらの身体を纏う鎧となっていく。最後にほむらの顔をアーマーが覆い、胸元にリアクターが紫色に輝いた。
このアーマーはほむらが作り上げた、アイアンスーツ、mark.5M23である。デザインまさにアイアンマンのそれをモチーフにしているが、色は紫と白を基調としている。体型も本来のアイアンスーツよりも女性的になっており、明らかに中身のほむらよりもスタイルが良い。
また、このアーマーの利点は持ち運び性に特化していることでスクールバックにギリギリ入る大きさである。本来、ほむらの魔法を使えば持ち運び性なんて必要無いが、今回の予定では魔法少女という事を隠すため必要であった。
『システム、オールグリーン。』
サタデイの声と共にモニターに周囲の映像が映し出され、さまざまな情報が投影される。
「ほむらちゃん?」
まどかの困惑した声が聞こえたがほむらは手で制した。
「下がってて、よく分からない状況だけど……。」
右手の掌を化け物、魔女の使い魔に向けて紫色のエネルギー弾を放った。リパルサーレイ。本来、飛行補助のユニットだが、出力を調整して攻撃に転用しているのである。
ほむらの一撃に化け物は消し飛んでしまった。しかし、それでも1匹だけ、まだ、大勢残っている。
「2人とも、頭を下げて!」
ほむらはそう叫ぶと同時に両手の甲から赤いレーザーを放ちぐるりと一周回転させた。それにより周囲の使い魔は上下に両断され消えていった。すると、異空間と化していた周囲が元の景色へと戻ってしまった。
(魔女は逃げたか……。それよりも……。)
『マスター』
『分かってるわ』
いつのまにか、ほむらの後ろに金髪の少女、巴マミが立っていた。格好は既に魔法少女のものとなっており、片手には銃が握られている。その様子は明らかに警戒しておりいつでも攻撃でも逃亡にでも移れるだろう。
「まずは、2人と、キュウベぇを助けてくれてありがとう。けど、あなたは、魔法少女よね? 見ない顔だけど……。ここに来た目的は?」
巴マミは用心深い。その理由はひとえに彼女が歴戦の猛者だからである。魔法少女には縄張りが存在しており、それを犯せば殺し合いになりかねない。そんな殺伐とした世界で生き残ってきたのだ。
「………。魔法?あの、少し勘違いしているみたいなのたけど、私は化け物に襲われたから撃退した、ただの科学好きの中学生よ。」
ほむらは慎重に言葉を選びながら答えた。ほむらの予定では、魔法少女である事を隠して近づくつもりであった。しかし、使い魔を撃退した事により完全に警戒されてしまったようである。
魔女に勝てるのは魔法少女だけ、そういう常識がマミの中にあるのだろう。しかし、意外なところから援護がきた。
「……マミ、少なくとも僕は彼女と契約した覚えは無いよ。見たところ使われている技術の大半はスタークインダストリーズのものに近い。魔法少女ではない可能性は十分にあるはず。」
まどかに抱かれたままキュウベぇは顔を起こして言った。その言葉にマミは少し驚いた顔をした。スタークインダストリーと言えばここ最近メディアを賑わせている会社だ。元とはいえ武器製造業であったあの会社は日本の一般市民には縁遠い。しかし、「I am Ironman」というヒーローの言葉は遠く離れた日本も賑わせていた。
「………キュウベぇ……。それって魔法少女ではなくて、スターク社の人?」
「その可能性はあるね。」
キュウベぇのその言葉にマミは小さく息を吐いた後に手に持っていた銃を消した。変身を解かないのは、未だに警戒はしているからだろう。
「ごめんなさい。勘違いしていた見たいね。私は巴マミ、魔法少女よ。」
◆アスガルド◆
2人の男が神妙な面持ちで会話をしていた。1人は眼帯をつけた大柄な老人で、もう1人は老人の足元で跪いている褐色の肌をもつ男である。どちらも21世紀とは思えない時代錯誤な格好をしているが、
この世界ではこれが普通な事であった。
何故ならここは神の国なのだから。
「ヘイムダル、本当に見つかったのか?」
老人はそういうとヘイムダルと呼ばれた男は跪いたまま頷いた。
「はい、数日前、宇宙全体の因果律が大きく乱れてたことはお耳に?」
「ああ、聞いておる。」
「その中心がミッドガルトだと先日判明しました。そのおりに、インキュベーターの影を捉えました。やつらはミッドガルトにおります。」
ヘイムダルのその言葉に老人、オーディンはしばし目を瞑り考えた後に答えた。
「しかし、因果律が乱れたとはいえ、何故、今になって捉える事ができた?」
「おそらく、
「なるほど、効率的な動きしか出来ないヤツらのサガか」
インキュベーターは効率的な動きしかしない。壊れる要因を観測していないのに点検なんていちいちしない。原因は不明とは言え、アスガルドに舞い降りた数千年ぶりのチャンスだ。インキュベーターを逃がすわけにはいかない。
「だが、これは好機。今度こそインキュベーターを屠るぞ」
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