ゼロと地獄の女神 (嫦娥(全裸))
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welcome Hellな使い魔?

間違っても彼女に変なTシャツヤローと言ってはいけません()


「暇ねぇ……」

 

 そう言って地獄のとある場所にある執務室のソファに寝転んだ女性……地獄の女神、へカーティア・ラピスラズリは最近暇を持て余していた。

 

自機組に選ばれるのは絶望的、あと、強すぎるのでゲストとして登場も中々出来ないから仕事も一通り終えているし、友人の純狐は人里に入り浸っている。愛しい部下のクラウンピースも最近はここに戻らない。

 地球の自分は最近大所帯になった自然災害課の処理が忙しくてハンコを押しまくる日々、月の自分は最近月人と弾幕ごっこに明け暮れている。

 だが、異界の自分はやる事が無い! 閻魔の所へは説教が目に見えているので行きたくないし、幻想郷の賢者達は胡散臭いからイヤ。

永遠亭にいる月の頭脳はこちらを締め出してくるし、博麗の巫女は行くとあっち行けオーラを出してくる。つまり、どこに行ってもダメ。

 とにかく、暇で暇でしょうがない。

 

「なんか面白い事起きないかしら……あら?」

 

そう言って体を伸ばして起き上がると、変な鏡があった。急に現れたので軽く術式などを見て調べてみる。

 

「……あら、使い魔召喚のゲートね。今どき珍し……使い魔!?」

 

 へカーティアは驚く。何せ──少なくとも──幻想郷では間違いなく最強の自分が使い魔として召喚されるのだ。

 同時に興味が湧いた。自分を呼ぶ程のチカラを持つ魔法使いがいるというのだ。仮につまらない奴だったら異界の自分は何時でも帰れるから問題ない。

 

「んーっと、クラッピー、純狐、閻魔様。しばらく異世界で使い魔として生活してみます。 へカーティアより……っと、これでいいかしら? さ、異世界に出発よん♪」

 

 置き手紙も書いて準備万端。自分の意思で鏡に飛び込み、吸い込まれていく……

 


 

ここはハルキゲニア大陸のトリステイン魔法学院。

 

空は蒼く、何処までも高く。

 

白い雲は風に乗って流れ。

 

一つの太陽は豊かな緑が生い茂る草原を温かく照らしていた。

 

その中心には黒いマントを着けた集団がいた。

 

教師と思われる1人を除いてその全てが10代の少年少女である。

 

その傍らには様々な生物がいた。

 

その中で1人の少女が杖を持って呪文を唱えていた。

 

ピンク色で緩やかなウェーブが掛かった長い髪を持った可愛らしい少女である。

 

だが、その顔は必死の形相だった。

 

もう余裕が無く、渾身の願いをもって呪文を唱え続ける。

 

今日は大切な日。生涯のパートナーとなる使い魔を召喚し、メイジとしての新たな第一歩を踏み出す日だ。

 

しかし、クラスの者達が使い魔を呼び出す中、彼女は使い魔の召喚に成功していない。

 

「早くしろよな~、ゼロのルイズ!」

 

「もう何回目だよ、いい加減成功させろよな」

 

「早くしないと日が暮れちまうぞ~~」

 

周りからそんな野次が飛んでくる。

 

(うるさい!黙れ!)

 

だが、少女…ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはそれに構わず、呪文(ルーン)を唱え続ける。

 

「ミス・ヴァリエール。心を落ち着かせてゆっくりルーンを唱えなさい。力が入りすぎですよ」

 

(うるさい!うるさい!うるさい!)

 

ルイズはその忠告をまったく聞かず、力強く杖を振り上げた。

 

(絶対に喚んでみせるんだから!誰よりも美しくて!誰よりも気高くて!誰よりも強い使い魔を…!)

 

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! 宇宙の果ての何所かに居る私のシモベよ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!私は心より求め、訴える!我が導きに応えなさい!!」

 

ルイズは杖を勢い良く振り下ろした、その瞬間……!

 

ドガゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!

 

 

今まで自分が出した中でも一際大きな爆発音が草原に響き渡り、更地に変える。

 

「なんだ~、また失敗か?」

 

「いい加減にしろよな~」

 

「さすがはゼロのルイズだ!」

 

その爆発音を聞いて、周りからそんな中傷が飛んでくるがルイズは無視した。

 

ただ、煙が晴れるのをじっと待った。

 

(ドラゴンとかグリフォンとかユニコーンみたいな贅沢は言いません。始祖ブリミルよ、私に立派な使い魔をお与え下さい!!)

 

煙の先には、人型のシルエットが浮かび上がる。もしかして亜人だろうか?

 

「あらあら……私を喚んだのは貴女ね?」

 

煙が晴れた先に現れた亜人?の女性は、赤髪で、長さは肩の辺りまで伸ばしたセミロング。

白い文字で何か描かれた肩が出ている黒い半袖の服を着ている。上の長めの文(Welcome)短いが大きめの単語(Hell)の間に赤いハートマークがあり、返り血のような意匠もある。

スカートは濃い色の緑・赤・青(紫色にも見える)の三色カラーの、チェックが入ったミニスカートで裾部分に黒いフリルと小さなレースがついており、ブーツを履いている。 正直変な服装だとルイズは思った。

 

「私は地獄の女神、へカーティア・ラピスラズリよん! よろしくね?」

 

 

「へ、平民!?」

 

「んもう、私を平民呼ばわりとは失礼ね?……って、話聞いてないし……」

 

「へ、平民なんて使い魔に出来ません!もう一度やらせてくださいっ!」

 

 焦りを多分に含んだ声が少女の喉から発せられる。

 

「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」

 

「どうしてですか!」

 

「決まりなんだよ。二年生に進級する際、君達は『使い魔』を召喚する。今やっている通りだ。それにより現れた使い魔で、今後の属性を固定し、それにより専門課程へと進むんだ。そして、一度呼び出した使い魔は変更する事は出来ない。何故なら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。好むとか好まざるにかかわらず……彼女を使い魔にするしかない」

 

「あのねぇ……じゃあ、実際にチカラを見れば私が平民なんかじゃないのが分かるかしら?」

 

 そう言ってへカーティアは空を飛び、指を弾いて禿げている男性の髪を生やす。

 

「!?」

 

「メ、メイジだ!平民じゃない!」

 

 野次馬の有象無象が何やら騒いでいるが、そんなこと知ったこっちゃない。私は召喚してきた少女の元へ向かう。

 

「んーっと、ここでは使い魔との契約ってどうするのかしら?」

 

「……あんた誰よ」

 

 少女がぶっきらぼうに聞いてくる。

 

「あら? 爆発の音でかき消されちゃったのかしら? まぁいいわ。へカーティア。へカーティア・ラピスラズリよん♪ よろしくね?」

 

「へカーティア……覚えたわ。さて、アンタには私の使い魔になってもらうわ!」

 

「いいわよ〜? 貴女の事はどう呼べばいいのかしら?」

 

「ルイズでいいわ」

 

「ではミス・ヴァリエール。コントラクト・サーヴァントを」

 

「はい。……あ、コントラクト・サーヴァントは使い魔との契約の儀式の事よ」

 

ルイズちゃんは私が髪の毛を生やした男性の言葉に促され、呪文を唱えて私に口づけを交わした。すると、突然体の何ヶ所かから少し熱と痛みを感じた。

 

「……これは前代未聞ですぞ!? ルーンが複数箇所に現れるとは!」

 

「へぇ〜……これが使い魔としてのルーン……」

 

「さ、改めてよろしくね?ルイズちゃん」

 

「ル、ルイズちゃん……」



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女神サマのお仕事

「……おや、かなり珍しい紋様ですね。スケッチさせていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「構わないわよん♪ ……ふむふむ……なるほどねぇ……」

 

 私はとりあえず(胸元と頭に描かれたのは隠れているから向こうには見えていないし、見せるのはちょっと恥ずかしいわ)両手を差し出して、しばらくしてスケッチが終わると、ミスタ・コルベールは手を叩いて注目を集め、学院に帰還するよう号令を出した。

 次々とルイズの同級生達らしき子達が上空へ飛び上がる。この子達、魔法使いだったのね。まぁパッと見だと力がしょぼそうだし、”の卵”が後ろににつくわね。 月の異変を起こした時に来た白黒魔法使いなら通常弾幕で蹴散らせる雑魚妖精レベルといったところかしら?

 

「『フライ』もろくに出来ないゼロのルイズはそのメイジと仲良く歩いて帰れよ!」

 

「ちゃんと学院まで使い魔を連れてってあげるのよ?」

 

「何もできないゼロには優雅なフライは難しすぎますものね。肉体労働がお似合いでしてよ!」

 

 ガルル……!と唸り声をあげる隣にいる主人となったルイズちゃん。悔しいみたいね。ちょっとあの子達を驚かせようかしら?

 

「ぐぬぬ……!」

 

「お困りのようね? 力を貸すわ!」

 

 私はルイズちゃんを後ろから抱き上げて飛翔。快適な空の旅をお届けしてあげる。

 

「ちょっ、ちょっと!いきなりご主人様に何無礼なことやって……………きゃあああ!!!」

 

 

 そのまま上空へと到着♪ マントをはためかせるおチビちゃん達と同じ高度に並ばせたわ。

 

「ふふ、びっくりしたかしら?」

 

「そう言うことは聞かれなくてもちゃんとやる前に言いなさい!まぁいいわ。仕方ないけど褒めてあげてもいいわよ。光栄に思いなさい」

 

 私は何も言わずおチビちゃん達のやり取りを眺めていると、1人の少女が舌打ちした。

 

 

「な、何よ、ゼロのルイズの癖に。使い魔にぶら下がって飛ぶだなんて、メイジの恥もいいところね!」

 

「な、何ですってぇ!『洪水』のモンモラシーの分際で!」

 

「『香水』のモンモラシーよ!変な二つ名付けないで頂戴っ。」

 

「私知ってるんだから!初等部高学年の年になってもアンタがお漏らししてたってことくらいっ!ああ、淑女として恥ずかしいっ……!」

 

「ななな、何言っていますのっ!?いい加減なこと言わないで頂戴っ。下品よっ。このメイジの恥っ!」

 

「うるさい、うるさーいっ! 無駄口叩く暇あったら、漏らしたパンツでも干してなさいよっ!」

 

「まだ言うのっ!? このゼロのルイズが!」

 

「ほら貴女、ちゃんと前を見ないと……」

 

ガサガサガサッ!

 

 あら、警告が遅れちゃったわね。木にぶつかって落ちちゃった。浮かしてあげて……って、気絶してるわね。運んであげましょっと……

 

「すまない、レディ。僕に彼女を渡してくれないかい?」

 

 

「あら、優しいのね? はい、どうぞ♪」

 

「ありがとう、だが、レディを丁重に扱うのは当たり前の事さ」

 

 あらあら……もしかして、この子にお熱なのかしら? ちょっとからかってあげましょう。

 

「んん〜? も し か し て ……付き合っているのかしら?」

 

「!!?? な、なんの事だか分からないね……」

 

「ん〜……まぁ、そういうことにしておくわ。それじゃ、お先に失礼するわよ〜ん♪」

 

「え、ちょ、きゃぁぁぁ!!」

 

私は一気に加速してルイズちゃん達の寮がある塔と思わしき所へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、空を飛ぶのって、こんなにも疲れるのね……」

 

「あら? お遊びとはいえ、私の飛行に耐えられるのは凄いことなのよ?」

 

「まぁ、それはそれとして、使い魔のやるべき事を教えるわよ!」

 

「本来使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ。早い話、あんたが見てる物や聞いている事を私も見たり聞いたり出来るの。……でもおかしいわね、なんにも見も聞こえもしないわ……」

 

(……あぁ、ルーンにそういう機能が搭載されていないのね。まぁやってる事筒抜けは嫌だし、そのままにしときましょ)

 

「次に、秘薬やその材料などの主人が望むものを持ってくること! ……って、アンタじゃそれなりにしか出来そうにないわね……」

 

「ふふふ……人は見た目に依らずって言うわよ? 大抵のものは取り出せる筈よ」(女神だけどね……)

 

「? 最後に、最も大切なのは……、主人を守る存在であること! その能力で主人を敵から守るのが、一番の役目よ!」

 

「じゃあ問題ないわね! 私、最強だから」

 

「……冗談もほどほどにしなさいよ? でも、この学院じゃ戦いなんてそうそうないから、普段は他の仕事をしてもらうわ。洗濯、掃除、その他の雑用!」

 

(……ま、部下の仕事を体験するって事にしましょう)「分かったわ。それじゃあ洗濯してくるわ〜♪」

 

そう言ってへカーティアは指を振って洗濯物を浮かし、行列のように並ばせた……

 

「って、まだ私の着替えが……!?」

 

ルイズが自分の服を見ると、いつの間にか寝間着へと入れ替わっていた……



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