グリード入りの転生者、成層圏を翔ぶ。 (割れたタカメダル)
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オーズドライバー
君は転生を信じるかな? 僕は信じる。というか体験した。
僕の名前は日野 鋭司。所謂転生者というやつだ。
インフィニット・ストラトスという作品はご存知だろうか。……知らない人に簡単に説明すると、主人公達が露出の多いパワードスーツを着るバイオレンス多めのラブコメ。ちなみに知識は最初の方だけだ。
世の中には、神様から貰う転生特典とやらがあるらしい。僕の転生特典……これは特典なのか分からないけど、それっぽいのならある。
『鋭司、アイスはまだか?』
『私はなんでもいいわ。みんなが喜ぶものならね』
『えいじ、おれもお腹減った!』
『我慢しろガメル。……やっぱり今の屑ヤミーの数じゃ5人分のセルメダルを維持する分には足りねぇな。ヤミーを作った方がいいんじゃないか?』
『まぁ焦るなってウヴァ。大っぴらに動いたら僕達の存在がバレて、この快適な身体が無くなるんだから』
「アンク、アイスならさっき食べたばかりでしょ。メズール、今日の晩御飯は魚にするよ。ガメル、もう少し待ってたらご飯になるよ。……ウヴァ、カザリ。今日は屑ヤミーを増やさない日だから、増やす明後日まで我慢してね」
何故か僕の身体には大量のセルメダルと、グリードの意思があるコアメダル(と、残りの8枚)が入っており、グリードが僕の体に住み着いている。鳥系のアンクはアイスに目がなく、水棲系のメズールはウヴァとカザリのケンカの仲裁役、重量系のガメルは子供、昆虫系のウヴァと猫系のカザリは割と無視できない頻度でケンカする。
僕の日常はかなりヒヤヒヤさせられるものだ。週に1度セルメダルを増やす為に屑ヤミーという怪人を生成。それを憑依させて5人のグリードを生きながらえさせているのだ。バレたら研究だのなんだのとあれこれ理由付けされて即解剖だろうね。ただ、とあるスポンサーには僕の体質を話している。
『そういえば鴻上の欲望バカに渡したコアメダルは大丈夫なんだろうな?』
「うん。僕の提案したオーズドライバーももうすぐ完成間近だって」
『僕達のコアメダルを使わなきゃいけないのはちょっと癪に障るけど、鋭司のやりたい事だからね。コアメダルを奪われなければそれでいいよ』
『オーズになるの、俺楽しみ!』
『ようやく暴れられるのか。ニュースでやってた男性操縦者に便乗する事でスムーズにIS学園に入り込む……いい作戦だ』
『一応オーズドライバーにはISコアを埋め込む予定だったかしら?』
「うん、メズールの言う通り、識別用にISコアを埋め込む予定だよ……よし、とりあえず和定食の完成っと」
『いただきます!』
『アイスは無いのか……』
「ほら、次の男! さっさとしろ! 男の分際で女を待たせてるんじゃないよ!」
『くだらねぇ……こんな所にも女尊男卑かよ……アイスが不味くなる』
『やれやれ……こういうのをヤミーにしたいよ』
『ハッ! 所詮三下が吠えているに過ぎない。ほっとけ』
『メズール、じょそんだんひってなんだ?』
『ガメル、簡単に言えばいじめよ』
『むぅ……おれ、そういうのよくないと思う!』
『そうね、でも鋭司の為に今は我慢よ』
「ハイハイ……(お願いだから起動してくれよ……!)」
グリード達が呆れたりして喋っている中、僕は待機状態のISに触れる。
僕の体内のセルメダルの1部には、屑ヤミーから集めたセルメダルに引っ付いた女性のDNAがある。それをメズールのシャチメダルに集めて無理矢理IS適正を獲得。さもIS適正があるかのように振る舞う予定なのだ。
「……ダメだったか」
僕がISから手を離そうとした瞬間、何故かメズールのシャチメダルに強い力が湧き、急激に脳内へ大量の情報を無理やり詰め込まれる。それと同時にISを中心に光り輝き、眩い球となって僕を包む。
僕を包んでいた輝きが消えると、そこにはISを纏った僕、日野 鋭司がいた……
「嘘……千冬様の弟ならともかく、なんでアンタみたいな有象無象がISを起動できるのよ!!」
「……これ、どうやって解除できますか?」
何やら試験官だった女性が喚いていたが、しばらくするとやってきた警備員の女性に外し方を教えて貰ってISから降りて、スポンサーの鴻上ファウンデーションに連絡する。
「もしもし、日野 鋭司です。鴻上社長に繋げて欲しいのですが……」
翌日、様々な検査を鴻上ファウンデーションからの要請という理由で突っぱねて鴻上ファウンデーションの社長室に入った鋭司を迎えていたのは、赤いストライプの派手なスーツを着た鴻上ファウンデーションの社長、鴻上 光生と、彼の作ったホールケーキであった。
「ありがとうございます、鴻上社長。こらガメル、ケーキはまだだよ」
『えー、えいじ、はやくケーキ食べさせろ!』
「ハッハッハ! ガメル君! 君のケーキを今すぐ食べたいという欲望、解放したまえ!」
鴻上社長は僕の体質を知っている数少ない……というか、僕を除くと2,3人しかいないうちの1人だ。アンク達グリードからすら呆れられる程の欲望大好きおじさん。何かと祝ってくる。ケーキが美味しい。……こんな所だろうか。
「所で、オーズドライバーはどうなりましたか?」
「勿論完成しているよ! 里中君、出したまえ」
「分かりました」
秘書の里中さんが持っているボタンが押されると、西側の壁の1部が開き、僕達の欲望の結晶が現れる。
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