FAIRY TAIL 〜『大地』の滅竜魔導士 〜 (紅蓮大地)
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オリ主設定

タイトル通り、オリ主の簡単な設定。細かい部分はその内出す予定です。


 

名前:グラン・ワームランド

 

性別:男 年齢:16 身長:174

 

好きなもの:大地、ウェンディ、シャルル、ギルドの仲間

 

嫌いなもの:ウェンディやシャルルを傷つける者、仲間を侮辱される事

 

苦手なもの:海、空を飛ぶ事

 

容姿:焦茶色の短いストレート、目の色は明るい茶色、いつも面倒臭そうな顔をしている。人によっては睨んでるように見える。

 

種属ギルド:化け猫の宿(ケットシェルター)妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

ギルドマーク:右肩に入っている、色は空色

 

魔法:大地の滅竜魔法

 

『大地』の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)。ただし、ナツやガジル、ウェンディのようにドラゴンに教わったのではなく、体内に滅竜の魔水晶(ラクリマ)を埋め込まれた第二世代の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)

 

いつ埋め込まれたのかは全く覚えておらず、記憶が曖昧。

 

森の中でうつ伏せに寝っ転がっている所を、偶々通りかかっていたジェラールとウェンディに気絶して倒れていると思われ、そのままなんやかんやで一緒に旅をする事になった。

 

性格はおおらか・・・・というより適当であり、普通自分がいつ誰に魔水晶(ラクリマ)を埋め込まれたか気になる所を、「まぁ、いっか」の一言で終わらせてしまう。滅多なことでは怒らないが怒ると口調がとても荒くなる。

 

魔法は大地の属性の滅竜魔法。大地を自由自在に操ることのできる。

 

大地・・・・つまり土から魔力を回復できる他、石や岩、砂、泥など大地の属性のものを食べても回復できる。常に泥水を持ち歩いて飲んでいる。

 

他の滅竜魔導士に比べて嗅覚はあまり鋭くない(それでも常人よりはいい)が、代わりに視覚が他の者よりも優れている。また身体もとても頑丈で、遥か上空から地面に落ちた時も痛いの一言で終わらせたり、剣で斬られても逆に剣が折れてしまうほど。更に力も強く、魔法を使わない単純な殴り合いなら、ナツとガジルを倒してしまうほど。

 

《魔法》

 

滅竜魔法

 

・地竜の剛拳

 

拳を岩のようにして相手に殴りつける。イメージはファンタスティック・フォーのザ・シング。

 

・地竜の咆哮

 

口から土のブレスを放つ。時々、砂だったり泥だったり石や岩だったりとブレスの種類が変わる。

 

・地竜の剛腕

 

両腕を岩のようにして、薙ぎ払うように放ち、砂嵐を起こす。

 

・地竜の断裂

 

大地の魔力を纏い蹴りつける。また地面を踏み込みながら発動すれば、大地が引き裂かれる。主にカカト落としで行う。

 

・地撃

 

地面に拳を打ちつけ、大地を伝い衝撃を相手に繰り出す。

 

・地撃・粉砕

 

地撃の強化版。より広範囲に衝撃を伝える事が出来る。

 

・地撃・壊振

 

地撃の更なる強化版。疑似的な地震を相手に直接叩き込む。イメージはONE PIECEのグラグラの実。

 

・地竜剣

 

腕を剣に変え相手に斬りつける。

 

滅竜奥義

 

・極波・地竜哮

 

大地から直接魔力を取り込み一気に解き放つ。

 

・極乱・地竜破拳

 

大地から直接魔力を取り込み拳に溜めて、連撃で叩き込む。

 

・極裂・地竜斬

 

大地から直接魔力を取り込み、腕を巨大な剣へと変え、斬撃を放つ。

 

 

 

 



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第一話 出会い

あんまり細かい所は考えず書きました。


 

(・・・・ここ、何処だ?)

 

とある森の中、ある少年が目を覚ました。

 

少年は、何故自分がここにいるのか、どうやってここに来たのか、自分が誰なのか・・・・は、分かる。

 

彼の名は、グラン。グラン・ワームランド。

 

だが、彼───グランがここにいる訳は分からない。

 

(・・・・まぁ、いっか)

 

─────が、すぐに考えるのをやめてしまった。もう少し気にしてもいいのに。

 

・・・・どうでもいいけど、地面がうまそうに見えるのはなんでだろ?

 

なんでこんなに腹が減ってんだろ?・・・・よし、いってみよ

 

そんな事を思いながら、倒れ込むようにうつ伏せに寝る。そしてそのままもぐもぐと地面を食べ始める。

 

大分シュールな光景である。

 

というかほんとに食べてるし。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────────────────

────────────

 

 

永世中立国・フィオーレ王国。魔法の世界の中の一つの王国。その中のとある森の中を二人の少年と少女が歩いていた。

 

「ジェラール〜、待ってよ!どうしたの?」

 

「ごめんっ、でもあそこに人が倒れてるっ!」

 

「えぇっ!?」

 

少年────ジェラールは、歩いている途中木々の間から誰か倒れているのを見て急いで駆け出した。その後ろを少年よりも幼い少女────ウェンディがついていく。

 

こんな森の中、倒れているのは誰であろう────

 

 

 「・・・・・・・・」

 

 

────こいつ(グラン)である。

 

うつ伏せになって倒れているグランに駆け寄る二人。見たところ怪我はしていない様子だ。そりゃそうだ。寝っ転がってるだけなんだから。

 

そうとは知らない二人は倒れてるグランに声をかける。

 

「おいっ、しっかりするんだっ!」

 

「・・・・・・・・」

 

「ジェラール、この子大丈夫!?」

 

「・・・・分からない。気を失ってるのかもしれない。おい、大丈夫か!」

 

「・・・・んあ?」

 

「わぁ、気がついた・・・・よ?」

 

顔を上げたグランに安心した二人だが不思議に思った────何故か口いっぱいに土を頬張っていたから。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」モグモグ

 

「・・・・・・あー、大丈夫か?」

 

「ゴックン・・・・え?何が?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「こ、ここで何をしていたんだ?」

 

「いや、特に何もしてねぇぞ」

 

「何も?」

 

「ああ。いつの間にかここにいたし」

 

「???」

 

ウェンディはその言葉に首を傾げ、ジェラールはグランに話を聞いた。だが分かっているのは名前だけである。何故土を食べていたか聞いてみても、美味しそうだったから、だそうだ。

 

「・・・・そうだったのか」

 

「おう」

 

「土っておいしいの?」

 

「ん?んー、意外と」

 

「へぇ〜」

 

「ウェンディ?食べちゃダメだよ?・・・・君は、これからどうする?」

 

「ん?んー、どうしよ?特にきめてねーなぁ」

 

「じゃあグランもいっしょに行こうよ!ねっ、ジェラール!」

 

「うん、そうだね。グラン、俺達と一緒に来るかい?」

 

「・・・・まぁ、他に行くとこないしね。よろしく」

 

「よろしく」

 

「よろしくね!」

 

「一応、自己紹介をしようか。俺はジェラールだ。」

 

「私は、ウェンディ!」

 

「あー、なら俺ももう一度。グランだ。」

 

こうして、グランは何も分からぬままジェラールとウェンディと共に旅に出ることになった。

 

この出会いは、これから続く物語の一ページ、序章・・・・いやプロローグとなる。この物語がどのような結末を迎えるかは、まだ誰も知らない。

 

 

 




この先どうなんだろ?


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第二話 連合軍

 

────それから月日が流れた。

 

あの後、しばらく旅を続けていた三人だったが、ジェラールが今よりもっと危険な旅に出るらしく、グランとウェンディを連れて行けなくなるという事になってしまい、急遽別れる事になった。

 

グランは納得したが、ウェンディが納得できずにいた。そこでジェラールはウェンディとグランを魔導士のギルドに案内するといい、案内されたギルドが【化け猫の宿(ケット・シェルター)】というギルドである。

 

そこからまぁまた色々あって今現在は、とあるギルドを討伐する為の連合軍の集合場所にグランとウェンディが共に向かっていた。

 

「もうすぐだよ!グラン!早く行こ!」

 

「・・・・別に集合場所が逃げる訳じゃねぇんだからそんな慌てるとこけるぞ」

 

今回の目的は【六魔将軍(オラシオンセイス)】という闇ギルドを討伐する為、【妖精の尻尾(フェアリーテイル)】、【青い天馬(ブルーペガサス)】、【蛇姫の鱗(ラミアスケイル)】、そして【化け猫の宿(ケット・シェルター)】の四つのギルドで連合軍を結ぶ事になり、グランとウェンディはその連合軍の討伐隊に行く事になったのだ。

 

そして今集合場所に到着したのだが、誰も気付いてない。いやなんか話をしてるっぽい。

 

「もう皆さん集まってる!私達も行かないと!」

 

「だから、そんなに急ぐと「きゃあっ!」・・・・転ぶぞって言う前に転んだなぁ」

 

案の定急いだ結果転んでしまったウェンディに駆け寄り手を出すグラン

 

「ほら、大丈夫か?」

 

「ちょ、ちょっとだけ痛いけど、ありがと、グラン」

 

グランの手を取り立ち上がり、服の汚れなどを乱れがないかを確認するウェンディ。そしてその場にいる全員に顔を向けて挨拶をする。

 

「遅れてごめんなさい。化猫の宿から来ましたウェンディです。よろしくお願いします!!」

 

「同じく、グランだ。よろしく」

 

「子供!?」

 

「しかも二人だと……?」

 

「・・・・グランだと」

 

「ウェンディ?」

 

この場にいた各々がそれぞれ別の反応を示す。その中で、ジュラはグランを、ナツはウェンディの名を聴き反応する。

 

「これですべてのギルドが揃った。」

 

「話進めるのかよ!!!」

 

「・・・・あのよく分からん被りもんしたおっさん、どっかで見た事あんなぁ。」

 

「グ、グラン!ダメだよ、そんな事いっちゃ!」

 

グランがジュラに対してやや失礼な事を言い、それをウェンディが慌てながら止めている中、連合軍の面々は思うところがあるのか一部は少し渋い顔をしていた。

 

「この大掛かりな討伐作戦にこんなお子様達を寄越すなんて……化猫の宿はどういうおつもりですの?」

 

「━━━あら、二人じゃないわよケバいお姉さん。」

 

そう言って、二人の後ろから一匹の猫が姿を現した。

 

「シャルル!?付いてきてたの!?」

 

「当然よ、グランもいるけど、それでも不安なのは変わらないもの。」

 

「まぁ、確かにさっきも転けてたしな」

 

「ほらやっぱり」

 

「グラン!もうー、言わなくていいよ!」

 

「ネコ!!!」

 

・・・・あぁ、猫は普通喋らねぇか・・・・、と考えてたグランはふともう一匹・・・・もう一人?シャルルと違い青い体のネコを見つけた。シャルルを熱い視線で見ていたが、そっぽ向かれてる。

 

「あ、あの……私、戦闘は全然出来ませんけど……皆さんの役に立つサポートの魔法いっぱい使えます……だから、仲間はずれにしないでください〜!」

 

「そんな弱気だから舐められるのよあんたは!!」

 

「すまんな、少々驚いたがそんなつもりは毛頭ない。よろしく頼む、ウェンディ。」

 

緋色の髪の女性、エルザ・スカーレットが微笑みながらウェンディと話す。

ウェンディは憧れの魔導士と会えたことで感激していた。青い猫はハッピーと言うらしい、ネコマンダーの。で、やっぱシャルルに無視されてるが、照れてると解釈したらしい。

 

「すまんが……君は何が出来る?」

 

そしてエルザはグランに視線を向け、同じように微笑みながら尋ねてくる。グランは、正直めんどくさかったがそれはそれでめんどくさそうだったので、少し考えてから己の魔法を説明しようとした。・・・・すると

 

「いや、エルザ殿。グラン殿の強さはワシが知っている。故に彼については後で改めよう」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

「・・・・あ?」

 

この場にいる全員が今のジュラの言葉に耳を疑った。聖十大魔導の一人であるジュラ・・・・その実力はこの場の誰よりも高いという事。そんな彼が強さを認める、これほど驚くことはない。

 

「ジュラさん、彼を知っているのか?」

 

皆を代表する様に、同じギルドのリオンが彼に聞く。

 

「ああ、ほんの一年程前、勘違いで彼と戦いとなり、ワシの魔法では()()()()()()()()()。」

 

「なっ!ジュラさんが!?」

 

今度は言葉が出なかった。だが、当の本人が負けたと告げている。一体この少年は何者なのか、この場の全員が疑問に思った。

 

「・・・・あっ、あん時のオッサンか!・・・・ってちょっと待て、違うだろ、おい」

 

「む?何か違ったか?」

 

その話は違うと、グランは言い別に違いはないとジュラは言う。

 

「アンタの魔法は俺に()()()()()()、俺の魔法はアンタに()()()()()()()、だ。結果として俺のがボロ負けしてんだよ。」

 

「・・・・ふむ、だが結果としてそなたにワシの魔法が通じなかった、というのは変わらないではないか?」

 

「それこそ相性だろ、魔法の。アンタの魔法が違ったらもっとボロ負けだったぞ」

 

「フフフ、だがグラン殿。そなたの強さは変わらんよ」

 

「・・・・へーへー、もういいや。・・・・ん?ウェンディどこだ?」

 

これ以上何言っても無駄だと悟ったグランは、早々に話を切り上げたが近くにウェンディがいない事に気づき辺りを見回すと、グランの話に最初こそ驚いたが男の話に興味がなくなった青い天馬の三人組がウェンディを囲んで接待していた。

 

「さ・・・・お嬢さんこちらへ・・・・」

 

「オレンジジュースをどうぞ」

 

「えっ・・あの・・」

 

「おい色モノホストども。ウェンディにちょっかいかけんじゃねぇよ、沈めんぞ、あぁ?」

 

すぐさまウェンディを引き寄せて睨みをきかせるグラン。青い天馬のメンバーにも軽く睨まれていたが、全く引き下がらずに睨みを続けた。

 

「止めないか、君たち✨・・・・さて、全員が揃ったのだ、私の方から作戦の説明をしよう✨━━━と、その前にトイレの香り(パルファム)を……✨」

 

「オイ」

 

「そこにはパルファム付けるなよ……」

 

「・・・・トイレのパルファムってなんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夜がトイレに行き、しばらくして戻ってきてから青い天馬による今回の作戦の説明が始まった。

 

「ここから北に行くと、ワース樹海が広がっている。古代人達はその樹海に、ある強大な魔法を封印した……その名は、ニルヴァーナ。」

 

「?」

 

「ニルヴァーナ」

 

「聞かぬ魔法だ」

 

「ジュラ様は?」

 

「いや・・・・知らんな」

 

この場にいる天馬以外の魔導士は聞いたことのない魔法にざわめきだした。聖十大魔導のジュラでさえ聞いたことのない魔法だ。

 

「グラン・・・・知ってる?」

 

「さぁ?マスターなら知ってんじゃねぇか」

 

「古代人達が封印するほどの破壊魔法という事だけは分かっているが……」

 

「どんな魔法かは分かっていないんだ。」

 

「六魔将軍が樹海に集結したのはきっと、ニルヴァーナを手に入れるためなんだ。」

 

「我々はそれを阻止するために、六魔将軍を討つ‼︎‼︎」

 

「こっちは13人、敵は6人……だけど侮っちゃいけない。この6人がとんでもなく強いんだ。」

 

そう言って青い天馬が一人、ヒビキが自身の魔法を使い六人の人物の写真を映し出す。

 

「毒蛇を使う魔導士コブラ、その名からしてスピード系の魔法を使うと思われるレーサー、天眼のホットアイ、心を覗けるという女エンジェル、情報が少ないがミッドナイトとよばれている男、そして奴らの司令塔ブレイン。

それぞれがたった一人でギルドの一つくらいは潰せるほどの魔力を持つ。我々は数的有利を利用するんだ。」

 

「あ、あの……私は頭数に入れないで欲しいんだけど……」

 

「私も戦うのは苦手です……」

 

「ウェンディ!弱音吐かないの!!」

 

「まぁ落ち着けってシャルル」

 

敵の魔導士の強さを聞き、戦闘力に自信のない二人・・・・フェアリーテイルのルーシィとウェンディが少々弱気な発言をして、シャルルがそんなウェンディに少し怒鳴り落ち着かせるグラン。

 

だが、そんな二人を安心させる為、一夜がある情報を提供する。

 

「安心したまえ、我々の作戦は戦闘だけにあらず✨奴らの拠点を見つけてくれればいい✨」

 

「拠点?」

 

一夜の言葉に、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のリオンが疑問を抱く。しかし、その疑問は青い天馬のレンによって解消された。

 

「今はまだ奴らを捕捉していないが、樹海には奴らの仮設拠点があると推測される。」

 

「もし可能なら、ヤツら全員をその拠点に集めてほしい。」

 

レンの言葉に続けるように言った一夜の言葉で妖精の尻尾の面々がそれぞれの反応を示す。

 

「どうやって?」

 

「殴ってに決まってんだろ!」

 

「結局戦うんじゃない……」

 

「集めてどうするのだ?」

 

その疑問に答えるように、少し自慢げに青い天馬の面々は対策を話す。

 

「我がギルドが大陸に誇る天馬、クリスティーナで拠点もろとも葬り去る!!」

 

「おお!?」

 

「魔導爆撃艇!?」

 

魔導爆撃艇を用いるということに驚きつつも、それを使わなければならないほどの相手だという事を面々は同時に思い知らされていた。

 

「・・・・馬が飛ぶなよ、陸を行け陸を」

 

「そこじゃないわよ、ツッコむところは」

 

グランだけは、全く別の事を考え得ておりシャルルに突っ込まれる。

 

「おしっ!燃えてきたぞ!!六人まとめて俺が相手してやるァー!!」

 

「ナツ!!」

 

「作戦聞いてねぇだろ!!」

 

最初に飛び出したのは、滅竜魔導士のナツ。それに続き妖精の尻尾の面々が飛び出した。

 

「妖精の尻尾には負けてられんな。行くぞシェリー」

 

「はい‼︎!」

 

「リオン‼︎シェリー‼︎」

 

妖精の尻尾に続き蛇姫の鱗からはジュラを除いた二人が飛び出していき

 

「オレたちも行くぞ‼︎」

 

「うん‼︎」

 

「エンジェルかぁ♡」

 

青い天馬からは一夜を除いた面々が次々に飛び出していった。最後の一人だけなんか余計な事を考えていながら。

 

「あわわわ・・」

 

「まぁ、落ち着けってウェンディ。そんな急がなくてもいい━━━」

 

「ウェンディ!行くわよ!」

 

「わっ!わっ!!」

 

「あ!待ってよ~」

 

「━━━んだぞってあーあー。」

 

震えているウェンディにグランが落ち着くように言っている最中にシャルルに引っ張られて行ってしまい、その後ろを妖精の尻尾のハッピーが追い掛ける。

そしてこの場には一夜、ジュラ、グランの3人が残っていた。

 

「・・・・行くか。」

 

「ちょっと待ちたまえ」

 

そう言ってグランも外に出ようとした所、一夜に声をかけられて静止する。

 

「あ?なんだよ、一夜さん」

 

「いや、ただ少しだけ確認したいことがあってね。何、すぐに済むからすまないが少し付き合ってくれないか?ジュラさんも。」

 

そう言いながら一夜はグランと一緒残っていたジュラを呼び止める。別に慌てることもなかったのでそのまま立ち止まり話を聞く事にした。

 

「どうしたのだ一夜殿。」

 

「いや、先ほどの話・・・・グランくんが本当にあなた程の魔導士をも上回る強さをお持ちなのかな?」

 

「おお、その事か」

 

「だからそこまで強くねぇって言ってんだろ?おっさんも過大評価しすぎだったの」

 

「では、聖十大魔導と肩を並べる程の実力はないと?」

 

「あったら俺もなってるよ」

 

「ふふふ、あまり謙遜しなくてもよいぞグラン殿」

 

「してねぇし」

 

一夜の聴きたかったことはグランが聖十大魔導と同じレベルの魔導士なのかという事。ジュラは謙遜するなというが、グラン自身はそこまでの実力はないと答える。

 

「そうか、・・・・時にジュラさん。かの聖十大魔導と言われた貴方ですが……その実力はマスター・マカロフに匹敵するもので?」

 

「滅相もない。聖十の称号は評議会が決めるもの。ワシなどは末席、同じ称号を持っていてもマスター・マカロフと比べられたら天と地程の差があるよ。」

 

「いいじゃねぇか、謙遜すんなっておっさん」

 

「・・・・先ほどの仕返しかな?」

 

「仕返しだ」

 

遠慮がちにジュラは一夜の言葉を訂正し、それを謙遜するなとグランがいう。それを聞いて一夜は何故か微笑んでいた。

 

「ほう、それを聞いて安心しました。マカロフと同じ強さだったらどうしようと思ってまして。」

 

直後、やけにつーんとする匂いが漂ってきた。

 

そして、それを吸ったであろうジュラは口元を押えながら膝をつく。

 

「うっ……!?な、何だこの匂いは……!」

 

「相手の戦意を消失させる魔法のパルファム…だってさ。」

 

「一夜殿!これは一体!?」

 

そして、その答えを言うまでもなく一夜はジュラをナイフで突き刺した。味方だと思っていた相手が、突如攻撃を仕掛ける。この状況でジュラも流石のグランも困惑し続けていた。

 

「テメェ、何やって!?」

 

しかし、それは一夜では無かった。その体は泡立っていき、段々と一夜の姿を保てなくなってから……一気にその姿を変化させた。

 

「ふぅ。」

 

「戻ったー」

 

「一夜って奴エロい事しか考えてないよ。」

 

「考えてないね!ダメな大人だね。」

 

その姿は、小さな二人の人影……いや、それはもう人間ではない。そして、奥から新たな人影が現れる。

 

「はいはい!文句言わない。」

 

「これは……!?」

 

現れたのは女。しかし、その顔に見覚えがあった。つい先は見た姿。銀の髪、胸元をはだけさせた、羽根を集めて作ったたような服装。そして気だるげな表情。

 

「六魔将軍の……エンジェルか」

 

「あー……あの汚い男ねー…コピーさせてもらったゾ。おかげで貴方達の作戦は全部わかったゾ。」

 

「「僕達コピーした人の考えまで分かるんだー」」

 

「な・・」

 

「・・・・おいおい、冗談だろ!?」

 

「は〜い♡まずは二人しとめたゾ」

 

「無、無念……グラン殿、逃げるのだ……!」

 

ジュラはそう言って気絶した。一夜の姿がコピーされた・・・・つまり一夜もやられているという事。この場は逃げるが先決・・・・であるが、グランは首を鳴らしその場に止まった。

 

「・・・・そいつ、星霊か」

 

「ん?逃げないのか?だったらさっさとお前も始末してやるゾ。ジェミニ。」

 

「「はーい。ピーリピーリ」」

 

そう言ってジェミニと呼ばれた星霊はまた姿を変えていき、今度はグランの姿となった。

 

「・・・・よりにもよって黄道十二門の内の一体かよ」

 

「そういう事、それじゃあね!!」

 

そう言ってグランにナイフを突きつける。そのナイフをグランは避ける事なく、その身体で受け止めた。すると

 

パキィィィィンッ!と音を出しながらナイフは砕け散った。

 

「なっ!?」

 

ナイフが砕け散るとは思っていなかったジェミニは動揺し、その隙を逃さずグランは殴りかかる。

 

「ぐっ!?」

 

グランの拳が身体に当たり、エンジェルの元まで吹き飛ばされるジェミニ。それと同時に変身も解けて元の星霊の姿に戻る。

 

「ナイフ程度で、俺の体が傷つくと思ったか、あぁ?」

 

「・・・・お前、ただの魔導士じゃないな」

 

流石のエンジェルも今の光景を見て疑問を隠せなかった。と、殴られて少しふらふらしていたジェミニが、代わりに答える。

 

「「・・・・アイツ、普通の魔導士じゃない、滅竜魔導士だ!!」」

 

「なっ!?」

 

「・・・・ご名答。答え合わせのついでにくらっとけ」

 

そう言い、グランは大きく息を吸い魔力を込め、そして放つ。

 

「地竜の咆哮!!!」

 

放たれた大地のブレス。放たれたブレスはエンジェルのいた場所へと撃たれていく。だが。

 

「・・・・逃げられたか」

 

そこには誰もおらず、削り取られた床と破壊された壁のみがそこにはあった。

 

「・・・・とりあえず、おっさん達の怪我の様子でも見るか」

 

 



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第三話 天空の巫女と大地の滅竜魔導士

 

「メェーン、助かったよグラン君✨」

 

「あぁ。すまなかった、不覚をとってしまい」

 

「別にいいよ、結局俺も逃しちまったし」

 

エンジェルが逃走した後、刺されたジュラの手当てを簡単にだが行いトイレで傷だらけになって倒れていた一夜も助け出した。

 

今は一夜の魔法である“痛み止めの香り(パルファム)”で一時的に抑えている。ちなみに一夜もボロボロだが、なんか大丈夫そうだったからそのままにした。

 

「一夜殿も、助かったぞ・・・・だが、急がねば」

 

「うむ、確かにそうだな✨・・・・それにしても既に敵に潜入されていたとは、不覚である✨」

 

「・・・・まぁ、あのエンジェルって奴は星霊魔導士だしなぁ。それに黄道十二門の一体、双児宮のジェミニを使われたんだ、仕方ねぇよ。それよか皆に伝えねぇとな」

 

そして、グラン、ジュラ、一夜の三人は急いで先に行った者たちの後を追って駆け出した。

 

「・・・・そうか、ウェンディ殿も滅竜魔導士だったのか」

 

「あぁ。それに失われた魔法(ロストマジック)である治癒も使える。大分魔力を消費しちまうが、アンタらの傷は治せるぞ。」

 

「なるほど・・・・それにしても君も滅竜魔導士だったとは、驚いたぞ✨」

 

「まぁ、厳密にはちょっと違うがな」

 

皆のところに行く途中で、ウェンディの事と己の魔法についてを説明していた。

 

「違う・・・・とは?」

 

「とりあえず、その説明は後で、今は・・・・ってアレは!」

 

「っ!!不味い!!」

 

「六魔将軍っ!?・・・・私たちも急ごう‼︎✨」

 

「だな。・・・・ところでアンタ本当に大丈夫か?」

 

「メェーン、全く問題ないさ✨」

 

 

 

 

 

 

「きゃああああああああ」

 

「ナツーーーうわーーー!!!」

 

六魔将軍が連合軍の前に現れ、その圧倒的な強さの前になす術なくやられてしまった。

 

そして六魔将軍のうちの一人、ブレインがトドメの魔法を放とうとした時、ウェンディがいる事に気づきウェンディと何故かハッピーを連れて行こうとした。

 

「ウェンディーーーー‼︎‼︎」

 

「ハッピー‼︎‼︎」

 

「うぬらにもう用は無い、消えよ‼︎!」

 

そしてブレインの魔法が放たれるが

 

「岩鉄壁!!」

 

その攻撃を、間一髪で間に合ったジュラが魔法で防ぐ。それと同時にグランと一夜も追いついた。

 

「ジュラ様‼︎!」

 

「おおおっ‼︎!」

 

「シャルルっ!!ウェンディは!?」

 

「グランっ!!・・・・ごめんなさいっ」

 

「・・・・そうか」

 

ウェンディがこの場にいない事に気づきシャルルに聞いたが、連れ去られたのだと理解した。

 

そしてその間に六魔将軍はこの場から既に去っていた。

 

「ジュラさん無事でよかったよ」

 

「いや、危うい所だった」

 

「そのキズ・・・・」

 

「今は一夜殿の“痛み止めの香り”で一時的に抑えられている、それにグラン殿の応急処置のお陰もある」

 

「六魔将軍め、我々が到着した途端に逃げ出すとは、さては恐れをなしたな✨」

 

「それはねぇだろ」

 

「あんたボロボロじゃねぇか!!」

 

「グラン・・・・感謝する」

 

「・・・・別に、いいよ」

 

リオンから礼を言われ、少し照れくさそうに顔を晒しながら答えるグラン。

 

だが、それよりもこの場にいる全員が満身創痍な状態であった。

 

「皆さんにも私の痛み止めの香りを✨」

 

それを察した一夜がまずは魔法により全員の痛みを和らげていく。

 

「・・・・元気だな、アンタ」

 

「お褒めに預かり光栄だ、メェーン✨」

 

「「「さすが先生!!!」」」

 

「また呼び方変わった・・・・」

 

「あいつら〜……ウェンディとハッピーを……どこだー!!」

 

「ナツ!!!」

 

そしていち早く立ち上がり駆け出したのはナツだった。周りの静止も聞かずにそのまま突っ走ろうとしていたが。

 

「んがっ!!」

 

シャルルがナツのマフラーを引っ張って無理やり止める。

 

「羽!?」

 

「猫が飛んでる……」

 

「これは(エーラ)っていう魔法……ま、驚くのも無理はないですけど「ハッピーと被ってる。」何ですって!!!」

 

「お前が驚くな。・・・・それに今それはどうでもいいぞ」

 

ナツの言葉で一瞬荒くなったシャルルだったが、グランの言葉を聞きそれどころではないと冷静になりながら情報を把握していく。

 

「とにかく、ウェンディとオスネコの事は心配ですけど……闇雲に突っ込んでも勝てる相手じゃないってわかったでしょう。」

 

「シャルル殿の言う通りだ。敵は予想以上に強い。」

 

「それに……」

 

シャルルはそれ以上言わず、視線だけを変える。

 

「エルザ、しっかりして‼︎!」

 

「う・・・・うあ・・」

 

そこには一夜の“痛み止めの香り”が効かず、腕を抑えながら苦しむエルザの姿があった。

 

そして、エルザはルーシィのスカートのベルトを取り外してそれを腕に巻き付ける。

 

「このままでは、戦えん」

 

そして自分の持っていた剣を地面に投げ捨て、痛む腕を突き出す。

 

「斬り落とせ。」

 

「「「「!!!」」」」

 

「馬鹿な事言ってんじゃねぇ!!」

 

「分かった、俺がやろう。」

 

「リオンてめぇ!!」

 

「やれ」

 

剣を拾い、リオンは即座に腕を切り落とすことに賛成する。

 

エルザ本人は斬ることに対して己で判断したことだが、エルザを除いた妖精の尻尾の面々はやはりそう片腕を斬り落とすことに反対の意思を示す。

 

「今この女に死んでもらうわけにはいかん。」

 

「けど・・」

 

「どんだけ甘いんですの!?妖精さんは」

 

「アンタに何がわかるっていうのよ!!」

 

「やるんだ‼︎‼︎早く‼︎‼︎」

 

「やめろリオン!!」

 

反対派と賛成派による言い争いをしている中、リオンは淡々とその剣をエルザに向かって振り下ろす─────だが

 

「・・・・落ち着けよ、アンタら」

 

「なっ!」

 

振り下ろされた剣はグランの腕によって受け止められ、斬られる前に静止する。

 

「……貴様もこの女の命より腕の方が大事か?」

 

「そういうわけじゃねぇが・・・・他に方法があるんだから、わざわざ斬る必要はねぇよ」

 

本当はあんま使わしたく無いが、とグランが呟いた直後、毒の痛みで限界が来たのか、エルザは倒れる。

 

「エルザ‼︎!」

 

「まずいよ!!このままじゃ毒が身体中にまわって・・・・」

 

周りにいた面々は焦るが、

 

「ウェンディなら助けられるわ。」

 

シャルルが一歩前に出て答える

 

「今更仲間同士で争っている場合じゃないでしょ?力を合わせてウェンディを救うの。・・・・・・・・ついでにオスネコも。」

 

「・・・・ついでって言ってやるなよ。まぁさっきオッサン達にも説明したが、解毒だけじゃなく解熱とか痛み止めとか傷の治癒もできる。・・・・正直使わせたくはねぇが、しょうがねぇからな」

 

「あ・・あの・・・・私のアイデンティティーは・・・・✨」

 

「完全に潰れたな」

 

「ガーン!?✨」

 

シャルルに続きグランも説明し、ついでに一夜のアイデンティティも崩した。それは置いといて、皆の間に少しだけ動揺が混じった。

 

「治癒って……失われた魔法じゃなくて?」

 

「まさか天空の巫女って言うのに関係あるの?」

 

「あー、まぁどうせ言うつもりだったし・・・・言っていいか?」

 

「・・・・まぁしょうがないわ」

 

隠してたわけでは無いが、一応念のためシャルルに確認をとり承諾を得る。

 

「ウェンディは、天空の滅竜魔導士・・・・天竜のウェンディだよ。」

 

「「「「「!?!?」」」」」

 

「ドラゴンスレイヤー!?」

 

「ついでに俺もな」

 

「「「「「「はぁ!?」」」」」」」

 

そのついでにサラッと自分も滅竜魔導士だと告げるグラン。

 

「詳しい話は後、今私たちに必要なのはウェンディよ。そして目的は分からないけれど、あいつらもウェンディを必要としてる。」

 

皆が驚いてる中でシャルルが冷静に目的を作り出す。

 

倒れたエルザを助ける為、攫われたウェンディとハッピーを助けるために。

 

「行くぞォ‼︎‼︎!」

 

「「「「「「オオッ‼︎‼︎!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウェンディ達を助ける為、グランはシャルルは、ナツ、グレイと共に行動していた。

 

「天空の滅竜魔導士ってさぁ・・・・・・・・何食うの?」

 

「空気。」

 

「うめぇのか?」

 

「さぁ?」

 

「場所によっては味はある的なことは言ってたぞ」

 

「・・・・それ、酸素と違うのか?」

 

「違うんじゃねぇの?」

 

「んじゃあ、お前は?」

 

「俺?大地の滅竜魔導士だけど?」

 

森の中を走って移動してる中、質問に答える。

 

「やっぱ土とか食うのか?」

 

「まぁ、それ以外にも砂だったり石だったり岩だったり泥だったり・・・・割と色々食うぞ。常に泥水は持ち歩いてるし」

 

「それ泥水だったのかよ!?」

 

常に携帯している水筒を見せ、それが泥水だった事に驚きを隠せないグレイ。

 

「あのコ、あんたに会えるかもしれないってこの作戦に志願したの。

 

「オレ?」

 

「同じ滅竜魔導士でしょ?」

 

「アイツ、七年前に滅竜魔法を教えてくれたドラゴンがいなくなったらしくてな。アンタなら居場所知ってんじゃねえかってな。確か名前は、天竜グランディーネっつたかな?」

 

「オイ‼︎!いなくなったのって七月七日か!⁉︎」

 

「・・・・あー、確かそうだったような?」

 

「イグニールとガジルのドラゴン……それにウェンディも七年前……んがっ!」

 

よそ見と考え方をしていたせいか、ちょうどいい高さにある木にぶつかって倒れてしまうナツ。

 

「そうだ!!!ラクサスは!?」

 

「ラクサス?って妖精の尻尾の雷の人?」

 

「まぁそうだが・・・・じーさん言ってたろ?あいつは滅竜魔導士じゃねぇ・・・・ってお前も滅竜魔導士だろ?」

 

「いやまぁ、そうなんだけど、そうじゃねぇんだよ」

 

「????」

 

グランの言葉に首を傾げるナツ。グレイも少し興味深そうにしていた。

 

「そうじゃねぇってのは?」

 

「おれはドラゴンに教えてもらったわけじゃねぇよ。体の中に滅竜の魔水晶を埋め込まれただけだからな」

 

「なっ!?マジかよ」

 

「誰にやられた!?」

 

「さぁ?興味ないし」

 

「いやそこは興味もてよ!!」

 

自分がなぜ滅竜魔法を使えるかを説明し、案の定誰にやられたかを聞かれたが興味ないの一言で終わらせるグラン。適当すぎやしないか。

 

「その話は後!今はウェンディを助けることが・・・・って何これ!?」

 

シャルルが向けた視線の先、そこには葉や幹までもが真っ黒になった木が存在していた。

 

「木が…黒い……」

 

「き、気持ち悪ぃ…!」

 

「・・・・大地が死んでる」

 

「大地が!?」

 

四人がその異様な光景に驚いていると、横から葉が動く音が聞こえてくる。

 

「ニルヴァーナの影響だって言ってたよな、ザトー兄さん。」

 

「ぎゃほー、あまりに凄まじい魔法なもんで大地が死んでいくってなァ、ガトー兄さん。」

 

「誰だ!?」

 

グレイが声を出した瞬間、四人の周りから大量の人間が出てくる。雰囲気からして我々は敵です、と言っているのがわかる。

 

「ちょ……ちょっとぉ」

 

「ニルヴァーナの影響だっ「さっき言ったぜガトー兄さん。」そうかいザトー兄さん。」

 

「囲まれてるわよ!!」

 

「うほぉ!サルだ!サルが2匹いんぞおい!!」

 

「うほぉだとゴリラじゃね?」

 

明らかにどうでもいいことに驚いているナツとさらにどうでもいい事に突っ込むグラン。

 

「こ、こいつら妖精の尻尾だ!!こいつらのせいで……!」

 

「オォ!もう一匹増えたー!!」

 

「こっちはサルっぽいな。」

 

「六魔将軍傘下、裸の包帯男」

 

「ぎゃほぉっ‼︎‼︎遊ぼうぜぇ。」

 

闇ギルドの一角。恐らくここだけでなく他の場所にもいるであろう、六魔将軍の傘下達。明らかな時間稼ぎだ。

 

「敵は・・・・6人だけじゃなかったっていうの・・・・!?やられた・・・・」

 

敵が6人じゃなかったことに、イラつくシャルル。一刻も早くウェンディを助けに行きたいのに、これでは一向に早く進めないからだ。

しかし、妖精の尻尾の二人と、グランはそうではなかった。

 

「こいつァ丁度いい。」

 

「ウホホッ、丁度いいウホー」

 

「だからウホだとゴリラ・・・・まぁいいや」

 

「何言ってんのあんた達!!グランも!!!」

 

「拠点とやらの場所を吐かせてやる……!」

 

「今行くぞ!ハッピー!ウェンディ!!」

 

「捻り潰す」

 

そう言いながら、冷気を出すグレイと炎を出すナツ、腕の一部を岩のように変化させるグラン。そして三人の発言を自分達に対する挑発だと決め込み、闇ギルドのリーダー二人がその挑発を受け取る。

 

「舐めやがってクソガキが・・」

 

「六魔将軍傘下、裸の包帯「死んだぞテメーら。」」

 

「何なのよ妖精の尻尾の魔導士は・・・・今の状況分かってるのかしらっ!!!グランもっ!何同じようにしてんのよ!!」

 

こうして、各地で連合軍vs六魔将軍の傘下の戦闘が開始された

 

 



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第四話 撃退と救出・・・・そして再会

 

「うおおおおっ‼︎‼︎らあっ‼︎‼︎!」

 

ドゴォッ

 

「ぐわっ」「がっ」「ぎぇー」

 

まずナツが炎をぶつけ敵を吹き飛ばす。そして敵も面白いようにぶっ飛んでいく。

 

そしてグレイも氷を用いて敵を倒していく。

 

「・・・・すっげ」

 

「ちょっと、アイツらばっか見てたら「よそ見してんじゃねぇぞっ‼︎‼︎」ほらぁっ!!!」

 

そんな中、グランはシャルルを守りながらナツとグレイの戦闘をチラッと見ていたが、それをシャルルに注意されたその瞬間に襲われる。

 

振り下ろされた剣はグランのみならずシャルルにも襲い掛かろうとしていた・・・・が

 

パリィィィィィンッ!

 

「・・・・・・・・え?」

 

グランがその身を盾にし、剣は砕け散った。

 

「・・・・・・・・・・・・おい」

 

「ヒッ!?」

 

「・・・・・・・・シャルルに当たるとこだっただろうがああああああっ!!!!」

 

ドガァァァァン!

 

「「「「ギャアアアアアアアっ!!!!!!」」」」

 

剣を振り下ろした奴とその周囲にいた奴らもろとも吹き飛ばした。とばっちりと言えばとばっちりだが、まぁ敵だし仕方ない。だが今ので大半の敵は吹き飛んでいった。

 

「おおっ!!」

 

「やるな、アイツ」

 

その強さを見ていたナツとグレイの二人はグランの実力を見て驚きと感心を持つ。

 

「無事か、シャルル?」

 

「ありがと、グラン。でもそもそもアンタがよそ見してたから狙われたんでしょうが!!!」

 

もっともだ。

 

「まぁ、すまん。だが、オレが守ってやるから安心してろよ」

 

「フンッ!当然よ!!さっさと終わらせなさい!!!」

 

「ヘイヘイ」

 

こうして、闇ギルド、裸の包帯男(ネイキッドマミー)との戦闘は続いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だは────っ」

 

「ぶは────っ」

 

「・・・・いや意外と強かったね、コイツら」

 

それからしばらくして、戦いは終了し、三人の周りには闇ギルドのひと達が倒れていた。だが、ただの寄せ集めかと思いきや流石は一ギルド。特にリーダー格の二人が意外と手強くナツとグレイは少しボロボロになった。対しグランはその二人が戦っている中、その他の連中を相手にしていた為、そこまでダメージは無いものの思ってた以上に敵が強く体力を消耗していた。

 

「何だよコイツら。ザコじゃなかったのかよ」

 

「意外とやるじゃねーか・・」

 

「他の奴らも意外としぶとかったしな」

 

「当たり前じゃない‼︎!相手はギルド一つよ!‼︎何考えてんのアンタたち‼︎!‼︎」

 

と、途中からグランに安全な場所へと移動されたシャルルが木の後ろから怒鳴る。

 

「オイ!‼︎ぎゃほザル‼︎!‼︎おめえらのアジトはどこだ‼︎!?」

 

「ぎゃんっ」

 

と、ナツが倒れたうちの一人の胸ぐらを掴みアジトはどこかと詰め寄っていく。

 

「言うかバーカ。ぎゃほほっ」

 

ゴン

 

「オイ‼︎!でかザル!‼︎」

 

「・・・・いつもこうなのか、この人?」

 

「まぁ、大体はな」

 

「本当めちゃくちゃね、アンタたち」

 

答えないなら用はないと言わんばかりにぶん殴り気絶させ、もう一人の方に詰め寄る。そんな光景を見て、グランはグレイに質問し、シャルルはその光景に半ば呆れるようにつぶやく。

 

そして見事に口を割らす事に成功した一同は、六魔将軍の拠点とされる西の廃村へと向かっていき、そして到着した。

 

「ハッピー‼︎‼︎ウェンディー‼︎‼︎」

 

「ちょっと‼︎!敵がいるかもしれないのよ!!」

 

「ウェンディ─────!!!」

 

「グランはもっとうるさい!!!」

 

到着して早々、ナツが大声でハッピーとウェンディの名前を叫びそれを注意するシャルルの横で更にでかい声でウェンディの名前を叫ぶグラン。それはもうグレイだけでなく、先に大声を出したナツも引くほどに。

 

「・・・・ん?」

 

シャルルに乗っかられながら全く痛くない猫パンチをポカポカと殴られながら廃村の方を見ていたグランは、何かが近づいてくる気配と()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ!!シャルル、危ねぇ!!」

 

「え?」

 

その瞬間、高速で近づいてくる何かがきた。

 

ゴオオオオオオオ ズギャッ!

 

「ぐあぁっ」 「ぐはぁっ」 「あでっ」

 

その高速の何かに吹き飛ばされるナツとグレイ。シャルルを守りながら喰らうグラン。

 

「またアイツだ!!」

 

「グラサンにモヒカン・・・・あれがレーサーか?」

 

「ここはまかせろ!!お前らは早く下に行け!!!」

 

「おし!!!」

 

「分かった!!」

 

六魔将軍の一人、レーサーを前に一人立ちはだかるグレイ。

 

「行かせるかよ、おっ?ぎゃっ!?」

 

再び走り出そうとしたレーサーだったが、その前にグレイがレーサーの乗っていた木を凍らせ、その氷に足を滑らせ落っこちる。

 

「シャルル‼︎!今だ、羽!!」

 

「いや、それよりこっちのが早い」

 

そう言ってグランは地面に手を置くとグランとナツとシャルルを乗せ動き出す。

 

「のわ!?」

 

「ちょっと!!」

 

「行くぞ!!!」

 

そして地面が形を変え、下に向けて大きく伸びていった。

 

「おおおおおお───────っ!!!」

 

「きゃぁああああああ─────っ!!」

 

だが思ってた以上の落下スピードに、ナツは少し楽しそうに、シャルルは悲鳴をあげていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぷ・・」

 

「酔ったの!?」

 

「おえ・・」

 

「何でグランも酔ってんのよ!!」

 

下に着いた途端、少し揺れていた為かナツは少し酔い、何故か操作していたグランも酔った。

 

「ナァ────ツ────・・・・」

 

「ハッピー!!!」

 

「あの中よ」

 

「ウェンディもそこか!!」

 

廃村の中を探している中、洞窟の中からハッピーの叫ぶ声が聞こえそこに向かう。

 

その洞窟の中には五人いた。六魔将軍の二人、ミッドナイトとブレイン。そして攫われた二人、ウェンディとハッピー・・・・そして、

 

「な・・何だ・・コレ・・・・」

 

「そんな・・‼︎!」

 

「・・・・・・・ジェラール?」

 

「ごめん・・・・・・・・なさ・・うぇっ、うぇっ。この人は私の・・私たちの恩人・・・・な・・の」

 

そして泣き崩れていくウェンディ。ナツのこの表情、それにブレインのあの表情を見る限りナツとジェラールの関係はあまりよろしくなく、ブレインにとって恐らくプラスになる事があるのだとグランは感じ取った。

 

グラン自身も久々に会った恩人との再会を喜びたいが今はそんな状況ではないし何か様子もおかしかった。

 

「ん?ウェンディ、まさか治癒の魔法使ったのか?」

 

「何やってんのよ!!!その力を無闇に使ったら・・・・」

 

とシャルルが言った直後、ふらっ、と倒れてしまうウェンディ

 

「ウェンディ!!!」

 

「クソッ!!」

 

急いでウェンディに駆け寄り倒れそうになった体を支える。外傷は特になく安心するグラン。だが、その安心もそう長くは続かなかった。

 

ジェラァァァァァァァル!!!

 

突如ナツが拳に炎を纏いながらジェラールに突っ込んでいった。そんなナツに対しジェラールは手を突き出し

 

ゴッ

 

と凄まじい魔力を放ちナツを吹き飛ばす

 

「うあああっ」

 

「ナツ!!!」

 

「相変わらず凄まじい魔力だな、ジェラール」

 

そんなジェラールに近づき話しかけるブレイン。だがそんなブレインに対し魔法を放ち地面を崩して落とす。

 

「ぐぉああああっ」

 

「・・・・おいおい、何やってんだジェラールのやつ」

 

そんな光景をウェンディとシャルル、そしてハッピーを守りながら見ていたグランは、以前とは違うジェラールに少し困惑していた。

 

その後、ジェラールはグランたちに目もくれずそのまま洞窟を出ていった。

 

「ジェラール‼︎‼︎」

 

ジェラールが出ていったタイミングで岩に埋まっていたナツが飛び起きてジェラールがどこにいったのかと聞いてくる。

 

「どこだ!!!」

 

「行ったわ」

 

「・・・・アンタとジェラールの間に何があったのかは詳しく知らんが、今は後だ。とりあえず今はウェンディを連れて帰るのが重要だ」

 

「グランの言う通りよ。エルザを助けたいんでしょ!!」

 

グランの言葉の後にシャルルがそう付け加える。

 

ナツは、ジェラールのことも気にはしていたがそれよりもエルザを助ける事が先であると分かっていた為、すぐに納得した。

 

「行くぞ‼︎‼︎!ハッピー‼︎‼︎」

 

「あいさ!!!!」

 

「シャルルはウェンディを運べ。俺は走ってく」

 

「分かったわ!!」

 

そして、ハッピーとシャルルは飛び立ち、グランは走って洞窟を出た。ここに降りてきた時のように大地を操ってもよかったが少しでも魔力を温存する為だ。

 

だが、この廃村は周りを囲むように壁があるため登るのは時間がかかる。そこでグランは地面に手を置き、その部分の性質を変え、ゴムのように跳ねやすいものへと変えた。

 

そこに勢いよく飛び乗り、その反動で高く飛んで移動する。すると、ちょうどナツたちが飛んでいた後ろまでこれた・・・・が

 

「きゃっ」「うおっ」「わっ」「何で!?」

 

勢いよく近づいてきた何かに攻撃され地面に落ちる。その際、シャルルとウェンディを抱き寄せて自身が盾になるように落ちる。

 

「がっ」

 

「ぐぇっ」

 

そしてナツと同時に落ちたグラン。すぐに飛び立とうとハッピーとシャルルに話しかけるナツだったが、今の攻撃で二人とも気を失ってしまった。

 

「シャルルとウェンディは俺が運ぶ!!アンタはハッピーを!!」

 

「おう!!」

 

グランはウェンディとシャルルを抱きながら走り出しナツもハッピーを掴んで走り出す。

 

「行かせねぇって言ってんだろ!!!」

 

「また来た!!」

 

だがそれを止めようとレーサーが突っ込んでくる。すぐに迎え撃とうとするが

 

「アイスメイク“城壁(ランパート)‼︎‼︎”」

 

その前にグレイが巨大な氷の壁・・・・城壁を創り出しレーサーを止める。

 

その城壁は更に大きくなり、道を完全に閉ざした。

 

「グレイ」

 

「行けよ・・・・こいつァオレがやるって言ったろ」

 

息をきらせながらそう言うグレイ。だが今の魔法で大量の魔力を消費した筈だ。一人で戦うのは無茶である。

 

「アンタ、今ので魔力相当使ったろ、無茶だ」

 

「そうだ!!それにボロボロだろ、お前!!!」

 

「いいから、行きやがれ」

 

そんなグレイを止めようとするグランとナツ。だがそれでも引かないグレイ。

 

「ここは死んでも遠さねぇ‼︎!行け‼︎エルザの所に!!」

 

「・・・・分かった、ナツさん行こう。」

 

「んぐぐっ・・・・うおおお〜〜〜〜っ!!!!必ずエルザを助けるからな!!!!!」

 

グランは頷き、まだ少し渋っているナツに行くように声かけ、勢いよく走り出す。それに続きグランも走り出す。今は一刻も早くエルザの元へ戻るために、エルザを助けるために走り出す。

 

 

 

 



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第五話 ニルヴァーナという魔法

 

エルザの元へ向かう中、ナツはずっとジェラールの事が気になっていた。

 

「ジェラール・・・・あの野郎・・・・何でこんな所にいやがるんだ」

 

「・・・・まぁアンタらとジェラールの間に何があったのか詳しいのは知らんが、まぁ落ち着けって」

 

「落ち着けるかァっ!」

 

「えー」

 

一応考えても仕方ないと思い落ち着くように声をかけるが怒鳴られるグラン。

 

グランもジェラールの事について噂は聞いていたが、自分達が一緒に過ごした彼と違いすぎてあまり信じていなかった。無論、ウェンディも。だが、ソレは後で考えるとして今は急いでエルザの元へと行かなければならない。

 

“ナツくん、グランくん”

 

「!」

 

「ん?」

 

といきなり頭の中で声が響いた。だが、どこかで聞いたことのある声だった。

 

“聞こえるかい?”

 

「その声・・・・」

 

「確か、青い天馬の・・・・」

 

“そう、僕だ。青い天馬のヒビキだ”

 

エルザの元に残っていたヒビキから頭に直接語りかけられていた。そしてすぐさま自分達のいる場所の地図を彼らの頭にアップロードする。

 

「おおっ‼︎?何だ何だ‼︎?」

 

「何だこりゃ、すげぇなオイ‼︎?」

 

“急いで、ナツくん、グランくん”

 

そして地図の示す場所へと一気に走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたー‼︎‼︎」

 

「よっしゃー‼︎!」

 

「ナツ‼︎‼︎それにグラン‼︎‼︎」

 

走り出してから少ししたところでエルガたちの元に辿り着けた二人。なぜ頭に地図が出たのか不思議だったナツだが、それよりも早くエルザを治さなくてはならなかった。

 

「そうだ!!ウェンディ!!!起きろ!!」

 

「いや俺ごと揺らすな!!!」

 

少々興奮気味のナツはウェンディを抱えているグランごと揺さぶる。

 

「・・・・んぅ・・・・・・・・・・・わぁっ!?///」

 

そして目が覚めたウェンディは、一瞬自分の体が浮いてるのを不思議に思ったが、すぐにグランに抱き抱えられているのだと理解し頬を染める。

 

「起きたか、ウェンディ!」

 

「うん、起きた!起きたから下ろして〜///」

 

「・・・・コレは」

 

「でぇきてぇるぅ〜」

 

その光景を目にした他のものは何となく察し、ハッピーはにやつきながら巻き舌で言っている。分かってないのはナツとグランくらいだ。

 

「それよりウェンディ!!!頼む、エルザを助けてくれ!!!」

 

「えっ?」

 

「毒にやられてる。治癒を使ったところ悪いが頼めるか?」

 

「う、うん!治します!!」

 

「ほ、本当か!!?」

 

ナツとグランに頼まれてエルザの元にゆき解毒を行うウェンディ。そんな中、ジェラールがエルザやナツたちにした事がどうしても信じられずにいた。それはグランも同じだったが、今それを証明できるものも無かったので内心はすごくモヤモヤしていた。

 

 

 

「終わりました。エルザさんの体から毒は消えました。」

 

「ん」

 

「「「おっしゃー!!!」」」

 

しばらくしてウェンディが解毒が終わり、毒が消えたと皆に報告をして、皆エルザの無事を喜ぶ。

 

ナツたちは嬉しさのあまりハイタッチをする。

 

「グラン!お前も!!」

 

「あぁ、よかったな!」

 

「おう!!!」

 

そしてグランもナツとハイタッチを行い、ナツはウェンディとも行いながら礼を言う。

 

「いいこと?これ以上天空魔法をウェンディに使わせないでちょうだい」

 

そんな中、シャルルはこれ以上ウェンディに魔法を使わせないように皆に言う。この魔法は魔力を大量に消費する。ウェンディの体を心配しての事だ。

 

だが、ウェンディにはそれよりも気掛かりな事があったが、それを話す前に皆が気合を入れていた。

 

「後はエルザさんが目覚めたら反撃の時だね」

 

「うん!!!打倒六魔将軍!!!」

 

「お─────っ!!!ニルヴァーナは渡さないぞぉ!!!!」

 

その時、突如何かが光り出したと思ったら黒い光の柱が現れた。その光に向かい黒い何かが纏わりついていた。

 

「まさか・・・・」

 

「あれが、そうか?」

 

「恐らく、あれがニルヴァーナなのだろう」

 

「まさか六魔将軍に先を越された!?」

 

突然現れたニルヴァーナに先を越されたのではと考えるルーシィ。だがナツは誰がニルヴァーナを発動させたか、検討はついていた。

 

「あの光・・ジェラールがいる‼︎‼︎」

 

体から炎だし、その表情は怒りに満ちていた。意外な人物の名前に目を丸くするルーシィだったが驚くよりも先にナツが走り出した。

 

「私の・・私のせいだ・・・・」

 

そんな中、ニルヴァーナが復活したのは自分のせいだと、自分がジェラールを治してしまったからだと思ってしまったウェンディはどんどん自分を責めていく。

 

「私がジェラールを治したせいで・・・・ニルヴァーナ見つかっちゃって、エルザさんや・・・・ナツさんや・・・・」

 

どんどん、どんどん自分を責めていくウェンディ。その心は少しずつ、少しずつ黒く染まっていく。

 

ニルヴァーナがどんな魔法か()()()()()()()ヒビキはウェンディを気絶させようと構える。だが

 

 

「ウェンディ、大丈夫だ。お前のせいじゃない」

 

 

ウェンディの目線までしゃがみ込むグラン。そんなグランを涙を含んだ目で見るウェンディ。

 

「グラン・・・・でも、私が治さなかったら・・・・」

 

「いや違う。お前はニルヴァーナを探すのを手伝ったんじゃない。俺たちの恩人を治したんだ。お前は悪くない。」

 

「でも・・・・でもぉ・・・・」

 

恩人を治しただけで、お前は悪くない。そう言うグランだったが、それでもウェンディは自分を責める。そんな彼女を見て、グランは・・・・そっと抱き寄せる。

 

「ふぇっ!?」

 

「大丈夫だ、安心しろウェンディ。お前は間違ったことはしちゃいない。それでも、お前を責める奴がいても、俺が守ってやる。俺がついてる。だから、大丈夫だ」

 

「グラン・・・・うん、ありがと」

 

そう言いウェンディも、グランの背中に手を回し抱き返す。ウェンディの心にもう暗い感情はなかった。彼女に纏わりついていた闇も打ち払われた。彼女の目からまた、涙が溢れる。だが、先ほどまでとは違う、後悔の涙ではなく、感謝を表している涙だった。

 

 

「・・・・どぅえぇきてぇるぅ〜」

 

しばらくの間、完全に二人の世界に入っていたが、どこぞの青い猫がさっき以上ににやつきながら煽ってくる。ルーシィもにやにやしながら二人を見てる。

 

「アンタ達!!いつまでも抱き合ってないで、さっさと離れなさい!!!」

 

そして痺れを切らしたシャルルが怒鳴る。その言葉に一瞬ポカン、としたウェンディだったがすぐさま言葉の意味を理解し顔を真っ赤にした。グランは割と普段通りだったが。

 

「ちちちちちちち違うの、シャルル!!コレは、えっと、あの!はわわわわっ!?///」

 

ズザザ─────と勢いよく離れていき、そのまま勢いよく木にぶつかりそして

 

「・・・・きゅう」

 

「ウェンディ─────っ!?」

 

頭を強く打って気絶してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気絶したウェンディを背負いニルヴァーナを目指すグラン達。その途中でヒビキからとんでもない事実を聞かされる。

 

「本当のことを言うと・・・・僕はニルヴァーナという魔法を知っている」

 

その事実にその場の全員が驚きを隠せなかった。グランも同様だ。何故それを誰にも伝えなかったのか・・・・それはこの魔法の性質が関係していた。意識してしまえばしまうほど危険であり、彼らのマスターからヒビキのみに説明された。

 

「どういう事?」

 

「どんな魔法何だよ」

 

「とても恐ろしい魔法だ。」

 

一呼吸置き、答える。

 

光と闇を入れ替える。それがニルヴァーナ

 

「光と・・」

 

「闇を・・」

 

「入れ替える‼︎?」

 

「・・・・どういう事だよ、それ」

 

その答えに疑問を隠せない一同。その疑問に応えるようにヒビキは続ける。

 

「しかし、それは最終段階の話だ。まず封印が解かれると、黒い光が上がる。まさにあの光だ。黒い光は手始めに、光と闇の狭間にいる者を逆の属性にする。例えば、強烈な負の感情を持った光の者は闇に堕ちる。」

 

「・・・・なるほど、さっきのウェンディみたいな感じか」

 

「そう。“自責の念”は負の感情だからね。・・・・実を言うと、あの時グランくんが止めていなかったら、ボクはウェンディちゃんを気絶させようとしてたんだ」

 

「はぁ!?」

 

「シャルル、落ち着けって。・・・・まぁ仮にそうしてたらどんな理由であれ沈めてたがな」

 

まさかのカミングアウトに直ぐにシャルルが抗議しようとするが、グランがそれを止めつつ、ギロリとヒビキを睨む。

 

「すまない。だが、あのままじゃウェンディちゃんは闇に堕ちていたかもしれない」

 

「・・・・まぁ、いい。結局気絶しちゃったしな」

 

闇に堕ちたウェンディもそれはそれで見たいような、とものすごくアホゥな考えをしていた。この非常時に何考えてんだ、コイツは。

 

「ちょっと待って!それじゃ“怒り”は!?ナツもヤバいの!?」

 

「そういやぁ、すげぇ怒ってたなあの人」

 

「何とも言えない・・・。その怒りが誰かの為なら、それは負の感情とも言い切れないし」

 

誰かのための怒り、確かにナツは今、怒ってはいるがそれは自分のための怒りではなく、エルザの為の怒りだ。一概に負の感情であるとは言えない。

 

「どうしよう・・・・意味が分からない」

 

「あんたバカでしょ」

 

ハッピーはよく分かっていなかったようで、シャルルがバカにしつつ簡単に教える。つまり、ニルヴァーナが封印から解かれた時に、正義と悪とで心が動いている者は、今の性格とは真逆のものになってしまう、という事だ。コインの表と裏がひっくり返るように。簡単に。

 

「それが、僕がこの魔法の事を黙っていた理由。人間は物事の善悪を意識し始めると、思いもよらない負の感情を生む。

 

“あの人さえいなければ…”

 

“辛い思いは誰のせい?”

 

“何で自分ばかり…”

 

それら全てが、ニルヴァーナによりジャッジされるんだ」

 

「・・・・それはまた随分な魔法だよなぁ。ニルヴァーナ、随分と質が悪りぃな」

 

「そのニルヴァーナが完全に起動したら、あたしたちみんな悪人になっちゃうの?」

 

「でもさ・・・逆に言えば、闇ギルドの人の奴等はいい人になっちゃうってことでしょ?」

 

「・・・・ニルヴァーナが無差別で使われたら、全部ひっくり返るだろうな」

 

もっともな疑問。闇ギルドもいい人になるならば、六魔将軍が狙う意味が分からない。そう言った意味も含めてハッピーは言うが、グランがそれは無差別ならと応える。その答えに、心当たりがあるヒビキも答えた。

 

「そういう事も可能だと思う。ただニルヴァーナの恐ろしさは、それを意図的にコントロールできる点なんだ。グランくんの言う通り、無差別でなく」

 

「そんな‼︎!」

 

とんでもない事実を聞かされ驚くルーシィ。それが奴らが狙う一番の理由。闇ギルドを省き、光のギルドにのみを標的にする。そんな事が起きて仕舞えば、大変な事態になる。

 

「そう、例えばギルドに対してニルヴァーナが使われた場合・・・・仲間同士での躊躇なしの殺し合い・・・・他ギルドとの理由なき戦争。そんな事が簡単に起こせる」

 

「なら、はやく止めねぇと」

 

「あぁ。一刻も早く止めないと、光のギルドは全滅するんだ

 

だから、急がねば。仲間同士で争う前に。一同はより一層に速く走り出す。

 

 

 

 

 

「・・・・ところでグラン?アンタさっき変な事考えてなかった?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・黙秘します」

 

「やっぱ考えてたんじゃない!!!」

 



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第六話 ニルヴァーナの進む先

進んでるようで進んでない・・・・


 

一方、いち早く光の柱、ニルヴァーナの元へと走り出したナツはその道中、川に浮かんでいるグレイを発見する。様子を見に近づいていくと、不敵な笑みを浮かべたグレイ。何とそこはイカダの上。すぐさま乗り物酔いを起こし膝から崩れ落ちるナツ。そんなナツに止めを刺そうと氷の槍を向けるグレイ。

 

それを一本の矢が邪魔をした。

 

「!!」

 

「何してんのよ、グレイ!」

 

「であるからして~、もしもし」

 

そこにいたのはルーシィ達。飛んできた矢は、ルーシィが召喚した人馬宮のサジタリウス。ニルヴァーナへ向かう途中で見つけた仲間が仲間を殺そうとした愚行を止めにきたのだ。

 

「ルー・・・・・・・・シィ・・・・」

 

「・・・・コレもニルヴァーナの影響か?グレイは前からあんなか?」

 

「ううん、喧嘩ばっかしてる二人だけどここまでは・・・・やっぱグレイも“闇”に落ちちゃったってこと?」

 

普段のグレイのことを知らないグランがルーシィに聞いてみれば、喧嘩はしているがここまでではないと応える。確かにグレイも“闇”に落ちてしまったと考える方が普通である。

 

「な…流れる…揺れる・・・・揺れてる」

 

「止まってるからしっかりしなさい!」

 

「いや、気持ちはわかる。もう乗ってるだけで嫌になってくるよな」

 

「変なとこで共感しない!」

 

「ナツ!今助けるよ!!」

 

イカダの動きは止まったはずなのに微妙な揺れで未だ酔い続けているナツ。それに突っ込むルーシィと変な共感を覚えるグランにその発言に突っ込みを入れるシャルル。

 

そしてナツを助けるために翼を発動してすぐに駆け寄ろうとするハッピー。だが、そこをグレイが手を差し出してハッピーの身体を氷に閉じ込めた。

 

「オスネコ!」

 

「ハッピーに何すんのよ‼︎!」

 

いきなりの攻撃に困惑を隠せぬままルーシィが彼に問いかける。だが、彼が口に出したのは全く思っても見ない事だった。

 

「・ハッピーは空を飛ぶ・運べるのは一人・戦闘力は無し。情報収集完了」

 

「・・・・急に何だ?」

 

「何言ってるのよグレイ…しっかりして…」

 

いきなりハッピーに対しての情報収集を口に出した。コレも闇に落ちた者の影響だろうか?いや、それにしたって何かおかしい気がする。

 

「グレイから見たルーシィ。・ギルドの新人・ルックスはかなり好み・少し気がある」

 

「はあ?な・・・・なによそれ」

 

「・見た目によらず純情・星霊魔導士。ほう・・・・星霊ね・・・・」

 

更にグレイからの評価に思わず顔を赤く染めるルーシィ。だが、そんな事は裏腹にルーシィが星霊魔導士であることに興味を持ったグレイ?は

 

「面白い‼︎!」

 

そう言っていきなり攻撃を仕掛けた。あまりにも急であったため防御も何も出来なかったルーシィだったが、間一髪のところでヒビキによって防がれた。

 

「違うね、君はグレイくんじゃない。何者だ」

 

「え?グレイじゃない!?」

 

いきなりグレイではないと言われたルーシィは困惑したが、仲間であるグレイは善悪の感情の狭間で揺れ動くような人ではないと知っている。では、一体誰なのか。その答えを知っている者がこの場に一人いた。

 

「・・・・ジェミニか」

 

「え?」

 

「アレ、バレちゃった?」

 

そう言うと一度煙に包まれる。そして、また姿を変える。今度の姿は金髪の少女。しかし、誰かはすぐに分かった。

 

「あ、あたし!?」

 

そう、ルーシィだ。だがしかし、今ルーシィに変身しても騙される訳がない。変身するメリットは無いはずだ。

 

「君・・頭悪いだろ?そんな状況でルーシィさんに変身しても騙される筈がない」

 

「まぁ、実はこっちのルーシィが実は偽物でした・・・・とかだったら面白いがな」

 

「面白く無いわよ!?」

 

「そうかしら?あんたみたいな男は女に弱いでしょ?」

 

ヒビキは呆れた様子でおり、グランがなんとも変な事を言い出しそれに突っ込むルーシィ。よく突っ込む娘だ。ボケるグランもどうかと思うが。

 

だが、奴がルーシィに変身したのは別の目的があるようだ。

 

不敵な笑みを浮かべながら、変身した方のルーシィは自分の服の裾を両手で掴み、そしてそのまま上まで一気に捲る。

 

「もしもしもしもしもしもしもしもし‼︎?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・っ‼︎?」

 

「きゃあああああああああああっ!!?」

 

服を捲れば当然その中身が見えてしまうため、サジタリウスとヒビキは釘付けに、ルーシィは自分の姿で裸体を晒されて悲鳴をあげる。まぁ、男であるなら目の前の美少女がサービスしてくれたなら見てしまうのも無理はない。当然グランもその光景に釘付けに・・・・

 

「・・・・・あんたいつもああなのか?」

 

「んな訳ないでしょ!?・・・・って何処見て言ってんのよ?」

 

なっておらず、首を思いっきり後ろに回していた。コイツ、意外とこういうことへの耐性がないようで、捲られると分かった瞬間に顔を背けていたのだ。

 

「・・・・星霊情報収集完了。へえ、すごい・・・・」

 

そんな中、偽ルーシィが一言呟く。こちらのペースを乱すだけが目的ではなかったらしい。では、一体なんの目的があったのか

 

「サジタリウス。お願いね?」

 

次の瞬間、信じられない出来事が起きた。

 

「がはっ!?」

 

「あでっ!?」

 

「え?」

 

「グラン!?」

 

突如サジタリウスが味方であるはずのヒビキとグランに狙って射撃。一本の鋭い矢がヒビキの身体に刺さり、グランの体に弾かれた。

 

「何よ、この馬っ!!?なんでグランを狙うのよ!!」

 

「ち、違いますからして…!それがしは…!!」

 

だがしかし、サジタリウス本人も何故こんな事をしてしまったのか分からない様子。考えられるのは、あの偽ルーシィがサジタリウスを操った事。その行動にサジタリウスの意志は関係ない事だ。

 

「・・・・悪いがルーシィ、ここは退避させてもらう。」

 

「分かった!!シャルルとウェンディを連れて逃げて!!コイツはヤバイ!!」

 

「任せろ、つうわけで行くぞシャルル!!」

 

「言われなくてもそうするわよ!!」

 

そしてグランはシャルルとウェンディを担ぎ、地面をトランポリンのようにして飛び上がる。そしてちょっとした後悔をしてしまった。

 

(・・・・ん?コレ俺が残った方が良かったんじゃ?・・・・まぁもう今更遅いか)

 

一瞬考えた後悔を捨てて、飛び続ける。まぁ正確には飛んでないが、そういう細かいところは気にしない方向でいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、目を覚ましたウェンディにシャルルはジェラールとは誰なのかと聞き、路頭を迷っていた自分を助けてくれた恩人であり、そのすぐ後にグランと出会ったらしい。

 

「そんな話聞いてないわよ・・・・てか、アンタは最初からよくわかんなかったのね」

 

「聞かれなかったし、別に変ではないだろ?」

 

「森の中で寝っ転がって土食ってれば十分変よ!!」

 

まぁ、変かどうかはさておき、そのあと一月あるかないかくらいの短い旅をしていたらしいが、ある日ジェラールが何か危険なものを見つけたらしい。名を《アニマ》。それがなんなのかは分からないが、とても危険なものらしく、ウェンディとグランを近くのギルドに預けてくれた。

 

「それが化猫の宿」

 

「んで、ジェラールとはそれっきりってわけだ。」

 

噂では聞いてたけどな、とグランは言うと、ウェンディもシャルルもなんとも言えない顔となった。

 

「ジェラール・・・・・・・・私たちの事覚えてないのかなぁ?」

 

「さぁな、それはジェラールしか分からん事・・・・あ?」

 

そんな話をしている最中、グランは遠くを見た。そこにあるのは、今自分達が目指しているもの・・・・ニルヴァーナだ。だが

 

「黒い柱が白くなったわ」

 

「何が起きてるんだろう?」

 

「さぁな、悪い事じゃなければいいが」

 

その瞬間

 

 

ゴッ

 

 

と、白い光が更に太くなったと思ったら、更なる異変が起きた。

 

「・・・・地面から何か出てくる」

 

「何かって何よ!?」

 

「分からん!?シャルル!!ウェンディを連れて飛べ!!」

 

「で、でもグランは?」

 

「俺は後で行く!!いいから速く!!」

 

「行くわよ!ウェンディ!!」

 

「待ってよ!シャルル!!!」

 

ウェンディの静止の声も聞かずに飛び立つシャルル。そして次の瞬間。地面から巨大な何かが出てきた。その巨大な何かの上にたまたまグランは乗ってしまった。そして、その姿を表す。

 

「・・・・まさか、コレがニルヴァーナか?」

 

超反転魔法ニルヴァーナ。その正体は、まさか超巨大な建造物・・・・いや、もはや一つの都市だ。こんなもの、どうやって止めればいいのか。・・・・いや、止めなくてはならない。だからグランは、とりあえず登っていく。

 

「・・・・俺もなんか移動手段欲しいが、乗り物は得意じゃねえしなぁ。てかどんだけ長ぇんだ、この脚?」

 

とぶつくさ言いながらニルヴァーナの恐らく脚のような部分を登って行く。だが、その脚という表現は間違っていなかった。

 

「・・・・ん?・・・・・・・・・・・・うぷ」

 

ニルヴァーナは動く巨大な乗り物だった。そしてグランは────────乗り物に弱い!!

 

「な、なんで動くんだ・・・・おぇ」

 

弱々しくも、一歩、また一歩と歩みを続けて行くグラン。その途中、ニルヴァーナが進む先が気になった。そして気づいた。この方角、このまま真っ直ぐ進めばあるのは

 

「・・・・化猫の宿(俺たちのギルド)が狙いか・・・・うぷっ」

 

そうニルヴァーナの進行先にあるのはグラン達のギルド、化猫の宿がある。偶然か、それとも狙ってなのかは分からないが一刻も速く止めなければ。どのみちギルドは巻き込まれてしまう。

 

「急いで・・・・ぉえ・・・・いかねぇ・・・・と!!」

 

少し勝手が違うがニルヴァーナの脚の性質を変え、反動をつけて一気に跳ぶ。ただ、酔っている状態でコレをやるともっと気持ち悪くなるが、そうも言ってられない状況のため、グランは一気に跳んだ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・吐きそう」

 

まぁ案の定吐き気に襲われたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ニルヴァーナの空中では六魔将軍の一人コブラとナツが戦っていた。相手の心を聴く魔法に苦戦しつつも、最後には叫びで倒すというまさかの撃退方法で勝利。だが、まだ戦う意志があったコブラはナツに攻撃を仕掛けようとする。しかし、それを邪魔したのは、同じ六魔将軍の一人ブレイン。ブレインはコブラに止めをさした後、ナツを連れてどこかへ行こうとした時、ルーシィとグレイ、そしてジュラの三人がそれを見つけた。そして、六魔将軍の第一の目的が、グランたちのギルドである化猫の宿であることが判明した。

 

「目的を言え。何故、グラン殿とウェンディ殿のギルドを狙う。」

 

「超反転魔法は一瞬にして光のギルドを闇に染める。楽しみだ・・・・地獄が見れるぞ」

 

ジュラがブレインに質問するも、聞く耳を持たず語り続ける。そんなブレインに嫌悪を抱くグレイとルーシィ。

 

「聞こえなかったか?目的を言え」

 

「うぬのようなザコに語る言葉は無い‼︎‼︎我は光と闇の審判なり、ひれ伏せぇっ‼︎‼︎」

 

先ほどよりも低い声色で話すジュラ。だが全く話の通じないブレインに仕方がなしに魔力を放とうとするジュラ。そこへ

 

ドゴォォォォッ

 

と大きな音を立てながら何かが降ってきた。突然の出来事にその場にいた全員が目を見開き驚いている。

 

そして、煙が消え降ってきた者がゆっくりと立ち上がる。

 

「・・・・・・・・おぇっ。思ったより・・・・跳んだな」

 

「グラン殿!?」

 

そう、ニルヴァーナの脚の部分から思いっきり跳んだグランは、酔っていたのもありニルヴァーナの至る所を跳んだり跳ねたりしながら、ここに着地した。まぁ落ちた、と言った方が正しいが。

 

「グラン殿、大丈夫か?」

 

「よう、オッサン。・・・・まぁ、なんとか。それより聞いてくれ、このままニルヴァーナが進むとそこに」

 

「化猫の宿がある・・・・だろう、小僧?」

 

「あぁ?」

 

グランの言葉の続きをブレインがいう。それも面白そうに、愉快そうに。

 

「・・・・なんで俺たちのギルドを目指す、目的はなんだよ」

 

「ふふふ、貴様のような小僧に言うはずもない‼︎‼︎その目で見ていろ!!光が闇に染まるその瞬間をなっ!!!」

 

グランがジュラと同じく聞いてみても、全く話す気が無いブレイン。そんなブレインに対し、グランは

 

「分かった。なら良い」

 

その言葉と共に、一瞬でブレインの懐まで詰め寄った。

 

「・・・・・・・・は?」

 

そして拳に魔力を込めて、その一撃を放つ。

 

「地竜の剛拳!!!!」

 

ゴッ! ガガガガガガガ

 

と都市を破壊しながらぶっ飛んでいくブレイン。あまりの出来事にジュラ以外が目をまん丸にして開いた口が塞がらない状態だ。

 

「・・・・・・・・な、何だ。この小僧の魔力は・・」

 

予想以上・・・・いや、予想すらしていなかった相手からの一撃に動揺を隠せないブレイン。そんなブレインに対し、グランは拳を岩に変え、首を鳴らしながら告げる。

 

「さっさと立てよ。テメェが吐くまで、ぶっ潰してやっからよ」

 

「ふふふ、グラン殿なら心配いらんな」

 

「も、もしかしてアイツ・・・・」

 

「めちゃくちゃ、強いの!?」

 

ここに六魔将軍のブレイン、化猫の宿のグランの戦闘が開始する

 

 





次回、グランvsブレイン 


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第七話 グランの実力・・・・そして


前回、とうとう動き出してしまったニルヴァーナ。その進行方向にはグランたちのギルド、化猫の宿が。それを止めるべくニルヴァーナへと向かい、敵の一人、ブレインと遭遇。そして対決する事となった。


 

吹き飛ばされ、未だに驚愕の表情を浮かべるブレイン。そんなブレインを睨みつけるグラン。

 

「流石だ、グラン殿」

 

「オッサンが言ってた事、冗談かと思ってたが・・・・」

 

「もしかして・・・・本当に聖天と同じくらい強いの!?」

 

敵の大将を吹き飛ばしたその実力に、ジュラは感心し、グレイとルーシィは驚きが隠せない。

 

この戦いの前、聖天の称号を持つジュラが認めた強さ。正直半信半疑ではあったが、今、それが確信に変わった。

 

「なるほど・・・・貴様もドラゴンスレイヤーか。そこらの雑魚とは違うという事か。まさか天空の巫女以外にもいたとはな」

 

口元の血を拭いながら立ち上がるブレイン。最初の一撃、そして与えられたダメージに最初こそ驚いたが、それでも余裕の表情を浮かべる

 

そして杖に魔力を溜め

 

常闇回旋曲(ダークロンド)

 

杖の先から怨霊のようなエネルギーをグランに放つ。放たれたエネルギーがグランに迫る。それに対しグランは両腕を岩に変えて構える。

 

「地竜の剛腕!!!」

 

飛んできたエネルギーを薙ぎ払い、砂嵐を起こす。放たれたエネルギーは砂嵐に巻き込まれ、霧散していく。だが、それを見越していたかのようにブレインはグランの背後に回り込む。

 

常闇奇想曲(ダークカプリチオ)!!!!」

 

「まずいっ」

 

杖の先から螺旋状の光線をグランに向けて撃つ。それをグランは先ほどと同じように砂嵐を巻き起こすが、放たれたエネルギーは砂嵐をモノともせずに突き進んでいく。

 

「無駄だ‼︎!常闇奇想曲は貫通性の魔法!!そんな砂嵐ごときでは止めることはできぬわ!!!」

 

そう高らかに告げるブレイン。その言葉通りエネルギーは砂嵐を突き破り、遂にグランに届く。そしてそのままグランの右腕を貫き、砕かれる。

 

「なっ!!?」

 

「うそっ!!?」

 

「・・・・・・・・」

 

グランの右腕が砕かれた事でグレイとルーシィは小さく悲鳴をあげる。だが、ジュラだけは笑みを消さずにいた。

 

だが、勝利を確信したブレインは高笑いをしながら叫んでいた。

 

「ふははははははっ!!所詮貴様程度では相手にすらならなかったという事だ!!!そのまま朽ち果てろ!!」

 

そしてまた杖に魔力を溜め、グランへと放とうとする。だがグランは砕かれた腕をすぐに()()()()魔力を溜め、そのまま地面を殴りつける。

 

「地撃‼︎‼︎」

 

ドガァァァァン!

 

瞬間、ブレインの立っていた地面が爆発を起こした。

 

「ガハァっ!?・・・・な、にぃぃ!?」

 

砕いたはずの右腕が再生したと思った次の瞬間、空中に吹き飛ばされ訳が分からず混乱するブレイン。空中に浮かんでいるブレインの元まで跳び上がり、同じように魔力を溜めてその体に直接叩き込む。

 

「地撃・壊振!!!!」

 

ドォォンッ!!

 

うあ"あ"あ"あ"っ

 

ブレインはそのまま地面に叩きつけられ、遂には動けなくなった。

 

「やりやがった!!!こいつ六魔将軍のボスだろ!?」

 

「あたしたち勝っちゃった‼︎!」

 

「流石の腕前だ、グラン殿。・・・・グラン殿?」

 

敵のボスを撃破できた事で喜ぶ一同。そんな中、グランはただその場で立っているだけだった。不思議に思ったジュラが話しかけた直後

 

「・・・・・・・・・・・・気持ち悪・・・・オェ」

 

バタンッ、と倒れ込んでしまった。ニルヴァーナが化猫の宿を狙っているという怒りでブレインを相手していたが、ブレインを倒した事で今までの乗り物酔いの波が押し寄せてきたのだ。無茶するからだ。

 

グランは自分は気にしなくて良い的なジェスチャーを出す。その後、ジュラがブレインに問い詰めたが、ブレインは何か気になる事を言いながら気絶していった。

 

「あの方?」

 

「つーかこいつの顔・・・・今、模様が一個消えなかったか?」

 

「ぶ、不気味な事言わないでよぉ〜」

 

「・・・・・・・・やべ、吐きそう」

 

やいのやいのと話していると向こうのほうからウェンディとシャルルが走ってきて、この都市が自分達のギルドに向かっているかもと告げできた。

 

「らしいが、もう大丈夫だ」

 

「え?ひゃっ!?あ、グラン!!大丈夫!?」

 

「・・・・・・・・ウェン・・・・ディ・・・・」

 

「アンタ、この大きさでもダメなの?」

 

倒れているブレインに驚いたが、それよりも顔を青くしているグランの方が心配になりすぐさま駆け寄るウェンディ。シャルルは乗り物がダメなことは知っているが、まさかここまでとは知らず呆れ半分でいる。

 

結局、化猫の宿が狙われる理由は分からずじまいだが、コレで終わりだと皆安堵していた。

 

「お・・終わってねぇよ・・・・早く、これ・・・・止め・・・・うぷ」

 

「ど・・・・同意・・・・オェ」

 

約二名ダウンしてるが、とりあえずニルヴァーナを制御していたであろう王の間に行ってみることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王の間についたがニルヴァーナを制御していると思われるようなものが何一つなかった。

 

ブレインを倒せば止められる・・・・その考えが甘かった事に気がついてしまった。

 

「・・・・クソッ、どうすりゃ良いんだよ」

 

「止めようにも、止め方が分かんないんじゃ・・・・」

 

「・・・・・・それ・・・・以前に・・・・オェ。まだ、ニルヴァーナが動いてる事が・・・・問題・・うぷっ・・・・・・・・だな」

 

王の間に横になりながらも、今起きてる不自然な点を述べるグラン。グランの言った通りここで制御して、その操作していたと思われていたブレインが倒されたにも関わらず動いているニルヴァーナ。(ちなみに、ナツはウェンディのバランス感覚をやしなう魔法トロイアをかけてもらい乗り物酔いは治まっているが、グランはウェンディに無理させないように断って、今も地面に寝っ転がっている)

 

そのことから、最悪な考えがよぎった。

 

「まさか、自動操縦!?すでにニルヴァーナ発射までセットされて・・・・」

 

「可能性は・・・・高い・・・・な・・・・」

 

その事実に、ウェンディは涙を流し悲痛の声をあげる。

 

「私たちの・・ギルドが・・・・」

 

「大丈夫!ギルドはやらせねぇ」

 

だが、乗り物酔いから治ったナツが、ギルドは大丈夫だと、必ず止める、決意の表情でそう告げた。

 

「でもどうやって止めるの?止め方分かんないんだよ?」

 

「壊す!!」

 

「またそーゆー考え!?」

 

「・・・・・・・・沈める」

 

「アンタはとりあえず寝てなさい」

 

「やはりブレインに聞くのが早そうだな」

 

色々とどう止めるか意見は出たが、まだ意見が纏まる様子はなかった。そんな中、ウェンディはある心当たりがあると告げどこかへ行こうとした。

 

「私・・・・ちょっと行ってきます!」

 

「ウェンディ!!待ちなさい!!」

 

「・・・・・・・・ウェンディ、シャルル」

 

そんなウェンディを追いかけるシャルルと声をかけるグラン。

 

「どうしたの、グラン?」

 

「何よ?もしかしてやっぱりウェンディに魔法かけてほしかったの?」

 

「違ぇよ。・・・・・・・・俺は一度、ギルドに戻る。」

 

「えっ!?」

 

「なんと!?」

 

「え、今!?なんで!?」

 

一度ギルドに戻ると告げたグランに耳を疑った一同。何故今戻るのか、と疑問に思うが、考えてみれば当然だと思う。自分のギルドが危険に晒されているからだ。

 

「・・・・万が一、ニルヴァーナを止められなかった場合に備えて、俺がギルドを守る。だから、オッサンたちには悪いがウェンディ達を頼む。」

 

「・・・・うむ、わかった。」

 

「おう!!任しとけ!!」

 

グランの申し出に、心良く返事をするジュラとナツ。他のみんなも同意見のようだ。ただ、ウェンディとシャルルだけは少し不安そうだった。

 

「・・・・グラン、無茶しないでよ?」

 

「・・・無茶はしねぇよ。した事ないだろ?」

 

「だいぶしてるわよ、アンタ。その度にウェンディが心配して泣き出すんだから」

 

「ちょっとシャルル!!そんな事今言わないでよぉ!!」

 

「・・・・まぁいい、とにかく行ってくる。それと、ウェンディ。」

 

「なぁに?」

 

「・・・・いざとなったら、“天”を喰え。お前ならできる筈だ」

 

「・・・・天を?」

 

「その内わかる」

 

ギルドに向かう前に、ウェンディたちに別れを告げるグラン。その間、グランとウェンディの間に、なんとも言えない雰囲気が流れていた。

 

「「でぇきてぇる〜〜〜」」

 

「・・・・大体こんな感じよ。この二人は」

 

そんな二人をニヤニヤしながら巻き舌でいうハッピーとルーシィ。それとこれが普通だ、というシャルル。それに気づき顔を赤くするウェンディと、よくわかっていないグラン。

 

「・・・・んじゃ、行ってくる!!」

 

その言葉と同時に跳び上がるグラン。目的地は化猫の宿・・・・自分達のギルドへ。ニルヴァーナよりも先に到着する為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・やっぱギルドに向かってんな、コイツ。全然止まる気配ねぇし。」

 

ギルドへ向かって跳びつつ、一向に止まる気配のないニルヴァーナに少々の愚痴を言いながら進んでいくグラン。空を飛べるわけではないので地面に着地する瞬間に、地面を弾力性にして跳んで移動している。これを繰り返してギルドへと進んでいるが、ニルヴァーナもすぐそこまで迫っている。何故、自分達のギルドを狙うのか。その理由は分からないが、とにかく急いで向かわなければならない。グランは更に速度を上げてギルドに跳んでいく。

 

「・・・・見えた!!化猫の宿!!」

 

なんとかニルヴァーナよりも先につけそうだが、ニルヴァーナもすぐそこにいる。急いで避難させなければ。そう思った矢先──────ニルヴァーナに異変が起きた。

 

ゴゥゥオォォン

 

「・・・・・・・・は?」

 

まるで・・・・いや、確実に魔力を溜めている。ニルヴァーナを発射させる気だ。もはや避難は間に合わない。なら、どうするか・・・・そんなものは決まってる。

 

すぐにグランは地面に降り立ち、地面に拳を突き立てそのまま巨大な土壁を作り出す。

 

「───なんだぁ、ありゃあ?」

 

それをブレイン────いや、マスター・ゼロは不快そうにみる。彼が望むは破壊ただ一つ。それが例え土塊でも邪魔されるのは不快でならない。

 

「あのガキは・・・・この体(ブレイン)を痛めつけたガキか・・・・」

 

更にその土壁を作り出しているのが、ブレインをやった者だと知り、更に不快感が増していく。

 

「そんな土塊建てたぐれぇで・・・・・・・・オレの破壊を止められるかァ──!」

 

キィィィィンコオオオオオオオオオオオオオっ

 

刻一刻と溜まっていく魔力。もはや止める事は不可能である。

 

「マスタ〜〜」「ひぇ〜〜」「ここまでだ・・・・」「ううう・・」

 

もはや絶望の淵に立たされた化猫の宿の仲間たち。それぞれが絶望に顔を青くし、悲鳴をあげる。だが、マスターだけは違っていた。

 

「何を狼狽える。これがワシ等の運命、なぶら重き罪の制裁」

 

これこそが自分達────ニルヴァーナを作り出してしまった自分達への制裁であると、その覚悟を決めていた。

 

「善意よ・・・・・・・・滅びるがいい────────!!!!」

 

そしていよいよ発射されてしまう。

 

「やめてぇ──────!!‼︎」

 

ウェンディの悲痛の叫びも虚しく、その時は来てしまう。

 

カッ 

 

 

ズドォォンッ!!

 

 

とうとう発射されてしまったニルヴァーナ。それは化猫の宿の前にそびえ立つ土壁へと近づいていく。

 

が、しかし。グランは決して諦めたわけではなかった。時間稼ぎの為に・・・・ニルヴァーナを防ぐために土壁を建てた訳ではなかった。ただ、自身の高さをニルヴァーナの発射口と同じ高さにしたかっただけであった。

 

突き立てた拳を更に地面に沈め、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

土や砂、石や岩などの大地の魔力の媒介物からの摂取ではなく、大地から直接魔力をその体に溜め込むグランの滅竜奥義。

 

その魔力は普段の何倍・・・・いや何十倍にも膨れ上がり、その力を増していく。

 

グランが編み出した・・・・グランだけが使うことのできる魔法。

 

「滅竜奥義・・・・

 

 

 

 極波・地竜哮!!!!」

 

 

 

放たれる大地竜の咆哮。大地の魔力と地竜の魔力が混ざり合い放たれたその咆哮はニルヴァーナと激突した。

 

二つの強大な魔力がぶつかり合い、その影響で大気が震え、物凄い衝撃波が起きる。

 

ある騎士は、信じられないとばかりに驚きを顔に表し。ある破壊者は、自身の思い通りにいかず苛立ちを露わにし。

 

ある少女は─────ただただ少年の無事を祈るのだった。

 

そして・・・・遂に終わった。

 

撃ち消しあっていた二つの魔法はほぼ同時に消え失せた。化猫の宿を傷つけることなく・・・・マスター・ゼロの破壊は失敗に終わった。

 

そして、グランもまた魔力をほぼ使い切ってしまった。次第に土壁も崩れていき、遂にグランの足場は無くなってしまいそのまま重力に従って落ちていく。

 

「・・・・・・・・後は・・・・頼んだ・・・・・・・・ぞ・・・・」

 

グランは、そう一言呟いた後、意識を失った。

 

 

 





グランの体について
グランは滅竜魔法を使う際、一部を岩などに変えて攻撃を繰り出します。そしてその岩へと変わった部分は魔力を込めていない時はある程度の攻撃で壊れてしまい、それこそブレインの放った魔法のように貫通系などを喰らうと簡単に砕けてしまいます。しかし、グラン自身の魔力がある限り砕けた、又は壊された部分は再生可能です。無論、永遠に再生する訳ではないので何度も壊されては再生は出来なくなります。魔力を回復させれば再生はできます。




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第八話 終結・・・・そして別れ

今回、少し長めです。そして六魔将軍編は終了です。


 

ニルヴァーナが発射されてから約二十分・・・・今度こそニルヴァーナを止めるべく足にあるラクリマを破壊する必要があった。残った魔導士、ナツ、グレイ、ルーシィ、一夜、エルザ、ジェラール・・・・そしてウェンディ。だが六魔将軍のマスター・ゼロがラクリマを守っていた。皆、満身創痍であるがそれでも、ニルヴァーナを止めるべく進んでいく。

 

そんな中、ナツがマスター・ゼロと対峙した。だが、マスター・ゼロの圧倒的な実力に苦戦していたナツ。その途中、思わぬ者がやってきた。記憶を失ったかつての敵・・・・ジェラールだ。がしかし、記憶が戻ってしまった。ジェラールはゼロではなく、ナツに攻撃を仕掛ける。だが、彼に炎を通じない。なら何故攻撃するのか・・・・それは、思い出したから。「ナツ」という希望を。だからこそ、ナツを助けるべくここにきた。だが、記憶がないからと言って過去の罪が許されるはずもない。ナツは忘れない。ジェラールも分かっている。・・・・だからこそ、今はゼロを倒すためにナツに力を与えたい。

 

咎の炎。金色の罪。

 

それを受け取ったナツ。そしてそれは起こる。全てを破壊する力。滅竜魔法の最終形態。

 

その名も、ドラゴンフォース。

 

これが最後の戦い。それでも、ゼロは倒されない。ゼロは言った。てめぇごときゴミが一人で相手できる訳ない、と。

 

だが、ナツは言った。一人じゃないと。みんなの想いがオレを支えている。支えてくれているからこそ、今立っていられる。仲間の力が体中をめぐっているのだ、と。

 

ゼロは惜しんだ、これほどの男を粉々にするのを。だから、奴に最高を“無”を・・・・ゼロの最大魔法を繰り出す。

 

ナツも、滅竜魔法・・・・その奥義を繰り出す。

 

「滅竜奥義・・・・

 

 紅蓮爆炎刃!!!!」

 

 

 

「ジェネシス・ゼロ!!!!!」

 

 

 

 

そしてぶつかる。ゼロので呼び起こした無の旅人がナツを喰らいつくそうと襲い掛かる。だが、ソイツ等は全員金色の炎に燃やされた。ゼロの最大魔法が・・・・いとも簡単に。

 

そして、ゼロは見た。ナツの背後に・・・・巨大なドラゴンの幻影を。

 

そして思い知る。ドラゴンを倒す為に、ドラゴンと同じ力を身につけた魔導士。これが、本物の

 

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だと。

 

 

「全魔力解放!!!滅竜奥義“不知火型”・・・・

 

 

紅蓮鳳凰劍!!!!!」

 

 

 

そして繰り出された滅竜の奥義。それを使いマスター・ゼロごと、ラクリマを破壊する。

 

それと同時に他五つのラクリマも破壊される。

 

一つはグレイ。

 

「時間だ!!!みんな頼むぜ‼︎‼︎」

 

一つはルーシィ。

 

「開け!!金牛宮の扉・・・・タウロス!!!!」

 

一人は一夜。

 

「ぬおおおおおおおおおおおおおっ!力のパルファム全開〜〜!!!!」

 

一人はエルザ

 

「ナツ」

 

そして最後の一つは────ウェンディ。

 

「天竜の・・・・咆哮!!!」

 

そして、遂に

 

バキィィッ!! 

 

ドドドドドドドドドドドド

 

六つのラクリマが同時に破壊され、マスター・ゼロも倒され、ニルヴァーナの破壊に成功した。

 

だが、喜びも束の間、ニルヴァーナは崩壊していった。当然中にいる者たちは危険だ。急いでニルヴァーナからの脱出を試みた。

 

「シャルル!!」

 

「ウェンディ、こっちよ!!」

 

ウェンディとシャルルも崩壊するニルヴァーナから脱出しようとしていた。だが、途中転んでしまいその上に瓦礫が落ちてくる。

 

「ウェンディ!!」

 

絶対絶命の時、一つの影が動いた。シャルルとウェンディを抱き抱え、瓦礫から身を守った存在。

 

「よくやった!ウェンディ!!」

 

「グラン!!無事だったんだね!!」

 

「遅いわよ!!」

 

ニルヴァーナを防ぎ、そのまま地面に落下したグランが助けに来ていた。無事だった事に喜ぶ二人。そしてそのまま脱出する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・いや〜、危なかったな」

 

「危なかったなじゃないわよ!!!ニルヴァーナと正面から撃ち合うって何考えてんのよ!!!」

 

「お、落ち着いてよ、シャルル〜」

 

あの後、なんとか無事全員脱出することに成功したのだが、ニルヴァーナに正面から挑んだ無茶についてシャルルに説教されていたグラン。まぁほとんど聞いておらず、どこ吹く風だが。そんなグランに弱々しい猫パンチを喰らわせるシャルルとそれを宥めるウェンディ。

 

「ブレインってやつをぶっ潰した時、強いとは思ったが・・・・まさかニルヴァーナを防いじまうなんてな」

 

「あれは流石に驚かされたぞ。」

 

「ともかく、全員無事で何よりだね」

 

「みんな・・・・本当によくやった。」

 

「これにて作戦終了ですな✨」

 

「……で、あれは誰なんだ?」

 

そんな中、グレイが少し離れた位置に立っているジェラールを見てそう呟く。

 

「ジェラールだ。」

 

「何っ!?」

 

「あの人が!?」

 

「あ、ジェラール?お久〜」

 

どうやら姿を知らなかったグレイとルーシィがその人物がジェラールであると聞き驚きを隠せない。グランはグランでそういえば久しぶりだなぁ〜的な感じで挨拶してた。

 

「・・・・君も、オレを知っているのか?」

 

「そりゃ、昔ウェンディと一緒に旅してたし・・・・覚えてねぇの?」

 

「記憶を失ってるらしいの・・・・」

 

「へー、まぁいいや。オレグラン。よろしく」

 

「・・・・ああ、よろしく頼む」

 

ウェンディから記憶がないことを聞いたグランは、まぁとりあえずよろしくと言った感じで手を差し伸べる。それに応えるように手を握り握手をするジェラール。

 

その後、エルザと何やら話をしていたのだが、その途中

 

ゴチィン

 

「メェーン!」

 

「どうしたおっさん!?」

 

「トイレのパルファムをと思ったら何かにぶつかった〜✨」

 

「何か地面に文字が……」

 

「なんだぁ?」

 

「こ、これは……術式!?」

 

この場にいる全員を囲うように術式が現れる。

 

「いつの間に!?」

 

「閉じ込められたァ!?」

 

「誰だこらァ!!」

 

「沈めんぞコラァ!!」

 

そして、術式が発動してすぐに、どこからとも無く大量の人が現れる。十字架のようなマークをど真ん中に描いた服を着て、統一されている杖を装備している者達。

 

「……手荒なことをするつもりはありません、しばらくの間そこを動かないで頂きたいのです。」

 

そのうちの一人が代表して話を進める。

 

「私は新生評議院第四強行検束部隊隊長、ラハールと申します。」

 

「新生評議院!?」

 

「もう発足してたの!?」

 

「我々は法と正義を守るために生まれ変わった。如何なる悪も決して許さない。」

 

「おいら達何も悪いことしてないよ!!」

 

「お・・・・・・・・おう!!」

 

「なんか今間が無かったか?」

 

「存じております。我々の目的は六魔将軍の捕縛・・・・そこにいるコードネーム:ホットアイをこちらに渡してください。」

 

そう、彼らの目的はグラン達ではなく、元六魔将軍の一人であるホットアイ・・・・いや、リチャードの捕縛だった。ちなみにグランは最初リチャードを見た時、なんでここにいんの?と思ったが、すぐにまぁいいか、と深く考えずにそのままにしていた。

 

「ま・・・待ってくれ!!」

 

「いいのデスネ、ジュラ。」

 

「リチャード殿」

 

微笑みながらジュラの肩に手を置くリチャード。それは諦めではなく、償いをしたいという彼の気持ちの表れだった。

 

「善意に目覚めても過去の悪行は消えませんデス。私は一からやり直したい。」

 

「・・・・ならば、ワシが代わりに弟を探そう。」

 

「本当デスか!?」

 

「あ、なら俺も手伝うぞ。同じ属性仲間だし」

 

「おお、ありがとうございますデス!!」

 

リチャードの代わりに弟を探すことを違うジュラと、同じ属性仲間であるという理由で一緒に探すというグランに感謝を述べるリチャード。

 

「弟の名を教えてくれ。」

 

「名前はウォーリー、ウォーリー・ブキャナン。」

 

「ウォーリー!?」

 

「「!!」」

 

その名前に聞き覚えがあるのか、エルザとナツ、ハッピーが驚いたような表情をしていた。

 

「その男なら知っている。」

 

「なんと!?」

 

「マジで?」

 

「ああ。私の友だ。今は元気に大陸中を旅している。」

 

エルザのその言葉に、リチャードは涙ぐみ、嗚咽を漏らす。探していた弟が元気で暮らしている、その知らせだけで彼の心はとても救われていた。

 

「これが、光を信じるものだけに与えられた・・・・奇跡という物デスか・・・・ありがとう・・・・ありがとう・・・・・・・・ありがとう!!」

 

そして、リチャードは評議院に連行される。だがなぜかまだ術式の解除はされなかった。

 

「もう良いだろ!術式を解いてくれ!漏らすぞ!!」

 

「そうだぞ、早くしねぇと酷いことになんぞ?」

 

「いえ、私達の本当の目的は六魔将軍如きではありません。」

 

「へ?」

 

「ごときて・・・・それ以上のがいんの?」

 

そう言いながらラハールは指を向ける。グランの質問に答えるかのように、その人物の罪状を述べる。

 

「評議院への潜入・・・破壊。エーテリオンの投下・・・・もっととんでもない大悪党がそこにいるでしょう。」

 

そして、その人物の名前を言う。

 

「貴様だジェラール!来い!抵抗する場合は、抹殺の許可も降りている!」

 

「そんな!?」

 

「ちょっと待てよ!!」

 

「はぁ?おい、ふざけんな!!」

 

「その男は危険だ。二度とこの世界に放ってはいけない……絶対に!!」

 

ラハールが強く言い放ち、面々が文句を飛ばす中……エルザだけ、他と違う表情を浮かべていた。

 

「ジェラール・フェルナンデス、連邦反逆罪で貴様を逮捕する。」

 

手枷を付けられるジェラール。彼はそれに一切抵抗をすることはなかった。ただただ己の罪を受け入れるだけだった。

 

「待ってください!ジェラールは記憶を失っているんです!!何も覚えてないんですよ!!」

 

「そうだ、ふざけんなコラ。ようやっと会えたのにまた別れとかざけんな!!」

 

「刑法第13条により、それは認められません。もう術式を解いてもいいぞ。」

 

「はっ」

 

部下に術式の解除を命じるラハール。ウェンディやグランの言い分に聞く耳を持っていなかった。

 

「で、でも!」

 

「いいんだ、抵抗する気は無い。・・・・君達のことは最後まで思い出せなかった。本当に済まない、ウェンディ、グラン。」

 

「……この子は昔、あんたに助けられたんだって。」

 

「・・・・一応、俺もな」

 

「そうか・・・・俺は君たちにどれだけ迷惑をかけたのか知らないが、誰かを助けたことがあったのは嬉しい事だ。」

 

シャルルとグラン言葉を聞き、満足そうにするジェラール。だが、それでもこの場にいるものは納得できずにいる。

 

「エルザ・・・・色々、ありがとう」

 

ジェラールは最後に、エルザに感謝を述べた。

 

「他に言うことはないか?」

 

「あぁ。」

 

「死刑か無期懲役はほぼ確定だ。二度と誰かと会う事はできんぞ。」

 

ラハールの説明を聞いても、ジェラールはそうなることを受け入れるかのように、驚きすらしない。

 

ルーシィやウェンディは驚きや悲しみでその表情を曇らせていた。

 

このままでは、ジェラールには二度と会えなくなってしまう。

 

「行かせるかぁぁっ!!」

 

誰もが諦めていた時、ナツが飛び出していた。ナツは評議院に殴りかかり、ジェラールを取り戻そうとした。

 

「ナツ!?」

 

「相手は評議院よ!?」

 

「ああ、やっていいのか?なら、やってやらぁ!!」

 

「グランっ!?」

 

ナツが飛び出したことに驚愕する一方で、それなら自分もというように評議員に殴りかかるグラン。

 

「どけぇ!そいつは仲間だぁ!!連れて帰るんだァァァ!!」

 

「と、取り押さえなさい!!」

 

ラハールは、スグに部下達にナツとグランを取り押さえるように命令を下す。ナツが大量の評議員に囲まれる瞬間、部下の一人をグレイが弾き飛ばした。

 

「グレイ!!」

 

「こうなったらナツは止まらねぇからな!!気に入らねぇんだよ!!ニルヴァーナの破壊を手伝ったやつに・・・・一言も労いの言葉もねぇのかよォ!!」

 

グレイのその言葉が引き金となり、皆が評議員相手に動き始める。

 

「それには一理ある。そのものを逮捕するのは不当だ!」

 

「悔しいけどその人がいなくなると、エルザさんが悲しむ!!✨」

 

「もう、どうなっても知らないわよ!!」

 

「あいっ!」

 

「過去がどうとか云々以前にウェンディ泣かせやがって、覚悟しとけよ評議員ゴラァ!!!」

 

皆それぞれ思惑はあれどジェラールを取り戻す、それが全員の願いであった。

 

「お願い‼︎!ジェラールを連れていかないで!!」

 

「来い、ジェラール!!お前はエルザから離れちゃいけねぇっ!!ずっとそばに居るんだ!エルザの為に!!だから来いっ!!!俺達がついてる!!仲間だろ!!」

 

「全員捕らえろぉぉぉぉぉぉ!!公務執行妨害及び逃亡幇助だ!!」

 

全力を持って捕えに罹る評議院。例え一人一人は大した事なくても、数だけは一丁前にいるため、ナツも揉みくちゃにされていく。

 

「ジェラァァァァァル!!」

 

だが

 

 

 

「もういい!!そこまでだ!!」

 

 

 

 

たった一言。エルザの一喝。たったそれだけで争っていたギルド連合軍側も評議院側も全員が動きを止めていた。

 

「騒がして済まない、責任は全て私がとる。ジェラールを・・・・連れて・・・・行け・・!」

 

「エルザ!!‼︎」

 

この中で恐らく一番助けたいという思いはあったであろう、エルザ。しかしそれを飲み込んで押さえ込み、エルザはジェラールに罪を償わせる選択をした。

 

この場の誰よりも、悲しそうに辛そうに悔しそうに表情を浮かべながら。

 

「……そうだ、()()()の髪の色だった。さよなら、エルザ……」

 

「……あぁ。」

 

そしてジェラールは評議院に連れていかれた。最後の一言の意味は、恐らくエルザしか分からないだろう。

 

ウェンディとグランも、エルザの考えを受け入れた。自分達よりも長く過ごしたエルザが決めたことに、賛同する他なかった。

 

その日の朝焼けは、空が怖いくらいに美しい緋色に染まっていた。それでも、グランはその美しい空が憎らしかった・・・・何故かは自分でも分からないくらいに・・・・その日の空は憎らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・そういやぁ、ずっと思ってたことなんだけどよォ。化猫の宿っていつからギルド連盟に入ってたんだ?」

 

「・・・・さぁ?」

 

魔導士ギルド化猫の宿、ギルド連合軍の全員が今はこの場に集っていた。ギルドマスターの好意により、ボロボロになった服の代わりに新しいのを用意させてもらうのと同時に、お礼がしたいとの事だった。

 

「まぁ無名だろうなぁ〜。考えてみりゃ、基本ギルドの仕事俺以外あんまやってなかったし・・・・まぁ、まともな攻撃魔法が使えるのが俺とウェンディくらいだったからか?まぁ、そこはいいや。とりあえずマスターが待ってっから、早く行こうぜ?」

 

そうして、全員が外へと出る。集落の中央で化猫の宿とギルド連合軍のメンバー全員が集まっていた。

 

「妖精の尻尾、青い天馬、蛇姫の鱗……そしてウェンディにシャルルにグラン。よくぞ六魔将軍を倒し、ニルヴァーナを止めてくれた。地方ギルド連盟を代表して、このローバウルが礼を言う。ありがとう・・・・なぶらありがとう・・・・」

 

「どういたしまして!マスター・ローバウル!!✨六魔将軍との激闘に次ぐ激闘!!楽な戦いではありませんでしたがっ!!!✨仲間との絆が我々を勝利に導いたのです!!✨」

 

「「「さすが先生!!」」」

 

「ちゃっかり美味しいところ持っていきやがって。」

 

「あいつ誰かと戦ってたっけ?」

 

「いや、誰とも戦ってねぇぞ」

 

改めて六魔将軍との戦いを終えたのだと実感する面々。ようやく終わったことへの達成感などで皆気分が良くなってきていた。

 

「グラン殿も、よくぞニルヴァーナを塞いでくれた」

 

「流石は、ジュラさんが認める魔導士だ」

 

「別に、大した事してねぇよ。俺がやったのは、ブレインぶっ潰してニルヴァーナの光線を塞いだ程度だよ。ニルヴァーナを止めたのはウェンディ達だ。後、どうでもいいけど服どうした?」

 

それでも十分だと思うのだが。

 

「この流れは宴だろー!‼︎‼︎」

 

「あいさー!!‼︎

 

テンションが見るからに高いナツとハッピー、そしてさらにテンションの高い青い天馬がそこにはいた。

 

「一夜が✨」

 

「「「一夜が!?」」」

 

「活躍✨」

 

「「「活躍!!」」」

 

「それ✨」

 

「「「「ワッショイワッショイワッショイワッショイ!!」」」」

 

「さぁ化猫の宿の皆さんもご一緒にィ!?✨」

 

「「「ワッショイワッショイ!」」」

 

「ワ・・・・✨」

 

ヒュウウウウウ

 

ワッショイダンスを踊っている青い天馬の面々、そしてそれに便乗して踊り出すエルザを除いた妖精の尻尾の面々。そして一夜が一緒に踊ることを提案したが、ウェンディ、シャルル、グランを除いた化猫の宿のメンバー全員が真剣な顔で黙っていた。その真剣な顔を見て、テンションが上がっていた面々は徐々に落ち着いていった。

 

「・・・・皆さん、ニルビット族のことを隠していて、本当に申し訳ない。」

 

「そんなことで空気壊すの?」

 

「全然気にしてねーのに・・・・な?」

 

「そうだぜ、マスター?俺もウェンディもシャルルも、全く気にしてねぇぞ?」

 

グランの言葉を聞いた後、ローバウルは深呼吸をする。真剣な表情から、何か緊張するかのような雰囲気が出ていた。

 

「・・・・皆さん、ワシがこれからする話をよく聞いて下され。まず初めに・・・・ワシらはニルビット族の末裔などではない。ニルビット族そのもの・・・・400年前ニルヴァーナを作ったのは、このワシじゃ。」

 

「へー、400年前にニルヴァーナを・・・・は?」

 

ローバウルが語る真実。その言葉に誰もが驚きと動揺を隠しきれていなかった。ウェンディやシャルル・・・・グランでさえ困惑した。

 

「400年前・・・・世界中に広がった戦争を止めようと、善悪反転の魔法“ニルヴァーナ”を作った。ニルヴァーナはワシらの国となり、平和の象徴として一時代を築いた。しかし、強大な力には必ず反する力が生まれる。闇を光に変えた分だけ、ニルヴァーナはその“闇”を纏っていった。・・・・バランスを取っていたのだ。人間の人格を無制限に光に変えることは出来なかった。闇に対し光が生まれ、光に対して必ず闇が生まれる。人々から失われた闇は、我々ニルビット族にまとわりついた。」

 

「そんな・・・・」

 

「・・・・考えたくねぇんだが・・・・そんな闇が纏わりついたら・・・・」

 

「そう、グラン。お主の考えている通り・・・・。地獄じゃ・・・・ワシらは共に殺し合い、全滅した。生き残ったのは……ワシ一人だけじゃ。」

 

全員が驚愕していた。400年前から生きている人物、更に隠されていたニルヴァーナの真の闇。その全てに驚き、動揺し、困惑していた。

 

「いや・・・・今となってはその表現も少し違うな。我が肉体はとうの昔に滅び、今は思念体に近い存在。ワシはその罪を償う為、また・・・・力無き亡霊(ワシ)の代わりにニルヴァーナを破壊出来る者が現れるまで、400年・・・・見守ってきた。今・・・・ようやくその役目が終わった。」

 

「そ・・・・そんな話……」

 

「役目が終わったら・・・・なんだってんだよ・・・・」

 

ウェンディとグランは謎の不安を覚える。そしてその不安を表すように、ローバウルが・・・・否、化猫の宿の面々がその体を光り輝かせ、次々とその姿を消していく。

 

「マグナ!?ペペル!?何これ……皆!?」

 

「あんた達!?」

 

「何が・・・・どうなって!?」

 

「騙していてすまなかったな。ウェンディ、グラン。ギルドのメンバーは皆・・・ワシの作り出した幻じゃ……」

 

「幻だぁ!?」

 

その事実に涙を流し始めるウェンディと驚愕するグラン。仲間だと思っていたのが幻で、その幻が今解かれようとしていた。

 

「ワシはニルヴァーナを見守るためにこの()()()()で暮らしていた。七年前、ある少年がやってきた・・・・一人の少女とそれを抱えている少年を『預かってほしい』と言われた。少年のあまりに真っ直ぐな眼にワシはつい承諾してしまっていた。一人でいようと決めていたのにな・・・・

 

『おじいちゃん、ここ・・どこ?』

 

『こ・・・・ここはじゃな・・・・・・・・』

 

『ジェラール・・・・わたしたちをギルドに連れてってくれるって・・・・』

 

『・・・・大丈夫か?ウェンディ?』

 

『ギ・・ギルドじゃよ!!ここは魔導士のギルドじゃ!!!』

 

『本当!?』

 

『・・・・あれ?なんか廃村っぽくなかったか?』

 

『なぶら、外に出てみなさい。仲間達が待ってるよ』

 

『うん!』

 

『なぶらって何?』

 

 

 そして幻の仲間たちを作り出した。」

 

それは優しい嘘。一人の少女を悲しませない為、たった二人の子供達の為に作られたギルド・・・・それが化猫の宿。

 

「・・・・んだよ、それ。今更聞きたかねぇよ、そんな話!!!」

 

「バスクもナオキも消えないで!みんないなくならないで!!」

 

そんな真実()にグランも涙を流しながら、彼らが消えていくことを拒んだ。消えてほしくない・・・・そう伝えるウェンディ。

 

だが、ローバウルは微笑みしか返さない。運命は決まっている、そう言わんばかりに

 

「ウェンディ、シャルル、グラン・・・・もうお前達に偽りの仲間はいらない。

 

 

本当の仲間がいるではないか

 

 

ローバウルはそう言いながら、ウェンディとグランの後ろにいるギルド連合に指を指す。そして、満面の笑みでウェンディとシャルル・・・・そしてグランを見る。その姿は、どんどんと薄く消えていった。

 

「お前達の未来は始まったばかりだ……」

 

「マスター!!」

 

走り出すウェンディ。しかし消える。消えてしまう。

 

「皆さん本当にありがとう・・・・ウェンディとシャルル、グランを頼みます。」

 

手を伸ばすウェンディ。しかし、その手は届くことなく・・・・マスター・ローバウルは、完全に姿を消した。

その後すぐに、ウェンディ達に刻まれたギルドの紋章も消えた。まるで、役目は終わったと、言わんばかりに。

 

「マスタ────────────────!!!!」

 

ウェンディは膝をつき、涙を流す。その肩に、後ろからエルザが安心させるかのように手を置いた。

 

「愛する者との別れの辛さは・・・・仲間が埋めてくれる。来い、妖精の尻尾へ。」

 

この日、この時をもって魔導士ギルド『化猫の宿』はこの世から姿を消した。たった3人のメンバーと優しい嘘(悲しい真実)を残して。

 

「・・・・ありがとう、マスター。俺たちの居場所を・・・・作ってくれて」

 

そして彼らは旅立った。化猫からの贈り物を受け取る妖精達に手を引かれながら、また、彼らの新しい道が開かれた。

 





次の章として、エドラスに入ると思いますが・・・・エドラス編は短いです。それはもう、すぐ終わります。物語的にも原作とほぼ変わりません。変わるのはある戦いだけです。とりあえず、お楽しみに!


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第九話 いざ、妖精の尻尾へ/最強の男の帰還

 

化猫の宿の真実を知った後の事。戦いが終わり皆それぞれのギルドへ帰っていった。そしてウェンディとシャルル・・・・グランは妖精の尻尾へと向かっていった。

 

「・・・・・・・・・・・・おぉぉ」

 

少々グロッキーになりながら。

 

妖精の尻尾のギルドがあるマグノリアまで行くために、船で移動していた。当然、乗り物に弱いグランは乗って早々に乗り物酔いとなって、倒れていた。では、同じように乗り物に弱いナツはどうなっているのか?グラン同様にぶっ倒れているのか?

 

「あぁ・・船って、潮風が気持ちいいんだな。乗り物っていいもんだなー!オイ────!!!」

 

全く違った。全力で船を・・・・というより乗り物を堪能し尽くしていた。何故ナツだけがこんなにも元気なのか。それはウェンディのおかげだ。ウェンディの平衡感覚を養う天空魔法トロイアをかけたおかげで、こうして乗り物を満喫することが出来たのだ。

 

なら、グランもかけて貰えばいいのでは?という話になるよな。理由は主に二つある。一つは、ウェンディに無理させないようにする為・・・・もう一つは

 

「あ、そろそろトロイアが切れますよ。」

 

「おぷぅ」

 

途中で効果が切れてしまうからだ。効果が切れた途端に倒れてしまったナツ。マグノリアまで道のりは長い、どうせ途中で切れるとわかっていたからかけてもらわなかったのだ。

 

「も・・・もう一回かけ・・・・て・・・・おぷ・・」

 

「連続すると効果が薄れちゃうんですよ。」

 

「放っとけよ、そんな奴」

 

「・・・・・・・・途中・・・からのが・・・・辛い・・・・オェ」

 

「あはははっ」

 

「本当にウェンディもシャルルもグランも妖精の尻尾に来るんだね。」

 

「私はウェンディやグランがついていくっていうから付いていくだけよ。」

 

「楽しみです!妖精の尻尾!!」

 

「・・・・たの・・・・し・・・み・・・・・・・・うぷっ」

 

そんなこんなで一行は妖精の尻尾へと船を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・という訳で、ウェンディ、グラン、シャルルを妖精の尻尾へと招待した。」

 

「よろしくお願いします。」

 

「・・・・フンッ」

 

「・・・・挨拶しとけ、シャルル。まぁ、よろしく」

 

一生懸命頭を下げて挨拶をするウェンディと顔を背けるシャルル、そんなシャルルに一言言ってから挨拶をするグラン。

 

「かわいいーっ!!!」「ハッピーのメスがいるぞ!!」「みんなおかえりなさい」「おジョーさんいく・・・・すいません」

 

新たなメンバーの加入で、妖精の尻尾はいつも以上に沸き立った。シャルルを見てハッピーのメスだと言ったり、ウェンディに年齢を聞いた者の顔をグランが鷲掴みにして、それをウェンディが慌てて止めたりと色々一悶着はあったが、皆、それぞれが楽しそうにしている事が何より印象的だった。

 

「シャルルはたぶんハッピーと同じだろうけど、ウェンディとグランはどんな魔法を使うの?」

 

「シャルル!!本物のミラジェーンさんだよ」

 

「ちょっと!?オスネコと同じ扱い!?」

 

「突っ込むとこそこ?」

 

「私・・・・天空魔法を使います。天空の滅竜魔導士です。」

 

「・・・・俺は大地の滅竜魔導士だ。つっても、ウェンディと違ってドラゴンに教わってねぇがな」

 

ウェンディとグランが己の魔法について話をした瞬間、妖精の尻尾が驚いて静まり返る。

 

きっと信じてもらえていない、と悲しい顔をするウェンディ・・・・だが、彼らの反応は思っていたのとは違っていた、

 

「おぉ!?すげぇ!!」「ドラゴンスレイヤーだー!!」「ナツと同じか!!」「ガジルもいるしこのギルドに4人も滅竜魔導士が!!!!」「一気に四人だぞ四人!!!」「めずらしい魔法なのにな」

 

驚きこそしたもののあっという間に静けさがなくなり先程以上に沸き起こる。

何はどうあれ、信じてもらえたことにウェンディは笑顔になり、その笑顔を見て、グランも自然と笑みをこぼす。と、そんなグランに近づく者がいた。

 

「……おい」

 

「あ?・・・・あぁ、あんたは確か・・・・ガジルだったか?」

 

そう、ガジルだ。同じ滅竜魔導士として話がある・・・・というわけではなさそうだった。だが、その表情は真剣そのものだった。

 

「・・・・・お前もネコがいねぇのか。」

 

「はぁ?・・・・あぁ、シャルルの事か?・・・・まぁシャルルはウェンディが卵で見つけてきたし・・・・相棒的な意味でのネコはいねぇな」

 

「・・・・・・・・そうか、ならいい。」

 

「・・・・え、それだけ?」

 

思ってた内容とは違う事を聞かれ、一瞬頭がハテナになるも、自分にもいないと告げると、何故か安心したように去っていく。よく分からなかったが、あまり深く考えないようにした。めんどくさそうだし

 

「今日は宴じゃあー!!」

 

そして、マスター・マカロフの一言により急遽宴が始まるのだった。ウェンディとシャルルとグランの歓迎会だと言いながら、各々が個人個人で好きなように騒いでいる。やれ飲んで、やれ食って、やれ歌って・・・・だが、とても楽しい気分になるのは、間違いない。

 

「楽しいところだね、二人共。」

 

「私は別に……」

 

「まぁ、退屈はしなさそうだよな」

 

こうして、ウェンディ、グラン、シャルルの3人は無事妖精の尻尾のメンバーとなった。

 

「・・・・・・・・」

 

そんな三人・・・・特にウェンディとグランを陰で見ていた者・・・・ミストガンは、そのまま何も告げずに去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、数日がたったある日。

 

「どお?このギルドにも慣れてきた?」

 

「はい。」

 

「女子寮があるのは気に入ったわ。」

 

「まぁ、楽しくやってるよ。」

 

ウェンディとシャルルは妖精の尻尾にある女子寮に住み、グランは近場にある借家に住んでいた。まぁ初めは一緒に住むとウェンディが言っていたが、それは色々まずい、という事でウェンディ達は女子寮に、グランは借家に住むことになった。

 

「そう言えば、ルーシィさんはなんで寮じゃないんですか?」

 

「寮の存在最近知ったのよ。てか、寮の家賃って10万Jよね・・・・もし入ってたら払えなかったわ。今頃・・・・」

 

「大変だー!!」

 

そんな時、ギルドに飛び込んで来る妖精の尻尾の1人がいた。そして、その直後、マグノリアの鐘の音が響く。

 

「何!?」

 

「鐘の音……?」

 

「・・・・つか、なんかさわがしくないか?」

 

この鐘の音が響いた直後から、妖精の尻尾のメンバー達が何やら騒ぎ始めた。騒いでいないのは、主に最近入った者達だけだった。

 

「ギルダーツが帰ってきたァ!!」

 

「あいさー!!」

 

「ギルダーツ?」

 

「私もあったことないんだけど・・・・妖精の尻尾最強の魔導士何だって・・・・」

 

「うわぁ!」

 

「・・・・最強・・・・か」

 

最強と聞いてウェンディはワクワクしていた。一方のグランは口元に手をやってニヤけそうな口を抑えていた。どれくらい強いのか、どんな魔法を使うのか、グランもグランでとても楽しみにしていた。

 

「どうでもいいけどこの騒ぎよう何!?」

 

「お祭りみたいだねシャルル、グラン。」

 

「ほんと騒がしいギルドね……」

 

「・・・・流石に騒ぎすぎじゃね?」

 

「無理も無いわよ。」

 

「ミラさん。」

 

何故こんなにも騒いでいるのか理由を知らないグラン達の様子に気づいたのか、ミラが近づいてくる。

 

「だって三年ぶりだもん、帰ってくるの。」

 

「3年も!?何してたんですか!?」

 

「勿論仕事よ。S級クエストの上にSS級クエストっていうのがあるんだけど・・・・そのさらに上に10年クエストって言われる仕事があるの」

 

「なら、ギルダーツはその10年クエストに行ってたのか?」

 

気になったグランがミラに聞くと、ミラは首を振る。

 

「いいえ・・・・ギルダーツはそのさらに上・・・・100年クエストに行ってたのよ。」

 

まさかのさらに上があり、それに行っていた事に驚きを隠せない四人。

 

『マグノリアをギルダーツシフトへ変えます。町民の皆さん!速やかに所定の位置へ!繰り返します』

 

「100年クエスト・・・・100年間・・・・誰も達成出来なかったクエスト・・・・ねぇ」

 

「それにしても騒ぎすぎじゃないかしら。」

 

「マグノリアのギルダーツシフトって何〜?」

 

「外に出て見ればわかるわよ。」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

ともはや街全体が騒がしくなってきたと思ったら、いきなり街が動き出した。大きな音を立てて、少しずつ変形していく街。

 

「う・・・・うそ!?」

 

「・・・・うわぁ」

 

そして周りの家は全て地面ごと隆起し、マグノリアから妖精の尻尾の1本道ができた。ギルダーツ一人の為に、マグノリアにある建造物全てが妖精の尻尾までの道を避けたのだ。

 

「街が・・・・割れたー!!」

 

「ギルダーツは触れたものを粉々にする魔法を使うんだけど・・・・ボーッとしてると民家を突き破って歩いてきちゃうの。」

 

「どんだけバカなの!?」

 

「凄いねシャルル!」

 

「えぇ……凄いバカ。」

 

「あぁ、もの凄いバカだ」」

 

そして、妖精の尻尾の扉を開けて一人の男が入ってくる。

 

その男こそ────妖精の尻尾最強の魔導士、ギルダーツ・クライヴである。

 

「ギルダーツ!オレと勝負しろォォォ────!!!」

 

「いきなりそれかよ。」

 

「おかえりなさい。」

 

「この人が、ギルダーツ……」

 

「む・・・・お嬢さん、たしかこの辺に妖精の尻尾ってギルドがあったはずなんだが・・・・」

 

「いやなんでだよ」

 

この言葉につい突っ込んでしまったグラン。だって紋章も名前も表にあるのに、分からないは流石にやばいでしょ。そりゃ反射的に突っ込みたくなるよ。

 

「ここよ。それに私ミラジェーン。」

 

「ミラ?ずいぶん変わったなぁお前!!!つーかギルド新しくなったのかよ────っ!!!」

 

「外観じゃ気づかないんだ……」

 

「ギルダーツ!!」

 

「おおっ!ナツか!久しぶりだなぁ」

 

「俺と勝負しろって言ってんだろぉー!!」

 

と言いながらギルダーツに殴りかかるナツ。しかしナツはギルダーツにいなされ、そして投げ飛ばされて天井にそのままの勢いで突っ込んで、めり込んでいた。

 

「また今度な。」

 

「や・・・・やっぱ・・・・超強ぇや・・・・」

 

「いやぁ、見ねぇ顔もいるし……ほんとに変わったなぁ……」

 

ギルドが新しくなったのも、新メンバーが入ったのもギルダーツが留守の間である。昔の姿と今の姿を見比べて、ギルダーツは感慨に耽っていた。

 

「ギルダーツ。」

 

「おぉっ!!マスター!!久しぶり────っ!!」

 

「仕事の方は?」

 

「がっはっはっはっ!!」

 

ギルダーツが帰ってきたこと、つまりそれは100年クエストが何らかの形で終わったことを示す。

だから、次にギルダーツが口にしたことは信じられなかった。

 

「ダメだ。俺じゃ無理だわ。」

 

「何っ!?」

 

「嘘だろ!?」

 

「あのギルダーツが、クエスト失敗!?」

 

「・・・・ギルド最強の男でも失敗するクエストか・・・・」

 

最強の男であるギルダーツでも失敗してしまう。その事実が、100年クエストの難易度を物語っている。

 

「そうか・・・・主でも無理か。」

 

「すまねぇ、名を汚しちまったな。」

 

「いや・・・・無事に帰ってきただけで良いわ。わしが知る限りこのクエストから帰ってきたのは主が初めてじゃ。」

 

「俺は休みてぇから帰るわ。ひ〜疲れた疲れた。ナツゥ、後で俺ん家来い。土産だぞーっ!がははっ!

 

んじゃ失礼。」

 

そう言ってギルダーツは出ていった・・・・扉からではなくギルドの壁から。

 

「ギルダーツ!扉から出ていけよ!!」

 

「・・・・なんか色々凄かったね」

 

「・・・・やっぱバカだろ」

 

「・・・・同意」

 

色々と情報量が多すぎたが、とりあえず妖精の尻尾に入ってよかったと思えるグラン達だった。

 





次回よりエドラス編スタート・・・・しますが、短いです。


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第十話 再会

 
今回はいつもより短めです


 

違う!!!

 

「・・・・声、デケェよ」

 

今現在、グランはガジルと一緒に・・・・というよりずぅーとネコ探しをしているガジルに付き合わされてた。

 

本当、いきなりだった。だっていつものようにギルドに来た瞬間、

 

「お前も来い!!」

 

「・・・・え、どこに?」

 

といった感じで連れ去られたのだ。まぁあの時は特に考えなかったが、今になってそれを後悔した。

 

「お前も探せぇ!!!」

 

「どこをだよ!!!!」

 

あっちの路地裏、こっちの路地裏・・・・もはやマグノリア中の路地裏を探し尽くしたガジル。というか多分、グランを攫う前から探してるっぽい。だってなんかボロボロだし。

 

「ぐほっ」

 

「あ、倒れた」

 

そして瓶に足を滑らせ盛大にこけるガジル。だが、それでも諦めず探そうとしていた。

 

「く・・・・クソッ・・・・」

 

「・・・・なーんでそんな必死に探すんだよ」

 

とうとう・・・・というかすごい今更だが、グランはガジルに聞いてみる。流石にここまで執着しているのは、気になったのだ。

 

「サラマンダーや新入りのガキにはネコがいる・・・・だが、同じ滅竜魔導士の俺にはネコがいねぇ・・・・」

 

「・・・・俺もいねぇぞ」

 

「それとコレは別だ!!」

 

「・・・・あー、うんまぁ・・・・・・・・うん」

 

よく分からなかったが、恐らく自分にだけネコがいないのが不服なのだろう・・・・だからあの時、ネコがいるかどうか聞いてきたのか

 

「・・・・まぁ頑張っても、いないと思うぞ。シャルルみたいなネコ」

 

「いや!!絶対に見つけ出す!!!」

 

「・・・・もう勝手にしてくれ・・・・ってもういねぇし」

 

勝手に連れてこられ、今まで散々付き合わされたのにいつのまにかいなくなってる。・・・・なんて勝手な野郎だろうか。

 

「・・・・まぁいいや。帰ろ」

 

そう言って路地裏を去っていたグラン。そんな時、ふと考えた。シャルルはどこから来たのだろうか、と。

 

約6年ほど前、ウェンディが見つけてきた卵から生まれてきた。もうその時点でツッコミどころ満載だが、もうめちゃくちゃめんどくさそうだからスルーした。一応あの後、色々調べてみたが、ネコが卵から生まれる・・・・というかしゃべるネコの情報は特になかった。まぁまさか妖精の尻尾に同じようなネコがいたことには驚かされたが。

 

一体、どこから来たんだろうか・・・・そんな事を考えながら、グランは妖精の尻尾へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・傘持ってくりゃよかった・・・・というかガジルについていかなきゃ・・・・って無理やり連れられたんだったわ」

 

あの後すぐに帰れると思っていたが、思ったより入り組んだ路地裏だったためか表に出るのに苦戦して、やっと出たと思ったらいきなりの豪雨に襲われた。

 

その時点で走ればよかったが、ぶっちゃけ疲れてたから走りたくなかったので普通に歩いて戻っていった。

 

そしてガジルに連れられた事を後悔していた

 

「・・・・あ?シャルル?」

 

「・・・・アンタ、こんなとこで何してんの?」

 

「割とこっちのセリフなんだが?」

 

帰る途中に、傘もささずに一人で歩いているシャルルを見つけた。いつもならウェンディが一緒にいるため、少し不思議に思った。

 

「シャルルー、やっと見つけたっ!!ってグラン!!こんなとこでどうしたの?」

 

「ウェンディ?ダメじゃないか、ちゃんと傘ささなきゃ」

 

「アンタが言うな」

 

そのすぐ後にウェンディが走ってきた。どうやらシャルルを探していたらしい。なんでも、ギルドでハッピーに冷たい態度をとって出てきたのを心配して探しにきていたらしい。

 

「おいおい、ダメじゃないかシャルル。もうちょい優しくしてやらなきゃ」

 

「そうだよ、シャルル。もっとみんなと仲良くしなきゃダメだと思うの」

 

「必要ないわよ、アンタ達がいれば私はいいの」

 

そう言ってグラン達に背を向けるシャルル。優しくする必要も、仲良くする必要もない。ただウェンディとグランがいればいい。そう言うだけだった。

 

「もぉっ!!またそーゆー事ばかりっ」

 

「やれやれ・・・・あ?」

 

そんな時、道の向こう側から歩いてくる人影が見えた。

 

「!」

 

「誰?」

 

「・・・・確か、妖精の尻尾の・・・・ミストガンって人だったはずだ」

 

その人物・・・・ミストガンはグラン達の前で立ち止まった。そして

 

「ウェンディ、グラン」

 

「え・・?その声・・・・」

 

「はぁ?」

 

「!!!」

 

その声はどこか聞いた事のある声だった。ほんの少し前、評議員に連行されたはずの人物の声。

 

「まさか君たちがこのギルドに来るとは・・」

 

そう言って被っていた布をとった。その顔は二人がよく知ってる顔だった。

 

「・・・・・・・・‼︎‼︎」

 

「・・・・・・・・ジェラール?」

 

そう、ジェラールだ。だがここにいるのはあり得ない。

 

「ど・・・・どういう事!?アンタ確か捕まって・・・・」

 

そう、ジェラールは評議員に捕まったはずだ。だからここにいるのはおかしい。だがミストガン・・・・いやジェラールから予想外のことを聞かされた。

 

「それは私とは別の人物だ」

 

「そんな!!!」

 

「どう見たってアンタジェラールじゃないっ!!!」

 

「実は双子・・・・ってわけでもなさそうだな」

 

「ああ。・・・・7年前、()()()()の事をよく知らず、君達にはジェラールと名乗ってしまった。」

 

「え?」

 

「・・・・ていうと、つまり?」

 

ジェラールは無言で頷く。そしてその真実に気づく二人。7年前、路頭を迷っていたウェンディを・・・・そして森の中で倒れていた(まぁ、正確には寝っ転がっていただが)グランを助けた・・・・あの時のジェラールだった。

 

「ずっと・・ずっと会いたかったんだよ」

 

その事実にウェンディは、やっと会えた恩人を前に泣いてしまった。グランも、口には出さなかったが本当の再会に喜んでいる。

 

だが、ジェラールは彼らとは違い再会を喜んでいる・・・・というわけではなかった。

 

「会いに行けずすまなかった・・・・だが、今は再会を喜ぶ時間は無い・・・・」

 

「え?」

 

「今すぐこの街を離れるんだ」

 

「どういう────」

 

事だ、と聞く前にジェラールは膝をついてしまった。

 

「ジェラール!!!!」

 

「どうした!!?」

 

「私は任務に失敗した・・大きくなりすぎた“アニマ”はもはや私一人の力では抑えられない」

 

「アニマ?・・・・それがどうした。アニマってなんだ?」

 

グランのその質問には答えず、衝撃の事実のみを告げてきた。

 

 

 

 

間もなくこの街(マグノリア)は消滅する

 

 

 

 

 



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第十一話 マグノリアの消滅・・・・そしてエドラスへ


前回、ウェンディとグランは、本当の恩人であるミストガン・・・・ジェラールに出会う事ができた。再会に喜ぶ二人・・・・だが、ジェラールから衝撃的な事実が告げられた。


 

「間もなくこの街(マグノリア)は消滅する」

 

「・・・・・・・・は?」

 

「ど・・・・どういう事。ぜんぜん意味がわかんない・・・・」

 

突然告げられた事に呆然とする二人。それも当然だ。やっと会えた恩人だと思ったら、いきなり街が消えると言われたからだ。

 

「終わるんだ。消滅は確定してる」

 

「・・・・冗談でも、笑えねぇぞ」

 

「冗談ではない・・・・せめて、君達だけでも・・・・」

 

「妖精の尻尾は!!?ギルドのみんなはどうなるの!!?」

 

「全員・・・・死ぬという事だ。」

 

そう聞かされた瞬間、ウェンディは走り出す、ギルドの元へ。

 

「ウェンディ!!!!」

 

「みんなに知らせなきゃ!!」

 

「行ってはいけない!!君とグランだけでも街を出るんだ!!」

 

「・・・・俺たちだけ・・・・なんてのはありえねぇだろ」

 

そう言ってグランも走り出す。彼らが走り出すの理由はただ一つ・・・・彼らがもう妖精の尻尾の一員だからだ。

 

「グランっ!!コレを!!」

 

「あ?」

 

と、ジェラールはグランを呼び止め何かを投げる。そしてそれをつかむグラン。見てみるとそれはとても小さな玉だった。よく掴めたもんだ。

 

「・・・・なんだ、コレ。薬?」

 

「それはエクスボールというものだ。もし、君が無事だった時、必ず役に立つ」

 

「・・・・分かった、貰っとく」

 

そう言ってグランは貰った玉・・・・エクスボールを飲み込む。恩人から渡されたとはいえよくもまぁよくわかんないもんを躊躇なく飲み込めるもんだ。

 

というか、何故飲み込んだ?

 

そして、グランは走り出す。ギルドの元へと・・・・だが、時はすでに遅かった。空に巨大な穴が空いたと思ったら、周りの建物がどんどんと吸い込まれていった。

 

「・・・・チッ!急がねぇ・・・・とぉ!?」

 

急いでギルドに向かおうとしたが、踏み込む時に力を入れすぎたのかいきなり地面が陥没して、そのまま地面に沈んでいってしまったグラン。大地の滅竜魔導士のくせに、地面に沈むとは・・・・なんとも滑稽だw

 

そうして地面に沈み埋まってしまったグラン・・・・そしてその間にアニマに吸い込まれてしまったマグノリア・・・・マジでなんで沈んだコイツ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボコッ、ボゴボコッ・・・・ボガァンッ!

 

「・・・・いや、深いわ!!」

 

何故かw・・・・ん"ん"ッ・・・・何故か地面に沈んでしまったグランは思った以上に深く埋まってたらしく以外と出てくるのに時間がかかっていた・・・・大地の滅竜魔導士のくせに

 

と、少し離れた場所で何かが飛び立つ影が二つ見えた。恐らくシャルルとハッピーだろう。

 

と思ったらいきなり空に消えた。全くどういう原理なのかは分からないが恐らくアニマというのが関係してるだろうと勝手に結論づけてとりあえず飛び立ったであろう場所に向かった。

 

「・・・・とりあえず来たけど・・・・どうしよ?・・・・・・・・よし、行くか」

 

とりあえず来てみたが特に何もなかった。どうしたもんかと2、3秒ほど悩んだ末に自分も行くという結論に至った。速い、速すぎる。コイツ冷静なふりしてだいぶ混乱してる。

 

そして地面に手をおき、いつものように地面の性質を変える。いつも以上に弾力性を強くする。もっと、もっと強くする。そして力強く踏み込んで・・・・そして

 

ドォォォォォォォンッ!

 

思いっきり跳んだ。物凄い勢いで。シャルル達が向かったであろう場所を・・・・そして、思う。

 

(・・・・あれ?コレでいけるよな?)

 

全く考えなしに跳んだからだ。だがもう止められない。どんどん、どんどん空に近づき・・・・そして

 

プァ  ァン キィィ  ン ギャオォン ゴオオオオ パァ  ン ボッ

 

「・・・・・・・・・・・・は?」

 

よく分からない何かに突っ込み、よく分からない場所を通って出てきたと思ったら、全くよく分からない場所に出た。

 

もう・・・・・・・・よく分からないとしか言いようがないが・・・・とりあえず、マグノリア出ないことは確かだ。

 

そして気づいた・・・・・・・・やべぇ、落ちる・・・・と。

 

「・・・・・・・・・・・・どうしよ」

 

そう思うならもっと騒げ。そして重力に従って、グランは地面に落っこちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、色々あり無事だったウェンディとナツはシャルルから違う世界・・・・“エドラス”について聞かされ、何故こうなったのか説明を受けた。その後、魔力にされた仲間を救うべくエドラスに向かったが、エドラスに来た瞬間魔法が使えなくなり、とある倉庫に落っこちた。そして妖精の尻尾のギルドを見つけた・・・・だが、それはナツ達の世界・・・・アースランドの妖精の尻尾ではなくエドラスの世界の妖精の尻尾だった。

 

その妖精の尻尾ではメンバーが色々違ってた。グレイはジュビアに惚れてるし、なんか暑苦しいし。ジェットとドロイはエルフマンを叱ってるし、カナはなんか上品だし、ルーシィはなんか男らしいし・・・・それにウェンディは背も高くなってスタイルも良くなり・・・・グランは逆に小さくなっていた。そして、この世界では王の命令で魔導士ギルドは廃止されていた。その為、王国に追われる身であった。

 

そして今まさに王国から来た妖精狩りから転送して逃げたところだった。

 

「んー、本当・・逃げ足の速い妖精だねぇ」

 

「シュガーボーイ、いたのか」

 

「んー、おしかったね妖精狩り」

 

そしてその場にいたのは、シュガーボーイと呼ばれたリーゼントの男・・・・そして、この世界のエルザ・・・・エルザ・ナイトウォーカー。なんとこの世界では妖精の尻尾の敵である。

 

そしてシュガーボーイ曰く、アースランドの妖精の尻尾は巨大なラクリマになっているというらしい。その報告を受けエドラスのエルザ・・・・エドエルザとシュガーボーイは王国へと戻ろうとする

 

「んー、それじゃ戻・・・・んー?」

 

「・・・・なんだ、あれは?」

 

戻ろうと思った時、空から何かが降ってくるのが見えた。誰であろう・・・・アイツである。

 

ドガァァァァァァァァァァァァァンッ!!

 

と凄まじい轟音を立てて落下してきた者・・・・それを警戒するエドエルザとシュガーボーイ。そして、ゆっくりとその落ちてきた者は動き出す。

 

「・・・・・・・・参ったな、超痛い。・・・・ん?」

 

グランだ。あの後、特に何もせずただ重力に任せて落下した結果、この場所に落っこちたのだ。そして、運の悪いことにちょうど妖精の尻尾が転送した後に落ちたのだ。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

しばらく続く沈黙の時間。・・・・だが、それもすぐに終わった。

 

ガキィィンッ!!

 

「・・・・いきなりなんだよ、エルザさんよぉ」

 

「貴様が誰か知らんが、妖精の尻尾ならば狩る」

 

いきなり仕掛けたエドエルザに対し、咄嗟に腕で槍を塞いだグラン。一応仲間であるはずのエルザから攻撃をくらい多少混乱するも、とりあえず分かったことがある。このエルザは妖精の尻尾(自分達)の敵である、という事が。

 

腕を薙ぎ払いエドエルザを吹き飛ばすグラン。当然その程度ではやられるはずもなく、無事に着地するエドエルザ。

 

「地竜の咆哮!!」

 

とここで畳み掛けるように魔法を放つグラン。早々に勝負をつけなければならない。恐らく別人とはいえエルザが相手など、どう考えても面倒だ。

 

封印の鎗(ルーン・セイブ)!!」

 

だが、魔法は当たる前にエドエルザの鎗によって切り裂かれてしまった。エドエルザも道具なしで魔法を使えたことに驚きはしたものの、直様反応して、グランの魔法を鎗で切り裂いた。

 

「・・・・武器が変わった?」

 

「・・・・なるほど、貴様アースランドの魔導士・・・・しかも滅竜魔導士か」

 

「だったらなんだ?」

 

とエドエルザはグランが別の世界の魔導士で、さらに滅竜魔導士である事に気づく。すると、少し嬉しそうに笑いまた鎗を向け、グランに告げる。

 

「喜べ、貴様は殺さず生かしたまま我が王国に連れて行く」

 

「何一つ喜べねぇが、とりあえず全力で断る。」

 

そして同時に走り出し、グランは拳を岩に変え、エドエルザはまた鎗の形を変えて行く。

 

「地竜の剛拳!!!」

 

爆発の鎗(エクスプロージョン)!!」

 

ドッ ドゴォン

 

拳と鎗がぶつかり合い、凄まじい爆発を引き起こす。その衝撃で、周りの木々は吹き飛び、大地が砕ける。

 

真空の鎗(メル・フォース)!!!」

 

「のわっ!?」

 

と、またエドエルザが鎗の形状を変化させ強大な風圧を繰り出す。流石のグランも耐えきれず吹き飛ばされてしまう。

 

音速の鎗(シルファリオン)!!!」

 

その隙を逃さんとまた鎗の形状を変化させ、高速で近づくエドエルザ。吹き飛ばされたグランの真上まで移動し、更に鎗を変化させる。

 

重力の鎗(グラビティ・コア)!!!」

 

そしてグランに向け黒い球体・・・・恐らく強力な重力の塊をぶつけようとする。それに対しグランは、吹き飛ばされながらも体勢を整え拳に魔力を溜めて放つ。

 

「地撃・壊振!!!」

 

ビキィィィンッ

 

「なっ!?」

 

放たれた拳は黒い球体を破壊した。流石に破壊される事は予想外だったのか、一瞬隙ができてしまう。もちろん、その隙を逃すグランではない。

 

「地竜の・・・・咆哮!!!」

 

ドゴォォォォッ

 

「ぐはっ!?」

 

先ほどよりも凄まじい威力の咆哮に、鎗で切り裂く余裕も無く吹き飛ばされてしまうエドエルザ。辺りは爆風で巻き起こった砂嵐で砂塵にのまれていった。そして砂嵐が収まっていくとすでにそこにはグランの姿は無かった。

 

「・・・・ッッ!クソッ、奴は!!?」

 

「ゲホッ、ゲホッ・・・・んー、逃げられた・・・・ゲホッ、みたいだねえ」

 

と、グランとエドエルザが最初に衝突した時に巻き込まれまいと少し離れた場所まで移動していたシュガーボーイが頃合いを見て戻ってきた。

 

シュガーボーイの言う通り、グランは逃げた。ここで時間を潰して戦っていても意味がないと、最初から分かっていた為なんとか隙を見て逃げ出そうとしたのだが、エドエルザの実力が想像以上であった為中々逃げ出すチャンスが訪れなかった。

 

いつも以上に強力な咆哮を放ち、その隙にいつものように地面の性質を変え跳んだのだった。

 

「・・・・・・・・ッッ!!」

 

そして逃げられた事、しかも最初からそれが目的だった事に気づけずにまんまと出し抜かれた事に苛立ちを隠せないエドエルザ。鎗で地面を叩き割り、そのままその場を去っていく。

 

 

一方であの場から跳んだ逃げる事に成功したグランだったが・・・・ここで大きな問題に直面する。

 

「・・・・・・・・ここ・・・・どこだ?」

 

グラン、異世界に来て、一人ぼっちで迷子になってしまった。

 

 

 





おまけ エドラスのグラン

とても小柄でギルドで一番小さいかも。だがその見た目からは信じられないくらい力が強い。ウェンディからとても可愛がられており、少々過保護気味な扱いを受けているが、本人はそれを受け入れている。というかもう諦めた。使う魔法はアースランドのグランが行うように地面の性質を変える・・・・ただし、うまくコントロールができない。実はマグノリアが吸い込まれた時、グランが地面に埋まったのは、エドラスのグランが魔法を誤作動で起こしてしまい、それが何故かアースランドの地面に影響して、たまたまそこに足を踏み込んだグランがそのまま沈んでいったのだ。何故魔法が使えるかって?今まで使いたくても中々使わせてもらえず、ストックが割と多くあるからなのと、エドグランの魔法は大地から魔力を吸収可能である為。・・・・細かい事は気にしちゃダメだゾ






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第十二話 さらばエドラス、ただいま・・・・


急展開入りまーす。


 

グランが迷子になっている頃・・・・

 

ここ、エドラスでは魔力がなくなりつつある。その為、アースランドから魔力を吸収すべく“アニマ”を作り出した。

そして、妖精の尻尾の魔導士達を巨大なラクリマへと変わってしまった。

 

ナツとウェンディとハッピーとシャルルは、仲間を助けるべく王都へ向かった。その途中、ルーシィと出会い共に王都へと向かった。無事王都まで着く事ができたが・・・・王国の兵隊に捕まってしまう。

 

そこでシャルルとハッピーは“エクシード”という種族である事が判明した。この世界における体内に魔力を持つ種族である為、人間達に神のように崇められていたが、王国は滅竜魔導士の魔力を使い、彼らエクシードを全滅させようと考えていた。

 

なんとか逃げる事に成功したルーシィ、ハッピー、シャルルはラクリマから元に戻ったグレイとエルザと共にナツとウェンディを救出に向かう。

 

そこでとんでもない事が判明する。王国軍はエクシードの国、エクスタリアを破壊する為に、妖精の尻尾の仲間達を爆弾代わりに使うつもりだった。そしてその為に滅竜魔導士の魔力を使った魔法“竜鎖砲”を今にも起動させようとしていた。

 

それを阻止すべく、王国軍の王都魔戦部隊の隊長達と激闘を繰り広げる。

 

エルザはエドエルザ。グレイはシュガーボーイ。ナツはヒューズ。ルーシィは王国軍、幕僚長のバイロと。

 

皆それぞれエドラスの魔法に苦戦を強いられるが、何とか勝利する。その後、エルザと機転により奴らが竜鎖砲を設置している部屋に入る事に成功したが、後一歩のところで邪魔が入り失敗してしまう。

 

そして巨大ラクリマがエクスタリアに衝突するのを防ぐべく、ナツ達と王国軍幕僚長補佐のココとココのレギオン・・・・そしてエクシード達総出でラクリマを防ごうと押していく。そして、強大ラクリマを徐々に・・・・徐々に押し返していった。

 

そしてその時は突然やってきた。いきなりラクリマが光出したかと思ったら、次の瞬間その場から消え失せてしまった。どうしたのかと全員が疑問に思っていたが、その疑問に答える者がいた。ミストガン・・・・ジェラールだ。

 

ラクリマをもう一度アニマに通す事でアースランドへ元の通りに戻したのだ。そのおかげでエクスタリアを・・・・仲間達を守る事ができた。安堵するのも束の間、すぐに王国軍が攻めてきた。

 

さらにエドラスの王が王国でも禁式であるドラゴン型の強化装甲“竜騎士(ドロマ・アニム)”を乗り込んでやってきた。

 

ドロマ・アニム・・・・対魔専用魔水晶が外部からの魔法を全て無効化してしまう搭乗型の甲冑。これにより魔法による攻撃は全く意味をなさない・・・・あの魔法を除けば。

 

相手はドラゴン・・・・ならば滅竜魔導士の出番である。妖精の尻尾が誇る四人の滅竜魔導士・・・・うち一人はこの場にまだいないが、それでもナツ、ウェンディ、ガジルの三人で戦い善戦していた。だが、ドロマ・アニムが色を変え“ドロマ・アニム黒天”へと姿を変えてから状況が一転、どんどんと追い詰められてしまった。

 

ドロマ・アニムは常に世界中から魔力を吸収し続けてしまう究極の魔導兵器・・・・故に禁式だった。

 

『もっと魔力を集めよ‼︎‼︎空よ 大地よ‼︎‼︎ドロマ・アニムに魔力を集めよ‼︎‼︎』

 

まだ足りぬ、まだ寄越せと叫ぶ王。そんな相手にも傷つきながらも怯まずに向かっていく三人。

 

火竜(サラマンダー)‼︎‼︎ブレスだ‼︎ガキ!!お前もだ!!」

 

「!!!」

 

「さ・・・・三人で同時に!?」

 

ガジルが提案したのは、三人で同時に攻撃・・・・ブレスを行う事だった。ガジル本人も何が起きるかわからなかった為控えておきたかったが、そんなことを言ってる場合ではなくなった。

 

「火竜の・・・・」

 

「鉄竜の・・・・」

 

「天竜の・・・・」

 

オオオオオ

 

全員が魔力を高め、一気に放つ。

 

 

「「「咆哮‼︎‼︎‼︎」」」

 

 

ドゴォォォォ

 

 

放たれた三つのブレスは、徐々に合わさり一つとなる。そして

 

 

ドゴォン!

 

大爆発を起こした。

 

やった・・・・そう思ったが

 

『フハハハハ!!』

 

「上だ!!!!」

 

「あんな跳躍力があったのか!!」

 

ドロマ・アニムは驚異的な跳躍力で三人同時のブレスをかわした。もう一度行う前に先手を打たれてしまう。

 

『竜騎拡散砲!!!!』

 

ズドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

 

ドロマ・マニアから発射される魔導砲の嵐。ナツ達を撃ち砕かんとするその凶悪な魔導砲が降り注ぐ。

 

そして撃ち終えたドロマ・アニムは地上へと降りる。確実に仕留めた、その確信をもって。

 

だが、そこにあったのは無様に倒れている三人の滅竜魔導士ではなく────大きな土壁だった。

 

そして、その土壁から一つのブレスが放たれドロマ・アニムに直撃する。

 

『なんだと!?』

 

そのブレスの威力にドロマ・アニムは大きく吹き飛んだ。今まで以上のダメージに何事かと混乱する王。

 

そして崩れた土壁から出てきたのは・・・・ようやくこの場にきたグランだった。

 

「グラン!!」

 

「よぉ、ウェンディ。それにナツとガジル・・・・少し遅れた」

 

「ギヒッ・・・・そうでもねぇぞ」

 

「ああ・・・・てかお前今まで何処にいたんだよ」

 

「・・・・森の中?」

 

「なんで疑問系なの?」

 

だって正確に何処にいたなんて分からないんだもの。

 

『フハハハハッ!今更一人増えたところで我がドロマ・アニム黒天の敵ではないわぁ!!大人しく我が世界の魔力となれぇぇっ!!』

 

そんな話をしている中でも、敵は待ってくれない。体制を立て直したドロマ・アニムは再び牙を剥く。倒れているナツ達を踏み潰さんとその巨大な脚を踏み下ろす・・・・だが、それを許さない男が一人ここにいる。

 

『な・・・・何!?』

 

踏み下ろされた脚を軽々と受け止め、動きを止めるグラン。その脚を強く握り潰そうと力を込める。

 

「・・・・お前が何処の誰かは知らねぇが、よくもまぁ俺の仲間を傷つけてくれたなぁ、オイ」

 

更に強くなる力・・・・そしてとうとう、ドロマ・アニムの脚を粉々に砕く。片脚を失いバランスを崩すドロマ・アニム。それに突っ込んでいくグラン。

 

「地竜の剛拳!!!」

 

岩の拳が黒き甲冑を砕く。

 

「地竜の断裂!!!」

 

放たれた蹴りが竜の体を引き裂く。

 

殴り、蹴り、また殴る。魔導砲を放つも怯まずに攻撃を仕掛けてくるグラン。竜騎弾を発射させるも全て撃ち落とされてしまう。そして、王は見た。今も攻撃をしてくるグランの姿が徐々に変わり・・・・大地を踏み砕き進んでくるドラゴンの姿を

 

『ひいぃ!?』

 

「砕けろ」

 

そしてグランは腕に魔力を込め、ドロマ・アニムを殴りつける。

 

「地撃・壊振!!!!」

 

ドオォォォンッ!!

 

グランの拳がドロマ・アニムを撃ち抜き、完全に破壊される。その破壊された残骸から這い出るように出てきた王は、グランだけでなく、ナツとガジル・・・・そしてウェンディの姿もドラゴンに見えた。

 

今まさに四体のドラゴンに睨まれている王。もはや王の心は恐怖に染まっていった。強大な力・・・・ドラゴンに対する恐怖が支配していった。そして王は失神して倒れてしまった。

 

「・・・・で、何があったの?」

 

「何もしらねぇのかよ、お前」

 

「つか、お前もきてたなら手伝えよ!!」

 

「しょうがねぇだろうが、こんな世界に来るなんて思ってなかったし来たと思ったらいきなりエルザさんと戦う羽目になるし・・・・」

 

「エルザと戦ったのか!?勝ったのか!?」

 

「んや、途中でスキ見て逃げた。戦ってる場合じゃなかったし」

 

「んで、その後は?」

 

「迷った」

 

「「迷子かよ!!?」」

 

「どうやってここに来れたの?」

 

「なんつうか、この世界の大地の魔力の流れが急に一箇所に集まったからな。なんかあるんじゃないかって・・・・それよりも大丈夫か、ウェンディ?」

 

「うん、私もシャルル達も・・・・ギルドのみんなも無事だよ!」

 

「それはよかった・・・・ところで、島が落ちてきてるけど大丈夫か?」

 

そのグランの言葉通り、浮いている島が落ち始めたのだ。エドラスの浮遊島はこの世界の魔力で浮いている。それが落ちるということは、この世界・・・・エドラスから魔力が消えているということ。

 

何故いきなりこんな事になったのか・・・・それはジェラールの仕業だった。アニマを逆展開させ、この世界の魔力をアースランドに流しているのだ。これも新たな世界のために、一度エドラスを滅ぼす為に行った。

 

各地で混乱が訪れる。この混乱を鎮めるには悪役英雄が必要だった。その悪役にジェラールが、英雄にパンサーリリーを選んだのだったが、リリーはそれを拒否する。ならば自分が悪となるというが、ジェラールがそれを拒否する。互いが互いの幸せを願う。死ぬということは不幸を招くだけ・・・・もはやどうしようもなかった。その時

 

「パンサーリリー様!!大変です!!」

 

一人の兵士が部屋に入ってきた。城下で暴れている者達がいるという報告を受け、急ぎ暴走を止めるべく外に向かう二人。

 

「暴徒の数は?」

 

「四人です」

 

「たったの四人だと!?何故取り押さえん!?」

 

「そ・・それがものすごく強くて・・・・」

 

「ガハハハハハハハハッ!」

 

と大きな笑い声が聞こえそこを見ると、そこにいたのは

 

「我が名は大魔王ドラグニル!!!!!この世界の魔力は俺様が頂いたァァ!!!!!!」

 

黒いマントを羽織り、付け角をつけたナツの姿だった。そしてその近くには木に縛り付けられた王の姿がいた。

 

「貴様等の王は俺様が仕留めたァ!!!!!特別に命だけは助けてやったがなァ。ガハハハハハハハ」

 

ものすごく様になっている。

 

「ゆけぇ!レッドフォックス!!マーベル!!ワームランド!!我が下僕たちよ!!街を破壊せよ!!!」

 

そしてその言葉と同時にガジルは街を剣で破壊し、グランは軽めの砂嵐で破壊する。ウェンディも頑張って街の人を怖がらせようとしている。だが残念なことに、ただただ可愛いだけだった。

 

「もっと街を破壊するんだー!!下僕共ー!!」

 

「下僕下僕うるせぇぞコノヤロウ!!」

 

「テメェもやれボケェ!!」

 

「いいからやるのじゃ。」

 

「口調変わってんじゃねぇか!!」

 

「沈めんぞゴラァ!!」

 

「あいつらが……!あいつらがエドラスの魔力を奪ったのか!!」

 

「大魔王ドラグニル!!」

 

「許さねぇ!!魔力を返せー!!」

 

「やだね……俺様に逆らうものは全員・・・・」

 

住民たちもナツたちに怒りをぶつけようとするが、そんな事がお構いなしに炎のブレス(弱)を放とうとした時

 

「よせ─────!!ナツ─────!!」

 

「……俺様は大魔王ドラグニルだ。」

 

ジェラールが止めに入った。だが、街のみんなは彼が誰か分からず混乱していた。

 

「馬鹿な真似はよせ……王は倒れた、これ以上王都に攻撃など・・・・」

 

「ファイアー!!」

 

ジェラールのその言葉を遮るようにナツはブレス(弱)で壁の一部を破壊する。それだけでも、街の人の恐怖を煽るには十分だった。

 

「俺様を止められるかな?エドラスの王子さんよォ……」

 

「王子!?」

 

「王子だって!?」

 

「7年前に行方不明になった・・・・」

 

「ジェラール王子・・・・!?」

 

「来いよ!来ねぇとこの街を跡形もなく消してやるっ!」

 

「っ!!ナツ!!そこを動くな!!」

 

「ナツではない、大魔王ドラグニルだ。」

 

ジェラールは、地面に降り立ちナツに迫る。

 

「王子?この人が?」

 

「あの魔王とか言うやつと戦うつもりなのか?」

 

「相手は火を吹くような怪物だぞ」

 

ジェラールの姿を見ても街の人々は不安に煽られる。そしてそんなジェラール自身も、ナツの行動に半ば呆れていた。

 

「バカ者め。お前のやろうとしていることは分かってる。だが、この状況を収集できるわけがない。眠れ・・・・!!」

 

放とうとした魔法は不発に終わる。魔力をアニマに吸われたからだ。

 

「どうした!?魔力がねぇと怖ぇか!」

 

「くっ!!」

 

「そうだよなぁ!!魔法は力だ!!!」

 

ナツは力の限りを込めて足場にしていた建物を殴る。その建物はその一撃に耐えられず完全に壊れて崩れ落ちた。

 

「きゃー!!」

 

「なんだこの破壊力は!?」

 

「魔法・・・・!?」

 

「やめろぉー!!」

 

「ナツさんやりすぎですよ!!」

 

流石に今のはやりすぎだと唱えるウェンディ。だがそうではないとガジルとグランはいう。

 

「いいんだよ。これで強大な魔力を持つ“悪”に、魔力を持たない“英雄”が立ち向かう構図になるんだ。」

 

「・・・・それにしてもまぁ・・・・悪役が似合うねぇあの人」

 

そう言いながら3人はナツを見守る。崩れた瓦礫に残るのは、ナツ(悪役)ジェラール(英雄)だけだった。

 

「もうよせナツ。私は英雄にはなれないし、お前も倒れたフリなどこの群衆には通じんぞ」

 

「勝負だァ!!」

 

「ぐ!!」

 

そうして二人での殴り合いが始まる。茶番だ・・・・そうジェラールに言われた。全くもってその通りだ。だが、この茶番劇にはジェラールを英雄に仕立て上げる他にもう一つ目的があった。

 

これはナツ流の妖精の尻尾式壮行会だったのだ。

 

妖精の尻尾を抜けるものに三つの掟を伝えなければならない。

 

一つ 妖精の尻尾の不利益になる情報は生涯、他言してはならない。

 

二つ 過去の依頼者に濫りに接触し個人的な利益を生んではならない。

 

そして三つ たとえ道は違えど、強く力のかぎり生きなければならない。決して自らの命を小さなものとして見てはならない。愛した友の事を生涯忘れてはならない。

 

三つの掟を告げた直後、互いの拳が顔に直撃する。そして最後まで立っていたのは・・・・ジェラール・・・・ミストガンだった。

 

「王子が勝ったぞー!!」

 

「やったー!!」

 

「スゲー!!」

 

「王子ー!!」

 

「ステキー♡」

 

そしてナツが倒れると同時に、ナツ……否、体内に魔力を持っているアースランドの魔導士達とエクシード達の体が光り始める。

 

「始まった」

 

「さーて、派手に苦しんでやるか。」

 

「派手に苦しむって嫌な言葉だなぁ」

 

「何だ何だ!?魔王達の体が……!?」

 

この世界から魔力が消える・・・・つまり体内に魔力を持っているもの達も含めて消えるという事だ。

 

「ぐわぁぁぁぁぁ!!!」

 

「きゃああああ!!」

 

「うああああ!」

 

「があああああ!!」

 

それっぽい反応をしながら、ナツ達は天へと登っていく。

 

消える直前、4人の滅竜魔導士はミストガンに向かって笑顔でミストガンを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んがっ!」

 

「きゃっ!」

 

「ぐおっ!」

 

「ひー!」

 

少し高い位置から落ちてきて地面に積まれていくグラン達。だが、その地面は自分達の知っている地面だった。

 

「帰ってきたぞーっ!!」

 

「そうだ妖精の尻尾!!」

 

グレイの一言で全員がマグノリアの街を確認する。

 

「元通りだ!!」

 

「マグノリアの街も!!」

 

「やったぁ!!」

 

元通りになったマグノリアの街。それを見て喜ぶ面々。だがエルザだけはまだ安心しきっていなかった。

 

「まだ喜ぶのは早い。人々の安全を確認してから」

 

「大丈夫だよ。」

 

「一足先にアースランドに着いたからね。」

 

「色々飛び回ってきたんだ。」

 

「ギルドも街の人もみんな無事だったよ。」

 

エルザの言葉を遮り、現れたのはエクシードの面々。しかし、いきなり現れたエクシード達に全員が言葉を失っていた。特にグランはそもそもエクシードという存在自体、今初めて知ったため他の者以上に驚いた。

 

「みんな魔水晶にされてたことすら知らないみたい。」

 

「アースランドってすげぇな!魔力に満ちてる!!」

 

「なんで・・・・なんでエクシードがアースランドに!!」

 

「しゃべる猫が大量に─────!?」

 

「まずそこからかよ」

 

とりあえず、エドラスの事についてみんなから少し離れた場所から説明を受けるグラン。

 

そんな中、シャルルはコイツらは危険だからエドラスに返すべきだと訴える。

 

変な使命を植え付けてこの世界に送り込んだと・・・・だが、真実は違っていた。

 

6年ほど前、エクシードの女王シャゴットはある未来を見た。それはエクスタリアが地に落ちる様子だった。それを危惧したシャゴットはせめて子供達だけでもエドラスから逃すように考えた。

 

だが、シャルルは不運なことに生まれたと同時にシャゴットと同じような「予言」の力が目覚めてしまった。その力を無意識に使ってしまいありもしない使命を作り出してしまったのだ。

 

そうして事情を聞いたシャルルはすこし悩んだ末、エクシード達を認めた。

 

そしてエクシード達は飛び立った。いつでも会えると、約束して。

 

「俺達もギルドに戻ろうぜ。」しゅしゅしゅ

 

「皆にどうやって報告しよう。」しゅしゅしゅ

 

「いや・・・・みんな気づいてねぇんだろ?今回の件。」しゅしゅしゅ

 

「しかしミストガンのことだけは黙っておけんぞ。」しゅしゅしゅ

 

「みんな・・・・手・・・・」

 

「真面目に話してんだよな?ふざけてるわけじゃないんだよな?」

 

恐らく真面目な話をしているんだろうが、ずっと腕を上下に動かしているのでふざけてるようにしか見えなかった。

 

「ちょ・・ちょっと待て」

 

「どうしたガジル・・・・お前も真似してーのか。」

 

「それに価値があるならな!!」

 

「恐らく無価値だろうな」

 

ガジルは辺りを見渡し、誰かを探していた。

 

「リリーはどこだ?パンサー・リリーの姿がどこにも見えねぇ!!」

 

「オレならここにいる。」

 

「「「!!!」」」

 

「ちっちゃ!!」

 

「随分可愛くなったね」

 

「どうやらアースランドと俺の体格は合わなかったらしいな。」

 

「あんた・・・・体、何ともないの?」

 

「今のところはな。俺は王子が世話になったギルドに入りてぇ。約束通り入れてくれるんだろうな・・・・ガジル。」

 

「もちろんだぜ!!!!相棒(オレのネコ)!!!!」

 

「うわ・・泣いたッ」

 

「なんか不気味だな・・・・んで、その縄なんだ?」

 

思いっきり抱きしめ泣いてるガジルに、若干ひきながらそのリリーが持ってる縄について聞く。

 

「あぁそうだった。・・・・それとは別に、怪しいヤツを捕まえたんだ。来い。」

 

リリーはそう言って縄を引っ張る。引っ張られた人物はバランスを多少崩しながら、草むらから出てくる。

 

その人物に、その場にいた全員が目を丸くして驚いた。

 

「ちょ・・私・・・・別に・・・・怪しくなんか・・・・きゃっ。私も妖精の尻尾の一員なんだけど・・・・」

 

「リサーナ・・・・」

 

「なんなのこのネコ!!てかエクシード?」

 

「パンサー・リリーだ。」

 

「何だてめぇ、俺のネコにケチつけようってのか?ア?」

 

「なんでアンタがケンカ売ってんだよ・・・・つか、リサーナって確か・・・・」

 

「そんなまさか…」

 

「リサーナ!?」

 

困惑する面々。それもそうだ。既に死去しているはずの人物が、この世界に蘇ったのだからだ。

 

「なんで・・・・」

 

「もしかして、エドラスのリサーナが」

 

「こっちに来ちゃった訳〜!?」

 

「ど・・・・どうしよう」

 

どうなっているのかと困惑していく一同。しかし、そんな中でリサーナはなにかに気づいたかのように、ナツに視線を向ける。そして

 

「ナツ!!」

 

「どわー!!」

 

抱きついた。・・・・なんで?

 

「また会えた・・・・()()のナツに!ハッピー!!私よ!!リサーナよ!!エルザとグレイも久しぶりだね!!うわぁ懐かしいなぁ。その子達は新しいギルドのメンバーかしら?もしかしてルーシィ・・・・()()()ウェンディに・・・・()()()グラン?」

 

「・・・・大きいオレってどういうこと?ってか本物って・・・・?」

 

「ちょっと待て・・・・お前・・まさか・・・・アースランド(こっち)のリサーナ!?」

 

「・・・・・・・・うん。」

 

「っ!!!」

 

「なっ・・・・」

 

「うそぉ!?」

 

「えええーっ!?」

 

「生き返ったのかー!!!」

 

「うわーい!!」

 

リサーナのことで驚いたり、喜んだり様々な反応をしました。中でもナツとハッピーが喜びで抱きつこうとしたが、その時冷静になったエルザが二人の首根っこを掴んで阻止する。

 

「ま・・・・待て!お前は二年前に死んだはずだ。」

 

そう、こちらのリサーナは2年も前に死んだはずだった。

 

「・・・・私、死んでなんかなかったの。二年前、ミラ姉とエルフ兄ちゃんと3人で行った仕事の最中、私は意識を失った。多分、その時アニマに吸い込まれたんだと思う。当時、アースランドには小さなアニマが沢山あったんじゃないかな。」

 

恐らく、ジェラールが潰して回っていたものの一つだろう。

 

「エドラスで目が覚めた私は妖精の尻尾を見つけて驚いた。皆、少し雰囲気は違ってたけど、私の知ってる人達がそこにはいた。しかも、みんなが私をエドラスのリサーナだと思い込んでいたの。多分、本物のエドラスのリサーナは・・・・既に、死んでいるんだと思った。ギルドの雰囲気がね・・・・そんな感じだった。私は本当のことが言えなかった。エドラスのリサーナのフリをしたの。最初は戸惑ったけど、みんなに合わせて、自分の魔法を隠しエドラスの生活にも慣れてきた。そして、2年がすぎて・・・・今から六日前に、アースランドのナツとハッピーがやってきたの。」

 

「なんであの時本当の事言わなかったんだよ!!」

 

「・・・・言わなかったつうか、言えねぇだろうな」

 

「・・・・うん、そう。言えなかったの。エドラスの・・・・違う世界のミラ姉とエルフ兄ちゃんを二度と悲しませたくなかったから。もう、エドラスで生きていこうって決めてたの。だけど・・・・エドラスの全魔力がアニマに吸われて…元々アースランドの人間だった私も……」

 

「例外じゃなかった……って訳か?」

 

「・・・・うん。」

 

グレイの続けた言葉にリサーナは苦笑しながら頷く。

 

しばしの沈黙・・・・だが突然ナツが立ち上がりリサーナに手を伸ばし、告げる。早く行こうと、家族の元へ。

 

初めは困惑したが、それでも生きていた彼女を一刻も早く彼女をギルドの・・・・ミラとエルフマン(家族)の元へ送り届けたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アースランド・カルディア大聖堂

 

「姉ちゃん、そろそろ行こう。」

 

「もう少し……」

 

一つの墓に佇む二人の人物。エルフマン、ミラジェーン。

 

リサーナの命日、その日には必ず花を置くために出向く。

 

今日がその命日だ。

 

「ミラ姉〜!!エルフ兄ちゃーん!!」

 

雨が降り注ぐ中、二人を呼びかける声が聞こえた。それはとても懐かしい、聞こえるはずのない声。二人は驚き、その声の方向を向けば、居ないはずの・・・・最愛の妹の姿を見た。一瞬困惑したが、すぐにその顔から涙がこぼれ落ち始める。

 

「ウソ・・・・リサーナ」

 

リサーナはミラジェーンに抱きつき、二人をエルフマンが泣きながら抱きしめる。

 

生きていた。その事実がとてつもなく嬉しく、嬉し涙が止まらない。

 

止まらない涙を流しながら二人はリサーナを暖かく迎え入れた。

 

「ただいま・・・・」

 

「おかえりなさい」

 

今日、この時からこの日は命日ではなくなった。代わりに祝いの日となった。

 

もう必要の無くなった墓を後にした。家族三人で。中身のない墓に別れを告げて。

 

 

 





という訳で、エドラス編終了です。ね、すぐに終わったでしょ?


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第十三話 S級魔導士昇格試験

 

「・・・・よくもまぁここまで騒げるなぁ」

 

「あはは・・・・」

 

無事エドラスから帰ってこれた後、死んだと思われていたリサーナが生きていた事で、もはやギルド中が騒ぎ出し、仕事する気などなく飲めや食えやのお祭り騒ぎになった。

 

気持ちは分からんでもないが、もう少し落ち着いたらどうだろうか。まぁこれが妖精の尻尾らしいと言えばらしいが。

 

「・・・・騒がしいギルドだな」

 

「第一印象はみんな同じなのね」

 

「まぁいいとこだがな」

 

そして新たな仲間、パンサーリリーもこの騒ぎように度肝を抜かれている。まぁ当然と言えば当然だろうな。

 

後なんかガジルがネコ同士で勝負させようとして、何故か本人同士で喧嘩するという、まぁいつも通りな展開が起きた。

 

「・・・・あー、なんか懐かしいなぁと思ったらそういやぁオレ向こうでずっと一人だったなぁ」

 

「そういえば、グランはどうやってエドラスに来たの?」

 

「そこはほら、いつも通りジャンプして」

 

「説明になってないのよ」

 

「なるほど・・・・報告にあったエルザが戦ったもう一人の滅竜魔導士というのはお前の事だったのか」

 

「あー、ここに来てすぐに戦ったからなぁ」

 

「ほう?それは面白い事を聞いたな」

 

「エルザ!!」

 

「エルザさん・・・・いや、アンタとは戦わんぞ?」

 

グラン達が話しているところに、エルザも現れたがその目はとても好戦的な目をしていた。エルザの相手などもうごめんだと、手を上げるグラン。

 

「ふふふ、だがいつかは手合わせしたいものだ。お前の強さは聖天大魔導のジュラさんのお墨付きだからな」

 

「だからそれはあのおっさんの過剰評価だっての」

 

そんな話の最中でも、喧嘩は続きギルドのほぼ全員を巻き込んで行われた。

 

そんな騒ぎもほぼ1日中続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまた日にちが経った年末のこと。あちこちで仕事、仕事と我先にと働いているギルドメンバー。その中にはナツやグレイの姿もあったが、グランは気にせず普通に仕事に行っていたりもしていた。

 

「よう、ウェンディにシャルル、それにリサーナ。なんの話してんだ?」

 

「あ、グラン!今ね、シャルルの予知能力について話してたの!!」

 

「ほーん、お前そんな事できるようになったんだな〜」

 

「そ、最近は少しだけコントロールができるようになったのよ」

 

「そりゃすげぇな・・・・んで?なに見てんの?」

 

「いやー、やっぱなんか違和感があって・・・・あのグランが大きくなってるなぁ〜って。」

 

「・・・・あっちのオレは一体・・・・いや、気にしないどこ」

 

まさか向こうではウェンディに過保護な扱いを受けているとは夢にも思うまい。

 

「それにしても騒がしいな、なんかあんのか?」

 

「うーん、なんだろうね?シャルルは何かわかる?」

 

「知らないわよ」

 

「あー、そっか。もうそんな時期なんだねぇ」

 

「なんか知ってんの?」

 

「んー、まぁすぐにわかると思うよ。」

 

「・・・・あ、そう?」

 

「そういえばグラン。お仕事お疲れ様!!大丈夫だった?」

 

「まぁ、ただモンスターを倒せってだけだったし・・・・あー、でもよく分かんないのに絡まれたなぁ」

 

「なにそれ。どんな奴よ?」

 

「奴っつうか小さい子供だったぞ?ウェンディより小さい。なんか“愛”がどうとか言ってずっとくっついてきて面倒だったが・・・・って何膨らましてんの?」

 

「・・・・別に」

 

嫉妬だ、気づけバカ。

 

 

そして翌日、妖精の尻尾のギルド内には多くの人が集まっていた。

 

「・・・・なんの騒ぎだ、これ?」

 

「あ、グラン!!」

 

「よう、ウェンディ、シャルル。んで、なんの騒ぎ?」

 

「マスターから何か重大発表があるんだって。」

 

「へー、なんだろうな」

 

「興味無いわ。」

 

何か発表があるらしいが、やはり何かは分からないそうだ。

だが、何名かはソワソワしたり、どこか落ち着きがない様子が見られた。

 

ザザン!!

 

と、奥にかかっていた垂れ幕が広がる。そこに居たのは、マスターとエルザとギルダーツ・・・・そしてミラの四人が立っていた。

 

「マスター!」

 

「待ってましたー!!」

 

「早く発表してくれー!!」

 

「今年は“誰”なんだー!?」

 

集まっていた者達が口々に声を出す。どうやら、殆どの人物がこの騒ぎの正体を知っているようだったが、グラン達はまだよく分かっていなかった。

 

「コホンッ!・・・・妖精の尻尾古くからのしきたりにより、これより

 

 

S級魔導士昇格試験出場者を発表する

 

 

オオオオオオオオオオオオ

 

マスターのこの発言により、妖精の尻尾中が声を荒らげる。

 

「なるほど・・・・最近妙に騒がしかったのはコレのせいか」

 

「今年の試験会場は、天狼島。我がギルドの聖地じゃ。」

 

おお──────────っ!!!

 

「S級試験って何をするんだろうね?」

 

「さぁ?シャルル、未来見れるか?」

 

「見れる訳ないでしょ」

 

気になったウェンディが、グランに尋ね、グランがシャルルに予知できるか訪ねるが、そんな遠くの未来見れる訳ないと言われた。結局、何なのかわかる訳なかった。

 

なんにせよ、きっとハードなことには変わりない。

 

「各々の力・・・心・・魂・・・・わしはこの1年見極めてきた。参加者は八名。

 

ナツ・ドラグニル 

 

「おっしゃあ‼︎‼︎」「やったねナツ‼︎」

 

 

グレイ・フルバスター

 

「やっとこの時が来た」 

 

 

ジュビア・ロクサー

 

「え?ジュビアが?」

 

 

エルフマン

 

「漢たる者S級になるべし‼︎‼︎「がんばってエルフ兄ちゃん」

 

 

カナ・アルベローナ

 

「・・・・・・・・」

 

 

フリード・ジャスティーン

 

「ラクサスの後を継ぐのは・・・・」

 

 

レビィ・マクガーデン

 

「私・・・・とうとう」「「レビィがキター!‼︎」」

 

 

メスト・グライダー

 

「メストだ!!」「昨年は惜しかったよなー」 」

 

「・・・・メストって誰よ?」

 

「さあ?知らないわ」

 

「みんな頑張れー」

 

発表された中に知らない人物がいてすこし不思議に思ったが、気のせいって事にした。

 

「今回はこの中から合格者を一名だけとする。試験は1週間後、各自、体調を整えておけい。」

 

「・・・・っ!!」

 

突然、何か驚くようなものでも見たような表情になるシャルル。グランとウェンディはすぐさまそれに気づく。

 

「どうかした?シャルル。」

 

「なんかあったか?」

 

「べ・・・別に・・・・」

 

だが、はぐらかされてしまったため、気のせいだと思って再びマスターの方へと視線を戻す。・・・・だが、グランは見逃さなかった。シャルルの顔が困惑に呑まれたのを。

 

「初めてのものもおるからのう。ルールを説明しておく。」

 

「選ばれた八人の皆は、準備期間の1週間以内にパートナーを一人決めてください。」

 

「パートナー選択のルールは二つ。一つ、妖精の尻尾のメンバーであること。二つ、S級の魔導士はパートナーに出来ない」

 

「なるほど、そりゃそうだな」

 

「エルザさんと一緒なら最強すぎるもんね」

 

「・・・・・・・・」

 

「試験内容の詳細は天狼島に付いてから発表するが、今回もエルザが貴様らの道を塞ぐ。」

 

「今回は私もみんなの邪魔をする係になりまーす♡」

 

その発表にざわめきだすメンバー。S級魔導士直々に邪魔をするとは、なるほど、ハードだ。

 

「ブーブー言うな。S級魔導士になる奴ァ皆通ってきた道だ。」

 

「あ、コレギルダーツさんも参加すんのか・・・・ふむ」

 

「戦ってみたいの?」

 

「まぁ・・・・・・・・多少は」

 

「・・・・アンタねぇ」

 

「選出された8名と、そのパートナーは一週間後にハルジオン港に集合じゃ。以上‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マスターの発表後、集まった一同はS級試験について話していた。

 

「アンタら初挑戦だったんだなぁ」

 

「そうよね、なんか意外だったわ。あんた達みんながなんて」

 

「大変そうですね」

 

「そういえば、みんなもうパートナーって決まってるの?」

 

「俺はもちろんハッピーだ。」

 

「あい。」

 

「ハッピーはズリィだろ!もし試験内容がレースだったら、空飛べるなんて勝負にならねぇ。」

 

「別にいいんじゃない?」

 

「俺も別に構わねぇよ、戦闘になったら困るだけだしな。」

 

「酷いこと言うねグレイ。オイラは絶対ナツをS級魔導士にするんだ‼︎‼︎」

 

「こればっかりは仲間といえど、絶対譲れねぇ‼︎‼︎こうしちゃいられねー!修行だー!!!」

 

「あいさー!!」

 

「・・・・なんか気合い入ってんなぁ。まぁS級云々はあんま興味ねぇけど・・・・ギルダーツさんとミラさんとは戦ってみてぇなぁ」

 

「お?なんだ、グラン?エルザは眼中にねぇのか?」

 

「・・・・いや、もうエルザさんの相手は懲り懲りだわ」

 

「そういえばグラン、エドラスで向こうのエルザさんと戦ったんだっけ?」

 

「うぇっ!?マジか!?よく無事だったな!?勝ったのか!?」

 

「んや、途中で隙見て逃げたよ。戦ってる場合じゃなかったし・・・・それにいちいち武器が変わって超めんどくさかったし・・・・できればもうやりたくねぇなぁ」

 

だからといって他のS級なら戦いたいと思うなら、コイツも大概戦闘狂だと思う。

 

「あの、ジュビアはこの試験を辞退したい」

 

「えぇ!?何で!?」

 

と、何故か急にジュビアがモジモジしながら試験を辞退すると言ってきた。何故モジモジするか、気になったがまぁすぐにわかった。

 

「だって・・・・・・・・様の・・パートナーに・・なり・・たい・・・・」

 

「何だって?」

 

「だから・・あの・・・・ジュビアは・・・・・・・・」

 

「あんたのパートナーになりたいんだって。」

 

「ア?」

 

「ホラ!!やっぱりルーシィが狙ってる‼︎‼︎」

 

「狙って無いわよ」

 

ほらね、やっぱり。

 

「悪いが、俺のパートナーは決まっている。」

 

「久しぶりだね、みんな。」

 

「・・・・誰よ?」

 

「おっと、そう言えば君とは初対面だったね、グラン。」

 

「あー、確かにな・・・・でも、正体は分かったぞ。獅子宮のレオだろ、アンタ。まぁよろしく。」

 

「あぁ、これから宜しくね。っと軽く自己紹介も済んだから話を戻すね。」

 

「昨年からの約束でな。」

 

「ルーシィ、悪いけど試験期間中は契約を解除させてもらうよ。心配はいらない、僕は自分の魔力で門ゲートを潜ってきた。だから君の魔法は使えなくなったりしないよ。」

 

「なんて勝手な星霊なの……?」

 

「・・・・どんまい」

 

ロキの行為で、ルーシィが困惑の表情を浮かべていた。流石にグランも同情した。

 

「でもおめェ、ギルドの一員ってことでいいのかよ。」

 

「僕はまだ、妖精の尻尾の魔導士だよ。ギルドの誇りをかけて、グレイをS級魔導士にする。」

 

「頼りにしてるぜ?」

 

「任せて。」

 

「……この二人ってこんなに仲良かったっけ?」

 

「・・・・どんまい」

 

「つーわけで、お前も本気で来いよ。久しぶりに熱い闘いをしようぜ。」

 

「っ!!」

 

「・・・・なんで顔赤くしてんの?」

 

「ちょっとお姉さん?」

 

「私がジュビアと組むわ!」

 

「本気かリサーナ!」

 

「私・・・・エドラスじゃジュビアと仲良かったのよ。それにこっちのジュビア・・・・何か可愛いんだもん。」

 

「リサーナさん・・・・」

 

「決定ね!」

 

まさかこの子もグレイ様を狙って・・・・

 

「・・・・重い愛だなぁ」

 

「ちょっと待てよリサーナ!それじゃあ、俺のパートナーが居ねぇじやねぇか!!」

 

「そう?さっきから熱い視線を送ってる人がいるわよ。」

 

「へ?」

 

「・・・・・・・・」じ〜〜〜

 

「・・・・なんであんなむくれてんの?あの人?」

 

「フリードがパートナーにビックスローを選んだ事にむくれてるみたいなの」

 

「エバーグリーン・・・・熱い・・・・って言うより石にされそうな視線じゃねぇか!!」

 

「・・・・まぁこれで大体決まったっぽいな・・・・レビィさんも、ガジルがパートナーにしたっぽいし」

 

「どうなるんだろうね?」

 

「さぁな、まぁオレらには関係ねぇ事だしなぁ」

 

こうして、誰をパートナーにするかの話し合いは幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその日の夜、雪降るマグノリアの中をグランとウェンディとシャルルは歩いていた。

 

「どうしたのシャルル、朝からずっとおとなしいね。」

 

「ちょっとね・・・・何か嫌な予感がするのよ・・・・この試験とかいう奴・・・あんた達は参加しちゃ絶対にダメだからね。」

 

「私なんかパートナーにする人いないし、大丈夫だよ。」

 

「・・・・そうとも限らないっぽいぞ」

 

「え?」

 

「その通りだ・・・・天空の巫女。」

 

「あ・・えーっと、貴方は・・・・」

 

「俺はメスト。ミストガンの弟子だった。」

 

「ミストガンの弟子!?」

 

「・・・・つまりジェラールの?・・・・っつか、何してんの?」

 

急に現れたメストが、ミストガン・・・・ジェラールの弟子だと告げられ違和感を覚えるグラン・・・・だが、当の本人はなぜか上を向き口を大きく開けていた。

 

「君の事はミストガンからよく聞いている。」

 

「あ・・あの、何をしているんですか?」

 

「雪の味を知りたいのだ。気にしないでくれ。」

 

「なんなのこいつ」

 

「・・・・頭おかしいんじゃねぇの?」

 

「力を貸してくれないか。」

 

「それが人にものを頼む態度なの!?」

 

「やっぱ頭おかしいわ、コイツ」

 

「すまん、どうも俺は知りたいことがあると夢中になってしまう癖があるのだ。ウェンディ、君の力があれば俺はS級の世界を知ることが出来る。頼む、力を貸してくれ。」

 

「え・・・・でも・・・・私なんか・・・・」

 

「ダメに決まってるじゃない!!」

 

「・・・・・・・・・・・・知りたい。冬の川の中というものを俺は知りたい。」

 

そして、唐突にメストは川の中に飛び込んでいた。

 

「こんな変態に付き合っちゃ絶対ダメよ!!」

 

「コイツはウェンディに悪影響だな。よし沈めよう!!!」

 

「お、落ち着いてグラン!!!そ、それにこの人・・・・そんな悪い人じゃなさそうだよ?それに私、恩人だったミストガンに何一つ恩返しとか出来なかったし。 」

 

「エドラスを救ったじゃない!それで十分よ!!」

 

「でもそれは結果論でしょ?私の気持ち的には・・・・」

 

「ダメったらダメ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・で、結局喧嘩して、お互いに口を聞かなくなったと。」

 

「そういう事、意外と頑固なのよあの子」

 

「お前もな・・・・ところでグランはどうした?」

 

「・・・・私達が喧嘩してる最中にメストを沈めようとしたのがウェンディにバレて、それにウェンディがちょっと怒っちゃって

 

『グランの馬鹿っ!!』

 

って言われたのが心にグサッてきたみたいで・・・・ずっとあんな感じ」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ズーーーーーーーン

 

 

S級試験が開始するまでの一週間・・・・ずっと沈んだままだったグランであった。

 

 



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第十四話 襲いくる悪魔の心臓・・・・アズマVSグラン

 

「・・・・いや〜一週間も腑抜けになっちまって悪かったな〜。あ、後もうちょい低く飛んで・・・・あ、でも海には当たんない程度に・・・・後もうちょいゆっくり・・・・」

 

「文句が多い!!我慢しなさい!!!」

 

「・・・・そんなに飛ぶのが嫌なのか?」

 

あれから一週間が経ち、ウェンディ達がS級魔導士昇格試験に向かった後、どうしても予知で見たことが気になったシャルルはリリーとそのリリーに運んでもらっているグランと共に天狼島に向かっていた。

 

「しょうがないだろ、オレは大地の滅竜魔導士・・・・空にいたら大地が遠のいてなんか嫌だし・・・・海もまた然り・・・・後単純に飛ぶのが怖い」

 

「そ、そうか・・・・しかし、やはり気掛かりだな、あのメストという奴」

 

「まぁ確かに・・・・正直ミストガンの弟子ってのが怪しいし、なんか変だしな」

 

「なんかってなによ」

 

そうこうしている合間に天狼島まで着いた三人は砂浜に降り立ち話を続ける。

 

「王子はこちらの世界で人と接触するのを避けていた。」

 

「ギルドに寄る時もわざわざ全員を眠らせて、顔がバレないようにしていたらしいわね。」

 

「その王子が弟子を持つとは考えにくい……」

 

「何が言いたいのよ。」

 

「うーむ……これはものすごく突拍子もない推測なのだが、メストという男は本当にギルドの一員なのか?」

 

「あー・・・・多分アイツ評議員だぞ」

 

「えっ!!?」

 

「何故わかる?」

 

唐突にグランの口から明かされるメストが評議員であると言う事実に驚きを隠せないシャルルとリリー。

 

とりあえずウェンディを探すべくリリーに抱えてもらい、飛びながら説明をするグラン。

 

「・・・・何も一週間、ただ腑抜けてたってわけじゃねぇ・・・・地を這いずりながらアイツを見張ってたら、連絡用魔水晶であん時の評議員と話してんのが見えたからな。だから多分、そうなんじゃねぇかなって」

 

「あの時?」

 

「なんでそれ黙ってたのよ!!」

 

「いや、すまん。話し相手が評議員のやつってのを飛び立つ時に思い出して・・・・いや、すいません・・・・っと見つけたぞ、あそこだ」

 

と、説明している途中でウェンディを見つけたと報告するグラン。それを聞きシャルルとリリーは速度を上げてウェンディのいる所へと飛んでいくのであった。

だが、それとほぼ同時に信号弾が打ち上げられた。色は赤・・・・その意味は、敵が襲撃したという事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウェンディー!!すぐそいつから離れなさーい!!」

 

「シャルル!!リリー!!グラン!!」

 

降り立った3人は、ウェンディとメストの間に入る。

 

「メスト!あんたの正体はもう分かってんのよ!!!」

 

「え?し・・・正体って……俺はミストガンの弟子で……」

 

ゴッ

 

「王子がこの世界で弟子をとるはずがない。この世界にいない人物を使ったまではよかったが、()()を誤ったなメストとやら。」

 

「後、ちゃんと周りを見たほうがいいぞ?」

 

「ちょっと!なんなの三人とも急に!」

 

「あんたは黙ってなさい。」

 

「一応・・・・聞いておく、お前は何者だ。」

 

「な、何のことだ……」

 

「恐らくお前は人の記憶を操作する魔法の使い手だ。ギルドのメンバーに魔法をかけ、自分がギルドの一員であることを装った。王子のことも含め、考えれば不自然な点だらけだ。お前と接点を持つ者の名も上がらない。その上、ギルドの信号弾の意味も知らないようでは言い逃れはできんぞ。」

 

「・・・・あー、ウェンディ?ちょっとこっち寄っとけ」

 

「え?」

 

リリーが念の為メストに正体を聞いている最中、妙な気配を感じたいグランは咄嗟にウェンディを引き寄せる。と、いきなりメストの姿が消えグランとウェンディの前に現れる。

 

「なっ!!」

 

「消えた!?」

 

だが、目の前に現れたメストに対し・・・・グランがとった行動は

 

「ウェンディよろしく」

 

「任せろ!!」

 

なんとウェンディを預け、その場を離れるようにした。その直後、先ほどまでウェンディ達がいた場所が爆発したのだ。

 

「ふんっ!!」

 

とグランは地面を踏みつけ、その爆発を止める。いきなりの事で困惑するウェンディとシャルルにリリー。

 

「攻撃!?何事!?」

 

「誰だ!出てこい!!」

 

「そこにいんだろ?勿体ぶってねぇで出てこいよ。」

 

メストは声を荒らげ、グランがある場所を睨んでいる。そこにあるのは一本の木。

 

「よくぞ見破ったものだ。それに軽くとはいえ、攻撃を止められるとはね」

 

だが、その木から声がしたと思ったら、いきなり、人の顔が浮き出てきた。

 

「ひっ!?」

 

「木から人が!?」

 

「な、何者だ!」

 

「うわ、気持ち悪っ」

 

その人物は木から出てきながら名乗りを上げた。

 

 

俺の名はアズマ・・・・悪魔の心臓(グリモアハート)煉獄の七眷属の一人。」 

 

 

「グリモアハート!?」

 

「闇ギルドよ…」

 

「またバラム同盟かよ・・・・」

 

「一体・・・・何がどうなっているんだ!」

 

リリーの疑問に応えるかのように、メストが本性を表し始める。、

 

「妖精の尻尾の聖地に侵入すればわきな臭い話の一つや二つ出ると思ってたんだがな。黒魔導士ゼレフに悪魔の心臓、こんなでけぇヤマにありつけるとァついてるぜ」

 

「あんた一体・・・・」

 

「まだ気づかねぇのか?俺は「評議員の人間だろ」評ぎってオイ!?なんで知ってんだ!?ってか途中で割ってくんな!!」

 

「評議員!?・・・・本当にそうだったのね」

 

「・・・・え、信じてなかったの」

 

「これはこれは……」

 

「・・・・まぁいい、あの所在地不明の悪魔の心臓がこの島にやってくるとはな。ふはははは、これを潰せば出世の道も夢じゃない。万が一にも備え、評議員強行検束部隊の()()・・・・戦闘艦をすぐそこに配備しておいて正解だった。一斉検挙だ、悪魔の心臓を握り潰してやる。 」

 

「あー、多分無理だと思うぞ?」

 

「戦闘艦?

 

 

あれの事かね

 

 

メストが語り終えた後、戦闘艦を見てそう言うグランと体をほぼ出し終えていたアズマ。そして次の瞬間

 

ドゴォ──────ン!

 

評議員の戦闘艦が、見るも無残に爆発した。

 

「なっ!!」

 

「え?」

 

「な、何をしたの!?」

 

「船が、馬鹿な・・・・」

 

「あーあ」

 

「フム・・・・ではあらためて・・そろそろ仕事を始めてもいいかね?役人さん。」

 

「全員下がってろ……!」

 

リリーが皆を守るために前に出る・・・・だが、そんなリリーを後ろに下げるグラン。

 

「おい、メストとやら・・・・全員を瞬間移動でここから離れたとこにやれるか?」

 

「何?」

 

「ちょっと、何言って・・・・」

 

「グラン?」

 

全員を下げさせ、一人前に出るグラン。何故そんなことをさせたのか・・・・そんなものは決まってる。

 

「ここはオレが引き受けた。だから全員、今すぐ逃げろ」

 

「そんなっ!?ダメだよ、グランっ!!」

 

「そうだ!奴の強さは未知数・・・・たった一人で相手になど・・・・」

 

「ブレビー」

 

グラン一人を置いて行かない・・・・だが、そんな事を悠長に話をさせるほど、敵も甘くはない。

 

グラン達に向けて爆炎が襲い掛かる・・・・が、その爆炎をモノともせずにアズマに突っ込んでいくグラン。

 

「地竜の剛拳!!!」

 

「グゥっ!?」

 

グランの拳がアズマの体を捉え、吹き飛ばす。

 

が、その直後グランの周りに小さな光が現れたと思ったら、先程以上の爆炎が起こり、グランを飲み込んだ。

 

その凄まじい威力に近くにいたウェンディ達も吹き飛んでしまう。

 

「グランっ!!」

 

「ゲホッ・・・・いいからさっさと逃げろ!!オレは大丈夫だっ!!リリー、ウェンディとシャルルを頼むぞ!!」

 

「・・・・ッッ!・・・・分かった、気を付けろよっ!!」

 

「任せろ」

 

まだ納得のいっていなかったリリーだが、この場にいても足手まといであると感じとり、まだ全く納得のいってないウェンディとシャルルを抱え、メストの元へ行き、そのままメストの瞬間移動の魔法でこの場を離れた。

 

「・・・・先ほどから、俺の魔法を受けてもほぼ無傷でいられるとは・・・・なるほど、君が噂の『大地』の滅竜魔導士かね?」

 

「アンタらに噂されても、嬉しかねぇがな。・・・・さてと、久々に本気でやらんとやばいよなぁ〜、コイツは」

 

「お前との戦いも、中々に楽しそうだ・・・・妖精女王や魔人とやる前の肩慣らしにはもってこいかな」

 

「あの二人と戦う前に、ここで終わりにしてやんよ!!」

 

もう一度、アズマに向かって駆け出すグラン。だが、来ることが分かっていたアズマはグランが接近する前に、先程以上の魔法を大量に放つ。

 

「ブレビー」

 

ズガーーンッ

 

先程と同様に爆炎に巻き込まれるグラン・・・・だが

 

「そんなもん効くかァァッ!!」

 

爆炎の中を突っ走ってアズマに近づく。これはまずい、とアズマは飛び上がり避けようとする。だが逃すまいとグランは両腕を構え

 

「地竜の剛腕!!!」

 

「グッ!?」

 

と砂嵐を引き起こし、アズマにぶつけていく。その砂嵐に巻き込まれアズマは空へと投げ飛ばされる。

 

「地竜の断裂!!!」

 

「グアォッ!?」

 

そこに畳み掛けるように攻撃を喰らわせ、地面に叩き落とす。そしてさらに攻撃を仕掛けようとするが、地面に落ちたアズマに近づいた瞬間、アズマの周囲が光だし・・・・

 

「タワーバースト」

 

ドゴォォォ

 

先ほどまでとは比でないほどの爆発を起こし、巨大な炎の柱を生み出す。そんな爆炎に呑まれたグランは大きく吹き飛ばされてしまった。

 

「アッツッ!!?クソッ!なんの魔法使ってんだよ!!」

 

所々で傷ができていたが、あらかた無事なグラン。アホ程頑丈である。

 

「ふむ・・・・今のを食らってもほぼ無傷とは、呆れるほどに頑丈だね。これは思ってた以上にかかりそうだ」

 

「一応褒め言葉として受け取ってやる・・・・それよかお前、この島に何しやがった」

 

「・・・・ほう?どうしてそう思ったのかな?」

 

「舐めんな、こっちは『大地』の滅竜魔導士だぞ?大地の変化に敏感なんだよ・・・・ここにきてからこの島の大地が妙なもんにやられてるくらいわかんだよ・・・・何かはわからんがってなんだコレ!?」

 

この島が危ない・・・・いや、妖精の尻尾の危機が迫ってくると感じたグランはすぐさまアズマを問い詰めようとするも、その前にいきなり現れた木々が体に巻き付いて身動きが取れなくなる。

 

「ふむ・・・・もう少し戦っていたいがこれ以上君を野放しにすると厄介な事になりそうだね。悪いけど、ここで死んでもらう」

 

「あぁ?誰が死ぬかぁ!!コレ外しやがれ!!」

 

「下手に力を加えないほうがいい。どちらにせよ、俺にしか解けんがな。・・・・中々楽しかったよ、ではな」

 

そう言って、アズマはこの場を去っていきグランだけが残った。その直後

 

「待てっ!!・・・・ってなんの音だ、これ?」

 

ビーーーッ

 

ドゴォォォォォォォォォォォォォンッッ!!

 

大爆発が起きる。グランを中心にその周囲は木々も地面も吹き飛び、更地と化す。そこに残っていたのは、爆発で体中黒焦げになって倒れているグランだけだった。

 

 



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第十五話 炎神VS地竜

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・っは!!クソッ!あのドレッド野郎!!ったく、今どうなって・・・・・・・・なんだ、まだ夢か」

 

アズマに爆破されて数分・・・・グランは飛び起き、そしてまた寝ようとした。いや、そんな状況じゃないのは分かっている。流石のグランもあの大爆発を喰らわれた為全身真っ黒焦げにされてしまい、気を失っていた。

 

たった今、闇ギルド“悪魔の心臓”から攻撃を受けている・・・・いや、もう既に受けているのは知っている・・・・その幹部の一人にやられたんだか「やられてねぇ!!!」・・・・やられてないらしい。まぁともかく妖精の尻尾の危機的状況である。

 

だが、そんな妖精の尻尾(仲間)の危機的状況にも関わらず何故夢だと思っえ寝ようとしたのか?・・・・だが仕方ないと思う、だって目が覚めたと思ったら大量の人間が落ちてくるなんて、夢だと思うだろう?

 

というか夢であってほしい・・・・あんな数が相手とか、クソめんどくさいじゃん。

 

だが、残念ながら現実である。今も大量の敵が空から降ってくる・・・・そして先ほどまで倒れていたグランに向けて攻撃を仕掛けてくる。

 

いくらグランとはいえ、先ほどまで戦闘し魔力を消費し傷ついていたのだ・・・・流石にこの数は────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「が・・・・・・・・ガハッ」

 

「・・・・く、クソ・・・・・・・・」

 

「つ・・・・つぇ・・・・・・・・ぇ」

 

────────全く問題なかったらしい。いくら数がいても所詮は三下の集まり・・・・・・・・多少は手こずったけどね。

 

「・・・・こいつらに聞いても意味なさそうだな・・・・・・・・それにしても、さっきの爆発と魔力は一体誰だったんだ?」

 

グランは襲ってきた悪魔の心臓の部下達に先ほど戦った敵“アズマ”がこの島に何をしたのか・・・・そもそも悪魔の心臓がこの島に何のようなのかを問いだそうとしたが特に何も知らなそうだった。戦っている途中で感じた魔力も気になったが、それは後回しだ。

 

 

「ウヒヒヒッ!オメェよくやるなァ、ウハッ!よくやるじゃねぇかよォッ!!」

 

 

ボゴォッ!

 

 

「なんだぁ!?」

 

突如、黒い炎がグランが倒した敵を燃やした。突然のことで混乱したが、わかるのは敵が焼け焦げているさまと・・・・・・・・怒りだ。

 

「今度はオレっちが相手してやんよ」

 

「・・・・・・・・誰だ、テメェ」

 

「オレっちはザンクロウ・・・・悪魔の心臓だよォ、ウヒヒッ」

 

「・・・・何で、こいつらを燃やした・・・・仲間だろぉが」

 

グランはザンクロウに何故こいつらを燃やしたのかを問う。するとザンクロウはさも当然のように、あっけらかんと答える。

 

「そいつらは燃やされて当然だってよ・・・・悪魔の心臓は最強のギルド、弱者は必要ねぇんだよ、ウハハハハハハッ!!!!」

 

「・・・・あー、そう。・・・・・・・・お前は嫌いなタイプだ」

 

グランはザンクロウを睨みつける。それでもザンクロウは笑い黒い炎を纏っている。

 

「ウハハッ、だったら何だってんだよォ」

 

「・・・・ぶっ潰す!!」

 

そう言いグランは駆け出す。だがザンクロウはただ笑って炎を放つ。

 

 

「ウハ───────ッ!!!!!」

 

ゴオォォォッ!

 

「ぐおぉ!?」

 

その黒い炎に包まれてしまうグラン。普通の炎・・・・さらにはナツの炎とも違う異質だが、どこか神々しい炎。

 

「ウハハ、どうだよォ、“神”の炎はよォッ!!妖精の尻尾(お前ら)んとこにいる竜殺しの炎よりも強力だろうよォッ!!」

 

そしてザンクロウはその炎の正体を明かす。

 

 

オレっちは神殺し・・・・滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)だぜ

 

 

“滅神魔法”・・・・それは滅竜魔法と似ていているようで違う魔法。神を殺す為の魔法・・・・竜の炎よりも、強力な炎。

 

「ウハハハッ!竜殺しの炎なんか比じゃねぇだろぉ?神の炎は竜の炎と違って燃やすんじゃなく、全てを破壊する焔だよォッ!ウハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!」

 

そう高らかに笑うザンクロウ。もう既に勝利を確信しているからだ。・・・・だが

 

「・・・・・・・・あっそ。なら一ついい事教えてやんよ」

 

「ハハハ・・・・あぁん?」

 

と、炎が霧散していく。そこにいたのは、所々火傷はしているものの五体満足でいるグランの姿だった。

 

「お前の炎が神殺しの炎だろうが、ナツの炎よりも強力だろうが、全てを破壊できようが・・・・この程度じゃ、大地は燃やされねぇんだよ。・・・・さてと、お前には色々聞きたい事があるからな。さっさと終わらせる。」

 

「ウハッ!やってみろってよ!テメェがただの土塊になるまで燃やし尽くしてやるよォッ!」

 

グランとザンクロウはほぼ同時にブレスを放つ。

 

「地竜の咆哮!!!」

 

「炎神の怒号!!!」

 

ぶつかり合いそのまま爆発する。その爆発の隙にグランはザンクロウに近づき、腕を剣に変えて斬りかかる。

 

「地竜剣!!」

 

「ウハハーーーっ!」

 

それを薙刀の形をした炎で受け止める。連続で斬りかかっても全て受け切られてしまう。

 

「めんどくせぇなぁ!オイっ!!」

 

「ウハハッ!属性は違えど、竜狩りごときがオレっちに勝てるかよォ!!」

 

そして大きく薙刀を薙ぎ払い、グランを吹き飛ばす。そして今度は全身から炎を放つ。

 

「炎神のカグツチ!!!!」

 

迫り来る黒い炎・・・・その炎を前にグランは両腕を構えそのまま砂嵐を放つ。

 

「地竜の剛腕!!!」

 

「なにっ、ぐあっ!?」

 

その砂嵐はザンクロウの炎を巻き込んでそのまま吸い上げ、ザンクロウにぶつかっていく。

 

あまりにも予想外の事にザンクロウは防御できずにそのまま吹き飛ばされてしまう。

 

「チィっ!!ふざけんじゃねぇってよ!!竜風情が調子に乗ってんじゃねぇってよォ!!火竜の前に、おまえを喰らってやるよォッ!!!

 

 

炎神の晩餐ッ!!!!」

 

そう言ってザンクロウは両手に黒炎を纏い、グランの体を飲み込んでいく。

 

「ぐぅぅっ!!?」

 

「ウハハハハハッ!この炎に包まれたら最後・・・・テメェは灰になるまで出ることはできねぇってよォ!!」

 

黒い炎にじわじわと焼かれていくグラン。だが、炎に焼かれながらも一歩、また一歩とザンクロウに近づいていく。

 

「なっ!?何で動いてんだよ!?さっさと灰になっちまえよォ!!!」

 

さらに火力を上げるザンクロウ。だがそれでもグランの歩みは止まらない。そんなグランにザンクロウはあり得ないものを見た。

 

今、目の前にいるのは竜狩りの魔導士のはずなのに。そいつが一歩、また一歩と近づくたびに・・・・そいつの背後に巨大な竜の姿が見えてしまう。

 

「・・・・学習しねぇようだからもういっぺん伝えてやるが、大地はこの程度じゃ燃やされねぇんだよ。しかもなぁ・・・・ずかずかと団体で俺らの聖地を踏み荒らしただけじゃなく・・・・俺の仲間に手ェ出そうとしてる輩に・・・・・・・・・・・負けてたまるかぁっ!!!」

 

黒炎の中で腕を大きく振り上げザンクロウを空中に殴り飛ばす。その衝撃でザンクロウは魔法を解いてしまい、グランは自由となる。

 

「ぐおぁっ!?」

 

空中に殴り飛ばされたザンクロウへ跳んで近づき、両腕を岩のように変え、両手を合わせる。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)を敵に回した事・・・・ギルドの仲間(家族)を傷つけようとした事・・・・ぶっ飛びながら後悔しやがれ!!

 

 

地竜の・・・大鎚!!!!」

 

一つの岩の塊となった両手を一気にザンクロウへと振り下ろす。

 

「ぐおぉああぁああぁぁぁぁっ!!??」

 

そしてザンクロウはそのまま崖の下まで吹き飛ばされてしまう。

 

「・・・・・・・・ヤッベ、やりすぎた・・・・し、死んでねぇよな?・・・・・・・・・・・・・・・・確認しとこ」

 

散々ぶっ飛ばしておいて、最後やりすぎたんじゃね?崖の下で死んでね?何て心配するくらいなら、最初からしなければよかったのにな・・・・結局何も聞けてねぇんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、グランと別れた後ウェンディ達は転移先で偶々ナツとハッピーと合流した。今攻めてきている敵の事、グランがその敵の幹部の一人と戦っている事を伝えて、共にグランの元へ向かった。その途中、大量の敵が空から降ってきた為、戦闘を開始。基本三下の集まりだった為そこまで苦戦はしなかってが、数が多い為、思ってた以上に時間がかかってしまった。

 

敵を吹き飛ばしながら、森の中を進んでいると、とある匂いを嗅ぎつけた。

 

「ん!この匂い・・・・じっちゃん!!」

 

「マスター!!!そんなっ・・・・」

 

森の中、傷だらけで倒れていたのは・・・・他でもない、マスター・マカロフだった。

 

「じっちゃん!!大丈夫かっ!?ウ、ウェンディ!!すぐに治してくれ!!」

 

「わ、分かりました!!」

 

急いでマカロフを治療するウェンディ。だが、傷が深すぎる為すぐには治らなかった。

 

「・・・・ナツ・・・・・・・・それにウェンディか・・・・ゲホッ、ゲホッ」

 

「じっちゃん!!よかった!!今、ウェンディが治してくれてる!!・・・・クソッ!誰にやられたんだ!!」

 

「ナツ・・・・・ウェンディ・・・・よく・・・・聞け・・・・・・この戦い・・ワシ等に勝ち目は無い。今回の・・・・敵は・・・・今まで・・・・・・・・以上に、強力じゃ・・・・」

 

「な・・・・何言ってんだよ、じっちゃん!!!俺たちは負けねぇ!!じっちゃんをこんな目に遭わせた奴は俺が倒す!!!」

 

いきなり、マカロフから言われたこの戦いに勝ち目はないという事に、即座に否定するナツ。だが、マカロフは自分の意思を曲げない。

 

曰く、“悪魔の心臓”のマスター・ハデスには、自分は手も足も出なかった。

 

曰く、彼の育て上げた魔導士達は、全員強力な魔導士であるということ。

 

それ等を踏まえた上で、もはや勝ち目はない、家族を危険に晒したくない・・・・そうマカロフは言っている。

 

「頼む・・・・ナツ・・・・みんなを・・・・連れて逃げるんじゃ・・・・」

 

「そんな事言うなよ!!S級試験は、どうなるんだ!!!じっちゃんは妖精の尻尾のマスターだろ!!!!勝てないなんて言うな!!!」

 

口ではそう言っているナツだが、それでも自分達のマスターがこんなにも簡単にやられ、傷だらけになっている姿を見て、ひどく動揺し・・・・それと同時に恐怖もした。

 

もしかしたら、本当に勝てないかも・・・・と。

 

「時には・・・・引かねばならぬ・・・・時も・・・・ぐふっ」

 

「じっちゃん!!!」

 

「マスター!!あまり無理をしないで!!・・・・・・・・グラン」

 

マカロフを治療している中、ウェンディは一人残してしまったグランのことが心配だった。

 

グランの強さは、ギルドの中では一番よく知っている。・・・・それでも、不安だった。心配だった。

 

と、皆がそれぞれ不安を抱えている時。

 

 

ズド───────ンッッ

 

 

と何かが物凄い勢いで落ちてきた。即座に警戒した。恐る恐るその落ちてきたものを確認しにいくナツ。そこにいたのは、全く見知らぬ魔導士─────ザンクロウだった。

 

「だ、誰だ?コイツ?」

 

「が・・・・・・・・・・・・・・・・ガハッ・・・・・・・・」

 

ほぼ虫の息だがなんとか生きているザンクロウは、もはや立ち上がる気力もなく、そのまま気を失っていった。

 

「・・・・そやつは・・・・悪魔の心臓の・・・・・・・・」

 

「幹部の一人って事!!?」

 

「一体、誰が・・・・」

 

悪魔の心臓の煉獄の七眷属の一人であるとわかった一同は、誰が倒したのかと疑問に思ったが、その疑問はすぐに解消された。

 

「・・・・・・・・・・・・あー、そいつ生きてる?」

 

「グランっ!!無事だったんだね!!!」

 

マカロフの治療がある程度終わったと同時に、ウェンディは崖から降りてきたグランに飛びつき、抱きついた。多少の火傷はあれど無事なグランがそこにはいた。

 

「・・・・グラン、お主・・・・倒したのか、悪魔の心臓の一人を・・・・っ!!?」

 

「・・・・マスター?大丈夫か?・・・・いや、まぁ一応。一人、逃したっていうか爆破されて逃げられたっていうか・・・・」

 

「爆破っ!!??大丈夫だったのアンタ!!?」

 

「グランッ、どこも痛くない!?大丈夫!?無理してない!?」

 

「とりあえずはな・・・・安心しろよ、ウェンディ。・・・・・・・・それはそれとして、今回はマジで相手が強い。さっき倒したコイツ・・・・ザンクロウも、既にここにきてたあのドレッド野郎・・・・アズマも・・・・もしかしたら、もう他のみんながやられてるかもな」

 

「そんな・・・・」

 

これが、グランが感じた事。妖精の尻尾のメンバーの中で唯一“悪魔の心臓”の煉獄の七眷属二人も対峙したグランだからこそ言える事。敵は強い。勿論、妖精の尻尾も強い・・・・だが、敵はそれよりも強いかもしれない。

 

グランがザンクロウに勝てたのは、やつ自身が油断していたのと、グランが大地の滅竜魔導士だったから・・・・それにアズマにはまんまと逃げられてしまった。

 

「関係ねぇ!!!!!!」

 

だが、そんなグランの言葉を吹き飛ばすほどの大声でナツは怒鳴る。

 

「引かなきゃいけない時もあるってのはわかる・・・・だけど今はその時じゃねぇ!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)を敵にした奴らに、思い知らさせてやるんだ・・・・全身全霊をかけた、ギルドの力を!!!!

 

決して引く意思を見せず、鼓舞を入れるように力強くそう言った。

 

「・・・・たしかに、そうだなナツ。戦って思い知らしてやろうぜ。・・・・・・・・ところで、マフラー黒いけど大丈夫か?」

 

「おう!大丈夫・・・・・・・・だ・・・・」

 

そう言った直後、ナツは倒れた。・・・・え、なんで?

 

 



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第十六話 妖精の輝き(フェアリーグリッター)

 

「・・・・どうだ、ウェンディ?なんとかなりそうか?」

 

「・・・・わかんない。傷を治そうとしても、何かが邪魔をして治癒の魔法が効かないの」

 

現在、いきなり倒れてしまったナツを治すべく、ウェンディが治癒の魔法をかけているが、どういうわけか全く効いていない。たしかに傷はあるが、どれも軽傷だ。それでも、その傷を治すための治癒の魔法を“何か”が邪魔をして傷を治さないでいる。・・・どうすれば、と考えていた時、マカロフが目を覚ました。

 

「ウェンディ・・・・ナツの・・・・マフラーを・・・・元に、戻せる・・・・かね?」

 

「マスター、あんま無理すんな。・・・・ウェンディ、できるか?」

 

「やってみます!!」

 

そうして、ウェンディがナツのマフラーを治していく。

 

「・・・・このマフラー・・・・いやに邪気を放ってるけど・・・・誰にやられた?」

 

「あい・・・・よく分かんない黒髪の不気味な奴にやられたんだ・・・・」

 

「・・・・もしかして、その男が・・・・」

 

「・・・・あぁ、多分悪魔の心臓(奴ら)の探してるゼレフだろうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!!」

 

「お、起きた。」

 

「お、おー。すまん、なんでか倒れちまって。」

 

「気にすんな、治したのは俺じゃなくウェンディだしな」

 

ナツのマフラーを元に戻して、少したち、ナツが飛び起きる。どうやら、体調は元に戻ったらしい。ウェンディに礼を言って、マカロフの無事を確認した時、何かの匂いを感じとり立ち上がった。

 

「この匂い!!!・・・・なんでアイツがここに?」

 

「誰のことだ?」

 

「ウェンディ、グラン・・アンタ達も同じ匂いを?」

 

「分かんない・・私はみんなの匂い散満してて場所の特定ができない」

 

「俺はウェンディよりも鼻が効かないから、さらに分かんない」

 

「ナツ?誰の匂いを感じたの?」

 

「ガルナ島で会ったアイツだ!!!」

 

ハッピーがナツに聞くと、ガルナ島というところで会ったらしい。

 

「近ェぞ!!!」

 

と言って、恐らく匂いのした方へ走って向かっていった。それを追ってハッピーも行ってしまった。

 

「・・・・行っちまったな」

 

「ナツさん・・・・誰の匂いを感じたんだろう?」

 

「さぁな・・・・とりあえず、ここで待ってるか」

 

「うん!!・・・・グラン・・その・・・・馬鹿って言ってごめんね」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ウン、キニシテネェヨ。」

 

「思いっきり気にしてんじゃない」

 

「うわーーーっ!!!本当にごめんねぇぇ、グランッ!!」

 

実はここにきてからもずぅーーーーと気にしていたグランは、また気持ちが沈み、泣きながら謝るウェンディ。

 

なんともカオスだな。

 

「・・・・何というか、ある意味すごいな。この二人は」

 

「昔からこんな感じよ。少なくとも、私が生まれてから基本こんな感じ。誰に対しても、基本強気でめんどくさがりで割と自分勝手なグランもウェンディの言う事はすぐ聞くのよ。ウェンディがダメって言えば、それまでの怒りが嘘みたいに消えるし、ウェンディに怒られたらそれこそここ一週間の時とおんなじように落ち込んじゃうのよ。」

 

「こう言ってはあれだが、まるで忠犬だな。」

 

「ま、グランの場合、忠竜って言った方が正しいかもね」

 

目に見えて落ち込んでいる者とそれに泣きながら謝る者の横で冷静に話し合う猫達・・・・うーん、カオス。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんながありまして

 

 

 

 

 

 

 

「ウェンディー!!」

 

「ナツさん!!ルーシィさんも!!」

 

ナツと共にルーシィも一緒に戻ってきた。

 

「マスターの具合は・・・・ってグランどうしたの?」

 

「まだなんとも言えないわ・・・・グランは気にしないでちょうだい」

 

ナツ達が戻ってきて今も絶賛落ち込み中のグラン。どんだけウェンディが好きなんだ、コイツ。

 

と、いきなり目の前に評議員のメストが現れた。

 

「貴様は・・」

 

「どこに行ってたんだ、コノヤロウ!!」

 

「この人が、評議員のメスト」

 

「本当の名はドランバルトだ」

 

本名はドランバルトというらしい。別にどうでもいい。

 

そのドランバルトの話によれば、グラン達を助けたいらしい。彼の魔法が有れば妖精の尻尾のメンバーだけでも逃がせるらしい。・・・・だが

 

「お断りしますってヤツだ」

 

「・・・・・・・同意」

 

「な?」

 

「なんで私たちが評議員の助けを借りなきゃならないの?」

 

「ギルドの問題は自分達で片付けるさ。ここの連中は」

 

「そうじゃない!!聞いてなかったのか!?今のこの状況を本部に知られたら島への攻撃があり得るんだぞ!!!」

 

「またエーテリオンを落とすつもり!?」

 

「こりないわね、アンタらも・・・・」

 

「・・・・その前に潰すだけだ」

 

「あ、復活した」

 

「マカロフもやられた!!悪魔の心臓にはまだ恐ろしい奴が残ってる!!勝てる訳ねぇだろ!!!!」

 

「オイオイ・・・・だから島ごとぶっ飛ばそうってか?」

 

「どんだけ脳筋思考なんだよ、評議員は」

 

お前にだけは言われたくないと思うぞ。評議員も。

 

「この島は私たちのギルドの聖地。初代マスターのお墓もあります。そこに攻撃するなんて・・・・」

 

「信じらんない!!そんな事したらみんな・・・・ただじゃおかないわよ!!」

 

「オイラたちはそうやってギルドを守ってきたんだ!」

 

ルーシィもハッピーも、決して屈する意思を見せない。

 

評議員(オレたち)を脅すつもりか!!!!魔導士ギルドごときが!!!」

 

青筋を立て怒鳴り散らすドランバルト・・・・だが、それでもナツたちは引く意思を見せない。

 

「いいか、よく憶えとけ。悪魔の心臓(グリモアハート)だろうが、評議員だろうが関係ねぇ

 

 

家族(ギルド)に手を出す奴はみんな敵だ。全て滅ぼしてやる!!!!!

 

ナツの睨みを効かされ、ひどく怯えた表情に変わるドランバルト。ちょうどそのタイミングで、空色が荒れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・ひどく降ってきたなぁ〜」

 

「ドランバルトさん・・・・大丈夫かなぁ」

 

「ほっとけばいいのよ、あーゆーのは」

 

あの後、シャルルとリリーが様子を見に行きその途中でギルドのキャンプがあることに気付き、ひとまずそこに行く事に決めた。

 

ドランバルトにはとりあえず評議員を止める・・・・もしくは時間稼ぎをしてもらう事にした。

 

「ん?誰かいるぞ」

 

と、先頭を進んでいたナツが目の前にいる誰かに気づく。

 

だが、おかしい事にその男の周りだけ()()()()()()()()()

 

「!!!」

 

「な・・・・」

 

「なに?この魔力・・・・」

 

「なんでアイツの近くだけ雨が激しいの!?」

 

「・・・・あー、なんか嫌な予感する」

 

「肌がビリビリする・・・・」

 

その男から感じる強力な魔力に全員が嫌な汗を流す。・・・・グランはいつも通りだが。

 

「誰だ、てめえは!!?」

 

ナツがそいつに怒鳴る。だがそいつはナツの声を無視してただ一言呟いた。

 

 

「飛べるかなァ?・・・・・・・・いや、まだ飛べねぇなァ

 

 

落ちろ

 

ドッ ゴガッ

 

と強力な重力場がつくられ、グラン達を押し潰した。

 

「ぐはあ!!?」

 

「きゃああ!!?」

 

「ウェンディ!!・・・・あぁ、キッツ」

 

「あああ!!?」

 

「う・・動けない・・・・!!!」

 

「重力!!?」

 

もの凄い重力に押し潰され身動きが取れないナツ達と、なんとか踏ん張り付いているグラン。

 

「オレはよぅ、妖精の尻尾にもゼレフにもあまり興味はねえのよ・・・・だけど一つだけ()()()()がココにあるんだ。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)初代マスター・・・・メイビス・ヴァーミリオンの墓は、どこだ

 

「・・・・初代の墓ァ?んなの知ってどうすんだよ」

 

グランが睨みながらその男に聞く。その男は淡々と告げた。

 

妖精の輝き(フェアリーグリッター)・・・・妖精の法律(フェアリーロウ)に並ぶとも言われている、てめえ等のギルド三大魔法の一つだろ?」

 

「・・・・そんなのあったのか」

 

「なんだよそれ・・・・」

 

ズンッ

 

「ぐおあああああっ!!?」

 

「・・・・重たい」

 

「グラン!!ナツさん!!」

 

「ナツ!・・・・グランはなんで平気そうなのよ?」

 

「つ・・・・潰れる・・・・」

 

「・・・・饅頭みてぇだな、ナツ」

 

「う・・・・ウルセェっ!!」

 

地面に潰されて動けないナツとまだ立っていられているグラン。本当にアホ程頑丈な奴だ。

 

「その輝きは敵の存在を許さない無慈悲な光。オレはその魔法が欲しい。メイビスの墓に封じられてるらしいな。その場所を教えてくれんかね」

 

「・・・・どこに初代の墓があるかしらねぇし、知ってても教えねぇよ。・・・・あー、重たい」

 

「・・・・お前は少し飛べそうだな」

 

「飛ぶきはねぇし、飛ばされる気もねぇはボケ」

 

双方睨み合う二人・・・・だがその男────ブルーノート・スティンガーは倒れているマカロフに気づく。

 

「お?そこでヨレてんのマカロフ?なーんだ、そいつに聞けばいいのか」

 

「じっちゃんに手を出してみろ!!!ただじゃおかねぇぞ!!」

 

「・・・・てかこれ以上仲間に手ェ出したら、二度と飛べねぇようにすんぞ」

 

潰されながらもブルーノートを睨みつけるナツとグラン。そんな二人を無視してマカロフに向けて歩みを進めるブルーノート。

 

 

「おまえかァ!!!!!」

 

 

と、そんな時この場に第三者────カナが現れた。

 

「これ以上仲間をキズつけんじゃないよ!!!」

 

カナはブルーノートに攻撃を仕掛けたが、軽くいなされる。だが、本命は別にあった。

 

キュイイィィィンっ!!

 

妖精の(フェアリー)・・・」

 

カナの右腕が光出す。その輝きが、ブルーノートにむけられる。

 

「まさか・・・・!!」

 

ズドンッ!!

 

「うあっ!」

 

だが重力をかけられ、それは不発に終わった。

 

「くっ!!?」

 

「てめぇの持ってるその魔法は・・・・」

 

「妖精の輝き!!?」

 

「え!?」

 

「マジか・・・・」

 

「・・・・ルーシィ、置いてっちゃってごめんね。弁解の余地もないよ・・・・本当に、ごめん・・・・」

 

どうやら、試験の途中でルーシィを置いていってしまったらしい。その事を謝るカナ。そしてブルーノートを睨みながら立ち上がる。

 

「だけど、今は私を信じて。あいつにこの魔法が当たりさえすれば、確実に倒せる!!」

 

「すごい!!お墓で手に入れたの!!?」

 

「墓に行ったって事は・・・・オイ・・まさか試験は・・・・」

 

「・・・・試験内容が墓探し?・・・・え?じゃぁ、試験の合格者は・・・・」

 

「今は、その話おいとかない?あいつを倒す為に協力して、ナツ、グラン」

 

「ムゥ」

 

「・・・・別にいいが、何すりゃいい?」

 

「私が“魔力”をためる間、あいつをひきつけて!!」

 

「むぅ〜〜〜!!」

 

「・・・・分かった・・・・だが、そんな長くはできんぞ」

 

まだ少々納得できてないナツと、承諾したグラン。そう意気込んだ直後。

 

「フン」

 

ズン

 

とブルーノートが重力を放ち、ナツたちは吹き飛ばされてしまう。

 

「オレの重力下で動ける者などいねぇなさ。・・・・まさか探してた魔法が向こうからノコノコやってくるとはなァ」

 

そう言いながら、倒れているカナに向けて重力を強める。

 

「くぅぅ・・・・!!?」

 

「その魔法はオレが頂く」

 

「この魔法はギルドの者しか使えない・・・・おまえらには使えないんだ!!!」

 

「“魔”の根源をたどれば、それはたったひとつの魔法から始まったとされている・・・・いかなる魔法も元はたった一つの魔法だった」

 

そう言って、ブルーノートはカナを浮かせる。

 

「うっっ」

 

「魔道の深淵に近づく者は、いかなる魔法も使いこなす事ができる・・・・逆に聞くが小娘・・・・てめぇこそ妖精の輝きを使えるのかね」

 

「うう・・・・ぐ・・・・っ」

 

「太陽と月と星の光を集め濃縮させる超高難度魔法・・・・テメェごときに使える訳ねぇだろうが」

 

「だったら、テメェごときも無理だわちょんまげぇ!!」

 

「なに!?・・・・グッ‼︎?」

 

カナに気を取られていたブルーノートに近づき、思いっきりぶん殴るグラン。その衝撃で、重力の拘束から解かれるカナ。

 

「ゼェ・・・・ゼェ・・・・あー!重たい!!」

 

「・・・・オレの重力下でそこまで動けるとは・・・・お前は他のクズとは違って飛べそうだなァ」

 

「・・・・ゼェ・・・・ウルセェはクソッ・・・・後、そこにいると燃えちまうぞ?」

 

「なに?」

 

「火竜の・・・・咆哮!!!」

 

ドゴォ!!

 

「!!!」

 

「って危なっ!?」

 

グランが殴り飛ばしたブルーノートに向け、ナツは地中からブレスを喰らわせる。危うくグランにも当たりそうだったが。

 

「テメェ!!もうちょいしっかり狙ってやれよ!!!燃えやしねぇが、危ねぇだろうが!!」

 

「んだとぉっ!!だったらもうちょっと吹き飛ばせばよかったじゃねぇか!!」

 

グランとナツが言い争ってる中、ブルーノートは無傷のまま炎の中から出てきて、ナツ達に向けて重力を放つ。

 

「邪魔だ、クズがァ!!!」

 

ズドォッ!

 

「うああ!」

 

「きゃああ!!」

 

「あうう!!」

 

「ウェンディ!!・・・・・・・・とナツとルーシィ!!」

 

「あたし等はオマケか!!?」

 

ナツと一緒に近くにいたウェンディとルーシィも吹き飛んでしまい、それを心配(特にウェンディを)するグランとそんな状況でも元気にツッコミを入れるルーシィ。

 

「ナイス!グラン!!!ナツ!!!」

 

「!」

 

だが、今の一連のお陰でカナに魔力が溜まった。

 

「行けーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」

 

「・・・・ぶちかませっ!!!」

 

カッ

 

カナを一つの光の柱が包み込み、光出す。そしてその輝きは更に強くなる。

 

「集え!!!妖精に導かれし光の川よ・・・・照らせ!!、邪なる牙を滅する為に!!」

 

「バカな・・・・ッ!!?」

 

そして右手をブルーノートに突き出して・・・・その魔法を放つ。

 

 

妖精の輝き(フェアリーグリッター)!!!!!

 

 

キイィィィン

 

 

ブルーノートを取り囲むように放たれる妖精の輝き。

 

「ぐおああああっ!!?」

 

「すごい光!!!」

 

「これがギルドの三大魔法の一つ」

 

「消えろォオオオオオオ!!!」

 

更に魔力を込めるカナ。これで勝てる・・・・そう思っていた。・・・・だが

 

「オォオォオォ・・・・

 

 

落ちろォ!!!

 

ドンっ!!!

 

誰も予想していなかった。誰も思っていなかった・・・・まさか、妖精の輝きが・・・・ブルーノート()に落とされるなんて。

 

ズドオオオォン!!!

 

「うおおああ!!」

 

「ウッソだろ!?」

 

「ああああああっ!!」

 

あまりの衝撃に、グランも立っていられずに吹き飛ばされてしまう。妖精の輝きを放ったカナは腕から血を流し倒れ込んでしまう。

 

「この程度が妖精の輝きだと?笑わせんな。いくら強力な魔法でも、術者がゴミだとこんなもんか?ん?」

 

苛立ちながらも、少しずつカナに近づいていくブルーノート。カナは自らの力不足に絶望し、逃げる気力もない。

 

だが、そんなカナを守るようにグランがブルーノートの前に立ちはだかる。

 

「・・・・仲間は殺らせんぞ・・・・ゼェ・・・・」

 

「・・・・お前は本当に惜しかった。もう少しでオレは飛べたかもしれない。どうだ?そいつから妖精の輝きを取り出したら、特別にお前と他のクズどもを助けてやろう。悪くない条件だろ?」

 

「・・・・それはつまり、仲間犠牲にして自分等の命助けようってこったろ?・・・・お断りだ。仲間犠牲にするくらいなら、死を選ぶ」

 

「・・・・そうか、残念だ。結局オレは今日も飛べなかった。・・・・お前等は地獄に落ちろ」

 

ブルーノートはグランとカナを纏めて殺そうとする。最後の抵抗でグランはブルーノートに殴りかかろうとする・・・・だが、それよりも速くブルーノートを吹き飛ばした人物がいた。

 

突き出された拳がブルーノートを吹き飛ばし、カナとグランを助ける。その人物は、この場の誰も予想していなかった人物。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の魔導士・・・・ギルダーツが、家族の為に、その力をぶつける。

 

 



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第十七話 妖精達の危機

 

「ギルダーツ!!!!」

 

「ギルダーツだーーーーー!!!」

 

「・・・・・・・・・・・・お父・・・・さん」

 

「ああ、お父さ・・・・・・・・え、なんて?」

 

ギルダーツの登場で一気にこの場に希望が湧いてきた。歓喜するナツとハッピー・・・・そしてボソッと割とすごい事を言ったカナとそれを聞いたグラン。

 

「ここを離れろ」

 

「何・・・・!?」

 

ギルダーツはそうナツ達に言った。その表情は、憤怒を纏っていた。

 

「行け!!!」

 

ドッ!とブルーノートに駆け出すギルダーツ。それに対し、地面をひっくり返したブルーノート。その地面を砕きながらブルーノートに突っ込む。二人は互いに拳を出し、そして

 

 

ドゴォォッ

 

 

物凄い衝撃波を放ち、辺りを吹き飛ばす。その衝撃にグラン達も吹き飛ばされる。

 

「すごい・・・・」

 

「どっちもなんて魔力なの!?」

 

「・・・・一応、ギルダーツが勝ってんな・・・・ってハッピー大丈夫か?」

 

「あ・・・・アイ・・・・ありがとう、シャルル」

 

「え!?別にかばってないけど?」

 

「・・・・まぁ、とりあえずここを離れるか」

 

「そうだね、急ご!」

 

「う・・うん。だけど・・・・」

 

この場を離れることに賛成なグランとウェンディ。だがルーシィが何故か少し渋っていた。その視線の先にはカナがいる。

 

「・・・・行こう。私たちがいたら()()()()()の邪魔になる」

 

少し俯きながらそう言うカナを、悲しそうに見つめるルーシィ。グランも先程の“お父さん”発言は気になったが、とりあえず今はこの場を離れる事を最優先にした。

 

「強ェ──────!!!オレ!!このケンカ見て────!!!」

 

「・・・・流石にそんな場合じゃねぇだろ」

 

「行くわよ、ナツ」

 

そうしてこの場を離れていった後、その場に残ったのはギルダーツとブルーノートだけになった。

 

「・・・・大事な試験だった。大人が考えるより多くの感情がガキにはあった

 

 

明日へ歩き出す為のガキなりの決意を・・・・テメェらは踏み躙ったんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡り・・・・森の中、一人ウェンディを探していたエルザの元に、悪魔の心臓の幹部の一人“アズマ”と接触する。

 

それからずっとエルザとアズマは戦い続けた。木々を飛び回りアズマを切りさこうとするエルザに対し、その剣技を見切ってかわし、エルザを木で拘束しながら、追撃を加えていく。

 

「明星・光粒子の剣(フォトンスライサー)!!」

 

「っ!!ぐほおおおお!!」

 

対しエルザもアズマの攻撃を読みアズマに一撃を入れていく。

 

吹き飛ばされながらも、木々の間を飛びながら着地するアズマ。・・・・そんな攻防の間でも、アズマは楽しそうに笑っていた。それを不思議に思ったエルザがアズマに問う。

 

「何がおかしい。」

 

「お前のような強者を待っていた。楽しいね。お前の武勇はよく聞くね。恐らくは俺と同じ人種、戦いが全て、ただ強者を求めてきた証。」

 

「悪いが賛同はできんな。私は強者を求めてなどいない。」

 

「いいや、求めなければその強さは手に入らんね。」

 

自分と同じ人種だと、そう言うアズマにそれは違うと言うエルザにその発言を否定するアズマ。だがそれでもエルザは変わらない。

 

 

私は仲間を守れる力があればそれだけでいい。その力と引き換えならば、私は誰よりも弱くていい。

 

 

決して揺るがない意思を示すエルザ。その発言に驚愕の表情を浮かべる。

 

「矛盾・・・・・・・・しているな。」

 

「面白いやつだ。お前とは正々堂々やりたかったね。」

 

「どういう意味だ。」

 

()()()()という事さ。俺の魔法は“樹”の魔法失われた魔法(ロストマジック)大樹のアーク。爆発は大地の魔力を木の実に凝縮して起こしていた。・・・・だが、この魔法の真の力は、大地に根を張り、その土地に蓄積された魔力を支配すること。」

 

「土地の魔力を支配するだと!?」

 

「俺が真っ先にこの島に送られた理由はただ一つ。島の魔力を支配下に置くこと。」

 

「お前は何を言って・・・・」

 

「俺の本意ではないのだがね・・・・命令とあらば仕方がない。」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

先ほどから響いてある音・・・・そして抜け落ちている木々を見て嫌な予感がした。

 

「な・・・・何をした!!貴様・・・・!!!

 

 

私達の聖地に・・・・何をしたのだ!?

 

響き渡る轟音・・・それが何を意味するのか・・・・その答えをアズマが答える。

 

「マスターハデスはこの島の力をよく知っている。島の中央にそびえ立つ巨木・・・・天狼樹。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の紋章を刻んだ者に加護を与え、この島で命を落とすことを防ぎ、魔力を増強させる特別な力があった。」

 

「ッ!お前はその天狼樹を倒したのか!!?」

 

「そうだ。それにより、妖精の尻尾の命の加護が無効化するのと同時に、妖精の尻尾全魔導士の魔力を奪い続ける。」

 

「そんな馬鹿なこと・・・・出来るわけが・・・・」

 

もう完了しているね。妖精の尻尾は全滅するだろう

 

信じられないという目でエルザは言うがアズマはさも当然のように言う。

 

「だがね・・・・島の魔力をコントロールしあんたの力はそのままにした。さぁ妖精女王(ティターニア)、島中で仲間が瀕死だ。救えるのはあんただけね。仲間を守る力がいかなるものか…俺に見せてみろ。」

 

「何故、こんな事をする。」

 

「マスターハデスの命令だ。妖精の尻尾の魔導士を一人残らず消せとの事だね。」

 

「違う、なぜ私だけが動ける状況を作ったのだ。」

 

「言っただろう。俺は本気になったお前と戦ってみたい。それだけだね。」

 

「その言葉に嘘偽りがないのなら、貴様が敗北した暁には皆の力を元に戻してもらうぞ。」

 

「約束しよう。俺も本来、こんなやり方は好きではない。勝てたら・・・・の話だがね。」

 

「仲間の命がかかっている。必ず・・・・勝つ!!!!

 

エルザは剣を構え、アズマに斬りかかる。

 

「天輪・繚乱の剣(ブルーメンブラット)!!」

 

剣をいくつも出し攻撃をする。・・・・だが、それ等すべての剣は木によって塞がれていた。

 

葉の剣(フォリウムシーカ)!!!!」

 

そしてアズマは葉を飛ばす。ただの葉ではなく、相手を切り刻む魔法。エルザはそれを全て剣技で弾き落としていくが、それでも数が多く苦戦する。

 

枝の剣(ラームスシーカ)!!!!」

 

更にアズマは枝で攻撃をしていく。剣とか言ってる割にはまるで槍のように素早い突きを繰り出していく枝。

 

「かっ!?」

 

その激しい攻撃の連撃に、防御が間に合わずまともに受けてしまうエルザ。

 

「あぐっ!?」

 

そして、枝が巨大な拳となり、エルザを殴る。元の鎧に戻ったエルザは追撃をかわしていく。

 

そして、今度は速度重視の鎧に換装して、アズマに向かって飛び込む。

 

「ぐほぉ……!」

 

二撃の太刀がアズマの体に浴びせられる。そして、エルザは近くの枝に乗り、更に追撃をしようとしたが、アズマは枝で自らの体を覆い、攻撃を防ぐ。

 

「なっ!?」

 

攻撃を塞がれたエルザはすぐに距離を取ろうとしたが、足首を何か・・・・いや誰かに掴まれていた。それは枝の中に身を隠していたアズマだった。枝の中を移動してエルザの足元まで来たのだ。

 

「タワーバースト!!!!」

 

そしてエルザに強力な一撃を与える。炎の柱に呑み込まれたエルザは近くの枝に落下する。全身ボロボロだが、まだどうにか動けていた。

 

「きゃ・・・・却下する!」ルーシィじゃあるまいし

 

「一人言かね。」

 

突然何かを却下したエルザ。何かは知らないが、とりあえずルーシィはとばっちりだろう・・・・何かは知らんが。

そしてすぐに鎧を変える・・・・だが、今までなものとは全くの別のものだった。

 

胸に包帯・・・・いやサラシを巻き、防御能力の一切がなさそうな布地のズボン。

 

エルザがアズマを倒す為に編み出した結論・・・・それは防御の一切を捨て、攻撃にすべての魔力を集中させる事だった。

 

「いでよ……妖刀紅桜!!」

 

その手に持っていた剣・・・・いや、刀はエルザのすべての魔力を纏い、怪しく光。

 

「おおおおおおおおおおおおお!!!」

 

「来い!妖精女王!!」

 

防御を捨て、完全に攻撃に特化した形。これが決まらなければ、エルザの敗北・・・・即ちギルドの敗北。だから負けられない。・・・・だが、相手はそれを許さない。

 

「何っ!?」

 

木の枝が伸びて、エルザの体を拘束していく。

 

「うおおおおおおおおっ!!!」

 

「うぐっ!?ぬあぁあぁあああああっ!!?」

 

完全に拘束され、メキメキと枝に巻きつかれるエルザ。アズマは拘束していきながらも、攻撃の手は緩めなかった。

 

「大地に眠りし“天狼”の魔力を解放する!!

 

 

大地の叫び(テラ・クラマーレ)!!!!」

 

ドゴオオオオオオオォォッ!!!

 

島一つの強大な魔力・・・・これで勝った、そう思ったアズマだったが、おかしな光景を目にした。

 

たった今放たれた大地の魔力が、心なしか縮んでいくように見えた・・・・いや、確実に縮んでいる。というよりも、何かに吸収されているようだった。

 

何かに吸収された魔力がどんどんと小さくなるとそこにいたのは、枝の拘束から解かれたエルザ・・・・・・・・そして

 

「アグッ・・・・アグッ・・・・ケップ。・・・・流石に多い」

 

この場に来れるはずがないグランだった。エルザに魔法が当たる直前に、エルザの拘束をとき、あの強大な島の・・・・いや、大地の魔力を食べたのだ。

 

「なっ!・・・・オマエはっ!!?」

 

「・・・・グラン?だが、何故?」

 

「や、どうもエルザさん。悪いんだけど、アイツ譲ってくんない?・・・・やられた分とギルドのみんなの分をまとめて返してやる」

 

「・・・・あぁ、構わん。」

 

そう言い、エルザはその場に座り込んだ。いくら“大地の叫び”を食らっていないとはいえ、それまでの疲労が一気にきたのだ。諦め?いや違う。必ず勝てると、安心したからだ。

 

グランは全てを吸収し終え、アズマに向かう。

 

「・・・・生きていたのかね。」

 

「ああ、お生憎とな。あの程度で死ぬか。・・・・ったく、あんたが島の魔力を支配しようとしてたんだな・・・・どうりで土食っても、あんまり魔力が回復しねぇわけだ」

 

そして拳を構え、アズマに飛びかかる。アズマもやられまいと“葉の剣”や“枝の剣”を駆使して攻撃をする。・・・・だが、それ等全ては無意味に終わる。葉も枝も、今のグランには全く通じない。・・・・今のグランは、天狼島の大地の魔力を直接吸収したのだ。もはや最初にあった頃のグランではない。

 

グランは腕を剣に変えた。だがその大きさはその身の丈ほどデカかった。その剣に大地の魔力をのせていく。アズマも防御しようとするが、アズマは直感的に感じた・・・・己の敗北を

 

「滅竜奥義・・・・

 

極裂・地竜斬!!!

 

「・・・・見事」

 

ズバァンッ!!

 

放たれた斬撃は、枝の盾を・・・・そして足場の大樹ごとアズマを切り裂いた。

 

切り裂かれたアズマはそのまま下に落ちていく。グランはエルザに肩を貸して、下に降りていく。アズマの体は少しずつ植物に取り込まれていた。

 

「お・・・・お前、その体・・・・」

 

「・・・・大丈夫か、それ?」

 

「失われた魔法の副作用だね。過度に使いすぎたようだ。約束は守る、皆の魔力は元に戻るだろう。・・・・それにしても、何故お前は動けたのかね」

 

植物に取り込まれながら、グランに問いかけるアズマ。エルザも気になっていた。アズマに支配され、エルザ以外の妖精の尻尾のメンバーは魔力を使えず、逆に魔力を奪われてしまうはずなのに。

 

だが、グランから出された答えは

 

「え、分っかんねぇ。ウェンディ達が急に倒れたと思ったら、大地の魔力の流れがあきらかにおかしかったから、それ辿ってここに来ただけだし・・・・」

 

「・・・・辿る?どうやって?」

 

「どうって・・・・俺、“大地”の滅竜魔導士ですし・・・・目は多分、他の滅竜魔導士より良いから。」

 

「・・・・ふっ、そうか。オマエには勝てそうもないね」

 

グランのそんな適当な説明を受け、笑うアズマ。そんな中でも、どんどん植物に取り込まれていく。

 

「・・・・オマエ達は何故、ゼレフを求める?」

 

「・・・・何が目的なんだ?」

 

エルザとグランが悪魔の心臓の目的を聞き出す。アズマはそれに応えていく。

 

世界の始まりの魔法・・・・一なる魔法に近づく為か・・ね

 

そう応えたアズマの体の殆どが植物に取り込まれていた。

 

「一なる魔法?」

 

「・・・・それに辿り着いたら、一体どうなるというのだ!」

 

そう叫ぶエルザだったが、アズマの体はとうとう完全に植物に取り込まれてしまっていた。

 

「一なる魔法・・・・」

 

「・・・・とりあえず、これでみんな助かる。・・・・・・・・あ、なんか体から抜けてく」

 

結局、奴らの目的の真意はわからなかったが、これでギルドの皆んなの魔力は元に戻った。この戦い、エルザとグランの勝利に終わった。

 





なんか書いてくうちにオリ主の強さバグってきたなぁ〜


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第十八話 悪魔の心臓(グリモアハート)VS 妖精の尻尾(フェアリーテイル)・・・・決着


今回は詰め込んだ。ハデス戦の最後まで詰め込んだ。多分読んでて長いと思う。だって自分も書いてて思ったもん。


 

「・・・・そうか、ギルダーツが戻ってきたのか」

 

「ああ・・・・これで残りの強敵はマスター・ハデスと七眷属の残りくらいだな」

 

アズマを撃破した後、皆がいる場所まで向かっていた。その時、ギルダーツが来た事と自分の知り得る情報を提供していた。

 

「それにしても、お前が来た時は本当に驚いたぞ・・・・そのおかげで、助かったがな」

 

「んや、多分俺が来なくてもエルザさんが勝ってたと・・・・んあ?」

 

そんな時、グランは少し離れたところでピンク髪の少女が黒髪の青年を背負いながら走っていて、それを地面を這いながら追っているジュビアの姿を見つけた。

 

「・・・・え?何してんの?」

 

「・・・・?どうした?」

 

「・・・・なんかジュビアが這いながら誰か追ってるっぽい・・・・なんか不安だからちょいと行ってくる」

 

「そうか、頼んだ」

 

そう言ってその場を離れ走り出すグラン。本当に頑丈な奴だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 ま ち な さ い 」 

 

「ひいーーーー!!何コイツー!!」

 

地面を這いながらピンク髪の少女・・・・メルディを追っているジュビア。メルディを追っている理由は、メルディが背負っている青年・・・・ゼレフを渡してもらう為、というかそうグレイに言われたから。

 

だが、ジュビアに争う意志は無い・・・・メルディと争いたくないからだ。それはメルディも同じのようだった。

 

「メルディー!!」

 

だが、そこに現れたのは・・・・グランに吹き飛ばされてほったらかしにされていたザンクロウだった。

 

「ザンクロウ!!?」

 

「ゼレフをどこへ連れてくつもりだってよォ」

 

「こ・・・・これは」

 

「やっぱり、てめェウルティアさんと一緒に裏切るつもりだったのか ア?」

 

「ちが・・」

 

否定しようとしたが、ザンクロウはもうそう決めつけていた為、聞く耳を持たなかった。

 

てめェはもう悪魔の心臓(グリモアハート)じゃねえぇ!!!!

 

そう言って炎のブレスを放つ。咄嗟にゼレフを離してしまったメルディ・・・・そしてそんなメルディを守ろうと近づくジュビア・・・・だが、間に合わない。その時

 

「きゃっ!」「え・・・・?」

 

「うわっ、危なっ!」

 

間一髪その場に間に合ったグランが二人を担いで炎を避けるグラン。

 

「て・・・・てめェは!?」

 

「よう、炎神野郎・・・・随分と長い昼寝だったな?」

 

「黙れってよ!!・・・・今はてめえに用はねぇんだよ!!ウヒ、ウヒヒヒヒッ!ゼレフはオレ達のもんだってよォ、ウヒヒヒヒ」

 

そう言ってザンクロウは倒れている青年・・・・ゼレフを掴んだ。

 

「待って・・・・ゼレフはウルティアの未来・・・・私の・・・・未来・・・」

 

「・・・・あれがゼレフ・・・・それに未来って?」

 

「めでてぇ奴だな、いつまでそんな事言ってやがるって」

 

「ウルティアは約束した・・・・大魔法世界に行けば・・私の街が元通りになるって・・・・・・・・」

 

 

その街を壊したのがウルティアさんだけどな

 

 

「・・・・・・・・ッッ」

 

「・・・・よくわからんが、嫌なカミングアウトだな・・・・ん?」

 

高らかに笑うザンクロウ・・・・そのザンクロウが放った事実に絶望するメルディと事情はよく分からないが良いカミングアウトでは無いことが分かったグラン・・・・そして気づく。ザンクロウが掴んでいたゼレフの様子が少し変わったのを見た。

 

「・・・・アクノロギア」

 

「ア?」

 

「・・・・あー、まずい!!」

 

嫌な予感がしたグランは咄嗟にメルディとジュビアを庇うように抱き寄せた。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そして、目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・あー何が・・・・ジュビアと・・・・えーっとメルディ?は無事か・・・・ザンクロウは」

 

時間が経ち、目を覚ましたグランはまず近くにいたジュビアとメルディの無事を確認した。そしてついでにザンクロウの安否も確認する・・・・しかし

 

「・・・・死んでる・・・・というか、ここ等一体が死んでる。・・・・あのゼレフの仕業か?」

 

とりあえずザンクロウを埋葬・・・・敵を聖地に埋葬するのも少しおかしい話だが、まぁ・・・・・・・うん。そこは気にしないどこう。

 

埋葬後、メルディとジュビアを安全な場所に移動させ、念のため防護壁のように土を建てる。

 

・・・・そして、感じた。

 

「・・・・・・・・ウェンディ?」

 

一瞬、ウェンディの身に何かが起きた事を。・・・・それがわかった瞬間、グランは駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グランがゼレフにより気を失った時、ナツ、ルーシィ、グレイ、エルザ、ウェンディ・・・・そしてハッピーとシャルルとリリー達は悪魔の心臓のマスター・ハデスに戦いを挑んだ。

 

相手はマスター・マカロフをも凌駕する魔導士・・・・故に最初から全力で挑んだ。全員の全力の攻撃、一切の手加減なしの攻撃。・・・・だが、それでもハデスには届かなかった。それどころか、ハデスにとってはただの準備運動に過ぎなかった。

 

そしてとんでもない事実を告げた。

 

マスター・ハデスは・・・・かつての二代目妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスター・プレヒトであると。

 

そんな事信じられないと、ふざけんなと言うナツ達だが、事実だと言うハデス。

 

そして、魔力の質が変わったハデスに徹底的に打ちのめされてしまったナツたち。魔法と踊るハデスの実力は、想像を遥かに上回っていた。

 

「妖精に尻尾はあるのかないのか?永遠の謎・・・・ゆえに永遠の冒険。・・・・ギルドの名の由来はそんな感じであったかな?」

 

「うう・・・・」

 

そんな事を言いながらナツに近づくハデス。そしてナツの頭を踏みつけるハデス。

 

「むぐ」

 

「しかしうぬらの旅はもうすぐ終わる。メイビスの意志が私に託され、私の意志がマカロフに託された・・・・しかし、それこそが間違いであった。マカロフはギルドを変えた」

 

「変えて何が悪い!!!」

 

「魔法に陽の光を当てすぎた」

 

「それがオレたち妖精の尻尾(フェアリーテイル)だ!!!てめえみてぇに死んだまま生きてんじゃねぇんだ!!!命かけて生きてんだコノヤロウ!!!!

 

 

変わる勇気がねえならそこで止まってやがれ‼︎‼︎

 

そう啖呵をきるナツ。だがハデスにとってはただの戯れ言にしか聞こえない。

 

「やかましい小鬼よ」

 

ズドンっ

 

そう言いながらナツを撃つハデス。

 

「がっあぁっ」

 

「恨むならアカロフを恨め」

 

ズドンっ ズドンっ ズドンっ ズドンっ ズドンっ ズドンっ ズドンっ ズドンっ ズドンっ ズドンっ

 

何度も何度もナツを撃つハデス。何とか止めようとしようとするも、先程の猛攻で動けない他の皆。止めたくても、動かない体。

 

「マカロフのせいで、うぬは苦しみながら死ぬのだ」

 

「・・・・ハァー・・・・・・・・ハァー・・・・お前は・・ハァ・・・・ハァ・・・・じっちゃんの・・・・仇・・・だ・・・・」

 

「・・・・もうよい、消えよ」

 

とうとうハデスが魔力を込めて、ナツを消滅させようとする。その瞬間

 

 

ゴゴゴオオオオオオオン

 

 

一つの巨大な雷が船に落ちた・・・・その落ちた雷がナツとハデスの前に現れる。

 

「こいつがじじいの仇か・・・・ナツ」

 

「ラクサス・・・・」

 

この場に現れたのは・・・・ほんの少し前に妖精の尻尾を破門にされ、旅立ったはずのラクサスだった。

 

()()?・・・・ぬごっ!?」

 

ラクサスの姿に、一瞬だけマカロフの影を見たハデスはラクサスの一撃をくらい少し吹き飛ぶ。

 

そしてさらに

 

 

ドゴォォォンッ!!

 

 

船の壁が破壊され、そこから更に乱入者が現れハデスに殴りかかる。

 

「ぬぐぅっ!?」

 

「ウェンディやったのはお前かゴラァァァァっ!!!」

 

「グランっ!!?」

 

「無事かウェンディ!!!・・・・・・・・とみんな」

 

「やっぱ私らはオマケか!!?」

 

ウェンディの危機を感じとり、凄い勢いで走り出したはいいが、どこにいるか全く分からず島中を走り回り、ようやく悪魔の心臓の船を見つけ、特に何も考えず壁を壊して突入したグランがいた。・・・・いや、しっかり心配してたよ?ウェンディ以外も・・・・多分。

 

「・・・・お前が、噂に聞く新しい滅竜魔導士か」

 

「・・・・あれ?あんたラクサスだっけ?オレはグラン。よろしく」

 

「あ、ああ・・・・」

 

いや、マイペースか・・・・いや、コイツは結構自由だったな。

 

「こやつ・・・・マカロフの血族か・・・・そやつは・・・・知らんな」

 

「まぁびっくり・・・・俺は眼中に無いらしい・・・・クソジジイめ」

 

「フッ、そうらしいな・・・・それにしても情けねぇな。揃いも揃ってボロ雑巾みてーな格好しやがって」

 

「・・・・だなっ」

 

「何故、お前がここに・・・・それにグラン、ジュビアは無事か」

 

「先代の墓参りだよ・・・・これでも()妖精の尻尾だからな」

 

「無事だぞ・・・・ゼレフには逃げられたっぽいが」

 

「俺は初代(メイビス)の墓参りに来たつもりだったのになぁ。こいつァ驚いた・・・・二代目さんがおられるとは」

 

「え、アレ二代目なの?・・・・なら、そろそろ引退してもらわねぇと」

 

 

「ああ・・・・せっかくだから墓を作って、おがんでやるとするか

 

 

「埋葬なら任せろ・・・・二度と出てこられねぇよう地中深く埋めてやんよ

 

 

物凄い剣幕でハデスを睨みつける二人。そんな二人に対し、一つ小さなため息を放ったハデス

 

「やれやれ・・・・小僧に、こんな思い上がった親族と兵隊がいたとは」

 

睨み合う三者・・・・最初に動いたのはラクサスだった。ハデスを蹴り上げ、殴りつける。

 

吹き飛ばしたハデスに更に近づく殴りつけるグラン。床に叩きつけられたハデスを攻撃するラクサス。だがその攻撃はハデスに避けられてしまう。

 

逃すまいと、二人同時にブレスを放ち退路を断つ。

 

ハデスは空中に浮きながら、魔力の鎖を放つ。だがそれを難なく避ける二人・・・・だがハデスの狙いは他にあった。グランとラクサスの後ろにあった巨大な地球儀に鎖を突き刺し、それを振り回すハデス。それを正面から迎え撃ち地球儀を破壊するグラン。

 

「フンッ」

 

「くっ!?」

 

「うおっ!?」

 

ハデスは掌底を繰り出し、ラクサスとグランに魔力をぶつけていく。だが、それ自体にさほど威力は無かった。少し怯む程度だった・・・・だがそれが狙いだった。

 

ハデスはその怯んだ一瞬の時間で術式を作りだし、グランとラクサスの周りに魔力の帯を作り出す。・・・・そして

 

 

ドゴォォンッ

 

 

爆発が起きる。その爆風に巻き込まれて吹き飛ばされるナツたち。

 

と、その爆発の中から一筋の雷が飛び出し凄い速さでハデスの後ろに回る。爆発が起きる瞬間、自身の身体を雷に変え避けていたラクサスはそのままハデスにその勢いのまま蹴りを喰らわせる。

 

「かああっ!!?」

 

流石に避けきれなかったハデスはまともにくらい、吹き飛んだハデス。

 

そして、先程爆発した場所の床が少し盛り上がり、そこから勢いよくグランが飛び出し、ハデスを殴り上げる。

 

グランも爆発の瞬間床に潜り込み避けていたのだ。

 

「す・・・・すげぇ・・・・ってか、え?グランの奴、ここまで強かったのか?」

 

「ラ、ラクサスもここまで強いことに驚いたが・・・・まさかグランもこれ程までに実力が高かったとは・・・・」

 

殴り飛ばされたハデスはすぐに立ち上がりラクサスとグランを睨みつける。ラクサスとグランもハデスを睨みつける。・・・・だが

 

「ぐふっ・・・・」

 

「ゴホッ・・・・」

 

「ラクサスッ!!グランッ!!」

 

先ほどの魔法を避けきれず食らっていた二人は、床に膝をつけてしまう。

 

「・・・・世界ってのは本当に広い・・・・こんなバケモンみてーな奴がいて・・・・ガキのくせしてオレぐらい強ぇ奴がいるとは・・・・オレも、まだまだ・・・・」

 

「・・・・まぁ、世界ってそんなもんだしな・・・・あー、痛い」

 

「何言ってんだ、ラクサス!!!グラン!!!」

 

「・・・・やってくれたのぅ・・・・ラクサスとやら・・・・そして、そこの兵隊・・・・グランと言ったな・・・・うぬらは、もう消えよ!!」

 

確実に仕留めるために放った魔力・・・・その魔力は喰らってはダメだと、この場の誰もがかんじるほどだった。

 

「立て!!ラクサス!!グラン!!」

 

「・・・・あーらら、これはまずったな」

 

「オレはよぅ・・・・もう妖精の尻尾(フェアリーテイル)の人間じゃねぇけどよ・・・・じじいをやられたら、怒っていいんだよな・・・・」

 

「・・・・まっ、それが家族じゃねぇか?」

 

そう言いながらラクサスは床に向けて、魔力を込めていた。それをみたグランは己の身体を最大限まで固め、ハデスの魔力から自身とラクサスを守る。

 

「・・・・アンタも粋なことするなぁ」

 

「・・・・うるせぇよ」

 

そして

 

ゴオォンッ

 

物凄い爆風が放たれ皆吹き飛んでしまう。グランが盾になっていたとはいえ、まともに喰らった二人はそのまま吹き飛んでしまった。 

 

「俺の・・・・奢りだ。ナツ。」

 

「え……?」

 

「ナツさん……?」

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・ごちそう・・・・様」

 

その言葉と共に立ち上がったナツ。その体には不思議なことに帯電していた。まるで電気・・・・いや、雷を受けているように。

 

「俺の全魔力だ」

 

「自分の魔力をナツに!?」

 

「いや、本当凄いよね、うん」

 

「雷……食べちゃったの?」

 

ラクサスが全魔力をナツに与える。それはつまり、魔力がほとんどない状態でハデスの攻撃を受けた、ということになる。いくらグランがいたとはいえ、あの魔力では余波も相当の威力となる。

 

「何で・・・・俺に・・・・俺はラクサスより弱ぇ・・・・オレより・・・・グランにやった方が」

 

「強えか弱えかじゃねぇだろ。傷つけられたのは誰だ?ギルドの紋章刻んだやつがやらねぇでどうする?」

 

「・・・・それに、俺に雷属性は意味ねぇしな」

 

笑いながらそう答えるラクサスとグラン。・・・・そして

 

 

ギルドの受けた痛みは、ギルドが返せ・・・・100倍でな。

 

 

オレの代わりに思う存分ぶつけてやれ

 

 

「あぁ」

 

「炎と雷の融合・・・・雷炎竜

 

立ち上がったナツの姿を見て、ボソリと呟くウェンディ。雷炎竜・・・・まさしくその通りの姿をした滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)がそこにいた。

 

「100倍返しだ・・・・うぉぉおおおおお!!」

 

ナツは声を荒らげながら全魔力を解放する。その力の前に、あのハデスも驚きを隠せていなかった、そして、雷炎竜のその圧倒的な力があのハデスを吹き飛ばせた。

 

「があぁぁぁぁ!!」

 

マスターハデスは殴り飛ばされ、壁へと叩きつけられ、頭を蹴られたと思ったら直後に雷が落とされる。

 

これが雷炎竜・・・・炎による攻撃の後に雷による追加攻撃が行われる。

 

「俺たちのギルドを傷つけやがって!!お前は・・・・消えろぉ!!」

 

炎と雷の攻撃。その破壊力は、船の底を破壊するほどの威力。

 

「ねあっ!!はっはー!!両手を塞いだぞォ!!」

 

その爆発から出てきたハデスの行った攻撃・・・・魔力で出来た鎖で両手を一纏めに拘束される。だが、そんなものは意味がなく、すぐさまナツに鎖を破壊されてしまう。

 

「な!?」

 

「雷炎竜の・・・・咆哮!!」

 

ドゴォォォンッ!!

 

「ぬ、があぁぁぁぁぁぁ!」

 

雷と炎が合わさったブレス。そのブレスはハデスを飲み込み、船の壁を破壊してそのまま天狼島まで、削っていく。

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・」

 

完全に気絶しているハデス。これでようやく・・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)の勝利が確定した。

 

「やった・・・・ぞ」

 

ブレスを放ち、フラついるナツ・・・・そのまま床の空いた穴に落ちそうになってしまう。それをルーシィが受け止めようと動く前に・・・・先に動いていたグランがつかむ。

 

「・・・・おつかれ」

 

「た、助かった・・・・もう完全に魔力がねぇや・・・・」

 

「これで、終わったな……」

 

「はい!」

 

全員が安堵した。やっと終わったと、全身から疲れが滲み出るようだった。グランはナツを一度ルーシィに預け、その場に座り込む。

 

「グランっ!大丈夫?」

 

「あぁ、ウェンディ。・・・・まぁなんとかな・・・・クソッ、あんのジジイめ。防御してもクソ痛かったぞ。・・・・おかげで魔力ほとんど持ってかれたしな!!!」

 

「・・・・お前本当に強いな・・・・まさかラクサスと一緒に戦えるとか・・・・」

 

「うるせぇよ、ったく。疲れ・・・・あー、嫌な予感」

 

「え?」

 

「・・・・大した若造共だ。」

 

グランが何かを見てそう言った直後・・・・聞こえてくる言葉に、全員が耳を疑った。その声が聞こえた方を向くと・・・・そこには確かに先程倒したはずのハデスの姿があった。

 

「マカロフめ・・・・全く恐ろしいガキどもを育てたものだ。私がここまでやられたのは何十年ぶりかのう。・・・・このまま片付けてやるのは容易いことだが、楽しませてもらった礼をせねばな。」

 

「ウソだろ……!?」

 

「あの攻撃が効かなかっただと……!?」

 

「・・・・あー本当・・・・めんどくせぇじじいだな、おい。」

 

ハデスはマントを羽織り、今までつけていた眼帯を外す。・・・・そして、その目を開く。

 

悪魔の眼・・・・開眼!!!!

 

うぬらには特別に見せてしんぜよう

 

魔道の深淵・・・・ここからはうぬらの想像を遥かに超える領域

 

「バカな・・・・」

 

「こんなの・・・・ありえない・・・・」

 

「・・・・気持ち悪りぃ魔力だな」

 

「こんな魔力は感じた事がない・・・・」

 

「まだ増幅していく・・・・」

 

先程以上に膨れ上がった異質な魔力。それぞれの顔に絶望が現れる。グランはなんか気持ちの悪い物を見る目で見ていた。・・・・コイツ大丈夫か?

 

「終わりだ、妖精の尻尾。」

 

「くそっ!!!動く力・・・・さえ、残ってねえ・・・・!!!」

 

「魔の道を進むとは、深き闇のそこへと沈むこと。その先に見つけたるや、深淵に輝く一なる魔法。あと少し・・・・あと少しで一なる魔法に辿り着く。だが、その“あと少し”が深い。その深さを埋めるものこそ大魔法世界、ゼレフのいる世界。今宵、ぜレフの覚醒とともに世界は変わる。そして私はいよいよ手に入れるのだ、“一なる魔法を”。

 

「一なる魔法……」

 

「・・・・アズマのやつも言ってたな。・・・・ってなんだあの変な構え?」

 

グランが言うように、ハデスは腕を上げ、少々独特なポーズを取り出す。

 

「うぬらはいけぬ・・・・大魔法世界には。うぬらは足りぬ、深淵へと進む覚悟が。」

 

「なんだあの構えは……! 」

 

「・・・・ふざけてくれてたらいいんだけどな」

 

グランのそんなふざけた願いは・・・・次の瞬間、打ち砕かれた。

 

「ゼレフ書、第四章十二節より・・・・裏魔法天罰(ネメシス)

 

ハデスのその宣言とともに、周りの瓦礫に変化が起こる。手のひらに収まるような小さな瓦礫から、黒ずんだ何かが出てきた。そしてその黒ずんだ何かは徐々に・・・・徐々に形を変えていった。

 

手が生えて・・・・足が生えて・・・・だが、形はどれも様々な、とても歪な化け物が生成されていった。

 

「が・・・・ガレキから・・・・化け物を作ってるのか……」

 

「ひっ・・・・ひぃん・・・・ひっ・・・・」

 

「深淵の魔力をもってすれば、土塊から悪魔をも生成することが出来る。悪魔の踊り子にして天の裁判官、それが裏魔法。」

 

見た目は歪・・・・だが、一体一体が凶悪な魔力の塊。皆がそれを恐れて、恐怖していた。・・・・だが、この場に置いてこの圧倒的な絶望を前にしても恐怖しなかったものが、二人いた。ナツとグランだ。

 

グランはウェンディを・・・・ナツはルーシィを掴んだ。そしてナツが言う。

 

「なんだ・・・・こんな近くに仲間がいるじゃねーか。恐怖は“悪”ではない。それは己の弱さを知るという事だ。弱さを知れば、人は強くも優しくもなれる。俺達は自分の弱さを知ったんだ、だったら次はどうする?強くなれ!!立ち向かうんだ!!一人じゃ怖くてどうしようもないかもしれねーけど、俺たちはこんなに近くにいる。すぐ近くに仲間がいるんだ!!今は恐れることはねぇ!!俺たちは一人じゃねぇんだ!!

 

ナツの激励に、仲間達が励まされる。グランは何も言わなかった・・・・だが、きっと思いは同じ・・・一人じゃない・・・・仲間がいるから、大丈夫だと。

 

「見上げた虚栄心だ・・・・だが、それもここまで。」

 

「行くぞぉ!!」

 

「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」

 

ナツの言葉と共に全員が走り出す。目的はただ一つ・・・・ハデスを倒す・・・・その為に。

 

「残らぬ魔力で何が出来るものか・・・・踊れ、土塊の悪魔。」

 

その声とともにハデスの激しい攻撃が始まる。しかし・・・・ここにハデスの一つの誤算があった。

 

確かに皆、魔力をほとんど消費している。魔法など、ろくに使えない・・・・だから、この猛攻撃は避けられない。そう思っていた。・・・・だが、この場の誰よりも先に前に出て、その攻撃を全て受け切っているものがいた・・・・グランだ。

 

ハデスによって生み出された悪魔は・・・・全てガレキ・・・・土塊からできている。・・・・例え、裏魔法によって悪魔となったとしてもその元はただの()()だ。・・・・つまり。

 

『大地』の滅竜魔導士には、全く意味がない攻撃だ。

 

流石に驚愕を示したハデス。そして、グランが盾となり、壁となっていたおかげで、他の皆はナツをハデスの元まで送ることができた。ルーシィとウェンディが投げ、エルザとグレイが自らの足を踏み込む足場となる。そしてハデスに突っ込んでいくナツ。

 

「全てを闇の底へ・・・・日が沈む時だ、妖精の尻尾。」

 

飛んでくるナツなど気にもとめない様子のハデス。ナツの攻撃に対しハデスが魔力をぶつけようとする。・・・・その瞬間、船が大きく爆発する。屋根が吹き飛び、部品が吹き飛び、船のパーツも吹き飛び・・・・もはや形を保っているのがやっとの状態だった。

 

そして、爆発が晴れると共にマフラーが宙を舞う。そこで皆が見たのは・・・・ハデスを殴りつけるナツだった。

 

「ナツ!! 」

 

「ば、馬鹿な!!裏魔法が効かぬのか!?ありえん!私の魔法は……!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

パンチを更にハデスの顔面に叩きつけるナツ。止まらない攻撃。止められない攻撃を喰らい続けるハデス。と、そんな時。

 

「……あれ?」

 

「どうした、ウェンディ?」

 

ウェンディが何かに気づいたかのように、視線を別方向に向けていた。その視線を追って皆が同じ方向を向いた。

 

「なっ、そんな・・・・天狼樹が元通りになっている!?

 

倒れていた島の巨木天狼樹。・・・・確かそれは1度アズマによって倒されていた・・・・だが何故か元通りになっていた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そして、天狼樹が元に戻ったということは・・・・それはつまり

 

「魔力が元に……」

 

「戻っていく!」

 

「これなら・・・・行ける!!」

 

「おおおおおおおおおおお!!勝つのは俺達だーーーっ!!」

 

「否ー!!」

 

ナツの言葉を否定するように、ハデスはナツを殴り飛ばす。

 

「魔道を進む者の頂きに、辿り着くまでは・・・・悪魔は眠らない!!・・・・いがっ!!」

 

更にそんな事を言うハデスを否定するように、ラクサスがハデスを殴り飛ばす。

 

「いけぇ!!フェアリーテイル!!」

 

そして、本当に・・・・本当の決着をつける為、全員が動き出す

 

「契約まだだけど・・・・開け!磨羯宮の扉!カプリコーン!!

 

「うぬは・・」

 

ゾルディオではありませんぞ。(メエ)はルーシィ様の星霊、カプリコーン!!

 

「グホォっ!?・・・・ぐぬぅ!?」

 

ルーシィの新たな星霊・・・・カプリコーンが攻撃し。

 

「見様見真似!天竜の翼撃!!

 

「おああああああ」

 

ウェンディがハデスを大きく吹き飛ばし。

 

氷魔剣(アイスブリンガー)!!

 

「ぐはあっ!?」

 

グレイの攻撃でハデスを氷に閉じ込め

 

天輪・五芒星の剣(ペンタグラムソード)!!!

 

「ガッ・・・・ハッ・・・・っ!?」

 

エルザが氷を砕きながら、ハデスを斬りつけ

 

地竜の大鎚!!!!

 

「・・・・・・・・・・・・っ!!?」

 

そして、グランが床に叩きつけ、吹き飛ばす。その吹き飛んだ先には・・・・右手に炎・・・・左手に雷を携えたナツがいた。

 

「うおおお!!

 

滅竜奥義・・・・改!!紅蓮爆雷刃!!

 

もうほとんど悲鳴すらも上げられず、魔力もほとんどない状態でくらった滅竜奥義。まともにくらったマスター・ハデスは綺麗に吹き飛ばされ・・・・とうとう完全に伸びていた。

 

それはつまり・・・・この戦いに妖精の尻尾(フェアリーテイル)が勝利した瞬間だった。

 

「────────これが俺達のギルドだァっ!!!」

 





というわけで、VS悪魔の心臓編は終了・・・・そして、次回いよいよ奴が島にやってくる。


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第十九話 厄災・・・・その名もアクノロギア

 

 

「終わったな……」

 

「あぁ……」

 

「私達勝ったんだね、グラン!!」

 

「・・・・あぁ、勝ったな、ウェンディ。」

 

「みんなー!!」

 

「うわあああ!!助けてナツー!!!」

 

皆が勝利に浸っていると、何やら叫びながら走ってくるハッピーとシャルル、そして魔力が切れてふらついているリリー。そしてその後から、恐らく、悪魔の心臓の下っ端と思わしき者達が大量に走ってきていた。

 

「待ちやがれーーーーっ!!!」

 

「ネコーーーーー!!」

 

「よくもマスターの心臓を!!」

 

「マズイぞ……」

 

「くそ・・・・流石にもう魔力が0だ」

 

「うあ・・・・」

 

「あー、めんどくせぇ・・・・」

 

流石に魔力がなく、消耗しきっている状態ではほとんどなす術が無かった・・・・だが、グラン達の後ろに複数の影が現れる。

 

「そこまでじゃ!!」

 

現れたのは他でもない・・・・キャンプに残っていた妖精の尻尾のメンバー達だった。

 

「うおお!増えたァ!!」

 

「あ・・・・あれはマカロフか!?」

 

「てか・・・・あそこ見ろ!!!マスター・ハデスが・・・・倒れてる!!」

 

マカロフ達妖精の尻尾のメンバーが現れたこと、そしてマスター・ハデスが倒れてること・・・・この二つの事実だけで悪魔の心臓の残党は完全に戦意が喪失していった。

 

「今すぐこの島から出ていけ。」

 

「ひいいいい!!」

 

「わ・・わかりましたー!!」

 

「信号弾だ!!」

 

慌ただしく逃げていく残党達・・・・これにより、完全に妖精の尻尾の勝利が確定した。

 

「やったね!!グラン!!・・・・グラン?大丈夫?」

 

「アンタ、顔色悪いわよ?」

 

「・・・・あー、あのジジイが出した気持ち悪りぃバケモン食ったからかなぁ・・・・クソ、瓦礫だからって食うんじゃなかった」

 

「・・・・ソレ、半分自業自得じゃない、もう」

 

まぁぶっちゃけあんな気持ち悪い物を食う方が悪いが・・・・しょうがない。他のメンバーもそれぞれが勝利に浸ったり、ラクサスが来たことに怒ったり、喜んだり、もう色々だ。皆ボロボロで、満身創痍がとても似合う状態だった。

 

「とりあえず、キャンプまで戻りませんか?」

 

「少しは休まないと体がもたないわ」

 

「・・・・まぁここに居続ける意味もないからな」

 

ウェンディとシャルルの一言で皆、キャンプ跡地へと足を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・いやぁ、終わったなぁ〜」

 

「グラン、本当に大丈夫?無理してない?」

 

「オレは大丈夫だ・・・・ウェンディも、そんなに使って大丈夫か?」

 

「うん!天狼樹が戻ってから調子がいいの!」

 

キャンプに戻ってからは、皆それぞれ休息をとっていた。グランは、地面に座りその近くでウェンディが皆の傷を癒していた。

 

「・・・・で、アンタはなんでそんな格好してんですか?」

 

「ん?いや、何。ウェンディだけに負担をかけるわけにもいくまい。残りは私がやろうと思ってな!!」

 

「・・・・もう、お好きにどうぞ」

 

何故かナース姿になって、皆の怪我を嬉々としてやろうとしているエルザ。なんかもうめんどくさくなったグランはツッコミを捨てた。だってそれはルーシィの仕事だもん。

 

「それにしてもグラン。お前があそこまで強かったとは驚いたぞ。あのラクサスが認めるほどの強さとはな」

 

「いやー、流石にそこまで強くねぇっすよ。あん時はちょっと怒ってただけですし・・・・」

 

「もうアンタが妖精の尻尾で一番強い滅竜魔導士なんじゃない?」

 

「・・・・いや、それは「何ーーー!?ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ白猫!!火竜(サラマンダー)ならともかく、このガジル様が負けるか!!」「んだとコラァ!!上等だァ!!ここで白黒はっきりつけたらぁ!!」・・・・めんどくせぇことになるから言うなって言おうとしたのに」

 

ラクサスが破門中の今、妖精の尻尾で一番強い滅竜魔導士がグランなのでは?とシャルルが言ったせいで、ガジルとナツがそれに強く否定して、二人で殴り合いを始める。せっかく治り出した傷がまた増えるな。

 

「・・・・あーあ。すっげぇ暴れてる・・・・元気だねぇ〜」

 

「アンタは参加しなくていいの?」

 

「いや別に最強とかは興味ないし・・・・」

 

「なんだ、まったいねぇなぁグラン。お前ならすぐにでもS級になれるってのに・・・・しょうがねぇ、オレが直々に稽古つけてやろう」

 

「いや、必要ねぇしいつのまにこっち来たんだよアンタ?」

 

ナツとガジルが喧嘩してるのを眺めていたら、いつの間にか近くにきていたラクサスに稽古をつけてやろうと言われたグラン。ただ、何故かフランクに接しられ、肩に手を回してきた。それを羨ましそうに見ている雷神衆・・・・特にフリード。

 

「・・・・・・・・ラクサスにあんな親しげに・・・・・・・・羨ましい・・・・・・・・」

 

「うわー、すげぇ顔・・・・ってか、アンタこんなフランクだったの?なんか聞いてたイメージと違うんだが?それに稽古はいらん」

 

「何、遠慮すんな。お前ならいずれ、妖精の尻尾最強の魔導士になれる。」

 

「いや、話聞いてくんない?」

 

「そう言う話なら私も稽古をつけてやろう。何、焦ることは無い。少しずつでも前に進めばいいさ」

 

「なーんで、エルザさんも稽古つける気満々なの?ってか、ソレ治療の意味ある?グレイ生きてる?」

 

ラクサスの妙なノリに乗ったのか、今度はエルザまで稽古をつけると言い出した。それはいい・・・・いやよく無いが、その包帯でぐるぐる巻きなされているグレイは無事なのだろうか?・・・・多分無事だろう。

 

「何!?エルザとラクサスと戦えるのか!?だったらオレがやってやる!!燃えてきたぞっ!!」

 

「ギヒッ!テメェじゃ無理だ火竜!!オレが真っ先にS級になってやらぁ!!」

 

「話が変わってるぞー・・・・っていつの間に来たんだアンタら?」

 

先ほどまで喧嘩していたはずの二人も近くにきていた。もはや話が脱線しているが。

 

そんなこんなで過ごしていると、マカロフからある知らせが言い渡された。

 

「「「「何だと〜〜〜〜〜〜っ!!!!」」」」

 

「だ か ら〜。今回のS級昇格試験は中止とする」

 

その知らせはS級昇格試験の中止だった。そらそうだ。候補者の中に評議員が紛れていたり、そもそも悪魔の心臓に邪魔されてしまっているのだ。中止にするのが当然だろう。

 

今回の候補者達もナツ以外はそれに納得しているが、ナツだけは納得していなかったので、マカロフに勝てたらS級にするという約束をした。

 

まぁ結果は瞬殺だったけど・・・・。

 

そんな中、グランは少し前からずっと何かを考え込んでいた。

 

「・・・・ん〜、何だったっけ?」

 

「グラン、どうしたの?」

 

「めずらしいじゃない。アンタが悩み事なんて。」

 

「何かあったのか?」

 

そんな考えているグランを心配して、ウェンディとシャルル、それにエルザも声をかけた。

 

「・・・・いや、悩み事っていうか、なんていうか・・・・ゼレフが目覚める直前に、何か言ってたような気がするんだよなぁ〜」

 

「ゼレフが言っていた?一体何を?」

 

「何・・・・つうか、多分なんかの名前だと思うんだが・・・・確か、ア・・・・アクア?じゃなくて、アクノ・・・・えーっと・・・・あー!思い出した!!確かゼレフが言ってたのは・・・・

 

 

アクノロギア」

 

グランが、その名を口にした瞬間・・・・偶然か、必然か、突然鳴り響く巨大な轟音。耳を塞いでも、体の芯まで響く何かの鳴き声。

 

その鳴き声に覚えのあるナツ、ガジル・・・・そしてウェンディ。彼らの知っている声ではなかったが、限りなく近い鳴き声を知っている。それは・・・・ドラゴンの鳴き声。

 

「みんなー!大丈夫ー!」

 

「おまえら!」

 

突然の事だったが、妖精の尻尾のメンバー達は1箇所に集まっていた。

 

ただ一人、ギルダーツのみ何かを察知したかのように、失った左腕を掴んだ。

 

「あそこだ!!」

 

と、リリー天狼島上空を指差す。そこにいたのは・・・・全身が黒いドラゴン。その姿に全員が驚きを隠せなかった。特に驚きを隠せなかったのが、ナツ、ガジル、ウェンディの三人だった。

 

「マジかよ……!?」

 

「本物のドラゴン……」

 

「やっぱり・・・・ドラゴンはまだ生きていたんだ」

 

黙示録にある黒き龍・・・・アクノロギア

 

「・・・・ゼレフはこいつの事言ってたのかよ」

 

と、ナツがそのドラゴン・・・・アクノロギアに向かって叫んだ。

 

「お前!イグニールがどこにいるか知ってるか!?あと、グランディーネとメタリカーナも!」

 

「よせナツ!!」

 

「降りてくるぞ!!」

 

降りてくるアクノロギア・・・・そして上げる雄叫び。そこにあるのは純粋な殺意・・・・それも、捕食者が獲物を殺すための殺意ではなく・・・・ただただ殺すためだけの殺意。

着地し、少し皆を見たアクノロギアは、再び高く飛び上がる。

 

「逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

ギルダーツの悲痛な叫び。その叫びに皆が反応するよりも早く・・・・アクノロギアは地面に再び着地・・・・いや、それは着地などではなかった・・・・すべてを破滅に導くための攻撃だった。アクノロギアが地面に触れた瞬間・・・・その地面が大きく砕け、風圧で周りのもの全てが吹き飛ばされていく。ただの着地・・・・それだけで、周りを破壊したのだ。

 

「ウソだろ!?」

 

「なんて破壊力なの!?」

 

「何なのよこれ・・・・なんなのよこいつ・・・・!」

 

「船まで急げぇ!!」

 

そして、全員が逃げ始める。アクノロギアはそれを追い始める。

 

「走れ!!!みんなで帰るんだ妖精の尻尾へ!!!」

 

「ウェンディ!あんた竜と話せるんじゃなかった!?何とかならないの!?」

 

「私が話せるんじゃないよ!竜は皆高い知性を持ってる!あの竜だって言葉を知ってるはず!!」

 

「なら、アイツにとってオレ達・・・・つうか、人間なんざ虫ケラ同然・・・・言葉を交わす価値なんざねぇって思ってんだろうな!!腹立つ!!!」

 

グランが吐き捨てるように言う。そして皆は走り続ける、ひたすら走り続ける。だが、それでもだんだんと距離を詰められていった。・・・・その時。

 

「じっちゃん!」

 

「マスター!?」

 

「船まで走れ」

 

マカロフは、その場で立ち止まり自らの魔法で体を大きくし、アクノロギアと同等の大きさまで変わりアクノロギアを抑える。しかし、まだ完全に癒えていない体では抑えることが難しく、傷が開いてしまう。

 

「無茶だ!かなうわけねぇ!!」

 

「マスター!やめてください!!」

 

グレイとエルザが、声を荒らげる。しかしそれでもマカロフはアクノロギアを押さえ込んだまま、離さなかった。

 

「走れ!」

 

「かくなる上は俺達も!!」

 

「当たって砕けてやるわー!」

 

 

「最後くらいマスターの言うことが聞けんのかぁ!クソガキが!!」

 

 

加勢しようとするメンバーに怒鳴り声をあげるマカロフ・・・・・・・だが、それでも納得できない者もいる。

 

「俺は滅竜魔導士だぁー!!そいつが敵って言うなら俺が・・・・うがっ!?」

 

「走るぞ、ナツ!!」

 

「ラクサス!!!お前・・・・」

 

ラクサスが、ナツの服を掴んで走り出す。その心に悲しみを押さえ込みながら。

 

「マスター・・・・」

 

「う・・・・うう……!」

 

そして、マカロフを残し、全員が退避する。マスターの・・・・最後の指示に従って・・・・

 

 

 

それでよい・・・・ いずれわかる時が来る

 

 

涙など虚空  人が死ぬから悲しいのか?  悲しみが人を殺すのか  答えは各々の胸の奥に  誇り高きクソガキどもよ

 

 

生きよ!!!未来へ!!!!

 

 

 

 

一人残ったマカロフは、アクノロギアを全力で止めた。自分の後ろには大事な家族がいるから。例えこの身が打ち砕かれようとも、決してこの先へは進ませない。・・・・だが、マカロフの全力の足止めも砕かれた。

 

アクノロギアはマカロフを倒し、そのままマカロフを踏みつけ痛みつけていく。

 

「がっ!?あああああああ"っ!!?」

 

その猛攻に溜まらず悲鳴をあげるマカロフ・・・・だが、ボロボロに傷付けられているのに・・・・何故かその表情は誇らしげだった。

 

 

初めて、親らしい事が・・・・・・・・できたわい。もう思い残す事はない!!!!

 

 

マカロフは覚悟を決めた・・・・だが、そんなマカロフの横を走り去りアクノロギアの体をよじ登る者がいた・・・・・・・・ナツだ。振り払われようとも、決して離さずに食らいついていく。

 

「じっちゃんを返せ・・・・・」

 

「ナツ・・・・」

 

「かかれーーーーーっ!!」

 

ナツだけじゃ無い。エルザの号令に続き、逃げたはずの妖精の尻尾のメンバー全身がいっせいにアクノロギアに攻撃を仕掛ける。例えマスターの命令に背いても・・・・家族を置いて逃げる事など、出来るはずがなかった。

 

皆がそれぞれ全力で攻撃を仕掛けた。・・・・だが、全く効いている様子は見えなかった。ナツ、ガジル、ウェンディ、ラクサス・・・・そしてグランの滅竜魔導士による同時ブレスをも浴びせたが、それすらも効いていなかった。

 

アクノロギアが腕をたった一振り・・・・ただの力任せの一振りだけで全員が吹き飛ばされていた。

 

「みんな無事か!?」

 

「くそっ!!」

 

「攻撃が全く効いてねぇ!!」

 

「クソがっ!!こっちは全力だってのに、アイツは戦いとすら思ってねぇんだろうな!!」

 

皆が吹き飛ばされ悔しがる中、アクノロギアがいきなり空高く羽ばたいた。そのまま雲を突き抜け、空高く。

 

「飛んだ!!」

 

「帰ってくれるのかなぁ……」

 

「油断しちゃダメよ。」

 

空高く飛んだアクノロギアは、静止して魔力をためる。もはや遊ぶ事にすら飽きたのか、奴がとった行動は・・・・天狼島ごと吹き飛ばす事だった。

 

咆哮(ブレス)だーッ!!」

 

「島ごと消すつもりじゃないでしょうね!?」

 

「防御魔法を使えるものは全力展開!!」

 

「はい!!」

 

「術式を書く時間が無い!!」

 

「文字の魔法には他にも防御魔法がたくさんあるよ!!」

 

「さすがレビィだぜ!!」

 

「みんな・・・・フリード達に魔力を集めて!!!」

 

「手をつなごう!!」

 

「俺たちはこんなところで終わらねぇ!」

 

「うん!絶対諦めない!」

 

「皆の力を一つにするんだ!ギルドの絆を見せてやろうじゃねぇか!!」

 

全員が手を繋いでいく。魔力を受け渡すため・・・・妖精の尻尾に帰るため・・・・みんなで、一緒に帰るため・・・・。

 

「みんなで帰ろう・・・・」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

そして次の瞬間・・・・アクノロギアが放ったブレスが天狼島を飲み込んだ。島まるごと飲み込む大爆発がおき・・・・更には海にも巨大な穴が開いた。

 

そこは・・・・ほんの少し前まで天狼島があった場所だった。やがて穴は次第に海の水が流れ埋まっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【X784年12月16日天狼島・・・・アクノロギアにより消滅。アクノロギアは再び姿を消した。その後、半年にわたり近海の調査を行ったが、生存者は確認できず】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、7年の月日が流れた

 

 

 

 

 

 



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第二十話 帰還

 

────────天狼島が消滅して七年の月日が流れた。

 

七年という月日は周りの環境を変えるには十分な時間だった。妖精の尻尾はこの七年で、弱小と言われるまでになってしまった。

 

その間も皆が必死になり探したが、誰一人として見つかることは無かった・・・・だが、青い天馬がフィオーレ中のエーテルナノ数値を調べ上げた結果・・・・天狼島がまだ残っている事がわかった。

 

早速、妖精の尻尾のメンバーは一部を残し、天狼島を探しに海へ出た。すると、海の上を立っている一人の少女を発見した。

 

その少女が現れた瞬間・・・・海の中から消えたはずの天狼島が姿を現した。すぐに島に上陸・・・・そして、見つけた。あの時消えたメンバーを・・・・あの時の姿のまま。

 

ほぼ全員を見つけ出し、皆喜んだ・・・・だが、何故かそこにグランの姿がなかった。そして、その少女の正体が明らかとなった。

 

彼女の名はメイビス・・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)初代マスターのメイビス・ヴァーミリオンその人だった。

 

アクノロギアがブレスを放った時・・・・初代は皆の絆と信じ合う心のその全てを魔力へと変換させ、妖精三大魔法の一つ妖精の球(フェアリースフィア)を発動させた。この魔法はあらゆる悪からギルドを守る絶対防御魔法・・・・そのおかげで皆を守る事ができたのだが・・・・解除するのに七年の歳月をかけてしまったという。

 

「なんと・・・・初代が我々を守ってくれたのか・・・・」

 

「いいえ・・私は幽体。皆の力を魔法に変換させるので精一杯でした。揺るがない信念と強い絆は奇跡さえも味方につける。よいギルドになりましたね、三代目」

 

そう言って、微笑みかけるメイビス。・・・・皆、助かった事、無事だった事に喜んだが・・・・やはりこの場にグランがいない事が気がかりだった。

 

「あ・・・・あの、初代。グランは、どこですか?」

 

皆を代表する様に、ウェンディが一歩前に出て初代に聞いた。・・・・すると初代は・・・・目を逸らし、汗を流して、見るからに焦っている様子だった。わかりやすいな、おい。

 

「・・・・えーっと。その・・・・ですね・・・・」

 

「まさか・・・・グランは・・・・」

 

「い・・いえ、生きています。・・・・ただ・・・・そのぅ・・・・」

 

泣き出しそうになるウェンディに慌てて生きている事を伝えるが・・・・どうも歯切れが悪い。

 

「・・・・彼は、七年前・・・・“大樹”のアークによって一度支配されたこの島の魔力を、その体に吸収した影響なのか・・・・・・・・あの・・・・島と一体化してしまいまして・・・・」

 

「「「「一体化〜〜〜〜っ!!!??」」」」

 

まさかの報告に全員が驚き、声をあげる。マカロフなんて、驚きすぎて口から魂が抜けそうになっていた。

 

「あ、いえ。一体化・・・・というより、この島に深く潜っているというか・・・・この島の地中のどこかに潜んでいるといいますか・・・・すいません、この七年で頑張ったのですが・・・・見つからなくて。ですが、彼が生きている事は確かです」

 

そんな皆を見て、メイビスは慌てて先ほどの言葉を一部否定して説明する。何はともあれ、生きている事に安堵する皆。ウェンディも無事だった事が分かり、その場に座り込む。

 

「とりあえず、まずはグランを探すか!」

 

「だけど、どうやって探すの?」

 

「とりあえずそこら中の地面を掘りまくる!!!」

 

「いや、だがそれだと時間がかかりすぎる。それにこの島をむやみやたらと掘るのは」

 

「私、頑張って探します!!」

 

「・・・・何を探すか知らねぇが、あんま無茶すんなよ?・・・・それにしても、とても気分が良いのはなんでだろう?」

 

「アンタ話聞いてなかったの?今からこの島のどこかに潜ってるアンタを掘り当てるために、どうするかみんなで決めてるんじゃない」

 

「・・・・この島を穴だらけにするのは、気が引けんが・・・・家族の為じゃ!!致し方あるまい!!」

 

「おーっし!!それじゃ、皆んなでグランを掘り起こすぞ!!!」

 

「・・・・なんかよくわからんが、頑張るぞー」

 

「「「「「おおーーーーーー・・・・・・・・・・・・おぉっ!!?」」」」」

 

「ところで、こちらの方はどなた?」

 

「・・・・・・・・・・・・はえっ??」

 

速報・・・・グラン、いつの間に復活してた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・なんでオレ怒られたんだろう?」

 

あの後、いつの間にか地面から出てきて、しれっと皆の中に混じっていたグラン。まず第一声に驚きの声が上げられ、ウェンディは嬉しさのあまり泣きながら抱きついた。

 

そして皆に一斉に怒られた・・・・というか怒鳴られた。居るなら言え、と。

 

まぁそんなこんながあったが、今グラン達は、今の妖精の尻尾のギルドに向かっていった。

 

そしてギルドに着いたが、中が何か騒がしかった。他に誰かがいるらしい。

 

まぁそんな事関係ないと言った感じで、まずナツが中に入り、入口に立っていた一人が蹴り飛ばす。続いてグレイが凍らせて、エルザが峰打ちし、ガジルが殴り飛ばし、グランも蹴っ飛ばし、マカロフが巨大化させた拳でげんこつを入れる。

 

そして、今まで通り・・・・七年前と同じように、ギルドに入る。

 

「ただいま。」

 

「フンッ」

 

「今戻った。」

 

「みんなー」

 

「なんじゃこの小さいギルドは」

 

「酒だ酒〜〜〜!!」

 

「わぁ♡素敵じゃない」

 

「よっ」

 

「ただいま戻りました」

 

「ボロボロだな〜」

 

皆がそれぞれ、笑顔を向ける。そして、帰ってきた者達の見た目が全く老けていないことに対して、泣きながら喜び、驚いていた。

 

「お・・おお……おまえら……」

 

「若いっ!!」

 

「七年前と変わってねぇじゃねぇかー!」

 

「どうなってんだー!!」

 

「えーと……」

 

起きたことを説明し始める。だが、話を聞いても出ることは喜びの感情だけだった。

 

「大きくなったな、ロメオ。」

 

「おかえり!!!!ナツ兄!みんな!!」

 

このたった一言で、残されていた者達はさらに涙を流す。そして当然・・・・宴を始めた。それが妖精の尻尾だ。きっと、この夜のことは生涯ずっと忘れないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁなんやかんやで時間が過ぎていって・・・・まぁ色々ありまして・・・・色々は色々だ。あんま気にすんな。

 

んで、今グランはマカロフとエルザとミラと共に黄昏の鬼のギルドにはいた。

 

「だからさぁじーさん・・・・今さら話す事なんかねェんだョ。貸した金きっちり返してくれれば、ウチらはそれでいい訳ョ」

 

「そう言われてましてものぅ・・・・知っての通りビックリするくらい金が無くてのう・・・・それに帳簿を見る限りだと、お金の出入りがあきらかに変ですよ」

 

「あぁ?イチャモンつけようって言うのかよ」

 

「とんでもない!!借りた金とその正当な利子分は払いますよ」いつか

 

物凄い小さい声でいつかと言う言葉を付け加えるマカロフ。だがそれはしっかり聴こえていたらしく、今すぐ払えと言っている。

 

更にはギルドの若いのが怪我させられたことを言い出した。

 

「おや?今日は“お金”の話という事で伺ってきたのじゃが・・・・そっちの話もしますかな?」

 

「そっちもこっちもないんじゃワレェ!!!!」

 

「『貸したものは返せ」・・・・それがおたくのギルドの信条・・・・という事でよいですかな?」

 

「七年間・・・・私たちのギルドへの器物損害及びメンバーへの暴行・・・・」

 

「その分全てを私たちもあなたたちに返さねばならなくなりますよ」

 

「・・・・まぁ、それがそちらのギルドの信条って事なら致し方ねェなぁ・・・・」

 

「七年間・・・・ガキどもが受けた苦しみ・・・・涙が出るわい・・・・

 

 

おい、小僧。戦争って事で良いんだな

 

黄昏の鬼のマスターを睨みつけるマカロフ。そして、そのほかのメンバーを睨みつけるエルザ、ミラ、グランの三人・・・・この後、どうなったのかは・・・・ご想像にお任せします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第二十一話 ポーリュシカとグランディーネ

 

グラン達が帰還して2週間・・・・その間、フィオーレ中にその情報が広がっていた。

まぁそんなことは置いといて、グラン達はロメオからとあるギルドのことを聞かされていた。

 

「セイバートゥース?」

 

「剣咬の虎・・・・セイバートゥースさ。それが、天馬やラミアを差し置いて現在フィオーレ最強の魔導士ギルドさ。」

 

「聞いたことねぇな。」

 

「七年前はそんなに目立ってなかったんだ。」

 

「って事はこの7年で急成長したのか。」

 

「ギルドのマスターが変わったのと、ものすごい魔導士が6人加入したのが強くなったきっかけだね。」

 

「たった6人でそんなに変わるものなの?」

 

「・・・・ぶっちゃけどうでもいい」

 

「ほおう、いい度胸じゃねぇか。」

 

「因みに私達のギルドは何番目くらいなんですか?」

 

「それ聞いちゃうの?」

 

「ウェンディ、聞くまでもないでしょ……」

 

「・・・・察してあげろ」

 

「え?」

 

ウェンディのその質問で、一部が苦い顔をする 。・・・・まぁ、主力のメンバーが天狼島で眠ってたし・・・・ねぇ?

 

「最下位さ。」

 

「超弱小ギルド。」

 

「フィオーレ1弱いギルド。」

 

「ああああ……ごめんなさい……」

 

「ウェンディは悪くない・・・・まぁ予想通りだったけど」

 

謝るウェンディを宥めながら、サラッと毒を吐くグラン。と、突然ナツが立ち上がり笑いだす。

 

「かーはっはっはっ!そいつはいいっ!!面白ぇ!!」

 

「は?」

 

「だってそうだろう!?上に登る楽しみがあと何回味わえるんだよォ!!燃えてきたァー!!」

 

「やれやれ・・・・」

 

「・・・・まぁ、その通りではあるな」

 

ナツのそんな言葉に、呆れるグレイと賛同するグラン。

 

「ねぇ、あんたらギルダーツ見なかった?」

 

「なんだよ、いつもパパが近くにいねーと寂しーのか?」

 

「バカっ!!」

 

「あ!悪ぃ……」

 

「ううん、いいよ気にしなくて。」

 

「・・・・やっちまったな、グレイ?」

 

「うるせぇ・・・・」

 

「ギルダーツならマスター・・・・いや・・マカロフさんと呼ぶべきか……」

 

「マスターでいいんじゃない?」

 

「マスターと()妖精の尻尾に向かったぞ。」

 

「よーし・・・・じゃ・・今の内に仕事行っちまうか!」

 

そう言って、カナは酒樽を持ってそそくさと仕事に向かっていった。

 

「・・・・そういやぁ、あのギルドの下って何があんだろうな」

 

「え?下って?」

 

グランがボソッと言った事に反応するウェンディ。

 

「んや・・・・なんか地面の下からたまに妙な魔力を感じるっていうか・・・・まぁ気のせいだと思うんだが」

 

「何よそれ?」

 

まぁ気のせいだという事で今の言葉を取り消すグラン。・・・・だがまさか、ギルドの下にあんなものがあるとは・・・・この時のグランは思っても見なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マ、マジ・・・・で?」

 

「俺らだって7年間何もしてなかった訳じゃねぇ。それなりに鍛えてたんだ。」

 

地面に尻餅をついているナツ、そして立っているマックス。なんでこんな事になったかって?今からでも鍛えようとしたナツがとりあえずマックスに戦いを挑んだのだが・・・・まさかの手も足も出ないという七年前まではありえなかったその光景が起きてしまった。

 

「ナツさんが……」

 

「マックスに勝てないの?」

 

「もう一度だオラァ!!うおおおおおお!!」

 

激しくラッシュを決めに行くナツ。しかしその全てをマックスは避けていく。

 

その合間に、周囲の砂を使うマックスの魔法が使われる。

 

砂の反乱(サンドリベリオン)!!」

 

「うあぁ!!」

 

砂の一撃が、ナツを吹き飛ばす。だが、タダでやられるナツではない。

 

「燃え尽きろぉ!!」

 

炎を出して、ナツはマックスの砂を吹き飛ばし返す。その砂達は周囲に散って軽い砂煙が上がっていた。

 

「うわぁっ・・・・あ、ありがとグラン」

 

「助かったわ」

 

「・・・・ジャリジャリ・・・・ゴックン・・・・何、気にすんな」

 

「ケホケホ!ちょっと、こっちも助けてよ!!」

 

「ナツー!頑張れー!!」

 

ウェンディとシャルルにかかりそうだった砂をグランが食べてしっかりと守り、ルーシィの方へ行った砂は放っておいた。

 

ナツはそのままの勢いでマックスに向かう。

 

「火竜の・・・・鉄拳!!」

 

砂の防壁(サンドウォール)!!」

 

しかし、ナツの攻撃はマックスに封じられてしまう。

 

「ぬうぅ・・・・」

 

「七年前とは違うぜ」

 

「信じらんねえ!あのマックスがっ!!」

 

「ナツを押してんのか!?」

 

「ひょっとして俺達もナツに……」

 

ギャラリーが沸き立つ。もしかしたら自分も・・・・と。だが、ナツは魔力をどんどん上げていく・・・・そして。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!モード雷炎竜!!」

 

「っ!!?」

 

「まさか!」

 

「おお、派手だね〜」

 

「雷炎竜の━━━」

 

「ちょ、なんだよそれ……!」

 

「咆哮ォォ!!」

 

口から出されるブレス。流石にハデス戦の時のような破壊力は無いが、それでも山の地表を少し削りかなり遠くまでそれが続いていた。

 

「クソォ!あのときほどのパワーは出ねえな!!」

 

「いつの間に自分のモノにしたの!?」

 

「今。」

 

「すごい・・・・」

 

「・・・・これ、どこまでいったんだろ?」

 

「ま・・・・参った・・・・降参だ・・・・あんなの食らったら死ぬって」

 

雷炎竜の力を見せつけられ、ナツに降参を申し出るマックス。そらそうだ。

 

「次はどいつだ。」

 

「ヒィー!!」

 

「やっぱつえぇ!!」

 

「バケモンだァ!!」

 

「かーっかっかっかっ!」

 

笑い声をあげた瞬間に倒れるナツ。

 

「やっぱり魔力の消費量がハンパないんだ。」

 

「ナツ、それ実戦じゃ使わない方がいいよ。」

 

「でもマックスさんも凄いです。」

 

「砂、美味しかったぞ」

 

「世辞なんかいらねぇよウェンディ・・・・グランに至っては世辞ですらねェし」

 

「だけど、そのくらいの力があったらオウガに好き勝手やられることもなかったんじゃないの?」

 

「そうかもしれねぇが……」

 

「金が絡んでたからなぁ。」

 

「力で解決する訳にもいかんでしょ。」

 

「マスター達はやっちゃったけどね。」

 

「……だな。」

 

「全く、金の事を力で解決するとは・・・・」

 

「いやアンタもやってたでしょ!!」

 

「アレは向こうのギルドの信条に従っただけだもん」

 

「ダメだよ、グラン」

 

「ごめんなさい」

 

「いや謝んのはやぁ!?」

 

「しかし、こいつァ思ったより深刻な問題だぞ。」

 

「グレイ!」

 

「元々バケモンみてーなギルダーツやラクサスとグランはともかく・・・・俺達の力はこの時代についていけてねぇ……」

 

「確かに……ナツでさえあのマックスに苦戦するんだもんね。」

 

「あのマックスさんに。」

 

「さっきのは本当に世辞だったのか!?」

 

「なんか一気に魔力を上げられる方法ないかなぁ……」

 

「・・・・ねぇ、なんで“化け物みてーな”のところにオレがいたのに誰も突っ込んでくれないの?ねぇ、ちょっと?目逸らさないでくれない?・・・・ねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つーわけで。」

 

「帰れ。」

 

とある森の中、巨大な木の幹を家としている者がいる。妖精の尻尾の顧問薬剤師のポーリュシカという女性である。

 

まぁ、いざ訪ねてみるとその扉は話を聞く前に閉じられちゃったけどな。

 

「ポーリュシカさん、なんかいい薬とかないんですか?」

 

「一気に力が100倍になるのとかー!」

 

「流石に都合よすぎかぁ……」

 

「・・・・」

 

「どうしたのウェンディ?」

 

「ううん……」

 

「・・・・どこか気分でも悪いのか?」

 

「うんん、大丈夫。」

 

どこか俯きぎみなウェンディを気にかけるシャルルとグラン。と、そんな時、ポーリュシカの閉じた扉が再び開く。

 

「お♡」

 

「人間は嫌いなんだよ!!帰れっ!!帰れーっ!!しーっしーっ!!」

 

出てきたかと思えば箒を振り回して追い返そうとするポーリュシカ。

 

「失礼しましたー!!」

 

「なんだよあの婆ちゃん!!」

 

「じーさんの昔の恋人・・・・「違うわボケ!!」」

 

追い返される中、ウェンディはポーリュシカの方に視線を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もぉー、誰よポーリュシカさんのとこ行こうって言い出したの〜…」

 

「ルーシィ……」

 

「とんでもねぇばーさんだな。」

 

全力で走って逃げてきた一同。息を切らせながら、一旦離れたところで休憩していた。

 

「人間嫌いとは聞いていたけど……あそこまでとはね。」

 

「オイラ猫なんだけどなぁ……」

 

「面白いばーさんだったがな。なぁ、ウェンディ。・・・・ウェンディ?」

 

と、ウェンディに同意を得ようとするが、ウェンディはなぜか肩を震わせていた。

 

「どうした、ウェンディ、大丈・・・・ウェンディ!!!!????」

 

「ちょ、どうしたの!?」

 

ウェンディは涙を流していた。流石のグランも驚愕の表情を浮かべ・・・・ポーリュシカの家を沈めてやろうと、心に決めた。

 

「あんのばっちゃん!ウェンディを泣かしたなぁ!!」

 

「違うんです…懐かしくて……」

 

「ん?・・・・懐かしい?」

 

「会ったことあるの?」

 

「ううん・・・・今さっき、初めてあったはずなのに・・・・懐かしいの・・・・あの人・・声が・・・・匂いが・・・・天竜(グランディーネ)と同じなんです」

 

ウェンディから発せられる衝撃の言葉。その衝撃と疑問だけが一同にはしった。

 

「あのばーさんがグランディーネ!?」

 

「ウェンディの探してるドラゴンと同じ声?」

 

「・・・・マジか?」

 

「ウェンディ、本当か?」

 

「分かりません。でも・・・・あの匂い・・・・あの声・・・・私のお母さん、天竜グランディーネと同じなんです。」

 

「こいつはちょっと確かめに戻る必要があるな。」

 

「待てよ。もし本当にグランディーネか化けてるとしても、少しおかしくねぇか?」

 

「そうだよ。ナツやウェンディ・・・・ついでにガジル。あんたたちのドラゴンが姿を消したのは確か7年前・・・・正確には14年前。X777年。ポーリュシカさんはそれよりも前からマスターと知り合いなのよ?つまり、ドラゴンがいた時代とポーリュシカさんのいた時代が被るのね。これじゃ辻褄が合わないわ。同一人物のはずが無い。」

 

ルーシィの言葉に少し落ち込むウェンディ。そしてルーシィを睨むグラン。

 

「生まれ変わりとか化けてるって線は無さそうだな。」

 

「うん・・・・あの、ごめんなさい。ただの考えなんです。だからそんな目で見ないで・・・・」

 

「確かに、落ち着いて考えてみればそうなんです。おかしいんです。声や匂いが同じでも口調や雰囲気が全然違う……」

 

「なるほど、確かに違うな」

 

「おいっ」

 

「あんた前に言ってたもんね、グランディーネは()()()()()って」

 

「どーしよう、猫は嫌いだったら」

 

「グランディーネは優しいドラゴンなんです」

 

「優しいドラゴンってのも想像出来ねーな。」

 

「アクノロギアを見ちゃったからね……」

 

「イグニールも優しいぞ。」

 

「優しくなくて悪かったね。」

 

そして、色々と考察をしていたグラン達の前に突如として現れるポーリュシカ。いきなり声を出したので、グレイとルーシィは驚いていた。

 

「ポーリュシカさん」

 

「びっくりしたぁ〜」

 

「・・・・隠しておくこともないね、あんたらだけに話しておくよ。」

 

そう言ってグラン達・・・・特にウェンディと目を合わせるポーリュシカ。

 

「私はあんたの探してるグランディーネじゃない。正真正銘人間だよ。」

 

「でも人間嫌いって……」

 

「人間が人間嫌いで文句あるのかい!!?」

 

「いえッ」

 

「悪いけど、ドラゴンの場所は知らない。私とドラゴンとは直接には何の関係もないんだ。」

 

「じゃあ、あなたは一体……」

 

「こことは違うもうひとつの世界、エドラスのことは知ってるね?アンタらもエドラスでの自分に会ったと聞いてるよ。」

 

「エドラスって……」

 

「まさか……」

 

「オレ会ってないけど・・・・」

 

「黙ってなさい」

 

「え、何?」

 

この世界(アースランド)の人間から見た言い方をすれば・・・・私はエドラスのグランディーネという事になる。何十年も前にこっちの世界に迷い込んだ。」

 

この言葉に、全員が驚いた。

 

「私は、ひょんなことからマカロフに助けられてね・・・・私もすっかりアースランドが気に入っちゃったもんだから、エドラスに帰れる機会は何度かあったんだけど私はここに残ることにした。」

 

「もしかしてイグニールやメタリカーナも、向こうじゃ人間なのか!?つーかこっちにいるのか!?」

 

「知らないよ、会ったこともない。けど・・・・天竜とは話したことがある。」

 

「え!?」

 

「会ったわけじゃない、魔法かなんかで私の心に語りかけてきたんだよ。」

 

そう言いながら、ポーリュシカは懐を探して、一束にまとめられた書類を取り出してウェンディに渡す。

 

「あんたら“強く”なりたいって言ってたね。そのウェンディって子だけなら何とかなるかもしれないよ。天竜に言われた通りに書きあげた魔法書だ。二つの天空魔法“ミルキーウェイ” “照破・天空穿”アンタに教えそびれた滅竜奥義だそうだ。」

 

「グランディーネが私に……」

 

「会いに来たら渡してほしいとさ。その魔法はかなりの高難度だ。無理して体を壊すんじゃないよ。」

 

そう言って、さっさと帰っていくポーリュシカ。

 

「ありがとうございますポーリュシカさん!グランディーネ!!

 

そんなポーリュシカに対して、頭を下げるウェンディ。そして、グランディーネにも礼を言う。

 

その時・・・・ポーリュシカの顔に笑顔が浮かんでいた事に、誰も気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・あのばーさん、笑えたんだな〜」

 

「何がよ?」

 

「・・・・んや、別に」

 

・・・・いや、一人を除いて・・・・だな。

 

 

 



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第二十二話 星霊界へご招待

 

「絶対出るんだーーーーーーーーーーーっ!!出る出る出る出る!!」

 

「出ねぇ出ねぇ出ねぇ出ねぇ!!絶対、認めねぇ!!()()にはもう二度と参加しねぇ!!」

 

ギルドに帰ってきたグラン達。しかし、マカオとロメオが何やら言い争いをしていた。

 

「ただいま。」

 

「お!帰ったのか。いい薬はもらえたのか?」

 

「ウェンディだけね。」

 

「えへへ♡」

 

「父ちゃんにはもう決める権限ねーだろ!マスターじゃねぇんだから!!」

 

「俺はギルドの一員として言ってんの!!」

 

「・・・・なんのこっちゃ?」

 

「何の騒ぎだ?」

 

「親子喧嘩にしか見えないけど?」

 

「・・・・服着ろよ」

 

「出たくない人!はーい!!」

 

「「「はーい!」」」

 

「あれだけはもう勘弁してくれ……」

 

「生き恥晒すようなものよ〜……」

 

「だけど今回は天狼組がいる!ナツ兄やエルザ姉がいるんだぜ!妖精の尻尾が負けるもんか!!」

 

「けど天狼組には7年のブランクがだなぁ……」

 

「・・・・まぁ全く問題なさそうなのが一人いるが」

 

「・・・・なんでこっちを見る?」

 

「さっきから出るとか出ねぇとか何の話だよ!?ルーシィのお通じじゃあるまいし「そんな話皆でするか!!」」

 

「ナツ兄達のいない間にフィオーレ一を決める祭りができたんだ。」

 

「おーーーーーっ!!」

 

「そりゃ面白そうだな。」

 

「フィオーレ中のギルドが集まって魔力を競い合うんだ。その名も・・・・

 

大魔闘演武!!!

 

「おおーーーーっ!!!」

 

「大魔闘演武!!」

 

「楽しそうですねっ!」

 

「・・・・面白そうだな」

 

「まさに“祭り”って訳か」

 

「なるほど、そこで優勝すれば・・・・」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)はフィオーレ一のギルドになれる!!!」

 

「「「おおっ!!!」」」

 

「しかし……お前らの実力で優勝なんざ狙えるかのう」

 

「そうだよ!そうなんだよ!!」

 

「優勝したら3000万Jジュエル入るんだぜ!」

 

出る!!!!

 

「マスター!!」

 

賞金に釣られて、マカロフも参加を決意する。だが、残された者達の方はどうしても参加をしたくないのか物凄く否定的になっていた。

 

「無理だよ!天馬やラミア・・・・」

 

剣咬の虎(セイバートゥース)だって出るんだぞ!?」

 

「因みに、過去の祭りじゃ俺達ずっと最下位だぜ。」

 

「いばるなよ……」

 

「そんなの全部蹴散らしてくれるわい……!」

 

「燃えてきたぞーーーーーーー!!」

 

「やかましい!!」

 

「その大会いつやるんだよ!」

 

「三ヶ月後だよ。」

 

「十分だ!それまでに鍛え直して・・・・妖精の尻尾をもう1度フィオーレ一のギルドにしてやる!!」

 

「いいねぇ!!!」

 

「うん!!みんなの力を一つにすれば」

 

「できない事はない」

 

「グランディーネからもらった魔法、それまでに覚えないと!」

 

「だな。・・・・オレも頑張るかぁ〜」

 

「マジかよ」

 

「本気で出るのか?」

 

「や、やめといた方が……」

 

「ナツが考えてるようなバトル祭とはちょっと違うわよ。」

 

「え?ちがうの!?」

 

「地獄さ「出ると決めたからにはとやかく言っても仕方あるまい!目指せ3千……コホン・・・・目指せフィオーレ一!!!

 

 

チームフェアリーテイル!大魔闘演武に参戦じゃああ!!

 

マカロフの号令と共に、妖精の尻尾は大魔闘演武に参加することが決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで残り三ヶ月・・・・妖精の尻尾のメンバーはそれぞれで修行する事に決めた。グラン達は海へ行き、ナツとグレイなどは初日は思いっきり遊んでエンジョイしていた。まぁ午後からはちゃんと修行していたが。

 

「・・・・んー?」

 

「どうしたの?グラン?」

 

「また悩み事?似合わないわよ?」

 

海合宿に来てから、何やらグランがまた悩んでいるようだ。

 

「んや・・・・なんて言うか・・・・なんか天狼島から起きてから、妙に力が上がってるような・・・・上がってないような・・・・」

 

「どういうこと?」

 

「アンタ、天狼島の魔力を一回飲み込んで、その上ずっと島の中に埋まってたから、そのせいじゃない?」

 

「・・・・う〜ん・・・・よく分からん・・・・ウェンディはどうだ?」

 

「・・・・コレ・・・・何て読むのか分からなくて・・・・」

 

「・・・・あー・・・・レビィに頼んで読めるようにしてもらえ・・・・」

 

「・・・・うん、そうする。グランも頑張ってね」

 

とりあえずグランは自分の中にある魔力をなんとかする事に専念した。

 

 

 

そんでなんやかんやで一日目が終了し、二日目の特訓日

 

「うーん!充実してるなァー!!」

 

「俺達が本気で体を鍛えりゃ」

 

「二日間といえどかなりの魔力が上がりましたね。」

 

「この調子で三ヶ月間鍛えれば、この時代に追いつくことも夢ではなさそうだ。」

 

「うん!」

 

「・・・・ねぇやっぱなんか魔力おかしくない?大丈夫?オレ?」

 

「大丈夫なんじゃない?」

 

「かーっかっかっかっ!見てろよ!他のギルドの奴ら!妖精の3ヶ月、炎のトレーニングの成果をなぁー!!」

 

「最初はたった三ヶ月?って思ってたけれど効率的に修行すればまだ三ヶ月もあるの?って感じね。」

 

「━━━姫!大変です!」

 

突然、ルーシィの足元から現れた人物・・・・いや、星霊。処女宮のバルゴだ。

 

「どこから出てきてんのよー!!」

 

「お仕置きですね。」

 

「そういや、ルーシィが7年間妖精の球の中にいたってことは……契約してる星霊もずっと星霊界とやらにいたって事になるのか。」

 

「可哀想!ルーシィのせいで・・・・ルーシィのせいで・・・・」

 

「いえ、それは大した問題ではないのですが……」

 

「問題ねぇのかよ」

 

「何かあったの?」

 

「星霊界が滅亡の危機なのです。皆さん・・・・どうか助けてください。」

 

「・・・・!!!」

 

「なんだと?」

 

「そりゃ一体・・・・」

 

「星霊界にて王がお待ちです。皆さんを連れてきてほしいと。」

 

「おし!任せとけ!友達の頼みとあっちゃあ・・・・」

 

「待って!星霊界に人間は入れないはずじゃあ……」

 

「星霊の服を着用すれば、星霊界にて活動できます。行きます。」

 

「ちょ、まだ心の準備が・・・・」

 

途端に地面に展開された魔法陣から光が溢れ、その場にいた一同は星霊界へと送られる。ジェットとドロイは取り残されて。

 

「なんで俺達だけ」

 

「おいてけぼり?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ」「ぎゃっ」「あぶねっ・・・・と、無事かウェンディ、シャルル?」「う・・・・うん。ありがと」「助かったわ」

 

「いやだからあたしらは!?」

 

魔法陣から落ちてきた一同。グランは体勢を変え、ウェンディとシャルルを抱き抱える。

 

そして、周りの景色を見て唖然とした。ここまで綺麗な場所だとは思っても見なかったからだ。

 

「ここが星霊界!?」

 

「わぁ・・・・綺麗・・・・」

 

ルーシィとウェンディも見たことがない絶景に感嘆の声を上げていた。

 

と、感動している一同の前に大きな影がくる

 

「よく来たな…古き友よ」

 

「あんたは」

 

「でかっ!」

 

「髭ぇー!!」

 

「星霊王!」

 

「お前がここの王か?」

 

「思ったよりでかいな、髭面」

 

(おまえって言ったー!)

 

(髭面って言ったー!)

 

おまえはまだいい・・・・よくないが、そんな堂々と髭面と言えるその度胸はすごいと思う。

 

「いかにも」

 

「星霊界の滅亡の危機って!?」

 

皆の視線が精霊王に注目する。

 

やがて星霊王はニカッ、と笑みを浮かべた。

 

「ルーシィとその友の!!!!時の呪縛からの帰還を祝してぇ!!!宴じゃーーーーーーーーーーっ!!!!」

 

「・・・・・・・・へ?」

 

星霊王の言ったことが理解出来ず、皆、ポカーンとしていた。

 

流石のグランもポカーンとした。

 

「滅亡の危機って!?」

 

「…………てへっ」

 

「何ーーーーー!!」

 

「ガハハハハハハハ!!!MO 騙してすまねっす。」

 

「驚かせようと思ったエビ。」

 

「ルーシィ様たちの帰還を祝して(メェ)達なりに考えたのです」

 

「みーんなでお祝いしたかったけど、いっぺんに人間界に顕現出来ないでしょ」

 

「だから、皆さんの方を星霊界に呼んだの。スミマセン」

 

「今回だけだからな、ウィ」

 

「そう!特別よ」

 

「ピーリピーリ」

 

 ようやく状況を理解できたナツ達は楽しむことにした。

 

「なーんだ、そーゆー事かーーーーっ!!!」

 

「もしもしーーーーーーっ!!」

 

「びっくりさせやがってーーーーーーっ!!」

 

「久しぶりだね、みんなー!!さあ!!僕の胸に飛び込んでもいいよ、ルーシィ」

 

「・・・・もう」

 

「さぁ!今宵は大いに飲め!!!歌え!!!騒げや騒げ!!!古き友との宴じゃ!!!!」

 

 こうして始まった、予想していなかった星霊界での宴。

 

 大きなテーブルにはたくさんの舌を誘う料理が並べられていた。

 

「元気だったか」

 

「試験は残念だったね」

 

「あの時はどうも、ありがとうこざいました」

 

「いえいえ、礼には及びません」

 

「・・・・なんの礼だ?」

 

「あ、グラン!あの時・・・・ハデスに攻撃された時助けてくれたの」

 

「ウェンディを助けていただきありがとうございます」

 

そのことを聞き、即座にホロロギウムに頭を下げるグラン。その間、僅か0.2秒である。

 

「いえいえ、頭を上げてください。当然の事をしただけですから」

 

「でも・・・・あの・・・・服が脱げたのは恥ずかしかったです・・・・」

 

「ちょっと待て、その話詳しく」

 

「もう、グラン!!」

 

顔を赤らめ両手を顔に当てたウェンディと即座に頭を上げ、その話を聞こうとするグラン。

 

「いや・・・・あれは・・・・その・・・・」

 

「「失礼しました」と申しております」

 

「・・・・後ろで何やってんの?」

 

ほかの皆も、それぞれで楽しんでいる。途中、シャルルとハッピーがニコラという星霊の大群に飲み込まれたりもしたが。

 

「エルザさ〜〜ん。MO、相変わらず見事な乳で・・・・」

 

「そうか?」

 

「ちょっと飛び跳ねてくれませんか?」

 

「なぜだ?」

 

「・・・・何考えてんだ、あの牛・・・・」

 

「あの星霊イヤ・・・・」

 

「私もです・・・・グランはどう思う?」

 

「オレはウェンディがいい」

 

即答か・・・・どんだけウェンディが好きなんだコイツは。ウェンディもその言葉に満足そうであった。

 

ポロロン♪ポロン、ポロロン♪

 

「古き友〜♪私は見える、あなたがそこにいる♪」

 

ポロロン♪ポロン、ポロロン♪

 

「古き友〜♪私は誓う♪決して・・・・とぎれぬ絆♪」

 

ポロロン♪ポロン、ポロロン♪

 

「歩き出す、無限の荒野♪涙こらえて、明日へと進む♪あなたの為の星だから♪」

 

ポロロン♪ポロン、ポロロン♪

 

「私は輝ける♪あなたの為の歌だから♪笑顔を見せて♪」

 

ポロロン♪ポロン、ポロロン♪ ポロロン♪ポロン、ポロロン♪

 

やがて、会場には優しい音楽が包み、皆の心を癒す一時となる。

 

その間、ルーシィは色んなことを思い返した。

 

辛かった事。楽しかったこと。悲しかったこと。

 

その全てがあったからこそ、今のルーシィがいる。

 

「ありがとう、みんな・・・・大好き・・・・」

 

涙を浮かべ、そういうルーシィに対し・・・・星霊王はただニカッ!と笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、楽しい時はあっという間に過ぎていくもんだ。

 

グラン達が人間界に帰る時間が近づいていた。

 

「ウム・・・・存分に楽しんでしまった」

 

「こんなうめぇもん、食ったことねぇよ」

 

「食ったのか!食ったのか!おまえーーーーーー!!」

 

「・・・・どうした?」

 

「この本、もらっていいの?」

 

「私この服欲しいです!」

 

「最高に似合ってるぞ!!」

 

「ホント!嬉しい!!」

 

その場でくるくる回るウェンディに対し、今まで見た事ないくらいの笑顔を出すグラン。気持ち悪りぃなコイツ。

 

「変なプルーが離れないよぉ〜〜〜〜」

 

「あっちも妙に気があっちゃって」

 

「苦労してんだね、あんた」

 

「アクエリアスさんこそ!」

 

「古き友よ、そなたには我々がついてイル」

 

「うん!」

 

「これからもよろしく頼むぜ」

 

「いつでも(メェ)達を呼んでください」

 

「またギルドに顔を出すよ」

 

「みなさん、ルーシィさんをこれからもよろしくお願いします!!!」

 

「では!!!!古き友に星の導きの加護があらん事を!!!」

 

 そう言うと星霊王を筆頭に星霊達が姿を消していった。

 

 残ったのはバルゴとホロロギウムだけだ。

 

「本当にお前は星霊に愛されているな」

 

「みんな、最高の仲間だよ」

 

「さーて!!だいぶ遊んじまったし、帰ったらたっぷり修行しねーとな」

 

「そうだ、3ヶ月で他のギルドのやつらに追い付かねーと!!」

 

「あー、確かになぁ〜」

 

「いやオメェは必要ねぇだろ」

 

「・・・・え?」

 

「そういえば一ついい忘れていたことが。星霊界は人間界とは時間の流れが違うのです」

 

・・・・なんか直感的に嫌な感じがしたグラン。そんなグランとは裏腹にナツとグレイは何か興奮気味だった、

 

 

「まさか、それって・・・・こっちでの一年が人間界では一日・・・・みてーな?」

 

「夢のような修行ゾーンなのかっ!!?」

 

「いいえ“逆”です。星霊界で一日過ごすと人間界では“三ヶ月”経ってます」

 

頭が真っ白になり、ぽけーっとしながら海を見つめるナツ達。

 

「・・・・・・・・・・・・え?」

 

「みんな〜待ちくたびれたぜ」

 

「大魔闘演武はもう五日後だぜ!!すげー修行してきたんだろーなぁ!!!」

 

 そこに駆けつけたのは置いていかれたジェットとドロイ。

 

「「「終わった………」」」

 

そして、力尽きたようにナツ、グレイ、エルザが前倒しに倒れた。

 

ウェンディはその場にしゃがみこんで、泣き出してしまう。

 

グランは慌ててウェンディを落ち着かせていく。

 

「うえぇぇぇーー!」

 

「ウェンディ・・・・大丈夫、大丈夫だから泣かないでくれ・・・・オレも泣きそうになる・・・・」

 

「ヒゲーーーーー!!時間返せぇぇーー!!」

 

 大魔闘演武まで残り5日である。・・・・終わったな。

 



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第二十三話 魔女の罪とグランの過去


今回、グランの過去がチラッと見えます。多少強引ですがね


 

前回・・・・星霊界の危機と聞き、急いで星霊界に向かうと・・・・それはただの口実で、本当は無事帰還したルーシィ達を祝う為の宴を開いていたのだ。それ自体はとても楽しかった。・・・・それはもう、一日中遊ぶくらいに・・・・星霊界で

 

「なんという事だ……」

 

「大事な修行期間が………」

 

「三ヶ月があっという間に過ぎた……」

 

「どうしよう……」

 

建物の壁にもたれながら、ナツ達はとても呆けていた。

 

そらそうだ、星霊界での一日は人間界では三ヶ月という、まさかの展開・・・・呆けたりもするさ

 

「姫、提案があります。私にもっとキツめのお仕置きを。」

 

「帰れば。」

 

「大魔闘演武であと五日だってのに」

 

「全然魔力が上がってねーじゃねーか!!グラン以外!!」

 

「おい」

 

「今回は他のみんなに期待するしか無さそうだね」

 

「はぁ」

 

「またリリーとの差が開いちゃうよ」

 

「え!?」

 

「あんた気にしてたの?」

 

「・・・・ねぇ、オレ魔力あがってんの?」

 

「知らないわよ」

 

「むうう!今からでも遅くない!五日間で地獄の特訓だ!!お前ら全員覚悟を決めろ!寝る暇はないぞ!!特訓に付き合え、グラン!!」

 

「ひぇぇ〜……」

 

「え、なんで名指し?」

 

ルーシィが、エルザの鬼気迫るやる気に少し怯え、何故名指しで呼ばれたのかわかってないグラン。・・・・と、空から一羽の鳩が降りてくる。

 

「ん?」

 

「ハト?」

 

「足になんかついてるぞ。」

 

「メモだ」

 

「何々〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『妖精の尻尾へ、西の丘にある壊れた吊り橋まで来い』って書いてあったのに」

 

「誰もいねーじゃねーか。」

 

「なんで喧嘩腰何ですか」

 

「イタズラかよ……」

 

「だからやめとこって言ったじゃない。」

 

鳩に付けられていたメモに書かれている場所までナツ達はやってきたが、そこには誰もいなかった。イタズラかと思った一同は帰ろうとした、その時。

 

「これは……」

 

「橋が、直った!?」

 

「向こう岸に繋がったぞ!!」

 

「渡ってこいということか……」

 

「やっぱり罠かもしれないよ?」

 

「なんか、怖いです……」

 

「・・・・安心しろ、何があっても守ってやるから。」

 

そして、そのまま一同は森の奥へと進んでいく。

 

しばらく歩くと・・・・目の前に、黒いローブを羽織った三人組がいた。もう見るからに怪しい三人組だ。

 

「誰かいる!」

 

「皆さん気をつけて!」

 

黒いローブを羽織った3人組は一同に近づく。そして、その顔を見て一同は驚きを隠せない。

 

「来てくれてありがとう……妖精の尻尾。」

 

「ジェラール……」

 

「変わってないなエルザ。もう・・・・俺が脱獄した話は聞いたか?」

 

「あぁ・・・・」

 

「そんなつもりはなかったんだけどな」

 

「私とメルディで牢を破ったの。」

 

「私は何もしてない、殆どウルティア一人でやったんじゃない。」

 

「メルディ」

 

「ジュビア、久しぶりね。・・・・あなたも久しぶり!グラン!」

 

「・・・・んあ?」

 

ジュビアに笑顔で挨拶をするメルディ・・・・そしてメルディはグランに近づいて、グランにも挨拶をする。さっきよりも笑顔で。まぁグランは誰だか分かってないようだが・・・・。

 

因みにウェンディは目を見開き、メルディの一部分と己の一部分を見比べて、落胆していた。

 

「ジェラールが脱獄!?」

 

「こいつらグリモアの……」

 

「まぁ待て、今は敵じゃねぇ……そうだろ?」

 

「えぇ……私の人生で犯してきた罪の数はとてもじゃないけど“一生”では償いきれない。だから、今はせめて私が人生を狂わせてしまった人々を救いたい・・・・そう思ったの。」

 

「例えば、ジェラール」

 

「いいんだ……俺もお前も闇に取り憑かれていた。過去の話だ。」

 

「ジェラール・・・・お前、記憶が……」

 

「ハッキリしている、何もかもな。六年前……まだ牢にいる時に記憶が戻った。エルザ・・・・本当に・・・・なんといえばいいのか」

 

「楽園の塔でのことは、私に責任がある。ジェラールは私が操っていたの。だから余り責めないであげて。」

 

「俺は牢で一生を終えるか・・・・死刑。それを受け入れていたんだ。ウルティア達が俺を脱獄させるまではな。」

 

「それって、なにか生きる目的ができた、ってことですか?」

 

「ウェンディ、グラン・・・・そう言えば君達が知っているジェラールと俺は……どうやら別人のようだ。」

 

「あ、はい!そのことはもう解決しました。ね、グラン!」

 

「・・・・・・・・??」

 

ウェンディに声をかけられたグランは何やらまた何か悩んでいるようだった。

 

「生きる目的……そんな高尚なものでもないけどな。」

 

「私達はギルドを作ったの。正規でもない、闇ギルドでもない独立ギルド 魔女の罪(クリムソルシエール)

 

「独立ギルド?」

 

「どういう事?」

 

「連盟に加入してない?」

 

「魔女の罪?聞いたことあるぞ。」

 

「ここ数年で数々の闇ギルドを壊滅させてるギルドがあるとか。」

 

「私達の目的はただ1つ。」

 

「ゼレフ……闇ギルド、この世の暗黒を全て払うために結成したギルドだ。二度と俺達のような闇に取り憑かれた魔導士を生まないために。」

 

魔女の罪の目的。それは全ての闇ギルドを全て滅ぼす為。

 

「おおっ」

 

「それってすごい事よね」

 

「評議会で正規ギルドに認めてもらえばいいのに。」

 

「脱獄犯だぞ?」

 

「私達()悪魔の心臓だし……」

 

「それに、正規ギルドでは表向きには闇ギルド相手とはいえ、ギルド間抗争禁止条約がある。俺達のギルドの形はこれでいいんだ。」

 

「……で、貴方達を呼んだのは別に自己紹介の為じゃないのよ。大魔闘演武に出場するんだってね。」

 

「お、おう。」

 

「会場に私達は近づけない。だから、貴方達に一つ頼みたいことがあるの。」

 

「誰かのサインが欲しいのか?」

 

「それは遠慮しておくわ。」

 

「毎年、開催中に妙な魔力を感じるんだ。その正体を突き止めて欲しい。」

 

「なんじゃそりゃ?」

 

「フィオーレ中のギルドが集まるんでしょ?怪しい魔力の一つや二つ……」

 

「俺達も初めはそう思っていた。しかし、その魔力は邪悪でゼレフに似た何かなんだ。それはゼレフに近づきすぎた俺達だから感知できたのかもしれない。」

 

「ゼレフ……」

 

「私たちはその魔力の正体を知りたいの」

 

「ゼレフの居場所をつきとめる手がかりになるかもしれないしな」

 

「もちろん、勝敗とは別の話よ。私たちも陰ながら妖精の尻尾を応援してるから!それとなく謎の魔力を探ってほしいの」

 

「雲を掴むような話だが、請け合おう。」

 

「助かるわ。」

 

「いいのか、エルザ」

 

「妙な魔力の元にフィオーレ中のギルドがし集結てるとあっては、私達も不安だしな。」

 

ジェラール達の申し出を受けるエルザ。たしかに、妙な魔力があっては妖精の尻尾も無事とは限らないからな。

 

「・・・・それと今のとは別に話しておきたいことがあるんだ」

 

突如、ジェラールが口を開く。

 

「話しておきたい事?」

 

「ああ・・・・コレは俺が犯してしまった・・・・罪の事だ」

 

「いいえ・・・・私たちよ。私たちが・・・・犯してしまった・・・・一人の人生を大きく変えてしまった」

 

ジェラールに次いで、ウルティアも話を始める。一同は何事かと思ったが、耳を傾けた。

 

「エルザ・・・・・・・・ノーム・・・・という名を覚えているか」

 

「っ!!・・・・・・・・あぁ、覚えている」

 

「ノーム?それは誰?」

 

「・・・・かつて、私やジェラールとともに“楽園の塔”にいた子の名だ。名無し(ノーネーム)だから、ノームだと、そう名乗っていた。・・・・労働に対し、いつも歯向かっていた為、いつものようにひどい仕打ちをされていた。・・・・それでも、あいつは・・・・皆の自由のために、歯向かう事をやめなかった。それが私たちにも、次第に希望に変わりそうだった。・・・・だが」

 

そこで一度、エルザは言葉を濁した。・・・・ほかの皆も、ノームという子がどうなったのか、予想はできてしまった。

 

「・・・・あいつは、死んでしまった。・・・・奴らの仕打ちに・・・・耐えきれず・・・・」

 

「・・・・いや、彼は生きている。」

 

「っ!!」

 

「彼は、奴らの拷問の最中に彼の中である魔法が目覚めた。その影響で、塔の地下に眠ってしまったんだ。魔法が発動した事で、今まで白かった髪の色は・・・・()()()に変わってしまっていた。」

 

「・・・・焦茶色の髪って・・・・まさか」

 

一同の視線が、ある一人に向けられる・・・・たしかに、彼の髪の色も焦茶色だ。

 

「・・・・エルザを塔から追い出した後・・・・オレは彼の存在を知った。・・・・当然、当時のオレは彼を駒にするべく、彼が眠っている地下に向かった。だが、皆の自由を願う彼がオレについてくるはずもない。無理やりやろうにも、当時のオレでは彼には勝てない。・・・・だから、オレは・・・・いや、俺たちは」

 

「彼の記憶を奪い・・・・海へと投げ捨てた。」

 

「「「「っ!!」」」」

 

「・・・・その後、まさか生きているとは思っていなかった。記憶が戻った時に思い出したんだ。俺が殺してしまったはずの彼が・・・・俺の目の前にいた・・・・と。・・・・すまなかった

 

グラン

 

皆の視線の先・・・・そこにいたのは・・・・やはりグランだった。なんとこんなところでグランの隠れたルーツが発見されるとは・・・・いやーびっくりだね!!

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・許してもらおう・・・・なんて思ってない。それでも・・・・君に一度、謝りたかったんだ。・・・・君の人生を・・・・自分達の目的のために奪ってしまった・・・・本当に、すまなかった」

 

「いいえ、悪いのは彼を操っていた私・・・・あなたの記憶も、私が奪ったの。・・・・だから、罰するなら私よ。・・・・本当に、ごめんなさい」

 

ジェラールとウルティアは、グランに向けて頭を下げる。許しを経たいのではない。純粋に、己の罪を感じ謝罪がしたかったから。

 

その間、グランはずっとダンマリだった。ほかのメンバーも色々言いたいことはあったが、当の本人がダンマリを決め込んでいるから言うに言えなかった。

 

そして、とうとうその閉じた口が開いた。

 

「あっ、思い出した。アンタゼレフ背負ってジュビアに追いかけられた人か!」

 

「・・・・えっ!?あ、うん、そうだ・・・・よ?」

 

「あー、スッキリした。・・・・なんでみんなして俺を見てんの?」

 

ズコーーーッ!!!

 

その場にいた妖精の尻尾のメンバーは、ウェンディとシャルルを除いて全員ずっこけた。

 

「・・・・ん?」

 

「・・・・話は、聞いていたんだよね?」

 

「あ?・・・・あー、きいてたぞ。記憶奪って海に投げ捨てたってな。・・・・んで?」

 

「でって・・・・他に何かないの?」

 

「・・・・いや〜、別にどうでもいいし」

 

「どうでもっ!?」

 

まさかのどうでもいい発言・・・・そうだった、コイツはこういう奴だった。ひときわ付き合いの長いウェンディとシャルルは、あー、やっぱりと言った感じでグランを見ていた。

 

「・・・・私たちは、あなたの記憶を奪ったのよ。その上、殺そうともした」

 

「でも、死んでねェし・・・・ぶっちゃけ記憶云々は別に気にしねぇ」

 

「だが・・・・うごっ!?」

 

「しつこい」

 

それでも頭を下げてくるジェラールの脳天に手刀をかますグラン。あまりの威力にジェラールは地面に落ちる。

 

「ジェラールっ!?」

 

「あんたらが記憶を奪ったとか・・・・海に投げ捨てたとか・・・・別にもうどうでもいいわ。それに・・・・そのおかげで、ウェンディ達に会えたし・・・・妖精の尻尾にも入れた。」

 

「え、このまま話すの?」

 

ジェラールは未だに悶絶しているが、普通に話を進めるグラン。自由すぎるぞ、コイツ。

 

「それに、別世界とはいえ、ジェラールには助けてもらってるからな。それでチャラってことで考えとけ。」

 

未だに地面に悶絶してるジェラールに言い渡すグラン。

 

「・・・・人が話してんのに寝っ転がるのはどうかと思うぞ・・・・」

 

「いや、グランがやったんだよ?」

 

「・・・・そうなの?」

 

ウェンディにそう突っ込まれるグラン。そうだ、おまえがやったんだよ。

 

「・・・・なら、私は・・・・」

 

「・・・・さあ?もうこの話終わりでいい?」

 

「・・・・えぇ?」

 

物凄い困惑した。決死の思いで告げた罪を、どうでもいいの一言で片付けられたからだ。・・・・もう、すごいなコイツ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで話はつづき

 

 

 

 

 

 

「報酬は前払いよ。」

 

「食費!」

 

「家賃!」

 

話は戻って、大魔闘演武で感じた妙な魔力の調査に対し、ウルティア達から前払いの報酬が払われることになった。

 

ナツとルーシィはお金が貰えると思いとても嬉しそうだったが・・・・どうやら違うようだ。

 

「いいえお金じゃないの。私の進化した時のアークが、貴方達の能力を底上げするわ。」

 

「「「え?」」」

 

 

 

「パワーアップ・・・・と言えば聞こえはいいけど、実際はそうじゃない。魔導士にはその人の魔力の限界値を決める器のようなものがあるの。例え、その器が空っぽになってしまっても大気中のエーテルナノを体が自動的に摂取して、しばらくすればまた器の中は元通りになる。ただ・・・・最近の研究で魔導士の持つその器には、普段使われてない部分があることが判明した。誰にでもある潜在能力、第二魔法源(セカンドオリジン)。時のアークがその器を成長させ、第二魔法源を使える状態にする。つまり、今まで以上に活動時間を増やし、強大な魔力を使えるようになる。」

 

「「「「おぉーっ!!」」」

 

「全然意味わかんねーけど。」

 

「ただし・・・・想像を絶する激痛と戦うことになるわよ。」

 

「ああああ・・・・」

 

「目が怖い」

 

「構わねぇ!ありがとう!ありがとう!!どうしよう!?段々本物の()に見えてきた!」

 

「だから女だって。」

 

「まだ引きずてやがったか。」

 

「・・・・何があったん?」

 

 





そんな感じで、実はグランも楽園の塔出身でしたー!!・・・・無理やりすぎないかって?大丈夫、大丈夫。時期的にもだいたい同じくらいだし・・・・そういう細かいところは気にしないで!!


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第二十四話 大魔闘演武・・・・開催

 

「か・・・・は……!がっ!ああ……!」

 

「「・・・・・・・・」」ゾ〜〜〜〜

 

「ぎぃいいいいいい!」

 

「服……脱がなきゃ、魔法陣・・描けねーのかなぁ……」

 

「あんたはそれ、心配しなくていいんじゃない……?」

 

「ぎゃああああ!!」

 

痛みで叫びながら、悶苦しみ続けるナツ。想像を絶する激痛とは言っていたが、あのナツがここまで苦しむとは・・・・恐ろしい!!

 

「頑張って。潜在能力を引き出すことは簡単じゃないのよ。」

 

「うがああぁああああ!!」

 

「ちょっと……あれ大丈夫なの?」

 

「どんだけの痛みなんだよ……」

 

「感覚連結してみる?」

 

「ふざけんな!!」

 

「私達も……あれ、やるの?」

 

「泣きそうです……」

 

「「お、俺らには関係ねえし帰ろうかな……」」

 

「そう言えばエルザは?」

 

「ジェラールと二人でどこか行ったよ。」

 

「いつの間に……」

 

「そういう事ならジュビア達も!!」

 

「どーゆー事だよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

皆が向こうで楽しそう(グラン視点)にしてる中、グランは少し離れた場所でボーっとしていた。

 

「・・・・こんなところでどうした、グラン?」

 

「・・・・あ、エルザさん・・・・んや、なんでも」

 

と、ジェラールと何かを喋っていたエルザが戻ってきた。

 

「・・・・オレ、エルザさんと知り合いだったんすね」

 

「・・・・そうだな。流石に驚いたぞ、おまえがあのノームだったとは。全く気づかなかったぞ。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お姉ちゃんって呼んでやろうか?」

 

「何、遠慮はいらん。姉の胸に飛び込んでこい!!」

 

「冗談だ、冗談!!だから無理やり抱こうとすんな!!」

 

そんな冗談を言ったおまえが悪いと思う。エルザは満更でもないようだから、呼んでやれww

 

・・・・ちなみに、その一部始終を見ていたウェンディは、やはり己の一部分を見て・・・・物凄い落ち込んだ。

 

 

 

 

「おお・・・・・・お・・・」「ぎゃあああああっ!!」「あああ・・・・」「ううう・・・・」「あーーんっ!」

 

それからそれから・・・・全員に第二魔法源を引き出す魔法陣を描き・・・・全員苦しんでいた・・・・エルザとグランを除いて。

 

「お陰様でみんな動けそうにない。」

 

「・・・・いや〜、思ったより痛いねぇ〜」

 

「……なんであんたらは平気なの?」

 

エルザとグランは、コテージの前に立ちウルティアに礼を言う。痛いとかいってるわりに、めちゃくちゃ余裕そうだった。全然痛がってねぇし、もう怖いよ、この人達。

 

「ギルドの性質上、1箇所に長居はできない。俺たちはもう行くよ。」

 

「大魔闘演武の謎の魔力の件、何かわかったらハトで報告して。」

 

「了解した。」

 

「・・・・分かった」

 

「競技の方も陰ながら応援してるから、頑張ってちょうだい。」

 

「本当は観に行きたいんだけどね。」

 

「変装していく?」

 

「やめておけ。」

 

「それじゃあ、また会おうエルザ。」

 

「バイバーイ!またねー、グラン!!」

 

「みんなに宜しくね。グレイのこともお願いね。」

 

そう言って、三人の姿は離れていって段々と遠くなり、最終的に姿が見えなくなる。

 

「・・・・なんかジェラールとあったんですか?」

 

「・・・・フフッ、いや。相変わらずウソが下手だと思っただけだ」

 

「・・・・ふ〜ん」

 

ジェラール達の姿が見えなくなってから、苦笑してため息をついていたエルザにグランは何かあったのかと聞くが、上手い具合にはぐらかされた為、それ以上聞かなかった。

 

「見て見てエルザー」

 

すると、どこにいたのか、ハッピーが現れ、枝で地面に落書きを描いていく。

 

・・・・ハートマークがひび割れたかのような絵を描いて、ハッピーは笑いをこらえながらそれをエルザに見せていた。

 

「・・・・あ〜あ」

 

当然、ハッピーはエルザに天高く蹴り挙げられ、それを見届けるグラン。その日、ハッピーは星となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから時が経ち、グラン達が合宿からギルドに戻り、大魔闘演武に出場する五人をマスターが選出した。

 

ナツ、グレイ、エルザ・・・・そしてルーシィとウェンディ。まさかのグランは選ばれないという結果になり、選ばれた五人を含め、全員が驚愕した。エルザ曰く、個々の力よりチーム力で判断したと言っていた。

 

・・・・ぶっちゃけガチで組むなら、エルザ、ミラジェーン、ギルダーツ、ラクサス、グランの五人で挑みたかったなぁ〜という本音を口に出してたり・・・・出してなかったり・・・・

 

いつもならそんなこと気にしないグランだが、ウェンディと一緒に出れないと分かった瞬間、砂となっていた。そして、涙ながらウェンディに声援を送っていた。

 

そんで、大魔闘演武に出場する五人と一部のギルドメンバーは、一足先にフィオーレ王国首都 花咲く都・クロッカスに来ていた・・・・第二魔法源の引き出しのせいでだいぶ調子が悪そうだったが・・・・やはりエルザは平気そうだったが

 

そしてそれぞれで街を回ることに・・・・と、その前に大魔闘演武の公式ルールとして、かいつまんで説明すると大事なことは三つ。

 

一つ、各ギルドのマスターは参加できない

 

一つ、ギルドの紋章をつけていない者を客人として参加させない

 

一つ、各競技は競技開始直前まで秘匿とし、各競技のルールもそこで説明される・・・・と、こんな感じである。

 

最後に注意書きとして「参加者は指定された宿に12時までに帰る事」だそうだ。

 

というわけで、時間がたっぷりあるから街を回ろうというらしい

 

・・・・その街を回る間に色々あった。エルザは指定された宿に行き、怪しいところがないか調べ、グレイは街に来ていたジュビアと・・・・リオンと共に食事をし・・・・ナツとハッピーとルーシィは街中で起こった喧嘩を見に行ってみたら、噂の剣咬の虎の双竜、スティングとローグと出会い・・・・まぁ、馬鹿にされた。ウェンディとシャルルは二人で街を回っていた。本当ならグランと一緒に回りたかったが、あいにくだった為・・・・そして、街を回る途中・・・・・・・・行方をくらませた。

 

ウェンディが戻らぬまま、時計は十二時を周り、大魔闘演武の()()が開始された。

 

参加チーム113を、一気に8つに絞る為の予選・・・・ルールは簡単、本戦会場であるドムス・フラウにゴールすれば良いだけである。各宿が変形し、スタート地点となり、空中に浮かぶ迷宮にて競争をすれば良いだけの事。

 

とはいえ、ナツ達はすぐには行けなかった・・・・何せウェンディがまだ来ていなかったから・・・・だが、ここには頼りになる漢が一人いた。

 

エルフマンがウェンディの代わりに出場し、迷宮へと向かった。・・・・まぁその途中は省いて、なんやかんやで予選は通過することができたのだ!!・・・・ギリギリの八位だけどな。

 

一方で、ウェンディ達を探していたハッピーとリサーナは、道にウェンディのバックが落ちているのを発見・・・・そしてその茂みの近くでウェンディ達を発見した。

 

外傷はないが、一度に魔力を失った為、全身の筋肉が低下する魔力欠乏症になってしまった。

 

「みんな・・・ごめ・・・・せっかく・・・・修行・・・・したのに・・・・私・・・・出られなくて・・・・グランの・・代わりに・・・・頑張ろうって・・・・思ったのに・・・・」

 

ウェンディは涙を流し、体を震わせながらそう告げた。

 

「エルフマンさん・・・・私の代わりにお願いします」

 

「おう!!まかせておけ」

 

 

 

 

そして、ナツ、グレイ、エルザ、ルーシィ・・・・そしてエルフマンの五人は控えに戻っていた。

 

「この大会の中にウェンディを傷つけた犯人がいるのか?」

 

「まだなんとも言えない・・・・けど、その可能性はあると思う」

 

「オレ達の戦力低下を狙ったのか?それとも」

 

「今はやるしかねぇ!!ウェンディの分まで俺たちが頑張るんだ!!」

 

「・・・・というか、この事グランが知ったら・・・・やばくない?」

 

なによりもウェンディとシャルルの事を第一に考えているあの男がこの事を知ったら・・・・もはや大会どころではないと、五人は容易に想像できてしまった。

 

「・・・・それは後で考えよう」

 

「「「「・・・・賛成〜」」」」

 

そして五人は会場に出場していった。

 

『今年もやってきました!!年に一度の魔法の祭典!!大魔闘演武!!実況は私、チャパティ・ローラ。解説には元・評議員のヤジマさんにお越しいただいております。ヤジマさんよろしくお願いします』

 

『よろスく』

 

『1日目のゲストはミス・フィオーレにも輝いた青い天馬のジェニー・リアライトさんをお招きしています!』

 

『今年はウチが優勝しちゃうぞ~♡』

 

『さあ、いよいよ選手入場です!!』

 

『よろスく。あー…あー…よろスク』

 

『ヤジマさん!!ちゃんと拡声器、音出てますから!』

 

実況と解説とゲストの紹介を経て、いよいよ選手の入場となった。

 

『まずは予選8位。過去の栄光を取り戻せるか。名前に反した荒くれ集団妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!!

 

入場した途端にブーイングの嵐・・・・いや、すごいな色んな意味で。

 

「んなっ!?」

 

「ブーイング・・・・だと?」

 

「うぬぬ・・・・」

 

『毎年最下位だった妖精の尻尾フェアリーテイルが予選制を突破し、すでに8位以内確定ですからね~。大陸中を騒がせた“天狼組”の帰還により、フィオーレ一となるか!!?』

 

「本当…良かったねぇ。おめでとう妖精の尻尾」

 

「うう・・・・」

 

「気にするなルーシィ」

 

「フレェー!!フレェー!!フェアリーテ・イ・ルッ!!!」

 

エルザがルーシィを励まし、観客席の方を見せる・・・・そこにはマカロフ達が体を思いっきり動かしながら声援を送ってくれていた。

 

「仲間の声援があれば、それだけでいい」

 

「うん・・・・」

 

彼らの存在は、いるだけで心強い。

 

「てか・・・・あれ」

 

「ん?」

 

「うそ!?」

 

「まさか・・・・」

 

と何かを見て驚きを隠せない・・・・だってそこには

 

「フレーフレー、フェアリーテイル♪」

 

「「「「マスター・メイビス!!!!」」」」

 

そう、初代マスター・・・・メイビスがそこにいた・・・・幽体だが、

 

「応援に来ちゃいました」

 

「来ちゃいました・・・・って、アンタ…」

 

「大丈夫です。ギルドの紋章をつけた人しか私の事は見えてませんから」

 

「いや…そういう問題なのか」

 

「だって…ずっと天狼島にいるのもヒマなんですよ」

 

「はははっ!!!初代も見守ってくれるとは心強ぇな!!!」

 

「幽霊だけどな」

 

『さあ…続いては予選7位。地獄の猟犬軍団四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)

 

「ワイルドォ~!!」

 

「「「「オオ!!!」」」」

 

次に来たの、なんか暑苦しい連中・・・・四つ首の猟犬。

 

『6位には女性だけのギルド。大海原の舞姫人魚の踵(マーメイドヒール)

 

「そんなギルドがあったのか」

 

次いで、今度は女性だけのギルド・・・・人魚の踵。

 

『5位は漆黒に煌めく青き翅青い天馬(ブルーペガサス)

 

『みんながんばれ~♡』

 

お次は、全く変わっていないあの感じ・・・・青い天馬。

 

『4位…愛と戦いの女神。聖なる破壊者蛇姫の鱗(ラミアスケイル)

 

「何で予選4位なんだ!!手を抜いたのかいっ!!?バカモノ!!」

 

次いで、あのジュラがいるギルド・・・・蛇姫の鱗。

 

「ごめんなさいオババ様、アタシ……ドジしちゃって──きゃあ!!」

 

「シェリア、あわてるな」

 

「ごめんね、リオン」

 

「誰だアイツ」

 

「いつもの“愛”はどうした?“愛”は?」

 

「あっちも見た事ない人だけど…人!?」

 

「ウチのシェリアはシェリーの従姉妹なんだよ」

 

「おおーん。めちゃくちゃ強いんだぞ」

 

「ううん、私なんかまだまだ“愛”が足りないよ」

 

「褒めてんだよっ」

 

「やっ、ごめんねトビー」

 

「キレんなよ」

 

「グレイ、あの約束忘れるなよ。オレ達が勝てばジュビアは我がギルドに」

 

「約束なんかした覚えはねーけど、お前らだけには負けねーよ」

 

「そういう事なら私はエルザさんを戴こう!!✨う〜ん、相変わらずいい香りだ✨」

 

やはり今までと変わらない一夜。・・・・なんか安心するな。

 

「・・・・ところで、グラン殿はおらぬのか?」

 

「・・・・ああ、今回はな」

 

「それは残念だ」

 

グランがいない事を残念そうにするジュラ。今回、ジュラが参加したのは蛇姫の鱗を一位にする以外にも、グランがどれほどまで強くなったか知りたかったからである。・・・・まぁ、蛇姫の鱗にはもう一人グラン目当てで出場した者もいるが・・・・それはまた今度にしよう。

 

『続いて第3位、おおっとこれは意外・・・・初出場のギルドが3位に入ってきた!!真夜中遊撃隊大鴉の尻尾(レイヴンテイル)!!

 

「大鴉の尻尾だぁ!!?」

 

まさかの登場に、妖精の尻尾のメンバーは驚き、マカロフでさえ体を乗り出し声を荒げる。それは当然だ、大鴉の尻尾は闇ギルド・・・・参加させていいわけない・・・・だが。

 

『えーーー。公式な情報によりますと、大鴉の尻尾は7年以上前から存在していましたが、正規ギルドとして認可されたのは最近のようですね』

 

『ギルド連盟に認可されてる以上、闇ギルドじゃないよな』

 

どんな手を使ったのか、正規ギルドに認可されたようだった。・・・・と、大鴉の尻尾の金色の仮面をかぶっている男がナツ達に語りかけていた。

 

「妖精の尻尾。小娘は挨拶代わりだ」

 

そういうと、全身真っ黒な男の肩にいた小動物が、顔をウェンディに変え、そのまま倒れる仕草をした。

 

・・・・つまり、ウェンディをやったのはコイツらであるという事だ。

 

ナツが文句を言おうとした・・・・次の瞬間

 

 

ドゴォォンッ!!

 

 

「な、なんだ!?」「じ、地震!?」「急に揺れたぞ!?」「で、でもすぐ治ったぞ??」

 

いきなり会場全体が・・・・いや、この会場を支える大地が揺れ出したのだ。事情を知らない他のギルドや会場にいる人たちは何が起こったか分からなかったが・・・・妖精の尻尾のメンバーだけはわかった。

 

 

・・・・絶対怒ってる・・・・と。

 

 

『さ、さあ…突然の揺れがありましたが、予選通過のチームも残すとこあと2チーム!!さあ、予選2位のチームの入場です。・・・・おおっと、これは意外!!堕ちた羽のはばたく鍵となるのか!!?』

 

そして、そこに現れたのは・・・・全くの予想外のチーム

 

『まさか!!まさかの…妖精の尻尾(フェアリーテイル)Bチームだぁっ!!!

 

「何ーーーーーっ!!?」

 

まさかの妖精の尻尾Bチーム。その五人とは

 

「姉ちゃん!!?」

 

「ガジル!!」

 

「ジュビア!!」

 

「ラクサスは反則でしょーーーーっ!!」

 

「つーかつーかつーか・・・・グラン・・・・・・・・・・・・・・・・さん」

 

ミラジェーン、ガジル、ジュビア、ラクサス・・・・そして、我らがグランは・・・・ものすっごい怒ってる。そりゃもう怒ってる。ナツが敬語になるくらい怒ってる。そりゃそうだろ。

 

というか、グランの怒りが会場中に届いたのか・・・・もはやもうざわつきすらない。・・・・どんだけ怒ってんだコイツ。

 

『いやー今回からのルール改正により、戸惑ってる方も多いみたいですねヤジマさん』

 

『ウム…今回の大会は各ギルド1チームないス、2チームまで参加できるんだよなぁ』

 

「そんなの聞いてなかったよ」 

 

「マスター・・・・っていうか、グランは大丈夫か?」

 

「・・・・何がだ、あ"あ"ん?」

 

「・・・・いえ」

 

『決勝では各チームごとの戦いになる訳ですが、同じギルド同士で争う事ができるのでしょうか?』

 

『大丈夫じゃないかね、あそこは』

 

『でも…ちょっとずるくない?例えば各チーム1人ずつ選出して争う競技があったとして、妖精の尻尾だけペアで戦えるって事だよね?』

 

『100以上のチームの中、決勝に2チーム残った妖精の尻尾のアドバンテージという事ですね』

 

『これは有利になったねぇマー坊』

 

『マー坊?』

 

「そっか・・・・だから参加チームの数が多かった・・・・」

 

「冗談じゃねぇ!!」

 

と突然ナツがグラン達に歩み寄ってきて叫び、ビシッと指を向けてきた。グランの方は目を背けて。

 

「たとえ同じギルドだろーが勝負は全力!!手加減なしだ!!別チームとして出場したからには敵!!負けねえぞコノヤロウ!!」

 

「望むところだよ予選8位のチームさん」

 

「ぬぐっ…」

 

それは事実なので言い返せないナツ。

 

「姉ちゃぁん」

 

「頑張ろうね、エルフマン」

 

「グラン・・・・大丈夫・・・ではなさそうだな」

 

「・・・・あぁ。エルザさん・・・・んや、大丈夫だよ・・・・だが大鴉の尻尾は絶対地に深く沈めてやる」

 

「・・・・い、今はやるなよ?」

 

「・・・・まぁそれとは別に、謎の魔力ってのも探さねぇとな」

 

「そうだな・・・・互いに健闘を祈ろう」

 

「・・・・上等」

 

過去の一件が分かって以来、意外と仲がいい二人。

 

『さあ、いよいよ予選突破チームも残すとこあと1つ・・・・そう!! 皆さんすでにご存じ!! 最強!! 天下無敵!! これぞ絶対王者!! 剣咬の虎(セイバートゥース)だぁ!!!

 

 

大トリを務めるチームの紹介に実況者が力を入れ、会場がこれまで以上の盛り上がりを見せた。

 

だが、残念ながらグランはこれっぽっちも興味がなかった。

 

「出てきたか」

 

「楽しもうぜナツさん」

 

「何ガンたれてんだコラ」

 

「ガジル」

 

『これで全てのチームが出そろった訳ですが、この顔ぶれを見てどうですか、ヤジマさん?』

 

『若いっていいねぇ』

 

『いや・・・・そういう事じゃなくて・・・・で、では…皆さんお待ちかね!!大魔闘演武のプログラム発表です!!』

 

と実況が言った瞬間地面から出てきたパネルにはこう書かれていた。

 

 DAY1 隠密(ヒドゥン)+バトル

 

 DAY2 ???+バトル

 

 DAY3 ???+バトル

 

 DAY4 ???+タッグバトル

 

 DAY5 ??????

 

 

まぁなんなのか全然わっかんないんだけどね・・・・今日やる隠密+バトルも意味わからんし。

 

「1日に競技とバトルがあるのか」

 

「・・・・はてなばっかだな」

 

「バトルかー!!」

 

『まずは競技の方ですが、これには1位~8位までの順位がつきます。順位によって各チームにポイントが振り分けられます』

 

1位、10ポイント。2位、8ポイント、3位、6ポイント、4位、4ポイント、5位、3ポイント、6位、2ポイント、7位、1ポイント、8位、0ポイント・・・・と言ったぐあいらしい。

 

『競技パートはチーム内で好きな方を選出する事ができます。続いてバトルパート、こちらはファン投票の結果などを考慮して主催者側の方でカードを組ませてもらいます。バトルパートのルールは簡単。このように各チーム対戦していただき、勝利チームには10P、敗北チームには0P。引き分けの場合は両者5Pずつ入ります。では、これより大魔闘演武オープニングゲーム“隠密”を開始します!参加人数は各チーム1名。ゲームのルールは全選手出そろった後に説明します』

 

長ったらしい説明を得て・・・・ついに、大魔闘演武が開始される。・・・・終わる頃までに、会場が形を保ってくれてたらいいなぁ〜。

 

 

 



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第二十五話 隠密

 

という訳で大魔闘演武が開始され、最初の競技は隠密。

 

その名の通りなら、隠密が得意なものが出た方がいいだろう。

 

「まずはオラに任せるだーっ!!

 

まず、四つ首の猟犬からはイェーガー。

 

「最初は様子見・・・・アチキにやらせて」

 

人魚の踵からはベス。

 

「ナルプティング、お前が行け」

 

「了解でサー!!!」

 

大鴉の尻尾からはナルプティング。

 

「僕が出るよ」

 

青い天馬からはイブ。

 

「私が出よう。今日は小鳥たちの歌声が心地よい」

 

剣咬の虎からはルーファス。

 

「初めから飛ばしていく。オレが出る。」

 

蛇姫の鱗からはリオン。

 

「ほう、だったらオレが出よう。この大会、どんなモンか見させてもらうぜ」

 

そして妖精の尻尾Aチームからはグレイ。

 

「グレイ様が出るならジュビアも!!!」

 

「おい!わざと負けたらただじゃ置かねえぞ!」

 

そしてグレイが出るなら当然、ジュビアが反応する。妖精の尻尾Bチームからはジュビアが出ることに。

 

「各チーム、隠密の参加者は前へ」

 

カボチャが選手達にそう伝える。グレイは薄っすらと笑みを浮かべた。自分の力を発揮する時だ、とワクワクしているんだろう。

 

「行って来るぜ」

 

「がんばってー」

 

「絶対負けんなよ!!!特にガジルのチーム!!それと剣咬の虎と大鴉の尻尾・・・・それと」

 

「漢なら勝ってこいグレイ!!」

 

仲間達の激励を背に進んでいくグレイ。

 

『いよいよ始まりますね。果たして隠密とはどんな競技なのか。ヤジマさん、注目の選手は居ますか?』

 

『んー…本命はルーファス君だろうけど、ワスはグレイ君に注目したいね』

 

『ジェニーさんは?』

 

『もちろんウチのイヴ君よ。強いんだから』

 

実況席の会話が響く中、選手達がカボチャの前に集まった。

 

「グレイ様、申し訳ありませんが負ける気はないですよ」

 

「当たり前だ、全力で来い」

 

 

「悪いが、オレも全力でやらせてもらう──ジュビアの為に!!」

 

「あう〜〜〜」

 

「ほっとけよ、バカがうつるぞ。・・・・つーか、予選の時から気になってたんだが…お前なに?」

 

と、グレイがカボチャに向けてそう言った。・・・・それは聞いちゃダメでしょうが。

 

「見ての通り~♪カボチャですぅ〜♪」

 

「あれ?質問したオレが悪いのか?」

 

「ジュビアもカボチャに見えますよ」

 

「いや、いいんだ」

 

「毎年の事だからね、あまり気にしてなかったけど」

 

「たぶん主催者側の役員だと思うのー」

 

「「キャラ作り、ご苦労さまです」」

 

「ノンノン、楽しんでやってるからいいんだカボー」

 

なんか無理してキャラ作ってねぇか?

 

「ちょっと待って下さいや。これから始まる競技…どんなモンか知りやしませんがね、いいや…今後全ての競技に関してですがね、ど―――う考えても2人居る妖精さんが有利じゃありませんかねぇ」

 

「ア?」

 

「仕方ありませんよ、決勝に同じギルドが2チーム残るなんて凄い事なんですから。カ…カボ」

 

「いいのではないかな。私の記憶が詩っているのだ。必ずしも2人居る事が有利ともいえない…と」

 

難癖をつけてくるナルプティングに・・・・まさかのルーファスがその抗議を助けるように発言する。

 

「さすがだねー、それが王者の余裕ってヤツかい」

 

「仲間は君にとっても弱点になりうる。人質・脅迫・情報漏洩・・・・他にもいくつかの不利的状況を構築できるのだよ。記憶しておきたまえ。」

 

「忘れなかったらな」

 

・・・・だが、やっぱなんかムカつく野郎だ。

 

『フィールドオープン!!』カ・・カボ

 

マトーくんが叫ぶと、突然会場のあちこちから建物が出現。それらはどんどん構築され、会場に町を作るように並んでいく。・・・・というか、カボつけるならちゃんとつけようぜ?

 

『会場の皆さんは街の中の様子を魔水晶ビジョンにてお楽しみください』

 

と、実況が言った瞬間、町を囲むようにいくつもの映像が現れる。映像を見てみると、周りを見回している様子の参加者が見えた。

 

『参加している8名は、互いの様子を知る事ができません。隠密のルールは簡単。互いが鬼であり追われる側なのです。この街の中で互いを見つけ、どんな魔法でもかまいません、一撃与える。ダメージの有無を問わず、攻撃を与えた側が1P獲得です

 

その説明の最中、町中のあちこちに光が溢れ、競技に参加している8人の選手達と全く同じ姿をしたコピーが大量に現れた。・・・・不気味だ。

 

『これは皆さんのコピーです。間違えてコピーへ攻撃をしてしまった場合、1Pの減点となります。さあ!!消えよ静寂の中に!!闇夜に潜む黒猫が如く!!隠密──開始ィ!!!

 

ジャ――――ンと銅鑼が叩かれる。

 

いよいよ競技が開始された。

 

「・・・・これ、負けたな」

 

グランがボソッと呟いた次の瞬間・・・・

 

『グ・・・・グ・・・・グレイ様がいっぱい・・・・これだけ居るんだから1人くらいジュビアが貰っても…グレイ様~ん♡』

 

ブッブー!と音が鳴り響き、ジュビアの身体が光り出した。

 

『きゃうん!!』

 

直後、彼女の姿は消え、別の場所に転移される。

 

『おーっと!ジュビアがコピーへの攻撃で減点1です』

 

「あのバカ」

 

「ほらやっぱり」

 

「・・・・」

 

「これは、ちょっとジュビアには不利かもね」

 

『この場合、10秒後に別のエリアからリスタートとなります。また他の魔導士にやられてしまった場合も1P減点され、10秒後に別エリアにてリスタートです』

 

これにより、ジュビアの得点は-1になってしまった。

 

『制限時間内であればリスタートは何度でも可能です。制限時間は30分、1番得点を稼いだチームが1位です』

 

こんな事なら、ラクサスかグランが出ればよかったな・・・・と、若干落胆していると、今度はグレイがコピーに攻撃をして、マイナスされる。件の大鴉の尻尾のやつに嵌められたのだ。

 

別の場所に転移されたグレイだが、またナルプティングに見つかり不意打ちされグレイの得点は-2。

 

「・・・・必要以上に狙ってくんな、アイツ」

 

「チッ!あのクソどもが・・・・」

 

グランとラクサスが吐き捨てるように言った。そして、競技はどんどん進んでいき、ベスがグレイを狙うが、逆にイェーガーに居場所がバレ、攻撃された・・・・と思ったらイェーガーもリオンにやられてしまう。

 

そこにジュビアがパンチラしながらリオンにドロップキック。これでマイナスから0になった。

 

「眼福…」

 

そう呟いて転移していったリオン。・・・・七年前もあんな感じだったっけ?

 

そしてジュビアとグレイが対峙した。

 

『オイオイ、手助けは無用だぜ』

 

『分かってます。ジュビアはあなたに勝ちます。マスターと約束したから』

 

『じいさんと約束だぁ?』

 

『はい』

 

実は、彼女たちBチームはマカロフから「勝ったチームがもう一方のチームを1日好きにできる」と言われたらしい。

 

つまり、負けた方は罰ゲーム・・・・それをグラン以外全員が知っていた事だ。

 

『ふざけんなぁっ!!?オイ!!じーさん!!聞いてねえぞ!!そのローカルルール、オレ達のチームにも適用されんだろうな!!』

 

「も、もちろん」

 

「・・・・オレ聞いてねぇぞ、そんな話」

 

「お前砂になってたからな」

 

その後、やはり妖精の尻尾を狙っているのかジュビアとグレイをまとめてナルプディングが攻撃を仕掛ける。

 

とイブの魔法により町中に雪が降る。

 

息を吐けば白くなり、寒ければ体が震える。コピーかどうかを見分けるなら上等な手段だ・・・・まぁ、グレイとリオンには効かないがな。

 

『悪いがオレに寒さは効かんよ』

 

『だよね』

 

連続でポイントを稼いでいたイブだったが、リオンに攻撃され中断される。

 

各地で静かな攻防が続いているが、ナルプディングは妖精の尻尾・・・・特にグレイをずっと集中狙いしていた。

 

『見いつけたっ』

 

『チクショウ!!このアゴ!!オレばかり狙いやがって!!』

 

『それにしても剣咬の虎のルーファスがまったく動きませんね。未だに誰も倒さず、倒されてもいません』

 

たしかに、あの仮面野郎だけが、目立っていなかった。すると

 

『この競技はジミすぎる』

 

『こ…これは!?』

 

声がしたと思ったら、街中で一番高い建物。その頂上で悠然と立つルーファスがいた。

 

『私は憶えているのだ、1人1人の鼓動・足音・魔力の質。憶えている、憶えているのだ

 

記憶造形(メモリーメイク)・・・・』

 

 

突如、空が暗くなった。動揺している選手達を嘲笑うように、ルーファスは体に光を纏わせ、そして両腕を広げた。

 

星降ル夜ニ!!!!

 

彼が纏っていた光が解き放たれ、流星のように全ての選手達に降り注いだ。

 

グレイ達はなすすべもなくそれを喰らってしまう・・・・唯一避けたナルプティングはルーファスに攻撃を仕掛けるが、あえなく撃破されてしまう。

 

『ぜ…全滅!!一瞬で首位に立った!!これがルーファス!!これが剣咬の虎!!!』

 

実況も観客も大盛り上がり。あっという間に状況をひっくり返してしまった。

 

『主催者の皆さん・・・・この競技は面白くない。だって私には隠れる必要がないのだから・・・・私を見つけたところで私に攻撃は当たらない。そこには私の記憶が残るだけなのだから』

 

『造形魔法だぁ?』

 

同じ造形魔法の使い手として、グレイが反応する。

 

『ふざけやがって隠密ってルールを守りやがれ!!』

 

グレイが飛び上がってルーファスに向おうとする・・・・だが、それをナルプディングが蹴って阻止する。

 

「また・・・・か」

 

「ヒヒヒ・・・・」

 

『ここで終了―――!!』

 

そこで時間が来てしまい、映像が消え、町も空中に溶けるように消えていく。

 

『順位はこのようになりました!!』

 

1位、剣咬の虎 2位 大鴉の尻尾 3位蛇姫の鱗 4位 青い天馬 5位 人魚の踵 6位 四つ首の猟犬 7位 妖精の尻尾B 八位 妖精の尻尾A

 

妖精の尻尾は第一の競技をボロ負けしてしまった。

 

『これは第一競技ですので順位がそのまま暫定総合順位となります。やはり予想通り1位は剣咬の虎でしたね~!』

 

『見事だったねぇ』

 

『妖精の尻尾は2チームとも善戦したのですが、残念な出だしです』

 

『次に期待スような』

 

浮かない表情で歩いてくるジュビアとグレイ。

 

そんな彼らに追い打ちを掛けるように観客から罵声が飛んできた。

 

「やっぱ弱ェじゃん妖精の尻尾!!」

 

「万年最下位――――っ!!」

 

「もうお前らの時代は終わってるよ―――っ!」

 

口汚く妖精の尻尾を罵倒する観客達。・・・・ぶっ殺してぇ。

 

「・・・・アイツら全員地に沈めてもいいかな」

 

「やめとけ・・・・次で見返せばいいだけの話だ」

 

「・・・・すみません、ジュビアのせいで」

 

「気にしなくていいのよ?次、頑張りましょ?」

 

落ち込むジュビアを慰めるミラ。

 

・・・・何はともあれ、開始された大魔闘演武・・・・あまりいいスタートではないが、この先どうなることやら。

 

 



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第二十六話 卑劣な大鴉

 

『続いてバトルパートに入ります。名前を呼ばれた方は速やかに前へ…』

 

隠密が終わり、続いてバトルパートが行われる大魔闘演武。

 

『バトルパートのシステムを確認しましょう。』

 

AチームVS Bチーム CチームVS Dチーム EチームVS Fチーム GチームVS Hチーム

 

『このように各チーム一試合ずつ行ってもらいます。トーナメントではありません。』

 

『組み合わせは主催者側が決めるんだったわね』

 

『面白そうな組み合わせになるといいね』

 

『さっそく私の元に対戦表が届いてますよ』

 

最初はどことどこが戦うのか・・・・

 

『1日目第1試合!妖精の尻尾A。ルーシィ・ハートフィリア!!』

 

「あたし!?」

 

『VS.大鴉の尻尾、フレア・コロナ!!』

 

「金髪ぅ」

 

いきなり因縁の大鴉の尻尾との対決になった。

 

「ルーシィ!修行の成果を見せてやれ!!!」

 

「ここで勝てば、まだ繋がるぞ」

 

「オオオオッ!!かっとばせぇ!!」

 

Aチームはそれぞれルーシィに声をかけていく。

 

「任せて!絶対、勝つから!!」

 

勇ましい顔付きで、勝負に挑むルーシィ。

 

『この2つのギルドはマスター同士が親子の関係だそうですね、ヤジマさん!』

 

『まぁ、違うギルドの紋章を背負ったなら、親も子も関係ないけどな』

 

マトー君がルーシィとフレアに呼びかける。

 

「両者、前へ」

 

2人は近付き、互いに対面した。

 

『ここからは闘技場全てがバトルフィールドとなる為、他の皆さんは全員場外へ移動してもらいます。制限時間は30分。その間に相手を戦闘不能状態にできたら勝ちです。それでは第1試合…開始!!』

 

銅鑼が鳴った直後、ルーシィが先に仕掛けた。

 

「いくわよ!!ひらけ!!金牛急の扉・・・・タウロス!!」

 

「MOぉーーーー!!!」

 

タウロスを召喚し攻撃をしたが避けられてしまう。・・・・だが、それだけでは終わらない。

 

「スコーピオン!!」

 

「ウィーアー!!」

 

そのままスコーピオンも召喚した。

 

「サンドバスター!!!」

 

スコーピオンも砂を撃ち、攻撃するが、フレアの伸びた髪によって防がれる。だが、まだまだ、ルーシィの攻撃は終わらない!!

 

今度はタウロスの斧にスコーピオンの砂を吸収させていった。

 

「砂塵斧アルデバラン!!!」

 

そして、それを振り下ろし、複数の砂嵐を発生させ、フレアを吹き飛ばす。

 

だが、やられてばかりいるような相手ではない。フレアは髪を自由自在に操り、攻撃してきたのだ。

 

「髪しぐれ狼牙!!!」

 

髪は次第に狼へと変化していき、ルーシィへと襲い掛かる。ルーシィはすかさずにキャンサーを召喚し、襲い掛かるフレアの髪を切り落とした。

 

「私の・・・・髪が!!おのれぇ!」

 

怒ったフレアが地面に髪を潜り込ませ、ルーシィの足元から出現させ、ルーシィのブーツに絡み付き、振り回していく。対し、ルーシィもタダではやられず、腰にある 星の大河(エトワールフルーグ)という鞭を振るってフレアの腕に絡ませ、フレアを振り回す。

 

互いに回しあったが、突如それは終わった。

 

よく見ると、ルーシィのブーツは焼け焦げて溶け落ちてしまい、使い物にならなくなっていた。

 

ボロボロとなったブーツを残念そうに捨てるルーシィ。彼女自身に大したダメージがあるわけではないようだ。

 

「私の・・・・焼ける髪・・・・赤髪が・・・・その程度のダメージ・・・・オオオッ!!」

 

その事実に愕然とするフレアは再び髪を伸ばして地面に潜り込ませた。

 

どこからくるか探るルーシィ・・・・だが、一向に出てこない。不思議に思ったルーシィは、ふとフレアが指差した方向を向く・・・・そこにあったのは妖精の尻尾の観覧性・・・・そして、アスカの横にチョロチョロ動く赤い髪。

 

「アスカちゃんっ!んぐ!?・・・・ぶあ!?」

 

直後、ルーシィはフレアの髪で口元に巻きつかれ、投げ飛ばされてしまった。

 

「声を出すな。これは命令。逆らったらどうなるか・・・・わかるわよね。いくら頭の悪そうな金髪でも」

 

そこからは一方的だった。何もできないルーシィをフレアは一方的に痛めつけていった。

 

実況も観客も、チームの皆も、急にやられっぱなしとなったルーシィを疑問に思っていた。

 

それは Bチームも。

 

「・・・・アイツ、急にどうした?」

 

「いきなりやられ始めたぞ」

 

「まだ魔力は十分にあるのに・・・・」

 

「・・・・多分だが、あの赤髪がさっき地面にやった髪のせいだと思う。」

 

「髪?」

 

「ああ・・・・狂ったみてぇに髪を地面に潜り込ませた後・・・・多分だが、観客の方に向けた。・・・・他の誰かを人質に取られたんだろ」

 

「はぁ!?だったらその髪とっとと引きちぎれ!」

 

「・・・・オレがやらんでも、もう向かってるよ」

 

 

「ルーシィ!!今だァ!!!」

 

 

グランがそう呟いた時、妖精の尻尾の観客席からナツの大声が聞こえた。耳のいいナツはルーシィがつぶやいたアスカちゃん・・・・という言葉を聞き、急いで観客席まで向かい、髪を引きちぎったのだ。

 

(ありがとう…!ナツ!)

 

さぁ・・・・反撃開始だ。

 

「ジェミニ!!」

 

「「ピッキッーリッ!!」」

 

「ぐふっ」

 

ジェミニを召喚し、1人はフレアに頭突き、もう1人はルーシィの髪の拘束を解いた。

 

「アレ、やるわよ!」

 

「まだ練習不足だよ」「できるか分からないよ」

 

「とにかくあたしに変身!」

 

「了解!」

 

ジェミニはルーシィ変身した!・・・・バスタオル姿で。

 

これのおかげで観客達が違う意味で大歓声を上げた・・・・主に男性が。

 

妖精の尻尾の面々も興奮気味だ・・・・違う意味で。

 

「何よその格好ーーーーーーーっ!!!!」

 

「しょうがないよ、()()()()()()の服装なんだから」

 

「そっか…昨日のお風呂上がりに…」

 

もうこの際仕方ないと諦めたルーシィは互いに目を瞑り手を合わせた。

 

「「天を測り、天を開き、あまねく全ての星々。その輝きをもって我に姿を示せ」」

 

「その魔法はまさか!!!」

 

その魔法に見覚えのあるヒビキは驚愕する。あの時彼女に託した知識が彼女の役に立ち、そして修得した事を純粋に喜んだ。

 

「「テトラビブロスよ。我は星々の支配者、アスペクトは完全なり」」

 

「な、なによこれぇ…!」

 

今のルーシィでは二人合わせたとしても、あの時・・・・六魔将軍のエンジェルを打ち倒した程の力は出せない・・・・それでも、彼女は見せる。

 

「「荒ぶる門を開放せよ」」

 

ギルドの誇りをかけた一撃を!!!

 

「「全天88星・・・・光る

 

 

ウラノ・メトリア!!!」」

 

そして、人々を魅了する輝きを放つ光が軌跡を描きながら、フレアへと向かっていった。

 

観客達は先ほどの不純な歓声とは違い、純粋な歓声をあげ、妖精の尻尾のメンバーの顔に希望が現れ、フレアの顔には絶望が浮かんできた。

 

もはやフレアになす術なく己を打ち砕く一撃が向かってくるのをただただ見ていた。

 

強力な星々の光が、会場の全てを包み込み・・・・そして、消え去った。

 

そこにあったのは・・・・全く無傷のフレアと何が起きたのか分からないといったように呆然とするルーシィ。

 

そこには、ルーシィに変身したジェミニの姿もなかった。

 

「何が起きやがった・・・・」

 

「・・・・決まってんだろ」

 

「・・・・・・・・あの黒人形が」

 

グランが睨みつける先には・・・・大鴉の尻尾のオーブラがいた。

 

ルーシィがウラノ・メトリアを撃とうとしたその瞬間・・・・ルーシィから魔力を奪ったのだ。

 

『これは一体、何が起きたのか!!?ルーシィの魔法は不発!!ヤジマさん!!これは・・・・!?』

 

『・・・・・・・・』

 

『や・・・・ヤジマさん?』

 

険しい表情で会場を睨みつけるヤジマ。彼も分かったのだろう・・・・外部からの妨害があったことに。

 

そして・・・・ルーシィはとうとう力尽きたように・・・・地面に倒れてしまった。

 

『おーっと!!ルーシィがダウ―――ン!!!試合終了――――!!勝者!!大鴉の尻尾 フレア・コロナ―――!!』

 

オオオオオオオオオオッッ

 

「こんなのおかしいよ!!」

 

「あの赤髪が魔法をしたようには見えなかったぞ」

 

妖精の尻尾のメンバーもおかしい事に気づいていく。

 

「外野からの支援ですね」

 

「アイツら汚ねぇ!!」

 

そんな妖精の尻尾を嘲笑うように見る大鴉の尻尾のマスター・イワン。

 

「イワン・・場外乱闘を望むのかョ・・オオ!?」

 

マカロフも憤慨してイワンを睨みつけた。

 

「わ・・私の勝ちだ!!ざまーみろよ、金髪ぅ・・・・みっともない!!無様!!負け犬!!!あはははははっ!!」

 

会場で、フレアがルーシィの事を罵り嘲笑っていた。そして、それは会場中に伝染する。

 

あははははははっ!!

 

「何だよ、今のー!!魔法不発かよー!!」

 

「ダセー!!」

 

「これでRTは18点!FTは・・・・くぷぷっ!・・・・0点!!」

 

はははははははははははははははっ!!!

 

何も知らない観客達がルーシィを罵って嘲笑っていた。

 

・・・・ルーシィは泣いた・・・・ただただ自分が情けなく感じて・・・・自分のせいで、ギルドが貶されてしまった事に

 

そんなルーシィの元に闘技場へ降り立ったナツがルーシィに近付いた。

 

「泣くな、ルーシィ」

 

「だって…悔しいよォ・・」

 

そんな彼女に、ナツは言う。

 

「涙は、優勝した時の為に取っておこうぜ。凄かったぞ!!お陰でオレ達は、この世界で戦えるって分かった。0点?おもしれーじゃねーか。ここから逆転するんだ」

 

「うん・・・・燃えてぎた」

 

ルーシィは涙を流しながらも、ナツの手を取り固い意志を見せた。・・・・そうだ、ここからだ。ここから逆転すればいいだけの話・・・・とても簡単な話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーシィの試合が終わり、第二試合、第三試合と続いていった。

 

第二試合は、青い天馬のレンと人魚の踵のアラーニャ・・・・勝者はレン。後、レンとシェリーはなんか婚約してるらしい・・・・まぁ確かに、六魔将軍と戦った後、なんか良さげな雰囲気だったが・・・・まぁいい。

 

これで青い天馬は14P、人魚の踵話3Pとなった。

 

次いで第三試合は、四つ首の猟犬のウォークライと剣咬の虎のオルガの対決となった。・・・・勝者は、相手にほぼ何もさせずに一撃で勝負を終わらせたオルガだった。

 

もっと盛り上げても良かったんじゃないかとスティングに言われ、なぜか一曲歌うオルガ・・・・因みにそんな上手くはなかった。

 

これで剣咬の虎は20P 四つ首の猟犬は2Pとなった。

 

因みにグランはオルガが放った黒い雷に少しだけ興味が湧いた。・・・・彼の記憶にある黒い炎・・・・神殺しの炎が頭によぎったからだ。・・・・まぁすぐ興味は失せたが。

 

『さあ、いよいよ一日目最後の試合となりますが』

 

『残っているのは妖精の尻尾 Bと蛇姫の鱗だね』

 

『昔はこの二つのギルド実力が均衡してたから面白い試合になりそうね』

 

そしていよいよ一日目最後の試合となった。妖精の尻尾 Bからは誰が出るのか・・・・蛇姫の鱗からは誰が出るのか

 

遂に発表される。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル) B、グラン・ワームランド・・vs.蛇姫の鱗(ラミアスケイル)、ジュラ・ネェキス!!!

 

その対戦カードは・・・・ある意味因縁の対決となった。

 



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第二十七話 グランvsジュラ

 

『一日目最後の試合・・・・妖精の尻尾 B、グラン・ワームランドvs蛇姫の鱗、ジュラ・ネェキス!!!』

 

大魔闘演武の一日目、最後の試合・・・・その対戦カードに・・・・ヤッバイ二人が対決する事になった。

 

「キターーーーーーーーーっ!!」

 

「ジュラだーーーーーーーーッ!!」

 

「プププッッ!!これw w妖精の尻尾負け確定じゃねぇか ww」

 

「せめて面白く負けてくれよぉーーーーっ!!」

 

ジュラが出てきたことで観客達は今日一番に盛り上がった。逆に相手になったグランを馬鹿にする者も現れる。・・・・何も知らないとは罪なもんだな。

 

『妖精の尻尾の滅竜魔導士の一人であり、その実力は妖精の尻尾の中でも上位と言われている、『大地』の滅竜魔導士、グラン・ワームランド・・・』

 

「妖精のww尻尾でww上位ってww」

 

「じゃあ大したことねぇじゃんww」

 

『対するは今大会最強候補筆頭・・・・聖十の称号を持つ、ジュラ・ネェキス』

 

「・・・・オイ、これ大丈夫か?」

 

「何、グランの実力は我々が一番知っているだろう?」

 

「いや・・・・あの二人が戦って、この会場もつのか?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・うむ!」

 

「答えになってねぇ!?」

 

グランの実力の心配をしている者は、妖精の尻尾の中には誰もいない。心配なのはこの会場が最後まで形を保っていられるかだけだった。

 

一方、他のギルドの反応はというと

 

「・・・・ふむ、グランくんとジュラ殿が戦うのか✨」

 

「彼は七年前の時点でとても強かった。この試合、とてもいいものになりそうですね」

 

青い天馬の一同は、ジュラとグランの対決を楽しみにしていたり

 

「うわぁ〜〜!ねぇねぇ、リオン!!グランだよ!グランがジュラさんと戦うよ!!」

 

「ああ・・・・彼の実力はジュラさんも認めるほど・・・・ジュラさんが負けるとは思えないが・・・・そう簡単には行かなそうだな」

 

「それだけスゲェってことだろっ!!」

 

「キレんなよ」

 

蛇姫の鱗もジュラの勝利を信じていたが、簡単にはいかないとそう感じていたり

 

「・・・・あれが、グランさんか・・・・()()()がすげぇ気にしてたな」

 

「・・・・興味ない」

 

「オレは楽しみだぜ?第二世代の滅竜魔導士の力・・・・見せてもらおうぜ?」

 

ガイヤって誰よ?・・・・まぁ、剣咬の虎の一部もグランの戦いに興味を持っていた。

 

「こいつァ、ついてねぇ・・・・いや、お前には関係ねぇか?」

 

「あのジュラとぶつかっちゃうなんて・・・・まぁグランなら大丈夫だと思うけど・・・・」

 

「そんなに強ぇのか?あのボウズ?」

 

「私とエルザの二人がかりでも勝てるかどうか・・・・」

 

「・・・・オッサンとか・・・・めんどくせぇ・・・・が、妖精の尻尾のために、ちょいといってきますっと」

 

「おう、行ってこい」

 

グランはめんどくさそうに会場へと向かった。会場には既にジュラが立っていた。

 

「個人的には主らには頑張ってほしいが・・・・ウチのマスター(オババ)がうるさくてのぅ・・・・それに、主とはもう一度戦いたかったからな。まさかこんなに早く叶うとは思っていなかったがな」

 

「・・・・アンタと戦ったのは一年・・・・いや、違うか。八年前か?」

 

「そうであったな・・・・結局、あの時の決着はついていなかったからな」

 

「あん時とは違うぞ?・・・・せいぜい負けた時の言い訳考えとけ、オッサン」

 

「・・・・ふふふ、まだまだ若造には負けんよ」

 

グランが出てきたことで、馬鹿にしたように笑っていた観客達だったが、二人から発せられた巨大な魔力のぶつかり合いに・・・・言葉を失ってしまった。

 

「・・・・今日は色々あった。・・・・ウェンディとシャルルは襲われて、妖精の尻尾は馬鹿にされて・・・・ルーシィも笑いもんにされた。・・・・だから、悪いな、オッサン」

 

「・・・・・・・・うむ」

 

グランはジュラを睨みつけ、ジュラもそれに応じる。

 

「・・・・・・・・今日あった事・・その全てに対して・・・・・・・・・・・・アンタに八つ当たりさせてもらう

 

「・・・・・・・・いいだろう・・・・・・・・存分に付き合ってやろう

 

『それでは本日の最終試合・・・・・・・・開始ぃーーーーーーーッ!!』

 

ゴォーーンッ!!

 

と開始と同時に先に仕掛けたのはジュラだった。ジュラは地面から柱を作り出し、グランに向かわせる。

 

それに対しグランは・・・・ただその柱を真っ正面から砕いていった。強靭な柱がいとも簡単に、ただの瓦礫となっていく。その光景に、観客達は開いた口が塞がらない。

 

そしてその勢いのまま、ジュラに向けて拳を構えるが、ジュラは、

 

「岩鉄壁!!」

 

地面から出た壁にてグランの行手を阻む。一度は止まったグランの動きも、すぐに動き出す。

 

「邪魔だっ!!」

 

岩へと変わった拳でその壁を破壊して、ジュラに再び殴りかかる。・・・・だが、ジュラは壁が破壊される事は予想していたようで、全く焦らずに攻撃を仕掛ける。

 

「ハッ!!」

 

砕かれた岩を操り、グランに向けていく。それらを無視して殴りかかろうとしたが、執拗に狙ってくる。

 

「覇王岩砕!!!」

 

そしてグランを岩に閉じ込めて、爆破させる。・・・・が、そんなものじゃグランは止まらない。

 

「地撃・粉砕ッ!!!」

 

拳を地面に叩きつけ、ジュラに向け衝撃波を送り出す。その威力は広範囲にわたり、ジュラは避けられず喰らってしまう。

 

大爆発が起き、土埃が大量に舞っている。その土埃の中から巨大な拳の形をした土がグランに向けて、突撃してきた。

 

それをグランは、やはり避けもせずに己の岩拳で打ち砕いた。そして高く跳び上がり、ジュラに向けてブレスを放つ。

 

「地竜の咆哮!!!」

 

「巌山!!!!」

 

しかしそれは塞がれてしまう・・・・が、それはグランも予想していた事。すぐさま地面に降り立ち、地面を柔らかく弾むような性質に変え、一気にジュラへと突っ込んでいき

 

「地竜の・・剛拳!!!」

 

「ぐふぅっ!!?」

 

ジュラの体に地竜の拳が突き刺さる。先に大きなダメージを与えたのは、グランとなった。だが、ジュラもただでは吹き飛ばず、地面から大量の柱を出現させ、グランに向けて放つ。

 

「崖錘!!!」

 

「うおぉっ!!?」

 

流石のグランも吹き飛ばされてしまう。

 

ほぼ互角の戦い・・・・これを見ていた観客達は、最初に馬鹿にしていたのが嘘のように、この戦いに夢中になっていく。

 

『こ・・・・これはすごいっ!!妖精の尻尾のグラン!!今大会最強候補筆頭のジュラを相手にほぼ互角で戦っているーー!!』

 

『これは驚いたねぇ。』

 

『なんとも予想外な戦いに、私、興奮がおさまりません!!・・・・っと、今入りました情報によりますと・・・・なんとグランは、七年前・・・・かのバラム同盟の六魔将軍のブレインを単独で撃破し・・・・古代の超魔法“ニルヴァーナ”をこれまた単独で防いだとのことです!!さらに、同じくバラム同盟の悪魔の心臓の幹部を二名撃破しているとの事!!』

 

『え、そんなに強かったの彼って!?』

 

そんな風に実況が言うもんだから、観客だけでなく、妖精の尻尾以外のギルドも騒ぎ始める。・・・・よくよく考えたら、戦歴ヤベェなコイツ。

 

「・・・・余計なことを」

 

「素晴らしい戦歴ではないか・・・・それが七年前の事だというから末恐ろしいものだ」

 

「自力で聖十の五位までいったおっさんに言われたかねぇよ」

 

どっちも化け物には変わりないと思う。

 

「・・・・まぁいいや。・・・・さっさとくたばれ!!」

 

「そう簡単にいかぬわ!!」

 

しれっと攻撃を仕掛けるグランだが、簡単に避けられる。そりゃそうだ。まだ試合は続いている。

 

ジュラは一度距離を取り、今度はひときわ巨大な土の柱を作り出す。その大きさたるや、会場中の全員が空を見上げるほどだった。

 

「巍・岩鉄砕!!!」

 

そしてそれが勢いよくグランに向けて発射される。会場の半分以上の土使ってんじゃねぇかってくらい巨大な柱はグランに避ける隙間を与えない・・・・まぁコイツ全く避けてねぇけどな。

 

グランは拳を構え・・・・真っ向から撃ち砕く。

 

「地撃・破砕!!!」

 

 

ドガァァァァァァンッッ!!

 

 

柱に拳が当たり、見事に粉々にしていった。睨み合う二人・・・・ここで両者の魔力の質がガラリと変わっていった。

 

・・・・まるで、ここからが本番だと言わんばかりに。

 

一触即発の空気が会場を包み込む。そして、二人が動き出そうとした・・・・その時

 

『ここで時間切れとなってしまったァーーーっ!!!試合終了!!この勝負は引き分け(ドロー)!!!この戦いに決着はつかずに終わってしまったァーーーーーーっ!!!』

 

今からという時に30分がきてしまったようだ。これで両チームに5Pずつ入ることになる。

 

「あ・・・・あのジュラと引き分け!!?」

 

「やばいくらいに強いぞ、アイツ!!?」

 

「・・・・あれが妖精の尻尾の魔導士・・・・」

 

観客もざわめき出していく。これまで散々馬鹿にしてきたギルドの魔導士が、まさかの聖十大魔道と互角以上の戦いを見せたからだ。

 

「・・・・まさか、ジュラさんと引き分けに終わるとは」

 

「強すぎじゃねぇか!!」

 

「だからキレんなって」

 

「うわぁ〜〜ッ!!すごいね、グラン!!ジュラさんと互角なんて!!ね、リオン!!」

 

「ああ、ここまで強かったとは・・・・これはとんだ番狂わせになりそうだ」

 

蛇姫の鱗のメンバーもこの結果に驚いている。

 

「・・・・ハハッ、これ冗談じゃねぇっての」

 

「・・・・彼の強さを記憶したが・・・・まだまだ底が知れないな」

 

「そりゃ、()()()も気にするわ・・・・ここまで強いとか、ふざけてるとしか言いようがねぇだろ」

 

剣咬の虎も、グランの実力には驚かされた。自分達が負けるとは思わないが・・・・どうしても思い描けない。自分達が彼に勝てるところを・・・・。そんな妄想を振り払うように、その場を後にしていった。

 

『総合順位はこのようになりました!』

 

一位 剣咬の虎 20P 二位 大鴉の尻尾 18P 三位 青い天馬 14P 四位 蛇姫の鱗 11P 五位 妖精の尻尾 B 6P 六位 人魚の踵 3P 七位 四つ首の猟犬 2P 八位 妖精の尻尾A 0P

 

『これにて大魔闘演武一日目終了ー!!!』

 

一日目の結果はこうなった。Aチームの結果はあまりよろしくないが・・・・それでも、今日この会場に・・・・観客達に・・・・他のギルドに・・・・しかと脳裏に焼きついただろう・・・・妖精の尻尾の魔導士の力を。

 

「・・・・んだよ、もう終わりかよ。・・・・まぁいいや。割とスッキリしたし・・・・早く戻ってウェンディの様子を見に行こ」

 

「・・・・やれやれ、全く。主がここまで強くなっていたとは・・・・驚かされたぞ」

 

「・・・・まだ決着ついてねぇからな?次でつけてやる」

 

「・・・・望むところよ」

 

二人はそのまま自分達のチームのもとに戻っていった。

 

「よくやった」

 

「ふふ、すごかったわよ。お疲れ様」

 

「ま、欲言えばあのまま続けてられてたらな。それならお前の勝ちだったかもな」

 

「・・・・それはわからんが・・・・初日から結構動いたなぁ〜〜・・・・じゃ、ウェンディ達のとこ行ってくる!!」

 

「って、早速か!!?」

 

軽い挨拶の後、試合の時以上の速さでウェンディの元まで走るグラン。・・・・コイツ、マジでどんだけウェンディが好きなんだ?

 

・・・・何はともあれ、無事・・・・無事?大魔闘演武一日目が終了した。・・・・あまりいいスタートとは言えないが、ここからだ。ここから逆転していくのが、妖精の尻尾だ。

 

燃えてきただろ?

 





技説明

・巍・岩鉄砕・・・・通常の何倍もの大きさの柱で相手を攻撃する イメージは、ONE PIECE ギルド・テゾーロの技、黄金の神の裁き(ゴオン・リーラ・ディ・ディオ)

・地撃・破砕・・・・地撃の強化版。衝撃を一点集中させて放つ技 イメージはONE PIECE ハイルディンの 英雄の槍(グングニル)や、エリザベロー2世のライト版“キングパンチ”




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第二十八話 仲間のために


大魔闘演武ファーストガイドブック 

妖精の尻尾 B グラン・ワームランド 

攻撃力 COOL 防御力 COOL スピード 3 知性 4
ウェンディへの想い COOL !!!


 

大魔闘演武一日目が終わり、妖精の尻尾のメンバーはとある酒場で夕食と、惨敗記念で盛り上がっていた。

 

「なっさけなーーーい。天下の妖精の尻尾が揃いも揃ってなんてザマだよ。それに比べて、アンタはよくやったよグラン!!」

 

「それは分かったからくっつくな・・・・」

 

「・・・・街中の酒場巡りで応援にも来なかったやつがエラそうに」

 

「見てたよ!!どこの酒場にも魔水晶映像が置いてあるんだ!」

 

「・・・・行ったのは否定しねえのかよ」

 

まさかずっと飲んでいたのかこの人は・・・・すごいな。

 

「それにしても、グランには驚かされたわい。まさかジュラと引き分けになるとはな」

 

「オレもグランには負けてられねぇ!!!明日は絶対オレが出る!!」

 

「ほぉう?火竜が出るってならオレも出ようか」

 

なんで今からバチバチになってんだこの二人は・・・・。

 

途中からグレイとルーシィも酒場に戻り、これで今日の主役達は揃った。ウェンディとシャルルはまだ調子が悪いらしくこれていない。グランはそこにいようとしたが、ポーリュシカに追い出された。

 

「聞けェ、ガキどもォ!!」

 

マカロフが全員揃ったことを確認して、机の上に立ち声を荒げる。

 

「今日の敗戦とグランの激闘は明日の勝利への糧!!!のぼってやろうじゃねぇか!!」

 

そしてグラスを掲げ、高らかに宣言する。

 

「ワシらにあきらめるという言葉は無い!!!目指せフィオーレ一!!!」

 

「「「「「オオオオオオっ!!!」」」」」

 

こんな程度で怖気付くようなギルドじゃないのが妖精の尻尾だ。今日の悔しさとグランが勝ち取った・・・・まぁ引き分けだが・・・・結果を糧に・・・・目指すはフィオーレ一だ!!!

 

そこからはもうどんちゃん騒ぎ・・・・まぁそれはいつものことか。その間、グランはずっとカナに捕まって酒飲みに付き合わされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次は誰だ――っ!!景気づけにかかってこーい!!」

 

「いいぞーナツーー!!」

 

「弱ぇぞ、マックスーー!!」

 

そんで時間が経ってどんどん盛り上がってきたのか、ナツが暴れ出す。床にはそのナツにボロボロにやられたマックスの姿が。

 

「なんで3ヶ月でここまで強くなってんだよ」

 

「オレらの立場って・・・・」

 

しょうがない、しょうがない。

 

「おもしれぇ、オレが相手してやるよ」

 

「よせよ…お前とナツじゃ遊びじゃなくなる」

 

今度はガジルが相手してやろうと言うが、ラクサスが制止した。

 

「オウオウ、ずいぶん丸くなったものだねラクサスゥ」

 

「やめなよガジル!」

 

レビィが抱きついて止めるのも構わず、ラクサスの頭をバシバシ叩くガジル。・・・・たしかに、だいぶ丸くなったなこの人・・・・グランは昔のラクサスなぞ知らんが。

 

「き…貴様っ!ラクサスになんて事を!今、我らの誇りが踏み躙られている!ラクサス親衛隊・・・・雷神衆―――!! 集合ォ―――!!」

 

「もうダメぇ…」

 

「オォオ・・・・」

 

「なっさけないねー」

 

「・・・・アンタが強いだけだろ」

 

「でもビックスローはアンタがつぶしただろ?」

 

フリードが高らかに声をかけるも、ビックスローはグランにエバーグリーンはカナに酔い潰さた。・・・・意外にも酒に強いグラン。

 

と、そんな二人に近づいていく一人の男がいた。

 

「姉ちゃん達・・強いじゃねーか」

 

その男は酒の入ったコップをダン、とテーブルに叩きつける。

 

「オレと比べてみねェか」

 

そしてカナとグランに勝負を挑んだ。

 

「ほぉう?どちら様か知らないけど、酒で私と勝負?」

 

「・・・・なーんでオレも・・・・つか、アンタ誰よ?」

 

「オイ!!誰だか知らねーがやめとけ!」

 

「こー見えてこの女、バケモンだぞ!!そっちの男もな!!!」

 

カナは妖精の尻尾一の大酒飲み・・・・そんな彼女に飲み勝負を仕掛けるなんて、自殺行為でしかない。恐らくグランも物凄く強い・・・・だって全く顔が赤くなっておらずケロッとしてるし・・・・。

 

そして飲み勝負をした結果、ぶっ倒れたのは・・・・

 

「・・・・きゅぅ〜〜」

 

「「ウソだろーーーーーーっ!!!」」

 

カナだった。

 

「わははははははっ!!やるじゃねぇか小僧!!!」

 

「・・・・小僧言うなやめんどくせぇ・・・・もうやめていいか?酒は苦手なんだよ」

 

「「そんだけ飲んでんのに!?」」

 

「わはははっ!!そうかい、そいじゃあこの辺でやめてやるよぉ・・・・コイツァ戦利品に貰っとくぁ」

 

「・・・・えーー?」

 

「何すんだてめぇーー!!」

 

「ギルダーツに殺されんぞ!!」

 

と言い、男はカナのブラジャーを戦利品としてお持ち帰ろうとしていた。

 

「・・・・それは流石に」

 

「返せや!!!」

 

「あまりウチのギルド舐めてっと・・・・!!」

 

「・・・・あー、アンタらはやらない方が」

 

流石にそれは返してもらおうと言おうとしたグランだが、それよりも先に動いたマカオ達が男に殴りかかろうとしていた。それを止めようとしたグランだったが・・・・時すでに遅し

 

酔っ払いながらもその独特な動きでマカオ達の攻撃を避け、逆にマカオ達を床に叩きつける・・・・あーあ。

 

「・・・・すんげー酔っ払い方だな、アンタ」

 

「わはははは!!次はお前がやるかい?グラン?」

 

「・・・・なーんで知ってんの?」

 

どうやら男はグランのことを知っていたらしい。床から飛び起きてグランの前に立つ。

 

「今日の最後の試合にでてたろぉ?あんなに魂が震える熱い戦いは久々だったぜぇ?わはははははっ!!!」

 

「バッカス?」

 

グランの前で高笑いする男にエルザが声をかける。・・・・どうやら知り合いらしい。

 

「よぉう、エルザじゃねぇか!ヒック!相変わらず良い女だねぇ」

 

「久しぶりだな」

 

「・・・・お知り合い?」

 

「昔な」

 

「7年も姿くらませてたんだって?」

 

「そうだな。お前は大魔闘演武に参加していないようだが」

 

「わはははは!!今回は若ェ連中に任せておこうと思ったんだけどよ、ウォークライのザマを見ちゃ黙ってられねぇのが男の魂ってモンよ

 

リザーブメンバー枠を使って、オレが入る事になった・・・ウィッ・・魂が震えてくらァ・・ヒックッ!

 

「・・・・ッッ!」

 

「・・・・えー、めんどくさそう」

 

「明日以降ぶつかる事があったら、いつかの決着をつけてぇな。お前とも戦ってみてぇよな、グラン。魂はいつでも…ワイルドォォォォ?」

 

「・・・・フォー」 「・・・・フォー?」

 

エルザが小さく応え、グランが疑問系で応えた。

 

「ノリ悪ィよエルザァ、グラン!!わはははははっ!!」

 

ズテーーーン!! ゴシャッ!! ガラガラーーンッ!!「わはははッ!!」 ガシャーーンッ!!

 

高笑いしながら出て行き、そして色々とぶつかりながら帰っていくバッカス。

 

「・・・・酔っ払ってっけど、アホみたいに強いな、あのバッカス」

 

「ああ、その通りだ」

 

「何なの、アイツ?」

 

四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)のS級にあたる男。奴とは仕事先でぶつかる事が多くてな…その強さはよく知っている」

 

「・・・・うわぁ」

 

酔いの鷹、酔・劈掛掌のバッカス・・・・何度か戦った事があるが、決着は付かなかった」

 

「エルザと…互角!?」

 

「・・・・あんな酔っ払いなのにな」

 

「なーに、昔の話だろ?今のエルザが負けるわけねぇ!」

 

「エルザが戦う前提なのか?」

 

「オレがやっへもいいへど」

 

「・・・・お前らいつの間に喧嘩してたんだよ」

 

まさかの実力者の登場に一同に緊張がはしる。・・・・何はともあれ、このまま夜が明けていった。

 

 

 

あ、ちなみにブラジャーはちゃんと返してもらったぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大魔闘演武、二日目の競技パート・・・・戦車(チャリオット)

 

『この競技は、連結された戦車の上から落ちないようにゴールを目指すというものです』

 

『ただス普通のレースじゃないんだよなァ』

 

『COOL !COOL !!COOL !!!』

 

『足元の戦車は常に動いている為、一瞬の気の緩みがミスへとつながります、クロッカスの観光名所を巡り、ゴールであるここドムス・フラウに一番に到着するのはどのチームか!?』

 

早い話、走る戦車の上を皆で走って競争する・・・・という事だ。・・・・そして妖精の尻尾A、 Bから出ているのは・・・・

 

『それにしてもヤジマさん、こんな展開誰が予想できたでしょうか?』

 

『ウ~~ム』

 

「・・・・なんでガジル出したよ?」

 

「「火竜が出るならオレだ!!」って言って聞かなかったのよ」

 

「・・・・まぁ、それはしょうがねぇが。」

 

『なんと!! 先頭より遥か後方、妖精の尻尾A、ナツがグロッキー状態です!!それだけではありません。そのすぐ近くで妖精の尻尾 Bガジルと剣咬の虎スティングまでもグロッキー』

 

物凄くグロッキーな光景だ・・・・乗ってないのに、一緒になって酔いそうになるグラン。

 

『これは一体どういう事でしょう、ヤジマさん?』

 

『3人に共通する何かがあるのかねぇ』

 

『COOL !!』

 

『あの・・・・ジェイソンさん、うるさいです』

 

『乗り物に弱ェのは…火竜とグランの…アレだろ…』

 

「どうなってる?何でガジルが」

 

「ナツのキャラ取らないでよね」

 

「セイバーの人まで・・・・」

 

三人が後ろでヘロヘロになりながら進んでいく中、前の方ではどんどんと他のギルドがゴールしていった。

 

やはり驚かされたのは、四つ首の猟犬のバッカスだ。たったの一踏みで戦車を崩壊させ、そのまま一位でゴールしていった。あの男と戦うとなると・・・・とても骨が折れそうだ。

 

そして二位に大鴉の尻尾、三位に人魚の踵、四位に蛇姫の鱗、五位に青い天馬がゴールしていった。

 

『残るは最下位争いの3人ですが…』

 

『おぼ・・・・おぼぼ』

 

『バ、バカな…オレは乗り物など平気…だった、うぷっ』

 

『じゃあ…うぷっ・・・・やっとなれたんだな、本物の滅竜魔導士に。おめでとう、新入り』

 

『ぬぐっ・・・・テメェっ!!』

 

ガジル渾身のタックルがスティングと・・・・ついでにナツを巻き込む。

 

『おばっ!?』

 

『うぼっ!?』

 

『かはぁっ、力が出ねぇ…!』

 

そりゃそんだけ酔ってりゃそうだろうよ。

 

「滅竜魔導士って、みんな乗り物に弱いの?」

 

「・・・・ウェンディは弱くないが、オレは弱いぞ」

 

「もしかしてラクサスも?」

 

「他の奴等には黙っとけよ」

 

「もうバレバレだと思うけど」

 

「同意・・・・にしても、頑張るなぁあの二人」

 

『うおぉぉぉぉおお!!! 前へ──進む!!』

 

例え乗り物に酔って力が出せずとも・・・・ナツとガジルはに諦めなかった。

 

雄叫びを上げながら、少しずつ、ゆっくりと、一歩ずつ、前へ進んでいく

 

『カッコ悪ぃ、力も出せないのにマジになっちゃってさ』

 

『進むぅぅぅぅ!!!!』

 

『いいよ…くれてやるよこの勝負。オレたちはこの後も勝ち続ける。たかが1点2点いらねーっての』

 

『その1点に泣くなよボウズ』

 

ガジルが後ろを振り向き、獰猛な笑みをスティングに見せ、また前に進んでいく。

 

『オオオオオオオっ!!』

 

『ぬがああああああっ!!』

 

『・・・・1つだけ聞かせてくんねーかな?何で大会に参加したの?アンタら。昔の妖精の尻尾からは想像できねーんだわ。ギルドの強さとか、世間体的なモノ気にするとか。オレの知ってる妖精の尻尾はさ、もっと……こうマイペースっつーか、他からどう思われようが気にしねーつーか』

 

『仲間の為だ』

 

スティングからの疑問に、たった一言で答えるナツ。その間も前に進みながら、続けていく。

 

『7年も・・・・ずっと・・・・俺達を待っていた・・・・どんなに苦しくても・・・・悲しくても・・・・馬鹿にされても耐えて耐えて・・・・ギルドを守ってきた・・・・仲間の為に、俺達は見せてやるんだ

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)が歩き続けた証を!!!!だから前に進むんだ!!!!

 

そして高らかに吠えた。今まで頑張ってくれた仲間のために、戦っているのだと。

 

スティングは目を見開いたままなにも言わない・・・・いや、何も言えない。

 

妖精の尻尾のメンバーは、皆涙した。

 

その強い想いと凄まじい執念のお陰で、ナツとガジルは、最後までゴールに辿り着いた。

 

『ゴォ――――ル!!妖精の尻尾A、ナツ6位!!2P!!』

 

「ポイント初ゲット…」

 

『妖精の尻尾B、ガジル7位!!1P!!』

 

「ギヒッ…」

 

『なお、剣咬の虎、スティングはリタイア。0Pです!』

 

「・・・・ナツ達のおかげかわからんが、観客の見る目が変わったな」

 

「俺たちも、ナツとガジルに続くぞ」

 

「えぇ、そうね」

 

「ジュビアも頑張ります!!」

 

競技パートが終わり、今の順位は

 

一位 大鴉の尻尾 26P 二位 剣咬の虎 20P 三位 青い天馬 17P 四位 蛇姫の鱗 15P 五位 四つ首の猟犬 12P 六位 人魚の踵 9P 七位 妖精の尻尾 B 7P 八位 妖精の尻尾A 2P

 

となった。

 

結果だけ見れば、一日目よりも低いが・・・・観客からの視線は変わっていった。

 

馬鹿にするのではなく・・・・彼らを讃えるものがふえていったのだ。

 

さぁ・・・・ここから始まるぞ。妖精達の、大逆転劇が!!!

 

 

 

 



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第二十九話 二日目終了

 

「おおお・・・・おおお・・・・」

 

「ナツ……大丈夫ですか?」

 

「何の心配もいらないよ、ただの乗り物酔いじゃないか。」

 

「・・・・ウェンディは」

 

「もうだいぶ回復してきたよ。」

 

「・・・・シャルルは元気になったようだな」

 

「えぇ。」

 

戦車の後、ナツはひどい乗り物酔いとなり、医務室で横になっている。そこにナツとウェンディの様子を見にルーシィとグラン・・・・まぁグランはどちらかと言えばウェンディとシャルルの見舞いだが・・・・。

 

「みんな待ってるから、あたし行くね?グランは?」

 

「・・・・もうちょいいるよ。先戻ってろ」

 

「了解!」

 

もうすぐ試合開始のためにルーシィは医務室から出ていくが、グランは少し残ると言っていた。

 

「・・・・まだ何かあんのかい。まさかずっといるとか言わないよね?」

 

「・・・・いや、アンタに用はねぇが・・・・シャルル」

 

「・・・・何よ」

 

「なんか、隠してんだろ?」

 

グランが残ったのはそれが理由・・・・シャルルは起きてから、何か自分達に隠している事があると、直感的に感じていたのだ。

 

「・・・・別に、何も隠してないわよ」

 

「・・・・ふーん」

 

「全く、そんな事を気にするくらいなら、もっと大会に集中しなさい!!」

 

「え、ごめんなさい」

 

割と理不尽に怒られたのにすぐ謝るグラン。

 

「・・・・んじゃ、まぁなんかあったら相談しろよ?ウェンディの事、よろしくな」

 

「・・・・えぇ、任せなさい」

 

グランはそれ以上何も聞かず、医務室を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・あ"ぁ”?」

 

医務室のを後にしたグランは、チームのところに戻る直前に、ぐるりと首を回し医務室の方向を見た。そして、そのままチームの元には戻らずに走り出す。

 

どこだ?どこだ?・・・・・・・・・・・・いた。

 

そこにはウェンディとシャルルとポーリュシカを攫ったと思われる怪しい四人組とそれを追っているナツがいた。

 

そしてその四人組の前へ、跳び上がって前に出る。

 

「ひぃぃっ!!?」

 

「こ、こいつって!!?」

 

「・・・・ウェンディとシャルルをどこに連れて行くつもりだ、あ"ぁ"?」

 

「「「「ヒィィィィィィィィィィィッ!」」」」

 

情けないかな、グランにギロリと睨まれてそのまま失神してしまう四人組・・・・まぁ仕方ないっちゃぁ仕方ないか。

 

「グランっ!!!」

 

「よう、ナツ。・・・・こいつら誰だ?」

 

「しらねぇ。起きたら、ばっちゃんたちがいなくなってた、こいつらの匂いがしたから追ってたんだ。」

 

「・・・・とりあえずこいつら縛り上げとくか。」

 

「おう。」

 

適当な紐を持ってきて、そのまま王国の兵士に引き渡そうとした二人。その時、ちょうど起きたウェンディとシャルルに、反射的に抱きついてしまったグランを鬱陶しそうにするシャルル。・・・・まぁウェンディも満更ではなさそうだったがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡り、競技パートが終わりバトルパートがスタートして、第二試合・・・・四つ首の猟犬と妖精の尻尾Aとなり、四つ首の猟犬からは・・・・あのバッカス・・・・そしてAチームからはエルフマンが出ることになった。

 

そして試合が始まるが・・・・流石はエルザと互角だった男・・・・エルフマンの攻撃が全く当たらなかった。膝をつき息を荒げながらも、勝つことを諦めないエルフマン。

 

その理由として、二つ・・・・一つは妖精の尻尾の勝利のため・・・・もう一つは、バッカスと賭けをしたから・・・・その内容は、美人姉妹を一晩貸すこと・・・・これに漢として憤慨したエルフマン。だからこそ勝たなければならないが、攻撃が全く当たらない。

 

素早さ系の接収(テイクオーバー)で攻撃を仕掛けても、ことごとく避けられ、反撃を喰らうエルフマン。

 

バッカスの魔法は手の平に魔力を収束するタイプのわりとオーソドックスな魔法・・・・彼の強さはその魔法を最大限に生かすために身につけた武術にある。

 

劈掛掌と言われる拳法・・・・そしてさらにその拳法に改良加え、酔・劈掛掌を編み出したこと。

 

そして、このエルフマンとの戦いでまだ一滴も酒を飲んでいない・・・・つまり、本気ではないという事。

 

接収がとけ、他に伏せてしまうエルフマン・・・・それでも彼は立ち上がる。そして、まだ自分が勝った時の賭けを言っていないと言い、その賭けの内容を話す。

 

それは、エルフマンが勝ったらバッカス達のギルド名四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)から、大会中は四つ首の仔犬(クワトロパピー)にする事。

 

それが面白かったのか・・・・とうとうバッカスは酒を飲んで、本気を出した。エルフマンも接収をするが、その一瞬で七発も食らってしまう・・・・だが、ダメージがあったのはバッカスの腕だった。

 

ビーストソウル・・・・リザードマン。その鱗は硬質で、無数の棘に守られているビースト。

 

エルフマンの立てた作戦は至極単純・・・・当てられねぇなら当ててもらう。どちらが先にぶっ壊れるかの意地のぶつかり合いだ。

 

バッカスの腕は攻撃のたびに傷ついていき、エルフマンの体もボロボロに砕けていく。

 

攻めるが果てるか・・・・受けるが果てるか

 

・・・・・・・・そして、両者共に膝をつく。

 

「ハァー・・・ハァ・・・・ハァー・・・ハァ・・・・ハァー・・・ハァ・・・・ハァー・・・ハァ・・・・」

 

「ゼェー・・・ハァー・・・ゼェ・・・・はっ・・・・ゼェー・・・ハァー・・・ゼェ・・・・はっ・・・・」

 

両者共に息切れ状態・・・・もはやどちらが先に倒れてもおかしくない。会場の皆が息を飲んで見守る。

 

「エルフマン・・・・って・・・・言ったな・・・・」

 

笑いながら立ち上がったのは・・・・

 

「わははは……わはははははっ!!」

 

『立ち上がったのはバッカスー!!』

 

バッカスだった。バッカスの笑い声が会場中に響く。観客の誰もエルフマンを馬鹿にしない・・・・むしろ、あのバッカスを相手にここまで大健闘した事を、同情に近い目を向けていた。

 

「お前さァ……

 

漢だぜ!!!!

 

笑い声が止み、その言葉と共に、バッカスはそのまま地面に倒れた。対し、エルフマンは膝をついてはいるものの、未だその背を立てていた。

 

『ダウーン!!バッカスダウーン!!勝者エルフマン!妖精の尻尾A10p獲得!!これで12pとなりました!!』

 

「オオオオオオオオオ!!」

 

『この雄叫びが妖精の尻尾復活の狼煙かーっ!!エルフマン!強敵相手に大金星ー!!』

 

『COOL!COOL!COOL!!』

 

両腕を上げ、雄叫びを上げるエルフマン。その雄叫びは大魔闘演武の全てのものに響きわたった。

 

「うおっ!すっげぇ歓声!」

 

「やりましたねエルフマンさん!!」

 

「・・・・やるなぁ、アイツ。」

 

と会場の上にいた、ナツとウェンディとグランはエルフマンの勝ちを驚き、喜んでいた。

 

「ウェンディ、もう大丈夫なの?」

 

「うん!もう平気、グランディーネもありがとう。」

 

「だからその呼び方は止めな……それよりも、さっきの連中……」

 

「大鴉の尻尾」

 

「・・・・奴等、やる事が卑怯極まりないな。」

 

「医務室に()()…少女……過去形?」

 

「一人い()じゃないか……ナツを運んできた……」

 

「ルーシィ……!?」

 

「・・・・とりあえず、その事は後でみんなで話し合った方が良さそうだ。・・・・んじゃ、オレはそろそろ戻るな。ウェンディ、あまり無理すんなよ?」

 

「うん!グランも、無茶しないでね」

 

ここで一旦グランは自分達のチームの元に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・すまん、遅れた」

 

「お前今までどこいってたんだよ!!?」

 

「・・・・ちょっと、道に迷って」

 

「迷いすぎだ」

 

あの後、すぐに戻るつもりだったが、自分の居場所もよくわかっていなかったため、だいぶ迷った末にたどり着いたグラン。・・・・方向音痴かこいつ?

 

「・・・・んで、今試合はどんな・・・・・・・・何やってんの?」

 

「・・・・見ての通りだが?」

 

試合は第三試合となり、青い天馬のジェニーと、妖精の尻尾 Bのミラの対決だが・・・・何故かビキニ姿でポージングを取り合っていた。

 

なんでも、どちらもグラビアアイドルだからグラビアで勝負をつけよう・・・・という話になったらしい・・・・いや、なんでだよ。

 

「・・・・これ、いいんか?」

 

「・・・・・・・・・・・・知らん」

 

「・・・・あ、そう」

 

それからどんどん変わっていき、だいぶマニアックな感じの衣装にもなっていった。スク水、ビキニニーソ、メガネっ娘、ネコミミ、ボンテージ・・・・両者一歩も引かない戦いとなった。

 

んで、最後の最後にとんでもない賭けを持ち出した。

 

「・・・・賭けでヌードって、いいんか?」

 

「・・・・まぁ、両者が納得してんならいいんじゃねぇか」

 

そして最後のお題は戦闘形態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・で、結局

 

『勝者、ミラジェーン!!!妖精の尻尾 B 10P獲得ーーーー!!』

 

「・・・・ミラさんが勝ったな・・・・あれが“魔人ミラジェーン”か」

 

「分かったか?アイツは怒らせちゃいけねぇ奴なんだ」

 

「やりましたね!ジュビア達、これで17Pです!!」

 

・・・・まぁ何はともあれ次で二日目最後の試合。

 

最後は人魚の踵のカグラ・ミカヅチと剣咬の虎のユキノ・アグリア・・・・・・・・勝者は、カグラ。

 

これで今日一日、剣咬の虎は1ポイントも取らずに終わってしまった。

 

「・・・・まさか星霊魔導士だったとはな、あのユキノっての」

 

「にしても、あの女剣士強すぎるんじゃねぇか?」

 

「・・・・んー?なんかどっかで見た事あんだけど・・・・なんだったかな〜?」

 

・・・・少々気になることもあるようだが、これで二日目が終了した。只今の順位は

 

一位 大鴉の尻尾 36P 二位 剣咬の虎 20P 三位 人魚の踵 19P 四位 青い天馬 17P 四位 妖精の尻尾 B 17P 六位 蛇姫の鱗 15P 七位 四つ首の仔犬 12P 八位 妖精の尻尾A 12P

 

となった。・・・・さてさて、明日からどうなることやら。

 



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第三十話 剣咬の虎(セイバートゥース)へ殴り込み

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さて困った。」

 

二日目が終了し、ウェンディ達に会いに行こうとしたグランだったが、結局道に迷いに迷って、もう日が落ちてしまっていた。・・・・コイツウェンディたちがピンチならそこに迷わず行くのに、それ以外だとポンコツか?

 

と、道の向こうのほうにナツがいるのが見えた・・・・その近くには剣咬の虎のユキノの姿も・・・・何故かユキノは泣いていたが。

 

「泣かれても困るんだけどーーーーーーっ!!?」

 

「・・・・何泣かしてんの?ナツ?」

 

「うおぉっ!?グラン!?いや、違・・・・くない・・・・けどちがうぞ!!?」

 

「・・・・どっちだよ。・・・・アンタ、大丈夫か?ナツが悪かったな。これ、使う?」

 

なんか言い訳のような事を言っているナツをそっちのけで、グランはユキノに声をかけて、ハンカチを渡す。すると、ユキノはさらに泣き出してしまった。

 

「・・・・・・・・えっ!!?」

 

「あー、グランがもっと泣かしたー」

 

「オレのせいか、これ!?」

 

流石に慌てるグラン。そんな彼等をよそに、ユキノはその場に座り込んでしまった。

 

「もう・・・ダメです。私・・・人にこのように気を遣われた事がないもので・・・・」

 

「・・・・・・・・ッッ」

 

「・・・・・・・・反応に困るんだけど」

 

だいぶ反応に困った二人。そのまま話を続けるユキノ。

 

「私…ずっと剣咬の虎(セイバートゥース)に憧れていました。去年やっと入れたのに・・・・私はもう…帰る事は許されない」

 

「はぁ?」

 

「・・・・どういうこった?」

 

「たった1回の敗北で・・・・()()()()()()()()()()

 

「・・・・ッッ」

 

「・・・・・・・・」

 

「大勢の人の前で裸にされて・・・・自らの手で紋章を消さねばならなくて・・・・悔しくて、恥ずかしくて・・・・自尊心も思い出も全部壊されちゃって・・・・

 

それなのに私には帰る場所がなくて・・・・

 

ユキノはまた泣き出してしまう。今度は大きな声をあげて。

 

「悪ィけど、他のギルドの事情はオレ達には分からねえ」

 

「・・・・それは同意だ。他のギルドの事なんか、知ったこっちゃない」

 

「ナツ・・・・グラン・・・・」

 

ナツとグランが冷たい態度をとり、それをハッピーが咎めるようにいう。

 

「はい…すみません。私…つい…」

 

「他のギルドだけど“同じ魔導士”としてなら分かるぞ」

 

「・・・・辱められ・・・・自らの手で、紋章を消させられ・・・・悔しいだろ」

 

・・・・だが、感じる。静かな怒りを・・・・グランの魔力の影響で・・・・大地が静かに震える

 

「仲間を泣かせるギルドなんて・・・・そんなのギルドじゃねぇっ!!」

 

「仲間を仲間とも思わねぇギルドなんざ・・・・ギルドを名乗る資格はねぇっ!!」

 

ナツとグランは、青筋を立て、憤慨の表情を浮かべていった。その瞳に憤怒の炎をのぞかせて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスターはどこだぁあぁあっ!!!!」

 

「三下どもは失せろっ!!!!!!!」

 

あの後、ナツとグランは剣咬の虎が泊まっている宿に襲撃していった。襲ってくる剣咬の虎のメンバー達を片っ端から薙ぎ倒していった。

 

そして、マスターがいると思わしき広間までついた。そこには剣咬の虎の主力メンバーも揃っていた。

 

「ワシに何か用か・・・・小童ども」

 

「お前がマスターか」

 

「誰が小童だ」

 

そして剣咬の虎のマスター・・・・ジエンマが前に出る。ナツとグランはジエンマを睨みつける。

 

「一度の敗北でクビだって?なかなか気合が入ってんなぁ」

 

「・・・・それがオタクらの信条なんだろ?・・・・だったらちゃんと守れよ?」

 

「ア?」

 

「お前も・・・・オレに負けたらギルドやめろよな」

 

「しっかり守れよ・・・・お前らもな」

 

再度、ジエンマを睨みつけるナツとグラン。

 

「本気でぬかしておるのか?小童」

 

「自分の所の仲間を仲間と思えねぇ奴は、許せねぇんだ」

 

「・・・・まぁ、オレも似たような感じだ。」

 

だが、そんな二人に対し「何の事か分からん」とほざくジエンマ。

 

「何の事かわかんねぇだとっ!!」

 

「・・・・ナツ、マスターは頼んだぞ。・・・・オレはコイツらにようがある」

 

「ああ!!」

 

ジエンマはナツに任せ、グランは他のメンバーを睨みつける。

 

「・・・・確か、ここに滅竜魔導士いたよな?・・・・名前は忘れたが」

 

「・・・・俺たちがそうだ」

 

「何のようだよ」

 

グランの呼びかけに答え前に出たスティングとローグ。二人とも、関係のない事で乗り込んできたナツとグランの事がよく分からずにいた。

 

「・・・・まずはお前らだ」

 

「はぁ?」

 

「・・・・何の話だ」

 

グランは二人に指を刺し、こう告げた。

 

「まず初めにお前ら二人がクビな?」

 

「・・・・ッ!?あんま調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」

 

スティングは憤慨しながらグランに突っ込んでいく。それにローグも続いて行く。

 

剣咬の虎の双竜による攻撃・・・・光を纏った拳と影を纏った拳がグランに見事命中した・・・・・・・・・・・・が、床に倒れているのは

 

「・・・・は?」

 

「・・・・なっ!?」

 

スティングとローグだった。倒れた二人も、周りで見ていた者達も何があったのか分からなかった。

 

分かったのは、スティングとローグがいとも簡単に床に倒された事だけ

 

「・・・・もう終わりか?・・・・なら、大した事なかったな。」

 

「・・・・っざけんじゃねぇぞ!!」

 

床から飛び起きたスティングはグランに攻撃を仕掛けまくる。ローグもまた、影に潜りながら攻撃する・・・・二人の攻撃は当たっている。確実に・・・・だが

 

(硬・・・・すぎんだろっ!!?)

 

(全く・・・・通じてない!?)

 

二人の攻撃によるダメージは・・・・グランにとって微々たるもの・・・・例えるならば、そう・・・・・・・・天高く聳え立つ巨大な山を相手しているような・・・・そんな感じだった。

 

「・・・・それが精一杯・・・・ってわけじゃねぇだろ?」

 

「がっ!?」「ぐっ!?」

 

グランはスティングとローグをまとめて殴り飛ばした。

 

「・・・・んじゃ・・・・最初のクビをもらうぞ!」

 

グランは息を吸い、ブレスを放つ。それと同時にジエンマに向け、拳を撃こもうとしていた。

 

 

「雷炎竜の・・撃鉄!!!!」

 

 

「地竜の・・咆哮!!!!!」

 

 

ドゴォォンっ!!!

 

 

物凄い衝撃が宿に響き渡る。そして、土埃が舞いはれていくと・・・・ジエンマとナツ、そしてグランとスティング達の間に、それぞれ女性が立っていた。

 

ナツとジエンマの間に立っている女性は、団子状に結んだ髪と少し濃いめの化粧が特徴的な女性で、グラン達の間に立っている女性・・・・いや、少女は、少し中性的な容姿が特徴的な少女だった。

 

「ミネルバ!!?」

 

「御嬢・・・・」

 

「ガイヤ・・・・」

 

「今宵の宴も、この辺でお開きにしまいか?」

 

「そうだね〜。もうやめといた方がいいよね〜」

 

「あ?」

 

「はぁ?」

 

「ミネルバ、貴様・・・・勝手な事を」

 

「もちろん、このまま続けていても父上が勝つであろうな」

 

「あ、スティング達は別だよ?ボクが止めずにあのままやってたら・・・・絶対負けてたからね。ボクに感謝してよね」

 

「・・・・あ?」

 

「しかし世の中には体裁という言葉があるものでな、攻めてきたのがそちらであったにせよ、ウチのマスターが大魔闘演武出場者を消したとあっては、我々としても立つ瀬がない」

 

「まぁ、それにボクらから出場者が二人消えちゃったら、元も子もないからね」

 

「・・・・なんなら今すぐ全員出場できなくしてやってもいいんだぞ」

 

「父上も部下の手前、少々熱が入り、引くに引けぬと見えた。どうだろう? ここは妾の顔を立ててくれまいか?」

 

ミネルバが虚空に手をかざすと、空間から何かが現れた。

 

「さすれば、この子猫は無傷でそなたらに返す事もできよう」

 

「いや〜よかったねぇ〜」

 

「ハッピー!」

 

「・・・・今どっから出した?」

 

「ごめんナツ~、グラン〜」

 

縛られたハッピーが出てきた。

 

人質・・・・いや猫質を取られたため、これ以上動けないナツとグラン。

 

「クソっ!」

 

「・・・・ハッピーの事、すっかり忘れてた」

 

「ひどいよ〜、グラン〜」

 

「部下が何人かやられてはいるが、妾が今回の件、不問に付してもよいと言っている。そなたらに大人の対応を求めようぞ」

 

「そうそう・・・・だから、ね?」

 

「・・・・チッ、今回は引くぞ、ナツ」

 

「・・・・クソッ」

 

二人が引くとわかると、ミネルバはハッピーを離した。

 

「オイラ・・・・入り口で捕まっちゃって・・・・ゴメン」

 

「いいんだ、ハッピー。俺たちの方こそ放っておいて悪かった」

 

「・・・・帰るぞ」

 

「ああ」

 

「あい」

 

「なかなか骨のある小童共だ」

 

「決着は大魔闘演武でつけよう。思う存分な」

 

「それじゃあね〜」

 

「・・・・テメェらなんざに負けやしねぇよ」

 

「つーかオレ達には追いつけねえ」

 

ナツとグランは宿を後にしながら、最後に・・・・剣咬の虎(セイバートゥース)に向けて告げる。

 

「ギルドなら仲間、大切にしろ」

 

「俺たちが言いてぇのはそんだけだ」

 

そう言って宿を後にしたグラン。

 

「・・・・ねぇ〜、マスター。ボク、この大会中絶対グランと戦いたいんだけど〜」

 

「・・・・戦いなど、大魔闘演武中いくらでもできる」

 

「じゃあ、なんとかしてねぇ〜」

 

グランの咆哮をいとも簡単に打ち消した少女・・・・ガイヤ。少女の周りには()()()が巻き起こっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第三十一話 妖精女王(ティターニア)妖精の輝き(フェアリーグリッター)


だいぶ前、グランに対し『歩く天狼島』という素晴らしい感想をいただぎました。・・・・今回その一片が現れます。



 

剣咬の虎へ殴り込みをしてから夜が明け、大魔闘演舞3日目。

 

『大魔闘演武もいよいよ中盤戦、3日目に突入です』

 

『今日は一体どんな熱いドラマを見せてくれるかね』

 

『本日のゲストは、魔法評議院よりラハールさんにお越しいただいています』

 

『久スぶりだねぇ』

 

『よろしくお願いします』

 

『ラハールさんは強行検束部隊大隊長ということですが…』

 

『えぇ、大会中の不正は許しませんよ』

 

「・・・・あれ?あの人見た目あんま変わってなくね?」

 

「そうか?」

 

そこは割とどうでもいい。

 

『三日目の競技は伏魔殿(パンデモニウム)!参加人数は各ギルド一名です!!』

 

「さて、誰が出る?」

 

「もう一回オレに行かせろ!!」

 

「・・・・好きに決めてくれ」

 

と適当に話を進めようとするグランだったが、蛇姫の鱗からジュラが出るというのが聞こえた瞬間、すぐに乗り出した。

 

「いや、やっぱオレが出る。つうわけで行ってくる!!」

 

「っておい!!」

 

ガジルが何やら言っているが、それをガン無視して会場に出ていった。

 

そしてそれぞれの選手が会場に現れる。剣咬の虎からはオルガ。蛇姫の鱗からはジュラ。青い天馬からはヒビキ。大鴉の尻尾からはオーブラ。人魚の踵からはミリアーナ。四つ首の仔犬からはノバーリ。妖精の尻尾Aからはエルザ。・・・・そして妖精の尻尾Bからはグラン。これで全員が揃った。

 

「昨日は休暇の為失礼しました。それではこれより伏魔殿のルールを説明します」カボ

 

そしてマトー君が説明に入ると、空から巨大な魔法陣が現れ、大きな建造物が降りてきた。

 

「これは…」

 

「・・・・無駄に豪勢な」

 

「邪悪なるモンスターが巣食う神殿、伏魔殿(パンデモニウム)

 

「モンスターが巣食うだと?」

 

「そういう設定ですのでカボ、ただの。この神殿の中には100体のモンスターがいます。・・・・と言っても我々が作り出した魔法具現体、皆さんを襲うようなことは無いのでご安心を。モンスターはD・C・B・A・Sの5段階の戦闘力が設定されています。内訳はDクラスから順に50体、30体、15体、4体、1体となっています。ちなみににDクラスのモンスターがどのくらいの強さを持っているかといいますと…」

 

空中に現れた魔水晶映像が伏魔殿の中の様子が映し出した。そこには1匹の凶暴そうなモンスターが居る。モンスターは近くにあった頑丈そうな柱に突進すると、呆気なく破壊した。これでDクラスらしい。

 

「こんなのやらこんなのより強いのやらが100体渦巻いているのが伏魔殿です、カボ。クラスが上がるごとに、倍々に戦闘力が上がると思ってください。Sクラスのモンスターは聖十大魔道と言えど倒せる保証はない強さですカボ」

 

「ムッ」

 

「・・・・それは楽しみ」

 

「皆さんには順番に戦うモンスターの数を選択してもらいます。これを挑戦権と言います。例えば3体選択すると、神殿内に3体のモンスターが出現します。選んだ人は1人で神殿に入ります。3体のモンスターの撃破に成功した場合、その選手のポイントに3点が入り、次の選手は残り97体の中から挑戦権を選ぶことになります。これを繰り返し、モンスターの数が0または皆さんの魔力が0となった時点で競技終了です」

 

「数取りゲームみたいだね」

 

「そうです。一巡した時の状況判断も大切になってきます。しかし、先程も申し上げた通りモンスターにはランクがあります。これは挑戦権で1体を選んでも5体を選んでもランダムで出現する仕様になっています。モンスターのクラスに関係なく、撃破したモンスターの数でポイントが入ります。一度神殿に入ると、挑戦を成功させるまで退出は出来ません」

 

「神殿内でやられたらどうなんだ?」

 

「今までの自分の番で獲得した点数はそのままに、その順番での撃破数は0としてリタイアになります」

 

「・・・・ふーん」

 

「それでは皆さんくじを引いてください」

 

どこからともなくくじの入った箱を取り出したマトー君。

 

全員引き終え、くじを確認する。

 

「む、1番」

 

「・・・・あーあ、最悪。8番だ」

 

エルザが一番でグランが八番・・・・最後だった。

 

「この競技、クジ運で全ての勝敗がつくと思っていたが…」

 

「クジ運で?いや、どうでしょう~…戦う順番よりペース配分と状況判断の方が大切なゲームですよ」

 

「いや…これは最早ゲームにならんな」

 

そして、エルザは断言した。

 

 

「100体全て私が相手する。挑戦権は100だ」

 

 

決して冗談ではない。会場もグラン以外の選手達も驚きを顔に表していた。

 

「・・・・クソッ、やっぱ100取られた。」

 

「すまんな、グラン。では、行ってくる」

 

「む、無理ですよ?1人で全滅出来るようには設定されていません!」

 

「構わん」

 

彼女は力強い足取りで神殿への橋を歩いて行く。

 

大魔闘演武三日目・・・・恐らく、この日のことは誰も忘れないだろう。

 

 

キズだらけになりながら 地に堕ちたはずの妖精が舞う

 

 

気高く、強く、美しい・・・・妖精女王(ティターニア)の姿を

 

 

それはまるで・・・・凛と咲き誇る緋色の花・・・・エルザ・スカーレット、ここにあり!!

 

 

『し・・し・・・・信じられません!!何とたった1人で、100体のモンスターを全滅させてしまった――――ッ!!これが7年前、最強と言われていたギルドの真の力なのかぁッ!!妖精の尻尾A、エルザ・スカーレット、圧勝!!文句なしの大勝利――――ッ!!』

 

会場中から大きな歓声が巻き起こる。

 

『未だに鳴り止まないこの大歓声!!!』

 

『こりゃ参ったね』

 

『言葉もありませんよ』

 

実況の三人ももはや言葉を失ってしまう。仲間からも大絶賛の声をあげられる。

 

「・・・・オレがやりたかったなぁ〜」

 

「そう言えるのは主ぐらいじゃな。・・・・何にしても見事。」

 

 『伏魔殿完全制圧!妖精の尻尾A10p獲得!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして

 

「えー、協議の結果。残り七チームにも順位をつけなければならないということになりましたので……いささか味気ないのですが、簡単なゲームを用意しました。」

 

そう言ってマトー君は後ろにある装置の説明に入る。

 

魔力測定器(マジックパワーファインダー)・・・・MPF。この装置に魔力をぶつけることで、魔力が数値として表示されます。その数値が高い順に、順位をつけようと思います。挑戦する順番は先程の順番を引継ぎますカボ。」

 

「じゃあ私からだね!行っくよー!!キトゥンブラスト!!」

 

ミリアーナから放たれた黒いロープ。表示された数値は365。

 

『比べる基準がないと、この数値が高いかどうかわかりませんね。』

 

『この装置は我々ルーンナイトの訓練にも導入されています。この数値は高いですよ、部隊長を任せられるレベルです。』

 

『続いて四つ首の番犬のノバーリ。数値は124。ちょっと少し低いか?』

 

「僕の番だね。」

 

続いてヒビキ・・・・結果は95。

 

「あぁ……なんてことだ……」

 

「・・・・まぁ、しゃーない」

 

『続いては大鴉の尻尾、オーブラ。』

 

「……次はこの黒人形か」

 

MPFの前まで歩くオーブラ。すぐさま襲い掛かりたかったが、大会中なのでそれは諦める。

 

「……」

 

「キキッ」

 

オーブラから黒い使い魔のようなものがMPFに突っ込んでいく。結果は4。

 

「これはちょっと残念ですが……やり直しは出来ませんカボ。えー、現在の順位はこのようになっています。」

 

【1位ミリアーナ 2位ノバーリ 3位ヒビキ 4位オーブラ】

 

「やったー!私が一番だ!みゃー!」

 

「そいつはどうかな。」

 

『ここでオルガ登場ー!!すごい歓声です!!』

 

剣咬の虎オルガ。片腕をあげ、観客の声に答える。そして、魔法を放つ前に、グランを睨みつけてから、両腕から魔法を放つ

 

「120mm黒雷砲!!!!」

 

その数値・・・・実に3825。

 

『さ、三千……!?』

 

「私の10倍ー!?」

 

「・・・・もうちょい正確に言えば、約10.5倍な」

 

そこはマジでどうでもいい。

 

「最強最強ナンバー1!!♪どうだ!妖精の!!」

 

「・・・・もうちょい歌唱力どうにかなんねぇのか?」

 

自作の歌を歌いながらグランに指差すオルガ。そして歌唱力に突っ込むグラン。だからそこじゃない。

 

『さぁ……それに対する聖十のジュラはこの数値を越せるかどうかが注目されます。』

 

「本気でやっても良いのかな?」

 

「勿論ですカボ。」

 

ジュラは両手を合わせ、目を瞑る。・・・・そして

 

「鳴動富嶽!!!!」

 

表示された数値は8544。

 

「は?」

 

「・・・・オッサンコノヤロウ・・・・オレとやった時手ェぬきやがったな」

 

だからそこじゃねぇって

 

『こ、これはMPF最高記録更新!!やはり聖十の称号は伊達じゃなーい!!』

 

「こりゃたまげたわい、ギルダーツとよい勝負か・・・・グランは勝てるのだろうか」

 

「クスっ、大丈夫ですよ。彼は何も七年間・・・・ただ地中に埋まっていたわけではありませんから」

 

「・・・・へ?」

 

何やら意味深げなことを言うメイビス。そして、グランの番がやってきた。

 

『最後の挑戦者は妖精の尻尾B、グラン・ワームランド。ジュラの後とはいえ、彼は初日にそのジュラと互角の戦いをしています。流石にジュラには届かないとは思いますが・・・・期待は大です!!』

 

「・・・・グランなら確実に二位は狙える!!」

 

「悪くても必ず4桁は絶対に行く!!」

 

「頼む!!」

 

ジュラには届かずとも、きっとすごい数値を出してくれると、観客全員が期待していた。

 

「さて、グラン殿?ワシを超えれるかな?」

 

「ウルセェぞ、オッサン。・・・・俺ん時手ェぬきやがって・・・・まぁいいや。・・・・度肝ぬくなよ?」

 

そう言ってグランはMPFの前に立ち、右手を前に出す。その手にはある紋章があった。

 

「・・・・しょ・・・・初代・・・・あれは、まさか!?」

 

「えぇ。その通りです」

 

ニコッと笑うメイビスをよそに開いた口が塞がらないマカロフ。

 

「・・・・集え、妖精に導かれし光の川よ。・・・・照らせ、邪なる牙を滅するために。」

 

静かに・・・・淡々と告げられていく詠唱とは裏腹にとてつもない魔力量を放つグラン。

 

「彼は眠りに入った七年間・・・・天狼島の地中は深くに潜ったことで、島とほぼ一体化していました。・・・・もはや、彼そのものが天狼島とも言えるでしょう。その加護の一つがあの魔法です」

 

「・・・・妖精の輝き(フェアリーグリッター)!」

 

ドッゴォォォォンッ!!

 

そのとてつもない魔力をぶつけていく。

 

表示された数値は・・・・9999。MPFが表示される限界を超えカンストしている。

 

『な・・・・なんということでしょう・・・・MPFが破壊・・・・カンストしています。な・・・・なんなんだこのギルドは!!?競技パート1・2フィニッシュ!!!もう誰も妖精の尻尾は止められないのかーーーっ!!』

 

「止まるわけねぇだろ!!俺らは天下の妖精の尻尾(フェアリーテイル)だからな!!!」

 

グランが腕をあげ、高らかにそう告げると会場中から大歓声が巻き起こった。

 

大魔闘演武三日目の競技パートは、妖精の尻尾の1・2フィニッシュで幕を閉じた。

 

 

 





歩く天狼島グラン・・・・加護その1“妖精の輝き(フェアリーグリッター)
島に眠っていた時、なんやかんやあっていつでも貸し借りができるようになった。ちゃんと初代の許可は取ってある。


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第三十二話 天竜VS天神・・・・放たれる二つの奥義


今回、原作とほんの少し違いますし、ウェンディがほんの少しだけ強くなってます。


 

三日目競技パート、伏魔殿が終わりそのままバトルパートへと移行する。

 

第一試合、人魚の踵ミリアーナVS四つ首の仔犬セムス。

 

「ワ・・・・ワイルド……」

 

「元気最強?」

 

勝者、ミリアーナ。

 

続く第二試合。剣咬の虎ルーファスVS青い天馬イヴの対決。

 

『試合終了ー!イヴ、あのルーファスに大健闘でしたが届かない!勝者、剣咬の虎ルーファス!』

 

ルーファスの古代魔法(エンシェントスペル)記憶造形(メモリーメイク)によって圧勝されてしまう。

 

そして、試合は第三試合へ。

 

妖精の尻尾Bからはラクサス・・・・そして、大鴉の尻尾からはアレクセイ。

 

妖精の尻尾のメンバー達は、それぞれが大鴉の尻尾のメンバーを見張っている。もう二度と卑怯な真似をさせないために。

 

・・・・だが、試合は思わぬ展開になっていった。

 

なんとあのラクサスが全くでも足も出ない状況になっていたのだ。

 

妖精の尻尾のメンバーは大慌てで大鴉の尻尾の動きを確認するが・・・・特に怪しい動きはしていない。

 

・・・・妖精の尻尾Bの観覧場でも、驚愕の表情を浮かべていた・・・・一人以外。

 

「そんな・・・・」

 

「冗談だろ?」

 

「・・・・何そんなに慌ててんの?」

 

「はぁ!!?お前見てねぇのか!!あのラクサスが一方的にやられてんだろうが!!!」

 

「・・・・あー、そういう・・・・多分、大丈夫だろ」

 

「ハァーーーっ!?」

 

グランのそんな適当な物言いに憤慨するガジルをなんとか宥めるジュビアとミラ。

 

「グラン、大丈夫ってどういうこと?」

 

「・・・・そのまんまの意味。・・・・多分もう少ししたら無傷なラクサスと・・・・ボロボロの大鴉達が出てくるよ」

 

「・・・・え?」

 

グランがそう言った直後・・・・会場にいたラクサスが消え、別のラクサスと大鴉の尻尾のメンバー・・・・それにマスター・イワンが出てきた。

 

グランは他の滅竜魔導士と比べると、嗅覚があまり良くないが・・・・代わりにとても視覚が優れている・・・・それこそ、本物か偽物かの区別がつくほどに。

 

故にグランに対し、幻術等の魔法は効きづらいため、他の者の目にはラクサスが一方的にやられている姿が見えていても、グランの目にはラクサスと大鴉の尻尾のメンバーが全員いたのが見えていたのだ。・・・・いよいよバケモンだな、コイツ。

 

『こ、これは一体・・・・何が起きたのか!?』

 

『ギルドマスターカボ!!!アレクセイの正体はマスターイワンカボ!?』

 

『先ほどまで戦っていたラクサスとアレクセイは幻だったのか!?立っているのはラクサス!!!試合終了!!!』

 

『そスて我々の見えぬところで五人がかりの攻撃・・・・さらにマスターの大会参戦・・・・これはどう見ても反則じゃの』

 

「あいつ一人でレイヴンのメンバーを全滅させたのかよ!!」

 

「さっきのエルザといい、グランといい」

 

「バケモンだらけじゃねーか妖精の尻尾!!!」

 

観客達も大いに盛り上がっている。

 

「・・・・な?大丈夫だったろ?」

 

「・・・・わかってたんなら最初から言えや!!!!!!!」

 

ガジルに怒鳴られるグラン・・・・これはこいつが悪い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『協議の結果、大鴉の尻尾は失格となりました。大鴉の尻尾の大会出場権を三年間剥奪します。』

 

『当然じゃ。』

 

『さて、なんとも後味の悪い結果となりましたが……続いて第四試合。本日最後の試合です。

妖精の尻尾Aウェンディ・マーベル!!』

 

「着替え完了です!!」

 

『VS、蛇姫の鱗シェリア・ブレンディ!』

 

「がんばっちゃうよー!」

 

「思いっきりやってきなさい」

 

「はい!!」

 

元気よく返事をして走って会場に進むシェリア

 

「きゃうっ!」

 

そして盛大に転ぶ。観客から少々笑い声がもれる。

 

「あ・・・・あの大丈夫ですか?あう!」

 

それを心配したウェンディも転んでしまう。

 

会場の雰囲気は和やかな空気に変わっていた。

 

「よ・・よろしくお願いします」

 

「うん、よろしくね」

 

「・・・・いや〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・可愛いな」

 

「顔がおもくっそ気持ち悪りぃくらいにやけてんぞ」

 

ほっといてやれ。

 

『これはなんとも可愛らしい対決となったぞー!!オジサンどっちも応援しちゃうピョーン!』

 

『あんたキャラ変わっとるよ。』

 

「・・・・あの実況は後で殺ス」

 

「・・・・や、やめとけよ?」

 

(・・・・それはまぁいいとして・・・・なんか妙な魔力を感じるんだが・・・・気のせいか?)

 

『大魔闘演武三日目最終試合、妖精の尻尾Aウェンディ対蛇姫の鱗シェリア!試合開始です!!これは可愛らしい組み合わせになりましたー!!オジサンもううっれしィー!!』

  

「・・・・やっぱあの実況殺ス」

 

落ち着け、落ち着け。

 

『あんなコ妖精の尻尾にいたかのう』

 

『ええ・・・・私は少しだけ知っているのですが、とても勇敢な魔導士ですよ』

 

(せっかく修行したんだ、頑張らなくちゃ・・・・それにグランも見てるんだ・・・・グランも・・・・グラン・・・・・・・・グラン・・・・・・・・

 

 

「・・・・よく頑張った、ウェンディ。えらいぞ」ナデナデ

 

「・・・・えへへ///」

 

 

・・・・・・・・って違う違う!!そんな事考えてる場合じゃないのにーーー///)

 

と顔を真っ赤にさせて手を空中にパタパタさせるウェンディ・・・・この娘もこの娘でグランが大好きである。

 

「・・・・やっぱり、ウェンディも“愛”してるんだね!グランの事!!」

 

「ふぇっ!?わ、私は、そのっ!?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・も?」

 

おっと?戦いの前から何やら不穏な雰囲気が?

 

「うん!!私もグランを“愛”してるよ!!」

 

「・・・・・・・・・・・・え?」

 

「・・・・・・・・ん?なんだ?いきなり寒気が?」

 

『な・・・・な、な、な、何とーーーー!?シェリアたんの口からいきなりの愛してる宣言!!??その相手は、まさかの妖精の尻尾のグランだーーーーーー!!?羨ましいぞーーーーー!!!!』

 

会場中が、ざわめき出す。そして妖精の尻尾のメンバーは全員一斉にグランを見る。・・・・当の本人はものすごい青白い顔をしていた。

 

「・・・・お前、あいつに何したんだ?」

 

「そうですよ!!ウェンディという娘がいながら!!!」

 

「あらあら、これは困ったことになったわね?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・助けてラクサス」

 

「自分で何とかしろ」

 

何故責められるのか・・・・いや、理由はわかっている・・・・わかっているが分かりたくないグラン。さて、そんなシェリアの愛してるよ宣言を真っ正面から聞いてしまったウェンディは・・・・

 

「・・・・・・・・」プクー

 

頬を思いっきり膨らましてグランをじと目で見ている。想像しただけでめっちゃ可愛い。でも、見られた本人は、ものすごいビビってる。

 

それはもう、めちゃくちゃ震えてる・・・・珍しい。

 

「・・・・もう行きます!!!攻撃力強化(アームズ)速度上昇(バーニア)付加(エンチャント)!!!」

 

とりあえずこの事は後で聞くことにしたウェンディは、まず自身の攻撃力と速度を上げていった。

 

「天竜の翼撃!!」

 

そして放たれた翼撃は、付加の影響もあり暴風と化す。

 

「よっ・・・・ほっ!!」

 

「かわした!!」

 

しかし、シェリアはそれをすべてをかわしきり、そして自身も構える。

 

「天()の……北風(ボレアス)!」

 

「うわっ……!」

 

ウェンディを黒い風が襲いかかる。

 

「すごい!これ避けるんだね!!だったら……天神の舞!」

 

「うわああああ!!」

 

避けたのも束の間、ウェンディはシェリアの風によって持ち上げられ、上空に吹き飛ばされる。

 

ウェンディのような風・・・・いや天空魔法の使い手・・・・そして黒色の風・・・・

 

「まだまだ!!」

 

そしてシェリアが再び追撃しようと跳び上がった瞬間、ウェンディはその場で止まり、カウンターの一撃をお見舞いする。

 

「天竜の鉤爪!!!」

 

「うっ……!」

 

そして二人ほぼ同時に地面に着地して、ほぼ同時にブレスを構える。

 

「天竜の・・・・」

 

「天神の・・・・」

 

そしてそれが確信に変わる。・・・・シェリアの扱う魔法の正体は・・・・ウェンディと同じ魔法・・・・失われた魔法(ロストマジック)・・・・すなわち天空の滅神魔法だった。

 

「・・・・咆哮!」

 

「・・・・怒号!!」

 

ぶつかり合う白い風と黒い風。その影響で会場全体にとんでもない暴風を巻き起こす。

 

「・・・・天空の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)だったとはな。・・・・この会場に後何人いんだか」

 

風がやみ、両者とも立っていたが、無傷はシェリアで、ウェンディはボロボロになって立っていた。

 

『な、なんと!可愛らしい見た目に反し二人ともすごい!凄い魔導士だーっ!!』

 

「驚きました・・・・」

 

「リオンから聞いてたんだ、妖精の尻尾にあたしと同じ魔法使うコいるって。しかも同じ人を“愛”してるって。ちょっとやりすぎちゃったかな?ごめんね、痛くなかった?」

 

「平気です、戦いですから。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そ、それにあ、愛してるって///」

 

そこは自信持って言おうよウェンディ。

 

「折角だからもっと楽しもっ!ね。」

 

「私、戦いを楽しむって……よく分からないですけど……グランも頑張ってたから・・・・私も、ギルドのために・・・・頑張ります。」

 

「うん!それでいいと思うよ。あたしも“愛”とギルドの為に頑張る!」

 

シェリアの放つ魔法がウェンディを吹き飛ばす。既に傷だらけでだが、それでも倒れないウェンディ。

 

『同じ風の魔法を使う者同士!シェリアたんが一枚上手かー!?』

 

『正スくは“天空魔法”な。』

 

「う、うう……!スウゥゥゥ……!」あぐあぐ

 

「あ!やっぱり“空気”を食べるんだね!じゃああたしも……いただきまふぅ!」あぐあぐ

 

『こ、これは……ウェンディたんシェリアたん何をしているのでしょう?気のせいか、酸素が少し薄くなった気がします。』

 

「滅竜奥義!」

 

十分に空気を食べたウェンディが、放つのは・・・・この大会のために修得したあの魔法。

 

ウェンディとシェリアを中心として風が吹き荒れ始める。風がうずまき、二人を閉じ込めた。

 

「照破・・」

 

「風の結界!?閉じ込められた!?」

 

「天空穿!」

 

ドッゴォォォォンッ!!

 

風の結界が打ち消され、天を穿つ一撃が放たれる。それをまともにくらいボロボロになるシェリア。

 

勝った・・・・誰もがそう思っていた。・・・・だが。

 

『シェリアダウー「あぅ〜ごめんね!ちょっと待って……まだまだこれからだから!!」・・・・ン!?』

 

「ふぅー、やっぱすごいねウェンディ!!!」

 

そこには無傷のシェリアが立っていた。

 

確実にウェンディの攻撃は当たっていた。・・・・という事はつまり、シェリアはウェンディには出来なかった“自己回復”ができるのだ。

 

「・・・・はぁ・・・・はぁ・・はぁ・・・・」

 

「降参しないの……かな?あたし、戦うのは嫌いじゃないけど……勝敗の見えてる一方的な暴力は“愛”がないと思うの。」

 

「うくっ……うぅ……!」

 

「降参してもいいよ……ね?」

 

「……出来ません。私がここに立っているということは、私にもギルドの為に戦う覚悟があるということです。情けはいりません。

 

私が倒れて動けなくなるまで、全力で来てください!!お願いします!!

 

力強く言い張るウェンディ・・・・グランはその光景を見て、とても嬉しく感じていた。昔から守ってきたあの弱々しい彼女は、もうどこにもいなかったからだ。・・・・まぁ弱々しかろうが、結局ウェンディには頭が上がらないんだがな。

 

「……うん!それが礼儀だよね!」

 

「はい!」

 

「じゃあ……今度はあたしが大技出すよ!この一撃で楽にしてあげるからね!!滅神奥義!!!

 

瞬間、シェリアの魔力が膨大に膨れ上がる。異常な程に膨大で、暴風など生易しい・・・・小さなハリケーンとも言えるほどの強大だった。

 

 

「全力の気持ちには全力で答える!!それが“愛”!!!

 

 

天ノ叢雲!!

 

 

ドゴォォォォォォォっ!!

 

放たれるは神をも屠る天空の一撃。これが当たってしまえば・・・・ウェンディが死んでしまうかもしれない。

 

もうダメだと・・・・会場中の皆が思う中・・・・グランは驚愕の表情を表していた。

 

「・・・・おいおい、まじかウェンディ!!?」

 

瞬間、空気が変わった。先ほどウェンディとシェリアが二人で空気を食べていた時とは比べ物にならないほど・・・・空気が薄くなっていった。

 

いや、もはや会場だけでなく・・・・恐らくここ、クロッカス全体の空気が変わっていた。

 

それら全ての空気の魔力は一人の少女・・・・ウェンディへと集まっていく。

 

ウェンディが他の皆に・・・・シャルルやグランにも黙っていた・・・・もう一つの魔法。

 

 

「滅竜奥義・・・・極波・天竜哮!!!」

 

 

ドゴォォォォォォォォォォっ!!!

 

そして解き放たれる天空竜の咆哮・・・・それはシェリアの魔法とぶつかり合い・・・・そして、会場に先ほどとは比較にならないほどの暴風・・・・いや、竜巻が巻き起こる。

 

「・・・・おい、グラン。あれってお前のやつだろ?どうなってんだ?」

 

「・・・・何で知ってんのかはさておいて・・・・俺の滅竜奥義は・・・・俺とウェンディとシャルルと協力して作り出した魔法だ。俺の魔力じゃなくて、大地の魔力そのものを直接体に取り込んで放つ魔法だ。・・・・口から食べるんじゃなくて、体全体で魔力を取り込む感じでな。・・・・ウェンディの場合常に空気中の魔力と触れ合ってるし、原理も理解してっから、ウェンディもできておかしくはないんだが・・・・これは驚いた。驚きすぎて体砕けちゃったもん」

 

「まじで砕けてんじゃねぇか!!!」

 

冷静になりながらも体が半壊しているグラン。

 

『こ、これはすごいーーーーっ!!!!絶体絶命かと思われていたウェンディたんがまさかまさかの大反撃!!シェリアたんの魔法を撃ち消したーーーーーっ!!!すごい、凄すぎる!!!オジサンもう、大興奮ーーーーーーっ!!!!』

 

「すごい魔法!!それってグランのだよね?ウェンディもできるんだね!!やっぱり“愛”の力だね!!」

 

「ハァ・・ハァ・・・あの魔法は、私とグラン・・・・それにシャルルの三人で一緒に考えたんです。・・・・昔から、こっそり練習してたんです。・・・・・・・・・・・・・・・・べ、別に“愛”とかじゃ、ないですから///」

 

「それでもすごい・・・・すごいよウェンディ!!!」

 

「まだまだ行きます!!天竜の砕牙!」

 

ウェンディが更に攻撃を仕掛けていく。シェリアは攻撃を喰らうもののすぐに回復してしまう。

 

「やーーーーーーっ!!!」

 

「とーーーーーーっ!!!」

 

ぶつかり合い天竜と天神の魔法。ただただぶつけ合う。それは意地のぶつかり合いか・・・・それとも、別の何かなのか。

 

『これは凄い展開になってきた!!!両者一歩も引かず!!!ぶつかり合う小さな拳!!!その執念はギルドの為か!?』

 

ウェンディが攻撃し、シェリアも攻撃する。シェリアは自己回復できるが、ウェンディはそうはいかない。ウェンディはどんどん傷ついていく。それでも引かない。

 

その小さすぎる魔導士達の戦いに・・・・観客達は目を離せなかった。

 

・・・・そして

 

『ここで時間切れ!!!試合終了!!!この勝負引き分け!!両チームに5pずつ入ります!!この試合おじさん的にベストバウト決定ー!!』

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・痛かった?・・・・ハァ・・・・ごめんね?」

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・いえ・・・・そればっかりですね。」

 

「クスッ」

 

「あははッ」

 

笑い合うウェンディとシェリア。

 

「楽しかったよ、ウェンディ。」

 

「あ、キズが」

 

シェリアがウェンディに近づき傷を治していく。

 

「わ・・私も少しだけ楽しかったです。」

 

「ね!友達になろうウェンディ。」

 

「は・・・・はい……私なんかで良ければ……」

 

「違うよっ!友達同士の返事。」

 

シェリアの言葉にキョトンとするウェンディ。そしてシェリアは笑顔で手を前に出した。

 

「友達になろっ、ウェンディ」

 

そして、すぐにウェンディも同じように手を伸ばす。

 

「うん!シェリア!」

 

そして手を握り合う二人。その光景はとても微笑ましかった。

 

『なんと感動的なラスト!!!オジサン的にはこれで大会終了ーーーー!!』

 

『これこれ……三日目終了じゃ。』

 

『皆さんありがとうございました。』

 

「・・・・でも、グランは諦めないよ?気をつけないとウェンディから奪っちゃうかもね?」

 

「だ、だめだよ!グランは私の・・・・って違うよ!?何言ってるの、シェリア///」

 

・・・・・・・・あいつ一回爆ぜてくんねぇかなぁ〜。

 

 

 

 

「ギヒッ、あの小娘やるじゃねぇか。・・・・お前も大変そうだな、グラン?」

 

「あ、まって。今体バラバラになっちゃったから後にして」

 

「あ?何言って・・・・マジでバラバラじゃねぇか!!?」

 

・・・・もう既に爆ぜてたし、ザマァ見ろ。

 

 

 

 

三日目終了時点の順位

 

一位 妖精の尻尾B 35P 二位 剣咬の虎 34P 三位 人魚の踵 32P 四位 妖精の尻尾A 27P 五位 蛇姫の鱗 26P 六位 青い天馬 18P

七位 四つ首の仔犬 14P × 大鴉の尻尾 失格

 

 

 

 

 

 

 

 

 





極波・天竜哮・・・・グランの滅竜奥義のウェンディバージョン。天空から直接魔力を取り込み一気に放つ。


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第三十三話 リュウゼツランド


今回はちょっと短め


 

三日目が終わり、その日の夜。妖精の尻尾のメンバーはいつもどおり酒場で飲めや食えや騒げやとどんちゃんしていた。

 

今日は競技パートで1、2のフィニッシュをだし、バトルパートであの憎っくき大鴉の尻尾をコテンパンに出来たから、それはもう大喜びだった。

 

・・・・そしてコイツも

 

「・・・・・・・・・・・・本当に何もないんです。」

 

「本当?」

 

「・・・・・・・・・はい。誓ってもいいです。」

 

「アンタ、ほんとは誤魔化してんじゃないでしょうね?」

 

「・・・・・・・・・・・・誤魔化してないです。」

 

床に正座しながら問い詰められているのは、今日のMVPの一人でもあり、ある意味今日一番注目を浴びた者・・・・グランだ。

 

酒場に来る前から、すんごいシャルルに睨まれ、ついた途端に正座させられたグラン。・・・・哀れなり。

 

グランとシェリアは実は七年前に一度だけあっているのだが・・・・その時のシェリアはまだ小さい上にこの七年で成長している。・・・・だからグランは正直わかってないのだが・・・・まぁしょうがないしょうがない。

 

「まぁ二人とも、その辺にしといてやれ。それにしても驚いたぞ、ウェンディがあそこまで奮闘するとは」

 

「・・・・サンクス、リリー。・・・・っていうか、いつから練習してたんだ?」

 

「あ、えーっと。じ、実は昔から練習はしてたんだ。・・・・結局私勝てなかったけど」

 

「全く、何言ってんの?よくやったじゃない」

 

「皆、驚いていたぞ」

 

「うん!!すごかったよウェンディ!」

 

「・・・・まぁ、あんま無茶はしてくれるなよ?俺びっくりしすぎて体砕けたからな」

 

「アンタはいい加減ウェンディを過保護に見るのはやめなさい」

 

まぁ色々とあったが、今日は皆が騒ぎに騒いで、食べたら飲んで・・・・大分歓喜にあふれたよるとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プールだと?」

 

「わぁ♡」

 

「近くにあるの?」

 

「フィオーレ有数のサマーレジャースポットリュウゼツランド

 

「行くしかねーだろー!」

 

「あちぃもんな。」

 

「あいさー」

 

「・・・・濡れるのはなぁ」

 

「・・・・・・・・一緒に行ってくれないの?」

 

「何ぐずぐずしてんだ、早く行くぞ!!」

 

「・・・・アンタもうちょい自分の意志を持ちなさいよ」

 

「でもマスターにことわらなくて大丈夫かな?」

 

「マスターならラクサスに連れ出されていったぞ」

 

なんやかんやあって近くにプールがあるとのことらしいので、皆で夜のプールに行くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【サマーレジャースポット リュウゼツランド】

 

「着いたー!」

 

「広いですね。」

 

「んー、気持ちいいな。」

 

フィオーレ有数のレジャースポットというだけあり、中はものすごく広く、プールはもちろん、波が起こるプールやウォータースライダー・・・・さらには水族館まであるという。・・・・水族館はやりすぎじゃね?

 

「・・・・無駄に広いな、おい」

 

「もう、そんな事言っちゃダメだよグラン。・・・・それより、どう?似合ってる?」

 

「めちゃくそ可愛い。すんげー似合ってるぞ!!」

 

「そ、そう?///えへへ///」

 

ほんとこいつウェンディが関わると気持ち悪いくらい変わるな。二人のそんな光景をニヤニヤしながら見てる女性メンバー達。

 

「でも本当に良かったの?グラン、あまり水に浸かりすぎると溶けちゃうけど・・・・」

 

「溶けるの!?」

 

「・・・・いや、溶ける訳じゃ無くて泥になるだけだし・・・・そこまで長いことつからなきゃ大丈夫だ。・・・・ちゃんと体が保つよう意識すればいいし」

 

土塊からただの泥に成り代わるのか・・・・どういう体の仕組みしてんだ、コイツ?

 

 

 

 

 

 

 

それからそれから、皆がバラバラに回ることにして、グランは当然、ウェンディと一緒にプールへ向かう。

 

「ウェンディーーーーっ!それにグランーーーーっ!!」

 

「シェリア達も来てたの!」

 

「・・・・確か、オッサンとこの娘か」

 

「今日はいい戦いだったね、怪我大丈夫?」

 

「はい!おかげさまで!」

 

「また敬語になってる。」

 

「あ・・・・クセで、つい・・・・」

 

「・・・・俺、敬語使われたことないよ?」

 

「だってグランはグランだし・・・・」

 

「まぁまぁ、そんな事より!私たちも一緒に遊ぼ!!」

 

「・・・・それはいいが、手を引っ張る必要はなくない?」

 

「う、うん!そうだね!!」

 

「・・・・ウェンディもそんなに引っ張らないでね?あ、ちょっ待って!!?普通に握って!?体をそんな密着させないで!!?」

 

とても可憐で美しい少女達に腕を組まれるグラン・・・・・・・・・・・・・・・・爆ぜろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、しっかり挨拶してなかったね!!私、シェリア・ブレンディ!!よろしくね!!」

 

「・・・・あぁ。俺は「グランでしょ?勿論知ってるよ!!」・・・・せめて自己紹介させてくれ。・・・・後、もうちょい離れてね?」

 

「・・・・・・・・やっぱりグランもお胸がある方がいいの?」

 

「違うよ、違う。そういう事じゃないんですよウェンディさん?あなたも大分くっついてるからね?・・・・ねぇ、プールに入りにきたんだよね君たち?」

 

左にシェリア、右にウェンディ・・・・まさしく両手に花状態のグラン。普段からは想像できないくらいに慌ててる・・・・ウケるww

 

「う〜ん、それもそうだね!!それじゃあ、行こっ!ウェンディ!!」

 

「あ、うん!シェリア!!グラン、行ってくるね!!」

 

「・・・・いってらっさーい」

 

二人がプールに向かっていく中、グランは近くの椅子に腰掛け二人の様子を見ていた。

 

水をかけ合う二人・・・・楽しそうに笑うウェンディとシェリア・・・・・・・・うん。

 

「・・・・・・・・・・・・いいなぁ〜、ああいうの」

 

コイツ本当ウェンディが絡んだ時だけ気持ち悪りぃな、おい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・なんか寒くねぇか?」

 

「そういえば・・・・」

 

「プールにつかりすぎたのかな?」

 

しばらく遊んでいると何故か急に寒気が襲ってきた。プールにつかりすぎたかと思ったが、ほとんどプールに入っていないグランも寒気に襲われていた。

 

まぁすぐに原因は分かった。

 

「・・・・ってかプール凍ってねぇか!?ウェンディ、シェリア!こっち来い!!」

 

「わっ!!」

 

「う、うん!!」

 

グランは急いで二人を引き上げ、側に寄せた。プールが・・・・というかこの施設ごとどんどん凍っていった・・・・その原因は、仲良く?ウォータースライダーを滑ってる二人にあった。

 

「・・・・グレイと・・・・確か、リオンだったな。え、何してんくれてんの?」

 

「あ、ありがと、グラン///」

 

「ちょ、ちょっと狭い・・かも///」

 

グランは凍る寸前に、ほぼ無理やり土壁を自分達の周りを囲いなんとか凍らずに済んだ。

 

「バカヤロウ!!プールを凍らすヤツが・・・・」

 

「・・・・ナツ?・・・・・・・・・・・・あ、嫌な予感」

 

「あるかーーーーーっ!!!!」

 

 

ドゴォンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・ぶっ壊れたなぁ〜」

 

「・・・・・・・・だね」

 

グレイとリオンが凍らせた後、ナツが炎で氷を溶かそうとした・・・・というか、プール事全部ぶっ壊しやがった。

 

まぁこの原因を作った二人はラクサスに絞められたがな。

 

「・・・・・・・・あ、マスターと初代。・・・・来てたんだな」

 

「・・・・泣いてるね」

 

「・・・・多分、修理代は妖精の尻尾(ウチ)もちなんだろうな〜・・・・・・・・ハァ」

 

壊れたプールの瓦礫の上で、大きくため息を吐くグラン。・・・・こんな事で残りの大会は大丈夫なんだろうか?

 

 

・・・・・・・・不安だ。

 

 





次で大魔闘演武四日目になるんですが・・・・そこでセイバーのガイヤとグランを戦わせようと思います。競技パートで?それともタッグ?・・・・いいえ、戦う場を無理やりねじ込みます。タッグバトルが終わった後、エキシビジョンマッチとして戦わせます!!

おいおい、それは無理やりすぎんだろ?とか、もうちょい原作に合わせろ!!とか色々言いたいかもしれませんが・・・・・・・・だってこれ以外考えられないんだもん。




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第三十四話 四日目 海戦

 

【大魔闘演武四日目 競技パート 海戦(ナバルバトル) 各チーム一名

 

球状の水中闘技場から外に出てしまったら負け。最後まで残った者が勝者である。

 

ただし、最後に二人だけ残った時に特殊ルールが追加される。

 

五分間ルール。最後の二人になってから五分の間に場外に出てしまった方は最下位となる】

 

 

『さぁ始まりました。四日目競技パート。』

 

『水中相撲といったトコかね。』

 

『楽しみですね、ありがとうございます。』

 

各チームそれぞれ、蛇姫からはシェリア、天馬からはジェニー、人魚からはリズリー、妖精からはそれぞれルーシィとジュビア・・・・そして

 

「・・・・水中なら、ジュビアの独壇場だとは思うが」

 

「あぁ・・・・問題は奴の実力だな」

 

『出ました!ミネルバー!!この大歓声ーっ!さらにリザーブ枠としてあのガイヤもいるとのことです!!』

 

『剣咬の虎の最強の六人が揃った訳だね。』

 

『ありがとうございます!!』

 

剣咬からは、最強の6人が一人、ミネルバ。そしてリザーブ枠に、グランの咆哮を止めた少女もいた。

 

「・・・・何もなけりゃいいがな」

 

『ルールは簡単!水中から出たら負け!!海戦開始です!!』

 

『早速だけど……みんなごめんね!開け!宝瓶宮の扉!!

 

アクエリアス!!』

 

『オォオオオオ!!水中は私の庭よォ!!』

 

『させない!!水流台風(ウォーターサイクロン)!!』

 

開始早々に、ルーシィがアクエリアスを呼び出し、ジュビアがそれに応戦する。

 

『ジュビア!!』

 

『恋敵!!』

 

『なんだいこれは……!』

 

『互角!?』

 

『だったら今の内に……まず1人!!』

 

『ワイルドォ!!』

 

『四つ首の仔犬、脱落ーーーっ!!』

 

『そのあいだに貴方も!!』

 

『ぽっちりなめちゃいけないよ!!』

 

「・・・・中々にすごい戦いになったが・・・・アクエリアスどこいった?」

 

「んー、多分デートじゃない?」

 

「・・・・デートて・・・・まぁいいや。その隙ついてジュビアがやってるっぽいし」

 

グランが言うように、ジュビアはアクエリアスがいなくなった隙を突いて、ルーシィを吹き飛ばす。

 

『バルゴ!アリエス!!』

 

『セクシーガードです!姫!』

 

『モコモコでスミマセ〜ン』

 

『水中の激戦が続いています!!頑張れっ!シェリアたん!妖精の尻尾Aよ!何故ウェンディたんを出さなかったのか!!』

 

『うるさい!!』

 

「・・・・・・・・やっぱあの実況沈めといた方がいいと思う。」

 

「落ち着けよ。お前もアレとそう変わらん」

 

「・・・・ふざけんな錆鉄」

 

「誰が錆鉄だクラァ!!?」

 

「おっ?」

 

『全員まとめて倒します!水中でジュビアに勝てるものなどいない!!第二魔法源の解放により身につけた新必殺技!届け!愛の翼!!グレイ様ラブ!!』

 

ガジルとグランがどうでもいい事で睨み合ってる中、ジュビアは第二魔法源が解放された事で編み出した必殺技を繰り出す。

 

ハートマークを撒き散らしながら、強大な水流を起こす。名前はふざけているが、ルーシィとミネルバ以外を全員場外に叩き出した。

 

『なんと!ジュビアがまとめて3人も倒してしまったー!!水中戦では無敵の強さだジュビアー!!』

 

「・・・・すごいはすごいが、色んな意味でグレイが可哀想だな」

 

「ぐっ・・・・・・・・うぉっ・・・・・・・・」

 

「それはいいけど、そろそろガジルを離してあげてね?でもこれで・・・・」

 

『え?』

 

グランがガジルの首を絞めながら感心しつつ引いていると、ジュビアは何故か水球の外に出てしまっていた。

 

『大活躍でしたが残念!場外!!しかしそれでも3位!6pです!残るはミネルバとルーシィの二人のみ!さぁ……勝つのはどっちだ!剣咬の虎か、妖精の尻尾か。ここで5分間ルールの適用です。今から5分間の間に場外となった者は最下位となってしまいます。』

 

『何のためのルールかね?』

 

『最後まで緊張感を持って見るためですよ!ありがとうございます!』

 

「・・・・あいつの魔法が何かはしらねぇが・・・・アレなら全員一瞬で場外にできただろ」

 

「・・・・嫌な予感がするわ」

 

『妾の魔法なら、一瞬で場外にすることも出来るが……それでは興が削がれるというもの。耐えてみよ、妖精の尻尾……!』

 

『きゃあっ!?』

 

「何アレ!?」

 

「・・・・熱か?」

 

『うああっ!!』

 

「ルーシィ!!」

 

「何だ、アイツの魔法は!!」

 

『今度は重い……鉛のような……』

 

熱の次は鉛・・・・一体彼女の魔法の正体は何なのか。

 

『やられてばかりじゃいられない・・・・っ!?あれっ!?私の鍵が……!?』

 

ルーシィもやられっぱなしではいられず、星霊を呼び出し反撃しようとするが、その鍵はいつの間にかミネルバが手に持っていた。

 

『きゃあああ!!』

 

『ルーシィ!このまま場外に出ると最下位だー!!』

 

『んんん・・・・んっ!!』

 

吹き飛ばされたルーシィだったが、水球ギリギリでなんとか止まった。

 

だが、その直後にまたミネルバの攻撃が襲いかかる。

 

『あたしは……どんな攻撃も耐えてみせる……!』

 

時間がどんどんとすぎていく中、ミネルバの魔法によって、一方的に傷ついていくルーシィ。鍵も取られ、水中では鞭も思うように扱えない。

 

だが、それでも決してあきらめてはいなかった。

 

『そろそろ場外に出してやろうか……』

 

『こんな所で負けたら……ここまで繋いでくれたみんなに合わせる顔がない……!あたしは、みんなの気持ちを裏切れない。だから絶対に諦めないんだ。』

 

ルーシィを場外に出そうとしたミネルバだったが、なぜかその手を止める。

 

『ど・・・・どうしたのでしょう?ミネルバの攻撃が止まった。そのまま時計は5分経過!後は順位をつけるだけとなったー!!』

 

だが、5分が過ぎた直後

 

『ああああ!!』

 

今までとは比にならないほどの攻撃がルーシィを襲う。

 

『頭が高いぞ!!!妖精の尻尾!!!我々をなんと心得るか!!我らこそ天下一のギルド!!剣咬の虎(セイバートゥース)ぞ!!』

 

『きゃあああ!!』

 

そして吹き飛ばされるルーシィ。・・・・このまま場外かと思われた・・・・だが。

 

『これは流石に場外・・・・・・・・消えた!?』

 

『ああああああああっ!!?』

 

『場外へ吹っ飛ばされたルーシィ!何故かミネルバの前にー!!』

 

何が彼女の琴線に触れたのか、それは分からない。だが、彼女に取ってルーシィの言葉それほど面白くないものだったのだろう。

 

「・・・・・・・・・・・・あのクソ女、わざわざ痛めつけるために戻してんのか!!?」

 

「そんなっ!!?」

 

「もう勝負はついてんだろ・・・・」

 

この蛮行に妖精の尻尾のメンバー達は全員、憤慨して剣咬の虎を睨みつけた。

 

だが、奴らはただただ笑っているだけだった。

 

『こ、ここでレフリーストップ!競技終了!!勝者ミネルバ!!剣咬の虎やはり強し!!ルーシィ・・・・さっきから動いていませんが、大丈夫でしょうか!?』

 

首を掴み、水球の外へ出すミネルバ。

 

「ルーシィ!!」

 

Aチームが飛び出し、ルーシィを受け止める。

 

「何て事するんだコノヤロウ!!」

 

「大丈夫か!?しっかりしろ!!」

 

ミネルバ以外が、ルーシィに駆け寄る。シェリアとウェンディが治療に回る。

 

「その目は何か?妾はルールに則り、競技を行なったまでよ。むしろ感謝して欲しいものだ。2位にしてやったのだ……そんな使えぬクズの娘を。」

 

その言葉を聞き、ナツが殴りかかろうとするが・・・・・・・その前に、とてつもない魔力がこの場の全員を襲う。

 

その魔力の影響で、大地が震えていく。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・潰ス」

 

「待て、落ち着けグラン!!」

 

周りの静止の声も聞かず、ミネルバへと歩みを進めていく、グラン。そのミネルバの前に他の剣咬の虎のメンバーと・・・・件のガイヤの姿も現れる。

 

『おーっとこれは……両チーム一触即発かー!?』

 

「・・・・・・・・どけ」

 

「いや〜、ダメでしょ?今どいたら多分ミネルバさん・・・・死んじゃうかもだし」

 

グランとガイヤの魔力がぶつかり合う・・・・・・・・その凄まじいぶつかり合いで、他のメンバーは近寄ろうにも近寄れなかった。

 

「・・・・随分と怒ってるね?そんなにあの娘が大事だった?」

 

「・・・・仲間が大事なんだよ。・・・・・・・・それを悪戯に傷つけるやつが大っ嫌いなだけだ」

 

「・・・・ん〜、分かった!じゃあボクが相手してあげるよ!!」

 

「・・・・はぁ?」

 

「ね、ね。マトー君」

 

「か、カボ!?な、何でしょうか?カボ」

 

いきなり話をかけられて少し動揺するマトー君。そんな彼の様子を無視してガイヤはある提案をする。

 

「今日、この後のバトルパートの後・・・・ボク達剣咬の虎と妖精の尻尾・・・・まぁつまりボクとグランで戦う場を作ってもいい?」

 

「・・・・あ?」

 

「ど、どう言う事でしょうか?カボ」

 

ガイヤからの提案に、いまいちよく分かっていない・・・・それはこの場の全員が言える事だが。

 

「いわゆるエキシビジョンマッチって事!!ほら、この後のタッグバトルで、もし万が一にも妖精の尻尾が勝ったとしても・・・・それでも怒りが収まらないこともあるかもじゃん?だから、ボクとグランが戦って、それを抑えようって言うこと・・・・お分かり?」

 

「・・・・か、カボ。言いたい事は、なんとなく」

 

「じゃぁ、決まり!!あとはよろしくね?じゃあみんな行こうーーっ!!」

 

そのままメンバーを引き連れて戻っていくガイヤ。妖精の尻尾のメンバー達は、それを睨みながら、その場を離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、医務室。そこではルーシィが眠っており、A、B両チームがいた。

 

「ウェンディのおかげで命に別状はないよ。」

 

「いいえ、シェリアの応急処置が良かったんです。」

 

「あいつら……!」

 

「言いてぇことはわかっている……」

 

「・・・・あのクソ女が」

 

「う……」

 

「ルーシィ!」

 

「みんな……ごめん……」

 

目を覚ましたルーシィがはなったのは謝罪の言葉だった。

 

「また・・・・やっちゃった。」

 

「何言ってんだ2位だぞ?8pだ。」

 

「あぁ、よくやった。」

 

「か、鍵……」

 

「ここにあるよ。」

 

「良かった……ありがとう……」

 

ハッピーから鍵を受け取り、安心したルーシィは眠りにつく。

 

「眠っちゃったみたいね……」

 

「・・・・だが、奴らは許さん」

 

「剣咬の虎・・・・」

 

「気に入らねぇな」

 

「AチームBチーム全員集まっとったか。丁度よかった。」

 

「マスター」

 

「これが吉と出るか凶と出るか……たった今AB両チームの統合命令が運営側から言い渡された。」

 

「何!?」

 

「ABチーム統合だと?」

 

「・・・・大鴉がいなくなったからか?」

 

「そうじゃ、奴らがおらんくなったから、バトルパートの組み合わせが奇数では困るという事じゃ。なので両チームを一つにして新規五人でチームを再編成しろと・・・・な」

 

「点数はどうなるの?」

 

「低い方に準ずるらしい・・・・つまりAチームの35pじゃな。」

 

「ひどいね、それ」

 

中々にひどいが、運営側が決めた事だから仕方ない・・・・と一応納得していた。

 

「それとグラン・・・・主と剣咬のとこの娘とのエキシビジョンマッチをやる事が決定した」

 

「・・・・アレマジでやんのかよ。」

 

「ああ、今日のバトルパートの後にやるらしい。それもあってか、お主はリザーブ枠として決定しておる」

 

「・・・・まぁそこはいいや・・・・・・・・・・・・潰ス」

 

「・・・・こ、殺すなよ?・・・・けどよ、リザーブがグランに決まったにしても、今から五人決めても残る種目はこれからやるタッグバトルだけなんだろ?」

 

「いいや・・・・明日の休みを挟んで最終日五人全員参加の戦いがあるはず。慎重に選んだ方がいいよ。」

 

「俺は絶対にルーシィの敵を取る!仲間を笑われた!!俺は奴らを許さねぇ!!」

 

「・・・・激しく同意だ。・・・・この鬱憤はあの小娘で思う存分発散させてもらう」

 

こうして、四日目のバトルパート、タッグバトル・・・・そして、グランとガイヤのエキシビジョンマッチが始まる。

 

 

 



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第三十五話 タッグバトル VS双竜

 

『妖精の尻尾チーム再編成も終了し、いよいよ四日目バトルパートに突入します。』

 

『四日目のバトルパートはタッグバトルなんだね?』

 

『2対2ですか!楽しみですね!!ありがとうございます!!!』

 

『今回は既に対戦カードも公表されています。』

 

【青い天馬vs四つ首の仔犬。人魚の踵vs蛇姫の鱗。剣咬の虎vs妖精の尻尾。】

 

この三つの組み合わせとなっていた。

 

『やはり注目は一触即発の妖精の尻尾対剣咬の虎でしょうか?』

 

『さっきはどうなるかと思ったよ。』

 

『熱かったです!ありがとうございます!!』

 

『その中でも特に触発しそうになっていたグランとガイヤですが・・・・このタッグバトルが終わった後、エキシビジョンマッチが行われる事が決まりました!』

 

『それは楽しみですね!!ありがとうございます!!』

 

『さぁ、新・妖精の尻尾が姿を現したぞー!!』

 

おおおおおおおおおおっ!!

 

『会場が震えるー!!今ここに……妖精の尻尾参上っ!!一日目のブーイングが嘘のような大歓声!!!たった四日でかつての人気を取り戻してきたー!!』

 

ナツ・グレイ・エルザ・ラクサス・ガジル

 

この5人が、妖精の尻尾の新しいチーム。

 

「・・・・燃えてきたぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大魔闘演武四日目、タッグバトル第一試合。

 

一夜&ウサギの着ぐるみvsバッカス&ロッカー。

 

そしてこの試合で、ウサギの正体が明らかとなった。・・・・それは、かつてエドラスでエクシードの近衛師団長を務めていたニチヤだった。

 

二人揃った事で、会場中には悲鳴が上がる。エルザなんか気を失いかけていたし。

 

まぁニチヤは速攻でバッカスに殴り飛ばされて気を失ってしまったが。そして残った一夜も、もう後がない四つ首の仔犬の二人にボッコボコにされていく。

 

だがそれも一夜が“力の香り(パルファム)”を使った事で逆転する。一夜の見た目が筋骨隆々となったのだ。

 

「くらうがいい!!これが私のビューティフルドリーマー✨

 

 

微笑み✨

 

 

スマーーーーーッシュ!!✨」

 

一夜の一撃で、吹き飛ばされるバッカスとロッカー。そして一夜の微笑みを見た者達は、青い天馬のメンバー以外は、悲鳴をあげ、引いて、吐いていた。

 

『ダウーン!四つ首の仔犬ダウーン!!勝者青い天馬!!』

 

「大丈夫かねニチヤ✨」

 

「メェーンぼくない・・・・✨」

 

絵面がキモ・・・・・・・・・・・・少々強烈過ぎたためにあまり注目されてないが、あのバッカスをほぼ一撃でねじ伏せたのは事実。それには流石の一言だ。

 

『いやー、いい試合でしたね。』

 

『そ・・・・そうかね?』

 

『とってもキモかったです!ありがとうございます!』

 

続いて第二試合。リオン&ユウカ対カグラ&ミリアーナの対決。

 

30分で決着がつかず、ドロー。

 

「やっぱつえぇな、カグラ・・」

 

「まだ本気を出してるとは思えん。」

 

「毎年そうさ……あの刀を抜かない時点で本気じゃねぇ……カグラが本気になったとこなんて誰も見たことねーんだ。」

 

ユウカの悔しげな声が、カグラの強さを確信させるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『興奮冷めやらぬ会場ですが、次のバトルも目が離せないぞー!!今、両ギルドの紋章が闘技場に掲げられたーーーっ!!七年前最強と言われていたギルドと・・・・現最強ギルドの因縁の対決!!妖精の尻尾ナツ&ガジルvs剣咬の虎スティング&ローグ!!』

 

フィールドに並び立つ四人の滅竜魔導士

 

火の滅竜魔導士ナツと鉄の滅竜魔導士ガジル。

 

そして、白の滅竜魔導士スティングと影の滅竜魔導士ローグ。

 

『しかもこの四人は全員が滅竜魔導士!!全員が竜迎撃用の魔法を持っているー!!』

 

「待っていたぜこの瞬間を……」

 

『ついに激突の時ー!!勝つのは妖精か!?虎か!?戦場に四頭の竜が放たれたー!!夢の滅竜魔導士対決!!ついに実現!!間もなく試合開始です!!』

 

最高潮とも言えるべき盛り上がり、それに反してフィールドにいる滅竜魔導士達は皆静かに佇んでいた。

 

「試合━━━開始ィ!!」

 

「行くぜぇ!!」

 

「おう!!」

 

試合開始の合図とともに身構えるスティングとローグ。だが、身構えた時にはもう既に遅かった。

 

「がっ!?」

 

一瞬で詰め寄り、ナツはスティングを、ガジルはローグを殴り飛ばした。

 

驚く観客達だが、これでは終わらない。ナツはそこからスティングを蹴り飛ばし、ガジルは殴り落としてから、蹴り上げて吹き飛ばす。態勢を立て直したスティングがブレスを放つ。

 

「白竜の咆哮!!」

 

「レーザー!?」

 

「やっハァっ!!!」

 

白竜の咆哮を一度は避けるナツだが、スティングはそれを自在に曲げ、ナツ諸々ガジルを焼き払おうとした。

 

「おっと!!」

 

「影竜の斬撃!!」

 

ガジルはレーザーを避けるが、その隙をついてローグが、ガジルの後ろから攻撃を当てようとする。

 

「鉄竜剣!!」

 

「っ!」

 

「おらぁ!!」

 

「くっ!!?」

 

だが、ガジルはローグの攻撃を難なく防ぎ、ナツの方へ投げ飛ばした。そして投げ飛ばされたローグの顔面を殴りながらスティングのところまで走るナツ。

 

「ローグ!!」

 

「おおおおおおおおおお!!」

 

「何!!?」

 

「火竜の翼撃ィ!!」

 

そしてそのままナツの一撃が二人に入る。体勢を立て直し、フィールドに立ち上がる二人だが、誰がどう見ても妖精の尻尾の二人の方が、圧倒的に強かった。

 

『こ、これはどういうことでしょうか!?あのスティングとローグが!!フィオーレ最強ギルドの双竜が押されているー!!』

 

「やっぱつえぇなぁ……こうじゃなきゃ……」

 

「ガジル……」

 

「お前らその程度の力で本当にドラゴンを倒したのか?」

 

「倒したんじゃない……殺したのさ、この手で。」

 

「自分の親じゃなかったのか?」

 

「アンタには関係ねえ事だ……今から竜殺しの力を見せてやるよ。」

 

そう言った直後、双竜の体から魔力が上がっていく。

 

スティングは光り輝く魔力。

 

ローグは黒く揺らめく魔力

 

「ホワイトドライブ」

 

「シャドウドライブ。」

 

「行くぜぇ!」

 

白く輝くスティングと影のオーラをまとったローグ。

 

「はぁっ!!」

 

真っ先に飛び出してきた、スティングの攻撃。ナツはそれを両腕でガードする。・・・・だが

 

「聖なる白き裁きを!!くらいなぁ!!」

 

「ぐっ!!」

 

即座に打ち込まれた2打目にナツは、ガードを崩されてしまう。

 

火竜(サラマンダー)!!ぐぉ!?」

 

「影は捉えることが出来ない」

 

「こいつ……ッ!」

 

ガジルが捕まえようと腕を伸ばすも、影となったローグはその言葉通り捉える事ができず、すり抜けて空振りに終わってしまう。

 

「俺はずっとあんたに憧れてたんだ!そしてあんたを超えることを目標にしてきた…今がその時!!」

 

スティングがナツに何かを打ち込む。

 

「白き竜の爪は聖なる一撃!聖痕を刻まれた体は自由を奪われる!!」

 

それを打ち込まれたせいで、ナツは体が思うように動かない。

 

「これで俺は!!あんたを超える!!」

 

一方のガジルも、影となったローグに翻弄されながら背後を取られる

 

「影なる竜はその姿を見せず……確実に獲物を狩る」

 

スティングの、ローグの一撃がそれぞれ迫ってくる。・・・・だが

 

「確実に獲物を……何だって?」

 

「っ!!!」

 

攻撃される瞬間、実態化する隙を突いてローグの腕を捕まえるガジル。

 

そしてナツはスティングの攻撃が入る前にすかさずカウンターを決める。

 

「ばがっ!?な、なぜ動ける!?っ……聖痕が、焼き消されて……」

 

体を拘束させる力を持った聖痕、ナツはそれを自身の炎で焼き消していた。

 

「中々やるじゃねぇか。だけどまだまだだ。」

 

「あんまり調子に乗んなョ、コゾーども。妖精の尻尾を舐めんな!!」

 

ガジルはローグの顎に肘を叩き込み、ナツは更にスティングを殴り飛ばした。

 

「っ……やっぱり最高だぜあんたら!!こっちも全力でやらなきゃな。白き竜の拳は炎さえも灰燼に還す。滅竜奥義・・・・

 

ホーリーノヴァ!!」

 

魔力の塊とも言うべき、圧倒的な魔力の拳がナツに襲いかかる。それはナツに当たった瞬間に盛大な爆発を起こした。

 

「……」

 

「な、あ……!?」

 

だが、それだけ。拳はナツに片手で簡単に受け止められ、ダメージはナツに一切入っていなかった。

 

「ガジルゥ!!」

 

完全に戦い方を見切られたローグは、ガジルに一撃入れられる。

 

『ヤジマさん!!これは一体……!』

 

『ウム……』

 

3ヶ月の修行・・・・そして、第二魔法源がナツとガジルをここまで強くしていた。

 

『格が違いすぎる。』

 

『こ、こんな展開!!誰が予想できたでしょうかー!?剣咬の虎の双竜!妖精の尻尾の前に手も足も出ずー!!このまま試合は終わってしまうのかー!?』

 

「終われるものか……」

 

「ああ、簡単に超えれる壁じゃねぇ事は、分かってた。分かってるよ、レクター。約束だもんな。……負けねぇよ、負けられねぇんだよ。レクターの為に……!」

 

二人の魔力がさらに上がる。顔に紋様が浮かび、オーラも桁違いのものとなる。

 

“ドラゴンフォース”

 

滅竜魔導士が持つ力。それを目の前にいる二人は、自力で発動することができるのだった。

 

「なんだこの魔力は……!」

 

「ローグ、手を出すな。俺一人で十分だ。」

 

『な、なんと!!先程まで劣勢だった剣咬の虎!!まさかの1対2宣言!!』

 

『それほど自信があるんだろうね。』

 

『凄いです!ありがとうございます! 』

 

観客席と、実況席の盛り上がりが更にヒートアップしていく。

 

「……舐めやがって。」

 

「けど、この感じ……強えぞ。」

 

「━━━はぁっ!!」

 

飛び出してくるスティング。ナツがガードをしようと試みるが、それよりも先にスティングの一撃がナツの顔を捉える。

 

ガジルが薙ぎ払うように足を振るうが、それもかわされて逆に魔力の塊を飛ばされて、一撃をもらう。

 

ナツが飛びだして、スティングに一撃を入れようとするが、それを片手で防がれ、

 

「うぶっ!!」

 

逆にスティングに腹へ膝を叩き込まれてしまう。そのままナツをガジルの方に投げる。

 

「白竜の……ホーリーブレス!!」

 

そしてスティングは飛び上がり、ブレスを打ち込む。その威力と範囲はとんでもなく、闘技場の床が簡単に崩壊するほどであった。

 

『試合は続行されます!!皆様は魔水晶映像でお楽しみください!!』

 

「まだまだこれからだぜ!!」

 

落ちながら、迫ってくるスティング。ナツは身を翻して、瓦礫に乗る。

 

「火竜の・・劍角!」

 

「鉄竜の咆哮!!」

 

ナツの一撃がスティングを穿ち、その隙にスティングの上まで登っていたガジルがブレスを撃ち込んで地面へと叩きつける。・・・・だが、土煙から現れたスティングには、まともにダメージが入っているように見えなかった。

 

「白き竜の輝きは万物を浄化せし……ホーリーレイ!!」

 

「ぐあああああ!」

 

「ああああああ!!」

 

何本も放たれたレーザーの雨は、二人を穿ち、地面に落とされる。その隙を狙ってスティングがナツに向かって拳を振るった。

 

「……飛べよ。」

 

その拳をなんとかガードしたナツだったが、そのまま吹き飛ばされる。地下にある古い建物に飛ばされて、建物が崩壊していた。

 

「ぐはっ!!」

 

蹴られ、殴られ、吹き飛ばされ……ナツ達はスティングに手も足も出ないまま、防戦すらも許されることなくタコ殴りにされていき・・・・そして、とうとう二人はスティングの前で倒れてしまっていた。それに対してスティングは、ほとんどと言っていいほど、ダメージを受けてなかった。

 

「時代は移りゆく……七年の月日が、俺達を真の滅竜魔導士へと成長させた。旧世代の時代は終わったんだ」

 

「ああ・・・・。でも……やっぱり強かったよ、ナツさん、ガジルさん」

 

『両者ダウンかー!?』

 

 

「ちょーっと待てって。」

 

 

その声とともに、ナツ達は何事も無かったかのように立ち上がる。

 

「いってぇー……」

 

「思ったよりやるな。」

 

「けど、お前の癖は全部見えた。」

 

「何!?」

 

ナツはニヤリと笑みを浮かべる。ナツの言葉に、スティング達の表情が驚愕の色に染まる。

 

「攻撃のタイミング、防御の時の姿勢、呼吸のリズムもな。」

 

「ばか、な……こっちはドラゴンフォースを使ってんだぞ!!」

 

「おう!大した力だ。体中痛えよこんちくしょう。・・・・まぁ、ぶっちゃけグランにぶん殴られる方がダメージデケェけどな」

 

「アイツがおかしいんだ。マジで一瞬体砕けたかと思ったからな」

 

「なっ・・・・・・・・なぁ!!?」

 

ドラゴンフォースの動きを見切っただけでなく、それよりもただの滅竜魔導士の攻撃の方が痛かったと言われ、さらに驚愕の表情を表す。

 

「んで、お前の癖・・・・例えば、攻撃の時軸足が11時の方を向く。」

 

「いーや、10時だな。」

 

「11時だよ。」

 

「半歩譲って10時30分!11時じゃねぇ!」

 

「11時だ!23時でもいい!!」

 

「それ一回転してるじゃねぇか!!」

 

「うるさい。」

 

「おわっ!?」

 

ものすごくどうでもいい事で言い争うをして、ナツは、ガジルを突き飛ばしそばにあったトロッコに無理やり乗せる。そして、そのままさらに近くのレバーを引いて、トロッコを動かす。

 

「オイ!!てめ……こ、これは……うぶ、うおー……!」

 

「ギヒッ。」

 

トロッコは乗り物なので、滅竜魔導士の弱点とも言える乗り物酔いが、ガジルを襲った。うわ、ひっでぇ。

 

「な・・なんのマネだ!?」

 

「ガジル・・・・」

 

「舐められた分はきっちり返さねぇとな……

 

俺一人で充分だ!まとめてかかってこい!!・・・・燃えてきただろ?

 

絶句している二人に対してナツは挑発するように指先から炎で“COME ON”と文字を作り出す。

 

「一人で・・・・十分だと…ふざけやがって!」

 

「お前に用はない。ガジルとやらせろ」

 

「だったら、俺を倒して行くんだな」

 

その言葉に二人は再びドラゴンフォースを発動させる。

 

「ドラゴンフォースは竜と同じ力!!この世にこれ以上の力なんてあるはずねぇんだ!!」

 

「完全じゃなかったんじゃねーのか」

 

スティングはナツへと殴りかかるがナツの腕で簡単に防がれる。

 

「俺はこの力で白竜(バイスロギア)を殺したんだーーーーっ!!」

 

「そうか・・・・だったら俺はこの力で

 

笑われた仲間の為に戦う

 

そしてそのまま、ナツはスティングを殴りつける。その隙にローグが背後に回りこんだ。

 

「影竜の咆哮!!」

 

「火竜の咆哮!!」

 

背後から放たれたローグの咆哮をナツも同じく咆哮で迎え撃つが、一瞬の均衡すら許さずローグの放った咆哮はナツの放った咆哮によって飲み込まれローグにも襲いかかった。

 

「まだまだぁ!!!」

 

「来いよ」

 

その言葉を受けて二人がかりで襲いかかるが、全ての攻撃を防がれて避けられ、反撃を喰らう。先ほどまでの戦いがまるで嘘のように・・・・ナツの独壇場と変わっていった。

 

「スティング!!!」

 

「おう!!」

 

そして、スティングとローグは二人の魔力を合わせて行く。

 

合体魔法(ユニゾンレイド)だ。光の魔力と影の魔力が合わさりあい、どんどん魔力が高まっていき・・・・そして放たれる。

 

「「聖影竜閃牙!!!」」

 

光と影が混ざり合った光線がナツに向けて放たれる。それをナツは避ける素振りを見せず・・・・ただただ真正面から打ち砕いた。

 

「滅竜奥義・・・・紅蓮爆炎刃!!!」

 

螺旋状に放たれたナツの炎はスティングとローグの合体魔法を打ち消して二人をも飲み込んだ。闘技場地下で大爆発が起こり、その衝撃と粉塵で地下を映していたラクリマが映らなくなった

 

そして、土埃が消えて、立っていたのは・・・・

 

『こ・・・・ここここれは・・・・・・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)だーーーーーっ!!!!双竜破れたりーーーーーーっ!!』

 

立っていたのはナツただ一人・・・・これにより、妖精の尻尾の勝利が決まり・・・・見事に一位に躍り出た。

 

これにより、全てのギルドが最終日の標的を・・・・打倒、妖精の尻尾に変えた。

 

 

 

 

 

 

「・・・・あーあ。やっぱり負けちゃったか〜あの二人。・・・・ま、しょうがないよね〜。」

 

「・・・・・・・・ガイヤ・・・・テメェは無様な真似すんじゃねぇぞ」

 

「分かってるって・・・・ボクが負けるわけないじゃん」

 

そして、次はいよいよ・・・・・・・・グランとガイヤのエキシビジョンマッチとなった。

 

 

 



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第三十六話 エキシビジョンマッチ グランvsガイヤ





 

『これにて、大魔闘演武四日目の競技、バトルパートは全て終了しました!!いやー、最後のタッグバトル・・・・妖精の尻尾vs剣咬の虎との対決はとても素晴らしいものでした!!自分、まだ興奮が治りません!!』

 

『とても熱かったですね!!ありがとうございます!!』

 

『普段であれば四日目はこれで終了・・・・なのですが、本日は特別に妖精の尻尾と剣咬の虎とのエキシビジョンマッチが行われるのですが・・・・』

 

『闘技場がボロボロだね・・・・』

 

ナツとガジル(まぁ途中からいなくなったが)とスティングとローグとのバトルが終わり、次はいよいよグランとガイヤのエキシビジョンマッチが行われるのだが・・・・ヤジマも言ったように闘技場がボロボロ・・・・というか大きな穴が空いており、正直このままできるとは思えない状態だった。

 

『ですので、少々お時間をいただきまして、闘技場の修理を行いますので皆さんそのままで・・・・ってこれは!?』

 

『なんと・・・・闘技場が』

 

『少しずつ直っていますね!ありがとうございます!!』

 

闘技場にポッカリ空いた穴が端から埋まっていく。その闘技場両端には二人の人物がいる。それは今からエキシビジョンマッチで戦う二人だった。

 

「・・・・無駄に深い穴空けやがって。・・・・お前らちゃんと躾けとけよ」

 

「え〜、でもしょうがないでしょ?テンションあがっちゃったら誰でもこうなっちゃうよ。」

 

グランとガイヤの二人が軽口をたたきつつ闘技場を治していき、徐々に近づいて行く。

 

そして穴が完全に埋まり、闘技場の中央で睨み合う。

 

『こ、これはもう既に両選手が闘技場に降り立っていたーーーっ!!』

 

『グラン君もガイヤ君も、どちらも大地を操れるんだったね』

 

『ええ!グランはご存知の通り“大地”の滅竜魔導士・・・・対しガイヤは今までの大魔闘演武の戦いで、大地を自由自在に操って相手を圧倒していましたが・・・・この戦い、どちらかといえばグランの方が有利といえましょう!!・・・・それではお待たせいたしました!!妖精の尻尾グランvs剣咬の虎ガイヤ!!大魔闘演武特別エキシビジョンマッチ!!いよいよ、激突の時!!』

 

両者が共に睨み合う・・・・その一瞬、会場に静寂が訪れた。まさに嵐の前の静かさというべきな。

 

『試合・・・・・・・・・・・・開始ぃ!!!!』

 

ゴォーーンッ!!と、音が鳴った瞬間先に動いたのは・・・・グランだった。

 

なんの躊躇もなくガイヤに殴りかかるが、ガイヤはそれをひらりと避けていく。その後もニ撃、三撃と続けて攻撃するが避けられる。

 

「地竜の・・・・剛拳!!!」

 

そして、剛拳をガイヤに向けて放つ。それをガイヤは避けつつ、受け流すようにして、グランの拳を闘技場へ向かわせる。

 

その一撃で、闘技場全体に亀裂が走る。せっかく綺麗に直ったのに、自分で壊してるよ。

 

『開始早々にグランが仕掛けていくーーっ!!だが、全て避けられしまっているが、その一撃で闘技場はもう既にボロボロだぁーーーっ!!』

 

『凄まじぃ力だね』

 

『すごいですね!!ありがとうございます!!』

 

そのままグランの攻撃が始まる・・・・と、そう思っていたが、ガイヤが驚くべき行動に出ていた。

 

「これ、もらうね?」

 

バキィィッ!!っと、グランの腕をへし折ってしまった。観客達は悲鳴をあげ、驚愕する。

 

『な、なんとーーーっ!!?ガイヤがグランの腕をへし折ったーーーーーっ!!?グランは大丈夫なのかァァっ!!?』

 

「・・・・普通折ってからいうかよ」

 

グランは平然としながら、折れてなくなった腕を生やしていった。

 

『全く問題ないようだ!!ガイヤのあの細腕に・・・・一体どこにあれ程の力があるのか!?』

 

実況も観客も、ガイヤの行動にどんな意味があるのか、全く分からない・・・・だが、その理由はすぐに分かる事になった。

 

「それじゃ・・・・()()()()()()()

 

ガイヤはへし折ったグランの腕に()()()()()。ガリっ、ゴリッと音を立てながらグランの腕を食べていく。

 

何故こんなことをするのか?・・・・その答えもすぐに分かった。

 

「・・・・ご馳走様!じゃっ!いくよ〜。」

 

彼女はそう言いながら、息を大きく吸い・・・・そして放った。

 

「地()の・・・・怒号!!」

 

ガイヤの放ったブレスは、黒か染まった大地の咆哮・・・・それを見た観客も剣咬の虎以外のギルドも驚愕した。そして、それは闘技場を削りながらグランに迫っていく。

 

「地竜の咆哮!!」

 

それに対し、グランは特に驚く素振りを見せずブレスで対抗する。

 

ぶつかり合う二つのブレス・・・・そのぶつかり合いにより凄まじい爆風が起きる。大きく舞う砂埃・・・・それは天高く舞い上がっていく。

 

「・・・・テメェ・・・・やっぱりそうか」

 

「うん、そうだよ?君が思ってる通り・・・・ボクは大地の滅神魔導士だよ!!」

 

ガイヤの魔法・・・・それはグランと同じのようで違う魔法・・・・“大地”の滅神魔法だった。この事実に、またもや会場中がざわめき出した。

 

これでこの大会に、滅神魔法の使い手が三人いる事になる。・・・・まぁグランにはどうでもいい事だったが。

 

「それじゃ・・・・・・・・もっといくよ!!地神の砂嵐(セティ)!!」

 

ガイヤは両手に黒砂を纏い、そして黒い砂嵐を撃ち放つ。

 

「地竜の剛腕!!!」

 

それをグランも砂嵐で対抗していく。ぶつかり合う砂嵐の中に突っ込んでいくグラン。それに応じるように、ガイヤも突っ込んでいく。

 

「地竜の剛拳!!」

 

「地神の巨拳(ギガス)!!」

 

そして二人の拳がぶつかった時、その砂嵐を吹き飛ばすほどの衝撃波が放たれる。

 

しばらく拮抗し合っていたが・・・・先に吹き飛ばされたのは、グランだった。

 

吹き飛ばされるグランへさらに迎撃していくガイヤ。グランも対抗しようとするものの・・・・全ていなされるか打ち消される。

 

「その程度?」

 

「・・・・まだまだ、これからだが?」

 

・・・・そうは言っているが・・・・誰の目から見ても、追い詰められているのはグランだった。これまで、グランの攻撃はまだ一撃も入っていないからだ。

 

グランはガイヤに殴りかかるがガイヤはそれを避け、そのままグランを蹴り上げた。空へ大きく蹴り上げられたグランは・・・・重力に従って落ちていく。

 

そのグランの上に飛び上がっていくガイヤ。そして、そのまま魔力を高めていく。

 

「知ってる?この壮大な大地を作ったのは神様なんだよ?・・・・だから君の大地も作り替えてあげる・・・・

 

テラ・ペリーレ!!!」

 

そして膨大な魔力がグランに向けて放たれ・・・・闘技場を破壊し、ナツ達が戦った場所まで落ちていくグラン。

 

「・・・・・・・・せっかく直したのに。」

 

「逆さまになりながら言ってもね〜」

 

地面に頭から落ちたグランとそれを追って一つの瓦礫の上に降りてきたガイヤ。その光景を見ている者達は・・・・皆、見えてしまった。その立ち位置が、まるで二人のその差を表しているようで。

 

「・・・・ボクはね。別に滅神魔法の方が滅竜魔法より優れているとは思ってないんだ」

 

「・・・・あ?」

 

突如と口を開いたガイヤ。そのまま、瓦礫から降りてグランに近づいて行く。

 

「でもね・・・・やっぱり一番は剣咬の虎・・・・それ以外はその下・・・・それは絶対だと思うんだ。・・・・だからあなた達妖精はボク達に潰されなきゃいけないの!!」

 

「・・・・ぐおっ!」

 

そのままグランを蹴り上げ、グランは宙に浮く。そして、そのままグランにもう一発蹴りを入れていく。

 

「地神の大鎌(ハルパー)!!!」

 

「・・・・ヅッ!!?」

 

その蹴りをくらい、鮮血を出し建物を壊しながら吹き飛んでいく。建物はどんどん崩壊していく。それからもガイヤの猛攻は止まらない。・・・・大地の神の拳は、地竜の鱗を砕き、大地の神の脚は、地竜の体を裂き、大地の神の叫びは、地竜を内側から破壊する。止まることのない攻撃。グランも反撃はするが、全て吸収されていくか避けられる。ほぼ一方的な激しい攻撃は止むことなく続いていく。段々と立ち上がる土埃で映像が見えなくなっていく。・・・・そして、土埃が治まった時、映っていたのは・・・・倒れているグランと全く無傷のガイヤの姿だった。

 

「・・・・分かったでしょ?あなた達が下・・・・ボク達が上ってことが。」

 

『こ・・・・これは予想外の展開だぁーーーーーっ!!!妖精の尻尾のグラン、剣咬の虎のガイヤに手も足も出ないーーーっ!!!これが大地の滅神魔導士の力・・・・剣咬の虎の実力かーーーーーーっ!!?このままなす術なくやられてしまうのかーーーーーっ!!?』

 

妖精の尻尾のメンバーも驚愕の表情を隠しきれない。あのグランがこうも一方的にやられていくのが、信じられなかった。

 

「うそだろ・・・・あのグランがここまで一方的にやられるなんて・・・・」

 

「・・・・それほどまでにあのガイヤという少女が強いのか?」

 

「それでも、あのグランが手も足も出ないなんて・・・・」

 

「あのグランが・・・・」

 

「大体誰が相手でも、割と適当に相手しても勝っちまうあのグランが・・・・」

 

「大体が私情で戦っては他の空気を全く読まずにサラッと勝利しちまうようなグランが・・・・」

 

「それぐらい理不尽な強さなグランが・・・・・・・・・・・・何もできずやられるか、普通?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・いや、ありえないな」

 

なんか変な空気になってきた。そもそもおかしな話だ・・・・あのグランがほぼ何もできずにやられるなんて・・・・・・・・何企んでんだろうな、アイツ。

 

と、妖精の尻尾が微妙な空気になっていった後、倒れていたグランがゆっくりと立ち上がる。普通の人ならばその顔に写るのは圧倒的な実力差に絶望するところだが・・・・

 

『だが、グランはまだ諦めていない!!どれだけ傷つけられても、決して挫く事なく前に進む・・・・それが妖精の尻尾の魔導士なのでしょうか!!!今立ち上がったグランの表情には痛みに耐えながらも決して諦めずに相手を睨みつけるような・・・・ような・・・・・・・・んん?』

 

実況の声が途中で止まってしまった、というか、観客全員がポカンとした。立ち上がったグラン、その顔は・・・・何というか・・・・とてもガッカリとした表情だった。

 

こんな感じ→(´・  ω  ・`)

 

「・・・・え?何その顔?」

 

「・・・・・・・・いや、思ってたより弱くて」

 

「え、誰が?あなた?」

 

「・・・・いや、お前」

 

「ボクッ!?」

 

何とこいつ、あそこまでボコボコにされてたのにも関わらずその自分をボコした相手を弱いとぬかしやがる・・・・まぁ、よく見たらグランの体は、さっきまであった傷が全くないのだが。

 

グランの発言でまたもや会場中がざわめき出す。そんな空気など知ったことかというように、グランは話を続ける。

 

「・・・・滅神魔導士と戦うのは、これで二回目なんだよな、実は。」

 

「二回目?・・・・一回目は、だれ?」

 

「・・・・お前が知ってるか知らんが・・・・悪魔の心臓にいた、炎の滅神魔法の使い手の・・・・ザンクロウってやつ。」

 

ザンクロウと言えば・・・・天狼島でグランを襲い、見事に返り討ちにされた挙句、ゼレフのよく分からん何かに殺されて、今天狼島で埋葬されている・・・・まぁ、なんか可哀想な奴だ。

 

「・・・・奴の炎は・・・・今だから言えるがめちゃくそ熱かった。正直、ナツの炎よりもな。・・・・今は知らんが、だからまぁ・・・・楽しみにしてたわけよ。お前が滅神魔導士なのは何となく分かってたからな・・・・だから、思ってた以上に弱くてガッカリしたんだよな」

 

コイツ、相手が思ってたよりも弱かったから手ぇぬいて戦ってやがった。

 

「へぇ・・・・じゃあ何?それはただの言い訳?さっきまでボクに手も足も出なかったのは、ボクが弱かったから?妖精さんは、面白くもない冗談が好きだね?」

 

「・・・・まぁ、それと・・・・お前と戦ってんのは、ルーシィが・・・・仲間を必要以上に傷つけられたからなんだがな・・・・ふと、思ったわけよ。・・・・・・・・・・・・なんでコイツと戦ってんの?って。やるんなら、あのミネルバじゃね?って。」

 

・・・・・・・・そこに今触れんの?・・・・もうちょいなんかあるでしょ?ないの?コイツ?やっぱなんかズレてるよ。

 

「・・・・まぁ、そんな訳で色々考えていたんだが、もうめんどくさくなった。・・・・よって、さっさと終わらせる事にする」

 

グランは大きく息を吸い、ブレスを放つ準備をする。ガイヤは先ほどまでのグランの物言いに文句を言おうとしたが・・・・それは、グランが放ったブレスによって・・・・その文句が全て吹き飛んだ。

 

()()()()()()()!!!」

 

グランから放たれたのは地竜のブレスではなく・・・・真っ黒な炎のブレス・・・・炎神の炎だった。

 

「はぁっ!!?」

 

流石に度肝を抜かれたガイヤはそのまま黒炎に飲み込まれて吹き飛ばされる。その黒炎は、周りの建物も巻き込んで破壊していく。

 

会場全体が、今日イチの驚愕の表情を浮かべるのも束の間に、グランはそのままガイヤにむけ、巨大な炎の剣で斬りつける。

 

「・・・・レーヴァテイン」

 

振り下ろされ、爆炎と爆風を撒き散らかす。先ほどまで、土埃と砂塵しか見えなかった場所は・・・・瞬く間に、黒炎と黒煙に包まれていく。

 

「ゲホッ・・・・ゲホッ・・・・お、おかしいでしょ!?なんで滅神魔法使えてんの!?しかも属性違い!!?それにそれ!今さっき話してたザンクロウ?の魔法だよね!?」

 

「・・・・なんか・・・・色々あって・・・・できるようになった」

 

「色々って何!?」

 

「しらねぇよ、色々は色々だ」

 

「・・・・・・・・頭痛くなってきた」

 

「・・・・大丈夫か?」

 

「あなたのせいでね!!?・・・・もうなんかよく分かんないけど滅神魔法が使えたってボクには敵わないからね!!!」

 

話しても無駄だと思ったガイヤは、グランに向けて駆け出していく。そしてぶつかり合う地神の拳と炎神の拳・・・・いや、炎神の炎を纏った地竜の拳は・・・・大地の神の拳を吹き飛ばした。最初とはまるで逆・・・・いや、最初からグランの方が勝っていたかも・・・・いや、そういやコイツ最初手ェ抜いてたな。

 

グランによる猛攻が、ガイヤを襲っていく。地竜の拳が、炎神の焔が、大地の神を打ち砕き、燃やしていく。

 

地竜の力と炎神の力が混ざり合った・・・・というよりはまるで・・・・地竜に吸収されていったようなその力に・・・・ほぼなす術なくやられていった。

 

「・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・ッ!!」

 

「・・・・こんなのはありえないって顔だな」

 

「・・・・っ!!」

 

先ほどと立場が逆転し・・・・今度はガイヤがグランに見下ろされる形となった。

 

『こ・・・・これはすごい展開だぁーーーっ!!ガイヤの猛攻をモノともせず、まさかの炎の滅神魔法を使うとは!!?まさに圧倒的実力ーーーーっ!!!!彼は一体・・・・我々をどれだけ驚かせれば気が済むのかーーーっ!!!』

 

観客も最初は驚いたが、それと同時に大いに盛り上がっていった。

 

(ありえない・・・・こんな筈はない・・・・ボク達は最強のギルド・・・・・・・・これ以上の失態は犯さない!!!)

 

ガイヤの魔力が今まで以上に跳ね上がる。恐らく、次で終わらせるつもりなのだろう。ガイヤの魔力で、大地が震えていく。対し、グランにも変化が訪れていた。

 

建物を、闘技場の地下を燃やしていた黒炎が全てグランへ集まっていったのだ。

 

「・・・・神は地に堕ちたぞ」

 

「・・・・はぁ?何言ってんの?」

 

「・・・・地に呑まれ・・・・地に沈む・・・・どんどんどんどん沈んでいく・・・・・・・・地に堕ちて沈んだ神の行く末は・・・・・・・・地獄だけだ」

 

瞬間、会場が、大地が、震えた。大地から湧き上がる黒炎・・・・それら全てもグランへと吸収され、グランの体がひび割れていく。その割れた場所から、吸収した炎が漏れ出していく。グランの目が怪しく光る。赤いようで黒い色・・・・まさに獄炎の如く。

 

「・・・・何・・・・それ・・・・冗談でしょ!?」

 

「・・・・冗談に見えるか?」

 

その姿・・・・まるで地獄をそのまま表すかのような姿(まぁ地獄なんて行ったことないが)・・・・・・・・名付けるなら・・・・地獄竜

 

もうなんでもありだな、コイツ。

 

「・・・・モード“地獄竜”・・・・ってとこか」

 

「・・・・無茶苦茶でしょ」

 

「・・・・おら、さっさと来いよ・・・・次で終わらせんだろ?」

 

「・・・・上等じゃん・・・・・・・・やってやるよ!!!」

 

ガイヤの魔力が莫大に跳ね上がる。それに応えるように、大地の魔力が流れていく。

 

「母なる大地に・・・・還りなさい!!滅神奥義・・・・テラ・マーテル!!!」

 

放たれる滅神奥義・・・・全てを大地に還す魔法。それをグランは、いつものように・・・・ただ真っ正面から討ち払う。

 

 

「地獄竜の・・極哮!!!」

 

 

そのブレスは・・・・全てを焼くつくさんとする獄炎を纏った・・・地獄の大地。赤黒く輝くそのブレスは、ガイヤを魔法ごと呑み込んでいく。闘技場の地下を・・・・いや、闘技場もろとも吹き飛ばすほどの大爆発を起こし、巨大な火柱が立つ。黒煙が立つ中、地下が丸見えになっていく。そして、最後まで立っていたのは・・・・グランだった。

 

『し・・信じられません!!劣勢かに思われたグランがまさかの大逆転!!!闘技場もろとも吹き飛ばす強力なブレスを放ち、あのガイヤを・・・・剣咬の虎を討ち破ったーーーー!!!大魔闘演武、エキシビジョンマッチ・・・・これを制したのは・・・・妖精の尻尾のグランだぁーーーーーーーーーっ!!!!!!』

 

これにより、会場中が大熱狂の嵐を巻き起こした。妖精の尻尾のメンバー達も、大いに喜んで騒いでいた。

 

・・・・剣咬の虎のマスターだけは・・・・静かに怒りを溜めていた。

 

 

「・・・・生きてるか〜」

 

「・・・・お陰様でね・・・・しばらく動けないけど」

 

一方、試合が終わったグランは、たおれて、ほぼ黒焦げになっているガイヤに話しかける。

 

「・・・・最後まで手加減したでしょ?・・・・あーあ。あんだけ啖呵を切っといて負けたんだから・・・・情けないなぁ〜」

 

「本当情けないな」

 

「・・・・そこ普通は慰めるとこじゃないの?」

 

「だって事実だろ?」

 

「・・・・・・・・もう本当、君と話してるとボクおかしくなりそう。・・・・あーー、帰ったら絶対めんどくさい事になってそうだなぁ」

 

「・・・・・・・・まぁ、いいや。ある程度は気が晴れたからな。・・・・次はないって伝えとけ」

 

そのまま、その場を去っていくグラン。これで、本当に大魔闘演武四日目が終了した。

 

残るは最終日・・・・そこでいよいよ、本当の一番が決まる。

 

 





歩く天狼島グラン・・・・加護?その2“炎の滅神魔法(もう吸収されて無くなった)”
島に眠っていた時、埋葬されていたザンクロウから魔法を・・・・なんやかんやあって吸収して、使えるようになった。今回で使うのは最初で最後になる。

モード“地獄竜”
炎神の炎を吸収・・・・というより自らの地に沈める事で獲得した。属性に炎がつく。ただ、グラン本人も(・・・・これ体に沈めたらどうなんだろう)ぐらいに特に何も考えずにやったため、原理などは全くわかっていない。放つブレスや拳は赤黒い色の何かに変わる。





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第三十七話 エクリプス計画

 

エキシビジョンマッチが終わり皆で騒いだ後の夜の事。ナツ、ウェンディ、そしてグランはガジルに呼ばれて地下に来ていた。

 

「一体何があるんですか?ガジルさん。」

 

「黙ってついてこい。」

 

「何で俺たちだけ……」

 

「・・・・滅竜魔導士に関する何かなんじゃねぇの?」

 

「そうだろうな。」

 

「あいっ」

 

「……と言っても、野次馬もいるけどね。」

 

「馬ってやつがあるか。」

 

「だって気になるじゃない。」

 

まぁこの場にはグレイとルーシィもいるけどね。

 

「それにしても、グラン。滅神魔法が使えたんだね」

 

「アレはマジでビビったぞ?一体どうなってんだお前?」

 

「・・・・まぁもう沈めちまったから、使えるかどうかわからんが・・・・どうなってんのかは知らん。」

 

「・・・・やっぱわからんは、もう」

 

「すごいね!グラン!!」

 

いつもどおり適当なグランに、呆れるグレイと純粋に感心しているウェンディ。

 

それからしばらくして目的の場所についたのか、ガジルが止まる。

 

「ここだ。」

 

「ん?」

 

「これは……!?」

 

「なんだこりゃ……」

 

「動物の、骨……」

 

「・・・・というか、コレ・・・・動物じゃなくて」

 

ガジルが案内した場所。そこは、ある生物の骨が大量に存在していた。その骨がなんの骨か・・・・動物にしてはデカすぎる・・・・そう・・・・コレはまるで

 

「竜の骨、竜の墓場・・・・」

 

「これ、全部竜の骨!?」

 

「凄い数……」

 

「ドラゴンの存在を確定づける場所か……」

 

そう・・・・そこにある大量の骨は・・・・全てドラゴンの骨だった。流石のグランもこれには驚かされた。

 

「なんなんだここ。」

 

「知るか。」

 

「どうなってんだこりゃ……こんなに大勢の竜が……」

 

「ここで何かあったのかしら……」

 

「・・・・一応、聞くがここにお前らの親はいんのか?」

 

「・・・・いや、いねぇよ」

 

「俺達の竜が姿を消して14年だ……ここに眠ってるのはそれよりも遥かに古い遺骨だろうな。」

 

「・・・・そうか、ならいい」

 

と、今まで何かを考え込んでいたウェンディがハッとして顔を上げる。

 

「ミルキーウェイ」

 

「どうしたのウェンディ?」

 

「・・・・ミルキーウェイって確か」

 

「うん。ポーリュシカさんから教えて貰った滅竜奥義の1つ、ミルキーウェイ。天ノ川へと続くドラゴンの魂の声を聞け。私・・・・てっきり攻撃系の魔法かと思っていたんですが……もしかしたらこの事なのかも……」

 

「・・・・その、ミルキーウェイはどんな効果が?」

 

「・・・・多分、魂となった竜の声を聞く魔法かも。」

 

「何!?」

 

「それって……」

 

「ここに眠る竜の声が聞こえれば、ここで何があったか分かるかも知れません。・・・・そして、いなくなった私達のドラゴンのことも……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてまたしばらくして、ウェンディはその場に魔法陣を書き始めていった。

 

「魔法陣?」

 

「やっぱり!攻撃用の魔法だと思ってたからここの文字が違ってたんだ……」

 

「何やってんだウェンディ?」

 

「あんた話聞いてなかったの?」

 

「ミルキーウェイだって。」

 

「黙ってみてろ馬鹿」

 

「これでよし!皆さん少し下がっててください。」

 

そして魔法陣を描き終えたウェンディは、皆を少し下げる。

 

「さまよえる竜の魂よ、そなたの声を私が受け止めよう・・・・

 

ミルキーウェイ

 

ウェンディが言葉をつむぎ、そして魔法陣が光り輝き洞窟の天井に、まるで星空のような輝きが映し出される。

 

そして、魔力が渦を巻き、一箇所に集まり一斉に骨達が震え始めた。

 

「ひゃあ!?骨が……」

 

「大丈夫なのかウェンディ?」

 

「竜の魂を探しています。この場にさまよう残留思念はとても古くて……小さくて……っ!!見つけた!!」

 

ウェンディが祈るようなポーズをとると、洞窟内の広いところに何かが集まっていくのが見えた。

 

「うおおっ?!」

 

「あれが魂なのか!?」

 

「ウェンディ?」

 

「集中しているみたいね。」

 

「・・・・邪魔すんな。・・・・それより、来るぞ」

 

そしてその集まった魂は次第に形を作っていく。いくつもある鱗、鋭い爪に牙を持つ巨大な生物……竜だ。

 

グアアアアアアアアアアアっ!!!

 

「「「あぁあああああ!! 」」」

 

「・・・・うっるさ」

 

そして現れた竜が吠え、ナツ達が驚き、グランが耳を塞ぐ。・・・・そして

 

「あーっはっはっはっ!」

 

「「「「っ!!?」」」

 

「人間の驚いた顔はいつ見ても滑稽じゃのう。」

 

「・・・・趣味悪いな、お前」

 

「気にするとこそこ!!?」

 

その反応にぽかんとする一同とやっぱりなんかズレていることに驚くグラン。その竜は驚くグラン達を気にせず話を続けていく。

 

「我が名はジルコニス・・・・翡翠の竜とも呼ばれておった。ワシの魂を呼び起こすとは……天竜(グランディーネ)の術じゃな?どこにおるか……」

 

そしてキョロキョロと辺りを見渡し、じっと黙って集中しているウェンディを見つけ、顔を近づける。

 

「かーわええのう!こんなにちんまい滅竜魔導士が、ワシを起こしたのか!」

 

「オイコラウェンディに近づくんじゃねぇぞおいコラ聞いてんのかコラ」

 

「嫌じゃ、この娘はワシが食う。」

 

「・・・・・・・・・・・・潰ス」

 

「冗談に決まっておろうがっ!!バカな種族よ!!!ホレ!!“幽体”に何が出来ようか!?あはははっ!!」

 

わざわざ見せつけるように、爪をすり抜ける。

 

「・・・・なんなの?このふざけた人」

 

「人じゃねぇ、竜だ」

 

「魂らしいがな」

 

「我が名はジルコニス、翡翠の竜とも「さっき聞いたわーっ!!」」

 

「・・・・翡翠の竜って自分で考えたんかな?」

 

「だからそこじゃないでしょ!!?」

 

「ここで何があったの?」

 

「ここには竜の亡骸がいっぱいあって……」

 

「その真相を知るためにお前の魂を呼び起こしたのだ。」

 

もう埒があかなくなったシャルル達がジルコニスに質問を投げつけるが、ジルコニスは態度を変えることはなかった。

 

「人間に語る言葉ない、立ち去れ。」

 

「オイラ猫だよ。」

 

「……そうだな、あれは400年以上昔の事だ。」

 

「ずいぶんアバウトな自分ルールだな」

 

「・・・・適当な竜だな」

 

お前が言うか。

 

「かつて竜族はこの世界の王であった。自由に空を舞い、大地を駆け、海を渡り繁栄していった。この世の全ては、竜族のものであった。人間等は、我々の食物に過ぎなかったのだよ。ぐふふ。・・・・だが、その竜族の支配に異論を唱える、愚かなドラゴンがおった。人間と共存できる世界を作りたい・・・と抜かしおったのじゃ。それに賛同する竜と、反対する竜との間で戦争が始まった。ワシは、反対派として戦った。」

 

「・・・・つまり、人と共存なんざしてられねぇって奴らの一体ってことか」

 

「そう・・・・ワシは人間は好きじゃない。食物としてなら、好物であるがな。」

 

「食いもんと会話してんのかおめー。ぷぷっ」

 

「ほら!!そーゆーのムカつくの!!!」

 

「それで・・・・その戦争はどうなったの?」

 

「コホン……戦況は拮抗しておった。竜と竜の戦いはいくつもの大地を裂くものだった。やがて共存派の竜どもは、愚かな戦略を打ち立てた。人間に竜を滅する魔法を与え、戦争に参加させたのだ。」

 

「滅竜魔法……?」

 

「滅竜魔導士の原点ってこと……?」

 

「・・・・マジか」

 

「滅竜魔導士達の力は絶大であった……人間との共存を選んだ竜達の勝利は目前と迫っていた。しかし、ここで一つの誤算が生じる。」

 

「・・・・誤算だと」

 

「・・・・力を付けすぎた滅竜魔導士達は、人間との共存を望んだ竜達さえも殺していった。そしてその人間の中の1人に……竜の血を浴びすぎた男がおった。」

 

先ほどまでずっと笑みを浮かべていたジルコニスの顔から笑みが消えて・・・・少し怯えたような表情になっていた。

 

「その名を口にするのも恐ろしい。“男”は、数多の竜を滅ぼしその血を浴び続けた。やがて“男”の皮膚は鱗に変わり……歯は牙に変わり……その姿は竜そのものへと変化していった。」

 

「人間が竜になったの……!?」

 

「それが滅竜魔法の先にあるものだ。・・・・ここに眠る竜達も、その男により滅ぼされた。男は人間でありながら、竜の王となった。竜の王が誕生した戦争・・・・

 

それが竜王祭

 

「・・・・その、男の名は?」

 

グランがそう聞くと・・・・ジルコニスは答えづらそうにしていたが・・・・その口からハッキリと答えた。

 

 

「王の名は、アクノロギア。竜であり竜ならざる・・・・暗黒の翼。」

 

 

「・・・・アイツが!?」

 

「まさか、あれが……」

 

「元は人間だった!?」

 

「ばかな……!」

 

その名を聞き、全員が驚愕する。その竜はかつて、自分達を滅ぼそうとした竜の名だったからだ。

 

「奴により、ほとんどの竜は滅んでいった・・・・それが今から400年前の話だ。ワシは、貴様らに・・・・・・・・」

 

と、突如としてジルコニスは最後まで言わぬまま姿を消した。

 

「オイ!」

 

「消えた!!」

 

「まだ聞いてねぇことあるだろ!!」

 

「翡翠の竜って自分で考えたのか!!」

 

「だからそこじゃない!!」

 

「ウェンディ!!」

 

「ダメです……この場から完全に思念が消えました。東洋の言葉で言う、成仏というものでしょうか。」

 

「なんだか、エライ話になってきたな。」

 

「スケール大きすぎよ」

 

「滅竜魔法使いすぎると本物の竜になっちまうのか!?」

 

「それは困る!」

 

「どうしよう……」

 

「・・・・これって俺はどうなんだろうな」

 

 

「それはありえんよ。」

 

 

と、ここにまた第三者の声が聞こえてきた。

 

「誰!!」

 

「話は聞かせてもらった。やはり我々の研究と史実は一致していた……君達はゼレフ書の悪魔を知っているかね?・・・・アクノロギアはそれに近い。1人の滅竜魔導士をゼレフがアクノロギアにしたと推測される。」

 

「ゼレフが!?」

 

「つまり……全ての元凶であるゼレフを討つことが、アクノロギア攻略の第一歩となるのだ。」

 

「・・・・ゼレフを倒す?」

 

「何言ってんだ!!」

 

「誰だテメェ!!」

 

「ユキノ!?」

 

そして現れたのは・・・・白い鎧を身にまとった騎士・・・・そして元剣咬の虎のユキノがその場にいた。

 

「私はフィオーレ王国軍、クロッカス駐屯部隊、桜花聖騎士団団長アルカディオス。」

 

「同じく臨時軍曹のユキノ・アグリアでございます。」

 

「軍のお偉いさんがなんでこんなところに……」

 

「ユキノ……あんた剣咬の虎の一員じゃなかったの?」

 

「辞めさせられたって言ってたよね?」

 

「はい、その通りです。」

 

「私から説明しよう。極秘に進めていたある作戦に星霊魔導士が必要だった。そこでユキノ軍曹に力を借りているという訳だ。」

 

「星霊魔導士……?」

 

アルカディオスの言い分に、ナツが憤慨し始める。

 

「ちょっと待て!!何の話かわからねー!!ややこしい話はパスだ!!用件をいえ!!」

 

「・・・・ナツ・ドラグニル君だね?先ほどの戦い、素晴らしい魔闘であった。」

 

「んな事ァどーでもいいんだョ。こっちは星霊魔導士が必要とかどうとかってのに引っかかってんだ。言いてえ事があるならはっきり言いやがれ。」

 

アルカディオスの話に聞く耳を持たず、詰め寄り睨みつけるナツ。その行動を、誰も止めようとはしない。・・・・もう既に、ルーシィが狙われているからだ。

 

「ついてきたまえ。」

 

「おい!てめぇ!!」

 

「ルーシィ様……私からもお願いします。」

 

「え?」

 

「この作戦が成功すれば……ゼレフ、そしてアクノロギアを倒せます。」

 

「……アクノロギアを?」

 

「・・・・とりあえずついていってみるか」

 

こうして一同は、渋々ついていくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして場所が変わり、華灯宮メルクリアス・・・・王が住んでいる城である。

 

「んだー!?コリャー!!」

 

「華灯宮メルクリアスですね。」

 

「陛下のおられる城だ」

 

「オイラたち入っていいの?」

 

「・・・・大丈夫だろ」

 

「まず初めに………数日前、ルーシィ殿を狙い……誤って攫おうとしたことを謝罪したい。」

 

「何!?」

 

「あれ、あんたの仕業だったの!?」

 

「勿論危害を加えるつもりは無かったが……些か強引な策に走ってしまった。あの時は早急に星霊魔導士が必要だと思いこみ、判断を謝った……申し訳ない。」

 

「・・・・そうか。・・・・ちょっといいか」

 

「何だ?」

 

 

ドゴンっ!!

 

 

「・・・・とりあえず、これでウェンディ達を攫ったのはチャラにしてやる」

 

「殴ったーーーーっ!!?」

 

アルカディオスの腹にパンチを喰らわせ、アルカディオスはその場に少しうずくまった。

 

とりあえずで国のお偉いさんに腹パンするコイツは色々すごいと思う。アルカディオスも、それを甘んじて喰らったようで、ふらつきながら立ち上がり、話を続ける。

 

「・・・・だ、大魔闘演武は、魔導士達の“魔力”を大量に接収する為のカモフラージュだった。」

 

「毎年魔導士達から魔力を奪ってたのかよ」

 

「……きたねぇな。」

 

「なんと言ってもらっても構わんよ。全ては計画の為にやったこと。」

 

そしてアルカディオスを先頭に城の中を進んでいく。そして彼らの目の前に巨大な扉が見えきた。

 

世界を変える扉、エクリプス・・・・これの建造の為、大量の魔力が必要だった。」

 

「扉!?」

 

「何だコリャ?」

 

「・・・・デッカ」

 

「太陽と月が交差する時……十二の鍵を用いてその扉を開け。扉を開けば“時”の中。400年の時を渡り、不死となる前のゼレフを討つ。それこそがエクリプス計画。」

 

巨大な扉を見上げなが、アルカディオスは語る。

 

「と・・・・時を渡る……?」

 

(・・・・コイツが謎の魔力の正体か)

 

「ルーシィ様、星霊界はこの世界と時間の流れが違うと聞きます。」

 

「そう言えば、そうだったけど……」

 

「その星霊界独自の次元境界線を利用し、星霊魔導士の力でこの扉を開くのです。」

 

「当初の計画では、星霊魔導士は擬似的な魔力で代用できる予定であった。だが、本物の星霊魔導士と十二の鍵があれば、計画がより完璧になる。もはや必要不可欠と言って良い。太陽と月が交差する時、即ち三日後の7月7日・・・・君の力を貸してほしい、ルーシィ殿。」

 

「え?」

 

「7月7日・・・・」

 

「・・・・それって確か・・・・竜が消えた日だよな」

 

「・・・・うん。私たちの竜が消えた日だよ」

 

「ただの偶然か・・」

 

「太陽と月が交差する・・・・日蝕(エクリプス)

 

 

「そこまでだ!!」

 

 

とそこに大声とともに、大量の兵隊が彼らを囲い込んできた。

 

「王国兵!?」

 

「なんだよ!?」

 

「・・・・ここでやろうってか?」

 

「大人しくして頂こう……アルカディオス大佐。」

 

「国防大臣殿!?これはなんの真似ですか!?」

 

そして現れたのはこの国の国防大臣だった。

 

「それはこちらの台詞だ。極秘計画……超国家機密を部外者に漏らすなど言語道断。」

 

「部外者ではない!知っているでしょう、この作戦において重要な役割を持つ者達です。」

 

「それは貴様の独断で決められるほど……簡単なものではない。」

 

「あなたは単にこの計画に反対なだけでしょう!!今すぐこんなふざけたマネはやめていただきたい!!」

 

 

「反対に決まっておるわ!!歴史を変えるなど!!その危険性を少しでも想像出来んのかっ!!小僧がァ!!」

 

 

大声を出し怒鳴る国務大臣。・・・・だが、彼の言う通り歴史を変えるという事の危険性は計り知れない。

 

「アルカディオス大佐を、国家反逆罪の容疑で拘束する!!並びにユキノ・アグリア、ルーシィ・ハートフィリア・・・・そしてグラン・ワームランドも拘束!!それ以外の者は追い出せ!!」

 

「何!?」

 

「ちょっとあたしまで……」

 

「・・・・え?なんで俺も?」

 

拘束対象に選ばれたルーシィと何故か同じく拘束対象にされたグラン。ルーシィは恐らく星霊魔導士だからであろうが・・・・グランはなんでなのかさっぱりすぎて頭が混乱しているうちに、拘束されていった。

 

「てめぇら……ルーシィとグランを巻き込むんじゃ……!」

 

「よせっ!!ここで魔法を使ってはならん!!」

 

「ぐあ……!?」

 

仲間を拘束されるのを見てられなかったナツが魔法を発動させようとしたその瞬間、突如エクリプスが起動しナツの魔力を全て吸い取ってしまった。

 

「言ってなかったかね?大魔闘演武は魔導士の魔力を微量に奪い、エクリプスへ送るためのシステム。

こんなにエクリプスの近くで魔法を発動すれば、全ての魔力が奪われてしまうぞ。・・・・騒ぎは起こさんでくれ、魔法の使えん魔導士など、我が王国兵の敵ではないのだから。」

 

「ちょっと!!離してよ!!」

 

「貴方達!アルカディオス様の部下ではないのですか!?」

 

「・・・・オイマジでなんで俺も拘束すんだ・・・・待て、俺だけ拘束具ゴツくないか?それ明らかに怪物用のだろ?アレか、俺は怪物みたいだって言いてぇのか?」

 

「ルーシィ!」

 

「ユキノさん!!グラン!!!!」

 

王国兵に捕えられるルーシィとユキノ・・・・それとグランとアルカディオスも捕えられてその他の者達は皆城の外へと追い出された。

 

「私とて本意ではないことを、理解していただきたい。全ては国家のため……だが、一つだけ助言することもできよう。

陛下が妖精の尻尾フェアリーテイルをたいそう気に入っておられる。大魔闘演武にて優勝出来たなら、陛下に謁見する機会を与えよう。

心優しき陛下ならば、仲間の処遇についても配慮してくれるやもしれん。」

 

そうして、一同はルーシィと・・・・本当に何故かグランまでも王国に捕まってしまったまま、その場を去ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 







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第三十八話 投獄と脱獄・・・・そして罠


ここで一つのお知らせ・・・・大魔闘演武の最終日は原作とほぼ一緒なので、ここからしばらくはグラン達メインとなります。


 

前回、色々あってフィオーレ王国の国防大臣に捕まってしまったルーシィとユキノ・・・・そして何故かグラン。

 

そして現在牢屋に囚われていた。

 

「・・・・まさかこんな事になってしまうなんて」

 

「・・・・本当にね」

 

「・・・・もう、何なのよ」

 

「・・・・すみません。私は・・・・本当に、不幸を呼ぶ・・・・」

 

「何言ってんの?落ち込むヒマがあったら脱出方法考えよっ!」

 

「・・・・ルーシィ様」

 

「・・・・というわけでやっちゃってグラン!!」

 

と、ルーシィはいい笑顔でグランへと声をかける。最初からグラン頼りだったらしい。まぁ確かに、グランならこんな牢屋はおろか例え怪物用の拘束具だろうがぶっ壊せる。・・・・普段であればの話だが。

 

「・・・・よし任せろ・・・・って言いたいが、今は無理だ」

 

「・・・・・・・・え?」

 

「あのな、そもそもの話・・・・俺が捕まってておかしいと思わなかったのか?」

 

・・・・まぁ、そりゃそうだ。確かにあの時は近くにエクリプスがあって魔法が使えなかったとしても、たかが王国兵如きに捕まるはずがない・・・・のだが

 

「・・・・ただ・・・・ちょっと今、力がでねぇんだよ。魔法もうまく使えねぇし。」

 

「・・・・・・・・・・・・えぇ!!?」

 

まさかの事実に飛び上がって驚く。

 

「・・・・炎神の魔法を体に沈めてから・・・・なんつうか、体の調子がおかしいんだよな。力がぜんぜん入んねぇし、魔力もうまく操れねぇし・・・・中々馴染まねぇんだよな」

 

「・・・・あれ?でも確かアンタって、大地の魔力があれば大丈夫・・・・的な事言ってなかった?」

 

大地の滅竜魔導士であるグラン・・・・確かに、大地から微量であるが魔力を常に頂いている。・・・・のだが

 

「・・・・まぁそうなんだが・・・・まだ大地の魔力とうまく繋がらねぇんだわ。・・・・炎神の魔力が混ざり合ったからか、俺の地竜の魔力を大地がまだ認識できてねぇみてぇだからな。・・・・だから今は無理だ」

 

「まぁ・・・・しょうがないから別の方法探さないとね!!」

 

そんな話を聞いても、割とポジティブになれるルーシィは素直にすごいと思うよ。

 

「・・・・本当にすみません」

 

「アンタのせいじゃないって・・・・あたしもあんたも・・・・ついでにグランも、王国の内ゲバに巻き込まれただけだし」

 

「・・・・そこでなんで俺も捕まったのかわっかんねぇんだけど?」

 

「アンタ放置してたら危険だと思ったんじゃないの?」

 

「・・・・心外な」

 

まぁ、そうだったとしたら正しい判断だ。

 

「・・・・それにしても、エクリプス計画ってのを実行すべきなのかな。ハッキリ言ってどっちが正しいか、あたしにはわからないよ」

 

「・・・・この場合は、どっちも正しい・・・・が、正解になるかもな。時間を狂わせてでも、ゼレフを討ちたい団長・・・・時間を狂わせる事で歴史がぶっ壊れちまうかもしれない危険性を考え、強硬手段を取っちまう国防大臣・・・・どっちも間違いと言えば間違いだし、正しいと言えば正しいからな。難しいところだ」

 

「・・・・私は、実行するべきだと思います」

 

「・・・・」

 

「・・・・なんか理由でもあんのか?」

 

「・・・・私には姉がいたんです。ソラノという名前でした。私は何をやってもドジばっかりして、いつも両親に怒られていました。でも、姉はそんな私をいつでもかばってくれた。

 

『ユキノは悪くないゾ』

 

優しくて・・綺麗で・・・・私は姉が大好きだった。だけど、ある日ゼレフを盲信する集団に両親は殺され、姉は連れていかれてしまいました。私は命からがら逃げ出す事しか出来ませんでした。・・・・その後の姉の生死は不明です。・・・・エクリプスを使えばゼレフを倒せます。この世界にゼレフがいなければ姉は・・・・」

 

「・・・・」

 

「・・・・そうか(・・・・なんかどっかで聞いたことのあるような語尾の奴だな・・・・・・・・・・・・気のせいだよな、うん)」

 

それ以上は何も聞かずにいた。

 

「・・・・んで、お前ここで何してんの?」

 

「えっ?」

 

「・・・・?」

 

と、いきなり誰もいない場所に話しかけるグラン。・・・・と、そこに少しずつ影が現れ・・・・とある少女が出てきた。

 

「・・・・あ、あはは〜。ど、どうも〜」

 

「えぇ!!?あ、アンタって確か!!?」

 

「・・・・ガイヤ様!?」

 

「・・・・なんでここにいんだよ、お前」

 

そう、牢屋にはもう一人いた・・・・それはグランとエキシビジョンマッチで戦った剣咬の虎のガイヤだった。

 

「・・・・え〜、まぁあの後色々あってね・・・・あの髭面・・・・じゃなくてマスターに・・・・貴様など剣咬の虎にいる価値もない!!・・・・って言われたから・・・・じゃあお望み通りやめてやんよ!!・・・・って勢いでセイバーの紋章のある部分の皮膚をちぎってぶん投げてそのまま出てきちゃった!」

 

テヘペロッ!ってな感じで軽く言うガイヤ。

 

「皮膚をちぎったって・・・・大丈夫なのアンタ!?」

 

「え?別に・・・・魔力で地に変えれば魔力を込めれば治るし・・・・ねぇ?」

 

「・・・・まぁ、皮膚ぐらいならすぐ再生するし・・・・ってかお前今剣咬の虎じゃねぇのかよ」

 

「・・・・・・・・まぁ、そんなとこ。・・・・それで、まぁ・・・・その・・・・・・・・え〜っと」

 

大地系スレイヤーあるあるを言ってる最中、何故か口籠るガイヤ。

 

「・・・・なんだ?」

 

「・・・・その・・・・あれだよ・・・・・・・・ユキノが・・・・どうなってたのか気になって」

 

「・・・・私が?」

 

「・・・・ほぉ〜ん」

 

「・・・・何だよ、その顔?ボクなんかおかしい事言った?」

 

「・・・・別に」

 

「・・・・・・・・まぁ、それで・・・・あの後どうなったか、色々聴きまくって・・・・王国の臨時軍曹になったって兵隊が言ってたから会いに行こうとして・・・・邪魔されまして・・・・えーっと・・・・・・・・・・・・ね?」

 

「・・・・兵隊やったんか?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・てへっ」

 

ようは、セイバー辞めたし、実はどうなったか気になってたユキノに会いに行こうとしたが、兵隊に邪魔されたから、つい手が出てしまったため、牢屋に入れられた・・・・と。

 

「私の為に・・・・そんな」

 

「・・・・だって・・・・割と仲良かったし・・・・さよなら言えてなかったし・・・・」

 

「・・・・ガイヤ様」

 

試合の時の堂々とした態度は何処へやら。めちゃくちゃ縮こまって喋るガイヤと、少し嬉しそうなユキノ。

 

(・・・・なんやかんやで仲はよかったっぽいな)ボソボソッ

 

(ねっ・・・・なんか安心した)ボソボソッ

 

(・・・・まぁだからって堂々と兵隊をぶっ潰すのはどうかと思うがな)ボソボソッ

 

(いや、あんたも似たような感じでしょ?)ボソボソッ

 

まぁそんなこんながあり、牢屋にガイヤもプラスされた。・・・・なんでおんなじ所に?ってツッコミはなしだ!!ご都合主義ってやつだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまぁ、時間が過ぎて恐らく大魔闘演武の最終日の種目が始まった頃、ルーシィ達はベットで横になり、グランは壁際に座っていた。あれからグランが、今はうまく魔法が使えないと言うのを知ると、今なら勝てる!!と思ったガイヤが襲いかかってくるが、軽くいなすというのを繰り返していた。

 

・・・・そして

 

「ルーシィ!」

 

「グラン!」

 

「っ!!ナツ!ウェンディにミラさんも!」

 

「・・・・何してんの?」

 

「しー」

 

「も"め"ん"」

 

「オイラ達もいるよ」

 

「というかアンタもいたのね」

 

「・・・・いや〜、妖精さん達はなんていうか・・・・すごいなぁ」

 

「どうやってここに…」

 

「いいから下がってろ」

 

「・・・・いや、いい。俺がやる」

 

少し困惑気味なガイヤとユキノを他所にナツが牢屋の鉄格子を掴み壊そうとしたが、それを止めるグラン。

 

少し不思議に思うのも束の間、グランは立ち上がり少し力を込め腕を開くと、たちまちに拘束具が破壊される。その光景にガイヤとユキノが驚く中、そのまま鉄格子の前に行き鉄格子をぐしゃぐしゃの鉄塊に変えた。

 

「・・・・あー、きつかった」

 

「大丈夫?グラン?」

 

「全く、アンタまで捕まっちゃうなんてね」

 

「・・・・それは面目無い」

 

「はい、着替え持って来たわよ」

 

「ありがとう、みんな」

 

「はい、グランも。ユキノさんのもありますよ」

 

「悪いけど、アンタのはないわよ」

 

「わ、私は結構です・・・・え?あの・・・・」

 

「ねぇ、すっごい平然としてるけど、今グラン拘束具をバーンッ!ってやったと思ったら、鉄格子ぐしゃぁ!!ってしたんだけど?おかしくない?おかしいよね?あれ?ボクらがおかしい?」

 

妖精の尻尾のメンバー・・・・特にウェンディとシャルルはこの程度では驚かなくなっているが、先程までずっと拘束されていたのに、その拘束具と鉄格子を難なく破壊できたグランに驚愕の眼差しを送る元剣咬の虎の二人。

 

「あとはどうやって脱出するかね」

 

「できることなら、誰にも見つからずに城を出たいな」

 

「ちょっと待って、鍵を取られたままなの!探さなきゃ!」

 

「・・・・なーんか嫌な予感が」

 

「え?」

 

ガコココココココンッ!!

 

と、どう脱出するか、どう鍵を探すか考えている中・・・・突然床が縦に割れた。

 

「なっ!?」

 

「地面が!!」

 

「・・・・正確には床な」

 

「言ってる場合!!?」

 

そしてグラン達は何も出来ず、ただ重力に従って下に落ちていった。

 

「着替え中なんですけどーーーーーーー!?」「わーーーーー!!?」「きゃーーーーー!!?」「ひぇーーーーー!?」「やーーーーーーーん!!?」「・・・・ウェンディ、シャルル、捕まっとけ」「あ、ありがとーーーーーー!!?」「でもおちてんのよねーーーーーー!!?」

 

悲鳴を上げながら下へ下へと落下していって、恐らく城の地下へと落ちていった。

 

ナツやルーシィ、ガイヤとシャルル以外の二人はナツを一番下にして地面に積み重なり、グランとウェンディとシャルル・・・・近くにいたからついでという事でユキノは、グランに抱えられながら無事に降り立つ。

 

「・・・・無事か?」

 

「あ、ありがと、グラン」

 

「全く、なんなのよ、もう!」

 

「わ、私まで、ありがとうございます」

 

「ん、気にすんな・・・・・・・・そっちも無事だな」

 

「だから私らはついでか!!!?」

 

「ボクらの扱い酷くない!!?」

 

飛び上がり文句をいうルーシィとガイヤ。そんなこと言ってもしょうがない。それがグランだもの。

 

《ようこそ奈落宮へ》

 

「ア?」

 

「誰!?」

 

「・・・・ん?」

 

《見事に罠にかかりましたね》

 

「え?」

 

「罠!?」

 

《辺りを見なさい。ここは死の都、奈落宮。・・・・罪人の行き着く最後の自由。しかしここから出られた者は1人もいない》

 

いきなり誰かの声が聞こえたかと思ったら、空間にある映像が映し出された。そこにいたのは、翡翠色の美しい長い髪をもつ美しい少女がいた。

 

《そこで朽ちていくがよい──賊よ》

 

「誰だアイツ!!!」

 

「姫です、この城の」

 

「お姫様!!ボクとユキノはこの人達と全く関係ありません!!」

 

「・・・・おい」

 

しれっと自分達は関係ないと告げるガイヤに軽く突っ込むグラン。

 

そして姫の映し出された映像はそれだけ告げると消えていった。

 

状況は最悪だ・・・・牢屋から出られたと思ったら、今度は地下の奈落宮という場所に落ちてしまった。・・・・一体この先どうなることやら

 

・・・・まぁグランなら大丈夫か

 

 

 

 





ここで、グランの魔法が使えなかった理由がいまいちよくわっかんねぇって人へ。要するに炎神の魔法が沈んだグランの魔力を受験生・・・・大地の魔力を、受験生がこれから受ける学校と例えると・・・・今のグランの状態は、その学校から合格発表をされるのを待っている受験生で、合格が発表されるまで何もできない状態・・・・的な感じです。なので、合格が発表されしだい、すぐにその学校に通える感じです。・・・・余計分かりにくいか?


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第三十九話 餓狼騎士団

 

「ナツー、天井も全部塞がってるよ!!」

 

「出口は無さそうね」

 

「くそっ!せっかくここまで来たのに!!」

 

「ミイラ取りがミイラに・・・・って事ね」

 

「情けないです・・・・。ごめんね、グラン」

 

「・・・・まぁ気にすんな」

 

前回、牢屋に囚われたグラン達を救うべく侵入して助けにきたナツ達だったが、それは罠で、まんまと引っかかり、地下の奈落宮に落とされてしまった。

 

なんとか抜け出そうと出口を探すも、それらしいものは全く見当たらない。

 

「みんな!!こっちに通路があったわ!」

 

と、そんな時シャルルが通路を見つけてくれた。その通路を皆で通り、広い所に出ると、一人の男が倒れていた。

 

「アルカディオス様!!」

 

「この前の・・・・」

 

グラン達は急いで倒れているアルカディオスの元へ駆け寄った。

 

「オイ!大丈夫か、しっかりしろ!!」

 

「ボクこの人知らないんだけど、誰?」

 

「・・・・あー、この国の軍の団長さんだ」

 

「ヘェ〜」

 

呑気だな、この二人は。

 

「なんでこんなとこに」

 

「あたし達と同じように落とされた?」

 

と、ボロボロのアルカディオスがボソッとつぶやいた。

 

「逃げ・・・・ろ」

 

「・・・・あ?」

 

 

「ぱーーーーん」

 

 

と、後ろから不気味な気配を感じ皆一斉にその場から離れた。

 

「シュワーー」

 

「うお!?」

 

「きゃっ!」

 

「これは・・・・」

 

「酸だ!!」

 

その後ろにいた男が放ったのは、地面を容易に溶かす強力な酸だった。だが、これだけじゃ終わらない。

 

 

「タイタイ、ターイ!!」

 

 

とふざけた掛け声が聞こえたと思った瞬間

 

「大漁ォ〜〜〜〜!!!ターーーーーイ」

 

「ああああ!?」

 

「・・・・なんなんだコイツらは」

 

「しかも、まだいるっぽいし!!」

 

今度は花が咲いたと思ったら、そこから人が生えてきて、紙が集まったと思えば、それが人の形となった。

 

「またふえた!?」

 

「・・・・陰から王国を支える独立部隊・・・・王国最強の処刑人・・・・餓狼騎士団」

 

 

「餓狼騎士団・・・・一五◯◯任務開始」

 

 

そして最後に背中に大鎌を二つ携えたフードの男が現れた。

 

「奈落宮からの生還が不可能なのは・・・・奴らがいるからだ」

 

「フィオーレ独立部隊、餓狼騎士団特別権限により、これより罪人の死刑を執行する」

 

「ハイ!ボクとユキノはこの人達とは全くの無関係です!!」

 

「・・・・おい」

 

なんとか自分とユキノは助かろうと騎士団に告げるガイヤにまた軽く突っ込むグラン。・・・・と、いきなりナツが笑い出す。

 

「ぶはっ、ぶははははっ!!あはははははっ!!」

 

「ちょっとナツ、こんな時に」

 

「だってどう見ても“騎士団”ってナリじゃねぇーだろ!!」

 

「確かに」

 

「特におまえ!」

 

「タイ」

 

まぁ確かに、騎士団いう割に鎧着てるのが一人もいないし、タイタイってる奴なんて旗持ってるし

 

「・・・・大道芸人?」

 

「ぷくくっ!そっちのが合ってるかもね!!」

 

「あははははははははっ!!」

 

グランがボソッと言ったことに、ナツだけじゃなくガイヤも笑い出した。

 

「見た目に惑わされるな・・・・奴らの使う魔法は・・・・人を殺す魔法だ

 

そんなナツ達を見て、傷ついた体を上げながらアルカディオスが告げる。

 

「上等!!!」

 

「・・・・ようは、出口が向こうから来てくれたんだろ?探す手間が省けたな」

 

「そうね、出口を教えてもらうのに丁度いいわ」

 

「え、そういう解釈なの?妖精さん達、頭大丈夫?相手王国を支える騎士団だよ?」

 

「・・・・国の兵隊ぶっ飛ばしたお前がいうか?」

 

妖精の尻尾のメンバーはもう既に戦う体制を整えているのを見て、若干引いているガイヤ。でも、コイツも兵隊ぶっ飛ばしてここにいんだよな。

 

「餓狼騎士団を前に臆さぬとは・・・・無知なる罪人め・・・・フィオーレ王国の土へと還れ」

 

「土に還れってボクらには関係ないよね?」

 

「・・・・そこは気にすんなよ、あーいうしか無いだろ、大抵は」

 

「今気にするとこはそこじゃないでしょ!?

 

大地系スレイヤーはどいつもコイツもズレてるらしい

 

「行くよ、コスモス」

 

「私とカミカの美しい舞・・・・ね」

 

まず動いたのは餓狼騎士団の二人の女性・・・・和風な服を纏ったカミカと大きな帽子を被ったコスモスだ。

 

カミカは小さな赤い紙切れを取り出し、フッと息を吹きかけると、それはたちまち大量の紙吹雪となった。

 

「紙吹雪・・・・赤の舞!!!」

 

「んなものは燃やして、やるァ!!」

 

所詮は紙切れと思ったナツが全部燃やそうとするが・・・・赤い紙吹雪は全く燃えなかった。

 

「あ?」

 

「燃えてない!?」

 

「赤い紙は炎の神・・・・舞い散るがよい!!!!」

 

赤い紙吹雪はそのままナツに向かって突き進んでいく。

 

「地竜の剛腕!!」

 

「地神の砂嵐(セティ)!!」

 

と、それを防いだのはグランとガイヤだった。グランの砂嵐とガイヤの黒い砂嵐を巻き起こし紙吹雪を吹き飛ばした。

 

「サンキュー!!グラン!ガイヤ!」

 

「・・・・ようやく少し調子が戻ってきた」

 

「神さま相手ならボクら神殺し(ゴッドスレイヤー)でしょ!!」

 

「美しいわ」

 

と、今度はコスモスが動き出した。だが、狙ったのはグラン達ではなく・・・・ウェンディだった。

 

「美しく踊る人形・・・・それは血の咲く骸の花」

 

「きゃっ!!?」

 

「ウェンディ!!!!」

 

ウェンディの下にきみの悪い植物が生えて、ウェンディを丸呑みにしようとする。が、それはミラによって助けられる。と、今度は鍵を持っていないルーシィとユキノに向けて、棘付きの蔦のようなものが襲ってくるが、それはリリーとグラン・・・・ガイヤによって斬り捨てられた。

 

「パーーーンッ」

 

「!」

 

「・・・・危なっ」

 

「汚い!!!」

 

と今度は酒瓶を咥えた巨漢の男が、酸魔法を放ってくる。・・・・多分汚くはないと思う。

 

「紙吹雪・・・・紫の舞!!!」

 

と、またカミカが紙吹雪を飛ばしてくる。しかし、先ほどとは違い攻撃用ではなく、拘束用だった。

 

「何だ!!」

 

「体が動かない!!」

 

「・・・・鬱陶しい」

 

「紫の紙は縛りの神」

 

「これぞ美しい連携・・・・グロウ・フロウ!!!」

 

最後に止めと言わんばかりにコスモスが巨大な花を召喚する。

 

「食せ、美しく・・・・罪人の命を」

 

そして、その花は勢いよくグラン達を吸い込んでいく。

 

「体の不自由解除!!!状態異常回復魔法レーゼ!!!」

 

と、ウェンディが体の縛りをなくしてくれる魔法をかけてくれたおかげで、全員体の自由を取り戻した。

 

「治った!」

 

「けどあれ・・・・」

 

「どうする!!?」

 

残った問題は、召喚された巨大花。どうするか?決まってる

 

「壊す!!!」

 

「OK!!」

 

「・・・・了解!」

 

「分かった!!」

 

「オオオオオオ!!」

 

カッ! ドッ!!

 

ナツ、ミラ、リリー、グラン、そしてガイヤの攻撃により、花は撃破された・・・・だが、その衝撃で皆バラバラになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶはっ!おーい!!みんな無事かーーーーっ!!」

 

「どうやら先ほどの衝撃で方々へと散ってしまったようだな」

 

「ア?」

 

「だが、私の部下は優秀だ。誰一人として生きては帰さん」

 

「ここでルーシィ達と離れちゃ意味がねぇってのに」

 

妖精の尻尾 ナツvs 餓狼騎士団 カマ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさーん、どこですかー!!グラーン!!どこーー!」

 

「みーんなはぐれちゃったねぇ〜・・・・余計なのもいるけど」

 

「美しい・・・・いえ、美しいというより可憐・・・・でも処刑よ」

 

妖精の尻尾 ウェンディ&元剣咬の虎 ガイヤvs 餓狼騎士団 コスモス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へへへっ」

 

「クソ・・・・みんなとはぐれたか」

 

妖精の尻尾 リリーvs 餓狼騎士団 ネッパー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルーシィ!!ユキノ!!みんな!!どこ?」

 

「よそ見してる場合じゃないわよ、アンタ」

 

妖精の尻尾 ミラvs 餓狼騎士団 カミカ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・・

 

「うう〜〜〜」

 

「・・・・大丈夫か?」

 

「な、何とかね」

 

「・・・・忝い」

 

ルーシィ、ユキノ、ハッピー、シャルル、アルカディオス・・・・そしてグランは同じ場所に吹き飛ばされていた。ある程度の衝撃をグランが中和してくれたおかげで、ほぼ無傷な他のメンバー。

 

「もしかしてみんなとはぐれちゃった!?」

 

「・・・・俺らが無事なら、みんなも無事だろうな・・・・あの餓狼騎士団の奴らも散り散りになってるっぽいが・・・・とりあえず、皆を探そう」

 

「・・・・なんだろう?ピンチのはずなのに全然ピンチって気がしない」

 

「あい!もう安心感が違うよね、魔法が使えないルーシィと違って」

 

「余計なお世話よ!!」

 

「・・・・すみません」

 

「あい?あわわわわわ!?」

 

と、突然ハッピーの体が宙に浮き始めた。

 

「釣れたタイ!!」

 

「オイラ魚じゃないよう!!!」

 

「・・・・・・・・本当だ」

 

「ぎゃっ!?」

 

と、浮かしていた本人はハッピーを近くの柱に投げ捨てる。

 

「なんなの、コイツ」

 

「処刑人ウオスケ」

 

「素敵な名前ね」

 

「こんなの魔法なくても勝てるんじゃないの!?」

 

「確かに」

 

ひどい言いようだが、見た目がものすごくふざけているから、そう思ってもしょうがないと思う。

 

「そんな事言ったら・・・・怒っちゃうぞー」

 

「・・・・表情筋あんのか、あいつ?」

 

怒っちゃうという割に全く顔のパーツが変わっていないウオスケ。

 

「勝てる!!というか、グランがいるから正直楽勝!!」

 

「・・・・まぁ、お前らは下がってろよ?危ないから」

 

「は、ハイ!すみません、お手数をおかけして」

 

「気にすんな」

 

「いかん・・ぞ。奴は処刑した者の骨すら残さぬという」

 

「「「「え?」」」」

 

「・・・・あ、ちゃんと怒ってた」

 

アルカディオスがつぶやいた言葉に一気に血の気が引くルーシィ達と、言葉通り怒りを体で表現していたウオスケに感心するグラン・・・・感心するとこそこじゃないんだよ、だから。

 

妖精の尻尾 グラン、ルーシィ、ハッピー、シャルル&王国軍臨時軍曹 ユキノと団長 アルカディオスvs 餓狼騎士団 ウオスケ

 

 



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第四十話 vs餓狼騎士団・・・・決着

 

城の地下・・・・奈落宮。グラン達はそこで、王国最強の処刑人、餓狼騎士団と対峙してしまった。

 

さらに、衝撃のせいでそれぞれがバラバラの場所に飛ばされてしまい、餓狼騎士団の一人一人と対峙することになった。

 

ナツはリーダーのカマと。リリーは酒瓶を咥えたネッパーと。ミラは、紙吹雪を操るカミカと。ウェンディとガイヤは植物を操るコスモスと対峙していた。

 

餓狼騎士団全員が処刑人・・・・それぞれが使う魔法は、相手を確実に死に陥れる強力で凶悪な魔法・・・・その魔法を相手に、皆苦戦を強いられていた。

 

「コイツ・・・・」

 

「我が狙うは罪人の首のみ」

 

「おっかねぇ奴だな」

 

執拗に首を狙ってくるカマ。

 

「シュワー」

 

「酸とは厄介な・・・・剣では防ぎきれん」

 

「溶けろ・・・・溶けろ」

 

強力な酸の魔法で殺しにかかるネッパー。

 

「紙吹雪・・・・緑の舞!!」

 

「う、ぐふっ!?」

 

「緑の紙は毒の神」

 

「この人たち・・・・確実に命を狙って」

 

猛毒の紙吹雪を操るカミカ。

 

「胞子爆弾、リンカ・レンカ」

 

「もう!!鬱陶しい!!ウェンディちゃん!大丈夫!?」

 

「な、なんとか!!」

 

「その悲鳴も可憐・・・・」

 

「・・・・あの人、頭大丈夫かな!?」

 

「さぁ、眠る時間よ・・・・マクラ・カムラ」

 

「っ!!これは!」

 

「しまっ・・・・くぅ〜〜Z z z」

 

「この胞子の睡眠効果により、眠ってしまったら、あなた達は二度と目を覚さない死の魔法」

 

「ガイヤ・・・・さん・・・・あぅ」

 

「さぁ眠れ・・・・永遠に」

 

凶悪な植物を操るコスモス・・・・それぞれに追い詰められていった。

 

 

そしてグラン達も・・・・

 

「地形効果・・・・溶岩帯!!!」

 

「何か来るわよ!!やっちゃって、グラン!!」

 

「すみません、お願いします!!」

 

「・・・・一応言うが、調子はまだ戻ってねぇからな」

 

などと呑気に話している間に、どんどん地面が変わっていき・・・・燃え盛る溶岩地帯へと変わっていく

 

「崩れ・・・・!?」

 

「きゃっ!!?」

 

「え?あ、おい、ちょっ!?」

 

立っていた地面が崩れ落ち、ルーシィとユキノとグランは落ちていってしまう。

 

「ルーシィ!グラン!ユキノ!今行くよ!!」

 

「待ってなさい!!」

 

そこにすかさずハッピーとシャルルが助けに行こうとするが・・・・ウオスケに捕まってしまう。

 

「わっ!!また釣られた!!?」

 

「私は魚じゃないわよ!!!」

 

「地形効果・・・・重力帯!!」

 

「ぐぎゅっ!?・・・・体が・・」

 

「あうっ!?・・・・重たい・・」

 

シャルルとハッピーの場所だけ、重力が強い地形に変えて、二人を動かないようにする。・・・・ふざけた見た目と口調の割に中々にエグい魔法を使うなコイツ。

 

「うぅ・・・・熱・・・・くない?あれ?」

 

「それに・・・・ぶら下がっているはずなのに・・・・あまり辛くない?」

 

そう・・・・何故か地面から溶岩に落ちそうになったのにも関わらず、あまり溶岩からの熱気を感じられず、地面ぎりぎりに掴まったはずなのにさほど辛くないのだ。

 

「・・・・そりゃ、アンタら二人が俺を下にしてるからな」

 

「え?」

 

「へ?」

 

と言われたように下を向くと・・・・溶岩に体を半分ほど浸かってしまっているグランがそこにはいた。

 

「えぇーーーーっ!?何してんの!?」

 

「・・・・地面が割れた時にちょうど割れ目に落ちたと思ったら、お前ら二人が続くように落ちてきたから、動くに動けなかったんだよ」

 

「だ、大丈夫なのですか!?グラン様!!?」

 

「・・・・ちょっとぬるい」

 

「ぬるいの!?」

 

溶岩に浸かっておきながらぬるいと抜かしやがるのかコイツ。・・・・そういや、炎神の炎を食らっても大丈夫だったし、今は体に沈めてるから、耐熱がめっちゃ上がってんのか・・・・だからって溶岩浸かってぬるいとか・・・・。

 

「え?え?人間って、溶岩の中であんな平然としてられたっけ?」

 

ほら、処刑人のウオスケも若干引いてるじゃん。

 

「・・・・とりあえず、上にあげるぞ?」

 

そう言い、グランは二人を持ち上げ地面に座らせる。そして、何もなかったかのように溶岩の中から上がってくる。・・・・若干服は溶けているもののそれ以外は全くの無傷だった。

 

「・・・・んー!もうちょい熱くてもよかったな」

 

「溶岩浸かってそんな事言えるのアンタぐらいだと思うわよ?」

 

「・・・・・・・・っ!!」

 

ルーシィはなんか慣れた感じだが、ユキノはもう目を大きく見開いて驚いている。

 

「え?なんで?なんで普通にしてんの?あれ?」

 

ウオスケも混乱状態だ。

 

「・・・・さてと、お前らはシャルルたちを助けて、アルカディオスのとこに行ってろ。そいつに運んでもらってな」

 

「え?」

 

「任せてよ。ごめんね、遅くなって」

 

そこにいたのは、獅子宮のレオこと、ロキだった。その手には奪われたルーシィとユキノの鍵もある。

 

「ロキ!!」

 

「獅子宮のレオ・・・・」

 

「・・・・皆を頼むぞ」

 

「ああ、君も気をつけて・・・・って、その心配は無用か」

 

ロキはそのままルーシィとユキノを担ぎアルカディオスの元へ移動する。

 

「・・・・んじゃ、やるか」

 

「ア、まずい。地形効果・・重力帯!!」

 

歩みを始めるグランに対し、近づかせたらヤバいと察知し、その場に先ほどよりも強力な重力を発生させる。

 

「・・・・軽いな」

 

「タイ!?」

 

が、そんなもの関係ないと言わんばかりに普通に歩みを進めるグラン。脚は沈んでいるものの全く影響なく普通に進んでいる。すぐには近づかず・・・・あえてゆっくり歩を進めている。まるで、ウオスケの死刑宣告のように

 

「地形効果・・渦潮帯!!!」

 

それでも負けじと、今度は巨大な渦潮を発生させ、歩みを止めようとする・・・・だが

 

「鬱陶しい・・・・たい!!!」

 

「タイイィっ!!?」

 

腕を横に一振りして、渦潮をかき消してしまう。そしてとうとう、ウオスケの元まで着いてしまった。

 

「・・・・よう」

 

「タ・・・・・・・・タイ」

 

そしてそのまま拳を構え、ウオスケに向けてぶん殴る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリーvsネッパー

 

「オラオラどうした?溶かしちまうぞ!!バーンってよォ!!!」

 

「ガジルと共に修行してきた日々を思い出せ!!鉄の拳!!奴の拳を何度も受け止めてきたこの体!!!その鉄の硬度が誇るのは・・・・己の肉体と精神力!!!」

 

 

「何事にも負けぬ鉄の意志!!!」

 

 

「なァ!!!?酸を斬ったァ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウェンディ&ガイヤvsコスモス

 

「さあさ、そろそろ可憐に眠りに落ちてしまったかしら?」

 

「誰が?」

 

「それはもちろん貴方たち・・・・え?」

 

「・・・・状態異常耐性付加、リレーゼ」

 

「え?なんで!!?」

 

「私に状態異常系の魔法は効きません。」

 

「実はもう既に状態異常の耐性を付加済みでした!!残念でした〜!」

 

「な、な!?」

 

「いきましょう、ガイヤさん!」

 

「そうだね、今度はボクらの番だ!!」

 

「私はみんなのサポートがお仕事だけど・・・・戦わなきゃいけない時は・・・・」

 

「ボク、花は好きだけど、あんまりおいたをする子にはお仕置きが必要だよね?」

 

「何これ!?風が・・・黒い砂が・・・・私の花が散っていく!!?」

 

 

「私は天竜となります!!」

 

 

「地神の力・・・・なめないでよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミラvsカミカ

 

「だいぶ苦しそうね・・・・そろそろ死んじゃう?」

 

「魔法は人を殺すための力じゃない・・・・だけど、大きな力がなければ愛する人たちを守れない。矛盾してるわよね」

 

「何言ってるの?」

 

「貴方はひとつだけ大きなミスをした。・・・・私ね、大会の会場とか・・・・仲間が近くにいたりとかね・・・・誰かに見られてると思うと、自分の力を抑えちゃうの。さっきの矛盾からくる私のジレンマなのかしら?・・・・私が“一人”の時・・・・それは私が100%の力を出せる時なの」

 

「え?うそ!?毒を吸って・・・・!?」

 

 

「悪魔に毒?大好物なんだけど♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナツvsカマ

 

「ごあ!?・・・・なんだ、この男は・・・・」

 

「火竜の鉄拳!!!」

 

ドッゴォ!!

 

「私にこんな事をして・・・・貴様ら王国を敵にまわす気か!!?」

 

「敵に・・・・まわす?お前らこそ妖精の尻尾(フェアリーテイル)を敵にまわす覚悟はできてるんだろうな?

 

 

「オレたちは家族(ギルド)を守る為なら、国だろうが世界だろうが敵にまわす・・・・」

 

 

「それが妖精の尻尾(フェアリーテイル)だっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お」

 

「あ、グラン!!」

 

「・・・・ウェンディ、無事だったか・・・・ついでにお前も」

 

「え?ボクってついでなの?」

 

「・・・・気にしたら負けよ」

 

別々で戦っていたグラン達だが、餓狼騎士団にトドメをさすタイミングが奇跡的にあったらしく、それぞれが吹き飛ばした騎士団のメンバーは、カマ以外全員目を回して倒れている。

 

「全・・滅・・・・だと?」

 

「さて・・・・と。出口教えなきゃ処刑だぞ」

 

「・・・・早く言わねぇと、地面に沈めんぞ?」

 

「・・・・悪・・」

 

vs餓狼騎士団・・・・全員撃破。脅迫紛いの聞き込みにより出口の場所も聞き出せたグラン・・・・・・・・まさか、その場所でとある人物と対面する事になるなど・・・・誰も思っていなかった。

 

 

 

 



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第四十一話 最悪の未来





 

「本当にこっちであってるのか?」

 

「・・・・奴らが嘘をついてなきゃな」

 

あの後、餓狼騎士団から出口の場所を聞き出し皆で出口を目指したが、無駄に広い地下を彷徨いながら進んでいた。

 

「そういえば、ロキはどうやってここまで来たの?」

 

「飛び降りて」

 

「・・・・後先考えるの大事だぞ?」

 

お前も大概そんな感じだろ?

 

因みにアルカディオスは、今までの疲労が溜まっていたようで、今はロキに担がれながら、気絶したように眠っている。

 

「オイ!!あれを見ろ!!」

 

しばらく進んでいくと、そこに立派な扉があった。早速開けようとナツが拳を構え破壊しようとする。

 

「オレに任せろ!!火竜の・・・・」

 

が、ナツの拳が当たる前に扉が開き・・・・ナツは中途半端でやめてしまった為、転がった。

 

「うほぉーーーっ!?」

 

「・・・・まずなんで扉開けるのに殴ろうとするんだよ」

 

「アンタもそうしたでしょ?」

 

「うん」

 

じゃあ人の事言えねぇじゃねぇか。

 

そしてその開いた扉から出てきたのは・・・・フードを深く被った一人の男性・・・・いや、女性か?フードを深く被りすぎて顔が分からず、体のラインも覆われているからどちらか定かではないが・・・・敵が味方かもわからない。

 

「誰だ、お前?」

 

ナツが立ち上がりながら聞く・・・・すると、聞こえたきたのは・・・・とても馴染みのある声だった。

 

「・・・・グスッ・・・・ごめん・・力を・・・・貸して・・」

 

「その声・・・・」

 

「・・・・どうなってる」

 

皆が困惑する中、その人物はフードをとる・・・・そして、そこにあった顔は・・・・ルーシィと瓜二つだった。

 

「ルーシィ!!!!?」

 

「えええええええええええええっ!!!?」

 

「ルーシィがもう一人・・・・」

 

「ど・・・・どういう事ですか?」

 

「・・・・これは予想外の展開だ」

 

「ジェミニ・・・・じゃないですよね」

 

「エドラスとかそういうのじゃ・・・・」

 

「何なに?どうなってるの?」

 

皆がそれぞれ疑問に思っているその答えを、もう一人のルーシィが答える。

 

「時空を超える扉・・・・エクリプスの事はもう知っているよね」

 

「・・・・それを聞くって事は・・・・」

 

「あんたはエクリプスを使って・・・・」

 

「未来から来たの」

 

「「「「「なーーーーーーーーっ!!!!!」」」」」

 

まさかの未来から来たという・・・・こんな突破な話を聞かされ、さすがのグランでさえも驚愕の表情をあらわにした。

 

「この国は・・・・もうすぐ・・・・」

 

そう言って、未来から来たルーシィはその場に倒れてしまった。

 

「おいっ!!」

 

「だ・・・・大丈夫ですかっ!?」

 

「・・・・全くもって訳がわからん」

 

「同意だ」

 

「・・・・なんか気味が悪いよ・・・・なんで、わたしが」

 

当の本人であるルーシィは未来から来た自分に対し、訳が分からなすぎて気味悪がっていた。

 

「とにかく放っておけねーだろ。このルーシィも連れ出すぞ」

 

ナツがそう言い、未来ルーシィを担ぐ。

 

「城を出て、信号弾を上げましょう」

 

「ルーシィさんの救出成功ってですね」

 

「・・・・まぁ、まさか二人に増えるとは思いもやらなかったがな」

 

そしてグラン達は、死の都“奈落宮”からの脱出に成功するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・んで、城の中に入ったのだが

 

「まいったな」

 

「・・・・完全に迷子だな」

 

そりゃ、地下ほどでないにしても広い城の中をあっち行ったりこっち行ったりしてたら、迷子になるわな。

 

「困ったわね」

 

「私もお城様の構造についてはちょっと・・・・」

 

「お城様!?」

 

「お城に様はいらないと思うよ〜、ユキノ〜」

 

もういっその事兵士の中を突っ切って行こうとナツが提案したが、怪我人がいるし、色々印象が悪くなってしまうからやめておこうとなった。・・・・まぁ、ガイヤは兵士をぶっ飛ばしてここにいるし、処刑人の奴らをやっちゃってるからもう手遅れだがな。

 

「うぅ・・・・」

 

「!」

 

「お!」

 

「・・・・起きたな」

 

「大丈夫?未来ルーシィ?」

 

そして気を失っていた未来ルーシィが目を覚ました。

 

そして未来ルーシィから話を聞いた。

 

未来ルーシィの話によれば、奈落宮から脱出後、みんな王国軍に捕まってしまうらしい。なんでも逃走途中、エクリプスに接近してしまい、そのせいで魔法が使えなくて捕まってしまったらしい。グランもいるのに何故?と思ったが、先にウェンディが捕まってしまった為、降参するしかなかったらしい。

 

そして・・・・“あの時”が来るまでずっと、牢屋の中にいたらしい・・・・

 

最悪の未来・・・・この先にまつ絶望・・・・

 

 

一万を超える(ドラゴン)の群れがこの国を襲う・・・・最悪の未来が

 

 

街が焼かれ、城は崩壊し・・・・多くの命が失われる・・・・そんな絶望の未来が

 

 

 

 

「「「「「・・・・・・・・っ!!!!」」」」」

 

未来ルーシィから聞かされた未来の話に・・・・皆、驚愕した。

 

「な・・・・ん・・・・じゃ・・・・そりゃーーー!!!!」

 

「・・・・・・・・マジかー」

 

ナツは目に見えて慌て、グランもいつも以上に間を空けて驚いた。皆もそれぞれ何故そうなったか、何かと関係があるのかと考えていた。

 

「とにかく、こうしちゃいられねぇ!!!戦闘準備だ!!いくぞ、グラン!!」

 

「・・・・どっから持ってきた、その兜と槍?」

 

居ても立っても居られなくなったナツは急いで戦闘準備を開始するが、そんなナツを見て・・・・いや、今の話を聞いて疑わない皆を見て、少し驚いた表情をしていた。

 

「みんな・・・・信じてくれるの?」

 

「ウソなのか!?」

 

「違う!!!けど・・・・こんな話、誰も信じてくれないんじゃないか・・・・って」

 

「何でルーシィの言葉を疑うんだよ?」

 

何気ない一言・・・・その一言が、未来ルーシィにはとても嬉しかった。

 

・・・・そして、話は続く・・・・何日経ったか覚えておらず、エクリプスの元へ行き、無我夢中で扉を開けたら、本当に過去に戻れたという・・・・

 

 

X 791年7月4日に

 

 

「4日ってつい最近じゃないか」

 

「エクリプスってそんなちょっとしか過去に行けないの?」

 

「・・・・んや、アルカディオスによれば、四百年前にも戻れるって話だ。・・・・多分、魔力が足りなかったのか、どっか壊れてたんだろ」

 

「うん・・・・多分そうだと思う。」

 

「でも・・・・これからどうするの?」

 

「今すぐ城を出て欲しいけど・・・・街は大魔闘演武を撮影してる魔水晶がそこら中に配置されてる・・・・地下を通ってジェラールたちと合流してほしいの」

 

「ジェラール?」

 

「彼には全部話してある。今・・・・対策を練ってるハズだから」

 

「対策を練るって・・・・」

 

「・・・・?」

 

と、未来ルーシィが顔を俯ける。

 

「・・・・ごめんね。あたしは未来から“対策”を持ってきた訳じゃない。あの事態をどうすれば回避できるのか、分からないの」

 

「・・・・本当に無我夢中で過去(こっち)にきたんだな」

 

「・・・・本当に・・・・ゴメン。これじゃ、あたし・・・・何のためにに来たのか・・・・今日までどうしていいかも分からず街をウロウロしてた・・・・」

 

「・・・・いや、オレたちが何とかする」

 

うつむき、後悔している未来ルーシィを前に、ナツが声をかける。そして近づき、未来ルーシィに感謝を伝える。

 

 

「ありがとうな、オレたちの未来の為に」

 

 

その言葉に、未来ルーシィは涙を流す。悲しみからでなく、その感謝に応えるように流れていく。

 

「必ず、未来を変えてやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっち!!」

 

今現在、未来ルーシィの案内の元、城の地下の道を通って地上へ向かっていた。

 

「きっとみんな心配してるから、早く戻らないとね、グラン!」

 

「・・・・そうだな。そのまえに、団体客の相手しなきゃダメっぽいがな。」

 

「へ?」

 

と、グラン達の進む先から王国兵が続々と湧いて出てきた。

 

「王国軍!?こんな所に配置されてるなんて・・・・」

 

「心配すんな。魔法が使えりゃつかまったりしねーよ」

 

「そうだね」

 

「・・・・準備運動くらいにはなるか」

 

「あ、あの!アルカディオスさんがいません!!」

 

「なに!?」

 

「ユキノとガイヤもいないわ!!」

 

なんといつの間にかアルカディオスとユキノとガイヤの姿が居なくなっていたのだ。なんて自由な奴らなんだ。

 

「あの騎士はともかくユキノは放っておけない。私が戻るわ!」

 

「ダメだよはぐれちゃ!」

 

「みんな・・・・気をつけてね!」

 

そう言って来た道を戻っていくミラ。そしてここに残っている者達は王国兵を相手にしていく────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────そして出来上がる、兵士達の山。

 

「がっ・・・・」「・・・・ぐふ」「・・・・・・・・ッ」

 

「・・・・もう終わりか?」

 

「・・・・もう彼一人でいいでしょ?」

 

「クソォ!!オレはまだ暴れたりねぇぞ!!!」

 

「そこ、怒るとこじゃないからね?」

 

「まぁ、当然よね」

 

どんどん湧いてくる兵士達を、軽く捻り潰してしまうグラン・・・・コイツ一人で王国兵を相手にしてる状態になってる・・・・兵士達もあまりの力の差に、全員ビビって動けずにいる。

 

「ネッパァ!!」

 

「あ?」

 

と、いきなり強力な酸がグラン達を襲う。

 

「パーン」

 

「またお前か!!」

 

「・・・・しぶとい奴ら」

 

「王国最強の処刑人をなめないでくれる?」

 

「ねー、カミカ」

 

現れたのは奈落宮でやっつけたはずの餓狼騎士団だった。なんてしぶとい連中だろう。

 

「タイター「・・・・あ"?」ごめんなタイ」

 

ウオスケはグランに己の魔法が全く通じず、ほぼ一方的なやられ方した為、グランに対しトラウマができてしまったようで、グランに睨まれた瞬間、頭を下げた。

 

「貴様らの理念は、よくわかった。ここからは私の理念を通す。罪人を生かしたまま、城外には出さない」

 

「しつけぇな、オイ」

 

「・・・・やっぱ沈めときゃよかった」

 

餓狼騎士団が加わった事で、王国兵の勢いが増していった。倒しても、山にしてもどんどん湧いて出てくる。

 

「なにこれ!?」

 

「・・・・鬱陶しい」

 

「私の植物よ!!かわいいでしょ?」

 

「こんなもんよりウェンディの方が何兆倍も可愛いわバーーカ!!」

 

「グ、グラン・・・・恥ずかしいよ///」

 

「こんな時にイチャコラしない!!」

 

「パンパーン!!シュワー」

 

「しまった!!体が・・・・!?」

 

「ホラ!!処刑されちまいなっ!!」

 

「このままじゃもたないぞ!!?」

 

「あきらめろ、罪人よ!!」

 

「もー怒った!!!処刑だ!!!全員まとめて処刑だぁーーーー!!!!」

 

「全員生き埋めにしてやらぁーーーーーー!!!!」

 

もう色々面倒になったナツとグランが、なんか自暴自棄になったように叫び出した・・・・その時、兵士たちが悲鳴を上げて何かに吸い込まれていく。

 

「うわー!?」「ぎゃー!?」「うわぁ!!?」「何だ、コレェ!!」「ひいぃ!!?」「ぐぁああ!!?」「何事!?」「影が人を飲み込んで・・・・・・・・」「うわぁぁぁぁぁぁっ!!?」「何なのよ、コレ!?」「ちょっ・・・・やっ・・・・」「ターーイ!?」「パーーン!!?」

 

「どうなってんだ!?」

 

「・・・・誰の仕業だ?」

 

そして、王国兵達は、餓狼騎士団を含め、全員が影にのまれてしまった。

 

「王国兵が・・・・みんな・・」

 

「影の中に」

 

そしてその影の向こうに人影が見える。敵か味方か、まだ分からない為、全員警戒を怠らない。

 

「おまえ、誰だ?」

 

「・・・・ウェンディ、下がってろ」

 

少しずつ近づいてくる男・・・・その男の顔はどこかで見たことのある顔だった。

 

「影がのびる先は・・・・過去か、未来か・・・・人の心か・・・・懐かしいな、ナツ・ドラグニル、グラン・ワームランド・・・・

 

 

オレはここより先の時間から来た・・・・ローグだ。

 

現れたのはもう一人の未来から来た人物・・・・ローグ。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・そして、この時より未来は不確かなものへとなった・・・・この先に待っているのは、絶望か・・・・希望か・・・・滅亡か・・・・生存か・・・・誰にも分からない。

 

否、知っているものがいる・・・・ならば、未来を知っているものが、有利なのか・・・・否、それは一つの結果に過ぎない・・・・その通りとなるとは限らないから

 

だが、これだけはハッキリしている・・・・ここから先は予測は不可能・・・・どんな結末になるかは・・・・彼らの手にかかっている。

 

運命に抗え、最悪を超えよ。絶望を希望で塗り替えよ。

 

妖精よ、虎よ、天馬よ、蛇姫よ、人魚よ、猟犬よ、魔導士たちよ。

 

戦いは、もう目の前だ。

 

絶望か希望か・・・・全ては、おまえたちにかかっている。

 

必ずその手で・・・・未来(希望)を掴め!!!

 

 

 

 

 



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第四十二話 エクリプス“2”計画・・・・始動

 

城から脱出しようとしたグラン達、その途中未来から来たルーシィと出会い、この先の未来に、一万の竜がやってくると聞き、さらに急いで城から脱出しようとする。

 

その途中、王国兵や餓狼騎士団に阻まれてしまった。

 

さすがに限界と感じたその時、王国兵達は突如現れた影に飲まれてしまった。

 

そして現れたのは・・・・未来から来たというローグだった。

 

「ローグ?」

 

「あの剣咬の虎の!?」

 

「・・・・あの影野郎か」

 

「未来から来たっていうの?」

 

「・・・・あたし以外にも・・」

 

「なんで?」

 

いきなり現れた未来ローグに疑問が尽きないグラン達。・・・・何故か異様な雰囲気を漂わせるローグ。

 

「王国兵を一掃して・・、助けてくれたのかい?」

 

「おまえなんか雰囲気変わったな」

 

「・・・・何しに来やがった」

 

「扉を開く為」

 

「エクリプスの事!?」

 

「・・・・時間旅行にでも行くのか?」

 

「いいや、エクリプスには2つの使い道がある。1つは時間の移動。もう1つは攻撃用兵器、E(エクリプス)・キャノン。1万のドラゴンを倒せる唯一の手段」

 

「じゃあ話は早ェな、味方って事じゃねーか」

 

「やったー!!ドラゴンを倒せるんだね!」

 

「未来は救われるんですね!よかったね、グラン!!・・・・グラン?」

 

「・・・・・・・・」

 

まさかの解決方法に喜ぶナツ達だったが、グランはどこか納得していない様子。

 

その中で、未来ローグが話を進める。

 

「いいや…話はそんなに単純ではない。オレは今から7年後の未来から来た。7年後…世界はドラゴンによって支配されている。・・・・生き残っている人類は1割にも満たない。もちろんエクリプスも現在ほどの力を持っていない。」

 

七年後・・・・遠いようで近い未来・・・・待っているのは絶望だけだと、そう告げられた。

 

「今ここでドラゴンを止めなくば、この世界は終わる」

 

「だから扉を開けてぶっ放すんだろ?単純じゃねぇか!」

 

「しかし7年前…つまり“現在”。扉を開くのを邪魔する者が居た。そいつのせいで扉は開かなかった。1万のドラゴンに向かいE(エクリプス)・キャノンを発射できなかった。世界を破滅へと導く者が居た。オレはそいつを抹殺する為に、此処に居る」

 

「物騒ね。その人にも事情を話せば邪魔なんかしないんじゃないかしら?」

 

「・・・・殺す必要はねぇだろ」

 

「大きな“時”の接合点では、言葉で行動を制御できない。たとえ今説得できたとしても…そいつは必ず扉を閉める。そう決まっているのだ」

 

「決まっている?」

 

「運命からは逃げられない。生きる者は生き、死ぬ者は死ぬ。扉を閉める者は閉めるのだ。たとえ何があっても、生きている限り」

 

「よく分からねぇ言い回しだな」

 

「・・・・結局、その邪魔者ってのは誰だよ」

 

まどろっこしい事は抜きにしてその邪魔者の名を聞こうとするグラン達・・・・そして、ローグは言葉と共にそれを実行した。

 

「おまえだ・・・・

 

 

ルーシィ・ハートファリア!!!

 

「え?」

 

影でできた剣をルーシィに向けて放った。まさかの出来事に誰も反応ができなかった。

 

「ルーシィ!!!」

 

「しまっ!!?」

 

間に合わない・・・・そして影の剣は深く刺さった。

 

 

ルーシィを庇うように前に出た・・・・未来ルーシィに。

 

「・・・・っっ!!」

 

「ルーシィさん!!?」

 

未来ルーシィはそのまま倒れてしまう。

 

「ちょ・・・・ちょっとアンタ!!?」

 

「ルーシィーーーー!!!」

 

急いでルーシィが抱き抱え、ハッピーも近くに寄る。

 

「ルーシィが・・・・二人だと!?」

 

刺した本人であるローグも、ルーシィがもう一人いる事は想定外のようで、驚愕をあらわにしている。

 

「しっかりして!!」

 

「あたし・・・・扉なん・・て・・閉めて・・・・ない・・・・い」

 

「分かってる!!あたしはそんなこと絶対にしない!!・・・・なんで自分を庇ったの!!?」

 

「あんたの方が・・・・過去の・・・・あたし・・・・だ・・から・・・・・・・・あんたが死んじゃう・・・・と、どうせ・・あたしも消えちゃうの・・・・。自分に・・・・みと・・・・られて・・死ぬの・・・・て・・・・変な・・感じ・・・・」

 

「あたしだって変な感じよ!!死なないでよ!!!」

 

「もう・・・・いいの・・・・」

 

死なないで欲しい・・・・そう願っても、叶わない。それでも、彼女は・・・・死ぬ間際だというのに、笑顔を浮かべていた。

 

「二度と会えないと思ってた・・・・みん・・なに・・・・もう一度・・・・会え・・た・・・・。あた・・・・しは・・・・それだけで・・幸せ・・・・」

 

「ルーシィ、やだよォ・・・・死なないでよ・・・・・・・・」

 

涙を目に溜め、ハッピーが未来ルーシィに近づいていく。ナツも、グランも・・・・目の前の現実が、まだ受け入れられないように、ただ立ち尽くしている。

 

「あたし・・は、この時代・・・・ううん・・・・この世界の人間じゃ・・ない。この世界の()()()は・・・・仲間と一緒に・・・・生きていく・・・・」

 

だから悲しまないで欲しい・・・・ルーシィはハッピーにそう言った。

 

「悲しいよっ!!!!どこの世界から来ようと・・・・誰が何と言おうと、ルーシィはルーシィだよ!!仲間なんだよぉっ!!!!悲しいに決まってるじゃないか!!!」

 

泣き叫び、悲しむハッピー。彼・・・・いや、彼らにとって・・・・どこから来たかは関係ない・・・・ルーシィはルーシィ・・・・大切な仲間だ。

 

「ねぇ・・・・ギルドマーク見せて」

 

「え?」

 

未来ルーシィは、ルーシィの右手にあるギルドマークを・・・・()()()懐かしいように撫でた。

 

「あんた・・・・右手・・・・・・・・」

 

「もっと・・・・冒険したかった・・・・な」

 

そして・・・・未来ルーシィは・・・・弱々しくなっていき・・・・・・・・そして

 

「未来を・・・・守って・・・・・・・・」

 

その言葉を最後に・・・・・・・・未来ルーシィの命は尽きてしまった。

 

「・・・・扉を閉めた自覚が無かった・・」

 

その光景を見ていた未来ローグはそう呟き、それにルーシィが怒鳴り返す。

 

「何が扉よ!!あたしはそんな事絶対しない!!なのに・・・・!!」

 

「今は・・・・な。だが・・・・数時間後にはお前は扉を閉める」

 

「あたしは扉なんか閉めない!!めちゃくちゃな事言ってアンタ…何が目的なの!!?」

 

「扉は閉まる、そう決まっている。お前が生きている限り」

 

ギリッと歯軋りをしながら、未来ローグは己の主張を変えない・・・・頑なに・・・・苛立ちを立てる。・・・・その苛立ちは、未来のためか・・・・それとも、別の何かのためか。

 

「未来のあたしが閉めないって言ったんだ!!あたしは自分を信じる!!!」

 

「お前の言葉に真実など無い!! 全ては運命によって決まっている事だ!!」

 

そして、今一度ルーシィを殺そうと、影を集結させる。だが、その影がルーシィに放たれる事はなかった。

 

「運命なんか焼き消してやる!!!

 

 

ルーシィの未来は誰にも奪わせねえぞォ!!!!!

 

 

ナツが未来ローグを殴り飛ばす。その目に涙を流しながら・・・・未来ルーシィの最後の言葉を守る為。

 

『未来を・・・・守って・・・・・・・・』

 

「約束する」

 

未来ローグはそのまま吹き飛ばされ、距離がとれる。

 

「ルーシィ!!!ここから離れろ!!」

 

「でも・・・・!!」

 

「・・・・ここはナツに任せる。そもそも奴の狙いはおまえだ」

 

「そうだよ!!早く逃げよう!!」

 

「う・・・・うん」

 

未来ローグはナツに任せ、グラン達はルーシィを連れてその場を離れていく。

 

 

 

 

 

「おまえが立ち塞がるのは想定内だ。どの道おまえはドラゴンに殺される未来。このオレが殺しても歴史に何の影響もあるまい」

 

「おまえ、そんな奴だったか?」

 

「歳月は人を変える・・・・ここで死ね、ナツ・ドラグニル!!」

 

「おまえは、オレの目の前で大切なものを奪ったんだ。

 

 

おまえのやり方は信じねえ・・・・オレはオレたちのやり方で未来を守る!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・逃げ出せたはいいが」

 

「すごい所に出くわしちゃったわね」

 

「扉が開くトコみたい」

 

城から・・・・というか未来ローグから逃げ出すことに成功したグラン達は、ウェンディが言うようにちょうどエクリプスを開けようしている場面に出くわしたのだ。

 

因みにロキはもう帰っている。エクリプスの近くの為、魔法が使えないからだ。

 

「隠れてる必要はない。出てきなさい」

 

「・・・・んだよ、わかってんのかよ」

 

物陰で見ていたが、アルカディオスには気づかれていたようなので、諦めて普通に出ていく。

 

「オイラたち何も悪い事してないぞ!!!」

 

「処刑人はぶっ飛ばしたがな」

 

「アンタは黙ってなさい」

 

とりあえず、皆で姫様たちの前にいく。

 

「妖精の尻尾・・・・この度は申し訳ありませんでした。今は緊急事態の為、正式な謝罪は後日、改めて。・・・・それと、大魔闘演武優勝、おめでとうございます」

 

「優勝!!」

 

「・・・・さらっと言われたな。・・・・まぁ、当然だな」

 

「何で扉を開いてるの? まだドラゴンは来てないのに」

 

「ドラゴンの事を…」

 

「ええ。彼女らも事情は知っています。・・・・そう言えば、未来から来た“君“は?」

 

「「「・・・・」」」

 

「・・・・殺されたよ。未来からアイツに」

 

「「!!」」

 

ルーシィやウェンディが顔を俯かせるなか、グランが応えていく。

 

「その男は言ってた。あたしが扉を開くのを邪魔したせいでE・キャノンが撃てなかったって」

 

「だから君を殺そうと?」 

 

「・・・・邪魔をするのですか?」

 

ヒスイ姫は険しい目つきでルーシィを見る。ルーシィもそれは無いと、首を振る。

 

「そんなことしません!!だけど・・・・どうしてドラゴンが来てないのに扉を開いているのか気になるんです」

 

「単純な事です。砲撃までに時間がかかるからです。ドラゴンが現れてからの開門では間に合いません」

 

「・・・・なるほど、そりゃあんだけデカけりゃな」

 

「本当にドラゴンを倒せるんですか?全部」

 

そこが一番重要だ。例え強力な砲撃でも確実に全てを倒さなきゃ意味がない。

 

「確実・・・・とは言えませんが、最悪の事態に備え、陛下も策を講じているハズです」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・グラン、どうしたの?」

 

「・・・・いや、何でもねぇ」

 

そう言いつつも、どこか胸騒ぎがしているグラン。・・・・嫌な予感・・・・何かが引っかかっている。

 

走行しているうちに、とうとうエクリプスが開き始めた。

 

「見ろ!!」

 

「オオっ!!」

 

「人類の希望の扉が開く!!」

 

「勝利の扉が開くぞぉ!!」

 

その光景に兵士たちも喜んでいる。

 

「すごい魔力だね」ヒゲがピリピリする

 

「確かにコレならドラゴンを一掃できるかも」

 

「これほどの魔力が一か所に」

 

「これで未来が救われるね、グラン」

 

「・・・・・・・・あぁ、多分な」

 

皆が喜んだ。これで未来は守られた・・・・だが、その扉に近づく者がいた。

 

 

「ダメ・・・・扉を開けちゃ・・・・ダメ・・・・今すぐ扉を閉めなきゃ・・・・」

 

 

運命には逆らえない・・・・今まさに、ルーシィはその希望の扉を閉めようとしていた。

 

 

 

 

 



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第四十三話 時を超える竜


今回、オリジナルのドラゴンが出てきます。


 

「扉を閉めて!!!今すぐ!!その扉は開けちゃダメ!!」

 

「ルーシィさん?」

 

「・・・・どうした?」

 

エクリプスが完全に開かれようとした時、いきなりルーシィが扉を閉めるように叫び出した。

 

「お願い!!扉を閉めて!!!」

 

「なりません!!!これは大群のドラゴンに対抗できる唯一の兵器!!!!今・・・・扉を閉じたら、E(エクリプス)・キャノンは撃てない!!!」

 

ヒスイ姫は断固として閉じるのを拒否する。だが、ルーシィも一歩も引かない。

 

「E・キャノンなんて無い!!あれは“扉”!!!時間をつなぐ扉なの!!!」

 

「その蓄積された魔力を放出するのがE・キャノンです!!」

 

なんだか雲行きが怪しくなってきた中、扉が十分に開いていく。

 

そしてグランは見た。その扉の向こうに、こちらに近づいてくる・・・・巨大な何かの影を

 

「・・・・・・・・なんだ・・・・アレ?」

 

「グラン、どうしたの?」

 

そして・・・・・・・・・・・・・・・・運命の時がやってくる。

 

「あの扉は・・・・400年前と繋がって・・・・」

 

ゴッ!ゴゴォン!! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

 

響き渡る轟音・・・・大きく揺れる地面。

 

「何!?きゃっ!?」

 

「ウェンディ!!・・・・クソッなんなんだ!?」

 

そして、ソレを見る。見上げるほど巨大な生物・・・・ドラゴンが。皆が驚愕する。ドラゴンが現れたこともだが、現れた場所に。

 

どこから来るのか・・・・ずっと疑問に思っていた事の答えが・・・・ようやく分かった。

 

「・・・・うそっ・・・・!!?」

 

「・・・・・・・・これは・・・・予想外だな」

 

ドラゴンは・・・・開かれたエクリプスから・・・・時を超えて、やってきた。

 

「扉からドラゴンが・・・・」

 

 

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

 

 

 

そしてそのドラゴンが吠えた。・・・・それだけで地面は抉れ、兵士たちも吹き飛ばされていく。グランはウェンディ達を支えながら踏ん張っている。

 

そして、そのドラゴンはその巨大な腕を上げ、地面を踏み砕く。たった一撃で直線上に、街が破壊されていった。

 

「これほど・・・・・・・・・・・・なのか」

 

アルカディオスも、他の兵士たちも、その圧倒的な破壊力に恐れ慄いていた。

 

だが、ドラゴン達は待ってくれない。次々とドラゴンが出てくる。所々にヒレのような物がある竜。全身が燃えている竜と、出てくる。

 

「扉はどうやってしめるの!?早く!!」

 

あまりの出来事に放心していたヒスイ姫に詰め寄り、扉を閉める方法を書き出していく。

 

「そ・・・・そこの台座で・・・・」

 

それを聞いたルーシィは直様台座に走り出す。だが、ドラゴンたちの一動作はルーシィを軽く吹き飛ばし、台座から離されてしまう。

 

「ルーシィさん!!」

 

「急げ!!」

 

「うん!!」

 

吹き飛ばされたルーシィは、ウェンディとグランに支えられながら、前に進んでいく。そして台座に到着した。

 

「このトリガーを引くのね!!!星霊魔導士の力で・・・・!!!」

 

「ルーシィさん!!!なんで気がついたんですか!!?」

 

「あたしじゃない!クル爺がずっと調べてたの!!で・・・・さっきこの扉の解析が終わった!これはゼレフ書の魔法と星霊魔法が合わさった装置なの!!本来なら時間座標を指定して時間を移動できるんだけど、今日だけは特別に・・・・あの月が魔法を狂わす!!」

 

それに浮かぶ、紅い月が怪しく光っているように見える。

 

「そのせいでこの扉は制御がきかなくなってる!!

 

400年前・・・・つまりドラゴンの居る時代と繋がっちゃったの!!

 

ルーシィが扉を閉めようとしていても・・・・中々閉まらない。そんな中でも、次々とドラゴンがやってくる。

 

「・・・・クソッ・・まだ湧いてきやがる!!」

 

「ルーシィさん!!!扉は、まだ閉まらないんですか!!?」

 

「次から次へとドラゴンがでてくるよぉ!!」

 

「なんで!?なんで扉が閉まらないの!!?」

 

ルーシィがなんとか閉めようとしているが、扉は閉まる気配を見せない。

 

「なんで!!?」

 

「・・・元々、エクリプスを開く為に大量の魔力や星霊魔導士・・・・それに十二の鍵の力が必要だった。・・・・単純な話、ルーシィ一人じゃ扉を閉めるのに足りないって事だろうな」

 

「そんな・・・・っ!!?」

 

そして、ドラゴンの起こした暴風でルーシィは台座から飛ばされてしまう。

 

「あぁん!!?」

 

「ルーシィ!!!」

 

「世界が・・・・ドラゴンのは怒りに・・・・染まる・・・・」

 

ヒスイ姫は涙を流し、絶望の表情を浮かべる。

 

「あたしはそんなのイヤ!!!!もう一人の私の分まで生きるんだ!!!あたしの分まで笑って・・・・泣いて・・・・生きていくんだ!!

 

ルーシィは決して諦めず、扉を閉めようとする。・・・・だが、それでも扉は全く閉まらない。

 

「・・・・星霊魔導士の力が足りない」

 

もうどうしようもない・・・・そう思っていたその時。

 

「私がいます!!!」

 

そこに現れたのは・・・・もう一人の星霊魔導士、ユキノだった。

 

「ユキノ!!」

 

「ミラさん!!」

 

「・・・・後ついでにガイヤ」

 

「ついではひどくない!!?」

 

「ルーシィ様、黄道十二門の鍵を出して下さい!私の鍵と合わせて、十二の鍵で扉を封じます!!」

 

「星霊で!?」

 

一人なら無理でも、二人で・・・・星霊達の力を借りて扉を閉めようというのだ。

 

「ルーシィ様!」

 

「分かった!!」

 

ユキノとルーシィがほぼ同時に全ての鍵を宙に放り投げた。

 

放り投げられた十二の鍵がまるで意志を持ったかのように集結し、黄金に輝き出した。

 

その黄金の輝きの下で、ルーシィとユキノは互いの手を取り合い、祈るように膝を付き、目を閉じる。

 

2人の星霊魔導士の力を合わせる。

 

「黄道十二門の星霊達よ───」

 

「悪しきものを封じる力を貸して!!」

 

「「開け───十二門の扉!」」

 

 

ゾディアック

 

 

そして、その祈りに応じるように全ての星霊達が姿を現す。

 

そしてエクリプスに向かい左右に分かれて、閉じていく。

 

その途中、一匹のドラゴンが出てこようとする。なんとかそれを阻止しようと星霊たちも頑張るが、それでも扉から無理矢理出てこようとしてくるドラゴンに苦戦していく。

 

これでもダメか・・・・そう思ったその時、グランが扉の前まで駆け出していき、拳を構える。

 

「・・・・とっとと自分の時代に帰りやがれ!!」

 

そしてそのドラゴンにむけて拳を振るう。

 

「グオォオッ!!?」

 

予想外の一撃に、流石のドラゴンも怯んでのけぞってしまう。それを好機とみた星霊たちは一気に扉を閉めていき・・・・そして

 

 

ゴゴォォンッ!!

 

 

エクリプスが完全に閉め切った。これでもう、扉からドラゴンが出てくることはない。・・・・だが、まだ安心できない。

 

「喜ぶのはまだ早い!!!何頭のドラゴンが出てきた!!?」

 

「八頭です!!」

 

一万のドラゴンが八頭のドラゴンに変わっただけでも良しだが、それでも一頭だけでも圧倒的な破壊力を持っているのだ。

 

この際一万も八頭も対して変わらん・・・・いや、だいぶ変わるか

 

 

「やってくれたなルーシィ、ユキノ」

 

 

「!!」

 

と、そこに一人の男がやってくる。それは、未来からローグだった。未来ローグは酷薄な笑みを浮かべ、こちらに近づいてきた。

 

「だが、八頭も居れば十分」

 

「ローグ・・・・・・・・様?」

 

「ナツはどうしたの!?」

 

「正直、一万は制御しきれん」

 

「・・・・制御・・だと?」

 

「何の話?」

 

「あの方は…私に未来を告げた…」

 

「奴が姫を騙した未来人!?」

 

つまりは、E・キャノンなどというありもしない兵器の話をした張本人であり、全ては、エクリプスを今日この時に開かせる為に。

 

「あんた・・・・まさか最初からそれが目的で・・・・」

 

「よく聞け愚民共」

 

そして未来ローグは両手を広げ、世界中に届くかせるように、声を響かせた。

 

 

「今より人の時代は終わりを告げる・・・・これより始まるのはドラゴンの時代」

 

 

そしてローグの言葉に反応するようにドラゴン達が集結して、それぞれが咆哮を放つ。

 

「手始めにこの街にいる魔導士どもを・・・・皆殺しにしてこい」

 

ドラゴン達は未来ローグの命令に従い、それぞれが魔導士の集まっている所まで飛んでいった。

 

「ドラゴンがあいつの言うことを聞いた!?」

 

「さっき制御とか言ってたが・・・・まさか!?」

 

その質問に答えるかのようにローグは告げる。

 

(ドラゴン)を支配する秘術・・・・・・・・操竜魔法

 

「・・・・竜を支配する・・・・秘術だと?」

 

「あいつの目的は何なの!?」

 

「わ、わかりません・・・・」

 

「・・・・おまえら、わかるか?」

 

「ぜ〜んぜん・・・・今のローグでさえたまに何考えてるか分かんないのに」

 

「こんな事になんのメリットが・・・・・・・・」

 

そして未来ローグは近くに降りてきたドラゴンの手に乗り、その場を離れようとした。

 

「ここはおまえにまかせるぞ、ジルコニス

 

「ははは・・・・うまそうな人間どもだ」

 

未来ローグは一頭のドラゴンにこの場を任せた。そのドラゴンをグラン達は知っていた、つい最近竜の墓場でその魂と話したばかりだった。

 

「あいつは・・・・」

 

「ドラゴンの墓であった」

 

「・・・・翡翠の竜」

 

「そんな・・・・」

 

偶然か必然か・・・・まさか生きているジルコニスに会う事になるとは・・・・

 

そして未来ローグはドラゴンの背に乗り飛んでいく。

 

「・・・・ミラさん、ガイヤ、ウェンディ・・・・こいつ任せていいか?とりあえず、あの影野郎を叩き落としてくる」

 

「グラン・・・・うん、任せて!!」

 

「ここはボク達が引き受けた!!」

 

「気をつけて!!」

 

グランは皆の了承を受け、思いっきり跳び、未来ローグのところまでいく。

 

「・・・・待てよ、影野郎!!」

 

「・・・・グラン・ワームランドか・・・・おまえの相手などしてられん。おまえの相手はコイツだ。」

 

「あ?」

 

ドゴォォォォンッ!!

 

と、後少しで未来ローグのところまで届くと言うところでグランは落とされてしまった。

 

「・・・・・・・・クソが」

 

「グワハハハハハハッ!!!人間にしては中々に頑丈な奴だ!!だが所詮、この俺様の敵では無いわ!!」

 

「まかせるぞ、ハリドロング

 

グランの前に立ち塞がるドラゴン・・・・ハリドロング。その見た目は筋骨隆々でゴッツゴツの鱗に覆われている。その体も他のドラゴンよりもほんの一回りほど大きい。

 

グランだけでなく、他の場所でもドラゴンが暴れ出し、それを皆が止めにかかる。

 

ここに、未来ローグ&八頭のドラゴンvs全魔導士の戦い・・・・いや、戦争が開始された。

 

「・・・・めんどくせぇ・・・・が、やってやるよ」

 

「グワハハハッ!!!来いっ!!人間よ!!!貴様もろともこの世界を踏み砕いてやろう!!!」

 

 





ハリドロング・・・・名前は硬いって意味のハードとソリッド。強い、手強いを意味するストロングを適当に混ぜ合わせて作った。

本文では筋骨隆々とかゴッツゴツの鱗とかよく分かんない見た目説明したが・・・・まぁ、モンハンに出てくるディアブロスやティガレックス、ボルボロスとかそこら辺のモンスターを混ぜ合わせた感じの見た目をご想像ください。

大きさは・・・・正確なドラゴンの大きさがよくわかんないんですが、エクリプスから出てきたドラゴン達の大きさが20mぐらいの大きさだとすれば、ハリドロングの大きさは30〜40mほどだと思っていてください。






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第四十四話 竜王祭

 

「グワハハハハハハッ!!!中々に痛いぞ!!人間よ!!」

 

「・・・・だったらもうちょい痛がれよ、クソがッ」

 

現在、フィオーレ王国は未来ローグの陰謀により、四百年前の時代よりエクリプスを通じて八頭のドラゴンがやってきた。

 

未来ローグの秘術、操竜魔法により操られているドラゴン達は、大魔闘演武に参加していた魔導士達を片っ端から襲っている。それに対し魔導士達もドラゴンに抵抗していくが、ほとんどの魔法はその硬い鱗に通じず、唯一の手段、滅竜魔法でもダメージは通るものの、決定打になっていなかった。

 

「地竜の剛拳!!!」

 

グランの拳も何度も食らわせている。・・・・だが、大きなダメージは入らず逆に何度もその巨大な腕で吹き飛ばされてしまう。

 

「・・・・あー、クソかてぇ・・・・」

 

「グワハハハッ!!!貴様本当に人間か!!!我が拳を受けてまだ形を保っておられる生物など、ドラゴン以外に初めて見たわ!!!グワハ、グワハハハハハッ!!!!久々に血肉が踊るわッ!!!!!!」

 

ハリドロングは自身の攻撃を受けてまだまだ無事なグランを見て、久々に楽しめそうだと、喜んでいた。

 

ハリドロングの巨大な拳、尻尾、鉤爪、翼までもがグランに向けて襲い掛かる。グランもそれをなんとか弾き、逸らし、避けながらもなんとか攻撃を喰らわしていった。

 

「グワハハハハハッ!!本当に楽しいぞ!!このままずっと続けていたいぐらいにな!!・・・・だが!!悪いが主だけは何がなんでも確実に殺せと命を受けてしまっていてな!!悪いが死んでもらうぞ!!!」

 

「ざっけんな!!影野郎の命令だけで死ねるか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、未来ローグは、ドラゴンに乗りながらボロボロの状態のナツと対峙しており、その際ナツに目的は何かと聞かれていた。

 

「7年後・・・・世界はドラゴンによって支配されていると言ったの覚えているか?だが、正確に言えば世界は完全に全てが支配されていたわけじゃない。・・・・世界の大半を支配していた支配者の名は、アクノロギア・・・・たった一頭のドラゴンによって世界の大半は支配されている。戦える魔導士もギルドもほぼ存在せず・・・・奴と対抗できるのはたった一人・・・・()だけだった。残された人々は()にほんの一握りの希望を持ちつつも・・・・それでも恐怖に怯える日々。オレの秘術も奴には効かなかった。・・・・だが、他のドラゴンは操れる」

 

「他のドラゴンを操って、アクノロギアを倒そうってのか!?」

 

「そうだ!!そして、この時代で()を殺せば・・・・アクノロギアを倒し、オレがドラゴンの王となれる!!」

 

「・・・・おまえが言ってる()って誰だ」

 

先ほどから未来ローグが言っている()が誰なのかを聞くナツ。・・・・未来ローグは不敵な笑みを浮かべながらも答えた。

 

「・・・・おまえも知っている奴だ・・・・

 

 

グランだ。グラン・ワームランド。奴こそが人々の最後の希望。

 

 

「なっ!!?・・・・グランが・・・・ッ!」

 

なんとグランだった。あいつ七年後には等々ドラゴンとタメはれるのか・・・・今でもできそうだが。

 

「奴の強さは別格だ。アクノロギアに支配された世界で、唯一奴を退く事ができた者。奴は生き残った者達を、ここフィオーレに集め土壁で囲みアクノロギアに支配された世界と完全に孤立させ、人類最後の楽園(ユートピア)を創り出し、人々の希望となった。アクノロギアはグランを殺せず・・・・グランもまたアクノロギアを殺さなかった。・・・・奴でさえ不可能ならば、もはやアクノロギアを倒せるのは・・・・同じドラゴンだけ。だからまずこの時代で扉を閉めるルーシィ・ハートフィリアを殺し、一万のドラゴンを解放し・・・・グラン・ワームランドをドラゴンに殺させるつもりだった」

 

「おまえがやらねぇのか?・・・・ちげぇな、できねぇんだろ?」

 

未来ローグの話を聞き、ナツが憎たらしいほどにいい笑顔でそう告げる。たしかに未来ローグは強いが、それでもまだ、今のグランの方が強い・・・・つまり未来ローグでは、どうひっくり返ってもグランには勝てないと分かったからだ。

 

未来ローグも、その事には図星だったようで、チッ!と強めに吐き捨てた。

 

「・・・・この7年でオレは強くなった。・・・・だが、そうだ。おまえの言う通り、たったの7年じゃ奴には敵わないのは百も承知だ。・・・・だが、そんなグランでも、ドラゴンには勝てない。」

 

いかに今のグランが未来ローグより強くても、今のグランではドラゴンに勝てない。それだけは自信満々に応える。

 

「そして、アクノロギアを倒せば・・・・オレがドラゴンの王だ」

 

「・・・・おまえ」

 

「支配する側に廻るんだ。ぞくぞくする」

 

「ドラゴンの匂いは・・・・・・八人か」

 

ナツが匂いを嗅ぎ、ドラゴンの数を数える。

 

「八頭もいれば十分・・・・世界を我が物にできる」

 

ローグのそんな言葉を無視して、ナツは思いっきり乗っているドラゴンを殴る。

 

ドッゴォンっ!!

 

「アァアァアっ!!?」

 

巨大な爆発と共に、殴られたドラゴンはその衝撃で苦しみ声を上げる。

 

「何を!!?」

 

空中に巨大な火玉ができた事で、皆それに注目していく。

 

「聞こえるかぁ!!!!滅竜魔法ならドラゴンを倒せる!!!滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)は8人いる!!ドラゴンも8人いる!!今日・・・・この日のために俺達の魔法があるんだ!!今、戦うために滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)がいるんだ!!」

 

そしてナツは叫び、皆に発破をかけ再びドラゴンを殴りつける。

 

「行くぞォ!!!!ドラゴン狩りだっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グワハハハハハッ!!マザーグレアめ!!情けない声をあげよる!!否!!ここは奴にそれ程のダメージを与えた者を褒めるべきだな!!!他にも威勢のいい人間がいるとはな!!!」

 

「・・・・流石だな、ナツ。・・・・んじゃ、オレも頑張りますか・・・・ってなんだ?」

 

ナツの声を聞き、また闘おうとした時、飛んでいるドラゴン・・・・マザーグレアが何かを大量に落としていった。その落ちてきたものは地面に落ちると・・・・中から小型な人型のドラゴンが出てきた。

 

「・・・・また面倒な」

 

「グワハハハハハっ!!楽しくなってきたなぁ!!人間!!!さぁ!思う存分戦って・・・・そして死んでくれ!!」

 

ハリドロングは高笑いをしながらグランに突っ込んでいく。

 

「・・・・楽しいは否定はしねぇが・・・・殺されるつもりはねぇぞ!!!」

 

そして、グランの周りの大地が震え上がり・・・・黒炎がグランに纏わり付き、獄炎の如き光を放つ。

 

「モード“地獄竜”・・・・地獄竜の極拳!!!」

 

そして獄炎を纏い赤黒く光るグランの拳が、ハリドロングの強靭な体に突き刺さる。

 

「グボハァっ!!?」

 

先ほどまでとは明らかに桁違いの威力の拳を喰らい、苦悶の声をあげながら吹き飛んでいく。それをグランも追いかけていく。

 

 

 

場所は少し変わって、エクリプス前。

 

「あーーーーーっはっはっはっ!!!効かぬぞ、人間どもがぁ!!」

 

「天竜の咆哮!!!」

 

「地神の怒号!!!」

 

空を飛び、人を見くだす態度をやめないジルコニスに向け、ウェンディとガイヤは、ブレスを放つ。ウェンディの魔法はある程度のダメージはあるものの、ガイヤの魔法で与えられるダメージは微々たるものだった。

 

「もう!!こいつ硬すぎない!!?全然ダメージ入ってる感じしないんだけど!!?」

 

「うぅ・・・・」

 

「さて・・・・そろそろ茶番は飽きてきたなっ!!!」

 

「きゃあっ!!」

 

「うわっ!!?」

 

「あぁっ!!!」

 

そう言ってジルコニスは、ウェンディ、ガイヤ、ミラの三人を地面に向け叩き落とした。

 

「まずは面倒な滅竜魔導士の小娘から食らってやろう」

 

「・・・・ウェンディちゃん、逃げて!!」

 

「このっ!!」

 

ウェンディの側に近寄ろうとするジルコニスを何とか止めようとする二人だってが、そんな事を気にも止めずウェンディに近寄るジルコニス。

 

「・・・・・・・・グラン・・・・」

 

「はははっ!!では食らうと・・・・ん?」

 

そしていざ食らおうとした瞬間、何かがこちらに突っ込んでくる気配を感じ其方の方向を向くジルコニス。

 

「ぐはぁっ!!?」

 

「ぐおぉっ!?なんじゃあ!?」

 

そして飛んできた・・・・いや、殴り飛ばされたハリドロングがぶつかりそのまま二匹とも吹き飛んで倒れてしまう。

 

「貴様、ハリドロング!!!何をあそんでおるか!!」

 

「グワハハハハハっ!!すまんすまんジルコニス!!!奴が思ってた以上に強い拳を放ってきてな!!!油断したわ!!!」

 

ドラゴン同士のじゃれあいなど誰にも需要はないが、ウェンディはこれで助かった。

 

「な、何、あのドラゴン?・・・・他のよりちょっと大きくない?」

 

「一体、どこから・・・・」

 

「・・・・あ、グラン!!!」

 

「ウェンディ!!ミラさん!!・・・・無事だったか」

 

「ねぇ、ボクもいるんだけど?」

 

「しっかり働け」

 

「やっぱ扱い酷くない!?ってギャー!!?地獄竜ダァーーーっ!!!」

 

「・・・・やかましいわ」

 

そしてハリドロングを殴り飛ばした張本人であるグランもこの場所にやってきた。

 

「グラン、大丈夫だった!!」

 

「何とかな・・・・あの翡翠竜は任せるぞ」

 

「うん!」

 

「ミラさんも、お願いします」

 

「ええ、任せて!!」

 

「ガイヤ・・・・しっかり戦え」

 

「だから扱い雑!!!」

 

今一度、ウェンディ達にジルコニスの相手を任せ、グランはハリドロングに向かい駆けていく。

 

「グワハハハハハっ!!ジルコニス!!貴様に構ってられるほど暇ではないのでな!!!邪魔だてするなよ!!!」

 

「貴様が我の邪魔をしたんだろうが!!」

 

「グワハハハハハハハハハっ!!知らんわ!!!」

 

「オイこらハリドロング!!・・・・ん?あの小娘どもはどこに・・・・」

 

「天竜の咆哮!!!」

 

と、ジルコニスがハリドロングに視線を向けている間にウェンディは空を飛びジルコニスの頭めがけてブレスを放つ。

 

「ぐおおおおっ!!?」

 

「地神の巨拳!!!」

 

「ぐっ!?」

 

さらにガイヤの拳を思いっきり顎にくらい少しだけ怯んでいくジルコニス。

 

「やっとまともなの入った!!」

 

「私たちも行きます!!」

 

「ええ!!」

 

「ぐうぅ!!小賢しい人間どもが!!」

 

こうして、ジルコニスとウェンディ達の戦いが再度始まった。

 

 

 

 

「グワハハハハハっ!!先ほどの拳・・・・とても痛かったぞ!!見ろ!!血を流したのは久しぶりだ!!!グワハハハハハっ!!」

 

「あっそ。今度は痛がってくれて助かったぞ!!」

 

少し離れた場所で、グランとハリドロングは殴り合いを始めていた。地竜の拳では傷つけられなかったハリドロングの強靭な体も、地獄竜の拳なら血を流す事ができた。

 

「とっとと倒れやがれ!!!」

 

「それは断らせてもらおう!!こんなにも楽しい殺し合いを早々に終わらせてなるものか!!」

 

「なら俺がさっさと終わらせる!!地獄竜の極哮!!!」

 

グランは埒が開かないと、ハリドロングにブレスを放つ。赤黒い地獄の大地の咆哮は、ハリドロングを包み込んでいく・・・・だが。

 

「グワハハハハハハハハハっ!!!痛い!!痛いぞ、人間よ!!!!グワハ、グワハハハハハハハハハハハハハっ!!!!」

 

「・・・・イカれてんな、クソ」

 

ダメージは確実に通っているはずなのに、笑いながらグランに襲い掛かるハリドロング。・・・・ドラゴンってのはこんなイカれ集団なのか?

 

だが、確実にグランに勝機が回ってきていた。他のみんなも、それぞれで奮闘していった。希望を持ち始めていった。

 

・・・・だが、その希望も間もなく崩れ去る。

 

その運命を決めるのは・・・・・・・・・・・・たった一人の命だけ。

 



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第四十五話 一分

 

美しかった花の都は血で穢れ 混沌(カオス)となった

 

人と竜の魔の祭り

 

人と人が戦い 竜と竜が戦い 人と竜が戦う

 

これぞ、古の厄災・・・・竜王祭の再来である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地獄竜の極拳!!!」

 

「グワハハハハハハっ!!!」

 

ぶつかり合うグランとハリドロングの拳。地獄竜となったグランの力でやっと互角に殴り合う事ができるほどの強敵。だが、こちらにも勝算はある。・・・・多分。

 

まず、攻めてきたドラゴンのうちの一体・・・・あの燃えているドラゴンはなぜかわからないがこちらの味方となり、空を飛ぶドラゴンと戦っていくれている。

 

そのおかげでジルコニスの方に、先ほどまで燃えているドラゴンと戦っていたラクサスが駆けつけてくれた。

 

先ほどからチラホラと雷撃が飛んでくる。効きはしないが、一々びっくりする。

 

「グワハハハハハっ!!!楽しいがそろそろ死んでくれ!!」

 

「だから死なねぇって言ってんだろうが!!!」

 

互いに血を流し合いながらの殴り合いを行い続けていく二人。ドラゴンと真っ正面から普通に殴り合えるグランが凄いのか、グランに血を流し未だに倒れないハリドロングが凄いのか・・・・どちらも化け物という事には変わりないな。

 

だが、微かだがグランの方が優勢である。ハリドロングはダメージが蓄積されていき傷が増えていく一方だが、グランは少しずつ傷を治していっている。

 

ダメージが多く常に魔力を消費してしまうが、出し惜しみしている場合ではない。

 

このまま続けていけばグランも瀕死ギリギリになるかもしれないが、確実にハリドロングを倒せるだろう。

 

「グワハハハハハっ!!!こうなればどちらか死ぬまで戦い続けようか!!!!」

 

「上等・・・・・・・・・・・・だっ?」

 

だが、グランは見てしまった。

 

ラクサス達と共に戦っていたウェンディが────────今まさにジルコニスに食われそうになっているのを

 

「────────っ!!」

 

その瞬間、駆け出した。目の前の敵を放り出し一直線に、ウェンディの元へ

 

「ウェンディっ!!!」

 

「きゃっ!?グ、グラン────」

 

そして、ウェンディを押してその場から突き飛ばす。飛ばした先で怪我をしないように、大地を柔らかくしたから大丈夫・・・・ウェンディは無事だ。

 

 

()()()()()()

 

 

(・・・・・・・・何で、ウェンディは泣いてんだ?)

 

どこも怪我をしていないはずのウェンディが、なぜか泣いていた。いきなり突き飛ばしたから怒ってんのか?すまない・・・・と謝りに行こうとしたが・・・・何故か動かない。感覚がない。下半身と・・・・・・・左半身の感覚が・・・・ない。

 

「あ”ーー、なんじゃコイツは!?ペッ!ペッ!不味い上に砂利だらけじゃないか!!」

 

食われた。でもよかった。ウェンディは無事だ。

 

「グラン・・・グラン・・ごめん・・・・ごめんね・・・・」

 

ウェンディは泣きじゃくりながら、グランに治癒魔法をあてる。暖かい光が当てられているのに・・・・それを感じる事ができない。

 

ハリドロングとの戦いで・・・・魔力を使いすぎた。体を再生できない。

 

「・・・・まさか小娘を助けるために、己を犠牲にするとは・・・・。ふむ、大分予定とは違うが・・・・もう楽にしてやろう!!」

 

ハリドロングも近づいてきて、その巨大な拳をグランとウェンディに向けて振り下ろしてきた。

 

グランは・・・・最後の力・・・・最後の魔力を使い、ウェンディを守る。大地を使いウェンディを掴み、安全な場所まで届ける。

 

「いやっ・・・・いやっ!!離して!!離して、グラン!!」

 

「・・・・・・・・じゃあな」

 

「いや、ダメ!!グラン────」

 

ウェンディの無事を、その目で確認し・・・・・・・・・・・そして

 

降り注ぐ、巨大な拳の雨。大地は割れる。体は砕ける。意識がなくなるまで・・・・永遠とも思える時間が流れていく。

 

「・・・・そん・・・・な」

 

「嘘だろ・・・・」

 

「・・・・いやいや・・・・ただのフリでしょ?・・・・じゃなきゃおかしいじゃん」

 

グランが潰されていくその光景を・・・・信じられない目で見ている、ミラとラクサス・・・・そしてガイヤ。

 

いつものように、またひょっこり現れる。いつものように・・・・そう願うが・・・・ハリドロングがその拳を止め、そこにあったのは

 

「・・・・・・・・あぁ・・・・・・・・あぁ・・・・っっ」

 

何もない。グランを表すものは、何一つない。一片の欠片も残さずに・・・・グラン・ワームランドは・・・・死んだ。

 

「・・・・これで、我の命は終わりだな。・・・・ふむ、グラン・・・・その名を生涯覚えておこう」

 

そして、ハリドロングは惚けているウェンディ達の元へ行き・・・・そして

 

「お前らも、あの人間・・・・グランの元へ届けてやろう!!!」

 

巨大な拳をウェンディ達へと振り落とし───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グワハハハハハっ!!!楽しいがそろそろ死んでくれ!!」

 

「だから死なね・・・・・・・・ん、なんだ?」

 

グランは殴り合っていた。ハリドロングと、両手で、両足でしっかり立ちながら。

 

だが今のはなんだ?ウェンディが食われそうになって、それを俺が止めて・・・・んで、食われて。

 

・・・・つまりこの後無計画に突っ込んでってたらウェンディは助けられるが俺は死ぬと・・・・んじゃやり方変えよう!!

 

「グワハハハハハっ!!!こうなればどちらか死ぬまで戦い続けようかァァーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!??」

 

「ん?なんじゃあぁぁぁっーーーーーーーーーーーーーーー!!?」

 

グランはハリドロングの腕を掴み、ジルコニスの方へと思いっきりぶん投げた。そしてハリドロング達は地面に豪快に倒れていく。

 

「グランっ!!」

 

「うおっ!・・・・ウェンディ、無事か?」

 

「うん!・・・・でも、さっきのは」

 

「・・・・分からん・・・・が、妙な感じだ」

 

ウェンディが駆け寄り、グランの無事を喜ぶようにグランに飛びつく。グランもそれをしっかりと受け止めていく。

 

そして、先ほど見た光景を思い出す。・・・・幻にしては、嫌にリアルだった。何がどうなっているのかさっぱり分からないが・・・・とにかく今はドラゴン達を倒さねばならない。

 

「・・・・まだ、いけるか?」

 

「うん!!グランも、気をつけて!!」

 

「あぁ・・・・任せろ!!」

 

ウェンディはラクサス達と共にジルコニスを倒しにいく。グランはハリドロングに向かっていく。

 

ドラゴン達も、それぞれの獲物めがけて突撃してきた。

 

「グワハハハハハッ!!また投げられるとは・・・・やはり面白いぞ!!」

 

「ウルセェ・・・・とりあえずムカついたからその腕斬り裂いてやらぁ!!」

 

夢?でハリドロングに殴り殺されたため、その腹いせに腕を斬り落とそうというのだ。・・・・仕方がないが、向こうからしたらとんでもない八つ当たりになる。

 

グランはその腕を、巨大な剣に変えてハリドロングの拳に向けて斬りかかる

 

「獄竜剣!!!」

 

ズバァァンッ!!

 

「グオォオッ!!?」

 

そしてハリドロングの腕を斬り落とした。元々ダメージが蓄積されていたのと、一番傷の深い場所に斬りつけた為、ハリドロングの強靭な鱗をも斬り裂く事ができたのだ。

 

だがその影響で、“地獄竜”が解除されてしまったが、この戦いで一番のダメージを与える事に成功した。斬り落としされた腕は宙を舞いながら地面に落ちていく。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・腹減ったな」

 

魔力が消耗してしまったグランは・・・・・・・何故か落ちた腕をじ〜〜〜〜〜っと見ている。・・・・何をする気だ?待て、うまくないぞ?絶対上手くはないぞ!!?多分魔力は回復しないぞ!?

 

「・・・・グワハ・・・グワハ・・・・グワハハハハハハハハハっ!!!我が腕を斬り落とすとは・・・・やはり素晴らしいぞ!!!さぁ!!とことん楽しもうじゃないかっ!!」

 

「・・・・・・・・んが?」モグモグ

 

「って我の腕食ってる〜〜〜〜〜っっ!!!???」

 

ハリドロングが同じように高笑いをして、後ろを振り返ってみると・・・・そこには先ほど斬り落とした腕をモグモグと食べているグランの姿があり、目玉が飛び出るほど驚愕した。

 

腹減ったからって普通食べるか?いや、食べるのはまだいい・・・・普通本人の前で食うか?あー、でも魔力は何故か回復してるっぽい。

 

「ちょ、おい!!何食っているのだ!!?」

 

「・・・・腕?」

 

「疑問形にしなくとも腕じゃっ!!!」

 

「お前の腕、筋肉ばっかでかったいな〜」

 

「えっ、そりゃまぁ他のドラゴンよりは我は鍛えているからな・・・・じゃないわ!!?」

 

一応言っておこう・・・・今は戦いの真っ最中である。

 

「うははははははっ!!ハリドロングの奴、腕を斬られた挙句食われとるわ!!!うははははははっ!!!」

 

ジルコニスもウェンディ達を襲うのをやめて、大爆笑していた。

 

「・・・・何やってんだアイツ」

 

「あらあら・・・・」

 

「ねぇねぇ。妖精さん達はあんな変なのしかいないの?それともグランがおかしいだけ?」

 

「だ、ダメだよグラン!!そのまま食べたらお腹壊しちゃうよ!!ちゃんと焼いて食べないと!!」

 

「うん、ウェンディちゃん?そこじゃないよ?ボクらが言いたいのはそこじゃないんだよ?」

 

(ドラゴン)の腕をモグモグと食べている光景を見て、若干・・・・いやかなり引いている三人と、なんかズレたことを言っているウェンディ。・・・・この娘もグランが関わると、少しアホな子になるのか?

 

「・・・・・・・・ゴックン。・・・・さてと、最後はド派手に決めるか」

 

腕を食い終わり、自身の魔力も戻り、大地より魔力を取り込んでいくグラン。“地獄竜”は、もうすでに解除しているが・・・・それにも劣らないほど魔力が高まっているのを感じる。

 

ハリドロングもそれを感じとり今一度グランに向けて拳を振るう・・・・だが、その拳をグランは弾き返していた。

 

先ほどまで出来なかった芸当に驚愕をあらわにするハリドロング。

 

何が起きたのか、わからないが、今この瞬間にグランはドラゴンを超えた。

 

惚けているハリドロングに向け、大地から十分な魔力を取り込み両腕を構え・・・・奥義を繰り出す。

 

「滅竜奥義・・・・極乱・地竜破拳!!!

 

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!

 

「グボラバァッ!!?」

 

連続で撃ち続けられる大地竜の剛拳に、たまらず苦痛を上げて倒れ込むハリドロング。

 

「・・・・ウソ、グランがドラゴンに勝っちゃったよ」

 

「ボサっとしてんな!!俺たちもコイツを倒すぞ!!」

 

「はい!!」

 

「ハリドロングの奴・・・・人間如きに負けるとは・・・・だが、貴様ら風情に負ける我では・・・・ん?」

 

「・・・・んあ?」

 

ウェンディ達もグランに負けじとジルコニスを攻撃していこうとする。それを薙ぎ払おうとしたジルコニスは、ふと空を見上げる。

 

その場の全員も空を見上げると・・・・巨大な炎の塊が落ちてきているのが見えた。

 

・・・・そして

 

ドッゴォォォォンッ!!

 

凄まじい轟音が鳴り響いた。その場所を見ると・・・・ナツが空を飛んでいたドラゴンを落とし、エクリプスを破壊していたのだ。

 

そして・・・・ドラゴン達の体が光りだした。

 

今、エクリプスが破壊された事により・・・・ドラゴン達もこの時代から元の時代に帰るのだ。

 

「ぬおおお!?なんだこれは!!?」

 

「ドラゴンが・・・・」

 

「消えてく・・・・!?」

 

「え?ウソ?これボクらの勝ち?まだ倒してないよ?」

 

だが、ジルコニスは最後の足掻きで暴れ出す。

 

「人間如き・・・・人間如きがぁ!!!」

 

「・・・・ごめんなさい」

 

そんな暴れるジルコニスの前に、一人の女性が出る。

 

「時をつなぐ扉を建造したのは私です。あなた方の自然の時の流れを乱してしまった。あなたは400年前に生きる者。我々は現在に生きる者。本来・・・・争うべき理由が全くないもの同士。それを歪めてしまったのは私です。」

 

「何だ貴様は……」

 

「ヒスイ・E・フィオーレ。」

 

「ヒスイ?」

 

「そう・・・・あなたの体の色と同じ翡翠です。」

 

「同じ・・・・だと?」

 

「同じです・・・・翡翠の竜よ

 

(・・・・あれ姫さんがつけたのか・・・・)

 

それを聞いていたグランはふとそう思った。

 

「翡翠の竜・・・・悪くない響きだな。・・・・ん?うわっちょっと待て!!くそっ!!ハメられた!!オレは・・・・」

 

最後の最後にハメられたジルコニスは最後まで言う事なく帰って行った。

 

次々と他のドラゴンも元の時代に帰って行った。

 

・・・・それはハリドロングも同じ事。

 

「・・・・・・・・グワハ・・・・ハハハッ!・・・・・・・・我が負けるとはな」

 

「・・・・なんだ、意識あったのか」

 

「・・・・人間・・・・貴様の・・・・名は・・・・」

 

「・・・・グラン。グラン・ワームランド」

 

「・・・・・・・・グワハハハ・・・・覚えておこう・・・・・・・・我を倒した・・・・人間の名を・・・・・・・・」

 

そう言って、ハリドロングも帰っていった。それを目に焼き付けながら、グランはウェンディ達の元へ向かった。

 

「・・・・俺も覚えておくよ。ハリドロング・・・・一度、俺を殺したドラゴンとしてな」

 

夢・・・・いや、あの一つの現実で起きた事を思い出しながら・・・・グランはハリドロングの名を頭に刻み込んだ。

 

「グラン!!凄いね!!ドラゴン、やっつけちゃったね!!」

 

「・・・・まぁ。偶々だがな」

 

「その偶々も俺らには出来なかったんだぞ?・・・・ったく、呆れるほど強くなっていくな、お前。」

 

「・・・・まぁいいや。・・・・戦いは終わったからな」

 

「・・・・そうだな」

 

「・・・・うん!」

 

滅竜魔導士は・・・・グランを除いた全員がドラゴンを倒せていなかった。それほどまで強力なドラゴンとの戦いに・・・・生き残り、この世界を守れただけでも・・・・我らの勝ちである

 

「・・・・・・・・」ギュッ

 

「・・・・どうした?ウェンディ?」

 

先ほどまで、グランの勝利を自分のことのように喜んでいたウェンディは・・・・グランに抱きついた。

 

「・・・・グランは・・・・私とシャルルを置いて死なないよね?」

 

その目に、涙を溜めながらグランに問いかける。あの時・・・・あの光景が・・・・ウェンディは頭から離れない。自分のせいで、あぁなってしまったと・・・・そのせいでグランが・・・・と考えてしまうから。

 

「・・・・安心しろよ、ウェンディ」

 

そんなウェンディを抱き返すグラン。優しく、その小さな体を包むように

 

「・・・・俺はウェンディとシャルルを置いて死なねぇよ。絶対にな」

 

「・・・・うん・・・・うん!」

 

ウェンディはさらに強く腕に力を入れて、グランを抱きしめる。そしてグランは、ここに誓う、決して死なないと。何があっても、ウェンディとシャルルの元に戻る・・・・と。

 

 

 

X 791年 7月7日。ドラゴンの襲撃を回避、エクリプスを破壊・・・・ここに、新たな未来へと進みだした。

 

その未来に待っているのは、絶望か、希望か・・・・まだ、分からない。

 

だが・・・・今はそんな先のことよりも・・・・今この勝利を喜ぼう。

 

皆で掴んだ・・・・この未来(希望)

 



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第四十六話 打ち上げパーティ

 

大魔闘演武・・・・そしてドラゴン襲撃から数日後。フィオーレ王国・・・・そして世界を守ってくれた魔導士達を労う為と、大魔闘演武の打ち上げのために、お城でパーティを開く事になった。

 

「わぁ、凄いね、グラン!!」

 

「・・・・豪勢なもんだな。あ、その格好似合ってるぞウェンディ」

 

「ありがと!グランもカッコいいよ!」

 

当然、妖精の尻尾のメンバーも参加している。いつものような格好でなく、しっかりと正装に着替えての出席だ。

 

「・・・・城の中だってぇーのに、いつもと変わらずいるのは凄いよな」

 

「妖精の尻尾だけじゃなく他のギルドもね」

 

「みんなそれだけ楽しいって事だよ、二人とも」

 

そして、城の中でも変わらないテンションでいられるみんなに若干の呆れ言葉を告げるグランとシャルル。

 

まぁ・・・・それが魔導士って奴だからな。

 

「・・・・俺らも楽しむか」

 

「そうだね!」

 

「全く・・・・まっ、楽しませてもらいましょ」

 

そう言って皆のところまでいき、パーティを楽しんだ。その途中でシェリアと出会い、一緒に楽しんでいる途中少しその場を離れたグラン。・・・・そして

 

「・・・・迷った」

 

人混みにのまれウェンディ達の場所が分からなくなり迷ってしまったグラン・・・・コイツ緊急時以外、方向感覚がポンコツすぎる。

 

「一人とは珍しいな、グラン」

 

「・・・・エルザさん。ども」

 

迷ってる途中で、エルザと遭遇した。そんなに一人は珍しいだろうか?と考えているが・・・・仕事とか以外は基本ウェンディと一緒だろうが、お前。

 

「聞いたぞ、ドラゴンを一頭倒したそうだな。流石だな」

 

「偶々だったがな」

 

「ふふ、謙遜するな。・・・・む?」

 

「・・・・ん?」

 

「あっ」

 

たわいもない話をしている時、エルザが誰かに気付きそちらをむき、グランも一緒に向く。そこにいたの人魚の踵のカグラだった。

 

「もうケガはいいのか、カグラ」

 

「・・・・それアンタがいうことか?」

 

「同意だ。・・・・お前とは初対面だったな。一応自己紹介しておく、カグラだ」

 

「・・・・ん?あぁ、グランた。よろしく」

 

「こちらこそ」

 

一応初対面だという事で、軽い自己紹介と拍手を交わす二人。

 

「良き友人になりそうだな。・・・・いろいろあったが、どうだ。私とも友人になってくれないか?同郷・・・・だしな」

 

「・・・・あ、同郷なんだな2人」

 

「あぁ。・・・・それでどうだ?」

 

「断る」

 

「!!」

 

友人になろうと聞くエルザに対し、即答気味に断るカグラ。少し驚いたが・・・・次に出てくる言葉で色々吹き飛んだ。

 

「姉さん・・・・の・・・・方が・・・・好ましい・・・・」

 

「・・・・やれやれ、かわいいやつだ!」

 

そう言いながら、エルザはカグラを胸へと抱き寄せた。カグラも冗談だ!と強めにいっているが、どこか嬉しそうだった。

 

それを邪魔するまいと、その場を離れようとしたグランは・・・・エルザに止められ、引き寄せられた。

 

「・・・・え?なんで?」

 

「何を言う。お前も恥ずかしがらず、姉に甘えてこい」

 

「なんで????」

 

そう言えば、グランも冗談混じりにそう言ってたような・・・・ふっww

 

「・・・・ならば、私も姉と呼んでいいのだぞ?」

 

「え?なんで?」

 

何故かカグラもグランの姉を名乗ると言いだした。・・・・よかったね、姉が2人できてww

 

「ちょっと待て、グランの姉は私だ。そこは譲らんぞ」

 

「アンタはアンタで何言ってんの?姉じゃねぇだろうが」

 

「いや、見たところグランは私よりも年下だ。なればこそ私が姉になるのが自然だ」

 

「不自然だよ」

 

だいぶよく分からん事になってきたので、どちらが姉か議論をしている2人のそばをそっと気配を消して、その場を離れたグラン。・・・・・・・・なお、この議論はどちらも納得出来ず、2人姉という事に決まったとか決まらなかったとか・・・・

 

 

 

 

「ナツさーーーん!!!グランさーーーーん!!!一杯やろうぜーーーーーっ!!!」

 

「やりましょう!!ナツ君!!グラン君!!」

 

「火竜ならいねーぞ」

 

「・・・・ガジルには用はないってさ」

 

「ウルセェぞグラン!!」

 

エルザとカグラから逃げてきたグランは、ウェンディ達を探す途中ガジルと合流し、軽い談話をしているとグラスと酒を持ったスティングとレクター・・・・ローグにフロッシュ・・・・さらにガイヤがやってきた。

 

「あっれーーーー!?せっかくお近づきの印にって思ったのにーーーーっ」

 

「作戦失敗ですね」

 

「まぁ元々無理な作戦だったしね〜」

 

「フローもそーもう」

 

「・・・・お前、セイバーに戻ったんだな」

 

「まぁね、なんかあの髭面とミネルバさん姿くらましちゃったらしいからね!じゃあ戻ろう!!って事でスティングにお願いしたんだ〜」

 

ちゃっかり剣咬の虎に戻ってるガイヤ・・・・まぁそこはどうでもいいや

 

「・・・・なんかすんごい失礼な事言われた気がする」

 

「どうでもいい」

 

「ひどいっ!!?」

 

「まぁナツさんいなくてもグランさんいるからいいや!!一杯やりましょーーーっ!!」

 

「・・・・鬱陶しい」

 

「すいません・・・・不器用なもんですから」

 

「ギヒッ、いいじゃねぇか。仲良くしてやれよ」

 

ローグと何やら話していたガジルもグラスを片手に持って近くにきた。

 

「妖精と虎の友情に乾杯!!」

 

「・・・・友情?」

 

そこは気にしてやんなよ。まぁそんな感じでスティングとグラスをうち合わせたグラン。

 

「・・・・ってか、ガイヤ。ユキノはどした?」

 

「・・・・・・・・それ今言う?」

 

そして一言余計?な事を言って若干空気が凍った。

 

・・・・それを狙ってなのか、ミラとルーシィと共に・・・・ユキノがこの場に現れた。

 

「・・・・気まずいな」

 

「・・・・言わないでよ〜〜」

 

空気を読め大地コンビ。

 

「ユキノ」

 

とフローがそう言いながらユキノに近づくが、ユキノはそそくさとどこかへ行こうとする。

 

「す・・・・すみません。私・・やっぱり来るべきでは・・・・」

 

「待って!!」

 

それをスティングが止める。バツが悪そうに顔を晒しながら話を続ける。

 

「悪ぃ・・・・来てるのは知ってたが・・・・タイミングは分からなくて・・・・」

 

(・・・・知ってたんだな)ヒソヒソ

 

(ボクが言っといたんだけど・・・・ヘタレめ)ヒソヒソ

 

だから空気読めって

 

「マスターとお嬢は姿をくらませたんだ。俺たちは一からもう一度剣咬の虎をやり直す」

 

(・・・・捨てられたダメな彼氏が言いそうな事だな)ヒソヒソ

 

(この場合、親に何も言えず言われるがまま彼女を捨てた奴の言い訳だよねぇ〜)ヒソヒソ

 

「お前にはその・・・・いろいろ冷たくあたったけど・・・・これからは仲間を大切にするギルドにしたい」

 

(・・・・頑張ってよりを戻そうとしてる元カレって感じがすげえな)ヒソヒソ

 

(そんなヘタレにユキノは渡せない、ボクが守る。・・・・このまま後ろからズドンと)ヒソヒソ

 

「・・・・あの・・・・さっきからヒソヒソとやめてくれないか?」

 

あ、やっと突っ込んだ。

 

「ウルセェぞ、ヘタレ」

 

「素直に戻ってほしいって言えよヘタレ。じゃなきゃ沈めてやろうか!!」

 

「え、えぇ・・・・」

 

この2人はユキノのなんなのだろう?特にガイヤ。

 

「・・・・まぁ、その。だから、戻ってきてほしい・・・・ってのは調子いいかな」

 

「・・・・私は」

 

「・・・・どうしたー。いつもの勢いはどーしたー」

 

「そうだそうだ!!もっと誠意を見せろ!!頭を下げろ!!」

 

「・・・・いや、だから・・・・」

 

まだまだヤジを投げてくる2人にもう一度突っ込もうとした時・・・・まさかの第三者がやってきた。

 

「無論!!!調子がよすぎて笑えるぞ!!」

 

「!!」

 

「カグラ様!!?」

 

「・・・・嫌な予感」

 

「え?何?何?」

 

見た通り酔っ払っているカグラが・・・・いや、人魚の踵がやってきた。

 

「ユキノの命は私が預かっておる。ユキノは人魚の踵がもらう!!!異論は認めん!!さぁ!!ユキノ!!我が弟と共にこちらに来い!!」

 

「「「「何ィーーーーーーーー!!!!?」」」」

 

「え・・・・ええ!?そ、それに・・・・我が弟って・・・・??」

 

「・・・・まだ言ってんのかよ」

 

突然の申し出に、剣咬の虎は飛び上がって驚く。ユキノも当然の如く慌てふためく。そしてグラン・・・・は割といつも通りか

 

「アンタ酔ってるだろ!!ってか弟ってグランさんか!?アンタの弟じゃねぇだろ!!」

 

「うるさい!!ユキノはマーメイドのモノだ!!そしてグランは我が弟だ!!」

 

「待てーーい!!!!」

 

「・・・・今度はなんだ」

 

虎と人魚で睨み合っていると・・・・そこに更なる乱入者が!!

 

「それはウチも黙ってられんな。ユキノは我々がいただく。無論、我が弟も当然妖精の尻尾のモノだ!!」

 

「漢だな!!」

 

「そーよ!流れ的にウチに入るって感じじゃない!」

 

「オウ」

 

「ジュビア的にはグレイ様の嫁候補はこれ以上要りませんが」

 

「キャラ被ってるけど…」

 

まさかまさかの妖精の尻尾参戦!!そして誰もエルザの弟発言にツッコまない!!

 

「妖精の尻尾の皆様まで・・・・」

 

「・・・・誰かエルザさんの我が弟発言に突っ込んでくれよ」

 

もうそこは気にしなくていいと思う。

 

「いいや…君のような美しい女性は」

 

「僕たち青い天馬に入ってこそ」

 

「輝くぜ」 

 

「くんくん✨なんと美しく可憐な香り✨」

 

「ウチにいらっしゃいよ」

 

「もちろん、グラン君も大歓迎さ」

 

「君も入れば、天馬はさらに飛び立てる」

 

「うむ✨君ほどのイケメンなら歓迎しよう✨エルザさんの大切な弟君だからな✨」

 

青い天馬も参戦してきた。もう当然のようにグランも入る感じなのか

 

「そういう事なら、この蛇姫の鱗もユキノ&グラン争奪戦に参加しよう」

 

「張り合ってどうする。・・・・だが、まぁグラン殿もユキノ殿も歓迎しよう」

 

「ウチに来いっての!」

 

「キレんなよ」

 

「漢くせぇギルドに一輪の華ってのも魂が震えらァ!さらにグランもくりゃぁ、さらに“漢”になるゼェ!!大会はどうでもいいが、この戦いだけは絶対に勝つぞォ!!」

 

「「「「うおおおおお!!」」」」

 

さらにさらに、蛇姫の鱗と四つ首の仔犬・・・・じゃなくて四つ首の猟犬も参戦してきた。

 

「ちょ・・・・ちょっと皆様・・・・」あたふた

 

「・・・・だからなんで俺まで・・・・マスターもなんか言って・・・・」

 

「やってやろうじゃねぇか」

 

「大会の憂さ晴らしに丁度いいぜ」

 

「回るよ」

 

「若い頃の血がふつふつしちゃうわ〜」

 

「・・・・あぁ、もうダメだな」

 

止めるべきマスター達も全員やる気だ・・・・もうどうしようもないな

 

「あわわ、どうしよう・・・・グランが他のギルドに行っちゃう!??」

 

「大丈夫だよウェンディ・・・・これも“愛”だよ。・・・・でも蛇姫の鱗に来てくれたら嬉しいなぁ〜」

 

「え!だ、ダメだよ!!?いくらシェリアでもグランはあげないよ!!」

 

ウェンディはこんな時でも可愛らしい・・・・そんな感じで現実逃避しているグラン。・・・・そして始まる大乱闘!!

 

「オラーーー!!!」「くらえーー!!」「このクソ天馬ァ!!!」「バカヤロォ!!」「マカロフの髪をむしれ!!」「それはヒドイ」「やっちまえーーーーっ!!」「ババァ脱ぐなーーっ!!?」「うわーーーーっ!!!大乱闘だーーーーーーっ!!!!」

 

もはやパーティ会場はカオス状態となった。人は飛ぶ、机や椅子は壊れる。もうしっちゃかめっちゃかだ。

 

「・・・・なんていうか、愛されてんな、ユキノ」

 

「・・・・それは・・・・グラン様も・・・・ですっ」

 

よく見るとユキノの目から涙が流れていた。・・・・でもそれは悲しみからではない

 

「・・・・泣くほど嫌なのか?」

 

「いいえ・・・・いいえ!!・・・・だって・・・・ウソでも嬉しくて」

 

それは嬉しさから来る涙だった。憧れのギルドから一方的にやめさせられ、どこにも居場所がなかった少女には・・・・彼女が思ってる以上に彼女の居場所が存在していた。

 

「・・・・こんな時に、ウソはつかねぇよ。・・・・よかったな、こんなに居場所があって」

 

「はい・・・・」

 

ユキノは・・・・その顔にやっと笑顔が宿った。それを見て、グランも・・・・珍しく・・・・本当に珍しく、ウェンディやシャルルに向けるような優しい笑顔をユキノに向けた。

 

「・・・・///」

 

「・・・・どした?顔赤くして?」

 

「・・・・い、いえ///」

 

・・・・・・・・爆ぜろ。

 

「皆の者!!そこまでだ!!陛下がお見えになる!!」

 

と、アルカディオスがこの場に現れた事で先ほどまでの大乱闘は、ピタッと止まった。・・・・もうちょい早く止めて欲しかったけど

 

「この度の大魔闘演武の武勇と、国の危機を救った労をねぎらい、陛下直々に挨拶をなされる。心せよ。」

 

アルカディオスのその言葉が終わってから、奥の垂れ幕からやってくる。しかし、そこに現れたのは王様でなく・・・・ものすごい見慣れた人物だった。

 

 

「皆の衆!楽にせよ!!かーっかっかっかっかっかぁ!!」

 

 

「返すカボ!!」

 

王冠を被り、偉そうにしているナツだった。・・・・見ないと思ったら何やってんだ、アイツ。

 

「オレが王様だーーーっ!!!王様になったぞーーーーーーーっ!!!!!」かーーかっかっかっ!!

 

「・・・・何やってんの?・・・・あ、マスター燃え尽きた」

 

・・・・なんか色々しまらないが・・・・妖精の尻尾らしいといえばらしい感じだな。

 

これで、波乱も波乱な大魔闘演武及び、世界の運命をかけた戦いは終わりを告げる。

 

・・・・前も言ったが、これから起きる事は完全に予測不能だ。まだまだ絶望の種は残っている。

 

バラム同盟の最後の一つ、“タルタロス”。四百年起き続けている不死の黒魔導士“ゼレフ”。・・・・そして、最悪の災害“アクノロギア”。

 

・・・・まだあるかも知れないが・・・・今一度、この時を祝おう!!

 

この先どんな未来が待っていようと

 

 



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第四十七話 ギルドへ帰郷

 

それからまぁ、色々あったが、グラン達はマグノリアへと向かっていた。

 

「色々あったけど楽しかったね、グラン!シャルル!」

 

「・・・・そうだな〜」

 

「そうね、だけどちょっとだけボロ酒場が恋しいわ・・・・というか、グラン大丈夫なの?」

 

「・・・・何故か大丈夫だ」

 

「な・・・・・・・・なん・・・・で・・・・うぷっ」

 

「知らん」

 

「だから走って行けって」

 

マグノリアへは馬車に乗って移動するため、ナツは当然グロッキーになっているのだが・・・・何故かグランは平気な様子だ・・・・なんでだろうな。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・なんかあったのか、グレイ?」

 

外を眺めながら、どこかほおけているグレイに声をかけるグラン。

 

「いや、別に・・・・っ!!」

 

と、こちらを向き返事をしたグレイはもう一度外を見た瞬間、なにかに気づいた。

 

「止めろ!!!馬車を止めろ!!」

 

「どうしたの!?」

 

いきなり大声を上げて、馬車を止めるように言い出した。他の皆も何事かと驚くが、すぐに「・・・・いや・・・」と、俯き気味に座り込んだ。

 

彼が何を・・・・いや、誰を見たのかは分からないが・・・・聞くのは野暮であろう。

 

今は帰ろう。自分達のギルドに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たぞ!帰ってきた!!」

 

「早くー!みんな、こっちこっち!」

 

「待ってましたー!!!」

 

「おかえり、みんなー!!」

 

「皆さーん!大魔闘演武優勝ギルドをぉ・・・・盛大な拍手で迎えましょう!!」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)凱旋ーーーーーーー!!!!」

 

 

マグノリアに戻って早々に、街の人・・・・いや、マグノリアの近隣からも人が集まり、妖精の尻尾の帰還を待ち望んでいた。

 

その中には、あの・・・・あの・・・・・・・・・・・・あのギルドも帰還を迎えてくれた!!

 

「皆さん、応援ありがとうございました。」

 

「もう!!シャキッとしなさいよ。」

 

「・・・・無駄に多いな、おい」

 

「グランさーーーん!!ジュラ戦、最高の戦いでしたーーー!!」

 

「ガイヤ戦もカッコよかったですーーー!!」

 

当然、大会を見ていた人たちもいるようで、グランを見るととてもすごかったと多くの称賛の声と激励の声が聞こえてくる。・・・・主に女性から。

 

「・・・・照れるな」

 

「全然照れてないじゃない」

 

「・・・・むぅ〜」

 

全く照れた様子なく手を振っているグランにツッコミを入れるシャルルと、頬を膨らましているウェンディ。・・・・可愛い。

 

「街のみんなにいいモン見せてやるぞ〜・・・・じゃーーーん!!」

 

と、ナツが担いでいた袋を地面に下ろし、袋の中から取り出したのは国王杯!!・・・・・・・・ではなく、国王の冠だった。

 

「国王の冠!?」

 

「とってきちゃったんですか!?」

 

「・・・・あ〜あ」

 

「あ・・・・これじゃねぇや。」

 

周りの声をガン無視してナツはまた袋を漁り始める。

 

 

「優勝の証!!国王杯!!」

 

 

そして今度こそ、大魔闘演武で優勝した証・・・・国王杯を取り出した。とりあえず、冠のことは皆一旦忘れて、優勝したという事実に対し、喜んでいた。

 

・・・・大丈夫だよな・・・・・・・・多分。

 

「えー、これよりマグノリア町長から、記念品の贈呈です。」

 

「コホンっ」

 

「記念品とな?そんな気を使わなくても」

 

「妖精の尻尾の皆様・・・・どうぞこちらへ」

 

そう言って町長は腕を広げて奥にあるものを見せる。町長から・・・・いや、マグノリアから妖精の尻尾への記念品・・・・それは、とても懐かしいモノだった。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)は我が街の誉れであります。よって、ギルドを修繕して贈呈したいと思います。」

 

 

「ギルドが元通りだー!!」

 

「あいさー!!」

 

ボロボロで・・・・ずっと放置され、廃墟当然だったギルドが元通りに戻っていたのだ。

 

「うわ〜!!ギルドが直ってるね、グラン!!」

 

「・・・・これはたまげたな。・・・・ってか、記念品っつってるけど・・・・これ絶対最初から元通りにするつもりだっただろ」

 

「そこは気にしなくていいんじゃない」

 

そりゃそこ言ったら終いだろ。

 

「ワシはこの街が大好きじゃあ〜!!」

 

と、マカロフは嬉しさの余り感極まって泣き叫ぶ。その声はマグノリア中に響くほど。皆もその様子を見て、笑い、喜んでいた。

 

そんな街の様子を遠くから見ている怪しげな小さな影。

 

「キキッ……」

 

小さな黒い猿・・・・猿・・・・か?・・・・まぁいいや。大鴉の尻尾にいた、オーブラが使っていた生物・・・・いや、あれはただの人形だったらしいから・・・・こちらが本体か。そいつは、街を駆け抜け、近くの森へと走り抜けていき、遠く移動して・・・・黒魔導士ゼレフの元へと到着した。

 

「やはり大魔闘演武を見ていたのですね、ゼレフ。」

 

そしてそれを追ってきたメイビス。

 

「声は聞こえず、姿も見えず。だけど僕には分かるよ。そこにいるんだね、メイビス。」

 

妖精の尻尾の紋章がなければ見えず聞こえないはずのメイビスの存在を、ゼレフはそこにいると断言した。

 

メイビスはゼレフの後ろに降り立ち、話し始める。聞こえていないはずなのに、なぜか会話ができている。

 

「7年前、あなたは私の近くにいた。」

 

「7年間、君は僕の近くにいた」

 

「貴方は、まだ自分の死に場所を探しているの?」

 

「死に場所はもう決まっている。僕は何百年もの間・・・・時代の終わりを見続けてきた。人々の争い、憎しみ、悪しき心。新たなる時代において、それらの浄化をいつも期待する。もう何度目だろう・・・・人々は繰り返す、何度でも同じ過ちを。」

 

「それでも、人は生きていけるのです。」

 

「生きていないよ、本当の意味では。人と呼べる愛しき存在は、もう絶滅している。」

 

「もう・・・・待つのはやめたのですか。」

 

「そうだね、7年も考えて出した結論なんだ。世界が僕を拒み続けるならば、僕はこの世界を否定する。」

 

「妖精の尻尾はこの世を肯定するでしょう。」

 

「これは僕からの贈り物・・・・世界の調和、そして再生。」

 

「・・・・戦いになるのですか?」

 

「・・・・いいや。

 

一方的な殲滅になるよ、誰一人として生かしてはおけない。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)が阻止します。滅びるのは・・・・貴方の方だけです、ゼレフ。」

 

 

睨み合う両者・・・・ゼレフの影響で周りの木々は死んでいく。・・・・そして、思わぬ第三者がこの場にいた。

 

「・・・・随分な場面に出くわしちゃったなぁ・・・・おい」

 

「っ!」

 

「っ!・・・・グラン!?」

 

「どうも、初代。・・・・ゼレフにきぃとられすぎじゃないっすかね」

 

なんとそこにいたのは、マグノリアにいるはずのグランだった。実はあの時、黒い猿・・・・もうこいつがオーブラでいいや。オーブラがいるのが見えたグランは、ウェンディとシャルルにやったことに対しての事をまだやり返してなかった為、こっそり跡をつけてきたのだった。

 

「・・・・君は」

 

「どうも、ゼレフ。覚えてるかどうかしらねぇがな」

 

「・・・・いや、覚えているよ。七年前、あの場にいたからね」

 

「あっそう。・・・・アンタが殺したザンクロウなら、今も天狼島で眠ってるよ」

 

さて・・・・と、言葉を一度区切りグランはゼレフに近づいいく。ゼレフの呪いをモノともせずに。

 

「・・・・色々言いたいが、死に場所は決まってるって言ってたな。だが、ラッキーだぞ?・・・・オレが直々に地獄に送り込んでやれる。・・・・お前が何をしようが・・・・妖精の尻尾(俺たち)を敵に回した事・・・・必ず後悔させてやるからな

 

大地が震え・・・・死んだはずの地が蘇る。覆した・・・・ゼレフの呪いを・・・・矛盾の呪いの力を

 

・・・・こいつドラゴンの腕食ってからさらにヤバくなってねぇか?

 

「・・・・そうか。それでも、結果は変わらないかも知れないね」

 

そう言いながら、ゼレフはその場を去っていった。

 

そこに残ったのは、グランとメイビスだけ。

 

「・・・・いけすかねぇな」

 

「・・・・あなたは、私と彼に何かあるのかと、聞かないのですか?」

 

「・・・・そこは興味ねぇし」

 

「えぇ・・・・」

 

最後まで締まらないやつだな、おい。

 

 

 

 



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第四十八話 ウォーロッド・シーケン

 

大魔闘演武が終わって数日・・・・妖精の尻尾は大会の活躍もあり、依頼が殺到していた。

 

今日グランは、ウェンディ、シャルル、エルザと共に一つの依頼を終えて、軽い談話をしていた。

 

「おかえりなさい」

 

「・・・・よっ」

 

「邪魔をしているぞ」

 

「なんか懐かしー!!」

 

ルーシィの家で。

 

「すみません、勝手にお邪魔しちゃって。」

 

「中々いい部屋じゃない。」

 

「報酬で貰ったスイーツだが……ちょっと私たちでは多すぎてな。お裾分けに来たというわけだ。」

 

「わぁありがとう!」

 

・・・・チョロい。もう勝手に家に入ってる事を気にしてない。

 

「じゃあ仕事上手くいったんだね!」

 

「え・・・・まぁ」

 

「バッチリだ。」

 

「・・・・なぜあれでバッチリと言える」

 

グラン達がやった仕事は、とある演劇に参加する事なんだが・・・・まぁ、エルザの演技が・・・・・・・・うん。

 

「それより、ハッピー達はまだ帰ってきてないの?」

 

そうそう、珍しくナツとグレイの2人で仕事に行っているのだが・・・・まだ帰ってないらしい。

 

「簡単な仕事って言ってたのに……遅いね。」

 

「馬鹿な……もう3日も経っているんだぞ。」

 

「近場のはずだから、ちょっと見に行ってみようか。」

 

「・・・・心配だもんな」

 

「別に心配してるわけじゃないんだけど……」

 

「そうだな……あの二人の実力でこれほど遅いとなると、些か気になる。」

 

「何かトラブルでもあったんですかね?」

 

「・・・・どうせ喧嘩でもしてんだろ」

 

「待って!!あたしも行く!!」

 

というわけで、みんなでナツとグレイが仕事で行っている場所まで向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、依頼場所に到着する。一同の目の前には巨大なモンスターが倒れていた。

 

「でかっ!!」

 

「これは……」

 

「依頼書のモンスターです!!」

 

「・・・・豚?・・・・って事は依頼自体は終わってんだな」

 

と近くの茂みから木の棒をつきながらふらふらのハッピーが出てきた。

 

「シャルルゥ〜・・・・助けてぇ・・・・」

 

「ハッピー?」

 

「何があったんだ?」

 

「それが・・・・」

 

「いい加減にしろよクソ炎!!」

 

「それはこっちのセリフだヘンタイ野郎!!」

 

とハッピーが説明をしようとした時、近くからとても聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「てめーはいつも考えなしに突っ走りやがるから!!」

 

「てめーがモタモタしてっから!!」

 

ナツとグレイだ。顔は互いに腫れてボロボロだが・・・・取っ組み合って喧嘩していた。

 

「あぁ」

 

「・・・・やっぱりな」

 

「いつもの事か。」

 

「心配してたのに……」

 

「3日もこれ続けてんの?」

 

「寝たりご飯食べたりはしてるよ……」

 

「あら、可愛らしい喧嘩ですこと。」

 

「こら・・・・お前達、その辺にしないか。」

 

流石に止めた方がいいと思い、エルザが近くにいき喧嘩をやめるように言う。これならこの2人も止まるだろう・・・・そう思っていたが

 

「「うるせぇ!!」」

 

ゴッ!!

 

だが2人ともエルザだとは気付かず、2人同時に殴りつけた。・・・・当然、そんな事をされて黙ってるエルザではなく

 

「……ほう?」

 

「エルザーーーーーーー!!!!」

 

「なんでここにーーーーーーー!!!?」

 

ぎゃあああああああああ!!

 

うぎゃあああああああああっ!!

 

殴ってからエルザに気づいた2人は・・・・仲良くエルザにボッコボコにされました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「あはははははっ!!」」」

 

ギルドに戻ってからは、2人の喧嘩やエルザにやられた事はみんなの笑い話に変わっていた。2人は変わらずブスッとしているが。

 

「仕方ねぇなぁ二人とも。」

 

「もう二度とこいつとは仕事行かね」

 

「こっちから願い下げだ馬鹿野郎。」

 

「ガキじゃあるまいし」

 

まだ子供のロメオに言われちゃおしまいだな。

 

「ナツ!グレイ!またおまえら2人を指名の依頼書じゃ!!」

 

「「またかよ!!」」

 

「そっか・・・・そういう理由であの二人だったんだ」

 

「せっかくの指名だ!今度は仲良く行ってこい。」

 

「む?むむむ……?」

 

「なんだよじっちゃん。」

 

「オレはもうこいつとは行かねー」

 

「俺も行かねー」

 

「触んな」

 

何やら真剣に依頼書を見ているマカロフに対し、もう行かないと言うナツとグレイ。

 

「いや……行かねばならん・・・・そして・・・・絶対に粗相のないようにせよ・・・・」

 

だがそんなマカロフの真剣な声を聞き、ナツもグレイも口論を止める。

 

「依頼主の名は、ウォーロッド・シーケン。聖十大魔道 序列四位・・・・イシュガルの四天王と呼ばれる方々の1人じゃ」

 

「「「「!!!!!????」」」」

 

まさかの依頼者にギルド中がざわめき出す。聖十大魔道・・・・それも序列四位の大魔導士が、あの二人にどんなようなのか・・・・と。

 

「・・・・ウォーロッド?・・・・あー、あの木のじーさんか」

 

「そう・・・・あの木のじーさ・・・・んんっ!?」

 

「「「「んんんっ!!?」」」」

 

ボソッとつぶやいたグランの言葉に、ギルド中が驚愕する。気のせいだろうか?今、グランの口からウォーロッドの事を知ってる風に聞こえたが?

 

「グラン、知ってるの?」

 

「・・・・ん?・・・・あー、昔な。名前も見た目も割と特徴的だったから覚えてるだけだ。・・・・確か、ギルドを引退してから趣味・・・・・・・・慈善活動で砂漠の緑化活動をしてたはずだぞ」

 

「へぇ〜。すごい人なんだね!!」

 

うん、すごい人なんだよ。聖天大魔道の序列四位なんだからすごい人なんだよ。そこじゃないんだよ。ど天然かコイツらは

 

後なんで趣味から慈善活動って言い直した?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、ナツとグレイはウォーロッドの元へと向かっていった。

 

「のどかなところですね。」

 

「うん、空気も美味しいし。」

 

「風も心地いいな。」

 

「なんか、ピクニックみたいで楽しいよね。」

 

「そうね。」

 

「・・・・あれがなけりゃぁな。」

 

「俺の肉食っただろぉ!」

 

「テメェのもんなんか食うかよ!!」

 

「てか服着ろよ!!」

 

「髪の色が目にいてぇ!!なんとかしろよ!!」

 

二人だけでは心配なので、ルーシィ、エルザ、ウェンディ、グラン、ハッピー、シャルルも一緒に着いてきたのだが・・・・案の定喧嘩ばっかしている。というか髪の色が痛いって・・・・もはや言いがかりレベルだろ。

 

「いい加減にしないか、これからとても位の高い人に会いに行くんだぞ?」

 

「2人だけじゃ心配だからついてきたけど……先が思いやられるわ。」

 

「・・・・あのじーさんなら、そういう事あんま気にしねぇが・・・・まぁそれ以前の問題だよな」

 

「聖十大魔道って言えば、評議院が定めた大陸で最も優れた魔導士10人……だっけ?」

 

「そうだ、ウチのマスターやラミアのジュラもその1人だ。かつては、ファントムのジョゼやジェラールもその称号を持っていた。中でも、序列上位の4人はイシュガルの四天王と呼ばれる大魔導士だ。」

 

「ちょっと緊張してきたかも・・・・」

 

「・・・・割と気さくなじーさんだぞ?・・・・・・・・・・・・だいぶめんどくさいが」

 

「え?」

 

「イシュガル?」

 

「この大陸の古い名だ。」

 

「・・・・でも、そんなすごい人がなんで・・・・あんなのをご指名で…」

 

ルーシィが見た先には・・・・まだ睨み合い歪み合う二人がいた。

 

「てめぇなんかエルザに食われちまえ!!」

 

「てめぇこそエルザの糞にまみれてろよ!!」

 

「今・・・・わたしがディスられているのか。」

 

「・・・・あの二人にとって、エルザさんはどういう扱いなんだ?」

 

なんかもうよくわからない喧嘩をしているが・・・・大丈夫だろうか?

 

「あ!見てください!あそこに家があります」

 

と、ウェンディが平原の先に家を一つ見つけた。

 

「ここか、聖十大魔道序列四位・・・・ウォーロッド・シーケンの家」

 

ようやく辿り着いた。皆で家まで行き中に入っていく。

 

「ごめんください、魔導士ギルド、妖精の尻尾の者です。」

 

「・・・・しー。・・・・静かに。」

 

と入った瞬間、中にいた人物から静かにするように言われた。

 

「草木は静寂を好む・・・・理解したなら、その忌々しい口を閉じよ。」

 

それを聞き、ルーシィとウェンディはとっさに口を手で覆う。他の者も口を閉じてじっと黙っていく。・・・・グランだけはめんどなさそうにしていたが

 

「・・・・・・・・なんてな。」

 

その理由はすぐにわかった。一言ボソッと言った瞬間、辺り一面の草木から花が大量に咲き始める。

 

「冗談じゃよ、冗談!!ぷふー!草木も花も人間の声は大好きなんじゃ!!わはははは!!」

 

いきなり冗談だと言い、先ほどの雰囲気とはほぼ真逆のハイテンションで笑い出す。

 

「・・・・・・・・本当に木だ」

 

「・・・・・・・・なんだこのじっちゃん?」

 

「・・・・・・・・本当にスゲー奴なのか?」

 

「・・・・な、めんどくさいだろ?」

 

もうどう反応していいか分からなくなってきて、だいぶ混乱している皆。

 

「いやぁ、よく来てくれたね。妖精の尻尾の魔導士達よ。ナツ君とグレイ君というのはどちらかね?・・・・・・・・ややっ!!予想より猫っぽいな!!」

 

「「・・・・・・・・」」

 

「冗談じゃよ、冗談!!わはははっ!!ぷふっ」

 

ナツとグレイと言いながらハッピーとシャルルを手に取って勝手に驚いて勝手に冗談だといい、勝手に受けてずっと笑ってる。

 

「テンションの高いおじいさんね…」

 

「う、うむ……」

 

「・・・・なっ?気さくだろ?」

 

「おっと、喉が渇いた。うはははははっ!!」

 

と、今度は手に持っていたジョウロから水を飲んでいた。・・・・綺麗なのか?それ?

 

「あああああ……」

 

「失礼ですが、貴方が聖十大魔道のウォーロッド・シーケン様ですか?」

 

エルザが恐る恐ると言った感じでそう聞く。すると、先ほどまで笑っていた顔を真剣に変えて答える。

 

「いかにも!(ワッシ)こそがウォーロッド・シーケン」

 

そう断言し

 

「・・・・冗談だけどな。」

 

「「「「えーっ!?」」」」

 

と付け加え

 

「・・・・というのは冗談じゃ。」

 

とまた付け加える。・・・・本当にめんどくさいじーさんだ。

 

「・・・・相変わらずめんどくせぇな、アンタ」

 

「・・・・ん?おおー!グラン君ではないか!!いやー久しぶりじゃのお・・・・やや?前より低くなっておるな!!」

 

「・・・・・・・・ッッ」

 

そう言いながら、グランの隣にまだ混乱しているウェンディの方を向いて驚いていた。

 

「・・・・おいっ」

 

「ジョーダンじゃジョーダン!!わははははっ!!」

 

「・・・・・・・・とりあえず、依頼の話に入ろうぜ」

 

もう埒があかないのでとりあえずさっさと依頼の話に移ろうという事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一度外に出て、机を囲み話を進める。

 

「私は引退してから、ずっと砂漠の緑化活動を続けてきた。」

 

「はい。グランから聞いてます。」

 

「はっはっはっ!ちょうど緑化活動中にグラン君と会ってな!中々に面白い少年だったが・・・・妖精の尻尾に入っているのは驚いたがな」

 

「・・・・オレの話はいいだろ?依頼の話だよ依頼の」

 

「おお、そうだったそうだった。私は『緑の魔法』を持って砂漠の広がりを食い止める。慈善活動といえば聞こえはいいが、実はただの趣味じゃ。そんなわけで、何年もあちこちの砂漠を旅しておるのだがね。この前奇妙な村を見つけてのう。文献によれば、そこは『太陽の村』・・・・永遠に燃え続ける炎を守護神とし、信仰していた村だった。」

 

「永遠に燃え続ける炎?」

 

「そう……だが、その村は凍りついていた。天災なのか人災なのか……人も動物も植物も・・・・建物も川も・・・・村を守護する永遠の炎さえも凍りついていた。」

 

「炎が凍りついて!?」

 

「そんな……」

 

「・・・・マジか」

 

「マジじゃ。・・・・その村で何があったのかはわからん。だが、氷の中で村人は生きておった。」

 

「氷の中で、生きてるなんて……」

 

「どういうことなの?」

 

「生きた村人が凍りついている。放ってはおけん、その村を救ってほしい・・・・それが、私の依頼じゃ。 」 

 

凍りついた村と村人を救ってほしい・・・・それがウォーロッドからの依頼だった。

 

「なるほど!それなら簡単だ!!俺の炎で全部の氷溶かしてやる!!」

 

「・・・・だが、それならナツだけでいいんじゃねぇのか?」

 

「グランの言う通りだ。そういう事なら俺はいらねぇだろ。」

 

氷を溶かすならナツだけでいい・・・・そう言うグランの言葉を肯定しながらグレイはウォーロッドに聞く。

 

「いや・・・・あれはただの氷ではない。きっと君の力も必要になる。」

 

「・・・・?」

 

ウォーロッドから出た答えは、少し不思議だった。

 

「お言葉ですが、ウォーロッド様。貴方ほどの魔導士ならば、ご自分で解決できる事件では・・・・?」

 

エルザが咄嗟にウォーロッドに聞いた。たしかに、聖十大魔道・・・・それも序列四位ほどの大魔導士ならばそれくらいなら自分で解決できるのではないのか。そう疑問に思ったからこそ聞いた。

 

「君達は、何か勘違いしているのかもしれんな。」

 

「??」

 

だが、ウォーロッドはその言葉を軽く否定する。

 

「聖十大魔道といえど万能ではない。評議院が勝手に定めた10人にすぎん。この大陸(イシュガル)には、私以上の魔導士は山ほどいるし、大陸を出たらそれはもう私など、とても小さな存在。現に私は攻撃用の魔法はほとんど知らぬ。若者と武力で争っても、勝てる自信もない。」

 

「ですが……」

 

「誰にも得意不得意はある。それを補い合えるのが仲間・・・・ひいてはギルドであろう。」

 

そう優しく微笑みながら告げるウォーロッド。・・・・そう、確かにそうだ。皆それぞれ得意不得意がある・・・・それを補い合うのが仲間(ギルド)というものだ。

 

「仰る通りです。」

 

「その依頼引き受けた!」

 

「おう!」

 

「あたし達に任せてください!」

 

「・・・・頑張るか。なっ、ウェンディ」

 

「うん!!」

 

それを聞き一同はさらにやる気を出す。ずっと啀み合い喧嘩していたナツとグレイでさえも、互いに拳を打ち合いやる気を見せている。

 

「それでその村はどこにあるんですか?」

 

「ここから二千kmほど南じゃ。」

 

「・・・・思ったよりあるな」

 

「なーに、移動くらいは手伝ってやろう。そこに集まって、荷物も忘れんようにな。」

 

移動を手伝ってくれると言い、一同を一箇所に集める。

 

「回れ右」

 

「「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」」くるっ

 

「・・・・というのは冗談じゃ。」

 

「「「オイ!!」」」

 

最後まで冗談だらけのウォーロッドだったが、その場で呪文を唱え始める。すると、足元から芽が生えていき、だんだんと大きくなっていく。それは、グラン達全員を乗せることが出来るほどの大きさになっていく。

 

「え?」

 

「なにこれ!?」

 

「うわっ!?」

 

「・・・・ウェンディ、捕まってろ」

 

「う、うん!」

 

「頼んだぞ……妖精の尻尾の若者達よ。」

 

芽は葉となり、幹となり、そしてそのまま木となっていく。そしてそれは物凄い勢いで成長して、凄まじい速度で進んでいく。

 

「木が生き物のように・・・・」

 

「すげぇ!!」

 

「うほぉーーーーーっ!!」

 

「まるで乗り物ですね。」

 

「落ちるわよ。」

 

「・・・・相変わらず、すげぇ魔法だな」

 

「そうだな・・・・謙遜されてはいるが・・・・やはりたいしたお方だ。大自然を操る魔法とは・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グラン達を送り届けたウォーロッドは・・・・昔を懐かしんでいた。

 

「流れておる・・・・な」

 

─────────────────────────

 

───────────────

 

──────────

 

『・・・・・・・・ッ』

 

『ウォーロッド!!早く!!こっちですよーーーーーっ』

 

『っ!』

 

『またボケーっとしやがって』

 

『見ろよ!!完成したんだ』

 

『おお!!これが・・・・私たちのギルド・・・・』

 

『ああ』

 

『さあ、記念撮影ですよー!妖精の尻尾(フェアリーテイル)誕生です!!』

 

─────────────────────────

 

───────────────

 

──────────

 

「・・・・あれから105年か・・・・メイビス・・・・あなたの想いは、若者達に受け継がれておりますぞ」

 

 



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第四十九話 凍りついた村・・・・トレジャーハンター参上

 

ウォーロッドからの依頼を受け、ウォーロッドの緑の魔法で『太陽の村』まで送り届けてもらった一同。ものの十分ほどで目的地まで辿り着いた

 

「着いたのか?」

 

「あっという間だったな」

 

「すごい魔法だったね、グラン!」

 

「・・・・確かにすごかった。」

 

「うぷっ」

 

「酔ったの!?」

 

約一名ほど軽くダウンしているが、とりあえず村まで進むことにした。進んでいくにつれ、岩肌が凍りついており・・・・村につけば、本当に全部凍りついていた。

 

地面も建物も何もかもが凍りついていたのだが・・・・肝心の村人が見当たらなかった。

 

「本当に建物も何もかも凍りついてる。」

 

「何があったんでしょう…」

 

「ウォーロッド様の話では人も・・・・ということだったが・・・・見当たらないな。」

 

「・・・・気のせいか、なんか建物でかすぎねぇか?」

 

「確かに・・・・なんか村全体がでかいような」

 

と歩いている時・・・・ふと、上を見上げてみる。・・・・そして、村人はいた。確かに凍りついていたが・・・・・・・・・・・・普通じゃない。

 

「でかーーーーーーっ!!!?でかっ!!?でかっ!!?でかっ!!!?小っさ。でかーーーーーーーーっ!!!!?」

 

そう、でかいのだ。村人が巨人とか聞いてない。デカすぎてナツなんか何回も巨人と・・・・ルーシィとウェンディの胸を見て叫んでいる。

 

「ここは巨人の村なのか!!?」

 

「あの・・・・今・・私の方を見て何か言いましたか?」

 

「・・・・気にしたら負けだウェンディ・・・・にしても、巨人の村とか・・・・

 

 

『そういえば大事な事を伝えるのを忘れてたような・・・・冗談だけど』

 

 

・・・・とか思ったんだろうな、あのじーさん」

 

「確かに・・・・」

 

「驚いたな……こんなに大きい人間がいるとは。」

 

ナツのように騒いではいないが、やはり驚く一同。

 

「犬も大きいです。」

 

「犬なのかしら……」

 

「・・・・まぁ、オオカミではないな。・・・・多分」

 

「とにかくはえーとこ助けてやらねぇとな!俺の炎で溶かしてやるァ!!」

 

「ナツー!頑張れー!!」

 

「ふぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ!!!」

 

「行けー!!やっちゃえーーーっ!!」

 

早速ナツが自慢の炎で巨人の氷を溶かそうと頑張る。ハッピーも声援を頑張る。

 

「どうなってんだこりゃあ……」

 

「あい……」

 

だが、全く溶けやしない。ナツと何故かハッピーは力尽きたように座り込む。

 

「木のじーさんが普通の氷じゃねぇ・・・・って言ってたけど・・・・なんだ、この氷の感覚は。今までに感じたことの無い魔力・・・・」

 

グレイが氷に触れた時・・・・どこか違和感を感じていた。

 

「お前の魔法でも溶かせないのか。」

 

「そう簡単にはいかないかぁ……」

 

「・・・・けど・・誰かの魔力に似てんだよな・・・・」

 

凍った巨人を触りながら呟くグレイ。

 

「グラン・・・・アンタならこのくらい壊せるんじゃない?」

 

「・・・・その場合、巨人達諸共砕くことになるぞ?」

 

「じゃっ、無しね」

 

さらっと氷は砕ける発言をするグラン・・・・まぁ砕けるが溶かせないからなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・え?炎神の魔法?・・・・知らない子ですね

 

「・・・・おや、先客か?」

 

どうしようかと悩んでいると、唐突に聞こえてくる声。その声の方向を見れば、そこには三人の男が立っていた。

 

「これは参ったね。」

 

「超女子供ばかりだと?」

 

「ドゥーンドゥーン。」

 

「何者だ」

 

エルザがその三人組に向け聞く。

 

「トレジャーハンターギルド」

 

風精の迷宮(シルフラビリンス)。」

 

「ドゥーン。」

 

意外と律儀にその三人組は答えた・・・・のだが、こちらが特に何も反応したないからか少し間を置いて

 

「トレジャーハンターギルド」

 

「風精の迷宮。」

 

「ドゥーン。」

 

「いや、分かった。」

 

また同じ説明を繰り返した。・・・・別に聞こえたなかったわけじゃないんだがな

 

「トレジャーハンターギルドって…」

 

「宝探しが専門って所かしら。」

 

「・・・・めんどくせぇ」

 

「悪ぃが、ここに眠る宝はウチらのもんだ。邪魔は勘弁な。」

 

「宝?」

 

「んなもん興味ねぇよ。」

 

「永遠の炎狙いじゃねぇのかよ!!」

 

「じゃあ魔導士がどうしてこんなとこに超いるんだ!!」

 

「ここの氷を溶かして住人を助けに来たんだ。」

 

「「「・・・・・・・・」」」

 

ハッピーが放った台詞に、三人は一度顔を見合わせる。

 

「それを邪魔っていうんじゃねーか!!」

 

「ドゥーン!!」

 

そして怒鳴りながらそう答える。

 

「永遠の炎は何百年も燃え続ける幻の炎よ。俺達トレジャーハンターの間じゃあ、超S指定されてる超お宝だ。」

 

「けど、村を守る巨人達のせいでお宝には近づけなかった。」

 

「それがどういう訳かドゥーンって凍っちまっただろ?」

 

「今が永遠の炎を狙う絶好のチャンスってわけ。」

 

「でも、その炎はこの村の守り神でとても大切なものだと聞きました。」

 

「勝手に取っちゃうなんてドロボーじゃない。」

 

「・・・・トレジャーハンターじゃなくて、ドロボーハンターか・・・・いやそれだとドロボーをハントしてるみたいか・・・・どうでもいい」

 

「「「・・・・・・・・」」」

 

再びトレジャーハンター達は顔を見合わせる。

 

「トレジャーハンターに宝をとるなって言うのかよ!!」

 

「そんなもん取られた方が超悪ぃに決まってんだろ!!」

 

「ドゥーンドゥーン!!」

 

「・・・・いや盗む方が悪いだろ」

 

「こうしちゃあいられねぇ!!魔導士どもに邪魔される前にお宝頂いちまおうぜ!!」

 

「おしっ!!行くぞ!!」

 

「ドゥーン!」

 

ボソッと言ったグランの言葉は聞こえなかったようで、怒鳴り散らした後すぐさまその場を離れるトレジャーハンター達。

 

「頂くって・・・・残念だが、その炎も凍ってるって話なんだけどな。」

 

「トレジャーハンターの超お宝力、舐めんなョ。この超秘宝『月の雫(ムーンドリップ)』があれば、氷を溶かす事が出来んだョ。」

 

そう言って、トレジャーハンター達は小瓶に入った少量の液体を見せる。

 

「「なーっ!?」」

 

「ムーンドリップって……」

 

「ガルナ島でリオン達がやっていた魔法……」

 

「液体にできたのか……」

 

「……てかアレがあれば村を元に戻せんじゃねぇか!!」

 

「「「あーーーっ!!」」」

 

「追え!!トレジャーハンターを捕まえるんだ!!」

 

「奪えーっ!!」

 

「取っちまえばこっちのもんだ!!」

 

「魔導士なんかに捕まるかよ!!」

 

「あいつらさっきまでの超綺麗事どこに行ったんだ…?」

 

「ドゥーン。」

 

そして、トレジャーハンター達を追いかけていくナツ達・・・・その場にはグランとウェンディとシャルル・・・・そしてエルザだけが残った。

 

「・・・・・・・・行っちゃった」

 

「どうしようグラン・・・・私たちも行く?」

 

「・・・・まぁそうだな。・・・・エルザさんは?」

 

「いや、私は他の手がかりを探そう。」

 

そう言ってその場から離れていくエルザ。・・・・巨人達を壊さないといいんだが

 

「・・・・まぁとりあえずトレジャーハンター共を追うか・・・・正直、あんな量の月の雫でどうにかなるとは思えねぇが」

 

「そうよねぇ。まっ、早く行かないと色々面倒ごと起こしそうだからさっさと行くわよ!!」

 

「うん!行こっ!グラン!」

 

「・・・・了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まてぇー!!」

 

「その雫があれば巨人を助けられるんだ!!」

 

「冗談じゃねぇ!この『月の雫』を手に入れるのにどんだけ苦労したと思ってんだ!!」

 

「超悪魔ばっかりの島に行って超必死に探したんだぞ!!」

 

「つーか巨人が蘇ったらドゥーンって怖ぇだろーが!!」

 

「あれ?そう言えばエルザは?」

 

「何かほかの手掛かりを探すって村に残ってます。」

 

「・・・・心配はない・・・・多分」

 

多分、恐らく、大丈夫だと信じたい。・・・・というか中々追いつけないな。・・・・トレジャーハンター達もずっと追いかけられるのも鬱陶しく思ったのか、その場に止まり何かを始めようとしている。

 

「ドレイク位置につけ!!」

 

「おうっ!」

 

「魔導士ごときに舐められちゃ超終わりなんだョ!邪魔な奴らは排除する!!」

 

「トレジャーハンターは危険な仕事だぜ、ドゥーン!」

 

「危険な仕事はお互い様だろ!」

 

「やるなら話ははえぇ、ぶっ潰す!」

 

「燃えてきたァ!!!」

 

「ドゥーン!」

 

「うぉ!」

 

トレジャーハンターのドゥーンドゥーン言ってたやつが、手のようなハンマーをナツ目掛けて振り下ろす。

 

強化甲型鎚(ストロンガー)の威力はドゥーンと来るぜ!!」

 

「火竜の鉄拳!!」

 

そんな事関係ないと言わんばかりにナツは魔法を放つが、手が開いたような形になり、ナツの魔法を受け止め、逆にナツを掴みそのまま放り投げる。

 

「ドゥーン!!」

 

「うおおおあああ!」

 

「ナツさん!!」

 

「・・・・あーあ」

 

「アイスメイク・・・・氷槍騎兵(フリーズランサー)!!」

 

今度はグレイが大量の氷の槍を放つが、今度は超超言ってたやつが、手にしている剣で斬る

 

「超斬る!!」

 

「!!!」

 

「我が変形銃槍剣(チェインブレイド)くらうがいい!」

 

そう言って持っていた剣の形を変えて、今度は槍のように変え、突いてくる

 

「・・・・意外とやるな・・・・ん?ウェンディ、ルーシィ、こっちに」

 

「わっ!」

 

「きゃっ!」

 

と何かに気づいたグランが二人を引き寄せる・・・・するとさっきまで二人が立っていた場所に銃弾が飛んでくる。

 

「銃!?」

 

「どこから!?」

 

「狙撃手!!?」

 

「ほう・・・・よくかわしたな。・・・・だが、次は頭をぶち抜く「・・・・誰の頭を?」そりゃあの小せぇ魔導士か・・・・ら・・・・え?」

 

他の者がどこから来たか混乱してる中、すぐさま狙撃手の場所を特定に全く気づかれずに近づいたグラン・・・・もはやホラーだ。

 

「・・・・くたばれ!」

 

「ぐほぉっ!!?」

 

そのまま蹴り飛ばし、さっきのトレジャーハンター達の元まで送り届けるグラン。

 

「ドレイク!!?超大丈夫か!!?」

 

「ドゥーン!?」

 

「お前ら魔法も使わねぇのにすげーな…」

 

狙撃手がここまで吹き飛ばされ慌てる三人を無視してナツが疑問を唱える。

 

「お・・・・おいおい、俺達風精の迷宮をそこらのトレジャーハンターギルドと超一緒にしないでくれよ。フィオーレ1のトレジャーハンターギルドを決める、大秘宝演舞超優勝ギルドだぜ!!」

 

「ドゥーン!!」

 

「お・・・・おぉ・・・・・・・・」

 

若干動揺するも、とても誇らしげにそう告げるトレジャーハンター達。狙撃手もフラフラになりながらも、手を上げている。

 

「トレジャーハンターさんの世界にも、同じようなお祭りあったんですね…」

 

「お、おめでとう……」

 

「それはすげぇ!!」

 

「本気で感心するな。」

 

「・・・・クソどうでもいい。」

 

「わ・・・・分かったらとっとと帰りなョォ・・・・そこらの魔導士じゃ俺達とはやりあえないぜェ・・・・」

 

「・・・・既にボロボロじゃねぇか」

 

「ま、それにそこらの魔導士じゃねぇんだな……じゃん。」

 

グレイはそう言いながら月の雫の入った瓶をトレジャーハンター達に見せつける。

 

「何っ!?」

 

「ムーンドリップが!?」

 

「アイスメイク・・・・盗賊の手ってね。」

 

「いつの間に!!」

 

「あー!ドロボーだ!超ドロボーだ!!」

 

「・・・・お前らが言えることか?」

 

「ドレイク撃てーい!!」

 

いつの間にかまた狙撃場所まで戻っていた狙撃手がグレイを狙う。

 

「開け!人馬宮の扉!!サジタリウス!」

 

「もしもーし!!」

 

「何っ!?」

 

だが、ルーシィがサジタリウスを召喚し、銃弾と矢が共にぶつかり相打ちとなる。よほど動揺していたようで、先ほどと同じ位置に行ってしまったらしい

 

「返せドロボー!!」

 

「巨人を助けるんだ、悪いがいただく。」

 

トレジャーハンターは槍でグレイを突こうとするが、それを避けて、即座に瓶を投げる。

 

「ナツ!!」

 

「おう!!」

 

「ドゥーン!!」

 

「おっと」

 

振り下ろされたハンマーをナツは避けて更に瓶を投げ渡す。

 

「ルーシィ!」

 

「OK!!」

 

「チェインブレイドガンナー形態!!」

 

今度は銃に形を変え、乱射を始める。それを避け、また瓶を投げ渡す。

 

「ウェンディ!!」

 

「はい!!」

 

「オオオオっ!!」

 

よほど焦っているようで、無茶苦茶に乱射するトレジャーハンター。めちゃくちゃに乱射される銃弾からグランはその体を盾にしながらウェンディを守る。

 

「・・・・無茶苦茶だな、トレジャーハンター」

 

「ありがと!グラン!いくよ!シャルル!」

 

「了解!!」

 

ウェンディは今度はシャルルに投げ渡す。当然乱射は続いていくが、それからもグランはシャルルを守る。

 

「・・・・危ねぇだろうが」

 

「ありがとね!グラン!!ハッピー!」

 

「あいさー!!」

 

そして、シャルルはハッピーへと投げ渡す。投げた瓶はハッピー・・・・の頭上を通り過ぎ・・・・そして

 

ガシャーーンッ!!

 

嫌な音が鳴り響く。

 

「「「割れたー!!」」」

 

「・・・・あーあ」

 

「何てことしやがるー!!お前ら超悪人だなー!!」

 

「盗んだもん壊すとか…ドゥーンドゥーンドゥーン!!」

 

「ごめんなさい……」

 

「でも、あれ見て。」

 

「あ」

 

と、泣きながら叫んでいるトレジャーハンター達を一旦無視するかのようにルーシィが指をさした。その先には漏れた月の雫があったが・・・・それにより溶かした氷は、液体がかかったほんの少しのところだけであった。

 

「たったあれだけしか氷が溶けてない」

 

「やっぱり、初めからあの量の月の雫で、村全体を救うのは無理だったんだ。」

 

「・・・・まぁ、あれを大量に増やす手段が有れば別だが・・・・」

 

「そんなぁ!!超駄目な計画だったのかー!」

 

「月の雫で永遠の炎がドゥーン溶けると思ったのに……」

 

「・・・・無さそうだな」

 

やはりあれで永遠の炎の氷を溶かそうと考えていたらしく・・・・目の前の事実に悲鳴を上げている

 

「ドゥーンと作戦変更だ!!」

 

「超やり直しだな!!」

 

「逆になってますよ。」

 

「・・・・相当混乱してんな」

 

と、そんな中、なにかに気づいたナツが耳を溶けた地面に押し付ける。

 

「なんか聞こえる・・・・誰かの・・・・声…・・・・」

 

「え…」

 

「声、ですか?」

 

「氷の溶けた地面から、誰かの声がする。呼んでるみてーだ。」

 

「オイラには何も聞こえないよ?」

 

少し考え、そしてそのまま走り始めるナツ。もはやトレジャーハンターなど頭の隅にもないようだ。

 

「こっちか!!」

 

「ナツ!!」

 

「ナツ待てよ!!」

 

「ちょっと、なんなの?」

 

「何を聞いたんですか!?」

 

「とにかく追いかけよっ!!」

 

「・・・・行くかぁ」

 

そしてそのまま妖精の尻尾の面々はナツを追って、その場から走り去っていく。

 

「「・・・・・・・・」」

 

ドドドドドっ!!

 

「「・・・・・・・・」」

 

「ゼェー・・・・ハァー・・・・ゼェー・・・・ハァー・・・・」

 

「このままじゃ終われねぇ!!あいつら追うぞ!!」

 

「あの金髪の鍵見たか!?アレ・・・・超レアものだぜ!!」

 

「トレジャーハンターが宝を持たずにギルドに帰れるかっての!!ドゥーン!!!」

 

もはや蚊帳の外にされてしまったが・・・・そこはトレジャーハンター。すぐに獲物を見つけてそれを追う。・・・・今度は立場が逆になったが・・・・まぁそこは別にいいか。

 

 

 

 



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第五十話 永遠の炎

 

トレジャーハンターを追い、月の雫を奪おうとしたグラン達だが、少しの月の雫では村全てを溶かすことができないと分かったため(というか入っていた小瓶割っちゃったため)また振り出しに戻ったのだが、いきなりナツがどこかへ走り出したためそれを皆で追っている途中なのだ。

 

「きゃう!」

 

「ウェンディ大丈夫?」

 

「すみません、地面が凍ってて……」

 

「・・・・だが、気をつけろよ?・・・・にしても、ナツだけじゃなくグレイとも逸れるとは」

 

「どうしよう……全然訳が分からない所に来ちゃったみたいです」

 

『オイラとシャルルで空から探すよ』

 

『アンタ達は地上で探して』

 

・・・・って言ってたハッピー達も戻ってこないし。」

 

「・・・・グラン、ルーシィさん・・・・ちょっと気になることがあるんですけど」

 

と、急にしどろもどろになるウェンディ。・・・・まぁその理由をグランは何となく察していた。

 

「気になる・・・・ていうか・・・・絶対変・・・・ていうか・・・・付けられてるみたいです。」

 

「やだなぁ、オイラ超ネコだにゃ。」

 

「白ネコだニャドゥーン。」

 

「きゃあああああ!」

 

「・・・・ふっww」

 

後ろに視線を送るウェンディ。そこにいたのは先ほどのトレジャーハンター達・・・・だが、顔を青と白で塗っており、何故か猫耳をつけていた。その見た目に悲鳴をあげるルーシィと、鼻で笑うグラン。

 

「トレジャーハンタースキル“変装”が見破られた・・・・だと!?」

 

「やっぱ俺が青ネコやるべきだったんだよ!!」

 

「・・・・そういう問題じゃねぇと思うんだが」

 

「本気で騙せると思っていたのかしら・・・・」

 

「奥が深いですね、トレジャーハンターって。」

 

「バレちまったら超仕方ねぇ!!標的変更!!お前のその鍵、超レア物だろ!」

 

「ドゥーンと頂いていくぜ!!」

 

「何なのよこいつら…」

 

「あの・・・・小瓶の事はすみません・・・・けど、私達は争うつもりは無いんです。巨人さんを助けたいんです。」

 

「巨人?そんな奴らはどうでもいいよ。トレジャーハンターにとって物を見極める基準は一つだけ・・・・それが宝か宝じゃねぇかだ!!

 

そう言うと、チェインブレイドでその場にいる凍った巨人の足を切り裂くトレジャーハンター。流石に、その行動に驚きを隠せない三人。

 

「止めなさいよ!!まだ生きてんのよ!!」

 

「生きてようが死んでようが、宝じゃねぇものに興味はねぇ。」

 

「止めて下さい。」

 

ウェンディが、少し言葉を強くしながらもまだ諭そうとする。だが、トレジャーハンター達にはそれは届かない。

 

「辞めねぇよ、やりてぇ事をやる…欲しいものをいただく。それがトレジャーハンター━━━」

 

「やめてください!!」

 

ウェンディは、ブレスでトレジャーハンターを吹き飛ばす。もはや言葉での説得は不可能・・・・ならば実力行使に出るしかない。

 

「争うつもりは無かったけど酷いです!!放ってけません!!」

 

「村人を傷つけるつもりなら、あたし達が相手よ。」

 

「イイネ・・・・宝も女ももらっていくか。」

 

「女はイラネ、殺そうぜ。ドゥーンっと。」

 

 

「・・・・・・・・・・・・はぁ?」

 

 

あ、地雷踏んだ。グランは脚に魔力を込めて・・・・地面を思いっきり踏みつける。

 

「地撃・・・・粉砕!!」

 

「「「えっ?」」」

 

ドッガァァァァァァァァン!

 

とトレジャーハンター達(遠くに潜んでいた狙撃手も)全員に衝撃波を吹き飛ばす。飛ばされたトレジャーハンター達は綺麗に同じ場所へ山積みになり、気を失っていく。

 

「・・・・えーっと・・・・終わり?」

 

あまりにも一方的で一瞬の出来事に目を丸くするルーシィだったが・・・・グランが規格外なのはいつものことなので、とりあえず放っておいた。

 

「・・・・少しは反省しやがれ、盗人共が。・・・・無事か?二人とも?」

 

「うん、大丈夫だよグラン!」

 

「・・・・なんか色々カットされたような感じだけど・・・・まぁいいわ!!」

 

今は勝利した事を喜ぼう・・・・そう思うことにしたルーシィだった。

 

「さて・・・・と。これからどうするか」

 

「ナツさんやグレイさんを探しに行く?」

 

「・・・・んや、それよりもこの凍った村と巨人達をどうにかするかを考えた方がいいかもな。アイツらならほっといても大丈夫だろ」

 

「そうね。・・・・でも、どうするの?ナツの炎でもダメだったし・・・・他にもっと強力なのがあればいいんだけど・・・・」

 

「・・・・永遠の炎なら・・・・みんなを元に戻せるかも」

 

「まぁ確かに・・・・だがその炎も凍って・・・・ん?」

 

と、悩んでいる時に人が一人増えていた。その声の主を見ると・・・・そこにいたのは、大鴉の尻尾にいた赤髪の女・・・・フレア・コロナだった。

 

「フレアさん!?」

 

「えっ!なんでアンタがこんな所にいる訳!?」

 

「・・・・金髪をつけてきた」

 

「ええ!!?」

 

「てゆーか、いつもつけてる」

 

「えええっ!!?」

 

まさかの新事実!!ルーシィ!!ストーカーにあっていた!!

 

「ウソ」

 

なんだウソかよ・・・・つまんねぇ

 

「・・・・んで?なんでここにいるんだ?」

 

「・・・・私、行くとこなくなった。だから、帰ってきた。」

 

「帰って・・・・きた?」

 

「そう・・・・私の故郷。この紋章は、太陽の村(このむら)の紋章。」

 

フレアは、胸のマークを見せながらそう語る。グランは咄嗟に顔を背けたが。

 

「フレアさんってこの村の人だったんですか!?」

 

「ウソっ!?」

 

「小さい頃、巨人に育てられたの。帰ってきたら、村もみんなも凍りついてて・・・・あのトレジャーハンター達が永遠の炎を奪おうとしてたから金髪達に加勢しようとしたけど・・・・」

 

「その前に俺がぶっ倒しちゃったと?」

 

「そう・・・・茶髪が強かった」

 

どうやら、こちら側に敵意はなく・・・・本当に帰ってきただけらしい。まぁそのついでという事で、フレアの過去について聞いてみることにした。

 

「・・・・小さい頃からこの村にいたけど・・・・わたしだけ・・・・みんなと違うのがイヤで・・・・村を出ていったの。それまで自分と同じ大きさの人間見た事なかった。それが・・・・逆に怖くなって、わたし・・・・こんなんになっちゃって・・・・」

 

「それでレイヴンに入ったの?」

 

「私・・・・お金稼ぐ方法知らなくて・・・・何も知らずに大鴉の尻尾(レイヴンテイル)に入った。そのギルドは、妖精の尻尾(フェアリーテイル)を嫌ってて・・・・でも・・・・それが当たり前だと思ってて・・・・」

 

「・・・・まぁ・・・・それはしゃーない」

 

「もういいんです、仲直りしましょ?」

 

「うん・・・・ごめんなさい」

 

「ううん・・・・全然気にしてないから。」

 

「フレアさんが久しぶりに故郷に帰ってきたら、村がこうなっていたんですよね?」

 

「うん・・・・」

 

そして巨人達の事を思い出したように涙を浮かべる。

 

「泣かないで!!みんなまだ生きてるんだから」

 

「うん」

 

ルーシィはすぐにフレアを慰める。フレアは涙を拭き取り、すぐに立ち上がる。

 

「永遠の炎ならみんなの氷を溶かせるかもしれない。ついてきて!!案内する!!」

 

そして、皆を助けられる可能性のある永遠の炎まで向かうことにする一同。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・なんか急に小さくなったと思ったら、また戻ったな」

 

「なんだったんだろうね?」

 

永遠の炎を目指す途中、なぜかいきなり体が小さくなったのだが、それもいきなり元に戻った。よく分からなかったが、今はそれよりも永遠の炎が先ということで後にすることにした。

 

「ナツ!!」

 

と、その途中ではぐれていたナツを発見する。ナツは最初はフレアに軽い敵意を向けていたが、敵ではないと分かるとその敵意もおさまった。

 

「・・・・まぁそんな訳で“永遠の炎”で巨人達と村を戻せるんじゃねぇかってことでここまで来た」

 

「そっか・・・・オレの手がかりの声はこの山で聞こえたと思うんだけどな」

 

一同の前には天高く聳える凍った山があった。こんな場所に山などおかしい話だと思っていたらフレアが違うと否定した。

 

「山じゃない・・・・村の守護神、永遠の炎・・・・これが永遠の炎

 

「え!!?」

 

「・・・・マジか」

 

そう・・・・巨大な山だと思っていたこれこそが、“永遠の炎”だった。・・・・まぁ、巨人の村の炎だから普通ではないとは思っていたが・・・・ここまで巨大とは

 

「山じゃねぇのか!?」

 

「巨大な炎が凍りついて山に見えてるんだ」

 

・・・・だが、村を戻せるかもしれない肝心の永遠の炎も凍っているのなら、もはや手の打ちようがない・・・・そう思っていた時

 

「お前ら逃げろーーーーっ!!!!」

 

グレイの叫び声が聞こえ、そちらを向くとこちらに向かい走ってくるグレイとハッピーにシャルル・・・・そんでなんかよく分からない鳥?が来ていた。

 

「グレイ!ハッピー!!シャルル!!」

 

「・・・・・・・・デカい鳥?」

 

「一つ目玉の鳥がいるかーー!?」

 

「よく分かんないけど、オイラ達を食べるつもりだよ!!」

 

「敵よ敵!!グラン!!お願い!!」

 

「・・・・任せろ」

 

巨大な鳥?が大口を開けてグレイ達を食べようとする前に、グランは跳び上がり鳥?の真上まで移動して、思いっきりぶん殴る。

 

「地竜の・・・・剛拳!!」

 

ドゴォォン!!

 

「ギィ・・・・ギギイィ・・・・・・・・っ!!?」

 

全身をピクピクさせながら、地面に倒れる鳥?かわいそうに・・・・相手が悪い。

 

「・・・・てかこの程度、グレイなら倒せたろ?」

 

「悪りぃ、無駄な魔力を使ってる場合じゃなかったんだ!!」

 

「ん?」

 

「この村の氷・・・・もしかしたら溶かせるかもしれねぇ!!」

 

そう告げるグレイはまた永遠の炎まで走っていく。

 

「本当?」

 

「レイヴンの?なんでアイツが・・・・」

 

「んな事ァいい!!この氷溶かせるんだなっ!!?」

 

「確実じゃねぇが・・・・やるさ!!やってやる!!」

 

「おし!!この山が永遠の炎だ!!コイツを溶かしてくれ!!」

 

「何!?・・・・分かった!!」

 

炎の大きさに度肝を抜いたが、すぐさま氷を溶かすように動くグレイ。

 

「・・・・だが、どうやってこの氷を溶かす?お前特殊な炎でも使えんのか?」

 

「いや!この村を覆う氷は得体が知れない。操る事も溶かす事もできなかったが、オレの体を通す事はできた。これは同じ氷の属性ゆえなのかはわからねえが」

 

どういう原理なのかは分からないが、グレイの体を通すことは可能であるという。一体全体どういう事なのかはよく分からないが

 

「・・・・なるほど、よく分からなんが・・・・で、その後は?」

 

氷造形(アイスメイク)だ。この村の氷をオレの形に造りかえる」

 

一度グレイの体を通すことで、この得体の知れない氷を自分の形に変えて、氷を溶かそうと考えていたのだ。

 

「すごい・・・・そんな事が・・・・」

 

「できるかは分からねえ、だから巨人に使うのは後だ!まずはこの山・・・・永遠の炎を溶かしてみせる!」

 

まぁ先に巨人で試してダメでしたじゃ、まずいことになるからなぁ。

 

「みんな離れてろぉ!!!」

 

そしてグレイは両手を氷に触れて、造り替えていく。すると、永遠の炎を凍らせている氷が何やら光り出し、それとともに蒸発していく。

 

「オオオオオオオオオオオオっ!!!」

 

「氷が蒸発してる!!」

 

「おし!!」

 

そしてグレイはさらに力を込めて造りかえる。

 

「やったー!!」

 

「氷が溶けるわ!!」

 

そして・・・・とうとう氷が全て蒸発し・・・・そこには何もなかった。

 

「あれ・・・・?」

 

「どういう事!?」

 

「炎が・・・・ない・・・・」

 

「バカな・・・・」

 

「そんな・・・・」

 

フレアは地面に力尽きるように座り込む。・・・・そこにあるはずの、永遠の炎が無かったから。・・・・失敗した・・・・それとも凍った時点でもうダメだったのか・・・・皆が気を鎮めている時・・・・ウェンディは何かを感じ取っていた。

 

(何・・・・!!?この感じ・・・・この魔力は・・・・)

 

震えるウェンディの肩に・・・・グランが手をやり落ち着かせる。

 

「・・・・っ!!・・・・グラン!」

 

「・・・・ウェンディ・・・・“ミルキーウェイ”の準備しといてくれ」

 

「?・・・・ッ!うん、分かった!」

 

少しだけ考え、すぐに理解したウェンディはすぐさま魔法の準備を行った。

 

「・・・・ナツ」

 

「なんだ?」

 

「・・・・ちょいと頼み事だ」

 

「ああ??」

 

 

 

「永遠の炎が消えた…!?」

 

「そんな…そんなぁ…!!」

 

一方で、永遠の炎が消えてしまい、どうしようも無いと感じてしまっているルーシィ達。

 

「凍らされた時点で消滅しちゃったのかしら・・・・」

 

「いや・・・・オレが失敗したのかもしれねえ・・・・これじゃ・・・・巨人の氷を溶かすのは無理だ・・・・」

 

「何百年も燃え続けた炎が消えるなんて・・・・この村はもう・・・・ダメ・・・・なの…?」

 

「・・・・まだ灯ってるよ・・・・小さいけどな」

 

「「「「!!!」」」」

 

グランのその呟きに、諦めかけている皆はすぐさま反応する。

 

「・・・・永遠の炎はまだ生きてる。祭壇をよく見ろ」

 

「生きてる?永遠の炎が?」

 

「それに祭壇って・・・・あっ、あれ!!」

 

ルーシィが指差した所に祭壇があり・・・・よく見ると・・・・グランの言う通りまだ炎が灯っていた。

 

「かすかに火が残ってる」

 

「でもすごく弱々しい」

 

だが、あの巨大な氷の塊からは想像できないほど遥かに小さくなっていた。

 

「大丈夫です!!ナツさんの炎ならあの炎を復活できます!!」

 

と、魔法の準備をしていたウェンディが大きく叫ぶ。

 

「そうか、ナツ!!・・・・っていねぇぞ!?」

 

「桜髪?」

 

グレイがすぐさまナツに頼もうとしたが、すでにこの場にはナツはいなかった。どこにいったのか・・・・その答えはすぐに分かった。

 

「ウオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

「あそこ!!」

 

ナツの叫び声が聞こえ、その方向を向けば先ほどの鳥?を担ぎながら巨人や建物をよじ登っているナツを発見した。

 

「アイツ、あそこで何を!?」

 

「・・・・ナツには先に頼んどいた。思いっきり燃やせってな」

 

「なんであの鳥も?」

 

「・・・・ついでに処分できるなぁって思って」

 

ついでで炎に処理される・・・・なんとも不憫な

 

「うおおおっりゃっ!!!」

 

そうこうしているうちに十分な高さまで登ったナツはそのまま跳び上がり

 

「火竜の煌炎!!!」

 

そのまま、永遠の炎がある祭壇に鳥を叩き込む。そしてそのまま炎をひたすらに叩きこんでいく。

 

「まだまだァ!!」

 

その勢いだけで空中に浮かぶほどに激しい攻撃を繰り返していき、トドメの一撃を繰り出す。

 

「滅竜奥義・・・・紅蓮爆炎刃!」

 

ナツのありったけの炎をくらった祭壇は・・・・小さな灯火から山のように巨大な炎へと勢い良く燃え上がり、永遠の炎は復活を果たした。

 

「炎が・・・・守り神が・・・・灯った」

 

その燃え上がる炎は、村全体を優しく灯した。

 

「俺が聞いた声・・・・」

 

「私が聞いた残留思念・・・・そっか・・・・」

 

「・・・・なるほどなぁ〜」

 

「永遠の炎ってまさか・・・・」 

 

「おまえだったのか」

 

「400年ぶりか・・・・イグニールの子よ・・・・」

 

蘇った炎が突如喋りだす。その姿は、妖精の尻尾の面々は見覚えがあった。

 

忘れもしない、大魔闘演武最終日・・・・時を越える扉“エクリプス”より、四百年前からやってきたドラゴンの内の一体。

 

炎竜アトラスフレイム・・・・それが、永遠の炎の正体だった。

 

「あいつは・・・・」

 

「エクリプスから出てきたドラゴンの一頭!?」

 

「400年前に帰ったはずじゃあ……」

 

「400年・・・・ウム・・・・400年・・・・われは燃え続けておる。」

 

「生きてたんだな、おっちゃん。」

 

「お久しぶりです……」

 

「生きて・・・・?いや・・・・違うな」

 

「この姿は、私の魔法(ミルキーウェイ)で魂を具現化したものです。」

 

「・・・・予想通りドラゴンだったのは良かったよ。アトラスフレイムだとは思ってなかったが」

 

「死んだ、ということか……?それも、遥かなる古……」

 

何やらどこか様子がおかしいアトラスフレイム。どうやら少し困惑しているようだ。

 

「意識がはっきりしてねーのか?」

 

「意識・・・・と言うよりは記憶が・・・・混濁しておる・・・・ムム・・・・ここは……我は……」

 

「しっかりしろよおっちゃん。」

 

「イグニールの子は覚えておる」

 

困惑を続けるアトラスフレイム。

 

「どういう事?ジルコニスの時は記憶もはっきりしていたのに!」

 

「・・・・多分だが、氷のせいだな」

 

「うん。・・・・元々残留思念というものは、とても強い意志に反してとても弱い魔力なの。それが、氷の魔法によって長時間凍結されたことで記憶の一部が損傷したのかも・・・・」

 

「氷・・・・ウム・・・氷だ・・・・世界は氷に包まれた。」

 

グランとウェンディが放った“氷”に反応したように、何かを思い出したアトラスフレイム

 

「おっちゃん、この村のこと言ってんのか!?」

 

「何が・・・・あったのですか・・・・あの・・・・教えて・・・・」

 

唯一、この村の出身者であるフレアが、意を決して、恐る恐るアトラスフレイムに近寄り、話しかける。

 

「ムググ・・・・あの男は・・・・我を・・・・何かと間違えて・・・・ムウウ・・・・!」

 

「あの男……?」

 

「・・・・そうだ・・・・たった一人の人間が・・・・世界を氷に変えた。」

 

分かったことは、まさかの事実だった。氷の魔導士の仕業ではあるというのはある程度予想していたが・・・・まさか、たった一人の魔導士の仕業だったのだ。

 

「氷の魔導士の仕業だったのか!」

 

「たった一人の魔法でこの村をこんなふうにしたの!?」

 

「な・・・・何のために……!?」

 

「あの男は・・・・我を・・・・“悪魔”だと思っていた・・・・我を消すため・・・・村中を凍らせた・・・・悪魔祓いの魔導士・・・・滅悪魔導士(デビルスレイヤー)

 

そして更なる事実・・・・滅竜でも、滅神でもない・・・・悪魔を倒すための魔法。初めて聞く魔法に皆が驚愕をあらわにする。特にグレイは一番驚いていた。

 

「ムググ・・・・思い出せん・・・・我は・・・・一体・・・・」

 

だが、凍った理由は分かったが・・・・何か大切な事が思い出せずにいた。

 

「━━━あなたはこの村の守り神!!巨人の炎!!!」

 

「ム・・・・」

 

そこに、居ても立っても居られなかなったフレアが必死の表情を浮かべ、アトラスフレイムに語りかける。

 

「どうかお願いします!この村に再び光を!この村を救ってください!!」

 

そして地面に膝をつき、頭を下げて懇願する。・・・・この村を救ってほしい・・・・ただその一点で。

 

そして、フレアの決死の思いが・・・・アトラスフレイムに奇跡を起こした。

 

「我は・・・・そうだ・・・・我が名は巨人の炎(アトラスフレイム)。この村を作った者……!」

 

「いいぞ!思い出してきたんだな!」

 

フレアの思いにより、これまで無くしていた記憶が蘇りつつあった。

 

「我が村の不幸は我が痛み・・・・我が村の悲しみは我が涙・・・・我が・・・魂の最後の残り香と・・・・イグニールの子の炎を持って・・・・この村を解放せし・・・・

 

我が名は炎竜アトラスフレイム、この村の守護竜なり!」

 

そしてアトラスフレイムから、凄まじい熱気が吹き出され、その熱気とともに、アトラスフレイムが・・・・永遠の炎が激しく燃え盛る。

 

その圧倒的な雄々しさ・・・・まさに圧巻の一言。

 

「・・・・ウェンディ、大丈夫か?」

 

「うん・・・・でも、魂が消えていく…」

 

「え!?」

 

言葉通り・・・・最後の力・・・・最後の灯火で氷を溶かしていくアトラスフレイム・・・・その影響で、消えていた記憶が再び蘇りつつあった

 

「イグニール・・・・竜王祭・・・・アクノロギア・・・・ゼレフ・・・・思い出した・・・・思い出したぞ・・・・ゼレフ書最凶最悪の悪魔END・・・・400年前・・・・イグニールはENDを破壊できなかった」

 

その言葉と共に・・・・アトラスフレイムは完全に消え去り・・・・村が・・・・巨人達が見事に復活を果たした。

 

「見て!!村が!!」

 

「おお」

 

「元に戻ってく」

 

「・・・・ああ」

 

「うん」

 

「オッチャン・・・・」

 

「ああ・・・・なんて・・・・暖かい・・・・」

 

アトラスフレイムがこの世に残した灯火は・・・・この村を、世界を優しく包み込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・一方、吹雪が荒れる場所。壊れた家、瓦礫が雪に埋もれているその場所にある墓の前に、一人の男性。

 

「・・・・・・・・」

 

そこにまた、一人の男がやってきた。

 

「シルバー様、本部への召集命令が出ております」

 

「・・・・墓参りくれぇゆっくりさせろや」

 

シルバーと呼ばれた男に・・・・召集命令を伝えにきた男は・・・・どこかひどく怯えていた。

 

「今回は九鬼門全員に召集命令が出ていますので・・・・氷の滅悪魔導士(デビルスレイヤー)シルバー様・・・・帰還命令に従ってください・・・・」

 

「そんなビクビクするなや。とって喰いやしねぇよ。

 

オレが喰うのは悪魔の魂だけだ。」

 

着実に近づいてくる・・・・悪魔の足音・・・・今、まさに・・・・冥府の門が開かれた

 

 



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第五十一話 ギルドの“和”

 

「わははははは!」

 

「わはははははははは!!」

 

「「わーっはっはっはっはっはっー!!」」

 

色々あって村を氷から救い出したグラン達。その後、巨人達からのお礼として、宴を行なっているのだが・・・・ナツとハッピーは巨人の頭の上に乗り、高らかに笑い、乗られている巨人もまた大きく笑っている。・・・・まぁ要するに、意気投合しちゃってるわけだ。

 

「すっかり馴染んじゃって…」

 

「・・・・あっちもね」

 

「だらっしゃぁっ!!!」

 

「ぬぉおおっ!!?」

 

すっかり意気投合しているナツに軽く呆れているルーシィ。シャルルもまた巨人達と力比べをして楽しんでいるグランを見て若干・・・・いやだいぶ呆れてる。・・・・巨人に力で勝ったぞアイツ。

 

「小さきものに救われてしまったな。」

 

「元に戻れてよかったな。」

 

「小さきもの」

 

「その中でも更に小さい部類ね、ウェンディは」

 

「わはははははははは!!」

 

「しかし小さき者に力で負けるとは・・・・なんとも驚いた!!わははははははっ!!」

 

「・・・・あー、楽しっ!」

 

なんか今までで一番イキイキしてねぇか?コイツ?

 

「一体この村で何があったのだ。」

 

「氷の滅悪魔導士って言うのが襲ってきたんだって。」

 

「ワシらも武器を取って立ち向かったのだが……」

 

「そこからの記憶が無い。」

 

「ウム。」

 

つまりは、物の一瞬で巨人も村も・・・・永遠の炎をも凍らせたということになる。

 

「永遠の炎・・・・つまり、アトラスフレイムを“悪魔”だと思って倒しに来たらしいの。」

 

「犯人の勘違いが、引き起こした事件だというのか?しまらん話だな。」

 

「いや・・・・その犯人の真意はまだ分からねぇ。サキュバスの男が言ってたんだよ…」

 

『お前らは開いちまったんだ、冥府の門を。もう後戻りはできない』

 

冥府の門(タルタロス)!!?」

 

「ひぃっ!」

 

「・・・・またバラム同盟か」

 

「恐らく犯人は冥府の門の人間だ。その下部ギルドにあたる夢魔の眼がこの村の守備についたんだ。」

 

「何か別の理由があって村を凍らせた、ってこと?」

 

「そうね・・・・まだ何か裏がありそうだわ。」

 

バラム同盟の最後の一つ・・・・冥府の門。その実態はほぼ不明。だが、今はそのことよりも巨人達の無事を祝おう。

 

「まぁ・・・・とりあえずは仕事完了だ。」

 

「あいさー!」

 

ナツとハッピー笑い、仕事の完了を喜び、それにつられ、他のメンバーにも笑みが浮かぶが、ふとそこにフレアの姿がないことにルーシィは気がついた。

 

「そう言えばフレアは?」

 

と、後ろを見ると何故か木陰に隠れているフレアがそこにはいた。

 

「何で隠れてるの?ねぇ、フレア。」

 

「・・・・」

 

「フレアだと!?そこにおるのか!?」

 

突然、巨人達が立ち上がり、頭の上に乗っていたナツとハッピーは転がり落ちる。

 

「ほら・・・・久しぶりに帰ってきたんだし」

 

「私・・・・この村捨てた・・・・勝手に出て言った・・・・だから」

 

「大丈夫だよ、怒ってなんかないって」

 

ちらっと、巨人の方を見上げるルーシィ。しかし、その顔はしかめっ面・・・・とてもさっきまでの巨人達とは思えない

 

「・・・・・・・・たぶん」

 

「本当にフレアなのか?」

 

「久しいな・・・・」

 

「大きくなったが、まだワシらより小さいな。」

 

「外の世界はどうだった?」

 

突然尋ねられ、言葉がつまるフレアだったが、たどたどしく紡いでいく。

 

「た・・・・楽しいことも・・・・辛いこともいっぱい・・・・」

 

その言葉を聞き、巨人達は笑みを浮かべ、ナツも笑みを浮かべる。 

 

「それはどこにいても同じだ、生きている限りな・・・・出ていこうが戻ってこようが、ここがお前の家だ。」

 

「自由にすればいいさ。」

 

「ウム。」

 

「まぁ・・・・しかしなんだ・・・・これだけは言っておかんとな。」

 

「「「おかえり、我らが娘よ。」」」

 

巨人達のその言葉に・・・・フレアは体を震わせ・・・・涙を流し始める。悲しみの涙ではなく・・・・・・・・嬉しさの涙。

 

「た・・・・ただいま・・・・」

 

そして、笑顔を浮かべるフレア。他のものもそれにつられて笑みをこぼす。

 

それから皆、夜まで飲んで歌って、朝まで騒いだ。それまで聞いていた不吉なことは忘れて・・・・今この瞬間を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わはははっ!やっぱり君たちに任せて正解だったよ!いやー、よくやったよくやった。」

 

「楽勝だったな。」

 

「無事にウォーロッド様の依頼を達成出来てホッとしています。」

 

「そういやあの盗賊の三人組は?」

 

「・・・・沈めといた」

 

「えっ!?」

 

宴を終え、太陽の村から、ウォーロッドの家まで戻ってきたグラン達。帰りはグランの魔法を使ったので、ウォーロッドほどではないが早く戻る事ができた。

 

冥府の門(タルタロス)が関わってたのには驚きでしたけど…」

 

「・・・・また面倒ごとが起きそうだな。」

 

「ウム、その辺の調査は評議院に任せておけば良い。それより君達に報酬を渡さねばな。」

 

「待ってましたー!」

 

「ま、仕事したんだし当然よね」

 

そう言いながら、ウォーロッドは花壇の中の草花を掻き分けはじめ・・・・・・・・その手に報酬を取り出す。

 

「ほい。」

 

「ほい…って。」

 

(ワッシ)の畑で取れたジャガイモ。」うひゃひゃひゃひゃっ

 

「「「「・・・・・・・・」」」」

 

楽しそうに笑うウォーロッド。・・・・どうしようめちゃくちゃ腹立つ。

 

「・・・・・・・・というのは冗談じゃ。」

 

「だ・・・・だよな!?」

 

「あは・・・・は・・・・」

 

「本当は隣の村で買ってきたジャガイモなのじゃ。」

 

「どっちでもいいわァ!」

 

「金寄越せこらぁ!」

 

もはや相手が聖天大魔道だろうが関係なくキレ散らかすナツとグレイ。・・・・正直気持ちはわかる。

 

「・・・・でもジャガイモはうまいぞ?」モグモグ

 

「ダメだよ、グラン。ちゃんと焼いて食べなきゃ」

 

「だからそこじゃないのよ」

 

シレッともらったジャガイモを頬張るグラン。・・・・空気を読め、食べるな。そしてやはり突っ込むのはそこじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ♡すごい!!」

 

「絶景だな」

 

「素敵ですね」

 

あの後まぁ多少報酬で揉めたがウォーロッドから秘湯を紹介されたので、折角ということで仕事の疲れを癒しにきた。

 

「流石はウォーロッド様・・・・こんな秘湯を知っておられるとは」

 

「見てウェンディ。この湯は健康と美容にいいんですって」

 

「わぁ」

 

女性陣は素敵な絶景に湯の効果を見てさらに盛り上がる

 

「仕事の後のお風呂って最高だよね。」

 

「疲れた心と体を癒し、また明日に向けて気持ちを切り替えられるしな。」

 

「でも、なんかグランやナツさん、グレイさんに悪いですよね。」

 

「いーのよ、あいつらどうせ温泉になんか興味無いでしょうし。」

 

「いや、そうでもねぇぞ。」

 

「たまにはこういうのも気持ちいいもんだぜ。」

 

「・・・・まぁ・・・・疲れは取れるな」

 

「あい」

 

と、風呂の隅の方から声が聞こえてきた。その方向を向けば、もう既に湯に浸かっているグラン、ナツ、グレイ、ハッピーがそこにはいた。

 

エルザは割といつも通りなのだが、ウェンディとルーシィは困惑し、咄嗟に状況を把握する。

 

「きゃああああああ!」

 

「何勝手に女湯入ってきてんのよー!」

 

「先に入ってたのは俺達だ。」

 

「お前らがあとから入ってきたんだろ!」

 

「・・・・言い訳苦しいが後から来たのはそっちだからなぁ」

 

目に見えて動揺しているルーシィ達と違い、割と平然としているナツとグレイ。グランは平然としているようで、内心めちゃくちゃに動揺している。

 

「あれ?言っとらんかったかの?混浴じゃと。」

 

「堂々と入ってくんなー!!」

 

そして、ウォーロッドまでもが入ってくる。割と堂々と

 

「ちょっと男子は出ていきなさいよ。」

 

「そうです!恥ずかしいです〜」

 

「お前の裸なんか見飽きてる。」

 

「新鮮味はねぇな。」

 

「・・・・それはそれでどうなんだ?」

 

「うわー、超最低。死ぬの?」

 

「まぁ落ち着けみんな、仲間同士だ。これくらいのスキンシップは普通だろ。」

 

「普通じゃありません!」

 

「昔はナツやグレイと一緒に、風呂に入ってたんだ。」

 

「う・・・・」

 

「む・・・・」

 

「それが普通じゃないのよ。」

 

そもそもエルザを普通に当てはめてはいけないと思う。

 

「久しぶりに背中を洗ってやる。」

 

「いっ、いいよ!」

 

「もうガキじゃねえんだ!」

 

「グランも遠慮せず、姉に任せておけ」

 

「・・・・断る。・・・・というかそれまだ言ってんのかよ」

 

抵抗虚しくナツはそのまま連れて行かれた。その光景を見て、ウォーロッドは楽しそうに笑い出した。

 

「ほっほっほっ、仲間というものはいいもんだのう。」

 

「あんた違うでしょうが!!」

 

「おや?そうか・・・・まだ言ったらんかったか」

 

ウォーロッドは、浸かっている左腕を上げて、一同に見せつける。そこにあったのは紛れもない・・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)の紋章が刻んであった。

 

「私はメイビスと共に、妖精の尻尾を創った創世期メンバーの一人。君らの大先輩じゃよ。」

 

その事実に、グラン以外の全員が驚いた。 

 

「おじいさんの昔いたギルドって…」

 

「妖精の尻尾って事?」

 

「そっか、だから・・・・同じ聖十の称号を持つマスターの言い方は気になってたのよ。」

 

「あれ?グランあんまり驚いてないね?」

 

「・・・・そりゃ知ってたし・・・・言ったじゃん、ギルド引退してるって」

 

それだけで、妖精の尻尾だと分かるはずがないだろうが。

 

「・・・・というのは。」

 

「冗談なのか!?」

 

「本当じゃ。」

 

もう面倒臭いがそれがこのじーさんだ。諦めよう。

 

「それでウチのナツとグレイを指名なされたのですね。」

 

「ウム・・・・いかにも。君達が私の家を訪れた時、ほのかに懐かしきギルドの古木の匂いがした・・・・・・・・というのは冗談じゃが。」

 

「話が進みませんね……」

 

「・・・・そこはもう諦めろ」

 

「君達若き妖精たちに会えて、私は本当に嬉しいのだ。メイビスの唱えた“和”・・・・血よりも濃い絆で結ばれた、魔導士ギルド妖精の尻尾。その精神は時が流れた今でも、君達の心に受け継がれておる。それは仕事の成否にあらず、君達を見た時に感じたこと。」

 

微笑みながら、ウォーロッドは語る。初代が・・・・妖精の尻尾を作り出した初代ギルドマスター・メイビスの残した言葉・・・・そして、その心を。

 

「かつてメイビスは言った。“仲間”とは言葉だけのものでは無い。仲間とは心、無条件で信じられる相手。

 

『どうか私を頼ってください。私も、いつかきっとあなたを頼ることがあるでしょう。

 

悲しい時も苦しい時も

 

私が隣についています。

 

貴方は決して1人じゃない。

 

空に輝く星々は希望の数。

 

肌に触れる風は明日への予感。

 

さぁ歩みましょう・・・・妖精達の(うた)に合わせて・・・・』」

 

感慨深く、聞き惚れる一同。その言葉・・・・その一つ一つが、全員の心に残る言葉になった。

 

「妖精の尻尾、創始の言葉かぁ・・・・なんか感慨深い物があるね。」

 

「つー事はあれか!?じっちゃんより歳上なのか!?」

 

「失礼だぞ、ナツ。」

 

「いや・・・・もしかしてそんなに昔の人だとさ・・・・ENDって悪魔の話知ってるのかなって。」

 

「END?終焉・・・・?」

 

「ゼレフ書の悪魔らしい。俺の親父のドラゴンが倒そうとしてたみてぇなんだ。」

 

「ゼレフ書・・・・また物騒な名前を・・・・」

 

ナツの言葉に、指を顎に当てて考え込むウォーロッド。

 

「そのENDってのがなんなのか分かれば、イグニールの居場所のヒントになると思ってたんだけどな。」

 

「アトラスフレイムが言ってた言葉ですね。」

 

「ウム・・・・すまんが知らんのう。」

 

申し訳なさそうに頭を下げるウォーロッド。だが、すぐに頭をあげて語り始める。

 

「だが、昼間冥府の門(タルタロス)と聞いてこんな話を思い出した。奴らは正体が一切わからぬ不気味なギルド。本拠地も、構成員の数も不明じゃ。だが、何度か集会を目撃した者の話を聞くことがある。その者達は、口々にこう言う

 

あの集会は悪魔崇拝だと・・・・・・・・」

 

悪魔・・・・これまでとは一風変わった相手・・・・奴らの正体は分からないが・・・・とても不気味なギルドだ。

 

「これは我々、イシュガルの四天王の推測ではあるが・・・・奴らは強力なゼレフ書の悪魔を、保有している可能性がある。」

 

「ギルドがゼレフ書の悪魔を保有!?」

 

「もしかしてその悪魔がEND!?」

 

「・・・・実は全員が持ってたりして」

 

「恐ろしいこと言わないでよ!?」

 

「そっか・・・・・・・・っ!どこにいるかわかんねーってんならやりようがねぇな!!くそっ!!見つけたら叩き潰して吐かせてやる!こうやってギッタンギッタンに・・・・」

 

ナツがどこにいるかも分からない冥府の門に対しての苛立ちを表すように殴りつける・・・・・・・・・・・・それはもう激しく

 

「おい、ナツ…」

 

「ア?」

 

「ほう?」

 

「・・・・・・・・っ!!??」

 

その拳全てが先ほどまで背中を流していたエルザに当たる。・・・・怒りで前に誰がいたかを忘れていたらしい。

 

・・・・この綺麗な絶景にナツの悲鳴がどこまでも響いていた・・・・なんともまぁ締まらん話だ。

 

 



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第五十二話 動き出した冥府の門

 

「戦争だァ!!!!」

 

「落ち着けよナツ!!」

 

開幕早々にナツが叫んでいるのは申し訳ない。ナツがこうなったのには理由がある。

 

まず、バラム同盟の最後の一つ・・・・冥府の門(タルタロス)がついに動き出した。奴らはまず手始めに評議院を爆破・・・・九人の議員を全員殺害し・・・・さらには死傷者119名出すという大惨事を起こした。

 

それだけなら、ナツもここまで暴れないのだが・・・・理由は奴らの狙いが現評議員だけでなく、元評議員も狙いの一つであり・・・・元評議員であるヤジマさんを襲撃・・・・そこに居合わせたラクサスのおかげで、ヤジマさんは一応無事ではあったのだが・・・・冥府の門の一人が大量の魔障粒子を空気中にばら撒いたせいで、ヤジマさんも雷神衆もラクサスをも命の危機にさらされた。

 

それに怒ったナツが冥府の門を一人残らずぶっ潰そうと暴れているのを皆で抑えているのだ。

 

マスターもすぐにでも突撃したいが、相手の情報が少なすぎて、動こうにも動けない。

 

今分かっているのは、奴らの狙いが元評議員であること。なら元評議員の家に行けば必然的に奴らと対峙できる・・・・のだが、まず元評議員の居場所は秘匿情報、知るものはいない。結局は手詰まり・・・・・・・・と、思っていたが、なんとロキが全員ではないが知っているという。なんで知ってんのかは・・・・・・・・察しろ。

 

ロキのおかげで、4名の元評議員の住所がわかった。やるべき事は大きく三つ。一つは他の元評議員の住所。一つは冥府の門に狙われる理由。最後の一つは、ラクサス達を襲った、魔障粒子を持つ者の血液を採取すること・・・・これが、今妖精の尻尾のやるべき事。

 

マスターが壇の上に上がり、狼煙をあげる。

 

「敵は冥府の門(タルタロス)!!!六魔将軍(オラシオンセイス)悪魔の心臓(グリモアハート)に並ぶバラム同盟の一角!!!しかし!!!ワシらはその二つを撃破してきた!!!冥府の門(タルタロス)も同じように、我々を敵に回した事を後悔するだろう!!!仲間がやられた!!!それは自身の痛み!!!仲間が流した血は我が体より流れた血と同じ!!!この痛みを・・・・苦しみを闘志と変えて敵を討て!!!我等は正義ではない!!!我等は意志で動く!!!!我らが絆と誇りをかけて・・・・家族の敵を駆逐する!!!

 

オオオオオオオオオオオッ!!!!!!!

 

今ここに始まる・・・・妖精と悪魔の戦争・・・・こんな時だというのに・・・・我らがグランはどこ行った?

 

「ウェンディ、グランにもこの事伝えとかないと」

 

「うん!まってて今連絡する!!」

 

なんと、今ちょうど一人で仕事に出ていた最中だったという。ウェンディはグランに連絡を取るため、手のひらサイズの水晶板を取り出す。グランの作った連絡手段の一つ・・・・大地からなんかこう上手いことあれこれして連絡が取れるようにした物だ!!・・・・・・・・説明はまた今度で

 

『・・・・おう、どしたウェンディ?』

 

「あ!グラン!!よかった!あのね!」

 

『・・・・あー、その前に聞きたいことがあんだけどさ』

 

グランと繋がり、今回の事を説明しようとしたウェンディだったが、その前にグランが話があるという事でそれを聞くことにした。

 

・・・・だが、グランから聞かされたのは全く予想していなかった事だった。

 

『もしかしてヤジマさん・・・・冥府の門(タルタロス)に襲われたりしてない?』

 

「・・・・へっ?」

 

その一言で、今この場にいる全員に衝撃が走った。

 

「何故分かった!?」

 

マスターがいち早く駆け寄りグランにそう聞く・・・・グランから聞かされた答えは至極単純で・・・・全くの予想外な物だった。

 

『何故って・・・・偶々仕事できてた街に冥府の門の輩が来てぶっ潰したからだけど?あいつ自分で元評議員が狙いって言ってたからヤジマさんは無事かなぁって思って』

 

「「「「「はぁっ!!?」」」」」

 

これからやろう!!って時にもう既に冥府の門の一人を倒してしまったらしい・・・・なんなん?コイツ?

 

「一体、何があったの?」

 

『・・・・あー、まぁ普通に仕事し終えた時だったんだけどな────』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・こんな感じでいいか?」

 

「ああ!助かったよ!!」

 

とある町でグランは一人仕事に来ていた。内容は割と簡単なもので、とある場所から荷物を運んでほしいというもの・・・・だがその荷物がデカくどう運ぶのか悩んで結局依頼を出したらしい。

 

まぁ運ぶだけだからという事でグラン一人できたのだが・・・・本当にデカいししかも多かったが、そこは問題なく依頼をこなせた。

 

「・・・・さてと、帰る・・・・ん?」

 

そしていざ帰ろうとした時・・・・グランは嫌な力を感じ取った。魔力ではない・・・・どこか禍々しい力。

 

「・・・・なぁ」

 

「ん?どうした?」

 

「あそこの家には誰が住んでる?」

 

グランが指差した方向には、街の湖にポツンとある一軒家。そこから感じた?・・・・いや違う。

 

「さぁ?でも確かじーさんとその孫が住んでだと思うが・・・・それがどうした?」

 

「・・・・悪いが今すぐ町の全員を避難させろ。・・・・死にてぇなら別だがな」

 

「えっ!!?それどういう!?」

 

「さっさとやれ」

 

「は、はいぃぃっ!!!」

 

余計な事は言わず睨み返して避難を誘導させるグラン。・・・・正直これで避難するとは思わないが。

 

そして急いでその家まで向かい、少々強引ではあるがドアを蹴破って中に入る。

 

「えっ!?何っ!!?」

 

「な、何じゃ貴様!?」

 

「・・・・説明後、早く逃げ・・・・・・・・あーもう遅いか」

 

中にいたのは一人の女性となんかネコっぽい耳をしたちっこいじーさんだった。

 

急いで逃げるよう告げようとしたが、もう時既に遅し。急いで駆け寄り守るための壁を作る。

 

・・・・・・・・そして次の瞬間

 

 

ドゴォォォォンっ!!!

 

 

いきなり爆発し、家が一瞬にして瓦礫になった。

 

「・・・・いやマジでこうなるとは」

 

瓦礫の中、壁を解除して辺りを見渡すグラン。割と立派だった家は無惨にもバラバラになっていた。

 

「わ・・・・ワシの・・・・ワシの家がっっ。ど、どうしてくれるんじゃー!!?」

 

「・・・・俺に文句言うな。・・・・言うならあいつに言えや」

 

 

「おろ?・・・・なんや全員ふっ飛ぶ思うたんやけどな。現評議員みたいに・・・・ワハハ」

 

 

グランが向く先にいたのは、瓦礫の上で愉快そうにこちらを眺める一人の男・・・・この爆発を起こした張本人。

 

「誰や、ワレェ」

 

「・・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)のグラン。・・・・さて、お前には色々聞きたいことがある」

 

睨み合う両者。

 

「お前に用はない。用があんのはそっちの元評議員の方や。邪魔すんなや」

 

「ひ、ひぃぃっ!!?」

 

そう聞くと、じーさんの方が怯えて腰を引いていく。

 

「・・・・冥府の門(タルタロス)か、お前。現評議員達を爆破させた理由はなんとなくわかるが・・・・何故元評議員も狙う」

 

「よく聞いてくれたなぁ・・・・なんて馬鹿正直に答えるわけないやろうが!!」

 

一応何故襲うのか理由を聞くが、答えてくれるはずもなくこちらに突っ込んでくる冥府の門の男。このままここでどんぱちやってもいいがその後のことを考えるとめんどくさい。

 

一応、町の連中には避難するように言っておいたが、それに正直に従わない奴もいるだろうから、町で暴れるのはやめておいた方がいい。

 

ならどうするか?・・・・答えは簡単、ここじゃない場所で暴れればいい。

 

「・・・・というわけでぶっ飛べ!」

 

「はっ?・・・・ぶべら!?」

 

とりあえずグランは突っ込んできた冥府の門の男の顔面を思いっきり殴りそのまま吹き飛ばした。

 

呆気に取られてるじーさん達を無視して、吹き飛んだ方向に跳んでいくグラン。ちょうどいい場所まで行ったと分かれば、さらに追撃していく。

 

「地竜の剛拳!!」

 

「ぐぼぁぁっ!!?」

 

グランはその男を殴りつけ地面に叩き落としそこはさらに追撃を喰らわす

 

「地竜の断裂!!」

 

「ぐがっ!!?」

 

ほぼ勢いのまま喰らわした蹴りは奴を伝い、大地を裂いていく。

 

「・・・・ぐっ・・・・・・・・クソがっ・・・・!!」

 

「・・・・もっと相手したいが、そんな時間はなさそうだからな。・・・・まぁ、相手が悪かったと思え」

 

地面に降り立ち、両手をあげ一気に振り下ろす。

 

「地竜の大鎚!!!」

 

ドゴォォォォンッッ!!

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・しまったな。情報聞き出せば良かった」

 

あれだけ殴って蹴ったりしといて今更そんな事言っても遅いだろうが。頭はいいくせにそこら辺適当だからな、コイツ。

 

「・・・・まぁいいや。とりあえずあの元評議員にでも・・・・・・・・なんだこれ?」

 

キィイィィィィッ!!

 

先ほどの元評議員に話を聞こうと戻ろうとした時、体の・・・・特に腕がいきなり光出した。

 

「・・・・何だこのアザ?」

 

「・・・・そらぁ、オレの“呪法”やな」

 

「あ?」

 

と、何かと考えている時先ほどまで倒れていた男がゆっくりと立ち上がった。

 

「あー、クソいてぇ。お前、ほんまに人間か?・・・・まぁいい。んで、オレの“呪法”はな・・・・触れたものを爆弾に変える力や・・・・お前、オレに何回触った?」

 

「・・・・えー、4か」

 

ドゴォォォォンっ!!!

 

と、馬鹿正直に答えようとしたその瞬間、グランの体が爆発した。触れたものを爆弾に変える力・・・・それは自身に触れた者も例外ではないらしい

 

「クハハハハっ!!律儀に数えたんか!!クハハっ!!・・・・まぁいい。ほな、さっさとあのじじいをぶっ殺しに行きますかっと」

 

爆発したのを見て一通り笑った後、すぐに街に戻ろうとした冥府の門の男・・・・もう既にグランに用はないように早々とこの場を去ろうとする・・・・だが、コイツは知らない。

 

「・・・・ちょい待ち」

 

「はぁ?・・・・ぶべらっ!?」

 

グラン(コイツ)がどれだけ頑丈で、呆れるほど強い事を。

 

煙の中から突き出た拳に反応できず、またもや吹き飛んでしまう男。

 

「ガハッ!・・・・クソっ、何普通にしてんねんワレェ!!!さっさと体粉々に砕けて死ねや、ボケがっ!!」

 

「・・・・あいにくと、あの程度じゃ死なねえし・・・・それに例え粉々になっても」

 

ドカンッ!!と、先ほど殴った腕が爆発で吹き飛ぶ。男もそらみろ吹き飛んだ・・・・そう思わざるような笑みを浮かべるが・・・・その吹き飛んだ腕はすぐに再生していった。

 

「なっ?」

 

「・・・・」ゾクッ

 

次の瞬間・・・・男はよく分からない寒気に襲われた。いや・・・・分かる。分かっている・・・・・・・・これは恐怖だ。

 

恐れているのか?オレが!?人間如きを!?・・・・否!!ありえへん!!!ありえへんわ!!!!!!!

 

「ふざけんなや!!オレは冥府の門(タルタロス)九鬼門の一人・・・・ジャッカル!!!人間如きが・・・・この俺にぃぃぃっ!!!」

 

「・・・・なんだぁ?」

 

唐突に叫びだした男・・・・ジャッカルは・・・・段々と体が膨れ上がり・・・・まるで狼男のような、正真正銘の怪物のような見た目に姿を変えた。

 

「・・・・・・・・犬?」

 

「誰が犬や!!!っざけやがってぇぇ!!!」

 

怪物となったジャッカルは怒り狂いながら腕を振り下ろす。グランがそれを受け止めたその瞬間・・・・先ほどまでとは比較にならない程の大爆発が起きる。

 

ドゴォンッ! ドゴォォンッ!! ドゴォォンッ!! ドゴォォンッ!! ドゴォォンッ!!

 

「人間如きがオレ等悪魔に上等くれとんじゃねぇぞ!!コラァ!!」

 

何回も何回も出鱈目に繰り出していく大爆破。地面は割れ、砕け、その衝撃は街にまで響くほど

 

「・・・・なんだぁドゴォォンッ!!・・・・何となく分かってたドゴォォンッ!!・・・・けど・・・・お前人間じゃ「滅べ!!人間どもぉ!!」ドゴォォンッ!!・・・・・・・・・・・・・・・・鬱陶しい!!!」

 

「うぐぉ!!?」

 

そんな大爆発を喰らいながらも普通に会話をしようとしているグラン。・・・・そもそも怒ってる相手にその舐めくさった態度はいかんだろ・・・・まぁそこはいいとして・・・・それでも流石に鬱陶しかったようで、ジャッカルを殴り飛ばした。

 

・・・・・・・・あの大爆発を鬱陶しいで済ませるコイツは・・・・・・・・もう、いいや。そこは。

 

「お前がどういう理由で戦おうが・・・・そこはどうでもいいがな・・・・お前が・・・・お前等が仲間を傷つける可能性があるんなら・・・・相手が悪魔だろうが神だろうが・・・・お前等全員捻り潰してやるよ」

 

グランは腕に魔力を込めて、ジャッカルに叩き込んでいく。

 

「地撃・壊振!!!」

 

ドォォンッ!!!!

 

その衝撃はジャッカルを通じ、大地を揺るがし、街に今日一の大きな揺れを発するほどだった。

 

「・・・・・・・・・・・・ッッ」

 

当然、そんな攻撃を喰らい無事でいるはずもなくジャッカルは声も上げられぬまま倒れていた。

 

「・・・・やりすぎたかなぁ〜。まぁ、いいや。とりあえずコイツから情報を・・・・あー、その前にあの元評議員のじーさんに話聞くか?・・・・・・・・考えんの面倒になってきた。とりあえず叩き起こす・・・・・・・・ん?どこ行った?アイツ?」

 

戦い終え、どうするかとあっち向いたりこっち向いたりしていながら、ジャッカルを叩き起こそうとしたが、いつの間にかジャッカルの姿が消えていた。

 

跡形もなく・・・・そこに最初から無かったように

 

「・・・・まぁいいや。とりあえず街戻ろ」

 

だから気にしろよ!!そういうところだぞ!!お前!!

 

消えたジャッカルを気にもとめずさっさと街に戻っていくグラン。

 

だがこれで・・・・冥府の門(タルタロス)妖精の尻尾(フェアリーテイル)との・・・・本格的な戦いの幕開けとなる・・・・・・・・かも?

 

冥府の門(タルタロス)、九鬼門のジャッカル

 

VS

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)、グラン・ワームランド

 

勝者、グラン・ワームランド

 

 

 

 

 

 

 

 



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第五十三話 フェイス

 

『──────てな事があったんだよ』

 

「「「「・・・・・・・・」」」」

 

グランの話を聞き、もはやどう反応すればいいか分からない。なんでコイツこう・・・・・・・・アレなわけ!?

 

『・・・・んで?そっちってどんな感じよ?』

 

「あ、あぁ。すまん今話す」

 

だが、いつまでも黙っているわけもいかないので、グランにこちらで起きた事とこれからの事について説明していく。

 

『・・・・なるほど。やっぱヤジマさんも狙われたか』

 

「グラン、主が戦った冥府の門の男から何か情報は得られたか?」

 

『・・・・いや、聞く前に消えてたからな。オレが分かってんのは、今奴らの狙いが元評議員であることと、奴らが使うのは・・・・魔法じゃなく“呪法”って事だけだ』

 

「呪法じゃと?」

 

『・・・・詳しくは知らんが、奴がそう言ってたからな。』

 

結局のところ、奴らの目的自体は分からないが、奴らが呪法という力を使う事が分かっただけでも、一つの収穫だ。

 

『・・・・他の元評議員はどうなってんだ?』

 

「・・・・残念ながら、ホッグ老師とベルノ老師は一足遅かった。恐らく、グランが言っている元評議員はミケロ老師じゃろう。何か聞き出せないか?」

 

『・・・・一応、聞いてんだけど・・・・まぁ見てもらったほうが早いか』

 

グランはそう言って水晶板をミケロに向ける。そこに映っていたのは、全身から汗を流して少し虚な目をしているミケロの姿だった。

 

『・・・・白き遺産・・・・フェイス・・・・・・・・ワシは何も知らん・・・・本当に何も知らん・・・・』

 

「フェイス?」

 

『・・・・さっきから言ってるそのフェイスってなんだ?』

 

先ほどからずっとフェイスという言葉を繰り返して言っているミケロ。それは何かと聞いてみれば、ようやくそのことについて話し始めた。

 

『フェイスは……評議院が保有する兵器のひとつ。いくつもある兵器は、その危険度や重要度などによって管理方法が違ってくる。例えばエーテリオン・・・・この大陸中全てを狙える超魔導砲。その威力は1国をも一瞬で消滅させるほどの力……これの発射には、現評議院9名の承認と上級職員10名の解除コードが必要となる……』

 

因みに七年前は評議員5名の承認で発射できたんだって。

 

「つまり評議員がみんな殺された今・・・・」

 

「評議院はそのエーテリオンが使えないってことか?」

 

「エーテリオンを無力化するのも奴らの狙いの一つか」

 

奴らが現評議員達を皆殺しにした理由は、皆何となく想像がついていたが・・・・それでもなぜ元評議員まで狙うかは分からない。

 

「フェイスとは一体どんな兵器なんじゃ!」

 

『っ・・・・・・・・!!』

 

「秘匿義務があるのは分かる!しかし今はそれどころじゃ無いんじゃぞ!!」

 

『っ・・・・・・・・!』

 

マカロフにどんな物かと聞かれ、最初は言うのをしばっていたが・・・・とうとう観念したようにフェイスについて話す。

 

魔導パルス爆弾……大陸中、全ての魔力を消滅させる兵器

 

「なっ!?」

 

「た、大陸中の魔力を・・・・」

 

「消滅!?」

 

『・・・・わぉ』

 

告げられたフェイスの正体に皆が度肝をぬく。流石のグランでさえも驚いて・・・・・・・・驚いてんだよな?これ?

 

だが、実際に、この大陸中から魔力が消滅してしまえば全魔導士が魔力欠乏症にかかり、苦しむ事になる。

 

「しかも、冥府の門の使う力は魔法じゃなくて呪法・・・・ってグランが言ってた!!」

 

「全魔導士が魔法を使えず、苦しむ中で、冥府の門だけが自らの力を使える世界……」

 

「何というとんでもない兵器を……!」

 

「それはどこにあるんだ!!奴らより先に俺達がぶっ壊してやる!!」

 

ナツが水晶板の向こうにいるミケロに怒鳴るように聞く。しかし、ミケロは首を横に振る。

 

『し、知らんのじゃ・・・・本当に・・・・。封印方法は、3人の元評議院の生体リンク魔法だと聞いたことはあるが・・・・その3人が誰なのかは、元議長しか知らない情報じゃ。』

 

「生体リンク魔法……」

 

「3人の命が封印を解く鍵……」

 

「だから奴らは情報を聞き出そうともせずに評議員を殺しているのか」

 

「でも・・・・それって、逆に言えば、情報を得る必要が無いという事・・・・冥府の門は、フェイスの隠し場所まで掴んでいるということでしょうか?」

 

『・・・・いずれにせよ、早くその封印してる元評議員を見つけねぇとフェイスが奴らの手に渡っちまう』

 

「急いでその3人を見つけ出し、守らねば!その3人のことは元議長が知ってるんだな!?」

 

『お、恐らく……』

 

「元議長の住所の割り出しはまだか!?元議長も敵に狙われてるはずじゃ!!急げ!!」

 

「大丈夫!追加で16人の元評議院の住所を見つけた!!他のギルドにも頼んで護衛についてもらってる!!」

 

「その中に元議長の住所もありました!!」

 

「急いで誰か向かわせろ!!」

 

「安心してください、既に向かってます!!最も頼れるふたりが!!」

 

元議長のところに、エルザとミラが向かっているらしい。他の元評議員達のところにも、他のギルドが協力して護衛に回ってくれている。これで一安心・・・・なのだが、どこか腑に落ちない。

 

元評議員の住所は・・・・調べ上げていけば奴らでも分かるだろう。実際、グラン達妖精の尻尾も元評議員達の住所を調べ上げる事ができた。

 

・・・・だが、フェイスの存在・・・・さらに隠し場所など・・・・・・・・そう簡単に分かるものではないはず・・・・ならば、どうして?

 

色々と疑問に思うグランだったが、とりあえず今はギルドへと戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・んで、あの後急にナツとハッピーが元議長のところまで飛んでいったと?」

 

「そう、一応私とウェンディで後を追ったんだけど・・・・エルザもミラもナツもハッピーもいなかったわ」

 

「・・・・ごめんね。私の鼻じゃ跡を追うまでは出来なくて」

 

ギルドに戻ってきたグランは、ウェンディとシャルルからナツが先に飛び出してしまった事を聞いた。

 

「・・・・そうなると、元議長が奴らの協力者って事になるのか」

 

「ええ、恐らくね」

 

これで、元評議員達の住所はおろか、フェイスの情報を奴らが持っていた理由がわかった。ナツは恐ろしい野生の勘で、元議長が怪しいと思いそのまま飛んでいったのだろう。

 

冥府の門(タルタロス)・・・・何とかして本拠地の情報を得られぬものか。」

 

「見付けたー!オイラ本拠地見つけたよー!!」

 

「ハッピー!!」

 

皆がどうしたものかと悩んでいたら、フラフラになりながらも戻ってきたハッピーが、本拠地を見つけたと言っていた。

 

「エルザとミラが捕まっちゃって・・・・元議長が裏切り者で・・・・ナツまで・・・・オイラ・・・・」

 

「落ち着きなさい。」

 

「あい!!」

 

一度ハッピーを落ち着かせてから説明を聞く。

 

「しかし信じられん・・・・本当に元議長が冥府の門側に・・・・」

 

「エルザとミラが捕まるなんて……」

 

「・・・・ナツも捕まったか。それで、奴らのアジトは?」

 

「あい・・・・あいつらのアジトは移動してるんだ……変な四角い島みたいな…」

 

「移動じゃと!?」

 

「それじゃあ正確な位置は分からないの?」

 

「ハッピー、大体の場所と向かってる方向わかる?」

 

「オイラ…向こうから来て、あっちに動いてて……」

 

「任せて!私が的の進行経路を計算する!!必ず場所を突き止めてやるから!!」

 

「急げレビィ!他の者は出撃準備じゃ!!」

 

「「「「おぉ!!」」」」

 

これでようやく奴らに反撃ができる。妖精の尻尾に活気が渦巻いていた。

 

そんな時、ユーリ老師の所に行っていたエルフマンが帰ってきたが、一緒に行っていたリサーナが帰ってこないのを不審に思い聞いてみると、何とリサーナは敵に捕まってしまったらしい。

 

そんなエルフマンに、情けないと告げるカナ。獣の力を持っているエルフマンがみすみす敵を見失った事に、苛立ちを覚えたらしい。

 

カナの言葉に特に反論もせず、トボトボとその場を後にするエルフマン。

 

「みんな・・・・ピリピリしてるわね」

 

「・・・・まぁでも、なんかエルフマンの様子もおかしかったような。」

 

「おかしい?」

 

「・・・・敵を見失う・・・・は、まぁ奴らの呪法でどうこうされたって事でまぁ一応納得できんだが・・・・いつもならもっとこう・・・・漢ォ!!って感じで暑苦しく騒ぐイメージがあるんだが」

 

お前エルフマンに対してそんなイメージ持ってたのかよ。・・・・分からんでもないが。

 

「・・・・アンタのイメージはともかく、確かにそうよね」

 

「・・・・気のせいならいいんだが、まぁ妹が攫われたのがよっぽどこたえたって考えとくか」

 

「・・・・そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!!敵の場所が特定できた!!!見つけた!!」

 

「「「「おおっ!!」」」」

 

「よくやった!!」

 

時間が経ち、レビィがようやく敵の本拠地が特定する事ができた。だが、その場所は予想の斜め上の場所にあった。

 

「真上・・・・」

 

「え?」

 

「真上にいる・・・・」

 

何と奴らは向こうからわざわざこちらに来ていたのだ。奴らの真意は分からないが、これでこちらからも攻め入る事ができる。

 

「向こうから来やがったか」

 

「ナツ達を助けに行こう!」

 

「あい!」

 

「・・・・やるか」

 

「うん!」

 

「行くぞ!!!」

 

「「「「「おおおおおおっ!!!!」」」」」

 

グレイの掛け声と共に皆の士気が一気に上がり・・・・そして

 

 

ドゴォンっ!!!

 

妖精の尻尾のギルドは大爆発により、大破された。

 

 



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第五十四話 妖精の尻尾vs冥府の門

 

冥府の門の策略により、妖精の尻尾はギルドごと吹き飛んでしまった。その様子を空を飛ぶキューブより見ている冥府の門。

 

「ご覧の通りですわ、キョウカ様。」

 

「よくやったセイラ。」

 

「ゲヘヘヘ…失ったお命は、おいくらかおいくらか。」

 

「一掃出来たのなら、こんな辺境の地まで冥界島(キューブ)を動かす必要はなかったな。これより、作戦を従来のフェイス計画に一本化する。時は満ちた……人間共の猜疑心が生み出した白き遺産によって、人間共は自らを滅ぼすのだ。フェイスは人間共から全ての魔力を奪い、我ら魔族の時代を約束するだろう。全ては、ゼレフの望む世界のために。」

 

そして、邪魔者がいなくなった奴らは等々、計画へと実行していこうとしていた。そんな中。

 

「おんや?」

 

「どうしたフランマルス。」

 

「いえね、多数の魔力反応が……」

 

フランマルスが多数の魔力反応があると報告する中、1人の兵士が部屋の中に大急ぎで入ってくる。

 

「大変です!冥界島に向かってくる三体の影を確認しました!」

 

「三体?いや、これはもっと大勢の魔力ですぞ?」

 

その兵士の報告にもっといると言うフランマルス。

 

「視認できるのは3体のみです!」

 

だが、兵士は視認できるのは三体のみと、少し矛盾が生じていた。

 

「何事だ?」

 

「アンダーキューブを映しますわ。」

 

島の下側、その映像が映し出される。そこに三体の影がいた。ハッピー、シャルル、リリーが、今まさに冥界島に向かっていた。

 

「ネコ…!?」

 

「あれは確か妖精の尻尾の…!?」

 

「あんな小動物から多数の魔力反応だと!?」

 

「キョウカ様、手に何かを持っているようですわ……カード!?」

 

そして、セイラはハッピー達が大量のカードを持っている事に気がついた。

 

 

 

 

 

 

時間をすこし巻き戻す・・・・爆発のほんの少し前

 

エルフマンの様子がおかしい事に疑問を思ったカナはエルフマンを追うと、エルフマンが魔水晶をセットして今にも爆破させようとしている所に遭遇。

 

なんとか止めようにも、エルフマンは敵に操られている様子で押さえつけられてしまう。

 

間に合わない・・・・そこでカナがとった行動は、皆を一斉にカード化させる事。

 

そしてギルドが爆発したと同時に、ハッピー、シャルル、リリーに脱出と特攻を命じていた。

 

この一瞬の出来事のおかげで、ギルドは破壊されてしまったが、皆無事だった。

 

「あのカードは、妖精の尻尾の魔導士ですぞ!!」

 

「なんだと!?」

 

「そんな…私の……失態………」

 

「防衛線を張れ!アンダーキューブに重力場を展開!フロント・リア・サイドキューブは第1戦闘配置!トップキューブには近づけさせるな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ!?」

 

「何これ!」

 

「吸い寄せられてる!!」

 

「これは…重力!?」

 

冥界島へと飛んでいたハッピー達は、島の真下に急激に引き付けられてしまい、ハッピーとシャルルは地面に叩きつけられてしまう。リリーはうまく着地していた。

 

落ちた直後・・・・大量の冥府の門の兵士達が襲いかかってくる。

 

「オイラ達逆さまになってるの!?」

 

「そんなことより敵が出てきたわ!!」

 

「全員カードから解凍!行くよ!!」

 

「「「おおおおおおおっ!!」」」

 

「「「妖精の尻尾、出陣!!」」」

 

そして皆、カードから解凍され出撃していく。今ここに、妖精の尻尾と冥府の門の戦争が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・それにしても無駄に数が多いな!!」

 

向かってくる兵士たちを蹴散らしながらそう言うグラン。彼の言う通り、そこまで大した事がないのだが、いかんせん数が多い。加えて、病人や怪我人も守りながら戦わなければならない状況にあった。

 

早く城まで行かなければならないが、中々突破口が見つからない。

 

「グラン!!アンタならこれくらい壊せるでしょ!!」

 

「・・・・そしたらみんな真っ逆さまだけど?」

 

「ぐずぐずしてないで兵士を倒しなさい!!」

 

「えぇ〜」

 

兵士達の相手をしている場合ではないのだが、突破口がなければ向かえないのもまた事実。どうしたものかと思っていると・・・・いきなり地面が盛り上がったと思ったら、その部分が破壊されて、槍を構えたエルザが飛び出してきた。

 

「・・・・突破口できたな」

 

念願の突破口が、まさかエルザにあけてもらえるとは思っていなかったが、そんな事を気にしている場合ではなかったので、その突破口へと降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何…!?この部屋……」

 

「沢山文字が浮いてる」

 

「あの大きい球体、地図みたいですよ。」

 

「制御室かしら……」

 

「・・・・なんか気持ち悪い気配があるな」

 

突破口より入ってしばらく、グラン、ウェンディ、ルーシィ、ハッピー、シャルルはある一つの部屋に立ち寄った。

 

「エルザが言ってた通り、フェイスの封印が解かれたみたい。」

 

「ど、どうしよう、グラン」

 

「・・・・どうしような」

 

「この魔法陣使って、また封印できないのかな?」

 

「駄目ね、完全にロックされてるわ。動かせない。」

 

「あれ?ここには現地の手動操作じゃないと起動出来ない、って書いてあるのに……起動してる!?」

 

エルザが言っていたのだが、もうすでにフェイスの封印が解かれてしまったいるらしい。そしてルーシィが見た画面にはもう既に起動しているらしい。

 

「これ・・・・フェイス発動まで後41分」

 

ウェンディのその言葉に、グラン以外は驚き焦り始める。グランは「・・・・あらら」的な感じだ。だからもっと驚け!

 

「41分!?あとたった41分で大陸中の魔力が!?」

 

「どうしようどうしよう!!みんなに知らせなきゃわー!?」

 

「落ち着きなさいハッピー。」

 

「ここを壊してもダメ!?」

 

「・・・・無理だな。解除も現地でやるしかないっぽい。」

 

「みんなに知らせてる時間はないわね……私たちで行きましょう!」

 

「あい!!」

 

「・・・・俺は?」

 

「アンタは走りなさい!!」

 

止められないとわかれば、即座に判断し、フェイスを止めようとフェイスの出現した場所まで向かおうとした矢先・・・・部屋に錫杖の音が鳴り響く。

 

「仄暗き乙女の祈りは、地獄に響く鈴の音か。照らす魔皇は、大地を回復せし明星の息吹。冥界に落ちた妖精の乙女よ。骸となりて煉獄を彷徨え。」

 

「が、がいこつ……」

 

「お面ですよきっと…」

 

「・・・・俺の事が言われてない」

 

「そこはどうでもいいでしょ!!」

 

そこに現れたのは、冥府の門九鬼門の一人、漆黒僧正キース。見た目は、完全に骸骨だ。そしてグラン、そこは気にするとこじゃない。

 

「時間が無い、スキを作って脱出しよ。」

 

「はい。」

 

「早くフェイスを止めないと…」

 

「大変なことになるわ。」

 

「もう大変なことになっているんですよ、お嬢さん、お坊ちゃん方。ゲヘヘヘヘ。」

 

と、そこに恐らく元々この部屋にいたであろうフランマルスもひょっこりと現れた。

 

「一人増えた!」

 

「・・・・一つ目ボール」

 

「誰が一つ目ボールですか!?」

 

「あたしに任せて!開け金牛宮の扉、白羊宮の扉!!タウロス、アリエス!!」

 

「MOォ!出番ですかな!」

 

「頑張りますすみません!!」

 

ウェンディが一人増えた事に驚き、グランがどうでもいい事を言って相手の気を引いている間にルーシィは2人の星霊を呼び出す。

 

「モコモコウール100%!!」

 

「もっ!?ぶほぉ!!」

 

「MOOOOOOO!ウールタイフーン!!」

 

「ぶほほっ!?」

 

アリエスが出したウールを、タウロスが戦斧を振り回して勢いよく巻き上げる。

 

「今のうちよ!!」

 

「あい!!」

 

「フェイスの場所分かる!?」

 

「ドクゼリ渓谷の大空洞よ!!」

 

「急ごう!!」

 

「はい!!グランも!!」

 

「・・・・悪いが、もう一人きた。先行ってろ」

 

「え?」

 

星霊達が足止めしてくれている間に、急いでこの場から脱出しようと考えていたが、どうやら敵は簡単に逃してくれないらしい。

 

「砕け散れ土塊ェっ!!」

 

その言葉と共に激しい爆発音が鳴り響く。その威力は凄まじく、ウェンディ達は吹き飛ばされてしまう。

 

「グラン!!」

 

「アイツは!?」

 

その爆破を起こしたのは・・・・グランに一度ボロ負けして倒されたジャッカルであった。

 

「・・・・生きてたんだな、爆破魔。今は犬じゃないんだな」

 

「じゃかしぃ!!お前だけは一片のかけらも残さずに粉々に爆破させたらぁっ!!」

 

側にいたウェンディ達には全く目もくれず、グランに敵意と殺意をあてまくるジャッカル。だが、これはある意味好都合。

 

「・・・・今のうちに行け!後で追いつく!!」

 

「ごめん!!任せる!!」

 

「ごめんね!フェイスは任せて!!」

 

そう言ってその場から勢いよく飛んでいくウェンディ達。そんな彼女達を止めようともせずにグランに突っ込んでいくジャッカル。その勢いのまま、壁に激突して破壊していく。

 

「・・・・しつこい」

 

「オラオラ!!さっさと反撃してみろや!!」

 

容赦のない爆破の雨・・・・いや嵐。ただただ一方的な攻撃にもはやなす術なしか!?

 

「ワハハハハハっ!!どうしたどうした土塊ェ!!手も足も出ぇへん「・・・・・・・・悪いが」かっ!!?」

 

ガシィっ!!と、ジャッカルの顔面を握りしめ、力を込める。

 

「・・・・お前に構ってる暇は・・・・・・・・ねぇんだよ!!」

 

「うおぉおおっ!!??」

 

そしてそのまま勢いよくぶん投げて、吹き飛ばす。今の最優先事項は、フェイスを止める事であり、こいつと戦うことではない。

 

さっきは、まだウェンディ達がいた為、相手にしていたが、ある程度の時間を稼げれば問題はない。

 

ジャッカルはぶん投げられ壁の向こうへと消えていく。死んではいないだろうが、当分はこれでいいだろう。

 

「・・・・急ぐか」

 

グランはそのまま、ウェンディ達が飛んで行った方まで走っていった。

 

 



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第五十五話 ドラゴンフォース





 

場所は変わり、ドクゼリ渓谷の大空洞。ウェンディとシャルルはフェイスを止めるべくその深い大空洞の中へと進んでいった。

 

だが、簡単には見つからず冥府の門、九鬼門の一人エゼルと対峙してしまう。

 

ウェンディでは敵う相手ではない。逃げた方がいいというシャルルに対し、逃げきれないからやるしかない。そう告げるウェンディ。シャルルを安全な場所に移し、戦闘を開始する。

 

が、しかし。エゼルには敵わなかった。ウェンディの攻撃は対したダメージにならず、吹き飛ばされてしまう。

 

吹き飛ばされたウェンディはエゼルに踏み付けられ、身動きが取れなくなる。

 

「あぅっ!!?」

 

「見ろ・・・これがフェイスだ」

 

そしてちょうど吹き飛ばされた場所にフェイスがあった。それは巨大な白い柱・・・その頂点に人の顔のようなものがある。

 

「発動まであと5分。流石にこんなに近づくとすげぇエーテルナノ濃度だ。臭くていけねえ。・・・・・だが、その魔法粒子が魔法を滅ぼす。大陸中の“魔力”を奪い、オレ達の“呪法”が世界を支配する・・・・・・・・・お前はその前に粉々に砕いてやるョ」

 

そしてエゼルはより一層にウェンディを踏む力を強めていく。本気でウェンディを粉々に踏み砕くために。

 

「ウェンディを放しなさいっ!!このっ!このっ!!」

 

だが、それを阻止しようと陰にいたシャルルがエゼルへと攻撃する。その攻撃は、決してダメージなど与えられない・・・微々たるもの。それでも、ウェンディを助けたくて、居ても立っても居られなくなったシャルルが出来る唯一の抵抗。

 

「んだァ?このネコは?食っていいのかョ」

 

当然、エゼルに簡単に掴まれてしまいその大口を開けシャルルを食らおうとする。

 

「やめて!!お願い!!!」

 

ウェンディは動けぬ体で必死に声を張り上げながら懇願するも、悪魔の耳には届かない。

 

抵抗虚しくエゼルがシャルルを食らおうとした、その時

 

ゾッ

 

「・・・・・・っ!!?なんだっ!!?」

 

得体の知れない何かを感じ取ったエゼルは咄嗟に振り向いた。その何かはエゼルにとっては何かわからない・・・本来悪魔である自分が持ってはならない・・・・・・恐怖を感じてしまうようなもの。

 

対し、ウェンディとシャルルにとっては・・・・・・いつも感じている・・・昔から知っている・・・・・・自分達を守ってきてくれた・・・そんな存在。

 

(・・・・・・もう・・・守ってもらうだけなんて・・・・・・そんなのいや・・・・・・いつまでも・・・弱いままなんて・・・・・・私も・・・グランみたいに・・・・・・今度は私が・・・守れるように!!)

 

一瞬だった。エゼルの踏み付けによる拘束が弱まったのも、エゼルがウェンディとシャルルから気を逸らしたのもほんの一瞬。すぐに気のせいだと思い、シャルルを食らおうと、ウェンディを踏み砕こうとする。

 

だが、ウェンディにとって・・・その一瞬で充分だった。

 

ゴオオォッ!!

 

「な・・・何だ!!?」

 

フェイスの近くを漂う高濃度エーテルナノ・・・それが空気と混ざり合い・・・・・・その空気を取り込んだウェンディは・・・今、竜の力(ドラゴンフォース)を手に入れた。

 

逆巻く風を纏い、ウェンディは立ち上がり、反撃を開始する。

 

ヒュンッ

 

「消え・・・・・・ごあああああっ!!?」

 

一瞬でエゼルの死角に回り込み一撃を食らわせる。先程までとは打って変わった力にたちまち声を上げるエゼル。

 

「このガキっ!!」

 

当然黙ってやられる訳もなく反撃するエゼルだが、その攻撃は空を切る。そのまま逆に吹き飛ばされる。

 

「面白ェっ!!」

 

突如としてパワーアップを果たしたウェンディを相手にさらに闘争心を激らせるエゼル。

 

「ウェンディ・・・もう時間が・・・」

 

だが、コイツを相手に時間をかけるわけにはいかない。残り時間はもう既に5分を切っている。

 

「わかってる!!!これで・・・・・・決める!!」

 

「ア?何だこれは・・・風!?」

 

だからこそウェンディは次で止めを指すつもりだ。魔力を高めていき、エゼルに向けて放つ。

 

「滅竜奥義・・・照破・天空穿!!!」

 

放たれる滅竜奥義。これで決まると思っていた。

 

「オレの“呪法”は全てのものを斬り裂く“妖刀”!!!!三日月!!!」

 

エゼルは腕を振るいウェンディの滅竜奥義を斬り裂いた。

 

「ああぁぁっ!!」

 

斬り裂かれた衝撃で吹き飛んでしまうウェンディ。対しエゼルは、その姿を変貌させ追い討ちをかける。

 

「斬撃モード!!!オレの妖刀は斬れ味をさらに増すぜぇ!!」

 

迫るエゼル。そして刻一刻と過ぎていく時間。

 

(・・・この空間は・・・今・・・・・・私が・・・支配してるんだ!!)

 

そして次の瞬間────────────この空間から風が消えた。

 

「・・・・・・・・・ア?」

 

先ほどまで逆巻いていた風はおろか、その周りの風・・・いや、空気が消えていた。それら全ての空気は、ウェンディへと集っていく。

 

エゼルの本能がそれをいち早く察知しウェンディを斬り刻まんとその凶悪な妖刀をウェンディへと向けたが・・・・天竜は既に狙いを定めていた。

 

「滅竜奥義・・・・極波・天竜哮!!!」

 

ドゴォォォォォォォォォォっ!!!

 

放たれた天空竜の咆哮は、エゼルを通してフェイスをも破壊した。

 

それとほぼ同時にウェンディの竜の力も解けて、ウェンディは地面に倒れ込む。

 

やった・・・・・・そう喜ぶのも束の間。フェイスは破壊したはずなのに・・・・・・カウントダウンは止まっていなかった。

 

「え?」

 

「何で・・・・・・フェイスを壊したのに・・・カウントダウンが止まらない!!」

 

「くっ・・・あうっ。あれ?・・・体が・・・」

 

もう一度何とかしようとウェンディは立ち上がろうとするが・・・体に力が全く入らず、また地面に倒れてしまう。

 

より一層に光出すフェイス・・・があった場所。カウントダウンはもう3分を切っていた。

 

更に・・・・・・ウェンディ達を絶望が襲う。

 

「くそがァァァァァァァァァァァァっ!!!」

 

「え!?」

 

「何で・・・」

 

倒したはずのエゼルが雄叫びを上げながら立ち上がった。目の焦点はあっておらず全身ボロボロな状態で、ウェンディを睨んでいた。

 

もはや立つことすらままならないはず。だが、奴は起き上がった。自らのプライドをズタズタにされた屈辱を糧に、ウェンディへの憎しみだけでその体を保っていた。

 

「このガキがぁぁっ!!!!!」

 

そしてボロボロの刃をウェンディに向けて振り下ろさんと襲い掛かる。ウェンディは避けようにも、体は動かない。シャルルはその小さな体に懸命に鞭を打ちウェンディを守ろうとするが間に合わない。

 

(だめっ・・・・・・)

 

(助けて・・・・・・)

 

((グランっ・・・))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォォォンッ!!

 

「グボハァっ!!??」

 

刃がウェンディへと振り下ろされる瞬間、飛んできたグランに因ってエゼルは地面に叩き潰され・・・完全に意識を失っていく。

 

「・・・あっ」

 

「・・・頑張ったな、ウェンディ。あとは任せろ」

 

「・・・うん」

 

と、ここでウェンディは安心しきったかのように気を失った。

 

「・・・さて・・・と。シャルル、コイツが自爆した時の爆破の範囲は分かるか?」

 

「・・・分からない。本来なら私がやろうとしてたから。この先の未来は真っ白だったの。それに、爆破の範囲は予想・・・予知ができない。」

 

「・・・なら、出来るだけ遠くに送るから、何とか頑張ってくれ」

 

「・・・アンタは大丈夫なの!?フェイスの自爆の威力は分からないわ!いくらアンタでも・・・・・・」

 

フェイスを止める方法・・・大量に吸収したエーテルナノ、そのエネルギーを別の属性に変換させ、自立崩壊魔法陣を発動させる。つまりフェイスを自爆させようという事だ。

 

だが、その威力は計り知れない。だが、だからと言ってこのまま作動させてしまえば、世界中から魔力が消えてしまう。

 

「・・・大丈夫、約束したからな。お前らを置いて死なねぇってな」

 

そう言い、グランは大地を操作して、ウェンディとシャルルを出来るだけ遠く、安全な場所まで移動させる。なるべく遠くに。

 

ある程度の距離を離した後、グランはフェイスの近くへと近づく。

 

「・・・恐らく、ここをこうする・・・・・・・・・あ、合ってた」

 

コイツ、まさかのほぼ勘で自律崩壊魔法陣を展開させようとしてたらしい。バカじゃねぇの?しかもそれで出来ちゃったし。

 

「・・・・・・これを押せばいいのか」

 

そしてフェイスの自律崩壊魔法陣を展開させ、後はボタン・・・紋章?を押す・・・いや触るか?・・・まぁどっちでもいいか。それだけとなった。

 

・・・・・・フェイスの自爆による爆発の威力は予想ができない。息を整え、今一度覚悟してから「・・・ポチッとな」え?まだ覚悟できてな──────

 

ドゴォォォォンッ!!

 

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

 

オオオオオオ

 

 

オオオ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェイス爆発場所より離れた場所にて、フェイスの自爆を目の当たりにしグランが無事かどうか心配するものがいた。

 

「・・・・・・本当に大丈夫なんだろうな、アイツ」

 

ドランバルトだ。グランがウェンディ達の元に向かう途中で偶然にも遭遇し、ウェンディとシャルルを途中から安全な場所まで送り届けてもらうよう頼んであったのだ。

 

「だが、これでフェイスが破壊された。グランのおかげ・・・・・・いや、この小さな勇者達のおかげだな」

 

「・・・・・・何カッコつけてんだ、お前」

 

「どわぁあっ!!?」

 

感傷に浸っていたドランバルトの元にしれっと現れたグラン。所々傷はあるものの、ほぼ無傷と言っていい状態で無事だったようだ。いよいよやばいなコイツ。

 

「ぐ、グラン!?お前、無事だったのか!!?」

 

「あの程度じゃ死なん」

 

ならどうやったら死ぬのか教えてくれ。

 

だが、これでフェイスは無くなった。この世から魔力が消えることは無くなった。これで一安心・・・・・・とはいかなかった。

 

まだ終わってはいない。

 

まだ、絶望は残っている。

 

そして、更なる絶望がこちらに向かっている・・・・・・暗黒の絶望が。

 

だが、それを知るのは・・・もう少し後のこと。

 

 

 



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第五十六話 マグノリアへ向かうモノ

 

フェイスを破壊して少し経った後、グランとドランバルトはウェンディ達を岩の木陰に休ませて起きるのを待っていた。

 

「・・・・・・っ!ここは!?」

 

「ウェンディ!」

 

そしてしばらくして、シャルルが起きその少し後にウェンディが目を覚ました。

 

「・・・よく休めたか?」

 

「あ、グラン!!フェイスは!!?フェイスはどうなったの!!」

 

「君たちとグランのおかげで起動は停止した」

 

ウェンディの疑問に答えたのはドランバルトだった。そしてフェイスが破壊された事に喜び、シャルルと共に抱き合って喜ぶウェンディ。

 

「これで皆んな助かるね、グラン!」

 

「・・・あぁ、そうだな・・・・・・って言ってやりてぇとこなんだが」

 

「とても伝えにくいんだが・・・・・・まだ・・・何も終わっていないんだ

 

「え?」

 

そう・・・まだ終わっていなかった。見た方が早いと言われ、シャルルと共に飛び上がったウェンディ・・・そこには衝撃的な光景が広がっていた。

 

「そんな・・・」

 

そこにあったのは、地面から突き出た無数の顔・・・・・・大量のフェイスがそこにはあった。

 

「・・・・・・顔のデザインどうにかなんなかったのか、評議員は」

 

「そこじゃねぇんだよ」

 

でも正直気持ち悪いと思う。

 

「現在確認されてるフェイスは約二千機」

 

「いや、三千だ」

 

ドランパルドが告げた数を訂正する様にグランがそう告げた。

 

「私たち・・・あんなにがんばって一つ壊したのに・・・・・・グラン、アンタでもどうしようもないの?」

 

「・・・・・・流石に数が多すぎる。例え猶予が一日あったとしても、ぶっ通しでやって千壊せるかどうかだ」

 

それでも一日で大陸中にあるフェイスの三分の一を破壊できるといえるコイツはやっぱヤバイと思う。

 

「・・・じゃあ・・・もう、終わ───」

 

「言わないでシャルル。もう、絶望なんてしたくない。」

 

弱音をはこうとしたシャルルに待ったをかけたウェンディは手に風をまとわせ、即座にウェンディは自身の髪を切って肩までの長さに揃える。

 

「ウェンディ!!」

 

「弱音も吐かないし、涙も流さない。みんな戦ってる……だから私も諦めないよ!」

 

そこにあったのは、何があっても諦めない、覚悟を決めた顔だった。下をむきかけたシャルルも顔をあげる。

 

「そうね、弱音を吐いてる場合じゃないわね!」

 

「ああ、まだ終わったわけじゃない!」

 

「ウェンディ!!その髪も似合ってるぞ!!」

 

「え?そう///」

 

「アンタは少し真面目にやんなさい!!」

 

各々覚悟を決めたと言うのにグランはウェンディの切り揃えた髪しか見ていない・・・・・・コイツマジでなんなん?

 

「それはそうと・・・これだけの数のフェイス、一体どうしたら・・・」

 

「・・・・・・とりあえず、マグノリアまで戻ってウォーレンの力をかりる」

 

「うん、ウォーレンさんの魔法で大陸中のギルドに呼びかけるの」

 

「分かった。だが、ここからだと中継地点をいくつも挟むからな・・・急いで5分位だ」

 

まずはマグノリアに戻り、皆と合流し、ウォーレンの念話で大陸中の魔導士達にフェイスの破壊を協力してもらおう・・・というらしい。

 

「じゃあ行くぞ!」

 

「はい!グランも・・・グラン?」

 

「・・・・・・・・・悪い、ちょいと用事ができた。先行っててくれ」

 

いざマグノリアへ向かおうとした時、グランはマグノリアとは別の方向を睨んでいた。

 

「こんな時にどうしたのよ?何かあったの?」

 

「・・・ああ。多分早めに対処しないと、手遅れになるかもだからな」

 

グランの口からはっきりと告げられた言葉に無言で頷くウェンディとシャルル。ドランバルトも承諾し、ウェンディとシャルルと共にマグノリアへと魔法で飛んだ。

 

グランもまた、その場から跳んでいった。マグノリアとは別の方向へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり・・・マグノリアから少し離れた上空。そこを巨大な黒い影が物凄いスピードで飛んでいた。

 

それは全てのものにとっての厄災・・・ドラゴンにとっての絶望・・・人々の悪夢

 

闇の翼“アクノロギア”。奴が向かう先は・・・マグノリア。何故奴がそこに向かうのか。冥府の門の殲滅?それとも消し損ねた妖精の尻尾を消滅させるため?それとも別の何かなのか・・・・・・それは奴にしか分からない。

 

だが分かるのは、このまま行けばいずれまた妖精の尻尾も巻き込まれてしまうという事。アクノロギアに認識すらされずに。

 

だからと言ってコイツを止めれるものはいない。いや、それよりもアクノロギアに対し何の関係もない者がアクノロギアを止めようと動くわけがない。

 

関係ない者は・・・だが

 

突如としてアクノロギアの前に巨大な土壁が立ち塞がった。これが普通の土壁ならば、構わずそのまま真っ直ぐ突き破るが・・・この土壁から“魔”を感じたアクノロギアは今まで緩めることをしなかったスピードをほんの一瞬緩めた。

 

「グオォ!?」

 

ほぼ真下から放たれたブレスにより、バランスを崩しその場に止まるほか無くなった。

 

アクノロギアはブレスが放たれた方向を睨みつける。一体何が己の邪魔をしたのか。

 

「・・・・・・久しぶりだな、クソ野郎」

 

そこにいたのは、アクノロギアを睨みつけているグランだった。

 

何故ここにいたのか、そもそもどうしてアクノロギアがマグノリアに向かっていると分かったのか?

 

そういう細かいことはいいや。頭痛くなりそうだし。

 

だがアクノロギアにとっては所詮は人間・・・・虫ケラを一々相手にする必要もない。

 

だが、一瞬。グランから竜の気配を感じ取った。ならばアクノロギアが行うのはただ一つ──────────破壊するのみ。

 

アクノロギアが轟音を上げながらグランへと突撃していく。直接その身体を破壊する為に。その漆黒の爪がグランを切り裂かんと迫ってくる。

 

だが、アクノロギアの予想とは違い、この虫ケラのような存在はアクノロギアによる攻撃・・・・・・いや、アクノロギアにとってはただ腕を振り払う感覚だっただろうが、それを易々と退けた。

 

次は外すまいと再度繰り出すが、また避けられた。次も、次も、また次も。

 

当然、アクノロギアも本気では攻撃していない。竜の気配があったとしても、所詮は虫ケラ。そんなモノに一々本気で相手にする方がバカらしい。

 

だが、それでもこの虫ケラを破壊するつもりで繰り出している攻撃を避けられ、苛立ちが溜まっていく。

 

「・・・・・・どうした、ちんけな虫ケラ一匹も満足に破壊できねぇか?」

 

そんな挑発するような・・・いや、挑発してんのか。それを受けたアクノロギアはさらに激しい攻撃に出る。爪だけでなく、牙で噛み砕こうとしたり、ブレスで一掃しようとしているが、グランはそれもほぼ紙一重で避けていく。

 

もはや当初の目的を忘れ・・・・・・何かは知らんが・・・グランを破壊せんと牙を剥き出し襲い続けるアクノロギア。

 

攻撃が激しさを増す一方で、易々と攻撃をよけ、挑発までできるグランは・・・・・・・・・内心めちゃくちゃ焦っていた。

 

アクノロギアは適当に相手していたが、グランはその適当な攻撃をギリギリで避けるだけで精一杯だった。

 

しかもアクノロギアはグランの態度が気に食わなくなり、攻撃がさらに勢いを増してしまい、もういっぱいいっぱいだった。

 

そんな状況でよく挑発するよな、コイツ。まぁ怒らせたのは自業自得だがな。

 

だが、ただやられっぱなしでいられるような魔導士でないのは、皆、百も承知だろう。

 

グランを噛み砕こうと突撃してきたその次の瞬間、グランは予想外の行動に出る。

 

突撃してきたアクノロギアを避け、あろう事かそのままアクノロギアに飛び乗った。

 

不快!不快!!不快!!!虫ケラ如きが我に乗るなど、烏滸がましい!!そんな事を言わんばかりに、アクノロギアはグランを振り落とそうと暴れ回る。

 

それでもグランはアクノロギアの身体に喰らい付き中々落ちない。そしてここから、これまでの反撃に出てかかる。

 

「モード地獄竜!!滅竜奥義!!」

 

拳を握り、今出せる最大を与える。半端な攻撃じゃ怯みもしない。やるんなら、全力で殴り続ける!!

 

 

「獄乱・地竜破拳!!」

 

 

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!!

 

 

「グオァっ!!?」

 

獄炎を纏った大地竜の拳が無数に叩き込まれ、あのアクノロギアが苦悶の声を一瞬上げた。

 

殴る!殴る!!殴る!!!

 

大地の魔力、そして自身の魔力の限りを尽くし殴り続ける。

 

流石のアクノロギアでさえも、この連撃にはこたえたのか鬱陶しそうに頭を振り払う。

 

だがそれでも落ちず殴り続けるグランに対し、アクノロギアは強行手段に入る。

 

遥か上空に飛び上がったと思った次の瞬間、今度は猛スピードで地面にむけて急降下していった。

 

そんな中でも殴り続けるグラン。迫る地面、さらにスピードを上げるアクノロギア。

 

そして・・・・・・

 

 

ドゴォォォォォォォォォォンッ!!

 

 

物凄いスピードで地面に激突し、凄まじい轟音と共に土煙が舞い上がる。と同時にアクノロギアはまた上空へと飛び上がり、大地に向けてブレスを放つ。

 

ブレスを放ち終え、しばらくすると先ほどまで聳えていた土壁が瞬く間に崩れ去っていった。

 

「・・・・小さな竜擬如きが、我の道を阻もうなど・・・・・・不快」

 

先ほどまで一言も発しなかった言葉を吐き捨てるように言い、またマグノリアまで物凄いスピードで飛んでいった。

 

アクノロギアが飛び去ってしばらく、アクノロギアが放ったブレスの影響で大穴があいた大地。その大穴から動く影が一つ。

 

「・・・・・・久々に死ぬかと思った」

 

グランだ。・・・・遥か上空から叩き潰され、その上からブレスを撃たれたと言うのにいつも通り無傷・・・・・・というわけではなかった。

 

身体は半壊状態で、所々から血を流している。体の再生が間に合わずモロに喰らってしまったからだろう。

 

だが、アクノロギアと戦い・・・相手はそう思ってなくても、戦ってこれだけで済んでいるのだから流石というべきである。

 

「・・・・急いでマグノリアに戻らねぇと、今度こそ妖精の尻尾が全滅しちまう。」

 

グランは激痛の走る身体にムチを打ち、マグノリアへと向かった。

 

 

 

 



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第五十七話 マグナカルタ

 

一方のマグノリア・・・・・・冥府の門との戦いで、敵の大元の戦力は九鬼門が残り一人・・・隷星天キョウカと、冥府の門の事実上のリーダー“マルド・ギール”のみとなっていた。

 

さらにこちら側の戦力として、セイバートゥースのスティングとローグも共に戦ってくれている。

 

このままいけば、妖精の尻尾の勝利だったかも知れないが・・・・・・厄災がこの地にやってきた。

 

アクノロギアだ。ここへ来たのは何が目的かなんて誰もわからない。唯一マルド・ギールだけが、ある程度の予測をたてているだけだった。

 

と、同時にドラゴンスレイヤー達の身体に異変が起きた。そのうちの一人・・・・・・ナツの体が異様なまでに光だし─────信じられないものが現れた。

 

紅蓮の炎を纏い空へと飛び上がった巨大な生物・・・ドラゴン。

 

炎竜王・イグニール。ナツがずっと探し求めていた・・・父親のドラゴン。

 

どういうわけか、ナツの体にずっといて、今このタイミングで姿を現したらしい。

 

だが、何はともあれ強力な味方ができたことには変わりはない。アクノロギアはイグニールに任せ、ナツは敵の総大将、マルド・ギールへと拳を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

フェイス発動まで・・・・・・・・・およそ20分

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、冥府の門のよく分からないファファファ言ってた悪魔を倒し切ったエルフマン達、そこにルーシィも合流した。

 

ガジルとレビィとジュビアはラクサス達の薬の素をポーリュシカのとこへ運び、色々経緯は端折るが新しい力を手に入れたグレイは一時単独行動へ出たらしい。

 

「ナツはその・・・・・・どうやって説明したらいいか・・・」

 

「もしかして空中で今アクノロギアと戦ってるのって・・・」

 

「ナツがずっと探してたあのイグニール・・・」

 

「どこから来たんだ?」

 

「えーと・・・」

 

「けど、ナツの味方ってことは俺たちの味方だよな!!」

 

「アクノロギアと互角に戦ってんだろ?」

 

「少しは希望が見えてきたんじゃねーか!!」

 

歓喜な声を上げる妖精の尻尾・・・だが、そこに割り込む形で会話に入るものがいた。

 

「まだ、フェイスが残ってます」

 

「ウェンディ!?」

 

「シャルル・・・・・・それにアンタは評議員の」

 

「「「つーかその髪どーしたんだあぁぁ!!!」」」

 

「今はそれより大量のフェイスをどうにかしないと……」

 

「大量!?」

 

ウェンディ達は今までの事、更にこれから行うことをまとめて話していく。

 

「作戦はわかったけど、無理だよ……俺の念話はせいぜい5kmしか届かねぇ。大陸中の魔導士に呼びかけるなんて……」

 

だが、ウォーレンの魔法では呼びかけが不可能だと言われてしまった。

 

「そんな……」

 

「何千機ものフェイス……」

 

「もう起動しているんだ、発動まで間もないはず……」

 

「どうすれば……」

 

「くそっ!くそっ!!俺のしょぼさが情けねぇ!!」

 

『まだ諦めるには早い。』

 

「この声…」

 

皆が沈んでいる中、とある聞き覚えのある声が頭に響いた。マスターだ。

 

『こちらにも奥の手が残っている。妖精の尻尾最終兵器、ルーメンイストワール

 

そして告げる最終手段、ルーメン・イストワール。だが、その名を聞いても、この場にいる誰もピンとは来なかった。

 

「ルーメン・イストワール?」

 

「何ですかそれは。」

 

『詳しく説明しとる暇はない、今すぐギルドに戻ってこい。』

 

どこか焦りが見えるマスター。確かに、早くしなければフェイスが発動してしまう。一刻の猶予も無い、

 

「けど、ギルドは粉々に……」

 

「よせよ。」

 

『ギルドの地下じゃ、急げ。』

 

ギルドではなくその地下、そこに来い告げるマスター。

 

「……俺は残る。」

 

「エルフ兄ちゃん!?」

 

「なんで?」

 

だが、唯一エルフマンだけはこの場に残ると言い出した。確かにギルドを爆破させるラクリマを仕掛けたのはエルフマンだが、それは九鬼門に操られていたから、仕方がない事だが、本人は深く責任を感じているらしい。

 

『ギルドの破壊は主のせいではなかろう。』

 

「それでも、俺は……」

 

『わかった…気が済むようにせい。』

 

「エルフ兄ちゃん、気をつけてね。」

 

「おう。」

 

こうして、エルフマンを除くメンバーでギルドの地下を目指すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ!」

 

「ルーシィ!?」

 

「なんか、力が抜けて……」

 

ギルドの地下を目指して大急ぎで向かう途中、突然倒れてしまうルーシィ。その表情はどこか弱々しく、苦しそうなものだった。そして、その直後に仲間達と自分達の不調に気づき始める。

 

「オイオイ嘘だろ!?力が出ねぇ!」

 

「念話が通じねぇよ!?」

 

「まさかフェイスが……!?」

 

「きゃっ!?ちょ、やだ…!アニマルソウルが解けたら私…!」

 

アニマルソウルを保てなくなったリサーナに自身のマントを渡すドランバルト。

 

「あ、ありがとう…」

 

「エーテルナノが薄くなってる。」

 

「じゃぁ・・・もう・・・・・・」

 

もうダメだ。そう思っている一同の不安を押しつぶすように告げる者がいた。

 

「・・・・・・大丈夫だ、直に元に戻る」

 

「っ!グラン!!」

 

「アンタ今までどこ・・・に・・・?」

 

聞き覚えのあるその声にいち早く反応したウェンディとシャルル・・・だったが、その姿に驚愕した。それは他の皆も同じ。

 

身体は所々ボロボロで全身が真っ赤になるくらいに出血している、今まで見たことないくらい重傷なグランの姿がそこにあった。

 

「・・・・・・よっ」

 

「「「「何があったーーーーーーーーっ!!!?」」」」

 

当然そんな反応になるだろうよ。いつもほぼ無傷なグランがボロボロで血も流しているんだから。

 

「グラン、大丈夫!!?今治すからね!!!??」

 

「・・・落ち着けウェンディ。今治癒魔法は使えないぞ?」

 

「アンタはもっと慌てなさい!!!」

 

「・・・・ちゃんと慌てたぞ、今も痛いし」

 

「なら無理しない!!」

 

「じっとしてて!!!」

 

泣きながらグランを安静にさせようとするウェンディといつも通りのグランを叱るシャルル。今一応魔法世界のピンチなのになんでいつもこうなるんだろう。

 

「・・・それよりウェンディ・・・何か感じないか?」

 

「え?」

 

そうグランに言われ、先ほどから感じていたどこか懐かしい気配を・・・・そう、この気配の正体・・・それは

 

天竜(グランディーネ)?」

 

そう・・・ウェンディの親に当たる竜・・・グランディーネの気配だった。それだけじゃない。ガジル、スティング、ローグもそれぞれ鉄竜(メタリカーナ)白竜(バイスロギア)影竜(スキアドラム)の気配を感じていた。

 

・・・どういうわけで、なんでこのタイミングで現れたのか・・・さっぱりだが・・・・・・解放されたドラゴン達が、今、この大陸(イシュガル)の空を舞っている

 

そして大陸中にあるフェイス全てを破壊して飛んでいるのだ。

 

「・・・・まさかの展開だよな」

 

「ドラゴン達が・・・」

 

「大陸中除くフェイスを壊してくれた・・・・・・これで、一応俺らの勝利だな」

 

皆今度こそ歓喜に溢れかえっていた。皆で喜び、皆で笑い、勝利を祝った。

 

「ところでなんでそんなにボロボロなの?」

 

「・・・ああ、ちょっとアクノロギアと戦って」

 

「・・・・・・・・・へ?」

 

「やべ」

 

当然こっぴどく叱られた。ざまぁww

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくすると、空を飛びフェイスを破壊していたドラゴン達が全員グラン達の元に集った。

 

「グランディーネ」

 

「皆の勇気とイグニールがアクノロギアを退けた。フェイスの破壊、よく頑張ったわね」

 

「シャルルが一緒だったから。それに、グランが助けてくれたから」

 

グランディーネに褒められ涙を拭いながら答えるウェンディ。グランディーネは目線をグランに向ける。

 

「ありがとう、グラン。今までウェンディを守ってくれて」

 

「・・・・当然の事してるだけ。・・・まぁ、礼は受け取っておく」

 

グランは照れ臭そうに答える。珍しい。いつもなら淡々としてるのに

 

それはそれとして、ドラゴン達は今までどこにいたのか?なんと驚くことにドラゴンスレイヤーの体の中にいたらしい。どういうこっちゃ?

 

どうやら、ドラゴン達は既に死んでいるらしい。その昔、アクノロギアの滅竜魔法で全員“魂”を抜き取られてしまったらしい。

 

ドラゴンスレイヤー達の体内にいた理由は

 

【ドラゴンスレイヤー達の竜化を防ぐ】【アクノロギアを倒す】、それと【ドラゴン達の延命】が主な理由だと言う。

 

さらに一度出てしまえば二度と体内に戻れない。故に今、グラン達に見せる最初で最後の力だと言う。

 

「まだ全てを伝えられた訳ではないけど、時間が来たわ。お別れの時よ」

 

そして遂に終わりが来た。

 

「やだ・・・」

 

「この先も数々の困難があるだろうけど、あなたたちならきっと大丈夫。グラン、ウェンディ達をよろしくね」

 

「・・・・あぁ、任せろ」

 

「やだよ、グランディーネ行かないで・・・・・・」

 

だが、ウェンディにとってはやっと会えた母親だ。そう簡単に気持ちの整理は落ち着かない。

 

「見送ってやろうぜ。胸をはってな」

 

そこに、意外にもガジルが声をかけ見送るように告げる。彼もまた、再会した親との別れを惜しんでいるが、それでも前へ進む為に、彼らを見送る。

 

「人間たちよ・・・争い・・・憎しみあっていた記憶は遠い過去のもの。今・・・我々はこうして手を取り合うことができた」

 

そしてドラゴン達は一斉に飛び上がった。

 

「我々ドラゴンの時代は、一つ終焉を迎えた」

 

「これからの未来をつくるのは人間の力」

 

「400年前、人間と竜との間で交わされた盟約・・・・・・マグナカルタにのっとり」

 

我々ドラゴンは人間を見守り続けよう 永遠に

 

ドラゴン達を光の柱か包み込む。いよいよ別れがやってきた。

 

「グランディーネーーーーーっ!!!!」

 

「愛してるわ、ウェンディ」

 

ウェンディは泣きながらグランディーネの名を叫び、グランディーネは最後に愛しているとだけ伝え消えていった。

 

「目つきが悪いのう」

 

「最後の言葉がそれかよ!!・・・・・ちくしょォ」

 

メタリカーナは最後の最後までガジルの目つきの悪さを言っており、ガジルもそれに突っ込むが・・・・・・目元には涙が少し溜まっていた。

 

「ありがとう、バイスロギア」

 

「スキアドラム」

 

スティングとローグはそれぞれの親のなを言い、バイスロギアとスキアドラムはそれを静かに見守っていった。

 

そしてさらに強い光を放ち・・・ドラゴン達は等々完全に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バラム同盟の一角、冥府の門と妖精の尻尾の全面戦争。多くの傷跡がついたものの、勝者は・・・・・・妖精の尻尾。

 

ここに、一つの時代が終わりを告げる。

 

 

 

 

 



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第五十八話 それから一年

 

冥府の門に勝利し、安堵したのも束の間。マスターから“妖精の尻尾を解散させる”と言う衝撃的な事を告げられたメンバー。

 

当然納得できるはずもなく皆がそれぞれ野次を飛ばしているが、マスターは解散させるの一点張り。その気迫に誰も文句がいえなかった。

 

・・・・・・ん?展開が急?そんな事はない。断じてない。

 

・・・・・・まぁいいや。んで、その後でマスターは姿をくらまし、皆それぞれの道を歩んで行った。

 

他のギルドに入ったり、別の仕事をしたり、修行したり・・・・・・まぁ色々。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一年の時が過ぎた。

 

 

 

 

 

 

なんやかんやあの後妖精の尻尾の解散も知らずに修行に出たナツとハッピーは、週刊ソーサラーで編集者(見習い)として働いていたルーシィと再会。闘技場を溶かし、城に炎で大きく“FAIRYTAIL”と残し、皆を集めてギルドを復活させようと行動に出た。

 

あいも変わらず無茶苦茶な奴だがまぁそれは置いとこう。

 

最初に目指すのはマーガレットの街・・・蛇姫の鱗のある街へと目指すことにした。

 

ちょうどマーガレットでは蛇姫の鱗感謝祭が行われており、リオンの氷の演舞、トビーのモノマネショー、マスターによる東洋演舞など色々やっていた。

 

まぁ泣いてる自分の真似とか、盛り上がんなかったからぬごうとしたりと割とめちゃくちゃだが、まぁそこはいいや。

 

そしていよいよ、ナツ達が探していたメンバーの一人が舞台に上がってきた。

 

「つ、続いては皆さんお待ちかね。我がギルド自慢の天使

 

天空シスターズ!!!シェリア&ウェンディ!!!

 

オオオオオオオオオオオオオオ

 

会場は今日イチの歓声を上げており、ナツとハッピーはポカーンとしていた。

 

他のギルドで働いていた事より、ステージの上でフォーエバーしてたことが衝撃的だったらしい。

 

「ウェンディを正しい道に連れ戻すぞ!!」

 

「間違ってるわけじゃないでしょ」

 

なんか泣きながらわけわかんない事言ってるが、即ルーシィにツッコまれているし。

 

「あれ?そういえばシャルルは?」

 

「グランもいねぇぞ?」

 

ウェンディがいるならばシャルルとグランもいるのではと思っていた二人はその二人の姿が見当たらないことに気がついた。

 

「そろそろ来る頃だと思ったわ」

 

「「「っ!」」」

 

「ナツ、ルーシィ、そしてオスネコ・・・あら、ごめんなさい。ハッピー」

 

と、そんな三人に聞き覚えのある声で声をかけられるが、そこにいたのは、ネコミミと尻尾を生やした一人の少女だった。

 

「「「・・・・・・え?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔導士ギルド 蛇姫の鱗(ラミアスケイル)

 

「もう二度とあんな恥ずかしい事しません///」

 

「すごく可愛かったよ。いやー、愛されてるね、ウェンディ」

 

感謝祭の舞台が終わり、ギルドで先ほどの羞恥を思い出して顔を真っ赤にするウェンディ。

 

「グランも見れたらよかったのにね」

 

「うぅ・・・あんな恥ずかしい格好、グランに見せられないよ〜///」

 

話を聞く限り、今この場にグランはいないらしい・・・まぁいたらいたでめんどくさそうだがな。

 

「ウェンディ、客だぞ」

 

「え?」

 

と、そんなウェンディにリオンが客だと連れてきたのは

 

「よっ!」

 

「久しぶりー」

 

「元気ー!?ウェンディー!」

 

「ナツさん!!ルーシィさん!!ハッピーも!!」

 

ナツ達だ。ウェンディは久しぶりに三人に会えて、少し涙ぐんで再会を喜んでいる。

 

「じゃ、連れて帰るんで」

 

「あわわ」

 

「「オイ!!」」

 

そして速攻でウェンディを連れ帰ろうとするナツ。下手したら誘拐一歩手前だな。

 

とりあえず、ウェンディや蛇姫の鱗にも妖精の尻尾復活の話をする。マスターの行方不明の件もわかるかも知れないからと。

 

ついでに、ナツ達は知らなかったが、新たな評議院が設立されており、聖十大魔道が一同に集まって評議院を再結成したらしい。

 

この場にジュラがいないのも評議院にいるからである。

 

「そういえばグランは?確かグランも蛇姫の鱗に入ってたはずだけど?」

 

「ああ、グランは先日評議院に呼ばれてな。今は留守なんだ。恐らく明日には戻ると思うのだが」

 

グランがここにいないのは評議院に呼ばれたかららしい。一体何やらかしたのか。それともまた違う事なのか・・・まぁそこはいいや

 

「にしても聖十の魔導士が評議院か・・・強そーだな」

 

「じゃあマスターも?」

 

「そのハズだったんだけど、行方をくらましちゃって」

 

「逃げたんじゃねーのか?めんどそーだし」

 

ハッピーがマスターも評議院にいるんじゃないかと言うが、ルーシィがそれを否定する。

 

「とりあえずじっちゃんはおいといて・・・オレたちと来いよ、ウェンディ」

 

とりあえずで置かれるマスター・・・扱いが雑だがまぁ、今するのはウェンディ達を連れて行く事。だからってとりあえずでおくのはどうかと思うが。

 

だが、このままの流れでいけば、おそらくウェンディは一回断るだろう。別の世界線(原作)では、少々思うところがあり妖精の尻尾に戻る事を渋っていたハズ。だから残念だがナツ、もう少し時間を置いて「はい!一緒に行きます!」ほらね断っ・・・断ってねぇ!!?

 

「グランとも話し合って決めてましたから、この時が来るまでお世話になるって。」

 

流石流れをぶっ壊す達人グラン。この場にいなくてもマイペースを掴むのか、アイツは。

 

「みなさんも、一年間ありがとうございました」

 

「いや、いいんだ。元々そう言う約束でウチに入ったんだろう。」

 

「それに、そろそろ来るんじゃないかってグランも言ってたしね」

 

先を見越しすぎじゃねぇか?

 

「はい。妖精の尻尾が解散した事を知らないナツさんなら妖精の尻尾を必ず復活させるだろうって言ってましたし」

 

だから見過ぎだって、未来でも見えてんのか?

 

「まさか、本当に一年後にやってくるなんて思ってもいなかったけどね」

 

と、こちらに歩き近づいてくる少女・・・人の姿に変身したシャルルがやってきた。

 

(何で人間なんだろう?)

 

(何で人間なんだ・・・!?)

 

「何で人間なんだーーっ!!?」

 

まぁ当然疑問に思う三人は、ルーシィとハッピーは心に留めておいたのに、ナツが普通に声に出して聞いていた。・・・まぁそこはいいか。

 

「これ?変身魔法よ、覚えたの。この姿、ちょっとだけ魔力が上がって予知魔法の力が強くなるの」

 

なるほど、変身魔法か。予知魔法が強くなるとは、ますます強力になったな、シャルル。

 

ちなみに、ハッピーは修行して、魚を少しだけ我慢できるようになったらしい。・・・どんな修行したんだろうか

 

「よっしゃぁ!!それじゃ今すぐ行くか!!」

 

「あいさーー!!」

 

「あ、今すぐには行けません」

 

「「ズコーーーっ!!?」」

 

今すぐにでも行く気満々だったナツとハッピーは、勢いよく立ち上がり出発しようとして、思いっきり床に転けた。ズコーーーって口で言っちゃってるし。

 

「ちょっとナツ、ハッピー大丈夫?」

 

「す、すみません。でもまだグランが帰ってきていないので・・・グランが帰ってきたら行きますので」

 

そういやぁグランがいなかったな。

 

「とりあえず、今日は宿屋に泊まっていくといい。おそらく早ければ明日にはグランも戻ってくるだろう」

 

「そうさせてもらうわ」

 

「グランかー!!久々に戦いてぇ!どれくらい強くなってんだろうな!!」

 

「山とか持ち上げたりして」

 

「流石にそれはない・・・・・・ハズ」

 

まぁ・・・とりあえずは宿屋でしばらく泊まっていくということになった。

 

 

 

 

 

 

【シェリアとウェンディの家】

 

その日の夜、ウェンディとシェリアはパジャマに着替え、それぞれのベッドの上に座って談話していた。

 

「それにしても、一年か・・・。長いようで短かったね」

 

「そうだね。いっぱいお世話になっちゃった。」

 

夜遅くまで、この一年を懐かしむように話していると、ふと、ウェンディが顔を俯かせる。

 

「どうしたの、ウェンディ?」

 

「・・・・実はね、もし妖精の尻尾を復活させるって言われても断ろうって考えてたんだ」

 

「え?」

 

ウェンディの口から聞かされた事に、少し言葉を失うシェリア。

 

「シェリーさんが結婚しちゃったからシェリアが一人になっちゃうから、私は一緒に居ようって。でも、それをグランに話したら・・・

 

 

化猫の宿(ケットシェルター)がなくなった時・・・俺たちは三人だけになったか?』

 

 

・・・って言われちゃって。」

 

えへへ、とバツが悪そうにウェンディは笑った。

 

「それでね、気づいたの。私が出て行ってもシェリアは一人じゃない・・・蛇姫の鱗の皆さんがいるって。ギルドが違っても、私たちはずっと友達だって」

 

「・・・そっか、そうだね」

 

ウェンディが秘めていた胸の内を聞き、どこか安心したように笑うシェリア。

 

「やっぱり、ウェンディはグランの事を“愛”してるんだね」

 

「・・・・・・うん///」

 

顔を真っ赤にして頷くウェンディ。きっとこの場にグランがいたのなら全身が崩れ塵となっていただろう。

 

まぁ今ここにはいないが、アイツがくる時は大体なんかどでかい音と共にくるからドゴォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!・・・・・・噂をすればなんとやら。

 

「っ!?何!?なんの音!?」

 

いきなりどでかい轟音と共に街全体が揺れたため、街の民は大慌て・・・はしなかった。

 

「・・・もしかして」

 

「帰ってきた!」

 

この轟音を起こした人物が誰なのか、この一年である程度把握しているから。そしてその人物がこの街に帰ってきた者の元へと集って行く。

 

だが、街の外を見ると、思ってもいないものが大量に倒れていた。

 

「・・・これは」

 

「魔物!?こんなにたくさん・・・」

 

数にすれば、およそ十万の魔物が地に沈んでいた。まぁ誰がやったかは分かるとして、こんなに大量の魔物、一体どこからやってきたのか。

 

その疑問もすぐに消えた。というか、答えが向こうから来た。

 

大量の魔物の横を何人かをまとめて縛り上げて運んでくる人物が・・・まぁもうわかるけど、やってきた。

 

「・・・・・・疲れた」

 

「グラーン!!」

 

「ウェンディーー!!」

 

疲れたとぬかしときながら、ウェンディに声をかけられた瞬間元気に手を振る人物・・・グラン。やっと登場だ。まぁ手を振るのはいいが、とりあえず人を持った手で振らない方がいいぞ。

 

「帰ってきたんだね!!その人たちは?」

 

「さぁ?魔物使って蛇姫の鱗を潰そうとしてたから、そのまえに沈めただけだし」

 

「そっか」

 

「いやそっかじゃないのよ、ウェンディ」

 

だからなんでこの子はグランが関わるとちょっとアホの子になるのか。

 

「・・・相変わらずむちゃくちゃね」

 

「変わってないねー」

 

「おーーい!グラン!!」

 

一年前と変わらずのむちゃくちゃぶりに半ば呆れるルーシィとハッピー、そんな事は気にせず再会に喜ぶナツ。

 

「ん?おー、ナツ、ハッピーついでにルーシィ」

 

「誰がついでか!?」

 

「・・・そろそろ来る頃だとは思ってたぞ。まぁ、そこは今はいいや」

 

そう言いながらグランはリオンたちの元に近づいていった。

 

「思ったより早かったな。」

 

「・・・まぁな。面倒ごと頼まれたが、そこはどうでもいい。それより聞きたいことがあるんだが」

 

「ああ、恐らくコイツらは蛇鬼の鰭だろう。ジュラさんのいない時期を見計らって襲おうとしたんだろう」

 

「それはどうでもいい」

 

どうでもいいんかい。

 

「・・・・・・感謝祭は?」

 

「は?」

 

「・・・・・・天空シスターズは?」

 

「・・・あー」

 

「フォーエバーは!!!??」

 

「・・・・・・もう終わってるぞ」

 

「どちくしょぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

地面に膝をつき、大声を上げて悔しがるグラン。そんなに見たかったのかコイツ。

 

「は、恥ずかしいよ〜グラン〜///」

 

「そんなクネクネしながら嬉しそうにしても説得力ないよ、ウェンディ」

 

・・・・・・爆発してくんねぇかな〜、マジで。

 

「・・・ジュラのオッサンめ。次あったら髭引っこ抜いてやる」

 

「やめてあげなさい、全く。」

 

・・・なんか締まらないがそれはいつも通りか。

 

 

 

 

 

 

 

まぁ・・・なんやかんやで次の日って事で

 

「長い間お世話になりました!!」

 

「元気でな、ウェンディ」

 

「私も、一応礼くらいはいっとくわ」

 

「シャルル」

 

「・・・・ありがとな、色々と」

 

「どういたしまして!」

 

ウェンディとグラン、それにシャルルはそれぞれで蛇姫の鱗に礼を言い、別れを告げる。

 

「妖精の尻尾の復活、頑張れよ」

 

「おー!」

 

「グレイによろしくな」

 

「そういえば足取りがわからなくなってるのよね」

 

「気をつけてなー!」

 

「おおーん!」

 

こうして、蛇姫の鱗と別れをつげ、街をでるグラン達。これから新たな物語が始まる。

 

「・・・んで、次はどこ行くんだ?」

 

「えーっと、ここから東に行くと“アメフラシの村”っていう村があるのね。」

 

「雨・・・ですか」

 

「そこ、雨が降り止まない村なんだって」

 

「もしかして・・・」

 

「・・・だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそのアメフラシの村では

 

「・・・・・・・・・」

 

雨が降り続ける中、ただただ立ち尽くす女性が一人いた。

 

 

 



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第五十九話 グレイの行方


今回はちょっと短め


 

「見事にあそこだけ雨が降ってるわね」

 

「怪しいですね」

 

「・・・アメフラシ村ってかアメフラレ村じゃね」

 

街が出発してしばらくすると、目的のアメフラシ村に到着したグラン達。その名の通り、その村のある場所のみ雨が降り続いている。

 

「こっちが雨。こっちが晴れ。こっちが雨!」

 

「ふはは!まだまだ甘いなハッピー!!今の時代は半分雨!!」

 

「半分雨かーー!!」

 

「そんなに楽しい?」

 

「・・・楽しいんじゃないか」

 

まぁ、本人達が楽しいからいいんじゃないか?・・・そこはいいとして。一同は早速その村へと進んでいく。・・・だが

 

「人の気配が全くしない」

 

「誰も住んでないみたいですね」

 

そう、建物はいくつかあれど人の気配がほとんどない様子だった。

 

「いや、ジュビアの匂いがする。こっちだ」

 

「・・・あぁ。あそこで座ってんな。」

 

だが、ナツはジュビアの匂いを感じ、グランはこの先にジュビアがいるのを確認した。

 

「おーい!ジュビアー!」

 

「っ!・・・グレイ様」

 

早速ナツがジュビアに話しかけるが・・・何やら様子がおかしい・・・というか、なんか感極まってないか?

 

「グレイ様♡ジュビアは、ジュビアはーーーっ!」

 

「落ち着け。よ!元気だったか?」

 

「相変わらずのテンションで安心したわ。」

 

「お久しぶりですジュビアさん!」

 

「・・・・思ったより元気そうだな」

 

何故か勢いよく飛び込んできたジュビアをナツが止め、それぞれで軽めの挨拶を交わす。

 

「ナツさん・・・ルーシィにウェンディ・・・グランも」

 

「オイラたちもいるよ!」

 

「あんたこんなところに1人で住んでるの?」

 

シャルルがそう聞いたのが原因なのか、ジュビアは涙を流し始め、そのまま倒れ込んでしまう。すんでの所で、ナツが抱えて事なきを得た。

 

「オイ!どうした!?」

 

「ジュビア!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごい熱です……」

 

「こんな雨の中にずーっといたら具合も悪くなるわよ」

 

ジュビアが倒れた、ということで傍にあった家の中に入る一同。

 

「いやここってジュビアの家かしら?」

 

「うーん……少しグレイの匂いもするぞ。」

 

「グレイもいるの?」

 

「……ジュビアは、グレイ様と……ここに住んでました……」

 

「「えっ!?」」

 

息を切らせながらも意識を取り戻したジュビアはあったことを語る。

 

「2人で♡」

 

「すごいドヤ顔……」

 

「一緒に食事をして、一緒に修行をして、一緒に仕事をして・・・一緒にベッドで━━━」

 

「っ!!」

 

「言わなくていいから!!」

 

「━━━寝ようとして蹴飛ばされたり。」

 

「・・・そこは変わんねぇのな」

 

「幸せでした。ですがある日

 

『グレイ様!!また服を脱ぎっぱなしにして・・・』

 

『・・・・・・』

 

『その体・・・一体・・・何が・・・』

 

『心配ねぇ。メシにするぞ』

 

 

・・・・・・その日以来1人で外出することが多くなって、帰ってこなくなったのが半年前です。」

 

「そんな……」

 

「・・・なるほど」

 

「勝手に出ていくとかあの野郎……」

 

「あんたが言う?」

 

「俺は遺書を残しただろ。」

 

「ナツ…『書き置き』ね。」

 

「それでも勝手に出て行ったのは同じ。残された方はね……」

 

「・・・・・・」

 

「残された方は……」

 

「イチャイチャしないでください。」

 

「してないわよ!!」

 

いや、イチャイチャしてるぞ。

 

「それで、グレイはどこにいるか分からないの?」

 

「分かっていたら、ここにはいないでしょ。」

 

「……ジュビアは、何日も探して歩きました。・・・でも……グレイ様は見つからなくて…待つことにしたんです。ここはグレイ様とジュビアの…思い出が詰まっている家だから……きっといつか…グレイ様はここに帰ってくるって。」

 

涙を流すジュビア。彼がいなくなった事に・・・ではなく、彼が心配だからこそ流れる涙だろう。

 

「……ごめんなさい、久しぶりにあったのに。」

 

「俺が見つけてやる。いや、必ず見つける……仲間を全員集めるんだ。妖精の尻尾を復活させるために。」

 

ナツのその言葉で安心したのか、ジュビアはそのまま眠り始めた。

 

一同は、ジュビアをしばらく寝かせるためにその家から外に出て雨を眺めていた。

 

「ジュビアさん眠っちゃいました。」

 

「・・・まぁ疲れは溜まっていただろうな」

 

「見つけるって言ってもアテあるの?」

 

「あたしのメモでも足取りが掴めてないんだー」

 

「・・・・・・」

 

「どうしたのナツ、そんなに怖い顔しちゃって。」

 

「確かこの近くだったよな。」

 

「?」

 

剣咬の虎(セイバートゥース)に行くぞ。」

 

「え!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけでナツとハッピーとルーシィは、なぜか剣咬の虎へと向かうことになった。なぜかはナツしかわからん。というか行くって決めたのはナツだし。

 

だが、全員でというわけでなく。ジュビアの看病にウェンディとシャルル。そして看病はできないがもし何かあった時用にグランが残った。まぁ、ぶっちゃけるとグランは特にやる事はないから家の外で待機してる。

 

「・・・黒い模様・・・例の滅悪魔法とやらが変に影響したか・・・。近頃、ゼレフを信仰する黒魔術教団がコソコソ怪しい動きをしてるが・・・それに関係してんのかねぇ・・・まぁいいや。」

 

色々考えたがとりあえずは一時考えを放棄して、ナツ達の帰還とジュビアの復活を待つことにして、少し眠りについたグラン。雨が土砂降りの中よく寝れるなコイツ。

 

 



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第六十話 黒魔術教団 撃破

 

グレイを探しに剣咬の虎へと向かったナツ達。そこでなんやかんやあり、黒魔術教団を壊滅させるという依頼を代わりにやることになった。

 

というのも、未来ローグより一年後にフロッシュはグレイに殺されるという事を聞いていたナツは、ローグの仕事先にいるのではと推測。

 

案の定、黒魔術教団へと潜入するとその教団にグレイはいた。さらに厄介な事にそいつらは浄化作戦というとんでもないことをしでかそうとしていた。

 

まぁ、グレイが教団に入ってたのは潜入作戦だったらしい。半年ほど前に偶然エルザと遭遇、内部調査を進めて行くうちに、街一つ殲滅する浄化作戦の話が出てきてしまったらしく、思っていたよりも長期になってしまったのだ。

 

一つの集団ならエルザとグレイで十分だが、予想以上に大きな組織であったため、全ての支部が集まるこの浄化作戦の日を待つことにしたらしい。

 

そのタイミングでナツ達がきた・・・と。だいぶややこしいな。

 

まぁ当然そんな話をされ黙っているナツ達ではない。グレイ達と共に浄化作戦を潰すべく、黒魔術教団と対峙していった。

 

当然、信者達では相手にならず幹部とも言える者達も圧勝して行くナツ達。途中復活したジュビアとそれにつれられたウェンディとシャルルも加わった。え?グラン?色々あって遅れてんじゃね?知らんけど。

 

「アレ?グランは?」

 

「寝てたから置いてきたわ」

 

全然違ったし。

 

その後も、次々と敵を薙ぎ倒して行く妖精の尻尾の魔導士達。ナツも敵の親玉を既に倒していた。

 

だが、倒された親玉・・・アーロックは倒れながらも不気味に笑っていた。

 

「くくく・・・」

 

「何がおかしいんだ」

 

「そなたらの負けだ・・・・・・我はこの日のために自らの顔を焼いた。それが代償だった!!!我は喜んで顔を焼いたぞ!!!」

 

「何言ってんだ、オマエ」

 

「さぁ!!契約の闘神よ。代償の対価を払え!!その力を我が為にふるえ!!

 

イクサツナギ召喚!!!

 

その言葉と共に空が渦巻き、巨大な魔力の渦が発生した。轟音と共に大地が割れ、その渦の中心から出てきたのは・・・巨大な足だった。

 

その足は黒魔術教団の信者達を踏み潰しながら地についた。

 

「おい!!よせっ!!仲間ごとやるつもりか!」

 

ナツがアーロックに怒鳴るが、奴は不敵な笑みを崩さない。

 

「これが浄化作戦だ。捧げる魂は黒魔術教団の信者の信仰する心。街の人間などどうでもよい。ゼレフを信じ死んでいく者の魂こそ、究極の供物。それでこそゼレフは姿を現し、我々を導いてくださる」

 

「テメェ・・・」

 

ナツは怒った。仲間を仲間とも思ってもいないアーロックの言葉に。そんな怒りもなんなその。アーロックは両手を広げ、闘神を崇める。

 

「ふはははははははははっ!!闘神イクサツナギは誰にも止められん!!この場、全ての命を奪い尽くすまでなぁ!!」

 

そして等々、イクサツナギがその姿を現した。その巨大さたるや、およそ千メートルはあるのではないだろうか。もうどう言葉で表していいかわっかんねぇは。

 

その手にはその巨体に相応しい剣を握っており、それが振るわれれば、いかにナツ達でも大ダメージを受ける。

 

そして、ついに闘神が動いた。

 

ドゴォォォォンッ!!!

 

・・・・・・否、()()()()()()

 

足元より凄まじい轟音が鳴り響いた瞬間、闘神はその巨大な足を蹴り飛ばされ、その巨体諸共宙に浮くように転ばされたのだ。

 

そんな無茶苦茶なことができる奴なんて、一人しか知らない。闘神は倒れながらも自らを倒した相手をその目で睨む。だが、その時既にアイツは次を仕掛けていた。

 

「地竜の・・・咆哮!!!」

 

放たれた大地竜のブレスが、イクサツナギの体を貫いた。そしてその衝撃は全身に渡り・・・そしてそのまま爆散していった。

 

あの野郎(グラン)、遅れてきたくせにいいとこだけ取りやがった。

 

その光景に、敵は唖然とし恐怖した。強大な闘神が、たった一人の魔導士に、何の苦もなく倒されてしまったから。その場から逃げたくても、体が震え動けなくなっている信者達を素通りし、グランはウェンディ達の元へと行く。

 

「・・・起こしてよ」

 

「起こしたわよ。でも起きなかったんだからしょうがないじゃない」

 

「ごめんね、グラン」

 

「・・・まぁいいや、寝てたのは俺だし。ところでさっきの何?」

 

「相手方の親玉が召喚した闘神だって」

 

「・・・ほぉーん」

 

普通に会話をするな。周り見てみろ。色んな意味でドン引きしてんぞ。

 

「・・・アイツ、全然変わってねぇな」

 

「ですが、強さはもっと上がっています」

 

「どこまで強くなるつもりなんだ、ったく」

 

しょうがない。それがグランだし。

 

「バケモノーーーーっ!!!!」

 

「助けてくれーーーーーーーーーっ!!!!」

 

「殺されるーーーーーーーーーーっ!!!」

 

と、先ほどまで恐怖に体を縛られていた黒魔術教団の信者達は、一目散ににげだした。まぁ、たった数人で二千の軍を圧倒する者達や、闘神をたった一撃で倒すような奴なんて相手にしたくないわな。

 

逃がさないように拘束しようと動き出す前に、ある集団がこの場に到着した。

 

その先頭には、グラン達も見覚えのある人物がいた。

 

「全員逮捕だーーーーっ!!!!逃すなよ、コラァ!!!!」

 

そこにいたのは、評議院達を率いるリリーと・・・ガジルのそっくりさんだった。

 

「ガジルさん!!???」

 

「リリーも」

 

「・・・すごいな、ガジルのそっくりさんが評議院を率いてんぞ」

 

「誰がそっくりさんだコラァ!!???喧嘩売ってんのかグラン!!!」

 

「・・・・・・いやー、あのガジルさんが評議院な訳ないし」

 

ギャーギャー騒いでいると、この場に他の皆も集まってきた。

 

ガジルとリリーの他にはレビィも評議院としてこの場に来ていたらしい。うーん、リリーとレビィは違和感ないが・・・・・・ねぇ?

 

「レビィとリリーか!!」

 

「ナツ!」

 

「久しいな」

 

「ギヒ。」

 

そして、ナツもこの場に集合し、当然困惑する。だってガジルが評議院の服を着てるんだから。

 

「……と、ガジルによく似た人?」

 

「喧嘩売ってんのかコノヤロウ!!」

 

「いやー、あのガジルさんが評議院なわけないし。」

 

「・・・やっぱ偽物か?」

 

どこまで疑ってんだコイツら。まぁしゃーないか。

 

「食いぶちを探してる時()のじーさんに誘われてな。」

 

「ウォーロッドさんだ。」

 

『・・・冗談だったのに・・・』そう言いながら、後悔してるウォーロッドの姿が鮮明に見える。

 

「こうしてギルドの上に立つことになった。ちなみにお前も逮捕だ火竜(サラマンダー)。『目付きが悪い罪』でなぁ」

 

なんだその罪。だったらオマエもじゃねぇか。次いでガジルは、ルーシィ、ジュビア、ハッピー、ウェンディ、グランにそれぞれの罪状を告げた。

 

「お前は『格好がエロイ罪』で逮捕。」

 

「なっ…」

 

「ジュビアは『じとじと罪』で逮捕。」

 

「じとじと?」

 

「お前は『魚食いすぎ罪』」

 

「美味しさは罪だったのか……」

 

「お前はなんか…その存在が何となく逮捕だ。」

 

「え?何ですかそれ……」

 

「グランは・・・アレだ。アレで逮捕だ」

 

「・・・おい、俺とウェンディだけ適当すぎんだろ」

 

そしてさいごにガジルはグレイの方を見る。先ほどまでとは違って真剣な表情で。

 

「お前は……言わなくてもわかるよな?グレイ。オレァ甘くはねぇぞ。」

 

そうグレイを睨んでいると

 

「ぐほっ! 」

 

後ろからやってきたエルザに頭を殴られて、間抜けな声を出す。

 

「エルザ!」

 

「エルザがいたーっ!!」

 

「機嫌悪そうだよー!!」

 

「貴様……ガジルに似てる癖に随分と調子に乗っているな。」

 

「俺はガジルだ!!本物のなッ!!」

 

「いや、あのガジルさんが評議院なわけなかろう……」

 

「・・・・・・実は本物のガジルだ。」

 

「「何っ!?」」

 

「・・・うそぉ」

 

「本気で偽物だと思ってたの……?」

 

エルザとナツ、そしてグランは驚いたが、エルザはすぐさま真面目な顔に戻って状況説明に戻る。

 

「ならば話は早い、黒魔術教団の浄化作戦を止めたのは我々だ。いや、もっと言えば」

 

「分かってるよ。」

 

「グレイのおかげで俺達もここまで来れた、感謝している。」

 

「しかし迷惑かけたことに変わりねぇ。済まなかった。」

 

「ジュビアは…グレイ様が無事ならそれでいいです。」

 

「私も、まんまと騙されたよ。」

 

「お前はもう少し変装に気を遣わねぇとバレバレだぞ。」

 

「えー、バレてたの〜?」

 

「えーと・・・話が見えないんですけど」

 

「なんでエルザまでいるの?」

 

「後で説明するね」

 

「・・・恐らく、半年前に偶然エルザとグレイが再会、黒魔術教団へとグレイが潜入捜査してた・・・・・・的な感じか?」

 

「大体な」

 

大体合ってるがなんでそこまでわかんの、コイツ?

 

「とにかく、街は守られた。」

 

「まさかみんなに助けられるとはね。」

 

「ケッ」

 

「俺達が揃えば無敵!」

 

「またみんなで一緒に戦えるなんて……」

 

「少し大きくなったか?ウェンディ。それにグランは、またアホ程強くなってんな」

 

「いいえ、全然変わってません。」

 

「・・・そんな変わらん。多分」

 

「なんかギルドにいるみたいだね。」

 

「このメンツが揃うとね。」

 

「こーゆーの久しぶりだなぁ……」

 

その場の一同で和気藹々と話し合い、かつての・・・一年前のことを思い出す。そして、そのままの勢いでエルザが指揮を執る。

 

「さあ私達の勝利だ!勝鬨を上げろ!」

 

オオオオオオオオオオオオオオオオっ!!

 

皆で掲げる大きな勝鬨。ここに、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の勝利が刻まれる。

 

そしてこれは、復活の狼煙でもある。

 

 

 



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第六十一話 超軍事魔法帝国アルバレス

 

そんなこんながありまして、黒魔術教団の野望を阻止し無事マグノリアの街に一年振りに戻ってきた。

 

そんでなんやかんやあり、妖精の尻尾のメンバー達はルーシィからの手紙を受け取り、皆集まっていた。

 

そして今はギルドを修理中である。

 

「「「「「「「ってオイ!!?」」」」」」」

 

「なんか色々カットしなかった!?割と大事な部分なのに!!??」

 

気のせいだ仕事に戻れ。

 

「やっぱ扱い雑じゃない!!???」

 

うっさい。

 

「・・・・適当だな」

 

オメェにだけゃ言われたかねぇわ。・・・・・・・・・まぁそんな訳で一応復活した妖精の尻尾の記念すべき最初の仕事は・・・壊れたギルドを建て直すことだ。

 

・・・・・・建て直すはずなんだけど

 

「・・・喧嘩はじまりそうだな」

 

「いつも通りね」

 

「あはは・・・」

 

結局喧嘩が起こりはじまりそうで、作業が中断しそう・・・ってかしてんだよな

 

「・・・う〜ん?」

 

「レビィさん、何してるんですか?」

 

「ちょっと書類の整理をね」

 

「・・・書類?」

 

「そっ。ギルド復活って言っても実は言葉だけじゃあどうにもならないの。評議院に認可されなきゃ闇ギルドと同じだからね。これは、それらの書類。」

 

「ま、その点に関して言えば俺たちが一年かけて根回ししておいたからな。」

 

「気が利くじゃない。」

 

「だから表向きにも妖精の尻尾は完全復活と言える。」

 

「ありがとうございますレビィさん……!」

 

「・・・ウェンディ、泣かない泣かない」

 

まぁ確かに、いきなり復活しました・・・とは言っても、認可されなきゃ勝手にやってる無法者になっちゃうからな。・・・ぶっちゃけそっちのがあってそうだが

 

「あとは…この欄を埋めるだけなんだけど……」

 

「迷うわね。」

 

「迷う?」

 

「・・・何をだ?」

 

どうやら書類は後何かを埋めるだけで終わるらしい。結構な量があったと思うが、後それだけだとは・・・すごいな。

 

だが、何を迷っているのだろうか?

 

「7代目ギルドマスターを誰にするか」

 

・・・・・・ああ、納得。

 

「7代目ギルドマスター。」

 

「・・・なるほど、確かに迷うな」

 

「別にオレは……どうしてもって言うなら……」

 

「父ちゃんはやめてくれ!!」

 

「ギルダーツでいいじゃねぇか。」

 

「あんなどこをほっつき歩いているかわからねー奴を、マスターに出来るか!!」

 

確かに、強さで見るならギルダーツが最適だが・・・そもそもここにいないし、あの人前断ってるしな。

 

「6代目が帰ってくるまでの暫定でしょ?誰でもいいじゃない。」

 

「俺も同意見だ。」

 

「でも、今回は今までのギルドとは違う…… 6代目がいないこいつらを、誰がまとめられるのかって話しさ。」

 

そう言ったカナの目線の先・・・先ほど喧嘩しそうだったナツとエルフマンが殴り合いを始め、そのまま周りを巻き込んでの大喧嘩を始めていた。

 

「あわわっ!?」

 

「・・・仕事しろよ」

 

「全くね。」

 

もはや建て直しどころの騒ぎじゃなくなってきてるし、あぁ、また色々壊れてく

 

「・・・マスター、誰にすんのかね」

 

「グランやってみる?」

 

「・・・ウォーロッドのじーさんから面倒な事押し付けられそうになってるから遠慮しとくし、なりたくない。というか無理」

 

「面倒な事?」

 

「・・・ああ、実は」

 

「ってちょっとは止めようと動いてくんない!?」

 

と、喧嘩をよそにグラン達がほのぼのといつも通りに過ごしているのをルーシィが突っ込んだ直後、ズシィン!と、大きな音が響き

 

 

「仕事しろ」

 

 

「「「「「「「「・・・・はい」」」」」」」」

 

エルザの睨みをきかせた一言で、一瞬で静まりかえり皆、おとなしくなった。

 

「クスっ。やっぱりこれしかないよね。

 

7代目ギルドマスター エルザ・スカーレット

 

ものすごい適任者がここにいた。この暴れる奴らを大人しくさせることができて、尚且つ実力者であるエルザ。この決定に皆歓喜の声をあげるが、エルザは荷が重いと、首をふる。

 

「ちょ、ちょっと待て……私がマスターだと?それは……」

 

「━━━お前しか適任者はいねーだろ。」

 

と、突如として新たな人物がこの場にやってきた。

 

「お前は……!」

 

「えーっと……あれ?」

 

「だれでしょうか……」

 

「いや…ウチのメンバーだ……だが名前が思い出せない……?」

 

「この時を待っていた。皆が再び集うこのときを。

 

六代目マスターマカロフを助けられるのは、お前らしかいない。」

 

この場に現れたのは評議員・・・いや、妖精の尻尾のメンバー メスト・グライダーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・んで、今船の上ってね」

 

「急にどうしたの?」

 

いきなり飛びすぎだと思う。・・・まぁいい。とにかく説明しよう。

 

いきなり現れたメストに案内され、ギルドの地下へと案内されたエルザ。そこにあったのは、結晶のような何かに入っていた初代だった。

 

それこそが妖精の尻尾最高機密、ルーメン・イストワールだ。

 

そこにエルザをつけてきたナツ達も雪崩れ込むようにその場に入り、事の顛末を聞くことにした。

 

まず、メストが評議員にいたのは、マスターの指示であり、“西の大陸”に関する全ての情報を流して欲しい、と言われたそうだ。ついでに自分の記憶も消しての潜入だそうだ。

 

そして一年前、西の大陸の情報、そしてマスター独自の調査により、妖精の尻尾の解散を決断したらしい。

 

何故解散させたのか。今まで通り迎え撃てばいいだけではないか?・・・そう思うのだが、相手が違いすぎる。

 

超軍事魔法帝国・アルバレス。正規・闇合わせた730の魔道士ギルドを一つに統一して出来上がった巨大な帝国。

 

730と1・・・子供でもわかる数の差。故にマスターは決意する。直接アルバレスへと交渉へ行きできるだけ時間を稼ぐ事。

 

万が一マスターに何かあった時、ギルドが残っていてはギルドのメンバーが狙われてしまう。

 

だからこそ、ギルドの歴史よりも、体裁よりも・・・家族を守る為に解散させたのだ。

 

それが妖精の尻尾解散の真実。当然こんな話をされて黙っているナツ達じゃない。ギルドメンバー全員で向かおうとするが、エルザがそれを止める。

 

大勢ではダメだ。少人数で、マスターを救出に行く、と。

 

とまぁ、細かい事を色々省いたが、大体こんな感じの経緯で今アルバレスに向かっている訳だ。

 

「・・・説明終わりっと。・・・にしても西の大陸(アラキタシア)か」

 

「ど・・・どうしたの?・・・グラン?」

 

「・・・いや、前行った事あるなぁって。後ウェンディ?辛いなら無理すんな」

 

この一年で乗り物に弱くなったウェンディと何故か乗り物が平気になったグラン。・・・何があったのだろうか?・・・いや、待てよ?大魔闘演武の後ぐらいから平気になってなかったか、コイツ?

 

まぁそんなこんなで・・・そんなこんな使いすぎか?・・・まぁいいや。もう直ぐ目的の島カラコールに着こうとしていたのだが、少しトラブルが発生した。

 

「アルバレス帝国の船だと!?」

 

「なんでこんな所に……」

 

「カラコールはアルバレスの領土じゃないはずよ?」

 

「港で何かの検閲をやっているようだ。」

 

「これじゃあ島に近付けねぇぞ。」

 

そう、何故かアルバレスの帝国軍の船が港に止まっていたのだ。何やら検閲を行なっているようだが、何故なのか。

 

「スパイの仲間を探してる。・・・・・・みてーだ」

 

「スパイさんも、捕まってはいないようです」

 

「・・・・スパイバレたのかよ。それと二人とも。辛いなら無理すんな」

 

「え?・・・・・・・・・。あんた達港の声が聞こえるの?」

 

「微かにだけど……」

 

さすがはドラゴンスレイヤー。素晴らしい聴覚だが、それでもどうするか。

 

「どうする。」

 

「奴らに諜報員が捕まる前に接触せねばな」

 

「・・・じゃあ、変装か?」

 

「それしかあるまい」

 

 

というわけで

 

 

「・・・久々だな。化猫の宿(この紋章)をつけんのも」

 

「懐かしいね、グラン」

 

妖精の尻尾としてではなく、今はなき化猫の宿の魔道士として観光を目的として上陸することにした一同。

 

無事に上陸できたのだが・・・まぁうん、アレだ。

 

「人間のオスも大した事ないわね」

 

「シャルル・・・私たち役に立ってないよ」

 

「・・・安心しろ、ウェンディ達のが魅力的だ」

 

「あら、ありがと」

 

「あ、ありがとね、グラン」

 

まぁ上陸できたのなら、諜報員探しを開始しようとしたのだが。

 

「お父さんを返して〜……」

 

「ム?」

 

「どこに連れてったの〜!お父さ〜ん!!」

 

「親父に似てこのガキも反抗的だな。」

 

兵隊たちに父親を連れていかれた子供が、その兵隊達に父親を返すよう泣いている場面を見てしまった。

 

「っ……!」

 

「我慢するんだナツ。」

 

「絶対に奴らに手を出しては行けない。」

 

エルザとメストの静止により、ナツは兵士へと殴りかかるのをなんとか踏みとどまるが、そんなことと関係なく段々と険悪になっていく。

 

「うわぁーん!お父さーん!!」

 

「黙らねぇと殺すぞ!!」

 

「相手は子供だぞ!?」

 

「正気なの!?」

 

兵士達はとうとう我慢ならなくなった様子で、泣いている子供に武器を振り上げて、一切の躊躇なく殺しにかかる。しかし、その武器は子供へと振り下ろされる前に・・・兵士は皆ぶっ飛ばされていた。

 

「何事だーっ!!」

 

「やっちまった……!」

 

エルザ、ルーシィ、グレイ、ナツ、グランが兵士達を吹き飛ばしてしまった。まぁ、あの場面を無視するなんてのは、コイツらには無理だからな。

 

「忍法、吹っ飛ばしの術だ。」

 

・・・忍法関係ねぇ。

 

「もう島から出れねぇぞ……!」

 

「そうね、全員倒すまでは。」

 

「こっちは任せてください。」

 

「・・・なら、念のため俺も行く」

 

ウェンディは子供を安全な場所まで案内しようと動き、念のためと言いグランも一緒について行く。

 

ナツ達はそのまま残りの兵隊達を相手にして、メストはどこかにいるはずの諜報員と合流するべく、ここで別行動に出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・中々見つからんな」

 

「うん、でもなんとかなりそうだよ」

 

ひとまず別行動を取り、子供の親のところまで案内しようと、匂いを頼りに探すグランとウェンディ。

 

と、その時地面が大きく揺れ始めた。

 

「・・・んあ?」

 

「何!?」

 

「地面が!?」

 

いきなり轟音と共に揺れ出す地面に、島中が大混乱してしまう。・・・が、その揺れも直ぐに止まる。

 

「・・・・・・おさまった?」

 

「グラン、何かしたの?」

 

「・・・いや、島の体積がいきなり増えたから止めて元に戻しただけだが?」

 

さらっと言ってるが、こいつがむちゃくちゃなのは良しとして、それはつまり、島の体積・・・質量を優に変えられるものがいる・・・という事。

 

「・・・ナツ達、大丈夫か?・・・・・・大丈夫か。ウェンディ、シャルル、ハッピー。念のため、空を飛んでその子の親を探してくれ」

 

「う、うん。いいけど、グランはどうするの?」

 

「・・・妙にでかい魔力が現れたからそっちに向かう」

 

「分かった、気をつけて!!」

 

「・・・そっちもな」

 

そう言い、ウェンディ達は空へと飛んでいき、グランはこの魔力の持ち主の所まで、歩を進めていった。

 

 



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第六十二話 マスター救出

 

場所は変わり、ナツ達は兵士達を相手にしていたが、当然相手になるはずもなく、ボッコボコにしていた。

 

が、直ぐに増援がきた。

 

マリン・ホーロウと名乗るアルバレス帝国軍、ブランディッシュ隊所属の男が現れてから、戦況は一変。

 

空間系の魔法を全て封じてしまうマリン・ホーロウの前では、エルザもルーシィも魔法が使えず、ナツとグレイも点と点で空間を移動しながら戦うマリンに苦戦する。

 

そして、さらに一人増援がきた。

 

それこそが、島の質量を変えるほどの力を持った人物。

 

アルバレス帝国軍、スプリガン12(トゥエルブ)の一人・・・ブランディッシュ・μだった。

 

魔力だけでもマスター以上。さらに質量を簡単に変えられるほどの力を持つ彼女を前にし、一時的に体が動かなくなる一同。

 

だが、彼女に戦闘の意思はなく、帰ろうとする。

 

そこにナツが突っかかる。仲間が一人やられてんのに、黙ってはわけないと

 

だが、ブランディッシュは予想外の行動に出る。

 

なんと彼女は、マリンを一瞬にして消してしまったのだ。まさかの行動に唖然とするナツ達。

 

「これでこっちも仲間を1人失ったわ。おあいこね。悪いけど私、めんどくさいの大嫌いなの。」

 

「自分の仲間を……!」

 

「めんどくさいのは大嫌いだからね。スパイも合流してた奴も始末したってことにしておいてあげる。だから西の大陸には近づかないでね。」

 

ナツ達はそれでさらに驚愕した。自分達のやろうとしていることが、完全に敵に筒抜けだったから。

 

「……マカロフは生きているわ。けど貴方達が余計なことをしたら…どうなっちゃうのかしら。これは忠告、私達に近づくな。」

 

そう言った瞬間、地面が消えた。・・・と思ったら、またいきなり現れた。一瞬。どちらも一瞬で消えて、一瞬で元に戻ったのだ。島の住民も、ナツ達も意味が分からなくなる。

 

「・・・さっきも止められた。一体誰?」

 

「・・・お前か、さっきから島の体積いじってんのは」

 

そこに現れたのは、誰であろうグランである。一瞬で縮んだ地面を一瞬で戻すとは・・・さらに化け物じみたな、こいつ。

 

「・・・あなた、グランね。めんどくさいのがいたわね。」

 

「・・・いきなり面倒扱いされたんだけど」

 

「でも、まぁいいわ。いまのでわかったと思うけど。この程度の魔道士はアルバレスには12人いる。いくらそいつがいても、敵わない戦はしない事ね・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

妖精の尻尾への忠告。善意からくるものではなく、ただ面倒な事をしたくないが為の忠告。そのまま彼女は自身が乗ってきたであろう船へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・怪我人はいなさそうだな」

 

「あぁ、助かったぞグラン。」

 

あの後、念のため島にいたもの達に怪我がないかを確認して、一度船に戻ったグラン達。

 

「・・・あの女が島・・・というより大地に対して使ったから何とか出来ただけだ。それ以外なら多分無理だな」

 

「・・・島を丸ごと小さくするとは。かなり高度な魔法だ」

 

「・・・さらに言えば、巨大化も可能・・・あの女と同等・・・もしくはそれ以上の実力を持ってる魔道士が後11人。・・・・・・真面目に今回の敵はヤバそうだな」

 

グランでさえ、今回の敵がいかに危険であるかがわかってしまう。敵にはもう自分達の目的がバレている以上、これからの行動を慎重にせねばならない。・・・慎重に出来るかは知らんが。

 

「・・・ひとまず諜報員を探さねぇとな」

 

「ああ、そうだ━━━」

 

と、次の瞬間、エルザの姿が一瞬にして消えた。そして

 

「っ!?」

 

「なっ……」

 

「なにこれ!?」

 

「うわっ!?」

 

「・・・お?」

 

残りの全員も突如として姿を消し、次の瞬間別の場所に移動していた。

 

「大丈夫・・・俺の・・・魔法だ・・・」

 

「いきなり瞬間移動使わないでよっ!!」

 

どうやらメストの瞬間移動の魔法で移動させられたらしい。一言言ってくれてもいいと思うんだけど

 

「おお!!ここ!!乗り物じゃねぇ!!」

 

「わぁ」

 

「え?待ってウェンディ、今のわぁってもっかいやって」

 

船から移動したことでダウンしていたナツとウェンディは大喜び。ウェンディの喜び具合を見てグランも大喜び。

 

「どこなんだ、ここは」

 

「位置的にはカラコール島の近海の・・・海中だ」

 

「・・・・・・・・・え、マジで」

 

移動した先はまさかの海中である事を知ったグランは・・・一瞬でテンションが下がった。

 

と、皆それぞれの反応をしている時、いきなり神殿が動き出す

 

「今度はなんだ!?」

 

「メスト!」

 

「わ、わからん……」

 

「ちょっとこれ……動いてない?」

 

何故かは分からないが神殿が突如として形を変えて急に動き出した。外から見ると、円柱の建物の上に羽付の大砲がくっつき、両端にも羽が生え、さらには足も生えたよく分からん乗り物?へと変わっていた。

 

当然、乗り物だからさっきまで喜んでたナツとウェンディは直ぐに気分が悪くなる。

 

「ようこそ。」

 

「誰かいたー!?」

 

突如、第三者の声がしたと思ったら壁がひっくり返り、中から1人の人物が現れた。

 

「移動神殿オリンピアへ。艦長のソラノだゾ。」

 

そこにいたのは、元六魔将軍のエンジェルだった。

 

「エンジェル!!」

 

「何で水着なんだ?」

 

「海だからじゃない?」

 

「・・・お前は服着ろよ」

 

「諜報員ってまさか……」

 

「正解だゾ。」

 

「・・・アンタが敵にバレて」

 

「・・・島まで逃げてきたせいで」

 

「島が消えかけた」

 

「私だって命からがら逃げてきたのよ!ま……メストには借りがあるからね。今回だけは手を貸すけど、仲間になったわけじゃないゾ。 」

 

「ありがとうエンジェル……ソ、ソラノ?」

 

ルーシィが礼を言うが、エンジェル・・・否ソラノは彼女を見たまま少し間を置いて、その後でルーシィに近づき、彼女が着ているビキニの紐を指で引っ張って持ち上げながら、笑顔で話しかける。

 

「カレンを殺したのは、私。忘れちゃダメだゾ。」

 

「っ……」

 

「よせソラノ。」

 

「はいはい。」

 

エルザがソラノを制して、おちゃらけた様子でソラノはルーシィから離れる。

 

「こ、これ……どこに向かっているんですか…?」

 

「地獄か……?」

 

「・・・どこでもいいから、海から出たい」

 

乗り物によりグロッキーになってる二人と海中にいるという事でブルーになってるグランからどこに向かっているのかを聞かれたソラノ。

 

そしてその質問に答えるように、目的の場所を告げた。

 

「マカロフの所だゾ」

 

その答えに皆驚愕した。まさかマスターの居場所をもう突き止めていたということに

 

「見直した?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、アルバレス帝国では。

 

一年前、交渉を目的としてアルバレスへと足を運んだマカロフ。意外にもアルバレスの皇帝はマカロフを客人として招き入れ、アルバレス帝国の大臣 ヤジールと交渉をすることが成功していた。

 

放浪癖のある皇帝陛下を待つこと一年・・・ようやくアルバレスの皇帝が帰還した。

 

・・・・・・だが、その正体にマカロフは驚愕した。

 

それはイシュガルで黒魔道士として名を馳せているゼレフ本人だったから。見間違いでも、人違いでもなく・・・紛れもない本人。

 

そして、ついに交渉が開始されるが・・・そもそも交渉の余地はないらしい。

 

ゼレフは何百年も前から竜王祭の準備だけはしていたらしい。イシュガルに攻め込む理由はルーメン・イストワールを手に入れる為。

 

正式名称・・・妖精三大魔法のさらに上位・・・秘匿大魔法 妖精の心臓(フェアリーハート)

 

だが、そう決めたのは最近で、元々はアクノロギアに対抗するために集めた出した力なのだという。

 

「本当の竜王祭が始まる・・・黒魔道士・・・竜の王・・・そして君たち人間。生き残るのは誰なのか、決める時が来たんだよ」

 

「戦争を始めるつもりか」

 

「殲滅だよ」

 

戦争ではなく一方的な殲滅であると告げるゼレフ。その後、フッと小さな笑みを浮かべる。その様子を不思議そうに見ながらも警戒するマカロフ。

 

「何がおかしい!!」

 

「いや・・・・・・一年ほど前に彼・・・グランから言われた事を思い出してしまってね。後悔するのは一体どちらだろうってね」

 

「後悔するのは貴様の方だ・・・貴様に初代は渡さんぞ!!!」

 

ゼレフに啖呵をきるマカロフだが、次の瞬間ゼレフによって拘束されてしまう。

 

「むぐっ!!?」

 

「君には少しだけ感謝しているんだ。ナツを育ててくれて、ありがとう」

 

「・・・・・・!!?」

 

「直ぐに楽にしてやろう。そして体をナツに届けよう。」

 

さらに力を込め、マカロフを殺しにかかるゼレフ。

 

「怒るだろうな・・・僕を壊すほどに」

 

「むぐ・・・ぐぐっ!!?」

 

「最後に言い残す事はあるかい?」

 

「うう・・・醜い・・・悪魔め・・・」

 

「おしいね。スプリガンというのは醜い妖精の名前さ」

 

もう直ぐやられる・・・と思った次の瞬間、マカロフは間一髪でメストによって救い出された。

 

「じーさん!」

 

「マスター!」

 

「じっちゃん!」

 

「マスター!」

 

「わぁ!」

 

「・・・無事で何より」

 

「お、お前達……」

 

メストが、マカロフを連れて戻り、嬉しそうに反応するナツ達と驚いているマカロフ。

だがしかし、メストがそれどころではないと言わんばかりに、驚きと焦りに満ちた顔をしている。

 

「ゼレフ!!ゼレフがいた…!」

 

「ゼレフがいるのか!?」

 

「この大陸に……!?」

 

「ワシも知らんかった・・・・・・皇帝スプリガンを名乗る男こそ、ゼレフ本人じゃ」

 

「・・・スプリガン・・・醜い妖精・・・・・・何故醜い妖精?」

 

「そこはどうでもいいと思うよ、グラン」

 

「お前達がここにいるということは、事のいきさつはメストから聞いてるという事か。」

 

「はい。」

 

「兎に角無事で良かったです。」

 

「・・・・・・ワシの考えが浅はかだった。奴らは初めから、交渉に応じる気などなかったんじゃ。ギルドの歴史を汚してまで、西方入りしたと言うに・・・・・・全てが無意味、こんなに悔しいことは無い

 

拳を握り、悔し涙を流すマスター。歴史を汚してまで守ろうとしたが・・・それが無意味に終わったから

 

「無意味なもんか、この1年があったからみんな成長した。」

 

「あたし達はまた集まることが出来たんだよ。」

 

「人を想って起こした行動は、必ず意味のあるものと信じています。それが、あなたの教えだから。」

 

「帰ろう、じっちゃん。妖精の尻尾へ。」

 

「・・・ああ」

 

泣いて、悔やみ、俯いていたマスターにナツが手を差し伸べる。それに、マカロフは涙を流す。

 

「つもる話もあるけれど、まずはこの場を離れましょう。」

 

「そうだね。」

 

(誰じゃこやつ・・・)

 

「連続で瞬間移動(ダイレクトライン)を使いすぎた。今の魔力じゃみんなを連れて移動できるのは一回。その1回はソラノの船?までの1回に使いてぇ。瞬間移動で船まで行ける地点まで戻らねば……」

 

「━━━折角仲良くなれたのに、帰っちまうのかマカロフ。」

 

一同が相談している中、そこに話しかける1人の男が現れた。マカロフを助けるため侵入はしたが、それにしたって追手が来るのが早すぎる。

 

「土産は持ったかい?土の中へは意外とすぐについちまう。」

 

「・・・いや、土は意外と沈みにくいぞ。沈みやすいのは砂・・・・・・ってお前アジィールか」

 

「知っておるのかグラン!!?」

 

「バカな、どうやってここに・・・!!!?」

 

「砂!砂はいい……全てを語ってくれる・・・が、お前までいるとは語ってくれなかったな、グラン」

 

「残念だったな。大地に関係するすべてのものは俺の味方だ」

 

悠長に話しとる場合か馬鹿グラン馬鹿

 

グラン以外の全員が戦闘態勢に入る。この男の魔力量がブランディッシュの同じくらいだったからだ。

 

「いいねぇ……」

 

「よせ!戦ってはいかん!勝てる相手ではない!逃げるんじゃ!!」

 

「っ!けど……」

 

「マスターが言うんだ、引くぞ!!」

 

「・・・別に負けねぇけど」

 

「いいから行く!!」

 

そう言って、全員が一斉に引き始める。エルザが、目くらましとばかりに剣による攻撃を行いながら逃げていく。

 

「こっちに魔導四輪を用意してあるわ!!」

 

「今のうちだ!乗り込め!!」

 

「車……」

 

「私が運転する!!SEプラグ接続!行くぞ!!」

 

そして、エルザは自身の魔力を注入し、魔導四輪を動かし逃げていく。

 

「とばせ、エルザ!!」

 

「わかってる」

 

そしてさらに魔力を注入し、最大限のスピードで逃げて行く。

 

「……来るぞ…」

 

「あ?」

 

「何あれ!?」

 

「砂!?砂の怪物!?」

 

魔導四輪の後ろを巨大な砂の怪物が迫っていた・・・が

 

「・・・鬱陶しい」

 

というグランの一言と偶に、砂の怪物はすぐさま形を保てず崩れ去って行く。もういよいよを持ってチートだな。前からそうだが、大地関係でコイツに勝てんのいるのか?

 

「・・・・・・よし」

 

「よくやった!!」

 

「・・・もうグラン一人でいいだろ」

 

グランが直ぐに砂の怪物を崩したおかげでさらに逃げやすくなったが・・・簡単には敵も逃してはくれない。

 

「ふぅぅ・・・やっぱグランがいたら意味ねぇかァ。・・・まぁだからって逃がさねぇけどなァ!」

 

その一言と共にアジィールの姿が一瞬で消える

 

「消えた!!」

 

「下じゃ!!奴は砂と同化する!!」

 

そして次の瞬間

 

「蟻地獄ゥ!!」

 

魔導四輪の下が流砂となる。その範囲のデカさに避ける暇もなく巻き込まれてしまう

 

「しまったァ!!」

 

「くぷっ!」

 

「くそっ!!」

 

「・・・ウェンディ、シャルル、つかまっとけ」

 

「あ、ありがと」

 

「だからわたしたちは!!?」

 

とりあえずウェンディとシャルルの安全をすぐさま確保するあたり、全く変わってないなコイツ。

 

「アーハッハッハッ!いいねぇ!無様な姿が実にいいねぇ!」

 

「車から出るんだ!!」

 

「・・・もう出てるぞ」

 

お前とウェンディとシャルルはな。

 

「くそ……魔導四輪が……!」

 

「砂が!」

 

「まとわりついて……!」

 

「動けない!!」

 

「何人殺してきたかなぁ、いくつの街を飲み込んで来たかなぁ……この蟻地獄は終わりの扉、逃れられた者はいねぇ「・・・とりあえず、ゆっくり行くから、口閉じとけよ」「わ、わかった」「えぇ、お願いね」・・・・・・いいかァ!死ぬ前に一つだけ覚えて「・・・・・・あ、後あんま動かん方がいいぞ。纏わりついてうざいからこれ」「じゃあ早く助けてよ!!?」「・・・・・・頑張って」「おい!!?」・・・覚えておけぇ!!お前ら程度の魔導「・・・砂うまっ」「食ってねぇではよ助けろ!!?」テメェグランちょっと黙ってろぉ!!!!!!!!」

 

哀れアジィール。本来ならば、高笑いしながら一同に上から目線でものを言い始めるという見せ場なのに空気読まない&蟻地獄が効かない&マイペースなグランに邪魔されてなんか変な空気になってしまっている。ルーシィとグレイも今の状況を忘れ普通に突っ込んでるし

 

「・・・・・・イシュガルの地は神に見捨てられた!これよりアルバレスによって支配されるだ「・・・・・・ふぅ、もうめんどくせぇ。」「「いやめんどくさがんな!!!!」」だから黙ってろぉ!!!」

 

「・・・んじゃぁ、ほい」パンッ

 

と、間の抜けた声と共に手を鳴らすと、先ほどまで鬱陶しいほどに纏わりついていた砂も蟻地獄も一瞬にして消え去っていた。

 

「・・・何地面に寝っ転がって遊んでんだ?」

 

「「ソレができるなら最初っからやれ!!!!」

 

「・・・・・・何一つ昔とかわっちゃいねぇぇ」

 

「・・・・・・いや〜、ソレほどでも」

 

「「「褒めてねぇ!!!」」」

 

敵からも味方からも突っ込まれるグラン。・・・・・・状況は敵に追い詰められて最悪なのに、コイツのせいでシリアスは台無しだな。

 

 





「・・・これだいぶ原作と違うがいいのか?」

お前がやったじゃん

「・・・書いたのはお前だけどな」

いいんだよ、こういうのはノリと勢いに任せりゃ大抵何とかなるなる!

「・・・ねるねるねるね?」

誰もんな事言ってねぇ








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第六十三話 愛の奇跡 愛の悲劇

 

「・・・前回、なんやかんやあって無事マスターを救出できた俺たち。まぁ結局敵には目的バレてたけどそこはいいとして、追手にアジィールがやってきたんだよね。一戦交えても良かったけど、マスター救出が第一だからなぁ。まぁアジィールは普通に退いて、天馬の船がこっちに来てたから全員で乗り込んで・・・・・・まぁそんなこんなで今は立て直せたギルドにいるってわけだ」

 

「グラン?さっきから誰に言ってるの?」

 

「・・・誰だろうな」

 

いきなり喋り出したと思ったら何?前回のあらすじ?だいぶ適当だな、おい。

 

とりあえず今は皆無事にギルドに戻ってこれたって事で。

 

あの後色々質問攻めされたグランだが、「・・・・・・昔の知人?」とかもうなんか聞いても無駄だと悟りマスターの無事を喜ぶ事に専念した。

 

と、皆が飲んで食べて騒いでいる時、マスターが壇上に上がり杖で床を強く叩きつけ、皆の注目を集め、話し始める。

 

「皆・・・済まなかった。言い訳はせん、皆の帰る家をなくしてしまったのはワシじゃ。本当に済まない。」

 

「メストから聞いたぜー」

 

「俺らを守るための判断だったんだろ?」

 

「気にしてねーよ。」

 

「そうだ、もう復活したんだ!!」

 

「辛気臭い顔すんなョ。酒が不味くなる。」

 

皆に謝罪するマカロフに対し、皆は気にしてないと、慰めの言葉を入れる。マカロフはそのまま話を進めていく。

 

「更にワシの策さえ無意味じゃった。アルバレスは攻めてくる。巨大な大国が、このギルドに向かい進軍してくるのじゃ。」

 

「それがどうしたァ!!」

 

深刻な顔をし話すマカロフに向かい、ナツは大声を張り上げる。

 

「俺たちは今まで何度も何度もギルドの為に戦ってきた。敵がどれだけ強かろうが、大切なものを守りたいって意思が俺たちを強くしてきたんだ。」

 

づかづかとマカロフに近づき、地図を置いたテーブル1枚挟んでナツは手をたたきつける。

 

「恐怖が無いわけじゃねぇ。どうやって下ろしていいかわからねぇ重荷見てーだよ。けど、みんなかきっと手伝ってくれる。」

 

そのまま炎を出して、ナツは地図の上に置いてあるアルバレスを模した駒に火をつける。

 

「本当の恐怖はこの・・・楽しい日の続きがなくなる事だ。もう一度みんなと笑って過ごせる日のために、俺たちは戦わなきゃならない。

 

勝つ為じゃねぇ!!生きるために立ち上がる!それが俺達の戦いだ!!

 

全員が、ナツの言葉に同意する様に、覚悟を決めた顔をする。恐怖は・・・次第に勇気にもなりうるというように。

 

明日を失わないために、アルバレスと戦う。

 

「全員覚悟は出来てるみてーだぜ。」

 

「・・・・・・・・・・・・ワシもじゃ。」

 

一度顔を伏せたマカロフだったが、すぐに顔をあげ、拳に力を込める。

 

 

「我が家族に噛み付いたことを後悔させてやるぞ!!返り討ちにしてやるわい!!」

 

 

杖を大きく掲げて、マカロフは勝鬨をあげる。それに合わせて、妖精の尻尾全体も一気に湧き上がる。

 

「燃えてきたァー!!」

 

「必ず勝利しましょう。」

 

「当たり前だ。」

 

「・・・全員沈めてやる」

 

妖精の尻尾全体が湧き上がり、勇気を振り絞っていく。マカロフは杖を叩きつけて皆を静かにさせる。どうやら、未だ話しておくべきことがあるようだった。

 

「戦いの前に皆に話しておかねばならぬことがある。ルーメン・イストワール・・・正式名称妖精の心臓(フェアリーハート)の事じゃ。」

 

マカロフがこの戦いにおいて最も重要なことを話そうとしたその時、マカロフの後ろから1人の人物が現れる。

 

「それについては私から話しましょう、六代目・・・いえ・・・八代目。」

 

「初代!?」

 

その人物は初代妖精の尻尾マスターであるメイビスだった。

 

「皆さん…妖精の心臓は、我がギルドの最高機密として扱ってきました。それは、世界に知られては行けない秘密が隠されているからです。ですが、ゼレフがこれを狙う理由もみなさんは知っておかねばなりません。

そして、私の罪も……」

 

「…罪?」

 

「初代……」

 

「良いのです。全てを語る時が来たということです……これは、呪われた少年と呪われた少女の物語、2人が求めた1なる魔法の物語・・・」

 

そして、メイビスは語り始める。事の発端・・・・・・妖精の心臓のこと・・・自身のこと・・・呪われた少年とのこと

 

過去を話すことで、それらを話していく。

 

100年以上も昔、妖精の尻尾創設の少し前。マグノリアの東の森で、メイビスと一人の青年・・・ゼレフと偶然出会った。

 

ゼレフはアンクセラムの呪いに苦しんでいた。それは意図せず、人の命を奪ってしまう呪い。

 

しかしメイビスはゼレフに惹かれた。ゼレフから沢山の魔法を教えて貰っていた。そして、当時マグノリアは闇ギルドに支配されており、メイビス達はマグノリアを解放すべく、魔法を覚えた。

 

そしてその戦いの中、メイビスは未完成の黒魔法を使い勝利した。だが代償に、メイビスの体は成長ができない体になってしまった。

 

X684年4月 妖精の尻尾が創設。当時は領主同士の通商権争いが激しく、第ニ次通商戦争が始まった年。やがて魔導士ギルドも、傭兵として領主達の戦いに巻き込まれていった。

 

X690年、第2次通商戦争が終わった。第1次戦争に比べ各地の死傷者の数は数十倍にのぼった。

 

それは、戦争に魔導士ギルドが介入したのが原因だと言われたらしい。魔法界もこれを受けて、ギルド間抗争禁止条約を締結した。

 

まぁ、そらそうだわな。妥当だ。

 

この条約により、魔法界にしばしの平和が訪れた。

 

・・・・・・そして6年後のX696年。メイビスは偶然にも、黒魔道士である彼・・・ゼレフと再開した。

 

・・・・・・その時のメイビスは純粋すぎた。ゼレフが黒魔導士であると知っても、悪い人だとは思えなかった。

 

……その時、メイビスは知った。ゼレフの本性と、メイビス自身が不老不死になっているということを

 

当然信じるわけがない。自身が、不老不死の体になり、アンクセラムの呪いにかかっていることに。

 

そして、そのことを信用しないまま……メイビスはギルドに戻った。

 

X年696年 ユーリの子、マカロフ誕生・・・・・・そして母親の命をメイビスは奪った。

 

矛盾の呪い。人を愛するほど、周りの命を奪い、愛さなければ命を奪わない

 

木々を枯らし、動物の命を奪い、人の命さえも奪う。

 

それ以来、メイビスはギルドに顔を出さなくなり、あてもなくさまよい、いくつもの命が消えていき、そして、1年が経過した。

 

その時、メイビスはゼレフと再開した。

 

その当時ゼレフは、エーテリアス…ゼレフ自身を殺すためだけの悪魔を作りだした後だった。

 

まぁその悪魔もほとんど居ないけど・・・そこは関係ないから割合して

 

そしてさらにゼレフは国を作っていると言っていた。

 

それがアルバレス帝国

 

領土を広げていくことを楽しい、国づくりは醜い領土の拡大、楽しくない・・・・・・そう言っていた。自身の思考さえも矛盾していく。おかしくなっていく。

 

メイビスはゼレフと一緒に呪いをとく方法を探そうと言った。メイビスはゼレフに惹かれていった。ゼレフもまた、メイビスの優しさに惹かれていった。

 

魔道の深淵・・・全ての始まり・・・・・・それは1なる魔法“愛”

 

愛は奇跡を引き起こし、時に悲しみを引き起こす。

 

矛盾の呪いをかけられた二人の愛は、最後の矛盾をつきつけられる。

 

愛すれば愛するほどに命を奪うその呪いは、不老不死であるはずのメイビスの命を奪っていった。

 

その後、メイビスの体は妖精の尻尾のギルドに届けれた。その当時マスター代行をしていたプレヒトは、メイビスの心臓が少しだけ動いていることを確認し、メイビスの体を魔水晶に封じ込めた。

 

そしていくつもの蘇生魔法をプレヒトは試していくうちに、メイビスにかけられたアンクセラムの呪いに気づいた。気づいてしまった。

 

こんな事実・・・ギルドのメンバーには伝えられない。ソレが秘匿とされたきっかけである。

 

X697年、プレヒトはギルドメンバー達にメイビスは死んだと告げ、天狼島に墓を建てられた。メイビスと出会った島。始まりの島に。

 

同年に、プレヒトは2代目マスターとなり、仕事の傍ら私の蘇生に心血を注ぎこみ、約30年……それを続けているうちに、プレヒトの類まれなる才能と知識・・・・・・そしてメイビスの不老不死がもたらす半永久的な生命の維持。それらが融合し……説明のつかない魔法が生まれた。

 

魔法界を根底から覆す魔法

 

それが、それこそがルーメン・イストワール・・・

 

「永久魔法妖精の心臓(フェアリーハート)

 

「永久・・・魔法?」

 

「それは一体……」

 

「その名の通り永久・・・無限。絶対に枯渇することの無い魔力。」

 

「なんだそりゃ!?」

 

「一生使える魔法源って事!?」

 

ナツとハッピーが、同時に驚く。いや、声に出していないだけでこの番にいる全員が・・・・・・まぁグランはほへーって感じだが、驚いていた。

 

「例えるなら…エーテリオンという兵器がありました。一撃で国をも消滅させる旧評議院の超魔法。妖精の心臓は、そのエーテリオンを無限に放つ魔力を持っているのです。いいえ…魔力を持っている、という表現自体が体をなしません。無限なのですから。」

 

エーテリオン、一撃で国をも滅ぼせる超魔法・・・それを何度でも放ててしまうのが妖精の心臓。

 

その真実は、この場にいる全員を絶句させていた。

 

「そんな魔法が公表されたら……」

 

「確かに魔法界は根底から覆る……」

 

「・・・そんな魔法がありゃ・・・誰もが欲しがる。」

 

「かつてイワンもこれを欲した……どこで漏れたのか、アルバレスにも情報が渡った。」

 

「アルバレスは妖精の心臓を奪うために攻めてくるってのか!!」

 

「でもなんのために?」

 

「力は十分に持ってるはずなのに。」

 

「恐らくはアクノロギアを倒す為だと推測されます。あれは、ゼレフに取っても邪魔な存在。」

 

「逆にそうでもしなきゃ、倒せないってのかいアクノロギアは……」

 

「そんな……」

 

「あのさー、単純な質問なんだけど。そんなに強い魔法なら、アルバレスもアクノロギアもバーンてやっつけられないの?」

 

最もな意見をあげるハッピー。確かにそんな魔法がいや、永久に使える魔法源があるならば、それを使えばいい。

 

「確かに一理ある。ワシも大量のフェイスを前に、1度はそれを考えた。

しかし、一時的な勝利はできてもそのあとどうなってしまうのか。もし、無限に降り注ぐエーテリオンが制御不能だったら……」

 

「・・・・・・・・・・・・ッッ」

 

マカロフが言ったことに、ハッピーが絶句する。あくまでも妖精の心臓は無限の魔力を持っているだけ。それを制御できるかは全くの無関係である。

 

「ごめんなさい……」

 

「毒を以て毒を制すわけには行かんからな。」

 

「毒って……初代の体よ一応。」

 

「妖精の心臓はいかなる理由があろうと、世に放ってはならん。」

 

「おう!そんなの当たり前だ!」

 

「そもそも初代の体だ!他の奴らに渡せるかってんだ!!」

 

皆がアルバレスに妖精の心臓を・・・初代の体を渡すまいとテンションを上げていく。

 

そんな皆を見て、初代は申し訳なさそうに俯く。

 

「っ……私の罪から生まれた魔法が、まさかみなさんを巻き込んでこんな事態になってしまうなんて……」

 

「人を好きになるってのが、なんの罪になるんだよ。そんな罪じゃ、逮捕は出来ねぇな。」

 

そんな初代をフォローしたのは、まさかまさかのガジルだった。

 

そして、全員が驚いた顔でガジルを見ていた。

 

「「「「え?」」」」

 

「なんでよてめぇら!!」

 

「・・・だって似合わないし」

 

「ぶっ飛ばすぞ、グラン!!」

 

だってあのガジルからそんな言葉が出てくるとは思わないじゃん。

 

「初代…どうか自分を責めないでください。」

 

「うん、不幸な出来事が重なってしまっただけ……」

 

「貴方がいなければ、妖精の尻尾はなかったんです。」

 

「つー事は、私達が出会うこともなかったんだね。」

 

「初代はここにいるみんなを繋げてくれた人なんだ。」

 

「私たちは、初代の作ったギルドを守りたい……だから戦うんです。」

 

涙を流しながらも微笑むメイビス。どんなことがあれ皆を繋いだのは初代。このメンバーを家族にしたのは紛れもない、初代だ。

 

「良いギルドになりましたな……初代。」

 

「しくしく……」

 

「なっ!?」

 

「メイビス様は、かつて愛した人と戦わなくてはならないんですね。」

 

「それは遠い過去の話……今のゼレフは、人類に対する脅威です。必ず倒さねばなりません。」

 

涙を拭き改めて話を進めていくメイビス。

 

「でもよォ……アルバレスの兵はなんとかなるにしても…」

 

「ゼレフという者は不老不死なのだろう?」

 

「不死身ってことじゃない!!」

 

「どうやって倒せばいいんだ……」

 

「グラン、何とかならない?」

 

「・・・生き埋めにしても這い出てきそうだしなぁ」

 

「そこは任せてくれよ。」

 

皆がどうするかを話し始めた時、ナツがテーブルに飛び乗って包帯を巻いた右腕を皆に見えるように見せつける。

 

「ゼレフは俺が倒す。そのための秘策がこの右腕なんだ!!!」

 

「・・・・・・で?」

 

「その秘策とやらは……」

 

「秘密だ!だからこそ秘策なんだ。」

 

自慢げに笑みを浮かべるナツ。しかし、あそこまで露骨にアピールをされて、いざ秘密です話しませんと言われて引き下がるほど妖精の尻尾は大人しくない。大人しかったら評議院に何度も世話になってない。

 

「勿体ぶってんじゃねぇ!!」

 

「その右腕にどんな秘密があるんだー!!」

 

「知りたい!!」

 

「かじるのやめろ」

 

「でも・・・ナツさんが言うんだからきっとすごくとっておきなんだろうね、グラン」

 

「・・・まぁ、こんな時にくだらん冗談は言わねぇだろうな」

 

ちなみに、ハッピーは何か知っているようでなぜかドヤ顔してる。

 

「とにかく()()()は1回しか使えねぇ。けど、ゼレフを倒すために編み出した技だ。絶対倒す自信がある。」

 

「1回・・・」

 

「本当に奥の手というわけか。」

 

「私にもいくつか策がありますが、今はナツを信用しましょう。」

 

「…マスター。」

 

「「「はい。」」」

 

何かを聞きたかったルーシィがマスターを呼ぶが、メイビス、マカロフ、エルザに加え、一応マスターだったマカオが同時に返事をした。

 

「えーっと、おじいちゃんの方で。これから私達が戦う敵のことを教えてください。」

 

「うむ……そうじゃな。ワシが知る限りのことを伝えておこう。」

 

そう前置きを置いてから、アルバレスの主な人物達をマカロフは紹介し始めていく。

 

「まずは皇帝スプリガン。イシュガルでは最強の黒魔導士として知られるあのゼレフじゃ。そして、その配下にスプリガン12と呼ばれる先鋭部隊がいる。わしもこの1年間で会うことが出来たのは6人だけ……土地が広いせいで全員が一同に会することは滅多にないらしい。

 

冬将軍インベル。奴はゼレフの参謀であり執政官でもある。その異名の通り氷系の魔法を使うと思われるが、詳細は分からん。」

 

「氷……」

 

砂漠王アジィールは、脱出時に交戦した砂の魔法の使い手。12の中でもかなり好戦的な奴じゃ。」

 

「・・・砂漠王・・・・・・まぁ間違ってねぇか」

 

「ってか、結局アイツとどういう関係なのよ」

 

「・・・だから昔あった知人ってだけだ。そんな詳しく知らん。」

 

国崩しのブランディッシュ。好戦的ではないが国をも崩すという魔力の持ち主。」

 

「奴とはカラコール島で1度だけ接触した。奴は恐らくものの質量を変える魔法を使う。」

 

戦乙女ディマリア。やつの魔法は知らんが、戦場を駆け巡った女神を通り名に持つ女騎士。」

 

「魔導士ではないのか!?」

 

「あんたがつっこむの?」

 

聖十最強の男ゴッドセレナ。やつはいわゆる残念な感じの男なのだが…やつの強さはワシがいちばんよく知っておる。」

 

「聖十大魔道の序列1位の人が敵だなんて未だに信じられない。」

 

「何故イシュガルを去ったのでしょう…」

 

「そればかりは本人に直接聞いて見なきゃわかんないよね。」

 

「裏切り者めぇ!」

 

魔道王オーガスト・・・・こやつ・・・だけは・・・ワシの知る限り別格!!!他の12とは比べられんほどの大魔力の持ち主。・・・聞いた話では古今東西のあらゆる種の魔法を使えるとか……使える魔法の種類だけで言えば、ゼレフより上かもしれん。」

 

マカロフが言った言葉に、全員が絶句する。ありとあらゆる魔法が使えるだけでも厄介なのにその数が数百年生きているゼレフよりも多いとなれば、厄介以外何でもない。

 

「ワシが知っているのはこの6人…あとは名前だけ知っているのが3人。ブラッドマン ナインハルト そしてワール

 

「・・・つまりは、半数以上が未知数な上、その強さは最低でも聖天大魔道の序列一位並ってか。・・・やっばいね、コレ」

 

流石のグランも小さく弱音を吐いてしまうほど、今回の相手は強大。

 

「これから作戦を立てます。皆さん…よく聞いてください。ゼレフは全軍を率いて攻めてきます。私達の置かれている状況は圧倒的に不利と言えるでしょう。敵は今まで戦ってきた敵とは桁違いに強い。ですが、勇気と絆を持って戦い抜くのです。ギルドの力を見せてあげましょう!!」

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオっ!!

 

メイビスの言葉に、全員が大声を出す。士気は上がりに上がりまくった。

 

あとは、決戦まで待つのみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・腕が疼く・・・炎竜に喰われた左腕が・・・

 

竜王祭・・・我が全てを喰らってやろう。我こそが竜の王にして絶対の存在・・・アクノロギアなり

 

今ここに・・・厄災が・・・絶望が・・・闇の翼がまた、イシュガルを舞う。

 

 

 



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第六十四話 戦争開始

 

アルバレス帝国を迎え撃つ為にほとんどのメンバーは家に戻り、その時を待っていたがマスターなどの一部のメンバーはギルドに戻り、敵を警戒していた。

 

「ウォーレン、索敵状況は。」

 

「未だフィオーレに敵影なし。」

 

「それ……本当に信用出来んのか?」

 

「俺が作った超高性能レーダーだぞ!!」

 

「北部、南部…あるいは西部。どこから上陸してくるのか分かれば、策を練りやすい。」

 

「北部を陽動に使い、南部に主力を置くのが一般的ですね。」

 

「初代…!」

 

「決戦前の皆さんを見てきました。みんな、この状況に不安を感じてません、とてもたくましい仲間達です。」

 

どうやら、霊体の体の利点を使い全員の様子を見てきたらしい

 

「初代にはそう映りましたかな……わしには皆不安を押し殺しているように見える。友と寄り添うことで、不安を和らげ自分を鼓舞しているように見える。」

 

不安を感じさせないと考える初代とは違い、不安を押し殺していると考えるマカロフ。

 

「だが…それが悪いわけじゃない。親がビビれば、子もビビるのは当然…親なら自らガキどもの前に立ち、震える足を地につけてやるのもまた務め。」

 

「…はい!」

 

だが、威風堂々とするその佇まいにメイビスの心はまたどこか落ち着いた。

 

皆が皆、それぞれ過ごしていたその時・・・・ギルド内を・・・いや、街中に不自然な風が吹き抜けた。この異質な風は・・・奴らが攻めてきた証だった。

 

「そんな……」

 

「ウォーレン!魔導レーダーはどうなっておる!!」

 

「俺のせいかよ!知らねぇよこんなの!!」

 

そして突如としてウォーレンのレーダーに大量の敵影を確認する。それを知らせるかのように、アラームが鳴り続けている。

 

「なんで接近に気が付かなかったんだクソ!!」

 

「総員戦闘準備!!

 

敵は上空!空駆ける大型巡洋艦約50隻!!

 

「なんだよあの数!!」

 

「1隻だけでギルドと戦える大きさだぞ!!」

 

「あれはまだ、帝国の1部でしかない……!」

 

「空からなんて聞いてねーぞっ!!」

 

「鐘を鳴らしてください!敵襲!西方上空に巡洋艦約50!!」

 

敵が来るや否やメイビスが即座に指令を出す。それとほぼ同時にアルバレスの軍隊から一斉射撃が放たれる。だが、フリードによる術式のバリアによって守られる。

 

「初代!いくらフリードでもあの物量で押されたら持ちませんぞ!!」

 

マカロフは焦った声を出す。当然他の皆も焦りを見せる中・・・メイビスは落ち着いている様子だった。

 

「西の空から来るなんて予想外だ!」

 

「どうすんだよ!!」

 

「いえ…ここまでは想定の範囲内です。それよりも、先行部隊だと思われますが、予想より小規模の攻撃なのは嬉しい誤算。」

 

「え?」

 

「は?」

 

マカオとワカバが素っ頓狂な声を上げるが、メイビスはそのままウォーレンの念話を使って指令を出す。

 

「ウォーレン!全員に念話!作戦をDに!!飛竜隊、ミサゴ隊攻撃開始!!」

 

「了解!!」

 

これより・・・妖精(フェアリーテイル)妖精(スプリガン)による大規模な戦争が幕を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・空から来るとはな。まぁそれも初代の読み通りだったわけだが・・・滅竜魔導士を行かせたのは不味かったんじゃねぇか?」

 

そう呟くのは我らがグラン。こいつ一人で何やってんだろう?

 

「・・・ジュピターで撃ち落とせれば楽だったんだが、アジィールならそれも防ぐ・・・が、だからって負けはしないのが俺たちな訳で・・・・・・・・・もっと言えばこれ昨日の話なんだよね」

 

何を言ってるのか分からない人も多いだろう・・・まずグランがどこにいるか何だが・・・その実、フィオーレにはいないのだ。

 

というのも、初代からの命令で東に陣をとって欲しいと言われて東にあるボスコ国へと向かっていた・・・・・・歩いて

 

何で乗り物で行かねぇんだよ、てか跳んでけよ・・・まぁそこはいいとして。

 

「・・・ウェンディに会いたい」

 

黙れよ。

 

まぁまさか初代も四方を囲まれるのは計算外だっただろうが・・・それもまた戦争・・・何が起こるかはまるでわからない。

 

「・・・んで、いざこっちに来てみりゃ、ボスコは占領されて、馬鹿でかい魔力が三つに軍隊が百万・・・めんどくせぇ。無駄に多いからだいぶ時間掛かっちまったし」

 

そう言いながらも、コイツの目の前には・・・ズタボロにされたアルバレス帝国の兵士たちが地に伏せていた。

 

こいつ、こっちに来てすぐに兵士達ほぼ全員をズタボロにしといて息切れ一つしてないの怖いんだけど・・・なんか普通に喋ってるし

 

「・・・それで、さっさか負けを認めて帰ってくんないか?スプリガン12のお三方よぉ」

 

「あれだけの数の兵士を最も容易く倒すとは・・・噂通りの強さか。それとも、それ以上か」

 

古今東西のありとあらゆる魔法を修得した魔導王、オーガスト。

 

「これが陛下とアジィール・・・それにブランディッシュの言ってたグラン・ワームランドか?それほど脅威とは思えねぇがな」

 

暗殺魔法の天才、ジェイコブ・レッシオ。

 

「ゴッドハロー。お前の噂はイシュガル(こっち)にいた時から聞いてるぜ?大地の滅竜魔導士」

 

・・・そして、変なポーズをとっている元聖十大魔道序列一位、ゴッドセレナ。

 

「・・・変なポーズ」

 

シュッ!シャバっ!シュババババッ!!

 

「そう褒めるな」

 

「褒めてねぇわ」

 

何とも緊張感のない奴らだ。今が戦争の真っ只中だという事を知ってんのか?

 

「オーガスト、ジェイコブ手ェ出すなよ?」

 

「油断するな。此奴の強さは予想がつかん」

 

嬉々としてグランと戦おうとするゴッドセレナに対し、油断するなと告げるオーガスト。そんなオーガストの助言も軽く聞き流し、意気揚々とグランに向かっていく。

 

「すべてのドラゴンは俺の前に朽ち果てる。お前を最初の一匹にしてやっ!!?」

 

ドゴォォォォンッ!!

 

「・・・何言ってんだお前?」

 

ゴッドセレナの顔面に向かい拳を撃ち込むグラン。流石相手が何かを言ってようが関係なしに攻撃をする・・・いやまぁ戦闘中にベラベラ喋んなって話だけどな。

 

「グッ!思ったよりいい拳じゃねぇか!!」

 

だがその程度で倒せるほど敵は甘くない。すぐさま起き上がり反撃を繰り出すゴッドセレナ。だが、グランにそんな攻撃は通じない。今度はガラ空きの胴体に思いっきり蹴りを入れて吹き飛ばす。

 

「グフゥッ!!?」

 

「・・・オラ、さっさと出せよ。お前も使えんだろ?滅竜魔法」

 

「・・・・・・なら、望み通りだしてやるよ!!」

 

「・・・もう出すのか」

 

「それほどまでの強敵・・・竜の神に愛された男を相手に・・・地の竜がどう出るか見ものだ」

 

立ち上がったゴッドセレナの目の色が表裏逆転した・・・次の瞬間

 

「岩窟竜の・・・大地崩壊!!!」

 

「・・・あー、大地割られるってこういう気持ちなのか・・・覚えとこ」

 

自身の周りの大地を崩壊させたゴッドセレナ・・・だけど、グランにとってはなんて事ない攻撃。しれっと自分の周りの大地は割られずに無事だし。だが、それで攻撃は終わらなかった

 

「煉獄竜の炎熱地獄!!!」

 

「今度は火か・・・ナツが喜んで食いつきそうだな。」

 

「海王竜の水陣方円!!!」

 

「・・・やっべ、調子こきすぎた。あぁ流された」

 

巨大な炎の爆発を引き起こしたと思えば、今度は巨大な激流を発生させたゴッドセレナ。爆破は防げたが、激流は防げずに軽く流されていくグラン。

 

「暴風竜の嵐雪月花!!!」

 

今度は五つの竜巻を繰り出し、グランへと迫っていく。大地、火、水そして風とくる。一体いくつの滅竜魔法を使えるのか

 

「地竜の・・・剛腕!!」

 

五つの竜巻に対し、グランは誰よりも巨大な砂嵐を巻き起こし霧散させていく。そして拳を構えてゴッドセレナまで突っ込んでいく。

 

ゴッドセレナもそれを避けず真正面から迎え撃とうと構える。

 

「地竜の剛拳!!」

 

「金剛竜の堅城砕破!!!」

 

ゴオォォォォォンッ!!!

 

まるでとてつもなく硬い物質同士のぶつかり合いのような重低音が衝撃波と共に鳴り響く。

 

「八つの竜の魔水晶を宿したゴッドセレナ相手に互角で渡り合うか」

 

「彼奴の中に滅竜魔法以外の魔力も感じ取れる。底の知れぬ男よ」

 

二人の戦いを見ていたオーガストとジェイコブは、グランの強さに素直に驚かされる。

八つのうち五つもゴッドセレナに使わせてもなおも引けを取らないグランの実力に。

 

「ハハハっ!!思ってた以上にやるじゃねぇか!!グラン・ワームランド!!」

 

「・・・まさか体に八つも魔水晶を宿してるとはな。・・・・竜の神に愛されたってのも納得だな。めちゃくちゃな奴だ」

 

めちゃくちゃなやつにめちゃくちゃって言われとるがな。

 

「竜に神も王もいねぇのさ。だからこそ、全てのドラゴンはオレの前で朽ち果てる。」

 

まだ戦う気満々なゴッドセレナはより一層に魔力を高めていく。グランもそれに合わせ、もう一度対峙しようとしたその時、ここに第三者の異様な魔力がやってきた。

 

「「「っ!!」」」

 

「・・・何でこのタイミングでくるかねぇ」

 

唯一グランだけはその魔力の持ち主に気付き、嫌そうな顔をした。

 

日の沈む方向からゆっくりとこちらに歩みを寄せてきたのは

 

 

「ドラゴンの匂いがするなァ」

 

 

他でもない・・・闇の翼、竜の王・・・アクノロギアだった。

 

アクノロギアの登場は全員予想外だった為、嫌な汗が頬を伝う

 

ゴッドセレナは驚愕の表情から、その顔に笑みをこぼした。

 

「まさかそっちから来るとはねぇ。・・・オレはお前を倒すためにこの大陸(イシュガル)を・・・・・・」

 

「・・・ゴッドセレナ待て・・・避けッ」

 

一瞬だった。その一瞬でゴッドセレナの右の腹部は抉られた。グランはアクノロギアのその行動に気付き防御と忠告を行ったが、ゴッドセレナは間に合わず喰らってしまった。

 

「・・・・・・え?」

 

「・・・クソが」

 

ゴッドセレナは何をされたか、何があったのか知るよしもなく・・・絶命した。

 

 

 

「完全なる滅竜まで・・・・あと8人」

 

 

 

 



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第六十五話 時を燃やす黒炎

 

「完全なる滅竜まで・・・・あと8人」

 

いよいよ、アルバレス帝国との戦争が開始した妖精の尻尾。グランは一人、東の陣を行うよう命じられ、そこでスプリガン12のうちの3人、オーガスト、ジェイコブ・・・そして元聖天のゴッドセレナの対峙。グランとゴッドセレナの戦闘の途中、人の姿のアクノロギアが現れ、そのままゴッドセレナの腹を抉り絶命させてしまった。

 

「・・・・・・ッ!!」

 

「よせ、敵う相手ではない」

 

ゴッドセレナが殺されたことに怒ったジェイコブがアクノロギアへ仕掛けようとしたのをオーガストが静止する。

 

いくら仲間が殺されたとはいえ、相手はアクノロギア。下手に手を出してはいけない存在。

 

「もう一人、ドラゴンがいるなッ」

 

ドガァァァァンっ!!

 

アクノロギアがこちらを振り向いたその瞬間、アクノロギアは思いっきり殴られて、地面に叩きつけられる。誰がやったか?決まってる。

 

「・・・久しぶりだな、クソ野郎。覚えてるか知らんがな」

 

グランだ。あの一瞬でやつの死角に入り拳を叩き込んでいた。約1年ぶりの再会。これほどまでに嬉しくない再会があるのだろうか。いや、ないな。

 

「・・・貴様・・・我の道を阻もうとした竜か」

 

「・・・竜擬・・・じゃなかったか」

 

アクノロギアに対してダメージは入っておらず、ゆっくりと立ち上がりグランを見る。アクノロギアはグランを覚えていたようだ。自らの道を阻もうとした者として。

 

「破壊できなかったとは・・・不快」

 

「そらこっちのセリフだ。完全なる滅竜だ?そんな確実に俺の仲間に被害が来るような真似簡単にさせてたまるか」

 

グランとアクノロギア。両者の纏う魔力がより一層プレッシャーを高めていく。まさに一触即発の雰囲気である。

 

だが・・・アクノロギアはグランから視線を外し、歩き出して行った。

 

「・・・あ?」

 

「貴様は後だ。後で・・・破壊する」

 

そう言い残し、アクノロギアはその場を去って行った。グランも今本格的にやり合うのは得策でないと判断し、アクノロギアが去るのを黙って見ていた。

 

「・・・完全なる滅竜・・・ねぇ。何がしたいのか、分かりたくねぇな。っと、そう言えばあの二人は・・・・・・・・・・・・・・・どこ行った?」

 

グランの意識がアクノロギアに向かっている隙に、オーガストとジェイコブはもうすでにこの場を去っていた。

 

アクノロギアがいたとはいえ、敵の主戦力を逃すとは・・・やっぱどっか抜けてんな、コイツ。

 

「・・・とりあえず、マスター達に報告だけしとくか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日は進み、フィオーレ南方で行われているハルジオン解放戦。ここでは、ハルジオンを奪還すべく、人魚の踵と蛇姫の鱗が戦っていたが、苦戦を強いられていた。

 

敵の圧倒的な兵の数に加え、スプリガン12のディマリアにワール、さらにまだ戦場に出てきていないナインハルトまでもいる。苦戦は当然である。

 

妖精の尻尾からも、グレイ、ジュビア、エルザにウェンディ、それにラクサスも援軍にきた。

 

ラクサスはきて早々にワールと対峙・・・雷が効かない上に、体内を魔障粒子により侵されていた為多少苦戦はしたものの、見事に勝利。

 

そして戦場で、ウェンディとシェリアとシャルルはディマリアと対峙。

 

だが、ディマリアの魔法はある種最強の魔法・・・誰しもが一度は願った、時を封じる魔法アージュ・シール。これが彼女の魔法。彼女だけの世界。勝負は一瞬で終わる・・・はずだった。

 

突如動き出したウェンディ達にディマリアは動揺を隠せず、二人の同時攻撃を喰らう。

 

何故動けたか?その理由はすぐに分かった。

 

一年前の大魔闘演武以来行方不明になっていた、魔女の罪のウルティアが彼女達の時を固定して動けるようにしたらしい。

 

「急いで!私が“時”を固定してる間しかあなたたちは動けないのよ!!!

 

「はい!!!」

 

「ありがとう!!!」

 

ウルティアの言葉と同時に二人は駆け出していく。ウルティアがウェンディ達の時を固定できる時間は短い。早く決着をつけなければならない。

 

「ここは私だけの世界!!!誰にも邪魔させない!!」

 

だが、時を封じる魔法が効かなくなったとはいえ相手はスプリガン12の一人。そう簡単にはやられてくれはしない。

 

「天竜の翼撃!!!」

 

「天神の北風!!!」

 

天竜と天神の暴風がディマリアを攻撃するが、尚も彼女の顔から不適な笑みは崩れない。

 

「何故私が“時”を操れるか・・・・・・見せてあげるわ。12の実力を」

 

ウェンディ達を薙ぎ払ったと同時に、彼女の右腕の防具が砕けた。そして次の瞬間放たれる、圧倒的な魔力

 

「うぁあぁああっ!!」

 

「きゃぁあぁああ!!」

 

その圧倒的な魔力に耐えきれず、ウェンディとシェリアはその場から吹き飛ばされてしまう。砂埃が収まりそこに現れたのは・・・紛れもない神の力だった。

 

接収(テイクオーバー)・・・ゴッドソウル」

 

そして次の瞬間・・・大爆発を起こした。とてつもない威力・・・これこそがディマリアの真の力・・・神の力だ。

 

「畏み申せ。我が名はクロノス・・・時の神なり」

 

何故彼女が時の神の力を手にできたのか。それは彼女が、古の時の都ミルディアンの末裔で、ミルディアンが祀っていた神がクロノスだったのだ。

 

「本当に神様なら、滅神魔導士(わたし)の出番って訳ね!」

 

そう意気込むシェリア。だが、ディマリアはそんなシェリアには目もくれず、徐に指を指す。

 

「ウェンディ!!」

 

「え!?」

 

そして未来を予知し、危険を察知したシャルルはすぐにウェンディをその場から退かす。

 

そして次の瞬間、ディマリアの指からレーザーのようなものが放たれる。たったそれだけで、命を奪える程に強力な一撃からウェンディを守る為に身を挺して助けるシャルル。

 

未来を予知しても避けられない理不尽すぎる神の一撃。無慈悲なレーザーがシャルルの身体を貫こうと刻一刻と迫っていく。

 

・・・・・・もし、これがif(原作)の話だったのならば、彼女達はどうなっていた?シャルルはレーザーを受けたと同時に、ウルティアが時の狭間から脱出させ、時が動いたと同時に治癒をかけなければいけない程の重症を負ってしまう。

 

そして、ディマリアを倒すために、未来に手に入れる可能性の魔力を今すぐに手に入れることのできる第三魔法源(サードオリジン)をシェリアが使い、滅神の奥義を持ってディマリアを撃破。だが、代償としてシェリアは今後一切魔法が使えなくなってしまう。

 

・・・・・・だが、それはif(原作)の話。この世界にはアイツがいる。めちゃくちゃにデタラメで呆れるほどに強い地竜が

 

そしてレーザーは貫いた。シャルルの体を?否、シャルルではない。時を封じる神の力を()()()で焼き、この世界に存在できるようになったもの。

 

誰であろう?当然、グラン(コイツ)である。

 

「ッ!貴様はっ!!」

 

「・・・普通に痛い」

 

「グランっ!!」

 

「た、助かったわ。けど、下ろしてちょうだい」

 

間一髪のところでシャルルを抱きかかえ、レーザーから守ったらしい。しかし、何故この時が止まった世界で動けるのか?ウルティアがやったのか?いや、文字だと分かりにくいが、グランの登場にめちゃくちゃ驚いているから、彼女ではないな。

 

「グラン、大丈夫なの!?お腹!!?」

 

「あ?シェリアか。・・・こんな所で天空シスターズが復活するとは・・・衣装は着ないの?」

 

「あ、ごめんね、グラン。あの衣装は今ないの」

 

「グラン、その事は今関係ないよね!?後、ウェンディも!!お腹の傷治さないとってもうない!!」

 

「・・・あの程度じゃ、対して効かねえよ。それよか無事でよかったよ。ウェンディもシャルルもシェリアも。他のみんなも無事そうだし、後ウルティアも・・・・・・・・・あ、ウルティア?なんでアンタこんなとこにいんだよ」

 

「・・・・・・そ、それがちょっとややこしいのよ」

 

「じゃあいいや」

 

「いいの!!?」

 

さっきまでの緊張感ある場面はどこいったのか、なんでコイツが出るだけでここまでボヤッとした雰囲気になるのだろうか

 

「っていうか、なんでグランは動けてんのよ?」

 

「・・・それは・・・なんでだ?」

 

「いい加減にしろ!!我を神と知っての狼藉か!!」

 

だが、とうとう痺れをきらしたディマリアがグランはむかい拳を放つ。それをグランは難なく受け止める。

 

「っ!!?グァアッ!!?」

 

そしてディマリアの拳はグランの黒炎によって焼かれてしまう。

 

(馬鹿な、あり得ない!たかが人間の炎に我が焼かれるなど!!可能性があるならば・・・)

 

「・・・なるほど。神の力で時を止めてたと。そら、燃える筈だわな。炎神の炎に」

 

「炎神・・・だと!?貴様、滅神魔導士か!!?いや、だが情報では貴様は大地の滅竜魔導士だった筈!!?」

 

「・・・まぁ色々あって使えるんだが、もう沈めたから二度と使えねぇと思ってたんだがな。なんか使えた。」

 

やっぱそこは適当なのか。だがまぁ納得・・・・・・・・・したくはないが納得した。炎の滅神魔法で、時の神が封じたこの世界を焼き、この世界へと存在できたのだ!・・・ごめんやっぱわからん。ってかなんで使えんの?後書きでこれが最初で最後って言っちゃったよ?言っちゃったよ!!?どーすんの!?「・・・そんなもん、俺は知らん」っざけんな!!こんちくしょうめが!!

 

・・・もういいや、もう。グランだからしょうがないってことにしよ

 

「貴様如きが我に・・・神に敵うと思っているのか!!」

 

「・・・大丈夫だ。お前よりでっかいのやってるから、心配すんな」

 

そこじゃねぇよ。

 

まぁ当然、グランの態度で怒りが込みあがり攻撃を仕掛けてくるディマリア。さすがは神の力。一撃一撃がとてつもない威力。だが、グランはそれを軽々受け止め、反撃を喰らわしていく。炎神の黒炎が神の力を焼き尽くし、次第にこの静止した世界にまで影響しだした。

 

「っ!見た、シェリアっ!」

 

「うん、みんな今少し動いた。」

 

「時間が・・・少しずつ進んでる」

 

周りの人間が少し・・・ほんの少しずつだが動きだしている。それ即ち、ディマリアがこの世界を留めておくことが困難になってきた証拠である。

 

「ふ、ふざけるな!!?我の・・・私の・・世界が!!?」

 

「・・・もう限界か?神の力、剥がれかけてんぞ?」

 

「っっ!!黙れぇぇ!!!」

 

接収が解けかかっている事に焦りを感じたディマリアは更なる猛攻に出る。自身の世界を穢された怒りを込め、目の前の者を完全に消し去るために。

 

「・・・もういいだろ、時の神。・・・炎神の炎に焼かれちまいな」

 

そんなディマリア相手に、グランは両手に黒炎を纏いそのまま黒炎は形を変えていく。それは巨大な炎の剣となり、神を斬る。

 

「・・・ヒノカグツチ」

 

「─────ッッッッ」

 

そのままディマリアを斬りつけ、ディマリアはそのあまりの熱量に、声も上げられず吹き飛ばされる。

 

それと同時に止まっていた時が完全に動き出す。

 

「時が動いた!って事は」

 

「グランが勝った!!」

 

「まっ、当然ね!!」

 

ディマリアに勝利した事を互いに手を取り合って喜ぶウェンディとシェリア。シャルルも腕を組み、当然といった表情を浮かべていた。

 

一方のグランを中心にして、辺りで燃えている黒炎が次々とグランへと吸い寄せられるように集まっていく。

 

「・・・また沈むのか。まぁなんにせよ、助かった」

 

再び炎神の炎は、グランの体へと沈んでいった。時の狭間の影響か、あるいは神の力で時を止めた故に、使えるようになったのか定かではないが、今は勝利を喜ぶとしよう。

 

・・・・・・でもやっぱり、止まった時を燃やして無理やり動けるようになったのはヤバすぎると思う。

 

 

 



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第六十六話 過去の強者

 

「・・・あー、また調子が悪くなってきた」

 

「大丈夫?」

 

「まぁなんとか」

 

ディマリアを撃破後、ウェンディとシェリアの傷を癒す為暫しの休息をとっていた。

 

別にグランは怪我はしてないが、炎神の魔法が一時的なのか使えるようになったせいか、まだ本調子にはならなかったのを理由に少し休んでいる。

 

まぁ東のボスコ付近からハルジオンまで跳んで、停まってる時の中を燃やしながら移動してスプリガン12の一人と戦ってんだから普通はもっと疲れてる筈なんだよ。

 

「でもすごいね!スプリガン12をあんな簡単に倒しちゃうなんて!」

 

「アンタ、ちょっと強くなりすぎじゃない?・・・まぁ、おかげで助かったけど」

 

「・・・まぁな。それで、ハルジオンにいるスプリガン12はあと2人・・・いや、さっき馬鹿でかい雷が落ちてたから、おそらくラクサスが一人倒したとして・・・残り一人・・・・・・あ?」

 

「どうしたの?」

 

「・・・いや、なんかいきなりあちこちにデカい魔力が増えたから何かなって思っただけだ」

 

「魔力が増えた?」

 

そう、いきなりあちこちで魔力が増えた・・・その中にはグランも知っているものもあったが、それはもうこの世にいない筈の者の魔力だった。

 

すると、いきなりグラン達の前に一つの大きな影ができた。そして目の前にはウェンディとシャルルの見覚えのあるものが現れていた。

 

「え?」

 

「何コレ・・・」

 

「また会ったなぁ・・・チビィ!!」

 

「コイツは!!?」

 

「・・・だれ?」

 

そこにいたのは冥府の門(タルタロス)にいた九鬼門の1人、エゼルだった。何故コイツがここにいるのか、それは分からないがまたコイツと戦わなければならない緊張にウェンディとシャルルは包まれていたが、グランだけはエゼルではなく、その上を見ていた。

 

「わざわざテメェを斬り刻む為に・・・戻ってきてやったぜェ、チビィっ!!」

 

「くっ!!」

 

「ちょっとは空気読みなさいよ!!」

 

「・・・お前が誰か知らんが・・・そこにいると危ねぇぞ?」

 

ウェンディとシェリア、それにシャルルは魔力を高め戦う姿勢をとっていたが、グランだけはエゼルとは別の方・・・上空に視線を向けたままだった。

 

「オレが誰か・・・だと!?人間風情がなめてんじゃねぇぞ!!俺様こそ、冥府の門、九鬼もっっ」

 

ズドォォンッ!!

 

「えっ!?」

 

「なになに!?どうなってるの?!」

 

「あーあ」

 

せっかく自己紹介的なのをやってたのに、空から落ちてきた巨大な何かに潰されて、そのまま消滅してしまったエゼル。

 

落ちてきた・・・いや、降りてきた者は土煙の中ゆっくりと立ち上がった。

 

ここでようやくグランが戦う姿勢をとる。この場に流れている緊張感は、先ほどの比ではない。

 

そいつは見覚えがあった。当然だ。一年前、フィオーレ王国を襲った過去からの来訪者にして・・・一度、グランを殺した存在。

 

「グワハ、グワハハハハハハハハハっ!!久しぶりだなぁ!!人間・・・・・・いや、グランよ!!!!!会えてうれしいぞ!!!」

 

「・・・そうかよ、俺は全然嬉しくねぇよ、クソドラゴン・・・いや、ハリドロング」

 

そう、ハリドロングだ。奴もまたこの世に復活して、グラン達の前に立ちはだかっていた。

 

理由はわからないが、おそらくそこらじゅうにいきなり現れた数々の魔力は死より復活した過去の強者達なのだろう。

 

だからと言ってコイツまで復活しなくてもいいと思うのだが。

 

「・・・ウェンディ、シャルルとシェリアを連れて速く逃げろ」

 

「えっ・・・」

 

「何言ってるの!?私たちもまだ戦えるよ!」

 

「それにまだアンタ調子戻ってないんでしょ!!」

 

グランはウェンディ達にこの場から逃げるように言い、前に出る。シャルルの言う通り、まだ本調子とは言えないがコイツの強さは一番よく分かっている。

 

だからこそウェンディ達を守る為にこの場から遠ざける必要があった。

 

「俺なら平気だ。だから安心しろ」

 

「でもっ!」

 

「いいから速く行けっ!!」

 

それでもなお逃げないシャルル達に怒鳴るように言ってしまうグラン。その勢いに少し押されてしまうシャルルだったが、まだ諦めずに説得させようとするが

 

「ゴチャゴチャと言っとらんで、さっさと戦おうぞ!!」

 

待てなくなったハリドロングがその巨大な拳を振り下げてくる。反応が遅れたグランはその拳を避ける術なく、そのまま吹き飛ばされるはずだった。

 

「天竜の鉤爪!!」

 

だがその拳は、ドラゴンフォースの力を纏ったウェンディによりグランに当たる前に弾かれる。

 

「んなぁ!?」

 

予想外・・・いや、予想もしていなかった者からの攻撃に驚愕するハリドロング。そんなハリドロングにさらに追撃を喰らわせる。

 

「天竜の咆哮!!」

 

「ぐぬぉお!?」

 

放たれた暴風にハリドロングはたまらずに吹き飛ばされてしまう。

 

「ウェンディ、何してんだ!?ここは俺に任せて早く逃げ「グラン」ろ・・・?」

 

あまりの予想外の出来事に静止していたグランだがすぐにウェンディへ逃げるように言うのだが、ウェンディはドラゴンフォースを解き、振り向きムッ!とした表情でグランに詰め寄る。

 

しばしの静寂に包まれる。何か言おうにも言葉が出てこない。怒っているのか?それとももっと他のことか?

 

だが、ウェンディは少し険しかった表情から、優しい笑顔になり口を開く

 

「グラン・・・ありがと、いつも守ってくれて」

 

「・・・おう?」

 

まさかの感謝の言葉に思わず間抜けな声が出るグランの頬に手をやり、ウェンディは話を続けていく。

 

「昔からずぅーっと守ってくれた・・・私が弱かったから・・・ずっとグランに迷惑をかけてきちゃった・・・でも、もう大丈夫!!」

 

ウェンディは再びドラゴンフォースとなり、風を纏う。

 

「もう守ってもらうだけの、弱い私じゃない!!私も、グランと一緒に戦える!!

 

ゴオォ!!

 

と先ほどよりも強く逆巻く風を放つウェンディ。そこにいるのは、か弱い少女ではなく、心強い妖精の尻尾の魔導士だった。

 

「・・・グワハハハハハッ!!小さいくせにやるではないか!!貴様もまとめて叩き潰してやるわぁ!!」

 

と、吹き飛ばされたハリドロングが起き上がり、またその巨拳を振り下ろす。また迎え撃とうとするウェンディだが

 

ボコッ ドゴォォォォッ!

 

「なんうごっ!?」

 

グランが地を操り、ハリドロングを突き上げる

 

「・・・ウェンディ」

 

「・・・うん」

 

そしてウェンディの横に立ち、呼びかける。それに小さく頷くウェンディ。

 

「・・・俺は一度も、お前もシャルルも弱いと思った事は無い・・・だが、それでもお前らが大事だから・・・守ってきた・・・けど、まぁなんだ・・・強くなったな、ウェンディ」

 

「えへへっ、そうでしょ?」

 

はにかむウェンディ・・・うん、可愛い・・・じゃなくて

 

目線をウェンディから上空にいるハリドロングに向け、拳を構える。ウェンディを守るためでなく・・・一緒に戦うために

 

「いくぞ、ウェンディ!」

 

「うん!!」

 

そして、二人同時に跳び上がる。それを見たハリドロングは不敵な笑みをうかべ、巨拳を持って迎え撃つ。

 

ウェンディが巨拳を弾き、グランが地竜の一撃を打ち込む。グランが巨拳を受け止め、ウェンディが天竜の爪で切り裂く。

 

攻防一体・・・多少、意味は違うが二人はまさに攻撃と防御を同時に行えている。

 

「地竜の剛拳!!」

 

「天竜の翼撃!!」

 

「グオォオッ!!?」

 

そして同時に攻撃し、地面に叩き落とす。ハリドロングもやられっぱなしでは終われない。すぐさま体制を立て直し、二人が地に着地したと同時に仕掛けていく。

 

だが、二人はもう既に攻撃を放つ姿勢に入っていた。そしてそのままハリドロングに向かい魔法を放つ。

 

「地撃・壊振!!」

 

「天竜の砕牙!!」

 

「ぐがぁあっ!!?」

 

放たれた魔法により、ハリドロングは耐えきれずそのまま完全消滅していった。

 

一息をついたのち、勝利を喜びウェンディはグランに抱きついた。

 

「やった、やったよグラン!!」

 

「あぁ・・・やったな、ウェンディ」

 

やった、やったと喜びながら抱き合いその場をクルクルと回る。そんな二人を若干呆れた目で見るシャルルと笑顔のシェリア

 

「全く・・・一時はどうなるかと思ったけど。まっ、結果オーライってとこね」

 

「そうだね!二人の“愛”の勝利だね!」

 

「そうね、今回は“愛”の勝利かしらね?」

 

まぁ、何はともあれ。いきなり現れた過去の強敵を打ち倒せたのだ。

 

スプリガン12を次々と撃破できている。妖精の尻尾の・・・ひいてはイシュガルの勝利は近い。

 

・・・だが、油断はできない。まだ残りの12が残っている。そこにはまだ厄災と絶望が残っている。

 

まぁ・・・今は勝利を喜べはいいか。

 

 

 

 

 



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第六十七話 ユニバースワン

 

過去から甦った者達との戦闘に勝利し、ハルジオンにいる妖精の尻尾の一同は、ハルジオン奪還の為の本部に集合していた。

 

日も落ち、あたりはすっかり夜になったが、無事ハルジオンを奪還できた事に皆が喜んでいる。

 

「う……」

 

「目が覚めたか。」

 

一番傷が深く、眠りについていたエルザが目を覚まし、それをガクラが覗き込む。

 

「傷が深かったので、完全に回復するまで時間がかかります。」

 

「大丈夫、キズは残らないから。」

 

「そういうお前らもボロボロじゃねーか。」

 

「グレイ様服は・・・!!?」

 

「・・・お前もな。」

 

「おお!?いつの間に!?・・・つうか、グラン。お前いつの間にここに来たんだ?確かお前、ボスコの方にいたはずじゃ?」

 

「あー・・・・・・ボスコで兵隊ぶっ飛ばして、スプリガンの三人に会って、ゴッドセレナと戦って、途中アクノロギアが来て、ゴッドセレナがやられて、アクノロギア殴って、色々あって時間が止まってたからウェンディとシャルルのところまで跳んで移動して、ディマリアをぶっ飛ばして、クソッタレドラゴンをウェンディとぶっ飛ばして・・・・・・んで、今ここ」

 

「・・・・・・そうか」

 

グレイは考えることをやめた。もうコイツがめちゃくちゃなのはいつもの事だし、やばい敵と日に四度も対峙してんのに怪我等特になく、疲れてる様子も見られず(まぁ炎神の魔法を使った時はちょっと調子は悪そうだったが)いまだにピンピンしてるのはもう、グランだからで終わらせよう。

 

「みんな・・・た・・・戦いはどうなったのだ!!」

 

自分の事よりもまず戦いの事を聞くあたりエルザらしい。その問いかけにグレイはニィッと笑い答える。

 

「ハルジオン奪還は成功だ。港を取り戻したんだ。ジェラール達はまだ残存兵を追っているが、もう全滅まで時間の問題だろうな。」

 

「そうか・・・」

 

「俺達は一旦ギルドに戻る。」

 

「ギルドのみんなが心配ですし・・・」

 

「ここはマーメイドとラミアに任せな。」

 

「はい」

 

「任せた」

 

残りは人魚の踵と蛇姫の鱗に任せ、動ける妖精の尻尾のメンバーは一度ギルドに戻る事にしたらしい。

 

「ならば私も・・・」

 

「お・・・お前はまだ休んでなきゃダメだ!!」

 

「そうは言ってられん」

 

ボロボロの状態でも戦おうとするエルザを制止するカグラ。とここで、この場にラクサスがいない事に気づいたエルザ。

 

「ラクサスはどうした?」

 

「あいつはバケモノ2連戦でさすがにダウンしてる。」

 

「へー・・・大変だな」

 

「いやお前ほどじゃねぇよ・・・いやホントなんでお前ピンピンしてんだよ」

 

「そんなモン知らねぇよ。・・・・・・なんだよ、人をバケモノみたいに・・」

 

十分バケモノだよ、お前は。

 

「……エルザ。」

 

「?」

 

「その・・・なんというか……済まない…」

 

「何の話だ?」

 

と、いきなりエルザに謝罪をするカグラ。その顔は何故か赤かったが、その目は何かを決心したような目だった。

 

何事かと思っていた次の瞬間、カグラはエルザの顔を掴み、そのままキスをした・・・・・・キスをしたぁ!?

 

「!!?!??!?」

 

当然、突然そんな事をされたエルザは目を見開き驚愕した。

 

「「「「「「・・・・・・・・・!!!!!」」」」」」」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで?」

 

他の皆もカグラのまさかの行動に驚きが隠さず声も出せない状態だ。あのグランでさえ驚きすぎて口がポカンと開きっぱなしになっている。

 

「……これで許せ…」

 

「…………………………………………え?」

 

それからここは変な空気が漂っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・まぁ色々とあったが、とりあえずカグラとエルザのキスについては一旦記憶から消して妖精の尻尾のメンバーはギルドに向かっていった。

 

本来ならエルザはあの場に残って休息を取らなければいけないが、どうしてもといい、今はグレイにおぶられている。

 

何故グランではなくグレイなのかと言えば、もし今敵に襲われた時のために、少しでも動きやすいようにらしい。

 

「・・・ん〜?」

 

「どうしたの、グラン?」

 

だが、当のグランは自身の体に触れながら首を捻っている。体調が悪いわけではなさそうだが、何か違和感があるような様子だった。

 

「いや、なんというか・・・大地とうまく繋がらないというか・・・変な感じだ」

 

「大地と?」

 

「炎神の力をまた使った影響だと思ってたが・・・もっと根本的に違う・・・大地が・・・知らない形に構築されてるような・・・・・・ってなんだ?」

 

「えっ?・・・っ!空が・・・っ!」

 

「なんだ、光?」

 

グランが大地への違和感を覚えながら話している途中、まだ夜だというのに空が光り輝く・・・・・・いや、空じゃなく・・・ここフィオーレ王国そのものが光り輝いている。

 

その光がより一層強くなった次の瞬間・・・

 

 

世界が新たな姿へと再構築された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、フィオーレ王国より遠く離れた海のど真ん中・・・そこにある一つの島・・・否、大地。

 

「・・・ったく、やっと大地と繋がったと思ったら、何がどうなってんのか」

 

そこにいたのは、やっと調子の戻ったグランだった。光が静まり目を開けた瞬間、まさかの海のど真ん中というわけのわからない状況だった為、とりあえず海底から大地を無理やり引っ張りそこに着地した。

 

「大地そのものに影響を与えるほどの魔法・・・ってことはやったのはオーガストか・・・それに並ぶほどの12か・・・なんにせよ、皆と逸れた・・・のか、わざと俺だけを遠くにやったのか・・・まぁどちらにしても、急いで戻らねぇとな」

 

とりあえず自身の置かれた状況と今起きた事を冷静に考え、敵の仕業と結論づけ、一刻も早くギルドに戻るようにするグラン。

 

そう、確かに今行われたのは敵、最強の12が一人、アイリーン・ベルセリオンの付加(エンシャント)魔法、大地そのものに付加を施した魔法、世界再構築魔法ユニバースワン。

 

これにより、より速くそして確実に戦争を終わらせられるようにしていた。ゼレフが妖精の心臓を手に入れられるように、そしてその障害となる者達をより遠くへと移動させたのだ。

 

・・・そう、障害となる者達を・・・だ。妖精の尻尾やその他フィオーレの魔導士達は、障害にならず、自身達の手で対処が可能だと決めつけフィオーレ王国に留まっているが、どうしても無視できない存在がアイリーンの中に二人(・・)いた。

 

一人はグラン。ゼレフや一部の12から話は聞いていた大地の滅竜魔導士。確かに実力は妖精の尻尾の中ではトップクラスだが、それまで。最初は、それほどまでに脅威に思えなかった。だが、フィオーレの大地に付加を施そうとした時、ほんの一瞬拒絶があったのを感じ取ったのだ。それが、意図的で無いものなのは理解したが、意図せず自身の魔法を一瞬とはいえ拒絶できるほどの魔導士・・・これを脅威と言わずなんと言う。

 

だからこそグランを海のど真ん中まで移動させたのだが、まさか無理やり大地を引っ張り上げるとは思わないだろう。

 

そして・・・もう一人の脅威・・・そんなもんは決まってる。ソレはもうグランのすぐ近くまで来ていた・・・全ての竜を滅するために

 

ドガァァァァン!!

 

「・・・・・・あぁ?」

 

いざ戻ろうとしていたグランの近くに、何か勢いよく降って・・・いや、降りてきた。

 

ソレ・・・いや、ソイツが誰かはすぐに分かった。ソイツもまた、ここにグランがいると理解した上でここにきた。

 

完全なる滅竜のために。

 

「今ここで破壊してやろう・・・大地の竜よ」

 

「・・・・なんで日に二度もお前と会わなきゃいけねぇんだよ、クソが」

 

いきなり現れたアクノロギアに特に動揺せず、グランはブレスを放った。大地の咆哮・・・普通なら避けねばならぬほど強力なブレスをアクノロギアは正面から受けた。

 

凄まじい轟音と共に舞い上がる土埃・・・その土埃が晴れると、そこにいたのはダメージが全く入っていないアクノロギアの姿だった。

 

「フンッ・・・つまらん事をするな、地竜よ」

 

「・・・テメェ・・・なんとなく分かってたが・・・・・・属性なしか」

 

ダメージが全く入っていないその理由・・・滅竜魔導士はそれぞれに属性がある・・・グランなら大地、ウェンディなら空気、即ち天・・・火、鉄、雷、白、影など・・・ソレらを食し自身の強化、その属性を操る事が滅竜魔導士の基本なのだ。

 

「そうだ・・・我に属性などない・・・・・・我は魔竜・・・全ての“魔”を喰らいし終焉の竜」

 

だが、アクノロギアにその属性はない・・・全ての魔法・・・全ての魔力が奴の力となる。

 

「・・・クソめんどくせぇ・・・・・・・・・が、やるか」

 

グランは拳を強く握り、構える。対しアクノロギアも残っている右腕に力を込め、同じように構え・・・・・・そして両者同時に駆け出し引いた拳を弾き出す。

 

ゴオオオオオオオォォォォォォオオオンッッッ!!

 

凄まじい轟音と同時に、海は裂け、大地は砕かれ、天も割れる。

 

ここに、全ての“魔”を司どる竜と大地を司どる竜が衝突する。

 

 



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