地球人類が最初に接触した異星起源知的生命体が、全裸系パッキン幼女だった件について (ヤマトとトマトはなんか似てね?)
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第01話:” 2191年4月1日 ショックカノン・デビュー戦”

とりあえず、原作開始8年前から。


 

 

 

西暦2191年4月1日

地球より2万光年と少し彼方……

 

テレザート星より大マゼラン星雲方向へ約200光年、イシュタル星系第4惑星(居住不可惑星)付近

 

 その日、地球連邦軍テレザート星駐留艦隊所属、第1警備艦隊第3哨戒分艦隊の48隻を率いる沖田十三准将は、近代化改修を終えたばかりの分艦隊旗艦、金剛型戦艦”金剛”のCICルームにある提督席で、立体投影型の戦況表示ディスプレイを見ながら実に憂鬱な表情を浮かべていた。

 

「島君、私はそこそこ順調な人生を歩んできたつもりだったんだがね……」

 

 宇宙物理学関連で博士号を持ち、40代で閣下、つまり将官の地位にいるのだから確かに沖田の言葉に嘘はないだろう。

 だが、その言い回しから考えると、

 

「よもや、40代も中盤に差し掛かろうとした今頃になって貧乏くじを引くことになろうとは、思いもよらなかったよ」

 

『心中お察ししますよ、沖田提督』

 

 そう通信で返してくるのは、村雨型巡航艦”村雨”に座乗する分艦隊に一翼を担う第2戦隊長の島大吾大佐だった。

 第3哨戒分艦隊は、旗艦の”金剛”を頂点に村雨型巡航艦12隻、磯風型駆逐艦36隻から編成される。

 沖田の直轄は第1戦隊の村雨型6隻と磯風型18隻、島大佐が率いるのは座乗する”村雨”を含む村雨型6隻と磯風型18隻。

 本来の分艦隊編成であれば、もう1個戦隊を加えた3個戦隊=73隻が定数だが、今回は1個戦隊は後詰めに回している。

 

 というのも、

 

「異星人との接触もこれで()()()……流石に三回連続友好的に、とはいかんか」

 

「今までが幸運過ぎたんですよ」

 

 そう返したのは沖田の隣に立つ艦隊付参謀、山南修中佐だった。

 

「そうかもしれんな。いや、そうなのだろう」

 

 一度目は自業自得故に滅びかけた地球人類に対する”救済”、二度目は復興の道を進んでいた地球人が”受け入れる”側になった。

 そして、三度目は……

 

「こういう三度目の正直は、嬉しくないな」

 

宇宙は、敵意と悪意、それに殺意に不足を感じない土地だよぉ♪

 

 ふと沖田の脳裏に蘇る、彼女の言葉……

 それを肯定するように戦況表示ディスプレイに映るのは、星系……地球連邦の生存領域に侵入してきた所属不明の30隻の宇宙船。

 いや、この言い方は大雑把すぎるだろう。

 

(明確な敵対行動、領宙侵犯を行う戦闘用艦艇群か……)

 

 もっともそれは、沖田に限らず地球連邦に所属する軍人全てが”いつか来る日”だと覚悟していたものだ。

 この天の川銀河に自分達以外にも凶悪な武装を持つ巨大勢力が存在することは、残念ながら確定的な事実であった。

 正確に言えば、1世紀以上前から、この世界の地球人類は知っていた。

 

 

 

 原作と呼ぶべき世界では、「火星には明らかに戦闘艦と思われる宇宙船の残骸」があったらしい。内惑星戦争終結後、その資料は全て失われたらしいが……

 

 だが、この世界線では状況が全く異なったのである。

 そもそも、地球人類は内惑星戦争などという”()()”をやっている余裕など最初からなかった。

 

 何故なら、西暦2025年に勃発したアメリカを盟主とする有志連合と中露を基軸とするユーラシア同盟との「なし崩し的に始まった」第三次世界大戦により滅亡に瀕した地球人類は、滅亡回避の対価として一刻も早く盟約の星(テレザート)に向かわねばならなかったのだから。

 

 それは解釈によっては、()()()()()()()()()()と言えるのかもしれない。

 

 そして対価の支払い、あるいは誓約履行の最初のステップとして選ばれたのが、「誰にも気づかぬままテラフォーミングされていた火星」であり、その場所に並べられた”()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”だった。

 しかも、鎮座していた多くの艦艇は、使用感や損傷はあるものの「まるで、どこかのスクラップヤードからそのまま持ってきた」ような状態だったらしい。

 

 当時のまだ未熟だった地球連邦の技術では、やっとの思いで火星までたどり着いたところでそれらを修復して実戦に使えるようにするのは不可能ではあったが、それでも宇宙に適応する技術を習得する初期段階の教材としては、必要にして十分だった。

 

 そして、人類が本格的に宇宙を生活の場としてからはや一世紀……これまで地球外起源知的生命体とそれなりに上手くやってきこれた地球連邦に、闘争という試練の時が訪れようとしていた。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 上官にあたる軍の制服組、統合幕僚本部の芹沢虎徹少将に急かされるまでもない。

 

 沖田の分艦隊がここに到達する前に、地球連邦テレザート方面軍は、哨戒網を形成する無人哨戒艇(ピケット)を二度も所属不明艦船群に接触させ、警告を放っているのだ。

 無論、その警告はことごとく無視されたが。

 

「三度目は、ない」

 

 仏の顔も三度までというが、あいにくと国防委員会は人間の組織なので二度が許容限界だった。

 

(こうなれば、やることは一つか……)

 

「全艦、()()()()をコンバットステータスに引き上げろ! ”コスモ・パンサー”隊、全機発艦! 艦首()()()()()()、自動追尾照準、開始っ!!」

 

 沖田は覚悟を決める。

 地球連邦は、未だイスカンダルという星の存在を知らない。

 しかし、地球人類は150年近くも前に、”理論上、無限のエネルギーを引き出せる半永久機関”の現物を目にし、手に入れていた。

 それは当時の人類が、すぐにどうこうできる代物ではなかったが、それでも滅びの宿命から一転、宇宙に夢を馳せさせるには十分な”()()”であった。

 

 そして、ここ150年の地球人類、発足以降の地球連邦は常にその夢の結晶とも言える半永久機関、人類に光速を超えさせる可能性を秘めた()()()()()()の技術の解析と開発に躍起になってきたと言っても過言ではない。

 まるで渇望にも似た超光速の夢とテレザートへの到着……

 

 22世紀前半にそれが達成されても、地球連邦は技術開発の歩みを止めることはなかった。

 宇宙が、地球人が公式に”一番最初に接触した異星人”の言う通りの、恩人の……人によっては()()の言う通りの場所だと仮定するならば、生存に必要となるであろう技術開発を止める理由などなかった。

 

 金剛型戦艦の艦首には46サンチ(18in)陽電子衝撃砲(ショックカノン)が、村雨型の艦首には30.5サンチ(12in)陽電子衝撃砲(ショックカノン)がそれぞれインストールされている。

 エネルギー充填は十分であり、機関に負荷をかけなくとも、現状で毎分20発以上のレートで継続射撃が可能だろう。

 

 陽電子衝撃砲(ショックカノン)は、通常の陽電子ビーム砲とは(少なくともこの世界線では)意味も威力も違う。

 金剛型戦艦の旋回砲塔にも用いられている36サンチ(14in)三連装陽電子収束荷電粒子砲などの通常の陽電子ビーム砲は、荷電粒子を圧縮/収束し、加速させつつ指向性を持たせて放出する武器であるのに対し、ショックカノンは砲身部で”螺旋圧縮加速”という過程を放出までに挟む。

 難しい理屈を省けば、圧縮した荷電粒子を砲身で螺旋状に回転させながら加速させ、ビーム自体にジャイロ効果による直進安定性を付与し、高威力/長射程/高弾速/高命中精度を実現させようとした技術だった。

 もっと簡単に考えれば、ガンダムAGEに出てくるドッズライフルのようなものだとイメージしてくれても良い。

 現状の技術では物理砲身型のライフリング状螺旋圧縮加速装置が必要だが、そのうち無砲身(不可視の力場砲身)でも実現したいと地球連邦軍は考えているようだ。

 

 

 

()ェッ!!」

 

 沖田の号令のもと、合計13条の螺旋弾道を描く陽電子ビームが、その威力を誇示するように虚空へと放たれた……

 一度戦端を開けば、そうたやすく後戻りはできない……沖田は、その苦さを改めて感じていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

******************************************

 

 

 

 

 

 その敗北は、大小マゼラン星雲の覇者たる”大ガミラス帝星”にとり瑕瑾という言葉にすらあたらない小さな負け戦だったに違い無い。

 15万光年彼方のたかだか30隻程度の消滅程度で、帝国の中枢が激しく動揺することなどない。

 

 だが、彼らはもう少し真剣にこの事象を考察すれば、少しだけ未来は変わったのかもしれない。

 何故なら……建国以来約1000年、ガミラスが初めて”()()()()()()()()()()()()()()()”だったのだから。

 

 そして、後に多くの歴史家は語ることになる。

 この天の川銀河の片隅で勃発した小さな戦いこそが、”古きガミラスの()()()()()()()だったと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




このシリーズの全裸系パッキン幼女はわりと元気に暗躍しますw



登場兵器スペックシート




89式汎用艦上戦闘攻撃機”コスモ・パンサー”

全長:17m

武装
30ミリパルスレーザー砲×6(機体側面。ブレンデッドウイングボディ部)
12.7ミリ電磁投射機銃×8(左右主翼)
内蔵ウェポンベイ(各種ミサイル計8発)

エンジン
副機:重力縮退式熱核反応タービン×2(別名:インパルス・タービン)
副機:テレザート式陽電子転換炉×1(APU兼用)

防御装置
積層式耐ビーム・コーティング(表面処理)
エネルギー転換装甲(内部装甲。エネルギーを硬度や靭性に変換する内部装甲素材。実体兵器に有効)
自動発射式妨害装置投射機

特殊装備
イナーシャル・コンデンサー蓄積型慣性制御装置
イナーシャル・アフターバーナー(エンジン後部に内蔵。蓄積した慣性力を主推力に合成して放出)
三次元ベクタード・スラスター(メインノズル。慣性ベクトル制御も併用)
高機動スラスター(機体各所)
限定的重力制御システム
格納式エマージェンシー・シート
ジレル式パッシブステルス機材一式(光学迷彩機能はない)
主翼折畳装置

外部兵装
各種ミサイル用ハードポイント×4(左右主翼下面×4)
・6連装高機動ミサイルポッド(対機動兵器用。プラズマ弾頭)
・汎用多弾頭ミサイル(熱核反応弾頭。戦闘艇~中型艦用)
・対艦反物質航空魚雷(巡航艦以上の標的向け)
・強制推進剤ドロップタンク

備考
2191年当時の地球連邦軍の制式艦上戦闘機。名称通り2189年に制式化。DWG109 デバッケなどの当時のガミラス戦闘宇宙機を圧倒できる性能があった。
基本的に旧作ブラックタイガーをリファインしたような機体で、2190年に配備が始まったコスモ・ファルコンの前進的な機体であり、また使われてる技術から考えて姉妹機的な立ち位置の艦上戦闘機でもある。
名称は、米海軍機F9F”パンサー”より。








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第02話:”【属性】最終兵器的な要素を持つ先史文明の遺物属性持ちの愉悦主義的全裸系腹黒パッキンロリは好きですか?【盛り過ぎィィィィィ!!】”

とりあえず、第02話が完成したので投稿。
このテレサ、なんかCVが悠木碧様っぽいな……




 

 

 

 唐突で申し訳ないが、古今東西問わず、かなりのパーセンテージで伝承で語られる女神というのは、現代人の価値観で言えばロクデナシだ。

 その様はまるで性悪なことが女神の特権のようであり、また理不尽の象徴のような描かれ方をしていることも多い。

 例えば、ギリシャ神話に登場する女神ヘラ。

 旦那の浮気相手やその子供を祟ったり呪ったりする前に、旦那の女癖の悪さと下半身の緩さをなんとかしろという。

 同じオリュンポス十二神の女神、アフロディーテとかも大概だが。

 

 そして地球より2万光年ほど離れたここテレザート星にも、その末席に名前を連ねそうな者が存在していた……

 

面白くない

 

 そう自分の穴蔵(テレザリアム)の中でつぶやくのは、長い金髪とツルツルロリぺったんなボディがチャームポイントのテレサだった。

 もっとも別に彼女は受肉してるわけではなく、主に彼女自身の趣味でそう見えるように幻影、有質量立体映像のようなアストラル・ボディを形成しているだけである。

 たまにぺったんこな胸とくっきりなスジで性癖が破壊されて信者になる者がいる(というか自称「テレサ様に導かれてテレザートに辿り着いた」者の何割かは、男女問わずそのような手合だったり……)が、それも彼女にとっては愉悦だった。

 蛇足ではあるが、常に丸出しでモロ出しなのは、別にテレサ自身に露出癖があるという訳ではなく、服は物理的な変化を受けやすい肉の体だから必要という概念があるかららしい。

 

 数々の銀河神話や寓話、御伽噺にその名をちらつかせるテレサではあるが、その実像は実はそこまで神々しいものでも神秘的ものでもない。

 手っ取り早く彼女の正体を明かせば、なんのことはないイスカンダルに匹敵するかそれ以上に古い世代の、古代アケーリアス文明が生み出した老舗超高度文明の末裔……というか”成れの果て”だ。

 

 イスカンダル人ほど傲岸不遜にして邪智暴虐ではなかったが、同じく古代超高度文明にカテゴライズされる(仮称)先史テレザート文明も、中々にかっ飛んでいる。

 

 なんせ文明の到達点で行き着いた結論が、「肉体という古き衣を脱ぎ捨てて、新たな進化のステージに登ろう」というものだったから。

 きっとテレザート文明は、”陽蜂(怒首領蜂最大往生)”でも生み出したのだろう。

 そして無邪気に人類のためを想う彼女の善意の申し出に賛同し、「死ぬがよい!」されないまま、こことは違う何処かへ逝ったのかもしれない。

 もっとも今となっては、テレサさえもその結末は悲劇か喜劇か知る由もない。

 

 ただ彼女がわかるのは、自分が生まれたきっかけが億の先史テレザート人の残滓、この星と結び付き残留思念となった集合無意識より生まれたことくらいだ。

 

 いや……ここで一つ仮説を立てよう。

 もし、本当に先史テレザート文明が”陽蜂”に似た何かを生み出したのだとしたら、存外にその存在がコアとなり、遺された想いを集めて今のテレサとなったのかもしれない。

 だとすれば……

 

やっぱり面白くない

 

 遥か昔、テレサは肉の軛から解き放たれ、旅立った大好きな人達を見送った気がした。

 そこに不満はない。

 受け取った遺された想いが自分を形作ったのだとしたら、それほど嬉しいことはない。

 自分が遺された存在だとしても、寂しいとは思わない。

 

 でも、少しだけ別の不満があった。

 悠久の時を、制限のない生を与えられた自分に娯楽は必須だとテレサは考えていた。

 要するに、この世に遺された俗っぽい願いや望みもまた彼女は、叶えられなかった無念としてしっかり受け取っていたのだ。

 個人のそれではないが、人間が根源的に持つ根源的な欲求のようなものだ。

 

 その欲求を満たすため、テレサは時間や空間を超越するコスモウェーブに自分の意識を乗せ、宇宙を物見遊山することを覚えた。

 そしてある時、自分の意識や感覚は文字通り時間や空間を超越していることを自覚した。

 つまり、自分にとって確定した過去も、未確定で揺らぐ未来の可能性も見通せることに気がついたのだ。

 

 更に億の夜を超える頃、”()()()()()()()()()()”事に気づいた。

 そう、並列世界あるいは平行世界の存在を知覚したのだ。

 

 そして、この世界線の……もしかしたら、最高性能のエレメンタル・ドールに似た何かを核としたかもしれない彼女は、こことは違う世界に住まう自分へとアクセスした。

 

 別に他の世界に干渉するつもりなどなかった。

 ただ、好奇心という欲求を満たせればよかった。

 だが……

 

好きなお話がない

 

 1万と2000ほどの年代記(クロニクル)を見た後に、彼女はそう感じた。

 計算上、1億と2000見ても好みの物語が見つからない可能性が高かった。

 

やっぱり、見てるだけじゃダメなんだ

 

 だから、

 

見たいのなら、テレサが()()()にならないと

 

 そう決めた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 ”候補”は、もうあった。

 自分が見たどの世界線でも、どこかしら何かしら自分と関わりを持った星……

 

 幸い、あるいは当然のようにその青い星は、自分の世界線にも存在していた。

 

 その星の住人の暦によれば西暦2025年7月4日、滅亡の始まりを告げる最初の核が発射された。

 これといった明確な怨嗟があったわけじゃない。

 核の炎に包まれる数年前から、大陸東部より異常進化を遂げる病原性ウイルスが惑星上を覆い、経済活動に致命的な打撃を継続的に与えた。

 その根絶もままならぬまま、今度は衰退したかつての大国が隣国に攻め込み、穀倉地帯を焦土に変え、世界的な食糧不足が連鎖的に起きた。

 人々の不安が焦燥を生み、それがやり場のない不満と誰かにぶつけたい憤怒に変わるまでそう時間はかからなかった。

 

 やがて寛容は不寛容に変わり、引き金を引く躊躇が消失した。

 化石燃料文明から脱却できぬまま、宇宙に広がれぬままその星のアケーリアスの落とし子達は終焉を迎えるはずだった。

 

 

 そしてそれは、紛れもなく好機だった。

 

 

救済を望むのは、あなた達かな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




このテレサ、怒らせると反物質のふぐ刺しとか洗濯機とか撃ってきそうw

ガミラス(とばっちりでイスカンダル)がひどい目に合うとすれば、ほぼほぼこの全裸系パッキンロリのせい。




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第03話:”ハイペロン 地球だって持ってますことよ?”

今回は、2191年4月1日以降、地球とガミラスがどんな宇宙戦争やってるか?的なエピソードです。

ネームド・キャラ、出て来ないッス……






 

 

 

 ”大ガミラス帝星”との開戦から数年間は、膠着状態や自然休戦期を挟みながら、戦闘はなお継続的に続いていた。

 ガミラスと地球連邦、この2つの勢力がいまだ決定的な破綻をきたしていないのは、皮肉にも両国ともに決定打に欠けているからだった。

 

 地球連邦の人口は、2190年の国勢調査で合計150億人強。銀河英雄伝説の自由惑星同盟より20億人ばかり多い。

 2025年勃発の第三次世界大戦の影響で、最悪の時は”とある世界線”で地球外起源炭素作業機に痛めつけられた1999年当時の地球総人口より数を減らしたにしては、150年ちょっとで中々の増え方だった。

 

 まあ、間違いなくどこぞの全裸系パッキンロリが何か(テコ入れ)したのだろうが。

 

 

 

 実際、2025年を堺にテレサの地球人類へのテコ入れは定期的に行われ、太陽系とテレザート間の2万光年を片道1ヶ月程度で無理なく往来できるようになった今では流石に頻度は落ちたが、それでも0になったわけじゃない。

 

 そのおかげもあって、地球連邦は現在、計6基の”()()()()”という移動できるデカブツを頂点に、無数の宇宙軍港や地上基地、そこに駐留する3万隻超の連邦宇宙軍艦艇と、合計25万機の軍用機を保有するに至った。

 それらを機能させる予備役を動員してまで集めた(政治的にも経済的にも問題が多すぎる徴兵は行われていない)1億人の将兵を揃えることにも成功している。

 だが、一見すると膨大に見えるこれらの兵力を持ってしても、2万光年の間にある全ての恒星系に軍を駐留させるのは土台無理な話だった。

 むしろ、基地を置いてるのは通商の要所となる部分だけで、そこから無人艦艇を含む広域哨戒網や警戒網を敷くことによって、どうにか航路を維持しているというのが偽らざる本音である。

 端的に言えば、今のところ積極的な全面攻勢に踏み切れるほどの潤沢な兵力は地球連邦にはない。

 

 対してガミラスは、実働戦闘艦艇数こそ8万隻と地球連邦の3倍近いが、如何せん彼らは維持すべき戦線が多すぎるし、戦域が広大すぎた。

 更に今のところ宇宙海賊扱いの”蛮族”としてしか認識されていないガトランティスが、大マゼラン星雲で蠢動し始めてるせいもあり、余計に兵力的余裕がなくなってきてる筈だ。

 

 そこで開戦より2年が経過した2193年頃、ガミラスは地球連邦勢力の哨戒の穴を突くように必要なら浮遊大陸まで持ち込んで前線基地を設営、宇宙規模の投石と言える遊星爆弾や原作で飛び立とうとするヤマトに向けられた星系間対惑星攻撃用大型ミサイルなどを用いた無差別ロングレンジ星系間飽和爆撃を仕掛けるようにドクトリンを切り替えた。

 だが、これが地球連邦の逆鱗に触れた。

 

 

 

 軍事施設も民間人居住区も一緒くたに大量破壊兵器で吹き飛ばすやり口は、自業自得とは言え核戦争の相互確証破壊で全滅しかけた経験を持つ地球人の虎の尾を踏むのに十分な蛮行だったのだ。

 

 そして、ガミラスは地球連邦軍の宇宙迎撃能力や探知能力を完全に甘く見ていた。

 

 2194年6月に誰も表立って口には出さないが、「報復と懲罰」を目的に発動された死の支配者(オーバーロード)作戦”は、守勢的な姿勢を貫いていたこれまでの地球連邦の軍事作戦に比較し、明らかに異質な作戦だった。

 

 その発動に伴いガミラスの遊星爆弾や大型ミサイルの発射地点を算出した地球連邦は、開発はしていたが使用を自粛していた兵器の封印を解くことを決定した。

 その兵器の名は、

 

 重核子(ハイペロン)爆弾”

 

 何故、地球がそれもこんな早い時期に重核子爆弾を保有していたのか……?

 この作品のオリジナル要素かと言えば、そういう訳では無い。

 実は原作2199(リメイク・ヤマト)でも、重核子爆弾は”()()()()()()()()()”として登場するのをご存知だろうか?

 無論アニメ本編ではなく、コミカライズ版、それも単行本未収録エピソードにおいてだが。 

 概要はこうだ。

 

 地球脱出が目的とされる”イズモ計画”には、一握りの上層部しか知らない()があった。

 その脱出の意味は、決して地球人類全員を安全域まで逃避させるというものではない。

 その本質は、超光速航行が可能な次元波動機関搭載船に人間を含む地球生物の遺伝子を詰め込んだ播種船として用いるということにある。

 そして現在生きている地球人は、その脱出させるべきエレメントには()()()()()

 では、残された地球人はどうするのか?

 それは……播種船が出航した後、地球本土の占領に来たガミラス軍もろとも地下深くに秘密裏に設置されている()()()()()で死滅させる手筈だった。

 即ち、玉砕によってガミラスへの隷属を拒否すると同時に、地球という存在そのものをリセットしてやり直そうという信念に基づくものであった。

 

 内容が内容だけに、道理で単行本に収録されなかったわけである。

 とは言うものの、重核子爆弾と書くと如何にも厳しいが、重核子自体は正式には”ハイペロン”というもので、これは”バリオン(亜原子粒子=原子より小さな粒子)”の一種で、バリオン自体も”ハドロン(複合粒子=素粒子の複合体)”グループの一つである。

 付け加えるとごく少量であれば2022年現在の地球の技術でも、高エネルギー加速器があれば生成できるのだ。

 

 それとわりと誤解されているのだが……重核子爆弾は人間の脳だけを重核子(ハイペロン)で破壊すると思われがちだが、それは旧作が公開された当時、冷戦時代真っ只中で中性子爆弾が脚光は浴びていた時代だからこそ広まった誤認である。

 実はオリジナルの設定でも「任意の生物の脳細胞を一挙に死滅させる」とされるのは、ハイペロンではなく最終的には()()()()調()()()()()()()であり、ハイペロンは重力波を発生させる触媒になっているに過ぎない。

 

 だからこそ、2190年代の地球連邦がハイペロン、バリオン、ハドロンの豊富な技術蓄積を持っていても不思議はなく、またこの世界線の地球連邦は、主にテレザート在住の誰かさんに起因する”とある理由”により、原作より数段高度な重核子関連の技術を保有していた。

 

 

 

 そして、無差別ロングレンジ攻撃をしてきた天の川銀河に巣食うガミラス勢力に、地球連邦は容赦しなかった。

 珍しくも攻撃的な布陣で出撃した地球連邦選りすぐりの強襲任務群は、ことごとくガミラスの守備艦隊を壊滅させた後に発射地点と特定した11箇所の基地にワープさせた重核子爆弾を投下、起爆させた。

 旧作の暗黒星団帝国のように脅迫目的ではなく、完全に基地に居るガミラス人全てを殲滅するために使用したのだ。

 

 この作戦で、少なくとも重核子爆弾が透過されたガミラス基地に生存者はおらず、故に捕虜も発生しなかった。

 その後に入った宇宙海兵隊や空間騎兵隊が隅々まで調査し、「抵抗してきたのはガミロイドだけだった」と報告したのだから間違いないだろう。

 

 更に入ってきた工兵隊により、小惑星点火用の反射衛星砲や反射衛星、大型ミサイルや制御装置一式に無傷のガミラス艦艇や航宙機など、持ち出せるものは根こそぎ持ち出した。

 

 最後に法務士官立ち会いのもとに戦死者の私物や官給品が遺品として集められ、「死体をそのままにしておくのも忍びなく、衛生上の問題もある」という建前で、遺体はすべて回収され必要な生体データやサンプリングを行い、リストが作成された後に荼毘に付された。

 

 無論、これは言うまでもなくガミラス側に「何を使って将兵が殺されたのか?」を司法解剖などで悟られないための処置であった。

 

 

 

 

 

 

 

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 当然のように、ガミラス本国では主に軍部が蜂の巣を突いたような大騒ぎになった。

 何しろ彼らにしてみれば、十分な防備を固めていたはずの前線基地が、「ある日突然、11箇所も同時に音信不通になった」のだから当然だろう。

 

 

 大至急、近隣の部隊に調査に向かわせたが、厳重な哨戒網を敷いていた地球連邦(テロン人)の艦隊に追い散らされ、ほうほうの体で逃げ帰ってくる始末。

 それならば大規模な編成の艦隊で一気に攻め込みたいところだが、ガミラスの天の川銀河方面軍は薄く広く艦隊を配置していたために、集結まで時間がかかる上に補給を考え、どこを集結地点にするかという問題もあった。

 

 やがて、永続的に占領する気がないらしいテロン人が艦隊を引いたあとに調査隊が入ってみれば、

 

『何もありません。本当に何も……ただ、ここが基地として利用されていた場所で、その跡地であるとわかるだけです』

 

 そう目から光を失った調査部隊員の報告を聞いたガミラス軍情報部は頭を抱えた。

 とにかく、何が起きたのかわかる証拠がなさすぎた。

 11箇所の基地が壊滅したのは理解できたが、肝心のその方法が推測不可能だった。

 

 故にガミラスは、

 

テロン人の手が届くところに基地は設営しない。テロン人との戦争は、足の長い戦闘艦による長駆艦隊戦で決着をつける

 

 というシンプルな方針転換を行った。

 

 

 

 だが、これがガミラスにとり更なる悪夢の始まりだった。

 そう、2194年を堺に続々と就役が始まる地球連邦のより強力になった最新鋭艦群のせいで、最終的にキルレシオが1:10まで悪化する……地球連邦艦を1隻沈める間に、ガミラス艦が10隻沈む羽目になる”艦隊大消耗戦時代”の幕開けであったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




実は地球連邦も保有していたヤベー武器w

今回は、原作にも出てきたメカ設定など。

※※※






90式汎用戦闘攻撃機”コスモ・ファルコン”

全長:17.9m(機首陽電子機関砲身含まず)

武装
57ミリ陽電子機関砲×2(機首)
30ミリパルスレーザー砲×6(機体側面。ブレンデッドウイングボディ部)
内蔵ウェポンベイ(各種ミサイル計8発)

エンジン
副機:重力縮退式熱核反応タービン×2(別名:インパルス・タービン)
副機:テレザート式陽電子転換炉×1(APU兼用)

防御装置
位相変調装甲(表明装甲。敵エネルギー兵器の逆位相のエネルギーを当てて相殺する装甲。特にビーム兵器に有効)
エネルギー転換装甲(内部装甲。エネルギーを硬度や靭性に変換する内部装甲素材。実体兵器に有効)
自動発射式妨害装置投射機

特殊装備
イナーシャル・コンデンサー蓄積型慣性制御装置
イナーシャル・アフターバーナー(エンジン後部に内蔵。蓄積した慣性力を主推力に合成して放出)
三次元ベクタード・スラスター(メインノズル。慣性ベクトル制御も併用)
高機動スラスター(機体各所)
限定的重力制御システム
格納式エマージェンシー・シート
ジレル式パッシブステルス機材一式(光学迷彩機能はない)

外部兵装
各種ミサイル用ハードポイント×4(左右主翼下面×4)
・6連装高機動ミサイルポッド(対機動兵器用。プラズマ弾頭)
・汎用多弾頭ミサイル(熱核反応弾頭。戦闘艇~中型艦用)
・対艦反物質航空魚雷(巡航艦以上の標的向け)
・強制推進剤ドロップタンク

備考
堅牢な設計と高性能が売りの基地航空機。原作と違い艦船に搭載され艦上機あるいは艦載機として運用されることはなかった。
2190年より配備開始。基本的にコスモ・パンサーの姉妹機と考えて良い。
艦載機としての設計制約がなかったせいか原作より幾分大柄で、そして高性能に仕上がっている。
就役が原作より10年近く早く、しかも随所にこの時代の地球にはある筈のない名前の装備の表記があるが、いずれ理由は明らかになるかもしれないが……ほぼほぼ全裸系パッキンロリのせいだと考えて良い。
一切のオプション追加不要で大気圏突入・離脱が可能な空中・宇宙を問わない全環境対応機で、木星付近のような高重力条件でも活動できる出力がある。その出力に裏打ちされているのが、攻撃力と防御力と運動性で、攻撃力は原作2205に登場する”コスモ・パイソン”を数字上は凌ぎ、防御力や運動性は……そういうことだ。
また、普通の防空戦闘機としてだけでなく、遊星爆弾や星系間大型ミサイルを迎撃するメテオ・スィーパーとして大活躍し、その勇名を馳せた。
配備された時代を考えると、開戦当時の地球連邦とガミラスの技術差は、艦艇よりむしろ航空機にあったように思われる。
そう思えるほどの性能を誇り、コスモ・ゼロが戦場に姿を現すまで、紛れもなく地球連邦のフラッグシップ・ファイターであった。











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第04話:”第四話目で、ようやく主人公が出てくるみたいですよ?”

まんまサブタイ通りです。




 

 

 

2198年3月、太陽系・テレザート間航路

地球より約8000光年……第68哨戒任務群、旗艦:装甲巡洋艦”セント・ヘレナ”

 

 

 

 2194年からの後継の八雲型戦艦の就役と共に、戦艦から装甲巡洋艦に艦種変更された金剛型。

 その中の幾隻かは艦底面に背負式に装備されている2基の36サンチ(14in)三連装陽電子収束荷電粒子砲のうち、後方の四番砲塔が撤去され代わりに居住区画や格納スペースを増設、完全編成の宇宙海兵隊ないし空間騎兵隊1個増強小隊程度を装備一式ごと運用できる「揚陸仕様」へ改造が施されていた。

 ビジュアル・イメージ的には原作金剛型戦艦の四番砲塔を取り外してその分下っ腹をパテ盛りするようにふくよかにし、原作宇宙戦艦ヤマトの艦底後部のコスモ・ファルコン射出用ハッチを取り付けた感じだ。

 

 この”セント・ヘレナ”もそのような揚陸仕様の改造を受けた金剛型の1隻だった。

 

「それにしてもアンタも物好きだねぇ。4月に装備実験航空隊に配属だってのに、わざわざ哨戒任務に志願するなんてさ」

 

 さて、その船の食堂で青年に気軽に話しかけてきたのは、長身とポニーテールが活発さを示す、”カッコいい女”路線を地で行く地球連邦軍空間騎兵隊所属の軍曹、”永倉志織”だった。

 

「おっと、これは失礼。今や上官、()()殿でしたね?」

 

 と、おどけた様子で敬礼する永倉に青年、いやまだ少年臭さが残る主人公……”古代進”は苦笑しながら、

 

「やめてくださいよ、永倉()()。貴女にそうされるとなんというか……こそばゆいです」

 

 人の縁というのは、どこでどうつながるか分からないというのは洋の東西を問わずに言われることだ。

 そして、この揚陸仕様に改装された装甲巡航艦の中でも縁の糸は、再会によりまた紡がれていた。

 さて、古代進と永倉志織の縁というのも中々に面白い。

 

 時間は、古代進がまだ士官候補生だった時代まで遡る。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 古代は士官学校時代、パイロット養成科を履修していたのだが……

 特に彼が履修していた戦闘機コースには、とある必須受講訓練がある。

 その名は「不時着時生存帰還訓練」だ。

 

 内容は読んで字のごとく、事故やら撃墜やらのアクシデントで愛機から放り出されたとき、どうやって脱出し生き残り、味方がいるところまで帰還するかという訓練だが……その中で一番過酷とされているのが、”白兵戦ブートキャンプ”と呼ばれる訓練だ。

 つまり、「敵兵に囲まれた状況で如何にして生き残るか?」を骨子としたもので、当然のように白兵戦訓練が含まれていた。

 もうお察しかもしれないが、古代が放り込まれたのが空間騎兵隊、桐生悟郎中佐(当時)麾下の部隊で、指導教官だった軍曹が永倉だったというわけだ。

 

 ちなみに当時の永倉もまたなったばかりの新米軍曹で、当然のように訓練生を受け持つのは初めて、つまり古代は永倉にとっても教え子第一号だったということになる。

 そういう意味でも思い入れ深い生徒ではあったが、それに輪をかけて印象に残っているのが古代はいわゆる優等生であり、「色々な意味で」優秀な生徒だったということだ。

 とりわけ射撃に関して高い適性があり、パイロット・サバイバル必須の軍用拳銃(コスモガン)メインのCQBタクティクスだけでなく、海兵隊ならびに騎兵隊の象徴とも言える複合レーザーアサルトライフルを相棒とした通常陸戦訓練も卒なくあるいは難なくこなし、それどころかリニア・スナイパーライフルにまで高い適性を見せたのは正直、永倉も内心で舌を巻いた。

 

『試しに撃たせてみたら、玄人はだしだった』

 

 と当時の永倉の訓練詳報にも記してあるほどだ。

 ちょっと本気で空間騎兵隊にスカウトしたくなったが、「航空技量主席」と記されている成績ログを前にしては諦めるしかなかった。

 

 余談ながら同時期、同じ部隊で白兵戦訓練を受けていたのが、後に無二の親友となる”島大介”だ。

 彼は航海科なのだが……白兵戦訓練を受けていた理由は、「艦が航行不能あるいは不時着した際、侵入を図る敵兵を迎え撃つ」ためのカリキュラムを受講する必要があったかららしい。

 なので、古代が野戦訓練がメインであったのに対して、島は日夜元気に艦内を模したキルハウス・プラクティスをこなしていたらしい。

 ついでに書くと古代は前述の通り銃器メインのCQBが得意なのに対して、島はナイフ戦や無手格闘術を含む近接戦闘術:CQCを得意としていた。

 島の射撃の腕前は軍で標準的と言って良いものだったが、格闘術に精通していたようだ。

 特に蹴り技が強力で、オーバーロード作戦で鹵獲し修復、訓練用に再利用しているガミラスの戦闘用アンドロイド、通称”ガミロイド”を一撃で蹴り壊す姿を見て、古代は「コイツを怒らせたら怪我じゃすまないな」と戦慄を覚えたらしい。

 ……やっぱり古式の琉球唐手だろうか?

 

 そのせいもあり、島は島で空間騎兵隊に勧誘を受けていたらしいが、父と同じ船乗りになる志を持つ島は、鋼の意思で誘いを蹴ったようだ。無論、物理的にではない。

 

 

 

 そして古代と島は、年齢が同じで同じ地獄の訓練を生き延びたことで意気投合、友誼を結ぶ事となる。

 もっとも、2198年現在においては、まだ「再会できたら、酒でも飲もうや」という感じの友情ではあるが。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 古代はその後、新米少尉として第7航宙団、最新鋭の汎用艦上戦闘機”コスモ・ゼロ”が配備された戦闘機隊配属となった。

 しかし、任官1年にして異動の辞令が唐突に降ったのだ。

 

 新たなる配属先は、”第13装備開発実験航空隊”

 まだ出来たてホヤホヤの部隊で、テストするのは海の物とも山の物ともつかぬ初期段階の試作機ではなく、実戦テストに投入できるレベルまで仕上がった機体であるらしい。

 要するに試作機の看板を外し、初期生産に移行できるかどうかの判断材料を捻り出す部隊ということだ。

 

 長いので第13実験飛行隊と略すが、かの部隊が求めた人材は「経験が浅く、尚且つ腕の悪くないパイロット」だ。

 チャック・イェーガーの例を出すまでもなく、テスト・パイロットというのは経験があり腕が立つパイロットが選ばれる。何が起こるかわからない実験機や試験機を飛ばすのならそれも当然だろう。

 確かに第13実験飛行隊にもその手のパイロットは在籍している。だが、それだけでは部隊の性質上、足りないのだ。

 わかりやすく言えば、彼らが取りたいデータは「新型機を経験の浅いヒヨコに与えた場合の挙動」だが、同時に「つまらん操縦ミスで墜落でもされたら目も当てられない」というところだろうか?

 

 そういう意味では、古代はまさに適任だろう。

 そうでなければ、こうも露骨な一本釣りはされないだろうが。

 

 

 

 もっとも、今回の辞令の妙な部分は、普通は人員の異動だけなのだが内容的に『上層部と話はつけたから、君の愛機も一緒に運んできてくれないかな? 新型機との性能比較に使いたいんだ。ああっ、治具とか整備機材やら何やらはこっちで用意するから、コスモ・ゼロだけ持ってきてくれればいいよー』という命令書も同時に受け取ったところだろうか?

 

 もっとも、これはコスモ・ゼロがまだ配備開始から3年も経っていない最新鋭機で、前線に回すだけで今のところ生産ラインが手一杯になっている現状を考えれば納得できなくもない。

 

 実際、古代が間借りしている”セント・ヘレナ”も揚陸仕様に改修する際にコスモ・ゼロや100式偵察機などの新型機運用能力を獲得しているが、実機は未だに配備されておらず、艦載機はおなじみのコスモ・パンサーのままだ。

 

 そう、そしてコスモ・ゼロを搬送手段として提案されたのが、戦隊規模の麾下を引き連れ哨戒任務中に第7航宙団基地のあるテレザートで補給を行い、地球へ戻る第68哨戒任務群に便乗することだった。

 第68哨戒任務群は地球・テレザート間の巡回哨戒任務を行う部隊であり、都合が良いことに航路上、補給を行う惑星に古代の新たな配属先があり、旗艦の”セント・ヘレナ”にはコスモ・ゼロの運用能力が備わっていた。

 

 本来なら古代はゲストであり、積み荷の持ち主以上のものではないのだが、流石に運んでもらうだけでは申し訳ないと思ったのか、あるいは移動中に腕を鈍らせたくないという向上心なのかわからないが、古代は第13実験飛行隊の拠点に到着するまで哨戒任務への協力を志願し、めでたく受理されたという訳だ。

 

 

 

 だが、この選択こそが古代進という男の運命を、良くも悪くも大きく変えてゆくことになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ただし、師弟関係であっても別に永倉がメインヒロインというわけではないw

とりあえず、今回もメカ設定とか。




※※※



金剛型装甲巡航艦(2191年当時は戦艦)


全長:280m
同型艦;金剛、榛名、霧島、比叡、アサバスカ、ホワイトホーン、ベン・ネビス、セント・ヘレナなど

・艦首46サンチ(18in)陽電子衝撃砲×1基(固定砲。物理砲身式。実体弾発射可能。ビームで砲弾を押し出し、リニアライフルングで螺旋加速させる物で独立した装薬などはない)
・主砲:36サンチ(14in)三連装陽電子収束砲×4基(旋回砲塔。力場砲身式。ビーム専門。垂直方向への指向は力場砲身依存。艦上下面に背負式。2番、4番砲塔は後方へ指向可能)
・副砲:20サンチ連装重核子収束砲×4基(旋回砲塔。力場砲身式。ビーム専門。垂直方向への砲撃は力場砲身依存。船体側面対角線に正面から見るとX状に配置。全門全周囲射界を持つ)
・533ミリ(21in)空間汎用魚雷発射管×8門(艦首両舷。リボルビング装填装置。1門あたりの3発)
・汎用八連装ミサイル発射塔×2基(上下甲板)
・94式爆雷投射機×2基
・88ミリ連装高角速射陽電子砲×12基(CIWS=無人旋回砲塔型)
・76.2ミリ(3in)連装パルスレーザー×12基(CIWS=無人旋回砲塔型)

機関
主機:次元波動機関(地球量産型コア)×1
副機:テレザート式対消滅・対生成反物質炉(テレザート由来の反物質=安定化疑似反三重水素を使用。波動機関を起動させるAPUとしても使用可能)
予備電源:重力縮退式熱核反応機関(別名:ケルビンインパルス・エンジン)

防御装置
コクーン型波動防壁(艦周囲に紡錘状に展開するフィールド型防壁。通常航行時にも対デブリ用に展開し、戦闘用のコンバットステータス=高出力モードを持つ)
位相変調装甲(敵エネルギー兵器の逆位相のエネルギーを当てて相殺する表面装甲。特にビーム兵器に有効)
エネルギー転換装甲(エネルギーを硬度や靭性に変換する内部装甲素材。特に実弾兵器に有効)

搭載機
・空間艦上戦闘機×8機
・空間偵察機×2機
・内火艇×2艇(脱出艇兼用)

超光速航法
イスカンダル式ワープ航法(安全マージン込で24時間で3回のワープが可能。計算上600光年/日の速力。2199年当時は機関強化が施され750光年/日となっている)

備考
ガミラスとの開戦当時、地球連邦軍最大の純粋戦闘艦。当初は戦艦区分だったが、後継の八雲型が就役し始めた2194年以降は機関などに小改良がほどこされ装甲巡航艦に艦種変更された。
2191年4月1日、ガミラスとの最初の接触→戦闘のとき、沖田十三准将が座乗していた船。
イメージ的にはほぼ原作2202後半に登場する金剛改Ⅱ型宇宙戦艦準拠の性能を持っている。ワープを含めた機動力で勝り、艦首に波動砲を持たないことと主砲がショックカノンでないことで攻撃力でやや劣り、防御力は位相転調装甲やエネルギー転換装甲の導入で上回る模様。

1番艦の就役が2171年と比較的古い船ではあるが、2191年当時には大半の同族が第一次近代化改修を終えて上記の仕様になっていたようだ。
2194年以降は前出の通り第二次近代化改修が順次実行され、ワープでの航行距離が八雲などの世代と同等になり、また随時コスモ・ゼロ、100式偵察機などの新型機運用能力を得た。
また、何やら”あるはずのない(オーパーツ)技術”も混入しているようだが……いずれ理由は明らかになるだろう(ただし、重くもなければ深くもない理由)。
また一部の船は四番砲塔(船体下面背負式2基の砲塔のうち、後方の砲塔)を撤去し、”コスモシーガル”も搭載できる大型カーゴスペースと原作ヤマトに似た艦底面装甲ハッチを増設した”揚陸仕様”に改装されている。
これは2194年の”死の支配者(オーバーロード)作戦”以降、ガミラスの拠点制圧や占拠の必要性が再認識され、宇宙海兵隊や空間騎兵隊の展開能力拡充が急務とされたための対応である。
その為、当時は人が装着できるほど小型化されてなく、人が乗り込んで操縦するタイプの大型装備を含む完全編成1個増強小隊(戦闘隊のみならず整備隊などを加えた自己完結性の高い小隊)程度の運用が可能となっている。

なお、三連装陽電子収束砲の一部が艦橋砲塔になっているわけではなく、砲塔は全て同じデザインで艦橋機能を持つCICは、現代の軍艦のように艦内最深部の重防御区画(ヴァイタル・パート)内にある。








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第05話:”「艦隊大消耗戦時代」と呼ばれた時代”

今日、仕事休んで通院したので、余った時間で執筆完了。

なにやら前作「たまには地球がチート臭くても良いのではないかと」より、地球もガミラスも真面目に戦争してるなーと。
やはり、チートではなくぷちーとだからか?w





 

 

 

2198年3月、太陽系・テレザート間航路

第68哨戒任務群、旗艦:装甲巡洋艦”セント・ヘレナ”

 

 

 

 その”救難信号”を傍受したとき、第68哨戒任務群を率いる”山南修”大佐は、頭を悩ませてしまう。

 現在、第68哨戒任務群はテレザートからの復路にあり、コスモ・ゼロをパイロットごと赴任地までエスコートするという副次任務はあるが、それ以外はこれといった特別任務のない……通常の哨戒任務と、要所要所に無人警戒網の保守点検や無人偵察ポッドの補充、宇宙灯台のデータログ確認、不審なデブリの調査と破壊を含む撤去、掃宙任務などを行っていた。

 まあ、こういう船外作業が多くあるからこそ、空間騎兵隊を引き連れているのだが。

 

 そこに前触れ無く飛び込んできたのが、弱すぎて個体識別できない、だが明確な地球連邦の国際救難信号(エマージェンシー)だった。

 

 無論、見て見ぬふりをするとか、無視するという選択肢はない。

 船乗りの心意気云々に出すまでもなく、少なくとも宇宙軍はまだ惑星上で海軍と呼ばれていた時から、大きく言えば制海権と通商路の維持を第一義とする組織であり、軍民問わず自国の船舶の救難はその職務に含まれている。

 しかし……

 

(どうにも、”()()()()”ねぇ……)

 

 山南は思考を巡らせる。

 そもそも、一介の大佐に過ぎない自分が、戦艦の艦長ではなく戦隊1つを引き連れる事になっている理由……それは、第68哨戒任務群に限らず100近くも編成された哨戒任務群について考えるべきだった。

 

 哨戒任務群が編成されたきっかけは、ガミラスのドクトリン変化が背景にあった。

 2194年に発動された”死の支配者(オーバーロード)作戦”……天の川銀河に設営された地球連邦領域近隣11箇所のガミラス前線基地に対する重核子爆弾の投下は、予想以上にガミラスに影響を及ぼしていた。

 そう、例えば彼らが「テロン人」と呼ぶ勢力との戦争計画を大幅に見直さなければならなくなるほどにだ。

 遊星爆弾や戦艦より巨大な超大型ミサイルによる無差別ロングレンジ爆撃から、

 

”テロン人の手が届くところに前線基地は設営せず、足の長い戦闘艦による長駆艦隊戦で決着をつける”

 

 という方針にだ。

 だが、それは結果としてガミラスどころか地球連邦でさえも予想しなかった結果となったのだ。

 

 

 

 2195年初旬から2197年中旬までの約2年半、彼我双方の参加艦艇数1000隻超えの大規模会戦が頻発し、また動員規模を考慮しなければこの間に起きた軍事衝突は200を超える。

 計算上、4日に1回のペースで何らかの戦闘行為が行われていた計算になる。

 

 無論、もっとも大規模会戦が集中したのは地球連邦、いやおそらくは天の川銀河最高峰の資源地帯、こと反物質に限れば産出量無限とされるテレザート星系近辺だ。(実は産出できるのが反物質だけとはテレサは一言も言ってないが……)

 

 しかし、それ以外の場所……地球とテレザートの航路上、その多くの場所にガミラスの艦隊は出没した。

 200を超える戦いが2年半の間にあったと書いたが、これでさえ地球連邦が地球とガミラスの間に敷いた2万光年の宇宙通商路、そしてその要所に設けた宇宙艦隊拠点や6基の機動要塞の哨戒網や警戒網に引っかかった敵を迎撃した数にすぎない。

 

 実のところ……定点観測設備や指定された宙域や航路を定期巡回する無人艦や無人偵察ポッド/ドローンである程度穴埋めしているとは言え、それ以外の部分は目が届かず、艦隊出没の頻度から考えてこの広い天の川銀河にガミラスにより連邦が未確認・未発見の軍事拠点を、それも複数が新規に設営されていることは確実視されていたが、鹵獲した敵艦を調べても地球連邦に場所を知られるのを嫌がったのか、航路データは途中からきれいに抹消されていた。

 ”こちら側”に寝返った捕虜(ゲスト)の話を聞く限り、航路図が途切れてるところまで戻るとその先の航路データが再受信される設定になっているらしい。

 どうやらオーバーロード作戦は、ガミラス人に想定以上のトラウマを植え付けてしまったようだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 だが、その状況も2197年も後半に入ると再び変化する。

 ガミラスは正面から殴り合うことをやめ、小規模で隠密性や機動性の高い少数精鋭部隊を用いてこちらの哨戒網をすり抜けようとするドクトリンに切り替えたようなのだ。

 

 だが、この変化に関しては地球連邦とて納得はできた。

 

 オーバーロード作戦で各種大小装備諸々とともに入手した情報を解析した事により、地球連邦は”大ガミラス帝星”を僭称する敵国の大まかな位置を把握自体はしていたのだ。

 地球より16万8千光年の彼方……大マゼラン星雲の中に、彼らの本国はあったのだ。

 それを知った地球連邦の政府と軍の上層部は、素直に頭を抱えた。

 何しろ正しく”距離の暴虐”……この世界線では、地球から見てテレザートは大体大マゼラン星雲方向にあるのだが、そこを寄港地にしたとしても14万8千光年という旧作ヤマトにおけるイスカンダルまでの距離が横たわっているのだ。

 

 八雲級戦艦を頂点とする現在の地球最新鋭艦の一日の移動距離は、安全マージンを考えると250光年ワープ×3で750光年というところだ。

 仮にテレザートから出発するにしても、ガミラス本国に到達するまで約200日……

 

 確かに機関冷却のリスクをあえて看過すれば1日4回のワープ、日速1000光年の超光速航行で、何事もないことが条件だが計算上は150日以内に到達できるかもしれない。

 だが、当然のように5ヶ月も無茶な冒険航海ができるように軍艦は作られてないし、地球の軍艦は基本的に防衛用途を目的に設計段階から建造されているため、そもそも15万年もの距離を無寄港・無補給・ノーメンテで航行できるようにはできていないのだ。

 いや、地球連邦各所で極秘裏に行われている”()()()()()()()”なら可能かもしれないが、少なくとも2198年3月の時点では、連邦のどこを探しても、大マゼラン星雲まで到達できる船はない。

 

 しかも、地球人が解析できたガミラス人の航路図は実に大雑把であるうえ、彼らの拠点の目星はついたが、それ以外の”難所”だの何だのと推測しかできない物や意味不明の表記や記述が多数あったのだ。

 それこそ、「実際、行ってみなければ状況がわからない」という感じだ。

 

 

 

 ここに経験の差がモロに出た。

 ガミラスは何だかんだ言っても、驚くほど短い期間(古代イスカンダルにより、ライバルになりそうなつよつよ宇宙文明が粗方エレメント化されているとはいえ)で大小マゼラン星雲で覇権を確立した軍事国家で、地球はどこぞの全裸系パッキンロリのテコ入れがあったとしても、本格的に宇宙を生活の場としてから1世紀程度の新米宇宙国家にすぎないということを、改めて思い知らされることになったのだ。

 

 まあ、逆に言えばそんな短期間で2万光年も離れた2つの恒星系を結ぶ航路を往来し、あまつさえ今のところ制海権を維持している地球も異常と言えば異常だ。

 

 そして、その地球という国家の異常性、言い方を変えればテレサの最大の被害者もまたガミラスであった。

 そう、地球連邦上層部はこう結論付けたのだ。

 

”如何にガミラスが巨大覇権国家だとしても、1()()5()()()()()()は無視して良い問題ではなかった”

 

 と……

 この2年間でガミラス側の撃沈確認、大破や中破による航行不能などで地球連邦に処分や確保された船の数は15000隻を越えていた。

 更に悲劇的だったのは、その間に地球連邦が受けた被撃沈、損傷により修理不可と判定された艦艇数は、1500隻に届いていないのだ。

 

 キルレシオ、1:10……

 

 奇しくも、2年半に及ぶ一連の大規模な艦隊戦闘は、奇しくも地球連邦でもガミラスでも、ほぼ同じ呼ばれ方がされる事になる。

 曰く、

 

 ”艦隊大消耗戦時代”

 

 慥かに保有艦艇の5%を喪失した地球連邦が負ったダメージも、組織工学的には決して小さくはない。

 だが、どちらがより激しく消耗したかは、何より数字がよく物語っていた。

 

 この時期、ガミラスが天の川銀河方面に投入した戦闘員は、ガミロイドを除けば9割近くが非ガミラス系、つまり”二等ガミラス人”という被支配民族で構成されていたが……それで「青い肌を持つ純血のガミラス人の死者は多くはない」と強弁したところで、ごまかせるような小さな数字ではなかったのだ。

 

 

 

 だからこそガミラスはドクトリンを変更したのだが……

 地球連邦軍は、あるいは山南は、まだどのような変化を遂げたのか? 本質的に何が変わったのかを、未だ明確に掴みきれてはいなかったのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




1話に続いて沖田かんちょーを差し置いて再登場の山南さんでした。
苦労人気質と江原さんヴォイスは、不思議と相性が良い気がする。

明日からまたストレスフルな仕事の日々なので、更新遅くなると思います(泣

基本50話以内に終わらす予定ですが、3199放映開始までに完結できればいいなーと。





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第06話:”この世界線では、全裸系パッキンはロクでなししかいない可能性が微レ存”

時間がないのでちょい短めです。
でも、新キャラ(原作キャラ)はでてくるという謎。






 

 

 

地球より16万8千光年彼方……

大マゼラン星雲、某所

 

 

 

 その日、男はテラスより美しく輝く、どこまでも蒼い空と碧い海を眺めていた。

 特に彼は水平線……蒼と碧が混じり合い、境界線を失うその風景が好きだった。

 

(我々は青い肌が美しいと、高貴だとうそぶくが……)

 

「この美しさの前では、青い肌が高貴などと戯言に過ぎんな」

 

 すると、後ろからクスクスと鈴を鳴らすようなたおやかな笑い声が聞こえてきた。

 

「いいの? ”()()()()”? ガミラスの最高権力者がそんなこと言って?」

 

 青い肌の男は誰の声なのか、振り向かなくともわかる。

 なぜなら、この場所には今は2人しかいないのだから。

 

「いいのさ。所詮は”ヒトザル(ガミラス)”。王だろうと総督だろうと皇帝だろうと、君にとっては”猿山の大将”以上の意味などないのだろう?」

 

「もう。その言い方は少し意地悪よ?」

 

 ぷくっと頬を膨らませる金髪の美女。

 黄金律と言いたくなる女性らしい丸みを失わない均整の取れたボディラインとシミ一つない白磁のような肌……

 その美貌を隠すのは愚かと言わんばかりに何もまとわぬその姿は、なるほど確かにひどく絵になる。

 一応言っておくが金髪全裸という特徴は一致しているが、テレサではない。

 瞳の色も違うし、何よりテレサは美女ではなくジャンル的にはロリ枠の美幼女だ。

 

「すまんすまん」

 

 と青い肌を持つ美丈夫は、女に隣にくるように手招きし、

 

「君の妹君は、もう辿り着いただろうか?」

 

「予定通りなら、そろそろ」

 

 肩を抱かれながら、女は少し愁いを帯びた瞳でそう答えた。

 

 望まずに民族の命運を背負わされた男と、終わることなき墓守の役目を押し付けられた女……

 純粋に愛を語るには抱えるものが大き過ぎる二人は、とても良く似ていて……似ているからこそ、傷の舐め合いに見えてしまう。

 一時、辛辣な現実を忘れ、肉欲に溺れたただの男と女として求めあったとしても、現実からは逃れられないことをこの二人は誰よりも知っていた。

 虚しさを感じないと言えば嘘になる。

 だが、それでも自分が一人でないことを知覚するには、他者の肌とぬくもりが必要なのだ。

 

 真実を知っても、男は女を愛し続けている。

 真実を語っても、女は男を愛しいと思う。

 それが悲劇を生み出し続けるとしても、もはや止められないことを二人は知っていた。

 

 

 

 

 

 

******************************************

 

 

 

 

 

 

 

 

”良いんじゃないかな? せっかく肉の体を得たのだから、その業に溺れてみるのも一興だよ♪”

 

”でもね……”

 

”宇宙は貴女のものじゃないんだよ? 墓守さん♪”

 

 そして、魔女はほくそ笑む……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

******************************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、舞台は再び装甲巡航艦”セント・ヘレナ”

 正確には、その食堂だ。

 

 

 

「ところでさ、古代少尉」

 

「なんです? 教官」

 

 なにやらすっかり白兵戦訓練の時代の空気感になった永倉志織はおもむろに、

 

「ぶっちゃけ、あんたっておっぱいの大きな女、好きだよね?」

 

 盛大に爆弾を落とすのであった。

 

「ブフッ!?」

 

 思わず飲んでいたコーヒーを吹き出す哀れ古代進であった。

 

「な、なんですいきなりっ!?」

 

「いや、あんたって大抵、女を見るとき、顔からじゃなくて胸からみるなーと前々から思っててさ」

 

「そ、そんなことは……」

 

 しかし、永倉はニヤリと笑い、

 

「誤魔化そうとしても無駄だよ? 女はそういう視線には敏感なんだ」

 

「うっ……」

 

 進退窮まったという顔をする古代に対し、永倉はむしろ優しげに、

 

「別に責める気もないし、咎めてるわけでもないよ? まあ、あんたも年頃だと思ってね」

 

「そりゃ俺だって一応、男ですから」

 

「ふーん」

 

 永倉は、ふと思い出したように、

 

「あっ、そういやあんたが好きそうな娘、この船にも乗ってるよ」

 

「はぁ?」

 

「いや、私のダチなんだけどね、この間、たまたま非番がかちあって部屋飲みしてたら『彼氏ほしー』とか騒ぎだしてね」

 

 酒癖は少々悪い(絡み酒)が、悪い娘じゃないんだよなーなどと永倉は思いつつ、

 

「今度、紹介してやろっか?」

 

 だが、古代が何らかの答えを返す前に、艦内に緊急招集を告げる放送が響き渡ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この世界線の古代進→異星人好きではなく、自身がおっぱい星人である可能性が急浮上w

ちなみに永倉も大きいですが、互いに恋愛感情は無い模様。

次回こそ更新遅くなりそうです(汗





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第07話:”(頭髪が薄くなっても)働くお父さん”

ちょっと渋めの原作キャラの登場です。

というか、本気で女子分少ないなこのシリーズw





 

 

 

「……救難信号、ですか?」

 

 第68哨戒任務群、旗艦:装甲巡洋艦”セント・ヘレナ”のブリーフィング・ルームには、任務群各艦の艦長と副官などの首脳部、そしておそらくこれから山南司令が口にする作戦に必要だろうとこの船の士官・下士官が集められていた。

 その中に、本来はゲストであるはずの古代の姿があった。

 

「うむ。信号は強度が弱く不明瞭。波形から連邦の物ではあるだろうが、艦船の特定まではできていない状況だ」

 

 山南はそう告げた後、

 

「故に罠である可能性も否定できない」

 

 と続けた。

 

「知っている者もいるだろうが……昨年の後半より、ガミラスの動きが妙に散発的になってきている。大規模攻勢の前兆と見るものも居るが、作戦部や情報部の判断ではドクトリン変更が起きた可能性が高い」

 

 そして、艦隊付参謀がいくつかのデータを立体映像で浮かび上がらせた後、

 

「変更したドクトリン、その可能性の一つが通商破壊作戦(トレイダーレイド)だな」

 

 表示されるデータは、探知し辛い少数精鋭の部隊が、まるで地球連邦の警戒網や哨戒網の範囲と強度を探るように浸透する行動である。

 確かに通商破壊作戦の可能性が低くはないことを示していた。

 そうなれば一番邪魔になるのが、彼らのような哨戒部隊だ。

 

 哨戒任務群という字面だけ見ると比較的穏健な雰囲気があるが……語義から言えば、哨戒とは「敵の侵入や襲撃に備えて、周辺あるいは特定の区域を警戒する」という意味になる。

 ぶっちゃけてしまえば、彼らの行動はむしろ、地球とテレザートの間を定期的にあるいは不定期に巡回し、領宙を維持するための広義な意味でのハンターキラー任務を継続的にやっているようなものだ。

 加えて以前に述べたように広域無人警戒網の保守点検(メンテナンス)や機材の補充も行う。

 更に大きなくくりでの掃宙任務だけでなく、輸送船団の護衛も任務に含まれているのだ。

 

 地球連邦軍としては、本来なら護衛艦隊を司令部ごと新たに立ち上げたいところだろうが、そこまでの余裕はなかった。

 なので、哨戒任務群と輸送船団の予定をすり合わせて航行させているというのが現状だ。

 ここにつらつらとあげつらっただけでも、ガミラスが通商破壊作戦を狙うとしたら、いかに哨戒任務群が邪魔な存在かわかるだろう。

 できるなら、事あるごとに消耗させてすり潰したいと思うのも無理の無い話だ。

 

 まあ、他にも世知辛い事情もあると言えばある。

 2194年後半あたりから戦場に出現し始めた地球連邦艦、八雲型戦艦を頂点とする最新鋭艦相手だとどうにも現状では分が悪いのだ。

 そもそも2195年初旬から2197年中頃までの約2年半、ガミラスがキルレシオ1:10という散々な目に合わされた大きな理由の一つが、この新顔(ルーキー)たちに有効な戦術を見いだせず、また特効があるような兵器も用意できなかったことだ。

 

 しかし対して、哨戒任務群に回される船は、ルーキーたちの躍進により前線勤務を解かれた開戦以来の”古馴染み(ロートル)”ばかり。

 多少改良はされていても根本的には変わらず、まだ対抗策を寝ることができた。

 

 例えば、現在の地球連邦軍でも最大の保有数を誇る”磯風型突撃宇宙艇(2191年当時は駆逐艦という区分だった)”は、同時に地球連邦軍最小の戦闘艦で、最も防備の弱い船として知られている。

 確かに防御に気を使う地球艦らしく波動防壁を標準搭載しているが、その強度は次元波動機関の出力に依存するので、小兵の出力では……具体的な数字を出すなら、ガミラスの代名詞たるデストリア級航宙重巡洋艦などが装備する330ミリ三連装陽電子ビーム砲相手では、同時にあるいは短い間隔で6発喰らうと、ほぼ確実にオーバフローを起こし防壁が消失するのだ。

 また、原作2199の初期ヤマトと同じく、コンバット・ステータスで波動防壁コクーンを維持できる時間は30分以内と制約もあった。

 

 そして、一度オーバーフローを起こすと、機関冷却が終わるまで防壁の再展開は不可能となる。

 防壁を失った下にある装甲表面の処理は、これまた機関出力の問題で効果が薄いとされビーム兵器に高い耐弾性を誇る位相変調装甲ではなく、積層蒸散式耐ビームコーティングだ。

 330ミリ陽電子ビームも命中1発なら耐えられるが、ビームのエネルギーを分散・吸着して熱に変換して蓄え、粒子となって装甲より剥離し排熱する構造なので同じ場所とは言わず、剥離した場所に陽電子ビームが直撃すれば、容易く貫通されてしまうのだった。

 ついでに言えば、物理的なダメージに対する減衰は期待できず、むしろミサイルや魚雷の爆発衝撃で表面処理が剥がされ、そこにビームを撃ち込まれ沈んだケースもある。

 その下にエネルギー転換装甲もあるが、それはガンダムSEEDシリーズに出てくるフェイズシフト装甲やトランスフェイズ装甲と基本的な性質は同じで、物理的な衝撃には強いが、熱的変化の大きいビーム兵器やレーザーなどの光学兵器にはそれほど高い効果があるわけでもなく、またエネルギーを消費する装甲だけあって使われる場所も限られる。

 

 それでも原作2199の地球艦隊に比べたら雲泥の差と言っていい高い防御力だが、逆に言えば「ビームや魚雷、ミサイルなどを併用し戦術を工夫すれば、沈めることは難しくはない相手」であった。

 それは少なくともガミラスにとって福音であり、その”脆さ”を反省し開発されたのが島風型重装宙防艦だが、今のところ前線に最優先配備され、哨戒任務群に回ってくることはない。

 

 現状、第68哨戒任務群の保有戦力は、揚陸仕様に改修された旗艦の金剛型装甲巡洋艦”セント・ヘレナ”1隻に、村雨型駆逐艦(2191年当時は巡航艦という区分だった)3隻、磯風型突撃宇宙艇12隻の計16隻という布陣だった。

 

(決して弱い戦力とは言わんが……)

 

「とはいえ、救難信号を捉えて無視というのは軍の責務としても船乗りの義務としてもありえん。そこでだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

******************************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ここは第68哨戒任務群より600光年ほど地球・テレザート間の正規航路から外れた宙域……

 

 

 

「なにっ? 微弱なテロン人の船と思わしき救難信号だと?」

 

 ガミラス・地球(テロン)人領域調査特殊作戦任務部隊、通称”ガミラス浸透戦闘隊”の一つを率いる”ヴァルケ・シュルツ”大佐は、その報告に薄くなった髪の毛が乗っかる頭を捻らせた。

 

(確かに我々の任務は、テロン人の警戒網や哨戒網の穴を探り、突破口を探し出すことだが……)

 

 だが、シュルツは知っていた。

 祖国のザルツが敗れ支配を受け入れたことにより、今や忠誠を誓うべき本国となったガミラス、その首脳部は少しでもテロン人の情報を欲しがっているということを。

 

(これは好機かもしれんな……)

 

 彼が率いてる艦隊の乗員は、全て二等ガミラス人……青い肌を持たぬ故にガミラス人から下等民族と見下されるザルツ人だ。

 確かに戦争に負け、被支配民族となったが、だからこそシュルツの胸のうちには常に同胞たちのガミラスにおける地位向上が念頭にあった。

 

「ならば、発言権はあるにこしたことはないか」

 

 幸い、自分の率いてる艦隊、発見されにくくするため戦隊規模ではあるが、銀河系での戦闘経験は無いがマゼラン星雲でガトランティス相手に戦い、生き延びた精鋭揃いだ。

 しかも、自分が座乗するガイデロール級航宙戦艦”シュバリエル”を旗艦に、デストリア級重巡洋艦2隻とケルカピア級航宙高速巡洋艦4隻、24隻のクリピテラ級航宙駆逐艦を引きつれている。最新鋭ではないが、扱い慣れた「手に馴染んだ装備」で状態もよい。

 あと艦隊戦には使い所がないが、陸地調査用にガミロイドと各種車両を積み込んだデラメヤ級強襲揚陸艦も3隻随伴している。

 

(ここには判明したテロン人の大規模軍事拠点はない。出てくるとしてもパトロール部隊くらいだろう)

 

 だからこそ、彼は進路を救難信号の方向へと向けた。

 その先に、何が待っているかを知ることもなく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シュルツ君はやっぱり天の川銀河に来ていたw

まあ、1年後に”ヤマッテ”を相手にするよりはマシかなーと。


そして、今回も設定を少々。


※※※



磯風型突撃宇宙艇(2191年当時は駆逐艦という区分だった)

全長:90m
同型艦;磯風、浜風、追風など

・艦首533ミリ(21in)汎用魚雷発射管×3門(船体前面。リボルビング装填装置。1門あたりの3発)
・12.7サンチ(5in)連装速射陽電子旋回砲×2基(12.7サンチ高角速射陽電子砲の先祖。上面/下面×1。全門全周囲射界を持つ)
・汎用四連装ミサイル発射塔×2基(船体左右。回転ターレット)
・76.2ミリ(3in)連装パルスレーザー×4基(CIWS=無人旋回砲塔型)


機関
主機:次元波動機関(地球量産型コア)×1
副機:テレザート式対消滅・対生成炉(テレザート由来の反物質=安定化疑似反三重水素を使用。波動機関を起動させるAPUとしても使用可能)
予備電源:重力縮退式熱核反応機関(別名:ケルビンインパルス・エンジン)

防御装置
コクーン型波動防壁(艦周囲に紡錘状に展開するフィールド型防壁。通常航行時にも対デブリ用に展開し、戦闘用のコンバットステータス=高出力モードを持つ)
積層蒸散式耐ビームコーティング(表明処理)
エネルギー転換装甲(エネルギーを硬度や靭性に変換する内部装甲素材。物理ダメージに強い)

搭載機
・内火艇×1艇(脱出艇兼用)

超光速航法
イスカンダル式ワープ航法(安全マージン込で24時間で3回のワープが可能。計算上600光年/日の速力)


備考
 高度な自動化により24名で24時間運用可能な小型艦。なので乗員30名ほどで3交代24時間勤務ができる優れものだったりする。
作中では「小兵で防御が弱い」と評されるが、6発目までガミラスの主力陽電子ビーム砲の直撃に耐えられる波動防壁(ガミラス艦はミゴウェザー・コーティングを持っていても味方艦の誤射で沈むのと比べたら対照的)と乗員30名で地球・テレザート間の超光速航行を含む長距離航海を難なくこなすという、原作2199の初代磯風型とは比べ物にならない高性能艦だったりする。
 武装は、機関出力の関係でビームなどの高エネルギー兵器は航宙機や小型艦相手の「威力は低いが発射速度の早いもの(しかし、連装速射陽電子旋回砲はクリピテラ級航宙駆逐艦程度ならミゴウェザー・コーティングごと装甲をスパスパ貫けたらしい)」とし、対艦兵器は魚雷やミサイルなどの実体弾に絞るという割り切った設計だ。
 とはいえ、魚雷は熱核(ケルビン)インパルスエンジンと陽電子を主体とする初歩的な反物質弾頭を持つ高速魚雷、ミサイルは重力縮退式熱核反応弾と結構なハードパンチャーだ。
 要するに、小柄であること(=的が小さい)と高い運動性を生かした水雷戦隊的な、あるいは魚雷艇やミサイル艇のようなビッグイーター的な戦い方が本懐と言えるだろう。
 これだけの性能を原作2199よりわずか10m程度しか大きくない船体に押し込めたのだから、この世界線の地球の技術力の高さ、特に次元波動関連の造詣の深さがうかがい知れる。
 ちなみに「ガミラスにもっとも撃沈されたシリーズ」と不名誉な呼ばれ方をすることもあるが、要はそれだけ建造数が多かったという裏返しでもある。
 実際、まだ対宇宙艦隊戦ドクトリンが確立されてなかった最も状態のよくない時期でも、対ガミラス艦キルレシオは1:2~3を維持していた事は追記しておく。
 










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第08話:”ゲシュ=タム・フィールドとゲシュ=タム・ウォールの違い(この世界線限定)。ワープ・グリッドとか、遭難者はザンネンパッキンとかそういう話”

これまであまりにも女っ気が少なかったので、今回は女の子しか出てきません。
一人だけですがw


今回は、どちらかと言えばシリアルがしばし蟄居閉門食らったので、ギャグ系ですかねー。




 

 

 

 

天の川銀河、地球・テレザート間の航路に程近いとある惑星……

 

 宇宙はただただ空虚に広く、暗くて冷たくて寂しい場所だという。

 まあ、確かに彼女がいる状況も、それに当てはまると言えば当てはまる。

 

 

「くらいよー、さむいよー、こわいよー」

 

 ただし、魔法は尻から……もとい。ただし、緊張感は無かった。

 というか、何か無駄に懐かしい言い回しをしている気もする。

 

 さて、ここに居るのはどこぞの青肌の王様とよろしくやってるパッキン女王……とよく似た顔立ちだが、大分幼い印象のパッキン少女だ。

 特に身長(タッパ)と胸部装甲がスケールダウンしている。

 強いて言うなら金剛型戦艦と高雄型重巡洋艦の差だろうか? 艦これ的な意味ではない。

 

 さて、彼女の名は”ユリーシャ・イスカンダル”……立派な原作のキーパーソンだ。

 彼女がなぜ地球からまだ遠く離れたこんな場所にいるかと言えば、

 

「いきなり叩き起こしてお船に押し込んで打ち出すなんて、お姉さまも無茶苦茶だよぉー。わたし、今の世の中のこととか全然知らないのにー」

 

 とまあそういうことらしい。

 少し補足すると……

 

 このユリーシャ、マジにスターシャの血のつながった妹で、イスカンダル式VRで日々楽しくあらゆる世界を旅し、ちょうど六神合体したときにクソゲーっぷりに定評あるリアルに引っこ抜かれた。

 ちなみにこの世界のイスカンダル人=リアルに絶望した廃人VRゲーマーと思うとだいたいあってる。

 

 本人曰く、「世情は知らない」と言っておくが、ガミラス視点で見た「可能な限り客観的な情報」は、航海中にVR学習システムでインストールされており、知識としてはかなりあるが、感覚として追いついていないようだ。

 

 それはそうだろう。

 リアルに引っ張り出されたら、久しぶりに会った(ユリーシャ本人は久しぶりという感覚は無かったが)実の姉には青肌の彼氏がおり、半分寝ぼけていたせいもあるが、

 

『お姉さま、いつの間に若いツバメひっかけてきたの? 自分のお歳、考えたこと、ある?』

 

 と素直すぎる感想を口にしたら、グッドモーニングな錐揉み落下式(イスカンダル)フィッシャーマンズ・スープレックスを食らった。

 相変わらずの姉の技のキレにちょっとサンクテルに戻りかけた。イスカンダルの女王はキレッキレだった。

 

 

 

 そして前述の通り、ツイン・ゲシュ=タム・ドライブが自慢のステルス・フィールド(弱)装備の超最新鋭(シミュレーションのみでリアルでは試験航海もしていない出来たてホヤホヤ)金ぴか宇宙船に押し込まれ、推定地球連邦(テロン)領域へ射出された。

 ちなみに金ぴかの表面は、間違ってもイスカンダル女王の趣味とか自分の髪色/瞳の色に合わせた結果ではなく、れっきとした防御装備、ビーム反転コーティングという実用的な物。

 基本的にガンダムSEEDシリーズの”ヤタノカガミ”と似たようなものだが、330ミリ陽電子ビーム/陽電子カノン砲ぐらいまでなら180度反転させて撃ってきた相手に意趣返しできるが、490ミリ陽電子ビーム砲や480ミリ陽電子カノン砲とかになると少し厳しく、分光拡散させるのが精いっぱいというところだろうか?

 いずれにせよ、イスカンダルの謎技術なのは間違いない。

 

 加えて、金ぴかの前に”ゲシュ=タム・フィールド(船外にコクーン状に展開する防御フィールド)”と”ゲシュ=タム・ウォール(船体表面に展開するエネルギー・シールド)”という二段構えの波動防壁亜種が揃ってるのだから鉄壁も良いところだろう。

 ちなみに二種類の波動防壁を併載する船は人類史上初かもしれない。

 武装を付けてない分、防御特化にした設計思想なのだろう。

 

 ここまで技術があるのなら、現行艦だと一部の大型艦以外は紙装甲呼ばわれしてしまうガミラスに技術供与してやれと言いたくなるが、実は装置現物は渡していないが、理論やら何やらはだいぶ前(エーリク・ヴァム・デスラー統治時代)に渡しているのだ。

 だが、ガミラスはまずゲシュ=タム・フィールドの艦船に搭載できるほどの小型化に失敗し、浮遊大陸などの大型構造物のデブリ対策装備などにとどまっている。

 つまり、装置は大きく(それこそ現状は最小サイズでもゼルグート級並み)、広く薄く防壁を張るのには向いているが、狭く堅牢に張るのには向いていない。

 ゲシュ=タム・ウォールにいたっては、装甲素材との干渉を防ぐエネルギー・クリアランスの算定が上手く行っておらず、グリッド制御で活路を見出そうとしてるが、今のところはエネルギー・シールド自体が装甲を傷つけてしまうために実用化には至っていない。

 

 それだけイスカンダルの技術の高さが垣間見えるが、おかしな所に落とし穴があった。

 やはり波動防壁の豪華ダブル搭載は技術的な無理があったのか、あるいは次元跳躍門(バラン・ゲート)を使わず100日足らずでここまで来れるイスカンダル・コアのツイン・ドライブがピーキー過ぎたのかはわからないが、エンジンと波動防壁が奇妙な干渉を起こして機関故障。

 不時着を余儀なくされたユリーシャは、頭と膝を抱える羽目になった。

 

「だからあれほど、機関周りはワープ・グリッドで疑似次元的に独立・安定化させておけと……」

 

 このアイデア、実は後によりによって地球で実用化されることになるのだが……それはまた別の話。

 

 

 

 とはいえ、「こんなこともあろうかと」という訳ではないかもしれないが、急ぎすぎたことを自覚していたどこぞのパッキン墓守も、不具合が出る可能性を考慮していたのか、ガミラスで回収されこっそりイスカンダルで修理されていた地球式の救難信号発信機を積み込んでいた。

 焼くならマグカップ、たまに行くならこんな店、拾ってもらうなら地球連邦にという事だろう。

 そもそも、彼女に託された()()()は、地球連邦、それも要人に接触しなければ話にならないのだから当然であった。

 

 幸い、救難信号は少し動作が怪しいが発信自体はされてるようだ。

 なぜ地球(テロン)人が自分たちと接触する前にイスカンダル式超光速通信機を持っているのか謎だが、おかげで同じ方式のイスカンダルで修理できたし救難も呼べる……多分、呼ばるはずだからユリーシャ的には文句はない。

 むしろ文句をつけたいのは、やっつけで仕上げて性能だけはすごいが信頼性に問題のある船で送り出した姉にだ。

 

「とりあえず、今は大人しくしてるしか無いかなぁ……」

 

 とポリポリ非常用宇宙食をかじる金髪の妹君……なんというかその姿、そこはかとなく残念臭がするのは気のせいだろうか?

 

「それにしても……」

 

 ユリーシャは小さくため息を突き、

 

「わたしに”和平の使者”をやれとか、お姉さまも無茶振りしてくれるよぉ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




暑い。死ぬ。というわけでやや短めです。

しばらくはショートジャブかな?

この世界線のユリーシャは、腹黒系ペット志願Mとかではなく、残念パッキンです(断言
ちなみに姉は割と肉体言語を使います。見かけで騙される隠れグラップラーです。
イスカンダル式喉輪落としとか、イスカンダル式シャイニング・ウィザードとかも得意技ですw
女王の座には、実力(物理)で選ばれた?
そういや、そんな感じのサブミッション使いヒロインの母親がいたっけか……(何もかも皆懐かしい風





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第09話:”この作戦が終わったら…… 真のヒロイン(?)の登場です”

本日、二度目の投稿です。
いや、ようやく”彼女”が出せました……
思ったより話数かかったなーと。


 

 

 

「惑星ガルガンチュア157、それが特定された救難信号の発信源という訳だ」

 

 ガルガンチュアはここ100年ばかりで頻繁に行われている地球・テレザート間の航路周辺を探索する無人探査船シリーズの一つで、ガルガンチュアが157番目に発見・データベース化した惑星という意味だ。

 ごくごくありきたりの太陽型恒星の第4惑星で岩石惑星、公転軌道面はぎりぎりハビタブルゾーンに位置していた。

 精密な調査は現在行われておらず、当然のようにテラフォーミングの計画はない。

 ぶっちゃけ、人口150億人くらいしかいないのに既に主にテレザートとの航路中に拠点・中継点として二桁の人類居住惑星を保有し、更にその倍に達する即時民間人居住可能惑星(未入植惑星)を抱えている地球連邦にとり、今のところ魅力も価値も無い惑星だった。

 

 だが、その辺鄙な惑星が唐突に奇妙な価値を持ってしまったのが、問題だったのだ。

  

「まあ、これが罠なら確実に、罠じゃないとしても救難信号をキャッチできる程度の近場にいれば、十中八九ガミラスは来るだろうさ」

 

 救難活動の真っ只中など、狙ってくださいと言ってるようなものだ。

 救難・救助活動中は襲わないなんて倫理観、価値観の違うガミラスに求めるほうが間違っている。

 こっちが少勢力だなんてことも、接近すればすぐにわかるだろう。

 

「まさに小癪な邪魔者を始末するにはうってつけという訳だ。例え、我々のような小部隊が消し飛んだところで戦争の趨勢に影響なぞないが、塵も積もればなんとやら。敢闘精神あふれる相手なら、仕留められるときに仕留めない理由はないさ」

 

 そして生憎、ガミラスは闘争心が弱いという評判を受けたことのない民族だった。

 

「ならばこちらも相応の準備をし、打てる手は打っておこうということだな」

 

 山南はそう区切ると、

 

「艦隊は警戒態勢を維持しつつ、防御陣形を組みガルガンチュア157静止衛星軌道上で待機。救難活動は、空間騎兵隊に担当してもらおうと思うんだが?」

 

 無論、永倉をはじめとする空間騎兵隊の紳士淑女諸君はサムズ・アップだ。

 というかむしろ本職であり、本業の一環である。

 

「敵影が無いうちに軽武装(この場合は個人携行できる装備)の空間騎兵隊と衛生官を乗せた”コスモ・シーガル”を救難機として先行させる。無論、船舶が重度の損傷をしている場合に備え、”95式空間装甲騎兵”も陸上随伴兵力としてつける」

 

 経験上、緊急搬送が必要な要救助者がいることを想定すれば、シーガルに乗っけて行けるのはパイロットと衛生官、そして引率役の隊長を含めて精々6名程度だろう。

 小隊付きの空間装甲騎兵は4機……正直、罠が張られてるなら心もとないが、

 

(なら、保険をかけておくか)

 

「古代少尉」

 

「はっ!」

 

 小気味よい返事に山南はこの新人の評価を内心で上方修正しながら、

 

「”積み荷(ゲスト)”のお前さんに任務を割り振るのは心苦しいが、すまんが航空予備として作戦終了までコスモ・ゼロのコックピットで待機しておいてくれんか?」

 

 ガミラスの艦隊がいつ来るかわからない現況、艦隊を惑星表面に降ろすのはリスクが高すぎる。

 地球・ガミラスを問わず現代の軍艦は、大気圏内を飛べるとしても宇宙空間でこそその真価が発揮できるように作られているのだ。

 しかし、同時に陸上に部隊を展開する以上、エアカバーの重要性は今更語るまでもないだろう。

 

 実際、第68哨戒任務群にも航宙機(航空機、艦載機)もあるが、山南が座乗する旗艦の金剛型”セント・ヘレナ”に8機、率いてる3隻の村雨型駆逐艦に2機ずつの艦隊合計14機に過ぎない。

 ガミラスの駆逐艦以上の船には艦載機搭載能力があるのはすでに知られていることであり、機数的に劣勢な可能性は十分にある。

 また、艦隊に配備されているのは今や旧式化の波に抗えなくなりつつある”コスモ・パンサー”だ。

 開戦初頭ならともかく、今となってはガミラス航宙機に対して圧倒的優位を取れる訳ではない。

 

 だからこそ、ここで古代進少尉とコスモ・ゼロが意味を持つ。

 山南には古代の具体的な腕前はわからないが、第7航宙団に配属され最新鋭機の調教を任され、そして実験機部隊に引き抜かれるのだから腕は悪くないだろうと想像できる。

 それにコスモ・ゼロは第68哨戒任務群の正規の命令系統には入っておらず、航空部隊の一員としての投入は難しいが、かと言って最新鋭機を遊ばせせておくのは勿体ない。

 

「了解しました!」

 

 その迷いのない古代の敬礼に山南は満足を覚えつつ、さらに思考を巡らせる。

 思考を止めた時が死ぬ時と、彼は戦場で学んでいた。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 さて、ブリーフィングが終わると、コスモ・シーガルに乗って臨時編成の救助隊を引率することとなった永倉志織は、任務の準備をしていたショートカットで胸の大きい年下の友人を捕まえた。

 

「真琴ぉ~。お前さん、今回の随行衛生兵に志願したんだって?」

 

「あっ、うん。志織さん」

 

 そう振り向いた彼女の名は、”原田真琴”。今年二十歳になる正確に言えば衛生兵ではなく衛生下士官、階級は二等軍曹だ。

 

「じゃなかった永倉軍曹」

 

 と微笑みとともに敬礼する真琴である。ちなみに永倉は軍曹(一等軍曹)なので1階級上である。

 

「公的な場じゃあるまいし、そういうのは気にしなくていいさね。いや、なんだって志願したんだい? 罠である可能性もあるし、そうじゃなくてもいつガミラスが現れるかわからない危険な任務だよ?」

 

 すると真琴はう~んと考え、

 

「そこに怪我をした人がいるかもしれないから……かな?」

 

 

 

(そういや、こういう娘だったねぇ~)

 

 永倉と真琴の出会いは、まだ真琴が新米衛生兵だった頃まで遡る。

 その頃、演習場で事故があり、巻き込まれた永倉の部下も軍病院に運び込まれた。

 強がり軽い治療だけ受けて演習に戻ろうとする部下を盛大に叱りつけたのが真琴だった。

 強面の古参兵相手に、一歩も怯まず腰に手を当てる「私、怒ってます」ポーズで”いのちをだいじに”について説教をかます真琴は、タジタジになる古参兵込みで実に見ものだったらしい。

 その気っ風の良さと鼻っ柱の強さを気に入った永倉は、声をかけて「一杯おごらせてくれ」と飲みに誘った。

 互いに酒好きのせいもあり瞬く間に意気投合し、現在まで続く友誼となったのだった。

 

「つまり、ほっとけないってことかい? 居るのは敵かもしんないよ?」

 

「えっ? 関係ないよ?」

 

 キョトンとした顔で返してくる真琴に、思わず苦笑する永倉。

 

(まあ、こういう肝っ玉の座った娘には、ついご褒美をあげたくなるもんさね)

 

「なあ、真琴。あんた、前に彼氏欲しいとか言ってたよね?」

 

「えっ? あっ、うん。そりゃあ欲しいけど……」

 

 永倉の意図がわからず、ちょっと困った顔をする真琴に永倉はニヤリと笑い、

 

「この作戦が終わったら、あんたに良さそうな男、紹介してやんよ。生き残れれば、将来有望だよ?」

 

 ……それはフラグだとか言ってはいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ええ。ようやく6話の伏線を回収できました。
この世界線において、誰かさんのメインヒロインは、原田真琴さんなんですねー。
原作のネームド・ヤマトクルーで確か唯一の作中時間軸経産婦(ヲイ

出産時期から考えて、航海中に「ヤッちまったZE☆」をしたヒロイン力は伊達ではないっ!!
ということで、大抜擢です。
というか、古代と真琴って、1歳しか違わないんですよねー。

ちなみに……この世界線で飲酒可能年齢を気にしてはいけませんw


今回のオマケ設定は、チラッと作中に名前が出てきたオリメカです。





※※※



95式空間装甲騎兵”ハリケーン”

頭頂高:5m
空虚重量:18t

武装

固定装備
・ロケットホーミング・スラッシュアンカー×2(両肩部、フレキシブルマウント発射器。推進式有線誘導のハーケン状射出ユニット。鋭角的な先端部は指向性高周波微細振動刃(メイザー・ヴァイブレーション・ブレード)構造になっており、対象に突き刺した後、格納していたカエシを展開し固定する。本体も電源供給ケーブルを兼ねたワイヤーもエネルギー転換素材製。本来は武装ではなく船舶のロケットアンカーとワイヤーとウインチを使い勝手良くコンパクトにした装備)
・メイザーヴァイブレーション・プラグナイフ×2(指向性高周波微細振動刃型のコンバットナイフ。敵の装甲を切り裂くだけでなく、難破船の外壁を溶断したりと工具としても重宝する)
・12.7ミリRWSレーザーガン×2(胸部。ポールマウント砲口で射角が広い。オートモードでミサイルの自動迎撃などが可能)

外部装備(手持ち装備)
・30ミリパルスレーザー+105ミリ実体弾リニア投射器コンバインド・ライフル(航空機用の30ミリパルスレーザーを短砲身・発射速度下降などと引き換えに徹底的に再設計コンパクト化したガンユニットに、105ミリのリニア式セミオート投擲器と組み合わせた標準装備のライフル。歩兵用の複合ライフルのほぼスケールアップ版)
・45ミリ対装甲速射レールガン(歩兵用のセミオート対物ライフルに相当。リニアガン方式ではなくレールガン方式)
・多目的投射装置(両脚部外側に装着可能。対人榴弾や発煙弾、信号弾や照明弾など投射できる)
など多数

防御装置
・エネルギー転換装甲(フレームなどにも採用)
・単位相光波・磁場式エネルギーシールド(両腕。ガンダムSEEDシリーズのアルミューレ・リュミエールの技術的延長線上にある装備)

機動装置
・超伝導高出力非接触(フィールド)モーター内蔵ダッシュホイール

動力
・陽電子転換炉

背部オプションパック
様々な状況に応じたミッション・パックが用意され、背面のハードポイントに接続される。

突起
搭乗には、戦闘用軽装甲宇宙服が必須。


備考
 地球連邦の宇宙海兵隊や空間騎兵隊に配備されている地上でも宇宙(限定的)でも戦闘もこなせる人型重機。
 アーマードトルーパー(AT)やナイトメアフレーム(KMF)の亜種だと思えば間違いはない。
 本来の用途は、戦闘ならば非対称戦における武装勢力の拠点制圧や占拠された施設や市街の奪還であり、また小惑星や難破船に擬態した宇宙海賊や星間テロリストの基地制圧も任務に含まれたため、地上や重力環境だけでなく極小重力や真空中でもオプションパックの選択次第で適応できるように設計されている。
 その具体例が、ロケットホーミング・スラッシュアンカーでこれは本来、突き刺して相手を倒すような推進式有線誘導兵器ではなく、「狙った場所に自分で飛んで行く便利な錨」として開発されたもので、ビルに突き刺して立体機動装置ごっこをするだけでなく、例えば小惑星に突き刺してウインチを巻き上げて推進剤を使わず接近するとか、逃走しようとする海賊船に突き刺して振り落とされないようにするなどが本来の用途。
 また、人型をしているということは汎用性を求められた結果であり、戦闘のみの用途ではなく施設の設営や船舶からの救出など、汎用性や柔軟性に富んだ活躍が期待されていることがわかる。
 本来は「人体に装着できる」コンパクトさを目指したが、ガミラスとの開戦により要求性能が変更され、それを満たすために「人が乗り込めるサイズ」に肥大化してしまったという開発経緯がある。
 基本、技術が足りなかったから装着型から搭乗型になったと思っておk。
 とはいえ、サイズ的にも出力的にも火力や防御力の面からも本格的に宇宙戦をこなせる訳ではないが、「しっかり地面がある」ガミラスの惑星上拠点や浮遊大陸の制圧などには宇宙海兵隊や空間騎兵隊の猛者たちの頼れる相棒として、花形として活躍したようだ。





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第10話:”近い将来に名将と呼ばれるかも知れない、生まれた星の違う二人の大佐が邂逅する件について”

考えてみればシュルツさんて、青い肌を持たない故に下等民族呼ばわりされる被支配民のザルツ人なのに、大佐に出世して原作でも基地司令やってたり、艦隊指揮官やってたりと有能な人材だよなーと。






 

 

 

「ふむ……どうやら既に救助活動を始めているようだな」

 

 最大探知距離で捉えた敵影は、数こそ少ないが艦首陽電子衝撃砲を備えた舳先をこちらに向けつつ隙の無い防御陣形を取っており、その練度の高さをうかがい知れることができた。

 

(なるほど……道理で歴戦たる我々が、ガトランティスとの戦を差し置いてまで、わざわざルビー戦線より引き抜かれたか得心がいったわ)

 

「これでは、ガミラス正規軍(ブルースキン)も苦労するはずだわい」

 

 ゲシュ=タム(ワープ)・アウトは感知できない距離でした筈だが、敵艦隊はどうやらこちらを先に発見していたらしく既に艦載機を発艦させていた。

(艦載機は艦隊攻撃には使わんか……)

 

 展開パターンからそう読み取れる。

 

「敵勢力は重巡洋艦1、駆逐艦3、戦闘艇12です。おそらく救助作戦完遂まで、当該惑星の衛星軌道上にとどまり耐久する腹積もりではないかと」

 

 と進言するのは艦隊付参謀、浅黒い肌の筋骨隆々とした体躯に鋭い眼光、そしてスキンヘッドに濃い髭と個性の塊、艦隊参謀より剣と魔法の世界の方が似合いそうなヴァル・ヤレトラー少佐だった。

 

「そしておそらくですが、彼我の戦力差を認識している以上、既に増援要請をしているものかと思われます」

 

 そう付け加えるのは、ちょっと気弱そうな印象を受ける小太りの少佐、副官の名前は厳ついゲルフ・ガンツだった。

 こちらは対峙してる戦力だけで、ガイデロール級航宙戦艦”シュバリエル”に、デストリア級重巡洋艦2隻とケルカピア級航宙高速巡洋艦4隻、24隻のクリピテラ級航宙駆逐艦、つまり総数31隻と数的にほぼ倍である上、艦格的にも勝っている。

 敵艦隊からすれば、増援を呼んで然るべきだろう。

 艦隊指揮官のシュルツは短く逡巡し、

 

「どうやら地球(テロン)人は、我々が艦隊戦()()を狙っていると判断してるようだな……」

 

(ならば、教えてやろうではないか)

 

 確かに名誉や面子を過度に重んじるガミラス人(あおはだ)なら、正面切った艦隊決戦を望み、それに固執するかもしれない。

 だが、我々はザルツ人だ。

 名誉や面子よりも、戦果を……実利を重んじる!

 

「我々が毎度毎度、船同士の殴り合いを望むと思うな……!!」

 

 かつてあった祖国(ザルツ)は、もう歴史用語に成り果てた。

 ザルツ人は、原作でもガミラスに対する愛国心、忠誠、献身は印象的に書かれていたが、それは全て自らの国家を敗戦で失った民族の悲哀……そうであるからこその発露だった。

 国破れた彼らが選べるのは、青い肌を持つ純血のガミラス人に下等民族と蔑まれながら二等ガミラス人として生きてゆくことだけだ。

 だからこそ、シュルツには戦果が必要なのだ。

 ザルツ人として生きることが叶わなくなった同胞たちの地位を、少しづつでもガミラスという枠組の中で高めるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「連中、どういうつもりだ?」

 

 

 ”セント・ヘレナ”のCICで、山南はそういぶかしむ。

 本来、ガミラスの対地球ドクトリンは、”高機動突撃砲雷撃戦”、つまり古式ゆかしい肉薄水雷戦術だ。

 いや、正確には現行のガミラス艦隊の装備で防御がやたらと堅い地球艦にダメージらしいダメージを与える手段はそれが結果として一番効率が良いので選択されているという感じだ。

 

 例えば、艦隊単位で舳先を向けあって押したり引いたりするのオーソドックな砲雷戦では新型艦でも出てこない限り火力でそこまで差はないものの、波動防壁の標準搭載で防御力に大差をつけている地球艦隊の圧倒的有利だ。

 なにせガミラス艦が確実に沈む距離でも相手の船体には傷一つ入れられないのだから。

 

 では今度は、その防御力の差を覆す……まではいかなくても、穴埋めするにはどうすれば良いか?

 ガミラスはなんだかんだ言っても宇宙戦争に慣れており、また単艦ならともかく戦隊や分艦隊規模の機動的な運用は一日の長があるのだ。

 技量よりも指揮統制システムが物を言う1000隻規模の大艦隊となればまた話は変わってくるが、指揮官やら艦長やらの技量や経験こそが鍵となる100隻程度まで特に高機動戦術機動となると、やはりその手の戦術艦隊機動に手慣れたガミラスに軍配が上がる。

 

 では、今度はガミラスの強みを活かすにはどうすれば良いか?

 その最適解が、ダメージの入る見込みのない遠間合いからのダラダラとした撃ち合いではなく、機動で翻弄しつつ一気に間合いを詰め、ありったけの火力をぶつけられる近距離から叩き込み、まずは波動防壁を引っ剝がす……本当の戦争はそこからだというノリだ。

 

 もともと、高機動を生かした水雷戦術なり突破戦術なりは、ガミラスが金科玉条とするお家芸の範疇だ。

 驚くべきことに、300mオーバーの戦艦級すら水雷戦隊旗艦として使われるのが、ガミラスという国家の国防方針だった。

 例えば、ガイデロール級で知られる鹵獲したガミラス戦艦を調査した技官は、

 

『この造りは戦艦じゃない。艦隊指揮機能を持つ、戦艦サイズの重雷装大型巡洋艦だ……』

 

 と驚愕したという。

 いかにガミラスが高機動水雷戦術を重んじてるかわかる技術的ランドマークだった。

 

 より詳しく書くなら、ガミラスの一定規模以上の艦隊は、大きく2つのパートで構成されている。

 一つは今回、シュルツが率いてるような編成の「実質的な主力で多数派」の槍として使われる水雷戦部隊。

 もう一つは、それを統括する地球連邦的な解釈では「戦艦らしい戦艦」である、鈍足でありガミラス・トレンドの高機動戦術を陣頭指揮には向かないが、それを補うように異常なまでの重装甲による撃たれ強さと、艦橋部が司令部一同を乗せたまま脱出艇になり、あまつさえ単独でワープし本体が沈んでもまんまと逃げおおせることができる生存性を併せ持つ”ゼルグート級”を旗艦とする艦隊司令部隊だ。

 水雷戦隊と一緒に突っ込んできて、的の小ささに見合わぬ攻撃力を持つガミラス艦上航宙機の母艦がいるのも、大体後者の位置だ。

 

 だが、今回は見慣れた水雷隊編成。普通なら旗艦と思われるガイデロール級が先陣を切って突撃してきてもおかしくないはずだが……

 

(コイツは一体、何を意図している……?)

 

 予想に反して最初に突っ込んできたのは、24隻いる敵駆逐艦部隊だ。

 それは良い。確かに水雷線の花形は駆逐艦かもしれない。

 だが、

 

(なぜ、()()()()()を先行させた……?)

 

 しかし、山南のやるべきことは変わらない。

 出現したガミラス艦隊の規模を確認したとき、既に増援要請は出したが間に合うかどうかは微妙なところ。

 ならば、救助活動が終わるか増援が来るかまでの間、

 

「現有戦力で耐久するのみだ」

 

 

 

 こうして、山南修とヴァルケ・シュルツという奇しくも同じ大佐という階級の、そして近い未来の名将同士の、最初の戦いの火蓋が切って落とされるのだった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




暑いと集中力の維持が難しいっす(泣

とりあえず、山南さんvsパパ・シュルツという原作でもあり得たかもしれない対戦カードです。





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第11話:”一筋縄では行かない状況”

今回は、ちょっと短めです。



 

 

 

 シュルツ率いるガミラスの小艦隊の動きは、山南のよく知るガミラス式宇宙砲雷撃戦術とは微妙に異なっていた。

 実質的な水雷戦隊旗艦である戦艦が巡洋艦や駆逐艦を率いて肉薄するような戦いではなく、まず24隻の駆逐艦を先行させ、その後ろを戦艦と巡洋艦で編成された7隻がついてくるというような布陣だ。

 

 山南も何かがおかしいと思いはしたが、ここは定石通り磯風型突撃宇宙艇12隻で迎撃を行うこととした。

 

(おそらくは、駆逐艦隊で突撃路を形成し、一気に殴りかかる気だろうが……)

 

 これまでも類似した戦術パターンはあった。

 今回はこちらの数は半分だが、迎え討つことに徹すればそこまで不利ではないと思いたいところだったが……

 

「なっ!?」

 

 その挙動に驚愕した。

 磯風型が接近するなり、ガミラス駆逐艦隊は戦いを避けるように散開し、その間隙をついて戦艦・巡洋艦が増速して突進!

 磯風型めがけて猛烈な陽電子ビームとミサイル・魚雷の弾幕を浴びせてきたのだ!。

 しかも回避しようとする磯風型にめがけ、”逃さん!”とばかりに艦載機部隊を投入し、穴を埋めてきたのだ。

 地球連邦艦と同じくガミラス艦も限定的航宙機運用能力を持つことは常識の範疇だが、よもやこういう形で投入されるとは思わなかった。

 これまでのガミラス・ドクトリンなら十中八九、航宙機群は”セント・ヘレナ”に集中させ、一刻も早い撃沈を狙ってくるはずだ。

 

 そして、分断される磯風型をすり抜けてガミラス駆逐艦隊は”セント・ヘレナ”と3隻の村雨型駆逐艦へと急速接近してくる。

 そう、6倍の艦数でだ。

 磯風型が忙殺されている以上、こちらの現在追加できる戦力は14機の”コスモ・パンサー”だけだった。

 しかも、今回は敵航宙機迎撃をメインとして想定していたため、コスモ・パンサーには強制推進剤タンクと6連装高機動ミサイルポッドをそれぞれ2基ずつしか外部搭載していないし、機内のミサイルも全て高機動ミサイルだ。

 プラズマ火球型の弾頭のため全くの無力というわけではないが、数的にも優勢な艦船相手と考えると正直火力は心もとない。

 

 しかし、それは相手も同じことだ。

 分断で各個撃破を狙うとしても、決定打に欠ける。

 確かに特に旧式艦のコンバット・ステータスでの波動防壁の展開時間は長いものではないが、かといってその堅牢な防御力はそう簡単に覆るものではない。

 正直、先手を取られたが、かといって艦隊に重度の損傷を与えられるほど巨大な戦力というわけではない。

 事実、一見逃げ回ってるように見える磯風型も隙を見ては果敢に反撃してるし、自分たちとて黙って撃たれるような真似はしない。

 地球連邦は耐えて戦うことを苦手としてはいないが、それは別に守りにのみ傾注してるわけではないのだ。

 

(だとすれば、目的はなんだ……?)

 

 山南は戦闘指揮を行いながら思考を深化させる。

 寡兵であるこちらが増援を呼ぶことはわかってるはずだ。

 敵艦の動きを見ればわかるが、彼らは高練度の部隊だ。つまり、経験の浅い闘争心ばかりに溢れた輩ではない。

 だとすれば長引けば、不利になる可能性が高くなるのはガミラス側だということが理解できていないとは思えない。

 それに攻撃パターンも問題だ。

 

(無理な攻撃をせず、むしろ被害を抑える方向の戦闘機動か……)

 

 例えば絶好の攻撃位置につけるとわかっていても、決して艦種陽電子衝撃砲の射角には入らない。

 実体弾は誘導弾もあるが、過流加速された陽電子ビームは艦首のフィン状のパーツで発生させる重力レンズを用いて、ある程度の偏向はできるが、基本的には固定砲だ。

 開戦以来の古株である金剛型の最強武器の特性をガミラスが解析していることは不思議ではないが、ここまで徹底されるのは珍しい。

 普通のガミラス艦隊は、「攻撃こそ最大の防御」と言わんばかりにリソースを攻撃に割く。防御を軽視しているとまでは言わないが、防御が攻撃より優先されることはない。

 だが、今回の敵の行動はまるで……

 

(まるで敵の方が時間稼ぎをしてるようじゃないか……)

 

 その時、不意に閃いた事がある。

 そう、この互いに決定打に欠ける戦場における、ガミラスの勝利条件だ。

 

「まさか……!」

 

 自分の結論が正しければ、事態は一刻を争う!

 悠長にいつ来るか不明の援軍を待っていたら、完全に盤面がひっくり返されかねない。

 

「古代少尉に出撃命令を出せっ!」

 

「えっ?」

 

 驚くオペレーターに山南は一喝するように、

 

「すぐに救難隊のエアカバーに向かわせろっ! 俺の予想が正しければ、敵には別動隊がいるっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 時間は、コスモ・シーガルが救難信号の発信地点(ポイント)に到着した時まで遡る。

 

「うそぉ……」

 

 宇宙服の中で、思わず原田真琴は口をあんぐりと開けてしまう。

 対して、戦闘用宇宙服を着こんだ永倉志織は、どうやら不時着したらしい”それ”を見上げながら、半ば呆れたような表情で、

 

「さしずめ、”黄金の船”(ゴールドシップ)ってとこかねぇ……」

 

 いや、それ多分色々ダメな奴だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 



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