私が生まれたのは、ポッカリと口を開けた大穴のまわりに造られた街__オースであった。
物心ついた時に、既に親と呼べるものは無かった。普通なら、親もなく、家無しの子はすぐにのたれ死んでしまうのだろうが、生憎、私は恐ろしいほどタフだった。
日がな日がな、ゴミを漁っては食べ物を掘り出した。私を助けてくれる大人は1人もない。時折、布切れしか身に纏っていない私の身包みを剥がそうとしてくる奴もいた。だから、私も周りの奴らの身包みを剥ぐことにした。当然の摂理だ。
殴られても蹴られてもびくともしない身体であったから、トンカチだったり、なんなら石さえ持ってれば大人でも容易に動けなくさせることができる。そうやって、私は周りから奪い続けた。
しばらくして、縦に走った窓?のような部分から紫の光を漏れさせる仮面を被った男が目の前に現れた。お腹が空いていたから、とりあえず襲うことにした。
でも、そいつは私の精一杯の飛び蹴りを避けるまでもなく受け止めて、
「元気が良いですね、素晴らしい。私の名前は“ボンドルド”、“黎明卿”と人は呼びます……さて、今日ここに来たのは他でもありません。あなたに素晴らしい提案をしに来たのです」
私は、ボンドルドの言うことを聞いて、従った。ボンドルドから嫌な感じはしなかったし、何より、抗っても私がどうにかなるだけだとわかってたからだ。私はアイツの一行に連れられて、アイツの研究所に住むことになった。
新しい住処は、鉄の扉に遮られ、四方を足の壁に阻まれた息苦しい部屋。部屋の中には、私と同じような子供がたくさん居た。皆ボンドルドに連れてこられたのだろう。同年代と会話するのは新鮮な感覚だった。
それからというものの、いつまで経っても景色の変わらない退屈な場所で、味がするのかしないのかわからない固形の食べ物しか出てこないとはいえ、しばらくの間、私は安定した生活を送った。風呂にも入れた。
「______、______、今日は君の番ですよ」
一日おきぐらいに、部屋の中の1人がボンドルドに連れられ消えていく。帰ってくることはない。一体何をしてるんだろう。
それを、私は自分の身で体験することになった。
「貴方程頑丈な生体もそうはいません。もしかしたらアビスの呪いに対するなんらかの耐性を持っているのかもしれません」
つまるところ、私や他の子供は全て、ボンドルドの研究材料であったらしい。ガラスばりの昇降機に入れられた私は、特段絶望しているわけではなかった。気づかなかった私が悪い。当然だ。
実験は至ってかんたんで、下がって上がるだけだ。それはすぐに始まった。
目にも止まらぬスピードで地下へ落ちていって、真っ暗闇の中で停止した。容器の中の電灯から漏れる光では、奥を見渡すことはできない。
すると、容器ごしに、生ごみが張り付いたような音がして、すぐに“肉の塊”が、よだれを垂らしながら容器にしがみついてきたのが見えた。一匹だけじゃない。何匹も、何十匹も迫ってきた。
多分、実験の成れの果てだ。
その瞬間、昇降機が作動して、肉の塊を弾きながら上に巻き戻りはじめた。変化はすぐに始まった。
とにかく身体が熱くなった。痛くて、思わず頭にてをやったら、ずるっと頭皮がむけて、もっと痛くなった。身体から湯気が上がった。骨が軋んで、砕けてくっついて砕けて、髪の毛が抜けて、腕がとれて、青いムチみたいな腕が生えて、はらわたがひっくり返るような感覚がして。
気づけば、ボンドルドが目の前にいた。
「これは……“なれ果て”なのでしょうが、……実に興味深い。君は素晴らしいですね、______」
私は、人の形を捨てていた。嬉々としてボンドルドは鏡で私に私自身を自認させた。
青ざめた甲殻に身を包んでいて、黒い嘴のような口に金色の目、至る所に空いた穴から吹き出る青い汁。2本の長いうでだったもの。斑点、吸盤。大きさは、以前の半分もない。地下の肉の塊と同じぐらい。
ボンドルドは、私にいろいろなことをしてきた。お腹を開いたり、頭を割ったり。とても痛い。でも危機感は感じない。もうそんなものでは死なないとわかっているから。
しばらくして、私は肉の塊と同じ場所に捨てられた。ボンドルドは満足したらしい。
どちゃ、と落着した私の青白い光に、肉の塊が群がってきた。肉の塊の足とも腕とも言えない物体が触れた時、頭の中に一つ、抗えない衝動が湧いた。
(オナカ、スイタ)
肉の塊を食んだ。悲鳴もかまわずに、思い切り肉を食い破った。味は昔食べてた生ごみに匹敵したが、むしろ私の衝動は唸りをあげた。
赤い血を流しながら這って逃げようとする肉の塊を2本の腕で絡め取って、ひたすら貪った。すると、身体がミシミシいいだして、もっとお腹が空くと同時に、変な情景があたまをよぎった。
ピアノを弾いている。親に頭を撫でられている。どうやら、肉の塊の記憶だったようだ。
周りを見てみると、肉の塊は後ずさっていた。私の衝動は、未だにたかぶりの一途にあった。
逃げる肉の塊をひたすらに絡め取っては食い破った。青い汁が以外と役に立つ。余すことなく食べると、肉の塊の記憶が流れた。途中から食い破ると言うよりかは、口の中に放り込むようになった。
気がついたら、私は一人ぼっちになっていた。
ああ、お腹が空いた。
悪いことは大抵ボンドルドのせいにしとけばおけ
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おめかし
肉の塊をぜんぶ食べて、何もない、暗い空間に残された。相変わらず、頭の中で肉の塊の記憶が右往左往してるし、それに、空腹が収まる気配もない。
一通り辺りをみてまわったが、円形の行き場のない洞窟のようになっていて、生き物は何もない。ここにいたら飢えて死んでしまうかもしれない。
地面は柔らかそうだったから、私の腕なら掘り進めることができそうだ。善は急げ、だ。
壁に背を向けて、腕を壁に突き立てた。すると、脆いところがガラガラと崩れ落ちて、少しだけ抉れた。口の周りにできたもう2本の腕を使って体を押して、くぼみをさらに掘り進めていく。脱出は容易なようだ。
しばらく掘り進めていくと、急にぼっかりと穴が空いて、2本の腕が重たい水に触れたと思ったら、勢いよく私の身体を押し流してきた。随分と重たい水だから、ここがボンドルドの言っていた“なきがらの海”の最深部なのだろうか。
水の流れに抗って、口から取り込んだ水を吐き出しながら穴から飛び出すと、真っ暗な海中であった。すると、私の中の記憶が騒ぎ出した。まるで喜んでいるみたいだ。
私は海中を進み出した。この身体はとても便利で、目がとても冴えている。ひかりが少なくても、随分遠くまで見渡すことができる。
とにかく、今私がしたいのは腹ごしらえだ。
見つけた。私の斜め左下。見たことのない巨大な魚。まるで私に眼中は無いようだ。
好都合。ゆっくりと距離をつめてみる。
顎が随分と長いそいつの眼前まできたが、相変わらず私は見えていないように、ゆったりと前進している。下の方をみると、小魚のような生き物がいっしょにいた。
さっさと食べてしまおう。お腹がいたいほどに空いてる。
2本の腕を伸ばして、巨大魚の目に刺した。すると、ようやく驚いたように身を捩って、水流が私の身体を押し流そうとしてくる。突き刺した両腕の吸盤で耐えながら、両腕の口から、青い汁を思い切り発射。
巨大魚の頭が膨らんで、後ろから青い汁が光線のように噴き出した。死んだのか、糸が切れたように巨大魚はぐったりとして、どんどん沈んでいく。腕を引き戻そうとしたら、逆に私が死体に引き寄せられた。ともかく、これで腹を満たすことができる。
辺りを真っ赤に染め上げながら沈んでいく死体にかぶりつく。味は肉の塊よりも断然良い。なんなら、今まで私が食べてきたものよりおいしい。身体もミシミシいって喜んでいるみたい。
柔らかい肉をたんのうしていたら、下の景色が変わり始めた。どこまでも海が続いているのかと思ったら、大小さまざまな骨が降り積もった海底があった。
死体の半分を食べて、はらわたを喰み始めていた時、骨の平原に死体が落着して、赤黒い煙を上げた。
しばらくして、私は背骨の中の液体まで吸い取って、腹ごしらえを終わらせた。残ったのは大きな骨だけ。
ふと、私の2本の腕に、ずいぶん刺々しい骨が引っ付いていることに気がついた。どうやら、身体からうっすらもれ出ている青い汁がそうさせているらしい。まるでおめかしをしてるみたいだ。
なんだか落ち着く。どうせなら全身に取り付けてみよう。
2本の腕で骨の平原を掘り起こす。巨大なワニのような頭骨が出てきた。これは頭に嵌め込むことにする。同じような小さな頭骨が出てきた。これは腕の先端に取り付けて__
いつまでそうしていたか。鏡が無いからわからないが、多分全身に骨を取り付けた。私の2本の腕は、まるでお伽噺の龍のように厳めしいみために変わった。ふるふるとふったり、先端を開いたりすると、まるで生きているかのようにふるまう。胴の部分は、全身に空いている青い汁をだす穴を塞がないように取り付けたら、まるで、かつてみた、オースを訪れていた船のようなかたちになった。
なんだかとても良い気分。私の中の記憶もよろこんでいる気がする。
あぁ良い気分。
しばらく、他の骨をさがしてみたり、腹を満たしたりしてたら、急に地上が恋しくなってきた。やっぱり私は元々人間だったんだなと改めて思う。記憶たちもそうらしい。
骨に埋まっていた私は、腕を前にして、顔を後ろにした。私の腕にはある程度の感覚器官がついていて、目のように扱うことができる。こうして巨大頭骨に顔を隠せば、一見、双頭の龍のような、船のようにしかみることができないのだ、と思う。こうすれば骨が並大抵の衝撃は分散して、私を守ってくれる……
あれ、なんで、私は死なないのに。私という人間がそうさせるのか。骨を纏うことを楽しいとかんじたり、安心するのはこのためなのか。
一先ず、かつての足であるヒレを動かす。すると、骨で重くなった身体が簡単に浮き上がる。続け様に、口から重たい水を噴き出すと、ゆっくりと身体が前に進み出した。
地上。私はオースのゴミ溜めとなきがらの海の陸地、ボンドルドの研究所しか知らない。他の記憶も似たような風景しか無い。そうだ、どうせならば、いろいろな場所を探索しよう。それが良い。私を縛るものはない。
探検。探検。あぁ、楽しみだ。
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ころせ、こわせ、うばえ
今回の話は、龍属性エネルギーをアビス世界なりに独自解釈した描写が出てきます。
口から噴き出す水の勢いと、ヒレの動きがとても強いようで、あっという間に水面が見えてきた。
嬉しくなって、思い切り水面から飛び出してみた。まるで星屑のように水しぶきがたった。半身と龍ににせた腕を伸ばして水面に浮かんだ私に飛び込んできた光景は、どうどうと流れ込む水の壁。急速に心が萎えた気がした。
仕方が無い。もっと登るしかない。
滝の中に入ってみる。ものすごい量の水が押し寄せてきて、海の中よりも重たいけど、チョロチョロしてなくて量は多いからなんとか登れそう。
口の中に水を込める。ついでに、腕に青い汁を溜めさせて、顔の向いている方向に合わせる。
そして、思い切り発射。その瞬間、まるで弾かれたボールのように私の身体が浮き上がって、滝を登り出した。
そういえば、イドフロントで読んでいた本に、“鯉という魚は、とある川の激流を登ると龍になる”と書いてあったが、それはアビスの上昇負荷のことを言っていたのだろうか。
しばらくして、両腕から青い汁が出なくなった。口から水を噴き出し続けているおかげでゆっくりと上に進んではいるが、腕の感覚器官で見てみるに、まだ半分ぐらいまでしか進んでいない。なんてことだ。
なんとなく、体の中で青い汁ができている感覚はあるから、十分たまるまでのろのろのぼっていくしかない。なんてことだ。
まだたまらない。
まだたまらない。
まだ。
……
いらいらしてきた。なんだか身体もあつくなってきてる。
まだたまらない。
まだか。
ぜんぜんたまらない。
はやくしろ。
口元が熱い。なんだか身体から赤い火花が散ってる気がする。
いや、気のせいじゃない。私のいらいらに反応してる。何かが私の中で沸騰しかけている。
動かせる。これはしょうあくできる。利用出来るかもしれない。
身体の中のあたたかな感覚を口元に集める。すると、なんだか赤黒い、稲妻がとどろく玉が出来始めた。どんどん集めていこう。
もう少し、
もう少し、
もう少し__
気がつけば、私に真っ白な雪が降り積もっていた。とっさに腕で周囲を見て回ると、雪原の上に横たわっているみたいだった。あれを撃って、私は上まで上がってこれたということか。
近くに水辺があって、その奥の方に、まるで溶かされたような跡と、水蒸気があがっている。
私のあの力のせいなのだろうか。だとすれば、ものすごい破壊力だ。
ボンドルドに喰らわしてやりたい。
……なんで。
ともかく、ヒレを使って半身を地面に埋めた。顔に土がかかっている感覚がした方が落ち着くし、視界は両腕が担ってくれる。
さぁ、
探検をしよう。
ボンドルドを殺せ。
いやだ。
ボンドルドを殺せ。
私は探検がしたい。いろんなところを見たい。
私は白笛になるのが夢だった
オレは遺物を見つけて大金持ちになりたかった
英雄になりたかった。
有名になりたかった。
ぜんぶあいつが奪った。もう元に戻れない。お前の腹の中で囚われているしかない。憎い。
殺せ。
ボンドルドを殺せ。
……
イドフロント。
懐かしい風景。
こわせ。
うばえ。
両腕に赤黒い力がたまる。これは憎しみの光。恨みの光。嘆きの光。あえて名をつけるならば、
“怨嗟の慟哭”
両腕から光が放たれる。その瞬間、視界が白飛びして、視界が戻ると、イドフロントに大穴が空いているのが見えた。
もっとこわせ。
やつぎばやに光を放つ。腕から発射するから威力は落ちるが、連続で打つことができる。光は、ちちち、と空気が焼けていくような音を放ちながら進み、轟音とともにイドフロントを確実に破壊していく。
もっと、もっと。
「
あうっ。
「閉じろ」
動けない。何。
黒いネバネバが、誰が、
……ぁ。
「お久しぶりですね、______。……いえ、もはやあなたにその名は似合いませんね。そうですね……“オストガロア”なんてどうでしょう?タコを意味するオクトパスに、旧時代に信仰されていた“神”の一柱であるタンガロアを掛け合わせたものです。とてもお似合いですよ」
あいつだ。
「ともかく、再び会えて嬉しいですね。そんな力を身につけているなんて、貴方は素晴らしい」
両手を広げている。地面を掘り起こして、本体をあえて露出させる。そして、自分の目で、はっきりと捉えた。
あいつだ。ボンドルドだ。間違い無い。
「ずいぶんと大きくなりました、これでは、イドフロントに持ち帰るには手に余りますね」
もちかえる?こいつはまだ
やっぱりこいつは
死ね。
死ね。
「……!!」
力任せに黒いネバネバを引きちぎる。こうふんしているからか、体のいたる穴という穴から青い汁が噴き出て、雪原を青白く光らせる。
あいつは後ずさってる。殺せ。
「またその光ですか」
何か身構えているけど関係ない、
「
咄嗟に貯め切ってない“怨嗟の慟哭”を放った。その瞬間、私に向けられたボンドルドの肘が光る。
訳もわからない内に、私は吹き飛ばされていた。初めてこの身体の、甲高い呻き声を聴きながら、
「驚きました。
雪の冷たさすら、もはや私の好奇心を覚ますことはできない。
起き上がり、“暁に至る天蓋”に着いた埃や雪を振り落とす。そして、立ち上がる。
興味深い。
是非調べたい、知りたい。
前方を見ると、イドフロントを囲むように広がる海に落下したオストガロアの触腕が蠢いているのが見える。実に素晴らしい。
「フフフ、素晴らしい。素晴らしいですよオストガロア。さぁ、貴方
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さようなら
「
光を両腕で受け止める。その瞬間、パッと、まるで昔見た花火みたいに弾けて、後ろの方で水の爆発がなんどもおきる。
そのまま、両腕から“怨嗟の慟哭”を発射。雪を巻き上げてボンドルドに__
ボンドルドは走って逃げる。鬱陶しい奴。
「
何。紫の光、アイツの仮面から、あちこちから____
待って。
ボンドルドはどこに行った。
「おやおや、視野が狭いですよ、オストガロア。関心しませんね」
腹__
「
『________________!!?!?!!!!』
熱い。
熱い熱い熱い熱い熱い痛い熱い痛い痛い痛い__
お腹が、横腹が焼かれた。ふざけるな。
怖い
いやだ
「おっと」
痛くて狙いが定まらない。取り敢えず引き剥がさなきゃ。
両腕をぶん回す。当たればそれでいいし、まずは距離を取らなくては。
本当にすばしっこい奴。全く当たらない。
それに、引き剥がせない。
「君は本当に
『_____』
熱い、痛い、両方のお腹が焼かれた。
「
なんだ、どこをやかれた。
そうか、顔__
『______!!』
今日一声だしたきがする?痛い、あう、かんがえられない、痛い、憎い、殺す、殺せ、ボンドルドを……
逃げよう
動けない。
黒いネバネバが、いくえにも重なってる。岸辺の
お腹も治りが悪い、口が裂けてしまっている。
ボンドルドが、目の前にいるというのに。このままじゃ。
しぬ
「さぁ、やんちゃはやめにして、また私の所へ帰ってくる気はありませんか?貴方や、貴方の友達のおかげで、私の研究は大いに進みそうなのです」
なにいってんだこいつ。
殺してやる。
いたい
食ってやる。
だめだ。逃げよう。
怖い。怖い。怖い、怖い、怖い怖い。
こいつはバケモノ。死にたくない。
ふざけてんのか、ボンドルドは殺す。
死ぬのはやだ。痛いのもやだ。
なんで。
……
「さぁ」
ひっ。
「なんということでしょう、取り逃してしまうとは。実に素晴らしい」
岸まで泳いでいき、水気を払った私の視界には、ちぎられた“
「
身体が震える。寒さからではない。新しい興味対象物が出来たことに対する歓喜。
しかし。
「しばらくはお別れのようですね、オストガロア」
掘り進めていった方向は上層部。
ああ、なんて口惜しい。
「さようなら、オストガロア」
私の目の前には、彼が残した青白い体液が飛び散っている。
ここがどこかもわからない。怖い。きずぐちから青い霧が漏れ出している。怖い。地面の中でうずくまっていたい。怖い。
怖い、怖い、怖い、怖い。
僕を食ったくせに
オレを食ったくせに
なんで逃げた。ボンドルドを殺せ。
あんなの殺せるわけがない。当然のこと。なんでわからないの。
そんなのアタシには関係ない。
なんで逃げたんだ。
なんで逃げた。
……
お腹、すいた。おなか、すいた。そうだ、腹が減った!
おい。
思い切り地面から飛び出す。その瞬間、花びらがふぶきのように舞い散った。すごい綺麗。
くそ、きいちゃいない。
あぁ、ここが“なきがらの海”の上の層なのだろうか。わくわくする。心が高鳴る。どんな生き物がいる?
おぼえておけよ
まだおなかと口元が痛いけど大丈夫。さあ行こう。冒険だ。これが私のしたかったことなんだ。
さようなら、オストガロア。また会う日まで。
私の周りに広がっているのは、だだっ広い真っ白な花畑。上を見ると、何か、きょだいな丸い天井が何枚もおおっている。
ボンドルドのやつが言っていた気がする。“第四層には《殲滅卿》の好きな、トコシエコウの花畑”があるって。ということは、ここは第四層“巨人の盃”なのか。
それにしても、殲滅卿。ボンドルドと同じ白笛……
早くこの場からはなれよう、そうしよう。
五層の乾いていた硬い土ではなく、ふかふかな茶色の土だから、掘り起こして進みやすい。万が一白笛に見つからないように、より深く潜っていく。
土がきずにしみる。細かい穴ぼこから青い霧がさかんに漏れ出しているけど、これは大丈夫なのだろうか、絶対に死にはしないだろうけど。
そうこうしているうちに、土の質がかわって、石っぽくなってきた。そろそろ地中からでても良さそう。
安全確認のために、片腕を地面から飛び出させて周囲を見る。
うん、問題なさそう。
ヒレに力を込める。そして、思い切り飛び出す。その瞬間、微風が私の半身に吹き付けてきた。気持ちがいい。
私が出てきたのは高台だったみたい。さっきしたから眺めていた光景が、上から見てみると、ゆげを放つ水をいっぱいにためた“盃”が、所狭しと並んでいるのがわかる。
やっぱり、ここは第四層“巨人の盃”だ。
情緒不安定なオストガロア君、なんとかしたいですよね。
ゾアホリックにかなり独自解釈入ってます
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こころ休めて
新たな
白骸を身に纏う双頭の龍のような外見、上昇負荷など意に介さず、その他諸々のスペックから推定される危険度は脅威の
一先ずは主要な探窟家に、オストガロアに対して刺激を与えないよう、可能な限り情報収集をするよう指令を送ったが、仮に、仮にオストガロアが地上に襲来としたら。
ただでさえ、主戦力となるであろう、英雄の白笛の内、
頼みの綱となるのは、黎明卿、そして、現在の白笛では古参の部類に入るベテラン只1人。
「オストガロア、ねー」
あぁ
……ライザ、君も後数ヶ月は地上にいれば、こんな楽しいイベントに恵まれたろうに。
「本当に、度し難い」
久々に、長い旅路になりそうだ。
いる。私のま上。この足音は“タマちゃん”かな。
両腕を、音をたたせないように掘り進めさせて、上を歩く何かに合わせる。
今。
思い切り地面から飛び出させる。肉に食い込む、暖かくて柔らかい感覚、完全に
ジタバタもがいているのは、私の予想通り、やっぱりタマちゃん__タマウガチだった。今日で12匹めだ。
巨人の盃に来てから、私は地面の中に潜って生活している。そうすれば、怖いボンドルドに見つかることもないし、他のいきものに気づかれることもないから、安心してお腹を満たすことができている。
思い切り地面に引き摺り込んで、私の顔の前に持っていく。とげとげを逆立ててよわよわしく威嚇している。なんて美味しそうなんだろう。
口の腕で抱きつくようにして、棘ごと口の中に収めて、一気に噛み砕く。すると、タマちゃんから溢れたまっかな血が私の顔を染めて、にくがぴくぴくする生暖かい感覚が気持ちいい。
私は大きいから、タマちゃんだと食べ切るのに30秒もいらない。あっという間に食べきって、このまえのたたかいで裂けて、広がった口から棘を吐き出す。
けぷっ。
これは両腕に青い汁でつけておく。タマちゃんの棘には毒がある。これを利用しない手はない。
青い霧が体から、口から漏れる。どうやらあいつにやられたこの傷口はもう治らないらしい。意識すればとめられるけど、四六時中それができるわけでもないから、あきらめてたれながしている。
……ここも見納めだし、自分の目ではっきり見よう。
ヒレを動かして、トコシエコウを押し退けて地上に出る。そして、頭にかぶっている骨を押し上げると、いつ見ても綺麗な、いっぱいに広がった盃に、温泉が溜まって、湯気がのぼる光景が広がる。
顔がしめる。それは青い霧のせいなのか、湯気のせいなのだろうか。
ここに来ていく数日。私は次の階層に行く。
冒険だ。あと、ボンドルドから逃げるために。
第三層__大断層には、縦穴しかなくて、原生生物がいる以外にほとんど何もないっていうのはしっているから、私がめざすのは第二層。
木が逆さにはえているらしい。あぁ楽しみ。どんな光景なんだろう。どんな食べ物があるだろう。
くふふ、うふふ。
さあ、早く行こう、そうしよう。
タマちゃん乱獲祭
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へいおんのおわり
深界三層、大断層。なんてことはない、ただだだっ広い縦穴が空いてるだけの場所。マドカジャクや大口開けてるアマカガメ、外を飛んでるベニクチナワあたりに気をつければ特段面倒は無い。
ネリタンタンが掘った薄暗い穴伝いに下の階層に向かう。それが探窟家の中での定石だ。もちろん、私もそうしている。
ただ、私に関してはここが面倒でならない。背格好が無駄にでかくなってしまったから、鎧のへりだったりがあちこちにつかえてしまう。忌々しい。
毎回
それにしても。
「やっぱり、
真っ暗な天井から水滴が滴ってくる。
どうにも、さっきから胸のざわつきが止まらない。久しぶりに下の方へ向かうからだろうか。それとも、例のオストガロアとやらに気圧されているのか、この
「まさか」
くだらない妄想なんてやめて、さっさと先に__
「っと」
揺れ、地震か。すごい揺れだ。この私が体勢を崩してしまった。崩れないだろうなこの穴__
まて。
「……」
しゃがみ込んで、手を地面につける。揺れは強くなる一方だが、何かおかしな感じだ。
まるで、何かが
登る、音。
……
もしそうだとしたら。私の勘は、なかなかバカにできない。
「……」
せっかく降った道を、また登らなきゃいけないようだ。
勢いよく地面から飛び出す。鳥かなにかがとびさっていく音がして、周りを見渡してみると、土煙の奥に森が広がっているのがよくわかる。
ついにきた。ここが二層、誘いの森だ。本でみたのと全然ちがう。
嬉しくなって腕をふると、からからと骨が擦れあって、不思議な音がなる。私の好きな音。からから、からから。
あぁ、早く探検しよう。なにがいるんだっけ、そう、ナキカバネ。どんな味がするのかな、お腹がすいた。とにもかくにもはやくいこう。
顔を背負った頭骨で隠して、半身をじめんに埋める。腕を目がわりに、私の身体が動き始める。あぁ、なんて綺麗なこうけいだろう。むかしオースでうけたような日差しをかんじる。アビスの“力場”がそうさせているらしい。
ここさいきん、また身体がおおきくなったから、地面をすすむごとに周りの木々を薙ぎ倒してしまう。ボンドルドは言ってた、環境破壊はいけないって。私は環境破壊してるのかな。
奥の方に尖った山みたいのが見えてきた。なんだあれ。
あっ、鳥の巣だ、昔見たことがある。それが山の頂上にある。
足を止める。観察しよう、あれがナキカバネの巣かもしれない。
巣の中をよく見る。腕についた目はそんなに良くないから見えにくいけど、こらせばなんとか……
小さな、鳥の子供?目が変。ひたいと左目のぶぶんに目玉があって、右目がない。ということは、あれはナキカバネだ。ナキカバネの雛だ。
美味しそうでかわいいなぁ、あ、そうだ。お腹空いているんだった。
食べてしまおう。
全く面倒極まりないことになった。せっかく頭痛に苦しみながら上に戻ってきてやったというのに、いいことと言ったら、大断層と巨人の盃に直通の通路ができたぐらい。それだけじゃ借金まみれなぐらいだ。
なにか
ボンドルドの嘘みたいな話は、どうやら本当だったらしい。
『___!!!________!!!!』
全身に纏わせた骨を震わせて、青い霧を体から発せながら、カラカラと不気味な音を奏でながら、龍頭のような触手でナキカバネを捕まえては、巨大な頭骨を被った真っ青な本体が貪っている。巣も例外なく。ナキカバネがナキカバネを呼んで、あの化け物、オストガロアがまとめて喰らっているって寸法だ。
肌で分かった。あれは異質だ。六層や七層から来たと言われてもなにも異論なく受け入れることができるほどに。
この私が、少し気圧されている。
ただでさえここは二層。まだまだ経験の浅い探窟家が多い。仮に奴に刺激を与えるようなバカがいるとしたら。
どうにかして地下に押し戻してやらねば。だがどうする。
「……度し難い」
奴も生物だ、私たちの姿形をしたものを“怖がる”ように仕向ければ、あるいは奴から身をひいてくれるか?いや、深界から赴いたものに恐怖心を植え付けることなんてできるのか?むしろ敵対心を煽るだけに終わる__
「っ」
すごい。食べればナキカバネが私を攻撃してくる。こんな程度効かないから、もっとたくさん食べれる。
あはは、面白いなあ、まるで漁をしてるみたい。
もっと来て。もっと食べたい。もっと遊びたい。
楽しい。
もっと
いいぞころせ
うふふ、あはは。
カラカラ、からから。
『__』
んぅ?
上の方。
ナキカバネ?ちがう。
腕に足、服を身につけた胴体。恐怖に歪んだ顔、青い笛。あぁ、久しぶりにみたな。
ヒトだ。
やれ
殺す?必要ない。
あるだろ。
ボンドルドはヒトダ。
人は敵だ。ボンドルドは敵だ。
お前をそうさせた。俺たちを食ってしまうきっかけを作った敵。
お前が俺たちに永遠に憎まれることになった原因。
人がいるせいだ。だから殺せ。
いたいのはいや。
いやだ。
だめだ。
逃れることはできない。
お前は殺しを楽しんでいる。遅かれ早かれお前はこうする。
だから手助けしてやる。
ちがう。
違わない。
楽しもう。
あの少しで
「探窟家__」
『___________!!!!!!!!!!!』
内臓がひっくり返るような轟音、オストガロアが発生源か。何が起こった。
高台で蹲ってるのは何もしていない。だというのに、オストガロアの纏う雰囲気が変わった。青い斑点が赤く染まったとか、そういう外見上の変化もそうだが、そうじゃない。
人が変わったような、言うなれば、酒に酔った飲兵衛のような。
濃密な殺気を放つ存在に。
「ぐっ……!!」
大地が揺れる。オストガロアの両腕の先が天井に向いた。
いや、天井を見ているのではなさそうだ。
頭の中で“最悪”を告げるアラートが鳴り響き続けている。こんな感覚久しく感じたことがない。赤笛の時以来か。
ともかく、こうなってしまえばなりふり構っていられない。多分どう転んでもこうなるのだったんだろう、あの豹変の仕方ならば。
薙ぎ倒された木の影から思い切り飛び出す。目標はあの探窟家の位置。目測で500mぐらい先か。
それなら
脚に力を込める、そして、一気に跳躍。
「っ……!!あ、あえっ!?」
「しゃがんでな」
1秒もしないうちに後ろの方で聞こえた声の後。
私の頭上に、怪物の腕が振り下ろされた。
オース史上最悪の日、はじまりはじまり。
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骸まとう龍
「……」
私の部屋の匂い。
なんだ、
体の節々が痛い。あぁ全く、最近は昔を思い出すことが多すぎていけない。体を起こすことができないなんて久しぶりだ。
「無理にせんでいいよ、オーゼンさん」
ザポか。ベッドのそばの椅子に腰掛けていて、随分表情が優れていないじゃないか。
くそ、距離感が掴めない。
「……オースは」
「あんたが頑張ったお陰で、全壊とまではいっておらん。犠牲者も最小限に抑えられたじゃろう」
「……そうかい」
別に守るつもりもなかった。有象無象の死なんて、どうでもいい。
「気を悪くするような言い方をしてしまったの」
「別に……あ」
いや、一つあった。一番気になっていたことが。
「
なぜ、目を逸らす。
あぁ、右腕が痛い。いや、もう
あぁ、度し難い。度し難い……
東西南北、中央区、全区、特に、出現区域である西区の被害が抜けて甚大。全区域の家屋、建造物になんらかの損害があると予測され、青い粘液による土壌の汚染も懸念される。
死者、行方不明者は、現状、全区合わせて10013人であり、今後さらに増えていくと予測される。また、青笛以上の探窟家に犠牲者が多数。今後の探窟作業に影響があると予測される。
出現した原生生物、オストガロアは、不動卿“動かざるオーゼン”の奮闘によりアビスに落下。消息不明。
「あの日、街は一夜にして消えた」
「大穴の側で共に暮らした仲間たちも」
「生まれたばかりの幼子も」
「みんな奪われてしまった」
「何の因果か残されたわしは、ただ一つの望みを抱いて生きてきた」
「誰でも良い。どんな外道な方法でも良い」
「オストガロア……奴を、文字通り骸に変えてくれ」
ア、ア。
お前のせいだ。
足りない。
生まれ故郷を破壊した。
いくら食べてもうまらない。きもちよくならない。心のうろ。
我等を貪った。
苦しい。むなしい。
お前はこれからも奪い続ける。
もっと食べたい。食べたくない。
奪い続けろ。それがお前。
おなかがすいた。
怨嗟に苛まれながら、自ら憎しみの炎に薪をくべるおろかもの。
いらない、もういらないから。
いとおしい我等の主
もう何にん食べたとおもっているの。
如何なる状況でも、我等はお前を助けよう。
もういらない。まだ欲しい。
欲しい。
欲しい。
欲しい……
……
だれか、いないの。
誰もよりつかない。わたしからにげていく。
手を伸ばしたらうばってしまう。
さみしい。
さみしい。
わたしにかまってよ。
わたしに、よりそって。
なんて、自分勝手ないきものなんだ、
これで原作に入ります。
ちなみに、作中の老人の言葉は、「モンスターハンターダブルクロス」において有名な、とあるクエストの依頼文を多少変えたものです。
メイドインアビス、第二期がついに始まりましたね。初手から飛ばしてて笑いました。
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深淵に挑め
旅の始まり
いたい。
いたい。なのに、ひだりあしがうそのようにないみたい。
うごけない。
くらい。
なんで、きゅうにこんなことに。
あぁ、あれのせいか。すきまから見える。おおあなからあらわれた二本首のりゅうがあばれている。なんで?
二本首のりゅうと戦っているひとがいる。よく見えないな、メガネネどこいっちゃったかな……
あれは……あぁ、“ふどうきょう”だ。あのつばのながいよろいかぶと。間違いない。
ほかのひとたち……だいじょうぶかな……
ねむい……なんでだろ。
「__こ!____ろ!!」
うるさいなぁ〜。
「リコ!何授業中に寝ている!!!」
「うわっ!!?いっだ!」
頭ッ……!!壁!?
あれ!?ここ教室!?あ、あぁ……
ノート涎まみれになっちゃった……おまけに……うわ、院長めちゃくちゃ睨んできてるよぉ〜……
「「ふふふ……」」
「次そんな態度とってみなよ、問答無用で裸吊りだからね……!
」
「は、はいっ!すいませんでしたっ!」
ぐぅう、こんな基本的な知識は聞き飽きてるのにぃ、眠たくなるのも当然じゃないのよ!あのウネウネ白黒頭!
だぁぁぁ……
「はっ、全く……じゃ、続けるよ」
冷や汗びっしょりになってる。……いつもの“夢”のせいだ。
やだやだ。過ぎたことなのに、どうしてこうフラッシュバックしてしまうものなんだろ。
まぁ良いや、切り替えてこ!午後の探窟に備えないと。
ツルハシを振る。すると、ザクッとまんまるな岩に深く刺さって、綺麗にご開帳。
何もない……
「リコってさー、いっつも寝苦しそうな顔してるよなー」
ナットの声だ。振り向いたら、姫乳房を投げつけてきた。
「一体何見たらそんなんになるんだ?……院長に裸吊りにされたときとか__」
「オストガロアが出現した時のこと」
露骨に、苦虫を噛み潰したような表情になる。ナットはわかりやすいなぁ。目線も、私の左脚にいってるのがバレバレ。
「……なぁー、お前、あの化け物に殺されかけてるんだろ?瓦礫の下敷きになってさ」
「うん」
「なんていうか、嫌になんねーの?
ナットを通り過ぎて、崖のへりに立つ。
雲が浮かぶ中に、……今日は何故だかいないけど、いつもツチバシが空を飛び回ってて、たまにサカワタリがその群れを追い回したり、巣を突っついたりする。
その下を覗くと、先の見えない大穴が口を開けて待っている。勇敢で愚かな挑戦者を。
そして、オースをめちゃめちゃに破壊し尽くした、あの化け物も、多分どこかに潜んでいるんだろう。公的には死んだ扱いになってるけど、そんなわけがない。
……いや、わからない。死んでいるのかもしれない。
だから、だからこそ。
「怖いよ。恐ろしい。今でも昔がフラッシュバックするんだから、ナットの言う通りトラウマになってるんだと思う」
「……」
「でもね」
思わず、
「そんなことで、憧れは止められないの!」
振り向いたら、ナットは呆れているような表情。
「それに、安眠妨害してくる原因の生死を確認しないと。いい加減裸吊りは勘弁だからねっ!」
「……はは、なるほどな。ほんとアビス馬鹿だなーお前……まあ、それがお前か」
ナットが笑った。
いつも心配してくれてありがとう、とは、あえて口にしない。
「さ、手を止めないで探窟進めよっ!もうちょっと、一層のギリギリまで降りていこう!」
「ええ……」
「白笛目指してレッツゴー!!」
「おー……」
探窟家の中でも、至上の英雄とされる白笛の娘にして、かの“
彼女は、人を魅了してやまない秘境、アビスに魅入られ、また、比類なき恐怖を心に抱いていた。
しかし、恐怖心では、彼女の“憧れ”を止める理由にはなりえぬのである。
彼女が歩みを止めることは無い。
己が夢に全力で向かうだけ。彼女が目指すは、甘美な深淵のその先。
もはや止められぬ彼女の運命の歯車に対して、外野ができることはただ一つ。
彼女の旅路に、溢れんばかりの呪いと祝福があらんことを、祈ることだけである。
__そして、深界五層“なきがらの海”。その外縁部。
そこに、積み重ねられた無数の
オストガロア襲来時に家屋に押しつぶされ、左脚を無くしてしまったリコちゃん。最近は義足の改造が趣味らしい。
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癒えぬ傷跡
最近2000文字も書けないから物語が進まぬ
治す気は……
レグ。
そう名付けられた。
本来の名前では無いかもしれないのに、妙にしっくりくる名前。由来がペットの名前でなければ、素直に受け入れられたのに。
僕は、僕が何者なのかわからない。伸縮性のある金属のロープで繋がれた、鉄の塊の両腕が付いているし、リコが僕に施したという行為の数々からして、人ならざるものなのだろうが、……色々、
僕を拾って、名前をつけてくれた、“リコ”という僕と同じくらいの背の、片足が義足の女の子。彼女が言うには、僕は大穴__アビスの底からやってきた者らしい。
アビス。アビス。
わからない。
こんな僕を、リコ、そして、ナット、シギーは受け入れてくれた。……僕が絆されただけかもしれないが。
ともかく、シギーの立てた作戦に従って、僕は、彼らの住むベルチェロ孤児院の一員となった。
「レグ!ちょいとこれを運んどくれ」
「了解した」
リコが曰く、孤児院にいるものは皆、アビスに転がる遺物を回収しに向かわされる。しかし、僕にはそういった仕事はまだ無いよう。いきなりではなく、しっかりと知識を身につけさせてからのようだ。
孤児院の人に頼まれた、僕の身長ほどの木箱を持ち上げる。
僕がするのは、今のところこういった雑用しかない。ほとんどを孤児院の中で過ごし、このような形でたまに外へ出る。
「よし」
荷物を奥の倉庫に置いて、手を払う。仕事をした後は気分が良い。
後ろを見ると、口を開けた穴の周りにびっしりと並ぶ建物の群れが見える。あと風車。
「……」
そして、そんな街並みの中に残る、叩き潰されたままになった瓦礫の山。
8年前、オースに襲来した原生生物が引き起こした大災害。その爪痕。
8年も経っているというのに、何故撤去されないのか。その質問に、この前リコは体を張って教えてくれた。
「見ててねぇ〜!」
探窟の時に使うらしいツルハシを振りかぶる。その切っ先が向いているのは、ぐちゃぐちゃに重なった瓦礫。
「とりゃっ!」
風切り音の次に聞こえたのは、火花の散るような甲高い音と、潰れたカエルのような悲鳴だった。
リコの持っていたツルハシは、刃先がへし折れていた。
「あつつ……よ、よくわかったでしょ……」
時間が止まったみたいに状態が変わらず、金属をも超える強度になって、同じようにかちこちな地面とひっついてしまった瓦礫をどかす手段は無いらしい。
結構力自慢の僕でも、この瓦礫は無理だった。
「……」
ここに来て、もう二ヶ月も経つのか。
ハボさんが帰ってきた。
二ヶ月前まで逆さ森まで探窟に行っていたハボさんが帰ってきた。
白笛を携えて。
わたしの、お母さんの。
“殲滅卿”の。
「……」
白笛の帰還。最も偉大な探窟家の魂の帰還。情報はあっという間にひろまって、オース中が歓喜に包まれる。
復活祭。
「……」
一応、お母さんは死んだことになる。
なのに、よくわからない。悲しいのか、帰ってきてくれて嬉しいのか。顔も見たことがないから。
でも、どこか、胸に空洞ができたような気はする。
でも、
なによりも私を愛している人だったらしい。
……
「……」
祭りの熱は冷めそうにない。
無くした左脚が、ちくちく痛む気がする。
なきがらの海の底。
何が広がっているか知ってる?
骸?違う。
煌びやかな世界。空が海に囲まれた、不思議な世界。
黄金卿。おわりのはじまり。
たくさんの生き物がいるの。とっても美味しいよ。
美味しいの。
まだ聞きたいことはある?
そこの、君も。同じなれ果ての仲じゃないか。
何を怖がっているの。
私が、何者か?
私は私だよ。それ以上でも以下でもない。あぁ、イカではあるかもしれない。
ん?まだ聞きたいことがあるの?ミーティ。
色々動き始めました。
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待つもの、発つもの
アビスで死んだ者は、アビスを構成する土に還る。つまり、アビスそのものに還ることになる。循環の最も単純な構造です。
魂もまた、アビスで終われば、アビスに還る。
しかし、オストガロア。彼の光は違います。
枢機に還す光とは似て非なる閃光。
彼は、この奈落で唯一、円環の外側にあって、その行く末を左右できる力を与えられた存在なのです。
あぁ、なんて素晴らしく、恐ろしい存在でしょう。
ようやく私とおしゃべりしてくれる気になった?
ボンが言ってたんだ。アンタは“はずれもの”だって。
……
なぁ、アンタなら、……
私の力はミーティを殺せるよ。
……
でも、その魂は永遠に私のものになる。
んな……
そうなったら、ミーティは壊れちゃうよ。そして、私を苛む“怨嗟”のひとつとなる。嫌だなぁ。
……
なんで、そんなにミーティを殺してやりたいの。
それは……
君は、本心からそれを望んでいるの。
……当たり前だぜ。
……?
ミーティは、いるんだろ?囚われてるんだろ?……オイラはいつか死ぬかどうにかなるだろうけど、ミーティはそうはいかねえ。そんなの、あんまりだろ。
殺したら、会えなくなる。
……
囚われてたっていいじゃないか。こんなにかわいいんだから。
……
自分が苦しくなることなんて、する必要ある?
……ミーティの苦しみは、オイラの苦しみだ。
よくわからない。君と私、似たもの同士なのにね。
あぁ、そうなのにな。
……
……
君がそうしたいのなら、ボンドルドの奴に頼むか、待つといい。
……
きっと彼は帰ってくる。奈落の底へ。彼の光はボンドルドの光。
彼、って、誰だよそいつは。
わからない。
……
あぁ、そろそろミーティが起きる。内緒話は終わりだ。
あの日。私が
私の住処に現れた少年。
上を目指していた少年。
四肢に光を宿した少年。
人ならざる少年。
骸に囲まれながら、私は願う。
早く、戻ってきてね。
夢を見た。
オースに居た時の夢。
ナット、シギー、キウイ、隊長……ベルチェロ孤児院のみんな。アビスを取り囲む街並み。
見上げると、アマギリのおおきな葉っぱの重なり越しに、丸い空が覗ける。この上にオースの風景がある。
隣を見ると、レグが寝ている。四方八方に自分の手を伸ばして、私を守ってくれながら。
とても、苦しそう。ひどい夢を見ているのかな。
それとも。
……
「うっ……」
「あ、レグ!どうしたの?ずいぶん寝苦しそうだったけど」
起きた。
ひゅるひゅると風切音が鳴って、レグの両腕が収納される。表情は芳しくない。
「ひどい、夢を見ていた」
「……」
「とにかく、不愉快に感じる存在が囁いてくるんだ。“来い”って」
そう語るレグの顔は、やっぱり気分が悪そうだった。
少しして、身支度を済ませた私たちは、ここ深界二層__“誘いの森”踏破に向けて移動を開始した。
当面の目指す先は、
私を2度も救ってくれた、恩人の住む場所。
千人楔。一つ身体に打ち込めば千人力が如き怪力を得ることができる一級遺物。
もう何本刺したのだろうか、確か120はやったか。いや、150だったっけ。
左腕はびっしりと埋め込まれてて、真っ黒に変色している。両脚も。見せる相手なんていないだろうからかまやしないが、化け物じみてしまったもんだ。
鏡に映る私の顔面も、右半分があの
果たして、これだけやっても奴に敵うだろうか。前とは比べ物にならないほど力を得た自負はある。だが、奴もそうだろう。
また、奴が地上に這い出てくるようなことが有れば。
最近は、こんな想像しかしていない。
しかし、問題はそれだけじゃない。
正直、地上に奴がまた現れるよりも、私にとっては度し難い、
片足を失って尚、アビスへ向かいたいという欲は潰えていないらしい。
なんて役回りを押し付けられたものだろう。
もし、生きているのならば。
「お師さま、お師さま、なにか近づいてます」
「二人です……一人は赤笛なのですが、もう一人が……探窟家ですらないような……ゴンドラの準備は?……?」
「お師さま?」
「ふふーん……まだ生きてたんだ。あのガキ」
ならば仕方がない。
その気ならば、送り出してあげよう。
もはや、ある程度の予測すらもつかない場所へ。
待たせすぎたな。
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監視基地
傷ついた巨人
お母さんを追いかけてアビスに挑んで、色々なことを経験した。
美味しい料理を作ったり、“星の羅針盤”を落としちゃったり、ゴコウゲに追いかけられたり……
ナキカバネに襲われたり。
正直言って、死ぬかと思った。ナキカバネが私の義足を掴んでなかったらどうなっていたか。着脱機能を利用してなんとか拘束を逃れて、レグに受け止めてもらったけど、上昇負荷を受けて吐瀉物まみれになるし、意識は朦朧として、ふわふわする。そこに、ナキカバネの群れが押し寄せてくる。
そんな絶望的状況下から逃れることができたのはレグのおかげ。
光だ。レグの掌から放たれたそれは、射線上にいた二、三匹のナキカバネと後ろの巣ごと、まるで“解いて”いくように、跡形もなく吹き飛ばした。
私はその光を“
ともかく、私は色々なことを経験して、
ゴンドラで昇って、監視基地の入り口から漏れる光の前。
吐き気がひどい。上昇負荷なんだろう。頭いたい、気分が悪い。
「へー、よく昇ってこられたねぇ」
人の、声。前から。
「この辺は負荷が緩くなってるとはいえ、子供にはキツかったろーに」
脚がおぼつかない。付け直した義足がふるえる。
ああ、多分間違いない。目の前のこの人が。
「あ、あのぅ私!」
「ん……」
「リコと言います……」
視界がぐるぐるする、よだれがいくらでもでてくる。
あ、むり。
「ん゛っ……!」
せめてよごさないように……!
「リコ……!」
「うぉええっえっ……うえっ」
レグにからだささえられてる、あぁすっぱ。
奈落に落ちてく黄土色なつぶて。ちょっと水っぽい。頭いたい……
「しってるよ、ライザの子だねえ?……はは、汚いねー」
嘲笑するような声……ハボさんの言ってたのはこういうことなのかな。
「おや……少年は平気なのかね?」
レグも圧倒されてる。それはそうだ。
目測で2メートルは越していそうな体躯。
どうなでつけているのかわからない、二対のツノが生えているような髪型。
そして、左目を隠すように巻き付けられた黒い布から覗ける、抉られたような傷跡に、肘下が無い左腕。
そして、胸元の白笛。
この人は、“動かざるオーゼン”その人なんだから。
「マルルク、この子たちの話聞いといて」
無性に腹が立つ。
廊下を歩く音がやけに大きく聞こえる。イラついたりした時は風に当たるに限る。
右手には持ち慣れたくない感覚。バカ弟子の笛。
封書が上に届いてそう経ってないはずなのに、もう来てしまうなんて。12か、マルルクと同じぐらいじゃないか。
「……」
下層から吹く風が私をさます。いつもと何も変わりのない、薄暗い逆さ森の風景。
バカ弟子の声が、姿が、ガキを見てから脳裏にちらつく。
なんで、記憶の中の瞳とおんなじ光を灯しているんだか。
それに、バカ弟子のことだけで無く、私の長い人生史上最も思い出したくないことも、妙に鮮明に浮かび上がってくる。
骨野郎、オストガロアのこと。
目を瞑りたくなる光景というのは、これを言うのだと思った。
平和を謳歌していたんだろう。たまに舞い込んでくる探窟家の武勇伝や情報、貴重な遺物の発見に沸き立つ陽気な街並みは、戦乱の惨禍に巻き込まれたかのように変貌している。
上昇負荷なんて気にする間も無く、息つく暇すら無く、オストガロアの後を追って地上にたどり着いた私は、この頃数えるほどしか感じたことのない、総毛立つ感覚を覚えた。
一時間程度。千人楔を30本は刺していた私が、二層から本気で地上へ向かった間。たったそれだけだ。
崩落した家屋に沈んだ街並み。
そこら中から聞こえる呻き声。
それを焦がし尽くすように燃え盛る炎。
そして、破壊と進撃、人々を喰らい続ける双頭の骸。
オースは地上の地獄と化していた。
とにかく、奴をオースから遠ざけることだけに注力した。
30人乗ったゴンドラを軽々持ち上げられる私の拳を、奴の骨は容易く防ぐ。柔らかそうな、骨を纏っていないむきだしの部位を狙おうにも、青いガス状の物質に保護されていて、それに触れれば皮膚が焼け爛れたようになる。
比較的攻撃の通る触手を殴り、蹴り続け、奴の触手の片方を引き裂いてやって、怯んだのか青いガスを出さなくなった隙を狙って、奴の右目に拳を差し込んでやった。
怯んで力が緩んだところで、アビスに向かって渾身の力を振り絞って押した。その時だ、私が左腕を失ったのは。口元に近すぎたせいだ。
ともあれ、私は奴と一緒にアビスに落下することはできた。
そのあとは、記憶が曖昧になっている。多分その時に顔面の左半分を削られたりしたんだろうが、私も奴に何か喰らわせてやったんだろうか。
私が倒れていたのは、深界五層だったらしい。
外した義足はレグに回収してもらって、しっかり付け直した。火葬砲には巻き込まれなかった模様。
二層から一時間で地上に行ける(ゴンドラ無し)オーゼンさん。強くね?
それよりも早く地上に襲来したオストガロア、見た目にそぐわず割と機敏。
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苦しみの果て、そして
ライザのガキを試す。
前々から決めていたこと。今現在のガキの力量を測って、アビスの底の方で、最低限原生生物の餌にならないようにするための生存訓練、その強度を決めるために、精神的に、肉体的に、徹底的に痛めつける。
……
ライザとの約束を果たしたいというのも本心だし、きっと
だから手は抜かない。出し惜しみはしない。嫌いな嘘だって吐く。
ライザの墓のことを教えてやれば、潜る目的を失ってくれるだろうか。
出生の秘密をバラしてやれば、絶望してくれるだろうか。
折れてくれ。
壊れてくれ。
私は君を見たくもなかった。
私は君が
……
だというのに。
得てして、子供は大人の想像を上回る。
あの義足、バネか何かが仕込んであるのか知らないが、不自然な加速をつけて殴りかかってきた。泣き叫ぶだけで終わらないとは。
瞳の明かりを消すことがないとは。
肉体的な苦痛でも、精神的な苦痛でも、止められない。
……お前がそうだったなぁ、ライザ。
憧れは止めることができない。わかりきってたことだ。
あぁ、だから嫌なんだ、お前らは。
あぁ、本当に、
「ここ最近、あの子らの訓練と飯以外では、ずっとここにいるんじゃないかね、オーゼンさん」
「……」
「アンタがイライラしとる時には大抵ここにおる。
「……随分口の回る。……ザポ」
長としての風格なんてあったもんじゃないな、いや、元からそんなものでもなかったが。
そんな取り留めのないことが頭を右往左往していると、いつの間にやら、枯れ木のようなジジイが私の隣に腰掛けた。
“
いつもなら蹴り飛ばしてるとこだが、そんな気が湧かない。
「もう長いことアンタと一緒にやってきたが……今程アンタにとって辛い時間もないじゃろう」
「……」
「白笛というのは、大なり小なり常人を超えた域の存在。人格もともなって、化け物とよべるやつの方が多い。その中で、アンタはあまりにも“マジメ”じゃからなぁ……」
「……」
……
「かの“骸龍”がひそみ、“黎明卿”をはじめとした白笛がひしめく最下層……本当なら、アンタも
「……」
「あの子らは明日出発する。……行けばいい。少なくとも、ここにアンタを止めるものはいない。マルククでさえそうじゃろう」
この野郎、真顔でいうかい。そんな
宥め方がヘタクソなんだよ。
「……待ってるだろうなー、ライザは」
「……」
「それがわかるからいいのさ、私は。ここで電報船が飛んでくるのを待ってるぐらいがちょうどいい」
肌寒い風が吹き抜けてくる。そして、小うるさいジジイのせせら笑いが耳を突く。
「……それでこそ、“動かざるオーゼン”ということか。全く」
チャポン、と波打つ音がする。ザポの方から。
振り向くと、奴が持っている二杯の木製ジョッキと、みたことのない酒が目に入る。顔を見ると、
「そうそう、要件を思い出したんじゃ。
「……」
「アンタに見つからないようにとっておいた、外国産の珍しい奴じゃよ。量は少ないが……」
……
「花がないよ、枯れ木みたいなジジイと飲むなんて」
「はっは、辛辣じゃなぁ」
それに、これっぽっちしかないんじゃね。
まぁ、今日ぐらいはね。
……
ついにきた。光を持つものが。
……
何故臆する?君のねがいが叶う。わたしはかなしいけど、君は嬉しい。
なぁ……会えるよなぁ、また、……魂は、アビスに還るんだよなぁ。
会える。君もまた、身体という牢獄に閉じ込められた魂。解放されれば、アビスに溶けて、再びであう。
……
かなしい。君とのおしゃべりは楽しかった。彼女が還れば、君を
……
まいにち、まいにち、奪いあいの日々。壊して奪ってうばわれて壊されて殺して怪我して、心が壊れる。君とのおしゃべりはわたしの心を保っていた。
……
どうか、わたしの前に現れないで。つぎに会う時、
……
君はころしたくない。
……
さようなら、ナナチ。ありがとう。
……お前はみまごうことなきバケモンだけどよぉ、……オイラも楽しかったよ、なんだかんだな。
さようなら、オストガロア。
『……』
「今日は随分と静かに待っていましたね、では始めましょう。
まいにち、まいにち、同じことの繰り返し。
また殺してやる。
死にたくない。
これで10009人目。
死にたくない。
殺す。
死にたくないから、殺す。
地臥せりの中でも。ザポ爺はオーゼンと長くともに行動してそうだから、悩み続けるオーゼンさんのカウンセラーになってもらいました。ほんへでもオーゼンはこんな感じの精神状態になってそう。
そして、オストガロア君に変化が……
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