ヴィクトリアの元軍人兼傭兵 (Mrミステル)
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設定とか
プロローグ


アークナイツが好きすぎて書きました。後悔はしていません。




はい、どうも、ワタクシはしがない傭兵のカゲロウと申します。

突然ですがねぇ、ワタクシが普段寝泊まりしてる洞窟が突然攻撃されましてですねぇ、なんか急に軍隊が入ってきたと思ったらあっという間に紐でぐるぐる巻きにされまして、気がついたら攻撃してきた軍隊の指揮官の前に放り出されてました。

あ〜、そのロゴマーク見たことあるぅ...

...とりあえず...

 

「あの、これ解いて貰えませんかね?」

 

「あぁ、ごめんね。それは無理だ。お茶飲む?」

 

「......もらう」

 

なんでだよチクショウ!てかなんだよ!俺コイツ知ってるぞ!

そんな俺を知ったことか、とガン無視したよく分からんフルフェイスの...男?女?...ともかく、「ドクター」は話し始めた。

 

「そんな怖い目で見ないでおくれよ。私だってこんなことしたくないさ」

 

「じゃなんで俺の事捕まえる指揮してンだよ」

「それは...まぁ、ね?仕方ないでしょ」

「仕方ないってなんだよ!?」

 

なんだコイツ!?言うことに事欠いて仕方ねぇとか言ってんぞ!どうなってんだ!

 

「ええい離せ!どうなってんだよ!ロドスはよォ!」

 

「いや〜、ねぇ?ホントに仕方ないんだよ...ブハッ..ケルシーが君のこと欲しがっててね?」

「ちょっと笑ってんじゃねぇぞコノヤロォ!」

 

何が面白いんだこの状況!周りはロドスのオペレーターに囲まれてるし...いやコイツら酒飲んでやがる!「仕事終わりの1杯」じゃねえよ!ふざけんな!

 

「いやいやw私もね?ククッ..君の事が興味深いと思ってね..フフッ..」

「そーだそーだー。とっととロドスに入っちまえー」

「傭兵よりよっぽど待遇いいぞー」

「酒も呑めるぞー」

 

「ドクター以外棒読みじゃねえか!雑に職場勧めてんじゃねぇよ!」

 

ざけんな!酒よこせ(本音)!

 

「なんで入らないんだい?私とロドスは君が欲しい。君は今よりずっと良い待遇を受けられる上に鉱石病の治療も受けられる。これ以上のwin-winの契約が他にあるかい?」

 

「....そもそもテメェ。俺の体質知ってんだろ?」

 

「君が自らの鉱石病を『治せる』事かい?勿論知っているとも」

 

そうだ。俺はこの「原石廃坑」に寝泊まりしている。だから廃坑とは言えど、『鉱石病』(オリパシー)に罹っている。のだが...俺は過去に自分の鉱石病を治す方法を見つけたので特に問題ない。

 

「そもそも君のそれ、どうやっているんだい?」

 

「あ?...なんつーか..こう..アーツを自分の全体に行き渡らせて...」

 

ポロポロと俺の体から生えていた原石が落ち始めた。

 

「...素晴らしいね。その能力」

 

「...これが世の中全員できるのなら、アンタも楽になるのになぁ...」

 

「全く...否定出来ないような事を落ち込みながら言わないでくれよ...君が過去にやった事もほぼ全部知ってるけどさ...」

 

「なんで知ってんの(ドン引き)....」

 

「じゃあ教えてくれる?」

 

「えぇ...」

 

「...話さないとケルシー呼んでくるよ?」

 

「スイマセンハナシマス。だからあの年増だけは勘弁」

 

「...しーらね」

 

俺は過去、この力を傭兵仲間に見せたことがある。

こうすれば治せる。助かる上に日常生活に戻ることができる!と、俺は仲間たちに嬉々として見せた。そして、皆が鉱石病から解放されるのを今か今かと待っていたのだが、誰一人として治らなかった。

 

アーツの扱いが下手なのか?

いや、当時の俺より上手いやつは何人もいた。

なら、俺の教え方が悪いのか?

俺はヴィクトリア王立前衛学校を卒業しているからそれは無いと思う。

なら...俺は白昼夢でも見ているのか...?

だが、俺は生きている。周りの仲間は死んでいく。

 

ここまで時間をかけて、俺はようやくこの能力が俺だけのモノだと気づいた。鉱石病がいくら進行しようと、健康体でいることができる能力。

俺は仲間たちに顔向けが出来なかった。皆は死がそこまで迫っているというのに、俺は自ら死を遠ざけることができる。

 

見ていられなかった。

俺より若い新入りが粒子になって消えて行くのを。

俺を信じた仲間が、日夜出来もしないアーツの練習をし、死を急速に招いているのを。

俺に向けられる羨望の眼差しを。

 

だから俺は離れた。

傭兵が荒野を1人。なんて訳にもいかないから、俺はヴィクトリアの近くの廃坑に身を潜めた。

鉱石病を治せる。この力を他人に行使出来たらどれほどの幸せを生み出せただろう。傭兵仲間だって死ななかった。

そういった感情が俺の心を支配し、蝕んだ。

食料や水には困らない。傭兵をしなくても王立前衛学校を卒業しているのだから仕事なんて探そうとすればいくらでもある。

故に辛かった。

俺は「士官」クラスを卒業し、前線へ配備された直後に感染。ウルサスの奴らの兵器に原石が仕込まれていた、と発表されている。

そして、その戦闘で感染した奴らは追放され、路頭に迷うこととなった。その時の弾かれ者同士で、傭兵団を組んだのだ。

そこは俺にとって唯一の居場所だった。お互いに傷を舐め合い、守りあい、語り合った。

家族みたいだった。暖かい場所だった。

 

俺はその温もりが何よりも辛かった。

「お前だけでも」 俺だけが生きて何になる。

「治せばいいじゃないか」 お前たちはどうするんだ。

「戻らないのか?『普通』に」 『普通』ってなんだ。

結局、俺は死なない程度に鉱石病を調整しつつ、傭兵団に残り続けた。しかし、皆が死に、メンバーが一新されていく中で、俺は遂に耐えられなくなった。

 

特に書き残す様なこともなく、俺は団を離れた。

そこからはヴィクトリアに戻り、鉱石病を完治させ暫く働いていた。収入は傭兵より安定している。

悠々自適とまでは行かないが、それなりな生き方をしていた折に傭兵団が全滅したと、風の噂で聞いた。

 

果たして噂は真だった。

死体は誰が誰だか分からないほどに滅茶苦茶にされていて、ウルサスの仕業だと分かるのは一瞬だった。持っている武器で判別するのがやっとだった。人数が少ないのは、風に吹かれたということだろう。

現に今も1人、体が粒子となり飛んでいってしまった。

 

俺は自分を許せなかった。再び傭兵へと戻り、傭兵団の名を名乗り、各地の小競り合いに割って入った。一騎当千とまでは行かずとも、一騎当十くらいはやっていたのではないだろうか。

特にウルサスを徹底的に潰した。刀で四肢を落とし、大太刀で両断し、近くの木に括りつけ、放置した。

ウルサスを殺すたび、仲間が報われているような気がした。

 

俺たちを感染させ、傭兵にしたのもウルサス。

そして、俺たちを殺したのもウルサス。

どこに情け容赦をかける義理があるだろうか?

 

「....というのが俺の略歴だが。だから俺は嫌なんだ。ロドスに入ったら俺1人だけ完全に浮くじゃねぇか。そして何よりウルサスが殺せなくなる。ロドスって基本殺害ダメなんだろ?却下だ却下。俺はこれからもウルサススレイヤーとして生きていくんだ」

 

「おっっっっっも」

「吐きそう」

「下手したらこの隊の誰よりもきついかもな」

 

「...君、もしかしてあのウルサス殺しの『陽炎』(かげろう)かい?」

 

「他に心当たりないし、まぁ、そうなんじゃないの?」

 

「...参った..君だったのか...」

 

「え?どゆこと?」

 

「...君には必ずロドスへ来てもらうよ。君のことを待っている人間がたった今増えたからね」

 

「は?」

 

「よし!そろそろ彼に仕掛けた薬の効果が出る頃だから、準備して!」

 

「は?」

 

....は?....あっ、眠い寝るわ....zzzz

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

そして俺が目覚めたら、案の定ロドスの医務室のベットの上でした。

そして、なんか横にいるんだけど。めっちゃ寝息たててるし、ちょお美人。

え?誰この人。いやヴイーヴルなのは分かるけど。いやでもどっかで見たことあるような...?俺こんな美人と同衾してたの?あっ、めっちゃいい匂いする。結構鍛えてるな...軍人かな?とりあえず腕を解いて...力強っ!?逃げられねぇ!なんだコイツ!起きてるだろ!怪力もいいところだぞ!俺だってオニの端くれだぞ?

 

「ふんぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

「何をしているんだ」

 

「アッ...」

 

ひぇっ。ケルシーセンセ....。

 

「ドクターがやっと『陽炎』を連れて帰ってきたと思えば...医務室のベットで異性と同衾しているとは。君に必要なのは外科医ではなく精神科医だったかな?」

 

「ヤメテ!暗に頭おかしいって言わないで!謝るから!....いやなんで俺が謝るんだ。よくよく考えたらおかしくね?」

 

「....ワルファリンを呼んでこよう」

 

「違う!違うのケルシーセンセ!俺はコイツがなんでここに居るのか知らないし、俺マジでさっき起きたばっかりだから!」

 

「避妊はしてくれよ。彼女が妊娠でもしたらロドス全体に影響が出る」

 

「ちがァァァァァァァう!!!」

 




と、言うわけでいかがだったでしょうか。

いきなり縛られて拉致されて美人と同衾してる主人公がいるらしいんすよ〜
( *¯ □¯*)なー( *¯ 罒¯*)にー(以下略

次回から人物紹介と、関係性を整理しながら話を進めていきたいと思います。

ではまた次回



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プロフィール紹介

カゲロウ君のプロフィール紹介です


基礎情報 先鋒 突撃兵

【コードネーム】 カゲロウ

【性別】 男

【戦闘経験】 12年

【出身地】 ヴィクトリア

【誕生日】 9月8日

【種族】 オニ

【身長】 182cm

【鉱石病感染状況】

体表に源石結晶の分布を確認。■■■■■■■■■■■■■■■-該当ファイルは削除されています。

 

能力測定

【物理強度】 普通

【戦場機動】 優秀

【生理的耐性】 普通

【戦術立案】 優秀

【戦闘技術】 優秀

【アーツ適性】卓越

 

個人履歴

ヴィクトリア王立前衛学校卒業。ヴィクトリア軍に数ヶ月服役した後、鉱石病に感染し、追放され傭兵として活動。

軍事教育を受けた軍人であるため、ロドス加入からしばらくの期間を経て、様々な任務においてプロフェッショナル級の戦闘技術と戦術素養を見せた。

 

健康診断

造影検査の結果、臓器の輪郭は不明瞭で異常陰影も認められる。循環器系源石顆粒検査の結果においても、同じく鉱石病の兆候が認められる。以上の結果から、『一応』鉱石病感染者と判定。

 

【源石融合率】? %

 

【血液中源石密度】 ?u/L

 

え?彼、自分の意思で鉱石病をコントロール可能なんですか!?どういうことですか!?待ってくださいケルシー先生!彼には無限の可能性があるんです。私たちに研究させ-「記録は削除されています」

 

第一資料

ヴィクトリア出身の傭兵。カゲロウ。彼は元々ヴィクトリア軍に所属しており、将来を約束される程有能な軍人であった。しかし、ウルサスとの戦闘中、彼は原石を含んだ弾丸を受けてしまい、そのまま鉱石病に感染した。彼は同上の戦闘で感染者となった人間と傭兵団を結成し、そこそこの活躍を見せた。前衛学校の時からバグパイプとサイラッハと面識があるらしく、今回彼がロドスに入隊したのは2人の強い要望があったためでもある。そして彼は我らがロドスの最重要研究対象でもある。ただし、その研究に携われるのは一部のエリートオペレーターのみだ。

 

「お願いします!彼の体を調べさせてください!彼は鉱石病を自分で抑え、その上完治も可能だとか!これは我々ロドスの永遠の夢なのです!!実験や論文の準備だってできているんです!」-医療オペレーターH.E

 

「却下する」-ケルシー

 

第二資料

彼は基本的には好印象で物腰柔らかな青年という印象を持たれている。実際その認識は間違いではないが、過去に彼と任務に同行したオペレーターから話を聞くと、顔を青くし、震え上がり、受け答えもまともに出来なくなる者が多かった。戦場での彼は勇猛果敢という言葉では抑えられぬほどに激情家であり、また、冷徹に敵を追い詰め殺しきるという二面性を持つ。軍人時代の誇りなど捨ててしまったようだ。オニ族の名に恥じぬ体躯とパワーで敵を纏めて両断するその姿は同行したオペレーターに大きな衝撃とギャップを与え、以降恐怖の対象となってしまったようだ。

 

「俺ってそんな怖い?」

 

「....戦闘中はそこそこ」

 

「泣いた」-カゲロウと一般前衛オペレーターの会話

 

第三資料

彼の武器、それは極東に伝わる刀と大太刀だ。双方共に敵を「斬る」ことに特化された武器で、細かなメンテナンスを必要とする。

彼は滅多に大太刀を使用することはないが、敵にウルサスがいると豹変し、大太刀に持ち替え、塹壕に逃げるウルサス軍を文字通り地の底まで追い続け、20人の小隊を1振りで斬り尽くしたというのはロドスの有名な都市伝説だ。

 

「大太刀?よく使うよ。一体一なら刀使うし、多対一なら大太刀で一気にぶった斬るかな」

 

「チェンさんの赤霄とはどう違うんですか?」

 

「まず形から違う。後は刀身の太さも違うんじゃないかな。そもそも刀ってのは......」

 

「うーん、よくわからないです!」-カゲロウとスズラン

 

第四資料

信頼度200で解放

 

昇進資料

「なぁドクター、この俺の能力が仮にもし、世界の全員が使うことが出来たならどんなに幸せだったろうな」

 

 

 

ボイス

 

秘書任命 「書類仕事か?お易い御用だ。半分貰うよ」

 

会話1 「へい、ドクター。暇だからよぉ、様子見に来てやったぜ」

 

会話2 「子供?あぁ元気だよな。これから身に降りかかる不条理を知 らねぇで楽しそうに過ごしてやがる。だが子供にはそれが一番だな」

会話3 「腹減ったな。飯だ、飯。腹が減ってはなんとやらだろう?ほら、ドクターも行くぞ」

 

信頼上昇後会話1 「ドクターの指揮ってのはすげぇんだな」

 

信頼上昇後会話2 「バグパイプ?あぁ、あいつとは学校の同級生でいつも成績を争ってたな。大体お互いの得意な分野では勝つんだよ。俺?俺は座学とスタミナだけは負けねぇよ?」

 

信頼上昇後会話3 「ドクター、この世界は不条理や理不尽が溢れている。 俺は天から恵まれたが、救われない人はとんでもない数だ。だからよドクター。お前は全てを背負おうとしなくてもいい。この世界はたった1人には重すぎるからな」

 

放置 「おい、起きろ。ケルシー呼ぶぞ」

 

入職会話 「カゲロウ。ただいまロドスに馳せ参じた。....あー、めんどくせぇのは無しだ。よろしくな、ドクター」

 

経験値上昇 「復習にはちょうどいいな」

 

編成 「任せな」

 

隊長任命 「この作戦の指揮は俺が執る!」

 

作戦準備 「え?2体までなら流していいの?」

 

戦闘開始 「投降してくれ。お前たちの家族が悲しむぞ?」

 

選択時1 「おう」

 

選択時2 「なんだ」

 

配置1 「俺の前に立ったことを後悔させてやる」

 

配置2 「勇敢と無謀は違うからな」

 

作戦中1 「くたばれ」

 

作戦中2 「両断する」

 

作戦中3 「一瞬だが空を飛べるかもな、首だけだが」

 

作戦中4 「俺は慈しみなんて持ち合わせちゃいねぇよ」

 

★4で戦闘終了 「ふむ、流石だなドクター。その集中力を普段の書類仕事 にもぜひ活かしてくれ」

 

★3で戦闘終了 「戦闘終了。...さて、死体の処理するかぁ...」

 

★2以下戦闘終了 「追撃する。30分くれ」

 

作戦失敗 「撤退だ。俺が殿を務めるから後は任せた」

 

基地配属 「繊細な作業なんて俺やった事ねぇんだけど」

 

タッチ1 「ん」

 

信頼タッチ 「やぁやぁドクター。一緒に1杯、どうかな」

 

タイトルコール 「アークナイツ」

 

挨拶 「お、来たなドクター」

 

基地スキル1

名称 原石加工

 

解放条件 初期

 

効果 製造所で合成玉の製造効率+40%

 

基地スキル2

名称 過去の思い出

 

解放条件 昇進2

 

効果 宿舎でバグパイプかサイラッハと同時に配置されている時、体力の回復量が+0.5/h

 

 

攻撃範囲

■□ (昇進しても変化なし)

 

潜在能力

2段階  コスト-1

 3段階 再配置時間-4秒

4段階 第一素質強化

5段階  第二素質強化

6段階  コスト-1

 

 

スキル

スキル1 迅速攻撃γ 自動回復 手動発動

攻撃力+40% 攻撃速度+45

 

スキル2 冥天火光(めいてんかぎろい) 自動回復 手動発動

攻撃力+60% 攻撃が術攻撃になる。スキル発動時、前方3マスの範囲内の敵全てに攻撃力の300%の確定ダメージ

 

スキル3 死天滅陽(してんめつよう) 自動回復 手動発動

スキル発動から6秒間行動しなくなり、その後ブロック数が無限になる。ブロック中の敵に攻撃力の160%の確定ダメージを毎秒与え、敵を倒す度所持コスト+2。スキル終了時、周囲8マスの味方に攻撃力と防御力の50%の「鼓舞」状態を付与して、強制撤退。

 

素質

素質1 燻り続けた才能

自身のSPの自然回復速度+0.6sp/秒 【ウルサス】を攻撃時、攻撃力が140%に上昇

 

素質2(昇進2で解放) 義の復讐

自身が配置された状態で、味方が敵の攻撃により撤退させられた時、即座に自身の攻撃力+30%防御力+35%

 

カゲロウの印

原石スティック。彼がアーツを使用するため能動的に鉱石病に感染する時に使われるモノ。怨嗟と畏怖が渦巻いた廃坑から採れた原石が使われている。医療部からは大バッシングを受けている。

 

 




という訳で、いかがでしたでしょうか。

いやぁプロファイル書くのムズいっすね。書いてる人尊敬しますわ。
カゲロウ君は先鋒の突撃兵です。バグパイプとサイラッハとは各隊のエースとして面識があるという設定で行きたいと思います。

話が進んだ時に第四資料書こうかな。

ではまた次回


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第1章
誤解と自業自得


はい、どうもこんにちは。
サイラッハ欲しさに150連爆死の作者が通りますよ。

前回のUAが600近くありました。凄いですね。読んでくださった皆様、どうもありがとうございます。

これからも頑張って投稿するのでどうぞよろしくお願いします。


はい、どうも皆様カゲロウです。

無事ロドスに拉致された俺は現在、修羅場1歩手前でございます。

というのは、目覚めたら腰に...こしに....腰...

 

「むにゃぁ...あれ?起きたの?」

 

「...バグパイプ...?」

 

「っ!!そう!そうだべカゲロウ!私!バグパイプ!」

 

「やっぱりか!久しぶりだな〜!俺が軍隊にいた時だから...2年ぶりくらいか?」

 

「うんうん!」

 

同衾してた美人バグパイプだったわ。軍服じゃないから分からんかった。....てかなんだそのカッコ

 

「...軍服じゃないから分かんなかったけど...何その服?」

 

「これ?なんか..えっと...れーすくいーん?ってやつの服らしいべ」

 

「ふーん...」

 

あかんエッチすぎる。腰あたりにしがみついてるから常に上目遣いだし、大きな山が2つ当たってるし、めっちゃ谷間見えてるし、ケルシーセンセはコッチをガン見してるし、なんなんだこの状況?

 

「とりあえず一旦離れてくれない?俺ちょっと色々話さなくちゃいけないことあるんだよね。ね?ケルシーセンセ?」

 

「....ぶー」

 

「お前仮にも軍人だろ...」

 

そんな不貞腐れてもダメなものはダメです。可愛いけど。可愛いけど!!(大事なことなので二回目)

 

「あぁ、君をロドスに拉t...連れてきたのは、他でもない。君のその体質と不可思議なアーツの研究の為だ。鉱石病は未だ有効な治療法が確立されていない。故に君のアーツ..云々」

 

今拉致って言いかけたよね?後話が長ぇ。見ろよ、バグパイプまた寝始めたぞ。可愛い。

 

「長いっすケルシーセンセ。1行でおねしゃす」

 

「その身、余すことなく全てをロドスに捧げろ」

 

「断るに決まってんだろそんなことォ!?」

 

え?プロポーズ?と思ったそこの貴方。ピュアですね今すぐアークナイツダウンロードしましょうね。(早口)

いやいやいやいや!何されるかわかったもんじゃねぇよ!?ケルシーセンセの脊髄と戦わされるかもしれねぇし!なんでブラック(と名高い)企業にこの身を捧げねぇといけねぇんだよ!!

 

「む...何故だ。1行で説明したのだが」

 

「説明=即入社なんてありえねぇだろうがよォ!」

 

「そうかそうか。つまり君はそんなやつなんだな」

 

「さてはアンタふざけてんな!?」

 

なんなんだこの人!?こんな性格だったか?この前(去年の傭兵家業中)会った時はもっとお堅い感じだったのに!もっとマトモにスカウトしてくれてたのに!

 

「はぁ...ならば仕方がない。とりあえずこの書類に目を通しておいてくれ。....安心しろ。流石にもうしない」

 

「本当かよ....えっと?なになに...えー..ロドスにおける入院費治療費薬剤費etc.....え、なにこれ」

 

え?なにこれ。なんか0がいっぱいあるんだけど。え?

 

「見ての通りだ。君は倒れていたところ(・・・・・・・・)保護されて(・・・・・)ロドスで治療を受けた。その対価を求めているに過ぎない」

 

「は!?おかしいだろ!?俺ドクターに薬盛られて拉致されたんだぞ!?」

 

「だが治療を受けた事実は変わらない」

 

「汚ぇ!汚ぇぞこんなの!ふざけんな!マッチポンプもいいところだわ!!だいたi..「だがロドスではお金以外の払い方もある」...話聞けやこのババア!!」

 

すると大声で起きてしまったのかバグパイプが眠そうな目を擦りながらこう囁いてきた。

 

「むにゃ...カゲロゥ...ケルシー先生はババアじゃないよ...この間もドクターとしっぽり...」

 

「は!?なにそれ!?てかお前どこでそんな言葉覚えたんだよ!..「チェンちゃんに教えてもらったー...」..あんの*龍門スラング*!!!」

 

「....///」

 

「アンタもアンタで顔赤くしてんじゃねぇよ!?」

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「ま、まぁともかく君はロドスでの支払いにお金以外の方法がある事を知っているだろう」

 

「あの状態から平静を装って話無理やり戻すところだけは尊敬しますよ」

 

「...選ぶといい。ここで働くか、牢獄にぶち込まれるか、を」

 

「ほんと汚ぇ...」

 

我傭兵ぞ?持ち合わせなんかある訳ねぇんだよなぁ。

 

「ねぇねぇ!カゲロウ!ロドスに入るんだべか!?」

 

「..俺としてはすげぇ嫌だ。何かこう...闇に負けた気がする」

 

「闇?何言ってんだべ!ロドスはいいところだよ!」

 

そんな事を喋っていると医務室の扉が開いた。

 

「そうそう。カゲロウ、バグパイプの言う通r..「チェストォ!!」..ぐぼぁあ!?」

 

「ドクター!?何やってんだべ!カゲロウ!」

 

「コイツが全ての元凶なんだよ!寝床爆撃するわ、女狐と結託して人を嵌めるわ!お前、クズさ加減に磨きがかかってねぇか!?」

 

「いったた...で?どうするんだい?カゲロウ。ブハッ..こっちはね..フフッフ..近衛局の人だって..ククク...いるんだからね?」

 

「グッ...」

 

「ねぇねぇカゲロウ?「あぁ?なんだよ今必死に考」...私たちと一緒が嫌なの...?」

 

あっあっあっ。断れないやつ。目うるうるしてるし、抱きつく力も強くなってるし、破壊力がすごい。

 

「ねぇ?どうして...?」

 

「....」

 

「ほら〜。腹くくれよ〜男だろ〜?」

「「「ドクターは黙ってて(ろ)」」」

 

「...ハイ」

 

あーあーバグパイプのやつ、ほんとに泣きそうじゃねぇかよ...。

.....仕方ねぇか。これ以上は粘れなさそうだ。

許してくれよ、皆。俺は、鉱石病の苦しみを絶つために....

 

「...俺は鉱石病の奴らの辛みや憎しみなんてひとつも理解しちゃいない。それでも...いいか?」

 

「...!あぁ!大歓迎だよカゲロウ!!ようこそ!我らがロドスへ!」

 

------------------------------

 

こうしてカゲロウはロドスに加入した。ここから彼はやはりと言うべきか、ロドスのトラブルに度々首を(無意識に)突っ込むこととなる。

というか既に頭半分くらい突っ込んでいるのだ。その理由とは...

 

「...ネェ?コンナ昼間カラナニシテルノ?」

 

「ジェニー!?お前もロドスにいたのかよ!」

 

「久しぶりだね、カゲロウ。でもね、私が気になってるのはそこじゃないんだ。なんでカゲロウがバグパイプさんと腕を組んでいるのかってこと」

 

「いや..これは...その」

「え?久しぶりに会えたのが嬉しいからだよ?」

 

「ふーん。ふーーーーーん」

 

「....ジェニー?」

 

「幼なじみの私を差し置いてバグパイプさんと腕組んじゃうんだ。へー」

 

「ジェニーさん?」

 

「カゲロウ?」

 

「はい!?」

 

「後で訓練室Bに来てね。いっぱいOHANASHIしよ?ね?」

 

「イエス!マム!」

 

 

 

この後カゲロウは脳天に軍旗が刺さった状態かつ頬に「女の敵」と油性マジックで書かれた状態で発見された。

それを見たドクターは大爆笑してたところ、ケルシーに拉致られた。

 

そして現在。俺は2度目の医務室の天井を見上げている。見知った天井だぁ...。しかも今度はジェニー(コードネームはサイラッハと言うらしい)が抱きついてくるし。髪がくすぐったい。めっちゃいい匂いする。あんだけ軍旗投げておきながら汗一つかいてないし、どうなってんだ。この世界の女の子は皆バーサーカーなのか?

 

「うふふっ...カゲロ〜」

 

「....なんだよジェニー。俺頭に軍旗刺さってたから今結構辛いんだけど」

 

「それはカゲロウがバグパイプと腕組んでたから...つい!ごめんね!」

 

「なんだその理由」

 

俺が浮気したみたいじゃん。おかしくね?俺彼女とかいた覚えないんだけど、流石に童貞ではないけどな!同意の元でヤった事あるし!傭兵だと娯楽が死ぬほどないからな〜。

 

「ネェ?」

 

「はい?....あっ」

 

目のハイライトが遠征してらっしゃる!ヤバいって!

 

「今他の女の子のこと考えてたよね。なんで?今は私が目の前にいるのに」

 

「な、なんのことだ?そんな訳ないだろ」

「童貞」

「は?ヤった事あるが?....あ」

 

やっべぇ墓穴掘った。なんかジェニーの綺麗な髪の毛逆だってるし、いやそれどうなってんの?なんか色々物理学無視してない?こっわ

 

「...カゲロウ」

「はいぃ!」

 

「カゲロウ、昔約束したよね?」

 

「なななんのことでしょうか?」

 

 

 

「私で童貞捨てるって」

 

「してねぇよそんな約束!!」

 

誰がするかぁ!!ヴィクトリアの儀仗隊で童貞捨てるとか罪がウルサスの子供たちより重くなるわ!!

 

「え!?でもカゲロウは私と結婚してくれる、って...結婚したら(ピー)するんでしょ!?その時に童貞捨てるってことじゃん!!...はっ!もしかして...浮気?」

 

「なわけねぇだろスカポンタン!!そもそもその約束何時のだよ「3歳の時」覚えてねぇわ!!てか結婚するまで童貞処女の方が珍しいわ!!」

 

「え?私処女だけど」

 

「お前もバグパイプもどうしちまったんだよ!?俺が知ってる2人はそんなこと軽く口にするような人じゃなかったんだけど!?」

 

「カゲロウ...人は変わるんだよ」

 

「やかましいわチクショウ!!」

 

おかしいだろ!!確かにヴィクトリア軍に居たら捨てる機会なんて皆無だろうけどさぁ!!もっとあるだろ!!なんかこう...

 

「...とにかく公の場で童貞とか処女とか言うんじゃありません!!分かった!?」

 

「じゃあ今捨てればいいね」

 

「何言ってんだオメェ!?!?」

 

何が「じゃあ」だよ!馬鹿野郎俺は生きるぞお前!もうほとんど痛みもねぇしスタコラサッサだ!

 

「あばよジェニー!俺はケルシーとドクターみたいに盛りたくはないからな!」

 

「あっ!えっ!?嘘!?どうやって抜け出したの!?」

 

そうして俺は病室を抜け出した。そして暫く逃げ続けていると...

 

「やぁカゲロウ..ブフッ...いやぁあれは傑作だったねHAHAHA!」

 

「うるせぇよドクター!俺はサイラッハに色教えこんだやつ潰すために忙しいんだ!」

 

「あぁそれ私だよ。彼女がカゲロウに振り向いてほs「テメェかぁ!!」ぶべらァ!?!?」

 

今度は俺がドクターの黒いフルフェイスに修正ペンで「クズ」と顔の真ん中に書いてやった。

あぁ〜、スっとしたぜぇ...

 

 

 




という訳でいかがでしたでしょうか。

なんでドクターは自ら明かしてしまうのか。
サイラッハは軍人って作戦終わると性欲すごいって言うしね、仕方ないね。

ではまた次回



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どうしてこうなった

はい、どうも皆様こんにちは。

ミステルでございます。今回もカゲロウにはロドスでほのぼの()してもらおうと思います。

では、どーぞ


「廃都市の捜索?」

 

「うん、この地図を見て欲しい」

 

そこにはヴィクトリアの荒野が写った地図があった。...荒野の地図とか誰需要なんだとか思ってたが、こんな所で使われているとは。

 

「結構前の天災でね、ヴィクトリアの一部が天災を交わしきれずに移動都市から切り離されたんだ。で、今回その切り離された廃都市を調査してもらいたくて君を呼んだって訳さ」

 

「なんでまたこんな辺境の廃都市を?廃都市なら他にも沢山あるだろう」

 

「ここにレユニオンの巣窟があるという報告があるんだよね」

 

「なるほどなぁ...」

 

レユニオンかぁ...リーダーのタルラには逃げられたって話だし、また勢いを盛り返してんのか?アイツらそこそこの人数いるから掃討するとなったら結構めんどくせぇな...

 

「あくまで今回は調査だよ。威力偵察じゃないからね」

 

「バッタリした場合は?」

 

「バレないように殺っちゃっていいよ」

 

「うーんこの」

 

ガバガバやんけ。殺しってダメなんじゃないんかい。

 

「その廃都市ごとぶっ飛ばせば良くね?ほら、エイヤフィヤトラさんとかに任せてさ」

 

「ん〜。それも考えたんだけど、やっぱり研究サンプルは欲しいよね」

 

「テメェの倫理観どうなってんだ?」

 

何する気だよ...。てかエイヤフィヤトラさんの名前テキトーに出したけど、あの人だと死体も残らないってこと?え?ヤバくない?あの齢かつあの体躯で?とんでもねぇな。

 

「隊の編成はこちらで決めておくから、この日からこの日までは空けておいてね」

 

「あぁ、分かった。ちなみに隊長は誰だ?」

 

「バグパイプ」

 

「OK。もう一度聞くが本っ当に威力偵察ではないんだな?アイツ普通に突っ込むぞ?」

 

「出来ればやめて欲しいかなぁ...」

 

じゃあシラユキとか隊長にしとけや、とツッコミを入れつつドクターとの会話は終わった。

 

------------------------------

 

俺は傭兵の時からトレーニングは欠かさない。筋肉痛にならない程度に毎日体を磨いている。戦う上で大事だからな。体は資本、これ大事。

 

「ふぃ〜。トレーニングおーわり。シャワーどこだっk「君かな?」...んあ?」

 

誰だこの女。白い...ループスか。....えっ何この子、すげぇスンスンしてくるんだけど。今俺絶対汗くせぇよ?

 

「...何してる」

 

「んふぅ...君からは強者の匂いがする...」

 

「は?何言って...「ボクと戦おう!」...え?いや」

 

え?いきなり来て匂い嗅いで戦おうとかどんな戦闘民族だよ頭おかし..あっぶな!?

 

「っぶねぇ!何すんだ!」

 

「アッハハハハ!何って!戦うんだよ?剣を抜いただけさ!」

 

「俺は了承した覚えはないんだが!?」

 

「アッハハハハ!!!」

 

聞いちゃいねぇ!クソっ!

 

「痛くて泣いても知らねぇからな!」

 

「いいねぇ!その顔!ボク好みだよ!」

 

こんな奴に好かれとうないわ!!

 

------------------------------

 

しばらく剣を打ち合った。コイツ二刀流なのズルいから俺も大太刀を途中から解禁した。

ていうか笑いながら斬りかかって来るのマジで辞めて欲しい。今まであったどんな奴よりも怖ぇわ。

 

「ほら!ほらほら!もっと激しく殺り合おうよ!」

 

「...チィッ!」

 

距離を詰めれば払われるが、逆に距離をとると斬撃が文字通り飛んできてジリ貧だ....。

こうなったら...

 

「おい!女!こっからはマジで手加減しねぇからな!」

 

「..!!いいよ!もっと...もっと!!激しく殺し合おう!」

 

俺は懐から原石スティックを取り出した。こいつは俺がアーツを使う時、その出力をあげるために自ら鉱石病に罹る為の代物だ。

 

「えっ、それって原石...」

 

ループスがなんか言ってるが、気にせず俺はそれを齧った。齧ってその一部を飲み込んだ。そうすると、身体中から原石クラスターが生えてくる。

 

「うぁ...ぁあ...フゥ....さぁ第2ラウンドと行こうじゃねぇか」

 

「バカなのかい!?君は自ら原石を齧って鉱石病になった!!これがどういうことなのか!分からない君じゃないだろう!?」

 

「あぁ?なんだいきなり...」

 

「ふざけるな!!君はボクが殺すんだ!鉱石病で死ぬなんて絶対許さない!!そこで待ってろ!ケルシーを呼んでくるからな!!」

 

えぇ....なんか急に心配してくれてる?

 

「あー、おい待て…」

「待たない!いいかい!?そこで待ってろよ!」

 

言うが早いかトレーニングルームから駆け出していってしまった。

 

「俺自分で治せるんだよなぁ...ハァ....とりあえず落としとくか」

 

------------------------------

 

数分後にあのループスとケルシーがやってきた。ループスは俺の体から原石クラスターが消えたことに完全に虚をつかれたような顔をしていた。一方ケルシーは...

 

「この原石、貰っていいか」

 

「全然いいっすよ、俺の角栓みたいなもんだけどね」

 

「え...あれ?....いやでも確かに....んん...?」

 

ループスは全く考えが纏まっていないようだ。自分のほっぺたを抓ってるし、目を何度も擦っている。

 

「けっ、ケルシー!本当なんだ嘘じゃない!ボクはこの目で確かに...」

 

「分かっている。彼はそういう戦い方なんだ。原石を喰らい、自ら鉱石病となって、アーツの出力を底上げしているんだ」

 

「そんなこと!あっていいのかい!?仮にも医療部のトップだろう!?」

「あ、それには俺も同感だわ」

 

たまにはマトモなこと言うやん。ちょっとだけ見直したぜ。まだ全然イメージはマイナスだけど。

 

「....当然医療部としては賛成どころか、大反対だ」

「そうだろう!?」

 

「だが、彼が感染しないと研究が進まん」

 

「...っ!....っ!!」

 

うわぁ...なんだかあのループスが可哀想になってきたな。喉元まで言葉は出かかってるが、あまりにもケルシーがケロリと言うもんだから自分を疑ってるな。流石に見てられねぇな。

 

「あー、ケルシーセンセ。そこら辺にしといてやってくださいよ。そこのループスの価値観がぶっ壊れちまう」

 

「....そうか。では私は行こう。また鉱石病になる機会があったら呼んでくれ」

 

「....」

 

さてはコイツ(ケルシー)なんも分かってねぇな。

 

------------------------------

 

放心状態のラップランド(コードネームはケルシーから聞いた)に一応声をかける。

 

「あー、大丈夫か?」

 

「ボクの価値観や倫理観が崩壊したよ...」

 

ここで俺が「いやいきなり戦闘吹っかけてくるやつが元々マトモな倫理観持ってる訳ねぇだろ」と言わなかったことを褒めて欲しい。

 

「....あ、そういえば」

 

「なんだ」

 

「キミのこと、呼んでる人がいたよ」

 

「え?もっと早く言ってくんない?で、誰?ドクター?」

 

「そこは謝るよ....。えっと青い...サンクタ?サルカズ?が探してたよキミのこと。なんでも天使の恨みは重いんだーって言ってたよ。キミ、彼女に何したんだい?」

 

ンン?青いサンクタかサルカズぅ?んで女ァ?

...やっべぇ心当たりが1人しかねぇ。そんでもってマージで会いたくねぇ...。今度こそ何されるかわかったもんじゃねぇよ...。

 

「...場所は?」

 

「食堂」

 

「OK、わかった。ありがとなラップランド」

 

「うん。キミも体に気をつけてね。いやほんとに。また戦おうね!」

 

んな、またご飯いこうね!みたいなノリで言わんといてください...。

 

------------------------------

 

そして俺は覚えたてのロドスの廊下を1人歩いていたのだが、本っ当に足が重い。すげぇ会いたくねぇ。どーせモスティマだろ?俺アイツになんかしたっけ?俺には身に覚えがないのにめっちゃ殺そうとしてくるからな…。

そして食堂が近づいてきた時、何人かのオペレーターが食堂から出てきた。

 

「カゲロウさん、今食堂に行くのは止めた方がいいですよ」

 

「...モスティマが不機嫌なんだろ」

 

「え、なんで知って...とにかくそうなんです!あの人が不機嫌で時間を勝手に弄るから料理が急に冷めたり、カピカピになったりするんです!」

 

「アイツ何やってんだ...」

 

やり口が幼稚園児のそれじゃねぇか...。

 

「というか!カゲロウさんが何かしたんじゃないですか?彼女、カゲロウさんの名前をずーっと呟いてたんですよ!」

 

「それ大丈夫?俺の事殺すとか言ってなかった?」

 

「言ってました!」

 

oh Jesus...。仕方ねぇなあ。とりあえず説得してみっかぁ。

 

「おい、モスティ「ここであったが百年目だよカゲロウ!」危ねぇ!?」

 

いきなり杖を振りかぶってくるんじゃないよ!?

 

「クソっ!なんで避けるんだカゲロウ!殴らせてよ!」

 

「待て待て待て待て!なんでだよ!お前が俺を恨んでるのは前々から知ってる!」

 

「なら大人しくしてくれよ!」

 

「その理由が分かんねぇんだよ!俺、なんかお前に恨まれるようなことしたか!?ほんとに危ねぇ!?」

 

「はァ!?あんな事をしておいてかい!?」

 

「マージで心当たりがねぇよ!教えろ!」

 

するとモスティマは一旦攻撃を止めた。

 

「フフ、フフフフフ。いいだろう。教えてあげるよ。私がカゲロウを恨んでる理由をさァ!」

 

「最早お前誰だよ...」

 

もう悪役じゃねぇか。それも世界を自己満で滅ぼそうとするタイプの。

 

「スゥー、カゲロウ、覚えてるかい?君がペンギン急便に雇われた1ヶ月をさァ…。」

 

「...?もちろん覚えてるぞ。あれだよな、なんか祭りの時の」

 

「そう!そうさ!君は安魂祭の前後1ヶ月!ペンギン急便に雇われてたよねェ!?」

 

「お、おう...何をそんなに興奮してんだよ...」

 

マジで怖いコイツ。どうしちゃったの?瞳孔ずっと開きっぱなしだし、杖2本振り回してるし、いちいちリアクションがオーバーだし。

 

「その時のことさ。君、祭りが終わってから...エクシアと2人でどこに行ってたんだい?」

 

....あ、マジ。バレてんのか。

 

「……君のような勘のいい女は嫌いだよ」

 

「ぶっ殺ォす!!」

 

「仕方ねぇだろ!誘ってきたのは向こうだぞ!?」

 

「知るかそんなこと!私は純情なエクシアが好きだったのに!君が色々教えこんだせいで私のスキンシップへの反応がすごく薄くなったんだからな!!顔を赤くしながら「もう...やめてよ...」ってウブな反応をするエクシアが好きだったのに!!それがどうだい!?昨日ちょっと胸に触ったら「...んっ...///」って感じた後に危うくこっちが食べられる所だったんだぞ!恥ずかしがるエクシアを見るはずがあんな事になるなんて...とにかく死んで貰えるかな、カゲロウ」

 

「テメェもテメェだし話が長ぇよ!!」

 

人の事言えねぇだろコイツ!!てか母艦内で暴れんなよ!時間もバッチリ止めてくるし!

おかしいだろ!なんで一日にこんな死に際に立たされてんだ俺は!?...あっ!?

 

「ケルシーセンセ!ちょっと助けて!」

 

「.....」

 

「ケルシーセンセ?」

 

「モスティマ、一旦止まってくれ」

 

「....ケルシーが言うなら仕方ないね。どうしたんだい?」

 

え、待って?止めてくれたのはいいんだけど、肩離して貰えます?ガッチリ掴まれてて走れないし、動けないんだけど。

 

「ドクターに色々と教えこんだのは、君か?」

 

「何を!?」

 

そんなアバウトな文章じゃ何も分からねぇよ!

 

「...行為中に尻尾の根元を叩くといい、と教えたのは君か?カゲロウ」

 

「....」

 

俺ですねェ!!これやるとフェリーンの子は反応良くなるんだよな。前にフェリーンの女の子とヤった時にやってみたら?ってドクターに教えたわ。ケルシーにやるとは思わなんだ。

 

「どう?気持ちよかった?」

 

「モスティマ、君は時を止めて彼を抑えておいてくれ。私がとどめを刺す」

「わかったよ。でも私も殴りたいから生かしておいてね」

 

「ふぁっ!?」

 

え、ちょっと待って!待ってってば!!おい!ケルシーはその脊髄をしまえ!モスティマは杖にアーツを込めるな!!いや待ってほんとに洒落になってnギャーーーース!!!

 

「...悪は滅びたな」

 

「うん、いい事したね、ケルシー」

 

「」チーン

 

この後さらにケルシーによく分からん薬いっぱい投与された上、実験台にされた。

翌日には完治した。

 

「...オニ族って体頑丈でいいな(現実逃避)!」

 




と、いうわけでいかがでしたでしょうか。

任務どこ行ったんだって話ですねェ!次回任務の話にするんで許して...。
方方の女の子から恨みを得たカゲロウ君。果たしてロドス内での社会的地位はどうなってしまうのか

ではまた次回


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廃都市偵察

はい!どーも皆様こんにちは。ミステルでございます。

暑いですね!筆者は毎日背中がびしょびしょになります!鬱陶しいことこの上ないですね!
というわけで前回の後書き通り、今回は廃都市の偵察に来たカゲロウ君達のお話です。

それでは、どぞー!




今、俺はバグパイプ、俺、ラップランド、行動予備隊A6とヴィクトリアの廃都市探索へ来ている。隊長はバグパイプ、副隊長はオーキッドさんが務めてくれている。

 

「......と、言うわけで、ここからは散開。レユニオンが潜伏しているのを見つけたら地図に書いておくように」

 

「「「「「了解」」」」」

「はーい」

 

バグパイプは軍人モードに入るとやはり頼りになるな。一緒のベットに入ってた時との同一人物とは思えん。ここまで1人たりともレユニオンとバッタリしなかったし、遠目から一方的に敵の存在を知ることが出来たのはひとえにバグパイプの指示のお陰だろう。

ラップランドも意外と素直に指示に従っている。マジで意外すぎる。

あ、いや全然だったわ。両手が剣を握ったまま震えてるわ。しばらく戦闘してないから禁断症状出てるやん...。いやそもそも戦闘してないから禁断症状って何だよ。

 

「えっと...俺のルートはこっちか」

 

------------------------------

 

「ふむふむ...なるほどなぁ」

 

ロドスから出発する時にドクターから貰ったこの廃都市の地図。どうやらドクターとバグパイプが敵の位置を予見し、戦闘力まで予想してあるな。そして、ここまで見事なまでにその地図の予想は当たっている。

 

「あっちは狙撃6、こっちは盾兵3、向こうには流れ者とブッチャーの混在部隊ねぇ...」

 

恐ろしいな、ここまでドンピシャだと。もう偵察とか要らねぇんじゃねぇの?

この廃都市の東と北側はほとんどがレユニオンの巣窟と化していた。俺たちは通信基地を設置した南側から乗り込んだから、基本的には敵と接触しないようになっている。

 

「そんで、ラップランドと合流、と」

 

「やあ!カゲロウ!お早い到着だね」

 

「この地図のお陰だろ。見張るべきポイントが既に書かれていたから助かった」

 

「ほんとだねぇ。....ねぇカゲロウ」

「ん?」

 

「ちょっと...ほんの少しだけでいいからボクと戦ってくれないかい?....ほんとにしばらく戦っていないと手の震えが収まらなくて...」

 

「....」

 

マジでどういうことだってばよ。

 

------------------------------

 

「ちょっと2人とも!?何してるのよ!?」

 

「あ、オーキッドさん。お疲れ様です」

「よそ見してる暇なんてあるのかい!カゲロウ!」

 

「お疲れ様です、じゃないわよ!あなた達なんで戦ってるの!敵にバレたらどうするのよ!?」

 

「ほんとだべカゲロウ!ちょっと2人とも!止めなさい!!」

 

「俺防いでるだけだしラップランドを止めてくんね?」

 

俺が一方的に受けの展開、と言っても刀で受けるようなことはしていない。鉄と鉄の打ち付けあった音でバレちゃうからね。避けの一手だったわ。

さて、ラップランドの禁断症状も収まったことですし。

 

「報告だ。特に変わった事はなし。概ね地図の通りだった」

 

「うん、ボクもカゲロウと一緒かな」

 

「私とポプカルのルートもよ、あんた達2人は?」

 

「俺の方も同じかな」

 

「俺もだ、特に問題はない」

 

「よし、では撤退します。各員整列!」

「はッ!!」

 

ここで俺がヴィクトリア軍式の立ち振る舞いをした事にオーキッドやミッドナイトは少々驚いていたが、俺の事をなんだと思っているのだろうか。

 

「あなた、そんな軍隊みたいなことできたのね」

「ああ、俺も少し驚いたよ」

 

「...どういう意味だよ」

 

「そのままの意味よ、あなたがここに来てから軍人らしい所作なんて一切しなかったじゃないの」

 

「いやまぁ....そりゃ軍人の時間よりも傭兵としてやってた時間の方が長いからなぁ。でもよ、たま〜に思い出すんだよ。ヴィクトリア式のアレコレを」

 

今回俺がやったのもそれだ。てか未だに体に染み付いている事に俺もびっくりしてる。軍隊の時にあれだけ扱かれたからなぁ...ハハッ

 

「...カゲロウお兄ちゃんの目が死んでる...」

 

「...1人で一体何を考えているのかしら」

 

------------------------------

 

「うん、今日の任務はこれで終わりかな。お疲れ様でした!私は隊長としてロドスと通信するから皆は休んでてね」

 

「ありがとうね、バグパイプ。申し訳ないけど先に休ませてもらうわ。行くわよポプカル」

 

「じゃあ俺も一杯やろうかなぁ。どうだい?スポット?」

 

「...一杯だけだぞ」

 

「ボクは剣の手入れをしてくるよ」

 

A6とラップランドの面々は終わったと同時に自分の時間へと入っていく。おそらくオーキッドさんは戻ってきて書類を手伝うだろうが、ポプカルを寝かせることが先決だ。俺はと言うと...

 

「見回り行ってくる」

 

「あ、ちょっと待ってカゲロウ」

 

俺は夜番だ。通信基地の外へ出て、異常がないか見て回るだけ。...酒飲んでても出来そうだな。...と行きたいところだったが、隊長に止められては無視できない。

 

「どうした?」

 

「いや...この機械の使い方が分からなくて....」

 

「....そういやそうだったな」

 

そうだった。コイツ超がつくほどの機械音痴だったわ。コイツに電子機器類を持たせると1週間でブラックアウトしちまう。アニメとか漫画みてぇだな。

 

「えっと説明書説明書....あ、あった。なになに?まずは電源に入れて...」

 

5分ほどで画面の先にドクターが映った。

 

「やあ2人とも!そっちの方はどうだい?地図はどれくらい当たってたかな」

 

「はい、敵の位置は概ね予想通りでした」

「ほぼドンピシャだ。助かったよ」

 

「うんうん。やはり私の予想は当たってたか...。よし、レユニオンなんて潰しておくに越したことはないし、此方から増援を送るよ!そこら一体のレユニオン、殲滅してくれるかい?」

 

「援軍はいつ頃の到着になりそうですか?」

「あと、飯の問題とか補給もあるだろう。今回そんな持ってきてねぇぞ?店があってもレユニオンが持ってってるだろうし」

 

「3日後。兵站は此方から持って行かせるよ」

 

「了解。他に指示はありますか?」

 

「うーん...特にないかな。君たち2人の指揮能力も素晴らしいし、撤退の判断なんかも君たちに任せるよ」

 

「了解。では、通信終わります」

 

「うん、お疲れ様!」

 

「お疲れ様でした。...カゲロウ、どうやって切るの?」

「あ?ここのボタン押すんだよ」

 

「仲良いね君たち」

 

「否定はしn「あ!このボタンだべ!」ブチッ」

 

------------------------------

 

「アッハハ、切られちゃったよ」

 

「バグパイプは本当に機械音痴なのね...」

 

「うん、ところでサイラッハ。君、援軍の隊長、任せてもいいかい?」

 

「え!?隊長!?...えっと...うん、わかった。任せてよ!」

 

「よし、じゃあ後はどの面子にしようかな〜」

 

そしてドクターは目線を手元の書類に移した。今度の援軍のメンバーを選んでいる。あ、そうだ。

 

「ドクター、チェン警視がカゲロウに会いたいって言ってたよ」

 

「ん?....あ、そっか。カゲロウとチェンは同級生か。そりゃ会いたいよなぁ...となるとバランス的にエクシアあたりも入れるか...前衛は...カゲロウにやってもらえばいっか。あ、あと医療オペレーターも...補助オペレーターは...オーキッドが向こうにいるし要らないかな」

 

ドクターが集中し始めたのでサイラッハはそそくさと執務室を後にした。

 

「ふぅ...隊長かぁ。頑張らないと!」

 

そして十字路を直進し、食堂へと入ると、そこには赤髪の天使(サンクタ)がいた。

 

「あ!おーい!サイラッハー!アップルパイ食べるー?!」

 

「エクシアさん!頂きます!」

 

------------------------------

 

「ん〜!美味しい〜!さすがはエクシアさんのアップルパイ!」

 

「あはは〜、褒めてもアップルパイしか出ないよ!」

 

「じゃいっぱい褒めないとですね!...あ、そういえば次の作戦にエクシアさんが参加するかもしれない、とドクターが言ってましたよ」

 

「次の?どんなやつ?」

 

「今バグパイプとカゲロウが行っているヴィクトリアの廃都市のやつです。レユニオンが多数見られたから掃討するから援軍を送るーって、その援軍の中にエクシアさんの名前が...え?どうしたんですか?」

 

「...!!いっ、いや!なんでもないよ!わ、わかった!教えてくれてありがとう!ち、ちょっとお手洗い行ってくるね!」

 

「あ、はい...どうしたんだろ、エクシアさん。顔赤かったし、急にモジモジしだしたし、そんなに我慢してたのかな...」

 

そんな事はない。エクシアはカゲロウの名前が出た時に、彼との夜を思い出してしまっただけである。モスティマが言っていたように、エクシアはカゲロウと一夜を明かした事がある。その時の名残が今なおエクシアに残っている。それだけの事だ()

 

そして、そんなエクシアを見たモスティマが青筋を浮かべながら笑顔でドクターに作戦への参加を直談判()したのは言うまでもない。

 

果たしてカゲロウ君はどうなってしまうのだろうか。

 

------------------------------

 

「ぶぇっくしゅ!!」

 

「どうしたの、風邪?」

 

「これでもオニの端くれだぞ?風邪なんかひかねぇよ」

 

「そっか。ところでカゲロウ、この機械ってどうすれば動くの?」

 

「え?これただのガスコンロなんだけど。機械と呼べるかすら怪しいんだけど」

 

「むー。いいもん!私が1人でやる!...えい!」カチッ

 

「....え?つまみ回しただけだよね?なんで光っt」

 

 

ドガァァァァァァァァァン!!!

 

 

 

偵察隊 

本日の成果 敵の位置のおおよその把握 

死者 なし 

負傷者 2




というわけでいかがでしたでしょうか。

バグパイプが機械音痴なのは確か公式設定じゃなかったかな?
次回は援軍との合流の話をメインに書こうと思います。
皆様も暑さにはお気をつけて!

ではまた次回


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困難は突然に

はい、どうもこんにちは!作者でございます。

と、言う訳で前回はカゲロウ君がヴィクトリアの廃都市に来たところまでお話が進みましたね!
今回もカゲロウ君は廃都市での任務に励んでもらいます。

では、どうぞ


偵察任務2日目、俺たちは朝礼のために通信基地の1番広い部屋に集まっていた。

 

「総員、傾注!....まぁ今は作戦行動中じゃないし、楽にしてていいよ」

 

「朝イチで呼び出すとは、重要な連絡でもあったのかい?」

 

「ええ、そうよミッドナイト。私たちが発見したレユニオンを『廃都市に残された民間人を救出する』という名目で掃討する事になったわ」

 

「...民間人なんていたか?」

 

「...生きている確率も低い上に、生きていたとしてもヴィクトリアに見捨てられたと考えるだろうな。レユニオンに新しく入隊した、と考えるのが妥当だろう」

 

「...と、言う訳で。今から3日後に援軍と兵站が到着するから、それまでここがバレないようにまた偵察を繰り返します。なにか質問は?」

 

上から順にバグパイプ、ミッドナイト、オーキッド、スポット、俺、バグパイプの発言だ。

するとこれまで黙っていたラップランドが手を挙げた。

 

「いいよ、ラップランド」

 

「...仮にここが、もしくは個人が偵察中に敵にバレてしまった場合、どうすればいいんだい?」

 

「それに関しては俺が話そう。ラップランド、喜べ、バレたら戦闘OKだ。というか殺せ。いいか?ラップランド。"バレたら"だぞ?他意はないからな?」

 

マジで突撃とかしないでね?

 

「フフっ....アッハハハハハ!!!そうかいそうかい!分かったよ!バレたら殺せばいいんだね!?あぁ!一気に気が楽になったよ」

「なんで気が楽になるんだよ」

 

コイツ人の心とかないんか?...ないな、コイツ。そういえば。

 

「えっと...できればバレないで欲しいんだけど...」

 

ほらぁ、バグパイプも引いてるじゃん。いやバグパイプだけじゃねぇな。ポプカル以外は皆引いてるわ。

 

「...?...殺して...いいの?」

 

「なんて恐ろしいこと言うんだポプカル!?」

 

こうして朝礼は無事(?)終了した。

 

------------------------------

 

偵察、と言っても今日は夜に行う予定だから、今はまっっっったくする事がない。俗に言う暇と言うやつだ。これが休日だったら惰眠を貪るのも悪くないと思ったが、生憎ここは作戦地区だ。いつ奇襲があってもおかしくない。故に俺は訓練をして過ごすことにした。(ラップランドにバレないように細心の注意を払っている)

 

「やぁ、カゲロウ。精が出るね」

 

「フゥー、ミッドナイトか。何か用か?」

 

「いやなに、俺も混ぜてもらおうと思ってね」

 

「そうか、組手でもやるか?」

 

「いや、止めておくよ....前回君がラップランドと組手やった時のこと忘れたのかい?俺なんかじゃ君の足元にも及ばないしね。見学させてもらうことにするよ」

 

「えー...やらないのかよ....ん?痛った!?」

 

「あー...脇の下に原石クラスターができてるね」

 

「んだよもう...ふっ」

 

「...いつ見ても壮観だなぁ」

 

「んあ?」

 

ミッドナイトには何度かこの力を見せたことがある。というかこういうカラッとした奴の前でしかこの力は使わない。使えない。重症の人の前ではさすがに煽ってるみたいで良心が傷つく。

 

「おーい!カゲロー!どこだべー?!」

 

「おやおや、女房が呼んでるよ」

 

「誰が女房だって?バグパイプか?HAHAHA!冗談だろ?」

 

「....え?」

「....え?」

 

「あ!いた!また機械の使い方分からないから来て!!!」

 

「またァ?今度はなんだよ...爆発するもの?」

 

「違うべ!今度は爆発しないやつ!」

 

「ほんとかよ...すまんミッドナイト、ちょっと待っててくれな。で、どれだよ...」

 

そう話しながら2人は通信基地の中に入っていった。

ちなみに昨日のガスボンベの爆発で負傷したと思っていたらすぐに応急処置を終えて2人ともケロッとしていた。

そして何より...

 

「....この俺が空気になるとは....というかバグパイプさんもアレが相手だと苦労しそうだなぁ」

 

ミッドナイトはジメジメとした曇天の下、1人取り残された。足元を小石が転がっていくのを眺めていたミッドナイトをオーキッドが目撃し、本気で心配していたのはまた別のお話。

 

------------------------------

 

「で?どれだよ」

 

「これ!」

 

「え?扇風機?こんなんそこのスイッチ押せばええやん」

 

「でもつかないの。なんで?」

 

「えー...?別にコンセントから抜けてる訳じゃないしなぁ…壊れたか?」

 

「まだここに来てから2日と経ってないべ!なんで壊れちゃうの!おりゃ!」

「おい待てバカ叩くな。また爆発しt「ついた!」おぉー」

 

確かに扇風機が動き出した。涼しい風が体を撫でるように吹き抜けていく.....いや待てなんかガタガタ言ってねぇ?

 

「....ねぇカゲロウ、なんかガタガタ言い始めたよ?」

 

「....なんでだろうな」

 

もうしーらね。俺また訓練に戻るから、ミッドナイト残してきてるし。

 

「俺もう訓練に戻るぞ」

 

「えー?もう?確かに大事だけどさぁ、もうちょっとお話しない?お互いに積もる話なんて全くできてないよ?」

 

「....今は一応作戦中なのを忘れるなよ」

 

「....はーい。ぶー...」

 

「ガキじゃねぇんだから....」

 

なんか俺が知ってるバグパイプはもっと勇猛で、かっこいいイメージだったんだけどなぁ。

どうしてこうなった。

さて、ミッドナイトのところに戻るか。

あぁ〜、なんかたった今出てきた建物の中から爆発音がするナ〜(現実逃避)

 

しかしミッドナイトは既にいなかった。(オーキッドとお茶中)

 

「.....まぁいっか」

 

そして俺は日が暮れるまで鍛錬に励んだ。

 

------------------------------

 

夜。

日が暮れて、俺が鍛錬を終えて戻ってきた時、バグパイプは爆発の後始末を終え、丁度飯時になった。

 

「ところで、ご飯って何日くらいもつの?」

 

「あー...今のペースで毎日食ってたら...2.5日くらい?」

 

「でも援軍の到着はもう2日後だろ?特に問題ないんじゃないか?」

 

「それがあるのよスポット。援軍の車が野盗に狙われた上に天災が近くに来ているみたいなのよ」

 

「そりゃ....文字通り災難だな。何日くらい遅れそうなんだ?」

 

「ドクターの見立てだと1週間くらいですって。ドクターも申し訳ないと謝ってたわ」

 

「え、じゃあ飯どうすんの?」

 

食事中の俺たちを重い空気が支配した。毎日一食ずつ抜けばプラス2日は行けるだろうが、1週間はさすがに無理だ。

 

「....おい、どうすんだ隊長」

 

「...待って今考えてる」

 

明るいバグパイプも黙り考え込んでしまった。それほどに状態は切迫している。俺も頭の中の情報を色々整理し、引き出してはみるが..

 

「近くに集落は」

 

「ない」

 

「行商」

 

「いない」

 

「森、川、山」

 

「ここは荒野のど真ん中」

 

360°手詰まりか。

....今、俺は1つ案を思いついた。倫理的にも世論的にも最悪な手だが一応提案してみるか...。

 

「カニバリズム」

 

「.....」

「さすがに認められないわ」

「さすがにそんな事する前に食料奪えばいいじゃないか」

 

「デスヨネー」

 

まぁだよな。バグパイプにいたってはマジの引き顔してるし、無意味に俺が傷ついただけだったわ。

 

「...ポプカルを寝かせてくるわね」

 

「あぁ、おやすみポプカル」

 

「...ぁい...おやすみ....」

 

------------------------------

 

「四方手詰まりじゃねぇか。どうすんだ」

 

「レユニオンから奪う....けど絶対バレるぞ」

 

「俺、もう1回地図見てくるよ」

 

「私も行ってくるわ」

 

夜分、ポプカルを除いたA6と俺たちは今後来たる食糧難についての対策を練っていた。まずは一日の食事量を減らす。これは決定したのだが、ポプカルにはさすがにちゃんと食べさせることにした。

次に日中の探索だ。今日はこの会議をしているため出来なかったが、普段は夜に偵察に向かう。だから昼のうちにここら一帯を歩き回って食べられる野草などを探す。荒野に生えている野草なんてたかが知れてる上に鉱石病の危険もあるが、背に腹はかえられぬ。

そして、強奪。上のふたつの案で耐えられなくなった時の最終手段だ。とりあえずはこの3つの案でやりくりしていくしかない。ドクターとの通信でも許可は得た。

ちなみに、ここから1番近いロドスの基地からでも6日はかかるため、ロドス本艦と大差ない。よっぽど此方の食料は尽きるだろう。通信基地を細やかに漁ってみた結果、予備の食料が少しだけ残っていたのが救いだが、結局は恐らく4日で限界だ。2日も飲まず食わずでは、俺たちはともかく、ポプカルに支障が出る。

 

「...とりあえずこの案で進めよう。本当にダメだったら撤退も視野に入れる」

 

「さすがのドクターも天災が急に起こるのは想定外だったか」

 

「ロドス本艦も今大慌てみたいよ。トランスポーターがことごとく泣かされたらしいわ」

 

「そんなにか」

 

今回の天災はトランスポーターが全く予測できなかったらしい。原石も何もない所にいきなり天災が発生するのは珍しいことではないが、今回は本当に予兆が無さすぎたらしい。

 

「...よし、じゃあ解散。明日の朝一番にもう一度レユニオンを偵察してから探索を開始しよう」

 

「「「「「了解」」」」」

 

 

 

 

そして俺は爆発と怒号。つまりはレユニオンの襲撃で目覚めることとなった。

俺は枕元の刀を引っ掴み、服を着替える暇もなく扉を開けて飛び出した.......

 

 




と言う訳でいかがでしたでしょうか。

いきなりカゲロウ君達を襲った食糧難という危機。
そもそもね、急ピッチで作られた簡易的な通信基地(という設定)だから保存食が少ないのは仕方ないね。
さてはて、どうなってしまうのでしょうか

ではまた次回


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奇襲と捕虜

はい、皆様こんにちは、ミステルでございます。

前回、思わぬ形で危機を迎えたカゲロウ君一行。食料危機となってしまいました。そして、これからの事を考えていたところにレユニオンの襲撃が...
果たしてカゲロウ君たちの命運はいかに、

では、どうぞ


えー、はい、カゲロウでごぜぇます。

なぁんで基地がバレてるんですかねぇ!!

 

夜寝て朝日が登る前にこれだよ。嫌になるね。

 

「くたばれ!この裏切りもん共がぁ!!」

「殺してやる!」

 

「おーおー、朝っぱらからご苦労なこって」

 

結構な勢いだ。この基地は天災がこの廃都市に直撃する前から存在していたため、そこそこボロボロだったのだが、即席で一応修復はしたため、ある程度の防御力を持つ。とは言っても所詮は通信基地だ。侵入されたら普通に一溜りもない。

 

「カゲロウ!?大丈夫!?」

 

「おう、こっちは平気だがそっちは?」

 

「私達も大丈夫!何とか抑えてるよ!」

 

とりあえずこの奇襲で大事に至った生半可な奴は我がロドスには居ないらしい。さすがロドス。さすが民間軍事会社。え?違う?

 

「とは言ってもどうすんだよコレ!色々とマズイだろ!」

 

「何ごちゃごちゃ言ってんだ!」

「クソっ!ロドスにこんな奴居たか!?」

「知るかよ!とりあえずぶっ殺してこいってあの方が言ってただろ!殺すぞ!」

 

「...なるほどねぇ...」

 

どうやらバックにそこそこな立場の奴が居るらしい。そんな重要なことをアイツらデケェ声で言っちまっていいのか甚だ疑問だが、俺たちの偵察を看破し、なおかつこの通信基地の場所まで特定したとなると、少々腕がたつ人間のようだ。

とりあえず聞いてみよう。

 

「おい!お前らのカシラは誰だ!」

 

「はァ?言うわけねぇだろ!」

 

「ですよねー!」

 

交渉は失敗か()なら....捕まえて吐かせるか。

 

「...痛い目見る前に逃げることを勧めるぜ」

 

「よく回る口だな!たたっ斬ってやる!」

「殺せぇ!」

 

えっと敵の数は..1、2、4、7....沢山だな!

 

「横薙ぎ一閃だオラァン!」

 

------------------------------

 

「...これ全部カゲロウがやったの?」

 

「...はい」

 

「こっちの窓も全滅よ。風通しが良くなったわね」

 

「...申し訳ございません」

 

ハイ...調子乗りました。...ごめんなさい。

真剣使った戦闘が結構久しぶりな事もあって力加減ミスった...。刀振るった余波で基地に色々傷がついてしまった。2つの部屋の窓は風圧で全部割れてたらしい。

あ、ちなみにレユニオンの死体はそこら中に転がってる。捕まえようとしたんだけどね。アイツらが殺しにかかってくるし仕方ないね。

ところで、

 

「むぐぐーー!!んー!」

 

「コイツどないするん?」

 

「とりあえず色々聞いてみようと思うよ。これだけ計画的な奇襲がレユニオンにできるとは思えないし」

 

「まぁ、そうなるな」

 

1人俺がひっ捕らえた。コイツだけ良心が残っていたのか殺意が薄く、戦意も他のヤツらに比べると全くなかったと言っても過言ではない。

 

「...おい、外すからちょっと黙ってろ」

 

「....」

 

あらいい子。

そして正座の刑を解かれた俺がコイツの口枷を外してやった。

 

「ブハッ!...クソっ!ふざけんな!殺してやるぞ!」

 

「まあまあ、落ち着いて茶でも飲めや」

 

「え...あ、ありがとうございます...いや!そうじゃない!感染者の裏切り共め!」

 

「お前ここのモンだな?」

 

「...ちっ、違う!俺はレユニオンだ!」

 

やはり良心が残っている。そして所作も上品なものがある。ヴィクトリア式の紅茶をしっかり飲んでいるのでコイツは元々この廃都市の市民だな。と推測したがビンゴだ。目が泳ぎまくってる。

 

「どうどう、別に悪いようにゃしねぇよ。ただちょーっとお話しようぜってだけだ」

 

「絶対なんかされるヤツ!?嫌だ!誰か助けてくれー!!」

 

「もう助けを求める仲間は全滅してるぞ」

 

「ひぃっ...!」

 

------------------------------

 

「...彼、圧迫面接得意そうね」

 

「学校にいた時も口喧嘩では負け無しだったんだよ...」

 

「...カゲロウとは口喧嘩でもただの喧嘩でも勝てねぇじゃねぇか」

 

捕らえたレユニオンにどんどんプレッシャーをかけながら「お話」を進めていくカゲロウに対してのオーキッド、バグパイプ、スポットの反応である。ドン引きである。

 

「あーあー...アイツ泣きそうになってるよ」

 

「まぁ敵だしボクはなんとも思わないけどね。それより敵の増援とか来ないかな〜」

 

------------------------------

 

「ウッ..ヒグッ....びぇぇえええええん!!」

 

「はぁ!?おいおいおい、泣くなよ...」

 

泣き出しやがった!なんだコイツ!ちょーっとお話しただけじゃねぇか!仲間はどれくらい居るのかとか、カシラはどんな奴なのかーとか!

なのになんで泣くんだよ!女みてぇじゃねぇか!.....待てよ、もしかしてコイツほんとに女か?仮面剥いでみよ。

 

「えい」

 

「!?ひゃぁァァァァァァ!?!?」

 

「あ、マジで女やん」

 

捕まえたレユニオン女だったわ。てか...コイツ「ドラコ」じゃねぇのこれ?ここら辺(ヴィクトリア)では多いんだよね。確か。

 

「おーい!バグ!コイツ女だ!」

 

「えっ!?女の子だったの!?」

 

バグパイプが駆け寄ってきた。

 

「...ほんとだ。女の子だ」

 

「な、なによ。女で悪かったわね」

 

「んーん、えーっと...お、女の子で戦うのって珍しいから...」

「お前何言ってんだ?」

 

どうやらバグパイプはこの女を慰めようとしているらしいが、焦って言ってることがめちゃくちゃになっている。お前も女やろがい。

話進まねぇし尋問続けるか...

 

「...まぁ、とりあえず...お前たちのバックにいるのって誰?」

 

「いっ、言うわけないでしょ!?皆死んじゃったけど...まだ仲間はいるんだから!!」

 

「...知ってはいるんだな?」

 

そう言うと女は慌てて口に手をやった。やってしまったと言う顔で、顔を青くしている。

今度はバグパイプが女に質問した

 

「ねぇ、あなた元々ここの人?」

 

「...そうよ」

 

「家族は?」

 

「...死んだわよ、天災で」

 

まぁ、そうだよな。天災をモロに受けた都市だ。生き残る方が難しいだろう。その点、この女は運がいい。

 

「ねぇ、あなた鉱石病になってるよ?」

 

「...っ。知ってるわよ!だから何!?この石は仲間の印よ!あんたらが殺した仲間のね!!」

 

「怖いのか」

 

「ハァ?!そんな訳ないでしょ!?」

「震えてるぞ」

「多分カゲロウが怖くて震えてるんだと思うよ」

 

「.....」

 

.....黙ってよ。

 

------------------------------

 

あの後バグパイプに尋問任せたらすぐに終わった。やはり女は女に任せておくべきだったな、うん。

あ、連れてきた。

 

「とりあえず尋問終わり!この子の後ろにはほんとに誰かいるみたいだよ。わかったのはそれくらいかな」

 

「悪ぃなバグ。ところでソイツどーすんの。いくら捕虜とは言えこっちは食料危機だぞ?」

 

「...どーしよ」

 

「殺しちゃえばいいんじゃないかなぁ」

「ヒィッ!」

「黙っててラップランド」

 

「あ、じゃあ俺が実験に使ってもいい?」

 

「...なんの実験なの。カゲロウ」

 

「いや、俺って自分だけなら鉱石病治せるじゃん?」

 

「そうだね」

 

「この力って体の内側からアーツで洗い流してるようなイメージなんだけど」

 

「うん」

 

「じゃあ体の中から俺のアーツ流したらどうなるのかなって」

 

「...え?どうやってやるの?」

 

「体に穴開けてそっから腕をねじ込む」

「却下だよ!!」

 

あれ、怒られた。割と良い案だと思ったのにな。鉱石病研究も1歩進むと思ったのに。

一方その頃この会話を聞かされた捕虜の女はと言うと、

 

「ロドスコワイ....コロサレル...」

 

ガタガタ震えていた。食料危機だから生かしておく意味もないしどないしよ。

 

------------------------------

 

この女、割とお嬢様だったらしい。名前を「ローザ」といい、そこそこの名家の出だった。そして、俺たちが食料危機だということを知るやいなや俺たちに話しかけてきた。

 

「何よアンタたち、食料危機なの?」

 

「お恥ずかしながら。故にテメェは死ぬ訳だが」

 

「話が飛びすぎよ!...え?ちょっと待って本当に!?待っ、待って!私ここら辺に詳しいのよ!食べ物が取れるところだって知ってるわ!だからその剣をしまってよ!」

 

「ほぉ?あとこれは剣じゃないけどな」

 

中々興味深いじゃないか。交渉材料としては十分だ。

 

 




と、言うわけでいかがでしたでしょうか。

次回、捕虜の女に連れられてカゲロウ君たちは食料を探しに行きます。そしてそこに迫る黒い影...。一体どうなるのでしょうか

ではまた次回


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捕虜と食料と邂逅と

はい、皆様こんにちは!ミステルでございます。

という訳でね。身内が流行病になりまして、ワタクシ外に出られなくなりました。落単まっしぐらでございます。
前回は1人女の捕虜を捕え、食料の場所を提供してもらえるところで終わりました。女が言う食料とは?

それではどぞ


はい、どうも皆様カゲロウでごぜぇます。

 

今ワタクシはですね、捕虜の女(ローザ)に連れられて、廃都市を外からグルリと大回りしているところでございます。なんでもコイツここら辺の食糧事情に詳しいみたいで、生かしておく代わりにその食料の場所を教えてもらうというギブアンドテイクが成り立ちました。隊の中で1番腕が立つラップランドは基地の防衛を兼ねてお留守番。2番手の俺がついて行くこととなりました。

 

「...アンタたち、私たちを殲滅しようとしてたんでしょ?なんで食料が足りないなんて事態になるのよ」

 

「作戦に支障がでるから詳しい説明は省くが...要は天災が全部悪いってことだ」

 

「...そうね。私も天災が悪いと思うわ。私は食料だけじゃなくて家族まで殺されたもの」

 

「そもそもなんでこんな事になったんだ?ヴィクトリアは天災に対しての技術がそんなに遅れている訳ではないだろ?」

 

「それでも予見できなかったのよ。だから1番端の都市だった私たちの町が切り離されたって訳。予告なんて一切無しにね」

 

「....」

 

なるほどなぁ...。相当辛い思いをしたようだ。そりゃヴィクトリアを恨みもするわ。

あ、言い忘れてたけど、この廃都市にたむろするレユニオンの目的はヴィクトリアへの復讐だ。ヴィクトリアで感染者となり追い出された者、この廃都市の生き残り、その他諸々でヴィクトリアに恨みがある人間が集まっているらしい。まぁ殲滅するんですけどね(無慈悲)

 

「...なぁ、分かってると思うが、ここで俺たちを騙そうなんて思ってねぇよな?」

 

「...んな訳ないでしょ」

 

「そうか、ならいい」

 

なんだ今の微妙な間は。ホントに騙そうとしてんのか?

 

「もう着くわよ。ほら見えるでしょ?」

 

「なんだコレ。山?」

 

「ここに食料が入ってるのよ。...えっと...ほいっ」

 

そう言って目の前に立つホントに小さな山にローザは小石を投げた。カツーンといい音を鳴らして跳ねた小石は山にところどころ空いている穴へと落ちていった。

 

「何してんの?安全確認?」

 

「いいえ?食料からこっちに来てもらうようにしただけよ」

 

「は?(疑問)」

 

「言い忘れてたけどこの山、オリジムシの巣よ。デッカイわよね」

 

「は?(半ギレ)」

 

「あぁ、それと私。虫ダメだから。お先に失礼するわね」

 

「は?(ブチ切れ)」

 

すると足元が大きく揺れ始めた。そして下の方からカサカサとオリジムシの足音(アイツらに足はないが)が聞こえてきた。

 

「待て待て待て!!テメェ!やっぱり騙そうとしてんじゃねぇか!こんなオリジムシの巣に連れてくるなんて俺の事殺す気か?」

 

「ハァ?当たり前でしょ?これでも私、レユニオンなの。それとオリジムシは食べられるし、騙してなんかないわよ。あわよくば死んでもらえると助かるわね」

 

「このクソアマぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

そして立っていられないような振動が辺り一帯を襲ったその時。巣の穴という穴からオリジムシが飛び出してきた!

 

「うわぁぁぁぁぁ!!気色悪ぃいぃぃぃぃ!!」

 

「ヒッ...」

 

なんだこりゃ!?100体は下らねぇぞ!?波みてぇだぞ?!

 

「クソっ!やるしかねぇ!横薙ぎ一閃だオラァン!」

 

多対一の時に役立つ横薙ぎ。これに限る。

そしてここにアーツを込めてやれば...

 

「行くぞ...『影打ち』!『山波』!『風切』!」

 

『影打ち』は納刀状態から一気に横薙ぎに抜刀する居合の技。

『山波』は逆袈裟で切り上げた後にそこから袈裟懸けを行う2回攻撃。

『風切』は俺の原石アーツを込めた一閃だ。刀にアーツを込めて振り抜くと、原石の破片が飛んでいく。俺のほぼ唯一の遠距離攻撃だ。

 

「ふぅ...いっちょあがり」

 

「すごい...」

 

オリジムシは外殻をとって中身を取り出して煮るなり焼くなりすると意外と食える。だが正直美味いと感じるのは一部の味覚バカ(ドクター)のみだ。正直俺も好んで食べるかと言われればNOと言うだろう。

さてはて、大体全部で200匹くらいか。どうやって持って帰ろう(計画性0)。

 

「おい!隠れてないで手伝え!」

 

「...分かったわよ、やればいいんでしょ!...うえぇ」

 

「とりあえず食えそうなやつだけ持って帰ろう。...というかなんでこんな巨大な巣がこんな所にあるんだ?」

 

「さぁ?ハチだって時々すごく大きな巣作るのと一緒じゃない?」

 

「うーむ」

 

「考えすぎよ、というかコイツらを1秒でも長く触っていたくないからとっとと帰りましょ?」

 

「あいあい、捕虜のクセに生意気だな。ホント」

 

「食料の場所教えてあげたんだから寧ろ感謝して欲しいくらいよ」

 

そんなふうに笑い合いながら俺たちは基地に帰ってきた。やはりオーキッドさんに「オリジムシを食べるの?」ドン引きされていたが、結局1番食べてたのオーキッドさんじゃねぇかな。

 

------------------------------

 

夜も更けて、いざいざ偵察へ。

 

「カゲロウ、今回はもっと奥の方に行ってもらうよ」

 

「分かった。地図見せて」

 

これは何時もの偵察前の状況なのだが、2人の距離が近い。肩は触れ合ってるし、バグパイプの綺麗な髪はカゲロウが弄っている。それでいながら顔と話している内容は真面目なのだから見ている側からしたら、職場婚した夫婦に見えなくもない。

 

「相変わらずお熱いねぇ」

 

「...うるさいわよミッドナイト」

 

「オーキッドさんもそろそろ焦ってんじゃないですか?よし良ければ俺g...いやほんとすいませんでした」

 

「分かればいいのよ」

 

「よし!ルート決まったよ!」

 

「ラップランドには割と敵が多い地区を担当させた」

「アッハハハハハハハ!!いいねぇ!」

 

「...一応見つかった時の危険性を考えた結果だが、お前見つかるなよ?」

 

「分かってるさ。さすがに態々見つかりには行かないよ。癪だけど、任務だからね」

 

「そしてAルートはオーキッドとポプカル、Bルートはミッドナイトとスポット、Cが俺でバグは捕虜の見張りでお留守番な」

 

「うん!その通り!私はこの子とお留守番だから皆、よろしくね!」

 

「よし、行くか」

 

「なんか君が隊長みたいだね、カゲロウ」

 

------------------------------

 

そして散開した後、ルートにそって偵察を続けている。てか今朝奇襲してきたのになんでこんなのんびりしてんだコイツら。奇襲は独断専行か?

 

「....んー?」

 

なんだありゃ。何人かの体に黒い模様?が見える。初めは原石クラスターかと思ったが、どうやら違うようだ。黒い...なんだ?

 

「なんかの民族由来の模様か?...そんなんここら辺にあったっけ...」

 

帰ったらもう一度資料を漁る必要がありそうだ。てかホントコイツら能天気だな。酒飲んでんじゃねぇか。寄越せ(本音)。

 

「えっと..次はこっちか」

 

------------------------------

 

「....おかしい」

 

おかしい。なぜこんなにも皆同じ模様があるのだろうか。もしこれが民族由来の模様ならいざ知らず。ここにいる100人は同じか多少違う模様が同じ位置に彫られて...彫られてんのかは知らんが、ある。

というかここまで大きな民族なら俺は絶対知っているはずだ。なぜなら俺はヴィクトリア出身だからな。道すがら見覚えのある看板も幾つか見た。

 

「クソっ!なんかおかしいぞ...」

「何がおかしいのです?」

「...ッ!?」

 

俺は刀を抜くのと同時に声の方向へ斬りかかった。ロドスの隊にこんな声の奴はいない。俺の知り合いにもいない。故に敵。故に斬る。

 

「..おっとぉ。危ないですねぇ」

 

「...誰だ。名乗れ」

 

俺の斬撃は呆気なく交わされた。そして俺は敵の姿を視界に捉えた訳だが、明らかにヴィクトリアの人間ではない。だが、その帽子には見覚えがある。

 

「いやはや、私はしがない傭兵ですよ」

 

「嘘をつくな、その帽子、ウルサス軍のものだろう」

 

「おや...まさかバレてしまうとは」

 

「...いやそれ隠す気ねぇだろ」

 

何がバレてしまうだよ。ちょっと戦闘経験があればすぐ分かるわ。ウルサスの奴らどこに遠征しようと真冬みてぇな装備してるから分かりやすいんだわ。

 

「なぜウルサスがここにいる」

 

「おやおや、せっかちな方ですねぇ。まぁいいでしょう。では、私の名前はクシュマフ。クシュマフ・ヴァルシュオ。以後お見知りおきを」

 

「ヴァルシュオ...ヴァルシュオ?テメェ、ウルサス軍の術士じゃなかったのかよ」

 

「お恥ずかしながら鉱石病になってしまいまして、追放されてしまいました」

 

そう言ってクシュマフと名乗る男は右袖をまくった。確かに原石クラスターがある。

それよりも、今はコイツから情報を取れるだけ取っておきたい。

 

「あの模様はなんだ。テメェの仕業か?」

 

「私が名乗ったのに君は名乗ってくれないのかい?」

 

「....ヤマトだ。極東の出身」

 

俺は何時もの偽名を使った。『カゲロウ』という名前は良くも悪くも知っている人が多い。故にバレたくない時には『ヤマト』という偽名をよく使っている。

 

「ほう...ヤマト...!いい名ですねぇ。...そして、あの紋様の事ですが....私がつけました」

 

「....!!」

 

「そんなに殺気立たないでください。別に悪いものではありませんよ」

 

「じゃあ何だって言うんだ」

 

「あれは『カウントダウン』です。自らの死期を可視化したものですよ。一応非感染者もいるのでね。感染者が死んで爆発的に感染者が増えても困るので、可視化してゼロに近づいてきたら自ら遠くへ行ってもらいます」

 

「...そうか。では次「次はこちらの質問です」...いいだろう」

 

そういうと目の前の男はニヤリとほくそ笑んで、柱の裏へ何かを取りに行った。その間も俺は警戒を解かず、男に対して間合いを調整していたが、男が柱の裏から持ってきたモノに言葉を失った。

 

「あなた...この駄犬をご存知...ですよね?」

 

「....」

 

男は俺の前に白いループスを投げ捨てた。

ボサボサの髪に腿の原石クラスター。そして特徴的な剣。血に塗れてはいるが間違いない。

 

「....っぁ....」

 

 

ラップランドだ。

 




はい、という訳でいかがでしたでしょうか。

黒幕と思われる人間が出てきましたね。そして戦闘描写なく倒されるラップランド、ファンの方ごめんなさい。
次回はこの男との会話と戦闘がメインになると思います。

ではまた次回


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「悪夢」

はい、どうもこの1週間外に出ていないミステルです。

前回は偵察中のカゲロウ君の前に強そうなオジサンが出てきたところで終わりましたね。今回はオジサンとの会話がメインです。...アークナイツのギャグ小説ってむずくね?

それでは、どーぞ


 

クシュマフ・ヴァルシュオ。

昔ウルサスの奴らを殺して回っていた時に凄腕の術士と耳にしたことがある。そしてウルサスの人間にしては「人間らしい」という事も知っている。現にそれが今回の感染を広めるまいとする『カウントダウン』に現れている。

 

そのような人間がなぜ鉱石病になったくらいでここにいる?そもそも軍の中で鉱石病になったとバレてしまえば殺されてしまうのもウルサスの軍内では少なくないという。ここまででも疑問点が多すぎる。そして、

 

「...ゥぐぅ...」

 

「...落ち着け、呼吸を整えろ」

 

目の前に横たわっているラップランドがこの男が如何程の実力者か物語っている。

 

「おやおや優しいですねぇ!やはりお知り合いですかァ!?」

 

「うるせぇよ、声を抑えろ」

 

「フハァ...ところでヤマトサァン?」

 

「...なんだ」

 

「お前、『ウルサス殺し(スレイヤー)』について知ってるか?」

 

周りの温度が急激に下がった気がした。目の前の男はこの話題を出した途端、目が据わり、明確な殺意を持って俺を見ている。

 

「...なんだソイツは」

 

「我々の同胞を殺し回っているネズミのことですよォ!元ヴィクトリア軍だと噂がたってますが...私はこの目で確かに見た!『ウルサス殺し』を!」

 

マズイか?俺が襲撃したウルサス軍の中に生き残りがいた?俺は必死に記憶を引っ張り出して、生き残りの可能性がある戦いを探した。基本全滅させるため、逃がした事についてはあまり覚えていない。

 

「それで?どんな奴だったんだ」

 

黒い髪をした女だった(・・・・・・・・・・)!!あれは男の動きじゃない!!」

 

「...ほう?」

 

俺じゃないな、というか俺以外にもウルサスを狩るとかいうキチガイ紛いなことやる奴が居んのかよ。しかも女て。

 

「それとこのループスがどう関係するんだ」

 

「あぁ...?その駄犬は私のアジト周りをウロチョロされて鬱陶しかったんですよォ.....ん?話がだいぶズレているなぁ?」

 

「ちなみに俺はその黒髪の女の事なんざ知らねぇぞ。俺はここら一帯の天災を調べに来ただけだからな。ほら、身分証明書」

 

「ん....なるほどォ?ヤマト...トランスポーター...ゴールド免許なんですねェ....ふむふむ」

 

ゴールド免許はどうでもいいだろ。というかこの世界でゴールド免許持ってるやつはマジで希少すぎる。龍門にいる知り合いは皆免停か1回は事故ってた。...なんで?

 

「ふむ、ではお返ししますね。どうかお気をつけて。時間を使わせてしまって申し訳ございませんねェ...」

 

「あぁ...では失礼する「待ちなさい」...あ?」

 

「アナタァ...この駄犬を何処かに報告しますか?我々レユニオンがここを根城にしていると報告...しますか?」

 

...どうやら奴さんはハナっから俺を逃がす気はないらしい。

 

「...する、と言ったら?」

 

「誠に残念ですがァ...死んでもらうことになりますねェ....」

 

「ならば報告はしない。誓おう。理由は...」

「理由は?」

 

「原因であるテメェを今ここで殺すからだ」

 

「!!..イッヒヒヒヒヒ!!やはり仲間だったか!さァ!皆さん!愚かなネズミを殺して差し上げましょオ!」

 

「「「うぉぉぉァァァァァ!!!」」」

 

俺がクシュマフへの殺意を全開にした辺りでようやく向こうは俺がロドスの人間だと気づいたらしい。おっそ。まぁとりあえずは...

 

「うるせぇぞ。愚図共が」

 

「うわぁ!なんだコイツ!?」

「一気に5人斬りやがったぞ!?」

「いでぇ!痛てぇよぉ!?」

 

「おやおやァ!容赦ないですねェ!?同じ感染者だと言うのに!」

 

お前ら(レユニオン)俺たち(ロドス)を一緒にすんじゃねぇよ」

 

画して戦いは始まった。

 

------------------------------

 

場面は変わってロドス母艦。急激に発生した天災に見舞われはしたが、ようやく復旧作業が終わったところである。

 

「うえぇ〜...づがれだ....」

 

「本当に感謝するよ、クロージャ」

 

「ほんとだよ!1週間くらい休暇貰うからね!」

 

「勿論。ドクター権限d「それは無理だ」おや、ケルシー」

 

「ゲッ...ケルシー...」

 

ロドスの最高責任者の1人、ケルシー。プレイアブルキャラとして登場する前はラスボスだの黒幕だの言われていたケルシーである。

 

「クロージャ、サイラッハ達を乗せた車も荒野の真ん中でダメになってしまったらしい」

 

「え゛...」

 

そして、彼女は笑うでもなく申し訳なさそうな顔をするでもなく言い放った。

 

「もうひと仕事だ」

 

「イヤだぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」

 

 

 

救援が到着するまで、あと4日...

 

------------------------------

 

「イヒヒヒヒ!駄犬1匹背負っての戦闘は辛そうですねェ!!」

 

「....ッ!」

 

「うおっとォ...得物は刀なのに遠距離攻撃があるとは...興味深いですねェ!」

 

戦闘が始まって数分、5分経ったか経たないか位だろうか。周りの雑魚どもは全滅したが、やはりこの男はただものでは無い。ラップランドを背中に背負って戦闘を続けているが、隙を見て離脱したい。ラップランドの傷口から血は止まっているものの、顔色は悪く、息遣いも浅く、短いものとなっている。非常にマズイ状態だ。

 

「テメェ、いい加減諦めたらどうだ。手の内は大体見たぞ。もう当たらん」

 

「イヒヒ...そうですねェ...私もアーツを使いすぎて少々疲れてしまいましたァ...」

 

「...なら今回は離脱させてもらう。これ以上戦ってもお互い得しないからな」

 

「そうですか...そうですねェ...アハァ...」

 

そういうと目の前の男はバタリと倒れてしまった。...は?

 

「は?いやいやいや倒れるほどかよ。俺致命傷すら与えてないんだけど」

 

「・・・・・」

 

「....?まさか...コイツ、死んでる?」

 

ラップランドを下ろし、俺は刀に手をかけながら、ゆっくり倒れたクシュマフの元へ近づいた。そして首元の脈を図るために手をやると...

 

「...ない。本当に死んでやがる...」

 

脈がなく、呼吸もしていない。本当に死んでいるようだ。なぜ?俺は直接的な死因をおそらく作っていない。ラップランドを背負っていたため、常に逃げの一手だったからだ。

 

「まぁいっか、とりあえず基地に戻るか」

 

やはりラップランドの事が先決だ。1度基地に戻って治療しよう。スポットに医療品を貰えば問題ないか。

 

「....ぐッ....ウゥ...」

 

「大丈夫か、もう少しの辛抱だ」

 

「...ダメだ...違う...ソイツじゃ...なぃ....」

 

「なに?」

 

『ソイツじゃない』?どういう事だ。ラップランドを倒したのはコイツじゃなかったってことか?いやまぁ、実際そうなんだろうけどさ。コイツ弱すぎるもん。

 

「分かったからとりあえず治療が先だ」

 

「...まだ...いるよ...カゲロ...後...」

 

「後ろ?」

 

俺は自身の背後の気配を探った。特に変わったことはない。...泳がせるか。俺は気づいてないフリをした(実際気づいていないのだが)。だが後ろにいる、という事は分かっているため。後ろに全神経を集中しながら基地へと飛んだ。

 

「後ろに集中、後ろに集中....コイツ結構あるな……」

 

これは後ろに集中した副作用だ。決して他意はない。決して。

 

------------------------------

 

果たして何事もなく基地の近くまで来てしまった。1度スポットと合流してから、後ろにつけて来ていられると困るので少々ルートを変えて廃墟に入り込み、そこで治療を行っているのだが、全く気配を感じない。本当に後ろにいたのか?

 

「どうだ、ラップランド。」

 

「...うん、だいぶ楽になったよ...」

 

「まだ寝てろ。周囲の警戒は俺がやる」

 

とりあえず応急処置は済ませた。血は止まっていたため、傷口に薬をぶっかけただけだが使い方は合っていたらしい。

 

「カゲロウ...さっきの話の続きだよ...ボクがやられたのはさっき倒したヤツじゃない...別のヤツだ」

 

「...後で聞くから今は休め」

 

「...わかったよ」

 

日が昇ってきた。明るい日差しが俺とラップランドのいる廃墟を照らしだした時、今まで見えていなかったものが見えてきた。血痕だ。

 

「!?血痕!?誰の血だ!?」

 

それも一つや二つではない。そこら中に血の跡がベッタリとついている。だが死体は見当たらない。

 

prrrrr...

バグパイプからだ。

 

「こちらカゲロウ。どうした?」

 

『どうした?じゃないよ!もう何時だと思ってるの!?完全に日が昇ってるよ!早く帰ってきて!』

 

「いやしかたなかったんだっt『問答無用!』..へいへい」

 

「さてと...帰るか」

 

「この血痕..かなり新しいけど、どうするんだい?」

 

「ここに有ったって事だけ覚えとけばいいだろ。感染者が塵になっただけなんじゃねぇの?」

 

...結局後ろには誰もいなかった。ラップランドの勘違いかな?

 




はい、というわけでいかがでしたでしょうか。

あれ、オジサンよっわ!と思った方。そうです。このオジサンは弱いんです。鉱石病も末期でしたしね。
次回は基地に帰ってからの情報共有が主になると思います。

それではまた次回


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報告会

はい、どうも皆様ミステルでございます。

前回はおっさん弱ぇじゃん!といった具合でしたね。今回はそんなおっさんになぜラップランドが倒されたのか、といった事を紐解いていきます。

それでは、どうぞ


とりあえずその後何事もなく夜が明けて、俺とラップランドは基地に帰ってきた。そしてこれから眠る前に情報の共有だ。

 

「私とポプカルの方は特に何もなかったわ。強いて言うなら少しレユニオンの数が減ったくらいかしら」

 

「...うん、少なかった」

 

「俺たちも特にないな。なぁ?」

 

「あぁ、こっちも同じく少し数が減ったくらいかな」

 

「なるほど...あ、ちなみにこの子(ローザ)はいい子にしてたよ。カゲロウ達は?」

 

上から順にオーキッド、ポプカル、スポット、ミッドナイト、バグパイプの発言である。

 

「俺は...敵のカシラだと思われる人物と接触した」

 

「ボクは殺されかけてたからよくわかんないや、ごめんね?」

 

「え?」

 

ローザ含め全員がポカーンとしている。説明すんのめんどくせぇな...。

 

「んぁ〜...多分俺より先にラップランドが話した方がいいんじゃねぇの?」

 

「ん...そうだね。ボクから話すよ」

 

「え?ほんとにどんな目にあったの?帰ってきたと思ったらラップランドは血塗れだし、カゲロウはまた鉱石病になってたし...」

 

------------------------------

 

ボクは地図に書かれたルート通りに進んでいたんだよ。途中までは問題なかったさ。もちろんこっちから戦闘を吹っかけたりもしてないしね。

繰り返すけどここまではなんの問題もなかったんだ。レユニオンも視界内に捉えてて、周りに大した気配もなかった。

だけど問題はルートの半分を過ぎてからだったんだよ。

ボクはなんだか変な気分になったんだ。なんて言うのかな...こう...乗り物酔いになりかけた感じ..かな。でもこの程度の不調、風邪ひいたかなくらいの気持ちでいたんだけど、どんどんひどくなっていったんだ。お陰様で吐いちゃってさ。敵に位置がバレちゃったからソイツらだけ殺しちゃった。これは許して欲しい。ソイツらを片付けてからもどんどん気分が悪くなっていったんだ。そしてボクが前後不覚になったところで、アイツが来たんだよ。

 

「...うッ...けほっ...誰...」

 

「おやおやァ...新薬の実験は成功ですねェ...」

 

「...誰だって聞いてるんだ!...ゴホッ!」

 

「ふむゥ...理論上は立っているのも辛いはずですが...やはり個人差があるのか...」

 

「ブツブツと何を言ってるんだ!」

 

そこまで言ってからボクは剣を振るったんだ。ボクの剣戟は飛ぶからね。確実に当てたと思ったんだけどなぁ...。

 

「ハァ...ハァ...ふぅ。一体なんだったんだよ...」

 

死体はなかったけど血痕が残ってた。だから油断しちゃったんだ。

 

「さて、次は...ウグゥ!?」

 

「ギャハハハハハ!あの程度で死んだと思ったのですかァ!?」

 

「...ッ!このォ!」

 

そこからはボクもよく分からなかった。ボクの斬撃は確実に当たっているはずなのに、その度にソイツは消えて、完全な死角から攻撃されるんだ。傷一つ無い状態でね。初めはボクの斬撃が外れているのかと思ったさ。

でも1度だけボクは直接アイツを斬ったんだ。間違いない。確かにこの手に肉を斬る感触があったんだ。だけどアイツは消えて、また攻撃してきた。

その時にボクは驚いたよ。ボクが斬った脇腹どころか服にすら傷一つ無いアイツが攻撃してきたんだからね。

アイツが2人いるのかと思った。アーツによる幻影も疑った。けどそんな感じはしなかったんだ。気分が悪かったのはアーツの影響だろうけど、直接的な干渉をしてくるアーツは感じられなかった。なら2人いるのか?否だった。アイツは1人だった。そもそも2人いるなら始めから2人がかりで襲ってくればいい。だから余計に訳が分からない...

 

------------------------------

 

「.....っていうのがボクの報告さ。嘘じゃないよ。ボクは嘘だと思いたいけどね」

 

「..どういう事だ?ラップランドが負けるほどの実力者であることは分かったけど...高速再生のアーツか?」

 

「高速再生だと服に傷がないことに説明がつかないだろう?」

 

「....もしかすると私たち、とんでもない奴を相手取っているのかも知れないわね」

 

 

「だけどソイツは死んだんだ」

 

俺のこの発言に空気が凍りついた。

 

「...え、ラップランドが倒せなかった奴をカゲロウが倒したのか?」

 

「んなわけねぇだろ。無茶言うな。...俺は今回の偵察中にラップランドが言う「奴」に会ったんだ。名前はクシュマフ。クシュマフ・ヴァルシュオ。元ウルサス軍の術士で、一騎当千の強さを誇る...らしいぞ?」

 

「なんで疑問形なの....」

 

「だって俺何もしてねぇのに目の前で死んだんだぜ?」

 

疑問形になるだろ。それなりに強ぇ奴が何もしてねぇのに死んだんだから。もしかして鉱石病が末期だったか?やっべ調べるべきだった。

 

「...とにかく特徴的な喋り方のウルサス人の男には要注意だね。ドクターにも報告しておくよ」

 

「あぁ、頼んだぞ。バグ」

 

「任せて。...あ、そういえば救援の人達はあと4日で着くみたいだよ。さっきクロージャさんから連絡があって、今からあと半分くらいの道のりらしいよ。天災のお陰で遠回りさせられてるみたい」

 

「オリジムシはほぼ無限に採れるし、4日ならなんとかなるかぁ。....ふあぁ〜、俺はもう寝るぞ」

 

「うん、じゃあ皆も解散!私はドクターに報告してからこの子(ローザ)を監禁してくるね」

 

「あぁ、頑張ってな」

「ちょっ、ちょっと待ってよ!監禁!?なんでよ!私食料の場所まで教えてあげたのに!?」

 

この後ローザはしっかり監禁された。

 

------------------------------

 

寝るとは言ったものの、俺は奴の事が頭から離れなかった。ラップランドを打ち破るほどの実力者。斬りつけても即回復しているのかのようなアーツ...アーツなのかな。そして俺の目の前でいきなり死んでいった...ラップランド曰く俺の前で死んだアイツはラップランドがいう奴とは別人らしいけど...これもう分かんねぇな。

 

------------------------------

 

日が高く昇り、結局一睡もできなかったが、俺は部屋(ガラス全壊)から外に出た。

 

「...ふわぁ〜...おい、スポット。交代だ」

 

「ん、あぁ頼んだぞ」

 

俺はスポットと見張りを交代し、椅子の上で思考を再開した。

 

ここまでの情報を整理しよう。

敵の頭の名前はクシュマフ・ヴァルシュオ。

元ウルサスの軍人で術士。「一騎当千」と呼ばれ、今回ラップランドを倒した実力者。鉱石病が原因でウルサス軍から脱退。その後はこの廃都市でレユニオンとつるんでいる。アーツは今わかっている範囲では、『カウントダウン』『高速再生(?)』『瞬間移動(?)』程度のものだ。...待てよ?

 

「ローザってカウントダウン...あったか?」

 

------------------------------

 

「カウントダウン?何よそれ?」

 

「鉱石病患者のレユニオン共にクシュマフがつけたアーツだ。お前も見た事くらいはあるだろ?」

 

「....あぁ!あれね!あのよくわかんない紋様のやつ!」

 

「あぁ、多分それだ」

 

ローザには『カウントダウン』が着いていなかった。なぜ?ローザが鉱石病に罹ったのはこの都市が廃都市になる原因であった天災に由来する。ということは鉱石病界隈では古参ということだ。なのになぜ『カウントダウン』がない?クシュマフがわざと付けなかった?...それはアイツが言っていた理念と完全に矛盾する。いやまぁ敵の人間の言葉に耳を貸すつもりはさらさらないのだが。

 

「なんでお前には付いてねぇんだ?」

 

「さぁ?あんな気持ち悪い奴の考えることなんて知らないわよ」

 

「なるほどなぁ...」

 

さてはて本格的に八方塞がりだ。手がかりが少なすぎる。

そも、ラップランドを単騎で倒すことが出来て、高速回復して、瞬間移動できる奴なんて今まで見たことも聞いたことも....

 

 

いや、待てよ。あるな。あるわ。思い出した。

 

 

ちょいとばかり条件は違うかもしれないが、それでも誤差の範疇だろう。善は急げと俺は傭兵をやってた時のツテから『アイツら』に連絡した。

 

prrrr....ガチャッ

『はい、コチラ『レッドラベル』...この番号にかけてくるってことはただモンじゃねぇな?誰だ』

 

『レッドラベル』ホログラム。それが俺が出した回答だ。

 

 




はい、というわけでいかがでしたでしょうか。

最後にレッドラベルの名前を出してみました。じゃあ死んだおじさんはホログラム...ってこと!?
それはまた次回のお楽しみに...次回はおじさんの能力の答え合わせになると思います。

それではまた次回


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敵を信じる

はい、どうも皆様こんにちは。ミステルでございます。

投稿が遅れたのは夏休みの課題追われていたからです。これからお盆にもなるのでまた更新は遅くなりそうですが、何卒ご容赦ください。


では、どうぞ


『この番号知ってるってことはただモンじゃねぇな...誰だ』

 

「俺だよ、俺。カゲロウだ。久しいな赤さん」

 

『...なんだよカゲロウかよ...で?今度はどんな厄介事だ?』

 

「なんで俺が電話しただけで厄介事確定なのかは知らん。マジで。厄介事が向こうからやってくるんだよ」

 

『...あぁ、知ってる。で?要件はなんだ』

 

「ん、お前ここ最近ホログラムどこかに貸し出したりとかした?」

 

『んあ?ホログラム?ちょっと待ってろよ....♪〜』

 

「ちゃんと保留するんだ...」

 

もうみんなわかっていると思うが、今俺が電話してたのは『レッドラベル』だ。傭兵してた時に色々あってなんやかんや仲良くなった。

向こうの電話の人の顔は知っているのだが、真名を知らないため、俺は「赤さん」って呼んでる。

 

------------------------------

 

『♪〜....待たせたな。ホログラムは特に貸出も奪われてもいないそうだ。というか何故ホログラムなんだ?ウチには他にも兵器はあるが...』

 

「詳しい内容は伏せるが、そのホログラムに似たような戦い方の敵がいるんだよ。倒したと思っても倒せてないんだ。肉体を斬ってもすぐに戦線に復帰してくる。...ソイツにラップランドが負けたんだ」

 

『ラップランドの嬢ちゃんが負けたのか!?なんて事だ...おい、そいつの名前、なんてんだ。ウチの集団にソイツを避けさせる』

 

「元ウルサス軍人、クシュマフ・ヴァルシュオ。男。髪はロン毛の黒。術士。アイツが言うことを信じるわけじゃないがアーツの内容は『カウントダウン』が確定。『カウントダウン』ってのは....

 

 

----カゲロウ説明中----

 

 

『なるほどなぁ。よし、分かった。感謝する』

 

「あぁ、といってもしばらくしたら恐らく戦闘になるから意味ないと思うよ、そのメモ」

 

『いや、今のはお前さんの発言を纏めてたんだ。お前、それは本当にただの『カウントダウン』なのか?俺ァ、ウルサスの奴がそんなことするとは思えねェ』

 

「...確かに...だがカウントダウンを確かめる手立てがない。1人捕虜をとったがそいつにはなかった。そいつは訳あって鉱石病にかなり前からなってんだが...何故かカウントダウンがなかった」

 

『...本格的に怪しいじゃねぇか。お前マジでちゃんと確かめろよ?足元すくわれるぞ』

 

「今から確かめに行ってくる。じゃあな。情報提供に感謝する」

 

『おう、気をつけろよ』

 

ガチャッ...ツーツーツー。

 

「さてはて...どうしたもんかねぇ…」

 

確かに言われてみればその通りだ。あれは本当にただの『カウントダウン』なのか?カウントダウンなら時間が経てば数字が変化するはずだ。...そもそも死期を完璧に予見するなんて事、できるのか?

 

「謎は深まるばかりだな…」

 

あーもー分かんね!考えるのやめよ!どうせ全員殺せば任務クリアだろ!

 

------------------------------

 

そしてその日の夜...

 

「....という訳で俺はあともう2人ほど人j...捕虜を捕まえることを提案する」

「今人質って言いかけたわよね!?ふざけないでよ!ここからだせー!」

 

「...なぁ、なんでここにコイツがいるんだよ」

 

「え〜?あんまり監禁してても可哀想だし...」

 

一応作戦会議なんだけど?ほとんどが機密だし、バレたらまずい事だらけなんだけど。そんなあってないような簀巻きだけでいいんすか。

 

「よし、なら味方の場所を教えろ」

「いっ、嫌よ!アンタ達私の仲間を殺すつもりでしょ?!絶対教えないわ!」

 

「まぁまぁカゲロウ。この子もレユニオン以外に頼るところが無かったわけだし、そりゃあ言えないよ」

 

「..!そっ、そうよ!よく分かってるじゃないの!レユニオンは私たちを救ってくれたヒーローよ!そう簡単に売る訳n「だから今から捕まえてきていいよ」ちょっと待てーぃ!」

 

「おう、行ってくる」

「待てって言ってるでしょ!?」

 

「じゃあなんだ、待ったら教えてくれんのか?」

 

「教えないわよ!ていうか行かせるわけないでしょ!?」

 

「ほぉ、簀巻きの状態でどうやって俺を止めるか見ものだな」

 

「むきいぃぃぃいい!!」

 

「なにこれ?」

「さぁ?」

「...頭痛くなってきたわ」

「オーキッドさん、大丈夫?」

 

------------------------------

 

そして数刻後、俺はローザと廃都市を歩いていた。これをデートと言ってきたミッドナイトは少々強めに殴っといた。

 

「...はぁ...」

 

「なによ。シケたツラしてしかもため息?止めてよね。不幸が移るわ」

 

「俺は今お前といることが不幸だよ...」

 

なんで妥協策がコイツにレユニオンを説得してもらうことなんだよ...おかしいだろ...絶対戦闘になるやんけ...。なにが「私だって鉱石病で早死したくないから」だよ...。

 

「はぁ....」

 

「...アンタ普通に失礼だって自覚ないの?」

 

------------------------------

 

そしてさらに数刻後、そこそこな距離を歩いてきたが、未だにコイツ(ローザ)が言うレユニオンは一向に見えてこない。そろそろ俺もローザに対しての警戒を強めている。やはり罠だったか?

 

「おい」

 

「...分かってるわよ。だけど本当に見つからないの。ここら辺に生活の跡が残ってるでしょ?元々私たちはここにいたのよ」

 

なるほど。確かに火を起こした跡や枕にされたのであろうレンガが幾つか転がっている。

 

「だとしたら移動したってことか?だったら帰ろう。探すことに対してのリターンがない」

 

「待っ、待って!待ってよ!もう少し探させて!」

 

「テメェ、それは罠がありますって言ってるようなモンだぞ?」

 

「罠なんかないわよ!あるならもうとっくに使ってる!だからお願い!あと少し!少しだけ!」

 

「...なんでそこまで固執する?お前、自分でロドスで治療を受けるって言ったんだぜ?レユニオンからしたら裏切り者もいい所だぞ」

 

「...友達がいるの。アタシと一緒に被災して、鉱石病に感染して、レユニオンに拾われた。小さい頃からの友達よ。ドロシーって言うの」

 

そう話すローザの目は暗い輝きを纏い、今にもこぼれ落ちそうだった。手はピンと伸ばしたまま服の裾を握りしめ、震えている。

 

「...そいつはどんな見た目なんだ。とっとと探すぞ」

 

「...!腰まで届く金髪にメガネしてるわ!あと...いっつも本を持ち歩いてるの!」

 

「こんな被災してる時でも本を持ち歩いてるのか?」

 

「もちろんよ!彼女、本の虫だもん!」

 

先程とは一転、目は明るい輝きを放ち、零れそうだった雫は引っ込んでいた。足取りも軽く、先へドンドン進んで行った。

...もしもこれが演技だったら、俺の負けだな。

 

------------------------------

 

「こっちは?」

 

「いない」

 

「ここには...いないな」

 

「こっちもいない...」

 

人が数人ほど過ごすことが出来そうな窪みや廃墟等をあちこち探したがドロシーは見つからない。...仕方がないな。

 

「おい、ドロシーって子は感染者なんだよな?」

 

「え?うん。そうよ」

 

「ならまぁいっか...おい、息止めとけよ」

 

「...」コクコク

 

俺は先程身体に生えていた原石を折り、アーツを込めた。

 

「『粉塵探知』...」

 

『粉塵探知』探す対象が感染者や感染生物の時のみに使う結構荒業な索敵技だ。

原石を砕いて、その粉塵にアーツを込めて撒き散らし、粉塵に触れたものを立体的に感知できる。人間はおろかオリジムシも探知することが出来る極めて制度の高い索敵。傭兵時代は寝床としていた廃坑の入り口付近に常に粉塵をばらまいていた。

さすがにデメリットも存在する。それはなんといっても探知の媒介が原石であることだ。非感染者に使ってしまえば、その人は感染してしまう。故に使用はかなり制限される。

 

「色までは識別出来ないが......いたぞ。長い髪、メガネ、そして手元に厚い本。周りに仲間と思われる人が何人かいる....恐らくコイツだな」

 

ローザは口を手で押さえながら心底嬉しそうな顔をしていた。

さて、ここから南に170m。何事も無いといいのだが(盛大なフラグ)

 




という訳でいかがでしたでしょうか。

ローザの友人ドロシー。彼女もまた天災の被害者です。

次回はフラグを回収するのか、それともへし折るのか。どうぞお楽しみに。

ではまた次回


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たかが1人、されど

はい、どうも皆様ミステルでございます。

暑いですね、皆様も体調には気をつけてくださいね。作者は熱中症で死にかけた経験があるのですが、本当にちょっとおかしいと思ったら休むことをオススメします。

さて、前回は盛大なフラグをたてて終わったわけですが、果たして今回はどうなるのでしょうか。

では、どうぞ



南方170mにある廃墟、恐らくそこにローザの友人である「ドロシー」という女の子がいるのだろう。さっさとロドスに来るように説得してもらいたいが油断はできない。こいつらも結局はレユニオン、敵だ。いざとなれば流血沙汰も辞さない。

そんなことを考えていると先行しているローザから、

 

「アンタのあれ、すごい精度なのね。アーツロッドは原石に直接作用する系統かしら?」

 

という声がかかってきた。

 

「...まぁ広い意味で言うのならそうだな」

 

「なによ、広い意味って」

 

言えるわけが無いのである。確かに原石もアーツロッドだが、カゲロウはアーツを伝導さえできるならばどんなものでもアーツロッドとするのだ。

自身から生えている原石クラスターだってアーツロッドであるし、彼女(ローザ)から生えている原石クラスターだっていざとなれば彼女の身体を内側から食い破るようにすることも出来る。爆破することも出来る。カゲロウの知り合いであるテキサスの原石剣だって媒介できるし、たとえ原石よりもアーツの伝道性が低い鉱物や人工物であっても全て彼の手にかかれば、あっという間にアーツロッドに早変わりするのである。

こんな事を敵に言えるわけがないのである。

 

そして、このアーツの才能が故に彼は市街地戦では無類の強さを誇るのだが、それはまた別のお話。

 

「広い意味ってのはそのまんまだ。誰だってアーツロッドには原石が仕組まれてるだろ?」

 

「...さすがにまだ信用してくれない?」

 

「当たり前だ」

 

「...そっか。...でも、友達を探してくれて...ありがとう」

 

「...」

 

なんだコイツ。偽物か(失礼)?素直にお礼とか言うタイプじゃなかったろ。ますます罠なんじゃねぇかな、これ。怪しすぎるもん。そもそもこいつに友達とかいたんか(超失礼)?顔がいいから許すけど(ゲス)。

 

「なんだお前、お礼とか言えたんだな」

 

「なっ!?アタシだってお礼くらい言えるわよ!バカにしないでくれる!?」

 

さて、あと40mか。「無視すんな!」...どうしたもんかねぇ…どうにもアイツ(クシュマフ)の匂いがすんだよなぁ...。いや、死臭って訳じゃないんだけどねぇ。アイツがまだ生きているっていう感覚がある。ラップランドも言ってたしな。

 

-----------------------------------------

 

.....

 

「...おい」

 

「なによ?」

 

......コ

 

「...なにか聞こえねぇか?」

 

「え?なにが?」

 

......ボコ

 

「...いや、聞こえる。なんだ?」

 

「....え〜?」

 

....ボコボコ....コポ

 

「...!アタシも聞こえた!なんか沸騰してるような音!」

 

「なるほど、沸騰ねぇ...お前の仲間にそういった系統のアーツが使える奴がいるのか?」

 

「え?...いなかった気がする…」

 

....ブクブク........

 

「....?音が止まったか?」

 

「...うん、止まった。スープでも飲んでるのかな」

 

「なら早く音がする方に行こう。お前が先に行ってくれ」

 

「うん!」

 

あと...20m

 

------------------------------

 

一方その頃、in通信基地

バグパイプはオーキッドの補助の元ドクターと通信をしていた。

 

『...という訳で増援は予定より早く着きそうだよ。まぁ、元々遅れてるわけだから早くも何もないけどね。本当に申し訳ない、そして耐えてくれてありがとう』

 

「いいえ、ドクター。気にしないでください。オリジムシも意外といけたので...『そうか!いやいや!ようやく同士ができたよ!』...どちらかと言えばの話ですし、普段から食べるのは御免こうむりたいですけど」

 

『...残念だなぁ。あ、ところでカゲロウはどこにいるのかな、一応今後の作戦で前衛として働いてもらうことを言っておきたいんだけど』

 

「カゲロウは今捕虜の女とレユニオンの説得に出ています。上手く行けば戦闘は回避しつつ、ロドスに患者を運ぶことが出来そうです」

 

『え?レユニオン説得しに行ったの?マジで?結構な数の戦闘員送っちゃったんだけど?』

 

「...まぁ、その時はその時ですよ。前に報告したウルサス人のこともありますし」

 

『あっ、そうだった忘れてた。君たちが言ってるウルサスの術士なんだけどね...できれば彼とは関わらないで欲しいな』

 

「それはまたどうしてですか?」

 

『彼が我々が敵対したくないウルサスの人だってこともあるんだけど...何よりも彼のアーツが厄介すぎる』

「そう!そうなんだよ!ドクt...ゲホッゴホッ」

「ラップランドさん!?無理しちゃダメだよ!」

 

『...いいかい、今から話すは(クシュマフ)のアーツの内容についてだ。かなり胸糞悪いからポプカルは外して貰えるかな』

 

「了解。ごめんね、ポプカルちゃん」

 

ポプカルはミッドナイトに連れられて部屋を出た。オーキッドの方を名残惜しそうに見つめていたが、事情を察して出ていった。

 

そしてバグパイプとオーキッドは気を引き締めた。彼女達の後ろで横になっていたラップランドも頭だけをあげて通信を聞いている。

 

『...いいかな、じゃあ話すよ。彼、クシュマフ・ヴァルシュオのアーツの能力は....

 

-------------------------------------

 

ようやく170mを歩き終わり、目の前に広がった景色に俺はなんとも言えない感情を抱いていた。

 

「...まぁ、なるほど。と言えるだろうな」

 

「な、んで...どう...して...」

 

目の前に広がるのは人が一面に横たわっている景色。その中におそらくドロシーと言う女の子も見られた。そして...

 

ボコボコボコォ!!

ブクブクブク!!

 

謎の音の発生源もここであった。死体の誘致場と言えばいいだろうか、部屋には感染者の死体が山積みにされている。とはいえ、この音はなんだ?

.......あ、そっちは

 

「おい」

 

「え.....いやぁぁぁあ!!ドロシー!!ドロシィィィイ!!」

 

どうやら見つけてしまったようだ、事切れた友人を。こっちの声は聞こえちゃいねぇ。今は彼女はパニックになっているから、俺がちょっと調べるか...

 

「....これは...やはり...」

 

「嘘...嘘!起きてよ!おかしいわよ!こんなの!!」

 

ここら一帯の死体には全て『カウントダウン』が刻まれている、と仮定していいだろう。数は20ちょっとだが、粉塵となってしまった死体もあると考えるともう少し多いか。

 

「...刻まれている模様も同じ...本当にカウントダウンなのか...?」

 

「おかしい!一体全体どうなってるのよ!」

 

「おぉ、もう立ち直ったか」

 

「えぇ、よく見たらそもそもあの死体ドロシーじゃなかったわ」

 

「...なんだって?」

 

「え?いや、あの死体はドロシーじゃなかったのよ。ドロシーって金髪ロングだけど、肌は真っ白なの。あんなに焼けてなかったし、ごつくもないわ」

 

「...その死体、どこだ?」

 

「こっちよ」

 

...確かに、ローザの言葉を信じるのならコイツはドロシーではないだろう。金髪ロングで、メガネまではあっているが、かなり日に焼けているのか、肌は小麦色だ。

 

「なるほどな。じゃあもっかい『粉塵探知』やるかぁ」

 

 

「その必要はありませんよォ!」

 

------------------------------

 

in通信基地

 

「....ごめんなさいドクター。もう一度説明してくれるかしら?」

 

「...俺ももう一度ききたい」

 

『うん、何度でも言うよ。彼のアーツは文字通りの「一騎当千」、一騎で千人に当たるんだ。具体的に言うと彼のアーツは『憑依』だ。彼が紋様を刻んだ対象を彼自身(・・・)に変化させ、意識の共有及び記憶も引き継がれ、最後には完全に彼となる(・・・・)。Gみたいだね。彼が1人でも存在している限り紋様を刻む相手さえいれば無限に彼は増え続けることができる。...それがたとえ死体だとしてもね。彼一人で軍隊を組むことも可能だろうね。』

 

「....」

 

通信を聞いていた一同は言葉を失った。ただ1人、彼と剣を交えたラップランドを除いて、

 

「それじゃあ、ボクが戦った時はなんだったんだい!?その話を聞いていると...まるでボクが...ボクは...!」

 

画面の先にいるドクターは数秒逡巡した後、口を重そうに開き(口はフェイスマスクで見えないが)

 

『手加減...だろうね。もしくは能力を悟られたくなかったか。どちらにせよ、ラップランドを数で圧殺することもできたはずなんだ』

 

「...!!...ギリィッ!!」

 

『今はカゲロウが外に出ているんだよね。彼にも伝えてもらえるかな。クシュマフとの戦闘は避けて、紋様が刻まれているレユニオンにも注意してねって。ウルサス軍に彼が所属していたなら厄介だったけど、ウルサスの記録では死んだことになっていたから、後に到着する増援と一緒に叩いてしまおう。幸い対多数ならこっちにはモスティマがいる。Gは根絶やしにしないとね』

 

「...最近Gになんかされたのかい?」

 

『口の中で沸かしてたカップ麺の中に入ってた』

 

------------------------------

 

「...今の声、お前か?」

 

「そんなわけないでしょ」

 

実際には俺も分かっている。今の声がクシュマフの声であることくらい。

しかし、どこにいるのか全く把握出来ない。この今にも崩れてきそうな柱の影にも見受けられない。俺たちがこの少し開けた死体の山の場所に来た時には人が通れる道は1つしかなかったはずなのだが、そこにも見当たらない。となると...

 

「さっさと出てこい。コイツら全員燃やすぞ?」

 

「おやァ!怖いですねェェ...ほっ..と」

 

「え...なんで...さっきまで..」

 

やはりというかなんというか、死体の山の中から奴は這い出てきた。先程まで死んでいたと思われていた体が起き上がって話しかけてくるのだからかなりホラーな絵面だな。ローザめっちゃ震えてるし。

 

話すことはなく、俺と奴はお互いに得物を構え、ローザは撤退させた。

 

「おいゴキブリ。いつまで生きてる気だ。さっさと死ね」

 

「製薬会社の人間が言っていいことじゃないですねェ!死ぬのはそっちだ!」

 

 

そうして俺と奴は激突した。

 




という訳でいかがでしたでしょうか。

クシュマフのアーツは紋様を刻んだ対象をクシュマフ自身にするというものでした。要はコスパの悪い分身ですね。

次回は戦闘の描写がメインになるかと思います。

ではまた次回。


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果てなき戦い

はい、どうも皆様ミステルでございます。

作者は強風域の地域に住んでいるので今日は1日お家でゆっくりです。
さて、前回はクシュマフとの戦闘が始まるところで終わりましたね。今回はその戦闘の続きです。

では、どうぞ


 

俺はクシュマフとの無限とも言える戦いへ踏み切った。途中で通信がかかってきた気がするが、今更敵に背を向ける訳にもいかない。

...てかコイツほんとにGなんだけど!?どんだけしぶといんだよ!そこに転がってる死体全部コイツに変身すんの!?ダルゥ!

 

「イヒヒィ...極東の刀と私のアーツの相性なんて分かりきったことでしょォ!」

 

「うるせぇゴキブリ。何回お前のこと殺したと思ってんだ」

 

「1度や2度殺した程度で図に乗らないでほしいですねェ...紋様を刻んだ人間がいる限り私は死にませんよォ!」

 

いつものやけに語尾を伸ばす特徴的な話し方は変わらずに、もう3体目との戦闘に入っている。ローザは無事に逃げきれただろうか。

...てか、ほんとにめんどくせぇなコイツ。

 

「おい、お前のアーツと手の内、大体わかったから一斉にかかってこいよ」

 

「アァん?」

 

「お前一人一人と戦ってもお互いにジリ貧なんだから一斉にかかってこいって言ってんの。なんだ?まさかその程度もできない訳じゃあるまい?」

 

「...!...シャシャってんじゃねぇぞォ!感染者のゴミ虫がァ!」

 

「お前も感染者だろ」

 

「いいだろう!『目覚めよ我が分身(プライスニス・アイツェワ)』!」

 

すると先程まで物言わぬ死体だった身体が起き上がり始め、顔を覗かせた。1人残らず同じ顔をしており、同じガタイであり、同じアーツの使い手だ。...先程のドロシーという女であろう金髪ロング(既に半分ほど抜け落ちているが)の個体もいる。

 

ボコボコボコボコ!!

 

...どうやらたった今変化が終わった個体もいるらしい。謎の音はコイツらの身体が内側から沸騰するように変化していたから発生していたようだ。...あくまで俺の予想だけどな。某名探偵も小さくなる時身体熱かったらしいし、コイツらも体の中でなんか沸騰してたんでしょ。

 

「お望みどおりに26人で相手してあげますよォ!かかれェ!」

 

26人...え、26人?しかも自律してんだけどコイツら。目の前で全く同じ顔のヤツが笑ってんのマジで気持ち悪ぃ。26の内25は武器を持っていないのがせめてもの救いか。アーツロッドを持っていない術士なんて取るに足らない雑魚だからな。

 

「お前..ッ!武器も持たせずに突貫させるとか...ハアッ!..どんな神経してんだ!」

 

「ンっン〜?所詮ン、ソイツらは捨て駒ですよ。本命(・・)は私なのですから」

 

「ちょっと上手いこと言ってんじゃねェぞ!?」

 

クソッ!なんだコイツ!余裕ぶっこきやがって!ムカつく!!

素手で殴りかかってくる分身はともかく、アーツを使ってくる分身が厄介すぎる。

 

「『風切』!」

 

「ぐおッ!?」

「アブなぁい!?」

 

「全員しぶといじゃねぇかよ!」

 

「そりゃ元が私ですしぃ?」

 

「マジモンのGじゃねぇか!ふざけんな!」

 

1匹見たら30匹はいるってか?やかましいわ!今の風切受けても誰も死なねぇし。耐久力だけはいっちょ前だな。

 

「ほらほらァ!こっちからも行きますよォ!」

 

「なっ!...ぐはっ!?」

 

俺は大きくダメージを受けてかなりの勢いで吹き飛ばされてしまった。壁に何度も穴を開けてようやく止まった時、俺は周りを見て冷や汗をたらした。何故ならば...

 

 

------------------------------

 

「ハァ...ハァ...!」

 

バタン!と大きな音を立てて通信基地のドアが開き、ローザが飛び込んできた。

 

「ローザ!どうしたの!?...カゲロウは!?」

 

「ハァ...カゲロウはっ...ゼェ...アイツと...ンクッ..フゥ...戦ってる!アイツともう既に戦い始めてるよ!」

 

ドクターも画面の向こうからの会話が聞こえたのか、フルフェイスに指紋がついてしまうのにも気づかず手を当て、天を仰いだ。同じくオーキッドも天を仰いだ。

 

「通信にでないと思ってたら…もう!また勝手なことして!!」

 

「...どうするんだドクター。カゲロウの性格からしてもう止まらないぞ」

 

『ハァ...仕方がない。いいかい皆、これから彼の援護に向かって貰えるかな。敵の能力は今話した通り、ラップランドは...行けるかい?』

 

「もちろんだよ...!アイツには借りがあるからね...ボクがぶっ殺す...!!」

 

『うん、わかった。よし、そうしたら今すぐにでも向かってもらえるかい?スポット、少し大変かもしれないけど、増援にはホシグマもいるから、できる限り粘って欲しい』

 

「...了解だ。それが俺の役目だし、覚悟もしてる」

 

『まずは分身たちの分断を試みてくれ。一体一体もそこそこの強さだからね。纏まられていると少し厳しい。分断に成功したらそこからは各個撃破を狙うよ。纏めて倒すには此方の火力不足だ。くれぐれも敵が全滅(・・)するまでは油断しないように』

 

「「「「「了解」」」」」

 

「...え、アタシは?」

 

『君は...うん、私とお話しようか』

 

「え、は、はい...」

 

------------------------------

 

俺は今、猛烈にヤバい状況に陥っているのかもしれない。あいつのアーツの射程距離は如何程か、対象は、効果時間は、分身の人数に限界はあるのか等、知らないことが多すぎる。

もし、もしも仮にアイツのアーツの射程距離がここまで届いていて、尚且つ分身の数に限界がないのなら俺は今、猛烈にヤバい状況だ。

というのは...

 

「....お兄ちゃん、だいじょぉぶ?」

「いたくない?」

 

目の前に紋様が刻まれた小さな子供がいるからだ。それも数人。何よりも事態をややこしくしているのは、この子供たちはおそらく感染者ではない。

 

(どういうことだ?あのアーツは感染者のみが対象ではなかったのか?)

 

その仮説が崩れるのならば、ほぼ最悪に近い状況と言えるだろう。そもそも生きている人間に対して、「自身の分身とする」という生命の乗っ取りのような事はできるのか?分からねぇことだらけだ。

 

「あら?どうしたの?」

 

「あ、ママー。このお兄ちゃん、怪我してるの」

 

「まぁ大変!アンタ、大丈夫かい?」

 

「...あ、あぁ。大丈夫だ。すまない、心配をかけ...ッ!?」

 

この母親にまで紋様が刻まれているじゃねぇか!どうなってやがる!?

いや、落ち着け俺!かなりの距離を飛ばされたから少し時間があるはずだ。とりあえず、アイツの分身が増えてしまうことは避けたい。ここから動いてくれるか分からないが、動いてもらわないと困る。

 

「お母さん、私はここら辺の天災トランスポーターですが、どうやら午後は酷い風が吹きそうだ。子供たちを連れて帰った方がいい」

 

「おや、トランスポーターなのかい。...分かった。私はまだヴィクトリアのトランスポーターを信じてる。今回の天災は予見できなかったらしいが、彼らが天災が来ると言って来なかった事はないからね。...おーい!午後はどうやら嵐みたいだから帰るよー!」

 

良かった。どうやら納得してくれたようだ。子供たちも撤収の準備を進めてくれている。この家族たちにも紋様が刻まれているが、生きている人間、それも健常者を自身の分身とする、なんて事はされたくないし見たくもない。

 

「ありがとう、お母さん。私はまだ調べたい事があるから失礼するよ」

 

「えっ、アンタその傷!本当に大丈夫なのかい?」

 

「あぁ、大丈夫だ。気にしないでくれ。それよりも早く帰った方がいい。嵐は待ってくれないからな」

 

「そ、そうかい...なら私たちは帰るよ」

 

「ママー!レオがいなーい!」

 

「そこら辺に隠れてるんだろう!かくれんぼだ!探しておいで!」

 

「キャー!」

 

 

 

...どうやらめんどくせぇ事になりそうだ。足音が近い。今からこの家族を帰すのは無理だな。

 

「お母さん!もう風がすぐそこまで来てる!ガキ連れて風が凌げる場所に避難しろ!」

 

「えぇ!?もうかい!?「早く!」...分かった。おーい!2人とも!レオは見つかった!?」

 

「いなーい!」

 

「分かった!今からお母さんがオニやるからアンタたちも隠れな!」

 

「分かったー!」

 

機転の利く母親だこと。...俺は少しでも家族からあのGを引き離すため、吹き飛んできた方へ突っ込んだ。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

あの家族がバレていないのが奇跡に思えるほどに奴らは近くにいた。

 

「....!見つけた...」

 

「...!!いたぞォ!こっちだ!」

 

発見はほぼ同時、ただし声をあげられてしまったので周りのヤツらも寄ってきた。数は...7体!一気に叩く!

 

「...受けるがいい。俺のアーツを」

 

「その前に攻撃すればこっちのモンですよォ!」

「ハァァァァ...ハァッ!」

 

何体かがアーツを放ってきたが、交わし、7体の内先頭に立っていた奴の前で俺は停止した。

 

「俺のアーツはこのクソッタレな石を焼く力。世界を焼く力」

 

「何をブツブツとォ!」

 

目の前の個体が焦って、大きく腕を薙ぎ払ったが、俺はそれをバックステップで交わした。

...ここだ。ここが俺の間合い。7体全てを斬ることが可能な距離。刀に仕込まれている原石にアーツを流し込み、紫炎を生み出す。

 

「我が炎は怨嗟の炎。無念に散った同胞の恨みの炎。黄泉より燃えるその怨、我が晴らして見せようぞ」

 

「この距離なら刀は届きませんねェ!食らえ!」

「オオオオオォォォォ!!」

 

アーツによる光弾が飛んできているが関係ない。

 

「あはれ、散れ。...『冥天火光(めいてんかぎろい)』」

 

カゲロウは紫炎を纏った刀を袈裟懸けに大きく振り抜いた。刀だけでは届かなかった7体はアーツによる炎によって焼かれ、地獄行き。炎は未だ刀に纏われており、しばらくは消えないだろう。

 

 

「これが俺の斬撃だ。思い知ったか」

 

分身は残り19体か。先は長いな。

 




はい、というわけでいかがでしたでしょうか。

今回はカゲロウ君スキル2の『冥天火光』が初登場ですね。
果たして、健常者にもクシュマフのアーツは作用してしまうのか。

ではまた次回


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蹂躙、合流

ココ最近は某狩りのゲームにハマっておりまして、いつの間にか3時になっているミステルでございます。

さて、前回はクシュマフの分身を目の前で見たカゲロウ君が『冥天火光』を発動したところで終わりましたね。
今回はしばらく術攻撃になったカゲロウ君が頑張るお話です。

...自分が殺されるのを目の前で見てるのってどんな気分なんでしょうね。SAN値ぶっ飛びそう。




カゲロウは紫炎を纏った刀を抜刀したままに廃墟を闊歩していた。彼が放った斬撃により背後の瓦礫は全て灰燼と化し、7体の分身も全て焼け焦げていることだろう。

 

音に反応したクシュマフが3人ほど迫ってきたが、まだ様子を伺っているようだ。...奴が感染者だからこそ身体に生えている原石クラスターに俺のアーツが反応できるが、アーツ適性が低かったり奴が2人以上いると気づけなければ苦戦するだろう。ラップランドがやられたのも頷ける。

 

「そこの裏に1人」

 

「...バレていましたかァ...」

 

「そっちにも1人」

 

「...仕方ありませんねェ」

 

奇襲を企てたのか知らんが、隠れていてもバレていては仕方が無いと分かっているのか、あっさり2人は姿を見せた。

 

「...」

「....」

 

「....」

 

もう1人はまだバレていないと思っているのか未だに隠れている。

 

(ならこっちから仕掛けるか。)

 

俺は前にいる2体に体を向けたまま3体目であろう人間が隠れている瓦礫へ跳んだ。

俺の行動を見た2体は特に俺を追いかけるでもなく様子を見ているようだ。ならば好機、瓦礫の裏にいる奴を殺ってしまおう。

 

「くたばr...なっ!?」

「ひっ!」

 

そこにいるのはループスの青年だった。鉱石病患者で、腕にクラスターが確認できる。...そして『カウントダウン』も刻まれている。

いや、そんな事より今はこの青年を逃がすかが問題だ。

 

「クソッ!お前なんだってこんなとこに?!」

「僕は散歩してただけだよ!そっちが来たんじゃないか!」

「...」

 

やっべぇ。ド正論で反論も出来ねぇ。

 

「...おい、とりあえずお前、逃げろ。...レオか?」

 

「え?どうして僕の名前を...?」

 

「理由はいい!とりあえずお前の家族が向こうにいるから!俺が合図したら走れ!走れるな?」

 

「う、うん」

 

「行くぞ、合図は『男の叫び声』だ!男が叫んだら走れよ!いいな?!」

 

「え?ちょっと待ってよ!それってどうい「いいから!分かったな?!」...分かった」

 

「よし、じゃあバレないように隠れてろよ」

 

「...ところでお兄さんは何者なの?誰と戦ってるの?」

 

「...」

 

俺は最後の質問には答えずに瓦礫から離れた。この青年がクシュマフに恩があったりすると面倒だからな。

 

「行くぞ、『冥天火光』」

 

刀はなお紫炎を纏っており、陽炎が立ち上っている。そこに一層のアーツを流し込むと、さらに炎は妖しく揺らめき、刀身も身の毛もよだつような光を放ち始める。

 

「さて...」

 

いざ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?なんか増えてね?

なんかめっちゃ増えてんな。うん。

 

「なんか増えてね?」

 

「そうですよォ!」「当たり前ですねェ!」「別の場所の死体を持ってきましたよォ!」「その数59体!」「これでお前も消し炭だァ!」「元々と合わせて78体!」「数は質に勝るのですよォ!」「これで我々は一騎当千!」「後からまた合流しますよォ!」「アーッハハハハハ!!」「ほらほらァ!」「我々を相手にィ!」「まだ戦おうとするのですかァ!?」「イーッヒヒヒヒィ!!」

 

「うるせぇ!うるせぇ!!一気に喋るなよ!」

 

頭おかしなるわ!てか増えすぎだろ!コイツ絶対裏で市民何人かやってんな?ウルサス許すまじ...!(ウルサスは完全なとばっちり)

 

「代表作れよ!ソイツが話せ!」

 

「では...僭越ながらワタクシが」

「全員自分なのに僭越もクソもあるかよ」

「...」

「...」

 

なんか微妙な空気になっちゃった...。えっと...

 

「...お前の最終目的はなんだ」

 

「最終目的ィ...?そんなの決まってるじゃないですかァ...」

 

そういえばコイツらの目的ってなんなんだろ。咄嗟の質問にしては悪くない質問したな、俺。

 

「なんだ。ほら、言えよ」

 

「どうせ、今から死ぬ人間に言っても問題ないか...我々の目的はヴィクトリアへの侵攻」

 

「...どういうことだ。お前、軍は抜けたんだろ」

 

「別に軍は抜けても私は1ウルサスの民なので。故にウルサスへの奉仕は間違ったことではありませんよね?」

 

「それが単身、国へ挑む事だと?」

 

「えェ、我々がここで兵力を増やし、ウルサスとヴィクトリアの戦争に横から打撃を加えます。たとえ100人だろうと、それが全員術士なら無視はできませんよねェ」

 

「...それで?」

 

「その後は死ぬのみです。感染者ですので。帰る場所はありません」

 

「...」

 

思ったより重いなぁ!?

止めてくれよな。下手したら戦争に巻き込まれんじゃん。ヴィクトリアの上層部ってマジのクソ野郎ばっかだからここでコイツ止めないとロドスがウルサスに加担したって難癖つけてくるかもしれない。...いや絶対してくるな。

いやマジで、ドクターはここまで読んでいたのか?いやないか。ここでコイツ潰してもヴィクトリアに何一つ恩が売れないもんな。

 

「...止める..ッ!」

 

「止められるものなら止めてみてくださいよォ!」

 

紫炎と分身が激突し、何人かが大きな悲鳴をあげながら、焼死した。

チラリと後ろを見ると、先程の青年はしっかり離脱できたようだ。

 

------------------------------

 

「オーキッドさん!急いで!」

 

「分かってるわよ...ゼェ..あと、どのくらい?」

 

「40!」

 

「うわっ!なんだあれ!?炎!?相手は爆破のアーツも使えるのか!?」

 

「ううん!あの炎はカゲロウのだよ!元々カゲロウが出す炎は紫だもん!」

 

「...ハァハァ...なんでバグパイプはドヤ顔なのかしら..?」

 

「...私カゲロウの事よく知ってますアピールでしょ」

 

------------------------------

 

「カゲロウ!」

 

「...!バグ!来てくれたのか!...っとと」

 

「うわっ!何コイツ!?気持ち悪ぅ!?」

 

「初対面で気持ち悪とは随分な言い草ですねェ!!」

 

「危ない!皆避けて!」

 

しかし白いループスは突っ込んだ。

 

「ラップランド!?避けろぉぉ!!」

 

「アッハハハハァ!!この程度なのかい!?今度こそぶっ殺す...!」

 

そして、勢いそのまま一体を切り刻んだ。

 

「おい!コイツら数増やしてヴィクトリアと戦争するつもりだぞ!止めないとめんどくせぇ!」

 

「そうなの!?私の故郷に手出しはさせないよ!クシュマフ!!」

 

スポットがやはりキツそうだが、ミッドナイトが上手くカバーしている。あ、ポプカルが3人ぶった斬ってるな。

 

「どうだ。クシュマフ、別に軍でもなんでもない俺たち相手に大苦戦だぞ?目ぇ覚ましたらどうだ?」

「そうだよ!今すぐに投降しなさい!これ以上暴れるようなら本当に全滅させるよ!」

 

すると、数多いるクシュマフの一体が首を傾げた。

 

「ロドスは民間軍事会社じゃねぇんですかァ?」

 

 

「「違ぇわ(うよ)!!」」

 

「はァ!?」

 

何言ってんだコイツら。

 

「ロドスは製薬会社だ!間違っても軍事会社じゃねぇよ!」

 

「え、でもカゲロウさ、ロドス来る時うちの事民間軍事会社って...」

「...ごめん、ややこしくなるから黙ってて?」

 

 

「おい!余裕あるなら手伝ってくれ!スポットがヤバい!」

 

「スポットって術耐性ないんだっけか」

「いや、あるにはあるけど!数が多すぎるよ!」

 

「分かった。俺がそっち行く。バグ、ここ頼んだ」

 

「任せてカゲロウ。...んふふ。なんだか軍にいた時みたいだね」

 

「...そうだな。懐かしいな…」

 

「いいから早くカバーに来いや!!」

 

------------------------------

 

「よぉ〜!スポット!助けに来たぜ!」

 

「遅い。....少し稼いでくれないか、すぐ回復する」

 

「任せろ」

 

そして、俺はスポットの前に仁王立ちし、奴の火球と光線を捌こうとしたのだが、

 

「いや多い多い!!」

 

数が多けりゃ打ってくる攻撃も多いわけで、

 

「いやマジでやばいかも....」

 

盾なしでここまで捌いたことを褒めて欲しいと思いながら、

 

「...くうぅ....」

 

「おい、大丈夫か?」

 

「やばいかも!」

 

スポットに早く戻ってきて欲しいと思いながら、

 

「...あっ」

 

光線を捌いたと思ったらその裏側に上手く置かれた火球を捌ききれず、体をひねろうとしたのだが、スポットが後ろにいることを思い出し、受ける覚悟を決めた。

 

ゆっくりと火球が迫ってくる、刀は光線を焼いてから次の光線を防ぐので手一杯、たとえ火球を受けても刀は振るい続けなければ。

 

あと...どれくらいだろうか。火球との距離は。

 

火球は先程よりもゆっくりと近づいてくる。走馬灯ってのはこういう時に見るものでは無いのかと思いながら、火球を受けた後にどこに刀を振るうかを決めた。

 

火球はゆっくりと俺に近づいて....そして、静止した。

静止した。何もかもが。弾いた光線も静止した。分身も静止した。バグやポプカルも静止した。俺も静止している。意識だけが動き、冷や汗が垂れるような感覚を覚えた。

 

 

「やぁ。どうやらピンチのようだね?カゲロウ(クソ野郎)?」

 

 

 




はい、というわけでいかがでしたでしょうか。

時が止まりましたね。一体何ティマさんの仕業なんだ...。

次回はいよいよ大詰めになりそうです。

作者はロドスのギャグ小説を書きたかったのになんでこんな戦闘なんて書いてるんでしょうかねぇ..


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救世主?

皆様どうもこんにちはミステルでございます。

前回は世界が止まったところで終わりましたね。(パワーワード)
今回は世界を止めた人とご対面します。

...そろそろここに書くネタがありません。

それでは、どうぞ




静止した世界の中で、意識だけがその動きを認知できた。そして、こちらに向けられた濃厚な殺意が2つ、...なんで味方から殺意向けられてんだ俺。

 

「いやいやいや!!滑稽だねぇ!カゲロウ?!どうだい?火の玉に黒焦げにされそうになってる気分はさぁ!」

 

...すげぇムカつく。時間止められてるからあいつしか動けねぇし話せねぇ。それをいいことに言いたい放題じゃねぇか。...あ、こっち来た。

 

「ふふぅん...いやいや、大変だねぇカゲロウ。こーんな大量の攻撃を盾も持たずに防がなくちゃいけないなんてねぇ...」

 

分かってんのならどうにかしてくれよ。と言ってやりたいところだが、あいにくコイツに伝える手段がねぇ。視線すら動かせねぇし。

 

「君は...私とケルシーにボコボコにされたすぐ後にまーたエクシアにちょっかい出したのかい?!ええ?!」

 

いやそれに関してはマジで知らんぞ。エクシアに手を出したのは安魂祭の時だけだ。それっきり。

 

「帰ったらもう1回ボコボコにしてあげるから覚悟しなよ...」

 

いやホントに知らねぇんだっての!!

 

「ただぁ、このまま時間を止めておくのも私のアーツが持たないからね。いいかい?3...2...1...ほら!」

 

途端に世界が再び動き出した。止まっていた火球や光線がまた俺を狙って走り始めた。

 

「いや急だよ!!危ねぇ!?」

 

急には避けらんねぇよ!?と被弾を覚悟したが、大きな影が立ち塞がり、敵の攻撃を全て防いでしまった。

 

「...ふむ、こんなものか。大丈夫か?カゲロウ。...隊長!今です!」

 

「閃ッ!」

 

「ホシグマ!チェン!」

 

「全く...なぜお前と会う時は必ず事件に巻き込まれるんだ...」

 

「ははは...全くです」

 

「お前ら!久しぶりだなぁ!龍門にいた時以来だから...2年振りか?」

 

「2年と3ヶ月だ」

 

「...よく覚えてますね?」

 

 

「何をゴチャゴチャとォ!!」

「くたばりやがれください!!」

 

クシュマフの何人かがまた攻撃を仕掛けてきたが、ホシグマが全て防いだ。

 

「久方ぶりの再開なんだ。邪魔しないでくれよ?」

 

 

------------------------------

 

「とは言っても...さすがにここまで多いと面倒ですね」

 

「ここら辺お前らに頼みたいんだけど、いいか?A6がちょっと心配だ」

 

「うん、ここら辺のはどうにかするから君はそこから1歩下がることをオススメするよ。いやホントに。早く動け」

 

「はぁ?今後ろに下がったら他の奴らがあぶねぇだろうがよ。攻撃が止んだら動く」

 

「もうサイレンスのドローンが来たから大丈夫。てか早く動いて!3秒以内に!」

 

コイツは何をそんなに焦ってんだ?そんなタマじゃねぇだろ。なんかヤバい奴でも居んのか?(フラグ)

 

「...はい、下がりましt(ガッシャァァァン!!!)...は?」

 

あぶねぇ...下がっていなければ即死だった...。てか何コレ?上から降ってきたのか?土煙がすごくてよく見えな.......あっ

 

「..........」

 

なんか廃墟の上にいらっしゃいますねぇ!目の前に刺さってんの軍旗だし!嫌な予感しかしないぜ!!バフはありがたいし、なんか敵が何人か串刺しになってるような気がするけど!!

誰が戦場で旗を武器にしてんだよ!?()

 

「あーっ!やっと来た!」

 

「モスティマ!来てくれたのね!」

 

「サイラッハまで!」

 

「大丈夫か?スポット?」

「ホシグマか...助かる」

 

こちらは援軍が到着して士気が大幅にアップしている。

しかし、俺は気が気でない。だって絶対アイツ怒ってるもん。なんでか知らんけど。

アーツの雨の中で俺は恐る恐るモスティマに聞いてみた。

 

「なぁモスティマ!なんでアイツ怒ってんの?!」

 

「自分で考えろーって言いたいけど、一生分からなさそうだから教えてあげるよ。君、なんで基地に女連れ込んでるんだい?君の女好きは猿並みなのかい?」

 

「....」

 

やっべぇ

 

------------------------------

 

時は遡り、サイラッハがカゲロウ達に合流する前、サイラッハ達は1度通信基地に来ていた。

 

「えっと...あ、あった。ここだね」

 

「こんな分かりずらい所に...」

 

「久しぶりにカゲロウに会えますね?隊長?」

 

「あぁ、まさかまた顔を合わせることになるとはな...」

 

そして、やけに分かりずらい入口を開け、中に入ると...

 

「...あなた、何者?」

 

「ひぃっ!ち、違うの!私は味方よ!」

 

当然ローザに会う訳でして、

 

「...味方って言ってますけど、どうします?」

 

「そういえばドクターが、基地に女の子がいるって言ってなかったっけ?」

 

「あぁ、そういえば。問題なさそうだぞ、サイラッハ....サイラッハ?」

 

「....ない」

 

「は?」

 

「許さない!カゲロウ!また違う女の子と一緒にいるなんて!...帰ったらしっかりお話しなきゃ...」

 

「....」

 

目のハイライトは消え、髪の毛は逆立ち、手に持つ軍旗はミシミシいっている。

声をかけたホシグマはすぐに肩にかけた手を引き、チェンは顔を青くした。モスティマはこれからカゲロウに起こるであろう修羅場を想像して吹き出し、サイレンスは関わりたくないと全力で存在感を消していた。ローザはまたロドスの人間に殺されるとガタガタ震えていた。

 

------------------------------

 

廃墟の上に立つご立腹のサイラッハを見て、俺はともかく、クシュマフも手を止めた。

 

「なんなんですかァ?あの女」

 

「おい、マジで悪いことは言わないから投降した方がいい」

 

「はァ?!する訳ないでしょォ!?テメェらをぶっ殺して私は軍と合流するんですよォ!」

 

「うるせぇ!俺はお前のために言ってんだよ!ほら見ろ!あの軍旗!またあの女が構えてんだろ?!野球選手顔負けのフォームで!!」

 

「ハッハッハ!!戦場で旗を武器にするなんて聞いた事もありませんよォ!」

 

いいから黙って逃げろやコイツぅ!!マジで旗で死ぬんだってば!!さっきの一投見てないんk(グッシャァァァァァン!!)...あーあ。

 

「....は?」

 

「....5人は逝ったか」

 

そんで、バフばらまいてるし。

 

「....カゲロウ?」

 

うわ、ついに話しかけてきやがった。

 

「...なんでしょうか」

 

「あの女の子、誰?」

 

「あ?ローザの事か?味方だよ。多分アイツロドスに来るぞ。普通に有能だし、可愛いし。すぐにお前とも仲良くなるよ」

 

隣でクシュマフが呆気に取られている間にこの問答を済ませたのだが、モスティマは額に手を当て、チェンは「相変わらずだな...」とひとりごち、ホシグマは苦笑いし、オーキッドはドン引きし、バグパイプはなんでサイラッハが怒っているのかよく分かっていないようだった。サイレンスは全力で気配を消した。

 

「カゲロウ。私が聞きたいのはそういう事じゃないんだよ?分かってるよね?な・ん・で、女の子を連れ込んでるの?私という女がいながら」

 

「捕虜なんだから仕方ねぇだろ!?大体なんでアイツはダメでオーキッドさんはOKなんだよ!」

「ちょっと待ってカゲロウ、こっちに飛び火させないで」

 

ごめんね!オーキッドさん!死にたくないから身代わりになって!(クズ)

 

「...とにかく、カゲロウ。「あ、話しそらした」....あなたの隣には私がいるの!もう決定事項なの!浮気なんて許さないから!!私の処女だって貰ってもらうよ!!」

 

「テメェマジでとち狂ってんのかよ!?」

 

なんで戦場でこんな会話してんだろ(冷静)。アイツホントに頭おかしいよ!どうなってんだよ!誰が俺のジェニーをこんな風に...ドクターか?(疑問)ドクターだな(確信)。よし、

 

「ほらジェニー!話は後で聞くから!今はコイツら殺るぞ!」

 

「え?私もう2桁は殺ってるけど」

 

「....」

「....?」

 

そうだったわ。コイツ旗で殺してたわ。怖すぎんだけど。なんかテレビとかで流れそうだよね「変死!狂気は旗!」とか言って。なんかサルゴンの奥地に向かってそうだな。てかどうなってんだ腕力。ゴリラか?

 

「....なんか言った?」

 

「いえ、なにも?」

 

------------------------------

 

「君たちには悪いけど、生きるとはそういう事さ」

 

「ぎゃぁぁぁぁああ!!」

「ぐはぁっ!?」

 

増援によって一気に形勢はこちらへ傾き、俺たちは勢いそのままにクシュマフを殲滅した。そして今、モスティマが最後に残った2人にトドメを刺しているところだ。

 

「ふぅ...これで全部かい?」

 

「....見える範囲では、殲滅完了って感じか?」

 

「アッハハハハ!!呆気ないねぇ!!」

 

「お怪我はありませんか?隊長?」

 

「あぁ、ほぼ無傷だ」

 

「スポット、大丈夫かい?」

 

「あぁ、サイレンス達が来てくれて助かったよ」

 

「....zzz」

 

「あら?サイレンス?...立ったまま寝ちゃってるわね...」

 

「小官がおぶりましょう。どうしますか?基地に戻ります?」

 

「うん、戻ってドクターに報告しよう」

 

バグパイプの一存でとりあえず基地に戻る事が決定した。

 

------------------------------

 

「えへへぇ〜カゲロ〜」

 

「...おいジェニー、あんま引っ付くなよ...皆いるんだぞ?」

 

「うるさい」

 

「..ハイ」

 

ジェニーはご機嫌斜めなのかそうでないのか全く分からん。腕を組みながら頬ずりしてきたと思ったら、めちゃめちゃドスの効いた声出して来たんだけど。

 

「...いっつもあんな感じなんです?」

 

「...彼、ここに来たばっかりだから私も知らないわよ」

 

「それであんなに...?」

 

ローザがオーキッドに質問していたが、まぁ当然だろう。バグパイプは仲良いなーとニコニコしているし、チェンはため息ばっかりだ。

 

「あ!ところでカゲロウ!ドロシーは?」

「死んだ」

 

「...え?」

 

「死んだ。アイツらのどれかがドロシーだ」

 

「...は?」

 

「....」

 

「...は、はは。...そっか。そうだよね。助からなかったかぁ...そっかぁ...」

 

そういうとローザはその場で歩みを止め、背を向けて肩を震わせた。ここは危険地帯だ。いつ他の奴らが来るとも限らない。

 

「俺が残る。先戻っててくれ」

 

「...うん、分かった。気をつけてね」

 

こういうところでは素直に引いてくれるからコイツ(サイラッハ)はいい女なんだよなぁ。

やっぱりジェニーはヤンデレじゃないな(盛大なフラグ)!!

 




というわけでいかがでしたでしょうか。

ようやく増援が到着。
一応予定より早い到着ですが、モスティマが時を止めたおかげですね。
止まった時の中は別にモスティマ1人という訳では無いので、車を動かして飛ばしてきました。

ではまた次回


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二次小説の主人公は危機管理ができない

皆様こんにちは、ミステルでございます。

前回はローザがフラフラとどこかへ行ってしまいましたね。
今回はそれを追いかけるカゲロウ視点でスタートです。


それでは、どうぞ。


「追うのはいいけどさ、ちゃんと謝りなよ?さすがにドライすぎるよ。ローザはカゲロウと違ってこんな戦場なんて経験ないんだから、その上友達が死んでるんだよ?大丈夫?さらに傷えぐったりしない?」

 

「...正直、小官は不安しかありません」

 

「全くもって同感だ」

 

「俺もついて行こうか?」

 

「あんたはやめときなさい...ホントに気をつけなさいよカゲロウ。本当に、ほんっっっっとに」

 

「なんだお前ら、俺がそんなに信用ならねぇか?」

 

「「「「「うん」」」」」

 

「...泣いていいか?」

 

そんなに信用ねぇのかよ!!ひでぇコイツら!

 

「ほら、グズグズしてると見失うぞ。(サイラッハの気持ちが爆発する前に)早く行け」

 

「お前らマジで覚えてろよ...」

 

そうして俺はローザの後を追った。確かに今まで戦いなんてした事の無い女の子が当然戦いに巻き込まれて、さらに友人まで失ったとなれば、精神的なダメージは計り知れない。壊れてもおかしくないレベルだろう。

 

「はぁ...」

 

てか傷心中の女になんて声かければいいんだ。しかも相手は子供だぞ?あ、学生の時に落ち込んでるジェニーに声掛けたことがあったな...

えっと...なんて言ったんだっけ...。

 

〜〜〜〜~~〜~~~〜~~

 

回想、ヴィクトリア王立軍事学校時代のカゲロウ

 

「なんだ、こんな所にいたのか」

 

「...ほっといて」

 

「そういう訳にもいかんだろ。...っと」

 

場所は夕日が当たる校舎の1階であまり使われない裏口の階段にジェニーは縮こまっていた。

 

「...なぁ、なんでこんな所にいんだよ」

 

「....」

 

「なんだよ。お前、儀仗隊に選ばれたんだろ?もっと胸はれよ。」

 

それでもコイツ(ジェニー)は黙っている。俺はイライラしてきて、ついキツく言った。

 

「...あのなぁ...俺だってお前の全部を知ってるわけじゃねぇんだよ。言ってくれないと分からん」

 

「...だ」

 

「あ?」

 

「儀仗隊なんて...嫌だ」

 

何を言い出すかと思えばこれだ。儀仗隊は技能もそうだが何よりも容姿が優れていなければならない。小さな女児は1度は夢見る役職だ。コイツも小さい時は儀仗隊になると言い張っていた。

 

「...そりゃまた、どうして?」

 

「...」

 

また黙りだ。頼むよぉ、話してくれよォ。じゃないと分かんねぇよぉ。

 

「ちっちゃい頃はあんだけ言ってたじゃねぇか」

 

「...それはもう昔の話」

 

「...そっか、でもなんで今更」

 

「...カゲロウには分かんないよ」

 

はぁ?なんだコイツ。人が話に来てやってるってのによォ!わざわざ先生に言われたんだぞ!「カゲロウ君、ジェーン君を気にかけてあげてね」ってよォ!...そう、だから落ち着け...ここでキレたら先生に成績下げられる...。

 

「...言ってくれないと始まらんよ」

 

「...もぅ、うるさい...ほっといて。1人になりたいの」

 

「...そっか。落ち着いたら話に来い」

 

「...」

 

〜〜〜〜~~〜~~~〜~~〜

 

全然励ませてないじゃん!!

あかんこれじゃ(空気が)死ぬぅ!...てかこの後どうなったんだっけ。まぁいいや。いやよくねぇわ。どないしよ。

えっと、えっと、友達が死んだんだろ...?なんて声かけよう。

あ、俺の傭兵仲間が全滅した時、どんな風に励ましてもらったっけ...

 

〜〜〜〜~~〜~~~〜~~〜

 

時は学生生活が終わり、軍人生活を経て、傭兵時代。そして仲間が全滅した直後。

サイラッハとの一幕。

 

「....」

 

「ね、ねぇ...カゲロウ...」

 

「...」

 

「カゲロウ...大丈夫?」

 

「...す」

 

「え?」

 

「ウルサス、潰す」

 

「えっ」

 

〜〜〜〜~~〜~~~〜~~〜

 

...くそっダメだ!俺の覚悟がガンギマリすぎる!!

実際この後すぐにウルサス狩り始めたから大して落ち込んでもねぇし!

あー!クソクソクソ!!マジでどうしようかな。友達失う経験は俺もしたけど、ローザは一般人だ。生きてきた世界が違いすぎる。もういっその事引きずってでm「...アンタなにしてんの?」...え?

 

「こんな所で頭抱えて、なに?黒歴史でも思い出しちゃった?」

 

「なんだ...その...お前...大丈夫なのか?」

 

「....もちろん大丈夫じゃないわよ。ドロシーは小さい時からの友達だったんだから。でも、アイツが持ってた本も形見として持ってこれたし、これからはこれをドロシーだと思って生きていくわ。ドロシーの分まで。もう周りでは何人も死んでるし、悲しいけど慣れちゃったわ」

 

なんだコイツ。メンタルイカれてんのか?(褒め言葉)友人を失ったのにもう前を向いてやがる。さてはあんまり仲良くなかったな?(失礼)

 

「...よく持ってこれたな。みんな同じような顔だったのに」

 

「...彼女のアーツが残ってたの。どうやらあのクソ野郎に変えられてもその人のアーツは残るみたいね。近づいたらすぐに分かったわ」

 

「なるほど?お前、アーツの流れには敏感なのか?」

 

「敏感もなにも。私のアーツは『コピー』よ?敏感じゃないとやってられないわ」

 

は?

 

「は?」

 

「は?じゃないわよ。私のアーツは『コピー』というか...真似と言った方がいいかしら。アンタのアーツだって真似できるわよ。...さすがに時は止められないけど、模倣する対象がいないと発動すら出来ないの。だから残り1人になった時、抵抗できなかったのよ」

 

「え?じっ..じゃあお前、鉱石病治せんじゃねぇか!?」

 

「え?」

 

「俺のアーツは自分の鉱石病を治せる!原理は知らんが..とにかく俺のアーツは原石に干渉できる類のモンだ!」

 

「えっ...」

 

言うが早いかローザは俺のアーツをコピーしたらしい。原石クラスターがある箇所からポロポロと原石が剥がれてきている。

 

「取れてく...あんなに痛かったのに...」

 

「...」

 

他人のを見ているとやはり壮観だな。ミッドナイトが呆けるのもうなずける。

ポロポロと原石が完全に落ちた後、ローザは化け物を見るような目でこちらを見てきた。

 

「アンタ...人間?」

 

「どっからどう見ても人間だろ」

 

失礼な奴だな!!

 

------------------------------

 

「あれ?帰ってきた!」

 

「おーう、ただいま戻った」

「ただいま」

 

「え?あれ!?ローザちゃん!?原石クラスター無理やり剥がしちゃダメだよ!?」

 

「あー、バグ。コイツのアーツ、他人の能力をコピーできるらしいぞ。そんで、俺のアーツを使って治したって訳」

 

「え?じゃあローザちゃんはもう...」

 

「感染者じゃない、ただの健康な一般人だな」

「...みたいです」

 

「「「「ええぇぇぇぇ!?!?」」」」

 

------------------------------

 

あの後、私は皆から盛大な祝福を受けた。

バグパイプやオーキッドさんはもちろん、ラップランドや...モスティマさんか、モスティマさんにも「おめでとう」「良かったね」なんて言われた。それが私には理解出来なかった。

 

「なんで...」

 

「ん?」

 

「皆はなんで!私を...祝ってくれるんですか...?」

 

「なんでって...なんで?」

 

「皆はまだ感染者でしょ?!なのになんで!治った私を嫌な顔せず祝えるのよ!訳わかんない!」

 

「なんでってそりゃお前...めでたいからだろ。これでお前はただの一少女として生きられるんだ。そもそもロドスの理念はそこにある。鉱石病を治し、鉱石病によって受ける理不尽による不幸を取り除くためにロドスは活動しているんだぞ。そりゃ目の前でその理念そのまんまの現象が起こってんだ。嬉しいだろ」

 

その言葉をカゲロウから聞いた時に周りの人を見渡すと、誰も嫌な顔をしていなかった。誰もが笑っていた。小さなポプカルちゃんから「良かったね」と言われた時、ついに私は涙を流した。ポプカルちゃんの目の前で泣き出してしまったから彼女はすごくオロオロしていた。ごめんね?ポプカルちゃんが悪いわけじゃないんだよ。

涙で潤んだ視界の端では、カゲロウがバグパイプとサイラッハに「女の子を泣かせんな!」ってダブルラリアットを受けていた。隣ではチェンという人がため息をついていて、私はやっぱりそれが可笑しくて、笑ってしまった。あぁ、ごめんねポプカルちゃん。泣いてる人が急に笑いだしたら怖いよね...。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「カゲロウ」

 

「うごァァァァァ...何ぃ゛ぃ゛ぃ゛」

 

今度はバグパイプにチョークスリーパーをかけられているところに私は話し始めた。

 

「私、ロドスに行きたい。貴方たちが見ている世界を私も一緒に見てみたいの。もちろん、厳しい事は承知の上よ。それでも、私はロドスに行きたいと思うの...変かしら?」

 

「ちょっど待って...ふぅ...。いんや、全くおかしいなんて思わないよ。お前がその覚悟を持ってんなら俺たちロドスは貴女を歓迎する」

「カゲロウはまだロドスに来て1ヶ月だけどね」

 

「...悪かったな。じゃあお前が言ってくれよ」

 

 

 

「うん、えーコホン。....一緒に帰ろう!ロドスに!」

 

 

こうして、ローザは晴れてロドスの一員になった。

ちなみに、途中で出会った家族だが、皆紋様は消えていた。それつまり、クシュマフが全滅した事を示しているのだろう。援軍が来てからはマジであっさり終わったな。

その家族に聞くと、どうやら近いうちにヴィクトリアの移動都市の一部が近くを通るらしい。それに乗って、これから頑張っていくんだと話を聞いた。よかったよかった。

 

------------------------------

 

ローザはすぐにロドスに溶け込んだ。彼女が予想していたロドスの像と概ね一致していたらしく、面食らった事といえば、履歴書を提出した時に人事部が涙を流して歓喜していた事くらいだろう。ローザは基本的には人事部にいるらしい。オーキッドさんの推薦だ。だが、そのアーツの特性故に色んな部署に引っ張りだこらしい。

初めてロドスの制服を来た時、ローザはわざわざ俺のところに来て、

 

「どう...かしら。似合ってる?」

 

と聞いてきた。

 

「ん、あぁ似合ってるよ。可愛い」

 

と返したところ、隣にいたジェニーからとんでもない殺意が飛んできた。ローザも気づいたらしく、慌てて退散して行った。

俺はまた眉間に旗立てられた。

 

「んもぅ、カゲロウは私だけ見てればいいのっ!」

 

とかほざきながら眉間に旗刺して壁に固定するのはヤバくないか?視線どころか全身固定されて動けないんだが。

 

「誰か助けてーーー!!!」

 

俺の悲痛な叫びがロドスの女性宿舎にこだました。幸い搾り取られることは無かったが、そろそろコイツやばくない?

 




はい、というわけでいかがでしたでしょうか。

ローザが仲間になりましたね。新しくロドスの人事部に配属され、オーキッドさん同様、ブラック労働に追われる日々との事です。

ローザの『コピー』について解説をば、
ローザのコピーは対象のアーツを文字通りコピーします。ゲーム的な制度で言えば、直前に配置したキャラのスキルをローザも使うことができる。と言った具合です。

例)S3エイヤフィヤトラを配置→ローザ配置(高台地上どちらでも配置可能)→ローザもイラプションが使える。と言った具合です。ただし、チャージ時間は倍になります。

この章はとりあえずこれで終わりです。次回からは幕間を書いていこうと思います。そんなにシリアスな幕間にはしないつもりなので、よろしくお願いします。


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幕間

どうもこんにちはミステルでございます。

前回で1章が終わったので、今回は幕間です。
ロドスにいても災難が降りかかるカゲロウ君を見て鼻で笑ってあげてください。

それではどうぞ


 

とある一日の昼下がり。カゲロウは食事を終えてロドスをブラブラと散歩していたところ、ジェイとたまたま出会い、少しお話をしていたところ...

 

 

「いやぁジェイ!お前んとこの魚団子は絶品だな!」

 

「ありがとうごぜぇやす。ところでカゲロウさん、レパートリーを増やすために魚の種類を増やそうと考えてんですが、極東の方でなにかいい魚、ありやせんかね?」

 

「極東?まぁ確かに魚を食う文化はあるが...お前んとことはほぼ別モンだぜ?生で食べるし」

 

「あぁ、聞いた事ありやす。刺身ってんでしたっけ。魚をほぼそのまま食べるんだとか」

 

「あぁそれだ。これがまた美味いんだよな。素潜りして取ってきたりとか、やっぱり魚は鮮度が命だからな」

 

「他にもスシってのがあるぞ。ほとんど刺身と似たようなもんだが、白いご飯の上に刺身を乗っけるんだと」

 

「他にも卵を乗っけたりするんですよね」

 

「そうだな!プチプチの食感が癖になるんだよな〜。あ、そういえば出汁にも魚が使われてるらしいぞ」

 

「へぇ、そりゃ初耳ですね。どんな魚なんです?」

 

「なんでも飛ぶらしいんだ。見た目は普通なんだが、飛ぶことができるらしい。その魚から出汁が取れるんだと」

 

「飛ぶ魚ですか?面白いですね」

 

「さては信じてねぇな?ホントだぞ?ほら、この動画見てみろ」

 

「うわっ!本当に飛んでやすね...」

 

「だろ?あとは...そうだな、家のジジイ達は水底の植物を食べてるらしい。花だか草だかは知らんがどうやらスシにも使われてるらしいぞ」

 

「ほへ〜。そんなモンまであるんですねぇ。いやぁやっぱり水の中ってのはよく分かりませんねぇ」

 

「また今度行ってみようぜ。素潜りで魚捕まえ(ドグワッシャァァァァン!!)...は?」

 

------------------------------

 

ロドスの廊下を1人の美女が闊歩していた。

ロドスの最高戦力が一、ココ最近はどこぞの民族衣装を着て戦場に出ているスカジである。今日は久しぶりに青を基調とした普段のスタイルで過ごしていたのだが、聞き逃せない会話が聞こえてきた。

 

 

『極東?まぁ確かに魚を食う文化はあるが...お前んとことはほぼ別モンだぜ?生で食べるし』

 

(魚を生で食べる!?)

 

ここからスカジはカゲロウとジェイの話を盗み聞くのであった。

何を隠そうこのスカジ、『魚』は全てイベリアに居たような物だと思い込んでいるのである。

 

『あぁそれだ。これがまた美味いんだよな。素潜りして取ってきたりとか、やっぱり魚は鮮度が命だからな』

 

(素潜りで!?私たちアビサルですら苦戦する海の魚を極東では素潜りで取るの!?)

 

『他にも卵を乗っけたりするんですよね』

 

『そうだな!プチプチの食感が癖になるんだよな〜』

 

(なんてことしてるの極東は!!クローラーを食べるなんて!....そもそもアイツらって美味しいのかしら?)

 

『なんでも飛ぶらしいんだ。見た目は普通なんだが、飛ぶことができるらしい。その魚から出汁が取れるんだと』

 

(ドリフターじゃないの!...出汁!?出汁って言ったかしら!?じっ...じゃあ今まで食べたスープには...)

 

『だろ?あとは...そうだな、家のジジイ達は水底の植物を食べてるらしい』

 

(今度はリーパーじゃない!!道理で極東出身のオペレーターから少し海の匂いがすると思ったら...これは問い詰める必要がありそうね...)

 

------------------------------

 

そしてスカジは剣を放り投げてカゲロウとジェイの話を遮ったのである。

 

「えっと?スカジさん?いきなり剣投げられると危ないんだけど...」

 

「あなた達...今の話は本当かしら?」

 

「え?剣にはノータッチ?...いやまぁ本当ですけど」

 

「あ、スカジさんも海の近く出身ですよね。一緒に魚取りに行きやせんか?極東の海」

 

「辞めておきなさい。海は危険なのよ」

 

そしてここからスカジのコミュ障っぷりが発揮されるのである。

 

「それと...(海の生物を取り除くために)あなたたちの腹を斬らない(手術)といけないわね...」

「なんか物騒なこと言ってる!?」

 

「ほら、(手術のためにケルシーの元へ)逝くわよ」

「え?は?マジで言ってます!?おい!なんだか知らんが逃げるぞ、ジェイ!」

「もちろん!」

 

「ちょっ...どうして逃げるの...!」

 

「なんで腹かっ裂かれないといけないんですか!」

 

「それは...!魚を食べるのは危険だからよ!」

 

「いや普通食べるでしょ!ジェイとか料理魚メインですよ!?」

 

「...彼は頭も見てもらいましょう」

 

「散々な言いようですね!?」

 

カゲロウはダッシュで逃げた。ジェイとは別の方向に走り、曲がり角を曲がったところで、事態はさらにめんどくさい方向へ進み始めた。

 

「あっ!グレイディーアさん!ちょっとあれどうにかしてくださいよ!!」

 

「...あなた、何したの?」

 

「...カジキ...彼が魚を生で食べたらしいのよ」

 

「はぁ....あのねシャチ...」

 

その後はグレイディーアがスカジに事の顛末と勘違いについて丁寧に説明してくれた。

 

「ごめんなさいね。怖がらせるような真似をして」

 

「いえいえ!まさかスカジさんがそんなに恐れるとは...イベリアの海ってどんなモンなんですかね」

 

「魚と言うよりはバケモノが悠々と泳いでいますわ。不容易に近づかない方がいいと言うのは私もシャチと同意見ですわ」

 

「なるほどねぇ...」

 

「その...今回のことなんだけど、お詫びとして...」

「え?いやぁスカジさん!お詫びなんて要らねぇっすよ!大体、お互いに知識が足りn「私と組み手をしましょう」マジで要らねぇなぁ!?」

 

この後しっかりぶちのめされたカゲロウ君。治療を担当したケルシーに「お前スカジと組み手したの?バカか?」とありがたい説教を受けて、休暇が消えました。

 

 

 

「なんでだよチクショォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」

 




というわけでいかがでしたでしょうか。

アークナイツでネタに走るの、ムズいね!
もうひとつくらい幕間を書いて、次の章に進みたいと思います。

ではまた次回


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幕間

こんにちは、ミステルです。

皆様残暑の中いかがお過ごしでしょうか。
花粉症が辛い時期になったそうですね。作者は花粉症になった事がないので、その苦しみはわかりませんが、薬飲んで頑張っていきましょう。


 

「うぉらァ!!」

 

「ハン!こっちががら空きだなぁ!?」

 

「なっ?!」

 

はい、どうもカゲロウでごぜぇやす。今はね、ズィマーと1VS1で模擬戦をやってるところですね。

 

「フゥ....イースチナ、今何戦目だっけ」

 

「100と42戦目です。結果はカゲロウさんの全勝です」

 

「チッ...クソが...」

 

「まぁキリは悪いが休憩しよう。てかホント無理。俺が死ぬ。ウルサス人はパワーもそうだが、スタミナもヤベェな...」

 

「...アンタのそんなヤツら相手に狩りをしてたんだろ」

 

「いやぁそれを言われるとなんともなぁ..」

 

「ソニア、はい、あなたのドリンクです」

 

「ん...」

 

 

言い忘れていたが、ここはロドスのトレーニング施設。基本的には何をしても(スカジのフルスイング以外)壊れない(はずの)強度を持っていて、模擬戦や演習にはもってこいなのだ。

ここで、先程から俺はずっとズィマーと模擬戦を行っている。

 

事の発端はこうだ。

 

------------------------------

 

カゲロウ君がロドスに来たばっかりの頃...

 

「...で、こっちが訓練室で、あっちに行くとトレーニング施設があるよ。...うん、これで大体まわったけど、気になることとかあるかい?」

 

「強制的にロドスに連れてこられたことに関しては気になってるな」

 

「HAHAHA、なさそうだね!」

「は?」

「うん、なら私はケルシーに案内が終わった旨を伝えて仕事に戻るとするよ。...早く仕事を終わらせないとアーミヤが寝かせてくれなくなるからね」

 

「...アンタも案外苦労してんだな」

 

カゲロウがドクターからロドスを案内されて、一通りまわった後、1度自室に戻ったカゲロウは、トレーニング施設に行ってみることにした。そして、自室の扉を開けると...赤髪のウルサス人がいた。

 

「...?えーっと?」

 

「おい、お前」

 

「...なんでしょ」

 

「ウルサス狩り、だな?」

 

「...どうしてそれを?」

 

「そんな事はどうでもいい。今、アンタの目の前にいるのはウルサス人だ。アンタが殺す対象だ」

 

「いやちょっと待てよ俺は別に一般j「だから私はアンタを殺す」...なぁんか話が飛躍してんなぁ?」

 

「こい。こっちでケリをつけてやる」

 

「はぁ」

 

着いて行った先は先程も来たトレーニング施設。自分の前を歩くウルサス人の少女は常に後ろの俺を警戒しているようで、ロドスに来て早々にめんどくさいことになったとカゲロウは嫌でも自覚するのであった。

 

「アンタにここのウルサス人を殺させる訳にはいかない」

 

「いやだから俺はウルサス軍を殺してる訳であっt「勝利か!死かだ!」アブねぇ!?」

 

いきなり斧を振りかぶってくる少女がいてたまるかよ!

 

「話を聞けよぉ!」

 

「うるせぇ!アタシ達は今必死に立ち直ろうと努力してんだ!アンタにぶち壊されてたまるか!」

 

「ロドスのウルサス人は殺す気ねぇよ!」

 

「信用できるかそんな言葉!」

 

「俺はよっぽどロドスが信用できねぇよ!」

 

ふざけんな!(ブチ切れ)

なんでトレーニングしようとしたら斧持った女の子にケツ追い回されなくちゃなんねぇんだよ!ニェンって奴が脚本書いたホラー映画みたいじゃねぇか!

ロドスってのはどうなってんだよ!戦闘狂しか居らんのか!倫理観どっかに吹き飛ばしてんじゃねぇぞ!?教えはどうなってんだ教えは!

 

「喰らえ!」

 

「テメェこのアマぁ!後悔すんなよ!」

 

あんまりにも危なっかしいので(フツーにムカついたので)闘ってやろう。

 

結果としては俺の圧勝。刀を抜かずして殴打でズィマーを気絶させた。そしてその顛末をドクターに話して、ズィマーを医務室まで運んだところで、今度は別の女の子と出会った。

 

「...あなたがソニアをこんなにしたんですか」

 

「そうだが。勘違いしないで貰えんか?仕掛けてきたのはコイツだ」

 

この女の子ソニアって言うのか...なんてカゲロウが考えていると、白髪の女の子はカゲロウの隣に座って、

 

「あなた、ウルサス狩り、ですよね?」

 

と質問してきた。別に隠すほどのものでもないのだが、さすがにウルサス人からそれを言われると、カゲロウも警戒されてるのか?と勘ぐってしまう訳である。

 

「...無言は肯定とみなします。...安心してください。私はあなたの事を警戒している訳ではありませんので」

 

「...それはそれでどうなんだ?」

 

「いやまぁ、ソニアをここまでボコボコにする人は警戒するに値しますね。で、なぜあなたはウルサス"軍"を襲うのです?」

 

なんだ、軍だけを襲うってこの子は分かっているのか。

 

「復讐。ただそれだけだ」

 

「...なるほど。そうですか」

 

カゲロウとイースチナの間に沈黙が流れる。イースチナは手に持った本を読み始め、カゲロウは太刀の手入れを始めた。

 

「...別にあなたがここにいる必要はないのでは?」

 

イースチナは本から目を離さずに問うた。

 

「バカ言え。俺が怪我させちまったんだ。面倒を見る責任がある」

 

カゲロウも太刀から目を離さずに答えた。

 

「...そうですか。あなたはそんな人には見えませんが」

 

「生まれ育ちはヴィクトリアだが、これでも元は極東の血筋なんだ。筋は通すよ」

 

「ソニアが起きたら暴れるのでは?」

 

「そんときはそんときだ」

 

そして再び二人の間に沈黙が流れる。重苦しくもなく、かと言って気持ちのいい沈黙かと言われると首を横に振るような、微妙な沈黙。

先に沈黙に耐えられなくなったのはカゲロウだった。

 

「なぁ嬢ちゃん、その本「イースチナです」...イースチナ、その本面白いか?」

 

「ええ、面白いですよ。貸しましょうか?」

 

「え?いいのか?」

 

「はい、私はとうに読み終わっているので」

 

「じゃあ借りようかな。どこが面白い?」

 

「犯人が1番最初に出て来た男であるというところですね」

 

「...うん、ありがとう。やっぱり返すよ」

 

「あら?いいのですか?」

 

そりゃね。何が悲しくて初めから犯人知ってる小説を読まなアカンのや。

その後、ズィマーが目を覚まし一悶着あったが念願のトレーニング施設に1人で(ここ重要)来ることができた。ちなみに、これ以降ズィマーは暇さえあればカゲロウに闘いを挑むことになる。冒頭が正にそれである。

 

------------------------------

 

「クソが...」

 

「まだ言ってんのかよ...」

 

「ソニアは負けず嫌いですから」

 

冒頭よりまた数戦やって俺の全勝。通算成績が150勝まで伸びてしまった。途中でグムちゃんが差し入れとして色々持ってきてくれたので、それをつまみながら休憩中である。

 

「なんで(ムグムグ)テメェに(ムシャムシャ)勝てねぇのか(ゴクン)さっぱり分かんねぇ!」

 

「...喋るか食うかどっちかにしてくれ」

 

「はい、タオルです」

 

「ん...(ゴシゴシ)、なぁ〜んで勝てねぇかなぁ。こんな女たらしに」

 

「誰が女たらしだ」

 

「どうやったらお前に勝てるか、教えろ!」

 

「俺、術攻撃に弱いんだよね」

 

「よし!アンナ!加勢しろ!」

 

「嫌です。ボコボコにされそうなので」

 

「ハッハッハ!振られちまったなぁ!ズィマーさんよぉ!次も俺の勝t「では、私が加勢しますわ」...お?ロサか」

 

トレーニング施設の扉が開き、そこから長い白の髪をたなびかせる長身の美女と形容するのがふさわしい女が入ってきた。ズィマーやイースチナとチェルノボーグ事変に巻き込まれ、ロドスに保護された学生の1人、ロサである。

 

「ごきげんよう御二方、それとカゲロウさん」

 

「あぁ、ごきげんよう」

 

「...お前が加勢してくれんのか?」

 

「えぇ、もちろん。どうやら手ごわい相手のようですし。アンナはいいのかしら?」

 

「...あなたがやるなら私もやります」

 

「いきなり3対1かぁ...」

 

「ハン!アンタにはこれくらいがちょうどいいだろ!」

 

こうして唐突に始まった3対1の多勢に無勢マッチ。

序盤はイースチナの妨害やロサの重い一撃を対処しながらの闘いになったため、カゲロウが押され気味となった。

 

「オラオラァ!さっきまでの威勢はどうした!」

 

「3対1はフツーにキツいって!...危ねぇ!」

 

「チッ...外しましたか」

 

なんかイースチナのガラ悪くね?舌打ちするような子だったっけ?

 

「よそ見してる暇あんのかよッ!」

 

「...正直ある」

「なっ...んだとォ...!」

 

ズィマーに関しては見てなくても対処可能だ。斧の威力は分かりきってるし、小型攻城兵器持ってるロサの方がよっぽど怖い。

 

「ハァ...まずは戦術マニュアルどおりに...」

 

「あぶなァい!」

 

ズィマーは片手間に捌きつつ、ロサが射出してくる矢に最大限警戒する。イースチナのアーツにもある程度気を配っておかないと本当に痛い目を見そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ところが闘いは予想外の形で決着を迎える。

 

 

 

「...え?まさか故障...きゃっ!」

 

ロサの小型攻城兵器が暴発した。イースチナには特に影響はなかったが、無数の矢がズィマーとカゲロウに向けて飛んできていた。

さすがにアーツなしでは捌ききれねぇ...!

 

「ズィマー!危ねぇ!こっち来い!」

「えっちょっ...」

 

ズィマーを引き寄せ、刀を鞘から抜いた。

 

「焼き払え!」

 

刀にアーツを伝道させ、膨大な量の炎を生み出し、矢に対して振り抜く。

すると矢は炎の中で速度を失い、カゲロウの足元に数本が刺さった。もう数本は炎をモロに受けて、蒸発したのだろう。

 

「ズィマー、大丈夫か」

「...」

 

「ズィマー?」

 

余程怖かったのだろうか、ズィマーが喋らなくなっちった。ロサは暴発の反動でひっくり返っていて、イースチナは「これは恋愛小説で読んだ...!」とか言って震えている。え、どうすればいいのこれ。聞こえてなかったかもしれんし、もっかい聞いとくか

 

「おいズィマー、大丈夫か?」

「...す」

 

「す?」

 

「...スっ、スキありィ!!」

「ぐべらぁ!?!?」

 

ズィマーは顎に強烈なアッパーを叩き込んできた。ウルサスの全力でアッパーはダメよ...。

 

こうして俺の通算成績は150勝1敗になった。納得いかねぇ....

 

この怪我治しにケルシー先生のところに行った時に「暇なの?ちょっとMon3trと闘ってくんね?」みたいなこと言われたから全力で拒否っといた。後日Mon3trにボコボコにされた。解せぬ。

 




という訳でいかがでしたでしょうか。

ちょっとアンケート機能を使ってみたいので、この後書きはこれだけにしときます。
皆様にこの小説を読んで頂いて、大変喜ばしいのですが、ギャグ調で進むのか、シリアス調で進むのかの方針を決めたいと思います。


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2章
そうだ、旅行行こう。


はい、どうも皆様こんにちは。ミステルです。

前回のアンケートに投票してくださった方々、ありがとうございました。
結果を見たところ、シリアスよりギャグ調の方がいいとの事なので、この章はギャグっぽく進めていこうと思います。

話としてはまぁ、頭空っぽにして読んでください。


 

やぁどうも、カゲロウだ。

突然だが今俺はロドスの食堂にいる。昼飯の時間だしな。

でだ、俺は休暇なんだ。ヴィクトリアの廃都市から帰ってきて、もはや習慣と化したズィマーとの組手を終え、ドクターやアーミヤCEOへの報告も済ませ、ドクターの書類も手伝い、ローザがロドスに馴染めるように根回しまでやった。ボーナスも出た。

そしてCEOから1週間の休暇を言い渡された。...ドクターが血涙を流していたがなんだったのだろうか。

 

と、いうわけで俺は小旅行にでも行こうと考えている。ヴィクトリアに帰るのもいいし、極東まで行ってみるのもいいな。とにかく1週間あるからな。久しぶりのバカンスだしな。めいっぱい楽しみたいな。

あ、そうだ。

 

「シエスタに行こう」

 

「にゃに〜、どこに行くって〜?」

 

「...飲みすぎだよブレイズ。なんで真昼間から酒煽ってんだよ。お前任務は?」

 

「きょーはもーおしまーい。ほらほら〜、カゲロウも呑みなよ〜」

 

「いや俺この後車運転するし呑まねぇよ」

 

「え〜?なんでよ〜。任務終わったしぃ〜お酒呑もうよ〜」

 

「だから呑まねぇって。てかお前、お酒しばらく禁止じゃなかったのかよ」

 

「ん〜?へーきへーきぃ。もう任務は終わったし誰にも会わないからねぇ」

 

「俺に会ってんじゃんか」

 

なんだその1秒未満で破綻する理論は。巻き込まれる前に離れとこ。

 

...あっ、ケルシーにバレてら。ドナドナされてる..。

 

------------------------------

 

「ロドスってのは本当に何でもあんだな...」

 

そんな事を独りごちながら、俺はロドスのガレージにやってきた。傭兵の時の車を持っていきたいと契約の時にドクターやってきたアーミヤに話したところ、快くガレージの1部を貸し出して貰えた。駐車料金もない。やっぱロドスはホワイトだな()

 

「さて...」

 

久方ぶりにエンジンをかけたが特に問題は無さそうだ。ところどころガラスが割れたりしていたのも、ロドスの給与で修理してもらった。その手のエンジニアもいるとは...。マジでロドスに来てから驚くことばかりである。

 

 

 

 

 

 

ところで、話は変わるのだが俺の車はほぼ装甲車といっても差し支えないほどである。1人で乗るには少し寂しいくらいの大きさで、かつての傭兵団が全員乗れるほどの席がある。今回も空席が多くなると思っていたのだが...。

 

「すみませんカゲロウさん...。乗せて貰っちゃって...」

 

「いーのいーの。この車も無駄に席が多いし、ちゃんと使ってあげないと。ね、カゲロウ?」

 

「エイヤフィヤトラさん達はともかくテメェはなんなんだモスティマ。なんでしれっと助手席に座ってんだよ」

 

俺がシエスタに行くってドクターに連絡した時に、「じゃあちょうどいいや」ってエイヤフィヤトラさん達のトランスポーターチームを乗っけることに関しては文句はない。しかもその対価としてホテルいい所取ってくれたしな。

ただしモスティマ。テメーはダメだ。あと...なんだっけ...

 

「...苦難陳述者?」

 

「フィアメッタよ!そっちの名前で呼ばないで」

 

「何でもいいけどお前も乗るのね」

 

この堕天使(モスティマ)の監視が私の使命だもの。私も乗るわよ」

「さも当然のように言ってんなコイツ」

 

まぁいいけどさ。俺は俺で休みを楽しむだけだし、任務でシエスタに行くであろうコイツらには悪いが、俺はバカンスを満喫するんだ(フラグ)!

 

------------------------------

 

「シエスタ....火山....定期調査....」

 

「黒曜石....オリジムシ....」

 

「セイロン....ポンペイ....」

 

どうやら後ろの席ではトランスポーターチームが今回の任務について再確認しているようだ。熱心なようで何より、というか前はエイヤフィヤトラさんは現地の調査に参加出来なかったらしい。ここ最近はすこぶる調子がいいとのことで、今回シエスタに初めて向かうらしいが、やはりとんでもない人だな。火山や天災のトランスポーターとしても一流、術師としてもロドストップクラス、と非の打ち所がない。

ちなみにモスティマは寝てる。苦難陳述s「フィアメッタ」...は起きているらしい。

 

「ところでアンタ。気づいてる?」

 

「後ろからずっと追いかけられてることか?」

 

「気づいてるなら別にいいんだけど」

 

「分かってんなら榴弾ブッパしてもいいんだぜ?」

 

「窓の開け方が分からないわ」

 

こんな会話をしているが、後ろから野盗と思われる連中に追われている。奴らも車で追っかけてきているが、俺が同じくらいのスピードで逃げているので追いつかれはしないだろう。おそらく気づいてるのは俺とフィアメッタくらいで、トランスポーターチームが集中しているのですぐに片付けたい。

 

「できるだけ静かにやってくんない?」

 

「静かに銃を撃つのは無理だけど」

 

「1発で仕留めてくれればいい」

 

「あぁそういうこと」

 

フィアメッタも後ろでトランスポーターチームが会議をしているのをチラリと横目で見て、俺が言ったことに納得してくれたようだ。物分りのいい子は好きだぜ。

 

「窓ってか屋根開けるぞ」

 

「曲射しろっての?」

 

「しろ」

 

えっと...屋根開閉は...これか。お、ちゃんと開いてるね。

 

「じゃあ頼むわ」

 

「はいはい...『償還せよ』」

 

ポンッ!と銃にしては軽めの発砲音が響き、ミラーに爆発が映った。煙が晴れると、そこには野盗が乗っていた車の残骸だけが残っていた。

 

「....ふぅ」

 

「さすがにラテラーノ仕込みは違うな」

 

「なにそれ」

 

フィアメッタは使った銃に目を向けながら、少しはにかんでそう答えた。屋根が開いたのと銃を撃ったのとでさすがにエイヤフィヤトラさん達は驚いていたが、「問題ないですよ」と俺が一言いうと、また会議に意識が戻って行った。相変わらずモスティマは寝ている。

 

------------------------------

 

「着いた〜〜...んきゅ〜〜〜」

 

「伸びと一緒に変な声出てるわよ」

 

「ありがとうございました!カゲロウさん!」

 

「おう、頑張れよ〜」

 

とりあえずシエスタに到着して、今はロドスの研究施設シエスタ支部にトランスポーターチームを送り終えたところだ。

いやぁ、暑いねシエスタ。これよりもっと暑い時にドクターはあの服装でここに来てたのか...。さて、

 

「で?お前らは任務どこなの?」

 

「何言ってるんだいカゲロウ。私達も休暇だよ」

 

「あ、そうなのか。俺あと5日はここにいる予定だけど、帰りどうすんの?」

 

「カゲロウの車に乗って帰るけど」

 

「は?」

「え?」

 

「わざわざ俺の予定に合わせなくても...帰る方法は幾つかあんだろ?」

 

「私達だって5日間ここにいるんだよ」

 

「あ、そうなのか。なるほどね、それならまぁいいや」

 

「2人とも、何やってんの。荷物下ろすの手伝ってよ」

 

------------------------------

 

「ホテルまで一緒なのかよ」

 

「ここまで来るとちょっとビックリだね」

 

「そうね...あ、予約したフィアメッタです。あ、でも名義はドクターだ」

 

「フィアメッタ様、モスティマ様、カゲロウ様。ようこそお越しくださいました。ご予約のお部屋へ案内致します。どうぞこちらへ」

 

「じゃ、カゲロウ。先行ってくるよ」

 

「おう、いってら」

 

「...?失礼ですが、お連れの方ではないのでしょうか?予約は『3名部屋で3名』とドクター様から言われているのですが...」

 

「ん?」

「え?」

「は?」

 

ふっふふふ。災難の予感だぜ...。

 




という訳でいかがでしたでしょうか。

災難...圧倒的災難...!!
という訳でモスティマ、フィアメッタと一緒に5日間同じ部屋で過ごすことが確定したカゲロウ君、どうなってしまうのか。

ちなみにトランスポーターチームはシエスタのストーリー準拠です。
エイヤフィヤトラ、プロヴァンス、スカイフレアですね。間違ってたらご指摘ください。


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山()あり谷間あり

どうも皆様こんにちは。ミステルでございます。

シエスタっていいですよね。行ってみたいと思う今日この頃。


 

「ではごゆっくり」

 

ごゆっくりじゃねぇんだわ。あのクソフルフェイス野郎!帰ったらぶっ殺す!!

見ろ!マジで気まずいぞ!エレベーターの中でも誰一人として喋らんかったわ!

 

「あー....もしあれだったら俺、出ていこうか?」

 

「いいよお金が勿体ないし、幸いベットは3台あるからね。でももしも君が私たちを襲うような真似したら...分かってるよね?」

 

「さすがにな。ここはラブホじゃねぇんだから」

 

「うん、よろしい。で、君はいつまでそうしてるんだい?」

 

「うるさいわね...」

 

フィアメッタはこの会話中もずっと俺とモスティマから顔を背けていた。

 

「だいたいなんで部屋まで一緒なのよ!」

 

「それに関してはドクターに聞いてくれ」

 

「貴方紳士を演じてるだけで私たちを襲うつもりでしょ!エ〇同人みたいに!」

 

「...じゃあ俺やっぱり出てくよ」

 

「そこまでしなくていいわよ!」

 

「...じゃあどうすりゃええねん...」

 

「大丈夫だよカゲロウ、彼女はちょっとむっつr「モスティマ、黙りなさい」...まぁ、そういうことさ」

 

えぇ...(困惑)。どうしろって言うんだよ。

 

------------------------------

 

「私このベットにしよー」

 

「私はこっちね」

 

「じゃあ俺はこっちか」

 

とりあえずベットは決めた。ホントに3つあってよかった。

 

「で、お前らなんか予定あんの?」

 

「いやぁ、特には。ブラブラするつもりだよ」

 

「私はモスティマの監視だからついて行くわ」

 

「そっか。じゃあ俺は海にでも行ってくるかな」

 

「水着持ってきたの?」

 

「もちろん」

 

シエスタに来たんだから海行かないとだよなァ!?俺が知ってる海なんてココとドッソレスとイベリアと極東くらいしかしらねぇぞ。

 

「ふーん。私たちも海行こっか」

 

「え?」

 

「まぁ私はどこでもいいけど...」

 

「いや、え?」

 

「何さカゲロウ。そんなに私たちと一緒に居たくないのかな?」

 

「いやぁ...別にそういう訳じゃ...」

 

「ならいいよね。それともなんだい?私たちが何処かでナンパされてお持ち帰りされて〇〇〇や〇〇されて〇〇〇〇させられてもカゲロウは気にしないってことかな?」

 

「話が突飛すぎるしやけに解像度高いのなんなの?」

 

なんだコイツ。そもそもナンパされても返り討ちにするだろこの時止め性悪女(モスティマ)とそのストーカー(フィアメッタ)。てかモスティマも大概だろ。フィアメッタのことむっつりとか言えた口か?

 

「話してるとこ悪いけどちょっといい?」

 

「どうしたのフィアメッタ。もしかしてカゲロウと一緒がi「私たち水着持ってきてないわよ」...え?」

 

「だから、水着持ってないのよ。モスティマもでしょ?海に行くなら買いに行かなきゃ」

 

「...お前、水着持ってきてないのに海行こうとしてたのか?」

 

「うるさい。そもそも海に来るの久しぶりなんだから仕方ないだろう?」

 

「じゃあ早く買ってこいよ。俺は先に行ってるぞ」

 

そう言って俺は水着とシートとその他もろもろを持って海に行こうとするのだが、ガッシリと後ろから掴まれた。

 

「...なんだモスティマ。俺は水着の美女を探しに行くんだ離せよ」

 

「正体現したね。させないよ」

 

「なんでだよ!別にお前らナンパされても返り討ちにするだろ!?俺は俺で今夜の餌を探すのに忙しいんだよ!」

 

「仮に君がもしナンパに成功してお持ち帰りしても、帰ってくるのはここだよ」

 

「...」

 

「さすがに私たちの目の前でお持ち帰りした女の子とおっぱじめたりは出来ないよね?」

 

「...」

 

「じゃ、カゲロウ。君には私たちの水着、選んでもらうから」

 

「なんでだよ!お前らの水着は自分で選べや!別にお持ち帰りしなくてもラブホくらいそこら辺にあんだろ!だいたい『別にお前らナンパされても返り討ちにするだろ!?俺は俺で今夜の餌を探すのに忙しいんだよ!』...は?」

 

「うん、ボイスレコーダーの調子はいいみたいだね。さて、カゲロウ。君がまだ諦めないってなら、私たちにも考えがあるよ」

 

「...」

 

....ここ数年の内で俺はこの瞬間が1番恐ろしく、凍えるほどに寒い時だったかもしれない。ボイスレコーダーにこの録音をされた時には俺はもう負けていたんだ。それは分かってたんだ。ただ、モスティマは意外と優しいから、そんなに大事にはならないだろうとタカをくくってた。

 

「...考えってなんだ」

 

「この音声、サイラッハちゃんに聞かせる」

「それだけはやめてください死んでしまいます」

 

やっぱり、モスティマには勝てなかったよ。

 

------------------------------

 

「おぉ〜。色んなのがあるんだね」

 

「ラテラーノに水着着るところなんてほとんど無いし、新鮮かも」

 

「何でもいいからさっさと決めてくれ....」

 

はい、ドナドナされました。

やめてくれよォ。俺のメンタルが持たねぇよォ...。店員さんはすげぇニッコニコだし、周りの客に1人も男いねぇし、視線が痛い...。

そんな俺を無視して2人は気に入った水着をどんどん手に取っていく。そんなにとってどうすんだ?

 

「なぁ、そんなにいるのか?水着」

 

「何言ってるんだいカゲロウ。これから試着して、それから絞っていくんだよ」

 

「...どれくらいかかるんだ」

 

「1時間」

 

「...これだから女の買い物は嫌なんだ」

 

長ぇよ。なんで水着選ぶのに1時間もかかんだよ。もういいじゃん手に持ってるやつで。俺なんて5分で選ぶぞ。もうロドスのガキンチョ共が来てるアレでいいじゃん。青いやつ(スク水)

 

「じゃ、試着してくるから感想よろしく」

 

「...どれ着ても似合うと思うぞ」

 

「...言っときゃいいって考えてるでしょ」

 

バレたか。女にはとりあえず似合ってるとか綺麗とか言っておけばどうにかなると思ってたんだが(クズ)。

 

「じゃ、待っててね」

 

そう言うとモスティマはカーテンが閉まってる試着室に入っていった。...は?

 

「きゃああああ!?モスティマ!?なんでアンタ入ってきてんのよ!」

 

あ、やっぱりフィアメッタが入ってたのか。

 

「いいじゃないか。私たちの仲だし」

 

「何言ってんのよ!さっさと出ていきなさいよ!」

 

「うわぁ...結構攻めたやつ着るんだね。フィアメッタは大きいからね〜」

 

「うるさいわよ!私の話聞いてる!?」

 

「あ、こっちも似合うんじゃない?...ほら、これ。サイズもちょうどいいよ」

 

「こっちよりも攻めてるじゃない!...ひやぁぁぁあ!!どっ、どこ触ってるのよ!///」

 

「うわ、でっか。前々から思ってたけどやっぱりでっかいね。それでこんな水着着るとか...誘ってる?」

 

「そそそそそそんなわけないでしょ!?単純にカワイイと思ったから着てるだけよ!」

 

「あれ?そうなの?てっきり誘ってるものかと思ったよ。じゃあカゲロウに見せてあげようよ」

 

...は?

 

「え?」

 

「はい、じゃーん!」

 

モスティマが高めのテンションで思いっきりカーテンを開けるもんだから俺はフィアメッタとバッチリ目が合った。フィアメッタは俺と目が会った瞬間にガッチリと固まってしまった。

 

うん、まぁエロかったよね。これはおそらくロドスの女性全員に言えることなのだが、非常にスタイルがいい。腕もお腹も筋肉質で非常に引き締まっているので非の打ち所がない。

黒いビキニだったんだけどさ。まず布面積が少なすぎる。オフショルなのね。肩出しが眩しい。あとフィアメッタの大きさも相まってフリフリがカーテンになっとる。下は...何それ?くびれすっごい。こっちにもフリフリ着いとるんか。あと見えそう。えっろ(語彙力)。

さっきまで俺を疑念の目でチラチラ見てきてた女子もフィアメッタに釘付けだ。

 

「ちょっと!早く閉めて!!」

 

「どう?フィアメッタの水着」

「エロい(即答)」

 

「んなぁっ...!」

 

「ほらね?もうそれにしちゃえば?すごく似合ってるよ」

 

「.....///早く閉めて...」

 

うわぁ顔真っ赤。

 

「はいはい、ほら閉めるよ」

 

「アンタは出てって!」

 

モスティマが試着室から弾き出され、ピシャンと音を立ててカーテンが閉められた。

 

「イテテテ。あんなに強く押さなくても...」

 

「...お前は試着しなくていいのかよ」

 

「うん、私はもうお会計も済ませたしね」

 

そう言ってこの店のビニール袋を見せてきた。確かに中には水着が入っているのだろう。

 

「いつの間に...」

 

「ふふん。やっぱりコーラルコーストの水着はいいね。着るのが楽しみだよ」

 

「どんなやつ買ったんだ?」

 

「ふふふ。な・い・しょ」

 

こいつも大概エロい水着買ってんだろなぁ...。

 

こんな会話をしている内にフィアメッタは試着室から出て来た。そのままあの黒い水着を買ったらしい。

 

「おまたせ」

 

「うん。じゃあ行こっか海で思いっきり楽しもう!」

 

こうして3人で海に向かうことになったのだ。

この時はまさかあんな事が起こるとは全く思っていなかった...。

 

 




いかがでしたでしょうか。

フィアメッタはむっつり。異論は認める。
それはそうとYostarは全オペレーターに水着実装はよ


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海は広いが世間は狭い

どうもこんにちは。ミステルです。

寒いですね。これはフロストノヴァが何処かにいるに違いない。
さて、前回は海にやってきた御一行。
正直に言います。海で遊ぶ描写は無に等しいです。作者は海で何をすればいいのか分からない人間なのです。

それでは、どうぞ。


「ったくよぉ〜、何が『女の子は準備が多いんだよ』だ。結局パラソルとかの準備も俺が全部やってんじゃんか」

 

文句タラタラでシートとパラソルの設置をしているカゲロウ。シエスタは今はフェスの期間ではないがそもそもが観光都市のため、それなりに観光客はいる。その中で場所をとって、色々準備をするのはかなり骨が折れた。

 

「はぁ、とりあえず設置完了。...あいつら待つか」

 

とりあえず自分の身体に日焼け止めを塗って、近くを見渡しながらぼーっとしていると、何やらコチラに近づいてくる人だかりが。

...嫌な予感するなぁ。

 

「やぁカゲロウ。おまたせ」

「待たせたわね」

 

「おう、待った」

 

やっぱりコイツらじゃん。周りの人間は7割ナンパの男で、3割はコイツらに惚れた女ってとこか。見る目ねぇな(辛辣)。

 

「チッ...なんだよ男連れかよ...」

「じゃあ気が変わったら遊びに行こうぜ!」

 

「すごい...なにあのスタイル...かっこいい...」

「はぁ...マジ天使...じゅるり」

 

コイツら遊びに誘うとか本気か?あとそこの女、やめとけその先は地獄だぞ。

 

------------------------------

 

「はぁ...海に入る前から疲れたよ」

 

「同感ね」

 

「それに関してはお前が誘ってるのが悪ぃだろ」

 

「だから誘ってないっての!」

 

2人が持ってきた荷物も置いて、今は準備体操中だ。2人の艶めかしい肢体を見ながらの準備体操は眼福ではあった。

 

「カゲロウ。目付きがいやらしいよ」

 

「どこ見てんのよ!...はっ!まさかあっちの岩陰に誘い込んで...」

 

「...お前らちょっとは真面目に体操しろよな」

 

途中からモスティマは見せつけるようにポーズするだけだったし、フィアメッタはずっと体を隠すようにモジモジ動くだけだった。すごく興奮した。

 

「ところでカゲロウ。私の水着、どうかな?」

 

「ん?あぁ似合ってる似合ってる痛てぇ!?」

 

「ちゃんと見て言ってくれるかな...?」

 

「痛い痛い!ちゃんと見る!見るから!」

 

だから頭から手を離せ!首が折れる!

 

「最初からそうすればいいんだよ」

 

「...ゴリラかよ」

 

「...なんか言った?」

「ヴェッ!マリモ!」

 

「ほら、ちゃんと見てよ。カゲロウのために選んであげたんだよ」

 

「...お前そのセリフ今まで何人の男に言ってきたんだ?」

 

「ふふふ。女の子は秘密が多いんだよ」

 

ふむ。こうなったらモスティマのペースなので、水着に意識を移そう。

モスティマの水着は薄い青だった。水色よりかは色が濃いような気がする。上は普通のタイプのビキニだった。いやまぁそれでも全然色気がでてるんだけどね。さすがにフィアメッタよりボリュームは劣るが、ちゃんと谷間はできている。下は...

 

「何それスカートとふんどし足して2で割ったようなやつ」

 

「パレオだよ!」

 

どうやら下はパレオと言うらしい。花が沢山デザインされている。

え?ちょっと待ってよ?

 

「それ下履いてんの?」

 

「当たり前でしょ!?」

 

あぁ良かった。さすがに下履いてなかったら痴女だしな。

フィアメッタよりは大人って感じだった。フィアメッタは「えっろ」って感じだったが、モスティマは妖艶というか、色気がすごい。

 

「すげぇ大人っぽいな。背伸びしてる感じもしないし、色気がすごい。似合ってるよ」

 

「...ありがと」

 

「え、何もしかして照れてんの?」

 

「うるさい。沈めて時止めるよ」

 

「沈めるだけじゃ飽き足らず!?」

 

 

さてさて、ついに海だ。俺自身、実は海に入るのはだいぶ久しぶりな気がする。

 

「じゃあ魚でも探すヘブァ!?」

 

「あっはっは!カゲロウ!ざまぁないね!」

 

「んだとこの性悪天使がよォ!」

 

モスティマが思いっきり海水かけてきやがった。はっちゃけ過ぎだろ。

 

「喰らえやオラァン!」

 

「あははは!無駄無駄ァ!」

 

「テメェ!時止めて避けるのは卑怯だろうが!」

 

「ほらほらー?周り見てみなよ」

 

「あぁん?」

 

周りを見ると水が浮いている。...いや止まってるのか。は?360°全部囲まれてんだが?

 

「...青ざめたね?」

 

「...!!」

 

「ふふぅん?悟ったようだね...これからどうなるか...カゲロウ。君はチェックメイトにハマったんだよ!」

 

「うるせぇ全部交わしてやらぁ!おら!来いよ!」

 

この後ちゃんと全部喰らった。

 

 

------------------------------

 

 

とりあえず少しばかりはっちゃけて休憩中。ホテルから海までは歩いてきたので、酒がないかと海の家を物色中だ。

 

「お、ビールあんじゃん。おっちゃん!...おっちゃん!?暑くねぇの!?」

 

なんだその格好!?ドクターより着込んでんじゃねぇの!?てか一種の鎧じゃねぇか!

 

「ん?あぁ、この格好のことか。いや大丈夫だよ。慣れてしまった。....で、ビールかな?」

 

「お、おぉ...ビール1杯頼むよ」

 

なんなんだあのおっちゃん...あ、うめぇこのビール。なになに...ボブ酒造のクラフトビールか...。覚えとこ。

 

 

「おじさん!ビールひとつ!」

 

 

なぁんか聞いたことある声だぁ...。

え?モスティマでもないし、フィアメッタでもないよね。てか絶対アイツだわ。間違いないわ。でもなんでこんな所に居るんだ?

 

「何してんの、チェン」

 

「ん?...かかかかかかかカゲロウ!?...はっ!お、おほん。えっと...どなたかな?」

 

「いやもう手遅れだよ。誤魔化せるわけねぇだろ」

 

「な、何をいいい言っているのかな?私は...私は観光客の女性Cだぞ」

 

「お前は一体何を言っているんだ」

 

そんなモブみてぇな名前の人間がいてたまるか。なんでそんな誤魔化すんだ。ロドスの仕事サボってんのか?

 

「で、なんでここに居るんだ?あ、ビールおかわりおねしゃーす」

 

「なんでって...知らないのか?」

 

「あ?なにが?」

 

「ほらあれだ」

 

チェンが指す方に視線を向けると

『シエスタ大運動会』

と書いてあるポスターが目に入った。

 

「なんだあの小学生みたいなネーミング」

 

「そう言ってやるな、なんだかんだあの名前で続いているんだ」

 

「ん?ということはお前、あれに参加するのか?」

 

「あぁ、この手の大会は既に体験済でね。この大会も賞品が豪華ってことで参加しようと思っている」

 

「ほぉ」

 

「カゲロウも参加してみたらどうだ。参加資格は4人チームであることだが」

 

「え、それよりもお前4人も友達いたの?」

 

「失礼なやつだな!私にも友達はいる!」

 

「じゃあ誰だよ」

 

「それは秘密だ。お前が参加するとなるとメンバーの開示は不利でしかない」

 

「なるほど」

 

その後も適度にビールを飲みながら運動会の話を聞いた。何やら毎年死傷者が出ているらしい。...組体操でもやるんか?

 

------------------------------

 

 

「.....というわけらしい」

 

「それ、もう明日スタートだよ。申し込みするなら早くメンバー見つけないと」

 

「なんだ。ノリノリじゃねぇか」

 

「せっかくシエスタに来たんだから、イベントは楽しまないとね」

 

「でも、毎年死傷者が出てるって話だけど」

 

「チェン曰く、ロドスのオペレーターはそんなにやわなのか?との事です」

 

「完全に挑発されてるわね...」

 

 

 

 

「話は聞かせてもらいましたわ!!」

 

 

 

 

「ッスー...さ、早くメンバー探そうぜ」

 

「そうだね。さ、早く行こう」

 

「え、ちょっとアンタたち呼ばれてるけど」

 

 

 

「話は聞かせてもらいましたわ!!」

 

 

「...あー、ハイハイ。なんでしょうか?セイロ〜...ん?どこ?」

 

「上ですわ!」

 

 

そんな声が聞こえると同時に屋台の屋根の上から青を基調としたお嬢様が降りてきた。隣には普段から布面積が少なすぎるフェリーンのシュヴァルツもいる。屋台のおっちゃんは「え?屋根の上にいたの?」と呆けていた。

 

「ご安心なさいな。あなた達3名の登録はもう済ませてあります」

 

「どういうことだってばよ」

 

「あなたがたにシュヴァルツを加えて4人ですわ!」

 

「え、シュヴァルツ?」

 

「お嬢様のお願いとあらば」

 

「良かったじゃないか、これで4人だね」

 

「おぉ、ラッキーだな」

 

探す手間が省けたな。シュヴァルツが加わってくれれば4人。ちょうどいい。だが...

 

「なんで急に?」

 

「私も優勝賞品が欲しいのです」

 

「優勝賞品ってなんなの?」

 

「単純にお金も出ます。それとは別に、スポンサーである様々な企業からも賞が出ますわ。私が欲しいのは茶葉1年分ですわ!」

 

茶葉...茶葉ねぇ...。セイロンって紅茶いれるの下手じゃなかったっけ。シュヴァルツが既に顔色悪いんだけど。

 

「それはそうと、こんな所にいていいのですか?」

 

「え?大会は明日からだろ?」

 

「予選があります。登録は終わっていますがそれに出て勝ち進まないと明日の本戦にすら進めません」

 

「あ、そうなの。何時から?」

 

「あと1時間ありません」

 

「賞品云々より先に言えやボケェ!」

 

なんなんだ一体。シュヴァルツはお嬢様が混ざるとアホになるのか。

 

この後速攻片付けて、ダッシュで会場に向かった。

 

 




というわけでいかがでしたでしょうか。

次回、予選書きます。

ローグライク楽しぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!
タグに不定期更新を追加しますかね


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予選

ココ最近忙しくてマトモに投稿できないミステルです。

なんもかんも全部アークナイツとかいうゲームが面白いのが悪い。


 

俺とモスティマ、フィアメッタにシュヴァルツは海岸線沿いを走りながら今回の大会の話をシュヴァルツに聞いていた。

 

「そもそも予選って何やるの?決闘?」

 

「毎年内容は違いますが...まぁ30チームになるまで絞り込むのは同じですね。大体はバトルロイヤルです」

 

野蛮すぎんか(ドン引き)。死傷者ってほぼ予選で出てんじゃないの?やってる事地下闘技場とかその類なんだけど。

 

「この予選の結果で本戦のハンデが決まるんです。ですから予選も大事なのですよ」

 

「なるほどねぇ。お、見えてきたかな」

 

多くの人が集まっている。大体は観光客だろうが、その奥には屈強な体をした男や、暗器を手に持ち笑う女など、おそらく対戦相手となるのだろう人たちも見えた。

それと『受付あと10分』という看板も見えた。

 

「あと10分だってよ。受付はセイロンが済ませてくれてんだよな?」

 

「はい、私たちは会場に入るだけです」

 

というわけでセイロンからもらった用紙を受付に見せて会場に入った。会場といっても砂浜に木の板を上から乗っけたようなもので、そんなに豪華ではない。あ、チェンもいるやん。

 

「おいチェン!」

 

「ん?あぁ、間に合ったのか」

 

「おう。...というか、まぁお前がチーム組むって時点でこのメンツだとは思ってたよ」

 

「なんだ、まるで私に友達がいないみたいな言い草じゃないか」

 

「そう言ってるからな」

 

チェンのチームはチェン、ホシグマ、スワイヤー、リン・ユーシャの4人。前衛職ばっかやん、バランス考えろよ()

 

「カゲロウ殿も参加されるのですね」

 

「あぁ、お手柔らかに頼むよホシグマ」

 

「それは無理な相談ね。優勝は私たちがいただくわよ」

 

「気合い入ってんなスワイヤー。やっぱり金か?」

 

「金はどうでもいいのよ。単純に優勝って肩書きが欲しいだけ」

 

「....鼠王の娘か?こりゃまた手強いな」

 

うわぁ手強い(小並感)。

 

「あ、そうだ。お前ら予選がどんなもんか知ってたりしない?」

 

「それが小官たちにも分かりません。さっぱりです」

 

お前らも分からんのかい。俺の中でこの運動会がどんどんバイオレンスなイメージになっていくんだが?

 

------------------------------

 

『会場の皆様ァ!長らくお待たせしましたァ!!』

 

「「「ワァァァァァアアアアア!!!」」」

 

『これより!第‪✕‬回!シエスタ大運動会を開催しまァす!!』

 

「「「ワァァァァァアアアアア!!!」」」

 

すごい盛り上がりだ。平日の昼間なのに。仕事はどうした、仕事は。

あ、セイロンの親父さん出てきた。

 

『今年もこの大会を開催できたこと、嬉しく思う。選手諸君はどうにか五体満足...いや、精神も含めた六体満足で大会を終えて欲しい』

 

「シュヴァルツ?」

 

「なんでしょう」

 

「五体満足ですらない人間が出るってこと?」

 

「五体どころか一体も残らない参加者も出ますよ」

 

「どうなってんだよ...」

 

恐ろしいわ。シエスタ大運動会。

 

------------------------------

 

『では!予選の内容を発表しまァす!!』

 

「お、ようやくか。お偉いさんの話は長くてやってらんねぇな」

 

「カゲロウ半分以上寝てたじゃないか」

 

「あ、バレた?」

 

「...ちょっと待って立ちながら寝てたってこと?」

 

『予選は....出ました!「水鉄砲バトルロイヤル」!!』

 

なるほど、クジで決めるのね。そりゃ情報がないわけだわ。にしても「水鉄砲バトルロイヤル」ってなんだ。

 

「簡単です。持参もしくは大会側から支給される水鉄砲でバトルロイヤルするだけです。比較的怪我人も出ない平和的な予選のひとつですね。幸運です」

 

「え、マジか。俺水鉄砲なんて持ってないぞ」

 

さすがに水鉄砲なんか持ってきていない。そもそもこの旅行は一人旅の予定だったのだから、大の大人が海で1人水鉄砲なんて持ってくるわけが無い。

 

「あれ?そうなのカゲロウ。私たちは持ってきてるよ」

 

そういうとモスティマとフィアメッタは懐から水鉄砲....水鉄砲?

 

「それホントに水鉄砲か?」

 

「もちろん。私のはセミオートのアサルトライフル型で、フィアメッタのはいつものやつだね」

 

「ちょっと待てや」

 

どういうことだってばよ。水鉄砲ってセミオートとかフルオートとかあんの?あといつものってなんだ。爆発するんか?死人が出るぞ?

 

「安心なさいな。水風船を詰めて射出するだけだから」

 

「そんなのもOKなんだ」

 

「はい、基本的に水を飛ばせるなら全部水鉄砲と大会規定にも書いてあります」

 

「そういうお前もいつものクロスボウなのね」

 

なんだそのガバガバ規定は。

ちなみにシュヴァルツはいつものゴツイクロスボウであった。なんじゃそりゃ。水飛ばせんのかそれ。

 

「大丈夫です。鉄板くらいなら貫けます」

 

「もう1回聞くけど水鉄砲だよな?」

 

------------------------------

 

結局俺は大会側からちゃっちい水鉄砲を借りた。子供用のピストル型のやつだ。

 

「滑稽だね、カゲロウ」

 

「うるせぇよ。そもそも水鉄砲使うことになるなんて予想つくかよ」

 

「まぁ、精々生き残ってよ。戦闘は私たちに任せて」

 

やだ惚れそう。何この堕天使。顔が良すぎる。

 

「にしても随分と範囲広いのね。まさかシエスタ全域が予選会場なんて」

 

「先程運営から配られた端末を持っているのが参加者です。毎年観戦者からも怪我人が出るので、新しく作られたようですね。レイジアン工業の賜物です」

 

運営から参加者にはブレスレット型の端末が配られた。これを使って連絡、管理等ができるらしい。スリーサイズまで測られたらしく、フィアメッタがブチ切れていた。

 

『参加者の皆さァん!!聞こえますかァ!?』

 

「ん?あのドローンからか」

 

『開始は30秒後です!準備は終わってますね!?』

 

準備させる気ねぇじゃん。

 

『ではスタートです!皆さんの健闘をお祈りします!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------------------

 

結果から言おう。俺たちは2位だった。

いや、大健闘したと思う。なんか他のチームもゴツイ水鉄砲持ってるし、俺は早々に退場した。なんか知り合いに何人かあった気がするが、そんなことに気を取られている暇もなかった。ステージはシエスタ全域と言えど、結局ドローンによるパブリックビューイングによってすぐに位置がバレてしまうので、そこら中でドンパチやり合うこととなり、結果的には3時間と経たずに終了した。

 

ちなみに怪我人は2桁ほど出たらしい。...なんで?

 

「私たちの相手には怪我人はいないでしょう」

 

「嘘つけ、お前のクロスボウで何人撃ち抜いたと思ってんだ」

 

「それよりもあの龍人さんは何なの?とんでもない威力だったんだけど」

 

ちなみに優勝はチェンのチームだ。いやてかあれはズルいわ。うん。

チェン→訳分からんほどの高火力バズーカ。多分怪我人はほとんどコイツが出してる。

ホシグマ→「般若」がスプリンクラーと盾の2役

スワイヤー→モーニングスターの鉄球が水風船

ユーシャ→おおよそ透明になれる

 

ズルいじゃん。勝てるわけがないYO。チェンのバズーカはなんなんだ。アスファルトの地面が陥没してたんだけど。俺が頑丈なオニ族じゃなかったら死んでたかもしれない。

 

ただ、ドローンが飛び回って写真を撮りまくっていたらしく、すごくいい笑顔のチェンやフィアメッタ。楽しそうなシュヴァルツの写真を貰えたから満足です。

 

明日はどうやら本戦らしいから早く帰って寝よ!(盛大なフラグ)

 




というわけでいかがでしたでしょうか。

皆様10章楽しんでますか?ワタクシはサリア(完凸済)がすり抜けて泣きそうです。異格スペクターまで時間ないのに...。


ではまた次回


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戦いは終わらない

お久しぶりです。

もう書くことないので本編どぞ。


 

 

カゲロウ、モスティマ、フィアメッタ、シュヴァルツの4人は得てして予選を2位として通過した。女子3人組が強すぎる。というより、今回の大会は女性陣が奮闘しているらしく、1位のチーム龍門(チェンのチーム)に始まり、カゲロウらが2位、3位、4位もほとんど女性で構成されており、TOP5のチームの中で、20人中男は4位と5位には0人、3位に1人、そしてカゲロウのみのたった2人だけという、史上稀に見る女性陣の大進撃であった。

 

...という号外が出ているのを横目で見ながら、カゲロウ達はセイロンを加え、予選突破祝いとして外に飲みに来ていた。町中お祭りムードで、既に席が埋まっているところも多く、探し回ってはや10分、ようやく席に着くことが出来た。

 

「じゃ、とりあえず予選突破を祝ってかんぱーい!」

 

「「「「「かんぱーい!!」」」」」

 

というわけで俺たちは酒を煽り始めた。2位だ、すごくね?俺ほとんど何もしてないけど。モスティマ達がほとんど敵を倒したおかげで俺は囮としての役目がほとんどだった。

 

「本戦っていつからなの?」

 

「明後日です。明後日の10時からスタートですね。集合場所は今日の浜辺と同じところに集合しましょう」

 

「そうなんだ。じゃあ1日余裕があるってことだね」

 

なるほどね。そりゃ怪我人も出たから間隔は空くか。...1日で怪我治るのか?いや普通に治るな。だってテラの医療は進んでるもんな()

 

「皆さん!おめでとうございます!本戦も楽しみにしていますわ!」

 

「うわ、このお嬢様すごいペースで飲んでる...」

 

セイロンの手元にはからのジョッキが既に2つほど並べられている。えっ、はっや。俺まだ1杯目なんだけど。

 

「お嬢様、飲み過ぎには注意してください」

 

「分かってますわ!だからこれでもセーブしてる方ですわ!」

 

「それでセーブしてるのか...」

 

「普段ならスピリタスを紅茶で割って飲んでますもの。これくらい余裕ですわ」

 

「ほーん、道理で....おい待て今なんつった?」

 

お嬢様がものすごい飲んだくれかつ味覚がどこかに吹っ飛んでいる事が判明した。おいシュヴァルツ、お前コイツどうにかしろよ。

 

--------------------------------------------

 

『前代未聞の女性の快進撃です!TOP5のメンバー構成は...』

 

「パブリックビューイングでもこれ1色だな」

 

「それだけ人気なんだよ」

 

町中のバカデカいテレビでは今日の予選の結果が大々的に放映されている。周りの人達は参加者の容姿に足を止めたり、賭け事をして三者三様の楽しみを謳歌しているようだ。

 

「いいな、俺も賭けてこようかな」

 

「もちろん、私たちにだよね?」

 

「当たり前だろ?」

 

『ここから1日は、壮絶な奪い合いタイム!毎年の怪我人は大体この1日の間に出てきます!下位のチームは上位のチームが持つ、順位証明カードを奪えば、本線に奪ったカードに書かれている順位で出場できます!逆に元々上位のチームは頑張って逃げ回らなくてはなりません!健闘を祈ります!以上、夕方のニュースでした!』

 

「...」

 

「...」

 

「...」

 

「今年は何人怪我人がでるのかしら」

 

「去年は死者が出ないだけマシでしたね」

 

俺の手元には『2位』と書かれたカードがある。え?つまり明日一日これを守りながら動かなくちゃいけないってこと?

 

「なんじゃそりゃ...」

 

「これ、おちおちホテルにも戻ってられないんじゃないの?」

 

「いいえ、ホテルにいる限りは奪われませんよ。そういう決まりです」

 

じゃあさっさと帰ろうぜ。やだよ俺、疲れたもん。今日は戦いたくないよ?...ほらもう色んな所からガッシャンガッシャン聞こえるもん。ガラスめっちゃ割れる音するし。

 

「こんなところにいられるか!モスティマ、フィアメッタ!早くホテル行くぞ!」

 

「なんだいカゲロウ。ヤリ〇ンみたいな誘い文句だね」

 

「...そうだった...戻ってもコイツと部屋...ブツブツ」

 

「うるせぇよ」

 

 

誰がヤリ〇ンだゴラァ!?あとそこのリーベリ、色々妄想するのは止めなさい。顔真っ赤じゃねぇか。こっち睨みつけんな。

 

「絶対堕ちないから!」

 

「なにが?」

 

もうダメだよコイツ。早く何とかしないと...。

 

--------------------------------------------

 

「ヒャッハー!!カード寄越せェ!」

「ついでに女も寄越せェ!」

 

なんだこのモヒカン!?世紀末じゃねぇんだよここは!あーもうめんどくせぇなぁ!

 

「ほら、コイツやるよ」

 

「...ねぇカゲロウ?どうして私を差し出すのかな?」

 

「冗談だ」

 

ほら見ろ、向こうも「え?」みたいな顔してんだろ。今のうちに...

 

「逃げるんだよォ!モスティマァ!」

 

「...」

 

--------------------------------------------

 

しばらく走ってホテルの前、後ろを振り向くとモスティマとフィアメッタはちゃんと着いてきていた。ちなみにセイロンとシュヴァルツとは別れて解散した。

 

「ふぅ...なんとか撒いたかな」

 

「そうみたいだねさっさとホテル入ろうかほら」

 

「えっ、何どうしたのモスティマさん?」

 

「いいから早く入ってよ」

 

すっごい早口。どうしたのモスティマさん?

まぁとりあえずモスティマの言う通り部屋に戻ってきたわけだけども、え?

 

「アイタァ!危ねぇな!」

 

モスティマがいきなり俺を突き飛ばしてきた。幸いにもベッドに激突したため怪我はないけど、明日のことも考えるとあまり動きたくな...ッ!?

 

「ネェカゲロウ、ナンデアンナコトシタノ?」

 

「ヒェッ」

 

ブチ切れでらっしゃる!?

 

「冗談!冗談だっての!結果逃げられたんだからいいじゃねえか!」

 

「ふーん。でもカゲロウ、私傷ついちゃったな〜。カゲロウに売られて辛い思いしたな〜」

 

あ、目にハイライトがない。終わった(潔し)。

 

「...なにがお望みで?」

 

「抱いてよ」

「アウトォ!!」

 

アウトだよ!!これR18の小説違うから!ほら見ろ!フィアメッタがとんでもない事になってんぞ!...違う妄想してるだけじゃねぇかコイツ!このムッツリーベリがよォ!!

 

「...じゃあケルシーに報告させてもらうね♡」

 

「やめてください死んでしまいます」

 

アカンて、それは。違うやん、ケルシーセンセに報告するのは。ほんとに八つ裂きにされかねない。

 

「じゃあほら、早く脱いでよ。早く〇起させてよ。あ、フィアメッタの裸見る方がいい?」

 

「ちょっと!なんでそこで私なのよ!」

 

「え?待って、ホントに?マジで言ってる?」

 

「エクシアとはヤッたんでしょ?私とできないなんて言わないよね」

 

「お前ホントにモスティマか!?おいほらフィアメッタ!お前コイツ止めろよ!...え?何してらっしゃる?」

 

「大丈夫大丈夫初めては痛いらしいけど気持ちよくなるって聞くし大体エクシアちゃんが大丈夫だったんだから私だって平気なはず...(超早口)」

 

「嘘だよな?」

 

どうやらこの部屋に俺の味方はいないらしい。モスティマは「シャワー浴びてくるね〜」と浴室に姿を消し、目の前のフィアメッタは未だにブツブツ言いながら自分の服に手をかけている。

いやマズイって。これ以上描写したらR18になってまう。

 

こうなったら...

 

「俺は逃げるぜッ!」

「させないよ」

 

うがァァァァァァ!!体が動かん!モスティマが浴室からタオル1枚で出てきた!

てかはえぇよ!シャワー浴びるとか言いながら1分もたってねぇじゃんか!...そうじゃんコイツ時止められるんだった(納得)。

 

「いい加減受け入れなよ。ほら」

 

(う、動けん...ばっ、馬鹿な...!)

 

いつもなら時間がゆっくりになるだけでスローに動くことができるのだが、今回ばかりはモスティマも本気らしい。マジで体が動かん。

 

「お前...!処女は大切にしろよな!」

 

「その処女をくれてやるって言ってるんだよ?喜ぶべきだよ、カゲロウ」

 

「HA☆NA☆SE!!」

 

ーーガチャリ

 

「失礼しま......失礼しました」

 

「待って!助けて!モスティマに襲われる!」

 

扉を開けて入ってきたのはマーガレットとマリアのニアール姉妹だった。先にマリアが入ってきたのだが、モスティマが俺に馬乗りになっているのと、下着しか身にまとっていないフィアメッタを見てゆっくりと扉を閉めた。

 

「なんだ?相変わらずの節操なしだな、カゲロウ?」

 

「マーガレット!助けて!犯される!」

 

「はぁ...お互いに上位で本戦に出場できると聞いて酒盛りでもしようと思ったのに...」

 

「うわぁ...うわぁ...すごい...///」

 

酒瓶を片手に「ダメだこりゃ」といった表情をするマーガレットと顔を真っ赤にしつつ指の間からチラチラとこっちを見てくるマリア。姉妹でもここまで反応が違うのも面白い。

 

「ちょっと?こんなところでなんで止まってるのよ。ほらお酒買ってきたから早く皆で...」

 

あ、ウィスラッシュことゾフィアまで。すごい俺たちを見てプルプルしてる。

 

「なにしてんのあんた達!!」

 

「なにって...ナニだよ」

 

「ここはラブホテルじゃないのよ!!」

 

--------------------------------------------

 

た、助かった...。モスティマとフィアメッタは服を着て(重要)、ゾフィアに叱られてる。というかニアール達もこの大会に出てたんだな。

 

「お前ら何位で予選通過したんだ?」

 

「え〜?カゲロウさん、ニュース見てないの?私たち3位だよ!」

 

「あぁなるほど」

 

俺を除いた唯一のTOP5内の男がいるチームなのか。...どうしよう。言われなくても多分そのメンバーが誰だか分かるわ。え?やばくね?カジミエーシュの名家ニアール一族総出ってこと?は?強すぎんか?

 

「...一応4人目のメンバーを聞いてもいいか?」

 

ーーガチャリ

 

「...私だ」

 

「知ってたよチクショウ!」

 

そりゃそうだよね!ここまでニアール一族来てたらアンタも来るよね!

 

「アンタこんな柄じゃないでしょ!ムリナールさんよォ!」

 

「...マリアに...頼まれて...」

 

「それで来てくれたんだよ!」

 

「あぁ...なんか、もう、大変なんだな...」

 

ムリナール。マーガレットやマリアの叔父にあたる...多分現カジミエーシュの最強の男なのではなかろうか。マジで強いもんこの人。傭兵だった時期に世話になったことがあったんだけど、とんでもない強さだった。私生活ではマリアにプレゼントのドローン分解されたり、マリアに叱られたり、会社でパワハラ受けたりと散々らしいけど。

おそらく3ヶ月分の有給を幾分か消費してわざわざシエスタまで来たのだろう。ご苦労なこって。

 

「ふふふ。叔父さんがいるからには優勝はもらったかな?」

 

「バカいえ。俺たちだって負けねぇよ」

 

足を組んでワインを煽るマーガレット、めちゃめちゃ絵になる美しさだな。

 

「そうか。私としては久しぶりに君と対戦ができるのを楽しみにしていたんだ。よろしく頼むよ」

 

「あ〜。そっか、懐かしいな。...で、お前らなんでこの大会に参加したんだよ。お金?」

 

「そんな訳ないだろう。私が欲しいのは権利だ」

 

「権利?」

 

「あぁ、この大会のスポンサーにはカジミエーシュの会社も参加しているからな。そこの会社に私とマリアの要望を通してもらう」

 

「ふーん?なんの要望を通すんだ?」

「君だ」

 

「はぇぁ?」

 

「君だ。なぁ?どうして私たちの家から逃げてしまったんだ?私はそうだがマリアは3日間も部屋から出てこなくなったんだぞ?というか私たち2人をあんなに焚き付けておいてお預けをするとは一体どういう要件なんだカゲロウ。ともかく君には私とマリアを娶って貰うぞ。そうじゃないと釣り合わないからな」(爆速早口)

 

「ひえぇ...」

 

俺なんかしたっけ...?確かにカジミエーシュにふらふら向かった時にニアール家に居たけども...。基本ムリナールの手伝いしただけだし...あ、そういえばトーランド元気にしてっかな(現実逃避)。

 

「だからカゲロウ。君には私の家に来てもらッ!?」

 

「...すまないな。姪が迷惑をかけた」

 

「あ、いや、大丈夫です...」

 

ムリナールがマーガレットに恐ろしく早い手刀を入れ気絶させた。そのままニアールと(俺のベッドで)眠ってしまったマリアを抱えてムリナールは器用に外に出ていった。ゾフィアも酔ってはいたようだが、すぐに立ち上がると、俺を見て

 

「じゃあ、また明後日にね。...私たちから逃げられると思わない事ね」

 

「ひえぇ...」

 

ニアール一族怖い...。いや、今はそれよりも...

 

「さて、カゲロウ。聞かせてもらうよ?彼女たちとどういう関係なのか」

 

「洗いざらい吐きなさい。さもないと爆破するわよ」

 

割りとシャレにならないレベルの修羅場だ...。ウケる(笑えない)。なんで休暇なのにこんなピリピリせないけんのや!

 

「話すからその杖と銃口を離してください」

 

「よろしい。じゃあ話してよ」

「...ふんっ」

 

「あれは...確か俺がまだ傭兵だった頃...ニアール家に居候してる時期があってな?そん時にマーガレット達と一緒に寝t...「死ね」...もうホントやだ!!」

 

クソが!なんでだよ!馬鹿野郎お前俺はやるぞお前!!逃げるんだよォ!

 

俺はまだ杖と銃を構え終わっていない2人の隙間を抜け外に出た。そのままホテルの廊下をダッシュしていると、目の前に...。

 

「あら?久しぶりね。カゲロウ?」

 

「...もうダメだ。今日はノストラダムスも真っ青な厄日だな」

 

「人を見るなりそれは酷いんじゃないの?」

 

「いやホントに勘弁してくださいよ。ホルン(隊長)

 

 

 

 




というわけでいかがでしたでしょうか。

セイロンはね。結構ぶっ飛んだお嬢様だと思うの(偏見)
で、シュヴァルツはお嬢様が絡むとバカになると思うの(独断)
ムリナール叔父さんは姪っ子を溺愛してるし(憶測)
ゾフィアは「おばさん」って呼ばれすぎて早く男を捕まえたいと思ってる(殴

異論は認める。ただしフィアメッタはムッツリ。これは絶対だ(鋼の意思)


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回想―カジミエーシュ

2周年イベムズい!危機契約ムズい!アニメから来た初心者を殺す気か!?

かく言う私も大苦戦しました(初期勢ドクター)


 

ホルン隊長と感動の再開を果たしたところだが、少しばかり昔話に付き合ってもらおう。

具体的にはなんか少しヤンデレに片足突っ込んでるニアール家についてだ。いやなんか久しぶりに会ったらドス黒くなってるし、どうなってんでしょうね?

 

--------------------------------------------

 

カジミエーシュってのはヴィクトリアとウルサスの丁度真ん中にあるんだよ。で、俺は一応元傭兵で、ウルサススレイヤーなんて呼ばれてたんだ。

言葉通りにウルサス兵を殺して回ってたからついた異名なんだけど、何時だか忘れたんだが、とある時にウルサス兵がしっぽ巻いて逃げるもんだから呆れながら追撃してたら迷子になったんだよね。そん時にフラフラ歩いてたらいつの間にかカジミエーシュのスラムにたどり着いたんだよな。

そこでレッドパイン騎士団を名乗る何人かに拾われてしばらく過ごしてたんだが、どうやら騎士競技に出場すれば莫大な金が手に入ると言うじゃないか。

俺はレッドパイン騎士団やそこにいた感染者に恩義があったから騎士競技に出場しようとしたんだ。そうしたら周りのレッドパイン騎士団に必死に止められたんだ。

曰く「感染者は出場できない」だと。俺は鉱石病を自療できるから問題ないって押し切ったんだけど、そん時に団長さんに「何をされるか分かったもんじゃない!」と大声で言われて気づいたんだよ。団長さん、泣いてたんだってさ。

ロドスでアッシュロックと再開した時に明かされたんだが、団長さんは誰かが傷つくくらいなら自分を傷つけるようなすごく優しい人だから、俺が騎士競技に出場したらとてつもない傷を負ってくると考えていたらしい。いやまぁ実際ごもっともなんだけどね。

 

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受付の人に「参加するならある程度金とかスポンサーないと無理だよ?」と言われたので傭兵時代のツテで運送会社(表向き)にスポンサーになってもらった。ありがてぇ...。あのペンギンにはマジで頭が上がらん。

 

え?早くニアール家を出せって?

オーケーオーケー。落ち着けよ。

じゃあ続きな?

 

まぁ、大まかに区切れば俺は優勝した。なんか名前が...えっと...てーげん?なんとかといった黒騎士の三連覇を阻んだとかでかなり注目されたんだ。いやぁ強かったね。なんなんだあのバケモノ。この世界の女の人強すぎじゃね?

 

まぁ、優勝したとは言っても、感染者と関わっていると知られたら賞金がどうなるか分かったもんじゃないから、それこそペンギン急便に表向きの仕事を頼んでダンボールにお金を詰めて運送してもらった。

 

さて、ここでだ。俺はまたヴィクトリアに戻ろうかな〜なんて考えていたんだが、なんかすごい金色の美人なクランタに話しかけられたんだ。「家に来ないか?」ってさ。この人が「ウィスラッシュ」なんだけど。

俺はホイホイついて行ったよね。で、気がついたらムリナールさんとの面談になってた。

 

「...君か。黒騎士を打ち破った騎士というのは」

 

「あぁ、そうだが。何者だ?アンタ。タダモンじゃねぇな?」

 

「私は一介の社会人に過ぎない。それよりも、だ。私は君を雇おうと思う。どうだ?君は今傭兵なのだろう?1年ほどこの家に身を置かないか?」

 

「こんなお屋敷に住んでる奴が一介の会社員な訳ねぇだろ。で?なんだって?俺を雇う?」

 

傭兵にとって長期の契約ってのは警戒するに値する。割に合わない無理難題を連続で押し付けられるのが関の山だからだ。俺はよーーーく知ってる。

 

「あぁ、これだけ出そう。家に余裕がある訳でもないが、君を姪達の戦闘面での教官になってもらいたい。ゾフィアだけでは足りないからな...」

 

そこに提示されたのは今回の騎士競技の優勝賞金にも負けず劣らずの大金だった。これだけあれば武器の手入れもできるし、俺の切り札である原石スティックも買い込める。何より車が余裕で買える。優勝賞金はレッドパイン騎士団に押し付けて手をつけていないから、俺としては喉から手が出るほど欲しい大金であった。

 

「こんなに出すのか...。一体貴様の姪はどれだけのじゃじゃ馬なんだ?」

 

「君は極東の刀の使い手だろう?なら極東式の薙刀も使えるのではないか?」

 

「まぁ、一応な」

 

「それでいい。姪が騎士競技に出る時に薙刀に似た武器を使う敵が現れるだろうからな」

 

「騎士競技に出すのか?姪を?...アンタ鬼か?」

 

「オニは君だろう」

 

確かに俺の種族はオニだけども。

 

--------------------------------------------

 

庭先に出ると既に先程出会ったゾフィアという女と1人の幼さが残るクランタが組手をしていた。あれが俺の契約にあった姪っ子か。

 

「あら?来たのね。マーガレット。挨拶なさいな」

 

「私はマーガレット・ニアール。あなたが新しい先生か?」

 

「先生...まぁ、そうだな。ムリナールさんにお前を騎士競技で戦えるようにしろとのご達しだ」

 

「...?おじさんは騎士競技に反対してたんじゃ...」

 

...あれ?もしかしてこれやらかした?あっ、ゾフィアが「黙れ」って目線だけですごい伝えてくる。分かりました。黙ります。だからその目止めて。

 

--------------------------------------------

 

「はぁっ!」

 

「おっと、筋は悪くないな」

 

俺の首の横をソードランスが通り抜けたところで、1歩右足を引く。俺は今刀1本だからな。単純にリーチの差で不利だ。

 

「くっ、ちょこまかと!...そこだっ!」

 

マーガレットは俺の引いた右足を見て突いたソードランスをそのまま薙ぎ払いに来たのだが、まぁ、まだまだだな。

 

「残念。カウンターだ」

 

「なっ!? ガハっ...」

 

そのままソードランスの比較的マーガレットの持つ部分に近いところを払ってソードランスが宙を舞い、その隙に俺がマーガレットに蹴りを入れたところで組手は終了。

さすがに女の筋肉で薙ぎ払いは無理があるな。

 

咳き込むマーガレットを尻目に俺が弾き飛ばしたソードランスを拾いに行き、戻ってくると既に落ち着いたようで、瞳をメラメラと炎を宿しながら

 

「もう一度だ」

 

と、言ってきた。俺としてはヴィクトリア式の教育メゾットであるキッチリカッチリしたのを活かしたいところなのだが(これ以外の教育法を知らない)、ここまで燃えている奴を放置するのもなんだか後味が悪いので

 

「1回だけだ」

 

と言って100回やった。気がついたら真っ暗だしゾフィアとマリアが止めに来なかったら多分夜明けまで続いてたぞ。

 

といった具合に初日から1週間似たようなメニューで飛ばしに飛ばしたんだが、これを見たマリアが「私もやる!」と言い出した時は頭が痛くなった。

姉が俺にボコボコにされてグロッキーになっているのを見て「私もやる!(裏声)」とか言ってきたぞコイツ。頭おかしいんじゃねぇの?()

 

--------------------------------------------

 

「なぁ、ムリナールさんよ」

 

「なにかね?」

 

「俺の寝室、どこ?」

 

「マーガレットとマリアと同室」

 

「は?」

 

要約するとこんなやり取りがあった。

 

いや待てよおかしいだろ色々と。布団に横になっているのだが、俺の左側にはあっち向いて拗ねてるマーガレットだし、右側にはマリアがいてすっごい話しかけてくる。

 

「どうしてこうなった...」

 

「あははっ!私、男の人と寝るの初めて!」

 

「黙らっしゃい!」

 

マリアは男というか、誰かとお泊まり会みたいな事をした事がないのでテンションが上がっているらしい。マーガレットは単純に俺にボコボコにされたから拗ねているだけで、しっぽは俺の太ももの上にある。可愛いヤツめ。

 

--------------------------------------------

 

2人に稽古をつけ始めてから1ヶ月。2人とも飲み込みが早いので俺が教えることがドンドン無くなっていく。1年も持つかな?さすがに組手では負けないがゾフィアも2人の成長速度に目を見張っていた。

 

「あなた、やるじゃない。2人とも生き生きしてるわ」

 

「光栄だ。金を貰った以上、俺は筋を通す」

 

「あら、傭兵の割には誠実なのね」

 

「...多分俺くらいだと思う。ここまで誠実なの。...自分で言うのもなんだけど」

 

「あら、謙虚さはさすがに持ち合わせていないのかしら?」

 

「ほざけ叔母さん」

 

「あ?」

 

「ヒェッ」

 

この後めちゃめちゃシバかれた。

 

ここからさらに2ヶ月後、俺に名指しの傭兵業での仕事が舞い込んできたので、ムリナールさんとゾフィアに許可とって少しばかりまたウルサス兵を狩った。マジでホントにウルサス軍ってクソだな。荒野に身を寄せあってただけの感染者にさえあの仕打ちか。

 

「別にここはウルサスの領土じゃねぇだろ...」

 

と、俺がボヤいていると後ろから独特な呼吸音と共にやってきたのは、『皇帝の利刃』。

 

「私が今、両の足で踏みしめている。それ即ちここはウルサスの領土だ」

 

「傲慢なのも大概にしろよ*ウルサススラング*野郎。世界がテメェらの為だけにあるとでも思ってんのか?」

 

夜明け。激突。日没。決着。

 

丸一日戦い続け、ようやく皇帝の利刃のチューブを切り裂き、勝利したのだが、ここら一帯はもう生命が存在できなくなってしまった。

 

何とか体を引き摺って『国土』の外に出て応急処置を終え、ニアール家に帰ってくると2人から泣きながら出迎えられた。

そうだった。2人に仕事だから稽古をゾフィアに代わってもらうことを伝えてなかった。

 

--------------------------------------------

 

これからである。金色のクランタが段々とドス黒く染まっていくのは。

カゲロウが『報連相』を怠ったばかりに2人の姉妹は心配性を拗らせていくのである。

 

だが、カゲロウは気づかない。成長した2人のクランタが何を企んでいるのか。今回の運動会で2人がカゲロウと離れ離れになりたくないが為にナニをしようとしようとしているのか。

 

カゲロウは、知る由は色んな時期にあったのだが気づかなかったのである。

 




カゲロウVSニアール姉妹VSモスフィアVS何も知らないドクター

           ファイッ!!


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再開―身を滅ぼす

年明け前だってのにホントいいストーリー追加しますねYostar。
いいぞもっとやれ。

回想は前回で終わりです。


 

「あなた、私を『隊長』なんて呼んた事、ないでしょ?」

 

「あん時は世間を知らないガキだったもんで」

 

今、俺の目の前にはテンペスト部隊隊長のコードネーム『ホルン』が仁王立ちしている。俺がテンペスト部隊に所属していたのは少しの間だけだが、この人にはかなりお世話になった。主に戦闘の後始末とかな。

軍学校を卒業してすぐの俺とバグパイプはいきなりこの遊撃隊である部隊にぶち込まれた訳だが、まぁこの人バケモンだよ。おかしいもん。なんで重装なのに前衛の人より撃破数多いんだよ。なんだよ照明弾って。それってかなり昔の極東の海軍が使ってた砲弾ちゃうんか?なんで人間が撃ってんだよ。などといった疑問が尽きない人だった。

 

「そういえば、君も運動会に参加してるんだって?」

 

「えぇ、まぁ...。隊長もですか?「なんか気持ち悪いから敬語は抜きでいいわよ」...気持ち悪いってなんだよ」

 

「そうそう、それでいいわ」

 

そう言うとホルンはその整った顔をへにゃりと崩し、懐かしさに浸かりながら口角をあげ、クスクスと笑った。今まで軍にいた時には見たこともない表情だ。美しい、とか綺麗、とかそんな形容詞では到底表せないような、そんな表情だった。

 

「なんだ、そんなメスみたいな顔できたんだな。彼氏の1人や2人できたのか?」

 

「殺すわよ」

「なんでだよ!?」

 

どうやら地雷を踏んだようだ。

 

--------------------------------------------

 

「え!?未だに処女なの!?そんな薄着で出歩いといて!?」

 

「うるさい!」ガンッ

「痛ぇ!」

 

マジで言ってる?彼氏...はまだしもこの人まだ未経験ってマジ??

 

「見てくれはいい女なのになぁ...」

 

「...敬語抜きは許したけど、侮辱は許したつもりはないけど?」

 

「褒めてんだろ。ナンパくらいはされんだろ?」

 

 

 

「えぇ、それはもう沢山されてたわよ」

 

「......」ダッ!

 

「どこへ行くんだぁ?」

 

「HA☆NA☆SE!!」

 

「ふふっ、久しぶりだね?カゲロウ」

 

クソっ!ここに隊長が居るんだから警戒しとくべきだった!!そりゃ居るよな!!

 

「...っ!......ふっ!」

 

「あぁん。逃げようするなんて酷いわカゲロウ。...別に取って食うつもりだけどそんなに悪いようにはしないよ」

 

「お前そんな話し方だったか!?ジェニー!!」

 

金髪超ロングの美女、サイラッハ。

この小説を頭から読んでくれている方は分かっていると思うが、コイツ、ヤンデレである。

 

「てか取って食うつもりなのかよ!ふざけんなお前!ここはラブホじゃねぇんだよ!(特大ブーメラン)」

 

「いいじゃない。別に迷惑がかからなければいいの。丁度隊長もバグパイプもいるし、仲良く4〇(ピー音)といこうよ」

 

そう言うとサイラッハは腕を絡ませ、その豊満な恵体をカゲロウに押し付け、上目遣いで誘惑し始めた。

「儀仗隊のサイラッハ」を知る人間はサイラッハが「美しい」事は知っているだろう。しかし今、目の前にいるこの「妖しく、艶めかしき、官能的なジェニー」を知るのは幼馴染である俺くらいなものだろう。

そんなくだらないことに少々の優越感を得ながら、モスティマ達から逃げるべく必死に腕を振りほどこうと藻掻くのだが、コイツ力強ぇ!

 

「うふふ。ほらカゲロウ。バグパイプも待ってるよ」

 

「やめろ!お前達とヤると破滅しろうな気がする!」

 

これは実際そう。何されるかわからん。怒った女の子って怖いからね。仕方ないね。

 

「そもそも4人チームなのにお前は3人じゃねぇか!あと1人いんだろ!」

 

正直そのあと1人を1番警戒してる。この3人に着いてくるんだぞ?絶対ヤバいやつじゃん。

 

「あぁ、あと1人はマンドラゴラだよ。ほら、救出したあの子」

 

「え!?あのクソメスガキと組んでんの!?あんなに敵対してたのに!?」

 

マンドラゴラはヒロック郡でその時はまだロドスに加入していないサイラッハやホルン隊長と大規模な戦闘を行い、ヒロック郡をほぼ壊滅させたクソガキだ。なんでも元々本人が所属していた組織から蹴られたらしく、ロンディニウムでマンフレッドに殺されそうになっていたところを(ヒロック郡での因縁を知らなかった)俺が救出した。その後散々言われたが一度保護した感染者を荒野に捨てるのはロドスのポリシーに反するとしてそのままロドスに加入した(させた)。

 

「あいつも少しは丸くなったのか?」

 

「確かめるために私たちの部屋、行こ?」

 

くっそあざとい。可愛いのは間違いないが、ここで1歩間違えると既成事実を作られかねないので黙って逃げよ。

腕に生えている原石クラスターにアーツを流して...。

 

「ん...あっつい!?」

 

「ハッハッハ!あばよ!俺は高飛びさせてもらうぜ!」

 

「ふーん。逃げるんだ、カゲロウ」

 

「あたぼうよ!お前らに捕まると何されるか分かんねぇからな!」

 

「そっかぁ。カゲロウ」

 

 

 

前、よく見た方がいいよ

 

 

 

--------------------------------------------

 

...はっ!?

あれ...。俺は...ここは...?

鎖に繋がれてて動けねぇ!

 

「おや?目が覚めたかい。カゲロウ」

 

「モスティマ!お前これなんだよ!」

 

「何って...私は知らないよ?これ、サイラッハさん達がやったやつだし」

 

「は?」

 

「そうよ。彼女達がホテルの近くにあったロドスの駐在所にこんなところを作ってたみたい」

 

「フィアメッタ...お前まで...」

 

てか、個人の都合で一企業の駐在所を改造すんなよ。

 

「まぁ、そろそろ彼女たちも来るだろうし、朝まで期待して待ってなよ。...あ、そういえば1日余裕があるんだったね。良かったねカゲロウ。朝から晩まで酒池肉林だよ」

 

「全くもって良くねぇよ!?」

 

「ガチャ」と暗い部屋に一筋の光が差し込んだ。普段から平和な世界に住んでいる人間ならば、光が差し込む描写は救いの象徴だと感じることだろう。しかし、カゲロウにはただの絶望でしかなかった。

 

「あ、おはようカゲロウ♡」

「おぉ、見事な縛り具合だべ♡」

「...♡」

「またアンタと会えるなんて...♡」

 

上から順にサイラッハ、バグパイプ、ホルン、マンドラゴラである。4人は個人の所有物であろう水着を着込み、そのプロポーションを余すことなく存分に醸し出している。

道行く男は2度見し、女はその恵体の差から羞恥を覚えるような美しさだ。

 

「あぁ、やっと来た」

「待ちくたびれたわよ」

 

「ごめんね、モスティマさん、フィアメッタさん。私たち以外にも誘っててさ」

 

そしてもう一度、扉(と思われる箇所)が開き、そこには、金色のクランタ。

 

「遅れて済まない...あぁ、師匠...♡」

 

「ううん。まだ味見もしてないよ」

 

てかやばくね?ここどこ?ロドスの駐在所にこんなところ無かったと思うんだけど。地下か?地下なのか?てかヤバいって。

 

「なんだおめェら!はよこれ外せ!」

 

「あーあー暴れちゃって。いいの?カゲロウ。据え膳だよ?」

 

「うるせぇ!その膳毒入りじゃねぇか!」

 

「それは私たちが毒婦って事かい?酷いよカゲロウ...」

 

「心にも思ってねぇこと言ってんじゃねぇぞ!?あと嘘泣き止めろや!」

 

「もう諦めろ師匠。あなたは私たちに喰われる運命なんだ」

 

「マーガレット!お前騎士だろ!?こんな事して...騎士の誇りはどうしたんだよ!」

 

「騎士よりも女の幸せを追いかけたということだ」

 

くっそ!味方が居ねぇ!

 

「ふふふ...♡」

「じゅるり...♡」

「...アハッ♡」

 

「オ、オレは、何回ヤるんだ!? 次はど・・・どこから・・・い・・・いつ「襲って」くるんだ!? オレは! オレはッ!」

 

「オレのそばに近寄るなああーーーーーーーーーッ」

 

その時、一筋の金色が暗い部屋を切り裂いた。その金色は今にも俺に襲いかかって来そうな女性たちを襲い、俺の目の前に君臨した。

 

「ふむ、君でもここまで苦戦するか」

 

「ムリナールさん!!」

 

ムリ伯父ィ!信じてたぜ!!

 

「...気づいているか?このシエスタ全域で今日は強姦が多発している」

 

「え?いや今日のニュースは運動会一択...もみ消されてるのか」

 

「そうだ。そして強姦と言っても、被害者は男のみだ。何故か女性が男性を襲うという普段とは逆の事態になっている」

 

なるほど...ジェニー達がやけに積極的だったのはこの流れに乗ったのか?いや仮にも一企業のオペレーターだぞ?働きにくくなるような行動に衝動的に移るか?

 

「なにか外的要因が...?」

 

「そうだ。それを突き止める為に君に協力してもらう。そして外に市長がいるからサッサと出るぞ」

 

「いや、鍵...」

 

「なんだ?傭兵だった時に手錠抜けを経験しなかったのか?」

 

その後ムリ伯父に手錠抜けに関して色々教えてもらった。てかなんでアンタがこんな事知ってんだよ。おかしいだろ。仕事の机に縛り付けられてんのか?

 

------------------------------------------------

 

「やぁカゲロウ君。久しぶりだね」

 

「どうも。今は長ったらしい口上垂れてる場合じゃないでしょう?」

 

「ふふ、相変わらずだね。よし、では私の部屋に行こう。何やらきな臭い事になっていてね。我々も手を焼いているんだよ」

 

そして俺、ムリ伯父、市長(セイロンの父)は市役所へと向かっていった。

 

 




いかがでしたでしょうか。

この小説でのロドスには基本死んでしまった人物はほとんど生きている設定で進めたいと思います。(今更)

「人は死ぬからこそ美しい」という方、よろしい、ならば戦争だ。



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緊急事態

どうも皆さんこんにちは。ミステルです。

パゼオンカえっちすぎんか....?

150連でとりあえず両方揃いました!(自慢)


市長とムリ伯父に連れられて、男どもの悲鳴が聞こえる中でとてつもなく積極的になった女性達から身を隠し、ソロリソロリと歩いて居ると目の前にゴツめのガスマスクを装着したエイヤフィヤトラさんと遭遇した。

カゲロウはとっさに身構えたが、エイヤフィヤトラさんはどうやらなんともないらしく、いつもの胸焼けしそうな口調でロドスの研究所へ案内してくれた。

...なんだこの地獄。普通女だろ、叫ぶのは。

 

--------------------------------------------

 

ロドスの研究所はシエスタに座する火山についての研究を行っている。過去にこのロドスのおかげで噴火から市民を守ることに成功しており、それからはシエスタと良好な関係が続いているのだ。

完全に閉め切られた密封空間で、エイヤフィヤトラさんは「では」と話を切り出した。

 

「まず、この女性達がやけに積極的になっている現象についてです。色々話したいことはありますが、結論から言うと、これは一種のガスによるものでしょう」

 

ガス...ガス?エイヤフィヤトラさんがガスマスクをしていたのはそれが原因だとは分かったが...。

 

「すまない。ひとついいか?」

 

「カゲロウさんが疑問に思っていることは、『なぜ男性は平気なのか?』ですよね?実を言えばこのガスは男性にも作用しています。実際にカゲロウさん達にも少なからずガスの影響はあると思われます」

 

「ふむ、まずはロドスの迅速な原因の究明にシエスタ市長として感謝する。して、男性にも作用していると言っていたが、我々は特に身体に異常はない。このガスは一体どういうものなのかね?」

 

「スカイフレアさんとプロヴァンスさんの資料によると、これは全く新種の火山ガス...と言いたいところなのですが、いかんせんサンプルがないので確実な事は言えません。しかし、このガスの毒はどうやらヒトの脳に対して影響を与えるらしく、おそらく人の理性を削る酩酊状態にするもの、もしくは欲求の増大の作用があると思われます」

 

「...話を聞いている限りだと男の方が酷いことになりそうなモンだが...」

 

これはご最もな感想だろう。

世の中の強姦等、性的な犯罪の大半が男性によるものだ。そこに理性を削るなり欲求の増大なんてものが加われば、どうなるかは火を見るより明らかな筈である。

 

「これも推測ですが、おそらく元々の理性の強さが影響しているのではないかと考えています」

 

「というと?」

 

「男性は元々女性よりも性欲が強いと言われています。その分、理性も女性より強いと考えれば、多少理性を削られても耐えることが可能なのだと思います。理性を数値化出来ればいいのですが、そんなことは出来ないので皆さんにはイメージをして欲しいのですが、女性の普段の性欲を50、そして理性を100と考えてみてください。そして今回のガスで性欲が100を超える、もしくは理性が50を切ってしまったという訳です。男性の場合は性欲と理性の値を10倍にして、考えると良いと思います。1000から50が引かれても500には全く届きませんよね?そして元々のこの理性の差が今回『女性だけに作用する毒ガス』というようなレッテルになってしまっているのではないかと思います」

 

なるほど。つまりは、ガスの作用を男性はその理性で抑えることができるが、女性は抑えるだけの理性がないということか。なんて差別的なガスなんだ。

 

「...ところで、エイヤフィヤトラさんしか見当たらないんですが、他の方は...?」

 

「全員部屋でおっぱじめてます」

 

「うわぁ...」

 

--------------------------------------------

 

エイヤフィヤトラさんは研究所でそのまま研究を続けるとのことで、カゲロウとムリ伯父、市長はとりあえず今度は市役所へと向かった。街の中心部にあり、男の役員も多い市役所ならば被害の実態を把握することができると考えてのことだ。

 

「...あっ。市長!大変です!」

 

「わかっている。各自、今の段階で分かっているだけの被害を報告しろ。死傷者は出ているのか?」

 

「はい!現在、死傷者は出ていません!けが人は男性が抵抗する時に数人出ましたがいずれも軽傷で、レイプ被害は今夜だけで4桁に登りそうです!」

 

市長は頭を抱えた。一夜にして観光都市シエスタが風俗都市シエスタになってしまったことにである。ちなみに龍門のスラムではレイプ被害は1日2桁あるかといった程度である。どれ程事態が深刻なのか分かって貰えただろうか。

 

「あー...レイプ被害をこれ以上広めないためにはどうすればいい?」

 

「元手を断つしかあるまい。エイヤフィヤトラ嬢が仰られたように、火山ガスが原因ならばその付近にある鉱石を持ち帰って鑑定してもらわねば」

 

「うむ。トランスポーターはいるか!?」

 

「いません!」

 

「なにぃ!?」

 

「トランスポーターは全滅です!」

 

なんてこったい。

 

どうやらトランスポーターは全員この市役所にたどり着く前にやられた(意味深)らしく、火山への安全な道が分からないときた。いくら男にはあまり効き目のないガスとはいえ、普通に毒性のガスを吸い込んでしまえば一貫の終わりなので、どうにか火山への道を知っているトランスポーターが必要になってくる。

 

「どうするんだ。我々は安全な道なぞ知らないぞ」

 

「ロドスにトランスポーターはいらっしゃらないんですか?」

 

「いるにはいるが、全員女性だ」

 

「あっ...」

 

そうである。今回同行してきたロドスが誇るトランスポーターのスカイフレアとプロヴァンスは現在隔離部屋でにゃんにゃんもふもふ()しているので使い物にならない。

 

「どうする、ロドスに増援を頼むか?」

 

「今から頼んでもここに着くのは明日以降ですよ」

 

 

「どうやらお困りかな?」

 

 

「ん?なんだ自称100年に1人のイケメン」

 

「いやぁ、どうやらとんでもない事になってるらしいね。ソーンズが知らせてくれたよ」

 

「なるほど。で?ソーンズは?」

 

「エイヤフィヤトラさんが研究してた所を爆発させたらしくて説教されてる」

 

「お前がいるってことはケルシーセンセもいるのか?」

 

「ドクターと(ピーー)してる」

 

oh...。R.I.Pドクター。

先程から話しているのはロドスの先鋒オペレーター『エリジウム』。コミュ力化け物だ。白い髪に赤メッシュ。履歴書に「100年に1人のイケメン」と書き込もうとしたヤバめの奴でもある。トランスポーターであり、通信系統のアーツを扱う。

 

「で?フリーWiFiは火山への道知ってんの?」

 

「そのあだ名で二度と呼ばないでくれるかな?...えー、おほん。もちろん分かるさ!なんてったって僕は「じゃあ行こう、さっさと行こう」...なんか僕の扱い雑じゃない?ねぇねぇねぇ?」

 

--------------------------------------------

 

先程はおちゃらけていたエリジウムだが、仕事となるとコイツ以上に頼りになるやつはほとんど居ないだろう。仕事のオンオフがしっかりできるのもコイツが嫌われていない(好かれている訳でもない)理由である。

エリジウムは手に持った観測機を逐一確認しながら火山へとどんどん近づいていく。それに置いていかれないように俺とムリ伯父は足を早めるのだった。ちなみに市長はお留守番である。

そして俺の背中にはエイヤフィヤトラさんをおぶっている。研究するには研究者が現地に赴くのが1番だと市役所にいつの間にかやってきていた。

 

「すみません、カゲロウさん...。わざわざおんぶしてもらって...」

 

「いえ、気にしないでください。我々は火山についてはさっぱりなので、貴女が頼りです」

 

道中、火山に生息するオリジムシを見かけたが特にいつもと変わらずに石をハムハムしていた。もしここら辺のオリジムシがガスの影響を受けていたらそこらじゅうで盛りまくっていたのだろうか。そんなオリジムシを横目に少し険しくなってきた道を歩き、石をどけ、倒木を飛び越えていると、見えてきた。あれが...

 

「一応火口...なのか?」

 

俺たちがいるのは山に空いた大きな横穴だ。エリジウムの話では前回ロドスが来た時に使った穴との事だが。

 

「ここら辺にも溶岩が固まっている形跡があるのでまぁ火口と言って差し支えないと思います」

 

「...で、何か異常は?」

 

「ムリナールさん、すみませんが私を持ち上げて貰ってもいいですか?」

 

「あぁ、承知しました」

 

俺よりもムリ伯父の方が背が高い。エイヤフィヤトラさんはムリナールさんに持ち上げてもらって火口の中を覗いている。親子みたい...。全く種族違うけど。

 

「ねぇねぇ」

 

「どうしたポケットWiFi」

 

「いや...この際あだ名はいいや。君、モスティマさんとかその他たくさんの女性オペレーターと一緒にいたよね?大丈夫だったのかい?」

 

「あ〜〜...。とりあえず俺の貞操は無事だ」

 

この騒動が終わった後が怖いけど。アイツら地下室に置きっぱなしだし。

 

「...本当に?君、ロドスの中では噂になってるんだよ。『女泣かせのカゲロウ』って」

 

「俺は女を泣かせる趣味はない」

 

俺今まで女を泣かせたことあったっけ?なんでそんなあだ名がついてんの?心底疑問なんだけど。ジェニーとかモスティマなんかとは未だ清い関係だし。ロドスのオペレーターや患者には一切手ェ出してないぞ。

 

「皆さん。とりあえずこの火山ガスについて仮説を立てたので聞いてください。」

 

おっと、エイヤフィヤトラさんがお呼びか。俺とエリジウムは腰を上げてエイヤフィヤトラがいる火口の方に向かっていった。

 

おいコラちょっと待てエリジウム。なんだその顔。うぜェから今すぐやめろ。は?「女は君の気づかない所で泣いてる」?

...とりあえずジェニーとかに謝っとくか...。

 

「カゲロウ。君のその「よく分からんけど謝っとく」ってクセ、やめた方がいいよ。特に女性には」

 

「お前は電波だけじゃなくて脳波まで読めるのか?」

 

--------------------------------------------

 

.

 

...

 

 

 

.......

 

 

 

 

 

 

..............んぅ。

 

 

 

.....どこ、ここ

 

 

 

 

 

 

 

.......カゲロウ.....まっててね......

 

 

 

 

 

 

今、迎えに行くから。

 

 





なんか10人の方に評価して貰えているみたいで嬉しいです。

皆さん何か御要望の程、ありましたら是非感想欄にお願いします。



次回、カゲロウ死す。デュエルスタンバイ!!


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女難


大変長らくお待たせいたしました。




 

「この火山ガスについて私が立てた仮説は、このガスは火山由来のものでは無いということです。ここら一帯ではとてもあの媚薬とも思われるガスの元になるような物がありません」

 

なるほど。どうやらエイヤフィヤトラさんが言うには、この火山ガスは天然由来のものでは無いと。

 

「では、人為的なものなのか?」

 

「人為的...と言いますか、そこら辺はまだよく分からないんです」

 

そりゃそうだ。いくら天然由来ではないとはいえ、そこからいきなり人為的なものというのは突飛すぎるだろう。

 

「加えて言えば、このガスは理性を削る効果があるようですね。火山の中にいるオリジムシは特に異常な行動はしていませんでした」

 

オリジムシの理性なぞ元々存在しない。だからもし火山の中でオリジムシが大量に繁殖を行っていたのならこのガスによる性欲上昇のサインだったのだが、特に異常はなかったようだ。故にエイヤフィヤトラさんはガスは理性に作用するものだと考えたらしい。

 

「...どうするの?僕、一応仕事終わったんだけど。帰っていい?」

 

「ダメに決まってんだろ。おら、お前も一緒に火山に入るんだよ」

 

「ヤダよ!暑いもん!なんかよく分かんないオリジムシいっぱいいるし!あっ、引っ張らないで!髪抜けちゃうってば!」

 

「お前エイヤフィヤトラさんに行かせて自分は帰るつもりかよ!」

 

「え?...エリジウムさん、帰っちゃうんですか?」

 

「喜んで行かせていただきます」

「おいコラ」

 

おいコラ(大事なことなので2回言いました)。

 

--------------------------------------------

 

「あ゛っ゛づ い 」

 

「そりゃ火山の中だからな。あちぃわ」

 

とりあえずエリジウムも引きずって火山に連れてきた。熱い。暑いじゃなくて熱いわ。

ロドス開発の耐熱剤が無ければ死んでたな。間違いなく。

 

「皆さん。どうですか?ロドスの試薬の調子は」

 

「暑いけどないよりは全然マシなんだろ?助かるぜ」

 

「うんうん。これがないと僕たち死んでたね」

 

「それはよかったです!」

 

さて、先に行けば行くほど、熱くなるのはもちろんの事、段々とガスの濃度も濃くなっているとのことなので、一応男性陣もガスマスクをつけることにした。

別に理性を削るだけならつける必要ないと思うけどね。さすがにエイヤフィヤトラさんに欲情するほど俺の性癖はねじ曲がってない。

 

--------------------------------------------

 

「エイヤさん。あれじゃないですか?」

 

「まぁどう見たってあれでしょうね」

 

「...ここまで分かりやすいと最早清々しいな」

 

「皆さん、なにかみつけたんでs...あぁ、多分あれが原因でしょうね」

 

満場一致だ。それもそのはず、今俺たちの目の前にいるのはなんだかよくわからん機械がごちゃごちゃと取り付けられたポンペイだ。

黒曜石に齧り付いては煙突のような機械からガスが吹き出している。

 

「思いっきり人工だね」

 

「...あの機械のロゴ、カジミエーシュの企業じゃないっすか、旦那」

 

「...私は何もしていない。責任はない」

 

「あの、一応戦闘の準備だけお願いします!ちょっと観察してみましょう」

 

観察といっても岩陰に隠れて、動向を見守るだけの簡単なお仕事だ。

ポンペイ自体に特段変わった動きはない。しかし、ポンペイの特性である体から溢れ出す溶岩がそのままガスに切り替わっているようだ。

 

「...とりあえず周りを注視しましょう。絶対に近くに何か、あるいは誰かいるはずです」

 

「うん、僕もその案に賛成かな。...はい、これでいつでも僕に連絡できるよ。別れて探そうか。僕は向こうに行ってみるよ」

 

「...私は向こうを探索してみよう」

 

「じゃあ俺はこっちだな。...お互い無事で戻ろう」

 

--------------------------------------------

 

そうして別れた一行。カゲロウはなにか手がかりを探して歩いていると、小さくだが揺れを感じた。

 

「ん?」

 

その揺れはすぐに収まった。特に気にする必要も無いだろうとまた歩みを進めると、そこにカゲロウは驚くべきものを見た。

 

「おいおいおい...。マジかよ...」

 

そこに居たのはポンペイである。なんてことはない普通のポンペイ。先ほど見たあの改造されたポンペイとは別の個体だろう。同じ場所にポンペイが2体もいるとは...。どこの密林だよ()。

 

「え?あれ?やばくね?なんかこっち来てね?」

 

先程の改造ポンペイが通常ポンペイに向かって来ている。後ろからエリジウムやムリ伯父が着いてきているが、止めてくれ(懇願)。何が起こるか分かったもんじゃない。

 

「ちょっと!ヤバいって!攻撃攻撃!!」

 

「え!?なんでもう一体いるの!?」

 

この2...頭?匹?はお互いに威嚇しあっている。

 

...ん?威嚇?これホントに威嚇か?なんかすごい距離近くね?なんか膨らんだりしてる気がするんだが?

 

「あ、そういえばポンペイって爆発します!皆さん!身を隠してください!」

 

「早く言えやそういうのは!!」

 

エイヤフィヤトラにツッコミを入れながら障害物を探すも何も無い。

とりあえず遠くに走っていると、後ろからはものすごい熱気が襲ってきた。

 

「あっつ!」

 

「まずいです...。あの2匹が同時に爆発でもしたら...」

 

するとカゲロウの頭の上を影が横切った。

その影はカゲロウの後ろに着地すると、心地の良い声で歌い始めた。

 

「〜〜〜♪」

 

するとどうだろう。たちまちの間に2匹のポンペイは凍りつき、辺りは涼しいと思えるほどに氷漬けになった。

 

その影はくるりと振り向くと、

 

「...久しいな。ロドス」

 

「アンタ最高だ。フロストノヴァ」

 

フードを取るとぴょこんと耳が飛び出し、ガスマスク越しだが、その声が過去に激闘を繰り広げたフロストノヴァであることは容易に判別できた。

 

--------------------------------------------

 

「我々スノーデビルはとりあえずシエスタの民の救助に当たっている。医療の心得はないからな。そこら辺は君たちに任せたい」

 

との事だ。なんともまぁ有能な隊長である。

それに比べてドクターときたら...今頃残業してんだろうなぁ...。

だけど今はそんなことを言っている場合じゃねぇな。

 

「毒ガスって抜けるの?」

 

「抜けると言いますか、まずは新鮮な空気を吸うのが1番です。この大運動会用に大量の酸素があるはずですから、それを使いましょう」

 

「僕としても賛成なんだけど、大丈夫なの?コイツら溶けてまた動き出したりしない?」

 

「お前はあの場にいなかったからそんなことが言えるんだな」

 

 

そんなやり取りをしていると、突如殺気を感じた。

歴戦の勇士であるロドスの戦士やフロストノヴァはバックステップで身をかわし、殺気の出処を探ると、目の前には大きなクレーターができていた。

 

「...あっ(察し)...」

 

今、この状況でクレーターを生み出せる人間は居ない。ポンペイも凍っていて動かない。

つまるところ、第三者の仕業というわけだ。

 

...まぁ、そういうことですよ。

 

「あはっ、やっと見つけたよカゲロウ!」

「私を弄んだまま逃げるなんて許さないから」

 

モスティマとフィアメッタである。

先程のクレーターもフィアメッタの榴弾によるものだろう。

 

カゲロウはダッシュで逃げ出した。自分の身はもちろん、周りの人間にも危害が加わると面倒なことになるからだ。エリジウムやムリ伯父はその意志を汲むと、すぐにシエスタへの道を走り出した。

 

 

「おやぁ?どうして逃げるんだいカゲロウ。君の方から誘っておいてそれはないんじゃないかな」

 

「俺は別に誘ってなんかねぇからな!?お前らが勝手に着いてきたんだろうが!?」

 

「私の裸見ておいて生きて帰れると思ってるのかしら?」

 

「見てねぇよ!」

 

そんな言葉の応酬をしていると、また目の前にクレーターができた。

半身で確認したが、フィアメッタの榴弾ではないらしい。となると...。

 

「隊長!?」

 

「うふふ...♡ 見つけた...」

 

目が虚ろすぎる!?ハイライトどこ?ここ?

 

えっ、じゃあちょっと待ってここに隊長がいるってことはよ。

 

「もちろん私もいるよ!」

 

「ジェニィィィィィイイ!!」

 

目の前に旗が降ってきた。そんでもって多分今まで見た中で1番デカいクレーターができてる。

 

「絶対逃がさないから!止まってよ!」

 

 

あっやばい追いつかれるって。...アガッ!?

 

 

俺はジェニーの手刀を受け、一撃で意識を刈り取られた。

 

「...」

 

「...よいしょっ。...んふっ。大好き...」

 

 





マジで本当に長らくお待たせしてしまい申し訳ございません。

これからはもうちょい頑張るのでユルシテ....ユルシテ...


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裏の裏


...また闇が深いのが出てきたな...。(イベントを完走した感想)

ドロシーってさ。前になんか名前使っちゃったんだけど。どないしよ。

ま、お話どうぞ


カゲロウは揺さぶられる中で目が覚めた。

ジェニーの脇で抱えられて三半規管へのダメージは相当なものだったが、なんとか吐かずに抵抗することにした。

幸いなことにジェニーはまだカゲロウが目覚めたことに気づいていない。

 

「うぉらっ!!」

 

「きゃっ!?」

 

カゲロウはジェニーの腕を振りほどくと、フラフラと足元がおぼつかないことを悟られぬようにしゃがんだままジェニーに話しかけた。

 

「おい聞けジェニー! お前は今毒に侵されてるんだ! だから一旦止まって治療を受けろ!」

 

カゲロウの言葉はは心の底からジェニーを心配してのことだった。

 

しかし、ジェニーはニタァと口を三日月形にして微笑むと、

 

「知ってるよ、そんなこと」

 

「なら...なんで...」

 

今にも吐きそうなカゲロウを見つめながらジェニーはゆっくりと歩み寄り、目線をカゲロウと同じところまで下げると、覗き込みながら耳元で囁くように、

 

「...だって、カゲロウはいつまでたっても私を見てくれない。昔のヴィクトリアの学校の時みたいに、幼なじみみたいに私を見てくれないじゃない。...ロドスに来てからは同僚としか見てくれない。...寂しい。寂しいの、カゲロウ」

 

「...だったら」

 

「...だから...毒にかまけて襲ってやろうと思ったの。事故で終わるし、記憶がないふりをしていれば私たちの間に亀裂が入ることはない。カゲロウはそんな事しない、でしょ?」

 

「......それを言ったら全て瓦解するが?」

 

「そ、分かってる。多分今頃は皆解毒されてるよ。カゲロウが気絶している間に私が皆をシエスタまで送ったから」

 

ジェニー...。いや、ロドスのオペレーター『サイラッハ』は優秀な戦士であり、1人の乙女であった。味方を見捨てはせず、恋心には忠実であった。

そのままスクっと立ち上がると上からカゲロウを見下ろして、

 

「...だからさ。言っちゃったものは仕方ないし、これからは私自身の魅力で君にアタックするよ。絶対に振り向かせてみせる。...お互い永くは生きられないかもしれないけどさ。最後に君の隣に居られれば、それ以上に幸せなことってないよ」

 

2人は戦士故、永い時を過ごすのは無理かもしれない。カゲロウは感染者だから尚更だ。

 

カゲロウはジェニーの顔を直視出来なかった。

上を向くのがしんどいのである。

 

「ジェニー...」

 

「...///。とはいっても今のは恥ずかしいなーって...。へへ...」

 

「ごめん吐きそう...。...オエッ...」

 

「え? え? え!? ちょっと待って大丈夫!? 「おrrrrrr」 きゃーっ!?」

 

締まらねぇ...。

 

 

「あ゛ー....。スッキリ...」

 

「スッキリ...じゃないよ! ビックリしたんだからね!?」

 

カゲロウとジェニーは2人仲良く火山の中を歩いていた。フロストノヴァが氷漬けにしたのであまり暑くはなかった。

 

さて、カゲロウ達はムリ伯父らと合流した。目を覚ました女性陣も集まっており、大規模作戦を予感させる大所帯となっていた。

 

「その...ごめんねカゲロウ。どうかしちゃってたみたいだ」

 

「私からも、ごめんなさい」

 

「よしてくれよ。アンタたちが謝るなんて、らしくねぇ。明日は隕石か?」

 

「隕石って割と普通(天災)じゃない?」

 

「...確かに...」

 

----------------------------------------------------------

 

「でだ。あの改造ポンペイどーすんの」

 

「いや...それが...その......」

 

カゲロウは何気なく質問したのだが、どうにもエイヤフィヤトラの歯切れが悪い。首を傾げていると、途中からはモスティマが答えた。

 

「倒しちゃった」

 

「えっ」

 

「多分私とカゲロウの射程の間に入っちゃったんだろうね。粉々になってたよ」

 

「粉々に」

 

「そ。かろうじてカジミエーシュの会社のロゴが分かるくらい」

 

「かろうじて」

 

あっけらかんと言い放つモスティマにカゲロウは戦慄した。とてもじゃないけどポンペイは1人で倒せるような敵ではないはずだ。

 

それを粉々にしたらしいこの悪魔。いや絶対1人の犯行では無いはずだが、こやつならやりかねない。

 

「ちなみにだけど、多分このポンペイはカジミエーシュのロゴを被ったライン生命の代物だよ。こんな技術はあの国にはないはず」

 

「あんのライン超え生命がよォ!!」

 

話を聞いていたムリ伯父はそっと胸をなでおろした。胃の穴も塞がった。

 

 

 

以下、ライン生命職員の会話

 

「なぁ、あのでっかいオリジムシどーすんの?」

 

「さぁ? 上の考えることなんて知るかよ」

 

「第2の『炎魔計画』でもするつもりなのか?w なんちゃって」

 

「ハッハッハ! よせよ! それこそシャレにならなッ........」

 

「...は? お、おい? どうしたんだよ? ......ァガっ!?」

 

 

 

「......処理完了。これより帰投する」

 

 

----------------------------------------------------------

 

「皆さんに後遺症の類は見られませんでした。お疲れ様でした。私は市長に報告の行うので、皆さんは解散してもらって大丈夫ですよ。...あ、サイラッハさんだけ残ってもらってもいいですか?」

 

「あ、はい」

 

「いやいや、そんなに緊張しなくてもいいですよ。ただ貴女に感謝を述べたいだけですから」

 

「ジェニー? 待ってようか?」

 

「ほんと? じゃあ一緒に帰ろカゲロウ!」

 

そういうと、ロドスの研究員と共にサイラッハは扉の向こうに姿を消した。カゲロウは自らに生えた原石をいじりながら時間を潰していた。

 

----------------------------------------------------------

 

「さて、サイラッハさん。この度は助かりました。貴女が他のオペレーターに気付けを行っていなければ大変なことになっていたでしょう」

 

「そんな! お礼を言われるような事じゃないよ! 私はただ、やるべき事をやっただけ......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

..............で? どうだった?」

 

 

「......残念ながら」

 

 

「...そっか。まぁ1回だけじゃしょうがないよね。...今度こそデキたと思ったんだけどなぁ...」

 

「私が言うのもなんですが...あの人、全く気づきませんよね。どうやってヤッてるんです?」

 

「...カゲロウは昔から寝ると中々起きないの。傭兵の時は無理やり起きてたらしいけど、その反動でロドスでは基本仕事がない時は寝てるんだよね。...部屋に入ってさ。彼のほっぺを2、3回抓るの。それでも全く反応がなければ、私はそこでヤッてるよ。...貴女も想い人がいるんでしょ? 捕まえたいなら既成事実に限るわよ」

 

「...アドバイス感謝します」

 

----------------------------------------------------------

 

 

 

「...ぁ゛ーー。なんっか腰いてぇな...。どこかで打ったか...?」

 

 

なんてことは無い。

ただ幼なじみの腰に打たれたのだ。

 

「カゲロウ!」

 

「おぉジェニー。帰ろうぜ。アンタもお疲れさん」

 

「はい、お疲れ様です」

 

そしてカゲロウとジェニーは帰路についた。

彼女の股から流れ落ちるドロリとした白い液体に気づかないまま。

 

そして今後、さらに腰を痛める未来が待っているのだが、カゲロウはそんなこと露ほども予見していなかった。

 

「ふふっ♪ カゲロウ! 明日の運動会も頑張ろうね!」

 

「...憂鬱だぁ...。てか中止されねぇのかよ...?」

 

「そんなこと言わないの! ...夜の部も頑張るんだよ!」

 

「夜の部...? あぁ、あったなそんなの。確か順番の札を......まさか」

 

「油断してるのが悪いんだよカゲロウ! ほら! ばいばーい!」

 

「あっ、こら! 待て!」

 

 

夜はまだ終わらない。

この鬼ごっこも終わらない。

レースもまだ終わらない。

 

野望もまだまだ終わらない。

 

 

「んっ...はぁ...」

 

「ジェニー? どっか怪我したのか?」

 

「んーん? 全く! 私は元気じゃないとね!」

 

「?? まぁお前には元気が似合ってるけども」

 

「...ふふっ。カゲロウ。私から1つ教えてあげるよ」

 

「俺学業に関してはお前よりよっぽど成績いいんだけど」

 

「うるさいなぁもう! ...カゲロウ。気づいてなくてもさ、責任って発生するよ。.......んっ。んぅ...」

 

「は? 何言ってんだおめェ。ほら、おぶってやるから帰るぞ」

 

「一緒に寝よ!」

 

「ザケンナお前。俺が殺されるわ」

 

カゲロウは背後に感じる双丘から意識を逸らしながらホテルへと帰った。

ジェニーはカゲロウにバレないように位置を調整しながら液体を押し込んだ。

 

 





はい。(はい)

テラの世界には倫理観なんてありません。
故にこの小説にも倫理なんてものは存在しません。Q.E.D。

今更ですがTwitterやってるんでもし良かったらフォローしてね♡


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大乱○

いやほんっと...ごめん。


 

 

「ほら、おやすみ」

 

「ねー。だから一緒に寝ようよー」

 

「断る」

 

カゲロウはジェニーの提案に断固拒否の姿勢を見せ、さっさと自らの部屋に戻...らず。結局戻ってもモスティマとフィアメッタがいるだけで全く休まらない。

 

と、なればやることはひとつ。

 

「遊びに行くかぁ」

 

なんだかんだあのポンペイの被害があったのはほぼ身内のみ、毒性も薄く、繁華街は火山からは離れていて被害は皆無。

明日(既に午前0時は回っているため)の試合もあるがシエスタに来たからには観光もしないとくたびれ損というものだ。

 

ちなみに、運動会に出場している選手は外出時に必ず順位表を携帯することを義務付けられている。夜の争奪戦(健全)を偶発させるためだ。

 

「...ほーん。居酒屋、定食屋、龍門料理店に...極東の料理店まであるのか!」

 

よりどりみどりである。特に極東料理はあまりお目にかかれない珍しいものだ。となれば決まりだ。

カゲロウはシンプルに何でも食べる。それが美味かろうと不味かろうと傭兵時代のレーションに比べれば須らく頬が落ちるほど美味いものなのだ。

 

「すみませーん。今やってま...す...」

 

「あいよ! やってるよ!」

 

「...さっきぶりだな」

 

「お? お姉さんのツレ? こちらへどうぞ!」

 

なんでおめぇが居るんだフロストノヴァ!!

 

----------------------------------------------------------

 

「これとこれと、あぁ後はこれも美味いぞ」

 

「全部酒じゃねぇか」

 

フロストノヴァの隣へと通されたカゲロウは、そのままオススメを聞いたのだが、帰ってきた返答は全てアルコールの欄に載っていた。

 

「俺は飯を食いに来たんだよ」

 

「じゃあこれだ。スシ」

 

「スシ?」

 

見れば米の上に生魚の切り身を乗せたものだった。なんだこれは(困惑)。そもそもなんで生魚なんだ。危なくないか? 当たったらどうするんだ。

 

「そんなに美味いのか?」

 

「あぁ、美味いぞ。今まで食べたものの中で上位に入る」

 

フロストノヴァが目をキラキラさせてスシのプレゼンを始めた。

なんだか楽しそうなフロストノヴァは年相応で、まだ20にも満たない少女であることが見て取れた。中身はやはり可憐なる乙女なのだ。

 

「じゃあこれにしよう。すみませーん」

 

「酒は飲まないのか?」

 

「今日は遠慮しておく」

 

「......そうか」シュン...

 

「...すみませーん。やっぱこの日ノ本酒ってのも追加で」

 

「カゲロウ...! 私も同じのを頼む!」

 

それからしばらくフロストノヴァとの談笑を楽しみながら過ごしていると、話題はやはり運動会の話になった。

 

「カゲロウは明日2位スタートだったか?」

 

「これを奪われなければな」

 

そう言ってフロストノヴァの前に「2位」と書かれたカードをヒラヒラと見せる。

フロストノヴァは確かこの運動会には参加していなかった。だから少しくらいなら見せても大丈夫だろうと判断したのだ。

 

「そうか。ぜひ頑張ってくれ。1位の龍門の奴らも手強いし、3位は光輝な一族、4位は私とアビサルの手練たちだったな」

 

「...ごめんアビサルの手練って誰だっけ」

 

「...同じロドスの仲間を忘れたのか...?」

 

知ってるよ。てか大体想像ついてるよ。ただの現実逃避だよこれ。うわうわうわ。嫌だァァァ!

 

「...酔っ払ったのか? ものすごい動きだぞ?」

 

「ごめんフロストノヴァ、今ちょっと現実逃避中」

 

 

 

「珍しい事もあるのね。現実主義のあなたが現実から目を背けるなんて」

 

「どわっしょい!?!?」

 

変な声出た。いつの間にか頬と頬がくっつきそうなくらいの距離にスペクターの顔があった。

驚くこちらを見てクスクスと笑うスペクター。その後ろにはスカジとグレイディーアも立っていた。

 

「こんばんは2人とも。いい夜ね」

 

「やぁスペクター。体の調子はどうだ?」

 

アビサル組とフロストノヴァは直接的な関係はあまりないが、どうやら仲は悪くないらしい。

もちろん今夜が「いい夜」かと言われると首を全力で横に振るが、フロストノヴァとお酒を飲んで幾分かマシにはなった。

 

かと思ったらアビサル組が出場していると聞いてどん底だよ。どうなってんだおい。

 

「お前ら4位だったんだな。もっと上に行けただろ」

 

「...あれはルールが悪いのよ」

 

「...?」

 

スカジ曰く、「水が出ればそれは全て水鉄砲」というルールを読み、スカジは水を纏わせた大剣を、スペクターは丸鋸を使ったが、さすがにそれはダメだろとツッコミが入り、2人はペナルティを受けたらしい。その間にグレイディーアが周りの人間をボコボコにし、ほぼグレイディーア1人の活躍で4位にまで上り詰めたと言う。

 

「倫理観どこ行っちゃったの」

 

「海の底」

 

「...シャレになってねぇよ...。大丈夫だよな? 人殺したりしてない?」

 

「.........」プイ

 

「ねぇ? なんで黙るの? スカジさん? おい目を逸らすな何したんだテメェら!? おい!?」

 

「大丈夫よ。怪我人は0だと発表があったでしょう?」

 

「グレイディーアさん? 怪我人の内に死人は含まれてますか?」

 

「.........」プイ

 

「図星かよお前!」

 

どうやら開幕相対したセクハラ親父にスカジがブチ切れて殺ってしまったとの事。ちなみにたまたまソイツが指名手配犯だったが故にスカジは不問とされた。

 

「常日頃から頭の中で「王の子を孕め」ってうるさいのよ。だからついカッとなって...」

 

「...それ俺が聞いていいやつ?」

 

「...聞かれちゃったわね...」

 

スカジのターゲット欄にドクター以外の名前が刻まれた瞬間である。合掌。

 

「まぁ、なんでもいいけどよ。酒飲むか? それともスシ食う?」

 

 

----------------------------------------------------------

 

「うゅ〜〜〜〜」

 

「あはっ! あっははははははは!!!」

 

「......zzz」

 

なんだコイツら酒癖悪っ!!

スシに関してはもう本当に凍てつく視線を浴びせていた。スシが何をしたんだ...。

アビサル組曰く、「魚食べるとか、バカか?」との事である。言われてみれば確かに彼女たちはそういう感想になるのも無理は無いかもしれない。なんせ故郷や付近のイベリアで取れる魚と言えば...止めておこう。闇が深すぎる。

 

三者三様の酔い方をしているが、誰がどれかは皆さんのご想像にお任せしよう。

確かにこの日ノ本酒って強いお酒だしね。ホシグマが飲んでた「鬼殺し」も日ノ本酒の一種だった気がする。

 

「ふむ、何杯でもいけるな。おかわりを頼む」

 

「...マジ?」

 

一方フロストノヴァは既に10杯目だ。なんだコイツ。化け物か?

 

俺はそろそろ...眠く..........

 

----------------------------------------------------------

 

 

「はっ!?」

 

いつの間にか眠っていたらしい。見覚えのないベッドだった。即座に周囲を確認すると、時計と窓があるのが確認できた。時計は午前の7時を指しており、窓からはシエスタの海が一望できる。

 

「ここは...一体」

 

「私たちの部屋よ」

 

「ひょっほぉぅ!?!?」

 

また変な声出た。音もなくすぐ側に寄るのやめて貰えませんか?

...ん? スペクターたちの部屋?

 

「......」冷や汗ダラダラ

 

「ふふっ。思い出したかしら? 凄かったわぁ...。私たちとフロストノヴァを相手にあんな激しく...。まだ腰が痛いもの」

 

「あら起きたのね。もう少し寝ているかと思ったわ」

 

「スカジ...」

 

「...昨日は遅くまでお疲れ様。楽しかったわ。初めてあんなに熱くなったわね...。あなたも汗かいているでしょうし、シャワーでも浴びてきたら?」

 

「...グレイディーアは?」

 

「彼女はあの後も私たちとずっとやってたわよ。困っちゃうわ。隊長ったら1度火がついちゃうとなかなか冷めないんだから。何回やられたか...」

 

「......」

 

「あら、フロストノヴァのことを気にしているのかしら? 彼女ならほら、隣で寝てるじゃない」

 

「...........」ダラダラ

 

こんな問答を繰り返していると、ドアが開いてグレイディーアが入ってきた。

 

 

「あら、お目覚めね。ならもう一度やるわよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スマ○ラ」

 

「いや...早く帰らないとモスティマとかにドヤされる...」

 

「諦めなさい。さっきも言ったけど隊長は1度火がつくと中々消えないのよ」

 

「勝ち逃げなんて許さないわ」

 

「いやほんっと...。勘弁してくれ...」

 

そしてカゲロウはアビサル組に連行された。

 

その後、少し遅れて目覚めたフロストノヴァ。

モゾモゾとベッドで起き上がると、おもむろに下腹部に手を置き...

 

 

「......んっ...。暖かい...」

 

 

 

 

 

 

「はっ」

 

「どうしたのモスティマ」

 

「なんかカゲロウに不幸が降り注ぐ気がする...」

 

「...どうせまた女に拉致られてるんでしょ。とりあえずホルンさんの部屋見に行ってみましょ」

 

 

 

もはや安心と信頼のカゲロウクオリティであった。

 





強敵、アビサル+フロストノヴァ。

...というかなんだヤトウその格好。叡智すぎんか?


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