仮面ライダーゼロワン&賢者の孫 (仮面大佐)
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オリキャラ解説

今回は、オリキャラ解説と今後の展開について話します。


ユウト=イーウェル/仮面ライダーゼロワン

CV 斉藤壮馬

概要

オリ主。転生者であり、爆破テロに巻き込まれて死亡して、賢者の孫の世界に転生した。当初は、転生者である事を忘れていたが、幼い頃に魔物に襲われて、生死の境を彷徨った結果、前世の記憶を思い出す。それからしばらくして、旅に出る事を決意。両親も、息子の決断ならと、背中を押してくれた。旅の最中、とある遺跡に入る。そこで、ヒューマギアのイズと迅に出会い、そこで、飛電ゼロワンドライバーとライジングホッパープログライズキーを手に入れて、ゼロワンとなる。そこで、転生者であるレイトという人物と、衛星ゼア内で出会い、アークを止めてくれと頼まれる。その後、シンと邂逅するが、邂逅したのは、カートが魔人になった際に。ちなみに、周囲からは、性欲が死んでいる、度を超えた朴念仁などと貶されているが、当の本人は気付いていない。

 

タクヤ=フラウド/仮面ライダーバルカン

CV 石川界人

概要

ユウトと同様に、転生者。タクヤもまた、魔物に襲われた時に前世の記憶を思い出す。だが、タクヤの場合は、前世の記憶を思い出した日の夜に夢の中で女神から、ユウトが向かったのとは違う遺跡に向かう様に言われていて、そこで、亡と出会い、ショットライザーを受け取り、バルカンになる。ユウトとは後に知り合い、友人関係になる。ゼロワンをテレビで見ていた時に、不破諌に憧れ、ゴリライズを行なっている。若干、コハルに気がある模様。

 

コハル=マリス/仮面ライダーバルキリー

CV 沼倉愛美

概要

ユウト、タクヤと同様に、転生者。コハルもユウトとタクヤと同じく、魔物に襲われた時に前世の記憶を思い出す。タクヤと同様に、夢の中で女神から、タクヤと同じ遺跡に向かう様に言われ、そこでタクヤと亡と出会い、ショットライザーを受け取って、バルキリーになる。タクヤとは、喧嘩はするが、息の合ったコンビである。ユウトとは、タクヤと同様に、後に知り合った。刃唯阿に憧れており、彼女の様な技術者になりたいと思っている。

 

レックス=ウェイト/仮面ライダー1型

CV 小野大輔

概要

アールスハイドに住む人物。レイトの助手の子孫。父親から、仮面ライダー1型を継承した。実家はカフェで、ユウトが来る前は、そこそこの売り上げだったが、ユウトが来て以降は、売り上げがかなり伸び、現在は多忙を極めている。レックスの淹れるコーヒーはかなり美味という事で、コーヒー目当ての客が多い。元々は、魔物ハンターとしても活動していたが、現在は引退している。妻が居たが、死去している。店自体は人気になるものの、一部、ユウトへの婚約を迫る未婚の貴族の女性が来ており、対応に辟易している。その為、貴族の女性の対応が面倒臭いのもあるが、ユウトに自分の人生を歩んで欲しく、早く彼女か婚約者でも作れと急かしている。

 

イネス=ウェイト

CV 花守ゆみり

概要

レックスの弟の娘。ユウトに惚れた。惚れた理由としては、魔法学院でのユウトの戦闘を見て、かっこいいと思ったから。ちなみに、年齢は15歳。高等魔法学院に通っており、Aクラスに在籍している。行動力は凄まじく、すぐにレックスの家に住むと決断するくらいには。現在は、ユウトがアールスハイドに居ない事が多い事も相まって、中々アピール出来ていない。

 

レイト

CV 山寺宏一

概要

賢者の孫の世界に於けるゼロワンシステムを開発した人物。転生者。故人。アークを開発したのは彼。だが、とある国の重鎮達が、アークに人間の悪意をラーニングさせてしまった。その結果、その国は滅ぼされ、現在はアールスハイドの一部となっている。レイト自身は、この出来事を、デイブレイクと呼んでいる。その後は、ゼロワンシステム、衛星ゼア、滅亡迅雷、イズを作成し、アークの打倒を、後の世代の若き人物に任せる事を決意した。一部、スローイングクロウなどといった、本家のゼロワンには存在しないプログライズキーを作成していたりもする。




今回はここまでです。
今後の方針について、話そうと思います。
次の話で、サウザーに変身するキャラを出す予定ではありますが、その人物は、最初から味方………ではありますが、少しライバル心を燃やすキャラという感じです。
ただ、そうなると、メタルクラスタホッパーとプログライズホッパーブレードをどの様に出せば良いのかが、分かりません。
最初から味方なら、ゼロワンの評価を地に落とす為にメタルクラスタホッパーを作る必要性はないので。
バーニングファルコン、ランペイジバルカンに関しては、ちゃんと出します。
ここ最近、賢者の孫とジオウかオーズの小説を投稿するのもありかなとも思い始めました。
少し、モチベが下がってきてしまい、もしかしたら、これを削除してしまうかもしれません。
感想、リクエスト、受け付けています。
皆さんが、どんな風なストーリーを望んでいるのか知りたいので。


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本編
プロローグ


今回は、プロローグの為、少し短めです。


 善意と悪意。

 それは、お互いに相反する感情である。

 善意とは、他人を思いやる感情。

 悪意とは、他人を害する感情。

 とある世界では、平和を守る為に戦う仮面ライダーと、人類を滅ぼそうとする悪意の人工知能、アークの戦いがあった。

 だが、これはその世界とはまた違う世界で、アークが生まれてしまい、仮面ライダーが立ち上がる話だ。

 とある森を歩く1人の青年が居た。

 

ユウト「随分と深くに来たな………。」

 

 その青年の名は、ユウト=イーウェル。

 彼は、前世にて、爆破テロに巻き込まれ、死亡し、この異世界に転生した。

 当初は、自分が転生者だという認識は無かったが、幼い頃に魔物に襲われ、生死の境を彷徨った結果、前世の記憶を取り戻す。

 前世の記憶を取り戻したユウトは、暫くして、両親に、旅に出たいと宣言。

 両親は、最初こそ反対するが、息子が本気で言ってる事に気づき、背中を押してくれた。

 ユウトは、旅に出て、魔物ハンターをやりつつ、生計を立てていた。

 そんな彼が、何故こんな所にいるのかというと、遡る事、3日前、仲の良い商人と再会した時に、その話を聞いた。

 

ユウト『謎の遺跡ねぇ。』

商人『そうだぜ。あの遺跡は、レイトという天才魔道具士に関与しているって言われてんだ。』

ユウト『レイト?』

商人『ああ。マッシータっていう人物と同じ、天才魔道具士なんだと。』

ユウト『そんな人が関与してる遺跡を、どうして俺に?』

商人『何だかなぁ、アンタなら行けそうな気がするんだ。』

ユウト『………分かった。ちょっと行ってみるわ。』

商人『おうよ!………という事で、その遺跡への地図と、食料とかは要るか?』

ユウト『…………がめついね。』

商人『それが、俺だ。ナッハッハッハッ!』

ユウト『アンタらしいよ。』

 

 ユウトは、呆れ笑いを浮かべつつ、その商人から、地図と食料を買った。

 そうして、3日かけて、その遺跡へと向かっていたのだが。

 

ユウト「確か、地図によると、ここら辺みたいだが…………。」

 

 ユウトは、地図を広げつつ、周囲を見渡す。

 すると、遺跡が目に入る。

 

ユウト「ここか………。」

 

 そこは、多少朽ちているとはいえ、そこまで古くはない遺跡だった。

 入口が開いており、ユウトは、入口から、中を覗く。

 

ユウト「何か居る訳ではなさそうだけど………。」

 

 ユウトは、慎重に進んでいく。

 何か魔物が現れる訳でもなく、少しずつ進んでいくと、最深部に到着する。

 

ユウト「ここが、最深部か?何か、意外と呆気ないな。」

???「お待ちしておりました。」

???「待ってたよ。」

ユウト「!?」

 

 ユウトがそう呟く中、男と女の声がして、ユウトが振り返ると、そこには、首元にリボンを付けた女性と、若干ボロボロの服を着た男性がいた。

 見た目こそ人間だが、耳には、前世で言うところの、ヘッドフォンみたいなのが付いていた。

 ユウトは、少しずつ感情が昂まりつつ、2人に問う。

 

ユウト「………ええっと、君たちは?」

イズ「申し遅れました。私は、レイト様の秘書だった、イズと申します。」

迅「僕の名前は迅だよ。」

ユウト「イズに、迅か。俺はユウト。よろしくな。(やっべぇぇ!本物か!?)」

 

 ユウトは、平静を装いつつ、心の中で歓喜する。

 ユウトは、仮面ライダーゼロワンがとても好きで、ゼロワンに登場するイズと迅が目の前に居ることを喜んでいる。

 

イズ「まさか、最深部にまで来れるとは。」

ユウト「どういう事?」

迅「ああ、悪意を持つ人が入ると、自動的に外に追い出されるんだよ。」

ユウト「マジで?」

 

 つまり、変な事を考えていたら、外に追い出されていたのだ。

 ユウトは、ホッとため息を吐く。

 そんな中、イズと迅の2人は、話していた。

 

イズ「………どうやら、私たちの事を知っている様ですし、レイト様と同郷の人物の可能性が高いかと。」

迅「………なら、アレを渡しても問題はないよね?」

イズ「はい。」

ユウト「アレ………?」

 

 2人がそう話すと、イズが、アタッシュケースを持ってくる。

 

イズ「ユウト様。これをあなたに。」

ユウト「あ、ありがとう。ええっと、これ、開けていいのか?」

迅「うん!開けて良いよ。」

 

 迅にそう言われ、ユウトはアタッシュケースを開ける。

 その中には、黒が基調で、黄色いラインが入ったバックルと、バッタが描かれている黄色いデバイスが入っていた。

 

ユウト「ゼロワンドライバーに、ライジングホッパープログライズキー!?」

イズ「やはり、知っていましたか。」

迅「予想通りだね。」

 

 そう、このバックルとデバイスは、飛電ゼロワンドライバーとライジングホッパープログライズキーだ。

 ユウトは感激と同時に、疑問を感じていた。

 

ユウト「何で、ゼロワンドライバーがこの世界にあるんだ………?」

イズ「それを知りたければ、ゼロワンドライバーを腰に装着して下さい。」

迅「そうすれば、ゼロワンドライバーがこの世界にあるのと、僕たちヒューマギアがこの世界に居るのかを知れるよ。」

ユウト「分かった。」

 

 ユウトは、アタッシュケースから、ゼロワンドライバーを取り出し、腰に当てる。

 すると、ベルトが伸びて、自動的に装着される。

 更に、ユウトの意識が、遥か頭上へと飛ばされていく。

 

ユウト「うわぁぁ!?」

 

 ユウトが目を開けるとそこは、0と1が大量にある白い空間だった。

 ユウトは、そこもまた見覚えがあった。

 

ユウト「やっぱり、ここって、衛星ゼアの中だよな………。」

???『その通り。』

ユウト「!?」

 

 ユウトは、突然した声に、驚きながら声がした方向へと向くと、1人の男性が居た。

 そこに居たのは、少し痩せ気味の男性だった。

 

ユウト「ええっと、貴方は………?」

レイト『残念ながら、その質問には答えられない。今の私は、ゼアに残した録画なのだからな。だが、名前を聞くと思うので、名乗っておこう。私の名はレイト。このゼロワンシステムを開発した、魔道具士だ。』

ユウト「レイト!?」

 

 ユウトは、驚愕していた。

 それって、あのおっちゃんが教えてくれた人じゃないか!?

 でも、ゼロワンシステムに衛星ゼアなんて、この世界の技術力じゃ、とても作れる代物じゃない。

 という事は、まさか………。

 ユウトがそう確信する中。

 

レイト『今、この映像を見ている君が察している様に、私は転生者だ。』

ユウト「…………エスパーですか?」

 

 レイトの余りにも見通した様な発言に、ユウトはそうつっこむ。

 

レイト『今、目の前で見ている君が思っている事としては、何故、私がゼロワンシステムを開発したのか、という疑問だね?』

ユウト「…………そうですね。」

レイト『私がゼロワンシステムを開発した理由は、アークを打ち倒す為だ。』

ユウト「アーク!?」

 

 アーク。

 それは、仮面ライダーゼロワンにて、人間の悪意をラーニングした結果、人類を滅ぼすという結論に至った悪意の人工知能だ。

 だが、この世界にアークは存在しない。

 ユウトはそう思っていたが、まさかと思った。

 

レイト『アークは元々、私が開発したのだ。』

ユウト「えっ!?」

レイト『ただ、人類を滅ぼそうとするのではなく、人々の生活の支えになって欲しい。そんな思いを込めて作ったのだ。だが、とある国の重鎮は、私のその想いを反故にしたのだ。』

ユウト「反故………?(まさか………。)」

レイト『その者たちは、アークに人間の悪意をラーニングさせてしまった。その結果、その国は滅び、後にデイブレイクと呼ばれる災害になった。』

ユウト「デイブレイク………。」

 

 原作ゼロワンのデイブレイクタウンみたいな場所が出来てしまった様だ。

 だが、何故原作では、アークの部下である迅が、協力的なんだと、ユウトがそう思っていると。

 

レイト『勘違いしないで欲しいのだが、迅を始めとする滅亡迅雷は、私がアークに対抗する為にゼアを作った際に、イズと共に作ったのだ。だが、私も歳でね、完成したのは良いが、変身出来ずに居た。そこで、イズと迅にゼロワンドライバーを託したのだ。』

ユウト「そういう事か………。」

 

 どうやら、滅亡迅雷は味方の様だ。

 すると、レイトは再び口を開く。

 

レイト『いきなり、こんな事を君に頼むのは、申し訳ないが、頼む。アークの脅威を止めて欲しい。このままでは、ゼロワンの世界での悪夢が、この世界でも起こってしまう。』

ユウト「聞こえてはいないと思いますが……分かりました。」

レイト『君にゼロワンシステムを託す。ゼロワンドライバーは、生体認証により、君にしか使えない。』

ユウト「なるほど………。」

レイト『それと、ショットライザーも作っておいたから、いずれ、バルカンとバルキリーの適合者も現れる。君たちと滅亡迅雷と共に、アークを止めてくれ!』

 

 その声と共に、ユウトの意識は、ゼアから身体へと戻った。

 目を開けると、イズと迅が至近距離からユウトを見ていた。

 

ユウト「うわっ!?」

イズ「どうやら、レイト様と話し終えた様ですね。」

迅「さて、改めて聞くよ、ユウト。ゼロワンとして、アークと戦うのか。」

ユウト「…………分かった。アークと戦うよ。この世界の平和を守る為に。」

イズ「ありがとうございます。」

迅「それじゃあ、早速移動するよ!」

ユウト「えっ?移動するって、どこに?」

イズ「アールスハイドです。」

ユウト「アールスハイド!?何で?」

迅「アールスハイドに、レイトの協力者が居るんだ。」

 

 その言葉に、ユウトは首を傾げながら質問をする。

 

ユウト「え、でも、レイトって、いつ死んだんだ?」

イズ「ざっと、150年前です。」

ユウト「150年前!?でも、協力者って一体誰なんだ?」

迅「それは、レイトの知り合いの子孫だよ。」

ユウト「へぇぇ…………。」

 

 こうして、仮面ライダーゼロワンの資格を得たユウトは、イズと迅と共に、アールスハイドへと向かう事になった。




今回はここまでです。
レイトのCVは、山寺宏一です。
滅亡迅雷は、ユウト達の味方です。
いずれ、バルカンとバルキリーに変身するキャラを出す予定です。
時系列としては、シンが魔法学院の試験を受けてる時です。
現状、原作キャラは変身しない予定です。
1型、サウザーに関しては、変身者は全くもっての未定です。
この小説は、リバイスの小説で、そこまで賢者の孫の要素を入れられなかったので、こちらは入れていきたいと思います。
リクエストを受け付けています。


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第1話 オレが魔物ハンターで仮面ライダー

 レイトから飛電ゼロワンドライバーとプログライズキーを託されたユウト。

 当のユウトは、イズと迅と共に、アールスハイドへと向かう事になった。

 余談だが、アールスハイドに入るには、市民証を見せる必要があるのだが、全員見せて、問題なく通った。

 ユウトは、とある家に着く。

 

ユウト「ここは?」

イズ「ここは、今日から貴方が下宿する家です。」

迅「ここを使って良いからね。」

ユウト「マジで?」

???「来たか。」

???「その様だな。」

 

 すると、目の前の扉から、二人の男性が出てきた。

 片方はヒューマギアで、もう片方は普通に人間だった。

 

ユウト「ええっと、貴方達は………?」

滅「俺は滅だ。」

レックス「俺はレックスだ。」

イズ「レックスは、レイト様の助手の子孫です。」

レックス「という訳で、ゼロワンシステムの調整は、俺に任せろ。」

滅「俺はお前に特訓をさせる。アークに対抗する為にも、一刻も早く強くなって貰うぞ。」

ユウト「ああ。」

 

 そうして、ユウトは特訓を開始した。

 といっても、ユウト自身の戦闘技術自体はそこそこ高かったので、更に高めるべく、滅と一対一で、変身せずに戦う。

 そんな生活を続けていく。

 ちなみに、特訓は、地下室で行なっている。

 ユウトは、大分戦闘に慣れていた。

 

滅「大分慣れてきたようだな。」

ユウト「滅の指導が良いからだよ。」

滅「そうか。」

 

 すると、迅が駆け込んでくる。

 

迅「ユウト!ゼロワンドライバーを持って、すぐに魔法学院に向かって!」

滅「どうした?」

迅「魔人が現れて、そいつがマギアになったんだ!」

ユウト「え!?分かった、すぐに向かう!」

 

 ユウトは、飛電ゼロワンドライバーとライジングホッパープログライズキーを持って、魔法学院へと向かう。

 遡る事、少し前、魔法学院では、シン=ウォルフォードを始めとするSクラスの生徒が食堂で話していた。

 

マリア「そう言えばシンって、移動中も索敵魔法使ってるよね。あれ何で?」

シン「何でって、こっちに害意向けられたら分かるだろ?」

トール「ん?シン殿、害意が分かるんですか?」

シン「あぁそうか、えーと………トールは魔物狩った事ある?」

トール「ある訳ないじゃないですか。この前まで中等学院生ですよ?」

シン「魔物の魔力って、禍々しいって言うか、気持ち悪いって言うか、普通じゃないんだよ。敵意とか害意をモロにこっちに向けてくるからね。そう言うのって、人間にも少なからずあって、それを察知してる訳。」

リン「ウォルフォード君って魔物を狩った事あるの?」

シン「あるよ。」

 

 その言葉に、全員が驚いた表情になる。

 

トニー「因みに……初めて魔物を狩ったのって何歳?」

シン「確か………10歳の時。」

全員「10歳!?」

シン「確か、熊だったかな?」

全員「熊ああ!?」

 

 その逸話に、Sクラス全員が驚いた。

 

シン「3メートルくらいあったけど、首落として倒したよ。」

全員「…………。」

シン「(また俺何かやっちゃいました?)え?何皆、何処に驚いてんの?」

全員「全部にだよ………。」

 

 その後、講堂へ。

 

マリア「午後から研究会の説明かあ……。」

アリス「私達、もう究極魔法研究会を立ち上げるって決めたのに……。」

ユーリ「入る気もない研究会の説明、聞かされるなんて無駄な時間よねぇ。」

ユリウス「そう仰るな。拙者達だけ参加しないと反感を買うで御座るよ。」

 

 すると、シンが何かを感知した。

 

シン(害意を向けられてる?何処だ!?)

 

 すると、茂みの奥からして、そこには自宅謹慎中のカートが。

 

シン「カート!?」

全員「!?」

 

 すると、カートが炎の魔法を放つ。

 シンが咄嗟に魔力障壁で防ぐ。

 

シン「グッ………!シシリー、オーグ!制服に魔力を通せ!!」

 

 シシリーとオーグはすぐに制服に魔力を通す。

 カートが2発目を放つ。

 

トニー「魔力障壁……!!」

シシリー「シン君!手が!!」

 

 イメージが間に合わなかったのか、シンの手が火傷していた。

 

シン「大丈夫……。自動治癒が発動するから……!」

オーグ「何で奴がここに!?」

マリア「謹慎中じゃなかったの!?」

シン「オーグ……。これはもう、ダメだろ!?完全に殺す気だったよな!?」

オーグ「ああ!これは完全に殺人未遂だ!到底見過ごす事は出来ん!!」

カート「貴様………きさま………キサマ………キサマキサマギザマーーーー!!!!!」

 

 すると、カートの魔力が更に増幅した。

 

シン「なあオーグ……。」

オーグ「何だ……?」

シン「アレ、魔力の制御出来てると思うか?」

オーグ「思わんな………。」

シン「マズくね……!?」

オーグ「マズイな………!」

 

 2人の懸念が当たり、何と、カートは魔人と化した。

 

オーグ「まさか………!?」

シン「魔人化しやがった………!!」

 

 シンは、野次馬の生徒達を見て。

 

シン「おい皆逃げろ!!奴は魔人化した!!ここに居ると巻き添え喰らうぞ!!」

 

生徒達「………ま………魔人………!?」

生徒「うわあああああああ!!!!」

生徒「きゃあああああああ!!!!」

生徒「助けてええええええ!!!!」

 

 生徒達がパニックになって逃げる。

 

シン「オーグ、お前達も逃げろ。」

オーグ「シン!?………お前まさか………!?バカな!お前も逃げろ!!」

シン「此奴を王都に放つ訳にはいかないからな!!俺が食い止める!!」

オーグ「ならば私達も!!」

シン「魔物や魔人を狩った事ない奴が何言ってんだ!!」

オーグ「シン………私たちは邪魔か?」

シン「………ああ、邪魔だな。」

 

 それを聞いたオーグは、苦渋の表情を浮かべるが、すぐに叫ぶ。

 

オーグ「そうか………分かった!全員直ちにこの場を離れろ!!私達が居てもシンの足手纏いになるだけだ!!」

シシリー「そんな………!シン君だけ残してなんて!!」

マリア「…………!!」

オーグ「メッシーナ!!引き摺ってでもクロードを連れて行け!!」

マリア「は………はい!!シシリー!!」

 

 マリアは、強引にシシリーを連れて行く。

 

オーグ「皆も早く!トール!!ユリウス!!教師に連絡して対処を急げ!!」

トール・ユリウス「はっ!!」

 

 全員がすぐに避難する。

 魔人化したカートの目の前に、シンが立つ。

 

シン「そろそろ行くぞ、カート!!」

カート「ゴアァアアアア!!!!」

 

 カートはすぐに走り出して、最大火力の炎を投げた。

 それを見たシンは、魔法の発動を中断して、横に飛ぶ。

 シンは、すぐにファイヤーボールを連射する。

 そのファイヤーボールは、カートにダメージを与えた。

 

シン(今のでダメージあるの!?足止め程度のつもりだったのに………!?)

 

カート「ウォルフォードォォ!!キサマァァァァ!!」

シン「魔人が………言葉を発した!?」

カート「コロス!!コロシテヤルゾ!!ウォルフォード!!」

 

 カートは、衝撃波を放つ。

 シンはすぐに魔力障壁で防ぎ、ジャンプして雷撃を放つ。

 

カート「ゴアアアアアアアア!!!!」

シン(やはり効いている………!完全に魔人になっていない………!だったら、元に戻す方法が!)

 

 カートは、炎属性の魔法を放ち、シンは高速移動で躱す。

 

シン(どうにかして、カートを暴走させている魔力を抑えられれば………!)

カート「ウォルフォォドォォオオ!!!!!」

 

 すると、カートは自分に魔力を集め出す。

 

シン「まさか………自分に魔力を集めて爆発させる気か!?させるか!!」

 

 シンは、カートの目論みに気付き、光輪を放つが、魔力の干渉により、打ち消される。

 

シン「くそっ!あんな量の魔力………学院ごと吹き飛んでしまう!!」

カート「オワリダ!!!」

シン(どうする………どうすれば良い!?)

 

 シンは考えるが、討伐するしか思いつかなかった。

 

シン(時間はもうない………!!やるしかない!!)

 

 シンは、異空間収納から、バイブレーションソードを取り出した。

 ジェットブーツを使い、カートに急接近する。

 

シン「許せ………カート!!」

 

 シンは、バイブレーションソードで擦れ違いざまでカートを斬った。

 カートは、首を斬られ、その場に倒れる。

 カートは倒れたが、シンは悔やんでいた。

 

シン「くそっ………何だよ………何なんだよ!!(本当にこんな形でしか………他に方法はなかったのか………!?俺………初めて…………人を………!)」

 

 シンの心境が穏やかじゃない中、シシリー達がやって来る。

 

シシリー「シン君!怪我は!?怪我はしてませんか!?」

シン「ああ………大丈夫だよ………。」

 

 シンは、倒れ伏すカートを見る。

 

シン「カート………彼奴………シシリーの事付け狙ってたし………魔人にまでなっちまったけど………それでも俺………討伐するしかなかったのか………!?」

シシリー「シン君………。」

 

 オーグが声をかけようとする中、カートの様子がおかしかった。

 

オーグ「シン!!」

シン「え?………首が………!?」

 

 そう、斬られた筈の首が、くっついたのだ。

 そして、再び立ち上がる。

 

カート「コロスコロスコロス!!!!」

シン「何で………!?」

オーグ「どうなっている!?」

 

 すると、カートの腰辺りに、謎のベルトが出現していて、カートは何かを取り出す。

 それは、ユウトが持つプログライズキーとほぼ同じの、ゼツメライズキーだった。

 そのゼツメライズキーは、ベローサだった。

 

ベローサ!

 

 カートは、そのゼツメライズキーを、腰についたゼツメライザーに装填して、左側のノックを押す。

 

ゼツメライズ!

 

 すると、カートの体に装甲が付いていき、絶滅した昆虫「クジベローサ・テルユキイ」のロストモデルが付与されたベローサマギアとなった。

 ただ、本来のマギアと違い、耳の部分にヒューマギアのモジュールはついていない。

 

シン「何だよ、あれ………!?」

オーグ「魔人が、姿を変えた………!?」

カート「ウガァァァ!!」

 

 カートは、両腕についた鎌、トガマーダーから、緑色の斬撃を放つ。

 

シン「皆伏せろォォッ!」

 

 シンは、オーグ達に向かう緑色の斬撃を、魔法で撃ち落とす。

 シンは、カートが突然姿を変えた事に驚いていた。

 シンが、シシリー達に意識を向ける中、カートは、トガマーダーでシンを斬り裂こうとする。

 

シン「不味い………!障壁が間に合わない………!」

シシリー「シン君!!」

ユウト「ハァァァ!!!」

 

 トガマーダーは、シンには届かなかった。

 なぜなら、ユウトがカートを思いっきり横から蹴って、軌道を逸らしたのだ。

 

ユウト「大丈夫か!?」

シン「お前誰だよ!?」

ユウト「まさか、ベローサか………!」

オーグ「お前は一体誰だ!?」

ユウト「その話は、後でちゃんとします、殿下!!」

シン「誰か知らないけど、逃げろ!!」

ユウト「大丈夫だ。」

 

 ユウトはそう言って、ゼロワンドライバーを腰に装着する。

 

ゼロワンドライバー!

 

ユーリ「あれは………?」

トニー「魔道具………?」

 

 ユーリとトニーが戸惑う中、ユウトはライジングホッパープログライズキーを構える。

 

JUMP!

 

アリス「何あれ!?」

リン「さあ?」

 

 ユウトは、ライジングホッパープログライズキーを、オーソライザーでスキャンする。

 

オーソライズ!

 

カート「ガアアア!」

オーグ「危ない!」

 

 カートは、再び緑色の斬撃を放つ。

 だが、それはユウトには届かず、目の前に現れた巨大なバッタが押し潰す。

 

マリア「何あれ!?」

シシリー「巨大な………バッタ………!?」

 

 ユウトは、腕を動かしていき、ライジングホッパーのライダモデルは、ユウトの周囲を飛び回る。

 ユウトは、プログライズキーをキーモードにして、叫ぶ。

 

ユウト「変身!」

シン「え!?」

 

 ユウトは、プログライズキーを、ライズスロットへと装填する。

 

プログライズ!

飛び上がライズ!ライジングホッパー!

"A jump to the sky turns to a rider kick."

 

 ライジングホッパーのライダモデルは、しばらく周囲を飛び回っていると、ユウトの目の前に電子図の様な物が現れ、それがユウトを通過すると同時に、全身が黒いアンダーアーマーに包まれ、ライダモデルが分解して、アーマーとなる。

 これが、仮面ライダーゼロワン・ライジングホッパーである。

 

シン「え!?」

カート「キサマ………ナニモノダ………!?」

ユウト「ゼロワン!それが俺の名だ!!」

 

 ユウトは、そう叫んで、カートへと向かう。

 カートは、ユウトに攻撃しようとするが、ユウトに懐に入られ、パンチを叩き込まれる。

 

ユウト「やっぱ、すげぇな!」

シン「あれって………!(まさか、仮面ライダーか!?)」

 

 ユウトは、自分のパンチ力に驚いている中、シンは、前世の産物である仮面ライダーに驚いていた。

 ユウトは、カートの攻撃を躱しつつ、攻撃していく。

 カートは、ユウトの足元に向かって攻撃しようとするが、ユウトはジャンプでそれを躱す。

 すると、ユウトは5メートル上空にいた。

 

ユウト「足のパワー、スッゲェェェ!」

ユリウス「脚力強化の身体魔法を使ったのでござるか!?」

オーグ「魔法ではなさそうだな………。」

 

 カートは、両目からビームを放つが、ユウトはそれを防御しながら、パンチを叩き込む。

 カートは、再び吹っ飛ばされる。

 すると、イズが現れる。

 

イズ「ユウト様!」

ユウト「ん?イッテ!」

 

 イズは、アタッシュケースを投げ渡すが、ユウトの顔面に命中する。

 

イズ「ユウト様!申し訳ありません。」

ユーリ「誰?」

ユウト「大丈夫、大丈夫!」

 

 ユウトは、すぐにアタッシュケースを広い、展開する。

 

ブレードライズ!

 

 ユウトは、アタッシュカリバーを使って、カートを斬り裂いていく。

 ユウトは、一度アタッシュカリバーを閉じた。

 

チャージライズ!

フルチャージ!

 

 ユウトは、再びアタッシュカリバーを展開して、必殺技を放つ。

 

カバンストラッシュ!

 

 カバンストラッシュで、カートは吹っ飛ぶ。

 ユウトは、アタッシュカリバーを放り投げ、指先をカートに向ける。

 

ユウト「お前を止められるのはただ一人、俺だ!」

 

 ユウトはそう言って、ライズスロットにセットされたプログライズキーを押す。

 

ライジングインパクト!

 

 足の力が最大限に強化され、その力でカートに一気に接近して、カートを上空に蹴り飛ばす。

 

ユウト「行っけーー!!」

 

 ユウトも上空に飛び、ライダーキックを放ち、カートを貫く。

 

グインパクト

 

 カートを貫いたユウトは、地面に着地しようとするが、足を挫く。

 

ユウト「痛っ!」

 

 そのまま転がり、木が大量に倒れている場所で止まった。

 

ユウト「と、止まった………。」

シン「カートのあの姿は一体何なんだ……!?」

オーグ「それより、お前は誰だ?」

ユウト「ん?あぁ、俺は、ユウト=イーウェルっていう名前だよ。」

 

 ユウトはそう言って、変身を解除する。

 シン達は、ユウトとイズから、事情を聞く事にした。

 それを見ていたとある人物は。

 

???「ゼロワンが動き出したか………。なら、計画を早めるとしましょう。アーク様の為にも。」

 

 その人物は女性で、姿はイズに似ていた。




今回はここまでです。
遂にユウトがゼロワンに変身しました。
カートがベローサマギアになった理由としては、アークがカートの悪意に反応したからです。
マギアと言っても、ヒューマギアモジュールはありませんが。
こんな調子で頑張りたいです。


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第2話 ヤバいアイツが現れた

 Sクラスでは、生徒と、ユウト、イズが集まっていた。

 

シン「…………。」

オーグ「どうした、シン?」

ユウト「魔人になったとはいえ、人を殺した事を気にしてるのか?」

シン「それもあるけど、気になる事があるんだよ。」

イズ「気になる事とは、何でしょうか?」

シン「あんな簡単に、魔人になるものかなぁって、思って。」

オーグ「確かに………。」

アリス「え?どういう事?」

 

 アリスの疑問に、イズが答える。

 

イズ「かつて、この国に出現した魔人は、高位の魔法使いで、高度な魔法の制御に失敗して魔人化したと言われています。」

オーグ「その通りだ。しかし、リッツバーグは高等魔法学院に入学したてだ。魔法の制御に失敗しても、暴走するだけだ。魔人になるなんてあり得ない。」

リン「うん。私もよく暴走させる。」

 

 リンの発言に、全員が引く。

 マリアが発言する。

 

マリア「でも、実際に魔人になってたし……。」

イズ「それに、アークが介入して、カートをマギア化させました。」

オーグ「なあ。お前達は誰なんだ?あの怪人の事を知っている様だが。」

イズ「アレはマギア。カートの悪意に、アークが反応した結果、変異させた怪人です。」

シン「アーク?」

ユウト「それから話した方が良いな。じゃあ、アークについて話すぞ。」

 

 ユウトは、話した。

 かつて、マッシータと同じくらいに天才な魔道具士、レイトがアークを作った。

 だが、ある者達がアークに人間の悪意をラーニングさせてしまった。

 その結果、その国は滅び、後にデイブレイクと呼ばれる災害になった。

 レイトは、アークを止める為に、ゼロワンシステム、滅亡迅雷とイズというヒューマギア、衛星ゼアを開発した事。

 それを話したら、全員が驚いていた。

 

ユーリ「レイトって言ったら、マッシータと並ぶくらいの天才って言われてる人じゃない!」

オーグ「なるほどな。その国が滅んだのは、そのアークに悪意を学ばせた結果か。」

トール「何というか、自業自得な結末ですね。」

イズ「アークは、人類滅亡を狙っています。」

トニー「どうしてだい?悪意を学んだからって、人を滅ぼす結論に至るんだい?」

ユウト「人の悪意を学んだからこそ、人類は必要ないと、アークは判断したんだろうな。」

ユリウス「なるほどでござるか………。」

シシリー「あの………ゼロワンというのは?」

ユウト「仮面ライダーゼロワン。それが俺が変身した時の名前だ。」

シン(やっぱり、ユウトもレイトって人も、転生者だ。)

アリス「ねぇ、そのゼロワンに変身する魔道具って、どんなのなの?」

ユウト「ああ。」

 

 ユウトは、机にゼロワンドライバー、ライジングホッパープログライズキーを置く。

 ちなみに、他のプログライズキーは、レックスの家に置いてある。

 

リン「バッタの絵が書いてある。」

シン「生物の力が宿ってるのか………。」

オーグ「なら、カートが使ったアレも、プログライズキーなのか?」

ユウト「いや、カートが使ったのは、ゼツメライズキーって奴です。」

シシリー「ゼツメライズキー………?」

ユーリ「プログライズキーとは、どう違うのかしら?」

イズ「プログライズキーには、現在も存在している生物の能力が、ゼツメライズキーには、既に絶滅している生物の能力が付与されているのです。」

シン「…………まあ、話が逸れたけど、カートは人為的に魔人にされて、そこから、アークの力で蘇生したって感じか?」

オーグ「…………だとしたら、由々しき事態だな。」

 

 そうして、一旦解散となる。

 その後、オーグに連れられ、ウォルフォード邸に向かう。

 そこには、ディセウム、マーリン、メリダの三人がいた。

 

シン「あれ?ディスおじさん。」

ディセウム「おお、シン君。それに、君がユウト君だね。」

ユウト「ああ、はい。私は、ユウト=イーウェルです。陛下。」

ディセウム「良い良い、君もまた、シン君と同様に、この国を救ってくれたのだからな。」

ユウト「は、はぁ…………。」

 

 ユウトは、すぐに敬語を使うが、ディセウムはそれを止める。

 シンは、ディセウムに用事を聞く。

 

シン「それで、どうしたの?」

ディセウム「私が訪れたのには、理由があるんだ。事が事だけに、私自らが、シン君、マーリン殿とメリダ師に話をしておきたくてな。おい。」

官僚「はっ!シン=ウォルフォード殿!ユウト=イーウェル殿!貴殿らは、魔人及び怪人の出現という国難に際し、自らの危険を顧みずこれを討伐するに至りました!!就きましては、アールスハイド王国よりその行為に対し、感謝の意を表し、勲一頭の勲章を授与する事になりました!!」

シン「く………勲章!?」

ユウト「俺も!?」

 

 すると、マーリンとメリダが話に割って入ってくる。

 

マーリン「ディセウム、ユウト君に勲章を授与するのは結構だが、以前にお主は言ったな?シンを政治利用するつもりはないと。なのにこの扱いは何じゃ?」

メリダ「私も聞きたいねえ。これはどう言う事だい?」

 

 その二人がそう言った事により、一触即発の空気になってしまった。

 

ディセウム「そう言われると思ったからこそ、私が来たのです。今回数十年振りに魔人が出現しました。過去に1度魔人が現れた時、王国は滅亡の危機に瀕しました。その脅威をこの国の人間は決して忘れません。その脅威がまた現れた。この事は既に多くの国民の耳に入っております。そしてそれが直ぐ様討伐された事も。この国にとって、魔人の出現と討伐は隠しておけない事柄なのです。」

マーリン「そんな事は分かっておる!!勲章の授与とはどう言う事かと聞いておるんじゃ!!!」

 

 ディセウムの弁解に、マーリンが怒鳴る。

 

ディセウム「マーリン殿とメリダ師、お2人の魔人討伐の際に授与した勲章を、同じ功績を残したシン君とユウト君に授与しない訳にはいかないのです。」

イズ「確かに。その必要はあります。」

メリダ「それはそうだけども……。」

ディセウム「勿論それを利用しようと言う輩が居るでしょうが、それは私が全力を持って阻止します。何なら授与式で宣言しても良い。ですから何卒お許し願えませんか?私の為ではなく、国民の為に。お願い致します!!」

 

 ディセウムは、マーリンとメリダに向かって頭を下げる。

 マーリンが、ため息を吐きながら声を出す。

 

マーリン「分かった。お主の言葉を信じよう。もし、その言葉を違えたら、我々はこの国を出る。それで良いな?」

ディセウム「分かりました。肝に銘じます。」

マーリン「それと、一国の王が簡単に頭を下げるでない。」

 

 その場は、解決した。

 すると。

 

レックス「どうやら、話は纏まったみたいだな。」

シン「…………誰?」

レックス「俺はレックス。ユウトの協力者だ。」

メリダ「何だい小僧。ここまで来たっていうのかい?」

レックス「相変わらず、きつい言葉ですね。」

ユウト「知り合いなんですか?」

メリダ「まあ、レイトの事を聞く為に、この小僧のとこまで行った事があるのさね。」

レックス「俺は、レイトの助手だからな。」

メリダ「まあ、それはそれとして、アンタは次から次へと、よくもまあトラブルを起こすもんだよ。」

シン「俺のせいじゃないし!」

メリダ「良ければ詳しく話を聞かせてくれるかい?そして、ユウト。アンタも、それについても説明をしてくれ。」

ユウト「はい。」

 

 シンは、先程の件を話した。

 ユウトは、ゼロワンシステムの概要、アークという存在についてを話した。

 

ディセウム「何!?人為的に魔人化された!?それは確かなのかい!?」

シン「あくまで推測なんですが……。」

メリダ「それに、レイトが作ったアークが、そのカートという魔人を蘇生させて、マギアという怪人にしたとはね………。」

マーリン「しかも、人類滅亡を狙っておるとはな………。かなり厄介じゃぞ。」

レックス「ああ。だが、アークの現在位置は、大体分かっている。」

オーグ「それはどこだ!?」

イズ「アークによって滅ぼされたとある国の跡地に出現した湖の中でしょう。」

ディセウム「なるほどな…………。」

 

 その間、ディセウムは考えていた。

 以前、ドミニクから、魔物の出現が増加していて、それが人為的に行われている事を報告された。

 

ディセウム「シン君、ユウト君、アウグスト、トール、ユリウス、シシリー、マリア、イズ。君たちに命じる。この件に関して、箝口令を敷く!決して口外無用だ!分かったね?」

シン「Sクラスのクラスメイトと担任の先生には話したよ?」

ディセウム「それはこちらで対処しよう。至急、各人に使者を派遣、通達を。」

官僚「はっ!!」

ディセウム「では私は、これで失礼させてもらうよ。」

 

 そうして、ユウト達は帰る事になる。

 

ユウト「なぁ、イズ。カートの家族はどうなるんだ?」

イズ「恐らく、財務局を辞任する可能性が高いかと。」

レックス「まあ、内容だけ見ればカート自身の暴走だが、責任を取らざるを得ないだろうな。」

オーグ「話は変わるがシン。どちらにしろクロード達とは通学を続けた方が良さそうだな。」

シン「え?どういう事?」

オーグ「あぁ。箝口令が敷かれたのは飽く迄カートの件。お前が功労者である事は世間では周知の事実だ。言い方は悪いが、露払いでもいなければ、まともに街も歩けないぞ。」

マリア「そういえば、ユウトは、どこかの学院に通ってるの?」

ユウト「いや、俺は特に通ってないけど。」

レックス「だとしたら、俺の家に人が押しかけてきそうだな………。」

 

 そのオーグの言葉に、レックスは頭を掻きながらため息を吐く。

 それを見たシン達は、苦笑していた。

 そんなこんなで翌日になった。

 ユウトは、買い出しに出かけようとしたのだが。

 

滅「お前は外に出るな。」

ユウト「何で?」

 

 滅からそう言われたユウトは、窓から覗くと、外には大量の人が居た。

 

ユウト「何で!?」

レックス「昨日、言っただろ。やっぱり、押しかけてくるんだよなぁ…………。」

迅「でも、これじゃあ、まともに生活出来ないよね。」

イズ「そうですね。」

レックス「そういえば、アウグスト殿下から、ユウト、迅、滅に頼みがあるんだと。」

迅「僕と滅も?」

レックス「ああ。今日一日は、シン達と共に行動して欲しいだと。」

イズ「恐らく、ユーリ殿がご所望したのだと思います。」

ユウト「分かりました。」

滅「だが、俺たちは外に出られないぞ。」

レックス「大丈夫らしい。」

 

 そう言うと、謎の魔法が出て、そこからシンが出てくる。

 

ユウト「シン!?」

シン「よお。」

イズ「これは?」

シン「これ?ゲートだよ。」

ユウト「そんな魔法あんのかよ………?」

迅「流石、世間知らずって、メリダさんから言われてるだけあるね。」

シン「世間知らず言うな!」

滅「事実だろ。」

シン「グッ………!それはそうと、ユウト。お前と二人きりで話をしたい。」

ユウト「えっ?分かった。」

レックス「なら、地下室を使ってくれ。」

 

 そうして、シンとユウトは、地下室へと向かい、お互いに向かい合う。

 

ユウト「それで、話って?」

シン「………単刀直入に言うと、ユウト。お前、転生者だろ?」

ユウト「…………やっぱりかあ。」

シン「…………って事は、俺が転生者だって、気付いてたのか?」

ユウト「うん。ゼロワンシステムや衛星ゼアの話を聞いた時の君の反応から察した。」

 

 そう、シン=ウォルフォードもまた、ユウトと同様に転生者なのだ。

 

シン「じゃあ、レイトも…………。」

ユウト「ああ。転生者だ。」

シン「やっぱり…………。」

ユウト「まあ、そんな感じだな。」

シン「分かった。」

 

 そうして、シンとユウトの話は終わり、迅、滅と合流して、魔法学院へと向かう。

 午後、ユウト、滅、迅は究極魔法研究会に向かった。

 その際、究極魔法研究会の面々に、迅と滅がヒューマギアである事を話した。

 

滅「究極魔法研究会か…………。」

迅「へぇぇ。ここで、シンの規格外の魔法を研究してるの?」

シン「規格外言うな。」

滅「事実だろ。」

シン「うっ……………。」

 

 シンは滅に苦手意識を抱いた。

 滅の言う事は、ご尤だが。

 オーグ曰く、『ゲートに無詠唱など、コイツの世間知らずは、底知らずだな。』との事。

 

ユウト「…………本当に、常識知らずだなぁ…………。」

迅「確かに…………。」

滅「だが、魔人やアークに対しては、それくらいが丁度いいのかもしれないが。」

 

 ユウト、迅、滅はそうしみじみと語る。

 一方、リッツバーグ邸では、警備局捜査官のオルト=リッカーマンが、カートの父親ラッセル=フォン=リッツバーグ伯爵に尋ねる。

 

オルト「息子さんの事、心中お察ししますリッツバーグ伯爵。奥様は?」

ラッセル「心労から寝込んでいる。私も寝込めるものなら寝込みたいが、そうもいくまい。事情徴収だろう?始めてくれ。」

オルト「失礼を承知しでお尋ねしますが、息子さんは昔から横柄な性格だったのですか?」

ラッセル「バカを言うな!多少気位は高かったが、『民は守るもの』と言う意識は持っていたはずだ!あの様な態度、先日が初めてだった。」

オルト「(中等学院時代の評判とは一致する………が、そこまで唐突に考えが一変するものか?まるで別人………。高等魔法学院に入ってからの言動はまるで………っ!)帝国貴族。」

 

 オルトは、そう考えた直後、思い当たる節があるのか、呟く。

 

ラッセル「何?」

オルト「いえ、失礼。最近の息子さんに対し私が受けた印象です。」

ラッセル「確かに帝国貴族にとって国民は搾取の対象………。貴族でない者は人間ではないと言い張る様な輩だからな………。」

オルト「(そう………まるでカートの変化は帝国貴族の洗脳を受けたかの様な………。)息子さんが、帝国の者と接触した事は?」

ラッセル「カートが通っていた中等学院の教師が元帝国の人間だったな。カートはその教師の研究会に参加していたはずだ。受験の為、一時家庭教師に来て貰った事がもあった。」

オルト「……………。」

ラッセル「そう言えば、妻に聞いたが………カートが死んだ日にも、その教師がカートを尋ねて来ていたらしいが………。」

オルト「っ!伯爵、その教師の名は?」

ラッセル「オリバー=シュトロームだ。」

 

 それを聞いたオルトとカルロスは、中等学院へと向かって行った。

 二人は、シュトロームの部屋へと入る。

 

オルト「警備局捜査官のオルト=リッカーマンです。」

カルロス「同じく、カルロス=ベイルです。」

シュトローム「初めまして。オリバー=シュトロームです。」

オルト「お忙しい所、すみません。」

シュトローム「いえ良いですよ。紅茶でも?」

オルト「いや、お構いなく。」

 

 シュトロームは、カップに紅茶を入れる。

 それを見たオルトは、呟く。

 

オルト「感知系の魔法ですか?」

シュトローム「ん?」

オルト「いえ、両目を眼帯で覆っているのに、動きに迷いがないので、視覚の代わりとなる魔法を使われているのかと。」

シュトローム「まぁ、そんな所です。」

オルト「不躾な質問ですが、その目は?」

シュトローム「恥ずかしい話ですよ。私は帝国貴族の家に生まれたのですが…………。」

オルト「っ!?」

シュトローム「ですが、実家の跡目争いに敗れましてね。私を亡き者にしようとする親族から命辛辛逃げ出したのですよ。この目もその時の襲撃によって。」

オルト「そうでしたか。失礼な事を聞いてしまってすみません。」

シュトローム「いえ、よく聞かれる事ですから。所で、今日はどう言った御用件で?まさか私の目の事を聞きに来られた訳ではないでしょう?」

 

 シュトロームの質問に対して、オルトは答える。

 

オルト「えぇ、シュトローム先生はこの学院の研究会で優秀な魔法使いを育成されているようですね。」

シュトローム「それが、何か?」

オルト「多くの生徒を研究会に誘い、随分熱を入れておられると聞きましたが。」

シュトローム「私は元帝国貴族ですからね。この国では風当たりは結構強いんですよ。私を学院内で認めさせるには目に見える功績が必要だったんです。」

オルト「成る程、それで。」

 

 オルトは納得する。

 帝国の者に対する風当たりが強いのは、よく聞く話なのだ。

 

シュトローム「私の生徒の中には高等魔法学院に合格した子も居たんです。」

オルト「そうなると、先生達にとっても……。今回の事は残念でしたね。」

シュトローム「そうですね。カートがまさか………こんな事になるとは………。」

 

 その言葉を聞いたオルトは、疑問に感じた。

 

オルト「シュトローム先生。」

シュトローム「何でしょう?」

オルト「実は今魔人化した彼の遺体を、各所の専門家が検分している最中なんです。出来れば先生方にも是非意見を聞かせて頂きたい。」

シュトローム「教え子の遺体を検分するのは気が進みませんね………。」

オルト「どうかそこをお願いします。」

シュトローム「分かりました。伺いましょう。有益な話が聞ける事を期待していますよ。」

 

 しばらくして、練兵場に到着する。

 シュトロームが口を開く。

 

シュトローム「しかし、なぜ警備隊の練兵場で検分を?」

オルト「こちらにも色々と事情がありまして。」

 

 そんな風に話していると、広場に到着する。

 

シュトローム「それで?カートの遺体は………。」

 

 シュトロームは聞こうとするが、周囲を騎士と魔法使いが取り囲む。

 

シュトローム「…………遺体の検分をすると言う雰囲気ではないようですね。」

オルト「しますよ。あなたの検分をね。」

シュトローム「私の?」

オルト「シュトローム先生、あなたの証言は見事でしたが、1つだけミスを犯しました。」

シュトローム「…………?」

オルト「陛下は、直ぐ様箝口令を敷かれました。魔人化した人間の名を口外してはならぬと。」

シュトローム「…………ッ!?」

オルト「カートの家族が不当な扱いを受けない様にね。国民で話題になっているのは、『高等魔法学院に魔人が出現し、偶々居合わせた英雄の孫シン=ウォルフォードと、仮面ライダーゼロワン、ユウト=イーウェルが倒した。』それだけです。なのに、どうして貴方は、魔人化したのがカートだと知っているんですか?」

 

 オルトの確信を得た言葉に、シュトロームは黙っていたが、突如笑い出す。

 

シュトローム「クク………ハハ………アハハハハハハ!!」

オルト「…………?」

シュトローム「まさか、カートの名が伏せられてるとは思いませんでしたよ。そうですか。話題になってるのは、ウォルフォード君とイーウェル君だけですか。」

オルト「今回の件は、貴様の仕業か!?何の目的だ!?」

シュトローム「…………実験ですよ。」

オルト「何…………!?人間を実験台にしたと言うのか!?」

シュトローム「さて、ここでの実験は全て終わりました。そろそろ失礼させて頂くとしますね。」

オルト「奴を捕まえろ!決して逃すな!!」

 

 オルトの指示で、騎士と魔法使いが動き出す。

 しばらくして、ビーン工房という所に向かう事になった。

 向かっている途中。

 

マリア「え!?マークと付き合ってるの!?」

オリビア「マークとは幼馴染みで、その自然と…………。」

シシリー「そこ、詳しくお願いします!」

オリビア「詳しくですか!?」

 

 女性陣が恋バナで盛り上がっていた。

 すると、背後で爆発が起こる。

 

オーグ「何だ!?」

 

 ユウト、迅、滅、シン、オーグが中を覗くと、シュトロームがオルトを魔法で吹き飛ばしていた。

 

迅「何これ!?」

滅「奥に誰か居るぞ。」

ユウト「誰だ?」

シン「両目に眼帯。まさか。」

オーグ「ああ。オリバー=シュトロームだ。」

シュトローム「おや、アウグスト殿下に英雄シン=ウォルフォード君、ユウト=イーウェル君ではないですか。」

 

 すると、倒れていたオルトがオーグに警告する。

 

ドミニク「お逃げ下さい殿下!!奴は魔人騒動の首謀者です!!」

オーグ「なっ………!?」

シン「お前がカートを魔人化させたのか……!?」

シュトローム「ええ。いやぁ面白い程思い通りに踊ってくれましたねぇ。とは言え、魔人化したにも拘らず、彼処まで弱かったのは計算外でしたけどねぇ。」

 

 その発言に、シンがキレた。

 

シン「そうかよ!コイツが全ての元凶か!」

シュトローム「おっと。」

 

 シンの放った魔法が、シュトロームの魔力障壁に阻まれる。

 すると、更に黄色の斬撃と紫色の矢とピンク色の弾丸が飛んでくる。

 シュトロームの魔力障壁が壊れ、シュトロームは驚く。

 ユウトはアタッシュカリバーを、迅はアタッシュショットガンを、滅はアタッシュアローを持っていた。

 

シュトローム「!?」

ユウト「お前は放ってはおけないな。」

滅「新たな犠牲者が出る前にお前を倒す。」

迅「本気で行くよ。」

 

 そう言って、三人はベルトを装着する。

 

ゼロワンドライバー!

『『フォースライザー!』』

 

 そして、プログライズキーを取り出す。

 

JUMP!

POISON!

WING!

 

 ユウトは、ライジングホッパープログライズキーを、オーソライザーでスキャンし、迅と滅は、フォースライザーにプログライズキーを装填する。

 

オーソライズ!

 

 すると、天井を突き破ってライジングホッパーのライダモデルが現れ、フォースライザーから蠍と隼のライダモデルが現れる。

 

シュトローム「何………!?」

「「「変身!」」」

 

 ユウトは、プログライズキーをゼロワンドライバーに装填して、迅と滅は、フォースエグゼキューターを引く。

 

プログライズ!

『『フォースライズ!』』

飛び上がライズ!ライジングホッパー!

”A jump to the sky turns to a rider kick.”

スティングスコーピオン!

フライングファルコン!

『『Break down.』』

 

 ユウトは仮面ライダーゼロワンに、迅は仮面ライダー迅に、滅は仮面ライダー滅へと変身する。

 

オーグ「何………!?」

シシリー「迅と滅も、仮面ライダーに………!?」

シュトローム「これは厄介ですね。なら、コイツらを使いましょうか。」

 

 すると、どこからともなく、狼の魔物が2体現れる。

 

マリア「魔物!?」

シュトローム「念の為に、忍ばせていて正解でしたよ。」

迅「ユウトとシンは、シュトロームの方を頼む。」

滅「俺と迅で、コイツらを片付けておく。」

ユウト「分かった。」

 

 シンとユウトは、シュトロームへと向かい、迅と滅は、狼の魔物に対応する。

 シンが魔法を放つが、障壁で防がれる。

 

シュトローム「もう少し魔力が薄かったら抜けてましたね…………っ!?奴らが消え!?」

 

 すると、背後にシンが居た。

 

シュトローム「っ!!」

 

 剣を振ったシンだが、シュトロームが間一髪で避けた。

 

シン「ユウト!」

ユウト「ああ!」

 

 ユウトは、ライジングホッパープログライズキーを、アタッシュカリバーに装填していた。

 

Progrise key confirmed. Ready to utilize.

グラスホッパーズアビリティ!

 

 ユウトは、アタッシュカリバーのトリガーを押す。

 

ライジングカバンストラッシュ!

 

 ユウトはライジングカバンストラッシュを放つが、躱されてしまう。

 

シュトローム「その2本の剣、魔道具ですね。」

シン「さあね!」

ユウト「どうかな!」

シュトローム「やはり君達は、危険ですね!」

 

 そう言って、雷撃を放ってくる。

 一方、迅と滅は。

 

迅「こんな奴ら、苦戦するほどでもないね!」

滅「油断するな。」

 

 迅と滅は、それぞれの武器で、狼の魔物を追い詰めていく。

 

滅「トドメだ。」

迅「うん。」

 

 二人は、プログライズキーを取り出す。

 滅はアメイジングヘラクレス、迅はガトリングヘッジホッグを取り出し、それぞれの武器に装填する。

 

STRONG!

REVOLVER

Progrise key confirmed. Ready to utilize.

ヘラクレスビートルズアビリティ!

ヘッジホッグズアビリティ!

 

 二人は、それぞれの武器を狼の魔物に向ける。

 

アメイジングカバンシュート!

ガトリングカバンショット!

 

 アタッシュアローから放たれたヘラクレスの角状のエネルギーが狼を貫き、アタッシュショットガンから放たれた大量の針が狼を蜂の巣にする。

 2体の狼の魔物は、絶命した。

 同じ頃、シンとユウトは、即席の連携でシュトロームを追い詰める。

 だが、シュトロームが飛んだ。

 

ユウト「飛んだ…………!?」

シン「宙に浮かぶとか反則だと思うんですけど?(浮遊魔法…………?そんなの流石に俺でも使えねーぞ………!)」

シュトローム「今のは焦りましたよ。流石は英雄の孫とゼロワン。魔人を討伐するだけの事はある。」

イズ「ユウト様!」

ユウト「イズ?」

イズ「レックスから、これを使って欲しいとの事です!」

 

 そう言って投げ渡したのは、フライングファルコンのプログライズキーだった。

 

ユウト「フライングファルコン!?何で………。」

迅「レイトが、僕用と君用の二つを作ってたんだよ!」

ユウト「そういう事か!」

 

 ユウトは、ライジングホッパープログライズキーを抜いて、フライングファルコンプログライズキーを構える。

 

WING!

オーソライズ!

 

 すると、シュトロームの上空から、天井を突き破って、フライングファルコンのライダモデルが現れる。

 

シュトローム「何!?」

マリア「今度は、隼………?」

ユウト「行くぜ!鳥ちゃん!」

 

 ユウトはそう言って、キーモードにしたプログライズキーを装填する。

 

プログライズ!

Fly to the sky!フライングファルコン!

”Spread your wings and prepare for a force.”

 

 ユウトは、ゼロワン・フライングファルコンへとハイブリッドライズする。

 そして、ユウトは飛び、シンはジェットブーツで大きくジャンプする。

 

シュトローム「何!?」

ユウト「悪いな!この形態になれば、空を飛べるんだよ!」

シン「一瞬なら、俺でも飛べるんだよ!!」

 

 シンはバイブレーションソードと魔法で、ユウトはアタッシュカリバーで攻撃する。

 すると、シュトロームの眼帯にヒビが入る。

 

シュトローム「調子に…………乗るなああああああ!!」

ユウト「グッ………!」

シン「ううっ………!」

 

 すると、全員が驚愕する。

 なんと、シュトロームの両目が、赤かったのだ。

 

シン「嘘だろ………!?」

ユウト「完全に理性を保った、魔人……!?」

シュトローム「やってくれましたねぇ。出来れば、正体を知られずにこの国から出たかったのですがね。」

滅「まさか、そんな事が………。」

シュトローム「ユウト君。君の言う理性が、人間である証拠なら、私のそれは、ちょっと違いますね。」

ユウト「どういう事だ?」

シュトローム「この身体になってから、私にとって人間なんて心底どうでもいい存在に成り下がったのですよ。利用しようが!騙そうが!殺そうが!!この身体になってから何とも思わくなったんですよ!!」

シン(狂ってる!カートと違ってアイツは真に魔人だ………!人類の敵になる存在だ………!!アイツはここで仕留めなければいけない!!)

ユウト「これ以上の犠牲を出す訳には行かない!」

 

 シンは光弾を撃って、フライングファルコンのライダモデルが入ってきた時に空いた穴に入っていく。

 ユウトは、フライングファルコンプログライズキーをアタッシュカリバーに装填する。

 

Progrise key confirmed. Ready to utilize.

ファルコンズアビリティ!

 

 さらに、アタッシュカリバーを一回畳んで、もう一度展開する。

 

チャージライズ!

フルチャージ!

 

 ユウトは、フライングファルコンの力でシュトロームの周囲を旋回して、強烈な竜巻を巻き起こす。

 

シュトローム「グッ………!(竜巻!?一体何の為に………。何!?)」

 

 シュトロームは、竜巻に飲まれつつも、上空を見る。

 そう、シンが放った魔法が発動しようとしていたのだ。

 

シン「そこでじっとしてろ!!俺の魔法は既に完成してるんだよ!!」

ユウト「行くぜ!」

 

 ユウトは、アタッシュカリバーのトリガーを押す。

 

フライングカバンダイナミック!

 

 シンの熱光線魔法とユウトのアタッシュカリバーから現れたフライングファルコンのライダモデルが、シュトロームに襲い掛かる。

 

シュトローム「グゥ………アァ…………アアッ!!!」

 

グカバンダイナミック

 

 二つの必殺技を受けたシュトロームは爆発する。

 爆発に怯んでいると。

 

オーグ「やったか!?」

シン「それ言っちゃダメ!!」

オーグ「ん?」

ユウト(典型的な生存フラグだしね………。)

 

 ユウトはオーグの発言に苦笑して、そのまま変身解除する。

 迅と滅も、変身解除していた。

 

迅「あの光線を浴びた地面がガラス化してるよ………。」

滅「凄まじい魔法というのは、確かだな。」

イズ「はい。流石のシュトロームも、消滅した可能性が高いかと。」

ユウト「…………。(だと思いたいんだけど、手応えがそこまで無かった。という事は、シュトロームが生存してる事も視野に入れるべきか。)」

 

 イズの言葉を聞いたユウトは、そう思っていた。

 すると、魔法師団団長のルーパー=オルグランが、シンとユウトに話しかける。

 

ルーパー「どうした?浮かない顔をして?魔人とは言え、人を手に掛けるのは気が滅入るか?」

シン「そういう訳じゃないんですけど……。」

ルーパー「だったら、胸を張りな。生き延びる事が出来のは、君たちのおかげだ。ありがとうよ、ウォルフォード君、イーウェル君。」

ユウト「はぁ…………。(ていうか、誰?)」

ドミニク「しかし、また魔人が現れたと聞いて飛んできてみたら、既に討伐されていた後とはな。」

 

 シンとユウトが首を傾げると、ドミニクは自己紹介をする。

 

ドミニク「私はドミニク=ガストール。ミッシェル様の後任の騎士団総長でね。」

ルーパー「おっと、自己紹介が遅れたな。俺はルーパー=オルグラン。魔法師団の団長だ。」

ユウト「どうも。」

 

 ユウトは、後の説明をシンに任せた。

 その間に考えていたのは。

 

ユウト(もしかして、アークがシュトロームと繋がってる可能性はあるのか?両方とも、人類をどうでも良いと思ってるし。もしかしたら、シュトロームがアークゼロに………。いや、最悪なシナリオだな。)

 

 ユウトは、そう考えていた。

 一方、シュトロームは、傷だらけになるも、生存していた。

 

シュトローム「ハァ………。ハァ……。やってくれましたね、ウォルフォード君。イーウェル君。」

 

 そう、咄嗟の判断で自ら爆発魔法を発動させて爆風で逃げたのだった。

 

シュトローム(しかし、アレを浴び続けるのは危険ですね。それに、あの隼に捕まらなかったから、逃げられた。)

 

 シュトロームは、ギリギリでフライングファルコンのライダモデルから逃げる事も出来たのだ。

 

シュトローム「やはり、あの二人………いや、迅と滅とか言った者も危険ですね。万全の体勢を整えなければ………。」

???「やっぱり、やられたんだ。」

 

 そう言って、謎の女性が声をかける。

 シュトロームは、苦笑気味に話しかける。

 

シュトローム「アズさん。助けてくれても良かったんじゃないですか?」

アズ「自力で逃げられたんだから、良いじゃない。それに、アーク様の結論は決して変わらない。」

シュトローム「その結論とは?」

アズ「人類滅亡。」

 

 そう言って、アズとシュトロームはアールスハイドから姿を消す。

 まだ、シュトロームとアークの陰謀は、始まったばかりだ。




今回はここまでです。
遂に動き出す、シュトロームとアーク。
滅亡迅雷の残りの亡と雷は、いずれ出します。
ちなみに、バルカンとバルキリーに変身するオリキャラは、現在、亡と行動を共にしています。
ユウトには、ヒロインは居ません。
サウザーに関しては、アークに悪意を教えた一族の末裔が変身する設定にしようかと思っています。
リクエストがある場合は、一番新しい活動報告にお願いします。
こんな感じに頑張っていきます。


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第3話 ハテンコウな新英雄

 シュトロームの襲撃があってから暫くして、ユウトもまた、ビーン工房に来ないかと誘われた。

 ユウトは、それを承諾した。

 

シシリー「ビーン工房はここから近いの?」

ユリウス「もうすぐそこで御座る。」

トール「けど、トニー殿は残念でしたね。来られないなんて…………。」

 

 そんな風に話している中、ユウトとシンは考え込んでいた。

 気づいたオーグが話しかける。

 

オーグ「さっきからどうしたんだ、二人とも?」

ユウト「オーグ、シュトロームは多分生きてる。」

オーグ「何!?」

シン「お前も見ただろ?俺の熱光線の跡を。」

オーグ「ああ…………。」

シン「普通はああやって凹みが出来るだけで、爆発なんて起きないはずなんだ。」

オーグ「っ!!つまり、あの時爆発を起こしたのは…………!」

ユウト「十中八九、シュトロームだろうな。」

シン「警戒は…………しておくべきだと思う。」

オーグ「…………シン、作りたい物を発注しろ。資金は王家が出す。」

シン「え?」

オーグ「今の話を聞いてしまうとなぁ………。シュトロームと対等に戦えるのはお前とユウトだけだ。装備は充実させておこう。」

 

 そんな風に話していた。

 ただ、ユウトは懸念していた。

 

ユウト(まあ、現状の戦力じゃあ、アークには勝てない。シャイニングホッパーを完成させる為にも、色んなプログライズキーのデータを集めないと…………!)

 

 そう、現状戦力では、アークには勝てない。

 ユウトはそう判断している。

 レックスからも、『シャイニングホッパーを完成させるには、各種プログライズキーを使ってくれ。』と言われている。

 そんな風に話し、ユウトが考えていると、ビーン工房に着く。

 

マーク「ビーン工房にようこそ!!歓迎するっス!!」

オリビア「お、おはようございます皆さん。」

 

 マークは、皆を歓迎する。

 すると、マークの後ろからオリビアが顔を出した。

 

シン「おはようマーク、オリビア。」

ユウト「あれ、休日でも2人一緒なのか?」

 

 オリビアを見て、シシリーとマリアがきゅぴーんと来た。

 

マリア「おはようオリビア。では早速♡」

シシリー「ええ、これはお話を伺わせて頂かなければ♪」

オリビア「うう…………お手柔らかにお願いしますぅ………。」

 

 そう言って、オリビアはシシリーとマリアに連れていかれる。

 ユウトは、苦笑しながら、その3人を見ていた。

 ユウト達は、工房の中に入る。

 

マーク「父ちゃん!とーちゃーん!」

ハロルド「何だバカ野郎!!デケェ声で呼びやがって!!工房ん中じゃ親方って呼べって言ってんだろうが!!!」

 

 彼はハロルド=ビーン。

 マークの父親にして、ビーン工房の工房主だ。

 ハロルドが怒鳴った事に、オーグを除く全員が驚く。

 オーグは、ハロルドに話しかける。

 

オーグ「忙しい所をスマンな。私はアウグスト=フォン=アールスハイドだ。」

ハロルド「ア…………ア…………アウグスト殿下ぁぁぁ!?」

 

 オーグの姿を確認したハロルドを始めとする職人達は、一斉に跪く。

 

ユウト「凄い勢いだな………。」

オーグ「ああ、手を止めさせてすまない。工房主に話があるだけだ。作業を続けてくれ。」

ハロルド「は…………話って言うのは?」

オーグ「実は、ここに居るシンの武器開発を手伝って欲しいのだ。」

ハロルド「このボウズ…………いや、坊ちゃんの武器ですか?」

オーグ「紹介しておこうか。彼はシン=ウォルフォード。賢者マーリン様の孫だ。」

ハロルド「っ!!!!って事は彼が魔人を討伐したって言う…………!?」

オーグ「頼めるか?」

ハロルド「そりゃ願ってもねえ!!新英雄様の武器を作れるとなりゃこれ以上の誉れはねえ!!それで、どんな武器を作るんですか?」

オーグ「シン。」

シン「あぁ。」

ユウト「どんな武器が出来んのかな?」

 

 ユウトはそう呟く。

 一方、アールスハイドから離れた国、ブルースフィア帝国の帝城では。

 

ヘラルド「ゼスト、貴様の持っていたアールスハイドの情報を何処から仕入れて来たのだ?」

 

 彼は、ブルースフィア皇帝のヘラルド=フォン=ブルースフィア。

 その皇帝に話しかけているのは、ゼスト。

 帝国の諜報部隊のリーダーだ。

 

ゼスト「王国内に協力者が居りましてね。魔物の増加で国中が混乱していると報告があったのです。」

ヘラルド「対して我が国の魔物は急激に減っている。王国が魔物の手を焼いている今………確かに攻め入る好機か。フン、お前如き平民の意見。本来ならば聞く耳を持たぬが、まあ今回は我々帝国貴族が有意義に使ってやる。光栄に思え。」

ゼスト「はい。ありがたき幸せ。」

 

 ブルースフィア帝国は、アールスハイド王国に攻め込もうとしていた。

 一方、ブルースフィア帝国の魔の手が迫っている事に気付いていないユウト達は。

 

シン「じゃあ親父さん、後はお願いします。」

ハロルド「おう任しとけ!試作が出来る頃にまた来てくれ!」

 

 シンの武器のアイデアを伝え、試作を作ってもらう事に。

 ユウト達は、外で待っているシシリー達と合流した。

 

マリア「あ、あっちも終わったみたい!」

シシリー「お話済みましたか?」

シン「あぁ。そっちは?」

マリア「まぁ一応。」

 

 そう言うマリアとシシリーは満足気な笑みを浮かべている。

 だが、オリビアはボロボロだった。

 

ユウト「オリビア、大丈夫か?」

オリビア「何とか…………。」

ユウト(恋バナをする女子って、怖いな。ていうか、こうなるまでやるのは、やめて差し上げろよ。)

 

 ユウトがそう思っている中、シンはマークに話しかける。

 

シン「所でマークの店って、他に何を売ってるんだ?」

マーク「2階は生活用品で、3階はアクセサリーとかッスね。」

シン(アクセサリーか………。防御魔法を付与して制服と併用すれば更に防御効果を高められるな………。)

 

 シンが考え込んでいると、シシリーが話しかける。

 

シシリー「どうかしましたか?」

シン「いやぁ。ねえシシリー、何か欲しいアクセサリーない?」

シシリー「え!?ア………ア………ア…………アクセサリー…………ですか!?えと、あの………ゆ…………指輪とか…………?でもいきなりそんな!と…………取り敢えずネックレスとかブレスレットも捨て難いし…………あ、ピアスも嬉しい…………。」

 

 シンからそう言われたシシリーは、慌てだす。

 それを見ていたユウトは。

 

ユウト(あ、シシリーの奴、絶対に勘違いしてんだろ。)

シン「そ、そんなに沢山欲しいの?」

シシリー「あ…………いえ!そう言う訳じゃなくて!シ、シン君に貰うなら何が良いかなって…………。」

シン「いや、実はアクセサリーの魔法付与について考えてて…………付与して皆に渡すなら何が良いかと思ってさ…………。」

シシリー「あ、そうですよね…………。」

シン「あれ!?」

 

 シンの言葉にシシリーが涙を流しながら落ち込み、シンは驚く。

 ユウト達は、シンに非難の視線を向ける。

 

オーグ「お前、それはないだろう………!」

トール「上げて落とす………鬼ですか!?」

マリア「シシリー可哀想…………!」

ユウト「うわぁ、シン君最低。」

 

 その後、シンがシシリーを連れて、工房の3階へと向かう。

 その間、マリアはユウトに質問をする。

 

マリア「ねぇ。」

ユウト「ん?」

マリア「ユウトは、彼女欲しいとか思った事ないの?」

ユウト「無い。」

オリビア「即答ですか………。」

オーグ「だが、これからは、お前一人で行動するんじゃないぞ。」

ユウト「何でですか?」

オーグ「お前も、これから表彰される。一人で居ると女に囲まれるぞ。」

ユウト「あぁ…………。」

ユリウス「しかし、ユウト殿は、魔法を使えぬで御座るよ。」

オーグ「そうだな。シンのゲートの魔法を使えないしな。」

 

 そんな風に話していた。

 そう、ユウトは魔法を使えない。

 だから、ゲートを使っての逃走が不可能だ。

 

ユウト(まあ、どうにかするか。)

 

 ユウトはそう考えていた。

 それから数日後、遂に叙勲式が始まる。

 王城の控え室にて、ユウトとシンは待っていた。

 

ユウト「いよいよか………。」

シン「緊張するな…………。」

ユウト「シン。」

シン「何だよ?」

ユウト「もう、なる様になれだよ。ヘマをしなければ大丈夫だ。」

シン「お前、何でそんなに緊張してないんだよ………。」

 

 シンは、ユウトに恨みがましい視線を向ける。

 ユウトは、シンの視線を気にしていない。

 すると、係員が入ってくる。

 

係員「ウォルフォード殿、イーウェル殿。お待たせしました。」

ユウト「分かりました。」

シン「いよいよだな………。」

 

 二人は、扉の前に案内される。

 扉が開かれると、声がする。

 

儀仗官「救国の勇者!新たなる英雄!!シン=ウォルフォード様とユウト=イーウェル様!ご到着!!」

 

 その声と共に、周囲の人が拍手をする。

 その数は沢山だった。

 

シン(マ、マジかよ………!?)

ユウト(すっげぇな。人が一杯だ……。)

 

 シンとユウトは前に進む。

 一番奥には、ディセウムが居て、二人は跪く。

 

ディセウム「シン=ウォルフォード、ユウト=イーウェル。此度の働き、誠に見事であった。その働きに敬意を表し勲一等に叙する。」

シン「つ………謹んでお受け致します。」

ユウト「謹んでお受け致します。」

 

 シンが緊張気味に言う中、ユウトは比較的冷静に言う。

 二人は、勲一等を叙勲される。

 

ディセウム「見事であった。」

シン「あ、ありがたき幸せ………。」

ユウト「恐悦至極にございます。」

シン(や…………やりづれーよディスおじさん……….!!)

 

 二人の叙勲が終わると、ディセウムは大声で宣言する。

 

ディセウム「皆の者よく聞け!このシン=ウォルフォードは我が友、賢者マーリン=ウォルフォードの孫であり、我にとっても甥の様な存在だ!彼がこの国に居るのは彼の教育の為であり、決して我が国に利を齎す為ではない!!彼を我が国に招く際、賢者殿と約束した事がある!彼を政治利用も軍事利用もしない事だ!!勿論これはユウト=イーウェルも同じ事だ!!その約束が破られた際、英雄の一族はこの地を去る!その事努々忘れるな!!」

シン(約束してくれた事…………本当に言ってくれたんだ………。こう言う所はカッケーな、ディスおじさん。)

ユウト(陛下………ありがとうございます。ゼロワンシステムは、決して兵器なんかじゃないんです。)

 

 何故、ユウトもその対象なのかと言うと。

 遡る事、レックスの家にディセウムが来た時の話。

 

レックス『…………それで、どういったご用件ですか、陛下。』

ディセウム『レックス、頼む。ユウト君を、魔人討伐に参加させて欲しいんだ。』

レックス『…………分かりました。ただし、一つ条件があります。これは、ユウト自身が言った事です。』

ディセウム『それは…………?』

レックス『ゼロワンシステムを、政治利用も軍事利用もしない事だそうだ。』

ディセウム『分かった。シン君の宣言と共に、それも宣言しよう。』

レックス『助かります。』

 

 そう話していたのだ。

 ディセウムは、シンとユウトに向かって笑顔を向ける。

 こうして、叙勲式を終えた。

 だが、パーティーが始まり、ユウトとシンは辟易する。

 そして、そのパーティーに参加していた、とある男性が。

 

???「ゼロワンか…………。兵器として使えそうですね…………。」

 

 そう呟く。

 そう、この男は、ディセウムの宣言を無視しようとしていた。

 一方、レックスは。

 

レックス「…………先生。俺は、上手くやれてますかね………。」

 

 そう言って取り出したのは、フォースライザーに似ているが、黒と黄色ではなく、銀と赤が基調になっているベルトと、ロッキングホッパーというゼツメライズキーだった。

 

レックス「…………いずれ、これをまた使う事になりそうだな。」

 

 レックスはそう呟く。

 暫くして、ユウトはまたビーン工房に来ないかと誘われる。

 その際に、イズも同行する。

 迅と滅は、体の定期メンテナンスの為、来られないとの事。

 

ハロルド「お!来たな?試作品出来てるぜ!」

 

 ハロルドは、出来上がった剣を見せた。

 

シン「流石本職!仕事が早い!」

ハロルド「当たり前ぇよ!そこの柄のトリガーを押してみな?」

シン「こう?」

 

 シンは、柄に付いてるトリガーを押す。

 すると、刀身が簡単に射出される。

 

ユウト「おお。」

イズ「なるほど。これなら、シン様の付与を刀身だけに出来ますね。」

トニー「これは凄いね!僕はビーン工房の新製品開発の現場に立ち会ったんだね!」

シン「何言ってんだよトニー。元はお前のアイデアだろ?」

トニー「あ、あはは。」

 

 トニーは、試作の剣に感動していて、オーグはその剣を見つめていた。

 その後3階のアクセサリーショップでアクセサリーを購入して、女性陣と合流する。

 

マリア「用事終わった?」

ユウト「あぁ。」

シン「これお土産。待たせたお土産。」

アリス「え!何何!?」

シン「皆の分のアクセサリーだ。」

シシリー「っ!」

シン「後で防御魔法の付与して渡すから。」

リン「あぁ、前に言ってた。」

オリビア「けど、皆の分って事は………。」

 

 オリビアが、何か気になるのかそう言う。

 トニー、ユリウス、トール、マークはポーズを取っていた。

 

シン「いや男子は指輪じゃないから………。」

「「「「うっ。」」」」

シン「ユウトにも渡すよ。魔法が使えなくても、魔道具くらいなら使えるだろうし。」

ユウト「助かるよ。」

 

 すると、オーグがシンに話しかける。

 

オーグ「シン、先程の剣だが、軍に採用を進言しようと思うんだが。構わないか?」

シン「え?婆ちゃんが『うん』って言わないんじゃないかな?」

 

メリダ『何だって!?』

 

ユウト「(何か、普通にそう言うのが想像つくな。)シンのバイブレーションソードを?」

イズ「そんな事をしたら、軍事利用になってしまうのでは?」

オーグ「いや、シンのバイブレーションソードではなく、一般兵用として採用したいんだ。改良は必要だが、大量生産すれば、経費を抑えつつ、武装を強化出来る。」

 

 ユウトとイズの質問に対して、オーグはそう答える。

 シンが口を開く。

 

シン「あの剣のアイデアはトニーだから、トニーが良いんなら俺は良いけど。」

ユウト「何でその話になるんだ?」

オーグ「実は、戦争が近いかも知れないんだ。」

シン「え?」

ユウト「戦争?」

オリビア「やっぱり………うちのお客さん達もよくそんな噂をしてます。」

シン「戦争って、何処と?」

アウグスト「ブルースフィア帝国だ。」

ユウト「ブルースフィア帝国?」

イズ「ブルースフィア帝国とは、アールスハイド王国、エルス自由商業連合国、イース神聖国に並ぶ、4大国家の一つです。」

 

 ユウトが首を傾げると、イズが答える。

 ユウト自身、アールスハイドから出た事が無いので、分からなかった。

 

ユウト「それにしても、何でブルースフィア帝国は、アールスハイドを攻めるんだ?」

オーグ「そんな事は向こうに聞いてくれ。帝国では、大規模な出征の準備がされているらしい。」

トニー「もしかしたら、帝国がゼロワンシステムを狙ってたりね。」

イズ「現状、何とも言えませんが、その可能性もあるかと。」

ユーリ「確かに、レイトって、世界中で有名な魔道具士だしねぇ。」

トール「まあ、帝国の目的は置いておいて、もし戦争が始まって長引けば、自分達学生にも動員が掛かるかも知れませんね………。」

 

 そう、戦争が長引けば、人員不足になり、戦争経験がない学生にも動員がかかる。

 トールの言葉に、周囲の空気が重くなる。

 オーグは、そんな空気を変えようと口を開く。

 

オーグ「ま、まぁ、まだ始まってもいないんだ。気にしても仕方あるまい。特にシンにユウト。魔人の襲来なら兎も角、戦争にお前達を駆り出す事は絶対にしない。軍事利用になるからな。」

 

 すると、それを聞いたシンとユウトが口を開く。

 

シン「確かに徴兵されないかも知れないけど、皆に危機が迫ったら俺は戦場に出るよ。」

ユウト「右に同じく。」

「「え?」」

 

 シンとユウトの宣言に、シシリーとマリアが驚く。

 イズは、やはりという表情を浮かべていた。

 

シン「ここで出会った皆は、掛け替えのない友達だからな。」

シシリー「シン君………。」

ユウト「俺のゼロワンシステムは、人々の笑顔を守る為にある。笑顔を守る為なら、俺は戦場に行く。」

マリア「ユウト…………。」

 

 そうして、シンは皆にアクセサリーを渡す。

 ユウトは、ペンダントを選ぶ。

 一方、ディセウムは、ドミニク、ルーパーを始めとする人たちと集まっていた。

 

ディセウム「そうか、帝国軍が我が国に向けて進軍を始めたか。降り掛かる火の粉は払わなければな。ドミニク。」

ドミニク「はっ!」

ディセウム「全軍に出撃命令を出せ!」

 

 ブルースフィア帝国が動き出し、アールスハイド王国も動きだす。




今回はここまでです。
謎の新キャラが登場。
そして、レックスが持っているのは、サイクロンライザーとロッキングホッパーゼツメライズキーです。
レックスが1型です。
設定としては、レックスの親が使っていたのを、レックスが貰い、使用していたという設定です。
近いうちに亡、バルカンとバルキリーに変身するキャラを出したいと思っています。
次回は、合同訓練の話です。


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第4話 ユウトの合同訓練

 アールスハイド王国軍とブルースフィア帝国軍がぶつかった、その日の夕方のブルースフィアの兵舎では。

 

ヘラルド「どう言う事だ!!」

 

 ヘラルド皇帝は激昂して、ワイングラスを投げる。

 

ヘラルド「ゼストの情報では、王国が大量発生した魔物の討伐に追われ………軍を出せた頃ではなかったのか!?何故王国軍は………我らを国境で待ち構えていた!?」

重臣「待ち伏せを受けた我が軍の被害は甚大………ここは一旦引いて、体制を立て直すべきかと………。」

ヘラルド「それより!ゼストはどうした!?奴は何処に居る!?」

重臣「それが………昨夜から奴の率いていた斥候部隊諸共、居所が掴めてません………。」

ヘラルド「っ!?………そうか!そう言う事か!!」

 

 そう、ゼスト率いる斥候部隊は、消息を絶ったのだ。

 ブルースフィア帝国軍は、アールスハイド王国軍が何もしていないと思っていたが、実際にはアールスハイド王国軍が待ち構えており、帝国軍は被害が甚大だった。

 しかも、帝国軍は知らないが、アールスハイド王国軍は、シンとトニーが考案した剣を使っていた為、武器を破壊されたとしても、すぐに使えるようになっていた。

 ヘラルド皇帝は、全てを察して、玉座から立ち上がる。

 

ヘラルド「ゼストめ、薄汚い平民の分際でよう謀りおったな!今度会ったら………必ず八つ裂きにしてやる!!!」

 

 ヘラルドは、そう叫ぶ。

 すると、兵舎の中に、兵士が入ってくる。

 

兵士「申し上げます!!」

ヘラルド「あぁ!?何だ!!」

兵士「は、はい!魔物が………帝都に魔物が大量に出現したと!!」

ヘラルド「バカな!!帝国領の魔物は少なくなっていたのではないのか!?」

 

 魔物が現れた事に、動揺するヘラルド。

 幕僚は、すぐに皇帝に進言する。

 

幕僚「へ………陛下!これは戦争所ではありません!!一刻も早く帝都に戻らなければ!!」

ヘラルド「くっ………!!全軍に告げよ!!急ぎ帝都に引き返し、魔物共を駆逐しろと!!」

「「「はっ!!」」」

 

 こうして、帝国軍は撤退をする事になる。

 一方、アールスハイドの兵舎では、ドミニクとルーパーが話していた。

 

ルーパー「帝国軍は引き始めたか。」

ドミニク「愚直に突撃を繰り返し、兵を擦り減らした挙句に撤退とはぁ。」

ルーパー「どうする?一層帝都まで追い掛けて行くか?」

ドミニク「この際、徹底的に叩いておくのも悪くないな。」

 

 その様に話していた。

 すると、1人の兵士が入ってくる。

 

兵士「ご報告します!」

ドミニク、ルーパー「ん?」

兵士「帝国軍と戦闘中、我が軍の先鋒が魔物に襲われました!!」

ドミニク「何だと!?」

兵士「魔物に行く手を阻まれて………これ以上の追撃は不可能かと………!!」

ルーパー「どうなってんだ!?魔物が帝国軍の退却を助けたのか!?」

 

 魔物が帝国軍の退却を助けた様に見え、動揺するドミニク達。

 一方、帝都は、地獄絵図と化していた。

 ある男はライオンの魔物に襲われ、ある女性は猿の魔物に食われた。

 そんな中を、平然と歩くシュトロームとミリア。

 

シュトローム「どうですか?ミリアさん。魔人になった感想は。」

ミリア「はい。これまで感じた事が無い程、力が溢れて来ます。」

シュトローム「それは良かった。さて、出兵した帝国軍が戻って来るまで2〜3日程ですが、その間に、ゼスト君達も戻るでしょうし、帝国軍を迎え撃つ準備でもしましょうか。」

ミリア「はい、シュトローム様。」

 

 そう、ゼスト率いる斥候部隊は、シュトロームの元に降っていた。

 数日後、ブルースフィア帝国は、壊滅寸前まで追い詰められた。

 帝城では、ヘラルドが憤慨していた。

 

ヘラルド「おのれぇ………!魔物如きが余の帝都を踏み躙りおって!!」

幕僚「先行して帰還した部隊が、既に魔物の討伐を始めております。この騒ぎも、何れその内………。」

ヘラルド「今日中だ!!陽が落ちるまでに片を付けろ!!」

幕僚「た、直ちに!!」

 

 ヘラルドは、幕僚に対してそう叫ぶ。

 その間に、考えていた事は。

 

ヘラルド(何としても、奴らを片づけ………ゼロワンシステムを、我が手中に……!!)

 

 そう、ヘラルドは、ゼロワンシステムを狙っていたのだ。

 それが、アールスハイドに攻め込む理由。

 ヘラルドは、自室に戻る。

 すると。

 

シュトローム「お待ちしておりましたよ。皇帝陛下。」

 

 シュトロームは、玉座に座っていて、ヘラルドを待ち構えていた。

 ヘラルドは、シュトロームを見ると、驚愕の表情を浮かべる。

 

ヘラルド「き…………貴様は…………!?オリベイラ!?」

 

 シュトロームは、指を鳴らす。

 すると、ヘラルドの背後の扉が閉まり、ヘラルドは驚く。

 

ヘラルド「っ!?」

シュトローム「あなただけは、どうしても私自身で始末しておきたくて。」

 

 シュトロームは、両目を赤く光らせる。

 すると、ヘラルドの足元に魔法陣が出現して、ヘラルドは動けなくなる。

 

ヘラルド「ぐぅぅ…………!?」

 

 ヘラルドがパニック状態になってる中、シュトロームが左手に魔力を集めていた。

 そして集めた魔力で魔法弾を生成し、ヘラルドに向けて放った。

 

ヘラルド「うわあああああああああああああ!!!!」

 

 魔法弾を受けたヘラルドが消し炭にされてしまい、大爆発を起こした。

 それから三日後、アールスハイド王国軍がブルースフィア帝都に到着した。

 

ルーパー「一体何がどうなっているんだ…………!?」

ドミニク「斥候部隊からの情報では、大量の魔物に襲われたとの情報だが、その報を受けて慌てて引き返した帝国軍もこのザマって事か………。」

 

 ルーパーが周囲の惨状に唖然として、ドミニクは斥候部隊から聞いた情報から推測する。

 すると。

 

シュトローム『ようこそ、お待ちしていましたよ?王国軍の皆さん。』

 

 シュトロームの声が響き渡る。

 その声を聞いたルーパーは、魔法を発動待機状態にして、ドミニクは抜刀する。

 

ルーパー「此奴は…………!」

ドミニク「何者なんだ!名を名乗れ!」

シュトローム『オリバー・シュトローム。』

ドミニク「貴様が王都を騒がせた魔人!」

シュトローム『随分到着に時間が掛かった様ですね。』

ルーパー「そうか、あれはテメェの差し金か!!」

 

 シュトロームの言葉に察したルーパーが叫ぶ。

 シュトロームは、ルーパーの言葉を肯定する訳でもなく、紡いでいく。

 

シュトローム『あなた達が帝国軍の数を減らしてくれたお陰で、楽に奴らを全滅させられましたよ。』

ドミニク「まさか………この戦争自体…………貴様が仕組んだとでも言うのか!?」

 

 その言葉を聞いたドミニクは、驚愕の表情を浮かべる。

 シュトロームは、ドミニクの言葉に対して、笑いながら答える。

 

シュトローム『流石、騎士団総長にして軍務局長のドミニク殿。察しが良いですねぇ。』

 

 すると、ドミニク達の目の前に、大量の人影が現れる。

 

「「っ!?」」

ルーパー「な………何だ彼奴ら…………!?」

ドミニク「全員が…………魔人!?」

 

 魔人が大量に現れた事で、ドミニク達は撤退していった。

 それを見ていたアズは。

 

アズ「フフフ………!アーク様の人類滅亡の結論は、着実に進んでるね。…………まあ、あの魔人達は、いずれ滅ぼすけど。」

 

 そうほくそ笑む。

 数日後のアールスハイド王城では、緊急会議が行われる。

 

ディセウム「まさか………シュトロームが生きていたとは………。」

ドミニク「我らだけでは勝ち目が無いと………止む無く撤退致しましたが………。」

ディセウム「いや、それは懸命な判断だ。責めはせん。」

 

 ドミニクは、悔しそうに俯くが、ディセウムは労いの言葉をかける。

 

高官「しかし………魔人が十数人とは………。」

高官「陛下、如何致しましょう………?」

ディセウム「…………。」

 

 しばらくして、高等魔法学院だけでなく、ユウトの元にも通達が入る。

 

レックス「ユウト。」

ユウト「どうしたん?レックス。」

レックス「実は、陛下から戦力の増強と究極魔法研究会との連携を深めるように頼まれたんだ。」

迅「やっぱり、シュトロームは生きてたんだ。」

滅「シュトロームが、ブルースフィア帝国を滅ぼしたのか。」

イズ「それで、究極魔法研究会との連携を深めるとは、どういう事でしょうか?」

レックス「ああ。これは、殿下とシンからのお願いの意味もあるんだ。」

ユウト「あの2人が?」

レックス「今のうちに、連携を深めれれば、対応がしやすくなるとの事だ。」

ユウト「まあ、それに関しては、分かったけど、何で帝国はアールスハイドに攻め入って来たんだ?」

 

 その言葉に、レックスは少し黙ったが、すぐに口を開く。

 

レックス「…………お前には言っておこう。帝国の皇帝、ヘラルド=フォン=ブルースフィアは、ゼロワンシステムを狙ってたんだ。」

ユウト「え!?」

迅「そうなんだよ。」

滅「ああ。」

ユウト「…………皆、知ってたのかよ。」

イズ「貴方に言うと、責任感で押し潰されそうだったから、というレックスの判断です。」

ユウト「…………そうか。」

レックス「アイツは、事あるごとにレイトにゼロワンシステムを要求してたんだ。」

ユウト「…………帝国の版図を広める為にか。」

レックス「…………ああ。」

 

 ユウトは、表情に怒りを見せていた。

 ユウト自身、ゼロワンは兵器ではないと強く認識している為だ。

 ただし、ユウト本人は、叙勲式の際に、ゼロワンシステムを狙っている人物には気づいてはいないが。

 

迅「で、レイトはそれを断った。」

滅「その結果、ヘラルドが攻め込み、レイトは何とかゼロワンシステムの設計図を全部持ち出して逃げる事に成功した。」

イズ「アールスハイドに逃げ込めたおかげで、帝国は手出しが出来なかったのです。」

レックス「まあ、そんな話は終わりだ。呼ばれてるのは、ユウト、迅、滅の3人だ。」

ユウト「まあ、分かった。」

 

 そうして、合同訓練の当日になった。

 ユウトはシン、オーグ、シシリー、マリアと同じ組になり、迅はアリス、リン、ユーリ、トールと、滅はユリウス、トニー、マーク、オリビアと一緒になる。

 

シン「両学院から4名ずつ、計8人に組んで森の魔物退治かぁ。」

ユウト「俺は、シン達と一緒の組になったわけだな。」

オーグ「増えた魔物の討伐も兼ねた実践訓練だな。」

シシリー「魔物と戦うなんてドキドキしますけど、シン君と一緒なら安心ですね。」

シン「いや、訓練だからシシリーも頑張らないと。」

ユウト「そうそう。この先何があるか分からないからね。」

シシリー「あっ!そ、そうでした。」

 

 ユウト、シン、オーグ、シシリーはそう話している。

 それを見ていた騎士学院のとある生徒達は。

 

クライス「あれが英雄の孫とゼロワンか。」

ノイン「所詮は魔法使いとただの戦士だろ?」

ミランダ「どうせもやしよ。もやし。」

ケント「足手纏いにならないと良いがな。」

 

 4人は、シンとユウトに向かってそう吐き捨てる。

 それを見たマリアは、シンとユウトに向かって言う。

 

マリア「ね?やな奴らでしょ?」

ユウト「小物感あるな。」

シン「あはは………。」

 

 そう、ユウトはレックスから忠告されていたのだ。

 騎士学院の生徒が見下してくるかもしれないと。

 しばらくして、馬車には、緊迫した空気が満ちていた。

 

ユウト「ところで、アンタらの名前は一体なんだ?」

クライス「騎士学院1年主席のクライス=ロイドだ。」

ミランダ「次席のミランダ=ウォーレスよ。」

ノイン「ノイン=カーティス。」

ケント「ケント=マクレガーだ。」

シン「(よりによってさっきの奴らかよ……。)シン=ウォルフォードです。」

ユウト「ユウト=イーウェルです。」

オーグ「アウグスト=フォン=アールスハイドだ。」

マリア「マリア=フォン=メッシーナよ。」

シシリー「シシリー=フォン=クロードです。宜しくお願いします。」

 

 両学院とユウトは自己紹介をする。

 シンは、騎士学院組に質問をする。

 

 

シン「なぁ、訓練が始まる前に聞いて良いか?」

クライス「何だ?」

シン「君ら魔物と戦った事はある?」

ミランダ「何!?ちょっと自分が魔人を倒したからって自慢してんの!?」

シン「そうじゃなくて、これから俺達は実際に魔物を討伐しに行くんだ。騎士がどうとか魔法使いがどうとか、そんな下らない事言ってると………。」

ミランダ「言ってたら何よ!?」

シン「死ぬぞ?」

 

 シンの真面目な顔に、騎士学院組は怯む。

 ミランダは、見下されてるかと思ったのか、声を荒げる。

 

ミランダ「五月蝿いわね!本当なら騎士学院生だけで魔物の討伐くらい出来るのよ!!」

クライス「ミランダの言う通りだ!精々足手纏いにならない様にするんだな!」

ユウト「…………そんな事を言ってると、足元掬われるぞ。」

ミランダ「五月蝿いわよ!そんな偉そうな口を叩くんじゃないわよ!!」

ユウト「………俺は忠告したからな。」

 

 ユウトの忠告に、ミランダは口調を荒げる。

 すると、オーグが口を開く。

 

オーグ「お前達、そんな認識でこの訓練に参加していたのか?」

クライス「あぁいえ!別に殿下が邪魔とか、そう言う事を言った訳ではなく………。」

オーグ「そんな事を言っているのではない!この訓練は、騎士学院生と魔法学院生の連携を強める為の訓練だ。先程ユウトが言った様に、そんな余裕な言葉を言ってると痛い目見るぞ。」

クライス「そ、それは………。」

 

 オーグの言葉に、クライスは何も言えなくなる。

 オーグは、騎士学院生の言動を見て、判断を下す。

 

オーグ「分かってはいるが、納得は出来ん、か。なら仕方ない。シン、ユウト。お前達はこの訓練で魔物を討伐する必要は無い。」

シン「え?」

ユウト「そうなのか?」

オーグ「そうだ。一度、魔法使いの援護無しで魔物を討伐してみろ。この訓練の意義が分かる。」

クライス「っ!…………殿下がそう仰るなら………。」

 

 騎士学院生は、気まずい雰囲気になり、マリアはそっぽを向く。

 それを見たユウトは。

 

ユウト(多分、マリアも納得してないんだろうな。魔法の方が強いとか言ってそうだし。)

 

 そう思っていた。

 しばらくすると、目的地に到着した。

 

シン「随分森の奥まで来たなぁ………。」

オーグ「実力に応じて、危険度の高い場所で訓練する事になっているからな。」

ユウト「ていうか、実力に応じてって、俺はここで良いのかよ。」

マリア「強い魔物が出る確率が高い場所でって訳ね。」

ユウト「まあ良いか。」

シシリー「各組ごとに指導教官の方が来られると言う事でしたけど………。」

???「ようシン!」

シン「あーーー!!」

 

 シンに声をかけたのは、ジークフリード=マルケスとクリスティーナ=ヘイデンだった。

 

クリスティーナ「今日は宜しくお願いしますね。」

シン「ジークにーちゃんとクリスねーちゃん!?」

ユウト「…………誰?」

ジークフリード「君がユウト君だね。陛下から話は聞いてるよ。俺は、ジークフリード=マルケス。よろしくな。」

クリスティーナ「私は、クリスティーナ=ヘイデンです。」

ユウト「どうも、ユウト=イーウェルです。」

 

 ユウトは、2人に挨拶する。

 シンは、2人に声をかける。

 

シン「2人が指導教官なんだ………。頼むから喧嘩しないでよ?」

ジークフリード「此奴が絡んで来なかったらな。………あぁ!?」

クリスティーナ「此奴が絡んで来なかったらね。………あぁ!?」

シン「だから、それを止めろって言ってんだよ!!」

ユウト(…………何か、騎士学院生と魔法学院生の仲が悪い事の象徴みたいな気がするな。)

 

 ユウトは、そう思っていた。

 すると、マリアはジークフリードに話しかけていた。

 

マリア「私!シンの同級生のマリアです!ジークフリード様!あ………握手をして貰えませんか!?」

ミランダ「ズ………ズルいぞお前!ア………私も良いですか…………?」

 

 一方、騎士学院生の男性達は、クリスティーナに話しかけていた。

 

クライス「俺…………いえ!私はクライス・ロイドと言います!」

ノイン「俺はノインです!今日は俺の勇姿を見ていて下さい!」

ケント「ケ………ケントです!」

シン「何これ?」

シシリー「お2人は、どちらの学院の生徒にも人気者なんですよ。」

オーグ「何しろ、父上の護衛を任される程の魔法使いと騎士だからな。」

シン「ジークにーちゃんはチャラ男だからモテても違和感ないけど………。クリスねーちゃんは意外だったな………。」

クリスティーナ「む?意外とは何ですか!失礼な!」

 

 そんな会話をして、森の最深部へと進んでいく。

 ジークフリードは、オーグの言葉に驚く。

 

ジークフリード「はぁ?最初は騎士学院生だけで魔物を討伐する?」

オーグ「あぁ、彼らの希望でな。言葉だけでは、この訓練の意義が分からないらしい。」

クリスティーナ「軍に入ったばかりの騎士や魔法使いには、よくある事です。」

ジークフリード「自分達だけで戦える。支援は無用って奴か。」

ユウト「愚かにも程があるだろ。連携は欠かせないってのに。」

 

 ユウトの言葉に、クリスティーナが頷く。

 

クリスティーナ「ユウト君の言う通りですね。実践を経験すれば、すぐにそれが間違いだと気付くもの。今回の訓練で、彼らがそれを学んでくれれば良いのですが。」

ジークフリード「学生時代に鼻っ柱をへし折られといた方が、後で面倒は無いか。君達はそう言う事言わないんだな?」

ユウト「約1名、納得してない人が居るけど。」

マリア「な、何よ………?」

オーグ「ユウトの言う通りだ。メッシーナはこの訓練の意義を理解しているのかと思ってな。」

 

 オーグの言葉に、マリアは反論する。

 

マリア「理解してますよ!シンとユウトが魔人と戦ったのを2回も見せられたら………。とてもじゃないけど、あんな風には出来ない……。私の力じゃ、騎士や剣士の支援がないと強い敵とは戦えないって………。」

 

 マリアは、そう独白する。

 すると、ジークフリードが顔を近づける。

 

ジークフリード「マリアちゃんだったかな?」

マリア「は………はい!!」

ジークフリード「そうやって、今の自分の実力を認識出来ているのは良い事だ。君は強くなれるよ。」

マリア「…………!!!」

シン(珍しいな、こう言うマリア………。)

 

 シンは、そう思っていた。

 一方、それを見ていたミランダは。

 

ミランダ(ジークフリード様にあんな事言われるなんて悔しい…………!)

 

 嫉妬心を見せていた。

 しばらく進むと、騎士学院生が構えながら進み始めた。

 

シン「アイツら、何警戒してんだ?索敵魔法には何も引っ掛かってないのに。」

ジークフリード「警戒っつーより、あれは緊張だな。」

クリスティーナ「無理もないですね。初めて魔物と戦うのですから。」

ユウト「っ!?」

 

 ユウトは、気配を察知した。

 シンも、気付いたようで、ジークフリードに声をかける。

 

シン「ジークにーちゃん!」

ジークフリード「分かってる。よし、騎士学院の諸君!もうすぐ魔物が現れる!戦闘態勢を取れ!」

 

 ジークフリードの声に、騎士学院生は、剣を抜刀する。

 すると、猪の魔物が現れる。

 

マリア「イノシシ!?」

シン「くそ!魔物化してなきゃ美味そうなのに!!」

オーグ「お前………。」

ユウト「逞しすぎない………?」

 

 シンの発言に、ユウトとオーグの2人は呆れる。

 猪の魔物が吠え、ミランダが声を上げる。

 

ミランダ「ビビるんじゃないわよ!!私達騎士学院のトップの実力を見せ付けてやるのよ!!」

「「「おう!!」」」

 

 ミランダは、猪の魔物に攻撃するが、躱される。

 

ミランダ「っ!!は………速い…………!!」

 

 猪は、後ろに居たミランダに蹴りを入れる。

 

ミランダ「うわあっ!!!」

 

 残りの面子も、猪の突進に薙ぎ払われる。

 

クライス「こ、これが………魔物………!?」

 

 猪の魔物は、騎士学院生に向かっていく。

 

ユウト(見てられないな。)

 

 シンとユウトは、バイブレーションソードとアタッシュカリバーを取り出して前に出て、一閃して、猪の魔物を倒す。

 

ユウト「こんなもんだな。」

ケント「い…………一撃………!?」

クライス「ウォルフォード………イーウェル……何時の間に………!?」

 

 それを見ていたクリスティーナは、騎士学院生に苦言を呈する。

 

クリスティーナ「不様ですね。この魔物は、中型でも弱めの部類ですよ?大言壮語を吐きながらあの程度の魔物にこの有り様。騎士学院のトップと驕っていた様ですが、所詮戦場を知らない学生の中の話。自分達の無力さをその身に刻みながら、残りの訓練に挑みなさい。」

ミランダ「は、はい…………。」

シシリー「あ………あの、回復魔法を掛けるのでじっとしていて下さいね?」

 

 シシリーは、騎士学院生に回復魔法をかける。

 クライスは、申し訳なさそうに口を開く。

 

クライス「す、すまん………。俺達はお前達を見下していたのに…………。」

シシリー「そんなに気にしてないですよ。今は同じパーティなんだから、これくらい当たり前です。」

 

 その言葉に、騎士学院生は一目惚れした。

 それを見ていたシンは苛ついていた。

 

シン「ぐぬぬぬぬ…………!!」

オーグ「どうどう。」

ユウト(これは、今度はシンを抑えないといけなさそうだな………。)

 

 訓練は続く。

 だが、騎士学院生の男達は、シシリーにべったりだった。

 シンは、苛ついていた。

 

オーグ「そうイライラするな。」

シン「別にイライラなんか…………!!」

オーグ「してるだろ?」

ユウト「そんなにイライラするなら、いっその事さ、『シシリーは俺の女だから手を出すな。』って言ったら?」

シン「ばっ…………!!何言ってんだよ!!」

マリア「あの手の男はね、自分に優しくしてくれる女に簡単に惚れるのよ。か弱い魔法学院の女ならここにも居るのにね………!!」

ミランダ「私なんか彼奴らにあんな事されたの一度も無かったのにね…………!!」

「「私らの何が悪いってのよーーー!!!」」

ユウト「俺に八つ当たりするなよ………。」

 

 マリアとミランダは、ユウトに向かって叫ぶ。

 ユウトは、そうつぶやく。

 それを見ていたジークフリードが声をかける。

 

ジークフリード「おーいお前らー!また魔物が来るぞー!じゃれてないで準備しろー!」

シン「っ!」

ユウト「どうした?」

シン「ジークにーちゃん………これちょっと数が多くない?」

ジークフリード「ああ………。かなりの数だな。」

 

 すると、ジークフリードの下に、教官が駆け込んでくる。

 

女性教官「ああ!ジークセンパイ!!クリスお姉様!!逃げて下さい!!」

男性教官「大量の魔物が此方に向かってます!!」

ジークフリード「規模は?」

男性教官「少なくとも100は居ます!!」

クライス「100…………!?」

ノイン「そんな!?」

 

 ジークフリードが聞く中、シンはジークフリードに声をかける。

 

シン「ジークにーちゃん。」

ジークフリード「ん?」

シン「それ、俺がやるよ。」

ユウト「俺もやって良いか?」

ジークフリード「そうだな。」

シシリー「そんな!シン君にそんな数………!」

ユウト「おーい、俺を忘れてね?」

ジークフリード「シンは兎も角、ユウトは大丈夫だろ。」

クリスティーナ「皆!後ろに下がって!」

 

 クリスティーナの声で、全員が後ろに下がる。

 ユウトは、ゼロワンドライバーを装着して、フレイミングタイガープログライズキーを取り出す。

 

ユウト「これで行くか!」

 

FIRE!

オーソライズ!

 

 衛星ゼアから、ライジングホッパーとフレイミングタイガーのライダモデルが現れ、ユウトの周囲に着地する。

 ユウトは叫ぶ。

 

ユウト「変身!」

 

 すぐに、キーモードにしたフレイミングタイガープログライズキーを、ゼロワンドライバーに装填する。

 

プログライズ!

Gigant flare!フレイミングタイガー!

”Explosive power of 100 boms.”

 

 ユウトの目の前に電子図の様な物が現れ、それがユウトを通過すると同時に、全身が黒いアンダーアーマーに包まれ、2体のライダモデルが分解して、アーマーとなる。

 ユウトは、ゼロワン・フレイミングタイガーへと変身した。

 

シン「久々に爆発系行くか。」

ユウト「さーて、行くか!」

 

 シンは、両手に魔力を集める。

 ユウトは、両手に装備されたパンテラバーナーから、炎を出して、チャージする。

 

シン(まずは、生成した水素を高濃度で圧縮!そんで酸素も!わりーけど、ちょっとイラついてるんで憂さ晴らしするぞ?)

 

 シンは、そう思っていた。

 すると、大量の魔物の背後から、虎の魔物も現れる。

 

クライス「と、虎…………!?」

ミランダ「あれって、災害級だよね……!?」

ノイン「まさか、アイツから逃げてたのか!?」

 

 騎士学院生は動揺するが、シンとユウトは動揺していない。

 ユウトは、炎を維持しつつ、プログライズキーを押し込む。

 

フレイミングインパクト!

 

シン「滅びろおおおおおおお!!!!!」

ユウト「ハァァァァ!!!」

 

 2人から魔法と火球が放たれ、魔物達は消し飛んでいく。

 それを見た騎士学院生達は、呆然とする。

 なぜなら、2人の攻撃の後には、魔物は一匹も居らず、地形が抉れていたのだ。

 

シン「ふー、スッキリしたー!」

クライス「これが………シン=ウォルフォード………ユウト=イーウェル………!?」

ノイン「賢者の孫にして………新たなる英雄の力と…………ゼロワン…………。」

シシリー「シン君!大丈夫ですか!?」

シン「ああ。」

ユウト(やっぱり、消し炭にするんじゃなくて、戦闘すれば良かったな。多分、戦闘データがあまり取れてない。)

 

 ユウトは、戦闘データが余り取れなかった事を気にしていた。

 その後、ミランダがシンとシシリーの事を付き合ってるのかと聞き、騎士学院生は、別の所が折れてしまった。




今回はここまでです。
次回は、迅と滅の方の訓練の様子、合宿云々の話になります。
ちなみに、次の話にて、あのキャラが登場します。
滅亡迅雷のユニット、ユートピアが歌うS.O.S、MONKEY MAGICが歌うAnother daybreak、AIりんなが歌うA.I. ∴all imagination Type-02が配信されました。
ただ、AIりんなの奴は、フルだと更に嬉しかったです。
賢者の孫とゼロワンは、こんな感じに進んでいきます。
ただ、賢者の孫とリバイスの小説は、リバイス寄りのままにするか、賢者の孫寄りにするかで、《この聖なる刃に祝福を》の方でアンケートを受け付けています。
最近、異世界チート魔術師と仮面ライダーウィザード、このすばと仮面ライダー鎧武の小説を書こうかと考えています。
流石に、他の小説もあるので、厳しいと思いますが。
次回も頑張ります。


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第5話 オレ達の合宿

 魔法学院と騎士学院の合同訓練で和解したユウト達のパーティ。

 しばらく進むと、熊の魔物が姿を現した。

 

ミランダ「熊の魔物………。」

クライス「くっ………怯むな!」

オーグ「クロード!メッシーナ!」

「「はい!」」

 

 3人が同時にファイヤーボールを飛ばし、熊の魔物に命中した。

 熊の魔物は炎で焼かれ苦しみ始めた。

 

クライス「ウオオオオオオオ!!!」

 

 走り出したクライスだが、熊の魔物が爪でクライスを引き裂こうとしたが、シンの魔力障壁のお陰で無傷で済んだ。

 

ミランダ「ウォルフォード君!」

オーグ「止めを刺せ!!」

「「ハアアアアアア!!!」」

 

 同時に走り出し、熊の魔物の左足を剣で突き刺した。

 クライスもそれに続いて熊の魔物の右足を突き刺した。

 

ミランダ「ハアアアアアアアア!!!!」

 

 そして最後にミランダがジャンプして、熊の魔物に向かって剣を振り下ろして討伐成功する。

 騎士学院の生徒が安堵の息を漏らす中、シシリーが近寄る。

 

シシリー「皆さん!お怪我はありませんか?」

ケント「擦り傷です…………。」

ノイン「問題無い………。」

シシリー「回復魔法で治療します!」

 

 シシリーは、回復魔法で騎士学生を回復させる。

 

クリスティーナ「様になってきましたね。」

ジークフリード「ようやく、剣と魔法の連携の何たるかが分かってきたって所か。それにしてもシン。お前は兎も角、殿下達の上達振りは何だ?現役の魔法師団の上位者と変わらない、と言うか、上回ってないか?」

 

 ジークフリードは、シンに話しかけていた。

 ユウトは、特に何もしていない。

 

ユウト(ああ…………。どうにかして、戦闘データを集めたかったけど、仕方ないか。)

クリスティーナ「ユウト?」

ユウト「はい?」

クリスティーナ「何か考え事ですか?」

ユウト「大した事ないですよ。」

クリスティーナ「そうですか。」

 

 クリスティーナとユウトがそう話してる中、オーグがシンに近寄る。

 

オーグ「ジークフリード。お前は軍の人間だ。それはシンの魔法の軍事利用になる。それはユウトのゼロワンと同じだ。下手をすれば、外交問題に発展するぞ?」

ジークフリード「そ、それは………。」

オーグ「今ですらギリギリだ。この力が周辺国に拡散すれば、魔人ではなく、人の手で世界が滅びるぞ。」

シン「そこまでの事かよ………?」

「「はぁ…………。」」

 

 シンの言葉に、オーグと、シンのそばによったユウトがため息を吐く。

 

オーグ「まだ自覚してなかったのか?」

シン「俺がやってる事は問題なのか?」

ユウト「当たり前だろ?」

オーグ「まぁ、一概にそうとは思えん。今は緊急事態だからな。魔人の大量出現と言う。」

シン「…………。」

オーグ「研究会の皆も、この力を世に拡散させないよう言ってある。力の独占と言われようが構わん。だからシン、これ以上自分の魔法を拡散させるな。」

シン「分かったよ。」

 

 シンは、オーグの言葉に頷く。

 だが、ジークフリードは食い下がる。

 

ジークフリード「ではせめて、マーリン様の練習法だけでも!」

ユウト「懲りないね………。」

オーグ「恐ろしく地味だぞジークフリード………。お前に出来るか?」

ジークフリード「勿論やってみせますよ!それで、その方法とは?」

 

 ジークフリードは、そう言う。

 オーグは、その方法を伝える。

 

オーグ「魔力制御の練習だ。毎日毎日、少しずつ制御出来る魔力の量を増やしていく。それだけだ。」

ジークフリード「たったそれだけですか…………?」

オーグ「なんだ?疑ってるのか?クロード!メッシーナ!来てくれ!」

ユウト(まあ、この世界の魔法は、基本的には詠唱が必要だからな。)

 

 ユウトは、シシリーとマリアが魔力障壁を展開するのを黙って見ていた。

 ユウトは、魔法を使う事ができないので、魔力障壁を作る事も不可能だ。

 それを見ていたジークフリードは叫ぶ。

 

ジークフリード「俺も、魔力障壁の練習をしよう!訓練は終了だ!集合場所に戻るぞ!」

全員「はい!」

ミランダ「ありがとう。あなたのお陰で、熊の魔物は倒せた。剣と魔法の連携の意味が分かったわ。」

シン「それは良かった。」

ユウト「迅と滅は、上手くやってると良いんだけどな…………。」

 

 ユウトは、そうつぶやく。

 同じ頃、トニー・ユリウス・マーク・オリビア・滅の班では、1人の騎士学院生がトニーを強く睨んでいた。

 

ユリウス「何やらトニーを睨んでいるで御座るな。」

トニー「あはは………。」

マーク「トニーさん、彼に何かしたんスか?」

滅「お前、何かしたのか?」

トニー「いやぁ〜、中等学院からの知り合いなんだけど………。」

 

 マークと滅の問いに、トニーは答える。

 すると、フリオという名前の騎士学院生が恨み節を吐き捨てる。

 

 

フリオ「トニー=フレイド………!魔法学院に逃げた軟弱者め!!」

トニー「って事みたい…………。」

ユリウス「拙者も騎士の家系で御座るが、特にその様な事は………。」

滅「待て、来るぞ。」

 

 ユリウスがそう話す中、アタッシュアローを構えた滅がそう言う。

 すると、狼の魔物が現れる。

 

オリビア「魔物です!!」

ユリウス「まずは拙者達が魔法で………!」

フリオ「必要無い!!」

マーク「待つッス!!」

滅「勝手に突っ込むな!」

 

 フリオは、滅とマークの静止を聞かず、勝手に剣を抜刀して飛び出す。

 

フリオ「実戦では、剣こそが物を言う!!」

教官「馬鹿者!!連携の訓練だぞ!!」

騎士学院生「俺達も行くぞ!!」

「「おう!」」

 

 フリオに触発されたのか、フリオに続いて他の騎士学院生が走り出す。

 

教官「お前ら!!」

 

 だが、他の魔物が現れ、怯んでしまう。

 狼の魔物がフリオの右腕に噛み付いた。

 

フリオ「がぁっ!!こ、この………!!」

 

 するとトニーが氷柱の魔法を飛ばし、狼の魔物の頭部を串刺しにした。

 それに続いてユリウス達と滅がファイヤーボールとアタッシュアローで狼の魔物達を討伐した。

 トニーは、フリオに近寄る。

 

フリオ「くっ…………!」

トニー「大丈夫かい?」

フリオ「余計な事を…………!!」

マーク「助けて貰ってそれは無いッス!」

フリオ「フンッ!」

 

 マークがフリオを非難するが、フリオは顔を背ける。

 

滅「余程、お前に負けたくないみたいだな。」

ユリウス「その様で御座るなぁ。」

トニー「ずっと仲が良かったんだけど、最近は事ある毎に突っ掛かって来るんだよねぇ。」

マーク「何かしたんでしょ?」

トニー「う〜ん………。やっぱり、あれかなぁ。昔彼が好きだった子が僕に告白して来てさ、お付き合いする事になったんだよ。」

(((絶対それだ………。)))

トニー「でも、もう別れたんだよ。キスまでだったし。」

 

 それを聞いたフリオは、ますますトニーを強く睨む。

 

マーク「この恨みは深そうっスね………。」

滅「というより、戦闘訓練で私情を持ち込むな。」

 

 マークはそう呟き、滅は、フリオに対して苦言を呈する。

 その頃、アリス・トール・リン・ユーリ・迅のグループでは、全員が顔を顰めていた。

 

騎士学院生「怖いんなら、俺の後ろに居ても良いぜ?」

 

 アリスはそう言われた。

 しかも、騎士学院生は、視線をアリスに合わせながら。

 

騎士学院生「君達は毎日机に向かってりゃ良いんだよなぁ〜?」

 

 リンはそう言われた。

 嫌味がたっぷりだった。

 

騎士学院生「君みたいな可愛い子、こんな訓練よりも花嫁修行でもした方が良いんじゃねえの?」

 

 ユーリはそう言われた。

 しかも、騎士学院生は、ユーリの胸に釘付けだった。

 

騎士学院生「女子の前だからって、良い所見せようなんて思うなよ?もやしコンビ?」

 

 トールと迅はそう言われた。

 迅も、顰めっ面を浮かべていた。

 それを見ていた教官は、苦言を呈する。

 

教官「訓練中ですよ!私語は慎みなさい!」

 

 すると、狼の遠吠えが聞こえてくる。

 

教官「来るぞ!」

騎士学院生「出やがったぜ!」

騎士学院生「大人しく見てな。」

 

 そう言って、ニヤッと笑う。

 それを見ていた女性陣は。

 

アリス「うわぁ。良い所見せようとしてる………。」

ユーリ「うん、気持ち悪いわねぇ。」

リン「イライラが………!」

迅「まあ、ほっとけば良いんじゃない?」

 

 迅は、呆れながらそう言う。

 騎士学院生は、小さい魔物に苦戦中だった。

 

騎士学院生「いだだだだ!!」

騎士学院生「おのれこの………!!」

騎士学院生「魔物風情が!俺を誰だと………!!」

 

 それを見ていたアリスは、痺れを切らしたのか、両手に火炎魔法を出す。

 

アリス「もういい!アンタ達邪魔!!」

ユーリ「固く凍らせてあげるわ!!」

迅「行っけー!」

 

 アリスが火炎魔法で魔物を焼き、ユーリが凍らせ、迅がアタッシュショットガンを撃つ。

 だが、リンはというと。

 

リン「あ………。制御…………し切れないかも………。」

トール「皆さん後ろに!!」

 

 だが、間に合わず、その場にいる全員が爆発に巻き込まれる。

 その後、全員が王都の正門に戻る。

 

ユウト「どうやら、他の班は上手く行ったみたいだな。」

シン「ああ………。それに比べて、何でお前らの班は…………。」

 

 シンの視線の先には、アフロになったアリス達が。

 

アリス「いやぁ…………思いの外威力が上がってたから、バンバン使ってたら………。」

ユーリ「騎士学院生さん達が落ち込んじゃって………。」

リン「ちょっと調子に乗った………。」

迅「僕はただ、それに巻き込まれたんだけど………。」

滅「大丈夫か?」

ユウト「…………で、あれは一体どうしたんだよ?」

 

 ユウトは、未だにトニーを睨んでいるフリオを指差す。

 

マーク「思春期男子の亀裂ッス。」

ユウト「は?」

ユリウス「結局、拙者達が魔物の討伐を進めたので御座る。」

オリビア「ウォルフォード君達の方はどうでした?」

シン「どうって………。」

マリア「シンとシシリーがイチャイチャしてたわねぇ。」

ユウト「確かに。あれはイチャイチャだ。」

 

 マリアとユウトが、揶揄う様に言う。

 

シン「はぁ!?」

シシリー「あわわわ………イチャイチャなんて…………!!」

オーグ「あれがイチャイチャでないのなら、お前等のイチャイチャがどの様なものか見てみたいものだぁ〜。」

ユウト「ヒューヒュー!」

シン「お前等なぁ!!」

 

 オーグとユウトは、揶揄ったり冷やかしたりする。

 マリアが口を開く。

 

マリア「冗談抜きにすれば、シンとユウトがフォローに回ってくれたお陰で、ちゃんと連携の訓練が出来たわ。」

オーグ「珍しく、シンがブレーキになってたな。」

シン「珍しくって………。(やっぱりそうなのか………。)」

 

 シンは、落ち込んでいた。

 オーグ曰く、卒業後、究極魔法研究会のシンを除いた面子は、国の管理下に置かれ、恐らくオーグ直轄の特殊部隊になる。

 シンは、皆の人生を歪めてしまった事を気にしていたが、皆は気にしていなかった。

 そうして、訓練は終わった。

 数日後のとある荒野では、究極魔法研究会のメンバーが魔法演習を行う。

 ユウト、迅、滅の3人は、戦闘訓練及び、戦闘データの収集を行っていた。

 この時に、バイティングシャーク、フレイミングタイガー、フリージングベアーに変身してデータを集めた。

 ユウト達は、変身を解除して、シンとオーグのもとに。

 イズも来ていた。

 

ユウト「結構派手だね。」

オーグ「研究会での魔法演習の場を変えたのは正解だったな。まるで一国の魔法師団の火力演習だ。学院の練習場でこんな光景見せられん。」

イズ「確かに。こんな事をしていたら、見てられないでしょうね。」

シン「ここならどれだけ魔法をブッ放しても平気だからな。俺が昔から使ってた場所だし。」

 

 そう話す。

 演習が終わった後、オーグは全員を集める。

 

オーグ「魔人達の動向について情報に新たな進展があった。一般には公表されていない話だがな。」

シン「それって…………国家機密って事?」

ユウト「ホイホイ言ってくるなぁ。」

マリア「あの………殿下?シンとユウト、迅と滅だけじゃなく……私達も居るんですけど………。」

オーグ「そうだ、皆に聞かせると言っている。この研究会の面子は、今や相当な実力者集団になりつつある。今後、魔人との戦闘が起こった際に重要な対抗戦力となる可能性が高い。それならば、魔人の動向は知っておくべきだ。」

 

 オーグがそう言うと、皆は真剣な顔になる。

 

マーク「…………。」

オリビア「魔人…………。」

アリス「こう言う話を聞くと、自分達が特別な存在だって自覚するね………。」

マリア「本当に特殊部隊になっちゃうのね………。」

リン「やっぱり、ウォルフォード君にもっと魔法を教わらないと………。」

 

 究極魔法研究会が表情を引き締める中、滅がオーグに質問をする。

 

滅「それで、新しい進展というのは何だ?」

オーグ「話を戻すぞ。旧帝国領から戻った諜報部隊からの報告だ。現在、魔人達は帝国領内にある町や村を襲い回っている。襲われている町や村の様子は悲惨の一言らしい。町を治めている貴族は例外なく皆殺し、平民達も殆どが殺されている。相手が相手だけに迂闊に手を出せない。数ヶ国の連合を組まないと、とても太刀打ちなど出来ない状況だ。」

シン「惨状を知りつつも、指を咥えて見ている事しか出来ないと言う事か。」

オーグ「そうだ。加えて魔人の数も更に増えていると言う情報も入っている。」

 

 その言葉に、全員が驚く。

 

オーグ「何らかの手段で、魔人に変えているのだろう………。」

シン「カートの様にか………。」

オーグ「恐らくな…………。」

ユウト「被害は拡大していく一方って事になるな。」

滅「あり得ない話ではないな。」

マリア「どういう事?」

迅「カートは、シンに対して悪意を持ってた。恐らく、魔人にされたのは、帝国貴族に搾取されてた平民って事になる。」

イズ「恐らく、シュトロームに悪意を増幅されたかと。」

 

 それを聞いたシンは。

 

シン(マジかよ………!1体の魔人ですら国を揺るがす程の脅威なのに………一体何を考えているんだシュトローム………!!よし、こうなったらここは!)

 

 シンは、これまで考えた事を発表する。

 

全員「合宿!?」

アリス「良いね!やろう!賛成!!」

シン「もうすぐ夏季休暇に入るだろ?」

オーグ「成る程、強化合宿か。」

マリア「そうね、魔人を相手にするとなると、もっと力を付けたいわ!」

リン「朝から晩まで魔法漬け!楽しみ!」

ユーリ「えぇ!何処でやるのぉ?」

 

 ユーリの問いに対して、シンは考える。

 

シン「実際の魔法演習は、この荒野でやるとして………。何処か皆で泊まれる所があれば良いんだけど………。」

オーグ「ここに居る誰かの領地で良いんじゃないか?」

シン「領地?」

オーグ「貴族は基本、領地を持っているからな。」

 

 そう、究極魔法研究会の何人かは、貴族出身なのだ。

 

トール「自分の所は職人街ですね。」

マリア「うちは港街ね。あんまりゆっくり出来る様な所じゃないわよ?」

ユリウス「拙者の実家はリゾート地で御座る。」

シン「(リゾート出身の武士って………。)じゃあ、ユリウスの所で決めるか。」

イズ「あまり、おすすめ出来ないかと。」

シン「何で?」

オーグ「イズの言う通りだ。魔人騒動の渦中でリゾート地へ行くなど、何を言われるか分からん。」

ユリウス「殿下の言う通りで御座る。」

ユウト「なぁ、騒動が終わったら、泊まって良いか?」

ユリウス「良いで御座るよ。」

 

 ユウトとユリウスがそう話していると、マリアが何かを思いついたのか、シシリーに近寄る。

 

マリア「あ!だったらシシリーの所が良いんじゃない?」

ユウト「シシリー?何故?」

マリア「シシリーの実家は温泉地よ!」

シン「え?本当に?」

シシリー「はい!皆さんさえ良ければ!」

シン「じゃあ、是非頼むよ!」

シシリー「はい!!」

 

 そうして、クロード家の領地で泊まることに決定した。

 ユウト、イズ、迅、滅はレックスの家に帰って、それを知らせる。

 

レックス「なるほど、強化合宿か。」

ユウト「俺たちも、連携を深めたいからっていう理由で誘われてるんだけど………。」

レックス「ああ。行ってこい。」

ユウト「ありがとう。」

レックス「そういえば、アイツが地下室に来てほしいって言ってたぞ。」

ユウト「アイツ?」

迅「調整が終わったの!?」

レックス「ああ。」

滅「分かった。」

イズ「それでは、行きましょう。」

 

 ユウト達が地下室に行くと、そこには、布が掛かってる何かがある。

 すると。

 

???「よぉ。やっと来たか。」

ユウト「ん?」

 

 そこに現れたのは、オレンジ色の作業服を着たヒューマギアが居た。

 

滅「ご苦労だったな、雷。」

雷「ああ。やっと、調整が終わったぜ。」

ユウト「兄貴………。」

 

 そう、宇宙野郎雷電こと、雷だった。

 ユウトは、雷に話しかける。

 

ユウト「それで、何の調整をしてたんだ?」

雷「ああ?それは、これだ!」

 

 そう言って、雷は、布を取る。

 そこにあったのは。

 

ライズホッパー!

 

 ゼロワン専用バイクの、ライズホッパーだった。

 他にも、2台バイクがあった。

 

ユウト「ライズホッパー!?」

雷「おうよ!ライズホッパーは、いつでも使えるぜ!!」

滅「俺たちのバイクも完成したんだな。」

雷「おうよ!」

迅「これで、行動範囲がかなり広がるね!」

イズ「そうですね。」

 

 こうして、ユウト、迅、滅は、専用バイクを手に入れた。

 滅は、雷に話しかけていた。

 

滅「………それで、亡達とは、連絡が取れたのか?」

雷「ああ、取れたぜ。今は、魔人達の動向を見張ってる。何かあったらすぐに連絡するぜ。」

滅「頼む。」

 

 そんな風に話していた。

 翌日、シン達と合流して、ユウトはライズホッパーに、迅はライズファルコンに、滅はライズスコーピオンに乗って、シシリーの領地に向かう事になった。

 ちなみに、ライズホッパーなどを見たシンの反応は………。

 

シン「バイク作っちゃったのかよ………。まあ、仮面ライダーって言ったら、バイクだしな。」

 

 そう語っていた。

 馬車とバイクが動き始めて、夕方になった頃、馬車が止まり、バイクも止まる。

 その理由は…………。

 

ユウト「魔物だな。」

迅「それも、中型だね。」

滅「だが、コイツらを倒さないと、先へは進めないぞ。」

イズ「そうですね。」

 

 ちなみに、究極魔法研究会の面々も降りていた。

 

ユウト「じゃあ、行きますか!!」

 

 ユウトは、アタッシュカリバーを持ちながら駆け出そうとするが。

 

アリス「待ってユウト君!」

ユウト「ブベラ!」

 

 後ろからアリスに体当たりされて止められた。

 

ユウト「何すんだよ!?」

アリス「ユウト君ズルい!!私!私やりたい!」

ユーリ「私もやりたいわぁ!」

トニー「僕もやりたいね!」

ユウト「やりたいのかよ…………。」

 

 すると、シンは異空間収納から、クジを取り出す。

 

シン「じゃあクジ引きだな。」

滅「…………何故異空間収納から、クジを取り出すんだ………?」

シン「用意が良いだろ?」

迅「そういう問題?」

 

 究極魔法研究会とユウト、迅、滅はクジを引く。

 その結果。

 

リン「やった。当たり。」

ユーリ「ああん、ハズレちゃったぁ………。」

マリア「じゃあリン、お願いね。」

 

 こうして、リンと魔物の戦いが始まる。

 

アリス「ブェクション!!」

 

 アリスがくしゃみをした瞬間、魔物が動き出す。

 

リン「うりゃああああああ!!!」

「「キャアアアアア!!」」

 

 リンが風の魔法を発動する。

 アリスとオリビアは、必死にスカートを抑える。

 狼の魔物は、遥か上空に飛ばされ、リンの目の前にサンドイッチ状に積み重なる。

 

リン「楽勝。」

シン「大分魔法の起動が早くなったね。」

ユウト「レベルアップした証拠だな。」

シン「でももう少し魔力が少なくても倒せたかな?そうすればもっと起動が早くなるよ。」

リン「そっか、次からは気を付ける。」

 

 その後、再びクジを引く事になった。

 それを見ていたマーリンとメリダは。

 

マーリン「皆、実力が上がっとるのう。」

メリダ「合宿前でこれかい………。他所様の子をこんなにしちまって………。」

 

 メリダは、嘆いていた。

 それから二日後、無事、クロードの街に到着した。

 クロードの街の領主館へと向かう。

 

シシリー「皆さん、着きました!ここです!」

使用人達「お帰りなさいませ、シシリーお嬢様。」

シシリー「お久し振りです!」

カミーユ「アウグスト殿下、賢者様、導師様、お目にかかれて光栄です。」

 

 彼は、執事長のカミーユ=ブランド。

 

カミーユ「ご学友の皆様も、ようこそいらっしゃいました。」

 

 カミーユは、シンを見る。

 

カミーユ「新たな英雄、シン様。使用人一同貴方様のお越しを心よりお待ちしておりました。シシリーお嬢様の事末長く、宜しくお願い致します。」

シシリー「な、な、な………何言ってんですか!!」

シン「何だよ!?」

 

 シンは、ニヤニヤしながら見ている皆に向かって叫ぶ。

 

オーグ「いや、皆。旅で疲れただろう?」

 

 そうして、風呂に入る事に。

 男子風呂では。

 ちなみに、迅、滅、イズは、ヒューマギアであるが故、風呂に入ってない。

 

シン「うは〜………。やっぱ温泉サイコ〜………。」

ユウト「あぁ〜〜〜良いお湯〜〜〜………。」

マーリン「あぁ〜〜〜〜生き返るのう〜〜…………。皆、シンに付き合ってくれてありがとう。」

シン「爺ちゃん?」

 

 マーリンの言葉に、首を傾げるシン。

 マーリンの独白が続く。

 

マーリン「成人するまで山奥の暮らしでこの子には同世代の友人がおらなんだ………。ワシはそれが申し訳なくてのぅ………。シンにとって、こんなにも心許せる友人が出来た事は、ワシにとっても嬉しいんじゃ………。本当にありがとう。」

 

 マーリンがそう言うと、オーグが口を開く。

 

オーグ「いいえ、マーリン殿。お礼を言うのは寧ろ私の方です。第一王子である私には対等な友人など1人も居なかった。それも立場上仕方無い事だと諦めていました。しかし、シンは従兄弟みたいだと、立場など関係なく対等に話してくれた。それは私にとって予想外の嬉しい事だったのです。」

シン(へぇ………り初めて聞いたな、オーグの本音………。)

マーク「ウォルフォード君には自分の父ちゃんもお世話になりっぱなしッス!此方こそずっと友人で居て欲しいッス!」

トール「シン殿と一緒に居るのは呆れる事も多いですが、楽しいですから。」

ユリウス「拙者は他の貴族から異端の目で見られる事の多いで御座るが、普通に接して下さるし。」

トニー「シンは人を色眼鏡で見ないからねぇ。女の子も好きだけど、男の友人が出来るのも嬉しいよねぇ。」

ユウト「まあ、シンと一緒に居るのは、飽きないからな。」

 

 オーグに続いて、マーク、トール、ユリウス、トニー、ユウトがそう語る。

 シンは、マーリンに向き合う。

 

シン「俺は感謝してるよ爺ちゃん。爺ちゃんが鍛えてくれなかったら、きっと今の俺は居なかった。そのお陰でこんなに一杯友達も出来たんだからさ!!ありがとう爺ちゃん!!」

マーリン「…………シン………!うぅ………!!」

 

 マーリンは、シンの言葉に感激したのか、大泣きした。

 一方、女湯では。

 

オリビア「凄ーい!広いですー!」

マリア「さぁ行こー!」

アリス「ふわぁぁ!気持ち良い〜〜〜〜!!」

メリダ「骨身に沁み渡るねぇ………。」

ユーリ「疲れも飛んでいきますねぇ〜。」

シシリー「フフ、喜んで貰えて嬉しいです。」

リン「さいこー。」

 

 マリアは、メリダを見つめていた。

 それに気づいたメリダは、マリアに声をかける。

 

マリア「じー。」

メリダ「何だい?」

マリア「ああ、いや。メリダ様はお歳を召しても良いスタイルだなぁと思って。」

アリス「普段から何かされてるんですか?」

メリダ「そうさねぇ………。シンが作った運動用の魔道具を毎日使ってる位かねぇ。」

 

 以前にシンが作ったランニングマシンを使って運動していると言う。

 それを聞いたアリスとリンは、食いつく。

 

アリス「その器具、使わせて頂けませんか!?」

リン「私も使いたい!」

メリダ「別に構わないけど、身体を鍛えたって、胸は大きくならないよ。」

「「ガーーーーン!!」」

 

 そう、アリスとリンは、それを使えば胸が大きくなるのではと思っていたのだ。

 だが、現実は無慈悲だった。

 

メリダ「大きくなりたいのなら、そこに居る、2人に聞いた方が良いんじゃないかい?」

 

 メリダがそう言うと、アリスとリンは、シシリーとユーリを見る。

 そして、アリスとリンは、シシリーの胸を揉み始める。

 

アリス「おお!!これは凄い!!こんな美乳………アタシも欲しい!!」

シシリー「あっ!!やっ!!アリスさ…………ん!!そ………そこは………!!」

リン「シシリーは感度も良好!」

シシリー「マリアー!!助けて!!」

 

 ユーリは、何とか逃げようとするが、マリアに目をつけられる。

 

マリア「逃がすかーーーー!!」

ユーリ「ひゃあん!!」

 

 しばらくして、シシリーとユーリはダウンする。

 アリス、リン、マリアの標的は、オリビアへと移っていた。

 しばらくすると、メリダの話を聞いていた。

 

メリダ「胸も脂肪で出来てるからねぇ。運動し過ぎても逆に胸が小さくなっちまうんだよ。ってシンが言ってたねぇ。」

マリア「何でシンはそんな事知ってるんですかね?」

メリダ「昔から何にでも疑問と興味を持つ子でねぇ。幼い頃から森の中で色々実験してたみたいだよ。シンの異常は魔法の数々は殆どがその経験によって生まれたもんじゃないのかねぇ。自由であったけど、友達と呼べる相手は作ってやれなかった。だからこそ、今こうして皆がシンの友達で居てくれる事が嬉しくてねぇ………。」

 

 メリダがそう言うと、シシリー達は口を開く。

 

シシリー「メリダ様、私の方こそシン君に出会えて本当に良かったと思ってるんです!」

マリア「友達になれて良かったのは、寧ろ私達です!」

アリス「魔法もいっぱい教えてくれるし!」

ユーリ「得をしているのは私達です!」

リン「超ラッキー!」

オリビア「ですね!」

 

 それを聞いたメリダは、タオルを体に巻きながら立ち上がる。

 

メリダ「アンタ達…………!よしっ!!本当は保護者に徹して口を出さないつもりだったけど、今回の合宿は、私達もアンタ達を鍛えてあげる事にするよ!」

女性陣「ええ!?メリダ様とマーリン様が!?」

メリダ「その代わり、ビシバシ行くから覚悟しなよ!!」

女性陣「はい!!」

 

 こうして、その日は寝る事になった。

 一方、ブルースフィア帝国内で、魔人の動きを観察している3人が居た。

 

???「ひでぇ有様だな。」

???「何とかして止めないとな。」

???「現在、ユウト達は、シン率いる究極魔法研究会と合宿を行なっているそうです。」

???「そうか。助かるぜ、亡。」

亡「はい。」

 

 亡と行動を共にする2人の男女は一体誰なのか………。

 一方、とある屋敷では。

 

???「なるほど、合宿ですか。なら、私も準備を進めなければ。サウザーの稼働準備は、着実に進んでいる。私の時代も、もう少しだ。」

 

 この青年は、何を企んでいるのか。

 ユウト達が合宿をしている中、その二つのグループが動いていた。




今回はここまでです。
雷と亡が登場しました。
そして、亡と行動を共にする2人の人物に、サウザーという単語を口にする青年。
色々と、動き出しました。
リバイスも、量産型デモンズが活躍してましたね。
まあ、赤石のキフデモスにはあっさりとやられてましたが。
それが、量産型ライダーの悲しき宿命ですね。
次回、ベイルのジャックリバイスに、新しい仮面ライダーが登場します!
賢者の孫とリバイスの小説は、リバイスが終わるまで更新を停止したいと思います。
何とか、頑張っていきたいと思います。


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第6話 決意のプロポーズ

 翌日、マーリンによる魔力制御の訓練が始まる。

 ユウト、迅、滅は、戦闘訓練をしていて、イズは戦闘データの収集を行なっていた。

 

イズ「戦闘データは、集まってきました。」

ユウト「ありがとう。…………シャイニングホッパーの完成には、あとどれくらい必要なんだ?」

滅「あと少しという所だな。」

迅「まあ、キー自体は完成してるんだけどね。」

ユウト「そっか………。」

 

 シャイニングホッパープログライズキー自体は完成しているが、まだデータ不足なのだ。

 ひとまず、戦闘訓練を終え、シン達と合流する。

 すると、究極魔法研究会の面々が、魔力障壁を展開していた。

 

ユウト「…………どういう状況………?」

オーグ「おお、ユウト!ちょうど良かった!シンの向こう側に行ってくれ。」

ユウト「は?ていうか、何をするんですか?」

オーグ「お前には、これからシンが発動する魔法の実験台になってもらう。」

ユウト「は!?」

ユーリ「何か、ユウト君なら大丈夫な気がするしねぇ。」

ユウト「待て!」

 

 ユウトは、仕方なく協力する事に。

 その際、ユウトはフリージングベアーに変身した。

 

シン(少し前から思い付いてたアイデアがある。まずはよく燃える可燃性のガスをイメージ。)

 

 そんな中、シンは可燃性のガスをイメージして炎の魔法を出す。

 

シン(よし、いける!言ってみれば、これは『ガス爆発』を利用した魔法だ。次に空気による玉を作り、さっきイメージしたガスを閉じ込める。密閉空間に充満したガスに引火させると、ガスが一気に膨張………ガスの逃げ場がなくなり、密閉空間が破綻すると………。)

 

 すると、巨大な火の玉が完成する。

 

トニー「そ、それが新魔法かい!?」

シン「いや、重要なのはここからだ!」

マリア「皆!衝撃に備えて!」

ユウト「何か嫌な予感………。」

 

 ユウトは、すぐにオーソライザーにライジングホッパープログライズキーを5回スキャンする。

 

ビットライズ!バイトライズ!キロライズ!メガライズ!ギガライズ!

 

 ユウトが必殺技をいつでも撃てる様にしてると、シンも、魔法を放とうとしていた。

 

シン(イメージするのは『指向性』!これまで使ってきたのもそうだったが、爆発系魔法はどうしたって、衝撃波が広範囲に広がり、威力が削がれてしまっていた。その衝撃波を今度は前方にのみ向かう様にイメージする!!)「発射!!」

 

 超巨大なファイヤーボールが、ユウトに向かって放たれる。

 究極魔法研究会の面々は、衝撃に備えたが、来ないことに首を傾げる。

 

ユウト「やばい!やばい!やばい!」

 

 ユウトは、フリージングベアーのプログライズキーを押し込む。

 

フリージングギガインパクト!

 

 ユウトはフリージングギガインパクトを発動して、眼前に巨大な氷の塊を出現させ、攻撃を防ぐ。

 巨大ファイヤーボールは、氷を溶かしつつも、軌道が逸れて、二つの方向に向かう。

 

ユウト「……………………。」

 

 ユウトは無事だったが、呆然としていた。

 それを見ていた一同もまた、呆然となっていた。

 

マリア「またやらかしたわね………!」

シン「やった成功だ!!」

メリダ「このお馬鹿!!!!何だいこの威力!!!」

アリス「あはは………。私夢見てるのかな………?」

リン「現実………。」

 

 シンが喜んでいると、メリダが即座にハリセンでシンをぶっ叩く。

 アリスとリンがそう話す中、シンは苦笑しながら答える。

 

シン「いやぁ………。ここまで予想してなかったっと言うか………。」

メリダ「っ!!!」

シン「ごめん!」

 

 シンのその言葉に、メリダはハリセンを構えて、シンが謝る。

 

トール「しかし、これ程の威力なのに、全く衝撃が来ませんでしたね………。」

オーグ「爆風を一方向に向けて、威力を高めた………?」

滅「そうだろうな。」

マーリン「恐らくのう………。」

マーク「もしこれがこっちに来てたら………ゾッとするッス!」

迅「危険すぎるでしょ!」

シン「だから大丈夫だって………。」

ユウト「何が大丈夫だよ………!?」

イズ「ユウト様!大丈夫ですか!?」

ユウト「何とか………。」

 

 トールの呟きに、オーグと滅が分析して、マーク達がゾッとしている中、シンの元に変身解除したユウトがやって来る。

 

ユウト「シン、1発殴らせろ。」

シン「何で!?」

ユウト「下手したら俺が死んでたんだぞ!殴らないと気が済まん!」

シン「理不尽!!」

『理不尽じゃないんだけどな………。』

 

 ユウトの言葉にシンが理不尽と言うが、全員がユウトに同情していた。

 

メリダ「今日の魔法演習はここまで!館に戻るよ!ユウトも、それくらいにしておきな!」

全員「はーーい!」

ユウト「気が済んだ。」

シン「ひっでぇ………。」

オーグ「シン、ユウト。ちょっと良いか?」

ユウト「ん?どうしたん?」

オーグ「シン、悪いがこの後1度ゲートで王城まで送って欲しい。」

シン「王城?」

オーグ「合宿中は王都を離れる為、魔人達の情報が入り辛い。1日に1度王城に戻り、定期報告を受ける事になっているんだ。」

シン「成る程、分かった。」

ユウト「俺は着いてきてくれって事か?」

オーグ「そういう事だ。」

ユウト「分かった。」

 

 シンがゲートを開き、王城へと戻る。

 すると、挙動不審気味の兵士達が居た。

 

兵士「で、殿下………。」

オーグ「何だ?何かあったのか?」

???「何だではありませんわ!アウグスト様!」

 

 挙動不審気味の兵士にオーグが尋ねると、女性の声がしてくる。

 すると、兵士の後ろから、1人の女性が。

 

オーグ「エ………エリー………!?」

シン「ん?誰?」

オーグ「私の婚約者だ………。」

シン「えっ、えっ、えぇぇぇぇ!?」

ユウト「初耳だぞ。」

オーグ「そりゃあ話してないからな………。」

ユウト「それもそうだな。」

エリザベート「何を仲良くコソコソお話していますの?」

 

 エリザベートが近寄ってきて、シンとユウトに挨拶をする。

 

 

エリザベート「初めまして、英雄の御孫様にして新しい英雄、シン=ウォルフォードさん。そしてユウト=イーウェルさん。私、コーラル公爵家が次女でアウグスト殿下の婚約者でもある、エリザベート=フォン=コーラルと申します。以後、お見知り置きを。」

ユウト「どうも。」

シン「ご、ご丁寧にどうも………。」

 

 エリザベートが挨拶する中、兵士達はこっそりと去っていく。

 オーグがエリザベートに尋ねる。

 

オーグ「それよりエリー、何故こんな所に?」

エリザベート「どうもこうもありませんわ!私やメイを放ったらかしにして、合宿だがに早々に向かわれてしまって!!」

シン「メイ?」

ユウト「誰?」

オーグ「妹だ。」

???「そうです!」

 

 すると、エリザベートの後ろから1人の少女が現れる。

 彼女は、メイ=フォン=アールスハイド。

 オーグの妹だ。

 

オーグ「何だメイ、居たのか。」

メイ「居たのか?じゃないです!!酷いですお兄様!!合宿にはメリダ様もご一緒だと聞いたです!!私がどれだけメリダ様に憧れてるか知ってるのに………置いて行くなんて…………!!」

オーグ「いや何、そうやって悔しがるお前が面白くてな。」

((ひでぇ…………。))

メイ「意地悪です!ズルいです!私もメリダ様にお会いしたいです!!」

 

 メイは、オーグを叩くが、オーグはどこ吹く風とばかりに気にしていなかった。

 シンとユウトは、メイに質問をする。

 

シン「婆ちゃんに?」

ユウト「メリダ様に?」

メイ「はっ!あわわわわ!ごめんなさいです………!シン様………ユウト様…………メイ=フォン=アールスハイドです………。アウグストお兄様の妹です…………!え、えと……….メリダ様の大ファンです!」

シン「そっかぁ………宜しくねメイちゃん。」

ユウト「宜しくね。」

シン「オーグとは従兄弟みたいな感じだから、メイちゃんもそうしてくれると嬉しいな。」

メイ「じゃ…………じゃあ、シンお兄様?」

シン「あはは、様なんていらないかな?俺は王族じゃないんだから。」

メイ「シンお兄ちゃん………?」

シン「うん!」

メイ「エヘヘ、意地悪じゃないお兄ちゃんが出来たです!」

 

 メイは、嬉しそうに言う。

 オーグは、苦笑を浮かべていたが、ここに2人が居る理由を聞く。

 

オーグ「で?何故こんな場所に?」

エリザベート「私達も、合宿先に同行させて頂きますわ。」

メイ「です!」

オーグ「馬鹿を言うな!!合宿と言っても遊びじゃないんだぞ!!同行許可など降りる訳無いだろ!!」

 

 オーグはそう怒鳴り、ディセウムの元へと向かうが。

 

ディセウム「連れて行ってやれば良いではないか?」

オーグ「父上!?」

ユウト「随分とあっさりだな。」

メイ「流石お父様です!」

ディセウム「マーリン殿とメリダ師もいらっしゃるし、移動はシン君の魔法だ。何の問題も無い。温泉街に滞在させておけば、良い息抜きにもなるだろう。」

エリザベート「私も、お父様に快諾させて頂いておりますわ。」

オーグ「……………。」

 

 オーグが呆然とする中、シンとユウトは笑っていた。

 すると、ディセウムがユウトに話しかける。

 

ディセウム「そうだ、ユウト君。」

ユウト「はい?」

ディセウム「レックスから、君にこれを渡して欲しいと頼まれてね。」

 

 そう言って渡したのは、ブレイキングマンモスプログライズキーだった。

 

ユウト「ブレイキングマンモス………。」

オーグ「プログライズキーか?」

シン「でも、マンモスって、絶滅した動物なんじゃ………。」

ユウト「ブレイキングマンモスはちょっと特殊なんだよ。」

シン「特殊?」

ユウト「マンモスのゼツメライズキーを解析して、作られた物だからな。」

オーグ「では、そのマンモスとやらの生物のゼツメライズキーは持っているという事か?」

ユウト「確か、レックスがマンモスのゼツメライズキーは以前回収してたって言ってたぞ。」

 

 そんな風に話していた。

 シンのゲートで、エリザベートとメイも一緒に来る。

 

シン「エリーさん!メイちゃん!こっち来て大丈夫だよー!」

メイ「わぁっ!!さっきまで城に居たのに、もう着いたです!」

ユウト「本当、凄いよな、こいつの魔法。」

オーグ「メイ、はしゃぎ回って逸れても知らないぞ。」

メイ「はわ!うぅ………。」

シン「ホラ、メイちゃん、逸れたら大変だからね。」

メイ「あっ………!ハイです!」

 

 シンは、メイの手を繋いで、ユウトはそれを微笑ましく見ていた。

 

オーグ「メイ、逸れないようにシンの言う事を聞くんだぞ?」

 

 オーグの言葉に、メイは頷く。

 オーグは、エリザベートの方を向く。

 

オーグ「エリー、この合宿は魔法の実戦訓練だ。お前達に構ってる時間は無いぞ。」

エリザベート「邪魔は致しませんわ。ただ、アウグスト様に悪い虫が付かないようにしないと!」

シン「あぁ成る程、合宿には女子が参加してるからな。」

ユウト「究極魔法研究会って、半数が女性だからな。」

エリザベート「いえ、そうではありませんわ。私が1番関係を疑っているのは………。」

「「「いるのは?」」」

 

 エリザベートの言葉に、シン、ユウト、オーグが聞くと、エリザベートはシンを思い切り睨む。

 

エリザベート「あなたですわ!!シンさん!!」

シン「えええええええええ!?」

メイ「はわわ!」

 

 エリザベートは、そこら辺で買った肉まんと串焼き肉を食べながら口を開く。

 

エリザベート「だってアウグスト様ったら、口を開けばシンシンシンシン………!疑うのも無理はありませんわ!!」

シン「いやいやいやいや!無理があるでしょ!?俺とオーグなんて考えたくもない!!」

メイ「はわわ…………大人の話です!!」

ユウト(この世界にも居たんだ、腐女子。)

オーグ「まあ………確かにシンと言う気兼ねしない友人が出来て、浮かれてしまったのは事実だな………。」

 

 そんな風に話していると、エリザベートは、球当てゲームをしながら文句を垂れる。

 

エリザベート「アウグスト様は私と居ると気を遣われますの!?」

オーグ「そんな事はないぞエリー。お前と居るのは心が安らぐ。」

エリザベート「っ………!!」

オーグ「男同士だとバカな事も出来る。私にとって初めての体験だったから、ついはしゃいでしまったのだ。分かってくれエリー。」

エリザベート「そ………そうでしたの………。」

ユウト(チョロい………。)

 

 ユウトは、そんな風に思っていた。

 再び場所が変わり、レストランで、パスタを食べている。

 

オーグ「それに、シンにはもう彼女が居るからな。」

エリザベート「そうなんですの!?」

シン「オーグ!お前何言って………!?」

オーグ「事実だろ?」

シン「…………。」

 

 オーグの言葉に、シンは黙り込む。

 オーグは、ため息を吐きながら口を開く。

 

オーグ「シン、良い機会だ。お前そろそろハッキリしろ。」

シン「ハッキリって…………?」

オーグ「その態度をだ。お前達が互いに好意を持っているのは確かだろう。」

シン「(お互いって………シシリーは俺に優しいけど、それはシシリーが優しいからであって………。)向こうが好意持ってるだなんて何で分かるんだよ!?」

オーグ「見ていれば分かる。」

シン「何で言い切るんだよ!」

ユウト「オーグの言う通りだろ。」

シン「ユウト!?」

ユウト「お前とシシリーの言動を見てれば、嫌でも分かる。」

 

 ユウトはそう語る。

 シンが口を開く。

 

シン「でももし間違えたら………これからどうするんだよ………?」

オーグ「では、このままで良いのか?相手の気持ちが分からないなんて当たり前だ。」

ユウト「それともシン、シシリーから言わせるつもりか?自分にはその勇気が無いのを言い訳にして。」

シン「それは…………。」

オーグ「幼い頃からずっと一緒に居て、婚約者になったと言うのに、未だにこんな誤解を受ける事もあるのだからな。」

エリザベート「そこで私を引き合いに出さないで頂けます…………!?」

ユウト「まあ、どうするかはお前が決めろ。」

シン「……………。」

 

 その後、領主館へと戻る。

 シシリー達と合流して、事情を話す。

 

シシリー「お2人も合宿に!?」

アウグスト「成り行きでな。すまないがクロード、合宿中この2人も世話してやってくれないか?」

シシリー「勿論構いませんけど………。」

エリザベート「訓練のお邪魔はしませんわ。」

 

 シンはシシリーを見ていたが、シシリーがシンの視線に気付いたのか、見てくる。

 

シシリー「どうかしたんですか?」

シン「え!?ど、どうって………べ、別に普通だよ!」

シシリー「そうですか?」

ユウト(ヘタレめ。)

エリザベート「ああ、さっきの話はシシリーさんの事でしたのね。」

メイ「シンお兄ちゃんとシシリーさんお似合いです!」

シシリー「…………?」

シン「うわあああああ!!何でも無あああああい!!」

 

 シンは、慌てる。

 その後、マーリンとメリダにエリザベートとメイが挨拶をする。

 

エリザベート「エリザベート=フォン=コーラルと申します。」

メイ「ア………アウグストお兄様の妹の…………メイです………!あの………あの………!」

シン「メイちゃん、婆ちゃんのファンなんだってさ。」

メリダ「おやおや。こんなお婆ちゃんでがっかりしたろ?」

メイ「そ、そ、そんな事ないです!私のお婆様より全然若いし………綺麗だし…………後…………後………とっても綺麗です!!」

 

 メイは噛みながらも、そう答え、メリダは笑う。

 

メイ「あの………宜しければ握手を………!」

メリダ「ウフフ、良いよ。やっぱり女の子は何とも可愛らしくて良いわねぇ。シンとは大違いだよ。」

マーリン「ホッホッホ。」

シン「悪かったな………。それでも小さい頃はよく手を繋いでただろ?」

メリダ「アンタは目を離すと何をしでかすか分からなかったからねぇ。小さい頃手を繋いでたのは、アンタを拘束する為だったからね。」

シン「ええ…………!?」

 

 衝撃のカミングアウトに、シンは驚く。

 すると、周囲から。

 

イズ「確かに、妥当かと。」

シン「え!?」

滅「こんな奴を放っておいたら、碌な事にならなそうだからな。」

迅「そうだよね!」

マリア「メリダ様とイズと迅と滅の気持ち分かるわ〜〜。」

アリス「シン君みたいな子供じゃ拘束しとかないと、心配でしょうがないよね!!」

リン「確かに、その方が効率的。」

ユーリ「ゴメンねぇウォルフォード君、それは仕方無いかもぉ。育てる方は大変よねぇ。」

オリビア「私の子供は普通である事を祈ります………。」

ユウト(いや、シンが転生者で、周囲に興味を持ってたのが原因だからな。)

 

 ヒューマギアと女性陣の言葉に、シンは傷ついていく。

 シシリーは、慌てていた。

 

シシリー「あ…………あの…………えと…………私は………。」

シン「いいんだシシリー………。気を遣わなくても…………。」

シシリー「そ、そんなんじゃないです!!シン君との子供なら可愛いでしょうし、私は喜んで手を繋ぎますよ!!」

 

 シシリーの爆弾発言に、周囲が固まる。

 シシリーも、自分が何を言ったのか気付いたのか、顔を赤く染める。

 

シシリー「あ…………あれ…………?私………今何て…………?」

マリア「シシリー………アンタ………。」

アリス「ヒューヒュー!」

ユーリ「わぁ大胆!」

リン「盛大な自爆。」

ユウト「爆弾発言だねぇ。」

シシリー「あ…………あく………あぅ………やあああああああ!!」

 

 シシリーは、羞恥心が振り切ったのか、逃げ出す。

 シンはそれを見ていたが、オーグが肩に手を乗せる。

 

オーグ「シン、分かってるな?」

シン「あぁ………。彼処まで言われて、分からない程鈍感じゃないよ………。」

オーグ「彼処まで言われないと分からない鈍感なんだよ。」

ユウト「それな。」

シン「うぐっ………。」

オーグ「まあ、頑張れ。」

シン「おう………。」

 

 そう言って、シンはシシリーの元へと向かう。

 それを見ていたオーグとユウトは。

 

オーグ「ユウト。言いたい事は分かるな?」

ユウト「はい。覗きましょうか。」

 

 こうして、全員で覗く事になった。

 隠れていると、告白が始まった頃の様だった。

 

シン「俺さ、あの時シシリーを見て、頭に雷が落ちたんだ。」

シシリー「え…………?」

シン「なんて可愛い娘なんだろうって………。」

シシリー「え!?あ…………あ!そ………その………私も思いました………。なんて格好良い人なんだろうって………。」

シン「え、本当に!?」

シシリー「はい………。」

シン「………シシリー。」

シシリー「ハ………ハイ!!」

シン「好きだよ。」

シシリー「っ………!」

ユウト(やっと告白したか。)

 

 ユウトは、そう思っていた。

 2人がキスをしようとすると。

 

ユウト「ちょっ………押すな!!」

「「っ!?」」

 

 ユウト達が倒れて、全員出てしまった。

 全員が誤魔化し笑いを浮かべる。

 

ユウト「アハハハハ………。グェッ!」

 

 ユウトが笑う中、シンに首根っこを掴まれて、締められた鶏みたいな声を出す。

 

シシリー「なななななななな………!?」

シン「皆さん揃って覗き見ですか!?」

「「だって、こんなビッグイベント見過ごせる訳ないじゃない!!」」

ユウト「見たって良いだろ!!」

シン「逆ギレすな!!」

 

 マリアとアリス、ユウトの逆ギレ気味の開き直りに、シンが怒鳴る。

 

オーグ「私はシンを焚き付けた張本人だからな。責任を持って見守る必要がある。」

エリザベート「私はアウグスト様の婚約者ですから、同じく責任が。」

メイ「はわわ………大人の情事ですぅ!!」

メリダ「シン!よく言った!!よくやったよ!!」

マーリン「ホッホッホ!!」

迅「おめでとう!!」

滅「まあ、良いじゃないか。」

イズ「おめでとうございます。」

 

 メリダとマーリン、迅、滅、イズも出てきて、シンはため息を吐く。

 

シン「はぁ…………まあ………そんな訳で、シシリーと恋人同士になりました。」

ユウト「おめでとう。」

 

 皆が、拍手喝采する。

 すると、シンとシシリーの背後から、カミーユも出てくる。

 

カミーユ「これは早速明日お祝いしなければいけませんね!!」

シン(アンタまで居たのかよ………。)

 

 すると、オーグがシンに話しかける。

 

オーグ「シン、取り敢えずおめでとうと言っておく。だが、今は非常事態の最中だ。付き合いに感けて訓練を疎かにしないようにな。」

シン「だったら何でこのタイミングで焚き付けたりしたんだよ………。」

オーグ「だってお前、物語なんかじゃ『この戦いが終わったら告白するんだ』って言った奴は大抵死ぬだろ?その前にと思ったんだ。」

シン(フラグ回避かよ………。)

ユウト(ていうか、この世界にも死亡フラグの概念あるんだ。)

 

 そんな風に思ったユウトだった。

 翌日、シン達が海に向かった中、ユウト、迅、滅、イズは、魔法練習用の荒野に向かっていた。

 

ユウト「…………ひとまず、あとは、ブレイキングマンモスのデータを集めれば、シャイニングホッパーのキーは完成するって感じかな?」

イズ「そうです。」

ユウト「でも、相手が居ない。」

迅「そうだね。」

滅「………いや、居るぞ。」

ユウト「ん?」

 

 すると、巨大化したオランウータンの魔物が現れる。

 

ユウト「でけぇよ!」

イズ「恐らく、帝都の方から流れてきた魔物かと。」

迅「丁度良いじゃん!ブレイキングマンモスを使いなよ!」

滅「早くしろ。」

ユウト「分かった。」

 

 ユウトは、ゼロワンドライバーを腰に装着して、ブレイキングマンモスプログライズキーを構える。

 

PRESS!

オーソライズ!

 

 すると、衛星ゼアの後方に付いていた巨大装備がジェットフォームになって、ビームに変換され、ユウトの頭上に転送される。

 その際、量子圧縮が行われ、数メートル大にダウンサイジングされる。

 ユウトは、叫ぶ。

 

ユウト「変身!」

 

 ブレイキングマンモスプログライズキーをゼロワンドライバーに装填する。

 

プログライズ!

 

 すると、ゼロワン・ライジングホッパーへと変身したユウトが、ブレイキングマンモスの内部に転送される。

 

Giant Waking!ブレイキングマンモス!

”Larger than life to crush like a machine.”

 

 そして、人型になり、ゼロワン・ブレイキングマンモスに変身する。

 一方、転送された事を知った雷は。

 

雷「どうやら、ブレイキングマンモスが届いたみたいだな。」

 

 そう呟いていた。

 一方、ユウト達は。

 

ユウト「すっげぇな!」

滅「来るぞ!」

ユウト「ああ!」

 

 巨大化したオランウータンがユウトに襲い掛かるが、ユウトは、ブレイキングマンモスを使って、難なく止める。

 そして、何発かパンチを叩き込んで、体の部分に付いている錨、グレインゴットを切り離して、それで攻撃する。

 オランウータンの攻撃は、マンモスプレッサーでガードする。

 

迅「良いぞー!」

イズ「ブレイキングマンモスのデータも、十分取れました。」

滅「止めを刺せ!」

ユウト「ああ!」

 

 ユウトは、ブレイキングマンモスプログライズキーを押し込む。

 

ブレイキングインパクト!

 

 ユウトは、マンモスプレッサーを分離させ、空に飛ばして、大きくジャンプする。

 マンモスプレッサーは、オランウータンの頭上で巨大化して、ブレイキングマンモスの足に付く。

 ユウトは、オランウータンを押し潰すようにキックを叩き込む。

 

ユウト「ハァァァァァァァ!!」

 

 オランウータンは、ブレイキングマンモスの重みに耐えきれず、圧死する。

 

ブレイキングイ

      

      

      

      

 

 オランウータンを潰し、マンモスプレッサーは、ブレイキングマンモスの腕へと戻り、変身解除する。

 ユウトは外に排出され、ブレイキングマンモス本体は、衛星ゼアへと戻った。

 

イズ「これで、シャイニングホッパーを完成させられます。」

迅「ただ、データがかなり膨大だから、完成するには、少し時間がかかるんだ。」

滅「それまで待っていろ。」

ユウト「ああ。」

 

 その後、シンがやって来て、回収してもらった。

 その夜、皆の部屋にユウトも来た。

 ちなみに、ヒューマギア組は充電の為、自分達の部屋にいる。

 

シン「そう言えば、シシリー達は何時オーグとエリーと知り合ったんだ?」

シシリー「5歳の時です。」

マリア「王族や貴族は、5歳になるとお披露目会があるのよ。」

ユウト「じゃあ、貴族・王族組は、幼馴染みたいな関係って事か?」

オーグ「そんな所だ。」

ユリウス「あの頃のトールは、よく女の子に間違えられていたで御座る。」

トール「黒歴史を抉らないで下さい!」

 

 そう、トールの見た目は中性的なので、よく間違われたそうだ。

 

ユウト「まあ、トールが女風呂に入っても違和感ないよな。」

トール「やめて下さいよ!」

シン「良いなぁ〜、俺が5歳の頃は森で鹿狩りしてたなぁ。」

トール「それはそれで凄い気が………。」

ユウト「俺は、5歳の頃は、父さんと母さんが稽古つけてた。」

トニー「君の両親って何者なの………?」

マリア「お披露目会かぁ〜、懐かしい〜!アウグスト殿下の周りは女の子達でいっぱいだったな〜。」

オーグ「うぅ………あれは最悪だった………。初めて会う令嬢達に様々なアピールをされ続けて………。」

シン「王族だもんなぁ。」

ユウト「まあ、そんなもんだろ。」

エリザベート「私はアウグスト様に近付けませんでしたの…………。」

ユウト「そうなんだ。」

 

 オーグ曰く、自らエリザベートに声をかけたが、面倒そうという理由で断られたとの事。

 

ユウト「そんな理由!?」

オーグ「あの中でエリーだけが、媚に売りに来なかったからなぁ。それで興味を持ったんだ。」

エリザベート「っ!」

ユウト「と言うと?」

オーグ「他の騒がしい令嬢を、冷めた目で見ていたのが印象的だった。」

エリザベート「ア、アウグスト様………。皆さんの前ですわ………。」

ユウト「なるほどね。」

 

 ユウトが納得している中、マリアが嘆く。

 

マリア「はぁ…………。何で私は選ばれないのかなぁ………?殿下と言い、英雄の孫と言い、目の前のチャンスを悉く………。」

アリス「私なんかチャンスすら無かったよ………?」

リン「私は魔法が恋人!」

マリア「うっ………。ユ、ユーリはどうなの?彼氏の1人や2人は居そうじゃない!」

ユーリ「う〜ん、それはぁ………ヒ・ミ・ツ♪」

マリア「ユーリズル〜い………。」

ユウト(まあ、俺はフリーを貫くか。アークと魔人の脅威があるし。呑気にそんな事をしてる余裕はない。)

シン「っ!シッ!」

 

 シンが静かにするように言う。

 すると、廊下から足音がして、メリダが部屋に入ってくる。

 

メリダ「あんた達!いい加減におし!明日もまた………おや?声がすると思ってたけど…………気のせいだったかね………?」

 

 メリダは、首を傾げる。

 実際には、布団の中やベッドの裏などに隠れていた。

 

ユウト(何とか誤魔化せたか………?)

 

 ユウトは、トニーと同じ位置で隠れていた。

 だが。

 

シシリー「きゃああああ!!」

シン「えぇ!?うわああああ!!ごごご、ごめん!!!そんなつもりは…………!!」

ユウト(何盛ってんだアイツ!!)

メリダ「シン!あんた!何やってんだい!!付き合いだして早速一線越える気かい!?」

ユウト(シン、終わったな。)

シン「いや、これはそのぉ………。」

メリダ「言い訳するんじゃないよ!!」

シン「えぇぇぇ…………!?」

 

 シンがメリダに見つかっていた。

 そんな中。

 

リン「ウォルフォード君のエッチ〜。」

マリア「あぁ………シシリーが………!シシリーがどんどん先に行っちゃう………!」

ユウト(おい、声を出すなよ!!)

メリダ「あんた達!!全員起きてここにお座り!!」

全員「ごめんなさーーーい!!!」

ユウト(俺はただ、巻き込まれただけなのに………!)

 

 ユウトは、全員の説教に巻き込まれ、シンに恨みがましい視線を向ける。

 結果、全員が寝不足になったとさ。




今回はここまでです。
ブレイキングマンモスの初使用です。
ユウトにヒロインが居ない理由は、ユウト的に言えば、アークと魔人の脅威がまだあるからで、メタ的に言えば、私の小説は、大体ヒロインが居るので、この小説ではヒロイン無しにしたいと思ったからです。
賢者の孫とリバイスの小説は、一応、リバイス寄りのストーリーでやって欲しいという意見が多く、その方向で考えていきます。
元太が変身する新たな仮面ライダー、デスドリームにベイルの形態のクリムゾンベイルが登場!
コモドドラゴンのバイスタンプも存在が分かりましたが、龍騎がモチーフですよね。
劇場版仮面ライダーリバイスでどのような活躍をするかが楽しみです。
賢者の孫とリバイスの小説で、シンがセミモチーフのライダー、シケイダに変身していますが、タランチュラモチーフのライダー、デビルズに変更しようかなと考え中。
姿自体は、デモンズの色違いです。
デモンズの赤と青の部分が反転したイメージで。
そして、シンの強化形態として、ギラファノコギリクワガタモチーフのライダー、オーバーデビルズというのがある感じで。
賢者の孫とリバイスの方でも、今後の方針についてのアンケートをやっていますので、良かったら票を入れて下さい。
感想も、よかったらお願いします。


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第7話 誓いの婚約披露パーティー

 翌朝のクロード領主館では、ユウトがシンに恨みがましい視線を向ける。

 

ユウト「お前な………。付き合って早々に盛ってんじゃねぇぞ。」

シン「いや、盛ってないから!」

ユウト「おかげで寝不足だよ。」

シン「いや、それは全員同じだろ。」

シシリー「あ………。」

シン「お………。」

 

 ユウトがシンに文句を言っていると、シシリーと合流して、シンとシシリーが顔を赤らめる。

 

シシリー「お、おはようございます………!」

シン「お、おはよう………あの………えっと………食堂行こうか………?でないと、朝食冷めちゃうし…………。」

シシリー「そ、そうですね………あ、あのシン君!」

シン「え?」

シシリー「今、ちょっと良いですか?一つ、お願いがあるんですけど………。」

ユウト「ああ。ご両親へのご挨拶か。」

シシリー「そ、そうです………。」

ユウト「分かった。皆には、シンとシシリーはご両親へのご挨拶に向かうから、朝食が遅れるって伝えておくわ。」

シン「助かるよ。」

ユウト「ああ。」

 

 シンとシシリーは、両親の元へと向かい、ユウトは朝食を食べに行く。

 その間に思った事は。

 

ユウト(彼女ね…………。まあ、アークと魔人の脅威がある以上、そんな惚気た話はとても出来ないな。)

 

 ユウト自身、前世でモテた事が無い為、恋愛に関しては興味を失せている。

 アークと魔人の脅威が迫っている以上、そんな事をしてる余裕はないとも思っている。

 ユウト達が朝食を食べ終え、シンとシシリーも戻って来て、訓練をする事に。

 

トニー「やるねトール!」

トール「トニー殿こそ!」

迅「ユウトもやるじゃん!」

ユウト「俺もやるんだよ。」

 

 それを見ていたエリザベートは。

 

エリザベート「な、何ですの!?皆様のこの魔法!」

シン「準備運動は、こんなもんで良いかな?」

エリザベート「ええ!?」

 

 シンの呟きを聞いたエリザベートは、驚愕する。

 すると、マーリンがエリザベートとメイに話しかける。

 

マーリン「ホッホッホッ。どうじゃな?折角見学に来とるんじゃ。お嬢様方も少しやってみんかね?」

メイ「え?」

エリザベート「わ、私は遠慮させて頂きますわ………。魔法の素質が無いのは分かっておりますから…………。」

メイ「私やりたいです!!」

マーリン「では、基本の魔力制御からやってみようかのう。」

 

 そうして、メイは魔力制御をやる事になった。

 すると、かなりの量の魔力が集まる。

 

メイ「わっ!わっ!凄いです!!こんなに魔力が!!」

マーリン「おぉ!これは凄いのう!」

メリダ「その歳でやるじゃないかぁ!メイちゃんには魔法使いの素質があるようだねぇ!」

メイ「えへへ………。」

アリス「もしかしてメイ姫様、凄い魔法使いになっちゃうかも………。」

リン「負けてられない!頑張る!」

マーリン「ホッホッホッ、メイちゃんが良い刺激になっとるのう。」

 

 メイに対抗心を燃やしたリンが、魔力を集め始める。

 マーリンは笑って見ていたが、リンが集めた魔力に、青ざめる。

 

マーリン「リンさん!それは頑張り過ぎじゃ!」

リン「え?」

 

 マーリンがそう言葉をかけるが、時既に遅く、爆発してしまう。

 煙が晴れると、アフロヘアーになったリンが現れる。

 

リン「ゲホッ…………。」

メリダ「あっはっはっ!」

マーリン「言わんこっちゃない………。」

メリダ「アンタ達は、将来メイちゃんに色んな所を追い抜かされない様に頑張るんだね!」

アリス・リン「色んな所………。」

 

 メリダにそう言われ、アリスとリンは想像した。

 背が高く、胸が大きいメイを。

 すると、アリスとリンはメイを睨む。

 

アリス・メイ「ギロッ!!」

メイ「はわわっ!!」

ユウト「幼女を相手に睨むなよ。」

 

 ユウトはアリスとリンを嗜めて、メイはシンの後ろに隠れる。

 

オーグ「む?そこで兄ではなく、何故シンの後ろに隠れる?」

シン「え?」

オーグ「これはお仕置きが必要だな。」

メイ「はわわわわ!シンお兄ちゃん助けて下さいです!!」

シン「揃いも揃ってお前等は………。」

オーグ「冗談だ。」

シン「本当かよ?」

 

 一方、ブルースフィア帝国の帝都に居るシュトローム、ミリア、アズは。

 

シュトローム「ミリアさん、進捗はどうですか?」

ミリア「街道を通る商隊を襲う事で、帝国各地の都市は食料不足に陥り、日々不満が高まっています。」

シュトローム「では、そろそろ頃合いかも知れませんね。」

アズ「フフフッ。大いなる悪意がどんどん広がっていくね。」

 

 相変わらず暗躍していた。

 一方、魔人とアークの暗躍に気づいていないユウト達の方は、シンとユウトを除いた全員が魔力障壁を展開している。

 

シン「何でまたそんなに警戒してんの……?」

ユウト「何で俺がここで待機なんだ………?」

ユーリ「だってウォルフォード君…………新しい魔法の実験するんでしょ………?そこにイーウェル君が居れば何とかなりそうだし………。」

マリア「巻き込まれて………吹っ飛ばされたら敵わないし………。」

トニー「当然の措置だね。」

滅「済まない。何とか耐えてくれ。」

オーグ「メイ、今度は私の後ろにちゃんと隠れてろ?」

メイ「はいです!」

ユウト「俺は実験台かよ。」

 

 皆の言葉にユウトはそう呟く。

 ユウトは、ため息を吐きながら答える。

 

ユウト「シン、早くやれ。」

シン「分かった。今回はそんなに危なくないから。」

 

 シンはそう言いながら足元の石ころを持つ。

 

オーグ「本当か?」

 

 シンの言葉に疑いを持ったのか、魔力障壁の数を更に増やす。

 

シン「攻撃魔法じゃないから、大丈夫だって!」

ユウト「お前………魔法に関してはどんだけ信用されてないんだよ。」

オーグ「そうか。なら。」

 

 オーグ達は、訝しみつつも、魔力障壁を解除する。

 そんな中、シンが魔力を集め始める。

 

トール「集まってる魔力の量が、尋常じゃないですね…………。」

エリザベート「ほ、本当に危なくないものでしょうね!?」

迅「本当に大丈夫?」

 

 色んな人たちが不安そうな声を出す中、シンの魔法が発動して、石が宙に浮く。

 

シン「おっ!やった!!成功したー!!」

 

 全員が目を疑い、目をゴシゴシするが、幻ではなかった。

 

エリザベート「これって…………一体何の魔法ですの…………?」

シン「浮遊魔法だよ。石に反重力の…………あぁえっと、物が落ちるのと反対のイメージを込めてみたんだ。」

マリア「あ、相変わらず何なのかよく分かんないけど………また凄いのやってのけたって事はよく分かるわ………。」

ユウト「本当にだよ。」

イズ「また、とんでも無い事になりそうですね。」

シン「凄いのはこれからかもね。」

 

 シンがそう言って魔力を再び集めると、今度はシン自身が浮遊した。

 

全員「え…………?」

 

 これには、究極魔法研究会のみならず、ユウト、迅、滅、イズも驚いた。

 

シン(上下移動の浮遊魔法を自分にかけて、左右には風の魔法を応用すれば!!)

 

 すると、シンは自在に空を飛ぶ。

 

シン「お!!おっほっほっほ!!こりゃ楽しいわ!!ヒャッホー!!」

 

 シンは、鳥と共に空を自由に飛び回ってる。

 

ユウト「楽しそうだな。」

 

 しばらくすると、シンが降り立つ。

 それには、ユウト、ヒューマギア組を除く全員が引いていた。

 

オーグ「お前…………。またとんでもない事を…………。」

ユウト「飛ぶだけにか?」

マリア「ユウト…………。今、それを言う?」

 

 オーグの呟きに対して、ユウトはニヤニヤしながらそう答える。

 すると、寒い雰囲気になってしまう。

 

ユウト「………ゴホン。まあ、ギャグは置いておいて。」

滅「浮遊魔法自体は、シュトロームも使用していたからな。使えておいて損はないだろう。」

イズ「そうですね。」

迅「こっちで飛べるのは現状、シンを除くと僕とユウトだけだからね。」

トール「ああ、フライングファルコンの事ですね。」

シシリー「シン君、凄い!」

 

 すると、興奮したメイがシンに話しかける。

 

メイ「シンお兄ちゃん!私も空を飛びたいです!教えて下さいです!」

マリア「だ、駄目ですよメイ姫様!!」

メイ「何でですか?」

マリア「だって、今飛んだら………。」

メイ「飛んだら?」

マリア「パンツ丸見えになっちゃうじゃないですか!!」

メイ「あう!」

 

 そんな風に話していた。

 その後、シンとシシリーは、マーリンとメリダを連れて、再びクロード邸へと向かい、シンとマーリンとメリダが血のつながっていない事を明かしたが、シシリーの両親は、それを知っても尚、シシリーを思って婚約を認めた事を明かす。

 シン達が帰ってくると、ユウトは、マーリンとメリダの2人に呼び出される。

 

ユウト「あの…………俺、何かしました?」

マーリン「いや、別にユウト君を責めようという訳ではないんじゃ。」

メリダ「レックスから愚痴を聞いてね。アンタは、結婚を考えてはいるかい?」

ユウト「…………何ですか、藪から棒に。まあ、考えていませんが。」

マーリン「実はのぉ。レックスの家が現在、お主に求婚してくる貴族の娘が押し寄せておるんじゃ。」

ユウト「……………え?」

メリダ「アンタはシンと違って、英雄でありながらも、女性と仲が良いという噂を聞かない上に、シンと比べて比較的会いやすい。チャンスと感じた連中が、レックスの家に押し寄せて、困ってるんだと。」

ユウト「えぇ…………。」

 

 そう、ユウトは、シンと比べると比較的会いやすい事から、未婚の娘が押し寄せてくるとの事。

 それを聞いたユウトは困惑する。

 

ユウト「………まあ、ここ最近は、単独で街を出歩かない様にしてるけど………。」

マーリン「まあ、気持ちは分かるぞい。」

メリダ「マーリンなんて、婚期を逃し掛けてる貴族の女に………。」

マーリン「その話は止めんか?」

ユウト「…………つまり、さっさと婚約者を決めろって事ですか?」

メリダ「口を悪くしながら言うと、そうなるさね。」

マーリン「そもそも、どうして恋愛事に興味を持たないのじゃ?」

ユウト「…………。」

 

 マーリンの質問に、ユウトは黙り込む。

 暫くの沈黙の末、ユウトは口を開く。

 

ユウト「…………俺って、そもそも山育ちだったんです。両親が山で育てたから。」

マーリン「儂らとシンと同じじゃのう。」

ユウト「まあ、ちゃんと常識も教えて貰いましたけど。」

メリダ「それが当然さね。なのにこのジジイは………!」

マーリン「……………。」

 

 メリダの視線に、目を逸らすマーリン。

 その2人を無視して、ユウトは独白を続ける。

 

ユウト「山で育ったもんだから、あんまり女性と会う機会が無かったんです。独り立ちしてからは、女性と会う事も増えましたが、特に何かあるわけではなかったので。」

メリダ「なるほどねぇ………。」

ユウト「それなのに、突然モテても、どうしたら良いのか全く分からないんです。」

マーリン「…………なるほど。」

 

 ユウトは、恋愛経験は全くの皆無だ。

 この世界でも、前世でも。

 その為、恋愛事には一切の興味を示さない。

 それを聞いたマーリンとメリダは。

 

メリダ「これは………思いの外重症だね。」

マーリン「じゃが、儂らには何も出来んぞ。」

メリダ「困ったね…………。」

 

 困り果てていた。

 ユウトもまた、困り果てていた。

 この日は、解散となった。

 ユウトは、自室にて考えていた。

 

ユウト(アークや魔人云々で誤魔化してたけど、レックスに迷惑をかけてるんじゃな……。でも、どうしたら良いんだ?)

 

 ユウトは考えていたが、答えが一切出なかった。

 そんな事を考えながら、ユウトは寝た。

 翌日、シンはオーグ達に戦闘服を渡していた。

 

シン「うん、皆似合ってるじゃん!」

ユーリ「これって、ウォルフォード君の付与した防御魔法があるのよねぇ?」

シン「それだけじゃない。姿を消す光学迷彩に、体感温度を一定に保つ快適温度も施してある。」

アリス「えっと、国宝級に更にプラスしてあるって事?」

シン「あぁ。」

マリア「はぁ………。遂に国家機密満載の服を着る事になるのかぁ………。」

 

 ちなみに、ユウト、迅、滅、イズはその服を着用していない。

 

シン「あ、因みにブーツは何もしてないよ?俺のと同じジェットブーツにする事は出来るけど、あれは扱うのにコツがいるからね。」

オーグ「この服と、以前貰ったアクセサリーで、防御は完璧と言う訳か。と言う事は今日の訓練は、相当危険な物になりそうだな。」

シン「へへ、当たり〜。」

 

 シンの言葉に、オーグ、ユウト、迅、滅、イズを除く全員が驚く。

 

シン「皆に実戦訓練をして貰おうかなって。」

アリス「実戦?」

ユウト「という事は、アレか?」

シン「ああ。災害級の討伐!!」

 

 シンの言葉に、全員が再び驚く。

 マークとオリビアが口を開く。

 

マーク「ささ………災害級!?」

オリビア「無理ですそんなの!!」

シン「大丈夫だって!皆そのくらい出来るようになってるから!」

滅「それに、どうせ俺たちはいずれ、魔人と戦う事になる。災害級如きで怯むな。」

トール「災害級如きって………。」

迅「そうだよ!」

イズ「それに、シン様が付与した服を着用しています。大した怪我にはならないかと。」

 

 そんな風に話していると。

 

メイ「置いて行くなんて酷いです!!どうして一緒に行っちゃ駄目なんです!?」

 

 そう言って、メイとエリザベートが現れる。

 オーグは、呆れながら理由を言う。

 

オーグ「今日は実戦訓練だ。僅かでも危険がある所に連れては行けん。」

メイ「ム〜〜〜!!」

マリア「メイ姫様は、お部屋でお待ち下さい。」

メイ「で〜〜〜も〜〜〜〜〜!!!!」

エリザベート「お止しなさいメイ。」

滅「メイ。俺たちは、災害級を討伐しに行くんだ。」

迅「そうだよ。逸れて、災害級と遭遇したら危ないよ。」

 

 その後も駄々を捏ねるメイだったが、シンが糸電話型の魔道具をメイに渡す。

 だが、それがメリダに見つかり、怒られそうになるが、銅像にそれを持たせて出発する。

 それを見ていたユウトは。

 

ユウト(………メリダ様には、ライズフォンの事は黙っておこう。)

 

 そう誓ったのだった。

 ちなみに、ライズフォンは現状、シンぐらいしか知らない。

 究極魔法研究会一同+αは、森林の中を歩いている。

 索敵魔法を使いながら。

 滅曰く、旧帝国から魔物が流れて来てるから、以前のようにずっと各地で増えているとの事。

 すると、シシリーの感知魔法に引っかかる。

 

シシリー「あ、これ………この先………。」

シン「気付いた?シシリー。」

シシリー「はい………。」

 

 目の前には、魔物化したライオンが。

 

ユウト「ライオンの魔物か。随分とデカいなぁ。」

シン「獅子は虎と違って動きは鈍いけど力は強い。なので近付く事はなるべく避けた方が良い。」

シシリー「じゃあ、遠くから魔法攻撃ですね?」

シン「うん、正解!」

シシリー「はう…………!」

 

 シンは、シシリーの頭を撫でる。

 だが、女性陣の嫉妬の視線が2人に向き、すぐに止める。

 

ユウト「おーい!イチャついてんじゃねぇぞ!」

シン「イチャついてないから!………よし、まずは………ユリウス、シシリー、ユーリ、マーク、オリビア。この5人で行こう。」

イズ「この5人は、支援系がメインですね。」

滅「特に、ユリウスは放出系の魔法が苦手だったはずだ。」

オーグ「大丈夫なのか?」

シン「これでも十分過ぎると思うよ?」

 

 オーグの疑問に、シンが笑いながら答える。

 オリビアは不安になるが、マークが肩に手を置く。

 

オリビア「……………。」

マーク「大丈夫。ウォルフォード君を信じよう!」

オリビア「………うん!」

 

 すると、ライオンの魔物がシシリー達に気付いたのか、振り返って吠える。

 

シン「来たぞ!皆用意して!」

 

 その声と共に、5人は魔法を発動する。

 手元に魔力を貯める。

 ライオンの魔物が5人に近寄ってくるが。

 

シン「撃て!!!」

 

 5人は魔法を一斉発射する。

 すると、大爆発が起こり、獅子の魔物が跡形も無く消えた。

 

シン「あはは………やっぱりやり過ぎたか………。」

ユウト「どう見てもオーバーキルだろ。」

シシリー「え?あの…………えと…………獅子の魔物は………?」

滅「消し炭になったようだな。」

ユリウス「せ……拙者達が災害級を………!?」

シン「支援系のメンバーでこれだからねぇ。攻撃魔法の得意なそっちの6人は、単独で討伐出来るんじゃない?あと、ユウト達は自由に動いちゃって良いよ。」

ユウト「じゃあ、遠慮なく。」

滅「行くぞ。」

迅「うん!」

 

 ユウト達は、ベルトを装着して、プログライズキーを構える。

 ユウトは、バイティングシャークを取り出していた。

 

FANG!

POISON!

WING!

 

 ユウトは、バイティングシャークプログライズキーを、オーソライザーでスキャンし、迅と滅は、フォースライザーにプログライズキーを装填する。

 

オーソライズ!

 

 すると、上空からライジングホッパーとバイティングシャークのライダモデルが現れ、フォースライザーから蠍と隼のライダモデルが現れる。

 

「「「変身!」」」

 

 ユウトは、プログライズキーをゼロワンドライバーに装填して、迅と滅は、フォースエグゼキューターを引く。

 

プログライズ!

『『フォースライズ!』』

キリキリバイ!キリキリバイ!バイティングシャーク!

”Fangs that can chomp through concrete.”

スティングスコーピオン!

フライングファルコン!

『『Break down.』』

 

 3人は変身して、オーグ達と共に災害級の魔物を倒していく。

 

アリス「フッ!!」

マリア「ハァッ!!」

トール「ヤァッ!!」

リン「ハァッ!!」

オーグ「フッ。」

 

 5人は、それぞれが得意とする魔法で魔物を倒していく。

 

ユウト「ハアッ!!」

 

 ユウトは、両腕に付いたアンリミテッドチョッパーから、エネルギーの刃を展開して、魔物を斬り裂いていく。

 

滅「ハァッ!」

 

 滅は、アタッシュアローとアシッドアナライズを駆使して、魔物を倒していく。

 

迅「でやあっ!」

 

 迅は、スクランブラーを展開して、羽型の手裏剣を飛ばして魔物を倒していく。

 

トニー「フッ!!」

 

 バイブレーションソードを握ったトニーが、最後の1匹に挑む。

 

トニー「ハアアアアアアア!!!」

 

 トニーのジャンプからの振り下ろしで討伐完了した。

 

シン「な?出来ただろ?」

マリア「あぁ、うん………。出来たと言うか、出来ちゃったと言うか………。」

アリス「特にトニーは凄かったね!!バイブレーションソードでパサーって!!」

ユーリ「けど、何時の間にバイブレーションソードを?」

トニー「シンがね、剣が使えるならって、一振り譲ってくれてね。」

ユリウス「ズルいで御座る!!拙者も!!」

トニー「シ、シンに頼んで?」

ユリウス「シン殿ォォッ!!」

シン「よし、皆次の段階に進んだ様だな。」

オーグ「次はお前の番だな。」

シン「え?あ、あぁ…………。」

オーグ「婚約披露パーティでの晴れ姿、楽しみにしているぞ。」

 

 そうして、訓練が終了する。

 その後、婚約披露パーティーが行われ、盛大に祝われた。

 …………ユウトは、心にモヤモヤを残しながら。




今回はここまでです。
ユウトに彼女ができない理由は、山で育った結果、女性には興味を示さなくなったからです。
仮にユウトに彼女が出来るとしても、究極魔法研究会の面々ではありません。
接点がそこまで無いので。
ベイルドライバーとデストリームドライバーのユニット、クリムゾンベイルバイスタンプが予約開始されましたね。
最近、盾の勇者の成り上がりにオリ主が仮面ライダーデモンズもしくはベイルに変身する小説を投稿しようかと考え中です。
賢者の孫とリバイスの小説の方針のアンケートについては、『この聖なる刃に祝福を』と賢者の孫とリバイスのアンケートの数字の値を合わせた物になります。
現在、賢者の孫寄りにすべきが7で、リバイス寄りのままで良いが11となっています。
次回も楽しみにして下さい。


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第8話 滅亡する帝国

 シンとシシリーが婚約パーティーからしばらくして。

 

アリス「ウッヒョー!気持ち良い〜!」

ユーリ「まさか空を飛ぶ日が来るなんてねぇ〜!」

マリア「まっ、こうやって空を浮いて居られるのは、シンがかけてくれた浮遊魔法のお陰なんだけどね〜!」

トール「自分達は、風の魔法を操って移動してるだけですからね。」

 

 アリス、ユーリ、マリア、トール、オーグの五人は、戦闘服に付与された浮遊魔法で空を飛んでいる。

 

ユウト「もう慣れたのか。」

シン(うん、大分様になってきたな。)

 

 ユウトとシンが見ていると、メイが話しかける。

 

メイ「シンお兄ちゃん、私も早く飛びたいです!ちゃんとこれを穿いて来たです!」

 

 メイはそう言うと、スカートを捲り上げる。

 その中のドロワーズを見せる。

 

男性陣「…………ハッ!!」

エリザベート「ハッ!!メイ!はしたない!!」

メイ「え?でも、これは見せても良いんじゃないのです?」

エリザベート「い、良いと言えば良いですけど………いけません!!」

ユウト「恥が無いのかよ………。」

迅「大胆だね。」

滅「あまりそういうのはやらない方が良いぞ。」

イズ「そうですね。痴女と思われますよ。」

 

 ユウトと迅が呆れ、滅とイズがメイに注意してる中、シンは魔道具を使う。

 

シン「おーい!そろそろ降りて来ーい!」

アリス「えぇ〜?折角調子出て来たのに〜。」

シン「交代の時間だぞー!飛びたいなら他の時間で飛べよなー!」

 

 アリスが文句を言う中、オーグは、シンが作ったスピーカーの魔道具を見ていた。

 

オーグ「あの魔道具、色々使えそうだな。」

トール「殿下の立太子の儀式で、使ってみても良いかも知れませんね。」

マリア「そう言えばもうすぐでしたっけ?」

オーグ「あぁ。」

 

 オーグ、トール、マリアがそう話していると、メイがマイクに向かって叫ぶ。

 

メイ「皆さーん!早く代わって下さいです〜!」

 

 一方、旧帝国の帝城では。

 

シュトローム「そうですか、最後の街が滅びましたか。」

ゼスト「はい。これで帝国の版図にある街や村は全て消え去りました。」

 

 魔人達は、戦力を着実に増やしていた。

 そして、帝国に存在していた街や村が壊滅して、本当の意味で帝国は滅んだ。

 ミリアが何かを考え込んでいる中。

 

シュトローム「アークから、ゼツメライズキーを受け取りましたか?」

ゼスト「はい。ゼツメライザーとゼツメライズキーを受け取りました。」

シュトローム「そうですか。」

 

 アークは、ゼストにゼツメライザーとゼツメライズキーを渡していたのだ。

 それを見ていたアズは。

 

アズ「まあ、勝手に人類と魔人で滅ぼし合えば良いんだよ。」

 

 そうほくそ笑んでいた。

 シュトローム達魔人勢は、謁見の間に集まっていた。

 

シュトローム「皆さんの働きで、帝国を滅亡に追い込む事が出来ました。大変に喜ばしい事です。」

魔人達「ウオオオオオオオオーーーーーー!!!!」

 

 盛大な歓声を上げる魔人達。

 しかしシュトロームから、驚きの言葉が。

 

シュトローム「さて、この後どうしましょうか?」

魔人達「?」

 

 その一言に、他の魔人達が首を傾げる。

 シュトロームの独白は続く。

 

シュトローム「帝国を滅亡させる事が、私の目標でしたからね。もうする事が無いんですよ。」

魔人「何を仰っているのですか!!」

魔人「そうです!この勢いで次は隣国を攻め取り、そのまま世界を統一し………!」

シュトローム「世界統一?何の話です?何故そんな面倒な事をしなければいけないのです?」

魔人「め、面倒………?一体何を………!?」

魔人「これだけの魔人が居れば、魔人の国を創る事も………まさか、何もしないおつもりで…………!?」

魔人「だったら何故!?何故私達を魔人にしたのですか!?」

 

 魔人達に驚愕の色が走る。

 1人の魔人が問いかけると、シュトロームからさも当然かの様な答えが返ってくる。

 

シュトローム「何故?帝国を滅する為の手駒を増やしたかったからですよ。」

魔人「駒………だと………!?」

シュトローム「私は”貴族打倒の力を与える”と言っただけですよね?一体何処からそんな話に?」

 

 彼の目的は、ブルースフィア帝国の貴族達の滅亡。

 それ以外の目的には興味を持たない。

 そして”手駒が欲しい”。魔人達はこの言葉に激怒した。

 

魔人「き………貴様!!」

 

 何人かの魔人は、シュトロームを殺そうとするが。

 

『クエネオ!』

『エカル!』

『ネオヒ!』

『オニコ!』

『ビカリア!』

『ガエル!』

 

 マギアとなった斥候部隊に返り討ちに遭う。

 

シュトローム「あなた方がどう言う野望を抱こうとも自由ですけど、そこを私に押し付けないで頂けますか?迷惑ですから。」

魔人「そうですか………。分かりました!ならば俺は俺の好きにやらせて貰う!」

シュトローム「どうぞ。と言うか最初からそうして下さい。彼の考えに賛同する方はどうぞ。一緒に行って頂いて結構ですよ。」

 

 斥候隊と一部の魔人達がここに残り、他の魔人達はここを出て行った。

 

シュトローム「一体何を考えているのやら。」

ゼスト「宜しいのですか?彼らをあのまま放置しておいて。」

シュトローム「構いませんよ。既に帝国を滅ぼすと言う目的は達したのです。好きにやらせておけば良いでしょう。」

ミリア「あの、どうしてそこまで帝国を憎まれておるのですか?元は帝位継承権を持つ帝国の公爵だったとお伺えしましたが…………。」

シュトローム「そう言えば、話した事が無かったですね。それでは、お聞かせしましょうか。私がまだ、オリベイラと呼ばれていた時の事を。」

 

 そうして語ったのは、シュトロームがまだオリベイラと言われた時だった。

 オリベイラは領主で、平民とも寄り添っていたのだ。

 しかし、オリベイラを邪魔と感じたヘラルド皇帝は、オリベイラの領民を騙し、妻と妻の中に宿っていた子供を殺したのだ。

 そうして、オリベイラは貴族と平民を含む帝国を憎み、魔人となった。

 その話を聞いたゼストは、部下の1人のローレンスに話していた。

 

ゼスト「ローレンス、シュトローム様の話を聞いてどう思う?」

ローレンス「どうって………。あれだけの事をされれば、貴族も平民も、纏めて帝国を滅ぼしたくなる気持ちも分かるな、と。」

ゼスト「だがシュトローム様は目的を果たされてしまわれた。今のシュトローム様には新しい目的が必要だ。そう思わんか?」

ローレンス「それは、まぁ…………無いよりはあった方が…………。」

 

 それを聞いたゼストは、ローレンスに向かって語った。

 

ゼスト「そこでだ。お前は出て行った魔人達に紛れて、スイード王国に攻め込む様に仕掛けろ。」

ローレンス「ん?」

ゼスト「スイード王国は、アールスハイド王国と国境を接する小国だ。そこに魔人の集団が現れたとなれば、必ず奴らが飛んで来る。」

ローレンス「奴らとは…………?」

ゼスト「シン=ウォルフォードとユウト=イーウェルだ。」

ローレンス「ええっ!?シュトローム様を追い詰めたと言う、あの………!?」

ゼスト「そうだ。だからこそシュトローム様の次の標的に相応しい。」

ローレンス「分かりました!来る日に備え、奴らの力を確かめようと言う事ですね!」

ゼスト「フッ、分かりが良いな。ローレンス、お前なら出来ると信じている。期待しているぞ。」

 

 そうして、魔人側が動き出そうとしていた。

 一方、スイード王国に向けて、とある三人組が向かっていた。

 男が口を開く。

 

???「亡、魔人側の動きはどうだ?」

亡「はい。こっそり帝城に仕込んだ盗聴器によると、平民の魔人がシュトロームから離脱したとの事です。」

???「だとすると、次はスイードに迫ってくる可能性があるな。」

亡「一応、盗聴器自体は、離脱した魔人を追わせています。どうします?タクヤ、コハル。」

タクヤ「なら、やるべき事は一つだな。」

コハル「ああ。スイードに急ぐぞ。」

 

 タクヤ、コハル、亡の3名は、スイード王国へと急いで行った。

 一方、離脱した魔人達は、世界征服に向けて話し合っていた。

 

魔人「全くよぉ!シュトロームの腰抜けにはガッカリしたぜ!」

魔人「魔人の力を存分に使わずどうしろってんだ!?まぁ代わりに俺達が世界を支配してやるから良いけどな!」

 

 離反したシュトロームの手駒の魔人達が喚いてる。

 そんな中、魔人のローレンスは。

 

ローレンス(あーやだやだ、こんな低俗な連中にしばらく付き合わなきゃならんとは………。こりゃ早めに…………。)

魔人「んで、次は何処を攻める?」

魔人「そりゃあ、帝国の次はアールスハイド王国だろう!!」

ローレンス「なぬ!?いやー、こんなのはどうです?まずは周辺の小国を落とし、我々が大国並みの規模となってからアールスハイドに挑むと言うのは?」

魔人「あ?」

 

 首を傾げる魔人に、ローレンスがどうしてそう言ったのかを説明する。

 

ローレンス「大国同士、対決する方がロマンがあって良いかなーって。ね?(くそ………ロマンって何だ?アホか俺は…………。いや、それより、帝国を滅ぼせたのはシュトローム様の力があったからこそだって分かってんのか?此奴ら…………。)」

魔人「フム、周辺国を制圧して、我々の戦力を増強するのも悪くないか。魔人を増やす事は出来ないが、捕虜や俺達に従う者は出て来るだろうしな。」

 

 考え込む魔人を他所に、ローレンスが地図を開いた。

 

ローレンス「(近隣諸国が魔人とに襲撃されたとなれば、恐らく国がウォルフォードと仮面ライダーを動かそうとするはず………。とは言え、あまり距離があったり、小国過ぎると、ウォルフォードやイーウェル共が現れる前に此奴らが国を制圧し兼ねない。)アールスハイドに脅威を与える意味でも、次の狙いは………帝国と王国の国境を接するスイード王国でどうです?」

魔人「良いんじゃないか?スイードならここからそんなに距離も無い。」

ローレンス(ウォルフォードや仮面ライダー共がもし現れなければ、此奴らにまた別の国を襲わせれば良い。)

魔人「次の標的はスイード王国で決まりだ!!」

魔人達「オオオーーーー!!!!」

 

 魔人達は、スイード王国へと進軍しようとしていた。

 その翌日、アールスハイドでは、立太子の儀式の日が訪れた。

 その為、国内では、大分盛り上がっていた。

 一方、当のオーグは。

 

エリザベート「お似合いですわ、アウグスト様。」

シン「おお………!オーグが王子様っぽい!」

マリア「いや王子様だし。」

ユウト「どうだオーグ?今の心境は。」

オーグ「うーむ…………心境か………皆の前でこう言う格好をするのが恥ずかしくなってきたぞ…………。」

エリザベート「シンさんの影響を受け過ぎですわ。…………やっぱり怪しい。」

シン(しつけぇ………!)

アリス「今日は私達もステージに上がるんですか?」

オーグ「ああ、研究会の面々や仮面ライダーもこの場を借りて紹介しようと思ってな。」

マリア「うぅ………キンチョー………!」

 

 そうして、立太子の儀式が始まる。

 究極魔法研究会、ユウト、イズ、迅、滅は、ステージに立つ。

 そこには、ディセウムが既に居た。

 

民衆「お!いらっしゃったぞ!」

民衆「アウグスト殿下ーーー!!」

民衆「陛下ーーー!!」

 

 民衆の歓声が上がり、儀式が始まる。

 

ディセウム「我が息子アウグスト=フォン=アールスハイドよ、汝は王太子となり、国の為、国民の為に身を粉にして邁進する事を誓うか?」

オーグ「私は、この国の為、国民の為に、命を捧げる事を誓います。」

ディセウム「うむ、よく言った。アウグスト、汝を王太子として認めよう。国民の為一層務める事を期待する。」

オーグ「畏まりました。」

 

 周囲が拍手喝采する。

 すると、1人の兵士が駆け込む。

 

兵士「ご………御報告申し上げます!!スイード王国に魔人が多数出現!!現在、スイード王都に向かって進行中との事です!!」

ユウト「!?」

兵士「馬鹿者!大切な儀式の最中に、そのような報告をするとは何事だ!!」

オーグ「よい!その者を咎めるな!」

兵士2人「殿下………?」

オーグ「よく知らせてくれた。魔人出現の情報は、何より最優先される。」

迅「動き出したか………!」

滅「ああ。」

国民「ま………魔人が出現って言わなかったか………!?」

国民「や………やだ、ちょっと…………大丈夫なの………!?」

 

 その言葉に、周囲に動揺が走る。

 そんな中、オーグが宣言する。

 

オーグ「皆、落ち着いて聞いて欲しい。たった今隣国スイード王国に魔人が現れたとの報告が入った。」

シン(おいおい、そんな不安を煽るような事をわざわざ………!?)

オーグ「だが心配するな!魔人に対抗する手段を我々は既に持っている!!シン!ユウト!迅!滅!」

滅(なるほど、国民に希望を持たせるためか。)

 

 オーグに言われ、シン、ユウト、迅、滅の4人が前に出る。

 

オーグ「彼は、シン=ウォルフォード!周知だと思うが、新たな魔人と魔物討伐の英雄だ!そして、ユウト=イーウェル、迅、滅!彼らもまた、魔人と戦う、仮面ライダーだ!我々は彼らと共に研鑽を続け、遂に魔人に対抗するだけの力を得た!これよりスイード王国に、魔人の討伐に向かう!!」

国民「おおおお!!」

 

 オーグはそう言って、マントを脱ぎ捨てる。

 

オーグ「我々はすぐにスイード王国へ向かう!!安心するが良い!!」

 

 周囲の面子も、マントを脱ぎ捨てていた。

 

イズ「用意がよろしいですね。」

迅「そうだね。」

オーグ「シン、ユウト、迅、滅。お前らも何か言え。」

ユウト「俺たちもですか?」

オーグ「これは国民の不安を払拭する為のパフォーマンスだ。決めてみせろ。」

滅「では、俺たちからいくぞ。」

 

 そう言って、滅、迅、ユウトが前に出る。

 

滅「仮面ライダー滅こと、滅だ。魔人達は必ず俺たちが倒してみせる。」

迅「仮面ライダー迅こと、迅だよ!絶対に僕達がスイードを守るから!」

ユウト「仮面ライダーゼロワンにして、ユウト=イーウェルです!俺たちは、スイード王国を守ります!だから、待ってて下さい!」

 

 国民達が、イツキ達の宣言に、歓声を上げる。

 

ユウト「はい次、シンの番だ。」

シン「マジかよ!」

 

 動揺する中、シンが宣言する。

 

シン「えーーーーー………俺を始め、ここに居る仲間達は魔人に対抗出来る力を十分に持っています。だから安心して下さい………(チーム名!?えーと………えーと………究極魔法………研究会…………究極………あぁぁダメだ!!これしか浮かばねえ!)俺達は、必ず討伐して来ます!!」

 

 そして決まったチーム名がこれだ。

 

シン「アルティメット・マジシャンズが!!」

全員(アルティメット・マジシャンズって!?)

 

 シンが後悔するかのように涙を流す中、ユウト、迅、滅は変身する。

 

『『WING!』』

POISON!

 

 ユウトは、フライングファルコンプログライズキーを、オーソライザーでスキャンし、迅と滅は、フォースライザーにプログライズキーを装填する。

 

オーソライズ!

 

 すると、空からライジングホッパーとフライングファルコンのライダモデルが現れ、フォースライザーから蠍と隼のライダモデルが現れる。

 

「「「変身!」」」

 

 ユウトは、プログライズキーをゼロワンドライバーに装填して、迅と滅は、フォースエグゼキューターを引く。

 

プログライズ!

『『フォースライズ!』』

Fly to the sky!フライングファルコン!

”Spread your wings and prepare for a force.”

スティングスコーピオン!

フライングファルコン!

『『Break down.』』

 

 三人は変身して、ユウトと迅は翼を広げて、滅は迅に掴まる。

 アルティメット・マジシャンズも、浮遊魔法を使って、飛んでいる。

 

シン「アルティメット・マジシャンズ、出動!!」

UMメンバー「おう!」

ユウト「行くぜ!」

迅「滅、しっかり掴まってね!」

滅「ああ。」

 

 そして、アルティメット・マジシャンズと仮面ライダーは、魔人を迎撃するべく、スイード王国へと向かう。




今回はここまでです。
スイード王国に向かって行った、タクヤ、コハルは、バルカンとバルキリーに変身します。
いずれ、サウザーに変身するキャラも出したいです。
賢者の孫とリバイスの小説ですが、これまで通り、リバイス寄りで行きたいと思います。
ただ、空気階段が出た話や、ヒロミさんへの思い出ムービーの作成、木村昴が出た話といった話に関しては、変更するかもしれません。
何せ、賢者の孫では、不可能な話なので。
もしかしたら、赤石長官に相当するキャラが動くのは、シュトローム撃破後かもしれません。
流石に、ホーリーライブが不遇なので、賢者の孫としてのストーリーで活躍させたいです。
ボルケーノの話で、イツキとマリアをくっつけたいと思います。
一応、シン達が魔人領攻略に行くのは、とある真実が語られた後になります。
いずれ、近いうちに更新したいです。
意見やリクエストがある場合は、メッセージまたは、活動報告にて受け付けています。


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第9話 魔法使い集団と仮面ライダー

 アルティメット・マジシャンズと仮面ライダー達がアールスハイドを出発した頃、スイード王国では赤い信号弾が打ち上げられていた。

 

兵士「国境沿いより、赤い信号弾!」

兵士「魔人襲撃の合図だ!」

隊長「王城へ報告!全住民を避難させろ!」

兵士達「はっ!」

兵士「見えました………!魔人の襲来です!!規模はおよそ………100!」

兵士「魔人が…………100体………!?」

隊長「総員配置に就け!!防御魔道具を配置せよ!!直ちにアールスハイドへ救援要請を!!」

兵士「はっ!!」

隊長「(だが………要請受けて援軍到着まで何日掛かるか……。)総員!城壁を死守せよ!!国民への被害は出させるな!!」

 

 スイード王国に、魔人が迫ってくるのを見て、魔道具を起動する。

 

魔人「城壁を破壊しろ!………あん?」

タクヤ「はあっ!」

コハル「フッ!」

 

 魔人がスイードに迫る中、タクヤとコハルは、ショットライザーを片手に魔人を倒していた。

 亡は、まだジャパニーズウルフゼツメライズキーの調整が終わっておらず、避難誘導に当たっていた。

 

タクヤ「ここから先に来てみろ。全員纏めてぶっ潰す!」

コハル「ああ!これ以上の犠牲は出さない!」

魔人「何だこいつら!?」

魔人「こいつらは無視して中に入れ!」

タクヤ「待て!」

コハル「コイツらを中に入れるな!」

 

 タクヤとコハルは、何とか街に魔人を入れない様にするが、いかんせん数が多く、何人かが突破されていく。

 魔人達が攻撃をするも、魔道具によって防がれる。

 

魔人「チッ!魔力障壁って奴かぁ。だが!!」

 

 魔人は、何かほくそ笑んでいた。

 一方、スイード王国へと向かっているアルティメット・マジシャンズと仮面ライダー達は。

 

シン「にしてもアルティメット・マジシャンズって…………。」

オーグ「いや、ククッ…………良いチーム名だと思うぞ?」

シン「急に考えろとか言うから!!」

迅「シンって、厨二病なんだね。」

シン「厨二病とか言うな!」

リン「実際良い名前!私は気に入った。」

 

 シンは、自分がつけた名前に、頭を抱えていた。

 それを迅に揶揄われ、強気に言い返す。

 

ユウト「まあまあ、もうこれに決めた以上、国中に浸透してると思うから。」

シン「諦めるしかないかぁ…………。」

トール「皆さん、もうすぐ国境です。」

迅「やっぱり、早いね。」

滅気を引き締めろ。ここからは、戦場になるんだ。」

オーグ「急ごう。貸し出している魔道具が長く持つとは思えないからな。」

 

 そう、アールスハイドは、シンに魔道具を作らせて、貸し出していたのだ。

 

シン「大量に作らされたと思ったら、スイードに貸してたのかよ…………。」

マリア「でも魔人かぁ………何時か来るとは思ってたけど…………いざ対峙するとなるとやっぱり緊張するなぁ。」

ユウト「まあ、お前らは、今は魔人よりも強いからな。」

マリア「それはそれで、どうなのよ。」

 

 そうこうしている内に、スイード王国が見えてくる。

 

滅「殿下!」

オーグ「数箇所城壁が破られてる!周辺に魔人が居るはずだ!!」

シシリー「………あそこ!誰か襲われています!!」

 

 下を見ると、誰かが魔人に襲われている。

 

シン「ッ!」

ユウト「行くか!」

 

 それを見たユウトとシンは、急降下を開始する。

 

オーグ「シン!」

滅「ユウト!」

 

 一方、タクヤとコハルは、王都内に入り込んだ魔人を相手にしているが、数が多く、押されていた。

 

タクヤ「数が多いな………!」

魔人「おら?どうした、お前ら。その程度か?」

コハル「舐められた物だな。ここからが、私たちの本気だ。」

タクヤ「テメェら纏めてぶっ潰す!」

 

 タクヤとコハルは、ショットライザーをバックルに装填して、ベルトを巻く。

 

ショットライザー!

 

魔人「ああん?」

 

 魔人が首を傾げてる中、タクヤとコハルは、それぞれのプログライズキーを取り出していた。

 

BULLET!

DASH!

 

タクヤ「フン!うううう………!うおおおおおお!!」

 

 タクヤはそう叫び、シューティングウルフプログライズキーを無理矢理こじ開ける。

 

コハル「無理矢理こじ開けるなよ。」

タクヤ「それがバルカンだ!」

コハル「…………好きにしろ。」

 

 タクヤの行動に、コハルは呆れて、2人はプログライズキーをショットライザーに装填する。

 

『『オーソライズ!』』

 

 コハルは、ショットライザーに装填したプログライズキーをキーモードにして、タクヤはショットライザーをバックルから外して、魔人に向ける。

 

Kamen Rider...Kamen Rider...

Kamen Rider...Kamen Rider...

 

 待機音が流れ、魔人達が戸惑っていると、タクヤとコハルの2人は叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

『『ショットライズ!』』

 

 その声と共に、2人はトリガーを引く。

 すると、弾丸が1発ずつ発射され、摩訶不思議な軌道を描きながら、魔人を倒していく。

 その弾丸が、タクヤによって殴られたり、コハルに当たると、2人にアーマーが形成されていく。

 

シューティングウルフ!

ラッシングチーター!

"The elevation increases as the bullet is fired."

"Try to outrun this demon to get left in the dust."

 

 タクヤは仮面ライダーバルカンに、コハルは仮面ライダーバルキリーに変身する。

 それを見た魔人は、動揺する。

 

魔人「な、何だテメェら!?」

タクヤ「仮面ライダーバルカン。お前ら魔人をぶっ潰す者だ。」

コハル「仮面ライダーバルキリー。魔人を確認した。対象を破壊する。」

 

 タクヤとコハルは、ショットライザーを構えながら、魔人の集団へと向かっていく。

 一方、王都内では、親子が2人の魔人に襲われていた。

 

母親「はぁ………!はぁ………!」

魔人「アハハハハ!!ホラホラァ!」

魔人「ちゃんと逃げないと当たっちゃうぜ!?」

 

 母親は、自分の娘を抱えて逃げていたが、間力弾によって逃げ道を塞がれる。

 

女の子「ああん!ママ〜〜〜〜〜!!」

母親「お願い………もう止めて………!!」

魔人「あれぇ?追い駆けっこはもうお終いぃ?」

魔人「だったらそろそろ殺し……グヘア!?」

 

 シンが蹴りを入れて、魔人が吹っ飛ぶ。

 

女の子「…………え?」

トール「シン殿!いきなり無茶はしないでください!」

シン「悪い。我慢できなかった。」

魔人「こ…………この野郎………!」

ユウト「はぁぁぁぁ!!」

 

フライングインパクト!

 

 蹴っ飛ばされた魔人が何かを言おうとするが、ゼロワンのライダーキックをくらい、倒された。

 

ユウト「シン!大丈夫か!?」

シン「大丈夫。」

 

 ユウトはシンの横にそのまま並び立つ。

 

魔人「テメェ等………自分が何をしたか分かってんのか!?」

シン「それはこっちの台詞だ!」

ユウト「これ以上、罪もない人達を襲わせるわけにはいかない!」

魔人「ヘッ!少しは出来る様だが、高高人間如きに俺達魔人とやり合えると思うなよ!!ハアアアアアア!!」

 

 魔人は、魔力を高めるが。

 

FANG!

Progrise key confirmed. Ready to utilize.

シャークズアビリティ!

 

 ユウトは、アタッシュカリバーにバイティングシャークプログライズキーを装填して、シンも魔力を高めていた。

 

魔人「な………なぁ………!?何だ………!?それは………!?」

 

バイティングカバンストラッシュ!

 

 ゼロワンとシンの必殺技と魔法で、魔人は倒される。

 

魔人「ギャアアア!!」

シン「たかだか人間と仮面ライダーに討伐される気分はどうだ?トール。」

 

 シンがトールに呼びかけると、トールの前方から煙が上がる。

 どうやら、もう1人魔人が居たようだ。

 

トール「終わりました。」

シン「グッジョブ!」

ユウト「大丈夫ですか!?」

母親「は………はい…………。」

女の子「お兄ちゃん達………誰………?」

トール「自分達は、アールスハイド王国からの援軍です。」

ユウト「早く避難所に向かって下さい!」

母親「は、はい!!」

シン「トール、避難所まで頼む。」

トール「分かりました。」

 

 母親と女の子と一緒に避難場所へ向かうトール。

 女の子はユウトとシンに手を振り、2人も手を振った。

 

ユウト「無事で良かった。でも………。」

 

 ユウトが周囲を見ると、荒れ果てていた。

 

ユウト「酷いな………。」

シン「酷い事を…………!」

 

 ユウトとシンは、密かに怒りを燃やしていた。

 一方、オーグとマリアは、城壁の上に乗っていた。

 

兵士「何だ!?城壁の上を何かが………!?」

オーグ(風の魔法を応用すれば声を拡大出来るか………。)

 

 風の魔法で拡声する。

 

オーグ『スイード王国民及び魔人共に告ぐ!!私はアールスハイド王国王太子、アウグスト=フォン=アールスハイドだ!!スイード王国の民よ安心せよ!!我々は魔人を打倒するだけの力を手に入れ、この地に参った!!王国兵と協力し、必ずや魔人共を撃退してみせよう!そして魔人共よ、絶滅するがいい!我々の中には、彼の賢者マーリン=ウォルフォードの孫であり、自ら魔人を退けた英雄シン=ウォルフォードと仮面ライダーがいる!万が一にも勝ち目があると思うな!!』

国民「オオオオ!!」

国王「アウグスト王太子殿下に、新英雄に仮面ライダーかぁ………。」

 

 そうして、オーグ達は、手分けして魔人を倒す事に。

 アリスとリン、トニーとユーリと迅、マークとオリビアと滅、トールとユリウスに分かれる。

 一方、それを聞いていたタクヤとコハルは。

 

タクヤ「なあ、さっきの声、聞いたか?」

コハル「ああ。どうやら、滅と迅、ゼロワンの変身者が来てるみたいだな。」

タクヤ「さてと、そのゼロワンの変身者を拝むとするか。お前は、避難所に向かう魔人を倒してくれ。」

コハル「ああ。」

 

 タクヤとコハルは、それぞれで動き出す。

 一方、建物の間から覗いていたローレンスは。

 

ローレンス「シン=ウォルフォードにユウト=イーウェル。どの程度の実力か、見せてもらおう。」

 

 ローレンスが、様子見をしていた。

 一方、アリスとリンは。

 

アリス「索敵魔法!!展開!!」

 

 索敵魔法を発動し、周辺の魔人を捜す。

 すると、魔人の反応が出る。

 

アリス「居た!行こうリン!」

リン「うん!」

 

 その魔人は既に数人の兵士達を殺していた。

 

魔人「ヘッヘッヘ!幾ら何でもだらしねぇなぁ!」

アリス「魔人発見!!」

リン「確認した!」

 

 そこに現れたアリスとリンを見た。

 

魔人「あぁ〜?何だぁ?幼女?」

 

 するとアリスに異変が。

 魔人は、アリスの地雷に触れた。

 

アリス「あぁ〜!?幼女ぉ!?」

魔人「あぁ!さっき王太子らが言っていたのはテメェ等か!ガキ2人か、舐められたもんだぜ!お飯事でも付き合って欲しいってか!?」

 

 魔人に色々言われて、アリスの怒りが爆発した。

 

アリス「ガキ………!?お飯事………!?じゃあたっぷり付き合って貰おうか!!!」

 

 両手に炎を持ってぶっ殺そうとしたが、リンが後ろから高圧水流の魔法でアリスをびしょ濡れにした。

 

アリス「び……びっくりしたぁ!何すんのリン!?危ないじゃん!って言うか思いっきり水掛かったし!」

リン「熱くなってる場合じゃない!アリスは興奮すると隙が出来る!相手は魔人!」

アリス「そ、そうだよね………。ごめん………頭冷えた………。うん、冷静に戦うよ。」

リン「もう倒した。」

アリス「へ!?」

 

 魔人が倒れると、真っ二つに切断されていた。

 リン曰く、高圧水流に砂を混ぜたらしい。

 周囲に大量の骸が転がっているのを見て、アリスは引いていた。

 

アリス「ま………魔人って言っても、人の形をしてるから………結構キツいね………。」

リン「私は平気。アイツらは魔人。例え元が人間でも今は違う。」

アリス「そうだけど………。そうなんだけど…………。」

リン「アイツらは魔物。ううん、知能があって、弱者を甚振って愉悦を感じるようなクズに成り下がってる。放置すれば犠牲が増える。アリス、躊躇わないで覚悟を決めて。」

アリス「………うん!」

 

 アリスはリンの言葉を聞いて、覚悟を決めた。

 すると、どこからか悲鳴が。

 兵士が魔人に踏まれていた。

 

兵士「貴様等………貴様等なんかに…………ガハッ!!」

魔人「貴様等何かに、何なんだよ!!!」

 

 そのまま兵士を蹴り飛ばした。

 

魔人「へへへ、次は足だぜ。ひゃはははははは!!楽しいなぁ!!これが魔人の力か!!どんな人間でもゴミクズ当然だ!!俺は人間を超越した存在になったんだ!!さあ、もっと遊んでくれよ!!」

 

 生き残ってる兵士を消し炭にしようとしたが、駆け付けたアリスとリンが魔力障壁を張った。

 

魔人「あ!?」

アリス「お前えええ!!!何してるんだ!!!!!!」

 

 更にまた激怒したアリスが炎の魔力を限界まで集める。

 

魔人「女の………ガキ?」

アリス「どいつもこいつも………私は子供じゃなぁい!!!!!」

魔人「な………何だこれは…………!?グアアアアア!!!!」

 

 両手から炎の魔法を放ち、魔人を跡形も無く消し炭にした。

 

アリス「ふぅー………。ふぅー………。」

リン「結局キレてるし。」

 

 その後、兵士を助けて、兵士は自力で救護所へと向かっていく。

 アリスとリンは、別の場所の魔人の元へ。

 一方、城壁上部では。

 

兵士「ヒィィィィ!!」

魔人「へぇぇ。良いもん持ってんじゃねぇか。」

 

 一方、トールとユリウスは魔人と交戦していた。

 

魔人「ハッハーーーー!!!!」

 

 逃げるトールを殴り飛ばそうとしたが、ユリウスが魔人の拳を掴んだ。

 

ユリウス「させぬで御座る!!」

魔人「オルァ!!消えろ!!」

 

 だが、別の魔人がトールに向けて魔力弾を飛ばす。

 

トール「ハァッ!!」

 

 トールは魔力障壁で防ぎ、左手で風の魔法を飛ばして魔人の右肩を斬り落とした。

 

魔人「ガハッ………!!」

トール「話し合いになるとは思いませんが、シュトロームに言われてこんな事を?」

魔人「お喋りに付き合う気はねぇよ!!!」

 

 魔人は魔力弾をトールに放ったが、魔力障壁により無効化。

 ユリウスは、魔人と肉弾戦を続けていた。

 

ユリウス「魔人とはこの程度で御座るか!!」

魔人「野郎…………!!!」

 

 トールは、風の魔法を放ち、右足と首の部分に攻撃する。

 魔人は、右足と首を切られ、崩折れる。

 

魔人「ははは、何だよ………。魔人だからって何もかも無敵って訳でもねーんだな………。100人も居るからこんな国簡単に陥せると思ったのによ…………。」

トール「察するに、あなた方は元帝国の平民でしょう?何故、こんな酷い事が出来るんですか!!」

魔人「…………愚問だな。それは俺たちが魔人だからだ。」

トール「それが答えですか………!?」

 

 トールは、魔人の答えに絶句する中、魔人は叫ぶ。

 

魔人「貴族に虐げられ、何もかも奪われた俺たち平民は、ただただ憎い………!憎い……!憎い………!魔人になってから、それが噴き出してきて止まらねぇんだよ!城壁の中で平和に暮らしてる奴には反吐が出る!」

 

 ユリウスは、魔人を倒して、その魔人に向かって叫ぶ。

 

ユリウス「だからと言って、無関係な人間を殺めて良いはずが御座らん!!我々が絶対に阻止するで御座る!!」

魔人「フフフ………!やってみろよ。」

 

 一方、別の場所のとある角では、4人の魔人が、兵士達を追い詰めていた。

 

魔人「ホラホラどうした!!後が無いぜ〜?」

魔人「勇敢な王国兵諸君〜?」

 

フライングディストピア!

 

 するとこの魔人の足元に水色の魔法陣が出現し、そこから水玉と冷気が溢れ出た。

 その魔人は、氷漬けにされた。

 2人の魔人は、羽型の手裏剣によって、倒された。

 

魔人「なっ!?………き、貴様等!!」

 

 屋根の上に迅とユーリが居た。

 

ユーリ「あらー?気付かれちゃったぁ?」

迅「まあ、気づくよね。」

魔人「テメェ等の仕業か!!!!」

 

 魔人は、迅とユーリに攻撃すべく両手に魔力を集めるが。

 

トニー「ハァッ!!!」

 

 そこに現れたトニーのバイブレーションソードが炸裂。

 

魔人「嘘………だろ………!?」

 

 トニーによって斬り裂かれた2人の魔人が両断された。

 

トニー「やっぱり良く斬れるねぇ!」

兵士「ウォォォ!!」

迅「ユーリ、トニー、後はお願いね。」

ユーリ「迅君も、無茶は禁物よぉ。」

トニー「迅は、他の魔人を。」

迅「ああ!」

 

 迅は、この場をユーリとトニーに任せて、他の魔人を倒しにいく。

 一方、救護所の近くでは。

 

魔人「ヘッへ、見っけ。救護所一番乗り!」

魔人「弱い人間いっぱい居そうだぜ。」

 

 救護所前に着地する。

 

魔人「よぉ〜。」

マーク「こ………ここは通さないぞ!」

滅「亡き者となれ。」

 

 滅は、アタッシュアローとアシッドアナライズを駆使して、魔人を倒していく。

 マークとオリビアは、2人の魔人を倒していた。

 すると。

 

魔人「隙だらけだぜぇ!」

コハル「フッ!」

 

 魔人がマークとオリビアに奇襲をしようとするが、コハルによって倒される。

 

コハル「奇襲か。奇襲をするなら、声を上げない方が良いぞ。」

マーク「誰っスか………?」

オリビア「アレって、プログライズキー!?」

滅「お前が、亡を通してレイトからショットライザーを受け取った者の片割れか。」

コハル「ああ。私はコハル= マリスだ。よろしく頼む。」

滅「ああ。」

 

 救護所では、シシリーが必死に治療を続けていた。

 

女性「シシリー様!どうかこの子を!」

シシリー「はい!」

 

 シシリーは、女の子に回復魔法をかけていく。

 だが、怪我をしている人が多く、シシリーは疲労していた。

 

シシリー「重症の方を最優先にお願いします!」

 

 一方、シンは、魔人を倒しまくっていた。

 ユウトは、違う場所へと向かっていた。

 何人もの魔人が、シンに向かっていくが、悉く返り討ちに遭う。

 

シン「どうした!!こんなもんか魔人共!!暴れたい奴は掛かって来い!!」

魔人「な………何だよアイツ!?」

魔人「聞いてねェぞこんな………!!」

魔人「俺達は魔人だぞ………!!カス共を排除し、何れは世界を統一する存在………!!」

魔人「死ね!!人間がぁーーーーー!!!」

 

 魔人はそう叫ぶが、シンの魔法が炸裂して、倒される。

 

シン「………分不相応な夢を見てんじゃねぇよ。」

 

 それを見ていたローレンスは戦慄していた。

 

ローレンス(なんだよ、アレ………!?)

 

 ローレンスは、シュトロームにシンとユウトの事を聞いた時の事を思い出していた。

 

シュトローム『彼等には随分と痛い目遭わされましてね。』

ローレンス(弱点を探れ………!?あるのかよ、そんなの………!?いや、まだだ。ユウト=イーウェルの方も見なければ………!)

 

 ローレンスは、ユウトを探しに動く。

 一方、ユウト、オーグ、マリアは索敵魔法で周囲を警戒していた。

 

マリア「………殿下、この周辺は粗方片付いたみたいです!」

オーグ「あぁ、だが油断は………。」

ユウト「なんか来るぞ!」

 

 すると、巨漢の魔人が現れる。

 

魔人「ほう………!随分と派手にやってるじゃねぇか。」

オーグ「懲りない奴らだ………!」

魔人「その声………。どうやら、テメェがアールスハイドの王太子様か。」

オーグ「そうだ。貴様らを1人残さず討伐しに来た。」

魔人「大した自信だな。」

タクヤ「面白そうじゃねぇか。俺も混ぜてくれよ。」

 

 そう言って、タクヤが現れる。

 いきなり現れた人物に、全員が驚く。

 

オーグ「お前は………!?」

マリア「仮面ライダー………!?」

ユウト「仮面ライダーバルカン………。」

タクヤ「お前がゼロワンの資格者ってとこだな。」

ユウト「ああ。」

タクヤ「俺はタクヤ=フラウドだ。アイツをぶっ潰すぞ。」

ユウト「ああ!」

 

 そう言って、ユウトとタクヤは並び立つ。

 それを見た魔人は、オーグに声をかける。

 

魔人「その首貰うぜ。大将の首を取れば後は総崩れよ!」

オーグ「残念だが、この……………ぷっ。アルティメット・マジシャンズの大将は私ではない。」

ユウト「何笑ってんですか?」

オーグ「お前が魔人の部隊を率いてるリーダーか?」

魔人「あ!?だったら何だ!?」

オーグ「だったら助かる。”頭”を叩けば残党の戦意を纏めて削げるからな。」

魔人「やってみろや!!帝国を潰した程度じゃ俺達の怒りは収まらねえ!!1人残らずぶっ殺してやる!!」

オーグ「それが貴様達の言動力か。だが討伐するのみ!存分に掛かって来るが良い!!」

タクヤ「ぶっ潰してやる!!」

魔人「引き裂いてやる!!!」

マリア「殿下もあまりシンの事が言えませんよ!もっと自分のお立場を!!」

 

 マリアが炎の魔法を放ち、タクヤはショットライザーで銃撃する。

 だが。

 

魔人「不意打ちかぁ?えげつねぇ嬢ちゃんだな。」

 

 魔人は死んでる仲間の死体を盾にしてやり過ごしていた。

 

ユウト「仲間の死体を盾に!?」

ファブロ「気に入ったぜ!このファブロ様の女にしてやろうか?」

マリア「いやー、彼氏は募集中だけど、アンタだけはないわー。」

オーグ「なんだ、モテるじゃないか。」

マリア「やめて下さいよ、殿下!」

 

 そんな風に話していると、ファブロが駆け出す。

 

ファブロ「折角良い思いをさせようとしたのに残念だなぁ!」

 

 仲間の死体を投げ飛ばし、マリアに向かってパンチを叩き込む。

 

ファブロ「っ!?(この手応え………!!)」

マリア「最っ低………相手でもエンリョなしなの?(実戦じゃやっぱり物理防御は必須……!戦闘服じゃなかったら多分骨ごと折られてる………!)」

 

 だが、ファブロは、マリアの腕を掴み、投げ飛ばすが、タクヤが受け止める。

 

タクヤ「投げ飛ばされてんじゃねぇ!」

マリア「あ、ありがとう!助かったわ!」

ユウト「はあっ!」

タクヤ「オラっ!」

 

 ユウトとタクヤは、アタッシュカリバーとショットライザーで攻撃する。

 マリアも、炎の魔法を放つ。

 だが。

 

ファブロ「へっへっ……効かねェなぁ………!」

オーグ(攻撃力に長けたメッシーナの魔法とあの2人の攻撃を無傷で………!?)

ファブロ「解せねェってツラだなぁ。ネタを見せてやろうか?」

 

 ファブロは、杖を取り出す。

 それは、城壁で兵士が使っていた魔道具だった。

 

マリア「魔道具………!?」

ユウト「杖?」

タクヤ「なんだあれ?」

オーグ「まさか………!」

ファブロ「城壁辺りでやあらこれで魔法を防がれてなぁ、便利そうだったんで拝借して来たぜ。………最も、持ってた連中は全員首をブチ折ってやったんで返却は出来ねェがなぁ。」

マリア「アールスハイドの防御用魔道具…………!!」

オーグ「つまりシンの魔力障壁………!!」

ファブロ「あぁ!?さっきまでの威勢はどうした!!ホルァ撃って来いよ!お得意の魔法をよ!!」

 

 オーグとマリアとユウトとタクヤが動く。

 オーグとマリアは、ファブロの横に配置して、ユウトはフレイミングタイガーに変身する。

 ユウトは、手から火炎放射を放ち、タクヤは絶え間なくショットライザーを撃ちまくる。

 

ユウト「ハァァァ!!」

タクヤ「ハアッ!」

マリア「ハァァァァ!!」

オーグ「ふっ!」

ファブロ「チッ!(こいつら………!即死級の魔法と技を絶え間なく………!これ………保つのか?)」

 

 ファブロは、魔力障壁を使い、凌いでいたが、突然消える。

 

ファブロ「何!?」

マリア「魔力制御の訓練もしてない人間が、魔人になったからって自在に魔法を使える訳じゃない!制御に集中出来ない状況まで追い込まれれば、自ずと魔法は発動しなくなる!残念だったわね、借り物の力じゃそこが限界よ!!」

ファブロ「ガキ共が!!!!!」

 

 ファブロは、杖を捨てて、マリアに攻撃しようとするが。

 

BULLET!

 

 待機音が鳴り出し、4体の狼が、ファブロの手足に噛みつき、壁に捕まえる。

 タクヤは、エネルギーをチャージしたショットライザーをファブロに向ける。

 

タクヤ「くらえ!」

 

シューティングブラスト!

 

 タクヤのショットライザーから放たれた青い弾丸は、ファブロを貫く。

 

ファブロ「ぐわぁぁぁ!!」

 

シューティングブラスト

 

 シューティングブラストがファブロを貫き、その先にあった家すらも貫く。

 

ユウト「よし!」

オーグ「メッシーナ。よく私の意図を理解してくれたな。」

マリア「そりゃもう、魔力制御に関しては嫌と言う程シンやマーリン様から散々学びましたからね!」

オーグ「ユウトとタクヤも助かる。」

タクヤ「礼には及ばねぇよ。」

オーグ「………帝国ではなく、アールスハイドに生まれていればな…………。それも、もう叶わぬか………。」

 

 一方、王城では、スイード国王が見ていた。

 

スイード国王「ふぅ………。どうやら、戦闘が収まったようです。」

 

 スイード国王は、そう言って後ろを振り向く。

 そこにマーリンとメリダも来ていた。

 

マーリン「ワシ等の出番は無さそうじゃのう。」

メリダ「今回は良くやったと誉めてやろうかね?」

 

 一方、ユウト達の戦闘を見ていたローレンスは。

 

ローレンス「ユウト=イーウェルも化け物か!?アイツに隙なんてあるのか………!?しかも、他の連中や仮面ライダーも相当強い!全滅は時間の問題か………!ここで全ての手駒を失うのはマズイ………!!くそっ!でもこっちには最善の策が!!」

 

 一方、スイード王国の城壁の外にいるゼストは。

 

ゼスト「この展開は予想できませんでしたね。シン=ウォルフォードとユウト=イーウェルを誘き寄せ、力を測るつもりでしたが、ここまでとは。彼らの評価を見直す必要がありますね。捨て駒の魔人達とは言え、見す見す全滅させるのは惜しい。撤退させるにしても、ローレンス1人では荷が重いでしょう。ですので、お願い出来ませんか?ミリアさん。」

 

 ゼストの背後には、ミリアが居た。

 スイード王国軍は。

 

隊長「魔人達の攻撃が収まったが、警戒を怠るな!」

兵士達「はっ!!」

 

 警戒を怠らないようにしていると、突然、ゲートが爆破されてしまった。

 

兵士達「うわああああああ!!!」

兵士「な………何だ!?」

ミリア「来なさい。人間共。」

 

 そこに現れたミリア。

 一方、ゲートが爆発したのが、ユウト達にも伝わっていた。

 

マリア「爆発した!?」

オーグ「何が起こっている!?」

ユウト「俺、先に行きます!」

タクヤ「悪いな、先に行かせてもらうぜ!」

 

 ユウトとタクヤは、駆け出していた。

 一方、スイード王国の上空に、シュトロームが来ていた。

 

シュトローム「やれやれ、手を出すなと言ったのに。酷いじゃないですかゼスト君。こんな楽しそうな事を、私に内緒で始めるなんて。」




今回はここまでです。
遂にタクヤとコハルがバルカンとバルキリーに変身!
次回は、ミリアが襲撃してくるまでです。
昨日のリバイスは、光君のフルゲノミクスで赤石長官が追い詰められ、赤石長官が退場しました。
次回のリバイスは、ライブの強化とヒロミさんの再変身と、見どころがあります。
近いうちに、亡と雷が変身します。
サウザーも近いうちに出したいとは思いますが、問題は、サウザーの対応ですね。
最初から味方というのは、考えていませんが、最初こそ第三勢力としていて、後に仲間になる展開を考えています。
ただ、滅亡迅雷が仲間なので、仮面ライダー滅亡迅雷が出し難いです。
まあ、いずれ出すとは思いますが。
一応、大まかな流れとしては、シュトロームとの決戦時に、アークワン、アークスコーピオン、リアライジングホッパーを出して、その後に原作ゼロワンの、REAL×TIMEに相当するエピソードをやる予定です。
意見やリクエストがある場合は、活動報告、メッセージにて受け付けています。


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第10話 そして世界へ………。

 ミリアがスイード王国の兵士を攻撃している頃、治療院では、シシリーが必死に治療を続けていた。

 

女医「シシリー様!此方をお願いします!」

シシリー「はい!」

 

 次々に搬送されてくる人たちを治療していくシシリー。

 

男性「ありがとう………。」

シシリー「いえ。さぁ、安静に。」

 

 シシリーが、男性を治療し終えると、1人の女性が駆け寄る。

 

女性「シシリー様!!どうか………どうか………私の夫を!」

 

 女性の案内で、その夫の場所に向かうと、夫は、酷い有様だった。

 

医療班長「くそっ!血が止まらん!」

女医「シシリー様!」

 

 腹の皮膚が抉られ、内臓が見えてる状態の大重傷を負っている。

 

シシリー「これ…………は…………!」

女性「夫を…………助けて下さい………!何でもしますから…………!」

 

 シシリーはすぐさま、その夫に近づき、回復魔法をかけていく。

 一方、シンは、大きな魔力の反応に気づく。

 

シン「何だ………この魔力…………!?」

 

 別の場所では、ミリアが兵士達を殺し続けていた。

 

隊長「今までの奴らとは……桁違いだ………!」

 

 するとミリアが巨大な魔力を兵士達に向かって放った。

 しかし、すかさずアリスとリンが間に入る。

 

アリス・リン「やあああああああああ!!!!」

 

 真上から現れたアリスとリンが魔力障壁で魔力を防いだ。

 

アリス「皆!下がって!」

隊長「し、しかし!」

リン「悪いけど足手纏い!」

隊長「わ、分かった!」

 

 2人の言葉を受けて、兵士達が下がる。

 

ミリア「あなた達は?」

アリス・リン「アルティメット・マジシャンズ!」

 

 アリスとリンはそう言って、ミリアに戦いを挑む。

 リンとミリアは、屋根に登って、リンが雷の魔法を放つ。

 

リン「はあああああああ!!!!」

 

 電撃魔法は、ミリアに向かって放たれる。

 しかし、ミリアが姿を消した。

 

リン「消えた!?」

ミリア「また無詠唱?厄介ね。」

アリス「ハァァ!!」

 

 ミリアは、近くの尖塔の上に立っていて、アリスが空中で魔法を放つ。

 それを見たミリアは、すぐさま魔力障壁で攻撃を防ぐ。

 

アリス「テイヤ!!!」

 

 アリスは着地して再び魔法を放つ。

 尖塔が崩れ落ちた。

 

兵士達「おおおおお!」

アリス「ちょっとやり過ぎたかな?」

リン「アリス!!後ろ!!」

アリス「え?」

ミリア「フッ!!」

アリス「ぐあっ!!」

 

 リンの警告に、アリスの反応が遅れ、ミリアに突き飛ばされる。

 アリスが魔道具の力で、傷を治す。

 

アリス「フゥ…………。」

ミリア「魔道具?」

アリス「こんの!!」

 

 アリスは、魔力弾を連続で飛ばす。

 

ミリア「フンッ!!」

 

 ミリアの方も魔力弾を飛ばした。

 アリスが魔力障壁を展開して防いだが、ミリアが高速移動してアリスを転ばせた。

 

アリス「うわぁぁ!!」

リン「アリス逃げて!………ウッ!?」

 

 リンはアリスを助けようと魔法を放とうとするが、ミリアによって、アリスが盾にされる。

 

アリス「ぐあっ………!凄い力…………!!」

リン「くっ!!」

ミリア「戦い方は素人ね。」

タクヤ「オラァ!」

 

 ミリアがアリスを拘束する中、突然の銃撃に、ミリアはアリスを捨てて、躱す。

 そこには、タクヤが居た。

 

タクヤ「何だ、こいつ………。」

アリス「誰………?」

リン「この人………強い………!」

タクヤ「見たら分かる。」

ミリア「仮面ライダー…………?」

タクヤ「覚悟しろ。俺が相手だ。」

 

 タクヤは、ショットライザーから弾丸を発射しながらミリアに迫る。

 一方、別の場所ではローレンスが索敵魔法を発動していた。

 

ローレンス(援軍!?まさか…………ゼスト様か!何方にせよこれは好機!)

 

 ローレンスは、すぐ他の魔人に知らせる。

 

ローレンス『全員退却だ!!命令だ!!リーダーが殺られた!!全員直ちに退却しろ!!』

 

 一方、ローレンスの命令を聞いた魔人達は、すぐには動かなかった。

 

魔人「あ?退却だと?」

魔人「暴れ足りねえ!!」

魔人「何だ人間如き…………。」

 

 何処からか炎が飛ばされ、魔人を燃やした。

 

ローレンス『この場は分が悪い!!一度退いて立て直す!!』

 

 そこに居たのは、シンだった。

 それを見て、魔人達は撤退を開始するが、何人かが炎に焼かれる。

 

魔人「オルア!!道を開けやがれ!!」

 

 負傷者を運んでる兵士達を突き飛ばして屋根の上へ逃げる。

 

シン「っ!?」

 

 シンはすぐさま、自身の浮遊魔法を使い、飛ぶ。

 魔人達は、屋根伝いに撤退していた。

 

シン「逃すか!」

 

 シンは、指向性爆発魔法を放つ。

 シンの魔法と必殺技が魔人達に当たり、消し炭にしていくが、何人かは、撤退に成功していた。

 

シン「逃すかっ!…………っ!?」

 

 シンは、逃げていく魔人を追撃しようとするが、爆発が起こり、そちらに向かう。

 一方、ミリアと戦っているタクヤは。

 

タクヤ「こいつ………強ぇぇ………!」

ミリア「へぇ。少しはやるじゃない。」

コハル「ハッ!」

 

 そこに、コハル、迅、滅も合流する。

 

コハル「大丈夫か!?」

タクヤ「誰に言ってんだ!」

迅「アイツ、強そうだね………。」

滅「油断するな。」

ミリア「仮面ライダーが4人も………。」

 

 ミリアは、その4人に向かっていく。

 ただ、ミリア自身は、滅と迅は後回しにして、タクヤとコハルを中心に攻撃を仕掛けていく。

 

滅「こいつ………!」

迅「タクヤとコハルを中心に攻撃してる……!」

タクヤ「こいつ………!」

コハル「怯むな!」

 

 そう、ヒューマギアである迅と滅とは違い、タクヤとコハルは人間だ。

 その為、徐々に押される。

 途中で、ミリアは、4人に攻撃をするのをやめ、アリス達に攻撃する。

 4人の意識がアリス達に向いたのを見て、一気に攻撃する。

 4人は変身解除こそしなかったが、吹き飛ばされる。

 

ミリア「大した事ないわね。」

シン「待て!」

ユウト「俺たちが相手だ!」

迅「ユウト!」

滅「やっと来たか………。」

ミリア(アイツらが、シン=ウォルフォード。そして、ユウト=イーウェル。またの名を、仮面ライダーゼロワン。)

 

 シンが皆を治療する中、ミリアは冷静に分析をしていた。

 迅、滅、タクヤ、コハルも、アリス達を連れていた。

 

ミリア(ローレンスの方は上手く行ったみたいね。)

シン「よくもやってくれたな!」

ユウト「お前を倒す!」

ミリア(さて、彼らが実際どの程度か、知りたいわね!)

 

 ミリアは、不意打ちと言わんがばかりに、炎の魔法をぶつけてくるが、ユウトが前に出てくる。

 その姿は、変わっていた。

 

ミリア「何!?」

 

プログライズ!

キリキリバイ!キリキリバイ!バイティングシャーク!

”Fangs that can chomp through concrete.”

 

 ユウトは、フレイミングタイガーからバイティングシャークへとハイブリッドライズする。

 ユウトは、両腕についたアルリミテッドチョッパーで、魔法を斬り裂き、シンと共に駆け出していく。

 シンはバイブレーションソードで、ユウトはアンリミテッドチョッパーで、ミリアに連携攻撃していく。

 ミリアは躱しつつ、シンに向かって魔法攻撃をするも、二重の魔力障壁で無傷だった。

 

ミリア(二つ同時に!?)

 

 ミリアが動揺する中、ユウトは攻撃する。

 ミリアはそれを躱すが、ミリアが動揺していたのもあり、隙をつかれて、シンのバイブレーションソードを食らう。

 ミリアは避けるものの、体の一部が斬られる。

 

ミリア(後少し遅かったら………!)

オーグ「シン!ユウト!」

マリア「大丈夫!?」

ユリウス「加勢するで御座る!」

 

 そこに、オーグ、マリア、ユリウス、トールが合流する。

 

ミリア(そろそろ引き時かしら?)

 

 ミリアは、不敵に微笑んだ。

 それに違和感を感じたユウトは、アンリミテッドチョッパーから、斬撃波を放つが、躱されてしまう。

 ミリアは、マリアを地面に叩きつけつつ、上空へと飛ぶ。

 

ローレンス「今だ!!周囲に爆発魔法を!!」

 

 すると、屋根の上のローレンスの指示を受け、浮遊して爆発魔法の魔力を最大まで収束させる。

 後ろを見ると、まだアリス達が動けない。

 

ユウト「不味い!!」

 

 ユウトは、すぐにブレイキングマンモスプログライズキーを取り出す。

 

PRESS!

オーソライズ!

 

 すると、衛星ゼアの後方に付いていた巨大装備がジェットフォームになって、ビームに変換され、ユウトの頭上に転送される。

 その際、量子圧縮が行われ、数メートル大にダウンサイジングされる。

 ユウトは、ブレイキングマンモスプログライズキーをゼロワンドライバーに装填する。

 

プログライズ!

 

 すると、ゼロワン・ライジングホッパーへと変身したユウトが、ブレイキングマンモスの内部に転送される。

 

Giant Waking!ブレイキングマンモス!

”Larger than life to crush like a machine.”

 

 そして、人型になり、ゼロワン・ブレイキングマンモスに変身する。

 ユウトはすぐに、ブレイキングマンモスプログライズキーを押し込む。

 

ブレイキングインパクト!

 

 ユウトは、マンモスプレッサーを分離させ、空に飛ばして、大きくジャンプする。

 巨大オランウータンの魔物とは逆に、足を上にしてジャンプして、マンモスプレッサーを足に装着する。

 

ユウト「ハァァァァ!!」

ミリア「何!?」

 

 ブレイキングマンモスは、ミリアの放つ爆発魔法とぶつかり合う。

 拮抗状態に陥るが。

 

ユウト「ぶち抜けぇぇぇぇっ!!」

ミリア「くっ!?」

 

 ユウトは、足に更に力を込めて、爆発魔法を貫く。

 その際に、大爆発が起こる。

 シン達は、魔力障壁で爆風を防いで被害を抑える。

 しばらくすると、黒煙が晴れ、ブレイキングマンモスから排出されたユウトが、変身解除しながら、シン達の前に降り立つ。

 

シン「ユウト!やったのか!?」

ユウト「いや、手応えがなかった。多分、爆発に紛れて逃げられた。」

滅「そうか。」

シン「皆、大丈夫か?」

トニー「うん。何とか。」

迅「それにしても、あの女性、かなり強かったね。」

トール「恐らく、あの女は、元兵士か、ハンターでしょう。」

トニー「そんな奴まで………!」

 

 その後、シンとオーグが治療院へと向かい、他の面子は、周囲の警戒を行う。

 その間、アリスはコハルとタクヤに質問をしていた。

 

アリス「あの、お二人は?」

コハル「私はコハル=マリスだ。で、そっちのぶっきらぼうなのが。」

タクヤ「ぶっきらぼうとか言うな。タクヤ=フラウドだ。」

ユウト「俺は、ユウト=イーウェルだ。よろしく頼む。」

タクヤ「ああ。」

 

 ユウトとタクヤは、握手をする。

 一方、苛ついている平民の魔人と共に撤退していたローレンスは、ミリアから事情を聞いていた。

 

ローレンス「何?ゼスト様が?」

ミリア「えぇ。あなた達の脱出の機会を作って欲しいと。」

ローレンス(しかし………想定外のウォルフォード達の力………!貴重な駒を失い過ぎた………!)

 

 撤退する魔人達を見つめていたシュトロームは。

 

シュトローム「勇んで攻め入り返り討ち……。尻尾を巻いて撤退とは、滑稽ですねぇ。帝国を滅ぼしてしばらく退屈でしたが、シン=ウォルフォード君、そしてユウト=イーウェル君。君達が居ると少しはそれを忘れられそうですね。」

 

 その後、王城に呼び出され、ユウト達も一緒に向かった。

 そこで、魔物が居なかった事、シュトロームの姿が見えなかった事を疑問視した。

 オーグは、スイード国王に、各国で連合を組む事を提案した。

 スイード国王は、その連合に参加するのを承諾した。

 その後、シン達アルティメット・マジシャンズは、各国を巡る事を決意する。

 ちなみに、目的は同盟と、ゲートを使ってすぐに行くようにする為だ。

 それには、ユウト達も同行する事に。

 その決意の下、アールスハイドに戻ると、盛大に盛り上がっていた。

 一方、魔人側は。

 

シュトローム「中々の見ものでしたよ。」

「「「っ!」」」

 

 シュトロームのその一言に、全員が震え上がる。

 そう、シュトロームは見ていたのだ。

 

シュトローム「だから忠告したじゃないですか。シン=ウォルフォード君とユウト=イーウェル君には手を出さない方が良いと。」

ゼスト「とんだ醜態を晒してしまいました…………。

シュトローム「いえ、十分楽しめましたよ。まぁ欲を言えば、もう少し盛り上がって欲しかったですけどねぇ。」

 

 シュトロームがそう言うと同時に、両眼を光らせて、3人を震え上がらせる。

 

ゼスト(シン=ウォルフォード………ユウト=イーウェル………。主人の新たな目的となりうる存在に感謝すべきか…………それとも手を打つべきか…………何方にせよ、あの規格外の強さ………無視は出来んな………。)

 

 ゼストがそう考えている中、シュトロームは、ミリアに尋ねていた。

 

シュトローム「ところでミリアさん。例の実験の様子はどうです?」

ミリア「っ!まだ、ハッキリとは………。もう少し検証する必要があるかと…………。」

シュトローム「そうですか………。また報告を待っていますよ。」

ローレンス「…………うん?」

ゼスト(そう…………。その結果次第で、私達魔人の将来が決まるのですから…………。)

 

 ローレンスがどういう意味かと首を傾げる中、ゼストはそう考えていた。

 シュトロームの例の実験とは………。

 しばらくして、アルティメット・マジシャンズの旅立ちの日。

 

ディセウム「頼んだぞ。」

オーグ「お任せ下さい。」

マーリン「気をつけての。」

メリダ「他国に失礼のないようにね。」

シン「分かってるよ…………。」

亡「滅。私と雷は、用事が済み次第、すぐに合流します。」

雷「待ってろよ。」

滅「ああ。」

迅「うん。」

ユウト「イズも、よろしく頼むな。」

イズ「はい。私は、あなたの秘書なのですから。」

ユウト「うん。」

 

 そうして、アルティメット・マジシャンズと仮面ライダー達は、旅立った。




今回はここまでです。
ユウト達も、シン達に同行します。
TTFCにて、ゼロワンothersの滅亡迅雷がただで見れるようになって見ましたが、重かったですね。
本当に、ザイア、滅亡迅雷に関しては、どうしようかと考え中です。
ゼロワンothers関連の話は、どうしましょうかね。
良かったら、活動報告、またはメッセージにて、リクエストを受け付けています。
近いうちに、シャイニングホッパー、アサルトウルフ、シャイニングアサルトホッパーを出したいと思います。
現状、シン達が変身する事は、考えておりません。


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第11話 各国を巡るゼロワン

 ユウト達とアルティメット・マジシャンズが旅立った。

 同盟を結ぶ為に。

 その際に、タクヤ、コハルも同行する事に。

 ちなみに、エリザベートは飛べないので、オーグが抱える事に。

 タクヤとコハル、滅、イズも飛べないので、ユウトと迅の二人が抱えている。

 

タクヤ「結構高いな………。」

コハル「この程度でビビってどうする。」

タクヤ「ビビってねぇよ。」

ユウト「まあ、仮面ライダー組で飛べるのが俺と迅の二人だけだからな。」

迅「そうだね。」

滅「一応、雷と亡がいずれ合流するだろうがな。」

イズ「私たちには、魔法は使えないですから。」

 

 そう、雷と亡は、用事を行なっている。

 一方、オーグに抱き抱えられているエリザベートがつぶやく。

 

エリザベート「………。」

オーグ「どうしたエリー?」

エリザベート「いえ、その………。私だけ飛べないので仕方無いとは言え………アウグスト様に抱えられているのが恥ずかしいと言うか………。」

オーグ「何だそんな事か。気にするな。」

エリザベート「………アウグスト様、シンさんと出会われて………変わられましたね。」

オーグ「おいエリー、まさかまだ妙な疑いを?」

エリザベート「分かってますわよ、最初から。シンさんがシシリーさんにしか興味ない事は。」

オーグ「そうなのか?だったら何故何時も………?」

エリザベート「それでもやっぱりシンさんが羨ましいんですわ。アウグスト様を、そんな風に変えられるんですもの。ですから、ちょっと悔しくて………お2人を困らせて差し上げようかと。ごめんなさい、アウグスト様。」

オーグ「………お前も少し変わったな。エリー。」

 

 そんな風に話していた。

 今回の日程で訪問する国は3つある。

 それぞれが旧帝国と国境を接するダーム王国、カーナン王国、クルト王国の3つの国だ。

 スイード王国の時は緊急の救援要請だった為、国境は素通りしたが、今回は事前に通信でオーグが訪問する事を伝えた上で、正式な手順で入国する事にした。

 ダームの国境付近に降り立ち、歩きでダームに向かう。

 その間、アリスが疑問を発する。

 

アリス「出発してから言うのも何ですけど殿下、スイードでの手応えからして、魔人って私達だけでも討伐出来る気がするんですけど、連合組む必要ってあるんですか?」

オーグ「寧ろ、魔人に対抗出来るのは私達だけだろうな。」

アリス「じゃあ何の為に?」

オーグ「我々だけ魔人を討伐したとなると、アールスハイドの功績があまりにも大き過ぎる。前に一度話しただろう?仮に世界を救えたとしても、今度は我々が他国から驚異の対象として見られ兼ねないんだ。」

滅「そうなると、アールスハイドが周辺の国に攻め込まれるからな。」

オーグ「そうだ。魔人が居なくなった事で、今度は人間同士の争いを招く事になる可能性が出て来る。」

シシリー「……………。」

 

 オーグと滅の言葉に、周囲は黙ってしまう。

 マリアが口を開く。

 

マリア「それって、アールスハイドが一人勝ちすると、他国の国が面白くないから、戦功を分け与える為の連合って事ですか?」

オーグ「第一は各国を守る為だ。そこは履き違えるなよ?」

アリス「魔人は人類共通の脅威なのに!何でそんな考え方になるのかな!?」

 

 アリスがそう憤慨する中、オーグがため息を吐きながら答える。

 

オーグ「それが国であり、人間と言うものだ。」

迅「人間は、例え脅威が去ったとしても、その脅威を滅ぼした相手に恐怖するんだよ。」

トール「…………自分も頭では分かっているのですが…………。」

ユリウス「感情では承服しかねるで御座る…………。」

シン「まあ、まずその前に魔人達の全容は全く分かってない訳だし、魔人を舐めて掛かるのは禁物だよ。国単位で同時に攻め込まれたら、やっぱり俺達だけじゃ対処出来ないし。」

マリア「そりゃ、まあそうか。」

オーグ「そう言った意味も含めて”大国”であるエルスとイースとの交渉が必要なんだ。後々、最も争いの火種になり兼ねない国々だからな。」

ユウト「大変だな。」

タクヤ「そうだな。」

コハル「見えてきたぞ。」

 

 そんな話をしてる中、ダーム王国へと到着する。

 

門番「ようこそダームへお出で下さいましたアウグスト様。馬車の御用意が出来ております。皆様で王城にお出でになられますか?」

オーグ「いや、今回は私だけでお会いしよう。一応護衛の2人は連れて行くが。」

門番「畏まりました。」

オーグ「では皆、また後程な。それまで観光を楽しんでくれ。」

 

 そうして、オーグ、トール、ユリウスの三人は離脱した。

 ユウト達は、観光をする事に。

 

タクヤ「随分と賑やかだな。」

コハル「平和だな。」

ユウト「そういえば、ダーム王国って、どんな場所なんだ?」

シン「確かに。」

マリア「小さいけど、歴史的にはかなり古くて重要な国よ。何せイース神聖国が出来る前は創神教の総本山があった所だからね。」

イズ「今でも当時の大聖堂とか残っていて、観光名所になっています。他に有名なのは………殉教者イースの生家でしょう。」

 

 ユウト達は、イースの生家に向かった。

 

トニー「へぇ、ここがイースの………!」

ユーリ「わぁ、実際見ると感激ねぇ………。」

ユウト「歴史を感じるな。」

迅「歴史の重みだね。」

エリザベート「とても趣きがありますわ。」

シン(そうか、殆ど皆創神教の信者だから………。」

 

 皆がそれぞれ言葉を発していると、メイが驚きの言葉を出した。

 

メイ「意外とショボイです!」

ユウト「メイちゃん!?」

タクヤ「おい、そんな事を言うんじゃ無い!」

コハル「言葉には気をつけた方が良いかと………。」

 

 メイの爆弾発言に、ユウト、タクヤ、コハルの三人が宥める。

 次は創神教旧総本山のダーム大聖堂へと向かう。

 

アリス「わぁ!結婚式!」

ユーリ「何処かの貴族ねぇ。」

 

 丁度結婚式が行われていた。

 女性陣がうっとりしている中。

 

オリビア「素敵………。私もこんな式挙げられたらなぁ…………。」

リン「頑張れマーク。」

迅「ファイト。」

マーク「む、無茶言わないで下さいリンさん!迅さん!金銭的にも立場的にも無理ッス………。」

 

 リンと迅からそう声をかけられ、マークはそう言う。

 滅が、エリザベートに質問をする。

 

滅「そういえば、エリザベートは、オーグとの式は、どこで挙げるんだ?」

エリザベート「アールスハイド王家は代々、アールスハイド大聖堂で挙式をするのが決まりですわ。此方に劣らず素晴らしい教会ですのよ。」

ユウト「へぇ…………。」

コハル「ユウト………興味なさそうだな。」

シン「シシリーもこう言う所で結婚式したい?」

シシリー「え!?いえ………その………はい………。やっぱり憧れると言うか………羨ましいと言うか………。」

シン「そっか。じゃあ、頑張って世界を救ったら、こう言う所で式を挙げようか。」

シシリー「えっ!?」

 

 嬉しくなったシシリーがシンに寄り添った。

 それを見ていた彼氏なしの女性陣はというと。

 

マリア「はぁ………リア充が…………。」

アリス「良いなぁシシリー。」

ユーリ「私達は式を挙げる場所以前に、相手探してからよねぇ…………。」

リン「私は魔法が恋人。」

アリス「そういえば、ユウト君って、フリーだよね?」

ユウト「そうだけど。」

アリス「相手を作ったりはしないの?」

ユウト「魔人やアークの脅威が無くならない以上、呑気にそんな事をしてる余裕は無い。」

 

 アリスの質問に、ユウトはそう答える。

 それを見ていたタクヤ、コハル、迅、滅、イズは。

 

タクヤ「アイツ………どんだけ女っ気が無いんだよ。」

コハル「………まあ、アークの脅威に備えようとする姿勢は普通に評価出来るな。」

迅「でも、ゼロワンとしての使命に縛られてるような気がするね。」

滅「アイツには、もう少し、自由に生きても誰も文句は言わないと思うのだがな。」

イズ「そうですね。」

 

 その五人は、ユウトの事を心配していた。

 ゼロワンとしての使命に縛られ、自由に生きる事が出来ないユウトを。

 その後別行動する事に。

 

マーク「すみませんッス。じゃあ俺達も少しだけ。」

オリビア「夕方には合流します。」

ユウト「ああ、気を付けてな。」

トニー「僕はちょっと街の娘と遊んで来るよ。なるべく夜には戻るから!」

ユウト「女好きだなぁ全く。」

タクヤ「俺たちは、個別で観光してるぜ。」

コハル「また会おう。」

迅「そういう事で。」

滅「合流する。」

ユウト「じゃあ、俺も個別で動くか。」

イズ「私も同行します。」

 

 そうして、シン、シシリー、マリア、アリス、リン、ユーリを除いた面子は、個別に動いていた。

 一方、旧ブルースフィア帝国のとある丘陵地帯では。

 

シュトローム「生物の魔物化ですか………。人間相手ではないならそう難しい事ではありませんが、そんなものを覚えてどうするのですか?」

ゼスト「シュトローム様がこの先、新たに目標を定められた際、我々もそのお力になりたいと思っております。手駒の魔物を増やす事も、その一環になるかと愚考した次第でございます。」

シュトローム「目標ねぇ…………。まあ別に構いませんが。」

 

 シュトロームはそう言って、1匹の羊に近寄る。

 

シュトローム「動物が魔物化するのは、魔力が制御出来ずに暴走するからです。なので制御し切れない量の魔力を流し続けてやれば、簡単に魔物化します。」

 

 シュトロームが右手を羊に添えると、羊が一瞬で魔物化した。

 

全員「おお…………。」

シュトローム「これが人間の様に魔力を制御出来る生物だと、一気に難易度を跳ね上がるんですけどね…………。」

ゼスト「成る程、では私から。………………む?これは…………意外と…………。」

ダンテ「ゼスト様、魔力が外に漏れ出すばかりの様ですが…………。」

ゼスト「見れば分かる………。真顔で言うな………。」

シュトローム「人間で言う基礎魔力量を掴んでやるんですよ。」

ゼスト「むぅ………魔力が少な過ぎて判別し辛いですな………。」

 

 ゼストに続き、他の魔人達もやってみる。

 

魔人「おお?」

魔人「くっ………確かに………。」

魔人「あ、待てコラ!」

魔人「難しいな………。」

 

 ゼストと同様に、羊を魔物化する事に苦戦していた。

 そんな中、再びゼストが挑戦すると。

 

ゼスト「っ!お、おお!」

 

 羊が魔物化した。

 

ダンテ「初の成功ですね。」

 

 それを見ていた他の魔人達が拍手する。

 

ゼスト「いい、一々拍手するな………。」

魔人「お、こっちも出来たぞ!」

魔人「俺もだ!」

ミリア「あ…………。」

 

 ゼストを始めとする他の魔人が成功する中、ミリアは、上手く出来ていない。

 

ミリア「ん?ん?(どう言う事………?自分の魔力も、上手くコントロール出来ない………?)」

 

 気になったミリアは、シュトロームに相談してみる事に。

 

ミリア「シュトローム様。」

 

 シュトロームに訳を話す。

 

シュトローム「ほう、これは………ミリアさん、以前からの実験………第1段階は成功のようですよ!」

ミリア「本当ですか!?」

シュトローム「フフ………実に興味深い実験結果だ。」

ミリア「…………。」

 

 果たして、その実験とは………。

 一方、サイクスは他の魔人に話しかけていた。

 

サイクス「なぁ、離反した連中に付いてるローレンスは兎も角、アベルとカインはどうした?」

魔人「ああ………例の潜入捜査だとよ。直接情報聞き出すなら彼奴ら適任だからな。特に女相手には。」

魔人「………所で、コレやり過ぎじゃね………?」

魔人「つい夢中になったな………。」

 

 魔人達は夢中し過ぎて、全部の羊を魔物化してしまってた。

 それを見ていたアズは。

 

アズ「何呑気に羊を魔物化してるのよ。早く人類を滅ぼして欲しいんだけど。」

 

 若干、苛立ちを見せていた。

 同じ頃、アールスハイド王都では。

 

店主「シン=ウォルフォード様とユウト=イーウェル様?そりゃアンタ、この国じゃ今一番の有名人だよ!魔人討伐に勲一等の叙勲!アルティメット・マジシャンズの発足にスイードの魔人撃退!兎に角常に話題に事欠かない方だからねぇ!あぁ〜、一度で良いからお会いしてみたいわぁ!」

???「お話ありがとうございます。旅の途中でして、どうしても噂の英雄について知りたかったものですから。」

店主「あはは、何時でもおいで!アンタみたいなイケメンなら大歓迎さ!」

 

 一方、その背後では。

 

 

???「ははっ、ありがとう。うん、また機会があれば。」

 

 1人の男が若い女性と話していた。

 

女性「やっぱり皆、シン様に興味津々なのね!」

女性「でも私、シン様も良いけどユウト様も結構好みだなぁ………。」

 

 その二人の男性…………カインとアベルは、お互いに成果を話し合っていた。

 

アベル「どうだカイン?」

カイン「奴らの通っている学院は夏季休暇中らしいよ。更に調べるなら、別の所からだね。」

アベル「奴らの関係者が多く居るアールスハイドの王城か、自宅である賢者マーリン=ウォルフォードの屋敷かぁ。」

カイン「ははっ、どっちにしろリスク高いなぁ。」

アベル「リスクは承知の上だろ?」

カイン「ま〜ね。」

アベル「魔人の気配を気取られるなよ。極力魔力を落として行動しろ。」

カイン「ていうか、イーウェルの住む家は何処にあるんだ?」

アベル「分からん。」

 

 二人は、ユウトとシンの情報を集めようとしていた。

 一方、全員が集結していたユウト達は。

 

シン「ダームでの会談は無事終了か?」

オーグスイードでの件が情報として既に入っていたからな。私の提案に飛び付いて来たよ。この文だと、まあ他の2ヶ国も同じ様な対応だろう。」

マリア「次はカーナン王国。」

アリス「牧畜が盛んで、織物が有名な国だよね。」

シシリー「特に魔物化した羊の毛で作った生地が注目されていますよね。」

ユウト「魔物化した羊の毛?」

シン「それ、手に入らないなかな………。」

シシリー「え?どうしてですか?」

シン「魔物由来の素材って、普通の素材より付与文字数が多くなるんだよ。」

マリア「え!?そうなの!?全然知らなかったよ。」

 

 マリアが驚いた声を上げる中、ユーリが口を開く。

 

ユーリ「学院ではまだ習ってないものねぇ。よっぽど付与魔法について興味がないと知らないわよねぇ。因みに家畜化されている羊は魔物化しやすいのよぉ?」

ユウト「そうなのか?」

ユーリ「野生が薄くなってるからって言われてるけど………。詳しくは分かってないのよねぇ。」

トール「凄いですねユーリさん!」

リン「流石付与魔法マニア。」

ユーリ「別にマニアじゃないわよぅ。」

滅「それで、その魔物化した羊の羽毛を使ってどうするんだ?」

 

 滅が気になったのか、シンに質問する。

 

シン「スイードの一件で、シャツだけじゃなく”マント”にも”自動治癒”を付与したいと思ってさ、やっぱり他人に着せる事で、その他人の傷を治せるってのはメリットだろ?男は兎も角………女の子が人前でそうそう裸になれないしさ。」

タクヤ「そんな事があったのか?」

コハル「らしいぞ。」

シン「そう言う訳で、マントの素材になる生地が…………お?」

メイ「わぁ!!羊さんです!!」

 

 牧場へ行くと、下に大量の羊が居た。

 

マリア「うわ〜〜〜〜………。流石に人口よりも羊が多いって言われるだけあって………っ!?ねぇ、ちょっとアレ、言ったそばから………!」

 

 マリアの指差す先に居た1匹の羊が魔物化した。

 

シン「オイオイ魔物化したぞ!早い所討伐しないと………!」

オーグ「大丈夫だ。近くに羊飼いが居る。」

 

 オーグがそう言った矢先に、牧場に羊飼いが現れた。

 

シン「何が大丈夫なんだよ!?余計に危ないじゃねーか!」

ユウト「一先ず倒す………。」

 

 ユウトがそう言おうとする中、羊飼いにより、魔物化した羊の頭が両断される。

 

ユウト「え?」

シン「え!?嘘?」

タクヤ「あれが羊飼いだと!?」

コハル「そうには見えんが…………!?」

オーグ「家畜の魔物化が頻繁に起こるこの国では、中型程度を討伐出来ないと羊飼いは務まらんからな。自然とそう言った人物が職に就く訳だ。」

ユリウス「確かに、この国の羊飼いはゴツイと言うか………マッチョなイメージが強いで御座る。」

イズ「マッチョな羊飼い………。」

タクヤ「ブッ!」

 

 イズの言葉に、タクヤがツボる。

 すると、リーダー格の羊飼いが話しかけてくる。

 

羊飼い「お?旅の人か?危なかったな。今丁度羊の1匹が魔物化した所だぞ。」

 

 その後。

 

羊飼い「夏休み中の旅行って所か。目的はやっぱり魔物化した羊の素材かい?」

シン「はい、それもあります。」

羊飼い「だったら、カーナン王都の『シェパード服飾店』がオススメだぞ!旅人向けの服や装備が揃ってるからな。何を隠そう、俺はそこの………。」

羊飼い「ガランさん!!た………大変だ!!」

 

 そこに2人の羊飼いが来た。

 

羊飼い「魔物化した羊が大量に押し寄せて来てる!恐らくブルースフィア方面で発生した奴らだ!!」

ガラン「んだと!?ったくメーワクな国だな相変わらずよ!男連中集めとけ!!俺もすぐ行く!!ボウズ達はさっさと街へ避難しとけ!!羊とは言え魔物だ!!ナメると痛い目見るからな!!」

 

 ガランはそう言うと、急いで魔物化した羊の場所へ向かう。

 それを見ていたユウト達は。

 

シン「ユウト。」

ユウト「ああ。行くか。」

 

 ユウト達は、後を追う。

 大量発生した魔物化した羊が居る場所では。

 

羊飼い「い………異様な光景だな………ここまで数の魔物は初めて見た………。」

羊飼い「サイズも通常よりデカくなってやがる………!!」

ガラン「1匹足りとも通すんじゃねえぞ!!街に入れたら必ず犠牲が出る!!」

羊飼い「くそぅ………流石に死ぬかな………こりゃ………。」

ガラン「行くぞ野郎共!!」

 

 ガラン達は、悲壮な覚悟を滲ませながら、羊の魔物達に突っ込もうとするが。

 

カバンストラッシュ!

 

 黄色い斬撃波が現れ、羊達を倒していく。

 ガラン達が、斬撃波が現れた場所を向くと、ユウト、タクヤ、コハル、迅、滅の五人が居た。

 

ガラン達「…………っ!?」

ユウト「さて、もう1発いくか。」

タクヤ「ショットライザーで銃撃するぞ。」

コハル「言われなくても分かっている。」

迅「じゃあ、僕はアタッシュショットガンで行こうかな。」

滅「行くか。」

 

 ユウト達は、それぞれの武器で羊を倒していく。

 

オーグ「ユウト!タクヤ!コハル!迅!滅!羊毛は商品だぞ!やるなら極力傷を付けるなよ!火や爆発系は避けて仕留めろ!」

ユウト「分かった!」

タクヤ「おう!」

コハル「ああ!」

迅「OK!」

滅「ああ。」

ユーリ「一応私達も行っとくぅ?」

マリア「倒すだけじゃ面白くないし………。どっちが綺麗に討伐出来るか競争ね。」

ユリウス「トニー殿、行かんで御座るか?」

トニー「普段の相手が虎や獅子だったからねぇ。今回は皆に譲るよ。」

 

 そんな風に、ユウト達によって、羊の魔物はどんどん倒されていく。

 それを見ていた羊飼い達は。

 

羊飼い「ガランさん………な………何者だい?ありゃ………。」

ガラン「いや………ただの旅行中のグループ………な訳ねーなこりゃ………。」

 

 呆然としていた。

 一方、アベルはその頃、アールスハイド王国のウォルフォード邸に向かっていた。

 

スティーブ「当家に何か御用で?」

アベル「かの有名なシン=ウォルフォード殿にお目にかかりたかったのですが、聞く所によると、暫く家を空けておられるかと。せめて近しい方にお話を伺えればと思い参りました。」

スティーブ「ご足労頂いたのに申し訳ありませんが、御存知の通り、当家は名前の通った者が多く居ります。安全面からも、当人とのお約束でない限り、お通しうる事は出来ない決まりで御座います。失礼ですが、お引き取りを。」

アベル「そうですか、分かりました。仕方ないですねぇ………。」

 

 アベルは、流石に諦めようとするが、マーリンの声が聞こえてくる。

 

マーリン「何じゃ?客人か?」

スティーブ「マーリン様!」

マーリン「庭を散歩しとったら、話し声が聞こえたものでの。」

スティーブ「シン様に会いに来られたそうですが、お約束はないそうですので。」

マーリン「ほぅ、そうかそうか。」

 

 彼はアベルをジッと見る。

 

マーリン「良いわい良いわい!ワシが代わりに話しを聞かせてやるわい!

アベル「本当ですか!?かの御高名な賢者マーリン様に直接お話を伺えるとは………光栄の至りで御座います!」

スティーブ「マーリン様、孫自身は程々に………。」

マーリン「ほほっ、分かっとるわい!スティーブ、茶を用意してくれんか?」

スティーブ「分かりました。」

 

 マーリンがスティーブにそう指示する中、アベルは敵意を剥き出しで入ろうとするが。

 

アベル「っ!?(これは………!?)」

 

 アベルは、正面ゲート前で結界に足止めされた。

 アベルが戸惑う中、マーリンが声をかける。

 

マーリン「そう言えば、1つ言い忘れとったが………ウチには優秀な魔道具制作の第一人者が居ての、絶えず屋敷に”侵入防止”の結界が施してあるんじゃ。何、心配はいらん。侵入を拒むのは、飽く迄”敵意”や”害意”のある者だけじゃからの。遠慮なく入って来るが良い!入れるものならな!」

 

 アベルが右手を出し、マーリンも右手を出して、両者顔面スレスレまで右手を止めた。

 

スティーブ「マーリン様!!」

マーリン「大したタマじゃ。命を狙われる事は幾度となくあったが、ワシを相手に僅かも腰が引き取らん。お主、本当に人間か?」

アベル「っ!」

 

 アベルは後退りして、高くジャンプして姿を消した。

 

スティーブ「何者でしょうか………?」

マーリン「さての、大方、シンとユウト君の噂を聞き付けて調査に来た他国の者か。(或は魔人の手先か………考えたくはないがの………。)スティーブ、やはり茶じゃ。ちとハッスルし過ぎたわい。」

スティーブ「はい。……しかし、あの男は、ユウト様の名前は口にしていない様な………。」

 

 スティーブがそうつぶやく。

 一方、離れた場所で見ていたアベルは。

 

アベル「あれが噂に名高いマーリン=ウォルフォード………。やはり近付く相手としては危険が過ぎたか………。”認識阻外”を付与したレンズを入れている以上に、魔人だとは確信を持たれていないだろうが………。これ以上の滞在は危険だな。一度カインと合流するか。」

 

 一方、遡る事数分前、カインはアールスハイド王城に居た。

 

カイン(王城への侵入者自体は出来なくもないが………。情報収集が目的である以上、騒ぎになるのは避けたいな。せめて、ウォルフォードとイーウェルと関わりがある人間と接触出来れば………。)

???「お前、そこで何してる?王城に何か用か?」

 

 騎士団と魔法師団の一行が後ろからカインに尋ねた。

 

カイン(手前の2人………確かブルースフィア帝都で一度見た………。恐らくは軍部のトップ………!)

ドミニク「おい。」

ジークフリード「いやいや、もういいじゃないですか局長?それより早く城へ戻りましょうよ。騎士団との合同訓練なんてそうそうやるもんじゃねーや。クタクタですよもう………。」

魔法使い「先行きますよ、先輩。」

クリスティーナ「文句ばかりは一人前ですね。あなたが真面目に取り組んでいたようには見えませんでしたけどね。」

ジークフリード「口煩いのが居るから余計に疲れるんだよ。ったく、シン達の気持ちが分かるってもんだ。」

カイン「!」

 

 ジークフリードが漏らしたシンの言葉に、カインは思いついた。

 

ドミニク「まあいい、用が無いなら早くここから………。」

カイン「あの、あなた方はもしや騎士団、魔法師団の団長殿では?実は私、入団希望でここに来たのです。」

ドミニク「入団?見た所学生ではないなぁ。一般からの希望者か。」

ルーパー「秋期の募集分、ギリギリ間に合うんじゃねぇか?」

ドミニク「だったら、まず詰所で入団申請をして手続きを取ってくれ。」

ルーパー「後、どちらを選ぼうと入団試験はあるが。」

ドミニク「騎士団と魔法師団!どちらの希望だ?」

ルーパー「騎士団と魔法師団!どちらの希望だ?」

 

 ドミニクとルーパーは、そう迫る。

 

ジークフリード「勿論魔法師団だよな?何つっても時代の流行りは魔法師だろ?」

クリスティーナ「チャラ付いた人達が何を偉そうに。騎士道を重んじる心こそが、時代を常に支えているんですよ?」

カイン「何方も構いません。私は何方も使えますから。」

全員「!」

 

 その言葉に、全員が反応する。

 

ドミニク「頼もしい事だな。クリスティーナ、ジークフリード、詰所まで案内してやれ。」

クリスティーナ「了解しました。」

 

 ドミニクとルーパーは2人に任せてここを去った。

 2人はカインを詰所へ案内する。

 

カイン「シン=ウォルフォード殿とユウト=イーウェル殿とお知り合いなのですか?」

ジークフリード「ああ、まーな。何だかんだで長い付き合いだよ。まあ、ユウトに関しては、つい最近知り合ったばっかだけどな。それにしても、シンは弟みてーなモンだと思ってたのに、まさか先に婚約者まで作っちまうとは………。」

カイン(っ!!)

クリスティーナ「ジーク。」

ジークフリード「あ?何だよ?」

 

 ジークフリードの言葉に反応したカインを見て、クリスティーナはカインに話しかける。

 

クリスティーナ「シンとユウトの事に興味が?」

カイン「興味を持たない人間は居ないでしょう。」

クリスティーナ「そうですね。ならば先日に婚約したシンのお相手、マリア=フォン=メッシーナの事もご存知かしら?」

カイン「……………ええ、勿論。ただ名前までは存知上げませんでした。マリアさんと言うのですか。婚約された事は聞いていたのですが………。」

クリスティーナ「!」

 

 クリスティーナは、カインの言葉に違和感を感じた。

 

ジークフリード「マリアちゃん?何言ってんだ?シンが婚約したのはシシ………。」

 

 ジークフリードが喋ろうとするが、クリスティーナに止められる。

 

ジークフリード「ってぇ!何すんだ!!」

 

 鞘から剣を抜いたクリスティーナが、剣先をカインに向ける。

 

カイン「あ、あれ?どうしました?」

クリスティーナ「警戒して引っ掛けを避けたのは見事ですが、残念でしたね。シンの婚約の報は公式に世間に発表された事実ですよ。勿論、婚約者の名もね。シンとユウトに興味ある人間がその名を知らない?妙ですね。もし、あなたが何らかの理由でシンとユウトを調べに来た他国の人間。だったら仕方無いですけどね?」

カイン「………やれやれ、流石はアールスハイドの軍人。切れ者も多い訳かぁ。悪いが、あまり目立ちたくないんだ。迅速にお前ら2人の息の根を止めて、この場を立ち去る事にするよ!」

 

 カインは左手から煙幕の魔法を地面に落として目眩ましさせた。

 

クリスティーナ(目眩まし!?)

 

 煙幕からカインがダガーでクリスティーナを殺そうとするが、クリスティーナが間一髪でダガーを防いだ。

 

ジークフリード「2対1で勝てる気か!?舐めんじゃねえよ!!」

 

 後方からジークフリードが魔法で援護するが、カインは、ダガーから発した魔力障壁で防いだ。

 

カイン「言ったよな?両方使えるんだよ。」

ジークフリード「ちくしょう!面倒臭ぇ!」

 

 ジークフリードがそう毒づく中、クリスティーナがジークフリードに話しかける。

 

クリスティーナ「気を付けて下さい。かなり強いですよ。」

ジークフリード「お前、よく気付いたな。あの野郎の目的。」

クリスティーナ「そうですか?入団希望者が軍務局長と魔法師団長の顔を知らない時点でもう既に可笑しいでしょう?まあそんな事は、そちらのお2人方も当然気付いていたようですが。」

カイン「!」

 

 クリスティーナがそう言うと、何処かへと向かったはずのドミニクとルーパーが現れる。

 

ドミニク「よくやった、クリスティーナ。」

ルーパー「オルトの時と言い、若いのは証言引き出すのが得意だねぇ。感心するぜ。シュトロームって野郎を知ってるか?そいつも単純に引っ掛けに引っ掛かりやがってよぉ、お前らも少し他国のお勉強しといた報が良いんじゃねぇか?」

カイン(此奴、シュトローム様の事を………!)

 

 ルーパーのシュトロームを馬鹿にする様な発言に苛立つカイン。

 ジークフリードがカインに宣告する。

 

ジークフリード「さあ選べ!大人しく捕まって洗いざらい吐くか、俺ら4人を相手するか!」

カイン(手練れのようだが、魔人の力を使えば訳は無いが、それで魔人の存在がバレちゃ、元も子もない。仕方無い。)

 

 苛立っていたカインだが、状況があまり良くないと判断し、異空間収納にダガーを収めた。

 

カイン「だったら選択肢その3だ!!」

 

 そう言うと、両手に魔力を集める。

 

ドミニク「おいおいマジか!!」

ルーパー「下がれドミニク!!」

ジークフリード「お前も死にたくなきゃ俺の後ろへ行け!!」

 

 ルーパーとジークフリードが魔力障壁を展開したと同時に、カインが集めた魔力を爆発させた。

 

兵士「おい、あれ………!!」

 

 爆発した方へ兵士が駆け付ける。

 

兵士「うわっ!これは………!?あ!局長!師団長も!」

ジークフリード「あんの野郎、自爆しやがった。」

クリスティーナ「自爆?あれだけの使い手が自ら死を選ぶとでも?」

ジークフリード「お前、その前に礼の一つも言え!助けられといてよ。」

ドミニク「緊急配備だ!賊が1名。城内もしくは近辺に潜入。総力で調査に当たれ!」

ルーパー「まぁ十中八九既に逃げた後だろうが。」

 

 ドミニクがそう指示する中、ルーパーはそうつぶやく。

 その後、アベルとカインが合流し、王都の少女2人にシンの婚約者について尋ねた。

 

少女「シン様の婚約者?勿論知ってるわよ!シシリー様よ!シン様とは学院のクラスメートで、何と彼女もアルティメット・マジシャンズのメンバーなの!」

少女「スイードで魔人を撃退した際に、多くの人の命を救ったって言う事で”聖女様”って呼ぶ人も居るわ!」

アベル「じゃあ、ユウト殿に婚約者は居るの?」

少女「いや、ユウト様は、そこまで仲のいい女性は居ないですよ。」

アベル「そうか、ありがとう。」

 

 アベルは少女にお礼を言い、2人はアールスハイド王国から出た。

 

アベル「ウォルフォードの婚約者か。確かに奴の弱みとなる可能性はあるな。」

カイン「可能性?」

アベル「英雄としてはやされる人間だろ?女なんか掃いて捨てる位居るんじゃないのか?」

カイン「本当に弱みとなる存在かどうか、まずはその確認か。」

アベル「そうだな。クロードも舞台の一員とならば、まず間違い無く今もウォルフォードに帯同している。けどまだイーウェルの弱みは分からない。ゼスト様に報告した後、一度ローレンスと落ち合おう。次の奴らの訪問先で仕掛けるぞ!」

 

 そう言って、ゼストの元へと向かう。

 一方、レックス達は。

 

レックス「王城が騒がしいな………。」

亡「レックス。」

レックス「どうした?」

亡「シャイニングホッパー、アサルトウルフ、ジャパニーズウルフ、ドードーのキーの調整、及びオーソライズバスターの作成が完了しました。」

レックス「分かった。………ユウト達の居場所は何処だ?」

雷「滅の定期報告だと、ガーナンに居るみたいだ。恐らく、次はクルトへと向かうだろうな。」

レックス「………迅に連絡を入れろ。俺たちもクルトに向かうぞ。」

亡「はい。」

雷「おうよ。」

レックス「………これも持っていくか。」

 

 レックス達は、それぞれのアイテムを持ちながら、移動の準備を開始する。

 一方、ガーナン王国のシェパード服飾店では。

 

ガラン「がっはっはっ!まさかボウズ達があんなに強ぇとは思いもしなかったぜ!お陰でこっちは労せずに魔物の素材が大量に手に入っちまった!礼と言っちゃ何だが、店にある生地や素材何でも使ってくれて良いぜ!」

シン「本当ですか!?」

ユウト「あの………あなたは?」

ガラン「おう、名乗るの忘れてた!!俺ぁガラン=シェパード!!れっきとした『国家羊養家』の資格を持ったこの店のオーナーだ!!」

アリス「えええ!?オーナー!?」

シン(っぽくねぇ………。)

 

 その後、シンは、マントの加工を依頼し、ガーナンを観光した。

 無事に同盟の件に話がついた。

 一方、ブルースフィア帝城では。

 

ゼスト「成る程、ウォルフォードの婚約者か。」

アベル「その女が使えるかどうかを、まず判断するのが先決かと思います。」

ゼスト「フム、奴らは今日にもカーナンを発ち、クルトに入るのではないかと言う情報が別働隊から入っている。奴らのクルト到着に合わせて、離反した連中を攻め込ませるようローレンスに指示を出そう。」

アベル「我々もクルトに向かいます。」

ゼスト「(ウォルフォード程ではないにしろ、突出した力を持った連中が10人前後。ウォルフォードの動向を見極めるには、やはり奴と婚約者のみを隔離するのが理想だな。どうしてもイーウェルを含んだ周りの連中を遠避ける為の手練れが数名必要だ。離反した連中では時間稼ぎにもならんしな………。)仕方無い。お前達も手を貸してやれ。」

 

 魔人達が動き出そうとしていた。

 それも、シンの動向を見極める為に。

 翌日、ユウト達はクルトに到着した。

 

シン「おお!見渡す限りの穀倉地帯!!ここがクルト王国か!!」

ユウト「みたいだな。」

迅「皆、お待たせー!」

 

 すると、迅が雷、亡、レックスを連れてやって来た。

 

オーグ「迅。昨夜は一体何処に行っていたんだ?」

迅「ごめん。この三人を連れて来てた。」

マーク「この人たちは?」

亡「アルティメット・マジシャンズと会うのは、これが初になりますね。私は亡。」

雷「俺は雷だ。」

レックス「俺はレックスだ。」

オリビア「あの………どういった用で………?」

雷「それは、ユウトとタクヤに渡したい物があんだよ。」

 

 そう言って、雷が渡したのは、ユウトにはシャイニングホッパー、タクヤにはアサルトウルフのプログライズキーを渡す。

 

ユウト「シャイニングホッパーと………。」

タクヤ「アサルトウルフ………。」

ユーリ「新しいプログライズキー?」

シン「でも、形状がこれまでのとは違うな。」

レックス「ああ。シャイニングホッパーとアサルトウルフは、ゼロワンとバルカンの強化形態用のプログライズキーだ。」

雷「まあ、アサルトウルフに関しては、少し経緯が特殊なんだけどな。」

マリア「特殊?」

シシリー「どういう事ですか?」

レックス「………アサルトウルフは、アークが作り出したプログライズキーだからだ。」

UMメンバー『!?』

 

 レックスの言葉に、アルティメット・マジシャンズが驚く。

 レックスの言葉は紡がれる。

 

レックス「………アークが作ったと言っても、暴走する前に作られた物だ。長らく使われていなかったから、調整が必要だったんだ。」

亡「だから、ここに来るまでに集まったタクヤの戦闘データを元に、アサルトウルフを調整したのです。」

オーグ「そういう事だったのか………。」

マリア「まあ、何はともあれ、戦力増強は間違いないわね!」

ユウト「ああ。」

 

 そうして、観光しようとしたのだが、メイが口を滑らせた事で、逃げざるを得なくなった。

 一方、ローレンスは。

 

ローレンス「さーて皆さん、クルトに到着しましたよ。」

 

 魔人を引き連れていた。

 

ローレンス「1つ、スイードに現れた例の連中が、現在クルトに居ると言う情報が入っています。」

魔人「お………おい何だそれ!!今になって………意味ないじゃねぇか!何の為にわざわざこんな遠国まで………。」

魔人「前の二の舞はゴメンだぞ!」

魔人「アールスハイドから離れれば問題ないって言ったのはお前だろうがよ!」

ローレンス「(それ、俺が言ったんだったか?)大丈夫ですよ。奴らの戦力を削ぐ術は既に考えてあります。あなた方には標的を1名に絞って攻めて欲しいんです。奴らは強力ですが、あなた方の力を結集すれば、人間1人訳ないはず。他の連中は私が何とかしましょう。」

魔人「よく分からねえが、1人を襲えば良いんだな?………まあ1人位なら………。」

ローレンス(やれやれ、弱気になったもんだ。アテにならねぇな………。何とか此奴らを奮起させねぇと………くそ、何でこんな下らん事ばかりに頭を………。」

 

 ローレンスは、苛立っていた。

 クルトに、魔人の脅威が迫ろうとしていた。




今回はここまでです。
ユウトにヒロインができない理由は、この話でもう一つ明かされました。
それは、ゼロワンとしての使命に縛られている事です。
ユウトとタクヤの元に、シャイニングホッパーとアサルトウルフが到着しました。
次回、そのフォームに変身させます。
エルスとイースの同盟の件で、シャイニングアサルトホッパーを登場させる予定です。
ただ、サウザーに関しては、どうしようかと思っています。
サウザーに関する扱いのアンケートを出したいと思います。
かなり先になると思いますが、アークワンとアークスコーピオンに関する設定は、一つ思いついています。
それは、アークスコーピオンは、アークゼロが手に入れたスティングスコーピオンのデータを利用して生み出す事です。
ただ、アークワンに関しては、ユウトに変身させるのか、アークゼロが進化するのかどうかは、まだ未定です。
まあ、後者の場合、リアライジングホッパーが出しづらいのですが。
どうしたら良いのか、アドバイスを是非お願いします。


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第12話 輝きの跳躍と強襲の弾丸

 ユウト達は、クルトの市民から逃げて、何とか振り切った。

 

シン「逃げ切れたか………?」

ユウト「多分…………。」

タクヤ「何とかな………。」

メイ「ごめんなさいですシンお兄ちゃん……。私がうっかり………。」

シン「いいよ、俺は気にしてないから。メイちゃんも気にしないで?」

メイ「ハイです………。」

滅「だが、公の場で口走ってはダメだ。今度からは気をつける様にな。」

メイ「はい………。」

 

 滅が優しくメイに注意する中、背後から声をかけられる。

 

???「おい。」

全員「うわぁ!?」

オーグ「何しているんだお前達は?こんな路地裏で。」

シン「な………何だオーグ達か………。びっくりした………。」

タクヤ「急に呼ばれると、心臓に悪いわ………。」

コハル「確かにな。」

レックス「それで、交渉は上手く行きましたか?」

オーグ「ああ、滞りなくな。後は日を改めてエルスとイースとの交渉を行うだけだ。」

シン「よし、じゃあこれ以上騒ぎになる前に早いとこ………。」

 

 ズラかろう。

 シンがそう言おうとした瞬間、突然、鐘の音が鳴り響く。

 

シン「何だ!?」

ユウト「鐘の音………!?」

雷「おい、まさか………!」

兵士「緊急警報発令!!総員速やかに避難せよ!!魔人襲来!!繰り返す!!速やかに避難せよ!!」

 

 そう、魔人が襲来してきたのだ。

 その声に、周辺の人が戸惑う。

 

マリア「え?何?魔………!?本当に!?」

トール「自分達が偶々居る時に攻めて来たって事…………ですか!?」

亡「偶然とは思えませんね………。」

迅「何か、企んでるのかな。」

オーグ「亡と迅の言う通りだな。無視は出来ん。迎撃するぞ。エリーとメイは住民と共に避難していろ。」

イズ「エリザベート様、メイ様。こちらへ。」

 

 オーグの声と共に、エリーとメイは、イズと共に避難する。

 すると、平原の方から爆発がする。

 

 

ユウト「爆発した!?」

マリア「一体何よ!?奴らまだあんな遠くに居るのに………!?」

 

 ユウト達が動揺する中、更に事態は進んでいく。

 

兵士「ほ…………北東に続いて4箇所で爆発です!!正面を除く計5箇所にも敵が居ると思われます!!」

タクヤ「何だと!?」

シン「完全に裏を掻かれた!」

マリア「ねぇどうすんの!?」

レックス「殿下!」

オーグ「規模が分からん以上、迂闊に兵を送るべきじゃないな。我々だけで対処しよう。止むを得ん!!スイードの時と同様のペアで迎撃しろ!各々の討伐が完了次第、別メンバーに合流しろ!!」

全員「了解!」

 

 こうして、シンとシシリーとユウト、タクヤと亡とオーグとマリア、コハルと迅とトニーとユーリ、レックスとアリスとリン、雷とトールとユリウス、滅とマークとオリビアに別れて、爆発場所に向かう。

 

ユウト「レックス!?行けんのか?」

レックス「ああ。」

 

 そうして、ユウト達は、それぞれ配置する。

 正門には、ユウト、シン、シシリーが配置される。

 ユウトは、ゼロワンドライバーを装着して、シャイニングホッパープログライズキーを構える。

 

ユウト「早速行ってみるか!」

 

 ユウトは、シャイニングホッパーのボタンを押して起動する。

 

SHINING JUMP!

 

 ユウトは、シャイニングホッパープログライズキーを、オーソライザーに当てる。

 

オーソライズ!

 

 衛星ゼアから、シャイニングホッパーのライダモデルが射出され、ユウトは、キーモードにしたシャイニングホッパーを、上空に現れた円形のゲートに差し込み、開く。

 すると、シャイニングホッパーのライダモデルが、ライジングホッパーのライダモデルを背負って現れる。

 

シン「デカ!?」

シシリー「大きいです………。」

ユウト「変身!」

 

 ユウトは、そう叫び、プログライズキーを、ゼロワンドライバーに装填する。

 

プログライズ!

 

 シャイニングホッパーのライダモデルが、大きくジャンプして、現れたデータネットに捕まり、ユウトと合わさる。

 

The rider kick increases the power by adding to brightness!


『シャイニングホッパー!』


"When I shine,darkness fades."

 

 ユウトは、ゼロワンの強化形態、シャイニングホッパーへと変身した。

 手には、オーソライズバスターが握られていた。

 すると、魔人達が襲ってくる。

 

魔人「ひゃっはっ!!俺が一番乗りだ!!見てろよあの野郎!!」

魔人「俺もやるぜ!!」

シン「撃って来た!!っ!?シシリー!!」

ユウト「させるかよ!」

 

 魔人が飛ばしたファイヤーボールがシシリーに向かっていく。

 だが、ユウトがすぐにオーソライズバスターからエネルギー弾を発射する。

 

ユウト「大丈夫か!?」

シシリー「大丈夫です!助かりました!」

魔人「はっはぁ!!!」

 

 シシリーに向かって、攻撃しようとする魔人が現れるが、ユウトのシャイニングホッパーのシャイニングアリスマテックを使い、魔人を倒していく。

 

魔人「先陣が殺られた!!」

魔人「どんどん行け!!」

ユウト「数が多いな………!」

シン「ああ!シシリー、気をつけて!」

 

 一方、タクヤと亡とオーグとマリアの方は。

 

亡「爆発したのは、ここでしたね。」

タクヤ「だが、誰もいねぇぞ!」

マリア「敵はどこに!?」

オーグ「街が騒ぎになっている様子はないな………となると。」

 

 そこに、魔人が1人現れる。

 

ダンテ「お初にお目に掛かる。アウグスト=フォン=アールスハイド王太子殿下。並びに、アルティメット・マジシャンズの一員、マリア=フォン=メッシーナ殿。そして、仮面ライダーバルカンに変身するタクヤ=フラウド殿。魔人シュトローム様の配下………このダンテが一時のお相手させて頂こう。」

 

クエネオ!

ゼツメライズ!

 

 ダンテと名乗る魔人は、クエネオマギアへと変貌する。

 

オーグ「(此奴ら………既に我々の情報を………。)わざわざ名乗って貰って恐縮だが、そちらが魔人である以上、討伐するのに僅かな躊躇いも持つ訳にはいかん。手段を問わず、向かわせて貰うが、構わんな?」

ダンテ「勿論だ。」

オーグ「タクヤ!亡!」

タクヤ「おうよ!」

亡「はい。」

 

 二人は、それぞれのベルトを腰に装着する。

 

ショットライザー!

フォースライザー!

 

 そして、それぞれのプログライズキーとゼツメライズキーを取り出す。

 

POWER!

ジャパニーズウルフ!

 

タクヤ「フン!うううう………!うおおおおおお!!」

 

 タクヤはそう叫び、パンチングコングプログライズキーを無理矢理こじ開ける。

 二人は、それぞれのキーを、ベルトに装填する。

 

オーソライズ!

 

 タクヤはショットライザーをバックルから外して、ダンテに向ける。

 

Kamen Rider...Kamen Rider...

Kamen Rider...Kamen Rider...

 

 待機音が流れ、タクヤは叫び、亡は呟く。

 

タクヤ「変身!」

亡「変身。」

 

ショットライズ!

フォースライズ!

 

 すると、ショットライザーから弾丸が放たれ、タクヤは裏拳で弾丸を潰し、亡は周囲に吹雪が舞う。

 

パンチングコング!

ジャパニーズウルフ!

"Enough power to annihilate a mountain."

Break down.

 

 タクヤは、バルカン・パンチングコングに、亡は、仮面ライダー亡へと変身する。

 四人は、ダンテへと挑む。

 一方、雷とトールとユリウスは、リオネルという魔人と相対していた。

 

リオネル「テメェらが相手してくれんのか?」

 

 そう言って、あるゼツメライズキーを取り出す。

 

エカル!

ゼツメライズ!

 

 リオネルは、エカルマギアへと姿を変える。

 

トール「ええ。」

ユリウス「行くで御座る!」

雷「じゃあ、俺も行くか。」

 

 雷は、フォースライザーを取り出す。

 

フォースライザー!

 

 そして、ドードーのゼツメライズキーを取り出す。

 

ドードー!

 

 雷は、雷を描く様に腕を動かし、呟く。

 

雷「変身。」

 

 そう言って、フォースライザーにドードーゼツメライズキーを装填して、フォースエグゼキューターを引く。

 

フォースライズ!

Break down.

 

 雷は、仮面ライダー雷へと変身した。

 

リオネル「ほう。少しは楽しませてくれよ。」

雷「お前に雷落としてやるぜ。」

 

 そう言って、睨み合う。

 一方、レックスとアリスとリンは。

 

カイン「さて、行くぜ?」

レックス「あまり甘く見ない事だな。」

 

 カインは、ネオヒマギアになっていた。

 レックスは、フォースライザーに似たベルト、サイクロンライザーを腰に装着する。

 

サイクロンライザー!

 

アリス「えっ!?レックスさんも仮面ライダーなの!?」

レックス「そうだな。」

リン「嘘…………。」

 

 レックスは、ロッキングホッパーゼツメライズキーを取り出す。

 

KAMENRIDER!

 

 レックスは、ポーズを取って叫ぶ。

 

レックス「変身!」

 

 レックスは、ロッキングホッパーゼツメライズキーを、サイクロンライザーに装填して、操作する。

 

サイクロンライズ!

ロッキングホッパー!

Type One.

 

 レックスは、仮面ライダー1型へと変身する。

 

カイン「なんだ、テメェ?」

レックス「仮面ライダー1型だ。」

 

 レックスは、そう呟いて、カインへと向かっていく。

 一方、コハルと迅とトニーとユーリは。

 

アベル「お前らが相手か。」

迅「あまり甘く見ないでよ。」

コハル「行くぞ、トニー、ユーリ。」

トニー「ああ。」

ユーリ「ええ。」

 

 アベルは、オニコマギアとなっていた。

 コハルと迅は、それぞれのベルトを腰に装着して、プログライズキーを構える。

 

DASH!

WING!

 

 プログライズキーを起動して、二人は叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

 それぞれのベルトにプログライズキーを装填する。

 

オーソライズ!

 

 コハルは、ラッシングチータープログライズキーを、キーモードにする。

 

Kamen Rider...Kamen Rider...

Kamen Rider...Kamen Rider...

 

 待機音が流れ、二人は変身する。

 

ショットライズ!

フォースライズ!

 

 ショットライザーから弾丸が放たれ、コハルに当たり、迅にフライングファルコンのライダモデルが纏わりつく。

 

ラッシングチーター!

フライングファルコン!

"Try to outrun this demon to get left in the dust."

Break down.

 

 コハルは仮面ライダーバルキリーに、迅は、仮面ライダー迅に変身する。

 アベルと激突する。

 一方、滅とマークとオリビアは。

 

サイクス「へぇ。お前らが相手か?」

滅「ああ。これ以上の好きにはさせん。」

 

 滅は、フォースライザーを腰に装着して、スティングスコーピオンプログライズキーを取り出す。

 

POISON!

 

滅「変身。」

 

 滅は、フォースライザーにプログライズキーを装填し、フォースエグゼキューターを引く。

 

フォースライズ!

スティングスコーピオン!

Break down.

 

滅「行くぞ。」

マーク「はいっす………!」

オリビア「はい………!」

 

 滅達も、サイクスと応戦する。

 一方、オーグ達の方は、ダンテは、異空間収納から槍を取り出していた。

 

オーグ「メッシーナ、フラウド!スイードでの経験は一度全て忘れろ。恐らく此奴こそが魔人だ!」

 

 突進からの突き攻撃をしてきて、タクヤ達はそれを躱す。

 ダンテは、オーグに向かって、砂嵐を起こし、オーグはそれを障壁で防ぐ。

 マリアは、ダンテに向かって攻撃しようとするが、オーグが間にいて躊躇う。

 

マリア「っ!?(敵の後方に殿下が…………!!これじゃ魔法が………!!)」

オーグ「(わざと槍の攻撃で分断したのか………!!)構うなメッシーナ!!こっちは障壁で防げるんだ!!」

ダンテ「その通り!だが戦場では、その一瞬の躊躇いが命取りだ!!」

 

 ダンテはそう言って、マリアに攻撃しようとするが、タクヤと亡がすぐに間に入り、ナックルデモリションとニホンオオカミノツメで攻撃するが、捌かれる。

 

タクヤ「何っ!?」

亡「一筋縄では行かなそうですね………。」

マリア(タクヤ達が間に入らなかったら、確実に攻撃されてた………!)

オーグ(スイードでの連中とはまるで違う……此奴………戦い慣れてる………!!)

 

 一方、レックスとアリスとリンの方は。

 

カイン「魔法使いの大きな弱点だ。」

 

 カインがアリスの背後に回り、アリスに攻撃しようとするが。

 

レックス「ハアッ!」

 

 レックスの蹴りで、カインのダガーが弾かれる。

 

アリス「レックスさん!」

レックス「大丈夫か!?」

カイン「接近戦に対し、兎に角脆い。お前らの魔法発動までの速度は驚異だが、あくまでそれは魔法使い同士の戦いでの話。剣を振るう速度を超える事は絶対に出来ない!!」

レックス「俺は、魔法使いじゃない!」

 

 レックスは、右足でカインのダガーを弾く。

 

カイン「手応えがまるでねーや………!」

 

 後ろからリンが水流魔法を放水するが、カインが避けた。

 

カイン「邪魔だ。」

 

 ダガーをリンに投げると、リンの顔面にダガーが命中した。

 

アリス「リン!!!」

 

 ブーメランのように戻って来るダガーをキャッチし、リンが倒れた。

 

レックス「ハァァァァ!!」

カイン(こいつ、強い………!)

 

 一方、コハルと迅とトニーとユーリは。

 

トニー「君の言う理屈は分かったけどさぁ、それって、でも僕らが接近戦でもイケるなら弱点はないって事だよねぇ?」

ユーリ「トニー君………。」

トニー「ユーリさん、悪いけど今回は、後方支援に徹してくれるかな?久し振りだよ、こっちメインで戦うのは。」

コハル「なら、私も本気で行こう。」

迅「うん。」

 

 トニーは剣を握り、コハルは、ライトニングホーネットのプログライズキーを取り出す。

 

THUNDER!

 

 ラッシングチーターのプログライズキーを抜いて、ライトニングホーネットのプログライズキーを装填する。

 

オーソライズ!

ショットライズ!

ライトニングホーネット!

"Piercing needle with incredible force."

 

 コハルは、ライトニングホーネットにハイブリッドライズする。

 

トニー「生憎、ウチにもちゃんと居るんだよねぇ。接近イケるの何人か!」

コハル「行くぞ!」

迅「うん!」

 

 アベルとトニーが、剣をぶつけ合い、コハルは、ホーネットエールを広げての飛行戦を繰り広げ、迅はアタッシュショットガンを撃つ。

 

アベル「ウォルフォードがお前達に何を施したか知らないが………確かに魔法使いとしての力を驚嘆に値する。だが、剣の腕は大口を叩く程じゃないな。そこの仮面ライダー達は、かなり強いが。」

トニー「っ!そりゃ傷付くなぁ(まー確かに、ブランク長いけど。)」

コハル「どうも。」

迅「ああ。」

 

 アベルは、地面を思い切り蹴り、土煙を出す。

 

ユーリ「トニー君!コハルちゃん!迅君!」

トニー(くっそ………!まさかあんな至近距離で土煙を………!)

コハル「…………。」

迅「どこだ…………。」

 

 アベルが、トニーの首に剣を向けて、コハルと迅は、ショットライザーとアタッシュショットガンをアベルに向ける。

 

アベル「覚悟が足りんな。自らの命を危険に晒さず勝てるつもりか?物理防御を解け。一撃で楽にしてやる。」

コハル「お前こそ、動かない方が良いぞ。」

迅「僕たちに撃たれたくないならね。」

アベル(こいつら………!!)

 

 一方、雷とトールとユリウスは。

 

リオネル「柔いなぁ。潰し甲斐がないぜ。そっちの仮面ライダーの方がまだマシだぜ。」

 

 ユリウスは、リオネルに一方的に攻撃され、雷はリオネルと互角に渡り合う。

 トールが魔法を放つが。

 

リオネル「あぁん?」

 

 魔力障壁を伸ばして弾いた。

 

トール「………!!」

リオネル「仲間が離れるの待ってから撃ってんじゃねぇよ。不意打ちにもなりゃしねぇ。」

ユリウス「ぐっ………!!拙者以上の怪力には初めて会ったで御座る…………!!」

トール「身体強化同士で戦ってこの実力差…………魔人とはいえ………地力からしての差があり過ぎる…………!!」

リオネル「身体強化だぁ?そりゃこれの事かよ?」

 

 リオネルは身体強化を発動した。

 

ユリウス(まさか、今まで魔法無しで!?)

トール「化物め………!!」

雷「面白ぇじゃねぇか。」

 

 一方、滅とマークとオリビアは。

 

マーク「はぁ………はぁ………!」

オリビア「マーク!!」

サイクス「おいおい何だよ。ちっとは使えるかと思ったら、てんで素人の剣じゃねーか。魔法で戦えないからって、取り敢えず出してみただけかぁ?浅はかだぜ。」

滅「マーク、下がっていろ。俺が守る。」

 

 滅は、アタッシュアローを手に、サイクスへと向かっていく。

 マークは、オリビアを見ていた。

 

オリビア「マーク?」

マーク「(バカか俺は………守らなきゃいけない女の前で何考えてんだ………!!滅さんに任せきりじゃダメだ………!!)全く嫌になるッス………!!どうして俺は、こう何時も…………!!…………二番手………下っ端………周りがすげー人ばかりだったからって…………何時から当然のように受け入れてたんだ、そんな立場…………。」

オリビア「マーク………。」

マーク(自分の事、最初から諦めて強くなんかなれるか!!ウォルフォード君…………ゴメン…………!!)

 

 彼は覚悟を決めて服を脱ぎ捨てた。

 

オリビア「マーク!?何してるの!?」

マーク「守られてばかりじゃ、何時まで経っても覚悟が決まらない…………!!ここからは…………!!俺自身で相手してやる……!!」

滅「…………分かった。行くぞ。」

サイクス「良い度胸だ坊主。死んでも恨むなよ?」

 

 一方、コハルと迅とトニーとユーリは。

 

トニー「覚悟かぁ…………。確かにすかもねぇ。暫くシンの傍に居たせいで、何となく彼と同様に自分も最強になったって過信してたかも知れない。僕はシンとは違うのにねぇ。それに、仮面ライダーと一緒にいる事で、アークやマギアと戦えるなんて思ったたんだから。…………あーあ、皮肉だなぁ。そんな事に気付いた直後でも………やっぱり彼に助けられるんだから。」

アベル「何の話だ?」

トニー「こう言う事だよ!」

 

 ジェットブーツを発動し、アベルの剣を弾いた。

 

アベル「何………!?」

 

 アベルの持つ剣に罅が入った。

 

ユーリ「トニー君!大丈夫!?それってウォルフォード君の…………!?」

トニー「嫌になるなぁ、奥の手使ってもノーダメージか………。シンやユウト、タクヤ、滅、迅に対する劣等感ってのはさ、男なら少なからず感じてると思うんだよ。殿下なんか特にそうじゃないかな?スイードの時、シンとユウトに替わって魔人のリーダーの討伐を買って出たらしいけど、まさしくそれを払拭する為の行動でしょ。近くて遠い存在だけどさ、シンってやっぱり少しでも近付きたくなるんだよねぇ。」

迅「トニー…………。」

コハル「お前………。」

 

 一方、タクヤと亡とオーグとマリアの方は。

 

ダンテ「フッ!!」

 

 槍でオーグを突き刺そうとしたが、オーグとタクヤが軽々と掴んだ。

 

ダンテ「むっ!?(優れた身体強化にその姿だ………!魔人である私と同等の力………!)しかしここからどうするつもりだ?ここまで接近していては、魔法による攻撃も下手には………。」

オーグ「悪いが、形振り構ってられん。他の方法が浮かばん故………許せ。」

 

 オーグは、電撃の魔法を放ち、ダンテとタクヤと共に自らも食らった。

 

マリア「ちょ…………殿下!?」

タクヤ「のわあァァァ!!」

ダンテ「ぐぬっ………!?(自らの体ごと電撃を………!!)」

 

 ダンテはすぐに後ろに下がる。

 

マリア「止めて下さいよ!危ない事するの!王太子でしょうが!」

亡「あまり、その様な事はしない方が良いかと………。」

オーグ「気にするな、この装備ならば滅多な事じゃダメージを受けん。だが………それはあちらも同様か。」

タクヤ「みたいだな。」

ダンテ「捨て身の戦法………。恐れ入る。王族に名を連ねる人間にしては、中々肝が据わっているな。我等魔人の相手はそうでなくては。」

タクヤ「舐めんじゃねぇ!」

 

 タクヤは、アサルトウルフプログライズキーを取り出す。

 

ASSAULT BULLET!

 

 タクヤは、アサルトウルフプログライズキーを無理矢理キーモードにして、ショットライザーに装填する。

 

オーバーライズ!

Kamen Rider...Kamen Rider...

Kamen Rider...Kamen Rider...

 

タクヤ「フン!」

 

ショットライズ!

 

 タクヤのショットライザーから弾丸が発射され、そこから狼がタクヤに突っ込んでいく。

 それを、タクヤは握り潰す。

 

レディーゴー!アサルトウルフ!

"No chance of surviving."

 

 タクヤは、バルカンの強化形態、アサルトウルフにハイブリッドライズする。

 

タクヤ「こっからが本番だ。」

 

 そう言って、腕のAWガントレットから銃撃を行う。

 一方、ユウト、シン、シシリーは、正門を防衛していた。

 

ユウト「コイツら………次から次へとシシリーを狙っている………!?」

魔人「オラァァ!!」

ユウト「フン!」

 

 ユウトは、魔人達の動きをラーニングして、約25000通りの対処パターンから、約0.01秒で最適解を導き出せるシャイニングホッパーの力を使い、シシリーを守る。

 殴ったり蹴ったり、オーソライズバスターから銃撃を行う。

 

ユウト「シシリー!」

シシリー「ユウト君!」

ユウト「コイツらの狙いは、お前だ!俺とシンで守るから、その隙に魔法を叩き込め!」

シシリー「はい!」

 

 ユウトは、ライジングホッパープログライズキーを、バスターオーソライザーにオーソライズする。

 

バスターオーソライズ!

 

 ユウトは、魔人達にオーソライズバスターを向ける。

 

プログライズダスト!

 

 プログライズダストを発動して、黄色い稲妻のようなエフェクトを帯びたエネルギー弾を放つ。

 

ユウト「まだ来るか………!」

 

 ユウトは、すぐにシャイニングホッパーの力を使って、魔人を迎撃する。

 

シン(此奴等………!!)

魔人「さっさと死ね女ああああ!!」

ユウト「させるか!!」

魔人「っ!?」

 

 ユウトは、迎撃しようとすると、後ろからシンが現れ、魔人の頭部を地面に減り込ませる。

 

ユウト「シン…………!?」

シン「おい………。意図的に俺とユウトじゃなく、シシリーを狙ってるな?」

 

 シンから黒い魔力が広範囲に広がった。

 

オーグ「シン…………!?」

タクヤ「シンがキレたぞ………!」

 

 一方、シンは。

 

シン「どう言うつもりだ?お前ら!!」

 

 その気配に、マギアとなっていた斥候部隊の面々は。

 

ローレンス「っ!?」

サイクス「オイオイマジかよ………!何だこの魔力は…………!?」

リオネル「奴か………!?」

カイン「聞いてた通りの怪物だなぁ…………。」

アベル「成る程、賢者にもまるで引けを取らん…………。」

ダンテ「ローレンスが恐れる訳だ…………。」

 

 一方、シンとユウトは。

 

シン「ユウト!手伝え!!」

ユウト「あ、ああ!」

 

 ユウトは、戸惑いつつも、オーソライズバスターにライジングホッパープログライズキーを装填する。

 

"Progrise key confirmed. Ready for buster."

 

 そして、ゼロワンドライバーにオーソライズする。

 

ゼロワンオーソライズ!

 

 シンも、両手に魔力を込めて圧縮する。

 オーソライズバスターに、黄色いエネルギーが貯まっていく。

 それを見ていた魔人達は。

 

魔人「や…………ヤバい!!あれはヤバい!!」

魔人「お…………俺はもう抜けるぞ!!」

魔人「なっ!おい!ちょっと待て!!」

魔人「ひぃっ!俺もゴメンだ!!か………勝てる訳ねえ!!!」

シン「散々シシリーを危険に晒しておいて逃げる………だと?逃す訳ねえだろ………このクズヤロー共があああああああ!!」

ユウト「ハアッ!」

 

ゼロワンバスターダスト!

 

 圧縮した魔法とゼロワンバスターダストで魔人達を大爆発させた。

 

ンバスターダスト

 

 それに巻き込まれた魔人は、麦畑ごと消滅した。

 それを見ていたローレンスは。

 

ローレンス「はぁ………はぁ……………危なかった………!集団から離脱していなかったら………間違いなく死んでた…………!!」

 

 一方、魔人達が動揺している中。

 

タクヤ「余所見してんじゃねぇ!」

ダンテ「!?」

 

 タクヤは、必殺技の体勢に入る。

 

アサルトチャージ!

マグネティックストームブラストフィーバー!

 

タクヤ「ハアッ!」

ダンテ「!?」

 

 エネルギーで狼の頭部を足先に形成し、空中を回転しながら、ダンテにキックを叩き込む。

 

        

          

          

          

          

          

クストームブラストフィーバー

 

 タクヤのキックが、ダンテに決まり、マギア化が解除される。

 

ダンテ「グゥ………!(そして、タクヤ=フラウドこと、仮面ライダーバルカン。こいつも厄介だな………!)」

 

 一方、ローレンスは。

 

ローレンス「時間切れだ!」

 

 そう言って、上空に信号弾を放つ。

 

アリス「あ!待て!何処へ………!」

レックス「逃げる気か………!」

カイン「悪いな、合図だ………。機会があったらまた闘おうぜ………。じゃあな………。」

 

 カインは、負傷しながら去った。

 

アリス「…………。」

リン「う………。」

アリス「リン!」

レックス「大丈夫か?………って無傷か。」

リン「前にウォルフォード君がくれた防御付与アクセサリー………。これで服以外の箇所をガード出来てたから助かった。衝撃で気は失ったけど…………。」

レックス「なら、良いんだがな。」

 

 信号弾を契機に、魔人達は撤退していく。

 全員が、ユウト達の元へと向かうが。

 

ユウト「……………。」

マリア「皆、無事………あ!?」

アリス「うわ、ちょ………麦畑が…………!」

亡「無くなってますね。」

雷「お前、やりすぎだって。」

迅「地面が抉れてるよ………。」

滅「やり過ぎだ。」

シン「ゴメン!やっちゃった!」

オーグ「お前何回目だ?その台詞………。」

シン「いや、何と言うか…………。シシリーを狙われて………ブチ切れたと言いますか………。」

ユウト「ごめん………ううっ。」

タクヤ「ユウト!?」

 

 ユウトは、突然地面に蹲る。

 全員がユウトのそばに寄る。

 

ユリウス「どうしたで御座るか!?」

レックス「恐らく、シャイニングホッパーの反動だろうな。」

シシリー「どういう事ですか?」

ユウト「簡単に言うと、シャイニングホッパーは、俺の力を前借りするから、体に結構負荷が掛かるんだ。」

ユーリ「強くなる代償って事かしら。」

オーグ「…………まあ、良い。小麦の方は、王家で買い取るとして………。それより………ん?どうした?何か全員様子が…………。」

 

 皆が理由を話した。

 

シン「そうか、魔人側にもまだそんな奴らが………。」

ユウト「一筋縄じゃ、行かなそうだな。」

マリア「街に被害がなかったから良し………って気分じゃないわよね………。」

オーグ「私の采配ミスだ。シンとユウトを正面の城門に据えていなければ、数体撃退出来ていたかも知れん。」

アリス「シン君の言う通りだったよ。魔人をナメてた。まだ奴らの底は知れない。」

トニー「強いよ彼奴ら。恐らくずっと、生死の境ギリギリに身を置いてきた人間だ。自分の命を削る事にすら微塵も躊躇いがない。」

トール「何とか、仮面ライダーの皆さんが居てくれたから、どうにかなりましたが………。」

ユリウス「今の拙者では、まず勝てんで御座る………。」

マーク「でもいいッス。これからまた強くなる理由が出来たッス。」

 

 皆がそう決断する中、オーグは語る。

 

オーグ「スイードでの経験も踏まえて、感じた事がある。月並みな表現になるが、奴ら魔人は帝国の生んだ亡霊だ。帝国の長い歴史の中、不遇な扱いを受けて来た者達が呪いとなって世界に放たれようとしている。不遇な環境で培われた思想は必ず、新たな不遇を生む。奴らの狙いが何であれ、事実そうなれば、ブルースフィアの思想………つまりは帝国が世界を支配する事と同意だ。」

ユウト「帝国が世界を支配………。」

オーグ「阻止せねばならない。我々で………絶対にだ!」

シン「ああ!その為にも強くなろう!今よりももっと!」

 

 全員が、そう決断する。




今回はここまでです。
ゼロワン・シャイニングホッパー、バルカン・アサルトウルフ、1型などが登場しました。
サウザーは、最初は第三勢力として出した方が良いんですかね。
ここ最近、色んな小説を投稿している為、これの投稿頻度が下がってしまいました。
何とか、他の小説も含めて、頑張っていきます。
あと、ユウトにはヒロインはいないと言いましたが、必要ですかね。
意見やリクエストがある場合は、活動報告、または、メッセージにて受け付けています。
例えば、このキャラをヒロインにして欲しいとか。
アークワンやアークスコーピオン、リアライジングホッパーは、どうしましょうか。
あと、賢者の孫とリバイスの話になりますが、流石に、オーグをデモンズトルーパーに変身させるのは、少し違和感を感じたので、もしかしたら、オーグだけ違う仮面ライダーにするかもしれません。
意見がある場合は、是非、お願いします。


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第13話 ライダー達の休息

 こうして、魔人を迎撃出来たものの、勝負には負けると結果になった、アルティメット・マジシャンズ。

 アールスハイドに戻る事にした。

 

オーグ「魔人襲撃で予定より1日延びてしまったが、これよりアールスハイドに帰還する。………シン。」

シン「ん?」

オーグ「不遜な言い方だが、お前のお陰で私達は随分力を付けた。だが、まだお前と私達の間には大きな隔たりがある。」

シン(何でちょっと不機嫌そうなんだ?)

オーグ「………だが、何時か必ず………。」

マリア「?」

ユウト「オーグ?」

滅(………シンと比べて、力不足なのが悔しいのだろうな。)

 

 オーグは、そんな風に言う。

 マリアとユウトが首を傾げる中、オーグは口を開く。

 

オーグ「兎も角、お前達はもう少し力の振る舞いを知れ。」

シン「っ!む、麦畑の話か!?」

ユウト「確かに………アレはやりすぎだったな………。」

レックス「本当にやりすぎだ。」

シン「スマン!」

マリア「まあ、気持ちを分かるけどね、シシリーを目の前で狙われたら………私だって黙ってられないし。」

トール「ただ、シン殿とユウト殿の場合、レベルが違い過ぎるんですよね。」

迅「確かに。シンの場合、うっかり間違って、魔法1発で、街を滅ぼしそうだしね。」

オリビア「ウォルフォード君、イーウェル君、うっかり世界を滅ぼさないで下さいね?」

 

 オリビアがそんな風に言うと、シンは大きく突っ込む。

 

シン「俺は魔王か!?」

ユウト「心外だな。シンはともかく、俺は大丈夫だ。」

タクヤ「確かに。ユウトの方がまだマシだからな。」

シン「何で、俺、そんなに貶されてんの!?」

コハル「自分の胸に聞け。」

 

 すると、周囲の人たちが、ヒソヒソと話していた。

 嫌な予感がしたシンは、話しかける。

 

シン「お、お前ら何ひそひそしてんだ?」

マリア「魔王………。言い得て妙ね………。」

リン「魔法使いの王………。ウォルフォード君にぴったり。」

ユリウス「”魔王”シン殿で御座るか………。」

オーグ「フム、シンの二つ名は決まったな。」

シン「………止めろ!!」

 

 その二つ名に、シンが叫ぶ。

 

シン「魔王ってもっとあれだろ!?世界を支配したり、悪さの限りを尽くしたり……!イメージ悪過ぎだろ!!え!?まさか魔王の概念無いの!?」

オーグ「何を言ってるんだお前?」

雷「まあ、良いじゃねぇか!魔王さん?」

シン「マジでやめろ!!」

ユーリ「格好良いわよねぇ。魔法使いの王で魔王!寧ろ、これ以上のものは浮かばないよねぇ。」

シン「思い浮かぶってぇぇぇ!!何かあるってぇぇぇぇ!!」

オーグ「それよりそろそろゲートを開いてくれ。騒ぎは避けたいから、今度は詰所以外の場所でな。」

シン「だから俺を無視して話を進めんなって〜〜〜〜!!」

 

 しばらく、シンのツッコミが炸裂していた。

 ちなみに、魔王姿のシンの想像をしたユウト、タクヤ、コハルは、必死に笑いを堪えていた。

 そして、そんな三人の姿を見て、シンは恨みがましい視線を向ける。

 アールスハイドの王都全体で、アルティメット・マジシャンズと仮面ライダーの人気が高まっていた。

 それを予想していたレックスは、頭を抱えていた。

 何せ、タクヤとコハルも、レックスの家に下宿しているのだから。

 そんな中王城では。

 

ルーパー「お!」

 

 ゲートで帰還したアルティメット・マジシャンズとユウト達を見て驚いた。

 

ルーパー「おかえり………なさいませ。」

ドミニク「何故こんな場所に………。」

オーグ「む、休憩中だったか。スマンな。」

シン「騒ぎになるから、人の多い場所は避けようって事で、テキトーな所にゲート繋ぎました。」

ルーパー「そ、そうか。賢明だな。」

 

 シンの言葉に、そう頷くルーパー。

 オーグは、全員に話しかける。

 

オーグ「既にクルト防衛の街も広がって街中大騒ぎだ。全員しばらくは街に出ない方が良い。」

アリス「ええ!?私たちも!?」

亡「まあ、大体そうなると、思っていましたが。」

レックス「やめてくれよ………俺の家に人々が更に殺到しそうだ………。」

雷「これは、大変だな。」

タクヤ「おいおい、迂闊に歩けねぇじゃねぇかよ。」

コハル「そうだな。」

ユウト「………下手に歩いてたら、取り囲まれそうだな………。」

 

 ユウト達がそう話していると、ドミニクが話しかける。

 

ドミニク「そう言えば殿下。殿下が他国を回っている間に、エルスとイースとも連絡が付きました。」

オーグ「っ!」

 

 その報告に、オーグは目を見開く。

 ドミニクは、三国会談の予定を伝える。

 

ドミニク「今の所、調整を経て三国会談を行う予定ですが………。時期は学院が休暇明けになりそうです。」

ユウト「会談は夏休み明けか。」

オーグ「旧帝国に変化は無いか?」

ドミニク「今や帝国領は魔物の巣窟ですからな………。正直他国の力を借りねば諜報活動すらままならん状況です。」

オーグ「結局の所三国会談待ちか………。」

ドミニク「ん?何か気に掛かる事が?」

 

 オーグの言い方に、疑問を持ったドミニクが質問をする。

 そして、オーグの言葉に、ドミニクだけでなく、ルーパーも驚愕する。

 

オーグ「強力な魔人が複数居た。恐らくは個々で国を落とせるレベルの手練れだ。クルトではそいつらを1体足りとも討伐出来ていない。」

ドミニク「っ!何と………!」

ルーパー「くそ………!やっぱ油断ならねぇな、魔人共………。」

 

 ルーパーがそう言う中、ドミニクは、ある事を、オーグに報告する。

 

ドミニク「殿下、此方でも一つ気掛かりが。推測ですが、ウォルフォード君の調査に来たと思われる賊が1人王城に現れましたが………我々の失態で取り逃がしてしまいました………。申し訳御座いません。」

シン「俺を?」

オーグ「どんな奴だ?」

ドミニク「こう言っては何ですが………。かなりの美形で、少年の様な男です。見た所、魔人共とは関係無いようでしたが………。」

マリア「美形?」

アリス「どんな奴だろう?見てみたいね。」

オーグ「何にせよ、今暫く動くべき時ではなさそうだな。合宿の続きで腕を磨きたいのも山々だが………。人目を避けてとなるとそれも難しいか………。」

 

 合宿の続きを、どこでしようかと頭を悩ませるオーグ達。

 そこにユリウスが提案を言った。

 

ユリウス「それならば全員で、拙者の実家に来ると良いで御座る。今なら魔人討伐や殿下の王太子就任で世間も浮かれている故、リゾート地に言っても何も言われんで御座ろう。」

マリア「ええ!?リッテンハイムリゾートに!?」

アリス「良いの!?やったぁ!!」

シン「ああ、前に言ってた武士のリゾートか。」

ユウト「武士?」

 

 シンの呟きに、ユウトが首を傾げる。

 ユリウスは、言葉を紡ぐ。

 

ユリウス「海でも山でも何でもあるで御座る。皆、特訓やら魔人やらで疲れも溜まっているで御座ろう。」

マリア「夏休みの締めにも丁度良いわね!」

シン「割り切ってバカンスってのは良いと思うけど、俺山育ちだし、山は取り敢えずいいかな………。」

ユリウス「そう言えば、そうで御座ったな。」

シシリー「じゃあ海にしましょう。それならシン君も楽しめますよね?」

マリア「おっと、やるわねシシリー。」

シシリー「何が?」

 

 シシリーの提案に反応するマリア。

 シシリーは、何の事かと首を傾げていたが、マリアの言葉に顔を赤く染める。

 

マリア「海って事は水着よねぇ?シシリーったら、シンに水着を見せてどうするつもりなのかしらぁ?」

シシリー「あぅっ!そ、そんなつもりじゃ!た、ただシン君が楽しめた方が良いと思って!」

シン「分かってるよシシリー。」

シシリー「シン君………。」

シン「水着楽しみにしてる。」

 

 シシリーは、シンに笑顔でそう言われ、顔を赤く染める。

 

シシリー「もう!もう!」

 

 シシリーは、照れ隠しにシンを叩く。

 

シン(可愛いなぁ〜。)

ユリウス「そうで御座る。折角だし、都合が合えばご家族も連れてくると良いで御座る。幸か不幸か、魔人騒ぎでキャンセルが多く出たで御座るからな。」

アリス「本当!?ユリウス君太っ腹ぁ!」

 

 そんな風に盛り上がっている中。

 

ユウト「悪いけど………俺、パス。」

アリス「どうして?」

ユウト「いや………魔人やアークの脅威がまだあるのに、呑気にバカンスなんて………痛っ!?」

 

 ユウトがそう言いかけると、レックスが背中を思い切り叩く。

 

レックス「ユウト。お前もリッテンハイムリゾートに行ってこい。」

ユウト「え…………?」

レックス「お前だって、シャイニングホッパーの負荷で、そこまで戦闘が出来ないだろう。少しは休め。」

ユウト「でも………!」

迅「そうだよ!」

滅「お前は、少しは休め。」

亡「ええ。休むのもまた、仮面ライダーにとって必要です。」

雷「心配すんな。魔人やアークの動向は、俺たちが見張っとくからよ。」

ユウト「でも………滅達にだけ負担をかけるわけには………!」

 

 ユウトがそう言う中、タクヤとコハルとイズが、ユウトの肩に手を置く。

 

ユウト「三人とも………。」

タクヤ「お前はさ、ゼロワンとしての使命に縛られすぎだ。たまには羽を伸ばしても、誰も怒りはしねぇよ。」

コハル「ああ。休まずに戦闘をした結果、倒れられても、こちらが困る。英気を養え。」

イズ「ユウト様。シャイニングホッパーの負荷は、まだ残っているはずです。休みましょう。」

ユウト「…………分かった。滅達も、悪いな。」

滅「気にするな。」

レックス「しっかり、羽を伸ばせよ。」

 

 こうして、ユウト、タクヤ、コハル、イズの四人が、リッテンハイムリゾートに向かう事になった。

 滅達は、アールスハイド王都に残る事に。

 ユウトは、イズと共にライズホッパーに乗り、タクヤは、コハルと共に、ライズウルフというバイクに乗る。

 ちなみに、シン達は、家族を連れてきているが、ユウト、タクヤ、コハルに関しては、家族は連れてきていない。

 三人とも、アールスハイドの王都からは、離れた場所に実家があるからだ。

 馬車に合わせて、二日かけて、リッテンハイムリゾートへと到着した。

 

シン「おお!海だ!」

ユウト「結構、広いな。」

 

 ユウト達は、ユリウスの父親に挨拶しに行った。

 

マルコ「皆様、ようこそおいで下さった。拙者ユリウスの父、マルコ=フォン=リッテンハイムで御座る。」

シン(1ミリも武士関係ねぇじゃねーか!!ってツッコんだらマズイかな………。)

マルコ「お久し振りで御座るアウグスト殿下。そして、お目に掛かれて光栄で御座る賢者様、導師様。それに………シン君。君は、ユリウスに出来た対等の友人だ。拙者、そう言った関係は何より大切に思う。皆と共にゆっくりと寛いでいってくれ。」

 

 そうして、ユウト達は水着に着替える事に。

 そして、男性陣は、水着に着替えて、先にビーチに来ていた。

 

シン「おお………白い砂浜!(前世でもこんなリゾート来た事ないなそう言えば………。)」

ユウト「青い空、白い雲。水平線にまで伸びる、海。リゾートだねぇ………。」

タクヤ「まあ、偶には、リゾートで羽を伸ばすのも、ありだな。」

メイ「シンおにーちゃーん!」

シン「ん?」

メイ「お待たせー!」

 

 男性陣がそう話していると、女性陣も到着する。

 

メイ「エヘヘ、どうですか?」

シン「可愛い可愛い。よく似合ってるよ。」

ユウト「二人は、自重してくれ。露出が激しすぎる。」

ユーリ「そぉ?」

エリザベート「だ………だってアリス達と買い物行ったらコレが良いって………あ………あまり見ないで下さいまし。」

タクヤ「で、お前らは、無難にそれを選んだのか?」

リン「心外。これが私達に1番似合う。」

アリス「そう、お子様水着がね!」

 

 そう言うと、リンとアリスは、泣き出す。

 

ユウト(盛大な自爆だなぁ………。)

アリス「なあっ!?」

 

 すると、アリスは、オリビアの水着姿を見て、驚愕する。

 

アリス「お………温泉の時は見落としてた……。こんな所に思わぬ伏兵が………!」

コハル「本当に、元気だな。」

タクヤ「お前は、無難に普通の水着って事か?」

コハル「そうだが?悪いか?」

タクヤ「いや、別に。」

アリス「何か………コハルの胸も普通に大きいよね………。」

リン「確かに………。」

コハル「胸の大きさくらいで僻むな。」

 

 アリスとリンの僻みを、コハルは一刀両断して、その二人は地面に崩折れる。

 

ユウト「そういや、親御さんは?」

マリア「気にせず友達と遊んで来いってさ。」

イズ「そうですか。」

アリス「ていうか、イズは水着、着ないんだね。」

イズ「私は、ヒューマギアです。水に入るのはダメなので。」

シシリー「あの………シン君、お待たせしました。」

 

 そんな風に話していると、漸く水着に着替えたシシリーが到着した。

 

シン「………!!」

シシリー「や………やっぱり少し恥ずかしいですね…………。」

シン「……………。」

 

 シンは、シシリーの水着姿に見惚れていた。

 そこに、ユウトが背中を叩く。

 

ユウト「ほら。何か言ってやれ。」

シン「あの…………えと………可愛い………す………凄く似合ってる………。」

シシリー「あ………ありがとうございます………。」

アリス「さあ泳ごう!!」

 

 そう言って、女性陣は、海で遊ぶ。

 

トニー「いやー眼福眼福。僕らは幸せ者だねぇ。」

マーク「刺激が強いっス………。」

 

 そんな中、リンが海に向かおうとすると、立ち止まる。

 

リン「今思い出した、泳げない!」

タクヤ「カナヅチか?」

シン「しょうがねーな、ちょっとバンザイしてみ?」

 

 シンが異空間収納から何かを出し、リンがバンザイすると、何かがすぽっとリンに入った。

 

リン「これ何?」

ユウト(浮き輪?)

シン「こんな事もあろうかと作っといた。それ着けて海入ってみな。」

 

 リンは、シンが出した浮き輪を持ちながら、海に入ると、感激した。

 

リン「お、お、おお!おおお〜〜〜〜!!!」

タクヤ「テンション高ぇな。」

マリア「ちょっとシン!あれ何!?」

シン「魔物化した大型のカエルの皮って、水を弾くし尚且つ軽いんだ。それでカナヅ………泳げない人用に浮き輪を作ってみたんだよ。」

アリス「凄い何それ画期的!!」

メイ「私も欲しいですシンお兄ちゃん!!」

 

 シンの説明に、アリスとメイが食いつく。

 そして、マジカルバレーを再びやる事に。

 それを見ていた、ユウト達は。

 

ユウト「おい、シン。」

シン「ん?」

ユウト「何だ、あれ?」

シン「ああ、マジカルバレーだよ。」

タクヤ「バレーなのか…………!?」

コハル「身体強化に魔法を使っているぞ………!?」

 

 ユウト達は、マジカルバレーにドン引きしていた。

 前世で知るバレーのレベルを超えた代物に。

 

シン「シシリー、暇だしちょっと俺、爺ちゃん達の様子見てくるよ。」

ユウト「俺も行くよ。」

タクヤ「じゃあ、俺たちは、待ってるわ。」

コハル「そうだな。」

 

 そうして、シンとユウトは、マーリン達の様子を見に行く事に。

 途中、一人で釣りをするマーリンを見る。

 

シン「ん?」

ユウト「マーリン様?」

シン(爺ちゃん………見なかった事にしよう…………。)

ユウト(何泣いてんだお前?)

 

 しばらくすると、シシリーの姉のセシリアにシルビア、メリダが居る場所に着く。

 

セシリア「あらシン君にユウト君。」

シルビア「2人でどうしたの?」

シン「いえ、俺の提案した遊びに皆、すっかりハマっちゃって………。」

ユウト「まあ、暇なんで。」

セシリア「へぇ、そうなんだ。」

シルビア「暇してるって訳ね。」

メリダ「丁度良かった。だったらコレ塗っておくれシン。」

 

 メリダは、そう言って、サンオイルをシンに渡す。

 

ユウト「サンオイル?」

シン「日焼け止めじゃなくて?若いなー。」

メリダ「海に来て焼かないとか、私の選択肢にはないさね。」

 

 メリダはそう言って、その場で水着を脱いだ。

 ちなみに、ユウトはサンオイルと聞いた時点で、目を背けていた。

 

セシリア「ど、導師様!!そんな大胆な!!」

 

 メリダは水着を脱いで、ビーチチェアの上で俯せになる。

 

シン(うーん、肩揉みレベルの面倒さ………何が悲しくて婆ちゃんにサンオイルを………。)

 

 シンは、少し泣きながらメリダにサンオイルを塗っていく。

 それを見ていたセシリアとシルビアは。

 

セシリア「………シルビア。」

シルビア「ええ、セシリアお姉様。」

セシリア「シン君、ちょっと良い?私達も日焼け止めまだなの。」

シルビア「塗っていただけない?」

 

 シンがそれを聞くと、顔を赤らめ、慌てる。

 

シン「え!?………いやでも………そ………それは色々とマズいんじゃ………!!」

セシリア「フフ、大丈夫よ。シシリーには内緒にしておいてあげる。」

シルビア「それにこれはただの医療行為よ。疚しい事なんて何もないわ。」

シン「(何か物凄〜〜〜くダメな気がするけど……。)そ………そう言う事なら………わ………分かりました………。」

 

 シンは、後ろめたさを感じながら、セシリアとシルビアに日焼け止めを塗る事に。

 一方、ユウトは、ずっと黙っていた。

 

ユウト(………シン、それがシシリーにバレたら、怒られるぞ。)

 

 ユウトは、そう思っていた。

 すると。

 

ユウト(あれ………?何か………寒く……!?)

 

 ユウトが寒気を感じると、そこには。

 

シシリー「何………してるんですか………?」

 

 目から光が消えて、氷を発生させながら歩いてくるシシリーの姿が。

 

シン「シ………シシ………リー………!?何………でここに…………!?」

シシリー「…………いえ、シン君とユウト君を除け者にしたみたいで………やっぱり申し訳ない気がして………追い掛けて来たんですが………。これは一体………どう言う事でしょうか?」

 

 すると、段々冷気が強まり、ビーチパラソルが凍結された。

 

ユウト「寒っ………。」

メリダ「…………。」

 

 ユウトが寒さに震え、メリダが無言でいると、セシリアとシルビアが大きく叫ぶ。

 

「「違うのよシシリー!!」」

シシリー「はっ!!」

シルビア「私達が彼にお願いしたのよ!!」

セシリア「そう!導師様に凄く上手にオイル塗ってたから!!」

((て言うか、シン君に塗って貰ったら何か運を分けて貰えそうな気がして………。))

 

 セシリアとシルビアは、運を分けて貰えそうという理由で、頼んだのだ。

 だが、セシリアとシルビアは、日焼け止めをシンに塗ってもらう為に、水着を脱いでいる。

 つまり。

 

シン「ちょ………おね………!」

シシリー「っ!!シン君!!見ちゃダメーーー!!」

シン「ぷわっ!?」

 

 それに気づいたシンが、何かを言おうとするが、シシリーが即座に胸にシンの頭を突っ込ませる。

 

ユウト「……………。」

 

 ユウトは、無言でいた。

 シシリーは、2人の姉に注意をする。

 

シシリー「もうお姉様!!ちゃんと水着着て下さい!!」

「「え?あ!」」

シシリー「はっ!きゃああああごめんなさい!!」

シン「ぷはっ………。」

 

 シシリーがそう注意するも、シシリー自身も、シンを胸に抱いていた事に気づき、即座に離す。

 メリダは、ため息を吐きながら、シシリーに話しかける。

 

メリダ「やれやれ、騒がしい子達だねぇ。」

シシリー「お婆様………。」

メリダ「心配いらないよシシリー。この娘達の言ってる事は本当さ。寧ろ、シンはアンタの事を気にして躊躇してたしね。」

シシリー「そう………だったんですか………。ごめんなさいシン君………私………早とちりして………。」

シン「いやいや!俺も………誤解されるような事をしてて………ごめん!」

ユウト「やれやれ。シシリー、いきなりそんな事をするんじゃなくて、少しはシンの話を聞いてやれよ。」

シシリー「は、はい………。」

 

 ユウトが、そんな風にアドバイスをする。

 その後、シンがシシリーに日焼け止めを塗る事になったのだが。

 

シルビア「そう言えば。」

セシリア「私達、まだ塗って貰ってないわね………。」

メリダ「安心おし。私が塗ったげるよ。」

セシリア「ひゃああああ!!ど、導師様冷た!」

シルビア「で………出来れば人肌ぐらいに温めてから………。」

メリダ「はあ!?知るかいそんなの。」

 

 セシリアとシルビアは、メリダに日焼け止めを塗って貰った。

 一方、ユウトは。

 

ユウト(ゼロワンとしての使命に縛られすぎか………。そんなに縛られてるのか?)

 

 そんな事を考えていた。

 その後、マジカルバレーの激しさを見て、ユウト達は、更にドン引きしていた。

 夕方。

 

シン「はぁ〜〜〜遊んだ遊んだ!くたくただ〜〜〜!」

ユウト「そりゃあ、あんな激しいバレーをしてたらな。」

タクヤ「腹減ったなぁ。」

コハル「丁度、夕食どきだしな。」

 

 そうして、ユウト達は着替える事にした。

 その後、バーベキューが始まった。

 

シン「ひゃ〜〜〜美味そう!!頂きま〜〜す!!」

ユウト「いやぁ〜〜美味いな。」

タクヤ「美味い!」

コハル「もう少し、落ち着いて食え。」

 

 そんな中、シンとユウトが、日焼けしたマーリンに話しかける。

 

シン「グレたの爺ちゃん?」

ユウト「喧嘩でもしたんですか?」

マーリン「違うわい!1日中、釣りしとったら真っ黒になってしもうた。」

セシル「け、賢者様。何かお悩みでしたら私共が………。」

マーリン「だからグレとらんわい!」

 

 シンとユウト、セシルの言葉に、そう突っ込むマーリン。

 そんな事もあるが、盛り上がっている中。

 

???「皆、楽しんでおるようだな。」

セシル「へ………陛下!?」

ロイス「それに………王妃様まで何故ここに………!?」

 

 そう、オーグのご両親が来ていたのだ。

 

ディセウム「おや?今日の招待は親子同伴でと聞いたが、私達が来るのは可笑しいかな?」

セシル「いえそんな事は………し…………しかし………。」

 

 いきなり、陛下が現れて、混乱しているセシル達。

 マリアは、シンに理由を聞いた。

 

マリア「お…………お2人は何時からいらしてたの…………!?」

シン「ついさっきだよ。定期連絡にゲートで王城行ったら待ち伏せされてた。」

ユウト「待ち伏せて………。」

 

 そんな風に話している中、メイとオーグが話しかける。

 

メイ「お母様!!」

オーグ「母上、遅いお着きで。」

ジュリア「余計な事言わなくていいの、アウグスト。」

 

 彼女は、ジュリア=フォン=アールスハイド。

 オーグとメイの母親で王妃様。

 

ジュリア「折角シン君の『ゲート』と言う便利な魔法があるんだから………私達王族の人間まで危険な馬車の旅するする必要はないでしょう?」

 

 そう言うジュリア。

 それを聞いたオーグとメイは、尋ねる。

 

「「………本音は?」」

ジュリア「馬車の旅はシンドい!」

 

 ジュリアがそう言うと、周囲がしーーーんとした。

 

ジュリア「ぷっ………ほほほほほほ!冗談よ冗談!」

 

 自分の失言に気づいたジュリアは、笑って誤魔化す。

 

シン「随分砕けた人だよな………。」

タクヤ「確かにな。」

マリア「………まぁ、そこが国民に好かれる所なんだけどね。」

ユウト「オーグの家族って、個性的だよな。」

マリア「でも実際、ジュリア王妃様は福祉なんかにも凄く力を入れていて………。お金を出すだけじゃなくて、自ら養護施設や孤児院に足を運んだりして、国民とのふれあいも大事にする方よ。」

コハル「良き王妃と言うわけだな。」

イズ「そのようですね。」

 

 マリアの言葉に、そう頷くコハルとイズ。

 

ジュリア「堅苦しいのは抜きにして下さいね皆様。折角のリゾートなんだから、気にせず羽を伸ばしてちょうだい。」

ディセウム「ウム。我々も今だけは休ませて貰うぞ。」

メイ「お母様!お母様!」

ジュリア「あらどうしたのメイ?」

メイ「見て下さいです!マジカルバレーの合間にシンお兄ちゃんとお魚釣ったんです!」

 

 メイはそう言って、異空間収納から、魚を取り出す。

 それを見たディセウムとジュリアは呆然とする。

 

「「……………。」」

メイ「どうしたです?お魚にそんなにビックリしたです?」

ディセウム「い………いやメイ………その前に………い………何時の間に異空間収納の魔法なんて………。」

ジュリア「普通大人だってそうそう使えないのに………。」

メイ「シンお兄ちゃんに教えて貰ったんです!とっても便利です!」

 

 それを聞いたディセウムは、すぐにシンを呼び寄せる。

 

ディセウム「困るよシン君………。君の非常識を娘にまで植え付けられては………。」

シン「へ?俺5歳で普通に使ってたけど?」

ディセウム「だって君は異常だろ?」

シン「それ、本人に言うセリフか?」

ユウト「確かに、シンって、異常だからな。」

シン「納得するな!」

ディセウム「あまり出鱈目な魔法使いになられても、娘の貰い手がだね………。」

メイ「別にお嫁に行かなくても良いです。シンお兄ちゃん達と魔物狩るです!虎とか獅子の魔物とかいっぱいいっぱい狩るです!!」

ディセウム「シ〜〜〜〜ンく〜〜〜〜ん!!」

 

 ディセウムは、メイがそんな事を言う理由になった元凶に怒鳴る。

 それを見ていたユウト達は。

 

タクヤ「アイツ、何やってんだ………。」

コハル「普通、そんな歳のメイ様に教えるか?」

イズ「やはり、シンさんは、異常ですね。」

ユウト「確かに。」

 

 そんな風に話していた。

 そんな中、メリダがジュリアに話しかけていた。

 

メリダ「久し振りだねぇジュリア。元気にしてたかい?」

ジュリア「あらメリダ様、お久し振りですわ!」

メリダ「お互いこれから大変だねぇ。まさかこの歳になって嫁にあれこれ指南する立場になるとは、思ってもみなかったけどね。」

ジュリア「まだまだお若いのに何仰いますか。私達ですらまだまだ御教授頂きたい位ですのに。」

メリダ「シシリー!エリー!こっち来て話に入りな!」

「「は………はは………はい!!」」

 

 メリダは、シシリーとエリーを呼び、話に入らせる。

 しばらくして、ディセウムが、ある事を発表する。

 

ディセウム「おおそうだそうだ!ここに来た一番の目的を忘れる所だったよ。アルティメット・マジシャンズはこれまでに2度も他国を魔人から救った。その際にかなりの数の魔物を倒しただろう。そこでだ!功績があまりにも大きい為、新しい勲章を作り、全員にそれを授与する事になった。」

オリビアの父「ウチの子が勲章!?そ………そりゃ凄い!!」

トニーの母「トニーが魔法学院行くって言い出した時は絶望を感じたものだけど………。」

トニーの父「ウム。これなら認める他ないな。」

トニー「大袈裟だなぁ。」

ディセウム「近い内に叙勲式を執り行うから、皆そのつもりでいてくれ。」

コハル「分かりました。」

アリス「うわぁ………メッチャキンチョーしそう…………。」

 

 コハルが、ディセウムの問いに答え、アリスが緊張する。

 そんな中、シンがメリダに話しかける。

 

シン「今回は………良いの?」

メリダ「まぁ良いさね。チームとしての功績だから、私らが口出す事でもないし(それに、恐らくこれによって、シンやユウトや殿下以外のメンバーにも、より自覚が生まれるはず。自分達が世界を救う立場にあると言う自覚が………。)」

 

 メリダは、そんな風に考えていた。

 そうして、リッテンハイムリゾートでの休暇は終わった。




今回はここまでです。
リッテンハイムリゾートでの休暇を、ユウト達は過ごしました。
冒頭でもあったように、ゼロワンとしての使命に縛られたユウトは、休息をとるという選択肢を失っていました。
現在、アンケートを取っていますが、サウザーは、最初から味方が多いですね。
メタルクラスタホッパーとプログライズホッパーブレードは、どんな風に出したら良いんですかね。
あと、一つ考えているのが、1型の強化です。
使うドライバーが、サイクロンライザーからゼロワンドライバーに変わって、使用するゼツメライズキーも、シャイニングアサルトホッパーベースのゼツメライズキーに変更しようかなと考えています。
ダイアウルフみたいに、アサルトグリップはそのままで、キーがシャイニングホッパーのリデコという感じで。
そして、ユウトにヒロインは必要なのかというのも、最近考え始めています。
一応、これまで投稿した小説の差別化として、ヒロイン無しを考えていたんですが。
まあ、仮にヒロインありに変更するとなると、ユウトは、アルティメット・マジシャンズの女性との仲は、普通なので、厳しいとは思いますが。
感想、リクエスト等、絶賛受け付けています。


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第14話 受賞と準備

 リッテンハイムリゾートでの休暇が終わった。

 その後、王都に戻った数日後に、王城での叙勲式が行われた。

 

司会「アールスハイドのみならず、各国を救った英雄達・アルティメット・マジシャンズ!!」

 

 司会がそう言うと、盛大な拍手が巻き起こった。

 

ディセウム「アールスハイドに誕生した英雄達を讃える事が出来、誠に嬉しく思う。更に、此度の功績は過去に類を見ないものだ。そこで、この度は特別な勲章を用意した。」

 

 周囲がざわつく中、名前が上がった。

 

ディセウム「シン=ウォルフォード!アウグスト=フォン=アールスハイド!マリア=フォン=メッシーナ!シシリー=フォン=クロード!アリス=コーナー!トール=フォン=フレーゲル!リン=ヒューズ!ユーリ=カールトン!トニー=フレイド!ユリウス=フォン=リッテンハイム!マーク=ビーン!オリビア=ストーン!以上12名からなる『アルティメット・マジシャンズ』に、”金龍特別勲章”を授与する!!」

周囲の人達「おおおおおおおおお!!!」

 

 ディセウムの宣言に、周囲の人達が大声を上げる。

 

マリア「ひええ………。こりゃまた凄いわね、金龍って…………。」

ユウト「金龍とは、これまた凄い。」

シン「え?何?それ凄いの?」

 

 シンのその言葉に、マリアが呆れる。

 

マリア「呆れた、まさか知らないの!?金龍はアールスハイドの国旗にも描かれてるシンボルじゃない!つまり私達も国のシンボルとして扱われるって事でしょ!」

トール「はぁ………。自国の国旗も知らない英雄が2つ目の叙勲ですか………。」

ユーリ「世も末よねぇ………。」

 

 そして彼らに金龍特別勲章が授与された。

 ちなみに、ユウト達は、アルティメット・マジシャンズの外部協力員という扱いだ。

 

ディセウム「おめでとう。」

シン(因みにさ、実際居るの!?ドラゴンって。)

オーグ(居ないだろ。目撃談はあるが、どうせ眉唾だ。)

シン(何だぁ…………。)

 

 シンは、オーグにドラゴンが居るかを尋ね、居ないと知ると、少し落胆した。

 ディセウムは、オーグに話しかける。

 

ディセウム「立派になったアウグスト。これならば安心して国を任せられる。」

オーグ「何を仰います。父上ならば、まだまだ御活躍出来るでしょう。これからも我が国を牽引していって下さい。」

ディセウム「アウグスト…………。」

 

 それを聞いたユウトは、オーグに聞く。

 

ユウト(それで………本音は?)

オーグ(もう暫く自由で居たい。)

ユウト(なるほどね…………。)

ディセウム(ユウト君、タクヤ君、コハル君、迅、滅、雷、亡、レックス。皆の前に出てきてくれ。)

滅(分かった。)

 

 ディセウムがそう言うと、八人が前に出る。

 

ディセウム「ユウト=イーウェル、タクヤ=フラウド、コハル=マリス、迅、滅、雷、亡、レックス=ウェイト。仮面ライダーに変身する者達よ!これまで、魔人や魔物を討伐してきた!彼らの功績を称えよ!」

 

 ディセウムがそう言うと、周囲から拍手が巻き起こった。

 

ユウト「少し照れるな………。」

タクヤ「まあ、気を緩めるなよ。」

コハル「分かっている。」

レックス「俺も更に有名になるのか………。」

ディセウム「そして、シン=ウォルフォード。僅かな期間に2回目の叙勲は王国の歴史上初めての事だ。素晴らしい功績である。」

シン「ありがたき幸せ。」

ディセウム(シン君、皆の前へ。)

 

 ディセウムにそう言われ、前に出たシン。

 そしてディセウムから言葉が。

 

ディセウム「シン=ウォルフォードは、最早この世界に敵う者のない”魔法使いの王”と呼んで差し支えない存在だ。よって我により『魔王』の二つ名を与える!!皆讃えよ!!」

シン「!?」

ディセウム「魔王シンの誕生である!!」

 

 その言葉を聞いたシンは、顔を青褪める。

 シンの脳裏に浮かんだのは、魔王となった自分の姿だった。

 そして、オーグの方を見ると。

 

オーグ「くっくっくっくっくっ………。」

 

 必死に笑い堪えていた。

 それを見たシンは、全てを悟った。

 

シン(てめぇか、やっぱり!!)

 

 シンは、心の中でそう叫ぶが、意識は周囲の人たちの歓声に向く。

 

周囲の人「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

周囲の人「魔法使いの王!!魔王シン!!」

周囲の人「その歳で二つ名を授けられるとは!!」

周囲の人「魔王!!」

周囲の人「魔王!!」

周囲の人「魔王!!」

 

 その途端、周りから魔王コールが響き渡る。

 それを聞いたシンは。

 

シン(う〜〜〜〜そ〜〜〜〜だ〜〜〜〜!!)

 

 シンは、撃沈した。

 そんな中、ディセウムはオーグに話しかけていた。

 

ディセウム「夏期休暇が開ければ間もなく三国会談だ。これ以上魔人の被害を広げない為にも、必ず成功させねばならない。連合が結成されれば、魔人制圧に動き出す事が出来る。皆………共に力を合わせて頑張ろうではないか。」

オーグ「ええ。」

 

 ちなみに、ユウト、タクヤ、コハルは必死に笑いを堪えていた。

 シンは、再びユウト達に恨みがましい視線を向ける。

 一方、スイード王国では。

 

兵士「国王!アールスハイドより伝達が。我が国に続き、ダーム、カーナン、クルトも連合に加わったと。残る2ヶ国…………エルスとイースとは近々会談を行い、交渉するそうです。」

 

 それを聞いた国王は、こう思った。

 

国王(実際、魔人による襲撃を受けた国でなければその脅威を直接感じる事は出来ん………。ましてやエルスとイースはアールスハイドと並んで力を持つ国々………。易々と提案に応じるとは思えん。しかし、魔人制圧には協力が必要不可欠な国々である事に違いない。お手並み拝見しますぞ………アウグスト殿下。)

 

 スイード王は、オーグの手腕を期待する。

 一方、旧ブルースフィア帝国の帝都では。

 

シュトローム「おやおやこれは、名演出家のゼスト君ではありませんか。」

ゼスト「シュトローム様。」

シュトローム「クルトの一件………聞きましたよ。離反した魔人達はまた手痛い目に遭わされたようですね………フフフフ。」

ゼスト「私には優秀な部下達が居りますからね。知のない連中を操るのは造作もない事です。」

シュトローム「そこまで彼らを利用して、一体何を目論んでいるのでしょうねぇ?」

ゼスト「作戦の途中段階故、今はまだ何とも………。ですが近い内に必ず………良い報告が出来るかと思います。」

シュトローム「では、それを楽しみに待つとしますか。」

 

 ゼストの報告を聞いたシュトロームは去っていく。

 彼が去った後。

 

ゼスト「そこに居るな?忙しくなるぞ。アベル、カイン、ローレンス、ダンテ、リオネル、サイクス。シン=ウォルフォード攻略の為に………次の作戦へ移行する。」

 

 ゼスト達魔人勢は、シンを攻略する為に、動き出そうとしていた。

 一方、レックスの家では、ユウト達が集まっていた。

 

ユウト「レックス、用事って何だ?」

レックス「ああ。それはな………。」

???「私が住む事よ!」

 

 そう言って、一人の女性が現れる。

 その女性は、ポニーテールだった。

 ユウト達は、首をかしげる。

 

イズ「レックス様、この方は?」

レックス「俺の弟の娘だ。」

イネス「初めまして。私は、イネス=ウェイト。今日から、おじさんの家に住む事になったから、よろしくね。」

ユウト「なるほど………。」

迅「それにしても、随分と唐突じゃない?」

滅「ああ。お前の父親は、許したのか?」

イネス「大丈夫よ。お父さんも、あっさり許してくれたし。」

レックス「やれやれ…………。」

 

 それを聞いたレックスは、弟があっさりと許可を出したことを、呆れていた。

 

タクヤ「あっさりすぎないか………?」

コハル「何か裏がありそうだな………。」

雷「まあ、別に良いんじゃねぇの?」

亡「そうですね。」

 

 訝しむタクヤとコハルを他所に、雷と亡は大して気にしていなかった。

 その後、ユウトを除く全員がレックスに集められた。

 

タクヤ「今度は、何の用だ?」

レックス「…………実は、イネスが来たのは、ある理由がある。」

コハル「ある理由?」

滅「それは何だ?」

レックス「それは………イネスが、ユウトに惚れたからそうだ。」

迅「………………え?」

イズ「イネス様が………?」

雷「アイツに…………?」

亡「惚れた………?」

 

 レックスの言葉に、全員が唖然となる。

 レックスは、首を縦に動かしながら答える。

 

レックス「ああ。アイツもイネスを止める事が出来なかった様で、俺に泣きついてきた。」

タクヤ「………ちょっと待て!」

コハル「あり得ない………あのユウトだぞ!?性欲が完全に死んでいるユウトだぞ!?」

滅「…………なかなかに酷い言い方だな。」

迅「まあ、性欲が死んでるのは、確かかもしれないね。」

雷「女性のアピールも、鼻を伸ばすどころか、引くレベルだからな。」

亡「そんな奴に惚れるなど、正気とは思えませんが。」

イズ「そうですね。」

 

 そんな風に、タクヤ達は、ユウトの事をボロクソに言う。

 レックスは、同情せずに、その通りだと言わんがばかりに頷いていた。

 

レックス「………つまり、俺の弟………ノエル曰く、イネスはユウトと結婚したいと言っているんだ。」

タクヤ「アイツ………気づかないだろ。」

コハル「まあ、良いんじゃないか?ユウトに婚約者が居ると分かれば、ちょっかいを出す貴族の未婚の女も減るだろう。」

滅「ただ………ユウトがそれに気づくのかどうかは、別だがな。」

迅「まあ、可能性は限りなく低いんじゃない?」

雷「アイツだからな…………。」

亡「ですね。」

イズ「…………しかし、これは、ユウト様にとって、良い機会なのでは?」

 

 イズがそう言うと、全員の視線が、イズに向かう。

 イズは、理由を話す。

 

イズ「ユウト様は、ゼロワンとしての使命に縛られすぎだと思います。ここら辺で、彼自身の人生を自由に過ごして欲しいのです。」

レックス「…………確かにな。ここいらで、アイツにも婚約者は必要だろうな。」

 

 レックス達は、何とかユウトとイネスをくっつけようと画策する。

 一方、ブルースフィア帝国では。

 

ローレンス「現状、これ以上細かな計画は立てられませんが、まあ予定通り進むでしょう。ただ、ウォルフォードのあの怒りを抑える事は我々には出来ませんよ。」

ゼスト「構わん。何もこの一件で奴を倒せるとは思っていない。直接打撃を与える事だけが成果ではないからな。もし奴が怒り狂い、婚約者に危害を加えた者を害したとしたらどうなる?しかも、それがその国にとって重要なポストに就く者だったとしたら?」

 

 ゼストがそう聞くと、ダンテが合点がいった表情を浮かべる。

 

ダンテ「成る程。今は英雄として称えられていても、怒りに任せて暴れれば、奴に対する評価は途端に”危険人物”に変わると。」

カイン「世間なんてそんなモンだよな。」

アベル「ましてや魔人以上に力を持つ存在。畏怖と畏敬は紙一重だからな。」

ゼスト「加えて、そうなれば奴は戦場の最前線に立つ事は難しくなる。連合を組もうが何だろうが、その指揮を執る事など到底無理だろう。それに、もう1つ起こりうる可能性がある。」

斥候隊「?」

 

 ゼストの言葉に、斥候隊の面々は首を傾げ、ゼストが説明する。

 

ゼスト「シュトローム様が魔人となった経緯を思い出せ。」

 

 全員がシュトロームが魔人になった経緯を思い出す。

 すると全員に戦慄が走った。

 

アベル「まさか…………!」

ダンテ「本当の狙いは…………シン=ウォルフォードの………魔人化!?」

 

 そう、ゼストの目的はシンの魔人化だった。

 それには、斥候隊の面々が、戦慄する。

 

ローレンス「正気ですかゼスト様………!?理性があろうとなかろうと………そんなものがこの世に誕生してしまったら………。」

リオネル「誰の手にも負えん………明白だ!そうなれば間違い無く………この世界は終焉を迎える………!!」

 

 ローレンスとリオネルが戦慄する中、サイクスは口を開く。

 

サイクス「冗談で言ってんのかお前ら、だからどうした?そもそも人間に取って代わって頂点に立とうって言う俺達魔人が、今更世界の心配か?魔人と敵対する怪物が1人居るか、全ての生命を脅かす悪魔を作るのか。あるのは最初からその2択のみだろうが。」

ゼスト「そう言う事だ。どう転ぼうとシン=ウォルフォードはこの世界の行く末を左右する存在なのだ。勿論、あのユウト=イーウェルもだ。だが奴の弱みはまだ不明だが、可能であれば奴を魔人化する何かを見つけられる筈だ。」

 

 そう、ゼストは、シンのみならず、ユウトの魔人化を計画していた。

 

ゼスト「まあ、どんな結果が出るにせよ、一先ずやってみるしかない。出発するとしよう。」

斥候隊「はっ!!」

ゼスト(フフッ………。)

 

 密かに不敵な笑みを浮かべた。

 一方、イース神聖国の聖都では。

 

神子「フラー大司教様、あ、あの、教皇猊下がお呼びです。至急会議室に来るようにと……。」

 

 不敵な笑みを浮かべて神子をじっくり見る男。

 彼がイース神聖国の大司教アメン=フラーだ。

 

フラー「わざわざ通達ご苦労。所で今晩、私の自室に………。」

???「フラー大司教!何をしておられるか!」

 

 フラーが神子に自室に来る様に言おうとすると、後ろから1人の男に呼び止められた。

 司教のハミル・マキナだ。

 マキナに呼び止められたフラーは、不機嫌そうにマキナに話しかける。

 

フラー「ちっ………何だマキナ。司教の分際で私の話を遮るとはどう言う………。」

マキナ「確かに私はただの司教ですが、我々を招集したのは、敬愛すべき教皇猊下ですぞ。」

フラー「我々?」

マキナ「私も呼ばれております。」

フラー「はぁ………。」

マキナ「さあ君、もう行きたまえ。」

神子「あ………ありがとうございます。」

 

フラー「(ちっ。)やれやれ、私だけなく、お前まで呼んでいるなら大した用件ではなさそうだな。全く、教皇猊下にも困ったものだ。私に全てをお任せ下されば良いものを………。」

 

 フラーは、そう毒づく。

 そして、エルス自由商業連合国では。

 

大統領「おい、誰かナバルを呼んで来たってんか。」

 

 エルスの大統領が、ナバルという人物を呼ぶ。

 しばらくすると。

 

ナバル「スイマセン、ナバルですけど。」

 

 外交官のウサマ=ナバルが大統領が居る部屋に入ってくる。

 

大統領「おお、ちょっとそこ座れ。お前、アールスハイドから提案されとる用件知っとるな?」

ナバル「そら私、外務局の人間でっせ。当然ですやん。」

大統領「向こうさん………アールスハイドな、国王やのうて、王太子をその階段に出席させるそうや。」

ナバル「王太子って………確かこないだ16になったばかりでっせ?そんな子供を国の代表にするんでっか?」

大統領「そうらしいで。何でも齢16にして、王国始まって以来の傑物や言うて評判らしいわ。」

ナバル「はあ………。で、それがどないしたんですか?」

大統領「ナバル、お前がその会談へ行って、アールスハイドから利権取って来い。」

ナバル「は?」

 

 ナバルは、大統領が言った事に、少し反応が遅れた。

 

大統領「せやからお前を、今回の会談の代表にする言うてんねん。」

ナバル「………ホナ、そこで私が自分の利権もろても宜しいんですか?」

大統領「おお。出来んねやったら何ぼでも毟り取って来い。」

ナバル「そう決まったら早速アールスハイドとの詰めの作業に入りますわ!ホナ、失礼しまっせ!」

大統領「おう、しっかりやれよ。」

 

 ナバルはそう言って、大統領の部屋から退室する。

 ナバルは、興奮していた。

 

ナバル(アールスハイドなんちゅう大国相手に利権を取る!あかん、元商人の血が騒いでならんわ!くはははは!)

 

 ナバルはそう思い、準備を始める。

 一方、エルスの大統領は。

 

大統領(アールスハイド国王陛下と………あの人には悪いが………。これも国家の繁栄の為や………堪忍したってや………。ふ…ふふ………大丈夫………大丈夫………やろうか………?もし、あの人が怒らしたらと思うと………震えが止まらんけどな………。)

 

 大統領は、あの人を恐れている様だが、その人物とは………。

 その後、ユウト達は魔法学院に来て、シンからネックレスを受け取る。

 

マリア「何コレ?ネックレス………は分かるけど、こっちは?」

ユーリ「見慣れない形ねぇ………。さっぱりだわぁ。」

ユウト(まさか。)

 

 ユウトは、シンが開発した無線通信機を見て、全てを悟った。

 シンが、携帯を作り出した事を。

 

シン「皆揃ったな?じゃあそれぞれ一セットずつ受け取ってくれる?新作の魔道具なんだ。」

リン「へえ………異物排除………。」

アリス「これ着けれてば、風邪引かないの!?凄いじゃん!」

コハル「そうだな。」

トニー「(異物排除………。)っ!シン!コレもう1個貰え………いや!売ってくれないかい!?だってこれ着けてれば安心して……。」

シン「おい!絶対違う目的で使う気だろトニー!!つーかそれに気付くの早えよ!!」

シシリー「…………。」

 

 トニーは、避妊具として使える事を思いつき、シンに迫る。

 シシリーは顔を赤く染め、マリアはシシリーに気づく。

 

マリア「(ん?何でシシリーが赤くなって………?異物………で、トニーがそんなに喜ぶ………って!)ああ!!シン!!まさかその目的で!?サイテー!サイッテー!!」

シン「ああホラ!!マリアまで気付いちゃった!!」

トニー「あはははは!」

 

 シンがそんな不埒な目的で作ったと誤解した女性陣は、シンをゴミを見る目で見た。

 一方、ユウト達は。

 

ユウト「何の話だ?」

タクヤ(…………コイツ、そんな事にすら気づかねぇのかよ!?)

コハル(末期だな………。)

 

 ユウトは、避妊具としての用途に気づかなかった。

 シンが無線通信機の説明をする中、オリビアが口を開く。

 

オリビア「あの………。」

シン「ん?」

オリビア「ユウトさん達には………その無線通信機は渡さないんですか?」

ユウト「大丈夫だよ。俺らには、これがある。」

 

 ユウトとタクヤとコハルは、そう言って、ライズフォンを取り出す。

 

マーク「何すか、それ?」

トール「魔道具ですかね………?」

ユウト「滅、言っちゃっても良いよな?」

滅「ああ。シンが無線通信機を開発した以上、黙っている必要はない。」

タクヤ「これはな、ライズフォンだ。」

コハル「簡単に言えば、シンの無線通信機みたいな物だ。」

オーグ「…………レイトが作ったのか?」

ユウト「ああ。」

オーグ「それなら、納得だな。」

 

 オーグは、ライズフォンをレイトが作ったと知ると、納得した。

 雷は、オーグに質問をする。

 

雷「そういやよ、三国会談の件はどうなったんだよ?」

オーグ「そうだったな。………日程が決まった。」

シン「マジか!」

ユウト「場所は何処なんだ?」

オーグ「場所はスイード王国。今回唯一、魔人の襲撃による被害を出した国で、魔人討伐についての会談を行う事になった。お前達には護衛も兼ねてスイードまで同行して貰う。第三国での会談は、エルス、イース共に譲らない最低条件だったが、スイードなら反撃の狼煙を上げる場所としては最適だろう。」

迅「確かにね。」

シン「それで………会談は何時?」

オーグ「1週間後だ。ゲートで移動出来れば良かったが、今回は公式な外交会談だ。国力を見せる意味でも、大掛かりな馬車での移動となるだろう。移動時間を考えて、3〜4日後の出発になる。各々しっかりと準備を頼むぞ。」

 

 そうして、三国会談へと動き出そうとする。

 一方、イース神聖国に居るフラー大司教は。

 

フラー「グフッ、グフフ………良いぞ!実に良い展開だ!まさか教皇がこんな好都合な仕事を任せて下さるとは………。これで近い内に必ず………!」

 

 フラーは、何かを企んでいた。

 すると、ドアがノックされる。

 

フラー「む?(こんな時間に神子の女か?丁度良い。)ああ、ちょっと待て。フン、何だやっぱりその気になって………。」

 

 ドアを開けると立っていたのは、神子ではなく、ゼストとローレンスとダンテだった。

 

ゼスト「やあこんばんは。イース神聖国大司教、アメン=フラー殿。」

フラー「なっ………誰………!!」

 

 フラーは、突然現れたゼストに口を塞がれた。

 

フラー(何だ此奴等………!!警備は何をして………っ!!)

 

 フラーが警備を探すが、警備は他の魔人に殺害されていた。

 

ゼスト「安心して良い。今殺す気はない。」

 

 ゼストは、そう言ってフラーに魔力を流し込んだ。

 

ゼスト「お前は大事な生贄だからな。」

 

 ゼストは、邪悪な笑みを浮かべていた。

 魔人達も、準備を進めていた。




今回はここまでです。
ユウトのヒロインになりそうなキャラ、イネスが登場。
イースとエルスの同盟の話で、シャイニングアサルトホッパーが登場します。
これまで、ユウトにはヒロインが居ないと言っていましたが、やっぱり、必要かと思い、出しました。
サウザーに関しては、エルスとイースの同盟の件で、アンケートを締め切りたいと思います。
エルスとイースの同盟の話は、2話構成になります。
今日のリバイスも、一輝の家族の記憶が完全に失われてしまう。
どうなっていくんでしょうね。


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第15話 三国会談

 三日後、ユウト達は、スイード王国に到着した。

 大勢の馬車が到着し、アルティメット・マジシャンズとユウト達が降りた。

 すると、周囲から黄色い歓声が。

 

人「キャアアーーーー!!アウグスト様ーーー!!」

人「魔王様ステキーー!!」

人「聖女様!!こっち向いてくれーーー!!」

人「ようこそ!アルティメット・マジシャンズ!!」

 

 その黄色い歓声は凄まじく、アルティメット・マジシャンズとユウト達は。

 

マリア「凄い歓迎っぷり…………。」

タクヤ「すげぇな。」

トニー「魔人を撃退したのは、ついこの前の話だもんねえ。」

シン「ま………魔王の二つ名が既に広まってる…………!」

ユウト「諦めろ。」

コハル「残りの2ヶ国の代表は来てないのか?」

オーグ「夕方頃には到着するはずだ。会談は明日早朝から始まる。」

トール「何としても、主導権を握れると良いのですが………。」

ユリウス「そうで御座るな。」

シン「オーグもそうだけど………。やたらアールスハイドが主導権を握る事に拘るな………。」

オーグ「………実際の所、主導権など何処が握っても良いんだ。結果として問題が解決するならな。しかし、こと魔人に関してはそうはいかん。実際に魔人の脅威を身を以て理解している立場でなければ、正しい判断を下す事は出来ん。犠牲が出てからでは遅いんだ。」

イズ「そうですね。」

 

 オーグのその言葉に、全員が納得する。

 

シン「………成る程、たしかにそうだな。」

オーグ「円滑に話が進めば良いが、時折耳にする世間の”魔人軽視”の風潮を考えても………簡単にはいかんだろうな。」

ユウト「エルスとイースの代表がマシな人だったら良いんだけど。」

エドガー「ようこそおいで下さいました。スイード王国軍指揮官のエドガー=フランネルです。宿泊施設の迎賓館まで御案内致します。」

 

 そして夕方、イースとエルスの代表が到着した。

 ちなみに、レックスは、イネスの世話を見る為に、アールスハイドに残っている。

 そして遂に、三国会談当日。

 

シン「頼んだぞオーグ。」

ユウト「しっかりな。」

オーグ「ああ。」

ユーリ「会議は別の場所で行うのよねぇ?私達はこっちで待機?」

迅「そうでしょ。」

アリス「あっちにもいっぱい警護の人達がいるだろうからね。」

滅「多数で行っても、邪魔になるだけだ。」

オーグ「…………。」

 

 ユーリ、迅、アリス、滅がそう話す中、オーグは黙っていた。

 それを見たトールは、オーグに話しかける。

 

トール「落ち着いてますね、殿下。」

オーグ「そうか?」

ユリウス「殿下は昔から緊張しないタチで御座る。」

トール「尊敬しますよ、そう言うトコ。」

オーグ「らしくないぞトール。昔のお前だったら『もっと緊張感を持て』とか言ってるトコだろ。」

トール「成長しましたから。殿下も、自分も。頼りにしてますよ。」

オーグ「ああ。行って来る。」

ユウト「頼んだぜ。」

雷「何事も起こらないと良いんだけどな。」

亡「そうですね。」

 

 そう言って、彼は会談へ向かった。

 会議室には、三つの大国の代表が揃った。

 エルス自由商業連合国代表、ウサマ=ナバル。

 イース神聖国代表、アメン=フラー。

 アールスハイド王国代表、アウグスト=フォン=アールスハイド。

 

オーグ「エルス、イース共に遠方までよく来てくれた。国を代表して礼を言う。」

ウサマ「お初にお目に掛かりますアウグスト殿下。エルスで外交を担当させてもろてますウサマ=ナバルと申します。どうぞよろしゅう。」

 

 ウサマは、密かに奇妙な笑みを見せた。

 それを見たオーグは、訝しげな表情を浮かべる。

 

オーグ「(イヤな笑みだな………。)アウグスト=フォン=アールスハイドだ。こちらこそ宜しく頼む。(自分の欲を隠す気がまるでない。そう言うタイプだ。)」

フラー「初めまして、私はアメン=フラー。創神教総本山において大司教の地位についております。」

オーグ「………(総神教の聖職者は清貧を美徳とし、自らを厳しく律する事で有名だが………。)」

 

 オーグは、フラーの事を見る。

 フラーは、オーグに尋ねる。

 

フラー「ん?どうかしたかね?」

オーグ「(大司教の地位を利用し、私腹を肥す生臭坊主………と言った所か。)………いや、宜しく頼む。(世界の危機に対する会議に………どう見ても自らの出世や利益を目的とする者達を送り込んで来るとは………。魔人の脅威を知らぬ2ヶ国の危機感のなさが見て取れるな。)」

 

 彼はこの2人の心を完全に読み取った。

 出世や利益を目的としている事が。

 オーグは、ウサマに話しかける。

 

オーグ「………魔人が出現してから各街道にも魔物が増えた。エルスは流通にも影響しているのではないか?」

ウサマ「そうですなあ、どうないしても護衛の数を増やさなあきませんよって、コストが増えたのが痛いですなあ。」

オーグ「イースではどうだ?何か影響は?」

フラー「………フム、不安がって教会に救いを求めて来る信者は増えておりますな………。」

 

 オーグがそう聞く中、フラーは密かに不気味な笑みを浮かべた。

 それを見たオーグは、首をかしげる。

 

オーグ「………?………さて、我が国が貴国らに声を掛けた件だが、担当直入に言おう。旧帝国領を支配し、遂には周辺国にまで進出して来た魔人達からの各国の防衛………。そしてこれから旧帝国領へと侵攻する為に同盟を結びたい。」

 

 2人はこの言葉を聞いて黙り込んでる。

 すると、ウサマが口を開く。

 

ウサマ「タダで………と言う訳にはいきまへんなあ。」

オーグ「何?」

ウサマ「エルスは商業国家でっせ?そんな損しか産まん利がない事に参加する理由がおまへんなあ。」

オーグ「利がない………か。」

ウサマ「そうでっしゃろ?よしんば魔人を討伐出来たとして、それに掛かった軍事費用は誰が負担してくれますの?魔人に賠償請求でもせぇと、そう仰るんですか?」

 

 ウサマの言う事は、全くの正論だった。

 オーグは、その言葉に頷く。

 

オーグ「…………たしかに賠償金を請求する先はないな。」

ウサマ「それともアールスハイド王国が負担を?」

オーグ「一国の軍事費用をか?まさか。そんな事が出来るはずもない。」

ウサマ「そりゃ困りましたな。しかし、そもそもこの話はそちらが持ち掛けて来た話ですやろ?それに………聞きましたで?ホンマやったら魔人程度アールスハイドのみで対処出来る問題らしいやないですか?」

オーグ(攻め所は調べ尽くして来たつもりなのだろうが………。まさかここまで認識が甘いとは………。)

 

 オーグがそう考えている中、ウサマは話し続ける。

 

ウサマ「実際アールスハイドだけで事に当たるには、負担が大きいからウチやイースに声を掛けたんですやろ?そしたらウチが損をせんような話を持って来てくれんとねえ………。話になりませんわ。」

オーグ「………具体的には何が望みだ?」

ウサマ「確か………アールスハイドとその周辺国の間では、遠距離通信が出来る魔道具があるらしいですね。その無償提供でどないです?………ああ勿論、こちらの希望する数を揃えて貰いますよって。」

オーグ「…………イースは?まさか、そちらにもこの世界の危機に何か要求があるのか?」

ウサマ「…………。」

 

 オーグは、ウサマへの返事はひとまず置いておき、フラーに尋ねる。

 尋ねられたフラーは、笑う。

 

フラー「はっはっはっ!私共は創神教の聖職者ですよ?要求などあるはずもない!エルスのような強欲の要求など全く………ね。」

ウサマ「何やと!?」

フラー「世界の危機に自国の利を優先するとは………考えられませんな。」

ウサマ「…………!!」

 

 フラーの言葉に、ウサマは苛立ちの表情を浮かべる。

 そんな中、オーグは尋ねる。

 

オーグ「ではイースは、この同盟に参加してくれると?」

フラー「そうですなあ………。参加するのは吝かではありませんが…………。」

 

 この言葉でオーグは、フラーが言いたい事を理解した。

 何か、要求がある事を。

 

オーグ「(やはりか。)望みは?」

フラー「いえ、先程も伝えましたでしょう?信者に不安が広がっていると。この状況を何とかしたいのですよ。」

オーグ「…………つまり?」

フラー「聖女。」

オーグ(っ!?)

 

 聖女、つまりシシリーの要求である。

 オーグは、その言葉に耳を疑った。

 

オーグ「聞き間違いか?今………何と?」

フラー「今アールスハイドには”聖女”と讃えられる少女が居るらしいですな。噂によると治癒魔法に優れ、大変美しいとか………。その少女をこちらに引き渡して頂きたい。イース神聖国にて、民の不安を取り除く象徴となって貰いたいのですよ。」

ウサマ(何が民の象徴や。自分の欲の為ですと、顔に書いてあるわ。この化け狸が………。)

オーグ(自分でも驚きだ………。親友の幸福を奪おうとする輩に、ここまで怒りを覚えるとは…………!)

 

 彼の心の中は怒りに満ち溢れてる。

 ウサマは、フラーの目論見を見抜いていた。

 

フラー「どうしたのかね殿下?お答えを。」

 

オーグ「エルスとイース、双方の要求なのだが………。」

 

 彼が出した答えは…………。

 

オーグ「両方共、呑む事は出来ない。」

 

 要求の拒否だった。

 それに、ウサマが反応する。

 

ウサマ「……………と言う事は何ですか?ウチらに無償で戦争に参加しろと、そう仰るんですか?」

オーグ「…………。」

フラー「やれやれ、何も分かっておらん。世界の民の不安を取り除く為の提案であると言うのに………。」

ウサマ「やはり、お若い殿下ではこう言う高度な交渉は出来ませんか!!ガッカリですわ!!」

フラー「全くだ!!まるで話にならん!!」

 

 ウサマとフラーがそう言葉を荒げる中、オーグは黙り込んでいた。

 

オーグ「…………。」

ウサマ「意地を張ったって交渉は進まんのですよ殿下!!」

フラー「今からでも代表者を替わられては如何か!?もう少し融通の利く者にな!!」

ウサマ「そや!何なら………!?」

フラー「っ!?」

 

 ウサマとフラーが好き放題に言う中、突然の気配に、二人は驚く。

 その気配の発生源は。

 

オーグ「何も分かっていないのは、お前らの方だろう!?」

 

 オーグだった。

 彼の異常な威圧感に、ウサマとフラーが恐怖心を覚えた。

 

フラー(ぐぬ………何だこの威圧感………!!たかだか16やそこらの若造がここまでの………!)

ウサマ(忘れとったわ………!王太子であると同時に、アルティメット・マジシャンズとか言う魔法師団集のトップに近い実力者やったな………!!こりゃアカン………ウチの大統領以上の迫力やわ…………!!)

 

 ウサマとフラーは、オーグを舐めていた事を後悔する。

 オーグは、ため息を吐きながら語る。

 

オーグ「エルスに利がない?その程度の認識で、よくもまあ代表としてこの場に来られたものだな。」

ウサマ「な………何やて!?」

 

 オーグは、ウサマにそう言うと、ウサマは怒る。

 だが、オーグはそれを無視して、今度はフラーに話しかける。

 

オーグ「それからフラー大司教。何故聖女を引き渡さねばならない?」

フラー「だ………だから、民の不安を取り除く為と………。」

オーグ「聖女と呼ばれているとは言え、聖職者になる為の修行を行っていない者をか?」

フラー「っ!?」

オーグ「それにアルティメット・マジシャンズの聖女と言えば、戦場では魔人を倒す力を持ちながらも、傷付いた者を無償で治すと言う評判だったはずだ。それ故に民衆の人気は高く、その存在自体が皆の希望になっている。わざわざイースに引き渡さなければならない理由など何もあるまい。」

フラー「………!!」

オーグ「聖女を戦場から離脱させる事は、逆に民衆の不安を煽る事になると思うがな。違うか?」

フラー(………魔人を………倒す程の実力者………だと………!?まさかそれ程の………!?)

 

 フラーは、オーグの言葉に驚く。

 そう、フラーは、シシリーが治療に特化していて、戦闘は出来ないと思っていたのだ。

 フラーが驚く中、オーグが尋ねる。

 

オーグ「それとも………何か他の目的が?」

フラー「そ………そんな事は!」

ウサマ「おやぁ?大司教ともあろう御方が、まさか御自身の為の邪な欲求だったんですかいな?」

フラー「黙れ!!この守銭奴が!!」

ウサマ「何やと!?この生臭坊主!!」

フラー「何だと!?」

ウサマ「何や!?」

 

 言い争う2人に対し、オーグの怒りが爆発した。

 

オーグ「いい加減にしろ!!」

 

 オーグは、机を強く叩いて言い争いを制止させた。

 

オーグ「エルスもイースも一体何を考えている?今我々が行っているのは、世界の危機を共に協力して乗り越える為の会議だと理解しているのか?」

ウサマ「そうは仰いますけどね殿下。先程も言ったように、ホンマやったらアールスハイドだけで対処出来る問題を何故ウチらまで………。」

オーグ「はあ………。それすら分からんのか………。」

ウサマ「な………何ですのん?」

オーグ「まず訊くが、一体何の根拠があって魔人の対処が我が国だけで出来ると考えている?」

ウサマ「………そ、そりゃ………他国からの情報で…………。」

オーグ「市井に流れる噂を何の根拠もなく信じ込んでいるのか?一度スイードに掛け合って被害の規模を確認してみるといい。犠牲者の数もな。それにもう一つ………。これは混乱を避ける為、他には出ていない情報だが、クルトの防衛戦において、我々は自分達の実力を上回る魔人達と遭遇している。それも複数のな。」

 

 その言葉に、二人は驚く。

 それは、アールスハイドだけでは、対処できない事を意味しているからだ。

 

フラー「………!?」

ウサマ「ホ………ホンマかいな………!?」

オーグ「状況は既に変わってきているのだ。貴国らの協力なしに魔人を包囲する事は、既に叶わんと言っても過言ではない。」

ウサマ「だ………だったら、さっさと精鋭部隊組んで攻め込んだったら………。」

 

 ウサマはそう言うが、オーグは口を開く。

 

オーグ「仮にそうしたとして、我々が帝国領に攻め込んでいる間に、奴らが対応する事なく他国へ散開したら?個人で国を滅せるような者達が世界へ散ったら一体どうなる?情けない話だが、今現在、奴らが帝国内に身を潜めていてくれる事は、我々にとって救いである事に他ならないのだ。………話を戻すが、それでも何とか貴殿らの言うように、我々アールスハイドのみで魔人を滅ぼしたとしよう。周辺国は我が国に多大な感謝をしてくれるだろうな。………しかしその時に、この人類の危機に何もしようとしなかった2つの大国にはどんな評価が下ると思う?」

 

 オーグのその言葉に、ウサマとフラーは、ハッとする。

 オーグの言いたい事が分かったのだ。

 

ウサマ「はっ!(そう言う事か………!!宗教国家であるイースも同様やが………商業を主流とするエルスは民衆の評判に大きく左右される………!アールスハイドがそれだけ巨大な功績を立てれば………何もしなかった2つの大国が失う信用はあまりにもデカい………!!)」

 

 ウサマがそう考える中、オーグは言う。

 

オーグ「今回のこの会議は、エルスとイースに『お願い』している訳ではない。世界のパワーバランスを保つ為、終戦後の功績を二国にも分けましょうと言う『利益共有の提案』だ。それを、こうまで欲に濁った思考で応対されるとは………。正直失望した。勿論貴殿らにではない。そんな人間を代表として送り込んだ、エルスとイースと言う2つの国に………だ。」

 

 オーグの言葉に、2人は黙り込んだ。

 そう、アールスハイドだけが魔人を倒したら、自分達の国の信頼が無くなってしまうからだ。

 

オーグ「そもそもナバル外交官。貴殿の言う通信機は個人が発明したもので、国に所有権はない。各国がきちんとその個人から購入し、通信料を払っているのだ。それをエルスにだけ無料で提供してみろ。他国の反感を買うのは目に見えるだろう。」

ウサマ(その通り………や。信用第一のウチが………信用を失う訳には………!)

 

 ウサマは、そう思っていた。

 信用を失う事は、商売で成り立つエルスにとって、致命的なのだ。

 ウサマが考え込む中、オーグはフラーに尋ねる。

 

オーグ「それからフラー大司教。聖女には現在婚約者が居る事は御存知か?」

フラー「それは………勿論、知ってはいる………が。」

ウサマ「魔王シン=ウォルフォード………でっしゃろ?仲睦まじい事でも有名やがな。」

オーグ「魔人を苦もなく討伐し、”魔法使いの王”とまで呼ばれる男の婚約者相手によくもそんな要求を………。全くもって貴殿の勇気には感服する。」

ウサマ「そんな仲を引き裂くようなマネ、ウチにはよう出来ませんわ。恨まれて何かされても良いって言う愚かモンなら別やけどな……。」

 

 オーグの言葉に、ウサマは頷く。

 シシリーに手を出す事は、シンを敵に回す事になるのだ。

 

オーグ「脅しにしか聞こえんかも知れんが、貴国の為の思って忠告する。アイツの怒りを買って地図上から『イース神聖国』を消したくなければ………聖女には手を出すな。」

 

 オーグのこの言葉で、フラーが密かに怒りを覚える。

 オーグは、ため息を吐きながら、立ち上がる。

 

オーグ「………何にせよ、こんな状態ではこれ以上の会談は無理だな。明日また改めよう。ナバル外交官、フラー大司教、私は何も無償で協力しろとは言っていない。この騒動が収まった後、どんな利があるのか考えてみるんだな。」

 

 オーグはそう言って、会議室から退室する。

 

ウサマ「………ホナ、私も失礼しまっさ。」

 

 ウサマも、そう言って退室する。

 会議室には、フラーのみが残る。

 すると、フラーは呟く。

 

フラー「生意気な小童に………強欲な商人風情が………この大司教に何と言う口を………!!」

オーグ『聖女には婚約者が………。』

フラー「一魔法使い如きが、私に栄えるなどと本気で思っているのか………!?くっふっふっ………見ているがいい………!私は………欲したモノは必ず手に入れてみせるからな………!!」

 

 そう言うフラーから、とてつもない黒いオーラが溢れ出た。

 それを見ていたアズは。

 

アズ「悪意が伝染したね♪」

 

 そう呟く。

 一方オーグは、シン達の元へ戻った。

 

シン「お?もう帰って来たぞ。オーグの奴。」

ユウト「結果はどうだ?」

オーグ「ああ、残念ながらエルスもイースも自分達の要求を呑ませようとして来たからな。」

タクヤ「やっぱりか。」

コハル「それで、会談は中止か?」

オーグ「いや、一旦落ち着いて明日また改める事になった。」

シン「オーグ、要求って?」

オーグ「その事で話がある。シン、クロード、それとユウト、タクヤ、コハル、迅、滅、雷、亡も少し良いか?」

「「「「「「「「「?」」」」」」」」」

 

 オーグは、ユウト達を呼ぶ。

 離れた場所で、オーグが会談での事を話した。

 

シン「聖女を………差し出せ………!?」

ユウト「聖女って確か、シシリーの事だよな?」

オーグ「ああ。」

タクヤ「おいおい………!それ、冗談か何かだろ?」

オーグ「冗談ではない。事実だ。」

コハル「どうやら、とんでもない事になってきたようだな。」

 

 聖女、つまりシシリーを差し出せと言う言葉を聞いて、シンが怒りを覚える。

 それを見たオーグが、声をかける。

 

オーグ「落ち着け。心配しなくても、その要求は突っぱねた。」

シン「当たり前だろ!!何考えてんだそいつは!?創神教ってのはそんな事する奴らなのか!?」

オーグ「誤解するな。そんな要求は勿論、そいつの個人の欲の為だけだ。大方、世渡りが上手いだけでのし上がった人間なんだろう。」

迅「創神教も、何でそんな奴を放っておいたんだろ?」

滅「恐らく、大司教という理由で、あまり追求出来ないんだろう。」

オーグ「エルスの代表は、私の話にある程度納得していたようだが、イースの代表は相当頭にきていた様子だった………。自分の思い通りにいかない事が許せないのだろう。」

シン「………何が言いたいんだ?」

 

 シンは、苛立ちながらもオーグに問う。

 

オーグ「クロードがここに居る事は当然承知しているはず。聖女を手にいれる為に強硬手段に出る可能性があると言う事だ。」

雷「つまり、奴は何処からどんな手段でシシリーを奪いに来るか分からねぇって事だな?」

オーグ「そうだ。」

亡「聖女を手に入れる為に、手段は選ばないという事ですね。」

オーグ「シン。クロードから目を離すな。言いたい事はそれだけだ。ユウト達も、もしクロードがシンと離れたらお前達がクロードに付いて行ってやれ。」

ユウト「分かった。」

 

 ユウトが代表して頷くと、オーグは去っていく。

 シンがシシリーを抱き寄せる中、ユウトは考え込んでいた。

 

ユウト(………もしかしたら、魔人やアークが関与しているのか?………まさかな。でも、使うかもしれないな。)

 

 ユウトはそう考えながら、懐を見る。

 そこには、アサルトグリップが。

 そう、ここに向かう前に、レックスから渡されたのだ。




今回はここまでです。
エルスとイースの同盟の話は、3話構成に変更します。
その為、次回の最後の方で、シャイニングアサルトホッパーを出す予定です。
本家ゼロワンで、シャイニングアサルトホッパーが出た時と同じような終わり方にします。
これまで出たオリキャラのイメージCVとしては、ユウトが斉藤壮馬、タクヤが石川界人、コハルが沼倉愛美、レックスが小野大輔、イネスが花守ゆみりです。
この小説の1型のオリジナル形態として、サイクロンロッキングホッパーというのを考えています。
ゼツメライズキーの形状は、シャイニングアサルトホッパーと同じです。
アサルトグリップはそのままで、シャイニングホッパーの部分が、ロッキングホッパーのカラーになっている感じです。
感想、リクエスト、絶賛受け付けています。


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第16話 大司教の暴走

今回は、シャイニングアサルトホッパーの変身までです。


 ユウト達が対策を練っている間、フラーはというと。

 

聖徒「お呼びですか?フラー大司教様。」

フラー「………よく来てくれた。お前達を有能な創神教信者と見込んで頼みがある。”聖女”を”魔王”の手から救い出して貰いたいのだ。」

 

 彼は、シシリーを奪おうと企み始めた。

 

フラー「聖女を魔王の手から、救い出して貰いたいのだ。」

聖徒「救い出す………?聖女とは、アールスハイドの聖女様の事ですか?」

フラー「信頼に於けるお前達にだから話すが、先程の会談でアウグスト殿下に相談された事があってな。魔王の事は知っているか?」

聖徒「は、はい。噂位は………。」

フラー「その魔王だが実は、強力な力と権力を使って、アールスハイドの王宮を乗っ取ってしまったらしいのだ。」

聖徒「ま、魔王が………王宮を………!?」

聖徒「まさか………!?」

聖徒「ほ………本当なのですか………!?」

 

 勿論、これは嘘話である。

 しかしフラーは信者達に信じ込ませる為嘘を言った。

 

フラー「ああ、その上聖女も無理矢理婚約者にさせられてしまったと言われていた。嫌がる聖女は、毎晩辱めを受けているのだとか……。」

聖徒「っ!?」

聖徒「お………おのれ鬼畜め………!!」

 

 聖徒達は、そんな風に誤解をする。

 この信者達の中に、ダンテとアベルが居た。

 

ダンテ「笑う所か?」

アベル「ローレンスが居たら、多分吹いてる。」

ダンテ「自分に都合の良い嘘が、よくもまあつらつら出るものだ。」

アベル「それだけゼスト様の魔力操作が効いていると言う事だ。」

 

 ダンテとアベルがそう話す中、フラーは聖徒達にお願いする。

 

フラー「魔王から王国を奪取する為の協力も要請されたら………。それより何より、まずは救国の象徴たる”聖女”様を救って欲しいとアウグスト殿下は言われた。力を貸してくれるか?」

聖徒「も………勿論です!」

フラー「都合の良い事に、聖女も今回の使節団に参加されておる。勿論魔王も帯同はしているが、危険を伴うが、早急に対処したい。」

聖徒「我々にお任せを!!必ずや聖女様を救い出してみせます!!」

フラー「頼んだぞ、勇敢なる神徒達よ。」

聖徒「はっ!ではすぐに、作戦会議に取り掛かります!!」

 

 神徒達が出て行くタイミングを見て、アベルとダンテも出て行く。

 

フラー「グフッ、グフフフ………これで………聖女が………我が手に………ふひっ、ふひひひ………何が魔王だ………!魔王は正義の名を騙る悪党………!そうに違いない………!(多少の強硬手段に出ようが………悪党の手から聖女を救い出したとなれば、誰も咎めはしない。聖女も喜んでその身を差し出すだろう。)ひひひひひひ………!」

 

 そう笑うフラーの後ろに。

 

ゼスト「上々な出来じゃないか。己の欲望に忠実な者は実に操りやすい。」

ローレンス「我々じゃ、まだここまでは出来ませんよ。ゼスト様の洗脳が優秀なんでしょう。」

 

 そう、フラーはゼストの魔力操作で洗脳されているのだった。

 

リオネル「洗脳か、俺はまた此奴を魔人化させて、ウォルフォードに嗾けるモンかと思ってたぜ。」

ローレンス「それじゃ結局、『魔人化した大司教を、ウォルフォードが討伐しました』で済まされちまう。今回のキモは、いかに俺らの存在を表に出さないかだ。」

ゼスト「第一の目的は、ウォルフォードの評判を地に落とす事。その為には此奴は自らの意思で動いている事にしておかねばならん。『フラー大司教は哀れな犠牲者』。『イースに非はなく、ウォルフォードのみが批判を受ける状況』…………それが目指す所だ。(まあ、飽く迄理想は………だがな。)」

ローレンス「さっきの連中は洗脳しとかなくて良いんですか?」

ゼスト「あまり不自然な状況になるのは避けたいからな。それに元より、あの連中の働きになど期待はしていない。」

 

 彼らが部屋から出た。

 

フラー「……………。」

 

 彼から、異様なオーラが溢れ出た。

 それも、悪意の。

 一方、ユウト達は、迎賓館にて作戦会議をしていたが、シンはシシリーを離さないようにしてる。

 

マリア「…………ゴメン、えーと………あれは放置………?で良いのかしら………?」

アリス「し………正直こっちが恥ずかしいんだけど………。」

滅「放っておけ。」

迅「まあ、無理もないからね。」

ユウト「それよりオーグ、話をしてくれ。」

オーグ「ああ。今から今後の対策を練ろう。幾ら何でもこの迎賓館を襲撃するなどと言うバカな事はしないと思うが………。様子からしても絶対ないと言えん。」

マリア「この大事な会談の交換条件に、個人的な欲望を押し出して来るような奴ですからね。」

アリス「よっぽどシシリー………”聖女”に固執してる証拠だよね。」

タクヤ「そのフラーって奴、どんだけやばい奴なんだよ。」

コハル「何かやらかす前にどうにかしなければ、大事になるだろうな。」

 

 タクヤ達がそう話す中、オーグがポツリと呟く。

 

オーグ「………敢えて警備の手を緩める………か。」

オリビア「?」

イズ「どういう意味でしょうか?」

オーグ「警備を強化して、襲撃を起こさない事は可能だが………そうなると今後も何かに付けて”聖女”を付け狙って来るかも知れん。危険の芽は早めに摘んでしまった方が良い。そんな人間には、表舞台から早々に退場して頂こう。」

トール「い………何時になく過激ですね殿下……。」

オーグ「あくまでそんな人間ならだ。何もないならそれが一番良い。」

雷「そうだな。そんな奴は、表舞台から退場した方が良いだろうな。」

 

 オーグの過激な発言に、トールが引く中、オーグと雷はそう言う。

 そんな中、ユーリとトニーが不安げな声を出す。

 

ユーリ「ただそれだとぉ………。」

トニー「うん。」

ユーリ「シシリーが囮になるって事よねぇ。」

亡「そうなりますね。」

シシリー「私なら全然平気ですよ。シン君や皆さんを信じてますから、例え何が起きたとしても、私が不安になる要素は何もないです。それに………この御守りがあれば、どんな事が起きても大丈夫だって思えるんです。」

シン「シシリー…………。」

 

 シシリーの言葉に、シンは微笑む。

 すると、マリアとアリスが反応する。

 

マリア「何よぉ、シシリーのペンダントにだけ特別な付与でもしてある訳?」

シン「そうだな、シシリーのだけには、皆のには無い付与がしてあるよ。」

マリア「え!?何それズル〜〜い!!」

アリス「私にも同じ付与してよシン君!!」

ユウト「で?何を付与したんだ?」

 

 ユウトの質問に、シンが答える。

 

シン「愛情………かな?」

 

 それを聞いた途端、全員がシーンとする。

 シンは、自分が自爆した事に気付き、恥ずかしそうに言う。

 

シン「い………今のはなかった事に………。言うんじゃなかった………。」

マリア「聞くんじゃなかった………。」

アリス「やらかしたねシン君。」

リン「今までで一番盛大にやらかした。」

タクヤ「盛大な自爆だな。」

コハル「バカな奴だ。」

イズ「シン=ウォルフォード様の体温が上がっています。」

オーグ「くく………よ………よし………では………警備にあたるスイード王国軍には………つ………通達しておく………く………くく………き………基本的に我々に対する護衛は不要………と………くく………くっくっ………!」

シン「笑うか話すかどっちかにしろ!」

ユウト「やれやれ。」

 

 シンの自爆発言に、オーグが笑いながらそう言って、シンが叫び、ユウトは呆れる。

 夜、各自で警備にあたる。

 無線通信機、ライズフォンで連絡を取り合う。

 ちなみに、亡が無線通信機とライズフォンで連絡が取れるように調整した。

 ユウトは、シンと共に周囲に警戒していた。

 

ユウト「何処から来る………?」

シン「…………。」

ユウト「シン、気持ちは分かるが、少しは落ち着け。」

シン「分かってるよ。」

 

 そんな風に話していた。

 一方、見回りをしていたオリビアは。

 

オリビア「もう真夜中か………。シシリーさん寝ちゃったかな………っ!」

 

 オリビアは、索敵魔法で何かを感知した。

 

オリビア「索敵に複数の反応!!方向は………裏門から東へ約20メートル地点………!!塀を乗り越えて中へ………!!」

 

 オリビアは無線通信機を取り出して、全員に連絡する。

 

オリビア「侵入者です!!」

シン「マジで来やがった………!!待ち構えておいて何だが………何考えてやがんだ………!!」

ユウト「来たか。」

 

 そんな中、オーグは全員に呼びかける。

 

オーグ「こちらアウグスト!無線機のチャンネルをクロードに合わせろ!我々の警戒に気付かれないように現場に近付き過ぎるなよ!」

マリア(今捕らえても罪状は不法侵入程度………。)

アリス(目的と黒幕をはっきりさせなきゃ意味がない………!!)

シン(索敵魔法と部屋に置いた無線機が拾う物音で………大凡その動きの予想は付く!!)

 

 一方、イース聖徒達が侵入していた。

 

聖徒「この先の部屋だ。」

聖徒「時間が時間だ。流石にお休みになられているはず。」

聖徒「いやに警備が薄くないか?王族が宿泊しているのに………。」

聖徒「薄くもなるだろ。中に居るのは魔人にも勝る鬼のアルティメット・マジシャンズとその筆頭、シン=ウォルフォードだぞ。こんな事情じゃなきゃ、誰が侵入なんて目論むかよ。」

聖徒「お咎めの覚悟とは言え、下手すりゃ死罪だよな。」

聖徒「それでも大司教の言葉が事実であれば、見過ごす訳にはいかん。神聖なるイースの聖徒としてな!」

 

 しばらく進み。

 

聖徒「待て、ここだ。」

 

 部屋を覗くと、ぐっすり眠ってるシシリーを発見した。

 

聖徒達(う………美しい………!!)

 

 聖徒達は、シシリーの寝顔を見て見惚れていた。

 

聖徒「おっと、見惚れてる場合か。睡眠香を使うぞ。」

聖徒「手荒な真似は避けたい。」

聖徒「聖女様には悪いが、より深い眠りに落ちて貰おう。」

 

 窓を少し開けて睡眠香を投げると、シシリーの部屋に睡眠香の煙が蔓延した。

 

聖徒「………よし、もう充分だろう。行け!!」

 

 聖徒達がシシリーを攫うために部屋に入ると、驚きの光景が。

 

シン「こんな夜更けに窓から侵入か?何処の不埒者だ?」

ユウト「お前ら、何考えてんだよ。」

 

 そこに、シンとユウトの2人が、シンのゲートを通って現れたのだ。

 

聖徒「なっ!!何だ此奴らは………!?」

聖徒「バカな!!何時の間に現れた!?」

聖徒「周囲には全く気配は………!!」

ユウト「俺たちが、お前らの侵入に気づかないわけないだろ。」

聖徒「くっ!お前らは此奴らを押さえろ!!俺は眠っている聖女様を!!」

シン「シシリー、もういいよ。」

 

 シンがそう言う。

 するとシシリーがひょこっと起きた。

 

聖徒達「!?」

 

 聖徒達は、睡眠香が効いていない事に驚く。

 

聖徒「バ………バカな!睡眠香が効いて………いない………!?」

シシリー「すみませんけど、私先日から、毒………効かないんです!」

 

 ペンダントに付与してある解毒の効果のお陰である。

 それを聞いて、更に驚く。

 

聖徒「………!?どうするんだよ!?と言うかひょっとして此奴………魔王なんじゃ!?」

聖徒「無理だ!退避するぞ!!」

ユウト「逃げられると思ってんのか?」

 

 聖徒達は、すぐに逃げようとする。

 だが、周囲に複数のゲートが現れ、そこからアルティメット・マジシャンズとタクヤ、コハル、滅亡迅雷が現れた。

 

オーグ「さあ、尋問を始めようか。」

聖徒達(お………終わった………!!)

 

 オーグのその声と共に、尋問が開始される。

 聖徒達は、終わったと思った。

 

オーグ「お前達は何処の者だ?何故クロードを狙った?」

聖徒「(身分は明かせん………。理由はどうであれ、こんな事を画策したのがイースの者だと知れれば………我々の立場は………!だが………もし大司教様の言葉通りなら………。)ア………ア………アウグスト殿下………わ………私………我々は………。」

 

 聖徒は、この状況をどのように切り抜けるのか、頭を働かせる。

 考えた末に出した答えが。

 

聖徒「あなたと………アールスハイドの為にここに来ました………。我々は味方で御座います………。」

ユウト「はあ?味方だと?」

イズ「何を言っているのですか?」

滅「ああ…………ッ!?」

 

 滅は何かに気付き、アタッシュアローで何かを防ぐ。

 それは、聖徒に紛れ込んだアベルの剣だった。

 

聖徒「ひぃっ!?」

滅「貴様、何しようとした。」

アベル「裏切り者は死ぬ。だが、お前に邪魔された。」

ユウト「口封じか………。」

コハル「お前、大丈夫か!?」

聖徒「あ………ありがとうございます………。」

タクヤ「てめぇ、何者だ!」

アベル「我々はイース神聖国の者である!!大人しく”聖女”を渡すつもりがなければ、此方も手段は問わん!!」

「「「!?」」」

 

 アベルの言葉に驚くシン、オーグ、ユウト。

 するとその聖徒が魔力を集め始めた。

 

シン「全員構えろ!一帯を吹き飛ばす威力だぞ!!」

 

 その声と共に、アルティメット・マジシャンズは、魔力障壁を展開する。

 一方、ユウト達は。

 

聖徒達「ひいっ!!」

滅「証言者を消させる訳にはいかん!来い!」

聖徒達「わあっ!!」

ユウト「くっ!!」

 

 ユウト達は、すぐにシン達の近くに聖徒達を引き寄せ、爆発に備える。

 爆発が起こるが、全員無事だった。

 

イズ「全員無事です。」

オーグ「警戒しろ!!狙いはクロードだぞ!!」

シン「(くっそ………!!とっさの事だからガードするのが精一杯で………。)シシリー!!何処だ!?」

シシリー「ここですシン君!!」

シン「ほっ………良かった、シシリー!手を掴め!!一度ゲートで他の場所に………。」

 

 シンは、シシリーへと手を伸ばす。

 だがシシリーの後ろにダンテが現れ、シシリーを連れ攫って屋根の上へ。

 

シン「!!」

ユウト「いつの間に!?」

アベル「今日から此奴はイースの人間だ。”聖女”としてか愛人としてかは知らないがな。」

オーグ「挑発に乗るなよシン!!トール!スイード王国軍に要警戒を伝えろ!!」

トール「はっ!!」

オーグ「ただし不用意に手を出させるな!!恐らく向こうも精鋭だ!!」

 

 オーグが指示を出す中、アベルとダンテがシシリーと共に姿を消した。

 全員が追おうとする中、タクヤとコハルが気配を感じる。

 

タクヤ「別の魔人か!?」

コハル「行くぞ!」

タクヤ「ああ!」

 

 2人は、動き出す。

 同じ頃スイード王国軍は。

 

エドガー「アウグスト殿下より伝令!!イースの手の者と思われる数名が迎賓館を襲撃!!聖女殿を攫って逃走中の事だ!!」

騎士「聖女………シシリー様を!?」

騎士「何のつもりだイースは!?」

騎士「シシリー様にはこの国を救っていただいた御恩がある!!」

騎士「必ず我々の手で賊を捕まえて………!!っ!?」

 

 目の前に2人の聖徒が現れ、騎士達を斬ろうとしたが。

 

タクヤ「おらぁ!」

コハル「無理をするな!」

 

 真上からタクヤとコハルが現れる。

 その2人が、ショットライザーで銃撃して、カインを牽制する。

 

カイン「あぁん?(こいつら………仮面ライダーか!?)」

タクヤ「どうやら、只者じゃなさそうだな。」

コハル「油断するな。」

 

 すると、騎士を倒していたサイクスが現れる。

 

サイクス「………つー事で、プランは『B』に変更。イースに罪を着せた上でウォルフォードの暴走を狙う。」

エドガー「な・・・何者だお前ら………!?」

カイン「神聖なるフラー大司教の遣い………イースの聖徒!」

サイクス「よく口に出来るなそんな台詞。」

カイン「言っててヘドが出そうだ。」

タクヤ「お前らの相手は、俺たちだ!」

コハル「覚悟しろ!対象を捕獲する!」

 

 タクヤとコハルは、アサルトウルフとライトニングホーネットのプログライズキーを取り出す。

 

ASSAULT BULLET!

THUNDER!

 

タクヤ「フン!うううう………!うおおおおおお!!」

 

 タクヤはそう叫び、アサルトウルフプログライズキーを無理矢理こじ開ける。

 二人はそれぞれのキーを、ショットライザーに装填する。

 

オーバーライズ!

オーソライズ!

Kamen Rider...Kamen Rider...

Kamen Rider...Kamen Rider...

 

 タクヤはショットライザーをバックルから外して、魔人に向ける。

 2人は、叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

『『ショットライズ!』』

 

 その声と共に、2人はトリガーを引く。

 すると、弾丸が1発ずつ発射され、摩訶不思議な軌道を描きながら、タクヤから発射された弾丸は狼へと変わり、タクヤに向かっていく。

 タクヤがその弾丸を潰し、コハルに着弾して、2人は変身する。

 

レディーゴー!アサルトウルフ!

"No chance of surviving."

ライトニングホーネット!

"Piercing needle with incredible force."

 

 タクヤはバルカン・アサルトウルフに、コハルはバルキリー・ライトニングホーネットへと変身する。

 

タクヤ「お前らの相手は、俺たちだ!」

コハル「行くぞ!」

カイン「良いだろう、来い!!」

 

 そう叫び、両者がぶつかり合う。

 シン達は、シシリーを連れ戻しに走る。

 無線通信機とライズフォンで連絡を取り合うが。

 

マリア「こちらマリア!現在、王都北東方面探索中、索敵に反応なし!!」

リン「同じく反応なし!」

マーク「反応ないッス!」

ユウト「すまん!完全に見失った!」

シン「こっちも反応なしだ………くそっ!!」

 

 全員が捜索するが、シシリーは見つからない。

 一方オーグは、イース使節団の宿泊施設に居た。

 

司教「フラー様?………そう言えば、夕方頃からお姿を見ておりませんね。」

オーグ「(やはり場所を変えた後か………。まあ当然だろうな。襲撃者が『自分はイースの人間だ』と名乗っておいて、本拠地に戻っていたんじゃマヌケ過ぎる。何にせよ、この時点で国際問題決定だ。)………シンか、こちらアウグスト。やはりこっちも蛻の殻だ。スイード側には、街から一切人を出さんよう徹底させている。だが、日が昇れば、それも難しくなるだろう。今晩中に必ずクロードを取り戻さねばならん。」

 

 オーグがそう言う中、シンは怒気が篭った声で言う。

 

シン「……………今晩中、シシリーに何もないと言う保証は………!?」

オーグ「気休めを言っても始まらん。保証はない。やるべきは一刻も早く見付け出す事だけだ。」

シン「シシリー………!!」

ユウト「シン!」

シン「ユウト………!」

ユウト「まだ近くに居るかも知れない。隈なく探すぞ!」

シン「あぁ!」

 

 シンとユウトは2人がかりで、シシリーの居場所を探す。

 ちなみに、ユウトがシンと一緒に居るのは、理由がある。

 オーグ曰く、シンはシシリーに危害が及ぼうとしていると、冷静さを欠く。

 ユウトはストッパーになれ、と言われたからだ。

 一方、とある古い教会では。

 

ダンテ「入れ。」

 

 攫われたシシリーが2人の聖徒と入る。

 

シシリー(教会………随分古い………。後ろ手に縛られているせいで………隙を見てゲートを発動するのも恐らく難しい………。)

 

 シシリーがそう考える中、2階のある部屋に連れ込まれる。

 

アベル「ここだ。」

 

 扉を開けると、そこに誰か居た。

 

フラー「ようこそ聖女殿。おおこれは、噂に違わず美しい。」

シシリー「っ!!」

 

 大司教のフラーだった。

 フラーは、シシリーに近づきながら言う。

 

フラー「聞くがいい聖女殿。其方を助けてに来てやったぞ。さあ、私と共に………イースへ行こうではないか。」

シシリー「お断りします!あなたが今している事は………国家間の関係を………最悪なものにする行為ですよ………!」

フラー「…………ふぅ、余程”魔王”に強く躾けられているのだな………。なぁに………魔王の事なら心配いらん。私は大司教だ。魔法使いの1匹や2匹何も口は出させんよ。」

シシリー(この人………さっきから一体何の話を………。)

 

 シシリーは、フラーの話に疑問を抱きながら、密かに異空間収納から無線通信機を出して起動する。

 

フラー「っ!何をしている!?」

 

 だが、シシリーの行動に気づいたフラーに肩を掴まれ、無線通信機を落とした。

 

シシリー(いけない………!!)

フラー「ん?何だ…………?これは。初めて見るな………。」

シシリー(そうか………。あれが通信機だと分かるのは私達だけ………。チャンネルを1つ回して通信するのが精一杯だった………。最初のチャンネル………シン君に繋がっているはず………!気付いて下さい………シン君………!!)

 

 シシリーは、シンに繋がるように祈っていた。

 一方、シンとユウトは、シシリーの捜索を行なっていた。

 

ユウト「アイツら、どこ行った!?」

 

 するとシンの無線通信機に通信が。

 

シン「………!?(通信中………!?何時の間に………誰が………?まさか………!?)シシ………!」

ユウト「待て!」

シン「え?」

 

 シシリーからの通信だと分かったシンは、叫ぼうとするが、ユウトに静止される。

 

ユウト(その着信、まさかシシリーか?)

シン(あぁ、多分そのはずだ。通信がシシリーからとして………敵は誰も通信機の存在を知らないはず………。もし敵がシシリーの近くに居たとしても、上手く使えば………。)

ユウト(なら気付かれないような合図を出せ。そうすれば騙せる。)

シン(合図………そうか!)

 

 ユウトのアドバイスを聞いたシンは、指で無線通信機を軽く叩く。

 一方、古い教会では、シシリーから奪った通信機から、シンの合図が聞こえる。

 

フラー「む………?何やら音が………。」

シシリー(!!)

フラー「異国のおもちゃか何かか。ふん。」

 

 おもちゃと判断したフラーは、無線通信機を投げた。

 

フラー「聖女と言えど、やはりまだ子供だな。」

シシリー(シン君・・・!!)

 

 合図がシンのだと理解したシシリーが、フラーに問う。

 

シシリー「フラー………大司教、ここは………何処なんですか?」

フラー「場所など知ってどうするのかね?まあいい………。ここは………古くて既に使われておらん教会だよ。事前に手を回して買い取ってある。ぐふふ、大声で出そうと誰も来んぞ。諦めたまえ。」

 

 フラーは、そんな笑みを浮かべながらシシリーに近づく。

 シンとユウトに筒抜けだと、知らずに。

 

ユウト(でかした!)

シン(ナイスだ、シシリー!!)

 

 それを聞いたシンは、即座にチャンネルを切り替えた。

 

シン「オーグ!!」

オーグ「シン!どうした!?」

シン「大至急スイードに掛け合って調べて貰ってくれ!!王都の中に最近買い取られた古い教会!!そこにシシリーは居る!!」

 

 一方、古い教会の外では。

 

ダンテ「この後は?大司教任せか?」

アベル「あれなら”聖女”に手を出すのも時間の問題だろう………。だが、ウォルフォードの暴走を狙うならもう少し時間を稼ぎたい。」

ダンテ「…………万が一奴が予想より早く現れたら?」

アベル「勿論止める。俺達でな。」

ダンテ「魔人の力を使わずにか?自殺行為だな。」

アベル「しかし、ここが重要な局面だ。」

ダンテ「私達でクロードを始末して、奴に死体を見せ付けられれば話が早いんだがな。」

アベル「確かに奴が怒りで暴走する可能性は高いが、怒りの矛先が何処へ向くか分からん。魔人化しようがしまいが………奴の怒りはイースへ向く方が我々にとっても都合が良い。」

 

 すると茂みからリオネルが出た。

 

リオネル「隊長からのお達しだ。こっちをフォローしてやれってな。」

 

 一方、タクヤとコハルは、カインとサイクスと交戦していた。

 

タクヤ「ハアッ!」

コハル「フッ!」

 

 タクヤは、腕のAWガントレットから銃撃を行い、コハルは、身体中に空いている蜂の巣状のウェポンベイから蜂型ミサイル、ベクスペスパを打ち出す。

 カインとサイクスは、それを躱していた。

 

カイン「くっ!」

サイクス「うおっ!」

 

 だが、ショットライザーからの銃撃を受けてしまう。

 

カイン「お前達、中々やるじゃないか。」

タクヤ「甘く見るな。」

コハル「行くぞ!」

 

 2人が、カインとサイクスに向かおうとした瞬間、真上からマリアが現れた。

 

タクヤ「マリア!?」

コハル「いつの間に!?」

 

 更にユーリがステッキを振ってサイクスに魔法を飛ばす。

 

サイクス「くっ!」

 

 サイクスはそれを魔力障壁で防いだ。

 

マリア「何それ新作?」

ユーリ「そうよぉ!振るだけでお手軽魔法ステッキ〜!」

タクヤ「お前達、来たのか?」

マリア「ゴメンユーリ、タクヤ、コハル。私既にキレてるから巻き添えに気を付けてね。」

ユーリ「大丈夫よぉ。私も結構怒ってるからぁ〜〜〜。」

コハル「分かった、行くぞ!」

マリア「ボコボコにして、シシリーの居場所を吐かせてやる!」

タクヤ「行くぞ!」

 

 4人は、カインとサイクスに向かっていく。

 一方、シンとユウトに、オーグが連絡を入れる。

 

オーグ『シン!!』

シン「どうだ!?」

オーグ『王都南西部の街外れにある教会が最近何者かに買収されている!記録にある限り、該当箇所はそこだけだ!これから私も………!』

 

 シンは、オーグの言葉を最後まで聞かずに、連絡を切る。

 

シン「ユウト!行くぞ!」

ユウト「ああ!」

 

 2人は、急いで南西部にある古い教会へ向かった。

 その古い教会の中では、リオネルが座っていたが、そこにシンとユウトが来る。

 リオネルは、すぐに立ち塞がる。

 

リオネル「ここは通さん。進むなら殺す。」

シン「退け!」

ユウト「退いてもらおうか!」

 

 2人のパンチとキックが、リオネルの腹に命中する。

 すると、ダンテが現れ、シンを拘束する。

 ユウトの前に、アベルが現れる。

 

ユウト「新手か。」

 

 ユウトは、アタッシュカリバーを展開して、アベルと戦う。

 

リオネル「フンッ!!」

 

 剛力パンチがシンに命中したが、戦闘服の防御付与で防がれた。

 

ダンテ(やはり物理防御が働く内は………!)

 

 一方、ユウトは、周囲の柱を使って、アベルにヒット&アウェイの戦法を取る。

 

アベル(こいつ………!………っ!?)

 

 アベルがユウトの戦法に翻弄される中、ユウトのキックが、アベルの顎と鳩尾に命中する。

 だが、何とかアベルは体勢を立て直す。

 そしてシンは、ダンテの腹部に肘打ちして怯ませ、振り返ってダンテの顔にキックした。

 

ダンテ「ガハッ!!」

 

 アベルは、ユウトに押され気味になっていた。

 

リオネル「ウオオオォォォォ!!!!」

 

 後ろからリオネルが襲うが、シンが振り返って右パンチで顔に強く大打撃を与えた。

 

リオネル「ぐっ………む………!」

 

 怯んでる隙に、ユウトがボレーキックをリオネルに叩き込む。

 

シン「もう止めとけ。じっとしてりゃ後で治してやる。」

ユウト「邪魔すんな。」

ダンテ(人間相手だからか、致命傷を避けた攻撃ばかり………。つまりまるで本気を出していないと言う事………。)

アベル「(やはり魔人の力を抑えて戦える相手じゃない………流石の実力だ………。)………2階奥の部屋だ………。行け!」

 

 ユウトとシンは、アベルの言葉を聞いて、2階の奥の部屋へと向かう。

 到着すると、シシリーがフラーに陵辱されそうとしていた。

 

ユウト「大丈夫か!?」

フラー「ちっ、何だ良い所で………。」

シン「………お前………何を………。」

シシリー「シン君!!ユウト君!!」

 

 シシリーは走って、シンに飛び込む。

 

ユウト「よっと!」

 

 ユウトは、シシリーを縛ってるロープをアタッシュカリバーで斬る。

 フラーは、侵入者がシンだと気づくと、邪悪な笑みを浮かべながら言う。

 

フラー「お前が”魔王”か………!ぐふふ………!聖女を誑かす悪の王が………一体何をしにここへ来た………!?知ってるぞぉ………ひひ、お前がアールスハイドを乗っ取り………剰え………聖女を我が物にし、好きにしている事もなぁ………!!」

 

 一方、教会の1階にオーグが到着していた。

 

オーグ(シン………ユウト………クロード………!!)

 

 一方、教会の外では。

 

ゼスト「さて、どう転ぶか………。」

 

 ゼストとローレンスが、事の運びを見ていた。

 2階では、ユウトが困惑していた。

 

 

シン「何を………言ってんだ………?お前………?」

ユウト「アールスハイドを乗っ取る?何言ってんだお前。」

フラー「私は大司教だぞ………全てお見通しだ………!皆が見ぬフリをしようとも………貴様の犯して来た数々の悪行………私が断罪してやる!!!王国を………聖女を………世界を貴様などに渡してなるものか………!!それを守護するのは私の使命なのだ………!!貴様では聖女を幸福には出来ぬ!!力に任せて世を脅かす悪魔め!貴様の様な存在を!!私は絶対に許さんぞ!!」

ユウト(何言ってんだ!?………ていうか、シンが爆発寸前じゃねぇか!)

 

 怒りが頂点に達したシンが魔力を解放した。

 オーグが駆け付け、ユウトが止めに行ったその時、シシリーがフラーに近づき、フラーの頬を平手打ちした。

 

シン「っ!?」

ユウト「シシリー………。」

 

 シシリーの顔には、涙が溢れて、フラーに向かって叫ぶ。

 

シシリー「いい加減にして下さい………何を勝手な事を!シン君が悪魔!?巫山戯ないで!!シン君程の周りの皆の安全を!幸せをこの世界の平穏を願っている人は居ないのに!!私の大切な人を!愛する人を!それ以上悪く言わないで!!」

 

 彼女の強い言葉で、シンの目に涙が出た。

 

シン「……………!!」

ユウト「よく言った。」

 

 シシリーがそう言った後、シンに抱きつく。

 それを、ホッとしながらユウトが見ていると、オーグがフラーに話しかける。

 

オーグ「フラー大司教、貴殿がどの様な経緯を持ってこんな行動に及んだ事は存じ上げないが、今のこの2人を見てまだなお………その仲を引き裂く勇気がおありか?」

 

 フラーはそれを聞いて尚、黙り込んでいた。

 すると、フラーの周囲に赤黒いオーラが現れる。

 

フラー「…………認めぬ。」

ユウト「ん?」

フラー「そんな事………絶対に認めんぞおおおおおお!!」

ユウト「アレは………レイドライザー!?」

 

 そう叫びながら立ち上がるフラーの腰には、レイドライザーが装着されていた。

 そして、プログライズキーを取り出す。

 

THROW!

 

ユウト「何だ、あのプログライズキーは!?」

 

 ユウトが驚愕する中、フラーはレイドライザーにスローイングクロウプログライズキーを装填し、レイドローダーを押し込む。

 

レイドライズ!

スローイングクロウ!

”Those black wings attack ordinary things.”

 

 フラーは、スローイングクロウレイダーになった。

 

シン「アレは………!?」

シシリー「一体………!?」

オーグ「マギアか!?」

ユウト「………見た事のないプログライズキーを使った、レイダー………!?」

 

 ユウトは驚いていた。

 ユウトの記憶のゼロワンでは、あんなプログライズキーを使ったレイダーは存在しないのだ。

 

フラー「魔王め………!私から聖女を奪おうとするなど………許サンゾオオオオオ!!」

ユウト「離脱するぞ!」

 

 レイドライザーの機能で、悪意が暴走しているフラーは、背中から翼を生やして、無数の爆弾羽を飛ばす。

 教会が崩壊するが、ユウト達は、間一髪で脱出する。

 一方、タクヤ達と交戦していたカインとダンテは。

 

カイン「これは?」

ダンテ「この気配は………あの時と同じか。」

カイン「時間切れの様だな。じゃあな。」

 

 そう言って、2人が撤退した。

 

マリア「待ちなさい!!」

 

 すると、目の前にゲートが現れて、そこからユウト達が出てくる。

 

タクヤ「ユウト!?」

コハル「どうやら、無事にシシリーを奪還出来たようだな。」

ユウト「ああ。だけど、面倒臭いことになった。」

イズ「どうしたのですか?」

 

 そこに、スローイングクロウレイダーとなったフラーが現れる。

 

コハル「アレは………!?」

タクヤ「レイダーだと!?」

オーグ「レイダー?」

マリア「マギアじゃないの?」

迅「皆〜!」

ユウト「迅!」

 

 そこに、滅亡迅雷と残りのアルティメット・マジシャンズが現れる。

 

雷「アイツ、何者なんだよ?」

ユウト「フラー大司教だ。」

迅「えっ!?」

滅「何?」

亡「それに、あのプログライズキーは………?」

 

 滅亡迅雷が驚く中、フラーは呻く。

 

フラー「シン=ウォルフォード………!貴様を殺し、聖女を私の物に………!」

コハル「レイドライザーの影響で、フラー大司教の悪意が暴走しているのか!?」

ユウト「俺がやる。」

 

 そう言って、ユウトはゼロワンドライバーを腰に装着して、前に出る。

 

ユウト「もうやめろよ!」

フラー「邪魔だ!」

ユウト「…………なら、アンタを止める!」

 

 ユウトはそう言って、シャイニングホッパーとアサルトグリップを取り出す。

 

トール「あのグリップって………。」

トニー「タクヤが使ってるアサルトウルフに付いてるのと同じグリップだね。」

迅「使うみたいだね。」

滅「ああ。」

 

 皆が見守る中、ユウトはシャイニングホッパーにアサルトグリップを装填して、グリップのボタンを押す。

 

HYPER JUMP!

 

 ユウトは、シャイニングアサルトホッパーとなったプログライズキーを起動して、オーソライザーに翳す。

 

オーバーライズ!

 

 ユウトは、シャイニングアサルトホッパープログライズキーをキーモードにして、天に掲げる。

 すると、衛星ゼアと衛星アークから光がプログライズキーに向かって行き、そこから、シャイニングアサルトホッパーのライダモデルが現れる。

 ユウトは、構えて叫ぶ。

 

ユウト「変身!」

 

 ユウトは、そう言って、プログライズキーをゼロワンドライバーに装填する。

 

プログライズ!

Warning,warning. This is not a test!


『ハイブリッドライズ!

シャイニングアサルトホッパー!

"No chance of surviving this shot."

 

 飛電ゼロワンドライバーにシャイニングアサルトホッパープログライズキーを装填すると、シャイニングアサルトホッパーのライダモデルが、ユウトに光を照射して、ユウトがアンダーアーマー包まれる。

 その次に、ユウトの頭上にあったシャイニングアサルトホッパーのライダモデルが人型の外骨格に変形してから覆い被さる。

 これが、ゼロワン・シャイニングアサルトホッパーだ。

 

フラー「何………!?」

トニー「何か、シャイニングホッパーとアサルトウルフが組み合わさったみたいな見た目だね。」

滅「あれが、シャイニングアサルトホッパーだ。」

ユウト「お前を止められるのはただ1人!俺だ!!」

 

 ユウトは、そう言って、オーソライズバスターを取り出す。


 

オーソライズバスター!

アックスライズ!

 

 ユウトは、オーソライズバスターをアックスモードへと切り替える。

 

ユウト「ふっ!ハァァァァ!!」

 

 ユウトは、ジャンプしながらフラーへと向かっていく。




今回はここまでです。
オリジナルプログライズキー、スローイングクロウを使ったレイダー、スローイングクロウレイダーが登場!
クロウとは、カラスの事です。
こんなオリジナルプログライズキーを出して欲しいという意見がありましたら、是非、リクエストをお願いします。
次回で、エルスとイースの同盟の件は終わります。
今回でアンケートを締め切って、サウザーは最初から味方という形にしたいと思います。
どんな展開にして欲しいのか、リクエストを募集しています。


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第17話 輝ける強襲の跳躍

 ユウトは、シャイニングアサルトホッパーへと変身して、オーソライズバスターを持ちながら、フラーが変身するスローイングクロウレイダーへと向かう。

 ユウトは、フラーに何度かオーソライズバスターで攻撃する。

 フラーは反撃なのか、羽型の爆弾をユウトに向かって投げる。

 ユウトは、ライジングホッパープログライズキーを取り出し、オーソライズバスターに装填する。

 

JUMP!

"Progrise key confirmed. Ready for buster."

 

ユウト「ハアッ!」

 

バスターボンバー!

 

 バスターボンバーによって、羽型の爆弾は全て爆発する。

 ユウトとフラーは、睨み合う。

 

フラー「ヌオオオオオ!!」

ユウト「ウオオオオオ!!」

 

 2人は叫んで、攻撃し合う。

 ユウトは、フラーに向かって駆け出す。

 フラーは、ユウトに攻撃するが、すぐに躱され、ユウトはシャイニングホッパー以上の高速戦闘を繰り広げていた。

 それを見ていた一同は。

 

シン「すげぇ………!」

オーグ「次元が違いすぎる………!」

シシリー「はい………!」

マリア「何か、残像が映ってるじゃない……。」

タクヤ「あれが、シャイニングアサルトホッパーだ。」

トール「しかし、あんなに高速で動いていたら、シャイニングホッパー以上の負荷になりそうですが………。」

コハル「その点は心配ない。」

ユリウス「どういう事でござるか?」

迅「あれは、シャイニングホッパーとアサルトウルフ。二つの欠点を潰しあってるんだ。」

ユーリ「どういう事?」

 

 ユーリが首を傾げる中、滅が説明をする。

 

滅「シャイニングホッパーの欠点である、力の前借りは、アサルトウルフの機能でリアルタイムで出力の調整を行い、アサルトウルフの欠点である生命維持機能が一切ない事も、シャイニングホッパーで補っている。」

アリス「つまり、どういう事?」

リン「もっと詳しく。」

雷「要は、シャイニングホッパーとアサルトウルフの欠点を潰し合い、利点を最大限に活かしてるんだ。」

トニー「そんな事が………。」

オリビア「凄い………!」

亡「ただ、フラー大司教は、レイドライザーの影響で、悪意が暴走している。厄介なことをしなければ良いのだが………。」

 

 皆が驚く中、亡は、レイドライザーで悪意が暴走したフラーが、何をしでかすかを不安視していた。

 そんな中、ユウトはフラーに向かって、オーソライズバスターを投げる。

 ユウトはフラーに近づいて、オーソライズバスターで一閃しようとするが、フラーの羽爆弾がゼロ距離で爆発して、お互いが吹っ飛ばされる。

 

ユウト「グゥゥ………!フラー大司教!アンタは俺が止める!」

フラー「私は負けん!貴様と魔王を倒し、聖女を我が手に………!!」

 

 フラーはそう言うと、周囲に大量の羽根爆弾を発射する。

 その羽根爆弾が着弾した周囲の建物の外壁が崩れる。

 ユウトは、それを避けようとするが、その外壁の一部が、逃げ遅れた子供の上に落ちていく。

 

子供「うぇぇぇん!!」

ユウト「子供!?しまった!!」

イズ「ユウト様!」

 

 ユウトは、その子供を守ろうとして、崩れた外壁を吹っ飛ばす。

 

ユウト「早く逃げろ!」

子供「う、うん!」

 

 子供は、一目散に逃げ出す。

 だが、背後にフラーが現れる。

 

フラー「隙だらけだ!」

ユウト「なっ!?」

 

 フラーは、レイドローダーを押し込む。

 

スローイングポライド!

 

 フラーの必殺技が、ユウトの背中に命中して、ユウトは建物の壁に突っ込む。

 

シン「背後からの不意打ち!?」

マリア「卑怯よ!」

フラー「黙れ!そいつに止めを刺してやる!」

 

 フラーは、ユウトが埋まっている建物に向かって、大量の羽根爆弾を投げ、ユウトを生き埋めにする。

 

シシリー「ユウトさん!!」

オーグ「何!?」

フラー「そこのそいつは止めを刺した!後は貴様だ!魔王よ!!」

シン「クッ………!」

 

 シン達が身構える中、ヒューマギア達は、冷静だった。

 そう、ユウトが死んだ訳が無いのだ。

 イズが、ユウトに通信をしていた。

 ユウトは、衛星ゼアを介して、イズから情報を受け取っていた。

 

ユウト「これは………。」

イズ「ユウト様。シャインシステムの使用を提案します。これがあれば、逆転出来ます。」

ユウト「そうだったな………。」

イズ「ユウト様。絶対に、負けないでください。」

ユウト「ああ。シンの為にも、負けてはられないからな!」

イズ「それでこそです。」

 

 そう言って、ユウトとイズは、通信を終える。

 そして、ユウトは呟く。

 

ユウト「シャインシステム………起動!」

 

 ユウトがそう言うと、胸のオービタルユナイトが光りだし、周囲の瓦礫が吹っ飛び、シャインクリスタが、瓦礫を粉砕する。

 

フラー「何………!?」

シン「ユウト………!」

オーグ「無事な様だな。」

シシリー「そうですね!」

マリア「全く!ヒヤヒヤさせないでよね!」

 

 そう言う中、ユウトの周囲を展開していたシャインクリスタは、オービタルユナイトに格納される。

 それを見ていたフラーは。

 

フラー「何だ………それは!」

 

 フラーはそう叫びながら、翼を展開して、ユウトに向かっていく。

 

ユウト「フッ!」

 

 ユウトは、再びシャインクリスタを展開して、フラーが放ってくる羽型爆弾を迎撃して、フラーが直接攻撃を叩き込もうとした瞬間に、高速回転して、バリアとなる。

 フラーが、バリアに阻まれる中、ユウトはフラーを斬撃する。

 ユウトの攻撃が、フラーを空へと大きく飛ばして、ユウトはフラーを追う。

 フラーは、空中を飛びながらユウトに攻撃するが、ユウトは、シャインクリスタからのビーム攻撃や、キック、オーソライズバスターで攻撃をする。

 何回か攻撃すると、フラーは落ちていき、ユウトは追撃でキックをして、オーソライズバスターで地面に叩きつけ、そのまま斬撃をする。

 フラーは転がっていく。

 

フラー「聖女は………私の物だ………!アールスハイドを乗っ取っている魔王の物ではなく………!」

ユウト「何で、そんな事を言うんだよ!シンは、アールスハイドを牛耳ってない!」

フラー「愚かな魔王に味方をする者め!貴様に私は止められん!」

ユウト「…………いや。アンタの凶行は、ここで終わらせる!」

 

 ユウトはそう言って、シャイニングアサルトホッパーのボタンを押す。

 

アサルトチャージ!

 

 そして、シャイニングアサルトホッパープログライズキーを押し込む。

 

シャイニングストームインパクト!

 

 ユウトは、高速移動をして、フラーの背後に立ち、フラーを思いっきり蹴って、空中に飛ばす。

 

フラー「ぐっ………!」

ユウト「シャインシステム………起動!」

 

 ユウトは、再びシャインシステムを起動して、シャインクリスタがフラーの方に向かい、電磁フィールドを生成して、フラーを拘束する。

 ユウトは、大きくジャンプする。

 

ユウト「これで、フィニッシュだ!ハァァァァァ!!」

 

 そして、電磁フィールドで拘束されているフラーに向かって、キックをして、フラーを貫く。

 そして、そのまま地面に着地する。

 

シャイニングストームイ

          

          

          

          

 

フラー「グワァァァァ!!」

 

 フラーは爆発して、そのまま落ちてくる。

 レイダーとしての変身が解除され、ユウトの方に、スローイングクロウプログライズキーが落ちる。

 ユウトは、プログライズキーを拾い上げる。

 シン達が、ユウトの方に来る。

 ユウトは、変身解除する。

 

ユウト「オーグ。フラー大司教を頼む。気絶してる。」

オーグ「分かった。………腑に落ちない点は幾つかあるが………取り敢えず………落着だ。」

 

 こうして、フラー大司教は拘束され、フラーの暴走は終わったのだった。

 翌朝、オーグはイースの迎賓館前に来ていた。

 事態を説明する為だ。

 

オーグ「死者12名、負傷者26名。実行犯数名はフラー拘束後に逃走………現在も行方は追っているが、以前手掛かりはなし。迎賓館にて捕らえた侵入者数名は、フラーの私設兵だった事は確認済み。”聖女”誘拐に加え、これだけの被害を出した以上、本来ならば連合結成の候補国からの除外は勿論の事。国際問題として取り上げざるを得ない状況だが………今回の件は完全にフラー個人の目論みである上、今は世界連合結成の為の会合の最中、各国の情勢の為にもあまり事を荒立てたくはない。よって、スイードとも協議した結果、イースの無条件の協力と、代表の交代で今回の件を収めようと思うが、いかがか?」

 

 それを聞いたハミルや他のイースの人物は、唖然としていた。

 そんな、とんでもない事をフラーがしでかした事にだ。

 

ハミル「(大司教の立場であの男………何と言う事を………!)恥ずかしながら、まだ状況を飲み込めておりませんが………。仰られる事に間違いはないのでしょう。そのような取り計らいで収めていただけるのであれば…………これ以上の感謝は御座いません。代表の件ですが、今後は次席である私、ハミル=マキナが務めさせていただきます。宜しいでしょうか?」

オーグ「ああ。フラーは、怪物化したが、ユウト=イーウェルとの戦いに敗れ、現在は尋問しているが、こちらの質問に答えなくてな。」

ハミル「………はっ………フラー大司教の私設兵は有能ですが、まだ若い者達ばかり………。彼らからすれば、大司教は教皇同様、神にも等しい存在です。おそらくは、いいように情報を吹き込まれ利用されたのでしょう。若い信者達を扇動して、犯罪に加担させるなど………それだけで重罪です。」

オーグ「………侵入者達に少し話を聞きたいのだが。スイード出向の直前、急遽私設兵に加えられた数名の人間がいたらしいが、何か知らないか?」

ハミル「………推測ですが、”聖女”誘拐の為にフラーが呼び寄せた者達………と考えるのが妥当でしょう。真の実行犯は、恐らくその連中でしょう。ひょっとしたら他国の者なのか……。そこまで過激派の連中が紛れていたとは………。」

オーグ「何か分かれば報告を頼む。」

ハミル「はっ!この度の非礼は必ず改めて謝罪させていただきます。早朝から御足労いただき、ありがとうございました。」

 

 一方、アールスハイドの迎賓館にいるユウト達は、スローイングクロウプログライズキーについて、話し合っていた。

 

ユウト「なぁ、このスローイングクロウプログライズキーなんて、前世では聞いた事が無いんだけど。」

タクヤ「確かに。カラスのプログライズキーなんざ、無かったしな。」

コハル「これは、レイトが作った物なのか?」

イズ「はい。ゼアにも、スローイングクロウプログライズキーのデータがありました。」

迅「問題は…………。」

滅「何者が、このプログライズキーを手に入れたか、だな。」

雷「まあ、アークの可能性が高いな。」

亡「ええ。それに、レイドライザーの出自も気になります。」

ユウト「謎は多くなるばかりか………。」

 

 ユウト達は話すが、謎は解けるどころか、深まっていった。

 オーグとハミルは、会議室へと向かう。

 会議室には、ウサマが既にいた。

 それも、両目には凄い隈をつけた状態で。

 

オーグ「………早いなナバル外交官。」

ウサマ「っ!おはようございます殿下。………おや?そちらは?」

ハミル「フラーに代わって代表を務める事になりました、ハミル・マキナです。」

ウサマ「ん?何かあったんですか?」

ハミル「………ええ………まあ………少々………いや、大きな問題を起こしまして………。」

 

 そのハミルの言葉と、昨日のフラーの本性を悟っていたウサマは、全てを悟った。

 フラーが何かをやらかした事を。

 

ウサマ「(何となく察しは付くけどな………。)………まあエエですわ。では会議を始めましょうか?」

オーグ「ところでどうした?凄い隈だな。」

ウサマ「そらもう、一晩かけて戦後の利益について考えてきましたわ。」

ハミル「出会って早々に何ですが、利益の追求ばかりでは多方面に敵を作り、何れ身を滅ぼしますよ。そうなる前に行動を改めた方が宜しいのでは?」

ウサマ「ホンマに創神教の神子さんは皆同じ頃言いよんな………残念やけど、エルスは資本至上主義の国や。富こそが何よりの正義ですよって。」

 

 ハミルの言葉に、ウサマはそう返して、お互いが睨み合う。

 それを、呆れながら見ていたオーグは。

 

オーグ(代表が変わろうが、両国の仲の悪さは変わらず…………か。まあ、商業国と宗教国と言う性質を考えれば無理もない………が。)

 

 そう思っていた。

 そして、会談は再開した。

 

オーグ「……………これが、ここまでで確認出来ている旧帝国の現状だ。数十万居た帝国民達はほぼ全滅………現在存在するのは、無数の魔物と魔人達のみだ。………この際”魔人領”としておくか。」

ハミル「魔人領………。」

ウサマ「つまり、それらを駆逐出来たとすれば、残るのは支配者の居ない広大な土地………。」

オーグ「皮算用になるが………土地については周辺国へ均等に分配される事になっている。エルス・イースは飛び地になってしまうから………そこは了承してくれ。」

ハミル「…………。」

ウサマ「………しゃあないでんな。」

 

 オーグのその言葉に、ハミルとウサマは頷く。

 

オーグ「ここからが本題だ。土地が増えれば、当然そこで人間が生産行動を取る事になる。元々あった帝国の街がどうなっているか分からんが………。施設や設備等、相当な復興が必要となるだろう。まず、資材の調達、建設………それから復興に関しての事だが…………。」

 

 オーグはそこまで言うと、ウサマに目を向けて。

 

オーグ「その大部分を、エルスに一任する事で各国の了承を得ている。」

ウサマ(っ!そら、とんでもない大商いやがな…………!!)

オーグ「どうだ?十分エルスに利のある話だと思うが。」

 

 オーグは、そう言いながらニヤリと笑う。

 

ウサマ「勿論ですわ!そないな話、不意に出来る訳おまへん………!!是非頼みますわ!!」

オーグ「………さて、次にイースだが。旧帝国での創神教とはどう言うものだった?」

 

 オーグの質問に、ハミルは答える。

 

ハミル「………はっきり申し上げましょう。私達は彼らを、同じ創神教の教徒とは認めておりません。宗派は多々あれど、創神教の本質は、戒律を守り善行を積む事で、神の御下へ導かれると言うもの。所が彼らの教会は…………”我らは神の子。故に自信の行動を素直に報告し、教会に空すればその行動は全て赦される”などと………とんでもない事を教えておりました。」

ウサマ「………アホくさ。そんなんどんな悪事働いても、金払えば赦して貰えるって事やがな。まー、ある意味ウチと通じるモンもあるが………。」

オーグ「多額の寄付が必要だから、貧しい平民達には浸透しなかったらしいな。むしろ『創神教』の名を嫌う者達も多かったようだ。」

ハミル「そのせいで貴族達は、まるで自分達が神になったかのように勘違いし、神の子ではない平民には、何をしても良いと考えるようになってしまったのです。本当に………愚かな話です。」

 

 ハミルは、そんな風に話す中、ウサマはハミルに話しかける。

 

ウサマ「…………ま、図らずも、そちらの言う悪しき教会は魔人達が残らず粛清してくれた訳や。」

ハミル「………言い方をお考えなさい。犠牲になった罪のない人々も数多く居るのですよ。」

オーグ「願わくば新たな土地には、正しき教義の教会を築いて欲しい。帝国の濁り切った歴史を二度と繰り返さない為にもな。」

ハミル「畏まりました。教会が増えるのは我々にとっても喜ばしい事。これ以上の『利』は御座いません。」

オーグ「さて………仮定の話ばかりしてきたが、勿論それら全ては魔人領に蔓延る魔人や魔物を討伐した後の話。まずは各国魔人達の脅威に立ち向かう事に目を向けてくれ。」

ハミル「目前の困難から目を背ける事は教義にも反します。協力致しましょう。」

ウサマ「将来の利益の為や。今は身銭を切らせて貰いましょ。」

オーグ「宜しく頼む。」

 

 3人は共に握手を交わした。

 こうしてこの日、アールスハイドとその周辺国にエルス、イースが加えた、世界連合が発足した。

 一方、アールスハイドの迎賓館では。

 

シン「上手くやってるかな、オーグの奴………。」

ユウト「大丈夫だろ。」

迅「オーグならきっと、上手くやってるよ。」

滅「今の俺たちに出来ることは、信じて待つだけだ。」

タクヤ「だな。」

 

 そんな風に話す中、マリアはシシリーに質問をする。

 

マリア「………ねえシシリー。」

シシリー「ん?なぁにマリア?」

マリア「………痛かった?」

 

 マリアのそんな質問に、シシリーがお茶を吹いた。

 

シシリー「な………何の話してるのマリア!?だ………だからまだ………何もしてないってば!!」

マリア「うそ!だってあ………朝からベッドでキスしてたじゃん!!」

シシリー「そ、そ………それは………。」

マリア「ほらぁ!やっぱり!」

コハル「何の話だ?」

雷「なんか、シンがシシリーと一緒の部屋に居たんだと。」

亡「そうらしいですね。私たちが話し合っていた時ですね。」

イズ「という事は、シン様とシシリー様は、一線を越えたと?」

シシリー「越えてませんから!」

アリス「まあ、良いじゃん。シシリーは皆より先に大人………になれたんだし。」

シシリー「も…………もう!違うってば〜〜〜〜!!」

 

 そんな風になっている中、オリビアが口を開ける。

 

オリビア「マリアさん、アリスさん、シシリーさんは多分まだ経験されてないですよ。」

シシリー「オリビアさん………!」

アリス「え〜?」

マリア「何でそんな事分かんのよオリビア。」

オリビア「だってシシリーさん、朝から普通に歩いてるじゃないですか。」

「「「「…………どゆこと?」」」」

 

 オリビアのその発言に、ユウト、タクヤ、マリア、アリスが首を傾げる。

 

オリビア「え?だって初めての時ってホラ、真面に歩けないじゃ………ない………です………か?」

コハル「オリビア。それは、盛大な自爆だ。」

アリス「それ、オリビアってもう経験済みって事!?」

マリア「何よぉ!大人しい顔してちゃんと進んでんじゃん!!」

オリビア「ええ!?いや!あの!し………しまったぁ!」

 

 オリビアが、そんな風に自爆した事に気づいて顔を赤くする中、シシリーが詰め寄る。

 

シシリー「そ………そうなんですか!?オリビアさん!」

オリビア「ひええっ!何ですかシシリーさん!?」

迅「何でシシリーまで食い付くんだ?」

滅「さぁな?」

シシリー「やっぱり初めての時は………で………手順は………から………?それから………は………し………下着とかは………。」

オリビア「ちょ………ストップ!落ち着いてシシリーさん!ここでそんな事言えないです!」

シシリー「あ………す、すみません私ったら………。」

オリビア「くすっ。シシリーさん、本当にウォルフォード君の事が好きなんですね。」

シシリー「はぅ…………。」

ユーリ「照れなくなって良いわよぉ。好きな人とそう言う関係になりたいって思うのは自然な事だよ。」

((この女は間違いないな………。))

 

 アリスとマリアは、ユーリを見ながら、何かを思う。

 

リン「……………。」

 

 この話に興味ないリンは、アイマスクで爆睡中。

 そんな中、オーグが戻ってくる。

 

ユウト「会談の結果は?」

イズ「上手く行きましたか?」

オーグ「ああ、エルスもイースも加盟を決めてくれたぞ。正式な調印はまた後日になるがな。」

シン「おお!マジか!凄え!」

雷「そうだな。」

シシリー「おめでとうございます殿下!!」

亡「ところで、オーグ。その方は?」

オーグ「イース使節団の次席であるマキナ司教だ。」

 

 オーグがそう紹介すると、マキナは突然土下座をしだす。

 

ハミル「この度は………誠に申し訳御座いませんでした!!」

タクヤ「いきなり土下座!?」

ハミル「我が国の愚か者が………魔王様と聖女様に対し、とてつもない非礼を働いてしまいました!!赦される事では御座いませんが、平に………平に御容赦を!!」

 

 ハミルがそう言う中、マリアは。

 

マリア「あのポーズ、前にシンもやってたけど………何なの?」

ユリウス「土下座を知らんで御座るか?」 

 

 マリアは、土下座を知らなかった。

 オーグも、シンとシシリーに謝る。

 

オーグ「その件に関しては、私も2人に謝らねばならん。クロードを囮にする策を提案したの他でもない、私だからな。」

シシリー「私なら全然きにしてません。昨日も言ったように………皆さんを信じて受け入れたのは私ですし。」

シン「………シシリー自身がこう言ってるし………実際俺達はそこまでの被害を受けた訳じゃないですから。謝罪であれば、犠牲が出てしまったスイード側にすべきだと思います。」

ハミル「はっ………!それは承知しております………!しかし元はと言えば、あの様な者を放置していた我々の責任………!!神子としては最低の男ですが………資金運用を得意とし、イースの財務を大部分掌握していたので………手も出せず………。」

ユウト「そういう事だったのか。」

シン「………まあ、俺達からしても、本当なら創神教の方と揉めたくないですからね。アールスハイド大聖堂での挙式も予定している訳だし………。」

ハミル「………では、せめてもの謝罪の証として………魔王様と聖女様の御婚礼は、我が国の教皇猊下に執り行って頂けるよう取り計らいましょう。」

 

 ハミルのその言葉に。

 

「「「「き………き………教皇猊下ぁ〜〜〜〜〜〜!?」」」」

 

 そんな風に、シシリー、マリア、アリス、ユリウスが驚く。

 一方、シンは。

 

シン「え?何?教皇?…………が執り行うって………それ凄い事なの?」

「「当たり前だ!!!」」

 

 そんな事を宣ったのだから、マリアとアリスにそう突っ込まれる。

 その後、彼らは迎賓館から出た。

 

マリア「後は、連合締結のお祝いの晩餐会に出席して終わりよね?スイード側の被害を考慮して控えめにはするみたいだけど………。」

トニー「もう明日には帰国かぁ。」

ユリウス「早々に済んだのも、全て殿下の手腕のお陰で御座る。」

マリア「あれ?殿下とシンは?」

アリス「ユウト君や滅達も居ないね。」

トニー「先行っててくれってさ。」

タクヤ「ユウトは遅れて来て、滅達は、先にアールスハイドに戻ったぞ。」

コハル「スローイングクロウプログライズキーについても、もう少し調べたいとの事だ。」

イズ「私たちは、先に向かいましょう。」

 

 そんな風に話していた。

 一方、ユウト、シン、オーグは、遅れて出発していた。

 

シン「わざわざ遅れて出発して………大事な話でもあるのか?」

オーグ「………フラーの行動が、あまりに腑に落ちなくてな。”聖女”に近付く機会だったとは言え、国と国との会談の真っ最中にあんな事を仕出かすか?仮に”聖女”を国に連れて帰れたとして、その後の弁解はどうするつもりだったんだ?」

シン「確かに………俺に対して行ってた言葉も相当意味不明だったな………。」

ユウト「フラーの悪意が暴走したのは、レイドライザーの影響かもしれないな。」

オーグ「祖国での行動は確かに、目に余るものだったようだが………それでも一応は大司教としての振る舞いをしてきた訳だろう。所が今回、奴が目論んだのは完全な犯罪行為だ。表沙汰になれば、奴だって立場所の話ではなくなるはず。」

ユウト「じゃあ、アイツに何があったんだよ?」

オーグ「あぁ。人が唐突に変わる………何か思い出さないか?」

シン「カートの時か………!」

 

 オーグのその言葉に、シンはカートの事を思い出す。

 ユウトが口を開く。

 

ユウト「カートって、確か、ベローサマギアになって、俺が倒した奴だよな。」

オーグ「フラーに関しては、レイダーという存在になった。確証はないが………もし、これが魔人共やアークの仕業だったとしたら………。」

シン「(奴らの魔の手は………俺達が思ってる以上に、近くまで伸びて来ている………。)俺が気になった事と言えば、シシリーを直接攫った連中だな。」

オーグ「やはりか。」

シン「一聖職者が呼び集めたにしては、あまりにレベルが高かった。あの身のこなし………魔法の精度………魔人を相手している様だった。」

ユウト「とにかく、アークや魔人の動きには警戒しないとな。アークはともかく、連中の狙いは、シンだろうな。………もしかしたら、シンを魔人化させて、暴走させるのが狙いだったりしてな………。」

オーグ「何!?」

ユウト「あくまで仮定だ。推測の域を出ない。(それに………シンが魔人、もしくはアークにでもなったりでもしたら、手がつけられないからな。)」

 

 ユウトは、ある意味では、魔人達の狙いを当てていた。

 すると、シンが人とぶつかる。

 

ゼスト「おっと、これは失礼………。」

 

 そこに居たのは、ゼストとローレンスだった。

 

ユウト「…………。」

シン「………いえ、此方こそ、すみません。」

 

 ユウトとシンは、2人を密かに睨んでいた。

 

ローレンス「暴走は失敗………ですね。あの男がレイダーに変貌しまいましたね。」

ゼスト「いや、構わん。魔人側としても損失は何もないんだ。いや………寧ろ得られた要素が大きい。」

ローレンス「っ?」

ゼスト「まず、魔力操作の実用性が高い事は証明された。これは今後も使える。それにやはりクロードの存在だ。あの女がウォルフォードに及ぼす影響は想定以上に大きい。そしてウォルフォード自身だが、強いとは言え、やはりまだ若造だ。精神的に付け入れる隙は大いにある。何れにせよ、これで連合は結成された。ここから先は、相手を滅ぼすか、滅ぼされるかの全面戦争だ。」

 

 ゼストは、そんな風に言っていた。

 その夜、パーティーが催された。

 

オーグ「この世界の危機を救う為、そしてお互いの国が発展する為、重要な連合が基本合意出来た事を大変喜ばしく思う。それでは、我々の未来に乾杯!」

 

 オーグの乾杯の音頭と共に乾杯して、晩餐会が開かれた。

 

ウサマ「これは初めまして魔王さん!私、エルス代表のウサマ=ナバルと申します!噂は予々伺っておりますがな!!」

 

 急にウサマがシンにグイグイ寄る。

 

ウサマ「特にアレですねん!国と国との間で使われとるっちゅう………例の………ね!アレの都合、幾らか付けて貰われへんやろうか!?勿論料金は支払うよって………。」

商人「ちょおナバルさん!抜け駆けはズルいですわ!!」

商人「ウチら、他の商人も来てるのに忘れんといてや!」

ウサマ「喧しいわ!!早いモン勝ちや!!」

シン(こ………これがエルスの商人か………凄え………。)

 

 エルスの商人は、商魂逞しかった。

 

ユウト「凄いな。」 

ウサマ「おお!これは、これは!ゼロワンのユウト=イーウェルさん!」

シシリー「大人気ですねシン君………。」

ウサマ「お!こりゃ聖女さん!流石にお美しい!!」

商人「魔王さんが羨ましいわぁ………ウチのも昔は可愛かってんけどなぁ………。」

ウサマ「あのトドが?」

商人「トドちゃうわ!どっから見てもキュートなゾウアザラシちゃんやろが!」

ウサマ「何が違うねん!!」

 

 そんな2人のやり取りに周囲が爆笑。

 ただし、タクヤ、コハル、イズは笑っていない。

 

シン(えええ………何このちょっと親しみのある空気………。)

ユウト(あれ………これ、突っ込むべきだよな?)

商人「ホラ見てみ?若い子達に大ウケ。ホンマの事言うた甲斐がありましたわ。」

ウサマ「ネタやないんかい!」

商人「聖女様に笑って貰えるとは光栄ですわ。普段は酒場のネーチャンしか笑わせれんよって。」

ウサマ「お前は一度『愛想笑い』って辞書引け!それ酒場のネーチャンの得意技やから!」

シシリー「ふふっ………!」

周囲「あははは!」

 

 商人とウサマの会話を聞いてて、タクヤ、コハル、イズを除いた人たちが笑う中、シンとユウトは。

 

シン(ダメだ………もう我慢出来ん………!)

ユウト(突っ込もう。)

 

 痺れを切らした2人が叫ぶ。

 

「「漫才師か!!」」

 

 2人の盛大な突っ込みが、炸裂する。

 

ウサマ「おお!何ちゅう鋭いツッコミ……!!流石は魔王にゼロワン!尊敬しますわ!!」

シン「ツッコミに魔王カンケーあるかぁ!!」

ユウト「誰もがボケになるなぁ!!」

 

 そんな風に和やかにパーティーが行われる中、ハミルはユウト達を見ていた。

 

ハミル「…………。」

オーグ「どうしたマキナ司教。」

ハミル「殿下………いえ………魔王シン=ウォルフォード殿を始めとするアルティメット・マジシャンズの面々………こうして見ると普通の青年達にしか見えないのに………連合を組んだにも関わらず、戦争の重大な局面は彼らに任せるしかないと言うのが………大人である私には少し歯痒くて………。」

 

 ハミルは、そんな歯痒い思いをオーグに話す中、エドガーがやって来る。

 

エドガー「私はそうは思いませんよ。」

ハミル「エドガー指揮官。」

エドガー「身近で何度も彼らに助けられた身としては………彼らの力は疑う余地のないものとしか思えません。待ち受ける困難や障害………それらを全力で排除し、道を作るのが我々の役目です。辿り着いたその先………恐らくは人類の存亡を賭けた局面が必ず来る。」

オーグ「そこで魔人を倒すのが、我々の役目だ。」

 

 この先に、新たな戦いが待ち受けている。

 そんな中、アールスハイドでは。

 

???「サウザーは完成しましたか。」

 

 サウザーという単語を言う、この青年は、一体………。

 一方、レックスの家では。

 

ザット「衛星ゼアからの命令を受信。構築を開始します。」

 

 ザットという多次元プリンターが起動して、何かを作り出す。

 それは、ゼロワンドライバーとシャイニングアサルトホッパープログライズキーに似た、プログライズキーだったが、色が、ロッキングホッパーゼツメライズキーと同じだった。




今回はここまでです。
エルスとイースが、同盟に加わりました。
今作のシャイニングストームインパクトは、ガンバライジングの物を少しアレンジしました。
サウザーに変身するキャラは、最初から味方で、ユウトにライバル心を燃やすキャラという感じにします。
そして、ゼロワンドライバーとシャイニングアサルトホッパーに似たキーが作成される。
ユウトが言っていましたが、シンが魔人、もしくはアークになったりしたら、手がつけられませんよね。
サウザーは最初から味方ですが、そうすると、メタルクラスタホッパーとプログライズホッパーブレードは、どんな感じに出せば良いですかね。
ランペイジガトリングに関しては、コハルが作る感じにする予定です。
あと、ジャッカルレイダーに関しては、登場せず、ショットライザーで変身させる予定です。
本当に、アークワン、アークスコーピオン、リアライジングホッパーに関しては、どうすればいいでしょうか。
シュトローム撃破後からしばらくした時系列に、REAL×TIMEに相当する話を入れたいので、リアライジングホッパーは出したいです。
感想、リクエストは、絶賛受け付けています。


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第18話 黄金のソルジャー

 無事、アールスハイドは、エルスとイースと同盟を結ぶ事が出来た。

 一方、アールスハイド王国軍務局の庁舎では。

 

ジークフリード「げっ!何でお前がここに居んだよ?」

クリスティーナ「直属の上司が務めている場所に私が居て可笑しいですか?寧ろアナタこそどうしてここに?」

 

 ジークフリードとクリスティーナは、バッタリと会ってしまった。

 

クリスティーナ「悪事がバレて呼び出しでも受けたんですか?」

ジークフリード「なっ!バ、バレてねえよ!」

クリスティーナ「つまり、バレてマズい事はあると。」

ジークフリード「うぐっ!」

 

 クリスティーナの誘導尋問に引っかかったジークフリードは、クリスティーナと同じ廊下を歩く。

 

クリスティーナ「付いて来ないでもらえます?」

ジークフリード「るっせー、お前が俺の前歩くの止めろ。」

  

 そんな風に話していると、2人は上司の部屋の前まで来た。

 

ジークフリード「やっぱりお前もここかよ。」

クリスティーナ「揃って呼び出しですか。正直嫌な予感しかしませんね。」

 

 クリスティーナとジークフリードは、ドアをノックする。

 

クリスティーナ「クリスティーナ=ヘイデン、参りました。」

ジークフリード「ジークっス。」

ルーパー「おう、入れ。」

 

 部屋に入ると、ドミニクとルーパーが居た。

 

ドミニク「勤務中にスマンな2人共。座ってくれ。」

ジークフリード「団長も居たんすかっで、どうしたんです?」

ルーパー「今度、軍の方で部隊を編成して近隣の魔物の討伐に出るのは知ってるな?」

ジークフリード「え?そうなんですか?」

クリスティーナ「ちゃんと掲示板に告知してあったでしょう?」

 

 ジークフリードのその言葉に、クリスティーナは呆れて、ルーパーは何かに気付いたのか、大声を出す。

 

ルーパー「テメー、さては見てねえな?はっ!まさかテメー、今度幹部飲み会の幹事お前がやるって分かってんだろうな!?」

ジークフリード「はい!?今度は俺の番でしたっけ!?」

ルーパー「巫山戯んなよテメーよォ!ちゃんと告知しといたろうが!」

ドミニク「巫山戯てるのはお前だ!ルーパー!!」

ルーパー「ああ!?飲み会、石窯亭だぞ!予約なしじゃ入れねぇだろうが!!」

ドミニク「この場でそんな話をするなと言っているのだ!!そもそも掲示板をそんな下らん事に使うなバカタレが!!」

クリスティーナ「あの、私達お2人の漫才を見る為に呼び出されたんですか?」

「「漫才言うな!!」」

 

 クリスティーナのその言葉で、ドミニクとルーパーは同時に突っ込む。

 

ドミニク「………で、だ。その魔物討伐なんだが、アルティメット・マジシャンズにも同行して貰うよう話を付けてきてくれないか?」

「「?」」

 

 その話に、クリスティーナとジークフリードは首を傾げる。

 

ドミニク「軍人に混じって魔物討伐するのではなく、彼らには独自に動いて貰って構わんのだが、お前達2人には、彼らの傍に付いて具体的な戦力の分析を頼みたいのだ。」

ジークフリード「戦力って、全員が魔人を倒せるレベルの連中を今更………。」

ドミニク「それ以上の事細かな情報が欲しいんだ。誰が何処まで出来て、何を得意とするのか。本人達に訊くより第三者の目で判断したい。正直、殿下ですらどの程度の力を秘めているのか我々も知らんからな。」

ジークフリード「それってつまり………。」

クリスティーナ「旧帝国………”魔神領”へ攻め入る為の戦力の確認と言う事ですか。」

 

 クリスティーナのその言葉に、ドミニクは頷く。

 

ドミニク「その通りだ。エルス、イースを加えた世界連合が発足した今、早急に魔神討伐に向けた作戦を立てねばならん。当然そこで、最も重要な点となるのがアルティメット・マジシャンズの配置だ。最前線で戦うのか、兵を率いて立ち回るのか、後方支援に当たるのか。実力があるのは分かる。だが、その全容が未知数では作戦に組み込めん。」

クリスティーナ(確かに………。)

ジークフリード(シンレベルの化け物揃いだもんなぁ………。)

 

 ドミニクのその言葉を聞いたクリスティーナとジークフリードはそう思う。

 

ドミニク「それに、ゼロワン達仮面ライダーの配置もどうするのかも決めたい。」

クリスティーナ「そう言う事なら了解しました。彼と一緒と言うのは不本意ですが。」

ジークフリード「それはこっちの台詞だっつーの。」

 

 2人がそう言うと、また喧嘩が始まった。

 

ドミニク「お前達、学生の前でそんな醜態晒すなよ………?」

ルーパー「手遅れだろ、この様子だと。」

「「だって此奴が!!」」

ルーパー「仲良いなお前ら。」

「「良くない!!」」

 

 ルーパーの言葉に、2人は同時に叫ぶ。

 一方、アルティメット・マジシャンズは。

 

マリア「もうじきアールスハイドの到着ね!」

タクヤ「やっと帰れるな。」

シン「はぁ…………にしても、まさかナバルさん達まで付いて来るとは………。」

 

 シンは、ため息を吐きながら、後ろの馬車を見る。

 後ろの馬車にウサマが乗っている。

 どうして、ウサマが居るのかと言うと、晩餐会の日にまで遡る。

 

ウサマ『商会を設立!?魔王さんがでっか!?』

シン『はあ………。まあ俺が個人で進めてきた話じゃないんですけど、通信機やら、他の便利な魔道具やら、世間に出回るようになるとお金の管理が大変だから、作るべきだって婆ちゃんに言われまして………。』

ウサマ『って事は、その商会に発注すれば通信機が手に入るんですな!?』

シン『まあそんな所です。』

ウサマ『オープンは!?何時ですの!?』

シン『店舗自体は前々から探して改装を進めてたみたいなんで、多分国に戻って少ししたら………。』

 

 シンのその言葉を聞いたウサマ達エルスの商人は顔を見合わせ。

 

ウサマ『ホンなら我々、アールスハイド寄ってから国に戻りますわ!』

商人『こんなチャンス目の前にして、手ぶら国に帰れませんよって!!』

 

 そして今に至る。

 

シン(エルスって確かスイード挟んで反対方向だったような…………。行動力あると言うか商魂逞しいと言うか………。どの世界も商売人は同じだなぁ………。)

商人「いやぁエエ外交になりましたなぁ!」

ウサマ「ホンマですな!これで夢の遠距離通信が我が国にも………。』

 

 ウサマ達がそんな風に話していると、馬車が急に止まる。

 

ウサマ「っ!?」

護衛「さ、索敵に反応!!近辺の崖下から魔物が多数此方に向かっています!!」

ウサマ「ま、魔物!?ホンマかいな!?ま、まあでもこんだけ護衛が居れば………。」

護衛「こ、これは………さ、災害級の反応もあります…………!!」

「「な………な………何やてーーーーーー!?」」

 

 災害級が居る。

 その言葉に、ウサマ達は仰天する。

 

シン(わー、お約束。)

アリス「この反応、熊か何かだね。」

リン「しかもかなりの大物。」

ユウト「じゃあ早速片付けるとするか。」

トニー「シン、ユウト。悪いけど大物だけ譲ってくれるかな?」

 

 シンとユウトが出ようとすると、トニーがそう言う。

 

シン「トニー。」

ユウト「どうしたんだ、トニー?」

トニー「何度か実践重ねて思ったんだけど、僕はやっぱり魔法で牽制しつつ、剣をメインに戦う方が向いてる気がしてさ。シンに付与して貰ったアレを含めてちょっと色々試してみたいんだよね。」

タクヤ「なら、俺も行くぜ。」

トニー「え?」

 

 トニーがそう言うと、タクヤも出ると言う。

 それにトニーは驚いたが、すぐに頷く。

 

トニー「それは良いね。シン、ユウト!災害級以外は任せるよ!」

タクヤ「それじゃあな!」

 

 トニーとタクヤは、ジャンプして災害級へ向かう。

 

マーク「俺も狩りたかったッス。災害級は素材も高く売れるから。」

オリビア「私も。お店に新しい窯入れてあげたかったなぁ。」

ユーリ「ウチの宿にもウォルフォード君所のトイレ導入したかったわぁ。」

 

 ユーリの言うシンの家のトイレとは、洗浄機付きのトイレの事である。

 

シン(人気だなぁ災害級………。)

マーク「イーウェル君、タクヤさんは大丈夫なんッスか?」

コハル「アイツの事だ、問題ない。」

 

 災害級の前にトニーとタクヤが現れた。

 タクヤは、シューティングウルフプログライズキーを取り出す。

 それを見たウサマは慌てる。

 

ウサマ「ちょ!殿下!!あの2人だけで!?無謀な!!何とかせな!!」

オーグ「ん?まあ大丈夫だろ。」

 

 タクヤは、シューティングウルフプログライズキーを起動する。

 

BULLET!

 

タクヤ「フン!うううう………!うおおおおおお!!」

 

 タクヤはそう叫び、シューティングウルフプログライズキーを無理矢理こじ開け、ショットライザーに装填する。

 

オーソライズ!

 

 ショットライザーにプログライズキーを装填して、災害級に向ける。

 

Kamen Rider...Kamen Rider...

Kamen Rider...Kamen Rider...

 

 そして、タクヤは叫ぶ。

 

タクヤ「変身!」

 

 その声と共に、ショットライザーのトリーガーを引く。

 

ショットライズ!

 

 すると、弾丸が1発発射され、摩訶不思議な軌道を描く。

 弾丸は、災害級にダメージを与え、タクヤに向かっていく。

 そして、タクヤは弾丸を殴り、アーマーを形成する。

 

シューティングウルフ!

"The elevation increases as the bullet is fired."

 

 タクヤは、仮面ライダーバルカン・シューティングウルフに変身して、災害級に向かっていく。

 災害級は、左手で攻撃しようとするが。

 

タクヤ「ハアッ!」

 

 タクヤのショットライザーの銃撃で、ダメージを受ける。

 今度は右手で攻撃しようとしたが。

 

トニー「っ!」

 

 トニーのジェットブーツで弾かれた。

 

シン(上手くなったなぁ、ジェットブーツの使い方。)

ユウト(やるね、タクヤ。)

コハル(上達している様だな。)

 

 それを見て、シン、ユウト、コハルの三人は感心していた。

 

タクヤ「おら!お前の相手は俺だ!」

 

 タクヤが注意を引き連れてる間に、トニーが異空間収納からバイブレーションソードを出した。

 

トニー(シンと同じ事をやってちゃ、何時まで経っても追い付けやしない。僕は僕なりの戦い方を探っていかなくちゃねえ。)

タクヤ「はっ!フッ!」

 

 トニーがそう考える中、タクヤは軽々と災害級の攻撃を避け続ける。

 

トニー(溜め込め風を、もっと!もっと!!)

 

 ジェットブーツに風を溜め込んで突進する。

 

トニー「(ジェットブーツと風魔法による、超高速斬撃!!)タクヤ君!」

タクヤ「おっと、危ね!」

 

 タクヤは、すぐに後ろにジャンプして着地する。

 それと同時に災害級の胴体が、トニーの超高速斬撃によって真っ二つにされた。

 それを見ていた一同は、驚いていた。

 

マリア「何今の!?風の魔法で自分を撃ち出したの!?」

トール「それに加えて、トニーさん自身も風を纏って威力を増してますよ!!」

トニー「体が吹っ飛ぶかと思ったぁ〜〜〜!!」

タクヤ「やるじゃねぇか。」

 

 そして、それを見ていたウサマは。

 

ウサマ「は、速過ぎて何も見えんかったわ………!!」

ユウト「ナイスコンビネーションだ!」

イズ「お見事です。」

シン(あれは俺も試した事なかったな!!剣と魔法………両方使い慣れてるトニーだからこそ出来る戦術!!)

オーグ「しかし両断してしまっては、素材の価値は低くなってしまうな。」

トニー「改良の余地ありですね。」

 

 それを聞いたシンは考え込む。

 

シン(素材の価値、か。)

ユウト「よし、ここは俺達も実験といくか。お前らは少し離れてろ。残りは俺達が片付ける。」

ウサマ「魔王はん!!ゼロワンはん!!無茶や!!2人でどうやってそないな数!!」

 

 ユウトの言葉に、ウサマは叫ぶ。

 すると、コハルがユウトに渡す。

 

コハル「それなら、これらをオーソライズバスターで使え。」

 

 そう言って渡したのは、ガトリングヘッジホッグとスカウティングパンダのプログライズキーだった。

 

ユウト「ガトリングヘッジホッグにスカウティングパンダ………。分かった!」

イズ「ユウト様。命中率を上げ、反動を抑える為に、変身した方がよろしいかと。」

ユウト「だな。」

 

 そう言って、ユウトはオーソライズバスターを取り出す。

 そして。

 

ユウト「変身!」

 

プログライズ!

飛び上がライズ!ライジングホッパー!

"A jump to the sky turns to a rider kick."

 

 ユウトは、ゼロワン・ライジングホッパーに変身する。

 

シン(森で狩りをしていた頃、獲物を逃さない為によく使ってたマーカーの魔法!まずは索敵魔法と同様に薄く魔法を広げ、そこに触れた範囲内全ての標的の眉間にロックオン!!)

 

 シンは、全ての魔物の眉間にロックオンした。

 

シン「後は!!」

 

 シンはそう言って、水の弾を生成した。

 ユウトは、オーソライズバスターにガトリングヘッジホッグのプログライズキーを装填する。

 

REVOLVER!

"Progrise key confirmed. Ready for buster."

 

 ガトリングヘッジホッグのプログライズキーを装填して、スカウティングパンダのプログライズキーを起動する。

 

SEARCH!

バスターオーソライズ!

 

 ユウトは、バスターオーソライザーに、スカウティングパンダのプログライズキーをオーソライズする。

 

マリア「何アレ………!?」

シシリー「水の弾………!?」

シン「ユウト!」

ユウト「分かってるよ!」

シン「行け!!」

ユウト「ハアッ!」

 

プログライズバスターダスト!

 

 シンとユウトは、水の弾とプログライズバスターダストを同時に連射した。

 オーソライズバスターから放たれた針が水の弾に重なり、全ての魔物の眉間に全弾命中した。

 残りが逃げようとしたが。

 

ユウト「おっと、逃がさないぜ!」

 

 ユウトは再び針を発射して、残りの魔物を倒していく。

 それを見たウサマは。

 

ウサマ「な………な………な………なああ!?」

 

 唖然としていた。

 

シン「オッケー!殲滅完了!!」

ユウト「ま、こんなものか。」

 

 それを見た他の面子は、シンとユウトに声をかける。

 

ユリウス「見事で御座るな!全て狂いなく眉間に一撃………。」 

トール「不自然な軌道で魔法が飛び交ってましたけど………どうやったらこんな魔法思い付くんですかね………。」

トニー「確かにこれなら素材を一切無駄にしないねぇ。流石だよ。」

シン「森での狩りは殆ど食糧の確保が目的だったからなるべく傷付けたくなかったし。」

ユウト「まあ、傷つけたら、碌に食べられないしな。」

シン「それに意図的に魔力でマーキングを妨害出来る一部の魔物や人間相手にはあまり使えないけど。」

オーグ(彼奴の獲物の仕留め方はそこに由来したのか。)

シシリー「凄いですシン君………!」

マリア「止まる事を知らないわよねぇ、シンの魔法は。ユウトもだけど。」

 

 シシリーが感激して、マリアが呆れる中、アリスが質問する。

 

アリス「というより、何でオーソライズバスターに二つプログライズキーを使ったの?」

イズ「ガトリングヘッジホッグで連射性を、スカウティングパンダで精密性を高めたのです。」

コハル「オーソライズバスターの利点は、二つのプログライズキーの力を一気に使えるからな。」

ウサマ「…………。」

 

 ウサマが唖然としているのに気づいたオーグは、ウサマに話しかける。

 

オーグ「どうした?ナバル外交官。」

ウサマ「い、いえ…………魔王さん………。コレ………世界征服も可能なレベルの強さちゃいますの………?」

オーグ「(驚きより恐れが勝ったか。)フム、ならば本人に訊いてみようか。シン!彼が世界征服する気はないかと訊いているぞ!」

ウサマ「ちょ、ちょお!止めてや殿下!!」

 

 オーグがシンにそう聞いて、ウサマは慌てる。

 だが、シンから疑問の答えが返ってきた。

 

シン「征服?俺が?何で?」

ウサマ「何でって、それだけの力があれば楽に………。」

シン「力があるから全てを支配しようなんて俺は思いませんよ。それってつまり、帝国や魔人の考え方でしょ?」

ユウト「まあ確かに今のシンの実力なら世界征服も夢ではない。けど此奴は違う。な?」

 

 シンはそう言って、ユウトがそう聞く。

 

シン「うん。俺には爺ちゃんが居て、婆ちゃんが居て、沢山の友人や知り合いや、何より恋人が居て。そんな人達を守る事だけに力を使えれば充分です。俺が知る限り、本当に力を持ってる人達は、皆大切な今を守る事だけの為に力を使います。それ以上求めるのは殆どが『力を持った気でいる人間』だけなんですよ。俺がそう思えるのは、身近に正しい人達が居たお陰だと思います。支配とかに興味はありません。」

ウサマ(英雄、シン=ウォルフォード………か。)

オーグ「だそうだ、安心したか?」

ウサマ「お若いのに、立派なモンですな………殿下も………魔王さんも………ゼロワンさんも………。」

 

 アールスハイド王国に帰国。オーグは王城へ向かった。

 ユウト達は、シン達と別れて、レックスの家へと戻った。

 そこには、滅、迅、亡、雷も居た。

 

レックス「おかえり。」

ユウト「ただいま。」

タクヤ「疲れたぜ…………。」

コハル「そうだな。」

イズ「スローイングクロウのプログライズキーは、調べられましたか?」

滅「ああ。」

迅「まあ、大した情報は得られなかったけどさ。」

亡「ええ。」

雷「それに、スローイングクロウプログライズキーには、誰が渡したのかというのも無かったぜ。」

ユウト「謎が深まったな………。」

 

 ユウトがそう呟くと、イネスがユウトに向かっていく。

 

イネス「ユウト〜!お帰り!」

ユウト「ええっ………!?」

 

 イネスは、ユウトに向かって抱きつき、ユウトは床に倒れる。

 

ユウト「ええっと…………イネスさん………でしたっけ?」

イネス「そうよ!」

レックス「じゃあ、俺たちは邪魔しちゃ悪いからな。」

 

 そう言って、レックス達はその場から退散する。

 

ユウト「ちょっと!?この状況をどうしろと!?」

イネス「ねぇ。話があるの。」

ユウト「な………何ですか?」

イネス「私、貴方のことが好きなの。」

ユウト「………………えっ?」

 

 ユウトは、それを聞いてフリーズする。

 しばらくして、思考が動き出す。

 

ユウト「えっ?君が、俺を?」

イネス「うん。」

ユウト「待って、待って、待って!状況に整理が追いつかねぇぇ………!」

イネス「ん?」

 

 それを、隠れて見ていたレックス達は。

 

レックス「アイツ、戸惑ってるぞ。」

タクヤ「そりゃあ、いきなりあんな事を言われたらな。」

コハル「全く。本当に度を超えた朴念仁だな。」

イズ「混乱していますね。」

滅「だが、これで奴も一歩成長する。」

迅「だと良いんだけどね。」

雷「アイツも、上手くやれると良いんだがな。」

亡「だと、良いんですけど。」

 

 レックス達は、そう話す。

 一方、ユウトとイネスは。

 

ユウト「え………?俺?いやいやいや。何で俺なの?」

イネス「えっ?だって…………かっこいいんだもん…………。」

ユウト(上目遣い!?)

 

 ユウトは、戸惑っていた。

 何せ、いきなり好きと言われたのだ。

 動揺するのも無理はない。

 

イネス「…………ダメ?」

ユウト(………そんな事を言われても………!でも、何か、悪い感じはしないな………。)

 

 ユウトは、悪くないとも感じていた。

 だが、会ったばかりでいきなりそんな事を言われても、戸惑うだけなので。

 

ユウト「イネス………さん。」

イネス「呼び捨てで良いわよ。」

ユウト「イネス。多分、君は悪い人じゃない。それは分かる。………でも、いきなりじゃあ、気持ちの整理が出来ないから、少し、時間をくれないか?」

イネス「そ、そうね。いきなりだと、混乱しちゃうわよね。分かったわ。」

 

 そうして、保留となった。

 その後、自室でユウトは。

 

ユウト(俺は………イネスの事が好きなのか?いや、会ったばかりだ。本当にそうなのかは、まだ分からない。)

 

 そう考えていた。

 翌日。

 

ユウト「おはよう………。」

レックス「おはよう。それと、お前にお客さんだ。」

ユウト「誰?」

???「初めまして。あなたがユウト=イーウェルですね。」

 

 そこに居たのは、白色の服に身を包む青年だった。

 

ユウト「…………誰?」

ミナト「申し遅れました。私、ミナト=ハートネルです。以後、お見知り置きを。」

 

 ミナト=ハートネル。

 彼は、そう名乗った。

 

ユウト「…………それで、用件というのは?」

ミナト「そうでした。レックス殿。地下室を借りて宜しいですか?」

レックス「別に構わんが………。」

ミナト「ありがとうございます。では、参りましょう。」

 

 ミナトとユウトは、地下室へと向かっていく。

 それを見ていたレックスは。

 

レックス(さて。アイツがユウトの事を認めるのかな。)

 

 そう考えていた。

 地下室では、ユウトとミナトが向き合っていた。

 

ユウト「…………で、用件は何です?」

ミナト「そうですね。………まあ、面倒臭い前置きはこれくらいにして。………ユウト君。私は、君を見極めに来たんだよ。」

ユウト「俺を?」

ミナト「これでね。」

 

 そう言って、とある物を取り出す。

 それは、ユウトにとって分かる物だった。

 

ユウト「サウザンドライバー………!」

ミナト「そうです。」

 

サウザンドライバー!

 

 ミナトは、腰にサウザンドライバーを装着する。

 そして、まずはアウェイキングアルシノゼツメライズキーを取り出し、サウザンドライバーの左側に装填する。

 

ZETSUMETU EVOLUTION!

 

 そして、目の前にアメイジングコーカサスプログライズキーを取り出して、起動する。

 

BREAK HORN!

 

 アメイジングコーカサスプログライズキーを起動すると、生体認証が行われ、自動でキーモードになる。

 そして、ミナトは言う。

 

ミナト「変身。」

 

 そう言って、ミナトはプログライズキーを装填。

 すると、サウザンドライバーの正面のゲートリベレーターが観音開きに開く。

 そこから、アメイジングコーカサスのライダモデルとアウェイキングアルシノのロストモデルがミナトの周囲を動く。

 

パーフェクトライズ!


『When the five horns cross, the golden soldier THOUSER is born.


『"Presented by ZAIA."

 

 ミナトは、仮面ライダーサウザーへと変身した。

 

ユウト「サウザー………!」

ミナト「さあ。君も変身したまえ。」

ユウト「言われなくても………!」

 

 ユウトは、ゼロワンドライバーを装着して、シャイニングアサルトホッパープログライズキーを取り出す。

 

HYPER JUMP!

オーバーライズ!

 

 ユウトは、シャイニングアサルトホッパープログライズキーを起動して、オーソライザーにオーソライズする。

 天井に向けると、シャイニングアサルトホッパーのライダモデルが出現する。

 

ユウト「変身!」

 

 ユウトはそう叫んで、プログライズキーをゼロワンドライバーに装填する。

 

プログライズ!

Warning,warning. This is not a test!


『ハイブリッドライズ!

シャイニングアサルトホッパー!

"No chance of surviving this shot."

 

 ユウトは、ゼロワン・シャイニングアサルトホッパーへと変身する。

 

ユウト「ハァァァァ!!」

ミナト「フンッ!」

 

 ゼロワンとサウザーは、ぶつかり合う。

 ユウトはオーソライズバスターとアタッシュカリバー、ミナトはサウザンドジャッカーを持っていた。

 それぞれの武器をぶつけ合う。

 

ミナト「やるじゃないか!」

ユウト「伊達に、これまで戦ってきたわけじゃないからな!」

ミナト「なら………!」

 

 ミナトはそう言って、サウザンドジャッカーの切っ先をユウトに向ける。

 だが、ユウトはすぐにミナトから離れる。

 

ミナト「ほう………。」

ユウト「流石に、ジャックライズされてたまるか!」

ミナト「どうやら、見抜いていた様ですね。」

 

 ユウトは、サウザンドジャッカーの特性を知っていた。

 まあ、それは当然だが。

 

ミナト「なら、こうしましょう!」

 

 ミナトは、サウザンドジャッカーのジャックリングを引く。

 

ジャックライズ!

ジャッキングブレイク!

 

 ミナトはジャッキングブレイクを発動して、炎を纏った斬撃を放つ。

 ユウトは、それを躱す。

 

ユウト「フレイミングタイガー!?」

ミナト「まあ、このサウザンドジャッカーには、最初から色々とジャックライズした物が入っては居ますが。」

ユウト「ありかよ………!?」

ミナト「これもね。」

 

ジャックライズ!

ジャッキングブレイク!

 

 再びジャッキングブレイクを発動すると、紫色のシャインクリスタが現れる。

 

ユウト「やっぱりか…………。」

ミナト「さあ、行きましょうか!」

 

 2人は、シャインクリスタで攻撃し合い、その攻防が続く。

 2人が攻撃すると、お互いに離れ、必殺技の体勢に入る。

 

ガンライズ!

JUMP!

"Progrise key confirmed. Ready for buster."

 

 ユウトは、ガンモードにしたオーソライズバスターに、ライジングホッパープログライズキーを装填して、ゼロワンドライバーにオーソライズする。

 

ゼロワンオーソライズ!

 

 ミナトは、再びジャックリングを引く。

 

ジャックライズ!

 

 そして、2人は、それぞれの武器のトリガーを引く。

 

ゼロワンバスターダスト!

ジャッキングブレイク!

 

 二つの必殺技が、お互いの中間点でぶつかり合う。

 

   JACKING

   BREAK

ンバスターダスト

 

 二つの必殺技がぶつかり、爆発すると、2人は変身解除する。

 

ミナト「やるじゃないですか。」

ユウト「そっちもな。」

ミナト「…………どうやら、信頼するに足りる男の様だな。」

ユウト「…………?」

ミナト「これからは、私も貴方と共に戦いましょう。」

ユウト「…………それはどうも。」

 

 ミナトが、ユウトに手を差し伸ばして、ユウトもその手を握り、立ち上がる。

 

ミナト「…………一つ聞こう。」

ユウト「なんだよ?」

ミナト「君も、転生者なんだろう?」

ユウト「っ!?」

 

 ミナトのその言葉に、ユウトは驚く。




今回はここまでです。
サウザーに変身するキャラ、ミナトが登場しました。
次回は、そんなミナトの出自が明らかになります。
賢者の孫とゼロワンの小説のリクエストは、目次から受け付けています。
ここ最近、賢者の孫とジオウの小説を書こうかなと思案していて、それのリクエストは、ここから受け付けます。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=285350&uid=373253
どうか、よろしくお願いします。


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第19話 魔物退治

 ミナトは、ユウトに対して、ある事を尋ねた。

 

ミナト「君も、転生者なんだろう?」

ユウト「っ!?」

 

 ミナトの言葉に、ユウトは驚いたが、すぐに冷静になる。

 

ユウト「いや、ゼロワンに変身出来る時点で、そうだろ。」

ミナト「まあ、それもそうか。」

 

 ユウトの指摘に、ミナトは納得した。

 ミナトは、ある事を言う。

 

ミナト「実は…………ある事を言おうと思ってな………。」

ユウト「何だよ?」

ミナト「それは…………俺の先祖が、アークに悪意をラーニングさせた事だ。」

ユウト「えっ!?」

 

 それには、ユウトは再び驚いた。

 

ユウト「えっ!?そうなの!?」

ミナト「ああ。勿論、俺は転生者で、それを知ったのは、随分後だけどな。」

ユウト「そんな事が…………。」

ミナト「だから、俺は先祖のやらかしを清算する為に、サウザーとして戦うんだ。」

ユウト「…………分かった。よろしく頼むわ。」

 

 ユウトとミナトは、握手をする。

 その後、全員が集まって。

 

レックス「…………と、言う訳で、ミナトもまた、俺たちと共に戦う事になった。」

ミナト「よろしくお願いします。」

タクヤ「信用できるか?」

コハル「まあ、信じるしかあるまい。」

イズ「そうですね。」

滅「ああ。」

迅「いまいち、信用できるのか、怪しいけどね。」

雷「だな。」

亡「それはそうと、レックス。何か、それ以外に話があるのではないですか?」

レックス「そうだったな。それは…………。」

 

 亡の質問に、レックスは答える。

 それは、魔物狩りに、アルティメット・マジシャンズと仮面ライダーも参加して欲しいとの事だ。

 

ユウト「軍の魔物狩りに、俺たちも参加?」

タクヤ「唐突すぎねぇか?」

コハル「急だな。」

ミナト「おそらく、目的は、アルティメット・マジシャンズと我々の戦力の確認だろうね。」

イズ「作戦に、どのように組み込むかという感じですね。」

滅「そういう事か。」

迅「確かにね。」

雷「アルティメット・マジシャンズは、シンクラスの化け物が揃ってるからな。」

亡「それをやるのは、重要でしょう。」

レックス「俺は、店があるからな。皆で頑張ってくれ。」

 

 そうして、仮面ライダー達も、魔物狩りに参加する事になった。

 その1週間後、魔物狩りの日になった。

 

タクヤ「本当に来たな、魔物狩り。」

コハル「そうだな。」

 

 シン達と合流した。

 

オーグ「ん?何か、一人増えていないか?」

ミナト「お初にお目にかかります。私は、ミナト=ハートネルです。以後、お見知り置きを。」

ユウト「彼も、仮面ライダーなんだよ。」

シン「そうなのか?」

ミナト「はい。」

 

 そうして、ユウト達は目的地へと向かう。

 しばらくして、目的地に到着する。

 シンが口を開く。

 

シン「分かってると思うけど、今更魔物を普通に討伐するのは、俺達にとって何の意味もない。そこで今日は、この機会を利用して、精密な魔法技術の向上を目指す訓練をするぞ!まずは何時ものペアに分かれて!精密な魔法ってのは、要するに威力や範囲を最小限に抑えて、極力獲物を傷付けずに倒すって事な!自ずと急所へのピンポイント攻撃が必要になってくる!当然、討ち漏らしが出て来るだろうから、ペアの片方はそのフォローに回って欲しいんだ。」

ユリウス「ピンポイント?」

トニー「例の猿に使ったシンの魔法が、その究極系だろうね。」

シン「ユウト達は、単独で好きに魔物を狩って欲しい。」

ユウト「あいよ。」

 

 こうして、配置が決まった。

 前衛には、オーグ、トール、シシリー、アリス、マーク、トニー。

 後衛には、シン、リン、マリア、オリビア、ユーリ、ユリウス。

 そして、ユウト達は、好きに魔物を倒す事になった。

 

滅「それで、シン。狩り場はどうすんだ?

迅「散開して森に入るの?」

シン「いや、それじゃあ遭遇率低いし、訓練にならないから。」

アリス「ん?じゃーどうするの?」

シン「まあそれは俺に任せといて!取り敢えずは全員配置に着いてくれる?こんな感じでね。」

 

 シンは、立ち位置を指示する。

 それは、クリスティーナとジークフリードを中心に、その周囲を放射状にアルティメット・マジシャンズと仮面ライダーが立つような形だ。

 ユウト達は変身していて、ユウトはシャイニングアサルトホッパー、タクヤはアサルトウルフ、コハルはライトニングホーネット、それ以外は、通常形態になっている。

 

シン「放射状に広がったこの陣形の外側から魔物が集まって来るから、前衛組は自分で魔物を討伐する事。ユウト達は好きなように魔物を狩る事。後衛組は取り零しが出たら素早くドローするようにな。」

アリス「間違って私に魔法当てないでよ?リン。」

リン「保証はし兼ねる。」

アリス「そこは保証しようよ!」

シン「因みに後衛組まで突破されるような事態が起きた場合………ジークにーちゃん達が襲われます。」

ジークフリード「全力でやれよお前ら!!」

 

 シンの言葉に、アリスがリンに聞いて、リンの言葉にアリスが突っ込む。

 そして、シンの言葉で、ジークフリードは叫ぶ。

 

シン「さて、準備は良いか?」

リン「うん!何時でも良いよ!」

シン「じゃあ、魔物共を呼ぶぞ!!」

 

 シンは、そう言って膨大な魔力を集め始めた。

 それを見た人たちは。

 

マリア「ちょっとシンそれって………!?」

クリスティーナ「魔力を集めてるんですか………!?」

ジークフリード「それも膨大な量のな………。成る程、魔物が集まるってそう言う事か。」

クリスティーナ「何がです!?」

ジークフリード「魔物は魔力を感知して寄って来る習性があるだろ?この魔力量、森中に報せるには充分だろうな………。集めた魔力をとっとと魔法に変換して放出しちまえば問題無いが、シンはただ魔力を集めてるだけだ。」

クリスティーナ「それってつまり………。」

ジークフリード「ああ、わんさか来るぞ!!」

 

 ジークフリードの言葉通り、森の奥から魔物の大群が現れた。

 

マーク「来たッスよ!!」

アリス「こっちもだよ!!」

タクヤ「来たか。」

アリス(ピンポイント威力を調節して………強過ぎず、弱過ぎず………!)

トニー(狙うならやっぱり眉間か首………!くそっ、狙いが定め辛い!!)

 

 前衛組が魔法で魔物達を狩り続けるが、ピンポイントが上手く出来ず、流れ弾が他の魔物に命中するばかり。

 

シン「ジークにーちゃん!クリスねーちゃん!指示を頼む!」

ジークフリード「お、おう!!」

クリスティーナ「トニー!!魔法発動が遅い!!次の獲物が通過してます!!」

ジークフリード「アリス!!威力が強過ぎだ!!別の魔物まで被弾してるぞ!!」

 

 前衛組が2人の指示に従いながら魔物達を狩る。

 

ユーリ「やり過ぎたぁ!両断しちゃったぁ!」

オリビア「際限なく出て来るから、どうしても集中力が………!」

トール「すみませんユリウス!逃がしました!」

ユリウス「任せるで御座る!!」

ジークフリード「マーク!トドメ刺せてねーぞ!!」

リン「イライラする………!デカいのカマしたい!!」

シン「我慢しろ!それじゃ何時も通りだ!!」

 

 前衛組が苦戦する中、リンはデカいのを打ちたいと言って、シンが叫ぶ。

 一方、ユウト達は。

 

ユウト「ハアッ!」

 

 ユウトは、シャインクリスタとシャイニングアサルトホッパーの高速演算能力を使い、魔物を倒していく。

 

タクヤ「オラッ!」

 

 タクヤは、アサルトウルフのオービタルバインダーによって、サポートされ、魔物を倒していく。

 

コハル「フッ!」

 

 コハルは、ライトニングホーネットのウェポンベイから、蜂型ミサイルのへクスベスパを打ち出し、正確に急所に命中させる。

 

滅「フッ。」

 

 滅は、アタッシュアローからエネルギーの矢を上空に向かって打ち出して、降り注ぐ矢が、眉間などを貫く。

 

迅「ハアッ!」

 

 迅は、スクランブラーから、羽手裏剣を連続で打ち出し、急所に攻撃する。

 

亡「フッ。」

 

 亡は、高い俊敏性を生かして、ニホンオオカミノツメで、確実に急所を狙って、斬っていく。

 

雷「オラッ!」

 

 雷は、アタッシュショットガンと雷を用いて、魔物を倒していく。

 

ミナト「フッ!」

 

 ミナトは、サウザンドジャッカーから、シャイニングアサルトホッパーやライトニングホーネットの力を使い、正確に魔物の急所を攻撃していく。

 しばらくして、魔物達が全滅した。

 

マリア「はぁ………はぁ………。」

ユーリ「やっと収まったぁ………。」

ジークフリード「予想以上に難しいなこれは………。」

オリビア「はぁ…………。」

 

 全員は、疲れていた。

 ユウト達は、そこまで疲れていなかった。

 すると、シンが再び魔力を集めていた。

 

ジークフリード「ん?」

シン「ホイ!前衛と後衛交代!すぐ次が来るぞ!」

ユリウス「次?」

 

 ユリウスがそう言う中、再び魔物達が森から迫って来た。

 

マリア「えええ!?ちょ、もう!?」

ユーリ「まだ心の準備が………!!」

アリス「わたっ………リンチェンジ!!」

クリスティーナ「ジーク、これはシンが………?」

ジークフリード「さっきしれっと呼んでたな。」

 

 そう、しれっと呼んでいたのだ。

 アルティメット・マジシャンズは、魔法を飛ばすが、当たらない。

 

ユーリ「ああんもう、当たんないぃ!!」

トニー「落ち着いてユーリさん!!」

シン「全員集中集中!!」

シシリー(シン君が前衛だと取り零ししないなぁ………。)

 

 ユーリが若干苛立ってきて、トニーがユーリを落ち着かせようとする。

 シンの命中率の高さには、シシリーはそう思ったのだった。

 数分後、何とか全滅に成功した。

 

マリア「ひえぇ…………ダメだぁ………。」

ユーリ「全然綺麗に討伐出来てない〜〜〜!」

マリア「もお!急にシンが魔物呼ぶから!!」

ユーリ「酷いよぉウォルフォード君〜〜〜!!」

クリスティーナ「やっぱりまだまだお子様ですね。アナタ達は敵が『今から攻めますよ』とでも言ってくれると思っているのですか?」

ジークフリード「わざと間を空けずに魔物を集めたんだろう。本当の敵は魔物じゃなく魔人。戦場で心の準備なんかさせてくれる相手じゃねーだろうからな。」

マリア(そうよね………。これから先、私達が相手するのは、こんなレベルの相手じゃない!!)

シン「厳しいと思われるかも知れないけど、俺はこの先誰も失いたくはない。(俺だけじゃない、アルフレッド先生や、チームに関わる多くの人達の為にも。)」

ユウト「俺も、仲間は失いたくないしな。」

シン「その為に出来る事は、何でもやっておくつもりだよ。」

オーグ「フッ、そうだな。」

マリア「よっしゃ!」

トニー「甘えられる状況じゃないよねぇ。」

 

 クリスティーナにジークフリード、シン、ユウトの言葉で、全員が気合を入れ直す。

 そんな中。

 

シン「その意気だ!頑張れ!次の魔物そこまで来てるぜ!」

 

 シンは、再びしれっと魔力を集めた。

 

マリア「うえええええ?ちょ!えええ!?」

ユーリ「今ぁ!?もうちょっと空気読んでよぉ!!」

シン「ん?魔人は空気なんか読んでくれないぞ?多分。」

ミナト「彼、相当な鬼畜じゃないかい?」

シン「そこ!黙れ!!」

ジークフリード「配置替え急げお前ら!!」

マーク「ひゃあ!!」

 

 ジークフリードはそう叫び、急いで配置替えをする。

 そんな中、シンはシシリーにある事を言う。

 

シン「あ、シシリーはこの後ずっと前衛ね。」

シシリー「え!?」

シン「だって、俺が前衛だと訓練にならないでしょ?大丈夫!ちゃんとフォローしてあげるから!」

シシリー「ふえええ!」

ジークフリード「うわぁ…………。此奴Sっ気あるぜ。」

クリスティーナ「意外でしたね。」

シン「五月蝿いよそこ!」

タクヤ「鬼畜のシンだな。」

コハル「婚約者を命の危険に晒すか?」

シン「お前らも五月蝿い!」

 

 シンの無情な一言に、シシリーは泣き、ジークフリードとクリスティーナ、タクヤとコハルがそう言う中、それぞれのコンビにつっこむ。

 すると。

 

クリスティーナ「っ!漸く来ましたよ、大物達が!」

 

 クリスティーナがそう叫ぶ。

 その視線の先には、災害級の魔物達が居た。

 

マリア「さ、流石にちょっとこれは………。」

オーグ「災害級を恐ろしいと思ったのは久々だな………。」

シン「あちゃあ………。思ったより集まっちまったなぁ………。」

ユウト「まあ、倒すだけだ。」

 

 シンとユウトがそう話す中、クリスティーナが後ろに目を向ける。

 崖の上には、騎士団達と魔法師団達が見物していた。

 

シルビア「ひゃあ〜〜〜、色々学べるから見てろって言われてたけど、本当とんでもない訓練してるわねぇ!」

女性団員「災害級まで来てるけど、平気なんですかね………?」

セシリア「討伐条件なければ余裕だろうけど、あのやり方だとちょっと苦労しそう………ん?」

 

 セシリアは、崖の下で手招きしてるクリスティーナを見た。

 

シルビア「ま………まさか………。」

女性団員「ク、クリスお姉様………?」

 

 嫌な予感に、その場にいる全員が冷や汗を流していると。

 

クリスティーナ「来なさい、アナタ達も。今すぐに。」

 

 そんな、クリスティーナの威圧に全員が怯えた。

 

クリスティーナ「一部預かりますよシン。」

シン「何で?」

ジークフリード「ちゃっかり見学してたのかよ彼奴ら!」

 

 ジークフリードそう言いながら魔力を集め。

 

ジークフリード「フッ!!」

 

 押し寄せる災害級に向けて投げて爆破させた。

 それを見たシンは、驚いた。

 

シン「おお!?ジークにーちゃん無詠唱!?」

ジークフリード「お前に魔力制御による訓練法教わったお陰でな!!制御出来る魔力量が増えて使えるようになったんだ!今じゃ魔法師団全員、訓練に組み込んでるぜ!!」

シルビア「ええい!やりますかセシリアお姉様!!」

セシリア「妹達に格好悪い所見せられないものね!」

 

 そう言って、魔法師団と騎士団も参入し、災害級の討伐を開始する。

 

シシリー「セシリアお姉様!シルビアお姉様!」

シン「へぇ!マジで軍の人達もレベルアップしてんじゃん!」

 

 シシリーは、自分の姉達が来ている事にそう叫び、シンもレベルアップしている事に感心する。

 ユウト達は、それぞれの必殺技を放つ。

 

シャイニングストームインパクト!

マグネティックストームブラストフィーバー!

サンダー!ライトニングブラストフィーバー!

スティングディストピア!

フライングディストピア!

『『ゼツメツディストピア!』』

THOUSAND DESTRUCTION!

 

 それぞれのライダーキックが、魔物達に命中する。

 一方クリスティーナは、熊の災害級に向けて剣の刃を射出させた。

 刃が熊の災害級の眉間に突き刺さった。

 

シン「うお!クリスねーちゃん何それ!?カッケー!」

クリスティーナ「射出用のバネを一番強力にした特製の剣です!これで刃の交換時の隙も無くなるでしょう!」

シン「でもそれ、装着時もかなり力いるんじゃ!?」

 

 シンがそう言う中、クリスティーナは、すぐに他の刃に交換した。

 

クリスティーナ「そんな柔な鍛え方していませんよ!!」

 

 その後も災害級の魔物達を討伐し続ける。

 しばらくして、全滅した。

 その夕方。

 

アリス「も〜〜〜〜〜おクッタクタ………。これ以上1匹も魔物狩れない………。」

マーク「流石に………限界ッス………。」

 

 その場にいる殆どが疲れ果ててる。

 

クリスティーナ「他の討伐隊の方も引き上げる時間です。ここまでにしましょう。この量、我々での素材回収は無理ですね。ハンター協会に連絡して直接回収して貰いましょう。」

ジークフリード「相当な価値になるだろうなコレ。」

シン「でも最終的には皆、技術向上してたしやって良かったよ。」

トニー「ヘロヘロだけどねぇ………。」

マリア「立つのがやっとよ………。今までで最も鬼のような訓練だったわ………。」

 

 シンがそう言う中、トニーとマリアはそう言う。

 シンは、シシリーに近寄る。

 

シン「シシリー。」

シシリー「はい………?」

シン「背中乗って。シシリーには無理させちゃったから。」

シシリー「っ!!」

 

 リンを除いたアルティメット・マジシャンズ女性陣がピクンと反応した。

 

シシリー「え………で、でも………その………あの………えと………。」

 

シン「あれ?お姫様抱っこのが良かった?」

シシリー「あ・・・背中乗ります!」

 

 シシリーは、オロオロしながらシンの背中に乗った。

 ユリウスがある事を言う。

 

ユリウス「消耗しているのであれば、ゲートで戻れば良いのでは?」

ジークフリード「バーロー。空気読め。歩くのも鍛錬だ。」

 

 ユリウスの発言に、ジークフリードはそうつっこむ。

 そうして、全員が帰る。

 

シン「キツかったよね?ゴメンシシリー。シシリーは皆とは別に治癒魔法の練習もあるから、戦闘技術が身に付く機会を無駄にしてほしくなかったんだ。本番の戦場に立った時、何か起きて後悔したくないし。」

シシリー「気にしてませんよ私。治癒魔法だって私が志願した事ですし、私を想っての事だってちゃんと分かってます。だから、頑張って強くなりますね。これからも宜しくお願いします。」

シン「で、でも無理だけはしないでね!?辛かったらちゃんと言ってね!?」

シシリー「そ、そんな事言いません。だって………な………君に………。」

シン「へ?」

シシリー「大好きなシン君に、いっぱい褒めて貰いたいですから。」

 

 シシリーはそう言う。

 それを見たマリアは。

 

マリア(ホラね。分かりやすいなぁシシリーも。)

オーグ「やれやれ、どう転んでもイチャイチャするんだな彼奴ら。」

滅「そうだな。」

ジークフリード「青春だなぁ!」

タクヤ「青春だな。」

ジークフリード「はぁ、俺もそろそろ身を固めるかな?」

クリスティーナ「アナタが?嘘でしょう?」

ジークフリード「お堅い誰かと違って、相手の1人や2人は居るんでね。」

クリスティーナ「失礼な、私も相手の当てくらい…………。」

 

 クリスティーナは、ジークフリードの言葉に反論しようとするが、言葉に詰まる。

 それを見たジークフリードは。

 

ジークフリード「居ねぇんだろ?どーせ。」

クリスティーナ「五月蝿い!刺しますよ!」

シシリー(勿体無かったかなぁ………。お姫様抱っこ…………。)

 

 ジークフリードとクリスティーナがいつもの喧嘩を始める中、シシリーはそう思うのであった。

 それを見ていたユウトは。

 

ユウト(俺も…………恋人とか出来るのかな………。そういえば、何か、イネスに告白されたけど、どうしたら良いんだろう。)

 

 そう思っていた。

 それを見ていたヒューマギア組は。

 

滅「ユウトの奴、何か悩んでいるようだが。」

迅「多分、イネスに告白された事を考えてるんじゃない?」

亡「まあ、彼には、ゆっくりでも良いから、答えを出して欲しい物ですが。」

雷「まあ、いずれ答えを出すだろ。」

 

 そう話していた。




今回はここまでです。
ミナトの一族は、アークに悪意をラーニングさせた先祖がいるという設定にしました。
少し、アンケートを取りたいと思います。
それは、メタルクラスタホッパーを暴走させるか否かです。
メタルクラスタホッパーと同時に、プログライズホッパーブレードを作って、予め暴走させないようにするかどうかです。
そのアンケートを、しばらくやりたいと思います。
賢者の孫とジオウの小説を投稿していますが、投稿頻度はそこまで高くはありません。
感想、リクエストは、絶賛受け付けています。
リクエストは、目次でそのページに飛べます。
ユウトのヒロインは、現状、イネスです。

 追記

アンケートで、現状、暴走させるが多いですが、どんな感じにやったら良いのか、意見がある人は、ここまでお願いします。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=285803&uid=373253


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第20話 暴走する悪意

 魔物狩りが終わった後、アールスハイド王国の王城のとある部屋では、ジークフリード、クリスティーナ、ドミニク、ルーパーが集まっていた。

 

ジークフリード「しっかしシンの奴、よくまあこのタイミングで生まれてきてくれたもんですよねぇ。シンが居なかったら、マジな話この世界は終わってたかも知れないッスもんね。それにユウトもここによく来てくれたんッスから。」

ドミニク「意思を持つ魔人、オリバー=シュトロームを始め、大量に出現した魔人や魔物に、人類を滅ぼそうとするアーク。それに対抗し得る人類唯一の希望だからな。一部じゃウォルフォード君の事を”神の使い”だって呼ぶ人間も出てきているみたいだしな。とても創神教の神子さんには聞かせられん。まぁ、ウォルフォード君やイーウェル君に関しては、元より危惧する事は何も無い。っで、他のメンバーの様子はどうだった?」

 

 ジークフリードの言葉に、ドミニクはそう頷いて、クリスティーナに問いかける。

 

クリスティーナ「実力を見ると言う体で、アルティメット・マジシャンズに付き添いましたが、そもそもあの程度の状況で誰1人として全力を出す者は居ません。」

ドミニク「…………一応、災害級も多く生息する危険区域なんだがな。」

クリスティーナ「寧ろ、それすら利用して、自分達の訓練に組み込んでしまってますから。精神的な未成熟さや甘えさはまだまだ見られますが、個々人の戦力は既に一国の軍隊にも匹敵するでしょう。故にシンやユウト以外のメンバーも、独立した戦力としてカウントすべきだと思います。」

ジークフリード「後衛向きだったり、治癒に秀でてたり、魔道具の扱いに長けてたり、魔力供給が出来てたり、って特徴はありそうなんで、まあその辺は臨機応変に動いて貰いつつ………。」

ドミニク「基本は災害級や魔人の討伐に専念して貰う、と言う所か。」

 

 クリスティーナの言葉に、ドミニクは驚きつつ、話す。

 ジークフリードも、ドミニクの言葉に頷く。

 

ジークフリード「まぁ、同盟国には既にゲートによる移動手段が確保されてるみたいなんで、何かあったら各国に派遣して、フォローに回って貰えば良いんじゃないですかね。」

ドミニク「陛下も『アルティメット・マジシャンズは世界の共有戦力』と提言しているからな。恐らく各国ともその案には納得はしてくれるだろう。」

ルーパー「まあ何にせよ、現段階で決められるのはそんな所じゃねぇか?連合会議はその方向で進めろよ。」

ジークフリード「そうッスね。そもそも味方以上に敵の情報も不足し過ぎてますしね。」

クリスティーナ「殿下達すら苦戦した相手、それが何人居るのか。それによって戦力もまるで変わってきてますからね。」

ドミニク「そればかりはフタを開けてみんと分からんか…………仕方あるまい。(ブルースフィアで見たあの連中…………あの全員がそんな実力者だとは考えたくはないが………。)」

 

 ドミニクは、以前にブルースフィア帝国で目撃したゼスト率いる斥候隊を思い出した。

 

ルーパー「俺達、軍人の戦力の底上げも必須だな。」

クリスティーナ「魔法師団の実力アップは、シンのお墨付きを貰いましたよ。」

ルーパー「ほう、そりゃ何よりだ。」

ドミニク「クリスティーナ、騎士団の様子は最近どうだ?少しは訓練の成果は出ているのか?」

ジークフリード(あ。)

 

 ドミニクの質問に、クリスティーナは顔を少し顰める。

 

クリスティーナ「実力は上がってます。………が、魔法師団程の急激は戦力アップかと言うとそれは…………。」

ジークフリード(始まった、面倒臭〜のが…………。)

ルーパー(嘘でもそこは強くなったって言っとけよ………。)

 

 クリスティーナの言葉に、ジークフリードとルーパーは呆れ、ドミニクは怒鳴る。

 

ドミニク「魔法師団に後れを取っている場合か!!何かないのか!!ウォルフォード君やイーウェル君の戦術で、我々にも応用出来そうなものは!!」

ジークフリード(いちいち対抗心燃やすなよ…………。)

クリスティーナ「そうですね。これは昔、シンに貰った物なんですが。」

 

 クリスティーナは、そう言いながら懐から、1つのナイフを出した。

 

ドミニク「ナイフ?」

ジークフリード「あ!それ俺も貰ったわ!懐かしーな!」

クリスティーナ「懐かしいって、まさか無くしたんじゃ?」

ジークフリード「いや、な、な訳あるかよ!大事に部屋に仕舞ってあるっつーの!多分………。」

 

 クリスティーナのジト目に、ジークフリードは言葉を詰まらせる。

 ドミニクは、クリスティーナに質問をする。

 

ドミニク「何だ?大層な武器なのか?」

クリスティーナ「魔力を通します。」

 

 クリスティーナがナイフに魔力を通すと、刃が高速で振動した。

 それを見たドミニクとルーパーは驚く。

 

ドミニク「そ、それは………!!」

ルーパー「ウォルフォード君の剣と同じ!?」

クリスティーナ「バイブレーションソードのナイフ版です。ですが殺傷力は同等です。単純び全騎士団員に持たせれば、容易く戦力アップに繋がるでしょう。」

ドミニク「おお!では…………!」

 

 そうしよう。

 ドミニクがそう言おうとするが、クリスティーナが遮る。

 

クリスティーナ「ただし、それは騎士でない者も同様です。魔法使いだろうと、剣の素人だろうと、子供が使っても同じ殺傷力を得られるのです。」

ドミニク「…………。」

クリスティーナ「超振動による攻撃に力はいりません。技もいりません。ただ、手っ取り早く強くなれる。しかし、私達騎士がそれで良いのでしょうか?」

 

 クリスティーナの言葉に、ドミニクは頷く。

 

ドミニク「技術を必要としない”強さ”か。それは即ちそれまでの技術を捨てると言う事……。それで胸を張って『強くなった』と言えるかは甚だ疑問だな。」

クリスティーナ「これに頼り切れば必ず剣の技術は衰退する。なので私もこれは奥の手として所持しているだけです。お守りみたいなものですね。容易く手に入れる力に意味はありません。私はそう思います。」

ドミニク「…………そうだな、ウム。口惜しいが、その通りだ。やはり地道は訓練しかないか、我々は。」

 

 ドミニクは、そう結論づける。

 ジークフリードは、呆れながらクリスティーナに言う。

 

ジークフリード「オメーもよぉ、案が無いなら回り諄い言い方しねーで…………。」

クリスティーナ「今のは前提の話です。」

ジークフリード「?」

クリスティーナ「それを踏まえた上で、我々の技術を無駄にせず、尚且つ、早急に戦力アップが出来るある道具を、先日ウォルフォード商会で発見しました。此方はすぐにでも導入すべきです。我々だけでなく魔法師団も。御三方もご存知の『アレ』ですよ。」

ジークフリード・ルーパー「まさか…………トイレか?」

クリスティーナ「はぁ…………。」

 

 的外れな事を言うジークフリードとルーパーに、クリスティーナはため息を吐く。

 一方、魔人領にいるアズは、アークと話していた。

 

アズ「アーク様。魔人たちが、一向に人類を滅ぼそうとしないの。あのシュトロームの無能が、現状に満足してるみたいで。」

 

 アズがそう話す中、アークは黙っていた。

 すると、アークが話し出す。

 

アーク「…………ならば、ゼロワンの動きを封じる。これを奴に使え。」

 

 そう言って、アークがアズに渡したのは、通常のプログライズキーよりも遥かに大きい物だった。

 

アズ「これは?」

アーク「…………お前が手に入れた、シャイニングアサルトホッパーのデータを元に、レイトが開発していた飛電メタルと合わせて作成した、メタルクラスタホッパーだ。」

アズ「分かったわ。」

 

 アズは、アークからメタルクラスタホッパープログライズキーを受け取り、アールスハイドへと向かっていく。

 魔人達は、アークが動いた事には気づいていない。

 一方、ユウト達は、シン、オーグ、シシリー、マリアと話していた。

 

シン「結局、フラー大司教が使ってたプログライズキーの出自は分かったのか?」

ユウト「ああ。あれは、アークがレイトが遺したデータを用いて作成したみたいだ。」

オーグ「なるほどな…………。レイトの遺した情報を悪用したという事か。」

タクヤ「そうだな。」

コハル「それに、レイドライザーも、レイトが遺したデータから生成していた様だ。」

シシリー「悪用されていたんですね………。」

マリア「なんて奴なのよ………。」

ミナト「とにかく、警戒するに越した事はないでしょう。」

 

 そんな風に話していた。

 すると。

 

???「はぁ〜い。仮面ライダーにアルティメット・マジシャンズ。」

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

 1人の女性が話しかけてきた。

 そこに居たのは、アズだった。

 

オーグ「貴様、何者だ?」

シン「何か、イズに似てね?」

ユウト「アズ…………!」

アズ「そう。私は、アーク様の秘書、アズ。」

シシリー「アークの………!?」

マリア「秘書………!?」

タクヤ「てめぇ、何の用だ?」

コハル「まさか、そっちから出向いてくるとはな。」

ミナト「そうだな。」

アズ「私が用があるのは、貴方よ。ユウト=イーウェル。」

 

 アズはそう言って、ユウトを指差す。

 ユウトは、厳しい表情で、アズを見る。

 

ユウト「…………どういう意味だ?」

アズ「貴方の動きを封じる為にね。」

 

 すると、アズは高速移動をして、ユウトに迫る。

 ユウトは、すぐにゼロワンドライバーを装着して、ライジングホッパープログライズキーを取り出す。

 だが、アズの方が早かった。

 

HIDEN METAL’S ABILITY!

 

 メタルクラスタホッパープログライズキーを起動して、ゼロワンドライバーのオーソライザーにスキャンする。

 

オーソライズ!

 

シン「あれは………?」

シシリー「プログライズキー………?」

タクヤ「メタルクラスタホッパーか!?」

コハル「まずい!」

ユウト「まさか…………!?」

アズ「貴方に悪意を、身をもってラーニングさせてあげる。」

 

 アズはそう言って、ゼロワンドライバーに、メタルクラスタホッパープログライズキーを装填する。

 

プログライズ!

メタルライズ!

 

 メタルクラスタホッパープログライズキーが、ゼロワンドライバーに装填されると、ゼロワンドライバーのシステムが書き換えられていく。

 アズは、すぐにユウトから離れる。

 すると、ゼロワンドライバーから無数のバッタが現れて、ユウトを漆黒のオーラが包み込む。

 

ユウト「うううっ…………!うわぁぁぁぁ!!」

シン「ユウト!?」

 

 ユウトは絶叫して、全員がユウトの方を見る。

 一方、ユウトの意識は、衛星アークへと転送されていた。

 

ユウト「ここは…………衛星アーク………。」

 

 すると、周囲に浮かんでいた0と1の文字が、夥しい数の滅、亡、暗、殺、戦、争、悪、憎、死、獄、愚、蔑、凶、邪、虐、痛、怨、恨などと言った、負の感情を連想させる文字がユウトに纏わりつく。

 衛星アークは、帝国の平民達の悪意も集めていた様で、平民の魔人が、貴族達にした事が、ユウトにもされていく。

 平民の魔人の姿をした悪意が、ユウトに何度も、何度も攻撃していく。

 目を魔法の様な悪意で攻撃され、刺し貫かれていく。

 傷はついていないが、それは、ユウトの精神を確実に削っていく。

 

ユウト「やめろぉぉぉぉぉ!!!!うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 衛星アークの空間内で、ユウトの絶叫が響く。

 一方、現実のユウトにも、銀色のアンダースーツに包まれ、目の前に小さいバッタが、群がって、巨大なバッタになり、それがユウトに纏わりつき、アーマーとなっていく。

 

Secret material!飛電メタル!

メタルクラスタホッパー!

"It's High Quality."

 

 ユウトは、ゼロワン・メタルクラスタホッパーへと変身する。

 変身が完了すると、赤色だった目は、若草色に変わる。

 それを見たアズは、ほくそ笑んでいた。

 

アズ「じゃあ、私はこれで。」

オーグ「待て!」

 

 アズはその場から去っていった。

 

シン「オーグ!これ、やばいんじゃないのか!?」

オーグ「そうだな!こんな市街地で、戦闘は出来ん!」

タクヤ「シン!あの荒野にゲートを繋げ!」

マリア「そうか!あの荒野なら………!」

コハル「私たちが、ユウトをゲートに押し込む!」

ミナト「早くしたまえ!」

シン「おう!」

 

 シンは、ユウトの背後に行き、ゲートを開く。

 タクヤ、コハル、ミナトの3人は、変身する。

 

ZETSUMETU EVOLUTION!

ASSAULT BULLET!

THUNDER!

BREAK HORN!

 

タクヤ「フン!うううう………!うおおおおおお!!」

 

 タクヤはそう叫び、アサルトウルフプログライズキーを無理矢理こじ開ける。

 二人はそれぞれのキーを、ショットライザーに装填する。

 

オーバーライズ!

オーソライズ!

Kamen Rider...Kamen Rider...

Kamen Rider...Kamen Rider...

 

 タクヤはショットライザーをバックルから外して、ユウトに向ける。

 3人は、叫ぶ。

 

「「「変身!」」」

 

『『ショットライズ!』』

パーフェクトライズ!

 

 タクヤとコハルは、ショットライザーのトリガーを引き、ミナトは、サウザンドライバーにプログライズキーを装填する。

 

レディーゴー!アサルトウルフ!

"No chance of surviving."

ライトニングホーネット!

"Piercing needle with incredible force."』
『When the five horns cross, the golden soldier THOUSER is born. 』
『"Presented by ZAIA."

 

 タクヤはバルカン・アサルトウルフに、コハルは、バルキリー・ライトニングホーネットに、ミナトはサウザーに変身する。

 

シン「ゲートは起動したけど、どうやってユウトを押し込むんだよ!?」

タクヤ「そんなの決まってる!無理矢理に体で押し込むだけだ!」

コハル「こんな時にも脳筋か。」

ミナト「だが、それが一番良いだろう。武器を使った攻撃では、防御されるだけだ。」

コハル「…………そうだな。」

 

 タクヤ、コハル、ミナトの3人は、ユウトが放つクラスターテンペストを躱しながら、ユウトに近づき、3人がかりで押し込む。

 

タクヤ「オラァァァ!!」

コハル「フッ!」

ミナト「ハアッ!」

 

 なんとか押し込む事に成功して、ユウト、タクヤ、コハル、ミナトは、魔法練習用の荒野に転送された。

 

シン「俺たちも行くぞ!」

オーグ「ああ!」

シシリー「はい!」

マリア「ええ!」

 

 シン達も、ゲートで、魔法練習用の荒野へと向かう。

 タクヤ達は、ユウトの事を見ていた。

 

タクヤ「それで、この後はどうする?」

コハル「そうだな。メタルクラスタホッパープログライズキーを抜ければ、どうにかなると思うが………。」

ミナト「なら、私がどうにかしよう。」

コハル「大丈夫か?」

ミナト「大丈夫です。」

 

 ミナトは、そう言いながら、サウザンドジャッカーを持って、ユウトに駆け出していく。

 だが、サウザンドジャッカーで攻撃するも、悉く防御される。

 ミナトも、クラスターセルを用いた攻撃を躱すが、次第に命中していく。

 ミナトが怯んでいると、ユウトはミナトの首を掴み上げ、クラスターセルで何度も攻撃していく。

 

ミナト「グッ………!グッ…………!グワァァァァ!!」

 

 クラスターセルの槍で、ミナトは吹っ飛ばされる。

 ミナトは、即座に起き上がり、ダイナマイティングライオンのプログライズキーを取り出す。

 

ミナト「なら…………!」

 

BURST!

 

 ミナトは、ダイナマイティングライオンのプログライズキーを起動して、サウザンドジャッカーのユニバーサルスロットに装填する。

 

"Progrise key confirmed. Ready to break."

 

 そして、ジャックリングを引く。

 

サウザンドライズ!

 

 ジャックリングを引いた後、トリガーを引く。

 

THOUSAND BREAK!

 

 ミナトの両隣に、エネルギーで作り出したガトリングガンで、ユウトに攻撃していく。

 

オーグ「凄まじい攻撃だ…………。」

シシリー「ユウトさんは、大丈夫でしょうか………?」

シン「…………おい!見ろ!」

 

 煙が晴れると、そこには、巨大な金属の塊が。

 それは、ユウトが展開したクラスターセルの防御壁だった。

 

マリア「嘘………!?」

 

 マリアがそう呟く中、ユウトは、クラスターセルを槍の形にして、ミナトに向けて飛ばす。

 

ミナト「クッ!」

 

ジャックライズ!

JACKING BREAK!

 

 ミナトは、ジャッキングブレイクを発動して、紫色のシャインクリスタを展開するが、突破されて、吹き飛ばされる。

 

ミナト「うわぁぁ!!」

 

 ミナトは、変身解除する。

 だが。

 

タクヤ「ハァァァ!!やれ、コハル!」

コハル「フッ!」

 

 タクヤが、ユウトに向かって銃撃をして、ユウトの意識がタクヤに向いた瞬間、コハルが羽を広げて、ユウトの懐に入り込み、プログライズキーを抜く。

 すると、変身が解除される。

 ユウトは、前のめりに倒れる。

 

シン「ユウト!」

 

 シン達は、ユウトのそばに駆け寄る。

 ミナトも、痛む体に鞭を打って、ユウト達のそばに寄る。

 タクヤとコハルも変身解除する。

 ユウトは、気絶しているのか、動かなかった。

 その場には、重い空気が漂っていた。




今回はここまでです。
遂に、メタルクラスタホッパーが登場しました。
勿論、暴走させて。
ユウトには、飛電或人以上に凄惨な目に遭いました。
平民の魔人が、貴族に対して攻撃したのが、ユウトに攻撃しているという感じになって。
それには、ユウトの精神が削られていきます。
アークが平民の魔人の悪意をもラーニングした結果、そうなりました。
その為、アンケートは終了します。
プログライズホッパーブレードも、次回か近いうちに出す予定です。
まあ、なるべくは次回にするつもりですが。
感想、リクエスト等、絶賛受け付けています。


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第21話 悪意を止める善意

 ユウトが倒れて、レックスの家へと運ばれたその翌日、アルティメット・マジシャンズは、集められていた。

 アズの行動、そして、メタルクラスタホッパーに関してだ。

 

ユリウス「アズとやらは、アークの秘書………そう名乗ったのでござるか?」

オーグ「ああ。」

トニー「それに…………メタルクラスタホッパーか………。」

トール「でも、それって、敵に塩を送る行為なのではないですか?」

シン「そうだったら、良かったんだけどな。」

アリス「どういう事?」

シシリー「メタルクラスタホッパーは、制御が効かない物なんですよ。」

マリア「驚いたわね。一歩も動かないで、ミナトを倒したんだから。」

ユーリ「一歩も動かず…………!?」

リン「嘘…………!?」

マーク「それ…………かなりやばいんじゃないっすか…………!?」

オリビア「でも…………シャイニングアサルトホッパーとかになれば…………。」

 

 アルティメット・マジシャンズは、メタルクラスタホッパーの凄まじさに戦慄していた。

 オリビアがそう言うが、そこに。

 

ユウト「そうだったら………良かったんだけどね…………。」

シン「ユウト!」

オーグ「大丈夫なのか!?」

ユウト「俺だけが、ただ寝てるのは、性に合わなくてね。」

 

 ユウトが、イズの肩を借りながらやって来た。

 全員が心配する中、ユウトはそう答える。

 そんな中、トールが質問をする。

 

トール「それより…………先ほどのユウトの発言は、どういう意味ですか?」

雷「そのまんまの意味だ。」

亡「現在、ゼロワンドライバーは、メタルクラスタホッパー以外のプログライズキーには、一切反応しません。」

シン「どういう事だよ!?」

タクヤ「滅達が、ゼロワンドライバーを調べたんだがな………。」

コハル「アークの干渉によって、接続先がゼアからアークに変更されている。」

ミナト「つまり、ユウトは現在、メタルクラスタホッパー以外には変身出来ない。」

シシリー「そんな…………!?」

滅「この方法で、ユウトの動きを封じてくるとはな。」

迅「厄介な事になったよね…………。」

 

 アルティメット・マジシャンズは、戦慄していた。

 つまり、ユウトは現在、変身不可能であるという事を。

 すると、レックスが口を開く。

 

レックス「…………お前の消耗ぶりはどうしたんだ?」

ユウト「…………俺が、アークに接続した時、酷い目に遭った。」

シン「何だよ、それ…………。」

ユウト「ブルースフィア帝国の貴族に向ける平民の魔人の悪意が、俺を攻撃してきた。」

アリス「…………え?それ、どういう事?」

ユウト「そのまんまの意味さ。平民の魔人の悪意が、俺を攻撃してきた。目を魔法の様な悪意で攻撃され、刺し貫かれていく。」

オリビア「ええっ!?」

 

 ユウトの言葉に、全員が絶句する。

 暫くの沈黙の後、ミナトが口を開く。

 

ミナト「何にせよ、メタルクラスタホッパーをどうにかしなければならないな。」

オーグ「どうにか…………とは?」

イズ「悪意を打ち消すのは、善意です。」

 

 イズがそう言うと、全員の視線がイズに向く。

 イズは、説明する。

 

イズ「ユウト様は、アークの悪意によって苦しんでいます。今度は、私たちが、ユウト様を助けるのです。」

シシリー「そうですが…………。」

マリア「大体、どうするのよ。」

滅「それなら、考えがある。」

 

 イズの言葉に、シシリーとマリアはそう言う。

 すると、滅がそう言って、今度は、滅に視線が向く。

 

滅「メタルクラスタホッパーは、レイトが開発した、飛電メタルと呼ばれる素材が使われている。」

トール「飛電…………?」

トニー「メタル………?」

ユーリ「それが、どうしたのよ?」

迅「飛電メタルと、悪意のデータを打ち消す、善意のデータを使って、メタルクラスタキーを制御する武器を作る。」

リン「出来るの?」

雷「ああ!」

亡「今は、それしかありません。」

イズ「はい。」

ユウト「皆…………!」

 

 滅と迅の言葉に、雷、亡、イズが頷く。

 そうして、善意のデータを集める事になった。

 ちなみに、衛星ゼアの中に、飛電メタルに関するデータがあった。

 

オーグ「…………それで、どうやってその善意のデータとやらを集めるんだ?」

滅「この場にいる人の善意のデータ。そして、衛星ゼアにこれまでユウトがラーニングしてきた善意のデータを使う。」

迅「そうすれば、アークの悪意を打ち消せる筈だ。」

亡「その為には、これを使います。」

 

 そう言って、亡が取り出したのは、プログライズキーだった。

 

オーグ「それは?」

シン「プログライズキー?」

イズ「これは、貴方達の善意のデータを集める為に用意したプログライズキーです。」

シシリー「私たちの…………!?」

ユリウス「そうなのでござるか!?」

トール「これを使えば、善意のデータとやらが集まるという事ですか。」

ユーリ「どうやって使うの?」

亡「どこでも良いので、プログライズキーを翳して下さい。」

 

 亡がそう言うと、シン達は、そのブランクのプログライズキーを翳す。

 すると、プログライズキーの絵柄が浮かび上がる。

 

トニー「これで、良いのかい?」

雷「ああ。」

滅「それじゃあ、プログライズキーを回収するぞ。」

 

 滅は、アルティメット・マジシャンズの善意のデータが宿ったプログライズキーを回収する。

 亡は、ユウトに近寄る。

 

亡「ユウト。ライジングホッパープログライズキーを借りますよ。」

ユウト「ああ。」

 

 ユウトは、亡にライジングホッパープログライズキーを渡す。

 

タクヤ「それじゃあ、お前ら、頼むぞ。」

コハル「それで、アレを作ってくれ。」

迅「任せといて!」

イズ「ユウト様。しばらくお待ち下さい。」

ユウト「ああ。」

 

 ヒューマギア達は、地下へと向かっていく。

 そして、地下にあるラボに、アルティメット・マジシャンズから回収したプログライズキーと、自分たちのプログライズキーを、プログライズキーコネクタに装填する。

 そして、ライジングホッパープログライズキーを、ゼロワンドライバーのオーソライザーに似た装置に置く。

 

イズ「ゼア。お願いします。」

 

 イズが、ゼアに通信をする。

 すると。

 

ザット「衛星ゼアからの命令を受信。構築を開始します。」

 

 ザットという多次元プリンターが起動して、何かを作り出す。

 それは、まるで剣の様だった。

 一方、完成を待っていたユウト達の元に、王城からの使者がやって来る。

 

使者「アウグスト殿下!」

オーグ「どうした?」

使者「実は、マギアとなった魔人の集団を確認しました!」

シン「魔人だって!?」

ミナト「このタイミングでか………。」

タクヤ「俺たちも行くぞ!」

 

 ユウトを除いた全員が、外へと向かっていく。

 

ユウト(頼む………。)

 

 ユウトは、新型武器の開発が早く終わる様に祈った。

 一方、イズ達の方は。

 

イズ「もう少しです。」

滅「そうだな。」

迅「僕もそろそろ………これを使う時が近いかな。」

雷「そうかもな。」

亡「これから、魔人やアークとの戦いは激化していくでしょう。」

 

 そう言って、迅が手に持っていたのは、ショットライザーに似た武器だった。

 ただ、色が赤く、短刀状だったが。

 すると。

 

ザット「構築を完了しました。」

 

“Changing to lethal weapon プログライズホッパーブレード!”

 

 その音声が流れ、プログライズホッパーブレードが完成した。

 イズは、それを持って、ユウトの元へと向かう。

 

イズ「ユウト様。」

ユウト「イズ………。」

迅「完成したよ!」

滅「お前も早く行け。」

ユウト「ああ!」

 

 ユウトは、ゼロワンドライバー、メタルクラスタホッパープログライズキーを持って、駆け出していく。

 イズも、プログライズホッパーブレードを持って、駆け出す。

 一方、タクヤ達は。

 

タクヤ「こいつら、マギアだが、魔人じゃねぇな!」

コハル「恐らく、アークが生み出したマギアといった所だろうな!」

ミナト「恐らくな。」

 

 タクヤ達は、変身して、そう言う。

 そこには、ベローサやクエネオと言った、ゼツメライズキータイプや、クラッシングバッファローなどと言った、プログライズキータイプのマギアが居た。

 プログライズキータイプのマギアは、アークが手に入れたデータを使用している。

 シン達は、若干苦戦していた。

 

シン「こいつら………意思を感じない!」

オーグ「ただの魔人ではなさそうだな!」

シシリー「このままじゃ………!」

マリア「どうすんのよ!」

ユウト「諦めんな!」

 

 その叫び声が聞こえてきて、全員が向くと、ユウトとイズが居た。

 

オリビア「ユウトさん!イズさん!」

マーク「出来たんすね!?」

ユウト「ああ。イズ、頼むぞ。」

イズ「はい。」

 

 そう言って、ユウトは、腰にゼロワンドライバーを装着した。

 

ゼロワンドライバー!

 

 そして、メタルクラスタホッパープログライズキーを構える。

 

EVERYBODY JUMP!

 

 メタルクラスタホッパープログライズキーを起動して、オーソライザーにスキャンする。

 

オーソライズ!

 

 ユウトは、メタルクラスタホッパープログライズキーをキーモードにして、叫ぶ。

 

ユウト「変身!」

 

 ゼロワンドライバーに、メタルクラスタホッパープログライズキーを装填し、メタルライザーを畳む。

 

プログライズ!

メタルライズ!

 

ユウト「うぅ、うぅぅぅ!うわぁぁぁ!!」

 

 ユウトは、赤黒いオーラに包まれる。

 

Secret material!飛電メタル!

メタルクラスタホッパー!

"It's High Quality."

 

 ユウトは、ゼロワン・メタルクラスタホッパーに変身して、暫くの絶叫の末、黙ってしまい、そのまま歩き出す。

 すると、イズはユウトの前に来て、プログライズホッパーブレードを前に出す。

 ユウトがそれを掴むと。

 

プログライズホッパーブレード!

 

ユウト「うぅ………!うぅぅ………!うおおおお!!」

 

 悪意のオーラに包まれていたユウトだが、プログライズホッパーブレードを手にした瞬間、その悪意のオーラが霧散して、ユウトの意識が、アークからゼアへと移る。

 

ユウト「ゼア………!」

 

 すると、メタルクラスタホッパーの装甲が、クラスターセルに戻り、プログライズホッパーブレードのエネルギー増殖炉、メタルブリードリアクターに吸収される。

 すると、その部分に、小型ライダモデルのリトルクラスタになる。

 そして、アーマーが再構成される。

 

ユウト「よし、体が自由に動く!」

アリス「凄い………!」

リン「暴走が、止まった。」

ユウト「皆、ありがとうな。後は、俺に任せろ。…………お前らを止められるのはただ1人、俺だ!!」

 

 ユウトはそう叫んで、マギアの方へと跳躍する。

 ユウトは、プログライズホッパーブレードのトリガーを一回引いて、刀身に飛電メタルを生成して、斬撃する。

 そして、マギアの数が減っていく。

 

シシリー「凄い………!」

マリア「これが、本当のメタルクラスタホッパーの力………!」

シン「ああ…………!」

オーグ「凄まじいな………。」

 

 ユウトは、マギアを倒していく。

 

ユウト「さぁて!止めと行こうか!」

 

 ユウトは、アタッシュカリバーを取り出して、連結させる。

 

ドッキングライズ!

 

 そして、プログライズホッパーブレードをメタルライザーにスキャンする。

 

アルティメットライズ!

 

 すると、待機音が流れて、ユウトは、構えてトリガーを引く。

 

ユウト「ハァァ………!」

 

アルティメットストラッシュ!

 

ユウト「ハァァァァ!!」

 

 ユウトは、マギアに向かって、巨大なクラスターセルの斬撃を飛ばす。

 マギアが受け止める中、エネルギーの斬撃波を放ち、更に追撃にもう1発撃ち込む。

 

ユウト「ハァァァァ!!」

 

トストラッシュ

 

 アルティメットストラッシュを発動して、マギアを全滅させる。

 

タクヤ「やっぱり、すげぇな………。」

コハル「ああ…………。」

ミナト「これで、暴走問題はどうにかなったな。」

 

 こうして、メタルクラスタホッパーの暴走問題が片付いた。

 その数日後、魔人領攻略作戦に向けた世界連合閣僚会議当日。

 連合国のほぼ中央に位置する国、ダーム王国。

 この地にて、連合会議が行われる事となった。

 会議室では。

 

ドミニク「『人類存亡の危機に際し、各国が協力し、事態の収拾に当たる。なお、連合締結中は、1つの集団として機能し、その行動に対し、何ら見返りを求めないものとする。』以上が、連合の調印内容となります。」

 

 ドミニクは、そう宣言する。

 ここに、7カ国の代表が揃った。

 アールスハイド王国からは、ドミニク=ガストール。

 イース神聖国からは、ハミル=マキナ。

 エルス自由商業連合国からは、ウサマ=ナバル。

 スイード王国からは、エドガー=フランネル。

 カーナン王国からは、ガラン=シェパード。

 クルト王国からは、エンリコ=ベーカー。

 ダーム王国からは、ラルフ=ポートマン。

 

 

ドミニク「アールスハイド王国軍務局長のドミニク=ガストールであります。現在、我々人類は魔人の大量出現と言う人類の存続すら危うい状況に置かれております。しかし!我々に希望が無い訳ではありません。大まかな作戦内容は既に作成しております。まずは、それを纏めた書類に目を通して頂きたい。」

 

 ドミニクは、作成した書類を各国の代表達に配った。

 それを見た、ラルフは。

 

ラルフ「各国軍は大型までの魔物の討伐を担当………災害級の魔物と魔人は、アルティメット・マジシャンズが担当する………!?ドミニク局長………!本気ですかこれは………!?」

ドミニク「無論本気です。最善であると確信した上での立案です。」

 

 ラルフは、ドミニクにそう聞くが、ドミニクはそう言う。

 すると、ガランが手を上げる。 

 

ガラン「国家養羊家のガランだ。場違いに思われるかも知れないが、ウチの国じゃ養羊家の国家権限は軍より上でな。アルティメット・マジシャンズとはちっと面識があるんで、俺が代表に選ばれた次第だ。彼らの力は本物だぜ。俺はこの案で文句は無え。」

ラルフ「……………。」

ウサマ「エルスの外交官ウサマ=ナバルや。ウチらはこの作戦、どっちかと言うと資金繰り中心に関わらせて貰いますよって。軍のお偉いさん差し置いて、ウチが出しゃばらせて貰いましたわ。あの子らなら作戦に掛かる資金に見合う働きをしてくれますわ。そこは間違いなく保証しますよって。」

エドガー「同意見です。」

エンリコ「同じく。」

ハミル「……………。」

ドミニク「目の前で災害級の魔物や魔人を討伐する姿を見た者は皆賛成のようですな。」

 

 皆が賛成の中、ラルフは反対を示す。

 

ラルフ「正気ですか!?強いとは言え、たかだか15〜16歳の子供ですよ!?私は反対だ!!魔人討伐の実績があるとは言え、年端も行かない子供達にその様な重大任務を任せるなど、私は納得出来ません!!」

 

 ラルフは、そう叫ぶ。

 全員が黙る中、ウサマは、何かを確信していた。

 

ウサマ「(何やな、その言い方、あの子らを心配してると言うよりは…………。)ラルフさん言いましたかいな?ホンなら、何ぞ代替案でもあるんですか?」

ラルフ「我々が一致団結して立ち向かえば、必ずやどんな困難も打開出来るはずです!!」

全員「…………?」

 

 ラルフの言葉に、全員が呆気に取られる。

 すぐに復活したウサマは、ラルフに突っ込む。

 

ウサマ「いや精神論やのうて、具体的な作戦案を訊いとるんです。」

ラルフ「そ、それは…………そもそもそこまで力を持った集団など、魔人以上に世界の脅威となる可能性も!!」

エドガー「彼らは『世界の共有戦力』です。ディセウム陛下の提言をお聞きになりましたか?」

ラルフ「それは国家間で取り決められた単なる表向きの協定でしょう!彼らが結託して暴動や反乱を起こさない保証などありますまい!!」

エリンコ「安全な城壁の上に兵を待機させ、自分達のみが危険な死地に赴く彼らが、そのような事を企む輩だとは思えませんなぁ。」

ラルフ「そうやって周りの信頼を得ようとしているのですよ!その内化けの皮が!!」

 

 ウサマの言葉に、言葉を詰まらせたが、すぐに反論するが、エドガー、エンリコがそう言い返す。

 尚もアルティメット・マジシャンズが危険だと言おうとすると、ガランが発言を止めさせた。

 

ガラン「軽率な発言は控える事を勧めるぜ。」

 

 ガランは、そう言う。

 ラルフが、凄まじい怒気にドミニクの方を見ると、今のドミニクは激怒寸前だった。

 

ドミニク「アルティメット・マジシャンズには我が国の誉れ叩き第一王子アウグスト=フォン=アールスハイド殿下も属していると知っての発言ですかな?ラルフ=ボートマン長官!」

ラルフ「っ!し、失礼致しました………。言葉が過ぎたようです…………。」

 

 ドミニクの言葉に、自分が言いすぎた事に気づいたラルフは、椅子に座る。

 そんなラルフに、ハミルが話しかける。

 

ハミル「ラルフ君、あなたがそこまで彼らを認めないのは何か理由が?」

ラルフ「マキナ様…………?」

ハミル「彼らは信頼に値する人物ですよ。三国会談の時の一件を知っているでしょう。レイダーという怪人と化した大罪人フラーの仕出かした事を彼の責任のみに留まり、イースの罪まで言及しなかった。本来国同士が敵対関係になっても可笑しくなかった程の事件なのにです。それにアルティメット・マジシャンズと言えば、民衆の間で”聖女”と呼ばれるシシリー=フォン=クロードさんや、今や”神の御使い”とまで言われているシン=フォルフォード君や、仮面ライダーゼロワンに変身して戦うユウト=イーウェル君が居るのですよ。彼らを信じ、人類の運命を託すのにまだ何か不満が?」

 

 マキナは、ラルフを諌める様にそう言う。

 ラルフは、こう考えていた。

 

ラルフ(そ……それが気に食わないのだ!!”聖女”だと!?それは現教皇が今の地位に就く前に呼ばれていた呼称!!神子でもない人間が、敬愛する教皇の嘗ての名で呼ばれて良いものか!!それに”神の御使い”だと!?創神教にとって神とは絶対なる存在!!一個人が!!魔法使い風情が!!軽々しく口にして良い称号ではない!!創神教の信徒として、容認出来ん!!それだけは!!)

 

 ラルフは、シンが神の御使い、シシリーが聖女と呼ばれているのが気に食わない様だった。

 ドミニクは、ラルフに声をかける。

 

ドミニク「他に案が無ければ、このまま続けさせて頂きます。宜しいか?」

ラルフ「………………。」

 

 ドミニクの言葉に、ラルフは、ただ黙っていた。

 会議終了後、ラルフはイライラしながら帰って行った。

 ドミニクは、呟いた。

 

ドミニク「ダーム王国は決議に不服なようですな。」

ハミル「いえ、そう言う訳ではありませんよ。」

ドミニク「?」

 

 ドミニクがそう呟く中、ハミルは否定して、ドミニクは首を傾げる。

 ハミルは、理由を説明する。

 

ハミル「創神教内、特に宗教国家であるイースやダームでは現在、”聖女”や”神の御使い”の存在の容認派と否定派に分かれているのです。ダームの民もその多くは容認派なのですが、ボートマン長官個人は、完全に否定派の様です。先程の反応ではっきりしました。」

ドミニク「信心深過ぎるのも考えものですな。…………っと失礼、これはあなたに言う言葉ではないな。」

ハミル「フッ。(些細な事かも知れないが、この事が作戦に影響しなければ良いが………。)」

 

 彼は心の中でそう願っている。

 不安がある中、魔人領攻略作戦が動こうとしていた。




今回はここまでです。
メタルクラスタホッパーが、制御出来るようになりました。
そして、魔人領攻略作戦が始まろうとしています。
東映特撮ファンクラブにて、11月10日から、『ゼロワンothers 仮面ライダーバルカン&バルキリー』が、会員登録していれば、無料で見られますね。
そして、リバイスのVシネマも、タイトルや主題歌が発表されましたね。
ヒロミさんが、死なないと良いんですが………。
目次から、この小説のリクエストを受け付けている活動報告に飛べます。
いずれ、この小説で、REAL×TIME、ゼロワンothersのエピソードをやる予定です。
ただ、REAL×TIMEは兎も角、ゼロワンothersに関しては、かなりエピソードが変わります。
どういう感じにして欲しいのか、リクエストをお願いします。
感想、リクエストは、絶賛受け付けています。
ちなみに、この小説では、アークワン、アークスコーピオン、リアライジングホッパーはちゃんと出します。
ただ、アークワンの変身者は、原作ゼロワンとは異なりますが。
ちなみに、ゲンムズのエピソードをやるかどうかは、未定です。


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第22話 教皇の宣誓と出陣

 世界連合閣僚会議の後、アルティメット・マジシャンズはユウト、タクヤ、コハル、滅亡迅雷、ミナトを呼んで会議をしている。

 

オーグ「まず、戦力分配としては、アールスハイドを除く魔人領周辺4国に、エルス・イースから等分して兵力を分ける。アールスハイドは他に比べて軍事力が強大な為、戦力増員はされない見込みだ。我々アルティメット・マジシャンズも、同じ4班に分かれ、周辺国の軍隊に合流する。正確な時期やメンバー分けはまだ未定だがな。」

マリア「でも殿下、それって少しアールスハイドが不利じゃないですか?軍は今のままで、私達も他国へ散っちゃうんじゃ?」

オーグ「その点は心配ない。シンの『魔力制御による魔法の制度アップ』については、魔法学術院を通して徐々に世界に広まりつつあるが、今の所、我が国だけが結果が出せているからな。」

トール「実質、アールスハイド王国軍が突出している訳ですか。」

オーグ「そう言う事だ。加えて騎士団も最近になって新たな手法で戦力アップを図っているらしいな。練兵場で極秘の特訓中だそうだ。(何となく予想は付くが。)」

 

 オーグはそう言いながら、シンを見る。

 それを見たシンは。

 

シン(あぁ、アレの発注がやたら増えたのって、そう言う事か。)

 

 合点がいっていた。

 すると、オーグはニヤニヤしながら言う。

 

オーグ「そして、またシンの元に莫大な金が転がり込む訳だな。」

「「?」」

シン「変な言い方すんな。どうせ使い道が無いんだよ。」

オーグ「贅沢な話だな。」

ユウト「シン、億万長者か?」

 

 オーグの言葉に、アリスとリンが首を傾げて、ユウトはニヤニヤしながら言う。

 するとオーグが何かを閃いた。

 

オーグ「それだけの資産があるなら、どうだ?愛人でも囲ってみては?」

 

 オーグのその言葉に、シシリーが反応する。

 

シン「ちょ!?おま!!滅多な事言うな!!」

 

 それを聞いたシンは焦りだす。

 そして、全員がシシリーの方を見ると。

 

シシリー「シン君。」

 

 シシリーがシンの名前を呼ぶと、周囲に風が巻き起こった。

 

マリア「え〜と………。」

リン「今回のコレは……………。」

シシリー「愛人さんを囲うんですか?」

 

 彼女からとてつもない風が吹き荒れていた。

 

アリス「わ〜〜〜〜〜〜〜…………。」

マリア「風魔法だ……………。」

ミナト「彼女、怒らせると怖いタイプか。」

コハル「やれやれ…………。」

タクヤ「やべぇな…………。」

ユウト「………………。」

 

 アリス、マリア、ミナト、コハル、タクヤがそう言う中、ユウトは黙っていた。

 そんな中、シンは必死に言う。

 

シン「ま、まさか!そんな事、微塵も考えた事ないよ!!」

シシリー「そうですか?」

シン「そうそう!!」

シシリー「なら良いです。」

シン(寿命縮む……………。)

 

 シシリーは、シンの言葉を聞いて、風が収まり、シンがホッとしていると、オーグは笑いを堪えていた。

 

シン「てんめぇ……………!!お陰で大惨事になる所だぞ!!」

オーグ「落ち着け、今のは忠告だ。」

シン「忠告?」

オーグ「世界一の魔法使いで、使い切れない程の富を持ち、おまけに聖女が婚約者だぞ。どれだけの人間が羨んでると思うんだ?」

ユウト「どうでも良いだろ。」

滅「お前からしたらな。」

オーグ「……………ユウトに関しては、人の事を言えないと思うが…………油断してると、火の無い所で煙を立たせる者が出て来るからな。そうなる前にお前の良識を少し試してみただけだ。」

シン「そうだったのか……………。(俺の為に…………。)」

 

 オーグの言葉にユウトがそう言って、滅が呟く中、オーグはシンに対してそう言って、シンは嬉しくなる。

 だが、トールの言葉にすぐに霧散する。

 

トール「騙されてますよシン殿。何時もの殿下の悪巫山戯です。」

シン「はっ!!てめぇ!!」

 

 それを聞いたシンは怒って、逃げるオーグを追い回す。

 

マリア「シンって、案外単純よね。」

オリビア「ですよね。」

タクヤ「あれが本当に賢者の孫なのか?」

コハル「まあ、ああいう奴なのだろう。」

 

 それを見たマリア、オリビア、タクヤ、コハルがそう話す。

 すると、オーグはいきなり立ち止まる。

 

オーグ「ちょっと待て、今ので思い出したぞ。」

シン「は?

オーグ「お前に伝える事があった。例のお前の本な、来週発売だからな。」

シン「嘘ぉ!?」

アリス「あ〜、そう言えば前に言ってましたね。シン君の物語が本になるとか何とか。」

シン「す、すっかり忘れてた…………。マジかよ、発売直前じゃねえか…………。」

迅「タイトルは何なの?」

 

 オーグがそう言うと、シンは頭を抱える。

 迅は、オーグにタイトルを聞く。

 

オーグ「「あぁ。『新・英雄物語』。前作のマーリン殿とメリダ殿を描いた『英雄物語』の続編に当たるものになる。」

ユーリ「殿下ぁ、私達先に読めたりしないんですかぁ?」

オーグ「そう言うと思って、人数分用意して来た。昼休みの間に読むといい。」

 

 オークが異空間収納から新・英雄物語の本を出して皆に配り、皆が読む。

 それを見た途端、全員が爆笑する。

 内容としては。

 

シン『お爺様、僕はこの力を世界の平和の為に役立てたく思います。』

シン『アウグスト、僕の力で良ければ何時でも貸そう。僕らの友情は永遠だ!』

シシリー『私は貴方に出会う為に生まれて来ました。この心と身体は全て貴方のものです。』

シン『たとえ何者であるとも、僕らの愛を引き裂く事など出来はしない。この剣と魂に誓って、君を守り抜くと約束するよ。』

 

 こんな感じ。

 

アリス「お爺様って……………って言うか僕って〜〜〜…………!」

マリア「”僕らの友情は永遠だ”〜〜〜〜………誰よこれ〜〜………!」

シシリー「わ…………私…………こんな事言ってません…………。」

アリス「剣と魂〜〜〜〜〜〜!何時の間に誓ったのシン君〜〜〜〜〜〜!」

コハル「これは、中々笑えるな。」

ユウト「やべぇ……………腹が痛ぇ…………!」

 

 一部の人は、読みながらそう言う。

 滅亡迅雷は笑っていないのかというと、必死に笑いを堪えていた。

 アリスは、シンに話しかける。

 

アリス「ちょっ、この台詞!言ってみてよ!お願いだから〜〜〜〜!!」

シン「完全に創作じゃねえか!良いのかよおい!!こんなある事ない事!」

オーグ「いや、内容自体に嘘は無いぞ?若干の脚色はあるが。」

シン「これで若干!?」

 

 アリスの発言を無視して、シンはオーグに叫ぶ。

 オーグは説明をする。

 

オーグ「まぁ、これをみて笑えるのはお前の知り合い位のものだ。その他は殆どの人間はこれを読んで感動し、お前の事を心優しい英雄だと認識するだろう。」

シン「これまさか、俺の印象を良く持たせる為にわざとこんな話にしたのか…………?魔人討伐後も周囲に脅威を感じさせない為に………?」

オーグ「いいや、ただの作家のセンスだ。」

シン「やっぱり創作じゃねえか!!」

オーグ「因みにこの本、世界同時発売だからな。」

ユウト「お。シンの新なる伝説が、世界に広まるのか。」

シン「デカいよ規模が!!実感沸かねーから!!後ユウトも変な駄洒落止めろ!!」

アリス「ねー!ここの台詞言ってみてよー!」

シン「黙れ!!」

 

 シンは、ユウトやアリスの発言に叫ぶ。

 そんな中、トールはオーグに話しかける。

 

トール「殿下。殿下もお人が悪い。読み手がシン殿に悪印象を持たないような文章にしろと指示したのは殿下でしょう?」

ユウト「俺達知ってるんだぞ。」

オーグ「何の話だ?」

トール「シン殿に知られると恥ずかしいんでしょう?」

オーグ「五月蝿いぞトール。勝手な事言うな。」

ユリウス「殿下も素直じゃないで御座るなぁ。」

オーグ「お前ら、最近遠慮が無さ過ぎるぞ。」

ユリウス「おや、ダメで御座るか?」

オーグ「……………別に構わんが。」

ユウト「意外と可愛い所があるな。オーグは。」

オーグ「ユウト、それを言うなよ…………。」

 

 オーグは、照れ臭そうにする。

 それを見て、ユウトはニヤニヤしながら揶揄う。

 だが、オーグは真面目な顔になり、ユウトに言う。

 

オーグ「ユウト。」

ユウト「ん?」

オーグ「お前は、婚約者は作らないのか?」

ユウト「無理言わないでくださいよ。俺には無理ですって。」

オーグ「現在、王城の方にも、ユウトに会わせて欲しいという未婚の貴族の女性が押し寄せているんだ。どうにかしろ。」

ユウト「どうにかって…………。」

トール「こちらは……………シン殿以上に面倒ですね。」

ユリウス「そうでござるな。」

 

 オーグの言葉に、ユウトは困り、トールとユリウスはそう話す。

 一方、イース神聖国では、枢機卿の男が何処かへ向かっていた。

 

枢機卿「教皇猊下、私で御座います。」

教皇猊下「あら、あなたね。開いているわよ。」

枢機卿「失礼します。」

 

 枢機卿が扉をノックすると、部屋の主が入室許可を出す。

 枢機卿は扉を開けて、教皇猊下の部屋へ入る。

 

枢機卿「おや、読書中で御座いましたか。」

教皇猊下「ええ。あなたこれ知らない?最近港で有名なのよ?」

枢機卿「そちらでしたら、私も購入しました。」

 

 教皇猊下が読んでいたのは、オーグが見せていた、あの本だ。

 

教皇猊下「あらそう、面白かったでしょ?」

枢機卿「ええ。何せ今話題の”神の御使い”と呼ばれる者の話ですからな。」

教皇猊下「新・英雄物語かぁ…………。」

枢機卿「そちらを読む限りでは、彼は正しく”神の御使い”と呼ばれるに相応しい人物であるようですな。」

教皇猊下「確かにそうね。この本が正確に事実を書いているのであればね。」

 

 枢機卿がそう言う中、教皇猊下がそう言って、枢機卿が尋ねる。

 

枢機卿「事実ですか?しかし、ここに書かれている事に疑う余地はないように思いますが。」

教皇猊下「行いわね。でも、人物像まで正確に書かれているかは疑問だわ。だって、あの”賢者”の孫なのよ?とても真面な人物だとは思えないじゃない。」

枢機卿「猊下?賢者殿ですよ?世界の英雄の孫なんですから、それは立派な…………。」

教皇猊下「あなたは賢者の本当の顔を知らないのよ。」

枢機卿「??」

教皇猊下(私は”賢者”の本当の顔を知っている。そして”導師”の事も。)

 

 そう。

 賢者マーリンと導師メリダと教皇猊下は深い関わりを持っている。

 教皇猊下がそう思うくらいには。

 

枢機卿「恐れ入りますが猊下、本日参ったのはその本の話をする為ではありません。例の世界首脳会議の日程が決まりましたので、お知らせに参ったのです。」

教皇猊下「あらそう、早かったわね。アールスハイドから紹介された通信機を導入したお陰で、各国との交信がスムーズになりましたからな。」

枢機卿「猊下、この度開催される世界首脳会議に、アルティメット・マジシャンズも来るそうです。気になるようでしたら、一度彼に直接お会いしてみては?」

教皇猊下「そうね、良い案だわ。」

枢機卿「それでしたら、丁度良い訪問理由が御座います。先日マキナ司教から直接嘆願が御座いまして。」

 

 どうやら、教皇猊下は、シン達に会う事にしたらしい。

 一方、魔人領にある北西部の海岸沿いでは、1人の魔人が弓矢で1羽の鳥を一発で射抜いていた。

 すると、拍手が来て、その男が振り返ると、ゼストが居た。

 

ゼスト「お見事。ベテランハンターの腕前は健在のようだな。捜したよラドリー君。」

ラドリー「アンタ、確かシュトロームの所に居た幹部の?どうしてここが分かった?」

 

 ラドリー。

 魔人領を離れた魔人であり、ハンターだ。

 ラドリーは、ゼストに理由を聞く。

 

ゼスト「情報収集と偵察は得意分野でね。お仲間はまた別の場所かな?」

ラドリー「(そういや、此奴ら斥候部隊だったな。)さあね、今更俺達に何の用だ?」

ゼスト「少しばかり君達の力を借りたい。」

ラドリー「?」

 

 ラドリーがゼストに理由を聞く。

 ゼストは、来た理由を語る。

 

ゼスト「人間達が世界連合を組んだ件はご存知かな?どうやら近々、奴らはこの国を攻め入って来る様子でね。此方も戦力増強を図っておきたいのだよ。勿論相応の謝礼は用意するつもりだ。」

ラドリー「お断りだね。アンタらに感謝はしているが、それとこれとは話が別だ。俺達ハンターを手前勝手に利用しやがった帝国の腐れ貴族共に復讐は出来た。俺達の目的はそれで終わったんだ!魔人になろうが何だろうが、それ以上を求める気はない!」

 

 そう。

 ラドリーを始めとする離反した魔人達の目的は、飽く迄ブルースフィア帝国の貴族達の復讐。

 それ以外の目的など無かった。

 つまり、別ベクトルで、シュトロームと似た理由だった。

 

ラドリー「俺達は自由に生きたい。これ以上何に縛られるのもゴメンだ!」

ゼスト「自由にか…………。残念だが、それは難しいぞ。人間達、連合軍の侵攻が始まれば、何処に居ようと君達は追い詰められる。当然”魔人”である君達は奴らからすれば討伐対象だ。人間相手とは言え、魔人数人で太刀打ち出来る規模ではない。揃って犬死にを選ぶなら無理強いはしないが。」

ラドリー「………………。」

 

 ラドリーがそう言うが、ゼストはそう言って、それを聞いたラドリーは口を閉ざす。

 

ゼスト「人間達を掃討出来た暁には、君達が安全に暮らせる地を用意しよう。勿論、莫大な資金もな。魔人になろうが、金の価値が変わらないのは、ハンターである君達がよく知っているはずだ。」

ラドリー「勝算はあるのか?」

ゼスト「勿論だ。君達と共に城を出た平民の魔人達も、今我々が招集している所だ。君達に合流させて少しでも戦力を…………。」

ラドリー「いらねぇよあんな奴ら!戦闘技術も無い連中の頭数をどれだけ集めたって、役に立ちゃしねぇよ!余計な事をするな!」

ゼスト「まぁそう言うな。何なら捨て駒にでも囮にでも使えば良い。」

ラドリー「仲間と相談する。言っておくが、最終的に判断するのは俺達だ!」

 

 ラドリーは、ゼストに対してそう叫ぶ。

 ラドリー達も、人間達との戦争に参加する事となった。

 一方、アークとアズは。

 

アズ「世界連合…………結成されちゃったね。」

アーク「この程度、予測出来ている。メタルクラスタホッパーが、制御されるのもな。」

アズ「どうしましょうか?」

アーク「……………様子見だ。どうせ、私の元には辿り着けまい。」

 

 アズとアークは、そう話していた。

 一方、滅亡迅雷とレックスは。

 

滅「いよいよ、魔人領に乗り込むのだな。」

迅「うん。」

雷「これには、アークはどう動くのかね。」

亡「分かりませんね。」

レックス「まあ、俺はいざという時に備えて、アールスハイドに残るとしよう。」

迅「僕も、これを持っていくよ。」

亡「私は、以前作っておいた、これを持っていくとしましょう。」

 

 そんな風に話していた。

 迅が持っていたのは、ショットライザーに似た赤い短剣で、亡が持っていたのは、ガトリングがついたプログライズキーだった。

 その数日後、ダーム王国で、遂に世界首脳会議の日が訪れた。

 ダーム大聖堂では、アルティメット・マジシャンズが外の様子を見ていた。

 ちなみに、イズはアールスハイドに残っている。

 

シン「世界首脳会議かぁ。流石に凄い厳戒態勢だなぁ。」

ユウト「そりゃな。(前世でのG7みたいなもんだろうし。)」

オーグ「連合7国の国家元首が勢揃いだからな。万が一何か起きたら、それこそ魔人以前の大問題だ。」

マリア「歴史上初よねぇ、こんな事態。」

 

 シン達はそう話す。

 そして、オーグが最終確認を行う。

 

オーグ「今後の流れを確認しておくぞ。今日明日にかけて行われる首脳会議では、世界連合の調印式を魔人領攻略作戦の出陣式が同時に行われる。その声明は通信機を通じて連合国中に同時に配信される。声明を聞いた後、各国で出撃準備をしている軍が魔人領に侵攻を開始する。目標は、魔人達の拠点を見付け出し、殲滅する事。無論、魔人達も我々の動きは察知しているはずだし、ただ手を拱いて待ち受けているとは思えんがな。」

ユウト「そして、向こうにはアークも居る。何をしてくるか分からない以上、警戒するに越した事はない。」

オーグ「ユウトの言う通りだ。」

タクヤ「それがどうした。どんな罠だろうと、こじ開ければ済む話だ!」

コハル「プログライズキーとは訳が違うんだぞ。」

 

 オーグの言葉に、ユウトがそう言って、タクヤとコハルがそう話す。

 すると、1人の兵士が入ってくる。

 

兵士「あ、あの!失礼します!調印式の前に、ア…………アルティメット・マジシャンズの皆様にご挨拶したいと言う御方が参られております!!」

オーグ「フム、どなたが参られた?」

兵士「そ、そ、それが…………イ、イース神聖国の…………エ、エカテリーナ教皇猊下で御座います!!」

 

 兵士の言葉を聞いた途端、皆は慌てる。

 一部の人を除いて。

 

オーグ「っ!?」

マリア「はい!?きょ…………教皇猊下が今からここに!?ちょっと待ってよ!!急にそんな!!」

アリス「あ、私髪大丈夫!?乱れてない!?」

リン「大丈夫。何時ものアホ毛だけ。」

ユーリ「どうしよう!私ったらこんな服でぇ!失礼じゃないかしらぁ!?」

シン「いや、それ俺に失礼じゃね?」

ユウト「教皇猊下か……………。」

ミナト「何故いきなり…………。」

 

 いきなり教皇が現れる事に、首を傾げるユウトとミナト。

 そんな中、シンは質問する。

 

シン「な、なあ、何で皆そんなに緊張してんの?」

マリア「だって創神教の教皇猊下よ!?国王や王族より更に雲の上の存在なのよ!!」

シン「そ、そんなもんなのか…………。(あんま宗教的なものに関わってこなかったせいか………ピンと来ないな…………。)」

オーグ「全員兎に角落ち着け!くれぐれも失礼のないようにな!」

全員「は…………はい!!」

滅「迅、雷、亡。落ち着いて対処するぞ。」

迅「うん。」

雷「おうよ。」

亡「はい。」

オーグ「お通ししてくれ。」

兵士「畏まりました!」

 

 兵士は扉を開け、教皇猊下をお通しした。

 

エカテリーナ「お初にお目にかかります。アウグスト殿下。そしてアルティメット・マジシャンズの皆さん。イース神聖国代表にして、創神教で教皇の地位に就いております、エカテリーナ=フォン=プロイセンと申します。」

 

 彼女がエカテリーナ=フォン=プロイセン。

 イース神聖国の教皇猊下である。

 全員がエカテリーナの美しい姿に見とれている。

 

シン(この人が…………。)

オーグ「これはご丁寧に、お初にお目にかかります。アールスハイド王国王太子、アウグスト=フォン=アールスハイドで御座います。そして此方が…………。」

シン「(お、俺も名乗るの!?さ……流石に冗談言える雰囲気じゃないな……。)ア…………アルティメット・マジシャンズ代表、シン=ウォルフォードです。」

エカテリーナ「そう、あなたが…………”神の御使い”、そして”魔王”シン=ウォルフォード君ね。そして、あなたが。」

ユウト「はい。ユウト=イーウェル。仮面ライダーゼロワンです。」

エカテリーナ「そう。」

 

 オーグ、シン、ユウトが名乗る。

 すると、エカテリーナは、シンをじっと見つめる。

 

シン「!?」

エカテリーナ「今回の魔人出現は正に世界の…………人類存亡の危機です。そんな時代に人類の歴史上、至上とも言える実力を持ったウォルフォード君とイーウェル君が現れた。私達は、ウォルフォード君。貴方が神が遣わされた御使いだと思っているわ。」

シン「か、買い被り過ぎですよ…………。」

エカテリーナ「そう?何か心当たりはないのかしら?」

シン(っ!?こ…………この人まさか………俺が前世の事や………転生した事を分かって言ってるのか………!?)

 

 シンは、エカテリーナが自分が転生者である事を分かったと思い、焦る。

 

エカテリーナ「貴方の使う魔法は随分と特殊だそうね。それで、もしかしたらと思ったのだけれど…………。」

シン「は、はは………違いますよ俺………僕は神様の指示は受けてませんから………。」

エカテリーナ「それから、貴方がシシリーさん?」

シシリー「は…………はい!」

 

 エカテリーナは、緊張するシシリーに歩み寄る。

 すると。

 

エカテリーナ「まあ!やっぱりそう!ずっと会いたかったわ!貴方が昔の私と同じ”聖女”と呼ばれてると聞いて、ず〜〜〜っと気にしてたのよ!!」

 

 冷静から突然気さくキャラに豹変してシシリーの両肩を掴んだ。

 

全員「!?」

エカテリーナ「ねぇ、貴方は大丈夫!?周りから五月蝿く言われてない!?『聖女の癖に』とか『聖女らしく振る舞え』とか!!」

シシリー「え………ええ………特には………。」

ユウト(性格変わりすぎだろ。)

 

 ユウトは、エカテリーナが急に性格が変わった事に唖然となっていた。

 

エカテリーナ「なら良かったわぁ。私の時は兎に角周りが五月蝿かったから。フラーの件では、貴方達にも随分迷惑掛けちゃったし、色々責任感を感じてたの。ごめんなさいね。」

リン(何と言うか…………。)

アリス(意外と結構気さくな人…………?なのかな??)

エカテリーナ「それで、貴方達の結婚式の話も聞いたの。私が貴方達の式を執り行う事が正式に決まったから、それを伝えに来たのよ。ただ、貴方達だけで結婚式を挙げちゃうと、色々言う人が居るかも知れないから………アウグスト殿下達との合同の挙式になるけど、そこは了承してね?」

シシリー「は…………はあ。」

リン「ついでにオリビア達も一緒にお願いしたら?」

オリビア「やや、止めて下さい・・・」

エカテリーナ「明日は世界連合の調印式と出陣式。世界に平和が戻るように頑張りましょう。」

 

 それを聞いたリンは、オリビアにそう言うが、オリビアは首を横に振る。

 そう言って、彼女は部屋から出た。

 エカテリーナが部屋から退出した後、全員が一息つく。

 

オーグ「ふう…………。まさか教皇猊下が直接来られるとは…………。」

シン「お?流石のオーグも緊張したみたいだな。」

オーグ「相手が相手だぞ。緊張するなって方が無理だ。」

ユウト「無理もないか。」

マリア「って言うか、シンこそもっと緊張感持ちなさいよね?」

コハル「教皇猊下の前だと、あんまり緊張感を感じなかったが。」

シン「うーん…………。俺創神教徒じゃないから、イマイチ教皇さんの偉大さが実感出来なくてさ。何かフレンドリーそうだし。」

 

 シンがそう言うと、全員がビクッとした。

 そして、シンに詰め寄る。

 

マリア「ちょっと!それ絶対教皇猊下に言っちゃダメよ!!いやいや、他の神子さんの前でも言っちゃダメ!!」

トール「礼儀を弁えて下さい礼儀を!!」

オリビア「教皇さんって何ですか!さんって!」

シン「ぉわっ!?わ、分かったって!!」

 

 マリア、トール、オリビアがそう叫んで、シンは頷く。

 

タクヤ「まあ、確かにな。」

ユーリ「殿下や陛下への態度を見てるとどうもねぇ…………。」

トニー「普通に『エカテリーナさん』とか言い出しそうだよねぇ。」

シシリー「コホン。兎に角、人前ではちゃんと教皇猊下と呼んで下さいね?シン君。」

シン「分かりました。」

マリア(この男、その内シシリーの尻に敷かれると見た。)

 

 シシリーにそう言われたシンは頷き、マリアはそう思う。

 一方、エカテリーナが歩いていると、枢機卿が話しかけてくる。

 

枢機卿「如何でしたかな?かのシン=ウォルフォードは?」

エカテリーナ「そうねえ、例の本は彼のイメージを保つ為、人間性の表現にかなりの補正が加えられているのではないかと思ったのだけれど…………。そんな事はなさそうね。言葉遣いは兎も角、彼に野心は無いわ。」

枢機卿「左様で御座いますか。」

エカテリーナ「それより、気になった事があるわ。」

枢機卿「は?」

エカテリーナ「彼に『神から遣わされた御使いではないか?』と言ったら…………彼、否定はしたけど、明らかに動揺したのよ。」

枢機卿「で………ではまさか………彼は本当に神の御使いで…………。」

エカテリーナ「まだそれは分からないわ。神の指示は受けてないと言ってたしね。」

枢機卿「指示は受けていない…………ですか。」

エカテリーナ「そう。ひょっとしたら彼は、神の存在には触れたのか…………或いは、それに準じる何らかの力の導きで、この世に生まれた可能性はあるわね。」

 

 エカテリーナは、シンが転生者である事を半ば察していた。

 流石に、違う世界からの転生者である事は察していなかったが。

 

枢機卿「…………猊下。」

エカテリーナ「ええ、ウォルフォード君には悪いけれど、これも世界平和の為。人類の心を一つにする為の神輿になって頂きましょう。」

枢機卿「…………ただ、アールスハイドの定めた彼に関する協定…………そこに反する事になるのでは?この後の調印式前の最終会議。協定を定めた当人であるディセウム陛下も居られます故…………。」

エカテリーナ「承認して貰うわよ。一個人の立場と、全人類の平穏…………秤などかけるまでもないのではなくて?」

 

 エカテリーナは、何を企んでいるのか。

 枢機卿の言葉に対しても、そう返す。

 そして翌日、遂に調印式及び出陣式の日が訪れた。

 

重臣「通信機と拡声機の準備は万全か?」

兵士「問題ありません。」

 

 通信機と拡声機の準備は万全だった。

 そして、連合国の兵士達が集まり、更に連合国に拡声機が設置された。

 

シン「いよいよだな。」

オーグ「ああ。今、神殿内で行われている調印式が終わり次第、すぐに出陣の合図だ。我々も一旦解散だな。」

 

 そして神殿の扉が開き、エカテリーナ教皇猊下、ディセウム陛下、スイード国王、各国の国王達が出て来た。

 エカテリーナが前に立ち、こっそりとシンを見て笑みを浮かべた。

 

シン(何だ?今の…………。)

ユウト(何する気だ?)

エカテリーナ「お集まりの皆さん…………。そして、この通信を聞いている連合国の皆さん、いよいよ時は満ちました。我々人間が、この世界に脅威を齎す魔人に対し、打って出る時が来たのです。ですが、皆さんの中には、本当に魔人を討伐出来るか不安に思ってる人も多い事でしょう。しかし、皆さん安心して下さい。我々には、仮面ライダーゼロワンが居ます!それが彼、ユウト=イーウェルです!」

群衆「うおおおおおおおおお!!!!」

エカテリーナ「そして私達には、神が付いています。その証拠に神は………彼を!!シン=ウォルフォードを遣わして下さったのですから!!」

 

 エカテリーナはそう宣言する。

 群衆は、後ろに居るシンを見る。

 そんなシンが後ろをちらっと見る。

 

オーグ「いや、お前だお前。」

群衆「うおおおおおおおおおお!!!!」

アリス「凄い!シン君って神の使いだったの!?」

シン「んな訳あるか!!」

ユウト「あの人やりやがったな。」

タクヤ「面倒な事になりそうだな。」

コハル「ああ。」

 

 アリスがシンに対してそう聞くが、シンは叫ぶ。

 ユウト達は、そう話す。

 

エカテリーナ「私は確信します!神の御使い、そして仮面ライダー達が居る限り!我々の勝利は揺るぎないものであると!!さぁ皆さん!!彼らと共に!!世界に平和を取り戻す戦いを始めようではありませんか!!」

ドミニク「出撃!!!」

エドガー「全軍出撃ーーーーー!!!!」

 

 エカテリーナ、ドミニク、エドガーの宣言で遂に、連合全軍が出陣した。

 そんな中、エカテリーナはシンに対して、ベロを出す。

 俗に言うテヘペロだ。

 

シン(あ、確信犯だ、あの人…………。)

ユウト「こんな事、ディセウム陛下は認めたのかよ。」

シン「そうだよ!!何で俺がこんな事に!!」

オーグ「諦めろシン、ユウト。あれは既にやり込められた顔だ。」

シン「マ………マジかよオイ………か…………”神の…………御使い”…………?お…………俺は兎も角…………こんなの絶対納得しない人達も居るんじゃ…………。」

亡「その可能性は高いでしょう。」

 

 シンの呟きに、亡はそう言う。

 亡の予感は、的中していた。

 ラルフ=ポートマンが壁を殴って怒りを爆発させていた。

 

ラルフ「バカな…………!!教皇猊下であろうお方が…………何を血迷った事を…………!!」

 

 ラルフの心の中は、シンに対する悪意が生まれつつあった。

 一方、アールスハイドの王城では。

 

メリダ「やりやがったねぇ…………!あんの小娘ェェ…………!!」

 

 メリダは、怒りを見せていた。

 そんなメリダに、ジュリアが話しかける。

 

ジュリア「お、落ち着きになってメリダ様。今のは世界の非常事態………各国がシン君とユウト君の力に頼るのは仕方無い事では………?」

メリダ「そんな事は百の承知だよジュリア!シンとユウト自身に『世界を救う』と言う明確な意思がある以上、私だってそれ以上の事を言うつもりはない。しかしだ!!創神教の教皇と言う実質、この世界のトップが各国に向けて『シンは神の御使いだ』だって宣言しちまったんだ!これじゃ間違い無くシンは創神教の重要人物だと認識する者が出て来ちまう!!そうなれば、他国でもシンを政治利用する輩が現れ兼ねない。勿論、シン自身の意思と無関係にね。」

マーリン「確かにそれは、ワシらにとって最も許し難い事じゃな。」

 

 そう。

 一部の人が懸念したように、メリダの逆鱗に触れてしまったのだ。

 

メリダ「くっくっくっくっくっ…………!!」

 

 突然、メリダが笑い狂った。

 

メリダ「これはちょいと、お灸を据えてやらないといけないねぇ…………!」

メイ「メリダ様怖いです…………。」

エリザベート「しいっ!メイ!聞こえたらどうするんですの!」

メリダ「悪いが、ちょいと用事が出来た。私らはこれで失礼するよ。ホレ、マーリン。ゲートを開けとくれ。」

マーリン「ダーム大聖堂じゃったな。若い頃行った事があって良かったわい。」

 

 そう言って、マーリンとメリダは、ダーム大聖堂へと向かう。

 それを見ていたジュリアは。

 

ジュリア「生きて帰れるかしら…………あの人達…………。」

「「?」」

 

 ジュリアはそう呟いて、メイとエリザベートは首を傾げる。

 一方、メリダ達が来ている事を露知らずの人たちは。

 

アーロン「いやぁ、エライ盛り上がっとりましたなぁ。」

 

 アーロン=ゼニス。

 エルス自由商業連合国の大統領。

 

ディセウム「ウム…………まあ…………シン君を”神の御使い”と認定する事で………民衆が希望を持てるのは確か………か…………。(ただやはり…………手離しでそれを喜んで良いものかどうか…………。)」

 

 ディセウムはそう言いつつも、不安を抱いていた。

 嫌な予感がすると。

 

エカテリーナ「ウフフ、久し振りに良い仕事をしましたわ。」

アーロン「しかし兄さんも、よく宣言を許可しましたなぁ。」

ディセウム「…………なあアーロン、それなんだが…………。」

 

 ディセウムは、アーロンの質問に答えようとしたが、答えられなかった。

 何故なら……………。

 

メリダ「小娘ええええええええ!!!」

 

 既にメリダが現れていたからだ。

 メリダの叫び声に、兵士たちは構える。

 

騎士長「な…………何者だ貴様!!」

 

 するとメリダから強力な魔力が溢れ出た。

 

騎士長「このただならぬ魔力…………猊下!皆様方も…………急ぎ退避を…………っ!?」

 

 騎士長は、3人に避難を促す。

 だが、エカテリーナ、ディセウム、アーロンがメリダを見て驚きを隠せなかった。

 

アーロン「ア…………ア…………アカン…………アカン………!!何で………ここに…………!?」

ディセウム(ああ………やはりなぁ………。)

 

 それを見て、アーロンは驚愕して、ディセウムは諦めの境地に入っていた。

 そんな中、メリダは3人に近づく。

 

メリダ「小娘…………よくもやってくれたねぇ…………!」

エカテリーナ「し…………し………師匠!?」

 

 メリダが近づく中、エカテリーナはそう叫ぶ。

 それを聞いた騎士長は、枢機卿に話しかける。

 

騎士長「枢機卿…………ま…………まさかあのお方は…………!」

枢機卿「あぁ、猊下の師と言えばただ1人…………。少女期、神子としての修行の旅を、とあるパーティと共にしていたと聞いたが………間違いない………!あれは………その時猊下を鍛えあげられたその人…………”導師”メリダ殿だ…………!!」

 

 騎士長と枢機卿はそう話す。

 メリダは、エカテリーナに近寄ると、拳骨をエカテリーナに叩き込む。

 

エカテリーナ「あだぁ!!」

 

 それを見ていた周囲の人たちは。

 

騎士長(げ………猊下に………ゲンコツ………。)

 

 唖然となっていた。

 そして、エカテリーナはメリダに叫ぶ。

 

エカテリーナ「な、何するんですかぁ!!!」

メリダ「何するんですかじゃない!!!うちの孫をこんな事に利用したんだ!!それなりの覚悟は出来ているんだろうねえ!?」

 

 それを聞いたエカテリーナは、先ほどの宣言の抗議に来たのだと察した。

 

エカテリーナ「緊急事態なんですよ…………!?世界の………し…………仕方無いじゃないですか…………!!に…………兄さん!!何とか言ってやって下さい!!」

 

 エカテリーナは、ディセウムに向かって兄さんと叫んだ。

 それを聞いた騎士長達は。

 

騎士長「兄さん?」

枢機卿「元々導師殿のパーティにディセウム陛下も同行していてな。そこに加わる形で、猊下やアーロン大統領も参加したらしい。つまりは、兄弟子に当たる訳だ。」

 

 騎士長と枢機卿は、小声でそう話す。

 そのディセウムはというと。

 

ディセウム「いや確かに…………”神の御使い”と認定する事で、『シン君は人類の敵ではない』と皆に喧伝出来る…………そう思って昨日は納得したが………やはり、それは同時にマーリン殿とメリダ師の意向に反する事であるのも事実で…………。」

エカテリーナ「そ…………そんな………!兄さん………今更酷い…………。」

 

 ディセウムの言葉に、エカテリーナは涙を流す。

 すると、アーロンが手をにぎにぎしながら、メリダに話しかける。

 

アーロン「あ…………あの…………お久し振りですお師匠さん…………その…………もうその辺で許してやってもエエんとちゃいますやろか…………。」

メリダ「あぁ!?」

アーロン「ヒッ!!」

 

 アーロンは恐る恐るそう言うが、メリダの睨みに怯える。

 

メリダ「ああ、何だい小憎かい。」

アーロン「い………いややなぁ…………四十過ぎのオッサン捕まえて小憎はないでしょ………。」

メリダ「小憎は何時まで経っても小憎だよ。それとも何かい?エルスの大統領になった自分を敬えって言ってるのかい?アンタがそこまで上り詰める為の元手は、誰が出してやったと思ってるんだい?私の開発した魔道具の権利を幾つか譲ってやったのを忘れたのかい!?」

アーロン「そ…………そら分かってますわ………。敵わんなぁ…………相変わらずやお師匠さん…………。(ああ〜〜もう…………だから下手に怒らしたくないんや…………この人…………。)」

 

 アーロンは、メリダに色々とされたのか、人一倍、彼女を恐れていた。

 そんな中、メリダはつぶやく。

 

メリダ「正座。」

アーロン「……………え?」

メリダ「正座しな。」

アーロン「は…………はい!!」

 

 周囲が唖然とする中、メリダは3人を正座させて説教を始める。

 

メリダ「さて、小娘。シンについての、ディセウムの提言した協定の内容は知っているよね?」

エカテリーナ「…………はい。」

メリダ「アンタのした事はまさしく、それに反する『政治利用』だ。違うかい?」

エカテリーナ「それは…………はい。」

メリダ「シンの力を人類の為に役立てる事に反対なんざしないよ。でもねぇ…………これは違うだろう?」

エカテリーナ「…………はい…………。」

 

 エカテリーナは、メリダの言葉に頷くしかなかった。

 それだけの事をしたのだから。

 メリダは、次にディセウムに話しかける。

 

メリダ「ディセウム。」

ディセウム「は…………はっ!!」

メリダ「アンタなりに考えて、小娘の宣言を了承したんだろうけど、その結果、どんな影響が出るのかまでは考えなかったのかい?」

ディセウム「考えが至らなかった事実です…………。すみませんでした…………。」

メリダ「シンがイースや創神教とは関係無い事はアンタが証明するんだよ。良いね?」

ディセウム「はっ!」

 

 メリダはディセウムにそう言って、ディセウムはそう言う。

 最後に、アーロンに話しかける。

 

メリダ「小憎。」

アーロン「は、はい!!」

メリダ「何でアンタまで正座してんだい?」

アーロン「へ…………!?あははははは、つい昔の癖で正座してしまいましたわ!」

 

 アーロンは、よくメリダに怒られていて、正座させられていたというのもあり、本能的に正座していた。

 

メリダ「全くアンタ達は…………何時まで経っても手が掛かるったらないねぇ。」

アーロン「あ、あははははは……………。」

エカテリーナ(しばらく会わない内に、心の何処かで師匠の事を甘く見ちゃってたのかな…………。やっぱり勝てないや…………。)

 

 メリダは3人に呆れ、アーロンは苦笑して、エカテリーナはそう思う。

 それを柱の陰から見ていたマーリンは。

 

マーリン(三大大国のトップをあっさり正座させよる…………間違い無く…………メリダがこの世界のゴッドババアじゃの…………。)

 

 そう思っていた。

 メリダは、そんなマーリンに声をかける。

 

メリダ「聞こえてるよ。」

マーリン「あれ!?ワシ、声に出してた!?」

 

 メリダの言葉に、マーリンはそう言う。

 マーリンに気づいたエカテリーナとアーロンが話しかける。

 

エカテリーナ「先生!?お久し振りです!!」

アーロン「オヤッさん!元気そうで何よりです!!」

マーリン「うむ、お主らも元気そうで何よりじゃ。」

エカテリーナ「え?先生………何ですか、優しいフリなんかして…………!?」

アーロン「じょ…………冗談止めて貰えませんかオヤッさん…………。ブキミやわ………。」

 

 マーリンがそう言うと、エカテリーナとアーロンは引きながらそう言って、マーリンは少し傷つく。

 ディセウムが口を開く。

 

ディセウム「シン君に育てていく上で、段々と丸くなって行ったんだよ。昔の姿からは想像も付かないだろうがね。」

エカテリーナ「はあ…………。彼がそんな影響を…………。

マーリン「も…………もういいわい。用は済んだんじゃろう?帰るぞメリダ。」

メリダ「アンタら3人共、もうそれなりの立場なんだから、くれぐれも責任持って行動しとくれよ。おいたが過ぎるようなら、またすぐ飛んで来るからね。」

 

 メリダは3人にそう言い残し、マーリンのゲートで、アールスハイドに戻る。

 そんなハプニングがありつつも、ユウト達は出陣する。

 悪意が芽生えようとしていた。




今回はここまでです。
少し、長くなってしまいました。
更新が遅くなって、すいません。
他のやつの更新もあったので。
気づいたら、原作の賢者の孫が完結していました。
あまり、賢者の孫とゼロワンは合わないと思いますが、応援の程、よろしくお願いします。
賢者の孫とオーズの小説をやろうかなと考え中です。
やるかどうかは、未定ですが。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
例えば、ゼロツーやアークワン、アークスコーピオン、リアライジングホッパーをどのタイミングで出すかとかですね。
まあ、出すとしても最終決戦でですが。
ゼロツーは、最終決戦前で出しますが。
REAL×TIMEにゼロワンothersのエピソードもやる予定です。
もし、それらのエピソードにリクエストがある場合は、お願いします。
ユウトにヒロイン候補は、現状、イネスというキャラが居ますが、くっつけるべきなのか、くっつかなくても良いのか、どちらが良いという意見があれば、お願いします。
あと、もしシン達を変身させたいというのもあれば、受け付けます。


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第23話 魔人領への突入

 メリダに説教された後、エカテリーナはメリダに殴られた所を摩っていた。

 

エカテリーナ「あ痛たたた……………。たん瘤になってるわ……………。」

 

 あの時のメリダの拳が効いたのだった。

 それを見ていたアーロンとディセウムが口を開く。

 

アーロン「相変わらずやったなぁお師匠さん!カーチェが頭ド突かれた時、俺もケツがキュッってなったわ!」

ディセウム「ははは、アーロンは一番メリダ師に叩かれてたからなぁ。」

アーロン「そんなん、思い出さんといてくれる?兄さん。」

 

 アーロンがそう言うと、ディセウムがそう言って、アーロンは顔を顰める。

 すると、ディセウムは、懐かしい顔を浮かべる。

 

ディセウム「懐かしいなぁ……………。我々3人が揃うのも何年振りの事かな?」

エカテリーナ「……………師匠が本気で怒るのは何時だって、自分ではなくて誰かの為だわ。シン君の事、本当に大事にしてるのね。」

アーロン「……………。」

ディセウム「まるで、本当の孫のように思っているよ。メリダ師も……………マーリン殿も。」

エカテリーナ「…………私、謝った方が良いかしら?シン君にも。」

ディセウム「そうだな。この作戦が無事完了したらな。」

 

 エカテリーナは、シンに謝る事にしたそうだ。

 すると、アーロンがディセウムに話しかける。

 

アーロン「そう言や、部下から聞いたで兄さん。シン君は兎も角、息子さんも立派にやっとるそうやないか。」

ディセウム「奇遇だなアーロン。私も息子から聞いているぞ。三国会談じゃ、エルスは随分横暴な交換条件を出して来たそうじゃないか。」

アーロン「っ!い、いややなぁ…………アレは部下の独断やで!俺は無関係や!なははははは……………。」

ディセウム「使者の選出した当人のお前が無関係?面白い冗談を言うようになったな。」

アーロン「ぎくっ!?筒抜けですかいな…………全部…………?参ったわこりゃ…………。」

ディセウム「まあ、結果的にはこうして作戦実行に至った訳だし、今更どうこう言う気はないがね。」

アーロン「はぁ……………危うかったわ…………俺まで虎の尾踏む所や……………。」

 

 そう。

 三国会談にて、ウサマを選出したのはアーロンだ。

 それを聞いて、アーロンは顔を青ざめる。

 エカテリーナは、口を開いた。

 

エカテリーナ「ユウト君やシシリーさんやアウグスト殿下。それに他の多くの仲間達。私達がそうであったように、シン君も多くの素晴らしい出会いに恵まれているのね。」

ディセウム「その通りだよ。神の力や導きなど、そこには一切関係ない。信じようじゃないか。”神の力”ではなく、彼自身を。そして共に戦おう。」

 

 3人は、魔人領攻略作戦が上手くいくように祈ったのだった。

 一方、魔人領へと向かっているダームとイースの連合軍は。

 

兵士「いよいよ魔人領に向けて出発か………。気を引き締めて掛からねばならんな………。」

兵士「何せ魔人領は、今や魔人や魔物の巣窟。生きて帰れるかも分からんからな……………。」

 

 魔人領へと向かう事に、気を引き締めていた。

 そんな中、とある馬車では、ラルフ=ポートマンが苛立ちを見せていた。

 

ラルフ「何と言う事だ……………よりにもよって教皇猊下が、かのシン=ウォルフォードを”神の御使い”とお認めになられてしまうとは……………!」

高官「ポートマン長官………………。」

高官「長官!私も納得出来ません!創神教徒でもないのに”神の御使い”などと!」

騎士長「剰え、教皇猊下自らが奴の結婚式を執り行うそうではないですか!」

高官「どうにか教皇猊下に”神の御使い”の二つ名を取り下げていただかねば……………。」

ラルフ「…………我々が功績を挙げて…………シン=ウォルフォードなど不要であると、教皇猊下にお見せするのだ……………!”御使い”などまやかしであると、御目を覚まして差し上げようではないか……………!!」

 

 彼はシンが神の御使いだとまだ勘違いしていた。

 それを見ていた高官の1人が話しかける。

 

高官「幸か不幸か、奴は我が軍に合流して現在、魔人領を目指しております。奴以上の功績を目に見えて挙げられる絶好の機会ですな。」

ラルフ「フム……………これこそがまさしく神の御導き!神は我らにこそ慈悲を与えて下さっている…………!!(シン=ウォルフォード…………!!貴様の思い通りにはさせんぞ…………!!)」

 

 ラルフ=ポートマンの心の中には、シンに対する悪意が芽生えていた。

 一方、ユウトはイズと話していた。

 

ユウト「どうしたの?イズ。」

イズ「実は、レックス様から、言伝を受け取っています。」

ユウト「レックスから?」

 

 イズは、ライズフォンを起動して、メッセージを再生する。

 

レックス『ユウトか?このメッセージが届いた頃には、既に魔人領への突入が開始された頃だろうな。俺から伝える事は、二つある。一つは、ラルフ=ポートマンには、気をつけろ。』

ユウト「ラルフ=ポートマン?」

イズ「ダームの長官です。」

レックス『奴は、シンが神の御使いと言われるのを否定している。』

ユウト「そういう事か………………。」

 

 レックスの言葉を聞いて、ユウトは悟った。

 何かをしでかす可能性があるということを。

 

レックス『だから、奴には警戒しろ。そして、もう一つ伝える事がある。必ず、生きて帰ってこい。それだけだ。』

ユウト「ああ。」

イズ「では、ユウト様、気をつけて。」

ユウト「分かってるよ。」

 

 そうして、ユウトはシン達と合流して、魔人領攻略作戦に参加する。

 ちなみに、イズはアールスハイドに残る事になっている。

 オーグ、トール、ユリウス、滅、迅は、クルト王国軍に合流。

 アリス、リン、ユーリ、タクヤ、コハル、亡は、スイード王国軍に合流。

 トニー、マーク、オリビア、ミナト、雷は、カーナン王国軍に合流。

 そんな中、シンは考えていた。

 

シン(皆、無事に作戦を進められると良いけど……………。)

 

 そう考えていると、シシリーが話しかける。

 

シシリー「皆の心配してるんですか?シン君。」

シン「あ、俺また顔に出てた?」

シシリー「フフ。」

ユウト「お前ってそう言うの多いよな。」

 

 シンがそう言うと、シシリーが笑い、ユウトはそう言う。

 

シシリー「それにしても”神の御使い”ですか…………。凄いですね。」

シン「全く……………何時も何時も俺の知らない所で勝手に二つ名が……………。」

マリア「良いじゃない!二つ名って言うのは、実力が認められた人にしか贈られないんだから!」

ユウト「俺は基本的にゼロワンだしね。」

 

 シシリーがそう言う中、シンがそう呟く。

 すると、マリアがそう叫び、ユウトはそう言う。

 ユウトは、ゼロワンと呼ばれている。

 

マリア「ユウトの奴って響きが良いし格好良いよねぇ〜。私も何か欲しいなぁ〜。」

シン「人の気も知らずに呑気な事を…………よし、だったら俺が付けてやる。」

マリア「え!?本当!?何何!?」

シン(マリアのイメージと言えば…………。)

 

 マリアがそう言う中、シンはマリアの二つ名を付ける。

 その際、シンがマリアのイメージを思い浮かべると。

 

マリア『私は彼氏が欲しいのよ!』

マリア『何で私には出会いがないのかなぁ……………。』

マリア『はぁ…………リア充が…………。』

 

 彼氏を欲しいと言うマリアの姿だった。

 それを思い浮かべて、シンがつけたのは。

 

シン「”愛の求道者”とかかな…………。」

ユウト「あ。」

マリア「表出なさいシン。喧嘩売ってると見なしたわ。」

 

 それを聞いたマリアは、強引にシンを引っ張る。

 

シン「ええ!?何で!?結構マジで考えて……………。」

シシリー「もう、馬車で走ってる最中だよマリア。」

シン「大丈夫だって!マリアにもすぐ良い人が見付かるって!!」

マリア「何よ、その上から目線。」

シン「え!?何!?マジで外出るの!?」

ユウト「マリア、外に出て怪我でもしたら危ないぞ。」

マリア「大丈夫よユウト。此奴なら無傷で済みそうだし。」

ユウト「そういうもんかな……………。」

 

 マリアはシンを外に出そうとして、シシリーとユウトが止める。

 すると。

 

兵士「報告!!前方に多数の魔物が現れました!!」

シン「いや魔物じゃなくて!!…………って、え?」

 

 兵士の報告に、ユウト達は、前を見る。

 前方には、山羊の魔物の大群が道を阻んでいた。

 

ユウト「山羊の魔物の大群か。」

マリア「命拾いしたわねシン。」

シン「へ?」

マリア「アレで我慢してあげるわ。」

 

 マリアはそう言うと、馬車の屋根の上に立つ。

 

シン「いや、でも大型の魔物までは軍の人が対処するって………………。」

マリア「あ”?」

シン「お、怒んなよそんなに……………。」

ユウト「マリア。」

 

 シンの言葉にマリアが苛立ちながらそう言う中、ユウトも馬車の屋根の上に立つ。

 

ユウト「俺との初めての共同作業と行こうか?」

マリア「そうね、一気に行くわよ。」

ユウト「んじゃ。」

 

 そう言うと、ユウトはオーソライズバスターを取り出す。

 そんな中、シンは兵士に話しかける。

 

シン「すみません。」

兵士「はっ!何でしょうか御使い様!」

シン「み…………御使い様…………魔物の討伐ですけど、初手だけ任せて貰って良いですか?えーと…………兵士の皆さんを鼓舞する意味でも……………。」

兵士「分かりました!!すぐに指揮官に確認を取って来ます!!」

 

 そう言って、兵士は指揮官に確認を取りに行った。

 それを聞いたラルフは。

 

ラルフ「何?魔物の討伐をアルティメット・マジシャンズが?」

騎士長「出しゃばりおって!作戦内容にも目を通しておらんのか!」

高官「…………しかし、魔人領に近付いた途端にこれか……………。」

 

 騎士長がそう叫び、高官がそう言う中、ラルフは考える。

 

ラルフ「(何のつもりか知らんが…………。まあ奴らの実力をこの目で見ておいて損はないか…………。あの数…………幾ら奴らでもそう容易くは片付けられんだろうしな…………。)良かろう。初手のみ許可する。」

騎士長「フン!勝手な奴らだ。どうせ手こずって我らにすがり付いて来るのが目に浮かぶわ。」

 

 彼らはアルティメット・マジシャンズの力を見た事が無い。

 

騎士「ダーム王国軍!イース神聖国軍!それぞれ戦闘準備!先頭のアルティメット・マジシャンズの両脇にて陣形を固めよ!!」

 

 その声と共に、左右に両軍の陣形が固まった。

 

兵士「それでは初手!お願い致します!!」

マリア「了解。」

ユウト「さて。やりますか。」

 

 ユウトはゼロワンドライバーを装着して、変身する。

 

ユウト「変身!」

 

プログライズ!

Warning,warning. This is not a test!


『ハイブリッドライズ!

シャイニングアサルトホッパー!

"No chance of surviving this shot."

 

 ユウトは、ゼロワン・シャイニングアサルトホッパーに変身する。

 シャイニングアサルトホッパーに変身した理由は、スカウティングパンダプログライズキーがない為、オービタルユナイトで、命中精度を上げる為だ。

 

魔物達「オオオオオオオオ!!!!」

 

 そう言う中、魔物が叫ぶ。

 ユウトは、フライングファルコンプログライズキーを取り出す。

 

WING!

 

 ユウトは、フライングファルコンプログライズキーをオーソライズバスターに装填する。

 

"Progrise key confirmed. Ready for buster."

 

 そして、ゼロワンドライバーにオーソライズする。

 

ゼロワンオーソライズ!

 

ユウト「マリア!行け!」

マリア「えぇ!」

 

 ユウトがそう叫ぶと、マリアは風の魔力を集めた。

 

兵士「っ!?うわ!!何だ!?突風が!!」

  

 突風が山羊の魔物達を囲み、魔物達が突風魔法により上へ浮いた。

 

兵士「な…………何なんだありゃ…………!?」

 

 この光景を見たラルフが言葉を失った。

 

マリア「喰らえ!!」

ユウト「ハァッ!!」

 

ゼロワンバスターダスト!

 

 マリアの竜巻と共に魔物達を全て両断し、ユウトのオーソライズバスターから放たれたフライングファルコンのライダモデルが風で軌道を変えて魔物達を一網打尽にした。

 魔物達はバラバラになり、大半を討伐した。

 

ユウト「ふぅ。」

マリア「あの、初手終わりましたけど。」

兵士「…………え、あ…………はい!」

騎士「ぜ、全軍進めーーーー!!魔物の残りを掃討せよーーー!!!」

 

 ユウトは一息ついて変身解除し、残った魔物は両軍が討伐する。

 

シン「まぁ、大半が今ので片付いちゃったっぽいけどな……………。」

マリア「本当は爆発魔法でドカーンと行きたい所だけど、地形壊しちゃ後に続く兵士さん達に悪いしね。」

ユウト「だから敢えて風でやったって訳か。」

シン「い、意外と冷静だったんだな…………。」

 

 マリアが意外と冷静な事に、シンはそう呟く。

 その数分後、魔物は全滅した。

 

兵士「終わりか?これで……………?」

兵士「ああ。殆ど俺達の出る幕無しだな………。」

兵士「魔人領攻略作戦…………正直不安も大きかったが…………圧倒的じゃないか…………!アルティメット・マジシャンズ…………!!」

 

 彼らは、馬車の屋根の上に立つユウトとマリアに見惚れた。

 

兵士「”ゼロワン”と…………”戦乙女”…………戦場にして凛々しく先頭に立ち、圧倒的な力で魔物を蹴散らす…………まさしく”戦乙女”…………!!」

兵士達「うおおおおおおおおおお!!!!」

マリア「え!?」

ユウト「何だどうした!?」

 

 1人の兵士がそう呟くと、周囲の兵士が叫び出す。

 

兵士達「ゼロワン様ーーーー!!ユウト=イーウェル様ーーーーー!!!戦乙女!!マリア=フォン=メッシーナ様ーーーーー!!!」

ユウト「戦乙女?マリアの事か?」

マリア「あ、私!?」

兵士達「マリア様ーーーー!!戦乙女様ーーーー!!メッシーナ様ーーーー!!」

 

 急に称えられたマリアが”かちーん”と固まった。

 そんな中、シンが叫ぶ。

 

シン「マリア!もういいだろ!!降りて来いって!!」

マリア「はぇ!?あ…………うん…………。」

 

 マリアは赤面しながら馬車に戻る。

 その馬車の中では。

 

ユウト「マリア、良かったじゃん。」

マリア「え!?」

ユウト「お前の望み通りの二つ名を頂戴出来たみたいで。戦乙女さ・ま。」

マリア「ユウト!!アンタねぇぇぇ!!!」

 

 ニヤニヤしながら言うユウトに、マリアがキレて、プロレス技をかける。

 

ユウト「うわああああ!!ギブ!ギブ!ギブ!ギブ!!」

マリア「でも…………シン達の気持ちが少し分かったわ…………コレ…………すっごく恥ずかしい……………。」

ユウト「二つ名ってのは、あんまり関心するもんじゃないね。まあ、俺は構わないけど、さ。さてと。」

 

 ユウトは馬車から出て周囲を見る。

 一方、後ろの馬車では。

 

高官「な…………何なのだあの大魔法は…………!!」

高官「桁違いではないか…………!!」

高官「あれ程の魔法をウォルフォードとイーウェル以外でも使えるのか……………。」

騎士長「つ…………つまり………ウォルフォードとイーウェルとはあれを超える実力者…………!?」

ラルフ「っ……………!!」

 

 それを見て、高官と騎士長は驚き、ラルフは苛立つ。

 そんなラルフに視線を感じた。

 

ラルフ「っ……………!?」

 

 ラルフは、感じた視線の方向へと顔を向ける。

 その先には、ユウトが居た。

 

ユウト「…………………。」

 

 ユウトはラルフを冷静に睨んだ。

 

ラルフ(おのれゼロワンめ…………!!我々を虚仮にしおって……………!!)

 

 ラルフはそう思う。

 一方、ユウトは。

 

ユウト(こりゃあ……………一悶着ありそうな気がするな。)

 

 ユウトはそう思う。

 その頃魔人領では、斥候隊が何かを探していた。

 

ローレンス「この辺りか?」

魔人「ああ。放っていてもすぐ出て来る。ここらが奴の縄張りだ。」

 

 すると後ろから、巨大な狼の魔物が現れた。

 

ローレンス「あれか…………デカいな…………。」

フィン「そりゃそうですよ。無気力なあの方が唯一好奇心を持って育て上げた”とっておき”ですから。」

ローレンス「魔人の意志通りには動かせるんだな?」

フィン「ええ。コイツにとっての主人はシュトロームですが、同様の魔力を受けて魔人化している我々の事も仲間だと思い込んでますからね。コイツと同じ”変異種”が帝国領各地に、後数体身に潜めています。」

ローレンス「各地に侵攻して来る人間達の軍隊にぶつけるには持って来いだな。」

魔人「そこらの災害級よりは遥かに戦力になる。相当数奴らの数は削れるはずだ。…………もっとも、ウォルフォード達に太刀打ち出来る程とは思えないがね。」

ローレンス「構わんさ。それはコイツらの仕事じゃない。隠しの”変異種”も、他の連中が誘導を始める頃だ。人間達が帝国領に入り次第、即投入するぞ。」

 

 ローレンス達は、そう話す。

 何かを仕込んでいるようだ。

 そして、魔人領北東部のとある砦では。

 

ラドリー「……………以上が奴らからの提案だ。意見は?」

 

 離反した魔人のラドリーが、同じく離反した他の魔人達にゼストが提案した事を全て話した。

 それを聞いていたヒースは、ラドリーに話しかける。

 

ヒース「お前はどう思ってんだ?ラドリー。」

ラドリー「殆ど信用出来ん。人間達の侵攻は確かな情報だが、その対抗策は何一つ口にしなかったからな。」

離反魔人「要するに、こっち方面に侵攻して来た人間を対処してくれって話だろ?」

離反魔人「信用も何もあるかよ。」

離反魔人「それで報酬を得られるんなら、そんな良い話ないじゃねーか。魔人になった俺らに敵う人間なんていやしねーだろ。」

 

 ヒースの質問に、ラドリーはそう答える。

 他の離反魔人達がそう言う中、ヒースが口を開く。

 

ヒース「報酬なんざ口約束で何とでも言える。要は、俺らがどう動くか…………そこだろ。」

ラドリー「人間達の…………魔人に対抗出来る集団が居るって話は聞いたか?ヒース。」

ヒース「噂でちらっとはな。アルティマ…………何とかだっけ?巫山戯た名前の連中だぜ。」

ラドリー「それに、その中にあの仮面ライダーが居るって事は聞いたか?」

ヒース「あぁ、確かゼロワンって言ってたな。」

ラドリー「もし仮に、そいつらを俺達にぶつけるのが目的だったらどうする?」

ヒース「……………そんときゃとっとと逃げりゃいーじゃん。何で俺らが相手しなきゃならねーんだよ。」

 

 これにはラドリーもニヤついた。

 

ヒース「狩れる時は確実に狩る。無理そうなら迅速に退く。ハンターの基本だぜ。」

ラドリー「アメリア。」

アメリア「……………そんな事よりさ、帝国周りの国の軍隊が大半出払ってこっちに向かってんなら、それって他国を落とすちゃんなんじゃないの?侵攻して来る人間なんか無視してさ。私らで今の隙に大国をモノにするってのどう?」

 

 ラドリーとヒースがそう言う中、アメリアはそう提案する。

 すると、ラドリーとヒースはため息を吐く。

 

「「はぁ……………。」」

アメリア「な、何よそのため息…………?」

ラドリー「また、お前の何時ものソレか…………。」

ヒース「そうシンプルな話じゃねーのよアメリアちゃん。幾ら人間達が本腰を入れて侵攻して来るからって、国に兵を残してないワケねーし。あのクソ皇帝じゃあるまいし。当然、そんな事態も想定して対策は取ってるはずさ。」

ラドリー「奴らにとっても今はただならぬ事態。情報も得辛いし、行動も読めん。迂闊に手を出すべき時期じゃない。」

アメリア「むぅ…………アンタらって何時もそうよ。つまんない。」

ヒース「そんなに国落としに拘るなら、あの平民連中に付いてきゃ良かったじゃねーか。」

アメリア「嫌よ。彼奴ら頭悪そうだもん。私、バカは嫌いなの。自分がバカだから。」

 

 ヒースとアメリア、ラドリーがそう話す中、離反魔人の1人が話しかける。

 

離反魔人「んで?結論としてはどーすんだよ?」

ラドリー「当面は、あのゼストって男の言う通りにしてやれば良いさ。敵意を持って俺達に近付く奴は全て狩る。隙を見て他国へ逃げるのか、それともこの地に留まってやり過ごすのか。ここに居ればどちらも可能だ。その後の事は状況を見て判断しよう。」

ヒース「決まりだな。よし、ちょっと偵察に出て来るわ。」

 

 そう言って、ヒースが動く。

 一方、国境付近では。

 

シン「今日はここで野営か。どの辺りに居るんだろう今?」

シシリー「国境付近らしいですよ?予定通り進んでいるそうです。」

兵士「ここに置くぞ。」

兵士「了解。じゃあこっちはこの先に。」

 

 シンとシシリーがそう話す中、兵士達が魔道具を設置する。

 

シン「あれは?」

マリア「魔物避けの魔道具でしょ。」

ユウト「それも、魔力遮断して魔物達に感付かれないようにする便利な物だ。俺もちょくちょく使ったもんだ。」

 

兵士「失礼します。御使い様、聖女様、戦乙女様、ゼロワン様。野営の準備が整いました!」

ユウト「ああ、ありがとう。」

シン(御使い様…………。魔王様のがまだマシだったような…………。)

マリア(い…………戦乙女様…………。)

 

 兵士の言葉に、ユウトは労いの言葉を言い、シンとマリアはそう言う。

 兵士の案内で、テントに到着した。

 

兵士「それでは、此方のテントが御使い様と聖女様。彼方の2つの1人用が戦乙女様とゼロワン様のテントになります。」

シン「…………はぁ!?ちょっと待てぇ!!俺とシシリー同じテント!?」

 

 兵士の言葉に、シンは驚く。

 どうやら、シンとシシリーが、そんな事をすると思っていたそうだ。

 

兵士「はい…………あ。それからその…………独り者も多いので、出来れば防音の魔道具を…………。」

シン「そんな状況でそんな事するかぁ!!!って言うか、一緒のテントにも泊まらないですから……………!!」

兵士「え?そうなんですか?」

シン「俺もユウトと同じ1人用。シシリーとマリアは大きい方のテント。それで結構です。」

兵士「畏まりました。はぁ良かった…………もし一晩中声が聞こえてたらどうしようかと…………。」

ユウト(この人…………そんなことを考えていたのか?)

 

 兵士の安堵に、ユウトはそう思う。

 その後、女子の浴槽テントでは。

 

マリア「はぁ〜〜〜疲れが取れるわ〜〜〜!野営なのにお風呂入れるって最高よねぇ!これも嘗てメリダ様が開発した給湯の魔道具のお陰よねぇ!」

 

 マリアとシシリーが入っているのは、魔物の革で作った浴槽(ビニールプール的なもの。)だ。

 そんな中、女性の兵士が話しかける。

 

女性兵士『聖女様、戦乙女様、お湯加減は如何ですか?』

マリア「あ、丁度良いです!ありがとうございます!…………本当はシンと同じテントが良かったんじゃないの?シシリー。」

シシリー「ふぇ!?…………シン君と同じテントに泊まって、朝皆の前に出て来る勇気が無いよ……………。」

マリア「あははは!まあそうよねぇ。アンタら見てると、これから戦場に向かうって事忘れそうになるわ!」

シシリー「もう…………マリアったら…………。」

 

 マリアの揶揄いの言葉に、シシリーは顔を赤く染める。

 一方、男子浴槽の方では、シンとユウトが上がったそうだ。

 

シン「お風呂ありがとうございます。お先にすみません。」

兵士「いえいえ!簡素なもので申し訳ありません。」

ユウト「いや、簡素で十分だよ。贅沢はあんまり好みじゃないからさ。」

兵士「ありがとうございます。それにしても凄かったですね。昼間の戦乙女様とゼロワン様の力。アルティメット・マジシャンズの方々は皆あのような魔法が使えるのですか?」

シン「そうですね…………まあマリアは元々学院でも成績も優秀だし、攻撃魔法を得意としてるってのもありますけど。」

ユウト「でも一応メンバーは全員あれに近い魔法を使えると思うぞ?」

兵士「そ…………そうなのですか…………。」

兵士「飛び抜けて凄いのは御使い様とゼロワン様だけだと思っていたが…………どうやら他の方々も同じように人間離れした力の持ち主のようだな……………。」

 

 シンとユウトの言葉に、兵士達はそう言う。

 一方、女子浴槽では、マリアが震えた。

 

マリア「ん!?」

シシリー「どうしたのマリア?」

マリア「う〜〜〜〜〜〜ん…………何か今あらぬ扱いを受けた気が……………。」

 

 マリアがそう言う中、外では。

 

兵士B「そこまでの実力者がそれだけ揃っていて…………この作戦…………俺ら必要なのか…………?」

ユウト「あらま変な自暴自棄になりそうな展開だ。どうする?」

シン「う〜〜ん…………あ。仮に俺達だけで魔人を殲滅しようとした場合。恐らくは何ヶ月…………下手すれば何年掛かりになります。奴らが真っ向から俺達を相手取るとも思えませんし、つまりその間……………民衆はずっと不安を感じ続ける事になる。」

ユウト「だがそれだけじゃない。時間を掛けている間にスイードやクルトのように襲撃を受ける国が出るかも知れない。勿論それは犠牲者も増えてしまう事でもある。それを避ける為には、早急に事態を収拾する必要がある。その為にも皆の、世界の力が絶対に必要なんだ。」

 

 シンとユウトはそう言う。

 すると、それを聞いた兵士たちは。

 

兵士「……………!!」

兵士「そうか…………そうだよな…………民衆の為…………俺達にもやれる事が…………!!すみませんでした御使い様…………!ゼロワン様…………!我々の覚悟が足りていませんでした…………!!」

ユウト「分かれば良いですよ。俺たち皆で、皆の夢を守ろう!」

兵士「はい!やってやる!!なあ皆!!」

兵士「おお!!それに俺達には御使い様とゼロワン様が…………!!アルティメット・マジシャンズが付いてる!!やるぞーーーーー!!!」

兵士達「おおおーーーー!!!!」

 

 シンとユウトの言葉で、兵士達は鼓舞される。

 そんな中、遠く離れた森林では、巨大な狼の魔物が熊達を喰い荒らしていた。

 そんな事を知らない彼らは。

 

マリア「あ〜〜〜さっぱりした〜〜!ついつい野営だって事忘れちゃいそう!」

シシリー「衛生面も大事さし、他の兵士さん達も喜んでたね。」

シン「おーいシシリー。マリアー。戻ってるかー?俺達のテント狭いからこっち来たよ。入って良い?」

シシリー「はい、良いですよ。」

 

 シンとユウトも入ってきて、テントで報告会が始まる。

 

シン「よし、じゃあ報告会だ。」

ユウト「その前にこれだ。音を遮断する防音の魔道具を使ってからだ。」

マリア「無線通信機にライズフォンの存在はまだトップシークレットだもんね。私もついうっかり街中で使いそうになるわ。」

 

 そう。

 一応、ライズフォンもトップシークレットの扱いだ。

 

ユウト「シン。」

シン「ああ。着信音を鳴らしてっと。」

 

”チリンチリン”

 

 シンは、着信音の鈴を鳴らす。

 

オーグ『こちらクルト班。ユウトか?こちらは皆揃っているぞ。』

アリス『ユウト君にシン君?こちらスイード班!準備OKだよ〜!』

トニー『カーナン班。こっちも準備出来てるよ。』

ユウト「OK。一応確認だが、タクヤ達も返事してくれ。」

タクヤ「おう。」

コハル「ああ。」

迅「OK!」

滅「ああ。」

雷「おうよ!」

亡「はい。」

ミナト「問題ない。」

ユウト「よし。」

 

 タクヤ達も反応して、報告をする。

 

マリア「こっちは国境に着く前に一戦交えたわ。結構な大群だったわね。」

シン「ま〜殆どユウトとマリアが片付けてたけど。」

ユウト「他の皆は襲撃とかあったか?」

 

 ユウト達の方を報告すると、他の人たちからも報告が入る。

 

オーグ『こちらは魔物の襲撃は無かったぞ。別方面から出発したクルトの舞台は、もしかしたら遭遇しているかも知れないが。』

アリス『私達の所はちょっとだけ出たよ!』

ユーリ『中型ばっかりだったから、私達の出番は無かったんだけどねぇ。』

リン『退屈だった。』

コハル『何言っている。その分負担が少なくて済んだだろう。』

亡『そうですよ。』

タクヤ『文句を言うんじゃねぇ。』

トニー『こっちも少しだけ出たねぇ。でも兵士さん達だけで何事も無く討伐出来てたし問題無しだよ。』

 

 どうやら、ユウト達が居る方程ではないが、魔物と遭遇したらしい。

 

ユウト「皆それぞれ遭ったんだな。」

シン「恐らくだけど、どれも魔人領から発生した魔物だよな。何でダーム方面だけこんなに魔物が出たんだ?」

オーグ『シンとユウトが居るからだろ。』

シン「何だよそれ!」

ユウト「俺達をトラブルメーカーみたいに言うな!」

オーグ『いや、これは真面目な話だ。シンとユウトの基礎魔力量は常人と比べて圧倒的に多いだろう。それに引き寄せられているのではないか?』

ミナト「あぁ。それに関しては、一理あるな。」

 

 オーグがそう言うと、ミナトも同意する。

 

オーグ『今にして思えば、合同訓練の時と言い、三国会談の帰りの時と言い、あんなに大量の魔物と偶然遭遇するなんて考えられんからな。』

シン「言い方変えただけで、結局トラブル体質だって言ってるよな?」

オーグ『ははは。』

シン「笑って誤魔化しやがって…………!」

シシリー「でもそのお陰で、マリアも”戦乙女”って呼ばれるようになりましたからね。」

マリア「っ!!ちょ!?いいのよシシリー!!そんなの言わなくても!!」

 

 オーグがそう言って、シンの言葉に笑いながら誤魔化していると、シシリーがそう言って、マリアは慌てるが、時既に遅し。

 

オーグ『ほう?何やら楽しそうな事になっているではないか。くっくっくっ。』

ユウト「本当にそうだな。」

マリア(バレちゃいけない人にバレた気が…………。)

 

 オーグがニヤニヤと笑いながらそう言い、マリアはそう思う。

 そんな中、シンはオーグに話す。

 

シン「明日からはどの軍も魔人領に進軍か。腹を括り直した方が良さそうだな。」

ユウト「オーグ、当面の目的は全軍が帝都へ目指すんだったよな?」

オーグ『まあ、そこを拠点としている可能性が最も高いからな。実際ドミニク達は帝都でシュトロームの存在を確認しているしな。』

滅『ただ、魔人達の全てが帝都に居るとは限らないし、拠点を移動させている可能性もゼロではない。場合によっては、向こうから此方に進軍して来る事もあり得る。』

ユウト「その為に、ローラー作戦を立案したと。」

オーグ『そうだ。各方面から部隊を複数に分け、索敵を併用して進軍すれば、例え帝都以外に拠点を移していたとしても、必ず奴らの根城は発見出来るだろう。皆、決して気は抜くなよ。明日、我々が足を踏み入れるのは正しく、魔人達の支配域なんだからな。』

迅『分かっているよ。』

雷『おうよ!』

 

 全員が頷く。

 一方、同じ頃、ラルフ達は。

 

高官「ラルフ長官、如何致しますか?」

高官「あんな規模の魔法…………始めて目にしたぞ…………。チームメンバーであの実力…………”魔王”の使う魔法は一体どんなものなのだ……………。」

高官「あれに後れを取らず手柄を立てる必要があるのか…………一体そんな方法が何処に……………?」

 

 ダームの高官達は、そう話していた。

 すると、ラルフが叫ぶ。

 

ラルフ「手柄の話ではない!偽りの”御使い”の名を暴く為に我々は動いているのだ!!仮に”神の御使い”と呼ばれる者が居るのならば!当然にして真摯に神を敬っている人間でなければならない!!聖職者どころか、創神教徒ですらない者など話にならん!!」

高官「そうですな……………その通りです。信仰心もない人間が”御使い”などと…………思い上がりも甚だしい。我々にはそれを証明する義務がある。」

 

 ラルフの言葉を聞いた高官の1人がそう言う。

 彼らはまだ、シンが賢者の孫である事を知らない。

 

ラルフ「奴らより先に……………魔人を討伐するのだ!!1匹でも多くのな!!」

 

 ラルフはそう言う。

 そんな中、ダーム王国の副官が不安げな表情を浮かべる。

 

副官(ラルフ長官…………いや…………他の者達もそうだが…………。敬虔な創神教徒の意見として間違っているとは思わないが……………シン=ウォルフォードを”神の御使い”と仰せになったのは他でもない創神教の頂点に在らせられる教皇猊下だぞ……………。それを否定するなど…………考えられん。一体どうしたと言うのだ……………?)

 

 彼は、ラルフ達の考えに違和感を抱いていた。

 そんな中、騎士長に話しかける。

 

副官「ん?…………おい、あの男は何処へ行った?」

騎士長「はい?どうしました?副官殿。」

副官「馬車での移動中、長官の隣に居た男だ。黒髪で…………ええと…………狐目をした…………てっきりこの作戦の参謀か何かだと思っていたが………………。」

騎士長「ん?さあ?居ましたか?そのような男。」

副官「………………?」

 

 騎士長の言葉に、副官は首を傾げる。

 一方、誰も見覚えの無いその男は今、外に出て何処かへ向かっていた。

 

男(魔物除けか。くくっ、馬鹿馬鹿しい。こんな物が通用するのは魔力を頼りに寄って来るカモのだけだろう。…………さて、確かこの辺り…………。)

 

 彼は、謎の人物と会った。

 

???「順調か?エミール。」

エミール「おやおや。わざわざ伝令すみませんね。此方はほぼ予定通りですよ。若干効き目の弱い者も居ますが。思考の偏りが顕著な者は実に操作しやすいですから。」

???「それでも、お前の魔力操作の腕が優れているのは確かだろう。……………我ら魔人の中ではな。」

 

 謎の人物の正体は、斥候隊のダンテだった。

 このエミールは魔人で、ダーム王国の兵士としてスパイをしていたのだった。

 

エミール「ふっくっくっくっくっ。(人間共、お前らが外側から攻め入って来るのなら、我々は内側からそれを崩壊させてやろうじゃないか。)例の変異種はどうです?」

ダンテ「もう目と鼻の先だ。明日には各国軍とぶつかる事だろう。」

エミール「そうですか。ふっくっくくく。それは楽しみだ。」

ダンテ「人間達の動きはどうだ?」

エミール「予想通りですね。それぞれの軍が帝都に向かって進軍するようです。」

ダンテ「此方も大凡は上手く事を進められている。引き続き頼むぞ。」

エミール「了解。では私はそろそろ戻ります。」

ダンテ「慎重にな。何せシン=ウォルフォードとユウト=イーウェルがすぐ傍に居るんだからな。」

エミール「そのスリルが楽しいんじゃないですか。(我々魔人を追い詰めているつもりなんだろうが…………ふっくっくっくっくっ………!お前ら人間は、魔人の手の平で踊らされているだけなのさ。)」

 

 エミールはそうやってほくそ笑む。

 魔人達の魔の手は、着実に迫っていた。




今回はここまでです。
魔人達の魔の手は、着実に迫っていました。
次回は、超災害級との戦いです。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
少し、アンケートを始めました。
それは、ユウトにヒロインは必要かどうかです。
ヒロインが要らない場合は、イネスの存在は削除しようと思います。
必要な場合は、誰がヒロインになって欲しいのか、活動報告にリクエストをお願いします。
まあ、ヒロインはどうしようかなと思っていますが。
他にも、賢者の孫の小説を投稿しようかなと思っています。
考えているのは、賢者の孫とオーズですね。
賢者の孫の世界観とも合うのが、オーズやらウィザードくらいしか無く、ウィザードは別の人が投稿しているので。
まあ、世界観とは関係なくやる場合は、ビルドも含まれます。
ビルドに関しては、この小説と同様に、シンと会うのは、カートとの戦いの時ですね。
流石に、魔法学院に入れる訳にもいきませんし。
もし、リクエストがある場合は、活動報告にて受け付けます。


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第24話 異常な災害級

 アールスハイドと魔人領の国境付近。

 ここに、アールスハイド王国軍第一班の野営地があった。

 

ミランダ「………………。」

 

 そこに、ミランダ達騎士学院生達の姿があった。

 ミランダが焚き火を前にぼんやりとしていると、クライスが声をかける。

 

クライス「落ち着いているな。ミランダ。」

ミランダ「クライス。」

クライス「例のマリアとかって子と修行したのが自信になったか?」

ミランダ「そう言うアンタは緊張気味ね。眠れそうにないんでしょ?まさか作戦参加に志願したの後悔してる?」

 

 クライスがそう聞くと、ミランダはそう返す。

 すると、クライスは動揺しながら言う。

 

クライス「そ、そんな訳あるか!世界規模の作戦なんで少し落ち着かないだけだ!」

ミランダ「心配しなくても、私達の立場はオマケみたいなもんよ。アルティメット・マジシャンズに比べればね。(そう…………今はまだオマケ。だけどきっと何時かは…………!)」

 

 両手を握り締め、心の中でそう誓う。

 そんな中、ジークフリードとクリスティーナが話しているのが目に入る。

 

ジークフリード「いやだからよ、王族警護専門の俺らが、何でこんな戦場に来てんだよ?」

クリスティーナ「学生の合同訓練や、アルティメット・マジシャンズを引率した実績を買われての事らしいですよ?間違っても参加した学生を死なせる訳にはいきませんからね。」

ジークフリード「結局またお守り役かよ。明日も早えーし、俺もう寝るわ。」

 

 ジークフリードはそうぼやいて、どこかへと向かう。

 するとミランダがクリスティーナの方へ歩く。

 

クライス「ミランダ?」

ミランダ「クリスティーナ様。」

クリスティーナ「あら、あなたは。」

ミランダ「…………………。」

クリスティーナ「?」

 

 ミランダは、クリスティーナに声をかけ、クリスティーナはミランダを見る。

 だが、無言のミランダにクリスティーナは首を傾げる。

 すると、ミランダはクリスティーナに聞く。

 

ミランダ「強くなりたいです!どうしたら良いですか?」

クリスティーナ「何かあったのですか?」

 

 そう言われると、ミランダが1本の剣をクリスティーナに見せた。

 その剣は、軍の正式装備であるエクスチェンジソードだった。

 

クリスティーナ「っ!それは、軍の正式装備の?」

ミランダ「先日、アルティメット・マジシャンズのマリアの勧めもあって、ウォルフォード商会で購入しました。この剣で……………マリアと共に1ヶ月間魔物狩りを重ねて来ました。今回の作戦参加を決めた時点で、ある程度の事は覚悟したつもりでしたが……………マリアの側で戦う事で……………より彼女達との実力差を思い知らされました。実力だけじゃない。彼女達はこの作戦の要であり、連合軍を率いる中心的存在。それに比べて私は……………『作戦に参加している』と言うだけで、最後衛で軍の人達に守られているだけ……………。自分が……………不甲斐なくて仕方無いんです…………。マリアと少し友好を深める事は出来ましたが…………このままじゃ胸を張って彼女の友人だなんて言えません…………だから……………。」

クリスティーナ「…………………。」

 

 ミランダはそう独白して、クリスティーナは黙って聞いていた。

 すると、クリスティーナが口を開き、ミランダに言った。

 

クリスティーナ「私達がこうしている今、殆どの学生達は温かいベッドで眠りに就いている事でしょう。過酷な作戦参加を選んだ時点で、あなたの心は人より遥かに強い。……………ただそれでも、まだあなた自身が納得出来ないと言うのなら……………私と共に前線に出なさい。私が直に鍛えてあげましょう。」

ミランダ「……………!はい!お願いします!」

クリスティーナ「フフッ、あなたなら何時かマリアさんと肩を並べられますよ。」

ミランダ「は……………はい!」

 

 クリスティーナは、ミランダの精神力を認め、最前線に出る様に提案する。

 ミランダは、それを了承する。

 それをクライスは見ていた。

 

クライス「………………。」

ジークフリード「彼奴ら、あんな事ばっかやってっから、ちっとも春が来ねーんだよ。」

クライス「うわっ!ジ、ジークフリード様!い、居たんですか!?」

ジークフリード「……………もう寝ろよクライス。明日起きれねーぞ。」

クライス「………………。」

 

 クライスが見ている中、ジークフリードはそう言って、寝るように促す。

 その翌日、ダーム・イース混合軍では。

 

兵士「馬車での山越えはリスクも高いし、時間も掛かります。裾野の森林を迂回して山向こうを目指しましょう。」

シン「了解です。じゃあ引き続き後方の索敵を怠らないようお願いします。」

兵士「畏まりました!」

 

 兵士とシンがそう話し終えたあと、シシリーとユウトの2人に話しかける。

 

シン「どう?シシリー、ユウト。」

シシリー「今の所、前方に大きな反応はありません。」

ユウト「こっちもだ。魔人と魔物らしき気配も感じない。」

シン「実際問題、それが一番厄介なんだよなぁ……………。魔人とは言え、極限まで魔力落とされると、人間と見分け付かないし…………まあどっち道、索敵には引っ掛かるだろうけど…………。」

 

 シンの質問に、シシリーとユウトはそう答えて、シンはそうぼやく。

 そんな中、マリアが呟く。

 

マリア「充分じゃない。それで。」

シン「え?」

ユウト「どう言う意味だ?」

マリア「言っちゃ何だけど、今更、魔人領には”人間”は居ないでしょ。人間の反応が複数あれば、それは間違い無く魔人よ。」

シン「そりゃまあ………………そうか。」

ユウト「確かに。ブルースフィアの人間は、全滅したんだったな。」

 

 マリアの指摘に、シンとユウトの2人は納得した。

 一方、後ろの馬車では。

 

兵士「魔人領中心部を目指して進んでいるのに、わざわざ後方の索敵を行う必要なんてあるのか?」

魔法使い「おい、黙っててくれ。索敵に集中出来ない。(小さいのが……………我々の魔力で……………あれ?)」

 

 兵士がぼやく中、魔法使いの索敵魔法に、巨大な何かが浮かんだ。

 

魔法使い(我々のすぐ後ろにある反応……………何だ……………これ?)

 

 巨大な何かが、後方の馬車に接近している。

 魔法使いは、兵士に話しかける。

 

魔法使い「おいちょっと。そこ開けて後方確認してくれ。」

兵士「ん?一体何……………。」

 

 魔法使いの言葉に兵士が反応すると、何かがへし折れる音がする。

 

兵士「っ!?何だ今の音!?」

兵士「後方からか!?」

 

 明らかな異音に、兵士たちは驚き、後ろを見る。

 彼らの目に映ったのは、破壊された馬車だった。

 

兵士「おいちょっと待て!な、何だあれ!?急に!」

兵士「伝令ーーーーーー!!ラルフ長官と御使い様に至急伝えろ!!最後尾の馬車が突然……………!」

 

 だが、後方から巨大な影が迫って来た。

 

兵士「た…………直ちに…………!!」

 

 兵士の1人がそう叫ぼうとすると、再び、何かがつぶれる異音がした。

 

兵士「っ!?」

 

 後ろを見ると、巨大な何かが馬車を破壊していた。

 

ラルフ「何だ今の音は!?後方の馬車か!?」

高官「お……………恐らく……………!」

ラルフ「進軍を止めよ!各自戦闘態勢を取れ!!」

 

 ただならぬ事態に、ラルフはそう叫んで、戦闘態勢を取る。

 

シン「シシリー!ユウト!マリア!災害級だ!後方から襲撃されているぞ!」

ユウト「何!?」

 

 シン達は、すぐに馬車を降りた。

 

ユウト「襲われたのは最後尾か!よりによって隊列が一直線になってる時に襲撃しやがるとは!」

マリア「それに、何でわざわざ後方に回って……………!?」

 

 災害級を探しに後方へ向かうと。

 

シシリー「っ!?」

ユウト「ん!?」

シシリー「待って下さい!移動してます!」

ユウト「後方に気配が無いぞ!」

シン「え…………!?(何だ…………!?此奴……………一体何してやがる……………!?わざわざ俺達の反対側に回り込んで…………。)」

 

 後方に災害級の気配がせず、シンが考えていると。

 

兵士「ぎゃああああああ!!!」

シン「っ!?」

ユウト「っ!!」

 

 前方から悲鳴が聞こえてくる。

 

兵士「お…………おい!こ…………今度は前方の部隊が…………!!」

ユウト「後方の馬車を襲撃し、すぐに前方の馬車を襲撃した……………!?」

マリア「な……………何なの!?2匹敵が居るの!?」

ユウト「待て!感じてるのは1匹だけだ!」

マリア「え!?どう言う事なの!?」

ユウト「っ!まさか!シン、これは!!」

シン「ああ、間違い無い!俺達を避けて攻撃してやがるんだ………………!!」

 

 そう。

 二匹居るのではなく、シンやユウト達を避けて、攻撃しているのだ。

 

シシリー「そんな……………!!」

マリア「災害級とは言え、そんな知能が……………!?」

ユウト「災害級の中に高い知能を持ってる奴が居る噂を聞いたが……………ここに来やがるとは……………それにこの速さは…………狼だ!」

シン「四手に分かれるぞ!見付けたら即足止めを!」

ユウト「OK!」

シシリー・マリア「了解!」

 

 4人は、四手に分かれて災害級を探す。

 一方、兵士達の方は。

 

兵士「ちくしょう……………!!一体何処から……………!!」

 

 兵士はそうさけぶ。

 すると、付近の森林から。

 

兵士「あ…………あっ…………!!」

 

 災害級が姿を現した。

 その災害級は、兵士に襲いかかる。

 

兵士「うわああああああ!!!!」

 

 姿を現した災害級が兵士を喰おうとしたその時。

 

カバンストラッシュ!

 

災害級「ッ!」

 

 上空から何かが災害級へ迫る。

 災害級がそれに気付いて避けた。

 

ユウト「ふぅ。」

 

 それは、ユウトのカバンストラッシュだった。

 

兵士「ゼ……………ゼロワン様……………!!」

シシリー「皆さん!大丈夫ですか!?」

兵士「せ…………聖女様…………!!」

シシリー「ユウト君。」

ユウト「シシリー、気を付けろよ。」

 

 破壊された馬車の上に立つ狼の災害級。

 その狼は、唸り声を出す。

 

災害級『グルルルル……………!』

シシリー(初めて見る……………!何て巨大な……………狼……………!)

ユウト「下がってろ。」

 

 ユウトはそう言って、ゼロワンドライバーを取り出して、メタルクラスタホッパープログライズキーを取り出す。

 

EVERYBODY JUMP!

 

 メタルクラスタホッパープログライズキーを起動して、オーソライザーにスキャンする。

 

オーソライズ!

 

 ユウトは、メタルクラスタホッパープログライズキーをキーモードにして、叫ぶ。

 

ユウト「変身!」

 

 ゼロワンドライバーに、メタルクラスタホッパープログライズキーを装填し、メタルライザーを畳む。

 

プログライズ!

メタルライズ!

 

 すると、禍々しさの薄い黄色い発光をしているメタルクラスタホッパーのライダモデルが現れ、ユウトにまとわりつく。

 

Secret material!飛電メタル!

メタルクラスタホッパー!

"It's High Quality."

 

 ユウトは、ゼロワン・メタルクラスタホッパーに変身した。

 ユウトは、アタッシュカリバーとプログライズホッパーブレードを持って、狼の災害級へと向かう。

 同じ頃、アールスハイド王国軍の方は。

 

ルーパー「っ!おい。」

ジークフリード「お出ましッスね。」

セシリア「出番みたいね。」

シルビア「頑張りましょうお姉様!」

ドミニク「魔物が多数接近中!!総員戦闘態勢!!」

 

 イノシシの魔物が群れで接近していた。

 それを見ていたルーパーは叫ぶ。

 

ルーパー「魔法師団!!撃て!!」

 

 最初の魔法師団の攻撃で、イノシシの魔物達を討伐。

 それを見ていた騎士達は。

 

騎士「凄えなぁ……………!!全員が無詠唱で魔法使ってやがる…………!!」

ドミニク「さぁ、次は我々騎士団の番だ!!訓練の成果を見せ付けろ!!」

 

 騎士達が構え、そして足に装備してるジェットブーツを噴射させて魔物達に挑む。

 

セシリア「うひゃあ!!何あれ!?」

シルビア「お姉様ホラ!ウォルフォード商会で売ってたシン君の『ジェットブーツ』ですよ!!」

ドミニク「訓練開始時は全く方向を定まらず、自分達は一体何をしようとしてるんだと呆れたものだが!使いこなせば見よ!!この突進力!!魔物など恐れるに足らん!!」

 

 セシリアとシルビアがそう話す中、ドミニクはそう叫ぶ。

 騎士達が次々と魔物を斬り続ける。

 

クリスティーナ「さぁ次行きますよミランダ!!」

ミランダ「は……………はい!!」

ノイン「す…………凄え…………これが………プロの軍人か…………!」

 

 唖然としている騎士学院生達にジークフリードが話しかける。

 

ジークフリード「君らはここに見学に来たのか?戦いに来たのか?どっちだ?学生諸君。」

ノイン「え……………?」

ジークフリード「学生の身でありながら、戦場に赴く覚悟は立派なもんだが、本番の戦場で『さあ、もう安全だから君達も戦いに参加して来なさい』なんて誰も言ってくれないぞ?覚悟をどう見せるかは自分達次第だ。ここには居ないシンやユウト達やアルティメット・マジシャンズは、今も自分達の意志で最前線で戦ってる。そしてそこに追い付こうと、必死に足掻いている人間だって居る。戦う意志を持ってここに来たのなら、何時踏み出すかなんて迷ってるヒマなんか無いぞ。」

 

 ジークフリードは、ノイン達にそう言う。

 それを聞いたノイン達は。

 

クライス「…………俺は………行くぞ………!!うおおおおおおお!!!!」

ノイン「お………俺だってやってやる………!!おお!!!」

 

 彼の言葉で覚悟を決めた学院生達が戦いに挑む。

 それを見ていたジークフリードは。

 

ジークフリード(…………あれ!?何か俺、本格的に引率っぽくなってねーか!?)

 

 そう思った。

 するとその時、もの凄い地響きがする。

 

ドミニク「な……何だこの地響きは…………!?何か来てるぞ…………!!」

 

 突如発生した地響き。

 それは徐々に大きくなっている。

 

ドミニク「ルーパー!!索敵を…………!!」

ルーパー「いいやドミニク。必要無え。」

ドミニク「っ!?何故だ!?」

ルーパー「……………見りゃ分かる。」

 

 ドミニクは、ルーパーに索敵を頼むが、ルーパーはそう言う。

 すると、そこに巨大な影が現れた。

 そこに居たのは、体長は余裕で10メートルは超えている巨大なサイの魔物の影だった。

 

騎士「な…………!?」

騎士「何だありゃ…………!?」

ドミニク「サイ……………!?…………の魔物…………!?そのようなもの聞いた事も…………!?」

ルーパー「いや…………まあそれ以前に………あんなサイズの生物見んの初めてだけどな………。何にせよ、魔人共の差し金で間違い無えだろう……………。」

 

 騎士達にドミニクが唖然とする中、ルーパーは少しは冷静に言う。

 すると、サイの魔物が後ろ足で地面を蹴る。

 

騎士「…………お…………おい…………!!」

 

 サイの魔物が目を大きく見開いた。

 それを見て、ルーパーが叫ぶ。

 

ルーパー「突っ込んで来るぞォーーーーーーー!!!!進路から離れろーーーーーー!!!!」

 

 サイの魔物が高速で突進し、逃げ遅れた騎士達と魔法使い達を轢き殺した。

 

クリスティーナ「総員!!ジェットブーツを起動!!一旦離脱しなさい!!」

 

 残った騎士達がジェットブーツでサイの魔物の進路から離れた。

 

クリスティーナ「はっ!!ミランダ!!」

 

 逃げ遅れたミランダ。

 だが彼女は、ジェットブーツで間一髪回避した。

 

ミランダ「わっ!!とおっ!!ってえ!!」

 

 回避出来たものの、ジェットブーツのコントロールが出来ず地面に落下してしまった。

 

クリスティーナ「大丈夫ですか!?ミランダ!!」

ミランダ「…………お金借りてでも、コレ買っといて正解でした。マリアに感謝ですね。」

クリスティーナ「……………。」

ドミニク「救護班!!負傷者の救助を急げ!!災害級の出現で他の魔物の集中が途切れている!!今なら無視して構わん!!」

 

 クリスティーナはそう声をかけて、ミランダはそう答える。

 ドミニクの指示が飛ぶ中、ジークフリードはクリスティーナに話しかける。

 

ジークフリード「無事かお前ら?」

クリスティーナ「ジーク。とんでもないものが出て来ましたね…………。どうします?あれ。」

ジークフリード「元々皮膚の分厚い生き物だからなぁ。シン達なら兎も角、俺らの魔法じゃ通るかどうかも怪しいな。」

クリスティーナ「関節狙いでの剣の攻撃に賭けてみますか。」

ジークフリード「ま…………やってみる価値はありそうだなぁ。」

ミランダ「…………?」

ジークフリード「急所の首を集中的に狙え。足止めは俺がしてやる。団長!!」

ルーパー「ああ!?何だジーク!?」

ジークフリード「ちょっとの間、災害級以外の魔物引き付けといて貰えます?本命はこっちで何とかしてみるんで。」

ルーパー「…………ちゃんとやれるんだろうなぁ?ジークよォ。」

 

 ジークフリードとルーパーはそう話す。

 災害級のサイの魔物がジークフリードに向かって突進し始めた。

 

ミランダ「ジークフリード様!!危ない!!」

 

 ミランダが叫ぶ中、彼は一歩も動かず、両手を前に翳した。

 すると地面から土壁が生成された。

 

セシリア「土壁!?」

女性団員「そんなもので災害級が止まる訳が…………!!」

 

 災害級が突進で土壁を破壊した。

 それを見たミランダ達は。

 

ミランダ「ああっ!!」

クリスティーナ「やっぱり…………!!」

 

 そんな風に反応した。

 だが、災害級に異変が起こった。

 

クリスティーナ「っ!?」

 

 それは、巨大な落とし穴に落ちたのだった。

 

災害級『バオオオオオオ!!!!』

ミランダ「落とし穴!?」

クリスティーナ「(そうか…………手前の土を盛り上げる事で、穴を作るのと同時に目眩ましを…………!!)災害級の動きが止まりました!!一斉に行きますよ!!!」

騎士達「うおおおおおおお!!!!!」

 

 身動きを失った災害級に、騎士達が立ち向かう。

 一方、ダーム・イース連合軍の方では。

 

ユウト「ハアッ!」

シシリー「ハァッ!!」

 

 シシリーは魔法で、ユウトはプログライズホッパーブレードで戦うが、狼の災害級は避け続けていた。

 

ユウト「っ!」

 

 ユウトは、プログライズホッパーブレードからクラスターセルを手裏剣型にして飛ばすが、躱される。

 

ユウト「ちっ!すばしっこいな!」

シシリー(速い…………!!恐らく私とユウト君だけでは動きを捉え切れない…………!!)

 

 そこにシンとマリアが駆け付けた。

 

シシリー「シン君!!」

ユウト「マリア!!」

シン「シシリー!!マリア!!奴の両サイドに魔法を!!」

 

 シンはそう言って、異空間収納からバイブレーションソードを取り出した。

 

兵士「け…………剣であの災害級を………!?」

兵士「む…………無茶です!!御使い様!!」

ラルフ(ウォルフォード…………!!)

 

 兵士達がそう言う中、ラルフはシンを睨む。

 

シシリー・マリア「ッ!!」

 

 シシリーとマリアは、同時に魔法弾を発射した。

 

災害級「ッ!!」

 

 狼の災害級は、シシリーとマリアの魔法弾を避けた。

 

ユウト「ハアッ!」

 

 すると、ユウトはクラスターセルを斬撃波状にして飛ばす。

 

災害級『ギャワァン!!』

 

 それを食らった災害級は怯む。

 

マリア「っし!!流石に3方向からの攻撃は避け切れないっしょ!!」

シシリー「狼の動きが止まりました!!」

シン(チャンス!!)

 

 バイブレーションソードで災害級を斬り裂こうとしたが、災害級が噛んで受け止めた。

 

シン「マジかよ!!嘘だろオイッ!!」

シシリー「ああ!!シン君!!」

マリア「あ…………あれじゃユウトは攻撃できないし…………!!シンの剣の振動が止まって……………!!」

シン「…………悪いね。俺が剣士だったとしたら、お前の勝ちだったかもな。」

 

 シシリーとマリアがそう言う中、シンは右腕を災害級の口に突っ込んで狙いを定める。

 そしてシンの炎が災害級の体内を燃やし尽くした。

 災害級が体内を燃やされた。

 それを見たユウトは、プログライズホッパーブレードを、メタルクラスタホッパープログライズキーにスキャンする。

 

ユウト「ハアッ!」

 

ファイナルライズ!

ファイナルストラッシュ!

 

 ファイナルストラッシュで災害級の首を切断して討伐完了する。

 

シシリー「た…………体内から炎の魔法で焼き尽くして…………剣で首を斬り落とした…………!?」

マリア「えげつなっ!」

 

 2人はこの戦い方に恐怖した。

 

兵士「おおおーーーーー!!」

兵士「災害級の狼を……………討伐したぞーーーーー!!!」

 

 兵士達はそう歓声を上げるが、あまり乗らなかった。

 

ユウト「ふぅ……………。」

 

 ユウトは、メタルクラスタホッパープログライズキーを抜いて、変身解除する。

 

マリア「あり得る?こんなサイズの狼。」

ユウト「普通だとこんなサイズはあり得ねえだろ。」

シン「ああ。かなりレアだけど、災害級に至った狼なら見た事はある。……………まあ、こんなデカくなかったけど。」

マリア「魔人側が何か手を加えた可能性は?」

シン「充分あり得る。シュトロームは魔物や魔人の研究をしてた訳だしな。」

ユウト「それに、俺達を無視して他の奴らを襲ってた。手際良く育てられたと考えられる。」

 

 マリア、シン、ユウトはそう分析する。

 シシリーは、兵士に話しかける。

 

シシリー「あの……………負傷者は?」

兵士「数名程です。ですが直接襲撃された馬車に乗っていた者達は…………恐らく既に全員……………。」

ユウト「遅かったか…………。」

シン「…………くそっ…………負傷者はすぐに俺達で治療します。帰還を望む人が居れば、ゲートの魔法を開くので申し出て下さい。」

騎士達「……………。」

 

 直接襲撃された馬車に乗っていた仲間は死んだ。

 それだけで、騎士達の空気が重くなるのは、十分だった。

 ユウトは、シンに話しかける。

 

ユウト「シン。」

シン「何だ?」

ユウト「あの災害級が魔人達の手先だとすれば、恐らく魔人達は他の所にもそいつらを送り込んでると思う。」

シン「っ!確かに…………そう考えると…………(マズイな…………この作戦…………恐らく時間を掛ければ掛ける程…………目的の達成率は下がって行く…………!!)」

 

 シンが焦りを見せる中、魔人領到着が少しずつ迫って来る。

 一方、アールスハイド王国軍は。

 

ジークフリード「うぇっ!ぺっ、ぺっ。」

 

 災害級が落とし穴に落ちた衝撃で周囲に砂煙りが蔓延し、ジークフリードの口に砂が入った。

 

ジークフリード「どうやら上手く行ったが…………口ん中に砂でジャリジャリだ…………べっ!」

セシリア「ジークフリード様!」

シルビア「もう!無茶して!これで口を漱いで下さい。」

ジークフリード「がぼぼっ!」

 

 ジークフリードは、シルビアが生成した水で口を漱ぐ。

 

ジークフリード「ぺっ!サンキューシルビア。」

セシリア「よくあんな事を思い付きましたね。」

ジークフリード「いやまあ、昔シンが狩りでやってたって方法を試してみただけだけどな。」

シルビア「シン君が!?」

ジークフリード「さーて、問題はこの先だ。任せたぜ、騎士団。」

 

 どうやら、シンとの経験が生きた様だ。

 ジークフリードは、騎士団にそう言う。

 

騎士「うおおお!!」

 

 騎士たちは、穴に嵌った災害級に剣を突き刺したが。

 

騎士「うおっ!か………….硬え!!」

騎士「くそっ!全く刃が…………!」

 

 サイの皮膚は硬く、剣では全く刃が立たない。

 

クリスティーナ「穴がから這い出て来るのは時間の問題ですよ!早くトドメを…………っ!!」

 

 クリスティーナは、そう叫ぶ。

 すると、巨大な咆哮を上げた災害級が暴れ出す。

 

騎士達「うおああっ!!」

 

 ジェットブーツで災害級から遠去かる。

 

クリスティーナ(乗れる程の巨体とは言え、当然足場は安定しない…………!ダメージを与える所か、これでは剣を振るうのも難しい………!)

ミランダ(私より遥かに筋力の高い騎士団ですら刃が立たない……………これじゃ私がどうやったって…………はっ!)

 

 クリスティーナとミランダはそう思う。

 すると、ミランダはあの時を思い出した。

 それは、マリアと一緒に森へ入ると、猪の災害級と遭遇した。

 

マリア『うわぁ、こりゃまたでっかい猪が出て来たわねぇ。ミランダ、あんたこれ1人で相手してみたら?』

ミランダ『冗談言わないでよ!私の力だけじゃ、とても彼奴の急所に届かないって!』

マリア『いやだから、漸く昨日買えたソレの出番って事よ。』

ミランダ『?』

 

 マリアの言葉にミランダはそう言うが、マリアは、ウォルフォード商会で買ったジェットブーツを指差す。

 それを思い出したミランダは。

 

ミランダ(そうだ!アレなら…………!!)

 

 何かが閃いたミランダが走り出す。

 

クリスティーナ「ミランダ!?」

 

 そして、ジェットブーツで高くジャンプした。

 

ミランダ(もっと…………!!)

 

 ミランダは、更に高くジャンプする。

 

騎士「あ…………彼奴!あんな上空から何を…………!?」

クリスティーナ「まさか……………!」

 

 空中で回転して剣を前に突き出して、ジェットブーツの噴射力で災害級目掛けて急接近する。

 それを見たクリスティーナは、ミランダの意図を察して、叫ぶ。

 

クリスティーナ「離れなさいあなた達!!」

 

 災害級の上に乗ってる騎士達に避難を指示する。

 

騎士「うおお!無茶すんじゃねぇえ!!」

ミランダ(いっけぇえええ!!!)

 

 すると、ミランダの剣先が災害級の首の付け根に突き刺した。

 

災害級『バオオオオオオ!!!!』

 

騎士「おお!!剣先が魔物の体に…………!!」

騎士「待て!でも……………!」

 

ミランダ(くっ…………!!この程度じゃ致命傷には…………!!もう1回…………っ!?)

 

 致命傷にはならなかったそうだ。

 ミランダは、剣を抜こうとしたが、深く刺さったのか、抜けない。

 

ミランダ「剣が抜けない…………!!くっ…………!!うぅっ!このぉっ!!………あ!外せば良いのか。」

 

 ミランダは必死に抜こうとしたが、途中である事を思い出す。

 柄のグリップを引いて刃を外した。

 エクスチェンジソードは、こういう使い方も出来るのだ。

 

騎士「嬢ちゃん!!もう充分だ!!」

騎士「危ないから一旦降りて来い!!」

ミランダ「っ!」

 

 刺さってる刃を見て、ミランダが何かを閃いた。

 ジェットブーツで刃を踏む。

 

ジークフリード「っ!!」

クリスティーナ「っ!!」

騎士達「っ!!?」

ミランダ「うりゃああああああ!!!!」

 

 ジェットブーツの噴射力で刃を災害級の体内へ押し込み、致命傷を与えた。

 

災害級『バオオオオオ!!!!』

騎士「ジェットブーツで剣を…………押し込んだ!!効いているぞ!!俺達も続け!!」

騎士達「うおおおおおおお!!!!」

 

 致命傷を負った災害級に一斉に剣で突き刺した。

 魔法師団が魔力弾を一斉発射した。

 そして、サイの災害級を見事討伐した。

 

魔法使い「災害級…………沈黙!討伐…………確認しました!」

 

 魔法使いの言葉に、周囲には歓声の声が響いた。

 

ミランダ「はぁ………はぁ………やった!!」

ルーパー「野郎共!喜ぶのは早ぇぞ!!まだ魔物は残ってんだ!!最後まで気ぃ緩めんな!!」

 

 ルーパーがそう叫んで、騎士達が残りの魔物達を討伐する。

 

ミランダ「くっ…………私も…………。」

 

 ミランダはそう言って、加勢しようとするが、倒れそうになる。

 すると。

 

ドミニク「おっと」

ミランダ「!」

 

 後ろからドミニクが支えた。

 

ドミニク「お前は行かなくて良い。少し休め。」

ミランダ「きょ…………局長……………。」

 

 彼はミランダを褒める。

 

ドミニク「見事だった。お前のお陰で災害級……………いや、これはそれ以上の存在か。それを討伐出来た。胸を張って良い。」

 

 褒められたミランダの顔が赤くなる。

 そこに、ジークフリードとクリスティーナが寄って来た。

 

クリスティーナ「マリアさんの特訓がしっかりと活かされたようですね、ミランダ。少し無茶はし過ぎですが。」

ドミニク「ほう。アルティメット・マジシャンズの知り合いだったのか。」

クリスティーナ「強くなりますよ、彼女は。私が保証します。」

ジークフリード「だったら尚の事、今は体を休めとかなきゃな。」

 

 そう言ったジークフリードは、ミランダをお姫様抱っこした。

 

ミランダ「!?」

ジークフリード「功労者は俺が安全な場所までお連れしますかね。」

ミランダ「…………じ…………じじじ…………じーくふりーど…………さ…………さま…………。」

 

 お姫様抱っこされたミランダがパニックになった。

 

ジークフリード「顔が赤いな。大丈夫か?少しの間じっとしてな。」

ミランダ(にゃうううう!!う…………嬉しいけど…………恥ずい〜〜〜〜〜!ゴ…………ゴメンマリア〜〜〜〜〜!)

 

 心の中でマリアに謝った。

 ダーム・イース連合軍と、アールスハイド王国軍は、犠牲者が出つつも、なんとか異常な災害級を撃破する。




今回はここまでです。
今回は、ダーム・イース連合軍と、アールスハイド王国軍の話です。
異常な災害級が、襲う。
次回は、別の方面の方の話です。
次回で、新戦力が三つほど出てきます。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
オリジナルのプログライズキーや、オリジナルフォームに関しては、受け付けています。
一応、シン達は今後、変身させる予定です。
なんの仮面ライダーに変身するのか、リクエストがあれば受け付けます。
シンが変身する仮面ライダーは、決まっています。


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第25話 新たな力

 ダーム・イース連合軍と、アールスハイド王国軍が異常な災害級と応戦する中、他の場所では。

 

滅「ハアッ!」

 

 滅は刀とアタッシュアローの斬撃で現れた虎の魔物達を討伐していた。

 

オーグ「終わったぞ。そっちは?」

トール「此方も討伐完了です。」

迅「こっちも終わったよ。」

オーグ「やれやれ、虎の魔物ばかり。何体目だこれで?」

迅「1…………2…………3…………もう6体目だね。」

トール「その内シン殿に”虎狩り王子”だとか呼ばれそうですね。殿下。」

 

 オーグ達は、そんな風に話していた。

 4人の活躍を見ていた兵士達は。

 

兵士「さ…………災害級を瞬殺…………!?これがアルティメット・マジシャンズに仮面ライダーかいな……………。」

兵士「ああ……………エルスの方々は彼らの戦闘を見るのは初めてですか。」

兵士「こちとら災害級を目にすのも初めてやっちゅうのに…………最早何処に驚いて良いのか分からんわ…………。にしても………川にぶち当たってしまうとは、運が無いですな…………。」

 

 エルスの兵士たちは、オーグたちの戦闘を見て、驚いていた。

 そんな中、目の前に川が現れて、そうつぶやく。

 

兵士「元々帝国とは国交が盛んだった訳ではありませんから…………道中の正確の地形までは計算に入れ難いのです。」

ユリウス「一層の事、川の水を凍らせて、その上を渡るのはどうで御座る?」

トール「小隊規模なら行けるでしょうけど、この大部隊ですからね。渡り切る前に凍らせ切れない部分の水が氾濫し兼ねませんよ。」

ベーカー「現在早馬で調査させていますが、川から離れる形で進軍を続ければ、恐らく何処かで渡る事は可能でしょう。」

オーグ「仕方あるまい。多少遠回りになるが、川沿いに足を進めよう。」

滅「そうだな。」

 

 兵士がそう言う中、ユリウスはそう提案するが、トールに却下される。

 オーグがそう言うと、兵士が報告する。

 

兵士「アウグスト殿下!!ベーカー部隊長!後方部隊から報告!!索敵に反応です!!」

ユリウス「何だ?また虎で御座るか?」

迅「位置は?」

兵士「か…………川の中です!」

 

 迅がそう聞くと、兵士はそう答える。

 

トール「川?水中に入居るって事ですか?」

ユリウス「魚か何かが魔物化したで御座るか…………?」

迅「川の中は恐らく小さい魚ばかりだと思う。ピラニア系ならまた別だけど。…………オーグ。」

オーグ「ああ。念の為部隊を水辺から遠避けろ。今すぐにだ。」

兵士「は、はっ!!」

ベーカー「魔物に気を配りつつ進軍を進めますか?それとも討伐を優先に?」

迅「決まってるよ。討伐優先だよ。オーグ、良いよね?」

オーグ「ああ、迅に賛同しよう。何せここは魔人領。我々の想像も及ばん生物が居ても可笑しくは無い。」

兵士「総員戦闘準備!!敵の姿はまだ未確認!!水辺に注意を払え!!」

 

 部隊を水辺から遠避ける。

 そんな中、迅はショットライザーに似た短剣を取り出す。

 

オーグ「なんだそれは?」

迅「僕の、新たな力だよ!」

 

 迅はそう言って、それを装着する。

 

スラッシュライザー!

 

 そして、赤いプログライズキーを取り出して、起動する。

 

INFERNO WING!

 

 迅は、そのプログライズキーをスラッシュライザーに装填する。

 

バーンライズ!

Kamen Rider...Kamen Rider...

Kamen Rider...Kamen Rider...

 

 待機音が流れる中、迅はプログライズキーを開き、言う。

 

迅「変身。」

 

 そう言って、トリガーを引く。

 

スラッシュライズ!

 

 すると、スラッシュライザーから、バーニングファルコンのライダモデルが現れて、迅を包み込む。

 

バーニングファルコン!

"The strongest wings bearing the fire of hell."

 

 迅は、仮面ライダー迅・バーニングファルコンに変身する。

 

トール「それが、迅殿の新たな力ですか……………!?」

ユリウス「強そうでござる!」

迅「まあね。」

滅「確実に我々の動きを感知している。襲う気満々って所だろう。」

迅「サイズは…………かなりデカそうだね。」

オーグ「先手を取るか!迅!滅!」

迅「うん!」

滅「ああ。」

オーグ「魔法師団!撃ち方用意!!水中に向かって魔法を放て!!」

迅「ダァッ!!!」

滅「ふっ!」

 

 迅の斬撃波と、滅の矢、魔法弾の一斉発射が水中に着弾した。

 

オーグ「反応はあるか?」

トール「数発被弾してるとは思いますが………今の所動きに変化は……………。」

迅「トール、このまま索敵を続けて。奴の動きを見逃さないで。」

トール「はい。」

 

 トールは、引き続き警戒をする。

 中央辺りに居る部隊の方は。

 

兵士「…………なあ、どうせ水の中の生物なんだろ?無視して進んじゃマズイのか?」

兵士「それもそうだよな……………。」

兵士「殿下も何をそんなに慎重になって…………。」

 

 兵士達がそう話す中、水面が動く。

 水の中から出て来たのは、ワニの魔物の災害級だった。

 

兵士達「う…………うわあああああああ!!」

トール「殿下!!」

ユリウス「部隊中央辺りで御座る!!」

オーグ「どうやら釣れたようだ!!」

迅「正体を現したようだね!!」

オーグ「よし!!行くぞ!!」

トール・ユリウス「はっ!」

滅「ああ。」

 

 オーグ達は、災害級討伐に向けて走り出す。

 一方、兵士たちの方は。

 

兵士達「ぐああああああああ!!!」

 

 水の中から現れたワニの災害級に、複数の兵士が喰い千切られてしまった。

 

兵士「ひぃっ!………く…………くそっ!!!」

 

 兵士たちは、怯みながらも災害級に挑んだが、ワニの硬い皮膚で槍が折れてしまった。

 

兵士「ダメだ!!丸で槍が通らん!!」

兵士「ワニの鱗板は鎧同様の硬さだぞ!!他の箇所を狙え!!」

 

 兵士達は、そう話す。

 すると災害級が尻尾を大きく振った。

 

兵士達「がはぁっ…………!!」

 

 壁に叩き付けられた兵士達が命を落とした。

 そこにオーグ達が駆け付けた。

 

ユリウス「ぬう!!丸焼きにしてやるで御座る!!」

迅「デアッ!!」

 

 スラッシュライザーの斬撃波と、ユリウスの魔法弾が同時発射したが、災害級がそれを一瞬で避けた。

 

迅「何!?」

ユリウス「避けた…………!!あの図体で早い反応で御座るな!!」

トール「温度感知の機能を有する生物ですから……………魔法に対する反応も敏感なんでしょう!」

  

 迅とユリウスが驚く中、トールはそう言う。

 災害級がそのまま水中へ姿を消した。

 

ベーカー「マズイですな…………水中に逃げられては打つ手が……………。また同様に襲撃されたら……………。」

滅「どうする?」

オーグ「……………。」

 

 ベーカーがそう言う中、滅はオーグに尋ねて、オーグは考える。

 一方、魔人領・南部に居るスイード・イース混合軍では。

 

アリス「ねーねー、あれって…………災害級?」

ユーリ「んー…………その表現じゃちょっと物足りないかもぉ。」

亡「何にしても、かなりの巨体ですね。」

 

 アリスの質問に、ユーリはそう答え、亡はそう言う。

 目の前に、巨大な猿の災害級とその子分らしき猿の魔物が佇んでいた。

 

アリス「超災害級……………とか?」

リン「ただのデカい猿。」

エドガー「な…………な…………何とかなりそう……………ですか!?」

ユーリ「んー多分。大猿以外にも魔物居るけど……………取り敢えず手出ししない方が良いかもぉ。どうせ、あの子達が片付けちゃうと思うしぃ。」

 

 エドガーの質問に、ユーリはそう答える。

 超災害級には、アリス、リン、タクヤが挑む事になった。

 

リン「アリス、タクヤ。細かい連中任せて良い?」

アリス「あっ!ズルいよリン!自分がデカいのと戦いたいからでしょ!」

タクヤ「まあ、邪魔だからぶっ潰すだけだ!」

亡「タクヤ。これを使って下さい。」

タクヤ「おう!」

 

 タクヤは、亡からガトリングが付いたプログライズキーを受け取る。

 そして、ガトリングを回転させる。

 

ランペイジバレット!

 

 ランペイジガトリングプログライズキーを起動して、タクヤはこじ開けようとする。

 

タクヤ「フン!うううう………!うおおおおおお!!」

 

 タクヤはそう叫び、ランペイジガトリングプログライズキーを無理矢理こじ開ける。

 そして、ショットライザーに装填する。

 

オールライズ!

Kamen Rider...Kamen Rider...

Kamen Rider...Kamen Rider...

 

 タクヤは、ショットライザーを前に向けて、叫ぶ。

 

タクヤ「変身!」

 

 そう言って、トリガーを引く。

 

フルショットライズ!

 

 すると、ショットライザーから、十体のライダモデルが現れ、魔物達を牽制しつつ、シューティングウルフのライダモデルから、弾丸が放たれる。

 それを、タクヤは受け止め、アーマーとなる。

 そして、十体のライダモデルは、パーツに変わり、左半身に装備されていく。

 

Gathering Round!ランペイジガトリング!

"Mammoth!Cheetah!Hornet!Tiger!Polar bear!Scorpion!Shark!Kong!Falcon!Wolf!"

 

 タクヤは、ランペイジバルカンへと変身する。

 

リン「凄い……………!」

タクヤ「おい、行くぞ!」

アリス「そうだね!!」

 

 最初にアリスが拡散魔法弾を発射し、猿の魔物を半数討伐する。

 

タクヤ「フン!ハアッ!」

 

 タクヤは、格闘戦とショットライザーの銃撃で、魔物を倒していく。

 

エドガー「おお!大量の魔物を一瞬で……………!!」

兵士「流石アリス=コーナー様!!タクヤ様!!」

兵士「いやまあ、本来あれ俺らの役目だけどな……………。」

 

 それを見て、歓声を上げる中、そう呟く。

 だが彼らに猿の災害級が。

 

兵士達「はっ……………!!ぐああああ!!」

 

 兵士達は、猿の災害級の右手で押し潰されてしまった。

 

リン「っ!!」

 

 リンは、魔力を収束させて、災害級に魔力弾を投げた。

 だが災害級がそれを右手で弾いた。

 

リン「っ!!(水+土の複合魔法!!ウォーターカッター!!)」

 

 ウォーターカッターで斬り裂いた。

 

災害級『ギキィ!!!』

 

 右肩を斬り裂いたが、浅かった。

 

リン「ちっ!(浅い!仕留め損ねた!)」

 

 すると災害級が、油断したリンを捕まえた。

 

アリス「ああ!!リン!!」

タクヤ「何やってんだ!」

リン「失敗(しく)った…………!!ぐむ…………!!まずい…………戦闘服の唯一の弱点を突かれた…………捕まってゆっくり握り潰されると…………魔法防御も物理防御も発動しない…………。」

アリス「猿に解説してる場合かーーー!!!ああもう退けお前ら!!むきーっ!!」

タクヤ「そこを退け!」

 

 押し寄せて来る魔物達を倒していく。

 

兵士「ああっ!アルティメット・マジシャンズが…………!!」

兵士「やはりあんな化け物…………相手では彼女達でも……………!!」

コハル「ハァ……………行くぞ、ユーリ、亡。」

亡「はい。」

ユーリ「んー、もぅ。仕方無いわねぇ。ど〜れ〜に〜し〜よ〜う〜か〜なっ…………と。」

 

 兵士達がそう言う中、コハル達は動き出す。

 コハルは、ファイティングジャッカルのプログライズキーを取り出して、亡は、ジャパニーズウルフのゼツメライズキーを取り出して起動する。

 

HUNT!

ジャパニーズウルフ!

 

 二人は、それぞれのキーを、ベルトに装填する。

 

オーソライズ!

 

 コハルは、プログライズキーを展開する。

 

Kamen Rider...Kamen Rider...

Kamen Rider...Kamen Rider...

 

 待機音が流れ、コハルは叫び、亡は呟く。

 

コハル「変身!」

亡「変身。」

 

ショットライズ!

フォースライズ!

 

 すると、ショットライザーから弾丸が放たれ、コハルに命中し、亡は周囲に吹雪が舞う。

 

ファイティングジャッカル!

ジャパニーズウルフ!

"Deciding the fate of a battle like a Valkyrie."

Break down.

 

 コハルは、バルキリー・ファイティングジャッカルに、亡は、仮面ライダー亡へと変身する。

 そんな中、ユーリは異空間収納からステッキを取り出した。

 

ユーリ「コハル、亡、頼むわねぇ。」

コハル「ああ。」

亡「分かりました。」

 

 コハルと亡は、駆け出して、コハルはテリトリーサイスで、亡はニホンオオカミノツメで攻撃する。

 

ユーリ「そ〜〜れっ!!」

 

 そして、ユーリのステッキから放たれた魔法カッターが、災害級に複数の傷を与え、リンを解放させた。

 

リン「ナイスユーリ!コハル!亡!恩に着る!」

ユーリ「お次は〜〜〜っと!」

コハル「ハアッ!」

亡「ふっ。」

ユーリ「えいっ!」

 

 取り出したステッキに光を収束させ、ステッキを振った。

 

災害級『?』

 

 地面から光が出現し、そこから石の槍が飛び出した。

 それらは災害級に全て命中した。

 コハルと亡の斬撃波もまた。

 

タクヤ「ハァァァァ!」

 

Hornet Ability

 

 タクヤは、ライトニングホーネットの力で、災害級の目を潰す。

 

災害級『ギキィィィィィ!!!!』

タクヤ「やれ!アリス!リン!」

アリス・リン「うん!そのまま寝てろ!!」

 

 2人の爆裂魔法で、災害級を大爆発した。

 

兵士「う…………うおお……………!」

兵士「た…………倒しちまった…………。あの超大型の魔物を……………。」

リン「余裕。」

アリス「死に掛けた癖に…………。」

 

 兵士達が驚く中、リンはそう呟くと、アリスに突っ込まれる。

 一方、クルト・エルス混合軍の方は。

 

トール「どうします殿下…………?奴がもう一度此方へ来たら…………。」

滅「問題ない。迅、オーグ。頼んだぞ。」

迅「OK。」

 

 滅はそう言って、左腕からアシッドアナライズを射出して、ワニの魔物を打ち上げる。

 アシッドアナライズには、熱は無いので、ワニも気づかなかった。

 そして、迅は飛び、プログライズキーのボタンを押す。

 

INFERNO WING!

 

 待機音が流れる中、迅はトリガーを引く。

 

バーニングレイン!

 

迅「ハァァァァ……………!ハァァァァァ!!」

 

 迅は、炎の斬撃波を放ち、ワニの魔物にダメージを与える。

 

迅「オーグ!頼んだよ!」

オーグ「ああ。」

 

 オーグはそう言って、手に電気を帯電させる。

 そして、空中にいるワニに向かって、電撃を放つ。

 ワニの魔物は、あっという間に黒焦げになり、落ちてくる。

 討伐が出来た。

 

兵士「で…………電撃ちゅーか…………完全に巨大な落雷やがな…………!!一瞬でワニが黒焦げに……………ホ…………ホンマにこれが一国の王子の力かいな…………!!雷の神…………そう…………まるで雷神の如き力…………”雷神”…………!アウグスト=フォン=アールスハイド王太子殿下……………!!」

オーグ(これは…………マズい流れ………!!)

 

 兵士の1人がそう言う。

 雷神と呼ばれ、気不味くなったオーグだった。

 ある日の夏期合宿中・クロードの館にて。

 

メリダ『ほう!もう付与が済んだのかい!ユーリと言ったね。アンタ中々筋が良いよ!』

ユーリ『本当ですかぁ!?私、元々メリダ様に憧れてて、昔からずっと付与魔法の練習して来たんですぅ。』

ユリウス『ぬぅ……………。』

 

 メリダがユーリを誉めていた。

 そんな中、後ろでユリウスが悩んでる。

 

ユーリ『ウォルフォード君に会うまでは、付与に関しては誰にも負けないつもりで居たんですけどぉ……………。』

メリダ『ああ、あの子だったら物の数に入れる必要は無いよ。あの子の頭の中は私にだって理解不能だしね。』

シン『聞こえてるぞ!』

 

 ユーリがそう言う中、メリダはそう吐き捨てて、シンが叫ぶ。

 

メリダ『自信持ちな。アンタは才能があるよ。』

ユーリ『……………!』

メリダ『アンタが望むなら、私のとっておきのを色々仕込んであげるけど、どうだい?』

ユーリ『是非〜〜〜〜!!お願いしますぅ!』

 

 こんな風なやり取りをしていた。

 そして現在。

 クルト・エルス混合軍では。

 

ユーリ「……………。」

エドガー「それにしても…………皆さん以前より更に魔法が洗練された印象を受けますな。」

アリス「あれからまたいっぱい訓練したもん!」

リン「血ヘド吐いた。」

コハル「嘘を言うな。」

エドガー「はは……………。」

 

 エドガーの質問に、アリスとリンがそう答える中、コハルは突っ込み、エドガーは苦笑する。

 

エドガー「ユーリ殿は…………三国会談の時の騒動でも魔道具を使われていましたが…………それらはやはり魔王殿が作製を?」

コハル「違うぞ。ユーリが作った物だ。だろう?」

ユーリ「えぇ。私達の合宿にメリダ様も同行して頂けてぇ、その時色々と教わったんですぅ。」

エドガー「ほう!成る程、導師様から!」

アリス「講義の後もユーリだけ残ってずっと教えて貰ってたよね〜。」

リン「あれはズルい。」

タクヤ「文句を言うんじゃねぇ。」

アリス「でも〜。」

 

 エドガーの質問に、コハルはそう答えて、ユーリはそう言う。

 

エドガー「”魔王”シン殿の魔道具を取り揃える商会の話は我が国にも伝わっていますからな…………。てっきりそう言った付与も彼がしたものとばかり。」

コハル「だが、メリダ様がシンに教えたのは基礎的な事だけだとメリダ様が仰っておりました。その後はシン自身が完全にオリジナルで魔道具を作ってるらしく、そのお陰でメリダ様も常に驚いていた。」

エドガー「そうだったのですか…………。では導師様の技術は魔王殿ではなく、主にあなたに引き継がれていると…………。つまり現状…………あなたが正式な”導師様の後継者”と言う事ですな!」

亡「なるほど、言い得て妙ですね。」

ユーリ(導師様(メリダ様)の後継者…………!)

 

 こうしてユーリに、導師様の後継者と二つ名を与えられた。

 それを聞いていたユーリは、嬉しそうにする。

 

ユーリ「ええ〜〜!そんなぁ〜〜〜〜!!私なんてぇ〜〜〜〜!!うふふふふふふ!」

コハル「すごく照れてるな。」

リン「すっごい嬉しそう……………。」

アリス「ユーリだけズルい!私にも何か二つ名!!付けて下さいよ!!」

エドガー「ええーー…………(ふ………二つ名のつもりで言った訳ではないのだが…………。)」

 

 それを見ていたコハルとリンは、そう呟く。

 そんな中、アリスはそう言う。

 エドガーは、困惑しながらも、さっきの戦いを思い出しながら考えた。

 

エドガー「…………せ…………殲滅魔法…………幼…………あ、いや…………少女…………とか…………?」

アリス「そ、そ、そんあ二つ名欲しくな〜〜〜い!!」

エドガー「え……………ええー、駄目ですか…………?」

アリス「つーか今、『幼女』て言いかけなかった?」

エドガー「は……………!」

 

 いらない事を言って、アリスの逆鱗に触れかけたエドガーだった。

 一方、魔人領・東部に居るカーナン・エルス混合軍。

 

ガラン「ぬぅりゃ!!!!!」

 

 養羊家のガランが仲間達と共に斧を振り下ろして魔物達を討伐してる。

 

ガラン「さーて魔物共…………細切れになる覚悟があんなら掛かって来なぁ…………。」

 

 彼の威圧に押された犬の魔物達が、一目散に逃げ出した。

 

ガラン「何だ、あの根性無し共が…………。」

 

 それを見ていたガランは、そう毒づく。

 それを見ていた兵士たちは。

 

兵士「ホンマごっついわ…………あれがカーナン養羊家かいな…………。正規軍の出る番無しやがな……………。」

兵士「気合で魔物追っ払っちまったし…………。」

兵士「もうどっちが獣だか…………。」

 

 ガラン達の戦いに兵士達が少々引いていた。

 馬車には、トニー、マーク、オリビア、ミナト、雷が居た。

 

雷「もう終わったのか。早いもんだな。」

トニー「アレなら大型の魔物位までなら余裕でイケそうだねぇ。」

マーク「流石ッス!ガランさん。」

トニー「実戦は何よりの修行の場だ。僕らも負けてられないねぇ。マーク。」

マーク「……………ウス。もう誰にも負ける気は無いッス!」

 

 雷がそう言う中、トニーとマークはそう話す。

 それを見ていたミナトは、マークに話しかける。

 

ミナト「君の場合は彼女(オリビア)の事も守らなきゃいけないしね。」

マーク「いやぁ…………今じゃ俺とコイツの実力はどっこいどっこいだし別に…………。」

オリビア「何よ!?私は普通の街の食堂の娘なんだからね?守ってよ。」

マーク「雑談しながら魔物を討伐出来る女を普通とは言わねぇそ!」

 

 そう言って、ぎゃあぎゃあとマークとオリビアの2人が揉める。

 

トニー「良いねぇ。羨ましいよ。2人みたいな関係。」

ミナト「まったくだな。うん?」

 

 そこに1人の兵士が駆け寄って来た。

 

兵士「失礼します!!魔物が現れました!!と…………討伐をお願いしても宜しいでしょうか!!」

トニー「出番みたいだねぇ。」

雷「だな。」

マーク「災害級ッスか?種類は?」

兵士「…………し…………鹿です!」

ミナト「鹿だと?」

 

 それを聞いたマーク達は驚く。

 代表して、トニーが聞く。

 

トニー「えーと…………確か大型までは軍の人達が対処するって……………。」

兵士「いえ!そ…………それがその…………と…………兎に角一度見て頂ければ………。」

雷「おいお前ら、ただの鹿じゃなさそうだぜ。」

マーク「え?」

 

 トニーの質問に兵士が答えると、雷が呟く。

 すると、巨大な影が現れた。

 

兵士「や…………や…………ヤバい…………!!」

兵士「またアレが来るぞ…………!」

兵士達「に…………逃げ…………ぐああああああああ!!!!!」

 

 そして、それと同時に、悲鳴が聞こえてくる。

 

トニー「マズいね!急ごう!」

ガラン「おぉい!何事だぁ!?」

マーク「ガランさん!!」

 

 トニー達は、叫び声がした方へ向かう。

 

ミナト「っ!!」

ガラン「うおっ…………これは…………!!」

 

 彼らが目にしたのは、体長は優に10メートルは超える巨大な鹿だった。

 

ガラン「鹿!?オイオイオイオイ…………冗談みたいなサイズだな…………!!」

マーク「あり得ないッス…………こんなデカさ……………。」

ミナト「野生動物は魔物化すると体組織の変化から、徐々に巨大化する例がある。だが、あの巨大さは限界を遥かに超えてるね。」

トニー「魔人側が何か施したとか思えないねぇ。」

雷「確かに、奴らならやりそうな手口だ。」

マーク「これを放置したら後の被害が計り知れないッス!討伐しましょう!」

ガラン「お…………おう!そりゃ良いが…………な…………何でこんなに黒焦げになってんだ……………!?オイお前ら!何があった!?」

 

 トニー達は、そう話す。

 ガランが驚いている中、鹿の角に電気が溢れ出た。

 

ミナト「角が青白く光っている…………これは電気か!?」

ガラン「角に…………帯電してんのか…………!?」

 

 鹿が首を振ると、辺り一面に雷撃が落ちた。

 だが彼らは間一髪避けれた。

 

マーク「…………っ!!危なかったッス!!何スか今の!?」

トニー「こりゃあ、不意を突かれたねぇ…………!」

オリビア「大気中の電気を角に纏わせて…………魔力とブレンドさせて放ってるんだと思います。多分…………。」

ガラン「自然界の魔法ってトコか!」

 

 オリビアがそう分析する。

 すると、再び鹿の角が青白くなった。

 それを見て、ミナトと雷は、ベルトを装着して、変身する。

 

ドードー!

ZETSUMETU EVOLUTION!

BREAK HORN!

 

 2人はプログライズキーとゼツメライズキーを起動して、叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

 そう言って、変身する。

 

フォースライズ!

Break down.

パーフェクトライズ!』


When the five horns cross, the golden soldier THOUSER is born.


『"Presented by ZAIA."

 

 雷は仮面ライダー雷に、ミナトはサウザーに変身する。

 

雷「行くぞ!」

トニー「うん!!すぐ次が来る!!僕と雷とミナトが突っ込むから、マークとオリビアは援護を!!」

マーク・オリビア「了解!!」

ミナト「行こうか。」

 

 すると鹿が雷撃を発動した。

 

ミナト「ハアッ!」

 

 ミナトは、雷撃を躱し、サウザンドジャッカーで攻撃する。

 

マーク・オリビア「はっ!!」

 

 それと同時に、2人は援護魔法を同時に放ち、鹿の足元に命中した。

 そして、トニー、雷、ミナトの3人は、攻撃をしていく。

 

ガラン「相変わらず凄え威力だな…………魔法とほぼ同スピードで突っ込むトニーと雷とミナトの奴らも凄えが…………。」

マーク「何言ってんスかガランさん。彼らの本気の速さはあんなもんじゃないッスよ!」

ガラン「!?」

 

 トニー、雷、ミナトが超高速でジャンプした。

 それと同時に鹿の右の前脚が切断されていた。

 

ガラン「なあぁっ!!い、何時の間にか鹿の脚が切れてやがる!?跳び上がる前に脚を切ったってのか…………!?全く目で追えなかったぞ…………!!」

  

 それを見て、ガランは驚愕する。

 鹿の角に電気が帯電し始めた。

 

トニー「っ!!」

 

 だが、ミナトのサウザンドジャッカーによって、雷が吸収され、オリビアの炎で角が破壊された。

 

ミナト「鹿の魔物の雷撃のデータはいただいた。」

オリビア「これ以上電撃は使わせない!」

マーク「うぅらっ!!!!」

 

 マークは、バイブレーションソードで左前脚を斬り落とした。

 

雷「オラっ!」

 

 雷は、アタッシュショットガンで足を撃ち抜く。

 

ガラン(トニーが初撃直後に敵の注意を引き付け、その隙にマークとミナトと雷が突く…………!!オリビアもそれを理解してフォローを…………!!個人の戦力としても凄ぇのに、しっかり連携も取れてやがる…………!!)

 

 ガランは、それを見て感心していた。

 

トニー「流石に全部の脚を失って立ってる事は出来ないよねぇ!」

 

 バイブレーションソードに風魔法を収束させて、鹿の魔物の頭部を斬り落として討伐した。

 

ミナト「倒したな。」

マーク「お疲れッス、トニーさん!斬撃に風の魔法を乗せる事で間合いが倍位に伸びてるッスね。」

雷「やるじゃねぇか。」

トニー「色々研究中だよ。3人もナイスフォロー。」

 

 ミナト達はそう話す。

 それを見ていたガラン達は。

 

ガラン「…………言葉もねぇや…………。あの鹿の化け物をこうもあっさり……………。」

兵士「ア…………アルティメット・マジシャンズに仮面ライダーが居なければ…………下手したら我々はここで全滅してたんじゃ……………。」

兵士「はは……………。」

 

 そんな風に話していた。

 ミナトと雷が話していた。

 

ミナト「この鹿の魔物のデータを使えば、新たなプログライズキーを生み出せるのでは無いか?」

雷「出来るかもな。」

ガラン「剣と魔法を同時に扱う…………宛ら物語の中に登場する”魔剣士”だな。お前さんは。」

トニー「ま、魔剣士!?僕が!?」

羊飼い「相応しい称号だと思うぜ。」

兵士「魔剣士トニー=フレイド殿…………か。」

マーク「確かに『剣の使い手』ってイメージはウォルフォード君より、トニーさんの方が強いッスね。」

トニー「……………いやまあ……………嬉しくはあるけど…………やっぱ少し恥ずかしいよねぇ。」

 

 ミナトと雷がそう話す中、トニーに新たな二つ名がついた。

 そんな中、ミナトが口を開く。

 

ミナト「そんなことより、先に進みましょう。本当の敵はまだまだ先に居るんですから。」

兵士「本当の敵…………魔人か…………魔物より…………災害級よりも恐ろしい存在………。」

兵士「災害級にすら太刀打ち出来ない我々が…………一体何処まで戦力になれるのか………正直…………足取りが重いな…………。」

 

 こうしてトニーは、魔剣士の二つ名を得た。

 一方、魔人領・北東部にある砦では。

 

ヒース「人間達は多方面から帝都に向かって進軍を続けるつもりらしく、今の所足取りは順調。このまま行けば数日でクルト方面辺りから出発した部隊がこの砦を発見するはずだ。さて、どうする諸君。」

サイード「そのクルト軍の中に例の連中は居んのかよ。あー……………と、何つったっけ。」

ヒース「ああ、アルティマに仮面ライダーか。デカい魔力に気配が幾つかあったが、恐らく…………としか言えねーな。奴らの索敵に引っ掛からない遠目からの視認が限度だったんでな。」

サイード「何だそれ、意味ねぇじゃねーか。そこが一番重要事項だろ。」

ヒース「文句あんなら次はてめーが行けよ。尻尾掴まれて、ここまで敵を連れて来ねーように精々気を付けてな。」

サイード「何だとてめぇ!」

 

 ヒースがそう言う中、サイードが文句を言い、言い争いになる。

 それを、ラドリーが諫める。

 

ラドリー「止めろ。仲間内で争ってる時か。」

サイード「仲間?勘違いすんなよラドリー。俺らがつるんでんのは、飽くまで、立場と敵(・・・・)が共通してるからであって、何も仲良く同じ目的の為に動いてる訳じゃねーんだぞ。」

ラドリー「それぞれの目的が何だろうが、今この状況を切り抜ける事が最優先な事に違いは無いだろう。人間達の包囲網を抜けた後はお前の好きにしろ。サイード。」

サイード「ちっ。」

 

 ラドリーの言葉に、サイードはそう言うが、ラドリーはそう返して、サイードは舌打ちをする。

 そこに報せが入った。

 

離反魔人「おい!客だぞ。それも団体だ。」

ヒース「あ?」

 

 そう言われて、ヒース達は入口を見に行く。

 砦に入って来た客とは、魔人達だった。

 

魔人「オイオイ何だよこのチンケな砦はよぉ。城でも用意してんのかと思ったぜ。」

魔人「本当にここに居りゃ、例の人間どもの襲撃から身を隠せるんだろうなぁ。」

 

 魔人達は、そう話していた。

 それを見ていたヒース達は。

 

ヒース「ありゃ、帝都の城に居た平民魔人共の生き残りだろ。何だってこんな所に集まって来てんだよ。」

ラドリー「さあな。ゼストって男が誘導して来た事に違いは無いだろうな。(どう言うつもりだ、あの男……………。)」

離反魔人「ウゼーなぁ、俺の方が砦に出たくなってきたぜ。」

離反魔人「どの道、今回の件が終わればすぐ出られるさ。」

サイード「……………。」

 

 それを見ていたヒースはそう言って、ラドリーは、ゼストが何を考えているのかを考えながら答える。

 すると、魔人達が声をかける。

 

魔人「よう、お前らだろ?ここを寝ぐらにしてる連中ってのは。しばらく世話になるぜ。」

魔人「早速だけど、何か食いモンねーか?後酒もよ。」

 

 魔人達は、そう要求する。

 そんな魔人共にヒースは苛立ってる。

 

魔人「共に帝国を滅ぼした仲だろぉ〜〜〜〜。仲良くしようぜェ。」

 

 魔人達は、呑気にそう言う。

 それを見ていたヒースは、ラドリーに話しかける。

 

ヒース「戦力になんのか?此奴ら。」

ラドリー「噂じゃ、二度程アルティマの連中と仮面ライダーに負けて逃げ帰ってんだろ。」

ヒース「何か、ここに避難して来たみたいな口振りだし。」

ラドリー「腐っても魔人だ。普通の人間程度なら問題無く戦えるだろう。」

ヒース「哀れな連中だねぇ。魔人になる前もなった後も、結局流されるだけの人生か。」

アメリア「アホらし。ちょっと外の空気吸って来る。」

 

 アメリアは、それを呆れながら見ていて、外に行こうとする。

 そんなアメリアを見て、2人の魔人が話し合う。

 

魔人「おい。」

魔人「ああ。」

 

 2人がアメリアにナンパする。

 

魔人「ようネェちゃん。今から俺らと一緒に遊ぼうぜェ。」

魔人「丁度俺らも外行こうと思ってたんだよ。」

アメリア「……………良いよ。私も色々溜まってるし(・・・・・)。」

 

 アメリアは、思案の末、そう答える。

 2人の魔人と一緒に外に出て、森林に入った。

 

魔人「なあ、もうこの辺で良いだろう。何処まで……………。」

アメリア「アンタら、何しにこの砦まで来た訳?」

魔人「あ?ああ…………人間共が総力上げてこっちに攻め込んで来てんだろ?」

魔人「アルティメット…………何とかって連中は帝都の方で引き付けるから、こっちにもし人間共が来たら応戦してくれって話だ。」

アメリア(…………どうもやっぱり、話が色々と可笑しいよねぇ…………。)

 

 アメリアは、魔人から聞いた話で、そう思う。

 

魔人「さぁ、もう良いだろ?こんな時だ。楽しめる時は楽しまなきゃ…………。」

 

 魔人がそう言って、アメリアの方に近寄ろうとすると、左腕が斬り落とされた。

 

魔人「あ?あ”ぁあああああ!!!!な…………う…………腕が………….何で…………!!?」

アメリア「ん?どしたの?自慢の技巧(テク)でもあんなら早く見せてよ。」

魔人「てっ…………てめぇがやったのか!この野郎!!」

 

 アメリアの仕業と知り、魔人がアメリアの方へと向かう。

 だが、今度は身体中がバラバラに斬り落とされた。

 

アメリア「尤も…………私に触れる時、まだ腕が残ってんならね。」

魔人「なっ…………一体何しやがっ…………!?」

 

 彼女は、魔力で生成した目に見えない針金の魔法でもう1人の魔人を斬り落とした。

 

アメリア「雑魚の上に下衆とか、救いないよアンタら。私はラドリーやヒース程辛抱強くないからさぁ、溜まってんのよね……………ストレス(・・・・)。」

 

 彼女が溜まっているのはストレスだった。

 そんな中、アメリアは呟く。

 

アメリア「大国で踏ん反り返ってる連中にすぐにでも目にもの見せてやりたいのにさぁ。軍の精鋭だろうとアルティマだろうと、仮面ライダーだろうと、バラバラに斬り刻んで返り討ちにしてやるわ。」

 

 そんな風に呟いていた。

 ダーム・イース混合軍のテント。

 ユウトのライズフォンで通信してる。

 

シン「雷神?それがオーグに付けられた二つ名なの!?」

オーグ『お前ら……………何でわざわざ報告するんだ……………。』

迅『いやぁ…………なんか面白いから。』

オーグ『面白くもあるか…………!!』

 

 シンがそう聞くと、オーグは恨めしそうに迅を見る。

 

シン「何だよそれ、随分格好良いじゃないか。」

ユウト「オーグにピッタリじゃん。」

オーグ『……………てっきりからかわれるかと思ったが……………。』

マリア「何でですか!良いじゃないですか格好良くて!私も”風神”とかの方が良かったです!”戦乙女”って…………私は何時まで乙女で居れば良いのよ……………!!」

シン(あ、そっち(・・・)を気にしてたんだ……………。)

 

 シンとユウトがそう言う中、マリアはそう叫ぶ。

 そんな中、ユウトが口を開く。

 

ユウト「それで、他の皆に何か二つ名は付いたのか?」

 

 ユウトはそう聞く。

 

魔剣士トニー=フレイド

 

導師の後継者ユーリ=カールトン

 

殲滅魔法少女アリス=コーナー

 

 これが、付けられた二つ名だ。

 

アリス『ちょっと待てえぇぇぇ!!!私のは二つ名じゃな〜〜〜〜〜〜い!!!!!』

雷『良いじゃねぇか。似合ってんぞ。』

アリス『似合わないよ!』

ユーリ『ウフフ……………!導師の後継者。ウフフフフフフフ。』

シン「いや……………ユーリは一応後で婆ちゃんに確認しとこうな。」

 

 アリスは不満げにそう言い、ユーリは今も上の空だった。

 そんな中、シンが口を開く。

 

シン「気になるのはやっぱり…………各地に現れた『異常な災害級』の存在だよなぁ…………。」

ユウト「まさか、皆の所にも現れるなんてね……………。」

オーグ『アールスハイド王国軍からの報告によると、向こうにも出現したらしいぞ。犠牲は出てしまったが、どうやら討伐には成功したらしい。』

 

 シンとユウト、オーグがそう話すと、マリアが叫ぶ。

 

マリア「で……………殿下!!」

ユウト「おわっ!?」

マリア「その犠牲者の中に……………まさか学生は居ませんでしたよね!?」

オーグ『各国軍とも既に犠牲は出てしまっているが……………何れも軍に在籍する者達だと言う事だ。お前の友人のミランダ=ウォーレスは無事だぞ、メッシーナ。』

マリア「……!知ってたんですか…………。」

オーグ『無事どころか、彼女の機転のお陰で災害級を討伐出来たそうだ。お前にも伝えておいてくれと、ドミニクから頼まれたぞ。』

マリア「…………あの子ったら、きっと無茶したのね……………。」

 

 オーグの言葉を聞いて、マリアはホッとした顔でそう言う。

 

シン「ミランダって確か……………。」

ユウト「合同訓練の時に会った子だな。」

シン「何時の間に……………。」

 

 シンは、マリアがミランダと仲良くなっていた事に驚いていた。

 すると、マークが真面目に言う。

 

マーク『まあでも、各国とも災害級を討伐出来て良かったッス。けど……………。』

トール『ここは魔人領。今更何が出て来ても自分達は驚きはしませんが……………。』

オーグ『……………ああ。』

ユウト「災害級(あんな物)がもし世に放たれていたら、各国の被害は計り知れない。楽観出来る事態じゃないな。」

 

 マークとトールがそう言う中、オーグとユウトはそう言う。

 ただでさえ厄介な災害級が強くなった存在は、脅威と言えるだろう。

 すると、シンはオーグに聞く。

 

シン「オーグ、話は変わるが。その災害級や犠牲者の事も含め、軍の人達の様子は今どうだ?」

オーグ『…………どう…………とは?』

シン「この作戦……………この先も大丈夫だと思うか?」

オーグ『…………ああ…………恐らくは…………な。』

 

 オーグは、シンの質問に、そんな風にしか答えられなかった。

 

シン(お前ならもう気付いているはずだろ、オーグ。今の所順調に見えるが、この先…………想定出来る最悪の事態がもし幾つか重なってしまった場合……………容易く作戦の全てが瓦解してしまう可能性に…………。)

 

 シンはそう思っていた。

 作戦の全てが瓦解してしまう事態を。

 その後、テントを出た4人は。

 

シン「日を追う毎に少しずつ連合軍(こっち)の被害も増えて来てる…………分かっていた事とは言え…………辛いよな…………。」

ユウト「きっと…………亡くなった兵士達の家族も悲しんでるだろうな…………。」

シシリー「シン君…………ユウト君…………。」

 

 連合軍の被害に、シンとユウトはそう呟く。

 シシリーは、口を開いた。

 

シシリー「この作戦が始まる少し前に…………お姉様達が帰省して来たんです。」

ユウト「シシリーのお姉さん達が?」

シシリー「これで…………最後になるかも知れないからって…………お姉様達が覚悟してました。国を守る軍人の一人として、命を懸けて戦う事を…………誉に思うと……………。」

シン「……………。」

シシリー「シン君とユウト君や私達だけでなく、きっと誰もが自分達の力でこの危機を乗り越えたいと思っているはずです…………。その為の犠牲は…………本人も…………その家族も………覚悟の上だと思います…………。だから…………シン君が…………気に病む必要は…………。」

 

 シシリーは、そう言っていると、涙を流していく。

 涙を流すシシリーを、シンが優しく自分に寄せた。

 

シン「…………ありがとうシシリー。…………終わらせよう。一刻も早くこの作戦を。」

ユウト「ああ。これ以上の犠牲を止める為にな。」

シシリー「…………はい…………えへ、ダメですね…………。私…………シン君やユウト君を励まそうとしたのに…………お…………お姉様達の事を想像したら…………自分で落ち込んじゃって…………。」

ユウト「無理もないよ。家族が亡くなるのは、悲しい事だからな。」

シシリー「はい……………。」

 

 ユウト達は、そう話す。

 その2日後。

 ユウト達の想いを他所に、1つの驚くべき報告が齎される事になった。

 クルト方面の連合軍が、魔人の拠点と思われる砦を発見したのだ。

 それをすぐにドミニクへ報せる。

 

兵士「局長!!情報処理隊から緊急の報告です!!」

ドミニク「何だこんな早朝に…………また災害級でも出たか…………?」

 

 兵士は、起きたドミニクに魔人の拠点の発見を報告する。

 それを聞いたドミニクは、すぐに意識がはっきりとする。

 

ドミニク「…………!!魔人の拠点を発見しただと…………!?」

 

 魔人の拠点が見つかり、どうなっていくのか。

 一方、別の場所では。

 

???「ファンタジー…………全然ファンタジーじゃない!!」

 

 とある男がそう叫ぶ。

 この男は、何者なのか。




今回はここまでです。
今回は、魔人の拠点が見つかる所までです。
ランペイジバルカン、バルキリー・ファイティングジャッカル、バーニングファルコンを投入しました。
流石に、そろそろ投入するべきだと思ったので。
アークゼロは、どのタイミングで出すべきかが、悩ましいです。
もし意見があれば、活動報告にお願いします。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
オリジナルの仮面ライダーや、オリジナルのプログライズキーなども受け付けています。
あとは、REAL×TIMEや、ゼロワンothersに該当するエピソードに関するリクエストも。
あと、新しい賢者の孫の小説をやろうかなと思っています。
賢者の孫とセイバーだったりなどです。
それらの意見があれば、お願いします。


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第26話 蠢く悪意

 魔人の拠点を発見した。

 その知らせは、すべての軍に伝わった。

 魔人領・北西部の砦付近のクルト・エルス混合軍の野営地では。

 

トール「間違いありませんね。このまま街道をしばらく進んだ先にある砦に、数十体の魔人が居ます。」

オーグ「シュトロームやその配下の魔人達の姿は確認出来たか?」

トール「自分とユリウスと迅殿で慎重に索敵を続けましたが……………残念ながら目視出来る場所に魔人は現れませんでした。」

オーグ「……………部隊長。悪いが少し人払いを。」

ベーカー「はっ。」

 

 オーグは、部隊長のベーカーに頼んで人払いさせた。

 そして、異空間収納から無線通信機を取り出した。

 

オーグ「全員聞いているな?クルト方面(こっち)で魔人の拠点が見付かった。当初の作戦通り、各国軍を此方に集結させてくれ。作戦開始から4日。多少のバラつきはあるが、各国軍同士の距離は縮まりつつある。移動に然程の日数は掛かるまい。」

アリス『でも殿下、魔人が複数居る以上、アルティメット・マジシャンズ(私達)が集まるのは仕方無いとして…………軍の人達までそちらに向かう必要があるんですか?』

オーグ「本来なら避けたい所だが、魔人を取り逃さず包囲する名目で連合を組織した以上、魔人の拠点を発見したのに『各国軍がその場で待機』と言う訳には行かないだろう。それに、我々が不在時に先日のような災害級に軍が襲撃されてみろ。その被害は計り知れん。」

トニー『どっちにしろ僕等(・・)は集まるしか無い……………。けど、何となくコレ………敵の陽動の可能性も考えちゃうの…………僕だけかなぁ?』

 

 オーグがそう言うと、アリスはそう返す。

 アリスの質問に、オーグがそう答えると、トニーがそう呟く。

 一方、ダーム・イース混合軍では。

 

マリア「軍が1箇所に向かうって事は、その分他の隙が出来るって事だもんね……………。」

オーグ『その我々が隙を突いて、シュトローム達がコソコソ動くと言うのか?魔人共がそんな逃げの一手を取ると?』

シン「……………あり得ないな。絶対に。」

ユウト「確かに。そもそも逃げるつもりなら、半年の間にとっくに逃げてるはずだ。彼奴がこの魔人領から動こうとしないのには何か理由があるはず。それにもしこの拠点が…………。」

オーグ『……………どうした?』

ユウト「いや、何でも無い。」

オーグ『兎も角、此方で一度落ち合おう。以上だ。』

ユウト「……………分かった。」

 

 マリアがそう言う中、オーグはそう聞いて、シンは断言する。

 ユウトは、何かを言いかけたが、すぐに止める。

 

シン(分かっていながら、誰もその可能性を口にしないのは…………その後に起こり得る問題を無意識に見まいとしているからだろう………。)

兵士「失礼します!長官が今後の確認をしたいと。」

ユウト「長官が?」

 

 シンがそう考える中、兵士が入ってきて、そう言う。

 4人はラルフ達が居るテントへ向かう。

 ラルフは、シンに話しかける。

 

ラルフ「真面に話をするのはこれが初めてですな。シン=ウォルフォード(・・・・・・・・・・)殿。ダーム王国軍総指揮官のラルフ=ポートマンと申します。」

シン「……………どうも。報告が来ていると思いますが、各国軍共、これからクルト方面へ向かう事になります。(この人は俺の事を”御使い様”とか言わないんだな。)」

ユウト(ラルフ=ポートマンね…………。)

 

 シンは、ラルフが御使い様と言わない事に反応する中、ユウトは警戒していた。

 その時、レックスとのやり取りが蘇る。

 

レックス『ユウトか?このメッセージが届いた頃には、既に魔人領への突入が開始された頃だろうな。俺から伝える事は、二つある。一つは、ラルフ=ポートマンには、気をつけろ。』

ユウト『ラルフ=ポートマン?』

イズ『ダームの長官です。』

レックス『奴は、シンが神の御使いと言われるのを否定している。』

ユウト『そういう事か………………。』

 

 そんな感じのやり取りがあった。

 

ユウト「………………。」

イース指揮官「問題はクルトから最も距離のあるアールスハイド軍ですね。アルティメット・マジシャンズの同行が無い以上、状況によって到着前に戦闘を開始する事も視野に入れては?」

シン「迅速に事態を終結させる意味でも、その方が良いでしょうね。被害を最小限に抑える為、魔人は俺達だけで相手します。連合軍は1体の魔人も逃さないよう、徹底した包囲をお願いします。」

 

 ユウトがラルフに警戒する中、イースの指揮官はそう言って、シンも同意する。

 その言葉でラルフに怒りが出る。

 

ラルフ「それは、我々ではどうやっても魔人は討伐出来ないと。そう言っておられるのか?」

ユウト「え?」

シン「?」

シシリー・マリア「……………?」

イース指揮官「……………。」

 

 ラルフの言葉に、全員が呆気に取られる。

 それを聞いたユウトは、すぐに言う。

 

ユウト「ちょっと待ってくれ。シンは軍の力を見縊る奴じゃない。スイードの一件からも各国軍だけで魔人の対処が出来るとは思えないって言ってるだけだ。」

シン「そうです。俺達だけで魔人の討伐に当たるのは、これまでの実績を踏まえて決定された事項だったはずでは?」

ラルフ「……………フン!傲慢な事だ!」

 

 ユウトとシンはそう言う。

 それを聞いたラルフは、愚痴を言ってテントから出て行った。

 

マリア「ちょっと何アレ!?」

シシリー「シン君にあんな態度…………酷いです!!」

ユウト「………………。」

シン「俺…………何かマズい事言いました?」

イース指揮官「いえ…………特には…………。どうしたのでしょうね……………普段の彼らしくもない……………。」

 

 マリアとシシリーが憤慨して、ユウトが考える中、シンとイースの指揮官はそう話す。

 すると、ダーム王国軍の副官が頭を下げる。

 

副官「も…………申し訳ございません!長官の非礼……………代わってお詫びします!!」

シン「えーと…………あなたは…………?」

副官「ダーム王国軍の副官です。長官は………本来あのような事を仰る方ではないのですが…………非常に申し上げ難いのですが…………長官は…………。」

ユウト「否定派なんですよね?」

シン・シシリー・マリア「?」

 

 副官が謝る中、ユウトはそう指摘する。

 それを聞いた副官は、肯定する。

 

副官「…………はい。教皇猊下がお決めになられたシン様の”御使い”の名や…………シシリー様の”聖女”の呼び名に納得が行かないようなのです……………。」

シシリー・マリア「……………。」

シン(ホラ見ろ、言わんこっちゃない……………。)

ユウト(やっぱりか。)

 

 副官の言葉を聞いたシシリーとマリアは呆然として、シンとユウトはそう思う。

 

副官「魔人の討伐は1体でも大きな功績です………。今の長官は…………恐らくそれをアルティメット・マジシャンズに独占されるのが…………悔しいのではないかと…………。」

マリア「何よそれ!?この世界の危機に何考えてんの!?」

イース指揮官「誰もが力を合わせるべき時に…………嘆かわしい…………。」

ユウト「功績を手に入れたいってことか。」

 

 副官の言葉を聞いたマリアは憤慨して、イースの指揮官はそう言う。

 ユウトがそう言う中、副官が口を開く。

 

副官「どうか、寛大な心でお許し頂きたい…………。作戦決行に支障が出ぬよう、私も長官を説得しますので……………。」

ユウト「分かりました。ラルフ長官の方は、お願いします。」

副官「…………ありがとうございます。で………では、失礼致します。」

 

 そう言って、副官もテントから出て行った。

 それを見ていたユウトは。

 

ユウト(面倒な事にならないといいんだけどな……………。)

 

 ユウトはそう考えていた。

 一方、クルト・エルス混合軍では。

 

迅「いよいよ本拠地突入が近付くね。けど…………。」

ユリウス「兵の疲労も少しずつ見えて来たで御座るな……………。」

トール「精神面も同様でしょう。ただでさえ緊張を解く事が許されない魔人領と言うこの場所…………加えて襲って来るのは、見た事もないような化け物達…………少しずつ倒れて居なくなって行く仲間…………不満や不安は溜まって当然の状況ですから。」

オーグ「まさしくそれが、シンの懸念していた事だろう。例えそのような状況だろうと、敵が現れれば剣を取って前へ進まねばならん。不安を払い、重い足を引き摺り、仮に最終目的地に辿り着いたとしても……………そこで待つのは、それまでの化け物すら従えるような更に上を行く怪物共。時間を掛ける程、道程が遠のく程、包囲網は削られ薄くなって行く。」

迅「まさにスピード勝負だね。」

 

 迅達がそう言う中、オーグはそう言う。

 そんな中、オーグは考えていた。

 

オーグ(こう言っては何だが…………理想は何事もなく帝都に辿り着き、そこで全て片付ける事だった。だが、こうして道程の途中で拠点を見付けた以上、それはもう仕方無い。問題は発見した砦にシュトロームが居なかった場合、即ち……………それが魔人達の拠点の一つに過ぎなかった時……………。)

 

 オーグは、そう懸念していた。

 翌日、ダーム・イース混合軍は、他の混合軍との合流へ向かう。

 

シン「急げば2日位でクルト王国軍に合流出来るってさ。」

ユウト「その間に襲撃が無ければ幸いだけどな。」

マリア「発見した砦に、シュトロームやクルトで戦った連中は居るのかしら?」

ユウト「どうだろうな……………。」

シン(どちらにせよ、そこでの戦いがこの作戦の1つのポイントになりそうだ。)

 

 シンとユウト、マリアがそう話す中、シンはそう思い、マリアは驚く。

 

マリア「っ!」

シシリー「どうしたのマリア?」

マリア「街だわ…………!」

 

 マリアが見付けたのは、廃墟と化した街だった。

 

ユウト「廃墟だね……………。」

マリア「当たり前だけど…………人一人居ないわね……………。」

シシリー「こんな小さな街まで…………襲撃に遭って、残らず全滅させられてしまったんですね…………。」

マリア「っ?」

 

 彼女の目に映ったのは、左足が失くなった少女のぬいぐるみだった。

 

マリア「……………!」

ユウト「………………。」

 

 そして彼の目に映ったのは、白骨化した遺体達だった。

 それも、多くの。

 

ユウト「災害級や魔人に襲われた者達が無残に遺されてる…………。殆どは喰われてしまったみたいだな。」

マリア「私には…………理解出来ない…………。魔人って言ったって…………少し前まで私達と同じ人間だったはずでしょ…………。それが何で『魔人になった』って言うだけで…………ここまで非情になれるの…………!?例え命令だったとしても…………どうして…………小さな子供や、罪の無い人達まで……………!」

 

 ユウトがそう言う中、マリアはそう呟く。

 それを聞いたユウトとシンが口を開く。

 

ユウト「マリア、お前の言ってる言葉、俺達も理解している。」

シン「俺だって、魔人=悪だなんて、安直に決め付ける気は無かったけど……………こんな光景を見せられたら…………そんな事も言ってられないよな…………。」

ユウト「あぁ。戦争や反乱…………更に革命行為とは真逆。正義の元で行われている訳じゃない。完全な虐殺行為だ。奴らは自らの意志で、本当の意味での、人類の敵となる道を選んでしまったんだ。それほど、平民の貴族に対する悪意が強かったって事だろうな…………。」

 

 シンとユウトはそう言う。

 一方、同じ頃、ラルフの乗ってる馬車では。

 

ラルフ「………………。」

 

 ラルフは黙り込んでいた。

 その際、ユウトとシンの言葉を思い出していた。

 

ユウト『ちょっと待ってくれ。シンは軍の力を見縊る奴じゃない。スイードの一件からも各国軍だけで魔人の対処が出来るとは思えないって言ってるだけだ。』

シン『そうです。俺達だけで魔人の討伐に当たるのは、これまでの実績を踏まえて決定された事項だったはずでは?』

 

 ユウトとシンの言葉を思い出したラルフは、顔を顰める。

 

ラルフ「調子に乗った若造共が…………!(しかし…………どうする…………?このままでは連合軍が集結し、次第に奴らが一気に魔人共を殲滅してしまう…………それでは奴らの二つ名の撤回所か、ますます名声が確かなもに…………!どうする……………。)」

 

 彼は此方を見ているエミールに目を向けた。

 

ラルフ(…………そうか!簡単な事ではないか!奴らより先に戦功を挙げれば良いのだ!)

 

 ラルフはそう思いながらほくそ笑む。

 不敵に笑うラルフに対し、副官は。

 

副官「……………。」

 

 不安げな表情を浮かべていた。

 チラッとエミールを見る。

 

副官「あの…………失礼ですが…………そちらは…………何処の所属の…………?」

エミール「…………長官。」

ラルフ「彼は今回の為に、他国から派遣された作戦参謀だろう。今更何を言っている?」

副官(…………!?不審がる者も特に居ない…………。私だけ知らされていなかった………のか…………?)

エミール(ふっくっくっくっ…………御し易い御し易い。欲に強い者、迷うのある者、意志の弱い者、衝動で動く者、手に取るように洗脳が出来る。)

 

 副官がそう聞くが、ラルフはそう答えて、周囲も不審がっていない事から、副官はそう考える。

 実は副官を除いた全員が、このエミールに洗脳されていたのだった。

 

エミール(さぁ、奴は一体何を仕出かしてくれるかな?人間よ、シン=ウォルフォードよ、ユウト=イーウェルよ。精々恐れ慄け。慌てふためけ。シュトローム様を楽しませる駒として、我々魔人の手の上で舞い踊るが良い!)

 

 エミールはそんなふうにほくそ笑んでいた。

 エミールが暗躍しているのを知らない中、その2日後、ダーム・イース連合軍は、クルト王国軍とカーナン王国軍と合流した。

 

マーク「あ!来たッスよ!」

オーグ「ダーム王国軍到着か。久し振りだなシン、ユウト。」

シン「あぁ。皆取り敢えず無事で何よりだな。」

ユウト「相当大変だったそうだな。」

迅「うん。大きいワニの災害級が襲って来たんだ。」

ミナト「こちらはでかい鹿の災害級だった。鹿の災害級のデータを手に入れたから、新たなプログライズキーを作れるぞ。」

ユウト「分かった。」

 

 マーク達とユウト達がそう話す中、シンが口を開く。

 

シン「っで、アリス達は?」

マーク「明日には到着する見込みみたいッスよ。」

オーグ「移動の休息や、軍との細かな連携の確認に1日程掛かるとして、恐らくその直後、砦に攻撃を仕掛ける事になる。砦はここからしばらく行った先の山間だ。お前達も後で現場を確認しておいてくれ。」

滅「ああ。」

迅「OK。」

 

 シンがそう聞くと、マークが答えて、オーグが言うと、迅と滅が反応する。

 

シン「連合軍の動きは勘付かれてないか?」

オーグ「五分五分だな。奴ら一度も砦の外に出ないから何とも言えん。物資の調達等はどうしているんだか…………。」

シン「まあ包囲して叩くだけだから。極論、バレてもあまり関係無いと言えば関係無いか…………。」

 

 シンとオーグはそう話す。

 その翌日の昼頃、スイード王国軍も到着した。

 

タクヤ「ユウト。待たせたな。」

ユウト「待ってたぞ。」

ミナト「漸く到着した様だね。」

コハル「うるさい。スイード王国軍に合わせて動いていたんだ。文句を言うな。」

 

 タクヤ達は、そんな風に話す。

 作戦開始まで少しの間は、各自で体を休める事になった。

 

兵士「此方が、アルティメット・マジシャンズの皆様で御利用になれる天幕になります。男女別で御用意出来ております。」

マーク「おお!広い!」

シン(これだけの広さがあれば…………!)

アリス「どうしたのシン君?」

シン「いや〜、他の兵士さん達にはちょっと悪いけど、実働部隊は俺達だけだから、ちょっと贅沢させて貰おうかなって。」

アリス「??」

 

 兵士が用意する中、シンは何かを思いつく。

 そして彼が用意したのは、高級なベッドである。

 

マーク「や…………野営にベッド!?ウォルフォード君が用意したんスか!?」

シン「ああ。異空間収納でね。ちょっと野戦病院っぽいけど……………。」

オーグ「不自然この上無いな。」

ユウト「全くだ。」

雷「マジかよ……………。」

シシリー「シン君、この寝具って…………!」

シン「ああ。家で使ってるのと同じ奴だよ。」

シシリー「わあ!」

 

 マークが驚き、オーグとユウトが呆れる中、シシリーはそう反応する。

 

マリア「え?何?何か特別なものなの?」

アリス「きゃあああ!!凄ぉい!何この布団!下も上もフワッフワでフッカフカ!!」

迅「本当だ!!凄く気持ち良いよ!!」

マリア「本当だ、凄く柔らかい…………。何なのこの素材……………。」

コハル(見た所、羽毛と木の皮を使ったみたいだな。)

シン(フッフッフッ。この世界の寝具は羊毛メインだからな。俺が密かに自宅で開発した羽毛布団と、木の皮を利用した低反発マットレスの威力を思い知るが良い!)

 

 マリア達が驚く中、コハルは冷静に分析していた。

 

ユーリ「これならあっと言う間に熟睡出来そうねぇ♡疲れもすぐ取れそう♡」

アリス「くー……………。」

リン「アリスはもう寝てる。」

亡「疲れているのでしょうから、寝かせてあげましょう。」

オーグ「準備が良いと言うか何と言うか……………。」

シン「はは。使う機会があって良かったよ。」

ユウト「まあ、良いんじゃ無いか。」

シン(魔人とまだ相対するんだ。皆きっと表に出さなくてもプレッシャーを感じてる。少しでもそれを和らげられればと思って用意したけど、喜んで貰えたようで良かったな。)

 

 シンはそんなふうに思っていた。

 その夜、アルティメット・マジシャンズが熟睡していると。

 

シシリー「…………っ?」

 

 1人だけ起きたシシリー。

 シシリーは、周囲を見渡す。

 

シシリー「……………ん?」

 

 だが、その中にユウトは居なかった。

 毛布を羽織って天幕を出ると、ユウトは地面に座って星空を見上げていた。

 シシリーはユウトへ歩み寄る。

 

シシリー「ユウト君。」

ユウト「シシリーか。眠れないのか?」

シシリー「いえ、先程起きちゃって…………ユウト君も?」

ユウト「いや、眠れる気配すら無い。」

シシリー「……………あの、良かったら少しお話でも。」

ユウト「良いのか?」

 

 そうして、ユウトとシシリーは話す事に。

 だが、この時、ユウト達は気づいていなかった。

 事態がとんでも無い方向に進みつつある事を。




今回はここまでです。
今回は、少し短めです。
砦を見つけ、包囲していく。
だが、ユウト達が知らぬ間に、悪意は蠢いていて、事態を悪化させていく。
果たして、どうなってしまうのか。
次回は、魔人との戦いが始まる所まで行く予定です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
この小説は、サウザンドアークやゼインに関しては、出すかどうかは未定です。
オリジナルのプログライズキーである鹿のプログライズキーを出します。
あと、賢者の孫とセイバーだけでなく、賢者の孫とドライブ、賢者の孫とウィザード、賢者の孫と何かのスーパー戦隊の小説をやろうかなと考えています。


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