【蜘蛛ですが、なにか?】短編集 (ジェノヴェーズェ)
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原作のIF
IF1:蜘蛛子がマザー攻略に、もっと慎重に動いていたら 前編


この度は拙作「【蜘蛛ですが、なにか?】短編集」に目を通していただき、ありがとうございます。
この作品では、作者が思いついたネタを執筆して投稿していく予定です。
あらすじにて注意事項をご確認いただいてから、本作をお楽しみください。

今回は、原作でも在り得たかもしれない可能性をネタとして思いついたので、執筆して投稿しました。
前編と後編に分けているので、まずは前編のほうをご覧ください。


上層に戻ってきて、数日。

強い魔物がうようよいた下層や環境が最悪だった中層では出来なかった、ゴロゴロくつろぐ生活を満喫しているわけだけど、そんな生活を送っていても不満に思っていることが一つある。

おそらくマザーが発信元と思われる、私の魂に繋がるラインから送られてくる指令。

私の場合、外道無効のスキルがあるから指令を無視することができるけど、それでも指令の存在自体が鬱陶しくて我慢できない。

なにより、私の意思を完全に無視して強制支配しようとしてくる存在は、例えマザーが相手だろうが許すわけにはいかない。

なので、これからマザーに反撃していくことにした。

 

マザーが私を支配するために繋いでいる魂のラインに並列意思3人を送り込み、そのラインからマザーの魂……精神?に侵入させて攻撃する。

生まれた時からマザーに送られてきた指令は、私の魂に少なからず影響を与えてきた。

なら、こっちがマザーの魂に乗りこむことでお返しすることにしよう。

まあ、真正面から戦ったりなんかしたら、絶対と言っていいほど私が負ける可能性が高いという理由もあるけど。

ともかく、マザーへの反撃は、私が一方的に攻撃できるだろう魂というフィールドで、というのは決定事項だ。

 

そんなふうに考えていた私だけど、ふと思った。

「あれ?ぶっつけ本番でマザーに攻撃仕掛けるのは、流石に無謀じゃね」、と。

 

今まで多くの戦いをくぐり抜けてきた私だけど、これからやる予定の魂同士の戦いなんてものは初めての分野だ。

外道無効のスキルで私の魂へのダメージはゼロになるとは予想しているけど、それはまだ立証できたわけじゃない。

なにより、いざ戦いを始めてみたら、想像を絶するようなとんでもない事態が起こったなんてことも、十分に考えられる。

それが私にとって有利な形で起こってくれればラッキーだけど、マザーの利になる場合だったら最悪だ。

そんなことにならないように、マザー相手に仕掛ける前に、一度並列意思による魂への攻撃がどんな感じになるのか実験しておいた方がいいはず。

 

というわけで、さらに魂のパスを経由することでマザーの眷属に入り込んで、魂への攻撃について実験してみようと思います。

並列意思の諸君、そういうわけだから実験にちょうどいい個体を探してきてくれたまえ。

[本当に人使いが荒い……]

{でも確かに、魂への攻撃がなにをもたらすのかは確かめておいたほうがいいだろうね}

〈さっそく行ってくるばいー!〉

 

 

 

並列意思たちに、マザーから繋がる魂のパスを通して実験対象になりそうな個体を探してもらった結果、1体のポイズンタラテクトで実験を行なうことに決まった。

もっと強いのなら、グレータータラテクトや、さらに上のアークタラテクトという魔物もいるわけなんだけど、こいつらマザーの便利な手駒っぽいんだよね……。

生まれたばかりの我が子をムシャムシャする無慈悲なマザーだけど、手下として優秀な奴らに手を出されたら、その時点で私を敵と見なして襲ってくることも十分に考えられる。

それより実力が劣る魔物なら、大した戦力じゃないから手を出してもマザーは気にしないはず……と思う。

だけど、龍相手にも大ダメージを与えることができる圧倒的な強さのマザー相手が本番なので、貧弱な強さの個体だと実験にはならなそう。

グレーターよりも弱くて、かつそれなりの強さは持っている魔物で実験したい。

そんな感じで私に選ばれたのが、このポイズンタラテクトでした。

おめでとー!

というわけで、残念だけど死んでもらう。

 

既に並列意思の魔法担当1号が、ポイズンタラテクトに入り込んで魂への侵食を進めている。

あくまで実験だから、1人分の並列意思で魂への攻撃という実験をやってもらってる。

最初はマザー相手に3人分の並列意思で攻撃するつもりだったけどね。

実験の経過は、順調ってところかな。

いつものようにHPを0にして倒すのとは勝手が違うから、多分だけどね。

時間はそれなりにかかるみたいだけど、こっちは当初の想定通りダメージを受けることなく一方的に攻撃できている。

外道無効のスキルのおかげで、私は無敵なのだ。

逆に言えば、外道無効とまではいかなくても、外道耐性のスキルが相手にあると、魂を侵食する効率も悪くなると思う。

今の段階でマザー相手にこれをやったら、攻略完了までえらく時間がかかることになっただろうなー。

やっぱり、ぶっつけ本番は良くないよね、うん。

 

ともあれ、まだ実験は始まったばかり。

実験の様子も気になるけど、今は自分を強くしていく方を優先しようか。

あとレベルが一つ上がりさえすれば、次の進化ができるわけだし。

この前の地竜とか倒して、どんどん経験値を稼ぐことにしよう。

 

 

 

レベル20になって、ゾア・エレからエデ・サイネに進化した。

それ自体は何も問題ないんだけど、この進化によって、禁忌のスキルがついにカンストしてしまった。

カンストした禁忌の効果で、私の頭のなかに膨大な情報が詰め込まれている。

その全部を把握できたわけじゃないけど、断片的な情報から、この世界が今、滅ぶ寸前といっていい状態にあることを知ってしまった。

 

このまま何もしないでいると、この世界と心中してしまう可能性があるってことだ。

そんなのは、大変御免被る!

だけど今のままじゃ、何もできずに滅びるしかない。

世界のこととか知ったこっちゃないけど、とりあえず私自身が生き延びる道を作るには、今よりもっともっと強くなるしか思いつかない。

なので、今までと同じやり方で強くなっていくけど、そのペースを大幅に上げる必要があると私は結論を出した。

だから、ある程度のリスクは覚悟のうえで、手強いけど多くの経験値を持っている魔物がたくさんいる下層で狩りまくっていた。

 

この時の私は、魔法担当1号がやっていた魂への侵食実験のことをまるで気にしていなかった。

むしろ、禁忌のスキルがもたらしてくる不快感が影響していたのか、実験なんて悠長なことやってないで、さっさとマザーに攻撃仕掛けようかなとか、そういうことを考えていた。

 

今までとは内容が全然違う天の声(仮)が唐突に聞こえてきたのは、そんな時だった。

 

《個体、エデ・サイネに個体、ポイズンタラテクトが統合されました》

 

はい?

統合って何?

そんなことを思っている私を置いて、天の声(仮)が続けて聞こえてくる。

 

《ステータスが統合されました》

《スキルが統合されました》

《スキルポイントが統合されました》

《称号が統合されました》

 

で、そんな感じの通知が聞こえているなか、私は気づいた。

これってもしかして、魔法担当1号がやっていた実験のせいじゃね?と。

ポイズンタラテクトが統合されたとか言ってたし、多分そうだと思った。

で、ステータスとかスキルとかが統合されたとか言ってるから、自分のステータスを確認してみたわけ。

 

 

結果、むっちゃ強くなってしました。

 

 

いやあ、驚いたわ。

持ってるスキルのレベルが幾つか一気に上がってたし、ステータスもグンと増えてたんだもん。

それ以上にスキルポイントなんて、今までからじゃ信じられないくらいのポイント数が入ってた。

数回レベルアップしても、ここまで強くなるなんて考えられないってぐらいの成長ぶりだったよ。

 

結論から言うと、この現象は魔法担当1号がやっていた、ポイズンタラテクトへの魂の侵食が原因で間違いなかった。

私の並列意思がポイズンタラテクトの魂を完全に侵食したことで、ポイズンタラテクトのステータスが私のものとして統合されたらしい。

単純に数値を加算するなら、そりゃレベルアップとは比べ物にならないくらいの強化になるだろうなぁ……。

 

なお、侵食されていたポイズンタラテクトの方はどうなったかというと、魔法担当1号が完全に自分の物として体を掌握していた。

しかも、このポイズンタラテクトのステータスは、なんと統合された後の私のステータスと同じだった。

要するに、私のステータスとポイズンタラテクトのステータスが加算されて、私と魔法担当1号とで半分こどころか×2された、ということだった。

ナニそれ、ぶっ壊れすぎる。

 

まあ、その代償と言っちゃなんだけど、ポイズンタラテクトの肉体を自分の物とした魔法担当1号は、以前のように魂のパスを通した肉体間の移動ができなくなっていた。

自分専用の体を手に入れたことで、意思が肉体に固定されちゃった、てことかな。

ポイズンタラテクトとしての体をなくせば魂のパスを移動できるようになるかもしれないけど、流石にそこまでやろうとは思わなかった。

 

とはいえ、私がエデ・サイネに進化する前からやっていた実験は、思わぬ収穫をもたらしてくれた。

より強さを求めるようになった私にとって、他の魔物の魂を侵食したことによる恩恵を知ることができたのは幸運だった。

この手を利用しない理由があるだろうか――!

 

 

ククク、待ってろよマザー。

あなたを超える日は、そう遠くないぞ――!

 

 




後編の更新は、明日の12時を予定しています。


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IF1:蜘蛛子がマザー攻略に、もっと慎重に動いていたら 後編

前回の投稿した話の続きになります。
前話をまだご覧になってない方は、そちらから読まれることを推奨します。
また、初めての方は、あらすじで注意事項をご確認いただきたいと思っています。


《ステータスが統合されました》

《スキルが統合されました》

《スキルポイントが統合されました》

 

今回の戦果を知らせる天の声(仮)が聞こえる。

自分のステータスを確認すれば、期待通りの結果が出ていることが分かる。

いや、以前よりも短い時間の分、期待以上と言っていいだろう。

 

ご苦労だった、侵食担当2号。

〔いや、だからそう呼ぶのはやめてって……〕

でもさ、魂の侵食のために生まれたんだからさ、侵食担当って呼ぶのが正しいじゃん。

〔不名誉な感じがして嫌なんだけど……〕

まあまあ、他のタラテクトへの魂の侵食が終わったら、新しい役割と名前を考えてあげるからさ。

ほら、早く次にいこうか。

レッツゴー!

〔はいはい、何を言っても無駄ですねっと……〕

 

一仕事終えて一旦帰ってきた並列意思を、もう一度魂の繋がりから送り出す。

ぐちぐち言いながらも、やるべきだと分かっていることはしっかりやってくれるのが、私の並列意思らしい。

これが落ち着いたら、ちゃんとした名前を考えてあげてもいいかも、と思う優しい私であった。

 

 

 

ポイズンタラテクトの魂を並列意思に侵食――食べさせた結果、侵食した相手のステータスやスキルを自分の物にすることができることが分かった。

それから私は、この方法を使って自分をどんどん強くしていくことに決めた。

具体的に言うと、グレータータラテクトやアークタラテクトといったマザーの上位眷属たちの魂を並列意思たちに食べにいかせ、そのステータスやスキルを奪っていっているのだ。

 

マザーの有用な手駒であるグレーターやアークに手を出すのは危ないかも、なんて最初は思っていたんだけどね。

魂への侵食でステータスやスキルを丸ごともらうことができるって分かったら、ついつい欲が出ちゃったんだよね……。

まあ、マザーに気づかれないように、こっそりと、少しずつ魂を食べていくように、並列意思たちに指示を出していたわけだけど。

それが功を奏しているのか、それともマザーは気づいているけど問題にしてないだけなのか、今のところマザーからの動きは特にない。

念のために、1体につき侵食する範囲は2割ぐらいまでにしておけ、とは言い聞かせている。

 

実験対象だったポイズンタラテクトの場合は魂を完全に掌握してから統合されたわけだけど、並列意思が食べた分を私のステータスに還元するのなら、別に魂を全部侵食する必要はない。

ステータスやスキルを、魂の侵食という形で奪ってきた並列意思が私本体に戻ってきた際に、その分だけ私のステータスが上昇するということが分かったのだ。

そんなわけで、マザーの眷属たちの魂を完全に取り込んでいない状態でも、私の強さはぐんぐん増しているのである。

まあ、完全に侵食させちゃったら、元魔法担当1号のように侵食した相手の体に意思が固定されて、他のタラテクトを侵食するための並列意思の数が減っちゃうだろうしね。

 

元魔法担当1号といえば、ポイズンタラテクトの体を自分のものにしちゃったわけなんだけど、自分の体を手に入れたことで私本体から少し独立した存在になっているみたい。

ポイズンタラテクトのステータスは私に統合されたわけだけど、今のポイズンタラテクト――元魔法担当1号が所有している肉体のステータスの数値は、その統合された直後のステータスと同じだった。

それからのことになるけど、他のタラテクトから吸収したステータスの統合以外に、私はレベルアップで能力値を上昇させている。

だけど、私のレベルアップによる能力値の上昇は、元魔法担当1号の方のステータスに影響していない。

逆もまた然りで、自分で鍛えたりする分には多少の相関があるけど、片方のレベルアップによるステータスやスキルの成長が相手に反映されるということは起こっていない。

元は同じ私だけど、肉体を完全に別にしたことで少しかけ離れた存在になったことを感じている。

とはいっても、私の方で新しく統合が行なわれたら、こっちがそれで強化された分だけ向こうのステータスも上がってるみたいだけど。

 

 

 

そんな感じで、マザーの眷属たちの魂を並列意思たちに少しずつ食べさせて、統合という今までにない形で順調に強くなっていく私でした。

1体に2割ずつしか食べさせていないのに、そこまでペースよく強くなれるのかって思われるかもしれない。

だけど、マザーの眷属たちは、私の想像を遥かに超える数が揃っていたのだ。

しかも、アークタラテクトは地龍にも相当するステータスを持っているんだけど、そのアークですらマザーの支配下に大量にいるのだ。

ハッキリ言って、最初からマザーの戦力がここまでのものだと知っていたら、マザーにケンカを売るのはもうちょっと後にしようと思ってた。

ま、魂への侵食なんていうものが使えるようになった今の私からすれば、ただの絶好の餌場だけどな!

 

レベルとかによって勿論ばらつきはあるけど、1体につき2割でも5体のアークタラテクトの魂を食べれば、地龍の能力値と同じぐらいだけ私のステータスが上昇する。

この成長ぶりを知っちゃったら、普通に魔物倒して経験値を手に入れるのが馬鹿らしく思えちゃう。

傲慢のスキルの効果で取得する経験値は大幅に増えてるわけだけど、仮にも魔物1体を相手にして上昇する能力値が違い過ぎる。

なので最近の私本体は、次元魔法や暗黒魔法といったスキルの熟練度をためる作業をしているのが殆どだったりする。

 

実のところ、こうやってマザーの眷属たちからステータスやスキルを奪って強くなるのはいいとして、それとは別に自分のレベルを上げるために魔物を倒していく必要はあると最初は考えてた。

エデ・サイネから進化したいと思っているけど、進化の条件にはレベルが指定されているからね。

ステータスやスキルが強化されても、レベルを上げておかないと進化に近づくことができない。

レベルを上げるには、魔物を倒すことで経験値を手に入れる他ない。

だからこそ、次への進化を目指すために、普通に魔物を倒そうとは考えていたんだ。

 

だけど、何度目かの統合によって自分のレベルが上がったことで、その必要すらなかったことを私は知った。

 

他のタラテクトの魂を侵食して得た能力値は、私の能力値にそのままプラスされる。

じゃあ、スキルの場合はどのように統合されるのか。

並列意思が手に入れてきたスキルのなかに私本体が持っていないものがあった場合、並列意思が持ってきた分だけの熟練度が加算されて、それがLV1以上の基準値を満たしている場合はスキルをそのまま手に入れる。

私本体が既に持っているスキルの場合は、そのまま熟練度の足しにされる。

だけど、集中のように既にカンストしているスキルの熟練度だったら、並列意思が手に入れてきた熟練度はどうなるのか。

奪ってきた熟練度の一部により持っているスキルがカンストして、結果として()()になってしまう熟練度が出ることだって考えられる。

これらの、スキルのレベルアップに貢献できなくなってしまった熟練度は、一体何になるのか。

 

私は、これらの熟練度は経験値となってるんじゃないかと考えている。

そうじゃなきゃ、ステータスもスキルも称号もスキルポイントも私にそのまま統合されているのに、経験値も入ってくるなんて思えないからだ。

魔物とかを倒した時に得ることができる、その魔物が持っていたスキルやステータスを丸々含んだ魂の力のごく一部、それが経験値だ。

相手の魂をそのまま取り込んで自分のステータスやスキルにするという方法である統合で得られる経験値なんて、私の()()()()()()()()()()()()()()、吸収するはずのスキルの熟練度が変換されたものだとしか考えられなかった。

もしかしたら私も持っている称号とかも、経験値に変換されているのかもしれない。

 

真実はどうあれ、他の魂を取り込む統合によって私のレベルが上がっていることは事実だった。

それでも、私が期待しているようなペースでのレベル上げが統合だけで可能だとは、初めのうちは考えていなかった。

統合でステータスもスキルもどんどん強化されていくし、レベルも上げてくれることは分かったけど、自分のレベルを上げるには、やっぱり地道に、普通に魔物を倒していくのが一番効率がいいって思ってた。

 

……他のタラテクトのスキルを奪い取って統合していくにつれ、経験値が加速度的にたまっていくのを確認してからは、その考えもすっかりなくなったけど。

 

当然だけど、私がタラテクト種の支配者たるマザーを介して魂を侵食できる対象は、そのマザーの眷属であるタラテクト種に限定されている。

で、同じタラテクト種だから、どの個体も戦い方が大して変わらないものになるだろう。

糸を使って動きを封じたりして、毒でとどめを刺しにかかる。

グレーターやアークなんかは、そこに魔法を加えた戦術になるだろうけど、それでもこいつらの間では戦い方は同じようなものだろう。

ということはどういうことかというと、使用するスキルも似通ってくるから、だいたいどいつも同じようなスキル構成になっているというわけ。

タラテクト種の場合は、蜘蛛糸だとか操糸だとか毒攻撃だとか、こういう系列のスキルを、どの個体も持ってる。

あとは、有用性が高い回避とか命中とか、身命とかの純粋にステータスを増強するスキルとかも被ってる。

 

さて、私は今まで、同じようなスキル構成の奴らに対して魂の侵食を続けている。

そうやって奪ったスキルの熟練度は私の持っているスキルにプラスされるわけだが、どいつも同じような感じでスキルを持っているわけだから、統合によって熟練度がプラスされるスキルも、毎回同じようなものになる。

蜘蛛糸の進化した万能糸とか、操糸とか、猛毒攻撃とか、その他諸々だ。

そんな感じで、統合のたびに同じスキルに熟練度が入り続けたら、よっぽど熟練度を必要としているスキルでもなければカンストするだろう。

私が覚えているなかで最初にカンストしたのは、操糸のスキルだったと思う。

で、統合することで入ってくる熟練度によって、カンストするスキルがどんどん増えていった。

 

統合によって手に入れた、既に私がカンストしたものを所有しているスキルの熟練度だったものは、経験値に変換される。

タラテクト種から魂を奪って統合を行なうから、そうやって熟練度が手に入るスキルは毎回似たり寄ったり。

そういうスキルは、統合によってカンストするものがどんどん増えていく。

 

以上により、他のタラテクト種の力を自分にどんどん統合していった結果、気づけば統合によってスキルのレベルが上がる代わりに自分のレベルが上がるようになっていました。

しかもね、かなり効率がいいの。

何体ものタラテクトの魂を攻撃して経験を積んできているおかげか、並列意思たちの作業ペースがどんどん上がってきて、短時間で成果を上げてくれるようになってるの。

そのおかげで、ほぼノーリスク・ショートタイム・ハイリターンでレベル上げができてるの。

そこそこのリスク(最悪死ぬ)でリターンが少なく感じる方法でのレベル上げとか、もう嫌気がさしちゃったの。

 

そんな感じで、わざわざ私本体が危険を冒して狩りに出かけなくても、他の並列意思たちがダメージを受けるようなこともなく魂への侵食をしてくれるおかげで、レベルがどんどん上がっているというわけだった。

というか、本当にレベルが上がるペースが半端じゃなくて、実はもうエデ・サイネから進化しちゃってたりする。

気がついたら進化できるレベルに到達していたから、エデ・サイネからザナ・ホロワに進化しました。

もうね、まだアラクネが残っているとはいえ一応の最終進化がこんなあっさりと済んじゃってね、苦笑いするしかなかったよ。

ちなみに、ザナ・ホロワに進化したことで不死のスキルを手に入れて、不死身になりました。

もうね、本当に苦笑いするしかなかったよ……。

 

進化が終わったころにDのスマホが落ちてきたのを見て、全部吹っ飛んだような気持ちになったけどね。

その時のDからはいろんなことを教わったけど、並列意思がやっている魂の侵食については「異世界転生して女神から祝福を受け取りますか?いえ、手持ちの能力(自力)で頑張れるので結構、ということでいいですね」とか言ってたけど、どういうこと?

まあいいや、アイツの考えてることを理解しようとか思わない方がいい。

 

とりあえず、ザナ・ホロワへの進化は達成した。

次はいよいよアラクネに進化するつもりだけど、満たさなきゃいけない条件はLV50という、かなり高い目標にあることは否定できない。

本格的にアラクネへの進化を目指していく前に、マザーとの決着を先に付けておいた方がいいだろう。

 

少しずつとはいえ、大量のタラテクト種からステータスを奪ってきたから、例えマザーと真正面から戦ったとしても勝機は十分にあるほど成長したと思う。

まあ、物理的に戦って倒すよりも魂というフィールドで攻撃を仕掛けていく方が、リスクが断然少ないしメリットも比べ物にならないほど大きいから、他のタラテクト種と同様、その力を私に統合させる方向で戦うつもりだけど。

マザーの強さをそのまま自分のものにできるっていうのは、凄く魅力的な話だ。

なんなら、並列意思に完全に侵食させて、その圧倒的な力を持つ体も支配してしまうのも悪くない。

 

だけど、マザーに直接攻撃を仕掛けたら、間違いなく物理的にこっちを消そうとしてくるだろうなぁ。

私のいる場所までマザーは来られないから、手下のアークとかグレーターを差し向けてくるはず。

今の私のステータスならアークやグレーターに負ける可能性は少ないだろうし、不死のスキルだってある。

だけど、物理的に倒しちゃったら、もう奴らからステータスを奪えないよなぁ……。

統合のおいしさを知っちゃった今、それは余りにも勿体なく感じる……。

 

やっぱり眷属たちからステータスを根こそぎ奪い取ってから、マザーに攻撃を仕掛けるか?

いやでも、あまり弱体化させちゃうと物理的に死ぬ可能性が高くなるし……。

そうなると魂を侵食している最中の並列意思が消滅する危険性も――

[情報担当ぉ大変だー!!]

ふぁ!?

きゅ、急に来て何があったの体担当!?

 

[わ、私らさ、マザーのことをタラテクト種の頂点だと思ってたじゃん……?]

そ、そうだよね。

[でもさ、それは違うってことが分かっちゃったんだよ……]

え?

ごめんちょっと待って理解が追い付かない、つまりどゆこと?

 

 

[マザーの、さらに()がいるってことが分かったんだよ!!]

な、なんだってー!?

 

 

あの圧倒的に強いマザーの、さらに()!?

そんなとんでも情報を聞かされて、私にどうしろと!?

いくら私が情報担当で、脳筋の体担当とは頭の出来が違うとしても、対処できないことだってあるんだよ!?

 

[いや、本題はここからなんだ……]

ま、まだ何かあるの……。

 

[マザーのさらに()……タラテクトの真の支配者は、マザーと同格の魔物をさらに4体も従えていた……!]

マザーと同格、つまり種族は、マザーと同じクイーンタラテクト……。

それが、マザーを除いても4体も……。

 

[そいつらの下には、それぞれマザーにも劣らない規模の配下がいる……!

 つまり、マザーの眷属、かける4……!]

マザーの眷属、かける4……!

 

[そして、こいつらとも、タラテクトの真の支配者を介して、魂のパスが繋がっている……。

 今からでも、こいつらの魂を食いに行くことができる……]

魂のパスが繋がっている……。

だから、並列意思のみんなが食いに行くことができる……。

それが、マザーの眷属、かける4……。

 

 

[情報担当……。

 私の言いたいこと、分かるだろ……]

 

ああ、体担当……。

つまりは、こういうことだろう……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タラテクトの魂の、食い放題じゃあ~!!

 

[ヒャッハー!

 お前らの魂、私たちが食って食って食いまくるんじゃあ~!!]

 

 

 

その後、私たちはタラテクト種の魂を次々と食い散らかしていき、いつの間にかタラテクトの真の支配者すらも及ばないほどの力を手に入れた。

そして私および私の並列意思たちは、他の魂をもぐもぐすることに強い快感を覚えるようになってしまい、自力で魂のパスを無理やり通って他者の魂に攻撃できるようにする術を開発してしまった。

この術によって、真っ黒エルフや管理者ギュリエなんちゃらを始めとした多くの存在の魂を食べて食べて食べまくって、なんやかんやで幸せになりましたとさ。

めでたし、めでたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、蜘蛛さんにもう少し落ち着きがあったら、こういう展開になる可能性もあったというお話でした」

 

んなアホな。

 

 




これにてIF1は終了になります。
読んでいただき、ありがとうございました。
ご都合主義が多いところもあったかもしれませんが、まあそこは、思い付きから書いたものなのでご容赦を(笑)

Dの「異世界転生して女神から祝福を受け取りますか?いえ、手持ちの能力(自力)で頑張れるので結構、ということでいいですね」という発言についてですが、とある異世界転移もののWeb小説のタイトルを意識したものです。
この小説の主人公は、このIFで蜘蛛子がやっていること以上のことができるので……。
「女神 祝福 異能」で検索すると、その小説が出てくると思います。

最後に、統合でレベルが上がる仕組みについて、自分の見解を載せておきます。
原作では、蜘蛛子がマザーの魂を並列意思に侵食させた結果、マザーのステータスやスキルを自分の物として吸収し、さらに経験値が入って大幅にレベルアップしています。
統合の際、マザーが持っていたスキルの熟練度のうち、蜘蛛子が持つスキルのカンストに必要な分を引いて余った分や、蜘蛛子が既にカンストしたもの(あるいはそれに相当するもの)を所持しているスキルの分は、どこに行ったのか。
それらの熟練度は、経験値に変換されて蜘蛛子のレベルアップにつながったというのが、自分の見解になります。

蛇足は以上です。
改めて、拙作を読んでいただけたことに感謝を。
またなにか思いついたネタがあったら、執筆を検討したいと思います。


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IF1:おまけ(蜘蛛子のステータス)

ちょっとしたおまけです。
IF1の後編時点での蜘蛛子のステータスを書いてみました。
「こんな感じになるかな」という調子で書いたので、粗い内容であることはご承知ください。


 ザナ・ホロワ LV14 名前 なし 

 ステータス

 HP:54811/54811+2000

 MP:48353/48353+2000

 SP:51865/51865

   :51765/51765+2000

 平均攻撃能力:52941

 平均防御能力:52206

 平均魔法能力:45739

 平均抵抗能力:46675

 平均速度能力:54933

 スキル

「HP超速回復LV5」「魔導の極み」「魔神法LV5」「魔力付与LV9」「大魔力撃LV4」「SP高速回復LV10」「SP消費大緩和LV10」「破壊大強化LV8」「打撃大強化LV10」「斬撃大強化LV10」「貫通大強化LV10」「衝撃大強化LV5」「状態異常大強化LV10」「闘神法LV4」「気力付与LV7」「気力撃LV3」「龍力LV9」「猛毒攻撃LV10」「腐蝕攻撃LV5」「外道攻撃LV9」「毒合成LV10」「薬合成LV9」「糸の天才LV4」「万能糸LV10」「操糸LV10」「念力LV3」「投擲LV10」「射出LV5」「空間機動LV10」「集中LV10」「思考超加速LV1」「未来視LV1」「並列意思LV8」「高速演算LV8」「命中LV10」「回避LV10」「確率大補正LV8」「隠密LV10」「迷彩LV4」「無音LV9」「暴君LV3」「断罪」「奈落」「退廃」「不死」「外道魔法LV10」「風魔法LV7」「土魔法LV7」「影魔法LV10」「闇魔法LV10」「暗黒魔法LV8」「毒魔法LV10」「治療魔法LV10」「空間魔法LV10」「次元魔法LV8」「深淵魔法LV10」「忍耐」「傲慢」「怒LV5」「飽食LV10」「怠惰」「叡智」「破壊大耐性LV5」「打撃無効」「斬撃大耐性LV8」「貫通大耐性LV7」「衝撃大耐性LV4」「火炎耐性LV3」「風耐性LV4」「土耐性LV5」「闇耐性LV5」「重大耐性LV3」「状態異常無効」「酸耐性LV8」「腐蝕大耐性LV4」「気絶耐性LV7」「恐怖大耐性LV1」「外道無効」「苦痛無効」「痛覚無効」「暗視LV10」「万里眼LV2」「呪怨の邪眼LV7」「静止の邪眼LV6」「引斥の邪眼LV4」「死滅の邪眼LV3」「五感大強化LV5」「知覚領域拡張LV10」「神性領域拡張LV9」「星魔」「天命LV10」「天動LV10」「富天LV10」「剛毅LV10」「城塞LV10」「韋駄天LV10」「禁忌LV10」「n%I=W」

 スキルポイント:321600

 称号

 「悪食」「血縁喰ライ」「暗殺者」「魔物殺し」「毒術師」「糸使い」「無慈悲」「魔物の殺戮者」「傲慢の支配者」「忍耐の支配者」「叡智の支配者」「竜殺し」「恐怖を齎す者」「龍殺し」「怠惰の支配者」「魔物の天災」「覇者」

 

 

※いちおう、本人としては加減しながら行動した結果の模様。

 スキルポイントも大量にあるため、その気になれば支配者スキルも割と取り放題です。なんなら謙譲を取得して、伝説の超D嫌人(スーパーディーイヤ人)に変身できるようになるのも可能です。

 



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