正義の眷属に竜人がいるのは間違いだろうか (トラノジ)
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プロローグ


えーこの作品を見る際には

突然の消滅(作品削除)

いやそうはならんやろ(展開)

更新)まだかかりそうですかね〜(更新速度)


などの事にご注意ください



それではどうぞ


 

 

風が鳴いている。

 

開かれたドアから吹き込む風が優しく頬を撫ぜる。

 

光に満ちた外へと出ようとする男を少女は止めた。

 

逆光が男の顔を黒く塗りつぶし、その表情は見えない。

 

 

「────────」

 

 

何かを言い残し、男は外へ出た。

 

少女は慌てて追いかけた。どんどん遠のいていく背中を止めようと足を動かし、そしてつまづいてこけた。

 

 

短い草が生い茂った草原に倒れ込み、生草の匂いが鼻を突く。

 

 

少女は急いで体を起こした。が、

 

 

 

もう追いかけていた背中は無かった。それどころか光が満ちていたはずの世界は暗く、後ろにあるはずの家も闇に消えていた。

 

 

『─────お父さん?』

 

少女は闇に呼びかける。

 

『─────お母さん?』

 

再び呼びかけると光が差し込み、そちらを見ると1人の赤子を抱えた翡翠の髪の女性が立っていた。

 

『────────』

 

女性は何か言ったあと、傍らに立つ妹の手を取り足早に光に向かっていった。

 

「───────」

 

 

少女は声をかけようとしたが、喉が蓋をされたかのように声が出なかった。

 

闇が暗さを増し、少女に駆け寄っていく。

 

 

やがて、少女は何の抵抗もなく、その闇に呑まれた。

 

 

 

どこか遠いところで、龍が鳴いた。

 

 

───────────────────────────

 

 

 

 

迷宮都市オラリオ

 

 

 

───────────────────────────

 

 

 

「───蹂躙せよ!同志たちよ!!安穏なる平穏を享受する者たちの命!それを我らが神への供物となすのだ!!」

 

 

白衣装の男が鼓舞し、それに呼応した信者たちが手に持つ銀の光を振りかざす。

 

「あーもう!しつこいわ!」

「私も同意見でございますわ団長殿。連日に継ぐ襲撃。一体何時になったら終わるのでございましょう」

「んなもんどっちかが消えるまでだろうよ!!」

「───無駄口を動かす暇があるのなら敵を1人でも多く片付けてください!」

 

迎え撃つ戦士たちはここ数日に渡って行われている襲撃に少々どころか大分ときているものがあるようで、敵の攻撃をいなしながら会話を交わし、1番新人のエルフに怒られていた。

 

「こちらに意識を向ける暇があるなら敵を1人でも多く叩け!たわけ!!」

「話す暇があるのならその時間を有効活用しろと私は言っているのだ輝夜ァ!!」

「あーはいはいいつものいつもの」

「こんな時に喧嘩しないでー!!」

 

 

金髪エルフと黒髪ヒューマンのいつもの喧嘩が始まり、桃毛の小人族が呆れ、後衛のエルフが悲鳴じみた怒声をあげて殴打武器でない杖で敵を殴る。

 

「───────オリヴァス!今日こそは仕留める!!」

「ふん!そう言って何度私を仕留め損ねてきた、象神の杖(アンクーシャ)!!!」

 

 

青髪の麗人が悪意を率いる白毛の悪鬼に咆哮し、悪鬼はそれを嘲笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《暗黒期》

 

 

1000年に渡り続いてきたオラリオの安寧。2大派閥《ゼウス・ファミリア》と《ヘラ・ファミリア》によって護り続けられていた平穏。

 

三大冒険者依頼(クエスト)の2つを成し遂げ、最後の1つを成し遂げられず、2大派閥の消滅をもって訪れた絶望の時代。

 

 

多くの悪が嗤い、多くの善が血を流し、多くの命が散っていった時代。

 

 

後の世に、暗き闇の時と謳われる時代。

 

 

これは闇を切り裂く星乙女たちと、一人の龍の物語。

 

 

 

 





アストレアファミリアメンバーの種族詳細を教えてください

お願いします何でもしません



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1話 噂


アストレアレコード単行本化ッッッッ!!!


これはもう我々のアストレアファミリアへの愛が届いた結果では?

どっちにしろめっちゃ嬉しい。輝夜とかライラとかの掘り下げしてくれんかな……


あ、それはそうと時系列的にはアストレアレコード1年前です。


 

【アストレア・ファミリア】

 

 

正義の女神《アストレア》を主神とし、オラリオの真下に広がる世界3大秘境の一つ【迷宮(ダンジョン)】の探索を1つの方針として掲げ、また、都市(オラリオ)の秩序と平和を守るべく日々活動する新進気鋭のファミリアである。

 

 

団員は種族こそ違えど全て女性で構成されており、仲の良い────

 

 

 

「もう一度言ってみろ輝夜!!!」

 

 

 

わけではない。

 

 

 

【アストレア・ファミリア】本拠《星屑の館》。

 

太陽がちょうど頭上に上がった頃に発生した怒鳴り声は、星乙女達の住まう館の隅々まで届き団長室にて最近の事件などの整理をしていた団長《アリーゼ・ローヴェル》を飛び上がらせた。

 

不意打ちで彼女は驚いたが、声の主が1番下の妹(眷属という名の家族関係)の物だと理解すると団長室から出て、外の様子を見た。

 

 

そこには綺麗な顔に青筋をたてて怒っている事が誰でも分かる金髪エルフと、極東から伝来した着物を着た黒髪美少女が居た。

 

 

「もう何度も言っているはずだが?」

「ッ……」

 

言葉に詰るエルフに、ヒューマンはため息をついて言った。

 

 

「お前は理想を追いかけすぎだアホ妖精。昨日も闇派閥(イヴィルス)の攻撃に晒された市民を助けようとしただろう」

「───それが」

()()()()()()()使()()()。そんなお題目何度もその口から聞いているわ。たわけ、お前のような青二才が何でもかんでも救えると思うなくそざこ妖精」

 

 

青二才……くそざこ……と固まるエルフ……《リュー・リオン》と黒髪美少女《ゴジョウノ・輝夜》の話が一旦収まったと見るや、アリーゼはすぐに間に入った。

 

 

「はーいそこまで!」

「アリーゼ……」

「輝夜の言うことも分かるわ、私たちは神様じゃない。でもそれができるようになる力はあるわ!」

「はぁ……団長殿?」

()()()()()()()()()()()!いつかできるように、ううん、それが必要じゃなくなる世界にしましょ!」

 

 

アリーゼの発言に、輝夜は肩を落とし、聞いていたファミリアのメンバーはふと微笑んだ。

 

「アリーゼってホント……なんというか……」

「思ったこと素直に口にするよね〜」

「ま、そんな所がアリーゼというか」

 

 

それぞれに自分を評価する少女たちに、アリーゼはドヤって言った。

 

 

「また皆を納得させてしまった……完璧美少女って辛いわね(キラッ☆)」

 

 

──────イラッ☆(アストレアファミリア一同)

 

 

 

 

いつも通りのアストレアファミリアの日常である。

 

 

──────────────────

 

夜が深まった頃。

 

 

「さて、と。じゃ今日も反省会という名の情報整理。始めますか」

 

アストレアファミリアで最も背の低い小人族(パルゥム)の《ライラ》が口火を切る。主神のアストレアも混じえた情報整理もアストレア・ファミリアでは日常である。

 

「そうね。それじゃあ皆、最近オラリオで変な事って起きてない?」

()ならいくらでも起きておりますが……さて」

 

 

「あ、はい!」

 

エルフの《セルティ》が手を挙げた。

 

 

「今日買い出しに行ってた時の話なんですけど……」

 

 

──────────────────

 

 

「え?角の生えた亜人?」

「はい……子供たちが見かけたそうで」

「凄い綺麗な人だったよ!」

「銀色の髪の毛ー!!」

 

店の子供たちが元気に声を上げる。

 

「亜人で角が生えた種族なんて聞いたことがないので耳を見間違えたんじゃないの?と言っても『あった!』の一点張りで……」

「ふーむ……分かりました。ちょっと調べてみますね」

 

──────────────────

 

「……え?それモンスターじゃないの?」

「私もそう思ったんですけど……」

「モンスターなら暴れる……よね?」

「って事は……人?亜人?」

「モンスターであるなら調教(テイム)済でない限り狩らなくてはなりませんねぇ」

「どちらにせよ都市(オラリオ)に被害が出る前に調査を……アストレア様?」

 

ノイン、セルティ、イスカ、ネーゼ、輝夜が口々に声を上げる中、末っ子のリューはアストレアが黙考に耽っている事に気づいて声をかけた。

 

「……あ、何かしら?リュー」

「あ、いえ……なにか考え事をされていたようでしたので」

 

心配そうに顔を覗き込むリューに対して、アストレアは心配ないと返した。

 

「んー……一先ず、その亜人?については明日から調査を始めましょ。見回りのついでにって感じに情報収集!」

『了解』

 

アリーゼが話を纏め、それにファミリアのメンバーが頷く形で会議は幕を下ろした。

 

 

─────────────────────

 

月が雲に隠れている。

 

オラリオの一角、暗い路地裏。

 

一つの影が静かに佇んでいた。音も立てずに、ただ闇に沈んだそれらをみている。見下す瞳の孔は、丸ではなく()()()()()()()()()()()()

 

「……バケ……モノ……め」

 

最後の力を振り絞り、己を侮辱した只人に対しての返答は無言の一閃。

突き立てられた剣が男の胸を貫き、残っていた血の一部が肉と銀光の隙間を埋める。

 

完全に息の根を止めたと確信したらしい影は、刀を無造作に引き抜いた。

 

 

それと同時に雲に隠れていた月がようやく顔を出し、その惨状を露わにする。

 

 

男女は関係なくその場に居た全ての者が、《彼女》を除いて死んでいた。これを見た物は惨いと最初に口にするであろう事が容易に予想できるほどの死体の状態に、少女は何の感傷も抱くことは無い。

 

 

少女はフード付き長外套の中にある鞘に刀を納めると路地裏を去った。

 

種族の特色である身体能力を活かし、屋根上に登った彼女を月明かりが照らす。

 

 

ちらりと月を見上げた少女は、逃げるように屋根上を駆ける。途中でフードが脱げ、銀糸の光が解き放たれたがそれを見た者はいない。

 

 

やがて、少女は都市の闇に姿を消した。

 

 

 






はい。お久しぶりです。

コロナ陽性になりました。あと、積みプラと夜勤でこちらに手が回らなかったのと気分最悪で書けてませんでした。

色々ありました。先輩にブチ切れたり仕事辞めたい言ったり……まぁその辺は折り合いが着いた?ので……


それはそうとアストレアレコードの三部作小説化。本当にめでたいですね。

そこで私、1度小説化されたアストレアレコード─邪悪胎動─を読み、さらなるアストレアファミリアに対して更に理解を深めようと思います。

何が言いたいかって言ったら……



しばらく投稿停止しかねませんよろしくお願いします。

場合によっちゃ来年までしないかも。もしかしたらそれまでにも投稿するかも

それでも某白ひげの如く拙作を愛していただけると感謝の極みにございます。

それでは次回。

主人公とアストレアファミリア、運命の邂逅


お楽しみに


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2話 会議

すんませんクソほど難産です。


キャラの名前すら決まってないです。


しかもちょっと前回と前々回の展開を変えてます。

本当に申し訳ない。


仕事でやる事やってたら早帰りしてもええ派上司から早く帰りたきゃ仕事早くしろと指示を受け(ええ上司です)、雑務で困惑し、積みプラに迫られ、ギーツのベルトを買い……

全ては私の責任だ。すまない(チョチョー並感)


3巻でて来年なったら早くなると思います。あと仕事が上手く行けば……




 

アストレア・ファミリアの会議から2週間後

 

 

 

「───これより、闇派閥(イヴィルス)対策定例会議を始める」

 

《バベル》を中心に円形に作り上げられたオラリオ、バベルから放射状に広がるメインストリートの1つ、北西に向かって伸びる別名《冒険者通り》にある万神殿(パンテオン)風の建物。

 

都市運営を担う組織《ギルド》。その本部の大型会議室。

 

最高100人の同席を可能とする議場に置かれた円卓を囲むのは、オラリオを代表する派閥、そして闇派閥に対抗する意思を明確にし、日々精力的に活動する派閥の代表である。

 

2大派閥【ロキ・ファミリア】からは《勇者(ブレイバー)》フィン・ディムナ、《九魔姫(ナインヘル)》リヴェリア・リヨス・アールヴ、《重傑(エルガルム)》ガレス・ランドロック。

 

同じく2大派閥【フレイヤ・ファミリア】からは《猛者(おうじゃ)》オッタル、《女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)》アレン・フローメル。

 

前者に迫る勢力を誇り、都市の憲兵と称えられる【ガネーシャ・ファミリア】からは《象神の杖(アンクーシャ)》シャクティ・ヴァルマ。

 

先に挙げた派閥よりも明確に勢力は劣るが、闇派閥への対処を認められ列席を許された【アストレア・ファミリア】からは団長アリーゼ・ローヴェル、副団長ゴジョウノ・輝夜。

 

都市防衛の要とも言える面々が揃い踏みしていた。

 

そして、現ギルド長であるロイマン・マルディールの粛々とした宣言を持って定期的に行われる会議が始まった。

 

「────今回の議題は昨今行われている()()()()()()()()についてだ」

 

《ギルドの豚》と呼ばれるほど肥太ったエルフが切り出した議題について真っ先に触れた……否、突っ込んだのはアレンだった。

 

「ただの仲間割れじゃねぇのか」

「それはないよアレン」

「気安く呼ぶな小人族」

「……今回の1件、どうやら闇派閥でも、都市側の派閥でもない()()()()の介入によるものらしい」

 

「第三勢力……ですか」

 

剣呑な雰囲気になりつつも普通に進めたフィンの発言を、輝夜が薄く目を開けて反芻する。

 

「あぁ、恐らくだが今まで起きてきた事件全て……《彼女》が起こしたと考えている」

「彼女……?女の人って事?」

 

今度はアリーゼが疑問の声を上げた。

それに対してはガレスが答えた。

 

「うむ、目撃者がおってな……」

「私たちの主神だ」

 

呆れたように告げるのは都市だけでなく世界のエルフたちから神以上に尊崇の念を集める王族(ハイエルフ)のリヴェリア。暗黒期真っ只中でありながらLv.5のガレスだけ───都市最高位とはいえど今の時期においては充分と言いきれない──を護衛につけて夜中に開いている店に呑みに出かける主神のロキに対して頭を抱えているようではぁと溜息をついた。

 

「簡潔に言えば、犯行後。疲弊しているところを見かけたというだけらしいんだが─────」

 

 

それは会議が開かれる2日前の事。

 

 

─────────あれは間違いない!別嬪さんや!間違いなく別嬪さんや!

 

深夜にもかかわらず騒ぎ立つ女好きである赤髪の女主神の声に起こされ、リヴェリアは何事かと騒音の源に寝間着で足を進めた。

 

 

 

─────うるさいぞロキ、今何時だと思っている?

 

寝間着で現れたリヴェリアに、主神である《ロキ》は別方向で興奮しかけたが、問題の方が興奮の度合いが大きかったようで「そんなことどうだってええねん!」と目をキラキラさせて言った。

 

─────うちは見つけたで!リヴェリア!世界最高の美人さんを!!

 

 

 

 

「……どうにも、神の直感とやらが犯人を女だと断定したらしい」

「じゃが、ワシも少しだけ見た。銀色の綺麗な長い髪だけな」

 

リヴェリアに続いて、実際に見たというガレスが《彼女》の容姿を語る。

 

 

「──────あ」

 

 

そこで思い出したかのように、アリーゼはおもむろに与えられた席を吹き飛ばさんが勢いで立ち上がった。なお椅子は倒れるだけで済んだ。

 

「おじ様!その子、角とか生えてなかった!?」

 

突然のおじ様呼びに会議室が固まるが、当の本人は気にもとめずに返した。

 

「んん?いや……暗くてよく分からんかったが……」

 

「……それがなんかあんのか」

 

訝しげに問いかけるアレンに、求めていた答えが返ってこなかったアリーゼはなんでもないと首を振った。

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

「─────あぁ?どういう事だ」

 

不機嫌な声音が闇に響く。

 

闇派閥(イヴィルス)》の幹部、《ヴァレッタ・グレーデ》は報告された事柄に青筋を立て、報告者の部下を震えさせた。

 

「で、ですから、正体不明の襲撃者の手で、我々の同志が次々襲われており……」

「んな事ぁ分かってんだ、だから説明しろ」

 

眉根を寄せ、理解できないと暗に告げるヴァレッタは理解できない部分を言った。

 

 

 

 

 

 

 

「───────なんでレベル4の奴が殺られんだよ」

 

 

 

 

 






新年明けましておめでとうございます。



更新頻度上げていきたい(タブンイケナイ)




コメントとか評価して貰えたら……ワンチャン……チラチラ


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3話 女神は龍を拾う


なんか役職の引き継ぎの件でごたつきそうな気配がしてます。

やれそう?って聞かれたんですけど……


やりたくねぇ!!!


そんな感情の中なぜか完成しました3話ですどえぞ


 

「さぁ!炊き出しよ!!」

 

「……よくもまぁ元気に言えんな、アタシらが主催ってわけじゃねぇのに」

 

 

よく晴れた青空にアリーゼの声が消え、ボヤくようなライラの声も消えていく。

 

今日も今日とて元気いっぱいのアリーゼ・ローヴェルは身を翻すと気が進まないと顔で語るライラに、唇を大きく三日月の如く上に曲げて言った。

 

「それはそれよ!重要なのは今日は闇派閥(イヴィルス)の脅威も一旦置いておいて皆笑顔になる日!それを守る私たちがげんなりしてたら皆の笑顔も曇っちゃうわ!」

「アリーゼの言う通りよ、ライラ。今日だけでも、ね?」

「……アタシ、こういうの苦手なんだよ……」

 

太陽のような笑顔を振りまくアリーゼに、アストレアも慈愛の笑みを浮かべて同意する。はぁ……とため息をつきそうなライラはそそくさと見回りに向かう。「私も苦手分野でございますので」と続く輝夜は炊き出しの手伝いへ。その他のメンバーもそれぞれに散り、残ったのは末っ子のリューとアリーゼだけになった。

 

 

「それじゃあ、私も炊き出しの手伝いに行くわね?」

「はい!あ、でも身の回りには気をつけてくださいね?アストレア様」

 

 

本拠を飛び出しては慈善活動をするアストレアに、アリーゼは釘を刺す。自身の心配をしてくれる眷属にアストレアは大丈夫よと笑顔で答えた。

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

「……ハァ……ハァ……グッ」

 

カハッ……パタパタッ……

 

 

ズルズルと足を引きずり、路地裏を歩く。

 

 

しくじった

 

 

それが少女の頭を埋める1文であった。

 

《敵》の集合地を見つけ、準備を整え、奇襲をしかけて《上位者》らしき男を屠ったまでは良かった。そこまでは。

 

しかし彼女は2人目に気づけなかった。否、集合地で行われていたことも含めて罠だと気づけなかった。

 

仕留めた上位者よりも頭を垂れていた女。桃毛に黒い長外套、歪な形の長剣を持った女がより高位の《昇華》を済ませた上位者である事を見抜けていれば、あるいは、()()()()()()()()()()()()()を選んでいれば彼女が傷を負うことはなかった。

 

傷つけられた脇腹から溢れ出す血を抑えながら、ズルズルと歩く。歩き続ける。いくつかの角を曲がった先で、ようやく大通りから差し込む陽の光が見えた。

 

道端で倒れれば、生き残れる可能性はある。

 

少女は進む。進む。進む────────

 

 

「おいおい、どこへ行こうってんだ?」

 

 

狩人の声が響く。振り向いて確認する必要も無い。奴だ。自分をここまで追い込んだあの女だ。

 

 

「生憎だがよぉ……てめえの居場所はそっちに」

 

言い終わられる前に手札……最後の手段を切る。

 

 

身を翻し、女に右手のひらをかざす。

 

 

「───なっ!!???」

 

 

女の顔が驚きに染まり、ついで一気に青ざめた。

 

 

「正気かてめぇぇぇぇ!!!??」

 

女が少女の歩んできた道に逆に走る。

 

少し遅れて少女の右手から放たれた業火の熱線は女の外套の端をかすめて壁に激突し、少女に遅れて反動が来る────────

 

 

それを彼女は受け止めなかった。

 

足を地から離して宙に舞い、一気に加速する。神々が見れば『ミサイル』と形容するであろうその行動は少女を陽の元に引きずり出した。

 

 

通りのど真ん中……ちょうど《何か》をしていたらしく、多くの人が行き交う石畳の道のど真ん中に、少女は仰向けに落ちた。

 

激突した際の衝撃が、疲れ果てていた少女の意志の力を全て持っていく。

 

 

 

 

「───おいなんだ!?」

「女の子が飛んで来たぞ!?」

 

消えゆく意識の中、突然の事に慌てふためく市民の声が、少女の耳に届く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────大丈夫!?しっかりして!」

 

 

 

 

 

 

 

最後に見えたのは、陽光に照らされ輝く栗毛と空以上に澄んだ、蒼い瞳だった

 





感想クレメンス……_( _´ω`)_




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4話 竜人


役職引き継ぎ、結局やる事になりました。







 

 

─────報復を。

 

 

炎の中で、()()は誓った。

 

 

─────報復を。

 

 

息絶えた幼い同胞を胸に抱いて、暗く炎が照らす夜空に()()は吠えた。

 

 

─────報復を!!!!!!!

 

 

流れる涙が枯れ果て、血に変わる。

 

 

『───────────!!!!!!!』

 

 

絶叫は止まらず、憎しみは留まることを知らず。

 

幼子に慈悲すら与えなかった《人間()》を。

同胞たちを散々凌辱して行った《神の眷属()》を。

あらゆる平穏を踏みにじり、それを嘲笑った《神々()》を。

 

必ず──────

 

必ず──────

 

『コロシテヤル』

 

 

絶殺の誓いは、誰の耳にも入ること無く、立てられた。

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

目が覚めた。

 

 

見えるのは太陽の光を少しだけ透過している白い布……天幕の中に寝かせられている事に、まもなく少女は気づいた。次いで、鼻についたのは食欲をそそる匂い……シチューかなにかが近くで作られているのだろう。

 

「──────」

 

そっと、視線だけを動かす。左には布の壁。右手にはこの天幕の入口だろうか。光が漏れているのがわかる。

 

次に、少女は自分の状態を確認した。死んでいないことはまず間違いない。匂いがする。寝かされている感覚がある。 四肢に問題は────

 

「────ッ……」

 

脇腹に痛みが走った。原因がピンク髪の追跡者の手でつけられた傷であることは間違いない。あとは右腕が痺れる。切り札である()()を放った方の腕だ。手を握って開いて痺れを取り除いた……まだ少し痺れはあるが、動く分には問題ないだろう。そのうち消えるはずだ。

 

そっと、身体を起こす。

 

天幕の内装は自身が寝かされていたベッド……と見せかけた長テーブルに、少し離れたところにテーブル。治療してくれた者がどういった存在なのか嫌でも何となく察させられる、その上に自分が着ていた服と持っていた刀がちょっとした見本市かのように広げられていた。

 

 

「────」

 

 

天幕の周囲に音はほとんどない。目覚めるのを待っていて、奇襲攻撃を仕掛けるつもりか────その可能性が頭を過った少女は、音を立てないようにそっと、寝台から足を降ろし、黒鞘の刀に手を伸ばし────

 

「!」

 

 

コツコツと靴底と石畳が奏でる音に気づいて、伸ばした手を引っ込めることなく刀を手に取り、寝台に飛び乗った。

 

 

間もなく、天幕の入口が開かれた。

顔を覗かせるのは、あまりにも整いすぎている美しい相貌の女。

そして纏った()()

 

女神だと気づくのに時間は要らなかった。

 

「良かった、目が覚め」

 

優しい声音を止めたのは、少女が刀を握り直すのを見たためだ。警戒しまくっている少女に対して女神は一瞬慌てたが直ぐに慈母のような笑みを見せて落ち着くように促す。

 

「落ち着いて?私はあなたの敵では無いわ」

 

今にも唸り出しそうな少女に、女神は微笑む。その手には何かを載せたお盆……

 

「……(グゥゥ……)……!!!」

 

 

唐突に胃が鳴った。飯を寄越せと仕切りに唸る。

 

鼻につく良い香りの何かを乗せたお盆を女神はスススッと動いて自分のすぐ隣に置いて見せた。

 

「……」

「……?どうかしたの?」

 

不思議そうに首を傾げる女神に向けた視線を今度はお盆に に向ける。

何が言いたいのか察したらしい女神は微笑んで言った。

 

「良いのよ?貴方の為に持ってきたのだから」

 

クゥゥゥ……

 

再び腹が鳴いた。

 

そっと刀を置き、女神から気を離さずに置かれた盆に目を向ける。

 

お盆に乗った木製のお椀には白い液体が入っていた。鶏肉、じゃがいも、ニンジン、タマネギ……シチューだと気づいた途端に更に腹が悲鳴をあげた。

 

バッと飛びついてバクバク食べ始める。はしたないとか関係ない、女神が驚いたようだが関係ない。危険な匂いが───食欲をそそる的な意味ではヤバいが───しない物を目の前に置かれた少女の胃は理性を粉砕した。

 

絶品だった。与えられた温かいシチューに、少女は知らず知らずのうちに目尻に涙を浮かべていた。

 

食べきるのに時間はかからなかった。口に着いた食べカスを腕で拭って息をつく。

 

「おかわりは必要かしら?」

 

微笑む女神に、正気に戻った少女は首を緩く左右に振った。そっと茶碗を置いて寝台から降りようと足を再び地面に下ろすと女神が慌てて止めて来た。

 

「まだ動いてはダメよ。傷は塞いだけど無理をしたら開いてしまうわ」

「……」

 

女神の忠告を聞き入れた本能が全身を止めようとする。が───

 

 

「この程度で死ぬような身体では無い」

 

意志の力で黙らせる。そのまま歩き出し、広げられた武具と着ていた服を手に取って、身に纏っていく。

 

「それに、死ぬのなら1人でも多く道ずれにしてやる」

「……貴女が死んで悲しむ人はいないの?」

 

女神は問うた。机の上に残っていた青い宝石のペンダントに伸ばしていた手が止まる。

 

 

 

「……死んだ」

 

「え?」

 

ペンダントを右手首に巻き付け、最後にボロボロになってしまったロングコートを纏う。

 

 

 

「もう居ない……いや、最初から居なかったのかもしれない」

「……」

「もういいな?私はあなた達に関わる気はない……関わりたくもない」

 

そう言い残して、天幕を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

天幕を出てすぐに、囲まれた。

一様に武器を持ち同じような橙黄色の衣装に身を包んだ戦士たちは出てきた少女に困惑とも言える表情を向けた。

 

 

一瞬、天使かと見紛う者もいた。それ程の美貌を少女は持っていた。白銀の毛髪も相まって神秘的な気配すら感じさせる少女に男女関係なく見惚れた。

 

 

「……最初からこうするつもりだったのか?女神」

 

少女は背後の天幕に向かって怒気を混ぜて呟いた。次いで1人の女神が天幕からでてきた。

 

「いいえ、私の判断だけではないわ」

 

先程と変わって凛とした女神の声に応えるように囲む集団の中から1人の麗人が進み出てきた。

 

「お前が闇派閥を殺害していた犯人か?」

「……そうだと言ったら?」

「お前の目的は」

 

いかにも堅物といった雰囲気の蒼髪の女性は少女を睨み、目的を問うた。

 

 

 

 

「あの下衆どもが笑えない世界を作ること」

 

 

 

 

「…………なんだと?」

 

さらっと言い放った少女に、麗人だけでなく周りの戦士たちも困惑の表情を浮かべた。

 

 

 

「故郷が焼かれた」

「親切にしてくれた者たちが傷つけられた」

「……大切な物が無くなった」

 

右手を持ち上げ、手首に光るペンダントの宝石を見て、ほんの少しの悲しみを滲ませた少女は、すぐに無表情になり吐き捨てるように続けた。

 

 

「ここに来たのは奴らを殺すためだ。あいつらの後ろにいる神々もな」

 

 

 

 

「……神殺しすら成し遂げると?」

 

さらに表情を強ばらせる女性に、少女は言った。

 

 

 

 

 

「────────当然だろう」

 

 

 

闇派閥とは、この世が混沌に包まれることを望む邪神が作り上げた組織だ。いくら末端の構成員を潰そうと、幹部を潰そうと。

 

 

神ある限りその存在は不滅なのだ。

 

 

「神が害悪の根源なら神であれど殺す」

 

 

 

 

 

「──────そうか」

 

 

麗人は残念そうに目をふせ、すぐにカッと目を開いて手を挙げた。

 

 

 

「拘束!!」

 

 

手を振り下ろし、部下たちに命令を下す。

 

 

『オォォォォォォォォォッ!!!』

 

 

一気に押し寄せてきた戦士たちに対して、少女は空に舞ってみせた。

 

 

「────なっ!????」

 

 

 

麗人の目が見開かれ、驚愕に震える。それは少女の真下で空を見上げる戦士たちも同様だった。

 

 

 

「────邪魔をするな、するならお前たちが善人であろうと容赦しない」

 

 

───バサッ、バサッ

 

 

 

少女の腰の辺りから翼が生え、宙に少女を浮かべていた。もしこの時代が遥か神代以前、古代であったのならば彼女を天使と勘違いしていただろう。

 

 

────その生えた翼に、羽毛があって。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「お前──────」

「安心しろ、市民に危害は加えん……闇派閥でない限りな」

 

 

コウモリのような翼を羽ばたかせ、陽光を浴び煌めく鱗に包まれた尻尾を揺らめかせた少女は天高く舞い上がった。

 

 

それを戦士たちは見送った。見送るしか無かった。

 

 

 

「……竜人種(ドラゴニュート)

 

 

蒼髪の女性は遥か昔に居なくなってしまった、しかし、知識だけは知っている種族の名を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で。

 

 

 

包囲網の外側。それぞれの反応を見せる市民たちと共に、それでいて彼らとは違った光を瞳に宿す少女が居た。

 

 

 

「……あの子」

 

キラキラと、探し物が見つかった子供かのような目で少女が去った空を見上げながら赤毛の少女────アリーゼ・ローヴェルは言った。

 

 

「欲しいッ!!!」

 

 

 

 




状況整理。

主人公

助けられる。邪魔しないでと通告。


正義の女神

……


都市の憲兵

マジか


赤毛の少女

主人公にロックオン






現段階最長の話でした。

描写力ぅぅぅぅ……ですかね……(課題)



ちなみにリアル関連がいい事がほとんどないので辛いです。



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5話 幕間 ──眷属会議──


これからはコツコツ進めていく方向で執筆しようと思います。

つまり鈍亀になるわけですねぇ!

その分ご満足いただけるものを執筆する所存。何卒よろしゅうお願いします……


 

「──────あの子を仲間にするわ!!」

 

 

唐突に切り出させれた宣言に、アストレア・ファミリアメンバーは揃って団長の顔を見た。ドヤ顔である。圧倒的ドヤ顔。

 

 

『……は?』

 

 

「だーかーらー!!あの竜人種の女の子よ!ファミリアに勧誘するわ!!」

 

「いやいやいやいやいやいや、待てアリーゼ。アレをか!?」

「あれだなんて失礼じゃないネーゼ!」

「いや無理無理無理!竜人種って気難しいらしいしなんならあの子邪魔したら神様だろうと敵にするって言ってたじゃん!」

「大丈夫!同盟的な関係を築くのよイスカ!」

「いやそれ以前に見てたでしょ?!街の人たちの反応!モンスター出た時と同じ反応だったし!闇派閥も狙ってそうだし!」

「ノイン!あの子喋るわ!意思疎通ができるなら協力できる!ついでに狙ってる闇派閥も一網打尽!完璧ね!!」

 

 

大騒ぎになる血を分けた眷属たちに対して一人一人対応していくアリーゼ。ひとしきり騒いだ後、机の上に置かれた水を飲んで口を潤し一息ついて話を仕切り直した。

 

「とりあえず、団長様が何故あの娘を勧誘しようとしているのか。理由をお聞かせ願えますかねぇ」

「まずは強そう!うん!これが一番ね!あとあの子の言っていた通りなら闇派閥と敵対してるってのは間違いなし!」

「だから欲しい……と?」

「ええ!皆はどう?」

 

 

自分の意見を出し、ついでに団員それぞれに意見を問うアリーゼ。

 

「私は異論ございません……が、あれが神殺しを標榜した以上、入団させるなら色々と制限をかけるべきかと」と輝夜。

 

「んーアタシはアリではあるな。アイツ前衛型ぽかったし」とファミリアの戦力の安定を掲げるライラ。

 

「いいと思う」

「うーんさっきあんなこと言っといてなんだけど……アタシも」

「私も」

「私も賛成かな〜」

「うーん……どう転ぶか分からないわよ?」

「挑戦は大事よ!リャーナ!」

 

アスタ、ネーゼ、ノインに続いて年長組のマリューが声を上げ、同じ年長組のリャーナが先の事を心配したがアリーゼは心配ないとどこから来るのか分からない自身を見せた。「なら、やってみようか」とリャーナは少し微笑んだ。

 

「……そういえばさ、竜人種ってどんな奴らなの?」

「ん?どういう事?イスカ」

 

アマゾネスは、自分たちの家族になるかもしれない者の種族について何も知らないことを思い出し、声を上げる。

 

「いや、竜人種なんて今の今まで聞いたこともなかったなーって」

「あ、そういえば確かに」

「いや、お前は知ってろよ団長」

 

知らなかったアリーゼに突っ込むライラ。

 

「セルティ、何か知ってる?」

「一応は……」

「おー!流石セルティ!」

 

知識の種族(エルフ)の中でも殊更に知識に貪欲な《イニェテの森》出身の《セルティ・スロア》。その頭脳に詰め込まれた知識で仲間の窮地を救うことは多々あった。竜人種の知識もあると語るセルティに仲間たちから尊敬の眼差しが向けられ、セルティは中性的なその相貌を嬉しさで少しだけ赤く染めた。

 

 

──────────────

 

 

えーとまず、竜人種というのは特徴で分けられた1つの区分です。正しくは幻想種。《ファンタズマ》と呼ばれる種族です。

 

精霊もこれに近く当てはめられるのではとされていたのですが……幻想種たちの特徴として私たちがよく知るモンスターと同じ姿をしているものが多いんです。

 

ただ、彼らの中には魔石がありません。普通の生物のように臓器があります。これが広まったのは神代が始まったあとなんですけどね。

 

 

幻想種たちは基本的にはさっきも言ったように獣のような姿をしています。古龍、不死鳥(フェニックス)神喰狼(フェンリル)……竜人のような人型も含めて現存が確認されているだけでも10種が幻想種に分類されています。

 

 

──────────────

 

 

「───んーとつまり……魔石が無いモンスターみたいな?」

 

その解釈であってますとノインの発言を肯定するセルティ。

 

「つまり珍しいってことよね!」

「そうですね……でも」

「何か問題が?」

 

リューが言葉を詰まらせるセルティに問いかける。顔を上げたセルティは言った。

 

「おかしいんですよ。竜人種が同胞の報復に1人で出向くだなんて……」

「……確かに妙ではありますね」

 

疑問を抱くエルフたちに、輝夜は私たちにも説明しろと催促した。

 

 

「皆さんはラキア王国の不敗神話について知っていますか?」

 

 

ラキア王国。

 

軍神《アレス》を主神に戴く国家系ファミリアが治める国であり、過去には神アレスの意向の元、何度も戦争を起こしていた大国である。《クロッゾの魔剣》と呼ばれるある魔剣鍛冶師の一族だけが生み出せる超強力な魔剣を持って行われた進撃は不敗神話として今も有名であり、やがてその進撃はエルフたちの中で神より崇め奉られる王族の住まう《王森》にすら及びかけた。

 

その際、精霊の力を起源としていたクロッゾの魔剣による破壊行為──進軍のための環境破壊によって住処を追われた精霊の逆鱗に触れ、クロッゾの魔剣は全て破砕され、神の眷属となったエルフ達の大反撃によってラキア王国は敗走した。

 

今では失われた栄光を今も取り戻そうと必死だという国家の話を出され、「知ってるけど……それがどうしたの?」とアリーゼは首を傾げた。

 

「その戦いに、幻想種達もいたんです」

 

「え?そうなの?」

「聞いたことないわよそんな話」

 

信じられないと先輩魔導士のリャーナが口を挟んだ。セルティは「仕方ありません」と首を折った。

 

 

「1番ラキア王国を痛めつけたのは彼らですから……」

 

 

─────────────────────

 

 

ラキア王国当時の国王は幻想種にある種の忌避感を抱いていた。モンスターと同じ姿をしながら、人の言葉を理解し、知恵を持った彼らを。

 

時に人を助け、時に争いに介入しそれを止める。

 

ラキア主神となっていた軍神アレスも、他国侵略において乱入してくる彼らの存在に度々憤っていた。

 

 

目障りになっていた彼らを殲滅、もしくは隷属させようにも彼らの力は時に昇華した眷属すら容易く屠る者も居ると聞いていた彼らは、その最後の決断をしかねていた。

 

クロッゾの一族が来るまでは。

 

 

 

クロッゾの魔剣を手にした彼らはその強大な力で持って次々とやってくる幻想種達を返り討ちにし、討ち取った彼らを解体して──幻想種の素材は薬効や武器になる───莫大な利益を得た。

 

ラキアは増長し、さらに進撃した。彼らの本拠地との噂名高い《幻想の谷》に向け、道すがら国家を吸収し、森を焼き河を干上がらせ、山を消し飛ばしながら突き進み続けた。

 

やがてエルフの王森にぶち当たった際に森から逃げた王族に1万程の軍勢を差し向け、残りは王森の侵略を続けていた。

 

そんな時だった。逃げた王族達をおっていた者たちがズタボロで逃げ帰ってきたのだ。

 

数百にも及ぶ龍の群れに追われながら。

 

 

時に平和な村を消し去り、時に女子供すら情けなく殺し、同族たちの遺骸を己の為に金に変えた。そして

 

《何も関係ない幻想種たちにすら及んだ虐殺》。

 

 

それを笑いながら彼らは成した。成してしまった。

 

 

幻想種たちは、秘め続けていた怒りを爆ぜさせた。

 

限界を超えたのだ。恩恵を与えた神を必ず殺すという覚悟すら決めさせる程に。

 

 

 

王森の者たちは後にこう語ったという。

 

 

 

────ラキアは目覚めさせてはならない虎の尾を踏んだ。と

 

 

 

それが初めての敗走。そして後に語り継がれる大敗北の始まりである。

 

 

 

─────────────────────

 

 

「怒り狂った彼らはラキア本国に進行し、大勢の民の命を奪ったといいます……今まで奪われた仲間たちの分まで」

 

 

「……えーと……奪われたのは自業自得なんじゃ……」

 

そもそもラキアの戦争に介入し、余計な不満を買わなければそうはならなかったのではと端的に口にしたのはイスカ。

 

 

「───いいえ、彼らはそうしなくてはならなかったのよ」

 

 

そう答えたのはセルティではなく、アストレアだった。眷属たちは声を上げた主神に目を軽く剥いた。

 

 

「そもそも、彼らが戦いに介入していたのはラキアが過剰だったから……小さな村すら侵略の対象として戦力を投入していたからなのよ」

 

 

()()()()()()()アストレアの証言に、誰かが生唾を呑んだ。

 

 

「彼らには古代より前から、下界の子供たちを守るという使命が与えられていた。時に子どもたちの戦いを止めて、時に子どもたちに恵みを与える」

 

「幻想種は……神様たちの眷属だった……ということですか?」

 

そう問うたアリーゼにアストレアは頷く。

 

「恩恵……と言うよりも加護は一部のより強い子に与えられたのだけれど……なくても、彼らは強かった」

 

 

一瞬の沈黙が部屋を満たす。

 

「彼らは今も私たちの言葉を守ってくれている……あんな事があって今も尚……」

 

「……?あんな事……っていうのは?」

 

ライラはアストレアの様子が一瞬変わったのを察知し、原因であろう《あんな事》について問うた。

 

いつもより暗い表情を浮かべるアストレアが顔を上げ、「それは」と言の葉を紡ごうとしたその時だった。

 

 

 

─────ドォォォォォォン……

 

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「今のって!」

「爆発……!」

「行こう!」

 

 

突然の爆音に眷属たちが飛び上がり、颯爽と立ち上がる。

 

 

「アストレア様」

 

「えぇ、行きなさい」

 

 

「はい!」と眷属たちが声を揃えて星屑の館を飛び出していく。

 

 

1人残されたアストレアは、眷属たちを見送った。

 

 

「……そう……今も」

 

1人、呟く。

 

 

「今も守ってくれている……」

 

窓際に寄りにわかに慌ただしくなる都市を見下ろす月を見上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの日から1000年が経っても……」

 

 

 

独白は、誰の耳にも入らず、静かに霧散した。

 





今回のまとめぇ!

アストレア・ファミリア

仲間にしよう!


アストレア

(´・_・`)


《過去》

ラキア

ぶっ殺したらァ!

あぁっすいません調子乗りすぎま(ボコボコ)

幻想種

お前死にたいんだってな?







大丈夫か……俺の文才……


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