私のディケイドアカデミア (課金ドライバー)
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世界の破壊者(女)、超人社会に転移する。

世界が崩れる。1人の時の王者によって理が歪められ、世界の再創造が行われていく……

その光景を3人が見ていた。

 

一人の男、門矢 士は既に別の仮面ライダーのいる世界へ向かい、もう1人の男、海東 大樹は世界の再創造を最後まで見送り……最後の一人、気那由 荻子は新たな旅を始めようとしていた。

 

「……さて、私もそろそろ別の世界に行こうかな!」

 

「おや? 気那由君はどんな世界に行くんだい?」

 

「そうだね……今度は仮面ライダーのいない平和な世界かな!」

 

「それは興味深いね。僕も行っていいかな?」

 

「私よりも海東さんは士さん目当てでしょ? そっち行きなよ!」

 

「やっぱり君達には嫌われているね……そろそろこの世界にも居られなくなったかもね。僕もそろそろ士を追おうかな」

 

2人が全く同じ移動手段である銀色の幕、オーロラカーテンを開く。この世界でやるべき事はもう無い。お宝も、歴史も、何もかも無くなってしまう前に通りすがりの仮面ライダーは去るのだ。

 

「……じゃあね、2人とも。……それと、仮面ライダージオウ! 幸せにね!」

 

……本来なら存在しない異分子である荻子は今度こそオーロラカーテンを通る。新たな旅をするために……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もいない夜のビルの屋上にて、オーロラカーテンが発生する。

しばらくすると、その中から1人の女性が出てくる。気那由 荻子だ。

 

 

 

 

 

 

私は気那由 荻子。本来なら存在しない2人目の仮面ライダーディケイドだ。どうしてこうなったのかなんて……旅をした時間が永すぎてもはや覚えていない。でも、自分が異分子であるのは未だに覚えている。それと、世界の再創造が始まる前に彼から面白いカードを貰った。私はそれをライドブッカーから取り出して眺める。

 

「まさかオーマジオウのカードが存在するなんてねぇ……それも、あの魔王は私にしかこれを出さなかった……まぁ、今これを使うつもりは無いし、仕舞っておいておこっと!」

 

私はオーマジオウのカードをライドブッカーに再び仕舞ってビルの屋上から飛び降りる。

 

「ひゃっふぅぅぅぅ!!! やっぱりこの移動方法はやめられないね!」

 

落下方向には予めオーロラカーテンを出しているので地面とキスする可能性はゼロだ。そして、士や私はとてつもなく頑丈だから少し落下速度が上がった程度なら簡単に耐えられる。

 

 

オーロラカーテンが地面スレスレに現れ、まるで地面から飛び出るように荻子が上に飛び、重力によって減速する。

 

「着地! さ、て、と……ここはどんな世界で私はどんな役割なのかな?」

 

ディケイド達には世界を渡る度に役割が与えられる。無職の時もあれば公務員の時もある。なんなら人外の時も……

 

ちなみに今までの職業?を軽く教えると……

 

クウガの世界:婦人警官(士と同じ所属)

 

アギトの世界:郵便局員(士と同じ所属)

 

龍騎の世界:弁護士(士と同じ事務所所属)

 

ブレイドの世界:BOARD社内食堂見習い

 

ファイズの世界:SMART BRAIN high schoolの生徒(士の隣の席)

 

響鬼の世界:黒子

 

カブトの世界:ZECT隊員(士と同じ部隊に所属)

 

電王の世界:イマジン(士と同行するという契約で消滅を回避)

 

キバの世界:フルート奏者

 

 

……こんな感じだ。士と同行するのがほとんどだが、別行動になることもあった。特に電王の世界の時はとてつもなく苦労した。危うく消えるところだったのを士に助けられてから士には頭が上がらない。

 

私はゴソゴソとポケットを探ると、胸ポケットから学生証が出てきた。

 

「学生かぁ……えーっと、静岡県の折寺中学校か……」

 

私は士と違って何でもできる訳では無い。家事などは一人暮らしの時があったからそつなくこなせるが、ヴァイオリンを弾くような事は出来ない。というか初見でだいたいできる士がおかしいだけなんだけど……

 

とりあえずやることも無いので、私は頭に入り込んでいる自分の家に向かった……

 

 

 

 

 



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検索と退治

 自宅があるマンションに入った私はリビングのカーテンを閉め、どこからともなく『ネオディケイドドライバー2号機』を取り出す。この世界に士はいないので、これからは普通にネオディケイドドライバーと呼ぼう。

 

そのまま腰に当ててベルトを伸ばし、ライドブッカーからディケイドの写真のようなカードを取り出し、ネオディケイドドライバーに挿し込む。

 

「変身」

 

待機音が流れる中、私はサイドハンドルを押し込んで変身プロセスを完了させる。

 

KAMEN RIDE DECADE

 

すると、ドライバーから「ディケイド」と電子音声のようなものが流れると同時に、私の前にいる誰かを囲うように19ほどのモノクロの影が現れ、影は私に重なり色を帯びながら装甲を形成する。左肩から右胸にかけて斜めの十字線が刻まれており、装甲はマゼンタカラー、顔には翡翠の色をした大きな複眼に10枚程の黒色のプレートが埋め込まれている。

 

これが私と士の変身する仮面ライダー、仮面ライダーディケイドだ。ちなみに私のディケイドは士のディケイドよりも一回り小さい。

 

「さてと、検索するならW系統だよね!」

 

そう言って私は白い仮面ライダーが描かれているカードを取り出してネオディケイドドライバーに挿し込む。

 

KAMEN RIDE ETERNAL

 

 ポリゴンパネルのようなものがディケイドを包み、白を基調としたボディに青い炎のような腕、黒い巨大なマント。そして永遠を模している黄色の複眼にEを横倒しにした3つ角。そして、身体中に様々なT2ガイアメモリが挿し込まれている姿。

 私は、全てのガイアメモリを内包した状態の『仮面ライダーエターナル』に変身した。

 

「サイクロンに……ジョーカー! これを押せば……」

 

サイクロン!ジョーカー!

 

仕組みは分からないが、この組み合わせを押すことで地球の本棚で検索できる。Wの世界を訪れて仮面ライダーエターナルの力を手に入れてからは情報収集が楽になったなぁと思いながら、『仮面ライダー』を検索条件にして検索に入れる。

 

「……よし、さっきやった私の変身を除けば0件だね。お次は『仮面ライダー、代わり』……と。……なるほど、ヒーローっていう職業が私達仮面ライダーの代わりになっていて、怪人にあたるヴィランがいるんだね」

 

夜が明けるまで一通り検索をした私は、近くのヒーロー事務所の情報網からヴィランの情報を検索する。手頃なヴィランを探していると、ヘドロのようなヴィランが暴れている情報が出現し、私はそれを確認して地球の本棚とのリンクを切る。そして、その近辺にオーロラカーテンを繋げる。

 

「さて、この世界の敵がどれ程か見てみますか……!」

 

 


 

荻子がオーロラカーテンを繋いだ先では、商店街にて爆炎が巻き起こっており、現地に集まったヒーローはその地形、状況、そして何よりもヴィランの体質である流動体に大苦戦を強いられていた。

 

「わ、私二車線以上じゃなきゃ無理! メインは誰かにあげる!」

 

「爆炎系は我の苦手のする所…今回の所は他に譲ってやろう!」

 

「そりゃどうも!こっちは消火で手一杯だっての!」

 

「ベトベトのヘドロのせいで掴めねぇし、良い個性の子どもが暴れて抵抗してる!」

 

「おかげでここら一帯地雷原さ…手が出せない…って、やべぇ!」

 

多くのヒーローが到着しているのにもかかわらず、ヘドロのようなヴィランに誰も手を出せずにいる状況を見た観衆の歓声は次第に止んでいき、代わりに動揺の声がポツポツと現れ始める。

 

「なんか……やばくね?」

 

「ヒーローなんで棒立ちなんだよ……これじゃ来た意味ねぇじゃんか」

 

「中学生が捕まってんだとよ。手が出せないのも仕方ないんじゃないか?」

 

「可愛そうに……でもきっと誰かが助けてくれるから頑張るのよ!」

 

 

何もしない邪魔な観客がいる中、荻子こと仮面ライダーエターナルは路地の影からその光景を見ていた。

 

(ふむ……個性の相性が最悪か、或いは上手く力を発揮できない状況のヒーローばかりで手を出せない……ヒーローとしてダメダメだね。仮面ライダーならこういう時こそ立ち向かうってのに……)

 

荻子が動こうとしたのと同時に、緑色の髪の少年が人壁を掻き分けて飛び出してくる。

 

「バカヤロー!! 止まれ!止まれっ!!!」

 

「あ、あなたは……!?」

 

「話は後。今は集中してこいつをぶちのめすだけ……!」

 

『あのガキ!デク!?」

 

ヴィランは肉体を中に取り込んだ結果、より太くなった腕を少年目掛けて振り下ろそうとする。

 

「させないよ」

 

オーシャン!ルナ!

 

すかさず荻子はT2ルナメモリとT2オーシャンメモリを起動して、流動体のヘドロボディを強制的に動かす。

 

『何っ!?』

 

「ゲホッゲホッ……なんでテメェが!!」

 

「君が、助けを求める顔をしてた!」

 

仮面ライダーエターナルは中に入れられていた少年を引っ張り出し、2つのT2ガイアメモリを押す。

 

「ヘドロがオーシャンメモリの守備範囲で助かったわ。さて……」

 

トリガー!ヒート!

 

「アンタは最大火力で吹っ飛ばす」

 

マキシマムドライブ!

 

『ごっ!?』

 

凶悪な威力を誇る炎弾がヴィランの胴体にゼロ距離で放たれ、その流動体の身体をバラバラに吹き飛ばした。

 

アクセル!

 

黒煙で見えないうちにT2アクセルメモリを起動して加速。仮面ライダーエターナルは消え去った。



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破壊要素と転校生(時限爆弾)

次の日、私は海岸に向かってしまった。

 

私の正確な役割は、今日から折寺中学校に来る転校生なので、地球の本棚で折寺中学校を検索。場所を特定してすぐさま向かった……のだが、不自然にならないようにオーロラカーテンを使わないで移動したら、気がつくと砂浜にいた。

 

 ……士が写真を撮るのが異次元レベルでヘタクソなのと同様に、私は異次元レベルの方向音痴なのだ。あちらは自分の世界かどうかを知るための判断材料になっていたが、私のは完全にデバフなのが……うん、これ以上はよそう。

 

私は初日から遅れないようにとオーロラカーテンで直接移動しようと思った時、ふと見覚えのある2人の姿に目が移った。

 

「ヘイヘイヘーイ!なんて座り心地のいい冷蔵庫なんだ!」

 

「ふんぎぎぎぎぎ……!だってオールマイト274kgあるんでしょ!?」

 

「いや、最近痩せちゃって255kgになった」

 

「ていうか僕なんで海浜公園でゴミ引っ張ってるんですか!?」

 

「それはあれさ!君、器じゃないもの」

 

「うわぁぁぁ!!」

 

「……一応隠れるか」

 

ATTACK RIDE INVISIBLE

 

 アタックライドのインビジブルによって私の姿がバラけて見えなくなる。当たり判定的なものもバラけるので、足跡も出来ない。……何故かインビジブルだけは生身でも使える。

そのまま私は近くに忍び寄ってオールマイトと少年の話を盗み聞く。

 

「足りないのは体だよ体。つまり頑丈な体。耐久力!私の個性、ワン・フォー・オールはいわば何人もの極まりし身体能力が一つに収束されたものなのは説明したよね?」

 

「はい……」

 

「君のヒョロヒョロな身体じゃ耐えられなくて、どんなに良くても下半身不随とかで生存、最悪四肢がもげて爆散さ!」

 

「ひっ…! ……じゃあつまり体をつくり上げるトレーニングのためにゴミ掃除?」

 

「トレーニングの意味もあるけど、同時に君にはヒーローとしての本質を教えるためさ!」

 

「昨日ネットで調べたんだけど、ここら辺は何年もこの有様だったみたいだね!」

 

「は、はい……ゴミの不法投棄が多発しているって……」

 

「最近のヒーローは派手さばかり追い求めるけどね…本来ヒーローってのは奉仕活動なのはわかっているね?」

 

「奉仕活動を地味だなんだと言われてもそこはブレちゃあいかんのさ!」ベゴッ!

 

そう言ってオールマイトは先程まで座っていた冷蔵庫をぺちゃんこの鉄板に変えた。私でも出来なくはないが、あんな自然にとなると難しいかもしれない。

 

「この区画一帯の水平線を蘇らせる。それが君のヒーローへの第一歩だ!」

 

「緑谷少年は雄英志望だろ? しかし、前にも言ったがヒーローってのは無個性でも成り立つような仕事じゃない」

 

「悲しいがな現実はそんなもんだ。まして雄英のヒーロー科は最難関!つまり……」

 

「……入試当日まで残り10か月で器を完成させて使いこなさなきゃいけない!」

 

「そこでこいつ!私考案“目指せ合格アメリカンドリームプラン”!」

 

(……なるほどね。必要そうなワードは揃った)

 

何となく事の動きが分かった私は、物陰でオーロラカーテンを開き、折寺中学校付近の路地裏に移動する。大まかなワードさえ分かれば地球の本棚で後は丸わかり。これ以上の情報収集は不要なのだ。

 

「……ん?」

 

「どうしましたオールマイト?」

 

「……おかしいなぁ、一瞬だけ人の気配がした気がする……気のせいか!」

 

 

 


 

 

折寺中学校の3年生の教室。緑色の髪の少年かやや疲れ気味になっている中、SHRにて担任の先生がそういえばと付け加えて話し始める。

 

「今日、急遽転校生が来る事になった。入ってきていいぞー!」

 

「失礼する」

 

生徒達が騒ぐ中、ガラガラと音を立ててドアが開けられる。

 

「今日からここに通うことになった、気那由 荻子だよ。よろしくね? 何か質問があるなら、ご自由にどうぞ。休み時間に答えるから」

 

「気那由は……廊下側の1番端の席だ」

 

「分かりました」(……ふむふむ、昨日の2人と同じ学校だったのか)

 

荻子は、ヘドロのヴィランに囚われていた金髪の少年と、彼を助けようとした緑谷とオールマイトに呼ばれていた少年を一瞬だけ見ながら席につく。

 

 

 

昼休み、私の周りを他の生徒が囲って質問責めに遭わせる。

 

「なぁなぁ! 荻子ちゃんの個性ってなんなんだ?」

 

「あー、確かに気になる!」

 

「そうそう! 発動型と変形型、どっちなの!?」

 

「うーん……なんて説明すればいいか……」

 

 荻子は返答に困った。安易に仮面ライダーだと言う訳にはいかないし、無個性と馬鹿正直に説明するのは後々要らぬ軋轢を産みかねない。そこで、上手くはぐらかそうとすることにした。

 

「まぁ……砂になりかけたり、至る所で敵扱いされたりと、ロクなものじゃないのは確かかなぁ……」

 

……断じて嘘は言っていない。全部本当に経験した事である。

 

「「「……??」」」

 

「まぁ知らない方が幸せかもね。他に聞きたい事はある?」

 

私は強制的に話を切り上げて別の話に移させる。

 

「そ、そうだ! 気那由君は高校、どこを志望してるんだ!?」

 

ちょっと真面目そうな子が少したどたどしく私の志望校を聞いてくる。

 

確か私の志望校に設定されているのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雄英高校だよ」

 

 



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縛りプレイ

雄英受験当日。筆記を終えた受験生達は、指定された会場にて実技試験の解説を受けていた。

 

『受験生のリスナー!今日は俺のライブに来てくれてありがとーー!!Everyday Say Hey?』

 

シーーーーン……

 

『こいつはシヴィーーー!!』

 

 

『これから実技試験の内容を説明するぜ!Are you ready?』

 

 

 どうやら派手なトサカのような髪型の男が司会を務めるようだ。やたらハイテンションなのは気の所為ではないだろう。それにしても、ここまでアウェーな状態でもへこたれないのは凄いメンタルだ。

 

「ボイスヒーロー“プレゼント・マイク”だ!すごい!ラジオ毎週聞いて「緑谷、今は試験中だよ」……そうだった」

 

(うるせぇ……デクもこのトサカもクソうるせぇ……)

 

荻子が緑谷の暴走を止める中、爆豪が心の中で愚痴る。

 

『入試要項通り、リスナーにはこの後10分間の“模擬市街地演習”を行ってもらうぜ!持ち込みは自由、プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!』

 

「つまり、ダチ同士で助け合いとかはさせねぇって訳か。」

 

「ほ…ほんとだ。受験番号連番なのに演習会場違うね。気那由さんはC、僕がB、かっちゃんがAだね」

 

そう言って緑谷が私と爆豪の受験票を覗き込む。

 

「見んなコラ、殺すぞ」

 

「ふーん……」

 

『演習場には仮想ヴィランを三種・多数配置してあり、それぞれの“攻略難易度”に応じてポイントを設けてある。各々なりの個性で仮想ヴィランを行動不能にし、ポイントを稼ぐのがリスナーの目的だ!』

 

『もちろん、他人への攻撃等アンチヒーローな行為はご法度だぜ!?』

 

「質問よろしいでしょうか!」

 

メガネの真面目そうな子が挙手をして質問の許可を求める。

 

『OK!』

 

「配布されたパンフレットには四種の仮想敵が記載されています!もしこれが誤載であれば雄英にとって恥ずべき痴態!どうかご説明を!」

 

『オーケーオーケー、受験番号7111くん、ナイスなお便りサンキューな!四種目のヴィランは0P、そいつは言わばお邪魔虫さ!アレ!マリオのドッスンみたいに思えばいいぜ!ようは各会場に一体所狭しと大暴れしている“ギミック”よ。倒せないことはないが倒しても意味はない。リスナーにはうまく避けることをお薦めするぜ?』

 

「ありがとうございます!失礼いたしました!」

 

そう言ってメガネの子は下がった。

 

(なるほどね。だいたい分かった)

 

『俺からは以上だ。最後にリスナーへ我が校校訓をプレゼントしよう!かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った……“真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者”と!』

 

『更に向こうへ!Plus ultra!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇演習会場C◇◇

 

「……スケールでっか」

 

試験会場へと到着した荻子は目の前にあるものに愕然とする。

荻子が今受験しているヒーロー科は雄英高校の中でも特に志望者数が多く、倍率は毎年300をゆうに超えるらしいため会場はいくつかに分かれており、荻子はそのうちのCの会場に割り振られていた。

 

 指定された会場に着いた荻子達を待っていたのは、能力を測る器具が置いてあるグラウンドなどではなく、自分が蟻やノミになってしまったかと思えるほど巨大な扉であった。予想外のスケールに荻子だけでなく、周りの受験生も呆気に取られる。

 

「……とりあえずディケイドで様子見かな」

 

「はい、スタート!……どうしたあ!?実戦じゃカウントなんざねえんだよ!走れ走れぇ!賽は投げられてんぞ!!?」

 

 

 プレゼント・マイクの号令によってドタバタと他の受験生が走る中、私はさっさと始める為にネオディケイドドライバーを腰に巻き付けて、ディケイドのカードを挿し込む。

 

「変身」

 

KAMEN RIDE DECADE

 

荻子の変身に驚く他の受験生。司会のプレゼント・マイクも例外ではなく、首にかけていたスピーカーがズレていた。

 

「ショータイム……かな?」

 

荻子はオーロラカーテンを開いて、Cの会場で最も高いビルに移動する。オーロラカーテンを使うのはこれだけにする。

 

「……よし、だいたい分かった」

 

ディケイドの複眼であるディメンションヴィジョンによって全ての仮想敵の位置を把握。それを大まかに記憶する。

 

「海東さん、使わせてもらうよ」

 

荻子はライドブッカーからディエンドのカードを取り出してネオディケイドドライバーに挿し込む。

 

ATTAC RIDE DIEND BLAST

 

「そんで、これも!」

 

荻子は続けざまに自分だけが持っているカード、ホーミング ブラストを挿し込む。

 

ATTAC RIDE HOMING BLAST

 

「銃弾のシャワーを浴びなさい」

 

荻子はライドブッカーをガンモードにして銃口を上に向けながら引き金を引く。放たれた光弾は瞬く間に360度全方向に拡散。軌道を曲げて仮想敵の頭部を次々と正確に貫く。

 

「……あ、そもそも曲がるんだからシャワーじゃないじゃん。……ま、いっか」

 

なんと先程の射撃で試験会場Cに存在する仮想敵が全滅。一気に暇になってしまった。

 

(頭部壊したらピクリとも動かなくなるなんて律儀に作ってるねぇ。減点とかされないよね?)

 

暇になった時間をどう潰そうか考えていると、荻子のディメンションヴィジョンが一体の仮想敵の出現を捉えた。

 

「……大きさからして0Ptか。暇つぶしにはちょうどいいかな?」

 

荻子はライドブッカーを開いて1枚のカードを取り出す。ブラストだ。

 

ATTACK RIDE BLAST

 

「弱点は見えた……後は撃つだけ!」

 

 

ディメンションヴィジョンによる精密射撃が0Ptの所々にある隙間に存在する配線や基盤を次々と破壊し、穴だらけになった0Ptが倒れ伏す。

 

「……ミッションコンプリート!」

 

『しゅーーーりょーーーー!』

 

司会のプレゼント・マイクの大声で実技試験の終了が告げられる。



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合格通知と入学

数日後、相も変わらず地球の本棚で検索しまくっていた荻子に雄英宛の封筒が届いた。

 

「わざわざ送ってきたって事は合格通知だろうね」

 

荻子は豪快にビリビリと封筒を破き、中にあったプロジェクターを丸いテーブルに置く。

 

ネズミ? ……とにかく、哺乳類が何やら喋っていて殆ど聞き流していたが、オールマイトが教師になるという事と、首席という所は聞き取れた。その後何故かプロジェクターは小さな爆発を起こして破損。どうやら機密保持が大好きなようだ。

 

 

 

 


 

やはりオーロラカーテンで雄英のすぐ近くにワープした荻子は、早速困っていた。

 

「どうしよう……迷った……」

 

またもや荻子は方向音痴で迷ってしまう。

1-Aだと思ったら2年B組の教室だったり、校長室だったり、女子更衣室だったりした。

 

「オーロラカーテンを使おうにも座標が分からないし……ん?」

 

「あ」

 

荻子が気配を感じて振り返ると、そこには地球の本棚で偶然知ったオールマイトの本来の姿(トゥルーフォーム)がいた。

 

「あの、雄英の方ですよね?」

 

「あ、あぁ。用務員の八木だよ。何か困った事でもあったのかい?」

 

「……実は迷っちゃって。1-Aってどこか分かりますか?」(……流石はNO.1ヒーローってとこかな? 素性を隠すのはそれなりにできるみたいだね)

 

「あぁ、1-Aならそこを右に曲がってすぐだよ。……とにかく、頑張るんだぞ!」(これすごく心臓に悪い! 今回はボロが出なかったけど、いつかバレるんじゃないかなぁ……)

 

オールマイトは少し緊張していたようで、額に冷や汗をかいていた。荻子はそれを見たが気にせず、お礼をして1-Aに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「す、すいません! 道に迷っちゃって……」

 

荻子がガラガラと勢いよくドアを開けると、1-Aはもぬけの殻で、またもや後ろから気配を感じると、何者かが、ぬっ…と起き上がっていた。

 

「遅いぞ 気那由 荻子。……だが、初回だから大目に見てやる。担任の相澤 消太だ。悪いが時間が無い。これに着替えてグラウンドに向かえ」

 

「あの……」

 

「どうした、気那由」

 

相澤はやや気だるげに荻子の言葉を待つ。

 

「私、極度の方向音痴なので一緒に行っても大丈夫でしょうか?」

 

「……了解だ。ここで待ってるから教室で着替えろ」

 

「ありがとうございます……」

 

 

 


 

 

 

グラウンド

 

「さて、これで全員集まったな。これから個性把握テストを始める」

 

「個性把握テストォォォォ!?」 

 

「入学式は!? ガイダンスは!?」 

 

丸顔のうららかそうな女の子が相澤にそう聞いてくる。

 

「そんな悠長な事はやってられん。さっきも言ったろ?時間は有限だ。それに、雄英の校風は『自由』だ。入学式を踏み倒してもなんら問題はない」

 

だが、それを相澤は一蹴し、折寺中時代に記録した荻子のソフトボール投げの記録を聞いた。

 

「入試の首席は……気那由だったな。中学の時の個性ナシでのソフトボール投げ、何mだった」

 

「んー、そうですね……あまり覚えていないですけど、60はあったはずです」

 

「おいバーコード女、自分の記録ぐらい覚えろアホ。おめぇは68だろ」

 

「あぁ、ありがとね爆豪。相澤先生、こいつの記憶って結構正確なんでまちがいなく68ですね」

 

「……まぁいい。これからお前らには個性アリで体力テストを行ってもらう。気那由のこれからするソフトボール投げはその見本と思えばいい。気那由、円からお前の身体が出なければ何をしても構わん。……どうした、気那由。早くやれ」

 

相澤が荻子の方を見ると、荻子はライドブッカーを開いてうーんと唸っていた。

 

「んー……相澤先生、単純な力技と、ルールの穴を突いたイカサマ紛いの方法…両方計測不能を出せる場合、どっちがいい顔されますかね?」

 

「……そうだな、どうせなら力技で行け。その方が見る時に分かりやすいだろう」

 

「んじゃ、今回はこれかな!」

 

 



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