ゼロの使い魔 タイタンフォールスタンバイ! (一般クソザコパイロット)
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mission1 無機質で何処か人間くさい使い魔
『プロトコル3、パイロットの保護』
プロトコル2、惑星タイフォンのフォールドウェポンの破壊任務、プロトコル3、パイロットの保護、双方のプロトコルの遂行が可能な選択肢を発見。前方ハッチを開きます。
「何をするBT!」
『……信じて!』
「BTーーーー!!」
プロトコルの遂行、完了。……さよなら、ジャック。
直後、BT-7274のシグナルロストが確認され、フォールドウェポンは爆散。一機の何処か人間くさいタイタンの犠牲によって、宇宙は救われたのだ。
ここはトリステイン魔法学院。
空は蒼く、何処までも高く。
白い雲は風に乗って流れ。
一つの太陽は豊かな緑が生い茂る草原を温かく照らしていた。
その中心には黒いマントを着けた集団がいた。
1人を除いてその全てが10代の少年少女である。
その傍らには様々な生物がいた。
その中で1人の少女が杖を持って呪文を唱えていた。
ピンク色で緩やかなウェーブが掛かった長い髪を持った可愛らしい少女である。
だが、その顔は必死の形相だった。
余裕が無く、渾身の願いをもって呪文を唱え続ける。
今日は大切な日。生涯のパートナーとなる使い魔を召喚し、メイジとしての新たな第一歩を踏み出す日だ。
しかし、クラスの者達が使い魔を呼び出す中、彼女は使い魔の召喚に成功していない。
「早くしろよな~、ゼロのルイズ!」
「もう何回目だよ、いい加減成功させろよな」
「早くしないと日が暮れちまうぞ~~」
周りからそんな野次が飛んでくる。
(うるさい!黙れ!)
だが、少女…ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに構わず、
「ミス・ヴァリエール。心を落ち着かせてゆっくりルーンを唱えなさい。力が入りすぎですよ」
(うるさい!うるさい!うるさい!)
ルイズはその忠告をまったく聞かず、力強く杖を振り上げた。
(絶対に喚んでみせるんだから!誰よりも美しくて!誰よりも気高くて!誰よりも…!)
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! 宇宙の果ての何所かに居る私のシモベよ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!私は心より求め、訴える!我が導きに応えなさい!!」
ルイズは杖を勢い良く振り下ろした、その瞬間…
ドガゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!
今まで自分が出した中でも一際大きな爆発音が草原に響き渡った。
「なんだ~、また失敗か?」
「いい加減にしろよな~」
「さすがはゼロのルイズだ!」
その爆発音を聞いて、周りからそんな中傷が飛んでくるがルイズは無視した。
ただ、煙が晴れるのをじっと待った。
(ドラゴンとかグリフォンとかユニコーンみたいな贅沢は言いません。始祖ブリミルよ、私に立派な使い魔をお与え下さい!!)
煙が晴れた先に見えたのは、火花を時々上げているゴーレムであった。
「コルベール先生、これは一体なんなのでしょうか?」
ルイズの目の前には巨大なゴーレムが横たわっている。しばらく観察してみても動く気配がないところを見るとこれは生物ではないのであろうか。自身では明確な解答が判然としないため、彼女は引率担当教官であるコルベールに尋ねてみた。
「……随分と巨大ですが、これは見たところゴーレムのようですね。しかし、これほどまでに精緻で精巧なゴーレムは見たことが無い……しかも、未知の物体で構成されている部分がある!!凄い!凄いですぞ!!ミス・ヴァリエール!さあ契約を」
俄にに興奮しだしたコルベールとは対称的にルイズは己の顔に落胆の色を張り付けていた。動かず生き物ですらないこんな物体をどうやって使い魔にしろというのか、ルイズは唇を噛みしめると目の前に横たわっているゴーレムの顔にあたる部分によじ登り呪文を唱えた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ。」
コントラクト・サーヴァントの呪文を紡ぐとゴーレムの顔と思わしき四角い部分に軽く口づけを交わす。ルイズはゴーレムの無機質な姿にやや気圧されながらも契約をこなした。すると、ゴーレムが起き上がって周囲を見回す。
『……大気の組成の変化を検知。データベース内のどの惑星とも一致しません。……仮説1、アークの爆発の余波による転移。……不可能。アーク単体での転送は出来ません。……仮説2、フォールドウェポンによる誤転送。……不可能。爆発直前までフォールドウェポンは転送機能を起動していませんでした……プロトコル2、プロトコル3に基づくパイロットの保護、及び任務の遂行とします。……パイロットとの連絡失敗。検証……原因はシグナルロストによるものと推測。……本部との連絡……失敗。現地でのパイロットとのニューラルリンクを模索。……第1候補、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。貴女とのニューラルリンクを開始します。搭乗してください』
プシューっと空気が抜ける音がして、ゴーレムの中の空洞が顕になる。ルイズは恐る恐る中に乗ると、急速にハッチが閉まり、ルイズを閉じ込める。ルイズは出ようとするが、内部に何故か取り付けられていたヘルメットを被るようにBTに促されて渋々と被る。
「ちょ、ちょっと出しなさいよ!」
『プロトコル1、パイロットとのニューラルリンク……ニューラルリンク完了。視点を共有します』
ニューラルリンクが終わった瞬間、ルイズはBTとの情報が共有され、前方にBT視点の画面が映し出される。
「……何かしら、これ……」
『プロトコル2、任務の執行。……現状の任務は存在しません』
『……プロトコル3、パイロットの保護。貴女は私が守ります、パイロット』
「…変わった使い魔ね……あと、私のことはパイロットじゃなくて、ルイズ様と呼びなさい!」
『了解、ルイズ様』
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mission2 追従
使い魔召喚の翌日、ルイズは自身の部屋のベットの上で目覚めると大きく伸びをする、
窓から差し込む明るい日差しが、よく晴れた朝だということを教えてくれていた、
ルイズはまだ半分寝ている頭を振りながらも日頃の習慣に従い、学院の制服に着替え、先日使い魔の内部にあった装備を取り出す。
その様子は寝起きにも関わらず、悩んでいるかのようだった。
自身の身支度を済ませると朝食の時間が近づいていることに気づき、部屋の扉に手をかけた、
ルイズが朝食を食べるために部屋の扉を開ける、
すると隣の部屋からも人が出てきたことを確認した、
「おはよう。ルイズ」
燃えるように赤い髪が印象的な少女がそこにはいた、
褐色の肌をした豊満な肉体、そしてほりの深い整った顔立ちは美しいと多くの人が感じずにはいられない、
大きな胸を強調するようにしてブラウスのボタンを幾つも外しているその姿はやや過剰なほどの色気を周囲に振りまいている。
「おはよう。キュルケ」
かけられた声に気づいたルイズは少女のほうを向き挨拶を返す。
その顔はやや不機嫌そうな色に染まっていた。
声をかけてきた少女の名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
トリステイン王国の隣国、帝政ゲルマニアの伯爵令嬢である。
またツェルプストー家はルイズの実家であるヴァリエール公爵領と国境を挟んで向こう側にある。
しかし、両家の間には因縁深い事件が多く二人は犬猿の仲にあった。
またルイズはキュルケのプロポーションを少々妬んでいる事もあり特に仲が悪い。
もっとも、その面白い反応からキュルケはルイズをからかう事はあれど悪い感情を持っているかどうかまでは分からないが。
ルイズはキュルケに尋ねた。
「昨日はどうだったのよ、使い魔召喚」
「私は一発で成功よ、しかもね……フレイムー、おいでー」
ルイズの問いに答えるようにキュルケは話を進めた。
キュルケの部屋から呼び出したのは深紅の皮膚をもったトカゲだった。
背は1メイルほどもあり、その大きな体を支える四つの足は力強く、太かった、尾の先からは揺らめく様にして炎が踊っている、
「見て、立派なサラマンダーでしょう! この見事な尻尾の炎、ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ。好事家に見せたら値段なんかつかないわ!」
「……そう」
「?」
キュルケは拍子抜けしたように首をかしげる。
いつものルイズであれば悔しがるなど何らかの反応が見られるはずだが、いまのルイズからはそのような様子は欠片も見られない。
寧ろ、どう答えるべきか迷っているかのようであった。
そこに、件の使い魔から通信が入る。
『ルイズ様、おはようございます。アルヴィーズの食堂までの最短ルートをナビしました。アルヴィーズの食堂にて、待機状態でお待ちしております』
スピーカーで発された使い魔の音声に、キュルケの目が大きく見開かれ、驚愕の表情を作り出す。
「……アンタ、もしかして喋るゴーレムを召喚したの!?」
「え、えぇ……BTって言うらしいんだけど……ゴーレム図鑑には似たような形のゴーレムすらいなかったの」
「へぇ……つまり、最近作られたゴーレムか、大昔のゴーレムって事?」
「さぁ……? ……って、窓を突き破るようなルートが用意されてる……いつもの道で進むか……」
「?」
ルイズは首を傾げながら
そこは、食堂とは言えとても華やかな作りが施されたいかにも貴族趣味、といった建物である
中も豪華絢爛という言葉がぴったり当てはまるほどの内装が施されていた、
中には百人はゆうに座る事ができるテーブルが幾つか並んでいた、
学年別に分かれているらしく、ルイズは二年生所定の真中のテーブルへと進み、自分の席へと着席すると朝食を食べ始める。
すると、使い魔が外から覗いてきた。
『ルイズ様、次の授業に遅れないように。食事が終了したのならお乗り下さい』
「ちょうど食べ終わったところよ。ほら、乗せなさい」
『了解。パイロットによる手動操作に移行します』
使い魔は優しくルイズの胴体を握り、コックピットに入れて、ルイズに操縦権を与える。
「全く、BTはもう少し穏やかに出来ないのかしら?……私、変な使い魔を召喚しちゃったかも……」
『皮肉を検知』
『到着しました。オートタイタンモードに移行します』
教室に到着すると、BTがコクピットの扉を開けて使い魔のいる場所へ座る。
教室で待機していると他の生徒も自らの使い魔を引き連れてやってきた。教室内には様々な使い魔がいる、フクロウにキュルケのサラマンダー、モグラなど十人十色多種多様だ、ただしひときわ異彩を放っているルイズの使い魔・BTを皆が警戒しているという共通点を除いては、だが、
教壇に中年の女が現れた、おそらく教師なのだろう、一旦教室が静かになる
「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。この赤土のシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、皆様が召喚した様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみにしているのですよ」
その言葉にルイズが俯く。シュヴルーズと言う女性がBTを見つめてルイズに話しかける。
「おやおや、変わった使い魔を召喚しましたね? ミス・ヴァリエール」
とぼけた声でシュヴルーズが言うと、教室中がどっと笑いに包まれた。
「先生! ルイズの召喚したのは生き物ですらありません!」
「しかもゴーレムです! どうせ他のメイジからゴーレムを借りて連れてきたんだろ?」
「ちょっと! 私はちゃんとBTをサモン・サーヴァントで召喚したわよ!」
「嘘つくな!そんな事言ってるけど、本当は『サモン・サーヴァント』が出来なかったんだろ?」
ゲラゲラと笑い声が響き渡る。
「ミセス・シュヴルーズ! 侮辱されました! 『風邪っぴき』のマリコルヌが私を侮辱しました!」
握り締めた拳でルイズが机を叩いた。ダンッ、と少し小さな音がした。
「俺は『風上』のマリコルヌだ! 風邪なんか引いてないぞ!」
「あんた、自分のガラガラ声聞いた事ないの? 馬鹿は風邪を引かないと言うけど、あなたの場合は風邪を引いてるのに気付かないだけなのかしら!?」
マリコルヌと呼ばれた少し太っちょの男子生徒が立ち上がりルイズを睨みつける。シュヴルーズが手に持った小ぶりの杖を振ると、立ち上がっていた二人が突然ストンと席に座り込んだ。
「ミス・ヴァリエール、ミスタ・マリコルヌ、みっともない口論はお止めなさい」
というシュヴルーズの言葉とともに目の前に現れた赤土に仲良く口を満たされていた。
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