アブノーマリティに転生したが...ノーデスを目指しますが......知らないアブノマーリティしか来ないんですけど? (サイコロさん)
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1Day 俺って転生してるっ――!?

気分転換に書いた……後悔も反省もしておりません。


………ガタン………ゴトン………!

 

 

何かが降りてくる音がする。そして大きな震動がする。まるでエレベーターのような震動や音だ。ゆっくりながらも稼働しているのか、そこまでは揺れは酷くない。

 

 

 

 

 

…………ん?

 

 

 

ちょっと待てちょっと待てちょっと待てお兄さぁん。俺はエレベーターで寝るという趣味もなければ、寝た覚えはないぞ。というか、このエレベーター赤くない? そりゃ薄暗いエレベーターの中、赤いライトの光に囲まれているからなぁ。そう思っていると上からスピーカーが聞こえる。どうやら薄暗くて気づかなかったようだ。

 

 

『……――ッ、――ッ、ァアああ、聞こえるか? 聞こえるならば返答を求む』

 

 

うーん、男性か女性なのか分からない中性的な声だな。とりあえず反応をしてみる。

 

 

「応よ! ばっちりさぁ!」

 

 

その言葉を聞いて安心したのか、安堵の溜め息をつく音がした。

 

 

『そうか……ならば君に聞きたいことは一つある。それだけ応えてくれ』

 

 

「なんだ?」

 

 

『君の特徴、または信念や思いを一言で教えてくれ』

 

 

ふむふむ。そう聞かれちゃこれしかねぇよ。

 

 

「俺は、皆を助けられる英雄(ヒーロー)になりたいのさ」

 

 

『……そうか……質問に応えてくれてありがとう』

 

 

そして俺は眠りについた...ホントになんで?

 

 

 

 

そして目覚めたら、そこは謎の空間。厳重そうな扉に周りには、換気扇やよく使っていたパソコンに高そうなデスク。さらにはクローゼット、ベッド、冷蔵庫まである。例えるならばマンションの一室みたいだ。というか俺の部屋だ。

 

 

「どう言うことだ? とにかくパソコンをつけるか」

 

 

そしてパソコンを起動させると、そこには俺が遊んでいたゲーム画面だった。

 

 

「おお! これは、俺が……?」

 

 

なんだ? この痛烈なまでの違和感。まるでゲームじゃない……うん? これは……!

 

 

「間違いない! これは、俺が以前まで遊んでいたゲームだ! そしてここはゲームの世界だ!」

 

 

なぜわかったのか。それは俺に似た何かがいたからだ。"それ"はサイボーグみたいだ。黒スーツを着た人間みたいだが、問題は内装だ。俺の部屋に異常なまでに似ている。

 

 

「こうしたらどうなるんだ?」

 

 

俺はパソコンを持ったまま、クローゼットを開けた。すると画面上でも俺をモチーフした"それ"は同じ動きをする。

 

 

「つまり、俺がいたエレベーターは……まさか!?」

 

 

以前のゲーム……サイボーグみたいな格好……つまり俺は――

 

 

「アブノマーリティになっているのか!?」

 

 

――それなら納得出来る! エレベーターは、アブノマーリティを選ぶ時の選択場面。パソコンの画面は、管理する時の画面。簡単な話だ! これは…ここは……

 

 

「Lobotomy Corporationの世界だなぁ! オイオイ楽しくなってきたんじゃねぇかぁ!」

 

 

いやぁ~まさか、あの残酷な世界に来てしまうとは、私も運が悪いな。

 

 

「うーん、ならばゲーム通りにやっていくべきなのか? 幸いにもアブノマーリティだから死なないし、職員達を犠牲にしながらやっていくべきなのか? うん?」

 

 

するとパソコンの画面に、俺の収容室に職員が近づいてくる様子が写っていた。ならば!

 

 

「見分けなければ! ここの職員にふさわしいか、どうかを!」

 

 

そして開かれるのは、赤い目に綺麗な白髪に雪の髪飾りをした女性社員だった。そして目から感じられるのは、"勇気"これしか感じない。感じなかった。

 

 

 

 

…………俺は、バカだ………!

 

 

 

 

考えてみろ! この世界を! ここは誰もが簡単に死んでしまう場所だぞ! ここはゲームじゃなくて、現実だッ!! 誰もが生き残る為に、泥をすすり、手を血に染める世界なんだぞ! 俺はバカだ! 何が犠牲だ! 今、生きている者達に対する最大の侮辱だ! ならば俺がやるべきことはッ!!

 

 

「いらっしゃい。お茶はいるかい?」

 

 

職員達(生きる者たち)の味方になることだ。

 

 

「……! ……ありがとうございます」

 

 

「まあまあ落ち着いて、ゆっくりと話し合おうぜ。そこにソファーあるから座ってくれるか?」

 

 

俺はソファーを指差す。

 

 

「……」

 

 

そして座ってくれる職員。そして俺は最大の質問を問う。

 

 

「コーヒーか、紅茶か、またはココア。どれがいい?」

 

 

「………? なんでもいい……です……」

 

 

「かしこまり♪」

 

 

俺は馴れた手つきでコーヒーを作る。香ばしい香りとほろ苦い味が明日の活力となる!

 

 

「どうぞ」

 

 

「……ありがとうございます……」

 

 

そして恐る恐るながらも飲んでくれる職員。俺はそんな職員に落ち着くように話し掛ける。

 

 

「そういえば、なぜここに来たんだ?」

 

 

「……【T-00-01《救世主》】に"洞察"するように指示が出されて……」

 

 

そして職員が持っていたタブレットを見せる。ほぉ~う。結構しっかりしてあるね。

 

 

「よし! ならばドンドン質問してきなさい!」

 

 

「……わかりました」

 

 

そして質疑応答を繰り返すこと三時間。そして得れた情報もたくさんあった。この世界のこと、会社のこと、そしてこの会社で()()()の職員だということ。

 

 

(つまり、まだセフィラを助けれるのでは!?)

 

 

そういう希望が見えてきた。そして俺の異常性が以下のこちら!

 

 

·落ち着く

·好かれやすい

·めちゃくちゃ強い

·知らねぇ

·ヒ·ミ·ツ♡

·わかりまちぇん

·まだ研究中ですぜ、兄貴!

 

 

なんだ? このふざけた研究結果は? 子どもすらこんな報告書は書かないぞゴルァ!

 

 

「なぁお嬢ちゃん。今更だが名前を教えてくれないか?」

 

 

「!!……どうしてですか……?」

 

 

「簡単な話さ。今後も長い付き合いになりそうだからな。それなのに名前が無ければ不便だろ?」

 

 

彼女は苦しそうながらも答えてくれた。

 

 

「私の名前は……()()()()()

 

 

「え?」

 

 

意外な返答に呆気ない声を出してしまった。

 

 

「あの……その、私は、実は………」

 

 

「待った。やっぱ言わなくていいぜ」

 

 

つい口調が戻ってしまう俺。それに驚いたのか目を丸くする職員。

 

 

「……ど、どうしてですか?」

 

 

「だって苦しそうだったから」

 

 

「で、でも……!」

 

 

「誰が苦しそうながらも無理矢理言う必要性を言った? お前はまるで昔に悲しそうに、泣きそうに、苦しそうに感じているんだろ?」

 

 

「……」

 

 

「沈黙は肯定だと受け取るぜ。まあとにもかくにも! 名前がないなら、俺が勝手に愛称(ニックネーム)をつけるがいいか?」

 

 

「……」

 

 

小さく頷く職員。そうだな……勇ましさ……勇気……ブレイブは似合わないよな………そうだ!

 

 

「ミウなんてどうだ? 悪いが俺はネーミングセンスは皆無だから、酷いかもしれないがな」

 

 

勇気→英語→ドイツ語→Mut→ちょっといじりまして→ミウ!

 

 

「……あ、ありがとう…ポロポロ」

 

 

そして泣き始めるミュウ。俺は慌てて慰めた。

 

 

「お、おい!? なんで泣くんだ! えっ、えっととりあえず飴ちゃん食うか?」

 

 

するとクスクスと笑い始めた……本当にどうしてこうなった?

 

 

 

 

『嫌だ! 死にたくない!』

 

 

私がいたところは、悲鳴がよく聞こえた。

 

 

『来るなッ!! バケモノめッ!!』

 

 

私は、誰からも愛されなかった。

 

 

『なんでだよ……お前が……お前のせいだ……呪ってやる』

 

 

私は、誰からにも呪われた。

 

 

『何をしている、No.75842。早く標的(ターゲット)を始末しろ』

 

 

『ヒイィッ!! 頼む、見逃してくれ! 俺はアンタ等には何もしていないだろ! 俺はただ、家族のために――』

 

 

『何をしている、No.75842。お前は"道具"だ。標的(ターゲット)を殺す為に、我らの手足となり、ただただ指令をこなせ』

 

 

『頼む……俺は、俺はただ……』

 

 

『時間がもったいない。早くやれ』

 

 

『……アンタは、そんな生き方でいいのかよ……クソが『ザシュッ!』』

 

 

組織の"道具"として生きていた。それが私の人生(すべて)だった。その後は、組織は壊滅して、私はL社に職員として雇用された。

 

 

(ここでも、マニュアル通りに……指令通りに……)

 

 

やらなくちゃ。全ては……誰に?

 

誰のために? そもそも私は誰? 生まれた意味は? 以前は"指令をやりこなすこと" ()()()()()

 

 

(私は……何のために……)

 

 

私はみんなが羨ましい。愛されないことなく、呪われることもなく、縛られることもなく、そして名前を持っていた。

 

 

(ここでも……私は……)

 

 

せめてみんなと同じ名前が欲しい……そう僅かな懇願を押し殺し、私は仕事に移る。

 

 

(ここはバケモノからエネルギーを取り出す……バケモノ……バケモノにだって名前があるのに…なんで私には)

 

 

ないの? そう思っていると、いつの間にか着いていた。

 

 

【T-00-01《救世主》】のプレートがついた重厚な金属の扉。このバケモノにも名前がある。なんでなの? なんでバケモノにあって、私には……

 

 

『来るなッ!! バケモノめッ!!』

 

 

……私は私欲を抑えて入った。

 

 

『いらっしゃい。お茶はいるかい?』

 

 

そこはとあるマンションの一室ようだった。冷蔵庫にソファー、パソコンまであってここなら一晩は過ごせそうだ。

 

そして一番に目に入ったのは、声の主だった。2mある身長、ちょっと怖い目つき、がっちりとした体格、特に変わらない人間なのだがよくよく見ると、左手と両足には謎の最新の機械が搭載されていた。

 

 

(これがアブノマーリティ? 今のところは人間にしか見えない……)

 

 

裏路地や私が殺してきた者たちが、まだバケモノの感じがする。それに――

 

 

(なんで、こんなに胸が、心が温かくなるの……?)

 

 

ジーンとするような……救われるような、慰められるような……なんとも言えない感情に心は揺さぶれた。とにかく指令をこなしていると、【T-00-01《救世主》】から話を持ち込んできた。

 

 

『なぁお嬢ちゃん。今更だが名前を教えてくれないか?』

 

 

それは私にとっては試練だった。しかし私の口は勝手に開いていた。

 

 

『私の名前は……無いんです』

 

 

『え?』

 

 

私の言葉に呆気を取られていた【T-00-01《救世主》】。私は何故、名前が無いのかを説明した。いや説明しようとした。

 

 

『あの……その、私は、実は………』

 

 

しかし、私は説明が出来なかった。わからない。どうして説明が出来ないのか。私の過去をただ話すだけなのに……すると声が掛けられる。

 

 

『待った。やっぱ言わなくていいぜ』

 

 

口調が変わったことも驚きはするが、何よりも驚いたのは聞かなかったことだ。

 

 

『……ど、どうしてですか?』

 

 

思わず尋ねてしまったが、【T-00-01《救世主》】は難なく答えた。

 

 

『だって苦しそうだったから』

 

 

どう言うことなんだ。なんで苦しそうだと感じたんだ。私は、今の環境には前に比べたら良い環境だと思っているハズなのに。

 

 

『誰が苦しそうながらも無理矢理言う必要性を言った? お前はまるで過去のことを悲しそうに、泣きそうに、苦しそうに感じているんだろ?』

 

 

………そうか。そういうことなんだ……思わず図星をつかれた私は、黙ることしか出来なかった。

 

 

『沈黙は肯定だと受け取るぜ。まあとにもかくにも! 名前がないなら、俺が勝手に愛称(ニックネーム)をつけるがいいか?』

 

 

頷いてしまう私。そうか……そういうことなんだ……

 

 

『ミウなんてどうだ? 悪いが俺はネーミングセンスは皆無だから、酷いかもしれないがな』

 

 

そうか……そういうことなんだ...

 

 

『お、おい!? なんで泣くんだ! えっ、えっととりあえず飴ちゃん食うか?』

 

 

突然、泣いたことに驚きながらも慰めようとした行為が、何故か面白くて笑ってしまった。

 

 

 

 

私には名前がある。それは"ミウ"。この名前は私にとって、とてもとても大事なものだ。




多分、不定期更新になるのでご注意ください。


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2Day  誰が序盤は簡単なアブノマーリティしか来ないと言ったッ!!

ヤバい……いいネタが思いつかねぇよぉおおおおッ!!


始まりは一言だった。

 

 

「……覚悟は出来てる……?」

 

 

「あら? (わたくし)に何のご用かしら?」

 

 

「あなたが……ハヤトさんを傷つけたこと……」

 

 

「私は入社した時、アブノマーリティは人に害するバケモノだと教わりました。だから私はマニュアル通りにやっただけですわ」

 

 

「……それでも……!!」

 

 

「あら、それでもやるつもりなのかしら?」

 

 

対する二人の女性職員。それは虎と竜の睨みあいを思わせる程の重苦しい雰囲気と殺意をにじみ出している。どうしてこうなった………?

 

 

←←時を遡り中←←

 

 

俺は一通りパソコンをいじりにいじって何か出来ないのかを試した。しかしこちら側の指令は出来なかったが、無線機能が使えるらしく、職員を選択して話し掛けることが出来る。

 

 

「ふーむ、上手く使えば助けられるかも知れないな~」

 

 

「……つまり?」

 

 

「お前がパニックになっても、俺が声かけて落ち着かせることが出来る、と言うわけだ」

 

 

「……いつでも、どこでも聞けるの?」

 

 

「まぁ可能じゃないんかなぁ……?」

 

 

「……じゃあ、私にずっとささやくことは?」

 

 

「か、可能かなぁ「…じゃあ!」だけど、それだと大事な放送を聞き逃すだろ?」

 

 

「……むぅ………」

 

 

それに対して不満そうに口をつむぐミウ。俺はゆっくりと頭を撫でる。お、意外に髪がサラサラしている。

 

 

「ッ!?……あ、ありがと…///」

 

 

しかしそこは女子、髪を乱されちゃ怒ってしまった。

 

 

「おっとごめんな。急に触っちゃダメだよな」

 

 

「え? あ、その……あれ……」

 

 

「悪かったな、今後はこういうクセ、失くすからな」

 

 

「……大丈夫

 

 

ミウが小声でボソッと何か言う。俺は思わずもう一回言ってほしいと言った。

 

 

「……大丈夫だから……出来れば今後もやって欲しい……///」

 

 

.....俺はミウの頭に手を乗せ、撫で回した。

 

 

「ッ!?!?」

 

 

「テメぇ、良いこと言ってくれるじゃねぇかよぉ~! オイオイ、思わず撫で回しちゃったんじゃねぇかあ!!」

 

 

そうして撫で回していると、業務終了時間となる。ミウが出ていった後、俺は考える。とりあえずここに引きこもっても仕方ない。どうにかして外に行かなければ……しかし……これだとただの脱走だと見られる……何とかしてここから脱け出せないかな………うん?

 

 

「ん? これは?」

 

 

新しいメモ帳に見えるが、よくよく見ると結構使われているように見える。つまり、新しく買ったがドンドン書き込んでいるようだ。

 

 

「中身は……いや、止めとこう」

 

 

女性のプライバシーを勝手に覗き込んじゃいけねぇよな。.....あっ。

 

 

「……管理人さーん。聞こえますかぁー! 俺は、今からメモ帳を届けに行くため、外に出ますが()()()()()()()()()。安心して作業を続けてくださぁーい!!」

 

 

こうして俺は外に出た。(脱走した。)

 

 

『緊急事態! 緊急事態! 【T-00-01《救世主》】が脱走した! 職員は直ちに鎮圧せよ!!』

 

 

脱走じゃないと言いましたやん。

 

 

「う~ん。こうなったらサッサと届けよう。そして管理室に突貫するかぁ「いたぞ!」ん?」

 

 

通路の出入口の前にいるのは、青い髪を短くしたボーイッシュな女……女性?………はっ!

 

 

「貴様ァ、さては童顔すぎてよく女性と性別を間違われているなぁ!」

 

 

「な、何故、そんなことを……!」

 

 

俺に図星を突かれた職員は、驚きの表情をして顔を俯かせた。そして――

 

 

「う"わ"あ"あ"あ"ん" 気づいてくれたんだぁッ!!」

 

 

俺にしがみつき、泣き始めた。

 

 

「お、おい! 貴様は何をしてい「そうだよ! 何回も何回も、何ッ回も間違われたんだよ! オレだってさぁ、男らしく色々頑張っているのに! ビーチでは男性の水着だと通報されて、女性の水着だとナンパされ、更には上司からの愛のポエムすら聴かされたんだよ! アンタだけだよ! 初見でオレを男だと見抜いたの、アンタだけだよぉ!!」……苦労しているんだな……」

 

 

なんだろう……この会社に入社した理由がなんとなくわかってしまった。まあとりあえず...

 

 

「眠れ」

 

 

「ぐふゥ!……チーン」

 

 

俺は首に手を当て、相手を気絶させた。

 

 

「よし……早く「パァーンッ!! パァーンッ!!」……グチャッ」

 

 

俺の頭に銃弾が撃ち込まれる。どうやら脳の一部と下顎が地面に落ちてしまったようだが……

 

 

(この程度じゃ止まらねぇよ)

 

 

ボォオオオオオ

 

 

何かが焼ける音がする。どうやら脳が焼けているようだ。そして傷が塞がる。

 

 

(ふむ。どうやら俺は、燃えることで傷を再生することが出来るのか)

 

 

そう理解していると、また銃弾が撃たれるが――

 

 

「成程……狙いがズレていないな……君はかなり手練れだね」

 

 

「!!」

 

 

どうやら俺が銃弾を避けたことに驚いているようだ。しかし未知の存在に対して、こうも冷静に撃ってくるとは……ふふっ

 

 

「初めまして、「パァーンッ!!」俺の名前は「パァーンッ!!」【T-00-01《救世主》】だがハヤトと「パァーンッ!!」呼んでほしいな「ゴンッ!」これからもよろしくな」

 

 

「何故、アナタさまは死なないんですか!?」

 

 

黄色い髪をツインテールにした後、先がドリルのようになった髪型(いわばお姫様のような髪型)に綺麗な翡翠色の瞳をした女性職員がそう叫ぶ。確かに銃弾三発に、警棒一発撲られたが……耐性がねぇ……

 

 

「えっとな…俺はRED耐性があってな。そしてその武器は、RED属性なんだよ。ただでさえ再生するのに相性が悪い武器だからかな。全然効かねぇよ」

 

 

「そ、そんなことがありますの……」

 

 

あるんです。

 

 

「しっかし、よくここまで射撃技じゅ――ッ!?」

 

 

「え?」

 

 

俺は撃ってきた女性職員を抱き抱えて、バックステップをした。そこには何故かミウがいた。

 

 

 

 

そして最初に戻る。

 

 

 

 

「……そうだね……!」

 

 

そうやって警棒を構えるミウ。しかしそれは普通の警棒だ、E.G.Oには勝てない。

 

 

「ええ、安心して。()()にしてあげるわ」

 

 

そうやって"初心の拳銃棒"を構える女性職員。このままだとどちらかが死ぬまでやり続けてしまうだろ。……うん? 正気にて……そう言うことかッ!!

 

 

「はいはーい。ストップ~!」

 

 

俺は割り込むように立ち塞がる。

 

 

「……邪魔しないで……!」

 

 

「ええ、私は、コントロール部門のチーフとして、同期として、やるべきことがありますわ!」

 

 

「ミウ、落ち着け。こいつはお前を助けようとしたんだ」

 

 

「え? ……どうして?」

 

 

「お前は俺に操られていると勘違いしているんだ」

 

 

その言葉に、二人は目をぱちくりさせる。

 

 

「え? その、ミウさま? アナタはもしかして操られていないのですか?」

 

 

「……コクリ」

 

 

そう言われて頷くミウ。そして互いに武器をしまいあう。

 

 

「もう……ごめんなさいわね。私はてっきり……」

 

 

「構わねぇよ。人間には誰だって間違いはある。問題はそれを認めてやり直せるかだ」

 

 

そう言ったら何故か呆然とする女性職員。女性職員は俺に質問をした。

 

 

「アナタは……"間違いをしたら罰する"を知らないのですか?」

 

 

「知らねぇが、なんとなく予想はつく」

 

 

「アナタは……間違いを犯したらどうなるのか解りますよね?」

 

 

「まあな」

 

 

「盗みから殺人まで、何かしら間違いを犯せば、必ず報いを受けます。これは赤ちゃんから大人、生きている物達にとっての絶対の"(ルール)"なのです」

 

 

そう迷い無き眼で言いきる女性職員、あの目は自分が心の奥底から"正しい"と思っている。けどな……

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……ええ」

 

 

口で言うほど簡単で薄っぺらいものはない……が、何故か納得してしまうほどの説得力はあった。もうこれ以上言及する必要はないだろう……ならば!

 

 

「またまた初めまして! 俺は【T-00-01《救世主》】だが、ハヤトと呼んでほしいぜ! これからもよろしくな!」

 

 

俺の雑で元気ある自己紹介に対して、一方は――

 

 

「初めまして、私の名はノエル·ライナ。役職はコントロール部門のチーフをやっております。これからもよろしくお願いいたしますわ」

 

 

優雅に一礼して頭を下げる姿はどこかの国のお姫様のように優雅で美しかった。すると放送が掛かる音がした。

 

 

『――ッッ あー、【T-00-01《救世主》】よ。そろそろ収容室に帰ってくれないか? 多分、職員達に危害を与えるつもりはなさそうだが……』

 

 

「分かっとる。それでも収容室に居た方が安心するんだろ? では、俺はそろそろおさらばさせてもらいますよ」

 

 

俺はミウの手にメモ帳を渡して、自分の収容室に帰った。……果たして俺が言いたいことは察してくれたのだろうか?

 

 

 

 

まったく人騒がせなことですね。あのアブノマーリティの第一印象はこれでした。

 

 

「ミウさま、ガーンさま。私たちはまだ未熟者。おそらく私たちではあのアブノマーリティを鎮圧は出来なかったでしょう」

 

 

「……うん」

 

 

「オレもそう思う」

 

 

私の意見に応えてくれるのは、パッと見て女性に見える男性職員ガーンと、クールで冷静な女性職員……名前は最初はないって言ってたけど、確か"ミウ"と名乗っていたわね。まあ兎にも角にもさておき……

 

 

「アナタたちは何しているのよぉー!!」

 

 

私は声を荒げた声を出した。少なくともこのメインルーム全体には聞こえる程でしょう。現にオフィサーの方々がビックリしているし。

 

 

「なんでガーンさまは、泣きついて抱いついているのよ! 相手は、あのアブノマーリティなのよ! 驚きを通り越して唖然したわ! そしてミウさまは...特に言うことはないけど、襲いかかってくるのはなんでなの!?」

 

 

「ああ!? オレがどれだけ苦労して男らしくなろうとするのが分からんのか!? この容姿のせいで転職して、ここに来るほどだからなぁ!?」

 

 

「……ライライは美人だから、怒っちゃダメ……」

 

 

「アナタのことを思って……ちょっとお待ちください。ライライとはどういう意味かしら……」

 

 

「……全てはガーンの仕業です」

 

 

「お、おい! こッんの裏切り者がぁ!! あ、ちょ、ちょっと弁明のお時間ください。必ずしもあなた様を頭蓋骨がキビキビ言ってるゥ―! アアアアアア!!

 

 

私のアイアンクローを受けて倒れるガーン。まあ、回復機能あるメインルームならすぐに治るでしょう。すると私のタブレットが何らかのメールを着信した音が鳴る。

 

 

[【O-06-37《ボクは悪いスライムじゃないよ!》】に"洞察"作業]

 

 

ふむ。どうやら新しく入ってきたアブノマーリティの作業のようですね……まぁ、やらなくてはいけませんね。

 

 

「ミウさま。とにかくガーンさまが復帰次第、T-00…ハヤトの作業をやってください。この責任は私が引き受けます」

 

 

「……わかった」

 

 

「ガーンさまは……私が作業失敗した場合、すぐさまに戦闘に入れるよう準備を」

 

 

「……ハ、ハイ」

 

 

こうして黄色い光に照らされた通路を渡った後、とある扉の前に立つ。

 

 

「ここなんですね……」

 

 

思わず独り言を言ってしまう……私は油断しない。出来る。よし!

 

 

「失礼いたします」

 

 

そこには、おそらく子犬ほどの大きさの青いスライムが居ました。スライムの体は青く透けており、顔がついていました。まるでスライムにのりか何かでくっつけたみたいでした。そしてその顔は今にも泣きそうになっており、まるで罪悪感に押し潰されるような……そんな気がしました。

 

 

「えっと……ちょっと失礼するわね」

 

 

私は、近づいてじろじろと観察しました。そしてO-04-37が何かを言い出し始めた。

 

 

「ボクは……ボクは悪くないのに………」

 

 

「え、えっと大丈夫なのかしら?」

 

 

「早くボクから離れないと……キミも酷い目にあっちゃうよ……」

 

 

どうやら早く離れて欲しそうでした。まるでこのままだと私が酷いことになってしまうことに恐れているようですね……

 

 

「安心しなさい。私はアナタに酷いことをしないから」

 

 

「ち、ちがう! ボクが言いたいのは……あ、ああ……」

 

 

まるで何かに畏れ、恐怖のあまりに固まってしまったようでした。なんでしょう……この……いやな感じは………

 

 

「と、とにかく落ち着きなさい。大丈ぶぅぐうっ!!?」

 

 

私は何かに腹を殴られた。そして恐る恐るスライムを見ると――

 

 

――赤く変色していた。

 

 

『緊急事態! 緊急事態! 【O-04-37《ボクは悪いスライムじゃないよ!》】が脱走した! 職員は直ちに鎮圧せよ!!』

 

 

『【O-06-37《ボクは悪いスライムじゃないよ!》】! 推測RiskLevel:――

 

 

私はわかってしまいました。私は――

 

 

―――HE!!』

 

――ここで死んでしまうことです。




見知らぬ罰を受けることは、その者にとって最大の苦しみとなるだろう...


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2Day  誰が序盤は簡単なアブノマーリティしか来ないと言ったッ!! この俺だぁ!!

いきなりHEが来たら困るよね。


私の前には、あの可愛らしいスライムの面影はなく、ただただ目の前の物を壊すことに夢中になっていた。スライムからは生臭い血の臭いがしていて、鼻をつまみたくなった。

 

 

(とにかく逃げなければッ!)

 

 

私は扉に向かって走り出す。幸いにもまだ足と手は動いてくれた。しかし私はふと疑問に思ったことがありました。

 

 

(何故、収容室にいるのに、脱走判定になっているのでしょうか?)

 

 

そんな疑問は、出てからわかった。

 

 

「あ、ああ……そ、そんなぁ………」

 

 

グチョグチョ………グチョグチョ……

 

 

通路には、一回り小さい赤いスライムが何体もいた。それぞれ何かを壊そうと必死になっている。そんな中、メインルームに繋ぐゲートの方から叫び声が聞こえました。

 

 

「おい! ライナッ!! 早くこっちに来い!」

 

 

私は走り出しました。しかし、スライムが私に気がついたのか、襲ってきましたが……

 

 

「ええい! 近づくんじゃありませんわぁ!」

 

 

何とか"初心の拳銃棒"を振り回しました。ダメージはほぼ無いですが、何とか遠ざけることは成功しました。私は間一髪でメインルームに避難出来ました。

 

 

「……オフィサー達、今だよ!」

 

 

『おう!』

 

 

すると何人かのオフィサーが、食堂の机だったり、椅子だったり何かしらの物を用いて即席の防護壁(バリケード)を作りました。メインルームには、全てのオフィサーと職員が集まっているようです。

 

 

「よし……現状確認だ。まずは、被害状況はどうだ?」

 

 

「……なんとか死者は出てないけど……重傷者が多すぎる」

 

 

「そうか……なら、エネルギーはどうだ? ワンチャンエネルギーを貯めての逃走は?」

 

 

「……そうしたいのは山々だけど、全ての通路にスライムが湧いている」

 

 

「ならば、ライナさん。武器でのスライムに対するダメージは期待できるか?」

 

 

「……いいえ。どうやら私の武器は相性が悪いようです」

 

 

思い出されるのは、とある助言(アドバイス)

 

 

『えっとな…俺はRED耐性があってな。そしてその武器は、RED属性なんだよ。ただでさえ再生するのに相性が悪い武器だからかな。全然効かねぇよ』

 

 

つまり、私たちの武器では……

 

 

「そうか……かくなる上は!」

 

 

そうやってガーンは、もう一体のアブノマーリティが収容されている通路のゲートの前に立つ。

 

 

「オレがひたすら時間稼ぎをする。そしたら、その隙を狙ってミウとライナがエネルギーを集める。簡単な話だろ?」

 

 

確かにそれならばいけるかもしれないが……問題がある。

 

 

「それはつまり、ガーンさまが死ぬ可能性が非常に高いことなんですよ!」

 

 

「……そんなのは……許せない………!」

 

 

「分かる。だが、誰かがやらないといけないんだ。普通に戦っても誰かが死んでしまう。このままだと全滅もあり得るんだよ」

 

 

ええ、分かっております。ならば!

 

 

「ならば、私に行かせて下さい! 私は、あなた方とは違って武器がありますわ! 私の方がこの作戦に向いておりますの!」

 

 

私の武器は、ダメージは与えられないものですが、引き付けることは可能なハズ! これを利用すればまだ勝算がありますわ!

 

 

「………わかった。そこまで言うならライナさんに任せた。オレはここにいるオフィサーの保護。ミウは」

 

 

「……エネルギー集め……」

 

 

「そして私が時間稼ぎですわね」

 

 

お互いに目を合わせる。それは互いの信頼を信用すること、誰一人欠けてもならない。欠けたら全滅。簡単な話ですわね。

 

 

「みんな、健闘を祈る」

 

 

「……うん」

 

 

「わかりましたわ」

 

 

こうして二日目で、私たち全員の命をかけた戦いが始まった。

 

 

 

 

そこはとある通路。黄色い光に照らされた通路で全体的に黄色の感じがしました。今は……

 

 

「ッ! このぉ!!」

 

 

大きく振り回して赤いスライム達にダメージを与えようとしたが、スライムは分裂しただけだった。気がつけば周りには赤いスライムがうじゃうじゃおり、全体的に赤色に見えました。

 

 

「まだまだですわ!」

 

 

私はさらに弾丸を撃ち、遠くのスライムに当てる。スライムを惹き付けること。そのためには全てのスライムがここにいないといけない。私に狙いを定めないといけないが……

 

 

「まさか、アナタさえも出てくるとは……」

 

 

「………アァ………アアァ……」

 

 

まさかの本体すらも出てくるなんて...けど、うじうじ出来ませんわ! 

 

 

「私は、まだまだ戦えますわ! 覚悟しなさい!」

 

 

私は、"初心の拳銃棒"を振り回して、スライムに攻撃を続ける。たまに触手みたいなのが来るから避けつつも、とにかく攻撃をし続ける。

 

 

「ぐふッ!?……ゥ…まだまだですわ!」

 

 

攻撃が当たって思わずうつむいてしまいました。攻撃は骨を折ってしまうほどで既に左腕がボロボロです……けど!

 

 

「まだまだ……え?」

 

 

私が前を向いた時、前には何もいなかった。

 

 

「あ、ありえませんわ!? どうして……!」

 

 

違和感、私の記憶を思い返してみる。そしたら一つ、たった一つだけおかしな点がありましたわ。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()……?」

 

 

そう、赤いスライムを見ていた私さえ、あの小さい赤いスライムがどうやって生成されたのですか? それはたった今、わかった。

 

 

ボコッ! ゴキッ! グチャッ!!

 

 

「……え”?」

 

 

私は倒れました。正確に言えば立っておれなくなりました。私は背中から倒れたので、通路の天井を見上げることが出来ました。そこには――

 

 

――赤い何かで埋め尽くされた換気扇がありましたわ。

 

 

「……成程ですわ……換気扇……ダクトを通って移動したんですね………それならば…私に見つからなくても移動は出来たんです……ね………ゴフッ」

 

 

どうやら脚を完全に折られたらしく、現に私の足から白い物が見えました。立つことも、逃げることも出来ませんでしたわ。

 

 

(私は……ただ……ただ……お母さま、お父さまに楽にさせてあげたかった………ですわ…………)

 

 

そして赤いスライムがゆっくりと落ちてきて、そして私を補食するように口を開いて、そして――

 

 

――私は、誰かに抱き抱えられていました。

 

 

………!? 思わず、その抱き抱えてくれた者に感謝を言おうとすると……そこには………

 

 

「よう。遅れてすまなかったな」

 

 

あの人騒がせなアブノマーリティ(ハヤト)の顔がありましたわ。

 

 

 

 

「いやぁ、大変だったよ~。ミウが異常なまでに慌てていたから話を聞いたら、全滅するかもしれないって。やっぱりパソコンを切っちゃいけねぇな」

 

 

なんとかここ以外の通路にいたスライムは、なんとか全滅させて残るはここのみ、そして――

 

 

「……や、やっと助かるのでしょうか……」

 

 

――大事な職員(ノエル·ライナ)を殺しかけたクソヤロウ(赤いスライム)だけだ!

 

 

「おいゴルァァア!! どこのどいつがノエルを傷つけたんじゃあ! さっさと出てきやがれゃぁア! 生きていることを後悔させてやりゃァアア!!」

 

 

「ちょっと物騒すぎません!?」

 

 

そう言うと、一斉に襲い掛かる赤いスライム達。俺は避ける。すると触手が俺の顔スレスレに狙ってきた。

 

 

「お前かぁ? お前がやったんがァ? だったら覚悟しやがれぇ!!」

 

 

俺は左手にある機械のスイッチを押す。

 

 

召喚 "突撃槍"(サモン "ランス")!」

 

 

そして俺の後ろから、水色の幾何学的な魔方陣から大きな西洋風の槍が突き出された。

 

 

「よぉ―し、これで形勢逆転だな」

 

 

俺は、赤いスライムを突き飛ばした西洋風の槍を手に取る。対する赤いスライムは……

 

 

「ハヤトさま! 赤いスライム同士がくっつき始めましたわ!」

 

 

大きくなっていた。

 

 

「構わん! どうせ、物理的ダメージはほとんど効かねぇし、俺も効かん! これは時間稼ぎだ!!」

 

 

「え!? じゃあ何をすれば!?」

 

 

俺の説明にどうすればいいのか混乱するノエル。

 

 

「安心しろ! 物理的ダメージが効かねぇなら、精神的ダメージでごり押しだ!」

 

 

そう言って俺は、赤いスライムに飛びつく。

 

 

突然だが、言いたいことがある。俺は何故、T(トラウマ)なのか? 俺は考えた……再生能力、圧倒的な戦闘力、豊富な前世からの知識、管理人の視点、癒す力……どれもこれも関係性がない………いや。

 

 

俺は、職員やオフィサー達を助けたいと動いている。まるで職員達の英雄(ヒーロー)だ...つまり!

 

 

俺は、職員やオフィサー達の"生きたい渇望"と"死ぬ恐怖"から産まれたアブノマーリティなんだ。

 

 

「ハッハッハッ! 俺がこの程度で倒れると思ったのか! このバカめぇー!」

 

 

俺は赤いスライムに向かって突撃をする。そして俺は……ニヤリ。

 

 

召喚 "錫杖"(サモン スタッフ)

 

 

銀色に鈍く輝く杖に、先っぽにはランタンみたいな飾りが付いており、青い炎みたいにゆらゆらと燃えて光っている。

 

 

「喰らいやがれ! ()()されろ!」

 

 

そして俺は、青い炎を空中に浮かべてスライムを燃やす。

 

 

「ピぃギャアアアア」

 

 

明らかに苦しみ始めたスライム。そしてスライムは燃やし尽くされた。その燃えた後には、青いスライムが寝ていた。

 

 

「あの……ありがとうございますッ!!」

 

 

そうやって頭を下げてくるノエル。俺は頭をポンッと手を置いて言ってやった。

 

 

「またピンチになったら助けてやる。だからいちいちお礼は言わなくていい。なぜなら俺が好きでやっているからな」

 

 

俺は不敵な笑いで言ってやった。

 

 

 

 

職員達には回復を優先してもらい、管理人からの願いもあり、俺とノエルは【O-06-37《ボクは悪いスライムじゃないよ!》】に会いに行った。

 

 

「失礼しま~す」

 

 

そこに居たのは、隅っこで縮まっている青いスライムだけだった。つぶらな瞳を滲ませ、小さな口をつんでいた。まるで泣きそうなのを我慢しているようだ。

 

 

「ピギぃ!? ボ、ボクは、悪いスライムじゃないよ……」

 

 

弱々しい声で自分が悪くないことを言うスライム。それに近づくのはノエルだった。

 

 

「……」

 

 

ノエルは何も言わない。ただひたすら見ていた。

 

 

「……ボクは……本当は………知っているんだ………」

 

 

「……」

 

 

「……けど、自分じゃないんだ………自分じゃないんだ……」

 

 

ノエルは、スライムに向かって――

 

 

「ピギィぃ!?」

 

 

――抱っこした。

 

 

「ピギィ……?」

 

 

それに不思議そうに声を出すスライム。ノエルはその答えを教えた。

 

 

「ハヤトさまから聞きました。アナタは……本当は仲良くなりたいんだと……」

 

 

「で、でも! ボクがやった事実は変わらないんじゃないの?」

 

 

「ハヤトさまが教えてくれました。アナタは、無意識に暴走してしまうと、自分では制御が出来ないと」

 

 

それにスライムは下を向く。

 

 

「私はわかったのですわ。ハヤトさまが言ってくださった言葉の意味を」

 

 

「……」

 

 

「アナタは、何もやっておりませんわ。ただ暴走したくない優しいスライムですわ」

 

 

「……ゥ……ゥ……ウワァアアン!!」

 

 

そして泣き出し始めたスライム。俺はノエルがスライムをあやしていることを眺めていた。

 

 

 

 

「……結局、あのスライムはどうなったの?」

 

 

「あの時よりも落ち着いているらしく、近々リスクレベルの見直しが入るそうだ」

 

 

「……よかったね」

 

 

「本当だよ。俺がさんざん手伝ってやったからな、あれで効果なしだと言われたらショックで暴れるぜ」

 

 

俺は、まだ不安定なオフィサーの為に、癒す効果を利用して食堂で待機している。まあ、だんだん元に戻ってくるでしょうな。

 

 

「ここにいましたわ。ハヤトさま」

 

 

「ししょー、見つけたぞー!」

 

 

すると、ノエルとライムちゃん(【O-06-37《ボクは悪いスライムじゃないよ!》】の名前を勝手につけた)が俺のもとに走ってきた。

 

 

「はーい、コレ!」

 

 

「あ、ありがとうございましたわ!」

 

 

すると一斉に贈り物(プレゼント)を渡される。ん? なんでや?

 

 

「こ、これは感謝の意を示した物であって! べ、別にハヤトさまのことを思って!「プレゼントをしたら喜ぶかなーって、ノエルさんがいってたー!」ちょちょちょっとお待ちくださいませ!///」

 

 

一生懸命スライムの口を塞ごうとするノエルを横目に俺は、贈り物(プレゼント)の中身を見る。そこにはクッキーが入ってあった。そしてこう書かれていた。

 

 

『助けてくれてありがとう』

 

 

……俺は二人まとめて抱いた。

 

 

「わぁー!」

 

 

「ッ!?!?!?///」

 

 

「お前ら、嬉しすぎんだろぉがこんちくしょうが! これで喜ばないやつ、どこにおんねん! ありがとよぉ!!」

 

 

「わ、わかりましたから、離してくださ「もっとー!」ちょ、ライムさま!?」

 

 

こうして俺は、ノエルが顔真っ赤になるまで抱き続けた。




こうしてスライムは、救世主に助けられた。


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3Day 見よ! これが俺流新人研修ぜよ!

ハヤトは考えた……新人研修したらいいんじゃね?


どうも、オレの名はガーンだ。裏路地で生まれては何度も何度"掃除屋"から逃げ回り、そしてようやく名のある事務所に就職出来たんだが……そこは地獄だった。

 

 

『ガーンくん、一緒に仕事しないか? え? 大丈夫、大丈夫。僕が愛しいガーンくんを危険にさらすわけないから♡』

 

 

『ガーン……俺と付き合ってくれ……!』

 

 

『不肖、私。愛するガーン様を思い、書かせてもらった愛の詩を朗読させてもらいます』

 

 

いや、めちゃくちゃモテモテやん!………………そうだよ。何故か、にだけめっちゃモテたんだよ! わかるか!? いやわからんだろうな!! 俺が男にモテにモテすぎて争いが起きるほどモテたんだよ!! 別に同性愛を差別したいわけじゃない。けどよ! ………思い出したくない。  

 

 

ま、まあとにかく、オレは命懸けで勉強する始めた。全ては地獄(ここ)から抜け出すためにな。それが実を結んだのか、L社に入社することが出来た。それはオレにとっても救いであり、チャンスであった。

 

 

そして現在、オレは化け物だらけの会社でエネルギー集めをしている、てわけなんだ……うん? なんで今更、こんな話をするかって? それはなぁ...

 

 

「ガーン先輩! ようやく会えましたね! いや、ガーン先輩が入社届けと退職届けを隠していたせいで二度と会えないと思いしましたが、まさに運命! 再開できるとは思いもしませんでした!」

 

 

悪魔(元同僚)と出会ってしまったからだ………

 

 

 

 

俺は考えた。どうすればいいのかと考えた。全ては我が"悲願"の為に。俺一人では叶うこともない夢物語を、手にいれる為にどうすればいいのかと熟考の末、辿り着いた結論が!

 

 

そうだ、新人研修しよう。

 

 

まあ待て、こいつ、頭おかしくなったか? と疑う気持ちはよく分かるが話を聞いてくれ。俺は前世ではこのゲームをプレイしていたから分かるんだが、ホドのセフィラコアの抑制をクリアした時の報酬が"新規雇用職員ランクⅢ"だった。これは現実だと即戦力として活用出来ると予測した。しかしコア抑制をしないといけないので....

 

 

「ようこそ、新人共(ひよっこ共)。無限地獄へ」

 

 

俺が代わりにやります。

 

 

「俺の名前はハヤト。まあいろいろ訳あってここのアブノマーリティをやっているが、お前らを救いたいと思っている。しかし俺一人じゃあ無理だ」

 

 

俺は新人共(ひよっこ共)の目を見て言う。

 

 

「だからこそお前らを鍛え上げて、どんな状況下でも生存させるような、いや、させてやる職員に変貌を遂げさせてやる。まあ、よろしくな」

 

 

俺は手を出す。そして二人の新人職員は目を丸くしていた……何でだ?

 

 

「こッんのお馬鹿がァア!!」

 

 

そうやってノエルに全力で頭をぶん殴られる。おかしい……俺は何もやっていないのに。

 

 

「だいたいアブノマーリティのアナタさまが先輩ヅラで説明しているのが、おかしいですわ! そもそも私達は詳しくじゃないけど、ある程度説明されますから!」

 

 

言われてみればそうだな。

 

 

「まあ……アナタさまのことだから、どうせ私たちを助ける為に何かしらの行動を起こそうとしているのは一目瞭然ですわ」

 

 

そうやってやれやれと腕を組んでノエルは言う……俺は今、男泣きしているだろう。

 

 

「あそこで泣いている方は放っておいて……私は、コントロール部門のチーフ、ノエル·ライナですわ。これからよろしくお願いいたしますわ」

 

 

そして優雅な礼をしたノエルに続いて、二人の新人も頭を下げる。

 

 

「サリーよ、よろしくね。サリ姐さんと呼んでくれると嬉しいわ」

 

 

「初めまして、ガーン先輩の彼女「違うぞ、違うからミウ! そんな好奇心旺盛な目で俺を見るのはやめてくれ!」ショコラです!」

 

 

金色モヒカン、まさに筋骨隆々の文字の具現化、俺と同等の身長、そして星形のサングラスをかけた(彼女)。サリナ姐さんと赤くてサラサラした髪に、華奢な体つき、大きくて丸い黄色い瞳。俺達の中で一番小さい彼女は、例えるならば純粋な子供に見えるだろう。

 

 

「ふむ……ショコラさま、ガーンさまの彼女とは主にどう言った意味で…「主に恋愛、運命の相手です!」へぇ~よかったわね、ガーン。彼女さんと同じ会社に勤めれるなんて」

 

 

そうやってノエルはガーンに茶化す。一方ガーンはこの世の終わりの顔をしていた。

 

 

「いいか……よく聞けよ……そいつはだぞ!?」

 

 

その一言で俺たちは………

 

 

「ええ!? こんなに可愛らしいのに……失礼ですが、本当に男性なのですか?」

 

 

「……恋に性別は……関係ない!」

 

 

「あらぁ、それが何かしら?」

 

 

「お前は、独り身の辛さが分からないんだからそういうことが言えるんだ」

 

 

各々の反応を示した……ん?

 

 

「ノエル、ミウ。お前たちはガーンにこんな可愛らしい彼と出来ているハズがないと言いそうだったのに…違うか?」

 

 

「いえいえ、私は別にモテているからという理由で相手を差別したり、怨んだりしませんわ」

 

 

「……恋愛に、老若男女関係ない!」

 

 

「そうか、ならいいんだ」

 

 

「ねえ、論点がズレている気がするんだが?」

 

 

『黙れ、この幸せ者(が)(ですわ)』

 

 

まあ、こんなうきうきワイワイと騒ぐ話もいいだろうが……本題はここからだ。

 

 

「よぉ~し、ならばこちらの資料を読んでみてくれ」

 

 

そう言ってライムちゃん(【O-06-37《ボクは悪いスライムじゃないよ!》】)の調査記録を手渡す。

 

 

「本日13:00に脱走する予定のアブノマーリティの資料だ。諸君らにはこれの作業を行ってもらう」

 

 

俺は淡々と説明を続ける。

 

 

「また諸君らには、これの鎮圧をしてもらう。いわば実戦形式の新人研修だと思ってくれ」

 

 

「質問があるわ」

 

 

そう言って、サリ姐さんが手を挙げる。

 

 

「このアブノマーリティは、鎮圧しなくてもよいと書いてあるのにわざわざ鎮圧する意味はなにかしら?」

 

 

「まあ、簡単な話だ。手加減してくれるアブノマーリティは、今のところだとライムちゃんしかいないからだ」

 

 

「ふぅ~ん、わかったわ」

 

 

そして読み終わったのか、資料から俺に目線を変えるサリ姐さんとショコラ。

 

 

「では、諸君らの健闘を祈る!」

 

 

俺は自分の部屋(収容室)に戻った。

 

 

 

 

どうも、ガーンだ。なぜかショコラの彼氏認定されているガーンだ。そして今は職員·オフィサー用の施設を案内しており、食堂で休憩しているところだ。

 

 

「まさか、ハヤトさんがアブノマーリティなんて…アブノマーリティは僕たちに害を与える存在だと聞きましたが……」

 

 

「アイツは別なんだよ。俺達を必死に助けようとしているんだ。理由は知らないけどな」

 

 

「そうなんですか」

 

 

そして目の前にいるのは危険生命体No.1(オレ独断)のショコラ。可愛らしい外見に騙されたら命はない、オレの中ではハヤトに鎮圧指示してほしいと思っている。まあ根はホントに良い子なんだが……

 

 

「それより! 早く結婚しましょうよ! あっ! もしかして同性婚が可能な結婚場が見つからないから先延ばしにしているんですか? 既に僕が見つけたので大丈夫ですよ!」

 

 

そしてオレの手を取って、そして――

 

 

「ホントに楽しみですね」

 

 

――濁った瞳でオレを見た……そう、ショコラは……ショコラはなぁ……少しヤンデレなところがあって……それは………それは……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁあ!!

 

 

「っは! はぁっはぁっは!」

 

 

思わず昔のことを思い出してしまったようだ。息が少し荒々しくなっている。そんなオレを見て、ショコラは……

 

 

「ハハッ、ガーン先輩が浮気をするからこうなんですよ。しっかり反省してくださいね」

 

 

………たしゅけて。

 

 

するとオレのタブレットがメールを着信する音が聞こえた。

 

 

[【F-04-14《誕生日、おめでとう》】に"抑圧"作業]

 

 

神様はいたんだ。

 

 

「おっといけねぇな! オレはそろそろ作業しなくちゃいけないようだ! じゃあな!」

 

 

「あ、待って下さい!」

 

 

そして今、オレは[【F-04-14《誕生日、おめでとう》】]の扉を開ける。

 

 

そこには紐に吊るされた馬のピニャータがあった。赤、オレンジ、黄色などの七色の紙吹雪みたいな紙が体中に貼り付いているようだ。またオレの気配を感じたのか、四本の足をジタバタ暴れさせる。

 

 

「ヒヒィーン!」

 

 

「では、いかせてもらうな」

 

 

俺は支給された鞭で、【F-04-14《誕生日、おめでとう》】に叩きつける。

 

 

「ヒィーン! ヒヒィーン!!」

 

 

その度に喜んでいる【F-04-14《誕生日、おめでとう》】はドMかなと疑ってしまった………けど楽しい!

 

 

()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

オレは無我夢中で鞭を乱暴に叩きつける。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「はぁーい、そこまでぇ~!」

 

 

オレの右手を掴んだのは、アブノマーリティのハヤトだった。どうして邪魔するんだ?

 

 

「ガーン、アブノマーリティに洗脳されているぞ」

 

 

え? 何を言っているんだ? オレはただただ……!

 

 

「ッ!?」

 

 

オレは思わず距離を取った。どうしてオレは壊すことを考えたんだ?

 

 

「いやぁおそらくだが、コイツは壊されることで真価を発揮させるタイプだな。俺もこういう似た奴は知っている」

 

 

美女と野獣? 何を言っているのか、よく分からないが、とにかくオレに壊させてやろうということはわかった。

 

 

「ありがとな、ハヤト。おかげで助かった」

 

 

「気にすんな。俺もお前が、ピニャータになってしまうところを見たくなかったからな」

 

 

今、恐ろしいことをサラッと言った気がする。

 

 

「ブルルる、ヒヒィーン!!」

 

 

止められたのが癪だったのか、さらにうるさく鳴く【F-04-14《誕生日、おめでとう》】。どうやら怒っているようだ。

 

 

「とりあえず今は危険だ。また少し経ってからやった方がいいな」

 

 

そして、オレたちは収容室から出た。その直後だった。

 

 

「ヒヒィン! ヒィィーン!!」

 

 

更に荒ぶる【F-04-14《誕生日、おめでとう》】。嫌な予感がして、振り向いたら――

 

 

「ヒィィーーン!!」

 

 

――大きな前足でオレたちを踏み潰す――

 

「オラッ!」

 

 

――ところをハヤトが思い切りぶん殴られる。

 

 

オレは今、超次元の戦いを見せられているんだろう。

 

 

「ほら、何をしている。早く帰るぞ」

 

 

「アッハイ」

 

 

なにがなんでもこの人には敵に回してはいけない。それを身に染みた。

 

 

 

 

そして俺は、パソコンを起動させていろいろ弄ってみる。どうやらアブノマーリティのギフトの分だけ、俺は強くなれるらしい。つまり今のところはライムちゃんのギフトしか貰っていないから……成程。

 

 

「俺が召喚等の他のアブノマーリティの異常性(能力)が使える範囲が広がるということなのか?」

 

 

それだったら……フフッ! ああ、楽しみだな。俺はパソコンに映っている画面上にいる職員達を触る。どうやらフェルターのON·OFF出来るようだ。

 

 

『あーっ、あーっ、諸君、そろそろ鎮圧対象が脱走する。まずノエル·ミウ·ガーンは、他のアブノマーリティが脱走しても対応出来るようエレベーターで待機、サリ姐さん·ショコラは鎮圧を優先に、あっ勿論、ライムちゃんは手加減するし、管理人からの指示があればそちらを優先に、では、健闘を祈る』

 

 

そして始まる戦闘。

 

 

「お、いいぞ~。サリ姐さんが意外と強いな。しかしショコラもなかなか良いサポートするね。これは……あぁー、けどな~。やっぱりアブノマーリティとの実戦経験が少ないな」

 

 

今回の経験でなんとか感覚を掴んでほしいと思っていると、誰かからメールが送られた。それは……ッ!? 嘘だろ!?

 

 

『【T-00-01《救世主》】様。少々お話させてくれませんか』

 

 

()()()()()からだと……!?

 

 

俺は驚愕のあまりにパソコンを掴んでしまう。だが、それほどに今、起きていることは異常事態(ハプニング)なのだから。

 

 

しかし好都合だ。

 

 

アンジェラから情報を聞き出し、今はどういう現状なのかを推測出来る。また、アンジェラに俺の意思を伝えれるハズだ。このチャンスを逃してはならない。

 

 

「いいぜ、アンジェラ。お前を懐柔して、お前を助けてやる!」

 

 

俺はそのメールをクリックした。




物を壊して褒められる。理解できない。


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3Dayー深夜~4Day アンジェラとの密談とXとの会談

この無限地獄で、私は何万年の苦しみをあった。
私の居場所はなかった。
私はここから抜け出せなかった。
私は全ての絶望を受け止めなければいけなかった。
もう……期待はしなかった。無限地獄(ここ)では何もかも無意味だから。
しかし、初めてあなたを見てしまった時……()()をしてしまった。


いつもは忙しく動く足音に書類の重なる紙の音、またはタブレットのメールの着信音に電子機器の電子音。いつも通りな変わらない職員達の会話も、アブノマーリティの呻き鳴くおぞましい声も、今では聴こえない。俺は今、管理室へと歩いている。

 

 

「……」

 

 

そして管理室へと辿り着くとその取っ手を掴み取り開ける。そこには……

 

 

「よく来てくれましたね。【T-00-01《救世主》】さん」

 

 

 

青く光る多数の画面を背景に、高級そうな社長の椅子に座ったアンジェラがいた。

 

 

「すまねぇな。クリフォト抑制を無効化するのに手間取った」

 

 

「いえいえ、……しかし、クリフォト抑制すらも効かないとは、本当にどうすればいいんでしょうね」

 

 

そうやって困ったフリをするアンジェラ。

 

 

「でもあなたなら、職員達を襲わないんでしょうね」

 

 

「まぁ、アブノマーリティの情報を読み返したり、職員やオフィサーから借りた映画を鑑賞するぐらいかな」

 

 

「そうね……そろそろ本題に入るわ」

 

 

呆気なく答える俺。アンジェラは、一段目を鋭くさせてから俺に話し掛ける。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

そして鋭い目線が俺を貫く。俺は難なく答える。

 

 

「簡単な話だ。俺は皆の笑顔を見たいからだ。ただただそれだけだ」

 

 

「あなたと他のアブノマーリティと一緒にしないで、他のアブノマーリティは「人を殺すことでより多くのエネルギーを作り出すか?」……どうしてその事を」

 

 

俺はアンジェラの疑問を無視して話を続ける。

 

 

「100倍遅く感じられるように設定され、記憶も忘れず、職員達が無惨に残酷に死なさせる方法をしか知れず、この地獄に閉じ込められた。だからお前さんは"光"を奪うことで復讐してやろうと……おいおい、そんな顔をするな。折角、美人な顔もむすっとしたら怖くなっちまうよ」

 

 

「……あなたは……どこまで知っているの」

 

 

珍しく動揺するアンジェラ。俺はその疑問に答えなかったが……

 

 

「俺はアンジェラ、お前の居場所を作ってやれる」

 

 

その言葉で目を開くアンジェラ。

 

 

「……それはどういうことなのかしら」

 

 

「決まってんだろ。最後の結末に、捨てられた……いや、"棄てられた"お前を助けるということさ」

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

長い沈黙が俺とアンジェラを包み込むように、この無音な空気と暗い空間が俺の心拍数を上げてくる。こんなに緊張したのは……大学受験と初めての仕事の面接の時ぐらいだな………いや、それ以上だ。

 

 

「……あなたは、私の全ての願いを叶えられるの?」

 

 

先に口を開いたのはアンジェラだった。そんなわかりきっている質問に俺は……

 

 

「うーん...わからん!」

 

 

素直な答えを出した。

 

 

「……はっ?」

 

 

アンジェラもこの答えは予測していなかったようだ。まあわからないモノはわからないけど……

 

 

「でも、お前が全て願うことをこんな無限地獄(ところ)で出来ることは限られているし、ワンチャン都市ならなんとか出来たかも知れないからな」

 

 

俺はアンジェラの目を見る。

 

 

「――だからお前を無限地獄(ここ)から出す。そうすれば全部まるごと解決するんじゃね?」

 

そう呆気なく答える俺。そんな俺の姿を見たアンジェラは溜め息をついた。

 

 

「……あなたは私を助けたいの?」

 

 

「え? 助けたいけど?」

 

 

「そんな混沌無形な説得で、私を納得させることが出来るの?」

 

 

「いや~、お前なら納得してくれると思っているぜ。だって――」

 

 

俺は絶対的な根拠を話した。

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

何故、俺が話を聞いてくれるだけで確信するのか。それはアンジェラは冷たいからだ。まさに機械のように何よりも冷たい。それは何度も何度も繰り返された反復による心の磨り減り。いつ、どこで、誰が絶望するのかを全て覚えているからこそ、他の者にとっては初めてだけど、アンジェラにとっては何万回も同じ台詞(セリフ)だから。台本通りに、孤独に、余計なことができない……最も人間の容姿に近いのに………誰よりも………。だからこそ、アンジェラが俺に接触する()()()()()()()をしたからだ。どうしてアンジェラは俺との会話をどうして望んだのかは知らないが、たった一つだけ分かることがある。

 

 

アンジェラこそが、無限地獄(ここ)の最大の被害者だ。

 

 

「…………わ………を」

 

 

「ん?」

 

 

アンジェラが小声で何か言った。俺は聞き取れなかった。

 

 

「あなたを信用するわ。私を無限地獄(ここ)から助け出してくれるのを」

 

 

今度はしっかり聞き取れた。………そうか(ニヤリ)。

 

 

「任せな。俺はお前を助けてやる。必ずな」

 

 

「ええ、期待しているわ」

 

 

俺とアンジェラは互いに不敵な笑みをした。こうして、アンジェラとの最初の密談は終わった。

 

 

 

 

わいわいガヤガヤと談話を楽しむ職員とオフィサー達。中には新メニューが出て喜ぶ声、どうでもいい普通の会話の声、誰かが弁当を作ってきた声にそれを妬む男性の舌打ち。さまざまな声や会話が聴こえる。

 

 

「でね。結局、私は嫌な予感がしたのに管理人が続行という指示があったから使い続けたのに……私のせいにしてくるのよ。酷くない?」

 

 

「まぁ所詮、人間は誰でもいいから感情を吐き出したいんだよ。多分、死んでしまう恐怖でパニックになっていたんじゃねぇか?」

 

 

俺はサリ姐さんとの会話(もとい愚痴)を聞いている。どうやら新しいアブノマーリティの能力に対する愚痴のようだ。

 

 

「確かに、その後、ちゃんと謝ってくれたわね。でもまあ、あのアブノマーリティは二度と勘弁だわ」

 

 

「まあまあ、それより新しいアブノマーリティってどんな感じなんだ?」

 

 

「例えるならシェルターね。タブレットによると何人でも使用できるらしいけど、その分クリフォトカウンターの減少速度が下がるらしいわ」

 

 

あの3月27日のシェルターの強化したっぽいアブノマーリティだな。するとサリ姐さんが席から立ち上がる。

 

 

「やれやれ、今からライムちゃん*1とのふれあいだから癒やされてくるわ」

 

 

「オーケー。あっ、でも収容室に落ちてある赤いスライムには触んなよ。あれは身体にも精神にもダメージ与えるからな」

 

 

「わかったわ、気遣ってくれてありがとね♪」

 

 

そしてサリ姐さんと入れ替わるように、とある一人が俺の前の椅子に座った。

 

 

「すまない。少し時間くれないか?」

 

 

「お? いいぞ。名前は……あぁ、自分から名乗らないとな。俺はハヤトと呼んでほしい。よろしく」

 

 

「俺は……そうだな、"管理人"だ。宜しくな」

 

 

「ん? 管理人さんよ。勝手にアブノマーリティとの接触はいけないんじゃねぇのか?」

 

 

「安心してくれ。既に許可は貰っている。早速だが話し合わないか?」

 

 

「いいぞ。ならこの前、とある職員がジムを建てて欲しいとー……」

 

 

俺と管理人は互いに、自分のことや世間話を軽く談笑しながら話をする。すると管理人が思いきったように話し掛けた。

 

 

「なあ……前回、新人に対しての実戦形式の研修……及びアブノマーリティの鎮圧をさせていただろ?」

 

 

「ああ、あれが響いているのか知らねぇが、結構鎮圧速度が速くなっていると、風の噂で聞いたな」

 

 

「その時の動画を見せて貰ったよ。かなり…いや、俺と比べるなんておごましい程の手腕だった。そこで――」

 

 

マグカップを降ろして、手を組み俺を見る。

 

 

「――どうやってやったのか、教えて欲しいんだ」

 

 

「はい、パソコンです」

 

 

「ほへぇ?」

 

 

俺が簡単に教えるとは1ミリも思わなかったのか、目をキョトンとさせる管理人。意外と変でかわいい声を出したな。

 

 

「いやいやそんな訳...っは!? 管理画面とほぼ一緒じゃないか! しかもなんだこれ! 認知フェルターのON·OFFに、クリフォト抑制、鈍化の加減すらもいじれるなんて.....ハイ!? しかも無線機能付き!? もうおかしいだろ!」

 

 

「おいおい落ち着け。周りが驚いているぞ」

 

 

「これが驚かない訳がないんじゃないか! アブノマーリティがここまでシステムを操作可能なんて……うん? どうやって充電しているんだ?」

 

 

「それはなぁ……こういう訳なんだ(ヌギヌギ)」

 

 

俺はスーツを脱いで、上半身裸になる。

 

 

「ッ!? 何をしているんだ……!?」

 

 

俺の体には普通の人間と同じように見えるが、一ヶ所だけ違う点があり、それは心臓部位から左手、両足が機械化されてある。それは青く鈍く光り、最新鋭な機械と歯車のような古い部品で構成されている。要するに見た目は古そう、中身は最新鋭の技術(テクノロジー)だと想像してくれ。俺は三本のコードの内、一つ取ってパソコンに差し込む。

 

 

「そしてこうすると……ほら、充電出来ているだろ?」

 

 

「あ、ああ、なるほどなぁ……スゴイナァ」

 

 

「語彙力低下しているぞ」

 

 

するとピンポンパンポンと放送がかかる。

 

 

『管理人、管理人。重要な会議があるため、コントロール部門第二会議室までお越しください』

 

 

「ほらほら、管理人さんよ。呼ばれておりますぞ」

 

 

「……そ、そうだな。貴重な体験を色々ありがとうな」

 

 

「おうよ! いつでも来いよ!」

 

 

そして早足で、会議室へと向かう管理人の後ろ姿を見届けている間、一つだけ気になったことを思い返した。

 

 

どうしてあそこまで、管理人は怯えていたような感情をするのか。ただそれだけ気になった。

 

 

 

「ふざけるのもいい加減にしろッ!!」

 

 

コントロール部門第二会議室へ移動した後、会議は始まった。議題は『アブノマーリティの作業効率向上案』『ビール自販機の設置今後のアブノマーリティ対策方針の決定』『セキュリティシステムの更新』『T社との今後の方針』そして『対アブノマーリティチームの結成』……最後のはアンジェラが直々に提案したものだ。しかし、この案にはここでは考えれない程の馬鹿馬鹿しい内容だった。

 

 

「何が、【T-00-01《救世主》】を軸とした対アブノマーリティチームを結成するだと! しかも()()()()よりも階級が上の特殊な役職を作り、それに就かせるだと? ふざけてる! 寝言は寝てから言え! こればかりは許しがたい!!」

 

 

それはそうだ。人間に敵対するアブノマーリティを、一つの部門を締め括るセフィラよりも上の立場にするなんて……いくらなんでも馬鹿げてる。

 

 

「そうです! アンジェラさま、説明をお願いします!」

 

 

「まだ大した情報も出揃っていないのに、こんなのは不確定要素が多すぎます!」

 

 

「私たちが信用出来ないと言いたいんですか、アンジェラさま!」

 

 

各部門の代表からも非難が相次ぐ。それだけ可笑しすぎる内容なのだから当たり前だろう……しかし……

 

 

「黙りなさい、これは決定事項です」

 

 

アンジェラの冷淡な一括によって非難を黙らせた。しかしセフィラたちは渋々ながらも黙った。

 

 

「しかし、あなたたちの言うこともわかるわ。確かに不確定要素が多いアブノマーリティが、あなたたちよりも上の立場になって命令するなんて考えれないよね」

 

 

「だったら「俺は賛成だな」ネツァク、どうして!?」

 

 

そんな中、最初の意見を言ったのは緑色の機械、ネツァクだった。

 

 

「どうしてって? 簡単だろ。死者やパニックが今のところ0人なんだぞ。これはもはや異常事態だろ?」

 

 

「それはまだ、管理が簡単なアブノマーリティしかいなかったから「でも、"2日目の惨劇"では大した武器や職員がいなかったけど、【T-00-01《救世主》】のおかげさまで生きているんだぞ。俺の代わりになってくれないかな」……くっ」

 

 

「でもまあ、確かにチームを結成させるには人数不足ね。ひとまずこの件は保留とさせて貰います。各自、各々の仕事に戻りなさい」

 

 

そうして終わった重要定例会議。各々何かしらの思惑があるだろう。しかし、たとえアンジェラを尊敬するものも今回ばかりは許せないだろう。今は管理室までアンジェラと一緒に歩いている。俺はどうしてそんなことをしたのかと尋ねてみると……

 

 

「私は舞台を整えるのが役目なんです。だからこそ、私は私の役目を果たしただけです」

 

 

……これだけしか言わない。舞台を整えること……つまりハヤトが舞台に立たせる……これでは我々には――

 

 

「ハヤトが必要であるっと言いたいんですね。しかしお喋りが過ぎました。どうにかしてセフィラたちを納得させないとですね」

 

 

肩をすくめるアンジェラ。以前のアンジェラはもっと冷酷で冷たく、まさに機械だった。しかし今はほんの少しだけだが口の両端が上がっているように見える。

 

 

いったい何が彼女を動かしたのか……わかっている。初めてハヤトの我々とは異なる点、異常性を見た時、俺は……

 

 

畏怖と尊敬の念を抱いた。

*1
【O-06-37《ボクは悪いスライムじゃないよ!》】




このシェルターはとても安全です! アブノマーリティや便利屋、掃除屋でも侵入不可能! さらには攻撃すらも無効にする機能付き! まさに難攻不落! 全てはあなた方の尊い命の為に。


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5Day 新しい職員は正反対コンビ

ハヤトは知ってしまった。……あれ? そろそろ試練くるんじゃない?


遂に来てしまった……情報部門の開幕だあっーーー!!!

 

 

ごほんごほん、失礼。取り乱してしまったようだ。とにかく、新しい職員と危険性が上がってくるだけじゃなく、なんと、『試練』のおまけ付きですよ! 試練は呼んでいないので帰ってくださいな。いや~ヤバいですよ。紫の深夜の試練は俺に深い絶望と恐怖を心に残したから一層身を引き締まなければ。(クリアできず、何回もやり直したから)

 

 

「それはさておき、今日は新しい新入社員が来ると聞いたな」

 

 

いやぁ仲良くすることは、後々役に立つなぁ。どうやらミウとノエルを情報部門に、残り三人は新しい社員2名を指導するってな感じか。

 

 

「まだパソコンで確認していないから。楽しみだな」

 

 

実を言うと、パソコンからの確認はしていない。しかしパソコンを点けていないと危ないので………

 

 

「地味に音しか聴こえないから不安なんだよなぁ」

 

 

パソコンを後ろ向きにして、音だけ聴こえるようにした。こうしたら非常事態でもなんとか動けるしな。するとノック音がしてくる。かなり礼儀正しいようだ。

 

 

「はい、どうぞ~」

 

 

「これが、天然鈍感女タラシかー!」

 

 

「オラァッ!! 死に腐れぇッ!!」

 

 

「危なぁっいぃッ!!?」

 

 

前言撤回、初見で悪口を言うとは……かなりのやり手だな。俺は咄嗟に右アッパーを繰り広げていた。

 

 

←←時を遡り中←←

 

 

初めまして、自分はクゴウと申します。どうやら(わたくし)たちは"翼"に入社出来ましては、早くも新しい仕事に勤めることになりました。

 

 

ファッッ~。クゴ~、眠いよ~」

 

 

「黙りなさい。レイズィー」

 

 

「えぇー、扱いひどっ」

 

 

私の同期して腐れ縁。白いチョボンがついた黄色いナイトキャップを被り、薄い黄色の髪を短く揃えた髪型の女性のレイズィー。

 

 

「でもさー。やっぱりさー、眠いよ」

 

 

「だったら永遠の眠りにさせてあげましょうか?」

 

 

「人間としての血も涙もないなー。そんなんだから、クゴーはモテないんだぞー」

 

 

「安心してください。私は、既に卒業済みなので」

 

 

「論点がズレズレだよー」

 

 

すると私たちがいる待機室の扉が開かれる。そこにいたのは、まさに外郭から生き延び、全てを屈服させてきたような方と、青い髪を短くさせた女性の方が入ってきた。

 

 

「初めましてね。私はサリー、サリ姐さんと呼んでね」

 

 

「オレはガーン。一応言っとくが、オレは男だからな」

 

 

ふむ、どうやら精神と体の性別が逆だったり、見た目を気にしているようです。しかし、だからといって差別したり、罵倒してはいけません。何事も"相互理解"。互いに知ることで、互いの価値観を理解する。これこそが大事なので「えっー! そんな見た目でですかー! あれ? でもサリーさんは完ぜゲフッ!」我ながらの肘打ちが決まったのか、倒れるレイズィー。私は頭を下げる。

 

 

「申し訳ありません。同僚が失礼なことを言ってしまって」

 

 

「いいのよ。私としては、そっちの子が悶絶しているけど大丈夫?」

 

 

「どうせ、オレは女性にしか見えないんだ。当たり前だ。そもそも初見で見抜いたハヤトがおかしいんだ。いやアブノマーリティの力なのか? どちらにせよ、オレが男性だと見抜ける訳がないんだ。ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 

 

ふむ、やはりそこら辺を気にしているようですね。

 

 

「大変すみません。ですがご安心下さい。これが"日常"なのでもう慣れっこです」

 

 

「そう、でもあまり乱暴はよくないからね」

 

 

「分かっておりますが、レイズィーはこうしないといけないのです。腐れ縁のお言葉をどうか信用下さい」

 

 

「そ、そうか。ならここの説明は聞いたと思うし、これから作業をしてもらう。支給されたタブレットがあるだろ? そこに指示されてあるからな。後は……大丈夫か?」

 

 

「大丈夫でーす。こう見えても物覚えは早いんですよー」

 

 

復活したレイズィーが代わりに反応する。こう見えて丈夫なのだから。するとガーンが小声で話し掛けてきた。

 

 

(よく聞け、これは大事な話なんだ。誰にも言うなよ)

 

 

((??))

 

 

(いいか、こうしているのは聴こえてはいけないからだ)

 

 

成程……確かにここにはアブノマーリティという存在がいる。どんな特殊能力を持っていてもおかしくない。その対策なんだろう。

 

 

(ガーン先輩、どういうことですかー?)

 

 

(いいか、たった一回しか言わないからな。いいな)

 

 

((コクリ))

 

 

一緒に頷く私たち。どうやら大切な話のようだ。

 

 

(お前らが今から担当するアブノマーリティは【T-00-01《救世主》】だ。基本的にこちらには無害…いや有益な存在だ。彼のおかげで生きている者達は沢山いる)

 

 

(ふむふむ、ガーン先輩。じゃあ、大丈夫ですよねー?)

 

 

(そうですね。今のところはそんなに危険そうでは有りませんね)

 

 

(確かにそうだ。しかし【T-00-01《救世主》】には重大な欠点が一つある。それは――)

 

 

一段と険しくなるガーン先輩の声に、しっかりと耳を傾ける。おそらく聞き逃したら後悔するような大事な内容だろう。

 

 

(――天然鈍感女タラシなんだ)

 

 

前言撤回。

 

 

(ほーう。どんな感じなのですかー?)

 

 

(あいつは、人から好き·嫌いや好意·敵意しか分からないんだ。だからとある人がめちゃくちゃ大好きでも、あいつからした友達の"好き"で終わっているんだ)

 

 

(ふむふむ)

 

 

(しかも、あいつは俺達のことを見抜いているのかのごとく、優しく状況に合った対応をしてくれるんだ。それにポロッとやられた人もいる)

 

 

(はぁ、はい)

 

 

(だからこそお前ら、特にレイズィーは気を付けろよ)

 

 

じゃあ、と手を挙げてサムズアップをしながら扉に向かうガーン先輩。私たちも収容室に移動する。

 

 

「あっ! ガーン先輩! どこにいたんですか! 探しましたよ!」

 

 

「ッ!? ど、どうしてお前が……! まさか、もう仕事を終わらせたのか!」

 

 

「はい! ガーン先輩と一緒に食事しようとって、なんで逃げるんですかー!」

 

 

「三十六計逃げるに如かずぅ!!!」

 

 

正直な話、後ろから聴こえてきたことに気になって仕方なかった。

 

 

 

 

「という訳なんです」

 

 

「よし、殺すか」

 

 

あの野郎……純粋無垢な新人たちに何言っているんだ。新人たちは例え、ホラ吹いていてもあっさりと信じてしまうんだぞ。

 

 

「いえいえ、あんな分かりきった話を信じてしまったレイズィー(こいつ)が悪いんです」

 

 

「だって~、初めて新人に教えることですよー。嘘つくとはおもいませんよー」

 

 

まったくその通りだ。ただでさえ、ここは常識が通用しないところがある。そんなデタラメが出回っているなら………

 

 

「■■■■、いや■■■■、■■■■■■■だな」

 

 

「あ、あの恐ろしすぎることをいってませんか?」

 

 

しまった。不安にさせてしまったようだ。とにかく俺はコーヒーとココアを用意した。

 

 

「とりあえず、コーヒーとココアだ。飲んでリラックスしようぜ」

 

 

「ありがとー」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

そうしてココアをクゴウ、コーヒーをレイズィーは飲む。その後は簡単な会話と質問、カウンセリングをしたぐらいかな。

 

 

「ではー、さらばだー」

 

 

「失礼しました」

 

 

怠け者なレイズィーに生真面目なクゴウ。案外、良いコンビだと思った。さてと自分は………

 

 

 

 

「やって来ましたー! ZYO☆U☆HO☆U部門ー!」

 

 

「いぇーい!」

 

 

ライムちゃんと共に情報部門に来た。全体的に紫色な部屋で、天井には.....何だろ? 丸い……LEDライトぽい何かがある。

 

 

「でも? ここにはいないよー」

 

 

「ここはメインルームと言ってな、ここは職員やオフィサーが待機する場所なんだ。ここにはいねぇよ」

 

 

「へぇー」

 

 

そして新しいアブノマーリティがいる収容室に行く。

 

 

「【T-07-51】だと……!」

 

 

「なんか木と紙のにおいするー!」

 

 

嘘だろ……まさか、あの陰陽みたいなやつが来るのか!  不味いなぁ……最悪、シェルターを使うか。

 

 

「たのもー!」

 

 

「失礼しま……はっ!?」

 

 

そこにあったのは、まるで……いや、図書館だ。四方の壁は本棚になっており、高さは……いや、ここは収容室なのか? 高さも広さも体育館並みはある。空間を弄れる能力か? 天井には蝋燭のシャンデリアがぶら下がっている。そして部屋の中央には木製の四つの長方形の長い机に木の背もたれついた四角い椅子。さらに奥には高級そうな貫禄がある机と椅子。所々には積み上げられた本があり、まだ整理は出来てないように見える。また一際目立つ木の独特の雰囲気を最大限まで出したような一段と大きな立派で古い本棚。しかし()()()()()()()()()()。すると後ろから気配はする。振り向くと。

 

 

「何かご用でしょ……う……か………」

 

 

茶色の紳士服みたい服装の大柄な人がいた。(何故か驚いている)しかし背中には蜘蛛のような8本の脚が生えており、しかしそれは木製の機械のようだ。先は尖っており、殺傷能力が高そうに見えた。

 

そして、顔は……なんというべきか。俺が例えるなら蜘蛛。黒よりの紫のガサガサしい肌に、角みたいに刺々しい水色の結晶が出ている何かの革? を被っている。どうやら身体を革で纏って、さらに服を着ている、ということか。そして甲羅に隠れている目は青く怪しく光っている。二つの大きくとんがった目と六つの小さな丸い目と小さく鋭利な牙の口で構成されている。そう顔が蜘蛛を人間化させたように見えたからだ。

 

 

「あのー、どちらさま?」

 

 

「申し遅れました。(わたし)はここの"個人図書館"の館長、……そうですね。あえて"フォッゲト"と名乗りましょう」

 

 

「ふおっげとさん?」

 

 

「ハハハッ、まだ発音が難しいかな?」

 

 

どうやらライムちゃんと仲良くなっているようだ。だが俺は警戒体勢を解かない。するとフォッゲトという自称館長がこっちに来た。

 

 

「………」

 

 

「………」

 

 

互いに無言が続く。どちらが先に動くか、これが勝負の鍵を握る。すると先に動いたのは――

 

 

「………(スクッ)」

 

 

「ッ!」

 

 

―――自称館長、フォッゲトだった。俺は回避に入るが相手はこれ程の空間操作能力に、木製の脚で純粋な攻撃か、とにかく避けることを考える。

 

 

「よくぞ来てくれました。我が主(マスター)

 

 

「……どういうことだ……?」

 

 

俺はあまりの状況に動けなかった。何故ならば、フォッゲトという自称館長が涙を出しながら、俺に跪いたからだ。

 

「ふおっげとさん? どうして跪くの?」

 

 

「失礼、私が此処にやって来た理由と関係するため、長話になりますのでこちらにどうぞ」

 

 

そう言われて四つの長机の内、一つを挟んで、椅子にお互いに座る。

 

 

「ゴホンッ……私は、元々とある廃屋で忘れ行く運命(さだめ)でした。私はそれが嫌でした」

 

 

「忘れられるか……」

 

 

「ええ、私はただ忘れられることに死ぬことよりも圧倒的な恐怖と絶望が襲い掛かりました」

 

 

「死んじゃうことより、わすられることがこわいの?」

 

 

「ええ、そうです。だからこそ私は"記録"を残すことを望んだ。しかしこんなちっぽけな蜘蛛は、弱々しく、移動することはもちろん。なんなら起きることすら苦痛でした」

 

 

「…? 今は強そうだよー」

 

 

「ハハッ! 確かにそうですね! しっかし私は昔は弱かったんですよ! 確か……少々失礼」

 

 

そうして立ち上がり、とある本棚から一冊取り出すフォッゲト。

 

 

「確かぁ…………お! あったあった。これですよ! この時、私は本を集める時、私より後に住み着いた獣がいましてね。それを退治するために、そして今後の脅威から守るために……そう思っていたら、いつの間にかこうなっていました」

 

 

そう開けたページには不恰好な人間の形をした紫色の何かの写真が貼ってあった。

 

 

「あれー? でもこれは本なの?」

 

 

「あぁ、それは私が本を集める理由は、"忘れたくない"故に、記録さえ出来ればなんでもいいんですよ」

 

 

「ふぅーん」

 

 

「しかし私は怖かったのです。どんなに情報を記録しても、新しい情報に踏み潰されるのが、そこで私は冒険をしました。どうすれば忘れてくれないのか、と考える為には、新しいやり方が必要だと理解したからです」

 

 

「成程……同感だな」

 

 

「その時、私は夢を見ました。それはそれはまるで神のお言葉を受けるようでした」

 

 

「本当に神さまなの?」

 

 

「もしかしたら私の情報、つまり努力の結晶が判断を下したかもしれませんね。しかし救われたのは事実なんです。その夢はある者が助けてくれると言ったんですよ」

 

 

「ほう。それで?」

 

 

「その夢は、まずは迎えが来る。そしたら後は委ねるだけだと、とおっしゃいましたよ」

 

 

「? ちょっとテキトーだね」

 

 

「しっかしその夢の通りでした。今まさにあなた様と会えているのですから」

 

 

「俺に会えることがそんなに重要か?」

 

 

「ええ、重要ですとも。何故ならば――」

 

 

この時、俺は初めてこの身を震わせた。それは……

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

………………え?




忘却こそ、我らを悲劇と進化させる感情なり


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アブノマーリティ調査記録管理画面 
【T-00-01《救世主》】調査記録


嗚呼、消えてしまう……嗚呼、失くなってしまう………
俺はただただお前らの幸せを望む。しかし、それすら許されないのか……
俺は愚かだ。自分は関係ないと思ったことが、今、起きている。
無惨にも殺され、喰われ、狂わせ、そして死んでしまう……
誰か、この地獄を終わらしてくれ...


【T-00-01《救世主》】 RiskLevel:ZAYIN

 

『俺は、皆を助けられる英雄(ヒーロー)になりたいのさ』

 

 

プロフィール

 

ダメージタイプ W(1~2)

 

E-BOX数 30

 

良い11-30

普通6-10

悪い0-5

 

 

作業好感度

 

本能

1ー普通

2ー普通

3ー高い

4ー高い

5ー最高

 

洞察

1ー普通

2ー普通

3ー普通

4ー普通

5ー高い

 

抑圧

1ー低い

2ー低い

3ー低い

4ー最低

5ー???(職員が拒絶するため判定不可能)

 

愛着

1ー高い

2ー高い

3ー高い

4ー最高

5ー最高

 

 

脱走情報

 

クリフォトカウンター✕

 

そもそも脱走しても害はない。むしろ協力するために脱走しているので非鎮圧アブノマーリティに登録されております。

 

RED 0.1

WHITE 0.2

BLACK 0.2

PALE 0.2

 

 

ギフト

 

勇気の結晶(お守り)

ALL+20

 

諦めずに生き残ること。それが幸せの結末(ハッピーエンド)に繋がるのだから...

 

 

E·G·O

 

○防具-初心スーツ

ランク ZAYIN

RED 0.5

WHITE 0.5

BLACK 0.8

PALE 0.8

移動速度20%UP

 

黒色のスーツ。初心忘れるべからず! 何事も安全第一に逃げ足を速くしよう!

 

○武器-初心の拳銃棒

 

ランク ZAYIN

 

ダメージタイプ RED(10~15)

 

攻撃速度 普通

 

射程距離 遠距離、近距離

 

拳銃と警棒を組み合わせた武器。(具体的に言えば警棒に拳銃の効果を足したもの)これで状況に応じたサポートが可能となる!

 

 

観察記録

·全長187cmある身長で一見細身に見えますがガッチリときたえられてある体格です。左手と両足には未知の技術で作られた機械が搭載されております。赤いネクタイに黒いスーツを着ており、戦う時は左手の機械を起動させ、こことは異なる別空間から武器を取り出します。

 

·【T-00-01】は、"ハヤト"と呼んでほしいと懇願されております。(ここからは【T-00-01】を"ハヤト"と略します)

 

·ハヤトは安らぎと平穏をもたらす癒し系のアブノマーリティです。

 

·ハヤトは誰かが死にかけるとすぐに助けに行きます。

 

·ハヤトは天然鈍感タラシです。気をつけ

 

·ハヤトは誰かの好意や意図に()()です。アレで鈍感なんていうことは絶対ありえません!

 

――うむ。間違った情報ほど怖いものはない。あいにく俺が気づかなかったら一大事だったぞ。byハヤト

 

·ハヤトはキノコの食感が苦手です。それゆえキノコを出されると悲しげな顔をします。

 

·ハヤト主催のアブノマーリティによる大会が開かれている場合、すぐさま連絡ください。

 

·ハヤトは我々を助けてくれます。それはここにいる()()をです。

 

·ハヤトは我々が死ぬ運命を知っています。それを使って助けるようです。

 

·ハヤトは我々が生き抜くことに喜び、そのためならば()()()()()もします。

 

嗚呼、全ては"見捨てられた者たち"を助ける為に、早死してしまう悲しき者たちを守るために、軽々しく命の灯火が消える悲惨な事故を無くすために。

 

 

 

命を懸けよう。




誰か、誰か助け…て………?




()()()()()()()()()()()


そうだ。自分は死なない不死身の体。更には強靭な戦闘能力に豊富な知識。自分こそが最もこの地獄を終わらすことが可能じゃないか。
この会社では……いや、アンジェラは助けれなかった。それは『エネルギーを最優先』という命令があったからだ。

俺にはない。

ならばやろう。誰もが助かる、誰もが生きれる、誰もが幸せに笑える。そう、薬やアブノマーリティによる科学的なものわ強制的なものによる笑いではなく、心の奥底から幸せに笑えるようにしよう!
アンジェラも、マルクトも、イェソドも、ホドも、ネツァクも助けよう!
偽善でもいい、自己満足でもいい、何でもいい!

救われない憐れな者どもに救済を! 不憫な助からぬ者たちに慈悲を! 取り残された者に居場所を!

それが俺の目標……いや、成し遂げないといけない"悲願"だ。


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【O-06-37《ボクは悪いスライムじゃないよ!》】調査記録

昔、とあるところには一匹の小さなスライムがいました。
スライムは必ずしも口にする言葉がありました。
"ボクは、悪いスライムじゃないよ!"
あれはどういう意味を表していたんでしょうか?


【O-06-37《ボクは悪いスライムじゃないよ!》】 RiskLevel:HETETH

 

『見知らぬ罰を受けることは、その者にとって最大の苦しみとなるだろう...』

 

 

プロフィール

 

ダメージタイプ B(4~5)

 

E-BOX数 12

 

良い10-12

普通6-9

悪い0-5

 

 

作業好感度

 

本能

1ー普通

2ー普通

3ー普通

4ー普通

5ー普通

 

洞察

1ー低い

2ー低い

3ー普通

4ー普通

5ー普通

 

抑圧

1ー低い

2ー低い

3ー低い

4ー低い

5ー低い

 

愛着

1ー高い

2ー高い

3ー高い

4ー高い

5ー高い

 

 

脱走情報

 

クリフォトカウンター2

 

『作業結果が悪いと低確率でクリフォトカウンターは1下がった』

 

『正義ランクⅤの職員が入るとクリフォトカウンターが0になった』

 

 

脱走した場合、ランダムな通路に2体ずつの赤いスライムが現れた。

 

『ベトベト』RED(10~10)

同じ室内にいるものにREDダメージを定期的に与える。

 

『バタンッ』RED(5~8)

前方に倒れるように攻撃して、REDダメージを与える。

 

RED 0.5

WHITE 1.2

BLACK 1.0

PALE 1.0

 

 

ギフト

 

ぷよぷよスライム(頭1)

RED属性+3

 

このぷよぷよ感は、何よりもクセになるさわり心地だぜ!

 

 

E·G·O

 

○防具-青いスライム

ランク TETH

RED 0.5

WHITE 1.2

BLACK 0.9

PALE 0.9

 

青いスライムに包まれたような服。青いスライムは、誰かを護りたい。そして仲良くなりたかった。

 

○武器-キミも治してあげるよ!

 

ランク TETH

 

ダメージタイプ WHITE(8~10)

 

攻撃速度 早い

 

射程距離 中距離

 

バケツにたっぷり入った赤いスライム。所々に燃えているスライムがあり、無限に出すことが可能。自分を助けてくれた光なら、困っている人たちに役立つかな?

 

 

観察記録

·体長約1mある青いスライムです。つぶらな瞳と小さな口で構成されている顔は、青いスライムの中に眼球も食道などの内臓がないにも関わらず機能しています

 

·性格は、臆病で優しいです。しかし、自分では抑えられない狂暴な力があります。それによって暴走状態になり、破壊衝動におわれます。

 

·怒ると赤くなり、たまに脱走しますが、それは職員やオフィサー達を助けるためなので、基本的には鎮圧しなくても帰ります。

 

·【O-06-37《ボクは悪いスライムじゃないよ!》】は、職員やアブノマーリティの頭の上に居座ることがとても大好きです。特にノエル·ライナとハヤトがお気に入りです。

 

·正義ランクⅤの職員が入るとクリフォトカウンターが0になった。

 

·いくら【O-06-37《ボクは悪いスライムじゃないよ!》】がひんやりしているとはいえ、抱き枕にするのはいけないと思います。(私だって抱きつきたい!)

 

スライムは溢れかえるような力を制御が出来なかった。そしてみんなを傷つけた。だから嫌われた。しかし………

 

 

ようやく仲良くなれた




やめてよ……ボクは何もしていないんだ………
助けてよ………ボクが何をしたんだ………?
ボクは……ボクはただただ仲良くなりたかったんだ……
するととある声が聞こえる。

『喰らいやがれ! 浄化されろ!』

誰かの声、すると身体が燃え始めた。最初は驚いた。熱かった。苦しかった。けど……


心が安らいだ。


だからボクは、あの人についていくことにした。ボクはようやく仲良くなれたのは、あの人のおかげだから。


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【F-04-14《誕生日、おめでとう》】 調査記録

物を壊す。そんな酷いことを……
物を壊す。そんな悪行を………
物を壊す。そんな残酷なことを…………
私はただみんなを喜ばせるために作られたのに………


【F-04-14《誕生日、おめでとう》】 RiskLevel:TETH 

 

『物を壊して褒められる。理解できない。』

 

 

プロフィール

 

ダメージタイプ R(2~3)

 

E-BOX数 11

 

良い9-11

普通5-8

悪い0-4

 

 

作業好感度

 

本能

1ー高い

2ー高い

3ー普通

4ー普通

5ー普通

 

洞察

1ー普通

2ー普通

3ー普通

4ー普通

5ー普通

 

抑圧

1ー最高

2ー最高

3ー最高

4ー最高

5ー最高

 

愛着

1ー低い

2ー低い

3ー最低

4ー最低

5ー最低

 

 

脱走情報

 

クリフォトカウンター1

 

『作業結果が悪いと中確率でクリフォトカウンターが1下がった』

 

『作業を中断すると高確率でクリフォトカウンターが1下がった』

 

 

脱走した場合、脚は黒く大きくなり、尾は馬同様の黒くなり、頭も馬同様となるが、鼻息が荒くなり目は充血する。

 

『暴れん坊』RED(5~5)

ひたすらに前方に向かって走り続けるだけ。道中何があっても止まらない。邪魔したものは大きな前足で踏み潰されるだけだ。

 

 

『ヒィィーーン!!!』WHITE(6~10)

もし止まったならば、大きな鳴き声で威嚇するだろう。

 

RED 0.3

WHITE 1.5

BLACK 1.5

PALE 2.0

 

 

ギフト

 

七色(なないろ)の馬耳(頭1)

 

抑圧作業成功率+3%

 

七色にピンっとした馬の耳。これを着けるとなんか……Sっ気がするらしい。

 

 

E·G·O

 

○防具-カラフルな服

ランク TETH

RED 0.3

WHITE 1.2

BLACK 1.9

PALE 1.9

 

七色に輝くカラフルな服。これを着るとなんかめっちゃヘイトを買ってしまうらしい。……まあこんなに目立てばそうなるな。

 

○武器-カラフルな鞭

 

ランク TETH

 

ダメージタイプ RED(3~4)

 

攻撃速度 高速

 

射程距離 遠距離

 

七色のカラフルな鞭。元々、鞭は拷問用の道具のために、ダメージは少ないですが、速く遠くから攻撃出来ます。

 

 

観察記録

·体長3m、高さ2m(脱走したら4m、高さ3m)の七色の紙吹雪を身体中に貼り付けたような馬とその馬をぶら下げている紐で構成されたアブノマーリティです。基本的には喋りも鳴きませんが、抑圧作業中による職員からの情報だと、"馬の鳴き声が聞こえた"と言っております。

 

·【F-04-14《誕生日、おめでとう》】は自分が他の者に傷つけられることに非常に関心が有ります。

 

·また抑圧作業を同じ職員で、2回連続して行うと、【F-04-14《誕生日、おめでとう》】は割れました。その時、大量の馬の毛、馬の血、紙吹雪が【F-04-14《誕生日、おめでとう》】から出てきました。

 

·そして割れた後、壊した職員は馬の毛が生えて、首と両腕が長くなり、馬になりました。そして大量の紙吹雪が身体中から生えてきました。そして紐が現れて、馬をぶら下げました。それは【F-04-14《誕生日、おめでとう》】と同じでした。

 

――間違いない……オレは確かにあの馬を壊そうとした………それはもしかすると……オレを…………これ以上は考えたくないし、想像したくない。けど、後でハヤトにお礼しに行かないとな。byガーン

 

·また、ハヤトが【F-04-14《誕生日、おめでとう》】を使ってカウボーイごっこしようとしたら、すぐさまに連絡ください。

 

 

ヒィーン、ヒヒィーン。馬の鳴き声が聞こえる。だけどふと思うんだ。

 

 

それは元は人間だったんじゃないかとな。




ああ、そうか………君たちは壊される私の痛みや苦しみを知らないから、そんな反応が出きるのか……
そうか、そうか。君たちは私の中身がお菓子でいっぱいだから壊したくなるのか……そうか、そうか………


ならば、中身を変えてやる。


中身は……そうだな、私と同じ運命にする呪いたっぷりな物にしよう。私の毛に血、たっぷりのカラフルな紙吹雪を私に詰め込んで………ああ、楽しみだ! 早く私を壊してくれ! そして見せてくれ! 感じさせてくれ!


私と同じ運命の君たちの絶望を


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