機動戦士ガンダムSEED ~哀・戦士~ (モノアイの駄戦士)
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ep1 暁に立つ

どうも、初めましての方は初めましてです。
あらすじにも書いた通り、ククルス・ドアン観てきた衝動で書き上げました。()
メンタル面で色々不安定かつ身内で色々起きてる為、気分次第によって投稿速度が激しく変わりますが評価とか感想とか定期的でも良いのでくれると、調子に乗って沢山書くかも。
後、前書きは愚痴とか身辺報告(自分への)みたいな感じなので無視して構わんでヤンス。

まあ、ともかくep1をどうぞ!




 

ー何故こんなものを地球に落とす!?

 

ー私、シャア・アズナブルが粛清しようと言うのだよ、アムロ!

 

 

ーならば、人類全てに英知を授けて見せろ!

 

ー貴様を殺ってからそうさせてもらう!

 

ー貴様ほど急ぎすぎもしなければ、人類に絶望なんかしちゃいない!

 

 

ーたかが石ころ1つ!ガンダムで押し出してやる!

 

ーνガンダムは伊達じゃない!

 

 

ーララァは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!!

 

ーララァが……お母さん…!?ウワッ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ………!?」

 

最近、おかしな夢を見る。

どこか、遠い遠いどこかで戦争をしていたような、でもどこかそんな物に何とも言いがたい郷愁染みた気持ちが込み上げてくる。

だけど、その夢の内容は全く覚えていない。

 

「変な気分だな……いや、こんなの観てるからあんな夢を見たのか……」

 

僕はアムロ・レイ。

父さんの仕事の関係で中立コロニー【ヘリオポリス】に住む、カトーアカデミアの学生だ。

機械いじりが好きな陰キャ……まあ、客観的に見れば僕はそんな人間だ。

友達も少ないが、けどそれなりに楽しい学生生活を送れていると思う。

けど、やっぱりプラントと連合による戦争がなければ、もっと良かっただろう。

そんなたらればはともかく、僕が見ていたのは父さんの部屋にあった連合軍による【G計画】の“G”と呼ばれるMSの設計図や稼働実験の録画を見ていたのだ。

父さんが技術屋なのは知っていたけど、まさかザフトの運用するモビルスーツを連合軍が作ろうとしているなんて、初めて見たときは信じられない気持ちが大きかった。

けど、モビルスーツ自体に僕は興味があったから父さんがいない間を使って父さんの部屋に入り浸っていた。

僕も、父さんと同じく技術屋の血があるんだろうな。

その事に少し嬉しさがあるが、ともかくそろそろアカデミーに行かなければならない。

 

「pi………」

 

「トリィ、行くよ」

 

「pi!」

 

親友と交換した僕の相棒とも言えるトリィを連れて。

 

「ハロ!ハロ!アムロ!オイテクナ!」

 

ああ、ハロの事も忘れていたな。

 

 

 

 

………後に思えば、あの時既に僕はヘリオポリスが戦場になるのを予期していたのかもしれない。

だって、あの時父さんの引き出しからG計画のファイルを幾つか抜き出していたから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ、アムロ!」

 

「おはよう、カズイ、サイ、トール」

 

アカデミーの仲間たちがやはりと言うか、先に教室にいた。

あまり自慢できるような事ではないが、僕の数少ない友人達だ。

 

「ちょっと!私の事も忘れてない!?」

 

「ごめん、ミリアリアさん、忘れてた訳じゃないんだ………」

 

そしてこのアカデミーの紅一点、ミリアリア。

トールと付き合っていて、まあ羨ましいとかそんな感情は特にない。

正直に言って、女性に興味を持つことはほとんどない。

だからか、僕としては口では羨ましいとか言いつつ普通に良かったね、程度くらいの気持ちだ。

………端から見ればただの強がりだけども。

 

 

 

 

そして時間は流れてアカデミーの休息時間になる。

トール達と戯れながら昼御飯を食べた。

世間ではナチュラルだのコーディネーターだのと、そんなことで騒がしいが僕には関係無い。

結局、人間でしかないんだと、唯一無二の親友と関わってそう思っている。

昼御飯を食べた後、皆よりも少し遅れたので急いでいると一人の少年?がどうやら迷っているようだ。

その後、紆余曲折あって彼が彼女であったり、案内をしたりとしていたがそんな平穏もすぐに終わりを迎える事となった。

唐突な爆発音によって、平穏が崩された。

避難しようと、避難シャッターの所へと走ろうと思ったが案内していた少女が突然、立ち入り禁止の区域に走っていったのだ。

僕は彼女を放っておけず、彼女を追いかけた。

その先にあったのは、僕が今も手提げのバックの中にあるG計画の集大成が、そこに横たわっていた。

 

「何故です…お父様……!!」

 

「父さん……!」

 

もう周りは火の海だ。

僕は呆然とする彼女を無理矢理引っ張って、シャッターの中に入れさせてもらった。

そのシャッターは一人しか入れなかったので彼女を入れたが、さて、このままだと間に合うか………

そう懸念しながら先程のGが横並ぶタラップの上を走っていた、そんな時だった。

 

「ラスティ!」

 

嫌に聞き覚えのある声だった。

銃声の最中に聞こえたその声の主は、赤いザフトのノーマルスーツを着ていた。

ヘルメットのバイザーで顔は解らない、けどすぐその前に茶髪の女性がいて、撃たれそうになっていた。

だから思わず叫ぶ。

 

「あ、危ない!」

 

「子供!?うっ……!?」

 

僕の声に反応したおかげか致命傷は避けた様だが、肩に当たったようだ。

そして反撃の射撃で撃った相手は倒れた。

 

「うぷっ……」

 

思わず、吐き気が出てきたが今は我慢して移動しなければ……!

だがその矢先、タラップが、いやタラップを支える壁がモビルスーツの方向へと倒れる。

何とか、僕は飛び出して一つのGに取り付く。

けど、その時顔を上にあげたとき、僕は驚いた。

そしてバイザーの奥に見えた彼もまた驚愕に顔を染めていた。

 

「アス……ラン……!?」

 

「アムロ………!?」

 

こんな形の再会なんて、僕はトコトンついていないんじゃないだろうか。

彼もまた、僕と同じく機械オタクで、親友でコーディネーターで……いや、彼がザフトに入ることは有り得なくもないか。

けど、こんな再会は………余りにも不本意だ。

 

「頭を下げてッ!!」

 

「「ッ!!」」

 

一時の再会は一人の女性の銃声によって終わりを迎えた。

アスランは他の機体に移動し、僕は非常事態、という事で取り付いていたGのコクピットの中に女性は引き入れた。

確か、コードネームは……【ストライク】だったか?

 

「ストライクだけでもっ……!」

 

そんな女性の焦りを感じさせる言葉と共に、ストライクは起動した。

しかしOSの名前を見たとき、僕はどこか懐かしい気持ちになっていた。

 

「ガンダム………」

 

今ここに、ガンダムは立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、アスラン・ザラはアムロ・レイとの思わぬ再会に戸惑いと困惑が彼の心を占めていた。

しかし、任務を遂行すべくプログラムを書き換えるその手は止まらない。

 

「アムロ………ッ」

 

アスランは今も残る記憶をかき集めて彼との思い出を思い出す。

月で幼少期、彼と機械でよく遊んでいた。

そして別れる際、アスランとアムロは友情の証として、お互いの自作ロボットを交換した。

アムロはハロを、アスランはトリィを送りあった。

当時はまだ反コーディネーター等が低活発だったので、アムロとの交友は厳格なパトリック・ザラも認めていた。

今も時折、アスランは思う。

またあの時に戻れないだろうか、と。

そんな想像は仲間で友人のニコル・アマルフィの通信で遮られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなOS……めちゃくちゃじゃないか!?」

 

ところ変わってストライクのコクピット内。

立ち上がり、移動していたのは良いものの、その乗り心地はとてもではないが二度と乗りたくないものだ。

故に、アムロはバックから取り出したG計画の紙資料を取り出し、それを参考にOSを少しずつ変えていく。

本来の主人公よりはその速さは遅い。

しかし、ストライクの初期OSよりは断然マシなOSが組み立てられていく。

 

「この子……!?」

 

脇に退けられた女性士官、マリュー・ラミアス技術大尉は目の前の名も解らぬ少年の才に、コーディネーターの懸念を考えたが、衝撃によって中断される。

 

「ぐわっ!?」

 

「うっ…!?」

 

目の前に、ザフトの誇る人型汎用兵器【ジン】がモニターの向こうに、立ちはだかっていた。

 

 

 




ちなみにアムロのイメージは読者さんのイメージで読んで下さい。
初代アニメ、オリジン、ゲーム媒体、大まかにこの三つで年代が解るぞ、これ………

尚、自分は初代とオリジンで迷ってます。

一先ず、次回は近いうちに出したい………無理かもしれんけど。



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ep2 白い悪魔の産声

いやぁ、感想をあんなにもらえたら調子に乗っちゃうじゃないか!()

という訳で空いた時間でチョクチョクと書き続けて二話目です。
独自解釈ありありですが、それでもよろしければお気に入り登録等をよろしくお願いします。



唐突だが、時間を少し遡ろう。

ヘリオポリス襲撃前、ナスカ級【ヴェサリウス】のブリッジの艦長席に座る男がいた。

その男の名はラウ・ル・クルーゼ。

奇抜、というには少々趣味の悪い仮面を着けた金髪の男だ。

そんな彼は、艦長席でとてつもない冷や汗を訳も解らずかいていた。

 

(なんだ!?このプレッシャーはっ!?ヘリオポリスから感じるおぞましい気配は!?)

 

彼のルーツによって超能力とも言える先読みを持つクルーゼは、その力で今までの戦いを生き抜いてきた。

しかし、彼は訳も解らない冷や汗に彼の人生で初めて、恐怖を感じていた。

世界に半ば憎悪し、狂気に捕らわれている筈のクルーゼが、である。

もし、それがザフトにしろ、連合軍にしろ、どちらにとっても良い意味でも悪い意味でも最強のパイロットと呼ばれる化け物がいる、と解ればクルーゼはヘリオポリスを崩壊させてからGを奪取しただろう。

まあ、クルーゼにそんな力があれば先の戦いで既に【エンデュミオンの鷹】を墜としていただろうし、そもそもこんな回りくどい事はしないかもしれない。

しかし、結局それはタラレバの話で、クルーゼは不安を抱えつつも愛機を損傷させられて本調子ではない、ミゲル・アイマンをヴェサリウスの護衛に付けさせる事で不安を少しでも払おうとした。

幸か不幸か、その用心深さで本来死ぬ定めだったミゲルは生き残ることになる。

それが彼をどう成長させるかはまだわからない。

だがしかし、根本的な問題は解決できなかった事は確かであった。

アムロ・レイという、一人の少年を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーそして時と場所は戻り……

 

「くっ、来るなぁぁぁ!!」

 

ストライクは腕を交差させて相手のジンの攻撃を防御していた。

OSの書き換えはストライクを防御姿勢にさせている間になんとかマトモに動けるようにはなった。

僕としては、武器がアーマーシュナイダーとバルカンしかないので、今はPS装甲という物理攻撃を無効化できる装甲で何とかなっているが……

 

「このままじゃやられる…!」

 

先程からの攻撃の衝撃で、席の後ろにいた女性は気絶しているし、そうなると僕しかコレを動かせないということになるが………

 

「このままされるがままにされるか!」

 

自分を激励を入れてバルカンをジンに当てる。

が、流石にバルカン程度で壊れる装甲はしていない。

でなきゃ、連合軍が地球の一部を奪われるなんていう失態など、起こさない筈だ。

 

「やるしかない……やるしかないんだ!」

 

もう、バルカン以外にはアーマーシュナイダーしかない。

ナイフ一本でどうすればいいんだと、開発者に文句を言いたいがPS装甲があるのなら……!

 

「うおおおおお!!」

 

突然、アーマーシュナイダーを突き出したことに驚くジンだが、やはりというか、僕の攻撃はアッサリと処理される。

 

「へへへ……コイツ、怯えていやがる……!」

 

「やっぱりリーチが短すぎる……!」

 

素人丸出しの様子に、相手は慢心したのだろうか。

このときの僕は必死だったからあまり覚えていない。

けど、その時に脳裏に浮かんだ光景は忘れられない。

 

緑の巨人が白い巨人の輝く剣によって貫かれていた光景が。

 

ジンが大振りに重斬刀を振り上げてきた。

がら空きの胴体に、僕はアーマーシュナイダーを突き刺す。

 

「たああぁぁっ!」

 

「なっ!?」

 

アーマーシュナイダーはコクピットに寸分違わずに、突き刺さった。

その光景は、奇しくも脳裏に浮かんだあの光景と同じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何!?ジーンが殺られた!?クッ!俺が残りのGを捕獲する!」

 

「デニム!……チッ、まさかナチュラルにジーンが殺られる等と……!!」

 

一方、ストライクと対峙していたジンのパイロット、ジーンの戦死を伝えられたデニムはストライクを捕獲するためにヘリオポリスにへと戻った。

その様子を、【デュエル】を操るイザークは友を失ったデニムに同情しつつも、コーディネーターがナチュラルの駆るモビルスーツによって撃破された事実を、信じられないでいた。

 

「イザーク、仇討ちは後でできる。今は……」

 

イザークが任務を放り出して行きそうな雰囲気を感じた【バスター】に乗るディアッカは、イザークをいさめる。

 

「解っている!」

 

それに軽く苛つきながらも、イザークは声を荒げつつもデュエルをウェサリウスに進路を進める。

 

「デニムさん……」

 

そんな彼らとは裏腹に、【ブリッツ】に乗り込んだニコルはつい先程、ヘリオポリスに戻ったデニムの身を案じるのだった。

そして、【イージス】のコクピットに収まるアスランは先程の出来事を頭の中で何度も再生し、悪夢だと思った。

 

「アムロ……なんでお前があんなところに……」

 

ヘリオポリスにいるのは良かった。

しかし、何故連合軍の軍事施設にアムロがいたのか、現段階のアスランではいくら考えようが答えは出ない。

だが、同時に心のどこかでアムロの無事と再会を喜んでいた。

が、この事は親しい間柄のニコルにしろ、何かとライバル視してくるイザークらには言えない秘密となってしまったことに、アスランは人知れず頭を抱えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして場所は変わりヘリオポリスのとある公園にて、アムロはストライクから降りて仲間たちと無事を喜びあう。

 

『アムロ!』

 

「皆!」

 

皆からの抱擁でもみくちゃにされるアムロだが、それも心地よく感じる程、アムロは精神的に追い詰められていた。

そんな彼らを見つめるのは同じくストライクから降りてきた連合軍の整備服を着た女性。

アムロは改めて彼女を見ると、美人で巨乳であることに色々あって彼女をはっきり見ていなかったのもあって驚く。

が、しかし連合軍の服を着ている時点でトール達の彼女に向ける視線はやや冷たい。

当の本人は致し方なさそうに、ガックリと落ち込む様子を見せるがすぐに気を取り直して自己紹介する。

自分の名はマリュー・ラミアスだ、と。

そしてこんなことになった経緯も含めて現状を彼らに話し、ストライクでG兵器の母艦【アークエンジェル】に向かうことにした。

しかし、戦いはまだ終わらない。

先の戦闘で宇宙港は停泊していた連合軍の艦が爆散して大破、かつ空気が流出しており、被害の規模から現段階で即座に空気の流出を止めることは不可能。

そしてアークエンジェルにやって来たアムロに待っていたのは、ストライクを扱えるから、という理由でストライクやその他のG兵器の部品の回収という、酷い有り様であった。

だが、アムロには拒否権はない。

軍事機密を動かし、そしてヘリオポリスの空気が無くなりつつある今、アムロは言われるがままにしか動けなかったのだから。

 

そして、更なる敵がアムロのすぐ間近に迫ってきていた………

 

 




尚、我輩は手癖が悪くて時折、いやしょっちゅうつまらんコメディ要素を本編内に入れるかも。
そういうのが無理だ、という方にはとても申し訳ないですが、なるべくないよう努力するので許して!(土下座)

運命によって少年はガンダムに導かれた。
ガンダムを駆るアムロ少年は、迫り来る脅威に立ち向かうことができるか!?

次回、【ストライク】!
まだ見ぬ明日へ跳べ、ガンダム!







後、なんか思い付いた茶番小話。

【機動戦士ガンダムTBより】

イオ「俺があんな義足野郎に負けるなんて……!」

ダリル(ダース・ベイダー)「……シュー…コー……」

イオ「は?」

ダリル「…………シュー…コー」

イオ「出てくる作品間違えてるだろ?」

ダリル「不本意だが、俺もそう思う………」

カーラ「テヘペロ♪」

イオ&ダリル「フジャケルナァァァ!!」

作者「」



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ep3 ストライク

評価バーに短くとも赤が付いて歓喜したぜぃ…!
ありがとうございます!!

ちなみにこの作品ではコーディとナチュラルのOSの違いは、熟練度や原作でも言及されたように才能による違いでOSの設定が全く違う、という設定です。
簡単に言うならコーディ用のOSでも、十数年くらいシミュレーターしてればナチュラルでも扱えるよ!って感じです。
いい感じの例を挙げるとすれば、ポケ戦のクリスとNT-1みたいなもんです。



現在、アムロはストライクを動かしてG計画に関する兵器や武装を回収する作業を淡々と行っていた。

時間にあまり余裕はないが、しかし軍事機密を守り、回収するのは軍人として当たり前の事である。

しかし、アムロは軍人でもない自分に命令してきた短い黒髪の女性、ナタル・バジルールへの第一印象はとにかく悪印象であった。

実際、口にはしないが内心では愚痴や陰口を叩いており、一時は爪を噛んでいたが仲間をアークエンジェルに保護してもらうためにもするしかなかった。

 

「これがランチャーストライカー……マニュアルだとアグニを使えるのか……こんなのコロニーじゃ使えないぞ」

 

連合軍はこんなのもモビルスーツに引っ付けようとしているのか、とアムロは若干呆れ返る。

OSでさえ本当に真面目に作ったのかと疑うくらいデタラメな数値を設定されていたのに、こんな強力な武器があっても当てられなければ意味はないのだ。

威嚇や牽制にはなるだろうが………

 

「ハロ、アップデートはどうだい?」

 

「ジュンチョウ!ジュンチョウ!」

 

簡易的ながらも人工AIを搭載したハロに手伝ってもらい、現在進行形でストライクのOSのアップデートが行われていた。

とはいえ、そのOSはアムロに合わせたものになるのでナチュラル全般が動かすには少し癖が強いだろう。

しかし、原作のようにコーディネーター用のOSを更に改造したキラ専用のOSよりは格別にマシである。

 

 

 

 

 

それはさておき、ランチャーストライカーやらGが運用予定だった試作のバズーカ等を作業用の輸送エレベーターに乗せて、壁の奥に潜むアークエンジェルに送る。

コロニー内の空気がもう薄くなりつつある為、作業員が出るには宇宙服を着用しなければならないし、かといってまだ空気の流出による暴風はアムロがストライクから降りればあっという間に宇宙空間に放り出されるだろう。

次第に動きが良くなっているストライクはテキパキと輸送コンテナやら兵器を運ぶ。

が、流石にそこまで猶予を与えてくれる筈はなかった。

コクピット内に、ロックオンアラートが鳴る。

 

「敵が来たのか!?」

 

バッテリーで動くストライクは一度アークエンジェルで充電してもらっているが、如何せん武装はバルカン……ではなくイーゲルシュテルンとアーマーシュナイダーのみ。

残弾少ない豆鉄砲とリーチの短いナイフ二本で素人にどうしろというのだ、とアムロしかり整備長のマードックや他の先の爆発で生き残った大人たちも渋い顔をする。

しかし、本来の艦長であるパオロは重傷を負い、その場で一番階級が高いのは技術士官のマリュー。

外での戦いの結果、アークエンジェルにやって来たエンデュミオンの鷹ことムウ・ラ・フラガはパイロットとして出る為、指揮系統に混乱が起きていた。

故に、結局ナタルの命令を受けるしかなかったアムロらはバッテリーの充電だけでこうして輸送作業を行っていた。

故に、念のために手元に置いていたストライカーパックを装着する必要がない武装をストライクの手に取らせる。

 

「見つけたぁ!!」

 

「ジンか!」

 

両者、共にモニター越しに敵を見つける。

ジンはマシンガンを発砲し、アムロはストライクに持たせた【試作大口径ガトリングガン】をジンに向けて撃つ。

ジンが空から来たこともあって、躊躇なくアムロはガトリングガンをブッ放した。

 

ーガガガガガガガガガッ!!!!!

 

「ヌオッ!?ガトリングガンかぁっ!?」

 

「うわぁっ!?しょ、衝撃がッ!?」

 

ガトリングガンの弾丸の嵐は、ジンを後退させる事に成功するもダメージは与えられず、しかもストライクのリコイル調整機能がまだ未完成なのもあってガトリングガンの銃口はとにかくブレる。

これがビーム兵器ならば無反動のため、ガトリングガンの射撃の反動でコクピットがシェイクにされることはなかったが、まあもう過去の事である。

ハロがしっかり調整したので、次はしっかり狙えば初弾くらいは外すことはないが、シェイクされたアムロはそれどころではない。

吐き気がアムロを襲い、思わずストライクの手からガトリングガンを手放せてしまった。

軽くトラウマを植え付けられたアムロだが、そんなアムロにジンを駆るデニムがそれを好機と判断して攻撃を仕掛ける。

 

「ジーンの仇ィィ!」

 

ジンの重斬刀が呆けたように立つストライクに力強く振り下ろされる。

が、デニムは頭に血が登り過ぎていて忘れていた。

ストライク、いやG兵器にはPS装甲があるということを。

ギィンッ!という大きな音と共に重斬刀は弾かれた。

 

「何だと!?」

 

「っ!そこだ!」

 

致命的な隙を晒してしまったデニムのジンは、ストライクのタックルを真正面から受けてしまう。

 

「ウガァァッ!?」

 

「グウッ!?」

 

ぶつかった衝撃でアムロは体のあちこちをコクピット内の何かしらにぶつけてしまう。

慣れない事をすれば、そうもなるがもっと悲惨なのはデニムだ。

 

「が、があざん……」

 

硬いPS装甲によるタックルは、それよりも硬度が低いジンの装甲で耐えきれる筈がなく、胴体部にくらったダメージは運悪くコクピットにも爆発と火花で影響を与えた。

衝撃で体の感覚が麻痺し、体が焼けている事に気付かないデニムは、母の名を呟きながら意識を閉ざした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デニムも殺られた!?クソッ!」

 

ウェサリウスの護衛をしていたミゲルはジーン、デニム両名の戦死に思わず悪態をつく。

愛用のジンは修理中で、G兵器はPS装甲が展開時は実弾が無効化されるとウェサリウスの整備兵から報告が上がっている。

ビーム兵器であるパルルスならGを撃破することは可能だろうが、如何せん取り回しが悪く大きさの割に出力も高くない。

【黄昏の魔弾】と呼ばれた男がこの有り様か……と自嘲するミゲルは、己の無力感と運の悪さに嘆くしかなかった。

一方、ウェサリウスのモビルスーツハンガーには奪ったG兵器四機がそこに鎮座していた。

 

「デニムさん……っ!!」

 

「嘘だろ!?」

 

「ナチュラルのクセにィィ!!チクショオォォ!!」

 

「…………クッ……」

 

帰還した四人もデニムの戦死に各々の反応をする。

ニコルは懸念していた事が当たり、悲しむ。

ディアッカは何時もの皮肉屋を忘れ、その事実を認められず、イザークに至っては怒りのあまりパイロットスーツが保管されているロッカーを殴り付けて凹ます。

アスランは複雑な心境ながら、仲間の死を悼んだ。

だが、ブリッジでその報告を聞くクルーゼは違った。

外面は少し悔しそうな顔をしているが、その内側には己を存在を消し飛ばしてくれる存在がムウ・ラ・フラガ以外にいることに喜びを感じていた。

 

「一先ず、補給の為に撤退だ。ジンを失い過ぎた。それにミゲルの為にも必要だ」

 

「了解しました」

 

一先ずはこの場を撤退することをクルーゼは決断した。

 

 

 

 

 

 

 

 




少年は人を殺めた実感を持てぬまま、大天使と共にクルーゼ隊を追撃から逃れるため【アルテミスの傘】にへと向かう。
友との戦いの最中、アムロとアスランは何を思うか?

次回、【赤と白の葛藤】!
迫る敵を打ち滅ぼせ!ストライク!



ちなみにナレーション誰がいいっすかね?
マリューさんかブライトさん、どっちでも合うんや……


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ep4 赤と白の葛藤

やっぱり感想でナレーションを永井さん選ぶ人が多いですねぇ!
というか、こんな短期間で感想をもらったのは初めてで嬉しすぎる……っ!!

てな訳で追撃戦です。
どぞ!



 

 

アークエンジェル艦長のパウロは重傷を負いながらも、ブリッジの艦長席に座っていた。

老いた体に鞭を打ってこうして艦長席にいるパウロだが、既にその命が長くないことをパウロは悟っていた。

故に、現在引き継ぎのために彼はこの場にいた。

 

「アムロ・レイ君か……開発を主導していたテム・レイの息子だったな。彼に可愛い一人息子だと彼からよく言われたな……」

 

「そのテム主任は先の宇宙港の攻撃で行方不明……既にコロニー内の空気も無くなっており、避難民の為にも早期にここから離脱する必要があると、小官は愚考します」

 

「うちの護衛艦も落とされたしな……最悪、俺のメビウス・ゼロで全部何とかするしかないな」

 

「ストライクは整備長からメンテナンスを終えて何時でも出撃可能だそうです。しかし、パウロ艦長、子供を本当に乗せるつもりですか!?」

 

しかし、話の進行は遅い。

子供を乗せることに彼らも忌避感を抱いていることにパウロはまだ人類は捨てたものではない、と希望を見出だすが、その先を見れることはないとパウロは悔しく思っていた。

 

「ラミアス大尉、フラガ大尉、バジルール少尉、私は今から君達にこの艦の指揮権を委譲する」

 

「なっ!?」

 

「ワシはもう長くない。ラミアス大尉を艦長に副長をバジルール少尉、戦闘部隊はフラガ大尉が指揮を取ってもらう」

 

「わ、私にはこの艦の指揮など……っ」

 

「パウロ艦長!再考して頂きたい!」

 

「俺は別にそれで構わないけどなぁ?」

 

パウロは各々の反応に、これが若さと言うものなのだろうか、と後を託した彼女らにうっすらと微笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼らとは裏腹に、アムロは父が行方不明であることにテムの生存を祈る。

とはいえ、相手はかの有名なクルーゼ隊。

補給を終えたらすぐに追ってくるだろうと、アークエンジェルは最大速度でヘリオポリスから離脱し、アムロはストライクの整備をマードックらと共に行っていた。

元々、アムロは機械オタクであるため、マードックらとはある程度気が合っていた。

なので、あまり親しい間柄を中々作れなかった原作主人公と違い、アムロはストライクの整備を一段落終えたのでマードックらとストライクの武装について語り合っていた。

 

「坊主、お前さんもか!」

 

「マードックさんも解ってるじゃないですか」

 

「おうおう、やっぱパイルバンカーはPS装甲に有効だよなぁ!」

 

「フム、出力が足りなくとも大幅に電力を削れるパイルバンカー……アラスカに戻ったら作るのも一興か」

 

「馬鹿野郎、以前オメェはそれで却下くらってるだろうが」

 

科学者風な者もいれば、若い軍人らしい鍛えられた体を持った整備兵もいる、中々カオスな空間だった。

何だかんだとありつつ、委譲されたムウらはストライクの足元でワイワイと団欒する彼らに差はあるが驚愕していた。

共通の話題を持てる、というのはやはり良いことなのだろうとムウは気軽に思うが、マリューはアムロ少年の明るい姿を見れて安堵していた。

自分達の戦いに巻き込んでおいて、何様だと言われれば反論はできないが、少なくとも一人の少年くらい心配できないほど、人でなしであるつもりはマリューにはなかった。

一方でナタルはオイル臭さに思わず鼻を摘まんでおり、その空気に日常的に触れて慣れていたマリューやムウと違ってナタルはあまりその場にいないために、充満したオイルの臭いに顔をしかめていた。

ムウは彼らの団欒に水を差す真似を後ろめたく思うが、必要事項でもあるため、彼は彼らに声をかける。

 

「すまん、皆。話がある」

 

そこからは自分達のこれからや指揮権の話など、必要な話をした。

既に正規の軍人は整備兵にしても士官にしても、クルーゼ隊の潜入時の爆弾によって多くが死亡している。

特に本来のGのパイロットが全員死亡したのが痛い。

故に、アムロにストライクを任されるのは必然であった。

子供に戦わせるという、罪悪感が彼らにない訳がない。

しかし、ムウはモビルスーツの操縦は未経験かつ練習もしていない。

他の大人たちにしてもそうだ。

だからこそ、その場でOSを書き換え、戦闘センスを見せてくれたアムロに任せるしかないのだ。

 

「僕が……ガンダムを……」

 

ムウから名指しで呼ばれ、自分達の運命を託された事にアムロは思わずストライクを見上げて現実逃避に入ろうとする。

しかし、そんなゆっくりとしている暇もなかった。

恐れていた出来事が、やって来たのだから。

 

「此方、ブリッジ!後方より、敵影を確認!モビルスーツも展開していますッ!なっ、もうG兵器を出すのか!?」

 

CICからの報告によって軍人たちはあわだたしく動き始める。

アムロはムウに連れられてパイロットスーツがある部屋にへと連れて来られた。

 

「アムロ、俺も乗れるならストライクに乗ってやりたいさ。だが、今はお前しか頼れない。すまないが、頼む。お前の友達を守るためにも」

 

ムウは内心、卑怯な奴だと自虐する。

例え事実だとしても、子供に戦争させるなんていい大人がすることではない。

しかし、アムロは連合軍の青と白で構成されたパイロットスーツにどこか妙に慣れた感じで着替えると、アムロは答える。

 

「……解りました。僕がやるしかないんでしょう?」

 

「……あんま生意気にしていると、墜とされるぞ?」

 

生意気気味に応えたアムロに軽口を叩きながらムウもまた、着替え終えてアムロを追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いの場は戦争序盤に起きた一週間戦争とも呼ばれる、義勇兵組織【ザフト】の開発したモビルスーツ、ジンによって大敗を喫した連合軍の艦隊の残骸やザフトのガモフ級等の戦艦が漂うデブリ帯だった。

とはいえ、その戦場跡よりは遠く、一部がここに流れてきただけだがアークエンジェルが速度を落とせざるをえない状況でもあった。

そのため、アークエンジェルに追い付ける足を持つナスカ級は追い付けたのだろう。

しかし、軍事衛星【アルテミス】まではあと少しである。

追いかけっこがここで終わるか、続くか。

その二択がアークエンジェルの面々にはつきつけられていた。

 

「メビウス・ゼロ、発進どうぞ!」

 

管制担当のボランティアによって選ばれたミリアリア・ハウは、初めての作業に緊張しながらもしっかりと行っていた。

簡単な仕事、というのもあるがやはり可愛らしい外見に反して、肝が座っている彼女だからこそ成せる業なのかもしれない。

 

「ムウ・ラ・フラガ、メビウス・ゼロで出るぞ!」

 

メビウス・ゼロはスラスターを点火してアークエンジェルの足の部分から飛び出る。

既にG兵器はイージスとブリッツがアークエンジェルの近くまでに近付いてきている為、ムウはすぐさまゼロの主武装とも言えるガンバレルを展開する。

アークエンジェルもそれと同時に弾幕を張り始める。

ザフトからは足付きと呼ばれているアークエンジェルは、現在の連合軍の宇宙戦艦の中では最速の戦艦、かつモビルスーツ運用を前提とし、武装も豊かだ。

ミラージュコロイドでステルスしていたブリッツもあまりの弾幕の厚さにステルスを止めてしまっていた。

ブリッツのミラージュコロイドはほとんど目視でも見えないステルス能力を持つが、バッテリーの容量等の問題でPS装甲と同時展開はできない。

その特性を理解しているマリューによる指示でブリッツの奇襲を避けれたブリッジの面々は安堵する。

マリューとしては複雑ながらも、今回ばかりはブリッツの性能に感謝していた。

 

「くっ……!すみません、アスラン。弾幕が厚くて潜り込めません…」

 

「いや、仕方がないさニコル。元々あっちで作られた機体だ。それくらいはしてくるさ。だからこそ、ゼロを落とすぞ!」

 

「了解です!」

 

アスランらは切り替えてムウを狙い始める。

アスランの懸念はストライクの存在だが、アムロは軍人ではないため、ストライクに乗ることはない……そう思い込んでいた。

 

「マードックさん!エールストライカーをお願いします!」

 

「解った!エールストライカー、ドッキングする!」

 

ストライクはエールストライカーを装着、武装を輸送アームから受け取り、カタパルトに足を乗せる。

 

「エールストライカー、ドッキングを確認!ストライク、どうぞ!」

 

「イクゾ!アムロ!イクゾ!アムロ!」

 

操縦席の後ろにハロを固定し、ストライクとデータリンクしながらハロはこれから遊びに行くかのようにアムロに話しかけるが、アムロは気にせずカタパルトハッチから覗ける宇宙を見据えて、叫んだ。

 

「アムロ、行きまーす!」

 

「ッ!出てきたか!白いヤツ!」

 

凄まじいGをまだ成長期の体が何とか耐え抜く。

グッ、とだけ声を漏らしたアムロは陰キャだとしてもやはり立派な男の子なのだろう。

相対的に、先行したイージスらに追い付いたデュエルとバスターはストライクの姿を確認すると同時に、ビームライフルでストライクを狙う。

アムロはストライクを蛇行させて回避しようとしたが…………

 

「うわあぁぁっ!?あ、暴れないでくれぇっ!?」

 

基礎プログラムしか入れていないストライクの航宙能力は、直進ならともかく、蛇行や急な動きはすぐにバランスを崩すような有り様である。

その為、まるでかのゴーストファイターのように端から見れば空中分解でもしているのかと思うようなメチャクチャな軌道を描いていた。

 

「なんだアイツ!?ふざけているのか!?」

 

当然、短気なイザークは油断はせずともすぐに沸騰し、ディアッカもコーディネーターとしてのプライドを刺激されて思わずカッとなった。

 

「舐めんなよッ!!」

 

そんな一言と共に【バスター】の徹甲弾の一射がストライクの胸部に被弾する。

とてつもない衝撃でアムロは一瞬、意識を飛ばしたがすぐに戻りお返しとばかりにビームライフルを撃つ。

が、マトモに照準をしていない状態で撃っても当たるはずがなく。

ゲームのようなオートエイムなどはない、現実では一筋の黄緑色のビームは何もない虚空を貫いた。

 

「アイツ、OSが完成していないのに出てきているのか?」

 

「ならば話は早い、ディアッカ!捕獲するぞ!」

 

「了解!」

 

暴れ馬のように飛び回るストライクを追いかけるデュエルとバスター。

しかし、彼らにはタイミングが悪く、アムロにとってはタイミングが良いことにシステムのアップデートが間に合った。

 

「イケ!アムロ!イケ!アムロ!」

 

「これで……っ!」

 

フットペダルを踏み込み、機体を急停止させる。

スラスターノズルのあちこちから蒼い炎が吹き出るが、イザークらには関係無い。

ただ好機が来た、それだけだった。

 

「これでお前もおしまいだ!」

 

デュエルの左腕がストライクのエールストライカーに手を当てた、その瞬間。

 

「イザークッ!!」

 

「は?」

 

ストライクのビームライフルがデュエルの左足の太股を消し飛ばした。

そして急旋回、デュエルの腹にキックを叩き込んだ。

 

「グアアアアァァァ!?」

 

「イザーク!?チィッ!」

 

「もう好きなようにやらせるか!」

 

デュエルは蹴られたまま宇宙をあらぬ方向に吹き飛び、デブリにぶつかる。

その後ろにいたバスターは仕返しにと、散弾を撃つ。

しかし、華麗に動き始めたストライクはソレを回避、ビームライフルで反撃する。

 

「コイツ!?コーディネーターか!?」

 

「モビルスーツなら人じゃないんだ!」

 

この時、アムロの脳裏に浮かぶのはアスランの姿。

ストライクに押し込まれたので、アスランがどの機体に乗ったのかは解らない。

だから、目の前のバスターがアスランが乗っている可能性が無くはない。

だが、ここで死ぬわけにはいかない。

 

「うおおおぉぉぉ………っ!!」

 

アムロが引いた引き金は応え、放たれたビームは的確にバスターの頭部を破壊した。

 

「カメラがやられた!?」

 

「グゥッ…!?」

 

「そ、それで帰る言い訳はつくだろう!?帰っちまえよ!」

 

アムロは怯えた。

明確に意識した状態で、人を殺すことに恐怖を感じた。

故に、アムロはコクピットを撃てる筈がなかった。

 

「はぁっ……はぁっ……!」

 

無意識に止めていた呼吸による息切れがアムロを襲う。

しかし、まだ戦いは終わらない。

今もなお、戦況は劣勢であるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わり……………

アムロがGを二機、撃退した後、ムウのメビウス・ゼロは加勢してきたジン三機を撃破したが、ガンバレルが実弾である以上、Gには効果は薄く、バッテリー切れを早めるだけにしか至らない。

そして腐ってもクルーゼ隊の一人。

アスランとニコルはガンバレルの攻撃を回避に専念することで、なんとかバッテリー切れを引き起こさずにいた。

そこに、最後の一手。

 

「待たせたな!後は俺がやる!」

 

オレンジに染められたジンハイマニューバを駆る黄昏の魔弾が、ムウの前に現れたのだ。

 

「おいおい、嘘だろッ!?」

 

ムウの疲労は既に限界に近い。

もう駄目か、そう諦めの境地に入りかけた時、一筋の閃光がブリッツに迫る………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスランはまだ、悩んでいた。

友を討つか、それとも友が守っているその友が乗る艦を討つか。

どのみち、アスランはアムロが乗るストライクを討つことはできなかった。

特に理由もない、思い込みではあるものの、しかし現実は小説よりも奇である。

もし、ゆっくり考える暇があれば理由に彼が機械オタクだから、という真面目に聞く側にとってはお冠な理由である。

まあ実際、アムロは乗っている。

そしてあの時のストライクならば出撃したとき、モビルアーマー形態でアムロを捕まえる事など簡単であった。

しかし、捕まえてもアムロはナチュラル。

ああも簡単に動かしていているが、アムロはナチュラルなのだ。

もし、アムロがプラントに来ても周囲のコーディネーターたちはいい目をしないだろう。

ナチュラルによって殺された家族や友人が多くいるのだ。

あの【血のバレンタイン】がなければ、コーディネーターがナチュラルを必要以上に憎む事もなかったかもしれない。

しかし、どのみち悲劇は起こるべくして起きたのだろう。

母を血のバレンタインで殺されたアスランは、連合軍に怒りはある。

だが、ナチュラル全員か?と聞かれればNOとアスランは答えるだろう。

そもそも、アスランは誰かの影響を受けやすい。

悪く言えば周囲に流されやすい人格なのだ。

故に、アスランはアムロを憎めず、そして救いたいと思ってしまっている。

その想いも、考えも秘めたままである今のままでは、どうすることもできないというのに………

 

 

 




5700文字を越えた……!
というのもちょっとこのあとの展開で、二つの展開があるんですが、したい展開を可能にするためにとある方と交渉中(?)なのです。
オリジナル考えてもどうも似てしまうしね………個人的にその機体が好きと言うのもありますが。

最悪、一ヶ月とか空くかもしれませんが結論がつき次第、投稿を再開するのでしばしお待ちくださるとありがたいです。
書き溜めしないと……
感想、良かったらよろしくです!
では次回予告。




二人の少年の葛藤に世界はそれを無視する。
一人は友を討つことを恐れ、無力感を感じ、もう一人は戦争と言う現実に恐怖し、だが戦い続けるしかない。
そして、一筋の閃光が戦況を変える……!

次回、【バレットライン】!
戦いは峠を越え、終わりを迎える。
死線を越えろ、ガンダム達よ!



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ep5 バレットライン

前回の後書きは一応、交渉先のお方の事も考えての予防線だったので怒らないで下さいっ!
ああっ!?物を投げないで!ハロを投げないで!アークスターも投げないで!ケツが焼けるぅっ!?


……お借りした機体は………鼠、と言えば知る人なら解るかな?



ムウを救う光は、ブリッツを確実に捉えた。

 

「グワアアァァァッ!?」

 

「ニコルッ!?」

 

ブリッツのコクピット内ではバゴォンッ!!と、耳鳴りがするほど大きい音が起きていた。

そして凄まじい衝撃だったのか、ブリッツは派手に吹き飛ばされている。

同時にブリッツのPS装甲はダウンして、灰色の本来の姿を顕にする。

 

「い、一撃でフェイズシフトダウン!?レールガンにしては強力過ぎでしょう!?」

 

「ニコル!無事か!?」

 

「なんとか!バッテリー切れの前に帰還します!」

 

「解った!後は黄昏の魔弾様に任せておけ!」

 

ミゲルは戦闘不可能なニコルを下がらせ、先程の狙撃を行ったアルテミスがある方角にジンハイマニューバのモノアイを向かわせる。

 

「あれほどの威力、そうそう連射はできまい…!」

 

そのミゲルの予想は正しく、アルテミスの傘の内側にてその狙撃者はいた。

 

 

 

 

 

「チッ、PS装甲なんていう厄介なモン作りやがったの誰だい!」

 

「それ言ったらウチらが戦犯じゃねぇかよ、姉貴」

 

「ウッサイわね!アンタはさっさと救援に行きな!」

 

「オーケーオーケー!最大加速だぜ!」

 

褐色肌の黒人女性は弟の大音量の声量に怒鳴り返し、当の弟は推力を大幅にカスタムされた機体でアークエンジェルが戦闘している宙域に向かう。

一方で、黒人女性……アジェ・アイルンは一息つくためにヘルメットを外し、手入れをかかさないためか綺麗に輝く黒髪が無重力に投げ出される。

 

「性能としてはまさにテスト。対PSスナイパーレールガンを一発撃つだけで右腕がイカれるなんてね。まあ試作量産モビルスーツにそこまで要求するのは高望みね」

 

アルテミスの基地の一角にて、白と灰色で構成されたモビルスーツがイカツイ右腕から火花を散らしながら抱えていた対物スナイパーライフルを巨大化させたかのようなレールガンを抱えたその機体の名は【テスター】。

アジェの機体は今回の武装のためだけにカスタムされた機体である。

 

「さぁて、後は待つだけだねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの方角は……アルテミスからか!」

 

救いの光によって助けられたムウは思わず喜びの声をあげる。

アークエンジェルの面々も味方の救援に暗い空気が明るくなる。

 

「よお!待たせたな!此方はアルテミス所属、マウス隊だ!」

 

「あれは……テスター!」

 

「た、助かったのか?俺達……?」

 

張りつめていたものが抜け、アークエンジェルの面々は脱力する。

が、その直後にウェサリウスからの砲撃によってすぐさま気を引き締める。

 

「スレッジハマー、発射準備完了です!」

 

「てぇぇーっ!」

 

お返しにと、アークエンジェルもミサイルを撃つ。

そんな様に、アムロは圧巻されていた。

 

「み、短かったけどこんなに長く感じたのは初めてだよ……」

 

「アムロ!ユダン!キンモツ!」

 

ハロはそんなアムロに忠告するが、既に勝敗は定まったようなもので、アムロは帰還するのみだけであった。

 

 

 

二個小隊によるMS試験運用部隊【マウス隊】。

常にOSや武装のアップデートが行われるこの部隊では、一人一人の癖が強い反面、その腕は確かなものである。

 

「ヒャッホーイ!俺についてこれるかな!?」

 

アジェの弟、オクトルはブースターやスラスター、プロペラントタンクを増設した【空間高機動型テスター】。

武装はAK-47をモチーフにしたマシンガン、ヒートナタを二本、腰部に懸架し後のストライクダガーが用いるシールドのプロトタイプを装備する。

 

「オラオラ!とっととやられな!」

 

「なんだこのデタラメなスピードはっ!?」

 

アークエンジェルへ攻撃を仕掛けていたジンの一機が、オクトルに張りつかれてしまい相手を見失う。

 

「っ!アイン!逃げろ!」

 

ミゲルはジンの真上から来ることに気付き、彼に伝えるも遅かった。

 

「う、うえk」

 

ーダダダダンッ!!

 

上を向いたジンにテスターは軽く引き金を引き、四発の弾丸がコクピットを穿つ。

 

「ヘヘッ、遅すぎるぜぇ?」

 

「コイツら、手慣れた部隊かっ!?」

 

ミゲルはテスターのパイロットを経験済みのコーディネーターと推察するが、オクトルはナチュラルである。

ジンを落としたオクトルは仲間に突撃の合図を出し、遅れてやってきたテスターたちも攻撃を開始していく。

 

「黄昏の魔弾か!ここで死合えるとは!」

 

「コイツはエースか!?なら!」

 

ミゲルの前に現れた黒と白のカラーリングに染められたテスターは、両手に保持させているビームサーベルを抜刀。

急加速してミゲルのジンハイマニューバとぶつかり合う。

スラスター出力を彼好みに調整されたジンハイマニューバだが、テスターはそれ以上の推力を持つようで、ミゲルは押され気味だ。

 

「対ビームコーティングした重斬刀があるんだ!やれるさ!」

 

「フハハハ!流石と言っておこうか!」

 

【近接特化型テスター type-β】……それがこの黒いテスターの名前であり、主であるハム・タンローグの愛機であった。

武装は頭部に増設されたバルカンポッド、肩に設置された試作ショットキャノン、専用増設バックパックに供給ケーブルが接続されたビームサーベル二本。

飛び道具は最低限だが、しかし初見殺しと格闘戦に特化させたこのテスターはパイロットの技量次第でXナンバーを撃破可能なステータスを持つ。

実際、ミゲルがその身をもってアスランに教えてくれた。

何回もサーベルと剣が打ち合い、しかしムウもアスランも手を出せない中、遂に決着が着く。

 

「フッ…私としてはこのまま剣での戦いで決着を着けたいが、戦争なのでな!悪いがご退場願おう!」

 

「な、何をぉっ!!」

 

敢えて、オープン回線でミゲルを煽るような言葉を吐く。

ここまで焦らされるようにギリギリを切りあっていた二人だが、煽りによって冷静さを欠いたミゲルは次の瞬間、ミンチになることなど予想もつかないだろう。

 

「さらばだっ!」

 

近付いてきたジンハイマニューバに、ハムは更に煽るようにビームサーベルを放り出し、四肢を宇宙に投げ出す。

突然のそれに困惑したミゲルは、思わず動きを止め、ハムはショットキャノンを連射する。

オレンジのジンハイマニューバは火薬を増やした散弾によってドンドン穴が空いていき、そしてジンハイマニューバは沈黙するのだった。

アスランは絶叫する。

 

「ミゲルゥゥゥゥ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

機体紹介

 

【空間高機動型テスター】

武装)マシンガン、ヒートナタ、プロトタイプシールド

 

開発コンセプトは「宇宙空間での高機動特化」。

マウス隊のテスターは試験部隊という特性もあって、各所が改造されており、パイロットの特性に合うようにカスタムされており、オクトルに合わせた機体がこのテスターである。

機体各所に機体制御装置スラスターであるバーニアや、スラスターユニットの強化&増設をされている。

試作兵器にヒートナタを二本装備。

これにより、実体剣の中では最高位の武器となるが生産に希金属を用いる為、生産コストは高いので量産は少数生産に留まる。

欠点もそれを助長しており、赤熱化させると電力をビームサーベルよりも消費し、尚且つビームサーベル程コンパクトではないので邪魔になりやすいのがネックになっている。

増加スラスターユニットのイメージとしてはスタークジェガン。

 

 

 

【近接特化型テスター type-β】

武装)バルカン・ポッド、ショットキャノン、ビームサーベル

 

開発コンセプトは「高い機動性による強襲攻撃」

ハム・タンローグに合うようにカスタムされた、近接戦闘に特化した機体。

ビームサーベルを主兵装とし、二本流による圧倒的な格闘能力で敵を撃破する。

試作されたショットキャノンは、ビームサーベルだけでは手数が足りないと懸念して、試験的に装着されたショットガンをキャノンのように引っ付けた物。

射角はないに等しいが、ショットガン由来の至近距離での攻撃力はとても高く、ジンの装甲を一撃で砕くことができる。

テスターは本来、ジンと同じくビーム兵器を携行できないが増設したサブバッテリーを搭載した専用のバックパックに供給ケーブルと接続してビームサーベルの使用を可能にしている。

同時に機体重量の増加による推力の低下を補うために、バックパックにはザフトが試作して放置している【土星エンジン】を連合が独自に製作されたものを積載している。

限界を超えるとテスターでは空中分解するのでリミッターが強く掛けられており、自爆コードを入力しなければ起動できない仕掛けになっている。

後に、このデータを元にエースパイロット向けに作られたストライカーパックが開発される。

 

 

【試験テスター】

武装)対PSレールガン

 

対PS装甲レールガンを撃つためだけに右腕を大規模改造した名もなきテスター。

結局、基地から電力を供給さた対物スナイパーライフルに模したレールガンを出力最大で撃ち、テスターでは耐えきれずオーバーホール確定になった。

右腕がイカツイ以外は特に変更点はない。

 

 

 




はい!お借りしたのはUMA大佐の【機動戦士ガンダムSEED パトリックの野望】より、テスターでございました!
マウス隊の名前や改造等の許可も頂けて感謝が絶えない……っ!
続けられるよう精進しないと…!
それと後書きの前に機体解説を書いたのは後書きに書くと長いし、萎える方もいるかと思い、本文に入れました。
アムロがフェードアウトしている?
今回はテスターに活躍させて下さいよ……痛い痛い!?
だからハロとかナックルクラスター投げないで!?
では、次回予告……




ピンチのムウを救った光はアルテミスからの狙撃だった。
黄昏は討たれ、またもや敗北したクルーゼ隊は体勢を整える為に撤退する。
更なる増援を要請するクルーゼは何を思うか?
そして、本来の道から外れたアルテミスに待つ男の影………

次回、【到来する寒き時代】!

あらゆる可能性を進め!テスター!




そして思い付いたつまらん茶番劇を初投稿。

【ガンダムOOファーストシーズンより】

刹那「砲撃!?どこから!?」

???「助けに来たぞ、少年よ」

刹那「ガン……ダム……!?」

スペガン「私の名はスペリオルガンダム。まあ、強いて簡単に言えばガンダムの神様だ」

刹那「俺の神は………ガンダムは……ガンダァァァム!!」(歓喜)

CB一同「いや、まるで意味が解らねぇ!?」

黄金大使「いや、あの、私の出番なんですが……」

リボンズ「DO☆N☆MA☆I」

黄金大使「おのれリボンズゥゥ!」バンッ!

ードカーン!

スペガン「これで悪は滅び去った……」

刹那「ガンダムガンダムガンダムガンダムガンダム…」

ロックオン「刹那ぁー!?正気に戻れぇぇ!?」



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ep6 到来する寒き時代

遅れましたが誤字報告ありがとうございます!
まだまだ脇が甘いですねぇ………
というか前回のを見直したらやっぱり酷い有り様だぁw
特に最後の茶番なんてミンチよりひどいや。

尚、マウス隊の登場によってアルテミスの司令とか色々宇宙世紀と若干混ざってます。まあ、しなくとも元々混ぜるの前提な物語だったけど。
とはいえ、原作から大きく離れる事はしないので、あくまでC.E.が主体です。

ちなみにマウス隊には試験運用部隊と面と、とある面も合わせ持つ部隊です。
ヒントは……外伝作品のとある連邦の部隊ですね。
コアな人なら読んでいるうちに解るかも。



 

 

 

「貴殿らはタイミングが良いな」

 

アークエンジェルはアルテミスに招かれ、マリュー達は司令との対面になった。

ムウも珍しく緊張した面持ちで司令代行を見る。

 

「本来ならば、大西洋連邦の管轄ではないこの基地に来るのは愚策だ。物資もある程度揃っているのだから、アークエンジェルは大気圏を越えられるその性能で直接アラスカに辿り着くべきだった」

 

そう、冷酷に話す司令にマリューは思わず反論をする。

 

「し、しかし、避難民を乗せておりましたし、残りのGをクルーゼ隊に奪われる訳にもいかず………」

 

そんな彼女の言い訳を「まあ、それは過ぎた事だ。気にするな」と切り捨て、彼は告げる。

 

「アークエンジェルには物資の補給が完了次第、アラスカに降りてもらう。これは決定事項だ」

 

それに流石に、とナタルはそれに反論する。

 

「なっ!?せめて避難民を下ろさせて下さい!ワッケイン司令!」

 

そう、彼はワッケイン少佐。

マウス隊の直属の上司であり、連合内でも頭は固いが有能という評価で通っている連合内では珍しく有能な佐官である。

そして、彼にはもうひとつの面もあるのだが……それは後としておこう。

 

「我々も余裕がないのだよ。前司令が少々、お痛が過ぎたので後方送りになってな。恐らく二度と復帰できまいが、それでも彼の配下だった者達の統一がまだなのでな。そちらに引きさく人員が足らん」

 

「それでは、一体どうすると…っ!?」

 

「今の有り様ではクルーゼ隊の襲撃の対応はままならんだろう。マウス隊も一部はオーバーホールだ。戦力が低下している時点で聡明な諸君らならば、どうするべきか解るだろう?」

 

その問いに、マリューは答える。

 

「つまり……出ていけと」

 

「勿論、先程も言った通り物資の補給はさせる。しかし、民間人の保護は現段階では厳しい」

 

「………了解しました」

 

マリューは渋々ながら、承諾した。

彼の言っている事は正しく、今も小さいが銃声が聞こえる。

ここらは既に安全が確保されているから通されているのだろうが、それでもここに来る道中にあった生々しい血痕や死体袋はその激しさを物語っていた。

そこまで目に見える証拠があれば、流石に無理は言えない。

道中を見てきたムウは苦々しい顔だが、しかしワッケインの最低限の配慮に感謝をする。

そうして、退室する間際になってワッケインはあまりマリューたちにとって、触れられたくない事を口に出した。

 

「ああ、そうだ。ストライクのパイロットを呼んできてくれないかね?彼は民間人でありながら、コーディネーターに勝ったと聞いてね。彼を見ておきたい」

 

「っ…………了解です」

 

「では下がってくれ」

 

退室するマリューらを見届けたワッケインは、隣に立つ己の信頼できる部下、アジェに声をかける。

 

「彼女たちを、どう見る?アジェ少尉」

 

その問いにアジェは上官に砕けた口調で話す。

 

「少なくとも、エンデュミオンの鷹以外はまさに垢抜けない軍人って感じね。まあ、元々後方でG兵器作るだけの任務だっただろうし、そりゃ当たり前なんだろうけどさ」

 

そんなアジェに、ワッケインは溜め息をつきながら毎度恒例の注意をする。

 

「アジェ少尉、何度も言っているが上官には敬意を払えと……」

 

「解ってるさ。実際、公の場所じゃちゃーんと敬語だろう?ダーリン?」

 

ダーリン、と呼ばれて気恥ずかしくなるワッケイン。

丸っきり童貞感を出している彼に、実のところアジェは確かに惹かれている………が、それを自覚するのはまだ先の話だ。

ワッケインはワッケインで、年甲斐もなく「まだ恋人でもないだろう……」とか細く文句を垂れる。

というかその険しい顔を若干赤らめているというホモしか得しない状況であった。

こんなことがよく部隊内で起きるので、知る人はコーヒーを飲んでたりとっととくっつけと内心では愚痴ってたりするが、当の本人達の問題なので今のところは何とも言えないだろう。

そう微妙な空気になっていた彼らだが、扉の向こうからアムロを連れてきた旨を伝えてきた。

空気をスッパリと切り替えた所は流石は軍人というべきか。

甘い空間はすぐに軍隊らしい冷たい空気に変わった。

 

「入りたまえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの戦闘の後、僕はハロを置いてきたことも忘れて睡眠を貪っていた。

初めて、自分の意思で人を殺そうとした時、僕は撃てなかった。

討つことができなかった。

それに安堵している自分もいれば、もう一人の僕は倒せよ!と怒っている。

 

「もう………戦いたくない………っ」

 

それが許されないのは理解している。

だから、きっとまた敵が、ザフトが来ればまた僕はガンダムに乗ってアスランと戦うだろう。

もしかしたら、マウス隊と名乗っていたあの人たちに殺られるかもしれない………そう思うと、僕は身震いが止まらなくなる。

戦わなきゃいけない。

でなきゃ、僕もアスランも死んでしまうかもしれない。

 

 

 

 

 

 

そして、夢を見た。

それはとても鮮烈で、でもどこか僕はその人に憧れを抱いていた。

 

«貴様の腕で勝ったのではない。モビルスーツの性能のお陰であることを、忘れるなっ!»

 

蒼い、巨大な星が僕にそう告げた。

解らない。

何故、僕はあの人を憧れるのか。

どうして僕はコクピットの中にいるのか。

そして、乗っているモビルスーツの名前が【ガンダム】であることを知っているのか…………

解らないことだらけだ。

でも、一つ解った。

 

«僕は……僕はあの人に勝ちたい………!»

 

その人に強い憧憬を抱いていた。

男として、戦士として。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢から戻り、僕に待っていたのはアルテミスの司令代行との面談。

民間人の僕に何のようなのだろうか、と疑問に思いながらも、綺麗に掃除されていた廊下を無重力の中で進む。

時折、大きな、人が一人くらい入りそうな大きな袋があったがせわしなく動く軍人の人達によって片付けられていた。

何だかよくわからないが、気にしても意味はないのでワッケインさんの所へと向かった。

 

「入りたまえ」

 

そんな声に誘われるように入れば、冷酷そうな男性が一人、そしてその人に寄り添うように黒人の女性がいた。

話はワッケインさんから切り出された。

 

「君はG兵器の一つ、ストライクのパイロットをしていた。違うか?」

 

嘘をついても意味はないだろう。

というかつく理由もない。

 

「はい」

 

迷いもなく、答えた。

 

「フム………君が……」

 

考え込むワッケインさん。

そんな彼を誘うようにしている隣の女性はいないものとする。

 

「アムロ・レイ君、君は今から少尉としてストライクのパイロットをしてもらう。既にその為の物は用意してある。受け取りたまえ」

 

「……え?」

 

意味がわからない。

たかが一人の子供に機密を任せるなど、正気の沙汰じゃない。

でも、彼は僕に軍人である証明書と除隊届の書類を僕の目の前に置いた。

 

「私とて子供に機密を預けて戦わせたい等とは思わん。しかし、軍人としては君をそうしなければならない。許してほしいとは言わない。ストライクのパイロットを辞める時が来たならば、いや、戦うことが嫌になればそれをつきつければいい。ここではできないが、後々、第八艦隊が君達アークエンジェルの補給のために来るだろう。その時に降りるのも良いだろう」

 

「………随分と優しくしてくださるんですね」

 

「余裕がなければ私は君とこうして会って、それを渡すことなど無かっただろうな。それに個人としてはこれからも君にはストライクのパイロットとして、戦ってほしいとも思っている。優しい等とはほど遠い人間だよ、私は」

 

その言葉に嘘はない……そう思った。

置かれた書類を受けとる。

今の僕には戦うことしかできない。

ならば、それをするしかないのだろう。

 

「ありがとうございます」

 

そういって、僕は退室した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アムロとの短い面談から数時間後。

パオロ元艦長が死亡した。

そう聞かされた時、ワッケインは隣に立つアジェに呟くように問う。

 

「ザフトとの戦いがまだまだ困難を極めるという時、我々は学ぶべき人々を次々と失っていく。寒い時代だと思わんか?」

 

それに対し、アジェは答える。

 

「確かに寒い時代よね。でも、いつか暖かい時代が来る。そう期待した方が良いと、アタシは思うよ」

 

その答えに、ワッケインは満足そうに言う。

 

「確かに、その心掛けが一番良いだろうな………」

 

ワッケインは目を閉じて、アムロ少年の姿を思い出す。

 

「いい目をしていた………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、クルーゼは己を越えるかもしれない存在に内心狂喜乱舞していた。

何なら裸で踊っても良いと思えるくらいに。

優しすぎるあの妬ましい自分を倒しうる少年ではなく、どことも知れぬ強者へと成長する事を確定されたストライクのパイロット。

クルーゼは想像する。

クルーゼを憎悪しながらクルーゼを殺し、そして世界の滅びに絶望する姿を。

親族であるムウなど、もう既に視界にすら入っていない。

ただ、あの時感じた強烈な気配。

自分と言う忌まわしい存在を塗り潰す存在に潰されたい。

最後の扉を開いた後の彼をこの手で殺したい。

憎悪と狂気によってトチ狂った思考は倒錯しつつも、世界の滅びを求める。

それしかこの世界へ復讐する術はないのだから。

 

「クルーゼ、珍しく良いことでもあったのか?」

 

モニターの向こうに映るパトリック・ザラが、何時もと様子が違うからか問い掛けてきた。

コイツもまた、狂気によって動く人間。

クルーゼのいい操り人形である。

故に、心配したような声のパトリックに内心舌打ちしながらも、感情を殺して「いえ、特段何も」と答える。

 

「そうか。しかし、足付きとモビルスーツ一機にここまで苦戦するとはな……クルーゼ、あまり失態を晒してくれるなよ」

 

地上でモビルスーツに全ての役割を任せようとしているバカに言われたくない、そんな考えが頭によぎるが「はい、ザラ議員」とだけ答えて通信を閉じる。

 

「……ククッ…グッ………ッ!」

 

最後の扉への道が一歩進んだ。

愉快な気持ちになるが、間が悪くいつもの発作が起きてクルーゼは顔を苦痛で歪めながらも棚から薬を取り出す。

急激な老化の進行を防ぐ程度にしかならないが、既にこれを飲むしか延命できない今、クルーゼに残された時間は少ない。

 

「せいぜい、地上で強くなってくれたまえよ?ストライクのパイロット君?」

 

破滅願望者の笑みは、どこまでも醜い嘲笑であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミゲルの戦死、捕獲したGの内、二機が損傷。

イザークは脳震盪や激しい打撲以外は無事であったが、クルーゼ隊の面々は重々しい空気だった。

これまで負け知らずだった。

彼らのプライドはズダズダにされた。

敗因を挙げれば、やはりマトモな連携をしなかった事だろう。

コーディネーター特有の才能によるゴリ押し。

ここからどう彼らが成長し、アムロに立ちはだかるか。

これから紡がれる物語に、描かれるだろう。

 

 

そして、アムロは葛藤と戦いへの不安や恐怖によって次第に追い込まれる。

常にギリギリであるアークエンジェルの面々は、生き残れるか。

それは彼らの努力次第だ。

 

次に待つのは砂漠にて牙を研ぐ虎。

アムロの運命は、まだ動き出したばかりだ。

 

 




………正解を書くとレイス隊です。
というか投稿遅れましてすみません。
若干燃え尽きてたので、ゲーム脳になってたんです………APEXが楽しいんだよ……MH:IBが楽しすぎるんだよ!
カービンお帰り!さようなら!ウイングマン!CAR!レプリケーターで会おうね!ランページ?知らない子ですねぇ……
後、導きの地に行ってきたけど、ムフェトヤバすぎぃ!(語彙力消失)
タイトルモンスの勢揃いに興奮しましたよ、私。
フルアダマンαとイシュワルダの刀でジンオウガを殺ってやる……殺ってやるぞぉ!(島田兵)

ちなみにワッケインの将来は自分でも解らん。
原作の様にフラグ立たせて死なせるかもしれんし、黒御禿様の様に唐突にさりげなく死んでるかも。

以下、修正部位。

というかさりげなく次回予告忘れていたw
てな訳でどうぞ。


アムロは進む道を示され、しかし戦いの道が彼に立ちはだかる。
クルーゼは最後の扉を開くべく暗躍し、名も知らぬパイロットの成長を望む。

次回、【歌姫】!

プラントの姫を守れ、イージス!



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ep7 歌姫

時間差による云々でアークエンジェルにラクスは回収されないものの、脱出ポッド内で戦争を体験してもらうアトラクションにご搭乗して頂きました(無慈悲)
ぶっちゃけ原作の方がマシだけど、したらしたでアムロが衰弱する前に修正パンチをくらい、ガチでストライクに乗らなくなりそうなのでカット。

というかまぁたオマージュ入れたよ、俺ぇ………
嬉しいとか言われたらもっと入れたくなる性分なんで、程々を意識しないと………
でも、テスターで一番やりたかったシーンなんで許してクレメンス。
というかテスターがどうしても自分の考える物と被るしね………うーん、発想力のなさがなぁ……
尚、ラクスの影が薄い!と言われても仕方がない内容です。
タイトル【歌姫】なのにね……

そういえばフレイも完全にフェードアウトしてますが、そもそも父親死んでないしアムロがナチュラルかつフレイに接点がないのでそもそもフレイって誰?って時折そんな感じになってますね、自分の中ではw
今のところ、かなり処遇に困るキャラ。





 

 

 

 

 

 

それは偶然だった。

月の第八艦隊所属モビルスーツ部隊【デルタ隊】のテスターたちは、母艦のドレイク級と共に暗礁宙域の見回りをするだけだった。

その部隊はようやくぎこちなさが抜けた三人一組の小隊。

連合の量産機で最初期のテスターに乗れる事を彼らは喜んだが、同時に不安も多々あった。

まあ、そんな細かいことはともかくその暗礁宙域には【血のバレンタイン】で破壊されたコロニーの残骸や、その後の大規模なり小規模なりと戦闘で発生した鉄屑が集まっている。

故に、テスターたちは暗礁宙域での戦闘や運用の安全性を上げるために【サブアームパッケージ】を装着していた。

宇宙世紀でいう、サンダーボルト宙域のジムが装着していた物と変わらない。

シールドはストライクら、Xナンバーのシールドになっているが、重しを着けているように見えるテスターたちは鉄屑の中を自由に飛び回っていた。

そんな時だった。

 

「ん?救難信号?」

 

隊長機が救難信号をキャッチした。

隊長機ということで通信系統を強化されているテスターであるため、他の二機よりも先に気付いたのだ。

 

「一先ず、救難信号ということは民間人でしょう。行きましょう」

 

彼らは知らなくて当然だが、中にはプラントの歌姫【ラクス・クライン】が婚約者から貰った小さなハロと戯れながらザフトの救出を待っていた。

平事なら事故、というよりは事件だろう。

連合の戦艦が民間船を撃沈したのだから。

プラントだから、という理由だけで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は少し流れて残り一機となり、身を隠しているテスターに乗るテリー・サンダースJr.は、己の不運と付けられていた二つ名に恐怖と不安と戦っていた。

死神サンダース、そう名付けられていたのは以前の部隊の三度目の出撃の時の後だったか。

戦場の兵士たちは嫌でもジンクスというものを気にする。

サンダースは今までの部隊で三度目の出撃で彼を除いて全滅していた。

もし、敵からの二つ名であればどれほど誇れたのだろう。

だが、味方にとっての死神は第八艦隊提督、ハルバートンも頭を悩ませていた。

しかし、それももう終わるのかもしれない。

何故なら偵察型のジン二機に、少し前に聞いた奪われたG兵器の一つがこちらに牙を剥いているのだから。

 

「ここが、年貢の納め時、か……」

 

サンダースのテスターはシールド全損、サブアームも一本イカれ、両足に至っては太股から先は無くなっている。

マシンガンの残弾も残り少ない。

絶体絶命のピンチだった。

彼が現れるまでは。

 

「そこのテスター!二時方向に輸送船がある!出来るのならそこへ避難しろ!」

 

突然、仲間が墜ちてからはウンともスンともなかった通信機から、若い男の声が聞こえた。

 

「何!?」

 

思わず、その方向を確認すると確かに輸送船の光が見えた。

しかし、若い男が乗っていたのはモビルポッドよりはマシだったが、しかし丸腰のテスターだった。

武器も何もない、丸腰だ。

何ならOSもアップデートされていないのか、挙動が不安定だ。

 

「そんな丸腰では無理だ!G兵器にやられるぞ!」

 

「やってみなければ解らん!」

 

「よせ!死ぬぞ!」

 

そんな押し問答が短い間に起きたが、青年の次の発言で彼は従わざるをえなかった。

 

「……俺はシロー・アマダ少尉だ。貴官の階級は?」

 

「…………自分はテリー・サンダースJr.軍曹であります」

 

「ならば、これは命令だ、軍曹。輸送船へ向かえ」

 

「了解であります」

 

軍では上官の命令は絶対。

しかし、丸腰で行かせるほどテリー・サンダースは腐ってはいなかった。

 

「アマダ少尉、弾数は少ないですが持っていって下さい」

 

と言って持たせていたマシンガンをアマダ少尉の元へ流す。

受け取ったアマダ少尉は感謝の意を告げながら、戦地、いや死地にへと入る。

 

「………(もう二度と、訓練時代の二の舞は御免だっ!)」

 

そんな覚悟と共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、アークエンジェルは物資補給が済み、暗礁宙域を越えるために鉄屑の中を注意深く進んでいた。

そんな中、爆発の光がアークエンジェルのブリッジにいた者たちに届く。

 

「戦闘の光!?」

 

短期間でクルーゼ隊との戦いで少なくとも厳しい戦いを経験したために、戦闘への移行は初めての時よりもスムーズに進む。

 

「第一次戦闘配備!」

 

マリューとナタルの指示でブリッジにいるメンバーは各々のすべき事をこなしていく。

そして、パイロットであるアムロたちはパイロットスーツに着替え、主を待つメビウス・ゼロとストライクに乗り込む。

 

「戦い、か………」

 

そんな呟きは誰にも届くこともなく、アムロはガンダムを発進させる。

カタパルトから射出された二機は、デブリ帯の中を突き進み、そしてその爆光の正体が露になる。

 

「テスター?だけど、あの動きは……」

 

「船外作業用に調整された物なんだろうな!援護するぞ!」

 

明らかにかろうじて戦闘を行っているように見えるオレンジ色に塗装されたテスター。

偵察型のジンを既に一機を大破、もう片方を中破させていた。

これだけでも大戦果というのに、イージス相手に四肢を幾つか失いつつも回避し続けるテスターは、パイロットに天性の才能でもあるのだろうか。

とはいえ、本人は常にギリギリの綱渡りをしているような物なので、本人にはその自覚はない。

手に持つマシンガンは弾切れなのか、放り出して腰部のサイドアーマーに懸架されていたバーナーを今度は振り回す。

 

「そんなものでっ!!」

 

イージスのパイロット、アスランは片手に脱出ポッドを携えながらも、テスターの攻撃をいなしては蹴って相手を吹き飛ばす。

しかし、初陣というのもあってシローは半ばパニック状態であり、とにかくしっちゃかめっちゃかに動かしている。

ロールアウトしてもマトモさなどないテスターでは、どう動こうがコーディネーターには練習相手にもならない的である。

しかし、アスランの経験の浅さ、特に護衛という経験が訓練時代以外で行った事がないため、デブリ帯での戦闘ということもあってラクスの脱出ポッドを過剰に気にしていた為に慎重になっていた。

故に、辛うじてシローはOSが古いテスターでも、何とか食いついていけたが………

 

「イージス!行ってください!」

 

「しかし、置いていくことなど!」

 

「私がコイツを抑え込みます!」

 

中破していたジンがテスターに取り付き、イージスから離されていく。

 

「行ってください!ラクス様をお願いします!」

 

「クッ………すまない……!」

 

届かぬ謝罪をしつつ、アスランは脱出ポッドを抱えてナスカ級にへと帰投しようとしたが、そこでアムロたちと遭遇してしまった。

 

「ストライクッ!?」

 

「イージス……アスランか!」

 

お互いに銃口を向け会うが、しかしどちらも引き金を引くことに躊躇する。

ストライクの後ろでバックアップについていたムウは、そんな彼らに違和感を抱き、同時にイージスの片手に脱出ポッドらしき物を抱えているのが解った。

しかし、その後ろにジン五機が此方に銃口を向けていた。

 

「アムロッ!!避けろ!」

 

「え?グワァ!?」

 

ストライクの装甲にジンのキャトゥスから放たれた弾頭に当たり、衝撃をもろにくらう。

 

「やったなぁっ!!」

 

「チッ!三機は俺に任せろ!残りは頼む!」

 

ムウはガンバレルを展開し、ジンに攻撃を開始。

アムロは仕返しにとビームライフルで先程撃ってきたジンを攻撃する。

 

「アスラン殿!早く離脱をッ!!」

 

「我々が抑えている内に!」

 

「すまない……ッ!」

 

決死の戦いを挑むジンたちはイージスを逃す為の肉壁となり、アスランは彼らの意思を無駄にしないためにもアスランは離脱する。

 

「そこぉ!」

 

「なんと……っ!?」

 

蒼い火の尾を引きながら、ストライクから放たれたビームは左腕を破壊する。

体勢を崩したジンは後ろへ下がろうし、カバーの為に後ろにいたジンが前に出るがアムロはエールストライカーの特徴である突破力を駆使し、前に出たジンを抜き去り、トドメの一撃を小破したジンに撃ち込む。

 

「今の僕は軍人なんだ……!銃を向けられたら殺るしかないんだッ!」

 

自分の本心を封じ込めたその理論武装で、アムロは人を殺す恐怖を紛わらせていた。

 

「モビルスーツなら人じゃないんだ!うおぉぉぉ!」

 

「あ、悪魔か……っ!?」

 

ムウが相手をしていた三機の方向へストライクを飛ばすと、死角となる後ろからジンのコクピットを的確に狙い撃ち、更にそのジンを盾に他のジンを撃つ。

 

「やるな!アムロ!」

 

その戦いぶりを見たムウは賞賛しながらも、ガンバレルでストライクの後ろに回り込もうとしたジンをバックパックに銃弾をぶちこんで撃墜させる。

 

「はぁ……っ!はぁ……っ!」

 

残りの二機が回避に専念し始め、ストライクはビームライフルを撃ち続けた為、弾切れを引き起こす。

カチッ、カチッと空回りした音が響くにも関わらず、アムロは気付かずトリガーを引き続ける。

しかし、ハロが「アムロ!タマギレ!タマギレ!」と叫ぶと、ハッと正気を取り戻しアムロは近付いてこないジンに近づいてビームサーベルを抜く。

 

「仲間の仇ィィ!」

 

「でゃああぁぁぁ!」

 

重斬刀とビームサーベルが交わり、ビームコーティング処理されていない重斬刀が半ばから刀身が切り離される。

 

「な、何ぃ!?」

 

「コーティングもしないでそんな物!」

 

先程のジンが持っていた重斬刀は、コーティングされていない物の為、鍔競り合いに持ち込む事などできない。

元々、こうなる事など想定していないのでコーティングなど、しようがないがコーティングに関して抜け落ちていたジンのパイロットは新兵からようやく抜けてきた様なパイロットだったため、こうなるのは当たり前だったかもしれない。

 

「さ、避ければ問題ないっ!」

 

「逃げるなぁ!」

 

とはいえ、ジンが回避に専念すれば新兵よりも下である素人のアムロには近接戦闘への技量など高い筈もなく、ジンの射撃が被弾してバッテリーが消費されていく。

 

「アムロ!レイセイ!レイセイ!」

 

ハロにそう言われてようやく冷静になるアムロ。

ハロに感謝しながら、アムロはストライクをデブリを遮蔽物にしてジンの攻撃を防ぐ。

一方で、メビウス・ゼロはガンバレルの内一基を破壊されてしまい、ムウは相手がベテランのパイロットであることを悟る。

 

「古強者って奴か……!」

 

双方、膠着状態に陥ったその時。

地球側から凄まじい閃光が起きる。

 

「何の光!?」

 

最初に墜ちたのは、アムロと対峙するジン。

光に気を引かれた隙にアムロはエールストライカーの力でジンの懐に飛び込んだ。

勿論、アムロも突然の閃光に驚いていた。

しかし、ハロの的確なアドバイスでアムロは突撃を敢行したのだ。

ビームサーベルがコクピットに突き刺さり、パイロットは光の正体に気を取られながら死亡した。

ムウの方では、同じく隙をついたガンバレルによる攻撃によってジンにダメージを与えていた。

しかし、ベテラン故にダメージは最小限だ。

スラスターが不調になった以外は問題ないようだ。

 

「やっちまったかなぁ……!」

 

ガンバレルに頼りすぎた自分を恥ながらも、ジンの攻撃を回避する。

 

「流石はエンデュミオンの鷹と言った所か!」

 

最後のジンのパイロットはモビルアーマーでよくやる、と感嘆しながらも攻撃の手は緩めない。

しかし、そんな彼の頑張りも無に帰した。

ロックオンアラートが鳴り、パイロットは周囲を見渡したその瞬間…………

 

「墜ちろっ!!」

 

投擲されたビームサーベルがジンの胴体に刺さり、ストライクのサーベルを狙った足蹴でビームサーベルが爆発し、同時にジンも誘爆する。

 

「アンナ………ッ!」

 

妻の弁当を思い出しながら、名もなき古強者は炎に巻かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、遭遇戦によってアムロはモビルスーツによる戦闘センスを開花させた。

その端で、連合とザフトのパイロット同士による禁断の恋が始まっていたのだが、それはまた別の話。

しかし、それはきっと荒んだこの世界においてナチュラルとコーディネーターの微かな人類の希望になることには変わらないだろう。

 

 

 

 




後書きじゃなくて前書きに書けよ!と思うかもしれないけど許してクレメンス。
ミラコロとPSの設定ミスってた♪(テヘペロ)
感想にて指摘されたのでマジで感謝。
基本的には原作と変わらない設定なので、間違ってたら指摘お願いします………本当に申し訳ない。

尚、シローらは原作通りの展開です。
時折、気分が高じて番外で他にも色々書くかも。
では次回予告。



偶然の対峙はムウにアムロへの疑念を芽生えさせた。
アムロはそうとも知らずに精神的に追い込まれていく。
そして、地球への道は険しいものとなる。

次回、【大気圏突入】!

重力の井戸にて戦え、ガンダム!





で、思い付いた汚い茶番。

【ガンダムSEEDより】

アスラン「お前も来い!キラ!」

キラ「でも、あの船には、アークエンジェルには僕の友達が……!」

アスラン「クッ……」

ラクス「………お二人は同姓愛者なのですか?」(頬を赤らめながら)

アスラン「断じて違うっ!」(抱きつかれながら)

キラ「えっ……」

アスラン「え?」

キラ「……アスランのバカぁ!」

ラクス「腐腐腐腐………」(恍惚)

アスラン「あっ、ちょっ、ヌゥォォォォォォ!?」

クルーゼ「最後の扉が開いたか……」(吐血)

アデス「隊長ぉぉぉぉーー!?」

作者「こうして、世界は平和になりましたとさ」

アズラエル「こんな平和はいやだぁぁ!」(イキ顔)

ウズミ&パトリック「」



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ep8 大気圏突入

バトオペでシナンジュ、ズール、袖付き水泳部が出てきた喜びで初投稿。
FA魔窟も出てきたから番外編も書いちゃうよ!

てな訳で遅れに遅れたぜ☆()
書いたら最後まで書き上げたい質だから許せ!()




アークエンジェルはスペースデブリを抜けた後、軌道上にて第八艦隊と合流した。

ワッケインからの報告もあって、第八艦隊は軌道上に待機してアークエンジェルとの合流を計っていたので、ある意味必然と言える結果だろう。

アムロのクラスメイトらはようやく平穏が戻ると安堵していたが、しかし短い間とはいえ彼らの家になっていたアークエンジェルに愛着を持っていたため、寂しい気持ちもあった。

そんな彼らを若干軽蔑した視線で見るのはフレイ・アルスター。

ヘリオポリスからの脱出以降、我慢の連続だった彼女にとっては身に降りかかったこの出来事はただの理不尽で周囲の人間は自分を苛立たせる要因としか見ていなかった。

まあ、理不尽な目に遭ったこと自体は事実だがどのみちここで降りれるなら降りたいと言う気持ちは奇しくも同じであった。

元々、フレイを除くがオーブの住民である彼らは地上に降りても家族がいるという事もあるので、ようやく戻れるというのは嬉しい事だろう。

しかし、アムロは父であるテムは行方不明。

母は別居してから音信不通であり、アムロには行き場がなかった。

その事実にアムロは軽くうちのめされていた中。

臨時に作られた偽のプロフィールと除隊届けを渡されたミリアリアやトール達は、フレイが彼らを説得する出来事も起きようがないので、彼らは特に思うこともなく除隊届けを出した。

彼らは無意識にアムロもそうしている、と思っていたのはまだ精神的な未熟さがある子供ならではの事なのだろう。

しかし、アムロは自分に割り当てられた士官の部屋にハロの中身をいじったり、ストライクの蓄積されたデータを整理し、自分自身に最適化させたりとまさに機械オタクである。

戦いはアムロを呼んでいる………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーブにへと降下するシャトルを見眺めながら、トール達の出発を見送り、ちょっと前に小さな少女から渡された花の折り紙を持つ手元を見る。

よく見れば、何度か折り間違えたりしたのか少しグシャグシャになっている所もあるが、しかし何の打算もない純粋な感謝を受けて、アムロは嬉しかった。

 

「守ってくれてありがとう!お兄ちゃん!」

 

そんな言葉は、帰る場所のないアムロにとって救いだった。

仲間も同じく、感謝を伝えてくれた。

だがしかし、ここまでに来るとき彼らはアムロを気遣うが深くまではせず、気軽なものだった。

結局、彼らは自分を解ってくれていない。

そんな苛立ちを溜め込んでいたが故に、アムロは自然と彼らとは疎遠となり、遂には別れの言葉もなくアムロは彼らを見送る。

が、そう問屋は下ろしてくれない。

このタイミングでザフトが襲撃してきたのだ。

爆発の衝撃で揺れる艦内の中を走るアムロ。

早めにあの旗艦からアークエンジェルに戻って良かったと思いながら、アムロはストライクに乗り込む。

自分にはここしか居場所はない。

そんな哀しみを抱きながら、宇宙に出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムウは出撃する直前のアムロと会話していた。

アムロはすぐにストライクに乗って出たが、ムウはとにかく後味が悪かった。

 

「僕にはここしか居場所がないから…………か」

 

自分のせいではない、そう思ってもやはり良心ある大人としては自分の不甲斐なさが今に繋がっていると思うし、自惚れのようにも聞こえるが自分達大人が彼を戦場に立たせていた自覚がある。

ムウの為に輸送されてきた新しい力を見ながら、彼は愛機に視線を戻す。

乗りなれない物に乗って出ても死ぬだけなのだから、ムウの判断はメビウス・ゼロで出るのは必然だった。

【105ダガー ガンバレルパック装備】なんていう機体が送り付けられた時は驚いた物だが、先行量産されたこの機体はストライクのパックと互換性があるため、現段階の有用性はとても高い。

まあ、ガンバレルは地上に降りればしばらく無用の長物となるわけだが………

 

「俺は俺なりに頑張るしかない………ムウ・ラ・フラガ、ゼロで出る!」

 

せめてできる限りアムロの助けにならなくてはならない。

そうムウはアムロの影を帯びた顔を脳裏に浮かべながら、体に掛かるGに耐えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のストライクには大気圏突入用のストライカーパックが装備されている。

機体各所に配置された耐熱ジェル、冷却ガスや試作の耐熱フィルムetc……

バックパックの形状としては宇宙世紀のジム・ナイトシーカーの物に近い。

違いは追加されている背部の追加されたスラスターユニットが、エールストライカーの可動部分のスラスターユニットを取り付けたものという点か。

【アウトサイドアサルトパック】と開発陣が本来の名前を端折って名付けた名前は、まさにモビルスーツによる大気圏突入のための兵装だろう。

それを身に纏い、連合軍謹製の試作ビームマシンガンを持ち、襲い来るジンやハイマニューバに穴を空ける。

まあ、ビームマシンガンと言っても二点バーストのビームライフルの高速連射なのだが。

 

「墜ちろ!墜ちろぉ!」

 

トール達への理不尽な妬みを自覚しつつ、それをザフトという敵にぶつけることで解消しようとしているアムロは、そんな自分に嫌気が差しつつも止めることはない。

殺らなければ此方が殺られる。

背追い込み過ぎたアムロは、一人でまた背追い込む。

負のスパイラルがアムロに起きていた。

そして、宿命はやって来た。

 

「ストライク……アムロ………!」

 

「ディアッカ!今度こそアイツを落とすぞッ!!」

 

「ああ、解っているッ!」

 

四機のGがアムロを襲う。

 

「しつこいな!コイツゥ!」

 

失われた脚を下半身丸ごとハイマニューバの物に変えたデュエルと、頭部をジンのものを取っ付けたバスターがストライクを執拗に攻撃をする。

応急処置故に、性能をフルに発揮できないガンダムの内の二機は連携によって倒そうとしていた。

しかし、まだ拙い連携にアムロは今まで感じたことのない感覚と共にその攻撃を避けていた。

 

「コイツ!?後ろに目でもついてんのかよ!?」

 

「今のは死角からの攻撃の筈だ………どういうことだ!?」

 

訳がわからない、だからこそイザークとディアッカがストライクのパイロットに恐怖を抱くのは人間として当たり前の反応であった。

未知には人間は過剰に反応するからこそ、イザークはそれを認識した時、激昂する。

 

「ナチュラルの機体ごときがぁ!」

 

「待て!イザーク!」

 

「黙って見ていろ!アスランッ!!」

 

止めるアスランを無視してストライクに突撃をを敢行するイザーク。

ビームサーベルでコクピットを貫こうとするその単調な動きに、アムロは鋭い蹴りをデュエルの頭部に叩き込み、あらぬ方向へと飛ぶ。

 

「グオォ!?」

 

「そこっ!」

 

「っ!?」

 

振り向くと同時にビームマシンガンの火線がバスターの装甲の表面を舐め、融解させる。

そんな鬼神でも乗り移ったかのような戦いぶりに、アスランはストライクのパイロットがアムロであるのか解らなくなってきた。

しかし、このままではイザークらをアムロが殺してしまう。

そう思うと、アスランはイージスをストライクに近付けさせてビームサーベルで切り結ぶ事ができた。

砲身が切り落とされてしまい、アムロは捨ててビームサーベルで戦うも、格闘戦では経験も才能もアスランが上手である。

だが、アムロはその身に宿る力が開花し始めているのだ。

高い精度の先読み能力と相手の思念を感じとり、過去を覗ける力。

それは宇宙世紀では【ニュータイプ】と呼ばれた人類の革新的存在だった。

その力が、戦うことによって解放されている。

だからこそ、アムロがアスランの激しい攻撃に晒されても機体の何処にも傷を付けていない。

それを見ていたムウは、同じくニュータイプに近い存在としてアムロを感じ取っており、ムウは初めての感覚に戸惑う。

しかし、そんな彼らを置いていく非情なる時間はアークエンジェルを大気圏突入に入らせ、第八艦隊の大部分を壊滅させていた。

そんな最中、苦し紛れにとでも言うように一つのシャトルが打ち出される。

吹き飛ばされていたデュエルは、それを見掛けた。

見掛けた故に、彼は摩訶不思議な体験をすることとなる。

 

「脱走兵か!腰抜け共め!」

 

デュエルのビームライフルの銃口が、シャトルに向けられる。

ロックオンも完了し、後は引き金を引くだけ。

が、そこにイージスと激戦を繰り広げていたストライクが乱入する。

少し、時間を戻すとイージスはエネルギー切れ寸前のために撤退、隙を窺っていたブリッツはその激しさに奇襲を掛けれずイージスを回収して帰還した。

勿論、その為ストライクもエネルギー切れが近い。

節約してもストライクのバッテリーは大きく減っていた。

 

「ストライク!?」

 

[止めろ!あれは避難民しか乗っていないんだっ!!]

 

それでも、アークエンジェルに戻れなくなる可能性を無視してでもアムロは疲労した頭で、必死に守ろうとした。

その姿と、見知らぬ声を感じてイザークは混乱した。

訳が解らなくなっていた。

しかし、それを遮るのはバスターの牽制射。

 

「イザーク!しっかりしろ!」

 

「ハッ!?お、俺は……!?」

 

イザークが困惑している中、アムロもまた自分………正確にはストライクに向けられる敵意を敏感に感じとり、困惑していた。

双方共に不可思議な出来事にポカンとしてしまう中、件のシャトルは大気圏に突入し、無事オーブにへと降りる。

デュエルとバスターは、本調子ではないため少しストライクと交戦した後、撤退した。

ゼロもすでに帰還したが、しかしアムロのストライクは戻れなかった。

アークエンジェルに近付くことはできたものの、下手に近付けれず、アウトサイドアサルトパック……ASA装備の機能を使う。

摩擦熱で機内の温度が上昇する中、ハロは限界までストライクのOSをアップデート処理し続けていた。

重力による影響を受けた火器管制システムの調整や、格闘プログラムの最適化、そして現段階では大気圏突入によるその他諸々でもしハロに素手で触れば機内温度もあって大火傷することだったろう。

アムロはマードックから渡されていた紙資料のマニュアルを席の下から取り出して読み込む。

その隣では、重力から抜けれなくなったジンが熱で装甲が融解し、爆散していた。

 

「これをこうして……こうか!?」

 

スイッチや計器を確認しながら、大気圏突入の為の操作を行う。

ストライク単体による大気圏突破は可能であると、カタログスペックに載っていたストライクだが、アムロはその中を考慮した物ではないと考えており、実際そうであった。

コーディネーターならともかく、ナチュラルのアムロはこのままでは体が動けなくなる感覚を感じながら死ぬことになる。

それを回避するために、ゆっくりながらも突入シークエンスをこなしていた。

結果から言えば、その試みは成功した。

アムロも無事であり、原作とは違いシャトルを撃ち落とされていない。

が、しかし相手の策が上手い為だったかザフトの支配下であるアフリカに降り立ったのは、運命と言うべきなのかもしれない。

 

 

 

砂漠の虎が、そこに待ち構えている………

 

 

 




尚、ハルバートンとは会う暇もなくアムロは大気圏突入。
最近、久しぶりにマキオンやってたら初代の格闘派生で踏み台を見つけた………思わず困惑したぜぇ…

種だとビームサーベルで鍔競り合いにはならないとかあるけど、今作ではできる仕様。
というか、原作でやっている以上、できるのが公式設定()でしょう。
ガバ?俺には関係無いッ!!




ザフトによる戦闘で第八艦隊は壊滅した。
宇宙から逃れるもアークエンジェルに待ち受けていたのは、灼熱の砂漠に牙を研ぎ澄ます虎だった。

次回、【悪魔と虎】!

主の為にそのガンダムを打ち破れ、バクゥ!



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番外編 頭上の悪魔

嬉しさでハイテンション!()
そんな訳で初連続投稿。若干無理した感覚が否めないけど、一度書いたら最後まで書き上げたい性分なんで許して………
前話の分も忘れずに見てね!

というかメンタルが低迷してて、何がやりたいのかわかるなくなってきたぜぃ………
唐突に投稿スピードが今より遅れる可能性があるので留意してくれると助かります。



宇宙でサンダース軍曹を助けてから数ヵ月。

二度の出撃を行い、帰ってきた俺達はその過程で部隊の仲間たちと仲良くなれた気がする。

事実、初出撃の際は舐めてくれた態度を取っていたカレン・ジョシュワ曹長は今ではある程度俺に信頼を寄せている様子だし、エレドア伍長も俺を侮蔑するような目をすることは無くなった。

ミゲルは恋人のBBという女性に手紙を書いては送る毎日だ。

故意はないのだが、彼の手紙の内容を見たときは誇張が多くて失笑してしまったのは永遠の秘密だ。

東南アジアの密林地帯での戦いはまさに緑の海の戦いだ。

俺が率いる第08MS小隊には三機のモビルスーツが配備され、後方支援のホバー車両があるが上の睨み会いのせいで中々予備パーツや物資が届かない。

文句の一つも言いたいが、そうすれば俺はブルーコスモスの連中にしょっぴかれる可能性もあるし、尚且つコーディネーターのある女性に惹かれている等、悟られるとかなり不味い。

そもそも、戦場でラブロマンスなんてやってる暇なんてないのだ。

しかし、どんなに否定しても俺は彼女を諦める事はできないようだ。

昨日の夜、彼女に借りて借りっぱなしのペンダント型の時計はロケットとしての機能もあり、そこには恋人らしき男性がいたのだから。

痩身のイケメン、というのが第一印象だ。

どこかやつれているが………

まあ、この失恋は一方的なのだから吹っ切るしかない。

そんな気持ちで三回目の出撃を俺達08小隊は迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らに与えられた任務の内容はどうやら大型モビルアーマーが渓谷地帯にて、ザフトが即席の射撃場で試射を行っているらしいとのこと。

そこで捕獲、もしくは撃破の任を受けた08小隊は防塵処理を施された【陸戦型テスター】任務を遂行する事となった。

陸戦型テスターはマウス隊の運用データから胸部への被弾率と脚部への大きな負荷への対策を施された激戦区に優先されて配備されているモビルスーツである。

宇宙で見かけたGとは違い、ビーム兵器は扱えないが、しかしモビルスーツがあるだけでとても心強い。

OSの癖は大きいが、コーディネーターよりは動かせれるという話を聞く限り、ナチュラル用の初期OSはもっと酷かったのだろう、とシローは試験を担当した部隊へ内心で敬意を払う。

 

「死神サンダース、か………」

 

頼もしい仲間からの突然の告白、そして願いはようやく一つに纏まりかけていた08小隊をバラバラにしかけるような出来事だった。

エレドア伍長は大怪我で後方に送られ、人員が足りない中の出撃。

特に索敵を担当していたエレドアが抜けたのが大きく痛い。

奇襲をかけるこちらがわが奇襲される側になってもおかしくないのだ。

ゲリラの少女、キキ・ロジータの協力もあって今は出現する確率がとても高い位置に伏せているが、それでもここ最近の出来事に頭を抱えてしまう。

ミゲルをモビルスーツの関節部のシリンダーで挟み殺してしまうところだったし、ミゲルを一時的にパイロットととしてサンダースと交代したり、色々ありすぎて彼は今のところは何も考えたくなかった。

 

 

 

 

 

潜伏してから夜が明けた。

夜の寒い空気とはうって変わってまた暑い灼熱の世界になり、機体に備え付けられている小型クーラーがコクピットを冷やす。

そして、そのときは来た。

 

「十一時の方向!巨大な何かが来ます!」

 

ソナー手のサンダースからの報告によって、小隊全員の気が引き締まる。

 

「作戦通りに行くぞ!各機、セーフティ解除!」

 

その方角から現れたその巨大な姿は、シロー達を雰囲気だけで圧倒した。

護衛なのかディンが二機、件のモビルアーマーに引っ付くようにいる。

そしてモビルアーマーは下降して試射を始めるようだが……

 

「いきます!」

 

カレンの陸戦型テスターが立ち上がり、ネットランチャーの弾頭を発射。

完璧な奇襲だったが、モビルアーマーはその巨体に見合わず機動性が高いようでギリギリ避けられた。

展開されたネットは谷の端と端に引っ付くが、それだけでシローらには充分。

退路を塞げたのだから。

元々、この任務は撃破を想定している。

たかがモビルスーツ三機と小さな輸送機で捕獲など、最初から期待していないだろう。

東南アジア戦線の隊長たるコジマ大隊長もそのような事を言っていた故に、彼らもそうした。

戦「線」ではなく「点」。

緑の大海で、戦ってきたシローにはその言葉の意味が解った。

まあ、それはさておき戦況は小隊が有利であった。

ディンはミゲルとシローの180mmキャノンによる攻撃で撃墜し、カレンはモビルアーマーにマシンガンで牽制する。

しかし、敵の動きはかなり早かった。

胴体に埋め込まれたような、巨大な穴から収束される光が運悪く近くにいたミゲルを狙う。

 

「ヒッ!?う、うわぁぁぁぁぁ!?」

 

余りの近さと、その威圧にミゲルは腰が抜ける。

しかし、シローのカバーによってビームは地面に向けられた。

 

「うおおおおおおおぉぉぉ!!!」

 

180mmキャノンの砲撃が、モビルアーマーの上部に当たり、射角が下にずれミゲルのテスターが立つ地面を破壊する。

ミゲルはフットペダルを押し込み、スラスターを点火して空へと逃げるが、追撃とばかりにモビルアーマーの体当たりを諸にくらった為、ミゲルのテスターは地面を削りながら着陸した。

 

「追撃はさせないっ!」

 

カレン機のマシンガンによる牽制射で気を引かせるカレンの思惑は成功するも、ビームの矛先が向いてしまう。

 

「マズイッ!?」

 

だが、そうはさせじとモビルアーマーに貼り付いた一機のテスター。

 

「死なせるもんかぁぁぁぁ!!」

 

イーゲルシュテルンと大型化してしまったビームサーベルを、モビルアーマーに叩き込んだシロー機。

しかし、モビルアーマーは冷静に対処し、崖に擦り付ける。

猛スピードで削られる機体は、あっという間にテスターの左腕を破壊し、ウェポンコンテナを懸架するためのパック【ウェポンパック】もバラバラに壊れ、機体の各所からエラーが吐き出される。

 

「こんなところで……!終われるかッ!!」

 

何とか打開策を探すシロー。

だが、接触通信回線から聞こえた声に、シローは動きを止めてしまう。

 

「……貴方はシロー・アマダ少尉ですか?」

 

「なっ!?何故……いや、その声は!?」

 

そんなまさか、そんな感情が両者の間にあった。

一度限りの出会い、戦争後か二度と会えないだろうと思っていた二人の無念は戦場で再会を果たすことで、その願いを叶えた。

あまりにも、その再会は唐突で戦場に合わない再会だ。

その直後、モビルアーマー【アプサラスII】が大量のエラーを吐く。

モニター一杯に広がる通知画面と警告音は、アプサラスのパイロット【アイナ・サハリン】を現実に引き戻すのに充分であった。

そしてまた、シローも突然上昇を始めたモビルアーマーに現実に引き戻された。

しかし、それを知らない08小隊の面々は隊長であるシローの喪失に恐怖を感じた。

 

「た、隊長ぉぉぉぉぉ!」

 

ミゲルのそんな悲鳴は、その場にいた部隊の面々の気持ちを表していたのかもしれない。

銃座に座っていたキキ・ロジータは、その光景に想い人であるシローの死を想像させるには充分だった。

 

「どこに行っちゃたんだよ、シロー………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機体解説

 

【陸戦型テスター】

武装/マシンガン、ショートシールド、大型ビームサーベル、ウェポンコンテナ(180mmキャノン砲、連装ミサイルランチャー、ネットランチャー他)

 

原作08小隊でいう陸戦型ガンダムや陸ジムに相当する機体。

激戦区に間に合わせで配備されている、陸戦に高い適性を持たせたテスター。

コクピット位置は変わらないが【コア・ブロックシステム】を採用しており、パイロットの生存性を高め、後継の量産機開発のためのデータ回収の目的や経験者確保のためもある。

大型ビームサーベルは、本来のコンパクトなサイズには収まりきれなかったテスターのビームサーベルで、元々ビーム兵器を運用できないテスターに無理矢理使えるようにしたため、ビームサーベル使用時には火器との同時使用はできない。

粗悪品も良いところの燃費の悪いビームサーベルだが、威力は耐ビームコーティングされた盾を焼き斬れる程高い。

陸戦能力においてならば、ジンには一歩前を行く性能だが、高い走破性を持つバクゥには劣る。

胸部の装甲を強化したため、機体重量は増えたが品質が高いパーツを用いているため、ウェポンコンテナ装備時でもやや高めの運動力を誇る。

ダガーの系譜を持つため、ストライカーシステムを利用可能だがもっぱらはウェポンパックを常備。

高価ながらそれに見合う性能はやや足りなかったが、最前線において幅広い活躍をしており、戦後の数年間も運用されていた経歴がある。

バリエーション機も豊富であり、ロングダガーやデュエルダガーといった機体とはまた違う展開を見せている。

 

 




一応、念のために親父が買っていた小説のSEEDの勢力図を参考に反映してます。
まあ、基本的には宇宙世紀の一年戦争と変わらないから大丈夫だったけどw
原作小説はラブロマンスがありながら、結構鬱な場面も多いからアニメとの温度差で風を引きそうですわw

また気が向けば番外編書いちゃいます。
感想よろしくです!


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ep9 悪魔と虎

まずは誤字報告ありがとうございます!
本当に申し訳ないぜぃ………ミスがないよう、気を付けなければ(できないやつ)

そしてお待たせして申し訳ない(震え声)
頭が鬱ハッピーセットやらストレスシールドが削られたりして今も語彙力が変です。
バトオペでピックアップでリバウLv2(絶望)を引き、APEXでブロンズ(適正)に上がり、マキオンで運のなさに嘆く日々でした。
それはさておきep9をどうぞ!




 

 

 

 

 

激戦の宇宙から地上へと降り立ったアークエンジェル。

ストライクもまた、スラスター噴射により着地しモビルスーツハンガーに戻る。

耐熱フィルムは既に放棄されるも機体の各所に破片が引っ掛かり、ジェルや冷却ガスもなくなり、所々焼けているストライクには一種の芸術に見えた。

その様子をムウはどことなく、アムロの精神の不安定を写している様に見えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わり、アークエンジェルの艦長室に変わる。

現アークエンジェルにおいて階級の高いムウ、マリュー、ナタルの三人は降下地点という問題に頭を抱えていた。

 

「アフリカ大陸に降ろされるとはな………こりゃ相手が上手だったか?」

 

「どのみちストライクを失うわけも、アークエンジェルが墜とされるにはいかなかったのだから、仕方がないわ」

 

そして連絡が早いことに、アークエンジェルがインド洋にへと移動する度にアフリカのザフトに襲撃され、休まる日がない。

相手は【砂漠の虎】だからこそ、気が抜けない。

地上に降りてからの彼の活躍は連合にとって目に余る活躍であり、暗殺やスパイを送り込んでも撃滅されスパイも簡単に処理されており、モビルスーツ戦闘だけでなく彼自身の能力が高いことも伺える。

 

「アムロもかなり精神を磨耗しているぜ?ちょっと前に見てきたが……結構ヤバそうだったな」

 

そういうムウ本人も目に隈を作っているが、大人としてのプライドが彼をここに立たせていた。

 

「物資はまだ少し余裕はありますが……水が問題です」

 

「節水をしても、やっぱりこの暑さではね……」

 

艶のないマリューとナタルの髪を見ればわかる通り、アークエンジェルではかなり厳しい節水をしている。

戦闘によるストライクとストライクの支援機として宇宙にいたときに運ばれていた【スカイグラスパー】の各部の洗浄、暑さによる水分補充等でアークエンジェルの俊足でもザフトによる足止めをくらい、水の消費が早かったのだ。

つまるところ、アークエンジェルの足を過信しすぎていたのである。

そも、これまでナスカ級以外では追い掛けられる事もなかったアークエンジェル。

それが無意識に過信にへと繋がっていた。

確かに宇宙ではナスカ級くらいしかアークエンジェルに追い付ける戦艦はいない。

だが、地球という重力のある空間ではアークエンジェルが俊足であることは難しい。

形状からして若干の無理があるアークエンジェルが空を浮かんでいられるのは磁場を利用した浮遊させる装置がアークエンジェルにあるからこそ、こうして飛んでいる。

しかし、その巨大故に稼働時間は一日も長くはないしザフトの襲撃の連続でメンテナンスが絶えない今、アークエンジェルの速度は確かに遅くなっていた。

 

「やっぱり、ザフトの支配域なのが不味いわね……」

 

「高度を上げればザフトに狙い撃ち、下げてもこの有り様かぁ……マードックからはもう猫の手も欲しいってぼやいてたし、かなり限界だぞ」

 

「クルーも連日の襲撃で疲労が溜まりきっています。どこか隠れる場所を見つけなければ………」

 

しかし、そんな折にアークエンジェルに衝撃が走った。

 

「なんだ!?」

 

すぐにブリッジからの連絡がやって来た三人は、ブリッジからの報告を聞き、聞いた一同は思わず机を叩き付けたり気絶してしまう。

 

「アムロ君が脱走した!?」

 

「ウッソだろオイ……」

 

「こんなときに遊んでいるのか……っ!」

 

マリューはその一報にショックで尻餅をつき、ムウは更なる重い情報で処理落ちして気絶。

ナタルは自分達大人に負があると理解していても、腹立ちが収まらず机を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当のアムロはそんなことをお構いなしにストライクで脱走して解放感に快感を感じていた。

連日の戦いで精神的に磨耗していたアムロは、遂に衰弱しかけていた。

だが、そこでアムロの頭脳が徹夜テンションという物もあって閃く。

脱走という手段を。

 

「ハハハ!ハハハハハ!ざまぁないぜ!」

 

自らの帰る場所を復讐を遂げたぜと、言いたそうな顔で笑い続けるアムロは、まさに狂人という言葉が合っているだろう。

実際、正常な判断ができていないアムロは、アークエンジェルが見えなくなるまで移動して、グッスリと眠ってからようやく自分の犯した過ちに気付くのだが今のアムロはただ感じる自由となった今を満喫するのだった。

 

 

 

 

で、深夜から夜が明け夕方近くになるまで熟睡したアムロは己の過ちに気付き、後悔する。

 

「僕は……僕は取り返しのつかないことをしてしまった……!」

 

ストライクのコクピットで頭を抱えるアムロは、悩んでもどうしようもないと一旦区切りをつけ、ローブを着て紙資料による地図で現在位置から近い町に向かうことにしたアムロ。

ガンダムは砂の下に隠し、アムロは私服で脱走する思考はできていた事に昨日の自分に感謝して町へ歩き続ける。

コロニーの快適な環境でそこまで運動もせず、機械をいじっていただけのアムロにはこの砂漠を歩くことはかなり、いや地獄であった。

暑さと太陽から照らさせる日光はアムロの貧弱な体力をガリガリ削った。

水筒の水を空にしてからどれくらい経ったのか。

アムロの体感では半日も歩いた感覚だったが、実際は計算した通りたったの一時間で、辿り着いた町は少し寂れた場所であった。

アムロはザフトの地上戦艦を発見してビビるも、今は連合ではなく、ガンダムにも乗っていない自分を撃つことはないと自分を説得して酒場と思われる場所へと入る。

予測なのは看板が砂で掠れており、読み取れなかったのと、そのすぐ脇の道路にバクゥやジンを乗せた輸送車があったからだ。

見張りに立っている赤毛の青年と視線を合わせまいと、フードを深く被り、店の中に入った。

そこにはやはりというか、ザフトの人々が夕食を摂っていた。

アムロもなけなしの金でパンと水を購入するが、砂漠地帯と言うのもあって水は無料ではなく、主に水で金をボッタくられた感じだ。

所持金が三分の一を切ったアムロは、これからの明日に絶望する。

とにかく腹を満たして喉も潤そう、と思っていたが後ろからの好奇の視線を感じとり、アムロは居心地が悪くなる。

そして遂に、集団の真ん中にいた一人の男がアムロに話し掛けた。

 

「やあ、少年。一人でこんなところになんでいるんだい?」

 

声をかけられて振り向きたくはないものの、アムロは振り向かざるをえない。

故に、アムロは声をかけてきた男の顔をよく見れた。

褐色肌の健康的な肌。

砂漠には場違いなアロハシャツから見える鍛え上げられた軍人の肉体。

そして、コーディネーターらしく整ったハンサムな顔立ち。

アムロは緊張を隠しきれない中、彼からの質問を既に食事中に立てていた嘘の身の上を話す。

 

「せ、戦争で住んでた町を追い出されてあてもなくさまよってるんです……」

 

「そうか……俺達が憎いか?」

 

唐突な質問に、アムロは思わず舌を噛みかけるが何とか返す。

 

「憎くもありますけど……でも、戦争だからどうしようもないですから…」

 

その返答に男は同情し、そして彼はアムロのテーブルの上にあるものを置いた。

 

「うーむ、そうか……なら、せめてもの償いだ。持っていってくれ」

 

「えっ!?こ、こんなに!?」

 

置かれたのは彼の所持品だろう財布。

そこにある分厚い札束はアムロを驚愕させるには十分で、喉から手が出る程欲しいものだった。

 

「こ、こんなに受け取れません!」

 

「いいさ、これは僕の勝手な世話焼きだ。遠慮なく受け取ってくれ。様子を見る限り、明日の飯もあるかもわからんのだろう?」

 

「うっ……」

 

鋭いところを突かれてたじろぐアムロ。

結局、アムロは男に促されるがままに金を受け取り、財布を男に返却するが「いや、その財布も腹の足しにしてくれ。別になくて困るもんでもないしな」と、拒否されて渋々アムロは受け取った。

 

「隊長!お時間です!」

 

と、見張りに立っていた赤毛の青年が扉の前に立っており、ザフトの集団は外に出ていく。

最後に、隊長と呼ばれた男はアムロに別れを告げる。

 

「もし行けたら【バナディーヤ】に行くといい。あそこなら君が生きるための仕事も食べ物も色々揃っている。何せ、【砂漠の虎】が頑張って内政をしてるんだからね」

 

そう言い残して男は去った。

ダコスタ、というらしい赤毛の青年の背中を叩いて「もうちょっと気を抜いたらどうだ」と声をかけながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アムロはバナディーヤに行くか悩んだ。

悩んだ末に保留となったアムロは、チャージストライカーによるバッテリー充電を確認しながらストライクを起動させる。

尚、ハロをずっとストライクのコクピット内に放置していたのはアムロには知らぬ事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バッグパック解説

 

[チャージストライカー]

 

モビルスーツの短い戦闘時間の延長を図ったストライカーパック。

太陽光発電、熱発電可能なバッグパックで、異様にエネルギー変換率が高いC.E.において効率的な発電ができる。

形状はエールストライカーに似ており、翼の部分が光、熱発電の受容器である。

機動力は勿論、エールストライカーに劣るがバッテリー充電しながら戦闘できるという点においては戦い方次第で相手のエネルギー切れによる勝利を得ることが可能である。

予算の都合でビームサーベルではなく、ビームピックを装備。

アーマーシュナイダーよりはマシな物の、近距離戦闘は苦手な部類に入った。

基本的にはビームライフルでチクチクと撃って戦う戦法となる。

 

 




まぁたエタるんじゃないかって?
それはないッ!!(確信)
他は駄目でもガンダムだけは終わらせん!終わらせんぞぉぉ!(謎のプライド)

お察しの通り、隊長はあの人。
アムロより人気なランバ・ラルを意識したバルトフェルドさんなら、あんなこともしてそうなのでファーストのシーンを入れられました。
で、今のところ無理矢理な感じのストライカーパックは原作よりも物資があるという事で許して……!
普通にそんな装備も有り得た筈のストライカーパックですし、ガンガンオリジナル出したいんですよ……

良かったら感想プリーズ!
現状打破に繋がれば恩の字!





知らぬ間の未来に悪魔と呼ばれる少年と虎と呼ばれた男の交わりは、運命を変えるか、それとも……
そしてアムロ脱走に浮き足立つアークエンジェル。
彼らは苦渋の決断をした。

次回、【夕焼けの砂漠にて】!

苦難を乗り越えろ!ストライク!



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ep10 夕焼けの砂漠にて

投稿!
少し(?)意欲が戻ってきたので連日投稿。
ヤクルトうんめぇ……

そしてガンダム至上、もっとも有名なシーンが入ります。
やったね!みんな!




チャージストライカーによる充電を終えたストライクは、宛もない砂漠を歩く。

コクピットの中は小さいクーラーで空気が冷やされているが、しかしアムロは行き先を決めれずに歩き回っていた。

チャージストライカーは充電能力に特化したため、ストライカー自体の強度は高くなく、実のところ激しい戦闘に耐えられる程ではない。

故に、アムロは崖などに注意して移動しないといけなかった。

まあ、そもそも目の前に地平線が見えるほど広大な砂漠なので、崖などありはしないが。

とはいえ、時折あるので油断はできない。

実際、アムロは先程崖に落ちかけていたのだ。

集中力がゴリゴリと削れる音を錯覚するアムロは、とにかくストライクを動かし続ける。

その方角は幸か不幸か、アークエンジェルもまた向かいつつある場所であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、アークエンジェルでは虎の猛攻が無くなり、機関部と装甲のメンテナンスや修理、予備パーツで組み立てられた新たなストライクを調整していた。

 

「大尉には心苦しいですが……ストライクに乗ってもらうしかないです」

 

「いや、スカイグラスパーだけじゃ俺もいつまで戦えるか解らなかったし、やるしかないだろ。………OSはアムロのか?」

 

「ええ、アムロ君のOSをコピーしておいて良かったわ……罪悪感は凄いけれども」

 

「……無理すんな。次からはそういうのはマトモにアムロの面倒見てやれなかった俺がする、いいな?」

 

「しかし………」

 

会話が続かず重苦しい雰囲気が漂う。

汚い自覚はある。

結局、アムロに甘えて甘えて今、アムロを裏切っている。

帰ってきてもこれではまたアムロは自分達を見限るだろう……そんな暗い気持ちになるのは必然だろう。

二人の距離が近づくのと同時に、またアムロの問題に頭を抱えるこの悪循環は今のところ変えようがなかった。

 

「ナタルは説教確定だろうな」

 

「そう……わね…」

 

そんな雰囲気を紛らすかのように、話題を変えるムウ。

マリューもそれに乗り、空っぽな笑い声がモビルスーツハンガーに響きわたった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隊長と呼ばれた男は、バナディーヤにて立派な屋敷でアイシャと呼ばれる【砂漠の虎】の愛人といつの間にか噂されている女性とベッドの上で世間話……にしては少々物騒な話をしていた。

 

「フフフ……アンディ、その子に惚れでもしたの?そんな話をするなんて」

 

「いい目をしていたからな、彼は。ついつい彼のことを喋ってしまったな」

 

まあ、そんな話は既に終えたようで普通な世間話をしていた。

アンディと呼ばれた男、アンドリュー・バルトフェルドは帰還途中で出会ったアムロの事を話題に出していた。

哀れんでの事もあったが、一番はアムロの目に宿すその光にバルトフェルドは惹かれていた。

彼は自覚していないようだが、あれは戦士としての目。

こちらを敵と見ていたあの目は、歴戦のバルトフェルドでも素で接していればプレッシャーを感じられずにはいられない威圧感があったのだ。

 

「もしかしたら連合のスパイかもしれんな。いや、スパイならあんなところで金欠になるわけがないか。まあ、どのみちアレでスパイなら俺も衰えた物だ」

 

「アンディはまだまだ若いでしょ?こうして私をベットの上で私を何度もイかせたんだから」

 

「あんまりイってる感じしなかったがなぁ?それにしても、愛人なんて誰が言い始めたんだか?まあ、こうしているところを見られればそう言われざるを得ないか」

 

「私たちにもよくわからないこの関係は、解らなくとも捨てがたいわ」

 

「捨てる筈がないだろう?僕の女神様?」

 

そんな会話をしながら、彼らは彼らなりの幸せを掴んでいた。

誰が言い始めたのかは解らない、アイシャという虎の愛人。

本人たちは否定するが、その関係性は恋人や愛人に近いものである。

それでも、彼らは否定するだろう。

強いて言うなら、相棒と呼ぶのが適切なのかもしれない。

彼らはそれも否定するだろうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脱走してから一週間が経った。

アムロは行く先々で男から貰った金で食料と水を買い、命を繋いだ。

しかし、防塵処理をマトモにされていないストライクの関節部は少々これからの未来を示すかのように不安であった。

 

「妻に……渡してくれ……これを……頼む」

 

とあるザフトの小さな前哨基地を見つけたアムロは攻撃をして、ジンを壊滅させ基地のあちこちを破壊しており、炎の手が上がっていた。

そんな折に、アムロは一人のザフト兵士を見つけ話し掛けた。

話しかけてしまった。

兵士から渡された恐らく彼の妻と子供の写真とペンダントを受け取ったアムロは、彼が力尽きるのと同時にストライクに駆け込んだ。

人の死を改めて間近で見たアムロは、死を恐れた。

手に持つ彼の遺品をコクピットの座席の下にある所持品入れにぶち込み、彼は震える。

 

「僕は……僕は………ッ!」

 

苦しい気持ちで一杯になるアムロ。

そんなとき、ふとコクピットの上を見上げると降下前に小さな少女に渡された花の折り紙を見つけた。

くたびれたその花は、どこかアムロに何かを訴えかけていた。

 

「……………」

 

アムロはアークエンジェルに戻ることにした。

何故だかは解らない。

ただ、戻ろうと自然にそう思えた。

まあ、どのみちストライクのチャージストライカーを飛び道具として使ってしまったため、バッテリーを補充できないのもあったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハロはアムロが心配である。

会話型のペットロボットのハロは、幼少期からのアムロを見守り続けてきた。

だからこそ、一定の思考回路しか持たぬハロでもアムロを想う。

さりげなくいないもの扱いされてきてもハロは今は気にしない。

今、外に出ればハロは砂ですぐに壊れるだろうし、そうなればストライクをアップデートできなくなる。

アムロは結局困るのだ。

それにハロ自身も、ストライクのコクピットが居心地良くなってしまい、時折ストライクと接続していなくともコクピットの座席に座っていることがアークエンジェルでは多かった。

今は物も言わぬハロ。

しかし、その忠義は確かにアムロに向けられており、そして生みの親を心配する良き子供でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、アークエンジェルは砂漠の虎とはまた別の部隊による奇襲を受けていた。

偶然見付けた峡谷に身を潜めていたアークエンジェルだったが、ザフトの支配下でそれを見逃す訳がなく、手柄を横取り目的でジブラルタルからやって来た部隊が攻撃を仕掛けていた。

 

「砂漠の虎も地に墜ちたな!いや、水に墜ちたが正しいか?ギャハハハハハ!」

 

下品な笑い声でバクゥを駆る隊長機は、動きが鈍いストライクをレールガンで揉みくちゃにしていた。

 

「グッ!?やっぱ付け焼き刃じゃ無理か……!」

 

シミュレーターはやりこんでもやはり実戦になればそう上手くはいかない。

ムウはその事に歯痒く感じる。

このままだと自分も死に、アークエンジェルで指揮を取る惚れた女の元にも戻れない。

そんな絶望にも近い感情が芽生え始めた……その時だ。

 

「へっ!これdー」

 

新たに組み立てられたストライクに襲いかかるバクゥのコクピットにライトグリーンのビームが通過した。

 

「た、隊長!?」

 

あまりの突然の出来事に部下たちは浮き足を立たせ、ムウはそのチャンスを逃す筈もなく初のモビルスーツ戦の撃墜スコアを手に入れた。

 

「そこっ!」

 

「ハッ!?前っ!?」

 

エールストライカーを背負ったストライクはビームライフルで、バクゥを一機撃破。

それとままた別にジンオーカーが先程の同様の狙撃をくらい、爆散する。

放たれた方向をムウが見たとき、何度目か解らない歓喜をあげる。

 

「アムロ!」

 

「その声は……ムウさん!?」

 

謎のガンダムにアムロはパイロットが誰か疑問に思っていたが、ムウだと解ると驚愕した。

モビルアーマー乗りがモビルスーツに乗り換えていた事に驚いたのもあるが、何故動かせているのかが疑問であったアムロに、ムウは真実を伝えつつまだ襲い来るザフトに応戦する。

そしてそんな最中、ムウは唐突に口を開く。

 

「アムロ、すまない!俺が不甲斐ないばかりにお前ばっかに負担をかけちまった!本当に酷い大人だよ、俺達は!」

 

「そ、そんなことを言われても…!」

 

「許してくれなんて言わない!だがな、今、こうして俺もようやくモビルスーツに乗る決心ができたよ。お前のおかげで!」

 

そんな告白に、アムロは照れ臭く、一方で憎たらしくも思った。

だが、自分の居場所はアークエンジェルだと再認識した今、アムロは己の帰る場所を守るために戦う。

知り合った人達のために、こうして共に同じ場所で戦ってくれる仲間のために。

 

「デャァッ!!」

 

チャージストライカーから抜いておいたビームピックをクナイのように飛ばしてジンのコクピットを的確に潰すアムロ。

ムウはビームライフルでアムロを援護して、他のバクゥやジンを近寄らせない。

 

「あ、悪魔だ……!」

 

誰が言い始めたのか、悪魔と目の前のガンダムは名付けられた。

 

「しっ、白い…悪魔………!」

 

ベテランたちも身を震わす、ガンダム伝説の始まりだった。

そんな彼らを見逃す訳もなく、最後のビームピックでコクピットをまたも潰し、今度はアーマーシュナイダーでジンの頭部やコクピットを的確に潰す。

目を奪われたジンのパイロットは、絶望の悲鳴をあげる。

 

「ヒッ!?あ、悪夢だー」

 

その悲鳴もすべてを届けさせることもなく消失し、ジブラルタルからやってきた部隊はバクゥ二機を残して全滅した。

 

 

 

 

後にこの戦いは【大天使の悪夢】と呼ばれる戦いとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークエンジェルへ戻ったアムロに待っていたのは、ナタルによる鉄拳制裁だった。

 

「この馬鹿者ッ!!」

 

「ウッ!?」

 

自分が悪いのが自覚しているアムロは、殴られるのは妥当だと、そう思いながらもしかしやはり彼にある少しずつ芽生えた反骨精神と甘えがアムロを愚痴らせる。

 

「ぶ、ぶったね!」

 

「殴って何故悪い!」

 

更なる一撃がアムロの頬を捉える。

受け止めることもできず、吹っ飛んだアムロは己の甘えを捨てきれず、尚も文句を言う。

そんな有り様にマリューとムウはおろおろと動揺するが、ここはあえて静観することを決めた二人は静かに見守る。

 

「二度もぶった!親父にもぶたれたことないのに!」

 

「甘えるな! 殴られもせずに一人前になった奴がどこにいるものか!貴様なら砂漠の虎やクルーゼを倒せるだろうと思っていたのだがな……ッ!」

 

そしてアムロは独房に数日間入れられる事になった。

まだ、甘えから離れられないアムロはその場から立ち去る皆を見ても尚、生意気を言う。

 

「僕が……僕が一番ガンダムを上手く使えるんだ……!」

 

そんな慟哭が、独房に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回からはアムロが本格的に開花します。
つまり、無双していくぞぉ……!

ちなみにアムロはハヤトたちがいたからキラ程殺人が嫌いにならなかったと思います。
他の人もやってるから、俺もいいよね?みたいな事、読者の皆様もしたことがあると思います。
多分、アムロもそんな感じだったんじゃないでしょうか?
横で共に戦場に立てる仲間がいるかいないかで、違うのもまた戦争って感じですよね。





大天使の元に戻った白い悪魔は、己の甘えを捨て去る。
そして【明けの砂漠】との出会いがアークエンジェルの運命を決める!

次回、【砂の大地に】!

その再会は少年に何を与える?ガンダム!






そしてなんか思い付いた自分でも謎な混沌茶番

【プリコネRe:Diveより】

シャア「コッコロは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!」

キャル「アンタ正気じゃないからぁ!?いつものイケオジに戻りなさいよ!?」

コッコロ「私は構いませんが………」

主人公君「ん!」(サムズアップ)

ペコリーヌ「イケオジからのマザロリ……ヤバイですね☆」

キャル「ヤバすぎるわ!?」

シャア「コッコロママぁ……」

コッコロ「よしよし、ママですよ~」

キャル「」処理落ち

アムロ「情けないやつめ………」

ペコリーヌ「アムロさん!一緒に食べ歩き行きましょう!」

アムロ「あ、うん、そうだな……」

主人公君「キャル~起きて~」

ペコリーヌ「やったぁ☆」(発情)

アムロ「(何だか凄い嫌な予感とプレッシャーを感じる……)」

このあと、ペコリーヌは美味しく頂かれました(意味深)



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ep11 砂の大地で

やっぱり意見をぶつけるって大事だね(現実でできるとは言わない)
読者様方の意見や知識を反映しつつ、頑張りたい。
感性がズレてるのかおかしいのかは解りませんが、鳥頭な作者の書く作品をこれからも読んでくれると嬉しいです。

トリガーハッピーを自覚しながら11話を初投稿。




 

 

アムロの帰還からアークエンジェルはゆっくりとインド洋に向かっていた。

ムウの覚悟とアムロの脱走はアークエンジェルのメンバーに大きく影響を与え、足りなくなっていたパイロットに臨時で候補するクルーもいた。

 

「子供に戦争やらせて俺達大人がいつまでもぬくぬくとしてられません!」

 

とは、マリューにスカイグラスパーのパイロットに志願しにきた代表のジョブ・ジョン伍長の言葉である。

まだアークエンジェルに待ち受ける障害物は多い。

その障害物の中で一番大きいものが、アークエンジェルに今、立ち塞がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

独房から出てからアムロはムウのためのOS調整に掛かりっきりだった。

自分のこれまでのデータを元手にシミュレーターで調整してムウ専用のOSをムウのこれからの相棒となるストライク二号機にアップロードする。

そんな作業を続ける毎日だ。

しかし、それを苦とは思わない。

もうそれが自分にとって生き残るための道で、ムウというアークエンジェルのクルーからも慕われる人物を死なせない為にも、アムロは黙々と作業を行う。

マードックやムウから甘めのコーヒーや食事を受け取りながらも、アムロは戦闘とは違う戦いを行っていた。

そして、それが終盤になったとき、遂に砂漠の虎の牙がアークエンジェルに襲いかかる。

 

「敵、10時の方向!」

 

「第一次戦闘配備!各員は位置について!」

 

「機種はバクゥ五機、ディン三機、ジンオーカーが二機、陸上戦艦一隻!」

 

「スレッジハマーを装填、指示で一斉射よ!」

 

「了解ですッ!」

 

あわだたしくブリッジが騒ぐ中、アムロはストライクのコクピットに座り、深呼吸を繰り返す。

ムウもまた、己の精神を統一すべく深呼吸をする。

アムロのガンダムにはエールストライカーが。

ムウのガンダムにはランチャーストライカーが装着される。

 

「ムウさん、無理して前には出ないで下さいよ」

 

「解ってるさ。モビルスーツ初心者はしっかり後ろで撃ってるよ。んで、ジョン、俺のスカイグラスパーを壊してくれるなよ?」

 

緊張を少し解すために、軽く会話する二人から唐突に会話のボールを渡されたジョンはいきなりの事で慌てる。

 

「え?あ、いや、その……気を付けます!」

 

「ククッ……そう固くなるな。あまり気を引き締め過ぎると悪影響だからな。ただ俺たちを空からサポートしてくれればいい。解ったな?」

 

「了解であります!」

 

「んおっと、まずは俺か」

 

アークエンジェルのカタパルトハッチが開き、ムウは会話を止めて己のガンダムをカタパルトの上に乗せる。

 

「カタパルトとの接続確認!出撃、どうぞ!」

 

「ムウ・ラ・フラガ、ランチャーストライクで出るぜ!」

 

カタパルトから射出されたムウのストライクはスラスターを焚いて空を滑空する。

アークエンジェルの甲板に着地する頃にはジョンのスカイグラスパーがガトリングスマッシュストライカーを装備して飛び立つ。

そしてアムロもまた、ガンダムをカタパルトの上へと歩みを進める。

志願して臨時オペレーターをする女性からの指示に従い、ガンダムを動かすアムロは先日出会ったアロハシャツを着ていた男を思い出す。

もしかしたら、あの部隊にはあの人がいるかもしれない。

そう思うと、無性にやりたくなくなる。

だが、それを振り払いアムロは決意を示すために、アムロは言う。

 

「ストライクガンダム、アムロ・レイ、行きます!」

 

戦場に大天使の腹から悪魔は降り立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二機のG?予備のパイロットでもいたのか?」

 

足つきから出てきた二機のモビルスーツにバルトフェルドは予想の違いに眉を潜める。

しかし、まだ誤差の範囲だ。

間に合わせの戦力強化でどうにかなるほど、自分達をどうにかできるとは思えない。

そんな余裕もあり、作戦の変更はなかった。

戦闘機とGが二機。

決して油断はできないが今の戦力でも充分対応可能だと思えた。

が、翼を生やしたG…エールストライクがビームライフルの代わりだろうか、テスターのマシンガンを手にしている。

それが火を吹いた時、バルトフェルドは口につけていたコーヒーを思わず吹いてしまう。

 

「ん"んっ!?」

 

「隊長!?まさか何かヤバイ事が!?」

 

吹いてからだんまりしているバルトフェルドに副官のダコスタは、まさかこちらの作戦を上回る動きを相手がしているのかと予測するが全くそんなことはなかった。

 

「………口内炎なの忘れてた」

 

「………………………」

 

どう表現すれば良いのか解らない微妙なコメディ空間とは裏腹に、戦場では銃弾による応酬が始まっていた。

 

「そこっ!」

 

「くっ……!カスッたか!?」

 

一機のバクゥの翼に被弾させたエールストライクは、その機動力で戦場をかきまわしていた。

 

「熱で精度が下がるのは変わらないけど……ビームライフルよりは弾切れを気にしなくていい……!」

 

そんなチョイスでテスターのマシンガンを持たせているアムロは、バクゥやディンをチクチクと攻撃しながらトドメの一撃をムウのストライクに任せる。

つまりは遊撃兼回避盾のストライクで相手を誘導、撹乱し、誘導された敵をメビウス・ゼロで培ってきた射撃の技術でムウが撃破を狙う。

ムウにモビルスーツ戦闘を経験させ、尚且つ安全性を考慮した作戦となっている。

ジョンのスカイグラスパーはアークエンジェルの護衛で、ディンを近付けさせないようにビーム砲で牽制するのみである。

無理に前に出せば必ず落とされると考えての配置だった。

この作戦の要はアムロであるのは変わらない。

負担も大きいこの戦法は経験値から見ればアムロしか適任はいないため、アムロは少しでも気を抜く事は許されない。

しかし、今のアムロは戦士として精神的に成長し、割り切った。

割り切ってしまった。

故に、隙あらばアムロはその銃口を知人だろうが容赦なく向ける。

 

「ま、前!?」

 

誘い出されたバクゥ二機がランチャーとエールに挟まれる形で追い込まれ、散開するがムウはアグニでしっかり機体の上半身を消し飛ばし、アムロはマシンガンを後ろの足に当てて破壊し、横転したところにバクゥの首根っこを掴み、動きを封じる。

 

「あぐっ!?も、持ち上げられている!?」

 

バクゥのパイロットは重力に引かれる方向を便りに現状を把握する。

が、彼が思考できたのはそこまでだった。

 

「や、野郎!?盾にしやがったッ!?」

 

バクゥから放たれたミサイルが盾にされたバクゥに当たり、爆発が起きる。

煙が去るとそこにはもう既にストライクの姿はなく、ミサイルを撃ったバクゥの真上に跳躍していた。

 

「アラート!?どこからだ!?」

 

「前に出過ぎるから!」

 

左手で抜刀していたビームサーベルをバクゥの胴体に突き刺し、機能を停止させる。

そこからまたジャンプで逃げると、そのバクゥは爆炎に飲まれる。

その光景を見ていたブリッジにいるクルーたちは己を鼓舞し、士気が上がる。

 

「アムロ君が、アムロ君があんな戦い方を………!」

 

不甲斐なさ、情けなさを持ちながらもその戦いにマリューもナタルも引き込まれる。

 

「本当に……本当にクルーゼやバルトフェルドに勝てるかもしれない、彼なら……!」

 

そんな淡い期待を寄せるナタル。

それを知るよしもないアムロは息をつく暇もなく、ストライクを常に動かし続ける。

マードックに叱られるな、と苦笑するも動きの遅いジンオーカーを発見してすぐにマシンガンで破壊する。

後ろからの砲撃も何となく避け、レールガン装備のバクゥにアーマーシュナイダーを投げてコクピット近くに刺さる。

 

「グカァッ!?……ッ!プラントに栄光あれぇっ!」

 

バクゥのパイロットは己の命日を悟り、特攻を仕掛けた。

しかし真横からミサイルとガトリングによってエールストライクにぶつかる前に爆発四散する。

 

「今のは危なかったんじゃないの?」

 

「ええ、助かりました」

 

実はシールドを投げて止めてた、とは言わないアムロ。

どのみち助けられた事は事実なので、感謝を伝えつつバッテリーの残量を確認する。

 

「バッテリーはまだ少し余裕がある……問題は推進剤か……!」

 

バッテリーの消費より推進剤が上回るという、前代未聞の状況を作り出していた。

どのみち噴射部分が焼き付いているので、アムロはガトリングスマッシュストライカーを要請する。

 

「ジョンさん!」

 

「わかった!ビーコンを送る!」

 

史上初の地上において、空中換装を始めるアムロとジョン。

シミュレーターで何度か練習はしているので、換装は滞りなく行われた。

ガトリングスマッシュストライカー。

それはガトリング砲による圧倒的高火力、殲滅力を積載したトリガーハッピーには堪らないパッケージである。

四つの大きいドラムマガジンとそれに繋がれたデカイガトリング砲とガトリング・スマッシャーユニットが、まるで新しい腕のように存在している。

腰部に近いガトリング砲の持ち手をマニピュレーターに保持させ、ガトリングユニットは回転を始める。

陸上戦艦【レセップス】から既に帰還信号を出されていたため、バクゥたちは撤退を開始するが少々、バルトフェルドの判断は遅かった。

 

「ガトリングフルオープン!ファイアーッ!」

 

「ミダレウツゼ!ミダレウツゼ!」

 

ガトリングユニットは上を向けられ、上空のディンは回避に専念するも追加にムウのアグニによる狙撃で更にパイロットの混乱を引き起こし全て鉛の雨によって鉄の肉塊にへと変化した。

バクゥらは残るガトリング砲で追い討ちされ、判断を間違えた者から犠牲となっていく。

 

「あ…」

 

残りの三機の内、隊長機がジャンプによる回避で着地狩りでスカイグラスパーからのビーム砲撃でビームは機体の胴体を貫通。

引火を引き起こして爆散した。

次はアムロと同い年くらいだろう少年の面影を残す青年。

 

「…なんで穴が……?」

 

避け損ねた一つの弾丸がバクゥのケツを貫き、コクピットまで到達する。

体に穴を開けた青年は、突然モニターに穴が空いて見える外の景色を不思議に思いながら炎に焼かれた。

最後の一機は後ろ足にダメージを負いながらも、何とか撤退に成功した……かに思われたが。

 

「こ、こんなときにゲリラがぁっ!?」

 

ゲリラ【明けの砂漠】による奇襲。

いや、漁夫は機動力の要である足を破壊されているバクゥには、ロケットランチャー一発でも足に入れば転倒させるには充分だった。

 

「た、隊長……ガッ!?」

 

転倒の衝撃で四肢がバラバラに弾け飛び、最後には沈黙した。

パイロットは頭部を激しく強打して脳内出血でゆっくりと死の世界に誘われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バルトフェルドは己の失態をはっきり自覚した。

少々、いやかなり胡座をかいてたツケがやって来たようだ。

そうバルトフェルドは感じた。

全滅した部下たちに内心で謝罪しつつ、バルトフェルドは最後に余計なことをしたゲリラに然るべき処遇をすべく静かな怒りをぶつける事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲリラ達は連合のGの強さに震撼していた。

畏敬と畏怖の視線がガンダムに向けられていた。

まるで神を崇めるかのように、彼らはその姿を見ていた。

しかし、その場には似つかわしくない少女とどこぞのベトナム帰りを連想させる男は違った。

その揺れる目には、複雑な感情がガンダムを見据えていた。

 

 

 




ジョンの階級については記憶が曖昧になってたのと【そうちょう】の「そう」の部分が3DSで書いているため、出てきてくれないからこの作品では伍長にしました。
違ってたら申し訳ない……

時間軸が少しズレたりとかしてるので、バルトフェルドが口内炎して吹いてたりとかしてもいいよね?って感じでコメディを添えてみた。
そして短気なお姫様の理不尽パンチを、アムロはどうするか……!?w





ガンダム伝説は始まった。
白い悪魔、狂戦士、悪夢……たった一人の少年に与えられるその二つ名はザフトの兵士に恐怖を与え、連合の兵士は頼りがいのある味方となる。
しかし、件の少年には目の前の出来事で精一杯であった。

次回、【共同戦線】!

伝説は始まったばかりだ、ガンダム!



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ep12 共同戦線

ボケーとランキング見てたら79位だった件。(7/21 0:02時点)
ええ……なんでぇ……!?(歓喜)
感謝を捧げるために更に投稿!無理はしてない!たぶん!

いけるなら一位取れるよう頑張りたいが、流石にガンダムを知る人も好きな人も少なめのこのご時世、中途半端な文才()と鳥頭もあってうまくいっても二位だろうなぁ……世知辛い……

話は変わって異世界おじさん、面白いよね。
流石は覇権アニメと言われる事はある!(無知)




 

 

アークエンジェルと明けの砂漠。

両者は共に守るものは違うが、しかし敵は同じだった。

 

「こちらは明けの砂漠だ。ここらのゲリラをしている者だがそちらと交渉したい」

 

この申し出にアークエンジェルと面々はどうするべきか、困惑する。

確かにザフトに敵対する勢力だろうが、所詮ゲリラでザフトから見ればテロリスト同然の存在。

しかし、彼らならば水の補給や消耗した弾薬等も補充できるのではと淡い期待も寄せる。

その判断をするマリューはどうするべきか、少し考える。

その結論は彼らと交渉することに決めた。

どのみちミイラになるか虎に首を噛み千切られるか、そんな未来しか見えない今、交渉せざるをえない。

 

「……解りました。今からそちらへ向かいます」

 

若干、クーラーの効いたアークエンジェルから暑い砂漠に出ることに気だるさがあったが。

 

「……」

 

その後ろでナタルは軍紀違反だと言いたい気持ちはあったが、こんなところで死ぬよりはマシだと思い直した。

任務遂行以前に戦わず飢え死にするなど、恥でしかない。

そんな風に多少の妥協をできるようになったナタルは、確かに軍人として成長していた。

 

 

 

 

 

 

 

アークエンジェルの影になるところにて、交渉をすることになった。

アークエンジェル側としてはこの交渉は捨てがたい物なので、明けの砂漠側は有利なポジションを持っているがとある爆弾を抱えている。

まあ、それが早々バレるとは思えない明けの砂漠のリーダー、サイーブはそんな不安を巧妙に隠しつつアークエンジェルの艦長、マリュー・ラミアスに視線を向ける。

 

「まずはモビルスーツのパイロットを降ろして貰おうか。交渉はその次だ」

 

「……了解したわ。フラガ大尉、アムロ君、聞いてたわね?」

 

「了解っと」

 

「了解です」

 

ストライク二機のコクピットから出てくるのはパイロットスーツを着込んだ二人。

律儀にこのクソ暑い中、機密を考えてヘルメットも被ったままだがどっちもすぐに耐えかねて仕方がなくヘルメットを脱いだ。

熱中症になってはこれからの戦い、厳しくなる中そんなしょうもないことで戦力低下はアホしかやらない。

それはさておき、アムロがヘルメットを外すと明けの砂漠の一人らしき少女が彼に突如として近寄る。

 

「お前……なんでこんなものに乗っているんだ!?」

 

そんな言葉より先に平手打ちがアムロの頬に決まりそうになる………が、アムロは手に持ったヘルメットでガードした。

そこそこ堅いヘルメットの部分に手をぶつけてしまった少女は「あたっ!?」と軽く悲鳴をあげて痛みの残る手を擦っていた。

 

「カガリ、それは理不尽過ぎだ」

 

「カガリ……すまん、うちのもんが。短気なもんでね…」

 

「うっ……サイーブ、キサカ、わ、私は……」

 

そんな光景を見せられているアムロは、まづカガリの暴力に殴られる筋合いはないと静かに怒り抱く。

が、よく見るとカガリと呼ばれた少女はヘリオポリスで見たあの少女だった。

 

「あっ……君はヘリオポリスの……!?」

 

そんな呟きはタイミングの良いことに突風でかき消され、本人やカガリのお目付け役らしいキサカという男の耳にも届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

交渉はそれほど時間もかからずに成立した。

明けの砂漠本拠地で次の戦闘の作戦を立てるのと同時に、それまでにバナディーヤで水と食料等の補給をする準備もしていた。

だが、そんな彼らに最悪の報せが届く。

 

「ま、町が!町が焼かれている!」

 

「何!?」

 

明けの砂漠のメンバーの大半はその町の出身である。

故に、故郷が焼かれたと聞かされて多くの者が大きく動揺する。

アークエンジェルからも救援を送ることを決定し、ジョンのスカイグラスパーが先行し、ムウのスカイグラスパー二号機も続く。

そんな彼らが目撃したのは恐らく生存は望めないだろう程に炎で燃え盛る町と、その近くの丘でこちらに手をふる町の人々の姿だった。

事情を聞くに、バルトフェルドが事前に町を焼くことを通達し、そして避難後にこうして焼かれたと聞かされた明けの砂漠のメンバー、特に若い者は復讐と怒りに燃え上がる。

それが自惚れであることも知らずに。

 

「やられたらやり返す!でなきゃ舐められたまんまだ!リーダー!攻撃の許可を!いや、無くてもいく!」

 

「いつまでも舐め腐りやがってぇ……!」

 

サイーブはそんな彼らを止めようと説得しようとするが、結局止められず自分までも行くことになった。

そんな彼らに更に油を注ぐような事をムウは言ってしまう。

 

「まだ優しい方じゃないの?あの砂漠の虎が皆殺しにせず、町だけ焼くんだから」

 

「ちょ!?フラガ大尉ッ!?」

 

ジョンはそんな彼に馬鹿野郎とぶん殴りたい気持ちを抑えて注意するが、もう既に遅し。

冷静さ所か更に怒りを増長させて彼らは行ってしまった。

その報告にマリューはこめかみを押さえながら、アムロに出撃命令を出すのであった。

 

 

 

 

 

 

結果から話せば明けの砂漠たちの大半が死ぬことになった。

脳筋プレイなバズーカによる攻撃など、バクゥやジン等のモビルスーツからすればただの小石による投擲で、重要な部分でもない限りモビルスーツの装甲を貫く事など不可能だ。

宇宙世紀に存在した固定砲台の【リジーナ】でもあれば、ある程度対抗は可能だろうが……どのみち無いものねだりはいくらしても何も出ない。

ジープから放たれるバズーカは予備機らしいバクゥ二機から見れば当たっても痛くもない(整備兵には文句を言われるが)攻撃だ。

それに直線的にしか飛ばないので、回避も簡単で、バクゥが回避する度にジープが宙を舞って死傷者が出るバカみたいな光景が起きていた。

ストライクの到着が遅れていれば、カガリやキサカも含めて死ぬか大怪我を負っていた可能性は非常に高い。

何せ、余計な手出しをされてしかも戦意のないものを殺した明けの砂漠には今のバルトフェルドは容赦はない。

普段の地雷を使った戦術も使わずに勝てるなど、本当にただの自惚れでしかないのだ。

モビルスーツが現段階で最強の兵器科である由縁である。

ストライクの出現でバクゥはストライクを攻撃することもなくその場を離脱し、無謀な復讐劇は終わりを迎えた。

そんな彼らを、アムロは軽蔑していた。

戦う覚悟を決めたアムロからすれば、守りたいものがあるくせに勝手に死んだのだから。

明確に守りたいものがないアムロにとっては羨ましくも、存分意義を見出だせる今の環境でしかアムロに居場所はない。

複雑な感情が彼の中を回り続けるが故に、目の前で親しい者の死を悲しむ少女や明けの砂漠のメンバーに罵倒を浴びせる。

 

「あなたたちは……死にたいだけ何ですか?そんなバズーカと車一つで勝てると思ってたんですか?」

 

「お、お前!?人が死んだのに、何様だ!?」

 

「貴方達は守りたい存分がいるのに、自分から手放しているようにしか見えない。はっきり言って無駄死にですよ、こんなの」

 

カガリは怒り狂う。

人を人だと思わないような発言に、また暴力を振るおうとする。

しかし、そんな彼女の肝を冷やす言葉がアムロから投げかけられる。

 

「お前ッ!」

 

「何となくですけど貴女はどこかの良いところのお嬢さん何でしょう?学がある筈なのに、そんなことも解らない癖に殴られる筋合いはない!」

 

「ッ!?」

 

飛び出した拳は止まらずアムロに突き進むが、アムロは回避して殴るために踏み出された足にめがけて足を引っかけて転がす。

美少女の顔が砂とキスして同時に砂が鼻や口に入って咳き込むカガリを余所に、アムロはストライクのコクピットに戻る。

このとき、初めてカガリは赤の他人から暴力を振るわれた。

その事実にカガリはその後しばらく呆然とするが、それは余談だろう。

一人の少年が背負うには重すぎる今と覚悟を抱えるアムロと、覚悟もなくただ祖国の理念を唱える現実を知らぬ少女カガリ。

相対する二人の未来はどうなるのかは、今はまだ解らない。

 

 

 

 

 

 




自惚れって怖いよね……どうやら自分はそれによる失敗を極度に恐れているっぽい。

ちなみに読者の皆様はクロブなりマキオンなりやってますかね?
自分は家庭版のマキオン(時折クロブ)やってますが、上手い人のテクニックが羨ましい……単調な申年格闘と運任せでしか少佐に上がれない無能はX1やシャイニング、バエルを使えても降格と昇格の狭間しか生きられない……
まあ、時折ガチのアホンタラがいるからストレス溜まるぅ!
というかマジでシャフのシステム修正して……なんで金プレの間に挟まれないといけないの……?
なんで黒とプラチナに混ざるの……?運営仕事しろ(諦観)
閑話休題。ということで次回予告行くぜ!





戦争は人間である限り、永遠に離れられない呪縛であった。
少年と少女は虎に問われる。
戦争はどうしたら終わるのか?と。

次回、【バナディーヤ】!

戦争の最中で、君は何を見る?




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ep13 バナディーヤ

感想もらえて嬉しい……嬉しい……!
それと誤字報告ありがとうございます!
ようやく少佐星1から上がれたし、チャンピオンも取れたし気分が良いので投稿!

というか79位とかちょうど一年戦争開始の年だし、放送年も確か79年だったはず。
縁起が良いのか悪いのかは解らないけど、完結目指すぞぉ!




 

突然だが、皆は後方支援や補給部隊と聞いて思い浮かべるのは何だろうか?

聡明な方なら食料や弾薬を運ぶ、重要な役割と理解しているだろうが、世界は広く理解どころか曲解しているバカもいる。

例えばサボリ魔だの無駄飯食らいだのと、その役割の重要性を理解できない者はそんな罵倒をする。

しかし、確かにそんな人々もいるので否定はできないだろう。

だがだからと言って後方支援なり補給なりを疎かにすれば、軍は崩壊しそれを従える国は滅ぶだろう。

後方支援とは、決して無能な者には任せられないとても重要な役割だ。

 

さて、話は戻してアークエンジェルの事を話そう。

件の後方支援を貰うことができず、孤立しているアークエンジェルは連合軍の上層部からは捨て駒か連合軍のこれからを切り開く英雄的な存在という認識に別れている。

【ブルーコスモス】党首、ムルタ・アズラエルはアークエンジェルを英雄的存在として見ていた。

流石に支援部隊を送る気にはならないが(道中で高確率で落とされるだろうから)インド洋に出ればどうにかできるとアズラエルは踏んでいた。

しかし、問題は腐りきっている上層部の軍人達で彼らの多くがアークエンジェルからデータを吸い出せるだけ吸い出してとある作戦で捨てる気でいる。

アズラエルとしては気が狂ったかのような発言にしか聞こえないが、ストライクのパイロットが実はコーディネーターなのではないかとあらぬ噂を立てられた事でアズラエルのストレスは限界まで溜まっていた。

真実を知る彼からすれば、まだ有効活用ができるというのに捨てようとする愚か者にしか見えない。

アズラエルはアムロ・レイのプロフィールを改めて読む。

 

「テム・レイ博士の一人息子にして才能を継ぐもの。今のアレはもう利用価値がないですからねぇ……パイロットでなくとも、彼は有用でしょうね」

 

惜しいことに、そんな彼をくだらん自爆攻撃で殺そうと言うのだから呆れるしかない。

できる限りお膳立てはするつもりだが、アズラエルにも限度はある。

今以上の活躍で馬鹿共の認識を変えてくれることを祈るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、アムロは微妙な関係のカガリとナタル、キサカと共にバナディーヤにへと訪れていた。

少ない軍資金引っ提げて明けの砂漠とアークエンジェル組による物資調達が始まるのだが、アムロとカガリに関しては別の話である。

シンプルな話、二人の仲を回復させる為に二人で行かせたのだ。

キサカとしては恐らくあのお転婆娘の事だからアークエンジェルに乗り込みそうだと察してその為に関係性を少しでも改善しようと苦慮した結果である。

マリューとしても彼の真意は知らぬものの、これから協力しあってバルトフェルドを倒すのに二人の不仲で敗北する等と言う意味が解らない事で負けるわけにはいかないのだ。

それにそれが起因で連携が上手くいかないなどとなったら目も当てられない。

故に、こうなることは必然であった。

当人達にとってはいらぬ配慮なのだったが、小遣いを貰ってケバブを食べようとはしゃぐカガリに引かれてアムロは仕方がなく彼女に付いていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は困惑していた。

何でこうなっているんだ?

サングラスをかけたおじさんとカガリがケバブに合うソースは何かと論議しているが、僕としては凄くどうでもいい。

正直な所、美味しければ良いのでは?と思うのだがヲタクをしていた自分なのでもしそんなことを言えば更に面倒な事になるのは間違いないので、ここは黙ることにする。

しかし、このおじさん、どこかで見たことがある……

どこだったか思い出そうとするが、おじさんとカガリがソースの容器を握り締めてしまい、僕のケバブはヨーグルトとチリのごっちゃになってしまったのだ。

初めて食べるのでそれほどショックではないが、折角出してくれた物だし……そんなわけで僕は味覚がおかしくなりそうな赤と白のケバブをかじった。

味は……なんとも言えないが不味くはない。

勿論、個人差があるだろうが……

 

「そこそこいけますね、コレ」

 

そんは感想を抱いた。

 

「まあ、それもまたアリ、かな?」

 

「ムムム……ヨーグルトソースが一番なのに……」

 

おじさんは潔く引き、カガリはまだちょっと引きずっているもソースのごっちゃ混ぜを食べさせてしまった事に罪悪感を持ったのか、その言葉に力はない。

そんな穏やかな雰囲気もすぐに終わりを迎えてしまった。

何か、僕の脳で閃く。

 

「ッ!?」

 

僕は反射的に護身用に持っていた拳銃のセーフティを外し、持ち手を持つ。

そんな僕の豹変にカガリは不思議そうだが………

 

「伏せて!」

 

「伏せろォ!!」

 

僕とおじさんの声が同時に店内で響く。

机を遮蔽物にするために倒し、店内で姿を現した覆面姿の男が「青き清浄なる世界の為にィッ!」と叫ぶのと同時にその手に持つライフルを乱射し始める。

店内のあちこちで関係のない客が悲鳴をあげ、銃声が鳴り響く。

どうやらグループ犯……というかテロリストだ、こんなの。

僕はセーフティを外した拳銃で嫌なざわつきを感じる場所に鉛弾を撃つ。

そこには武装していたテロリストで、各々の武器を取り出そうとしていた所だったようだ。

まあ、その前に彼らは頭や胴を撃ち抜かれて倒れたが。

いつの間にかおじさんも銃を取り出して応戦し、他の所からも武器を持った兵士や変装していたらしい兵士が発砲を開始し、数分後にはテロリストは全滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、アムロはおじさんと呼んでいた男とどこで出会ったかを思い出した。

しかし、同時にそれは彼の庭に入り込んだ後だった。

 

「まさか……貴方が……!?」

 

「アンドリュー……バルトフェルド……!」

 

戦闘後、カガリの服がケバブのソースまみれになったこともあり、バルトフェルドが気を効かせて彼女の代わりの服を与えるために屋敷にへと招待したのだ。

そしてようやく気付いたアムロと正体を悟ったカガリによって、目の前の人物が一体どんな男なのかを知った。

 

「砂漠の虎………君達の間じゃそういう風に呼ばれているんだろ?まあ、今日は僕のケジメをつける為に厄介になってくれ。まずは君のその服を着替えないといけないからね。アイシャ!いるかぁ?」

 

そんなことを言われても警戒を止めれないのは戦った敵だからだろう。

いや、少なくともアムロもカガリも対面で戦ったことはない。

しかし、彼の戦術なり戦略なりで大きくこちらを消耗させられたり、殺された仲間がいるのだからそう簡単に打ち解けれる筈がないだろう。

それを見越してか、バルトフェルドもそんな反応に落胆する気配はない。

カガリはアイシャという美人に連れていかれた後、バルトフェルドはアムロに問い掛ける。

 

「君はこれを見て、どう思うかね?」

 

「……【エヴィデンス01】、宇宙クジラですか…」

 

「ファーストコーディネーター、ジョージ・グレンが宇宙探査の結果で見付けた、地球外生命体の発見。これを切っ掛けに宇宙開発が大きく発展した」

 

アムロは彼の問いに答えようと思ったが、彼の真意は別のところにあると直感が囁いた。

それに従ってアムロは本題を問う。

 

「結局、本当は何を言いたいんですか?」

 

それを聞かれたバルトフェルドは「我慢弱い男はモテないぞ?」と、溜め息をつきながらもジョークを飛ばす。

とはいえ、一々下りを喋るのもめんどくさいと感じたのかバルトフェルドは本命を目の前にいるアムロ少年に問う。

 

「戦争は、どうやったら終わりだと思う?」

 

「どっちかが勝ったら終わりだろう?子供でも解ることだ」

 

その問いに一つの答えを出したのは着替え終わったのだろうカガリだ。

アムロはカガリがドレスに着替えているのを見て、一瞬思考を停止したがすぐ隣に少し嫌らしい笑みを浮かべるアイシャを見て何となくカガリの苦労を悟る。

話は戻してバルトフェルドはカガリのその答えに更に問い掛ける。

 

「では、どうやったら戦争が終わる?戦争にはルールなどないに等しい。どっちが勝ったり負けたりしたら戦争が終わるなんて、そう簡単な事じゃあない」

 

「こ、小難しい事を……!」

 

カガリはその問いかけに混乱しかけるが、そこにアムロが返答をする。

 

「徹底的に潰すか、妥協するか。でもこの戦争は潰しあう事しか考えられていない。僕としては何でも良いから戦争なんて終わってほしいですけどね」

 

その答えにバルトフェルドは少し満足そうな顔を浮かべる。

 

「確かに君の言う通り、どっちかが滅ぶまでこの戦争は続くだろうね。勝ち負け関係無く敵を殺す今、次に君達に会うときは殺し合う運命だ。あ、コーヒー飲むかい?勿論、毒なんて入れてないぞ?」

 

「じゃあ砂糖を少しだけ。……僕はもう貴方達を殺すことに迷いはありません。割り切らなきゃ、僕は死ぬ。貴方も同じでしょう?」

 

「フフ……やはりいい目をしている。どうして君が明けの砂漠なんかと共にいるのかは知らないが、少なくとも生きていることには安堵したよ」

 

お互いにコーヒーを飲み、気分を落ち着け喉を潤す。

そして少ししてバルトフェルドはこの会話を終わり、彼らを送ることに決めた。

 

「久しぶりに、コーヒーの良さを解ってくれる人と会えて良かったよ、少年」

 

「別に好きじゃないですよ……」

 

「何だか負けた気分だ………」

 

アムロは苦笑し、カガリは敗北感を感じながら帰路についたのだった。

 

その後、心配していたキサカやアークエンジェルの面々から叱られたのはここで話すような事ではないだろう。

 

 

 

 

 

 

 






バルトフェルドとアイシャの関係ってマジで難しい……
というかマジで宇宙クジラの存在意義って影どころか形も見えない。
なので、宇宙クジラの謎を種死後にやってみたいなと思うこの頃。
やるならSAN値チェックとメンタルチェックしとかないとなぁ……どのみち気分が落ちる時は落ちっぱなしだからどうしようもないけど。

とはいえ、種死後を描く人はほとんどの人はエピローグくらいしか書いてないと思うのでアムロというニュータイプの存在やムウのようなサイキッカー(?)の存在意義を確立させてみたいですね。
てな訳でやる気がなくなってなければ挑戦してみます!




戦いの火蓋は切られた。
砂漠の虎と白い悪魔はその戦いに何を見出だすのか。
戦いの最中、己の信念に従い戦うものたちの激闘が今、繰り広げられる事となる。

次回、【少年の憧憬】!

その悪魔の首を掻き切れ!ラゴゥ!





そして思い付いた胃もたれする茶番。

【Fate/GGOより】

作者「ガンダムとの二次創作って無いよなぁ……結構合うと思うんだけれども」

ぐだ男「ガンダム知らん人が多いし、書いてもすぐにエタるよ………それに宝具がデカイし」

作者「我輩はゼロを中盤の後半、原作マンガをコンプ、アポクリフォを少しだけだから、原作ゲームをよく知らない俺が書いても多分途中で萎えるし………ダメだぁ…」

ぐだ子「あっ、なんか変なの引いた」

作者「えぇ………(困惑)」

ぐだ男「遂に壊れたか、召喚システム……!」

マクギリス「純粋な力こそが世界を統べる!さあ、バエルの元へ集え!」

偽マフティー「カルデアに反省を促しに来ました」

オルガ(鉄)「俺は鉄華団団長……オルガ・イツカだぞぉ……!」

オルガ(種)「殺しちゃって良いんだろぉ!?」

ゾルタン「撃っちゃうんだよなぁ、コレが!?」

スペガン「………ここはどこなのだ?」

グフのパイロット「すみません、ここってトリントン?え?カルデア!?」

自爆王子「……任務了解、これより特異点の破壊を開始する」

刹那「俺がガンダムだッッッ!!!!」

ヅラ「トゥー!トゥー!ヘァー!モウヤメルンダッ!」

ぐだ子「……脳が震える」

作者「その扉は開いちゃダメだ!」

ぐだ男「ちょっ!?ギルガメ!?スペガンと張り合うな!?イスカンダルは何マッキーと手合わせしてんの!?」

ぐだ子「……ジル、オルガをつつかないで、彼のLPは一なのよ……」

作者「全人類に反省を促そう。よし、ガンダムが一番最適だな(錯乱)」

偽マフティー「おう、そうだな」

マシュ「………所長ー!」

オルガ(マリー)「止まるんじゃねぇぞ………」

この後、仲居さんに全て元通りになったとかならなかったとか。


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ep14 少年の憧憬

中々息が続かない日々。
でもガンダムを愛してるから頑張るさぁ…!
バエぴょい伝説でも見ながらモンハンXXをプレイする日々に戻りそう………

遂にバルトフェルドとの決着!
というわけでどうぞ!



 

 

バルトフェルドと別れた後、何事もなくキサカらと合流したアムロたち。

彼らから心配をかけてしまったことに謝罪しながらも、バルトフェルドと会話をしてきたと告げた。

勿論、それに驚く一同だがアムロにとってはバルトフェルドを男として越えるべき存在として見ており、また憧れでもあった。

 

「僕には眩しいくらいにあの人は人として、男らしく生きている。見えていたものは少ないけど、解るんだ」

 

というのがアムロの弁である。

それを聞いたムウは思わず自分のことを聞くが、ムウはショックで一日ほど気落ちしていたのでなんと言われたのかは彼の名誉のために黙秘しよう。

それはさておき、ガンダム二機の最終調整とスカイグラスパー二機のストライカーの装着を終えたマードックら整備組とアムロらパイロット組。

作戦時間は刻々とやって来ていた。

とはいえ、アムロ達がするのはバルトフェルドらが来るのを待つだけだが。

しかし、緊張の糸は張り詰められており明けの砂漠達もまた、ジープの上で各々の得物を構える。

そして……………到着を告げるミサイルとそれに混ざって飛ぶ弾頭が、敵の進行方向に地雷を設置していた地雷源に着弾する。

の、その前にその弾頭が展開して散弾を巻き散らす。

そう、弾頭の正体は榴散弾だったのだ。

おかげで苦労して埋めた対MS・MA用の地雷のほとんどが役目を果たせずに派手に爆発する。

レセップスのブリッジで最後になるかもしれないコーヒーを楽しみつつ、その目には虎を連想させる鋭い眼光が宿っている。

 

「帰る邪魔はしないとは言ったが、追跡はしないとは言ってないからね。これは戦争だ。とことんやらせてもらおう!」

 

これから殺すかもしれない二人の少年と少女を脳裏に浮かべ、ニヤリと笑む。

それはいたいけな二人を利用した後悔か、それとも憐れみかは彼とその隣で共にバルトフェルド謹製のブレンドコーヒーを飲むアイシャにしか解らないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ!やられた!」

 

サイーブは舌打ちしながらも、ジープの運転手にゴーサインを出して予備の地雷源の方へ移動を開始する。

アークエンジェルはミサイルの迎撃で忙しく、明けの砂漠を気遣うことなどできない。

しかし、サイーブはアムロ少年の予備の地雷源の必要性が立証されたことに舌を巻く。

まだ戦いはじめてほんの一ヶ月くらい、いやそれさえ満たないだろう少年が相手の作戦を見抜いている事に驚くのは当たり前だろう。

まあ、もしアムロにそれを言えば「死にたくないから必死に考えているだけですよ」と言うだろうが。

件のアムロはガンダムに装着された脚部のホバーユニットの具合を確認しながらカタパルトを使用せず、出撃しているが。

アークエンジェルの射程外からの攻撃、ということは既にこちらの位置が知られているということだが、実のところニュートロンジャマーによって一部の通信方法以外では遠距離の連絡を取れない上、レーダー等も利用できない。

そのため、原始的な実地に行く現地調査による報告が主だがバルトフェルドが追跡させたバイクマンが最近開発され実用化されたニュートロンジャマー下でも通信できる通信機を利用して原作の戦闘時間よりも早くバルトフェルドらはアークエンジェルを襲撃していた。

そのため、現在は夜明けの少し前。

まだ薄暗い砂漠で、決死の戦いが始まっていたのである。

バルトフェルドは先の戦いで侮れぬ敵として、獲物を確実に仕留めるために前回よりも多くの戦力を揃えた。

これで敗北すれば………恐らく、いやストライクというGは戦場の悪魔としてザフトの士気に大きく影響する。

故に、バルトフェルドはここで確実に倒すと決めた。

ディン20機、バクゥ26機、陸戦型ジン14機、ジン・オーカー10機、新型MA1機。

ついでに宇宙からの支援で修復を完了したデュエルとバスター。

これがバルトフェルドがジブラルタルの支援を最大限に活用して集めた戦力であった。

 

「敵機多数!これは……っ!」

 

「諦めないで!アムロ君たちが何とかしてくれる!私達は私達のできることをするの!」

 

そうマリューも激を飛ばす。

しかし、彼女自身も内心では不安で一杯であった。

だが、アムロたちという希望がマリュー達を支える柱であった。

 

 

その件の彼らは…………

 

「うおおおおおっ!!」

 

「射撃はゼロでもしてたんでね!外す方が難しいぜッ!」

 

「ひぃぃ……!」

 

三者三様の有り様である。

アムロはホバーユニットを駆使してガトリングガンを両手にバクゥを狩る。

一発、被弾すれば後は蜂の巣になるバクゥ達は既に何機もの犠牲を出していた。

ムウは慣れてきたのもあるのか、シュライクストライクで空を自由に飛び回り、ビームライフルで確実にディンを落としていく。

それについていく様に、ジョンのスカイグラスパーも装着したランチャーストライカーのアグニやミサイル等でディンや地上のジンを攻撃する。

ディンはともかく、砂漠という悪路で歩くジンは足腰周りが強化されていても動きが遅くなるのは必然である。

そのため、ジンのほとんどが撃破は免れるも被害は受けてしまう。

 

「そこだなっ!」

 

死角からのバクゥの射撃にガトリングスマッシュストライカーを装備したガンダムは、ガトリングユニットを後ろへと砲塔を反転させ、ガトリングの餌食にする。

 

「は……?」

 

訳もわからず弾の雨に飲まれたバクゥを余所に、他のバクゥはガンダムの首を捕らんとばかりに新装備の二連装ビームサーベルを展開しながら近付くバクゥ。

それに若干手間取るアムロはイーゲルシュテルンで牽制しつつ、通り過ぎ際にその横っ腹にヤクザキックを叩き込む。

 

「グオオッ!?」

 

横からの衝撃にパイロットは吐き気を感じるが、耐えて機体を立て直すが………

 

「頂きッ!」

 

空にいるガンダムの攻撃で爆散する。

激しい攻防の末、バルトフェルドは次の手を打つことに決めた。

 

「ダコスタ、本命を出す。指揮は任せるぞ」

 

「了解です!」

 

虎がついに動き出した。

それと同時にその予兆を、アムロとムウは感じとった。

 

「「ッ!!虎が来るッ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが戦場の風……とでも言うのかね?」

 

「それを私に聞かれても解らないわよ。でも、ガンダムを倒す為に頑張りましょ?」

 

【ラゴゥ】、バクゥの発展機でありエースであるバルトフェルドの機体。

ビーム兵器を標準装備し、複座式になるが射主と操縦者のコンビネーションによる戦闘力の高さはクルーゼ隊員でも一人では荷が重いだろう。

オレンジに塗られた虎の意匠持つラゴゥは、高台から奮闘するガンダムを見下ろす。

そして、狙うのは…………

 

「まずは……地上のガンダムッ!」

 

「来たか……!ムウさん!アークエンジェルを頼みます!」

 

「任された!」

 

「ジョンさん!エールストライカーを!」

 

「わかった……ってええ!?」

 

ジョンにエールストライカーを要請するが、ジョンの突然の驚愕にアムロは困惑する。

 

「あの嬢ちゃんが!?」

 

「カガリなのか!?」

 

ジョンとブリッジとの会話によると、そうらしい事にアムロは少し苛立つもカガリがストライカーの交換をやって見せると意気込むので、一か八かやることにした。

 

「ボタンを押して軌道を合わせるだけでいいんだ!ミスらないでくれよ!」

 

「私だってシミュレーターでやってみせたんだ、やってやるさ!」

 

密かにシミュレーターで練習していたカガリの腕を信じて、アムロは換装シークエンスに入る。

ガトリングスマッシュストライカーはバッテリーに余裕はあるものの、その消費の早さからすぐに弾を切らす。

実際、現時点で弾切れを起こしており残るは備え付けではないガトリングガン一丁しか残っていない。

結果から言えば成功した……が。

 

「うわぁっ!?」

 

「カガリ!ちぃっ!」

 

一足遅れてラゴゥの狙撃で翼を被弾したカガリのスカイグラスパーはあらぬ方向へ飛んでいき、不時着するのであった。

勿論、それを見ていられる程アムロに余裕はなくラゴゥとの近接戦闘に入る。

 

「でゃっ!」

 

「うおっと、その危険な武器は捨ててもらいたいざねぇ…!」

 

ビームサーベルで牽制に振り回すアムロだが、ラゴゥは巧みに回避してビームを撃ち込む。

アムロは回避するも、ラゴゥのビームサーベルが迫り、シールドで防御する。

そして、遂に誰が乗っているのか、バルトフェルドは知る。

 

「これが……虎の力……!」

 

「接触回線……!?いや、この声は…!」

 

たまたま開いた接触回線から聞こえたのはアムロの苦悶の声。

バルトフェルドは、いやアイシャもまた意外なパイロットに驚く。

 

「ふっ……君だったか。迷子の少年」

 

「なっ!?……接触回線が!?」

 

アムロも話しかけられてようやく気付く。

双方共に望まぬ再会シーンを迎えたが、しかし両者に余計な話し合いはない。

本来の主人公のように殺害を拒否する甘さを見せることなく、アムロはただ一言。

 

「僕は……僕は貴方に勝ちたい!貴方を越えたい!」

 

「ほう……ならば、戦士として全力を持って応えよう!」

 

「あらあら、男同士の熱い因縁?妬けちゃうわね」

 

男二人に呆れつつ、しかし己もまた全力を尽くす為にラゴゥのビームキャノンの銃口をガンダムに向ける。

それに気付いたアムロは撃たれる前にイーゲルシュテルンでシールドからはみ出て見えるビームキャノンの一つを破壊する。

 

「させるかっ」

 

「アンディ!」

 

「おう!」

 

失敗したと悟るとシールドを駆け登り、宙返りしなざら残るビームキャノンで乱射する。

下手に動くと当たる故に、シールドを構えたまま硬直するガンダムを好機と見たか、近付いてきたジン・オーカーがキャノン砲をガンダムに向けるが………

 

「アムロはやらせない!」

 

ジョンの割り込みでジン・オーカーのバックパックにイーゲルシュテルンがヒットする。

推進剤が引火してジン・オーカーはあえなく炎に沈む。

降りてきた小鳥を喰らおうと今度はバクゥがジョンのスカイグラスパーを狙うが、アークエンジェルからのミサイル攻撃に揉まれた挙げ句、予備の地雷源に飛び込んでしまい明けの砂漠に携帯用バズーカでコクピットしかり、関節部を撃って破壊する。

 

「ライフルの弾が切れた!ジョン!ランチャーに換装後、俺にもエールストライカーを!」

 

「了解!」

 

ムウの方ではバッテリー、ライフルのエネルギー共にレッドゲージ。

ランチャーに変えたムウは、アグニと残弾の少ないガトリングを使いつつ粘る。

冗談混じりにムウは「ジョンの奴!アラスカに着いたらパシリにしてやるからな!」と叫ぶが、その抗議の声はジョンに届いていない。

場面を戻り、ガンダムとラゴゥの一騎討ちは周りの戦いが終盤へとなったように、こちらも同じだった。

 

「はぁ…!はぁ…!」

 

「手強いな……」

 

どちらも呼吸を荒げて相手を見据える。

どちらも飛び道具は尽きた。

後は………その手に、その口に持つ輝く剣のみ。

最後の一手は、繰り出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





というわけで決着の行方を次回に持ち込むクソ野郎です。
4300文字も書いたから許して……駄目?
感想、よろしクレメンス(意味不明)







虎との刹那的な戦いはアムロにとって大きな成長と戦いの厳しさを理解させてくれた。
そして紅海に出たアムロたちは、追撃のザフト軍に苦戦を強いられる事となる。

次回、【血に染まれよ紅海】!

少年の明日を切り開け!ガンダム!



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ep15 血に染まれよ紅海

少しカッコつけ過ぎかな、サブタイトル………
そして今日もまた、将来を考えろ、やりたいことを見つけろと言われて脳破壊ノルマを達成。
死にたい。

それはさておき投稿!
今回は短いけど次回は番外編だから許して……!



 

 

 

紅海に出たアークエンジェルはそのまま直進して、インド洋の上にいた。

アークエンジェルのデッキにて、アムロはあの時の戦いを思い返す。

バルトフェルドの描こうとした刃の軌跡を肌で感じとり、その結果から反射で行ったコクピットハッチを破壊されたもののカウンターとしてその胴体を叩き斬った。

外から流れてくる熱気の中、アムロはその死に際を直と見た。

 

「………バルトフェルドとアイシャさん……二人乗りだったのか……」

 

何故、そう解ったのかは解らない。

だが知ったのだ。

彼らが乗っていたことを。

死の間際に何を思っていたのかという事でさえ。

 

『アンディ!』

 

『アイシャ!』

 

爆発でコクピットごと焼かれる直前、二人は抱き合っていた。

幻視かと思ったが、しかし妙にリアルでまるで目の前にいるかのようなダイレクトな感触のようなものはアムロがそれを幻視とするとしても何故見えたのか解らない。

そんな自分に恐怖を抱く。

それ以前の戦いだってそうだ。

誰かに導かれるように、もしくは後ろに何がいるのか理解しているように動いた。

そんな自分に恐怖を抱かないのは余程の楽観主義か脳筋くらいだろう。

自分が何者なのか、それを支える土台が崩れかけていた。

だが、それを許さぬ様に海から、空からザフトがやって来る。

いつの間にか残りのガンダムも集結しており、アスランとまた戦う日々である。

しかし、アムロは友との戦いを楽しみにしている節もあった。

アークエンジェルには娯楽がほとんどない。

精々、趣味の会話で盛り上がるくらいしかないからアムロは機械をいじるしか戦闘のない日はすることがない。

とはいえ、グッスリ眠れるのだからそれはそれで良いとは思うアムロ。

それはともかく、アムロは互角になってきたアスランとの戦いを純粋に楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあああっ!?」

 

「ニコル!?」

 

「だっ、大丈夫ですっ!グゥルがあれば、まだ……!」

 

「なんなんだコイツ!?俺達を簡単にいなして……!?」

 

「なっ!?弾幕の間をすり抜けるとかそんなのアリかよ!?」

 

今日もまた、紅海からインド洋へ出る直前にザフトから襲撃を受けたアークエンジェルは、ひたすら必死に弾幕を張り、たった二機のモビルスーツと二機のスカイグラスパーがモビルスーツ相手に激戦を繰り広げる。

紅海にはもう数えきれない程のディンやグゥル等の残骸が海洋を汚染し、そしてザフトの地上部隊の戦力は削られていく。

次第に増援を送るのを諦めている次第だ。

ザフトは連合と比べて圧倒的に数で負けている。

質では今はザフトが勝っているが、すぐに連合も捕獲したモビルスーツやG兵器のデータでモビルスーツを取り揃えるだろう。

そうなるとザフトは決戦兵器を使わざるをえない。

ただでさえ、戦争によって差別は殲滅という狂気に捕われている。

ソレが人間の母なる星に撃たれたら、そこに住むものたちも止まることはない。

そして世界の終焉に喜ぶのはただ一人………いや、死しても笑うだろう人によって生み出された強化人間という存在もまた、世界の終わりに笑みを浮かべるだろう。

その未来は、その起因の一つとしてアークエンジェルが握っていた。

ガンダムの悪夢は、伝説はガンダムが生まれる限り、続く。

この世界が求めているのかもしれない。

ガンダムという無機質の悪魔が戦争を終わらせる事を。

その選ばれたガンダムは今、選ばれなかったガンダムたちと戦っている。

神話のように語ったが、しかしこの戦いはまさに神話でなければ人の限界に近い戦いを人々は理解できない。

闇に葬られるのは、神話の必然とも言うべきだろうか。

 

「たった一機にここまで押されるとは……!?」

 

既に追撃部隊の士気も下がり続けて限界まで来ている。

ザラ隊についていけない緑服のパイロットたちは残るガンダムを狙うも、モビルスーツ戦闘を体で理解してきたムウに一般兵では太刀打ちできまい。

実際、シュライクで空を自由自在に飛んでいる。

エールストライカーで無理矢理飛んでいるアムロと違い、滑らかに動くストライクガンダムは蝶のように舞い、蜂のように敵を射抜く。

そして今日の戦いもまた、ザフトの敗北に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




遅れたけど誤字報告をしてくれた方々に感謝を!
感謝の証にアスランのヅラをプレゼn

次回はアイツが大地を駆け抜けるでぇ!
尚、アスランとカガリの会話は原作同様なのでカァット!
アムロさん、互角の戦いにワクワクしてる模様。








再び、地上で刃を交わせる二人。
悪魔は楽しみ、騎士は言えぬ苦しみに悶える。
しかし、二人の戦いは一時の休息を迎える事となる。

次回、【ククルス・ドアンの島】!

子供の未来を守るために、戦え!ジン!




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番外編 大地の王者の軌跡

前回の感想でモラシムが出てないと言われてようやく書く愚か者です。
いやぁ、今のアムロだとワンコンでモラシムさん何が起きたのかわからぬ間に死んじゃうし、そうなると戦闘描写が短すぎて思い付かなくなるし………
そんな訳でカットしました。脳が破壊されてやる気が落ちてたのもあるけど(震え声)

というかモビルスーツ適性試験って言っても地上で戦う分には問題ないだろとは思うんだよなぁ……
そうなると、バトオペ民の多くがモビルスーツ適性がなかったりする……!?(偏見)
にしてもユニコーン欲しかったヨ………

【時空のたもと】でも流しながら読んで頂けたらなぁと思うこの頃。
え?理由?ただの雰囲気作りですよ……




地球連合軍、と言っても連合軍は大陸によって組織体系は大きく違う。

そんな連合の中でもヨーロッパ方面の話をしよう。

ザフトの攻勢でヨーロッパ方面は大きく領土を取られ、連合軍は少数配備されていた陸戦型テスターでなんとか戦線を維持していた。

そんな中、ヨーロッパ方面の上層部たちはモビルスーツに頼らない通常兵器の開発を推し進めていた。

戦場の主体がモビルスーツへと変わるなか、それに逆らうように現れる珍兵器たちは歴史に名を残すことなく、あえなく散っていく。

しかし、そんな記録に残されなかった兵器の中で幾つか残っていた一つがある。

その名は【ヒルドルブ】。

戦車にモビルスーツの上半身を引っ付けた様な可変型の戦車。

モビルスーツ、というよりはモビルアーマーが正しいだろう。

そんな兵器が、古の戦いから継がれてきた古強者がヨーロッパのある地に愛機と共に立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソンネン少佐!」

 

ソンネン少佐と呼ばれた男は、気怠そうに呼ばれた方へ体を向ける。

 

「なんだぁ?オリカ・クリーヒィン一等兵?」

 

「今日もエイガー中尉と共に訓練をして頂かせていたく!」

 

「…また俺にボコられに来るとはな。Mは嫌いだぜ?」

 

「………少佐こそ、後輩殿とは仲がよろしいようで?」

 

「あくまで師弟だ。それ以上の関係じゃねぇ」

 

「………彼女が苦労する訳ですね」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「いえ!では私は先に!」

 

「了解した」

 

男の名はデメジエール・ソンネン少佐。

連合軍ヨーロッパ方面にて、戦車で数多くのモビルスーツの撃破記録を持つ、ヨーロッパ方面最強の戦車兵だ。

勿論、その分の被害は付いてくるがそれでも通常兵器でのモビルスーツの打倒に執心している上層部は彼を英雄に祭りたてているが。

しかし、彼本人もそれに嫌がることはない。

モビルスーツへの適性能力の試験で落とされた彼は、戦車の重要性を軽蔑し始めている新兵たちに焦りを感じていた。

元々、戦車にロマンを抱いてこうして軍人になったソンネンには戦車が廃る事に恐れを抱いていたのだ。

実際、ザフトがその良い例でザフトは戦車や航空機の役目を全てモビルスーツに担わせようとしている。

だが、モビルスーツだけが全てではないとソンネンは意気込んでいた。

何故なら、彼には新しい力が与えられたのだから。

 

 

 

 

 

ヒルドルブは超大型かつ高コスト機だが、戦車としては一級品である。

ソンネンはモビルスーツの上半身の存在に嫌味を漏らしていたが、連合軍内ではモビルスーツの量産計画に予算を多く回しているため、幾つかモビルスーツの技術を取り入れなければ採用されるか微妙な所であるという事情があったが、ソンネンにはそれを知れるのは戦争後の事だろう。

しかし、モビルスーツに接近されても最低限の反撃可能と言う点に置いてソンネンは苦虫を噛み潰した顔ではあったが利点として受け止めていた。

混じり物、と言ってしまえばそれまでだが、しかしソンネンにとってはソレが戦車であれば他はどうでも良かった。

あくまで戦車として扱えば済む話だからだ。

 

「ヒルドルブ……コイツを見たときのザフトの驚いた顔が見てぇな」

 

「ソンネン少佐の腕なら驚く前に全員死んでますよ」

 

「そうかもな!ハッハッハッ!」

 

同じく戦車を愛する男、エイガーは尊敬するソンネンと共にヒルドルブの最終調整を見ながら笑いあっていた。

エイガーら一個中隊はヒルドルブの護衛であり、ヒルドルブの初陣に選ばれた戦場は激戦区。

モビルスーツ部隊も手を貸してくれるが、基本的に孤軍奮闘しなければならない。

アラスカのクーラーで涼んでいた新兵や気楽なバカたちは、ここの暑さに愚痴を叩く日々だがどうせまた死ぬだろう。

そんな諦観した考えを当人たちに向けながら、その中でエイガーと共に己の指導を受けているオリカ一等兵を見つける。

彼女の腕はまだ未熟だが、エイガーや弟子よりも強くなれるかもしれない可能性を持っている。

故に、全力で彼女に戦車の戦いを教え込んだ。

エイガーと組めば恐らくモビルスーツ一機なら落とせるのではないだろうか。

ソンネンはその光景を想像するが、任務の開始の合図でその夢想を止めて現実の少々オイル臭いコクピットで意識を浮上させ戦場へ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦場はまさに灼熱の地獄だった。

C.E.以前の戦争の影響で砂漠化や干枯らびた土地は幾つもある。

かつては森だったのだろう大地でヒルドルブはエイガーらとの戦車とは別行動を取り、あえて砂漠に飲まれた市街地の中で高台に鎮座する。

 

「ヒルドルブはデケェ。なら、隠れるよりも囮にしてぶっ放す!よぅし、HE弾装填!」

 

テスターがジンと交戦している戦場にその砲塔を向ける。

照準機は本来より調整が効いているため、手動調整は必要に応じてになる。

ヒルドルブという、戦車の王が辿った末路はこの世界では大きく変わろうとしていた。

しかし、それでも戦争の中での一コマでしか過ぎなかった。

 

「……ここだっ!」

 

ソンネンはトリガーを引く。

直後、砲口から重厚な鉄の塊が超高速で放たれ、テスターのコクピットに重斬刀を突き入れようとしたジンの胴体が弾けとんだ。

 

「なっ、何事!?」

 

「四番機、撃破!?クラウン!?嘘だろ!?」

 

「各機、建物に隠れろ!射線を切るんだ!」

 

隊長機がいち早く建物へ射線を切り、部下たちもそれに続くがその間にもう一機、あまりの威力で下半身と泣き別れしたジンの上半身が落着後、爆散する。

 

「凄まじい威力だ……っ!ええい!戦車ごときが邪魔をしてぇ!」

 

建物に隠れたジンたちだったが、潜伏していたエイガーらの戦車隊が通り魔のごとく砲撃をかまして離脱する。

勿論、運の悪い奴は踏み潰されたりジンのライフルで撃破されたが、損害は少ない。

 

「次は曲射攻撃を行う!次弾装填!」

 

次は曲射攻撃。

ヒルドルブの砲塔は上を向き、そして弾を吐いていく。

隠れている敵を当てられると思うほど、ソンネンは自分の腕を過信していないし、傲ってもいない。

しかし、ナチュラル故に受け継がれてきた技術と経験がソンネンの今を支えている。

 

「出てきたところを戦車隊と俺で撃つ!モビルスーツと言えど、後ろのスラスターユニットや関節を撃たれれば動けまい!」

 

その作戦は見事にはまり、三機のジンが犠牲となる。

このままでは埒が明かないと判断した隊長機は、一番の脅威であるヒルドルブを撃破するためにジャンプの準備をする。

航空戦力のディンはまだ到着するには時間がかかるというので、殲滅される前にと賭けに出た。

しかし、彼らは戦車というものを侮り過ぎていた。

戦車の砲弾が効かないとしても、それは装甲の部分の話であって、ソレ以外は戦車と同じく脆弱な部分であることを。

 

「全車両、一斉射ッ!砲身が焼き付くまで撃ち続けろ!」

 

狙いすまされた狙撃は見事に関節やバックパックに被弾し、撃墜される。

 

「アガッ!?」

 

「な、ナチュラルのくせにぃぃ!?」

 

「あああああああああああああっっ!?」

 

絶叫の声は戦場に届くことはない。

大地の王者、ヒルドルブはモビルスーツの散り様を見届ける。

これを見ていたという当時21歳だった中年の男性は、まるで地上の覇者は戦車である、とでも言うような品格を持っていた、と語った。

そして、ソンネンの部下だったエイガーらもまた、ソンネンとヒルドルブに改めて敬意を寄せていったという。

ザフトはこの悪夢のような戦車をいつしか【深緑の王者】と名付けて、ヨーロッパ方面ではとても恐れられたと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦後、情報整理をしていた技術士官、オリヴァー・マイ少尉はこの資料やその他多くの資料の発見、復元を為して、世に密かに消えていった兵器達の存在を伝えていった。

その中に、ソンネン少佐の情報があったが個人情報としてオリヴァー・マイ少尉はその情報を消した。

その中に、恐らく彼の弟子であろう女性とその子供たちの家族写真があったことには、何か意味があったのだろうか……?

今となっては、この記録を残した者の想いを計ることは出来ない為、その真相はオリヴァー・マイにとっても永遠の謎となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーC.E.71年に開発されたモビルタンク【ヒルドルブ】はその高コスト故に、少数量産のみに留まり、ヒルドルブを運用した部隊、【タンク隊】のその後の足取りは深くまでは掴めなかったが、恐らくヨーロッパ戦線のザフト軍を大いに恐れさせただろうことは、容易に想像できる。

現存機は無かったが、この資料を復元できたことはとても喜ばしい事で、ヒルドルブとソンネン少佐の輝かしい経歴が明らかになった。

私は、パイロットと機体に深い敬意を持ち、彼らを見つけれた運に感謝している。

 

 

C.E.72年 8月1日

ザフト軍所属 オリヴァー・マイ技術少尉

 

 

 

 






ちなみに戦車の戦術とかそういうのは全く知らないので結構適当です。
ガルパン見てないし、そもそも戦車がカッコいいのは確かだけどそこまで興味ないのもある。
ファンやマニアの人には謝罪いたしまする………

そして………存在を知らせる前に目敏い方がおりまして伏線を見抜いた方がおりましたので、感想見れば解っちゃうのでここにお伝えしまする。
原作ではカガリ→チリソース、バルトフェルド→ヨーグルトソースだったのが反転しております。
ヒントは色!それが意味する物が何になるか……作者の思考を読めたら天才が狂人であることが認定されます。
伏線の答えは既に決めてるので、答えちゃっても構わないです。
答えが出るまで、それには触れないとも言うけど。

では、また次回にて!
感想よかったらよろしくお願いします!


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ep16 ククルス・ドアンの島

なんか前回のを見返したらep15なのに16になってたので修正しておきました。
深夜テンションって怖いね………(何度目が解らない呟き)
そして書いてたのにバグで全消去されたのでやる気が落ちてました。
めっちゃ遅れて申し訳ない………本当に気分に振り回される俺氏、もうやだぁ……

前回のガンダムSEED イグルーのコンセプト(?)は「SEEDの世界観に合わせたの自由なオリジナル展開」。
故に、歴史等に大きな影響は与えないけど少しは恵まれた兵器達があったよ~みたいなノリの内容が主になるかも。
原作厨の人はごめんなさい、許しは乞わないけどハッピーなりトゥルーなエンドは多くの人が見たいだろう景色!
自分もそんな感じなのでどうかご容赦頂きたい…!

そんなわけで真なる16話、どうぞ!


それと映画の話を多分に含む為、ネタバレが嫌な人は大変申し訳ないですが、バックして下さい。












知らない人はネタバレの覚悟はよろしいですね?
後悔しても私は知らんッ!!




 

 

アークエンジェルはインド洋を抜け、東アジア共和国にて物資や弾薬の補給を行っていた。

流石に連合軍圏内に乗り込むほど脳筋ではないようなので、しばらくはG達の攻撃から免れるだろう。

しかし、今回補給ができたのはブルーコスモスの手引きのおかげというのは、ブルーコスモスの過激な思想に極端過ぎて反感を持つアークエンジェルの面々には若干、複雑な気持ちであった。

しかし、こうしてゆっくりできるのも彼らのおかげ。

しっかりと任務を果たさねばという責任感が、蘇る。

だが、そんな折に東アジア共和国から依頼があったのだが、タダより高いものはないのだ。

当然のことだろう。

依頼内容は、近くにあるとある島でテスターや航空機等を向かわせたが一向に帰ってこないため、ザフトの何かしらの計画を隠蔽するために撃滅されたのでは、という予測が立ったので調査することを与えられたアークエンジェル。

アークエンジェル自体は修理と補給の為、移動は不可能。

その為、試作モビルスーツ輸送機【ペリーガネン】による現地調査を開始することにした。

ストライク二機を投入する事となったが、格納可能な空間の関係上エールストライカーは不可であるため、アムロはソード、ムウはランチャーキャノンストライカーを装備して出撃することとなった。

ランチャーキャノン、名前からして予想はできるだろうがランチャーストライカーの実弾形態である。

アグニを取り外し、110mmキャノン砲を取り付けただけのストライカーだ。

機体重量は弾薬の増加で増えたが、ペリーガネンの許容範囲であるため、問題なく飛んだ。

ペリーガネンのコクピットの座席で何もない大海原を眺めるアムロは、どこか既視感を覚えていた。

しかし、そんなアムロにジョンやムウ達は気付く様子もなくれ世間話に花を咲かせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして暇を潰し、件の島に辿り着いたペリーガネンからストライク二機が歩みを始める。

 

「アムロ、俺は灯台の方を見てくる。彼処はどうもきな臭いからな」

 

「解りました。じゃあ、僕はあのクレーターの跡へ行ってみます」

 

そうして別れた二人は各々の方向へ移動する。

ペリーガネンに待機しているジョンと今回の相方となるアーノルド・ノイマンと共に、大破炎上したらしい陸に打ち上げられたMS積載型の巡洋艦と恐らく撃墜されたのであろう航空機、モビルスーツの残骸を調べていた。

そして、アムロに忍び寄る一つの影が、アムロに大きな影響を与えることになる………

 

 

 

 

ガンダムを歩かせ続けたアムロは、争った跡を見つけていた。

先日、送り込まれたらしいテスターとこの島にいるらしい謎の敵。

足跡からジンの物だと判明したが………アムロはその跡の先に進むことにした。

巡洋艦は恐らく隠せる時間がなかったか、それができるほど数も多くないのだろう。

そんな推測を立てながら歩かせ続け、その足跡の先には崖があった。

その下は荒れ狂う海。

生身の人間が落ちれば確実に死ぬだろう。

それを空想するだけでもアムロは顔をひきつらせてそこから離れた………が、すぐにアムロは腕でそれを受け止めた。

 

「じ、ジン!?」

 

「………………………」

 

異様な雰囲気を持ったジンが、いつの間にかアムロのモニターの前に現れていた。

これほどまでに、ジンを怖いと思ったのは最初の戦い以来だろう。

恐怖している事を自覚したアムロは、それを抑え込むように「怖くなんか、怖くなんかぁ!」と叫びながらアーマーシュナイダーを抜いてジンに突きを食らわそうとする。

しかし、冷静に処理された上にカウンターとしてパンチを腹部にくらい、コクピットは大きく揺れる。

 

「うあっ!?……うぅ、やったなぁ!」

 

「……っ!」

 

お返しにとアムロは左腕のロケットアンカー【パンツァーアイゼン】を射出し、ジンの頭部を抉ろうとするがジンは素早く動き、アッパーカットを腹部にもう一度叩きつけてくる。

 

「あっぐぁっ!?」

 

コクピットをシェイクされて、アムロは思わず吐くが内容物のない胃から吐き出された液体はアムロの口元を臭くする。

 

「このぉっ!……ああっ!?」

 

まだ終わらない、とばかりにアーマーシュナイダーを振り回すが、これもまた冷静に対処されてパンツァーアイゼンを剥ぎとられてしまう。

ボロボロのジンのその戦い方は、もはや古の戦士が現代によみがえったかの様だ。

ボクサーのように、的確にそして素早くパワーあるパンチで、キックでアムロを追い詰める。

アムロはジャンプさせたり体を反らさせたり、それだけで手一杯だった。

 

「強い……!」

 

主兵装である対艦刀は大きすぎる為、距離を詰められている今だと邪魔にしかならない故に、アムロは苦戦していた。

ビームブーメランやサーベル代わりに使える【マイダスメッサー】を使うことも考えたが、相手が抜かせてくれる余裕をくれるはずがないだろう。

負けるかもしれない、死ぬかもしれない。

そんな思いが頭をよぎったそのとき、戦闘の衝撃で脆くなっていたのだろう崖が崩れた。

 

「お、落ちる!?」

 

アムロがモニター越しに見えた最後の光景は、落ちる自分を見下ろすボロボロのジンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムウ・ラ・フラガは困惑していた。

いや、それだけでは言葉が足りない。(当たり前)

ムウは足元で石を投げてきたり、少し大きめの石をストライクの足先に叩きつけたりとしている子供たちに、困惑していた。

 

「ここから出ていけー!」

 

「連合もザフトもいなくなれぇ!」

 

そんなことを叫びながら今もなお、石をぶつけてきている。

そんなことでストライクが壊れることはないが、しかし怪しいと勘が囁いていた感覚は既にない。

つまり、アムロよりも幼い彼らがここにいると囁いていただけの話だった。

とはいえ、だからと言ってそれを無意味だとは思わない。

アムロの兄貴分に足るよう、今も努力しているムウは彼らから何か聞き出せないかと、外部スピーカーを起動させて問う。

 

「わかったわかった!すぐに出てくから、だかりその前にこの島について少し教えてくれないか?」

 

しかし、子供たちにとっては軍隊は悪、というイメージしかないのだろう。

子供たちは「教えてやるもんか!」と口々に叫び、ムウは諦めて引き返すしかなかった。

だが、帰り道を歩く最中にムウはアムロの事を思いだし、ジョンたちにアムロの安否を問う。

しかし、その答えは解らないの一言だった。

 

「ウッソだろお前!?」

 

「嘘もアホもないですよ!本当に通信が繋がらないんです!」

 

そんな答えに、思わず舌打ちするムウ。

 

「チィッ!心配かけさせてくれるな!」

 

しかし、その声に穏やかな部分があることは両者共に気付いていなかったが、それは今は関係はないだろう。

ただ、天気が悪くなってきたため、ムウたちはアムロ捜索と撤退のどちらかを選ぶこととなった。

現場の責任者である、ムウは悩みに悩んだ末にムウは撤退を決めた。

 

「………撤退だ。帰れなくなる前に帰るぞ」

 

「ア、アムロはどうするんです!?」

 

「次に来たときに探せばいい!ここで闇撃ちでもくらえばあっという間に壊滅だぜ?俺だって置いてくのは苦しいさ………だが、俺達は軍人だ。アムロもそうだ。だから、今は情報を持って帰る事に集中しろ」

 

「くっ……了解……!」

 

苦渋の決断を下した彼らだったが、その判断のおかげでこの島にいるジンに殺られる、なんていう事はなくなった。

そんなことを知ることもないムウたちはアムロの無事を祈る。

同時に、またここに来ると誓いも立てて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………その男は、悪魔の腹にいる少年の姿に驚きを隠せないでいた。

ガンダムと呼ばれる兵器が、ここにやって来たことに最初は大きく動揺したが………こうして叩き落とされたガンダムと操る少年を見ると、殺すべきだという冷徹な自分と殺したくないという本音の自分がいる。

そして、選んだのは後者だった。

厄介事を引き寄せるかもしれないと解っていても、やはり子供であるアムロを殺すことも、かといって放逐することも今の男………ククルス・ドアンにはできなかった。

 

 

 




試作輸送機【ペリーガネン】はぶっちゃけガンぺリーです。名前違うだけのデザインそのまんまです。
島は映画ので、観ている人はこの島にどんなのあるのか判るだろうなぁ………
そして起爆剤になったククルス・ドアンの島は書きたかったから入れたぜ☆

個人的にはSEEDが初代の云々という話を聞いて、ドアンとの話もまた有り得たと思うので、おそらく不自然ではないと思いたい。
めっちゃ宇宙世紀の人物出てるけど、必要以上の事はさせない……筈。
オリキャラを編み出せない愚かな私を導いてくれ、ララァ………(他力本願)



アムロは孤島に住む幼き子供たちの姿を見る。
そして彼らを守る男、ククルス・ドアンはアムロにどんな影響を与えるのか?

次回、【孤島のゆりかご】!

その目に何を焼き付けるのか、見届けよストライク!



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ep17 孤島のゆりかご

投稿!

突如として湧いたモチベ盛り上がりで瞬殺ッ!()
そして今回はさりげないムウ視点から開始。

前回と変わらずネタバレ注意予報。



 

 

 

任務から帰還した俺達は、アムロの不在にアークエンジェルのクルーたちは大きく動揺していた。

正直、俺だって動揺したし、現段階で恥ずかしながら最強戦力とも言えるアムロがいないというのはとても不安だろう。

しかし、そうさせてしまった俺達がいつまでもここに、アークエンジェルに縛り付けてはならないと俺は思う。

大人として、軍人として、本当は俺達の戦いを子供に任せるなど、あってはならない。

アムロをガンダム………ストライクに乗せてからずっとそう思っていた。

それは恐らく想いを寄せているマリューも同じだろう。

堅物っぽいナタルも罪悪感が無いわけでない、というか彼女も同じだろう。

いや………それを言ってしまえばアークエンジェルのクルー全員が、アムロ・レイという少年に独りで戦わせている事に罪悪感を抱いている。

そうすることしかできない故に。

だが、砂漠の虎の時とは違い、今の俺たちは例えアムロが戦わなくても、いなくても大丈夫なんだ。

アムロのハロの力とあのヘリオポリスの惨事で生き残っていた開発者連中の力があり、俺のストライクのOSは初期よりもとても扱いやすくなっている。

本音を言えば、もう子供に戦わせる等させたくない。

また戦いで心を病んでしまうのではないか、そんな事が脳裏に浮かぶのだ。

だからこそ、なのだろう。

マリューが「これが脱走なら良いのに……」と呟いたのは。

だが、俺達はこれからを話していかなければならない。

だからこの話は切るべき……だったのに、続いてしまう。

 

「アークエンジェルに余裕ができたのは良いが………アムロの事がやっぱり心に引っ掛かるんだよな………」

 

「だとしても今の彼は志願兵。脱走など………極刑にされてもおかしくはありません」

 

「確かにハルバートン提督の最後や話を聞く限り、上層部の判断なんて信用できないわね……」

 

「もしかしたらコーディネーターとか勘違いしてそうだよなぁ………俺だって最初の頃はそれを疑ってたんだし」

 

今日も少し、話が長くなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ###

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼しい海風に肌を触られて、アムロは目を開けた。

見知らぬ天井、体の節々に所々痛みがある。

それでも起き上がるアムロは、どこからか聞こえる子供特有のかん高い声が聞こえた。

アムロはなぜ子供が?と疑問を覚えるが一先ず状況把握のために無理にでも動く事にした。

よろける体を壁を支えにして歩く。

それにしても、とアムロは思う。

なぜ、あんな壁のない部屋に寝かされていたのだろうかと思ってしまった。

もし、寝返りでもしてひょんな事でその先……海に落ちていたらどうするつもりだったんだろうと考えるが、捕まっている、いや生かされているという時点で何かあるのだろうと察しをつける。

その答えが先程聞こえた子供の声なのかもしれない。

まるで赤子のようにたどたどしく歩いた先には、眼鏡をかけた子供と三歳か四歳そこらの子供がヤギの乳絞りをしているではないか。

アムロはムウと違い、子供がいることを知らない故にその驚きはムウよりも大きかった。

そんな子供たちはアムロを見ると少し怯えた感じでアムロから離れる………いや逃げていく。

そんな彼らに付いていくと、二人は「ドアン!アイツが起きた!」と叫んでいた。

 

「ドアン………?」

 

どこかで聞いたことのある名前だ。

けど、どこで聞いたのかもそんな知り合いもいない。

そんな違和感を振り払いながらアムロは建物から出た。

そして、そこには自分よりも幼い少年少女達が皿洗いや畑仕事、各々の役割をこなしていた。

そんな中で、とても場違いな雰囲気を持つ男がいた。

 

「……………」

 

「起きたか、体に違和感等はないか?」

 

恐らく、この人があのジンを駆るパイロットなのだろう。

他に大人がいないからそうに違いない。

 

「僕のガンダムはどこなんです」

 

「……さあ、どこだろうな」

 

ガンダムを隠された、どこに、どこだ?

アムロは周囲を見渡してガンダム、もしくはジンの姿を確認しようとするが、影どころか金属片も見当たらない。

だが、このままではアークエンジェルに戻るなど無理な話で、あの男が気が変わって自分を殺すと判断されたらアムロは丸腰故に呆気なく死ぬだろう。

それを恐れたアムロはガンダムを歩いてでも探すことに決めた。

 

「どこに行くんだ!」

 

と、ドアンは問うがアムロは何も答えず炎天下の元、歩こうとする。

それを見かねたドアンは自分の被っていた古ぼけたザフトのツバの広い帽子をアムロに被せた。

 

「探すならせめて被っていけ。探し物が見つかると良いな」

 

白々しい、とは思いつつもアムロはドアンに被らされた帽子をそのままにガンダムを探すために歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩き始めてもう何時間経ったのだろうか?

もう日が暮れて、そして綺麗な夜空が空を彩る今、アムロはクレーター付近まで歩きそして歩いた道を戻っていた。

明かりもないのに探すのは困難と判断したアムロは渋々灯台のところへ足を向けていたが、炎天下で歩いたため体が水を欲していた。

喉の渇きに耐えながら、歩くアムロの目の前にランタンだろうか?

光が近付いてきた。

お迎えでも来たのだろうか?

そう思ってしまったアムロの若干オツムが緩んだ思考とは関係なしに、光をよく見ると自分と同じくらいの少女がいた。

 

「大丈夫?水が欲しいだろうと思って持ってきたけど………」

 

差し出されたペットボトルに入った水を差し出されて、アムロはがっつくように水を飲み始める。

 

「どこまでい行ってきたの?」

 

好奇心か、そんな事を聞いてきた少女に水を飲みながらアムロは答える。

 

「クレーター付近まで……」

 

「まあ!あそこまで歩いたの!?」

 

少女は驚いた。

怪我をして辛いだろう体でクレーター付近にまで歩くアムロに驚いた少女。

そんな筋肉もない悪く言えばヒョロそうな体でよくここまで歩けた物だと感心するが、アムロはパイロットなので筋肉はつかなくとも体力だけはそこそこあるので、むしろパイロットの中ではまだまだアムロの体力は訓練生とかそこらのレベルだろう。

それでもここまでやれたのはアムロの根性あってこそだろう。

そして少女はもうひとつの用件を思い出して問う。

 

「お腹、空いたでしょう?」

 

少女の問いにアムロは否、と答えようとしたが……

 

「いや、大丈夫で」グルゥゥ

 

「「…………………」」

 

タイミングの悪いことか、いや良いのだろうか?

ともかくアムロの腹は正直に答えた。

体も水分を取れて落ち着いた故か、我が儘に栄養も要求したのだ。

アムロは気恥ずかしさと情けなさを感じるが、少女は笑顔で「ご飯、あるから来て」と言って灯台に歩を進めた。

そんな彼女に、アムロは内心で感謝しつつ彼女の後に付いていくのだった。

 

 

 

 

 

それから何度もガンダムを捜索するが、見つからない故にアムロはドアンと子供たちと共に農作業や井戸を修理したりと、そこそこ慌ただしくも楽しい日々を過ごした事はアムロにとって良い思い出になっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジブラルタル基地にて、男は連合を一掃するための計画を進行する為に特殊部隊【サザンクロス隊】にある島での新型ミサイルの打ち上げ任務を与えていた。

 

「これで我らは勝てるのだ。忌まわしい力などと忌避していては勝てるものも勝てん」

 

男は暗い執念を持ちつつ、禁断の兵器に手を出そうとしていた。

己が滅ぼうとも関係無い、ただナチュラルを駆逐できるのならばと………!

 

 

 

 

 

一方で、ヨーロッパ方面のとある戦場で新入りが隊長にシバかれていたり、部隊の紅一点の女性が想いを寄せた男に気を取られていたりと、男とのギャップに風邪を引きそうである。

 

 





感想お待ちしてます!
というかモチベ維持のために頂戴!(俗物)
そして作者の技量不足で細かい描写は飛ばさせて貰います。
申し訳ございません……






子供たちとの思い出は少年にとって新鮮で、また楽しい物となった。
だが、そんな彼らに迫る脅威の影に、少年は何を思い、そして何を成すのか……

次回、【立て、戦士よ】!

戦いと平和の最中に何を見出だす、ガンダムよ!



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ep18 立て、戦士よ


諸事情で書く気力とモチベーションがなく、APEXとかドラクエ8等で少しずつ書きながらメンタル癒してました。
お待たせして申し訳ない。

思い付いてしまうと書きたくなる節度のない頭を恨みたい………
そして何か手違いを起こしてたら申し訳ない。
そして念のために駄文注意警報を発令しておきます。
常に駄文な気もするけども………
とりあえず、自分の精一杯を詰め込んだドアン編最終回どうぞ!

………シャチ娘可愛い(小声)




 

僕はこの日常……というにはまだ短いが、この島に来てからの日々は楽しい物だった。

勿論、ガンダムの捜索は続けていたが彼らとの生活は悪くないし、新しく知れた物もあった。

そして誕生日を迎えるらしい男の子のために、皆は誕生日会の準備をしていた。

けど、そんなある日、僕はついに見付けたのだ。

ガンダムのありかを………

 

 

 

ガンダムが落ちた崖と井戸水の配管修理に使ったロープ。

これによって閃いた崖下りは若干、いやかなり危ないが無事下まで下りることができた。

ただ、ドアンが先程、ボートでどこかへ向かったことが気になるが………

考えても仕方がない。

降りた先に見つけた洞穴を僕は通る。

この先にガンダムがある筈だ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果からすると確かにあったのだ。

だが、孤児たちと共にいた僕と同い年くらいの少年が僕よりも先にドアンにガンダムを貸して欲しいと語っていた。

なんとなく、いやもう既に自分の物のようにドアンにねだる彼に割り込むように僕は言葉を紡ぐ。

 

「…ガンダムは、ストライクは僕の物です」

 

「お、お前……!?一体どこから……!?」

 

「……バレてしまったか」

 

ドアンは険しい目で僕らを見ている。

子供たちの前では見せない一面に、僕は若干の戸惑いを隠せない。

だがここで食い下がってはアークエンジェルの皆の元へ戻ることもできない。

 

 

…しかし、ドアンの意思は変わらなかった。

あのあと、色々とゴタゴタと起きたがドアンの迫力ある一喝で僕達は灯台の家に渋々帰った。

辿り着く頃にはスコールがやって来ていて、家にいた子供たちは不安がっていた。

こんな時に思うのもアレだが………子供たちの中にはコーディネーターもいる。

ドアン自身もそうだが、ナチュラル………地球に住む人々である彼らがコーディネーターである子供やドアンを差別していないのは、子供故の純粋さなのだろうか?

世界もそうであれば良かったのだろうと、僕はアスランの事を思い出しながらそう思ってしまう。

彼との戦いは楽しい訳じゃない。

むしろ心苦しい。

でも、趣味の機械いじりもガンダムの整備で趣味というより作業だし、元々軍艦であるアークエンジェルに娯楽なんてものはせいぜいスカイグラスパーのシミュレーターくらいしかない。

だからなのか、いや、アスランが友だからか、まだ届かない彼の強さへのライバル心がどこかで燃えている。

ゲームのように工夫して、対策してそして倒す。

それはいけない視点であるのは理解している。

けれど、ストライクは■■■■と違って配線も構造も違う。

そもそも動力も全く違うから、時折手違いを起こしてしまう。

…………………なんだ?

 

「今、僕は何を思い出そうとしたんだ…?」

 

いい知れぬ何かが、僕の中でモヤモヤとなってその違和感は薄くなる。

でも、まずは子供たちの不安を払うための光を届けよう。

工作道具を持って、僕は修理を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  #

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぅし。お目当ての島はあそこだな!」

 

ヨーロッパ方面では少し前までは少しばかり有名だった【サザンクロス隊】のジンオーカーと隊長機であるジンハイマニューバの陸戦に調整された巨人たちが、グゥルに乗ってドアンの島に現れた。

 

「二人は任務を優先しろ、俺達は……ドアンを殺る」

 

一方、轟音が遠くから聞こえたドアンたちは迫ってくるグゥル、いやジンたちの肩にあるサザンクロス隊のマークに、ドアンは軽く渋面を作る。

だが、こうなっては戦うしかない、ドアンは再度ボートに駆けつけようとした。

が、その前に………

 

「ドアンさん!」

 

アムロが声を張り上げて、彼を呼ぶ。

ただ、ただドアンは問う。

 

「君は、子供たちを守る覚悟はあるか?」

 

その問いに、アムロは頷く。

当たり前だ、とでも言うようなその頷きにドアンは先程殴りあっていた少年を呼び、三人でボートに乗り込んだ。

そして入り口である水中にある穴へ、アムロたちは泳ぐ。

アムロにとってとても長い潜水だった。

パイロットとしてはともかく、彼はそれ以外は一般人。

溺死はせずともアムロは窒息で意識を失ってしまった。

 

「俺は先に出る。アムロ君のガンダムはあそこに隠してある、起きたら頼むぞ」

 

そう言い残してドアンはジンに乗り込み、そしてついさっき泳いできた海を、今度はジンで潜り抜ける。

戦いは、遂に始まろうとしている………起こるべくして。

 

 

 

 

 

 

 

夜空が綺麗に見える孤島で、歴史には残らない、密かな戦いが幕を明けた。

 

「コイツがあのドアン!戦ってみたかったんだッッ!!」

 

「ムッ……!」

 

開幕した直後、新入りのジンオーカーとジンの剣によるチャンバラが始まる。

彼らのジンオーカーにはホバークラフトが試験的に装備されており、機動力では相手が上である。

しかし、ドアンはそれをものともしない技量で攻撃を捌く。

 

「すげぇ!すげぇぜ!」

 

「コイツ、戦いを楽しんでいるのか?」

 

重斬刀を振り回すジンオーカーの戦い方に、そんな考えがよぎるが邪念を捨ててただ相手の隙を見極める。

そして、大振りになった瞬間にコクピットに裏拳を打ち込む。

 

「うごぉっ?」

 

パンチの衝撃で判断が鈍った新入りは、モニター一杯に剣が迫るのを呆けた顔で見るのが彼の最後となった。

ズシュッ、そんな音を発てて背中まで貫いたその剣はオイルにまみれ、赤錆色に光る。

 

「………どうして私たちを裏切ったの……ドアン!!」

 

今度は女性兵士が彼に立ち向かう。

マシンガンを発砲しつつ、蛇行によって動きを予測させないよう動く彼女には、声を大にしては言わないが、しかしその内は大きな怒りで染まっていた。

 

「エルマ………君の気持ちを裏切ってすまない……だがッ!」

 

薄々は彼女の気持ちに気付いていたドアンは、彼女への大きな罪悪感があった。

しかし、ここで敗れるということは子供たちを死なせると同義。

恐らく今もこの戦いを言うことを聞かずに遠くから見ているだろう子供たちの為にも、負けられない。

 

「弾がなくとも!」

 

ドアンは回避行動を取りながら、そこら辺に転がっている岩を拾い集め、そして投げつける。

 

「岩を飛び道具に…!?」

 

勿論、モビルスーツの装甲には大きなダメージは与えることはできない。

しかし、それでもモビルスーツのパワーで投げられた岩の質量による衝撃だけは防ぐことはできない。

勿論、ドアンのジンも被弾を抑えきることはできず、頭部の従来機より延びた通信アンテナは弾け跳ぶ。

 

「やはり上手いな……!」

 

「ドアン……やはり強い!」

 

近付いたジンオーカーによって遂に格闘戦に入り、剣と特製の手斧が鍔競り合う。

マシンガンを事前に捨てた彼女………エルマは、機体の大腿部に設置していたナイフを抜き出し、ジンの脇腹を刺そうとする。

が、それを察知したドアンは残量の少ないスラスターを吹かしてバックステップする。

それを見越していたエルマはナイフを投げて追撃をするがドアンは器用にマニピュレーターでナイフの刀身を挟んで止めて、投げ返す。

 

「あっ…」

 

それにエルマは反応できず、コクピット付近に深く刺さり、彼女のジンオーカーは機能を停止した。

 

「最後はぁ………俺様だぁぁ!!」

 

そして最後の相手、緑を茶色に染め上げたジンハイマニューバが刀身の大きい手斧、ジャイアントホークを両手に持たせてドアンの前に現れる。

 

「これは、不味いかもな………」

 

ドアンのジンでは、手斧の質量もあってパワー負けするのは明白だ。

整備不足が否めないジンでやれるか?

そう一瞬思った自分思考からを叩き出して、己の分身たるジンの操縦に意識を向ける。

騎士のようにまっすぐに剣を立てるジンと、狂戦士のように肩にかついだ巨大な手斧を持つハイマニューバは、まるで遥か昔のお伽噺に出てくるような光景であった。

最初に動いたのはハイマニューバ。

ジャイアントホークを横凪ぎに振り払い、ジンはバックステップを取る。

そこにもう一つのジャイアントホークを投げつけるが、ドアンはそれを見切っており、更に横にステップを踏む。

ハイマニューバはスラスターを吹かしてジンに急接近するも、かつての戦いで片付けきれずに放置されていたテスターに装備されていたのだろうアーマーシュナイダーを拾ったジンは、膝の関節を狙って投げる。

 

「チッ!」

 

「避けるか!」

 

機体をバレルロールさせて回避したハイマニューバにドアンは今度は岩を投げるが投げた先には先程投げられて地面に突き刺さったジャイアントホーク。

それを盾の代わりに防いだハイマニューバに、ドアンはかつての部下の成長に舌を巻く。

 

「強くなったな……!」

 

「俺は裏切ったお前を殺すために今まで何度もお前を殺す練習をしてきた!お前を殺すまで、死ぬわけにはいかんのだッ!!」

 

怒りの殺意は憎悪となり、そして彼の強さを一押しする。

 

「でぇあぁぁぁぁっ!!!」

 

「グッ!?」

 

怒りの感情に突き動かされるように突撃してきたハイマニューバに、距離を取ろうとバックステップとスラスターによる移動でハイマニューバから距離を取ろうとするが、ガス欠になってしまったジンは、相手の持つカードを全て見れぬままジャイアントホークの攻撃を受け止める事になった。

何度か防ぐが重斬刀は耐えきれずに折れ、そのままジンの左腕をもぎ取る。

が、ただでは済まさぬとドアンの悪足掻きによって折れた剣を捨てたジンは手刀をメインカメラに当てる。

潰れはしなかったが、モニターに不調を起こしたハイマニューバは一時的に動きが止まり、ドアンはハイマニューバから距離を取る。

 

「グゥゥ………やってくれるぅ……!」

 

「何!?足も駄目になったのか!?」

 

モニターにノイズが入るものの、ハイマニューバは行動を再開し、ジンは尻餅をつく。

情けなく岩を投げつけて近寄らせまいとするが、腰の入っていない投擲では衝撃を中にまで伝わらせる事もできない。

ドアンも、これでおしまいかと諦めかけたその時、白い悪魔が海から大地へ帰ってきた。

 

「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 

「何だ!?何の光ッ!?」

 

いつの間にか太陽が顔を出し始めている今、水に濡れ光を反射するストライクに光で敵の姿が見えないハイマニューバのパイロットは連合の新兵器かと一瞬勘違いして怯む。

投げられたマイダスメッサーは頭部の通信アンテナを斬るだけに留まったが、即座にジャイアントホークが振られて追撃できなかったアムロの目的であるドアンから此方にタゲを取るという役割は果たしてくれた。

 

「コイツは……G兵器かッ!!」

 

「これ以上、この島で好き勝手はさせない!」

 

対艦刀を抜き放ち、ハイマニューバと対峙するストライク。

決着の時は、近い。

 

「ドアンは後回しだ………まずは貴様を、Gを倒す!」

 

「来るか!」

 

ジャイアントホークを対艦刀で受け止めたストライクだったが、肝心のビームが出ず、叩き斬られてしまう。

 

「ら、落下の衝撃で発生機が壊れていたのか!?」

 

「なんだ、威勢だけか!?」

 

威勢良く出たものの、ものの数秒で回避と防御に専念することになってしまったアムロは、己の運のなさを恨む。

しかし、彼は天に見捨てられてはいなかった。

 

「アムロォォ!」

 

「この声は……カガリ!?」

 

一機のスカイグラスパーが、エールストライカーを引っ提げて島の上空に現れたのだ。

そしてそのパイロットはカガリ・ユラ。

恐らく周囲の声を無視してやって来たのだろうカガリに苦笑しつつも、アムロは勝ち筋を見いだした。

 

「カガリ!エールストライカーを!」

 

通信で換装要請をするアムロにカガリは内心不安ながら「任せろ!」と換装準備に入る。

 

「戦闘機一機で何ができるッ!!」

 

そう侮るハイマニューバはストライクに更に攻撃を加えるが、アムロは振り下ろされたジャイアントホークを無理矢理白羽取りする。

 

「なぬっ!?」

 

「転がせば後はッ!」

 

まさか白羽取りされるとは思わず動きを硬直させるハイマニューバに足払いをかけて転がせる。

そしてソードストライカーをパージしてドッキングシークエンスに入る。

 

「エールストライカー、しっかり受け取れよ!」

 

「解ってるさ!今ッ!」

 

換装など、この二人では空中換装なぞやったこともないのだが、無事エールストライカーを装着したストライクは、PSダウン寸前だったバッテリー残量もMAXになり、アムロはビームサーベルを二刀流で持つ。

 

「ビーム兵器!しかし、このジャイアントホークにも耐ビームコーティングがあるのだ!斬りあえるさ!」

 

「子供達を……子供達を殺させるわけにはいかないんだ!子供達を守るドアンさんも!やってやる!やってやるぞッ!」

 

「なんだ……!?何なんだこのプレッシャーは!?」

 

突然、何かを背負うように感じるストライクの姿にたじろぐハイマニューバ。

完全にペースを失ったハイマニューバのパイロットは、ストライクの光刃の乱舞に崖っぷちまで追い込まれる。

 

「何なんだよ!貴様はぁぁぁ!?」

 

理解できない故に、彼は半ば泣きながらその身を一対のビームサーベルによって蒸発させられた。

 

「はぁ……はぁ………ゴホッゴホッ……」

 

いつの間にか息継ぎも忘れていたアムロは、激しく咳き込みながらも、酸素を体に補給していく。

こうしてドアンの島での戦いは、多くの人には知られずに終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジブラルタル基地の一角。

計画の失敗をまだ知らぬ彼は、Nジャマーキャンセラーの小型化に勤しんでいた。

彼は研究者上がりの軍人であり、ザフトのシステム故に彼は権力ある地位にいた。

が、彼の計画は突拍子もない事で終わる。

パンッ!と乾いた銃声が彼の自室で響き、彼の人生は幕を閉じる。

そして、彼を撃った男………仮面を被った破滅願望者は止まらぬ笑みを浮かべながら、彼が先程まで操作していたパソコンを見る。

 

「フリーダムに……ジャスティス……そしてプロウィデンス………これは大きな火種となるだろうな……クククッ………」

 

 





実は9/21は作者の誕生日だったりする。
途中で力尽きたから当日に出せなかったよ………オニイサンユルシテ。
……私のけつあなで許してはくれないかね?()

感想一杯頂けるととっても嬉しいのです。(小並感)

尚、何故地上でNJCが?という質問に対しては連合側は盟主王含めてオーブ攻撃時には予測できても完成した事には知らないようでしたので、意外性を突いての開発だったり、とか色々想像膨らませて考えてこうしました。
宇宙で実際に建築、地上で設計図その他を作るっていう役割分担方式だったのではと。
尚、これならXアストレイも出るからとかいう辻褄合わせなメタい理由もあったりなかったり。
ガバってたらゴメン。優しい目で見ててくれ……サヨゴォー!



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