それはまるで深淵のような (ウルスラドゴーン)
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たった"それ"だけの物語

"それ"を見たときに私は驚愕した。そして咄嗟に理解した。"それ"は万物の源となるものであり、あるいは宇宙、あるいは神、あるいは心理、あるいは全、あるいは一なのだと、
私は見つけてはいけない遥かな"それ"を見つけてしまったらしかった。


私がおかしいなんて思わないでくれ。私なんかよりおかしい人はいるだろう?

そうさな‥あれを‥‥あの日‥‥‥私達は‥‥

 

 

 

 

   

         "世界を見つけたんだよ"

 

 

 

何をいっているのかわからないって顔をしているね。私もよく分からないが、あれは少なくともあの日の私達にとって、世界そのものだったのだよ。

まぁ難しい言い方になるかもしれないがね。

君は宇宙に行ったことはあるかい?ほとんどの人はないだろうね。では地球の外に本当に宇宙が存在してると思うかい?‥‥そうかい、思うのかい。ではなぜ?行ったこともないのに?え?本や記事がたくさんあるって?そんなもの嘘かもしれないじゃないか。

でもあの日見たものは宇宙という空間に存在してても存在してなかろうと、それは"世界"だと私達は思ったんだ。君によって見えるものは違うかもしれないがね。

私にとっての世界とは宇宙そのものであり、宇宙の外のことである。

そもそも、世界とは何か、という定義から始めなくちゃいけないかね。

まぁ何にせよ、"それ"は見る人によって違うものになる、と言いたいんだがね。

さて、"世界"そのものを見つけて私達はどうしたのかというと………どうしたと思うかね?少年?

 

 

 

「うーんとね!みんなでそれを分け合った?」

 

    

ふふっ‥‥少年は純粋だね‥例え話だがね。少年の大好きな好物が目の前にあって、

でもそれを他の人に分け与えなくてはならない。そこで自分だけ独り占めできるような状況にできたらどうする?

 

 

「皆にわけないで、自分だけのものにする!」

 

 

 

そうだ。あの日の私達は奪い合ったのさ。昔は研究熱心で仲間思いだったのがね‥‥

いいか、目先のものに飛びつくと大きな過ちを犯し、何かを失うだろう。

それは人生の中で必要な事だったり、

それは友情だったり

それは物だったり、それは様々だ。

私は人間の醜い部分を見てしまったがね。

クククッ‥‥いやぁ‥何であれ、どうしてあんなところに"世界"があったのかねぇ‥‥

あれがなければこんなことにならなかったのかね‥‥。そうだな‥私達が"世界"に見えたものは今の少年の目にはどのように映るのだろうか。

今一番大事なものはなんだい?母親かい?お父さんかい?それとも‥‥‥‥‥‥

 

 

 

 

      

 

              " 夢 " かい?

 

 

「な、なにを言ってるの?おじさん。怖いよ。やめてよ」

 

 

ふふ、私はね。嬉しいんだよ。この話を聞いてくれたことが。"それ"を見つけた話を聞いてくれるのが!私はとっくのむかしにおかしくなってたらしい。少年よ‥‥君にとっていちばん大事なモノを他の奴らに取られそうになったとき、君はどうしているかな?

 

 

私は‥‥‥怖かった‥‥

 

 

    

 

 

 

 




このおじさんはかつて仲間たちに夢を奪われました。ですが、少年に夢を話すことで、自分の夢を果たせたのでしょう。じゃあ、夢を無くしたおじさんは‥‥どこへ‥行くのでしょうか‥?


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