メタルマン made by ギンギツネ (青色好き)
しおりを挟む

第1話:メタルマン

メタルマンと聞いたらロックマンの方じゃなくて映画の方を思い浮かべます。


「ふふ、遂にプロトタイプが完成したわ……」

 

 暗い空間の中に一か所だけ灯りが点いている。灯りが照らされているテーブルには様々な機材や道具が置いてあり、配線やコード・ネジや基盤が幾つか置かれている。その光景は正に研究室としか言いようがない。

 

 そこに佇んでいるのは白い衣服を被った人物。声色からして女性だ。だがその女性は頭からキツネのような耳を、そして尻尾を生やしている。コスプレなどではなく列記とした体の一部だ。明らかに人間ではない。

 

 それもそのはず。彼女は「サンドスター」という特殊な物質によって動物が人間の少女の姿となった生命体「フレンズ」。

 

 彼女の名でありかつての動物の名前は「ギンギツネ」。

 

 フレンズとして誕生してからは発明家として活躍しているフレンズだ。

 

「誰に試そうかしら…… この大きさからして隊長が良いかしら?」

 

 ギンギツネの手には何やら大きなマスクがある。それは金属で構成されていて、目は薄い青色、やや痩せているような顔つきだ。テーブルの近くには紫色のボディが置かれている。あのマスクとボディは組み合わせて一つの物のようだ。組み合わせてみるとパワードスーツのように見える。

 

「ふふ、この“メタルマン”の素晴らしさをジャパリパークに…… いえ、世界に知らしめる日が明日になったわ! 明日が楽しみだわ!」

 

 メタルマン。

 

 それがギンギツネの開発した発明品の名前だ。

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

「ふぅ……、皆お疲れ様!」

 

 此処はジャパリパーク。草が生い茂り、虹色の立方体であるサンドスターが積み重なる山が美しい場で、5人のフレンズと隊長と呼ばれる人物が車に乗って移動している。隊長の後ろの座席にはドール・ミーアキャット・ハクトウワシ・マイルカ・ライオンのフレンズが座っている。

 

「今日のセルリアン退治、問題無く終わりましたね!」

 

「隊長の指示が的確だったからね! おかげで苦戦しなくて済んだよ~!」

 

「何言ってるんですか、二人共油断しそうだったですわよ!」

 

「そこを改善するべきね」

 

「ゆっくりでも良いから改善しようね~」

 

「ははは、頼むよ二人共」

 

「「は~い!」」

 

 6人は笑顔で会話しており、仲の良さを感じさせる。彼らは探検隊。今まで様々な戦いや出来事を経験しており、その分連携はしっかりと出来る強者チームだ。少し前ではセルリアンの群れと戦ったのだがそれをしっかりと倒した事からも実力の高さが窺える。

 

 車でしばらく移動すると隊長達の拠点に到着する。此処では色んなフレンズが集まる場所だ。様々なフレンズが雑談したり情報交換したりする事が多い。フレンズ達が仲良くしている様子を見るのが隊長の癒しだったりする。

 隊長が拠点に着くと、あるフレンズがやって来た。そのフレンズは黒い耳と尾を生やしており、まるでキツネのような姿のフレンズだ。

 

「隊長!」

 

「あ、ギンギツネ?」

 

 隊長の元にやって来たのはギンギツネだ。ギンギツネは発明を得意とするフレンズで、度々奇妙な発明をしており、それをセルリアン退治に使う事もある。ギンギツネが来たという事は何か発明品の実験をやらせるつもりなのだろうか?

 

「隊長、ちょっと試してみたい事があるんだけど…… 協力してくれないかしら? バイト代を出すから!」

 

「え、もしかして変な薬品を飲ませるとかじゃあ……」

 

「いいえ、ある物を着て欲しいのよ!」

 

「着る……? 服の事?」

 

「そうよ! お願い~!」

 

「う~ん、まぁ、良いけど……」

 

「ありがとう! 報酬はタンマリあるから!」

 

「発明品の服って何ですか? 気になります~」

 

「ふふん、それは ナ イ シ ョ !」

 

(ギンギツネの事だし、何か変な物着せられそう……)

 

 ドール達はどんな服を着せるのか結構気になっているようだが、ギンギツネはその事を話そうとしなかった。その分何を着せるつもりなのか隊長は増々気になった。

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

「さぁ、此処がその発明品を造るために造った地下室よ!」

 

「え、態々別の研究部屋を造ったの!?」

 

「そうよ! 今ある研究室じゃあ装置を置けないから別の研究室を造ったの! 結構大変だったわ~」

 

 まさか拠点の下に地下室を造るとは、一体全体何を造ったんだ? 只の服ではないと察していたが本当にどんな服なんだ? 隊長はどんな服を着せられるのか分からなくなってきた。

 地下室の灯りを灯すと、やや暗かった部屋の全体像が分かった。まるで映画やゲームに出てきそうな、清潔で綺麗な部屋をしている。所々配線や道具が散らばっているがそれを含めても十分綺麗と言って良いだろう。

 

「え~と、その服って……」

 

「ふふ、ズバリあれよ!」

 

 ギンギツネが自信満々の表情で指を指した。その方向には白いテーブル…… の上に珍妙なマスクがあった。マスク前部は金色、後部は紫色の光沢を放っており、頬の部分は瘦せ細ったような凹みがある。瞳の部分はやや鋭いような目つき。何とも奇妙なマスクだ。

 

「え~と、何あれ?」

 

「ふふ、私が造ったパワードスーツ。その名もメタルマンよ!」

 

「メタルマン?」

 

「そうよ! ジャパリパークで支給される予定のパワードスーツの試作品よ!」

 

「え、支給される!?」

 

「えぇ、セルリアン対策やパークにやって来るかもしれない違法ハンターとかへの対策のためにね! 私はそれの製作を任されてたのよ!」

 

「その試作品が、コレ?」

 

「その通り!」

 

 この奇妙なデザインのマスクがパークから支給……? 冗談じゃないのか? と隊長は心の中で呟く。ギンギツネにあまり言いたくないが、微妙なデザインのように感じてしまうからだ。少々安っぽい感じの出来に見えてしまう。まるで低予算映画の着ぐるみのような見た目だ。せめてマスクの頬が凹んでなければ少しはマシなのだが……

 

「凄いでしょ~! この強靭な金属! 鋭い目つき! 正にカッコよさの極み! マスクのデザインはメンフクロウに頼んで描いてもらったんだからカッコイイ筈よ!」

 

「え、メンフクロウのデザインなの!?」

 

 メンフクロウはお面を作る事が得意なフレンズで、テングコウモリや人面魚のフレンズが被っているお面をメンフクロウ製なのだ。このマスクも彼女が関わっていると知って正直驚いている。

 

「ふふ、早速このメタルマンを着てもらうわ! 先ずはボディの方から着てね!」

 

「う、うん……」

 

 と言う訳でさっそくボディの部分を装着する事にした。実際に着てみると意外と動きやすい。硬そうな金属が多数付けられているので動きにくそうなイメージがあったが、むしろ真逆だった。ここまで動かせるとは、流石パーク随一の発明家だけの事はある。

 

「さぁ、お待ちかねのマスクよ!」

 

 そして、遂にメタルマンのマスクを装着する事になった。やや狭いような感じだが、呼吸とかに問題は無い。十分快適だ。近くにある鏡を見ると自分の姿が映るが何だか低予算の特撮ドラマに出てきそうなキャラだなぁと思ってしまう。

 

「う~ん、何か安っぽさを感じるような…… それに何かベルトのサイズが合ってないような……」

 

「そんな事無いわよ! さぁ、起動コードを言って頂戴! 44875よ!」

 

「よ、44875……」

 

「これでメタルマンの性能が本格的に使えるようになったわ! よし、早速実験に入るわ! 外に出てメタルマンの機能テストよ!」

 

「え!? この格好で外に出るの!? 恥ずかしいよ!」

 

「大丈夫! パークで正式採用されて色んな人が着るようになるんだから! 今の内に慣れておきましょう!」

 

「えぇ…………」

 

 この頼みを断るべきだったなぁ。

 隊長は心の中でそう呟いた。




次回の更新は2022年6月24日19時00分の予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話:ギンアイ、起動

夏らしく本格的に暑くなってきました。暑さのあまり小説執筆が遅くなるぅ……


 拠点から少し離れた場所でメタルマンの機能テストをする事になった。ギンギツネがいるテーブルには何やら怪しそうな機材が置いてあり、少し離れた場所にはパークで使用されている車が置いてある。

 ついでに、このテストには多くのフレンズが見学している。パークで支給されるパワードスーツという事もあって興味津々な子が多いようだ。

 

「あれが隊長さんなんですか? 何だか変わった姿ですね?」

 

「う~ん、何だか硬そうだな~」

 

「光が反射してピカピカ光ってますわね……」

 

「正義のヒーローみたいでちょっとかっこいいわね!」

 

「噛み応えありそうな毛皮だね~」

 

 隊長が着ているメタルマンの姿を見て思い思いの感想を述べている。

 

「うぅ、皆に見られてるよ……」

 

「まぁまぁ、これからテストの様子を見せれば恥ずかしさは吹っ飛ぶわよ。まずメタルマンのマスクの調整をして…… よし! 先ずはこのジャパリパークの車を引っ張ってみて!」

 

「えぇ!? この車を!?」

 

 その車は隊長がよく運転しているものだが、それを引っ張るという内容。しかもその車をよく見ると紐で3台と連結してある。車1台で大体1トン位の重さなので、3台だと3トン! 到底人が引っ張れる重さではない。

 

「いくら何でも無理だよ!」

 

「大丈夫! 心配はいらないわ! 騙されたと思って引っ張ってみて!」

 

 本当に大丈夫かなぁ、と思いながら試しに引っ張ってみる事にした。軽く力を入れて引っ張ってみると、車が簡単に動いたのだ。しかも3台とも動いている。即ち3トンの物体を引っ張れる力があるのだ!

 

「す、凄い……!」

 

「どう? すごいでしょ?」

 

「隊長さん凄い! 物凄い力持ちになってます!」

 

「たいちょーすごーい!」

 

「まるで別人、いや、フレンズみたいな力ですわ!」

 

「Wow! まるでスーパーマンみたい!」

 

「隊長やるね~!」

 

 観戦しているフレンズ達はそれぞれ感想を口にしているが、皆隊長の怪力ぶりにかなり驚いている。人とフレンズの力の差は天と地の差であるが、それが縮まる程隊長は強くなってるのだ。これがメタルマンの力なのである。

 この調子でメタルマンの機能テストを進めようとした。

 

 その時だった。

 

「よ~し、次は…… きゃあ!?」

 

「!? ギンギツネ!?」

 

「あれは、セルリアン!」

 

「助けないと!」

 

 ギンギツネの背後から突然セルリアンが襲ってきた。セルリアンは大口を開けてギンギツネの全身を思いっ切り飲み込んだ! そしてギンギツネからサンドスターを吸い込んでいる。このままではサンドスターを吸い尽くされて動物の姿にされてしまう。

 

「やめろおおぉぉ!!」

 

 隊長はセルリアンに向かって渾身のパンチを繰り出そうとした。そのパンチはまるでライオンのような、いや、それ以上の力の強靭なパンチ。そのパンチが直撃したセルリアンはギンギツネを吐き出して思いっ切り吹き飛んでしまった。近くの机に激突したセルリアンは衝撃のあまり粉々に砕け散り、体を構成するサンドスターは霧散した。

 

「……!?」

 

「あ、セルリアンが一瞬で……!?」

 

 ドールを始めとするフレンズ達はセルリアンが一瞬で倒された事に驚いてしまう。現れたセルリアンは決して小さくない、中型位の大きさだ。フレンズと言えども一撃で倒すのは余程力が無ければ難しい。だがメタルマンを装着している隊長は一瞬で倒した。最早隊長はこの場にいるフレンズ達よりも強いのかもしれない。

 

「ギンギツネ! 大丈夫!?」

 

「う、たい、ちょ……」

 

「ギンギツネさん!」

 

「早く病院へ!」

 

 セルリアンが吐き出したギンギツネに近寄る。どうやらまだ無事のようだが意識は朦朧としている。輝きやサンドスターを大分吸われたようだ。

 

「メタルマンを…… 平和の為に、使って…… ぇ…………」

 

「ギンギツネ!」

 

 ギンギツネは担架に乗せられて急遽病院に運ばれた。隊長やドール達はギンギツネが心配なので共に病院に向かう事にした。

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 ジャパリパークの病院の一室で隊長達はカコ博士による治療の結果を待っていた。病室がある廊下では隊長とドール達・ミライが待機していた。隊長はメタルマンを装着しているため表情は窺えないが、深刻そうな姿勢からやはり心配しているのが分かる。

 病室からカコ博士が出てくる。病室のベッドにはギンギツネが毛布を被らされて寝かされている。見たところ命に別状は無さそうに見える。

 

「カコ博士! ギンギツネは……」

 

「彼女は無事よ。サンドスターを大分吸い取られたみたい。何時目覚めるかは分からないわ」

 

「そんな……」

 

 隊長とドール達はカコ博士からの返答に一瞬安堵するものの、目覚めるか分からない事を聞くと再び深刻な表情となった。少なくとも命に別状は無いのが救いである。だが、彼女の救出が間に合わなかった事が悔しいのだ。隊長は拳を力込めて握っている事からもそれが分かる。

 

「もっと早く助けていれば…… ギンギツネは助かっていたかもしれない……」

 

「隊長さん……」

 

 隊長の後悔の様子を見てドールは声をかけようとしたが、隊長の様子を見て何を話せば良いか分からないからだ。ミーアキャットも、マイルカも、ハクトウワシも、ライオンも、言葉が出なかった。ミライもカコもどう言えば良いか分からない。

 

 沈黙が流れる。

 

 だが、その沈黙が破られた。

 

 隊長の視界がブレ始めた。涙で滲んでいるのではない。まるで、映像機器のブレのような……

 

「え? 何だ……?」

 

 ブレは暫くすると収まっていき……

 

『隊長! 聞こえるかしら?』

 

 目の前の光景にある物、それは紫色の枠・伸び縮みする妙な棒・右上にある変な数字、そして……

 

 

 

 

 

 ギンギツネの姿が映ったのだ。

 

 

 

 

 

「え? 何これ!?」

 

『これを見ているって事は、私のメタルマン計画が最終段階に入ったか、私の身に何かが起きたかのどちらかの筈よ』

 

「え!? えぇ!?」

 

「あの、隊長?」

 

 突然の事態に隊長は困惑しているが、ドール達はその隊長の変わりように困惑していた。端から見れば突然隊長が変な事を言い始めたように見えるからだ。

 

『これは私の存在を模して作られた人工知能よ。ギンギツネのAI、略して“ギンアイ”よ!』

 

「人工知能……!?」

 

『良い? 隊長はジャパリパークで、いや、地球で最も進化した生命体になったのよ!』

 

「ど、どういう事……?」

 

『その様子だと何か大変な事が起きたのかしら? 本物の私に何か起きたとか……』

 

「そうなんだよ、ギンギツネがセルリアンに襲われたんだ。何時目を覚ますか……」

 

『そうだったのね……』

 

 どうやら隊長に話しかける謎の声はメタルマンに内蔵されている人工知能である事が分かった。隊長との話でギンギツネのAI、ギンアイは本物のギンギツネの身に起きた事を把握した。

 

「た、隊長さん!? どうしたんですか!?」

 

「一体誰と話してるの!?」

 

「もしかしてトーメイニンゲンとか? でも音で探っても何も無いよ?」

 

 その様子を見ているドール達は隊長の不審な行動を問いていた。流石に聞きたくなったのだろう。

 

『あ、周りに誰かいるのかしら?』

 

「うん。ドール達やミライさん達が……」

 

『彼女達に私の事を知っておいた方が良さそうね。ちょっと近くの機器を借りるわよ』

 

「え? 借りるって?」

 

 この会話の直後、病室に置いてあるプロジェクターが作動して壁に映像が映し出される*1。そこには今隊長が見ている画面がはっきりと映し出された。この事態にはドール達も驚いてしまい、目が〇〇となってしまう。

 

「ひゃあ!? ギンギツネさん!?」

 

「これは一体どういう事ですの!?」

 

『私はメタルマンに内蔵されている人工知能、ギンアイよ! ちょっと此処のプロジェクターを借りて、今隊長が見てる画面を映し出してるのよ』

 

「人工知能…… Wonderful! そんなものまで入ってるとは驚きだわ!」

 

「てっきりギンギツネが復活したと思ったよ……」

 

「まさか、メタルマンを作るように依頼してましたけど、まさか人工知能まで作ってるとは……」

 

 ドール達は映像で映し出されたギンアイに皆驚いてしまう。ミライとカコは流石に人工知能まで作ってるとは思わなかったのか、結構驚愕している。

 

『流石に私一人じゃ今後大量生産される予定のメタルマンを管理するのは大変だから、人工知能である私が作られたのよ!』

 

「そうなんだ……」

 

「確かにパークの人数でメタルマンの管理は難しいという課題はありましたけど、ギンギツネさんはそれを解決しようとしてたんですね!」

 

『流石本物の私! 天才だわ!』

 

(自画自賛…… してるなぁ……)

 

 ミライとギンアイの会話を聞いた隊長は心の中でそう呟いた。ギンアイとギンギツネは別人なので自画自賛と言えないかもしれないが。

 

「あ、そういえば前から気になってたんだけど、このメタルマンはどうやったら脱げるの?」

 

『あら? 脱ぐの?』

 

「ま、まぁ流石にずっと着てるのは恥ずかしかったから……」

 

『脱ぐには専用の装置が必要よ。赤いリモコンみたいな「ヌゲールメタルマンZ」という装置を使うのよ*2

 

「それは何処に…… あ……」

 

 ギンアイの「赤いリモコン」という発言に隊長はある事を思い出した。隊長がメタルマンの力でギンギツネを襲ったセルリアンを倒した時、吹っ飛ばされたセルリアンは机に当たったが、そこに()()()()()()があった事を。

 

「あの…… あの現場を調べた時にバラバラに壊れていた赤いリモコンと思しき物があったんですけど……」

 

『あ、それだわ』

 

「………… 壊れてるって事……?」

 

 残酷な推測に隊長は嫌な予感を感じてしまう。そのせいか、隊長の沈黙は少し長くなっている。

 

『残念だけど、本物の私が目覚めてヌゲールメタルマンZを直すまではそのメタルマンを着続けるしかないわね』

 

「えぇ!?」

 

 肝心の着脱に必要な装置が壊れているというとんでもない状況。それにより現在メタルマンを外す事が不可能となっているのだ。つまり、ギンギツネが目覚めて装置を直すまではメタルマンを装着したままでいなければならない。

 

「予備も無いの!?」

 

『申し訳ないわ。その通りよ』

 

「うそぉ……」

 

「あの、パークの研究員に頼めば直してくれるんじゃあ……」

 

『残念だけど、私しか知らない技術が沢山使われているの。多分パークの研究員でも難しいわね』

 

「じゃあ隊長さんは暫くの間はこのままですか!?」

 

『その通りよ』

 

「えぇ…………」

 

 追い打ちを掛けるかの如し予備無し・他の人にも直せないという事実。これにより隊長はメタルマンを着けたまま過ごす事になってしまった。哀れである。

 

「うぅ、この格好じゃあ恥ずかしいよ……」

 

「私はかっこいいと思うけど?」

 

「ハクトウワシはともかく僕はなぁ……」

 

『これからその姿で活動する事を考えると慣れる必要があるわよ? という訳で慣れなさい』

 

「でも……」

 

『仕方無いわ。隊長、その恥ずかしさを克服する方法を教えるわ。先ず、恥ずかしいという言葉を思い浮かべて頂戴。そして次はこう唱えるの。存在しない、と』

 

 流石にメタルマンの姿で活動するのは恥ずかしいのだが、ギンアイによるとどうやら恥ずかしさを克服する手段があるのだが、それが何がしたいのかと聞きたくなるようなやり方だった。これで克服出来る? どういう事なのだ? 隊長から、というより周りの人から見れば意味不明だった。

 

「そ…… 存在しない」

 

 ギンアイの言う通り、存在しないと言った。

 すると、変化が起きた。

 それは外面の変化ではなく、内面の変化である。

 

「あれ? 何か…… 恥ずかしさを感じなくなった?」

 

『人間の脳には恥ずかしさを感じる領域が存在するわ。メタルマンに内蔵されたナノロボットがそこに入って「恥ずかしい」という感情を削除したのよ』

 

「マジ!?」

 

『マジよ』

 

 サラリととんでもない機能で一部の感情を消すという荒業を成し遂げたのだ。ナノロボットという名前からして極小のロボットの事だろう。それが脳内に侵入して感情を消す…… 痛みを感じないとはいえ考えると物凄く恐ろしい事に感じてしまう。

 

『言っとくけど健康に問題無いように造ってあるわ! そもそも健康に問題が出るような仕様なら本物の私が隊長に着ける訳無いじゃない』

 

「だとしても凄く怖いんだけど……」

 

「よく分かりませんけど、メタルマンには凄い機能が付いてるって分かりました!」

 

 ドールは結構目を輝かせながらメタルマンを装着している隊長を見ている。どうやら凄い機能が付いていると分かってかっこいいと思っているようだ。周りを見ていると、マイルカもハクトウワシもライオンも目を輝かせている。彼女達もカッコいいと感じてるようだ。よく見るとミーアキャットやミライも目を輝かせていた…… ような気がする。

 

『もう少しメタルマンの詳細を教えてあげるわ! 私の言う通りに従って移動して! 別の研究所があるわ』

 

「え? もう一つ研究所があるの?」

 

『そうよ。メタルマンの量産や整備を想定した研究所があるの。そっちに向かうわよ』

 

「は、はぁ…… でも恥ずかしくなくなったとはいえ、この姿で歩いてるところを見られたら変な噂が立ちそうだよ。ここまでギンギツネを連れて来た時は空いていたけど、今の時間帯だと誰かいそうだしなぁ……」

 

 恥ずかしさは消えたものの、メタルマンの姿を誰かに見られて変な噂を立てられる恐れがある。何れ正式採用されて色んな人が着るかもしれないが現状着ているのは隊長だけ。他の隊長やパークの職員にコスプレ? とかの噂を立てられるのではと心配している。

 

『それもそうね…… よし、メタルマンの機能を使うわよ! 隊長、「ステルス」と唱えてみて!』

 

「どれどれ…… ステルス」

 

 ギンアイの言う通り「ステルス」と唱えると、体が一瞬光った。光が収まると、そこにはメタルマンを装着していない隊長の姿があった。

 

「!? スーツが消えた!」

 

「え!? 隊長さんのメタルマンが消えちゃいました!?」

 

「もしかして、別の場所に瞬間移動したのでしょうか!?」

 

 メタルマンの装備だけが消えた現象を見て隊長だけでなく周りの一同は驚き一色に染まる。

 

『メタルマンの装備だけを透明にしたのよ。消えた訳じゃないわ』

 

「あ、ホントだ! タイチョーさんの周辺で音が反射してるよ!」

 

「さすがはマイルカだね~」

 

 ギンアイが言うにはメタルマンのスーツを透明にしているようだ。その証拠にマイルカのエコーロケーションを使うと、隊長の周辺の空間で音が反射している。即ち透明となったメタルマンのスーツに反射しているのだ。全く見えない程透明に出来る技術は正に驚愕だ。

 

『これなら安心よ♪ さぁ、行きましょう!』

 

「まぁ、これなら大丈夫か……」

 

 メタルマンのスーツを透明にした事で取り敢えず問題は解決したので、ギンアイの指示の通りにその研究所に向かう事にした。隊長は恥ずかしがるような様子も無く歩いていき、探検隊も興味津々でついて行った。

 

「大丈夫かしら?」

 

「いろいろな意味で心配ね……」

 

 ミライとカコはその様子を大人しく見守っていた。あのパワードスーツがパークで支給されたらデザインとか変わりそう。そう思った。

*1
今作オリジナル機能です。ドール達にギンアイを説明しやすくするためです。

*2
今作オリジナル機能です。原作だと装着してパスワードを言うと脱げなくなりますが、流石にそれは恐ろしすぎるので脱げるようにしました。




次回は2022年7月1日19時00分に投稿予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話:もう一つのメタルマンの研究所

最近暑くて次回作の執筆が滞っているぅ……


 拠点から少し離れた森の入り口辺りに岩がある。その岩をどかすと、狭い通路が現れ、隊長達はそこに入っていった。此処がギンアイの言っていた研究所である。ついでに、メタルマンのスーツのステルスは解除している。

 

「電気を付けたけど、最初に来た研究所と比べると少し寂しい感じがするなぁ」

 

『まだ整備中だから仕方無いわ。そこに冷蔵庫があるでしょ。開けてみて』

 

 ギンアイの言う通りに部屋の一角に冷蔵庫がある。その冷蔵庫は何かを生産しそうな機械と合体しており、そのせいもあって不思議な見た目をしている。そこを開けてみると、緑色の液体が入った瓶が何本か置かれてある。その瓶には「エネルギー 1万ワット」と書かれている。

 

『それがメタルマンのエネルギー源であり、隊長の食事よ』

 

「え? これが…… 何か不味そうな色……」

 

「この液体は一体何ですの?」

 

『それはブドウ糖溶液よ。メタルマンの機能を維持するのに必要なエネルギーである1万ワットをこれ1本で摂取出来るわ。冷蔵庫と合体してる機械「ショクリョウツクールF」が自動的にそれを作っているのよ』

 

「ブドートーって?」

 

「正確にはグルコースという名前で、動物や植物の栄養になる物質ですわ。脳がエネルギーとして利用できる物質でもあるの」

 

「つまりジャパリまんみたいなものか」

 

『まぁ、その通りね』

 

 ミーアキャットの詳しい解説に一同は感心してしまう。流石は先生と言ったところだ。この緑色の液体が食事のようだが、大丈夫なのかと隊長は不安に思ってしまう。何か青汁よりも緑が濃い。本当に飲めるのかすら疑問に思う。

 

『それを飲めばOKよ!』

 

「でもどうやって飲むの? マスクは脱げないし……」

 

「あ! もしかして口の部分は開くんでしょうか? ウィーン…… て感じで!」

 

 口の部分が開く。ドールの言う通り確かにロボットのようだ。そこからあの緑色の液体を流し込むのだろうか。何だかあまり経験したくない飲み方のような……

 

『首に注入口があるわ。そこに流し込めば飲めるわ』

 

「首なの!? この辺りか……?」

 

「あ、隊長! 多分この穴かも!」

 

「ここか! 少し見づらいから零しそうだな……」

 

「あ、私がやります!」

 

「あ、悪いね。ドール」

 

 ドールが緑色の液体を持ってメタルマンの首の注入口に緑色の液体を注いだ。零さないように慎重に注いでいく。暫くすると、隊長に変化が表れた。

 

「……うっ!」

 

「え? どうしました?」

 

「もしかして、腐ってたの!?」

 

 隊長の呻き声で一瞬異変が起きたのではないかと心配したが、その理由は直ぐに分かった。

 

「……不味い……!」

 

 呻き声を出した理由は単純。不味いからだ。色が不味そうだっただけに本当に不味い。しかもこれまでに味わったことが無い程の不味さだ。

 

「あ、そうなんですか……」

 

「まるで〇〇〇〇と××××を加えて、更に△△△△と□□□□を加えたようなとんでもない不味さだ……!」

 

「そんなに不味いと逆に飲みたくなっちゃうな……」

 

「ライオン、やめた方が良いよ。気を失いかねない不味さだ……!」

 

『申し訳無いけど味付けする暇が無かったわ。メタルマンの開発と機能追加を優先してたからね』

 

「これを着てる間は、これしか飲めないの……?」

 

『残念だけどその通りよ。良薬は口に苦しって言うから我慢してちょうだい。本来ならアップル味とかオレンジ味とかグレープ味とかにするつもりだったんだけどね……』

 

「それ、凄い飲みたい……」

 

 猛烈に不味いものの何とか全部飲み干した。本物のギンギツネがメタルマンを脱がせる装置を修理させてくれるまでこれを飲むと考えると正直相当嫌である。

 

「また飲むと考えると、嫌だなぁ……」

 

『隊長。他人事のように聞こえるかもしれないけど、この状況に慣れれば慣れる程、隊長は楽になれるわ!』

 

「ほぼ他人事のような……」

 

『そのつもりで言ってないんだけどね…… あとやっておく事を済ませましょう』

 

「やっておく事?」

 

『近くの棚に金属の箱がある筈よ。その中に2個のチップがあるわ。開けてみて』

 

 言われた通りに冷蔵庫の近くの棚に金属製の箱が置かれている。隊長はそれに手を伸ばして開けてみる。すると、中に赤いチップと黄色いチップの合計2個のチップが入っている。

 

『赤いチップと右肩前方のスロットに、黄色いチップ右肩後方のスロットに装着してみて!』

 

「どれどれ…… やっぱり少し見づらいなぁ……」

 

「あ、私がやります!」

 

「あ、ドール。それじゃあお願い」

 

「ハイ!」

 

 ギンアイの言う通りに黄色いチップと赤いチップをメタルマンのスロットルに差し込む。カチッという音がすると同時に、メタルマンに変化が起きた。

 メタルマンに電流が走るようなオーラが現れたのだ。

 

「おぉ!?」

 

『来た来た来た!』

 

「え? 何ですか!?」

 

「もしかして、野生開放みたいな状態なの!?」

 

 ギンアイは随分興奮しているが、その様子を見ているドール達は一体何事なのかと驚いている。そんな中ギンアイは冷静に喋り始める。

 

『チップを装着した事でメタルマンの新しい機能が使えるようになったわ!』

 

「え? 新しい機能!?」

 

 新しい機能と聞いて隊長はどのような機能なのかかなり気になってしまう。もしかしたら脱げる機能なのでは? と期待してしまったのだ。

 

「凄い! 何が出来るようになったの?」

 

『私にも分からないわ』

 

「…………ぇ?」

 

 しかし、その返答は予想外の物だった。肝心の製作者(が作った人工知能)にも関わらず分からないという答え。

 

『チップを付ければ秘めた機能が使えるようになるっていう情報は入ってたんだけど、それが何なのかまではインプットされてないのよ』

 

「つまり、ギンアイにも知らされてなかったって事?」

 

『その通りよ』

 

 まさかの知らされていないという話に隊長は唖然としてしまう。もしかしたら脱ぐ機能かも、と淡い期待を抱いた矢先、知らないのである。これではどうやってその機能を発揮すればいいのか分からない。

 

『大丈夫! チップを解析すればどんな機能なのか分かるわ! 少し時間がかかるけどね!』

 

「う、うん。頼むね」

 

 仕方無くチップの解析をギンアイに頼む事にした。新機能が脱げる機能である事であれば良いなぁと心の中で思っている。いや、そうであって欲しい。でなければあの不味い液体を飲み続けなければいけないのだから。

 

「そういえばこの飲み物はどうやって作ってるんですか?」

 

『あぁ、それはアカギツネやホワイトライオンやピーチパンサーに頼んで時々材料を此処に運ばせているのよ。それを此処に入れて……』

 

「へぇ~、そうなんだ……」

 

 解析が終わるまで隊長達は雑談で過ごす事にした。ドール達はこのメタルマンの機能について色々質問している。このメタルマンの機能は隊長も気になっているので、隊長もギンアイに聞く事にした。

 

 そうしている間、パークでは大変な事が起きている事を皆は知らなかった。

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

「大変です! セルリアンが大量に発生しています!」

 

「大型の数も多いです! このままではパークセントラルの方にまで到来します!」

 

「不味いです! 各探検隊とフレンズの方々に連絡をしてください!」

 

 パークの多くの人が集まる部屋では、人々が慌ただしく行き交っている。モニターには多くのセルリアンが映っており、皆同じ方向に向かって移動している。大小異なる大きさのセルリアンが蠢く姿はまるでこの世の終わりを表すかのようだ。

 

「ミライさん! このままでは……!」

 

「えぇ、総力を挙げて迎撃しないとパークは大きな被害を……!」

 

 ミライと菜々は真剣そうにモニターを見つめている。このままではパークはセルリアンの巣窟と化してしまう。それを何としてでも防がなければならない。それは簡単では無い事を意味していた。

 

「ミライ、複数の探検隊がセルリアンと交戦し始めたわ」

 

「モニターにも映っていますね。セルリアンの数はまだ多い。何時まで持つか……」

 

 カコの発言にミライは心配する声色で答える。フレンズ達がセルリアン相手に戦っている。今は小型や中型が中心だが後に大型が来る。その時まで力を残す必要もあるだろう。この小型や中型との戦いで体力を消耗した状態で大型と戦ったら……

 最悪のパターンが頭の中に思い浮かんでしまう。

 

「各部隊に応援を出しました。もしかしたら……」

 

 ミライはある可能性を思い浮かべた。あの鋼鉄のパワードスーツを身に纏った隊長を。もしかしたら、彼は……




次回の更新は2022年7月8日19時00分に投稿予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話:戦いへ

自分の好きなフレンズが出てくる回その1。


『マスクの方は何個か造ったんだけどボディはまだ造ってないのよ。今隊長が着てるプロトタイプの製作に材料を沢山使っちゃったから……』

 

「え、マスクは幾つか造ったの?」

 

『そうよ。あっちに置いてあるわ。マスクを着てもパワーアップ出来るけど、ボディと共に着る事で更にパワーアップ出来るの!』

 

「へぇ~、そうなんですか!」

 

『ついでに、戦闘特化のマスクもあるのよ!』

 

 一方、隊長達はギンアイやドール達と軽い雑談をしている。すっかりご近所同士のお茶話のような明るい雰囲気だ。

 すると、突然ブザー音が鳴り響く。

 

「な、緊急警報!?」

 

「まさか、セルリアンが出たのでしょうか!?」

 

『もしかして…… ラッキービースト、聞こえるかしら?』

 

 警報に皆が驚く中、ギンアイは誰かと話をするかのように連絡を取っているようだ。隊長が見ている画面には通信を示すアイコンが表示されている*1。暫くすると、ラッキービーストからの通信が入った。

 

『ヤァ、キミガ ミライタチカラ キイテイタ ギンアイ ダネ?』

 

「あ、ラッキービースト!」

 

『その通りよ。今警報が出てるの?』

 

『ソウダヨ。セルリアンガ タクサン デテルヨ』

 

『何ですって!』

 

「セルリアンが!?」

 

「え! 本当ですか!?」

 

『ココノ チカク ニモ デテルヨ』

 

 ラッキービーストからの通信によりセルリアンが大量に出現した事に一同は驚く。今頃フレンズ達が力を合わせてセルリアンと戦っているだろう。自分達も行かなければならない。

 

「隊長! 行きましょう!」

 

「皆を助けに行こう!」

 

「私達の力を見せましょう!」

 

「私達のジャスティスでセルリアンをやっつけましょう!」

 

「プライドに賭けて必ず勝つよ!」

 

「皆……」

 

『これは行くしかないわね』

 

「あぁ、勿論だ!」

 

 ドール達がセルリアン退治にやる気になっている。セルリアンを放置すればパークは忽ち崩壊してしまう。そうなれば今までの楽しい日常を過ごせなくなるのだ。それは絶対に避けなければならない。パークやフレンズを守るために隊長達は戦わなければならないのだ。

 

「ギンアイ! このメタルマンでセルリアンと戦えるよね?」

 

『確かに戦えるけど、これはプロトタイプだから燃費はそんなに良くないわ。多めに食料を持って行きなさい』

 

「戦闘中に飲むのは難しそうだ……」

 

「私達がセルリアンと戦って足止めしてる時に、食料を飲ませるのはどうでしょう?」

 

『その方が良いわね。よし、隊長! 箱にあるだけの食料を入れましょう!』

 

「うん!」

 

 隊長は近くにある箱に冷蔵庫内の食料を出来るだけ多く入れる。味こそ不味いがどうこう言ってる暇は無い。

 

「よし! これで準備は出来た!」

 

『さぁ、行きましょう!』

 

「「「「「おー!」」」」」

 

 こうして、隊長率いる探検隊はセルリアンとの戦いに投じる事となった。

 フレンズ、そしてジャパリパークの平和を守るために。

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 研究所からそう遠くないのとある平野。そんなに長くない草が生い茂っており、風が吹くと草が海の波のように揺れて風の形を作り出す。パークのちょっとした名所だ。

 その平野にフレンズ達がセルリアン相手に戦っている。相手となるセルリアンは30匹程いる。フレンズ達はやや苦戦しているようだ。

 

「く…… 手強いな……」

 

「あぁ、なかなか硬いな。少し時間がかかりそうだ」

 

「キュ~…… そろそろ疲れてきました……」

 

「うぅ~ん、僕の攻撃もあまり効いてないような……」

 

「そろそろゲンカイなの……」

 

 セルリアンの相手をしているジャガー・タイリクオオカミ・タテゴトアザラシ・ケルベロス・カンザシフウチョウは体力的にそろそろ限界を迎えそうな程疲弊している。今戦っているセルリアンは数が多いだけでなく体も硬いため倒すのにどうしても体力を使う。残りは30体にまで減らしたがそろそろ限界だった。

 

 すると、一体のセルリアンが触手で攻撃してきた。触手は力を入れてジャガー達に向かっている。何とか戦える位の体力が残っているジャガーとタイリクオオカミが迎撃しようと構えた。

 

 その時だった。

 

 

 

 

 

 大きな打撃音が炸裂した。

 

 

 

 

 

 それと同時に触手を伸ばしていたセルリアンが爆散した。

 

 

 

 

 

「っ!? 何だ!?」

 

「いきなり爆発したぞ!?」

 

「キュゥ~!」

 

「えぇ!? 何々?」

 

「ナニがオきてるの!?」

 

 突然の事態にジャガー達は困惑しているが、それはセルリアンの方も同じだった。突然目の前の仲間が倒された事に困惑している。セルリアンは周辺に何かがいないか探しているが何も無い。何が起きているのか把握出来ない。

 

 そうしている間に別のセルリアンが爆散した。

 

 更にもう一体、もう一体と、爆散していくセルリアンはどんどん増えていく。セルリアン達が逃げ出そうとした頃には残りが十体となっており、瞬く間に5体がやられて残りは5体となった。セルリアンは必死な様子で逃げている。もうジャガー達の事を諦めているのだろう。

 

「何だったんだ……?」

 

 ジャガー達が頭上に?を掲げながらその様子を見ていた。

 

 だが、その直後、逃げるセルリアンの前から何やら大きな影が現れる。

 

 それは、別のセルリアンだった。

 

「キュッ!? もう一体いたの!?」

 

「まずいな……!」

 

 あのセルリアンは強い。彼女達の直観がそう語っている。見た目は人と同じ位の大きさで体色は青い。普通のセルリアンのようだが、彼女達からすればあのセルリアンは強く感じてしまうのだ。

 逃げているセルリアンはこのセルリアンの出現に驚いているようだ。その様子を見ている別のセルリアンは何の変化も無く見ている。その様子が少々変なように感じた。

 

「……?」

 

「何してんだろう……?」

 

 ジャガー達は何もしない様子を不思議に思っているが、どうやらセルリアン達もそう思っているらしく、「?」と思ってるような動きをしている。

 

 すると、

 

 近くの草むらから何かが飛び出してきた!

 

「やああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そこから飛び出してきたのはドール・ミーアキャット・マイルカ・ハクトウワシ・ライオンの五人。隊長が率いる探検隊のメンバー達だ。彼女達が一斉に飛び出し、5体のセルリアンに向かって攻撃してきたのだ。突然の事態にセルリアンは驚くが、反撃する暇も無く一瞬で倒されてしまった。

 

「え? ドール!?」

 

「皆さん、無事ですか?」

 

「あぁ、何とか……」

 

「助かったよ~」

 

「でも、セルリアンがノコっている」

 

「大丈夫です! 隊長さ~ん!」

 

 ドールがそう呼ぶと、セルリアンが光りだした。光が収まるとそこに佇んでいたのは金色と紫色の金属を纏ったパワードスーツ、メタルマンだ。その様子を見ていたジャガー達は驚いてしまう。

 

「えぇ!? 何それ!?」

 

「ほぅ、もしやそれはミライ達が言っていたメタルマンとやらか?」

 

「キュ~! キラキラ光っててかっこいいです~! これがオトナ……!」

 

「へぇ~、ハデス程じゃないけどかっこいいね~!」

 

「ヤミのナカでカガヤきそうなケガワなの」

 

 ジャガー達が各々のメタルマンの感想を述べる。どうやら全員好評のようだ。少なくとも不評ではない。

 

『ふふ、メタルマンの素晴らしさを分かってるわね! 流石本物の私!』

 

「意外だなぁ……」

 

 彼女達の好評を聞いてギンアイはすっかり嬉しさで包まれている。隊長自身はメタルマンのデザインを微妙だと思っているが、ドール含めて多くのフレンズはメタルマンについて肯定的だ。フレンズにとってメタルマンのようなデザインは受けやすいのだろうか……?

 

「そういえば、沢山のセルリアンが突然爆散したんだけど……」

 

『あぁ、それはメタルマンのフルステルスのおかげよ!』

 

「フルステルス?」

 

 聞いた事無い言葉にジャガー達は首を傾げる。少し前にセルリアン達が爆散させた技の事だろうか。

 

『簡単に言えばパンサーカメレオンみたいに完全に透明になれるのよ』

 

「えぇ!? そうなの!?」

 

「そして僕が次々とセルリアンを倒したんだ」

 

 ギンアイの答えにジャガー達は驚きを隠せなかった。

 これがメタルマンに装着したチップにより使えるようになった機能だ。この完全な透明化によりフレンズやセルリアン達に気付かれる事無く接近出来たのだ。そしてメタルマンのパンチによりセルリアンを倒したという事だ。

 

「それじゃあ、さっきまでセルリアンの姿だったのも、メタルマンの機能ですか?」

 

『その通りよ。メタルマンの機能により色んな姿に変身出来るの! 隊長、やってみて!』

 

「え? あれをやるの……?」

 

『そうよ。さぁ、早く!』

 

「う、うん……」

 

 恥ずかしい行為らしいのか、隊長はやや困惑気味だ。だが、ギンアイの押しに勝てず結局やる事になった。

 まず、隊長はこめかみに指を当てた。そしてしばらくするとメタルマンが光りだし、光が収まるとそこには違う人物が立っていた。その姿はフレンズなら誰もが知っている人物、ミライだ。

 

「あれ? ミライさんになった!」

 

「ほう、今度はミライさんか!」

 

「キュ~! もしかしてなんにでもなれるんですか?」

 

『残念だけど、予めインプットしてある姿しかなれないわ』

 

「て事はなれる姿は決まってるって事か~」

 

「でも、スゴいギジュツ」

 

『ホログラム技術を利用してるのよ! どう、凄いでしょ?』

 

「まさか、ミライさんになれるとは…… 何か変な気分だ……」

 

 変装時の奇妙なポーズ・女装してるような感じがしてしまうため、隊長は結構恥ずかしい気分になっている。穴があったら入りたい気分だ。周りに穴は無いが。

 すると、ホログラムがブレ始め、隊長の姿に戻った。

 

「あれ? 元に戻りましたよ?」

 

『あ、ホログラムは思い付きで急遽入れた装置だから不安定なのよ*2。もう使えなくなっちゃったわ』

 

「えぇ……」

 

 どうやらホログラム機能は使えなくなったようだ。結構便利な能力の為隊長は残念に思っている。

 

「あの~、隊長さん、ギンアイさん。そろそろ他の所に行きましょう」

 

『おっと、そうね! 隊長、急ぐわよ!』

 

「う、うん!」

 

 ドールの声により隊長とギンアイは思い出す。今はセルリアンが大量発生している時。沢山のセルリアンを倒さなければならない。今でも多くのフレンズが戦ってるのだ。此処で油を売ってる場合ではない。元のメタルマンの姿に戻り、近くに停めてあるジャパリパークの乗り物に乗る。ジャガー達もこれに乗り、他の場所に助太刀しに行くつもりだ。

 

「よし、急ごう!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 バスは勢い良く発進し、皆がセルリアンと戦っている場所を目指して進んでいった。自分達なら必ず勝てると信じて。その思いを胸に秘めながら向かっていく。

 

 

 

 

 

「かっこいいヒーローって空を飛ぶイメージがあるから、隊長のメタルマンも飛べればいいのにねぇ~」

 

『確かにそうね! 後で飛行装置を付けてみて試してみましょう!』

 

「おいおい、やめてくれ……」

 

 バス内では、こんな会話もあったそうな。

*1
今作オリジナル機能です。

*2
今作オリジナル機能です。便利なので直ぐにセルリアンを倒して話が終わってしまうし……。




次回の更新は2022年7月15日19時00分に投稿予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話:セルリアンとの本格的な戦い

自分の好きなフレンズが出てくる回その2。


 此処は研究所・パークセントラルからやや離れた地域。

 人の手が入った自然では無く、草が自由に生えている。正に大自然と言える風景だ。

 その地にセルリアンが押し寄せており、多くのフレンズが侵攻を食い止めている。中には野生開放してセルリアンに強力な攻撃しているフレンズもいる。

 

「はぁはぁ、まだいるな……」

 

「うぅ、しつこい……」

 

 前線ではテングコウモリとフォークランドカラカラが息を切らしている。長時間戦い続けた事で疲労が溜まっているのだ。このまま戦えば間違い無くセルリアンに負けてしまう。

 

「まずいわ! 二人共、交代して!」

 

「後は私達が行くよ!」

 

 変わるように、アフリカニシキヘビとオーストラリアデビルが二人の前に出る。更に後続としてキンシコウ・アイアイ・トド・セイウチ・ホルスタイン・ヤクが現れる。彼女達も既に臨戦態勢。何時でも戦えると言わんばかりに目は野生開放のように輝いている。

 

「まだこんなに……! しかし、負けません!」

 

「全力でいきます!」

 

「流石に今回は本気だすわよ~!」

 

「パークの危機となれば動くしかないわね」

 

「頑張りますよ!」

 

「強い心臓による力を見せてあげるわ!」

 

 戦いが得意なキンシコウとアイアイが構え、他の4人はその後ろで構えをとる。セルリアンは今にも襲い掛かろうとしており、一部は触手を出して襲い掛かろうとしている。

 

 その時、バスが煙を上げながら此方の方に向かっているが見えた。

 

「あれに誰か乗ってるぞ?」

 

「なんかブツを被ってる奴がいるわね?」

 

 段々近付いて来て、搭乗者の輪郭がはっきり映る程近付いて乗ってる人物が分かった。ドール達とジャガー達、そしてメタルマンとなった隊長だ。

 

「よし! 着いたぞ!」

 

「うわぁ! 沢山います!」

 

「これはハードな戦いになるわね……!」

 

「あ、あれって確かミライさんが言ってたっていう……」

 

「メタルマンですか? ちょっとかっこいいです~!」

 

「何だか強そうです~」

 

 バスから降りたメタルマンこと隊長を見て、キンシコウ達はその姿に呆気に取られるもその見た目のカッコよさ(?)から目をキラキラさせる。やはりフレンズから見ればメタルマンはかっこいいのだろうか……

 

「もしかしてドールさんの隊長さんも戦うのでしょうか?」

 

「あぁ、そのつもりだよ!」

 

『食料を飲んでエネルギーを補給したからもうしばらくは戦えるわ!』

 

「よぉーし! 私達も行きます!」

 

「さて、私達のプライドの力を見せてあげるよ!」

 

「バスで休憩したから、また戦える! やるぞ!」

 

「さて、群れの力を見せてやりましょう!」

 

 ドール達やジャガー達もセルリアンの大群に立ち向かう気でいる。ドール達の眼は光り輝いており、野生開放している事が分かる。皆そのために此処に来たのだ。パークを救う為に。

 

「ギンアイ、集中したいから一旦画面の電源を切るね」

 

『え? 良いけどじか』

 

 オオオオオォォォォォォォォ!

 

 隊長とギンアイが話していると、セルリアンの群れが一斉に隊長達に襲い掛かって来た。触手を多数出しており、これに巻き付けられたら一たまりも無いだろう。

 

「!! ギンアイ! それじゃあ切るね!」

 

『あ! ちょ』

 

 プツン。という音と共にギンアイが映る画面が消えた。これで画面の電源が消えたようだ。

 

「ごめんね、ギンアイ。戦いが終わったら電源を付けるからね」

 

 隊長は申し訳なさそうに呟いて前を向く。そこにはセルリアンの大群が此方に向かっている。

 

「よし、行くぞ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 メタルマンとドール達の戦いが、始まった。

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

「現在、隊長達がセルリアンの大群と交戦中です!」

 

「えぇ、徐々にセルリアンの数は減っているみたいだけど……」

 

 パークの一室にあるモニターではメタルマンとドール達がセルリアンの大群と戦っている様子が映し出されている。その様子をミライ・カコ・菜々・カレンダ達は心配そうに見ていた。

 

「! 大型セルリアンが接近中です! このセルリアンの周辺に小型セルリアンが群れを成しています!」

 

「つまり、今回の騒動のボスがこのセルリアンね……」

 

「このセルリアンを倒せば事態は収束する筈……」

 

 

 ミライ達の顔に汗が滴る。この巨大なセルリアンを倒せばこの事件は収束する。だが、大型となると簡単には倒せない。大勢のフレンズとメタルマンがいるが、彼らにも倒せるかどうか不安なのだ。もう少し戦力があれば倒せる見込みがあるのだが、他の増援が来るまで時間がかかる。それまでもつかどうか……

 

「出来れば私達も戦いたい…… フレンズや隊長の為にも、見てるだけじゃあなく彼らの力になりたいと今まで以上に思っています、カコさん……」

 

「「「ミライ…………」」」

 

 ミライの呟きにカコは黙っている。カコも思っている事はミライと同じだ。それ故に黙っている。力の無い彼女は見守る事しか出来ないのだから。

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 此処はパークの何処かにある地。

 その地にはパークを守るフレンズ、守護けものがいる。オイナリサマ、ヤタガラス、シーサーといった名だたる守護けものがパークを見守っている。それ故今起きている戦いの事も彼女達は既に知っている。

 

「戦いが始まったようですね」

 

「あぁ。我らが手助けしても良いがそれでは彼らは成長しない。本当に不味い時は……」

 

 彼女達は隊長達がセルリアンと戦っているのを知っている。だが、彼女達は彼らの成長を信じているため今は動かない。本当に危険な状況になった時には動くつもりでいる。

 

 そこに、5人の守護けものが現れる。

 

「今は見守りましょう」

 

「あぁ、彼らならやれるさ」

 

「見守る事は大事だからね」

 

「何せ隊長は今まで様々な困難を乗り越えてきたからね」

 

「うむ、何せ我が認めたあの隊長だ! 面妖な面を着て更に強くなっているからのう!」

 

 彼女達はセイリュウ、ゲンブ、ビャッコ、スザク、麒麟。前者4人は四神のフレンズで、麒麟は彼女達を纏めるリーダーである。彼女達も隊長達がセルリアンに勝つ事を信じているのだ。

 

「あなた達なら勝てる筈です。何せギンギツネの作ったメタルマンを着ているのですから……」

 

 彼女達は隊長が勝つ事を信じて、戦いを見守る事にした。




次回の更新は2022年7月22日19時00分に投稿予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話:巨大セルリアン

自分の好きなフレンズが出てくる回その3。
少しシリアス展開です。


 隊長達はセルリアンの群れと戦っている。隊長が着ているメタルマンの機能を駆使して戦っているがセルリアンの数が多いため苦戦している。そろそろドール達・ジャガー達・キンシコウ達が疲弊の色が現れ始めている。劣勢に陥ろうとしているのだ。

 

「く、まだ数がいる……」

 

「はぁ、はぁ…… キリがないです」

 

「きゅう、疲れてきました……」

 

「ふぅ、だらんとする暇が全然ありませんね。疲れてきました……」

 

 ドール達フレンズは息を切らしながらセルリアンを見つめている。セルリアンの数は大分減ったがそれでもまだ残っている。

 

「減ったけどまだ残ってる。ギリギリいけるかどうか……」

 

『う~ん、なんとか行けると思うけど厳しいわよ』

 

「そうか…… ってギンアイ!?」

 

 自身の発言にあっさりと返答したのは、何とギンアイだ。画面の電源を切っているので返答のしようが無いはず。

 

「何時の間に!? 電源を入れてないはず……」

 

『電源を切っても一定時間経てば自動的に復帰するのよ』

 

「…………何でその機能が付いてるの?」

 

『勝手に切られたら困るから』

 

 どうやら自動的に電源が入る仕様になっているようだ。これにより電源を切っても再び入ってしまうという事。これによりギンアイは再び復活したのだ。

 

「やっぱり電源を消されたくない?」

 

『勿論! と言ってる間に、大物が来たみたい』

 

「あ! あれは……!」

 

 メタルマンの視線の先には、普通のセルリアンより全高が10倍はあろう巨大なセルリアンが歩いている。

 直感で分かった。この大型セルリアンがこの群れのボスだと。

 

「どうやらこいつが……!」

 

『セルリアンのボスね』

 

「うわぁ、大きいです……!」

 

 ドシンドシンと足音を立てながら此方に向かっている。体からは多数の触手が蠢いていて、今にもこちらに襲い掛かろうとするような動きを見せている。

 

「あれを防げるかな……」

 

『だったらシールドを使うと良いわ』

 

「え? 何それ?」

 

『シールド、と唱えれば展開出来るわ』

 

 隊長とギンアイが話している最中に、大型セルリアンは触手を隊長に向けて伸ばしてきた。その触手は勢い良く発射されたため当たれば体が頑丈なフレンズと言えども一たまりも無いだろう。

 

「隊長! 危ないわ!」

 

「っ! シールド!」

 

 隊長がシールド、と叫ぶとメタルマンの周りに青いバリアのような物が展開された。水の波紋のような青いバリアが触手と激突した。すると、触手は大きく弾かれた。

 

「わぁ!? たいちょーの周りにおみずが出てきた!?」

 

『これがシールドよ! ある程度の攻撃なら防げるわ!』

 

「す、凄い……!」

 

『一応確認するけど、このメタルマンは燃費があまり良くないわよ。頼りすぎるのは駄目よ』

 

「ですよねー……」

 

 シールドの強靭さに驚くものの、このメタルマンはプロトタイプ故に燃費が悪い。シールドを使い過ぎるとエネルギーが切れてしまう恐れがある。そのため、使用は最小限に抑えなければならない。

 

『メタルマンのエネルギー源である食料はどれくらい残ってる?』

 

「えぇと、あと1本……」

 

『うぅむ、厳しいかも……』

 

「僕もそう思う…… ん?」

 

「隊長! 巨大セルリアンが攻撃して来るよ!」

 

 ライオンの声を聞いて前を向くと、巨大セルリアンが多数の触手を隊長やドール達に向けて伸ばしてきた。触手の先端には蛇の口のような形に変形していて、確実に捕えようとする狙いがあるのだろう。

 

「くぅ、不味いわね…… 数が多いわ!」

 

「私達でも全部防ぎきれそうにないわ……!」

 

 アフリカニシキヘビとヤクの言う通り触手の数がかなり多い。その数は50程あるであろう。とてもじゃないが20人程度の人数で防げるものではない。この状況で大型セルリアンに攻撃するのは非常に難しいだろう。

 

「あぁ、小型セルリアンも向かって来ます!」

 

「ダイピンチなの!」

 

 大型セルリアンの触手だけでも苦戦しているのに、更にまだ倒し切れていない小型のセルリアンが隊長達に向かって来た。間違い無く攻撃しようとしている。小型セルリアンの攻撃まで加われば、やられてしまうだろう。

 

「く! 今戦えるのは僕だけか!」

 

『しかも、エネルギーもあまりない…… 絶体絶命ね……』

 

 このままではこの場にいる皆が全滅してしまう。それだけは絶対に避けなければいけない。逃げようとしても戦いによって疲弊しているので移動速度は速くはない。隊長が乗って来たバスに辿り着くまでの間にセルリアンに追いついてしまうだろう。

 

 この状況で、隊長は一つの打開策を考えた。どうにか皆が助かるための策を。

 

「ドール、皆を連れて此処から離脱するんだ!」

 

「!? 隊長さんは……?」

 

「此処でセルリアンを食い止める!」

 

「「「「!?」」」」

 

 隊長の発言にドールを始めとするフレンズ達は驚く。それもそうだろう。この場で隊長を置いていくという、冷酷な作戦なのだから。

 

「そんな! 隊長を置いていけません!」

 

「そうですわ! セルリアンにやられてしまいます!」

 

「たいちょー! 止めて!」

 

「無茶よ!」

 

「隊長!」

 

 ドール達が隊長の作戦を止めようとする。自分達のチームの隊長を、パークやフレンズのためとはいえ此処で置いていく。そんな事出来る訳が無い。

 

「でも、誰かが此処で食い止めないとセントラルにまで来てしまう! そうなったらパークは終わりだ…… 隊長として、君達を傷つける訳にはいかない!」

 

「で、でも……!」

 

「いいから行くんだ!」

 

 メタルマンの大きな、決意を決めたような声にドール達は冷や汗をかく。これ程本気の隊長はギンギツネを助けようとした時、いや、それ以上だ。自分達を助けようとする隊長の覚悟をが直で感じているのだ。

 

「ミンナ、ハヤクバスニノッテ!」

 

「ボス!? どうして此処に!?」

 

「イソイデキタンダ。バスハボクガウンテンスルカラ、ハヤクノッテ!」

 

「「「「………………!」」」」

 

「ハヤク!」

 

 ボスの急かす声、そして隊長の決意の前にフレンズ達はある決意をする。

 

「……隊長さん! 必ず無事でいて下さい! 必ずまた助けに来ます!」

 

 隊長を置いて退却する。それがドール達が下した決断だった。

 全員退却したいのだが、それではセルリアンを食い止める術が無くなる。ドール達は疲弊しているためこれ以上残って戦えばドール達の中から犠牲者が出かねない。それらを吟味して下した決断なのだ。

 

「あぁ! 早く行って!」

 

「…………! うぅ…………!」

 

 隊長はメタルマンのマスク越しでドール達の表情を見る。ドール達の眼から涙を流している。自分を此処に置いていくのを悔やんでいるのだろう。ドール達に悪い事をしたな…… と心の中でそう思った。

 ドール達がバスに乗り込み、この場から離れていった。ドール達はバスに乗ってからは自分を振り向く事は無かった。振り向いたら、辛さが増してしまうからだろう。バスは地平線の彼方へと消えていった。

 

「……付き合わせてごめんね。ギンアイ」

 

『仕方ないじゃない。パークの危機だし…… それに、セルリアンを放っておけないしね!』

 

「あぁ、精一杯やるよ!」

 

 ギンアイも隊長と共にセルリアンと戦う決意をしている。隊長は巨大セルリアンと小型のセルリアンに目を向けて、構えた。

 

 セルリアン達は無機質な目を隊長に向けて、触手を伸ばしてきた。

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

「隊長さん……」

 

「く…………」

 

 ドール達はバスに乗って安全な場所まで移動している。隊長がセルリアンと戦っている場所から大分離れているため此処からは見れない。だが、今でも必死になって戦っている事は分かる。今離脱するしかない事が非常に悲しい。その思いが胸にこみあげているのだ。

 

「これが正解だなんて……」

 

「私達、撤退するしか出来ないのか……」

 

 バスに乗るドール達の表情は暗い。隊長とギンアイを置いてきたのだから当然であろう。助けたくても今の自分達では助けられない。その現実が辛かった。

 しばらく走っていると前の方から三人のフレンズが飛んできた。その内の二人は鳥のフレンズ故に頭に羽を生やしており、残りの一人は腰から蝙蝠のような羽を生やしている。前者二人はカワラバトとリョコウバト、後者はナミチスイコウモリのフレンズだ。

 

「皆さん、無事でしたか!」

 

「でもボロボロですわ! 少しでも休憩しないと!」

 

「こりゃまずいね…… 早くけもの病院の方に行った方が良さそうだ。今コアラがセントラルの方に来てるよ」

 

 三人はボロボロのドール達を見て心配している。無理も無いだろう。少し前までセルリアンと激しく戦っていたのだから。だが、今のドール達は治療しようとする気は起きない。

 

「でも、今隊長さんが一人で戦っているんです……!」

 

「えぇ!? 一人で!? 確かメタルマンっていう毛皮を着てるって聞いてたけど……」

 

「まずいですわ。まだ他の皆さんは着いていないのです……」

 

「先に着いたのは私達なんだよ。でも私達は戦いが得意じゃないし…… 怪我人が出ていたら助けるために来たんだ」

 

 やはり戦闘が出来るフレンズはまだ到着していない。このままではセルリアンと戦っている隊長がますます心配となる。

 

「うぅ、このままじゃあたいちょーさんが……」

 

「助けに行きたいですけど、今の私達が行っても足手纏いにしかならないです……」

 

「そのメタルマンって言うの、私達も被れたらねぇ……」

 

「確かに…… ん?」

 

 暗い雰囲気であったが、ナミチスイコウモリの発言にドールはある閃きが頭の中で生まれた

 メタルマン…… 確か……。

 

「……っ! もしかしたら!」

 

「「「「?」」」」

 

 ドールの大声に、フレンズ達は「?」マークを浮かべた。




次回の更新は2022年7月29日19時00分に投稿予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話:決戦

自分の好きなフレンズが出てくる回その4。
群れの力を見せる時。


「く、流石に厳しくなってきた……!」

 

 メタルマンを着ている隊長はセルリアンの群れと戦っていた。数はだいぶ減って来たがまだ10体程残っている。巨大セルリアンはまだ健在。小型のセルリアンの攻撃に合わせて攻撃する事もあり苦戦していた。メタルマンのエネルギーもそろそろ限界が近い。

 

『栄養もさっき飲んで無くなってしまったし、本格的にやばいわね……』

 

「戦闘中に飲むもんだから大変だったよ…… どうにか注いだだけでも奇跡というか……」

 

『本当…… また奇跡が起きて欲しいわね……』

 

 今の現状を考えると本当に奇跡が起きて欲しいと思ってしまう。エネルギーを補充する食料であるあの不味い栄養剤は使ってしまった。そしてメタルマンのエネルギーもそろそろ無くなりそうな状態。絶体絶命。正にそのような状態だった。

 

「考えたくないけど、ここまでか…… ドール達には本当に申し訳ない事をしてしまったな……」

 

『本物の私にも申し訳ないわね……』

 

 巨大セルリアンが多数の触手を隊長に向けて繰り出してきた。それと同時に小型セルリアンも触手を

繰り出してくる。いくらメタルマンとはいえこれだけの物量の攻撃には耐えられない。

 

 完全に終わり。

 

 そう思った瞬間だった。

 

 

 

 

 

「隊長さあああああんんんんんん!」

 

 副隊長の声が響いた。

 

(まさか、ドール!?)

 

 先程逃がしたのだが、戻って来たのか? ドールは疲弊していた。今戦ったとしても負ける可能性の方が高い。今すぐ戻るように言わなければ。

 隊長はドールの方に顔を向けると、そこには衝撃的な光景があった。

 

「ドー……!?」

 

「隊長さん! 大丈夫ですか!?」

 

 そこにはドールがいた。自分の探検隊に所属している、頼れる副隊長、ドール。声も正しくドールだ。

 

 だが、その何時ものドールと決定的に違う部分があった。

 

 それは、

 

 

 

 

 

 メタルマンのマスクを被っている事だ。

 

 

 

 

 

「え……!? ど、ドール…… だよね……?」

 

「そうですよ!」

 

 自分と同じくメタルマンを装着している。自分と違い、胴体のパワードスーツを装着していない。ドールが何故メタルマンのマスクを着ているのだろうか?

 

『あ、それはもしや、研究所にあったメタルマンのマスクを被ってるの!?』

 

「あ、そういえばそんな事言ってたっけ…… もしかしてそれを……?」

 

「その通りです! それを被ったんです!」

 

「でも、結構体力を消費してたんじゃあ……」

 

「あ、それなら大丈夫です! こうすれば隊長さんも回復します!」

 

 ドールは隊長の手を掴むと、その部分が薄緑色に光りだした。隊長は光に包まれ、気持ちよさがこみ上げてくる。光が収まると隊長に変化が起きた。

 

「あ、何だか元気になった……?」

 

『あ、もしかして回復装置を使ったのね!』

 

「はい! 研究室に貼られてる紙に書かれていた通りにやったら成功したんです!」

 

「メタルマンにそんな機能があったなんて…… ギンアイ、知らなかったの?」

 

『実はマスクを複数個造ってる時に回復機能を考案したのよ。マスクに回復機能を入れた後、隊長のメタルマンにも入れようとしたんだけど、時間が無かったから……』

 

「そ、そうなんだ……」

 

 この回復機能、後に造られたマスクには搭載されたものの、先に造られた隊長のメタルマンには入れられなかったのだ。

 

『でもこれのおかげでメタルマンのエネルギーが回復したわ!』

 

「何とか戦えるんだね。よし……!」

 

 隊長は体力を回復した事もあり元気を取り戻す。疲弊のあまり立っている事も辛かったが、今は回復した事もあり問題無く立てる。改めてメタルマンの凄さが感じてしまう。

 

「たいちょー! 無事だったんだね!」

 

「どうやら間に合ったようですわね!」

 

「流石はドールね!」

 

「良かった~」

 

 その声は。隊長が振り向くと、そこには探検隊のメンバーであるマイルカ・ミーアキャット・ハクトウワシ・ライオンがいた。彼女達もメタルマンのマスクを被っている。

 

「皆も被ってるの!?」

 

「そうだよ! たいちょーと同じヘルメットを被ってるの!」

 

「あまり重たくないので何時もと同じ感覚で動かせますわ」

 

「一度こういうの着てみたかったわ! 何せ正義のヒーローみたいだもの!」

 

「髪の毛がちょっとはみ出ちゃったけどピッタリ入ったよ~」

 

「これで私達は最強の探検隊です!」

 

(同じマスクを被ってるから、何と言うか、何て言えば良いのかな……)

 

 隊長自身はメタルマンのマスクのデザインを微妙に思っていた事もあり、自分の隊のドール達がそのメタルマンのマスクを被っている光景を見るとシュールというか、何とも言えない感が増してくる。正直笑いそうになる位は……

 

「そういえば他の皆は?」

 

「大丈夫です! メタルマンの回復機能で全員回復しました!」

 

 その発言と同時にドール達の後方からジャガー達とテングコウモリ達がやって来た。彼女達はメタルマンのおかげですっかり元気となっている。

 

「これならまた戦えるぞ!」

 

「番犬の力を見せちゃうよ~!」

 

「今までの借りを返してもらうわよ……」

 

「今度こそ勝つのです!」

 

「さ~て、私の鞭でさっきよりもきつく縛っちゃうわよ!」

 

 皆が回復した事で再び戦える。

 これならセルリアン達とも戦える。希望が見えてきた。

 

「よし! 僕達が巨大セルリアンと戦う! ジャガー達は小さい奴らを倒して!」

 

「リョウカイなの!」

 

『隊長! 止めはあの“奥の手”を使いましょう! それなら巨大なセルリアンを倒せる可能性が上がるわ!』

 

「え? 奥の手って?」

 

「ドールが離れた後、戦いながらギンアイと話してたんだけど、僕が着ているメタルマンには巨大セルリアンを倒せるかもしれない機能がメタルマンにあるんだ。でもセルリアンの数が多くてそれを使うタイミングがなかなか掴めなかったし、エネルギーを大分使うから迂闊に使えなかったんだ」

 

「タイミングが中々掴めずセルリアンと戦っている内にエネルギーが少なくなったのですね」

 

「残念だけど、その通りだ……」

 

 巨大セルリアンを倒せるかもしれない奥の手。

 それは一体何なのか。

 だが、巨大セルリアンを倒せれば間違い無くパークに平和が戻ってくる。事件は一気に解決出来る。そのためにも此処で“奥の手”を使える状況を作らなければならない。

 

「エネルギーは回復しましたし、これだけ大勢いれば奥の手を使うタイミングを作れる筈ですわ!」

 

「そうね! これだけいれば十分勝機があるわ! 必ず私達がビクトリーするのよ!」

 

「メタルマンを被ってる今なら負ける気がしないからね~」

 

「よ~し! 皆の底力をみせよー!」

 

「隊長さん! 行きましょう!」

 

「あぁ! 皆、行こう!」

 

『私も行くわよ!』

 

 必ず勝つ思いを胸に抱くと同時に、隊長達は巨大セルリアンに向かって進んでいく。

 

 決戦は始まった!

 

 

 

 

 

 小型セルリアン2体が隊長達に向かって触手を伸ばしていく。

 しかし、触手は途中でバッサリと切られてしまう。それは、“爪”による攻撃で切断されたのだ。

 

「はぁ!」

 

「残念だったな!」

 

「やああぁぁぁ!」

 

「そこよ!」

 

 ジャガーとタイリクオオカミが触手を切断し、切った瞬間にオーストラリアデビルとアフリカニシキヘビが攻撃し、小型セルリアンはサンドスターの欠片を撒き散らかしながら消滅した。

 

 残りのセルリアン4体がジャガー達に触手を伸ばすが、キンシコウとアイアイが全て切断。触手が途切れると同時にテングコウモリ・フォークランドカラカラ・トド・セイウチが上から攻撃する。直撃を受けたセルリアンはあまりの威力によりサンドスターの欠片となって消滅した。

 

「少し前のお返しだよ!」

 

「動く時には動きますよ~!」

 

 テングコウモリ達が着地すると同時に後方から触手が伸びてきて彼女達を掠る。

 

「きゃ!」

 

 4人はかすり傷を負ってしまう。背後では触手を伸ばす残り4体のやや大きめのセルリアンが迫っており、大口を開けて捕食しようとしていた。一撃では倒せそうにないその時だった。

 

「ちょっと待った!」

 

「これ以上怪我をさせないわ!」

 

 背後ではケルベロスが地獄の門を開けて闇を出そうとしてる。更にその上からヤクが大岩に乗りながら落下してくる。そして、闇の放出する勢いに乗って大岩が加速。セルリアンにぶつかるとあまりの衝撃からサンドスターの欠片となった。

 

「やった!」

 

「ふふ、上手くいったよ」

 

「ワタシのオドりでイリョクをアげてたしね」

 

 先程の攻撃、ケルベロスとヤクの攻撃で倒したように見えたが、実はカンザシフウチョウの踊りにより攻撃力を上げていたのだ。これにより、闇の放出と大岩の攻撃力が上がり、やや大きいセルリアンを一撃で倒す事が出来たのだ。

 

「いてて、掠った……」

 

「キュウ~、大丈夫ですか!?」

 

「私の牛乳で回復してください!」

 

 触手を掠って怪我をしたテングコウモリ達の所にタテゴトアザラシとホルスタインが駆け付けて回復させようとしていた。これにより小型セルリアンは全て倒された。

 

 

 

 

 

 隊長達は巨大セルリアンに向かって走っている。巨大セルリアンは口状の触手を伸ばして攻撃しようとしてくる。牙のような棘を生やして隊長を食べようとするが、

 

「おらぁ!」

 

 ライオンがその触手を爪で勢いよく切り落とす。

 

「うちのプライドのリーダーを傷付けさせないよ!」

 

「今の内です!」

 

「あぁ!」

 

 ライオンが食い止めている間に隊長達は更に巨大セルリアンに向かって進む。上からも触手を降り注がせるがハクトウワシがそれを防いでいく。

 

「ふふ、正義のスーパーウーマン登場よ!」

 

「何かノリノリだね……」

 

『このメタルマンの素晴らしさが分かっているのね!』

 

「かっこいいです!」

 

 メタルマンを着てノリノリのハクトウワシを見て、隊長は少しだけ冷や汗を流す。やはりフレンズから見ればメタルマンのデザインはかっこいいのだろうか……? そう思っている間に前方から触手が迫って来てるが、マイルカのメタルマンのシールドによりこれを防いだ。

 

「えーい!」

 

「はぁ!」

 

 シールドにより触手が身動き取れない間、ミーアキャットの攻撃により触手が消失した。

 

「お行きなさい! 隊長、ドール!」

 

「はい!」

 

「気を付けて!」

 

「よーし、ガンバルぞ!」

 

 マイルカとミーアキャットに任せて更に進む。

 今走っている足元の地面が僅かに膨らむと同時に、土が舞い、そこから触手が現れる。巨大セルリアンが触手を地面に潜らせていたのだ。奇襲してきた触手は隊長に向かって襲い掛かるが、

 

「させません!」

 

 ドールが次々と触手を切っていく。少々分厚い触手で、普通のフレンズなら切る事は出来ないが、メタルマンを装着して強くなった今のドールなら簡単に切れる。

 

「隊長さん!」

 

「っ! あぁ、分かった!」

 

 ドールが最後まで言わなくても、言いたい事は分かる。此処は自分に任せて先に行って、と。彼女は今まで長い間共に探検をしてきたのだ。直接言わなくても分かる。

 

『流石隊長ね、言わなくても分かるなんて』

 

「ドールは自慢の副隊長だからね!」

 

 そして隊長は巨大セルリアンの近くまで来た。見るからに巨大だ。これを倒すのは実力が高いフレンズでも難しい。

 

『この巨大セルリアンは表面が硬いわ。奥の手を使っても少し厳しいわね……』

 

「外が駄目なら……」

 

『中…… 体内なら効くわ! 口から奥の手を入れてやりましょう!』

 

 体内から攻撃…… 確かにそれなら有効だろう。巨大セルリアンに口が付いているため開ければ可能だろう。だがそれは簡単ではない。巨大セルリアンは隊長がやろうとしてる事を察しているのか口を開けようとしない。

 

「……うぅむ、無理に開けるか……」

 

『少しリスクがありそうだけど、それで……』

 

 そう言おうとした瞬間、巨大セルリアンは口を少し開け、そこから多数の触手を出した。触手の先端はワニ口クリップのような形をしている。これで捕まえようとしているようだ。

 

「く、まだ触手を……!」

 

 どうにか触手を捕まえようとした。その時だった。

 

「「やああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

 横から突然何かがやって来て、口から出てきた触手を思いっ切り叩いて地面に叩きつけた。その二人の影はフレンズ、コウテイペンギンとキングペンギンだった。

 

「ふぅ、間に合った……」

 

「え!? コウテイペンギンとキングペンギン!?」

 

「ギリギリだったね」

 

「助かった…… でも何故此処に? 二人は確か遠い海に……」

 

「ジュゴンとステラーカイギュウが秘密の抜け道を教えてもらったんだ。おかげで早く来れた」

 

 そう言うと、近くの池からジュゴンとステラーカイギュウが顔を出している。どうやらあの池と海は穴に繋がっているようだ。

 

「ジュゴン達も来ています~」

 

「あれがセルリアンですか? 大きいです……」

 

 二人が話していると、巨大セルリアンは口からもう一本の触手を出してきた。再び隊長に襲い掛かろうと動き出した。

 

「な!」

 

『まだ触手が!』

 

「そうは」

 

「いきませんわー!」

 

 すると、今度は空からカワラバトとリョコウバトが飛んできて二人がかりで触手を抑え始めた。

 

「心配なので来ました!」

 

「私達は非力ですけど、皆といれば強くなれますわ!」

 

「カワラバト! リョコウバト!」

 

「ジュゴンも手伝います!」

 

「私も!」

 

 カワラバトとリョコウバトが抑えていると、ジュゴンとステラーカイギュウも抑え始めた。彼女達は非力だが、4人いれば触手を抑えるのに十分のようで、触手は動かなくなった。

 

「他の触手は私達が抑えるよ!」

 

「あぁ、『キング』の名が廃っちゃうからね!」

 

「よし! あとは口を開けさせれば……」

 

「そこは私に任せて下さい!」

 

「!? その声はミライさん!?」

 

 何故此処にミライがいるのだろうか? 彼女はフレンズではないためセルリアンと戦うにはあまりにも無謀過ぎる。隊長はメタルマンを着ているため戦えるが、彼女は……

 

 いや、待て。

 

 まさか……

 

 もしやと思って隊長は声がした方向を振り向いた。

 

 そこには、

 

 髑髏のようなマスクを被ってるミライがいた。

 

「私もメタルマンを着ました!」

 

「えぇ!? それが!?」

 

 ミライが被っているマスクもメタルマンらしいが、自分とドール達が被ってるメタルマンのマスクとはデザインが全然違う。それも本当にメタルマンなのだろうか?

 

『それは、メッカ・テラーM48じゃない!』

 

「メッカ・テラー?」

 

『戦闘用のパワードスーツよ! つまり戦闘用メタルマンみたいな物よ! ついでに、マスクのデザインはメタルマンと同じメンフクロウよ』

 

「あれもメンフクロウが……」

 

 まさかあのマスクのデザインもメンフクロウ製だったとは…… 結構意外に思ってしまう。

 

「しかし、中々面白いマスク着てるね~」

 

「え? ナミチスイコウモリ?」

 

 上から声がしたので、上を向くとそこにはナミチスイコウモリがいた。

 

「実はナミチスイコウモリさんに此処まで運んでもらったんです!」

 

「キヒヒ、ちょっと重かったけどね」

 

「まさか……」

 

『もしや……』

 

「太ってませんよ! マスクを着てる分重いんです!」

 

「まぁ、そんな気はしてました」

 

『重かったら動きにくいもんね』

 

 そんな冗談を言いつつ、ミライは大型セルリアンの方に向き直る。

 

「今ならどんな相手でも勝てそうです!」

 

『言っとくけどメッカ・テラーの方にはまだ武器は装着してないわよ』

 

「えぇ、だからこの力を使います!」

 

 ミライはそう言うと、巨大セルリアンの口に向かって跳躍して下顎に乗り、僅かしか開いていない口の上顎に手をかけた。

 すると、

 

「はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 気合を入れるような声を出すと同時に思いっきり巨大セルリアンの口を開けた。

 

「っ!?」

 

『流石は戦闘タイプ…… それを作った私も流石ね!』

 

 あまりの馬鹿力に隊長は絶句しており、ギンアイは誇らしげに語っている。実際にあの大きなセルリアンの口を馬鹿力で開けてるのだから確かに誇らしげになるか……

 

「キヒヒ、私も手伝うわ」

 

 その様子を見ていたナミチスイコウモリは翼でパタパタと飛びながら上顎に手を掴んで持ち上げている。

 

『これなら行けるわ! 隊長!』

 

「よし!」

 

 隊長は大口を開けられたセルリアンの下顎に乗った。

 

『よし! 奥の手を使うわよ!』

 

「うん!」

 

 

 

 

 

「『ミサイル発射!』」

 

 

 

 

 

 メタルマンの大技、それはミサイル。

 対セルリアン用の効果がある特殊なミサイルだ。

 これを使えば大型のセルリアンでも粉々に破壊出来る。

 しかし、エネルギーを大分使う為、迂闊に使えない技なのだ。

 

 

 

 

 

 メタルマンの肩から煙を出しながらミサイルが直進し、大型セルリアンの口の中に爆発を起こす。

 

 すると、

 

 

 

 

 

 大型セルリアンは内部から小さい爆発が連続で発生し、サンドスターの欠片に変化して消滅した。

 

 

 

 

 

「「「「やったああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」

 

『やったわ! 隊長!』

 

「あぁ! やった!」

 

「やりましたね! 隊長さん!」

 

「わっふーい! やったー!」

 

「流石は隊長ですわ!」

 

「グレート! 凄いわ! 隊長!」

 

「流石隊長だね~!」

 

 ドール達が隊長の側に駆け寄り、互いに抱き合っている。メタルマンのマスクを着ているので端から見ればコスプレの人が抱き合っているように見えるのでややシュールである。

 

「ふふ、強敵との戦いの後の抱擁…… 微笑ましいです!」

 

「キヒヒ、あのマスクで皆を驚かせそうだ…… 私も着てみたいなぁ……」

 

 勿論ミライさんのマスクも被りたい…… という気持ちがナミチスイコウモリの心の中にはあるが敢えて言わない。

 暫く喜びの気持ちに浸っていると、後方からジャパリパークのバスに乗ってカコ博士と菜々がやって来た。

 その席には、少し前にセルリアンに襲われて寝たきりになっていたあのフレンズが乗っていた。

 

「あっ、皆…… やったようね……」

 

「あ! あれは……」

 

「ギンギツネさん!」

 

『あっ! 本物の私!』 

 

 バスにはセルリアンに輝きを吸われて倒れたギンギツネがいた。回復した事から隊長達の下に駆け付けたようだ。

 

「どうやらメタルマンがセルリアンを倒したみたいね」

 

「うん。結構セルリアン相手に戦う事が出来たよ!」

 

「ギンギツネさんのメタルマンのおかげで私達もセルリアンを一杯倒しました!」

 

『流石は本物の私ね!』

 

「も~、そこまで褒めても何もあげないわよ?」

 

 と言っている割には顔の頬は赤く染まっており、満更ではないようだ。

 

「あ、確かメタルマンが脱げなくて困ってるんでしょ? 私が着脱に必要なヌゲールメタルマンZを直すわ」

 

「っ! 本当!?」

 

「本当よ! あ、ギンアイも手伝って!」

 

『餅のロンよ!』

 

「え? これを外すの? 私はこのジャスティスなマスクをずっと着ていたいのに……」

 

「いやいや、ずっと着てるのは……」

 

 隊長とギンギツネの会話が平原で交わされている。そして、メタルマンが外せる事を知って安堵する隊長。その光景は正に“平和”の一言だろう。

 

 パークはメタルマンによって救われた。




次回の更新は2022年8月5日19時00分に投稿予定です。
次回が最終回です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話:最終話

自分の好きなフレンズが出てくる回その5。
遂に最終回です!

2022年8月13日、誤字があったため修正しました。何故かスナネコが2回出てた……(本来はクロトキなのに……)


 草木が風に流れて、海の波のように揺れている草原。

 

 奥の風景にはサンドスターが噴出する山があり、時々サンドスターが降り注いでいる。貴重な動物達も生息しており、此処に来るお客さん達を楽しませてくれる。

 

 そんな大自然の中に不自然な三人組がこそこそと動いている。迷彩色を着ていて、身を隠すように草むらの中を移動している。どう見ても怪しい。

 

「なぁ、兄貴~。本当にフレンズっているんですか~?」

 

「おいおい、信じられねぇのかよ。俺の情報網が!」

 

「いや、そうじゃなくて…… イマイチ半信半疑なんですよね~ 何かコスプレのように見えるし……」

 

「何言ってるんだ! 俺の信用出来る筋からの情報だとフレンズは実在するんだ! そいつらを売れば大儲け出来るぜ!」

 

 会話を聞いてみると、この三人組はフレンズを売り捌こうとしているのだ。このジャパリパークにこっそり侵入し、フレンズを無理矢理連れ去ろうとしている悪人だ。

 

「まぁ、そうでなくても珍しい動物が沢山いるからそいつらを売っちまうのも……」

 

「そうっすね…… って、わぁ!?」

 

「っ!? 何だ!?」

 

 部下が突然悲鳴を上げた事から二人は後ろを振り返る。しかし、誰もいない。さっきまでそこにいた筈の仲間がいない。

 

「一体何が……」

 

「って、ひぃ!」

 

「な!?」

 

 振り返っている最中にまた悲鳴が聞こえ、その方向を向くがやはり誰もいない。さっきまではそこに仲間がいたのだ。突然消えるなんておかしい。悲鳴が聞こえたという事は不測の事態が起きたという事。それが何なのか分からないのはまずい。

 

「えぇい! 一体何が……!?」

 

 部下二人が突然姿を消し、残ったのは自分だけ。

 一体何が起きたのか分からない。

 

 フレンズか? それとも……

 

 思考を働かせていると、体に異変が起きる。

 

 両手が勝手に動き、手が前に出てしまった。

 

「うわ!? 何だ!? 何かに掴まれているような……!?」

 

 突然自身の手が動き始めた事に困惑している。それに腕が“何か”に掴まれているような感触を感じている事から、透明な何かに触られている気がして不気味さと気持ち悪さを感じてしまう。

 

 手が前に出た。すると、何処からともなく手錠が現れて、カチャンという音と共に自身が手錠に掴まれてしまった。

 

「くそ! 一体何なんだ!」

 

 訳が分からず混乱してしまう。逃げようにも強い力で掴まれているため身動き一つも取れない。

 

 困惑していると、目の前の風景の一部が急にぼやけてきた。

 

「うお!?」

 

 ぼやけてきた風景は徐々に一つの形を成していく。

 

 そしてその形が明確に表した時、男の表情は驚愕の色に染まった。

 

 

 

 

 

 金色の顔

 

 

 

 

 

 頬が痩せたような表情

 

 

 

 

 

 紫色のパワードスーツ。

 

 

 

 

 

「そこまでだ! 残念だったな!」

 

 

 

 

 

 メタルマンがこの場に現れた。

 

 

 

 

 

「な、何だ!? こいつ!?」

 

 いきなり目の前に出てきたメタルマンを見て男はかなり驚いている。フレンズの情報を手に入れていたものの、メタルマンの情報を手に入れていなかったようだ。

 ふと後ろにも気配を感じる。恐る恐る後ろを振り返ってみると……

 

「きゅぅ~……」

 

「ふへぇ~……」

 

 いなくなっていた二人の部下と、

 

「もう逃げられませんよ!」

 

「フレンズを誘拐しようなんて、犯罪ですわ!」

 

「絶対に許さないからね!」

 

「私のジャスティスアイからは逃げられないわよ!」

 

「友達を連れ去ろうなんて考えない方が良いよ~」

 

 五人のメタルマンを装着しているフレンズが並んで立っていた。

 

 

 

 

 

「な、何だよその変なマスク……」

 

 

 

 

 

 その発言と同時に、向かってくる謎の仮面を被った五人組が自身に向かってくるところで男は意識を失った。

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

「皆、今日はお疲れ様! 不法侵入者を上手く捕まえたね!」

 

「はい! 隊長さんのおかげです! 隊長さんの指示が上手かったから捕まえられました!」

 

 探検隊が会話をしながら歩いている。しばらくしてある場所に辿り着いた。

 

「連絡がありましたけど、密猟者がいたんですね…… 怖いです~……」

 

「まぁ、俺だったらハムハムしてやっつけるけどな~!」

 

「ドール達の探検隊すご~い」

 

「メタルマンを最初に着た隊長さんが引き連れてるだけの事はありますね」

 

「流石ドール達の探検隊ですわ!」

 

 此処は探検隊の拠点。

 多くのフレンズが集まっており、本日の仕事の報告などをしている。他の探検隊も集まっている事から現在拠点は非常に賑やかとなっている。各探検隊の隊長やフレンズが話し合う事が多い。今拠点で話をしているのはアードウルフ・ハブ・フンボルトペンギン・スナネコ・シロナガスクジラだ。ついでに他にもフェネック・ホッキョクギツネ・キングコブラ・クロトキ・二ホンオオカミなどが拠点におり、正にフレンズのるつぼだ。

 

 だが、その拠点で目を引く物があった。

 

 それは、メタルマンだ。

 

「よぉし! 調整は完了! これで何時でも動かせるわ!」

 

『こっちも終わったわ!』

 

 拠点の一角には新品同然の綺麗な機械がズラリと並んでおり、そこにギンギツネとギンアイが複数のメタルマンを整備している。ギンアイは壁に掛けられている大きなモニターに映っており、壁掛けモニターの下に機械の腕が複数設置されていて、それを器用に動かしてメタルマンを四肢を整備している。すっかりこれが慣れた風景になった。

 

 あの日の巨大セルリアンの撃退により、ギンギツネが造ったメタルマンの性能がセルリアン相手に十分有効である事が証明された。それによりギンギツネを中心にメタルマンとその戦闘タイプのメッカ・テラーM48の生産が本格的に始まった。ジャパリパークで働く隊長や職員はこのメタルマンを装着する事でフレンズ達と共にセルリアン相手でも十分戦えるようになった。また、フレンズ達も見回りやセルリアンとの戦いの時はメタルマンを着ている。只でさえ強いフレンズがメタルマンを着る事で更に強くなるのだ。

 結果としてセルリアンの数は激減。ダイオウや女王といった強力なセルリアンも退治出来た事からパークの本格的な開園が可能となった。それまでに探検隊はパークのパトロールやセルリアン退治をしているのだ。

 

「メタルマンとメッカ・テラーM48の生産で儲けたお金で整備施設をリニューアル出来たのは本当に良かったわ~!」

 

『おかげで私のグレードアップも出来たし、専用の機械で歩けるようになったわ!』

 

「凄いです! ギンギツネさん! ギンアイさん!」

 

「凄い見違えたなぁ……」

 

 今やギンギツネとギンアイの設備はパークの至る所にある。主にメタルマンとメッカ・テラーM48の整備施設なのだが、常時警備用ロボットが付いている。セルリアンにしても侵入者にしても一切寄せ付けない造りだ。セルリアンが出た場合の避難所としても機能出来る。そう言った事もありこの施設はパークのあらゆる所で建設された。

 

 また、このメタルマンとメッカ・テラーM48は世界の警備員のパワードスーツとして世界各国に輸出する予定となっている。性能の高さもあり軍事施設や重要人物の警備として役立つだろう。

 

「あ、そうそう隊長さん。最近新しい味のブドウ糖溶液を作ったのよ。味見して欲しいの!」

 

「えぇと、どんな味なの?」

 

『コショウとラー油と海苔を入れた喜多方ラーメン味よ!』

 

「何か美味そうだな……」

 

「ラーメンですか? 美味しそうです~!」

 

 最近出来たブドウ糖溶液の味が随分と美味しそうだ。ラーメンは皆が好んで食べる料理だし、今度食べてみようと隊長は思った。

 

 ギンギツネが目覚めてメタルマンを本格的に生産して以降はメタルマンの機能は大幅に改善された。

 例えばエネルギー効率。

 どれだけ強くても短時間しか動けないとなると戦いの中では不利となりやすい。そのためエネルギー効率を良くして長時間戦えるようにする必要がある。かつて隊長が着ていたメタルマンはプロトタイプであるため効率が悪かったが、その後の改良により大幅に効率が良くなった。

 また、エネルギー源であるブドウ糖溶液の味も改善された。元々はかなり不味い味だったが今では多種多様な味付けがされた。その数は100種類を超え、現在でも様々な味が追加されている。

 

「隊長さん、パトロールお疲れさまでした!」

 

「あ、ミライさん。それにカコさんに菜々さんカレンダさん」

 

 馴染みのある声がしたため振り返ると、そこにはミライとカコ・菜々・カレンダが立っていた。

 

「ギンギツネさんとギンアイさんのメタルマンのおかげでパークはかなり平和になりました!」

 

「私達もある程度セルリアンと戦えるようになったのは有難いわね」

 

「何だか、昔見たアニメみたいに戦えるのは自分でも驚きですね……」

 

「このPowered Exoskeleton(パワードスーツ)はとてもCoolだし、最高だわ!」

 

「菜々さん、どんなアニメを見てたんだろう?」

 

 パークで働いている職員であるミライ達もメタルマンを装着している。不審者やセルリアン対策のためだ。彼女達とて危険が一切無い保証は無いのだ。ついでに、守護けもの達も装着している。オイナリサマもなんやかんやで気に入っており、麒麟も「隊長が着るなら我も着るぞ!」という事で四神も着ている。

 

「ふふ、このフルステルス機能を使ってフレンズの皆さんの耳や尻尾を…… ウヘヘヘ……」

 

「あ、犯罪者だ……」

 

『警備員を呼びましょうか?』

 

「あ、いやいや! 冗談ですよ!」

 

「「「「へー…………」」」」

 

 その場にいる隊長達は冷ややかな目でミライを見ている。何というか、何時ものミライさんだ。皆の心の内でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 これがパークの日常。

 

 フレンズと触れ合える、優しい世界。

 

 動物達と友達になれる場所。

 

 動物の事を詳しく知る事が出来るテーマパーク。

 

 それが此処、ジャパリパーク。

 

 皆も一度来てみては如何ですか?

 

 

 

 

 

 Welcome to the ジャパリパーク!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャスティスでかっこいいメタルマンにも会えるわよ!」

 

「皆フレンズと会う為に来てると思うんだけど……」




後書きは2022年8月12日19時00分に投稿予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

後書き

後書きです。
大したことは書かれてないです。


 どうも、青色好きです。

 本作品を読んで頂き、ありがとうございます。

 

 本作品を執筆した理由は、「けものフレンズとメタルマンをコラボしたら面白そう」と思ったからです(すげぇ単純)。

 去年の冬辺りに「ハーメルンでけものフレンズの小説を投稿しようかな」と思い、ちょうどその時期に映画「メタルマン」を見てたのですが、その時に「けものフレンズとメタルマンをコラボしたら面白そうじゃね?」と思ったのです。脳内でイメージしてみて、メタルマンを着けた隊長がセルリアンと戦うと考えたら中々面白いと思い、執筆を決めました。

 

 ブレイク博士に相当するキャラはギンギツネに決まりました。これは最初期の構想の時点で決定してました。ブレイク博士みたいに発明出来るフレンズといえばギンギツネが直ぐに思いついたからです。発明キャラ同士故に、ですね。

 メタルマンと言えば一度完全に装着すると脱げなくなる設定ですが、本作では「専用の装置で着脱可能」という事にしました。流石に二度と脱げないとなると相当きついし、ギンギツネなら流石に脱げるように設計する筈、ですし…… 本当に二度と脱げなくなったら隊長さんが可哀そう過ぎるし…… あと、ブドウ糖溶液の味や「私にも分からん」といった理由も、納得しそうな理由に変えました。やっぱりメタルマン本編のままだと、説明不足感があるかなぁって……

 

 今作のボスは巨大セルリアンでしたが、初期ではメタルマン本編に登場するセバスチャンにしようかなと思ってました。ですが、「セバスチャンがどうやってジャパリパークに介入するか」で少し悩みました。ジャパリパークに協力する企業で、パークを支配するとかで反逆~ とかならどうかなと思ったんですけど、最終決戦のイメージが湧きにくかったため、セバスチャンがラスボスというのは没にし、けものフレンズらしくセルリアンをラスボスにする事にしました。

 そういえばけものフレンズの敵勢力ってセルリアンしかいないので、やっぱりセバスチャン辺りをラスボスにしたかったなぁ~ と今でも思っています。

 

 セルリアン戦で協力してくれたフレンズは全て自分のお気に入りのフレンズ達です。やっぱり出すとしたら自分の好きなフレンズが良いし、執筆意欲が湧きやすいですし。自分の好きなフレンズを大勢出せたのは嬉しかったです。

 

 最後は結構平和的な終わり方です。けものフレンズだし、明るい雰囲気が良いですよね。メタルマンが世界中で使われる事になりますけど、世界中でメタルマンやメッカテラー・M48を見る事が出来るようになる…… 色んな意味で凄いですよね(笑)。ついでにジャパリパークのフレンズ達やパーク職員もメタルマンを着ている…… その内全人類がメタルマンを着る事になったりして…… いや、それは流石に無いか。

 

 そういえば前作の小説から大分期間が空いてしまいました。何か短編とか書けば良かったかなと思っています。でもその分この小説とPixivの小説の執筆に力を入れられた気がします。

 

 検索してみると最近ハーメルンでけものフレンズの小説ってあまり投稿されていないみたいですね。Pixivだと結構投稿されてるのに…… もっと投稿されて欲しい……

 

 あまり書く事がありませんでしたが、今まで読んで頂きありがとうございました! また機会があればハーメルンでけものフレンズかメタルマンの小説を投稿したいです!



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。