REGENERATE BRAVE (ミト推しのレイ)
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プロローグ。

第1話_

 

「よし、これで準備万端……と。」

 

艶やかな長い紫髪。服装は、リラックスできる愛用のパーカー。

私立エテルナ女子学院の制服は見事に脱ぎ捨てられ、端へ追いやられている。親の帰ってきていない時間帯。お腹が減ったので、菓子パンを取りに行く。黒くて丸いパン。____そういえば、あの世界のパンに似てるかも_____と、あの粗いぼそぼそとした、硬い食感を思い出す。

そうなってしまうと、もう居ても経ってもいられなくなり、残りのパンを口に放り込んで、自室へと駆け上がった。

 

白い、少女らしい手はあるヘルメットのような機械を手にとり、頭に被せた。

その名も、《ナーヴギア》。

脳に直接アクセスし、五巻全てをゲームの中へ入れる事が出来る___そんな夢のようなゲーム機である。

最も、今迄で彼女が満足出来るようなゲームは無かったが。

 

 

___プレイヤーネームは、βテストと同じ《ミト》で良いよね。

《ミト》という名前は、本名《兎沢 深澄》

をもじった名前である。シンプルな名前ではあるものの、私は気に入っている。

頭にナーヴギアを被せ、今にも私はあの剣の世界___私は大鎌の方が正しいかも知れないけれど__へ入ろうとしている。

別に、こんなに楽しみではあるものの、友達を誘ったりしている訳ではない。

 

正しくは、友達を作りたくないし、居ない。

誘おうなんて思わない。

あの出来事が脳裏に焼き付いているから。

 

 

_______思えば私は、傲慢で尊大で、自己中心的な人物だった。

数年前、私にはまだ友達がいた。

その頃遊んでいたのは、携帯機用ハンティングアクションRPG。仲間と協力プレイ、というのが醍醐味だったけれど、私は別に自分が死ななければ良い……それくらいに思っていた。

私は大剣装備のアタッカー。

サポートはしていたけど、全滅しなければ良かったのだ。

しかし。友達はそうではなかったらしい。

 

 

 

 

 

『深澄ちゃんはゲーム上手だから楽しいかもしれないけどさ。』

 

『いっつも1人だけ生き残るんだもん。』

 

『私達のことは放っておいてよ。』

 

 

 

私は、無邪気にも2人が楽しんでくれていると信じきっていただけに、その絶交宣言がとてつもなく悲しかった。ショックだった。

ただひたすらに悲しくて、ふらふらと帰宅し、熱を出したのを覚えている。

それ以来、私は協力プレイと名の付くものには手を付けなかった。つけたくも無い。

友達も出来ず、1人だった。

 

 

 

 

(____もう何年も前のこと、なのに……)

はぁ、とため息をつく。さっさとログインして忘れてしまおう。そう決めて、親も帰宅しておらず1人の家で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 リンクスタート! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一言を唱えた。

 

 

 

 

 

 

--------キリトリ線--------

 

 

初めまして!

筆者のレイと申します!多分ご存知の方は でお察し頂けるかと。

この小説を読むにあたり、注意点をいくつか挙げさせて頂きます!

 

◤◢◤◢WARNING◤◢◤◢

✘‎キリト、アスナの居ない世界です

✘‎ミトがメインヒロイン(女主人公)です

✘‎内容的にはSAOですが、キャラクターが大幅に変化します。

✘‎折キャラ増えます。というか多分折キャラずくしです。

✘‎ミトのお相手は多分折ですね。最悪キリトです。

 

 

 

とまあ、問題しかなさそうな世界ですが。

映画を観て思ったんです。

 

『あー良い映画だったなぁ!!!

……でも、アスナさんは報われたけど、ミトはなんか可哀想じゃない……?励ます人、本編にいなくね……?』

 

と。

ここで決意しましたね。

ミトを主人公にして、最強にしてしまぇぇぇぇと。

ということで、駄文すぎる小説、開幕です!



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鐘の音

第2話_

 

簡単な設定を終え、私は虹色の空間をくぐり抜けて行く。

そして、次に目を開いた時には________

 

 

 

 

 

 

__________帰ってきた。

 

太い、骨ばった男の手を開いて、閉じて。

リアルの自分より高い位置から景色を見渡す。

 

 

 

(帰ってきたんだ……!SAOに!)

私は、叫びたくなるような喜びを必死に抑え、広場を駆けてゆく。

第1層、《はじまりの街》。

シンプルな名前だが、大きな鐘のあるこの広場はそこそこ好きだ。

 

(とりあえず、スキルとか上げて早く両手鎌スキル取得しよう。)

 

この世界には、魔法というものが存在しない。

代わりに、ソードスキルという技が用意されている。武器も多種多様で、ワンハンドソードやツーハンドソード、レイピアにナイフ、弓などが用意される。それらは、《片手直剣》の派生であるが故に、まずはこれらを取得しなくてはならないのだ。

とにかく、リソースの奪い合いのこのゲーム。

大男《ミト》は、はじまりの街を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________

スキル《両手鎌》《細剣》《投擲》を取得しました。

_______________________________________________________________

 

こうしてミトは、コルとスキルを入手。

 

(やっと装備を整えられるなぁ……)

 

うーん、と伸びをしてはじまりの街のショップへ向かう。

 

 

その時だった。

 

 

 

 

「あの、すみません!」

 

後ろから声を掛けられる。

___誰?

 

「なんだ?私に何か用かな?」

 

スラリとした青年のキャラクター。

緑髪に、如何にも剣士というような顔立ち。

 

「僕はレコンと言います!あの、おじ……お兄さん、βテスターの方ですか?」

 

「嗚呼、そうだな。……それがどうかしたのか?」

 

「あの、もし良ければ僕に戦い方を教えて欲しくて。このゲーム、初めてなんです……その迷いのない足取りは、βテスターの方、ですよね?」

 

なるほど。

というか、こんな防具無しで飛び出すとはどんな考えを持っているのか。

これは1から叩き込んでやろうか……

……ということで、β出身であることを教え、1から教える事に。レコンを引っ張ってショップへとくりだした。

 

「それで、あんたは何の武器が良いんだ?」

 

レコンは目を輝かせてショップを見回す。

それもそうだろう。私だってβテストのときに感激した。デュエルだって、強い武器があればもっと楽しいだろうし_______。

こんな思考は、レコンの声によって遮られる。

 

「僕、これにします!」

 

_____なるほど、刀か。

正しく言えば”刀風の片手剣”だが、それでも様になっている。片手剣スキルなら初期のプレイヤーでも必ず持っている筈だし、問題ない。

そう判断して、レコンの防具を選び、ミトは満足げに頷いた。これなら、彼もフィールドで瞬殺……なんてこともないだろう。

 

「あ、そういえばミトさん。」

 

「ミトで良い。どうせゲームだし、タメ口で構わないよ。」

 

「じゃあ、……ミト。君の装備は整えないの?」

 

 

…………あ。

 

完全に忘れていた。もともとの目的を忘れるとは。

 

「……コホン.

これから揃えるのさ。」

 

レコンを無理やりにでも納得させ、今度は自分の装備を見る。

大鎌は有難いことに売られていたので、後は防具だが______

 

あまり重いと大鎌も振り回せず、アタッカーとしては不十分だろう。

 

そんな結論を出し、《ドーン・アーマー》にブレストプレート、ロングブーツという結果に至る。だが、何かが物足りなかったので、モンスターからドロップした《クリーンマント》を装備する。

 

 

「よし、これで十分だろ。

____早速、戦いに行くとするかい?レコン。」

 

「は、はい!……じゃない、うん!」

 

レコンが力強く頷き、ミトは満足げに彼を《原始の草原》へ連れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあァァァッ!!!」

 

シュッ、と空気を裂く音が響く。

イノシシのモンスターは暴れ、レコンへと体当たりした。

 

「ってて…………」

 

「まだスキルが発動していないから、自分の力だけで振ろうとしているんだ。それだと、最初は余りにも心もとない。

だから、スキルを発動してみてくれ。

 

予備動作を行えば、あとはシステムが動かしてくれる。」

 

ミトはそうレクチャーする。

彼の扱う武器は、軽さが特徴だ。ミトの《アイアンサイズ》とはまた違う。

少々上手くいくか気に留めながらも、まぁ死んだら黒鉄宮まで迎えに行こう___なんて考える。

だが、そんな心配は要らなかった。

レコンはみるみる戦闘術を吸収し、見惚れるくらいの剣技を繰り出すようになったのだ。

そんな風に彼を眺めているミトに、背後から近づく影があった。その影は飛び上がり、ミトへ飛びかかる。

____危ない……!!____

そう大鎌を間に合わない覚悟で握りなおした時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺の戦友を殺そうとは。貴様……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺す」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冷たく、鋭い音。

その音には、何も込められていない_____

_____いや、違う。

あれは、殺気だ。

ゲームに似合わない殺気を纏い、憎悪、嫌悪、怒り______________

 

 

そう呟く声が聞こえると、稲妻が走ったようなライトエフェクトが影を貫く。

プギー,と痛々しい悲鳴を上げ、モンスターはポリゴンとなった。

ふと、言葉が頭によぎる。

 

 

________修羅_?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄いじゃない!レコン!」

 

違和感なんか忘れ、わぁっ、と目を輝かせて叫ぶ。

ミトは”男性キャラ”を演じるのも忘れ、いつもの女子中学生へと戻っていた。

レコンが不思議そうな不気味そうな視線を投げかけているのも、まったく気にならないくらいに興奮していた。

 

「え、え〜と…………おう。」

 

 

レコンははにかみ、それだけを返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辺りが真っ赤に染まり、日が沈む少し前のこと。

 

「あ、僕はこれから用事があるので、これで失礼。」

 

「あ、もうそんな時間なんだな。

……そうだ、折角知り合ったのも何かの縁だろうし、フレンド登録をしておかないか?」

 

もちろんレコンは賛成した。

何事もなく登録が完了し、いざログアウトしようとメニューウインドウを開く。

 

 

「____________え?」

 

 

「どうした?」

 

 

「……ログアウトボタンが無い。」

 

 

「…………は?」

 

それがバグだとしたら、とんでもない失態だ。

ミトは直ぐに自分のものも確認する。

 

「……本当にない、」

 

嘘……と背筋が凍りついていくのを感じる。

ナーヴギアは、リアルの体への命令を全てキャンセルしている。

ということは、

 

 

 

 

 

_____ログアウト不可能_______

 

 

 

 

 

 

 

ミトの頭は直ぐに回転し、その答えを導き出す。

レコンもそれを察していた。先程からGMコールをしているのに、何の反応もない。

 

得体の知れない不気味さ、不穏さにミトは下唇を噛む。

レコンは、戦闘時と同じ_____落ち着き払っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______リンゴーン,リンゴーン_____

 

 

 

鐘の音。

………何かの警告ような音。レコンとミトは飛び上がる。

「…何だ」

 

「……何……??」

 

その時、キン_____と光が目の前を埋めつくし、辺りは真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつけば、そこは《はじまりの街》広場。

プレイヤー全員に当たりそうな人数が、そこには集められていた。



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全ての始まり

第3話_

 

______え?

私は、辺り一面を見回す。

人、人、ひと。

どうしてこんなにも人が集まっているのか。

 

 

 

 

すると、広場の空に《WARNING》などの文字が浮かび上がり、血のような真っ赤な世界へと一転する。

 

ミトには、これから何が起きようとしているのか。それが分かってしまうような気がしてならなかった。

 

空の縫い目から真っ赤な液体がどろりと溢れだし、ローブを形成する。

しかし、そのローブには頭が無い。

その様がより不穏さを増長していた。

そして、ローブは人々を見下ろすように語りかける。

 

 

 

 

 

 

 

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

 

『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

 

_______茅場……?

その名前は、聞き覚えがあった。

ミトは小さく息を呑み、その話へ耳を傾ける。

 

『プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなく、《ソードアート・オンライン》本来の仕様である』

 

________本来の、仕様……だと……?

レコンは目を見開く。

ならば、それは____________

 

『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない』

 

『......また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられた場合ー』

 

『ーナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』

 

___嘘、でしょう。

ひとりの少女、メレは恐ろしさに息を忘れる。

そんなの______!

 

『より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーヴギア本体のロック解除または分解または破壊の試みー以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている。ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴギアの強制除装を試みた例が少なからずあり、その結果』

 

『ー残念ながらすでに二百十三名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』

 

______ただのデスゲームではないか。

ミト、レコンを始めとするプレイヤーは、そう思い浮かべる。

 

『諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ていることも含め、繰り返し報道している。諸君のナーヴギアが強引に除装される危険はすでに低くなっていると言ってよかろう。今後、諸君の現実の体は。ナーヴギアを装着したまま二時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他の施設へと搬送され、厳重な介護態勢のもとに置かれるはずだ。諸君には、安心して......ゲーム攻略に励んでほしい』

 

_____安心?

ミトはその言葉をこの間だけは忘れていた気がする。まだ死んでもいないのに、死んだような……そんな気分になっていたような。

そして、ミトはある事に気づく。

 

『しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって《ソードアート・オンライン》は、すでにただのゲームではない。もう一つの現実と言うべき存在だ。......今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に』

 

_________この街を出よう_____

少女は、そう決心する。

 

『諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』

 

『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。先に述べたとおり、アインクラッド最上部、第百層まで辿り着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が完全にログアウトされることを保証しよう』

 

『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え』

 

_____プレゼント?

プレイヤーはアイテムストレージを開き、《手鏡》というアイテムを手に取る。

 

すると。

 

みな青い光に包まれていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミトは、目を開ける。

気のせいだろうか。背が低くなった気がする。

気のせいだろうか。喉を通る息が、細くなった気がする。

気のせい、だろうか。身体が女になっている気がする。

_____________気のせいじゃない。

これは______私だ。リアルの。現実の。

《兎沢 深澄》だ。

 

 

 

「あ、あんた、誰……だ……?」

”プレイヤー.”が戸惑う。

私だって聞きたい。

この黒髪で真面目そうな少年が誰なのか。

「……レコン、なの?」

 

「……うん。てことは、ミト?」

 

「……そうよ。」

 

「女の子、だったんだね。」

 

 

紫の髪、青みがかった深い黒目、切れそうなくらいに鋭い輪郭。

全てが私だった。

 

これが、現実になってしまった。

 

『諸君は、今、なぜ、と思っているだろう。なぜ私はーSAO及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのか?これは大規模なテロなのか?あるいは身代金目的の誘拐事件なのか?と』

 

『私の目的は、そのどちらでもない。それどころか、今の私は、すでに一切の目的も、理由も持たない。なぜなら......この状況こそが、私にとっての最終的な目的だからだ。この世界を創り出し、観賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた』

 

『......以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君のー検討を祈る』

 

 

 

 

茅場が話し終わると、いつもの空へ戻りのどかな雰囲気が流れる。

だが、それは風景のみ。

誰かひとりの悲鳴をきっかけに、次々とパニックを起こす。

 

 

 

 

 

 

 

_____今が、チャンスだ。_____

 

リソースを取られず、狩場を独占する。

そう思うと、固まっているレコンを引っ張り、街を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このゲームは、リソースの奪い合いよ。今ここを出ないと、私達はコルに困り、武器に困り、街で朽ちていくことになる。」

 

ミトは真剣な面持ちで言う。だが、レコンはそれを聞き入れなかった。

 

「だとしても、だ。僕は最弱くらいに弱くて、誰も守れないと思う…………ミト、君みたいに僕は僕に自信が持てないよ。今、何をしたいのか、まだ……見つからないんだ。だから、ミトだけでも此処を離れてよ。」

 

ミトはまた。

あの時と似たような喪失感を覚える。

けれど、感覚が麻痺してしまったのか。

もう何とも思わなかった。

 

 

 

 

 

「………………分かった。

絶対、追いついてよね。」

 

ミトはそう言い、ふっと笑う。

 

「最弱が、最強に近いあんたに追いつけるか不安だが…………やるだけやろう。」

 

レコンも笑う。

 

「……。」

 

じゃあね。とミトはレコンへ背を向ける。

すると

 

「ミト!」

 

そう、声が投げられる。

 

「……ミトは、女の子のままが良いとおもう!」

 

ミトは笑う。

 

「そりゃどうも!」

 

そうして、ひとりの少女は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソロとして街を飛び出し、後に名を馳せる《閃影》となる。



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歌姫メレ

これからの親友様登場です!
ヒーローは暫くお待ちください……()


第4話_

 

_____とりあえずトールバーナには着いた。

第1層の街《トールバーナ》。《はじまりの街》から少し距離はあるけれど、私はβの時の1層でよく訪れていた。

なぜなら、作戦会議でよく使われていたから。

ここにある広場で、デスゲームと化したこの世界でも同じ”ボス攻略作戦会議”が行われる。

 

でも、その前に一足先に着いて、宿の確保と敵がβテストと変わっていないかの調査____。やることが沢山ある、と一息着いて。

 

まずは宿屋を探そう、と歩みを進める。

歩きながら、今使っている《アイアンサイズ》がボス戦まで持つのかと少し心配になる。

もしボス戦でメインアームが無くなったとして。

それは命綱無しで崖を登るようなもの。

 

________不安しかない。

 

近いうちに新しい大鎌を手に入れよう。

ミトはそう思い、簡素なベッドのある宿屋へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

数時間後。

ミトは敵mobの確認を終え、トールバーナへと帰ってきていた。

__敵mobは変化なし。今の所は安全に狩れそうね。____と、思案しながら、明日行われる会議の会場へと無意識に足を運んでいた。

 

 

 

 

その時。

 

「______♪______、」

 

 

 

(この歌声……綺麗……,)

 

デスゲームには似つかわしくない、美しい歌声。

メロディと歌詞こそ悲しく、痛々しい程の後悔が込められているようにさえ思えるが、その歌声は、知らないうちに疲弊していた精神を癒すには十分事足りていた。

場所はトールバーナの円形劇場。

ミトは、歌声に惹かれて席へ着席。

 

 

歌声の正体は、1人の少女だった。

背中の真ん中辺りまで伸ばした白銀のロングヘア。真っ白な陶器のような肌と、サファイア顔負けの輝きを閉じ込めた蒼い瞳。

華奢な身体を白いチュニックとネイビーがベースで,金色で縁取られたミニスカートで包んでいる。革のブレストプレートからして、身一つでここまで来たのだろうか。

伸びやかで、繊細な歌声だった。

 

少女はミトの存在に気づいていないよう。

ミトが目を凝らすと、そこには箱が置いてあった。

___あれが、収入源……かな,

リアルでも路上ライブをしている人、いたし。と考える。

しかし、がら空きの席が目に入っていないのか。これでは、なんの稼ぎにもならないのではないか。

 

______キン,

 

コインを指で弾くと高い音を発して箱へと落ちる。

コルをひとつ、飛ばしたのだ。

歌がひと段落したらもう少し渡そうと決める。

 

 

 

「___♪_,……!」

 

一瞬歌が途切れる。

少女は初めてミトを認識した。というか、初めて人をみた。

そのまま歌を切ると、今度は明るい希望を添えたような歌へと変える。

心を込めた歌声に、ミトは心地よさそうに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

暫くして。コンサートが終わった。

ミトはシステム補正に身を任せて、ステージへと飛び降りる。

少女は荷物を纏めているところだった。

 

「……貴女の歌声、凄く心に響いた。」

 

ミトは、その一言を口にする。

(あー、もっとコミュ障じゃなさそうな一言にすれば良かったかな……!!!)

と、少女が戸惑っている様子から慌て出すが、そんな心配は要らなかった。

 

「そ、そう……ですか?……なら、良かった……,」

 

にこ、と少女が笑う。

まるで、1輪の花が花弁を1枚いちまい開いていくように。

 

「……わたし、こんなことになるなんて思ってもなかったんです。

両親とも離れ離れで、大好きな歌も聞けなくて。歌うことが、唯一の支えで。

モンスターは怖いし、でも倒さなきゃここに来れないし……死んでしまうし……死にものぐるいでここまで来たけど。わたし、どうすれば良いんでしょう。」

 

ぽつり、と雨が降り始めるように語られていく言葉を、ひたすらミトは聞く。

___不安、なんだろうな。

きっと、親友___明日奈だってそうなるはず。私だってそう。不安で不安で、堪らない。

 

「……分かるよ。その気持ち。

私だって__何が起きてるのか分からないし。それに、1人だからね。」

 

「1人って……不安、ですよね。」

 

「そうね。安全面でも良くないし、精神的にも堪えるし。」

 

「……ですよね。」

 

不安そうな表情を浮かべる少女。

だが、ミトはそんな彼女に笑いかけた。

 

「……じゃあ、暫く一緒に居よう。

私はβテスト出身で、ここら辺のこと__ボスのこと。何でも知ってる。貴女が死なない術を教える。

……どう?」

 

勢いに任せていってしまったものの、それは本心。

この少女だけは、どうしても無視できない。

_____どこか、明日奈に似ていて。

 

「……良いん、ですか?

でもわたし……戦うの上手じゃないですし…きっと、足でまといですよ……?」

 

「それも分かってる上で、よ。

貴女みたいな才能のある人、私は無視したくないのよ。」

 

そうほほ笑みかける。

ただの依怙贔屓だし、なんの理由にもならないが。

誰かを護り、誰かと共にいる___それだけで、生きている意味を見いだせるような__そんな気がした。

 

「………………。

分かりました。じゃあ、暫く一緒に。

宜しくお願いします……!」

 

「ん、宜しく。

それと、敬語じゃなくて良いわ。

私は《ミト》。呼び捨てで構わないよ。あなたは?」

 

「えーーーと……,

わたしは《メレ》です……じゃない、《メレ》。わたしも呼び捨てで大丈夫かな。」

 

少女_____メレは、そうぎこちなく笑う。

ミトは満足そうに赤眼を細め、

 

「了解。《メレ》……か。お互い2文字だね。」

 

と、くすくす笑う。

メレも”確かに”と同意して笑う。

 

「じゃあ。1日目,宿屋へ…………」

 

ミトが、メレと目を合わせて。

メレも決心が付いたようで頷き。

 

「「出発!」」

 

 

そう仲間とともにスタートを切った



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practice……?

第5話_

 

「おはよ、メレ。」

 

「……おはよう、ミト……,」

 

ある1件の宿屋。

ミトは取っていた1人部屋を荷物置きにするというなんともワイルド(?)な手段を取り、有り余っていたコルを使って、風呂付きの農家の小屋を借りることにした。

そんな訳で、ベッドが部屋に2つある小屋な訳だが。

_______なんでたった10コルの差でベッドの硬さがこんなに変わるのよ……

 

と、少々上等すぎやしないかというくらいの柔らかさを兼ね備えたベッドを恨めしそうに眺める。

昨日は、メレはこの部屋の広さとベッド、何より風呂に喜び、ミトとミルクで乾杯をして各々のベッドに潜り込んだ。

あそこまではしゃいでいたのだから仕方が無いか、とまだ眠そうに目をこするメレを眺めた。

 

「じゃあ、早速今日からレベリングね。」

 

「……あ、うん。了解。どこに行くの?」

 

寝巻きのネグリジェのままメレが振り返る。

因みに、ネグリジェはその装備のままでは落ち着かないということでミトと一緒に買いに言ったものだ。

 

「ええと、取り敢えずメレに戦い方とかを教えたいから……《原始の草原》かな。

あそこが1番敵mobが弱いし、安全だし。」

 

「おっけ、あとちょっとだけ待ってくれない?身支度終わらせるから。」

 

「了解、私も準備してくる。」

 

 

 

 

 

 

数分後。

2人は直ぐに身支度を終わらせた。

ミトはいつもの《ドーンアーマー》と初期装備の《レザーショートパンツ》、《レザーロングブーツ》、《アイアンサイズ》を装備し、最後にマントを羽織った。

メレは昨日整えた《ブラスアーマー》と初期装備の《レザースカート》、《ライトシューズ》、《アニールブレード》。

キン、と音を鳴らしてお互いの武器をぶつけると、フィールドへと繰り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もっと自分の運動神経を活かして……システムに全部任せないで!」

 

「はぁっ!」

一体。

 

「ソードスキルの予備動作から動きが立ち上がるまで待ててないから発動出来てないよッ!」

 

「やあぁぁぁあ!」

________12体,

 

「もっと速くブーストさせて!___そう!それ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、メレとの特訓はあっという間に過ぎて行き、何日かそれを続けて慣れた頃。

「ね、明日はフィールド変えようと思うんだけど___」

 

「そんなにLvが上がったのかぁ……なーんか嬉し,」

 

「この短期間で物凄く上達したと思うよ。

それで、今のフィールドじゃもう余裕だから、場所を《ホルンカの森》にしようかなって。」

 

「ミトが大丈夫だと思うなら良いよ、わたしは。」

 

「じゃあそこで。

サポートもいつもより早めに入るよ。」

 

「ミトって意外とイエローに落ちても中々助けに入らないもんね。__あれ、やられる側怖いんだから……。」

 

と、メレが頬を膨らませる。

ミトとしてはギリギリになっても慌てないように___という思いがあってなのだが。

 

「あはは、ごめんって。明日はイエロー入って直ぐにするからさぁ……,」

 

「イエローじゃ遅いんです!!グリーンのは・ん・ぶ・ん!!」

 

ホント怖いんだよ?とメレは憤慨する。

その怒り方が少々明日奈と被るかもなぁ___と呑気に考えて

 

「分かったって……じゃあ明日は怖かったら直ぐに言って。一応の助けには入るから。」

 

と、からかうようにわざと”一応”を強調した。

 

「だから、”一応”じゃ安心できないんだってばぁぁぁ……!」

 

その様子をミトが笑い飛ばす。

メレも暫くしたら笑いだして。

 

「「お疲れ様。」」

 

と、肩を叩きあった。




次回、主人公(かな?)様2名様ご案内です()
ご存知の通り劇場版のミトですね!!!!!!!!
ローリングミトになってまいります!!!!!()


次回 第6話_赤と出会い


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ホルンカの森

第6話_

 

 

「ここはネペントの上位種,《リトル・ネペント》がポップするんだけど…,」

 

メレのLvが上がり、私のLvも上がった頃。

もしかしたらフロントランナーに追いつけるかもしれない、という目論見から《ホルンカの森》へと繰り出した。

 

「りとるねぺんと…?って、どんな敵?」

 

真新しい片手直剣、《アニール・ブレード》を背中に差したメレがそう尋ねる。

 

「多分、見てもらう方が早いんだけど…」

 

生憎まだ森じゃないし、と辺りを見回すと、ネペントが森を通っていく所が丁度見える。

 

「あれよ。ちょっと気持ち悪いけど。」

 

「ほんとだね〜、でも、何とか倒せそうかなぁ。」

 

ほわんほわん笑いながら、メレはそう言う。

本当に明日奈そっくりだ。

私の記憶の中の明日奈とメレが重なる。

 

そのとき、私の頭に警鐘が響く。

そうだ、大切なことが。

 

「あ、ネペントについてなんだけど____」

 

「?気をつけることがあるの?」

 

なんて察しの良い。

 

「そう。ネペントは実付き種が居るんだけど、赤い実が着いてるの。

そいつを倒すと、というか攻撃すると、煙を撒き散らして辺りの奴らを引き寄せちゃうから気をつけて。そいつがポップしたらすぐにファンブルさせるのよ。」

 

「了解、気をつけるね。」

 

メレは頷く。

私も肩に当てている大鎌を握り、ネペントを探すために辺りを見回すと。

 

「「いた!!」」

 

真正面にネペントの群れが居る。

メレと一緒に叫び、金丁を交わすとお互いシステムアシストに物を言わせて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後。

順調にメレと私はネペント狩りをして、出口まであと3分の1くらいのところまで来た。

このまま行けば、今日中には余裕で抜け出せるだろう。

そんな時。

 

 

「________!!!!!」

 

《スプリー・シュルーマン》。

そいつがポップした。

レアアイテムを落とすMOBで、第1層では滅多にポップしない。

それに、あのレアアイテムは_______

 

メレは順調そうで余裕もあるし、少しくらいなら大丈夫だろう。

私はそう踏み、メレに許可を取って駆け出した。

 

シュルーマンはちょこまかと逃げ回り、ムカつく顔を見せながら走り回る。

しかし、流石にブースト系のソードスキルには勝てず爆散していった。

目当ての武器もドロップし、メレの元へと帰る。

メレは教えた通りにソードスキルを放っている。きちんと自分でブーストさせ、威力も増している_____

 

教え子の成長ぶりに我ながら顔を綻ばせると。

メレの狙った敵の背後にネペントがポップする。

それだけなら良かった。

________実 付 き だ 。

 

「メレ!駄目!!!」

 

私は必死に叫ぶ。

しかし、高速の技は後ろのネペントさえも切り裂き、止まることが出来なかった。

 

辺りに紫の煙が立ち込め、何体もの赤い光が点滅する。

 

「えッ!?

み、ミト!どうしよう,!」

 

メレも慌てる。

仕方がないだろう。煙が晴れると、ネペントに囲まれたメレが現れる。

もうこれは戦って倒していく以外に方法はない。私はメレとともにソードスキルを放ち、ネペントを倒していった。そこまでは良かったのだ。そこまでは。

 

「くっそ、メレと離れる…!!!」

 

ネペントに押され、メレとどんどん離されていく状況に舌打ちをしながらも応戦する。

背後は崖だが、あそこに変なトラップなんて無かった筈。

 

そう。βテストでは。

 

 

でも、今は違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トラップがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すぐさま足元が点滅し、崖が崩れる。ネペントからは逃れたものの、これでは落下ダメージをくらい、メレを見ながら指示を出すことが出来ない。

 

「あ゛ッ,」

 

せめてもの思いで受身を取り、暫く呼吸わ繰り返す。

その間にもメレのHPは減り、残り数ドット。

本当にミリ単位くらいにしか残っていない。

私のHPも僅かで、レッドにまで落ちてしまっている。

_____もうどうしようもない、

私はそう考える。

いつか幼いころにプレイしたRPGでは、こんな時どうしたか。

自分が生き残ればクリア出来るから、と一旦距離を置いた。

2人が全滅するより、その方が良いからと。

それ以外に、私は手段を知らなかった。

だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、メレ……貴女のこと、守れない…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メレに謝罪をし、パーティ解除ボタンに手を伸ばす。

 

 

 

 

 

「あ、これ。認証してくれない?」

 

「何これ?パーティ……?あ、フレンドみたいなやつか。」

 

「そ。この世界での友達の証。」

 

「何それ、面白いね、」

 

メレは笑った。とても嬉しそうに。

私も、心から笑った。

_____もう、その時間は帰ってこない。

 

 

 

 

 

 

 

 

メレのHPが減らなくなった事も知らず、私はパーティを解除した。

絶望と共に。




お久しぶりです!
今回はめちゃくちゃ暗い回になりました…
ヒーローチームに助けさせようか迷ったんですが、やめました()
多分時系列でいくと次がメモラブル・ソング回になりますね。
内容は同じか分かりませんが()
メレ回もあげようと思いますので、お楽しみに!


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それぞれの救済

わたし→メレ
私→ミト
となっております.


第7話_

 

「…ミト?」

 

どうして、という言葉しか浮かばない。

でもきっと、押し間違えたのだ。

多分、何かのバグなんだ。

ミトが見捨てるはずがない。

 

わたしは、そう考えた。

ネペントはわたしのHPとともに数を減らし、渾身のわたしの一撃で最後の一体を撃破したのだ。

きっと、ミトは戻ってきてくれる。

 

そう信じていた。

 

しかし、運が悪かったのか、ミトに頼りきりだったわたしへの悪戯なのか。

大きな雄叫びと共に、ゴリラのような巨大なモンスターが現れる。

 

《ジャイアント・アンスロー》。

見るからに強そうで、情けないことにわたしの脚は震えて動かなくなってしまう。

HPはもう限りなく0に近い。

ポーションも0。

何より、ミトが居ない。

それ故に、知らないボス級のモンスターをひとりで葬らなければならない。

 

______無理、無理だよこんなの…!

 

「嫌…,」

 

来ないで。

そんな言葉が通じるはずも無く、ボスは手で掴んで握り締めてくる。

 

息ができない。

このままでは、窒息扱いになってHPが無くなってしまう。

 

____嗚呼、でも。

 

____もうミトは居ないんだ。

 

 

____なら、もう良いんじゃないかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

諦め八割、恐怖二割でそう考える。

どちらにせよ、もう打開策が無いのだ。

だから、潔く死ぬしかない。

 

そう決意して、きつく目を閉じた_______その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っとぉ、お呼びでないモブここに見参!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなおちゃらけた声と共に、わたしは苦しさから解放される。

誰______?と見てみると、黒髪の多分年下であろう少年が刀を構えている。

ボスの手は切り落とされ、ポリゴンとなって消えたことで、わたしは解放されたようだ。

 

そうこうしているうちに、ミトが教えてくれた《ソードスキル》というものを使わない奇妙な少年は、ボスを華麗に撃破してしまった。

 

 

 

 

「ってわけで怪我ないかい?」

 

 

ポーションを差し出し、そう尋ねてくる。

_____何なんだ、この人は。

ついでに差し出された手を取り、起き上がると。

少年はこう名乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕はレコン。

この世界で最弱の、お呼ばれしてないモブキャラさ。宜しく頼むよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから暫くして、私は《レーゼルの村》へ向かった。

森からそこまではあまり距離がないのだが、片っ端からモンスターの相手をして、大規模リンク等の事故かモンスターに殺されるかを狙っていた故に、必要以上に時間を要した。

どうやら、私を脅かすモンスターはこの辺りには居ないようだった。

 

村に着いたのは0時を回った頃。

特に行き場も無いので、ふらふらと歩き回っていると、ふと広場を見つける。

 

____そういえば、メレもこんなところで歌ってたな____

 

そんな懐かしく心を抉るような思い出と共に、私は広場のステージへと行ってみる。

人気のない客席と、星なき夜空をバックにして、外周ぎりぎりの柵に腰掛けて《ナナナとハッチ》のエンディングを歌ってみる。

意外と風に乗って響き、心に染みる。

夢中になって歌っていると、もうどうでも良くなってくる。

きっと、メレは生きていない。

なら、もう私はここで死んでも満足かもしれないなぁ________

そう思い、冗談半分本気半分で身体を柵の後ろへ倒す。

バランスを崩して、そのまま真っ逆さまになる…

 

筈、だったのだが。

右手を引かれ、ぐっ,とそれ以上倒れなくなる。

手の温もり。

これは多分、人だ。

そっと目を開けると、真剣な表情の少年が手を握っていた。

グレージュの髪に、青空のような澄み渡った蒼い目。

 

「後ろ、外周だから。」

 

気をつけて、とそっと私の手を引いて柵から引き剥がされる。

観客席のところまで来て、彼はこういった。

 

「君が歌ってた曲、知ってるよ。『ナナハチ』のエンディングだろ。違う?」

 

「…合ってるけど。それが何か?」

 

「良かった、

俺は怪しい者じゃない、ユウトっていうんだ。

歌、凄く良かった。透き通った声が凄く心に響いたんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

良かったら、1杯どう?と誘われて、断りきれずに入った先が隠れ家的なバー。

なんだここは。

おしゃれすぎないか。

私は戸惑いつつも入店する。

ユウトは奥側の席へと私を案内するが、そこは上座にあたるので少し躊躇うが

 

_____すぐに出るし、良いか

 

と思い直して着席する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この店での出来事から、謎の少年《ユウト》との関係が深くなっていくことを。

 

この頃の私は知らなかった。




ヒーローコンビ登場ですね!
ミトsideはユウト君、メレsideはレコン君です!
これからより掘り下げていきますので、お楽しみに!


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