ろくでもない話 (多少プログってーる椛)
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1. はじまり
その国は、隣国と長きにわたる戦争をしていた。戦況は膠着し、どちらかが圧倒したと思えば、その3日後には逆に劣勢になる。その繰り返しを何度も何度も、それこそ何十年も続けていた。
その戦場には、2人の少女の兵士がいた。どこで生まれたのかでさえ定かではなかった。だが、2人とも射撃の腕前だけは誰にも負けなかった。ただひたすらに機械的に敵を殺す。そんな存在だった。
2人の少女は仲が良かった。部隊の人間の誰もが、いや、彼女らの様子を見れば誰でもわかるだろう。一部の人間は「彼女らは付き合っている」とも言う。本人らは「自分達は姉妹だ」と言う。真偽はわからない。
日々の戦場において、2人は常に一緒に行動していた。部隊の人間がそれに加わることはあるが、どんな時でも彼女らは常に一緒だった。
一度、敵に待ち伏せされ、あわや壊滅の憂き目に合いかけたことがあった。その時、彼女らは的確に部隊を指示し、自らは殿となり、守り切った。そして戻ってきた。片方がミスをしたとしても、もう片方が常にカバーをする事で彼女らは常に生き残ってきた。
だが、戦況は日々悪化していった。戦線はどんどんこちらの劣勢となっていった。
彼女らの部隊もまた、悪化する戦況の中で生き残ってはいた。だがある日、司令部から通達が来た。
「一時撤退し、その後部隊の補給, 増員を行った上で再侵攻せよ」と。
だが、部隊長はこう言った。
「誰か1人を置いていかなきゃならん」あまりに現実感のない言葉に一瞬場は静まり返った。すぐに怒号が飛ぶ。何故に仲間を置いていかなければならないのか。ふざけるな。せっかくここまで生き残ったのに。そう言った声が上がる。
「一時撤退するにあたって装甲車が迎えにくる予定だったが、どうあがいても1人乗れねえんだよ」
そんな説明をされても納得いくわけがない。そもそもここに置いていくということは、すなわち敵の捕虜になる、ないしは死を意味する。だが捕虜になるならまだ生きて戻れる可能性はある。そう考えていた。
「置いていくやつは……ここで殺すことになる」
は?
「上層部が、情報の漏洩を避けたいから捕虜に取られるなら殺せと言ったらしい「ふざけんな!」
先ほどよりも激しい怒号、罵詈雑言が飛び交う。当たり前だ。単独で取り残すことだけでなく、仲間を自らの手で殺すことなんてもってのほか。
集会は遅々として進まず、誰が死ぬのか。それすらも決まらないまま終わるかと思われたが「そういえばあの少女たちは……」
途端に静かになる。誰もが2人の少女に目を向ける。
彼女らはもともと正式な軍属とは言えない存在だった。かつて撤退する際、破壊された町にいた孤児を誰かが拾ったのだ。それが彼女らだった。
生まれも知らない。親も知らない。故郷すら今となっては存在しない。
なら……彼女らでいいんじゃないか?
それに対して彼女らは何も言わなかった。ただ、機械のように、無表情で。
集会は終わった。彼女らのどちらかが死ぬと決まった。
撤退するための装甲車が来るまではあと5日しかない。それまでにどうにかしなければならない。
続きは私の余裕がある時に書きます。もしかしたらエタる可能性もありますが……
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