艦隊これくしょん 数字の底にあったもの (江藤青市)
しおりを挟む
設定
感情度・好感度コンマまとめ
基本的には章開始時に登場キャラのコンマを張りますので、先にこの子はどんな数字なのかな? と気になる方だけ見ていただければ幸いです。
こちらに名前がない子に関してはまだとっていないことになります。追加分に関しては筆者がネットダイスで判定してます。
判定の順番でご要望ありましたら、ツイッターの@kennakuteitokuへダイレクメッセージか、最新のツイートへの返信という形でいただければ幸いです。
50を平均として01に近いほど関係が悪く、100に近いほどよくなります。(00は100扱いとします)
また提督or艦娘の感情度(その人物との初対面と二人が認識したさいの印象)が10以下or90以上の場合は好感度(コンマをとった現時点での好感度)コンマを行います。
※ハーメルンでの投稿以降に決定したものは作者がネットダイスを振って、数字をとっています。コンマと区別するために最後に☆をつけます。
例
阿武隈 ↓コンマ以下8 感情度8
提督 ↓↓コンマ以下72 感情度72
↓阿武隈の感情度が10以下なので再度、好感度コンマ
阿武隈 ↓コンマ以下92 好感度92
提督 ↓↓コンマ以下00 好感度100
【感情度目安】
01~10→顔も見たくない
11~20→できればもうあいたくない
21~30→この人にはついていけそうにないorこの人、大丈夫か?
31~40→苦手なタイプ
41~60→普通
61~70→いい人そう
71~80→また会いたい
81~90→尊敬できそうな人
91~100→これからもずっと一緒にいたい
【好感度目安】
01~10→大嫌い
11~20→嫌い
21~40→苦手
41~60→普通
61~75→仲良し
76~85→好き
86~100→大好き
※また条件を満たした場合は特別な関係が発生します。発生してる場合は艦娘の感情度の後ろに記載します。
ヤンデレ→どちら一方の感情度が50以下、艦娘の好感度が86以上
ヤンデレ(強)→提督からの感情度が40以下かつ艦娘の感情度が60以上、艦娘からの好感度が91以上
共依存→二人の感情度が80以上かつ好感度が61以上
共依存(強)→二人の感情度が90以上かつ好感度が90以上
爆弾→提督、艦娘のどちらからかの感情度が90以上かつ、好感度の合計が50以下
絆→上記に当てはまらない形で両者の好感度が81以上
強い絆→『絆』以外に当てはまらない形で両者の好感度が90以上
【戦艦】
提督から金剛への感情度:04 提督から金剛への好感度:32
金剛から提督への感情度:03 金剛から提督への好感度:21
提督から比叡への感情度:20
比叡から提督への感情度:83
提督から榛名への感情度:46
榛名から提督への感情度:24
提督から霧島への感情度:62 提督から霧島への好感度:72
霧島から提督への感情度:01 霧島から提督への好感度:88(ヤンデレ)
提督から長門への感情度:55
長門から提督への感情度:51
提督からビスマルクへの感情度:21
ビスマルクから提督への感情度:79
提督からアイオワへの感情度:46
アイオワから提督への感情度:52
提督からリシュリューへの感情度:75
リシュリューから提督への感情度:46
提督から伊勢への感情度:95 提督から伊勢への好感度:81
伊勢から提督への感情度:46 伊勢から提督への好感度:02
提督から日向への感情度:90 提督から日向への好感度:80
日向から提督への感情度:84 日向から提督への好感度:100(共依存)
提督から扶桑への感情度:100 提督から扶桑への好感度:44
扶桑から提督への感情度:21 扶桑から提督への好感度:94(ヤンデレ)☆
【航空母艦】
提督から飛龍への感情度:77
飛龍から提督への感情度:46
提督から蒼龍への感情度:73 提督から蒼龍への好感度:83
蒼龍から提督への感情度:08 蒼龍から提督への好感度:89(ヤンデレ)
提督から赤城への感情度:03 提督から赤城への好感度:39
赤城から提督への感情度:60 赤城から提督への好感度:94(ヤンデレ強)
提督から加賀への感情度:32
加賀から提督への感情度:13
提督からグラーフへの感情度:92 提督からグラーフへの好感度:95
グラーフから提督への感情度:53 グラーフから提督への好感度:20
提督から瑞鶴への感情度:28
瑞鶴から提督への感情度:78
提督から翔鶴への感情度:75
翔鶴から提督への感情度:84
提督から鳳翔への感情度:59
鳳翔から提督への感情度:24
提督から雲龍への感情度:10 提督から雲龍への好感度:18
雲龍から提督への感情度:33 雲龍から提督への好感度:08
提督からアクィラへの感情度:65
アクィラから提督への感情度:80
提督から隼鷹への感情度:85
隼鷹から提督への感情度:57
提督から大鳳への感情度:68
大鳳から提督への感情度:73
提督から龍驤への感情度:100 提督から龍驤への好感度:52
龍驤から提督への感情度:28 龍驤から提督への好感度:90(ヤンデレ)
提督からガンビアベイへの感情度:58
ガンビアベイから提督への感情度:35
提督から飛鷹への感情度:05 提督から飛鷹への好感度:89
飛鷹から提督への感情度:86 飛鷹から提督への好感度:12
【重巡洋艦】
提督から羽黒への感情度:85 提督から羽黒への好感度:47
羽黒から提督への感情度:09 羽黒から提督への好感度:57
提督からポーラへの感情度:58
ポーラから提督への感情度:33
提督から鈴谷への感情度:08 提督から鈴谷への好感度:99
鈴谷から提督への感情度:36 鈴谷から提督への好感度:99(強い絆)
提督から古鷹への感情度:68
古鷹から提督への感情度:80
提督から熊野への感情度65 提督から熊野への好感度66
熊野から提督への感情度98 熊野から提督への好感度90☆
【軽巡洋艦】
提督から大淀への感情度:03 提督から大淀への好感度:19
大淀から提督への感情度:20 大淀から提督への好感度:09
提督から神通への感情度:55
神通から提督への感情度:87
提督から由良への感情度:44
由良から提督への感情度:60
提督から木曾への感情度:99 提督から木曾への好感度:100
木曾から提督への感情度:60 木曾から提督への好感度:34
提督から球磨への感情度:64
球磨から提督への感情度:25
提督から大井への感情度:77
大井から提督への感情度:30
提督から北上への感情度:38
北上から提督への感情度:41
提督から五十鈴への感情度:73 提督から五十鈴への好感度:13
五十鈴から提督への感情度:100 五十鈴から提督への好感度:11(爆弾)
提督から龍田への感情度:05 提督から龍田への好感度:62
龍田から提督への感情度:10 龍田から提督への好感度:75
提督から天龍への感情度:93 提督から天龍への好感度:22
天龍から提督への感情度:87 天龍から提督への好感度:57
提督から川内への感情度:12
川内から提督への感情度:81
提督から那珂への感情度:100 提督から那珂への好感度:83
那珂から提督への感情度:87 那珂から提督への好感度:54
提督から鹿島への感情度:15 提督から鹿島への好感度:100
鹿島から提督への感情度:95 鹿島から提督への好感度:21
提督から阿賀野への感情度:13 阿賀野から提督への感情度:15
提督から阿賀野への好感度:19 阿賀野から提督への好感度:31
提督から多摩への感情度29 提督から多摩への好感度97
多摩から提督への感情度08 多摩から提督への好感度97(強い絆)☆
提督から長良への感情度30
長良から提督への感情度40☆
提督から夕張への感情度65
夕張から提督への感情度79☆
提督から能代への感情度05 提督から能代への好感度14
能代から提督への感情度13 能代から提督への好感度78☆
提督からアブルッツィへの感情度63
アブルッツィから提督への感情度52☆
提督からホノルルへの感情度04 提督からホノルルへの好感度02
ホノルルから提督への感情度21 ホノルルから提督への好感度65☆
提督からヘレナへの感情度18
ヘレナから提督への感情度22☆
提督からアトランタへの感情度29
アトランタから提督への感情度83☆
【駆逐艦】
提督から霞への感情度:56
霞から提督への感情度:88
提督から満潮への感情度:100 提督から満潮への好感度:18
満潮から提督への感情度:62 満潮から提督への好感度:02(爆弾)
提督から曙への感情度:06 提督から曙への好感度:97
曙から提督への感情度:10 曙から提督への好感度:83(絆)
提督から潮への感情度:27
潮から提督への感情度:87
提督から不知火への感情度:74
不知火から提督への感情度:75
提督から弥生への感情度:91 提督から弥生への好感度:83
弥生から提督への感情度:43 弥生から提督への好感度:67
提督から朝潮への感情度:25
朝潮から提督への感情度;42
提督から萩風への感情度:35 提督から萩風への好感度:45
萩風から提督への感情度:07 萩風から提督への好感度:77
提督から初霜への感情度:37
初霜から提督への感情度:35
提督から綾波への感情度:96 提督から綾波への好感度:53
綾波から提督への感情度:83 綾波から提督への好感度:52
提督から敷波への感情度:05 提督から敷波への好感度:10
敷波から提督への感情度:67 敷波から提督への好感度:47
提督から嵐への感情度:21
嵐から提督への感情度:48
提督から陽炎への感情度:68
陽炎から提督への感情度:75
提督から山風への感情度:90 提督から山風への好感度:07
山風から提督への感情度:53 山風から提督への好感度:74
提督から時雨への感情度:75
時雨から提督への感情度:48
提督から黒潮への感情度:56
黒潮から提督への感情度:11
提督から浦風への感情度:68
浦風から提督への感情度:66
提督から雪風への感情度:62
雪風から提督への感情度:67
提督から夕雲への感情度:63
夕雲から提督への感情度:42
提督から雷への感情度:39
雷から提督への感情度:22
提督から電への感情度:33
電から提督への感情度:56
提督から初春への感情度:14
初春から提督への感情度:23
提督から神風への感情度:37
神風から提督への感情度:85
提督から叢雲への感情度:05 提督から叢雲への好感度:96
叢雲から提督への感情度:66 叢雲から提督への好感度:56
提督から朝風への感情度:80 提督から朝風への好感度:42
朝風から提督への感情度:08 朝風から提督への好感度:34
提督から清霜への感情度:52
清霜から提督への感情度:32
提督から睦月への感情度:69
睦月から提督への感情度:63
提督から漣への感情度:48
漣から提督への感情度:88
提督から深雪への感情度:74
深雪から提督への感情度:21
提督から長波への感情度:65
長波から提督への感情度:62
提督から春風への感情度:68
春風から提督への感情度:78☆
提督から如月への感情度:56
如月から提督への感情度:66☆
提督から吹雪への感情度23
吹雪から提督への感情度73☆
提督から天霧への感情度24
天霧から提督への感情度71☆
提督から暁への感情度56 提督から暁への好感度76
暁から提督への感情度02 暁から提督への好感度54☆
提督から子日への感情度35
子日から提督への感情度16☆
提督から白露への感情度56
白露から提督への感情度87☆
提督から大潮への感情度73
大潮から提督への感情度83☆
提督から親潮への感情度91 提督から親潮への好感度48
親潮から提督への感情度09 親潮から提督への好感度90(ヤンデレ)☆
提督から巻雲への感情度30
巻雲から提督への好感度15☆
提督から秋月への感情度78 提督から秋月への好感度31
秋月から提督への感情度91 秋月から提督への好感度94☆
提督から島風への感情度66 提督から島風への好感度17
島風から提督への感情度98 島風から提督への好感度90☆
提督から松への感情度86
松から提督への感情度69☆
提督からZ1への感情度32 提督からZ1への好感度04
Z1から提督への感情度98 Z1から提督への好感度86(ヤンデレ)☆
提督からMaestraleへの感情度33
Maestraleから提督への感情度11☆
提督からFletcherへの感情度57
Fletcherから提督への感情度43☆
提督からSamuel B.Robertsへの感情度14
Samuel B.Robertsから提督への感情度77☆
提督からJervisへの感情度64
Jervisから提督への感情度69☆
提督からТашкентへの感情度08 提督からТашкентへの好感度20
Ташкентから提督への感情度01 Ташкентから提督への好感度82☆
【海防艦】
提督から対馬への感情度:51
対馬から提督への感情度:59
提督から択捉への感情度:25 提督から択捉への好感度:18
択捉から提督への感情度:100 択捉から提督への好感度:10(爆弾)
提督から佐渡への感情度:62
佐渡から提督への感情度:41
【潜水艦】
提督から伊58への感情度:51
伊58から提督への感情度:44
提督から伊26への感情度:20 提督から伊26への好感度:89
伊26から提督への感情度:98 伊26から提督への好感度:59
提督から呂500への感情度:13
呂500から提督への感情度:31
提督からまるゆへの感情度:63
まるゆから提督への感情度:25
【補助艦艇】
提督から明石への感情度:61
明石から提督への感情度:85
提督からあきつ丸への感情度:01 提督からあきつ丸への好感度:58
あきつ丸から提督への感情度:10 あきつ丸から提督への好感度:37
提督から秋津洲への感情度:71
秋津洲から提督への感情度:36
提督から間宮への感情度:47 提督から間宮への好感度:16
間宮から提督への感情度:97 間宮から提督への好感度:100(ヤンデレ)
提督から速吸への感情度:87
速吸から提督への感情度:74
提督から神威への感情度:95 提督から神威への好感度:56
神威から提督への感情度:91 神威から提督への好感度:52
【艦娘同士】
(金剛型)
榛名から霧島への感情度:92 榛名から霧島への好感度:21
霧島から榛名への感情度:45 霧島から榛名への好感度:98
(二航戦)
飛龍から蒼龍への感情度:72
蒼龍から飛龍への感情度:65
(一航戦)
赤城から加賀への感情度:38 赤城から加賀への好感度:13)
加賀から赤城への感情度:04 加賀から赤城への好感度:76)
(球磨型)
大井から北上への感情度:12
北上から大井への感情度:49
(五航戦)
瑞鶴から翔鶴への感情度:09 瑞鶴から翔鶴への好感度:42
翔鶴から瑞鶴への感情度:31 翔鶴から瑞鶴への好感度:59
(天龍型)
龍田から天龍への感情度:20
天龍から龍田への感情度:84
(暁型)
雷から電への感情度:23
電から雷への感情度:26
電から響への感情度:96 電から響への好感度:73
響から電への感情度:14 響から電への好感度:95
電から暁への感情度:82
暁から電への感情度:20
(川内型)
川内から神通への感情度;21
神通から川内への感情度:80
川内から那珂への感情度:22
那珂から川内への感情度:11
川内から那珂への感情度:22
那珂から川内への感情度:11
(睦月型)
睦月から如月への感情度:98 睦月から如月への好感度:93
如月から睦月への感情度:55 如月から睦月への好感度:09
(空母)
加賀から瑞鶴への感情度:26
瑞鶴から加賀への感情度:68
加賀から翔鶴への感情度:15
翔鶴から加賀への感情度:84
赤城から瑞鶴への感情度:0
瑞鶴から赤城への感情度:26
赤城から翔鶴への感情度:0
翔鶴から赤城への感情度:17
赤城から大鳳への感情度:66
大鳳から赤城への感情度:37
飛龍から瑞鶴への感情度:12
瑞鶴から飛龍への感情度:82
飛龍から翔鶴への感情度:24
翔鶴から飛龍への感情度:21
飛龍から大鳳への感情度:57
大鳳から飛龍への感情度:56
飛龍から赤城への感情度:44
赤城から飛龍への感情度:15
蒼龍から瑞鶴への感情度:18
瑞鶴から蒼龍への感情度:47
蒼龍から翔鶴への感情度:0
翔鶴から蒼龍への感情度:40
蒼龍から大鳳への感情度:81
大鳳から蒼龍への感情度:34
蒼龍から赤城への感情度:75 蒼龍から赤城への好感度:52
赤城から蒼龍への感情度:09 赤城から蒼龍への好感度:60
(陸軍)
あきつ丸からまるゆへの感情度:04 あきつ丸からまるゆへの好感度:78
まるゆからあきつ丸への感情度:39 まるゆからあきつ丸への好感度:50
(西村艦隊)
山城から満潮への感情度:91 山城から満潮への好感度:99
満潮から山城への感情度:96 満潮から山城への好感度:22
山城から時雨への感情度:36
時雨から山城への感情度:47
山城から山雲への感情度:96 山城から山雲への好感度:04
山雲から山城への感情度:52 山雲から山城への好感度:88
山城から朝雲への感情度:76
朝雲から山城への感情度:87
扶桑から最上への感情度:66
最上から扶桑への感情度:76
扶桑から満潮への感情度:25
満潮から扶桑への感情度:39
扶桑から時雨への感情度:75
時雨から扶桑への感情度:27
扶桑から山雲への感情度:23
山雲から扶桑への感情度:11
扶桑から朝雲への感情度:46
朝雲から扶桑への感情度:70
最上から満潮への感情度:48
満潮から最上への感情度:70
最上から時雨への感情度:33
時雨から最上への感情度:57
最上から山雲への感情度:29
山雲から最上への感情度:24
最上から朝雲への感情度:71
朝雲から最上への感情度:76
満潮から時雨への感情度:25
時雨から満潮への感情度:87
満潮から山雲への感情度:55
山雲から満潮への感情度:59
満潮から朝雲への感情度:83
朝雲から満潮への感情度:53
時雨から山雲への感情度:56
山雲から時雨への感情度:67
時雨から朝雲への感情度:38
朝雲から時雨への感情度:81
山雲から朝雲への感情度:62 山雲から朝雲への好感度:72
朝雲から山雲への感情度:92 朝雲から山雲への好感度:17
(衝突なのです)
電から深雪への感情度:29 電から深雪への好感度:23
深雪から電への感情度:90 深雪から電への好感度:55
(鈴熊)
鈴谷から熊野への感情度71(91)
熊野から鈴谷への感情度28(48)
(曙潮)
潮から曙への感情度82(92)
曙から潮への感情度82(92)
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
発生中特殊関係まとめ
大変ありがたいことにご希望がありましたので、まとめておきます。
・ヤンデレ
どちら一方の感情度が50以下、艦娘の好感度が86以上
関係性が薄い艦娘とのコンマ判定の際に自身の数値へ-10の修正を受ける。
恋は盲目。
・ヤンデレ(強)
提督からの感情度が40以下かつ艦娘の感情度が60以上、艦娘からの好感度が91以上
関係性が薄い艦娘との感情度・好感度コンマ判定の際に自身の数値へ―30の修正を受ける。
他はいらない。
・共依存
二人の感情度が80以上かつ好感度が61以上
関係性が薄い艦娘との感情度・好感度コンマ判定の際に自身の数値へ―15の修正を受ける。
二人の世界へ
・共依存(強)
二人の感情度が90以上かつ好感度が90以上
全ての艦娘との感情度・好感度コンマ判定の際に自身の数値へ―80の修正を受ける。
全てがあの人に
・爆弾
提督、艦娘のどちらからかの感情度が90以上かつ、好感度の合計が50以下
爆発済み。
・絆
上記に当てはまらない形で両者の好感度が81以上
関係性が強い艦娘との感情度・好感度コンマ判定の際に両者の数値へ+10の修正を受ける。
アレと付き合っていけるなら、大概は平気。
・強い絆
『絆』以外に当てはまらない形で両者の好感度が90以上
関係性が強い艦娘との感情度・好感度コンマ判定の際に両者の数値へ+20の修正を受ける。
おめでとう。
【ヤンデレ】
・霧島
提督から霧島への感情度:62 提督から霧島への好感度:72
霧島から提督への感情度:01 霧島から提督への好感度:88
・扶桑
提督から扶桑への感情度:100 提督から扶桑への好感度:44
扶桑から提督への感情度:21 扶桑から提督への好感度:94
・蒼龍
提督から蒼龍への感情度:73 提督から蒼龍への好感度:83
蒼龍から提督への感情度:08 蒼龍から提督への好感度:89
・龍驤
提督から龍驤への感情度:100 提督から龍驤への好感度:52
龍驤から提督への感情度:28 龍驤から提督への好感度:90
・親潮
提督から親潮への感情度91 提督から親潮への好感度48
親潮から提督への感情度09 親潮から提督への好感度90
・間宮
提督から間宮への感情度:47 提督から間宮への好感度:16
間宮から提督への感情度:97 間宮から提督への好感度:100
・Z1
提督からZ1への感情度32 提督からZ1への好感度04
Z1から提督への感情度98 Z1から提督への好感度86
【ヤンデレ強】
・赤城
提督から赤城への感情度:03 提督から赤城への好感度:39
赤城から提督への感情度:60 赤城から提督への好感度:94
【共依存】
・日向
提督から日向への感情度:90 提督から日向への好感度:80
日向から提督への感情度:84 日向から提督への好感度:100
【共依存強】
・該当なし
【爆弾】
・五十鈴
提督から五十鈴への感情度:73 提督から五十鈴への好感度:13
五十鈴から提督への感情度:100 五十鈴から提督への好感度:11
・満潮
提督から満潮への感情度:100 提督から満潮への好感度:18
満潮から提督への感情度:62 満潮から提督への好感度:02
・択捉
提督から択捉への感情度:25 提督から択捉への好感度:18
択捉から提督への感情度:100 択捉から提督への好感度:10
【絆】
・曙
提督から曙への感情度:06 提督から曙への好感度:97
曙から提督への感情度:10 曙から提督への好感度:83
【強い絆】
・鈴谷
提督から鈴谷への感情度:08 提督から鈴谷への好感度:99
鈴谷から提督への感情度:36 鈴谷から提督への好感度:99
・多摩
提督から多摩への感情度29 提督から多摩への好感度97
多摩から提督への感情度08 多摩から提督への好感度97
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
プロローグ
始まりのこと
その脅威がもっともはやく現実になったのは鉄底海峡と呼ばれた古戦場であった。
「帰りたい、帰りたい」。そんな聲を何人ものダイバーやその関係者が聞いたというなかば怪談めいた噂がそれだった。
いわくつきの場所でのこととはいえ、霊魂や怨霊というものが陰に追いやられた現代ではそれらを事実として受けとるものなど何人もいなかった。
つまるところ酒の席でのつまみ程度にしかならない話はさして広まることなく、海からの訴えは黙殺されたのだ。すべての事実を知ったあとからみても、それは当然の帰結であった。
……けれど、ここが今後の数十年間人類史に大きな問題として立ちふさがった彼女たちと和解できたのかもしれない、最後にして、唯一の機会であった。
そうして望郷の声が静まりかえって、しばらくしたころに『彼女』たちは砲音をならし雷跡をともなって姿を現した。
腥風は一瞬にして海を覆う。血と油のにおい満ちた時代をもたらした『彼女』たちは深海棲艦と呼ばれることになる。
※
大日本帝国海軍軍令部の第一会議室には重く暗い雰囲気が漂っていた。
その中にいる誰もが大日本帝国の藩屏たる海軍の将官であるというのは煌めく肩章、勲章がなによりも雄弁に語っていた。しかし、それらの絢爛な光とは対照的に彼らの表情は落ち込み、どんよりとした沈黙が場を支配していた。
居並ぶ誰もが、我らこそ国防の要という強い自負と自信の元に颯爽と肩で風を切っている普段の姿をしっているものからしたら嘘のような光景であった。
……もとより既存の兵器の多くを無効化する未知の敵に会敵してより、彼らはいつもこの部屋でそうしている。それでも今日は特にひどかった。誰もが口をつぐみ、それを動かすのは煙草を喫むときだけという有様であった。
この空気をもたらした初撃は海軍大臣である亀元大将の一喝であった。招集を受けた全員が集まるや否や、軍令部中に響くのではないかという大音声で曰く「軍令部と聯合艦隊はなんとしてでも奴らを追い払え!」である。誰もが心の中で出来ればしていると毒づきながら、申し訳ありませんとつぶやくように返答したのだ。
それでも時間がたつにつれ、ぽつぽつと新兵器の開発だ、無人の小型艇を直接ぶつけてみてみればどうだ、といったどこかふわふわとした話をしていたのだが、つい先ほど上がった新型県の発電所が敵の空襲を受けて大きな被害を出したという報告がそれらを完膚なきまでに打ち砕き、海底のごとき沈黙をこの場にもたらしたのだった。
「秘策がある」
そんな中であったから軍令部総長・勝幡大将の一言は音量以上の強さをもって響いた。それは呟くようなものであったはずなのに、どこか春雷のようだったのだ。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
1章 1部・思い出の中に
1995年 1-1
03 21
十時日向という男がいる。年齢はすでに知名をいくばくか超えていたが、その上に逆らってでも筋道を通したがる性分がいたずらをしたのか兵学校を次席で卒業した割に出世は少し遅れて、階級は少将であった。軍令部2部長として日々国のために奉職している。つまりは兵器の開発などに携わる部署の長だ。
そんな彼は最近、ため息をついているのをよく部下に目撃されていた。
元来、彼は陽気とは真逆な峻厳実直が旨であり、部下からみると親しむというよりも畏れ敬うというタイプの上官であった。そんな人物が間を空けないといってもいいほどの頻度で嘆息するのだ。同じ部屋で勤務する部下たちからするとたまったものではなかった。
そんな憂さをはらす意味もあって、十時の新しい『癖』について色々な噂が流れるようになっていた。
曰く、妾の子供が奥方に見つかったのだとか、昔遊んだ女との子供がひょっこりと顔を見せたのだとか下世話なものが大半であったが、戦況が下には知らされないほどに悪化しているのではというものまでまさに様々であった。
しかしそれらは真実をかすりもしていなかった。
理由の一つは年々、自身の天井というものがはっきりと見えてきてしまったということだった。
それを具体的に説明すれば、少将の現役定限年齢直前に一つ階級を上げてもらい、4年ばかり名誉職をつとめて軍人としての生を終えることが自身のアガリであるということだった。それは生来帝國軍人の規範たろうと生きてきた彼にはひどく薄暗い未来に見えていたのだ。
そんな恐怖と不安に覆われて自身が尽きるのを防ぐため、彼は胸の内にまだ燃えている軍人としてのいのちの火を鼓舞せんとため息をつくのだ。くたびれた中年男のそれは少し情けなく見えるかもしれなかったが、大きく動く前にも、落ち着くのにも息を入れることは大事なのだ。
さて、一つ目は少し特殊で内面的な理由であったのかもしれないが、二つ目の理由は簡単である。誰もが抱えていると言っても、いいことかもしれない。
今任されている仕事が嫌なのだ。だから、ついつい嘆息の息が漏れてしまう。それだけのことだ。
「Hey! テートク、そんな暗い顔してたらラッキーも逃げちゃいますよー!」
そう天真爛漫。まるで太陽な笑顔をうかべて十時の肩をバシバシと叩く彼女が、その原因であった。
ははは……と乾いた笑みで返して、現実逃避も兼ねてこのやかましい少女を預かるようになってしまった日を思い出した。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
1995年 1-2
去る皐月の中旬、すこしずつ深緑の息吹が芽吹く中のことであった。新しい命を感じながらも十時は忙しく各部署を飛び回っていた。
昨年の師走より現れた深海棲艦と名付けられた敵への有効な兵器の開発という命令はいまだに解決の糸口すら見いだせていなかったが、誰もがうらやむ功績をあげる絶好の機会でもあったのだ。
今までどこか主流と外れてしまっていた自分が、すべてを巻き返す絶好機。これで奮起せずに、いつ奮起するのだとばかりに十時は張り切っていた。
そんな中でのことであった。
「総長が私を?」
「はい。至急、執務室へお越しいただくように言付かっています」
突然、自分を訪ねてきた年若い軍令部総長付秘書官に言われて、十時は首をひねった。
新兵器の案についての報告であれば数日前にしたばかりである。一度しっかりとした報告を上げれば、勝幡という男はそうせかせかと言ってくる人物ではないはずなのだ。
なにかしくじったのだろうか、などと内心で疑問を抱きながらも、彼が首を横にふることなどできるはずもない。二つ返事ですぐに向かうことを告げると、残る部下へいくつかの指示をだしてから、十時は席をたった。
※
広い海軍省とはいえ、軍令部と軍令部総長室までは指呼の間である、帽子をかぶり直し軍服を整えているうちに目的地までついてしまう。
先ほどの疑問に答えを見つけてはいなかったが、十時は厚い扉を叩いた。
「軍令部第二部長であります。お呼びと伺い、参上いたしました」
「ああ、入れ」
「失礼いたします」
「うむ。ご苦労」
甲高い声の返答をうけて部屋に入り、敬礼をすれば十時は困惑してしまった。
どかりと椅子に掛けている軍令部総長の美丈夫とも、偉丈夫ともいえる様はまはいつもどおりであったが、見覚えのない巫女服というかひらひらとした洋服とも和服とも判別のつかない不思議な恰好をした少女がその横に控えていたのだ。
「まぁ、かけてくれ。少し話が長くなる」
「は、はぁ、失礼いたします」
そんな十時の様子に我関せずと返礼もそこそこに勝幡は応接用のソファを指さして、ゆったりと立ち上がる。
「さて、なにから話すべきか」
移動してソファに腰かけるなり、軍服の隠しから煙草を取り出しながら勝幡はポツリと呟いた。
「失礼します」
「うむ」
十時の出したライターで敷島に火をつけて勝幡は大きく紫煙を
それから少しの間、ただただ勝幡は煙草を楽しむようにしていたが、十時からするといろいろと頭の中がこんがらがって混乱を抑えることに必死になっていた。
この場に呼ばれた理由も、謎の女性についても考えれば考えるほどにわからなかったのだ。
「あの、総長、そちらのご婦人は」
つい沈黙に耐えられなくなってしまった十時が目線で少女を指しながら、問うと勝幡は面白そうに薄く笑った。
「今大戦の切り札だ」
「は? はぁ、いや、失礼いたしました。しかし、それは、なんともそれは……」
突然出た意味の分からぬ言葉に、しどろもどろになりながらも十時はなんとか言葉を絞り出した。
十時からすると兵学校の二つ上であった勝幡のことをよく理解していたつもりであった。こうして自分のことを突然にからかうことも冗談をいうことも珍しいことではない。しかし、そういった時には、彼の視線には幾ばくかの温かみがあり、一目で親愛の情によって発露したものだと理解できるようになっていた
だというのに今の勝幡の目にはただただ理性と知性が浮かび、まっすぐにこちらを眺めていたのだ。だからこそ十時の混乱は拍車をかけた。
冗談ではなく本気で言っている、と。
「ふふ、どうした随分と面食らっているようだが?」
「総長の深淵なるお考えが私にはどうも理解できずに申し訳ありません」
「いや、当然であろうな。それを説明するためにも今回は第2部長を呼び出したのだ」
言われて、十時はチラリと勝幡を見やった。
いつも通りにその姿は怜悧という言葉がピタリとくるような佇まいであった。年の割には黒々とした艶やかな髪を後ろに撫でつけて、ぴったりと軍帽の中にしまいこみ、軍服はしわ一つなく完璧に着こなしていた。そして吊り上がった瞳の中には知性と理性が湛えられている。それらの要素に、薄いながらも整えられた髭をあわせると、まさに良識的な軍人として完璧といっていいようにみえた。先ほどからの狂人のような言葉がこの人間から出たとは十時は信じられなかった。
目を回す後輩に笑みを深めながら、少女へと振り返った。
「金剛、挨拶を」
「YES! 英国で生まれた帰国子女の金剛デース!ヨロシクオネガイシマース!」
「……」
「どうした? 貴様も名乗れ」
「しかし、今のは――」
「早くしろ」
「……大日本帝國海軍十時中将である」
十時は腕を組み、顔を真っ赤にしながらなんとか言葉を絞り出した。
英国、金剛といわれてピンとこない人間なぞ海軍にいるはずもない。目の前の少女は、自分は戦艦だと自己紹介したのだ。
馬鹿にされていると彼が思うのも無理もないことだった。
しかし金剛と名乗った少女はその反応がいまいち理解できなかったらしく、不思議そうに首をかしげてから、助けを求めるように勝幡の方へ眼をやった。
そんな二人の様子をもともと予想していたのであろう軍令部総長はなにかを言う前に、短くなった煙草を最後に一つ吸ってから、灰皿へと押し付けた。それは面倒な長話をするまえに一息入れるためのものだったのだろう。
「すまんな。突然のことであるが、彼女はわが軍が太平洋戦争下で使用した戦艦金剛であるというのはどうやら事実のようなのだ」
「総長……失礼ですが私も与えられた任務をこなすことで手いっぱいであります。冗談であれば、ほかのものにお聞かせくだ――」
そこまで言ってから、スッと細くなった勝幡の視線に気づき十時は慌てて口を閉じた。それは勝幡という男のいまいちどこにあるのかもわからない地雷を踏みぬいた際に、彼がとれる唯一の対処であった。
不注意にもその怒りを始めて引き出してしまった際に、気を失うほどに殴られて以来、それは彼のトラウマにもなっていた。ゆえに一種の防衛本能といってもいいほどに、十時は勝幡の感情の機微に敏感になっていた。
「……よろしい。彼女は軍艦である」
「……」
納得は出来なかったが、上官がそういうのならば仕方ないとなんとか自身を納得させて、無言で十時は頷いた。
「では、時系列を追って説明をしよう」
そういってから勝幡の口から語られ始めたのは、十時の今までの常識と、勝幡という男の正気を疑わせるに十分な内容であった。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
1995年 1-3
深海棲艦と名付けられた存在が艦艇の大小を問わずに攻撃を始め、一月ほどたったころ、勝幡はその対処に頭を悩ませていた。
人間とほぼ同じサイズのそれらが放つ攻撃は理屈では説明できないほどに強力であり、駆逐艦どころか大型のタンカーですら数発で沈めるのだ。その攻撃が船籍、大小を問わずに襲いかかる。もはや太平洋において安全な航路は消え果て、海という巨大インフラはズタズタに荒らされていた。
もちろん、それらの排除せんと、多国籍軍からなる艦隊はすでに三度にわたって派遣されていた。しかし、それらは戦果をあげることなく、ただただ深海棲艦の餌食となってしまっていた。
人類の叡知を集めたはずの各国海軍の敗因はいたって単純である。現有兵器による攻撃の悉くが無効化され、通信機器の多くが機能しなくなるからであった。
対抗策も何もないのだ。
かといって、どうにもならないの一言で片付けて良い問題のはずがなかった。連日、勝幡は聯合艦隊司令長官並びに海軍大臣と連絡をとって、対策を協議したものの、この不愉快な現状を打破する糸口すら未だにみつかっていなかった。
「まるで小説の世界だ」
ぽつりとつぶやいて、勝幡は軍令部総長室の窓からあたりを眺める。
平時であれば明かりを落とした部屋がおおくなる時間だというのに、海軍省構内は煌々としていた。誰もがその明かりのもとで頭を悩ましているのだろう。全く新しい戦術を、全く新しい兵器を、と。
……いや、正確にいえば彼らがまだ効果の有無を確かめていない兵器はあった。『核』という最終手段が。しかし、それを行使するには、非常に大きな勇気が必要であった。下手を打てば、人類を滅ぼす諸刃の刀であるのだから、それも当然のことだろう。
けれど、それを決断せねばならなくなるのも、時間の問題であるということを勝幡はよくよく理解していた。
それは大日本帝國という国家の地理上の問題が大きかった。四方を海に囲まれたこの国は、海上輸送という手段を失えば、たちまち立ち行かなくなってしまうのだ。食料自給率は4割りほどでしかなく、残りは輸入に頼っている。またそのわずかな自国産の食料を生産するにしても原油というものは必須になる。近世のころならともかく、現代において農業も機械化されており、それらを動かすためにも原油が必要なのだ。
『我が国の年間の輸入量は8億トン。これを航空輸送のみで賄うのは不可能である』
先日の会議での海軍大臣亀元の言葉であったが、全くもっとその通りであった。輸送機なぞ、せいぜい100トン程度の積載量でしかないのだ。土台、無理な話であろう。
夢想の話ではあるが、数万の航空機で輸送を行うとなれば、それらを動かすための燃料費で国家が破綻するのはすぐだろう。
今は備蓄されている燃料の放出やなんとか民間から無理やり徴収した船舶を海軍が運用し、国民の生活を保たせているが、すでに食料などの生活必需品で大きなインフレが起きている。
亀元の試算によれば、あと半年ほどで陸・海両軍の機能は停止し、食料を求めて大きな異変がおこるだろうということになっていた。
勝幡はそれらを防ぐためにも、軍令部第2部をはじめとする兵器開発を行う関係各所に現状を打破する兵器の開発を命じているが、それもなかなか芳しい成果を上げているようには思えなかった。
「……」
最悪の未来が勝幡の脳裏をかすめる。それは国家の転覆であり、秩序の全てが崩壊するということであった。つい1年ほど前に生まれた孫娘の成長と未来を楽しみにしていたというのに、それらは突如現れた謎の存在により、海の底に広がる闇のごとく真っ暗に塗りつぶされようとしていたのだ。
「なんとかせねばな……」
自身を奮い立たせるためにも呟いてから、残りの執務を行おうと振り返ると、勝幡は驚きのあまり大きく目を見開いてしまった。
机の上に軍服を着た人形が正座するようにして、自身のほうを見ていたのだ。
「なんだ、これは……」
自身の私物では決してないものがあることに驚き、何度か目をこすり、瞬きをするものの、それはいつまでもそこにちょこんと鎮座していた。
あまりの悩みと寝不足でおかしくなったのかと思い始めたその時、あろうことか人形の口が動き始めた。
『長官、深海棲艦をやっつけましょう!』
どこかピントが狂ったような発声だった。
「お、お前がいったのか……?」
『はい! わたしは妖精さんです! 一緒に深海棲艦をやっつけましょう』
「……」
目じりを抑えながら、倒れるようにして勝幡は椅子へと腰を落とした。
ついに自分はおかしくなってしまったのだろう、と勝幡の頭脳は解を出した。人形が話すなど現実であってはならないのだ。それは妄想の中、作り話の中、そして狂気の中でしか、起こってはならないことなのだから。
『長官! どうしました?』
「……いや、もう、どうでもいい。お前には深海棲艦を倒す手があるのか」
『はい! 一緒に深海棲艦をやっつけましょう』
「……それはわかった。具体的にどうするのだね」
もはや正気の世界にとどまることを、あきらめた勝幡は苦笑をうかべながら、人形の言う、その手とやらをきくことにした。
どうせ、もうおしまいなのだ。藁にでも、幻にでもすがることに抵抗はなかった。
『はい! 長官! 私たちは艦娘というものとその装備をつくることができます! それで一緒に深海棲艦をやっつけましょう!』
「かんむす……かんむすね……なるほど。それはどうやって作るのだ?」
『はい! 艦娘は鋼材と燃料と弾薬とちょっとのボーキサイトでできます!』
「……よろしい。用意しよう。詳細な量を述べたまえ」
勝幡は自分のことながら、自身の思考が分からなくなっていた。まるでとりとめのない現状をなぜか真面目に受け取り、行動しようとしはじめていたのだ。
彼の優秀な頭脳は妖精さんと名乗った存在が要求した物資と、ほかの人間に見つからないように彼らを作業させる土地を確保するためにはどうすればよいのかという計算をはじめる。
……なに、これが自分の幻であるならば物資の集積場所を一つ増やすだけだ。問題あるまい。そんな言い訳をしながら。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
1995年 1-4
「……」
すべての話を聞き終えた十時はどう答えれば良いものかも分からず、ただ視線をさまよわせることしかできなかった。
突然、現れた謎の存在に言われ、責任ある軍令部総長が貴重な物資を使ったというだけで頭を抱えてしまうが、それで出来たのが少女だというのだ。
ちらりと金剛のほうを見ると、それに気づいた彼女からは明るい笑顔が返ってきた。艦娘の材料であると聞いた冷たいものでこんなものができるとはとても思えなかった。
十時は内心、からかわれているのではないかと言う疑念をぬぐいさることができず、苦虫を噛み潰す思いであった。しかしいつまでも黙っているわけにはいかず、なんとかこの荒唐無稽な話に付き合うべく口を開いた。
「……総長、お話は分かりました。しかしなぜそうようなお話しを私に?」
「うむ。実はな、妖精さんが『艦娘は人との絆で強くなる』というのだ。貴様には彼女が多くの人との絆を結ぶ手助けをして欲しい」
「……」
絶句。あいた口がふさがらなかった。
絆で強くなるなど、娘が見ていたアニメでそんな展観があったと益体もないことを思い出してしまうぐらいには十時の理解の範疇にはない命令であった。いかに上官の命令は絶対とは言え、こんな世迷い言まで頷いて見せるのは幇間さながらの手管で出世を重ねている
胃のあたりが痛くなるのを自覚して、なんとかこの馬鹿げた命令からうまく逃げる算段を探し始めた。
そしてその答えはすぐに見つかった。擦り付けてしまえば良いのだ。幸い十時にはこんなことを喜んで引き受けそうな人間がすぐに思いついた。
「総長、己の無能をさらすようで大変申し訳ないのですが、私は今いただいている任務で手一杯であります。代わりといってはなんですが、第一艦隊司令長官の
「ああ、私もそう思って――」
「そうでしょう。あの方は随分と女性の扱いにもたけている聞き及んでいます」
「まあ、そうあわてるな」
十時のあまりに必死な様子に苦笑しながら、勝幡は新しいたばこ火をつけた。
「実はな、新発田には別の艦娘をすでに任せているのだ。奴め、貴様とは違って随分と乗り気であったぞ。どうだ貴様もここで奴を越える功績を上げられれば一気に私の後任になることも出きるかもしれんぞ?」
「うっ、いや、それはその……」
内心でくすぶっていた不純な気持ちを見透かされた羞恥心と、言い聞かせるかのような言い方への怒りから十時は口ごもってしまう。
それとは別に、おそらくは何をいってもこの男は自身にこの命令を承服させるつもりなのだろうと理解してしまったことも十時の舌鋒を鈍らせた。しかしここで諦めて上官の言うとおりにするぐらいの物わかりの良さがあれば、彼の階級はもう一つ進んでいたことだろう。
「……すでに一人預けているのであれば、この際二人になっても問題ないでしょう。私は兵士、軍艦の扱いであれば自信もありますが、女性の扱いは全く心得がございません」
「ハッハハ……! そうであろうな。随分と結婚もしないから心配していたのだぞ? それでもあのように出来た細君を最後には射止めたのだから、良いではないか」
「妻とは見合い婚です。そのように言われましても困ります」
「いやな、別に上手くエスコートをしろと言っているわけではないのだ。艦娘という存在にどういった環境が最適なのかは未だに分かっていない。だからこそ多くの例が欲しいのだ。全てを新発田、一人に任せてリスクを高める必要もあるまい?」
勝幡の言葉は理屈としては間違っているとはおもえなかったが、それでも納得出来るかどうかは別である。
最後の抵抗とばかりに十時を沈黙もって、問いへの返答とした。
「はぁ……相も変わらずの頑固者だな。よし! 貴様にも艦娘の力というものを実際見せてやろう。本日は霧島が砲撃訓練を行っている。それをみてから決断を下せばよい。車を出させるからしばしば待つように」
「……畏まりました」
十時からすれば何をみようとも自分が頷くことは決してなく、無駄な時間になることは分かりきっていた。断ろうと思ったが、上官への一応の義理と、ポツポツと突然浮かんできたなにか得たいの知れない感情から十時はいつの間にか誘いへ頷てしまっていた。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
1995年 1-5
海軍省から30分ほど車を走らせた砂浜に到着するなり、十時は目を丸くしてしまった。
深海棲艦への対策として接収されたその場には大きな鉄柱が連なり、海原を覆い隠すように暗幕が垂れ下げられていた。未だに海軍のお膝元と言って良い程度の距離しか離れていないこの場所にこんなものが作られたという話はとんと聞いていない。非難と困惑を込めて横に立つ勝幡をみやれば、まるでイタズラの成功した子供のような笑みが帰って来た。
「驚いたか? なに、こんなものでも頭の固い連中に知られんように作るのには随分と苦労するものだ。近くに棲む民間人の避難から、施設の建築までとなるとなかなか手間だったぞ」
「……」
十時は上官のそんな態度に呆れはて、ここへきたことを後悔し始めていた。。
そして上官への無礼と分かっていても自然と嘆息が漏れてしまう。
そうして意識が逸れたからだろうか、今までずっと黙って着いてきていた少女が何か言いたそうにしていることに彼は気付いた。
「総長。金剛君ですが」
「ん? ああ、金剛、どうかしたかね?」
「えっと、霧島がいるならちょっとお話ししてきても良いですカー?」
「訓練開始時間までであれば、勿論構わんよ。私たちはもう少しここで話をしているから先に行ってきなさい」
破顔一笑。返事をきくや否や、軽い足取りでステップを踏むようにして、暗幕の中へ金剛は入っていった。
そのあまりにも少女然とした様子と浮かんできた笑みの差異に十時は少しの違和感を覚えた。まだ小学校に通っている娘でもあれほどまでに全身で喜びを表すことはしない、だというのに随分と控えめな笑い方だったのだ。
別段気にとめることではない。そう思っても、一度気になってしまうとなかなか切り替えられないのが彼の悪癖だった。あれこれと推論をうかべては自身で否定しまう。
そんな部下の様子をチラリと伺ってから、勝幡は腕時計を見やった。砲撃演習までまだ4半刻ほどある。食事をするにしては短いし、ちょっと一服というには長い時間だった。
「貴様は昔からあれこれと考え込むな。いいことだ」
十時はその言葉が賞賛なのか、判断の遅さを皮肉ったものなのか分からずに逡巡してしまう。
結局、会話の間というには長い時間をかけても答えを見つけられなかった彼は、皮肉だとしても無難に収まるであろう言葉でお茶を濁すことにした。
「……ありがとうございます」
「うむ。しかしだ、判断を下すまでに時間をすこしかけすぎだ。今後はもう少し即断即決を心掛けてほしい」
どうやら後者の意味で述べた言葉だったらしい。今度は出そうになったため息を押し殺せた十時は、ゆっくりと頭を下げた。
「申し訳ありません。今後はそのように心がけます」
「いや、なに今の仕事だけならそれでいいのだ。しかし、艦娘の指揮というのはそれではうまくいかんのだ。頼むぞ」
「……畏まりました」
「だから、その間をだな――まぁ、いい。その慎重さも時には必要だ」
勝幡は出かかった叱責を紫煙と一緒にすることでなんとか飲み込むことが出来た。自分でもなんと丸くなったものだ、と驚きながら勝幡は前言を撤回した。彼のように要領よく出世してきた人間からすると、いまいち理解の及ばないことではあったが、十時が不器用な上に頑迷さを残しながら、これまで大きな問題を起こすことなく来れたのはその慎重さゆえであろうと思いなおしたからだった。
今度はしっかりと横にいる後輩を眺める。顔のつくり事態は悪くないが、いかにも軍人然として厳つさが前面に押し出されていた。身長は6尺を少し割る程度であるが、軍人としてたくわえた筋肉が体をそれ以上に大きく見せる。喋り方は少しペースが遅く、声はどっしりとして低い。おそらく見知らぬ百人に彼の職業をきけば、9割は軍人という正解を答えられるだろう。
「うむ、貴様は本当に見た目は立派だな。ああ、これは皮肉じゃないぞ」
「息子たちの目もありますので、だらしなくしないように心がけてはおります」
「ああ、
「そうであれば嬉しいものですが。怪しいものかと」
「ハッハッハ!」
元々、甲高い声質の勝幡が呵々大笑すると、その笑い声はまるで百里先まで聞こえるのではないかという錯覚を覚えてしまうほどよく響いた。聞くものさえも明るくさせるような、その声につられて十時からもついつい笑みが漏れた。
ひとしきり二人で笑っていたが、その時間はピタリと終わりを告げた。
「まぁ、侮られないのは大事なことだ」
――先ほどまでの大音声とは打って変わり、嘲笑じみた暗い表情でぽつりと勝幡はつぶやくと小さく肩をすくめたのだ。
どこか気まずい沈黙が一瞬、場を支配した。しかし、それを一瞬でうちきると、彼の顔にはすぐに豪胆な笑みが戻った。
その変貌は長くともに過ごした十時からしても初めて見るものだった。
「さて、そろそろ時間だ。行くか」
「……畏まりました」
どこか厭な感情が沸いたが、それを振り払い十時は誘われるままに暗幕の中へと歩を進めるのだった。
※
暗幕のなかにはなんとも違和感を覚える風景が広がっていた。
目の前には抜けるような青空と美しい海原が広がっている。
しかし、それを遮るように、病院を思わせるほどに白いプレハブが10あまり並んでいたのだ。それだけでも十分な異分子であるというのに、それらの窓に映る、白衣を着た人間と各種計器はさらに無機質さを加速させていた。
同時に視界へと移りこむその二つのアンバランスはひどく、いっそ滑稽にさえ見えるものだった。
そんなやや現実離れした光景に十時が度肝を抜かれていると、いつの間にか小さな影が二人の横へ立っていた。
「お疲れ様です。総長、部長、よくお越しくださいました」
突然の言葉に驚き目線をそちらに向ければ、声の主は少年だった。甲種合格(152㎝)いっているのか怪しいほどの身の丈、ふけ飛ぶほどの痩身。柴染といっていいほどに明るい髪も、大きくクリクリとした瞳も、声変りしているのか疑うほどの声も、すべてが彼を幼く見せた。しかし、白衣の下には軍服がしっかりとみえ、彼が中学生ではなく、歴っとした軍人で有るということをそれが証明していた。
「……」
「うむ。ご苦労」
驚きのあまり呆然としている十時に構わず、勝幡は鷹揚に頷いた。
「あはは……失礼しました。この研究施設の指揮を任せていただいております、松江技術中佐と申します。以後お見知りおきください」
「ん……? は? 中佐!? 君がか!?」
「ええ、よく驚かされます。これでももう30超えてるんですが、なかなか皆さん若く思ってくださるようでした。はは……」
言われて十時は松江を下から上へと何度も見てみるが、とてもではないがそんな年齢に見える箇所が一つもなかった。どこからどうみても10代前半である。唖然とする彼に勝幡はあいまいな笑みを一つこぼして、松江へといくつかの指示を飛ばした。
少し袖が余っている白衣を着ているせいか、袖章は見えないがさすがにこんなことで冗談は言うはずもない。観念するように大きくうなり声をあげて、十時はようやく松江から視線をきった。
「おいおい、今日で一番おどろいてないか」
「いえ……はぁ……そんなことはありませんが……」
「はは……よし! これからもっと驚かせてやる! あれをみろ!」
そういって勝幡は海原へと指さした。
つられるようにして十時がそちらへと目をやれば、彼はさらに度肝を抜かれてしまう。海の上に人が立っていたのだ。
「……」
今度はあまりの驚きに声も出なかった。
ピントが遅れてあってくると、その人影が先ほどまで同行していた金剛と同じような服を着ていることと、背中につけられた装備から小さな砲のようなものが四つほど伸びていることがなんとか分かった。
そして、今までの会話から、その正体について彼はあたりを付けることが出来た。
「あれが……霧島ですか?」
「ああ、そうだ」
距離が離れているゆえに詳しくは見えなかったが、その細い体のラインや恰好から恐らくは金剛と同じような少女なのだろうことが分かる。
目の前に広がる光景をもってしても、頑迷な彼の常識はそれを受け入れることはできなった。しかし、それをなんとか飲み込もうとするが、なかなか成功することはなく、ただただ無言の時間がわずかに流れる。
そんな呆然と立ち尽くす十時に構わず、勝幡はゆっくりと右手をあげた。
「砲撃開始!!」
「了解。砲撃開始!」
そして、鋭く響く号令とともにあげた右手が勢いよく振り下ろされ、『それ』は起こった。
『それ』はまるで雷鳴が如き鉄の咆哮であった。びりびりと揺れた空気が十時の全身を痛みを感じるほどにたたきつける。信じられないことではあったが、十時はそれが『艦娘・霧島』の砲撃によって引き起こされた現象なのだと理解してしまった。
「馬鹿な……」
自然と口から言葉が飛び出した。
先ほどまで霧島が立っていたであろう場所にはもうもうと黒煙がたなびき、その姿を覆い隠していた。次の瞬間、遠くで水柱が上がり、やや遅れて着弾音が届く。
その光景は十時に『ああ、あれは戦艦なのだ』と理解させるに十分なものだった。
彼の動揺が収まることをまつこともなく、立て続けにマズルフラッシュを伴う砲撃が発射される。
「どうだ? これで理解しただろう? 例の任務だが頼むぞ」
いまだに響く轟音と閃光のなかでも、不思議なほどにその言葉は明瞭に聞こえた。
「……ええ」
ゆめうつつのはざまでぼんやりと十時は小さく頷いた。
雷鳴鉄火は現実を打ち破り、物語という濁流はその残滓を飲み込んでいく。その事実に耐えるためにも彼の視線は最後の砲煙が海風にたなびき、消えるその時までずっと海原の先へとくぎ付けになっていた。
全てが終わると十時はゆっくりと空を見上げた。すでに太陽は水平線に沈む目前であったが、あと数時間もすれば月が照らす時間になるだろう。朝雲たなびく、五月雨にはまだ早いとはいえ、ゆっくりと日は長くなっていたのだ。
破顔一笑って……なんか、こう……ペカーみたいな笑顔だと思ってました……
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
1995年 1-6
……どれほど現実逃避の回想をしていたのだろうか、と十時が時計に目をやると時間はまだ20分ほどしか進んでいなかった。
もちろん、彼の目の前にはニコニコという言葉がピタリとくるような笑みを浮かべた金剛が紅茶を楽しんでいた。相手が黙り込んでいる時間ずっとそうしていたのだろう、お茶請けで出されたスコーンもだいぶ減ってきている。
「お茶かえますカー?」
「いや、いい。それで……あれだ……最近はどうかね?」
なんとも歯切れの悪い情けない言葉だった。そんなぼんやりとした問いかけにも金剛はさらに笑みを深めて、紅茶を買いに行った際に公園で子供と遊んだとか、今度は洋服を買いにいってみたいとか、色々と楽しそうに報告してくれる。しかし、それを受ける十時はどうしても笑みを浮かべることができず、黙って腕を組みながらただ相槌を打つだけしかできなかった。
あの日、任務を受けて以来、彼はこの少女をどう扱えばよいのかわからず、とりあえずそこそこ格式の高いホテルに宿泊させて好きに行動させるようにしていた。一応、危ないこと以外は色々としてみなさいと指示を出してはいたが、そんなもので結果が出るわけもなかった。勿論、十時もそのことは重々承知していたが、案というものが何もうかばないのだ。男所帯の軍隊で半生を過ごし、見合いで結婚するまで女性の手を握ったこともなかったのだから、いくら軍艦といえど女性の形をしている金剛の世話をしつつ、人々との絆云々という任務をこなせというのは十時にとって大きな難問となっていた。
くわえていえば、同時期に艦娘を預かった組はそれなりに成果を上げているというのも彼を追い詰め、焦りが頭の動きを鈍らせていた。
(やはり自分には向いていないどころの話ではなかった……。このままでは勝幡の足を引っ張るだけだ、代わりを用意してもらおう。やはり自分は新兵器開発の指揮を執る方がまだいい。明日、早朝にそう申し上げよう)
まだ金剛の報告は続いていたが、十時はそれに対する相槌すら忘れ、心の中でそう決心した。
※
翌日、軍令部総長室を訪れた十時に対して勝幡は随分と機嫌よくあれこれと話をしてくれていた。おそらく経過報告でいい結果をきけると期待していたのだろう。
しかし、それを続けているわけにもいかず、なんとか決心して十時がこの任務を別の人間に任せたいというと、勝幡は最初唖然としてなかなか次の言葉は出てこない様子だった。
受け入れてもらえたのだろうか、そんな淡い期待を十時が抱いた次の瞬間、砲音もかくやという怒声が響いた。
「こん、たーけが!! おみゃー、一度うけたことじゃにゃーか!! おおちゃくこきやがって!」
普段の怜悧な様子が嘘のように勝幡は顔を真っ赤にし、目の前で所在なさげにする十時へと罵詈雑言の荒らしを浴びせてきたのだ。興奮のあまり普段は出ないお国言葉まで飛び出しているのが、彼の怒りがすでに頂点に達していることを明確に示していた。
「……申し訳ないことだとはおもいますが、やはり私には荷が重く――」
「ぐだぐだ言うんじゃにゃー!! おみゃーはどうすりゃ任務を達成できるかだけ考えればいい!! なんもできにゃーだけならともかく、投げ出して、申し訳にゃーですなんて通るわけにゃーだろうが!!」
「しかし――」
十時の反論に帰ってきたのはクリスタル灰皿の投てきだった。
まだ理性が残っていたのか、見当違いの方向に投げられたそれは壁に当たり木端微塵になった。
「ちっ!」
あまりの剣幕にたじたじになっている十時の様子と灰皿を壊したことで少し怒りが収まったのか、勝幡は大きく舌打ちして煙草に火をつけた。
それ以上の追撃が来なかったことにホッとする十時だったが、いまいち上官がこれほど激する理由もつかめずにいた。できない人間にいつまでも拘泥して時間を無駄にするほど勝幡はお人よしではない、任にたえられないとみれば冷静に更迭するはずだというのにそのことを言ってこないことが理解できなかったのだ。
それから煙草が一本灰になるまで重い沈黙がその場を支配した。
「……はぁ、仕方ない。妖精さんに干渉しないように言われていたのだがなぁ」
なかばあきらめたようにぽつりとつぶやき、勝幡は正面にいる部下へと諭すように語りかけ始めた。
「まぁ、貴様が相手が女というだけでここまでダメになるというのは知らなかった」
「申し訳ありません」
「……貴様の子供をつかえ」
「は? いや、それはどういう――」
「わからん奴だな。艦娘という存在に母性本能や子供をかわいく思う心があるのかは知らんが、もし人間と同じようにそれらがあるのならば有効な打開策になるだろう」
「……」
「返事はどうした!」
自身の無能のしりぬぐいを家族にさせるというのはどうにも気が進まなかったが、こうなってしまえば頷くよりほかに十時には手がなかった。たとえ代案を示してもここまで結果を出せていない自分の案に勝幡が理解を示すと思えなかった。
「……畏まりました」
不承不承ながら十時は了承の返事を絞り出したのだ。
コンマをとっていないキャラの好感度なんですが、どうしたもんかなぁと。
私がダイス振って決める以外で何かいい方法ありましたら感想欄かツイッターで教えていただけると大変ありがたいです。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
1995年 1-7
その日のうちにホテルから自宅へと金剛を移すことを了承させられた十時は気の重い作業をこなしていた。
妻へ総長の縁者と偽って金剛を預かると連絡をいれるのは、もっともと気が進まないことの一つであった。色々と面倒なことになるだろうと言い訳の言葉を用意していたのだが、妻がすんなりと受け入れてくれたことには感謝をしてもしきれぬ思いだった。むしろ、予定を大きく繰り上げてチェックアウトするホテルへの支払いや謝罪のほうが長く時間をとられたほどに早い解決だった。
ほかにもこまごまとした問題はあったが、それらをなんとか彼が片付け終えたのはすでに日も落ちようとしている時間になってからだった。
「はぁ、やっと終わった……」
最後に残った家具や雑貨の手配をおえて、十時はなんとか言葉を絞り出した。
慣れない仕事をしただけに、随分と体は疲れを感じていたが、『あとは金剛を自宅へ送り届けるだけだ』と自身を鼓舞して最後の任務へと取り掛かることにした。
「ご苦労さま。今日は先に帰るが、なにかあれば自宅まで連絡するように」
「かしこまりました。どうぞお気をつけて」
「ありがとう」
部下にわずかばかりの声をかけて足早に退潮していく十時は気づいていなかったが、その後ろではコソコソと小さい呟きが飛び交っていた。
ここ最近になって様子のおかしくなった部長が、今日は全く軍務に関係のなさそうな電話にかかりきりになっていたことに部下たちはおおいに不満を覚えていたのだ。それでも昼間に軍令部総長室で大きな雷が落ちたことを知っていたためにアレコレと詮索をすることはしなかった。
それでも聞こえてくる断片的な情報から人を移動させる手配をしているらしいことをなんとなく部下たちは察していた。
すでに軍令部2部の人員は激務で消耗しきっていたのだろう。不可解なその上官の動きはあらぬ噂の種となり、それは彼らの目からすれば自分たちの不満をそらすための娯楽としか映らなくなっていた。
前大戦末期のようにやんごとない方々を内陸部に移すための手配なのかもしれないと生真面目な男がいえば、口さがない男が自身の妾か総長の妾を疎開させているのだろうといった。
ひどく浮ついた雰囲気が軍令部第2部内に漂い始めていた。
※
「ここがテートクのおうちですカー?」
「ああ、そうだ」
「へー、おっきいお家デース」
止めた車の窓から金剛はまじまじと十時の家を見ていた。
純和風の豪邸といっても差し支えないほどに立派なそれは、金剛からすれば初めて見るものだった。いままでいたホテルの近くはビルばかりであまり埼葛間というものがなく、遠くへと出ないようにしていた彼女からすればただの民家でもふしぎなもののような気がしたのだ。それに和風というのが彼女は随分と気になっていた。
『昔』の記憶がどれだけあるかというのは艦娘たちの中でも随分とちがうようだったが、金剛はそれを靄がかかった写真程度しか持ち合わせていなかっただけに初めて順和風というものをみた思いだった。
声をかけなければ、ずっと駐車場の横に見える家を眺めているのではないかと思い、少しの決心をしてから十時は金剛に声をかけることにした。
「……さぁ、荷物は離れの君の部屋に運んである。いこう」
「Yes!」
「あ……! ま、待って――」
十時の言葉に金剛は待ってましたと言わんばかりに飛び出していってしまった。
もう一度、しっかりと家を正面から見ておきたかったのだ。誰も見ていないのだ、普段は遠慮してる満面の笑みを浮かべて家の前に飛び出して、しっかりとその館を見ることにした。
まるでホテルのテレビでみた旅館のようだ、そう金剛は思った。平屋の母屋は随分と広さがあるらしく、どこか威容という言葉が似あうような雰囲気があふれている。ちらりと横を見てみれば手入れをしっかりとしている庭と、雨戸が半分ほど嵌められた縁側がみえた。
(Oh! シシオドシがあるデース!)
そんな風に興奮しながら彼女が庭を見ていると、突然、正面の引き戸から人影が出てきた。
現れたその少し背丈の低い人物は目の前にいる金剛に驚いたのか、しばらく固まってからやっと言葉をつぶやいた。
「あの、えっと、どちらさまでしょうか……何か御用でしたら母を呼んできますが……」
それは随分と中性的な子供だった。少し低い声がかろうじて男の子だろうと金剛に推測させたが、はかなげで細い体や紅を引いたのではないかと疑うほどの美しい唇がそれを否定する。しかし、よくよくみてみれば骨ばったところがあり、なんとか最初の答えに金剛を立ち戻らせた。
先ほどまでの自身と同じように固まってしまった金剛に困惑するさまはどこか背徳的な美しさがあり、普段は陽気にふるまっている彼女ですらドキリとして気まずく思ってしまうような雰囲気が漂っていた。
「お兄様、金剛さんよ。お母さまがいってたでしょ?」
しばし、どちらも言葉を発せずに見つめあっていたが、少年の陰から飛び出すように現れた少女がそれに終止符を打った。
「ああ、そうか。失礼しました。十時の息子の航です、よろしくお願いします」
「Um……こ、金剛デース……」
妹の言葉に合点がいったのか、得心したように頷いてから少年は深々頭を下げた。しかし、そんな所作一つとってもどこか気品と色香があるように感じられてしまい金剛の言葉は尻すぼみになってしまう。
そんな彼女の様子に不思議そうに首を傾げたあとに、少年は横へ立った少女のほうへ顔を向ける。
「玲子、挨拶しないと」
「はーい。玲子です」
短く、どこかそっけなく言った妹に航は苦笑して「すいません」と金剛にもう一度頭をさげた。
「えっと、父さんはご一緒では……?」
「あの、その、お家をよく見たくて車から先に飛び出して来ちゃったんデース……」
「ああ、そうなんですか。ずっとイギリスにいらしゃったんですものね、気になりますよね」
そんな何気ない所作一つとってもなんとも言えなかった、どこか消えてしまうのではないかという微笑をうかべて、少年はゆったりと頷いた。烏の濡れ場色とはこういうものなのだろうと思ってしまうほどのすこし長い髪がそれと同時に動くさまは、まるで柳が微風に漂うような風情であった。
「ねぇねぇ、お兄様、イギリスって本初子午線が通ってるところでしょ? 勉強したもの」
「ああ、うん。そうだね」
玲子と名乗った少女は兄の意識が別のところに向いているのが気に食わないようで、そんな唐突なことから始めて次々とイギリスのことについて兄へと投げかける。それに困ったようにしながらも律儀に航は頷いていた。
そんな様子を見ながら金剛は似ていない兄妹だな、と思った。態度一つとっても静と動であり、髪色も闇夜の帳を思わせる兄と明るく輝くような妹はまるで違う。まじまじと見るまでもなく、二人の共通点はお人形のようということだけだった。目の形ですら、細く垂れてどこか焦点が合っていないのではないかという退廃的なそれと、つり目がちではあるがキラキラとして少し生意気な印象を受けるそれでは、まるで正反対だった。
しかし自身の姉妹を思い返してみれば、声以外はそれほど似ていない。そんなものなのかと一瞬納得しかけたが、目の前の兄妹ほどではないと思いなおした。
それに容姿だけならともかく、服までも狙ったように正反対なのだ。黒いカラーシャツに黒いスキニーパンツと髪色と同じように黒一色の兄と、白いワンピースの妹。
ここまでいくと一人は養子なのかもしれないとまで金剛は思ってしまった。白いものが混じっているとはいえ、十時の髪色からすれば妹の方が養子なのだろうか? けど、兄の方の雰囲気はまるであの人の息子とは思えない。どっちなのだろう――?
「ただいま」
そんな風に、うんうんと悩み始めた金剛の後ろから低く重い声が響いた。
それにハッとして、後ろを振り返れば家主である十時がやっとやってきたのだ。後部座席に置いていたであろう書類を小脇にかかえ、金剛には見せたことがない笑みを浮かべていた。
「お父様、おかりなさい!」
「こらこら」
妹の方が父へと一目散に飛びつくと、困ったようにしながらもそれを満面の笑みで受け止めた。
その様子は一目で先ほどまでの考えを否定するほどに、そして何故か金剛にはまぶしく思ってしまう程にあたたかな家族の一ページの一つだった。
「お姉さんにちゃんと挨拶したかい?」
「うん!」
「そうか、そうか。えらいな」
「きゃー」
大きく、ごつごつとした十時の手が玲子の頭をなでるたびに彼女の両サイドについたシニヨン――お団子が揺れた。
「どうかしましたか?」
「え? Um……な、なんでもないデース!」
金剛が父と娘との様子を食い入るようにじっと見ていることを不思議に思った航が尋ねると、金剛は驚きのあまり少し飛び上がってしまった。
それはただ声をかけられただけでも、そんな風になってしまうほどに無心で二人を眺めていた証拠だった。
航はその反応の原因がどこら辺にあるのかわからなかったのか、首を傾げたのちになにか勘違いをしたらしく、あいまいな笑みを浮かべて金剛へ頭を下げた。
「お客さんの前ですみません。父は家と職場とは随分と違うようですので、面食らってしまいますよね」
コホ、コホと小さく咳をして、そう言う航の横顔は図らずも上村松園の美人画もかくやと言わんばかりの色気が浮かんでいた。
そのあまりの儚さに少し驚きつつも、金剛はすぐに視線をじゃれあう父と娘のほうに戻した。そこには先ほどまでとは変わらない光景が広がっていた。
(きっとああいうのはこの国には一杯あるんデース……)
美しい光景だった。あれを壊すようなことはあってはならないのだろう。
そう金剛が思った途端、ぼんやりと自身の中が暖かいもので満たされていくのを感じ、大きく頷いた。
初めて彼女の中で自身が守るべき――守らなければならないものを見つけたと思ったのだ。
彼女が艦娘として生まれて以来、ただただ『戦い、国を守れ』と言われていた。勿論、艦娘としての本能なのか、それに否を唱えることは一つもなかったけれど、どこかその命令は空虚で伽藍洞なものに聞こえていたのだ。
それが初めて少し埋まった気がした。
金剛は自身を妹の霧島ほどに頭がいいとは思ってなかった。だから、国と聞いただけではその中身が想像ができないのだろう。一つ一つ自分で見てみなければ今後もこれが満たされていくことはないだろう。
艦娘は兵器なのだ。それでも心というものがある――少なくとも彼女はそう思っていた。だから、もっと暖かいものを集めようと決心した。
――それがあれば、前のように沈んでいくとしても冷たい海の底ではなく、もっと素晴らしいヴァラハラへの道しるべになるかもしれないのだから。
Twitterでの報告から投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。
ここら辺から色々と書いてかないと最後のほうで違和感ある可能性あったので、割かし試行錯誤してしまいました。
お団子は大事
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
1995年 1-8
目の前には闇が広がっていた。
後ろに続く長門、大和を導くようにして、彼女はそれを振り払って進む。至近にある台風の影響のせいか、ひどい風と雨が、激戦に次ぐ、激戦で悲鳴を上げている体を打ち付けていた。しかし、それもあと一踏ん張りで終わる。
やっと本土へと帰ることができるのだ。
ここのところ彼女の中にいる人間たちも戦況の悪化や鳥海のことで暗い気持ちになっていたようだが、このことについては随分と明るい思いが浮かんできているようだった。
そんな思いと周囲を固める水雷戦隊は彼女自身を勇気づけていた。
※
「金剛さん、おはようございます」
「……」
部屋の外から聞こえてきた声で金剛は目を覚ました。
なかなか回らない頭のせいか、ぼんやりと周囲を見渡して自身の置かれている状況をやっと理解することができた。
昨日、この家に連れてこられ、夕食をとった後にこの離れをあてがわれたのだ。今までと打って変わった環境になかなか寝付けなかったせいか、まだ睡魔は彼女に追撃を仕掛けていたが、大きく伸びを一つすることでやっとそれを追い払うことができた。
「……? 金剛さん? なにかありましたか?」
「なんでもないデース!」
「コホ……失礼しました。朝食の準備が整っていますので、よろしければ居間のほうへお越しください。まだ早いようでしたら後でお持ちしますが、どうしましょう?」
「OK! すぐに行くから待ってて欲しいデース」
「はい」
短く返事をした後に、コホ、コホと小さい音を伴って声の主は部屋の前を後にしたようだった。
夕食の際に航はあまり体が強くないと聞いていた金剛であったが、彼が朝から随分と咳をしていたことが少し心配だった。
まだ時計は6時を指しておらず、ホテルではゆったりと過ごしていた金剛からすればなかなかに早い時間である。しかし、間借りさせている身で手間をけさせるのは気が引けてしまう。
未だに誘惑してくる布団を何とかやっつけて、寝巻から用意された服へと着替えた。
着替えを終えて、最後に艤装でもあるので持ち出しを禁止されている髪飾りの代わりであるカチューシャを慎重に装着しようと姿見の中の自身を見ると、彼女はなんだか笑ってしまった。どうしてあの厳めしい鉄の塊であった時とのギャップがひどいのだ。少し癖のある枯茶の髪は腰よりも長く、肌はまるで深窓の令嬢のように白く染み一つない。どこからどうみても軍艦ではなく、女子大生である。
Hmm……と唸って、少し表情を動かしてみる。
完璧だ。ちゃんと笑顔が出来てる。
そのことがちゃんと確認できると金剛はすぐに居間へと向かった。
※
「Good morning!」
漂ってくる朝食のいい匂いにつられたのか、満面の笑みを浮かべながら金剛は居間への障子を勢いよく開けた。
その突然の大声にまだ眠たそうにしていた玲子がビクッと反応する。そんなちょっと抜けた妹の反応に苦笑しながら航はゆっくりと頭をさげた。
「あれ? テー――じゃなかった、トトキさんはもうお出かけなんですカー?」
「はい。先ほど海軍省から電話が来て登庁しました」
「なるほどネー」
頷いてから、昨日と同じように玲子の横へと腰を下ろすと目の前にはすでにおかずが並べられていた。
ギンダラの切り身、お浸し、お味噌汁。あとはここに白米がくれば、完璧と言っていいほどの日本の朝食だった。今まで菓子パンなりを食べていた金剛からすると、その漂う匂いは腹の虫を刺激するのに十分すぎるものだった。
そんな生理現象をなんとか抑えようと必死に格闘しているうちに、十時夫人である珠子がおひつをもってやってくる。
「おまたせしました」
控えめな声でそう言った彼女はまさに航の母親と一目でわかる態であった。
血が通っていないのではないかと思うほどに白い肌と椿を思わせる唇は鮮やかなコントラスを描き、ただそれだけでこの奥方の印象を儚く薄幸なものにさせていた。長く伸ばした鮮やかな黒髪とあわせて、金剛からすればどこか妹の榛名を思わせる風貌であった。しかし、そのほっそりとしたうりざね顔は妹に比べると随分と大人びていて、未来の榛名といった方がピタリとくるかもしれない。
そんな彼女であるが、航とは違い体の方は丈夫らしく、昨日から金剛が見ている限りはかなりテキパキと家事をこなしているようだった。
今も金剛がまじまじと彼女を見ていると、いつの間にか白飯がよそられた茶碗が自身の前に置かれていた。
その早業驚いて顔を目を上げてみれば、ちょうど目が合い、微笑が返ってきた。
「さぁ、冷めてしまう前にどうぞ」
「えっと……Yes……」
それは同性である金剛でもたじたじになってしまうほどの艶やかな表情であった。
少し慌てて金剛が味噌汁をすすってみれば、口の中に程よい塩味と暖かさが広がった。
「あ、美味しいデース……」
ひょっとすると今まで一番美味しいと感じたかもしれない、そんな味に正直な感想が自然と出てしまっていた。
「それは良かったです。なにか苦手なものがあったらおっしゃってくださいね」
「あの、多分、なんでも大丈夫な筈デース」
そう言ってから、金剛はこの体になってから食べてみたものをいろいろと思い返してみるが苦手だと思ったものはなかったと思う。
ついつい感想が出てしまっていたことが気恥ずかしく、それを誤魔化すように少し多めにご飯を口に運ぶ。
それからの朝食の時間は誰一人として食事中に声をあげることはなかった。音といえば、玲子と金剛がときおり鳴らす箸の音だけで、兄と母のほうはそれすらない。十時家の居間にはただただ沈黙の時間が流れていた。
しかし、そんな時間も金剛からすれば、なんとも不思議に感じるものだった。沈黙というのは随分と気まずいだけのものだという認識があったが、今この場に横たわるものは質を全く異にするものだったのだ。
どこかこの味噌汁のような温かくてホッとする、そんな時間。そんな風に金剛はこの沈黙の時間を捉えていた。
「ごちそうさまでしたデース」
最後に残った漬物を食べ終えて、かみしめるようにして金剛はそういった。
少しこの時間が終わってしまうのが名残惜しかったのかもしれない。
※
食事を終えた金剛はどうにも手持ち無沙汰になってしまった。
朝食の片づけは珠子にやんわりとだが、はっきりと断られてしまったのだ。昨日までなら一人でぶらぶらとしていても楽しく感じたが、どうにも今日はそんな気分にならなかった。
なにか誰かと話をしてみたい。そんな気分なのだ。
ウロウロと家の中をしていれば、縁側に座る玲子と航を見つけた。
どうも玲子の髪をいじっているようで、邪魔をしてしまうのではないかという思いが一瞬よぎったが、思い切って声をかけることにした。
「えっと……二人で何してるデース?」
「え? お兄様に髪を結んでもらってるの」
言われてみれば、玲子の頭には昨日までのお団子がなかった。
女性としてはこういうことにも気を配らないといけないのか、と金剛は少し虚を突かれた思いだった。
色々と情報を収集をして、女性のお洒落といえば服という認識であったが、髪型というものも大事なのだろう。建造されて以来、そこにはとんと無頓着で、艤装の邪魔になってはいけないとただストレートに垂らしているだけでいじることはしてなかった。
「見てても良いですカー? 私もそういうお洒落してみたいデース」
「ええ。お兄様はとっても器用だから、参考になるとおもうわ」
「Wow! それはとっても羨ましいデース」
「ははは……別にそんなたいそうなものでもないんですけれどね。この子が不器用なだけです」
兄の言葉に玲子は抗議しようとしたが、『動いたらうまくできないよ』という言葉で動きを止められてしまった。
そんな二人の様子についつい笑みが漏れてしまった金剛であったが、当初の目的を思い出して玲子の頭へ目をやれば、先ほどの言葉が謙遜だったことが十分に分かった。彼女の目から見ると航の指はなにか別の生き物のようだった。
腰よりも長いのではないかという玲子の明るい茶に近い髪を縛ってツインテールにすると、それを三つ編みにしていく。随分と細かく編み込みを入れているのか、鶴の羽を思わせる細い指はせわしく、整然と動いていた。
そして、その作業がおわると、作られた三つ編みがサイドへと巻いてまとめられていく。
「Hmm……」
「さぁ、終わったよ」
「ありがとう!」
自分にはすこし出来そうもないと金剛が唸っているうちにすっかりと玲子の頭にはかわいらしいお団子が二つできあがっていた。
「あれ? まだ髪結い終わってないみたいだけど、いいんですカー?」
昨日は気づかなかったが、玲子のお団子からひょこりと残ったツインテールの先が伸びているようだった。
どうやら航もそのことを気にしているらしく、苦笑をうかべていた。しかし当の本人である玲子はそれがこの髪型の肝なのだと言わんばかりに、少し胸をそらして自慢するような様子だった。
「可愛いでしょ? フレンチクルーラーとツインテール一緒にできるのよ?」
「え? お団子じゃないんですカー?」
「お団子なんてなんか子供っぽい言い方じゃないもん。ね、お兄様」
「いや、それはどうかな……はは……」
「Hmm……」
なんとも歯切れの悪い兄の言葉に少し不満そうにしている玲子であったが、金剛の知識からするとフレンチクルーラーというものがいまいち理解できなかった。もう少し勉強をしてみるべきなのかと思うと先ほどまでとは別の唸りが漏れてしまう。
最初にうけた『普段は普通の人間のように生活しろ』という命令を完遂するためにはどうも勉強することはまだ多いようだった。
「あ! そうだ、金剛さんもやってみたら?」
「え?」
「うん! 金剛さんもきっと似合うわ。えっとここら辺の両サイドにつけるの」
そういって玲子は金剛の耳当たりの高さあたりを指さした。
似合うのだろうか? そんな疑念もあったが、せっかくなのだからやってみたいという思いもあった。
そんな相反する思いに更なる唸りを上げて、考え込んでしまう。そんな金剛の様子を、自分の提案が受け入れられるのかと少しワクワクとしながら玲子は眺めていた。
「……OK! やってみたいデース!」
「やった!」
「Yes! それじゃあ、ヨロシクオネガイシマース!」
3分ほどの葛藤の末、決断を下した金剛は玲子の隣にドカリと腰かけて航へと背を向けた。
「え? いや、その……」
「あれ? どうかしましたカー?」
「それは、なんというか、あの、女性の髪を触るというのは――」
「なによ、お兄様、私だって女性じゃない」
「いや、玲子は家族だから……」
ごにょごにょと言葉を濁しながら、航は今まで金剛が見た中でもっとも深い苦笑をうかべていた。
こんな彼の態度を見るまでは金剛の頭からはすっぽりと抜け落ちていたことがあった。髪は女性の命ともいうほどだ、美容師でも家族でもない人間がいじるのは気まずいことなのだろう。
迷惑をかけてしまったかもしれない、変な人だと思われたのではないか、せっかくお話が出来たのに避けられるようになってしまうかもしれない――
そんな負の感情が溢れそうだった。
「Sorry……」
普段の明るい降るまいからは想像できないような蚊のなくような謝罪の言葉だった。
そのあまりの豹変ぶりに航はおおきな驚きを覚えた。それでも納得してくれたのならば、良かったと前を向けば、そこには怒気を浮かべた気の強そうな顔がまっていた。
「別に金剛さんが良いっていうんだから良いじゃない」
「そうはいってもなぁ……」
「意地悪!」
「う、うーん……」
すっかり拗ねてしまったようで、プイとそっぽを向いてしまった妹に航は頭をかきながら苦笑するしかなかった。
こう言う頑固なところは実に父譲りなのだろう。兄の困惑をみても玲子には譲歩しようとする素振りもなかった。
一方で、そんな兄妹の様子に金剛も困り果てていた。自分の迂闊な一言で喧嘩のようになってしまったのだ、先ほどから落ちていた形のいい眉はさらにハの字になってしまっていた。
暫し気まずい沈黙がその場を包もうとしたが、それよりも早く航は自身が折れることを選択した。
「はぁ……仕方ないなぁ。あの、金剛さん、髪に触らせてもらっても良いですか?」
妹の機嫌も航からすればどうにかしなければと思うものだったが、それ以上にそんな悲しげな顔をしている金剛に気付いてしまったのが止めになった。
わがままに付き合わせることへの申し訳なさから痛む胃のあたりをさすりながら、なんとか言葉を紡いだ。
たったそれだけのことで変化は劇的だった。
「やった! ね、金剛さん、お揃いにしましょ?」
随分と元気なことに玲子の顔には先ほどまでが嘘だったかのような大輪の笑みが浮かんでいた。
その変貌ぶりに金剛は驚かされたが、少女の純真無垢な笑みは先ほどまでの暗い気持ちをどこかへ追い払うのに十分すぎるほどのものだった。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
幕間 2017年 私と艦娘が険悪な関係だと?
私と艦娘が険悪な関係だと? 大淀編-前編
申し訳ありませんでした。
すでに深海棲艦があらわれて20年以上の時間がながれていた。その長い時の中で多くの制度や人間の生活はそれに対応したものとなっていた。
突如現れた脅威からの守護を名目に大日本帝国海軍はその活動範囲を大きく広げ、米英海軍とともに大海の支配者の一人として君臨していた。
物語の中心となる鎮守府はそんな流れの中で建造されたもののうちの一つだった。
※
鎮守府執務室には重苦しい沈黙が横たわっていた。この場に気の弱い人間がいれば、胃が痛くなるほどだろう。
その状況を作り出しているのは一人の男だった。
部屋の主であろうそれが、口を真一文字に引き締め、寄らば斬るとでも言いたげな雰囲気が漂わせているのだ。これでは執務室が深海のような雰囲気になってしまうのも無理のないことだっただろう。
見た目からすれば恐らく30代半から40代程であろう。眉間に大きく刻まれた皺と鋭すぎる容姿のせいで、詳しい年齢は分からなかったが、先ほどの推測で恐らくは間違いないだろう。
階級章はこのいけすかなく見える男が中将であることを示していた。多くの将官が失われ、鎮守府の乱立から軍での出世が早くなったこの時代でも、異例といえるほどに早い立身であった。
一種、この男の存在が、長く続いている深海棲艦との戦いの中で海軍がある種の病に侵されている証明であった。
その病の名前は戦果主義という。
実力や結果次第で出世がかなうといえばきこえはいい。しかし、それが世に言うブラック鎮守府やこの男のような化け物を生み出す原因の一つとなっていた。
「……提督、こちらを御覧下さい!」
秘書艦を務める大淀の一言に、目線は取り掛かっている書類から一つも動かさずに男は少し頷くことで答えた。
性格というものは顔にでるというが、それに従うならこの男は随分とキツイ性格をしているのだろう。そして、残念なことにこの男に限ってはその言葉は正鵠を射ていた。
「これは写真機か?」
目の前のものに興味がないことがありありと分かるほどに、ひどく平たんな声であった。それは聞きようによっては、非難の色や怒気などが含まれているように感じるかもしれないほどであった。
普通の艦娘であればひるんでしまうかもしれないその物言い。しかし大淀は、この男との長い付き合いの中で、そんなことにいちいち反応していては秘書艦など務まらないことを重々理解していた。
どこか事務的な印象を受けるほほえみを絶やさずに、持っているカメラをグイっと提督の眼前へとさらに近づけた。
「はい。しかし、ただのカメラではないんです」
「というと、明石謹製か」
そこでやっと興味がすこし向いたのか、鋭いというよりも険しい目線がしっかりとカメラをとらえた。
しかし、一瞥して外見上のそれは何の変哲もないものであるということを確認するとすぐに視線は書類へと戻ってしまった。
「ふん、見た目はただの三脚とカメラだがな。なにか特殊な機能でもあるのか?」
その一言に、大淀は待ってました言わんばかりに胸をはって――自身の発明でもないというのに――答える。
「なんとですね! これで写真を二人で撮るとお互いの相性や好感度が分かるんです!」
「……なるほどな、それで艦娘同士の関係を測り、艦隊運営の役に立てようかと言うのか。素晴らしい発明ではないか」
「え?」
一瞬の間をおいて、大淀の予想していた答えから、斜め上の回答をだした提督は満足そうに大きく頷いていた。
「なにか明石には褒章が必要かもしれんな」 とつぶやくように言ってから、目の前の大淀が唖然としていることにやっと気づいたようだった。
「なんだ、その反応は」
その表情が気に入らなかったのか、もともと逆ハの字の眉はさらにその角度を鋭いものにしていく。
これ以上怒らせるのはまずい。大淀はそう確信して慌てて言葉を紡ぎ始めた。
「あのぉ、提督、ご自身と艦娘とのことはお気になられないのですか?」
「別に。どう思われようが命令さえ聞くのであれば問題ない。違うか?」
「……」
「……なぜ黙っている? それとも私と艦娘の間にはその前提を覆すほどの溝があるとでもいいたいのか?」
「あ、いえ、そういうわけではないのですが……」
「では、どういう意味だ? なにもないのであれば、さっさっと執務に戻れ」
「あのですね、おそれながら申し上げますと、一部……そう、ほんの一部なんですが、提督のおっしゃるようなことをする艦娘がいる可能性もあるかもしれないなんて、おもったり――」
「何ッ!? どういうことだ!!」
「も、申し訳ありません……」
大淀の言葉があまりに想定外のものだったのか、目をむいて提督は怒声を上げた。
そのあまりの大きさにとっさに大淀は身をすくめてしまう。この鎮守府では敵の砲撃よりもこの怒声を恐れている艦娘も多かった。
流石に大淀はそれほどに怯えたわけではなかったが、平然としていては小言の追撃がくることも理解している。これが最善だと理解しての反応だった。
「……ちっ。取り乱したな、続きを」
「あ、あのですね、提督は生真面目で寡黙な方ですので一部の艦娘からはやはり畏敬といいますか……」
「はっきりと言え」
「……それでしたらざっくばらんに申し上げますと、やはり提督を怖がってしまって、転属願いを出した子もいまして――」
「はぁ!? ちょっと待て!? 冗談はやめろ!」
「いやいや、それが冗談じゃないんですよ!」
「馬鹿をいうな! おかしいだろ? なんだ、私が気に食わないのは別に構わん。しかしだ、軍人がそんなに簡単に転属願いなどだしていいのか? そこまでされるほどに私と艦娘との関係は悪いということか!?」
血管が切れたのではないかと思うほどに顔を真っ赤にして男は叫ぶ。
艦娘が自主的に転属願いを出したという例は今までにない。何事も先陣を切ることを好む男でも、そんな不名誉に一番乗りするのは嫌なのだ。
居心地悪そうに小さくなっている大淀にその鋭すぎる視線が突き刺さった。
そんな様子に、大淀の中でも今まで抑えてきた何かが切れた。
「そういう娘を説得している私にいわれましても……」
「はん! 馬鹿者の翻意もできない己の無能を棚に上げて、よく抜け抜けといえたものだな!?」
大淀は決心して放ったはずの嫌味も更なる嫌味によって押しつぶされてしまった。
不機嫌を隠すこともなく、提督はブツブツと小言を続けていたが、そんなことに付き合っていては一日が終わりかねなかった。
更なる決心――それも不退転のものをきめて、大淀はその小言を遮ることにした。
「と、とにかくですね、親密になりやすい相性がよい子達からでも良いので艦娘と交流していってほしいんです。その手助けにするために、この『感情度測定写真機』を開発したんです」
「むぅ……お前の考えは分かった。しかし、私も忙しい。そんなことをいちいちしている暇はない」
「えぇ……それでしたら艦娘との関係をどう修復していくおつもりなんですか……?」
「面倒であるが、すこしずつ改善していくようにしよう。だが、今はその転属を願っている者の対処だけで問題あるまい」
「……」
「で、その馬鹿は誰なのだ? 私が直に会って、叱責せねばな」
「はぁ……お言葉ですが、それではなにも解決しません。提督はこの鎮守府の雰囲気についておもうことはありませんか?」
「さっぱりお前の言いたいことがわからんな。各種物資が途切れることもなく、本国がこの地への民間人の入植を進めていただいたことで娯楽に関しても問題はないはずだが?」
「……そういったこと物質的なことではありません」
「下らんな、貴様のセンチメタルに付き合う気はない。馬鹿者の対処に関しては私のほうで引き継ぐので、書類をあとでまとめてもってこい」
言葉の通り、興味を失ったのだろう男の視線は机上の書類へと戻ってしまった。
こうなっては何をいっても聞かないことを残念ながら大淀は理解している。
故・勝幡元帥が築いた軍令部のドッグで建造されて以来、大淀は失敗らしい失敗に陥ったことはなかった。ゆえに唯一、転属願いを出された鎮守府の秘書艦などという汚名をかぶることは我慢できない。
秘書艦というのは、その鎮守府の顔でもあるのだ。鎮守府の運営で過失があったとなれば、秘書官にもその責任の一端があったとみられるのが通例となっていた。
暗澹たる未来を幻視してしまった大淀のカメラを握る手に自然と力がこもる。この一帯では南方海域総司令部に次ぐほどの大きさを誇るといっても何十とある鎮守府の秘書艦で終わるのを大淀は良しとしていなかった。
ここで大きな実績を上げて、中央に戻るのだ。そして艦娘出身の初の参謀になる。その野望のためにもここで躓くことは許されない。
言ってダメならば、実力行使で認めさせるしかない。普段は冷静沈着を旨にしている彼女であったが、それはそんな焦りに押し流されていた。
「提督! お覚悟を!」
「……ちっ! なんだ――」
パシャリ!
すこし間の抜けたような音だった。
昨年引退した野球選手ではないが、写真の右下に自身の顔が映るように自撮りをしたのだ。勿論、その奥にいる提督もしっかりと写真の中に納まる。
こんな苦肉の刑をおこなうことはしたくはなかったが、自身の数字を見せることで提督を説得しようと大淀はしたのだ。
長い付き合いだからこそ分かる。
この手の男は嫌っていたり、信頼していない艦娘を近くに置くことはしないはずだ。だからこそ、そんな相手から見るに堪えないような数字が出てくれば、翻意して、ことの重大さが分かるようになる。
この作戦は大淀自身に大きな痛みがあったが、それでも背に腹はかえらない。
少しの間は数字に叩きのめされた提督から色々と言われるかもしれないが、鎮守府の雰囲気が変わって成果さえ上げていけば自身に感謝をするかもしれない。
それが、いささか甘い見通しであることは大淀自身も頭の片隅では理解していた。しかし鎮守府の空母をまとめている赤城から連日にわたって上がっている報告から推測するに、モチベーションの向上は戦果の拡大に大きく寄与することは間違いないように思えた。
間違ったことはしていない。そんな確信を込めて、今後、数年にわたって鎮守府へ嵐を巻き起こすことになるカメラの最初のシャッターは押されたのだった。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
私と艦娘が険悪な関係だと? 大淀編-後編
提督から大淀への相性:03 提督から大淀への好感度:19
大淀から提督への相性:20 大淀から提督への好感度:09
「ちぃ!? なにをするのだ! この粗忽ものめ!」
顔を上げてみれば突然のフラッシュであった。この短気な男でなくても怒るだろう。
その当然の怒りを受け流して、大淀はカメラの下から出てきた写真を目の前に持っていく。
瞬間、すさまじい衝撃が体を駆け抜けていった。
「ブッー!」
「はぁ!? いきなり噴き出す馬鹿がいるか!?」
「す、すみません」
そのあまりの驚愕を大淀は体内にとどめておくことができず、勢いよく口から飛び出していってしまった。ありていに言えば思いっきり噴き出してしまった。
一方で、そんな部下の奇行に怒りよりも戸惑いが勝ったのか、提督は続けるはずだった叱責をなんとか飲み込むことを成功させた。
「ちっ! もういい! で、なぜいきなり写真をとったのだ」
「私の数値を見ていただければお考えも変わるかと思いまして……」
「下らんな」
「はい……申し訳ありません……」
大淀は手中に納まる手紙をもう一度みてみたが、先ほど見えたものと寸分変わらない数字が躍っていた。
ここにきて、大淀は自身の計略が根本から覆されたのを大きく実感していた。
もう終わりだ。
こうなってはどうにもならないと理解した彼女は、そっとその写真をポケットの中へとしまおうとした。
しかしそれを予想外の一言が遮った。
「で、撮ってしまったものは仕方ない。それを見せて説明せよ」
最悪だった。
自身に対してこんな数字を出した提督が、この数字を見るというのは事態を好転させるどころか悪化させるだけになるだろう。
拒否しようにも先ほどまでの言動から自身の数字が高いものではないというのは、すでに把握されているはずだ。人の気持ちが分からないと評されるこの男でも、頭のほうは切れすぎるほどに切れるのを大淀はよくわかっていた。
進むも地獄、引くも地獄。大淀からすれば、すでに現状は限りなく詰みに近いものに感じられていたのだ。
「? どうした?」
「い、いえ、やっぱり数字なんて見ない方がいいかなぁなんて思いま――」
なんとか紡ぎだしていた大淀の言葉は、目の前で顔を真っ赤にして、睨みつぶさんとでも思っているほどの提督によって完全に止められてしまった。
引くことは地獄どころか、まず選択肢にないことを理解した。
もうこうなれば開き直って一戦交えることでしか、自分には未来はないのだ。
「それでは説明させていただきます、青色の数字が感情度になります。なので、提督と私の相性や初印象がかなり悪いといことになります」
完全に開き直った大淀の口はよどみなかった。
しかし、予想されていた雷は落ちることもなく、提督はその説明に鷹揚に頷いただけだった。
「なるほどな。さすがは明石の頓珍漢な技術といったところか、私のほうでは異存のない数字だ。まさか、お前もこのように思っているとは想像もしていなかったがな」
「……そして、その下の桃色の数字が好感度――つまりは現在の好悪を数字にしたものです」
「なるほどな、ちなみに最も相性がよい場合はいくつで表示される?」
「100ですよ。それをたったの3ですよ、3。随分と長いことお仕えしてきましたが、こんな風に思われているとは思いませんでした」
「……」
やってやった。
言った大淀自身でも驚くほどに綺麗に出てきた嫌味に、内心で小さくガッツポーズしてしまいそうになる。
目の前にたたずむ男が普段よりも小さく見えた。これは追撃する好機――
「はん! 20も大概ではないか! べつに職務に私情を挟んでるわけでもなし、なんとでもいえばよかろう? それともなにか、私がすべての艦娘を愛している博愛主義者だとでもおもっているのか? それだとすればお前は随分とめでたい頭をしているな! はっはっは……今度からは私の頭はお花畑です、と初対面の人間には挨拶したらどうだ? そうすれば私も貴様のことを今よりも深く理解できていたぞ! 大したこともできない奴だと思っていたが、それすら買いかぶりであったとは驚いた! 驚きのあまりに心臓が止まるかと思ったほどだ。まさか、嫌っている私の心臓を止めようとでもしていたのか? それであればお前は随分と素晴らしい策士だな! もう少し私が年を食っていたら成功していただろうな!」
やはり鎮守府司令長官ともなると戦機を見るに敏なのだろう。
このままではイニシアティブを奪われるとすぐに理解したらしい。嫌味は何倍もの量と切れ味をもって、大淀へと降り注ぐことになった。
そしてそれは大淀のすり減った自制心を破壊するには十分な威力であった。
「だー! もうこうなったら、いいますけどね?! 私はあなたのその偉そうな態度が元から好きじゃないんです! 一番最初に会った時も挨拶もなしで、作戦についての伝達だけって私のことなんかまるで眼中にない感じで最悪の気分でしたよ!」
「ふん! 私もお前のその小賢しく、領分を超えたところにも嘴を入れようとするところは全く好かんな!」
最初は売り言葉に買い言葉だったとはいえ、その後も両者譲ることはできなかった。長く仕事をしていた関係だけに積もった鬱憤も相当なものなのだ。
罵声の応酬は10分を越え、遂には頂点をむかえようとしていた。
両者肩で息をして、一呼吸いれる。最終局面に相応しい一撃を模索する大淀であったが、ふいにそれはすかされることになってしまった。
提督が視線を大淀から先に外したのだ。
「……ちっ! もういい!」
「なにがいいんですか!?」
「そんなことも分からんのか? こんなことで時間をつぶしていても仕方ないということだ! 書類の整理へ戻れ! 私も業務に戻る!」
ここにきて大淀はしっかりとした確信を得た。
このままこの男がのさばっていれば鎮守府が崩壊しかねない。
……いや、転属願いを出されるなど、もう半分崩壊しているようなものだ。この喫緊の課題を解決するためにもこうしてはいられない。
「私はこれで失礼します!」
「は? まだ書類の整理は――」
「こんな状態の艦娘とでは仕事も進まないでしょう! 後任には、どうぞ、ほかの艦娘を探してください!」
「……お前は自身の職務を放棄する。そういうことだな?」
それは今まで大淀が聞いてきた中でも最も底冷えした声だった。
今までの感情のままに発射されていたものとは種類が違うそれには、歴戦の艦娘である彼女でも一瞬ひるんでしまった。
それでも、大淀はさらに踏み込むことを決め、自身を射抜いているどろりと絡みつくような視線を振り払った。
「はい。そのほうが鎮守府の運営でも効率的かと」
「ふん……そうか。勝手にしろ」
身勝手なこととはわかっていたが、これ以上、この場に止まることは感情的にできそうもなかった。
しかし不思議と、それとは相反する気持ちも大淀にはあった。この部屋を出る前に引き留めの言葉があるのであれば、いま起こったことを水に流すのはやぶさかではないのだ。
嫌いな人間とはいえ、長い付き合いである。頼まれたことを無下に出きるほど、彼女は冷たくはなれなかった。それに人間に必要とされ、それに応えるのは艦娘の本分でもある。
……加えて、一瞬の感情で失うには秘書艦という地位は重いようにも思う。
多くの艦娘と交流がある自身が協力すれば、こんな人でも鎮守府を立て直すこともできるだろう。
さぁ、部屋を出る前に、一言を――
「……」
しかし、そんな大淀の思いを裏切るように背後からはただただ無機質な書類をめくる音だけが聞こえてきた。
もはや提督は自身をを必要とはしていない。そう確信するのには十分すぎる対応だった。
退出する際の扉は驚くほど重く感じられた。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
1章 2部・業火の先へ
1995年 1-9
自身のものより少し小さな手に引かれ、金剛は河川敷を歩いていた。
吹き抜ける薫風はうららかな昼下がりをより心地よいものとさせ、深海棲艦による脅威など遠い世界のことなのではないかと錯覚させるのに十分過ぎるほどに穏やかな時間がその場には流れていた。
「もう少しよ」
その言葉に合わせて、玲子の歩調がやや早まる。
そんな彼女の楽しげな様子に釣られて、金剛も自然と笑みが漏れた。
端から見れば年の離れた姉妹のようにも見えただろう二人のあとを、ゆったりとした歩調で航が続く。
妹が金剛を遊びに行こうと誘った際、迷惑になるからと嗜めた彼であったが、いまの二人の様子を見るに余計なお節介であったようだ。
それでもふわふわとした二人の足取りに、少しの懸念を覚え、しっかりと釘をさすことは忘れない。
「あんまりはしゃいだら危ないよ」
「はーい」
「了解デース!」
「……」
玲子に向けていった言葉に金剛まで反応してしまい、航はそれ以上の言葉をつづけることは出来なかった。
父から大事な客人と聞いていた人に失礼なことをいってしまったのではないか、と少し心配した彼だったが、それはどうやら杞憂だったようだ。
前を行く二人は先ほどの言葉などまるで聞いてなかったのようで、スキップを踏むような足取りが改められることはなかった。
その様子に苦笑をうかべることしか彼には出来なかった。
※
家から歩くこと10分ほどで三人は目的地へと到着した。
そこにあったのは木造の民家にしか見えない建物であった。しかし、その軒先にはガシャポンが並び、店の中の棚には多くの駄菓子が並んでいる。
昭和からタイムスリップしてきたことを疑うほどに、それは昔ながらの駄菓子屋であった。
金剛の知識の中では多くあるはずだったそれだが、現代では多くが廃業してしまっていた。
初めて実物をみたというのに不思議と懐かしい感じを覚えて、困惑してしまう彼女であったが、それ以上に興奮を抑えられなかった。
感性が純真な子供に近い金剛には、ここに来る途中、玲子に教えられた限られた金額でお菓子の買い食いをするという一種の遊びが、随分と面白そうに感じられたのだ。初戦とは言え、最上の結果を出さんと、金剛は500円玉を握りしめると、獲物を狙う猛禽の如き視線で駄菓子を選び始めた。成年に近いだろう美女がするにはあんまりな行動に、航は失礼とわかっていてもなんとも言えない視線を向けてしまった。
それは駄菓子屋の店主であるお婆さんも同じようであったが、航がぺこりと頭を下げると不審ともいえる彼女が、常連である二人の連れだと理解したようで、あたたかな笑みがその表情に戻った。
「お兄様」
「……ああ、ごめん、ごめん。今週はお手伝い少なかったから200円だけだよ」
「えー」
「わがまま言わないの」
「ちぇ! いいもん!金剛さん、一緒に選びましょ!」
「Okネー!」
随分とこの二人は波長があうようで、この短時間ですっかりと打ち解けあったようだった。あーだこーだと実に姦しい様子でお菓子を選んでいく。
その様子に安どの息を一つ漏らして航もいつもと同じように、ゼリー棒、餅飴、フルーツヨーグルトをとると会計をいち早く済ましてしまう。
女性の買い物は長いというが、玲子に関しては駄菓子にもして同じである。買うものが常に決まっている航は店先に出て、妹のそれが終わるのをまつことにした。
「お兄様、いつもそれよね。たまには別の買わないの?」
「いいの、これがすきなんだから」
「ふーん。あ、金剛さん、それパチパチするのよ」
「パチパチ?」
「うん!パチパチ!」
出ていこうとした兄の背中に、少し不満気な声をかけた玲子であったが、関心はすぐに移ったようでアレコレと言われることは避けられたようだった。
内心でホッと一息ついて封を開けたゼリー棒をすすりながら、ベンチへと腰を下ろした。
ふっと視線を上に向ければ、そこには真っ青な空が広がっていた。
「ふぅ……」
来年になれば、海軍兵学校の受験資格を得る彼だが、未来ある少年には少年なりの悩みがあるようだった。まるで老人のようなため息を一つして、残っているゼリーを一気に流し込んだ。
いつもであれば、買い物も終わる時間がたっても、今日は金剛という連れがいるせいか買い物はなかなか玲子が駄菓子屋から出てくることはなかった。
ぼんやりと空を眺めて、手持無沙汰な時間を過ごしていた彼だったが、その油断がいけなかった。
「お? 十時君のところの坊主じゃないか?」
突然聞こえてきたその言葉に航は心臓が止まるのではないかというほどに驚いてしまった。バクバクとなる胸の鼓動を無視して、顔を上げると、そこにはよく見しった背の低い男が、いつの間にか目の前に止まった車の窓から顔を出していた。
「あ、こ、こんにちは」
「ああ、こんちは。なんだい、今日は嬢ちゃんと一緒じゃねぇのかい?」
「あ、えっと……」
「ん? おぉ、なるほど。女の買い物を待ってるってぇわけかい。そりゃあ、いい心がけだ。大人になりゃあ、その我慢を何度もしなきゃいけなくなるってもんだよ。今のうちに慣れておきな、はっはっは……!」
「あ、あはは……」
航が反応するよりも早く男は人好きするような笑みを浮かべて、一口に言葉をまくしたてる。航からすれば父から悪評だけをよく聞く相手だったが、なるほど、一対一で話せばよくその理由が分かった。質実剛健を旨とする父とは正反対なのだ、反りが合わないのも当然であろう。
曖昧に相槌を打つだけの航に対しても、言葉が途切れないのだ。これは一種の才能といってもいいだろう。
この多弁すぎる男の名前を
「お、まだそれ売ってるのか、懐かしいねぇ。うちの親父は下駄の職人でねぇ──あぁ、坊主は下駄ってはいたことあるかい? あれはいいもんだぜ、歩いてみれば足下からカランコロンと実に風流な音がすんだよ。実に小気味いいもんさ。もうちょい大きくなったら買ってもらいねぇ、坊主は色白で和服も似合いそうなもんだ。少し値は張るかもしれねぇけど、男たるもん、粋に洒落を楽しまなきゃいけねぇよ。でさ、下駄職人てのはあんまり儲かるもんじゃねぇんだよ。その倅なんだから、俺もガキの頃は贅沢ってもんがなかなか出来なかったんだけどよぉ、たまの小遣い握って、そういう駄菓子買ったもんだよ。はっはっは……!!」
「そ、そうなんですか……」
「俺も久しぶりに一つ買っていくか──とっと、いけねぇ、いけねぇ。そんな暇ねぇんだった。いけねぇよなぁ、貧乏暇なしっていうが偉くなっても暇なんかありゃあしねぇ。そんじゃあな、気ぃ付けて帰んなよ!」
急いでいるという割には随分と喋っていたが、窓を閉めるなり車を急発進させるあたり、それが本当なのか会話を終えるための方便だったのかはいまいち判然としなかった。
真相がどちらであれ、航としては呆然とその去っていく様を眺めているしかなかった。
早口で捲し立てられる言葉の多さからか、この一連の会話でどれだけ時間がたったのか、いまいち判然としなかった。しかし、後ろからの声が聞こえなくなっているあたり、二人の買い物が終わるには十分なぐらいには言葉の濁流を浴びせられていたらしかった。
そして、日吉の車が見えなくなるか、どうかという頃合に、膨らんだビニール袋を抱えた金剛が興奮を隠せない様子で店から飛び出してきた。
「お待たせシマシター! コウ君、見てクダサーイ! 500円でこんなに一杯買えたネー!」
「お兄様、おまたせ。? どうしたの?」
「え……ああ、うん、なんでもないよ。あの、それと、金剛さん、そんなに食べて夕飯大丈夫ですか?」
「大丈夫デース! こう見えて、一杯食べられんだヨ-!」
「あはは……そう、ですか」
一難去って、また一難というわけではないが、実に嬉しそうに話す金剛も先ほどまでの日吉に負けないぐらいによく口が回っていた。駄菓子ぐらいで妙齢の女性がこんなに喜んでくれるというのは航には予想外だったが、帰国子女には珍しい体験であったのだろうと納得することにした。
……これは航にはあずかり知れないことではあったが、金剛は何も駄菓子でこんなにも喜んでいたわけではなかった。勿論、それも理由の一つではあったけれど、なによりも誰かとお買い物をしたという事実が嬉しかったのだ。
なにはともあれ、混じりっ気のない天真爛漫な笑みと言葉に、航はさきほどまでの苦笑や追従といった卑屈な笑みではなく、自然と口がほころぶの感じた。
このあとは家に帰って、お菓子を食べながら妹の遊びに付き合うことになっていた。
せっかくの休日なのだ、楽しまねば損である。帰路を急ごう。
目次 感想へのリンク しおりを挟む