ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 (ベルゼバビデブ)
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ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜
STAGE01


本作は元々「チートギアス 〜反則のルルーシュ〜」のおまけで始めた外伝だったのですが、皆さんからの脳筋ルルーシュの受けが良かったので改めて始めることに。

但しタイムリープではなくなっています。


 戦争を機にスザクとは離れ離れになってしまった俺は、かつての後ろ盾だったアッシュフォード家に匿われた。今は俺は高等部、妹のナナリーは中等部の学生としてアッシュフォード学園に通っている。

 ミレイ会長は俺の秘密を知った上でよくしてくれるし、こんな俺やナナリーとも仲良くしてくれるリヴァルやシャーリーという友人もできた。しかし…それも今だけのこと、俺達の正体がブリタニア皇族…それも現皇帝に捨てられた皇族だと知られれば関係は簡単に崩れ去るだろう。俺はナナリーの幸せを守る為に戦わなければならない。そしてその為に身体を鍛えてきた。

 

 俺の朝は早い。毎日まだ日の昇らない時間から(ただし睡眠はしっかりとっている)ランニングとウェイトトレーニングを行い、朝食はプロテインを中心としたとりささみ、ブロッコリー等の高タンパク低カロリーな食事(もちろんナナリー用の別メニューは作る)を摂り身体作りに励む。

 流した汗をシャワーで流してからナナリーを起こすために部屋を訪れる。圧倒的筋肉を手に入れた今の俺であればナナリーを片手で優しく抱きかかえつつ、空いた片手でベットメイクを行うなど造作もないことだ。筋肉に不可能は無い。

「おはようナナリー。」

「おはようございます、お兄様。もう、また私をダンベル代わりにして…」

 確かに年頃の女の子をダンベル代わりと言うのは失礼かも知れない…しかし、体に染みついた習慣なので仕方が無いとも言える。

「ごめんごめん。でもこうやって抱えているとナナリーの成長を感じられて嬉しいよ。」

「まぁ!お兄様ったら…ふふふ」

 可愛い。ナナリーを車椅子に座らせ、ゆっくりとテーブルのところへと運ぶ。テーブルについてから細心の注意でナナリーにスプーンを握らせて皿の位置を教えば盲目の生活にも慣れてしまったナナリーならば支障なく食事を行える。今日も普通の朝だ。

 

 …普通でないとしたら、俺の野望の為の"資金集め"だろう。他国を侵略し征服するブリタニア、広すぎる国土はいかに監視の目を光らせようとも必ず影の部分が出来上がる。もっと言えばエリアの総督が無能だったり、黙認していれば尚のことだ。かつての日本、現エリア11も例に漏れず違法カジノが横行している。そして残虐な地下格闘は見世物として人々の優越感を満たすにはもってこいだ。ブリタニア人でありながら参加する俺なんかは変わり者だが、ブリタニア人を殴れるとなればイレブンも殺る気満々。勝負は白熱して金は面白いほどに回る。そんな地下格闘を回っては相手をボコボコにし、ファイトマネーを掻っ攫う。(ついでにリヴァルに大金を俺に賭けさせ賭け金も頂く。)

 

 全てはブリタニアをぶっ壊す。その軍資金集めだ。あとトレーニングにもなる。一石二鳥だな。

 

 とは言え、学校のある日は流石に地下格闘に行く余裕はない。小金稼ぎでチェスの代打ちなんかは授業をサボりつつこなせるので楽で良いが。…よし、今日の仕事場に到着だ。

「代理人のご到着かな?」

「あぁ!よかった間に合った…助かったよ…頼むよ、例のアレちゃんと用意しとくからさ」

 学生の立場では手に入らないものは弱みを握った大人にやらせるのが良い。リヴァルのバイト先のマスターは調達に何かと便利である。しかしながら何故この人はチェスが下手な癖に賭けチェスなどやるのか…?さて、今日の相手はどんなやつかと見てみれば素材だけは一丁前の高級品に身を包んだ男…しかしながら服と髪型と装飾品と香水の組み合わせが死ぬほど悪い。これならイレブンの方が良いコーディネートができるだろう。そんな訳で相手はどこぞの馬鹿な貴族な訳だ。

「なんだ…学…生?お前…学生?学生…か?」

 この学生服が目に入らないのだろうか?学生に決まっているだろう。

 パチンと音が鳴りボタンが弾け飛ぶ。ヒュンと貴族の頬を掠めるとボタンは頬を切り裂いたようで貴族の頬からは血が出ていた…まぁそういうこともあるだろう。最近また制服がキツくなってきたんだよな。それはそれとして…

「なんだ、貴族か。」

 俺が腰掛けると椅子は砕けた。脆い安物の椅子に違いない、馬鹿め!仕方ないので立ったままチェスのキングの駒を持ち上げ…

 

 あ、駒が砕けた。

 

「しまった。指圧トレーニングの癖で…」

 首が砕け散ったキングなど縁起が悪いが仕方ない。…いや、例えその身に怪我を負おうとも戦場の先人を駆ると考えれば寧ろ理想の王か?まぁいい、キングを盤に置いて相手の出方を待つ。それはともかく後で駒を弁償しなければ。素材は大理石のようなので安心した。俺の圧倒的筋肉で削り出せば素材を買うだけで済む。

「こ、降参する…」

 何…?まだ有利な盤面なのに一手も刺さずに降参だと…?やはり馬鹿な奴だったようだ。これだから貴族は…

 

「思ったより早く終わったな。帰りは走る事にするよ。先に学園に帰っててくれ」

「おっけー!じゃあまた後で!」

 バイクに乗り去っていくリヴァルの背を見送り、俺は学園へと駆け出した。

 

 しばらく走っていると高速道路で事故があったらしい。何事かと見てみればトラックが工事現場のようなところに突っ込んでいる。

「誰か助け呼んであげたら?」「君肩にナイトメア乗っけてんのかい!」「他所見でもしてたんじゃないの?」「馬鹿な奴ぅ!」

 周りの人間は写真を撮るばかりで助ける素振りはない。ちっ…どいつもコイツも…。そして、よくよく見てみれば事故現場の近くにはリヴァルもいるようだ。俺はリヴァルを助ける為に高速道路に飛び移った。「おっ!学…生…?救助隊登場!」

「リヴァル!無事か!」

「ルルーシュ!それが…エナジーの線が切れちゃったみたいでさぁ…」

「待ってろ」

 バイクの中を少し調べたが…うむ、俺にはさっぱり分からん!だがこういうものは大概強い衝撃を加えれば直ると母上が言っていた。俺がリヴァルのバイクを蹴り飛ばすと、どうやらエンジンが再始動したようだ。流石は母の教え。そして俺の筋肉。やはり筋肉に不可能は無い。

「嘘だろ…!?」

「取り敢えず高速を降りて直すなり停めるなりするべきだろう。俺はトラックの方を見てくるよ。先行っててくれ。あとみんなに遅れるって伝えてくれると助かる。」

 リヴァルと再び別れた俺はトラックによじ登り、中に入った。しかし、俺が中に入ると同時にトラックは急に動き出してしまう。まぁ、普段から体幹を鍛えているおかげで俺はびくともしないが。…おや?何かが落ちているな…これは…上着の様だ。上着を拾い上げると何かがポケットに入っているようだ。こらは通信機だろうか?それにしてもこの暗さと路面状況…旧地下鉄構内を走っているようだな。

 

 トラックが停止し、荷台側面が開かれ…ようとしたがどうやら何かに引っ掛かっているようだ。仕方ないと思い蹴り飛ばすと、つっかえていた何かが取れたのだろう、無事に稼働したようだ。その瞬間、俺の視界の端に見覚えのあるものが映る。そのキックに俺は何度も敗れた。その度に奪われる「ナナリーにあーんする権利」は数知れず、俺の屈辱的な敗北の記憶は数年ぶりに蘇り、と同時に俺の体は自然と動いた。蹴りを両手でいなし、こちらもお返しに蹴りを入れる…が、それは相手の腕により防がれ、続けてのコンビネーションパンチも有効打になり得なかった。俺も鍛えてきたつもりだがまだまだのようだな…!

「この動き…ルルーシュか!?」

「やはりスザクか」

 その顔は幼い頃に見た面影を残す日本人のもの、かつての親友スザクであった。

「お前軍人になったんだな」

「軍の施設なら効率的なトレーニングが出来るからね。栄養のある食事も出るし…君は?まさかトラックをダンベル代わりに!?」

「馬鹿を言うな。」

 昔会長の無茶振りで機材を積んだトラックを引き摺ったことこそあるが流石に持ち上げられるはずがない。相変わらずの天然振りだが、再会を喜んでいる場合では無いようだ。何故なら突如カプセルが開いたのだ。

「いけない!毒ガスが!」

 毒ガス…?するとスザクは小型のマスク…恐らくガスマスクの機能もあるのだろう…を付けた。俺も瞬時に息を吐ききり、そして息を吸い込んで呼吸を止めた。これで毒ガスが漏れたところで3分は活動できるだろう。

 

 しかし、中からは毒ガスではなく一人の女が出てきた。

「毒ガスじゃない…!?」

 女は拘束されているようなので、取り敢えず拘束具を引きちぎり、コミュニケーションを試みようとした。しかし、背後から声を掛けられた。

「ちッ!この猿!名誉ブリタニア人にそこまでの権限は与えていない!」

「しかしこれは…!」

 やり取りと態度から察するにスザクにとっての指揮官に当たる人物のようだ。そしてスザクはカプセルの回収を命じられていたが、中を見る事までは許可されていなかったらしい。そうなれば毒ガスと偽られていたこの女は見られてはまずい物なのは想像に難くない。

「まぁいい、その成果を評価して慈悲を与えよう。この銃であの学…生?学生かアレ…?取り敢えずなんでも良い…あの男を撃て。」

「できません!彼を撃つことは…!」

「ならば死ね」

 突如撃たれたスザクだが、先程拳を交えたので分かる。鍛えられた今のスザクはピストルの弾で死ぬ程やわな筋肉では無い。俺がこの場で暴れても良いのだが女の事を考えれば逃げるべきだろう。俺は女を抱えその場を後にした。その際都合よくトラックが爆発し、上手く撒くことができた。

 

 どれくらい走っただろう。一旦女性を下ろして周囲を確認すると、微かに風を感じた。恐らく近くに出口があるのだろう。

「お前、喋れるか?何故追われているか心当たりとかはあるのか?」

 女は大人しく反応を示さなかった。おそらくカプセルに入っていた液体に何かしらの作用があったのだろう。落ち着かせるために一度頭を撫でてから再度抱え上げ逃走を再開する。

「ここなんだな?出口の一つは」

「はい」

 聞こえてきた話し声から察するにどうやら俺の見つけた出口は兵士によって先回りされていたようだ。それにしてもこのまま逃げ回っていても埒が開かない。逃げるのも面倒臭くなってきたので制圧してしまおう。

「お前はここで隠れてるんだ。いいな?」

 女に隠れる様に指示し、手頃な瓦礫をいくつか拾い上げて何人かの兵士の頭に投げつける。

「ぐあっ!」

 この程度で気絶するとは敵ながら情けのない連中だ。このまま制圧してやる。

「なんだ!?何が起きている!?」

「いたぞ学生だ!撃て!」

 軍人の撃つ銃の狙いは正確だ。だが今はその正確さがこの場合は仇となる。

・銃で狙いをつけ引き金を引く

・撃たれた弾が着弾する

 そのタイムラグの間に俺は狙われた場所から動けば銃は当たらない。ジグザグに走ることで弾を躱し、距離を詰める。

「馬鹿な!」

 そして焦った人間の射撃で起こるのは残弾管理のミス。同時に撃ち出したのは判断ミスだったな。同時に弾切れを起こした兵士達など脅威では無い。スザクの見様見真似で回転クルクルジャンピングキックをお見舞いし、銃を取り上げる。もちろん撃つのでは無い、他の兵士に投げつけるのだ。こうして場を制圧した俺だったが、そんな俺に声がかけられた。

「動くな!この女を撃つぞ!」

 見れば隊長らしき男がピストルを女に突きつけている。

「人質のつもりか?俺とその女にそこまでの関係があるとでも?」

「黙れ。お前のせいで人が死ぬぞ」

 仕方なく俺は無抵抗を示す為両手を挙げた。

「ふん、無駄な手間を取らせやがって…死ね!」

 俺に向けられて放たれた銃弾は俺の腹に着弾する…が、ピストルの弾が俺の筋肉を貫くことは無い。直ぐに弾を指で取り出し、お返しに撃たれた弾をデコピンで弾き出す。額に着弾した兵士は倒れた為、すぐさま距離を詰めて銃を取り上げる。

「馬鹿な…!」

「道具に頼り身体を鍛えなかったお前の負けだ。覚えておくんだな。」

 俺は拳を振り上げ、そのまま男の顔面に振り下ろす。意識は確実に刈り取れるだろう。

 

「俺を撃って良いのは…俺にぶたれる覚悟のある奴だけだ!」




あれ?ギアス貰い忘れてない?

本来は
事故→カレン出陣→ヴィレッタ襲撃により旧地下鉄へ
という流れですが、ランニングのためにルルーシュの合流は遅れ、リヴァルの出発も早かったため
カレン出陣→二手に分かれリヴァルと事故→旧地下鉄へ
という流れになっています。ええ、言い訳です。


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STAGE02

設定としてルルーシュくんは原作同様賢いはずですが、鍛えすぎたフィジカルにしばしば思考が乗っ取られます。


「おいお前」

 またもや声を掛けられるが、今回は女の声。振り向けば俺が助けた女だった。

「なんだ、お前喋れたのか。」

「あぁ、取り敢えず助けられた。礼を言う。」

 礼を言うと言っている割には随分と偉そうである。本当に感謝してるのだろうか。

「助けてくれた礼に…そうだな。力をやろう。」

「…ダンベルならもう間に合ってるぞ」

「女性に向かって失礼だなお前。さては童貞だな?」

 ブリタニアを壊す為に体を鍛えたり、軍資金を稼ぐ為に時間を取られているので俺に恋愛にうつつを抜かす余裕は無い。故に童貞なのは当然であろう。

「私の渡す力はそういう物理的な力ではない。王の力だ。だが、これを手にすればお前は力を得る代わりに他人とは異なる摂理で生きることになる。王の道はお前を孤独にするだろうな。だが…お前には叶えたい夢があるのだろう?覚悟があるならばこの手を取れ。あとついでに私の願いも叶えて貰う。」

「ブリタニアを倒す為だ。頭脳も身体も鍛えた。更に力が手に入るというならば貰うとしよう…………ドーピングとかじゃないよな?」

 女はドーピングとかではないと言ったので手を取るすると、さまざまな映像が脳裏を駆け巡った。

「なんだ…これは!?」

 呆然とする最中、一つのナイトメアがやってきた。…というかあの女さっきしれっと願いを叶えろとか言ってきたな?全然礼になってないじゃないか。

『なんだこれは!どうなっている!ここで何が起きた!ブリタニアの学…生?学生か?学生…だよな…?お前、ここで何をしている!』

 流石の俺もナイトメア相手に素手で向かうほど愚かではない。早速貰った力とやらを試してみるか…

「"そこから降りろ。今すぐにだ"」

『なんだと?貴様偉そうだな。何様のつもりだ!』

 …どうやらこの力とやらは直接相手の目を見なければ使えない様だ。思ったより不便だな。ならばまずはナイトメアから引き摺り降ろすとしよう。

「私はニトゥーキン・ジョーワン!父は侯爵だ。保護を頼みたい。」

『保護?見る限り保護が必要そうな見た目ではないが…?』

「使えん軍人だ。父に言って抗議して貰うとしよう」

 普通に考えればこんなところに貴族の子供がいるはずがない。しかし、仮に何かの事故で迷い込んでしまい、それを見捨てたとなれば…軍人であるあいつは処分を免れないだろう。そして奴はこのリスクを無視できないはずだ。

『待て!保護しないとは言っていない!』

 馬鹿め…。降りて来た女に対し俺は力を使った。

「"お前のナイトメアを寄越せ"」

「…分かった。ナンバーはXG2-IG2D4だ。」

 キーを奪った後、念の為手刀で意識を刈り取った。

「お前も乗れ…えーっと…そういえば名前を聞いていなかったな。俺はルルーシュ・ランペルージと名乗っている。お前は?」

「名乗っている…?ニトゥーキンとやらと同じ偽名か…まぁいい。私はC.C.だ。」

「そうか。C.C.早く乗れ、少々狭いだろうが我慢しろよ」

 俺が乗りこんでからシートの後ろにC.C.が乗り込んだ。

「狭い上にお前のせいで暑苦しい。カプセルの方がマシだな」

「我慢しろ。ワガママを言うとお前も…」

 俺はC.C.を見やる。しかしC.C.は余裕の表情を浮かべていた。

「効くかな?私に」

「…じゃあ。」

 俺は力瘤をつくり見せつける。するとC.C.の顔から余裕が消え去った。

「…少しふざけるくらいは許せ。私の個性だ」

 ふむ、殴れば黙らせられるらしい。とは言え無駄に人を殴る趣味はないので状況把握に専念する。しかし、流石に情報が足りないと思っていると電話が掛かってきた。相手は…シャーリーか。C.C.に静かにしていろと言ってから電話に出た。

「もしもし?シャーリーかい?どうしたんだ?」

『もールル!今一体どこにいるの!?授業サボってばっかりで…このままじゃ留年しちゃうよ?』

 そういえば今日は授業をサボってるんだった。リヴァルに頼んだとはいえ、現状帰れる見込みなどつかない。となれば改めてナナリーのことも頼まないといけないな…。良い機会だから取り敢えず情報を集めよう。

「シャーリー、今そこにテレビとかはあるか?ニュースを知りたいんだが。シンジュク辺りの」

『え?ちょっと待ってね……………うん、ニュースね…うーん、特に何もやってないよ?交通規制があるだけで』

 大っぴらな報道はしていないようだ。

「交通規制の理由は?』

『わかんない』

 どうやら全て終わってから軍に都合のいい報道をするつもりのようだ。つまり援軍は呼び難いはず。奪ったサザーランドで戦況を見てみれば周りは敵だらけ、盤上の駒だけとは言え囲まれているのだ。一人で切り抜けるのは不可能だろう。

「C.C.お前ナイトメアは動かせるか?」

「動かすくらいなら…なんだ?私にも戦わせるのか?こんなただのか弱い乙女に?」

 ただのか弱い乙女が拘束されてカプセルにぶち込まれるとは思えない。動かすことができるなら駒としては十分だろう。

「お前の願いを叶えてやる代わりにお前も俺に協力しろ。」

「…良いだろう。これは契約だ。お互いにお互いの目的のため協力する…我々は契約者にして共犯者だ。」

 共犯者か、ふむ…悪く無い響きだ。

 

 C.C.のサザーランドを手に入れようと周りを見渡していると、輸送列車を見つけた。これは使える。軍人が見張っているが、まさか味方のサザーランドが奪われているなどと思うまい。友軍の様に振る舞いつつ接近し、降りた後、C.C.から貰った力…ギアスを使うことでサザーランドを奪うことに成功した。あと、念の為兵士たちには1発ずつ顔面にパンチをブチ込み意識を刈り取っておく。とは言えC.C.一人に渡すにしては数が多過ぎるな…そう言えばテロリスト達が居たんだったか。それに通信機を手に入れていたことを思い出し、包囲網突破のための作戦を思いついた。

「俺を巻き込んだ借りは返してもらおうか。」

 

 テロリストの通信機を使い、まずは赤いグラスゴーを助ける。どうやらサザーランドに追いかけ回されているらしい。型落ちな上、片手な癖によく耐える。余程パイロットが優秀なのだろう。ならば駒として活用しない手はない。

「赤いグラスゴーのパイロット!西口だ、線路を利用して西口へ回り込め!」

『誰だ!?どうしてこのコードを知っている!』

「私が誰かなどどうでも良い。私の指示通りにすれば勝たせてやる!」

『勝つ…!わかった!』

 少々反抗的だったがどうやら従ってくれるらしい。それにしてもパイロットは女のようだ。強力な女…よし、Q"クイーン"は決まりだな。

 女を追うサザーランドを俺とC.C.の十字砲火で叩きのめした。

『助かったよ。でもどうやってサザーランドを?』

「そんなことはどうでも良いだろう。それよりお前たちに列車の積荷をプレゼントしよう。勝つ為の道具だ。」

 C.C.は俺の護衛として周りを見張らせ、俺はテロリスト達に指示を出した。

 

 早々に包囲を崩したところまでは良かった。問題が起きたのは白いナイトメアの登場。テロリスト達が言うには白いナイトメアは実弾を弾くシールドを持ち、信じられない速さで動くと言う。

『ルルーシュ!例の白いナイトメアがこちらに来るぞ!』

「お前はナイトメアを捨てても良いから逃げていろ!合流地点はポイントσ7だ。」

『分かった。但し死ぬなよ?お前に死なれると困る』

「ふん、誰に言っている」

 C.C.は先に離脱し、その直後視界に白いナイトメアが現れた。こいつかイレギュラーは…!そしてその動きは…回転クルクル空中ローリングキック。このナイトメア…乗っているのはスザクか…!?スザクの動きを完全に模倣出来る機体などサザーランドで勝てるはずが無い!逃げに徹しつつ、直接攻撃ではなく周りの建物を破壊して進路を妨害する。姑息な手だが仕方がない…!

『ルルーシュ、援護するぞ』

 遠くからC.C.が援護射撃をしてくれるおかげもあり、なんとかスザクを振り切ることができた。

「これからどうするんだ?ルルーシュ」

「丁度いい。今頃本陣が手薄だろうからな。クロヴィスが何か知っていないか聞いてくるとするよ」

 ナイトメアを隠しつつ、C.C.を残して俺はその辺の兵士から装備を拝借しG1へと向かった。

「止まれ!」

「ようやく検問か」

「お前テロリストの仲間だな!?」

 何故コイツそれを…だがそう思うなら躊躇わず撃つべきだったな。俺は拳を叩き込み黙らせる。その後も視界に入る人間には何故か正体を見破られたので仕方無く全て拳で捩じ伏せ黙らせた。

「なんだお前は…!」

 一先ず銃をちらつかせ、停戦命令を出すように脅す。クロヴィスは怯えながら首を縦に振り、言われた通りに停戦命令を出した。

「これでいいか…!?次は何をすればいい?踊りか?それとも歌でも歌えばいいか?チェスのお相手でも…あ、サンドバッグ代わりはやめてくれ!良い感じの肉壁は将軍のバトレーという男の方が向いている…」

「チェスですか、懐かしいですね。昔はよくお相手しましたし…まぁ、いつも俺の勝ちでしたが」

「貴様…誰だ!?」

 俺はヘルメットを脱ぎ捨て素顔を晒す。

「お久しぶりです兄上」

「…いや、貴様誰だ!?私の弟にお前のようなゴリラは居ない!」

 俺如きの筋肉量でゴリラさんだと?ゴリラさんに失礼だ。俺はクロヴィスに近づき、思い切りビンタする。

「ヒィィ!!やめろ!やめてくれ!何でもする!何でもするから許してくれ!」

「腹違いとは言え実の弟の顔すら忘れるとはな。俺の質問に答えて貰うぞ?俺の前では誰も嘘は吐けない!」

 まずは一発ビンタを叩き込む。

「止めろ!やめてくれ!何でも話す!話すから暴力は!」

「俺の母は立場こそ皇帝の妃だったが出は庶民だった。他の皇族からしたらさぞ目障りだったろうな」

「…お前ルルーシュか!?う、嬉しいよ…生きてたんだな…!それにこんなに逞しくなって…だが、お前の母親…マリアンヌ様のことなら私じゃ無い!私じゃないぞ!本当だ!信じてくれ!」

 暴力はやめてくれと言われたので俺はギアスを使う。

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる!"俺の質問に答えろ"」

「…わかった。」

「誰だ。母さんを殺したのは!」

「第二皇女コーネリアや第二皇子シュナイゼルが知っている。」

 知っている?つまり犯人かどうかは知らないのか?

「そいつらが首謀者か?」

「………」

 どうやらそこまでは知らないらしい。

「…はっ!?私は本当に知らない!!頼むから暴力はやめてくれ!私が出来ることなら何でも協力する!そうだ!私と一緒に本国にでも…」

 醜く泣き喚きながら命乞いとは… 腹違いの兄弟とは言え恥ずかしくなってくる。とは言え、コイツにもう利用価値はない。

「お前には俺の覚悟を、引き返す道を無くすための生贄になって貰う。」

「止めろ!やめてくれ!その脚みたいな腕を振り上げるな!うわぁ!やはり嫌だ!嫌…」

 俺はクロヴィスに拳を振り下ろした。

「腹違いとは言え!実の兄だゴフェ!」

 何度も…何度も……

 

「残虐なやつだな。殺すなら銃で撃てばいいだろうに。」

「それではダメだ。この手で、この拳で殺す事に意味がある…ブリタニアを破壊する、その覚悟を決めるために俺は…!」

 我ながら悪趣味だが、俺の復讐を果たすための覚悟を己自身に示す為にはこれしか無い。俺が人をぶって良いのは、俺が撃たれる覚悟があるからなのだから。




やったねスザク!銃という証拠品が残らないから容疑は掛からないぞ!

20220715修正:ルルーシュの用いた偽名を「ニトゥーキン・ジョーワン」に変更
20220729修正:ルルーシュへのゴリラ呼び名怒る理由を変更

ネクストジェレミアヒント!「人を殴り殺せる身体能力」


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STAGE03

そう言えばルルーシュがカレンのこと見てないんだよね。ルート破綻してない?


「こーらルルーシュ!今こっそり筋トレしてたでしょ!」

 空気椅子しつつ机の下で握力トレーニングしていたのが会長に見抜かれたようだ。丸めた紙で頭を叩かれてしまった。

「本当ルルーシュは隙あらば鍛えるよなぁ…この前バイクに並走された時はビビったよ」

「それより昨日何やってたの?」

「はいはいはい!話を脱線させない!」

 俺達生徒会は今部活の予算審査を行なっている。因みに今日中に終わらせないと予算が降りないのだ。

「予算が降りないとなるとウェイトリフティング部はマジ怒りする事になるな」

「その非公式の部活、所属してるのルルだけだからね…?」

 バレたか。

「せめてもう1日早く思い出してくれればよかったんですよぉ会長…」

「もう1日遅くが正解!諦めがつく」

「それは困る。ウェイトリフティング部に予算を…」

 すると会長が突然大声を出した。

 

「ガーッツ!!」

 

 また会長お得意のガッツの魔法だ。俺は筋トレを諦めて本腰を入れて予算審査に取り組む事にした。但し空気椅子はやめない。

「会長!私もかかった事にします!」

「うむうむ、ルルーシュとシャーリーの肉体派コンビは素直でよろしい!」

「鍛えてるって言ってくださいよ、会長」

 俺はサムズアップを決める。一方シャーリーは複雑そうだ。

「ルルと一緒にされるのは複雑…」

 肉体派として俺と一括りにされるのは不満らしい。確かにまだまだ彼女は鍛える余地があると分かっているのだろう。彼女の向上心の高さに俺は感心した。その後、俺の圧倒的筋肉のおかげもあって予算審査は間に合った。そして結局ウェイトリフティング部に予算は降りなかった。3回隙を見て申請したんだが…ダメだったか。

 

 生徒会のみんなとクラスに向かうと、クラスメイト達が昨日のシンジュクでの毒ガステロのニュースについて話題にしていた。シンジュクというワードで引っかかったのか、シャーリーはこちらを見ているようだ。

「シンジュク?」

「あぁ、昨日はこの件で電話したんだ。知り合いからリアルタイムで聞いてさ」

「そうなんだ」

 ブリタニア側はこのタイミングでのクロヴィスの死は隠すらしい。まぁ、混乱を避ける為だろう。

 

 俺が自分の席で…空気椅子と握力トレーニングに勤しんでいると珍しいクラスメイトが入ってきた。赤い髪の女だ。

「おや〜?ルルーシュくん、な〜に見てるのかなぁ?」

「別に。珍しいと思っただけだよ。彼女、始業式以来来てなかっただろ?」

 リヴァル曰くカレン・シュタットフェルトは体が弱いらしい。だが、そんなことは嘘だと見れば分かる。あの筋肉のつき方…どう考えても身体の弱い人間のトレーニングでつくものではない。では何故体が悪いなどという嘘を吐くのか?恐らく学校に来ない口実を作る為だろう。つまり、学校に来ないことを不思議には思われたくないということか。

「ソフィちゃん心配してたよー!」

「うん…あんまり無理はできないけどね」

 

 そして点と点が線につながった。

 

 赤いグラスゴーのパイロットは女。そして今のカレンの声…似ている…?いや、機械越しの声の記憶など当てにならないが…調べてみる価値はある。

 

 昼食時、カレンの様子を伺っていると蜂に襲われているようだ。すると蜂から逃げる為だろう、茂みへと逃げ込み、結果としてこちらに近づいて来た。カレンの近くを飛んでいる蜂を指で掴み、遠くへ放り投げる。蜂に罪は無い。

「あ、ルルーシュくんだったっけ?ありがとう…」

「"質問に答えろ"」

「…はい。」

 俺は早速ギアスを使い聞き出すことにした。

「昨日シンジュクで赤いグラスゴーに乗っていたのはお前だな?」

「はい。」

「どうしてテロを?」

「私は日本人だから、半分ブリタニアの血も入っているけれど」

 なるほど、ハーフなのか。しかしブリタニアの学生もやっていると言うことはブリタニア人という立場を使ってやれることもあるのだろう。リヴァルの話では金もあるようだしな。

「…あの?私に何か…?」

 いつもならぶん殴って意識を刈り取るところだが、学園でそれをやるわけにはいかない。だが、保険のためにもう一度ギアスを使っておくとしよう。

「いや、用は済んだよ。でも念の為に…"シンジュクのことは忘れろ"」

「シンジュク?シンジュクがどうかしたの?」

「…"教室に戻れ"」

「あなたが質問に答えてくれたらね!」

 ギアスが効かない…?まさか一人につき1回なのか…?不味いな…こうなれば不本意だが脳に大きなダメージを与えて…

「ルルー!カレンさーん!次理科準備室だよー!急がないと!」

 シャーリーに見られていたか、危ない危ない。一先ずはこの場を立ち去り解決法を考えなければ…

 因みに理科準備室までは俺のダッシュなら間に合わない距離では無いが、今日は教師に言われて大型実験器具の運び込みを依頼されてるのだ。予算を抑える為に業者に運ばせず俺に運ばせる魂胆らしい。

 

 授業後、久し振りに落ち着いた時間が取れた為、改めてギアスの性能を調べる事にした。最初はC.C.に聞けば分かるものだと思ったが、ギアスとは人によって性能が異なる為どんな性能でどんな条件かは分からないという。つまり…他にもギアスを持つ者が居るという事だろう。その事についてC.C.に尋ねてみたところ、そこまでいう義理はないと断られてしまった。

「先生、"今度の論述試験の問題、教えて下さい"よ。」

「… エディンバラの屈辱と新大陸への遷都、北南戦争についてだ。」

 どうやらギアスが消えたわけではないらしい。

「先生、"今度の論述試験の問題、教えて下さい"よ。」

「馬鹿なこと言ってないで身体だけじゃなく頭も真面目に鍛えろ。お前はやればできるんだからな。」

「はーい!」

 やはり同じ人間には二度効かないらしいようだ。他にも持続時間のテストや距離、具体的な内容などを調べる。それにしてもカレンについてはヘタを打ってしまった。なんとかしなければ。

 

 …いけない、実験に夢中になり帰るのが遅くなってしまった。

「遅くなってごめん。ただいまナナリー、咲世子さん」

「おかえりなさい、お兄様!」

 咲世子さんの用意してくれたナナリーの食事、今日はステーキ肉のようだ。肉はいいぞ!タンパク質が摂れるからな。ナナリーの分は食べやすい大きさに切り分けておこう。

「それでね、一枚の紙を何度も折ると鳥や船になるんです…あっ…」

 俺が待たせてしまったせいで話したいことが沢山溜まっていたナナリーは急いだように喋り、結果としてスープを垂らしてしまった。俺はそれを優しく拭き取ってやり、声を掛ける。

「ほらほらナナリー、そんなに焦って喋らなくても大丈夫だよ。俺はどこにも行かないから」

「はい、お兄様。でも良かった、昨日のお兄様、初めてスザクさんにあった時みたいにどこか怖かったから…」

「そうかい?ごめんよ」

 スザクと初めて会った日はナナリーを守る為には筋肉が必要だと悟ったからだろう。

「そうそう、面白い話を聞いたんです。この鳥…鶴をね、千羽折ると願いが叶うんですって!もしお兄様に叶えたい夢があるのなら…」

 ナナリーはなんと人思いの優しい子なんだろう。俺の願いを叶えようとしてくれるとは…俺はナナリーを撫でながらその優しい申し入れを断った。

「いいんだよ、俺は。それよりナナリーは?」

「うーん…優しい世界でありますように」

 ナナリーはなんと人思いの優しい子なんだろう。己の願いまで自分のことではなく世界が優しいようにとは…ナナリーを守る為に俺は必ず作らなければならない。みんながみんなに優しい世界を…その為には今のブリタニアは壊さなければならない!

「約束するよナナリー。ナナリーの目が見えるようになる頃には必ず」

「本当!?」

 ナナリーが笑ってくれた。なんと愛らしいことか!

「あぁ、約束する。俺が約束を破ったことあるかい?」

「うーん、約束は破ったことないですけどシャツはしょっちゅう破ってますよね?」

「何故それを…」

 くすくすと笑うナナリーは俺の小指と自分の小指を絡ませてきた。

「嘘ついたら針千本のーます!指切った!ふふっ!」

「針を千本も飲まなきゃ行けないのか、それは痛そうだな。」

「お兄様なら耐えられると思いますけど…だからといって破っちゃダメですよ?」

 確かに針を飲み込む程度で死ぬほど俺はやわではないが…痛いものは痛いだろう。

 

 次の日、授業中にカレンがチラチラとこちらをみている事に気がついた。

 

 さては…俺の身体の鍛え方に興味を持ったな?

 

 病弱設定のせいで大っぴらにそれが聞けないのだろう。やれやれ、仕方のない奴だ。…それか、俺の正体に気が付いたかだ。与えた情報こそシンジュクの一言だが、リスクは排除しなければならない。俺の鍛え方への興味か、正体に気づいたか、どちらにせよ二人きりで話す必要があるな。

 

 授業後、俺はカレンを呼び出した。クラスの女子は何やら騒いでいたが気にしなくて良いだろう。

 クラブハウス、ここなら二人きりで話せる…と思ったが、当てが外れた。どうやらカレンの歓迎会をやるらしい。…副会長である俺に話が来ていないのは問題ではないだろうか。

 リヴァルがシャンパンを持ち出した為、取り上げる。未成年の飲酒は肉体に悪影響を及ぼす。こんなものをみんなに含ませる訳には行かない。

 

 …あ。力み過ぎて砕けた。

 

 力み過ぎて砕けた瓶は破裂、中に入ったシャンパンは当然液体なので、持っていた俺の服がビショビショになる。まぁ、それは仕方が無い。

「会長、ちょっと着替えてきます。あとシャワーも浴びてきます」

 濡れた服を洗濯機に入れ(流石に下着は履いたまま)廊下を歩いているとC.C.と出会った。

「丁度よかった。悪いが今から…そうだな。10分後にクラブハウスのシャワールームの電話に電話をかけてくれないか?内容はこのボイスレコーダーを流すだけでいい。」

「ふん、私を顎で使うとは生意気な奴だ。まぁいい、報酬のピザは忘れるなよ」

 因みにC.Cのことは住み込みのメイドとしてナナリーとミレイ、咲世子には紹介済みである。人見知りで臆病、身寄りがないなどの設定を盛り付けなるべく人前に出ないように言いつけてある。

 

「着替え…ここに置いておけばいいかしら?」

 しばらくしてやってきたのはカレンだった。やはりな。リヴァルは恐らく瓶の破片の片付け、そうなると俺に服を持ってくる人間は女性陣に限られる。俺の部屋へと案内が出来るのは身内であるナナリーだけだ。しかし、ナナリーだけで移動させるとは考え難い。優しいナナリーの事だ。クラブハウスの案内を兼ねて慣れないカレンを連れていくだろう。ミレイは普段はあんな風だが皇族の後ろ盾、アッシュフォード家の娘であるため、俺達のプライベート空間に足を踏み入れることは無い。シャーリーは何かと俺を避ける傾向にあるし、ニーナはなんか俺を恐れているので来ることはないだろう。

 

「ナナリーちゃんに案内してもらったけど、あなたここに住んでるのね」

「あぁ、ナナリーが寮で暮らすのはちょっとな…友達はみんな仲良くしてくれるようだが」

 シャワーを止め、カーテン越しに俺とカレンは話をする。

「ところでルルーシュくん。シンジュクの件だけど…」

 その時、電話が鳴った。

「悪いけど俺今濡れてるし…電話、出てくれないかな?」

「…良いけど」

 カレンが電話を取り、何かを喋っている。

「もしもし…はい、ええ、私ですけど…なに?お前は…!停戦協定を出させたのもお前なのか!?おい!電話を切るな!」

 録音なのだから反応するはずがない。

「停戦?なんだ、随分物騒なお友達だな?」

「それは…」

 普通の生活をしていれば停戦協定などという言葉は出てこない。

「当ててやろうか?テロリストだろ?お前」

「な、何を言ってるの…?私体が弱いからそんな…」

 この期に及んでそんな嘘がまかり通ると思っているらしい。俺はカーテンを開け、カレンを睨む。

「俺の体を見ろ。」

 俺は自慢の肉体をサイドトライセップスを決め見せつける。勿論筋肉を見せつけるためだけではない。

「俺くらい身体を鍛えた人間ならな、お前の体が鍛えられ絞られたものだと言うことは服の上からでもわかる」

「ッ!」

「だからシンジュクのことは言うなと言ったんだ。迂闊に口を滑らせれば正体がバレるぞ」

「くっ!」

 カレンはポーチに仕込んだナイフで俺に攻撃を仕掛けてくるが俺は人差し指と中指で受け止め、そのまま捻って刃をへし折る。

「嘘でしょ!?」

 更に手首を掴み力を込める。カレンは痛みで握っていたポーチを離したようだ。

「お前では俺は殺せない。別にお前がテロリストだろうと構わない。俺は誰にも言うつもりはない」

「黙れ!信用できるかそんなもの!」

「ナナリーを見ただろう?目も見えず足も不自由だ。弱肉強食などと言うブリタニアでは生きて行けない。」

「それは…」

 カレンは視線を落とす。俺も握っていた手を離し、拘束を解除する。

「お前に協力する気はないが、邪魔をする気も無い。わかったらさっさと行け。あまり遅いと怪しまれるぞ。但し…ナナリーに何があればお前を捻り殺してやる。」

 カレンは俺を睨みつけた後、少し視線を落とし、急に慌てたように去っていった。…?

 

 

 

 

 

 …しまった。俺今全裸だ。

 




カレンのサービスシーンがまるまるルルーシュに差し変わる放送事故


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STAGE04 体脂肪ゼロ(その名はゼロ)

「クロヴィス殿下は拳により撲殺された…つまり犯人の身体能力はそれだけ高いと言うことになる。枢木 スザク、君は格闘術の評価が非常に高かったな?それと、調べさせてもらったよ。君は日本最後の総理大臣、その嫡子だそうだな? 動機も十分。人を殴り殺すなどと言う蛮行も日本人であるならば納得だ。」
「何かの間違いです。」
「君には親衛隊の殺害容疑も掛かっている。認めたまえ。今ならイレブンではなく、名誉ブリタニア人として裁いてもらえるぞ?」
「自分は…やっていない!!」
椅子を押し倒され、顔を蹴られるスザクだったがそんじょそこらの蹴り如きが堪えるスザクではない。
「何かの間違いです!自分はやっていない!!」
数時間掛けてボコボコにしてようやく黙ったらしい。

と言うわけで本編スタートです。



 シャワーを終え、廊下を歩いていると、ナナリーの車椅子を押すカレンとナナリーを見かけた。

「生徒会と言っても、大したことは無いみたいですよ?たまに書類仕事が…この前も部活の予算審査を期限前日に思い出したみたいで」

「なにそれ、大丈夫なの?」

「いつもお兄様が気合いでなんとかしてくださいます。ふふふ」

「そうなんだ、なんかわかるかも」

 どうやら俺の脅しを恐れたか…あまりにも愛らしく傷付けるなど恐れ多い可愛らしいナナリーを前に手を出すのは諦めたのか、あるいは両方か。二人は仲良く雑談をしているようだ。俺としてもナナリーの友好関係を邪魔したくはない。俺がシャワー室にいる間、C.C.に密かに見張らせていたが問題はなかったようだ。C.C.はアレでいて実はかなり能力が高い。格闘術もそれなりに出来るし、ナイトメアの操縦についても飲み込みが早いのだ。しかも料理もできる(但し余りブリタニア圏の料理では無いものが殆どだが)頼めばナナリーの世話もそつなくこなし、ナナリーもC.C.の事は気に入ってくれたようだ。咲世子さんからの評価も高い。

 二人と合流したのち、会長の趣味であるお祭りのことを話す。

「男女逆転パーティーの時なんてお兄様の格好すごかったみたいですよ!私は残念ながら見れませんでしたが…」

「みんなが女装した俺を見て『お前のような女がいるか』だもんな。結構自信あったんだが」

「…その身体でよくそんなことがのたまえるわね…」

 一見カレンの反応は普通のようだが、念の為釘を刺しておこう。

「カレン、バスルームでのことは誰にも言うなよ」

「えっ?」

「なんのことですか…?」

「カレンが入ってきた時、たまたまカーテンが開いてたさ、それで、な?」

「言わないわよ!当然でしょ!」

 そんなやりとりをしつつ、みんなの元に戻るとニュースを見ているようだった。

「ルルーシュ!ビッグニュースだぜ!」

 珍しくリヴァルがニュースの内容に興味を持ったらしい。

「クロヴィス殿下が亡くなられたのよ。何者かに殺されたって…」

「ナンダッテ!?」

「えぇ!?」

 俺が殴り殺したのだからそこに驚きはない。

『たった今、新しい情報が入りました。実行犯と見られる男が拘束されました。発表によりますと、逮捕されたのは名誉ブリタニア人です』

 ん?犯人が捕まった?そんな馬鹿な話があるか。犯人は俺だ。そして名誉ブリタニア人………?まさか!

『枢木スザク一等兵。容疑者は元イレブン、名誉ブリタニア人の枢木スザクです!』

 

 

 ナナリーは悲しそうな顔で今日のニュースについて話しかけてきた。

「ねぇ、スザクさんですよね。さっきのニュース…」

「あぁ、スザク、生きてたんだな。」

 片手で抱いたまま、空いた手で何度も頭を撫でる。

「戦争の後お別れしちゃったままでしたから…お兄様、嘘ですよね…ニュース…」

「あぁ、嘘だよ。あのスザクがそんなことをするはずがない。何かの間違いだよ。」

 なんとかスザクを助けなければ。しかしどうやって…?ナナリーを寝かしつけた後、眠れない俺は片手指立てをしながら必死に頭を回転させる…こうなれば俺が真犯人だと名乗り出るしかない…!

 

 ギアスをかけた店長に俺はさまざまなものを用意させた。

「ああ、全て注文どおりのはずだ。こっちの世界では超一流って奴がやってるし、スライドシステムも確認済み。あとは、証拠を全て消して私が忘れてしまえばいいんだよな?」

 これで俺自身の用意は整った。あとは人手だ。

 

 ニュースの時、ジェレミアと言う男がクロヴィスの死について語っていたことから。シャーリーから純血派について質問された。

「ブリタニア軍は、ブリタニア人だけで構成するべきだって連中だよ」

 つまりクロヴィスの死を利用してスザクを処刑し、そのままブリタニア軍から名誉ブリタニア人を排除、軍内での地位を上げるのが目的か。なかなか頭がキレるらしい。だが血統などに縛られる奴は大概そこが弱点だ。生まれなどにこだわる奴ほど少しの疑念で崩壊するのが関の山、さてどうしたものか。

 

 授業がなくなった事を幸いに俺を賭けチェスに連れ出そうとしたリヴァルを撒き、俺は呼び出したカレンと接触するために動いていた。C.C.に携帯電話を持たせ、落とし物センターに届けさせる。キーホルダーには態々カレン シュタットフェルトの名前を書いてな。C.C.からカレンが電話を受け取ったと言う連絡を受け、続けてカレンの持つ携帯電話に電話をかける。

「ゲットー近くのスクラップ置き場に来い。お友達も一緒だ。」

 

 スクラップ置き場にて佇む俺に背後から声がかけられた。

「お前…なのか?」

 その声はカレンのものだろう。俺は勢いよく振り返り、カレン達を見る。

「私の名は、ゼロ」

「ゼロ…?シンジュクのあの声はお前が?停戦命令もお前がやったのか?答えろ!」

「全て私だ。そしてわかっただろう?お前達のテロでは奴らに勝てない。だから私がブリタニアとの戦争に手をかそう。」

 カレンの他には男が3人…この程度なら仮に襲われても返り討ちにできるな。

「戦争だって!?」

「ふざけるな!軽々しく戦争だなんて!口でならなんとでも言える!顔も見せられないようなやつの言葉が信用できるか!」

「そうだ!仮面を取れ!」

 ここまでは想定内だ。だから俺はスクラップを一つ拾い上げ、彼らに見せつける。

「なんの真似だ?」

「私が見せるのは顔ではない、力だ。力を見せれば…フンッ!!」

 両手でスクラップをペシャンコに押し潰す。

「…少しは信用できるだろう?」

「……それくらい鍛えれば誰にだって出来る!それくらいの事で戦争が出来るか!」

 カレンが食い下がるが、それもまた想定内だ。

「鍛えれば誰にだって出来る…確かにそうだろう。だが、現実はどうだ?誰にでも出来ることが出来る人間というのは意外にも少ない。何故か?やりきるだけの強い覚悟がないからだ!俺はブリタニアを打倒する、そのためにこの身体を手に入れた!」

「マジかよ…アイツ」

「あんな身体を手に入れるなんて他の誰に出来る…?日本解放戦線にだって無理だ、少なくとも俺にはできない…!」

 そして俺はスクラップ置き場から廃車とあるものを引き摺り出し、写真を2枚見せる。

「これはクロヴィスの御料車だ。そしてもう一枚は君たちもご存じの毒ガスのカプセルだ。これを明日までに作れ。形だけそう見えれば良い。私の力は腕力だけではない、奇跡を見せてやろう。あの枢木 スザクを救い出す。そうすればお前達も私のことをより認めざるを得ないだろう?」

「…わかった。協力する。」

「…俺たちもだ。ハリボテを作るくらいなら捕まるリスクはないし…」

 そして救出作戦にはカレンと扇という男を採用し、C.C.にも極秘裏の協力者として参加させ、スザク救出作戦は始まった。

 

「出てこい!殿下の御料車を汚す不届き者め!」

 出てこいと言われたタイミングで車の前掛けを燃やし、俺の姿が露わになる。

「私は…ゼロ!」

「もう良いだろうゼロ!君のショータイムはおしまいだ!その仮面を外してもらおう!」

 俺は仮面を外す…フリをして車の荷台をこじ開ける。

「なっ!?それは!」

 そう、中を見ていないジェレミアはこれは毒ガスのカプセルと考えるだろう。

「私を撃ってみるか?だがその時は覚悟しておけ、私の拳がお前をブツぞ。」

 俺が右拳を振り上げる。

「…わかった。要求は?」

「交換だ!コイツと、枢木 スザクを」

「笑止!こやつはクロヴィス殿下を殺めた大逆の徒!引き渡せるはずがない!」

 俺はカレンに合図を出し、車を進めさせる。

「いいや、違うな!間違っているぞ!クロヴィスを殴り殺したのは…この私だ!!」

 俺はダブルバイセップス・フロントを決め、筋肉を隆起させる。この筋肉を見れば人を殴り殺すなどと容易いと誰にでもわかるだろう。

「殿下の死因はトップシークレットのはず…!まさか貴様が…!?」

「イレブン一匹で尊いブリタニア人の命が大勢救えるんだ。悪くない取引だと思うがな。それともその細い腕で私を止めようと?」

 ジェレミアは俺に銃を向け発砲するが、この距離だ。弾丸の軌跡さえ読んでいれば掴み取ることなど造作もない。

「こ、こやつは狂っている!殿下の御料車を偽装し愚弄した罪、贖うがいい」

「良いのか?公表するぞ。オレンジを。私が死んだら公開されることになっている。そうされたくなければ…」

 ジェレミアは突然のことに困惑し、なおも発砲するが前述の通りこの距離ならば単発の銃の弾丸を掴むことは可能だ。

「何のことだ? 何を言っている?というかなんで弾丸が掴める!?」

「"私達を全力で見逃せ。そっちの男もだ"!」

 俺はジェレミアにギアスをかける。

「…いいだろう、くれてやれ!」

 こうして俺はスザクを解放することに成功した。

「君はル…うう!」

 言葉を発すると電気が流れる仕組みのようだ。俺はスザクとカレンを両脇に抱えて走り出す。

『逃すか!』

 俺がスイッチを押すとハリボテのカプセルから勢いよく煙が噴出される。更にC.C.が上手くやったようだ。ブリタニア人は毒ガスだ、死にたくないと走り回り混乱を作り上げることに成功する。そのまま道路を飛び降りる。

「私に捕まっていろ!」

「言われなくてもそうします!」

 カレンを抱える手を離し、ビルに指を突き立てる。指の力で壁から落ちる速度を緩和してから扇の出すクッションに着地する。その後は混乱に乗じて追っ手を撒いた…一部の歩兵には追いつかれたのでブン殴り黙らせたがな。

「手荒い真似を受けたようだな。」

 俺はスザクの首についた機械を引きちぎり投げ捨てる。

「枢木一等兵、ブリタニアは腐っている。君が世界を変えたいなら私の仲間になってくれないか?」

「それはできないよ、ルルーシュ」

 ん…?今コイツなんて言った?

「クロヴィス殿下が殴り殺されたって聞いて真っ先に君の名が浮かんだよ。ナナリーを守るために鍛えた身体でまさか人を殺すなんて…」

 どうやらバレてしまっていたようだ。

「…そうか、あの動きのいい取り逃がしたサザーランドは君だったのか。道理で…」

 どうやらシンジュクでのこともバレたらしい。

「考え直せスザク。ブリタニアはお前が仕える価値のない国だ。」

「なら僕は価値のある国に変えるよ。ブリタニアの内側から」

 こうなったスザクは頑固だ。ここはスザクの自由にさせる他ないだろう。

「本当は君を逮捕したいけど、今殴り合えば返り討ちにだろうからね。僕は行くよ。あと1時間で軍事法廷が始まるからね。」

「ば、馬鹿か、お前は! あの法廷はお前を犯人にするために仕組まれている。検察官も、判事も、弁護人も!俺がなんのためにお前を助け出したと思ってる!」

 俺はスザクの胸倉を掴む。…仲間にならないならまだしも死にに行かれるなどたまったものではない。

「それでも、それがルールだ。僕が行かないと、イレブンや名誉ブリタニア人に対して弾圧が始まる」

 スザクは俺の腕を無理やり引き剥が…そうとするがそれは叶わず、代わりに胸の部分の服を引き千切ったことで俺から逃れ、去っていく。しかし、スザクは何かを思い出したように立ち止まりこちらを振り返った。

「ルルーシュ、ありがとう…助けてくれて。嬉しかったよ…」

 

 俺は呆然と立ちすくむが、ふとジェレミアの発言を思い出した。「殿下の死因はトップシークレット」…疑念のあるジェレミアが半ば無理矢理でっちあげたスザクよりも、殴り殺したと発言した俺の方が真犯人としては都合が良いのでは無いだろうか?軍内部から皇族殺しが出るよりも外部犯の方が都合だって良いはずだ。そもそも、クロヴィスに残された打撲跡を調べればスザクの拳ではないことくらい分かるはずだ。…もしかしたらスザクは生き残るのではないかという希望を胸に俺は帰路についた。

 




流石は昔の友人スザク、あっさりとゼロがルルーシュだと見破ってしまいましたね!
まぁ、他にルルーシュがゼロだと解る人なんていないよね!はっはっは!


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STAGE05

第二皇女コーネリアの駆るグロースターによってとある中東の国家は陥落した。
「これでおちたな。エリア18の成立か」
「姫様、次の行動計画ですが…」
「すまぬ、愚弟の後始末につきあわせる」
「いえ。我ら、姫様のおられるところが国でございますれば」
「エリア11は一筋縄ではいかんぞ」
「承知しております」
「殴り飛ばしてやる、ゼロ。クロヴィスの仇…!」

それでは本編スタートです。


「ただいま」

「おかえり、ルルーシュ」

「おかえりなさい、お兄様」

 スザクを救い出し、再び法廷へと歩いていくスザクを見送った日、俺は夕飯を済ませてから帰宅した。

「その様子だと食事は外で済ませてきたようだな。」

「あぁ。」

「心配したんですよ?ゼロという人の騒ぎに巻き込まれたんじゃないかって。電話しても繋がらないし」

 食事を済ませてから帰ったのはC.C.と帰宅時間をズラす為だ。電話に出なかったのは失態だったな。それにしてもスザク、本当に無事だろうか。俺の希望はあくまで俺の想像に尽きない…もしもスザクが…

 

 しまった。力み過ぎてティーカップを砕いてしまった。

 

「あぁ、何をやってるルルーシュ。濡れてしまってるじゃないか。ほら、さっさと洗面所に行ってこい。着替えは自分で出せ。後片付けはしておいてやる」

 俺はC.C.に後片付けを任せ、先に部屋に帰った。C.C.にはナナリーを寝かし付けるのも任せてしまった。こんな力加減ではか弱いナナリーの肋骨を折りかねない。

 

「…済まなかったなC.C.」

「全くだ。私はお前の部下でもなければ召使でもないのだぞ」

 そう、俺とC.C.は契約者。初めはただの居候を画策したようだが、働かざる者食うべからずとして力ずくで追い払ったところ今の雇用状態に落ち着いた。基本的には3食昼寝付きなのだから文句を言われる筋合いはない。

「そんなに助けたスザクとかいう男が心配か?お前ほどではないが…あいつもなかなか逞しい体をしていたじゃないか。」

「どんなに鍛えようとピストルならともかく大口径の銃器で撃たれれば死ぬさ。処刑ってのはそういうことだ。」

 絞首くらいなら鍛えられた首の筋肉により対処可能だが、筋肉の守りを貫く銃器で撃たれれば流石に抵抗のしようがない。

「ところで、オレンジとは結局なんなのだったのだ?」

「でまかせだよ。血統に拘る奴らほど多少の疑念で瓦解するものだ」

 その日は結局まともに筋トレもできないまま眠ってしまった。

 

 

 

 僕の名前は枢木 スザク。ある日古い友人のルルーシュと再会できたと思ったら銃で撃たれ気絶し、その後ランスロットに乗ってテロの鎮圧をしていた。その時に出会った手強いサザーランドがルルーシュだったのは驚きだったけれど…それよりも困惑したのはクロヴィス殿下の殺害だ。殴り殺されてしまった殿下は僕が殺したということになり、今僕はその裁判を受けている。ルルーシュが言う通りこの裁判は全て仕組まれたものなのだろう。それでも構わない。ここで僕が逃げてしまっては弾圧が起こるだけ、僕の安い命でみんなが助かるなら…そうだ、これは僕への罰なんだ。

「枢木スザク一等兵。第11方面軍域。重要107号。クロヴィス殿下殺害容疑については、証拠不十分につき釈放とする」

 僕に下された判決は証拠不十分による釈放。ルルーシュ…ゼロのことはたんまり調べられたが、命を張って助けてくれた友人をおいそれと売ってしまうほど僕は非情にはなりきれなかった。これが間違ったことだとはわかっているけれど…

「どいてくださーい!あぶなーい!」

 僕の上方から女性の声がする。屋外で?上から?ふと顔を見上げれば綺麗な女の人がこちらへと近づいてきていた。

 

 うん、別の言い方をすればそれは落下という。

 

 僕は女性を受け止め、膝肩腰股関節膝をクッションのように曲げ、落下の衝撃を受け流す。

「あの、怪我とかしてませんか?」

「ごめんなさい。下に人がいるとは思わなくて」

「まさか僕も人が上から落ちてくるとは思わなかったですよ。」

 抱えたままだった女性を下ろして荷物を拾う。

「あら?」

「?どうかしたんですか?」

「はい!どうかしたんです!」

 ははーん、さてはこの人天然だな?

「実は私、悪い人に追われていて…」

「なんだって!?それはいけない!すぐに立ち去りましょう!」

 女の人が悪い人に追われていると聞けばこんなゆっくりはしていられない。すぐさま荷物と女性を担ぎ、ダッシュでその場から立ち去る。

 

 暫く走り、距離を置いてから僕は女性を再び下ろす。

「足、とっても早いんですね!あ!自己紹介がまだでしたね、私は…ユフィ」

「ユフィ?僕は枢木 スザクです。」

 女性は僕の名前を聞き終える前に猫に対して何やらニャーニャーと言っていた。どうやらこの人の中で僕の名前なんてものはその辺の猫よりも価値が低いらしい。これが僕への罰か…!

 それにしてもユフィと猫の戯れを見ていると中々人懐っこい猫のようだ。僕も猫は好きなので手を出してみる。ははは、いきなり手にキスをしてくるなんて中々愛らしい猫だな。

「スザクさん?手、噛まれてますよ?ねぇ?聞いてます?」

 

 猫は怪我をしていたらしく、近くの店で手当てができるだけの道具を購入する。ユフィ曰く僕は猫に噛まれていたらしい。噛み跡(?)には唾付けときゃ治るよと説明したのだが、不衛生との事で消毒と絆創膏の処置が取られた。包帯を巻かれた猫はどこかへと走り去ってしまう。もう少し戯れたかったけれど仕方がない。気まぐれなのも猫の可愛らしいところだ。

「ねぇ、スザクさん。もう少し私に付き合って下さいな。」

「勿論」

 ロイドさん達を待たせてしまっているが、この女性を追う悪い人の問題も残っている。守るためにも僕がそばにいるべきだろう。

 

 僕とユフィは暫くウィンドウショッピングなどを楽しんだ。

「スザクさん。もう一箇所だけ案内をお願いしてもいいですか?」

「えぇ、何なりと」

「ではシンジュクに。私にシンジュクを見せてください草薙 スザクさん。」

「枢木です。」

 やはりまともに名前を聞いてもらえていなかったらしい。これが僕への罰か…!

 

 僕らがシンジュクにたどり着くと学生二人が日ほ…イレブンに絡まれているところに遭遇した。

「出てけよ!ブリタニアの豚ども!」

 彼には人間が豚に見えているらしい。何か深刻な病に違いない。

「な、なんだよ…!イレブンの癖に!」

「日本人だ!イレブンなんて呼ぶな!このブリキ野郎!」

 重病の彼は学生を殴ろうとしていた。病が苦しいのは同情するが暴力は良くない!

「やめてください!暴力は!」

「邪魔すんなよ!」

 難病の彼は僕の方に走ってきて拳を突き出してきた。どうやら殴り合いをご所望らしい。

「そっちがその気なら!」

 僕は彼の拳を甘んじて受けつつ、渾身の一振りを腹にブチ込む。彼の拳は僕への罰、僕の拳は彼への罰だ。彼は気絶したようで、彼の付き添いの人が引き摺って行った。

「スザクさん、大丈夫ですか?」

「ええ、平気です。」

「大丈夫じゃないよ!僕のカメラが…」

「遅いんだよ!名誉の癖に…」

 遅い?この僕が?やはり日ほ…イレブンの僕とブリタニア人では身体能力に差があるらしい。

「僕が遅いと言うのなら速さで勝負してください」

「「「え?」」」

 僕はルルーシュに勝ちきれない、それは僕が遅いからに違いない!もっと早さを磨くため、目の前の彼らに追いつけるような速さで拳を突き出す!修行を積めばきっとルルーシュにも勝てるはずだ!そう思って突きだした拳は学生の顔面を捉え、彼は意識を失った。きっと僕の速さが上がったからだろう。もう一人の学生は助けてくれとどこかへと走り去ってしまった。

 

 ので、僕は彼に走って追いつき、背後からドロップキックをお見舞いする。これで僕の速さが証明できたはずだ。

「スザクさんってお強いんですね!」

 ユフィは手を叩いているが、僕の強さなどまだまだだ。もっと鍛えなければ。そう思っていると爆発音聞こえる。

「おーいスザクくん!ここは危険よ!」

 突如現れたのはセシルさん。僕の上司みたいな人だ。彼女の手料理は独特なセンスに溢れており……………うん、独特だ。可能なら2度と食いたくはない。

「何があったんです?」

「純血派の内ゲバだよ。ナイトメアでどんぱちやってんの」

 ナイトメアでどんぱちだって!?これは僕の速さを磨くためのチャンスだ。

「待ってください!ランスロットのデータを取るチャンスではないでしょうか!」

 こうして僕はランスロットに乗り、純血派の内ゲバに介入した。誰が敵で誰が味方かわからなかったので全員を平等にボコボコにした。途中で誰かか乱入してきたけれど、御構い無しさ。

『くそ…!イレブンに負けたまま終われるか!ケイオス爆雷を使う!』

 悪あがきのケイオス爆雷を起動する前に蹴りで打ち返す。

「おやめなさい!」

 ユフィが走って現れたので僕は手を止めた。

「私、ユーフェミア・リ・ブリタニアの名の下に命じさせていただきます!双方とも、剣を抑え…な………あれ?」

 双方とも剣を抑えるどころか全員僕がボコボコにしてしまっている。ユフィ…じゃなかった、ユーフェミア皇女殿下はちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめている。…可愛い。

 

 

 

 昼休みのこと、俺が学園の中庭でベンチを持ち上げてスクワットをしているとカレンがやってきた。

「ルルーシュくん、今いいかしら」

「あぁ、この程度の負荷で会話が出来なくなるほど俺の身体は貧弱ではない。」

「あなたよね?ゼロって」

 …何故バレた?スザクのように情報は出していないはずだが…

「あなた自分の体よく見た方がいいわよ。あんな逆三角形ボディ早々いてたまるもんですか。」

 なんてことだ。ではこの前のバスルームでの工作はなんだったというのか。

「何が俺は協力もしなければ邪魔もしないよ。ガッツリ当事者じゃない」

 冷静さを欠いたのだろう。俺はベンチを投げ捨て、カレンの胸倉を掴んでしまう。

「…誰にも言うな。ナナリーにもだぞ」

「分かってるわよ…!私達にしてもあんたの力は必要だし…」

 

 そして次の日、大変なことが起こった。

「本日付けを持ちましてこのアッシュフォード学園に入学することになりました。枢木 スザクです。よろしくお願いします。」

 スザクが学校に入学してきたのだ。




はい、体格のせいで秒でゼロとバレルルーシュでした。
一応言い訳ですが、ルルーシュとゼロの双方を近くで生で見ないと流石に確信が持てないと言うことにさせてください。

スザクですが、原作より天然+脳筋要素が増されています。

7/29追加
●オマケ NGシーン●※化物語ネタ

「クルルルギさん」
「ユフィ、ルが一つ多いよ。僕の名前は枢木です。」
「ごめんなさい、噛んじゃいました」

「クルルルルギさん」
「ユフィ、今度はルが二つ多いよ。僕の名前は枢木です。」
「あら、私ったら噛んじゃったみたい。ごめんなさい」
「わざとでしょ?」
「かみまみた!」
「わざとじゃない!?」

「クルギさん」
「それだとルがひとつ少ないからね」
「ごめんなさい、噛んじゃいました」

「ルルルギさん」
「ユフィ、僕の名前を黒い椎茸みたいな髪型の人の部屋のBGMみたいに歌い上げるのはやめてくれないかな。僕の名前は枢木だよ。」
「ごめんなさい、噛んじゃいました」
「わざとでしょ?」
「かみまみた」
「くっ…もしかしてわざとじゃない!?」

「ウツリギさん」
「ユフィ、僕をシャーリー、カレン、ナナリー、ユフィとペアリングのある最低浮気野郎みたいにいうのはやめてほしい。僕の名前は枢木だ。」
「ごめんなさい、噛んじゃいました」
「違う、わざとだよ」
「かみまみた」
「わざとじゃないのか!?」
「神を殺す!」
「どんな悲劇体験を!?」


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STAGE06

猫VS脳筋ルルーシュ 勝負になるかこれ?

というわけで今回は原作崩壊がより酷い回です。


 クラスのみんなはスザクの登場に困惑しているようだ。当然だろう、つい先日クロヴィス総督の殺害容疑者だった男が突然やってきたのだから。

「怖がってるだけじゃダメよ。話してみればどんな人か…」

 こんな時もシャーリーは恐れず突っ込んでいく。勇敢過ぎるが危険に自ら突っ込むのはお勧めできない。どうやらシャーリーのことはリヴァルが止めてくれたらしい。俺は教室を出る時一瞬立ち止まり、あるサインを行う。スザクは気付いてくれたようだ。

 

「七年ぶりに使ったよ。このサイン」

 俺は一方の手首を他方の手でつかみ腕および胸に力を込めて際立たせる姿勢を取った。

「『屋根裏部屋で話そう』」

 昔、スザクの元で世話になっていた時の合図だ。

「軍事法廷はどうなったんだ?まさか俺のこと…」

 スザクが無事だったことは喜ばしいが、恐ろしいのはゼロの正体のことだ。

「捜査を正しく行うように取り計らってくれた人がいたんだ。それに…君が殿下を殴り殺したのが自分だと名乗ったからね、証拠不十分さ。それに君の事は何も言ってないよ。その…助けてくれた友達を売るのは…流石にできなかったんだ」

「そうか…」

 一安心だが、いつまでも黙ってくれているとは限らない。これからも気をつけなければ。

「そういえばルルーシュの事はルルーシュって呼んでいいの?」

「記録上俺とナナリーは死んだ事になってる。ルルーシュ ランペルージ…それが今の名だ。」

 スザクは基本的に俺達をルルーシュ、ナナリーと呼ぶのでいかにスザクが天然でも問題はない。

「そういえばカプセルの子は?」

「…軍の方がわかるんじゃないのか?」

 C.C.の事も正直に言うべきか迷うところだ。

「それが親衛隊しか知らないみたいで。その親衛隊もみんな本国に送られちゃったし」

「…あいつなら今ウチで住み込みのメイドをしてるよ。結局狭い家の中に押し込めてしまってるが、カプセルよりはマシだろう?」

「そっか、元気に過ごしてるならよかったよ。」

 お人好しのスザクならこれ以上追求はしないだろう。後でバレるよりここで話しておくほうが話がこじらずに済む。

 しかしスザクが生きていると言うこの事実、なによりもナナリーが喜びそうだ。俺はスザクに今日の予定を聞き、空いていると知るとスザクとナナリーを合わせる話を持ち出した。スザクはとてもいいアイデアだと言ってくれ、早速今日の夜に家に招くこととなった。

 

「おかえりナナリー、C.C.今日はナナリーにプレゼントがあるんだ。」

「まぁ!なにかしら?」

 俺はC.C.に対し黙れのジェスチャーをし、スザクを招き寄せる。そしてナナリーの手を取り、スザクの胸板に当てる。

「この胸板…良かった!やっぱり無事だったんですね…」

「久しぶりだね、ナナリー」

 スザクがこの学園に通うことになったことを伝えるとナナリーはとても喜んでくれた。しかしスザクが軍の仕事があると言うとナナリーは心配そうな顔をする。軍…俺は今後スザクと闘わなければならないと言うことだ。

 

 暫く会話を楽しんだ後、スザクがそろそろ帰ると言い出した。送っていく時、スザクは信じられないことを言う。

「ルルーシュ、僕ら学校では他人でいよう。」

「なんでだ?」

「どう説明するんだ?ブリタニア人と名誉ブリタニア人が友達だなんて、下手をすればバレてしまう」

 スザクはどうやら俺を甘く見ているらしい。俺とスザクが仲良くしても不思議でないように俺はスザクが転校してきてからあらかじめプランを練っておいたのだ。

「安心しろスザク策は講じてある」

「本当かい?」

「当たり前だろう。俺とスザク、2人でできないことなんてないだろ?」

 

 

 

「大変だ会長!」

「どうしたのリヴァルそんなに慌てて」

「喧嘩だよ喧嘩!ルルーシュのやつが転校生に喧嘩をふっかけたんだ!

 

 学園の中庭にて、俺はスザクと対峙していた。

「俺の名はルルーシュ ランペルージ。お前スザクとか言ったな?名誉ブリタニア人の癖にブリタニアの学校なんかに来るなよな。」

 俺の作戦はこうだ。まず俺が難癖でスザクに喧嘩をふっかける。そして俺とスザクが喧嘩をし、いい感じのところで引き分けということで止める。男と言うものは一度拳を交えれて強さを認めれば友情が芽生えるものだ。

「この学園に名誉ブリタニア人が通ってはいけないなんてルールは無いはずだ!それに僕はお世話になった人に17歳なら学校に通うべきと言ってもらったんだ!君に指図される謂れはないよ!」

 先制攻撃は俺から。まずは周りからも分かりやすい右の大振りだ。スザクは上手く受け流し、カウンターを放ってくる。素早いバックステップでカウンターを躱すと、スザクお得意の回転クルクルローリング回し蹴りが飛んでくる。俺は敢えてそれをくらい、大袈裟に背後へと跳ぶ。

「あのルルーシュが先に一撃を喰らうなんて…!」

「イレブンに負けるなルルーシュ!」

「いいぞー!やっちまえー!」

 周りの学生の前で拳を交えれば嫌でもスザクの力を認めざるを得ない。俺の作戦は完璧だ。

「その程度かい?」

 スザクの挑発を受け、俺はクラウチングスタートの姿勢から指と両脚バネを使い一気に距離を詰める。

「速いッ!」

 スザクの腹部に膝をブチ込む。

「決まった!ルルーシュの彗星蹴りだ!」

「ルルーシュのあの技を受けて病院から出られた奴はいない…」

 ギャラリーが沸いている。いい流れのようだ。

「さぁさぁ本日突然始まった学園中庭ガチファイト!勝利するのは一体どちらか!一口300円※から受け付けております!」

「10分でルルーシュに3口!」

「俺は5分でルルーシュに5口だ!」

 リヴァルの奴、こんな時に賭け事を始めたぞ。中々目敏い。そんな風に意識をスザクから外した時だった。スザクの手刀に一瞬反応が遅れ、躱しきれなかった俺は腕に手刀を受けてしまう。制服は破れ、皮膚少し切れているようだ。

「やるな…おまえ」

「そっちこそ」

「あの転校生、ルルーシュの彗星蹴りを食らってもまだ戦えるのか…!?」

「すげえなイレブンのくせに!」

 俺とスザクの攻防は30分に及んだ。力では俺が勝るが、スピードでは僅かにスザクが勝る。手数を捌き切れなかった俺は全身に切り傷が、対するスザクは至るところが内出血している。だが、そろそろ頃合いだ…次で決める!

「スザァク!!!」

「ルルーシュ!!!」

 俺とスザクは同時に駆け出し、振りかぶった右手を振り抜く。いかん、マジになりすぎた。俺はスザクの拳を頬に受け…スザクもまた俺の拳を頬に受け…気絶した。

「嘘だろ!?ダブルノックダウン…!?」

 

「スザクさん、お兄様、喧嘩はめっ!ですよ」

「「はい…」」

 暫くして目覚めた俺とスザクはナナリーに説教された。しかし、学園のみんなにスザクの力が認められたのか、周りに人が集まっていた。

「やるわね転校生!あのルルーシュと引き分けなんて」

「会長!何言ってるんですか!喧嘩なんて良くないですよ!」

「俺生徒会のリヴァル!君にいいバイトがあるんだけど…」

 真っ先に声をかけたのは面白がったミレイ会長だ。俺の計算通りである。

「会長、スザクをウェイトリフティング部に…」

「却下よ」

 なん…だと…!?この流れならウェイトリフティング部の部員を増やせると思ったのだが…

「スザク君は生徒会に入れます!」

「生徒会に?何故です!ウェイトリフティング部の方が…」

 ここで引き下がるわけにはいかない。ミレイ会長のペースに乗らないように注意しつつ話を進める。

「転校して早々に喧嘩する不良生徒を見張るためよ。それにウェイトリフティング部ってルルーシュしか在籍してない非公式の部活じゃない。」

 ダメだ。論破された。

 

 因みにスザクは生徒会とウェイトリフティング部(非公式)の兼任となった。

 

 危惧していたスザクへの嫌がらせは起きなかった。当たり前だろう、スザクのあの圧倒的力を目の当たりにすれば報復が怖くて嫌がらせをするような小者は手を出せない。

「よし、完成だ。」

「なんだそれは?」

 C.C.に聞かれたのはゼロとしての衣装を隠すためのケース。

「ギアスと違ってこれは物的証拠になるからな。」

 ケースを二重にしてヘルメットなどを隠しているのだ。ちなみに仕組みは俺ほどの筋力で無ければ開けられないというシンプルなもの。完璧である。

 

 その後、猫がゼロのヘルメットを被って現れるというアクシデントに見舞われたが10秒ほどで回収できた。因みにナナリーは猫が気に入ったようで生徒会で飼うことになった。

「あ、その猫…」

 どうやらスザクと顔馴染みらしい。試しに猫をスザクに近付けると…

 

 おやおや、いきなりキスとはスザクの奴中々懐かれてるじゃないか。

 

 ナナリーによって猫はアーサーと名付けられた。アーサーは人懐こくよくナナリーの膝の上にいる光景を見る。

「ふふっ、アーサーは私の膝の上がお気に入りなんですね」

「にゃー」

 ナナリーも膝の上にいるアーサーを撫でて喜んでいる様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …アーサー、正直そこを代わってほしい。

 

 

 

 

 

 




※日本円に自動翻訳

因みに脳筋に毒された世界なので「サイドトライセップス」と呼ばれるポーズが「屋根裏部屋で話そう」のサインになっています。

これは余談ですがボロボロになって殴りあうルルーシュとスザクを見て一部の女子は何かに目覚めたとか目覚めてないとか…


原作通りにしようとしてしまうとフィジカルマシマシなルルーシュが速攻で猫に追いついてしまい、スザクが認められるイベントがスキップされてしまうんですよね。


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STAGE07 コーネリアをぶて(コーネリアを撃て)

「ねぇカレン…大事なこと聞いても良いかな」
「ん?何?」
「カレン、何か隠し事してない?私達に…」
「なんの話…?」
「私この前見ちゃったの。」
 カレンはポーチに仕組んだナイフを取り出そうとするが、刃物が折れたままであることを思い出し拳を握るに留めた。
「付き合ってるんでしょ!?ルルと!」
「ルル?」
「だってこの前中庭で…」
「違う違う!あれは向こうが胸倉を掴んで…」
「ルルが胸を掴んだ!?」
「変な想像ストップ!」

今気がついたんですけど、C.C.じゃゼロの替え玉出来なくね…?

それでは本編スタートです。


 新しく総督としてやってきたコーネリアがサイタマゲットーでの包囲作戦をわざわざニュースで報道させていた。しかもご丁寧に時間まで報道している。十中八九誘いの罠だろう。しかし、俺にはこの"力"がある。コーネリアを倒し、母の死の真相を掴まなくてはならない。

「乗るつもりか?敵の挑発に」

「態々招待されたんだ。それにコーネリアには聞きたいことがあるからな。」

 しかしC.C.は納得しないようで、ドアの前に立ち塞がり、どこに隠していたのかわからないが、ショットガンを取り出した。

「行くなルルーシュ。お前に死なれては困る」

「言ってることとやってる事がおかしいんじゃないか?」

「片足を吹っ飛ばすだけだ。お前の場合、死にはしないだろう」

 …そうか、こいつ自身に特別な力…ギアスのようなものは無いらしい。

「お前、ギアスは使えないんだな。まぁ、予想はしていたがな。」

 俺は肩をほぐす。C.C.は俺の行動の意味を悟ったようでショットガンを構える。

「言い忘れていたが私は不老不死でな、殺しは脅しにならないんだよ。」

「その割には震えているぞ?いかに不老不死と言えど殴られるのは嫌なようだな。」

「お前に殴られるのが怖くない人間なんていないだろうよ」

「なんだ、お前は人間だったのか」

 だが俺の狙いは実際にC.C.を殴ることでは無い。今の肩をほぐす動きで服の中に隠しておいた弾丸を掌に収める事こそが本命だ。親指を弾く勢いで弾丸を飛ばし、C.C.の手に命中させ、ショットガンを叩き落とさせることに成功する。

「チッ…この肉ダルマめ!」

 拘束着からピストルを取り出し、すぐさま発砲するC.C.だが、全身の筋肉を力ませる事で弾丸を弾く。そのままラリアットをC.C.に食らわせ、流れるようにヘッドロックに繋げる。

「このままお前の意識が飛ぶまで締め固めても良いが?」

「ち…分かった、好きにしろ。思い切りラリアットなんぞかましよって…首の骨が折れるかと思ったぞ」

 手加減したつもりだが…手加減が足りなかったようだ。兎も角納得してくれたC.C.を部屋に残し俺はサイタマへと向かった。

 

 道中、サイタマのテロリストグループと見られる男をふん捕まえ、ギアスと通信機を用いてテロリストグループとの接触を図った。これで協力する気が無いのなら見捨てる他無いが…テロリストの返事を待つ間にまずはサザーランドを手に入れるために動くとしよう。

『どこの所属だ?それにその身体…腕にスタントンファーでも付けてんのかい?部隊名とIDを示せ』

「第三偵察中隊のパック シックスです。テロリストよりこのような物を押収しました。本部にご送信願えないでしょうか?」

 パイロットが降りてきたのでギアスで起動IDを聞き出しつつ顔面に肘を叩き込んで意識を奪う。

 

 サザーランドを奪った後にテロリスト達へと接触を図った。

「私の名はゼロ。シンジュク事変の事は聞いているはずだ。私に従え、そうすれば勝たせてやる」

 

 のこのこと現れた敵サザーランドをテロリスト達に破壊させ、その後も指示を出していく。コーネリアを引っ張り出すか、隙を作るか、もう暫くはコーネリアの動きを確認するのが良いだろう。

『全部隊に告げる!ゲットー外縁まで後退せよ!配置は問わない!』

 早速隙が生まれたようだ。これなら後退する部隊に紛れ込めばコーネリアのすぐ近くまで詰められるだろう。

「コーネリア…勝つのは俺だ…!」

 

 コーネリアは焦っているのだろう、親衛隊を出してなんとかしようともがいている。滑稽だ。俺はテロリストに敵味方識別信号を復活させ…囮のブリタニア機として活動させる。…しかし親衛隊は確認もせずにサザーランドを破壊した…。その後も釣り野伏せなどを仕掛けるが失敗し、気が付けば制圧されていた。馬鹿な…ゲームにすらなっていない!

 そして追い打ちをかけるように全パイロットに対してハッチを開くようにと通達がなされる。まずい…このままでは…!

 

 面通しをされれば俺が本来乗っているパイロットでない事はすぐにバレるだろう。そうなれば仮にゼロの仮面や衣装がなくても終わりだ。ギアスを使おうにも見た限り面通しをしているのはナイトメア、ナイトメア相手ではギアスは効果がない。周りの歩兵かパイロットに…その場合はどうやってこちらを任せるかがネックだ。ならば先制攻撃を仕掛けての強行突破…

 

 これしか無い!強行突破だ!!!

 

 俺は自分の番が来る前にまずハッチから姿を晒した。そして俺は全身の筋肉を膨張させ、ダブルバイセップスを決める。

「おい!見てくれ俺の筋肉を!!」

「なんだ!?」「うほ!良い筋肉!」「背中にペンドラゴンでも描いてんのかい!」

 俺の体に注目が集まった瞬間!この瞬間を逃さず俺はギアスを使う。

「"お前達も好き勝手に暴れろ"!!」

 俺の周囲の数体のナイトメアと歩兵が急に暴れ出す。混乱とはこうやって作るのだ!

『貴様何をした!』

 面通しをする為に近くに来たナイトメア…流石にナイトメアを素手でどうこうは出来ない。だがそれはあくまで装甲に対しての話!俺は勢いよく飛び出し、頭部に飛びつく。

『なんだ!?くそ…!』

 懐から取り出したライフル弾を親指の力で弾き出し、センサーを破壊する。視界を奪えば時間が稼げるという物だ。

『センサーを壊された!?貴様なんのつもりだ!』

 俺は混乱に乗じ、ナイトメアの間を縫う様に駆け抜ける。このままコーネリアの首を取ってやる!

 

 G-1内を突き進み、邪魔するものはラリアットにドロップキック、そして拳で捩じ伏せる。しかし、俺の前に1人の男が立ち塞がった。

「貴様か、ゼロとか言うテロリストは。あの珍妙な仮面や衣装は付けていない様だが…その肉体を見ればわかる。俺の目は誤魔化せんぞ。私は姫様を守る騎士、アンドレアス ダールトン!来い、ゼロとやら!」

 どっしりと構えるこの男…隙が無い…!強者である事は拳を交えなくても肌で感じる!俺はクラウチングスタートの姿勢を取り、スザクにも見せた俺の渾身の膝蹴りを仕掛ける。

 まずは一撃、膝蹴りは顔面に突き刺さる…が、この男は倒れなかった。

「中々のパワーとスピードだ!見せ筋野郎では無い様だな?ゼロ!」

「チィ!」

 その一瞬の隙を突いてダールトンの拳が俺の鳩尾を穿った。大した奴だ、このレベルの殴打を繰り出してくるとは…!

「ほう?ギルフォードの奴も耐えられん俺の拳を食らってまだ立てるとはな」

 この男、思っていた通り強い…!このままではコーネリアを殴りつけるだけの体力が保たない可能性がある…!ここまで来て…!

「どうしたゼロ。ご自慢の筋肉が萎んでいるぞ?」

 だが、俺とて無策で突っ込んできたわけでは無い。

「…む?なんだ…?呼吸がし難い…?」

「気が付いたか」

 俺はここに来る前にG-1の空調システムを操作し、酸素が薄くなる様にしておいたのだ。

「馬鹿な…ゼロ!なぜ貴様は動ける…!」

 その答えは簡単、俺はここに乗り込む前に空気を吸い込み、無呼吸で闘っていたのだ。こいつは俺が本気で戦っていると勘違いした様だが…違うな!間違っているぞ!無呼吸闘法は通常時よりもパフォーマンスが劣るのは当然のことだ。

「さっきから何事だダールト…貴様はゼロ!」

「い、いけません!姫様!」

 コーネリアが構えているのは…銃か!

「クロヴィスの仇ィ!」

 放たれた弾丸は無呼吸でパフォーマンスの落ちた筋肉では弾けず、俺の腕に着弾する。ドアが開いた事でダールトンとやらも酸素を取り込んでいるはずだ。ここは退くしかないだろう。腕から弾丸を摘み出し、親指で弾く。コーネリアはダールトンが庇ったようだが、これで追っては来れないだろう。俺は敗北を噛み締めながら立ち塞がる兵士を蹴り飛ばしつつサイタマゲットーから脱出した。

 

 俺が部屋に戻るとずっと待っていたのだろう、C.C.と目が合う。

「…どうやら失敗の様だな?ルルーシュ。それに腕も怪我している様だな。こっちに来い、手当てしてやる」

「条件が同じなら負けはしなかったさ」

 シュルシュルとC.C.は手際よく包帯を巻いていく。

「負け惜しみだな。条件を揃えるのも実力のうちだ。」

 確かにこれは負け惜しみだ。俺にもギアスという特別な力がある…それでも負けたのだ。認めなければならない、そして変わらなければ!ブリタニアを叩き壊す為に!

「だったら揃えてやるさ…ブリタニアに負けない俺の軍を!人を!国を!そして筋肉を!!」

「筋肉はそろってるだろう」

 

 

 

 僕が生徒会室に行くと、中からカレンが出てきた。

「とにかく私とルルーシュは関係ないから!あっ…」

「ルルーシュ?」

 ルルーシュがどうかしたのだろうか?去っていくカレンを見送り、僕が生徒会室に入るとシャーリーがいたのでルルーシュがどこにいるか尋ねる。課題でわからないところがあるから教えてほしいんだよね。

「ルルーシュは?」

「知るわけないでしょ!あんな奴!」

 シャーリーは怒った様子だ。ルルーシュ、一体何をやったんだろう。シャーリーをダンベル代わりにでもしたのかな?ナナリーがルルーシュにダンベル代わりにされていることを嬉しそうに話してくれたから、僕もこの前セシルさんで試したところ滅茶苦茶怒られて張り倒されたんだよね。

 

「ルルって真面目に努力してるけど暑苦しいしムキムキ過ぎて怖かったから正直最初は好きになれなかったの。でも高1の時交通事故を見かけたの。」

 しばらくして落ち着いたシャーリーはルルーシュの話を聞かせてくれた。僕としても幼い頃に別れたきりなので友人の話が聞けるのは少し嬉しいのだ。

「事故にあった車を引き摺ってね、自動車修理工場まで運んだんだって。その時私思ったの。いつも体を鍛えてるのはこうやって人を助ける為なんだって。そしたらムキムキでも怖くなくなって、そしたら…」

「好きになってた?」

「そうなるのかな…」

 そのあとシャーリーから聞いた話だと、ルルーシュがカレンの胸を触っていたらしい。そんなに胸筋が触りたいなら僕に言えばいいのに…。そのことについてカレンにははぐらかされたということだったので残された手は一つだ。僕は受話器に手を伸ばす。

「こういうのは本人に聞くのが一番だよ。ついでにシャーリーのことどう思ってるかも聞いてあげるね」

「ええ!?そんなことまで!?」

 僕が受話器を握ると…

 

 あ、受話器が砕けた。

 

 参ったな、後でミレイさんに謝らないと…




ダールトンのフィジカルが上方修正を受けました。()


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STAGE08

「私、トウキョウ租界出るのって初めてなんですよ」
「ルルーシュも来られると良かったのにね〜」
 ミレイ、シャーリー、ニーナの3人は電車に乗り、トウキョウ租界を離れて河口湖へ観光に向かっていた。
「ルルーシュって湖でガチ泳ぎしそうだから観光にはちょっと…」
「あー…分かるかも。まぁ、今宵は夜通し語り合おうぞ。ルルーシュの好きな部位とか教えあったりさ〜」
「私はやっぱり逞しい背中かな…」

そんな訳で本編スタートです。


 コーネリアに敗北した俺は組織の重要性を知った。組織に必要なのものと言えばアジトだ。俺は道楽者の貴族を拳で捩じ伏せ…………るのは強盗の様な真似なのでギアスを使い、そこそこ大きめの多機能車両を譲ってもらった。カレンを通して扇達を呼び出す。扇達は何故か入り口で立ち止まっていた。俺でもなんとか通れたのだからあいつらに通れないはずはないのだが。

「どうした?早く入れ」

 扇達はようやく入ってくると車内をキョロキョロと見渡している。

「今からここが私たちのアジトだ。残念ながら筋トレ道具はないがな」

 そこそこ大きめと言っても筋トレ道具を置けるほどのスペースはなかった。まぁその気になれば空気椅子などやりようはいくらでもある。

「それはあんたが俺達と組むと考えていいのか?」

「あぁ、私達は仲間だ。」

 サイタマでの失敗は組織と人、そして俺への信頼だ。シンジュクで一度共に戦っているコイツらは都合が良い。

「でもこんなもの一体どうやって…」

「筋肉で捩じ伏せたら譲ってくれたよ。道楽者の貴族が」

「それ世間じゃ強盗って言わないか?」

「おいおい、2階まであるぞ?広過ぎないかこの車…」

 確かに隠密性は劣るが移動可能な点は評価が高い。

「これくらい大きいと『まさかイレブンがこんな物買えるはずがない』って盲点になるかも」

 カレンは中々鋭い奴だな。

「テレビまでついてるよ」

 テレビではニュースが流れていた。

『こちら河口湖のコンベンションセンターホテル前です。ホテルジャック犯は日本解放戦線を名乗っておりジェームス議長を中心とするサクラダイト配分会議のメンバーと居合わせた観光客および数人の従業員を人質にとっています。これが犯人から送られてきた映像です。ジェームス議長の他学生の姿も見受けられます』

 映像にはみんなでアドミナブル・アンド・サイをしている様子が映されていた。うーむシャーリー、まだまだキレが足りないようだな。今度アドバイスでもしてみるか。

「日本解放戦線、動いてきたな…」

「日本最大の反ブリタニア組織だからな。意地もあるんだろう」

 ゼロ…つまり俺の活躍を見て真似をしたくなった訳だ。リヴァルからの電話を無視し…まぁ言い訳としてはまた誤って砕いたとか言っておけば大丈夫だろう。

「いつまでテレビに齧り付いている。アジトの片付けや運び込みはまだ終わっていないが?」

「あ、あぁ、そうだな。ほらみんな」

 テレビにはシャーリーの父親が映っていた。何度か話したことがある。シャーリーの父親ということもあり優しげな…悪く言えば甘い人だったのを覚えている。

『ただの観光なんですよ!まだ学生なのに…それをテロリストは無差別に…許せない!シャーリーは無事なんでしょうか!?』

 このニュースを見れば日本解放戦線の行動がいかに迂闊か分かる。多くの日本人はブリタニアに対して良い感情は持っていないだろう。だからと言って無差別に市民をも巻き込む様なやり方を人々は支持するだろうか?答えは否だ。ブリタニアと戦うには組織は必要、だが…ここでクラスメイトも守れない様な男が果たしてナナリーを守れるだろうか?答えは否だ。しかし無策で突っ込む訳にも行かない。しかし珍しいこともあるものだ。コーネリアの性格なら人質など無視して……?では何故無視して強硬策を取らない?強硬策が取れない…人質を殺されたら困る都合でもあるのか?まさか…人質のなかに…?

「ルルーシュ、人質…会長達どうなるかな」

「…ここではゼロと呼べ。任せておけ俺に策がある」

 カレンと話をしていると扇が入ってきた。

「おーいゼロ。これみんなに配っていいのか?これさ、かっこいいとは思うけど俺達レジスタンスだし…」

 扇が持ってきたのは俺の組織の制服。それにしてもまだレジスタンス気分らしい。

「違うな扇。間違っているぞ。我々はレジスタンスではない。私たちが目指すのは…正義の味方だ」

 

「なぁゼロ。正義の味方は人を殴って中継車を奪ったりしないと思うんだが」

「彼…ギブソン氏は正義をなすための犠牲となったのだ。彼も本望だろう」

「無茶苦茶だな。」

 コーネリア達を超えてホテルまで行くにはどうしても車両が必要だった。それに中継車は色々と都合が良い。そのために中継車にいたギブソンと名札をかけたスタッフをぶん殴り黙らせた。

 

 中継車に乗り俺はブリタニア軍の中を進んだ。包囲後に逮捕するつもりだろう。

「ゼロ!この前の礼をこんなに早く返せるとは嬉しいぞ」

「おや?これは驚きだ。あの日敗北したのは私のはずですが」

 コーネリアは突然発砲してきたが、この距離なら予備動作の時点で反応は可能。放たれた弾丸を掴み、コーネリア側に軽く放り投げる。

「女性からのプレゼントとはいえ鉛玉は趣味ではない。これはお返ししよう」

 カランコロンと弾が転がる音がするが、不思議と次の攻撃は行われなかった。

「流石は我が弟を殴り殺したという野蛮人なことはある。銃が効かないとはな。ところで何しにきた?お前は日本解放戦線のメンバーだったのか?それとも協力するつもりか?何方にせよここを通す気はない!」

「コーネリア…何方を選ぶ?殴り殺されたクロヴィスと、生きているユーフェミア」

「!」

 コーネリアの表情を見れば図星という言葉がよく似合う。俺ほどになればあらゆる事態において顔面の筋肉を矯正してポーカーフェイスを保つことが可能だ。コーネリアの武人としての才は認めざるを得ないがやはりこういうことは不得意とする様だな。

「ななななななんのことかわわわわわわ分からないな!」

「救ってみせる!私なら!」

「…良いだろう、通してやれ」

 俺を捕らえられないデメリットはあるものの、ユーフェミア救助の可能性と、そうでなくとも俺と日本解放戦線が接触することによる時間稼ぎのメリットがある。それくらいの損得の勘定は可能らしい。しかしやはりコーネリア、あなたは甘い。妹のユーフェミア…いつまで経っても妹離れできない女だ。溺愛するユーフェミア…だから動けない。情の尻尾が邪魔をする。

 

 日本解放戦線としてはゼロに会いたいという誘惑を押されられるはずがない。案内され、俺は今回の首謀者である草壁という男に会うことができた。

「私と手を組み体を鍛えるつもりはないか?」

「ならば素顔を見せてもらおうゼロ。無礼であろう」

「分かった。しかし草壁よ。なぜこんな行動をした?この行動の果てに何がある?是非聞かせてほしいな」

 無論顔を見せるつもりはないが、俺にもわからないなにか凄い考えがある可能性が無きにしも非ずにて候。まぁ無いとは思うが、聞くくらいの余裕はあるだろう。

「知れたことよ。日本人がまだ死んでいないと内外に知らしめるためだ」

 日本人が死んでいないことを内外に知らしめるのであれば俺くらい筋肉を鍛え、街中で筋肉を見せつけるほうが早いだろうに。この男は考えが古く更には愚かな様だ。救いようがない。

「下らない考えだ。そして何よりお前達は救いようがない。筋肉もない。」

「どういう意味かな?ゼロ」

 その時、日本解放戦線の兵士によりドアが開けられ、ユーフェミアが連れて来られた。どうやらまだ殺されていない様だが、それを見た草壁は刀を抜き、俺に切り掛かってくる。

「最早問答無用!」

 俺は刀を両手で挟む様にして刀を止める、本当はこの程度の刃物で切れるほどヤワな鍛え方はしていないのだが、一度やってみたかったのだ。

「白刃取りだと…!?」

 俺は刀を奪い取り、そのまま草壁の顔面を殴る。思い切り殴り飛ばす事で他の兵士を草壁の身体で吹き飛ばし、同時にこちらに銃を構えていた兵士に刀を投げつけて無力化する。更にはカレン達が銃を構えて入ってきた為、日本解放戦線は制圧された。

 

 現在部屋には俺とユーフェミアしか居ない。カレン達には人質の解放と誘導を命じている。更には爆弾の設置も行なっている。

「ユーフェミア、民衆の為に人質を買って出たか。筋肉も無いのに相変わらずだな。」

「それ筋肉関係あります?」

 

 

 

「ユーフェミア皇女殿下。副総督への着任おめでとうございます。」

「喜べることではありません。」

「そう、私がクロヴィスを殴り殺したからだな」

 クロヴィスが生きていれば副総督としてエリア11にくることはなかっただろう。武人としての才もなければ頭もそれほど良くないユーフェミアのことだ、お気楽に本国の学生でもしていたのだろう。

「何故クロヴィス兄様を殺したのですか?」

「ブリタニアを破壊する為ですよ。私はこの拳でブリタニアを破壊するのです。ユーフェミア副総督、貴方も皇族…私の殴打を受けて死んでいただこう。せめてもの慈悲に顔以外にしてあげましょう」

 しかし、突如爆音と振動が起きる。

『ゼロ!基礎ブロックが破壊された!』

 何事かと外を見ればスザクが乗っているであろう白いナイトメアが視界に映る。スザクめ、想定より早いこの爆発はあいつの仕業か。通信を聞きけば悠長にユーフェミアを殴り殺す時間がないことがわかる。仕方なくユーフェミアを抱き抱えて脱出を急ぎ、人質達をボートに乗せ脱出させる。

 

 事件が解決したのならば次はお披露目会と行こう。奪った中継車を使い、テレビ放送を行う。

「ブリタニア人よ。動じることはない、ホテルに捕らわれていた人質は全員救出した。あなた方の元へお返ししよう。」

 無論、今コーネリアが何か仕掛ければ人質に戻ってもらうことになるが、その場合悪いのは救出の功労者に銃を突きつけるブリタニアだ。

「人々よ!我らを恐れ、我らを求めるが良い!我らの名は…黒の騎士団!」

 俺はダブルバイセップスを決め、筋肉を膨張させる。

「我々黒の騎士団は武器を持たない全ての者の味方である。イレブンだろうと!ブリタニア人であろうと!」

 続けて俺はサイドチェストを決める。

「日本解放戦線は怠惰にも筋肉を鍛えず、卑劣にもブリタニアの民間人を人質に取り無惨に殺害した。」

 そしてこれがアドミナブル・アンド・サイだ。もっともこの服装では俺の腹筋は見えないがな。

「無意味な行為だ。故に我々が制裁として鉄拳を下した。この私直々にこの拳でな。」

 そして俺は両手拳を前で合わせるモスト・マスキュラーのポーズをとり、この鍛えた拳を見せつける。

「クロヴィス前総督も同じだ。武器を持たないイレブンの虐殺を命じた。この様な残虐行為を見過ごすわけにはいかない…故に拳を加えたのだ!」

 ラットスプレッド・フロントを決めつつ俺は筋肉をアピールする。今日の俺の筋肉はキレキレだ。多くの者が俺の身体に釘付けになっていることだろう。

「私は戦いを否定しない。しかし強い者が弱いものを一方的に殺すことは断じて許さない!人を撃って良いのは…人にぶたれる覚悟のある奴だけだ!!」

 俺はふたたびポージングをダブルバイセップスに戻す。

「我々は力ある者が力無きものを襲う時再び現れるだろう。例えその敵がどれだけ大きな力を持っているとしても。抵抗して見せよう、この拳で」

 そして俺はマントをはためかせる。

「力あるものよ!我が拳を恐れよ!力無きものよ!筋肉を鍛えよ」

 

「世界は我々黒の騎士団が裁き、殴る!!!」




生徒会メンバー救出時には出来るだけルルーシュはそばにいない様にカレンから忠告を受けています。

●オマケ●
ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 OPテーマ歌詞

拳で世界さえも変えてしまえそうな
肉体は既に我がものに…

隠せぬ筋肉と 立ち尽くし鏡を見つめ
鍛えながら(1回目)
鍛えながら!(2回目)
鍛えながら!!(3回目)
(ポーズを)決めればいいさ
母がくれた 身体ひとつ
体脂肪は消え去り
ヒョロガリだった僕の身体筋肉増した

鍛えた肉体が強く引き締まって行く
閉ざした窓を開くと…割れた
拳で世界さえも変えてしまえそうな
肉体は既に我がものに…


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STAGE09 プ ロ テ イ ン(リフレイン)

 黒の騎士団と学生生活、いくら病弱で通し、成績上も文句を言わせない様に振る舞っているカレンでも、出席日数が足りない事態は避ける必要がある。結果として二重生活による疲れを溜め込むカレンは寝着に着替える余裕もなく、はしたない格好で泥の様に眠っていた。ガシャンと不愉快な物音で叩き起こされたカレンは簡単に一枚だけ纏うと廊下の様子を確認する。いつも失敗ばかりのメイドが今日も何かやらかしたらしい。
「また?」
「めんご!今日は脚立が壊れちゃったテヘペロ!」
 相変わらず立場も理解せずに馴れ馴れしい態度を続けるメイドにカレンは苛立つ。ご丁寧にウインクして舌まで出し、コツンと拳を頭にちょこんと乗っけるポージングにお前今何歳だと言いたくなるのをぐっと堪えるのは忍耐力の賜物だろう。
「早く片付けて。もうすぐもうすぐ学校に行く時間なんだから」
「りょ!最近よく学校行くけど、もしかして友達とか…」
「あなたには関係ないでしょ!」
 カレンは怒鳴り部屋に戻る。ドアを背にし、心の底から不満をぶちまける。
「消えてよ…もう!」


「黒の騎士団!」

 俺がいつも通り身体の半分を休めつつ筋トレに勤しみながら授業を聞き流していると、突然カレンが立ち上がりそう叫んだ。どうやら寝不足の様だな、最近学校に来ては生徒会の仕事をこなしたり、夜は黒の騎士団として働いているからだろう。オーバーワークは故障の原因だ。少し休暇を出すほうが良いかもしれない。

「HAHAHAHAHA!!」

 クラスのみんなに笑われてカレンは恥ずかしそうだ。ああいうところは乙女なんだな、あいつ。

 

「珍しいね、カレンが居眠りなんて」

「う、うん…ちょっとね」

「ルルーシュに弟子入りしたら?あいつ授業中も半身だけ寝てるらしいしさ」

 同じ生徒会ということもあり、カレンに話しかけているのはシャーリーとリヴァルの様だ。授業中は左半身を休ませていた為現在は右半身を休ませている為目では確認できないが。

「そんな離れ業他の人間に真似できるの…?」

 

 とある朝、生徒会へ向かうとスザクに拘束され、シャーリーとミレイ会長から抵抗するとナナリーにイタズラすると脅された俺は仕方が無く椅子に座らされ、大量の鎖と南京錠によって雁字搦め拘束された。別にその気になれば鎖くらい引きちぎれるが大人しくしていよう。よく見ればみんな猫にちなんだコスプレをしている様だ。スザクは着ぐるみの様な格好、ミレイ会長に至っては随分破廉恥な格好だ。仮に会長達のイタズラがナナリーにああいった破廉恥な服を着せることだったなら……………

 

 俺は自分を抑えられるかわからない。

 

 むしろ暴れて悪戯を容認するか?いやダメだ。落ち着け俺…!

「ほら、スザクそっちそっち!」

 手に筆を持ったスザクが俺の顔にペイントしてくる。

「ごめん、ルルーシュ…これは、これは…!会長命令なんだ…!」

 苦虫を噛み潰した様な顔で涙を滲ませながら俺の顔にペイントしてくるスザクに俺は何も言えなかった。そんなに嫌なら断れば良いだろう。せめて楽しめ。

「なに…やってるんですか?」

 昨日は活動の休みを伝えたはずだが、それでも寝不足なのだろう。欠伸を噛み締めた後の様な独特な顔の筋肉の緊張を残したままのカレンが生徒会室に入ってくる。

「おはようにゃーん。」

「なん…ですか?これは…」

「あれ?言ってなかったっけ?アーサーの歓迎会」

 生徒会では新メンバー加入時に歓迎会をするのがお決まりである。因みにスザクの歓迎会は俺が会長を手伝って見様見真似の日本食を作った。スザクは久しく食べる日本食に号泣していたが…まぁブリタニア人にも日本文化を尊重する人も残っているということだな。

「カレンの分も用意してるから」

「え?私も?」

 するとまたスザクが泣き出した。俺が知らないだけで日本には猫の仮装をしてパーティをやる習慣があったのかもしれない。それを思い出したのだろうか

「良かった…またこうやってみんなと集まれて…本当に…」

「…そうだな。」

 

 黒の騎士団は俺が宣言した通り正義の味方であることに専念した。民間人を巻き込むテロ、横暴な軍隊、効果がないインチキ健康食品・グッズ、汚職政治家にブラック企業、結果にコミットしないジム、科学的根拠のない筋トレ法を周知する詐欺師、法律では裁けない悪を次々と断罪していった。俺たちはあっという間に英雄になったのだ。ふと公園を見れば俺の真似をして弱々しい体で健気にダブルパイセップスを決める少年や工事現場では屈強な男達が誰の体が一番ゼロに近いかと競う姿が確認できた。

 たまにコーネリアの罠が紛れていたが拳で粉砕し、俺たちは再びナイトメアを手に入れた。もちろんこれらは表立っての話ではない。

「やめなさい!ゼロの真似なんて!」

「なんでだよぅ」

「あんなムキムキになるほど鍛えたら着る服とか困るわよ!」

 それは否定しない。実際俺の服はほとんどが特注だ。

 

 ある日の朝、珍しく会長が学園からどこかに向かうところに遭遇した。

「珍しいですね、会長が1人で学園を出るなんて」

「そうかしら?」

 会長は肩をすくめておどけている。もしや俺の正体…ゼロだと言うことバレてどこかに報告しに行くんじゃないだろうな?

「どこ行くんです?日中とはいえ最近はテロとか物騒ですし、送って行きますよ」

「あー…カレンのところに行くの」

 カレン?何の用事があるのだろう。

「複雑な家庭の事情って奴でね、ルルーシュなら気分…分かるでしょ?」

 確かに俺も普通の人間から家庭の事情に踏み込まれるのはまずい。とは言え、まさかカレンの奴テロ活動がバレたんじゃ…?カマを掛けるか

「そうか、カレンの奴バレたのか。ハーフだって事」

「なんでそれ…って、まぁルルーシュならわかっちゃうか」

「仲良くなれば悩みの一つや二つ聞きますよ。その時色々察しちゃって」

 全部嘘だがそれらしいことを並べておけば会長は納得するだろう。

「ふーん?ルルーシュとカレンがね…。でも私ルルーシュから悩みの相談なんてされたことないけど?」

「じゃあ今度相談しますよ。もっと効率の良いトレーニングの方法とか」

「うん、聞かなかったことにするわ」

 なんとか上手い流れでカレンの家への同行許可を勝ち取った俺は会長と共にカレンの家へとたどり着いた。道中柄の悪い連中に絡まれたが軽く撫でてやると尻尾を巻いて逃げ出していった。後何故か会長はどさくさに紛れて俺の腕に絡みついている。歩き難いな。

 

 カレンの家のベルを鳴らすと赤髪のメイドが扉を開けてくれた。

「アッシュフォード学園から来ました。ミレイ アッシュフォードです」

「付き添いのルルーシュ ランペルージです。カレンさんに用がありまして参りました。お取次をお願いします」

「かしこま!ちょっち待ってて!カレンお嬢様!カレンお嬢様ー!お友達ですよー!」

 しかし現れたのはカレンではなく金髪の女性。この人がシュタットフェルト夫人だろう。それにしてもこのメイド、どことなくカレンに…なるほどな。カレンはハーフ、このメイドは日本人…なるほど、中々複雑な家庭をしているようだ。

「あら、お友達と聞いて見てみれば…あらやだ逞しい…好み……」

「逞しいなんてもんじゃないわよ。筋肉でできた化け物よアレは…」

 遅れてやってきたカレンはシュタットフェルト夫人に何か俺の悪口っぽいことを話してから降りてくる。どう考えても病弱で通しているとは思えないスピードでだ。

「どちらにお通ししましょうか?客間ですか?それとも…」

「私の部屋に」

 カレンはピシャリと冷たく言い切った。母娘はあまり仲は良くない様だ。

「かしこまっ!」

「お願いだからそのノリやめて!!」

 

 流石に俺が女子の部屋に入るのは不味い。案内された客間ではシュタットフェルト夫人がやたらとねちっこい目で見てくる。思わず適当な理由で逃げる様に客間を脱出した俺はメイド…つまりカレンの母親と遭遇した。

「あら?ランペルージくん、どったん?道迷った?分かるー!私もたまに迷うもん」

「ええ、少し迷いまして。…失礼ですがあなたがカレンの本当のお母さん…なんですよね?」

「あー…」

 その反応を見てすぐに確信に変わった。カレンの母は自室に案内してくれ、そこで話を聞くことになった。

「すみません、お客さまを通すには汚い部屋で」

「いえ、構いませんよ。」

「…おっしゃる通り私がカレンの本当の母です。シュタットフェルト夫人はカレンにとっての継母という奴です。でも、それはできれば秘密にしていただけませんか?」

 俺とカレンの母はお互いベッドの上に腰掛け話をしていた。

「もちろんです。私も複雑な家庭の事情を持つ身。人の秘密を漏らす様な趣味はありません」

「ありがとうございます。」

 俺は部屋を見渡す。落書きがひどいな。どう見ても良い待遇を受けているとは言い難い。カレンとの仲も良好とは言えず、シュタットフェルト夫人とも…仲が良いとは思えない。

「ひとつお聞きしても?なぜこんな冷遇…しかもカレンとの関係も劣悪なのにこの屋敷に残られているんです?女性1人とは言え暮らしていく方法はいくらでも…」

「決めたんです。私は。」

 カレンの母親は力強く俺を見つめてくる。

「私は、カレンと…私の娘の側にずっといて守るんだって。私は娘が何事もなく育ってくれればそれだけでいいんです。他の些細なことなんて全部我慢できます。」

「…そうですか」

 強い女性だと思った。同時に危ういなとも。その時その時は耐えられても…積み重なれば壊れててしまう。

 

 

 筋肉と同じだ。

 

 

 

 最近、違法な薬物が蔓延しているらしい。扇さんからの電話でその存在を知った。

「違法プロテイン?」

『一時的に尋常じゃない筋肉がつくけれど、効果が切れると立てないくらい筋肉がなくなるってのが特徴かな。』

 なんだその薬物…作ったやつは馬鹿なんだろうか

「売れるんですか?そんなもの…」

『黒の騎士団に憧れて体を鍛え始めた日本人を狙い撃ちにした薬物だ。誰だって羨ましいよ、ゼロの筋肉が。ゼロも大層ご立腹だよ。物資が届き次第直ぐに叩く。カレンも準備しておいてくれ』

「分かりました。」

 私が電話を終えると近くで揉め事がある様だった。どうやらカルフォルニアドッグの屋台をやっている男の人がガラの悪い連中からリンチに合っている様だ。許せない…!私が向かおうとすると肩を掴まれる。びくともしない。ルルーシュだな?振り向くとそこにはやはり筋肉…つまりはルルーシュ

「相手はたったの5人程度だ。俺が軽く撫でてくるよ」

「あ、うん。手加減してあげて」

 ルルーシュはスタスタとリンチをしているガラの悪い男たちに近寄り、逆リンチを開始していた。なぜ5人相手に一人でリンチできるか不明だが、もう見慣れた光景だ。

「助けてくれー!」「筋肉に殺される!」「うわああああ!」

「ふん、情けない奴らだな」

 

 その後、営業の邪魔をしたとルルーシュはカルフォルニアドッグの屋台のホットドッグとアイスクリームを買い占め、ルルーシュと私はベンチに腰掛けていた。因みに私は私は一つ奢って貰っている。アイスクリームは周りの子供達に差し入れたりしていた。当然だ、あんなに食べたらお腹を壊してしまう。

「そんなに食べて平気なの?」

「今日はチートデイなんだ。それにあのイレブンはもうここでは商売できないだろうからな、最後の売り上げ貢献だ。我ながら短絡的なことをしてしまった。」

「ルルーシュって頭良いのに脳筋よね」

「そんなに褒めるなよ」

「褒めてないわ」

 ビンタでも食らわせてやろうかと思ったが、どうせ止められるだろうし、下手したら当たってもダメージはゼロだ。

「ま、多少はマシな男だとは思うけど…」

 

 ゼロの指示で私は無頼に乗り、違法プロテインの売買現場を襲撃した。逃げていく男達を追ってシャッターを突き破るとそこには違法なプロテインを使用して手に入れた異常な筋肉に喜ぶ者、萎んだ後なのだろう、立つこともままならず他を這う者。

『これであの人みたいにブリタニアの奴らを返り討ちにできるぞ!』

 この後から体が萎むことを知らずに復讐心を燃やすカルフォルニアドッグ屋の人…そして。

 

『これでカレンを…』

 

 ゴリマッチョになってしまった母の姿を見た。私を…どうするのだろう。実の母に冷たく当たった私を殴るのだろうか?だったら直接言えば良いのに。

「…男に縋って、ブリタニアに縋って、今度は薬…?あなたって人はどこまで弱いの!」

 その油断が仇となったのだろう、現れたナイトポリスに気が付かず先制攻撃を受けてしまった。

『あれ警察のだろ!?』

『グルってことか』

『腐ってやがる!!』

 

 私は咄嗟にゴリゴリの母を掴みその場を離れる…が、ナイトポリスの追跡を遮蔽物のない倉庫内で張り切ることなど出来るはずがない。あっという間に追い詰められてしまう。母を掴むのをやめ、早くどこかに行ってくれることを願った。

「逃げろ!この馬鹿!」

 しかし母はナイトポリスと私の間に立ち、構えを見せていた。生身でナイトメアに勝てるはずが無い。

『そこの女!力を貸してもらうぞ!』

 

 

 

「あなたは…?」

 突然現れたどこか見覚えのある…私の憧れた人に似た筋肉を纏った男の人が私の隣に立った。

「お久しぶりですね、カレンのお母上。」

「!」

 その言葉で察する。この人は…。そして私は私を守り倒れたナイトメアをチラリと見た。赤いカラーリング…もしや!?

「あなたには成し遂げたいことがあるはずだ。力を貸していただきたい。」

 彼は私にそう言うと走り出す。私も慣れない筋肉に戸惑いながら彼の後を追う。

「横に跳べ!」

 彼の指示通り溢れる筋肉で横っ飛びをし、ナイトメアの銃撃を躱す。

「頭だ!頭を狙え!同時に行くぞ!タイミングはこちらが合わせる!」

「はい!」

 彼の言葉を受け、私は駆ける。

「この筋肉はカレンを---------」

 

「「どりゃぁぁぁ!!!!」」

 私と彼の蹴りがナイトメアの頭部に直撃する。

『なんだ!?ファクトスフィアが…!?』

 そしてそこで私の体は動かなくなった。私の身体を彼が抱えてくれた気がするが…私はもう目も開けていられないほどに疲れてしまっていた。

 

 

 

『この筋肉はカレンを"守るために"!!!』

 そんな母の声が聞こえた。ルルーシュと母は丸太のような脚でナイトポリスの頭部側面を両側から蹴り付けていた。

『なんだ!?ファクトスフィアが…!?』

 恐らく視界を奪われたのだろう、ナイトポリスはあたふたとしている。それにしても私を守るために…。そうか、あんな家に居たのは…。そんなことのために薬まで使って…馬鹿じゃ無いのか。いや違う…

 

「馬鹿は、アタシだッ!!」

 

 動かなくなった腕を廃棄し、それを思い切り蹴り飛ばす。避けることもできないナイトポリスはよろめき、隙が生まれた。私は天井にスラッシュハーケンを突き刺し、高く登ってからスラッシュハーケンを抜く。

 

 そして、重力加速度を味方に付けた両脚による踵落としをナイトポリスにブチ込んだ。

 

 

 

 

 母の体は違法プロテインの後遺症でろくに立てない程に筋肉が衰えてしまった。ナイトメアを蹴るなどという馬鹿な行為により蹴った右脚は粉砕骨折までしている。因みにルルーシュはピンピンして今頃学校に通っているだろう。化け物だ。

「私 お母さん。私頑張るから、私とお母さんが普通に暮らせるように。」

「りょ!がんば!」

「うん。頑張る…!あたし、頑張るから!」

 




脳筋世界の歪みによりカレンの母の性格と言葉遣いが大幅に歪んでしまいました。というかリフレインの存在そのものが歪みました。

今回はとうとう生身のルルーシュとプロテインによるブースト+娘を守る母の愛の力でナイトメアを攻撃しましたが、あくまで精密機械のセンサー類がちょっと壊れる程度です。


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STAGE10

純血派にしてゼロとスザクを逃した賄賂疑惑のある軍人、ジェレミアはとあるバーの中で未だに友好的に接してくれる同僚のヴィレッタのグラスを交わしていた。
「例のオレンジ事件…」
「うぅ…」
「失礼。枢木スザク強奪事件の時、記憶がないというのは本当でしょうか?」
「信じて貰おうとは思わん。」
「実は私もシンジュク事変の時に記憶を失っているのです」
「それは真か!?」
「えぇ、あの時は頭に激痛があったので何者かに殴られた事が原因かとも思うのですが」
「記憶を失わせる殴打…ゼロか」
「ええ、おそらくは」
「くそ、何かもう少し手がかりがあれば良いのだが…」

それでは本編スタートです。


 黒の騎士団は入団希望者が増えた。とは言え有象無象を無駄に団員にして足がついては意味がない。俺は背筋を鍛えながらパソコンで作業を行い、入団希望者の情報を見ていく。するとその中にブリタニア人がいるのが目に入った。

「うん?主義者か?それとも俺と同じ復讐者か…」

 

 キョウトというテロ支援組織から紅蓮弐式と呼ばれるナイトメアを受け取った。更に複数の無頼と、先行試作型らしいが月下と呼ばれる機体も受け取る事ができた。キョウトからのメッセージで正式量産前に紅蓮と合わせてデータが欲しいらしい。

 組織が多くなった為か、玉城は何故か幹部を自称しているが、長くいるだけで幹部に指名するほど黒の騎士団は甘い組織ではない。とは言え現時点では能力を見ようにも活動そのものをしていないのだから評価しようがない。よって暫定的に玉城以外の初期メンバーを一旦幹部として扱う事にしている。それにしても暫定幹部達は部下が出来たからなのか少し浮かれている様だ。戦場でもそんな調子では困るが、まぁ今は目を瞑ってやろう。

「カレン、紅蓮弐式は君が使え。月下は私が使う」

「わかった。でも指揮官があんなピーキーな機体使って大丈夫なの?」

「ピーキー?なかなか良い乗り心地だったぞ?」

「…」

 カレンは俺のことを呆れたように見ているが…俺は何か変なことを言ったか?

 

「ゼロ!ちょっと来てくれ、すごいお客さんがきてる!」

 焦った様子の扇がこちらに駆けてくる。息切れをしているあたり鍛錬が足りないようだ。

「キョウトの紹介で来た。私は日本解放戦線の藤堂 鏡志朗だ。」

「ほう?かの有名な藤堂氏が我々に何用かな?」

 藤堂は徐に頭を下げる。

「頼むゼロ。日本を解放するため、我々に協力してほしい。」

「無論、私は日本人を含めたすべての人々を守る正義の味方だ。だが、草壁のようなブリタニア人を見境なく殺すような非道に手を貸すつもりはない」

 思い出されるのは河口湖における草壁だ。今頃水の中でおねんねしているだろうがな。

「承知している。草壁のことは我々は水に流すつもりだ。」

 安心して欲しい、既に水の中だ。とは言わない。

「君はシンジュクでブリタニアを倒し、枢木スザクを救い、今も日本人のために正義を行っていると聞く。キョウトが紅蓮をはじめとするナイトメアを渡すのも、その方がより日本の為になると考えてのことだろう。だから我々にも正義を成す為の知恵を授けてほしい。」

 駒として、この藤堂が手に入るのならありがたいが、果たして日本解放戦線は駒として使えるのだろうか?草壁の様な輩が居るとも限らない。この男は水に流すと言ったが、同志を殺されて簡単に割り切れるだろうか?

「それは日本解放戦線の総意なのかな?」

「…いや、あくまで私個人の意見だ。だが、私が他の者を説得する。確かに我々は数こそ多いが君達の様な実績は少ない。一度成田連山に来てはくれないだろうか」

「…良いだろう。但し条件がある」

 

 週末のある日、黒の騎士団はハイキング…ではなく、日本解放戦線との話し合いのためナリタを訪れていた。藤堂から貰ったのは地形データ、基地の位置データ、そして武装の内訳。なるほど、確かに規模としては黒の騎士団と比べるまでもなく、山を丸ごと改造し、要塞化しているのは流石と言える。これだけの隠し通路があれば簡単には陥落もしまい。だが、こんな山に籠って日本が解放できると本当に思っているのだろうか。俺はナイトメアから一度降り、迎えを待った。

「来てくれたかゼロ」

 指定されたポイントで待っていると、地面が盛り上がり隠されていた入り口が現れた。そこから複数の無頼と周りに護衛を引き連れた男が現れた。

「初めましてだな。あなたは…少将の片瀬だな?藤堂から話は聞いているな?協力するに相応しい相手かどうか見極めに来た。…ところで藤堂はどうした?出迎えは奴がすると聞いていたが?」

「キョウトから急に無頼・改を渡すと話があってな、藤堂と四聖剣は外している。まずは基地の中に入ってくれ。ここは我々の勢力範囲とは言えナイトメアは目立つ」

 案内に従い、基地に入ろうとした時偵察隊から連絡が入った。それは日本解放戦線でも同じなのだろう、動きが慌ただしくなった。

『大変ですゼロ!ブリタニア軍です!囲まれています!』

「どうやら我々は袋のネズミの様ですね」

「なんということだ。日本解放戦線と黒の騎士団、この二つを失えば日本の抵抗活動はお終いだぞ!」

 こんなに早く藤堂から貰ったデータが役に立つとは思わなかったが、ここはやるしかない。

「片瀬、私の機体に日本解放戦線の基地からデータを送って頂きたい。そして私に指揮権を委ねてほしい」

「…それで勝てるか?ゼロ」

「任せてほしい。私はゼロ、藤堂と同じく、起こして見せよう!奇跡を!」

 

 型落ちのグラスゴーを改造した無頼を主な戦力とする日本解放戦線ではコーネリアの親衛隊達のグロースターの相手は荷が重い。

「P-1、P-2、P-3!右方向に一斉射撃!K部隊は兎に角弾幕を張り敵を釘付けにしろ。B-4からB-8は次の地点に移動し罠を仕掛けろ!R-3はエリアV7を爆破して足止めだ!」

『承知!』

 山という地形上、高台を抑えているこちらの方に地の利はある。様々な隠し通路を用いて背後を取ることも可能だ。正面戦闘を避けたゲリラ的戦術によって敵の数を着実に削っていく。規模も質に目を瞑れば十分な数がある日本解放戦線ならばこの包囲網でもなんとか耐えられるだろう。これで膠着状態を作り出すことには成功した。あとは突破力がある上に大将でもあるコーネリアさえ抑え、こちらが押し込めば勝機はある。コーネリアと交戦し始めればどれだけ攻められようともブリタニア軍はコーネリア救援のために戻らざるを得ないからだ。

「片瀬、我々黒の騎士団はこれよりコーネリアの部隊に突撃する。暫くの間私の送った作戦書の指示に従い耐え切ってほしい!」

『わかったゼロ。君の武運を祈る』

 

 コーネリアにたどり着くまでの道中、現れるナイトメアをボコボコにして突き進む。

「紅蓮の物に劣るとはいえこの武装は凄いな。」

 紅蓮弐式の右手の輻射波動機構、その予備パーツで作らた簡易版とはいえ、威力は絶大。ナイトメアを一撃で屠れるとは俺の拳にピッタリだ。

『これ以上は行かせん!』

 行手を阻むサザーランドのスタントンファを蹴り飛ばして防ぎ、左手で頭部を掴む。

「砕けろブリタニアッ!」

 輻射波動を受けたサザーランドはボコボコと内側から膨れ、ついに爆散する。

『ゼロはどこだ!ゼロォー!!』

 こちらに突っ込んでくるサザーランドが現れるが、その前にカレンが立ち塞がった。

『あんた今のでエナジー厳しいでしょ?さっさと交換しなさいよ、ここは私が抑えるから!』

「あぁ、任せる。扇!」

『任せてくれ』

 俺は一旦退がり補給物資を抱える扇の無頼によりエナジーの交換を行う。試作だけあって武装の燃費はあまり良くない。これは必殺としては十分だが改善の余地ありだろう。

『間合いさえ取ればァ!』

 カレンとサザーランドの戦いを見れば既に決着がついていた。紅蓮弐式の右手は展開する事で伸びる。延長された腕により間合いを詰めたカレンはそのままサザーランドを掴み輻射波動を叩き込む。

『弾けろブリタニアッ!!』\ぽぺっ/

『お前達仲が良いな』

 通信を入れてきたのはC.C.。C.C.には俺とカレンがコーネリアと戦っている時の戦闘指示を命令してある。前にも思ったがC.C.はその実優秀だ。たまに皮肉や屁理屈を言うが真剣に教えれば飲み込みは早い。

「なんだC.C.嫉妬しているのか?」

『誰に向かって言っている。この肉ダルマめ。そろそろ想定地点だろう?私は当初の作戦通り背後を警戒しつつ援護する。他の部隊が現れたら足止めに入るから期待はするなよ』

「その前にケリを付けるさ」

 

 多数の日本解放戦線の無頼のロストを確認する。コーネリアだ。俺は一気に距離を詰めコーネリアのグロースターに攻撃を仕掛ける。

「コーネリアッ!!」

 まずは廻転刃刀、コイツは輻射波動と異なり燃費が悪いなどと言う事はなく使い易い手持ちの近接武器だ。

『ゼロか!?まさかノコノコと現れてくれるとはな!』

 ランスと廻転刃刀がぶつかり火花を散らす。

『姫様!』

 向かってくるグロースターにスラッシュハーケンを撃ち込み牽制しつつ距離を取る。

「カレン!コイツら以外の雑魚は任せる。C.C.!お前は戦況を見つつ柔軟に援護射撃をしろ!」

『簡単に言ってくれるわね!』

『つまり自由にやれと言うことか』

 

『数が多いからって調子に乗るなァ!!』

 カレンの暴れっぷりは目を見張るものがある。圧倒的数の不利を感じさせない立ち回り、輻射波動という一撃必殺を早々に見せつけ、警戒した機体をC.C.の援護射撃により浮き足立たせ生じた隙を逃さず更なる追撃、見事というべきだろう。

『ゼロ!藤堂達はそちらに合流出来なくなった』

「何が起きた?」

 俺がコーネリアともう一人を相手していると片瀬から連絡が入る。

『コーネリアの背後を突こうとしたところ、突出したところに配置されていた白いナイトメアにより足止めを食らっているそうだ。』

 スザクか。いくら5対1でも厳しい筈だ。カレンの方を見れば先ほどまでの勢いはない。連続で輻射波動を用いたことで輻射波動を使うだけの余力は残っていないようだ。C.C.達の援護チームもコーネリアを守る為に戻ってきた部隊と交戦、押され始めている。藤堂達も動けない、ならばここで押し切らなければ負けだ。

「片瀬、作戦行動εだ、ここで予備を含めた全部隊を投入しろ。」

『勝てるかゼロ?』

「包囲網の一部を崩せば勝機はある」

 とりあえず、兵隊同士の闘いが拮抗していた以上、予備を出した分こちらの方が優勢になる筈。既に隠し通路等の情報が出尽くして不意が打てなくなったとは言え、単純な数の増加は侮れない。更に一方向に集中させることで包囲網の一つを崩す。包囲網さえ崩せばこちらの士気は上がり、逆に向こうは下がる筈だ。

『そろそろ終わりだゼロ!』

 決着を焦っただろうコーネリアの一撃を左手で防ぎ、輻射波動を放つ。

『なんだこれは!?』

 チッ、勘のいいやつだ。右腕をパージして被害を最小限に抑えるとは。

『姫様!』

『構うな!ゼロを落とせば勢いは止まる!』

 俺はコーネリアではないグロースターに廻転刃刀を投げ付ける。

『野蛮なイレブンが!』

 狙い通りランスで弾いたか、ライフルでコーネリアを牽制しつつ、俺は距離を詰め再び輻射波動を放つ。

『その左手にさえ気をつけていればそんなもの!』

 躱されるがそれすらも俺の狙い通り。右手のライフルを投げ輻射波動で爆破する。左手はダメになるがダメージは与えられる。そのまま輻射波動の使えなくなった左腕を伸ばしつつグロースターをブン殴り、ランスを奪う。奪ったランスで串刺しにする直前脱出されたが、コーネリアを単騎にできれば十分だ。

「覚悟しろコーネリア。サイタマでの屈辱を晴らしてやる」

『甘いなゼロ、敵の武器を利用するのは貴様だけではない!』

 コーネリアのグロースターの手に握られているのは俺が投げ付けランスで弾かれた廻転刃刀。どうやらブリタニアの魔女と呼ばれるだけのことはあるようだ。

 再び刀と槍がぶつかり火花を散らす。とは言えリーチはこちらの方が上だ。コーネリアは初めて使う刀を上手く使いランスをいなすが押し込めている。

『ゼロ!こちらは終わりました!そちらの援護に!』

「でかした!」

 日本解放戦線の押し込みにより防衛ラインの押し上げには成功している。紅蓮弐式の右腕がコーネリアのグロースターの脚を砕くことに成功する。

 

 これで俺の勝ちだ!コーネリア!

 

 




ギアスと殴打による記憶欠落によりアッシュフォード学園の生徒を怪しめないヴィレッタはディートハルトのもとを訪れず、ディートハルトもナリタの情報が貰えないので今回の流れになりました。

ブリタニアの侵攻を知らないのと、日本解放戦線と手を組もうとしているので土石流作戦は未実行。

・月下先行試作型についてはロストカラーズというゲームから設定を持ってきました。調べた感じ、原作月下と同タイミングの入手みたいですが、月下より先行してロールアウトしていて、そもそも紅蓮と月下か基本的構造が同じなことからこのタイミングで入手することも可能かなーと。流石に無頼ではルルーシュが無双できないので。


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STAGE11

ブリタニアの少年、ルルーシュは、力を三つ持っている。
一つはギアス、如何なる相手にでも命令を下せる絶対順守の力。
一つは黒の騎士団、父が統治するブリタニア帝国を破壊するための、彼の軍隊。
最後の一つは筋肉。筋肉は全てを解決する。純粋な腕力の前に全ては平伏す。

それでは本編スタートです。


 コーネリア総督はナンバーズに厳しいお方だ。今回の包囲作戦でも僕ら特派は参加を許されず後方にて待機となっている。河口湖での囮作戦成功の功績を認めて僕を准尉に特進させたことを考えると、やはりユフィのお姉さんということもあって根は優しい人に違いない。…あ、これはなんだろう、口に出したら不敬なんだろうなぁ…。今回の包囲作戦は圧倒的物量で徹底的に日本解放戦線を潰す予定らしい。テロという間違った方法をとる彼らには申し訳ないけれど潰れてもらうしかないだろう。同じ日本人…イレブンを手に掛けなくて良いということで内心ほっとしている自分がいる。僕は卑怯者だな…。

 

 作戦が始まると当初の予想は覆り、苦戦を強いられていた。山全体を要塞化しているらしく、神出鬼没な日本解放戦線に不意を打たれる事態が多発した。

「あら〜?苦戦してるみたいだね〜これはもしかしたら出番あるかも?おめでと〜!」

 ロイドさんが言うようにこのままだとランスロットの出番があるかもしれない。そうなれば容赦なく叩かせてもらう。僕はブリタニアで評価され始めたんだ。このまま功績を上げ続ければきっとイレブンへの風当たりは良くなる筈だ。

 

 コーネリア総督の部隊から驚くべき通信が入った。日本解放戦線と黒の騎士団が協力しているらしい。そう考えればコーネリア総督の苦戦も理由がわかる。相手の指揮官はゼロ…即ちルルーシュだ。ルルーシュ、戦場であったら容赦は出来ない。ナナリーを悲しませることになるかもしれないが、君を止めなければもっと多くの人が悲しむことになるかもしれない。学校では…彼への恩もあるしそれは出来ないけれど…。

 暫くするとランスロットに出撃命令が下されることになる。総督の背後を守る部隊が何者かによって討ち取られているらしい。ロイドさんがユフィ…ユーフェミア副総督に直々に総督の救援を申し出たのだ。

『イレギュラーは大人しくしておれ!』

「まぁまぁ、うちらがやられてもそちらの損失にはならないんですし、いいじゃないですか」

『枢木准尉、お願いします。ランスロット、出撃してください。』

 僕は力強く頷く。

「イエス、ユア ハイネス!」

 

 僕は総督の背後に迫る敵部隊と接敵すると既に総督の背後を守る部隊は全滅していた。

「敵の数は…たった五機…?戦い慣れてるのか…!」

 見れば手に刀を持っている。こちらはMVSで応戦する。見たところグラスゴーを改修した機体の様だけど、動きが違う。機体の性能差を腕と立ち回り、数で補われている。数度攻撃を受けてみればわかる。並のサザーランドではこれは止められない!

「いくら数が多くても!」

 僕はヴァリスを向け放つが、残骸のサザーランドを盾にする様に前に放り投げられ防がれてしまった。

『スザクくん!方向に気を付けて、ヴァリスの流れ弾がもし総督の方に向かって当たりでもしたら…』

『あっはぁ!クロヴィス殿下殺害疑惑の次はコーネリア殿下殺害疑惑だねぇ!あっちょ…やめ…』

 確かに…今の防御でもわかったけれど迂闊にヴァリスは使えない。それに背後からの斬撃!シールドで受けたけれど、エナジーを消費するシールドの多用は厳禁だ。

『へぇ、やるじゃん』

 ただでさえ人数不利、次々から斬撃を捌くのに僕は両手にMVSを握ることにし、隙を窺うことにした。一人でも減らせればそこから勝機が見えるかもしれない。

 

 左右からの同時攻撃をスラッシュハーケンを使ったジャンプで躱し、続けて孤立した機体に向けてハーケンを飛ばして距離を詰める。一撃目のMVSは刀で防がれるがもう一本のMVS…は接近してきた別のナイトメアの攻撃に対する防御に使用する。仕方が無いのでナイトメアを蹴ることで距離を開け、敵の数を確認する。

 

 …一機足りない?

 

 僕はすかさず回し蹴りを放つ。すると僕の読みは当たったようで、ナイトメアを蹴り飛ばすことに成功した。

『無事か?』

『中々鋭い勘の持ち主だ』

 再び周りを見渡せばきっちり5機のナイトメアに囲まれているようだ。更にナイトメア達は等間隔に距離を開け僕の周りを旋回している。示し合わせたように距離を詰めては斬撃を繰り出してくるのでそれを防ぐ。攻めきれない…!?ランスロットでも!?

 

 すると、ユフィ…副総督から通信が入る。

『スザク!お姉様が!』

 次々と襲い来る斬撃を捌きながらモニターを見れば総督が敗北したらしい。なんとかしなければ…!危険だがやるしか無い。総督のナイトメアが動けないなら流れ弾が当たる可能性は低い。僕はしっかりと方向を狙い、僕を囲むナイトメアが巻き添いになるタイミングでヴァリスを最大出力で放つ。

『何!?』『きゃあ!?』

 5機の内2機の脚部と腕を破壊することに成功し、同時に総督への道も開けた。距離を詰められ襲い来る斬撃をヴァリスを犠牲に防ぎ、MVSを投げつける。

『大丈夫?』『中々面白い闘い方をする…!』

 残すは2機だが、優先すべきは総督の命だ。僕はナイトメア達に背を向け総督の元を目指す。

 

 

 

 突然地面が抉れ、吹き飛ばされた。コーネリアがいると言うのに無茶苦茶なことをする…!こんなことをやる奴の心当たりは一人しかいない、スザクだ。

「藤堂、そちらは無事か?」

『済まないゼロ、突破された。二人は動けるがどうする?』

「これ以上は消耗戦だ。破損したナイトメアは廃棄してこちらに合流しろ!」

 先ほどの攻撃の巻き添えで紅蓮はボロボロだ。C.C.に頼んで下がらせるしかない。そして現れたのは白いナイトメア…スザクだ。

『ゼロだな!?君を止めに来た!』

「やれるものならやってみろ!」

 ランスを投擲しつつ廻転刃刀を拾い上げ一気に距離を詰める。ランスは弾かれるが隙は作れた。廻転刃刀の一撃はシールドに防がれるがそれくらいは予想済み。俺は蹴りを繰り出す…が、それを脚で防がれる。やるなスザク、こちらの手を読んでいる!

『ゼロ!加勢する!』『藤堂さんがそう言うなら僕も!』

 スザクはスラッシュハーケンによる跳躍で背後からの攻撃を躱し、すぐさまコーネリアのグロースターに接近する。しまった、狙いは初めからコーネリアか!

 こちらは遠距離攻撃を持たず、ハーケンによる跳躍とそもそもの機動力が勝る白いナイトメアに追いつく・追い討ちを仕掛ける余裕はなく取り逃がしてしまう。

『ゼロ、聞こえるか。片瀬だ。包囲網の突破に成功した。我々はこのまま包囲網の穴を広げる。黒の騎士団だけでも今のうちに撤退してくれ。』

「馬鹿を言うな!ここで黒の騎士団が撤退しては再び押し返されるぞ!」

 今辛うじて抑え込めているのは我々黒の騎士団と日本解放戦線の両軍が居るからこそだ。ここでの戦力分散は自殺行為に等しい。

『このままこの地に留まればやがてブリタニアの援軍がやってくる。何も我々とてこの地で滅ぶつもりはない。日本人の意地と誇りにかけて突破してみせる。今回の戦いで確信したよ。君さえ居れば日本は再び立ち上がれる。また会おう、同志よ。次会うときは秘蔵の酒を振舞わせてくれ』

「申し訳ない。私は酒は頂けないが…次会うときを楽しみにさせて頂く。」

『さらばだゼロ、共に戦えて光栄だった』

 藤堂はそう言うと残りの四聖剣と共に山を登っていく。彼らの覚悟は固そうだ。諦めて俺達黒の騎士団は日本解放戦線がこじ開けてくれた包囲網の穴を使い撤退した。俺の月下は左手が全損、紅蓮も右手も修理が必要だ。団員もいくらか死んだが…俺達は生き残った。

 

 因みに包囲網の突破後にも何機かのサザーランドに遭遇したが全員ぶん殴って始末した。お陰で月下の右手もダメになってしまった。\もっと丁寧に扱いなさいよ!!/

 

 

 

 ここはどこだ?私は誰だ?わからないことだらけだが、口に入った土の味が不快なことはわかる。嫌に重たい体をなんとか持ち上げ、入ってしまった口の土を吐き出す。がさりと物音がし振り返ると何やら男性がいるようだ。

「大丈夫ですか?軍人さん!」

「あなたは…?」

「私はフェネットと言います。軍人さん、ひどい怪我だ。立てますか?ほら、肩を貸しますから」

「ありがとうございます…」

 フェネット氏は重たいであろう私の体を懸命に支えてくれた。

「ここはどこです…?」

「ナリタですよ。全く、仕事の関係で地質調査に来たらナイトメア同士の戦闘に巻き込まれるとは散々です。同僚達とははぐれてしまったし…この前は娘がテロに巻き込まれましてねぇ…私が何をしたって言うんだか」

「我々が不甲斐ないばかりにすみません…」

 私は軍人だ。名前はわからないが…きっと軍人だ。彼ら一般市民がテロに怯えるのは我々が情けないからだ。

「軍人さんが悪いわけじゃありませんよ。テロをする奴らが悪いんです。シャーリー…あ、私の娘なんですけどね、シャーリーは観光に行った先でテロに巻き込まれたんです。黒の騎士団とか言う奴らに救助されたって言ったましたけど、テロリストはテロリストですよ。」

「黒の…騎士団…?……………ゼロォーーーー!!!」

 その名前を聞くと私は頭痛に襲われた。

「ど、どうしたんですか!?少し休みますか?」

 私は突然の頭が破れるような感覚に倒れてしまう。黒の騎士団…ゼロ…!何故かは思い出せないが、その名前を聞くと許せない気持ちになる。フェネット氏は私に木陰で休むように言う。しばらくすると私も気分が落ち着いたように思える。

「娘さん、ご無事でよかったですね…」

「え?ええ、本当に。あ、うちの娘見ます?嫁に似て別嬪に育ってくれたんです。ほら」

 写真にはフェネット氏と二人で仲良さげに写真に写るオレンジ髪の可愛らしい女性が写っていた。

「確かに可愛らしい女性だ。」

「でしょう?昔はパパと結婚するなんて言ってくれたたんですけどね、こんなに可愛く育つと悪い虫が付かないか心配になるものです。…おっと、また話が過ぎましたね。さぁ、麓まで降りましょう。」

 再びフェネット氏の肩を借りた私は街らしきところまでやってきました。

「さ、あの道路を渡りましょう。街まで行けば安全に体を休められる場所がありますよ」

 私たちが道路を渡ろうとしたとき、トラックが突っ込んできました。

 

「危ない!」

 

 私はフェネット氏に突き飛ばして頂きましたですね?道路上を回転ローリングそしてオールハイルブリタニア!

「オレンジじゃ…無いんです…ゼロォーーーー!!!」




あれ?C.C.の本名回収イベントは???

シャーリーパパイベントを挿入。土砂崩れが起きてないから生き埋めにされてないよ!やったねフェネット氏!


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STAGE12

 京都六家と呼ばれる存在はキョウトとして日本の反ブリタニア組織への援助を行なっていた。しかし、ナリタにおける日本解放戦線とブリタニアの戦いにおいて、黒の騎士団が撤退した後の日本解放戦線は再度包囲され、多大な犠牲を払い一部がなんとか逃げ出すことができた程度に酷く壊滅した。
「ブリタニアの皇女がこれほどとはな…」
「解放戦線は分裂し、日本の灯は消え去りました。」
「待たれよ。逃走中とは言え藤堂は未だ健在ですぞ。」
「無頼改も失ったと書いておる。最早希望は…」
 火を囲む者達とは別に、簾を挟んだ幼女が口を開いた。

「希望はありますわーーー!!!」

「ええい、でかい声を出すな。黒の騎士団か?枢木スザク救出の一件依頼ゼロにご執心ですな」
「当然ですわーーー!!!」
「ええい、黙るのだ!!」

という訳で本編スタートです。


 クソッ!なんと言うことだ!失態だ!取り返しがつかない…!俺は必死に走り、なんとか必要なものをかき集める。ここはカレンに…?いやダメだ。ならばスザクに…ありえない!C.C.…一向の余地はあるか?いや、やはりこれは俺がやるしか無い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナナリー、体を拭くぞ」

 

 

 

 

 

 

「はい、お兄様」

 ナナリーが熱を出した。熱冷ましの薬は飲ませてあるが、まだ効き目はないようだ。ナナリーの身体を拭き、新しい寝着を着せる。

「さぁナナリー、少しは食べないと体力がもたないぞ?」

「はい…」

 弱々しいナナリーを抱え、お粥をスプーンで掬い、よく冷ましてから口に運ぶ。俺の肺活量をもってすれば熱々のお粥をヒエッヒエにすることなど容易だ。冷え過ぎてカチカチになったお粥をナナリーは暫く食べ進むがこれ以上は辛いと言ったナナリーの意志を尊重し、再び寝かせる。よく冷えた濡れタオルを額に当てるが、中々熱は冷めなそうだ。後は暫くC.C.に任せて俺は一度生徒会に顔を出すことにしよう。

 

「…ね?その辺どうなのルルーシュ」

 入るなり謎の質問を会長から投げられた。俺はとりあえず無言でシャツを脱ぎ上半身裸になってからタブルバイセップスを決める。

「「「……」」」

 長い沈黙の後、口を開いたのはシャーリーだ。

「ルル、今日は休みじゃ…?」

「ナナリーが熱を出してね。」

 俺は服を着ながら返事をした。

「そうなんだ、ナナちゃん具合はいいの?」

「食欲が少し無いけどまぁ落ち着いたよ。心配だから今日1日は看病するけどね。会長、言われてた書類ですけど」

 看病ついでに内職しろと言う会長だが、ナナリーの看病を何だと思っているのか。正直少し腹が立っている。

「その机の上よ、各学年クラスごとに仕分けよろしく!」

 言われた書類を抱えて俺は生徒会室を出るが、後からシャーリーがやってきた。

「ルル、その書類の束に私の手紙混ざってない!?」

「手紙?あぁ、これか。悪いな」

 俺は手紙を渡すがシャーリーの様子がおかしい。

「ルル!」

「はい。」

 シャーリーは手紙の中からチケットを取り出し、一枚を俺に手渡してきた。何だこれ?プロレスのチケット?出る方じゃなくて見る方のようだ。

「父さん単身赴任してて。でも私のご機嫌取りにってよくこういうの送ってくるの。それでなんだけど…」

「娘にプロレスのチケット?フェネット氏は中々愉快なセンスをしているな…」

 普通コンサートとかじゃ無いのか?

「…私が頼んでるの。プロレスが良いって」

 失言だった。その後は半ば強引に約束を取り付けられ…俺自身プロレスは嫌いでは無いので断らなかった。

 

 黒の騎士団のアジトとしている大型車の中で、今度は扇が俺に手紙を渡してきた。

「はいこれ」

「ん?なんだ?」

「ラブレター」

「どれどれ?」

 中を見てみると、日本語で「早くお会いしとうございます、ゼロ様!好きですわーーー!!!」と、筆により懇切丁寧に認められていた。うむ、確かにラブレターだな。どちらかと言うと恋文という言葉の方が合う気がするな。

「あとこれも」

「またラブレターか?」

 ふふ、俺くらい魅力ある肉体になればそりゃあみんな放っておかないよな。中を見るとキョウトからの勅書のようだ。直接会いたいとも書かれている。ラブレターではなかったか

「キョウトに認めてもらえれば資金援助も筋トレ道具の提供もしてもらえる。俺たちの貧弱な筋肉も…」

「貧弱な筋肉?私の考案したトレーニング方法なら問題無かったはずだが?」

 話を聞けば俺の考案したメニューはキツすぎるらしい。うーむ、俺基準でメニューを決めたのはダメだったか。今のところ実施できてるのはカレンだけらしい。

 

 その後、俺はキョウトのメンバーについて、なんとか12人まで絞り込んだ。これ以上はどうしても情報が足りない。やはりどうしてもアドリブが必要になるだろう。

 

 俺が帰るとC.C.とナナリーは談笑しているようだった。

「まぁ!お兄様が?」

「あぁ、おかしいだろう?…おや」

「何を話していた?C.C.」

 C.C.は水の入った桶や空になった食器、タオルをまとめるとスタスタと部屋を出ていく。俺の質問は無視するらしい。良い加減な女だ。

「…何話したたんだい?」

「乙女の秘密です。ふふっ」

 

 可愛い。

 

 ナナリーにそう言われてはこれ以上言及はできないな。看病自体はしてくれたようだし、今日のところは勘弁してやろう。

「ナナリー、もう体調はいいのかい?」

「はい、ちょっと拗ねてみただけなのかも」

 拗ねる…?

「最近、お兄様が遠くなったようなそんな気がして。」

 そう言われて俺はナナリーを両手で抱き上げる。

「誓うよ。俺は筋肉量と体脂肪率以外は変わらない。何があろうといつまでもお前の傍にいるよ。ナナリー」

 再びベッドに寝かせると、ナナリーが手を布団の外に出した。きっと手を握ってほしいのだろう。俺は力を込めたらへし折ってしまいそうな可愛らしいナナリーの手を優しく握る。

「ねえお兄様、我儘を言ってもいいですか?もう少しだけ手を握っていてください。このまま1人で眠るとまたあの夢を見てしまいそうな気がして…」

「あぁ、手どころか抱き締めて寝ても良いぞ」

「あ、それは骨が折られそうなので遠慮します。お兄様ったら最近また物を壊されたんでしょう?C.C.さんから聞きましたわ」

 ナナリーに拒否された…!?馬鹿な…!おのれC.C.…!!

 

 次の日…それは今日がキョウトに行く日という意味だ。仕込みのために俺はC.C.に頼むことがあった。

「C.C.今日はお前に頼み事がある。」

「今日"も"の間違いだろ。今日は何をすれば良いんだ?ナナリーの世話か?ナイトメアで暴れるか?それともスザクとか言う男を籠絡すれば良いか?なんだってやってやろうじゃないか。」

 C.C.にスザクが籠絡できるとは思えないし、させるつもりもない。

「今日はスニーキングミッションをしてもらうだけだ。」

「スニーキングミッション?不安だな、私はスタイルが良いから狭いところは通れないんだ」

「俺よりは細いだろう」

「お前と比べる奴があるか…」

 俺はC.C.に作戦を話した、C.C.は了承するが、何故か懐からチケットを取り出し、俺に突きつけてくる。

「忘れ物だぞ?」

「忘れたんじゃない。今日はいつ帰れるかわからないから断りの電話を入れるつもりだったんだ。」

 しかしC.C.は譲らず、結局チケットは持つ羽目になった。まぁ、間に合わないとわかってから連絡するとしよう。済まないなシャーリー。そう思っているとそのシャーリーから電話がかかってくる。

「シャーリー。ちょうどよかった」

『今日の約束なんだけどね、遅れるかもしれない。でも…必ず行くから…』

 シャーリーの電話越しに小さく「ナリタ行き」と聞こえた気がするが、恐らく気のせいだろう。しかし俺の返事も聞かずに切るとはな…。

 

 待ち合わせ場所にて、俺は先に一人で運転手と会う。

「ッス!他の幹部の方もお連れするように呼ばれてんスけど??」

「万一の事態に備えて周囲を警戒してもらっているだけだ。直ぐに呼ぼう。だが、その前に…」

 俺はギアスを使う。

「"俺の質問に答えろ"」

「ッス」

「行き先はどこだ。」

「富士鉱山ッス。」

 サクラダイトに関与しているとは、流石に権力は馬鹿にできないらしい。

「それではお前達の主人とは誰だ。」

「ッス。桐原 泰三さんッス」

 桐原…これは当たりだな。カレンに連絡をし、暫定幹部を呼び出す。そしてC.C.には目的地を伝え、先に向かってもらう。あいつは本当に多才だ。バイクにも乗れるんだからな。

 

「随分と走るけど、まだ着かないのかしら」

「確かに、今どの辺だろう」

 井上と扇は落ち着きがないようだが、仕方のない話だろう。そう思っていると車が上に上がり出す。

「なんだ!?」

「上がってる…?」

 車を降り、窓の外を見ると流石な扇も今どこにいるのか理解したようだ。

「ここは…富士鉱山!?」

「嘘でしょ!?こんなところに来られるなんて…」

「でも間違い無いわよ、この山、この形…」

 耳の無線からC.C.の通信が入る。

『ルルーシュ、こちらC.C.問題なく侵入できたぞ。』

 俺は手元のスイッチを押し、「誰にも見つからなかったか?」と返信した。今会話する訳にはいかないからな。

『3人程に見つかったがショックイメージを見せて眠ってもらったよ。』

 俺は手元のスイッチを押し、「予定通り待機しろ」と返信した。

「醜かろう。」

 聞き覚えのある男の声が聞こえる。やはり昔スザクの家で何度か顔を見た男のようだ。

「かつて山紫水明、水清く緑豊かな霊峰として名を馳せた富士の山も今は帝国に屈しなすがままに陵辱され続ける。我ら日本の姿そのもの。嘆かわしきことよ…顔を見せぬ非礼を詫びよう。が…ゼロそれはお主も同じこと。」

 すると無頼が現れ、こちらに銃を向けていた。

「わしは見極めなければならぬ。お主が何者なのか。その素顔、見させてもらおう」

 カレンが不安そうな顔をするが俺は動じない。やがて扇が指名され、俺の仮面を外すように言われる。

「済まないゼロ」

 扇が俺の仮面を持ち上げ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようとするが、外れない。

 

「なんだこれ、外れない…」

「何をしておる」

 うんとこしょ、どっこいしょ、それでも仮面は外れません。

「済まない井上、手伝ってくれ」

「わかったわ」

 うんとこしょ、どっこいしょ、それでも仮面は外れません。

「何をしておる!」

「カレンも手伝ってくれ!」

「私!?」

 うんとこしょ、どっこいしょ、それでも仮面は外れません。

「何をしておる!!」

「そこのあんたも手伝ってくれ!」

「我々は御前の護衛が…まあいい!」

 うんとこしょ、どっこいしょ、それでも仮面は外れません。

「御前!!外れません!!」

「ワシを馬鹿にしておるのか!?」

「いいえ?していませんよ?キョウトの代表、桐原 泰三」

「!」

 無頼と黒服の男達は銃を向けるが、先にチェックを仕掛けているのはこちらだ。

「動くな」

「いつの間に…!」

 こっそりと潜入させていたC.C.は桐原に至近距離から銃を向けている。

「貴様!」

 黒服の男が俺に発砲するが、俺はそれを摘んでみせる。

「なっ!?」

「はじめに…仮面が取れなかった理由を教えよう。それは筋肉だ。」

「「「「は?」」」」

「俺はこの仮面を首の筋肉を膨張させることでつっかえらせ、外れないようにしていたのだ。」

 続けて俺は摘んでいた弾を黒服に投げつけ失神させる。

「お前達は鍛え方がぬるい…だから単純な力にも勝てないのだ!」

 得られた情報からここから一気に追い詰めてやる。

「桐原泰三。サクラダイト採掘業務を一手に担う桐原産業の創設者にして枢木政権の陰の立て役者…しかし敗戦後は身を翻し植民地支配の積極的協力者となる通称売国奴の桐原。しかしその実態は全国のレジスタンスを束ねるキョウト六家の重鎮。面従腹背か…安いな」

「貴様御前のお気持ちも知らずに!」

 俺はほぼ同時に二人の黒服を殴り飛ばす。二人は当分目覚めないだろう。

「私は貴方の想像通り日本人ではない。」

「待てゼロよ。何故今殴った」

「脊髄反射だ」

「そ、そうか…」

 桐原は俺の答えに納得してくれたようだ。

「日本人ならざるお前が何故戦う?何を望んでおる?」

「ブリタニアの崩壊を。叩き潰すのです、この拳で!」

 そして俺はアドミナブル・アンド・サイを決め、仮面を外す。この角度なら桐原にしか見えない。

「貴方が相手でよかった」

「お主………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰だ…!?」

「え?」

 思わず声が出てしまった。覚えていない?俺を…?

「えーっと、覚えていませんか?8年前、あの家で預けられていた私を」

「……………あー!!えーー!?嘘じゃろ…!?ワシびっくりしちゃったぞい…どひゃー!…人間八年でこうも変わるんか…思わず粗相しちまったわ…わははは…」

 桐原は俺を思い出したらしく、納得したようだ。

「扇よ!この者は偽りなきブリタニアの敵。素顔をさらせぬ訳も、目的の為に鍛えられた肉体も得心がいった。わしが保証しよう。ゼロについていけ。情報の隠蔽や拠点探し、高タンパク低カロリーな食事などはわしらも協力する」

「ありがとうございます!」

 こうして俺達黒の騎士団はキョウトからの協力を約束された。

 

 そして俺は一応シャーリーとの待ち合わせの場所に全速力で向かっていた。まぁ、流石にもういないだろうが…。明日ちゃんと謝るとしよう。そう思っていると、雨の中見覚えのある人影が佇んでいるのが見える。

「シャーリー!?遅れて済まない。こんなに濡れてたら体に悪い。プロレス観戦はやめて直ぐに雨宿りできるところに…」

「ねぇ、ルル。黒の騎士団って正義の味方なんだよね?」

「あ、あぁ、そう言ってたな…悪いが持ち上げるぞ!」

 俺はシャーリーを抱えて屋根のある場所を探す。俺に抱えられたままシャーリーは言葉を続ける。

「なら、なんで私のお父さん殺したんだろ」

 殺した…?黒の騎士団が?どう言うことだ一体…

「私、お父さんにぶたれたこともなくて…何も悪いことしてないのに…なのに…お父さん、撃たれて…こんなの嫌よ、嫌!いやぁ…!」

 シャーリーはそのまま俺の首に手を回してくる。

 

「ルル…助けて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私がその人を発見した時、その人はすでに生き絶えていた。頭部に銃撃を受けた様子で、なんの恨みがあるのか、体は何かに強くぶつかったように酷くボロボロになっていた。所持品から男性と女性とのツーショット写真が発見され、データベースで照合。父と娘だと判明したためご家族に連絡を入れた。私は第一発見者だったこと、私は軍人ということもあり、ナリタでの後始末に追われる警察の代わりに彼の身元確認に立ち会った。

 

 娘さんからIDを確認させてもらった時、一枚の写真がヒラヒラと落ちてしまったため、拾おうとした時、誤って安置台に頭をぶつけてしまった。痛みを堪えてぶつけてしまったところをさすりつつ、拾った写真を見ると若い男のようだ。コイツの彼氏か?中々イケメンだな。…しかしやたら肩幅が広いな…。

 

 私の脳裏に何かのビジョンが写った。頭痛、男…

 

 

 

 そして、肩幅。




神楽耶様は歪んだ世界の犠牲になったのですわーーー!!!

おかしい。脳筋ルルーシュによるおふざけ世界のはずがどんどん暗くなっていく。

●オマケ● NGシーン
 そして俺は一応シャーリーとの待ち合わせの場所に全速力で向かっていた。まぁ、流石にもういないだろうが…。明日ちゃんと謝るとしよう。そう思っていると、雨の中見覚えのある人影が佇んでいるのが見える。
「シャーリー!?遅れて済まない。こんなに濡れてたら体に悪い。今雨雲を吹き飛ばすからな」
「…え?」
「ふんっ!!!」
 渾身の正拳突き、俺の肉体から放たれたそれは拳圧で雨雲を穿ち、空に風穴を開ける。
「これでよし、さぁプロレス観戦に行こうシャーリー」
 俺はシャーリーを抱き抱え歩み始めた。


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STAGE13

ナリタにて土石流攻撃をしなかったため、この辺から一部のシナリオが変わりますが、話の大筋は変わりません。

そんな訳で本編スタートです。


 フェネット氏の死、やったのは黒の騎士団だとシャーリーから聞いた。だがそれ以上踏み込んだことを聞くことはできなかった。当然だ、俺にだってそれくらいの良識はある。

「あなた…あなた…うぅ…」

「お母さん…」

 フェネット氏の土葬を俺は黙って見ることしかできなかった。そして、ふとスザクと目があった気がする。あいつの目は俺を睨み…そしてシャーリーを悲しそうな目で見ていた。

 

「サインがなくても通じるもんだな…」

「流石にあの雰囲気でサインを出すほど僕も馬鹿じゃないよ。」

 学園の屋上、俺を睨むスザクと対峙した。

「フェネット氏の死因、聞いたろ?強い衝撃と頭部への銃撃…やったのは黒の騎士団だと聞く。」

「俺じゃない…俺はやっていない!」

「君はゼロだ。黒の騎士団のリーダーだ!君のせいでシャーリーのお父さんは死んだんだ!」

 スザクに胸ぐらを掴まれる。俺は抵抗しなかった。

「確かに黒の騎士団の一員がやった可能性もある…だが、理由が無い…!ブリタニアの兵士ならまだしも、民間人を襲うなんて有り得ない!」

「何が正義の味方だ!君たちは一方的に人を殺すテロリストだ!大方見られて不味いものでも見られて口封じをしたんだろう!」

 どうにかしなくては…この状況を。そもそも、フェネット氏は本当に黒の騎士団に殺されたのか?何のために?

「待ってくれスザク…そもそも本当に黒の騎士団に殺されたのか?」

「他に誰がいるって言うんだ!」

 口封じ…そう、口封じだ…!

「スザク、もしもナリタにブリタニアの秘密の研究機関があったとしたら…?」

「そんな都合のいい話があってたまるか!」

 スザクは怒鳴るが、スザクを説得できるカードはすでに手の中にある。

「お前も見たはずだろ?毒ガスと偽られていたカプセルの女を!」

「!」

 そう、C.C.はクロヴィスによって極秘裏に研究されていたと言っていた。クロヴィスが死んだことで次の総督に研究がバレない様に移設…日本解放戦線の勢力範囲ないならば軍の捜査が及び難いと考えたのなら…?スザクは動揺したのか、胸ぐらを掴む手の力が弱まった。

「お前がもし、軍に見られて都合の悪いものを持っていて、軍から見つからない様に場所を動かすならどうする?」

「…軍でも手の出しにくい所に…あぁ、そういうことか…」

 そう、日本解放戦線の勢力範囲であるナリタの近く。辻褄は合うのだ。

「そんな…まさかブリタニアが民間人を…!?」

「…あくまで可能性だ。もしも黒の騎士団がやったのなら俺はシャーリーに正直に謝り、償いもする。だから協力してくれスザク。お前だって冤罪に苦しめられた身だろう!?」

「っ!…君は卑怯だ!そう言われたら…調べざるを得ないじゃないか…」

 ようやく俺はスザクから解放された。

「ルルーシュ、僕は君のために真相を調べるんじゃない。シャーリーのために真相を調べるんだ。彼女には全てを知る権利がある!」

「…分かった。俺は黒の騎士団の内部を調べる。軍の方は任せたぞ」

 

 スザクと別れた俺はゼロとして黒の騎士団でフェネット氏を殺害したかの調査を行った。カレンに事情を説明したところ、彼女も積極的に協力をしてくれている。カレンも俺と同じ気持ちなのだろう。内部調査の結果として、誰も心当たりはないそうだ。当然である、俺達は逃げるのに必死だったのだから。

「ゼロ!聞いてくれ」

「犯人がいたのか?」

「いや、そうじゃ無いんだ。キョウトから日本解放戦線の救援要請が来てる。」

 差し出された端末には港のタンカーにて日本解放戦線の生き残りが集結し、救援を待っているらしいことが書かれていた。俺達に日本解放の希望を託してくれた人だ。見殺しには出来ない。それに最早武器を持たぬ彼らだ。弱者を助けるのが正義の味方というものだろう。

 

 俺達が港に到着した時には既に日本解放戦線はブリタニア軍に包囲されていた。とは言え片瀬をやらせる訳にはいかない。

「黒の騎士団はブリタニア軍に対し奇襲攻撃を仕掛ける!ブリタニア軍を殲滅し我らが同志を救うのだ!ナイトメアは起動する前に海に叩き落とせば無力化出来る、数の差を覆し奇跡を起こすぞ!」

 俺が全軍に指示を飛ばしていると片瀬から通信が入った。

『ゼロ、聞こえるかゼロよ』

「片瀬か、今助けてやるもう暫く堪えてくれ!」

 しかし、モニターに映る片瀬は首を横に振る。

『我々が囮になる。奴らのナイトメアが取り付いたら流体サクラダイトを爆破させ奴等を道連れにするつもりだ。その混乱の隙にコーネリアを討って欲しい!』

「馬鹿を言うな!切り捨てるだけでは!」

 しかし、片瀬は黙って敬礼するだけだった。

『藤堂と四聖剣にはもしものことがあれば君達に従う様に言ってある。我ら日本人の希望は君に託す。ゼロ、後は任せたぞ』

 タンカーにナイトメアが取り付くと同時に大爆発が起こる。

『日本、万ざ…』

 片瀬との通信は途切れた。こうなれば彼らの覚悟を無駄にしないためにも勝利するしかない…!

 

「うおおおおおおおおお!!!!どけぇええええ!!!」

 思い切り蹴り飛ばし、サザーランドを海に叩き落とす。更に蹴った時の反動を利用して逆回転しつつスラッシュハーケンを放つ。遠心力を得たスラッシュハーケンはグロースターの横っ腹をブチ抜いた。

『ゼロ!前に出過ぎです!ゼロ!!』

「お前達は俺の退路を確保していろ!」

 カレン達には俺の退路を確保する為にブリタニアのナイトメアを掃討してもらう。俺の狙いはコーネリアただ一人だ。

『敵陣に突っ込んでくるとは愚かな!』『総督に近づけるな!』『ナイトメアの起動を急がせろ!』

 ナイトメアによる周囲からの同時攻撃をスラッシュハーケンによる跳躍で回避し、アサルトライフルで一体、輻射波動でもう一体を仕留める。仕留めたナイトメアのランスを奪い、投擲して道を作り廻転刃刀で切り伏せ、コーネリアの元へと月下を走らせる。

『勇猛だなゼロ!だがナイトメア戦で私に勝てると思うなよ!!』

 ランスによる刺突を左手で受け流しつつ距離を詰め、廻転刃刀で斬撃を仕掛ける。

『舐めるな!』

 放たれたスラッシュハーケンを弾くが、コーネリアには距離を取られてしまった。ならばここは意表を突くしかないだろう。

『私とてお前の闘い方は熟知している。その左手にさえ気を付ければ怖くはない!』

 俺は左手をコーネリアではなく、進行方向とは逆に向ける。

『何の真似だ!?』

 そして、一気に放つ!輻射波動により俺の月下は加速度を得る。そしてコーネリアのグロースターに膝蹴りを叩き込む。

『なんだと!?』

 振り上げた廻転刃刀を振り下ろせばチェックメイトだ!

『総督は僕が守る!!』

 俺は冷静ではなかったのだろう。背後から迫っていたスザクに気がつかなかった。奴の銃で刀を弾かれ、回転蹴りで左手を粉砕され、更なる斬撃により機体は限界に達した。

「クソ!ここまで来て!」

 脱出には成功した。

 

 …が、俺はあるミスを犯し、その後は紅蓮によって回収された。

 

 

 

 お母さんは泣き疲れたようで部屋で休んでいる。私も少し疲れてしまったが、眠る気持ちにもなれなかった。学校はお休みしているけれど、むしろ他のことをしたほうが気分は紛れるのかもしれない。家の呼び鈴が鳴り、お母さんの代わりに私が出た。どこかで見た覚えのある女性だったけれど、あまりよく思い出せない。

「…何の用ですか?」

「極秘裏に調査していることがあってね、調査に協力いただきたい。君の父君の死にも関わることだ。」

 お父さんの…?そう言われては無視ができなかった。私は車に乗せられ、写真を見せられる…ルルの写真だ。ルル…あの日あんな流れでキスをせがんでしまった。今度謝らなければ…そんな風に思っていると、女の人はルルがゼロだと言ってきた。

「そ、そんなはずありません!」

「何も私も適当に言っているわけでは無い。この学生の肩幅…ゼロと似ているとは思わないか?」

 確かにゼロもルルも肩幅すごいけど、そんなことでゼロ扱いされたらルルだってたまったものではないだろう。

「世の中には肩幅のすごい男の人くらいいくらでもいますよ!」

「君がそう思うのは勝手だが…まぁいい」

 そうして女の人とは別れたが、どうしてもあの人の言葉が引っかかってしまった。そうだ、私がルルの真実を証明してあげれば良いんだ。うん、そうだ。ルルがそんなひどいことを…お父さんを殺すはずがないのだから

「ルル、まってて…私がルルの真実を証明してみせるから…!」

 ルルを疑う様な行動に少し胸が痛むが、たまたまルルが学園を出るところを見かけた。ルルが外で何かをしている時にゼロが何かをすればルルの無実が証明できるはずだ。

「ごめんねルル、こんな疑うようなこと…」

 港の方まで来て私はルルを見失ってしまった。いけない、このままではルルの無実を証明出来ない。そう思っていると聞いたこともない恐ろしい音がする。

「これってテロ!?本当にルルが…!?」

 

 私が恐る恐る大きな音のした方に行くと、ナイトメアのコクピットブロックらしきものがあった。スザクくんに前教えてもらった感じとは形状が違うけれど…

「くっ…!失態だ。聞こえるか?私だ。位置情報を送る、回収を頼んだぞ。片瀬達に申し訳が立たないが作戦は失敗だ!ここで俺達まで討たれるわけにはいかない!撤退する!」

 あれはゼロ…!どうしよう、まだこちらには気づいていないみたいだけど、今なら逃げられるかも…そう思ってその場を離れようとすると、ゼロはこちらに顔を向けた。

「誰だ!そこにいるのは!」

「ひっ…!」

 ゼロに見つかってしまった。私は急いでその場を離れた。すると誰かとぶつかってしまう。どうしよう、黒の騎士団だったらお父さんみたいに殺されちゃうのかもしれない。

「見失った様だな?使えない奴め」

 ルルのことを言ってきた女の人だ。…どうしてこちらに銃を向けているの…?私、殺されちゃうの…!?いや、恐怖で足が動かない。誰か、誰か助けて…

 

「シャーリーから離れろ!」

 

 突如ゼロがやってきて女の人を蹴り飛ばした。女の人は海の方まで吹っ飛び、ドボンという落下音が聞こえる。

「な、何で私のこと…助けてくれたの…?」

 ゼロはお父さんを殺した人なのに。

「武器を持たない女性に銃を向ける悪人に正義を執行したまでだ。」

 ゼロはそう言うけれど、お父さんを殺した人達だ。やっぱり信用できない。そう思っていると続けて爆発音が聞こえてきた。

『ゼロ!こちらでしたか、撤退します、さあ捕まって!』

「おい待て!まだ…!」

 ゼロは突然現れた赤いナイトメアに連れて行かれてしまった。私はゼロに助けてもらったけれど、お礼を言うべきだったのだろうか?でも、黒の騎士団は私のお父さんを殺した人たちだし…あれ?

『シャーリーから離れろ!』

 どうしてゼロは私の名を知っていたの?

『何も私も適当に言っているわけでは無い。この学生の肩幅…ゼロと似ているとは思わないか?』

 

 私の名前を知っているあの筋肉量を持つ人を、私は一人しか知らない。

 




脳筋世界の日本解放戦線は漢気に上方修正が掛かっています。片瀬少将に敬礼!

ヴィレッタさんは銃で撃たれなかったよ。良かったね!


余談ですが、当十三話投稿時点で最終話である二十五話まてを書き上げています。よって、最終話までは毎日19:00に脳筋ルルーシュと脳筋に歪んだ世界が織りなすムキムキコメディを楽しんでいただければと思います。
また、展開予想等していただいても全然構いません。逆に、予想した展開が当たっていても意見採用ではありませんので悪しからず。また、おそらく返信では「今後見ていただければと!」みたいなこと返すだけになります。ご了承下さい。


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STAGE14 ギアス対筋肉(ギアス対ギアス)

 朝早く、寮における自室でシャーリー フェネットは手紙を書いていた。しかしその内容は上手くまとまらない。
「シャーリー?こんな朝早くから何してるの?…手紙?」
「う、うん、ちょっとね」
「もしかして果たし状?カレンとルルーシュくんの正妻争いでもするの?」
「し、しないよ…」
 シャーリーは手紙をくしゃくしゃに丸め、捨てることにした。

 しかし彼女は気がつかなかった。くしゃくしゃに丸めたそれはダストボックスには入らず、机と棚の間に落ちていったことを


それでは本編スタートです。


 朝早くシャーリーの部屋を訪れるが、同室の女学生が言うには少し前に荷物を持って出掛けてしまったらしい。行先も聞いていないとのことだ。

「ルルーシュ。」

「…スザクか」

 今はスザクと話すよりもシャーリーの行方を調べたい所だが、仮にシャーリーがスザクに話している場合も考えられる。元々スザクは俺がゼロだと知っているが、保護している場合があり得るのだ。俺は黙ってサイドトライセップスをし、屋上へと向かった。

「昨日のことだけど、許しは請わないよ」

「お前の邪魔さえなければコーネリアに勝てたんだがな」

 軽口を叩いてみるが、スザクの表情は硬いままだ。

「…フェネット氏だが、団員に聞いてみたがやはり心当たりはないらしい。そもそも俺たちはあの時逃げるのに必死だったんだ。民間人を殺す余裕なんてないさ…と、言ったところでお前は納得しないんだろう?」

「君がこのことについて嘘を吐くとは思いたくはないけれど、真犯人が出るまでは君たちがやったと言う前提で話を進めたい。」

 そこまで俺を疑っておきながら警察に突き出さないあたり、こいつの甘さがよく分かる。ここらでジャブを打っておくか。物理ではなく言葉でだが。

「お前、シャーリーが今どこにいるか知らないか?」

「…まさかシャーリーまで口封じをするつもりか!?」

 確かに俺は口封じをするつもりではいる。もしも彼女が俺の正体に気付いたのならの話だが。しかしスザクが知らないということは軍にはバレていないのか、とりあえずは安心だな。

「彼女、今朝早くにどこかに行ってそれからなんだ。携帯にも繋がらないし…あんなことがあった後だろう?クラスメイトとして心配なんだよ。」

 この言葉も実際のところは本音だ。

「…僕も知らない。でもシャーリーのことは心配だね。僕も探してみるよ。…君に口封じされたら僕はもう君も自分も許せなくなりそうだから」

 そう言ってあいつは去っていった。

 

 俺はシャーリーと同室の女学生にギアスを掛け部屋の捜索が終わるまで外に出てもらった。

「なんで私までこんな盗人まがいなことをさせられなくちゃならないんだ?」

「今は一刻も早くシャーリーを見つけ出さねばならん。猫の手も借りたい」

「にゃーん」

 今のは…!?いや、触れないでおこう。しかしなんだ、その…結構惹かれるものがあったな…。まぁいい、今朝訪れた時には見落とした何かがあるかもしれない。引き出し中の小物入れを開けると写真…大量の写真が入っていた。中には俺の寝顔まである。一年の時の文化祭のものや…結構ツーショットが多いな。もしもの場合口封じの後に処分する必要があると思い、それらを回収した。

「ふん、日記にも何も書かれていないな」

「そうか…」

 ふと、カレンダーが目に止まる。今日の日付に何か書かれて…ナリタ…?フェネット氏が亡くなった地だ。可能性はある。俺はC.C.を連れて電車に乗り、ナリタへと向かう。

「ナリタにいるのか?シャーリーは」

「まだわからない。だが他に手がかりが無い」

 現状は可能性が高いと言うだけ、そもそも訪れていたとしてももういない可能性だってある。

「いたらどうする?口封じをするのか?」

「ゼロの正体に気付かれたらそうせざるを得ないだろう」

「ところで」

「うん?」

 C.C.が着ている服のあちこちを摘んでは眉間に皺を寄せた。

「この服はなんだ?お前の趣味か?」

 流石に拘束着のまま外に出すわけにもいかない。とは言えサイズの合わない俺の服を着せるわけにもいかない。

「それは将来のナナリーのための服だ」

「呆れたな。何年先を見据えてるんだお前は。しかも…すこし胸元がキツぞ。」

「だが可愛らしいじゃ無いか、結構似合ってるぞ?拘束着の方がお似合いではあるが」

「…そ、そうか?ま、まぁ私はC.C.だからな!どんな服でも似合ってしまうさ」

 ナリタについてからは二手に分かれて捜索することになった。人探しなら写真もいるだろうと思い、一枚渡しておく。これで見つかってくれると良いんだが…

 

 

 

(ルルはどうしてこんなこと…)

「さぁ?どうしてだろうね?」

 僕はナリタに作られた戦死者慰霊碑の前にいるシャーリー フェネットに話しかけた。

(誰だろう…ナンパかな…?こんな慰霊碑の前で?…見るからにヒョロヒョロで頼りなさそう…。しかも何あのファッションダッサ…)

 ちっ…この女、僕のことを馬鹿にして…!

「立派な慰霊碑だね、シャーリー フェネットさん」

(どうして私の名前を…もしかしてストーカー!?気持ち悪い…助けて…ルル…)

 なんだこの女…自意識過剰だな。すごく腹が立ってきた。それにしてもまた"ルル"か、そこから揺さぶってやろう。

「ひどい男だね、ルルーシュは。ずっと君に嘘をついていたんだろう?」

「えっ…」

 ひゃは!驚いてる驚いてる!良いねえその顔!サイコー!

(なんでこの人ルルのことまで!?もしかしてゼロだってことも知ってるの!?)

 そうか、ルルーシュはゼロか。これは良い弱みを握れたな。それに…ふうん?ルルーシュに父親を殺されてるのか

「本当はゼロ…君のお父さんを殺した男なのに」

「だ、誰なのあなた!?」

(この人どこまで知ってるの…!?まさかあの夜のことも…)

 あの夜…?あぁ、なんだこの女、自分の父を殺した男にキスをねだったのか不潔な奴め。

「彼は君のお父さんを殺す命令を出したその口で君の唇を奪ったんだよ?許せないよねぇ、そんなの。罰を受けなくちゃあいけないよ彼も…君も」

「私も…!?」

「君は大罪人のゼロの正体を知りながらそれを隠してる!知り合いに軍人もいるのに。君も犯罪者、ゼロと同じだよ」

「違う、私は…!」

 必死だね!君の考えなんて手に取るようにわかるよ。

「その上父親の死と引き換えに対価まで得て!」

「違う!私は!!」

 

(シャーリーはどこだ…?いや、そもそもナリタにいるのか?…ナリタと言っても広すぎる、捜索範囲を絞るべきか?…ダッシュで町中シャーリーのことを大声で呼びかけながら走る方が早いんじゃ無いか?恥ずかしがって出てくるかもしれない!)

 そんな声が聞こえた。その後突然地響きと爆音が聞こえてくる

(シャァーーーーーリーーーーー!!!!どこだーーーーーー!!!!!)

「シャァーーーーーリーーーーー!!!!どこだーーーーーー!!!!!」

 くそ!心の声も肉声もうるさいな…!!シャーリーとか言う女から奪った携帯でルルーシュに電話をかける。

「もしもーーーーし!!!!シャァーーーーーリーーーーーですかーーーーー!!!!今どこに」

 うるせえ!電話越しなのに叫ぶんじゃ無い!!鼓膜が破けるだろうが!!!

「さぁ?どこかな?」

(誰だこいつは。なんだこいつがシャーリーの携帯を?しかし酷い私服センスだ。とりあえず殴るか?)

「良いのかな?僕を殴ったら彼女は一生誰にも見つからないところで一人で孤独に死ぬことになるかもしれないよ?」

「なに!?」

(くそ、殴るのはまずい…軍人やスザクならともかく、あのヒョロヒョロな男を殴ったら殺してしまう。あと改めて見てもこいつの私服センス絶望的だな。コーデにもなっていない)

 こいつまで僕を馬鹿にして…!くそ!ふざけやがって…!まぁいい、まずはこの携帯を放り投げて次の行動を引き出そう。ひゃは!怒った怒った!

「シャーリーはどこだ!」

「知りたい?じゃあ勝負しようよ。」

 僕はポケットからチェスの駒を取り出す。

(チェス…?ふん、馬鹿な奴め。俺の体を見て筋肉だけのバカだと錯覚したか?チェスは俺が最も得意とするゲーム…シャーリーの居場所を書き出したら両脚の骨を砕いて首をへし折ってサッカーボールにしてやる…)

 馬鹿は君だよルルーシュ。僕は相手の心が読める…つまり君の次の手が分かるってわけ!

「得意なんだってねぇ、君」

 

 僕とルルーシュは山頂行きのケーブルカーの車内でチェスをやっていた。まぁ、僕はこのゲームルール知らないけどね。

(冷静に考えれば恐らくチェスはひっかけに過ぎない。本当の目的は俺を人気のない場所に連れ出すこと。電話を使ったのは俺の顔を知らないからか?チェスは用意できた様だが、周到に準備したわけでは無いはず…だったら)

「つけいる隙はある?もうちょっと勝負に集中した方がいいんじゃ無い?」

(馬鹿な…ここでその駒の動きだと!?不味い今の俺にとって唯一にして最悪の手を取られた…!こいつ何者だ!?俺をチェスで追い詰めるなど…!)

 僕はルルーシュの心を覗く。

(ここでこのポーンを取られない限り…なっ!?取られた…!?他にも取れる駒があったのに?ならばルークで…その後はクイーンを囮に相手の守りを…く、崩せない!こいつ…俺の誘いに乗ってこない!?まずい、このままでは…!…………馬鹿な、この俺が負けた!?)

「ねえ、これって僕の勝ちでいいのかなぁ?」

 ルルーシュの心を読む感じだと僕の勝ちらしい。

(馬鹿な、何者だこいつは…俺が完璧に読み負けるなんて!)

「あれれぇ?聞いてないの?C.C.か」

 その瞬間僕の顔面に衝撃が走った。なんだ?何が起きた!?僕は今何をされた???さっきまでと風景が違う。僕は…なんで壁を背にひっくり返っている???

(C.C.…この完璧な心の読み…まさかこいつは心を読むギアスを?可能性はあり得る。ギアスを持つのが俺だけとは限らないからな。そんな能力あり得ないはあり得ない!俺の何でもいう事を聞かせる能力だって普通に考えたら強力なのだから)

 ケーブルカーが軽い振動を起こす。恐らく頂上に着いたんだ。でも…ダメだ、頭が割れる様だ!た、立ち上がれない…!

(勢い余って殴ってしまったが生きているのか、案外丈夫らしい。ならこのまま肋骨を一本ずつへし折って吐かせてやるか。それでもダメなら指を一本ずつ砕く。いや、面倒くさいな。全部一気に砕くか、そうしよう。うん?…窓の外に誰かいる…?あれはシャーリー!)

 ルルーシュはケーブルカーから出ていった。た、助かった。でもこのままじゃあいつに拷問されて殺される。なんで殴っただけであんな威力が出るんだ。ふざけるな…くそ、ショットガンだ、ショットガンを取りに行こう。このままなんとか這ってショットガンを取りに行くんだ…!

「シャーリー!よかった無事だったんだな!?」

「来ないで…!わ、私を口封じに…殺しに来たんでしょ!?」

「違う!俺は」

「いや!こないで!」

 外からあの女とルルーシュの声が聞こえる。そのまま痴話喧嘩に興じてろクソッタレ共め…!

「私、私もう全部言うから!スザクくんに、警察に!ルルがゼロだって!それで…黙ってた罪を償うの!」

「君は俺の正体を知った者が口封じされるからと思って秘密にしていたんだろう?それは君の優しさだ、罰なんて受ける必要はない!」

(どうしたんだシャーリー!いつもより様子がおかしい…まさか、あの男に何かされたか!?そうだ、思考が読めれば相手を誘導するくらいできるはず…!)

 ちっ…気付きやがった。でももう少しでショットガンに手が届く。後はこいつであの女諸共ブチ殺してやる。…と思った時何故かケーブルカーが動き出した。なんだ!?誰が動かしてる?いくら今の僕でもあの距離の操作室に…まさかC.C.!くそ、くそくそ、C.C.がそばにいるのに見れないじゃ無いか…!ルルーシュ…!許さねえ、許さねえぞルルーシュ…!

 

 

 

 俺は今のやり取りで確信した。シャーリーはゼロが俺と知ってしまったのだ。口封じをするしか無い。俺は逃げようとするシャーリーの前に回り込み、その細い腕を掴んで捕まえた。

「いや、いや離して!」

「ダメだ。離さない。」

 シャーリーはガクガクと顎を鳴らし、必死に掴まれた腕を振り払おうともがいている。無論そんなことで離すほど俺の握力は貧弱では無い。俺はシャーリーの顎を砕かない程度に強く掴み、顔を上げさせる。

「シャーリー、嫌なことは全部忘れるんだ」

「出来ないよ!」

「できる。俺が忘れさせてやる。」

 殴って記憶を吹き飛ばすのは確実性が無いし、何よりシャーリーの頭蓋骨が砕ける可能性がある…

「何を…何をする気?何を言って…」

「シャーリー、君を巻き込んでしまって済まなかった…。こんなことしかできない俺を許してくれ。」

 俺はシャーリーにギアスを掛けることにした。彼女の目を見つめる。彼女の目には俺が映る。

「ルル…!?ダメッ!!!」

 

「"俺に関することを全て忘れろ"」

 

 これで今後シャーリーは俺に関わらないはずだ。これで変な事に巻き込まれないで済むだろう。口封じも出来るし、殺していないからスザクにも怪しまれない…完璧だ。そう、完璧な…はず、なんだ…

 




 思考を読む相手に勝つ方法?殴ることを思考する前に体で実行すれば良いのさ!(脳筋的解決法)

 それはそれとしてシャーリーにはアニメ同様記憶を消されてもらいます。心見られたり記憶消されたり散々だなシャーリー、HAHAHA!!!


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STAGE15 粉砕のカオ(喝采のマオ)

 心を読むギアスを持つ男、マオはルルーシュからC.C.を取り返そうと画策していた。
「まずは二人っきりで会える場所を確保しないとね」
 マオが選んだのはクロヴィスランド。閉園時間後なら人はいない。マオは心を読むギアスを使い、関係者を探し出し、心を読んで弱みを握り、閉園時間後に動かせる様に手配した。
「C.C.を飛行機に積む為にはコンパクトにしないとね。出刃包丁も良いけど、切り落とすのに時間がかかりそうだからチェーンソーの方がいいよね。」
 何度か試し切りをすれば鉄をも斬り裂く素晴らしい切れ味だと実感する。これでC.C.をコンパクトにすることができるだろう。

 問題ない、C.C.は不死なのだから。

それでは本編スタート…名前に一言、お気に入りが1000を超えました。ありがとうございます!それでは本編スタートです。


「ブリタニアの研究機関について知りたい?」

「はい。なんとかなりませんか、セシルさん」

 セシルさんに差し出された"他のあらゆる食材が美味しく感じられる摩訶不思議な物理学的には飲食可能な謎の物体X"を無理矢理喉の奥に押し込み、持ち込んでいた水で流し込むと僕はセシルさんに尋ねた。

「スザク君や私なんかの立場ではなんとも…」

「ですよね…」

 准尉とはいえ名誉ブリタニア人である僕にブリタニアの研究機関について調べられるはずがない。そんなのは分かりきっていたことだった。それでも…ゼロとは言えルルーシュのことを信じたい僕は諦めきれなかった。

「でも、伯爵ならおできになるんじゃありませんか?」

「僕ぅ〜?まぁ、機密度にもよるけどできなくもないんじゃないかなぁ」

「…え?ロイドさんって伯爵だったんですか!?」

 驚きだ。貴族なのは知っていたけれど、そんなに高い地位だったなんて。

「放蕩貴族なの、遊びと仕事の区別もつかない」

「いやぁ〜お恥ずかしい」

 その後、ロイドさんにシンジュク事変で見たカプセルの女の子の話をした。

「ブリタニアがそんなことを…!?スザクくん、それ他の人には…」

「言ってません。本当はお二人にも話すべきではなかったと思っています。ですが、ブリタニアが未だに非人道的な実験をしているのだとすれば…」

「ふうん?クロヴィス殿下が人体実験をねぇ…まぁ、息抜きに調べてみるよ。なんだか面白そうだしねぇ」

 カタカタと楽しそうにキーボードを打つロイドさんを眺めつつ、補習があることを思い出し僕は学園に向かった。

 

 

 

 俺はナリタからの帰りの電車の中で、心を読むギアスの男についてC.C.に質問をしていた。聞けば俺の大先輩、C.C.がかつてギアスを渡した男の様だ。名前はマオと言うらしい。

「マオは…人の心を読み取るギアスを持っている。集中すれば最大500m先の思考を読むことができる。その気になれば深層意識まで読み取れる。頭で考えて戦おうとすれば確実に負ける相手だ。」

「道理でチェスで勝てないわけだ。」

 どうしても次の手を考え続けてしまうチェスではこちらの手もこちらが打たれたくない手も筒抜けだ。そりゃあ勝てるはずがない。だが打つ手は、いや、ぶつ拳はある。要は俺の拳が届く範囲まで接近し殴れば良い。思考を読んで避けようとも、疲れるまで殴れば良い。結論として、殴れるまで殴ればいいのだ。

「あいつの能力条件は?」

「マオのギアスは強い。お前のように回数制限も目を見るとかの制約も一切ない」

 俺のギアスは効かず、一方的にギアスによる思考の読み取りがされるわけか、強敵だな。だが、あいつになくて俺にあるもの、それは筋肉だ。

「弱点はないのか?」

「強いてあげればマオは能力をオフにできない。常に周囲の心の声が聞こえてしまう。本人が望もうと望むまいと。あとまぁお前に本気で殴られれば多分簡単に気絶くらいする」

 オフにできない?周囲の心の声が垂れ流しなんて…それは精神が病みそうだ。せめてもの慈悲に楽にしてやろう。

 

 マオの捜索は思考が読み取られないC.C.に任せ、俺は俺の急所たるナナリーを守る事に徹した。学園内をマオの侵入がないかを確認しつつ、俺はナナリーを抱きながら走り続ける。

「ふふっ風が気持ち良いです。お兄様」

「それは良かった」\コラァ!廊下を走るな!/

 何かが聞こえたが無視しよう。何人たりとも俺とナナリーの時間を邪魔する事は許さない。思えばこうしてナナリーと2人でゆっくりと…いや、速度的には速いが…するのは久しぶりだ。また寂しがらせてしまったのかもしれない。

「最近お兄様は家を空けてばかりでしたものね。どこか良いトレーニング施設でも見つけたんですか?」

「まぁね、今度のトレーニングはちょっとハードで」

「まぁ!お兄様でも?」

 学園内を走りながら俺は思考する。俺もギアスを使い続ければ能力のオンオフが出来なくなるのだろうか?人を従わせるこのギアスがオンオフできなくなるのは少し不便だな。両目を瞑って舌打ちの反響音で周囲を察知する訓練でもした方がいいかもしれない。いや、今から鍛えるべきか?いやダメだ。ナナリーを抱きながら危険なことはできない。

 

 次の日、ナナリーを送った帰りに会長と鉢合わせた。

「聞いたわよルルーシュ。昨日はナナリーを抱きながら校内走り回ってたんですってね。」

「ええ、たまにはナナリーだって風を感じたいと思って」

「いいなー、私も感じてみたい。ねぇ、今度私を担いでやってみせてよ」

 風を感じたいなら自分で走れば良いじゃないかと思っていると、シャーリーがやってきた。

「会長ー!」

「あ、シャーリー。朝練復活?」

「はい、いつまでも落ち込んでてもしょうがないし」

 シャーリーは俺に気付いたらしく、俺と会長を交互に見てから

「あっ!ごめんなさい会長、彼氏さんといるところお邪魔しちゃいましたね、それじゃまた生徒会で!」

 走り去っていくシャーリーを会長はポカンとした表情で眺めていた。しばらくしてから何故か会長は俺の腕に絡みつきながら

「新婚旅行はどこに行く?ダーリン」

「ライザッフ○」

 恋人段階から大分先に進んで無いか?

「さて、何冗談言ってるんですか。会長、どうせまたお見合いの話来てるんでしょ」

「バレてたか。それにしても何?今のシャーリー…」

 会長は離れないまま話を続けた。俺の用意した完璧な言い訳を披露する時が来たな。

 

「実は…俺が走り込みをしていた時にシャーリーとぶつかってしまい…」

 

「その衝撃でルルーシュに関する記憶が吹き飛んだって言うの…?そんなことある?」

「試してみますか?」

「いえ、遠慮します」

 確かめられないなら嘘もまた事実となる。ふふ、完璧だ!

 

 シャーリーの日記は持ち出しておいて正解だったな。彼女には悪いが燃やさせてもらう。物的証拠は消さなければ。それにマオの操作も難航している。黒の騎士団の情報ルートにも引っかからないが…まぁ心を読む相手の情報など早々に集まるはずもない。

「ルルーシュ。そんなところで何をしているんだい」

「…スザクか。珍しいな。夜遅くに学校にいるなんて」

「補習だよ。軍の仕事で出られない日が続いたからね。…聞いたよシャーリーのこと」

 スザクは静かに俺を睨んでいる。

「会長は走ってる君とぶつかったと言っていたけれど、君はシャーリーを殴ったな?だからシャーリーは記憶を失った」

「流石にお前は騙せないか」

「やはり君がフェネット氏を殺したんだな?だから都合の悪いシャーリーの記憶をぶん殴って消した!そうだろう!」

 またもや俺はスザクに胸ぐらをつかまれる。今回も抵抗はしない。

「ブリタニアの捜索は終わったのか?」

「…僕の地位では調べられないことの方が多いよ」

「俺はゼロ、これ以上シャーリーが関わればまた何かに巻き込んでしまうかもしれない」

「だったら自首すべきだよ…君は…いや、言っても無駄だね。」

 悔しそうに吐き捨てたスザクは俺を放り投げる様に解放した。スザク自身ブリタニアを信用しきれていない様だ。俺に電話が掛かってきた事をキッカケに俺とスザクは別れた。電話は…C.C.か。直接会って報告し合うこととなった。

「済まない、捜索は手詰まりだ。」

「分かっている。チェックを掛けるには駒が一つ足りない」

 どうやら俺とC.C.の意見は一致している様だ。お互いがお互いの手を補うしかないだろう。

 

 すると、電話が鳴った。誰から…非通知?

 

 

 

(このタイミングでの電話…マオか?)

 ヒャハ!正解、心を読んだ感じ、近くにC.C.がいるみたいだ。

「僕だよルル。C.C.に代わってよ。そこにいるんだろ?」

『…分かった』

 暫くしてからC.C.の声が聞こえた。やっぱり居たんだ!

『もしもし?久しぶりだなマオ』

「C.C.!ずっと探してたんだよ!急に居なくなっちゃうから心配してたんだ。」

『あれは…済まなかったな。』

「ねえC.C.、僕は怒ってなんか居ないよ。やり直したいんだ!あの日みたいに2人で暮らそう!」

『…わかった。どこで待ち合わせる?』

「クロヴィスランドで待ってる。一人で来て。来てくれないんならルルーシュの正体をバラすから。彼を抹殺するのはいつでもできるんだけど」

『はぁ…わかった。あいつを抹殺する方法については詳しく聞かせてくれ。私も気になる』

 僕はクロヴィスランドのことを伝えるとC.C.は了承してくれたようだ。ルルーシュの心を読んだ感じ、C.C.は行き先を伝えていない。やっぱりC.C.は僕のことが好きなんだ!ひゃははは!

 

 約束通りC.C.が来てくれた。僕はスイッチを押し、ライトをつける。まずは格好良く演出しなくっちゃ。C.Cの白馬の王子様になるためにメリーゴーランドに乗り、C.C.に呼びかける。

「C.C.!君はなんて静かなんだ!君の心だけは読めないよ。やっぱり君は最高だよ!」

「相変わらず子供だな」

 C.C.は照れ屋さんだなぁ

「白馬の王子って言って欲しいなあ。君を迎えに来たんだからさ。ははははは!嬉しいだろ?C.C.」

「前にも言ったはずだマオ。私はお前とは…」

 前…C.C.が居なくなる前に言っていた「私はお前とは一緒に居られない」の事?嘘だ。そんなの嘘っぱちだ。

「そんなの嘘嘘!C.C.は僕のこと大好きなんだから」

 僕は昔の嫌な思い出とC.C.と暮らした幸せな思い出を思い出す。

「C.C.!君だけだ!君だけなんだ!僕が欲しいのは。ルルーシュなんてどうでもいい。君さえ来てくれれば!」

 するとC.C.はピストルを持ち出した。分かった、これは愛の試練だ!僕は用意していたピストルでC.C.の腕を撃つ。大丈夫!C.C.は不死身だからね!とりあえずコンパクトにするためにも動かれると困るから四肢を銃で撃っておこう。

 

 そう思って引き金を引こうとした時だ。

 

 

 

(殴る。)

 

 

 

 うん?何か聞こえたぞ?

(殴る。マオを殴る。殴る。)

 な、なんだ?すごい速さで近づいて来る…450m…400m…320m…200m…ど、どんどん近づいて来る!ルルーシュか!?ドドドドドと地面が唸り、ものすごい圧が迫ってくる!!

(マオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴る殴るナナリーかわいいマオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴るC.C.無事かなマオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴るマオ殴るシャルル殺すマオ殴るマオ殴るシャーリーすまないマオ殴るマオ殴るマオ殴る)

 う、うわあああ!?な、なんだこれ!!な、舐めるなよ!その気になれば深層まで心は覗けるんだ!どんな作戦を考えてるのか知らないが、僕が負けるはず…

(まずはマオを殴る。そしてマオを殴る。更にマオを殴る。マオを、殴る。殴る。殴る殴る殴る。)

 ひっ…な、なんだこれ!なんなんだこいつ!!

「マァァァァァオォォォォォ!!!!!」

 しまった、もうこの距離まで詰められた!くそ、あいつにはピストルなんて効かない…チェーンソーなら!

(お前を殴る。)

「お前を殴る。」

「くっそお!」

 僕はチェーンソーを振りかぶる。どう避けようとも無駄だ!すぐさま追撃してぶった斬ってやるぞルルーシュ!

(チェーンソーか)

 ガリッとチェーンソーがなにかに引っかかって動かない。チェーンソーはルルーシュの左腕に食い込んだまま止まっている。

「流石に痛いな。チェーンソーは」

「どうなってる!?なんで切れない!?」

(馬鹿かお前。筋繊維だよ筋繊維。極限まで鍛えた幾層もの筋繊維がそう易々と斬られるはずがないだろうが。俺の筋肉を甘く考えたお前の負けだ)

 馬鹿はお前だ。チェーンソーで切れない人間なんていてたまるか。

「(殴る)殴る」

 しまっ…

 

 あの日に似た衝撃を食らい、僕は身体が吹き飛んだ。

「く、くそ…!ルルーシュ!」

「殴るのはこれくらいにしてやろう。(但し、蹴らないとは言っていない)」

「ひ…」

 とっくにサングラスは吹き飛んでいる。この距離ならルルーシュはギアスも使えるはずだが使う気が無いらしい。ルルーシュの思考を読んでも「殴る」ばかりだ。

「マオ、人間の拳と蹴り、どっちの方が強いと思う?」

(もちろん蹴りだ。筋肉の量が違うからな。安心しろ、俺は優しいからな顔面に一発蹴りを入れるだけだ。)

 動けない僕の元にゆっくり…ゆっくりとルルーシュが近づいて来る。ギュピッギュピッと足音を鳴らし、暴力の権化が近づいて来る!

「来るなぁ!僕の方に来るなぁ!なにが優しいだ!嘘吐き!!!」

 僕はピストルでルルーシュを撃つ。何度も何度も引き金を引く。全てルルーシュの体に着弾するが、意に介している様子がない。

「なんなんだ?今のは」

「う、うわぁぁぁ!!!!!」

(今からお前を…)

 

 

(「蹴る!!!!!)」

 

 

 

 グシャリ、と何かが潰れる音がしたそして僕の意識はそこで途絶えた。




脳筋的マオ攻略法:500m先から一気に距離を詰め殴る。思考を読んでも反応しきれない速度で殴る。そして、殴る。


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STAGE16

 扇は、ゼロに黒の騎士団に日本解放の希望を託し、日本解放戦線が誇り高く散っていった港を訪れていた。すると、テトラポットに人がいるのを見付けた。
「大丈夫ですか!?君!」
 扇は元々甘い人間だ。そして最近は正義の味方として戦っていたこともあり、困っている人を見かけたら助けざるを得なかった。
「車にでも撥ねられたのか!?病院に連れて行かないと…」
「ゼロ…やはり、お前が…」
「なっ!」
 ゼロの正体を知る手掛かり…それは彼に対する裏切りでもあるが、本当に知っているのなら口封じする必要、つまりは彼のためなんだと自分に言い訳をした扇は怪我をした女性、ヴィレッタ ヌゥを連れて帰った。

それでは本編スタートです。


 根詰めている私を気遣ってくれたのだろう。ユフィから気分転換をしようと言われた。そこはクロヴィスの作った庭で、どこかアリエスの離宮に似た見た目をしていた。

「久しぶりだな…こういう時間は。エリア11に来て以来、予想外のことが多すぎた。」

 そう、まさかクロヴィスを殴り殺すなどという蛮行をしでかしたゼロに、何度も知恵比べで負けるとは思っていなかった。…ふと視線を上げると、ユフィのお腹が視界に映る。何となく手を伸ばし、触ってみる。

「ひゃっ!?」

 ふむ、すこしぷにぷにしているな?少しからかってやろう

「デスクワークばかりで少し太ったんじゃないか?」

「もう、お姉さまったら!」

「ははは!済まない済まない」

 私は視線を再び庭へと移す。こうしてみるとここがエリア11とは思えないほどだ。

「お姉様、似ていると思いませんか?アリエスの離宮に」

 ユフィも同じことを思っていたらしい。

「あぁ、そうだな。」

「クロヴィス兄様が指示したんですって」

 それは私も知っている。最初は政庁の屋上に庭など不要と思ったが、義理の弟の遺した物だと言われればなかなか手が出しにくい。それがアリエスの離宮に似ているとなれば尚更だ。

「意外と気に入っていたのだな。あそこのルルーシュとは喧嘩ばかりしていたくせに」

 ルルーシュ、あいつも私の可愛い義弟の一人だ。色んな意味で…そしてその妹のナナリー。脚を悪くし、目見えなくなってからろくに会えずに一生の別れとなってしまった。あの日のことは後悔してもし切れない。

「ライバルだったんですよきっと」

「相手は年下だぞ?」

 まぁ、その年下に負け続けていたのがクロヴィスで、かく言う私もチェスでは度々敗北を喫していた。その腹いせに体格差で無理矢理押さえつけて身体のあちこちをくすぐってやったことも少なくない。あれはこう…なかなか良かったな。ふふ。

「でも兄様が遺した絵の中にルルーシュ達を描いた物がありましたよ」

「そうか、早くこのエリアを平定しゼロを捕まえねばな。クロヴィスに…そしてルルーシュやナナリーにも申し訳が立たん。ここは兄弟3人が命を散らせた天地なのだから」

 

 

 

 俺は空港で電話でディートハルトからの報告を受けていた。

『はい。紅蓮弐式再調整後の慣熟訓練は予定どおりです。キョウトとインド軍区の間で話がついたためあとは開発チームとラクシャータの到着待ちで…残念ながら月下を直す余裕はありませんでした。ゼロには無頼を用意する予定です。」

 ほぼ全壊だからな。仕方がないだろう。

「組織運営はどうなっている?」

『ええ。組織の細胞化現在92%。構成員も階層1から14まで割り振ってあります』

 大組織になった黒の騎士団だが、このディートハルトの提示してきた組織体形はかなり効果的だった様だ。

『ゼロの指示どおりブリタニアが所有している倉庫にもこちらの協力員を送り込みました。カントウブロック全564箇所にも戦力人員を分散してあります』

「ブリタニアの動きはどうなっている?」

 人が増えれば高まるリスクもある。些細なミスで捕まるのだから人が増えれば誰かが捕まるリスクはあるのだ。

『発見されたこちらの拠点は32箇所うちダミーは11箇所。逮捕されたのは47名ですが階層8以上とは情報が遮断されているためブリタニアもそれ以上は探れません』

「そうか、ならば問題ないだろう。」

『キョウトの後押しもあってか一般民衆が軍や警察に通報するケースはほぼなくなりましたしブリタニア内の協力者リストも。はい。例のゼロが手配しておられたグループです』

 これで当面の問題は解決された。あとは欲しい駒か

「藤堂はどうなっている?」

『はい、藤堂と四聖剣についてはまだ捜索中です。』

 片瀬とは合流できなかったのはある意味幸運だったのかもしれない。片瀬からも頼まれているかれらとの合流は急ぎたいところだが…

「分かった。引き続き作業を続けろ。」

 スタスタとこちらに誰かが歩いてきた。そいつは俺の前を通り過ぎ、立ち止まるとどうやら時間を確認しているらしい。

「よかったのか?私が使者で」

「へりくだれば舐められる。そういう相手だろ?中華連邦は」

 聞けば俺が蹴り殺し、死体をチェーンソーでバラバラにしてクロヴィスランドに埋めてやったマオとは中華連邦で知り合ったらしい。C.C.に中華連邦の言葉を話せるか尋ねるとご丁寧にあちらの言葉で流暢に「当然」と言ってきた。優秀過ぎて頼り過ぎてる気もしなくもないが、今回中華連邦への使者としては他に適任はいないだろう。

「自信がないな、私はお前と違って謙虚だから」

「その調子でやってくれ。」

 どうやらあいつと俺では謙虚の定義が違うらしい。帰ってきたらそうだな、美味いピザでもご馳走してやろう。きっと喜ぶぞ。

 

 

 

「おはよう。ルルーシュ」

「おはよう。スザク」

「…上司に相談してね、研究機関について調べてもらってるんだ。そして、ナリタにそれらしい施設があったとも聞いてる」

 それだけでルルーシュの言った通りとは限らないけれど、正直言ってかなり怪しい。ロイドさんが調子に乗り過ぎて色々ハッキングとかしまくってようやく見つけた情報だったし、どこに移動したかはまでは分からなかったけど。

「今でも君のことは信用していないけれど…学校ではただのスザクとルルーシュで居たい。…ナナリーのためにも」

「そうか、ありがとう。…ナナリーが寂しがっててな。今度食事でもどうだ?」

 僕は予定を思い出し…あ、だめだ。今晩くらいしか空いてない。

「こ、今晩なら…」

「分かった!」

 ルルーシュはダッシュで居なくなり…………あ、戻ってきた。ほんと見た目に比べて足が速いよなぁ。

「ナナリー喜んでたぞ。さ、授業行こう」

「うん…あ、どうしよう課題やってないや…」

「なにやってんだ不良学生。教室で教えてやる。」

 すると、リヴァルがバイクでぶつかってきた。危ないなぁ…僕ら以外にぶつかったらどうするつもりなんだろう。ほらみなよ、バイクが凹んでる。

「おいルルーシュ!会長お見合いするって知ってたか!?」

「あぁ、今日だろ?」

 へぇ、会長お見合いするのか、会長は美人だし僕みたいな名誉ブリタニア人でも優しく接してくれる明るい女性だから、良い人が見つかるといいけれど。そう言えばセシルさんが今日ロイドさんがお見合いするとか言ってたっけ?あの人多分特派のトレーラーの中でするんだろうな…悪い人では無いからロイドさんにもいい人が見つかると良いんだけど…

「今日!?知ってて何で教えなかった!!」

「教えたら泣くだろ?」

 なんでリヴァルが会長のお見合いで泣くんだろう?嬉し涙かな。

「大丈夫だよ。僕も知らなかったから」

「こんな時に天然で返すな!」

 天然?僕が…?

 

 授業が終わり、僕は生徒会室に来ていた、久しぶりにアーサーとも戯れたいしね。あ、またキスしてきた。猫って可愛いなぁ

「スザク、貴方って痛覚とか無いの?」

 カレンがそんなことを言うけれど、あるに決まっている。みんななんでそんなことを聞くんだろう?

「それにしても心配ね、シャーリー…頭を強く打ったって。あのルルーシュにぶつかって」

「ほぼトラックに轢かれた様なもんだもんなぁ」

「トラックって…」

 そう、みんなの中ではシャーリーはそう言うことになっている。本当はルルーシュがシャーリーをブン殴り記憶を破壊したんだ。僕は…みんなに嘘を吐いている。また…

 

 ナナリーとの食事の時間はあっという間に過ぎてしまった。

「そういえば覚えてますか?七年前、暑い夏の日に…」

 夏の日…七年前…僕は、そう、僕は父を殺した。あの時は戦争を止められると思ったから。でも、結果は…。僕はルルーシュがクロヴィス殿下を殺した事を責めたけれど、僕にその資格なんてないじゃ無いか。僕はあの日の罰を受けずにここに居る。ルルーシュがゼロだと知りながら黙っている。僕はまた罪を重ねている。

 ナナリーに見送られ、僕はルルーシュと外で二人きりになった。

「どうした?スザク、お前顔色が悪いぞ」

「ルルーシュ、君はブリタニアへの復讐でクロヴィス殿下を殺したんだよね?」

「…何を今さら。あぁそうだ。コーネリアも、ユーフェミアも他の皇族も…俺の復讐の邪魔をするなら殺す。ナナリーが幸せに暮らせる世界を作るためにシャルルを殺す。」

 ナナリーがそれを望んでいるとは思わないけれど…。ルルーシュはまだ考え覚悟を決めて、罰を覚悟で殺している。僕とは大違いだ。

 

 だからだろうか、こんなことを打ち明けてしまったのは。

 

「僕はね、ルルーシュ。父を殺したんだ。…枢木 ゲンブは僕が殺した。」

「…殴ってか?」

「いや、ナイフだよ。そんなことはどうでも良くないかい?」

 ルルーシュは少し驚いた様だったけれど、何も言わなかった。少しだけ考えた様な素振りをして

「悪かったな…その、ずっと気付いてやれなくて。でも、そのお陰で今の日本があるんだ。お前は間違ってない。」

 忘れていた。ルルーシュは優しい奴だったことを、僕は怒られたかったんだけど…逆に慰められてしまった。そしてなんだか、少しだけ楽になった気がする。卑怯者だな、僕は。

「そうか、だからお前あの時俺を庇ったのか」

「あの時?」

「ほら、俺を銃で撃てって命令されたろ?」

「あぁ…」

 確かにあれは友人を庇って死にたかったのかもしれない。

「あんなピストルで俺を撃ったって効きやしないのに…お前だってほぼ無傷だったんだろ?そうやって人のためにわざと死にに行くような…罰を受けに行くのはやめろよな。どうせなら…」

 彼は僕を見つめてきた。

 

「生きろ。」

 

「…そうだね、みっともなく生きて、僕は罪を償うよ。日本人のために、ブリタニアを変えて。」

 僕は静かに頷いた。するとルルーシュは肩をすくめる。

「だからさ、今後黒の騎士団の前には来ないでくれ、お前が来ると俺の作戦が崩れる」

「それはできないよルルーシュ」

「残念」

 戦場では手加減しない。それが僕の定めた僕のルールだ。

 

 

 

 私は夜、シャワーを終えて姿見の前に立った。少しお腹あたりを触ってみる。ふにっとした感触…うう…

「お、お姉様に言われた通り、もしかして太った…!?」

 思えば学生の頃はスポーツを楽しんでいた。私だってお姉様の妹だ。運動神経は悪くない。ところが副総督としての仕事はどうだろう。大抵がデスクワーク、精々施設内を少し歩く程度だ。そして本国と変わらずにお茶とお菓子を食べている…なんてこと…ふ、太る要素しかない。お姉様みたいに戦場を奔走する趣味(?)があるならば体を動かす機会もあるが、あいにく私は争いごとは苦手だ。

「どうしましょう…」

 1人の乙女として太ってきたことが気になってきたからと急にお茶をやめ運動し始めたと知られれば、お姉様に揶揄われる未来は見えている。一人で、室内でできる運動が良いだろう。特段体を動かすこと自体は嫌いでは無いのだ。自室のパソコンで何か無いかと調べてみると…

「あったわ!ボクササイズ、これなんていいんじゃ無いかしら!」

 リズムに合わせてパンチ。これなら大きな音も立てにくいし、道具も不要だ。ひっそり痩せられる!




ヴィレッタが見てもないゼロの正体をルルーシュと判断したのは「シャーリーから離れろ」と言われたためです。まぁ、ルルーシュにぶっ飛ばされた影響で記憶が飛んで行きましたが。

本来はナナリーが束縛プレイされマオがヒャッハ!する回ですが、蹴り殺されてしまっているので大幅カットです。その代わりスザクが自主的に父親殺しを白状してます。

尺稼ぎにオリジナルエピソードとして太ったのを気にするユーフェミアについて記載しています。


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STAGE17

「芸術週間の初日がこのクロヴィス記念美術館の落成式となります。ユーフェミア様にはこの中から大賞作品を選んでいただきます」
 ユーフェミアは珍しくデスクワークでない仕事を任された。それがこの落成式。因みにコーネリアが「私は芸術より武術の方が好きだ」とのことで役目がユーフェミアに回ってきたものだったりする。ユーフェミアが館内の絵を見て回っていると、大きく迫力のある絵が目に飛び込んできた。
「この絵、私気に入りましたわ」
「そちらはニコライ公爵のご子息がお描きになったものですね。」
 それは鍛え抜いた肉体を光沢ある褐色に輝かせ、ラットスプレッドフロントのポーズで見せつける皇帝シャルルの絵であった。タイトルは…『オールハイルマッスル』

そんな訳で本編始まります。オールハイルマッスル!


 今日はクロヴィスの作った数少ない比較的実害のない政策、芸術週間だった。芸術週間では普段芸術に触れる機会のない人にも芸術に触れる機会を作るため、さまざまな取り組みがなされる。芸術とは娯楽・文化であり、芸術とは豊かな心より産まれ出るとのありがたいクロヴィスのお言葉により、学校の授業は一部が芸術関連に切り替わり、町では芸術にちなんだイベントなどで賑わい、街中美術コンテストなどが催される。

 

 そして俺にとっての芸術とは即ち筋肉だ。

 

 見てくれこの八つに割れた逞しい腹筋を。そして爆発寸前かの様に盛り上がりシャーリーの脚より太い上腕二頭筋。ニーナよりも膨らんだ胸筋、会長のウエストより太い大腿筋。この日のために仕上げた俺の体はまさにベストコンディション。さあ、張り切って写生してくれたまえ。そんな訳で俺はお決まりのダブルバイセップスを披露し、芸術週間の催しである学園写生会の被写体となっている訳だ。

「すげぇなルルーシュの奴。ポーズ決めてから微動だにしないでやんの」「スザク君を絡ませたい…」「ちょっと、こんなところでカミングアウトしないで…」「僕がルルーシュに絡む?」

 

 授業が終わると電話が鳴っている事に気がつく。相手は扇のようだ。

「もしもし?私だ」

『ゼロか。今四聖剣の方々が来ている。』

 おお、四聖剣!日本解放戦線より託された彼らがようやく合流できたのか。ありがたい。…ん?待てよ?四聖剣だけか?

「藤堂はどうした」

『それがブリタニアに捕まってしまったらしい。四聖剣の方達からは助けるのに協力してほしいと言われてるんだが』

「もちろん引き受ける。集結方法はB13。ナイトメアはばらして18方向から。ディートハルトに仕切らせろ。合流予定のメンバーにも伝えてくれ」

 藤堂ほどの男をみすみす失うわけにはいかない。必ず助け出さなければ。電話を終えると生徒に変装したC.C.がやってきた。黒髪のかつらをかぶり、牛乳瓶の底の如き眼鏡をかけているが…それちゃんと前見てるんだろうな?

「中華連邦との交渉はうまく行ったよ。日本解放までは独力で動く事になるが独立後は同盟を結び、国を纏めるまでの間ブリタニアへの牽制は手伝ってくれるらしい。」

「見返りは?」

 タダでやってくれるほど向こうも甘くはないだろう。そんなことは考えなくてもわかる。

「サクラダイトを寄越せとのことだ。まぁ、当然だな」

 逆にそれ以外日本から取れるものなど無いだろう。自国の兵は消費せずサクラダイトの供給優先権が貰えるのなら中華連邦としては安いものだ。

 

 スザクを探して学園内を歩いていると汚れた体操着を持って水道に向かうところを見つけた。

「ここにいたのかスザク…って、何してるんだ?」

「今日は体育の補習があってね、でも明日も授業で体育があるだろ?それまでに洗っておきたいんだ。」

「水臭い奴だな。うちの洗濯機で洗っていけばいいだろ?ちょうど話したいこともあるしな」

「それじゃあお言葉に甘えようかな」

 俺はスザクを連れナナリーの元を訪れる。計画通りに事が進めばいずれ俺はナナリーの傍にはいられなくなる。いざという時ナナリーを守ってくれる人間が必要だ。スザクに生きろと願った以上、生きる目的がないとな。

「それでね、カエルが鳴くんです。クローククロークって」

「クローク…日本ではカエルの鳴き声はケロケロなんだ」

「ケロケロ?」

「そう、ケロケロ」

 楽しげに話す2人を見れば仮に俺がいなくなっても大丈夫だろうとさえ思う。

「冬には氷が張って、お兄様が私を抱えたままスケートしようとしたら氷が割れて落っこちたんですよ」

「えっ?大丈夫だったのかい?ナナリー」

 …。俺の心配はしてくれないんだな…?

「落ちる瞬間お兄様が私を上に放り投げて、その後は立ち泳ぎしたままキャッチして私を抱き抱えてくれてたので濡れませんでしたよ」

 そんなこともあったな。

「スザク、大切な話があるんだ」

「なんだい?もしかして課題を丸写しさせてくれる気になったのかい?」

「いや、それはダメだ。」

「なんだ…」

 普段真面目なくせに課題は楽をしようとするのがスザクのおかしなところだ。

「スザクくーん!ロイドさんが急用だって!」

 突然俺たちの話を遮って女の人が駆けてきた。服装の感じ軍人か。

「お前の上司か」

「そんなとこかな」

「あら?お友達?やだ、逞しくて素敵ね」

 そう言って胸に腕に腹筋尻と遠慮なく触られる。まぁ、悪い気はしないな。

「いけないいけない。ごめんね?スザクくん借りていいかしら」

「ええ、スザクのことよろしくお願いします。」

「お兄様ったらスザクさんの保護者みたい、ふふっ」

「やめてくれよナナリー」

 そう言ってスザクは女の人を抱えて走っていった。まぁ、その方が早いだろうからな。

「よかった。スザクさん、必要とされてるんですね。

「みたいだな。」

 俺としてはスザクがクビになる方が都合がいいが、そういうわけにもいかないだろう。

「なぁ、ナナリー。スザクのことどう思う?」

「好きですわ」

「…俺と比べたら?」

「もちろんお兄様ですよ?ふふっ」

 よし、勝った。

 

 もしもスザクが説得に応じないのならナナリーの為にギアスを使ってでも…。

 

 

 集合地点までの道中、ニュースをつけてみるとユーフェミアの顔が映った。おや?前会った時に比べて少し引き締まったか?

『今回の美術館の建設でイレヴンの業者が排除されたと言われていますが』

 そんなことをユーフェミアに聞いてどうする。わからないに決まっているだろう。

『えっと、その、目下調査中ですので、今回は回答は控えさせてください』

 ふむ、ユーフェミアにしてはまともな回答だな。

『Hi-TVです!副総督、最近お痩せになられましたよね!?もしかして恋あ…』

『ご、ご想像にお任せします!』

 なんとも生産性のない質問だ…

『インターセイトのタフガイです。近々騎士をお決めになるとの噂ですが…』

 騎士…か、そうだな、スザクにはナナリーの騎士になってもらうとするか。ナナリーに真似事をさせるのもいいかもしれないな。どうせ名誉ブリタニア人のスザクが誰かの騎士になることもないのだから。

 

「いいから押し込んでとっとと蓋閉めちゃえよ!出撃まで時間がないんだって!」

 玉城の奴…

 

 たまにはいいこと言うじゃないか。

 

 それでダメなら軽く蹴っ飛ばせなんとかなると言うものだ。カレンにそうアドバイスしようと立ち上がると

「もっと丁寧に扱いなさいよ!あんたたちの100倍デリケートに産んだんだから!」

 …すみませんでした。俺は心の中で謝りつつ、ようやく会えた技術者に挨拶をしに行った。

「お会いできて光栄だよラクシャータ。」

「アンタがゼロ?噂通りの凄い筋肉ね、今度データ取らせてちょうだい。」

 俺が手を差し出すと、ラクシャータは俺をどついた。まぁ、びくともしないが

「先行試作型機の月下をボロボロにしたのは許してないからね…!」

「…あ、はい。」

「私があれを産むのにどれだけ苦労したかわかってんの?」

「はい、すみません」

 港での戦いで月下は大破してしまい、お陰で今回の作戦では俺は無頼で出る事になっている。正直ラクシャータの言葉に返す言葉がない。

「あとこれ、キョウト土産よ」

「パイロットスーツか、ありがたい」

 受け取ろうと手を伸ばすとひょいと取り上げられる。

「ゼロ、アンタの分は無いわよ」

 なん…だと…?

 

 藤堂奪還作戦はまず捉えられているチョウフの壁を破壊、四聖剣で制圧し、その間に俺とカレンで藤堂を救出しに行く。ブリタニアのことだ我々が現れてから素早くことを進めなければ処刑されてしまう可能性がある。それは避けなばならない。

 事前に関係者にギアスを掛け藤堂の位置は把握済みだ。

「カレン、このポイントだ。威力は調整しろよ」

『わかってるわよ。』

 輻射波動で壁を破壊すると無事藤堂と合流ができた。

『ゼロ!やはり来てくれたか』

「藤堂、君の力が必要だ。再び手を貸して欲しい。」

『無論だ。片瀬少将の無念を晴らすためにも日本は解放せねば』

 俺の無頼に乗せ、合流ポイントに向かう。C.C.へ藤堂確保の連絡を入れれば藤堂の月下が運ばれてくる。

『皆、世話を掛けたな』

『これくらい安いものです』

『これより我々はゼロの指揮下に入る。日本解放の希望は絶えさせん!』

『『『『承知』』』』

 これで戦力は十分。

「まずはここの残存戦力を殲滅する!」

 次々と残るサザーランドを蹴散らしていく。邪魔なサザーランドだな。スラッシュハーケンを一方を前方に、また一方を後方に打ち込み巻き取る事で回転を得、更に俺は四肢とスラッシュハーケンを一気に叩きつけることで跳び上がる。これが無頼による回転蹴りだ!

『こいつ!なんで無頼でこんな動きが!うぎゃぁー!!』

 スザクのナイトメアほどでは無いが中々の威力だ。悪くない。

『ゼロ!アンタもうちょっと丁寧に戦えないの!?』

 あ、はい、すみません

 

 視界にチラリと映った空をナックルで弾く。これは…スザクのスラッシュハーケン!?

『どうしてあの機体がこんなところに…』

『ゼロ!この機体に対する対策は持っているか?』

『ナリタの借りを返す機会ですな。』

 まずい、スザクを殺すわけには…かと言って手加減して勝てる相手ではない!こうなれば賭けよう、スザクの筋肉に…!

 

「対策ならある。気合いだ!日本解放の強い意志さえあればやつを打ち倒せる!」

 

『流石はゼロだ!』

「全機一旦距離を取れ!」

 まずはスザクから距離を取る。お前には言ってなかったが、お前には昔から動きのパターンがあるんだよ…!

「カレン!まずはお前が仕掛けろ!奴の最初の攻撃は正面から、フェイントをかけることは絶対にない!」

 カレンとスザクの攻撃はお互いに空振り。

「かわされた場合次の攻撃を防ぐためすぐに移動する。移動データを読み込め!………S57!!」

『へぇ、本当に来たよ。』

 スザクに攻撃を仕掛けるのはヒョロ眼鏡の朝比奈。筋肉はないがナイトメアの操縦技術は十分だ。スザクは銃撃を仕掛けるがそれを朝比奈は銃そのものを弾く。

「良い判断だ朝比奈。これで奴の行動は制限された。」

『まぁね』

 スザクのことだ、こちらの武装が近距離メインである以上、ここは一旦距離をとり体制を立て直すはず。

「相手は後方へと距離を取る!次の座標は………X23!」

『流石だなゼロ!』

『尽く読まれている!?』

 藤堂の構えは…三段突きか。しかし三段突きは三段目を除き空を突いた。そして最後の一突はコクピットブロックを貫通し、そのまま装甲を剥ぎ取る。スザクの姿が丸見えだな。

『えぇ…!?スザク!?』

 そうか、カレンは知らなかったんだよな。しかし先に伝えるわけにもいかなかったからな…というか、脱出しないのか?それとも、そもそもないのか!?非人道的過ぎるな…何考えてるんだブリタニアは。

『ゼロ!私は彼と知り合いだ。説得をさせて欲しい!』

「…良いだろう。奴が味方になれば戦力として頼もしいからな。」

 俺はカレンに近づいて行く。

『ゼロ!どうすれば!?ゼロ!』

 カレンは動揺しているな。そりゃそうだ、まさか今まで何度も激突した相手が実はクラスメイトなどと知ったら誰だってそうなる。つまりもうカレンは戦えない。

「カレン、紅蓮を降りて私と代われ」

『え?』

「聞こえなかったか?私と代われ。藤堂が説得に失敗した場合、枢木 スザクは私自らが直々に手を下す。他の者はその間に脱出地点への障害を取り除いておけ」

 ここでスザクを屈服させ、ナナリーの騎士に任じてやる。

 藤堂はコクピットハッチを閉じた。やはり説得は失敗のようだな。

「全軍行動開始!」

 俺は紅蓮を駆り、スザクに突っ込む。

「枢木スザァク!!」

『まさか、ゼロか!?』

 スザクのブレードによる斬撃を仰け反って回避し、そのまま輻射波動を地面に放って遠心力と推進力を得た右手の裏拳による殴打だ。スザクはバックステップで避けるが、勢いを殺さず回転し、左手のグレネードで追撃する。スザクはシールドを使って防いだか、だが、現在紅蓮の右手は接地している。このまま輻射波動を進行方向と逆にぶっ放し、未だ滞空しているスザクにドロップキックを叩き込む。反応はできたようだがシールドで受けるのは間違いだ。何故ならまだ輻射波動は打てるからな。空中でスザクに対してマウントポジションを取り、右腕を掲げる。輻射波動のエネルギーを推進剤とし、このままスザクを地面に叩き付けてやる。

「ブッ潰れろ!!」

『これは…!?』

 スザクはスラッシュハーケンを物凄い速さで地面に突き刺す勢いと左腕と左脚を犠牲に衝撃を和らげたようだが、次の攻撃で終わりにしてやる。右手と右足で器用に地面を蹴り、そのままスザクは回転蹴りを繰り出してくる。半ば中身が見えたコクピットでよくやる。というか今のスラッシュハーケン…何か隠し玉があったらしいな。

「そんな苦し紛れの攻撃が俺に効く…なっ!?」

 スザクは何かを投げつけていた。ぶつかったそれを確認すれば砕けた脚のようだ。回転蹴りと思わせてこれが狙いか、いや違う、しまっ…

 スザクから意識を逸らしてしまった俺は回転蹴りをモロに喰らう。

『ゼロ!大丈夫ですか!?ゼロ!』

「心配無用だ。しかし…時間切れだな」

 上空を見ればブリタニアの援軍。スザク諸共爆撃されれば流石に耐えられないだろう。

「目的は達成した…ルート3を使い、ただちに撤収する!」

 今度こそスザクに勝てると思ったが、次の機会までお預けだな。

 




この世界のシャルルは日焼けし、オイルでテカテカさせつつ上裸のラットスプレッドフロントポーズでオールハイルブリタニアって言ってるんだと思います。

スザクはアッシュフォード学園内でいじめを受けていません。優しい世界ですね。

●唐突な次回予告●
藤堂「見合って見合って!はっけよい…のこった!」
ゼロ「どすこいどすこいどすこいどすこい!」

STAGE18「ムキムキスザクに命じる」


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STAGE18 ムキムキスザクに命じる(枢木スザクに命じる)

「名誉ブリタニア人とはいえイレブンが騎士になるとは…」
「テレビ放送も許可したとか…」
「どうやって取り入ったのか…」
「そこはほれ、ユーフェミア様も最近は筋トレにハマっているようですし…」
「「HAHAHAHAHA…」」
 枢木スザクは正式なユーフェミアの騎士として、名誉ブリタニア陣としては異例の少佐となり、騎士の叙勲式に出席していた。
「枢木スザク。汝ここに騎士の誓約をたて、筋肉を鍛えブリタニアの騎士として戦うことを願うか」
「イエス ユア ハイネス」
「汝我欲を捨て大いなる正義のために、鍛えた拳で剣となり分厚い胸板で盾となることを望むか?」
「イエス ユア ハイネス」
「わたくしユーフェミア・リ・ブリタニアは汝枢木スザクを騎士として認めます」
 騎士として認められたスザクは貴族達に体を向け、ラットスプレッドフロントをするが、誰も声をかけない。拍手すらもなかった。しばしの沈黙の後のことだ。
「今日もキレてるよぉスザクくん」「胸板に鉄板でも仕込んでるのか?」
 声をかけたのはスザクの上司であるロイド。続けて声をかけたのはダールトンだ。ロイドだけならともかく、将軍であるダールトンには逆らえない。堰を切ったように貴族達はスザクに声をかけて行く。
「キレてるキレてる!」「腕にスタントンファでも付けてんのかい!」「正直抱いて欲しい!」

そんな訳で本編スタートです。


 ラクシャータのルートで手に入れた潜水艦で移動しつつ、俺は組織説明を行なっていた。

「それでは黒の騎士団再編成による新組織図を発表する。軍事の総責任者に藤堂鏡志朗」

 これは当然だろう。かつてナイトメア無しで厳島において唯一ブリタニアを負かせた男だ。他に適任者が居ない。

「情報全般・広報諜報・渉外の総責任者にディートハルト・リート」

 次に情報、こいつはブリタニア人だが優秀だ。元々メディアの人間ということもあり顔も広くブリタニアの人間の知識にも精通している。

「必要なのは結果を出せる能力…人種も過去も手段も関係ないと考えればこの人選は適任だといえるな。」

「その通りだ藤堂。」

 藤堂の奴、どうやら空気を読んでくれたらしい。他の団員も他ならぬ藤堂の意見には流石に黙るしかないようだ。

「副指令は扇要。これまでと変わらず私を補佐して欲しい。」

「ま、任せてくれゼロ!」

 こいつはリーダーには向かないが、部下の意見を吸い上げて俺に伝えるという重要な役割をこなせるだけの信頼はある。それに新参者ではない古参ということでメンバーも納得してくれているようだ。

「技術開発担当はラクシャータ。」

「当然」

 ラクシャータのチームには現在、スザクのナイトメア捕縛作戦に向けゲフィオンディスターバーの開発を急がせている。

「零番隊隊長紅月カレン」

「零番隊?」

「零番隊は私の直轄…私の親衛隊と考えてくれれば良い。」

「わかったわ。因みに他のメンバーは?」

「それは後で伝える」

 零番隊は実質的に俺の正体を知っているもののみで構成される。つまりはカレンとC.C.のみだ。他の必要な人員は他の部隊から臨時で指揮下に置くとしよう。

 

 組織説明を終えると、ディートハルトから協議すべき議題があると進言があった。おそらくはスザクについてだろう。場所を会議室に移し、ディートハルトが口を開く。

「枢木スザク。彼はイレヴンの恭順派にとって旗印になりかねません。私は暗殺を進言します」

「暗殺?どうやって?」

「枢木スザクは人間です、銃や刃物などいくらでも…」

 ディートハルトは何か勘違いしているらしい。こういうことは実際見てもらう方が早いだろう。俺はピストルを取り出し、自分のこめかみを撃つ。

「ゼロ!?何を…!!」

「慌てるな。」

 ポトリと地面に落ちた弾を摘み、みんなにそれを見せつける。次に藤堂に目配せし、軽く頷く。

「ゼロ、行くぞ!」

 刀を抜いた藤堂が俺に刀を振り下ろすが、俺は肩で受け止めた。

「これで良いのだな?」

「あぁ、嫌な役目を任せてしまったな藤堂。見てもらった通りだ。鍛えた筋肉の前に刃物や銃では暗殺は不可能。枢木スザクも私に匹敵する筋肉を持つ。暗殺は不可能だ。」

「しかしゼロ!」

「爆破では民間人を巻き込む。他の手段では目立ち過ぎる。参考に言っておくと私はチェーンソーを腕の筋肉で受け止めたこともある」

 ここまでいえばみんな暗殺は不可能だと理解したようだ。

 

 

 

 騎士になった僕は様々なパーティに呼ばれた。一応僕の騎士叙勲祝いとのことだけど、貴族だらけのパーティでは正直僕の肩身は狭い。殆ど僕のところにきて声をかける人などおらず、たまにきたかと思えば皮肉を吐いていく。ブン殴ろうかと思ったけど、流石にそれはまずいだろう。どうやらブリタニア人と日本人では祝いの定義が違うらしい。だけど、セシルさんが企画してくれた特派のパーティなら気楽にやれそうだ。

「こんにちはセシル。今日は呼んでくれてありがと」

「セシルさん、この方は?」

 初めて見る人だ。穏やかそうな人だけど…

「紹介するわねスザクくん、この人はカノン マルディーニ伯爵。シュナイゼル殿下の側近の方よ」

「よろしくね」

「あ、はい、よろしくお願いします。」

 畜生、前言撤回だ。シュナイゼル殿下の側近の伯爵だなんて…これまた偉い人が出てきてしまった。これはまた肩身が狭いな…そう思っているとカシャリとシャッター音が鳴る。

「イレブンの騎士、記録。」

「こーら、アーニャ。彼は名誉ブリタニア人よ。」

 カノンさんの話を無視して何やらカタカタと文章を打っているようだ。

「全くこの子は…。彼女はナイトオブラウンズのアーニャ アールストレイム卿よ。今日はシュナイゼル殿下の代理で、私はその付き添い」

 こんな女の子が、帝国最強の騎士ナイトオブラウンズの一人…?年齢はナナリーと大差なさそうだけど…。と言うかまたど偉い方が来てしまった。

「よろしくお願いします。アールストレイム卿。」

「…アーニャで良い。」

 カタカタと打ち続けてるけど、まあ悪い人じゃなさそうだ。

 

 パーティが始まってすぐのことだ。

「あら、何かしらこれ。見たことない料理ね。はむっ……………」

 そう言って料理を口にしたカノンさんだったが、みるみるうちに顔色が赤から紫への虹の七色に変わっていく。人間の顔の顔ってあんなコロコロ変わるんだな…

「ミ°ッ」

 あ、倒れた。

「倒れたカノン、記録。」

「現場保全…流石はナイトオブラウンズ」

「な、何言ってるのスザクくん!?あぁ、カノンも泡吹いてるし…もしかしてこの料理って…」

 ロイドさんが慌てるのは珍しい。そして僕らの視線はセシルさんに向いている。まぁ、そういうことだ。なんだろう、見た目は美味しくできていたので、暗殺者の素質があるのかもしれない。僕も口にしていたら不味かったな。ありがとうカノン伯爵、貴方の勇姿は忘れません。

 

 そんな訳で僕が担いで…何故かアーニャも運ぶことになったけど…病院に突っ込んだことでカノン伯爵は一命を取り留めた。パーティは当然お開きだ。料理は丁重にヴァリスで処理した。

「人に担がれた時の風景、記録…高くて楽しい。」

 アーニャはまだ成長しきっていないから高い背からの風景は憧れだったらしい。

 

 次の日僕が招待を受けたのはナナリー企画の学校でのもの。聞けばこの日のために咲世子さんとルルーシュとミレイ会長がいくつかの日本食とパーティ料理を用意してくれたらしい。肩身は狭くないし料理は美味しいし最高だ。いやほんと、涙が出てくる。

「スザクの笑顔、記録。」

「ん?」

 カシャリというシャッター音がしてまさかと思って声の方を見てみれば何故か学園中等部の制服に身を包んだアーニャがいた。

「アーニャ!?なんで!?」

「この前パーティで料理食べられなかったから。日本料理…アーニャ、わくわく。」

「なになに?この子、もしかしてスザク君の恋人!?」

 あぁ、会長ってこういうの嗅ぎつけるの本当に早いよな…誤解を解くためにアーニャがナイトオブラウンズの一人だと説明するとみんなが固まった。そりゃそうだ。歳下だけど凄く偉い人だもん。というか理事長、ミレイ会長くらいには説明してても良さそうなのに。

「まぁ!声の感じ私と余り歳が変わらなさそうなのに、ナイトオブラウンズだなんて凄いんですね!」

 こういう時意外と堂々としてるのはやっぱ皇族の血だよなぁ…

「あれ?あなたもしかして…」

 アーニャがナナリーに興味を示したみたいだけど、扉が開いてみんなが今度は誰だよという感じにそちらを見た。シュナイゼル殿下とか出てからルルーシュが暴れかねないからやめて欲しいんだけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは!」

 良かった。伯爵のロイドさんだ。ナイトオブラウンズに比べたらたかだか伯爵なんて失礼だけど大したことない。というかなんでニーナと一緒にいるんだろ?メガネ仲間なのかな?

「あれ?ロイドさん?何か用ですか?

「うん、ちょっとね〜」

「ミレイちゃん、知ってる人?」

 あー、そういえばロイドさんとミレイ会長って婚約者だっけ。この前聞いて驚いたんだよね…

「僕のフィアンセ」

 あ、リヴァルが倒れた。

「倒れた人、記録」

 現場保存は大切だよね。

「ロイドさん、もしかして軍務ですか?」

「そ、大事なお客様が船でいらっしゃるんでね。お出迎えを。もちろんランスロットとユーフェミア皇女殿下も一緒に。アールストレイム卿もそれのついでで昨日のパーティに来たって訳」

 

 式根島というところでロイドさんの言う大事なお客様…要はシュナイゼル殿下を待っていると、やはりと言うべきか、ルルーシュが仕掛けてきた。そりゃそうだよね、昨日なんかロイドさんと談笑してたもん。ロイドさんは面白い子って言ってたけどさ…それに、アーニャはナイトメアを置いてきてしまっているので直接戦えないらしい。僕がユフィを守らないと。

「司令部が何者かによって攻撃を受けているとのことです!」

「ご安心くださいユーフェミア様、自分が守ります!」

「いいえスザク、ここにはアールストレイム卿も居ます。あなたは司令部の救援に向かってください」

 確かにここにはアーニャがいるし任せても大丈夫かもしれない。それよりルルーシュを止めなければ。

「騎士と皇女殿下のイチャラブ、記録。」

 アーニャ…君はマイペース過ぎるよ。

「あ、それ今度データ送って貰えます?」

 ユフィ…君もマイペース過ぎるよ。

 

 僕が駆け付けるとこの前の赤いナイトメアが暴れていた。中身はどちらからわからないけれど、どちらにせよかなりの強敵だ。周りの無頼を蹴散らしつつ、攻撃を仕掛ける。

「あれは…ゼロ!」

 どうやら今戦っているナイトメアの中身はゼロではないらしい。達くで無頼の肩に乗り、サイドチェストをしているのが見える。今日もキレてるなルルーシュ…!

 

 藤堂さんのナイトメアや赤いナイトメアを迎撃し、なんとか押し込んでいく。ルルーシュに追い付くと、何故か砂地に装備もなしに飛び込んでいく様子が見えた。砂地は確かに走り込みトレーニングに良いけれど、ナイトメアじゃ意味ないことはルルーシュにも分かってるはずだけど…

「罠か?だが、関係ない!ルルーシュを捕らえればすべて解決する!」

 幸い今のルルーシュが乗っているのは無頼だ。ランスロットなら簡単に制圧できる。

 

 次の瞬間、ランスロットの動きが止まった。 こんな時に故障か?ロイドさんめ、後でぶっ叩いてやる…!

『話がある!枢木スザク!出てきてくれないか?第1駆動系以外は動かせるはずだ』

 前言撤回、故障じゃなくてルルーシュが何かしたようだ。

『捕虜の扱いについては国際法に則る。話し合いに乗らない場合君は四方からナイトメアによる銃撃を受ける上、君を私が殴ることになるが?』

 それは流石にまずい。ここはルルーシュを信じて話し合いとやらに応じるしかない。ユフィの指示も出ることを了承してくれている。僕がナイトメアを降りると、ルルーシュが待っていた。

「単刀直入に言おう。私の仲間になってくれないか?」

「残念だけど、それはお断りするよ。」

 ようやくブリタニアを中から変えられるきっかけ…ユフィの騎士になれたんだ。ここで裏切れば日本人への差別は余計に酷くなるはず。ルルーシュめ、分かってて言ってるな?何が目的なんだろう。

「ならば仕方ない。日本語でダメなら、他の"言語"で話し合いをするしかないな。」

 徐にルルーシュは四股を踏み出した。なるほど、そう言うことか

「望むところだ」

 僕も四股を踏み、ルルーシュと見合う。これからの話し合いは肉体言語だ!

『見合って見合って!はっけよい…のこった!』

 恐らくだけど、藤堂さんの合図で僕達はお互いに組み合う。まわしは無いけれど僕らの指圧ならば問題はない。ルルーシュの方がパワーは上だろうけれど、日本人として相撲で負けるわけにはいかない!

「流石だなスザク!純粋なパワーによる猛攻にびくともしないとは!」

「君こそ、侮っていたよゼロ」

『のこったのこった!』

 一度お互い距離をとり、次は突っ張り勝負だ。

「どすこいどすこいどすこいどすこい!」

 砂地にでは上手く踏ん張りが効かないが、気合いで持ち堪えルルーシュの突っ張りを凌ぐ。

『応答しろ!聞こえるか?枢木少佐。応答しろ!』

『のこったのこった!』

 くそ、なんだこんな時に!こっちはルルーシュとの相撲で忙しいんだ…!

「どうした?出ないのか?」

「そんな隙を与えてはくれないんだろう?」

「当然」

『のこった!』

 段々ルルーシュの突っ張りにも対応できるようになってきた。なんとか目で追い、突っ張りをいなしていく。すると、とうとう待ちきれなくなったのか勝手に話し始めた。

『こちらはブリタニア軍式根島基地司令フッキン中佐だ。これよりテロリストに対し地対地ミサイルを撃ち込む。枢木少佐はその場にゼロを足止めせよ』

「なにっ!?」

『のこったのこっ…なに!?』

 一瞬、一瞬だけルルーシュが動揺した。今だ!再度組み付き、しっかりとルルーシュの服を掴む。

「部下に死を命じるとはな…!」

「君の家族を悲しませることになるが、これも一つの選択だ。」

 ルルーシュは僕を引っ剥がそうと躍起になっているが、そんな簡単に剥がされるほど僕は弱くは無い。

 

『生きろ。』

 

 ルルーシュ、君はそう願ってくれたね。でも、ダメみたいだ。

「このままではお前も死ぬ!本当にそれでいいのか!?」

「…済まない。でも軍人は命令に従わなければならないんだ。」

 僕は最大の友人である君を巻き添えに死のうとしている。やはりダメな奴さ。ふと、ゼロの仮面の一部が開いた。そんな機能あったんだ。そして、ルルーシュと目が合った気がする。

 

「"    "」

 

 ルルーシュに何かを言われた気がする。ルルーシュを離し、思い切り蹴り飛ばすことで距離をとりつつ、ランスロットに近付く。跳躍をする事で乗り込み、そのままランスロットでその場を後にする。僕は…俺は…!

 

 俺にはまだしなければならないことがある!!

 




みんな大好き(?)アーニャさんがフライング出演。筋肉によって世界が歪められたせいですね!くそ!筋肉め許さないぞ!あと、個人的には彼女にはもっとあったかそうな服を着てほしい。

スザクへのギアス当てゲーム!正解はSTAGE23にて発表!


●オマケ●
ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 OPテーマ歌詞 その2

腕鍛えた、腕
果て無く強く
鍛えた日々の努力の賜物

強靭な男の中で修行するぞ
刺殺銃殺のある空間
強靭な指を立てて
俺の身体支えてる
綺麗に、逆立ちまで。


この手で潰した
新鮮赤いリンゴ

鏡に映る鍛えた身体を見てェ!


強靭な男の中て修行するぞ
刺殺銃殺のある空間
強靭な指を立てて
僕の身体支えてる
綺麗に、逆立ちまで。

強靭だ…

強靭だ…


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STAGE19

 なんやかんやあって遭難し、全裸のところをスザクに見られたカレンはスザクを襲った。注意すべきは全裸の側が襲ったと言う事だ。これはスザクの名誉のためにも必要な事である。カレンは勇猛にもナイフでスザクを襲ったが、鍛えられた腹筋の前にカレンのナイフは2回目の破損をすることになった。まぁ、根本からポッキリ折れた訳だ。
「ダメだよカレン。女の子が服も着ずに走り回っちゃ。」
「クソ…!ルルーシュといいスザクといいなんなのよこの筋肉ガチ勢…!」
「嫌だな、何もこんな時に褒めなくても」
「褒めてないわよ!!」
 何度か逃走を企てたカレンだったが…
「ははは!こんな森の中で鬼ごっこかい?カレンって意外と活発なんだね!」「病弱だって聞いてたけど、もしかして空気が良いせいなのかな!」「おーいカレン、そんなに焦らなくても木の実は逃げないよ?」
 スザクの脚力の前にすぐに追いつかれてしまい、逃げる事は諦め素直に川での食料調達に勤しんでいた。
「上手いねカレン!」
「まぁ、小さい頃お兄ちゃんとよく川で遊んだから…」
 
 余談だがこの時点でカレンが黒の騎士団だとスザクは気づいていなかったりする。

それでは本編スタートです。


 スザクにギアスをかけ、なんとか命からがらあの場を切り抜けたが…気が付けば海の上にいた。ありがたいことに近くに島があり、そこまで泳ぎ着くが、どうやら植生や気温は式根島と変わりはないとはいえ、式根島とは別の島にいるようだ。

「助けて下さーい!だれかー!助けて下さーい!」

 どこからか情けない声が聞こえ海の方を見ると…

「あなたは…!お願いです、溺れそうなので助けていただけませんか!?」

 バシャバシャともがきながらユフィがこちらに助けを求めていた。着衣水泳は想像よりも大変である。それがドレスとなれば尚のこと。よりにもよって皇族を殴り殺した男に助けを乞うとはな。まぁ良い助けてやろう。

「ありがとうルルーシュ。ふぅ、溺れ死ぬかと思いました。」

「どういたしまし…ん?」

「あら?どうしました?ルルーシュ?ルルーシュ?おーい、おーいルルーシュ?ルルーシュルルーシュルルーシュ?聞こえてますかー?もしかしてそのヘルメット集音声悪いんです?おーい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バレてる…だと…!?まさかスザクの奴!そう思って俺は拳を振り上げる。

「わわっ!誰にも言っていません!本当です。だから私をぶつ前にせめて…顔を…あと良ければ胸板とかも生で見せてもらえると、あ!割れてる腹筋もできれば!」

 なんか遠慮なく要求してくるな…。まぁ正体がバレてるなら仕方ない。俺は仮面を外し、素顔を晒す。ついでに腹筋も晒す。触っても良いぞ、遠慮するな。今までの分も触れ。

「…いつから気づいてた?」

「ホテルジャックの時、私を抱えて逃げたでしょう?その時に胸板を触ってルルーシュだってすぐに分かったわ」

 あの時か…

「しかしなぜコーネリアに相談しなかったんだ?」

「お姉様は私の言うことなんか…それにそれ以上に悲しくて。ナナリーはどうしてる?」

 ユフィはそう言うと視線を落とす。

「一緒に暮らしてるよ。目も足も悪いままだけどな。こっちも質問して良いかい?母さんが殺された事件、何か知ってないか?」

「私は何も…。あ、でもお姉様は何か調べてる様子だったわ。マリアンヌ様はお姉様の憧れの人だったみたいだし」

 憧れということはコーネリアの線も無いか?いや、断定は危険だ。憧れや好きという感情が何かの拍子に悪意に変わることはない話ではない。

「くしゅん!」

 さっきまで溺れていたと言うことはもれなく服はびしょびしょだ。俺のスーツは発注の時点で俺の汗を吸い、直ぐに乾く素材を選んでいるため既に乾いているが、このままだとユフィは風邪をひいてしまう。俺はマントを手渡し、服を乾かすように提案した。…いや、ユフィ。いきなり目の前で脱ぎ出すんじゃ無い。実の兄妹とはいえ腹違いだぞ…!自然乾燥では効率が悪い。乾いた木があれば摩擦熱で火を起こすなど造作も無い。システムは完璧だ。ささっと5秒で着火し、適当に木をくべて火を大きくする。

「凄い!流石ルルーシュ、物知りなのね!」

「木と木を擦れば摩擦熱が生じる、着火点の470℃くらいまで到達すれば火も付く。当然だよ。」

 火を確保したら次は食料だな。水は海水を煮て生じた水蒸気を結露させれば簡単に作れる。漂流物から必要そうなものを拾い集め、筋肉を用いて組み立てればそれくらい簡単だ。

「じゃあ俺は適当に食料を拾ってくるからここで待っててくれ。」

「はい、気をつけてくださいね」

 糞や足跡から獣の通り道であることがわかる。足跡の方向に向かえば獣があるはずだ。つまり…

 

 腕力でねじ伏せて獣を狩れば良い!

 

 野生の猪は海を泳ぐことがあると言う。どこから渡ってきたかは知らないが、走って逃げる猪にドロップキックを叩き込み、首をへし折って絶命させる。お前の肉は有り難くいただくとしよう。道中木の実を見つけ、スザクとカレンを見つけ、香草なんかも見つけた。漂流物にフライパンがあったし料理でも作るか。…うん?スザク?カレン?

「スザク!?」

「ルルーシュ!?」

「カレン!?」

「ルルーシュ!?」

 

 そんなこんなで俺達遭難四人組は星の輝く空の下で焚き火を囲って魚を食らっていた。

「ふふ、焼いた魚にかぶり付くだなんてお姉様に見られたら怒られちゃうわね」

「驚いたよ。ルルーシュがユフィを見つけてくれてたなんて」

「それより驚いたのはゼロの正体をずっとスザクが知ってたってことよ」

 助けが来るまでは生き延びるため協力しようという話のもと、停戦協定が結ばれた俺たちは男女四人平和に過ごしている。

「というかルルーシュ、なんでこのお人形の皇女様と仲が良い訳?」

「お人形…?確かに私はお人形のように可愛いけれど、そんなストレートに褒めなくっても…」

「…」

 そう、ユフィは天然なのだ。一人では何も出来ないお人形の皇女様という皮肉はお人形の"ように可愛い"皇女様に自動翻訳されている。これにはカレンも黙るしか無いだろう。

「あれ?ルルーシュ言ってなかったの?ルルーシュがブリタニアの皇子だって…」

「はぁ!?」

「おい馬鹿!スザクお前…!」

 忘れていた。スザクも天然だったな…これには俺も絶句するしか無い。

「どういうことルルーシュ!?ずっと私たちを弄んでたの!?」

「達って…ルルーシュ。まさかお父様に似て女遊び?」

「ユフィは黙っててくれ…!話が拗れる!」

「答えてルルーシュ!」

 暴走寸前のカレンを抑えるには真実を話すしか無かった。というか、天然夫婦のせいで誤魔化しを言ってもすぐに横から訂正されるのだ。

「俺とナナリーの母は庶民の出でな、他の皇族によって疎まれ暗殺された。母を失った俺達は皇帝シャルルによって日本に人質として送られたんだ。」

「そこで僕と会ったんだよね」

「あぁ…だからあんた達仲良いのね、納得。じゃあ学園でのあの喧嘩騒動はお芝居だったわけ?」

「えっ?スザクとルルーシュって同じ学校なんですか!?」

「だからユフィは黙っててくれ!!話が逸れる!!!!」

 人が大事な話をしてるんだから話を逸らすんじゃない。

「そして皇帝は俺とナナリーがいることを分かって日本に戦争を仕掛けた。人質の俺達のことなんてどうでも良い訳だ。」

「…だから復讐って訳ね。ふうん、納得した。」

 そう言うとカレンは再度焼き魚を飾り始める。それと、そろそろ良い頃合いだ。

「みんな、できたぞ。"猪肉の香草包み"だ。塩と木の実ソースを使ってお好みで味付けしてくれ」

 俺が狩った猪は何故か根本から折れたカレンのナイフで捌き、森の中で見つけた香草で包んで焼いたものだ。味付けはシンプルに海水を煮て作った塩か、森の木の実を俺が握り潰して絞った木の実ソースからの選択式である。

「漂流物にフライパンがあって助かりましたね、ルルーシュ」

「あぁ」

「んー、このソースだとさっぱりしてて肉に合……………木の実のソースってまさかあんた握って絞ったとか言わないわよね?」

「他にどうやってつくるんだ?こんな島にミキサーがあるはずがないだろう」

 カレンは天を見上げている。なんだ?そんなに美味かったのか?スザクは…これでもかと言うくらい塩をかけて齧り付いている。うん、豪快でよろしい。

 

 食事を終えて真っ先に口を開いたのはユフィだった。

「ねぇ、ルルーシュ、ルルーシュとナナリーが生きていると知ればお姉様もきっと力になって下さいます。テロなんてやめて私達と…」

「ルルーシュ!まさか今更ゼロを辞めるなんて言わないわよね!?」

「ナナリーの為にもここは自首して罪を償うべきだ。捕まったテロリストの末路は悲惨だよ。」

「…俺は既にこの拳でクロヴィスを葬っている。今更退く気は無い。」

 俺がそう宣言すると全員が黙った。その後は黙々と食事を取り、捜索隊らしき光を見つけ明日はあちらに行こうと話をし、眠った。

 

「そういえばユフィ。どうして名誉ブリタニア人のスザクを騎士に?」

「それは…スザクはお姉様を助けて下さいましたし、他にもたくさん活躍しています。私はそんな姿を見て、任せたくなっちゃったんです。」

「なんか…照れるな」

 そんな風に歩いていると、開けた場所にやってきた。

「ルルーシュ、この場所なら上空からでも見つけやすいんじゃないかな。」

「そうだな、ここで火でも起こして狼煙を見つけてもらうか。」

 開けた場所を歩いていると、突然地面が光り輝く。なんだ?俺のギアスやC.C.の額と同じ模様!?突然体が浮いた感覚に陥り、周りをよく見ると地面が浮かび上がって…いや、逆だ、俺達が落ちている!?

 衝撃の後、再度周りを見渡せば遺跡のような内部にいる様だ。そしてブリタニア軍に囲まれていた。待ち伏せ…?いや、それにしては対応が杜撰だ。

「銃を向けるな!皇女殿下に当たる!」

 スザクが壁になれば関係ないが、それは俺も同じことだ。

「ゼロ!あそこにナイトメアが!」

「よし、お前はあれを起動しろ、俺が時間を稼ぐ!」

 何故かスザクは動かないが好都合、今のうちに兵士をボコボコのボコにしてねじ伏せる。すると視界にある男が映った。

「シュナイゼル!?」

「君が…ゼロか」

 俺が一気に距離を詰め、拳を叩き込むがシュナイゼルは済ました顔でそれを受け流す。

「君のパンチが破壊力に優れているのはわかるけどね」

 その後の蹴り、拳、頭突き、あらゆる攻撃が読まれて対処される。

「全て受け流せば問題はないよね」

 おのれシュナイゼル…!俺の攻撃を完全に…!

『ゼロ!こちらへ!』

 今回はシュナイゼルの始末はお預けだ。カレンの言葉の方へ跳躍し、ナイトメアに取り付き、そのままコクピットに座る。

「複座のナイトメアとはな。」

「そうね、正面のナイトメアはどう突破する?」

「ふむ、こいつの武装…ハドロン砲と言うのか、これならば!」

 俺はスイッチを押すが、狙いよりもメチャメチャにビームを吐き散らしたようなことになった。

「なんだ!?武器は未完成なのか」

「安心しなさいルルーシュ、見てなさいよ!」

 カレンが何やら操作すると、ナイトメアは飛び上がった。

「ほう?このナイトメア、空が飛べるのか。ならばこの機体は黒の騎士団で有り難く使わせてもらうとしよう!HAHAHAHAHAHAHA!!!!!」

 

 

 

 僕は…えっと。そう、確か見晴らしのいい場所に…その後は…?ダメだ、思い出せない。何か奇妙なものを見たような気がするんだけど。気が付けば遺跡のようなところにいて、ブリタニア軍に囲まれていた。と言うよりもこれはユフィを守ってくれているのかな

『ゼロ!こちらへ!』

 カレンの声がしてそちらを見ると、巨大なナイトメアにルルーシュが乗り込むところだった。そしてそのあとビームみたいなものを吐き散らし、飛び上がって消えていった。

「ガウェインが、我々のガウェインが」

 どうやらあのナイトメアはガウェインと言うらしい。

「所詮は実験機だ。良いじゃないか。それよりも今は二人の無事を喜ぼう」

「シュナイゼルお兄様!」

 どうやらあの人がシュナイゼル殿下らしい。

「枢木スザク少佐。第2級軍規違反の容疑で逮捕します」

「え?」

「逮捕します」

 僕はどうやら逮捕されるらしい。事情の説明を要求すると、ボイスレコーダーを差し出された。

『枢木少佐!命令を!』

『うるさい!知ったことかそんなもの!』

 確かに僕の声だ。こんなことを言った記憶はないけれど…

「どうやってランスロットから出たのかは知らんがゼロを始末する千載一遇のチャンスを自分の命を惜しんでふいにした。抗弁する気はあるかね?」

「僕が、そんなことを?」

「これ以上はない命令違反だぞ!」

 こうして僕は捕まった。けれども、シュナイゼル殿下から特別に非常時のことだからと許しを受けた。でも、僕は僕自身が許せなかった。だから、騎士の証をユフィに返すことにした。

「こんな僕に資格なんてありません。でも、ありがとうございました。認めていただけて、すごく、嬉しかったです。」




脳筋的サバイバル術:木の板に枝を回転させて擦りつかせその摩擦熱で火を起こす。(理論的には可能だけど…)

脳筋的サバイバル術:糞や足跡から獣の通り道を割り出し、獣を腕でとっちめる。

脳筋あるある:絶好のチャンスにギアス掛けるの忘れがち

因みに、最初は捜索隊が来るのめっちゃ遅くなって4人がすっかり原始人みたいなサバイバルを謳歌すると言う展開も考えました。が、没になりました。


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STAGE20 顔面陥没(キュウシュウ戦没)

「枢木が?まったく…イシカワの制圧が終わったと思ったら…」
 先日騎士になったばかりの枢木スザクが命令違反で捕まったと言う報告を受けたコーネリアは呆れ果てた。勿論続く言葉は「これだからイレブンは」だ。すると、自身の騎士であるギルフォードが慌てたように部屋に入ってくる。
「…何事だ。」
「殿下!キュウシュウブロックの関門大橋が破壊されました」
「何!?」
「他4箇所で陸路が、さらに玄界灘に強襲揚陸艇が多数侵入してきています!」
 コーネリアは次から次へとなんなんだ!と叫びたかった。ここのところユーフェミア成分が不足していたコーネリアはご立腹である。規模からしてテロ組織ではないのは明白、つまり考えられるのは中華連邦しかない。
「中華連邦か?しかし宣戦布告は…」
 そう、宣戦布告がなされていないため、中華連邦のはずがない。そう思っていると驚きの事実が告げられる。
「いえ…それらの艇体には日本の国旗が!」
 一体どこのどいつだと、すぐさまコーネリアはキュウシュウの奪還作戦を実行するものの、連日の嵐により上陸作戦は難航し、キュウシュウを纏める時間を与えてしまっていた。

それでは本編スタートです。


『我々は!ここに正当なる独立主権国家日本の再興を宣言する!』

 テレビに映る澤崎がそんなことを宣っている。所詮お前は中華連邦の傀儡だろうに。

『なお黒の騎士団が関与しているかは調査中ですが…』

 アナウンサーの言葉を聞き流しつつ、扇の話を聞けばキョウトも知らぬ独立宣言だそうだ。そして黒の騎士団は中華連邦とも繋がりがある。どう言うことか聞く必要がある。

「ゼロ!黎星刻と連絡が取れたぞ」

『私だ。』

「お久しぶりだな。黎星刻、ニュースは見たかな?」

『私も驚いている。だが、あれは中華連邦の総意ではない』

 モニターの黎星刻は首を振り関与を否定していた。さて、どうだか…

「では我々黒の騎士団があれを潰しても問題はない、という事だな?」

『あぁ、構わないとも。」

 その後の話から察するに、亡命してきた澤崎は中華連邦内でも日本解放を訴え続け、現在の主権グループからは鬱陶しがられていた。そして澤崎が日本を解放した暁には実権を得られると皮算用した非主権グループが澤崎と合流し、今回の作戦を実行。黎星刻の話をまとめれば中華連邦的にも程のいい厄介払いのようだ。

「澤崎とは合流しない。あれは独立ではなく傀儡政府だ。中華連邦のな」

「今まで中華連邦に亡命していた男のことだ。ろくな未来はないな。しかしブリタニアの行動も放っておくのか?」

「いいや、違うな藤堂。間違っているぞ。私がガウェインで出て澤崎を捕らえる。その間お前達はブリタニアの動きを見ておけ。将来我々が動いた時にどう動くのか…その予行演習にはもってこいじゃないか?」

「なるほどな、情報収集は戦いの基本だ。我々に任せてくれゼロ。」

 藤堂は俺の意図を理解してくれたらしい。

「次に我々の行動目標を伝えておく。我々はトウキョウに独立国を作る。」

「国を!?」

「あぁ、そうだ。誰かがブリタニアを倒してくれるのを待つ余裕はない。誰かが自分の代わりにやってくれる。待っていればいつかはチャンスが来る、そんなことは有り得ない。自らが動かないかぎりそんないつかは絶対に来ない!俺の体を見ろ!」

 俺はモスト・マスキュラーのポーズで団員達に筋肉を見せつける。

「俺はブリタニアを破壊するため、ここまでの肉体を仕上げた。自らの意思で、自らの行動で、掴み取らなければこんな体にはなっていない!国も筋肉も同じだ!諦めず、目的見据え努力する。それこそが我々の目指すものだ」

「確かに、ゼロだって最初は普通の人間だったはずだ。何も無いところからコツコツと筋肉を固めて今の姿になった…俺たちが国を作るのだってできなくは無いはずだ!そうだろみんな!?」

 扇のおかげで組織は纏まってくれたようだな。

 

 ブリタニアの行動記録は皆に任せつつ、俺はC.C.と複座のナイトメアであるガウェインに乗っていた。

「砲手は任せたぞC.C.」

「なんで私がお前なんかと」

「仕方がないだろう?シミュレーション結果で俺の操作で死なないのがカレンだけだったんだ。カレンはそもそも紅蓮があるからな、消去法でお前だけだ。」

 C.C.がガシガシと後頭部を蹴っ飛ばしてくるがこの程度蚊に刺されたようなものだ。

「お前今なんて言った?シミュレーションで死なないのがカレンだけで消去法で私?それってつまりシミュレーションだと私は死んでるってことだよな?私は不老不死だから乗せられてるだけだよな!?」

「舌噛むぞ」

 フルスロットルで加速し、一気にキュウシュウを目指す。

「ん"ん"ッ!!」

 何やらC.C.から変な音が聞こえたが大丈夫だろう。スザクを確認すれば囲まれているようだ。

「相変わらず無茶をするやつだなスザクは。撃て、C.C.!」

「…はっ!?くそ、言われなくともわかっている!」

 ラクシャータが気合いで収束させたハドロン砲をスザクを囲む中華連邦のナイトメアに向け放ち、敵を一掃する。

「C.C.次は航空戦力だ。薙ぎ払え!」

「人使いの荒い!」

 中華連邦の航空戦力をハドロン砲の薙ぎ払いで一掃。これで邪魔者はいなくなった。

「枢木スザク、生きているか?」

『ゼロ!その機体は…』

 スザクという単機で本陣を撹乱してイレギュラーを作る。失敗してもコーネリアは動きやすい。この策を考えたのはシュナイゼルだろうが今回は逆に利用させてもらおう。スザク単騎ならば俺も動きやすいと言うものだからな。

「エナジーが尽きているようだな。さぁ、受け取れ、新品のエナジーフィラーだ。これから私は敵の司令部を叩く。」

『僕は…』

 

 

 

 

 僕は絶体絶命だった。中華連邦のガンルゥと呼ばれるナイトメアは一機一騎の性能は低いけれどとにかく数が多い。防ぎきれずにヴァリスやフロートユニットは破壊され、僕は遠距離攻撃も逃げるための翼も失ってしまった。

『投降したまえスザク君。枢木玄武首相の遺児として丁重に扱うことを約束するよ?』

 そんな訳にはいかない。僕は…僕が殺した父の名で生き延びてしまったら僕はもう自分が許せないだろう。

 

『枢木スザク!』

 

 誰かと思ったらユフィが通信を入れてきた。もしかしたら援軍でもきてくれるのかもしれない。

『えっと…わたくしを好きになりなさい!』

 …?何を言ってるんだユフィは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうなってます!」

 

『え?』

「え?」

 いや、好きになれた言われても僕はもうユフィのことは好きだし…。

『な、ならもっと好きになりなさい!その代わり私があなたを大好きになります!私があなたの全てを大好きになります。だから、自分を嫌わないで!』

 あぁ、そうか…僕は良かれと思って騎士の証を返したけれど、かえって心配させてしまったのか…。

「お願いがあります。僕に何かあっても自分を嫌いにならないでください。あとその時は僕の存在を全て消してもらえると…。友達に迷惑はかけたくないから転校したことにでもしてください」

『スザク、まさか…ダメよ!」

 僕は再びナイトメアに囲まれてしまった。エナジーが尽きてしまってはいくらランスロットでも防ぎきれない。僕はここで死ぬみたいだ。

「ああいけない。セシルさんやロイドさん。それとシュナイゼル殿下によろしく。フッ…最後まで独りよがりだったな僕は…」

『スザク死なないで!生きていて!』

 生きる…?そうだ、そうだ僕は…!この際ランスロットを捨てて素手で殴って戦うのもいいかもしれない。そんな風に思い始めた時だ。

 

 突如周りのナイトメアが何者かによって殲滅させられた。上空を見ると神根島で盗まれたガウェインのようだ。

『枢木スザク、生きているか?』

「ゼロ!その機体は…」

 どうやらルルーシュのようだ。助けに来てくれたらしい。

『エナジーが尽きているようだな。さぁ、受け取れ、新品のエナジーフィラーだ。これから私は敵の司令部を叩く。』

 ルルーシュから受け取ったエナジーフィラーのお陰でランスロットは再度動けるようになった。これなら…

「僕は…悪いけどナイトメア操縦技術を鍛えるために君よりも先に敵の司令部を叩くよ。」

 僕とルルーシュは共に進み、敵を蹴散らしていく。

『下がっていろスザク。壁に穴を開ける。』

 ガウェインのハドロン砲で開けられた穴を使い、建物内に侵入していく、

『ゼロ!お前達は日本を憂いる同志ではないのか!?』

『我ら黒の騎士団は不当な暴力をふるう者全ての敵だ』

『不当だと?私は日本のために!』

「日本のためという割には澤崎さんには筋肉が足りませんね、鍛えてから出直して下さい!」

『脳筋がぁ…!!』

 キュウシュウ最大の要害は僕とルルーシュによって制され、澤崎達の拘束に成功した。澤崎さんが抵抗したので顔面に膝を叩き込み気絶させたけどね。ルルーシュの…黒の騎士団の関与は表立っては報道されなかったけれど、噂は流れているようだった。これがルルーシュの狙いか。

 

 僕はユフィの元に生きて、そして前よりも鍛えられて戻ることができた。

「スザク。私ね。分かったんです。理想の国家とか大義とかそういう難しいことじゃなくてただ私は筋肉が見たいんだって。今大好きな人とかつて大好きだった人の筋肉が」

 そうしてユフィは僕が返してしまった騎士の証を差し出してくれた。

「それを実現するために私を手伝ってくれますか?」

 今のままではユフィの願いは叶えられないかもしれない。だから、ユフィの願いが叶えられるように僕がユフィを鍛えなくちゃいけない!

「イエス ユア ハイネス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ルルーシュ」

「なんだい?スザク」

「やっぱりこの課題、教えてくれないかな」

 そして僕たち二人は夜の学園で補修を受けていた。

「自分で考えろ。身体だけじゃなくて頭も鍛えたらどうだ?」

 …そうだな、いつまでもルルーシュに頼ってばかりじゃダメだ。僕も頭を鍛えないと。

「二人とも静かに!」

 ドンと机を叩く音がする。

「確かに中華連邦の介入や黒の騎士団によるテロ行為によって世間はいろいろと騒がしい」

 わなわなと手を震わせる先生の顔は般若のようだ。

「しかし!それとこれとは別問題!出席日数が足りないというこの事実!いくら成績がよかろうと!いくらユーフェミア様の騎士だろうと!いくらイケメンだろうと!いくらムキムキだろうと!出席日数が足りなければ留年しかないの!あ、でも私個人としては留年してくれた方がその目の保養的には…」

 先生は留年してもいいと言ってくれているけれど、僕はユフィの好意で学校に通わせてもらってるんだ。無様に留年なんてしたらユフィに心配をかけてしまう。

 

「…であるからして、ここの答えは?ルルーシュ!」

「…です。」

「せ、正解。なんでお前授業出てないのにわかるんだ?」

 歴史の授業…なんとなくだけど、ルルーシュって元皇族だし近年の皇族関係の歴史は先生よりよほど詳しいんだと思う。僕は…うん、さっぱりわからない。あ、この人リ・ブリタニアってことはユフィ達のお母さんかな。へー、こんな人なのか。

「こら枢木!ぼーっとするな!」

「あ、はい、すみません。」

 半ば眠気との戦いとなってきた補習、最後は…

「最後は体育だ!」

 こうして体育の補習として僕もルルーシュは夜のグラウンドに佇んでいた。なんで深夜一歩手前に体育の補習を…?

「先生こんな夜にわざわざ屋外でベースボールの補習なんて正気ですか?」

「しかもナイター仕様だしね。みんな明るくて目、覚めちゃうんじゃないの?」

「うるさい!体育の補習、ベースボールやるぞ!キャッチャーは俺がやる、ルルーシュが先にピッチャーやれ。枢木がバッターだ。」

「スザクくーん!がんばってー!」「ルルーシュが三振に抑えるに賭けるぜ!」「じゃあ俺はホームラン撃たれる方に賭けよう」「お兄様ー!スザクさーん!頑張ってー!」「頑張れルルーシュ!」

 ほら、みんな起きちゃってるよ。…いや、ナナリーに明るさ関係ないよな…?なんでいるんだ?

「じゃあ行くぞスザク。全力で行くからな、お前も手を抜くなよ」

「分かってるよ。」

 はち切れんばかりの体操着に身を包んだルルーシュがピッチャーマウンドに立ち、おおきく振りかぶって…投げた!そして体操着は爆ぜた。ど真ん中に投げられればボールにバットを当てることは可能だ。そう、当てるまでなら。フルスイングしたバットと全力投球されたボールは激突し、今なおギュルギュルとボールは回転し続けている。ルルーシュのボールと僕のスイング、どちらが強いか。

 

 答えは不明何故なら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 金属バットがへし折れたから。

 

 折れた金属バットはルルーシュに直撃するが、バットは粉々に砕けた。そして僕のバットを突き破って尚ボールは勢いを無くさず、ミットに納まった。いや、納まったというのは語弊がある。

 

 僕らの視線の先にはキャッチャー役の先生、ルルーシュの全力投球をミットに納めたは良いものの、そのまま吹っ飛ばされフェンスにめり込んでいる。しかも気まで失ってるようだ。

「先生が気絶してるってことは体育の補習終わりってことでいいんだよな?」

「え?いいのかな?」

 まぁでも…起こすのも忍びないし、何よりも眠い。今日はもう帰ろう。

「もう今日は遅いしうちに泊まっていけよ。ナナリーも喜ぶ」

「うーん、じゃあそうさせてもらおうかな」

 ルルーシュに従い補習を終えたけれど、普通に次の日怒られたよね。




露骨な尺稼ぎの補習パート。


19:40 一部修正(シミュレーション云々の箇所)


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STAGE21

 ユフィはルルーシュとナナリーが生きていることを知り、どうにかしてスザクとルルーシュが戦わなくていい方法を模索していた。
「そうだ!エリア11の中にイレブンが日本人に戻れる場所があればいいんじゃないかしら!」
 こいつは名案だとウッキウキでシュナイゼルに話をすると
「ユフィ。このアイデア素晴らしいと思うよ。そうだね、行政特化であれば副総督の立場でも可能なんじゃないかな。それに枢木 スザクは名誉ブリタニア人、彼を騎士に任命したユフィの言葉ならイレ…いや、日本人のみんなも協力してくれるよ」
「えっ!じゃあ!」
「君は君の信じた道を進むといい。コーネリアには私から話しておくよ」
 頭の良さについて絶大な信頼を寄せているシュナイゼルからのお墨付きをもらい、ユフィはウッキウキで部屋を出た。

 ユフィが部屋を出たあと、シュナイゼルは一人で微笑んでいた。
「行政特区日本…これがあれば黒の騎士団は瓦解する。この戦いは我々の勝ちのようだね、ゼロ…」

 そんな訳で本編スタートです。




『皆さ~ん!お待たせいたしました!これよりトウキョウ租界でいっちばんオープンなアッシュフォード学園の学園祭を始めま~す!』

 今日は学園祭、ナナリーも楽しみにしていたし、俺も今日くらいは平和に過ごしたい。カレンもスザクもそのことに納得してくれているようなので、取り敢えず大丈夫だろう。

『スタートの合図はこの一声から!』

『あの…いいんですか?』

 スタートの合図はナナリーがすることになっている。それは、目も見えず脚も不自由なナナリーを気遣い、会長が学園祭に携われるようにと配慮してくれたのだ。

『いいの』

『それでは…にゃぁ〜!』

 ナナリー!おおおおおおナナリー!ナナリーおおおナナリーナナリー!!!うおお!!!うおおおおおお!!!!!

「「ナナリーーーーーーーーー!!!!!!!」」

 俺とスザクは周りの目も気にせず叫んだ。いいじゃないか、可愛かったんだから。カレンからうるさいと蹴飛ばされ、スザクはピザの材料カット、カレンはホラーハウス、俺は文化祭の運営に戻った。

 

『各地域の緊急時における対応は全てデータに残してあります』

「澤崎達にも利用価値はあったな。…ところでディートハルト、お前今表の仕事をしてるはずだが…平気なのか?」

『ええ、私は左遷された身ですし、ゼロのテレビデビューと黒の騎士団のデビューを放送した責任でカメラを持つことが禁止されていますからね。私立アッシュフォード学園という場所で開催される世界一のビザ作りの特番に携わっているのですが、撮影班は出ていきましたし、中継車内にいるのは私だけですから問題はありませんよ』

 つまりマスコミが学園祭に?まずいな、俺は顔を晒すわけにはいかない。

「そうだったか、藤堂はどうしている?」

『放送局など占領目標のリストアップを行っています。キョウトへのダミー計画書共々チェックをお願いしたいのですが』

「分かった。明日確認する。」

『ああそれと報告が遅れましたが、本日租界諜報員の篠…

 ディートハルトの電話とは別に、誰かが俺に声をかけてきた。

「大変よー!リンチよリンチ!」

 会話内容から俺の正体が発覚するのは不味い、俺は後で電話すると伝えて電話を切る。会長に聞けばイレブンの見学者がブリタニアの見学者から因縁をつけられリンチにあっているらしい。

「あそこよルルーシュ!ほら!」

 やたらとお姫様抱っこに拘っていたミレイを抱えて現場に駆けつけ、ミレイの指を指す方向を見ると…

「うん?」

 あれはいつぞやのカルフォルニアドッグ屋をリンチしていた連中か?

「おい、お前たち」

「ぁあ?なんか文句あん……」「あ、あの筋肉…間違いねえ…」「筋肉に殺される!」「うわああああああ!!!」

 俺の顔を見るなり逃げ出した。まあ、判断としては賢いな。

「流石ねルルーシュ!」

「前懲らしめたことがあっただけですよ」

 その後、ピザの進行に3%の遅れがあった為、気合いで解決することになった。

 

「スザク、材料を切るのに手こずっているらしいな」

「ルルーシュ、来てくれたのか。何分量が多いからね。でも焦って手加減を間違えるとまな板ごと切っちゃいそうで」

「だったらスザク、俺の胸板をまな板がわりにしろ。包丁では切れないから遠慮なく玉ねぎが切れるだろ?」

 俺は服を脱ぎ、胸板を軽く水洗いして寝っ転がる

「流石だねルルーシュ!それじゃあ遠慮なく…」

 軽快なリズムを刻むスザクの包丁の前にあっという間に玉ねぎは切り刻まれた。玉ねぎの次はトラックから運ばれてきたチーズ関係だが、そちらはスザク一人で十分とのことで、俺は再び全体の仕切りに戻ることとなった。

 

「危なーい!」

 飛んできたピコピコハンマーをキャッチすると、スザクの上司のセシルとかいう女がやってきた。

「ごめんなさい、思い切り叩いたら一撃で折れちゃって」

「いえ、ブリタニアの軍人さんにも楽しんでいただけててるみたいで良かったです。」

「ええ、本当はお酒があると最高なんだけど、流石に…ね?」

 流石に学園祭でアルコールの提供があるはずがない。それは流石に諦めて欲しいものだ。するとシャッター音が聞こえた。不味い、俺はメディアには露出できない!振り返るとそこに人影はなく、視線を下ろすと音の正体がいた。

「スザクよりマッシブな人、記録。」

「アーニャ、勝手に人の事を撮影しちゃダメモニ!早く消すモニ!」モニ!

「…わかった」

 あれは確かナイトオブシックス…また学園に来てたのか…隣の…なんか凄い語尾が聞こえた気がする金髪の女はよく分からんが、写真を消すように言ってくれた事には感謝しよう。

 俺はラウンズとそのオマケを見送り、再び進行に戻る。くそ、これではテロの準備が…

「おい、そこの肉ダルマ」

「うん?あぁ、お前か。変装はバッチリ出来ているな。ピザは午後からだ。大人しく待ってろ」

 話しかけてきたのは変装して制服を着せたC.C.こいつの目当てはピザだが、ピザは午後から。頼むから邪魔しないで欲しい。

 …そういえばC.C.って何歳なんだ?幼いマオにギアスを与えてるってことはそれなりの歳は行ってるよな?不老不死とはいえ…あ、そうか…心の年齢が高いからナリタのときの服装をあんなに気にしてたのか…

「C.C.」

「なんだ?」

 俺はC.C.を見ずに話しかけた

「お前見た目は若いんだ。女子高生でも全然違和感ないな」

「…そ、そうか?ま、まぁ?私はC.C.…だからな!こういう若い格好も?当然着こなせてしまうさ!ふふっ、仕方ない、午後までは部屋でおとなしくしておいてやろう」

 そう言うとC.C.は満足そうに帰っていった。なんなんだあいつ?まぁ、自主的に大人しくしてくれるんだ、ピザは多めに持って行ってやろう。

 

 機材の確認の兼ね合いで俺は倉庫を訪れていた。バーナー用のボンベ…うむ、ちゃんと予備以外は持っていってるな。予定通り進行してるといいんだが。そう思っていると倉庫にスザクとシャーリーが入ってきた。

「バーナー用のボンベでしょ?予備は確か…」

「どうしたんだい?二人とも」

「あ、ルルーシュ。実はバーナー用のボンベにトラブルがあってね、予備が欲しいんだけど」

 ちょうど確認したところだったのですぐに案内すると、スザクが担いで走っていった。あいつ張り切ってるな。学園のみんなに頼られてるのが嬉しいらしい。学園のみんなもスザクの事を受け入れてくれていて友人としてはとても嬉しい。やっぱり筋肉か?筋肉の多いスザクだから受け入れられているのか?ならば日本人を全員マッチョに…

「あのさ、ルルーシュ。話したいことがあるんだけど」

「うん?なんだいシャーリー」

 本当は作戦の準備を進めたいのだが、それを言うわけにはいかない。と、その時突然シャーリーの近くのパネルがシャーリーへと倒れ始めた。

「危ない!シャーリー!」

 動けないシャーリーを助けるために片手で抱き寄せ、片手でパネルを止める。

「あっ…」

「どうした?もしかして強く引っ張り過ぎて脱臼でもしたか!?」

 するとシャーリーは首を振る。よかった、怪我はしていないようだ。

「…ありがとう。ルル、私のことまた助けてくれたね」

「どういたしまして、いや、当たり前のことをしただけだよ。そういえば話ってなんだい?」

「あー…うんとね、今度買い物に付き合ってほしいなって。ダメかな?」

 シャーリーとはなるべく関わらない方針だが、「ぶつかった衝撃で記憶を吹っ飛ばした」事になっているわけなので事情を知ったシャーリーは気にせずに前みたいに仲良くしたいと積極的に俺に関わろうとしてくる。流石に邪険にしすぎるとスザクや他のみんなから怪しまれるため、程よく付き合うべきだろう。

「わかった。予定が合えば付き合うよ」

「ホント?やった」

 俺も俺でそろそろ進行管理に戻る必要があったので、シャーリーに別れを告げその場を去った。

 

『さぁ!始まりました世界一のピザ作り!ご覧下さい!私の足元にあるのが今回のためだけの特製オーブン!実はこれ材料費だけで済んでるので意外と予算は掛かってなかったりします!組み立ては生徒会副会長と風紀委員の二人がやってくれました!素晴らしき筋肉の有効活用!』

 リヴァルの奴張り切ってるな…まぁ、会長の推し企画だし成功させたいんだろうな。

 俺が管理室で進行管理をしていると、扉が開きミレイ会長が入ってきた。

「さすがね。時間どおりいけそうじゃない?」

「最近人を使うことを覚えましたから。それにしてもみんな楽しんでくれてるみたいでよかったです。あとはピザ作りが成功すれば大成功ですね」

 そしてまたドアが開いた。…この香りはナナリーか。しかしもう一人は…咲世子ではない…誰だ?ナナリーとどこか似た…まさか?

「お兄様」

「ナナリー、ピザは…」

 ナナリーの方を見ると、変装をした気になっているであろうユフィが居た。誰も止めなかったのか…?サングラスに帽子…お前、それで本当に変装した気になってるのか?冗談だろ…?お前のその特徴的なピンク髪、それをどうにかしろ、せめて髪型を変えろ、いや、誰も止めなかったのか!?しかも服装、なんでそんなに派手なんだ…会長に断りを入れ、俺はユフィとナナリーを担いで別のところへ急いだ。

 

 遠くでスザクが乗るナイトメア、ガニメデがピザ生地を大きくしているのを眺めながら、俺達兄妹の3人は話をした

「世界一のピザ、アーニャわくわく」

「ピザ、楽しみモニ!」モニカモニモニ!

 アーニャとそのオマケもスザクのピザ作りに夢中のようだな。

「私もこの学校に入学しようかしら。ルルーシュとスザクがいるなら楽しそう。」

「副総督の仕事はどうするんだい?」

「勿論続けますよ?」

 スザクや俺より欠席が多くなりそうだな。

「出席日数が足りなくて3人揃って補習だな。先生言ってたんだ。『いくら成績が良かろうと、ユーフェミア様の騎士だろうと』ってさ。」

「あら、そうなると『皇女殿下でも』って言って補習受けさせられるのかしら?」

 その時不意に風が吹き、ユフィの帽子が吹き飛んだが俺がすぐに回収してユフィに被せ、その日は他愛のない話をして終わった。なんだかその時やたらとボクシングについて聞かれた気がするな。

 

 

 

 私の占領した地域であるエリア18にて起きた問題解決のために私は一度エリア11を離れエリア18での問題対処に当たっていた。ゼロと比べれば稚拙な奴らだったので軽く捻り、首謀者に腹パンをかまして私はエリア11へと戻ってきた。私が抜けた穴にはシュナイゼル兄上が自らの正規軍を回してくれている。そして今日はそんなシュナイゼル兄上の出立の日である。

「よくぞ一晩でエリア18から。コーネリア軍は優秀だな」

「とんでもない。兄上が自らの正規軍を代わりに回してくださったからこそです」

「それぐらい当然だよ」

「本国待機のグラストンナイツも合流しこれで我が軍は本来のあるべき姿となりました。グロースターのザッテルバッフェもあります」

 これも兄上の計らいの結果だ。私が抜けた穴を尽く兄上が埋めてくれている。結果、我が軍はゼロを捉えるための戦力増加に成功したこととなる。

「分かっている。中華連邦との交渉にはそのカードを使わせてもらおう」

「お願いします」

 兄上としもエリア11に配備される私の軍が増強されることは交渉にて優位に働く。私とて無駄にブリタニアの魔女と恐れられているわけではない。数々の国を陥落させエリアとしてきたのだ。

「光栄だな。戦場では並ぶ者のないコーネリア姫にお願いされるなんて」

「兄上、揶揄わないでください…!」

「本当さ。戦場での君は武闘会の男の筋肉に流れる汗より美しく輝いているよ」

 やだもう!私は照れ隠しにビンタを見舞ってしまう。しかしその手はしっかりと兄上によって握られ止められていた。

「腰を使いスナップの効いた素晴らしいビンタだね、コーネリア。まるで…そう。閃光のように」

「っ!やめてください…私ごときが…ユフィはどこへ行ったのかしら?兄上のご出立だというのに」

 兄上には敵わないな。恥ずかしいので話題を変えて誤魔化そう。

「ユフィならゆうべ話をしたよ。ああそれとバトレーが管理している件だけど」

「ああ。構いませんが本当にあれに利用価値が?」

 私は前に視察した強化人間プロジェクトについて思い出す。神経電位接続…自らの身体への改造が必要な…私には不要な技術だ。

 

 私は現在、自身の乗るグロースターの整備状況を確認していた。エリア18は砂漠地帯、砂などが残っていると動作不良の原因となるからな。

「何も総督自ら立ち会って頂かなくても」

「何をいう。私が命を預ける機体だ。私が整備を見届けなくてどうする。…あ、そこはもう少し硬めでいい。」

「え、ですがそれだとクッション性が」

「強度が落ちては意味がない!乗り心地など捨て置け!」

 ゼロに勝つ為には乗り心地より実を取らねば。するとニュースを確認していた我が騎士ギルフォードが何やら慌てている。

「姫様!ユーフェミア様が!」

 ユフィが?今度は何をしでかした?まさか枢木と結婚などと言わないだろうな?そうなれば………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………うぅ、ユフィを殺して私も死んでやる…!くそ、やっぱりそんなのは嫌だ。いっそ結婚式には呼ば無いで欲しい何をしでかすが自分でもわからん。あぁ、もし子供とかできたらユフィに似て可愛いんだろうなぁ…あ、でもイレブンとのハーフ…?くそ…!なんて事だ!だが、枢木に似て強い子になれば…?いやいや、ハーフの皇族が皇帝になど…そもそもハーフとして迫害されるのでは?そんなのはあってはならない!くそ、こうなったら私が皇帝になってハーフに優しい政策を…!

「姫様!?聞いておりますか?姫様!」

 よし、コーネリア・リ・ブリタニアの名の下にブリタニア人のハーフにはブリタニア人と同じ地位を授けることを政策にしよう!そもそもブリタニアは強い国、その国民の地も他国のものより強いはず!そうに違いない!ならば半分がブリタニアの血ならもうそれはブリタニア人だ!ふふふ、我ながら完璧だ。

「姫様!どうなされたのです姫様!姫様ァーーーー!!!」

 …はっ!?いけないいけない…なんだったか、ユフィがどうかしたんだったな。

「また、何かやったのか?」

 モニターに映るユフィを見れば政庁の記者発表フロアにいることがわかる。それにしても生放送とはな。

『わたくしユーフェミア・リ・ブリタニアはフジサン周辺に行政特区日本を設立することを宣言いたします!この行政特区日本ではイレヴンは日本人という名前を取り戻すことになります。イレヴンへの規制ならびにブリタニア人の特権は特区日本には存在しません!ブリタニア人にもイレヴンにも平等の世界なのです!』

 ユフィ…何ということだ。そんな夢物語では…。

『聞こえていますか?ゼロ!あなたの過去もその仮面の下もわたくしは問いません!ですからあなたも特区日本に参加してください!』

 何だと?クロヴィスはどうなる!?

「何だこれは!」

「落ち着いて下さい姫様!」

 一体ユフィは何を考えているのだ…!




カレンの脱出の必要性がないので扇は潜入してません。なので倉庫にカレンも来ません。よってディートハルトからの報告も咲世子さんに関するものになっています。…あれ?その場合大事なフラグが折れる気が…?

ルルーシュの身体能力が高すぎたのと、シャーリーを蔑ろにしなかったおかげでユーフェミア身バレを防ぎ、無事にピザは完成しました。やったねC.C.!

●NGシーン●
「あの、本当にいいんですか会長、俺なんかの号令で…それじゃぁ………」
 俺は大きく空気を吸い込み…
「ヤー!」\it"s my life!!/

●お知らせ●
不手際で同時刻に22話も公開していました。23日19:10時点で修正しております。


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STAGE22

●お知らせ●
不手際で23日に22話を投稿していました。23日19:10時点で削除し、24日19:00に公開し直しています。



 ユーフェミアとナナリーは学園祭の時、二人きりで話をしていた。
「ねぇ、ユフィお姉様、覚えてますか?昔お兄様を二人で取り合って…」
「覚えてる。どっちと結婚するのか今日決めてって迫ったの」
「そうですそうです、二人で腕を引っ張って…」
「服がビリビリーって破れちゃったのよね!ふふふ…」
「知ってましたか?あの時お兄様、肩を脱臼してたんですって!」
「まぁ!」
「「うふふ、あはは」」

それでは本編スタートです。
※一部の人には受け入れられない展開かもしれませんがご了承下さい。



「なんかさぁ、久しぶりじゃない?」

「なにが?」

 俺はリヴァルのバイクと並走しながらリヴァルと会話をしていた。

「こうやって二人で話すのがさ」

「…そうかな。」

「そうだよ。」

 目的につくと俺はサイドカーから荷物を取り出す。

「悪いな、寄り道してもらって」

「良いって、こっちも買い物に付き合ってもらってるし。」

「じゃ、シャーリーと待ち合わせてるから」

 そう、今回の寄り道とはシャーリーとの待ち合わせ。最近シャーリーはまた俺に関わろうとしている。本当は突き放すべきなんだろうが…非情になりきれない。甘いな、俺も。

「シャーリーの記憶戻ると良いな。じゃな!ルルーシュ!」

 そう言ってリヴァルは走り去ったが、俺として記憶が戻るのは不味い。とは言え、確かにこのままなのも良くはない。せめてフェネット氏の死の真相さえわかればな…。

「何が行政特区だ!何が援助だ!署名などするものか!」

 突然そんな大声が聞こえてきたのでそちらを向くと、小さな子供をステッキで殴りつけている男を見つけた。

 

よし、殴るか。

 

「もう平等になった気か?下の者はおとなしく上に従っておればいいのだ!」

「もう平等になった気?違うな、間違っているぞ。人々は既に皆平等だ。」

「なんだ貴様?」

 男が俺を睨みつけるが、俺は拳を見せつける。

「人は死ぬまで殴れば皆等しく死ぬ。つまり、既に平等だ。」

 俺が拳を振り上げると、男のそばに立っていた男が立ち塞がった。

「そこまでだ学生くん」

「む?あなたは…」

「おや?」

 この大柄の男、どこかで…

「し、師匠!大変失礼致しました。」

 大柄の男は帽子を取り俺に頭を下げた。

「久しぶりだな。今何やってるんだ?」

 この男は俺がかつて荒らし回っていた地下格闘で出会った、俺と同じ珍しいブリタニア人格闘者だ。俺がボコボコにしたところ、俺を師匠と呼び、しばらく稽古という名目でボコボコにしていたことがある。つまり…ボコボコにしていた相手だ。

「はい、師匠に鍛えていただいた腕を売ってボディーガード業を」

「ほう?つまりあいつが今の雇い主か?」

「あ、は、はい…」

 俺はかつての弟子に腹パンをぶち込む。

「ゴフッ…」

「あいつは君が仕える価値のない男だ。早くうちに帰りたまえ」

「あ、は、はい…そうします…。」

 負傷を負った不肖の弟子は腹を押さえたままとトボトボと帰っていった。

「…わ、私もこれにて失礼する…」

 ふん、自分が殴られた訳でもないのに…これだから貴族ってやつは。

 署名運動をしていた子供がお礼を言ってきたので、優しく頭を撫でてから筋肉をつけろとアドバイスをしてその場を立ち去った。

 

「こーらルル!また人を殴ってたでしょ!」

「み、見てたのかい!?シャーリー、でもあれは…」

「見た感じ、がたいのいい男の人は知り合いだったんでしょ!?じゃあ殴らずに解決できたたんじゃないの!?」

「あ、はい。」

 反論できない、確かにそういう道もあったかもしれない。

「もう、ルルは折角頭も良いんだし力も強いんだから、もっと穏便に解決とかできないの?」

「…善処するよ」

 その後、これでもかというくらい荷物を持たされ、シャーリーとの買い物は終わった。

 

 俺は黒の騎士団を行政特区周辺で待機するように命じ、ガウェインに乗り行政特区へと向かった。

「ようこそゼロ!行政特区日本へ」

 会場に現れた俺へと真っ先に声を掛けてきたのはユフィだった。

「ユーフェミア・リ・ブリタニア。折り入ってお話ししたいことがあります」

「わたくしと?」

 お前以外にユーフェミアはいないだろうという言葉を飲み込み、俺はあくまで冷静なゼロを演じた。

「はい。あなたと2人きりで」

 俺は一通りボディチェックを受け問題ないと言われた。馬鹿め、俺の最大の武器はこの肉体、銃も刀も必要ないだろうに。

「ではこちらへ」

「ユーフェミア様。やはりこの男と2人っきりになるのは危険では?」

「あらスザク、妬いてるの?」

「ゆ、ユーフェミア様!?」

 腹違いとは言え実の妹が親友とイチャイチャするところを見せられるとなんというか…なんだろう、腹が立ってきたな。

 

 案内された先で俺はその場の機材を徹底的に拳で破壊…しようかと思ったが、場合によっては活用するかもしれない。電源を切るだけにとどめておこう。

「意外と慎重ね、てっきり拳でぶっ壊すのかと思ったのに」

「後で使うかもしれないからな。無駄に壊すのは馬鹿のやることさ」

「無駄には壊してないつもりだったんですね。」

 俺は仮面を外し、ユフィを見つめる。今から俺はギアスを使いユフィに日本人を虐殺命令を出させ、日本人を決起させるつもりだ。俺のギアスならそれが可能。犠牲は出るが、行政特区日本をぶち壊してブリタニアを倒すにはそれくらいの荒療治が必要なのだ。

「この式典は世界中に中継されている。そこでブリタニアの皇女である君が日本人の虐殺命令を下す。するとどうなると思う?」

「うーん、怒るんじゃないかしら」

「あぁ、騙し討ちされたとなれば日本人は怒り、君の信用は地に落ちる。そして暴動が起こるだろう。」

 そうだ。ブリタニアの中の偽りの日本に浸ろうとする腑抜けた連中にはこれくらいしなければならない。

「何ふざけてるんですか?私と一緒に日本を…」

「一方的に押し付けるのは筋トレの負荷でも政策でも悪手なんだよ。」

 すると、何故か俺は左目に激痛を覚えた。なんだ!?昨日筋トレしすぎたか…!?

「ルルーシュ!」

 痛みのあまりうずくまると、ユフィが駆け寄ってくる。それを手を振り払うことで追い払う。

「やめろ!これ以上俺を哀れむな!施しは受けない!俺はこの肉体のように自分の力で手に入れてみせる!」

 そうだ。俺はクロヴィスを殴り殺したんだ。ここでお前が憎まれ、それを俺が殴り殺す。そうすれば俺は、ゼロは、日本人から俺の体よりも分厚い信頼を得ることができる!

「…そのためにも、汚れてもらうぞ!ユーフェミア・リ・ブリタニア!」

「その名は返上しました!」

 …何?今なんて…?返上?

「いずれ本国から発表があると思いますが皇位継承権を返上しました」

「なぜ…?まさかゼロを受け入れたから?」

「私のわがままを聞いてもらうのですから、それなりの対価は必要でしょ?」

 なぜ、何故ユフィはそこまで?

「随分と簡単に捨てられるんだな君は…俺のためだとでも言うのか?」

「ふふ。相変わらず自信家ね。ナナリーのためよ」

 …そうか、ナナリーのためか…

 

『もう、ルルは折角頭も良いんだし力も強いんだから、もっと穏便に解決とかできないの?』

 

 …そうだな、シャーリー。俺程の力があるのなら、穏便にやる方法だってあるはずだよな。

「…君の勝ちだ。この行政特区を生かす形で策を練ろう。ああ。部下になるわけじゃないからな?」

「ええ」

 よく考えたら日本人の虐殺なんて、ナナリーの望む優しい世界に必要だとは思えない。俺が間違っていたよ。

「でも私って信用ないのね。筋肉で脅されたからって私が日本人を殺すと思ったの?」

「ああ違うんだよ。俺が本気で命令したら誰だって逆らえないんだ。俺をぶて、スザクを解任しろ、スザクをぶて、コーネリアをぶて、クロヴィスの亡骸を掘り起こしてぶて、シュナイゼルをぶて、全裸でダブルバイセップスをしろ、コーネリアの恥ずかしい秘密を話せ、幼少期のコーネリアの可愛らしいエピソードを暴露しろ、コーネリアのスリーサイズと体重を暴露しろ、服を裏返しに着て歌いながら踊れ、コーネリアが最近気にし始めて使い出したスキンケア商品を紹介しろ、コーネリアの好きなところを話せ、シャルルに金的をしろ、そう、どんな命令でもな。」

「ふふっ、へんな冗談ばっかり」

 まぁ、そうだよな、こんなのは冗談に聞こえるよな。

「本当なんだ。例えば"日本人を殴り殺せ"って命令したら君の意思に関係なく…」

 うん?なんだ?いま、何が起きた?何故ユフィは苦しんでいる?

「いや…そんなのしたくない…いや…!」

 なんだ!?何が起きている…!ま、まさか…!まさか…!!先ほどまで苦しんでいたユフィはピタリと止まり、ゆっくりと顔を上げると、まるでそれが当たり前のことかのように

 

「…そうね、日本人は殴り殺さないと」

 

 と言った。俺もマオと同じようにギアスのオンオフができない…?暴走している…!?いや、そんなことより、ユフィを止めないと!幸い俺の筋肉を持ってすればユーフェミアを取り押さえることくらい可能だ。俺がユフィに駆け寄ると、ユフィによる金的が炸裂した。

「マ°ッ」

 そういえばユフィ、島で遭難した時にチラッと見えたが腹筋が割れていた…それに今のパンチのモーション、殴り慣れている…!一体どこでそんな技術を…いや、今はそんなことどうでもいい!だ、だめだ…!いくら筋肉を鍛えようと不意打ちの金的を喰らっては…!身体がまともに動かん…!

 

 なんとかユフィの後を追い部屋を出るが、既に背中は見えない。

『日本人を名乗るみなさん!殴り殺されてください!』

 会場からそんな声が聞こえる。まずい、間に合わない!俺が辿り着くと、既にユフィは壇上を降り、老人の顔面に拳を振り下ろさんとしていた。

 

 

 

 ルルーシュがガウェインに乗って現れた。ルルーシュ、君が本当に行政特区日本に参加してくれるなら心強い。でも、まだシャーリーのお父さんの件が未解決だ。そのことがいつまでもつっかえてどこか君のことを信じられない。でも、この行政特区日本が問題なく終われば…僕はきっと君のことを信じられると思う。賢い君のことだ、きっと上手くやれるさ。

「ユーフェミア・リ・ブリタニア。折り入ってお話ししたいことがあります」

「わたくしと?」

 ユフィと2人で?そんなの流石に危険すぎる。ユフィの頭をぶん殴って記憶を吹き飛ばし、行政特区日本を白紙に戻すなんて言い出すかもしれない。

「ではこちらへ」

 ユフィはルルーシュだと知ってるからかあっさりと了承してしまう。流石にもう少し危機感を持ってほしい。ここは僕が止めないと!

「ユーフェミア様。やはりこの男と2人っきりになるのは危険では?」

「あらスザク、妬いてるの?」

「ゆ、ユーフェミア様!?」

 何を言ってるんだこんな時に…いや、そりゃ少しは妬いてるけど、だってルルーシュとユフィは実の兄弟とはいえ腹違いじゃないか…。ルルーシュはナナリー…妹を溺愛しているし、同じ愛情をユフィに向けたっておかしくはない。

 僕の心配をよそに2人は行ってしまった。心配だけど、ここでユフィを裏切る訳にもいかない。ここはルルーシュを信じて会場の警備に専念しよう。

 

 しばらくすると、ユフィが走って戻ってきた。…あれ、ルルーシュはどこだろう?

「日本人を名乗るみなさん!殴り殺されてください!」

 …え?ユフィ?君は何を言ってるんだ…?呆然とした僕はそのままユフィを見つめてしまう。その間にユフィは壇上から降りて、おじいさんの顔に拳を振り下ろそうとしている。だ、だめだそんなの!




脳筋ルルーシュの弱点:金的


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STAGE23

 振り下ろされた拳は的確に、そして無慈悲に一つの老体の命を刈り取る。ゴギリという鈍い音と共に首の骨をへし折ったのだ。もしもこれが鍛えていないユーフェミアだったなら、殴り殺せるような殴打なぞ無かっただろう。この世界が筋肉に歪んだ結果、ユーフェミアの拳は日本人を殴り殺せるまで至ったのだ。
「さぁ!兵士の皆さんも早く!日本人を殴り殺してください!」
 それが如何におかしな命令でも副総督の命ならば従わなければならない。兵士達は困惑しつつ、各々日本人を殺し始めた。命令は殴り殺せだが、兵士の多くは皆銃を構えてそれを放った。抵抗する若い日本人を肘打ちからのコンビネーションパンチで圧倒し、マウントをとって的確に顔面を殴り続けるユーフェミアの狂気に日本人は闘争よりも逃走を選んだ。
「いけません副総督!おやめください!なぜ急にこんな事を…」
 狂気に負けず行動できたのは将軍だからか、それとも鍛えた筋肉故か、ダールトンはユーフェミアを止めに入る。
「マ°ッ!?」
 が、ゼロ同様に金的を喰らい地に伏した。


それでは悲劇の本編スタートです、


「さぁ!兵士の皆さんも早く!日本人を殴り殺して下さい!」

 こんなの嘘だ。あのユフィがこんな命令を出すはずが無い。ルルーシュ、君を信じた僕が馬鹿だったよ。やはり君はシャーリーのお父さんを殺し、シャーリーをぶん殴り、更にはユフィまで殴りしばいたんだろう。結果ユフィはおかしくなり、こんなことをさせているんだ。それよりも僕がユフィを止めないと。ダールトン将軍は倒れてしまったけれど、僕がやらなくちゃいけないんだ!…ユフィの騎士として!

『枢木スザク…お前は日本人だったな?』

 ふと、そんな声が聞こえた。即座にその場を横跳びで退けるとグロースターの拳が降ってきた。

『ユーフェミア様は日本人を殴り殺す事をご所望だ。』

「馬鹿を言うな!」

 みんな何を考えてるんだ!?こんな時にすべきことはユフィを止めることじゃないのか!?

 

『…済まない。でも軍人は命令に従わなければならないんだ。』

 

 …そうだ。僕は、僕はあの時…。これが、これが僕への罰なのか?命令だからと従ってきた…だからってこんな…

 

『"    "』

 

 …そうだ。僕はこんなところで死ねない。僕がユフィを補佐して、鍛えて、ユフィの夢を叶えなくちゃいけないんだ!

「どけぇぇぇぇ!!!」

 放たれたグロースターの拳を回避し、そのままグロースターの腕を駆ける。そして一気にユフィの所へ飛び降りつつ、両手を組んで振り上げる。ユフィには悪いけど気絶してもらう!

「まぁ!スザク、会いたかったですよ!…あなたも日本人でしたよ…ねッ!!」

 こちらに気付いたユフィは僕のアームハンマーを躱すと、容赦ない肘打ちを仕掛けてきた。甘いよユフィ、僕はルルーシュに鍛えられてるからね。肘打ちを腕で弾いて無力化し、こちらも拳を打ち込む。しかしステップで躱された。

「!」

 何かまずいと思いその場を離れると、ユフィの蹴りが空を切った。あの軌道…睾丸を的確にブチ抜くつもりらしい。

「丈の長いスカートだと足元の動きが分かりにくい…!」

 袴と同じで足運びが隠されている。動きが読みにくくてやりにくいな。

「流石ねスザク。簡単には殴り殺されてくれないなんて」

 トントンとステップを踏んでからのコンビネーションパンチ…!?

「ユフィ、君は一体いつそんなにボクシングの腕を磨いたんだい!?」

 驚くべきはパンチだけじゃない、こちらの攻撃を的確に避け、受け流すその動きだ!

「ネットで調べたら出て来たの、L.L.って方が書いてくださっててね?教え通り鍛えたらこんなに鋭いパンチが打てるようになったの!それにシュナイゼルお兄様が君も皇女なら受け流しの技も磨いたほうが良いって!」

 しゃべりならがらも鋭い拳が飛んでくる。それをなんとか捌きつつ、頭を回らせる。L.L.…ルルーシュ ランペルージ…?まさかルルーシュの奴、ここまで計算して!?というか、そんなちょっとボクササイズしたくらいでこんなになるとは思えない、皇帝陛下もルルーシュもムキムキだし、もしかして血筋なのだろうか。それにシュナイゼル殿下…!何で余計な事を教えるんです…!

 そんなことより、これ以上ユフィの手を汚させるわけにはいかない!覚悟を決め、ユフィの放った拳を敢えて受ける!

「あは!やっと当たった!」

 甘いよユフィ。さっきも言ったけど、僕はルルーシュと殴り合ったことがある。彼の拳はこんなものじゃなかったよ。

 

 僕はユフィの腹に膝をブチ込んだ。

 

「かはっ…!?どうして…?スザク………」

 崩れ落ちるユフィを抱え、僕はアヴァロンへと急いだ。

 

 

 

 くっ…まだ痛みで体が上手く動かん…!ユフィを止めるのは…スザクに任せるしかない。俺はガウェインに乗って退散するとしよう…

「ま、まて…ゼロ…!」

 この声は…ダールトンか…!こんな時に…!俺が声のした方を見ると…俺と大体同じような姿勢のダールトンが居た。あぁ…なんとなく察した。ご愁傷様だ。こうなれば先を見据えでギアスを使っておこう。

「"コーネリアを生きたまま俺に差し出せ"」

「…わかった」

 よし、これで上手く行けばコーネリアは我が手に落ちる。ユフィに掛けたギアスは幸い俺を殺すものではないからこちらを追ってくることもないだろう。なんとかガウェインに乗り込み、今回ばかりはC.C.に操縦を頼み俺は砲手を務めるとしよう。

「驚いたぞルルーシュ、まさかこんなことになるとはな」

「俺じゃない…俺はギアスを掛けていない」

「何?」

 驚いたようにC.C.が振り返る。あいつは俺の左目を見て察したようだ。

「俺はギアスを掛けていない…いや、掛けたつもりは無かった」

「そうか…」

「こうなった以上は仕方がない。最大限利用させてもらう。俺だってクロヴィスを殴り殺したんだ、スザクにも怪しまれている、俺に退路はない、ならば進むだけ、全速全身だ!」

 俺は黒の騎士団に出撃命令を下す。

「行政特区日本は我々を誘き寄せる卑劣な罠だったのだ!自在戦闘装甲騎部隊は式典会場に突入せよ!ブリタニア軍を壊滅し日本人を救い出すのだ!急げ!」

 こうなったらユフィも始末するしかない。既に情報は得ているのだから生かす必要もないからな。スザクとは決裂する事になるだろうが、この際構うものか。俺は既にあいつを歪めている。今更この程度…!この、程度…!

 

 

 

 ユフィの始末はできなかったが、行政特区日本の制圧に成功した。ユフィは恐らくスザクが気絶でもさせて連れて行ったのだろう。無駄な事だ、ギアスの力には逆らえない。スザクが日本人である以上、ユフィはスザクを殴り殺そうとするだろう。…いや、それが狙いか?ユフィの最も近くに居る日本人がスザクならこれ以上ユフィが日本人を殴り殺すことは無くなる。

 まぁ良い、既にユフィは人を殴り殺しているところは映像に残っている。ディートハルトにはネットに映像をアップするように伝えてあるし、藤堂には今のうちに戦力を整えるように伝えた。扇にも資材の管理を命じてある。これからどうするかを考えていると、どこか見覚えのある女と男達が俺の前に現れた。

「やっとお会いできましたわーーー!!!」

 あぁ、いつぞやのラブレターの主か。…昔スザクの家で何度か見た覚えがあるな。

「ゼロよ、これからの事だが我らの下で…」

 この集団で桐原が話すということはキョウト六家の様だな?しかし桐原達の下?我々が?考えが甘いな。

「逆だ。こうなった以上キョウト六家の方々は私の指揮下に入っていただく!反論は許すがその場合は俺の拳が唸る事になるぞ!」

「それって実質的に反論許してないですわーーー!!!」

 

 準備が整ったとディートハルトに言われ、俺は生き残りの日本人達の前に姿を晒す。そこからはブリタニアへの抵抗と日本解放の意志、そして最後に

「私は今ここにブリタニアからの独立を宣言する。だがそれはかつての日本の復活を意味しない。歴史の針を戻す愚を私は犯さない!我らがこれから造る新しい日本はあらゆる人種・歴史・主義・筋肉量を受け入れる広さと強者が弱者を虐げない享受を持つ国家だ!」

 そう、今こそ建国の時!俺はサイドチェストをしつつ全身の筋肉を膨張させ、膨張に耐えられなくなった服は引き裂かれ、禍々しいほどに膨れ上がった筋肉を直に見せつける。そしてとどめにダブルバイセップスを決める。

「その名は!合衆国日本!」

 ユフィという撲殺皇女の登場はまさに絶望、その後に現れたゼロという希望。日本人達のボルテージは最高潮だ。このままブリタニア政庁を陥落させコーネリアを始末してやる。

\ゼロ!ゼロ!ゼロ!ゼロ!ゼロ!体脂肪ゼロ!ゼロ!ゼロ!ゼロ!/

 

 これで後は進むだけだ。一度鹵獲したG-1の司令部に向かい指示を出す。

「コーネリアさえ殴り倒せば我々の勝ちだ!全軍!作戦配置図に従い待機せよ!」

 こんな事になるのなら神根島で始末しておくべきだったか…いや、過ぎたことを考えるな…!全ては過去だ、後悔や懺悔なんて後でいくらでも出来る…!

「ディートハルト。前線は藤堂に。ここはお前に任せる。」

「分かりました」

 俺はガウェインに戻ろうとするが、こちらが扉を開ける前に扉が開いた。

「よかった、間に合いましたわーーーー!!!」

「皇の…?」

「私をおいてさっさと出陣しちゃうなんて酷いですわーーー!!!あなたのデビューから私ずーっとファンだったんですわーーー!!!ようやくちゃ~んとお話できると思ったのに。肩幅思ってた以上に広いんですね。でも大丈夫。すぐに追いつきますわーーー!!!」

 …ほう?なかなか見どころがあるな。

「キョウト六家の方々はフジに残られたはずでは?何故ここに?」

「夫の戦いぶりを見るために追いかけてきたんですわーーー!!!」

 ふむ、どうやら婚約者がいるらしい、そんな身分の奴がいたから?まぁ、そんなことよりも早くガウェインに戻らなくては。

 

 

 

 僕は気絶させたユフィをアヴァロンの一室に閉じ込めるという事で対処した。ベットの上に鎖でぐるぐる巻きにして拘束だなんて、コーネリア総督に見られたらタダじゃ済まないんだろうな…。

「…あ、スザク…」

 どうやらユフィは目覚めたようだ。

「ユフィ…教えて欲しい、どうしてあんな命令を?」

「命令…?…そんなことより、スザクは日本人…でしたよね?」

 ユフィはおかしくなってから、やたらと日本人である事に拘るな…ルルーシュの奴どんな殴打をすればこんなことができるんだ?

「…駄目、そんなこと、スザクの睾丸を蹴り飛ばすだなんて…考えちゃ、いけない…!」

 やはり睾丸を狙った攻撃を…ロイドさんに頼んでファールカップを作ってもらわないと。

「…スザク、式典は、どうなったかしら?」

「覚えていないのかい…!?君が無茶苦茶にしたんじゃないか」

「私が…?私、日本人を…そう、日本人は殴らなきゃ…スザク…」

 なんだ?鎖が…ひび割れている?まさか…ユフィ!?

 

「私があなたを大好きになります!ですからスザク、私と殴り合いなさい!」

 

「理論が破綻してるよユフィ!」

 パリンと鎖が引きちぎれた音がすると同時に、ユフィは寝た姿勢からブレイクダンスのような動きで起き上がりつつ僕に蹴りを放ってきた。

「スザク、私は日本人を殴り殺さないといけないの。でも今のままではスザクを殴り殺すことは出来ないわ。スザク…日本人を、あなたを殴り殺すために私に力を貸していただけませんか?」

「ユフィ?何を言って…」

 気がつくとユフィの体は視界から消え…下か!僕は思い切り地面を蹴り跳びあがることでユフィの下段攻撃を躱し、そのまま天井を蹴り勢いをつけながら回転し、ユフィの後頭部に踵をブチ込む事に成功する。後頭部に踵落としをくらった事で顔から地面に叩きつけられたユフィは直様立ち上がり、こちらに顔を向けてきた。

「ッ…!スザク、力を貸して下さいますね?」

 は、鼻血…鼻血を垂らしながらユフィはこちらに殴り掛かってくる…一体ルルーシュはユフィに何をしたんだ…!?それに、さっきよりも拳のキレが…!僕だってユフィの力に放ってあげたい、だけどそれは…

 

『"鍛えろ!"』

 

 …!?そ、そうだ、僕は…俺は、鍛えなくちゃいけないんだ!もっと俺自身が肉体を鍛えて、そしてユフィを鍛えなくちゃいけないんだ!

「ユフィ!」

 さっきまでは女の子だと思って手加減していたけれど、ユフィを鍛えるためだ、本気で行く!

「あはっ!スザク!ようやく本気を出してくだ---」

 俺の拳がユフィの鳩尾を抉り、ユフィは再び気を失った。

 

「ユフィ、赦しは乞わないよ。」

 

 …?僕は今何をした?ユフィが倒れている…これは、僕がやったのか?息はしているようだ。生きてる、でも…いや、今はまず医務室に向かおう。後のことはドクターに任せるんだ。僕はユフィを抱え、医務室に突っ込む。

「ユフィを助けて下さい!」

「助けろって言ったってこりゃただの痛みによる気絶だよ。」

 

 僕は再びアヴァロンの一室…ユフィを閉じ込めようとした部屋で砕け散った鎖を片付けながら呟いた。

「ユフィ…僕には分からないよ…どうして君があんなことを」

「教えてあげようか?」

 僕が振り返るとそこには見覚えのない子供がいた。どことなく幼い頃のルルーシュに似てる…?それにしてもどうして子供がアヴァロンに…

「初めまして枢木スザク。僕の名前はV.V.」

「V.V.くん?変わった名前だね、イニシャルだけだなんて…あ、ごめん。人の名前をこんな言い方は良く無かったね。反省するよ」

 彼は先程までユフィが寝ていたベッドに腰を掛け、僕にも腰を掛けるように促してくる。言われた通り腰掛けると、彼は僕の方を見ずに口を開いた。

「ゼロは超常の力を持っている。」

「確かにルルーシュは常人離れした筋肉を持っているけど…」

「あ、いや、筋肉とか身体能力で言えば君も大概だからね?」

「え?そうなの?」

 彼はうんうんと頷いている。うーん、僕なんてまだまだなんだけどなぁ…

「ルルーシュはね、ギアスという人を従わせる力を持っているんだ。」

「まさか、そんなものがあるはずがないよ」

 彼はふるふると首を横に振る。

「命令に従おうとした君は式根島で何故鍛え始めた?優しかったユーフェミアは何故突然人を殴りだした?」

「…それは…」

 確かに彼の言う通り辻褄が合う。そんな、ユフィのあれはルルーシュの望みだとでも…?いや、信じたくはない、信じたくはないが…ルルーシュはシャーリーのお父さんを抹殺し、シャーリーの記憶もそのギアスとやらで消したのだとすれば?そもそもシャーリーのルルーシュに関する記憶だけが消えてるのは不自然だと思った。僕を助ける時に見逃せと言ったのも?まさかクロヴィス殿下が急に停戦協定を出したのも………

「ルルーシュ…君が…?」

 君くらい賢い人間ならもっとやりようがあったはずだ。何のこんな…こんな犠牲を出すやり方を平然と…ルルーシュ、君は人の痛みがわからないのか…?ナナリーを世話する君が?

 

「ルルーシュ、これ以上悲劇を産まない為にも、僕が君を止めるよ…!」




はい、スザクにかけられたギアスは「鍛えろ」です。これによりスザクはピンチになると主に自分や親しい人を「鍛え」ようとします。

ユフィとスザクが殴り合い始める前代未聞作品、「ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜」を皆さまどうか引き続き応援ください。


●NGシーン●
 ユフィの振り下ろした拳は老人の顔面に直撃した。
「のほぉ!?ありがとうございます!」
「爺さん!?」
 ユーフェミアは更に続けてもう一発を老人の顔面に叩き込んでいた。
「うっほぉ!!ありがとうございます!!若くて綺麗な女性に殴っていただけるなんてご褒美です!!!」
「爺さん!!!」
 なんだこれは…。ダールトンがユフィを羽交締めにし、ジタバタするユフィを引きずるようにして退場していった。なんだこれは!この惨状は俺が作ったのか!?


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STAGE24

ニュースを見て私は呆然とした。ユフィが、あのユフィが人を殴り殺している?なんだこれは?あの動きはボクシング?私がボクササイズを止めなかったのがいけなかったか?そもそも、私が太っていると揶揄わなければこんな事にはならなかったか?いや、別にイレブンの命などどうでも良い、だが、私のせいでユフィが暴力に目覚めたのだとしたら…いや、そもそもあれがユフィの本性だとでもいうのか!?私は…

そういうわけなので本編スタートです。


 撲殺皇女ユーフェミアの悪評は一気に伝播し、我々黒の騎士団を含めた反乱軍は莫大な数に膨れ上がった。このまま物量で押し潰してやる。この日のために俺はギアスを使い、階層構造となっている租界の管理職員達にギアスをかけ、特定のワードに反応して特定の時間に特定の行動をとるようにしておいたのだ。

「聞くがよいブリタニアよ。我が名はゼロ。力ある者に対する反逆者である!0時まで筋トレでもして待とう。降伏し我が軍門に下れ。これは最終通告だ。0時まで筋トレでもして待つ、我が軍門に下れ」

 これで0時に租界の一部の階層のフロアパーツが一斉にパージされる。一部の職員は異変に気がつくだろうが、咄嗟に止められるものなど居まい。

 

 こんな時に電話…?しかもユフィから?一体なんだ…?

「もしもし?」

『やぁ、ルルーシュ。君を信じた僕が愚かだったよ。』

「…スザクか、どうしたんだ?急に」

 ユフィの携帯を使ってスザクが掛けてきたのか。

『ルルーシュ、君には殺したいほど憎い人間が居るね?』

「あぁ、居るよ。クロヴィスはその一人だったってだけだ。」

『そうかい。僕にもいるんだよルルーシュ…それが君だ。僕は今から君を殺すよ。そんな風に考えてはいけないと思っていた。ルールに従って戦わなければそれはただの人殺しだって…でも、君を止めないともっと多くの人が傷つく。これ以上君に罪は背負わせないよ。』

 流石に殴ってユフィがああなったとはスザクも思っていない訳か。…まさかギアスの事が?ありえない…いや、あり得ないなんて有り得ない…?俺以外に存在したギアスユーザー…マオのように、例えばC.C.…こいつと同一の存在が居ないなどと言うのはあまりにも楽観的すぎる。お世辞にも頭がいいとは言えないスザクのことだ、スザクにギアスのことを教えた奴がいる…!?

「ユフィのためだろう?気にするな、俺だってクロヴィスを殺してる。止まるつもりも引き返すつもりはないんだ。」

『君はナナリーのためだとでも言いたいのかい?それをナナリーが望んでるとは思えないな。』

「ナナリーは優しいからな。俺がナナリーの代わりに変えるんだ。」

 ナナリーは優しすぎる。ワガママは滅多に言わない。だが、俺はナナリーの目と足が治った時にこんな強者が弱者を虐げる世界は見せたくない。ナナリーの望む優しい世界を作ってから俺はナナリーを世界を見せる。

『君は卑怯だ。ナナリーを言い訳に使って!君ほどの男なら!それだけの力があれば!もっとやりようはあったはずだ!僕はそう思っていた!やり方には賛同出来なかったけど、やろうとしていることだけは正しいと…でも、君はそうしなかった。だから僕が止めるよ、殺してでも…僕達は友達だからね。』

「あぁ、7年前から友達だ。じゃあもう切るぞ。」

 

 時間はジャスト0時、租界外縁に布陣したコーネリアの軍は一斉パージの影響で落下し、落ちるパネルに潰されて崩壊していく。

「さぁ来いスザク!ユフィもお前も踏み台にして…俺はナナリーのために優しい世界を作り上げる!そのためには今あるものは全部邪魔だ!今の世界は全部全部全部ぶっ壊す!!」

 馬鹿なコーネリアだ。俺を相手に正面からの戦いに拘るなど!

「…そういえばC.C.、どうやらスザクにギアスのことがバレた。何か心当たりはあるか?」

「何?…まさかV.V.が…?」

 名前がイニシャル…どうやら予想通りこの女と同一の存在がいる様だな。

「その件は一旦後に回す…後で全部話してもらうぞ?あとは政庁陥落の映像と共に独立宣言を全世界に向けて発信すれば嫌でもあの男が出てくるはずだ。」

 …V.V.とかいう存在はスザクに接触した…つまりブリタニア側か?…まさか、あの男も?有り得ない話ではない、仮に奴が王の力、ギアスを持っていたならブリタニアが今の様な強国になったのも頷ける。もしも俺の様に人に命令を下せるなら?相手の心が読めるなら?同じように何か強力なギアスがあったなら…ただ引き摺り出すだけではダメだな、何か策を…。いや、一旦目の前の戦闘に集中だ。これが失敗したら元も子もない。地上の戦闘は藤堂に任せておけば大丈夫だろう。

『ゼロ、コーネリアを見つけた。だが済まない、討ち損じて逃げられてしまった。』

「気にするな。奴はブリタニア政庁に戻り立て直しを図る筈だ。当初の作戦通りそのまま正面からの押し出してほしい。」

『わかった。』

 次はナナリーを救出するか、スザクが本気になった以上、ナナリーを取られるのはまずい。危険に突き合わせる事になるが、俺のすぐそばに置くのが一番安全だ。

「零番隊は特務隊と共に学園地区を優先して押さえろ。その中の1つに司令部を置く」

『…ルルーシュ?本気なの?』

「カレンか、ナナリーを保護するためだ。」

『あんた…!?わかってるんでしょうね。』

 許せカレン。黒の騎士団も日本も所詮はナナリーの為の駒だ。だが、ブリタニアを壊す為の大切な駒でもある。優先順位こそあれ、別に捨てるつもりもない。航空戦力をガウェインのハドロン砲により薙ぎ払って壊滅させる。ブリタニアの兵の動きは明らかに政庁のみを守り援軍を待つ動きだ。その分こちらは正面さえ押さえれば他を押さえることは容易い。

『ルルーシュ、アッシュフォード学園の制圧は終わったわ。』

「分かった。ナナリーは生徒会室か?」

『さぁ?そこまでは知らないわよ。でも、あんたも咲世子さんもC.C.も居ないなら生徒会のみんなはナナリーといようとするだろうから…』

 …確かにそれもそうか。しかし咲世子さんには居て欲しかったが用事があると言われてはな…今まで世話になったこともある。できれば巻き込まれていないと良いが…

「カレンは再び紅蓮に乗り周囲を警戒してくれ。スザクと対等に闘えるのはお前しかいない。」

『分かった』

 

「あぁ!そうかよ!」

 俺が生徒会室に行くと玉城が銃でリヴァルを殴ろうとしていたので、玉城をブン殴った。

「な、何すんだよゼロ!」

「手荒な真似はするなと伝えた筈だ。私の命令が聞けないなら、まずはお前を血祭りに上げてやる。」

「あ、はい、すいませんでした」

 リヴァルの他には会長、シャーリー、ナナリー…ニーナが居ないがまぁいいだろう。目的のナナリーが居るならば問題ない。

「この学園は我々黒の騎士団が徴用し司令部として使用させてもらう。大人しくしていれば危害を加えないと約束するが…君たちに若者は時に勇敢だ。それ故に保険を頂こう」

「何をする気!?」

 俺はナナリーに指を刺す。

「目が見えない少女…正体を知られたくない私としては都合が良い。足が悪く一人で逃げられない点も気に入った。」

「なっ、ナナリーを人質にするつもりか!?そんな筋肉モリモリな癖に卑怯だぞ!」

「…先ほどの殴打を見ただろう?怪我をしたくなければ退くことをお勧めするが?」

 リヴァル達は少しだけ躊躇し、渋々道を開けてくれた。俺だってリヴァルを殴りたくはない、俺はナナリーを抱き上げる。

「あっ…」

 ナナリーは何かを言い掛けたが直ぐに口を閉じた。

「あのっ…!」

「うん?」

 シャーリー?なんの用だろうか。

「港で、私のことを助けてくれてありがとうございました。でも、貴方がやろうとしていることは、きっと悪いこと…だから」

 シャーリー…まさか記憶が戻ったのか!?このまま放置するのは不味いか…?しかし匿う場所が…。それにナナリーの前で処理するのはまずい…!

『ゼロ、扇だ。ランスロットが現れたぞ。今カレンが応戦してる。』

 くそ、よりによってこのタイミングでくるとは…いや、正体をバラすつもりならとっくに伝えている筈。ここはスザクの処理を優先するべきだろう。

「済まないが我々は忙しい。この少女の安否は君たちの行動次第だと肝に銘じておき給え、私は失礼する。」

 

 俺はナナリーを抱いたままガウェインに乗り込み、仮面を外す。

「おいお前、何故連れてきた?」

「その声…C.C.さん?やはり、お兄様なのですね?」

 抱え上げた時に見破られていたようだな。

「そうだよ、ナナリー。怖い思いをさせて済まなかったな。もうしばらく待っていてほしい。ナナリーは必ず俺が守るから」

「…はい。」

 ナナリーは良い子だ。頭を撫でてからC.C.の膝の上に移動させる。

 

 

 

 僕がルルーシュを探していると、突如何かが放たれた。それを弾き、放った主を探す…居た、赤いナイトメア…

「カレンか!」

『スザク!戦場で会った以上、死んでもらうよ。』

 カレン、君はもしかしてルルーシュに操られて…?いや、そんなことは関係ない。邪魔をするものは全て殺すだけだ。君も被害者の一人だとしても!

「答えろカレン!ゼロは、ゼロはどこにいる!!」

 一撃目はMVS、これで叩き切る!

『言うはずないだろ!!』

 またあの右手か、厄介だな。なんとかしてアレを封じないと…。こちらは空が飛べる分攻撃のタイミングを作りやすい、これを利用しない手は無いな。再度のMVSに対しカレンは跳び上がり右手で防いできた。

『そんな武器なんかァ…!』

「やるな…!」

 カレンはそのままぶつかった衝撃を利用して上に跳ね、スラッシュハーケンとビルを利用して高所を取る気の様だ。でも、そんな小細工は簡単に対処できる。君よりも更に高所から君とビルの接触点を攻撃すれば君は落ちざるを得ない!思った通りカレンは落ちていく

「これで終わりにする!」

『飛べるからって…』

 カレンは右手の鋭利な爪でビルの壁に突き刺し落下速度を和らげている…!?あれはルルーシュが僕を助けた時の動きだ…!ッ!それがなんだ!落下速度を落とすと言うことは僕は追撃がしやすいと言うこと!

『…調子に乗るなッ!!』

 何!?右手の爆発を利用して回避された!?あれはチョウフでルルーシュにドロップキックされた時と同じように移動に利用を…!カレンにこれ以上戦いの経験を積ませる訳にはいかない!どんどん吸収して強くなっている!

 僕はそこで焦ったのだろう、MVSの横振りはのけぞりで躱されてしまった。これも前ルルーシュにやられた動きだ…!ガシリと左腕を掴まれる。やられる…!

『捕まえたァ…くらいなァ!!』

 僕はここで死ぬのか…!?…ユフィ!!!

 

『"鍛えろ!"』

 

 ッ!そうだ、俺は生きてユフィを鍛えなくちゃいけない!あの右腕の攻撃は一撃必殺…だからこそそれが決まれば隙が生まれるはず!使えない左腕をパージし、この至近距離でヴァリスを叩き込む!…よし、こちらは左腕を失ったけど、あの右腕を吹っ飛ばす事に成功した、これで勝負はついた!僕は飛び上がり、ヴァリスを構える。

「さぁ、答えろ!ゼロはどこだ!」

『…しつこい男は嫌いなんだけど』

 そうか、なら死んでもら…!僕は咄嗟に回避行動をとった。直後俺のいた所にハドロン砲が放たれる。

『スザァク!!』

「ゼロか!!」

 あの機体はハドロン砲こそ恐ろしいが接近戦は苦手なはず、あの巨体では格闘戦などままならないだろう!

『おっと、それはさせんよ!』

 くっ!指のスラッシュハーケンで牽制を…!?そうだよな、ルルーシュがガウェインの弱点を考慮しないはずがない!

『受けるが良い!』

「甘い!」

 放たれるハドロン砲をシールドでなんとか受け流し…この威力、正面からは受けられないな…!ヴァリスを放つ…しかし、空を飛ぶガウェインにそう易々とは当てられない。やはり決めるには近接戦闘しかない!

『近接戦闘には持ち込ませんよ』

 甘いよルルーシュ、スラッシュハーケンくらい簡単に避けられる!終わりだルルーシュ!この蹴りで君を…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やはり回転蹴りか、その程度の攻撃、私が読んで居ないとでも?』

 

「なに!?」

 こちらの蹴りに対し、ガウェインも回転からの蹴りを仕返してきた。速度もリーチも重量もガウェインが勝っている…!ブレイズルミナスで…ダメだ!衝撃までは防ぎ切れない!でもなぜだ!?ガウェインにそんな運動性能…

「まさか!?」

『気付いたかスザク。そうだよ、さっきのスラッシュハーケンはお前を狙って打ったんじゃあない。前後に放ち、それを同時に引っ張る事で回転モーメントを得たんだよ。』

 まずい…!このままじゃやられる…!

 

 

 

 よし、スザクめ、シールドで受けたようだが、次で終いだ。崩れた体勢に対し、こちらはフロートを解除しつつスラッシュハーケンを地面に打ち込み巻き取る。重力に巻き取りの速度の力を加えた両脚蹴り、再度シールドで防いでも地面に叩きつけることくらいは出来る!

『墜ちる!?このランスロットが…!!』

 ランスロットを蹴り落とし、再びフロートを起動して距離を取る。

「今だC.C.ハドロン砲でとどめを!!」

「分かった。」

 放たれたハドロン砲をシールドで受けたようだが…

『いけない…!やはりシールドでは…!』

 よし、爆散したな。

『ユフィーー!!!!!』

 さらばだスザク、最初にして最後の親友よ。

 




スザクを始末できたよ!やったねルルーシュ邪魔者が減ったよ!

『筋トレしてでも待つ…0時に租界を…』

●唐突な次回予告●
C.C.「お前こそ、私が戻るまで生き残れよルルーシュ」
ルルーシュ「誰に言っている。」

次回、STAGE final「筋肉」


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STAGE final 筋肉(ゼロ)

 オール ハイル ブリタァァーーーーーーーーニア!!!!

 おはようございました。

 おや?あなた様方は読者!何たる感激!感謝!雨嵐!

 おおおおお願いです。

 最後まで読んで頂けますか?


それでは最終話スタート…の前に私からもお願いです。
完結したからといって、お気に入りを外さないで下さい。

それでは改めて、最終話スタートです!


「ルルーシュ、敵の航空部隊の援軍だぞ。爆撃されたら終わりだな。」

「問題ない。補給は済ませてあるからな」

 現れた敵の援軍はハドロン砲を放つ事で無力化する。ふん、歯応えのない連中だ。

「藤堂、私は政庁上空から攻め込む。こちらで混乱を作ったらその隙に正面から蹴散らせ」

『突出しすぎではないか?無事に戻れよゼロ』

「分かっている」

 俺が降り立った政庁の屋上は、かつて俺が過ごしたアリエスの離宮に似ていた。

「…アリエスの離宮に似ているな」

 つぶやいたのはC.C.。コイツが何故知っている…?

「…C.C.さん、アリエスの離宮を知ってるんですか?」

「あぁ、少しな。落ち着いたら話をしてやろう、ナナリー。」

 コイツもブリタニアにいたということか?ますますV.V.とかいう奴のことを聞き出す必要が出たな。だが、ギアスを知るスザクは始末済みだ。ギアスの仕込みもあるし…

『ようこそゼロ。やはり混乱を作るために単騎でここに来たな?』

「これはこれはコーネリア…!敵将自ら姿を晒すとはな!」

 残った障害が自ら出てきてくれるとはありがたい。

「あ!コーネリアお姉様ですか?お久しぶりです、ナナリーです!」

『な…!?ナナリー!?馬鹿な、ナナリーは死んだはず…まさか貴様…ゼロ!卑怯者め!クロヴィス、ユフィの次はナナリーまで穢すつもりか!!まさかルルーシュも本当は生きて…!?これは貴様に尋問せざるを得なくなったな!!』

 ナナリーには悪いがコーネリアも始末させてもらおう。

『姫様ァ!』

『ダールトン!来てくれたか、二人でゼロを…』

 馬鹿めコーネリア!ダールトンは既に我が手中に落ちているのだよ!ダールトンはランスでコーネリアのグロースターの腕をえぐり、脚を破壊した。

『ダールトン!?どうして…!?』

『ご安心ください姫様。殺しはしません。姫様を生きてゼロに差し出すのです…』

 お前の役目は終わりだダールトン。貴様の筋肉は厄介だからな、始末させてもらおう。

「C.C.!」

「分かっている」

 ハドロン砲によりダールトンを抹消し、ガウェインから降り、腕力でハッチをこじ開け中に引き篭もるコーネリアを引き摺り出し、用意していた縄で縛り上げる。

「この私が敵に捕まるなど…!こんな屈辱!くっ!殺せ!」

 俺は仮面を外し、左目を隠しつつ対峙する。

「お久しぶりですね、姉上」

「お久しぶりです、コーネリアお姉様」

「生きていたのかルルーシュ…だが、何故お前が?お前が全てやったのか…何故こんな…まさかナナリーもか!?」

 俺はナナリーを撫で、首を振る。

「いいえ、ナナリーは関係ありません。ただの人質ですよ。さて、姉上には聞きたいことがあるのですが、答えていただけますか?」

「答えると思うか?この私が…!拷問などに屈するものか!」

「ビンタしますよ姉上。"俺の質問に答えろ"」

 俺はギアスを使い、コーネリアから情報を聞き出した。どうやらコーネリアも真相までは知らなかったらしい。次に聞くべきはシュナイゼルか…

「お兄様、あの日のことを調べて…?」

「そうだよ、ナナリー。俺たちが生きてると知られたらきっとあの日の犯人が俺たちを消しに来る。ナナリーの平和のためには必要なことなんだ。」

「はい…でも、私にはお兄様さえ居てくれればそれで…」

「ナナリー…」

 抱き上げて頭を撫でてやる。ナナリー、それじゃあダメなんだ。いつまで誰が味方で居てくれるか分からない。俺たちの身を守るには俺が居場所を作らないと…

 流石にナナリーの近くでコーネリアを殴り殺すのは気が引けるな…場所でも移すべきだろう。まずはガウェインに乗り、コーネリアを拘束してからだな。

 

 

 

『オール ハイル ブリタァァーーーーーーーーーーーニアッ!!!!』

 

 

 

 今度はなん…なんだあの空に浮かぶオレンジは…!?

『私の怒り、こんな形で受け取った!回転!ローリング!抵抗無駄!』

 支離滅裂な上にふざけたフォルムの仮称オレンジだが、高速回転しての突撃の破壊力は馬鹿にならない。黒の騎士団で迎撃させるが…

『見えた…見えた…見えた…見えた…見えた…』

 当たらない上に当たってもダメージはないと来た。こちら触れただけで無頼やサザーランドは木っ端微塵だ…ふざけている…!こんな事で俺の作戦が邪魔されてたまるか!

『ゼロ…私は…帝国臣民に敵を拳が排除せよ!そう。ならばこそ!』

 まずい、またあの回転攻撃だ。ハドロン砲で迎撃を…

『オール ハイル ブリタァァーーーーーーーーーニア!!!!!!そして…』

 だ、だめだ!ハドロン砲すら弾かれる…!?なんだあれは!!

「くそ!邪魔をするな!」

『パワーーー!!!!!』

 ここは扇に連絡を取り援護射撃を…

『ゼロ!』

 うん?出たのは南?

「扇はどうした?」

『撃たれたんだよ!』

 扇が撃たれた?くそ、こんな時に…!

「扇の代わりはお前とディートハルトで分担しろ!ここで俺たちが立ち止まることを扇は望んで居ないはずだ!指定ポイントに敵の新型が現れた。援護射撃を頼む」

『わ、わかったゼロ、アンタは無事でいてくれよ』

「当然だ。私はゼロ、この筋肉を貫けるものなど無い!」

『そうだったな』

 援護射撃を頼んでは見たが、どう見ても効いていない…!コーネリアを人質に取り損ねた…これでは…!

「藤堂!そちらはどうなっている!」

『ゼロか?君ともう一機が離脱したのは把握しているが…何かトラブルが?』

 スザクは倒した、コーネリアも無事ではない、ダールトンも始末した、ナナリーはそばにいる、ここは一度仕切り直しを…

『…任せてくれゼロ、我々が必ず政庁を制圧する。君は敵の新型を抑えてくれないか?我々ならば再びの奇跡を起こせるはずだ』

「藤堂…そうだったな、我々に退路は無い!私は敵の新型を対処する、全軍の指揮は藤堂に一任する!」

『任せてくれゼロ!』

 これで…これで問題は目の前のオレンジだけだ。

「さあオレンジ!たっぷり時間をかけて攻略してやろう」

「お兄様、ファイトー!です!」

 可愛い。

 スラッシュハーケン…ち、組み付くのがやっとか?零距離でハドロン砲を…!くそ、この距離でも効かないか!だめだ、奴の方が馬力がある、一度離れるしかない!

「C.C.!12ストリートに出るぞ、ナナリーをしっかり抱いていろ!」

「私はチャイルドシートか?」

「ふふっ、C.C.さんよろしくお願いしますね」

 直接攻撃が効果ないのならば手を変えるだけだ。拳がダメなら蹴ってみろ、蹴ってダメなら固めて捻れ、母上の教えだ!

「C.C.!ハドロン砲を!」

「わかった!」

 放たれたハドロン砲はオレンジをすり抜けビルに直撃した。

『当たらず!このジェレミア・ゴットバルトには!』

 馬鹿め、もう当たっているんだよ!お前の背にしているビルを崩落させ、押しつぶす!

『卑怯。後ろをバック…』

「やったのか?」

「いや、たかがビルの下敷きになった程度では足止めにしかなるまい…!海に出るぞ!」

 だが、今必要なのは時間だ。海に…水場に連れて行けば勝機はある。

「…ルルーシュ、ナナリーを連れてガウェインを降りろ。」

 何!?コイツはなにを言っている!?

「私があいつを誘き寄せて戦場から突き放す。あのイレギュラーがなければお前は勝てるのだろう?ならば私を使うべきだ。」

「C.C.…何を…」

「早く行け!お前には作らねばならぬ世界があるのだろう!」

 …そうだったな。それにC.C.は殺しても死なない女だ。

「これを渡しておく。」

「これは?」

「色んなデータが入った…便利アイテムだ。」

 頭にデータの入っている俺は作ろうと思えばいつでも作れる。はぐれた後に備えもしものための保険は必要だろう。

「必ず俺の元に戻れよ」

「お前こそ、私が戻るまで生き残れよルルーシュ」

「誰に言っている。」

 そして俺はC.C.に作戦を言い渡す。いくら装甲が頑丈でもスラスターまで硬いはずがない。そこを狙い、海に突き落とす。破損したスラスターのまま海に落ちればどんな機械であろうと浸水する可能性はある。するとC.C.は何を思ったかいきなり接吻をしてきた。

「何をするC.C.!初めてはナナリーのために取っておいたのに!!」

「えっ!?もしかしてC.C.さんとキスを!?ひどいです!初めては私が奪うはずだったのに!」

 怒ったナナリーも可愛い。

「ふ、ふんっ…わ、別れの挨拶くらいで、そ、そんなに動揺するなんてなっ!この、ど、童貞坊やめ!」

 とは言え時間がない、俺はナナリーを抱えてガウェインを降りると、ビルから高速回転したオレンジが飛び出てきた。俺は建物の影でやり過ごし、C.C.を見送る。戦場に合流しようと周りを見渡すと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこには白いナイトメアが佇んで居た。

 

「あれはランスロット!?何故生きている…!まさか…」

 …まさか、持っていた銃を爆破させ、やられたように見せかけた…!?くそ、スザクの奴、やってくれたな…!この俺が騙されるなど…!

「ラクシャータ!空いているナイトメアは無いか!?サザーランドでも、グラスゴーでも、なんでもいい!」

『ガウェインが手に入る前に必要かと思って着手してた月下の予備機ならあるけどねぇ…左腕が無いし武装も弾薬も空だから戦闘力は皆無よ?』

「右腕はあるんだな?構わん!指定したポイントに大至急運べ!最優先だ!」

 今度こそスザクをしとめる!それには拳さえ有ればそれで良い…!ナナリーには済まないが、戦闘に巻き込むわけにはいかない。瓦礫だらけの場所に置いていくのは忍びないが…

「ナナリー、済まないがここでもう少しだけ待っててくれるかい?」

「はい、お兄様…ここで待っていますから、必ず迎えにきてくださいね…」

「勿論。俺はナナリーがどこに居ても、必ず迎えに行くよ。約束だ。」

 頷くナナリーを撫で、到着した月下に乗り込む。ふん、こいつを動かすのも久しぶりだな…

『そこにいるのは…ゼロ…いや、ルルーシュか!』

「あぁ、そうだよスザク。決着をつけるぞ!正々堂々一騎討ちでな!」

『…望む所だ!』

 スザクはフロートユニットをパージしつつ、こちらに向かってくる。いきなりフルスロットルか!?回し蹴り…?

「そんなもの…!」

『甘いよルルーシュ』

 何!?これはフェイント!?仕方が無い、スラッシュハーケンを用いたジャンプで躱し、近くのビルに再度スラッシュハーケンを突き刺し距離を取る。幸いスザクのスラッシュハーケンも大半が爆破で機能停止のようだな。

「これなら!」

 こちらの上段蹴り!…仰け反って躱された!?

『そんな攻撃なんか!』

 ならばこのまま勢いを殺さず回転し、スラッシュハーケンでジャンプだ。ふん、スザクの足払いは回避できたたな!

『決めきれない!?機体性能では優っているはずなのに…!これが筋肉量の差か!?』

「スザク!!」

 このまま高さを生かして踵落とし!腕でガードされた!?

「スザク…!やはり強い…!」

『ルルーシュこそ、でも僕は負けないよ。」

 ジリ…とお互いに構えをとる。弱攻撃の連打ではお互いエナジーを消耗するだけで決め手に欠ける。やはりここは大技で勝負を決める!

「スザァァク!!!!」

『ルルーシュ!!!!」

 月下の拳がランスロットの顔面をブチ砕く。しかし俺は勘違いしていた。これは生身同士の戦いじゃ無い。顔面を狙うより…

「かはぁ!?」

 ランスロットの拳はメキメキと月下の胴体をブチ抜き、砕けて変形した装甲が俺の腹をえぐった。

『これで終わりだ…!ルルーシュ!』

「俺は…負けた…のか…!?」

 流石に肉体を鍛えようともナイトメア規模の攻撃を受ければタダでは済まない。銃でも刀でも傷ひとつつかなかった俺の腹から血が出ている。

 

『お兄様!』

 

 …!ナナリー…!そうだ、ナナリーのためにも負ける訳には…!まだ止まるな、動け、動いてくれ月下ァ!動けェ!!

「うおおおおおおおお!」

『馬鹿な!?まだ!』

 俺の気持ちに答えてくれたのか、月下の膝蹴りがランスロットに突き刺さった。

『くそ!』

 俺は月下から脱出すると同時に月下は爆散した。今の爆発でランスロットも動くまい。

 

 俺とスザクの二人は対峙した。これで決着をつける…!

「ルルーシュ…!」

「スザク、ぶってみろ…この筋肉隆々の体をな。この丸太のような足がお前を砕く、お前も無事では済まないぞ」

 ランスロットから脱出したスザクに対して俺はクラウンチングスタートからの膝蹴りを見舞う。

「かはっ!?ルルーシュ…!傷を負った体のどこにそんな力が…!」

 続けてのコンビネーションパンチ!不意の一撃を貰ったスザクでは対応しきれまい!

「うぉおおおおおおお!!!」

「クソッ!このままでは…!」

 ドガ、と腹に激痛が走る。スザクは俺の傷口に的確に貫手を差し込んできた。

「ごはっ!?」

 溜まらず俺は血反吐を吐く。こいつ、こんな手を…!

「攻撃が緩んだ!今なら!」

 スザクは俺の顔面に回し蹴りをブチ込んできた。くそ…!この程度の痛みでやられるかッ!!腹の傷さえなければスザクなんぞに…!そうだ、傷…血だ!俺は腹に手を当てうずくまるフリをする。

「ルルーシュ!?」

 お人好しのスザク…!傷口を攻撃するという手に罪悪感を覚えたな?馬鹿な奴め!くらえ、血の目潰しだ!

 

「勝った!食らえスザクッ!!!」

 視界を失い生じた先にその顔面に膝蹴りを叩き込んでやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルルーシュ、やはり君は僕を侮ったね?」

 

 膝蹴りが手で止められた。ジリジリと退かされた奴と目が合う

「スザク…お前…!」

 血の目潰しは成功した…が、それは半分だけ、こいつ、予め片目を閉じて…!?スザクの回し蹴りが再度顔面に突き刺さる。い、いけない…こ、これ以上は身体が…!

「ルルーシュ!そんな体の君にこれ以上戦わせる訳にはいかない!これで止まってもらう!!」

「だ、黙れスザク!俺は世界を壊し、世界を作る!その邪魔になると言うのなら死んでもらう!!」

 俺とスザクは同時に駆け出す。

「スザァァァァァァク!!!!」

「ルルーシュゥゥゥゥ!!!!」

 

 

 俺たちの拳は、お互いの顔面に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人は、人間は筋肉を求める存在である。ブリタニアの少年…少…年?少年で良いんだよな…?うん、少年…ルルーシュが望んだ筋肉はささやかな筋肉にすぎなかった。…ささやかか…?特別な筋肉ではない。少なくとも筋肉の根源には人としてごく当たり前のとてもささやかな筋トレしかしなかった。ささやかの定義が違うな?

 

そんな筋肉を、そんな筋トレを誰が否定できるのか。誰にそんな資格があるというのか。

だがしかし。人は誰しもが否応なく食事と、運動をとることによって自らの体型を形作ってしまう。

ならば個人の腹筋など荒れた食事を前にしてはどうしようもなく隠れてしまう儚い存在でしかない。

拳と拳、鍛錬と筋肉。ルルーシュの前に立ちはだかったのは自らが生み出したマッチョでありマッチョが人である故の筋肉か。私これ何言わされてるんだ?

それでも今は筋トレすべきであろう。そう…少なくとも人が筋肉を求める存在であるのなら。

 

分厚い胸筋は割れた腹筋は筋トレからこそ生まれ出る…!」




●あとがき●
八つに割れた腹筋、欲しいですよね…
が、簡単にはそんな腹筋得られません。
ついつい食べ過ぎたり、筋トレ
をサボっちゃったり…
まぁ、筆者は普通に非マッスルです()
てな訳でご愛読ありがとうございました!


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オマケ
STAGE19? 捜索隊、ゼロ


 そこは無人島、神根島。植生は豊かであり、可食な木の実が取れ、豊かな自然のお陰で野生動物もそれなりにいる。湧水と川があるため、川魚も取れる。当然海に面しているので海水から塩が取れるし、貝類も豊富だ。

 何が言いたいかと言うと、ルルーシュ、スザク、カレン、ユーフェミア以上四人は絶賛遭難中。そして助けが来る気配が



   な    い    !



※本編にて没にしたエピソードをやっぱり考えてみた版です。


 初夜に合流し、互いの素性をバラしあった次の日。俺たち四人は砂浜にてぼーっと水平線を見つめ、いわゆる体育座りをしていた。

「こないな、捜索隊」

「こないね、捜索隊」

「なんで誰もこないのよ」

「あっ!見て下さい皆さん、今イルカが跳ねましたよ!」

 捜索隊が来ない。黒の騎士団はまだわかる。所詮はテロ組織、そこまでする義理がないと言われてしまえばそこまでだ。では、ブリタニア軍はどうか?名誉ブリタニア人のスザクはともかく、皇女のユフィがいて捜索隊を出さないとはどうなっている?頭がおかしいのか?コーネリアとか発狂してそうだが…

「こんなにゆっくりした時間はいつぶりでしょう?私キャンプなんて初めてです!」

 うん、ブリタニア…というかユフィは頭おかしいのかもしれないな。我が義妹ながらなんかそう思う。

 

 とにかく、捜索隊が来るにしろ来ないにしろ、サバイバルの準備だ。

「スザク、どこかに川とかなかったか?」

 海水から取り出す方法は効率が悪い。とてもじゃないが4人分は賄えないだろう。

「それならあっちに川があったよ。イワナっぽい魚もいたから水質はそんなに悪くないと思う。」

 長期のサバイバルにおいて、水場の確保は重要だ。清潔さを確保するにも、飲み水を確保するにも、何もかも。そんな訳でスザクの案内で川に来た。取り敢えずこの周辺に拠点を築くべきだろう。

 

 それにしてもこの四人でサバイバルか…

 

 俺(頭がいい)、スザク(体力バカ)、カレン(頭もいいし運動もできる)、ユフィ(………)

 うん、ユフィのサバイバル適性が低いのは分かった。だがなんとかなるだろう。

「みんな、何か使えそうなもの持ってないか?」

「使えそうなもの?私はこの折れたナイフくらいしか無いわよ」

「僕は特に何も」

「私もありません」

 俺もゼロの仮面くらいだ。

 現在の我々の持ち物は…ナイフは調理用と割り切ろう。獣を解体するときに必要だ。となるとまずは…石器を作るか。手当たり次第に石を拾い、うちつけあう。良い感じの大きさと鋭さを目指して斧を作るとしよう。

「ルルーシュ?それは…石器?斧を作ろうとしてるのかい?」

「あぁ、木の伐採はできるに越したことはないだろ?」

 そういうとスザクはどこかへと消え…あ、戻ってきた。

「はい、ルルーシュ。なんか良い感じの棒と蔦だ。」

「気が利くなスザク」

「まぁね」

 いい感じの棒を持ってきて得意げな顔を見ると…犬みたいだ。うん、雑種犬だな。カレンは………忠犬だな。そんでもってユフィは血統書付きの犬だ。

「あら、じゃあカレンさん。私たちは木の実でも探してきましょうか?」

「え?あ、あぁ…」

 良い感じにした石といい感じの棒と蔦でなんか良い感じになんかそれっぽい感じにすればそれっぽい石斧の完成だ。

 スザクに木を伐採させ、広場を作ろう。切り株はスザクと協力して引っこ抜く。まぁ、使い道はないが…いや、高さを整えれば机や椅子にできるか。川ということは野生動物の水飲み場である可能性が高い。スザクの持ってきた良い感じの棒の中から長めの良い感じの棒を選び、良い感じに尖った石と組み合わせる。これで投げ槍の完成だ。

 

 水場にのこのこやってきた獣はこれで…!

「ふんっ!」

 獣の脳天を投げ槍が穿ったのだろう、良い感じに仕留めることができた。とは言え、いつまでも運良く捕まえられるとは限らない。保存食とかも考えなければ。その為には塩が必要だし、器を作らないとな…

「おーいルルーシュ!また切り株引っこ抜くの手伝ってくれー」

「分かった。」

 何個かの切り株を引っこ抜いた時だ。

「この土、粘土か?」

 粘土なら土器が作れるな。スザクにも伐採作業は中止させ、粘土掘りをさせる。食料を持って帰ってきたカレンとスザクに土器を作らせつつ、俺は火の準備をした。ユフィはスザクの応援をしている。お前も働け。

 スザクが伐採した木の枝を適当に見繕い、へし折って薪を確保する。本来は乾燥させるべきだが、そんな余裕はない。幸い、火はすぐにつけられる為、今すぐに火はつけなくても大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 まぁ、そんなこんなで時は過ぎた。木の幹につけていた印が365をとっくに過ぎたある日の事だ。

 

「見てくださいルルーシュ、ルルーシュの甥ですよ。」

 

 まぁ…そういうことだ。捜索隊が来な過ぎた。スザクとユフィの間には子供ができてしまったし、この島での暮らしにもすっかり順応してしまった。現在俺は野生動物の家畜化計画と木の実の本格栽培を試行錯誤中だ。俺達の村(?)はこの無人島の高台に木の柵で覆われ、頑丈な作りをしている。カレンは意外にも土器作りが上手く…逆にスザクの作るものは散々な出来だった…世が世なら陶芸家紅月カレンとして有名になっていただろう。

「相変わらず上手いもんだな。」

「昔永田さんって人のところでやったことがあっただけよ」

 そうは言うがカレンの作る土器は中々見事だった。

 

 ナナリー、この場にナナリーが居ないのが残念だ。この俺たち四人…と、新たな生命による計5人の世界は実に平和だ。ブリタニアも日本もない。全員が全員に優しい世界。その理想郷はこの島にあったんだよナナリー。

 

 

 

 

 

 

 印をつけるのをやめてしまっていくつかの日々が過ぎた。俺の甥と姪が合計で9人を超えた。スザク、お前はベースボールチームでも作るのか?そんなことを言っているが、なんだかんだ俺とカレンの間にも子が3人ほど出来た。やれやれ、俺も雄の本能には勝てないらしい。農業と畜産は軌道に乗り、海上養殖も順調。ついに島の全てを整備し尽くした俺達はやはり平和に過ごしていた。まぁ、整備したところで走る車など無いのだが。

 

 

 更にいくつかの時がすぎ、何度かの冬をやり過ごし、子供達もすっかり大きくなった頃だ。島に船がやってきたのだ。ブリタニア軍でも黒の騎士団でもない、その捜索隊は…

「お兄様!ようやく見つけました!」

 

 

 目を見開き、すっかり大人の女性になったナナリーだった。




当たり前ですけど、続くはずがありません。

また、「ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜」の後書き的なものを活動報告に記載しましたので暇な方はお読みください。


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STAGE00 (主に返り)血の紋章事件

先に言い訳すると、私元ネタの血の紋章事件についてはよく知りません

大変短めです。






ので!19:00にもおまけが更新されるぞ!


 帝国最強の十二騎士、その内の一人たるナイトオブファイブのビスマルクは皇帝シャルルもとに走った。一部の皇族と大貴族、更にはナイトオブラウンズの大半が皇帝に弓を引いたからだ。謁見の間の扉を開けると、そこには血まみれのシャルルが居た。遅かった、とビスマルクは思った。

 

「ぶるぁ!!!」

 

 ドガッ!と拳を振り下ろし、トマトのように頭蓋骨を潰された人物…ラウンズの一人はあっさりと絶命し、シャルルによって放り投げられた。

「このワシにこんな貧弱な身体で挑んでくるとは…なんったる愚かしさ!!!」

 血まみれのシャルルというのは、当然返り血で血まみれの意味だ。ビスマルクがマリアンヌから聞いた話だと武装した集団50人程が皇帝の命を狙い謁見の間に突入したと聞いていたが、どうやら全員返り討ちにしたらしい。普通に考えて人間の技ではない。

「こ、皇帝陛下、ご無事で何よりです。ビスマルクでございます。」

「なんだビスマルク。ワシに挑みに来たか?しかし銃でも刃物でもこのワシには無駄ァーー!!!!」

 殴り掛かろうとするシャルルにビスマルクは両手を前に出し、必死に説得する

「い、いえ!私は皇帝陛下の味方です!マリアンヌ様から陛下の危機を聞き、馳せ参じたのです。」

「何…?ワシに危機だと?」

 シャルルはキョロキョロと周りを見渡し、首を傾げた。

「どこに危機がある。」

「あ、はい。すみません」

 更にはシャルル自らが謁見の間を飛び出し、歯向かうものを拳骨で一掃していった。

「ぶるあぁ!!」「ぶるぁぁああ!!」「なんったる愚かしさ!」「ぶーーるぁぁぁ!!!」「ぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるァァ!!貴様はワシをォ!怒らせた!!」

 ことごとく頭蓋骨を粉砕され脳漿と血をぶちまけていく反乱軍をビスマルクとマリアンヌは真顔で見ていた。

「ねぇ、ビスマルク。」

「なんです?マリアンヌ様」

「暇ね。」

「暇ですな。」

 彼らの眼前には今なお拳を振り上げぶるぶる言っている皇帝の背中があるのだが、槍で突かれれば槍がへし折れ、銃で撃たれても何故か無傷、剣を振るえども刃が折れ、生半可に殴ってもびくともはない。歩く要塞と化したシャルルに勝てるものなどいなかった。ラウンズが束でかかってもぶるぶる言っているうちに頭蓋骨陥没被害者の会の永久会員が増えていくばかり。流石にナイトメアが出張った時はマリアンヌがナイトメアで出撃したものの、殆どのラウンズをシャルル自らが処刑すると言うとんでもない事態に陥った。因みにビスマルクはたまたまナイトオブワンの止めをさせた。

 

 のちにこの事件は「(主に返り)血の紋章事件」と呼ばれ、ブリタニア皇帝シャルルに歯向かえるものは無いと周辺諸国に知らしめた。そしてそんな事態に胸を撫で下ろすのはビスマルク。

 

(最初は皇帝を騙し討つつもりだったけど、最後まで実施しなくて正解だった…!)




「にゃるが」さんから頂いた
「反逆したラウンズの一部をシャルル本人が自らの筋肉で粛清していそう」のエピソードです。


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STAGE06.5 神聖ブリタニア帝国第98第皇帝陛下よりお言葉

オールハイルマッスル!!


●お言葉 その1●

 母さんが死んでしまった。ナナリーも怪我をして入院をしている。それなのに、父上は見舞いも何もしなかった。そのことが僕は許せなくて父上に謁見を申し込んだ。

「神聖ブリタニア帝国第十七皇位継承者ルルーシュ ヴィ ブリタニア 様御入来!」

 家臣の声と共に大きな扉が開かれる。僕は玉座の前まで歩き、父を非難した。

「皇帝陛下。母が身まかりました。」

「だから、どうした?」

 皇帝という立場だから、人の目があるから、なんでもないように話すだけならわかる。だが、父上は本当に心底どうでもいいという顔をしていた。

「だから?」

「筋肉をつけておれば銃弾などで死にはしない!つまり死んだのは本人の努力不足…!お前はそんな事を言うためにブリタニア皇帝に謁見を求めたのか…?次の者、子供をあやしている暇はない。」

 無茶苦茶だ。父上は…いや、この男は本当に母を愛して子をもうけた自分の父親なのか!?

「父上!なぜ母さんを守らなかったんですか?皇帝ですよね?この国で 一番偉いんですよね?そんなに筋肉があるんだったら守れたはずです。ナナリーの所にも顔を出すぐらいは…」

「貧弱者に用はない!」

「貧弱者!?」

 ナナリーを貧弱者の一言で片付けた…!?母さんが命懸けで守ったナナリーを?あり得ない…!

「それが皇族、そしてマッスルガイという者だ。」

 なんだ?なんだそれは!それが皇族なら、それがマッスルガイなら…!僕は!

「なら僕は皇位継承権も筋肉なんてものもいりません!あなたの跡を継ぐのも争いに巻き込まれるのも筋トレに明け暮れるのももうたくさんです!」

「死んでおる…お前は、生まれた時から死んでおるのだ。身にまとったその服は、誰が与えた?家もトレーニング施設も高タンパク低カロリーな食事も、筋肉の付き易い遺伝子も、命すらも、全て、ワシが与えたモノ。つまり、お前は生きたことなど、一度も無いのだ。しかるに、なんったる愚かしさ!!…ルッルーシュ、筋肉もなく死んでおるお前に、権利など無い。ナナリーとともに日本に渡れ。皇子と皇女ならば…良い、取引材料だ。」

 つまり僕らは人質だ…ふざけている…なんなんだこの男は…!母を守らず、僕とナナリーを見捨てた男、僕は絶対に許さない…!!!

 

 

 

●お言葉 その2●

 クロヴィスを殺して数日後のある日、クロヴィスの死に対する言葉をシャルルが言うらしい。ブリタニア国家をBGMに、あの男が上裸の身体をオイルで光らせながら壇上に上がる。敵ながら今日もキレてるなシャルル…!それでもあの男への憎しみは変わらなかった。まずあの男がとったポーズはマストマスキュラー。自分が力強い権力者だと言いたいらしい。

『人はァ!…平等ではない。鍛え上げた足の筋肉が逞しい者、鍛えられた筋肉が美しい者、鍛えても筋肉量が貧しい者、鍛えても筋肉のつかない貧弱な体を持つ者、生まれも育ちも才能も筋肉もォ!人間は皆ァ!違って…おるのだ。 』

 するとシャルルはカメラに背を向け、ダブルバイセップスバックを披露する。自分の背中を見て育てとでも言いたいのだろう。傲慢な男だ。

『そう、筋肉はその者の価値を判断するためにある。だからこそ人は争い、競い合い、筋トレし、そこに筋肉が生まれる。 不平等は…悪ではない。平等こそが悪なのだ!! 』

 筋肉がその者の価値を差別するためにあるだと?そんな考えはふざけている。リヴァルみたいに筋肉がなくても価値のある人間はいるのだから。

 そう思っているうちにシャルルはサイドチェストにポージングを変えていた。

『権力を平等にしたE.U.はどうだ?筋肉を人気取りの道具にする衆愚政治と坐しておる。富を平等にした中華連邦は筋トレしない怠け者ばかりだ。だが我がブリタニアはそうではない!争い、競い、筋トレし常に筋肉が進化を続けておる!ブリタニアだけが前へ、未来へ、マッチョへと進んでおるのだ!我が息子クロヴィスの死もブリタニアが進化を続けているという証!戦うのだ!競い、奪い、獲得し、支配し、筋トレしろ、その果てにマッチョになる!!!」

 最後にラットスプレッドフロントのポージングをしてシャルルは叫んでいた。

『オールハイルマッスル!オール・ハイル・ブリタァァァァニア!!!!!』

 

 

 




「BBDK」さんから頂いた
「シャルルが上半身裸で肉体美を見せつけながら「人は平等ではない」って言ってる」のエピソードです。

書いてる私も思うんですけど、狂ってるよ()


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STAGE25.1 スザクと皇女

 

「あら?この足音…スザクさん?」

「やぁ、ナナリー。元気かい?」

 行政特区日本の事件で皇位継承権を失ったユフィとは反対に、ナナリーは皇族としての地位を取り戻していた。

「お兄様の行方、分かりましたか?」

「ごめんねナナリー。まだわからないんだ。」

 僕はまた嘘をついている。ナナリーは僕がルルーシュを倒した後に見つけた。瓦礫の中を座って佇んでいた。最初はルルーシュが迎えに来るからと頑なに動こうとしなかった。

 一度ルルーシュを拘束し、再び戻るとやはり佇んだままだった。仕方ないので半ば無理矢理に抱き抱えて連れて行った。

 何故あそこにいたのか聞けば、ゼロに人質として捕らえられていたと言っていた。機体の中で女性の膝の上に座らされ、目も見えず足も不自由だから好都合だと言われたそうだ。一応丁重な扱いをされ、怖い思いはしなかったらしい。ミレイ会長たちに確認しようとしたけれど、皇帝陛下がギアスでナナリーのことを忘れさせているから無理だと言われた。

 

 今さら皇族に復帰したナナリーにブリタニアの友人などいるはずがない、生徒会のメンバーは記憶を奪われている。ナナリーは孤独だ。僕とナナリーが話せば否が応でもルルーシュの話になる。僕にルルーシュの話をする余裕は無かった。

 

 

 

 今日はある人との連絡を取る日だ。モニターにはかつて総督としてお世話になったコーネリア殿下の顔が写っている。

『久しぶりだな枢木。』

「は、コーネリア殿下もお久しぶりです。」

『私は今ユフィの治療法を探してエリア18に来ている…が、ここでの収穫はなさそうだ。』

「そうでしたか」

 旅の中では昔のように髪を整える時間はないのだろう、ボリュームというか、髪のふんわり感がおとなしい気がする。

『ユフィはどうしている?』

「は、相変わらず手強いです。日に日にパンチのキレが上がっています」

『そうか、ユフィに武道の才があったのは驚きだが…私はユフィに喧嘩などさせたく無いのだ。必ず治療法を見つける。それまでは…死ぬなよ、枢木』

「はい、殿下もお気を付けて」

 ギアスの呪いに治療法などあるのだろうか?それでも今はコーネリア殿下を信じて待つことしかできなかった。

 

 

 

 今日も僕はそこを訪れていた。

「あら?スザク!今日も会いに来てくださったのですね!」

 元皇女殿下、ユーフェミア リ ブリタニア。今はユフィ タダノと名前を変え、拘束されている。失敗には終わったものの、ユフィは行政特区日本をやろうとした。皇女としての名の剥奪はその対価らしい。今は皇女としての位も剥奪され、ただの一般人として生きている。コーネリア殿下はユフィの治療法を求めて単独で旅を続けているらしい。ギアスの治療法、そんなものはあるのだろうか。

「やぁ、ユフィ。今日も元気そうだ…ねっ!」

 パシッと右ストレートを受け止め、続けての足払いに対して逆にこちらが足払いを仕掛ける。ユフィは転倒するが、その顔は笑顔だ。

「ふふっ、やっぱりスザクは強いわね!きっとスザクを殴り殺せたら日本人を全員殴り殺せる気がするの!これからも私を手伝ってくださいますか?」

 跳ね起きで立ち上がり、そのまま回転しつつの蹴りを繰り出してくるユフィの攻撃を捌き切るのは至難の業だ。でも…

 

『鍛えろ!』

 

 そう、僕は鍛えなくちゃいけない。僕がユフィの事を、そして僕自身のことを!昨日よりも早い拳をユフィの腹に叩き込み、ガラ空きになった後頭部にアームハンマーをブチ込む。床に叩きつけられたユフィは一度跳ね、動かなくなったようだ。

『枢木卿、今日はその辺で』

「…分かっている」

 また来るよ、君を鍛えに。ユフィ。

 

 ユフィをこんな風にした君は許せない、ルルーシュ。でも彼は今、C.C.捕縛作戦に餌として使用されている。管轄は機密情報局、僕がどうこうできる部署では無い。あちらも皇帝陛下直属の部署なのだから。




個人的にコーネリアは2期のなんかこうちょっと落ち着いた髪型の時の方が好きです。それはそれとして復活のルルーシュでのコーネリア殿下の服装、言っちゃ悪いですけどそこそこいい歳なのに凄い丈の履き物ですよね。良いぞもっとやれ

●オマケ●唐突な次回予告(偽)
新番組!
「ビートギアス 〜音楽のルルーシュ〜」

目の見えないナナリーを楽しませるため、ルルーシュは音楽に注力した。元々皇族として嗜んでいたピアノ、バイオリンは勿論、意外にもナナリーはクラシックよりロックがお好みだったこともあり徐々にルルーシュはドラム、エレキギター、キーボードなどを極めていく。
 ある日、謎のアーティストC.C.と出会った少年ルルーシュは謎の仮面ボーカル兼キーボードのゼロとしてカレン、C.C.と共にバンド「黒の騎士団」を結成する。
 枢木スザクに楽曲の盗作の疑いを掛けていたバンド「純血派」のジェレミア達を音楽性の違いからバンドを解散させ、枢木スザクを救い出す。バンドに勧誘したルルーシュだったが断られ…………


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STAGE25.9 SIDE:BLACK 黒の残党

一応公式にエピソードがあるようですが、確認してません()

また、双貌のオズは未読です()


「あった!紅蓮の右腕!」

 黒の騎士団が壊滅に至ったあの戦いでは多くのナイトメアの残骸が生まれた。そんなスクラップの山の中からスザクに吹き飛ばされた紅蓮の右腕を掘り当てた。しかしながら損傷が酷い。

『紅月さん、そろそろ巡回が…』

「分かってる。」

 輻射波動装置をリアカーに乗せてスクラップの山から離れ、トラックに積み込む。自分も荷台に乗り込み窓ガラスを叩く。

「出して!」

 走り出したトラックは無事に私たちの潜伏先へとたどり着いた。

 

「卜部さん!ありました、紅蓮の右腕!」

「やったな紅月」

「はい!」

 しかし、メカニック担当が渋い声出す。

「装置の損傷が酷いですね、簡易的に直しても前のようにはとても…」

 聞けばやはりスザクの銃をモロに受けたのが良くなかったらしい。装置が損傷し、出力や燃費、規模などが下がってしまっている。しかし輻射波動には変わりがない。普通のナイトメアなら一撃で倒せる。

「帰ったのかカレン。ほら、例の衣装用意できたぞ。」

 C.C.から渡されたのは赤というかピンクっぽいバニースーツとウサミミ。…本当にこれ付けるの…?

「なんだその顔は。仕方ないだろ?私はあまり顔を出すわけにはいかない。他に女団員が居ないんだ。お前がやるしかないだろう?」

 ゼロを…ルルーシュを奪還するための飛燕四号作戦、その作戦の中で私はバニーとして潜入する必要がある。C.C.の言い分はわかるし、理解もできるけれど、だからといって理解できるとは言っていない。

「済まないな紅月、この作戦は君にかかっている。頼まれて欲しい。」

「あ、はい。頑張ります、卜部さん」

 それにしても作戦の中で飛行船を使うのだが、そんなものどうやってC.C.は用意したのだろう。アオモリから逃げた時も…

 

 

 

 逃亡生活の途中、エナジーフィラー保管所を抑えていた卜部さん達は藤堂さんたちの本隊の崩壊、ゼロとの連絡がつかないと言う事態に撤退を決め、スザクに負けて補給の為に下がっていた私はその道中に拾われた。その後も追手に対して何人かの団員が殿になると残り、散って行った。陸路をことごとく抑えられ、なんとかカワヅ港まで逃げた私たちは船を奪って北上を考えた。その時、ボロボロの服装に身を包んだC.C.と合流したのだ。

 

 その後、とある倉庫会社の社長に私たちは見つかったのだが

「お前は…『緑の魔女』が命じる。我々に協力して欲しい。」

「…わかった。何をすれば良い?」

 C.C.が交渉した途端、男は快くわたしたちを受け入れ、ナイトメアを隠すことに協力してくれた。しかも、わざわざ大きめの船にガラクタを乗せて出発させ、ブリタニアに捕まったら自爆するという追手に対する偽装までしてくれたのだ。

 それから時が流れるごとにC.C.はどこからか機材や計器類を調達し、生き残りの団員に何かのプログラムをさせていた。

 

 ある日気がついたことがある。C.C.はいつも大事そうに起動キーのようなものを握り締めているのだ。もちろん使う時は手放しているけれど、そうでない時はいつもC.C.は大事そうに肌身離さず持っている。ガウェインの起動キーかとも思ったが、形状が違う気がする。

「ねぇ、C.C.アンタがいつも大事そうに持ってるそれ、なんなの?」

「これか?これはまぁ、ゼロが私に託してくれたものだ。色々と大切なデータが入っている。」

 ゼロ…ルルーシュが?ならば確かに黒の騎士団の再興には必要なものかもしれない。アイツはあの筋肉量とは裏腹に驚くほど頭がいい。ルルーシュにとっての「脳筋」とは脳=筋肉、全身筋肉=全身脳味噌くらいの物であり、度々の奇跡を起こしてきた。

 

 ある日のこと、突然C.C.からの提案を受けた。

「卜部、一度アオモリに行くぞ」

「アオモリ?潜伏場所ならここで十分ではないか?移動はリスクがあると思うが」

 偽装工作もあり、最近はかなり警戒が薄れている。とは言え未だに大通りは検問があるし、たまに裏道なんかで突発的な取り調べもある。

「ゼロが各地に資源を備蓄してくれていてな?アオモリにはエナジーフィラーが保管してあるんだ。いずれゼロを助け出す時にはナイトメアが必要になるだろう?我々はその為に整備している…しかし肝心のエナジーフィラーは保管所から盗んだ分を逃走中にほとんど使ってしまっている。これでは戦いにならん。」

 最近はテロ活動を警戒してエナジーフィラーの管理が厳しく、なかなか強奪もままならない。そのエナジーフィラーが手に入るというならやる価値はあるのかもしれない。

 

 そしてアオモリで大事件が起きた。C.C.こと『緑の魔女』が交渉した結果、ブリタニアのホテルを借りることができた、冬であること、日本人でありながら長い逃亡生活で湯にしっかりと浸かることができなかった反動なのか、久しぶりの入浴中、突然ホテルの支配人が戸を開けてきた。

「皆さま!お逃げください!軍…」

 銃声と共にホテルの支配人が倒れ、私たちは真冬のアオモリをほぼ全裸で逃げる羽目になった。逃走中、干してあったバスタオルを盗んでなんとか色々隠したが、C.C.は全裸でしかも全く気にしていない様子だった。流石にC.C.にもバスタオルを渡して隠させる。身体に大きな傷があったけれど、昔何かあったのだろうか。

「無事だったか紅月!」

 この声は卜部さん、良かった。彼方もうまく逃げられたらしい。振り返ると全裸の卜部さんが両腕を振りながら走ってきてきた。

「卜部さん!?せめて前だけでも隠してください!!」

「すまん。逃げるのに必死でな」

 他の団員も全裸であり、もう色々とやばい変態集団のようになっている。

 結局クリーニング屋で空き巣をし、各々服を盗んで着るまで私達は走り続けていた。そりゃそうだ。真冬に濡れた状態でアオモリで立ち止まったら?もれなく凍えて死ぬ。

 

 

 

 その後、紆余曲折はありつつなんとか物資の補給に成功し、帰り道は山などを経由してなんとか無事に辿り着くことができた。真冬のアオモリには二度といかないと固く誓ったのは言うまでもない。

 

 私はかつてルルーシュが乗っていた月下の左手のような形状になった右腕を取り付けた紅蓮を見つめ、胸元に起動キーのを押し込み、バニースーツに身を包む。と言っても殆どこぼれちゃってるけども…キッツいわねこれ…。飛行船に乗り込む卜部さん達を見送り、私はバベルタワーへと向かう。飛燕四号作戦…ルルーシュを、ゼロを、日本を取り戻す。

 

「ここからが私達の…反撃だ!」




 逃走生活しているカレン達のエピソードです。

 脳筋要素無くね?


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ミートギアス 〜暴力のアキト〜

タイトル詐欺です。物を投げないでください。やめてください、ものを投げないでください!


 拳と拳のぶつかり合い、ルルーシュと僕の拳はお互いの顔面をブチ抜き、脳を揺らした。しかし僕はまだ倒れない。さらにと貫手をルルーシュの腹に空いた傷口にブチ込む。そのまま中を掻き回せば幾らルルーシュとは言え立っては居られない。更に出血も相まってとうとう気絶する様だ。

「負ける…?俺が、スザクに………」

「僕は鍛えたからね。君に勝つために。」

 度度響くルルーシュの掛けたギアス、『鍛えろ』は文字通り僕を鍛えた。ユフィとも殴りあったことすらある。

 そもそも僕と殴り合う前にランスロットのパンチでルルーシュは腹に重傷を負っていた。あの状態で立って動いていただけでもおかしいのだ。ロイドさんにゼロを捕らえたことを報告すると、皇帝陛下から直接会うから連れてこいとのことだった。

 

「久しいな、我が不祥の息子ルルーシュよ」

「シャ…ルル…!」

 ルルーシュが反応したので僕は地面に押さえつける。傷口に指を差し込めばいかに頑丈な肉体でも痛みに耐えられるはずがない。

「ルルーシュ、その怪我で暴れるのはお勧めしないよ。」

 僕はルルーシュを押さえつけたまま皇帝陛下を見る。

「何か、言いたそうだな枢木よ。構わん!言ってみるが…よい」

「…恐れながら、自分を帝国最強の十二騎士、ナイトオブラウンズに加えていただきたい。」

「ほう?ゼロを、ルルーシュを捕らえた褒美が欲しいと?」

「はい。」

 僕は頷く。

「スザ…ク!友達…を、売る、のか…!?」

「あぁそうだ。君は僕の踏み台だよ。広い背中で実に踏みやすい踏み台だ。」

「ふはははは!良かろう!!…今の言葉気に入った。」

 すると皇帝陛下は立ち上がる。うん?今瞳が変わった気がするけど…?

「それでは早速ナイトオブラウンズに命じる!その男の左目を塞げ。」

 僕は命令通りにそれを実行した。

「やはり…ギアス!な、何をする気だ…!」

「記憶を…書き換える。」

 どうやらV.V.くんに教えてもらったギアスなるものは瞳に宿るらしい。そしてどうやら陛下もギアスを持っているようだ。僕も気を付けないと。ルルーシュの目を左目だけを塞ぐと言うことはルルーシュのギアスは左目にあるらしい。そしてどうやら見ることで効果を発揮するようだ…いや、目と目が合ったらかな?

「シャルル・ジ・ブリタニアが刻む新たなる偽りの記憶!!お前はゼロであることマリアンヌのことナナリーのこと!全てを忘れ、ワシの忠実な僕として今よりE.U.へ赴きワシのために策を弄し拳を振るって貰う!!」

「ふ、ふざける…な!う、うわぁぁああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全治半年といわれた傷を一週間で治したルルーシュ…いや、今は別の人物だが…は、僕と二人、ユーロブリタニアに向かっていた。ルルーシュは記憶と名を奪われ、その力と知恵を皇帝陛下のために使う奴隷となった。皮肉だね、ブリタニアの破壊を望んだ君が今やブリタニアのための奴隷になるなんて。

「許しは…乞わないよ。」

「は?何を言っている枢木卿」

「いえ、独り言です」

 彼は水を飲もうとして…あ、水差しを砕いた。

「水…」

 

 列車を使用してようやく僕らは目的地に着いた。しかし、あまり歓迎されていないのだろう、出迎えは見るからに最低限と言った感じだ。

「なんだ?迎えはこれだけか?」

 彼も同じ感想を抱いたらしい。少ない迎えをキョロキョロと見てから尊大な態度でそう言った。

「まぁいい、私が帰る頃には溢れんばかりの見送りと喝采が送られるだろう。」

 それして彼はダブルバイセップスを決め、誇らしげに言い放った。

 

「この天才軍師、ニクアツ マッスルガイがもたらす勝利によってな!」




タイトル詐欺解説:アキトが登場しない。

亡国のアキトを見ていない人向けに解説すると、ルルーシュが一時的に記憶を書き換えられて天才軍師「ジュリアス キングスレイ」としてE.U.攻略に遣わされていましたので、それの脳筋ルルーシュ版です。

おまけではありますが、ある意味最終話の結末を記してもいます。


●オマケ NGシーン●※化物語ネタです 第五話にも同じネタのオマケを7/29に追加しています
「恐れながらシャルルル皇帝陛下」
「ルが1個多いぞ、枢木よォ…」
「申し訳ありません、噛んでしまいました。シャルルルル皇帝陛下」
「今度は、二つ多いぞ、枢木よォ…お主、わざとやっておるな?」
「断じてそんなことは!どうかお許しを、シャル皇帝陛下!」
「今度はァ!ルが1個足りぬでは無いかァ!!枢木ィ!!」
「大変失礼いたしました!申し訳ありませんシェルル皇帝陛下!」
「枢木よ、ワシの名前はシャルル ジ ブリタニアである。決して、貝類のような名前では、なァい!」
「どうかお許しを!謝ルル皇帝陛下!」
「誤植では無いか枢木よォ…謝罪の気持ちがァ!わしの名前に移っておるでは無いかァ!!」
「謝罪の気持ちに免じてお許しいただければと、ぱるる皇帝陛下…」
「枢木よ、ワシの名前を埼玉県出身のビッグアップルに所属しておるAKB48の元メンバーの日本女優の愛称みたいに言い間違うとは何事だ!」
「はっ!大変申し訳ありませんでしたルシャシャ皇帝陛下!」
「ルとシャが!入れ替わっておる!!」」
「お許しください!ルルーシャ皇帝陛下!」
「そこにおるワシの不肖の息子のように間違うとは!なんったる愚かしさ!!貴様の記憶力は死んでおる!死んでおる貴様に権利などなァい!!!」


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STAGE25.5 枢木スザクと愉快なラウンズ達

外伝作品とかちゃんと見れば口調もはっきりするんでしょうけど、サボりたいので口調は適当になりがちです。


 僕はルルーシュを捕らえた功績からナイトオブラウンズに入る事を許された。因みに僕はナイトオブセブンらしい。

「本日よりナイトオブセブンを拝命いたしました。枢木スザクです。よろしくお願いします。」

 僕は他のラウンズの人達に頭を下げる。第一印象は大事だからね。

「貴様がイレブンのナイトオブラウンズか、皇帝陛下も何故こんな奴を…。家柄だけのお坊ちゃんといい…」

「いえ、自分はナイトオブセブンです。」

「……………………いや、まぁいい。私はナイトオブテンのルキアーノ ブラッドリーだ。よろしく…なっ!」

 そう言って彼は何かを投げつけてきた。僕の身体に当たったそれを拾い上げて見てみるとナイフのような物らしい。アーニャとかに当たって怪我でもさせたらどうするつもりなんだろう。危ないなぁ。

「素振りは大切ですがしっかりと握っててくださいねブラッドリー卿、今みたいにすっぽ抜けて僕以外に当たったらどうするんです」

「うん?うん…いや…あぁ、気を付けるよ。拾ってくれてありがとう。」

 ブラッドリー卿はそう言うと部屋の隅でナイフの手入れを始めた。落としてしまったから刃こぼれとかしてないかチェックしてるんだろう、物を大事にする人なんだな。

 

「久しぶり、スザク。再会の記念、記録。」

 カシャリという音とともに声を掛けてきたのはアーニャだ。

「久しぶりアーニャ。たしかアーニャはナイトオブシックスだっけ。」

「そう。」

 僕とアーニャが話をしていると、金髪で背の高い男の人が声を掛けてきた。

「初めまして枢木卿。私はナイトオブスリーのジノ ヴァインベルグ。2人とも名前呼び捨てなんて仲が良いんだな。」

「あ、はい、エリア11でお会いする機会がありまして。その時に名前呼びを許していただきました。できればその、枢木卿と呼ぶのは…」

「なら私のこともジノと呼んでくれ。私も君のことはスザクと呼ばせてもらおう。それと、ナイトオブラウンズは皆対等、敬語は不要だ。」

 そうは言われても年下のアーニャや年の近そうなジノは良いとしても明らかに年上の隻眼の人には敬語使うなって言われても無理だよ…。

 あ、その隻眼の人がこっちきた。

「ナイトオブワンのビスマルクだ。ナイトオブラウンズにようこそ、枢木スザク。君はナイトオブワンの地位を狙っているそうだね?」

「あ、はい。自分はナイトオブワンになってエリア11を頂きたいと思っています。」

 ビスマルクさん(苗字がわからない)は僕の肩に手を置いてきた。

「励むといい。とは言え易々と譲る気は無いが」

 そう言うと去っていった。

「あればナイトオブワンなりの激励だよ、スザクくん。私はナイトオブナインのノネット エニアグラム。コーネリア殿下の窮地を救ってくれたそうだね、私からも礼を言うよ。」

「い、いえ、総督をお守りするのは当然でしたから」

「あはは、まぁそりゃそうか。私はコーネリア殿下の戦闘指南役を務めてたんだ。」

「コーネリア殿下の!?」

 あのコーネリア殿下の戦闘指南ができると言うことは相当強いと言うことだ。実力がすごく気になるな…

「まぁ、機会があれば手合わせしよう。同じランスロットを駆る者同士な」

 ノネットさんはそう言うとさっきまで座っていた椅子に戻っていった。近くに座ってる人と少し言い合ってから入れ替わりにその女性…褐色で黒髪の綺麗な女の人がやってきて、

「私はナイトオブフォーのドロテアだ。…悪いが馴れ合う気は無い。」

 とだけ言ってスタスタと元の場所に戻っていった。ノネットさんとまた何か話しているようだ。同じ大人の女性だし話が合うのかな。

「えっと、あとは…」

 部屋の隅でいじいじしながらナイフをいじいじしているのがブラッドリー卿、いつのまにか肩を組んできて重たいのがジノ、「男同士の絡み。記録」と写真を撮ってるのがアーニャ、隻眼の人がビスマルクさん(今は部屋にいない)、褐色の綺麗な人がドロテアさん、ドロテアさんと話してる綺麗な大人の女性がノネットさん。あとは…

「ナイトオブトゥエルブ、モニカ クルシェフスキー。よろしくモニ」モニモニ

「あ、はい。よろしくお願い…モニ?」

 金髪で前髪を切り揃えた背の高い可愛らしい人が最後の1人。それにしても変わった語尾をしているなぁ…

「語尾は気にしないでほしいモニ」モニ~

「は、はぁ…」

 気にするなと言う方が無理じゃ無いだろうか。でも、周りのみんなは気にしてなさそうだし、慣れるしかなさそうだ。

 

 暫くアーニャとジノとモニカさんと話していると…不思議とモニについては気にならなくなってきた…そしてビスマルクさんが皇帝陛下を連れてやってきた。しかもビスマルクさんは料理の乗ったワゴンを押している。

「それではァ!新たなラウンズを歓迎し、ナイトオブセブン歓迎会をォ始めるゥー!!!」

「モニィ!?」モニ⁉︎

 そう言うとお召し物を筋肉の膨張で破ると言う、立場的に誰も笑えない一発芸を披露する皇帝陛下と共に、まったく気の休まらない歓迎会が始まってしまった。というかモニカさんの驚き方癖あり過ぎない?

「ほゥれ、ナイトオブシックスら未成年にはワシ自ら葡萄ジュースをくれてやろう…」

 わざわざ手刀で瓶を切り裂き、コルクの意味を無くしつつ、皇帝陛下が自らジュースを注いでくる。畏れ多すぎる、正直言ってやめてほしい。ジュースくらい勝手に注ぐし勝手に飲みたい。ほらみなよ、アーニャだって緊張…あ、全然してない。凄いなラウンズ。

 

 食事が終わるとデザートだ。しかしここでトラブルが起きる。

「むぅ、ケーキを切り分けるためのナイフがァ!無いでは無いかァビスマルクゥ!!」

「も、申し訳ありません皇帝陛下!」

 ビスマルクさんが頭を下げ、その頭を皇帝陛下がポカポカ殴っている。頭を下げ、殴られながらのビスマルクさんの顔がぐるりとこちらを見たかと思うと

「ルキアーノ、お前確かナイフを持っていたな?貸せ」

「あ、はい。」

 こうしてケーキは8等分された。

「ケーキ。アーニャ、わくわく」

「ケーキ美味しそうモニ!」モニカモニモニ

 こうやってお菓子を前に目をキラキラさせているところを見るとアーニャもモニカさんも女の子って感じがするよね。

「ノネット…食べた分だけトレーニングすれば実質ゼロカロリーだよな…?」

「ドロテア、あなたそう言ってこの前も…」

 ドロテアさんは…大人の女性特有の悩みって感じだね…

「本格的ですねぇこれ!作った人どんな人なのかなぁ?」

「皇帝陛下も口に入れるわけだし凄い人が作ったんじゃないかな。僕はあんまりブリタニアの有名な人とかわかんないけど」

 ジノは貴族だっていうからもしかしたらそういうの詳しいのかな。

「私は甘いものとかは食べないのでパスだ。」

 

「なんだとルキアーノ…。ワシの手作りケェキが食えぬと吐かすかァ!!」

 

 ブラッドリー卿…骨は拾わせていただきますね…

「こ、皇帝陛下の!?」

「ぶるぁぁぁ!!!なんったる愚かしさ!!!」

 ブラッドリー卿はケーキの代わりに皇帝陛下のビンタを喰らい壁まで吹っ飛んでいった。そして壁にめり込み気絶した。そして皇帝陛下は突然ブラッドリー卿の分の1切れを鷲掴んだかと思うと、それを僕の方に近づけ

「枢木ィ、食え」

「い、イエス ユア マジェスティ…」

 何が悲しくていいおっさんが手作りしたケーキをそのおっさんに素手で鷲掴みされてあーんして食わなくちゃいけないんだろう。最早拷問だよ。結局ろくに味も楽しめないまま歓迎会は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …かに思われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナイトオブシックスよ!カメラを、寄越せィ…」

「は!しかし何にお使いに…?」

「カメラの使い道などォ、決まっておる…」

 皇帝陛下は満面の笑みで自撮りをし、撮影方法を確かめてから

「今からワシがァ!ラウンズの記念撮影を、してやろう…」

 と言ってきた。僕達全員が固まった。なんだか気持ちが一つになった気がする。

「し、しかし陛下、流石に陛下にシャッターを切らせるのは畏れ多く…代わりにこの私が…」

「ぶるぁぁぁぁ!!ビスマルクゥ!ワシの撮影がぁ………受けられぬと?」

 酷い脅しだ。というか実際ビスマルクさんは腹パンを食らっている。ルルーシュ、やはり君のお父さんはロクでもない人だ。こんなのパワハラだよ。

 こうして、僕たちラウンズは仲良く写真に納まった。

「はい、チーズ」

 あ、そこは普通なんですね。

「アーニャ、後でデータ送って欲しいモニ」モニモニ

「分かった。」

「ワシにも…送れィ…」

「は!」

 まぁ、撮ったら撮ったで楽しんじゃうけどさ…

 

 後日、アーニャのブログをみると、写真が貼り付けてあった。タイトルは「ラウンズ集合写真」うーん、そのままだね。

・ナイトオブワン    写真中央やや左で仁王立ち。顔は真顔。

・ナイトオブスリー   ナイトオブセブンの右に立ちに肩を組む。満面の笑み。

・ナイトオブフォー   ナイトオブワンの左隣にて意外にもピース。割と笑顔だった。

・私          ナイトオブワンとナイトオブセブンの中間の前に立ちダブルピース。笑ってる(つもり)

・ナイトオブセブン   写真中央でやや右で無理やり肩を組まれているため体勢が崩れている。苦笑い。

・ナイトオブナイン   ナイトオブフォーの左隣、こちらも意外にもピース。口角を上げている。

・ナイトオブテン    左端で見切れている。表情はブレており判別不能。というか壁にめり込んでいる。

・ナイトオブトゥエルブ 写真右端でダブルピース。弾ける笑顔。モニィ!

 撮影者:皇帝陛下(左上に丸いやつで顔が貼られている。)因みに満面の笑み。

 

 アーニャはブログの閲覧者数がいつもより多いと喜んでいた。そりゃ…増えるよね。




終わり方が雑ですが、なんかこう、ラウンズたちの日常会的なのが書きたかった。

●唐突な次回予告●
ルルーシュ「撃って見ろ。但し、撃って良いのは、俺にぶたれる覚悟のある奴だけだッ!!」

次回、「ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 R2」

TURN01 筋肉が目覚める日


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ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 R2
TURN01 筋肉が目覚める日(魔神が目覚める日)


 トウキョウ租界の上空を一機の飛行船が飛んでいた。
「こちらFUKKIN6、間もなくトウキョウ租界管轄空域に入ります」
『了解。飛行目的は筋肉の広報宣伝で間違いないか』
「変更なし。滞空時間も申告どおり14時間を予定」
『確認した。上空飛行を許可する』
「対応感謝します」
 そう告げた女はニヤリと笑う。その背後には複数のナイトメアと人影が揺らいでいた。

それでは本編スタート…の前に一言。
「日本人よ!続編を待ち望む全ての読者よ、私は帰ってきた!再び読んでくれて私は嬉しい…」

それでは改めて本編再スタートです!


 今日もようやく授業が終わった。俺もなんだかんだあったが高校三年生…とは言え、自慢じゃないが知識だけで言えばとっくに大学が出られるくらいには賢いつもりだ。筋肉?そっちは皇帝にも負けないつもりさ。さて、今日は確かバベルタワーでデスマッチの…

「ルルーシュ」

 俺に声をかけてきたのは…やっぱりヴィレッタ先生か。

「またですか、粘り強く根気のある人は男女問わず嫌いじゃ無いですが…しつこいですよ」

「もう逃がさないぞ」

 俺は先生を無視して走り出す。俺の方が足が速いのだ、声をかける前に確保しなかった先生の負けである。

「先生、体力勝負を持ちかけた時点で先生の負けですよ」

「舐めるなよ!」

 チラリと先生を見ると……おいおい、テーザーガン!?正気かあの先生!俺はテーザーガンを打ち込まれ…ることはなく、筋肉により跳ね除ける。

「大袈裟すぎませんか!?ただの学生に」

「だったらまじめに授業を受けろ!それと、お前のように筋肉でテーザーガンを跳ね除ける奴はただの学生じゃ無いんだよ!」

 単位に問題はないはずだが…全く困ったな。俺は服を脱ぎ、高速で全身を摩ることで摩擦熱と汗を生じさせ、蒸気を発生させた。

「うっ!?」

「ただの蒸気ですから」

 走って階段を降りる最中、ミレイ会長が差し入れをくれた。ササミスティックだ。ありがたい。

 

 外を走っていると、上から声が聞こえてくる。

「ルルーシュ!」

 大変だ会長!空からヴィレッタ先生が!壁を用いて三角跳びして空中でヴィレッタ先生を受け止め、そのまま茂みに放り投げる。

「殺す気かルルーシュ!」

「だから茂みに投げたでしょう?それに3階から飛び降りたヴィレッタ先生の方が余程命を粗末にしてますよ!」

 俺はリヴァルのバイクのサイドカーに乗り、運転手に出発の合図を出す。

「じゃあリヴァル、これ借りるな!」

 盗んでないバイクは走り出した。

 

 自分で走るのもいいが、たまにはバイクで風を感じるのも悪くない。

「まったく、放課後ぐらい自由に過ごさせてほしいよな。」

「でもブラザーが授業サボってばかりだからでショウ?」

「かったるいじゃないか、あんなの。ほら会長からの差し入れのササミスティックだ。」

 俺はササミスティックを差し出す。ささみはいいぞ、低カロリーで高タンパクだ。しかし、食べるために前方確認が疎かになり、バイクが揺れる。

「おいおい!」

「だってブラザー!」

 よく考えたら俺がもう少し上手くやればこうもなってなかったか、なんでも弟のせいにするのは良くないよな。

 

 ゼロが起こした反乱事件…ブラックリベリオンからもうすぐ1年。このエリア11もすっかり落ち着いた。事件当初はいろんな噂が飛び交って俺達兄弟もブリタニア本土に二人で泳いで帰ろうかと思ったけど…

「ブラザー、進路調査票は出したんデス?」

「え?」

「ヴィレッタティーチャーが怒ってたからサ。大学に進学するんでショウ?」

 進路か、まだ決めてないんだよな。学生って身分にも飽きたことだし…かと言って人に使われるのも気が乗らないな。いっそ社長にでもなるか?

 

 ふと目に入ったモニターには磔にされたイレブンがユフィ執行官に殴られている様が放送されている。

『撲殺です!日本人は撲殺です!』

『こ、これはイレヴンに対する差別ではない!く、区別だ!』

 カラレス総督が叫んでいる。区別…ね。というか流石の総督も執行官による撲殺処刑にはドン引いてるな。俺も特段イレブンに思うところはないが、殴り殺されるなんてあんまりだとは思う。しかし執行官いい体してるな、一度手合わせしてみたい。

『イレブンはゼロという詐欺師に踊らされ、日本人という名に戻ろうとした!好戦的で体を鍛えたがる危険な人種である!故に我等ブリタニアによって管理・教育され、適度に高カロリーの食事を摂取しなければならない!』

 イレブンは負けた。筋肉か足りなかったから。おとなしくボディービルに興じていれば矯正教育エリアに格下げされることもなかったろうに。ゼロ、馬鹿な男だ…あれっぽっちの筋肉だけじゃ世界を変えるなんて…

 

 バベルタワーに着いた俺はバイクを降りた。弟とはここで別れるつもりだったが、弟は首を横に振った。どうしても着いてくるつもりらしい。エレベーターでは遅すぎる。俺と弟は階段を駆け上がりながら会話を続けた。

「ついてくるのはまぁいいけどさ。本当は送ってくれるだけでよかったし、そもそも送ってもらわなくても良かったんだよ。今日のは非合法だしさ…」

「補導じゃ済まないヨ?」

「警察が俺を止められるはずないだろ?」

 今日はイレブンの兄弟二人を相手にデスマッチを予定している。

「でもどうして?ブラザーは金が欲しいわけじゃないんでショウ?」

「決まってる。もっと強いやつと戦いたいからさ」

 弟にはそう言ったが、そんなのは嘘っぱち。こんなのは所詮ただの退屈凌ぎだ。

 

 デスマッチは俺の完勝だった。二人の連携の拳も俺の筋肉の前では無意味。俺は兄弟仲良くラリアットをブチかまし気絶させる。そしてこれはデスマッチ。動かなくなるまで拳を振り下ろすのだ。何度も…何度も。途中で兄の方が気が付いて俺に組み付き妨害を図ったが、それで止まる俺ではない。肘打ちで顔面の骨を砕き黙らせる。そして再び振るうのだ。

 

 デスマッチを終えた俺はカジノの中を歩いていた。

「ブラザー、デスマッチは終わったんだし帰りまショウ?」

「いいじゃないか、もう少し…」

 そんな風にカジノ内をふらふらしていると、やたら引き締ったボディの赤髪バナーさんにぶつかってしまう。まぁ、ぶつかった衝撃で吹っ飛ぶのはバニーさんだけなのだが。

「あっ!すみません…」

「ははは、いいんですよ。こんなデカい体してる俺の方が悪いんです。お怪我はありませんか?たまに俺にぶつかっただけで骨折れる人とかいるんですよ。」

 まぁ、見た感じそんなにやわじゃ無さそうだし問題はないか。手をとって起き上がらせつつ、少しだけ人間観察をする。やはり体が引き締まっている。それにただの筋肉じゃない…実践を経験している筋肉だ。

「いえ、吹き飛ばされた私が悪いんです。私は貧相な女、貴方はマッスルガイですから。私たちのように筋肉のない人間は我慢しなくちゃいけないんです…」

 するとバニーさんは急に頭を鷲掴みにされ、持ち上げられる。ゴリラのような男がゲスな顔を浮かべてバニーさんを舐め回すように見ている。

「ふむ、良い商品だ…」

 なるほど、兎狩りか。視線を奥に移すと同じように捕まっている女性が沢山いるのが見える。

「私は売り物じゃない…!」

「売り物だよ。勝ち取らないものに権利などない!」

 

 なるほど、一理あるな。なら勝ち取らせてもらおう。

 

「フンッ!」

 俺は一歩踏み込み、引き絞った右手を思い切り振り切る。俺の拳は男のこめかみを打ち抜く。

「ふべらっ!」

 頭蓋骨は砕けたかな?

「勝ち取るとはこういうことを言うのだ。」

「こいつ、まさか地下のキング!?」

 取り巻きの男が銃を取り出し、すぐさま発砲するが、弾丸など無粋。俺はそれを指で弾丸を掴み、そのままデコピンで撃ち返す。

「ピデブ」

 捕まっているバニー達の指の拘束具は彼女たちの指を傷つけないように砕き解放しつつ、オーナーを探す。この騒ぎでやってくるだろう。

「済まないオーナー、弁償はファイトマネーから当ててくれ。あとこれは迷惑料だ。」

 懐から金を出して渡しつつ俺はオーナーを見る。

「これは困りましたね地下のキング様、これと今回のファイトマネー分だけでは足りませんなぁ、何ぶん…殺人ですので…」

 手を揉みながらこの男は俺の足元を見てきた。いい度胸をしている…が、商魂に限らず逞しい奴は嫌いではない。

「分かった。次はライオンでもなんでも連れて来い」

 これで一件落着…かと思えば当然爆音と振動が轟く。テロでも起きたのか…?

「こっち!」

 赤髪バニーさんが急に俺の手を取り、引っ張る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …が、普通に俺はその場から一ミリも動くことはなかった。

「くそっ!この筋肉ダルマ…!びくともしない!」

「ふむ、そっちに行けば良いんだな?」

「えっ?ちょっと…きゃあ!?」

 バニーさんに連れていかれるより、俺が走った方が早い。バニーさんを抱えて駆け出す。

「ちょっと待ってくれよブラザー!」

 テロが起きてるんだったらこのバニーさんは守ってやらないとな。彼女はこんなに頑張って筋肉をつけてるんだ。もっと育てればもっと美しいボディになるに違いな…

 

 

 

「ハァイ!ブラザー!」

 …あれ?おかしいな、いつのまにかバニーさんが弟にすり替わっている。体が本能的に、よりウェイトトレーニングになる方を持ち上げてしまったのか?

「出口はあっちだぜブラザー?」

「あ、あぁ、そうだな。」

 走り出してすぐ俺たちの足元は崩れてしまった。

「なんちゅう脆い床だ!」

 俺はすぐに上のフロアに向けて弟を放り投げる。

「ブラザー!」

 当然俺は下に落下していく。このまま何もせず地面に叩きつけられれば流石の俺も気絶するだろう、だが問題はない。

 

 まず、右の足元の空気を思い切り踏み込む。空気との摩擦で少しだけ体が上昇する。次に、左の足元の空気を同様に思い切り踏み込む。するとやはり空気との摩擦で少しだけ体が上昇する。あとはこれを繰り返す。流石に弟を投げつけたことによる反作用で下方向に加速しているため、体を浮かす事はできないが、落下を軽減する事は可能だ。ふわりと着地し、周りを見渡す。

「探したぞ、この肉ダルマめ」

 声のした方を見ると、緑髪の女が立っていた。ふむ、あまり鍛えていないようだな?だが、身のこなしからしてなかなか動けるとみた。

「私はお前を迎えに来たんだよ、ルルーシュ。私は味方で敵はブリタニアだ。」

「いや、俺の味方はタンパク質で敵はカロリーだ。」

「…。契約しただろう?私たちは共犯者」

 何を言ってるんだこの女は?そう思っていると、突然女性は撃たれてしまった。

「大丈夫か君!?」

 抱きとめるが銃痕は胸にあった。こうなれば俺の筋肉を使った圧迫止血をするしかない。止血ついでに周りを見ると、ブリタニア軍がいた。この女の乗っていたナイトメアはブリタニア軍のものではない、つまりテロリストか。まさか一緒にいたら俺も巻き込んで撃たれたりするのか?まぁ、撃たれても平気だが。

「お役目ご苦労、ルルーシュ ランペルージくん。」

「役目?なんの話だ!?」

「4時00分起床。4時10分より弟とランニング10km及び各種筋肉トレーニング、7時12分より鏡で筋肉のキレを見ながら高タンパク低カロリーな朝食。鍛えた筋肉の部位に偏りはなし。8時45分登校。ホームルームと1時間目の授業は着席せず空気椅子しつつ握力トレーニング。…な、なんだこれ…」

 今日の…俺だ…こいつ、俺のストーカーらしい。

「観察日記というところかな?ゴリラの」

「ゴリラさんは植物を食べても筋肉に変換できるすごい種族だぞ!!馬鹿にするな!!!謝れ!!!!!」

「わ、私は男爵だからね、ゴリラのために謝ったりはしない。」

 ゴリラさんの凄さがわからんとは愚かな奴らめ…!

「そして君は罠と言ってもいい、その魔女、C.C.の」

 何を言ってるんだ?さっきからこいつは…まぁ良い…

 

 

 

 ゴリラさんの名誉の為にもとりあえず殴るか!

 

 

 

 彼女をゆっくりと床に置き、そのままクラウチングスタート。俺の膝蹴りは流星の如く。ストーカー代表の顔面をブチ砕いた。

「しまった、殴るつもりが蹴ってしまった。まぁいいか。」

「貴様!」

 こちらに向けられたのは…まずいな、機関銃だ。サブマシンガンやピストルならまだしもライフル弾はまずい。俺は天井、鞄、床にを思い切り蹴り、高速で跳ねる様に移動する。これならば銃は当たらない!

「こいつ本当に学生か!?」「そもそも人間の動きじゃねえ!!」「とにかく撃て!撃てば当たる!!」

 俺を撃つと言った男の懐に俺は入り込んだ。

「撃って見ろ。但し、撃って良いのは、俺にぶたれる覚悟のある奴だけだッ!!」

 渾身のアッパーで下顎の骨を砕く。

「まだ撃ってねえのにぶってるじゃねえか!」

 確かに、一理あるな…だが

「撃つまでぶたないとは言っていない!!」

「無茶苦茶だ!!うわぁ!!!」

 そのままその場を制圧した俺は倒れた女性の元に駆ける。止血が効果あると良いのだが。そう思っていると女は何事もなかったかのように立ち上がる。止血の効果って凄いな。

「…相変わらずというか、ますます人間離れしたな?お前…。力を…あー…面倒だな、おい、ちょっとこっち来い。」

 突然女は俺に接吻をしてきた。なんてことだ!弟のために取っておいた俺の初めてが!!!

 

 …うん?違う、俺は過去にも同じことをしている。というか…俺はここで何をしている?そうか…俺の日常に棘のように突き刺さっていた苛立ち…ああ。全ては偽りの記憶。そもそもなんで弟にファーストキッスを取っておかなくちゃならんのだ。

「思い出した…俺は…!」

 ダブルバイセップスを決め、俺は高らかに叫んだ。

「俺が、ゼロだ!!」

 あの日から俺の心には納得がなかった。かみ合わない偽物の日常。ずれた時間。別の記憶を植え付けられた家畜の人生。キレのない筋肉。決まらないポージング。

『ゼロ!お待ちしておりました!どうか我らにご命令を!』

 天井を突き破り現れたのは紅蓮と月下、声の感じは卜部か?そういえばさっきバニー姿のカレンを見た気がする。

「いいだろう!何故ならば!私の体脂肪はほぼゼロ!そして黒の騎士団のリーダーのゼロでもあるのだから!筋トレで筋肉を壊し休む事で筋肉を作る。それと同じ様に!世界を壊し世界を創造する!!」

 




「最終話」とは言ったが二期をやらないとは言っていない。
(「いつから2期があると錯覚していた?」とは言いましたが、「やらない」とも言っていません)

2022/8/1/19:00時点で十三話までは書き溜めれています。恐らくR2も毎日更新できる…はず…

R2からはより一層キャラ崩壊しているキャラが出てくるかもしれません。(何?もう出てる?何のことやら)


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TURN02

 ゼロを奪還した。その知らせを受け、士気の上がる黒の騎士団だったが、数の多さはどうにもならない。次第に押され始めるが、卜部とカレンの尽力によりなんとか崩壊まではしなかった。
『これ以上は無理です!』
「もうしばらく持ち堪えて!ゼロが…ゼロがここの構造を把握するまで…!」
 カレンは信じていた。彼が、ゼロが、ルルーシュが、あっと驚く策を披露し、この場の打開をしてくれると。
「歩兵部隊はナイトメアに乗り込め!ゼロが鹵獲してくれたサザーランドはまだあるぞ!」
「C.C.さん、歩兵部隊は全員乗り込みました。」
『わかった。例の物を使え。ゼロの護衛に回す』
「分かりました」

それでは本編スタートです。


 俺が顎を砕いた男のメモには様々なことが書かれていた。どうやらC.C.を確保するための特殊部隊らしい。男の持っていたデータの中に建物構造図は記載されていたが、肝心のサザーランドの起動コードは書かれていなかった。だからこれを使う。

「それは…例の奴か」

「あぁ、ナイトメアを自動で動かすプログラムだ。と言ってもサザーランドくらいにしか使えないけどな。お前に渡したデータにも入っていただろう?」

「あぁ、逃走しながらでは結局一つしか作れなかったがな。」

 C.C.に別れ際渡した便利データには「緑の魔女」というワードに反応して黒の騎士団に協力するギアスをかけた人々のリスト、自動操縦プログラム、さまざまなパターンを想定した作戦手順書を入れてあった。このバベルタワー襲撃に使用した飛行船を使うと言う物も作戦書にあった物だ。

 もしかしたらギアスの暴走はやたら無闇に協力者を作るギアスを掛けたのが良くなかったのかもしれない。…だが、そのおかげでC.C.達は再起できたのだと思うと、必ずしも間違いだったとは判断しかねるところではあるが…

 飛行船といえば…シャルルの奴隷となって軍師ニクアツ=マッスルガイとして策を弄した時にも使用した気がするな。それにドローンも使用していた。どうやら記憶は違えど考えることは同じらしい。

「…シャルルにギアスを渡したのはお前か?」

「まさか」

 C.C.は首を振る。まぁ、こいつが与えていたとしてもどうのこうのするつもりもないが…

「ナナリーはどうしてる?」

「すまない、回収出来ず終いだ。ただ、スザクに連れていかれるところをカレンが見ている」

 つまりブリタニアが握っているわけか…俺がゼロだとわかればナナリーは危うい。…そういえば、俺にこの世界で最も愛らしく、声も心地よく良い香りがして弾ける笑顔に癒される優しくも芯の強い妹は居るが弟は居なかったはず…誰だ?あの肉ダルマは…?まぁ、今は一旦その問題は置いておこう。

「長期休暇の課題で作っておいて正解だったな。」

 俺のコイツは特別製だ。起動キー代わりに刺し、ハッキングすることで稼働させることができる。まぁ、ハッキングに少々時間がかかるのが難点だが。

『ここで何をしている!?その服装…ブリタニア…の、学…生?学生で良いのか?それに倒れているのは機密情報局の…皇帝陛下の直属部隊がなぜ…?』

 C.C.を物陰に隠しつつ、顎を砕いた男に懸命に心臓マッサージをするフリをする。男は顎を砕かれている為ろくに喋れない。うーむ、力加減がわからずバキバキ言っているがまぁこいつには生きていてもらうと困るし、これで死んでも問題ないだろう。

「軍人さんですよね!よ、良かった!早くこの人を病院に!」

 相手は迷わず降りる様子だ。ふむ、情報通り特殊部隊とは情報を共有できていないらしい。好都合だな。

「生存者は一人だけか?」

「いいえ、0人です。」

「は?」

 俺は左目を開け、ギアスを使う。

「"よこせ、お前のナイトメアを"!」

「あぁ…分かった。大切に扱えよ。ナンバーはQR5-YK1D6だ。」

「ありがとう。…そしてさようなら。」

 取り敢えず別れの挨拶代わりに顔面に回し蹴りを叩き込み、意識を刈り取ってからサザーランドを起動させる。

「毎回思うんだが何故殴る?」

「敵のパイロットが意識を取り戻したら厄介だろう?」

「そ、そうか…」

 敵に連絡などされるリスクがあるからな。

「よし、C.C.はこっちを使え」

「分かっている。」

 C.C.が乗ってきた無頼は左腕が頑丈そうなものに置き換えられている。恐らく輻射波動などの直接的破壊力のあるギミックはないものの、殴打に特化した物なのだろう。

「C.C.は予定通りバベルタワーに対する爆薬設置作業を開始しろ。私はナイトメアを鹵獲しつつ指示を出しつつこの無頼で殴る。」

 

 カレンが敵のナイトメアを壁をブチ抜いての輻射波動で破壊した。

「よくやったQ1、次は21階だ。P4は階段を封鎖しろ。R5は左30°にミサイル発射。N1はそこから50m、天井に向けて斉射。」

『ゼロ!歩兵部隊は全員ナイトメアに騎乗致しました。次の指示をお願い致します!』

 黒の騎士団の団員は俺の指示通りに動いている、士気も高い。

『くたばれイレブンが!』

 ようやく俺の所にも敵が来たか。敵のサザーランドの射撃を柱で受け、スラッシュハーケンとランドスピナーにより一気に距離を詰める。左手のナックルで胴体をブチ抜き沈黙させた。そろそろカラレス総督が出張ってくる頃合いか。

『ゼロ!ブリタニアの援軍だ!も、物凄い数ですぜ…あんなの勝てっこありやせんぜ!』

 上からも下からも凄まじい数の敵ナイトメア…どうやら予想通り総督が出てきたようだな。脱出は難しい…だからこそ俺の勝ちだ。ご苦労なことにJフロアを残しブリタニアが制圧を実行、我々黒の騎士団は上下を挟まれ、地上に逃げるしかない…しかし、その先にはカラレス総督の本隊が陣取って居る。正面突破という手もあるが、それでは芸がないだろう。

 勝利を確信した敵ほど策に嵌めやすいものはない。今回の作戦はバベルタワーの爆破。ただ爆破するだけではなく、地上に陣取ったカラレス達を押し潰すように瓦礫が落ちるように計算して爆破する。さらにこの崩壊したビルは中華連邦の総領事館までの逃走ルートに応用できる。黎星刻には話がついて居る。我々が総領事館にまで逃げることができれば勝ちだ。まぁ、俺は行かないのだが。

「C.C.そちらのフロアはどうなって居る?」

『あぁ、現在作業中だ。10分もあれば完了する。』

「わかった。ならば今の配置で守り切れるだろう。」

 ディートハルトの残したラインΩ、総領事館でこれを流せば黒の騎士団とゼロの復活が為されるだろう。

『ゼロ!敵のナイトメアが一機で……………うわぁ!!』

「うん?どうした?」

『なんでだ!?さっきまであっちにいたのに!……………のわぁ!』

 味方機が尽く突破されて居る…?スザクでもあるまいし何が起きて居る…単独行動?まずいな、このままだとこちらまで来る…!

『ゼロ!ここは一先ずアンタだけでも逃げてくれ!元々我らが陽動、捨て石の作戦だ。』

「いや、卜部には爆破準備の方の警護に回ってほしい。こちら同様に突破してくる敵が居ないとも限らないからな。」

 こちらのフロアがやられるよりもC.C.がやられる方がまずい。俺は最悪ナイトメアを捨ててでも逃げ隠れすればなんとかなるが、C.C.の方が崩壊すれば我々は敗北が確定する。

『しかしそれではゼロの守りが手薄に…』

「問題ない。私の守りはこの私自らが行う。良いことを教えてやろう卜部。王自らが動かなければ部下は着いてこない、そうだろう?」

『分かった、我らが王よ!健闘を祈る!』

 これでこちらの守りはサザーランドドローンが2機とカレン、そして俺だ。ドローンならばいくらでも捨て石に出来る。カレンは…できれば生き残ってほしい。

 

 最近良い筋肉がついてきて居るんだからな。

 

 そして壁を突き抜け、金色のナイトメアが現れた。ドローンが反応し、銃撃を仕掛ける。金色のナイトメアはスラッシュハーケンで軌道を逸らしそれを回避したようだ。…ん?いまドローン達と金色のナイトメアが瞬間移動したように見えたぞ!?ドローン1は肘打ちのような攻撃で破壊されていた。

 ドローンプログラムにもサザーランドにも瞬間移動の機能などあるはずはない、つまり何か物理的でない何か…例えば時を止めるような能力が…?いや、ならばドローンも動いていることに説明がつかない。それに…何故奴はコクピットをこじ開け中身を確認するような動作をとっている?俺はC.C.を誘き寄せるための罠、あの男はそう言っていたな…つまり。これはギアスの力…!

 人に命令する力、記憶を書き換える力、思考を読む力、例えば…人を停止させる力、そう言ったものがあるとするならば?ギアスだというのならC.C.には通用しない、つまりC.C.を捕獲しようとしているあいつはギアスの効かないドローンをC.C.が乗っていると勘違いしたのだ。相手はギアス持ち、一体どんな奴…く、ドローン2もやられた…!まずい、もう壁役がいないぞ…!

『ゼロ!ここは私が!』

 いかにカレンが優秀でも相手を停止させる(仮)ギアスを持つ相手では勝ち目がない!

 

『こちらC.C.、準備完了だ。』

 

「流石は出来る女C.C.!完璧なタイミングだ!」

『えっ?そ、そうか?ま、まぁ?私はC.…』

 あそれポチッとな。これでバベルタワーは崩落する。さらばだ。カラレス総督!上の部隊は地面に叩きつけられ、下の部隊は上から押しつぶされる。これで敵の一掃は成った!

 そして俺は今からナイトメアを隠しつつ学園に戻りアリバイ工作を、C.C.には俺の代わりにゼロとして演説をしてもらう。演説の内容は既に録音済み、完璧な作戦だ。

『日本人よ!私は自らを鍛え直し、再びこの地に帰ってきた!今よりこの部屋が合衆国日本の新たな領土となる…』

 

 

 

 ブラザーは落下してしまいマシタ。まぁ、ブラザーは殺しても死なない人ですカラ、きっと大丈夫でショウ。それよりもボクの任務はブラザーの記憶が戻った時の抹殺とC.C.の確保デス。万が一に備えて準備が必要デス。ボクに預けられたナイトメアはヴィンセント、ランスロットをもとにした量産機デス。まずは黒の騎士団のサザーランドを殲滅しまショウ。ルルーシュにしてもC.Cにしてもこんなところにいるはずがありまセン。

 

 "絶対停止"発動…!

 

 ピタリと止まったサザーランドを破壊していきマス。もし動けるナイトメアがいたらそれがC.C.ということデス。

 壁をブチ抜き、広場を見渡すと、鹵獲されたサザーランドが2機、左腕のゴツい無頼、要注意機体の赤いナイトメア…4機デスカ。そう思っていると、サザーランドから発砲されマス。まずはC.C.が居ないかのチェックをしまショウ。その前にこの銃撃はスラッシュハーケンで避けるとして…

 

 "絶対停止"発動デス…!

 

 無頼と赤いナイトメアへ止まりまシタカ。…!?サザーランドが2機とも動いてイル!?そんな馬鹿ナ!ボクのギアスが効かないということは、C.C.が乗っているというコト…でも、それが2機?まさかC.C.や嚮主V.V.と同じような存在を黒の騎士団は確保したってコト…!?いや、そんなハズ…!

「あ、ありえまセン!」

 ここで時間切れ、一旦"絶対停止"を解除し、破壊したサザーランドのコクピットを確認するが、コクピットには誰も居まセン。これはどういう事デス!?

 再度"絶対停止"を発動し、もう一機のサザーランドも返り討ちにし、コクピットを調べマス。やはり誰も乗っていまセン。…いや、起動キーの代わりに別の何か…これはまさかドローン!?ドローンと言えば確かあれは少し前のコト…

 

『ヘイブラザー!こんな夜中まで何作ってるんデス?』

 普段は早寝のブラザーがまだ起きていると報告を受け、僕は確かめに行きまシタ。

『悪い、起こしたか?ナイトメアを自律行動させるためのプログラムをちょっと作っててさ』

『へぇ…なんの為につくってるんデス?』

『嫌だなロロ、長期休暇の課題だよ。ユーロブリタニアでは実戦にも投入されたって聞いてさ。俺も作ってみようと思って。』

 

 まさかあれが…?あの時からこのことを読んでイタ?いや、そんなはずはナイ!どっちにしろ、あの2機のどちらかにルルーシュが居れば始末するだけデス!再度"絶対停止"を…うん?この爆発音と振動はなんデス!?天井が崩れていマス!いけない、物理現象は止められまセン!

 なんとか脱出してみると、バベルタワーは倒壊し、カラレス総督は亡くなったとのコト。ゼロによる演説が始まり、発信元が中華連邦の総領事館と聞き、駆け付けマス。僕の前では警備など無駄デス。"絶対停止"を発動して潜入しようとすると、電話が掛かってしまシタ。…ブラザーからダッテ?

「もしもし?ブラザー?」

『良かったロロ、無事なんだな!?お前今どこに…』

「ブラザーこそ…どこにいるんデス?」

『何言ってるんだ。学校だよ。体育の補習…ヴィレッタ先生に代わるぞ?』

 ブラザーは学園に?と言うことはあのゼロはルルーシュじゃないってことでショウ。

『ロロか?お前も早く帰ってこい』

「…オーケー、ヴィレッタティーチャー」

 

 僕はどこか安堵しながら帰路に着きまシタ。




一応R2より前の亡国のアキトでドローンが出て来てるので時系列的にはおかしくないはず。まぁ高校生が作れてるのは異常かもですが

ゴミほど興味ない話だとは思いますが、Twitterアカウント作りました。

●オマケ●
ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 R2 OPテーマ歌詞

朝も夜も身体鍛えて

この拳でキミマモル
殴ったら行方知らズ

明日は昨日よりも鍛えて

増していくよ筋の肉
走る速さは流れ星



身体を鍛えてても
変わることのないものがある

拳を振るってでも
守るべきものが僕らにはある


何万回何億回ものの筋トレで筋肉が
強くなる増していく

筋肉ダルマと人が呼ぶ
筋肉の壁で君守る

I continue to Train
I continue to Train!


見つめ合い 拳を交わして
鏡越しのボクとボク
こんなに筋肉あるのに

褐色肌に歯が真っ白は映えるよ
筋肉のない君のもとへ
駆ける付ける速さ流れ星

鍛えた僕の身体
敵を今殴り飛ばす


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TURN03 囚われの筋肉(囚われの学園)

 ゼロの演説が終わり、総領事館はブリタニア軍に包囲された。
「凄い騒ぎね、ルルーシュ」
「当然だろ?自分達の領土の中にいきなり国ができたんだ。さらにその国が宣戦布告したとなってはな。」
 ゼロの仮面の下から現れたのはC.C.の顔。
「いつの間に入れ替わってたの?」
「はじめからさ。声は録音、身長はシークレットブーツ、体の厚みは空気を入れて誤魔化した。」
「気に入らないわね、私たちにまで秘密だなんて」
 C.C.を責めるカレンだが、当のC.C.はどこ吹く風といった表情で仮面遊びを始めた。
「私たち…?わ た し に だろ?」

まぁ、そう言うわけで本編スタートです。


「ルルーシュ、オーブン」

「はいはい。」

 会長に言われた通り、オーブンを確認する。グラタンは…うむ、いい感じの焼き具合だ。

「塩」

「はいはい。」

 岩塩をひとつまみ。それを指圧で砕き粉状にして振りかける。汗をかいた時には塩分補給も大事だからな。

「フライパン」

「はいはい。」

 肉。肉はいいぞ。筋肉がつく。

「卵」

「はいは…あっ…」

 しまった。卵を砕いてしまった。気を取り直して片手で割ってみせる。誤って砕いた卵は殻ごと口に放り込んだ。殻はいいぞ、カルシウムで骨が強くなる。

「ベシャメルソース」

「はいはい。」

 適度に掻き回しつつ、色味を確認する。問題なさそうだ。

「ジェラートは別皿、あぁ、ローズマリーは出してソルベに。ザワークラウトはディルシードね」

「はいはい。」

 ジェラートを別皿に取り分けつつ、ローズマリーをソルベにする。まぁまぁ良い手際だろう。

「シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテは」

「はいはい。」

 最早ミレイの言葉を待たずにクリームをぶち撒けるシャーリーにタオルを渡しつつ手を動かしていく。いくらリヴァルが味音痴でシャーリーが不器用だからって俺と会長だけでこの種類の料理を処理するのはなかなか骨が折れる。まぁ、俺の骨は簡単には折れないけどな。

 

「それにしてもこの手の筋肉キャラは生活力無いってのがお決まりなのにね〜」

「自分で料理作る方が栄養管理できて楽なんですよ。」

「家計簿まで付けてるもんな」

 なんでこいつそんなことまで知ってるんだ…?言ったことあったか?まぁ、知られたからどうこうと言う話でも無いし無視でいいだろう。

「そういえば、今日は俺とロロの生還記念パーティでしたよね?」

「うむ、あのテロからよくぞ無事に生還した!」

「でも会長、言うほど私たち心配してましたっけ?あの二人の筋肉なら大丈夫でしょって笑ってませんでした?」

 まぁ、確かに筋肉があれば多少のテロに巻き込まれたところで平気だが、普通に爆発には耐えられないぞ…?

「そういえばロロは?」

「ほら、兄と違ってチートデイじゃないから。走り込みに行っちゃったんだよね。あんなんだから友達いないんじゃ無いの?」

「努力家って言ってあげなよ…」

 みんなナナリーのことを忘れている。いや、妹のナナリーが偽りの弟にすり替わっている…!シャルルめ、俺の記憶だけでなくみんなの記憶まで…!こんなことを許してはいけない…!だが、この処置はナナリーが学園に来ないことを前提にしている。つまりナナリーはシャルルが握っている可能性が高い。慎重に動かなければナナリーが危ない…!

 

『はい、お兄様…ここで待っていますから、必ず迎えにきてくださいね…』

 

 ナナリー…待っていてくれ、必ず、必ず迎えに行くから…!

 

 それとなく学園やクラブハウスをランニング代わりにダッシュした感じ\コラァ!廊下を走るなぁ!/監視カメラが複数と監視役の生徒、教師が混ざっているようだ。と言うか生徒会メンバー以外全員知らない顔…恐らく俺のギアスを警戒して生徒は一新したか。生徒会メンバーは流石に記憶の改竄が複雑になりすぎるのだろう、ブラックリベリオンの時、俺がナナリーを連れ去る際のシャーリーの反応、記憶に関わるものは大きく違和感を感じればギアスを打ち破りうると言うことだ。だが、同時に生徒会のみんなは人質でもある。いざとなれば切り捨てる覚悟はあるが、できればそんなことにはしたくない。

 そして監視データの送信先が敵の中枢…まさか学園内に支部を置いているとは驚きだが…と分かったまでは良かったものの、現状打つ手がない。

「おーいルルーシュ、明日の授業もちゃんと真面目に受けろよ。空気椅子と机下での筋トレは認めてやるから」

 ヴィレッタ ヌゥ…奴にはギアスを使用済み。つまり単純な暴力などの他の手で脅すしか無い。それに俺の監視役の弟…こいつは拳で黙らせようにも俺に匹敵する筋肉を持つ。ならばギアスで…いや、この監視の中ギアスを使えばすぐにわかる。しかし現状ヴィレッタよりロロの方が突破できる見込みがあるだろう。

 

 突破口を探す為、俺はパソコンをいじっていた。画像データ、ナナリーの写真でもあればと思ったが、流石にそんなヘマはしないか。上手くナナリーが写っていないものか、画像を加工して切り取られている。筋肉コンテスト…俺とロロが表彰台を独占している…それにこの写真は失恋コンテストか。

「ブラザー。何見てるんデス?」

「ロロか、ちょっと画像データの整理をね。今年も会長のどんな思いつきに振り回されるんだか…見ろよ、失恋コンテストの画像。皮肉だよなぁ、優秀したリヴァルにトロフィー渡すのが会長だなんてさ。HAHAHAHAHA」

 俺は笑うが、ロロは笑っている様子はない。まさか気づかれたか?

「よく逃げ出せタネ。バベルタワーは軍に完全に包囲されていたのに、ブラザーはどうやって包囲網を突破したんダイ?」

「うん?おかしなことを言うなロロは。それを言うならどうやってテロリストから逃げたか、だろ?立ち塞がるテロリストどもを全員拳で黙らせただけだよ。ピストルの弾なんて俺には効かないし…お前にも連絡しようとしたんだけど、ジャミングが酷くてな」

 こいつのこの発言、どうやら俺の正体を怪しんではいるものの確信はないと言う感じか。それにしてもこいつの携帯のロケット…あれは、10月25日はナナリーの誕生日、ナナリーにあげるはずのロケットだったんだ。可愛らしいハートで、中を開くことができる。開いたところには俺とナナリーの写真を入れ、ナナリーの目が治ったら二人で見ようと約束するはずだった!

「そういえばロロ、そのロケット…よく考えたら男にハートのロケットはないよな。何か別の」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ノウッ!!!」

 

 

 

 な、なんだ!?

「これは!これはダメデス!!これは僕のデス!!!僕が、僕が貰ったんデス!!!!」

 ロロは必死な形相で俺の首に手を掛け、ギリギリと締め上げてくる。

「分かった。分かったからロロ、分かったから首を絞めるのはやめような。お前が俺以外の首を絞めたら簡単に折れるからな?」

「ソ、ソーリーブラザー…」

 こいつの今の態度の豹変…何かあるな?探る価値はある。

 

 筋トレしつつニュースを見ていると、ギルフォードによる黒の騎士団処刑が宣言された。手を打って来たか。だが、現状連絡を取る手段もギアスを仕込む余裕も無い。外に出ようとすればロロがついてくるだろう。それに俺が自然と行動する範囲は事前に監視カメラなどが仕掛けられているはず。不自然な行動を取ればバレてしまう。なんとかしなければ…!

「ルル、今日も筋トレ?ルルは鍛えたら鍛えた分だけ筋肉について羨ましいなー。私なんてちょっと腹筋が付いたくらい。」

「前よりも引き締まってるなとは思ってたよ。それに腹筋の綺麗な女性は魅力的だと思うよ、シャーリー。それよりどうしたんだい?悩み事?筋トレの仕方なら力になるよ」

「それがね、もうすぐヴィレッタ先生の誕生日なんだけど、プレゼントを考えなくちゃいけなくて…」

 ほう?これはありがたい、自然な外出の口実ができたな…!

「手伝おうか?プレゼント選び。ヴィレッタ先生はお酒が好きみたいだし、俺は料理に使うこともあって知識ならあるから力になれると思うけど」

「いいの!?」

「もちろん」

 俺は顔を微笑みに、内心をほくそ笑みシャーリーに笑いかける。

 酒の知識が無いであろうロロがついてくるのは不自然、ならばやりようはいくらでもある!俺は制服から私服に着替え、部屋を出る。

「ブラザー。出かけるのカイ?」

「あぁ、ヴィレッタ先生の誕生日プレゼント選びなんだ。」

「そう、大事だよね、誕生日プレゼントは…いってらっしゃいブラザー。」

 

 

「なぁシャーリー。せっかくショッピングモールに来たんだし、プレゼント選び終わったら色々見ないかい?服とかさ」

「え!?う、うん!私は全然時間あるからいいよ!」

 よし、シャーリーの協力も得られた。これで前提条件は全てクリアされた。それにC.C.から貰ったカラコンもある。

 ワイン屋に入り、ヴィレッタ先生へのプレゼントを選ぶ。ここを適当にしてしまうと怪しまれる可能性があるからな、真剣に選ぶべきだろう。

「キフワインはヴィレッタ先生みたいな大人の女性には甘すぎるかな…ここはシャプラン辺りで…」

 ワインボトルの反射で店の外を確認すると、どうやら会長達が付けて来ているらしい。とは言えワイン屋で仕込みはし難い。今後の通信のためにも携帯が欲しいところだ。

「プレゼントのワインは買えたし、携帯買いに行ってもいいかな」

「携帯?何に使うの?」

「ほら、俺ってちょっとした拍子で壊しちゃうだろ?だから念の為の予備をさ」

 これならば言い訳としておかしくは無い。

「あー、ルルったら力加減下手だもんね。」

「そうかい?

 携帯ならばモニターの反射でより鮮明に反射による周囲の確認ができる…おや、会長はロロまで連れて来てくれたのか、これは都合がいい。

「じゃあシャーリー、ちょっと契約してくるから時間潰しててくれ」

「うん、わかった!」

 書類を書き進める途中で俺は瞼の筋肉をうまく使い、コンタクトをずらす。

「ここってどう書けば…?」

「はい?えっとここはですね…」

 よし、こちらを見たな?

「"ちょっとしたお願いを聞いて下さい"」

「…はい、いいですよ。」

 そして俺はケータイ屋にギアスをかけた。16:00になったら非常ベルを鳴らせと。これで仕込みは済んだ。あとは俺の監視役を釣り出すだけだ。シャーリーに声を掛けるが、ヘッドフォンをしているせいで聞こえてないらしい。肩を叩くと

「ひゃあ!?」

 と驚きながらこちらを振り返った。あれ、大丈夫だよな?肩砕けてないよな?

「ごめん、強く叩きすぎた?」

「え?ううん!平気平気!」

 それならよかったが…それよりそろそろ仕込みに入るか。

「シャーリー、気づいてるか?会長達が付けて来てる。驚かせたいから協力してくれないか?」

「なにそれ!面白そう!」

 俺とシャーリーは小さな洋服店に入る。普段使わない店だ。監視カメラがある可能性は低い。仮にあっても流石に試着室に仕掛けるとは考え難い。持ち込んでおいた別の服に着替え、先ほど契約した携帯に逆探知防止と変声機能を備えた装置を取り付け、ショッピングモールの管理室に電話をする。

「私は黒の騎士団の団員だ。捕まっている黒の騎士団員を解放しろ。この要求が飲まれない場合、このショッピングモールを爆破する」

『そんな我々に言われても!』

 電話を切り、匍匐前進で試着室を出る。これならシャーリーは他愛ない悪戯だと想うはずだ。彼女には迷惑はかからない。

『函館租界からお越しのマキシマッスル様、マキシマッスル様…』

 店員にギアスをかけることも考えたが、放送がかかってから何やら不安げに話し合っていてこちらに気がついた様子がない。なるほど、今のはテロ警戒の放送か。

 

 店を出た俺の後を付けている男が居る…これは釣れたな。16:00.にベルが鳴り、ショッピングモールは混乱に陥る。俺の後を付けていた男には偽の情報を報告するようにギアスをかけた。あとはこの隙に学園の本部に仕込みをしに行くか。カメラの正確な位置と角度が分かれば取れる対応策もあるし、敵の本部ならギアスが使える。

 

 学園に戻り、地下司令部へ、残っていた人員にはギアスをかけ、カメラを確認していると、どうやらロロがこちらに向かっているようだ。入口の死角に隠れ、息を潜める。

「ブラザーはどこニ…」

 部屋に入って来たロロに背後からヘッドロックを仕掛ける。

「なっ!?いつの間ニ…!」

 不意のヘッドロック、完全に決まったそれは仮にロロに抵抗されどもびくともしない。どんなギアスか知らないが、この拘束から逃げられるのなら逃げてみるが良い。

 

「これで、チェックだ。」




Q.明らかに筋肉量の異なるC.C.にゼロの影武者ができるの?
A.ゼロのスーツに空気を入れて誤魔化した。
 ゼロのスーツ元々ルルーシュの筋肉量に合わせたサイズの特注品で常に筋肉でパツンパツンなので空気によるパツンパツン状態でもバレない。特に映像の画質が悪いのでバレない!バレないったらバレない!作者の俺がバレないって言ったらバレねぇんだよ!オラ!わかりましたって言え!納得したってい言え!!(殴打)

筋肉を持ってすればいちいちコンタクトを指で外すなどという動作は不要!!!(ルルーシュの筋肉は特別な訓練を受けています、真似しないでください。)

ちなみにクソどうでもいい話ですが、筆者のLOST STORYSでの名前は「マクシミリアン」です。自己紹介にて「函館租界から引っ越してきました」としています

--以下追加箇所--

 私の表現の限界なのですが
『はい、お兄様…ここで待っていますから、必ず迎えにきてくださいね…』
 というナナリーの台詞は25話のセリフの回想となっています。ナナリーからの念話ではありません。
 まぁ、念話でも別に話に影響はないので良いのですけれども…

--以上追加箇所--

●オマケ●
「ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 MACHO STORYS」テーマソング

 身体KINNKOTU KINNKOTU
 鍛えた肉体を
 ジムで更に鍛えに行こう

 この腹いつから割れていたの
 絶えず鍛えてた 割れてるエイトパック
 腹の動きに合わせて 何度も

 あの日 肉体 鍛えた身体の動きが
 風を起こし肉食ってきた
 筋肉がもっと増えるように

 身体KINNKOTU KINNKOTU 筋肉付け
 腹筋の時 服破り裂けて
 身体KINNKOTU KINNKOTU
 鍛えた肉体を
 ジム更に鍛えに行こう


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TURN04

 総領事館は突然の爆破に襲われる。何事かと思えば中華連邦によるものらしい。
「ゼロ!大変です!」
 報告のために叫ぶ団員だったが、黎星刻に押し倒され、剣の先を向けられる。
「黒の騎士団はここで潰えよ!」

 しばらくして武器を手入れするC.C.とカレンの元に黎星刻が現れた。
「おかしいな。黒の騎士団と中華連邦は協力関係にあったはずだが?」
「我々にも事情があってね。」
「事情…ね。大方ブリタニアをこれ以上足止めできなくなったから総領事を殺して無理矢理時間を稼いだと言ったところか?」
「あぁ。あれ以上の遅延は我が国とブリタニアで争いになる。そこで取引だが」
「分かっている。わたしたちをブリタニアに突き出さない代わりに総領事を襲ったのは我々ということにすればいい。」

それでは本編スタートです。…と言いたいところですがR2の4話にもなって今更ながら私の書き方の説明をば
「」…本人及び周りの肉声
『』…通信などその場にいない声。(回想、記憶の声含む)
で、おそらく脳内に直接話しかける場合、本人の独白(地の文)に対し割り込むように会話文が差し込まれます。

さて、そういうわけで本編スタートです!


「ブラザー…!やはり記憶が戻っていたんダナ!?」

「そうだ、これからお前を我が支配下に起き、ナナリーを取り戻すための道具になってもらう。」

「こうなっタラ…!」

 7、8、9…。

「ファック!腕がびくともしナイ!」

 10、11、12、13…モニターの秒数と俺の脳内で数えていた数字が違う。

 どうやら俺の体感時間と実際の経過時間にズレがあるようだ。ヘッドロックを更にキツくする。奴の首を俺の左腕の上腕二頭筋、肘、前腕屈筋群でしっかりとホールドし、更に逃げられないように俺の左手首は右腕の上腕二頭筋、肘、前腕屈筋群でホールドしている上、更に奴の後頭部を右手で前へと押し込む。このままあいつが抜け出すのが先か、首が取れるのが先か、ギブアップするのが先か…見ものだな。

「お前は人の体感時間を止めるギアスを持っているな?」

「なぜ、そ、それを…知ってイル!?」

 やはりか、バニーの格好をしたカレンを抱き上げていたと思ったら弟にすり替わっていたり、ドローンとコイツの乗っていたナイトメアだけが瞬間移動をしているように見えたのはコイツのギアスのせいだったか。

 そして俺は更にぎりぎりとヘッドロックを強めていく。

「これなら…どうデス!」

 たまらずロロは俺の股間に攻撃を仕掛けてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 が、それは無意味。

「残念だったな。ショッピングモールのスポーツショップでファールカップは購入済みだ。」

 昔ユフィに金的を食らったからな、対策くらい講じる。

「うぐ…!い、意識ガ…!」

 俺の腕を叩き、抵抗がまだできるとは流石は弟、常人ならとっくに首が取れているというのに。

「ロロ、ここは手を組まないか?お前がこのまま俺を見逃してくれるなら俺はC.C.を釣り出し、お前に引き渡す。ここでお前が俺をどうにかして捕まえ皇帝に突き出したとして…お前の生活に何か変わりはあるのか?今の生活の方が楽しくは無いか?今までと同じように俺と二人、ブラザーとか言いながら学園生活を楽しみたくは無いか?俺はお前のような筋肉のある弟なら歓迎するぞ」

「う、うぐ…!ブラザー!ぎ、ギブ!ギブギブギブ!!!」

 解放してやるとロロはむせながらも俺との取引に応じた。

「でも、ブラザー…C.C.を売るんデス…?」

「流石に体感時間を止められるお前に四六時中狙われたら勝てっこない、お前をここで殺しても次の刺客が来るだけだ。自分の命には変えられないだろう?」

 

 こうして一旦ロロが待つだけの時間を稼いだ俺は、外に出る為の口実作りのためもあり、リヴァルのバイクを取りに行っていた。明日の藤堂達の処刑前に仕込みを済ませなければ。

 まずはなんとか租界の構造に関与できる職員にギアスをかけることに成功した。ギルフォードが俺に要求した一騎討ち。それを利用してやる。彼らには特定のワードに反応するようにギアスを仕込む。ブリタニア軍に対する明日の作戦は、租界の構造を利用して総領事館内に敵軍を引き摺り落とすもので良いだろう。落とした後はカレンや卜部達になんとか救出させるだけだ。

 問題はロロ、さっきはヘッドロックでなんとか出来たが、不意打ちでなければ勝ち目がない。どう始末したものか…。殺しも、筋肉披露も、偽装工作も、情報操作も、全てロロがネックになる。ロロさえいなければ…なんとか始末しなければ。

 

 …いや、始末にこだわる必要はない。さっき見た資料の中にロロに関する記録があった。ギアスと筋肉しか価値がないのなら、俺が居場所になってやればいいじゃないか。相手の体感時間を奪う…恐らく暗殺にもってこいだ。今まで良いように使われていたに違いない。

 そして、あいつはロケットに対して異常な反応を見せていた。アルバムの中のロロは誰も楽しそうに笑っていた。何故だ?別に暗殺者として潜んでいるならば人付き合いなどしなくても良い。根暗でノリの悪いやつとして生きていれば…。

 

 俺の予想が正しければ、あいつは本気で楽しんでいたのではないか?

 

 本当にロロ ランペルージとして生きていたのではないか?それに奴のギアスは使いようによってはかなり有用だ。…それに、ナナリーを助け出すまではどちらにせよ学生は続けなければならない。ロロの始末は怪しまれる要因になる。ならば、俺の仲間に引きずり込む方が有用だ。

 

 それに奴の筋肉…俺は嫌いじゃない。

 

 ロロのギアスは物理現象は止められない。そこを利用して奴を助ける。そうすれば…よし、作戦は決まった。あとは仕込みだけだ。ロロと二人で映画館へ行き、こっそりと抜け出す。監視の目はロロのお陰である程度誤魔化しが効く。俺は兵士に変装し、高台の狙撃仕様のグロースターに近付いた。

「本隊から極秘命令です。通信の傍受を防ぐため口頭にて伝達せよとのことですが」

『わかった。』

 のこのこと降りてきたパイロットにあるギアスをかけた。それは遠距離からの狙撃。俺が一定のルートを取ったらそれを追うナイトメアを狙撃しろというもの。俺が脱出したら追っていたナイトメアを破壊し、そうでなければ撃たない。

 

『イレブン達よ!お前達の信じたゼロは現れなかった!あの筋肉以外全てはまやかし。奴は私の望んだ正々堂々の勝負から逃げたのだ。それではユフィ執行官、よろしくお願いします』

『撲殺です!日本人は全員撲殺です!今日はグロースターで撲殺です!』

「待て!間違っているぞギルバートGPギルフォード!お前たちが処刑しようとしているのはテロリストでは無い…我が合衆国日本の国民たちだ!」

『なるほど、後ろに回ったか!あ、ユフィ執行官、処刑は一時中断です」

『撲殺…』

 なんとか処刑を止めることはできた。あとは奴の人間性に賭けるしか無い。

「約束を果たそう、ギルバートGPギルフォード。一騎討ちを所望していたな。」

『あぁ、そうだ。…後なんでいちいちフルネームで呼ぶ?』

「一騎討ちは対等な条件で行うべきだ。そうだろう?ギルバートGPギルフォード」

『…確かに、対等な闘いでなければ意味は無いな。良いだろう、一対一で戦おう。他の者たちには手出しをさせない。あとだからなんでフルネーム?ねえ?』

 よし、やつはコーネリアの騎士…その分正々堂々とかそういう物に縛られると思った。ならば前提条件は全てクリアされる!

「お互い、武器は一つだけ。そんなルールは受け入れられないかな?ギルバートGPギルフォード」

『わかった。私はこの槍のみで闘う。あともう突っ込まないからな』

「ならば私はこの拳で闘う。」

 ガキンと無頼の左腕にナックルサポーターが展開される。

『いいだろう、では尋常に勝負!』

 距離を詰めてきたギルフォードはランスでの薙ぎ払いを仕掛けてきた。俺はスラッシュハーケンを使用したジャンプで躱し、拳を振り下ろす。

『甘いなゼロ!』

 それをギルフォードは左腕で甘んじて受け、右手のランスを構えた。

『これで…!』

「ほう?これはつまり、"肉を切らせて骨を断つ"かな?」

 ランスに対し、こちらも右手でなんとか軌道をずらす。そして、これが俺の用意していたワードだ、足場が急に蠢く。

『なっ!?これは…!』

「ギルバートGPギルフォード、中々良い動きだった。流石はコーネリアの騎士、今回は引き分けとさせて頂こう。とは言え…精々サザーランド並の性能である無頼とグロースターでは対等とは言えないのでは無いかな?」

 ギルフォードのグロースターを蹴り飛ばし、スラッシュハーケンでナイトポリスの元に移動する。ナイトポリスをブン殴り盾を強奪、斜面となった租界のフロアパーツをボードの要領で滑り落ちていく。

「さぁ!黒の騎士団よ!敵は我が領土に落ちた!合衆国日本の国民たちを救い出せ!」

 

 

 

 一体なんなのかしら?今日はグロースターというナイトメアで日本人を殴り殺せだなんて。それに勝手だわ、ギルフォード。私にお願いしたり取りやめたり。それにしてもあの無頼…?に乗ってるのは本物のゼロ?だとしたらルルーシュということよね、それじゃあ殴り殺してはいけないわ。ここで待つとしましょう。私は日本人を殴り殺すのですから。それにしてもスザク、早く会いにきてくれないかしら?私は早く日本人を…スザクを殴り殺したいのに。

『さぁ!黒の騎士団よ!敵は我が領土に落ちた!合衆国日本の国民たちを救い出せ!』

 あら?急に足場が…こんな作戦が実行できるなんてやっぱりルルーシュね?取り敢えず落ちて死んでしまっては日本人を殴り殺せないわ。一先ずスラッシュハーケンで…よし、うまく刺さった!あとはゆっくり降りましょう。

『ユフィ執行官!処刑開始です、お願いします!』

 あはっ!ギルフォードったら。そうね…

 

 日本人は殴り殺さないと。

 

「日本人を名乗る皆さん!殴り殺されてください!」

 逃げ惑う日本人をグロースターで追いかけ、後ろから拳で叩き潰します!撲殺です!

 あらら?私の拳は刀で止められてしまいました。無礼な方ですね。

『やめろ貴様!撲殺皇女ユーフェミアだな!?それ以上の狼藉、許さん!』

 刀を持ったナイトメア…。刀での袈裟斬りをナックルガードで受けつつ、蹴りをブチ込みます…あら、避けられちゃったわ。それと忘れてたわ、相手が日本人なのか確かめないと。

「ねえ、貴方日本人よね?私はユフィ。日本人を殴り殺さないといけないの。」

『ふざけるなよ撲殺皇女ユーフェミアめ…!四聖剣が一人、卜部巧雪…貴様に殺された日本人の恨みここで晴らしてやる!』

「やっぱりあなた日本人なのね?撲殺です!!」

 刀による突きを躱し、左の裏拳を叩き込みます!あら?腕で受けられちゃった。だったら機体を右手で支えて両脚で蹴り飛ばしましょう!

『ぐぅ!?つ、強い…!』

「安心して下さい。私の目的はあくまでも…」

 

「撲殺です!!!」

 

 右ストレートは刀で止められました。でも、腕はもう一本あります。ガラ空きになったボディをブン殴りましょう!

『舐めるなよぉ!』

 まぁ!頭突きしてくるなんて野蛮な方!やっぱり日本人は撲殺です!

『ユフィ執行官!退却を!予想以上に抵抗が激しく…これ以上は!』

 …もう、せっかくもう少しで殴り殺せたのに。仕方ありません、より多くの日本人を殴り殺すためにここは退かないと行けないわ。

 

 

 

 結果的に俺の作戦はうまく行った。予想通りながら俺を追う金色のナイトメア…中身はロロだ。その証拠に信号がロストと出現を繰り返している。そしてそれを狙撃させ、それを俺が防ぐ。

『ブラザー!?どうしてデス!?』

「お前が弟だからに決まってるだろう?植え付けられた記憶だったとしても、お前と共に鍛えた筋肉は本物だろう?」

『今までのことがウソじゃないだナンテ…ボクが弟…?…あの日、誕生日がなかったボクに初めて…プレゼントをくれタ…自分の生命が大事だと言ったくせニ…そんなくだらない理由デ…!?』

 ふははは!これはもう一押しで落ちるな…!やはりコイツは筋肉とギアスしか取り柄がないのだろう。心地良い居場所と快適なトレーニング環境さえ与えて仕舞えば…

「当たり前じゃ無いか。お前に言っただろ?筋肉のある弟なら歓迎するって」

 その時、ギルフォードに動きがあった。

『この一撃が…歴史を変える!』

 投擲されたランスは俺の狙い通り、ロロが受け止めてくれる。

『なっ!?どういうことだ!キンニク卿!まさか…ゼロの仲間か!?』

 いいや、違うな、ギルフォード。間違っているぞ?ロロの行動はC.C.を捕まえるために餌である俺に死んでもらっては困るから。それにせっかくもう少しで手に入る心地良い場所を簡単に捨てられるはずがない…!

 さらにここにもう一手。

「もしもし?ヴィレッタ先生ですか?」

『うん?ルルーシュか、どうした急に』

「ほら、今租界で黒の騎士団が暴れてますよね?学園の方は無事かなって…」

 ヴィレッタに電話を掛ける。話題はなんでも良い、必ず話はロロに変わる。なぜならロロの本来の役割は俺の監視だ。そして俺が既に記憶を取り戻しているが、それをロロは報告していない。

『暴れてるのは中華連邦の総領事館周辺だけだ。そこに近づかなければ平気だろう。そう言えば…ロロはどうしてる?ちょっと課題の関係で話があってな、代われるか?』

 既にロロは裏切った状態。そしてこの状態では本当のことを言うわけにはいかない。しかし、今のロロに良い言い訳なんて思いつくはずが無い。ここで俺が助け舟を出せばどうなる?

「ロロ、ヴィレッタ先生からの電話だ。繋げるぞ?」

『えっ?』

『ロロ、お前今どこにいるんだ?電話に出るまでずいぶん時間が掛かったな?』

「嫌だな先生。いくら俺たちが兄弟だからって、トイレくらい別にさせてくださいよ。それに俺たちは鏡を見るとついつい筋肉のキレを確認しちゃうから遅いんですよ…なぁ、ロロ?」

 この時点でロロはもう口裏を合わせるしか無い。

『そ、そうですよヴィレッタティーチャー…』

『さっきも言ったが、中華連邦の総領事館周辺にはいくなよ。』

「当たり前じゃ無いですか先生。ロロにはもう危ない目には遭わせません…」

 これでロロという手駒をギアス無しで手に入れた…!あとはコイツを散々使い倒して…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 より立派なマッスルガイに鍛えてやる!

 

 




脳筋式、絶対停止対処法:不意打ちでヘッドロックをキメる。
体感時間を止められても力を込め続けているルルーシュのヘッドロックからは抜け出せない。(体感時間を止められたからと言って人は別に力が抜けて倒れ込むわけじゃない様子から可能かなと思いました)

Q.脳筋ルルーシュがロロへの対応がソフト(物理的にはハード)な理由
A.脳筋ルルーシュはマッスルガイが嫌いでは無いので単純に気に入った。

●オリジナルナイトメア紹介
・グロースター執行官仕様
武装としてはスラッシュハーケンとナックルガードのみを装備したグロースター。カラーリングはドピンク色だが、拳周辺は返り血で赤いことの方が多い。
(今後、オリジナルナイトメアが出てくるかも知れませんが、なるべく原作段階から逸脱しない設定のものを用意する予定です)


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TURN05

「東堂中佐!」
「卜部、無事だったか。」
「はい。助けるのが遅くなり、申し訳ありませんでした。」
「何を言う。お前と紅月がゼロを助けたからこそ我々も今ここにいるのだ。」
 中華連邦の総領事館、ゼロの作戦によって助けられた黒の騎士団の団員達は喜びを分かち合い、再会に打ち震えていた。中でもたまたまエナジーの保管庫という前線から外れた場所で闘っていた卜部はブリタニアの手を流れることに成功し、カレン、C.C.らと共に逃げ延びていた。長い逃亡生活では彼の日本国土への知識は大いに役立てられ、自由人なC.C.やまだまだ子供のカレンに変わり、残党のリーダーとしての側面を持っていた。因みに、ゼロの正体を知る人物だったりするのだが、それを吹聴するような男ではなかった。

それでは本編スタートです。


 中華連邦の総領事館の一室で俺、C.C.、カレン、卜部、ロロは話をしていた。

「君がルルーシュ…ゼロを助けたパイロットか?」

「イエス。ロロ…と言いマス」

「彼はブリタニア人だが私の逃亡生活を手助けしてくれ、ブリタニアの苛烈な体制を憂いた我々の同志だ。今後も私はブリタニアの目を欺くために学生として生活するにあたり、彼の援助を受ける予定だ。」

「つまり仲間ってことね?よろしく、ロロくん」

「よろしくデス」

 この3人にはどうせ俺の正体がバレている。ロロはブリタニア人でしかも学生だ。いきなり全員に言うわけにもいかないが、コイツらには言っても問題はないだろう。

「ではゼロ、私は藤堂中佐と話してくる。他の四聖剣とも話があるしな。…安心してくれ、君が己の正体を隠している限り藤堂中佐にも秘密にしておくつもりだ。」

 そう言って卜部は部屋を出て行った。卜部は真面目な男だ。よほどのことがなければ秘密は墓まで持っていくだろう。

「…ねぇ、ロロくんの乗ってたあのナイトメア…バベルタワーの…?」

「…イエス」

「あれはコイツの立場上仕方のない戦闘だった。許してやってくれないか?」

「…立場?ただの学生じゃないって事?」

 俺は頷く。

「ふーん?大方皇子のアンタを暗殺しにきたその後を逆にたらしこんだって感じ?」

「たらし込むなんて言い方はよせ。利害の一致だ。」

 俺とロロは二人で肩を組み、腕をクロスさせる。

「そうデス。ボクとブラザーは産まれこそ違えど魂で繋がったソウルブラザーなんデス」

 カレンは呆れた顔をしている。…C.C.お前もか。

「暑苦しいのが増えたな、やれやれ」

「ま、良いわ。仲間になるって言うなら歓迎するし、じゃ、私も扇さん達と話してくるから」

 そう言うとカレンは去って行った。…ようやく本題に移れるな。

「さて、C.C.、このロロは相手の体感時間を止めるギアスを持っている。」

「…まさかギアスユーザーだとはな。」

「このギアスはV.V.から貰ったんデス。」

「V.V.の組織は中華連邦にある事はロロから聞けたんだが、詳細な場所までは分からなかった。心当たりとかないか?C.C.」

「済まない、私にもわからないな。」

 まぁ、それは仕方がない。学園からも調べられる事は調べつつアプローチはするとして…そろそろ私も団員達に顔を出さないとな。

 ロロを黎星刻の紹介したルートで先に帰らせ、俺は広場に向かった。

 

 広場に着くと、こちらに気付いた藤堂が話しかけてきた。

「いつの日か必ず助け出してくれると信じていたぞ、ゼロ」

「済まない藤堂、助けるのが遅くなった。」

「何を言う。元はと言えば大見栄を切ったのに結局押し負けてしまった私が悪いのだ。」

 しかし、それも元はと言えば俺が戦場を離れたからである。藤堂のせいでは無い。

「卜部の話だと合流できたのはごく最近だそうだな。何があった?」

「敵の新型に対する囮はC.C.に任せたのだがな、前線に戻る前に破壊したはずのランスロットを見つけたのだ。私はすぐさまラクシャータにナイトメアを手配してもらっだのだが、結局敵わず敗北し、私も逃亡…運悪く他のメンバーと合流もできなかったと言うわけだ。」

「そんなことが…やはりスザクくんを仲間にできなかったのは痛手か」

 しかしそんな過去のことを言っても仕方がない。俺は助け出した団員達に声を掛ける

「皆!今日までよく忍び耐えてくれた!再び私と共に日本解放に協力してほしい!」

「無論だ。」

「今度こそブリタニアを倒そう!ゼロ!」

「おいみんなぁ!俺たちのゼロを胴上げしようぜぇ!!」

 玉城はそんなことを言ったが、玉城以外誰も駆け寄ってこなかった。

「ゼロを胴上げは…なぁ?」「持ち上がるのか…?あれ…」「落ちてきた時腕もげそう」

 …ちょっと寂しかったので一人で玉城を胴上げした。

 

 俺は今後の作戦を考えるため、黒の騎士団の幹部を集めて作戦会議を行なっていた。

「俺まで参加していいのか?ゼロ」

「当然だ南。お前にはディートハルトのような現在いないメンバーの役割を一部担ってもらう場合があるからな。」

「あまり期待されると困るが…まぁ、最善は尽くすさ」

 俺は作戦書を取り出し、みんなに見せた。

「中華連邦に逃げる?正気かゼロ!?」

「あぁ、キョウトすら壊滅した今のエリア11内では派手に動くのは難しい、どこかで再起する為に力を蓄える場所が必要だ。」

「しかしそれでは逃げ出したように見えないか?民衆からの信用が…」

 確かに、それはネックだ。どうにかして民衆が納得する方法を取りたいが、上手い手が見つからない。

「ゼロにでも思いつかないことがあるんだな。」

「無論だ。そのために皆の知恵を借りようとこの場を設けている。民衆の納得する方法を皆も考えてみてほしい。何か私の考えのヒントになるワードなどが飛び出るかもしれないからな。」

 とは言え、いつまでも同じ議題に頭を悩ませるのも時間の無駄だ。次の議題に移ろう。

「そう言えば扇、お前ブラックリベリオンの時に腹を撃たれたそうだが傷は平気か?」

「あ?あぁ、もう平気だ。」

「ところで誰に撃たれた?黒の騎士団の中に裏切り者が?」

「いや、それは…」

 なんだ?扇の様子がおかしいな。

「直属の諜報員に裏切られたんです。褐色で銀髪の女に…。やっぱりブリタニア人は信用できないな、扇。」

「え?あ、あぁ…」

 ディートハルトのことも信用していないということか…。それにしても扇が俺に秘密で諜報員だと?副リーダーとして何かしようという気持ちは認めるが相談くらいして欲しいものだな。まぁ、正体を隠している俺が言っても説得力はないが。

「お前に直属の諜報員とはな…そんな話は聞いていないぞ?」

「す、すまないゼロ。」

 別に秘密を責めたわけでは無いが…うん?褐色で銀髪の女だと?

「南、扇、その諜報員とはこの女か?」

 俺はヴィレッタの写真を見せる。

「コイツです!」

「ほう?」

 これは使える情報だ。「ヴィレッタは本当は黒の騎士団の扇要の直属の諜報員」こんな噂が立てばブリタニアでは裏切り者と扱われるだろう。目障りなヴィレッタを陥落させる手が手に入るとは…!

「わかった。いい話を聞かせてもらったよ。」

 

 次の日、アッシュフォード学園では大変なことが起きた。

「本日より復学することになりました。枢木スザクです。」

 そう、スザクの復学だ。ゼロが復活したこのタイミング…確実に怪しまれているな。

「席はルルーシュの隣な」

 

 

 

 

 ここは一先ずスザクに不意打ちの拳を叩き込んでやる!

 

 

 

 

 

「!」

 パシッと手で止められ、反撃の蹴りが飛んできた。それを腕でいなし、俺とスザクは対峙する。

「ふっ、相変わらずの動きだなスザク」

「君こそ、殴りかかるなんてひどいじゃ無いかルルーシュ」

 ルルーシュというだけで近づいてきた…そして俺の消された記憶はナナリーのこと、母のこと、皇族であったこと、ゼロであったこと。つまり俺とスザクは昨年学園で拳を交えた友人ということになる。

「あ、ルルーシュ。休学中のノート映させてくれないか?」

「ノート写すより俺が補習してやるよ」

「ありがとう、助かるよ!」

 そんな会話をしつつ、俺は偽りの親友を演じた。しかし、ヴィレッタを脅しているところをスザクと鉢合わせるのはまずい、仕掛けるタイミングを図る必要が出てしまったな。それに…スザクの奴、顔こそ笑顔だが明らかに視線がコチラを探っている。スザクはそう言うことは素人だからな、ちょっと気をつければ見てわかる。逆に言えば気を付けなければそうとわからなかった。コイツ…鍛えてやがる。

 

 スザクが帰ってきたこともあり、生徒会のメンバーとロロで昼飯を食べる事になった。

「…それでね?私たち以外はみーんな帰っちゃったの。先生もよ?」

「なるほど、道理で見ない顔が…」

 スザクの登場でロロが余計なことをしなければ良いが…後で釘を刺しておくか。

 

 俺はロロの協力を得て学園内の監視員達にギアスをかけた。

「これで残るはヴィレッタだけか」

「イエス。しかし枢木スザク…彼の対処はどうするんデス?ボクが暗殺をしましょうカ?」

 俺は首を振る。ここでスザクを始末すれば疑いを強めるだけだ。それではナナリーが危ない。スザクを騙し続けるのが賢明だろう。

 

 会長の計らいでナイトオブセブン枢木スザク復学記念パーティが行われることになった。会長の祭り好きにも困ったもんだ。とは言え、パーティの主役であるスザクはそれなりに時間を取られるはず。ならば仕掛けるなら今日だろう。

『お待たせしました!これより、ナイトオブセブン歓迎会を始めまーす!開始の一言はもちろんこの方から!』

『本当に僕がやるんですか…?それじゃぁ…』

 スザクが息を吸い込んでいるのが聞こえる

 

『ヤーーーー!!!!』\It′s my life!/

 

 俺とロロは二人でジャガイモの皮剥きをしていた。

「ナナリーは目も見えず足も悪かったからな。こうやって二人で作業をするってのは新鮮だよ」

「ブラザー?」

「誰かと一緒にランニングとか、筋トレとか、ナナリーとはできなかったからな。これからも頼むぞ、ロロ」

 ロロは少しだけ口を閉じ、真剣な顔つきになった。

「ブラザー。実はボクのギアスには弱点があるんデス。」

「弱点?」

「イエス。ボクのギアスは使用中、ボクの心臓も止まってしまうんデス。」

 …うん?それだけか?

「…どこが弱点なんだ?」

「エ?」

 俺はロロの左胸に思い切り拳を叩き込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「心臓が止まるならこうやって外から衝撃を加えて無理矢理動かせばいいじゃ無いか。」

 

「なるほど、流石ブラザー!賢いデス!!」

「だろう?」

 じゃがいもの皮剥きはロロに任せ、俺はディートハルトと連絡を取るための手段を南に指示していた。

「キュウシュウのFサイドを通じて連絡を取れ。」

『分かった。』

 すると背後から声をかけられた。

「おい、ルルーシュ」

「うん?C.C.…?何をしにきた?」

「これを回収しにきた。」

 よほど大事なのか、C.C.はぎゅっとチーズ感を抱き締めている。こう見ていると結構可愛いな。あぁいや、もちろんチーズくんがだ。

 それにしても…言えば持って行ってやったのに。

「折角来たんだ。ピザも食っていけ。流石に顔は出せないから部屋で大人しくしてもらう必要はあるが…。ロロに案内させよう。いざという時ギアスで逃げられるからな」

 C.C.を部屋に連れて行ってもらい、再度ロロと合流。この時間ならスザクはピザ作りをしているはずだ。つまり、仕掛けるならば今。

 

 地下の司令室でヴィレッタはロロに軽めのヘッドロックをされ俺の前に立たされている。

「ロロ…貴様裏切ったのか!?」

「ヴィレッタ ヌゥ…ブリタニアの男爵、しかしその正体は黒の騎士団の諜報員。ゼロの様々な奇跡も、お前のような軍の裏切り者が居たなら理解が出来る。ギアスなどという信じられない物とブリタニア軍人の裏切り者、民衆はどちらを信用するかな?」

「私を…脅す気か!?」

 俺は首を振る。

「脅す?いやだなヴィレッタ先生…これはお願いですよ。…それともせっかく得た地位を捨て、囚人になりたいんですか?」

 これでもうヴィレッタは逃げられないし、協力せざるを得ない。トウキョウセクションは、アッシュフォード学園は我が手中に落ちた!…うん?電話?

 

 電話の相手としばらく話し、俺はヴィレッタとロロに着いてく?ように指示を出した。

「ヴィレッタ先生、ロロ…早速我々の合同作戦が始まりそうですよ」

「わ、私に一体何を指せる気だ…!」

「ブラザーのためなら一肌脱ぎマス!」

 ほう?ロロはやる気十分だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スクール水着の水泳部員が決めポーズをする。

「美少女から!」

 そして次に複数の水泳部員が破廉恥極まりない水着に身を包む(包んでいない)ヴィレッタを紹介する様にポーズを決める。

「アダルティなお姉さんまで!』

 …ヴィレッタ、表情筋がピク付いているぞ。接客業なんだから笑顔を作れ。

 

 

 

 そして俺とロロはブーメランタイプの海パンでサイドチェストを決め、爽やかにスマイルをキメる。

「「そしてハンサムなマッスルガイも(いるぞ)(いマス)!」」

 

「「「水泳部カフェへようこそ!」」」

 

 ふっ、俺の筋肉を見せつける良い機会だな。

「やっぱりルル達に頼んでよかったー!」

 電話でシャーリーから協力してくれと言われた時は驚いたが、どうやらうまくいった様だ。

「ダブルマッスルガイ、記録。」

「アーニャが言ってた通りこの学校って賑わってるな、水泳部カフェってのも斬新だし…てか凄い筋肉だ。腕にメギドハーケンでも付けてんのかい?」

「カフェの料理も美味しいモニ。これは世界一のピザも楽しみモニ」モニモニ

 な…!?あれはナイトオブラウンズ…!?なぜアッシュフォードにスザクを含めて四人も…!アーニャのブログで見た事がある。ありがたい事にラウンズ全員での記念撮影があったおかげで情報収集ができているが…

「…この胸板。たしか前にも」

「ブログ、よく拝見させて頂いております。アールストレイム卿。」

「…アーニャでいい。」

 そういうとアーニャはカタカタと携帯を弄っている。またブログでも書いてるのか?すると今度は金髪の男が肩を組んでくる。馴れ馴れしいな。

「君がスザクが言っていたランペルージ卿だね?それに弟の…。二人揃ってマッスルガイだなんて凄いなぁ!あ、我々はプライベートで来ているのですから敬称は不要ですよ、ランペルージ卿。」

 ナイトオブスリー…いいとこのボンボンって感じか。

「私はモニカモニ、よろしくモニ!ルルーシュくんの話はスザクくんから良く聞くモニ。とっても頭が良いって…それにしても、前に服の上から見た時も思ってたけど筋肉凄い…触ってもいいモニ?」モニ?

 この語尾の変な女はモニカ クルシェフスキー。ナイトオブトゥエルブ、しれっと昨年の文化祭にも来ていた女だ。アーニャのブログで正体を知った時は驚いた。それはそれとして俺の筋肉に興味があるなら触らせるのはやぶさかではない。

「えぇ、どうぞ」

「やった!あ、すご、逞しいモニ…」モミィ…

 オイコラ、乳首をさするな。コラ。

 

 

 

 C.C.達を黎星刻のルートで総領事館に送り返す。これで残った障害はスザクだけか。

「ラウンズのみんなにも会ったんだって?ルルーシュ」

 そう思っているとスザクは俺のいる屋上へと姿を現した。

「スザク?おいおい、主役が会場を離れるなよな」

「みんな楽しんでるようだから。それに僕はあんまりブリタニア式のダンスとか出来ないからね。」

 やはり仕掛けてきたか。だが、すでに障害は取り除いてある。焦る必要はない。

「僕はね、ナイトオブワンになるつもりだ。そしてこのエリア11…日本をもらう。そして僕が統治するんだ。だから、ゼロはもう必要ないんだよ」

「間接統治か、でもスザク…それってお前がナイトオブワンじゃなくなったらどうするんだ?怪我とか、老いとか、いつかは死ぬわけだしさ」

「そうだね、僕の統治はいわば時間稼ぎだよ。」

 時間稼ぎ?なんの話だ?

「時間さえあればこの人が変えてくれる。電話だ。君に」

「電話?誰からだい?」

「新しいエリア11の総督だよ。」

 新しい総督が俺に?一体…まさか!ナナリーを!?

「困ったな、そんな偉い人と話せだなんて…」

 俺が恐る恐る電話を取ると、俺の予想通りの声が聞こえてきた。

『お兄様!ナナリーです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 可愛い。




原作ではアーサーに羽ペンを取られる騒動がありますが、鍛えすぎたスザクは秒でアーサーに追いつくので大事になりません

ロロのギアスは効果として心臓が止まるのでそれを無理矢理心臓の筋肉を動かして弱点克服は出来ませんが、止まった心臓に外から力を無理矢理動かすことは可能です。可能なんだよ。脳筋世界では俺ができるって言ったらできるんだよ!!!オラ納得したって言え!!!納得したって言え!!!!(殴打)

●追記・修正のお知らせ
裏切り諜報員ヴィレッタに関する会話を一部修正しました


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TURN06

 ギルバートGPギルフォード、この男はコーネリアと共にゼロという男と戦っていた男である。そして、再び現れたゼロとも戦った人物でもあった。
「油断は禁物です。どれだけ不利な状況でもゼロは必ず何かを仕掛けてきます。」
 正直、その執念には幾度も「恐ろしい」と感じていたのだ。戦友のダールトンをも肉弾戦で圧倒し、自分とはナイトメアで互角以上に戦え、知略は敬愛するコーネリアを越える…かもしれない。まさに超人である。しかし、ギルフォードと話す男は愚かにも直接戦ったことすらないのにギルフォードを弱気だと侮蔑した。
「それでも帝国の先槍と言われた男か?腰抜けめ。ナナリー総督には私が付いている。貴公の出番などない!」
「しかし!新総督並びにあの機体にもしものことがあれば!」
「もしもが起きてもこの私が対処する!」
 結局ギルフォードはそれ以上強く言えず、退いてしまった。

 しかし、不要と言われてもギルフォードは準備を怠らず、こっそりと後方から部隊を動かした。全ては自身の信じるコーネリアに恥じぬ行いをする為に。

それでは本編スタートです。


 ナナリーは電話越しでも可愛いなぁ

『あの…お兄様なのでしょう?』

 …しかし、ここでナナリーか…!スザクめ、ナナリーを政治の道具にするなど…!俺はスザクの後ろに立つロロを見る。ロロは頷きスザクの体感時間を止めたようだ。

「でかしたぞロロ!」

「どういたしましテ、ブラザー」

 ロロは早速左胸をドンドンと強く叩き心臓を刺激しているようだ。もはやあいつに弱点はない!義理ながら何と頼もしい弟だ!

 

 俺は改めて電話の相手…ナナリーに声を掛ける。

「ナナリー、約束守れなくてごめん」

『やっぱりお兄様なのですね!それにしてもひどいです!私を置き去りにして…。でもよかった、生きていらしたんですね』

「勿論。すぐに迎えに行くよナナリー。でも今は協力してほしい、他人のふりをしなくちゃいけないんだ。話を合わせるんだ、良いな?」

『はい、分かりました。お兄様がゼロとして迎えに来ていただけるまでお待ちして居ます。ちょうど明日、そちらへ向かいますのでその時にでも』

 そうだ。ナナリーに伝えなくちゃいけない事があった。

「ナナリー、面白い話があるんだ。俺たちに弟が出来たんだ。」

『弟?』

「あぁ、色々終わったら紹介するよ。名前はロロって言うんだけど」

『まぁ!それは楽しみですわ、私も弟が欲しかったんです!』

 よし、ナナリーも喜んでくれてるようで何よりだ。

「なんだ?俺だけじゃぁ不満だったのか?」

『そうですね、約束を破るお兄様だけじゃ不満です。なーんて、ふふっ』

「それじゃぁ、ナナリー。愛している。」

『私もです。お兄さま』

 ロロに目配せすると…

「ブラザー、愛してマス」

「…お、おう、そうか。早くギアスを解いてくれ」

 …ロロにギアスを解除してもらう。そのあとはナナリーには人違いという演技をし、電話を返す。これでスザクは俺の記憶が戻って居ないと考えるはず。あとは明日、ナナリーを取り戻すだけだ…!

 

 スザクと別れた後、C.C.の報告を受けた。これでニイガタでの物資受け取りは済んだ。総領事館に戻る手立てはないが、総督であるナナリーを取り戻せばブリタニアは混乱する。そうなればなんとでもなるだろう。

『ナナリーか、そうだな…私も久しぶりにあいつの頭を撫でてやりたいと思わんでもない』

「馬鹿を言うな。ナナリーの頭を最初に撫でるのはこの俺だ。」

『このシスコン肉ダルマめ…』

 その為にも…政治の道具にさせない為にも俺は…!

 

 ナナリーは太平洋上で取り返す算段だ。航空機を使い、ナイトメアを輸送し、目的地へと向かう。道中、星刻からの連絡が来た。予定よりも少し早い気がするが…

『ゼロ、私だ。先程ナイトオブラウンズの枢木スザクが総領事館を訪れたよ。』

「分かった。報告感謝する」

 意外と早かったな…だが、今更退く訳にも行かない。

「作戦目標はエリア11の新総督。その人物を人質にする事にある!それでは黒の騎士団、作戦開始!」

 敵の航空部隊も現れたが、こちらはサーフェイスフレアを展開し、敵艦に飛び移る。更にサーフェイスフレアの中に仕込んでおいた爆薬を爆破させ、こちらを囲んでいた敵航空部隊を殲滅。

「旗艦以外は撃墜しろ!フロートシステムを狙え!シールドを貼られても問題ない、いずれエナジーが尽きる…!」

『分かってますよゼロ』

 朝比奈や卜部による護衛艦への攻撃により、護衛艦は簡単にこちらに攻撃ができない。月下で壁をブチ抜き、中に侵入する。道中、格納庫のような場所を通った。その中に一つ、見慣れない形のナイトメアを見つける。白いボディに無理やりつけたような追加装備は緑ベースのパーツが付いている。そしてその形状はまるでカマキリだ。しかし…どこかで見たような…

「思い出した。ユーロブリタニアの時に見たアレクサンダとか言うE.U.の可変ナイトメアフレーム…それがなぜここに?」

 ニクアツ=マッスルガイとしてユーロブリタニアにいた時の資料で見た。アレクサンダという機動性に優れた可変ナイトメア。しかし今はこんなものに構っている場合ではない、障害の扉は全て同様にブチ抜きナナリーの元へと突き進む。待っていてくれナナリー!今度こそ助け出す!

 

 

 

『敵の背後備えか、ゼロの予測通りではあったが!』

 藤堂中佐が言うように後方を確認すると敵の援軍が視認できた。フロートシステムを積んだランスロットの量産型…ロロとかいう青年曰くヴィンセントと言うらしい…とフロートユニットを装備したグロースターだろう。ヴィンセントのカラーリングは金ではないが、特徴的なフォルムでわかる。

「ゼロ、敵の後ろ備えだ。我々で時間を稼ぐ。君は引き続き総督の捜索を」

『分かっている。敵の数は?』

「四機だ。全員空を飛んでいる。」

 そう言っている間にも味方の一部はやられてしまっている。やはり空を飛ぶというアドバンテージは否めない。こちらの攻撃が届かないのだから。

『1機か2機ならば私の考えたスラッシュハーケンを用いた連携でなんとか落とせると思うが…』

「あぁ、紅月と藤堂中佐、朝比奈と千葉の2チームで2機は墜とした。しかしもう2機は警戒して近付いてこない。どうすれば良い?」

『くっ…安直だが、面的な密集砲火で被弾を期待するしかないだろう。』

「分かった。やらないよりマシなそれに賭けよう。君は総督の捜索に戻ってくれ。あとは我々がなんとかする。」

 総督の確保はゼロがやってくれるはず。ならば我々でなんとか敵の援軍を蹴散らして制圧をするべきだろう。

「一斉射撃で撃ち落とすぞ!」

『わかりました卜部さ…うわぁ!』

 突如味方の無頼が飛んで来た何かに潰され破壊された。スラッシュハーケンか…?

『おかしな戦闘機だね…卜部さん、援護を』

 戦闘機…がスラッシュハーケンを?いや…なにか不味い!

「…いけない、距離を取れ朝比奈!」

『えっ?』

 おかしな戦闘機に銃撃していた朝比奈だったが、突如進行方向を変えた戦闘機がナイトメアへと変形し、朝比奈の月下へと攻撃を仕掛けた。

「させるか!」

 俺の攻撃で何とか攻撃を凌ぎ、銃撃で一時的に追い払う。

『すみません卜部さん!助かりました。』

「気にするな、朝比奈。」

 トウキョウからの援軍…できれば背後備えを蹴散らしたから相手したかったが仕方がない…味方の残りはゼロを除けば6機、凌ぎ切れるだろうか…さらに右翼の護衛艦が制御不能になったからなのかこちらへと突っ込んできている。あんなものが直撃したら艦内探索どころではない。

「紅月!退避しろ!」

『でも!』

 すると昔見たガウェインのハドロン砲のような極太の光が護衛艦を一撃で木っ端微塵に消しとばした。

「なんだあの威力は!?」

『あんなのくらったらひとたまりもない!』

 続けて旗艦も謎の揺れが発生していた。

「藤堂さん!何が…!」

『敵が愚かにも自らのエンジンを攻撃したのだ…!このままでは…』

 墜落…ブリタニアと仲良く海水浴だと!?そんな馬鹿な…!

「ゼロ!卜部です、総督の確保は…!」

『まだできていない、そちらは平気か?』

「いえ、敵の新型に攻撃されこのままでは…」

 空を自由に飛び回るナイトメア相手に紅蓮と月下ではどうしようもない。外にいれば良い的だ。とは言え中に入っても回避行動が限られる。追い詰められるのがオチだ。更に、この墜ち行く艦に二機の航空機が近づいてきた。一期は素通りし、もう一機はこの艦の中に…まさかまだ敵のナイトメアが!?

『仙波がやられた!これ以上は…!』

 仙波大尉が…!?現状紅月達とは合流できず、藤堂中佐は孤立してしまっている。このままでは…

 

 突然、甲板を突き破って何かが現れた。

 

『ナイトオブトゥエルブ、モニカ クルシェフスキー参上モニ!」モニ-ン!

「更にナイトオブラウンズだと!?」

 カマキリのようなフォルムのナイトメア…コイツが甲板を突き破ったのか…!?先ほどの可変ナイトメアと言い、ラウンズの機体とはこうも奇怪な形状のものばかりなのか!?

『卜部さん、左右から同時に仕掛けましょう!』

「分かった。タイミングはそちらに合わせる。行くぞ!」

『そんな世代遅れのナイトメアなんかに負けないモニ!』モニィ

 こちらの左右からの同時攻撃を跳ぶように回避し、そのまま鎌の様な腕で斬撃を放ってきた。すかさず廻転刃刀で防ぐが、衝撃は防ぎきれずに吹き飛ばされる。

『中々やるモニ。でも、これで終わりモニ!』モニモニ

 カマキリナイトメアは変形し、人型になった。更に背中から銃身のようなものがこちらに向いている。まずい…!

「朝比奈!避けろ!!」

『分かってます!』

『ハドロンブラスター、発射モニィ!』モニニーン!

 放たれるビームを躱しきれなかったのか、朝比奈の月下は爆散してしまう。幸い脱出は間に合ったようだが。

 ふと足元を見ると爆発の衝撃で飛んできたのか、朝比奈の廻転刃刀が転がっていた。それを拾い上げ、2本の刀を交差して対峙する。

『今のを避けるとは中々やるモニ。二刀流対決なら負けないモニ!』モニ!

 銃撃を仕掛けるが再びカマキリになり、甲板を蹴り跳ねるように避け、こちらに近付いてくる。そしてこちらを跳び越えざまに放たれる斬撃をギリギリで回避するが、続けて先程のビームと同じものを連射される。

「くっ!?機体性能が違いすぎる…!」

『調整が終わったから実際に乗って最終調整しようと思ってたところに、たまたま黒の騎士団がくるなんてラッキーモニ!ここで黒の騎士団を壊滅させれば皇帝陛下もお喜びになるモニ!』モニ~

 人型になってからの二刀流による斬撃を何とか防がんと、こちらも2本の廻転刃刀で受けるが、直後のキックで吹き飛ばされた。

「蹴りだと…!?」

『さよならモニ』モニ

 スラッシュハーケンを使いなんとか直撃を回避するが、体制が崩れたところに放たれた斬撃は防げず、脱出…これがラウンズか…!機体性能もパイロットとしての腕も負けている…!こんなはずでは!

 

 

 

『済まないゼロ…!』

 くっ…!卜部までやられたか。幸い仙波以外は脱出には成功しているようだが…先程カレンも船から落ちたと聞く。しかし、ようやくナナリーのいるところに辿り着いた。これで戦局は逆転する。卜部達が作ったこの刹那、決して無駄にはしない。墜落が始まり揺れる中、俺はナナリーへと近づいて行く。

「お久しぶりですね、ナナリー総督。お迎えにあがりました。」

「キャーワタシヲツレサルキデスカゼロータスケテコワイデスー」

 棒読みのナナリーも可愛い。一応マイクを警戒して俺に連れさられるという設定に合わせてくれているらしい。久しぶりに皇族の服を着ているナナリーもとても可愛らしいな。よし、後はこのまま連れていけば…

『ナナリー!』

 突如壁が突き破られ、空気が外へと流れていく。…あれはランスロット!?不味い…!

「ナナリー!俺と!!」

 いけない!ランスロットの奴、拳を振り上げて…!

『どけェ!!』

 くっ…!ナナリーに近づけない!こんなに近くにいるのに!!

『脱出します、捕まって!』

「でも…」

 ナナリーの意思とは関係なく、スザクはナナリーを連れ去った。クソ!どこまでも俺の邪魔をする気かスザク…!

『ゼロ!聞こえますか!ゼロ!』

「カレン!?どうやって戻ってきた!?」

『ラクシャータさんが飛翔滑走翼を!』

 沈みゆく艦内を走り、回収しやすそうなところへと走る。

「この土壇場に間に合ったことは素直に喜ぶべきだろう。今回は総督を諦める他ない。カレン、回収を頼む」

『分かりました!ゼロ!』

 必ず、必ず迎えに行く…だから待っていてくれ、ナナリー…!

\モニ~!アーニャ、絶対に離さないでモニィ〜!/\必死なモニカ、記録/

 

 とは言え、不味い事になった。こちらのナイトメアは紅蓮可翔式のみ、団員も仙波を始めとする何人かを失った。総領事館には帰れない。ラクシャータの潜水艦のお陰で隠れる事はできてもいつまでもつか…




ルルーシュは脳筋病を患っているのでギアスでさっさとナナリーを見つけると言う最適解が取れていません。

モニモニさんのナイトメア、フローレンスは一応公式存在です。闘い方まであってるかはわかりません()
また、最終調整前なのでフロートは付いていません。


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TURN07

「世界はァ…嘘を吐いておる!」
 シャルルはまず、マストマスキュラーで力強い指導者であることをアピールした。
「人を殴るな、蹴るな、締め上げるな、ウェイトリフティング部に勧誘するな…全ては嘘。まやかしに過ぎん。」
 シャルルは次にダブルバイセップスバックでその鍛えた大きな背中を見せつけ、民衆に安心感を与えんとした。
「殴られたくない、蹴られたくない、逃れられないから締め上げられたくない、辛く苦しい筋トレを続ける胆力がないからウェイトリフティング部には入りたくない…だから暴力反対や着れる服が無いといった嘘で、弱いその身を守っておるのだ!!」
 そして振り向きつつのサイドチェストで筋肉を見せつけるとシャルルは言葉を続ける
「このワシの肉体は筋骨隆々なり、鍛えるのだ胸も腹も脚力も!身体そのものを!!」
 そして一段と筋肉に力を込め、その膨張を激しくさせ、褐色に輝く身を震わせるとラッドスプレッドを披露する。
「我らブリタニアこそが筋肉を壊し更に強い筋肉をもたらすのだ!!オールハイルマッスル、オール ハイル ブリタァァァァニアァァァァ!!!!」

そんな訳で本編スタートです。


 俺としたことが、今まで長い間ナナリーを摂取していない状態でナナリーを摂取できると思った矢先にお預けを食らってしまった為に気絶してしまっていたようだ。どうやらロロがベッドまで運んでくれたらしい。

「ブラザー、うなされてるみたいだったケド、何があったんデス?」

「…俺は、何か言ってたか?」

「…ずっとボクの名前呼んでたヨ」

「…そうか…心配かけたな、ロロ」

 多分嘘だ。一瞬間があったし目も泳いでいた。…きっとナナリーと呼んでいたに違いない。しかしナナリーは総督として赴任している以上、シャルルも簡単には手が出せないだろう。何より側にはあのスザクがいる。あいつならナナリーは守ってくれるはずだ。…だが、もはや今の黒の騎士団に総督であるナナリーを奪い去る戦力は残っていない。

 アーニャのブログによるとナイトオブトゥエルブはエリア11を離れたそうだが、逆に言えばまだ3人もラウンズは残っていることになる。やはり一度中華連邦で再起を図るか…しかし、どうやって…?結局以前言っていた民衆を納得させる方法は思いついていない。せめてブリタニア側からなにか仕掛けてくれれば…

 

 一通り授業を終えた俺は普段通りに過ごす為、生徒会室を訪れていた。シャーリーはガイドブックと睨めっこをしている。どこに行くかを決めているんだろう。

「ミレイ会長…それ、なに用意してるんデス?」

「えっと、網、蝋燭、チャンピオンベルト、カツラ、ダンベル、サンオイル、花火それにタンバリンも!」

 何で修学旅行にそんなものが必要なんだ…?

「あの、修学旅行ですヨネ…?」

「任せて!私2回目だから!」

 それは寧ろ不安しかない。

「どうしたの?ルル、今日なんかキレがないよ?筋肉の」

「え?そうかな…シャーリー」

「そうだよ。いつもはもっとこう…ムキムキムキって感じなのに」

 流石に態度に出過ぎていたか

「ほほーう?シャーリーはルルーシュのことよーく見てるのね」

「なっ!そ、そんなんじゃ無いですって!」

 すると、放送がかかりエリア11の新総督…つまりナナリーの着任挨拶がなされることとなった。俺達は体育館へと移動し、整列する。

『皆さん、初めまして。私はブリタニア皇位継承権代87位、ナナリー ヴィ ブリタニアです。』

 可愛い。

『先日亡くなられたカラレス公爵に代わり、この度エリア11の総督に任じられました。』

 可愛い!

『私は見る事も歩く事もできません。ですから皆さんの』

「可愛い!!」

 あ、しまった…つい声に出してしまった…

『…どうか、よろしくお願いします。』

 ナナリーはそう言って頭を下げていた。可愛い。

『尚早ではありますが、皆さんに協力していただきたい方があります。』

 可愛い。…ん?今モニターに写っているスザク達の反応を見ると、どうやら予定にないことを話そうとしているのか?それはそれとしてナナリーは可愛い。

『私は、行政特区日本を再建したいと思っています。特区日本ではブリタニア人とナンバーズが平等に扱われ、イレブンは日本人という名を取り戻すことになります。かつて、行政特区日本では悲しい行き違いがありましたが、目指すところは間違っていないと思います。等しく、優しく、逞しい世界に。黒の騎士団の皆さんもどうかこの特区日本に参加してください。』

 可愛い。…しかし、なぜナナリーは特区日本を?そんなことをすればゼロである俺が窮地になると分かっているはず…ナナリーは目こそ見えないが賢い子だ。そんな事がわからないはずは…いや、寧ろ分かっているからやっている?何か狙いが…

『互いに過ちを認めれば、きっと人々は分かりあえる。ゼロ、あなたに罪があることは承知しています。ですが…』

 可愛い。

 

『私は、いつまでもお待ちしております。』

 

 可愛い。俺はその一言を聞き、確信した。これはナナリーからの手助けだ。スザクをはじめとする防御を突破してナナリーを取り戻すのは難しい。ナナリーはあえて「いつまでも待っている」と言ってくれた。これは時が来るまで耐えるという意思表示だ。あとはどうやって黒の騎士団で国外へ逃亡するかだが…

 

「それじゃあ修学旅行にしゅっぱーつ!」

 結局答えは出ぬまま俺は修学旅行に行くことになってしまった。

「会長、2回目なのに張り切ってますね」

「なに言ってんのよルルーシュ、2回目だからこそ前回の反省を活かすために張り切ってるんじゃ無い」

 なるほど?そういうものか。確かに2回目ならば前回の反省を生かさないとな

「ルルーシュ、修学旅行中は一緒に回ろう。」

「当たり前だろスザク。道案内は任せるぞ」

 スザク…修学旅行中に俺が何か仕込まないか監視する気か。無駄な事をこちらにはロロが居る。お前の体感時間を奪えば問題ない話だ。

「しかし昨日の総督の発言にはびっくりしたよ。行政特区日本をまたやるって話」

「…僕も聞かされてなくて正直驚いたよ。でも、間違ったことはしてないと思う」

 やはりあの反応、聞かされていなかったのか。日本人のスザクくらいには言っても良さそうなものだがな。それにヨコスカ港に停泊している黒の騎士団はまだ見つかる恐れはない、さて行政特区…どう活かしてやろうか…

 

 目的地への道中、窓の外に自然が見え始めるとミレイ会長が窓を開けた。

「うーん!やっぱ自然の空気って良いわよね!」

「わかるんですかぁ?会長…」

「こういうのは雰囲気よ、雰囲気!あはははは!」

 みんなも真似をして窓を開けると、悲鳴が起こる。

「キャー!蜂よ!蜂!」

「みんな落ち着いて!」

 蜂の登場に大パニックになる車内、落ち着かせようと声をかけるスザク。

「俺が対処してくるよ。スザク」

 蜂を2本の指で挟み、そのまま外へと出してやった。

「はい、追放完了」

「ルルーシュの事だからてっきり空中で鷲掴みにして粉々にするのかと思ったよ」

 リヴァル…お前の中で俺ってどういう存在なんだ…?

「確かに蜂は危険だけど、バスの中から出しちゃえば後は別に良いだろ?」

 …二度目は反省を活かして…。危険な蜂を追放…?バスの中から…。そうか、あったぞ。ナナリーの手を汚さず、黒の騎士団が中華連邦へと逃れる手が…!しかも民衆の支持を得たままに!前回の失敗は特区日本を日本人の決起に利用しようと妨害しようとしたことだ!今回は受け入れてしまえば良い!

 スザクに怪しまれないように会話をしながら、見えない角度で密かに南へとメールを送る。南を経由してディートハルトに協力を要請、ディートハルトならば上手く手を回してくれるはずだ。

「そういえばルルーシュさぁ、この前幼女皇女に向かって可愛いって言ってたよな?あぁいうのがタイプなのか?」

 リヴァル…お前…!

「えっ!?ルルーシュがいつもつれない反応なのってもしかして…!?」

「シャーリー、違う誤解だ!」

「そんナ!ブラザーがいつもそっけないのハ!?」

「いや、お前男だろ何言ってんだロロ…」

「ルルーシュ、君はロリコンだったのかい!?失望したよ…!最低だ!」

 スザク…!お前まで乗るんじゃ無い…!!そんなこんなで度々仕込みをしながら修学旅行を楽しんだ。

 

 俺とスザクとロロが目的もなく街の中をふらふらしていると、急にスザクの目つきが変わった。だが、それは俺に向けてでは無い。視線の先は…路地裏か?

「?どうしたスザク」

「静かに!今、違法な薬物を取り締まっている疑いのあるブリタニア人を見た気がするんだ」

「何!?」

 違法薬物…まさか違法プロテインか!?

「ルルーシュとロロはここに居て、僕が見てくる」

「待てよスザク。一人で行くなんて危険だ、俺もついていく。ロロはヴィレッタ先生にこの事を伝えておいてくれ」

「オーケーブラザー」

 俺とスザクは頷くと路地へと入っていく。

 

「金が先だって言ってんだろ!」「この貧乏人が!」「このヒョロガリめ…」

「やめてくれ…お前達だって俺と同じイレブンじゃ無いか…」

 俺とスザクは二人で角から様子を伺った。一人のイレブンが周りのイレブンからリンチを受けているようだ。

「これが欲しければ、金を持ってくることだ。」

 そう言って金髪の男、ブリタニア人は何かの薬品らしきものを取り出した。

「ルルーシュ、あれは違法プロテインだよ。」

「違法プロテイン?」

「ルルーシュ、僕が壁を蹴って回り込むから挟み撃ちにしよう。」

 スザクは角から飛び出すと、左右の壁蹴りを繰り返して奥へと降り立った。

「何だお前は!」

「自分はナイトオブセブン、枢木スザクです。違法薬物取引の現行犯容疑で…殴打します!」

「ナイトオブラウンズだと!?嘘に決まっている!お前たちやってしまえ!」

「あの筋肉量…間違いない、本物だ!」「逃げろ!!」「助けてくれ!筋肉に殺される!」

 一人の男が逃げようとして俺の体にぶつかってきた。そう、この狭い路地は俺とスザクによって完全に封鎖されているのだ。

「どこへ行くんだ?」

「だ、脱走の準備だ…」

「仲間を置いてか?」

 俺が一人の胸倉を掴み男を持ち上げる。男はジタバタするが、そんなことで俺の手からは逃げられない。

「無駄な事を…今楽にしてやる」

 そのまま男を他の男たちに投げつけた。

 しかし、ブリタニア人はこちらを睨みつけ、なんと自身にプロテインを打ち込み始めた。

「何!?何て奴だ…!」

「私はこんなところで捕まる訳にはいかんのだ!」

 男は壁蹴りを繰り返して屋上へと登っていく。

「ルルーシュ!ここは任せた!」

 スザクも同様にブリタニア人を追っていった。挟み撃ちでなくなったイレブン達は逃走を開始し始め、バラバラに逃げ始めた。おそらくどこかに集合場所があるに違いない。

「ブリタニア人が雇ったイレブン達…アジトでもあるのか?無事に帰れると良いなぁ?」

 俺に体力勝負を仕掛けるなどその時点で敗北なのだよ。

 

 俺は一人の男の逃走ルートを予測して待ち伏せをした。予測通り男が息も絶え絶えに走ってくる。俺が姿を表すと恐怖に顔を歪ませた。

「回り込まれた!?」

 ダッシュで間合いを詰め、男にラリアットを叩き込む。男は壁まで吹っ飛び、壁に巨大なクレーターを作って停止した。

 俺は男の顔面を鷲掴み、顔を固定する。そして俺は男と目を合わせた。

「終わったな。クズは所詮クズなのだ。さぁ、吐いてもらうぞ?"お前達の落ち合う場所はどこだ"?」

 ギアスを使い落ち合う場所を聞き出し、俺は男達の落ち合う場所に向かった。

「大人しく捕まっていれば怖い目に遭わずに済んだものを」

 ギュピッギュピッと足跡を鳴らし、俺は男達を壁際に追い詰めていく。

「HAHAHAHAHAHA!!!よく頑張ったが、とうとう終わりの時が来たようだな?」

「あ、悪魔だぁ…!」

「俺が悪魔…?違う、俺はマッチョだァ!」

 男達は最早恐怖に顔を歪ませ、身を寄せ合うことしかできないだろう。

「「「「うわあああああ!!!!!」」」」

 

 こうして俺とスザクによる違法薬物取引の現行犯逮捕は終わった。コルチャックとかいう男もスザクによってのされたらしい。俺は表に出るわけにはいかないので全てスザクの手柄ということになった。

 

 そして楽しい時はあっという間に過ぎ、帰り道となった。

「あーあ、もう帰るだけになっちゃったかぁ」

「折角ならみんなで行きたかったね、修学旅行。」

「会長?みんなって…?」

「私、シャーリー、リヴァル、ニーナ、カレン、ルルーシュ、ロロそしてスザクくん」

 俺としてはそこにナナリーを加えたいところだがな。

「会長…カレンはその…彼女はテロリストですから」

「あー…そうよね、ごめんねスザクくん」

 スザク、お前は空気とか読めないのか…?

 

 クラブハウスに戻って早々に事が起きた。ヨコスカ港から作戦位置に移動をしようとしていた黒の騎士団の偽装船がブリタニアにバレたのだ。

『ゼロ!大変です、ブリタニアにバレました!』

「現在位置を送信しろ。まずはタンカーを爆破して潜水し、時間を稼げ!私が打開策を考える!」

 棚の資料集から海底図を引っ張り出しつつ、ロロにヴィンセントを用意させる。

『ゼロ!先程現在位置を送信しました。我々は現在囲まれて…艦内各部に浸水が!』

「焦るなカレン。敵は当てずっぽうだ。ダウントリム50、ポイントL14に急速潜航しろ。」

『分かりました!』

 運がいい、ブリタニア軍の布陣している海底にはメタンハイドレートの塊がある地域…そこに魚雷を打ち込めば大量の泡で浮力を失い敵艦隊は壊滅する。

「正面に向けて魚雷全弾発射。時限信管にて40秒。埋まっているメタンハイドレードにより敵艦隊を壊滅させる!アンカーでの固定を忘れるな!」

 ヴィンセントによりポイントL14に向かう。

 

 予定通り、海底からの泡によりブリタニアの艦隊は壊滅していた。

『ゼロ!これがお前の答えなのか!』

 スザクはこちらにヴァリスを向けていた。いいや、違うなスザク。答えは今からだよ。

「撃つな!撃てば君命に逆らうことになるぞ?」

『何…!?』

「私はあの世界で最も愛らしく、透き通る声と笑顔が素敵なナナリー総督の申し出を受けようと思う。そう、特区日本だよ。」

 これでスザクは簡単に攻撃できない!そして俺はダブルバイセップスを決める。

 

「ゼロが命じる!黒の騎士団は全員、特区日本に参加せよ!!」




原作でも聞かされてませんでしたが、多分ミートギアスの場合はいろんな理由からスザクに話さなかったんでしょうね

尺稼ぎの修学旅行パートを作り、それでも尺が足りなくて仕方なく修学旅行中にプロテイン騒動を突っ込んだら悪ノリで大変なことになりました。反省も後悔もしてません()

●オマケ● 唐突な次回予告
ゼロ「そうだ。つまり、どんな場所、どんな環境であろうと日本人として恥ずべきことのないように鍛え続ける心をもてばそれは日本人なのだ。」

TURN08「百万のキンニク」


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TURN08 百万のキンニク(百万のキセキ)

「奸賊枢木スザク、覚悟ォ!!」
 一人の名誉ブリタニア軍人がナイフを持ってスザクを襲った。しかし、ナイフでスザクを殺せるだろうか?答えは否、避けるまでもなくスザクに当たったナイフはへし折れてしまう。スザクによるナイフ破壊はこれで二度目になる。因みにナイフで危害を加えられそうになったのは3回目なのだが、2度目の時は投げナイフだったため折れずに済んでいたりする。
 襲ってきた兵士を殴り飛ばすと兵士は他の兵士に拘束され連れて行かれた。
「ルルーシュ、何故君は僕にこんなギアスを掛けたんだい?心のどこかで罰を求めていた僕に鍛えろと…」

「そんなギアスかけなくても僕は鍛えるのに」ムキムキッ

 その後、スザクは死刑執行命令のサインを渋ったがアーニャが代わりに記載し、死刑は執行されることになった。\日本人は撲殺です!/

それでは本編スタートです。

※今回は特にふざけが多い回です。


 俺が潜水艦の中に入り、みんなが待っている部屋に行くと、真っ先に神楽耶が飛びついてきた。

「ゼロ様ーーー!!!新妻をこんなに待たせるなんて酷いですわーーー!!!」

 拝啓ナナリーへ、お兄ちゃんはいつの間にか結婚していたようです。-許しません- …!?

 そんな冗談をさておきつつ、飛び付いてきた神楽耶を床に下ろす。ふむ、持ち上げた感じ前よりも筋肉がついているような…?

「神楽耶様、変わらぬ元気なお姿、安心致しました。」

「ゼロ様こそ、前よりも逞しくなってますます惚れましたわーーー!!!それに驚きましたわーーー!!!特区日本に参加するとわーーーー!!!!」

 うるせえ。

「そうだゼロ、説明してくれないか?何か策があるんだろう?」

 扇の発言に俺は頷いた。

「私が前に相談していた事項を覚えているか?」

「相談?何があったか…」

「確か中華連邦に逃げるとか何とか」

 意外にも覚えていたのは南だったが、再び俺は頷く。

「そうだ。我々は行政特区日本を使って国外へ逃亡する。」

「待ってくれ、意味がわからない。俺たちにもわかるように説明してくれ」

 扇の言う通り確かに説明不足だったかもしれない。話を聞いている全員が首を傾げている。

「良いだろう。その前に一つ尋ねたい。藤堂、日本人とは何だ?」

 その問いに藤堂は目を暫く閉じて思案していた。やがて目を開け、口を開く。

「日本人であれと己を鍛える心だ。いかなる困難にも立ち向かい、その身を高めて乗り越える。…そういう心だ。」

「そうだ。つまり、どんな場所、どんな環境であろうと日本人として恥ずべきことのないように鍛え続ける心をもてばそれは日本人なのだ。」

 俺の答えに藤堂はふっと笑い、なるほどなと呟いた。

「我々はもちろんいずれ日本を取り戻す。しかし、現状完全なるブリタニアの支配下にあるといえるこのエリア11では以前の規模を取り戻すには労力と時間がかかりすぎる。1年前と異なり、ブリタニアによる各国の支配はかなり進み、このエリア11には現在三人ものラウンズが我々の行動に目を光らせている」

「確かに、あのカマキリは別として戦闘機に変形するナイトメア、枢木スザクのランスロット、廻転刃刀を弾き戦艦をも破壊するハドロン砲を備えたナイトメア、あの三機を同時に相手にするにしては紅月の紅蓮だけでは荷が重すぎる。」

 流石は藤堂、彼我の戦力差を客観的に捉えた冷静な分析だ。

「そうだ。それらラウンズに加え、あのランスロットを元にした量産機までを相手をできるようになるまで我々が潜伏していては結局国民の支持を失うだろう。ならば!屈辱に耐えながら一度他国にて再起を図ることが日本人のためだと私は考える。」

「なるほど」

「しかしゼロ、それではかつての澤崎と同じになってしまうのではないか?」

 今の発言は千葉か、なかなか鋭い質問をぶつけてくる。

「良い質問だ千葉。そのための行政特区だ。今回、黒の騎士団のゼロはブリタニア直々に国外追放処分を受けることになっている。」

「何!?貴様だけ逃げる気か!我々を見捨てて…!」

「落ち着け。そのためにこれを用意した。」

 俺はゼロの仮面とコスチュームを取り出して見せる。

「それは…ゼロの?」

「そうだ。扇、これを身につければ誰でもゼロになることができる。」

「流石だなゼロ、まさかみんなでゼロになってみんなで国外追放される作戦とは…君にしか、いや、ゼロにしかできない発想だ。」

 そう、筋肉量こそ異なるものの、この仮面とスーツを身にまとえば誰もがゼロ。そしてゼロは国外追放。

「全てのゼロは国外追放を受け入れて国外へ逃げ延びる。ただ逃げ延びるのではなく、ブリタニアを出し抜いての国外逃亡だ。残された日本人達に私たちの姿はどう映ると思う?ただ逃げ出したのではなく、あのブリタニアを出し抜き再起を図りに行ったのだと映るだろう。ただ国外に逃げただけの澤崎とは違う。我々は希望を与えつつ国外に逃れることが可能なのだ!」

 そして俺は当日の作戦を話した。まずは無抵抗に会場へ集まる。そしてブリタニア側からゼロの国外追放が言い渡されたら俺がスザクと話をする。会話が終わったら煙による目眩しを行い、ゼロの服装へと着替える。

「しかしどうやって国外へ行くのだ?我々はゼロと違い水上歩行をすることも日本海を泳いで渡り切る体力もないが…」

「安心しろ藤堂。それは私が既に手を打っている。君たちは私を信頼して私の指示通りに動いて欲しい。

 星刻を通じて中華連邦のルートから氷塊船を手配してもらう予定だ。そしてこれらの作戦を中華連邦にいるディートハルトにも説明する。俺の影武者の件もあるからな。

 

「…というわけだ。ディートハルト、前に手配を依頼しておいた船をもうすぐ使う事になる。手続きは任せるぞ。」

『畏まりましたゼロ。』

 これで準備万端。まさか咲世子がディートハルトのルートで諜報員になっていた時は驚いたが、アイツならば安心して俺の影武者を任せられるだろう。篠崎流のSP秘伝アイテムの中には対象に完璧な変装をするために特殊なスーツを着て空気を入れる事で体型をコピーすることが可能らしい。つまり咲世子ならば俺のムキムキボディを再現した影武者が可能ということになる。凄いな篠崎流。

「流石はブラザー。ボク達ブラザーの居場所であるこの学園を守りつつブリタニアの支配を否定するなんテ。」

「あぁ、だがそれにはお前の筋肉と協力が必要だ、ロロ。俺のことがバレればこの学園は終わってしまう。咲世子をサポートしてやってくれ。更にV.V.…奴に裏切り者と見做されればギアスユーザーであるお前は始末される。そしてお前が死ねば結局俺も終わる。」

「ボク達は運命共同体だネ、ブラザー。」

 

 

 

「おーいスザク!お待ちかねの連絡が来たぜ。ゼロからだ。」

 僕はジノに呼ばれて政庁内のバーへと向かった。何故バーかというと、他の部屋は軒並み行政特区絡みで使ってしまっているのだ。因みに、何故政庁内にバーがあるのかは…謎だ。コーネリア殿下の時はなかったし、ナナリーが作るはずもないので、カラレス公爵が作ったのだろう。言うなれば役所の中に酒場作るって何考えてるんだ…?

 もしもルルーシュであった時の対策も含め、話し合いは通信で行われることとなっている。僕らが貸し切る時間になるまでセシルさんは飲んでいたらしく、どうせならということでセシルさんにも参加してもらうことになった。これでこちらはナナリーの補佐官のローマイヤさん、僕、ジノ、アーニャ、ロイドさん、セシルさん、それと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も参加するモニ!」モニィ!

 

 セシルさんと一緒に飲んでいたモニカだ。なんでこの人またエリア11に居るの?

「なぁモニカ、お前この前帰ったばっかだよな?なんでまたエリア11に?暇なのか?」

「スザクくんやジノのいるこのエリア11に比べて私の担当してるエリアは最近落ち着いてるモニ。だから今回は観光に来たモニ。カワグチ湖に泳ぎに行くモニ!」モニ!

「…会議に参加するのは構いませんが、クルシェフスキー卿、その格好はいかがなものかと。」

「モニカの水着、記録」

「アーニャも水着買って河口湖行くモニ!」モニモニ!

「…水替選ぶの、手伝って」

 セシルさんのドレスもかなり露出度が高いけれど、なんでモニカに至ってはビキニなのさ。もう訳がわからないよ。酔った勢いで泳ぎに行くために買っておいた水着に着替えたのかな?だとしてもおかしいよ。あとアーニャも自由すぎる。それはそれとして遊びに行くのは構わないけれどね。

「繋がるみたい」

 ロイドさんの言うように、モニターにはゼロの方が写し出された。

『ほう?ナイトオブラウンズが3に…うん?何故ナイトオブトゥエルブまで…?ま、まぁ良い、ラウンズが4人も参加とは、しかしあの愛らしく癒される笑顔と心地よい声音を兼ね備えそれでいて完璧な仕事をなさる才女のナナリー総督のお姿が見えないが?…あとなんで全体的に女性陣の露出度は高いのですか…?特にナイトオブシックス、それは…制服か何かか?あなたはもう少しお腹を冷やさない服装にしたほうがいい』

「…余計なお世話」

 …やけにナナリーを褒めるな…?こいつルルーシュでは?いや、しかしルルーシュはあの日電話で…。そうだ、ただのガタイが良いロリコンテロリストなだけかもしれない。先入観は危険だ。あと、ガタイの良いロリコンテロリストの場合アーニャも狙われている可能性がある、危険だ…!僕は上着をアーニャに纏わせロリコンテロリストゼロの視姦からアーニャを守りつつ口を開いた。

「これは事務レベルの話だ。」

 それに…ナナリーは優しすぎる。ゼロとの交渉に出すべきじゃないだろう。

「あのさぁ、聞きたいんだけど、君と前のゼロと同じ?それとも真似してるだけの偽物?」

『ゼロの真贋は中身では無く、その行動と鍛え抜かれた筋肉よって測られる。』

「あはぁ…哲学だねぇ」

 あのゼロの筋肉量は明らかにルルーシュに匹敵する…が、ゼロを演じるにあたり筋肉をつけるなんて当たり前のことだ。つまり筋肉量だけで判断するのも危険だと言える。ルルーシュか?ルルーシュじゃないのか?ダメだな。判断するには材料が足りない。それに今は行政特区が優先だ。するとジノが切り出した。

「黒の騎士団の意見は纏まったのか?特区日本に参加すると言ったからには…」

『こちらには100万人を動員する用意がある』

「百万。大群…」

「それはまた凄い数モニ!」モニモニ!

「本当なんだな?」

 あのゼロなら、そして演じている誰かなら、ブラフ…つまり嘘である可能性は否めない。

『無論だ。但し、条件がある…私を見逃して欲しい。』

「何!?」

 少なくとも総督であったカラレス公爵を殺しているのに見逃せだと!?あり得ない!そんなことを容認できるはず…

『…とは言え、君達にも事情はあるだろう?ゼロを国外追放処分にするというのはどうだろうか』

 自分だけ国外追放…?つまりそれは

「黒の騎士団を捨てる気か?」

「自分の命だけ守るってことだろ?」

 なんだそれは…そこまでしてなんになるんだ…!

「そんなことが話がバレたら組織内でリンチモニ!…まぁ、ゼロの筋肉なら返り討ちかもモニ…」モニィ…

『だから返り討ちにして無駄な血が流れないように内密に話している』

 すると、ローマイヤさんがペラペラと手元の本をめくっていた。何かを探している…?

「あった。エリア特法代12条第8項…こちらを適用すれば総督の権限内でも国外追放処分は執行可能です。」

 なるほど、ローマイヤさんはゼロの意見に肯定的なようだ。確かに組織を捨てて1人で逃げたリーダーなんてのは求心力を失うだろうし、そんな仮面の男1人が国外に逃げのびても何も出来ないだろうとは思う。…それがただの男であるのなら。だが、ゼロだ。ゼロであるならあるいは…

「ゼロを見逃すモニ?」モニ~?

「法的解釈を述べてるだけです。」

『どうだろう?式典で発表しても良い。君たちにとっても都合が良いだろう?』

 事前に知られて暴れられたり、放棄されるよりは直前に知らされて何もできない方がマシだろう。しかし、先程からゼロの話すタイミング、内容…誘導されてる…?

「つまんない男」

「でも悪くない話だろ?トップが逃げたとなればイレブンのテロリスト達は空中分解だ。」

 ジノの言う通り少なくとも無血でエリア11のテロリスト達の勢力を大きく削ぐことは出来る。それくらいゼロの存在は絶大だ。それ故にどうしてもゼロを見逃すというのは危険にも感じる。

 

 そして、結局みんなとの話し合いでゼロは国外追放と決まった。僕一人の我儘で方針を変える訳にはいかないって言うこともあり、僕も結局飲まざるを得なかった。ナナリーにも国外追放処分と話をすると

「そうですよね、私の一存で全ての罪を許すことはできませんものね。あとスザクさん、パンと牛乳買ってきていただけませんか?」

 ナナリーは許すつもりだったのか…?ゼロを…。それはそれとして最近よくナナリーにお使いを頼まれる気がするな…まぁ、総督は仕事も多いしナナリーは目も脚も不自由なんだし仕方ないか。

 

 シズオカゲットーは百万の人で溢れていた。表向きは多いからという理由だけれど、真の狙いはわざと隙を見せて尻尾を出すのを窺っているためノーチェックで集めている。こちらにはナイトメアという戦力もあり、テロリストの小細工を打ち砕けると踏んだのだ。でも、やはり僕はただゼロが国外追放処分を受け入れただけとは思えていない。

「スザクくん、難しい顔モニ。平和はブリタニア人もそうでない人も平等に与えられるべきものだと思うモニ、行政特区日本はその一つの形だと思うモニ」モニ-

「…ありがとうございます。クルシェフスキー卿。」

 きっとモニカさんは僕に気を遣ってくれたんだろう。

「モニカで良いモニ」モニィ

「ここにいましたか、クルシェフスキー卿、お願いがあるのですが」

「モニ?」モニ?

 モニカさんはローマイヤさんに連れて行かれた。なんだろう?お願いって。

 それにしてもこの百万人、ゼロの国外追放処分を聞いたらどうなるのだろう。できれば暴れてほしくは無い。鎮圧の名目で殺してしまうのはそれこそ虐殺だ。ユフィがあんな不名誉な呼び名をつけられたように、ナナリーにまで不名誉な呼び名をつけられるのは嫌だから。

 

「日本人の皆さん!行政特区日本へようこそ!たくさん集まって下さって、私は今とても嬉しいです。新しい歴史のためにどうか力を貸して下さい」

\可愛いぞナナリー総督ー!/\きゃー!こっち向いてー!/\好きだー!/\今日も髪型お似合いですね!/

「日本人の皆さん、ありがとうございます。ブリタニア人である私を受け入れて下さり、私はとても嬉しいです」

\可愛いは正義!/\国なんて関係ない!ナナリー様最高!/\こっちにも手を振ってくれー!/

 凄いなナナリー、大人気だ。それにナナリーも満更でもなさそうに手を振って答えてる。…こういう時にちゃんと対応出来るのは皇族の血筋なのかな…。しかしこうなるとゼロがルルーシュである可能性は薄くなるかもしれない。ナナリーは実際可愛いし、幼さや体の不自由さから守ってあげたくなるような感情を揺さぶられる。つまりゼロがナナリー好きでもおかしく無いということになってしまうのだ。

 ゼロは未だに姿を見せていないけれど、国外追放処分の話をすれば安全を確信して出てくるだろう。

「それでは式典に入る前に私達がゼロと交わした確認事項を伝えます。帝国臣民として、特区日本に参加するものは特赦として罪一等を減じ、三等以下の犯罪者は執行猶予扱いとなります。また、自由に筋トレも許されます。ブリタニアからの支援物資として高タンパク低カロリーの食事の提供を約束します。しかしながら、カラレス前総督殺害をはじめとする様々な犯罪は指導者であるゼロの責任は許し難い。よって、エリア特法12条代8項を適用し、ゼロだけは国外追放処分とする。」

\メガネ女引っ込めー!/\ナナリー総督に読み上げさせろー!/\ナナリー総督可愛いぞー!好きだー!/\ナナリー総督声綺麗ですね!憧れます/\いつまで立ってんだメガネ女!/

 ざわつく会場だったが…………うん、ほとんどローマイヤさん批判だ。あのローマイヤさんが珍しく泣いてるよ。普段から厳しく振る舞ってるけど別に悪い人じゃ無いんだよ。心無い批判を受ければ心だって傷付くよね。そしてどうやったのか、突然モニターが切り替わり、ゼロが映し出された。当たり前のようにハッキングしてるけど、現在進行形で犯罪を犯してるんだよね、それ…

『ありがとう!ブリタニアの諸君。寛大なるご処置、いたみいる。』

「まぁ!来てくれたのですね!」

 しくしくと泣きながらハンカチを噛んでいるローマイヤさんの隣で滅茶苦茶嬉しそうに笑っているナナリーという物凄く混沌とした光景が壇上で起きていた。

\ナナリー総督笑顔が素敵だぞー!/\天使の笑顔!/\よっ!この人類国宝!!/

 一先ず暴動が起きていないことに安心しつつ、僕は念のためナナリーを庇うように立つ。狙撃とかされてナナリーを傷つけるわけにはいかない。

「姿を現せゼロ!自分が拳でぶっ飛ばしつつ君を国外に追放してやる!」

『人の力は借りない。私ほどになれば海の上を走ってどこにでも追放されることが可能だ。』

 それは追放とは言わない気がするんだよな…

『それよりも枢木 スザク。君に聞きたいことがある、日本人とはなんだ?』

 それにしても国外追放にかこつけて殴るチャンスだったのに上手く躱されたか、流石はゼロを名乗るだけはある。しかし日本人とは何かだって…?

「いきなりなんの話だ!」

『日本語か?日本という土地か?血の、繋がりか?』

 …日本人とは、か。考えたこともなかったけれど…

 言葉…?違う、現に僕やナナリーは日本語やブリタニア語でお互いにコミュニケーションが取れる。別に日本語が話せるから日本人…ということはないはずだ。

 土地…?これも違う、昔ナナリーは日本にいたけれど、ブリタニア人のままだった。逆もまた然り。別に日本に居るから日本人…ということもないはずだ。

 血の繋がり…?これも違う、直接血の繋がりが無くても例えば養子とかで日本人がブリタニア人になったり、その逆があったという話は昔父さんから聞いた事がある。それに、血が繋がってないから家族じゃないなんて寂しすぎる。共に心を通わせ生きていれば本物の家族になれる筈だ。

 

 つまり、心だ。日本人という心があれば人は日本人になれる。どこに居ても、どんな言葉を話しても、血が繋がっていなくても、日本人という誇りを持ち、何事にも屈しない鍛える心があればそれはきっと日本人のはずだ。

「…それは、心だ!」

『私もそう思う。筋肉、自覚、筋肉、規範、矜持、筋肉つまり、文化の根底たる心と身体の根底たる筋肉があれば、それは日本人なのだ!!』

「それと、お前だけが逃げることになんの関係が…?」

 もしかしてこの問答が罠!?何か仕掛けるつもりか!?

 振り向くと突然服を脱ぎ出した屈強な男達が一斉に身体を擦り始め、汗と熱気から水蒸気を形成し、白いモヤとなって視界が遮られてしまった。これでは何をされるか反応が遅れかけない!

「アーニャ!ナナリー総督を安全なところへ!」

「分かった。」

 僕は未だに泣き崩れているローマイヤさんを片手で抱えつつ警戒する。今撃たれれば僕はともかくローマイヤさんは深手を追うかもしれない。

「全軍鎮圧準備!但し、向こうが手を出すまで絶対に手を出すな!」

 やがて煙が腫れる…そこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        (●) <ニッポン!

 

 ゼロが居た。でも、なんかやたら線が細いな…ちゃんと食べてるのか心配になる細さだ。いや…これは…!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   \ニッポンニッポンニッポンポン!/

 

(●)(●)(●)(●)(●)(●)(●)(●)(●)(●) (●)

 (●)(●)(●)(●)(●) (●)(●)(●)(●)

(●)(●)(●) (●)(●)(●) (●)(●)

 

 なんだこれは!?ゼロが一人じゃない…!?会場のみんながゼロの格好をしている!?いや、明らかに太さが違ったり若干色味が違ったり、そもそも胸筋の形が丸みを帯びていたり…つまり女性だったりと明らかにゼロじゃないゼロの人たちもいるけれど、あの特徴的なスーツとマント、そして仮面はゼロと言えるものだった。

『全てのゼロよ!世界で最も容姿も声も可愛らしく、笑顔が素敵でまだ若いのに仕事を懸命にこなす愛すべきナナリー総督からのご命令だ!彼女の手を煩わせないよう速やかに国外追放処分を受け入れよ!!』

 まさかこんな手を…!?体格は兎も角、ゼロと言い張る人々は全員ゼロだと、そう言いたいのか…!?

『どこであろうと…我々は心と筋肉さえあれば日本人なのだ!』

 筋肉なさそうな人が一部いるけれど…いや、今はそんなことを言っている場合じゃない!

『さぁ!新天地を目指せ!』

 仮面を外させるか?いや、筋肉量である程度は間引けても正体を知らない以上手間が掛かる。ここでゼロを百万人ごと許せばエリア11は…ナナリーの手を汚さずに平和になる。確かにその魅力はある。とは言えこれは騙し討ち…卑怯だ…!でも、ここで撃って虐殺にでもなったらどうする…?

 それに、ゼロは国外追放処分というのはもう公開してしまった約束事項だ。違えればエリア11はもちろん、他の国民からも信用を失ってしまう。国策に賛同しない不安分子を国外追放なら出来るという点でも利点はある…それに…ナナリーは許すと言って居たんだ。だから…

「約束しろゼロ!彼らを救い鍛えてみせると!」

『無論だ。枢木 スザク、君こそ救い鍛えられるのか?エリア11に残る日本人を』

「そのために自分は軍人になった…そして…」

 

『"鍛えろ!"』

 

「俺は鍛える!みんなを鍛えなくちゃいけないんだ!」

『信じよう。その筋肉を…』

 モニターのゼロは消え去り、百万のゼロ達は移動を始めた。氷の塊の船が彼らを運んで消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …そういえば、歩き去っていくゼロ達の中に

『ス、スザクく…モニィ!』モニ!

 ってなんか半ば強制的に連れ去られたゼロがいたような…。うん?モニ?そういえば…モニカさんはどこだ!?




Q.百万のキンニクって言うほど百万人が筋肉付けてなくね?タイトル詐欺じゃん。
A.うるせえ!(殴打)
 日本人であらんと鍛えようという意志があればそれはもう心の筋肉が鍛えられたマッスルガイなのだ!(暴論)
 ルルーシュは実質百万人分の筋肉付けてるってことで問題ないだろ!問題ないって言え!納得したと言え!!(殴打)

 
Q.結局原作と同じ…つまんない
A.うるせえ!!(殴打)
 タグの「原作沿い」が見えねえのか!(殴打)
 こっちは大筋が原作に沿ってるのに色々と筋肉で歪んでるところを楽しんで欲しいんだよ!(殴打)
 (殴打)
 (殴打)


Q.お前のような「原作沿い」があるか
A.…(沈黙)


本当はこんなこと書いちゃだめなんだけど、作者は割とナイトメア戦闘描写は真面目に書いてるので、筋肉によるおふざけ時空だけでなくそこも楽しんでいただけたらと思っています。


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TURN09

 沢山の人が居るモニ。今はローマイヤさんに頼まれて、なるべく目立たないように私服で百万人に紛れ込み、何か怪しい動きをする人物がいないか見回っているところモニ。
「ねぇ、あなた。」
 あ、赤髪の女の子に話しかけられたモニ。それにしても…ブリタニア人?何故彼女が行政特区日本に参加するモニ?
「あなたもハーフなの?」
 …なるほどモニ、彼女はブリタニアと日本人のハーフモニ…噂では日本人にもブリタニア人にもなりきれないハーフは酷い扱いを受けることもあると聞いたモニ。確かにナンバーズとブリタニア人が平等な特区ならそんなしがらみも無いモニ。…ここは穏便に乗り切る事を優先して話を合わせるべきモニ。
「え、えぇ。そうモニ」モ,モニ…
「そっか、私の周りにはハーフってことを気にしない人がたくさんいてくれたけど、あなたは…?」
「わ、私はちょっと大変だったモニ。」モニィ
「そう…でもきっと大丈夫、みんなあなたのことも受け入れてくれるわ」
 話を適当に合わせていたらいつのまにかゼロがモニターに映っていたモニ。そしてスザクくんと何やら難しい話をした後、急に一部の屈強な男達が脱ぎ始め、全身を擦り、汗と水蒸気で湯気が立ち上り始めたモニ。
『全軍鎮圧準備!但し、向こうが手を出すまで絶対に手を出すな!』
 確かにこちらから仕掛ける訳にもいかないモニ。スザクくんの判断は正しいモニ。
「ほら、あなたも早く着替えて!」
「モニ?」モニ?
「もしかして忘れてきちゃったの?ほら、予備があるから早く」
 私は手渡されたものを湯気の中で困惑しながら装着したモニ…これは…ゼロの服モニ?
『全てのゼロよ!世界で最も容姿も声も可愛らしく、笑顔が素敵でまだ若いのに仕事を懸命にこなす愛すべきナナリー総督からのご命令だ!彼女の手を煩わせないために速やかに国外追放処分を受け入れよ!!』
 全てのゼロ…?そう思って周りを見渡すと…みんなゼロの格好をしていたモニ。明らかに殆どのゼロは筋力量が足りないモニ。でも、何人かは屈強なゼロ(?)が居るモニ。
「我々はゼロですわーーー!!!一緒に新天地に行くんですわーーー!!!」
 あれは明らかに女の子モニ。背も低くて体つきも女の子っぽいモニ。声も高いモニ…。
「みんなで国外追放されようぜぇ!俺たちはゼロなんだからよぉー!!」
 こ、これまずいモニ。このままだと私、ゼロとして国外追放を受けちゃうモニ!あ!あれはスザクくんモニ!彼に助けを求めるモニ!
「ス、スザクく…モニィ!」モニ!
「あなた何やってるの!ほら行くわよ!」
 赤髪の女の子であろうゼロに引っ張られ、結局私は国外追放されちゃったモニ。私これからどうなるモニ!?

「それでは本編スタートモニ!」モニィ!


「モニィ…ここは中華連邦の…蓬莱島?本当に国外に追放されちゃったモニ」

「うん?…モニ?」

 その奇怪な語尾…以前戦ったカマキリナイトメアのパイロット…ナイトオブトゥエルブから聞いた気がする。確か名前は

「すまないが君…ナイトオブトゥエルブのモニカ クルシェフスキー殿では?」

「モニィ!」モニィ!

 図星なのか、ビクリとした後にぎこちなくこちらを振り返ってくる。表情も苦笑いというか、あからさまだ。目が泳いでいる。金髪で前髪を切り揃えた女性だ。日本人目線でも可愛らしい女性だとは思える。…が、どう見てもブリタニア人だ。ディートハルトやラクシャータのように日本人でない者も少なからず居るので今はみんなも気にして居ないようだが…

「な、なんのことモニ?モニカ クルシェフスキーなんて、私知らないモニ」モ、モニ~?

 誤魔化しているつもりなのだろうが、こんなふざけた語尾の人物が多数いるはずがない。

「私は貴殿と一度ナイトメアで手合わせした身だ。嘘を吐いても無駄だ。…あまり大事にしたく無い、大人しくついてきて欲しい。君だってこんなところでブリタニア人憎しの日本人からリンチを受けて死にたくは無いだろう?それに…君は女性だ、相手に何をしてもいいと思った人間がどんな浅ましい行為に出るかくらい、軍人なら分かるだろう?」

 そういうと彼女は大人しく従ってくれた。

「おっ!なんだよぉ卜部ぇ〜早速女を連れてデートかぁ?羨ましいなぁ!…ってなんだよブリキの女じゃねぇか!」

「当て身」

 酒を飲んでいる玉城にこれ以上絡まれても良いことはないと判断して意識を刈り取る。

「すまないモニカ殿。ブリキの女などと侮蔑した言葉を聞かせてしまったな」

「気にして無いモニ。元はと言えばナンバーズを差別しているブリタニアの落ち度モニ」

 我ながら「四聖剣」の一人としてそれなりに顔は知れ渡っている。そのお陰か、モニカ殿を見て絡んでくる玉城以降は輩はいなかった。とりあえずゼロに判断を仰くため、彼女を連行してゼロがいるという部屋の扉をノックする。

「ゼロ!卜部だ。少し問題があってな…入っても良いだろうか?」

『何?…ちょっと待っ…おっと!平気かカレン?………………いたのかC.C.…何?ラー油?それは…いや、今はそれより卜部だ。…………………よし、入れ』

 多分さっきまで仮面を外していたのだろうな。ようやく出た返事を受けてから入ると連れてきた彼女をみせる。

「あれ?あなたさっきの」

「何故ナイトオブトゥエルブがここに!?」

 ゼロの驚きようを見ている限り、どうやらこれはイレギュラーというやつらしい。つまり、彼女はゼロの勧誘で来たとかではないということか

「カレン、彼女を知っている素振りだったがどういうことだ!?」

「えっ、あの人がラウンズ?だって私と同じハーフだって」

「ご、ごめんなさいモニ、ハーフは嘘モニ…!」モニ!

「はぁ!?」

 

 モニカ殿、カレンの話によると、モニカ殿は行政特区日本の会場で怪しい人物がいないか見回っていた。そしてカレンが話しかけたため、ハーフと誤魔化して話を合わせた。しかしそこでゼロに着替えるタイミングに突入。カレンに渡された服に困惑しつつ断りきれずに着替えた結果、ゼロの1人として国外追放。そして現在に至る。…いや、流されやすすぎないか?

「…これも何かの縁だろうか、ナイトオブトゥエルブ モニカ クルシェフスキー卿。単刀直入に言おう、私の部下にならないか?」

「私は皇帝陛下にお仕えする帝国最強の十二騎士、ナイトオブラウンズの一人…その提案はお断りするモニ」モニッ!

 まぁ、自ら我々に賛同してついてきたならともかく、成り行きで来てしまっただけならそうなって当然だろう。それにしてもキリッとした表情で言っているが、流されてやってきた上に語尾がモニなせいで色々と説得力にいまいち欠ける。

「ならば卜部、彼女を斑鳩で監禁しろ。…手荒には扱うなよ。人質だ、何かに使えるかもしれん」

 俺は頷く。彼女は逆らうことなく大人しく連行されてくれた。まぁ、ゼロのあの筋肉の前で逆らっても無駄なのは明白だしな。話じゃカレンに引き摺られてきたというしな。

 そんな中、放送が入った。

『ゼロ様、斑鳩に来てほしいですわーーー!!!大変な事が起きましたわーーー!!!』

 俺、モニカ殿は斑鳩の独房へ、C.C.、カレン、そしてゼロはおそらく斑鳩のブリッジへと向かった。

 

 

 

「ゼロ様、中華連邦の天子様が政略結婚結婚させられますわーーー!!!」

「なに?政略結婚だと?」

 中華連邦の天子と言えば確か『可愛すぎる総督』として世界的にネットニュースを騒がせている我が愛しき妹であるナナリーよりも幼く、ネットでは「天使様」の愛称で親しまれている中華連邦のお飾り君主ではなかったか…?それが政略結婚とは…

 

 …いけない…!これを許せばナナリーの政略結婚も許すことになるかもしれん!そんなことは断じて許容できない…!

 

「スメラギコンツェルンを通じて式の招待状が届きましたわーーー!!!」

「相手は誰だ?」

「ブリタニア第一皇子のオデュッセウスですわーーー!!!」

 オデュッセウスだと…?あんな男が?あんな…

 

『やぁルルーシュ、ナナリー。今日もいい天気だね。今日も私の肩の上に乗って散歩でもどうだい?』

\ナナリーよ、ワシの肩の方がこやつよりも高いぞ…?/

 

『はっはっは。ナナリー、父上の肩の上で暴れてはいけないよ。落ちてしまったら怪我をしてしまうからね』

\落ちそうだからと言ってワシの髪を引っ張るで無い!ぶるぁぁぁぁ!!!/

 

『こらこらナナリー、出会い頭に私の睾丸を殴るのは良くないよ。とても痛いからね。…私だけじゃなくて父上の睾丸も殴ってはいけないよ?』

\ぶるあ…あぁ…ぁ………あぁ………/

 

『見てごらんルルーシュ、人が捨てたゴミの様だ。ポイ捨ては良くないのにねえ…』

\ナナリーよ、今ワシを指差してゴミと言ったか…?実の親をゴミ呼ばわりとはなんったる愚かしさァ!!/

 

『ナナリーはまだ幼いのにとても足が早いんだね、はっはっは。どこへ行こうと言うんだい?さぁ、鬼ごっこは終わりだよ?終点が父上のいる玉座の間なのは上出来だけどね』\ナナリーよ、ワシの足を踏んでおる…踏みつけるとは何事だナナリー!ナナリー!!やめっナナリー!!!/

 

『ルルーシュはとてもチェスが強いね。うーん、どうしようかな。追い込まれてしまったよ。…三分間待ってくれないかな』

\ナナリーよ、三分間よく飽きもせずワシの顔が殴れるなナナリーよ。ナナリー!やめんかナナリー!こらナナリー!!/

 

『ナナリー、誕生日おめでとう。はい、プレゼン…えっ、可愛く無い?…流行りの服は嫌いかぁ…』

\ナナリーよ、何故ワシの作ったケェキをワシの顔にぶつける?何を笑っておるナナリー!/

 

 …あんな凡庸な男に険悪だった中華連邦との関係を一気に覆すこんな手を考えつくはずがない。

 こちらの中華連邦への動きを見てからこの手が打てるとなれば…シュナイゼルだ。こちらの策は間に合わない。となれば…

「…神楽耶様、この婚姻どうするべきだと考えますか?」

「勿論ぶっ潰すべきですわーーー!!!好きでもない男と結婚なんてごめんですわーーー!!!」

 中華連邦に来て早々動く羽目になるのは予定外だったが、幸いインド軍区の働きのお陰でナイトメアは届いている。斑鳩の整備も問題無い上、中華連邦の地形データやレーダー監視網のデータは入手済みだ。事前に中華連邦入りを予定してディートハルトに集めさせたのは正解だったな。

 だがまずは婚姻の儀の前のパーティに赴き、敵の戦力を確認するのが重要だ。モニカの件もある、もしもラウンズの数が3人から変わっているのなら計算が狂うからな。

 

 他の仕込みをしようとしたところ、不審な男を見つけた。

「おい、貴様そこで何をしている」

「な、なんだお前!」

 中華連邦の兵士?なんだってこんなところに

「"私の質問に答えろ"」

「…はい。」

 やはり正確な情報を聞き出すという点ではギアスは優秀だ。殴るより確実だし早い、後処理も必要ないしな。

「ここで何をして居た?」

「はい、クーデターの準備を…」

 ほう?これは使えるな…!

 

『スメラギコンツェルン代表、皇 神楽耶様ご到着!』

 俺、神楽耶、カレンの3人で祝賀会に出席した。入口の兵士たちはギアスを使うまでも無く、俺たち…というか俺を見て困惑し、結果として判断を上に任せるために倒してくれた。まぁ、通さない場合は俺が拳でねじ伏せるだけだったから彼らの怪我が減っただけで特にこちらとしては問題はないのだが。

「これはこれは…!」

 シュナイゼル…やはりいたか…!

 即座に槍を持った貧弱な兵士達に囲まれるが、俺は槍の先端を握り潰してみせる。

「こんなものが私に効くとでも?」

「やめませんか?諍いは…本日は祝いの席です。それから皇さん、明日の婚姻の儀にはゼロの同伴は控えていただけますか?」

「それは仕方ありませんわーーー!!!」

「ははは、賑やかな女性だね」

 シュナイゼルの言葉と槍が効かないという点から兵士達は引き上げていった。シュナイゼル…!俺の前に姿を晒したな?

「ふんッ!」

 ノーモーションからの正拳突き、これは躱せないッ!!

 シュナイゼルの腹をブチ抜くつもりで放った拳はスザクによって止められた。

「殿下はやらせない!」

 チッ…やはり警戒して居たか。

「スザクさん、お久しぶりですわーーー!!!」

「相変わらず煩いな、従姉妹の君は」

 神楽耶が気を逸らしている間に会場を見渡す。ラウンズは3人、あれは…セシルとかいう女とロイド伯爵か。つまり当然ながらナイトメアも中華連邦に持ってきていると考えるべきだろう。黎星刻の姿は無い、やはり明日の準備をしているのは黎星刻達のグループか、ならばエリア11の恩を返すためにも婚姻はお望み通りぶっ壊してやるか。だが、まだ戦力を隠しているかもしれない、揺さぶりをかけるか。俺は半身を引き、拳を握る。

「どうです?一度手合わせでも」

「ほう?面白いね。」

 シュナイゼルはその場で脚を肩幅ほどに開き、右手を下に、左手を上に構えた。

「私が勝ったら神楽耶様へのプレゼントに枢木卿を頂きたい。代わりに私が負けたらこちらが捕虜としているクルシェフスキー卿をお返ししよう」

「なに!?やはりモニカは捕虜に!?」

「こらこら、今彼は私と話しているんだ、落ち着きたまえ枢木卿。それにしてもこれは…面白い余興になりそうだね。」

 その薄ら笑いを直ぐに泣きっ面に変えてやる…!さぁ、シュナイゼル…死合お…

 

「あ、あの!せめて別室でやって下さい、料理に埃がかかります…」

「「あ、はい、すみません」」

 ちっ、やはり腹違いとは言え実の兄弟…ハモるとはな…!

 

 天子の一言で俺たちは別室に移動した。俺とシュナイゼルは部屋の中心で対峙する。シュナイゼルは再び足を肩幅に開き、右手を下に構え、左手を上に掲げていた。無闇に動かず体力を温存して俺の攻撃を待ち構える…悪く無い手だ、だが失敗だったな!さっきもお前は反応できて居なかった、つまり一撃で終わりだ!

 俺が拳を放った瞬間、俺の拳は上に弾かれ、同時に手刀を喰らった。

「「「「おぉぉぉ…」」」」

 何が起きた…!?何をされた!?み、見えなかった…この俺が!シュナイゼルを再び睨むが、奴は先ほどの構えを取ったままだ。現状、特段シュナイゼルの手刀を食らっても俺の肉体にはさほど効果は無い。それに俺が今態勢を整える間も奴はあの構えを解かないままだ。何か種がある…!それを暴くまでは…

「行くぞッ!」

「いつでもどうぞ」

 その余裕がいつまで持つかな?しかし、シュナイゼルは俺の連続殴打に対し全てを弾き更にすべてに手刀で返してくる。なるほど、数度打ち込んで分かった、奴の技はカウンター技、こちらの動きを見て攻撃の予測、攻撃に対する弾き技、そして的確に防御不可な箇所への攻撃、その3つ同時に行なっている…!

「ふむ、君の攻撃は私には効かないし、私の攻撃も君には効いていないね、このままでは決着がつかないが…」

 流石はシュナイゼル、俺が唯一チェスで勝てなかった男…!だがそれは過去の話

 

 俺は少し距離をとり、クラウチングスタートの構えを取る

 

 俺の全質量を乗せた膝蹴り、これは弾けまい…!両脚と両手のバネで加速するこの膝蹴り、予測通りこの神速の一撃に奴は反応できない!鳩尾を抉って…!?俺の膝はガツンと何かに当たり止まった。なんだ…!?シュナイゼルは吹き飛んだものの、何事もなかったかのように立ち上がり、服の埃を手で払っている。

「やはり腹を狙ってきたね?」

 シュナイゼルは服を捲ると腹にナイトメアフレームの装甲を仕込んでいた。

「君程の男だ。この婚姻に介入しようと現れることは読んでいたよ。そして私では回避不能の一撃を放ってくると…しかし当たっても通じなければ意味がないよね。」

 おのれシュナイゼル…!まさかここまで読んでいたとでも…!?屈辱だ!このまま敗北して終わるわけにはいかない…!

 

 その時、腰に何かが当たった。パキンと何かが折れて地面に落ちる音がする。

「ゼロ!ユーフェミア様を可笑しくした犯人!!どうしてここにいるのよ!!」

 この女…誰だ?

「邪魔をする…」

 蹴り飛ばしてやろうと思った時、視界にミレイ会長が映る。そういえばロイド伯爵の婚約者だったか…。そしてさっきまでこの場にいなかったの二人が一緒にいたという事は…この髪色、髪質…そして俺の胸筋より慎ましい胸、まさかこの女ニーナか!?

「よすんだニーナ!この男にそんなナイフは通用しない!」

 ニーナと思われる女はスザクによって羽交締めにされていた。

「どうして…!私のユーフェミア様を奪ったのに…!」

 そしてニーナは泣き崩れていた。こいつとユフィになんの関係が?まぁいい

「ゼロ、勝負はお開きにしよう。それと、くれぐれも明日は出席を辞退してくれたまえ、今度は手刀では済まさないよ。」

 

 

 

 昨日のシュナイゼル殿下の言葉が効いたのか、神楽耶はカレンだけを連れて現れた。更に、昨日の手合わせはゼロの負けという事なのか、捕虜にされて居たモニカも連れて居た。

「シュナイゼル殿下、ご迷惑をお掛けしたモニ」モニィ

「いやいや、君が無事で居てくれて本当に良かったよモニカ。それにしても…ゼロ、君と言う男がどういう人物かわかった気がするよ。」

 そしていよいよ婚姻が交わされようとした時、乱入者が現れた。

「我は問う!天の声、地の叫び!人の心!そして筋肉!何をもってこの婚姻を中華連邦意志とするか!全ての人民を代表し私はこの婚姻に異議を唱える!」

 剣を持った男は高らかに叫んでいた。

「血迷うたか!星刻!」

「黙れ趙 皓!全ての人民を代表し、私はこの婚姻に異議を唱える!!」

 取り押さえろと誰かが叫ぶが、彼の剣の前にバッタバッタとなぎ倒されていく。凄いな彼、槍相手に剣で勝っちゃうなんて。

「スザク!俺達でオデュッセウス殿下をお守りするぞ!」

「わかった」

 ジノに言われ、僕たちはオデュッセウス殿下を守りに行く。

「オデュッセウス殿下、ご無事ですか?」

「心配はいらないよ。頑丈さには自信があるんだ」

 確かにオデュッセウス殿下はがたいだけで言えば僕にも劣らないだろう。

 シュナイゼル殿下はモニカさんとアーニャがついているし平気だろう。あれ?セシルさんがモニカさんに何か言ってる。そのうちモニカさんはどこかに走って行ってしまった。

「星刻ぅ!星刻ぅ!」

 天子様はどうやら剣の彼に助けを求めているらしい。中華連邦は天子様が納得していると言っていたけど、どうやらやっぱり嘘だったみたいだ。

「我が心に迷いなし!我が筋肉に疲れなし!」

「星刻ぅ!」

 天子様は彼を迎えるように手を広げていたが、不意にブリタニア国旗が落ちてきた。そして旗の中からは仮面とマントのあの男。マッスルガイのゼロが天子様を抱き抱えた状態で佇んでいた。

「感謝する星刻。君のおかげで私も動きやすくなった。」

「ゼロ…それはどういう意味だ!?」

 星刻と呼ばれた彼が問いただすと、ゼロは天子様のこめかみに指をデコピン状にして近づけた。ゼロの筋肉量ならばデコピンでも天子様の脳を破壊することが可能…なんて卑劣な男なんだ…!

「君たちにはエリア11での貸しがあったはずだが…?」

「だからこの婚礼を壊してやる。君たちが望んだとおり…但し、花嫁はこの私がもらい受ける。」

 デコピンの指をちょんちょんとこめかみに当て、抵抗しないように脅しをかけていた。

「星刻ぅ!」

「天子様!…ゼロ、この外道が!」

 星刻と呼ばれている男を始め、この場の誰もが卑劣なゼロを睨んでいるとき、シュナイゼル殿下だけは冷静にゼロを見つめていた。流石はシュナイゼル殿下だ。

 

「ゼロ…彼はナナリーのことを好んでいるという噂があったが、天子様を花嫁にしようとする本物のロリコンだとは…」

 

 この場でそんなこと考えてたんですか?シュナイゼル殿下…




脳筋ルルーシュあるある ギアスを何故か使わない

ロスストのモニカがモニモニ言わない事に違和感を感じはじめたらおしまいだと思ってます()

●オマケ● 唐突な次回予告(偽)
星刻「これがゼロの正拳突き…!なんて威力だ!」
ゼロ「今のは正拳突きでは無い…デコピンだ」
星刻「!!!」


●オマケ● 唐突な次回予告(真)
朝比奈「この新兵器凄いよぉ!流石はラクシャータの輻射波動だ!」

TURN10「筋肉輝く刻」


●更にオマケ● 唐突なオマケ話の予告
2022年8月10日12:00公開

TURN9.5


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TURN9.5

 これはエリア11や中華連邦をゼロが騒がしている頃のノネットとドロテアのお話…


「ドロテア、聞いたかい?エリア11からゼロが国外追放されたってさ」

「そう。なら、これでエリア11の抵抗運動も終わりね」

 目的地に向かう最中、隣に座って手持ちの端末を操作していたノネットが話しかけてきたため、私は読んでいる本から視線は外さずに答えた。

「それがさ…見なよこれ。アーニャから画像もらったんだけどさ」

 仕方なく本に栞を挟んで閉じてから視線を移す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 …!?…いや、何かの見間違いだろう。…見間違いに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 …!?み、見間違いじゃない!?なんだこれは…コラ画像かと画像を確認するとどうやら違うらしい。

「…なるほど、仮面と服を着れば誰でもゼロだと言うことか…」

「そう言う事みたいだね。とんだ屁理屈さ。」

 はははと笑うノネットだが、目が笑っていない。

「ラウンズが3…いや、確かモニカも居たはずだから4人か。4人もいてこの体たらく…今度あったらスザクにはお灸を据えてやらないとね」

 確か今エリア11に派遣されているラウンズは…スザク、アーニャ、ジノ…それにモニカか…。

 

 

 

 ……………揃いも揃って子供じゃないか。

「まぁ、シュナイゼル殿下が既に次の手を打っているそうだからきっと大丈夫だろう」

 その言葉で会話は終わり、私は再び本を開く。謎の覆面マッスルガイL.L.の筋肉写真集第3弾だ。…やはり筋肉は良い。

 

 そうして時間を潰しているとやがて艦内に放送がかかった。もうすぐ目的地に着く様だ。

 

 今回の任務は反乱軍の鎮圧。ゼロが復活してから各地で度々こうした反乱が起こる。スザク達にはさっさとゼロを討ち取ってほしいものだ。

「パロミデス発艦する。」

『ランスロットクラブ発艦!』

 私とノネットの機体が出撃し、戦場に到着する。敵は多いが雑魚ばかりだ。我々の相手ではない。

「なぁノネット。いい加減遠距離武器の一つでも装備した方がいいんじゃないか?」

 私は反乱軍に対しフィンガーハドロンを放ちながらノネットに話しかける。ノネットの方をチラリとモニターで確認すると相変わらず大型ランスを片手に敵陣に突っ込みランス、スラッシュハーケン、蹴り、ルミナスコーンで暴れ回っている。

『ドロテア…闘いってのはね、誇りと誇りの奪い合いなのさ。あんたみたいに高い所から撃ちまくってちゃぁ闘いの勘や腕が鈍るってもんさ。あんたと違って私は誇りを大事にしてんのさ』

 …一理あるか。それにその言い方に少しカチンと来たからな。パロミデスがただの移動砲台じゃないところを見せてやる。

 幸い敵のナイトメアは中華連邦から流れたらしいガンルゥと払い下げのグラスゴー、たまにサザーランドらしきものを見るがその程度。こんな輩に遅れをとる私とパロミデスではない。

 フィンガーハドロンを発射モードから打撃モードに変更し、鈍器としてガンルゥに叩き付ける。

『うわァ!!』

 うむ、これくらいの相手なら簡単に叩き潰せるな。

『なんだいドロテア。私に少し揶揄われたくらいで熱くなってんのかい?』

「うるさいよノネット」

 サザーランドのスタントンファーを防ぎ、再びフィンガーハドロンで殴り付ける。

 

 こうして反乱軍を私とノネットの2人で制圧し、乗ってきた戦艦へと戻る。するとノネットが何やら艦長と話し合っていた。

「ドロテア、本国からの招集命令だ。さっさと帰るよ」

「そうか。次はどんな戦場かな」

 

 負けないさ、相手が誰でも…私とパロミデスなら!




ナイトオブラウンズ、ロススト実装記念。


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TURN10 筋肉輝く刻

(2022年8月10日12:00にTURN9.5を投稿していますので気が向いたら読んでみてください)

 中華連邦のとある場所、砂漠の一角にその施設はあった。崩れた神殿のような外観をしており、二人の男が話をしていた。
 一人は砂漠には不釣り合いな椅子に腰掛けた男。
 もう一人は神殿の階段らしき段差に腰をかけた男。
「うん、ゼロの本当の目的がここなら厄介だからね」
「あぁ、それで私の為に手配を?」
「そうだよ。」
「ありがとうございます。調整さえ済めばC.C.もルルーシュも敵ではありません…このジェレミア ゴットバルト…」

「ご期待には 筋 肉 で」

「君は半分機械だからそんなに筋肉関係ないと思うけど…」
「これは失礼を…」

それでは本編スタート…の前に一言。
私自身ロスストの話を出したりネタにするのであまり強くは言えませんが、ロスストの話だけの感想はやめてください。せめて1行分だけでも本編に対する感想をください()

それでは改めまして本編スタートです!


「星刻ぅ!」

 我ながらナナリーより幼い女の子を人質にするのは心にくるものがある。しかし耐えなければならない!幼子の政略結婚を認めればナナリーまで簡単に政略結婚させられてしまう…!いや、むしろ俺が…ゼロがナナリーと政略結婚させられれば良いのでは…!?しまった、その手があったか

「くっ…!ゼロ!天子様を返す気は無いのか!」

「星刻、君なら天子を自由の身に出来るとでも?違うな…」

 よし、時間稼ぎはできた。背後の壁が崩れ、卜部の暁が現れる。よし、このままあの厄介なシュナイゼルを拘束し、周りのラウンズを始末すれば…!

「卜部!シュナイゼルを!」

『うむ、分かった』

 しかし、卜部の攻撃は飛んできたスラッシュハーケンらしきものに止められてしまう。チッ…ブリタニアのナイトメア…やはり読んでいたかシュナイゼル…!

『殿下は渡さないモニ!」モニ!

『モニカ殿か!』

『そっちは卜部さんモニ!?」モニ?

 仕方ない、こうなれば俺が拳で…いやダメだ、あちらにスザクが居る…数的有利が望めない上に天子を抱き上げるために片腕のままスザクとやりあうのは危険だ。

「兄上、行きましょう」

「どこへ行こうと言うんだい?シュナイゼル…」

「逃げるんですよ。考えればわかるでしょう兄上」

 クソ、またシュナイゼルを取り逃がすことになるとは…!

『ゼロ、こちらは予定通りです。』

「よし、ならばサードフェイズに入る」

 千葉の暁がコンテナを用意する間、俺は神楽耶を回収し、抱き上げる。

「カレンも早く乗れ!」

「う、うん…」

 そしてカレンを肩車し、跳躍してコンテナに入る。

「ゼロ様ったら女性を同時に三人も…英雄だからといって色を好みすぎですわーーー!!!」

「誤解を招く言い方はやめていただきたい」

「あの、三股は良くないと思います…」

「天子様も戯れが過ぎますよ」

 カレンを紅蓮に乗せて警戒させ、俺達を乗せたコンテナを千葉に運ばせる。現れたカマキリの相手は卜部に任せておけば大丈夫だろう。

 

 

 

『行かせないモニ!』モニッ!

 モニカ殿のブレードと廻転刃刀がぶつかり火花を散らす。だが、ラウンズ相手にもこの機体なら押し負けない…!

「空飛ぶカマキリか、だがこの暁なら…!」

 数度の斬撃を交えた後、カマキリの蹴りで距離を取られた。アレがくる…!

『これで決めるモニ!ハドロンブラスター発射モニ-!!」モニニーン!

 今までは避けるしかなかった飛び道具だが、この暁ならば!

「輻射障壁展開!」

 紅蓮の右腕ならともかく、輻射障壁では流石に真正面から受けるのはまずい、だが。敵のビームを受け流す事はできる!…これで距離は詰まった!

『ハドロンブラスターを受け流したモニ!?』モニ⁉︎

「貰ったッ!」

 渾身の一太刀は本体には直撃しなかったものの、フロートシステムを破壊することには成功した。

『しまったモニ!』モニーン!?

『よくやった卜部!カマキリのフロートを壊したのならば十分だ!これで奴は追ってこれない。そこは一先ず退け!』

「分かった」

 ゼロから教えられたレーダー監視網の間隙を突きつつ撤退する。

『卜部さん、補給は千葉の暁から行います』

「分かった杉山、俺と紅月は斑鳩に戻ってから受けよう。」

 追ってきた航空部隊は紅蓮の輻射波動を受けて全滅して居た。

『あっち行ってな!』

 流石に輻射波動は凄まじいな。

 

 

 

「天子よ、先程は怖がらせてしまい申し訳ない。しかし…」

 未だにビクつく天子の頭を撫でつつ…

「妬きますわーーー!!!私も撫でて欲しいですわーーー!!!」

 神楽耶がそんなことを言うので俺は両手でそれぞれの頭を撫でる。…うーむ、両手に幼女を侍らせているようなこの現状、なんか色々とヤバい絵面な気がする。-私も撫でてほしいのに-…!?

「今はこんな箱の中ですが、落ち着き次第あなたにもお見せしましょう、外の世界というものを」

「あ、あなたも私に外の世界を見せて下さるのですか…?」

「勿論です。本当はこんな乱暴なやり方であなたの夢を叶えたくはなかったのですが」

 天子のことは神楽耶から聞いている。この幼子の夢は外の世界を見ることのはず、つまりそこから話を持っていくべきだ。

「勿論、あなたにも天子という立場はあるでしょう、しかし!だからといって不自由なのはおかしい!あなたにだってこの世界を楽しむ権利がある!」

「そうですわーーー!!!そうして私みたいに素敵な殿方と出会い、恋に落ち、愛し合うのですわーーー!!!」

「こここ恋!?す、素敵な殿方なんて、わ、私は…」

 よし、このまま天子が自由な権利を欲しいと思えば合衆国制の受け入れに話をつなげられる…!

「黎星刻…あの男はあなたの事を真に想われているように見えました。…特別なお方なのですか?」

「えっ!?ど、どうなんでしょう…私は…7年前に外の世界を見せてくれると約束してもらっただけで」

 7年前の約束…なるほど、これは思った以上に黎星刻は見所のある男のようだ。天子のように力の無いものを助けようとする者…できれば天子共々我々の協力者にし、対ブリタニアの戦力を残したいところだが…

『ゼロ、前方の橋がなくなってる。停車するぞ』

 やはりそうきたか。橋を落として足止め、後ろからの奇襲…だがそんな三流の策がこの俺に通用するとでも?

「藤堂、朝比奈!」

『承知!』『分かってますよぉ』

 策にハマったのは奴等の方、両翼と渓谷に軍を待機させておいた。逆に囲んで叩き潰してやる。

「朝比奈、新型の調子はどうだ?」

『この新兵器凄いよぉ!流石はラクシャータの輻射波動だ!』

 ラクシャータの奴、労いに今度肩でも揉んでやるか。

 

 敵の追跡部隊を返り討ちにし、俺達は斑鳩に回収をさていく。あとは蓬莱島のインドの連中と合流するだけだ。

『ゼロ、トラックが斑鳩へ収容されるぞ。揺れても私は知らんからな』

「ふむ、天子様。難しい話は落ち着いた後でやりましょう。まずはあなたを安全な場所にお連れしなければ」

 揺れに備えてなのか、天子…と神楽耶は俺にしがみついてきた。この反応、一応の信頼は得られたようだな。

 それにしても道中何事も無い運転で何よりだ。中華連邦で過ごして居ただけあってC.C.に運転を任せて正解だったな。まぁ、運転中にピザを食べるのはあまり褒められないが…杉山が「C.C.さんが運転した後は運転席がピザ臭いしたまにハンドルがギトギトしてる」とぼやいていた。普通にやめような。

 

 俺がブリッジに行くと、前方のナイトメア部隊が突破されているという報告を受ける。おかしい…早すぎる。俺の計算ではまだあと1時間は掛かるはずだが…まさかこちらの作戦を読んだ奴が…?

「敵ナイトメアを捕捉しました!モニターに出します」

 全身青に金色フェイスというド派手なナイトメアが映し出された。しかし注目すべきは飛翔滑走翼…中華連邦にそんなものが作れるはずがない

『聞こえているか?ゼロ!ここは通さん!』

 まさかアレに乗っているのは星刻か?

「なっ!?あれは…!」

 ラクシャータのチームの研究員が反応をした。こちらと同じ飛翔滑走翼…なるほど、どこからか流れたか。

「今はあのナイトメアの情報が欲しい。教えてくれないか?ラクシャータ」

「…あれはうちのチームが作ったナイトメア…ハイスペックを追求しすぎて誰も扱いきれなかった神虎よ。…輻射波動こそ装備してないけど紅蓮と互角に戦える機体よ」

 そんなものが敵の手に渡っているとは…

「インドも一枚岩ではないということか、まぁ良い。私の蜃気楼は用意できているか!」

『申し訳ありませんゼロ、要望箇所の最終調整が…』

『さぁ、天子様を返してもらおう。今ならば命までは取らん!』

 まずい…千葉の暁が突破されたということは四聖剣では止められない…!藤堂は補給に入ったばかりで動けない。朝比奈も少し前に補給に入ってまだ出られない。俺が出られればと思ったがそれも無理とは…

『ゼロ、俺と紅月で出る!』

 卜部!?いけない…!あいつらは補給をまだしていない上に長時間戦闘でエナジーもロクに残っていないはず!そう思っているうちに二人は出てしまった。

 

 2対1なのに互角だとは…なんだあのナイトメアは…いや、パイロットの星刻の腕もあるか…!

「どうやら紅月も卜部もエナジーを気にしてあまり派手に動けていないようです…!」

 というより二人はエナジーを出し惜しみせず戦っても決めきれないと分かったから遅滞戦闘に切り替えているように見えるが…それでもまだ整備に時間がかかるとは…

「まだ補給は終わらないのか!?」

『い、急がせてはいるのですが…』

「ゼロ!戦闘に動きが!」

「何!?」

 見ると紅蓮と暁が黄色い紐に捕まっている様子が見える。

『捕らえたぞ!勝敗は決した!』

『それはどうかな!?』

 卜部は自ら拘束された部位を切り落とし、蹴りをブチ込んでいた。

『蹴りだと!?小癪な!』

『捕まえた!これであなたの負け!』

 更に蹴られたことで体勢を崩し、それを紅蓮の右手が捕らえていた。流石はともに黒の騎士団の残党を率いて逃亡生活を続けていただけはある。中々の連携だ。…通常ならば勝ちだろう、だがエナジーが…!

『直に叩きこ…しまった!エナジーが!!』

 その一瞬の隙に絡め取られた紅蓮と、絡めとった紅蓮でそのまま殴りつけるという意表を突く攻撃に卜部機もフロートを破損、ようやく出られた千葉と朝比奈が食らいつくが、中華連邦の大規模な追撃部隊により阻まれてしまった。

 

 捕虜になる…カレンが…!?まだだ、もうすぐこちらの補給は終わる。ならばカレンを助け出せるはずだ!

「カレン!まだ無線は生きているか!?」

『は、はい、すみません失態を…』

 失態だと?寧ろ敵の伏兵を警戒せずに杜撰な補給計画を立てた俺にこそ責任はある。

「そんなことはどうでもいい!必ず助けてやる!いいな!下手に動くなよ!」

『はい、分かっています。諦めません!』

「だが筋トレは欠かすなよ。」

『はい、欠かしませ…』

 くそ、切れたか…!

「斑鳩を反転させろ!」

「しかしゼロ、ここは撤退すべきでは?」

 俺の指示にディートハルトが反論をしてきた。ええい、邪魔をするな…!

「ゼロ、紅月カレンは一兵卒に過ぎません。」

「いいや、違う。間違っているぞ。」

「ゼロ…?」

 俺はマストマスキュラー、サイドチェストからのダブルバイセップスを決める。

「ゼ、ゼロ…何故ここで急にポージングを…」

「私はゼロ。エリア11では多くの団員を私一人の手で戦況を覆し救い出したことがある」

「それは…」

 ダブルバイセップスを維持しつつ、筋肉を更に隆起!特殊繊維で作ったこのスーツすら破き、俺は筋肉を露出する。

「ゼロ、だから何故ここでポージングを…」

「私は地位で人を判断はしない。その者の行ってきた行動と筋肉で判断する。カレンは私の数々の窮地をともに乗り越えてきた仲間だ。それに最近筋肉を付けてきている。それを取り戻せるのに諦めることは私には出来ない!」

「しかしそれは贔屓、偏愛では?それでは組織は崩れます!」

 さらに、さらに俺は筋肉を隆起させる。最早全身から溢れる熱量は真夏の室外機の如し、俺は口からシュウシュウと煙を吐く。

「ゼロ、一体何を!?」

「贔屓?結構。偏愛?だからどうした。私の仲間達にカレンを見捨てようとする者は居ない!黒の騎士団はこの程度で崩れるような柔な組織ではないのだ!」

 ブリッジ内のディートハルト以外の全員が頷き、斑鳩は反転、決着を付けんと動き始めた。

「何を馬鹿な…!」

「インドも一枚岩ではない…裏切って挟撃される危険性がある。ならばここは攻めるべきだ。星刻に教えてやる。筋肉量の違いを!」

「ゼロ…ナイトメア戦に筋肉量は関係ないのでは…」

 

 とは言え、地形は高低差が無く、地位的優位は望めない状況…さらにこちらの軍は言ってしまえば急拵え。俺が指揮するしかないだろう。数は劣るがナイトメアの性能はこちらの方が上だ…

「蜃気楼の整備を急がせろ」

『了解です。』

 相手は俺の策を読める男…更にエナジー不足とは言え卜部とカレンを相手に戦える男だ。奴を前面に押し出しての中央突破をされれば苦しい。そして急拵えの軍、つまりこれは兵の練度で負けているということだ。

「藤堂!神虎は任せて良いか?整備が済み次第私も蜃気楼で加勢する。」

『無論だ。だが、倒してしまっても構わんのだろう?』

「…ふっ、それは残念だ。楽しみが減るな。」

 神虎を藤堂に抑えさせれば射程で劣るとはいえ懐にさえ入ればこちらの方が有利のはず!

「暁隊、撃ち続けろ!」

 しかし敵の突破力が予想以上だ。中央が突破されつつある…が、これは想定通り。敵の先行部隊を囲んで攻撃しつつ、援軍を送る。

「星刻をエナジー切れに追い込めばこちらの勝ちだ…!」

 

「ゼロ!大変です。右方向から川の水が!」

 川の水?運河の決壊か。だがあらかじめ川の水量は減らしてある。残念だが意味は…

『大変ですゼロ!地面が!地面がうわぁ!!』

「何!?」

 何故地面が想定以上に泥化している!?なんだこれは…!

 

「新妻の登場ですわーーー!!!」

 

 こんな時に何故神楽耶様がブリッジに…!それに天子様まで…!おい南!何を何ぼーっとしている!

「あ、ここは確かかんがえ…かんたくちの…」

 かんがえかんたくち…?いや、灌漑開拓地か?

「天子様、そのお話を詳しく聞かせていただいても?」

「あ、えっと…確かここは、その…沢山の男の人たちが手作業で湖を埋め立てたって…」

 

『富を平等にした中華連邦は筋トレしない怠け者ばかりだ。』

 

 …!つまり、怠け者だらけの中華連邦で手作業の灌漑開拓?うまく行くはずがない!確実に手抜きがされている…!まさか…星刻が先行したのもこちらの足止めを…!?この俺が読み負けた!?馬鹿な…!

『…まだ決着はついていない!そうだろうゼロ!?』

 と、藤堂…!そうだ…まだこちらは全滅したわけではない…!とはいえ敵の全軍が進軍を始めている…こちらの輻射障壁も無尽蔵に張れるわけではない、確実こちらの燃料切れが先に来る…!ならばこの場は一度立て直すしかない…!

「艦首ハドロン重砲で敵両翼を一掃しつつ、動力部を守って後退!藤堂と四聖剣は残存ナイトメアの回収と指定ポイントへの撤退を援護しろ!」

『ゼロ…この撤退先は…』

 

 まさか星刻がここまでの男とは…!ますます欲しくなった。この俺並みの知略とこの俺並みの戦闘力…逸材だ…!あとは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 筋肉が欲しいところだな。




天は二物三物を与える(例:脳筋のルルーシュ)。つまり筋肉で歪められたこの世界の星刻は健康体です。

一応、ルルーシュがその場にいない場合は原作とほぼ同じ流れの部分はカットしているのですが、今後は時によってどこぞの死にそびれた四聖剣と担当エリアほっぽってモニモニしてるラウンズのせいで1話の文字数が長くなる傾向にあります。

●オマケ● 唐突な次回予告(偽)
ディートハルト「援軍は存在する!この国の鍛えられたマッスルガイ!その全てが援軍!」

●オマケ● 最近頻発の次回予告(真)
ルルーシュ「この蜃気楼は強靭!そして無敵!即ち最強ッ!!」

TURN11「筋 肉 の 力」


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TURN11 筋 肉 の 力 (想いの力)

「ミレイ会長は無事なの!?」「わかんないよ、中華連邦のことは…」
 ルルーシュ(?)は受話器を静かに置き振り返る。
「お土産買えそうにないからごめん だってさ。」
「何言ってんだか」
「良かった…。それにしてもルル、最近力加減覚えてきたね。昔は受話器を取るたびに破壊するか置くたびに破壊してたのに。」
「えっ…あ、あぁ…まぁね…(ルルーシュ様、そんなに頻繁に受話器の破壊を…!?この篠崎 咲世子、握力や受話器を置く動作で受話器の破壊は不可能です…一生の不覚ッ!)そ、それよりシャーリー…校内放送でみんなに教えてあげてくれるかな?」
 そう言ってルルーシュ扮する咲世子はシャーリーにハンカチを渡す。
「えっ…ありがとうルル。珍しいね、ハンカチだなんて…いつもはタオルなのに」
「え?あー…あはは…たまたま貰い物でさ…。(しまった…!確かにルルーシュ様の発汗量を考えればハンカチなどでは到底足りない…!少し考えればわかること…!)」
 シャーリーの校内放送がかかる中、咲世子は一人反省を行なっていた。
「ブラザー!ちょっといいカイ?」
 ロロに呼び出された咲世子は自分の対応の失敗を咎められることを覚悟した。しかし、ロロは肩を叩き白い歯を輝かせながらサムズアップをした。
「あれくらい問題無いデス!ブラザーはそんな暗い顔はしないヨ!さ、笑顔笑顔デス!」
「…はい!」

それでは本編スタートです。


「残存全ナイトメア収容完了しました。」

 天帝八十八陵での籠城策、この地形ならば相手は簡単には攻めて来られない。特に仮にブリタニアが参戦した場合、止めがさせないはずだ。シュナイゼルならば天子殺しは何としても中華連邦にやらせるはず…。だが、そもそもとして天子をブリタニアに差し出す連中だ。お構い無しに攻撃してくることは有り得る…。

「なるほど、敵は正面から攻めるしか無いがこちらには艦首ハドロン重砲があるから…」

 とは言え連射が効かない。物量で捩じ込まれれば対応はしきれないだろう。だが、仕込みはある。あとは大宦官がこちらの狙い通りに動けば良いのだが…。

「前方で中華連邦同士の同士討ちが始まっています!」

「あれは同士討ちと言うよりも大宦官と星刻…つまり反乱軍が鎮圧されようとしているのだろう。見ればナイトオブラウンズの機体が見える。ブリタニアに支援を要請したか…。」

 だが、逆に言えば星刻とは組みやすくなった。ならば逆転の可能性はある!

 振動と爆発音でブリッジ内に悲鳴が起きた。ここを爆撃し始めたか…いよいよ天子ごと殺す気になったようだな。

「神楽耶様、天子様を連れて別室へ。天子様にこれ以上人殺しの光景を見せたくはありません。」

「分かりましたわーーー!!!天子様行きますわーーー!!!」

 神楽耶と天子は手を繋いでブリッジを去っていった。あの二人の年齢ならナナリーと仲良くできるだろう。国や人種を変えて手を取り合う姿…うむ、実現したい。

「神虎とブリタニアのナイトメアが戦闘を始めました!」

『ブリタニアはどけ!これは我が中華連邦の問題だ!』

 藤堂と四聖剣には航空爆撃部隊の迎撃を命じた。これで少しは天帝八十八陵も耐えてくれるはずだ。

「私も暁で出よう。今は一機でも対空戦力が欲しいだろう?」

「捕まるようなヘマはするなよ」

「分かっている」

 C.C.を見送りつつ、俺は蜃気楼の整備状況を確認する。結局ゴタゴタのせいで整備が進んでいないのだ。整備が済み次第俺も出たいのだがな…

 

 遠方でモルドレッドがガンルゥを破壊しているのが見える。奴の極太ビームなら天帝八十八陵の破壊ができるはずだがそれをしてこないとは…やはりとどめは中華連邦にやらせるつもりらしいな。ならばここで私自ら蜃気楼の整備の時間を稼ぐしか無い。ディートハルトに頼み、大宦官へ通信を繋げさせた。

「大宦官よ。我々の負けだ。攻撃をやめてほしい。」

『ほう?直々に敗北を認めるつもりかな?しかしもう遅い。」

「どうしても攻撃をやめないつもりか?このままでは天子も死ぬぞ!」

 しかし…何だこいつらの体型は。筋肉のきの字もない…醜悪だ!醜悪な体型のせいで心までもが醜悪になっているに違いない!

『天子などただのシステム。』『代わりなど幾らでもいる。』『取引材料にはならんな』

 何…天子に代わりだと…!?まだあんな可憐な少女を…!?恐るべし中華連邦…!

「貢物としてブリタニアの爵位以上を寄越せと言うのか?」

 そう、大宦官は元は天子とオデュッセウスの結婚でブリタニアの爵位を得る腹積りだった。だからコイツらはこんな真似をしている…

『ほほ、耳聡いことを…』『安い見返りだったよ実に』

「領土の割譲と不平等条約の締結がか!」

『我々には関係ない。』『そう、ブリタニアの貴族となる我々には』

 自分達はブリタニア家族だから不平等条約も領土の割譲も関係無いと言いたいらしい…だったら…

「残された人民はどうなる?」

『ゼロ、君は道を歩く時蟻を殺さないように気をつけて歩くのかい?』

 気を付けても殺してしまうとは言えない。

『尻を拭いた紙は捨てるだろう?それと同じだよ』

「国を売り、主を売り、筋肉もつけず民を売り、その貧弱な握力で何を掴むつもりか!」

『…それ筋肉関係なくないか?』『主人や民など幾らでも増やすことができる。筋肉のようにな』

『『『HAHAHAHAHAHA』』』

 時間稼ぎの会話にも流石に限界があった。すり抜けた爆撃部隊により天帝八十八陵の崩壊、結果として輻射障壁機関の停止が報告される。くそ、甲板が剥き出しにされるのが想定よりも速い…!

「太っている!お前に筋肉を語る資格はない!!筋トレも食事制限もしたことのないメタボ腹が!!」

『それ趙 皓だけじゃ…』『趙 皓そんなに泣くなよ…割と事実だろ?』『だってワシ太りやすい体質なだけなんだもん酷いよ酷いよ…』

 大宦官を無視しつつ、蜃気楼の整備完了の報告に目を通す。よし…!

『ゼロ様大変ですわーーー!!!天子様が甲板に飛び出てしまいましたわーーー!!!』

 何故天子様が甲板に!?いけない、今からでは間に合わん…!

「神虎が斑鳩の甲板に取りつかれました!…いや…これは天子様を守っている…?」

 流石は星刻!天子の窮地を感じ取って駆けつけたか…!ならば時間稼ぎはしてくれるはず!ダッシュで蜃気楼まで駆けつけてさっさと乗り込んで起動させる!仕込みの方はディートハルトからOKが出ている。ならば次の一手で戦局は逆転するはずだ。

『お逃げ下さい天子様!折角外に出られたのに、あなたは恐らくゼロの分厚い胸板くらいしか見ていない!ここは私が防ぎますから!』

『でも、あなたが居なくちゃ…星刻…あたしは…』

 よし、よくぞ耐えた星刻!今駆けつけるぞ!

『誰か!誰でもいい!彼女を救ってくれ!!』

 甲板に出ると今にもいつ大破してもおかしくない量の砲弾をひたすら防ぎ続ける神虎が未だに天子を守っている姿が確認できた。自らを犠牲にしてでも天子を守るとは、やはり星刻、お前は素晴らしい人材だ!是非とも欲しい、故にここでお前を失うわけにはいかない!

 

「分かった…聞き届けよう!その願い!!」

 

 飛んでくる砲撃に対し蜃気楼が持つ世界最高峰の防御力をもつシールド、絶対守護領域を展開する。

 着弾の煙が晴れ、蜃気楼の姿が露わになっているだろう。さぁ、刮目せよ!全ての人々よ!

「幼き女性を命懸けで守るその姿、私は感動した!我々黒の騎士団は力を持たない弱者を守るために組織された!それは日本人だけではない!この中華連邦にも居たのだ!故に…我々は手をかそう!」

『ゼロ…!?お前が守ったのか…しかし、この状況をそのナイトメア一機だけで覆せると!?』

 さらなる一斉射撃に対し、再度絶対守護領域を展開して防ぎきる。

 あとは敵の数を減らすとしよう、相転移砲の準備はできた。凝固した金属プリズムを射出し、それに向けて相転移砲を放つ事で敵の戦力を大幅に削ることに成功する。

「いいや?違うな、間違っているぞ!この状況を覆すのは私だけじゃぁない!君たち中華連邦の人々の力が必要だ!」

『何…!?』

 今頃中華連邦内では一切放棄が行われているはず。我々と大宦官との会話を、恐れ涙を流す天子の姿を見てな…!

『ゼロ!君の相手は!』

 来たかスザク…!ブラックリベリオンの借りを今度こそ返してやる!俺は両腕のハドロンショットを放ち牽制を行う。

『その機体、接近戦は不利と見た!一気に決めさせてもらう!』

 ふははは!愚かなり枢木スザク、この俺がそんなただの砲戦仕様の機体に乗るとでも?我が蜃気楼は最強の防御を持つ。

「受けるがいい!絶対守護領域を!」

 展開した絶対守護領域でスザクの剣を防ぐ。

『硬い…!』

 スザクめ、隙を晒したな?確かに蜃気楼は『防御に主体を置いた』だが、いいことを教えてやろう。

 

 『攻撃こそ最大の防御』だということをな!

 

 そして防御に主体を置いた蜃気楼というナイトメア、その本当の戦い方を見せてやる。最大最高硬度の絶対守護領域を拳に展開、そしてそれで…

 

 

 

 殴るッ!!

 

 

 

『何!?ブレイズルミナスでも防ぎきれない!?』

 スザクの展開したシールドはガラスを割るかのようにパリンと砕けた。

『まずい…!』

 スザクめ、蹴りで距離を取ったな?攻撃は最大の防御、だが攻撃は当たらなければ意味がない、特に素早く動いて全て躱せば、射程から出て仕舞えば…と。

 

 しかし!この蜃気楼は機動力にも富むのだよ!

 

 俺は自分の背後に絶対守護領域を展開する。

『何故自分の背後を…まさか!?』

 ふははははは!そのまさかだよスザク!絶対守護領域を蹴り、加速度を得た蜃気楼で再び…

 

 

 

 

 殴 る ッ ! ! !

 

 

 

 一撃目は躱されたが距離は詰まった!両腕に絶対守護領域を展開し、引いた肘の箇所にもたわむような絶対守護領域を展開することで肘に反発力を与える!この加速した連打、これはランスロットでも躱せない!

『こ、これは!弾力のあるバリアの反動を利用して威力を増幅している!だから速い!リングロープの反動を利用するボクサーのパンチのように!ふ、防ぎきれない!!」

「この蜃気楼は強靭!そして無敵!即ち最強ッ!!」

 防御のためにために掲げられた両腕ごと破壊し、蜃気楼の拳がランスロットを捉える。

『自分はまだ!』

 スザクは蹴りを放ち距離を取るとそのままフロートシステムを使い撤退していった。

 そしてスザクの敗北を機にブリタニア軍は撤退を始めていく。

「今だ!ナイトメア部隊!全速全身だ!!星刻、大宦官の始末は君に任せたいが?」

『言われるまでもない。』

 蜃気楼で神虎を運びつつ、神虎の天愕覇王荷電粒子重砲で道を切り開く。

「君に道を切り開いてもらったんだ。ならば君の道は私が切り開こう。」

 再び絶対守護領域を拳に纏いぶん殴る。中華連邦の地上戦艦の装甲を一撃で粉砕された。

「あとは任せよう」

『分かった』

 

 その後、星刻にカレンの身柄を聞くがカレンはアヴァロンに連れていかれたと報告を受けた。カレンの処遇はナナリーがいる限り最悪の事態はないだろう、ならば二人を同時に助け出すまで…!待っていてくれナナリー!そしてナナリー!…あ、間違えたカレン…!

 

 大宦官の残党を殲滅し、斑鳩に戻った俺達は天子の無事を確認した。

「ゼロ、天子の婚姻が無効になったと世界中に喧伝する必要があります。その時に同時に日本人の誰かと結婚していただくのが上策かと考えますが…」

 分かりやすすぎる妥当な手…だが、本当にそれでいいのだろうか?それは政略結婚と同じではないだろうか…ナナリーの政略結婚を認められないのと同じで天子の政略結婚を認められないものもいるはず…。

「よろしければ私の方で候補者のリストアップを…」

「なりませんわーーー!!!」

 突然神楽耶が叫び出した。いや、神楽耶が叫んでるのはいつものことか。

「神楽耶様。これは高度に政治的な問題で…」

「違いますわーーー!!!単純な恋の問題ですわーーー!!!」

「そ、そうだな…わ、わたしだってその…いやだぞ、知らん男と結婚させられるなど…」

 そう言ってC.C.は俺のマントを引っ張ってくる。

「我々は戦争をしているのですよ?」

「ディートハルトは黙っていろ」

「参謀の私を呼び捨てにするなど…!」

 やけに女性陣が否定的だな。ここはどうするべきか…

「私は一人で静かに考えたい。少しだけ先を外す。」

 ギアスで無理矢理賛成させる手もある…だが、本当にそれでいいのだろうか。というかそんなことにギアスを使うのは勿体無い気がする。いざとなったら拳で首を縦に振らせるか…?いや、それはなんかもっと良くない気がする…いっそのこと全員に記憶抹消パンチを…?あり得ない!一人目には不意打ちで成功するだろうがその後が…というか黒の騎士団の女性陣から猛烈な反感を買う気がする…!いけない、一人で答えの出る問題ではないようだ…しかし誰に相談すれば…って電話?シャーリーからか。

『あ、ルル?今電話大丈夫?』

「なんだい?シャーリー。わざわざ電話じゃなくても…」

 いけない…ここのところ咲世子達からの報告に目を通す余裕がなかった…!ボロが出てしまわないように気を付けねば…

『会長の卒業イベントどうしようかなって。教室だとリヴァルから筒抜けになっちゃうと思って』

 ありがたい…そういう話題ならば報告は関係ない!しかし卒業イベントか…俺たちがあれこれ考えるより…

「いっそのこと会長に決めさせてあげたほうがいいんじゃないか…?」

『それもそっか!』

 よし…!なんとか電話は乗り切った!あとは天子の…いや、ここは第三者目線からのアドバイスがあった方がいいか?

「なぁシャーリー。ちょっと相談いいかな。家の事情で別れた方が良さそうなカップルがいて、説得しようとしてるんだけど…」

『えっ?別れたいの?それ、本人たちは…』

「いや…」

『ダメだよ!恋はパワーなの!誰かを好きになるとね?すっごいパワーがでるの!』

 なんだと!?恋がパワー…パワー…

 

 

 

 つまり筋肉…恋は筋肉だった…!?

 

 

 

 何ということだ。つまり恋愛を蔑ろにしていた俺は恋という筋肉の鍛錬を怠っていたということ…!くそ!何がマッスルガイだ!!全ての筋肉を極めてこそ真のマッスルガイ!恋という筋肉を鍛えそびれた俺はエセマッスルガイ、偽マッスルガイ、にわかマッスルガイだ!!俺は所詮見せ筋野郎だったと言うのか!

『……早起きしちゃったり、マフラー編んじゃったりって…きいてる!?』

「あ、あぁ、つまり恋は筋肉ってことだろ?」

『?????????』

 うん?何故シャーリーは黙ってる…?

『…その、ルルにはないの?誰かのためにいつも以上の何かが…』

 …そうか!俺はナナリーを守る為に筋肉を付けた。つまり俺はナナリーに恋を!?何ということだ、俺は既に真のマッスルガイになれていたとは!

「シャーリー、想いには筋肉をつける原動力になる、そうなんだな?シャーリー!」

『え?』

「ありがとうシャーリー!君に相談してよかった!」

『待ってルル!多分誤かっ』

 よし、真のマッスルガイ…いや、伝説の真トゥルーマッスルガイたる俺からこれから真のマッスルガイになる素質をもつ星刻にアドバイスをしなくては!の伝説の真トゥルーマッスルガイともなれば最早己の筋肉が鍛えられているなど当然、周りの筋肉をも鍛えてこそだろう!

「ゼロ様が戻ってきましたわーーー!!!」「なんかいつも以上に張り切ってないか?」「身体に絶対守護領域でも纏ってんのかい?」「暑苦しい肉ダルマだな…」

 

「星刻よ!君が真に天子を守りたいと思うならば…筋肉を鍛えよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「?????????」」」」」」」」」

 

「星刻もあなたみたいに厚い胸板になれるのですか?」

 天子の疑問に俺は首を縦に振る。

「無論です。星刻には貴方を守るという想いがある!ならば、肉体も中身をも真に鍛えられた私のようなマッスルガイになれるだろう!」

「待ってくれゼロ、私は…」

「天子よ、想像してほしい。分厚い胸板、脚のように太い腕、逞しく頼もしい脚、割れた腹筋、鬼のような背筋の星刻を…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「格好良い!私、見たい!そんな星刻が!」

 

「天子様!?」

 天子も見所があるな。この際天子にも筋トレをしてもらうべきか?国の代表だし、力強い方が良いかもしれないな…まぁまずは星刻からだ。

「…て、天子様が望まれるなら…?」

「これから私が君を鍛える。そして君は天子を守る。そして天子が国を導く。共に歩もう、日本と中華で。」

 俺と星刻は固い握手を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛い痛い痛い痛い!!私の手を砕く気か貴様!!!」

「何をいう!既にトレーニングは始まっているぞ!!!」

 

 交わせなかった。




スザクの「リングロープの反動を利用するボクサーのパンチ」のセリフには元ネタがありますが…皆さん知ってますかね?

後半の脳筋っぷりに作者もついていけていません。自分でも何書いてるのかわからなくなってしまいました。

●オマケ●
オリジナル(?)ナイトメア
・蜃気楼(脳筋仕様)
脚部が瞬発力のある蹴りが放てるようにバネなどが仕込まれている。これにより、展開した絶対守護領域を足場に高速な空中移動が可能。(但しルルーシュ以外がこれをやろうとするとGでもれなく気絶する)
また、絶対守護領域を拳に展開することで近接格闘が可能。素早い機動力、高い砲撃性能、堅牢な守り、そして近接戦闘力という全てを兼ね備えたナイトメア。更にフォートレスモードに可変する。

ラクシャータ曰く難産。

●さらにオマケ● 唐突だけど恒例の次回予告
ルルーシュ「流石だな咲世子。なかなか練られたスケジュールだ。」
ロロ「ブラザー!?」

次回、TURN12「マッスルタックル!」


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TURU12 マッスルタックル!(ラブアタック!)

 それは不幸な事故だった。本を返しにきたシャーリーとルルーシュに扮する咲世子は図書館本棚の角でぶつかってしまう。体勢を崩したシャーリーの腕を掴み咲世子が手繰り寄せると自然と二人の唇と唇は急接近。そして咲世子の「こんな時ルルーシュならば」が暴走した。

 咲世子の中にあるルルーシュの記憶。それは…
『おはよう、ナナリー』『おはようございます、お兄様』からの流れるような頬へのキス
『おやすみ、ナナリー』『おやすみなさい、お兄様』からの流れるような額へのキス

 つまり、ルルーシュ=挨拶のようにキスをする男=キス魔

 咲世子は未だに自分には挨拶のキスをしてくれたことがないと少しだけ不満を感じつつシャーリーに挨拶のキスをブチ込んだ。無論、唇と唇のである。

 それでは混沌とした本編スタートです!(悪ふざけが過ぎて約9000字と長くなりました)


 中華連邦の残党は藤堂達だけでも対応可能。そうなると俺は租界のゲフィオンディスターバー関連を進めるべきだろう。本命であるギアス嚮団も当たりを付けるまで時間がかかるだろうからな。一度学園に戻っておくとしよう。

 嚮団を壊滅させればこれ以上厄介なギアスユーザーの刺客を相手にしなくて済む。俺のような命令を下せるギアス、ロロのように体感時間を止めるギアス、シャルルのように記憶を弄れるギアス…そしてマオのような心を読むギアス。ギアスが人に作用するものと考えると例えば未来を予知するギアスや、人から敵意を持たれなくなるギアスなど、様々なギアスが思い浮かぶ。どれにしても使われたら厄介だ。

 こちらはC.C.がいるとは言え、こいつは皇帝を狙われている。一人だけギアスが効かないような素振りを見せればすぐに正体がわかる。つまりギアスは効くにしても効かないにしても皇帝にとっては都合がいい。

 まだ皇帝から手を打たれていない事を考えると既に潜り込まれているという可能性は低いが…念のために機械による監視やドローンの製造を進めるべきだろう。それにギアス嚮団を襲うとなれば対ギアスの部隊を編成する必要がある。人間はギアスを受ける危険性があると考えれば最小限にするべきだろう。それに事情を知らない者に話さないことが多くなるのは都合が悪い。要らぬ不信を招くだろう。

 服を脱ぎ綺麗に畳んでからチーズ君を抱えて寝転がるC.C.を尻目に…改めて見てみるとC.C.はまるで筋肉がないな…

「おいC.C.、お前ちゃんと鍛えてるのか?」

「…何が言いたい?」

 俺から見てもピザばかり食って居る割には痩せてはいると思う。本人も露出を恥ずかしがらないくらいには自分の体型に自信を持って居るのだろう。だが…

「筋肉がまるでないと言っている」

「…不老不死の身体だからな、成長が止まっている。故に私は鍛えても筋肉がつかない」

 なんだその地獄のような肉体は…あり得ない…!

「おい、そんな目で見るな。 筋肉がつかないなんて可哀想 的な目で見るなおい!」

 なんて可哀想なC.C.…鍛えても筋肉がつかないなんてあんまりだ…可哀想だから今度戻ってくる時何かお土産買ってこよう…。

「おい聞いてるのか!おい!私を憐れむのはやめろ!」

 C.C.には斑鳩に残り嚮団の位置が分かり次第連絡を送るように伝え俺はエリア11へと向かった。

 

 機密情報局の所有物である水族館から蜃気楼を浮上させ、俺はエリア11に帰還した。

「おかえりなサイ!ブラザー!」

「ただいま、ロロ。咲世子、留守中に何か変わったことはあったか?」

「緊急のものは特に…詳細は指示されたファイルに入れてあります。また、出版した写真集の売り上げについても例の口座へ移し替えが完了しています。」

「そうか、ご苦労だったな。」

 今後は超合衆国中華関連でまた金が必要になるからな…第四段にロロとのツーショット写真集でも出した方が良いだろうか。

 そんなことを考えているうちに咲世子は変装を解き、特殊スーツも縮んでいく。

「しばらくはこっちにいるんデス?ブラザー」

「あぁ、ゲフィオンディスターバーや捕まったカレン、ナナリーの救出とその障壁となるラウンズ対応があるからな」

 この間はスザクに勝てたものの、スザクに掛けた「鍛えろ」のギアスを甘く見るのは危険だ。今頃奴は己を鍛えて俺への対抗策を講じているだろう。我ながら厄介なギアスをかけたものだ…

「ボクもヴィンセントで闘いマス。この筋肉が見せ筋じゃないところヲ…」

「あぁ、お前には時が来たら戦ってもらう。それまでは引き続き鍛えろよ。あぁ、あと…真のマッスルガイはな、恋という筋肉も鍛える必要があるんだ。覚えておけよ」

「恋…オーケーブラザー!」

 …?なんで今こいつは頬を赤らめた?

 

 学園に戻ると俯くシャーリーと遭遇した。いつも活発なシャーリーが…何かあったのか?もしかして怪我とか…

「大丈夫かいシャーリー?怪我とか…」

「ねぇ、ルル。昨日のことなんだけど…」

 昨日…?いけない、昨日シャーリーと何があったかなんて聞いていないぞ…!そう思っていると、シャッター音がなった。そして…誰だこら、乳首をさするな。おいこら。

「おはよう、ルルーシュくん」

 ナイトオブシックス…!?

「おはようモニ!」モミモミ…

 ナイトオブトゥエルブまで…!?あと挨拶がてらに乳首をさするのはやめような。

「やぁ、お久しぶりですね」

 生徒会室からはナイトオブスリーが…!何だこれは…!?まさか俺の動きが読まれていたのか!?

「副会長のランペルージ卿!私たちは…」

「俺たち、だろ?」

「あぁ、そっか。俺たち、この学園に入る事にしたから」

「私は付き添いモニ」モミィ…

 学園に潜入…スザクが総督のナナリーを補佐しているから代わりの人員ということか…!未だに乳首を…というかさっきから乳首を擦るスピードが加速していっている…。やめなさい。

 ナイトオブトゥエルブは付き添いと言ったが恐らくは内部潜入の二人の要請を受けたらすぐさまナイトメアで突入してくるに違いない…!隙が無い…!何ということだ…!

「普通の学生ってのを経験したいんだって」

「いま話し方を教えてたところ」

 クソ、ナナリーの安全を確保しつつ学園に潜入したラウンズの対応をしなくてはならないとは…!

 

 その後、執拗に乳首をさすりつづけるナイトオブトゥエルブを無視しつつナイトオブスリー、シックスに学園生活及び生徒会の説明をし、一旦の解散を果たした俺は地下司令部にて咲世子の報告を受けた。

「ナイトオブラウンズが生徒会に…その問題もクリアしていないというのにこれは何だ…?俺がシャーリーと!?」

「はい、キスをさせていただきました。」

「ナンダッテ!?ボクもまだしてもらって無いノニ!?」

 いやロロ、俺とお前のキスシーンなんて一生来ないぞ。きてたまるか。…後で咲世子に絶対にロロとはキスをするなと厳命しておくか…

「あの、いけなかったでしょうか?昔からルルーシュ様は昔はナナリー様に頻繁にキスをされていたので…その行動を考えれば不思議ではないと」

 それはナナリーだからだ…!というかよく記憶を書き換えられた俺はロロにキスをしなかったな偉いぞ…!よく頑張ったと褒めてやりたいところだ…!

「咲世子はまぁ、よくはやってくれている…しかしシャーリーにキスとは…」

「あと、ルルーシュ様、明日のスケジュールです。」

 人間関係は円滑にと伝えてあったし、何件か予定は埋まって……………ん?

 

7:00 マリー 手作り弁当

9:00 ジゼル 美術館

10:30 アリス ショッピング

12:00 ドナ 水族館

…etc

 

 なんだこれは…!朝っぱらから女性とデート…?いつもはその時間は筋トレだというのに…!さらに睡眠時間が3時間?そんな睡眠時間では筋肉の回復が追いつかない!というかろくに筋トレする時間がない!!これでは真のマッスルガイとしてのボディが維持できない…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや、待てよ?

 

 デート=恋 恋=パワー パワー=筋肉 

 

 つまりデートもまた筋肉…!つまり真のマッスルガイたるもの、デートすらも筋トレとして使えば良いという事ではないか!?まさか咲世子、俺の行動を先読みしたスケジュールを…!?

「流石だな咲世子。なかなか練られたスケジュールだ。」

「ブラザー!?」

 

 7:00 マリーの手作り弁当

「はい、ルルーシュくん。どうぞ!」

 運良く今日はチートデイだ。ありがたくいただくとしよう。ベンチに腰掛けると見せかけての空気椅子。さらに太腿の上にマリーを乗せる事で負荷をアップ!エネルギー補給と筋トレを兼ねた素晴らしい時間だ。これぞ真のマッスルガイ。

 

 9:00 ジゼルと美術館巡り

「あ、あの…ルルーシュくん、流石にこれは恥ずかしい…」

「大丈夫、みんな絵画とか像を見てるんだし、誰もこっちを気にしてないよ。それに仮にこっちを見ても俺の筋肉に目を奪われるはずさ」

「そ、それもそうだね?」

 美術館で走るなど言語道断。真のマッスルガイは心もマッスルガイ。故に俺は美術館では大人しく…

 

 ジゼルを抱き抱え、爪先立ちで歩いていた。

 

 これにより通常よりもより多くの負荷を脹脛にかけることができる。芸術を見ながら俺の芸術的筋肉がより洗練されるとは、これぞ真のマッスルガイ。

 

 10:30 アリスとショッピング

「次はどこ行く?」

「じゃあ、ここの店の鞄が見たいな」

「分かった。じゃあしっかり捕まっててくれよ」

「う、うん!」

 アリスを抱き抱え俺は走った。ショッピングモールならば使える空間は広い。さらに高速で移動することでショッピングにおける商品選びの時間を長く取ることができる。筋トレと効率的ショッピングを兼ね備えられるとは…これぞ真のマッスルガイだな。

「はいこれ、ルルーシュ君にプレゼント!」

「えっ、ありがとう。」

 プレゼントか…俺も色々買っておくか

「次行きたいところあるんだけど、いいかな?」

「もちろん!」

「じゃあ、捕まっててくれよ!」

 

 12:00 ドナと水族館

「ごめんルルーシュ君、今なんて?」

「今からイルカショーだろ?俺も一緒に出ようかと思って」

「???????」

 俺はいうが早いか筋肉の膨張で服を破りさり、あらかじめ着用しておいた海パンフォームに着替えを完了した。

「あっ…筋肉凄…」

「じゃあ行ってくるから」

 そのままプールにダイブ。イルカたちと泳ぎの速さやジャンプの高さを競い合った。

 

 まぁ、イルカと勝負して俺が負けるはずがないがな。

 

「本日のイルカショー、優勝は飛び入り参加のルルーシュ君でーす!…なんで!?」

 デートついでに泳ぐ事で全身の筋肉を鍛えられる。さらにショーを盛り上げる事で周りの人間をも喜ばせることができた。これぞ真のマッスルガイ。真のマッスルガイは周りの人間を幸せにしてこそだ。

「すごかったねルルーシュくん!でも何でイルカより早く泳げてるの???」

「それは…筋肉さ!」

「そっかぁ!」

 

 水族館でドナと別れ、そのまま蜃気楼へ乗り込み、中華連邦へ向かう。ゼロの服に着替え、上海にて通商条約の提携をこなす。ふと星刻の体が目に入る。うむ、前よりも良い体になったな。褒めておこう。人間は誉められることでモチベーションが上がる。自分の作ったものに感想を言われると嬉しいものだからな。

「星刻、早速筋トレの成果が出てきたようだな。よい身体付きになってきているぞ」

「そうかな?君の指導とメニューが良いからだろう。」

「違うな、間違っているぞ星刻。君の天子を守り支えるという想いに眠れる筋肉、マッスルガイとしての素質が覚醒したのだ。」

「ふっ…そうかもしれないな」

 新たなマッスルガイの育成もこなす。それが真のマッスルガイ。…おや?天子様も前より…おっと、忘れるところだった。

「おいC.C.」

「なんだ?私にプレゼントでも…」

「ほら、タバスコだ。ラー油しかないとボヤいていただろう」

 業務用のタバスコを手渡し、さっさと蜃気楼に乗り、今度は帰国。しかし真のマッスルガイは移動時間でも筋トレを欠かさない。限られた空間を有効に活用して筋肉トレだ。更にそれだけじゃない!移動は自動操縦、つまり睡眠を取ることが可能!移動と筋トレと睡眠の両立。この効率的行動こそ真のマッスルガイに相応しいだろう。

 

 次はシャーリーと映画のレイトショーだ。時間を確認するとまだ待ち合わせよりも時間があるな。逆立ちで向かおう。すると、俺の視界に誰かの足が映った。視線を上げると

「逆さマッスルガイ、記録」

 カメラを持ったピンク髪の女子生徒…つまりナイトオブシックスのアーニャが現れた。まさか咲世子の奴ラウンズまで…?

「余裕があるなら尋ねたいことがある」

 逆立ちしたままでは失礼なので腕のバネを使い空中に跳び上がり、そのまま縦に3回転半して着地する。アーニャは俺にある写真を見せてきた。

「体型が全然違ったから全然ピンとこなかったけど、これもルルーシュ?」

 見せられたのは幼い頃…つまり皇子だった頃の俺の写真。薔薇を持って微笑んでいる。しかし今みればなんて貧相な身体だ。似ても似つかないな。しかし、これは恐らく皇帝の罠!なんとか誤魔化すしかない…!いざとなれば記憶抹消パンチを使ってでも…!

「…人違いでは?ほら、俺ってこんなにムキムキですし」

「そっか」

 アーニャはあっさりと納得し去っていった。…拍子抜けだな。

「あ、ルルーシュ先輩!今度デスマッチ連れてってくださいよ!命かける奴!」

「デスマッチのこと話したら是非行きたいって」

 ナイトオブスリー…お前そんな細い身体でよなそんなことが宣えたな…というかリヴァルもデスマッチのことを言いふらすな普通に犯罪なんだぞ。そしてそれに行きたいだと?こいつサイコパスかなにかか…?いや、ナイトオブラウンズな訳だし、もしかしたら強いのか…?…まさか、自分の筋力量を誤認させるギアスの持ち主!?いや、そんなことよりもシャーリーとの約束が…!

「きゃー!ルルーシュくーん!」「腕にスタントファーでも付けてんのかい」「私もう待てない!」「わたしもー!」「アタシもヨン」「肩にナイトメアでも乗っけてんのかい?」「ブラザー!」「まってー!」「ルルーシュくん今日もキレてるよー!」

「くそ!勘弁してください!」

 俺は駆け出す。俺の全力疾走に追いつけるやつなど…

「ブラザー!!」

「ロロ!?」

 居た。

 我がソウルブラザーのロロだ…!前方には次の約束の相手シャーリー、後方にはロロ…いや、お前は我慢しろよ…クソ!こうなったら…

「シャーリーすまない!」

「ちょっ!?」

 すれ違いざまにシャーリーを抱き抱え、スピードを落とさずそのまま駆け抜ける。デート(?)をこなしつつ逃走して更に脚力も鍛えられる。さらにロロの脚力も鍛えられるのでなんと効率的な行動だろう。まさに真のマッスルガイに相応しい行動だ。そういえば昔ナナリーもこうやって抱き抱えて走ったっけ…

「ブラザー!ボクにもキッスをくだサイ!!」

「ふざけるなロロ!俺のキスは愛している女性限定だ!」

「性別なんて関係ありまセン!!」

「お前になくても俺にはあるんだよ!」

「えっ、ルルじゃあ私のこと…!?」

 しまった…!完全にナナリーを想定して喋ったつもりが…!

「くそ!済まないシャーリー、君とのレイトショーはお預けになりそうだ…!お詫びにプレゼントを…君の髪の色に合いそうなドレスをと選んだんだけど受け取って欲しい。…あとしっかり捕まっててくれ!ロロを振り切る!」

 駆け抜けながら買っておいた洋服を手渡す。シャーリーがより強く俺にしがみついたことを確認すると更に加速させるために体を傾ける。

「あ、うん、ありがと…レイトショーじゃなくても私は別に…」

「ブラザー!!!」

 馬鹿な…振り切れない!?

「しつこい奴!!」

 いけない!このままでは追いつかれ…

 

「ルーーーーック!!」

 

 走りながらチラリと声がした方を見ると会長の姿が見えた。

「決めました!私の卒業イベント!!名付けて、キューピットの日!当日は女子にこのピンクの帽子、男子は青の帽子を被ってもらいます!そして相手の帽子を奪って被ると…生徒会長命令でその二人は恋人同士になりまーす!」

 なんだその倫理観に問題ある会長命令は…!するとロロが急に足を止めてミレイへと向かっていく。

「ミレイ会長!同性ハ!?同性はどうなりますカ!!」

 おいやめろ、必死すぎて怖いぞ

「ど、同性はダメかな…」

 よし、ならばロロの魔の手からは逃げられるな…!

「じゃあボクにピンクの帽子ヲ!!」

「う、うん、わ、分かった…」

 会長が押し負けた!?何ということだ。こちらを振り返り白く輝く歯が見えた。ロロの目が…肉食獣のそれに…!いけない!何とかしなければ…!

「大丈夫?ルル…汗すごいよ…?」

「あぁ…ごめんシャーリー。」

 

 ロロに追われながらでは真のマッスルガイになどなれない…!こうなればキューピットの日、これをうまく活用し万事を解決してやる…!そして俺にとって最大の障害はロロ。こいつさえ仕留めればあとは俺の筋肉量で何とでもなる。

「聞こえるか?咲世子」

『はい、ルルーシュ様。でも本当に宜しいのですか?ロロ様を遠距離から狙撃するなんて』

「問題ない、使用するのは熊などに使用する麻酔弾の麻酔を濃縮したもの、これならばいくらロロでも確実に眠らせられる」

『あ、え…あ…はい。かしこまりました。』

 ロロが眠ればあとは時間切れまで走って逃げればいいだけだ。

『間も無くキューピットの日を開始します!ターゲットから最低3mは離れてくださいね!』

 俺の初期位置はグラウンド。ここならばロロを確実に射殺…じゃなかった眠らせられるだろう。頼んだぞ咲世子。

『…帽子を取る方法は問いません。チームを組んでも動画を使っても、筋肉でゴリ押しても…では、スタートの前に私から一言…』

 …嫌な予感がする。なんだか、とても…!

『3年D組ルルーシュ ランペルージの帽子を私のところに持ってきた部は部費を10倍にします!』

 なんだと…つまり俺は殆どの学生…男子をも相手に逃げることに!?くそ!最後まで悪ふざけを…

『それでは!スタート!』

 パンパンという花火の音に混じっての発砲音が…ダダダダダダダ‼︎という音が聞こえる

「ノー!咲世子め、ガトリングだなんテ!!」

 ものの数秒で数十発の弾丸がロロに突き刺さり、倒れた。安らかに眠ってくれロロ。

「騎馬隊突撃ー!」

 馬術部の連中…!馬で俺に突っ込んでくるとは!だが、馬とは動物…そして俺は今まで馬術の授業やらなんやで幾度か馬たちとは接してきた。

 俺は馬達を睨む。すると馬たちはすぐさま俺との力量差、そして俺に逆らえば命がないと悟り馬術部員たちを振り落として逃げていく。

「よし!」

 チラリと周りを見るとナイトオブスリーは数人の女子と追いかけっこをしていた。どうやら本当にただ遊びにきただけのようだ…それはそれでどうなんだ?暇なのかラウンズ…。

『アッシュフォード学園全部活メンバーに通達!』

 会長…指示を出しているのか…!厄介だな。包囲網を敷くつもりか…

「ルルーシュ部長!是非我らウェイトリフティング部の予算確保のためにご協力を!!」

 俺の前に現れたのはウェイトリフティング部の部員達。だが、現在のウェイトリフティング部の予算は…

 

 

 

 

 ゼロ

 

 

 

 

 ゼロに何掛けてもゼロだ。こいつらは筋肉を鍛えるのに精一杯で大切な頭をどこかに置いてきてしまったらしい。いや、これも俺が真のマッスルガイに導いてやらなかったのが悪い。こいつらの目はここで醒まさせてやろう。ウェイトリフティング部員達の全員の腹に拳を叩き込む。

「部長…なぜ…」

「許せ」

 あまり一つの場所に留まるのはまずい、すぐに移動しなければ…

『アーチェリー部はルルーシュに向けて一斉射!当たってもルルーシュなら死なないわ!しっかり狙って!』

 放たれた矢を全て叩き落とす…と落下した矢から爆発が起こる。

「くそ!制服が!」

 なんだ今の爆発は…!俺じゃなかったら死んでたぞ…!くそ、制服がまたボロボロに…!さらに放たれた矢を今度は掴み、矢の先端を見る。これは…科学部が作ったニトログリセリン!?バカか!?いや、ウェイトリフティング部より頭は良いが科学部は何考えてるんだ。殺す気か!?くそ、こうなったら…!俺は大きく踏み込み、思い切り地面を揺らす。ニトログリセリンの塗られた矢を持つアーチェリー部&科学部連合は焦るだろう、その隙に一気に距離を詰め、矢を回収。全てを上に放り投げた上で起爆。最後に両部の全員の意識を刈り取る。どう考えてもニトログリセリンはやり過ぎだが、俺の筋肉を考えれば妥当か…。

『幻惑部隊、前へ!』

「ルルーシュ君も、男の子。」「絶対隙が出来るはず」

 幻惑部隊と名付けられた女子生徒達は左からナース、水着、巫女(?)服、ボンテージ、メイド服…。いや、そこそこ寒いこの時期にその格好は色々と不味いぞ。すぐさま周りの男子生徒から上着を剥ぎ取り、ついでに意識を刈り取る。

 幻惑部隊全員の意識を軽めに刈り取り全員に上着を被せる。

 

 すると、俺に影がさす。

「上か!?」

 見上げるとそこには…

 

 

 

 

 

 空飛ぶカマキリ。

 

 

 

 

 …まぁ、カマキリには翅があるし、空くらい飛ぶよな…。

 …カマキリ?あのフォルム…どこかで…いや、あれは!

『ルルーシュくんと恋人になって筋肉を揉むモニ!』モミィ…

 部外者が何故!?それに恋人関係なく勝手に揉んでくる癖に…!いけない、俺の筋肉がいかに強靭とてナイトメアに勝つことは出来ぬゥ!!か、勝てるわけが無い…屋内へ逃げれば追ってはこれないはず…!図書室!図書室から地下に逃げよう!窓は割れば良い!

 そうして俺は跳躍して2階の図書室の窓を突き破り図書室に侵入する。するとそこにはシャーリーが居た…なんでここに…!?

『逃げても無駄モニ!』モミモミ

 ブレードで壁を切り裂き、指をワキワキさせながらカマキリが突っ込んでくる。そんなのありか!?

「シャーリー!ここは危険だ!早く離れよう!」

「えっ!?えっ!?」

 一般常識に欠けるなんてレベルではない…!そうだ、ヴィレッタに連絡を…!シャーリーを抱えつつ、廊下を走りながら携帯を取り出す。

「ヴィレッタ先生ですか!?」

『どうしたルルーシュ。なんだ…その、やけに…後ろがうるさいが…』

「それなんですがね!校内にナイトメアが!早くなんとかしてください!」

『わ、分かった。もうしばらく耐えてくれ』

 すると今度は天井を切り裂き、腕が伸びてくる。進路を塞がれた…!

『ルルーシュくんの帽子は私のものモニ!』モミモミモミモミ…

「う、うわああああ!!」

「帽子…そっか!」

 シャーリーは急に自分の帽子と俺の帽子を入れ替えた。

『なっ…そんな手があったモニ…!?』モニーン…

 

 その後、モニカは暴動発生と勘違いして駆けつけたスザクから鬼の形相で怒られ、本国へと強制送還された。\怒られてるモニカ、記録ニャ/ニャ~

「ルルーシュ、シャーリー、怪我とかなかったルギ?」ルギ?

「あぁ、シャーリーの機転を効かせてくれなかったらあのナイトメアに掴まれてたよ」

 …うん?ルギ?

「私は…必死で。それにルルが守ってくれてたし」

「そっか、怪我がないならよかったよ。じゃあ僕は会長と損害と賠償について話し合ってくるから…あぁ、ギルフォードさんに怒られる…」

 なんだ、気のせいか。まぁ、学園内でナイトメアに追いかけられたんだ。錯乱だってするよな。

 しかしスザク、こんな変人揃いのラウンズといつもつるんでいるのか…あいつも苦労してるんだな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 …フッ、良い気味だ。




確か18:00シャーリーだった気がして、でも21:00レイトショーとか待ち合わせがどうこうと言っていたのでその辺の詳細は筋肉が歪めたという事で。

原作ギャグ回+脳筋化=混沌

昨日のアンケートですが、かなりの人が私の正気を疑ってくれていて嬉しい限りです。ですが残念ながら正気です。HAHAHA………


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TURN13

 雨の中、買い出しに出ていたシャーリーは目に見えない力を受け、掛けられたギアスが解除された。そう、調整の完了したジェレミア ゴットバルトによるギアスキャンセラーが発動したのだ。
「思い出した…私のお父さんを殺したゼロは…ルルーシュだ…」

 全ての記憶を思い出し、困惑するシャーリーの前に一人の男が現れた。その男こそジェレミア。顔の左目を仮面で隠した男、怪しさは満点である。
「なっ、なんですか…!?わ、私は…」
「失礼ですが貴方様はフェネット氏のご令嬢、シャーリー フェネット様では?」
「…え?なんで私の名前を…」
「やはり…!」
 ジェレミアは突然雨の中シャーリーに対して頭を下げる。
「な、なんですかいきなり!?」
「シャーリー様、私は貴方様にずっと伝えなければならないことがあったのです…!」
 突然思い出した記憶、そして突然現れた男、シャーリーの頭の処理機能はパンク寸前…というか既にパンクしていた。パンクした処理機能が導き出したのは…
「雨の中話すのもなんですからお店でお茶しながら話を聞かせてくれませんか?」

 それでは音楽こそ明るいけれど何故かシャーリーが登場しない不穏なOPアニメーションを思い出していただきつつ、本編スタートです!


 剣門関を落とし、マカオの空軍施設も抑えることができた。カザフスタンの守りには朝比奈と洪古を回せば良いだろう。抑えた土地の内政担当は南と杉山が適任だろう。

「順調みたいですネ、ブラザー!」

「敵と言っても我々を受け入れない地方軍閥が別々に兵をあげているだけだからな。まとめ上げられる旗印となる天子は先にこちらが抑えている。こちらには星刻のように土地に精通したものが居るしな。」

「宿題見てくれてありがとうブラザー。そろそろイケブクロに行く時間でショウ?」

 そういえば今日はイケブクロのゲフィオンディスターバーを確認しに行く日だったか。

 

 イケブクロに向かう電車の中、たまたまシャーリーと出会った。

「やぁ、シャーリー奇遇だね」

「あ………ルルーシュ」

 うん?いつもと様子が違…いや、気のせいか?

「俺はイケブクロに行くつもりだけどシャーリーは?」

「うん、私も。気が合うね」

 イケブクロにシャーリーがなんのようだ…?いや、イケブクロを経由してもっと遠くに行くという線も…だがその場合はもっと別の言い方をするか?

「スザクくんと会うの。最近話せてなかったから」

 スザクに…?シャーリーがスザクとなんの用事があるんだ…?

「…それ、ついていっても?」

「え?…うん、良いけど。ルルは用事いいの?」

「あぁ。必ずしも今日じゃないとダメなわけじゃないから。」

 電車を降りるとスザクとの待ち合わせ場所へと向かう。暫く歩くとシャーリーは立ち止まりこちらを振り向いた。

「シャーリー?どうしたんだい?」

「うん、ルルには伝えたいことがあって。」

 やはり…なんだかシャーリーはいつものシャーリーでいていつものシャーリーじゃ無い気がする。そう、例えるならブラックリベリオンの時のような…………まさか

「…なんだい?」

「私はね、ルルが好き。ルルがお父さんを殺したゼロだって知った時も嫌いになれなかった。それに、お父さんを殺したのは別の人だって教えてもらえたから。…ルルに記憶を消されてもまた、好きになった。そしてまた、皇帝陛下に何かをされたけど、また…好きになった。これって運命なんだよね?」

 何が…シャーリーに一体何が起きた…?ギアスが解かれている!?俺のだけではない、シャルルの物まで…

 だが、シャーリーの発言を聞く限りこちらには敵意が…いや、寧ろ協力者にでもなってくれそうな口振りだ…が、それは出来ない。

「済まない、君の気持ちは受け取れない。…シャーリーを巻き込みたくはないんだ。俺はもう、失いたくないから…」

「ううん、受け取って?私、全部が終わるまで待ってるから。ルルの戦いが終わるまで、私待つから。その時また返事を聞かせて?」

 …敵わないな。

「負けたよ、シャーリー。分かった。全部終わったら…必ず君に会いに行くよ」

「約束だよ?」

「…あぁ。」

 シャーリーに約束をすると、遠くから声が聞こえてきた。

「おーい!シャーリー!時間にっても待ち合わせ場所にいないから何かあったのかって…ルルーシュ?」

 そう言えばさっきシャーリーは全部分かった上で俺を許し俺を待つと言ってくれていたが…そもそもスザクとは何を話すつもりだったんだ…?

「ルルとはたまたまさっき会ったの。ね?」

「あぁ。そうなんだよ。スザクと会うって聞いたからさ、ちょっと妬いたんだ。」

「そう、だったのか。…それでシャーリー、僕に話って何かな」

 スザクの顔は真剣なものになっていた。とてもじゃないが同じ生徒会のシャーリーや「ただの友人」の俺に向けるものではない。怪しまれているな…

「私ね、お父さんを殺したのは黒の騎士団だとずっと思ってた。でも、違ったの。」

「…え?」

「ある人に教えてもらったんだ。誰が犯人かは…言えないけど。」

 スザクはチラリと俺を見た。昔俺はスザクと何度かフェネット氏の死について話をしたことがある。黒の騎士団でないなら犯人はブリタニア…だがそれはゼロである俺との話である。

「そうか…シャーリー。真犯人見つかって良かったねと…言うべきなのかな。でも僕は黒の騎士団もゼロも許すわけにはいかないよ。」

「そっか」

 その時、俺の携帯に着信があった。出てみればロロだ。スザク達に聞かれるのはまずいと思い距離をとる。

「ロロか?どうした?」

『ジェレミア…ジェレミア ゴットバルトがブラザーの命を狙ってイル!ボクのギアスが効かなかっタ!それに機械の身体を持っていたんデス!気をつけてくだサイ!』

「分かった」

 電話を切ると当然だがスザクが近づいてきた。

「なんの電話だったんだい?」

「それが学園で不審者が出たらしいんだ。単独犯だけど、ロロがやられた。」

「あのロロが!?彼は無事なのかい!?」

 俺の監視役として大切な部下だものな、そりゃあスザクは焦るだろう。

「おいおい、兄の俺がこんなに落ち着いてるんだ。無事に決まってるだろ?」

「そうだよスザクくん、ルルのことなんだと思ってるの?」

「えっ…あぁ…それもそうだね…」

 機械の身体…人間の大きさでロロにも勝てるとなるとサクラダイトは使っているだろう。ならばゲフィオンディスターバーを使えば…しかしスザク達が…。ん?シャーリーと目が…

「ルル、やっぱりロロが心配なんでしょ?」

「えっ?」

「今すぐ本当に無事かちゃんと見て確かめたいって顔してる」

 …!そう言うことかシャーリー。ありがたい。

「あぁ、実はそうなんだ。悪いけどスザク、シャーリーのこと頼めるか?彼女を任せられるのはお前しかいないんだ。もし不審者が現れたら…守ってやってくれ」

「それは…。うん、分かったよ。」

 俺はスザクにシャーリーを任せてイケブクロの駅へと向かった。

 

 機械の身体が相手ということで、ゲフィオンディスターバーの準備はしておくべきだろう。あらかじめギアスをかけて置いた駅員達に電話をして準備を進めておくか。

『ゼロ様、遅かったですね。ゲフィオンディスターバーは…』

「試している余裕はない。場合によってはぶっつけ本番で行く、準備を進めろ。」

『かしこまりました』

 しかしギアスの効かない相手とはな…まさか、シャーリーの記憶が戻ったと言うのは…。そうなるとシャーリーに真実を話したと言うのはジェレミア…?…個人的に礼を言いたい気分ではあるが、ゼロとしての立場では止めなくてはならない…!人のギアスを解除する力を無闇に使われては俺の計画が崩れる!

「見つけたぞ。ルルーシュ ランペルージ!」

 視認した瞬間、男の姿は消えていた。チッ!早い…!俺はその場で跳躍をし、天井に指を突き刺すことで保持、駅内を見渡す。

「お探し物は見つかりましたか?」

「!?」

 馬鹿な…俺が背後を取られた!?

 片手を天井に突き刺したまま裏拳を放つと硬い何かにガードされた。なるほど、やはり機械の体と言うのは本当らしい。しかも俺に匹敵するスピードと俺の攻撃に対応できるだけの硬さとは…!天井を蹴り地面へと着地する。相手も少し離れたところに着地をした。

「…戦う前に一つ問いたい。」

「何かな?」

「シャーリーのギアスを解いたのはお前か?」

「いかにも」

 そうか、やはりこいつが…

「ならばシャーリーにフェネット氏の死の真相を伝えたのもお前だな?」

「ええ」

「…その事についてはゼロとしてではなく、一人の…彼女の友人として礼を言わせてもらう。彼女には真実を知る権利があった。だからその真実を教えてくれたお前に素直に感謝をしたい。…だが、俺の、ゼロの前に立ち塞がると言うのなら…死んでもらうぞ!ジェレミア ゴットバルトォ!!」

 俺はクラウチングスタートからの膝蹴りを見舞う。如何に機械でもこの一撃は避けられまい…!

「まさかゼロからその名で呼んでいただけるとは何たる僥倖…!ならばこそ、忠義を示さねば」

 クロスした腕で防がれた!?こいつ…!瞬間、ジェレミアの腕の横振りが見えた。…何かまずい!蹴りで距離を取ると、何か鋭利なものが顔面スレスレを横切った。

「仕込み武器か…!」

「流石はゼロ。まさか私の奥の手を初見で見切るとは!」

 今のを避けられたのはたまたまだ。それにこの男も過去に紅蓮の輻射波動を初見で見切り間合いを取ろうとしたことはあった。その時は運悪く腕が伸びるところまでは見切れずに攻撃を受ける事になっていたが…

「受けよ!忠義の拳ッ!!」

「フンッ!!」

 真正面からの拳を俺は腹で受け止めた。

「なんと!?」

 相手の拳を敢えてガードせず腹筋の硬化のみで防御…その行動に驚いた隙に顔面に拳を叩き込む。

 

 一旦距離を取ることに成功し、俺たちは構は解かずに睨み合った。

「ルルーシュよ。お前は何故ゼロを演じ、身体を鍛える…?祖国ブリタニアを…実の父親を敵にまわす?」

 突然ジェレミアが俺に疑問を投げかけた。この男の力はさっきまでのやり取りでよく分かった。騙し討ちなどをする男ではない。

「母の死の真相を暴き、妹のナナリーを守るためだ。」

「ナナリー…ルルーシュ…。やはり、そうでしたか」

「…お前、俺たちの正体を知って…!?」

 ジェレミアは俺に対して跪くと涙を流してこちらを見てきた。

「ルルーシュ ヴィ ブリタニア様、私の話を聞いていただけませんか?」

「なっ…」

 こいつ、俺が皇族だと知っている…?いや、あらかじめ聞かされていたのかもしれない…が、何故ここで跪いてそれを口にする必要がある?

「マリアンヌ様の事件の日、私もあそこにおりました」

「母さんの!?」

「初任務でした。敬愛するマリアンヌ皇妃の護衛。しかし、守れなかった。忠義を果たせなかったのです…」

 ま、まさかこいつ…

「ルルーシュ様。あなたが筋肉を鍛え、ゼロとなったのは、やはりマリアンヌ様の遺されたご自身とナナリー様のため、そしてマリアンヌ様の為であったのですね」

 やはりそうだ。こいつの目的は俺を殺すことではなく、俺と同様に真実を知る為だ。俺の真意を確かめること、その為にこいつは…

「おまえは、俺を殺しに来たのではなく…」

「えぇ、私の主君は、V.V.ではなく…マリアンヌ様…。そしてマリアンヌ様の遺されたナナリー様とルルーシュ様です。」

 この男、そのために純血派を立ち上げ、俺に賄賂をでっち上げられてもなお軍に残り戦い続けたと言うのか…強い思いを胸に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 つまりこいつは機械の身体だが、心は紛う事なきマッスルガイ!

 

「ジェレミア ゴットバルトよ。貴公の忠節と心の筋肉はまだ終わっていないはず。そうだな?」

 まさかここにも心の筋肉を鍛えた真のマッスルガイが居たとは…

「イエス ユア マッスル!」

 

 

 

 ルルーシュは僕にシャーリーを守ってくれと去っていった。…頼まれなくったって僕はシャーリーを守るつもりだったさ。それにしてもシャーリーのお父さんの死の真相がまさか今頃わかるとは…いや、本当にわかったのだろうか?ギアスを使えば偽の証言くらい…いや、それはおかしい。ギアスが使えるのなら前みたいにシャーリーの記憶を消すだけで良いのだから。それに今のルルーシュは記憶が戻っていないはず。ギアスが使えるはずがない。

「そういえばシャーリー、用事ってなんなんだい?」

「うん、スザクくんに聞きたいことがあって」

 僕に聞きたいこと…?電話じゃダメなのかな。身体の鍛え方ならそれこそルルーシュやロロにも聞けば良い話だと思うけど…

 

「スザクくん。スザクくんはルルが好き?」

 

 …?なんだ?その質問は…。僕がルルーシュのことを好きか否か…。ルルーシュは…ゼロで、ユフィをおかしくした元凶で、みんなを騙す…僕の親友だった男だ。

「…好き、だったよ。」

「だった?…やっぱり、なんかおかしいと思ってたんだ。最近…去年に比べて二人の仲が悪そうだったから。」

「気づいてたんだね。」

 シャーリーは微笑みながら頷いた。

「当たり前だよー。よく見てればわかるもん」

「…僕はね、ルルーシュが許せないんだ。」

 

 ルルーシュはギアスで僕を歪めた。でも、捕まった僕を助けた。

 ルルーシュはギアスでユフィをおかしくした。でも、ユフィの話ではホテルジャックで、無人島で彼女を助けた。

 ルルーシュはギアスで日本人を撲殺するよう命令した。でも、彼と黒の騎士団はブリタニア軍では救えない人々を救った。

 ルルーシュはナナリーに、僕達に嘘を吐いた。でも、僕だってみんなに嘘を吐いている。

 

「許せないことなんてないよ。それは多分、スザクくんが許したくないだけ。」

 許したくない…か

「私は…もう全部許しちゃった。」

 …ルルーシュが今のシャーリーに何か許せないようなことをしたのか…?だって彼女は……………いや、まさか…?

「…君もしかして…記憶が…?」

「さぁ?どうなんでしょう?」

 クスクスとシャーリーは笑っていた。間違いない、シャーリーは記憶が戻っている。

「どうやって…?」

「…ごめんなさい、それは私にも…」

 それが分かればユフィを元に戻せると思ったけど…残念だ。

「シャーリー、記憶が戻ったのは良いこと…なんだろうけど、くれぐれもルルーシュには関わらないでいて欲しい」

「それはルルーシュがゼロだったから?」

 そこまで知ってるのか…これは危険だ。ルルーシュにそれがバレたら確実に拳で消されてしまう。今度は記憶だけじゃなくて存在そのものがだ。それに彼女の記憶は何も黒の騎士団側にとって不都合なものなわけではない、ブリタニア…皇帝陛下の機密情報局としても障害となりうる。

「それもあるけど…シャーリー。くれぐれも戻った記憶を周りに話したりはしないで。…事情は話せないけれど…」

「分かってる。ナナちゃんのことを話せないのは残念だけど…」

「ありがとう、友達を巻き込みたくはないからね…」

 その日は不審者を警戒してシャーリーを学園まで送って行った。帰りにナナリーに頼まれたパンといちごミルク買って帰らなきゃ。限定品だから売り切れてないといいんだけど。





脳筋過ぎて搦手を用いないルルーシュにより、正面戦闘を選択しているので原作のような騒ぎにはなっていません

Q.原作沿いなのになんでシャーリー生きてるの?
A.うるせえ!!!(殴打)
そんなこと言ったら卜部なんて生きてるどころか大活躍じゃねえか(殴打)
 原作(アニメ版)準拠だけど都合のいいところは原作(劇場版)準拠なんだよ!!(殴打)納得しろ!(殴打)納得したと言え!!!(殴打)

●オマケ●
ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 R2 OPテーマ その2

鍛えた身体が 反射する光 今ジムの中

鍛えただけじゃ魅せれない
筋肉だけじゃ掴めない
鍛えてきたのは何故だ?歪んだ世界で
守りたいものは何だ?筋肉の盾

Everything is muscle!!

鍛えた身体でポーズ決めて
見せつけるように

鍛えた身体が 反射する光
筋肉が付き
今 ジムの中


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TURN14

 コーネリア リ ブリタニアはユフィに掛けられたギアスを治す方法を求め、中華連邦のある施設を訪れていた。それこそはギアス嚮団。
 もしここでジェレミアと会えていたなら彼女の求めるものは手に入っていた。しかしながら残念なことにすれ違いになってしまったのである。代わりに出会ったのはバトレー達
「お前は…」
「バトレーでございます。」
「ここで何をしている?」
「お助け下さい!」
 事情を聞いたコーネリアは彼らと行動を共にするが、ある少年と出会ってしまう。ギアスを使う前にと動いたコーネリアはその少年に転蓮華をブチ込む。
「コーネリア殿下!?」
「どんなギアスを使うかも分からないからな。」
 その場を去ろうと歩き出したコーネリア達に背後から声がかかる。
「そ、そうだね…流石はコーネリアだ…いたた…僕もお、叔父として誇らしいよ…」
 不死身の存在V.V.は怪しく笑う


 が、その後すぐに苦痛に顔を歪めた。
「ごめん、ちょっとこの首だけ直してくれない?」

それでは本編スタートです!


「モニター越しで済まない。」

『いや、我々は現在各地に分散している。それは問題ないだろう。』

『ところでゼロ、急ぎの案件とはなんだ?』

 俺は画面の映る範囲を拡大し、ロロとジェレミアを映す。

「そろそろ君達には私がエリア11での活動において協力して貰っている彼らを紹介しておこうと思ってな。」

『なっ、その男は確かオレンジ事件の…成程、あの時から既にブリタニア軍に協力者を送っていたとは…流石はゼロ』

『今になって紹介すると言うことは大きく動くのだな?』

 俺は頷く。ジェレミアの齎した情報により、嚮団の位置は特定できた。後は人員を送り込み殲滅するだけだ。

「私はこれよりブリタニアの極秘研究施設を強襲する。」

『極秘研究施設を?』

「あぁ、そこでは死なない兵士や人間の脳を改造して人間に秘められた超能力を発見しようと日夜人体実験を繰り返している。更には幼子を洗脳し暗殺者に仕立て上げているのだ。」

 ロロは俺の元に送られるまでは暗殺者として使われていた。故にこれは嘘ではない。実際、俺の知らぬところでギアスユーザー同士の戦いがないとも言えないからな。

『幼子を!?許せん!ブリタニアめ…!』

 星刻は顔を歪ませ、怒りを露わにしていた。

『人体実験とはな…分かったゼロ、我々はどうすれば良い?』

「敵に悟られぬよう通常通り作戦を続けてくれ。作戦は私自らが指揮し、少数精鋭で実行する。」

 俺、ロロ、ジェレミア、C.C.、後はラクシャータが俺の試作品から気合いで完成させた自律型の暁達、ギアスの情報を秘匿する目的からからは仕方がなかった。

『分かった。作戦が終わったらまた呼んでくれ。近頃ブリタニアの脅しに屈する勢力も増えてきている』

「分かっている」

 

 こうして俺たちは中華連邦のとある場所、ギアス嚮団にやってきていた。

「よし、全軍位置に付いたか。それでは作戦を開始する。」

 ジェレミアの通信ネットワークを利用し、まずはV.V.を足止めする。態々エリア11の俺の自室に似せたハリボテのセットを運び込み、通信の発信元もエリア11になるように偽装をしておいた。

 通信が繋がり、画面には幼い金髪の男…心なしか昔の俺に似ているような…が映し出された。

「お前がV.V.か。どんな憎たらしい顔をしているかと思えば存外整った容姿をしているのだな。」

『…その様子だとやっぱり記憶は戻ってたんだね。』

「あぁそうだ。俺が…」

 そこで俺は立ち上がり、ダブルバイセップスを決める。

「ゼロだ!」

『へーぇ…やっぱりシャルルの息子だね、改めて見ると凄い筋肉だ。叔父として誇りに思うよ。』

 何…?コイツが俺の叔父だと…?まさかコイツ…シャルルの…!?

『そうか、ジェレミアを使ってこっちの位置を特定したんだね?でも君が来る頃には僕達はここを引き上げてるよ。まぁ良いや、近くにC.C.はいるんでしょ?だったらC.C.を頂戴。あれさえ貰えれば僕らも君からは手をひくからさ。エリア11に人手を送るからC.Cを…』

 ということはこいつらの目的のためにはC.C.が必要ということ、C.C.さえ押さえていれば必ず奴らの動きを阻止できるということか

「多忙な我が叔父上にそこまでしてもらうのは忍びない、せっかくですからこちらから向かおうじゃ無いか」

 それと同時に入口を爆破、流石に衝撃はV.V.のところまで届いたようだ。

『へーぇ…そういうことか。これは一本取られちゃったな』

「俺の目的はお前を足止めする事。お前が逃げる前に攻撃を仕掛ける時間が欲しかった。」

『やっぱりシャルルの息子達は侮れないな。本当に…気に食わないよ』

 俺はすぐさまハリボテの壁をブチ抜き蜃気楼に搭乗する。既に向かわせたC.C達により施設を全方向からしらみつぶしに制圧させていく。

『こちらオレンジ隊!多数のギアスユーザーとの接触あり、敵勢力は計画通りまだ脱出は出来ていないようです。』

「引き続き施設を破壊しつつ制圧を続行せよ!」

『イエスユアマッスル!』

 通信記録の情報からおそらく中央の施設だとは思うが、ギアスユーザーの奇襲を警戒して包囲しつ殲滅を実行している。しかし情報通りとは言え反撃はほとんど無いようだ。主戦力をドローンにしたのは正解だったな。これではブリタニアとやっていることは変わらない、虐殺だ。

 だが、どんなギアスを持つかわからない以上、余計な争いの火種になる前に始末してやる。それがせめてもの情けだ。

 しかし、眼前の施設が急に自壊したかと思うと、中から見覚えのあるスラッシュハーケンが飛んでくる。

「これはまさか…ジークフリート!」

 特徴的なオレンジ色に丸いフォルム。機体に取り付けられた緑のトゲトゲが印象的なナイトギガフォートレス、ジークフリート。かつてジェレミアが使用したあの忌々しい機体だ。

 スラッシュハーケンは絶対守護領域によって防ぐものの、勢いは殺せない、天井を突き破り屋外へと押し出されてしまった。しかしここで問題なのは乗っている奴だ。

「ジェレミア、あの機体は…」

『はい、神経電位接続ですから私以外では…』

 どうやらV.V.自らが出て来てくれたらしい、

「これはこれは叔父上、自ら出て来てくださるとはありがたい。探す手間が省けました。」

『可愛い甥っ子の顔を見に来ただけさ。手荒い歓迎に僕も手が震えてるよ。やんちゃな甥っ子は叔父の僕が教育してあげなくっちゃぁね』

 そう言いながらの回転攻撃、なんとか躱すが触れるだけで並のナイトメアを吹き飛ばす威力は健在だ。

『僕は結構君のことを気に入ってたんだけどね、シャルルに似てるからさ』

「俺はあいつのような自分のために鍛えたようなマッスルガイではない!!」

『いや、筋肉じゃなくて内面の話してるんだけどな』

 放たれるスラッシュハーケンで着々と自律型暁が穿たれて行く。

 やはりここは一気に決着をつけるしかないようだ。あの図体ならば拡散させるまでもない、相転移砲で蹴散らしてやる!

 

 しかし、放たれた相転移砲は直撃も虚しく装甲に弾かれる。

 

『あはっ!効かないよ、そんなもの…このジークフリートには!』

 相転移砲が効かない…!ならば次の手だ!

 ジークフリートは高速回転しながらこちらに突っ込んでくる。絶対守護領域で防ぐことはできるが、行き掛けの駄賃かの如く暁達が蹴散らされていく。これ以上無駄に戦力を削るのは無意味だ。

「全軍距離を取れ!コイツは私が相手する。」

『でもブラザー!』

「C.C.は逃走ルートを潰しに行け、奴らの狙いはお前だ。自律暁は距離をとって一斉射撃!ロロとジェレミアは敵の弱点を探れ!」

 俺は距離を詰めんと絶対守護領域を展開する。このまま守護領域を蹴って距離を詰め拳を叩き込んでやる!

『マリアンヌの子供が何を企んでるのか知らないけどさ』

 回転攻撃ではなくスラッシュハーケンか、ならば絶対守護領域で受け流し、そのまま距離を詰める!そして最高硬度の絶対守護領域を拳に展開。それで相手をブン殴る。これこそが我が蜃気楼最強の攻撃、これが効かなければ他の手段を考えるしかないが…。

 

「どっせい!!」

 

『なっ!?このジークフリートの電子装甲が!!』

 よし、やはり効いたか!

『こうなったら!』

 突如ジークフリートが変形し、電極のようなものが現れた。すると俺の全身に電流のようなものが駆け巡る。こ、これは…まずい…!

『ブラザー!』

 ロロがヴィンセントで必死に距離を詰めようとしていたが、スラッシュハーケンでうまく近づけないようだ。い、いけない…!このままでは…!

 

 すると突如下方から大量の弾丸が飛来し、ジークフリートに直撃する。

『ジークフリートの弱点を知っているかのような攻撃…!一体誰だ…!』

 砲撃を受け体制を崩したからか、電気による拘束から解放された。

 更に俺は落下するかのように見せかけ真下から相転移砲を叩き込む。破損した場所ならば弾くことも出来まい!

『しまったッ!?』

 まだまだ終わらない!俺は空中に絶対守護領域を展開、それを足場にして跳躍を繰り返し、ジークフリートへの距離を詰めていく。何かしようとしたジークフリートは更なる大量砲撃により阻まれていた。

 

『「これで滅せよ!ギアスの…源ッ!!』」

 

 更なる大量砲撃と真下からのアッパーにより、ジークフリートは完全に墜落軌道をとっていた。しかしその動きに諦めは見えない…!

 

『ルルーシュ!このムキムキな皇子め!!』

 

 最後の悪あがきか、ジークフリートは俺に向かって回転攻撃を仕掛けてきたが、絶対守護領域を脚部に展開し、ジークフリートを地面へと蹴っ飛ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 僕はヴィクトル ジ ブリタニア。弟のシャルルと共に神聖ブリタニア帝国に産まれた皇子だ。僕は産まれてから暫くしてこの世界を、この世界の神を呪った。

 それはある日の出来事だった。母さんの乗った馬車が事故に見せ掛けられて襲われ、そのまま母の命を奪った。ブリタニア皇族は常に次の皇帝争いを強いられた。だからその陰謀で母は殺された。僕らは絶望した。そして憎んだ。この世界の神を、こんな風に人と人を殺させる神ならば必要ない。だから僕とシャルルは自分達を守る為にある契約をした。そして力を手に入れた。

『神を殴り殺す。』『それが僕らの契約』

 シャルルは争いを起こす神を殴り殺す為にギアスと筋肉を手に入れた。そして僕は神を殺すための時間を手に入れた。コードを持つ不死身の存在として研究を続け、やがて作り上げた。それが『アーカーシャの拳』神を殴り殺すためのシステム。

 

 このままじゃシャルルとの約束が果たせない。僕はお兄さんなんだ、シャルルにこんな格好悪い姿を見せられない。今までの衝撃で身体中が痛いけれど、僕はお兄さん…長男だからね、長男だから我慢できる。

 

「まだだ…!まだ動く!こんなんじゃ終われない!お前だってそうだろう?ジークフリートォ!!」

 スラッシュハーケンも回転攻撃もルルーシュには効かない、ならば…

 

 

 

 

 

 

 合体技だッ!!

 

 

 

 

 

 

 スラッシュハーケンを発射しつつ回転攻撃、これならば!!

『何ッ!?』

 よし!ルルーシュのシールドを砕いた!!これで…

『ブラザー!!』

 なっ!?ロロ…!?

 

 ロロのヴィンセントがルルーシュのナイトメアを蹴り飛ばして追撃を躱させた!?あの裏切り者め…僕の邪魔ばかりして…!

『ブラザーはボクが守ル!!』

 しまった!動きが止まった隙にスラッシュハーケンに組み付かれた!くそ、振り落とせない…なんだ?ロロのナイトメア、あれは肘打ち…!?

『どっせイ!!』

 スラッシュハーケンが壊された!?生意気な…!

 

 !?そう言えばさっきからルルーシュが見えない…どこに…

 

『誰をお探しかな?叔父上』

 なっ!?既に組み付いて……

 

『行くぞロロ!』『オーケーブラザー!』

 コイツら何を…!

『『合体技(だ)(ダ)ッ!!!』』

 激しい衝撃がジークフリートを襲う。爆発と共に僕は落下した。負けたのだ。あの二人の肘打ちによって…

「ダメだ…!このジークフリートはもう!!」

 

 まだだ。まだ、負けてない…僕は死なない不死身の体、地を這ってでも、門まで辿り着けば逃げられる。シャルルのもとまで行ければ僕らの勝ちなんだ。

「兄さん」

 門の前にシャルルがいた。これで僕らの勝ちだ。僕は不死身だからどんなに怪我をしようと問題はないし、後はシャルルにかかえて貰って黄昏の門をくぐるだけだ。

「やっぱり最後に頼りになるのは兄弟だよね。助けに来てくれたんだろ?」

「…ジェレミアをルルーシュに刺客として送ったというのは、本当ですか?」

「そんな事どうでも良いじゃない…聞いてくれよシャルル、ルルーシュは記憶が戻っていたんだ。あいつはずっと嘘をついていたんだよ…ナナリーにもね」

 シャルルは僕にゆっくりと近づいて来た。…なぜ、シャルルは怒ってる…?僕はシャルルのためにやったのに…

「マリアンヌを殺したのは、兄さんですね?」

「…それは僕じゃないって言ったじゃないか。それにマリアンヌは僕らの同志だろ?殺す理由がないよ」

 シャルル…君はどうしてそんな顔で拳を振り上げてるのさ…まさか…僕を…?嘘だろう…?僕らは兄弟じゃないか、何でそんな…嫌だ…!

 

「兄さんは、また…嘘を……………吐いたッ!!」

 




尺が足りず無理矢理V.V.パートを挿入…

ここで書くべきことじゃないですけど、この前ロスストでノネットさんとモニカが当たりました。モニカがモニモニ言ってないし、凄い落ち着いた声で喋ってたので脳がバグりそうです。


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TURN15

C.C.が見つけたのは苦痛に歪んだ顔のV.V.だった。
「直接会うのは何年振りかな…V.V.…しかしまぁ…」
 V.V.は答えない。それもそのはずだった。
「シャルル…なぜ今頃V.V.のコードを奪った?しかもわざわざ殴り殺してまで…」
 V.V.は答えない。
「V.V.…お前羨ましかったんだろ?筋肉を鍛えられる身体が…」

それでは作者も何書いてんのかわかんなくなってくるくらい混沌とした本編スタートです。


 生命反応を感知し、向かった先で見たものは神根島の遺跡で見たような壁だった。そして壁から電気のようなものが走ったかと思うと

 

 俺は蜃気楼を降り、謎の空間に立っていた。

 

「これは…?ホログラムとかではない?それに、いつ俺は蜃気楼から降りた?」

「その通り!それにナイトメアなどという無粋な物…!この場所には不要!」

 忘れもしない、この声は…シャルルだ!奴に目を合わせればギアスが飛んでくる。ここは一旦蜃気楼の影に隠れよう。

「8年前の質問に答えてもらうぞ!何故母さんを守らなかった?他の皇族に疎んじられていると知りながら!」

「人は、平等では無い…。お前は他の者には無い肉体を持っている。力づくで聞けば良かろう」

 なるほど、肉弾戦に持ち込みギアスをかける気か、そっちがその気ならば…

「チチチチチチチチ…」

「なんの、音だァ…?」

 俺は駆け出し、シャルルに対して拳を叩き込む。しかし、流石にシャルルもタダでは殴られてはくれずバックステップで回避したようだ。

「なるほど、そういうことか」

「どうしたシャルル?貴様もギアスを持っているのなら、それを使ったらどうだ?使えるならの話だがな!」

 そう、俺は今回シャルルのギアス対策に目を閉じている。当然こちらからのギアスも使えず、視界すらも無いが問題はない。相手がどこにいるかなど気配やこの舌打音の反響でわかる。ソウルブラザーであるロロとの模擬戦を繰り返し俺はこの技の会得に至った。この力で奴を倒してやる…!

「ナナリーの未来のため、死んで貰うぞシャルル ジ ブリタニア!」

 チチチチチチチチ…と舌打を繰り返し、音の反響で場所を掴む。確実に仕留める為、渾身の一振りを腹に打ち込む。しかし、その感触は想像していたものとは異なる。まるで鉄を殴ったようなものだった。

「多少身体を鍛えた程度でワシを倒せるとでも?貧弱なりルッルーシュ!!」

 馬鹿な!この俺の拳を多少鍛えただと!?

「チチチチチチチチ…」

 突き出された拳をなんとか音の反響で感知し回避する…が、避けきれず頬を掠める。プツリと皮膚が切れ血が流れている様だ。

「掠っただけでこの威力…!」

「無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!ルッルーシュ!!!!無駄ァ!!!」

 高速の連続パンチを全て受け流し、どうにか打開策を考える。しかし思考をまとめる前に次の攻撃が飛んでくる。

「たかだか10年ちょっと鍛えたお前の筋肉がワシを上回ることなどあり得ぬ。」

「それはどうかな?」

 俺は真のマッスルガイとして超効率的トレーニングの日々を過ごしてきた…最近では逆立ち指立て伏せをしながら眠れるほどに…それに力がダメなら技だ。この十年間必死に体に叩き込んだあらゆる武術を仕掛ける

「力が劣るなら今度は技か、だがしかし!!技の強さは鍛えた年月に依存する!ワシは皇帝の座を守る為、あらゆる武術を極めておる!即ち!小童の貴様如きの技など無駄ァァァ!!!!」

 掛けた技は全て弾かれ、正面からの拳も耐えられた…クソ…!

 

 奥の手のギアスはお互い目を見る必要がある以上使えない…使えない?本当にそうか?方法はある…ならばバレないように準備をするしかない!

「どうしたルッルーシュ!お前はワシのサンドバッグか?なんたる貧弱さ!!お前の努力など無駄ァ!!」

 振るわれる拳をクロスした両腕でなんとか防ぎ、そのまま距離を取る。

 

 ポタポタと流れる汗を手で拭う。これだけ激しく動いたなら当然だ。まだだ、まだ俺は…!

 舌打ち音でシャルルとの距離を測る。この距離ならば外さない!クラウチングスタートの姿勢からの膝蹴り…!この感触、確実に鳩尾に決まった!

「ぬうん!!」

 確実に決まったはずだが流石はシャルル、即座に俺を投げ飛ばして来た。しかし、流石の奴でも効いたようだな!体制を崩している今がチャンスだ!

 

 俺は目を開け、ギアスを使う。

「"死ねぇ!!"」

「…良かろう。」

 シャルルは自分の拳を高々と振り上げ

「オーーーールハイル!ブリタァァァニアァァァァ!!!!」

 そのまま心臓に向け拳を振り下ろし、肉体を貫き絶命した。

 ギアスは光情報。故に反射が可能。俺は床に流した汗を集め水鏡を作ったのだ。

「勝った…!ようやく勝ったぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふははははは!愚かなり!ルッルーシュ!!」

 

 シャルルは目を開けこちらを睨む。そんな…あり得ない…

「銃やナイフ毒に筋肉…この世の如何なるものを持ってしてもワシを殺す事はできん!全ては…無駄ァーーーー!!!!」

 手袋を外し突き出された掌にはC.C.の額と同じマーク。コイツが不老不死に…!?

 

 

 

 

 

 だが、ここで俺が逃げればナナリーの身が危ない、ならば退くわけにはいかない!!

「うおおおお!!」

 俺はラッシュの突きを放つ。

「ほぉ…?まだワシに向かってくるとは…愚かなりルルーシュ!」

 負けじとシャルルもラッシュの突きを放ってきた。1発、2発と俺の体に拳が突き刺さって行く。

「ふはははははは!ルッルーシュ!無駄!無駄!無駄!無駄!全ては無駄ァ!無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!」

 やがて俺の拳は全て弾かれ、シャルルに蹴りを叩き込まれて吹き飛ばされる。だが、俺は諦めない。

「まだ、立ち上がり向かってくる…か、このワシに近づいてくるのか」

「当然だ。近づかなければシャルル。お前をブチのめせないからな…!」

「ならば…近づいてくるが、良い」

 再び俺はラッシュの突きを放つ。そしてシャルルによって弾かれ、また蹴り飛ばされた。

 

 そして再び立ち上がる。何度も、何度も

 

「何故だ…何故向かってくるルッルーシュ!!貴様では、ワシは殺せぬと言うのに…」

 数十回にも及ぶ攻防、その全てで俺の敗北であった。だが俺は立ち上がる。殺せない?そんなことは関係無い。ナナリーの為を思えば何度だった立ち上がれる力が湧いてくるのだから。

 

--この時、心と体の両方の筋肉を鍛えたルルーシュは、妹の為という他人を思いやる気持ちを爆発させた!

 

 そして心の筋肉が体の筋肉と混ざり合い、とてつもない爆発力を産んだ!!

 

 故にルルーシュの筋肉は膨張し、数十年の蓄積に劣らない筋肉を構築、更なる高みを目指し鍛える筋肉に更なるパワーを与えたのだ!!!--

 

 再びのラッシュ対決、俺の拳がシャルルの体を捉えた。

「何ィ!?ワシが、このワシがルルーシュに押されている…!?あり得ん!そんなはず…」

「あり得るさ…お前は不老不死、つまりもうお前の筋肉は成長しないという事だ!」

「馬鹿な!この土壇場で…貴様はワシとの打ち合いで急激な成長を遂げ、ワシと互角に…ワシ以上の筋肉を身に付けたとでも!?小癪な…!」

 突如距離を取られたかと思うと、俺の視界は謎の仮面と歯車によって埋め尽くされてしまう。シャルルめ…!逃げたか!?

「シャルル!貴様は何を企んでいる!」

「貴様は…己に嘘を吐いておる。かつて筋トレに明け暮れるのはもう沢山だと言っておきながら、お前はナナリーを言い訳に身体を鍛えざるを得なかった。本当はマッスルガイになどなりたくはなかったのだろう?」

「そんなことは…!俺は手に入れた!普通では到底なし得ない胸筋を!腹筋を!殴打を!」

 するとどこからか俺でもシャルルでも無い声が聞こえてくる。

『筋肉がつき過ぎてお気に入りの服が着れなくなった。』『みんなが筋肉をジロジロと見てくる』『モニモニ言いながら乳首をさすられる』『ガチムチな弟から背後を狙われる』『事あるごとにポーズを決めないと落ち着かなくなった』『すぐに服を脱いで筋肉を見せたい欲求に駆られる』

 

『本当は恥ずかしいし、ムキムキになんてなりたくなかったのに』

 

「違う!!」

 そうだ!俺は俺の意思で…!

「嘘など吐く必要はない。何故ならお前はマッスルガイでマッスルガイはワシ、つまりお前はワシなのだから。そう、最初からマッスルガイは、人類は一人しかいない。過去も未来も現在も…歴史上たった…一人」

「お前は何を言っている…?」

 するとどこからかC.C.が現れた。

「C.C.…!?」

「シャルル、筋トレの時間は終わりだ。その肉ダルマにもう価値は無くなった。私はもうここにいる。」

「そうだな、C.C…お前の願いはワシが叶えてやろう」

「C.C.!ピザくらい俺が食べさせてやる!何もシャルルに頼らずとも…」

 どうせこのピザ女の願いなど死ぬまでピザが食べたいくらいだろう、それくらい皇帝の財力がなくとも俺が…

 するとC.C.は涎を拭きながら首を振る。

「ルルーシュ、私の願いは私が死ぬ事。私の存在が永遠に終わる事だ。」

「なんだ、それなら俺が…」

 俺が拳を振り上げるとC.C.は焦ったようにシャルルの背後へと隠れた

「お前の拳では私は死なん!やめろバカタレ!痛いのは嫌なんだ!」

「安心しろ!今の俺の拳なら痛みを感じる間も無く」

「そういうことではない!」

「コードを持つものは一定以上のギアスを持つもののみによってのみ殺されうる…どうやら知らなかったようだな、ルッルーシュよ…」

 C.C.は更に謎の台を構築し、それに何かをしたかと思うと俺は吹き飛ばされた。

 

 謎の霧掛かった世界で…ええい、霧が邪魔だな。俺は思い切り息を吸い込み、霧を吸い込んだ。よし、視界がひらけたな。

 ひどく汚れた格好の女児がおぼつかない足取りで歩いてくる。何故こんなところに…きっとシャルルに酷いことをされたに違いない。やがて女児が倒れそうに成ったため急いで駆け寄るが、女児は俺の体をすり抜けて地に伏してしまう。

「何!?どこのだれとは知らないが俺はこんなか弱い女児一人守れないのか!?くそ!こんなことではナナリーを守ることなど到底不可能!何が伝説の真のトゥルーマッスルガイだ!!」

「無駄よ」

 背後から声がかけられ、振り返るとC.C.のようでそうでないような女が居た。

「これは私の記憶。干渉はできない。」

 そんなことはない、記憶とは即ち過去、過去も現在も繋がっているのだから鍛えた果てに干渉する方法だってある筈だ。

 いつのまにか視界は教会のような建物の中に移り、さっきの女児とシスターが話している場面にやっていた。

『あなたに生きるための理由はあるの?』

 生きる理由?そんなのは決まっている。俺は筋肉を膨張させつつダブルバイセップスを決める

「あるさ、ナナリーだ。俺はナナリーを守る!そのために鍛えてきた!」

「だから干渉は…」

『何かしら、今やたら私好みの逞しい殿方がダブルバイセップスを決めていたような…』

「えっ干渉してる!?怖…」

『私は死にたくないんです!』

「だったら俺が守ってやる!真のマッスルガイならば守る対象の一人や二人増えたところで!」

『あれっ、なんだろう、今すごくムキムキなお兄ちゃんがすごく頼もしいこと言ってくれた気がする…』

「なにこれ、こんな記憶私知らない…怖いよ…」

 次の瞬間、再度場面が切り替わり、C.C.らしき女がやたらと格式の古そうな屋敷の中持て囃されているところを映し出した。

「わ、私のギアスは人に愛されるギアス。このギアスのおかげでどんな人からも愛されたわ」

「愛される…?」

 ギアスとはその人の願いの形のはず。マオはおそらく人の顔を窺う子供だったのだろう、だから人の心を読むギアスを、野望のために人を操りたい俺やシャルルは人を操れるギアスを、俺と出会う前のロロは自分が最も鍛えた男になりたい、相手の鍛錬を止めたいという人の体感時間を奪うギアスに

 

 つまりC.C.の本当の願いは誰かに愛されること…?

 

 …だが、他人に愛す事を強制するなんて悲しすぎる。

「…お前はそれで良いのか?人の愛なんて強制させるものじゃない筈だ。偽りの愛に意味なんてない、そんな物全て捨ててしまえ」

 すると記憶のC.C.は困り果てるような顔になっていた。

『…そうだよね、こんなの本当の愛じゃない。』

「ナチュラルに私の記憶と会話するのやめてくれる?でも、私はやがて愛され過ぎてなにが本当の愛かわからなくなったわ。」

 更に場面が切り替わり、C.C.らしき女とシスターの二人が教会にいる場面になった。

『あの男の人に言われた通り貰ったものは全部捨てました。でもしょうがないでしょ?ギアスのせいなんだから』

『なら終わりにしましょう。私もあの逞しい殿方のようになりたいと体を鍛えたけれど、不老不死になってからはもう体を鍛えることすらできない』

『あの…なんの話?』

 するとシスターは突然狂ったように笑い出し

『残念!あなた騙されちゃったの!』

 残念なことに物理的に干渉するまでの筋肉は俺には無く、必死に止めようとしたがシスターは死に、C.C.へとコードが引き継がれたような光景が映し出された。

『最後に…またあの殿方の逞しい体が見えた…気が…す…』

「……も、もう突っ込まないわ。私はこうしてコードを押し付けられ…ちょっとなにする気?」

 俺は軽く跳躍して体を温める。そしてクラウチングスタートの姿勢をとり、一気に駆け出す。童女の頃のC.C.に俺は約束したんだ。

 

 俺の膝蹴りが空間を砕いた。

「あぁ、もうその…勝手にして」

 

 気がつくと俺の肉体は蜃気楼のコクピットに移っていた。

「C.C.!」覚えてるか!?あの日の約束を!!」

『開いたのか!?思考縄梯を!!』

 C.C.はシャルルから離れてくれた。俺の想いが通じたようだ。

 

 想いはパワー パワーは筋肉 つまり筋肉は想いとなる。つまり全身筋肉の俺の想いを受け取りC.C.は心を動かされたのだ。

 

 謎の物体が蜃気楼に引っ付いてくるが全て殴り飛ばし、絶対守護領域を展開した拳で暴れ回る。

「俺はこの空間を破壊し尽くすだけだァ!!」

「なんったる愚かしさァ!!!」

 そして砕けた足場から落ちるC.C.を俺は瓦礫を足場に飛び移り抱き抱える。

 

「C.C.!俺が守ってやる!お前が笑って暮らせるように!」

 




安心してください、貴方が読んだのはコードギアスの二次創作です。()

過去(記憶)干渉はあくまでもC.C.が直接見せたあの空間を介してのみできる技です。
また、ルルーシュの心の筋肉による超筋肉強化もCの世界でのみ発動可能な技です。
Cの世界は現実世界よりも超常的なことが起こりやすいんでしょうね。納得しましたか?(殴打)納得したと言え!!!(殴打)


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TURU16

 ルルーシュの正体を怪しんだスザクはルルーシュに変装した咲世にサイドトライセップスをした。これは二人の間で「屋上で話そう」の合図だった。しかし咲世子はそのことを知らない。
(何かしら、スザクさんがいきなりサイドトライセップスを…ここは…)
 咲世子はスザクに対し、ダブルバイセップスを返した。
(なっ!?そのポーズは「今は忙しいからまた今度」の返事…!?だが、ルルーシュは何かを仕込もうとしているのかもしれない!ここは食い下がって…)
 スザクはルルーシュに対しモストマスキュラーのポーズをとった。これは二人の間で「そこをなんとか」の合図であった。
 対する咲世子はサイドチェスト…つまり「しつこいぞ」と返事をする。流石にスザクもここまで筋肉コミュニケーションが成立する相手を偽物だとは思えなかった。スザクは最後にアドミナブルアンドサイで「また日を改める」と返事をすると立ち去った。
(なんだったのかしら…?)

 時に筋肉は奇跡を起こすのである。

 そしてこれは余談だが、スザクは今日は頼まれた限定品のパンを購入出来無かったそうな

それでは本編スタートです。


 気がつくと俺とC.C.はあの壁の前にいた。

「戻ってこられたのか。C.C.、目を覚ませ、おい」

 俺が軽くC.C.を揺さぶるとC.C.は目を覚まし、キョロキョロと周りを見渡した。しかし、前に比べてどこか怯えている様子に見える。

「あ、あの…ここはどこですか…?あなたは新しいご主じ…あっ、その胸板…」

 なんだ?C.C.の様子がおかしいぞ…?C.C.はやけに俺の胸板をペタペタと触ってくる。いつもは暑苦しい肉ダルマと言ってくる癖に…

「やっと私を守りに来てくれたんですね、ムキムキのお兄ちゃん!」

 そういうとC.C.は俺に抱き着いてきた。こんなこと今までになかった…それにムキムキのお兄ちゃんという呼び方…まさかC.C.は記憶が退行している…?あの世界に触れたせいだろうか。

 …しかし「お兄ちゃん」か。新鮮で悪くないな…

「俺はルルーシュだ。君は?」

「私は…\ポチャン/」

「そうか、良い名前だ。こんなところじゃなんだから移動しよう。\ポチャン/」

「うんっ」

 問題は山積みだが、一先ずC.C.を抱き抱え蜃気楼に乗り撤退する。

 

 斑鳩に戻り、C.C.の症状についてを「ブリタニアの洗脳攻撃を受けて幼児退行した」と言い訳をし、それを俺が助けたことから「マッスルガイを信用する幼児のような精神状態である」として斑鳩の俺の部屋内で療養するということになった。

「人間を幼児退行させるなど…なんという恐ろしい兵器を…!ブリタニアめ羨…けしからん!」

「安心しろ星刻、装置も研究施設も資料も全て抹消した。これであの恐ろしい兵器は二度と使われることはないだろう。」

 ロロは再びエリア11に戻し、ブリタニアに動きがあったらナナリーを助けるように言いつけてある。俺がゼロだとシャルルに知られてしまった以上、準備を進めなければならない。エリア11に攻め込みナナリーを奪還する。超合衆国憲章を使い、各国のブリタニア軍を抑え込みトウキョウ決戦に持ち込むのだ。

 

 アーニャのブログを確認するとつい先ほどアーサーに関する猫の記事を始めとする他愛の無い内容がアップされている。つまりまだラウンズは動いていないということだ。

『ルルーシュ様、お耳に入れたいことが』

 ジェレミアから極秘事項と言われ、着いていくと拘束されたコーネリアを見せられた。

「申し訳ございませんルルーシュ様、ご命令は殲滅でしたがブリタニア皇族であるコーネリア殿下を手にかけることはできず…」

 交渉のカードに使える可能性があるのだからむしろ褒めてやりたいところだ

「よくやってくれたジェレミア。それにしてもお久しぶりですね姉上。…すこし逞しくなられましたか?こう、腕の辺りが」

「気安く触るな!ふん…お前は相変わらずの肉ダルマだなルルーシュ!またもや捕まるなど!くっ!殺せ!」

 姉上も相変わらずのお人だ。

「私は屈しないぞ!お前と話すことなどない!」

 残念だが俺にそれは通用しないのだ。

「姉上はギアス嚮団で何を?答えろ」

 ブラックリベリオンの時、俺は俺の問いに答えるようにコーネリアにギアスをかけている。つまり

「ユフィのギアスを解く方法を探しにやってきた。」

 ぼうっとした顔でコーネリアは答え、すぐにカッとこちらを睨む。

「なるほど、ユフィに掛けられたギアスを解くために世界を旅していたのですか」

「何故それを!?」

「姉上には私の質問に答えるようにギアスを掛けているのですよ」

 コーネリアは更に強く俺を睨む。

「貴様…!」

 待てよ?これはかなり良いカードが手に入ったのではないか?

「姉上、実はあるのですよ。ギアスを解く手段が」

「何!?」

 俺はジェレミアのギアスキャンセラーを発動させ、コーネリアにかけたギアスを解除した。

「ジェレミア…!まさかお前が…。頼む!ユフィのギアスを!」

「姉上、いくら腹違いとはいえ実の姉弟であったとしても…タダというわけにはいきませんよ」

「貴様ァ…!元はと言えば貴様のギアスのせいだろう…!」

 俺はコーネリアに再びギアスをかける

「"ギアスを解除する方法に関することだけ忘れろ"」

 これでコーネリアはユフィのギアスを解除するためになんでもするだろう。そう、なんでもな。

「…くっ!何故かギアスを解除する方法があることは実体験でわかるのに、その方法だけが分からない!貴様…私に何かしたな!?」

「ええ、姉上には是非協力していただきたいことがありましてね。そのための交渉ですよ。私が捕まったり死ねば永遠にユフィは日本人を殴り殺す哀れな撲殺人形。ですが私に協力してくだされば私のかけたギアスを解いて差し上げますよ。どうですか姉上?」

「卑怯者め…!」

 ナナリーを救い出すためなら卑怯者にでも何にでもなってやるさ。

「…条件はなんだ」

「我らが愛しい妹のナナリーを助け出す手伝いをして欲しいのですよ。姉上だって妹を持つ身、私の思いを察してくれるでしょう?」

「くっ…!」

「ナナリーもユフィも普段は政庁に居ますからね。姉弟として仲良くやりましょうよ、ねぇ?姉上。」

「…良いだろう、だが約束を違えたら容赦せんぞ…!」

 簡単に俺に従えというギアスをかけるよりも自由意志を残した上で操れる今の方がコーネリアは良い手駒になるだろう。コーネリアのユフィへの想いは本物だ。想いはパワー、パワーは筋肉、つまりコーネリアは心の筋肉に関しては俺に匹敵するマッスルウーマンだ。それが我が手中に落ちたとあれば勝利は確実…!ふはははははは!!

 

 その後もブリタニアの動きを見る限り、皇帝不在の印象を受けた。どうやらあの崩落した空間に置き去りになったようだ。

「よし、これでしばらくはナナリーの安全が確保される。今のうちに準備を進めるか。」

「あの、ルルーシュお兄ちゃん、私は何を…」

「そうだな、まずは腹筋100回と腕立て伏せを100回にスクワット100回と懸垂100回を3セットかな。だが無理はするなよ。水分補給はしっかりな」

「はいっ!1…2…3……」

 そういうとC.C.は素直に筋トレに取り組み始めた。…いや、C.C.に筋トレは無駄か…?まぁ良いだろう。筋トレをする中で培われる心の筋肉はきっと無意味ではないはずだ。

 

 俺は合衆国憲章批准予定国の代表を集め、合衆国憲章の説明を行なっていた。

「…と、このように。この合衆国憲章を批准することで神聖ブリタニア帝国に匹敵する巨大な連合国家が誕生する!」

 そして俺はダブルバイセップスを決める。

「その名も、超合衆国!」

 会場の反応を見るにかなり好感触だ。

「ゼロ様素敵ですわーーー!!!」

「ブリタニアの植民エリアとなった亡命政権からも参加表明が届いています。」

 そう、これでこちらは「解放戦争」という大義名分を得ることになる。つまりは正義の戦争だ。来るべき日本奪還作戦においてこちらが勝利すれば未だに様子見を決め込んでいる愚かな奴らも、流石にこちらに尻尾を振るだろう…いや、ジルクスタンとか言う国はどうにも靡かなそうではあるが…まぁ、あの国は傭兵を雇わせてくれるのならばこちらとしては文句はない。

 だが、そのためにもブリタニアが動く前に超合衆国を作る必要がある。各国の代表にもそれぞれ言い分はあるかもしれないが、ここは時間が勝負を分ける。流石に対局的な見地に立って行動くらいできるだろう。

 

 そろそろ飯の時間だ。C.C.にも好物のピザを差し入れてやるか。杉山に用意させておいたピザを受け取り、部屋に向かう。

「昼飯を持ってきたぞ」

「98…99…100…!」

 どうやら本当に筋トレをしていたらしい。珍しくC.C.は汗をかきながら肩で息をしていた。

「終わったよ!お兄ちゃん!」

「そうか、偉いな。まずは水分補給とシャワーで汗を流すと良い。」

 一度水分を補給させてシャワーから出たC.C.をソファに座らせピザを差し出す。

「これは?」

「ピザだよ。美味いぞ?食ってみろ」

 そう言って食べ方の手本を見せると飛びつくように食べ始めた。

 

 

 

「猫と戯れるスザク、記録」

 いつものようにキスしてくるアーサーと戯れて居るとアーニャが写真を撮ってきた。

「またブログにアーサーの記事を載せるのかい?」

「うん。猫は可愛い。記録して残したい。」

「記録もいいけどたまには直接触れ合って思い出にするのも大事だと想うよ。」

 アーサーはこんなに人懐っこい猫だからね。ほら見てみなよ、キスが激しすぎて持ち上げてもキスしたままなんだ。よほど僕に懐いてくれてるんだね。かわいいなぁ

「思い出…?人の記録なんて曖昧なもの、価値はない。」

「そうかな?」

「価値はない。9年前、私が書いた日記がある…けど、私にはそれを書いた記憶がない。」

 …記憶がない?まさか…皇帝陛下のギアスを…?でも、どうしてアーニャが…。

「他にもいっぱい。私の記憶とデータとしての記録は違って居るの。」

 ラウンズならば頻繁に陛下に会う…その度に記憶を?いや、ますます意味がわからない…なぜそんな…。

「それだけじゃない。今でもたまに記憶がずれる事がある。中華連邦で戦った時もいきなり…」

「そう…なんだ。」

 中華連邦?それは流石に皇帝陛下は関係なさそうだ。でももしかしたらアーニャには何かそう言う障害があるのかもしれない。

「久しぶりだな枢木卿」

 突然声をかけられた。声の方向を見るとナイトオブテンのブラッドリー卿だ。

「お久しぶりです、ブラッドリー卿」

「白ロシア戦線の時はお前に手柄を譲ったが…今度は負けんぞ?」

「いえ、今回も負けませんよ」

「ふっ、こいつめ」

 ブラッドリー卿と軽く握手をするとナイトメアが降りてきた。これは…ギャラハッド。つまりナイトオブワンのビスマルクさんだ。

『三人とも、久しぶりだな!黒の騎士団が攻め込むであろうこの地を見事守り抜こうぞ!』

 その後僕らはシュナイゼル殿下の指揮の元闘うこととなった。

「そうだ枢木卿、確かイレブンのエースを捕虜にしてるとか。一度どんな面なのか拝んでも?」

「ナナリー総督に聞いてみますね。」

「よろしく頼むよ」

 ナナリーに連絡すると許可が降りたため、僕とブラッドリー卿はカレンのもとを訪れた。

 

「…998…999…1000…!よし!」

「まぁ!カレンさんったらお兄様みたい!

「ちょ、ちょっとやめてよ!」

 そんなやりとりが聞こえてきた。

「ナナリー総督、ナイトオブテンのブラッドリー卿をお連れしました。」

「ほう、こんなお嬢ちゃんがイレブンのエースねぇ…手合わせできないのが残念だ」

「あなたがブリタニアの吸血鬼さん?噂よりもまともそうな言動してるじゃない」

 そういえば僕がラウンズになる前はブラッドリー卿といえば悪い噂をよく聞いた気がする。でも、実際に会ってみるとなかなか良い人だし、僕に対抗心を燃やして戦果を競い合ってくるような負けず嫌いな性格をした人だ。つくづく噂なんて尾鰭がついて実際とはかけ離れるものだよね。

「あ、スザク。この前話した行列のできるお店のプリンを買ってきていただけませんか?」

「イエス ユア ハイネス」

 

 ブラッドリー卿とナナリーと別れ、僕はロイドさんに呼ばれたこともあり格納庫へ向かった。ニーナの話だとランスロットにフレイヤを載せるらしい。聞けば一発打っただけで軽くトウキョウ租界を滅ぼせるとんでもない爆弾らしい。そんなものを僕に…?正気なんだろうか、そんなものを扱える気が…………

 

 …いや、それだけの兵器を扱えるように俺は鍛えないと。

 

 それから僕は格納庫を出てプリン屋へと向かった。

 

 

 

 ディートハルトからの報告で全世界に向けての報道準備は整った。俺はインドとギニアの代表に会い次第会場に合流する予定となっている。電話を終え、部屋を出る準備を済ませる。

「それじゃあ俺は行ってくるから。部屋からは出るなよ。」

「うん!いってらっしゃいお兄ちゃん!」

「あぁ、行ってきます。」

 仮面をかぶり俺は歩を進める。

 

 この連合国家構想はそれだけが目的ではない、あえて連合国家達には軍を持たせず、代わりに黒の騎士団という戦闘集団に資金と人員つまり戦力を集中させる。これにより連携を欠かずに強大な軍隊を誇ることができるのだ。

「…それでわーーー!!!私から最初の合議ですわーーー!!!我が合衆国日本の領土が他国により蹂躙され不当な支配を受けて続けてますわーーー!!!黒の騎士団の派遣を要求したいと考えますわーーー!!!賛成の方はご起立をお願いしますわーーーー!!!!」

 そして多数決は全員の起立という形で賛成を意味した。これで解放戦争という名目でエリア11へ進軍できる。ようやくこの時が来た。ナナリー!すぐに迎えに行くからな…!

 

 しかし、その時モニターに映るはずのない男が映し出された。

『ゼロよ!それでワシを出し抜いたつもりか?だが…悪くない、流石はワシに匹敵する筋肉を持ち…優れた頭脳で数々の策を弄し、これほどの国を纏め上げる我が好敵手よ…。3局の一つE.U.は既に死に体、つまり貴様の作った小賢しい憲章は世界をブリタニアとそうでない者に色分けする。単純それ故に明快…。この戦いを制した方がこの世界を手に入れるということ。良いだろうゼロ!挑んでくるが良い!全てを得るか全てを失うか…戦いとは元来そう言う物よ。オールハイルマッスル、オールハイルブリタァァァニァァァ!!!』

 いけない…!今すぐにナナリーを救い出さなければ…!今すぐに…!ロロを使って…いや、当然向こうも対策して居るはず、単騎で向かわせるのは危険すぎるか…!どうにかしなくては…!いや、時間がないとは言っても総督に就任している皇女をこんな戦のタイミングでぞんざいに扱うはずはない。冷静に部屋で考えるくらいの時間はあるはずだ…!

「藤堂、私は少し作戦を練り直す。ここはお前に任せるぞ」

「あぁ、任せてくれ。日本万歳!」

 部屋に戻るとまたC.C.は筋トレをしていたようだ。

「あっ!おかえりなさい!」

「あぁ、ただいま」

 チラリと机の上を見るとどうやら俺の分らしいピザが残っていた。ピザを齧りつつ頭を回らせる。コーネリアを人質に…いや、そんなものが通用する男ではない…いや、コーネリア?そうだ…ユフィのギアスを解くのを交換条件にスザクにナナリーを守って貰えば良いじゃないか…!

 俺がそう結論を出して居ると、C.C.が痛いと声を漏らした。振り向くと、どうやら慣れない道具を誤って使ったがために指先を切ったようだ。普段のC.C.ならば傷なぞ治るはずだが、記憶が退行して居るせいなのかその様子がない。消毒と絆創膏で応急処置を済ませると俺はスザクへと電話をした。

『もしもし?ルルーシュ?どうしたのさ』

「…ニュース知ってるよな?…また、エリア11が戦場になる。」

『トウキョウ租界も危ないかもね。また忙しくなるよ』

 …こいつまだ俺がゼロだと気付いて居ないのか。

「…なぁスザク。俺たち友達だよな?」

『何言ってるんだい今更』

「俺の頼みを聞いてくれないか?」

『うーん、僕も軍の仕事があるからね…。それに、行列のできる店のプリンを買ってこなくちゃいけないんだ』

 呑気なやつだな…!

「ナナリーを守ってくれないか」

『ナナリー総督を守るのは任務…うん?ナナリー?まさか君…記憶が戻ったのか!?…そうか、だから陛下は…。』

 この反応を見るに本当に気づいて居なかったようだ。

『ゼロは君だったのか…ナナリーを守ってくれ、か…なんで僕がそんなお願いを聴かなくちゃならないんだい?』

「頼む…!俺自身への罰なら然るべき時に受ける!だがナナリーは関係ない!」

『…罰を受ける覚悟があるのなら…そうだな、君の誠意を見せて欲しい。ナナリーのいるこのエリア11に君は一人で来るべきだ。枢木神社に来るんだ。そこで…二人きりで、君の覚悟を見る。』

 

 そういうと電話が切れた。




記憶干渉パンチにより奴隷C.C.とルルーシュが面識あり状態に変化。これも筋肉によって世界が歪んだせいなんだ!

今頃C.C.の本名回収イベントを挿入したけど、知ったからと言って特に意味はないです。

ブラッドリー卿の人間性が上方修正のアップデートを受けました。多分折れちゃったんでしょうね、色々と。

なんだか久しぶりにコードギアスやってる気がします。

●オマケ● 唐突な次回予告
ルルーシュ「見合って」
スザク「見合って」
ルルーシュ&スザク「「はっけよーい…のこったッ!!」

TURN17「血の味」


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TURN17 血の味(土の味)

「シュナイゼル殿下、予想通り枢木卿が動きました。目的地は恐らく枢木神社かと」
「報告ご苦労カノン。やはり彼はゼロとただならぬ関係だったようだね。」
「はい、あの筋肉量、そして彼はオレンジ事件とキュウシュウの二度命を救われて居ます。」
「神根様でも行動を共にして居たと聞くしね。しかし…皇族に恨みを持ち、彼と関わりのある頭の切れる男…か、ナナリーが生きて居ると聞いてまさかとは思うが…ゼロの正体が私の思う彼なら、是非とも会って話がしたいところだ。私は彼の血を分けた実の兄なのだから。」

それでは愉快な本編スタートです!


 あの日、初めてこの階段を登った時はまだ鍛える前で、ナナリーを背負い必死に登ったのを覚えて居る。それが今やダッシュでかけ上がれるのだから努力とは恐ろしいものだ。

「一人で来たのか?」

「勿論。約束だからな。」

 本当は嘘だ。作戦に組み込めないある人物を一人近くに配置している。俺の合図があれば駆けつけてもらう予定になって居る。

「よく来られたね」

「俺の肉体を持ってすればあらゆる場所が歩行可能だからな、簡単だったよ。」

「違うよルルーシュ」

 うん?どういうことだ…?

「よく僕の前に顔が出せるな…そういう意味だ。」

 スザクは俺を強く睨んだ。

「約束だから?今更君のことなんて信用できるはずないだろ。僕を…みんなを騙して…!ユフィのギアスを解除するだなんて嘘までついて!!」

「だったらなぜお前もここに一人で来たんだ…?」

「これ以上嘘を吐きたくないからね。ナナリーに嘘を吐いた…君と同じように…最低だ!何がマッスルガイだ!ずっと僕を裏切って居たくせに!」

 スザク……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 言わせておけばコイツ、好き勝手なことを言いやがって…!!!もう許さん、ユフィのギアスを解除してやろうと思っていたがそっちがその気ならこっちだって考えがあるぞ

「…スザク!」

 俺は四股を踏む。

「なんの真似だいルルーシュ?」

 そして俺は見合った。言葉で言って分かってくれないなら拳でわからせるしかないからな。即ち…………………

 

 

 

 

 

 相撲だ!!

 

「言葉の次は暴力か、いつまでも君に負ける僕だと思ったら大間違いだよルルーシュ」

 スザク四股を踏み、俺に見合う。

 

「見合って」「見合って」「「はっけよーい…のこったッ!!」

 

 スザクの初撃は突っ張り!これは恐らくフェイントではない!バックステップで躱す事に成功した。その場合奴はこちらの攻撃を避けるために距離を取るはずだ。移動座標は…X23!ならばそこに突っ込み、こちらも攻撃を仕掛ける!

「くっ…!式根島の時よりも強くなって居る…!」

「鍛えてるのはお前だけじゃないんだよスザク!」

 俺達二人は互いの学生服をがっちりと掴み、離さない。

「答えろ…ルルーシュ!君がユフィにギアスをかけたのか!」

「あぁ、そうだ!」

 一瞬俺の体が持ち上げられるがすぐに踏ん張り留まった。

「日本人を殴り殺せと?」

「俺が命じた!」

 俺はジリジリとスザクを石段の方へと押し出していく。しかしスザクも踏ん張り、やがて拮抗する。

「なぜそんなギアスを…!ふんっ!」

「どっせい!…日本人を決起させるためだ!はっ!行政特区日本が成立すれば…どすこい!…黒の騎士団は崩壊して居た!」

 俺はスザクを持ち上げ投げ飛ばそうとするが、スザクはスザクで体を捻り、着地する。こいつ…!

「かつてシャーリーの…ふんっ!記憶がなくなったのは?どすこいどすこい!」

「ふんぬっ!俺のせいだ…どっせい!ゼロの正体を知られたから口封じをした!」

「君にとっては…ぐぬぬっ!…シャーリーもユフィも!どすこい!野望のための駒に過ぎないのか!」

 俺たちは身体と身体をぶつけあい大きな音を撒き散らす。スザクめ、予定ではもっと早期に決着をつけるつもりだったのだが…!やはり相撲は日本文化…藤堂達から指南を受けたとはいえ決めきれないか…!

「全ては盤上のことだ!どすこい!全ての罪はこの俺にある!ふっ!はっ!だが、ナナリーは関係ない!」

「卑怯だ!うぐっ!ナナリーをだしにして!!」

 再度俺たちの攻防は階段際になった。流石にこの階段を転げ落ちれば打撲くらいするはずだ。俺たち二人は必死の攻防を繰り返す。

「ルルーシュ…!きみはっ!どすこい!許されるとどすこい!思ってどすこいどすこい!居るのか!どすこい!」

「どすこいどすこい!許す許さないじゃない!どすこい!俺はナナリーを助けたいだけだ!どすこいどすこい!そのためには!どすこい!お前に頼むしかないんだ!」

「それは人に物を頼む態度じゃないんだよ!!」

「お前が口で言っても分かってくれないからだろ!!」

 ふと、スザクの手が緩んだ。…よし!勝った!!そう思った瞬間…

 

「ルルーシュッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の顔面に拳が突き刺さった。

 

 は?

 

「おい!パンチは相撲じゃ反則だろう!」

「うるさい!ギアスなんてものを使って人を操る君に反則だとか卑怯だとか言われる筋合いはないよ!」

 なんだと…!?こんな時に正論を振り翳しやがって!そっちが殴るならこっちだってやってやるぞこの野郎!!

「スザクッ!」

 俺の拳がスザクの顔面をブチ抜く。

 しかしスザクは反撃に蹴りを繰り出してくる。とはいえ俺もそんなに黙って殴らたり蹴られたりしてやるほどお人好しじゃない。蹴りを腕で防御し、スザクを突き飛ばして距離を取る。

 

「かかってこいルルーシュ!君はなぜ僕に鍛えろとギアスをかけた!?」

「俺が…生き残りたかったからだ!」

 お互いに走り、スザクは俺の顔面に一撃を、俺もスザクの顔面に一撃を叩き込んだ。お互いに顔面への殴打は中々キツく、ふらふらと距離をとり、一度呼吸を落ち着かせる。

 

「クロヴィス殿下殺害の時、俺を助けたのは何故だ!?」

「日本人を信用させるためだ!」

 再度互いに走り、スザクは俺のボディに一撃を、俺もスザクのボディに拳を一撃ずつ叩き込んだ。

 人間、顔面に対する殴打による脳震盪ばかりをイメージしがちだが、このボディへの一撃というのも中々来るものがある。やはり一度距離をとって互いに睨み合う。

 

「ホテルジャックの時、生徒会のみんなを助け出したのは何故だ!?」

「黒の騎士団のデビューに使えると思ったからだ!」

 三度目の正直、お互いに走り、スザクは俺の顔面に回し蹴りを叩き込み、俺は膝蹴りをスザクの腹にブチ込んだ。

 

 お互いノーガードでの殴り合いに体力がつき、仰向けになって倒れた。

「…嘘だな。君の拳を受ければわかる。君は本気じゃない、わざと僕に殴られて罰を受けて居るつもりか」

 馬鹿な…俺が罰を受け入れているだと…!?そんなはずは…いや、もしかしたらそうなのかもしれない…俺は俺の拳を受けたことがない、そのスザクが言うのなら…

 

 やがて、体力が回復して俺たちは起き上がり、再び向き合った。

「嘘なら…ルルーシュ、君の嘘を償う方法は一つ、嘘を本当にしてしまえばいい。君は正義の味方だと嘘をついた…だったら、本当に正義の味方になってみろ!!ついた嘘は最後まで突き通せ!この戦いを終わらせるんだ!君はゼロ、僕よりも頭が良くて筋肉もある、そんな君にしか出来ないことを!世界を平和に、みんなが幸せになるやり方で!!」

 そう言うとスザクは少しだけバックステップを踏み、俺を睨む。俺は頷き、仁王立つ。

 スザクはそこから助走を取って俺の顔面にドロップキックを叩き込んできた。俺はそれを甘んじて受け、吹き飛ばされる。石段を転げ落ちたので登ってからスザクと再び対峙した。

「ナナリーを守りたいのは僕だって同じさ、ルルーシュ」

「ありがとう、スザク…」

 スザクから差し出された手に俺がスザクに手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、俺の脇腹を何かが貫通した。

 

『そこまでだゼロ!』『既に正体は知られて居るぞ!』

 俺は思わず痛みでうずくまってしまった。周りを見渡すとブリタニアの兵士が集まってきた。なるほど、スザク…そう言うことか…また俺を裏切ったんだな…

「スザク…!俺の踏み心地はそんなに良かったか!?一度ならば二度までも俺を踏み台にするのか!!」

「ち、違う!ルルーシュ!」

 俺は俺を押さえつける兵士たちを力を振り絞り跳ね除ける。

 

 そして…ダブルバイセップス。

 

 そう、合図を出したのだ。ブリタニアのナイトメアの一機が銃撃に沈み、場は混乱に陥る。俺の腹に弾丸ひとつ分の風穴を開けて安心するとは馬鹿な奴らめ。混乱で生じた隙にスザク以外の歩兵を拳で叩きのめす。

『ルルーシュ!』

『この声はコーネリア皇女殿下!何故ゼロと…!?』

『ギルフォードか…』

 コーネリアの駆るグロースター・可翔式が瞬く間にブリタニアのナイトメアを…上手く腕と頭だけを吹き飛ばして…無力化していく。流石はコーネリアと言ったところか。

『何故です姫様!』

『訳は話せぬ!許せギルフォード!』

 そう言ったコーネリアはギルフォードのヴィンセントを蹴り飛ばし、俺を乱暴に掴んだ。

『この程度で死ぬお前ではあるまい。ユフィのギアスを解くまで死んでもらっては困るからな!』

「この程度かすり傷だ…!だが、頼んでいたとはいえ助けに来てくれて嬉しかったよ、姉上」

『べ、別にお前のためではない!ユフィのためだ!か、勘違いするな!』

 筋肉で腹の穴を塞ぎつつ、隠しておいた蜃気楼に乗り込みコーネリアにはトウキョウ租界への進軍を指示した。

 

 トウキョウ租界の上空、乗り込んだ蜃気楼の中で俺は準備して居たそれを起動する。そう、ゲフィオンディスターバーだ。更に藤堂達に合図を出してトウキョウ決戦へと持ち込む。

「この真のマッスルガイたる俺が租界で筋トレだけに明け暮れて居たとでも?これでトウキョウ租界は停止する!ナナリーを救い出す!」

「ロロ!ナナリーの救出は任せたぞ!」

『任せてくれブラザー!うおおおお!待っててくれシスター!!』

 そうだ、俺が間違っていた。友情などに頼ろうとしたのがいけなかったんだ!筋骨!隆々!自らの筋肉を完全な状態に置かねば、ナナリーは取り返せないんだ!!

 

 

 

『卜部殿は左翼の援護に!異常な突破力のナイトメアを抑えてくれ!』

「承知した!」

 藤堂中佐達本体はトウキョウ租界へ、私は星刻殿の補佐として戦場を駆けていた。ゼロ曰く私はこの戦場における切り札らしい。確かに戦力的には星刻殿の方が強力だが、指令としての仕事もあるため動きが制限されるのだ。

 味方の六角突貫陣を返り討ちにする所を目の当たりにして、即座に察した。この相手、ラウンズだ…!

『おやぁ?お次の相手は君一人かな?それじゃあ足りないなぁ…戦場に手向ける命の華としてはッ!!』

 太腿辺りから放たれた光弾を回避し、その性質を理解する。あれはハドロンショット…!ゼロの蜃気楼の腕について居るものと同じだ、厄介だな…。右手の爪と鍔迫り合いにならば確実に撃たれる。ならば…!

『さぁ!咲かせろ!お前の命の華をッ!!』

 敵のナイトメアは爪を回転させドリルのような物を形成して居た。まずい、あんなもの掠っただけでも危険だ。突き出されたドリルを刀で受け流し、すぐに斜め方向に距離を取る。予想通り先程まで俺の位置へとハドロンショットが放たれていた。正面から打ち合うのは危険だ。

『ほう?私の攻撃を避けるとは、中々やるなぁ貴様…これは良い華が咲きそうだ!!私はナイトオブラウンズが一人、ナイトオブテンのルキアーノ ブラッドリー!咲かせた華に付ける名は?』

 この男やはりラウンズか…!つまりモニカ殿と同等の相手ということ…

「我が名は卜部 巧雪、相手にとって不足なし、いざ参る!」

『ウラベ…?あぁ、モニカが言ってたイレブンか。コイツはいい!良い華が咲きそうだ!!』

 ドリルの薙ぎ払いを急制動で躱し、シールドでの殴打に対しこちらはシールドを蹴ることで回避する…が、しまったな。流石に無茶で脚が砕けたか、済まんラクシャータ。\もっと丁寧に扱いなさいよ!/

『体勢を崩したなぁ?所詮はイレブン、この私の手で咲けることを光栄に思うんだな!』

 こちらに向けられたシールドが展開し、中からミサイルが飛来する。

「ミサイルだと!?だが!」

 こちらには輻射障壁がある、ミサイルを防ぎつつ、煙で姿を隠して居る好きに反撃を…いや!

 俺は咄嗟に刀を構え、煙の中から突き出されたドリルを受け流す。

『ほう?』

「ミサイルを防がれることまで折り込み済みの攻撃とは…!だがしかし!」

『まぁいい、これで距離は…』「詰まったッ!」『…何ッ!?』

 こちらのスラッシュハーケンが相手の右肩を穿ち、あちらの頭部のスラッシュハーケンがこちらの胴体に直撃する。俺のところまではギリギリ突き刺さらなかったが俺はここまでのようだ。

『コイツ右腕を…フン、中々立派な華だったぞウラベ!』

 落ちていく俺の暁にハドロンショットを撃ち込み奴は去っていった。俺はギリギリ脱出に間に合ったが…復帰までは時間がかかりそうだ。済まないゼロ、今度こそ日本を救ってくれ…!

 

 

 

 ウラベとか言う男は…脱出したか…まぁ良い。この私にパーシヴァルの奥の手である頭部のスラッシュハーケンを使わせるとは…中々楽しめたぞ。

「ヴァルドシュタイン卿、パーシヴァルの右手をやられました。一度退がります。」

『ならば整備しつつグラウサム・ヴァルキリエ隊と共にトウキョウへ行け!』

「トウキョウ?なるほど、ゼロですか。わかりましたよ。…トウキョウ租界を花畑にしてやりますよ」

 しかし最後の最後にこの私のパーシヴァルに手傷を負わせるとは、枢木スザク同様、思っていた以上にイレブン共は手強いようだな…!




ミートギアス相撲回その2
ミートギアス恒例の肉体言語による激しい話し合いですね。…ルルーシュ短気になってない?

ルキアーノさんの人間性が若干の上方修正を受けたため、それに伴い戦場でもちょっと変な言い回しするだけの人になってます。

●オマケ● 特に意味のないオマケコーナー
イエス マイ ロウドウ!
イエス ユア タフネス!
イエス ユア マッスル!


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TURN18

 ランスロットに乗り込もうとするニーナをセシルとロイドが説得していた。
「ニーナさん、あなたの筋肉量じゃ無理です!」
「でも!このままじゃトウキョウ租界がゼロに!」
「だからさぁ…君の筋肉量じゃ操縦できないの!」
 そう、ランスロットの操縦機器はスザク並みの筋力が無ければびくともしないのだ。
「プロテインを使用すれば政庁に行くくらいは…」
 そこに逆立ち歩きでスザクがやってきた
「君にフレイヤを撃つ筋力はあるのかい?」
「筋力は関係ないんだけど…」
「それだけじゃない。撃たない筋力も必要なんだ」
「だから筋力は必要ないんだけど…」

と言うわけで、本編スタートです。


 まずはナナリーとコーネリアとの契約で確保する必要のあるユフィを確保するためにも政庁の制空権は押さえたい所だ。

「藤堂、千葉と朝比奈に政庁の制空権を抑えさせろ。」

『承知』

 ここで問題になるのは敵軍の第六世代以降のナイトメア…まぁ、そんなものはごく少数だろうがな。スザクのランスロットが出てきてもこちらにはジェレミアがいる。ロロは心配せずとも上手くやるだろう。何せあいつはもう立派なマッスルガイだからな。

 

 すると、蜃気楼に警戒のアラームが鳴る。モニターを確認すると案の定スザクがこちらに向かって飛んできていた。

『聞こえるかゼロ!戦闘を停止しろ!こちらは重戦術級の弾頭を搭載している。使用されれば4000万人単位以上の被害を出す…』

 ふん、スザクめ…俺相手にブラフなど舐めたことを…

「馬鹿が!ここでそんなものを使ってみろ、関係のない民衆まで巻き込む気か?もっとマシな嘘を吐くんだな!ジェレミア、お前の忠義と心の筋肉の力でスザクをこの世から消し去ってしまえ!」

『イエス ユア マッスル!』

 ジークフリートの装甲を利用して作られたサザーランドジーク…あれならば厄介なスザクをも始末できる!

『ジェレミア卿!?何故!!』

『枢木スザク…君にはかなり筋肉がある、とても筋肉がある、控えめに言っても筋肉がある!しかしこの場は…私の心の筋肉が勝る!!!』

 ギリギリで拘束を免れたスザクだったが、この俺の存在を忘れているようだな。

「絶対守護領域で殴る!!!」

『ここはヴァリスで!』

 無駄だスザク!この絶対守護領域を纏った拳…名付けて絶対破壊両腕はそのまま絶対守護領域としての防御も可能、その程度の攻撃で俺を倒すことは出来ぬゥ!!

 それにしても…

「コーネリア、何故傍観を?ユフィを助けたくはないのですか?」

『私に枢木を討てと言うのか…ユフィを支えてくれたあ奴を…』

「ほう…生きているユーフェミアと生きている枢木スザク…あなたは枢木スザクを選ぶと?」

『チッ…!』

 流石の姉上も立場を理解してくれたようだ。

『枢木!』

『まさか…コーネリア皇女殿下!?何故あなたまで…!!』

『訳は言えぬ、ユーフェミアの為に死んでくれ!!』

 それでいい…これで3対1…このままスザクを始末してやる…!

 

 ジェレミアのミサイルがスザクを襲う。俺は奴の進行方向を先読みし、絶対守護領域を蹴ってスザクに拳を見舞う。

『読まれている…!』

 俺の拳をギリギリで躱したが、体勢は崩れた。この状況なら!

「ずっと目障りだったんだよスザク!この裏切者が!!」

 俺は相転移砲を放った。

 

『そんな攻撃なんて!』

 

 避けたなスザク…俺の読み通りだ!あらかじめ空中に射出しておいた液体金属を凝固させたプリズムに相転移砲が当たり、反射し拡散する。

『なっ!?後ろから!?この攻撃は…!!』

 やはりこれをも回避するか、流石に伊達に"鍛えて"いないようだ…だが、これでチェックだ!コーネリアがランスでの突きを放ち、スザクはそれをシールドで防ぐ…それを蜃気楼でシールドごと殴り付け、吹き飛ばす。これで最早姿勢制御は出来まい!

「やれ!ジェレミア!」

『しまった!』

 俺がジークフリートから食らった電撃による拘束、それと同じものをサザーランドジークがランスロットに対して行う。これでスザクの拘束に成功した。ここまではすべて俺の作戦通り、あとは俺自ら絶対破壊両腕で粉砕すればナナリー救出の障害はなくなる!!

 

 しかし、俺の拳は妨害された。攻撃の出どころを確認すると…あれは…ナイトオブスリーのナイトメアか。何故ここに…!?

 続けての攻撃でスザクの拘束は解除されてしまった。ここにきて更にナイトオブスリーとは別のナイトメアだと…!?まさかシュナイゼル…トウキョウ決戦を読んでいたとでも…!?

「ロロ!どうやらトウキョウ決戦が先読みされていた。俺はしばらくこちらの対応をする。そちらへの合流は遅くなるが…」

『問題ないデス、ブラザー!シスターを助け出すのは任せてくだサイ!』

「頼んだぞ、ロロ!」

 流石は我が弟にしてマッスルガイだ…!

 

 

 

 この外の音…きっとみんな戦ってるんだ。それなのに私はこんなところで…!

「みんな…みんな戦ってるのに!」

 悔しい、その思いで私を捕らえる壁を叩く。何がゼロの親衛隊だ。こんな大切な時に戦えないなんて役立たずだ!

「くそっ!」

 八つ当たりに拳を叩き込む。

 

 ミシミシッ!

 

「えっ?」

 壁をよく見てみると。ひびが入っていた。毎日の鍛錬は無駄ではなかった。そうか、ルルーシュの奴ここまで計算して…!

「ふんっ!」

 ひび割れた壁を中心に連続の渾身の殴打。拳をそのまま打ち付けるのは怖かったのでドレスを破いて巻き付けてサポーターにする。

「ふん!ふん!」

 何度も、何度も、壁を殴打…やがて壁の破壊に成功する。

 

 しばらく政庁内を走っていると、誰かが壁を叩く音が聞こえてきた。もしかしたら誰かが助けに来てくれたのかもしれない。

「…誰かいるの?」

『…です!…人……で…!』

 少し壁から距離をとると、コンクリートの壁を突き破り、声の主が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日本人は撲殺です!」

 

 なんて事だ、声の主は撲殺皇女ユーフェミアだった。

「シュナイゼルお兄様ったら酷いわ!私をこんなところに閉じ込めて…折角黒の騎士団の方々が来ているならお出迎えしないと!…あらぁ?あなた確か一緒にキャンプした…。貴方は…日本人じゃ無いわよね?良かった。日本人だったら殴り殺さなくちゃいけないもの」

「…ブリタニアの血も半分入ってるけど、私は日本人よ。」

 殴り殺せるもんならやってみなさいよ。撲殺皇…って近い…!もう拳が目の前に……!!

 

「日本人を名乗る人はみんな撲殺です!!!」

 

 …目の前に迫っていた拳は誰かの掌によって防がれていた。でも、いつの間に…?

「大丈夫ですカ?カレンサン」

「このっ…離しなさい!」

 ユーフェミアの拳を止め、更に殴打を食らっても倒れない。ゴーグルで目元は見えないけれど、このルルーシュ並みの筋肉、白く煌めく歯、そしてこの独特な喋り方…

「貴方、ロロ ランペルージ!?」

「Yes I am!」

 更にユーフェミアはロロに金的を仕掛けるが、ロロはピンピンしていた。

「ノー!それはブラザーに仕掛けて失敗したことがありますカラ、勿論対策してマス!」

「なんですか貴方は。私はその方を…」

 次の瞬間、ユーフェミアはロロの腕の中で気絶していた。

 あ、ありのまま今起こったことを話すわ…!ユーフェミアに殴られると思ったらユーフェミアが気絶していた。何を言っているのかわからないと思うけれど、私にもわからなかった…瞬間移動とか、超スピードとかそんなチャチなものじゃァないわ。私の理解を超えるなにか恐ろしいものの片鱗を味わった気がするわ…!

「カレンサンはこの先の格納庫に向かって下サイ。咲世子と紅蓮が待ってますヨ。ボクはこの人を連れていかなくちゃいけないカラ」

「分かったわ。ロロも無事でいてね!」

「HAHAHA!!誰に言ってるんデス?」

 

 ロロに言われた通り、進んでいくと、そこには何か違う紅蓮があった。名は紅蓮聖天八極式…これなら…!!

 

 

 

『ブラザー!ユーフェミアは確保しまシタ。ナイトメアを奪ってそっちに向かうヨ』

「いや、今合流するのは危険だ。先に斑鳩に戻ってユーフェミアを部屋に押し込んでから合流しろ。こちらの戦局は拮抗しているがサザーランド如きで覆る戦いでは無い。それに乱戦ではお前のギアスを無闇に使うのは危険だしな」

『オーケーブラザー!』

 これで姉上に最低限の義理は果たせそうだな。それに姉上がこちらに寝返り戦ったことは既に知られている…更にユーフェミアの身柄はこちらが確保しているとなれば…まだまだ踊っていただきますよ姉上…。

『ゼロ!答えてくれ!自分が原因でこの闘いを始めたのだとしたら…』

「自惚れるな。お前は親を、日本を…筋肉以外を尽く裏切ってきた男だ。だから友情すら簡単に裏切る…ただそれだけのこと」

 そして接近してきたモルドレッドを殴り飛ばし、モルドレッドの極太ハドロン砲を絶対守護領域で弾く。スザクの相手はみんなに任せてここは先にナイトオブシックスを始末しておくか。

「お前のブレイズルミナスとやらとこちらの拳、どちらが上かな?」

 蜃気楼による連続パンチ、一撃を与えて離脱し、すぐに絶対守護領域を展開してそれを足場に方向転換、空中を縦横無尽に駆け巡り四方八方から拳を叩き込む。しかし流石だな、この拳でも簡単に壊せないとは…だが、全方位シールドなど…いつまでエナジーが保つかな?

『動けない…』

「堅いだけのナイトメアなど!!」

『ゼロ様、咲世子です。ナナリー様を確保しました。』

『キャータスケテーワタクシヲドコニツレサルキデスカー』

 ナナリー…こちらの意図を汲んで合わせてくれるようだな。棒読みのナナリーも可愛い。

 あとはこのままモルドレッドを始末して…むっ!?

『ゼロォ!』

 モルドレッドを始末する直前、ミサイルが飛来したため絶対守護領域で跳ね除ける。…モルドレッドはあの損傷だし落下もしている、ならば戦線復帰はないだろう。

 それにアレは…卜部から報告のあったナイトオブテンの機体か。確か突破力が異常だとか…ならば俺が直々に始末してやる…!

『ゼロ…私は美しい華が好きでねぇ…。だが黒い華は好みじゃないんだ』

「ほう?ならばキミには消えてもらおう」

 液体金属の凝固プリズムを取り出し、投擲!

『おおっと!』

 隙を晒したな?馬鹿め食らうがいい、相転移砲を!

『胸から出されるビームと先ほどのプリズムからの反射レーザーだろう?枢木から聞いているよ。ラウンズ相手になど同じ手が効くとでも?』

 馬鹿な、戦闘中に情報共有を…!?なっ何!?…しまった!敵の伏兵か…!両手足を拘束された…!だが、絶対守護領域で防御はできる!奴の武器は…どうやら右腕のドリルのようだが…

『さぁ!醜い華はさっさと散れェ!!』

 …い、いけない!モルドレッドを始末するのに時間をかけすぎた…!エナジーが保たない…!!

 

 その瞬間、蜃気楼の手足を縛る内の右腕を拘束する機体が爆発する。よし、この隙に…!自由になった右手のハドロンショットを使い拘束を解除して…

『させるかッ!』

 チッ!ラウンズめ、すかさず距離を詰めてきたか…!

 だが、俺とラウンズの間に輻射波動のビームが放たれる。

 

『ゼロは私が守るッ!!』

 

 どうやらやってくれたのはカレンのようだ。

「よし、そいつの相手はお前に任せる、私はスザクを始末しに行く!」

 藤堂からの報告では各地のゲフィオンディスターバーが破壊されている。時間はあまりないだろう。

 

 

 

 折角ゼロを始末できると思ったのだが…まぁ、黒い華よりは赤い華の方が好みだ。

「ヴァルキリエ隊は地上の雑魚を始末しておけ!こいつは私が相手をする!」

『『『イエス マイ ロード』』』

 これで邪魔は入らない…!

「さぁ、赤い華よ!私を満足させてくれッ!」

『その声…ふーん、ブリタニアの吸血鬼さんね。悪いけど、戦場で会った以上死んでもらう』

 ほう…?この女あの時の捕虜か…

『ブラッドリー卿、紅蓮の破壊許可が降りました。』

 破壊許可?関係ない、戦場に出てきた以上盛大に咲いてそして散って貰うだけだ。

 確かあの機体の恐ろしい武器は右腕の、フクシャハドーと呼ばれる一撃必殺の超兵器…ふむ、これが終わったらパーシヴァルに取り付けてもらうか。

 そう思っていると目前にその右腕が迫っていた。

「おおっと!」

 回避すると味方が貫かれ爆散していく。なるほど、右腕は有線式で切り離して自立行動しているのか、つまり本体は今ガラ空きッ!

 まずはシールドミサイルで牽制…回避されたか、だがそれくらいは対応圏内、ハドロンショットで回避行動を制限して距離を詰める!

 

 よし、この右腕で貫いてやる!

「さぁ!真っ赤な華よ咲き乱れろォ!!」

 突き出した右腕は短刀によって防がれた…が、終わりじゃ無いんだなこれが!

「これで決着はついた!」

 頭部のスラッシュハーケンで…

『ブラッドリー卿!』

 なっ!?ソレイシィ…!このタイミングで何故パーシヴァルを足蹴に…!私の邪魔をするつもりか!?

 

 その瞬間、真上から放たれた赤いフクシャハドーのビームがソレイシィのヴィンセントを消し飛ばす。まさか…あいつ私を庇って…!?

『邪魔が入ったけどこれで貴方の負け』

 再び射出された右腕をこちらも右腕で受ける。確か枢木が言うにはフクシャハドーに掴まれたらすぐにその部位を切り離さねばやられるらしい。右腕をパージすると同時にパーシヴァルの右腕が爆散した。成程、確かに強力だ。こちらは頭部のスラッシュハーケンを放つも、短刀を投擲され防がれた。

「まずい…!この私が…!」

 続けての右腕の殴打は盾を弾かれる代わりになんとか防ぎ、脚のハドロンショットを放つ…が躱された。なんだあの反応速度は…いけない…もう打つ手が無い…!

『そんなに華が好きならさァ…!アンタが盛大に咲きなッ!!』

 このままでは…やられる!

『ブラッドリー卿!お逃げ下さい!』

『邪魔をするなァ!』

 紅蓮とパーシヴァルの間に躍り出るも、2機のヴィンセントが一瞬で屠られる…!機体ポテンシャルが違い過ぎる…!くそ、私はこんなところで殺されるわけには!

 …!不味い掴まれたッ!

『捕まえたァ!食らいなァッ!!』

 なんだこれは!?か、身体が…燃えるように!!

「散ってしまう!私がァ!!このッ…………」

 

 

 

 ルルーシュ…何て苛烈な攻撃を…本気で僕を殺す気らしい…!それにジェレミア卿の攻撃、絶妙なタイミングでこちらのカウンターを潰してくる…隙が無い!

『枢木卿!ブラッドリー卿が…!』

 いけない…!アーニャも撃墜されてるから…!

『ス、スザク!そっちの援護にはいけそうに無い!さっきからカレンに追われててさ…おっと!』

 いや、この場は寧ろカレンを抑えてくれてるだけでも有難い。でもジノがカレンとやり合ってるってことは…

『枢木ィ!!』

「やめて下さい!皇女殿下!」

 MVSでランスの刺突を防ぎ、すぐさま蹴って距離を取る。続け様の援護射撃をブレイズルミナスで弾き…ルルーシュはどこだ!?

『命は貰ったッ!!』

「背後から!」

 回し蹴りを放つが、拳で殴り返され、脚部が砕け散った。やはりあのパンチを受けるわけにはいかない…!

『スザク!撃ってよフレイヤを!貴方も助かるのに!』

 ダメだよニーナ、これをこんな租界のど真ん中で撃てば沢山の人が犠牲になる。僕にその引き金を引く覚悟はない…!

 

 覚悟がない…?なんだ…?僕は……俺は…………

 

『終わりだ!枢木 スザク!!』

 MVSの斬撃を白刃取りで止めさせ、続けてのグロースターのランスの投擲を左腕を犠牲に対処。ヴァリスはルルーシュとの戦い中でとっくに叩き落とされていたので白刃取られたMVSをわざと折って拘束を逃れつつ、蹴りで距離をとり、欠けたMVSを投擲して空いた手を腰に伸ばす。

 

『"鍛えろ!"』

「俺は…鍛えるッ!!」

 覚悟を決められないような弱い心は…鍛えればいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フレイヤ…発射。

 




なんで私特に思い入れのないルキアーノに一人称視点与えてるんだろう…。マオの時はギアスの演出上もあってやったんですけど…

これが投稿される時点で先の話を突然書いてるんですけど、続きを早く見てほしい欲が凄く溢れますね。特別な場合を除いて一日一話ですけど。
…それでも毎日投稿ってすごいと思いません?(唐突な自画自賛)


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TURN19

「みなさんこんばんは、ニーナ アインシュタインです。今日は私の作った究極のクリーンな破壊兵器、『フレイヤ』についてご紹介しますね。
 フレイヤは発射するとある程度の距離を直進してから内部のサクラダイトが起爆して核分裂反応を起こし、巨大なエネルギーの球体が発生させます。見てください、綺麗でしょう?そしてこのエネルギーに触れたものを跡形もなく消滅させるんです。ゴミ処理問題の救世主です。この時球体内部の空気すら消滅してしまうので球体の縮小・消滅後は真空となった圏内に周辺の空気が流入し、第二次、第三次影響圏内に強烈な突風が発生してしまうので広範囲に甚大な被害を及ぼしてしまいますが、放射能とかは残らないのでとっても安全です!」

 それでは、あらゆるものが光の中に消えていく上に何故か無駄に長い本編スター…


 なんだ…?スザクの奴、何故今さらあんなものを撃った?この追い詰められた状況で当たるはずもないのに…

 

『聞こえるかゼロ!戦闘を停止しろ!こちらは重戦術級の弾頭を搭載している。使用されれば4000万人単位以上の被害を出す…』

 

 まさか…あの言葉は本当だったのか!?いけない…アレが本当なら…!

 突如目の前に光の球体が現れる。それはみるみる内に大きくなり、光に触れた物体を飲み込んでいく。ナナリーは政庁にいたはずだ。つまり…ナナリーが…ナナリーがあの光の中に…!?そんな馬鹿な!助けに、助けに行かなければ…!

「ナナリー!」

 そんな俺の機体を押し出す奴がいた。コーネリアだ。

「姉上!邪魔をするな!」

『ルルーシュ!お前に死なれては困る!約束は守れよ…ユフィの、ユフィのギア…』

 そして目の前のグロースターが脚から徐々に光へと飲み込まれていく。そして瞬時に光の球体が収縮すると突風が巻き起こった。

 

 政庁を探すが、政庁が無い。粉微塵になって消えたのだ。いや、きっとナナリーはどこかに居るはずなんだ…!

「ナナリー!ナナリーを探せ!早く!全力で探せ!黒の騎士団に告げる!全力でナナリーを探し出すんだ!!」

『しかしゼロ!またあの攻撃を受ければ黒の騎士団は壊滅するぞ!?』

 ええい…!藤堂!こんな時に俺に逆らうんじゃない…!殴られたいのか…!?

「ロロ!ジェレミア!ナナリーを探せ!ナナリーを探し出すんだ!早く!」

『イエス ユア マッスル!』

『ブラザー、ナイトメア部隊のエナジーは尽きかけていマス。一度補給した方が結果的に早くシスターを見つけ出せると思いますヨ!』

 …何…?それもそうか…こんな時でも冷静に判断を下せるとは流石は我が弟…ここはロロの言う通り一度補給をして万全な状態にしてから探す方が効率的か…待っていてくれナナリー!

 斑鳩に着き、補給の間は部屋で休んで万全な体力にした方が効率良くナナリーを探せるとロロに言われ、一理あると思った俺は部屋に戻っていた。

 

 しかし、結局休む気になどなれなかった。ナナリーはきっと今も俺の迎えを待ち望んでいるはずだ。

 すると、ロロが部屋に入ってきた。

「…どうしたロロ」

「…ナナリーは粉微塵になって死んダ。」

「…なに?」

 ロロは何も答えなかった。

「ふ、ふざけるな…!!お前はさっき探すと言ったじゃないか!!」

 俺はロロの胸倉をつか……もうとして腕が空を切った。ロロの奴め…!ギアスを使ったな…?

「あぁでも言わないとブラザーはあの場に残ったでショウ!?」

「当たり前だ!今もナナリーは俺の迎えを待ってるんだ!!」

「シスターはもう居ないヨ!!シスターは死んだんデス!あの光の中に飲み込まれてしまったんダ!!だかラ…」

 ナナリーが…ナナリーが死んだ…?そんな、そんな馬鹿な…いや、そんなことがあるはずがない…そんな…。

 

 問題だ…あの全てを飲み込む破壊の光からナナリーはどうやって生き残った?

 ①かわいらしすぎるナナリーは神にすら愛されたため、突如破壊の光から身を守るバリアを構築し耐え凌いだ

 ②誰かが助け行き、脱出を手引きした

 ③かわせない、現実は非常である

 

 俺が選びたいのは①だが、あの綺麗に租界をえぐった半球を見ればあまりにも非現実的過ぎる。物理現象が止められないのだからギアスで逃げることも不可能だ。つまり答えは②…そうだ、咲世子だ、咲世子が脱出させたに違いない!…では、何故その咲世子から何故連絡が来ない…?ほ、本当にナナリーは……答えが③だと…?そんなことは認めない…!認めてなるものか…!!!

 

「もしもシ?ジェレミアですカ?租界の探索ニ…?…オーケー。わかりまシタ、ブリタニア軍には気をつけて下サイ。ブラザーにはボクがついてマス」

 ロロがジェレミアと電話をしている…。ふと、ロロの携帯に付けられた揺れるハートのロケットが目に入る…あれは…あれは!あれは!!ナナリーへの誕生日プレゼントだ!!!!

 俺はロロから携帯を取り上げ、ロケットを引きちぎる。これはこんな奴が持っていていいものじゃないんだよ…!!携帯をロロに投げつける。そしてついでに顔面に拳を叩き込む。

「どうしてお前にあげてしまったんだろうな!このロケットは…このロケットはナナリーにあげるはずだったんだよ!」

「ブ、ブラザー…?」

「何がソウルブラザーだ馬鹿馬鹿しい!!」

 俺はロロの胸倉を掴み、その顔面に頭突きをブチ込んだ。

「お前のような奴が俺やナナリーの弟になどなれるものか!!」

 そしてロロの顔面に右の拳を叩き込む。まだだ。この目障りなクソッタレを徹底的に痛めつけて部屋から叩き出してやる!胸倉を掴むのをやめ、思い切り体を捻る。

「出て行け!!」

 すぐさま左の肘を叩き込み、更に両手で顔面を掴む。こいつでトドメだ!

「今すぐ出て行け!!!」

 顔面に右膝を叩き込む。

「二度と俺の前にその面を見せるな!!!ナナリーを救えと言った俺の命令を実行できなかった役立たずめ!!!何がマッスルガイだ、お前のは所詮見せ筋だ!!!!」

 そして部屋から物理的に叩き出すため、助走を取ってからドロップキックを叩き込み部屋から追い出す。

 

 よし…

 

 静かになった部屋の中で俺はソファに座り込んだ。

「お兄ちゃん…大丈夫?」

 恐る恐る…と言った様子で柱から顔を覗かせて声をかけてきたのはC.C.…。そういえばこいつもまだ部屋にいたんだよな。

「…怖がらせてしまったな。済まない…でも、今はそっとしておいてくれ…」

「ルルーシュ!」

 そんな静かになろうとした部屋に突撃してきたのはカレンだった。

「あの、お兄ちゃんがそっとしておいてほしいって…」

「は!?C.C.…アンタ…。ルルーシュ!私がいない間にそういうプレイに興じてた訳!?」

 クソ!そっとしておいて欲しいんだよこっちは!!

「ふーん、私のこと無視する訳ね…いいわよ、もう。でも、扇さん達が格納庫に来てくれって言ってるんだけど?」

 格納庫に?何で今…そうか、補給が終わったのか。でももう無駄だ。ナナリーは居ない…死んで…しまったんだ…。だが、ゼロとして行かないわけにもいかない。C.C.にすまなかったと頭を撫でてやってから部屋を後にする。エレベーターの中、カレンと俺は二人きりだった。

「ルルーシュ、私ね、筋トレのお陰で壁を壊せたの。それで脱出できて…」

「…そうか。助けるのが遅くなって悪かったな。お前は無事でよかったよ…」

 そういえば…俺を助けるためにコーネリアも光の中に飲まれてしまったのだったな。約束を守る義理くらいはあるか…。俺は携帯を取り出し、ジェレミアに連絡を取る。

「もしもし?ジェレミアか」

『これはルルーシュ様、いかがなさいました?』

「済まないジェレミア…もう、探索は良いんだ…代わりに斑鳩内のユーフェミアに掛けられたギアスを解除しておいてくれ…死んだ姉上との約束だ。」

『コーネリア皇女殿下の…畏まりました。ルルーシュ様』

 エレベーターを出ると、カレンが疑問を口にした。

「ぎあす?解除するって何の話?」

 あぁ、そういえばカレンはギアスを知らないんだったな…まぁ、カレンくらいには言っておくべきだったか。…どうでもいい、全て終わったことだ。

 すると、突如俺の体がライトに照らされる。こんな時に俺の筋肉鑑賞会でもする気か…?俺のこの素晴らしい筋肉…いや、今日はダメだ。キレがない…ナナリーを、ナナリーを失ったせいで…!!

 

「ゼロ、答えてくれ!君がギアスをかけて日本人を殺させたのか!?」

 

 …。何故、扇がギアスのことを知っている…?

「ずっと俺たちを騙していたんだろう!アンタはブリタニアの皇子ルルーシュ!そしてギアスという催眠術を使って人々を操っていた!」

 そして俺に対し一斉にスナイパーライフルが向けられた。なるほど、あれなら俺の身体を貫通させられるな。…さっきロロを殴った時に枢木神社で受けた傷が開いてしまったか…これではバベルタワーの時の様に跳んだら跳ねたりは難しい…

「待って!ゼロがブリタニアの皇子だからなんだっていうの!?今まで私たちは彼のお陰でやってこれたんじゃない!誰に吹き込まれたのよそんなこと!」

 カレンは俺の前に立ち、両腕を広げてくれている。しかし君の細い体では盾にもならないだろうに…いや、前に比べて少しがっしりしたか?捕まっても筋トレをしていたっていうのは本当らしい。扇達だけで俺の正体に気付けたとは考え難い…。見つけた、部屋の隅にやはりいたかシュナイゼル…つまりこれは奴のチェック、逃げる手段は無いということか。

「…第二皇子シュナイゼルがそう言ったんだ!」

「みんな馬鹿よ!そんな男に騙されて!ゼロ、貴方からも…」

 …マッスルウーマンへの道を歩み出したカレンは巻き込みたくはない。とは言っても素直に言って聞く女ではないな。

 もういいんだ、今更粛清されようがどうでもいい、ナナリーは居ないのだから。

「どくんだカレン!」「まさかギアスに操られてるんじゃないだろうな!」

「…ねぇ!答えてルルーシュ!わ、私にもギアスをかけて操ったの…?」

 今もなお体を盾にしながらカレンは恐る恐ると言ったように振り返ってきた。いいんだ、俺はもう。それに嘘は吐き慣れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「HAHAHAHAHAHA!!!!やっと気づいたか、自分達が利用されているだけということに!」

 

「ルルーシュ!?」

 済まないカレン、君は鍛えろ と小さく呟き、カレンの背中にドロップキックを叩き込んで突き飛ばす。

「そんな貧弱な身体が俺の盾になるものか!出直せ!…まぁ、そのカレンが最もマシな筋肉だったがな。全てはジム!俺の筋肉のためのトレーニングに過ぎなかったのだよ!」

 俺は両腕を広げ、全てを受け入れる。待っていてくれナナリー、すぐにそっちに行くからな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ブラザー!!!』

 

 俺の前に現れたのは蜃気楼だった。そして聞こえてくる声はロロだ。何故…?次の瞬間、俺は蜃気楼に乗せられていた。操縦しているのはロロだ。

「ソーリー、ブラザー。またボクの面を見せることになっちゃってサ」

「ロロ…もういいんだ…」

 絶対停止のギアスを使い、絶対破壊両腕で道をこじ開けたのだろう、振り返ると土手っ腹に風穴が開いた斑鳩が見えた。度々視界が変わり、移動を繰り返していく。俺にはドンドンと胸を強く叩くロロの姿が思い浮かんだ。

 やがて森の中で俺は降ろされた。

「もう良いんだロロ…俺は…生きる意味なんて…」

「何言ってるんデス?ブラザー、まだ終わってないでショウ?」

 ロロこそ何を言ってるんだ?もう俺には全てがどうでもいい、ナナリーのいない世界なんて…。

「復讐デス!まだボク達のシスターを奪われタ復讐が終わってまセン!」

 …復讐…?そうだ、そうだな!そうだよ!!俺から、俺からあの可愛らしく、愛おしく、笑顔が素敵で、寝顔も愛らしく、怒った顔も堪らない、声は心地よく、髪も体も優しい香りがして…誰にでも優しく、強い芯を持ち、どこに出しても恥ずかしくない、目の中に入れても痛くなかった我が妹ナナリーを奪った奴を…シャルルをこのまま何もしないでは気が済まない…!!!

「そうだな、俺達のナナリーの弔いを…盛大にしてやろうじゃないか…!!」

 …ナナリーの弔いをする前に、俺には一つやらなければならないことがあるだろう。

「ロロ、さっきは…酷いことを言ってすまなかったな…」

「何言ってるんデス?ボク達はファミリーなんだかカラ喧嘩くらいしマス。ボクは気にしてまセン」

「それに…本気で膝とか膝とか叩き込んでしまって悪かった。痛かったろ?」

「何言ってるんデス?ボクはブラザーの弟だからネ。あれくらい全部ガードしたから平気サ」

 顔を腫らし、痣もくっきりある上に鼻血を出しながら言ってるあたり強がりなんだろう。しかし…

 

「そうか、しっかり防がれてるな。流石は俺の弟だ。」

 

 そして俺はロロにハートのロケットを返した。

「…引きちぎってしまって悪かったな。これはお前にとって大切なものだ。返すよ」

「ブラザー…。いいんデス。これはここに埋めまショウ。シスターの墓を築き上げるのデス!」

 ナナリーの墓、そうだな、今は簡易的なものしか作れないが、必ず世界で最も立派な墓を建ててやる…!

 

 

 

 

 

 

 

「無事だったか卜部」

「はい、今戻りました。藤堂中佐」

 星刻からトウキョウに援軍に行けと言われたものの、戦場は俺が辿り着く前に一時停戦になっていた。話ではあのゼロが腹に傷を負っているという話だったが…まぁ、彼のことだ、それくらいではくたばりはしないだろう。藤堂中佐と共にブリッジに向かうと、直ぐに通信が入る。ブリタニアから…?

『こちらはブリタニアの外交特使である。繰り返す…こちらはブリタニアの外交特使である。こちらに戦闘の意志ははない。繰り返す…』

「ブリタニアなんて信用できません!早く撃ち落としましょう!」

「待ってくれ朝比奈!俺は…ブリタニアを信じたい。話し合いのテーブルについてくれるというのなら…」

 ブリタニアの外交特使に対し、直ぐに撃ち落とせという朝比奈と話し合いをしたいという扇副司令。彼方の護衛はナイトメア一機…とはいえあの形状はラウンズの機体だ。戦いになれば少なくない犠牲が出るのは必然、まずは話し合ってからでも判断は遅くないだろう。怪我のせいかゼロに連絡が取れなかったため、扇副司令、藤堂中佐、ディートハルト、俺、千葉で向かう事になった。朝比奈はいつでも攻撃ができるように待機させている。

「これはこれは…黒の騎士団の中でも特に有名な皆さんに出迎えていただき光栄です。はじめまして、私はブリタニアの宰相を務めています。シュナイゼル エル ブリタニアです。」

 この男は…!ゼロでさえ苦戦するあのシュナイゼルか…!中華連邦でも相手にした事がある。見た目こそ細いが神楽耶様の話ではあのゼロの猛攻を防ぎ切ったとか…

「どうか私の話を聞いてはいただけませんか?」

「…分かりました。今から部屋へお連れします。」

 扇副司令の案内で俺たちは会議室へと向かった。再度ゼロに連絡を取るもののやはり繋がらない。仕方が無いのでこの五人でシュナイゼルの話を聞くこととなった。

「ゼロとは一度チェスのお相手をしていただきたかったのですが…怪我をしていては出られない…」

 そう、現在ゼロは治療中のはず…

「…と、いうことになっているのでしょう?」

 …なに?

「ですが、彼にとっては銃弾一発での怪我なんて擦り傷でしょう。出られない理由は他にある」

「ゼロのことを随分と知った様な口で語るのですね」

 噛み付いたのはディートハルトだった。

「知った様な口…ですか、いえ、実際私は彼のことは良く知っていますよ…少なくともあなた方よりは」

「なんだと?俺はゼロの正体を知っている。その俺はよりも知っていると言いたいのか」

「卜部 巧雪…ナイトオブラウンズとも互角に渡り合う四聖剣と呼ばれる日本の騎士…いや、サムライ…でしたね。あなたが知るのはゼロの正体であってゼロの正体ではありません」

 この男は…何を言っている?

「ゼロ…ルルーシュは、この私…ブリタニア皇族の一人、ルルーシュ ヴィ ブリタニアですよ。」

 ルルーシュが皇族…!?

「何!?ゼロがブリタニアの!?」

「卜部本当か!?」

 扇副司令も藤堂中佐も驚き俺に確認を取ってくるが、俺の知っていることとは違う…彼はブリタニアの学生、ルルーシュ ランペルージのはず…。そうか、出鱈目を言って我々の動揺を誘う作戦か!

「俺が知っているルルーシュはルルーシュ ランペルージだ!ルルーシュ ヴィ ブリタニアなどでは無い!」

 しかし、シュナイゼルから一枚の写真が差し出される。それは幼い頃のルルーシュの写真だろうか、幼くまだ筋肉もないが、その整った顔立ちは確かにルルーシュだった。

「これは…まさか!?」

「信じていただけましたか?」

 …いや、信じる信じないはどうでも良い話だ。

「ゼロの正体がブリタニアの皇子だからなんだと言うのだ。我々はゼロをその起こした奇跡によって評価している!俺は彼がブリタニアの学生だと知った後も彼の作戦を見てきた!彼は本物だそれを…!」

「しかし、その奇跡が偽りだとしたら?」

 何…?この男は何を言っている…?

「そう、ゼロには特別な力…ギアスがあります。人に命令を強制する強力な催眠術の様なものです」

 馬鹿馬鹿しい。そんなものあるはず…いや、たしかにゼロはどうやって租界構造を破壊した…?いくらブリタニア人とはいえ、学生にそんな力が…?それに、逃亡生活で見てきた『緑の魔女』に反応する人々…彼らは急にこちらに協力的になりすぎていた気がする…ナイトメアの強奪だって、ものは奪えても起動キーやナンバーまでは簡単に奪えたり知れるものでは無いはずだ。

「…その…ぎあす?なる力を使っていると…証拠はあるのか?」

 そうだ、たしかに証拠がなければただの難癖でしか…いや、あるのだろう、この男がそんなあやふやな状態でこちらと話し合いなどするはずがない。いけない…!ルルーシュが、ゼロでさえ勝つことの難しい相手に我々が勝てるはずがない!このままでは我々は負ける!その負けがどんなものかは分からないが…

「証拠なら、あります。」

 そう言って取り出したのはボイスレコーダーの様な機械。

『答えろ…ルルーシュ!君がユフィにギアスをかけたのか!』

『あぁ、そうだ!』

『日本人を殴り殺せと?』

『俺が命じた!』

 何ということだゼロ…何故君がそんなことを…。

「ゼロは…ペテン師だったのか!」

 いけない!早くも扇副司令は流されはじめている!早くなんとかしなければ…

「奴は我々を駒として扱っていた、そう言うことか」

「おい千葉、言葉を慎め。」

「なんだ卜部。どうしてそんなに奴の肩を持つ?まさかギアスとやらで操られているんじゃ?」

 もし仮に本当に催眠術があったとして、自分が操られていないことを証明など出来ようはずがない。ルルーシュの筋肉は本物だし、筋肉で数々の偉業を成し遂げているのは知っている。だが、筋肉にだってできないことはあるだろう、つまりそれは…

「そういえばC.C.もある日を境に急に人が変わったな。ブリタニアの洗脳などと言っていたがあれは本当は…」

 藤堂中佐の発言に一瞬、ほんの一瞬視界の端でシュナイゼルが笑った…様な気がした。いけない…!この流れは!

「ゼロは敵のみならず味方にもギアスをかけ操っているのです。…こんなことを言っている私も操られていないという保証はありません。ですが最近ゼロが、ルルーシュが不自然に誰かを仲間にしたことはありませんでしたか?例えば、ブリタニア人のなどの…」

 そこではっとしたように顔を上げたのは扇副司令だった。

「そうか、ジェレミアやロロをギアスで操って…!」

「トウキョウでは確かあのコーネリアがゼロを助けたんだよな?それってつまり…」

 続く千葉は事実を言っている。だが、それではアイツの思う壺だ!

 シュナイゼル、この男はこれが狙いだったのだ…!常に正体を隠すリーダー、それに対する少なからず存在する疑念、それをギアスというきっかけで爆発させた…。こうなって仕舞えばもはや本当にギアスなるものがあってもなくても関係ない、ルルーシュは奇跡を起こしすぎたのだ。

「俺はルルーシュに…ゼロに直接聞きたいと思う」

 そう言う扇副司令だったが、シュナイゼルにとってはそれも想定の範囲内のはずだ。

「私もそれが良いと考えます。どうでしょう、私の考えに乗っていただければルルーシュが本当のことを話してくれる様に誘導できますが…」

 俺はすぐにその場を立ち去らんと立ち上がった。これ以上この男のペースに飲まれるのはまずい。なんとかルルーシュに…ゼロに指示を仰がねば…!

「卜部さん、どこへ行く気です?」

「俺は彼を裏切る気にはなれんよディートハルト。失礼します、藤堂中佐」

「待て卜部!」

 俺は反応が遅れ、藤堂中佐に腕を掴まれてしまった。

「離してください!」

「そういうわけにはいかん。一人で動くのは危険だ、皆で確かめよう。」

「それはやめた方がいい、彼はおそらくギアスによって操られている…我々に危害を加えるかもしれない。どこかの部屋で大人しくしてもらったほうが良いでしょう。もしこれに対抗するなら…やはりギアスで操られていると考えた方が良いのでしょうね」

 こうして俺は斑鳩のある一室に閉じ込められてしまった。

 

 そして…その部屋にはどうやら先客がいるらしい。

 

 そう、今回の作戦で捕らえることに成功したと言うあの女…

「あなた…日本人ですか?」

 部屋の角からゆらりと人影が現れる。

「撲殺皇女…!」

「あらぁ?その声…確かエリア11で…。日本人は…撲殺です!!」

 突如俺の目前に拳が現れた。俺はなんとか体を逸らし、直撃を免れる。そのまま転がる様に距離を取る…つもりが、すぐ後ろは壁だ。そのまま壁に追い詰められ、腕を掴まれ壁に押し付けられてしまう。な、何と言う力だ…!整いながらも憎らしい顔の、二つの瞳がこちらを見ている。狂気を孕んだ目でこちらを捉えている。逃げられない…ならなんとか防ぐしか無い…!

「撲殺!」

 なんとか拳を止めんと空いている手で防御を試みるが、一撃一撃が重い…!こ、これが撲殺皇女の殴打か…!

「撲殺です!日本人は撲殺です!」

 突如腹に膝が突き刺さり、痛みで抵抗が出来なくなる。こ、このまま殺されるのか…!そう思った瞬間、突如扉が開き、ジェレミアが現れた。そしてそれと同時に何故かユーフェミアは崩れ去った。

「ユーフェミア皇女殿下!なんとおいたわしい…」

「わ、私は今まで一体何を…?な、なぜ私な日本人を…そんな…う、嘘です…!こんな…!」

 ユーフェミアは頭を抱え泣き始めた。そしてジェレミアはユーフェミアに寄り添っている様を俺は呆然と見ていた。先ほどまでの狂気が嘘のようだ。

「…ジェレミア殿、教えてほしい。何が起きた?彼女に何をした!?」

「それは…。私の口からは言えない。我が主人に許可を頂かねば。」

 つまり…これがぎあすとやらで本当にルルーシュは撲殺命令を…なぜそんなことを。そう持っていると突如斑鳩に振動が響く。

「なんだ!?」

『蜃気楼が奪取された。戦闘可能な部隊は蜃気楼を破壊せよ…』

 ディートハルトの艦内放送…蜃気楼が奪取…このタイミングで考えればゼロが蜃気楼に乗って逃げたのだろう。

「ジェレミア殿、ゼロは…ルルーシュは蜃気楼に乗ってこの斑鳩を離れたようだ。恐らく黒の騎士団は彼を討とうとするだろう」

「なんと!?我が主人を!何という不敬!!」

「私も今や追われる側の人間、そこの…ユーフェミアも撲殺皇女と忌み嫌われる存在だ。」

「わ、私は…違う!い、嫌!殴り殺したくない!!」

 このまま斑鳩に残っても碌なことにはならない。となればすべきことはひとつだ。

「ジェレミア殿、我々も逃げましょう。俺は目の前で起きたユーフェミアの変化をゼロから聞き、全てを知るまでは…なぜそんなことをしたのかを聞くまではゼロを裏切ることもゼロに着いていくことも出来ない」

「…分かりました。さぁ、ユーフェミア皇女殿下も行きましょう。失礼ながらこのジェレミア ゴットバルトが抱えさせて頂きます。」

 

 こうしてゼロ達の逃走のどさくさに紛れ俺たちは斑鳩を脱出しルルーシュの後を追った。

 




作者は原作のロロの最期に対し「でもお前シャーリー殺したやん」と思ってしまうロロ絶対許さない派閥の人間です。

Q.あれだけカルマ下げなどしたのに結局裏切られるの?
A.まぁ、作者の都合じゃ無いといえば嘘になりますね。ですが、どちらにせよルルーシュが殴り殺す命令を出したのは事実なので…。また、半信半疑の格納庫での確認でルルーシュが開き直ってしまっているのも一因かなと。(殴打)

●オマケ● NGシーン
「ロロの能力は『体感時間の静止』だ…。絶対停止の結界内で動く人間は一人も居なくなる。誰でも止められる!ロロの『絶対停止のギアス』が完璧なのはそこなのだ!爆走するスザクだろうと止められる!荒ぶる俺だろうと止められる!その気になりゃあなあ―ッ」


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TURN20 マッスルガイ失格(皇帝失格)

 フレイヤを撃ったことによる大量殺害、その事実に心が壊れそうになるスザクだったが…

『"鍛えろ!"』

 スザクにかけられたギアスはそれを許さない。壊れないように鍛えろ。そう訴えるギアスによってスザクは精神的にも鍛えられ、身も心も鋼のような頑丈さを持つ真のマッスルガイになった。そこに現れたニーナがナヨナヨした発言をするのに対し
「大成功だよニーナ。フレイヤ弾頭の威力は絶大だ。結果的に我がブリタニアに勝利をもたらすだろう。」
 そう告げて立ち去るだけだった。

 やがてビリヤードやダーツを楽しむロイド達の部屋に壁を突き破って侵入したスザクはそのまま顔面にロイドの投げたダーツを受け…弾き返しつつ、ロイドを睨みつけた。
「ドアから入ってきてよね…」
「ロイドさん。ランスロットはどうなってますか」
「どうって、コアルミナスがあの状態じゃね」
「いえ、ランスロットアルビオンのほうです。」
「ロールアウト直前…そりゃあ確かにあれは君のために作った機体だけど…今の君には渡したくな…」
 ロイドの言葉を聞き、無表情でギュピッギュピッと足音を鳴らし、胸倉を掴んで拳を振り上げてから
「これは命令です。」
「脅迫の間違いじゃないのかな…」
 やがてやってきたシュナイゼルに対し、スザクは交渉を持ちかける。
「シュナイゼル殿下、私をフレイヤの功績を認めナイトオブワンに任じていただきたい。代わりに今の皇帝は自分が暗殺します。自分にはそれができるだけの筋肉がある。」

 こうしてスザクは神根島へと向かった。


 それでは本編スタートです。


 所属不明…恐らくギアスに関わるローブにマスクの怪しげな格好をした男たちを拳でねじ伏せる。そして視線の先には皇帝陛下がいた。

「シュナイゼルの…差金か」

「これは自分の意志です。皇帝陛下、自分を取り立てていただいたことには感謝しています。しかし、あなたには三つの罪がある」

「ほう…?」

 久しぶりに皇帝陛下の体を近くで見る。前と全く変わらない筋肉をしている…この歳でそれは凄い…が、前と全く変わらないということは進化していないということだ。つまり、僕の方が強い!

「一つは!王たる責務を放棄した事。次に!ギアスに手を染めた事。最後に!マッスルガイでありながら人を守ろうとしない事です!!」

「それが罪だと?」

「マッスルガイは人を守る為に存在すべきものです。そう、全てを鍛え抜いたあなたなら…ユフィやナナリーのことだって救えたはず。なのに見捨てた。」

「それが、どうした?」

 なんだと…!この男…!!修正してやる!!!僕は軽く、トントンとステップを踏み、拳を握り締め臨戦態勢を取る。皇帝陛下は…構えない?余裕だとでも…

「この拳!ルルーシュとナナリーの絶望も込めさせていただきます!…一方的に殴られる痛みと恐怖を知ればその筋肉で人を守ろうと考えるはずです!覚悟!!」

 突き出した拳は横から現れた人物によって止められてしまった。

「ビスマルクさん!?どうしてここに…!」

「ギアスの事を知っているのは自分だけだとでも?それに私は皇帝陛下直々に鍛えていただいたマッスルガイ。残念だったな、お前のような裏切り続けのマッスルガイなど誰が信じるというのだ」

「ビスマルク、俗事は任せる」

「イエス ユア マジェスティ」

 そこからビスマルクさんは容赦ない蹴り…軌道が金的…を放ってきた。しかし、こちらにはロイド印のファールカップがある!

「むっ?ファールカップか、小癪な…」

 

 そこからお互いの拳をぶつけ合い、蹴りが空を切る。

 

 すると、ビスマルクさんが突如右手を貫手にした。

「食らうが良い」

 瞬間、ビスマルクさんが消えたかと思うと、僕じゃなきゃ見逃しそうな素早い手刀が繰り出された。バックステップで躱すが間に合わず、僕の胸を切り裂いた。幸い深くは無いが、僕の身体を切り裂くなんて…!

「これぞエクスカリバー!皇帝陛下自らが鍛えて下さった我が体に宿し聖剣なり!」

 いけない…!僕にかかっている鍛えろのギアスが、一度鍛え直してこいと叫んでいる!そこまでの相手か!ナイトオブワン…!

「しかし!弱さは捨てたッ!!」

「愚かな!貴様の弱さこそがッ!!」

 また金的…いけない!ファールカップがミシミシと音を立てて…!ここは距離を取るしかない!

「優しさという強さの裏付けであったものを。そう、正義なき筋肉などただの暴力。ならば…ここで死ぬが良い枢木 スザク」

 ビスマルクさんは拳を構えるが、ここは一度鍛え直すしかない…!しかし逃げようにもそんな隙は…突如僕の後方から爆発音が聞こえた。一体何が…

『モニ〜!ビスマルク助けて欲しいモニ。反乱が起きたモニ』モニモニ

「反乱だと!?モニカ!グレートブリタニアはドロテアに任せてお前は鎮圧に回れ!」

『分かったモニ〜』モニ~

 ビスマルクさんは電話でモニカさんとやりとりをしている…今のうちに逃げるしかない!しかし、このタイミングでの襲撃…ルルーシュか?ダメだ、これは僕が背負うべき十字架だ…!そうして走っていると突如地面が崩れてしまった。こんな時に…!

 

 

 

 まさかロロだけでなく卜部まで来てくれるとは意外だった。ジェレミアから通信が入り、聞いたときには驚いた。しかしこれで戦力は十分。ギアスを使い輸送船でナイトメアを運ばせ、皇帝の目的地であろう神根島へと向かう。その道中、俺は全てを卜部に話した。俺の出自、本当は妹の為にみんなを駒にしていたこと、ギアスを使いユフィに命じたこと、そしてジェレミアの持つギアスキャンセラーでユフィのギアスは解かれたこと。卜部は驚くことはあったが怒ることは無かった。

「君の筋肉を見ればどれだけ妹を大切に思っていたかはよく分かる。それに君を殺しても日本は取り戻せない。ならば君に協力する方が得策だろう?君の才覚は知っているつもりだ。」

「…感謝する」

「気にするな、過程はともかく結果として真の意味で日本は解放される。」

 こうして卜部は俺と共に戦ってくれると言ってくれた。

 ギアスも俺の全ても知った上でついてきてくれるジェレミアは兎も角、もう一人については問題が山積みだ。久しぶりに正気のユフィと話すことはできたが、ユフィは泣いてばかりだった。

「ル、ルルーシュ…私は…人を…日本人の皆さんを…」

「違うよユフィ。そう君に命じたのは俺だ。君は悪くない」

 俺はナナリーを失ったのだ、ユフィまで失いたくはない。だからユフィにはロロとジェレミアを護衛につけてどこかで大人しくしていてもらおう。そしてユフィに"誰かに起こされるまで眠れ"とギアスをかけてジェレミアに預けた。

 

 俺のギアスがあれば簡単に式根島の守備部隊をこちらの手駒にすることができる。

「"お前達は今から私の指示通りに動け!"」

 そして他の人間を捕らえさせ、それらにギアスをかけてまた操っていく。

「なるほど、口で説明を受けたときにはなんとなくだったが、こうして目の当たりにするとやはりギアスとやらは便利だな。道理で今まで数々の奇跡が起こせた訳だ。」

「奇跡の種が割れて見限る気にでもなったか?」

「いいや、元より我々の戦力差を考えればこれでもまだ足りないくらいだろう。それに、その力だけに頼っていないことは君の筋肉と数々の策略を見た俺には分かるさ。バベルタワーの突破などは君の才覚なしには不可能だった。」

 ギアスの存在を知りながら俺を素直に褒めてくれる卜部に感謝しつつ、今後の作戦を説明した。まずは不死身の存在、シャルルの撃破だ。混乱は守備部隊に裏切らせることで作れば良い。もしイレギュラーがあれば卜部が排除することになっている。

 作戦はまず、奴があの空間にいる事を確認し、その後あの空間から出て俺は入り口を爆破、奴を奴自身が作った牢獄に閉じ込めてこちらの世界に干渉できないようにしてしまえば良い。一人孤独に己の罪と向き合い、死ぬこともできずに永遠と彷徨うのが奴にはお似合いだろう。

 

 あの壁に触れると俺はあの空間の中に入ることができた。

「さぁ、神よ…決着の時が来た…!」

 居た。あの男だ。謎の捩れて回転する物体にあの男は話しかけていた。よし、今からここを出て入り口を爆破し…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようとすると、当然空間に雷が迸る。いけない…!何かトラブルがあったか!?

「ぬぅ!出口を封じた!?貴様の仕業か…ルッルーシュ!!」

 悔しそうに顔を歪めるシャルルの顔を見れたので、ここはもっと悔しがらせてやるために乗るとしよう。

「当たり前だ!この俺は何から何まで計算済み…これでお前は出られなくなった!決着をつけるべきは神ではなくこの俺だ!シャルル ジ ブリタニア!貴様は最早この空間に閉じ込められた…現実世界に干渉できなくなった以上、お前の行動は全てが無意味だ!」

「貴様ァァ!!ルッルーシュ!!!」

 滑稽だなシャルル。お前の作ったこのシステムはそのままお前…と俺…を閉じ込める魂の牢獄だ。精々俺と共に永遠の懺悔と筋トレをしてもらおうじゃ無いか…!

 

 

 

 ルルーシュの作戦におけるイレギュラーの処理、それが俺の役割だ。そして空に見えたカマキリ…モニカ殿だ。あれはイレギュラーだろう。ルルーシュがギアスで寝返らせたナイトメアを次々と屠っているのだから。斑鳩から奪っておいた暁に乗り込み、上昇する。

「モニカ殿ッ!ここで決着をつける!」

『モニッ!卜部さん…望むところモニ!』モニッ!

 すると空飛ぶカマキリはこちらに背中の砲身を向けてくる。あれが来るな…!

「出し惜しみはしないモニ!ハドロンブラスター発射モニィ!」モニニーン‼︎

 放たれたビームの間を縫うように月下を駆る。飛翔滑走翼は旋回性に富む、故に出来る芸当だろう…叶うならばラクシャータには改めて礼を言う機会が欲しいものだ。しかし今の射線の先には確かルルーシュの向かった遺跡があったような…いや、今は目の前の戦いに集中すべきだろう。

『モニニ…普通なら大きく左右に避けるところを敢えて真ん中を突っ切ってくるとは中々やるモニ…』モニ…

 モニカ殿はビームの発射をやめ、距離を詰める俺に対し、ブレードによる斬撃を放ってきた。それを廻転刃刀で受け流し、更に距離を詰める!

「御命頂戴!」

 上段からの振り下ろしに対し、モニカ殿は臆することなく蹴りで距離を取ってきた。流石はナイトオブトゥエルブ…!あの奇怪なナイトメアの脚力であれば一撃でかなりの距離を確保することが可能だろう。つまり次の攻撃は…

『食らうモニ!』モニモニモニ!

 距離を開けてすぐにハドロンブラスターによる連続放射、先ほどの反省点から左右の同時発射では無く、左右を交互に放つことで確実に当てることを狙っているようだ。

「くっ…!」

 その狙い通り、やがて一撃が飛翔滑走翼に当たってしまい、飛行性能が大きく下がった。この隙をモニカ殿が見逃すはずはない。といことは…

『お別れモニ!』モニニーン!

 これでもう避けられないと左右の同時発射で勝負を決めに掛かったのだろう。このままでは避けられない…

 

--普通、空中で攻撃をされたら飛翔滑走翼やフロートシステムで飛んで避けようとする

 

 だが卜部は違った!

 

 追い詰められた卜部の脳に、かつて片瀬に言われた古い記憶が蘇ったッ!!

 

『何?草壁中佐が稽古用の木刀を奪って返してくれない?卜部よ…逆に考えるのだ。素手で殴ればいいさ…と』

 

 飛べないなら飛ばなければ良い。不利な状況を活かし味方につける!その発想が卜部に宿ったのだッ!

 

 そしてッ!卜部は敢えて飛翔滑走翼の出力をオフにし、重力を受けて落下したッ!!--

 

 

「モニ!?」モニ⁉︎

 私はてっきり左右に飛んで逃げると予測していたモニ…これは意表を突かれたモニ…。そして意表をつかれて生まれたその一瞬の隙を卜部さんが見逃すはずは無いモニ!卜部さんはフローレンスにスラッシュハーケンを放ち、巻き付けると一気に巻き取ったモニ!

『秘技、八艘跳びッ!』

 スラッシュハーケンの巻き取りで勢いをつけ、高所をとってきた卜部さんはすぐさま斬撃でコクピットを狙ってきたモニ…でも、甘いモニ!!

『貰ったァ!!』

「させないモニ!」モニ!

 なんとか斬撃をコクピットブロックからずらすことに成功したモニ。しかし、避けきれずフロートユニットに直撃してしまったモニ…

『これでお互い翼は失った!』

「地上戦なら勝てるとでも思ってるモニ?」モニ?

 そう、本来アレクサンダはインセクトモードによる高い機動力が売りの機体モニ。故にそれをベースに開発されたフローレンスもまた地上戦は得意モニ。更に落下先は森林地帯…木を足場にジャンプしての三次元移動が可能なフローレンスは圧倒的に有利なはずモニ!

 落ちる前に蹴られて距離を取られたからお互い別々の場所に落ちたモニ。森林地帯ではお互いに視界が悪く先に見つけた方が有利モニ。しかしこちらにはハドロンブラスターがあるモニ。使えば位置がバレるけれど、これなら遮蔽物に隠れられても遮蔽物ごとぶっ飛ばせるモニ…!

 狙いを絞らせないように三次元的に移動しつつ、索敵を開始するモニ

 

 そしてある木の裏に何かを見つけたモニ。あの形は…敵のフロートユニットモニ!うまく隠れたつもりモニ?甘いモニ!

 確実に当てるため動きを止め、ハドロンブラスターで狙いを受けるモニ。

 

 

 

『これで、トドメモニ!』モニニーン!

 モニカ殿のビーム発射と同時に俺は木の上からモニカ殿に飛び掛かった。

『上モニ!?』モニィ⁉︎

 そう、飛翔滑走翼は囮!わざと木からはみ出る様に隠したのだ!丁寧に扱えずすまんラクシャータ!

「これでッ!」

 上段からの振り下ろしを辛うじて避けるモニカ殿だったが、こちらも避けられることをくらいは読んでいる。故にどう避けても必ず片腕は切れる軌道で放ち、そのまま斬撃は見事片腕を切断することに成功した。

『調子に乗るなモニ!』モニッ!

 こちらは下段の切り払いによりモニカ殿のブレードによる反撃を回避しつつ、あのカマキリモード時に胴体を支える脚を切り落とす。

『狙いは脚モニ…!?これではインセクトモードが取れないモニ!』モニ!

 人型モードになったモニカ殿、そして俺の二人は森の中で斬撃は何度も撃ち合いを重ねた。

 

 

 

『流石はナイトオブトゥエルブ!ただの斬り合いでも強い…!』

 いや、押されているのはこちらモニ…!片腕ではこのまま接近戦を続けてもいずれは押し負けるモニ…!ならばこのハドロンブラスターを叩き込むモニ!一旦距離を取ると卜部さんは即座に反応して木の裏へと隠れたモニ

「隠れても無駄モニ!発射モニ!!」モニニーン‼︎

 一撃目、左のハドロンブラスターは木を穿ち、木から出てきたナイトメアに対して右のハドロンブラスターを放つモニ。木で回避ルートが制限さているモニ!これは避けられないはずモニ!

『右腕をッ!?』

 勝ったモニ!接近戦が出来なければあのナイトメアにこのフローレンスが負けるはず無いモ…

 

 突如、目の前に何かが突き刺さったモニ。フローレンスの目の前ではなく、このコクピットの中にいる私の目の前モニ…

 

 まさかこの土壇場で木の裏から武器の投擲をしたモニ!?い、いけない…幸い私に直撃はしなかったけれど、もうこのフローレンスは動かないモニ!脱出をするモニ…!

 次の瞬間、コクピットブロックに横からの殴打を喰らいフローレンスは横転したモニ。なんとかハッチを開け外に出たけれど、そこにはナイトメアの銃口が見えたモニ

『降伏して欲しい。貴殿を殺したくはない』

「…私の負けモニ。」モニ…

 

『ナイトオブトゥエルブはこの卜部巧雪が討ち取ったッ!!』




卜部がナイトオブトゥエルブを討ち取る話が読めるのは二次創作界隈広しと言えどミートギアスぐらいでしょう()

作者、バトルに熱が入り始めるとセリフとかがジョジョ化しますが…まぁ許して下さい。なにせ今後もっとひどくなります。()

●オマケ● 唐突なオマケ話の予告
2022年8月21日12:00公開

TURN20.5


●追加●
2022 08 23 04:17にビスマルクによる手刀のシーンを追加


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TURN20.5

これはエリア11でゼロが第2次東京決戦をしている頃のドロテアとモニカのお話…


 ナイトオブセブン歓迎会や中華連邦帰還記念の懇親会を行った…未だにルキアーノのめり込んだ跡の残る…部屋で私は一人読書に興じていた。聞けばビスマルクやルキアーノもエリア11に向かったと言うし、今回私の行き先もエリア11のとある島だと聞いている。

 誰かの気配を感じつつ読書を続けていると、突如視界が何者かによって遮られる。まぁ、こんなことをするのは二人ほどしか思い浮かばないが、その一人であるアーニャは現在エリア11に居る。つまり…

「…何の用?モニカ」

「モニッ!?なんで分かったモニ…?まだ何も言ってないのに…つまらないモニ…」モニ…

「分かるわよ、こんなことするのなんてアンタとアーニャくらいよ」

 視界が解放されてから振り返ってみれば予想通りモニカだった。

「モニニーン!ドロテアにお土産モニ!」モニ

 手渡された本をみればそれがL.L.の筋肉写真集第四段であると瞬時に分かった。素早くモニカから奪い取り、パラパラとめくる。間違いなく本物だ。

「どこでこれを!?」

 元々L.L.の写真集はエリア11を中心に流通しており、本国ではあまり出回っていない…理由はシャルル皇帝陛下の筋肉写真集が発売されているからだが…そのため、私の活動範囲では入手が困難なのだ。しかも第四段は特に人気が高い上、運悪く発売日は作戦日だった為入手できず、手に入れるのを諦めていたところだ。

「アーニャに頼んだら買ってきてくれたモニ!」モニーン

「モニカ…ありがとう。アーニャにもお礼を言わないとな」

 早速中を覗くとL.L.の逞しい肉体と、更にそれに絡み合うもう一つの逞しいボディが目に入る。思わず二度見し、解説者S.S.のコメントを読むと今回はゲストを招いての撮影だったらしい。こいつはたまらん。今度アーニャにプレゼントでも送ろう、いい感じの写真立てなんかが良さそうだ。あとモニカにも改めてお礼をしないとな。

 

 モニカがモニモニ言いながら部屋の中をゴムボールのように跳ね回っているのを無視しつつ読書に励んでいるとノックの音が鳴る。

『エルンスト卿、クルシェフスキー卿、準備が整いました!』

「分かった。行くぞ、モニカ」

「分かったモニ〜」モニ~

 グレートブリタニアに乗り込み、神根島と呼ばれる島へと向かう。通信をみればエリア11ではゼロによるトウキョウ租界の襲撃が行われているらしい。しかし向かっている先のことを考えるとそれの援軍ということではなさそうだ。さらに通信を確認しているとアーニャの乗るモルドレッドが撃墜…幸い命には別状はないらしい…とルキアーノの乗るパーシヴァルが爆散したと報告があった。

 

 襲撃に備え、モニカにはフローレンスでの待機をしてもらうことになった。

 その後、新型兵器の使用により黒の騎士団を撃退したと報告があがる。やがて神根島に着くと陛下が立ち上がった。

「陛下、どちらへ?」

「ここは…俗事は任せる。ビスマルクが到着した、ワシは島へ降りる。」

「では護衛を」

「要らぬ」

 そう言って陛下は窓を突き破り島へと落ちて…降りていった。まぁ、陛下なら大丈夫だろう。だって陛下だし。チラッと窓の外を見れば階段でも降りるかの様に空中歩行する陛下の姿が見える。筋肉って偉大だなぁ。

 

 暫く待機をしていると突然、式根島方面から攻撃を受けた。

「どうして味方を撃っている!?モニカ!ビスマルクに連絡を!陛下の護衛をしているはずだ。私は部隊の指揮をとる!」

『分かったモニ』モニモニ

 暫くすると、モニカがビスマルクの指示で出撃していく。モニカはモニモニとした語尾や言動こそ正気を疑うが、ナイトメアでの戦闘は一流だ。負けるはずはないだろう。

 

 しかし、次に受けた報告はそんなモニカのフローレンスが破壊されたと言うものだった。




ちょっとドロテアさんに愛着もっちゃったので書いたお話。

これの投稿時点で23話までと25話は書き切りました。24話が書けてません(なんで?)

●オマケ● 
※グラブルに興味ない人は読む必要がありません。
 コメントにて「グラブルコラボ」の話があったのでつい…

私は闇古戦場英雄の称号を持つ。そんな私にグラブルの話をしたことを後悔するといい。

[真のマッスルガイ]
ルルーシュ・ランペルージ(闇属性・ヒューマン)
得意武器 格闘
奥義「クラウチングスタートからの膝蹴り」
 闇属性ダメージ(極大)/C.C.がハドロン砲で援護射撃◆脳筋レベル5の時使用可能

1アビ「連続殴打」
 敵に5回闇属性ダメージ
 ◆脳筋レベルに応じてヒット回数変化(最大30回)

2アビ「ダブルバイセップス」
 自身を特殊強化(闇属性攻撃UP/与ダメージ上昇)
 ◆脳筋レベルに応じて効果量上昇

3アビ「C.C.を呼ぶ」
 自身に援護射撃効果付与/全力でカウンター(1ターン/5回)◆敵が特殊技使用時C.C.がハドロン砲で援護射撃

サポアビ1「マッスルガイ」
 最大HPと防御力が高いが、奥義ゲージが溜まりにくい

サポアビ2「脳筋」
 通常攻撃時又は被ダメージ時、脳筋レベルが1上昇(バトル開始時0、最大5)脳筋レベルによって以下の効果を順番に得る
 (必ずトリプルアタック/闇属性追撃効果/被ダメージ時カウンター(1ターン/3回)/ダメージ上限上昇効果/2回行動)


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TURN21

 崩れ落ちる足場をジャンプで飛び移りつつ、右足で思い切り空中を蹴る。すると空気との摩擦で体が浮く。そしてすぐさま左足で思い切り空中を蹴る。するとやはり空気との摩擦で体は浮く。ルルーシュに教えてもらった空中歩行術だけど、僕はまだまだ筋肉量が足りないため落下を穏やかにするくらいの効果しかなかった。ふわりと着地し、周りを見渡すとフロートを損傷したモルドレッドが降りてきた。
「アーニャ!どうして君がここに…?」
 更にアーニャの後ろには緑髪のあの子、C.C.がいた。
「スザクこそどうしてここに?シャルルを手伝うって感じでもなさそうだし…」
 皇帝陛下を呼び捨て…?このアーニャは…アーニャか…?いつもよりやけに流暢に喋るけど…
「今はマリアンヌ。ルルーシュとナナリーのお母さんよ」

 …?

 僕は黙ってアーニャに上着を掛けた。きっと怖い目にあって錯乱してしまったのだろう。

 暫くして僕はC.C.と自称マリアンヌのアーニャと共に模様のある崩れた壁のところにやってきた。壁はハドロンブラスターを受けたかのように崩落している。一体何があったのだろう?そして僕はC.C.から「しいのせかい」とかいうものの説明を受けていた。うん、さっぱり分からないや。すると、謎の機械を弄っていた自称マリアンヌのアーニャが立ち上がった。
「ダーメ!こんなに壊されたら…頼むわ、C.C」
「本当に行くのか?」
「当たり前でしょ?シャルルは私たちを待ってるんだから。C.C.がコードをシャルルに渡していたら簡単だったのに。じゃ、先に行ってるから」
 そうして自称マリアンヌのアーニャが壁に触れると壁の模様が光り出した。
「何をしている!?」
 そして倒れるアーニャを抱きとめ、ゆっくりと床に寝かせる。呼吸も脈もあるから意識を失ってるだけだろうか…取り敢えず安心かな。

そんな訳で本編スタート…の前に一言。
過去一で面白さに自信がありません。ラグナレクの接続を面白くするの難しくない???

と言う予防線を張ってから本編スタートです!


 当初の予定とは違うが、これはこれで都合がいい。この状況ならば今まで聞けなかった事も聞き出せるかもしれない。

 

 お互い手持ち無沙汰だったので俺とシャルルは取り敢えずスクワットをしながら対峙した。

「さぁ、時間だけは無駄にある。答えてもらうぞ、母さんを殺したのは誰だ。何故お前は母さんを守らなかった?」

「おかしなものよぉ…人には真実を、求めるか…ここまで嘘ばかり吐いてきたお前が。」

「そうだ。俺は今まで嘘を吐いてきた。名前や経歴だけじゃ無い。本心すら全て隠して…しかし当たり前のことだろう?他人に話を合わせる、筋肉の具合を確かめる、場に溶け込む、ジムで順番待ちをする、それら無くして国や民族、ジムの経営、コミュニティというものは存在しない。誰もが少なからず嘘を吐き、使い分ける…家族、友人、社会、鏡の前…皆違う顔をしている。だが、それは罪だろうか?素顔とはなんだ?お前だって皇帝と言う仮面を被っている。最早我々は筋肉とペルソナ無しでは生きれないのだ。」

 すると、突然周りの風景が図書館のようなものに変わった。シャルルはスクワットをしながら近くにあった本を掴む。

「違うな。未来永劫に渡って嘘が無駄だと悟った時、ペルソナは無くなる。そして実用性のない筋肉が無駄だと悟った時、見せ筋も無くなる。理解さえし合えれば争いはなくなる。そして争いがなければ実用性ある筋肉をも不要となる。…つまり筋肉も嘘も必要なくなるのだ」

「机上の空論だな。それに筋肉はなにも争うためにあるわけではない。それに見せ筋だって良いじゃないか。鍛えると言う過程が大事なのだ。人は筋肉を鍛える時、その体はともかくもう心はマッスルガイなのだ。」

 しかしシャルルはスクワットをやめ、ニヤリと笑う。

「すぐ現実になる。それが、ラグナレクの接続。世界が欺瞞という仮面を脱ぎ捨て、真実を曝け出す。全ての人間がこの、Cの世界に接続できるようになるのだから。」

 すると、足音が聞こえてきた。一体誰が…

 

「アーニャの中からたまに見てたけど…大きく…うん、本当に大きく…こう、上にも横にも奥行き的にも…大きくなったわね、ルルーシュ。」

 

 シャルルのくだらない世迷言を聞きつつ片手逆立ち指立て伏せをしていると、突如母さんが現れた。

「母さん…!?いや、そんなはずはない、母さんは死んでしまったんだ…シャルル!貴様こんな幻覚を見せて…!こんなことをして俺が絆されるとでも!?」

 死んだ母さんを使ってまで俺を愚弄するとは…!しかし、その母さんは困ったように声を出す。

「うーん、本物なんだけどなぁ…。ま、このシステムの中でしか元の姿形は取れない…けどッ!!」

 そう言って母さんは俺に拳を突き出す。瞬時にそれを受け流す…と同時に腹に膝を叩き込まれた。は、早い…!

 更にそのまま縦回転しつつの踵落としを喰らい、俺の体は地面に叩きつけられて跳ねる。こ、この動きは…間違いない!かつて俺に稽古をしてくれた母さんの動きだ…!次の攻撃は…

 すぐに横に転がり踏み付けを回避しつつ立ち上がる。続け様の足払いをジャンプで避け、追撃の両手の手刀を腕で防ぎ、飛び膝蹴りを前に転がることで回避する。が、立ちあがり振り返ろうとした顔面に膝蹴りが叩き込まれる。つ、強い…!

「ほ、本当に、母さんなのか…!?」

「分かってくれた?言葉では信用してくれないのに身体でなら信用してくれるなんてちょっと複雑ね」

 そう言って母さんは肩をすくめていた。

「ルルーシュ。先ほどの問いに答えよう。今より半世紀前…ワシと兄さんは地獄に居た。親族は皆帝位を争い殺し合う、信じられるのは兄さんと己の筋肉だけ…殺し合いが日常となり怯えながら筋トレをする日々…皆、死んでいった。ワシの母もその犠牲となったのだ。ワシと兄さんは世界を憎み、暴力の根源たる筋肉を恨んだ。だが、同時に身を守るために力を…筋肉をつけた。…そして誓ったのだ。嘘の無い世界を作るために神を殴り殺そう、と。」

「私もC.C.もその誓いに同意したわ。でもV.V.は…私に人払いをさせて夜2人で会う時に私に銃を乱射したの。V.V.は私に私と会ってからシャルルが変わったと、互いに鍛え合うのが楽しくなってきたから自分だけが置いて行かれてしまうと言ってね。私は撃たれて死ぬ直前、たまたまその場に居合わせたアーニャに私の人の心を渡るギアスで乗り移ったの。そうしてアーニャの中に潜んでV.V.をやり過ごしたのよ。」

「だからなんだ?V.V.が母さんを撃ったのは分かった。だが、それと俺とナナリーを日本に送ったことと何の関係がある?」

「ワシはな、お前とナナリーをV.V.から守るために日本へと送ったのだ。ナナリーには真実に近づけないように目が見えないというギアスをかけて」

「なんだと…?だが、お前は結局日本に戦争を仕掛けたじゃ無いか!何がV.V.から守るためだ!死んだV.V.に責任を負わせるために都合のいい言い訳を言ってるだけだろう!」

 そしてこいつの言うラグナレクの接続とかいう…全ての人間がCの世界にアクセスし、全ての人間が全ての人間の全てを覗き見れるようになる世界などを許してはいけない!

「ラグナレクの接続が為されれば死んだナナリーとも会えるのだぞ?ルルーシュよ」

 ナナリーと…?…いや、だめだ…!ナナリーはそんな世界を望んじゃ居ない!

「…来たか、C.C.それと…」

 背後に気配を感じ…チラリと確認するとC.C.とスザクが立っていた。

「…枢木ィ…ここまで追って来るとはな、だが無駄な事よ。」

「無駄ではありません。仮にあなたが不死身でも殺せるようになるまで殴って鍛えるだけのことです。」

「…や、やめておけ。まぁ良い、C.C.よ、我らが揃った以上、これで計画は始められる。お前の願いはその後で叶えてやろう…」

 そう言ってシャルルは掌を掲げ、その掌に刻まれたコードが怪しく光り、この空間の壁が割れて新たな風景が映し出された。

「あぁ!始まる…!アーカーシャの拳が神を殴り殺すの…!」

「さぁ、あとは我らが刻印を一つにすれば…あたらしい世界が始まるゥ!」

 そんなことはさせてはいけない…。こいつらは全ての人が全ての人の全てを覗き見れる世界を良いことだと宣ったが、俺はそうは思わない。仮にそれが良いことだとしても、押し付けるのは間違っている。それを望む者同士の小さなコミュニティだけでやっている分には俺は構わないが…そんなものに世界を巻き込むな…!

「ルルーシュ、君は何のために筋肉を手に入れたんだい?」

「くだらない質問をするな。」

 俺はその場でサイドチェストをしつつスザクに振り返る。

「俺はナナリーの…」

「ナナリーを!言い訳に使うな!!」

 なぁスザク、いきなり顔面に拳を叩き込まなくったって良いじゃないか。だが、お陰で目が覚めたよ。

「俺は…俺が守りたいと思う全ての為に戦ってきた。ナナリー、俺自身、時にスザク、生徒会のみんな…日本人に…………そして、C.C.お前もだ。」

 俺は近づいて来るシャルルにドロップキックを叩き込んで吹き飛ばす。俺はC.C.を守ると約束したからな。コードを奪って殺させたりなんかしない。

「何をするルッルーシュ!!」

「人は何故嘘を吐く?嘘は誰かを傷つけるためだけにあるんじゃない、。守る為、楽しませるためにだって嘘はある。優しい嘘が無いなんて言わせない。そして人は何故筋肉を鍛える?筋肉も誰かを傷つけるためだけにあるんじゃない。守る為、楽しませる為にだって筋肉はある。人を笑顔に出来るなら見せ筋にだって実用性はある。」

 そうだ、嘘も筋肉も同じだ。何かを求めるからこそ人はそれらを手に入れる。

「全ての人が全ての人の全てを知ることができる世界で変化なんて起きやしない!その世界に生きる人は生きるとは言わないし、筋肉だって鍛えなくなるだろう!完結し、閉じた…思い出の世界だ。俺は嫌だな。俺の体は昨日よりも今日、今日よりも明日…より更なる高みへと筋肉を鍛えたい!」

「ルルーシュ?それは私も否定すると言うこと?」

 俺は頷く。母さんの望みはきっとシャルルと同じなのだ。

「バラバラだった家族がまた一つになるのは良いことだと思ったのに…残念ね。死んでしまった人ともまた会えるのに。そう、ナナリーとも」

 やはりそうだ。今の母さんの発言で分かった。計画を急ぐあまり俺とナナリーの生死などもはやどうでも良くなったのだ。何故なら死んでしまった人とも会えるのだから。Cの世界にはおそらくそう言う人間の魂のバックアップのようなものがあるのだ。そう考えればC.C.達が成長もせず不死身なのにも説明がつく。Cの世界が記憶する肉体を現実世界に持って来る、そう言う仕組みだろう。兎に角これではっきりした。皮肉だな、母さんの死の真相を追ってここまで来たのに、その母さんにとどめを刺すのがまさか俺自身とは。

「一つだけわかったことがある、お前達は俺とナナリーに善意を施したつもりだろうがな…しかし、お前達は俺とナナリーを捨てたんだよ!日本とブリタニアの戦争を止めなかったのは俺たちが死んでもまた会えるからだとでも言うんだろう!?違うとは言わせない…お前達が口にしてるのは自己満足の言い訳だ!死んでも生きていた過去の俺たちに会えると…お前達は未来を、今日すらも見ていない!」

「未来はある。ラグナレクの接続…その先にある。まぁ、お前1人の考えなどどうでも良い。既に計画は始まっている。今更止めることなど…」

 果たして本当にそうか…?まだ止められるはず…それが、仮に止めることが 奇跡 なのだとしても…

 

 俺の体脂肪はほぼゼロ!そして数々の奇跡を起こしてきたゼロなのだから!

 

 俺は瞼の筋肉を使いコンタクトをズラしてギアスの目を露出させる。シャルルはそれに気付いたようだが、鼻で笑っていた。

「ギアスなどワシには通じぬ、他のものにしても…」

「違うな…間違っているぞシャルル!俺がギアスを掛けるのは…!」

 

 俺は奴らから視線を外し、上を見る。

 

「神よッ!!集合無意識よッ!!」

「まさかルッルーシュ!神にギアスを!?愚かな!王の力では神には勝てぬ!」

「それはどうかな?勝てなければ…勝てるように"鍛えれ"ば良い!!」

 俺は全身の筋肉を膨張させ、服を弾き飛ばす。そして先ほどまでにしこたま行っていたスクワットによって発生している汗が俺の体を伝っていく。

『おおおお………』『キレてる………』『すげぇ………』

 どうだ。集合無意識も俺の筋肉を称賛している。この完璧に仕上げた肉体は今、"神々"しく光輝く!!そう、俺は伝説の真トゥルーマッスルガイを超え、今やトゥルーマッスルガイゴッドとなったのだ!!

 

 さらに集合無意識は俺に答えるように唸り声のようなものを上げる。だから俺は更に願いを伝えた。

 

「人の鍛錬を…止めないでくれ!」

 

「ルルーシュ!貴方って子は!」

 殴りかかる母さんの拳をスザクが弾く。容赦ない金的を脚を閉める事で太腿で挟み込みようにして防ぎ、そのまま脚を掴んでのジャイアントスイング、放り投げられた母さんにスザクは飛びかかってアームハンマーを腹にブチ込んだ。

「こんなことは誰も望んでいない!ナナリーも望んでいなかった!!」

「出来るはずがない…!神に、人類そのものにギアスを掛けるなど…!」

 そんなことはない、筋肉だ。筋肉は全てを解決する!筋トレをすれば筋繊維は壊れる、そして眠り休めることでより強い筋肉となる!!だから…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「筋肉のために俺は…"明日が欲しい!!!"」

 

 空間に存在する謎の捩れた物が粉々に消えていく。成功したようだな。やはり筋肉、筋肉は奇跡を起こすのだ。筋肉にできないことはあまり無い!

「思考縄梯子が…ワシとマリアンヌの、兄さんの夢が朽ちていく…!」

 そしてシャルルと母さんの体は光の粒子となって徐々に霧散して行っている。鍛え抜いたとこれ以上の鍛錬を拒む彼らには明日に進む権利がないと人類によって判断されたのだろう。

「このワシが!飲み込まれるゥ!?Cの世界にィ!?」

 その時、母さんが視界から消える。これは…!すぐさま真後ろに肘打ちをブチ込み、そのまま勢いを殺さずに回し蹴りを顔面へと叩き込む。確かな手応えに後ろを確認すると母さんが倒れていた。

「…強く、立派になったのね…ルルーシュ」

「…母さんが頑丈な身体に産んでくれたお陰です。」

 そして俺はダブルバイセップスを披露した。

「…そう。」

 そして満足そうに頷いた母さんは光の粒子となり消えていった。すぐさま後ろから殺意を感じ、振り返ると今度はシャルルがこちらへと向かってきていた。

「マリアンヌをよくも…!この鍛えし愚か者めがァ!!」

 シャルルに首を絞められる…が、俺の筋肉量を舐めるなよ…!奴の握力に負けない首の筋肉で気道を確保、これで奴に俺は殺せない!

「くっ…!全力で締めているはずなのに…!何故…!」

「お前はコードを得て不老不死になってから筋肉が増えていない、ならば常に鍛え続けた俺の方が筋肉があるのは当然だろう!!」

「ぐぅ…!」

 

「消え失せろ!!」

 シャルルの顔面に拳を叩き込むとそのまま光の粒子となって弾け飛んだ。

 

 

 シャルル達との戦い、あれから1ヶ月が経った。

「皇帝陛下ご入来!」

 その声を聞き、俺は歩を進める。俺を見て会場にはどよめきが広がるが人をどよめかせるのは慣れている。そして俺はそのまま歩き、玉座に腰をかけ…る前にダブルバイセップスを決めて服を弾き飛ばす。

「この私が…第99代ブリタニア皇帝…ルルーシュ ヴィ ブリタニアです。」

「え?本当に?」「生きていた!?…あ、それにしてもいい筋肉好み…」「肩にナイトメアでも乗せてんのかい?」

 カリーヌやギネヴィア達の発言に俺は頷く。

「えぇ、そうです姉上。地獄の底から駆け上がって参りました。」

「確かにそれをなし得そうな筋肉…」

 そして俺は玉座に腰をかけ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …ると玉座が砕けた。きっと安物の玉座だったに違いない。馬鹿め!

 仕方が無いのでエア玉座で我慢だ。しっかりと脚を組むことも忘れない。すると、オデュッセウスが近づいて来る。

「良かったよルルーシュ。ナナリーが見つかったからもしかしたらと思ったんだけど…。しかし、玉座を壊すのはやり過ぎだよ。それは父上の…」

「第98代皇帝、シャルル ジ ブリタニアは私が殴り殺した。よって、次の皇帝には私がなる。」

 会場は再び騒めいた。

「こ、この痴れ者がっ!わ、私直々に排除する!」

 そう言ってスタスタとギネヴィアが俺に近づいて来る。そして…腕を掴み

「あっ…逞しい好き…」

 

 ふっ…落ちたな…!

 

「何言ってるのギネヴィア姉様!衛兵は何してるの!?早くあの男を排除して!お父様を殺した大罪人よ!」

 俺の逞しすぎる腕に頬擦りするギネヴィアは放っておくとして、カリーヌの呼んだ衛兵をどう処理しようか。俺が相手をしても良いが…ここはスザクを呼ぶとしよう。俺が指を鳴らすと俺の後ろの壁を突き破りスザクが現れ、衛兵たちを順番にぶん殴り蹴散らした。

「紹介しよう。我が騎士、枢木 スザク。彼には私が新たに定めるナイトオブラウンズのナイトオブワンに任命する。…ついでだ、皆も入ってきてくれ」

 スザクの破壊した穴から更に三人の男女が入ってきた。

「順番に紹介しよう。彼女のことは知っている者も多いのでは無いか?元第三皇女にして現在は名を改めたユフィ タダノだ。彼女にはナイトオブスリーの称号を与える。」

「我々に逆らうものは撲殺です。」

 次に紹介するのは我が弟にして真のマッスルガイ…

「彼は我が弟!名をロロ ランペルージと言う。彼にはナイトオブエイトの称号を与える。」

「ブラザーはボクが守りマス!」

 うむ、見事なダブルバイセップスだ。今日もキレてるぞ弟よ。

 そして最後に紹介するのは俺の罪を知りながら忠誠を誓う侍。

「彼は枢木 スザクと同じ日本人だ。名前を卜部 巧雪と言う!前ナイトオブトゥエルブを討ち取った実力者だ。彼にはナイトオブイレブンの称号を与える。」

「ナイトオブラウンズは虚名にあらず。」

 スザクを含めた4人の新たなラウンズが俺の配下だ。あと、俺の割れてる腹筋をウキウキしながら触っているギネヴィアはどうするべきだろうか。

「いけないよルルーシュ。それに枢木卿…ユフィまで…あと…そこの2人も。それにギネヴィア、君はいつまで弟の筋肉を触ってるんだい?これ国際中継だよ?なんかこう、全体的に悪ふざけがすぎるよ」

 オデュッセウスが常識人で助かったな。ギネヴィアは名残惜しそうに帰って行った。だが、これで舞台は整った。ここにいるラウンズ以外の全てにギアスを掛けるとしよう。

 

「"我が筋肉を認めよ"!!」

 

 オデュッセウスはギアスに掛かると高らかに

「イエス ユア マッスル!」

 と叫ぶ。更に他のものもギアスにかかり、ダブルバイセップスのポーズをとって

「「「オールハイル ルルーシュ!」」」

 と叫んだ。

 

 これで全ては動き出す。俺の…世界を平和にするための計画がな!




ナイトオブラウンズに加入する卜部が読めるのは二次創作界隈広しと言えど後にも先にもミートギアスだけでしょうね。

そしてなんとこれを投稿している時点でなんと25話まで書き切れました。ので、皆様安心して8/25の完結まで読んでいただけます。また、コメント返しが「今後をお楽しみ下さい」としかなりませんが展開予測していただいても平気になりました。

●オマケ● 唐突な次回予告(偽)
ドロテア「フィンガーハドロン発射テア!」ドロローン!
ノネット「私のルミナスコーンを食うノネ!」ノネネネネ!

●オマケ● 唐突にして恒例の次回予告(真)
ビスマルク「我がギアスは未来を読む!弱点は…無いッ!!」

TURN22「脳筋ルルーシュ」


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TURN22 脳 筋 ル ル ー シ ュ (皇帝ルルーシュ)

『先日即位した第99代ブリタニア皇帝ルルーシュは歴代の皇帝領の破壊を強行しました。貴族制度の廃止、筋トレの推奨、違法でないプロテイン…こちらは皇帝自らが愛用している物とのこと…の格安販売、財閥の解体、ナンバーズの解放…これらの行為に対してもオデュッセウスを始めとする元皇族達は神皇帝を支持しているようです。』
「すっげーなアイツの筋肉!」
「筋肉がすごいのは前からだろう。だが、完全にブリタニアを作り変える気とはな…」
「壊すの間違いじゃないの?」
「ルルーシュのブリタニアへの怒りは本物だったのか…」
「ルルーシュ皇帝の制度と筋肉を支持する声は超合衆国でも多いですわーーー!!!」
 斑鳩のブリッジ内でもルルーシュに対する肯定的な意見が聞こえる中、否定する者がいた。
「いいや、違う」
 星刻はモストマスキュラーのポージングを取り、首を横に振る。
「ルルーシュ皇帝の…いや、ゼロの目的は全世界の…掌握!」
 星刻はサイドチェストにポージングを切り替えて断言した。

 それでは本編スタートです。


 集めた兵士達に奴隷となるようにギアスを掛けるとジェレミアが現れた。

「ジェレミア ゴットバルト、ただいまローゼンクロイツ元伯爵の討滅より帰還いたしました。」

「ご苦労だったなジェレミア。しかし本当にいいのか?お前の活躍ならやはりお前もラウンズに…」

「いえ、ルルーシュ様。私はルルーシュ様に仕えることさえできればそれ以上は何も望みません」

 無欲…いや、忠義の厚い男だ。その反面、俺には人望がないと感じさせられる。こうも各地で貴族どもが反乱を起こすとはな…筋トレする暇が無い。今も空気椅子をしながら右手でバーベルを持ち上げるくらいしか出来ていない、これでは鈍ってしまう…。そんなことを考えていると玉座の間にロイドが現れた。

「来たかロイド。ラウンズ達の機体はどうなっている?」

「えぇ、順調ですよぉ〜」

「ならば案内してくれ。」

 俺は膝でバーベルを挟み逆立ち歩きでロイドに着いて行き、ラウンズのナイトメアの元へと向かった。

 

「まずはナイトオブイレブンから…」

 ナイトオブイレブン…卜部専用のナイトメア『ガングラン』は卜部の希望もあり、回収したカマキリナイトメア…モニカのフローレンスを改造したものだ。特徴的だったインセクトモードを排する代わりに機動力を更に高めた機体。2基有ったハドロンブラスターも1基に減らし、カラーリングも紺色に統一してある。そして卜部に合わせて刀型のMVSとその鞘を右肩に取り付けた。弱点らしい弱点のない安定した機体だが、逆に言うと特徴がないともいう。

「うむ、次に行ってくれ」

 

「はい。次はナイトオブエイトの機体ですよぉ」

 ナイトオブエイト…ロロ専用のナイトメア『ラモラック』はロロが今まで乗ってきていたナイトメアであるヴィンセントをベースに開発した。ガングラン製造時に余ったハドロンブラスターはラモラックが使うことになっている。そして最大の特徴は拳、肘、膝の計6箇所に取り付けたニードルブレイザー。6つ同時起動により前方に絶対守護領域並みの硬度を誇るブレイズルミナスを展開することができる。しかし最大の武器は乗っているロロ自体だ。あいつの絶対停止を展開しつ接近、攻撃はニードルブレイザーから発生するブレイズルミナスで弾き、遠距離はハドロンブラスターを、接近したらニードルブレイザーによる攻撃で仕留める。我が弟ながら実に強力だ。胸を叩く為に片手が塞がることの多いロロの為に一応片手で大まかな動きができるように設定してあるが、細かい動きができないのが欠点だろうか。

 

「ねぇ、ルルーシュ!」

「うん?ユフィか、どうしたんだい?」

「私専用のナイトメアはまだ出来上がらないのですか?」

 ナイトオブスリーのユフィの為に開発予定の『ユーウェイン』は現在グロースターをベース開発しているはずだったが、ユフィの希望である「デケェ拳で相手を叩き潰したい!撲殺です!」を叶えるのは流石のロイドでも難しかったらしい。何せ他のナイトメアと同時着手のため、完全新規作製をするは時間が足りない。しかし、グロースターがベースではユフィの望むデケェ拳を振り回すだけのパワーに欠けるのだ。

 しかし驚いたな…ギアスを解いてなおユフィが戦うと言い出すとは…。

 ユフィには俺のギアスのことを説明した。そしてその結果起きた悲劇も、全て俺の責任だと誤ったが、彼女は首を横に振ったのだ。

『私、吹っ切れちゃいました。だから許します、私はルルーシュを。そして…私が人々を殺めたのは私の罪、その罪滅ぼしのためルルーシュと共に優しい世界を作るのです。』

 そう、言ってくれたのだ。まぁ、許す前に顔面に拳は貰ったが安いものだろう。…正直ギアスの影響がかなり残ってるんじゃないかと心配になる言動を繰り返しているが、ジェレミアは確かにギアスを解除しているのだ…我が義妹ながら逞しいものだ…あ、いや、心がな。うん。

 

 そして卜部もロロもジェレミアもスザクもロイド達も…もちろんC.C.も俺の計画に協力してくれると言ってくれた。だから…俺は必ず成し遂げなければならない。

 すると、電話が鳴る。皇帝である俺の電話に直接かかってくるなど2つしか想像出来ない。どうやら動き出したようだな。

 

 

 

 僕達ナイトオブラウンズは旧ナイトオブラウンズの鎮圧に出ることとなった。こちらはユフィを除く僕、ロロ、卜部さんの3人。対してあちらはビスマルクさん、ジノ、ドロテアさん、3対3なら数は互角、さらにこちらは最新の機体ばかりだ。負けるはずがないし、負けるわけにはいかない。ここで皇帝ルルーシュとそのラウンズが旧ラウンズを撃破することでブリタニアにおける反抗の芽を完全に潰せるはずなのだから。

「旧ナイトオブワンは自分が相手する。ロロは旧ナイトオブフォーを、卜部さんは旧ナイトオブスリーを相手してほしい」

『オーケー!』『承知した』

 まずはラウンズよりもその直属部隊を叩くとしよう。でもそれはどうやらみんな考えは同じらしい。

 ランスロットアルビオンのエナジーウィング、ガングランのハドロンブラスター、ラモラックのハドロンブラスターが直属部隊の機体を撃墜していく。

『枢木スザク!』

 やはりあんな雑な攻撃ではギャラハッドは墜とせないか。

『どちらが真のナイトオブワンか…ここで決着をつけようか!』

「望むところです!」

 

 

 

 今回は追い詰められるまでなるべくギアスを使うなとブラザーから言われていマス。ですが、ボクがギアスだけでは無いと言うことを教えてあげまショウ!

『喰らいなァ!』

 ナイトオブフォー…そしてパロミデスのフィンガーハドロンが飛んできまシタ、ここはラモラックの機動力を活かしテ攻撃を躱しマス。そして一気に距離を詰めて攻撃デス!

『距離を詰めれば勝てると思ったか!?』

 パロミデスは拳を繰り出してきまシタ。でも甘いデス。こちらは肘のニードルブレイザーからブレイズルミナスを展開して受け止めマス。このポジションでは攻撃は難しいですネ、一度距離を取りマス。そしテ…

「ハドロンブラスター発射デス!」

『舐めるんじゃ無い!フィンガーハドロン発射!』

 ラモラックのハドロンブラスターではフィンガーハドロンの一斉射撃には流石に勝てないようデス。押し負けたハドロン砲がボクに当たる前に素早く避けると既にパロミデスのフィンガーがこちらに向いていまシタ。

『貰った!もう一回食らえ!!』

 再びのフィンガーハドロン…ですが避ける必要は有りまセン。

「効きませんヨ、そんなモノ!」

 ラモラックの六つのニードルブレイザーを起動シテ、ブレイズルミナスを展開しマス。

『防がれた!?馬鹿な!?』

「ヴィンセントとは違うのですヨ、ヴィンセントとはネ!」

 肘打ちで最大の武装と思われる肩の武器を破壊しマス。これでボクの勝ちデス!膝を胴体にぶち込んで終わりにしマス!

『ロロく〜ん!お願いなんだけどさ〜ぁ!』

「ロイドサン!?」

 突然の通信デス。驚きまシタ。

『その機体、できれば鹵獲して欲しいんだけ…あっちょっやめっ…』

 …取り敢えず絶対停止でパロミデスの動きを止めて起きまショウ

『ロロですか?私です。貴方の義理の兄の腹違いの妹…つまり貴方の腹違いの姉のユフィです』

「…間違ってはないですケド…それはもうほぼ他人ですヨ…」

『何か言いましたか?そのパロ…?パロデミ?…兎に角!その機体が私欲しいのです!必ず鹵獲しなさい、良いですね!』

 …後が怖いし言われた通りにしまショウ…胴体ではなくコクピットに肘打ちをブチ込みマス。ヨシ!これで鹵獲成功デス!

 

 

 

『くっ…その形状…フローレンスか…!その機体はモニカのものだ!返して貰うぞ!』

「これは正々堂々の一騎打ちを経てモニカ殿より直々に受け取った物!貴殿に返す通りは無い!ジノ ヴァインベルグ卿…相手にとって不足なし!この機体欲しくば力づくで来いッ!!」

 相手は可変ナイトメアトリスタン。こちらも元は可変ナイトメアだったがその機能を使う気はない。そもそも空中ではあまり意味がないからな。

『食らえ!ハドロンスピアー!』

 ほう、あれがスザクくんの言っていたハドロンスピアーか、だが…!

「こちらにもハドロンブラスターがある!」

 左肩のバドロンブラスターで相殺し、すぐさま距離を詰める。…が、流石は元ナイトオブスリー、既に人型になっていたか。振るわれたMVS同士のぶつかり合いとなり、火花を散らす。だが、このガングランの元となったアレクサンダなるナイトメアにはモニカ殿にも使われたことのない仕込み武器が存在する。それがこのウルナエッジ!手首に仕込まれたこれならば!

『隠し武器だと!?モニカから聞いてないぞそんな物!』

「当然だろう、でなければ隠し武器にならんからな」

 胴体へのウルナエッジは逸されたものの、そんなことはこちらとて想定済み、最初から狙いは頭部!

『しまった!』

 ギリギリ躱されたが頭部の半分は持っていけたな。これで視界は大きく削げた。続けて蹴りを叩き込む!

『そんな攻撃ッ!』

 距離を取ってギリギリ躱す算段か、甘い!このガングランは変形を想定してはいないが、可変構造自体は残してある。つまり!モニカ殿のフローレンスが度々見せたインセクトモード、あれは太腿部分が延長される構造になっている…ならば!

『脚が…伸びた!?』

 躱しきれず蹴られ、体勢を崩したところで叩き切ってやる!俺はMVSを上段から下段に振り下ろした。

『クソッ!』

 再度MVSで防がれたか…だが!その削がれた視界ではこの腰のスラッシュハーケンは避けられまい!

「食らえ!」

『何!?どこから…!』

 とどめにフットスタンプを叩き込む。先程も言った通りガングランの太腿は伸びる。つまり一度目の衝撃を与えた事で相手の抵抗力を相殺し、ガラ空きになった相手に更なる衝撃を叩き込めるということ!これぞ破壊の極意なり!あまりの衝撃にトリスタンのフロートシステムが砕け、落下していく。…勝ったか。どうやらロロくんの方も終わっているらしい。あとはスザクくんだけか。

 

 

 

 おかしい、こちらの攻撃が読まれているし、ランスロットの移動先も読まれている。機体性能では圧倒しているはずなのに…これが元ナイトオブワンの実力か…!

『スザク、予定通りこの戦いは全国に放送されている。お前の鍛えられた力を見せつけろ!』

「分かってる!」

 ギャラハッドによる距離を詰めての斬撃…幸いスピードで圧倒しているアルビオンならば回避は可能…だけど

「回避した場所に蹴りを!?」

『ナイトメアの性能の違いが、戦力の決定的差ではないということを…教えてやる!』

「くっ!」

 エナジーウィングから無数のエネルギー弾を飛ばすけれど全て躱された…!更に…いけない!この軌道ではスラッシュハーケンが避けられない!何故ランスロットの軌道を…!まるで未来を読んでいるかのようだ…!だったら…!複雑に左右にフェイントを掛けての攻撃…!

『甘いな』

「何ッ!?」

 ギリギリでMVSで鍔迫り合いに持ち込むが、これはランスロットの機体性能のおかげだ。つ、強い…!

『我がギアスは未来を読む!弱点は…無いッ!!』

 袈裟斬りをエナジーウィングの盾でなんとか防いだけれど、何度も受けたら機体が保たない…!

『スザクくん、加勢は…』

「必要ありません!これは僕の一騎打ちです!ロロも手を出すな!」

『オーケー』

 そうだ、乗り越えなければ…!この強敵に勝てるように…!ゼロレクイエムの為にも…!!

 

「僕は、"鍛える"!」

 

 僕に掛けられた「鍛える」ギアスは僕の力量不足を感じると発動する呪い…だが、それを逆手に取れば…!

『なんだ…!?さっきよりも早い!?』

 ランスロットアルビオンに搭載された新システム…『マッスルデバイス』は僕の筋肉の動きを読み取りそれを数値化して機体の制御に反映している…つまり!僕の筋肉が鍛えられれば鍛えられるほどより早くランスロットアルビオンは動く!!

『帝国最強の騎士は、我が名と共にッ!!』

 ギャラハッドが剣を構えてこちらを見ている…しかし!

「うおおおおおおおおおお!!パワーーーーーッ!!!!」

 動きが読まれても関係ないほど早く!より早く!体を鍛えて攻撃をブチ込む!!!

『な、なんだ!?機体性能じゃない…!?この動きは……!!!』

 脚部にブレイズルミナスを展開し、回転を加えた蹴りで…胴体をブチ抜くッ!!

「食らえ!陽昇流誠壱式旋風脚!!」

 

『…見事』

 

 ギャラハッドは爆散した。これで反旗を翻したナイトオブラウンズはもういない。

 

 

 

 スザクがビスマルクを倒したことを確認し、俺は次の一手に出る。全世界に向けての宣言だ。

「全世界に告げる!今の映像で私が名実共にブリタニアの支配者とお分かり頂けたことと思う。そして見よ!この筋肉を!!」

 俺はダブルバイセップスを披露して服を破り裂く。

「そしてこのブリタニアの支配者である私は…我が神聖ブリタニア帝国が超合衆国への参加を表明したい。交渉には枢木スザクを始めとする武官は立ち会わせない…何故なら必要がないからな。この筋肉があれば護衛など不要と言うことだよ。全て超合衆国の指示に従おうではないか。海を走ってこいでも、空中を走ってこいでも、会場までは逆立ちでこいでもなんでも…ただし、交渉の舞台は現在超合衆国とブリタニアの中立地帯の日本…アッシュフォード学園を指定させていただこう」

 まぁ、どんな条件で来られてもこちらは超合衆国の代表達を人質にする作戦を決行するがな…!そもそも超合衆国のシステムは俺が使ったのだ。その弱点は把握している…そして暴力で脅して首を縦に振らせる。民主主義の脆弱性を教えてやろう…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、ルルーシュ。なんでも条件を呑むとは言え、これは余りにも…その、あまりにも酷くはないか?」

「そうか?」

 俺は今、日本に降り立ち、C.C.を肩車してウサギ跳びでアッシュフォード学園に向かっている。超合衆国からの条件は

・ルルーシュ皇帝の類稀な筋肉を見ればSPは不要と考える

・ルルーシュ皇帝の類稀な筋肉で戦力は十分なのでナイトメアの持ち込みは不可

・ルルーシュ皇帝の類稀な脚力を拝見したいので日本内の移動はウサギ跳びに限る

・ルルーシュ皇帝の類稀な筋肉を考えれば同行者は不要と考えるが、必要な場合はルルーシュ皇帝自らが肩車すること

であった。恐らくこちらが「こんな条件が飲めるか!」と怒ることを想定したんだろうが甘いな…!

「その…お前には…羞恥心という概念はないのか?」

「あるに決まっているだろう。だが、皆が俺の鍛えられた身体に注目しているのだ、どこに恥がある?」

「私は今ほど死なないことを後悔したことはないよ」

 ウサギ跳びを続けていると、急に声をかけられた。

「ルルーシュ!教えてくれよ!今までどうしてお前は俺に…」

 声の主はリヴァルか…久しぶりだな。だが今の俺は皇帝、もうあいつと話すことなどない。無視してウサギ跳びを続けると学園に到着した。出迎えが現れ…あれはカレンか。それにゴーグルをかけた護衛が数人、ギアス対策だろうな。

「…恥ずかしいとかそういう概念はあなたには無いわけ…?」

「お前もおかしなことを聞くんだな。あるに決まっているだろう」

「やめておけカレン、この肉ダルマには何を言っても無駄だ、それより早く案内してくれ、私の方が恥ずかしくて死にそうだ」

「…同情するわC.C.…こっちよ」

 そしてカレンの案内で俺は体育館へと向かった。

 

「超合衆国最高評議会議長、皇 神楽耶殿…我が神聖ブリタニア帝国の超合衆国への加盟を認めて頂きたい。」

「それには各合衆国代表の3分の2以上の承認が必要ですわーーー!!!」

「えぇ、わかっています。それが民主主義というものでしょう?」

 相変わらずの喧しさだな、神楽耶…

 すると突然俺の周りに壁が現れた。なるほど、これもギアス対策か…だが杜撰な対策だな…。周りのざわめきを聞けばギアスのことを知っているのが神楽耶と黒の騎士団のメンバーと言うことが予想できる。そして目の前のモニターに神楽耶が映し出された。

『悪逆皇帝ルルーシュ、あなたの狙いはお見通しですわーーー!!!』

「ほう?狙いとは?」

 すると神楽耶だけではなく星刻も映し出される。そして星刻はサイドチェスト(こんにちマッスル)と挨拶をしてきた。俺もサイドチェストを返す。星刻め…この短時間でここまでのキレを…中々侮れない奴だ。

『ふん、相変わらずキレているなルルーシュ。そして相変わらずの頭のキレだ。合衆国の決議は多数決で行われるが、その投票権は人口に比例する…中華連邦が崩壊した今、世界最大の人口を誇る国家はブリタニアだ。その数はおよそ過半数を超える…』

『つまり、合衆国は事実上あなたに乗っ取られてしまいますわーーー!!!ブリタニアと言う国を割るか、投票権を人口比率の20%にするかしてほしいですわーーー!!!』

 やはりそう来たか…だが!

「我が国にだけそれを求めるのは不平等では?多数決、民主主義とは平等が前提のはず。それとも何か?神聖ブリタニア帝国の人民は他国の20%分の権利しかないと?」

『それは…』

 星刻が狼狽えた隙に壁を殴り破壊する。この程度の壁で俺を閉じ込められるなどと愚かな考えだ。

「この私には世界を統べる資格がある!強靭な肉体!全てを破壊する覚悟!その二つが私にはある!」

 瞬間、天井を突き破ってランスロットアルビオンが現れる。今頃はブリタニア軍が日本へと向かっているはずだ。国際的信用など筋肉の前には無駄!筋肉…つまりパワー、パワーとは即ち軍事力。この絶対的軍事力で世界を統べてやる!

「ブラザー、会場の黒の騎士団員は全員始末したヨ」

「よくやった。」

「いつの間にかナイトオブエイトが現れましたわーーー!!!」

 C.C.を連れてきたのはこの為だ。ロロが広範囲を絶対停止し、同行者として会場内に待機したC.C.が内側からロックを外す。そしてロロが内部に侵入して黒の騎士団員達を始末する。

 いつの間にか現れたナイトオブエイト、倒れた護衛、そしてランスロットアルビオン…とどめにこの俺の筋肉!もはや誰も俺には逆らえない!

 

「さぁ、民主主義を始めようか…!」




ドロテアに出番を与え過ぎて逆にノネットの影薄すぎる問題。でも、ロスカラに出番があるから逆に動かしにくいんですよね、彼女

前回の感想欄で多かったので質問返し※作者の描写不足の言い訳
Q.マリアンヌがまともな人になってません?
A.ルルーシュが本物の母親だと分かったのは「ルルーシュがマリアンヌの殴打を受けてから」です。しかも、「途中で次の攻撃が何がくるかを知っていました。」よね。これは私の描写不足ですが、マリアンヌは幼いルルーシュ達に鍛錬()を行っていた事になります。結論として…なんだ、良い人ですね()

●オマケ● オリジナルナイトメア紹介
『ランスロットアルビオン(脳筋)』
・現代の技術力を全て組み込み、気が付いたらリミッター付けずにフルスロットルで動かすとルルーシュですら死に至る性能になってしまったナイトメア。リミッターの代わりに「マッスルデバイス」による半自動制御によりそのパイロットで可能な最大限のパフォーマンスを発揮する。
(武装、外見は原作と同じなので省略)
・「マッスルデバイス」…フローレンスの素体であったアレクサンダで用いられていたE.U.独自のシステム。存在を知ったルルーシュが権力などを用いて取り寄せた。パイロットの筋肉を自動的に読み取り数値化し、機体制御に置き換える。これにより現在のパイロットの筋肉量では耐えられない動きは出来なくなる。逆に言えば筋肉を鍛え、負荷に耐えられれば耐えられるほどより本来の性能に近づいて行く。スザクは必要性に駆られると『鍛える』ギアスが発動し、無限に鍛え続けるので理論上はいつかランスロットアルビオンの本来の性能を発揮するまでに至る。

『ガングラン』
・モニカのフローレンスを改修して作り上げたナイトオブイレブン、卜部専用のナイトメア。
・両腕の大型MVSを取り払い、変形を必要としない方向性に強化。結果として機動力や運動性能が上昇した。
・武装は腰のスラッシュハーケン×2、ハドロンブラスター、MVS(刀タイプ)
・MVSはハドロンブラスターのあった背中部分に鞘を取り付けたため、ハドロンブラスターを1基取り払っている。
・カラーリングは紺色(四聖剣暁の時と同じ色)
・左腕にはブレイズルミナスを装備
・変形機構自体は残っているため、太腿が伸びる上、踏みつけた状態で一気に伸ばす事で二段蹴りの様な攻撃が可能。

『ラモラック』
・ヴィンセントをベースに開発したナイトオブエイト、ロロ専用のナイトメア。
・拳、肘、膝の計6基のニードルブレイザーにより高い防御力を誇る。同時起動する事で最高硬度の絶対守護領域に匹敵するブレイズルミナスを展開可能。
・武装はニードルブレイザー×6、スラッシュハーケン×2、ハドロンブラスター
・ガングラン製造時に余ったフローレンスのハドロンブラスターを譲り受けている。
・カラーリングは金色

『ユーウェイン』
・鹵獲したパロミデスをベースに現在開発中のナイトオブスリー、ユフィ タダノ専用のナイトメア
・本人の希望で武装がデケェ拳のみに縛られるためロイドも頭を悩ませていた。また、既存の汎用機をベースにしてはパワーが足りないため難航していたが、ドロテアのパロミデスを鹵獲した事により開発の目処が立った。
・武装はハーケンフィスト×2
・紅蓮聖天八極式の右手と同様に巨大な拳をブースターとワイヤーで飛ばして攻撃が可能。飛ばさずにブースターを使用する事でユーウェイン自体が高速で移動が可能。
・カラーリングはドピンク
・掌にブレイズルミナスを装備している。
・見た目の割に素早く、拳でぶん殴るだけで並のナイトメアはブチのめすことが可能。

オリジナルナイトメア、出来るだけ原作等からベース機を持ち出す事で想像しやすい様に留意しましたがどうでしょうか。わかりにくかったらごめんなさい。


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TURN23

 天空要塞ダモクレス。シュナイゼルがトロモ機関に作らせたそれは空に浮かぶ要塞。高出力のブレイズルミナスはあらゆる攻撃を弾くかもしれず、搭載したフレイヤは全てを消し飛ばす。

 そのフレイヤはペンドラゴンへと落とされた。

 ナナリーはシュナイゼルからルルーシュの悪政を打倒するためと聞いていた。そしてペンドラゴンの人々は既に避難済みとも。
 そしてナナリーはシュナイゼルに提案をした、「フレイヤの発射スイッチを下さい」と。
 それにシュナイゼルは計画通りと思った。

 そしてそれはナナリーも同様だった。

それでは本編スタートです!


『陛下!アヴァロンから緊急入電です!』

 超合衆国を制圧したものの、スザクの声の焦りは尋常ではなかった。やってきた兵隊達に各国の代表達を連行させつつ報告を聞いた。

『帝都ペンドラゴンにフレイヤが…!』

 シュナイゼルに先手を撃たれたか…兵士達に持って来させた輸送機に乗り、モニターで確認すると建造計画書で見た天空要塞ダモクレスの姿があった。

『ルルーシュ、これは君の予測していた…』

「あぁ、そのようだな」

 スザクと皇室専用チャンネルで通信をしていると誰かが割り込んできた…このタイミング、シュナイゼルか

『筋肉を鍛えるのは気持ちが良いよね。でも、他人を従えるのに喜びを見出し始めたら終わりだよ、ルルーシュ。フレイヤ弾頭は全て私が回収させて貰った。』

「ほう?ブリタニア皇帝に弓を引くと?」

『残念だが、私は君を皇帝と認めていない』

 なるほど、自分こそがふさわしいと言いたいわけか…面白い…!今度こそ完膚なきまでに叩きのめしてやるぞシュナイゼル…!

『いいや、間違ってるよルルーシュ…ブリタニアの皇帝に相応しいのは彼女だ』

 そう言って映し出されるのは正に絶世の美少女、神の求愛を受けた美しい容姿に聞けば天にも登るような声音、その髪の色は美しく、独特な癖毛が唯一無二と言える存在だと知らしめる…即ち我らが愛すべきナナリーだ。ナナリーが生きていてくれた…!なんということだ!俺は今初めて神とやらに感謝している。しかし、それを顔に出すわけにはいかない。そのナナリーがシュナイゼルの手にあると言うことはこれは奴のジョーカーだ。俺に対しての…

 ナナリーは頬を膨らませ、眉を一生懸命吊り上げている。可愛い。

「お兄様、スザク、私はお二人の敵ですよ」

 一生懸命怒っている様な声音を出している。可愛い。だが、相手は長年共に過ごしてきたナナリー、モニター越しでも分かる。敵の態度ではないと。恐らくナナリーのことだ、また行政特区の時のように俺を助けようとしてくれているに違いない。そうなればこちらの打つべき手は…

「ほう?愛らしい姿で我々を籠絡しようとは…しかし、この私がそんな物に動じるとでも?それに…お前はシュナイゼルが何をしたかわかっているのか?」

『はい、帝都ペンドラゴンにフレイヤ弾頭を撃ち込んだんですよね』

 やはりやったのはシュナイゼルか

『それがわかっていて何故!』

『黙りなさいスザク!ギアスの方が正しいというのですか!?あともし私のところに来ることがあればまた限定品のパンといちごミルクを買ってきてください。デザートのプリンも忘れずに』

『え?あ、はい。』

『ナナリー?枢木 スザクにここに乗り込まれたらそれは我々の負けだよ?』

 今のうちに他に誰がシュナイゼル側に付いているか確認しておくか…。ディートハルト…ふむ、シュナイゼルの中に何かを見出したか。それにギルフォード卿…仕える姉上の代わりにナナリーを守ろうとでもしているのか?律儀なことだな。

「我が妹よ、お前がシュナイゼルと手を組み、我が覇道の前に立ちはだかるというのなら容赦はしない。この分厚い両腕で叩き潰すだけだァ…!」

 そう言って通信を切る。

 

 まさかナナリーが生きていてくれたとはな…。するとさらに通信が入った。相手はジェレミアだ。

「どうしたジェレミア」

『はい、先程シノザキなる女性が陛下にお取り次ぎをと…』

「何!?咲世子が!?」

『はい、トウキョウ決戦においてナナリー様はシノザキ…あぁ、サヨコ殿と共に逃げ、その後シュナイゼルによって捕縛…カンボジアから遥々その情報をと』

 そうか…見間違えるはずもないがやはりあれは本物のナナリー、そして何故生きていることが今までわからなかったのか納得もいく。シュナイゼルめ…!しかし、流石は咲世子だ、よく頑張ったと褒めてやりたいところだ。咲世子は華奢だが間違いなく心の筋肉を鍛えたマッスルウーマンだろう。

 元よりナナリーの生死に関係なくシュナイゼルとは決戦をする予定だったそれにこれは都合が良い。俺の後の皇帝にはナナリーがなれば良い、優しいナナリーならばきっと…良い世界を築いてくれるはずだ。

 

 そしてブリタニア軍を使い日本を再占領、しかし帝都ペンドラゴンの消失により内政機能が麻痺、各エリアの軍隊は黒の騎士団と対峙している為下手には動けない。だが、これはいつ崩れてもおかしくはない。こちらの部隊は日本を再占領した部隊のみに限られるが、ナイトオブラウンズは4人ともこの戦場に投入している。つまり更なる援軍が来る前に黒の騎士団とシュナイゼルは攻撃を仕掛けざるを得ない…ならば俺の勝利は確実。

「この戦いこそが世界を賭けた決戦となる!シュナイゼルと黒の騎士団を倒せば我が覇道を阻む者は一掃される。世界は我が筋肉によって破壊され、筋肉のようにより強靭なものとなって創造される!ブチ砕くのだ!敵を!シュナイゼルを!天空要塞ダモクレスを!その筋肉で!!恐れることはない、未来はこの筋肉と共にある!!!」

 

 そして…ダブルバイセップス!

 

 蜃気楼の中からシュナイゼルへとオープンチャンネルを繋げる。

「ご機嫌ようシュナイゼル。あなたはフレイヤを切り札のように掲げているが果たして撃てるかな?」

 俺は用意しておいた人質達の映像を見せた。

『人質が…でもね、世界の平和と僅かな命、比べるまでもない』

 残念ながらシュナイゼルにとってはそうかもしれないが黒の騎士団はそうはいかない、特に星刻はな…!

『撃つなよシュナイゼル!その時は私の拳で貴様を殺す!こちらとていざという時の覚悟はあるが…無駄にして良い命など無い!』

『ならば全体の指揮系統は私に譲ってくれるね?安心したまえ、私はチェスでも殴り合いでもルルーシュに負けたことはないんだ』

 いつまでも中華連邦のとかの俺と同じだと思うなよ…?

「どれ…手合わせ願おうか!!」

 愚かなりシュナイゼル!俺はお前との会話の中、ずっと解析していたのだ、俺は蜃気楼から液体金属を凝固させたプリズムを発射、すぐさま相転移砲を放射し、拡散した相転移砲が黒の騎士団のナイトメアを破壊する。そして俺はこのとっておきの秘策を早速披露する…

 

「全 軍 全 速 前 進 だ ! !」

 

 以前のコーネリアとのサイタマでの戦いで学んだことがある。チェスはお互いの駒の力が同じだからこそ成り立つゲーム!だが、現実ではそんな状況はあり得ない。こちらの盤面には幾つものクイーンがあるようなものだ。ならば細かい陣形のやり取りなどせず、速攻で決めてやる!戦いが長引けばフレイヤ封じの策も機能しなくなるからな…!

「敵左翼はジェレミア、ロロ、C.C.が抑えろ!右翼はユフィ、卜部で抑える!正面戦力は私とスザクで蹴散らしてやる!!」

 

『私を相手に天子様を人質に取ることがどういう事か分かっているのか!?真のマッスルガイとは何かを教えてくれた貴方が!』

「お前が真のマッスルガイだと?ふざけるな、お前のような出来損いが…マッスルガイなどと、その気になっていたお前はお笑いだったぞ星刻!」

『…貴様ァ!』

 神虎の天愕覇王荷電粒子重砲…我が相転移砲で相殺してくれる!こちらのハドロンショットはフーチ型スラッシュハーケンに阻まれるか、ならば!

 

「拳を食らえ!!」

 

 しかし神虎は近くの暁にスラッシュハーケンを掴ませると一気に後退した。

『君と接近戦をするつもりはない!』

 それで俺から逃げられるつもりらしい…愚かな事だ

「雑魚の暁と協力したとて、俺から逃げることは出来ぬゥ!!」

 後方に展開した絶対守護領域を蹴り、一気に距離を…

『ルルーシュ!上だ!』

 上?…何ッ!?

『ルルーシュッ!!』

 紅蓮の右腕…カレンか!スザクのお陰でギリギリ防ぐ事はできたが…!

「助かったぞスザク」

『礼は不要だよ。僕らにはなさねばならないことがあるからね』

 …そうだ、あらゆるものを犠牲にしてでも俺は世界を手に入れる…!

 

 

 

『カレンの相手は任せるぞ』

「イエス ユア マッスル!」

 カレン相手に出し惜しみはできない…ロイドさんとセシルさんの話曰く、カレンの乗る紅蓮聖天八極式は"今の僕が操る"ランスロットアルビオンよりも高性能、しかもパイロットのカレンは女性だから負荷への耐性が高い!つまり…今のところは彼女の方が強い…だから勝つには…"鍛える"しかない!

『スザク!決着をつけるよ!!』

「あぁ、僕達の殴り合いに!!」

 スーパーヴァリスは…ダメだ、輻射波動に止められる。エナジーウィング…あちらもエナジーウィングを持っているから相殺される。MVSによる攻撃…あちらの十手型のMVSに止められる、スラッシュハーケンを…ダメだ、あちらのスラッシュハーケンに弾かれる!幸いあちらの攻撃はシールドで止められる…だったら…!

 

「蹴りを食らえ!!」

 

 ブレイズルミナスを展開した蹴りを!

『甘いよスザク!』

 輻射波動を展開した掌底…!?カレン…やるな!

『全軍このまま前進せよ!両翼は我が軍が押し切りつつある、このまま力で捻じ伏せろ!』

 ルルーシュ…君の覚悟を無駄にはできない、ゼロレクイエム…アレを完遂させる!それが…!

『…さっきよりも早い!』

 対カレンの戦いで僕は鍛えられた!ならばマッスルデバイスがランスロットの限界を引き上げてくれるはず!ビスマルクさんをも破ったこの陽昇流誠壱式旋風脚でトドメを!

『待て待て待てーい!この玉k』

 何!?カレンの前にいきなり暁が!機体を丸ごと盾に止められた!?いけない…!

『スザク!!』

 投げられた十手を弾くとすぐさま右手が迫ってくる。スーパーヴァリスを放つが輻射波動に止められてしまった。いけない…!もっと、もっと鍛えなければ!

 

『は、早い!』

 数度の紅蓮との攻防、僕の身体は更なる鍛錬を得た!もう一段階ランスロットの力を上げられるはず!だが、紅蓮だけを相手にしているだけでは鍛錬の効果は薄い!もっと、もっとだ!!もっと!!!紅蓮を蹴り飛ばし、スーパーヴァリスを構える。

『そんな武器なんか!』

 カレン、残念だけど…

 

 僕は構えたヴァリスを戦艦に向ける。ルルーシュ曰く斑鳩と名付けられた黒の騎士団の戦艦だ。あれを墜とせば更なる鍛錬となる!スーパーヴァリスに対して斑鳩はハドロン砲を放ってきたけれど、ルルーシュ曰くあれに連射機能はない。

『待て!』

 紅蓮の攻撃に対し、MVSを投げつけることで牽制し、一気に斑鳩に接近する。動力部を破壊すればあとは落ちるだけだ。ブレイズルミナスを展開した蹴りでフロートに蹴りをブチ込むと程なくして煙が上がる。

『扇さん!…スザクゥゥゥゥ!!!』

 カレンがまた向かってくる…来い、僕は今君を相手しつつ戦艦を一つ落とした…これで僕の筋肉はさらに鍛えられたはずだ!

『よくやったスザク!私は今からダモクレスに直接攻撃を仕掛ける!紅蓮と神虎を抑えておいてくれ!』

 2対1か…ならば僕の筋肉はさらに鍛えられるな…!!

 

 

 

『斑鳩が墜落とはね…さらに両翼も抑えられている…まさか単純なゴリ押しでここまで苦戦させられるとは…でもねルルーシュ、チェックをかけられたのは君だよ…さぁ、ナナリー、フレイヤを』

 流石はお兄様、シュナイゼルお兄様を策もなしに追い込むなんて…。いいえ、これは恐らく私の事を想定しての策。

『…?どうしたんだい?ナナリー、標準はもう合わせてある。あとはスイッチを…』

「すみません、シュナイゼルお兄様…スイッチは先程落としてしまいまして」

 

『…え?』

 

 もちろん嘘だ。だが、スイッチは押さない、私はスイッチを押させない為にこれを手にしたのだから。

 そう、あのお兄様なら見越していたはず、私がシュナイゼルお兄様からフレイヤの発射スイッチを譲り受け、それを「使わない」という選択を取るであろうということに。あとは私を救いにやってくるであろうお兄様にこれをお渡しするだけ。あぁ、待ち遠しい…

 シュナイゼルお兄様は私をお兄様へのカードとして切ったようですが、そうはさせません。効果的なカードとして突き刺さるのはお兄様のカードとして、そして窮地に追い込まれるのはシュナイゼルお兄様の方。

『ナナリー…まさか君は…なるほど、そういう事かい。参ったな、私が読み負けるとは。君を侮って…いや、その可能性を捨てきってしまっていたよ』

 

 私にはお兄様さえいれば良いのですから。

 

 

 

 ダモクレスのブレイズルミナスか、そんなものは蜃気楼の絶対破壊両腕を持ってすれば破壊可能だ。

 背面に展開した絶対守護領域を蹴り、最高硬度の絶対守護領域で殴り付けるとブレイズルミナスが砕け散る。後はダモクレスの内部を制圧して黒の騎士団をボコボコにブチのめせば誰も俺に逆らえなくなる。

「まずは脱出経路を封じておくか」

 蜃気楼で側面の壁に穴をブチ開け、蜃気楼を降りて内部を探索する。

 

 小賢しくゴーグルをしているが、接近してブン殴ればギアス対策など無意味。

「"私の指示通りに動け!"」

「イエス ユア マッスル…」

 その後も片っ端から殴ってギアスを掛けて進んでいく。途中で管制室のようなところに出たので調べてみるとフレイヤでの自爆をセットしているようだ。

「シュナイゼル…無駄なことを。」

 ギアスで操った兵士達に見張らせ、制御システムにハッキングして自爆を解除させる。ついでに監視カメラのハッキングも済ませてダモクレス内の映像を確認した。どうやらシュナイゼル達は脱出する気らしい。無駄な事だ。脱出艇を発信できないように小細工を仕込む。

 そして脱出艇のモニターに通信を繋げると、シュナイゼル達が映し出された。

「シュナイゼル、どこへ行こうと言うのかな?」

『…そうか、チェックメイトを掛けられたのは私か…なるほどね』

 そう言うとシュナイゼルはシートに腰を掛けた。

『教えて欲しいな、何故私は負けるのか…』

「筋肉が足りないからだろう。あなたには鍛える気がない。」

『やはりそうか…と言う事は私を殺すのかな?しかし君がここに走って到着するまでどれほどの時間が掛かるだろうね?』

 いいや、違う…間違っているぞシュナイゼル。俺は思いきり跳躍し、天井をブチ抜く。そしてそれを繰り返し、シュナイゼル達のもとに向かう。そして天井と脱出艇の底をブチ抜き、眼前のシュナイゼルの顔面に拳を叩き込む。

「は、早すぎる…!」

 そして俺はシュナイゼルの顔面を鷲掴んだ。

「筋肉の鍛錬を怠り筋肉の可能性に気がつけなかったあなたの負けだ。そしてあなたには…”ゼロに仕えよ”という言葉をプレゼントしよう。」

 こうしてシュナイゼルは我が軍門に下った。更にシュナイゼルの側近に腹パンをぶち込み気絶させる。

「ゼロ…!貴方の物語は既に完結している…!貴方は、生きていてはいけない!」

 ディートハルトが突然こちらにピストルを向けてくるが、そんな豆鉄砲を恐れる俺ではない。そしてディートハルトはピストルを放つが、俺の前に躍り出たシュナイゼルがピストルの弾を弾き、ディートハルトの首に手刀を叩き込む。どうやら打ち所悪く首の骨が折れた様だ…これは死んだな。まぁそんなことはどうでも良い。

 

 あとはナナリーのもとにダッシュで向かうだけだ。待っていてくれ!ナナリー!!




脳筋ルルーシュによるダモクレス攻略法:ナナリーが発射スイッチを抑えて撃たないことを信じて全速全身して速攻で乗り込む
RTAかな?

地味に22話のガングラン、二重の極み理論で攻撃したんですけどわかる人居たんですかね。

2022年8月23日4:17に「TURN20」のスザクとビスマルクの肉弾戦のシーンに少しだけやりとりを追加しました。でも聖闘士星矢知ってる人じゃないと分かりにくいネタになってますね。


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TURN24

 私の名前はギルバートGPギルフォード、コーネリア皇女殿下にお仕えする騎士。今はシュナイゼル殿下の指揮のもと、自称皇帝のルルーシュを倒さんと戦場を駆けている。
 私は全ての忠誠を姫様に捧げた身、必ずやあの悪き皇帝を打ち倒す!

 そして私の耳には敵側からのある言葉が耳に入る。

『撲殺です!平和を乱す黒の騎士団は撲殺です!』

 ユフィ執行官…いや、元執行官…コーネリア殿下の行方を知れぬ今、ユフィ様をお守りしようとお側に仕えていましたがまさかあの悪逆皇帝に着くとは…ですが必ずや私が止めて見せます…!

 それでは本編スタートです!


『我々に刃向かうものは撲殺です!さぁ、兵士の皆さんも早く!』

 …ルルーシュの奴、本当にユーフェミアのギアスは解いているんだろうな…?言動が不穏すぎるのだが…ってユーフェミア、突出しすぎではないか!?

「おい、ユフィ殿!前に出過ぎだ!」

『問題ありません。私を信じて下さい』

 するとユーフェミアは放たれる弾丸を全て避け、時に掌のブレイズルミナスで防ぎ距離を詰めていく。何という機敏な動き…それに反応速度だ…!

『瞬殺!』

 ユーウェインの拳が暁を殴り付け粉砕する。ただの殴打であの威力…恐ろしい機体だ。

『滅殺!』

 今度は遠くの敵に対しハーケンフィストを飛ばしての殴打。更に一機だけではなくその衝撃が次々と暁達を巻き込んで破壊していく。

『圧殺!』

 戻ってくるハーケンフィストともう片方の腕で挟み込んでの攻撃…何という苛烈な攻撃…!

『さぁ!我々に刃向かうものは全て皆殺しにするのです!虐殺です!!』

 …うーむ、あれは憎しみを集めるための演技なのか本気なのかわからないが…まぁ、作戦には問題はないだろう。

 む?ユーウェインに近づくあの機体は…!

『撲殺皇女ユーフェミア!ここで!!』

 藤堂中佐に千葉と朝比奈か、いくらユーフェミアとユーウェインでもあの3人の相手は厳しいだろう。

「ユフィ殿!加勢する!」

『その声!卜部か!ナイトオブ…イレブンなどと、侮蔑を受け入れる日本人の恥晒しめ!』

「ならば俺を倒してみろ千葉、できるものならな!」

『言われずとも!』

 グレネードをブレイズルミナスで弾き、MVSによる横振り、千葉は廻転刃刀を縦に構えて防ぐがそれはこちらの狙い通り。蹴りで突き飛ばし、ハドロンブラスターを放つ。

『くぅッ!?』

 輻射障壁で防いだようだが体勢が崩れたな。このまま一気に…いや!

 振り下ろされた斬撃に廻転刃刀を横に構えて受け止める。

『卜部さん…何故なんですッ!』

 これは…朝比奈か。MVSで廻転刃刀を右に受け流し、ウルナエッジで刺突を繰り出す。

『させるかッ!』

 刺突は途中で千葉の暁に止められた。だがそれも囮だ。先ほど同様に朝比奈と千葉の暁に蹴りをブチ込み距離をとり、すぐさまハドロンブラスターを放つ。

『二度も同じ手を!当たるかッ!』

 千葉は大きく横に避けたか、ならばと腰のスラッシュハーケンを放つ。

『しまった!』

 廻転刃刀で防いでいるがかなり体勢が崩れている。

「トドメだ千葉!ハドロンブラスター発射ッ!」

 この距離、この一撃は躱せない!

 

 直前、朝比奈が千葉を蹴り飛ばし、直撃を免れる。しかし飛翔滑走翼には掠めたらしい、朝比奈にスラッシュハーケンで牽制をしつつ、MVSの鞘を千葉に投げつける。鞘を振り払い隙を晒した千葉にトドメとしてフットスタンプを叩き込む。

『千葉!』

 これで千葉は戻ってこれない、あとは朝比奈を対処するだけだ。

『卜部さん!貴方は僕が止めるッ!』

 朝比奈からの連続の斬撃を全て受け流す。

「四聖剣としての技が俺に効くと思ったのか?」

『くっ…!』

 

 すると、ガングランのフロートが攻撃で破壊された。

 

「なっ…下から…!?」

 まさか、千葉か…!?

『貰ったァー!!』

 朝比奈から意識を外した一瞬に放たれた振り下ろしで右腕を持っていかれた…!更に後方に飛び退きながらの薙ぎ払いでハドロンブラスターを持っていかれる。

 …だが、まだ終わりじゃ無い!二つあるスラッシュハーケンのうち、一つで腕を狙い廻転刃刀を弾き、もう一つを朝比奈の暁に巻きつけ、一気に巻き取る。そして俺はウルナエッジを構えた。

『卜部さん!?何を…!』

 ウルナエッジならば胴体ごとコクピットまで貫くことは出来る!さらにこの速度でぶつかれば無事では済まないだろう。

 

 …無論、俺もだが。だが、心中の相手が四聖剣というのも悪くない。

 

『まさか…!特攻を…!?いけない!!』

 機体を大切に扱えとまたラクシャータに怒られてしまうな。いや、ガングランだから怒るのはロイドか?まぁいい。

 朝比奈はもがいているが無駄な事だ。予めワイヤーが切られないように刀を弾いたのだからな。

『止まれぇー!!』

 グレネードを受けるがそんな物では俺は止められん。

 

 ナイト オブ ラウンズは…虚名に在らずッ!!

 

 

 

 あらら、ナイトオブイレブンがやられてしまったようですね。でも関係ありません。

 私は私の敵の相手をするだけです。

『撲殺皇女ユーフェミア…今までやられた日本人の仇ッ!』

 どうやらあの機体は接近して剣で戦うタイプのようですね、ですが近接戦闘が得意なのはこちらも同じです。

『我々も加勢を!』

 あら?敵の援軍ですか、目障りですね。

「抹殺!」

 ハーケンフィストを飛ばし、援軍を殴り付け破壊、更に近くのナイトメアをハーケンフィストで掴み、周りの敵に投げつけます。

『隙を晒したなッ!』

 黒いナイトメアが突っ込んできますが、ハーケンフィストの掌にあるブレイズルミナスで防御をします。

「隙?いいえ、これは余裕というのです」

 既に飛ばしたハーケンフィストは戻ってくる軌道をとっています。

「圧殺!」

 しかし黒いナイトメアは押し潰す直前に躱しました。中々やるようですね。

『ふん、威力は高いが当たらなければどうと言うことはない!』

 そして黒いナイトメアは私の周りを回り込むように飛んでいます。そして攻撃を仕掛けてきては距離を取るヒットアンドアウェイを繰り返してきました。いずれもブレイズルミナスで防ぎますが…なるほど、ユーウェインの図体を見て何か勘違いをされてるようですね。

『貰ったッ!これでェ!』

 背後からの攻撃をハーケンフィストの右と左を前後に向け、ハーケンブースターを発動、その場で高速回転し、ナイトメアを殴りつけます。

『は、早いッ…!?』

 吹き飛んだナイトメアは両腕のハーケンブースターの加速を使えば追いつけます。

「滅殺!」

 ユーウェインによる純粋な殴打…これでトドメです。

『舐めるなァ!』

 あら、器用に刀で防いでるわ…さっきの攻撃もこうして防いだのかしら。でもごめんなさい、拳は二つあるの

 

「撲殺!!」

 

 それでもギリギリの回避行動で胴体を砕くことはできませんでした。でもフロートがあの損傷では戻っては…

 

『ユーフェミアァッ!!』

 刀から出ているブースターで登って来た…?中々タフな方ですね、でも、そんな遅い動きではユーウェインは倒せません。

『でぇい!!』

 苦し紛れの斬撃を白刃取りで止め、そのままへし折ります。顔面を蹴り飛ばし、ハーケンフィストを射出してダメ押しの殴打を叩き込みます。

「これで良しっと。」

 すると、今度はヴィンセントが現れました。カラーリングは…お姉さまが好みそうな紫ですね。

『…ユフィ元執行官…なぜこの様なことを…!おやめください!』

 あら、この声ギルフォードかしら?まぁ、関係ないけれど…私はルルーシュの為に、平和な世界の為に皆に憎まれると誓ったのですから。それが私の罪に対する罰。

「ギルフォード、久し振りね。お姉様は元気かしら?」

『…分かりません』

 この距離…うん、狙いは完璧ね。

「そうですか、ならばギルフォード…あの世に行って確認してきてください。」

『ユーフェミア様、何をっ』

 ヴィンセントに向けて右のハーケンフィストを発射し、ブン殴ります…あら?

『こ、これしきの事…!』

 ニードルブレイザーで防がれちゃったみたいね。流石はお姉様の騎士。…でもねギルフォード。

 

「拳は二つあるんですよ。知ってましたか?」

 

 左のハーケンフィストのブースターで一気に接近、このまま叩き潰します!

『私はッ!コーネリア様の騎士ッ!』

 これもニードルブレイザーで防ぐんですね…なら…

 

「このまま押し潰します!」

 

 両手を広げブレイズルミナスを展開して左右から押し潰します。

『こ、このままでは…!』

 すると、ヴィンセントの両腕が一気に爆散…パージされ、そのまま胴体で体当たりをしてきました。

『これでッ!』

 どうやらスラッシュハーケンを撃ち込むつもりのようですね、蹴りをブチ込みギリギリ躱しますが一撃は貰ってしまいました。でも無事な方のハーケンフィストを叩き込むとヴィンセントは落ちていきます。さようならギルフォード。

 さて、ルルーシュとスザクは大丈夫だとは思うけれど、ロロ達は上手くやってるかしら?

 

 

 

『ルルーシュの奴、こんなふざけた作戦を私たちに押し付けるとはな…』

『C.C.…いくらなんでも不敬である』

「お二人とも喧嘩しないデ」

 ボクとC.C.、ジェレミアの3人は…たった3機で敵陣深くまで切り込んでいまシタ。理由は簡単デス。ギアスキャンセラーで動けるジェレミアとギアスの効かないC.C.の2人しかボクの絶対停止停止の空間で動けないカラ。味方のドローンはとっくの昔に墜とされてマス。

『ルルーシュの奴!ラクシャータに変なものを作らせるから!』

『ふん、所詮は機械!私のように忠義も心の筋肉もないデク人形など敵ではない!』

 ランスロットフロンティアに乗ったC.C.さんはMVSで、サザーランドジークに乗ったジェレミアはロングレンジリニアカノンを放ちドローンを蹴散らしていきマス。

 ボクは心臓を強く叩きつつ、攻撃をブレイズルミナスで防いだりハドロンブラスターを発射して敵を蹴散らしていまシタ。

『受けよ!忠義の嵐ッ!!』

 ジェレミアのサザーランドジークから放たれる無数のミサイルが自律暁達を撃墜していきマス。

『ロロ!来るぞ!』

「オーケー、C.C.サン!」

 ラモラックを前進させ、六つのニードルブレイザーを同時発動、放たれたシュタルクハドロンを防ぎマス。

「ナイトオブシックスのモルドレッド…なんとか距離を詰めなけれバ」

『奇襲で一気に数を減らせはしたがありったけのドローンを投入しているのだろう、敵の数が多すぎる!』

『堪えよ!我らがここを抑えればルルーシュ様の勝利は揺るがぬ!』

 ラモラックを前進させ、絶対停止の結界を押し付けマス。これで敵軍は退かざるを得まセン。しかし、ボクのギアスのことは対策を講じられているようデス。

 近づく自律暁を拳のニードルブレイザーで粉砕しツツ、遠くのモルドレッドに注意を払いマス。恐らくモルドレッドを死守してボクの絶対停止の効果範囲外からシュタルクハドロンを直撃させるのが敵の狙いのハズ。それならバ、モルドレッドのシュタルクハドロンさえ気を付けておケバ…

『ロロ!上からくるぞ!気を付けろ!』

「上…!?」

 C.C.サンの言葉と同時に突如、上からトリスタンが現れ、ラモラックのフロートを叩き切られまシタ。

「そんな馬鹿ナ!絶対停止の結界ハ球体状…つまり上にもに広がるノニ…」

 し、しまった…ギアスを維持できナイ!

『…はッ!?や、やったのか!?』

 …まさカ!こちらの位置を読んでただ落下シタ!?物理現象は止められナイ、ならばと重力に身を任せテ…!?

「流石ハ…元ナイトオブスリー…!」

 でも、ボクはブラザーの弟デス、このままじゃァ格好悪くってあの世になんて行けまセン!

 再度の絶対停止…墜ちるラモラックでハドロンブラスターを構えマス。これがこの戦いの正真正銘最後の絶対停止デス!

「ハドロンブラスター…発射ッ!!」

 トリスタンの脚部を吹き飛ばし、ボクはそのまま墜ちていきマス。

 すみませんブラザー、ボクはここまでデス…

 

 

 

 僕の相手はカレンと星刻…かなり不利な戦いだが…この場合はそれが良い、凄く良い。僕にかけられた鍛えるギアスは追い込まれれば追い込まれるほど自身を鍛え、より強くなれる。鍛えれば鍛えるほど強くなるし、ランスロットもより本来の性能に近付くのだ。

 神虎と紅蓮の両方から放たれる攻撃を回避し、まずは神虎の撃破を狙う。

 スーパーヴァリスを闇雲に撃ってもカレンに邪魔されるのは目に見えている。ならばここはスラッシュハーケンで!

『そんな攻撃が効くとでも!?』

 腕のスラッシュハーケンを回転させて弾かれるも、すぐさま距離を詰めてMVSで切り付ける。あちらも剣でガードしたが、最初からMVSは囮!この脚で!

『何!?』

 胴体を横から蹴り上げる。これでかなりのダメージが入ったはずだ。そして僕自身、この戦いで更に鍛えられたことを実感する!

 そしてすぐさまその場を飛び退き、紅蓮の右手を躱す。

『さっきよりもまた早くなった!?』

 マッスルデバイスとランスロットアルビオン、そしてルルーシュのくれた鍛えるギアス…そして鍛え抜かれたこの身体があれば僕は誰にも負けない!

 カレンにスーパーヴァリスを撃ち込み輻射波動の使用を誘ってしばらくあの必殺の右腕を封じる。その隙にMVSで切り掛かるが、やはり十手型のMVSに止められてしまった。ここでスラッシュハーケンを…

『貰った!』

 このタイミングで神虎の攻撃…!?だが、ギリギリガードは可能!脚のブレイズルミナスを展開して受け流せばッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『掛かったな!枢木 スザク!』

 

「何!?」

 僕がブレイズルミナスで受け流してしまった先には…旗艦アヴァロン!

「しまった!」

『カレン!後は…』

『分かりました!』

 すると、神虎は僕を素通りし、アヴァロンへと向かっていく。そうか、星刻の狙いは最初からアヴァロン…!いけない!星刻の行方を阻もうにも紅蓮が攻撃を放ってくる。…さっきよりも早い…?

『行かせないよスザク…!』

「カレン…!」

 カレンの輻射波動を避け、MVSを繰り出し、空を駆ける。

 エナジーウィングとエナジーウィングによるエネルギー弾の放出はお互いの仲間を巻き込み多くのナイトメアが墜ちていく。

 いつしか戦場はダモクレスの近くとなっていた。カレンの猛攻に僕はブレイズルミナスを背に追い詰められてしまう。

『これでッ!』

 カレン…わかっていない様だね、僕は追い詰められると鍛えられる、鍛えられれば更にランスロットアルビオンは加速する!

 輻射波動を回避すると、輻射波動がブレイズルミナスを破壊した。…いや違う!カレンは最初からこれが狙いだったのだ!

『気が付いたみたいね!』

 紅蓮のスラッシュハーケンによりブレイズルミナスの発生装置が破壊され、ブレイズルミナスにポッカリと穴が空く。

「させるか!ルルーシュの邪魔はさせない!」

 僕も穴を潜り、カレンは対峙した。

 

 決着の時は…近い!




ヴァインベルグ式絶対停止攻略法:上空から重力に身を任せて叩き切る。
なんで俺は特に好きでもないジノを活躍させたんでしょうね?でもロロが強すぎるから仕方ないね()

機動戦士ガンダムSEEDを知らない方にはユフィ「滅殺!」とかの元ネタわからないですよね、ごめんなさい。

Q.え?ジノ生きてるの?
A.私は破壊の極意でフロートがブッ壊れて落ちて行ったとしか描写してません。それに原作でもジノの初期位置は左翼だったか右翼だったかです。原作だとフジ噴火とかあってわちゃわちゃしてダモクレスまで戻ってきたはずですが、本作だとルルーシュのRTAムーブに置いてかれてるのです。

Q.あの卜部が千葉と朝比奈如きに負けるはずがない
A.うるせえ!(殴打)千葉を倒したと思って油断しちゃったんだよ!!(殴打)納得しろ!(殴打)納得したと言え!(殴打)殴打!(納得してください)

Q.輻射波動でブレイズルミナス壊せるなら本編でもやってるよね?本編でジノに壊してもらってるってことは壊せないんじゃないの?
A.脳筋世界なので可能。壊せるだけの出力があったんだよ!(殴打)納得したよね?(殴打)納得するよな?(殴打)殴打(納得してくれ)

次回とうとう最終回、お楽しみに


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TURN FINAL

 そこはとある部屋…それは今なお戦いで傷を負った者たちが運び込まれては治療を受ける施設のとある一室だった。
「酷い怪我だな」
「…姫様こそ」
「幸い傷跡は殆ど残らんそうだ。治ればまた戦場に立てるさ」
「戻る戦場があるのでしょうかね」
 フレイヤに飲み込まれ、あわや消滅の刹那、ぎりぎりコクピットだけは飲み込まれずに済んだコーネリアは、ナイトメアの落下で大怪我をする程度に留まった。入院し、ルルーシュの日本再占領の際にこの病室に運び込まれ治療を続けていたのだ。
 そしてコーネリアの横たわるベッドの隣に運び込まれたのは彼女の騎士、ギルバート GP ギルフォード。
「姫様…か、まだ私をそう呼んでくれるとはな、一度はお前と剣を交えた私を」
「姫様はいつまでたっても私の姫様です」
「…そうか。ところでその怪我、ユフィにやられたそうだな。」
「えぇ、ユーフェミア様は…お強かったですよ。」
「それはそうだろう、なにせ私の妹なのだからな。」
「…違いありません。」

 それでは「ミートギアス ~筋肉のルルーシュ~ R2」最終話…開幕です!


 ナナリー目指して天井を突き破っていると、ジェレミアから連絡があった。

『ルルーシュ様、ナイトオブエイトとナイトオブイレブンがやられました。ナイトオブスリーも機体に損傷が…ナイトオブワンも現在紅蓮と交戦中で、星刻達のアヴァロンへの侵入を許したとのこと…』

「問題ない。アヴァロンはミッション『アパティアレティア』を発動して降伏しろ。ナイトメア部隊はダモクレス周辺に集結して制圧までの時間を稼げ」

『イエス ユア マッスル』

 

 そして天井を突き破ると広い空間に出た。どうやらナナリーのいるフロアに飛び出たようだ。

「床を突き破るような衝撃音…もしかしてお兄様ですか!?」

 声のした方に顔を向けるとナナリーが座っていた。可愛い。

「…ナナリー!よく無事で…そしてフレイヤの発射スイッチを確保してくれてありがとう。ナナリーが居なかったら厳しかったよ」

「やっぱりお兄様なのですね!はい、これをどうぞ」

 ナナリーが笑顔で差し出したものがフレイヤの発射スイッチなのだろう。それをナナリーから受け取る。

「さぁ、私も…」

 ナナリーは期待を込めてか笑顔で手を広げていた。かわいい。本当はこのまま連れ去りたい。だが、それはできない

 

 …何故なら俺は今から最大の罪を犯すからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拳に力を込め、息を吐く。

 

「…?お、お兄様?…まさかッ!?」

 流石は我が妹…聴覚と気配だけで俺の意図に気が付くとはな…

「そのまさかだナナリー、歯ァ食いしばれッ!!」

「なっ!?」

 

 ナナリーの腹に!拳を!!叩き込むッ!!!

 

 ナナリーの口からおおよそ人間が発してはいけない類の声が漏れ出る。これからの俺の計画にナナリーは必要ないからだ。…だからナナリーに最初で最後の暴力を叩き込む。

 そして、これでもうナナリーにとっても俺は必要ないはずだ。ナナリーに暴力を振るうような…優しくない兄など必要ないのだから…

「お兄…さ…」

 ガクリと身体から力が抜け、車椅子から崩れ落ち、床に倒れて動かなくなったナナリーの頭を撫でる。

「愛しているよ、ナナリー」

 俺はその場を後にした。

 

 フレイヤの発射スイッチを押し、誰もいない空間でフレイヤを炸裂させる。そして俺の映像を撮っているカメラに対し、モストマスキュラーを見せつけた。

「全世界に告げる!私は神聖ブリタニア帝国皇帝…ルルーシュ ヴィ ブリタニアである。」

 これで私がフレイヤを使えると言う事が分かっただろう。もはや俺に逆らうものは居ない。次にサイドチェストを披露する。

「シュナイゼルは我が軍門に下った。よって、ダモクレスもフレイヤも全て私のものとなった。黒の騎士団も私に抵抗するだけの力は残っていない。それでも抗うと言うのなら…」

 俺は上腕二頭筋に力を籠め、その凄まじい筋肉を見せつける。

「フレイヤと我が殴打の威力を知ることになるだけだ。我が覇道を阻むものは最早存在しない。そう、今日この日この瞬間をもって世界は我が手に落ちた!」

 俺はポージングをラットスプレッドフロントに変更した。

 

「ルルーシュ ヴィ ブリタニアが命じる…世界は…我に従え!!」

 

 

 

 お互いそれなりに熾烈な闘いをしてきた…だからもう余りエナジーに余裕はないはず。しかし、油断はできない。ここでカレンを止めなければルルーシュの邪魔をされるに決まっている。

「カレン、どうしても邪魔をする気かい?」

『スザク、私はあなたを誤解していた。やり方は違うけれど、あなたはあなたなりに日本のことを考えて筋肉を鍛えていたって…でも、違うみたいね。あなたの筋肉は権力を振りかざすためのただの暴力。…正義のないあなたはここにいちゃいけない。あなたを倒し、ルルーシュを止める!』

「それは…させない!」

 躱されることを前提にヴァリスを放つ。やはりと言うべきか、上空に飛び上がってカレンは回避し、そのまま右手による砲撃を放ってくる。僕はそれをブレイズルミナスで受け流す。すぐさまスラッシュハーケンを放つが躱され、お返しにとミサイルを放ってくる。

「ここまで温存してきたのか…!」

 それらを全て躱し、ヴァリスを放つがやはり防がれた。

『そんな攻撃…効くかァ!』

 だが、こちらの狙いはそれだ。紅蓮はあの右手こそ厄介だが、攻撃も防御も右手がメイン。ならば右手のエナジー切れにもっていけば…それに、あれだけの威力なのだから連続使用は負荷がかかるはず。距離を詰め、MVSによる斬撃を放って十手型のMVSで止めさせる。そしてヴァリスを構えてカレンに反応をさせた。

『学習しないのねスザク、そんな武器なんか!』

 スラッシュハーケンによる攻撃を回避し、こちらもスラッシュハーケンを飛ばして牽制しつつ距離を詰める。

 

 しかし、もうこのヴァリスを撃つ気はない。では何故ヴァリスを構えたか、それは簡単だ。

「これはッ!これが君が僕に撃たせた…ヴァリスだァーー!!」

 

 ヴァリスで!思いきり!!殴りつけるッ!!!

 

『なッ!?』

 そう、普通銃を見れば撃ってくると思うだろう!しかし、カレンに対してヴァリスは大したダメージソースになり得ない!ならば…ヴァリスはここで放棄し、隙を作る!

 カレンが怯んだその一瞬の動揺を見逃さず、蹴りを叩き込みエナジーウィングを破壊する。これでもう空は飛べない!

『調子に…乗るなァ!』

 !?紅蓮の動きがまた早くなった!?紅蓮の右腕を躱しきれず、右腕がエナジーウィングを掴んでいる!

「くっ!」

 仕方なくエナジーウィングをユニットごと切り離し、スラッシュハーケンでダモクレスに飛び移る。

『…0%…』

 …?カレンが何か言っている…?

 

『紅蓮聖天八極式…出力100%…!!』

 

 放たれたスラッシュハーケンは今までのどれよりも素早くキレがあり、思わずMVSを弾かれてしまう。まさか…!?

「カレンもマッスルデバイスを…!?」

『もってことはやっぱりスザクも付けてたのね。』

 この土壇場で成長したというのか!?だが!ブレイズルミナスを展開しての蹴り…これで!

『そんな攻撃なんか!』

 輻射波動による防御…だが離れる時にスラッシュハーケンを叩き込む!ギリギリ躱されたが、紅蓮のスラッシュハーケンのうち、一つは破壊することができた。

『スラッシュハーケンをやられたくらいで!!』

 紅蓮の攻撃パターンが変わった…!あの右手を貫手のように…狙い通り輻射波動は尽きたようだ。だが、こちらのシールドエナジーはまだ残っている!さらに純粋な格闘戦なら鍛えた僕の方が勝るはずだ。

 貫手を躱し、右拳を突き出すと左腕で防がれた。だが、まだ蹴りがある!

 胴体に蹴りをねじ込むが右手で若干防がれ威力はイマイチ、だがそれは同時にこの蹴りにシールドのエナジーを使わなかったことが正解と言える。距離をとってからスラッシュハーケンによる攻撃で残っていたスラッシュハーケンを破壊し、左手の十手型MVSも弾き飛ばす。

「しまった!?』

「これでとどめだ!カレン!」

 いつもの蹴りを決めようと脚にブレイズルミナスを展開してランスロットを回転させる。

 

 

 

 

 

 

 しかし、あの禍々しい赤い光が紅蓮の右手から放たれる。

 

「何!?」

『思った通り…紅蓮の攻撃を直接の物理格闘に切り替えれば輻射波動のエナジーが尽きたと勘違いすると思ったわ…!』

 あの土壇場を…使わなければ負けるかもしれない戦いの中で温存だって!?馬鹿な…!この瞬間のために温存を!?僕が勝利を確信してこの蹴りを放つ瞬間を…待っていたのか!?

 

『紅蓮の右手が真っ赤に光る!スザクを止めろと震えて焦す!!』

 

 いけない!このモーションでは躱せない!!

 そして僕は紅蓮に胴体を掴まれてしまう。

『爆熱ッ!輻射ァ…波動ォ―ッ!!』

 全身を熱が包み込み、ボコボコとランスロット表面が歪に膨らむ。警告音が鳴り響くが、ロイドさんは脱出ユニットなんてものを付けてはくれないので脱出もできない。

 しかし、まだ…まだランスロットは動く!両腕でアームハンマーを叩き込んでッ!

「届けェ!!」

『そんな機体でまだ!?』

 アームハンマーは紅蓮の頭部を打ち砕き、機体前方の装甲を削り取る。そして紅蓮の輻射波動が炸裂し、ランスロットは爆散した。そして僕は爆炎に飲み込まれる。

 

 僕が最後に見たのはランスロットの爆発でダモクレスの外に弾き飛ばされたカレンの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流石にランスロットの爆発に巻き込まれた僕はそのケガを治し、筋肉の調子が戻るのに2か月を要した。

 僕のリハビリ期間中にE.U.は超合衆国憲章に批准し、ルルーシュは世界統一と言う偉業を成し遂げたのだ。因みにカレンはあの後ジノのトリスタンに間一髪のところでキャッチされ、死は免れたそうだ。とは言え、そのジノもカレンも今やルルーシュにより拘束されている。

「スザク、約束通りお前が俺を殺すんだ。誰よりも鍛えてきたお前にしかこれは成し得ない。計画通り全ての憎しみは俺に集まっている。後は俺が消えることでこの憎しみの連鎖を消し去るんだ。」

 そしてルルーシュからゼロの仮面が手渡された。

「黒の騎士団にはゼロと言う伝説が残っている。シュナイゼルもゼロに仕える…これで世界は筋肉による拳と拳の物理的な話し合いではなく、対話による穏便な話し合いのテーブルにつくことができる。明日を迎えることができる。…全ての憎しみをこの俺に!」

 僕はゼロの仮面を受け取り、それを掲げる。

「いいですとも!」

 

 そして計画実行の日、僕は仮面をつけた。鍛え抜いた末に僕の筋肉はルルーシュと大差なくなっていたから、ゼロに成り代わるのは簡単だった。今日僕はルルーシュを殺す。全ての憎しみを引き受けたルルーシュがゼロによって討たれる。そしての真実は秘匿され、誰も真実に到達する事はない。それがゼロレクイエム。

 僕は英雄となる。悪逆皇帝、ルルーシュ ヴィ ブリタニアから世界を救った救世主として。その代り、僕は今後正義の味方のゼロとして生きることになる。人並みの幸せも、人並外れた筋肉も、全て世界に捧げて筋肉を鍛えて生きていくのだ…永遠に。だが、僕はその願いを受け取った。

 捕まった人達を見せつけるようなルルーシュのパレードに僕は足を踏み入れ、ダブルバイセップスを決める。

 

「ゼロ…!」「体脂肪ゼロだ!」「背中にエナジーウィングでもつけてんのかい?」「間違いない!あの肩幅、あのポージング!」「ゼロだ!ゼロが来てくれたんだ!」

 

 騒然とした会場を僕は駆け抜け、放たれたヴィンセントの銃撃を回避する。更にジェレミアさんの顔をぶん殴り、再び駆け抜ける。カレン達やシュナイゼル殿下、ナナリーの横を通り抜け、ルルーシュの前の坂へとやって来た。この坂を駆け上がればルルーシュに拳が届く…!

「ゼロ…か、どこの誰かとは知らぬが愚かな者よ…。だが、その愚かさに免じて一つ提案しようではないか。私の仲間にならないか?そのまま坂を降りれば…命を助けてやるどころか我が下僕にしてやろうではないか。だが、その坂を登れば命は無い」

 僕は無言で坂を上がる。

「そうかそうか…この私、ルルーシュ ヴィ ブリタニアに逆らうか…ならば…死ぬしか無いなァ!ゼロッ!!」

 瞬間、ルルーシュの姿は消え去り、突風が巻き起こる。僕は後方を振り返りつつ肘打ちを叩き込む。

「ほう?見えていないのによく反応できたな?それとも知っていたか?この私の動きを」

「…!」

 ルルーシュは僕の肘を掌で止めていた。なぜ抵抗を…?なんだ…?この違和感は…ルルーシュ、事前の計画では僕の拳で胴体を貫かれて死ぬと…まさか…!?

『もうお前は用済みだ、スザク』

 誰にも聞こえないような…肉薄した僕にしか聞こえないような小さな声でルルーシュはそう呟いた。まさか…!?裏切ったのか!?この土壇場で!?

「隙を晒したな?死ねィ!!」

 瞬時に腹筋に力を込め、ルルーシュの拳をガードする…が、思わず吹き飛んでしまう。な、なんてパワーだ…!

「財力…権力…そして筋肉のパワー!この俺はこの世界の誰よりもぶっちぎりで頂点に立った!この世界は今より私が支配する。それを邪魔する事は誰にも出来ん!」

『ゼロレクイエムで俺が死ぬなどと…その気になっていたお前はお笑いだったぜ』

 そう口パクで僕に伝えて、ルルーシュの顔はニヤリと歪んだ。まさか…ルルーシュの真の狙いは本当に世界征服する事だったのか…!ここで僕を始末すれば後はギアスと筋肉でどうにかできると…!?どこまで卑怯なんだ君は!!僕を…騙したのか!踏み台にするのか!!

「ッ!!」

 歯を食いしばり、一気に駆け出す。ルルーシュの突き出してくる拳を砕かんと膝と膝で挟み込む

 

 …が、砕けない!

「その程度の筋力で俺の拳を砕くことは出来ぬゥ!!」

 ルルーシュは素早く息を吸い込むと口を窄めて唾液を飛ばしてきた。ルルーシュの口から高速で放たれるそれは水圧カッターよりも鋭いはず、当たるわけにはいかず距離を取るが、幾つかが腹部に突き刺さった。鋭い痛みだ…!更にルルーシュは高く脚を上げ、素早く振り下ろして踏み込み、正拳突きを放った。その拳から放たれる拳圧は暴風を巻き起こし、僕の体を吹き飛ばさんとしてくる。更に先程の水圧カッターが暴風を受け更に加速して突き刺さる。

 

「我をぶって良いのは…我にぶたれる覚悟のある奴だけだッ!」

 

 僕にも覚悟なら…ある!しかしルルーシュの奴、一体いつの間にこれはどの力を…!ふと、ルルーシュの目に…その黒目の輪郭に赤く光る輪を見た。C.C.曰く、あれはギアスを受けた者…通常は視覚できないが僕ほどの鍛えられた目ならば判断可能…の特徴!まさかルルーシュ…君は…!

「俺は世界を手に入れる!その為に死んでもらうぞゼロォ!!」

 ルルーシュ…君は自分自身にギアスを使ったのか!?一瞬、ルルーシュの筋肉がさらに膨れ上がるのを見た。まだ…まだ強くなると言うのか…!?

 

「負けるなゼロ!」「負けないでくれ!」「心臓の代わりにユグドラシルドライブでも入ってるのかい?」「あんただだけが希望なんだ!」「悪逆皇帝を倒せ!」

 

 周りから声が掛けられ、僕は肉体の活性を感じ取った。民衆が僕に声援を…そんなことすれば一族郎党皆殺しなのに…いや、違う、みんなそれだけの覚悟を持ってこの場に立ってるんだ…負ける訳には行かないッ!僕の覚悟にはみんなの覚悟が上乗せされるんだ!!だから僕の身体が活性化されたのだ!穿たれた傷や痛みを吹き飛ばし、暴風の中、僕は全身に力を巡らせる。

 

--普通、人間は己の肉体の限界を脳が無意識にストッパーをかけ、セーブしている。

 

 ストッパーを外した状態で激しく、肉体の悲鳴を無視して暴れれば骨は折れ、血管は千切れ、皮膚は引き裂けるだろう。

 

 しかし、最早枢木 スザクはそれを厭わなかった!その覚悟が彼には有ったッ!!周りの声援がそれを可能にした!

 

 みんなの心が一つに、ルルーシュを倒せと!その願いに呼応し、スザクの心の筋肉がとてつもない爆発力を産んだのだ!!--

 

 これから先の道にルルーシュの作った計画という道は必要ない、ここから先は…覚悟が道を切り開く!

「立ち止まってどうした?疲れでもしたか?まぁいい、そのままじっとしていれば…あの世には楽に行くことができるぞ!命は…貰ったァーーー!!!」

 

 突き出された拳を拳で返す。僕の拳とルルーシュの拳から血が噴き出た。しかし、僕はそのまま拳を押し退けて、ルルーシュの顔を殴り抜ける!

「何ィ!?」

 

 吹っ飛ぶルルーシュに対し僕は更に拳を握り締めて接近し、ふたたび拳をルルーシュの顔面に叩き込む。僕の腕から悲鳴のように血が噴き出るが気になんてしていられない。二発目の殴打を受けてルルーシュは吹き飛び地面を転がっていく。

 そしてルルーシュは立ちあがろうとするが、脚が痙攣でもしているのか、うまく立ち上がれていないようだった。

「ば…馬鹿な…!?こ、この俺が…唯一皇帝ルルーシュがッ!気分が…わ、悪いだと…!?た、立ち上がれないッ!顔面を殴られて…力が入らないだとッ…!?」

 

 僕は黙って歩を進める。もう一度拳を握り締め、ゆっくりと…

 

「く、来るな!俺に近寄るなァーー!!」

 這いつくばって叫ぶルルーシュの顔面に蹴りを叩き込む…これで、終わりだ!!

 限界を超えた一撃にルルーシュはすっ飛んでいく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ…ふはは!はははははは!馬鹿がッ!!」

「!?」

 チラリと見えたルルーシュの顔は笑っていた!この状況で!

 

 突如、僕らが戦っていた乗り物が急に大きく揺れ始める。蹴り飛ばされて坂の上に戻ったルルーシュは何事もなかったかのように立ち上がる。そんな…先程の攻撃で無傷だとでも言うのか…!?

「甘いなァゼロ!この私が…本当に貴様程度の拳で致命傷を負うとでも思ったかァ!?馬鹿が!!演技だよ演技!貴様にとどめを刺す為に、この場所に登るためにわざと食らったのだ!!」

 すると突然坂が割れ、中からナイトメアがせり上がってくる。あれはまさか…月下!?

『ふははははは!残念だったなァゼロ!いくら貴様とてナイトメアには勝てまい?これで…チェックだ!!』

 か、勝てない…!いくら僕でもナイトメアに素手では勝てない…!ここで僕は負けるのか!?月下は僕に近づくと、その拳を振り上げる。

 

『潰れ死…『 " 鍛 え ろ ! " 』』

 

 ルルーシュの声を掻き消すように、俺の頭にかつてのルルーシュの声が響き渡る。

 そうだ、ナイトメアに素手で勝てないなら…

 

 勝てるように鍛えればいいじゃァ無いか!

 

 簡単なことだ。何故今まで気付かなかったのだろう。それに今の俺の中にはいつもとは比べ物にならない圧倒的な力を感じる!ルルーシュに裏切られた怒りと正義の心で僕の心は燃え滾っている!俺は月下の拳を紙一重で躱し、月下の膝関節にこちらの肘打ちを叩き込む。肘に激痛が走るが、痛みは気合い柔らげる。予想通り関節部ならなんとか破壊できることがわかった。そして体勢を崩した月下の苦し紛れのパンチを受け流す。

『馬鹿な!?』

 動揺している今がチャンスだ。月下の腕を駆け上がり、頭に回し膝蹴りを叩き込む。よし、壊れた!これでモニターは使えないはず!コクピットが開き、正面のガラスが透明に戻る。ルルーシュの焦った顔がよく見えた。

「ふざけるなよゼロ!こんなところで私の覇道を止められてたまるか!!」

 俺は破壊した月下の頭部を両腕を使って月下の胴体に叩き付ける。破損した装甲からはケーブルが剥き出しになっていた。俺は拳を突っ込み、思い切り引きちぎる。

「何を!貴様!馬鹿な!!やめろ!ゼロォォォォォォ!!!!」

 俺は月下を思い切り蹴り、距離を取る。

 

 そして、クラウチングスタートの構えを取る。

「その…構えは!?」

 そうだよルルーシュ。これは君の技だ。だからこそこれを君に叩き込む必要がある!

 装甲が剥がれ、火花を散らす胴体に膝蹴りを叩き込んだ。

「私は、私はァ…!身体を鍛え…!!筋肉を創…」

 

 一度距離をとり、拘束されているナナリーを抱えて更に距離を取るとタイミングを見計らったかのように月下は爆発した。

 

 …さようならルルーシュ。僕の最初にして最後の親友。

 

「ゼロ!」「凄い!悪逆皇帝ルルーシュを倒した!」「素手でナイトメアに勝つとかヤバすぎだろ!」「血の代わりに流体サクラダイトでも流れてんのかい?」「ゼロ!ゼロ!体脂肪ゼロ!ゼロ!」

 予定通りゼロレクイエムは…いや、そうか、君はここまで考えて…道理で素手でナイトメアが壊せたはずだ。君はワザと関節を脆くしていたんだね?悪逆皇帝を倒した、ナイトメアを素手で破壊できる『仮面の英雄ゼロ』を作るために…。

 さっきの爆発も違和感があった。至近距離のニトログリセリンによる爆発をも防ぐルルーシュの肉体を容易く破壊しうる規模の爆発…通常のナイトメアが爆発してもそんな威力は普通は出ない。つまりルルーシュは流体サクラダイト等を使ってわざと爆発力を高めたのだ。僕に、ゼロに悪逆皇帝ルルーシュを殺させるために。

 

 

 

 

 そして、ルルーシュは粉微塵になって死んだ。

 

 

 

 

 全てが終わった証明に僕はダブルバイセップスを決める。

「人質を解放しろ!」

「いかん、ここは退却しろ!」

 そんなやりとりがなされる中、民衆によるゼロの名前を呼ぶ声が響き渡る。

 

 

 それから世界は大きく変わった。戦争に向けられていた人々の意識や筋肉は、教育、ボディービル大会、運送業、福祉や貧困等弱者の救済に向けられた。全ては…ルルーシュ、君の思い通りだったね。

 困難な事はまだあるけれど、人々は未来に向け歩み出している。きっと大丈夫だ。

 

 ルルーシュ、君の犠牲のおかげで完成したよ。

 

 優しい、世界が…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼロ、今から合衆国中華に行ってこのアンニン…というスイーツを買って来てください。」

 あ、はい。

 




8月中は後日談等の
おまけの話があります。
ちょっと短めではありますが…。
わたし的にR2まで書き切れて満足です。
ほんとうにありがとうございました!
つぎの作品にご期待下さい!


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オマケ R2
TURN7.5 それ食う奴も好き好き


オマケの前に皆様アンケートの回答ありがとうございます。

作者、結構ナイトメアの戦闘頑張って書いてたつもりですけど需要があまり無いのか私の描写が下手なのか…

それではオマケスタートです


「スザク、たまにはラウンズの皆さんとお食事でも行ってきたらどうですか?」

「しかし総督、自分には総督の補佐が…」

「総督には秘書である私が就いていますので業務に問題はないかと。それに…確認してきたところ枢木卿は政庁内の残業レースぶっちぎりの一位です。業務内容が違うので純粋な比較はできませんが、ナイトオブワンであるヴァルドシュタイン卿並みの残業時間です。」

 そういうわけで僕は急遽定時で業務を終えることになった。そのことをジノに伝えるとご飯を食べに行こうという事になった。幸い今日はチートデイだからどれだけ食べても平気だ。

 

「スザクのオススメの店楽しみにしてるぜ」

「うん、任せてよ。…二人のことも誘ってくれてたんだね」

 ピンクのロリータファッションのアーニャとそれのお揃いっぽい緑のロリータファッションに身を包んだモニカさんの二人は自撮りに余念がないようだ。写真を撮ってはモニカさんがあーでもないこうでもないと何かを言っている。アーニャは心なしか不機嫌そうだ。まぁ、アーニャって細かいこととかあんまり気にしなそうだもんね。

 ひと段落したらしくアーニャがタイピング…多分ブログを更新しているのだろう。そしてモニカとアーニャが二人が嬉しそうに…アーニャの表情も心なしか嬉しそうに思える…

「スザクの奢り、アーニャわくわく」

「今日はご馳走になるモニ!」モニィ!

 と言ってきた。

 

 ん?あれ?…えっ、僕が奢る前提…!?まぁ、良いけど…。

 そんなわけで僕は3人を引き連れとある店へと向かった。

 

「ここなんだけど」

「んー?なになに…昆虫食…。虫を食うのか?」

「食用の虫…記録」

「モニィ!!虫を食べるモニ!?無理無理無理無理、私は虫は苦手ムリ!!」ムリィ…

「え?でもモニカさんのナイトメアってカマキリモチーフだよね?」

 モニカさんの専用ナイトメアフローレンス、腕の大型ブレードとインセクトモードが特徴のナイトメア、そのモチーフはカマキリ、つまり虫である。

「モチーフが虫のナイトメアと虫そのものは全くの別物モニ!!」モニ‼︎

 しかし喚くモニカさんをよそに好奇心旺盛なジノとポーカーフェイスのアーニャは店へと入っていく。僕もそれについて店に入る事にした。

「モニィ!?なんでみんな平気モニ!?」モニ…

 

 結局あの後モニカさんも半泣きで入ってきた。そんなに嫌なら無理しなくて良いのに…

「そういえばスザク、よくこんな店知ってたなぁ」

「うん、前セシルさんに紹介してもらったんだ。虫は栄養価も高いんだよ」

「そうなのか、スザクは物知りなんだな!」

 こうして僕らは何を食べるか早々に決めた。モニカさんはそもそもメニューの写真…つまり調理後の虫を見ることができず中々決まらない。

「お願いスザク…なるべく原型のない料理を注文して欲しいモニィ…!出された以上は美味しく食べきりたいモニ…!」ムシムリィ…

 それならと僕は『昆虫食には興味があるけど原型ままは無理』という人向けの粉末加工してそれを練り込んだりした系の料理を提案し、了承してもらった。

 

 料理が運ばれるまでの間、ギュピギュピという聞き覚えのある足音が聞こえ、音のした方に目を向けると見事なマッスルガイが二人並んでいた。ルルーシュとロロだ。テーブルのみんなに一言断りを入れてから席を立ち、会計を済ませたであろうルルーシュに声をかける。

「ルルーシュ」

「うん?スザク、お前もきてたのか」

「うん、友達…に昆虫食を紹介したくて」

「なるほどな。俺も生徒会のみんなと初めてお前にここに連れてこられた時は虫なんて食えるかとお前と殴り合いをしたっけな。」

「懐かしいね、その時まだカフェだったこの店を木っ端微塵に消し飛ばしちゃって二人で弁償したんだよね」

 そしてその後改めて昆虫食の良さ…特に栄養面について伝えるとルルーシュは渋々食べ、それからは度々通うようになっているようだ。

「お客さま、注文されたお土産のセミの唐揚げでございます。」

「あぁ、ありがとう。それじゃあなスザク」

 

 二人を見送り、テーブルに戻るとモニカさんは泡を吹いてぶっ倒れていた。どうやら自分の分の料理が来た時はそうでもなく、先に食べ始め、『意外とイケるモニィ!』モニィ と言っていたようだが、続け様に運ばれた僕たちの虫料理を見た瞬間泡を吹いてぶっ倒れたらしい。

 ジノはモニカさんを介抱しているが、アーニャは昆虫食を写真に撮り、その後は黙々とスナック菓子感覚で口に放り込んでいた。

 

 

 そうだ、ナナリーにもお土産でセミの唐揚げを買っていこう。きっと喜ぶぞ!




タイトルの元ネタは諺の「蓼食う虫も好き好き」から
意味は『人の好みはそれぞれで、一概には言えないということ。』
蓼の実は苦く、大抵の動物は倦厭するが、好んで食べる虫もいることから…らしいです。

ロスストのスザクのキャラクターストーリーを今朝読んで思いつきましたので急遽書きました。
ロスカラだと卜部さんが好きな食べ物として「炙りセミ」と回答するようですね。

因みに私は昆虫食興味はありますが食べた事はありません。(なので想像で書いてます)


Q.ナナリーってセミの唐揚げ食うの?
A.…想像にお任せしますよ。


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TURN11.5 ラウンズ懇親会

TURN9.5書いてラウンズ全員に出番ができたので書いた悪ふざけ。

スザク、ジノ、アーニャ、モニカ→TURN11の後、TURN12の前
ノネット、ドロテア→TURN9.5の後

のお話です。


 僕らが中華連邦からエリア11に戻ると、急に本国からの招集命令が掛かった。何事かと向かうと…

 

『祝!中華連邦生還記念 ラウンズ懇親会』

 と書かれた横断幕と満面の笑みの皇帝陛下がいた。既に嫌な予感しかしない。僕の肩に座ってるアーニャは相変わらずブログの更新に夢中だし、ジノもすごく微妙そうな顔をしている。そしてドロテアさんとノネットさんに関しては逃げようとしているのを必死の形相のビスマルクさんに止められている。あの人も苦労人だよなぁ…僕だって逃げられるのなら逃げ出したい。でもナナリーが『私の補佐はローマイヤさんがいるので是非行け』と言って来たので総督補佐を理由に断ることも今から帰ることもできなかった。そもそも皇帝陛下の勅命なので無視することもできないけれど。

 

「枢木卿」

「あ、ブラッドリー卿…その、どうされたんですか?既にボロボロですが…」

 ブラッドリー卿の目は腫れているし、見る限り肌はアザだらけ、服もあちこちがズタズタだ。鼻血を出した痕も見えるし、左腕に関してはあまり曲がってはいけない方向に曲がっている気すらする。野生動物かそれに相当する何かに襲われ…いや、きっとヨガか何かに違いない。僕は左腕から視線を逸らした。

「あぁ、これか、逃げようとしたら陛下にボコボコにされたんだ。」

 信じたくは…無かったよ…!

 

「それではこれよりィ…ラウンズ4名の中華連邦からの生還を祝して…懇親会をォ…始めるゥ!」

 ニカッ!と笑う陛下だけど、とても楽しめる雰囲気ではない。陛下の横のビスマルクさんなんて真顔で拍手してるもん。あ、アーニャも拍手し始めた。それからみんなが渋々拍手をし始めた。僕の騎士叙勲と同じだ。なんかそう考えるとあの貴族の人たちには悪いことをしてしまった気分になる。きっとみんなあの時のダールトン将軍に「余計なことしやがって」と思っていたに違いない。だって今僕がまさにそう思っているのだから。

「懇親会をォ…より楽しんで貰う為、余興を提案…するゥ…」

 陛下、陛下からの提案は命令と同義なんですよ。知ってましたか?

「モニカよ!」

「モニッ!?」モニ⁉︎

「これより、ラウンズ全員にィ…」

 …ま、まさか!?いけない…!陛下の顔面にドロップキックを叩き込んで…なっ!?羽交締めを!び、ビスマルクさん!?そんなに冷や汗をかいておきながら何故止めるんです!離してください!何故そんな目を見開いて首を横に振るんです!

 

「モニカと同様に自分の名前の一部を含んだ語尾で喋って貰うブリ!」ブリリッ‼︎

 

 間に合わなかった…!というか陛下もやるんだ…しかもシャルル ジ ブリタニアの"ブリ"タニアからあえてブリなんだ…なんか音が汚いんだよな…

「懇親会、アーニャわくわくニャ」ニャー

 ニャ!?敢えてのアー"ニャ"のニャをチョイスしたのか!?その外見で語尾ニャは色々まずい。ロリコンテロリストゼロが誘拐しに乗り込んでくる危険性がある…警戒しないと。

 それにしてもアーニャは相変わらず順応が早過ぎるよ。

「モニ〜!アーニャとお揃いモニ」モニ~

 アーニャを抱きしめるモニカの絵面は微笑ましいけど、とても和む気分にはなれなかった。

「ドロテア…覚悟を決めるノネ」ノネ

 ノネットさんは"ノネ"ットのノネか…どこかで教師でもやってそうな語尾だ…

「ノネット…しょ、正気か…!?あ、いや、正気テア…!?」テア⁉︎

 みんなが律儀すぎて怖いよラウンズ。それにドロ"テア"さん顔真っ赤じゃないか…もう喋るのやめなよ…

「なぁスザク、陛下も面白いこと考えるヴァイ」ヴァイーン

 "ヴァイ"ンベルグから取ったんだね…ジノ…。なんだが急に日本の方言みたいになっちゃったな…と言うか話し掛けないでくれ。

「どうした枢木ィ…先ほどから一言も喋らぬではないかブリ」ブリッ!

 クソ!圧がすごいんだよ!近づきながらブリッ!って言わないでくれ!唾が飛んでくるし、なんかもう色々と汚いッ!!

「も、申し訳ありません、皇帝陛下…あ、えっと、ルギ…」ルギ…

「ふむ、よかろうブリ」ブリィ…

 ルルーシュ、僕はブリタニアを必ず中から変えてみせるよ…こんな…こんな圧政を許してはいけない…!

「みんな変な語尾モニ!面白いモニ〜」モニ~

「黙って欲しいニャ」ニャ~ン

「モニカには言われたく無いヴァイ」ヴァイ

「お前がそれを言うテア?」テア?

「モニカ、あなたにはだけ言われたくないノネ」ノネ…

「寧ろこれを日頃から無意識に出来ているモニカはすごいルギ…」ルギ…

 頭がおかしくなりそうだ。いや、多分もうなってる。ブリタニアを中から変える前に取り込まれてしまいそうだ。済まないルルーシュ、ナナリー、僕は無力だ。

 

 すると、突然ドアが開きシュナイゼル殿下が入ってきた。

「あれ?シュナイゼル殿下、どうかされたんですヴァイ?」ヴァイ?

「トラブル、発生ニャ?」ニャ?

「…やぁ、ジノ、アーニャ。懇親会を楽しんでいるところ済まないゼル」ゼル

 流石はシュナイ"ゼル"殿下…すぐさまこの異常事態に順応した…そして同時にこの混沌をどうにかしてくれる人物がいなくなった事に僕は密かに絶望しています。

「父上、早急に対応していただきたいことがあるゼル」ゼル

「ううむ…ならば仕方ないブリ、すぐ向かうブリ」ブリ…

 よし、陛下が部屋を出ていった!これでこの地獄から解放される!

「…やれやれ、何がモニカと同じような語尾で話せ、だ…くだらん」

 瞬間、ブラッドリー卿は"ビス"マルクさんのドロップキックを受けて壁にめり込んだ。

「ルキアーノ!陛下の催しはまだ終わってないビス!」ビスッ!

 まだ…まだ続くのか…この地獄は…!

「なぁノネット、私達がおかしいテア?」テア?

「きっと正常ノネ」ノネ

「めり込んでるルキアーノ、記録ニャ」ニャー

 

 この地獄の催しは朝まで続いたルギ…




女性陣の語尾がすんなり決まったので悪ふざけに書いたら悲惨なことになったバビ

先に懇親会の話はおまけとして書いていたのでこの話の存在が本編にもちらほらと匂わせられてたりします。
(TURN12、20.5)

活動報告にR2の後書き的なものを書きましたので暇な方はどうぞ


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TURN12.9 真実の語り手

「雨の中話すのもなんですからお店でお茶しながら話を聞かせてくれませんか?」

 見るからに怪しい男の人をお茶に誘うなんておかしいかもしれない。でも、私のパンクした頭ではそれを言うのが精一杯だった。

 

 雨の中、私はルルにキスをせがんだ。

 

 車の中、私はルルがゼロだと唆された。

 

 港の中、私はルルがゼロだと気付いた。

 

 山の中、私はルルにルルを忘れろと言われた。

 

 腕の中、私はルルがゼロだと思い出した。

 

 いきなり現れた皇帝陛下によって私は何かをされた。そしてついさっきそれまで忘れていたナナちゃんのこと、そしていきなり現れたルルの弟のロロ。訳がわからないし、いつのまにかナナちゃんが皇女様になっていた。私にルルがゼロだと言ってきた軍人さんは破廉恥な水着を着た先生だし、ルルーシュはゼロだ。カレンもテロリスト。何が本当で何が嘘かはわからなかったけれど、私はルルが好き。それはわかる気がした。

 

「アイスティーをお願いします。」

「では私はコーヒーをいただけますか?」

「かしこまっ!ちょっちまってて〜」

 赤毛の明るい店員さんに注文すると沈黙が訪れた。

「申し遅れました。私、ジェレミア ゴットバルトと申します。元ブリタニアの軍人です。」

「えっと、そのブリタニアの元軍人さんがなんのようですか…?」

「私はナリタにて貴方のお父上に命を救われたのです。」

「えっ、ナリタって…」

 ジェレミアさんは少し気まずそうな顔をした。

「私は、フェネット氏の真相をあなたにお伝えせねばならないのです。」

 お父さんの死の真相…?ゼロが…ルルーシュが犯人じゃないの…?

「実は、フェネット氏は私を庇い、轢かれてしまったのです。…ブリタニアの極秘研究機関のトラックによって。」

 ジェレミアさんは尚も話を続けた。

「そして、あろうことか…!そのブリタニアの職員は口封じと偽装を兼ねてフェネット氏に銃を向けたのです!今なら殺しても黒の騎士団のせいにできると!わ、私は…!私は守れなかった…!軍人でありながら、怪我をしたという理由でフェネット氏に親切にしていただき、肩まで貸していただいた!シャーリー様のことを自慢げに話して下さいました!そのフェネット氏は私を庇い、殺されたのです!」

「そんな…」

 だけれども、不思議と今更ブリタニアのその研究機関を恨む気にはならなかった。多分、優しかったお父さんはそんなことは望んでいないと思うから。

「私を…私を庇ったりしなければフェネット氏は死ぬことはなかった!私がフェネット氏を殺したも同然です…!貴方様に何をされても私は文句は言えません。如何ように…」

 そう言ってジェレミアさんはまた頭を下げてしまう。

「頭を上げてください、ジェレミアさん。私、許します。そもそもジェレミアさんは悪くないし…」

「何という寛大なお心…!」

 

 お父さんには悪いけど、私の心はルルがお父さんを殺した犯人じゃないって分かったことが…一番嬉しかったな。

 

 ジェレミアさんとはそこで別れ、私はスザクくんと話をするためにイケブクロへと向かった。




フェネット氏の死の真相です。
まぁ、わざわざ語るまでもないのですが


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TURN25.5 楽しいみかん栽培

エリア11にワカヤマ租界ってあるのかな…

あと、作者はみかんの諸々に詳しくありません()


 

「記録、終了。」

 サザーランドジーク…サザーランドにナイトギガフォートレスのジークフリートの走行の一部を取り付けたと言う機体。的が大きい分当てやすかった。シュタルクハドロンが命中したのだからこれで私の勝…

『まだまだァ!!』

 

 

「!?」

 

 

 そう思った矢先、サザーランドジークからオレンジ色のサザーランドが飛び出してきた。爆風を背にコチラに飛びかかろうとしている…!ブレイズルミナスで弾き返して…ま、間に合わない!組みつかれた…!更にブレイズルミナスはサザーランドの胴体を寸断するように展開されている。いけない…!

 

『爆 散 !』

 

 サザーランドが爆散し、中から男が更に飛び出てくる。爆発で剥き出しになってしまったコクピットの私に剣のような物を突きつけ、男は…

「記憶せよ!ジェレミア ゴットバルト…お前に敗北をもたした…記念すべき心のマッスルガイの名前だ!」

 と叫んだ。

「記念?そんな物…記憶に意味はない。…どうせ私には記憶が」

「記憶?まさか…ギアスの…」

 男が何かをした瞬間、私失ったはずの過去の記憶を思い出して居た。

「いま…あなた何を…」

「…安心するといい、これより君は記憶を失わず生きていける。故に!記念すべき私の名、覚えておくと良いぞ!この、ジェr」その後、私は捕らえられて処刑されることになった。

 彼…ジェレミアの指揮する部隊によって。

 

 しかし、突如ゼロが現れ、私は救われた。逆にジェレミアはルルーシュに仕えた者として捕まった。強制労働場に送られ、暫くして彼が解放されたと聞いた私は、私とモニカの農園に彼を呼んだ。因みに呼んだのはモニカのアドバイスだ。ジェレミアはブリタニアではオレンジと呼ばれて居たから、きっとみかんやオレンジのことはオレンジに聞くのが早いと思ったのだろう。

「なるほど、つまり私にみかん栽培について聞きたいと…?」

「そう。あなたはオレンジ。みかんのことに詳しいと思って」

「………。この、ジェレミア ゴットバルト…ご期待には 全 力 で お応え致します!…が、1週間ほど準備時間をいただいても…?」

 私はそれを了承しジェレミアの帰りを待った。

 

 

 

 オールハイルマッスル!読者の皆様ご機嫌よう、私はジェレミア ゴットバルトその人である。昨日、私は尊敬するナイトオブラウンズに所属して居た元ナイトオブシックスのアーニャ アールストレイム卿より御慈悲をいただき、強制労働所から出た後、彼女に引き取られました。開口一番、どんなお言葉をいただけるかと待ち望んでいれば、なんと、この私にみかんの育て方について教えを乞うて頂いたのです!私の様なただの男に元とは言えナイトオブラウンズが頭が教えを乞うてくれるとは何たる行幸!数奇!そして歓喜の嵐!このジェレミア ゴットバルト…ご期待には全力でお応えするのが性分!

 

 

 だ が し か し !

 

 

 私はッ!みかんの!いや!みかんどころか!果物の!もっと!言うなら!植物の!育て方など!

 

 

 

 

 

 知らないッ!!!

 

 

 

 

 何故素人の私にみかん栽培を?まさかナイトオブラウンズともあろうお方が私のオレンジなる忠義の名を聞いて私をオレンジに明るいサイバイマンか何かだと勘違いなされた…?いや、そんなはずはない!きっとラウンズに上り詰められた方なりの深い考えがあるはず!そうですよね読者の皆様!?つまり!これは一から新しいことを学び、人に教えられるほど吸収して理解せよとのお言葉に違いない!流石はラウンズ!!…そういうことなんですよね読者の皆様!?

 

 こうなれば1週間!この機械の体を最大に利用して学んで見せましょうみかん栽培!

 

 みかんといえばエリア11にいたころ、任務で訪れたワカヤマ租界にて食べたことがあった。あの溢れる果汁と口一杯に広がる甘味は本国のオレンジとはまた違った味わいがあった…。みかんのことはみかん農家の方に聞くのが一番早いはず!私はすぐさまワカヤマ租界…ではなく合衆国日本の和歌山県と呼び名を改めたらしいかの地へ赴き、みかん農家の方々に頭を地面に擦り付けて教えを乞いました。みかんの農家の老夫婦は快く私の熱意と想いを受け取ってくださり、私にみかん栽培のノウハウを教えてくださったのです。ルルーシュ様達がエリア11になる前の日本へと送られることになった際に、いつでもお側にお仕えすることになっても良いように学んでおいた日本語がここで役に立つとは…何たる数奇!宿命!暁光!!

 昼はみかん農家の老夫婦から、夜は図書館から借りた書物をサクラダイトを齧りながら読み耽ること1週間。私はアールストレイム卿の元へと戻りその学びの成果を披露したのです!人間、やればできるものですね、読者の皆様もそう思うでしょう?

「ありがとう、ジェレミア。…ジェリーって呼んでもいい?私のことはアーニャって呼んで」

 更にはみかん栽培に一番関わっているのは私だからと農園の名前もゴットバルト農園と改めていただきました。なんという御慈悲!

 そんなこんなで収穫の時!ご覧下さい和歌山県のみかん農家の老夫婦よ、この立派なみかんを!あなた方の教えを受け継ぎ見事なみかんができあがりました!

「立派なみかん。記録」

「でも流石はオレンジモニ、みかんのことも詳しかったモニ!」モニ

 …え?

「モニカのアドバイスのおかげ。ジェリーがみかんに詳しくて助かった」

 …おやおや?

「ま、まさかお二人とも私がみかん栽培に明るいと思っておられたのですか…?」

「うん」「モニ」モニ

 

 ……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ、良いとしましょう。何故ならこうやって土に触れ草木と触れ合う生活も悪くはないのですから!





●オマケ●妄想CM
「サクサクモナカに爽やかみかん入り餡を
 みかんの形で包みました!
 食べよ!至高の和菓子!!

 ジェレミア農園のみかん最中

 ご期待には…全力で!」

「12個入り2500円モニ!」モナカモニモニ
「モナカサクサク、アーニャわくわく」


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TURN25.6 藤堂流剣術道場

 色々なことがあったけれど、無事日本という国は復活した。そしてブリタニアとの政治も和解路線で進んでいることもあり、今この日本ではブリタニア人と日本人が混在している。

 特にカレンなんかはブリタニアの学校…まぁ、元々通っていたって言うところも大きいんだろうけど…に通い直している。それにしてもなんで道場ってのはまたこんな田舎の、しかも山の上に作るのかな。一度眼鏡を外し、手の甲で顔の汗を拭う。こういう時いちいち外さなくちゃいけない眼鏡って不便だよね…

 

 石段をようやく登り切ると道場が見えてくる。元々藤堂さんの道場があった土地を整備し直したものだ。まぁ、今は藤堂さんは黒の騎士団の仕事で不在だから別の人が師範をしてるけどね。

「おーい、う…表屋さん」

「おぉ、朝比奈か。よく来たな。」

 そこそこ広い道場のど真ん中で座禅を組んでいた表屋さんがこちらにやってきた。

「道場は繁盛…してなさそうですね」

「まぁ、仕方ないさ。宣伝もほとんどできていないしな。しかし朝比奈、お前息切れしてるじゃ無いか。…鈍ったんじゃ無いか?」

「僕も歳ってことですかね」

 表屋さんは呆れた表情になった。

「亡くなられた仙波大尉の前でも同じことが言えるのか?」

「…そうですね、鍛え直します。って言ってもこの脚じゃぁ…ね」

「…まだ本調子では無いのか」

 僕は悪逆皇帝ルルーシュと黒の騎士団の最終決戦、ダモクレスを巡る戦いの中で怪我を負った。まぁ、死ななかっただけでも儲け物だとは思ってるけどね。しかしながらその後遺症で今も右脚が上手く動かないのだ。

 僕は改めて道場の名札掛けを見る。藤堂さんと表屋さんの名札しか掛かっていない。繁盛してないどころの話じゃ無いよねこれ。まぁ、別にお金には困ってないから良いんだろうけど。

「それにしてもこの道場もすっかり綺麗になりましたね。前来た時なんて目も当てられないほどボロボロだったって藤堂さんから聞きましたよ。」

「あぁ、なにぶん時間だけはあったからな。それに雑草抜きは足腰が鍛えられる。」

 そんな他愛無い話をしていると、僕らに声がかけられた。

「ごめんくださいモニ!」モニ!

 モニ…?まさか…

「モニカ殿!?何故ここに」

「何故って…ここで日本の剣術が学べるとアーニャから聞いたモニ。だから学びに来たモニ。」モニモニ

 間違いない、元ナイトオブトゥエルブのモニカ クルシェフスキーだ。神根島の闘いで森の中を彷徨っているところを黒の騎士団が保護し、その後は蓬莱島で監視対象になっていた。そしてルルーシュが死んだ日はコーネリア達と共に僕らの解放のために動いていた。

「モニカ殿…みかん農園の方はよかったのですか?」

「機械化も進んでるし、元々私は加工食品を担当することの方が多かったモニ。あ、これお土産のみかんモナカモニ。」モニ~

「おぉ、ありがたく頂戴しておこう。」

 モニカさんはキョロキョロと周りを見渡している。日本の文化に興味があるようだ。

「それにしてもまさか初めての門下生がブリタニア人とは」

「あれ?もしかしてブリタニア人はダメモニ?」モニ?

「いや、そんなことはない。藤堂流剣術道場はいかなる国籍、年齢、筋力、性別を受け入れるのがモットーだ。」

 そしてモニカさんはあるものへ指を刺した。達筆な筆で書かれた日本語だった。多分モニカさんには読めなかったのだろう

「あれはなんて書いてあるモニ?」

「ん?あぁ、あれか…」

 

「"四聖剣は虚名にあらず"」

 




朝比奈くん、実は生きてましたってお話。

Q.「表屋」って誰?
A.オリジナルキャラクターです。「表屋 稚炎(おもや ちえん)」と言います。


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(セリフ集) どこかで見たようなバトレー

完全なるネタ

ドラゴンボール(パラガス)を知らない人は読んでも面白くないです。


「探しましたぞクロヴィス殿下」

 

「バトレーでございます。」

 

「新神聖ブリタニア帝国の皇帝になっていただきたく、お迎えにあがりました。」

 

「もう一度、最強の神聖ブリタニア皇族の優秀さを全世界に知らしめてやろうではありませんか!あなたの手で、最強の新神聖ブリタニア帝国を築き上げるのです!」

 

「伝説の真トゥルーマッスルガイを倒せるのは…クロヴィス殿下、あなたしかいません」

 

「東の国々一帯を、その驚異の筋肉で暴れ回っております。このままではせっかく築き上げた新神聖ブリタニア帝国も伝説の真トゥルーマッスルガイに…」

 

「あなたもどうぞ…同じ血を分けたライラ皇女殿下」

 

「フレイヤに神聖ブリタニア帝国を破壊されて30年…。神聖ブリタニア帝国を再興することは、わたしにとっての最大の願いでした。それが、フレイヤによって無念の内に亡くなられた、あなたのお父上、シャルル皇帝陛下に報いる道だと信じて…。今ここにあなたを迎え、悲願は達成されました。」

 

「クロヴィス陛下、世界の至るところから集めたならず者たちが、あなたの従僕としてお待ちしておりました」

 

「ジェレミアです。何なりとお使いください。」

 

「気を鎮めろジェレミア」

 

「ジェレミア一体どうしたというのだ…まさか、ゼロが…」

 

「ジェレミアのマッスルガイとしての本能がゼロの筋肉によって目覚めさせられ、コントロールの壁を乗り越え始めてしまったというのか…。もしそうだとしたら、わたしのこれまでの苦労が…。」

 

「ジェレミアこそマッスルガイそのものだった…。生まれついての桁外れの筋肉は成長するにしたがって、わたしが恐怖を感じるほど増大し、凶暴化していった。」

 

「わたしは科学者にジェレミアを自在にコントロールできる装置を作らせた…」

 

「とうとう、わたしはジェレミアの筋肉を操ることによって、全世界を支配できる力を手に入れたのだ…」

 

「このコントローラーが正常に働いているとすれば…ゼロに会ったことが…」

 

「なんとしてでもジェレミアをコントロールしなければ、世界を破壊し尽くしてしまう…!」

 

 

 

「やっと芸術面しか才能のないなお前でも飲み込めたようだな…。全てはゼロの言うとおりだ。」

 

「こーんな最低の国には何の未練もない。ダモクレスが墜落することが分かったからこそ、この国を利用したのだ。オレの狙い東の島国の日本なのだからな!!地球の中で一番サクラダイトが埋蔵された日本に移住し、そこを本拠地として帝国を建設するのがオレの本来の計画なのだよ。そのためには日本を決戦の舞台にするわけにはいかんからなあ…」

 

「新神聖ブリタニア帝国の皇帝などと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ。」

 

「はははははーーっ!!いいぞお!!もはやダモクレスなど待つ必要はない!!今のお前のパワーで、ブリタニア皇族をこの世から消し去ってしまえーっ!!」

 

「ダメだ!! やめろジェレミア!!それ以上、筋肉を高めるな!!やめろジェレミア!!落ち着け!!」

 

 

 

 

 

 

「この国も、あと数時間の命だ…。コントロールが効かなくなったお前は、もはやオレの足手まといになるだけだ。可愛そうだがジェレミア、お前もこの国と共に死ぬのだ…。」

『何処に行かれたおつもりだったのですか?』

「お、お…お前と一緒に…ひ、避難する準備だあ…。」

『一人用のジークフリートでございますね?何たる不義、勝手、裏切り!!』

「じ、自分の研究の成果に殺されるとは…。これも科学者のさだめか…」




Q.なんでこんなものを投稿したんですか?
A.作者の理性もはや私のコントロールを離れてしまった。正気を失った作者はもはやネタの限りを出し尽くすまでは止まらないだろう…


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TURN25.7 嘘吐きの弟

 相手の体感時間を止めるギアス。それが僕のギアス。

 

 いや、正確には僕のギアス…だった。兄さんに教えてもらった『止まった心臓に対して衝撃を与えて無理矢理動かす』と言う方法は僕の弱点を克服した。そのせいだろうか、ある日とうとう僕のギアスは暴走した。常にギアスが発動し、心臓が止まったため、常に僕は心臓を叩いた。当然心臓に負担が掛かる。常に止まった心臓と、それを無理矢理に動かす殴打、やがて僕の身体は僕自身に負け、骨が砕けた。

 幸い、暴走した時点で事態を察したジェレミアがラクシャータに連絡、ジェレミアによる人工心臓への転換手術が急遽行われた。映像を中継し、ラクシャータさんの指示を受けてジェレミアが手術を行ってくれたらしい。恐ろしい話が、僕が気絶してもなおギアスは止まらなかったそうだ。そして僕の心臓が人工心臓になった時、僕はギアスを失った。正確には、ギアスが発動しなくなった。僕の瞳には確かにギアスの刻印が浮かぶのだが、肝心の体感時間を奪う力が発動しなくなったのだ。そして主治医のラクシャータさんから筋トレを禁止され、気がつくと僕はヒョロヒョロのもやしになって居た。こんな姿ではあの美しく逞しい筋肉が輝かしいソウルブラザーことルルーシュをブラザーとは呼べない。だから僕はルルーシュのことを兄さんと呼び改めた。…お見舞いで貰って食べた「みかんモナカ」は美味しかったな。

 

 C.C.さんはどこかへ行ってしまった。兄さんが死んでしまってからの彼女は余りみんなの前に姿を出さなくなった。カレンさん曰く、ああ見えてC.Cはかなり家事が出来るので一人でも平気だと言って居たけれど、もしかしたら不老不死の彼女はもうあまり人と関わりたくないのかもしれない。だって僕たちはいずれ彼女を置いて逝ってしまうから。

 そう思うと、僕らから彼女へ関わるのは気が引けてしまう。

 

 無事にラクシャータさんから退院を言い渡された僕だったけれど、正直行き場に困っていた。だって僕はもう、ろくに運動できない身だ。幸い見た目が変わり過ぎたため、第99代ブリタニア皇帝に選ばれたラウンズ…通称『悪のラウンズ』だった僕は昔と変わらぬ生活を送っている。ユフィさんには身元保証人のコーネリアさんが居るし、卜部さんはもう居ない。スザクさんはゼロとして生きることになっている。

 困った時はいつでも頼れと言ってくれていたナナリー義姉さんにアドバイスを貰おうとメールを送ると、元生徒会を頼ってみたらどうかと返事があった。ミレイさんは世界各地を飛び回るリポーターだし、リヴァルさんはそれの付き添い。ニーナさんはあまり人を世話するタイプには思えないし、そうなると消去法でシャーリーさんだ。シャーリーさんに連絡を取ると、快く受け入れてくれた。東京の池袋って駅で待ち合わせると、遠くに元気にはねるオレンジ髪が見える。

「ごめーん!待たせちゃった?」

「あ、いえ。僕も今きたところですから」

 そう言うととよかったと言いながら、シャーリーさんは僕のことをジロジロと見てきた。

「ロロ、見違えたね…写真見てなかったら誰かわかんなかったよ!」

「あはは、はい、色々ありましたから。」

「そうだね、じゃあ着いてきて!」

 シャーリーさんに促され、僕はトウキョウ租界…じゃなくて、東京を歩いていく。

 

「ついたよ!」

「ここって…」

 見覚えのある建物、そう…私立アッシュフォード学園だ。その後もシャーリーさんについていくと、やがて屋上に足を踏み入れることになった。

「久しぶりー!ロロ!」

「随分細くなったなぁロロ〜!」

「こ、こんばんは…」

「…。」

「遅いですよ、ロロ」

「ごめん、姉さん」

 この場にいるのはミレイさん、リヴァルさん、ニーナさん、ゼロ、ナナリー義姉さん、そして僕と僕を連れてきたシャーリーさん。…ってゼロ?なんでここに…?

 すると屋上の扉が勢いよく開く。

「間に合ったー!会長、もうちょっと余裕持って連絡してくださいよ」

 遅れて来たのはカレンさんのようだ。

「いよーし!久しぶりに集まれたわね!ゼロはナナリーの付き添いでせっかくだから参加してもらうわ!さて!これでルルーシュとスザクを除く生徒会メンバー総集合ってわけ!流石に旅行はみんなの予定が合わないけど、花火くらいなら上げられそうじゃない?」

 兄さんとスザクさん以外という言葉にゼロがピクリと反応して居たけど僕以外誰も気づいて居ないようだ。そんな訳で僕らは花火を上げた。

 

 この花火…兄さんにも見せたかったな。

 




ロロの見た目は原作をイメージしてください。

復活のルルーシュのビデオ映像のミレイ見てる感じ、ナナリーを呼び捨てにしてるからあれ記憶戻してもらってる感じなんだよね?(と勝手に解釈しました)なのでみんなジェレミアによって皇帝のギアスを外されています。

因みにロロのナイトオブエイトは「ロロ→○○→∞→8」からです。分かるはずないでしょうね。こんな言葉遊び


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TURN25.8 仮面の闘士

最近脳筋要素が足りないって?そんな読者には殴打をプレゼントだ!

冗談はさておき今回も短い割に色々と酷いです。


 ゼロレクイエムの後、私は強制労働施設に入れられました。多くの命を奪った罪、憎まれる者の末路としては当然でしょう。しかし、しばらくするとナナリーのおかげで私たちは施設の外に出ることが出来ました。それからは黒の騎士団の将校として身分と責任のあるお姉様に監視されるという名目で引き取られ、昔のように姉妹で仲良く過ごしています。流石に私を黒の騎士団で雇う事は出来ず、私は職を探しました。

 

 そして私はなったのです。プロの…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レスラーに。そして謎の仮面闘士マスク ド ユフィとして多くの人をボコボコに打ちのめし病院に送る毎日を過ごしています。

 そして今日は特別な試合のある日、念入りな調整を済ませ、控えスペースに待機し、呼ばれるのを待ちます。

『赤コーナー!誰かこいつを止めてくれ!病院送りは当たり前!拳を振るうは撲殺皇女…マスク ド ユフィーーー!!!』

「撲殺です!」

 私が手を振りながらリングの上に登るといつものように観客の皆さんが豚の真似をして声援を送ってくれます。

「ユフィー!応援してるぞー!!」

 いつもの席にいるお姉様とギルフォードにも手を振り、私は対戦相手を待ちます。

『青コーナー!素手でナイトメアを倒し、空を走る我らが伝説の仮面の英雄!…ゼロの登場だー!!』

 ゼロに扮するスザクが無言でリングに上がるとダブルバイセップスを決めました。今日も見事な筋肉です、流石は私の騎士。

 私は手を差し出し笑顔で語り掛けます。

「ゼロ、手加減は必要有りません、全力でかかってきてください」

「…」

 コクリと頷き、手を握り返してきたスザクの手を思い切り握って逃げられないようにして、私はゴングが鳴る前に、懐から肉叩きを取り出し、それで思い切り殴りかかります。

「!?」

『で、出たー!マスク ド ユフィの容赦ない試合開始前の不意打ちだー!!』

『あの技で多くの対戦相手をKOして不戦勝になってますからね、ゼロの行動に期待です』

『まぁ、彼女にとっては軽い挨拶みたいなものですからねぇ』

 しかし流石はスザク、これくらい腕で簡単に防ぐようですね。しかし甘いです。私は予め改造をしておいたリングを思い切り踏み込んで畳替えしさせ、格納しておいたチェーンソーを手に取ります。

『おっとー!?マスク ド ユフィ、これはリングの改造かァ!?リングの改造は反則になりますがどう思われますか?解説の星刻さん』

『踏み込んだ地面がたまたま畳返し、そこにあったチェーンソーを拾っただけですからね。あれは事故です。反則ではない』

『というわけで反則ではないようです!というかまだ試合始まってないんですけどね。』

 あら、そうでした。肉叩きを投げつけゴングを鳴らし、ついでにチェーンソーを起動させます。

『さぁ改めてゴングが鳴ったぞ試合スタートだ!』

「…」

 スザク、ただのチェーンソーなんて効かないと余ってるのでしょう?甘いですよ

 チェーンソーを振りかぶり、それを思い切り薙ぎ払うとスザクはジャンプで躱しました。予測通りです。勢いを殺さず振り抜き、そのままチェーンソーを上へと投げ捨てます。

 スザク、思わず上を向きましたね?上には事前に仕込んでおいた針天井があるのです。今のチェーンソーは針天井を固定するワイヤーを切断する為のもの。スザクも空中でこちらの策に気が付いたようですね。それでは私は一度リングから降ります。

「ッ!!」

 スザクは針天井に押し付けられ、リングまで落ちてきました。しかし、針の先端を握ってどうにか持ち上げているようですね。

『いやー、まさか針天井があるとは、驚きですねぇ星刻さん』

『神聖なリングの上に針天井があるなんて運営は何を考えているのだ!』

『確かにそうですねぇ。』

 スザクが動けないうちに私はある物を取りに会場の外へと出ます。

 

 私が戻るとスザクはなんとか針天井をどかしたようですね、私がどこから来るのかキョロキョロと見回していますが甘いですよスザク。私が仕掛けるのは横からではなくもう一度上から…そう、これこそ私の十八番の技…

「ッ!?」

 今更見上げても遅いですよスザク。食らいなさい!

 

「ロ ー ド ロ ー ラ ー です!!!」

 

 まだまだプロレスは始まったばかり、行きますよ、スザク!




ミートギアスの筋肉に犯された世界でツッコミ役不在になるとどうなるかがわかるお話でしたね…

Q.ルールは無いんですか?
A.試合が面白ければヨシ!(欠如した倫理観)


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ミートギアス 〜疾走のスザク〜

時系列は
ゼロ国外追放後 第二次トウキョウ決戦前
です。具体的にいつってのはないです


 かつて日本と呼ばれたこの地は今はエリア11と呼ばれている。

 神聖ブリタニア帝国の領地として、本国から派遣された総督によって管理されるのだ。

 

 僕はその総督補佐。日本人でありながらラウンズになり、支配者側となった僕のことを裏切り者と思う人は多い。でも、僕には関係なかった。僕にはなすべきことがあるのだから。

 

 今日も僕は総督の命を受けエリア11内を奔走していた。今日はハコダテ租界だ。多忙な総督に代わり、僕はランスロットの機動力を活かして各地へと飛び回るのだ。ゼロが国外追放処分になったと言っても抵抗運動が全くなくなった訳では無い。寧ろゼロの仲間にならなかったテロリストというのはゼロよりもより卑劣な手を使う。民間人を平気で巻き込むのは当たり前だ。だから僕がいる。ランスロットの圧倒的な機動力で相手が何かをする前に捩じ伏せるのだ。

「降伏してください!今なら総督の寛大な慈悲により死刑だけは免れます!」

『ブリタニアの言うことなんか信じられるか!やっちまえ!』

 グラスゴーやガンルゥ等の世代遅れのナイトメアで暴れるテロリストをランスロットのパンチで捩じ伏せる。捕らえられた彼らはきっと処刑されるのだろう。

 

 撲殺で。

 

「総督、鎮圧は終わりました。これよりトウキョウ租界に帰還します。」

『待って下さいスザク。帰る前に別の任務を与えます。』

「は!なんなりとお申し付け下さい。」

 こうして僕はナナリーから新たな命令を受けた。

 

 目的地に到着し、ランスロットを着陸させる。ランスロットを降り、扉を開ける。用事を済ませたら最寄りの基地でランスロットの補給を行い、再びトウキョウ租界を目指す。

 

「総督、ただいま戻りました。」

「おかえりなさい。随分遅かったですね、スザク」

「申し訳ありません」

 結構飛ばして来たつもりだったんだけどな…

「それで?例のものは?」

 僕は鞄から頼まれていたものを取り出し、ナナリーに手渡す。

「ハコダテ租界限定のメロンプリンです。」

「ご苦労様でした。…?用がないならもう下がっていいですよ。」

「あ、よろしければこちらも」

 僕は鞄から飲み物等を取り出し手渡す。

「こちらは?」

「同じくハコダテ租界限定のメロン牛乳です。飲み物も必要かと思いまして。あとはその店の人気商品などをいくつか」

「ふーん。そうですか、気が利きますね」

「いえ…それでは失礼します」

 

 ナナリーは皇族としてしっかりと責任感を持って総督の仕事をこなしているのがよく分かる。その証拠にナナリーは最近僕をさん付けしない。きっとこれは僕が部下だからだろう、上下関係をはっきりさせるのは大事な事だからね。それに各地の限定品の食べ物を僕に買わせるのもエリア11の各地の名産品を知る事で政策などに反映するために違いない。やっぱりあのルルーシュの妹だ、僕なんかとは頭の出来が違う。

 

 総督の部屋を出るときにミスローマイヤとすれ違った。

 

 …。

 

 少し悪い気もしたけれど、扉に耳を当て中の様子を伺ってみる事にした。総督補佐として総督と他の人の人間関係を調べるのも仕事のうちのはずだ。

『あっ!ローマイヤさん、ちょうどよかった。よかったらスイーツ一緒に食べませんか?』

『私などがご一緒に…よろしいのでしょうか?』

『えぇ、よろしいのです!

『ではお言葉に甘えて…あ、甘く…てでもさっぱりしてて美味しいですね』

『まぁ!そちらの味も一口いただいてもいいですか?私のも一口差し上げますので!』

『えぇ、もちろんです』

『あーん…』

『あ、はい、あーん…』

『うーん!美味しいです!』

 

 …。

 

 今日は…ユフィのところに行って鍛錬でもしようかな…!

 




「ラプラスの悪魔」さんからのリクエスト、パシリのスザクが題材のお話です。シリーズ化はしません。

ナナリーとローマイヤさんの仲が良いのも世界が筋肉で歪められたせいなんだ…!


ちょっと作者、初期の感想返しを見返してたんですけど
「流石になんかこう、鍛え抜かれた身体でできそうなことからあまり逸脱させたくはないと思ってます。」
とかほざいてますね?逸脱しまくってるな???
しかも「たまにこういう外部ネタも良いかなって」って感想返してますけど、もはや外部ネタだらけだよ()


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TURN25.9 英雄の血統

実質オリジナルキャラクターが出てきますが、許してください。


 エリア11で過ごしていた頃、俺がお世話になっていた人はエナジーフィラーに関する仕事に携わっていた。そのせいでブラックリベリオンの時に巻き込まれて死んでしまった。それからは何もかもが嫌になり、エリア11を出た。

 

 最近になってエリア11は日本に戻ったらしいけれど、今更戻る気にもならない。戻ったところでいい思い出なんてほとんどないのだ。

 テレビをつけると人気アナウンサーのミレイさんがアッシュフォード学園の学園祭の取材に行っていた。

『あっ!会長!』『会長だ!』『元、会長ね。今はアナウンサーよ!』

 自分の祖父が理事長やってる学園に取材か…取材許可は降りやすいだろうな、そりゃ。どうやら学園祭では今年も巨大ピザ作りをする様だ。恒例行事になってるらしい。

 

 しばらくテレビを見ているとドアのノックの音が響く。

『シェスタール様がお呼びです』

「分かった。今行く」

 今日もナイトメアの特訓だろうか。あの人も熱心な人だな。

 

「今日も全力でお相手して構いませんね?」

『当然だ。栄えあるフォーグナー家をいずれ継ぐ者として私は強くならねばならん』

 何が栄えあるフォーグナー家だよ。100年とちょっとの歴史の浅い元傭兵の癖に。でも、自分の血に誇りを持って努力するってのには憧れる所はある。俺は…俺自身の血に、生まれに誇りなんてないから。

『そこだッ!』

 突き出される剣を弾き反撃の蹴りを繰り出す。

『むっ!やるな!』

 元々この国のナイトメアは四脚のゲド・バッカと呼ばれる無骨な物だった。でも俺が今相手にしてるシェスタール フォーグナーは見栄えを気にした為、上半身のみ人型のカスタムした物を使っていた。しかし、より見栄えを気にして完全なる人型ナイトメアの開発を希望、俺が何かに使えるかもと思ってお世話になってた人の職場から盗み出していたナイトメアの設計図…と言ってもグラスゴーのものだったが…を基に完全なる人型ナイトメアの開発に成功、それがあの『ハニーブ スル ヒーバー』だ。最近はどこかの国から流れ着いた科学者によって最新鋭のナイトメアが作られているらしいが、そんなものが一般的に使用されることはないだろう。このハニーブ スル ヒーバーの製造もその最新ナイトメアのデータ取りくらいにしか思われてないだろうけど。それにシェスタールも今までの四脚ナイトメアから人型ナイトメアになったことで姿勢制御などにまだまだ難がある様だし。

『どこを見ている!』

 相変わらず俺がそんな風に思考を別の事に割いていても余裕で防げるくらいにはなまっちょろい攻撃だが、前よりは良くなってるとは思う。本当に、微々たる物だ。正直、才能はあまりないが、やる気はちゃんとある様だ。

「それじゃあそろそろ本気で行きますよ」

『何!?今まで本気じゃなかっ…』

 俺が愛用してるのは横流しされた月下とかいうナイトメア、エリア11でも使われてたとか。それにこの廻天刃刀はなんだか良く馴染む。シェスタールの剣を弾き、直撃させない様に気を付けつつ突きを放つ。

『…み、見事だ。』

「今日はここまでにしましょうか」

『そうだな…だが、いつか私はお前をも倒し必ずやフォーグナーの名をこの世界に轟かせる!その為にもまた付き合ってもらうぞ、マリオ』

「…ナムジャララタック」




●オマケ● 実質オリジナルキャラクター紹介
『マリオ』
・エリア11で暮らしていた少年
・世話になっていた人はブラックリベリオンの騒乱で死亡、以降エリア11を出てジルクスタンに流れ着いた
・ナイトメアの操縦技術が高く、その腕を買われてシェスタール フォーグナーに仕えているが、内心結構馬鹿にしている。

●オマケ● オリジナルナイトメア紹介
『ハニーブ スル ヒーバー』(英雄の牙 …のつもりで名付けました)
・初の純ジルクスタン製人型ナイトメア。シェスタール フォーグナー専用機。
・ジルクスタンに人型ナイトメア自体は横流し品などで幾つかあったものの、シェスタールがジルクスタン製に拘る性分だった。因みに、最新ナイトメアの開発前の肩慣らし・データ集めくらいのつもりで製造されたが本人は知らされていない。
・カラーリングは青であり、上半身はほぼジャジャ・バッカと同様。
・肝心のジルクスタンに人型ナイトメアの製造・設計ノウハウがなかった為(というか必要性を感じてなかった)、そこまで良い性能にはならなかった。
・武装は手持ちの剣とアサルトライフル。腕にスラッシュハーケンを装備しているが、総じて言えば普通にゲド バッカを使った方が強い。

●オマケ● 唐突な次回予告
C.C.「私に笑顔をくれるという契約、叶えてもらうぞルルーシュ。」

ミートギアス 〜腹筋のルルーシュ〜
TRAINING01「C.C.の契約」


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ミートギアス 〜腹筋のルルーシュ〜
TRAINING01 C.C.の契約


 時は光和2年、ナイトメア戦闘、知略、権力、兵器力、そして…筋力。この世の全ての力を総なめした悪逆皇帝、ルルーシュがナイトメアをも素手で打ち勝つ伝説の仮面の英雄ゼロによって爆散死してから1年が過ぎた。

 世界は再編成された超合衆国を中心に嘗てない平和を謳歌している。

 この一年は人類史、戦争もテロも無かった「奇跡の明日」として後年評価されることとなる。ちなみに、この年のゼロの筋肉も歴代最鍛筋肉として後年評価されることとなる。

 しかし、人は筋肉を鍛えるだけでは飽き足らない。いずれ鍛え上げた肉体でいたずらに暴力を振るう輩が現れるのは必然だったのかもしれない。


 唐突だが、これは少し過去の話。ルルーシュが月下に乗ったまま爆散して粉微塵になって死んだとされたが、ジェレミアにより飛び散った肉片は掻き集められ、ある場所に保管してもらっていた。

 これは私のほんのささやかな希望によるものだ。スザクにも、ロロにも、ユフィにも妹のナナリーにさえも伝えて居ない。普通なら細切れになった肉片を集めるなど狂気の沙汰だが、あの男はやってくれた。まったく、あの肉ダルマには過ぎた男じゃないか?

 とは言えジェレミアもある事情から追われる身となり、その管理はシャーリーが引き継いだ。聞けばジェレミアはシャーリーの父の死の真相の生き証人であり、それを伝えたことから二人はは少し仲良くなったらしい。人の出会いとはわからん物だな。

 そして私はシャーリーから連絡を受け、指定された場に行くと知った顔がいた。シャーリーではない。シャーリーは既に移動済みだからだ。

 

「…久しぶりだな」

 そいつは無言で昔と変わらず筋トレに勤しみ汗を流して居た。まったく、相変わらずな奴だな。

「…おいおい、久しぶりだというのに無視とは随分なご挨拶だな。私に笑顔をくれるのだろう?」

 黙々と、両手に重り代わりの水の入った樽を握り…樽には持ち手がないので馬鹿げた握力で保持している…水がこぼれないようにゆっくりスクワットしている筋肉隆々の男は何故か私の声に反応を示さない。

「…ルルーシュ?」

 不思議に思い、私が肩に触れると

「うああああ!!」

 狂ったように手足を振り回し、私は36回程死んだ。

 

「…ようやく落ち着いたか?ルルーシュ」

「ああああ……」

 全身筋肉のクセに怯える姿は滑稽だ。まるで赤ん坊である。

「私はC.C.だ。大丈夫、私はお前の味方だ。ルルーシュ。何も怖くないぞ、お前に痛いこともしないし、危険なことは何もないんだ」

 そう言って抱きしめてやると、ルルーシュは何も言わず、頭を撫で…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …てくれると思ったら私の頭を握りつぶしやがった。ふざけるなバカタレ。前言撤回、こんな可愛くない赤ん坊がいてたまるか。

 結局、幾度となく顔面が吹き飛ぶなどの死亡を繰り返しつつ…回数に関しては100を超えてから数えるのをやめた…なるほど、シャーリーが移動済みなのも頷ける。こんな奴の世話など幾つ命があっても足りない。不死の私が言うのだから間違いない。…とはいえなんとかルルーシュは私は無害だと分かってくれたらしい。ぎこちないが頭を撫でてくれるようにもなった。いやまて、寧ろどうやってシャーリーは生き残ったんだ…?

『え?ルルーシュ?うーん、別に暴れたりとかはしなかったですよ?いつも筋トレして、お腹が空いたらご飯食べて、疲れたら寝て…』

 気になって電話してみれば…この野郎、私に恨みでもあんのかルルーシュ…!

 

 それにしても食べる時と寝る時以外ひたすら筋トレするのはやめてほしい。暑苦しいったらありゃしない。というか実際こいつが部屋にいると暑い。排熱量が凄いのだ。

 しかし…あいつは私に約束してくれた。だから…

「ルルーシュ、私はお前を取り戻そう」

 ルルーシュはシャルルからV.V.のコードを継承していたのだ。しかし、継承したあの場所が良くなかったのか、死に方がまずかったのか、どう言うわけだかルルーシュはルルーシュでありながらルルーシュではなかった。中身がないとでも言おうか、言葉も意味のない言葉と…

 

「パワーーー!!!」

 

 パワーしか言わない。せめて一単語なら「C.C.」を覚えて欲しかった。教えれば簡単な動作は覚えるし、教えなくても筋トレとストレッチと睡眠と食事だけは一丁前にとりやがる。

 因みにご飯は出された物を食いはするが、高タンパク低カロリーでない食事を出すとあからさまに顔を顰める。張り倒すぞ

 それでも味は美味いと思ってくれるらしく、定期的…つまりチートデイ(?)的な日は笑顔でモリモリと食ってくれる。…作り甲斐があるってものだな。

「美味いか?ルルーシュ」

「あうあう」

 両手に飯を鷲掴み、口から汁を垂らしながら力強く頷いている様を見るとやはり憎めなく思ってしまう。

「ほらルルーシュ、汁が垂れてるぞ」

 こんな風に世話をして過ごすのも悪くはない…が、やはり私はもう一度あいつと話がしたい。

 

「私に笑顔をくれるという契約、叶えてもらうぞルルーシュ。」

 

 だから…私はルルーシュを取り戻す。なんだかんだで再び自由の身になったらしいジェレミアがアーニャとモニカとみかん農家をやっているらしく…ゴットバルト農園のみかんモナカはなかなか美味かった…そちらのツテでトラックといくつかの日用品を用意してもらった。

 日用品についてはシャーリーにも協力してもらっている。ロロは今シャーリーのところで暮らしているらしい。あいつはもう筋トレなどの激しい運動はラクシャータストップがかかり、今ではヒョロヒョロなもやしのような優男になってしまった。さらにどういうメカニズムかは不明だが、ルルーシュの事も「兄さん」と呼ぶようになっている。だが、そのおかげかあのルルーシュの弟のロロとは誰にも気付かれず、基本的には普通に過ごせているらしい。

 ユフィもあの後結局プロレスラーになったとか。見事なヒールっぷりで逞しくなった妹にコーネリアは泣いて居たと聞く。嬉し涙か否かは確認する気にならない。今は確かエキシビジョンマッチとしてゼロとユフィでのプロレスが現在3日目に突入している事だろう。プロレスの1試合が何故三日目に突入などという意味不明なことになっているかはわからないが、盛り上がってるなら仕方のない話だろう。というか、あのスザクに張り合えてる時点でユフィはおかしいと思う。一瞬ラジオをつけて試合の様子を聞いてみると、現在ユフィはグラスゴーに乗ってゼロを踏み潰しているらしい。うん、殺す気か?

 

 そんな風にラジオを聴きながら私はトラックを走らせた。因みにルルーシュはトラックと並走するようにランニングをしている。底なしの体力バカだ。これでオツムが空なのだからタチが悪い。おい、お前いつの間にその牛を狩ってきたんだ?仕方ない…これは今日の晩御飯にしよう。

 しかし、ルルーシュの異常は何も中身だけではない。ルルーシュがCの世界に干渉したからなのか、爆散という死に方が悪かったのかはわからないが、どうやらルルーシュには共に爆散した月下の残骸とでもいうべきか、私では起きた事のない異常を有して居た。コードの力による復活とは本来Cの世界記録した肉体をアップロードして修復するのだが、ルルーシュの場合は何をどうしてそうなったのか、左腕が異常な形になっていた。

 

 道とも道でないとも言えない恐らく道を走り、一晩明かして早朝また走り出すと、突如トラックが壊れた。ジェレミアめ…!もっとマシな車を寄越さんかあのポンコツめ…!仕方ない…

「おい!ルルーシュ、新しい筋トレだ、このトラックを引っ張ってくれ!」

「パワーーーー!!!!」

「そうだ、お前のその無駄についた筋肉をたまには活かせ」

 ルルーシュは素直に引っ張ってくれ…るのはいいが、なんで普通にトラックが走るより速度出てるんだ…?

 

 ようやく街に着き、私は車の修理屋を探した。たまたま近くのベンチに座って読書をしている褐色肌に黒髪の女性に声を掛ける。

「済まない、この辺に車を直せるような店はあるだろうか。旅の途中で車が壊れてしまって困ってるんだ。」

「それは大変だったな。だったらこの道をまっすぐ行って三つ目の交差点を右に曲がると良い。自称物直しの天才が営むリサイクルショップがある。」

 女性に礼を良い、言われた通りに進むと派手な髪の男が営む店に着いた。

「ふむ、かなり状態は悪いが直せんことはない」

「本当か!?これを直せるのか、助かるよ!」

 しかし男は当然だと言うように鼻で笑った。

「質問…商売で大事なものはなんだ…?それは、お金だ。」

 そう言って提示された金額を確認すると、払えなくはないが払ってしまうと今後が不安になる金額だった。

「済まない、待ち合わせ的にこれは厳しい…。これくらいでなんとかならないだろうか」

「足りないなぁ…この程度の金では。…ところでどこまで行く気だ?」

 地図を見せ目的地を伝えると男は呆れたように首を振る。

「何もわかっていないようだな、これだから旅行客は…そこまで行くのにあの車で通れるような道はない。…ここに、こう鉄道が通っているからそれを使うんだな」

「そうなのか…」

「今ならアレをタダで引き取ってやらんこともないが?もし売れ残ったならさっき提示した金額で売ってやろう。」

 仕方ないので男の提案に乗り、鞄に詰めるだけ積み込み、ルルーシュに運ばせた。そこからはシャルルの残した遺跡の資料を頼りに使える門をしらみ潰しに当たっていく旅だった。

 

 

「…ここのはダメか」

「パワーー!!」

「オイコラこら壊すなルルーシュ!」

 羽交締めにしようとするが、ルルーシュは分厚すぎて私では腕の長さが足りない。結果ルルーシュが更地にするまで私は暴れ馬に乗っているかの如く揺られるしかなかった。

 

 地図の印を確認し、次の目的地を確認する。

「次は…ジルクスタンか。そういえば最近ラジオで聞いた国の気がするが…なんだったか?まぁいい。行くぞルルーシュ」

「あああ…」

 荷物を運ぶルルーシュに肩車をさせる。うむ、これは移動も楽ちんだな。この辺は田舎だから人の目もないしな。

 道中で国境越えを頼んだところ、力仕事を手伝うならと言われルルーシュを貸し出した。普通なら1日かかる仕事を1時間で終えたらしい。体力馬鹿め…。そうして車の荷台に乗せてもらうことで国境を越える。

 こうしてなんとか国境を越えたまではよかったのだが、ジルクスタンにある門は少し場所が特殊だった。よりにもよって監獄の中とはな…。

 どうやって入ろうか考えているうちに夕食の時間をとっくに過ぎてしまい、もうすぐ深夜になろうとしていた。もう遅いが食事をすることにしよう。まぁ、ルルーシュの顔を見られるのは都合が悪いので私の手作りなのだが。

「ほーら、できたぞルルーシュ。お、今日もソフレを敷いてくれたんだな、偉いぞルルーシュ。」

「ああ!あうあう」

「そうだな、冷めないうちに早く食べ…」

 突然の爆風により扉が吹っ飛び、私とルルーシュの目前にあった食事は吹き飛んでいった。

「ああああああ!!!!」(※私)

「ああああああ!!!!」(※ルルーシュ)

 目の前の吹き飛んだ食事に呆然となるルルーシュを流し見る。

「おいルルーシュ、落ちた物は食べるなよ。」

 まぁ、あいつに限って腹を壊すなんてないとは思うが…。兎に角、折角作った食事を台無しにされことに腹が立ってきたので注意しようとドアの方に向かうと、突然誰かに馬乗りにされた上銃とナイフを突き付けられた。

「あれ!?あんたC.C.!?」

「カレン!?随分なご挨拶だな…!折角の飯が吹っ飛んだぞ!」

「いや、今飯は良くない…?」

 襲撃してきたのはカレンだった。良い訳がないだろふざけるな。私が丹精込めて作ったご飯を吹っ飛ばしやがって…!更にロイドと、そのロイドを担いできた咲世子も合流してきた。…なんだこの組み合わせは?

 

 外から物音がしてまだ誰か来るのかと立ち上がると眉間に衝撃が走り、私は後ろに倒れた。

「旅行客か?不運だったな。」

 どうやら私は撃たれてしまったらしい。倒れた私を見て、流す血を見て、あいつは叫び声を上げた。

「ああ…!あああ!!ああああああああ!!!!!」

「ルルーシュ様!?」「え!?」「ルルーシュ!?」

 ルルーシュは三人には目もくれず…というか運良く照明弾の明かりに照らされていなかったのか、逆光で見えなかったのか…ともかく、ルルーシュは怒りに身を任せ外へと出ていった。溢れんばかりの筋肉で視界に入る兵隊を全て薙ぎ倒していったようだ。私が生き返るのにかかった数秒のうちに既に惨状が出来上がっている。

「まさか…暴走!」

「パワーーー!!!!!」

「まさか悪逆皇帝ルルーシュが生きて居たとはな!だが、我々はアンタみたいな対肉ダルマ弾を用意しているのだよ!」

 ルルーシュへと一斉に弾丸が放たれた。

 




「ミートギアス 〜腹筋のルルーシュ〜」は映画「コードギアス 〜復活のルルーシュ〜」に該当するエピソードです。
テレビ版準拠だけど書いちゃうんだなぁこれが!!
…という訳で、もうしばらくだけ脳筋世界にもう一度お付き合い下さい。

そうそう、TURN FINALの後書きって縦読みで「8おちわほつ」→それぞれ1つ後にズラすことで「9かつをまて」(9月を待て)になるんですけど…気がつきました?


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TRAINING02 ルルーシュの復活

 後にハシュベスの戸惑いと呼ばれる事件、つまりこれはカレン達がジルクスタンに潜入するきっかけになった少し過去のお話。

 ゼロレクイエムの後、ジェレミアのギアスキャンセラーで視力を取り戻したナナリーは神聖ブリタニア帝国第100代皇帝として即位し、国のあり方を変化させた。結果として今やブリタニア帝国は公国となり、皇帝とは国の象徴としての立場に留まり政治の実行権からは切り離されることとなった。そしてそのナナリーは世界人道支援機関の名誉顧問として難民キャンプを訪れている。その側にはゼロがいた。

 そして、彼らは突如現れた武装ナイトメア集団に襲われることとなり、ゼロは砂地という足場でサンドボードもなくフロートシステムも切られ、儀礼用のお飾りの剣とスラッシュハーケンしか持たないナイトメアでの出撃を余儀なくされる。ところがそんな不利な条件もなんのその、怒涛の勢いで敵の数を減らしていくゼロだったが、突如現れた新型ナイトメアに追い詰められてしまう。バックステップを取り、罠にかかり、驚異的反応速度で片足を自ら切り落として何とか罠から脱出したものの、逃げた先には更に別のナイトメアが伏兵として待っていた。
「あんなところに罠があるだけでなくこんなところに伏兵まで!?」
『やれ、エクスカリバー!』
『ナムジャララタック』
「いけない!今のこいつでは……!!」
 こうして、ゼロは敗北した。

 それでは本編スタートです。


 複数の男たちからルルーシュへと一斉に弾丸が放たれたが、それがルルーシュを傷つけることはなかった。

 

 何故なら…

 

「ああああああ!!!」

 ルルーシュは徐に左手を前に掲げると、赤い光と共に-"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"-という不愉快な音を鳴らす。赤い光に触れた弾丸は破壊されルルーシュを守っていた。

「あれって輻射波動!?」

「とうとうラクシャータは僕のメガネみたいに装置の小型化をしたの!?」

 ルルーシュのアレはロイドのブレイズルミナスメガネのような小型化というようなものではない。

「ああああ!!」

 ルルーシュは男を左手で掴まんとするが。男はバックステップや周りの部下を盾にすることでそれを躱して居た。

「パンチなど!間合いさえ取れば…!」

 敵の部下らしき男もバックステップを踏むが、ルルーシュに掴まれた。

「なんだ!?今腕が伸びたぞ!!」

-"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"-

「う、うわぁぁぁ!!な、なんだこれはぁぁぁ!!!熱い!身体が…熱」

 赤い波動の光が男を包む。

「ぽぺっ」

 掴まれた男は爆散死した。

「クソ!ならばギアスを食らえ!」

 隊長らしき男が何かをしたようだが、不幸なことに今のルルーシュには効かなかったか、意味がなかったようだ。

「なんなんだこいつは…!まさか、嚮主と同じ…!?」

 ギアスが効かなかったことをコード所有者であると勘違いしたのだろうか。

 

 …今のルルーシュは月下に乗ったままの爆死と、不完全なコード継承の結果、ルルーシュの抜け殻のような存在となっている。そして左手は歪な状態で復活することになった。死ぬ時に共に爆散したのは普通の月下だったが、黒の騎士団としての活動を始めた頃にルルーシュの手足のように戦場を駆け、多数の戦果を挙げた月下は『先行試作型月下』だった…そのせいでルルーシュの記憶に強く残っていたのか、結果として肘関節は通常よりも2つ多く、普段曲げている肘関節を伸ばすことにより腕のリーチが伸びることになった。

 

 うん、意味がわからない。

 

 さらに、左掌には多数の発声器官が備わっており、発声時の声帯の振動で発熱しそれを放射する熱放射器官が備わっていた。結果的に輻射波動機関の再現が可能となり…まぁ、速い話が左腕が実質紅蓮の右腕みたいな物だ。こうしてルルーシュはとうとう人間ナイトメアの如き力を手に入れてしまった。

 

 うん、やっぱり意味がわからない。

 

「くそ、だったらこれでも食らいな!」

 男が投げたのは閃光弾だろうか?しかしそれもルルーシュには無意味。

「チチチチチチチチ…」

「C.C.、何この音」

「できるだけ動かないようにしろ、今のルルーシュに見つかったら殺されるぞ。」

 ルルーシュは視界を封じられても舌打ち音とその反響で周囲を認識できるのだ。そうして視界を奪ったはずなのにと考えている男達は次々とルルーシュに狩られていく。

「なんなんだこの化け物は!?くそ!撤退する!!ナイトメア部隊で足止めしろ!」

 隠密性に特化させたからなのか、そもそもが歩兵部隊でナイトメア同士の戦闘を考慮していないからなのかは不明だが、黒く塗装された月下らしき機体と2機のグラスゴーらしき機体が現れる。しかしルルーシュは物怖じすることなく、進行方向とは逆に左腕を掲げ、掌の爆発を利用して突っ込んでいく。左腕を伸ばしつつの殴打でグラスゴーの頭部を破壊、更に思い切り振り上げた拳をコクピットブロックに叩き込むとグラスゴーは停止し、ルルーシュはすぐにもう一機のグラスゴーに飛び移った。今度は左腕の輻射波動で爆散させ、続けての月下の銃撃も輻射波動で防ぐ。爆散したグラスゴーの破片を拾い上げたルルーシュはそれを投擲。ぶつかってよろけた月下に対し、またもや左手の爆発で一気に距離を詰めると月下の脚を掴んでそのまま引き摺り回し、横転させた。生身相手だというのにナイトメアで勝てないというふざけた事態に月下のパイロットは脱出して走り去っていった。

 その後も逃げる敵を次々と蹴散らすルルーシュだったが、後一人というところでエネルギー切れ…つまり腹が減ったようで戻ってきた。食べようとしていた私の作った飯は吹っ飛ばされてしまったからな…。

「ありがとうルルーシュ、お腹空いたろ?すぐに何か用意するからな」

 腹が減って座り込んでしまったルルーシュにとりあえず簡単な食事を…とは言ってもカレン達から押収した保存食だったが…与え、カレン達の指示に従い車両に乗る事になった。

「ねぇねぇルルーシュくん、アレの積み込み、手伝ってくれなぁい?」

「あぁ!」

 ライドの手伝いをしているルルーシュを眺めつつ…おい待て、何で会って数分のロイドには従順なんだ?私と会った頃なんて何度も殺してきたくせに…あいつ私に恨みでもあんのか!?

「ああぁ!」

 するとルルーシュは私に抱きついてくる。おいよせ、胴体が千切れる。

「ルルーシュ様はC.C.様に褒めていただきたいのでは?」

 咲世子に言われるがまま私はルルーシュの頭をなんとか…何とか撫で、胴体がちぎらない様に留意しつつ言葉を吐き出した

「そ、そうか…え、偉い…ぞ、ル…ルル…ルッ…」

 

 あ、いかん千切れる

 

 運転を咲世子に任せ、ある場所へと私達は向かっていた。

「で?いい加減事情を説明してくれる?」

 車内で三重バック宙という意味不明なトレーニングをしているルルーシュを無視して…というか、カレンはそれに背中を向けて視界に入れない様にしながら尋ねてきた。

「…ルルーシュはシャルルを倒した時…ルルーシュはシャルルのコードを継承していた可能性があった。」

「…その、コードってC.C.も持ってる不死身になれるやつよね?」

「そんないい物ではないさ。だが、不老不死になれるのは事実だ。実際お前達の目の前でも見せただろう?」

 ロイドは知的好奇心に眼を爛々とさせているが無視だ。…だから研究者ってのは嫌いなんだ…。

「ええ、C.C.ってピザばっかり食ってる割にスタイルいいまま体型変わらなくて羨ましいって思ってたけど、まさか不老不死だったとはね。」

「話を戻すと、コードを継承している可能性があり、実際にも今ルルーシュの体がここにある様にルルーシュはコードを継承していた。しかし、ルルーシュがCの世界で神に干渉した結果、Cの世界が不都合を起こしてな…Cの世界でルルーシュの人格を再構築しようにも今の私は自由にCの世界に入れないんだ」

「じゃあ今後ろで飛び跳ねてるあの肉ダルマはなんなの?」

「ルルーシュの筋肉を纏った虚…カラの器と言ったところかな」

 器と言うか…土器?カレンは一瞬だけ後ろを振り返り、またこちらに向き直る。

「で?アンタはどうするの?」

「ルルーシュを再構築するためにCの世界に入る。幸いこの国には入るための門が残ってるはずなんだ」

「なるほどね、だからC.C.はこの国にね…。私達も協力していい?」

「…は?いや、協力してくれるのは嬉しいがなぜお前達が…?」

 ルルーシュの復活は私の我儘だ。超合衆国にも黒の騎士団にも関係ないはず…

「知り合いのアンタが困ってるからに決まってるでしょ!それに、アレ見たら知らんぷりもいまさらできないわよ。というか夢に出てきそう」

「…恩に着るよ。」

 あと、実際夢に出るし、私はいつもうなされてる。寝ても覚めても筋トレをしやがるので頭がおかしくなりそうだ。

 

 そして私はこの国の拘束着を着させられていた。

 

「はぁ…何も考えていなかったのは事実だが、まさかこんな格好をする羽目になるとはな」

 というか正直ルルーシュに突撃させれば全部解決するのではと思っていた。私もルルーシュも不死身だしな。

「へぇ、似合ってるじゃない、C.C.」

 カレンからそんな揶揄いが飛んでくるが、ここは大人の余裕を見せてやろう。

「ふん、私はC.C.だからな。どんな服を着ても似合ってしまうのさ」

「はいはい」

 はっ倒すぞ。

 因みにルルーシュに着せるのは滅茶苦茶難航した。咲世子と私とカレンの三人がかりで私は2度ほど死んだ。畜生め。

 やがて変装した咲世子と看守たちに着いて行き、牢屋内を歩く事となった。

「そろそろ良いでしょう」

「は?何が良いんだ?」

 咲世子の発言を受け、看守達は疑問を口にした。そしてその瞬間に私は右手を前に出しルルーシュへと指示を出す。

「やれ、ルルーシュ!薙ぎ払え!」

「パワーーーーーーー!!!!!!」

 瞬間、ルルーシュの拘束着が弾け飛び、看守の顔面をブン殴る。さらにもう一人の看守に左手を伸ばし、その圧倒的な握力で握り締めていた。

「う、うごご…体が…は、弾け…」

 そのままルルーシュが放り投げると看守は檻に叩きつけられ動かなくなった。

「囚人達を解放して騒ぎを起こしますか?」

「いや、騒ぎを大きくするのは得策じゃない、さっさと先へ急ごう」

 

 いくつかの通路を抜け、水に沈む門を見つけた。

「どうすんの?沈んじゃってるじゃない!」

 狼狽えるカレンだが、何も問題はない。

「方法ならある。」

 水を抜くためにルルーシュが水門らしきものを破壊させると水が抜けて行く。

 …ここのシステムを作ったやつには謝らないとな。圧倒的暴力の前に意味をなさなかったが、きっと何かギミックがあったに違いない。

「見張りと守りは任せるぞ、カレン」

「分かったわ。必ず戻ってきなさいよね」

「ふん、誰に言っている」

 そして、私はルルーシュの手を握り、門に触れる。

 Cの世界に入った瞬間、ルルーシュはつかつかと意識の塊とも言うべき謎の紫の塊に近付き、その左手で殴り付け簡単に破壊した。

 なんかこう、もっと障害というか困難があるかと思っていたが杞憂だったらしい。

 

「…ふむ、どうやらまたお前に礼を言うことになりそうだな?C.C.」

 

「…ルルーシュ!戻ってきてくれたのか!」

 思わずその分厚い胸板に顔を埋め、抱き付いてしまう。

「…苦労をかけたな…。ここは、Cの世界か…?まぁいい、感動の再会って奴はここを出てからにしよう」

 そしてルルーシュは私を引き剥がす。さらに自分の左腕を…二度…いや、三度見した。

「…な、なんだこの左腕は…!?これは…輻射波動か…?なぜ俺の左腕が…。…あぁ、そうか、月下…お前が守ってくれていたのか。」

 そう言ってルルーシュが左手をさすると左腕が普通の…普通と言ってもあんな脚のような太さはやはり普通ではないと思うが…腕に戻った。そしてもう一度さするとまた人間ナイトメアの腕に戻った。

 

「これは…どういうことだC.C.」

 

 いや知らん私に聞くなそんなもの。怖…




脳筋スザク、ただの罠なら反射神経で辛うじて回避できちゃう。

そしてCの世界でのあれこれは全カット。これも筋肉のおかげさ。

というわけで復活ルルーシュの左腕はナマモノ版紅蓮の右手みたいになってます。更にCの世界から出た後は通常の腕から切り替え可能です。なんで?


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TRAINING03 スザクの覚悟

 「ハシュベスの戸惑い」で敗北したゼロ…として活動していたスザクは捕らえられた。そして捕らえられた彼と話すのはシャリオ、彼は最強の戦士を目指しており、強さを欲していた。
「これ、この動きなんだけどさ…姿勢プログラムにないよね?どうやってるの?」
 シャリオはスザクの強さを奪う為、スザクを拘束し、拘束したスザクに映像を見せていた。
「あぁ、これ?これは上半身を捻って…」
「あー!はいはい、こんな感じね…すごいなぁよくこんなの思いつくな」

 二人は…意気投合していた!

 スザクにかけられたギアス、『鍛えろ』はスザク本人だけではなく、周りの人間に対する意味でも適用される。
 自分を捕らえた相手とは言え、姉のために最強の戦士にならんとするシャリオの想いにスザクの鍛えろの呪いは反応、敵であるシャリオをスザクは鍛えまくっていた。

「脚が動かないからなんだ!上半身を鍛えろ!まずは懸垂100回!」
「イエス!ボス!」

「判断が遅い!相手がカレンだったら死んでるぞ!」
「イエス!ボス!」

「何度言ったらわかるんだ!君は相手の行動予測が甘い!そんなんじゃ君はすぐにスクラップだぞ!」
「イエス!ボス!」

「君には身体の筋肉も足りなければ心の筋肉も足りない!そんなことでは何も成せないぞシャリオ!!」
「イエス!ボス!!」

 そして今日も一通りの鍛錬を終え、去っていくシャリオの背を見送り、スザクは己の拘束具と自分の筋肉を見て思った。

 もうすぐ拘束具を引きちぎれるくらいには鍛えられるな と

 それでは本編スタートです。


 背後に誰かの気配を感じ、振り返る。そこには俺が砕いた紫の破片があるだけで誰も居ない。しかし…

「…行ってくるよ、母さん」

 C.C.と共にCの世界から脱出すると、突然の銃声が聞こえ、C.C.を貫かんとする凶弾を拳で弾く。そして弾丸が放たれた方を見ると見知らぬ男たちの他に拘束されたロイドと咲世子が見えた。ロイドは兎も角、あの咲世子を捕らえるとは…敵は中々やるようだ。

「ちっ、狙いが逸れたか、今度はちゃんと狙えよ!」

 叫んでいるのは髪の薄いヒョロヒョロな男、血色も悪い。

「お前、飯はちゃんと食べてるのか?」

「は?」

「筋肉が足りないぞ。そんなんじゃ部下も心配なんじゃないか?どうなんだ?」

「え、あぁ…はい、そうですね、好き嫌いせずちゃんと食べて欲しいとは思ってます。この前もブロッコリーを残して…」

 それ見たことか。栄養のある食事は体作りの基本だ。それを怠るとは愚かな奴め。

「…テメェ!ふざけてんのか!?」

 どうやら当の本人には俺の発言は侮辱と取られたらしい。そんなつもりはなかったんだがな…。

「俺達軍人はな…映画館の席を取られたり、飲食店で値段ふっかけられたり、そんな事で殺しはしない。だがな!俺達に対する侮辱って行為だけは許しはしない!それは何故か、俺達を侮辱するってことはそれ即ちジルクスタンというこの国そのものへの侮辱と同義だからだ!」

「だから?」

「丸腰で俺達を、ジルクスタンを侮辱したんだ、テメェ…覚悟は出来てるんだろうな!?」

 …丸腰?俺が丸腰だと?こいつ…どこを見て物を言っている…武器ならあるさ、この俺の肉体がな!

「さっき貴様は覚悟と言ったが、お前こそ出来ているのか?」

「なに?」

「お前が始末される覚悟をだよ。人を始末しようとしてるんだ。逆に自分が始末される覚悟は当然してきているんだよな?」

「何を馬鹿な、死ねえ!」

 薄髪の男が何かを放ったのでC.C.を庇うように前に立つ。

 

 そして…ダブルバイセップス!

 

 爆発が起きたが俺は無傷、当然だ、何せ俺はニトログリセリン程度の爆発では死なないのだからな

「なんなんだぁ?今のは…」

「なっ…!?そんな馬鹿な!」

 俺は一歩ずつ奴らへと距離を詰めていく。

「ば、化け物…!な、何してる!お前達、早くあいつを撃て!」

「俺が化け物…?違う、俺はマッスルガイだ…」

 奴らの放つ鉛玉を全て空中で掴み取る。それはマガジンが空になるまで行われ、結局俺にもC.C.にも一発たりとも当たることはなかった。そして弾丸を観察すると奴らの自信に納得する。そしてそれを粉々に砕いた。

「成る程な、貫通力を上げてあるのか…これなら確かに俺やスザクにも傷を負わせることができるな…だが、結局のところ当たらなければどうということはない」

「いいや…おかしい、ありえない!こんな事態は知らない!!」

 それでは奴に覚悟の程を見せてもらうとしよう。何故なら…

 

「俺を撃って良いのは…俺にぶたれる覚悟のある奴だけだ!!!」

 

 そう言うと俺は目にも止まらぬ速さで男達の顔面を殴り、その頭を木っ端微塵に弾け飛ばす。

「うーん、私はとんでもないものを復活させてしまったのやもしれんな…。」

「?何を言っているC.C.、それよりもロイド達を助けるぞ。」

「あぁ」

 ロイドの拘束はC.C.がナイフなどで切ってくれるだろう、俺は咲世子に近づき、その体を拘束する謎の物体を砕いた。

「ルルーシュ様、ありがとうございます」

「何、礼はこの事態を切り抜けてからだ。この施設がどう言う状態か説明できるか?ロイド」

「勿論ですよぉ陛下」

「陛下は辞めたく…ッ!!」

 瞬間、凄まじい筋力の波動を感じ、入り口に視線を移すとそこにはスザクが立っていた。

「…僕は夢を見ているのか?ルルーシュ…なんでここに…?」

「…どうやら死に損ねたらしくてな。」

 俺がそう答えた瞬間、スザクは視界から消える。後ろかと思い気配を探るがC.C.の気配しか感じなかった。つまり…

「上か!」

「遅い!」

 咄嗟のガードも間に合わず、俺の顔面にスザクの踵がめり込んだ。うーむ、相変わらずのキレだなスザク。続けての顔面への殴打を回避するが同時に放たれていたらしい腹部への殴打に身体が少しだけ後ろに吹き飛ばされる。

「らしいとはなんだ!僕がどれほどの覚悟で生きていたと思っている!死に損ねたのなら今度こそ完全に消し去ってやる!!」

 すると俺とスザクの間にC.C.が割って入ってきた。

「待ってくれスザク!これは私の我儘なんだ!」

「うるさい!知ったことかそんなもの!僕はルルーシュを殺さなくちゃ行けないんだ!」

 スザクがC.C.に対して手を振り上げたので瞬時に背後に回り込みその腕を掴む。

「この手はなんのつもりだスザク。C.C.は関係ないだろう。殴りたいなら俺だけにしておけ」

「…だったら望み通りにしてやる!」

 スザクの膝が俺の顔面に突き刺さる…瞬間!俺は思い切り体を反らして回避し、反った勢いをそのまま攻撃に転換し、頭突きを顔面に食らわせる。

「無抵抗に殴られるとは言っていないがな!スザク!」

 人間、いきなり顔面に頭突きを食らえばよろめくもの、それがスザクでもだ。よろめくスザクの背後に周り、勢い良く脚払いを仕掛けてスザクの体を180°回転させる。そして片手とスザクの体を拘束し、一気に跳躍してからスザクの首を両脚で固定、空いた片手で天井を押し出し勢いをつけてスザクの脳天を床に突き刺す。

 するとスザクは首の力だけで床から跳び出たのち、なんでもなかったかのようにこちらに構えを取った。

「また僕を騙したのかルルーシュ!この卑怯者!」

「おや?そうかい?」

 スザクに再度拳を叩き込まんと踏み込むと、スザクは思い切り地面を蹴って天井に消えていった。なるほど、上からの奇襲か…面白い、天井を観察し、どこからくるのか構えて待つ、突如地面から音が鳴り、スザクのアッパーが俺の顎を貫いた。

「ま、回り込んだのか!?」

 スザク…!こいつ鍛えてやがる!だが、殴られっぱなしは主義ではない!すぐさま跳び跳ね起きで起き上がり、拳圧による暴風を食らわせる。その隙にこのフロアに残っていた水を飲み込み胃に水を溜め込む。そして筋肉を操作して胃から水を汲み上げて口に含み、水圧カッターの要領で吐き出す。

「これは!ゼロレクイエムの時に見せた技の応用!?」

 スザクは腕でガードするが、この切れ味には流石に耐えられず、スザクの腕に切り傷が刻まれる。更に2度、水圧カッターを放つとなんとスザクは腕での血を投げ飛ばし俺の水圧カッターを防御した。

「初めてやってみたけどうまくいったようだね」

「やるな…スザク!」

「ルルーシュこそ」

 気付けばロイドも咲世子もC.C.もフロアから居なくなり、俺達は拳を交えつつ徐々に上階へと向かっていった。道中、何やらここの看守らしい連中から銃を撃たれた。

「「邪魔をするな!!」」

 俺とスザクによる拳圧の暴風が看守達を吹き飛ばす。更に暫く殴り合っていると、突如ナイトメアが現れた。

『見つけたァ!死ねェ!!』

 放たれた砲弾をスザクが俺に弾いてきたので俺は撃ってきたナイトメアに弾く。着弾するとナイトメアは爆散した。

「チッ、弾くのか」

「お前に出来て俺に出来ないはずがないだろう…とはいえ、邪魔が多いな…喧嘩の続きはまた今度にしよう。」

「そうだね、今は襲ってくるナイトメアを倒すのが先だ。」

 俺は左腕を変化させ、動きを確かめる。なんとなく使い方も分かる気がする。

「スザク、お前は一度ロイド達のところに行ってナイトメアをとって来い。ここは俺が食い止める」

「分かった。僕が戻ってきたら今度は逆に君がロイドさんのところに行って作戦を考えるんだね?」

「話が早くて助かるよ」

 スザクは床をブチ抜き去っていき、それと同時に天井から再びナイトメアが降りてきた。放たれる砲弾を左手で防ぎ、胃から大量の水を汲み上げ、それを窄めた口から高圧力で噴射しつつ薙ぎ払う、名付けて空裂口刺驚(スペースリバーススティンギーマウス)!超極細の水のレーザーが兵士達の首を刎ね、ナイトメアの脚部を切断する。しかし流石に俺の胃の容量も空になってしまった。破壊したナイトメアに近づくとクローアームのようなものが飛んでくる。どうやら腕がスラッシュハーケンのようになっているようだ。それを蹴りで弾いてから一気に接近し、ナイトメアに対して左手を使う。程なくして敵のナイトメアは歪に膨らみ弾け飛んだ。

『ルルーシュ!無事か!』

「スザク、来たか」

 スザクに後のことを任せ床をブチ抜きロイド達のいた司令室らしきフロアに戻る。

 

「あ、陛下ぁ…聞いてくださいよ。スザクくんったらせっかく僕が持ってきたあのラクシャータの機体を突っぱねてあんな醜いナイトメアになったんですよぉ」

 突っぱねられた機体とは黒い月下のことらしい。

「私たちを襲った奴らが使っていたんだ。それをお前が積み込んだ…覚えてないだろうがな。それで、作戦は?敵はあまりに多く囲まれている。カレンの救出は咲世子に任せればいいとしても…」

「ふん、これくらいならば問題はない。ロイド!月下には私が乗ろう。」

 

 作戦はこうだ。ロイドは咲世子に守らせ、隙を見て逃走。こちらの作戦は簡単だ。鹵獲した敵のナイトメアに乗ったC.C.とカレンとスザクの三人で敵陣を強行突破。そして敵の大将を叩く。つまり

 

「全 速 前 進 だ !」

 

「お前を信じた私が馬鹿だったよ」

「同感」

「二人ともやろう!僕らが生き残るにはこれしかない!」

 スザクは乗り気だが何故か女性陣は否定的だ。何がいけないのだろう。まぁ、すでに時間はないのでやるしかないのだが。

 

 スザクは早くもあのナイトメアの操作方法をマスターしたらしく、速度を落とさず高速回転しながらその常軌を逸した動体視力で敵のナイトメアを撃ち抜いていく。C.C.とカレンは堅実に狙いを定めてから確実に数を減らして行っているようだ。俺はというとロイドに急ピッチで黒い月下のための武器を作らせていた。そして出来上がったのが

 

ブレードタイプのスラッシュハーケンのブレードを円状に並べた所謂丸鋸、これをタイヤの代わりに四足ナイトメアの脚に取り付けることで回転丸鋸が完成する。その脚を持ちやすい太さに調整したナイトメアのフレーム素材にくくりつけ、もう一本脚を接続しバランスを整える。もう一本はタイヤはそのままにする事でタイヤによる移動補助と丸鋸による攻撃を兼ね備える獲物が完成した。

「でもよかったんですか陛下?陛下なら殴るからの方が得意なのでは?」

「殴ったり蹴ったりするにはそれなりの剛性が必要だ。しかし月下にそれを求めるのは酷だろう。だったら獲物を振るうことを俺は拒まんさ」

「あはぁ〜!要らない心配だったみたいですねぇ」

 咲世子にライドの脱出を任せると俺は月下に乗り込み、スザク達が開けた穴を通って上に向かう。するとスザクから通信が入った。

 

『ルルーシュ、恐らく敵の大将らしきナイトメアを発見した。座標を送る』

「分かった。すぐに向かう」




脳筋世界なら何しても許されるのでスザクが平和を乱したことそっちのけで相手を鍛えていても問題はない。いいね?(殴打)

スザクは鞭打ちされてない(されても無傷)なので原作のような弱体化は受けておらず、更にムキムキなので自力で脱出してます。文句はないね?(殴打殴打)

嘆きの大監獄脱出戦…なんだかルルーシュがどんどん馬鹿になっていく気がしますがきっと気のせいです。気のせいです。(殴打殴打殴打)


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TRAINING04 シェスタールの誇り

 現在ルルーシュ達によるたった3機のナイトメア…さながらパイロットの力量というどうしようもない要素を正面から叩きつけて敵の作戦そのものを捩じ伏せる、「全速前進作戦」が行われているのは嘆きの大監獄。そして嘆きの大監獄を攻める部隊を指揮しているのはジルクスタンの親衛隊隊長、シェスタール フォーグナーだった。
『先行したナイトメア部隊、突破されました!…信じられない!たった一機のゲド・バッカに複数のフロアを制圧されるなんて…』
「な、なんだこれは…!戦略が機能しない!?私はこの日の為に『モンキーでも分かる戦略指南書(初級編:著者L.L.)』で戦略を学んだのだぞ!」
 シェスタールは悔しさに唇を噛み、机に拳を叩きつける。
「やはりエクスカリバー氏にも来ていただくべきだったのでは?」
「…私はあの男は好かん、あのなんでも見通したかのような目がな…!マリオ、私と共に死地に飛び込めと言ったら来てくれるか?」
「…それが命令なら行きますよ。しかし指揮官であるシェスタール様も出られるのですか?」
「ならばついて来い!英雄の私…つまり上の者自らが出なければ部下達は着いてこない!尊敬する戦略家のL.L.氏もそう言っている!」
「はぁ…ナムジャララタック…」
 青き人型のナイトメア、ハニーブ スル ヒーバーと月下の二機が監獄へと足を踏み入れた。


『全速前進だ!』

 ルルーシュの指示に従い、僕は再び上のフロアに突入し、そこで独楽のように回転しつつ前進し、回転する視界の中でモニターを確認して肩のキャノンを放つ。

「済まないカレン、C.C.、二機ほど柱の影の死角だったから倒し損ねた。掃除を頼めるかい!?」

『任せて!』

『誰に言っている』

 更に上のフロアに向かうとそこには青いナイトメアと僕が乗るのを拒んだナイトメアと同じタイプのナイトメアが立っていた。ルルーシュに連絡を取ると直ぐに向かうと言っていた。

 

 ルルーシュと合流すると相手の青いナイトメアが抜剣した。それにしてもあの青いナイトメア、初めて見るタイプだ。難民キャンプで襲ってきたのとはまた別のようだけど…

『私はジルクスタン親衛隊隊長、誇りあるフォーグナーの血を引くシェスタール フォーグナーである!私の策を破った実力は素直に賞賛に値する!だが、ここらで降伏をお薦めしたい、我々としては嚮主C.C.様の身柄さえ頂ければ手を引くし、ナナリー殿もお返ししようではないか』

 やはりジルクスタンがナナリーを…!

『私は…ゼロ!』

『ゼロだと…?』

『C.C.の身柄を引き渡せだと?残念ながら私は彼女を守ると決めている。君のような英雄気取りが重職に就くような国に彼女を任せるわけにはいかないのでな』

『英雄…"気取り"だと…?貴様ッ!フォーグナーを侮辱した罪は重いぞ!私直々の罰を受けるが良い!!』

『罪?罰だと…?』

 ルルーシュは何故か罪と罰と言う言葉に反応を示し、突然ルルーシュからスゴ味が溢れてきた。

『貴様らを誘拐罪と監禁罪で断罪する!理由は無論分かっているな?貴様らがスザクをこんな監獄に繋ぎ、ナナリーを誘拐したからだ!覚悟の準備をしておくが良い。近い内にぶちのめす!顔面もぶちのめす!ナナリーも問答無用で返して貰う。命乞いの準備もしておくが良い!貴様らは犯罪者だ!顔面に拳ぶち込まれる楽しみにしておくが良い!いいですね!』

 ルルーシュはナナリーを誘拐された事で興奮しているのか、武器を振りかぶって距離を詰めていく。しかしルルーシュの丸鋸はシェスタールには届かず、代わりに何度か見た刀に止められていた。

『これは…廻転刃刀と月下…チィ!どこから流れた!』

 刀による薙ぎ払いを石突の代わりに取り付けられたタイヤによって速度を得て距離を取る事で回避していた。

『スザク!俺はこいつの相手をする!お前達はあの青いナイトメアをやれ!』

「分かった」

 とは言え敵の数は多い。密集陣形からの一斉砲撃を縦横に動き回って回避しつつ、こちらも砲撃を与えて数を減らしていく。

「僕が囮になる!カレンとC.C.は敵の数を減らしてくれ!」

『オッケー!やられるんじゃないわよスザク!』

『このまま敵の大将を倒してしまっても構わんのだろう?』

 頼もしい二人に背中を預け、引き続き敵陣を縦横無尽に駆け抜ける。

『止められねえってこんなの!』

 一機また一機と蹴散らしていくと、使っているナイトメアの主砲の弾薬が切れた。僕はスラッシュハーケンで敵のナイトメアを飛び越えつつ乗り捨て、そのまま下にいたナイトメアに組み付く。ハッチを無理やりこじ開け、中のパイロットをブン殴りつつ摘み出し乗り換える。

『おい!敵がナイトメアを乗り換えたぞ!』『戦闘中にふざけやがって!』

 ルルーシュ達に自分が乗り換えた機体の信号を報告しつつ、放たれた砲弾を地面をブチ抜いて躱し、続けて天井を攻撃して足場を崩す。落ちまいとスラッシュハーケンで逃げる敵を撃ち落としていると通信が入った。

『スザク、そろそろこちらの弾薬が保たない、戻って来られる?』

「ハッチを無理矢理こじ開ければナイトメアを奪えると思うけど」

『そんな離れ業はお前とルルーシュくらいにしかできん』

 言われた通り戻ると敵の数はかなり減っていた。…瞬間、アサルトライフルで左の砲身を撃ち抜かれてしまう。

「読まれていた…?」

『ふん!所詮はテロリスト、英雄の血筋には勝てまい!』

 どうやらあのあの青いナイトメアのパイロットは中々やるようだ。スラッシュハーケンを放つとブレードで弾かれ、咄嗟に飛び退くと僕の居た位置にアサルトライフルの弾が着弾する。中々正確な射撃だ。

「ルルーシュ、そっちはどうだい?」

『悪いなスザク、相手も中々やる…援護には行けなそうだ』

「分かった。こちらも手強くてそちらの援護には行けなそうだ。」

 同じ性能のナイトメアとは言えルルーシュでも決めきれないとは…。幸い、もう少し時間を稼げばC.C.とカレンが補給を終えて戻ってくる筈だ。狙いを定めつつ、前進してスラッシュハーケンによる牽制をしつつ相手の動きを確認する。今度はスラッシュハーケンを避けてやり過ごす様だ。相手のアサルトライフルを右手で受けつつ砲撃、右腕は壊れてしまうし、こちらの攻撃もブレードで弾かれたがそれは計算通り、初めから僕の狙いは相手の後ろにいたナイトメアの残骸、それをスラッシュハーケンで引き戻して相手に後ろからぶつけるのだ。

『ふん!背後からの攻撃をこの私が気付いていないとでも?」

 スラッシュハーケンで天井へと飛び退かれ躱されてしまった。更にアサルトライフルを受け、僕がナイトメアから飛び出ると爆散してしまう。

 

 しかしそれもまた想定内。

 

「今だ!カレン!C.C.!」

僕の開けた床の穴から飛び出た二人による砲撃、これは躱せない!

『何ッ!?』

カレンの砲撃が脚部に直撃、C.C.の砲撃は天井を貫き崩落を誘う。

『た、絶えてしまう、英雄の血統がッ!…父上ェッ!!』

 崩落した天井に彼は飲み込まれた。すると、左腕を切り落とされたルルーシュのナイトメアが近づいて来る。

『そちらも片付いた様だな。』

「ルルーシュ!そっちも終わった様だね」

『いや、こちらは逃げられた。だがロイドに確認したところ敵は撤退を開始している。今のうちに脱出するぞ』

 

 こうして僕らは大監獄から脱出し、国境沿いの村に向かう事となった。

 

 

 

 村に着くとコーネリアから歓迎を受けた。スナイパーライフルが多数向けられているが、姉弟の再会を見たいだけだろう。うん、そうに違いない。

「久しぶりだなルルーシュ」

「お久しぶりです姉上。まさか生きておられたとは。」

「ふん、お互い様だ。にわかには信じ難いが…まさかあの爆破も演出で、生きながらえていたとはな。とんだペテン師だ」

 スザクはともかく、俺は本当に爆破に巻き込まれて粉微塵にはなったのだがな…まぁ、これを言っても意味はないだろう。

「ジルクスタンの追手から逃げてきたのだろうが、お前とスザクを超合衆国に入れるつもりはない」

「姉上、間違っておられますよ。私は逃げてきたのではなく、姉上達と合流するためにここに来たのです。」

「戯言を言うな!」

 するとコーネリアは部下に保たせていたスナイパーライフルを受け取り、俺に突き付けてきた。

「ここでもう一度死んでもらう!」

 放たれた弾丸を掴み、コーネリアの持つスナイパーライフルの砲身をへし折る。

「申し訳ないがあなた方にはこれより私の指揮下に入りナナリー奪還作戦に協力していただきたい」

「ナナリーの救出は我らも目指すところだ。しかし、幽閉されているであろう首都には12000人もの人員が割かれている。対するこちらは民間人を含めた20人程だ!それにあくまでも実態調査や先行隊の回収を目的とした集団なのだぞ!これ以上増やすこともできんしな…」

 敵との差は約600倍、俺とスザクが3000ずつ、カレンとC.C.で2000は対応できるとして残り4000か…。だが、ナナリーを救うだけならそれだけの相手ができれば十分だろう、何も全滅させる必要はないのだ。

「頼む、姉上…今頼れるのは姉上しか居ない。相手の狙いがわからない以上、ナナリーが何をされるかわからないのだ!」

「我らが力を貸せば勝てる保証でもあるというのか?」

「ある!私の筋肉を見ろ!!」

 俺はダブルバイセップスをし、筋肉を隆起させ服を弾け飛ばす。

「この筋肉、そして俺の頭脳、更にスザク!これらが揃えば負ける道理がない!」

「説得力皆無な要素でとんでもない説得力を生み出すのはやめろ!」

 叫ぶギルフォードだったが、姉上は少しだけ考えらように目を閉じ、そして開いた。

「…お前にはかつて約束を守ってくれたな。…今回も約束できるか?」

 俺はポージングをマストマスキュラーに変更し、力強くうなづく。

「できる。この筋肉に誓って!」

「…分かった。」

 するとコーネリアはいつも身に付けている銃と剣が一体化した獲物を取り出し、それを天に掲げた。

「これより我らはナナリー救出作戦に従い、ナナリーを助け出す!」

 

 そして時が夕方ということもあり、結団式が行われることになった。皆は酒や食事を楽しんでいるようだ。

「ところでルルーシュ…なぁ、ユフィの…あれはギアスとは関係ないんだよな?」

 コーネリアがチラリと見た先にはユーフェミアが現地の子供達と戯れ…ボクシングの手解きをしているらしい…ているところだった。

「…え、えぇ、ギアスキャンセラーは確実に機能しています。ですが、その、どうやらユフィの中の闘う才能が開花してしまった様で…アレにはなんとも」

「そうか…まぁ、あれがユフィの意志だと言うのなら尊重するしかあるまい」

 そう言えばコーネリアにはフレイヤから庇って貰った礼をまだ言って無かったな…

「姉上、あの時はフレイヤから庇っていただきありがとうございました。」

「…ユフィのためだ。お前のためではない。」

 すると、いつの間にかユフィは俺達の側に居たらしく、コーネリアの腕に絡んでいる。

「もう、お姉様ったら素直じゃないんですね。ルルーシュ、全て過去の事です。お姉様もとっくの昔にもう水に流してますよ」

 笑顔のユフィに言われ、コーネリアも頬を掻いていた。どうやら許してくれているらしい。ありがたいことだ。

「そうか、ありが…」

 

 瞬間、俺の顔面にユフィの拳が突き刺さった。

 

「ふふっ、私は水に流したとは言ってませんよ?お姉様を危険な目に合わせてたなんて、ラウンズになる時私聞いてなかったんですけど?」

 ユフィの拳で前が見えねえ…。

 更にユフィは俺に馬乗りになると顔面を殴打しまくった。そして俺はそれを甘んじて受け入れた。

「ユフィ?私はもう水に流したから、な?ユフィ、やめるんだユフィ!ユフィ!やめろ!!」

「お姉様は黙っててください!」

「あ、はい」

 

 しばらくするとユフィの殴打が止む。

「ふぅ、これでスッキリしました。過去のことは汗とともに綺麗さっぱり水に流します!さぁ!一緒にナナリーを助けましょうルルーシュ!」

「あ、あぁ、協力感謝する」

「平和を乱すものは撲殺です!」

 ギアスはとっくに解除されてるはずなんだがな…

 

 

 俺はとんでもないギアスをユーフェミアにかけてしまったのかもしれない。

 

 

 コーネリア達と別れてから背後に気配を感じ振り返ると、色白もやしと形容するのが相応しい少年と目が合う。彼は徐に俺の胸板に触れてきた。

「この筋肉…やっぱり生きていたんだね…!」

 俺の記憶にこんな奴は居ない…いや、この瞳には見覚えがある。それに…この魂を揺さぶる感覚は…!?

「お前…ロロか!?」

「うん、そうだよ兄さん。」

 やはりそうか、しかしこの体は一体…筋肉がなく、色も白い…髪型もスキンヘッドでは無くなっている…それに話し方も変だ。…いや、普通なのだが、ロロの場合それが変なのだ。

「実はね、兄さん。色々あったんだ。そのせいで僕はもう激しい運動ができなくなって…」

「そうだったのか、大変だったな。だが…またお前と話すことができて俺は嬉しいよ。」

 しばらくロロとも話し、ロロの最近について知る。どうやら人工心臓になった影響か、もうギアスは使えないらしい。だが、そんなことは関係ない。ロロはロロだ。ならば俺とナナリーの弟なのだ。すると乳首に刺激が走る。つまりモニカだ。

「この乳首の感触…!もしかして本物のルルーシュモニ!?」モミィ…

「これはこれはモニカ クルシェフスキー卿…相変わらずあなたは乳首を弄るのがお好きですね…」

 うーむ、なんだかだんだん癖になってきたような…いや、いけない、なんだかこれは良くないことのような気がする…!モニカを無視してモニカの隣に立つ人物に視線を移す。男は手を出してきた。つまり…握手か

「モニカ殿から誘われまして…はじめましてルルーシュ殿。表屋 拙炎と申します」

「そうか、よろしく頼む。表屋」

 俺は握手に応じ、話を合わせた。どう見ても卜部なのだが、まぁ、こいつにもこいつの事情があるのだろう。大方俺の側についたことを咎められ偽名での生活を余儀なくされてる…とかな。

 その後、ジェレミアとアーニャが合流し、ナイトメアの受け取りと最後の一人の合流が終わった。最後の一人は我が弟子たるマッスルガイの星刻だ。

「星刻…俺は…」

「いや、何も語ってくれるな。君の筋肉を見れば分かる。私だって天子様が誘拐されたら同じだけのことを同じ覚悟で成し遂げるだろう。必ずナナリー殿を取り戻すぞ」

「…ありがとう」

 俺は星刻の差し出した手を掴み、思い切り握力を込める。

「…強くなったようだな」

「無論だ。君の教えがあって今私はここに居る」

 力強く握り返してくる我が弟子もいるとはな、頼もしい限りだ。

 

 夜、俺が作戦を練っていると扇が訪ねてきた。こいつ居たのか。

「ゼロ、これは神楽耶様が『もしゼロが生きていたら渡してくれ』と言われていたデータです」

 確認するとどうやらジルクスタンの地形図の様だ。ありがたい。

 すると、扇は急に拳銃を取り出し、自分の首に突き付けた。

「ゼロ!今の日本があるのは君のおかげだ、あの時は裏切って済まない。ここで命を持って償……」

 あぁ、斑鳩での一件を言っているのか。今更過ぎたことだ。それにしても自殺を図るなど筋肉が鍛えられていない証拠だ。ここは心と体に教え込む必要があるだろう。

「この馬鹿野郎!!!」

 俺は扇の顔面を殴り、そのまま殴り飛ばす。落ちた銃を拾い上げそのままくしゃくしゃに丸めて放り投げる。

 

「過ぎた事は…汗とともに水に流す。それが…マッスルガイだ。」

 

 遥か後方にすっ飛んだ扇の元まで歩き、手を差し伸べる。

「…あ、ありがとう、ゼロ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 因みに、扇はこの一件が原因で全身の骨を粉砕骨折し、留守番となった。脆弱者め!!!

 




シェスタール君は修行の成果でそれなりに強くなってます。このように、ルルーシュ側が強くなっている関係でジルクスタン側にオリジナルキャラを投入等して強化しています。悪しからず

ルルーシュのスゴ味のところは「ワザップジョルノ」で検索してください。

●オマケ● オリジナルキャラ紹介
『エクスカリバー』
・ある日ジルクスタンにやってきた謎の人物。
・屈強でナイトメア操縦技術も高いが記憶の大半を失っているらしい。
・現在は顔の上半分を仮面で隠しているが、シェスタール曰くなんでも見通したかのような眼を特徴としている


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TRAINING05 シャムナの野望

 ジルクスタンの神官長のシャムナは今から弟と共に風呂に入ろうと服を脱ごうとしていた、その瞬間、シャムナの脳内に6時間分の記憶が流れ込んでくる。
「こ、これは…!」
「どうなさいました?シャムナ様」
「…今すぐに将軍に連絡を取り付けなさい」
「ナムジャララタック」
 ジルクスタンが強国である理由はシャムナにあった。彼女には無限新生という『死ぬと自分の記憶が6時間前の自分に送られるギアス』があった。この力の恐るべきところは自分が死ぬと過去の自分に記憶が送られるという性質故にC.C.などのコードユーザーにすら実質的にギアスが通用するという点である。シャムナはこの力を使い、ジルクスタンを侵攻しに来たブリタニアを退け、難民キャンプではスザクを追い込んだのだ。
 そしてシャムナの記憶に送られて来たのは少数による奇襲と速攻、気がついた時にはに攻め込まれ、あっという間に制圧された…というもの。目の前にナイトメアを含めて約20人の男女が現れたのだから驚くのも無理はない。そして恐ろしいことに…何度も何度もやり直し、いくら対策をすれどもすれども記憶が送られてくるのだ。お陰で風呂には入りそびれた。

「つ、強すぎる…!迷いのない神殿への速攻、ナナリーの場所を移せば途端に襲撃と強奪、こちらの対策を尽く無効化してくる…一体なんなのだ…!」
 相手がどこからどんな手で攻めてくるのか分かっていても対処しきれないというふざけた事態にシャムナは頭がおかしくなりそうになる。更に追い討ちとして外交ルートはどう頑張ってもシュナイゼル率いる黒の騎士団による上陸作戦を止められず、目の前の敵に粘ったとしても上陸作戦の時間になれば質量で押しつぶされることが確定してしまった。結果的にシャムナに取れる選択肢は『Cの世界にアクセスするシステムを完成させ、時の戻りを自由にし、全てをやり直す』ことしか無くなってしまった。その為の時間稼ぎだ。…その時間稼ぎが全く出来ないのだから辛いところである。システムの完成と軍への指示…両方やらなくっちゃぁいけないってのが神官長の辛いところだな。
 そもそもの話として6時間巻き戻せたとしてもやれる事は限られている。取らねばならない対策は多く、備えるにしても限度があった。それほどにゼロと愉快な仲間達というドリームチームは強靭無敵で最強だった。それが搦手を放棄して全速前進し、こちらの対策を全て跳ね除けるのだから始末が悪い。

「まだよ…!システムが完成さえすれば…!私の『無限新生』は無敵な能力…運命はこの私を『頂点』に選んでくれたッ!このシャムナとジルクスタンはいつだって危機を乗り越えてきた『強国』なのよッ!」

 それではシャムナの悪足掻きと本編スタートです!
(今回セリフ少なめです。ごめんなさい)


「それではこれよりナナリー奪還作戦の概要を説明する!」

 こちらの駒はコーネリア、ギルフォード、ユフィ、ジェレミア、アーニャ、卜部、モニカ、星刻、咲世子、ロイド、セシル、C.C.、スザク、カレン、ロロ、そして俺自身。

 更にナイトメアとして、コーネリアとギルフォードにクインローゼス、ユフィのフレームコート・ピンクタスク、ジェレミアのサザーランドローヤル、アーニャのモルドレッドビルドアップ、星刻の神虎、スザクのフレームコート・ホワイトファング、カレンのフレームコート・火焔光背、そして俺の真母衣波 零式。C.C.とロロには月虹影を任せてある。これだけの戦力があるならば小細工は不要。つまり…

 

 

「全軍全速前進だ!!」

 

 

 どんな能力かはわからないものの、C.C.から聞いたギアス能力者と思わしき襲撃者。そして実際に存在した大監獄の門、そしてスザクが言っていた『まるで先読みされていたかのような罠と襲撃』これらから考え得るに敵にはギアス能力者がいる。そしてスザクに対して『罠』という手段を取ったことから、手段は兎も角先読みが可能なギアスだと分かる。心を読んで罠に誘導したという線もあるが…その場合、この作戦に対して無意味だ。何故ならこちらの作戦は全軍全速前進だからな。心を読んだとしても意味がない。俺がかつてマオに対して使った殴れるまで殴る作戦と同じだからだ。それに、『ジルクスタンの予言』という噂は調べれば簡単に知ることができた。心を読むことを予言とは言わないだろう…まぁ、全ての情報を網羅して計算するならば話は別だが。

 そして敵のギアスには必ず穴がある。その証拠がシェスタールとかいう親衛隊長の死だ。仮に未来を読むギアスを持っていたとして、我々が今から攻め込むとしよう、ならば何故シェスタールは死んだ?スザク達を相手にそれなりに戦える相手なのであれば貴重な戦力のはずだ。そもそも、我々が脱獄できていなければこんなことにはなっていない、つまり、敵のギアスは完璧な能力ではなく、何かの条件がある。再使用間隔、範囲、対象、時間、使用条件…何かはわからないがな。

 そしてナナリーを誘拐したのは人質にするためではない。確かにナナリーはこの世で最も可愛いし、そばに置いて愛でたくなる魅力を兼ね備えては居る…が、その為に国が滅びて自らが死んでは意味がない。そもそも人質にしてもシュナイゼルには無意味だからな。故に目的はそういう物理的なものではない…相手がギアスを持っているのであれば恐らくCの世界に関係する何か。かつて神根島で見た門の前にあった機械…Cの世界に入る為の機械に必要なのだろう。原理は知らないが。

 C.C.曰く、現在はCの世界は現在自由に入ることができないらしい、そしてそんな怪しいオカルトアイテムを置くならどこか?決まっている…神殿だ。

 傭兵を排出する軍事国家、ナイトメアを見ても合理的で無骨な物だ。そんな科学の発達した現在に神殿などというものが国の首都のど真ん中にデカデカと存在している時点で影響力の大きさなど簡単に分かる。そして先読みのギアスがあるならばジルクスタンなどという小国を、シャルルの代のブリタニアが攻めあぐねていた理由にもなる。門が欲しいだけで他は大した価値もない土地…門そのものも他の土地でも代用可能なのであれば多大な損失を負ってまで奪う必要もない。

 だが、そうなるとギアスを持っているのは国の中心に属する人物…神官長か大将軍のどちらかだろうがそれも関係ない。何故ならこちらの作戦は少数による全速前進、速攻で決め、相手が何かをする前に量を質で押し潰す。例え何かしても質で跳ね除ける。

 かつてスザクが未来を読むギアスを持ったビスマルクを正面からのゴリ押しでねじ伏せたり、心を読むギアスを持ったマオを正面からのゴリ押しで捩じ伏せたのだから今回も相手の反応できない速度で殴れば済む話だ。

 

 司令塔である俺への砲撃を絶対守護領域を展開して防ぎきる。まさかスザクの奴が絶対守護領域を操れるほど鍛えていたのは驚きだが、今はひたすらにありがたい。俺が現れたと同時に一斉に砲撃をして来たところを見るに、やはり何かしらの方法でこちらの作戦は読んでいるようだ。…が、関係ない。こちらは全力で前進するのみ。常に各員の判断に任せ目的地である神殿に全速前進だ。俺、C.C.&ロロ、アーニャによる部隊はこのまま空から神殿に向かって全速前進!どんなに作戦を読んでも物資には限りがある。こちらの最高戦力であるカレン、スザク、ユフィの部隊に敵の戦力の大半が割かれるはず。でなければ3機のうちのいずれかがそのまま神殿に全速前進してナナリーを確保する。更に俺達とは別方向のコーネリア、ギルフォード、星刻、ジェレミアの部隊もスザク達同様に大戦力、これを無視しても全速前進でナナリーの奪還は可能だ。そして相手がギアスを使ってもジェレミアならば無効化できる。残る歩兵隊は街中を全速前進。華奢ながらマッスルウーマンの咲世子と侍である卜部が居れば大半の物理障害は突破可能、ロイドとセシルが居ればあらゆる電子障害も突破できる。…モニカ?

 

 …。

 

 …あらゆる手段による全速前進により敵は同時に全てを対応する必要がある。ジルクスタンの処理能力ではいかなる手を持ってしても全てに対応し切ることは不可能なはずだ。

「アーニャ!敵部隊を薙ぎ払うぞ!」

『了解』

 アーニャのハドロン砲と真母衣波の胴体から放たれるハドロン砲…流石のスザクも反射計算はできなかったらしい…で敵を薙ぎ払い前進する。

『ルルーシュ、敵のギアスについて検討はついているのか?』

「能力は3つに絞り込めている。そのうちのいずれもに対応はできるが…問題は発動条件だ」

『ほう、既にそこまで絞り込んでいるとは流石だな。聞かせてくれるか?』

「1つ目は未来を見るギアス。こちらがどんな風に攻めるかが分かるならば対策は取れる。だがこの場合、最早相手のギアスを気にする必要が無い。何故ならこちらは未来を読まれた上でそれをねじ伏せるのだからな。更にこちらにはC.C.…お前がいる。お前は相手のギアスの効果を受け付けない、最悪俺が囮になりその間にお前が動けばナナリーは奪還できる。」

『なるほど。二つ目は?』

「こいつが一番厄介だ。タイムリープ…つまり過去に戻るギアス」

『過去に戻る?』

「そうだ。自由なタイミングか、何かのきっかけかは兎も角、過去に戻り経験を基に対策を立てる」

 コードユーザーの不死の原理の世界丸ごと版とでも言うべきだろうか。まぁ、ギアスは物理法則には干渉しないことを考慮すると…精神、要は記憶のみをバックアップの世界に送り付ける感じだろう。この場合の厄介な点はC.C.の行動すら見て対策ができることだ。何せ自分だけでギアスが完結しているのだからな。

 だが、仮に過去に戻るギアスでも付け入る隙はある…それは初見殺し。未来を見れるわけでは無いのだから初めて見る行動には対応出来ないはずだ。

『それでは三番目は?』

「無いとは思うがこちらの思考を読み取るマオのようなギアスだ。俺の思考でも読んで軍を動かした…」

 だが、これはあまり考えられない。いくらこちらの作戦を読んだからと言っても短時間でこんなに万全な対策ができるはずがない。更に言うならば未来が読めたからと言ってこれほど的確に兵を配備できるだろうか?まるで…何度も試行錯誤したかのような配置だ。

 故に大本命が過去に戻る、次に未来予知、大穴で思考を読み取るギアス。未来予知も思考の読み取りも全速前進でねじ伏せれば済む話な上、過去に戻ったところで取れる対応には限度がある。これが個人の生存のみに関わるのであればある程度はなんとかなるだろう、如何なる技もいかなる知恵も何度も過去に戻ることで経験を積む事で対処可能だ。しかしどうにもならないこともある。例えば今から1日戻って自由に鍛えられるからと言ってトラックを持ち上げられるはどれくらい居るだろうか?殆どいないだろう、俺やかつてのロロのように下地となる筋肉があるならば話は別だが。

 戻れるのが精神だけ、しかも本人のみなら軍をいかに指揮しようとも技量や技術の差は覆せない。そしてその証拠に俺達はもうすぐ敵陣を突破しようとしている。

「アーニャはこのままここに残り殿として追手を殲滅しろ!C.C.とロロはついて来い!」

『了解』

『分かったよ兄さん』

 そしてまずは俺だけで神殿に乗り込む。どうやらシャムナと思われる女は謎の装置に入っているようだな。今のうちだとナイトメアから飛び降りる。

「何奴!」

「当て身」

 武器を持つ女達の意識を刈り取ったらC.C.への指示だ

「C.C.、相手のギアスについて警戒しておいてくれ」

『分かった。』

 すると謎の装置からシャムナが出てくる。

「お前がシャムナか。既にこの場は俺が制圧した…つまりチェックメイトなんだよ。」

「…確かに制圧されてしまってるわね。この私の細腕ではどう頑張ろうと貴方には勝てない…でも、この『無限新生』の前では何者だろうとその『行動』は無意味となる!誰であろうとこのジルクスタンの永遠の繁栄を脅かす者は許さない…決して!確実に消え去って貰う…『最初の人類』はこのシャムナだッ!!」

 するとシャムナは自らを銃で撃ち抜いた。

「馬鹿な!?」

 そして…シャムナの瞳が怪しく光った。あれは…ギアス…か?

「…!そうか、発動条件は死ぬこと…!だがそれでは…」

「我が『無限新生』の能力の前ではこの世の全ての時間が巻き戻り、そして全ての人類は巻き戻す前の時間の中で動いたことを覚えていないッ!空の雲は千切れ飛ぶ事を忘れ、消えた炎は消えた瞬間を炎自身さえ覚えていない!『記憶』だけだ!この世界のことは私の『記憶』だけに残る!!」

 そしてシャムナは力が抜けたように倒れた。

「…また、会いましょうゼロ…」

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 …そしてその証拠に俺達はもうすぐ敵陣を突破しようとしている。

「アーニャはこのままここに残り殿として追手を殲滅しろ!C.C.とロロはついて来い!」

『了解』

『分かったよ兄さん』

 そしてまずは俺だけで神殿に乗り込む。どうやらシャムナと思われる女は謎の装置に入っているようだな。今のうちだとナイトメアから飛び降りる。

「何奴!」

「当て身」

 武器を持つ女達の意識を刈り取ったらC.C.への指示だ

「C.C.、相手のギアスについて警戒しておいてくれ」

『分かった。』

 すると謎の装置からシャムナが出てくると同時に、杖で床を叩いた。瞬間、背後から音がして振り向くとC.C.が月下に踏み潰されているのが見える。俺は今ナイトメアから降りている。つまり…

 

「私がシャムナよ。この場の制圧はこれで封じさせてもらった…つまりチェックメイトよ」




Q.ダモクレス攻防戦、ルルーシュにとらせた作戦は何だった?
A.ええと…全速前進作戦だね。
Q.嘆きの大監獄突破戦、復活したルルーシュにとらせた作戦は何だった?
A.…全速前進作戦だね。
Q.ルルーシュの知的さと戦略性どこやった?
A.…君のように勘の良い読者は嫌いじゃないよ(でも殴打)

Q.シャムナのセリフになんか既視感があるのですが。
A.キングクリムゾンッ!(読者の頭部を殴打)読者の既視感は消し飛ぶッ!!

●オマケ● オリジナルナイトメア紹介
『真母衣波 零式(脳筋)』
・ほぼ蜃気楼と同じ機体。スザクが使いこなせるくらいに鍛えた為、絶対守護領域を搭載している。
・胸部はただのハドロン砲に変更されている。

『フレームコート・ピンクタスク』
・スザクのフレームコート・ホワイトファングの姉妹機。
・最大の武器は大型のハーケンフィストである「ビッグフィスト」
・ビッグフィストの指はユーウェインの時に使っていたハーケンフィストと同じものであり、単純計算でユーウェイン5機分の殴打を同時に放つことが可能。
・ユフィの類稀な戦闘センスにより、全方位からの同時殴打が可能。
・フレームコートの例に漏れず内部にナイトメアを格納している

『ユーウェインsiN』
・ランスロットsiN同様の理由からsiN(罪)の名を冠する事で作成された機体
・色々と懲りてないユフィの「やっぱりデケェ拳でぶん殴りたい!撲殺です!」という要望で結局ハーケンフィストのみを武装とする機体となった。
・更にユフィから「足なんか飾りです」という意味不明な言動により脚部の代わりにハーケンフィストを装備しており計4つの拳で相手をボコボコにぶん殴ることが可能


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TRAINING06 シャリオの闘争

 シャムナは前回と同じように指示を出すと、前回まで敢えて現場に投入しなかった人物に声を掛ける
「マリオ、貴方に頼みたいことがあります」」
「はぁ、俺にですか」
 シャムナの作戦は前回同様ルルーシュ達に攻め込ませ、ルルーシュがナイトメアを降りた時に襲い掛かるというもの。

 全てが前回通りに動くのであれば速すぎる全速前進で到着するのは戦闘力の低い脚無しのナイトメアとルルーシュの乗るナイトメアのみ。シャムナの作戦は無理に全てを押さえるのではなく、敢えて穴を作り全速前進させ、少数ずつを始末しようという作戦だった。

 それでは本編スタートです!


 今頃みんなは作戦通り全速前進できているだろうか。先ほどから待ち伏せる敵を俺とモニカ殿で切り捨て、咲世子殿が誘導し、先を急ぐ。

「モニカ殿、随分藤堂流剣術が板についてきたようだな。」

「モニ〜師匠の教え方が上手いからモニ」モニモニ

 元ラウンズから言われると照れ臭い所があるな…。そのまま進んでいると敵の一団と出会した。

「警戒を、あの男…!」

 一人だけ格好の違う男、確かあれはギアスを持つとされていたハズだ。咲世子殿とアイコンタクトを取り、当初の通りのフォーメーションに移行する。

「ほう?貴殿が一人で相手をすると?しかし我々がそれに付き合う道理はないな」

 一斉に放たれた銃弾を全て斬り落とし、刀を構え直す。

「なっ…!?全て弾いただと…!?」

「藤堂流剣術を舐めるなよ」

「ふん、ならばこれでどうだ!」

 瞬間、目の前にモニカ殿が現れた。

「何…!?」

 そして後ろを振り返ると、先ほどの男達が立っていた。一体いつの間に背後を取られた…?

 向き直り刀を構えると、男は首を傾げている。

「?どうしたモニ?」モニ~?

 …モニ?

 

 よくよく見てみれば手に持っているものが大扇子だったり眼鏡だったりとあの男が持っているにはおかしすぎるもの。そして目の前のモニモニ言いながら跳ねる男…そしてギアスの存在…なるほど

 俺はモニカ殿の姿をしている者の方に体を向き直し刀を振るった…流石に避けられたが、ギアスの正体見破ったり!

「個体の認識を入れ替えるギアスか、厄介だな」

「ギアスの存在を知っていたのか、だからどうということはないがな!」

 踏み込んでの薙ぎ払いをバックステップで躱したモニカ殿の姿をした相手はすぐにこちらに銃を向けてきた。そしてその銃を弾くのは刀を持った敵の男の姿をした人物…恐らくはモニカ殿だ。

「感謝するモニカ殿」

「お安い御用モニ〜」モニニン

 俺は刀を相手の自分の体を使い相手の死角に刀を持っていく。そしてそのままモニカ殿の姿をした相手に距離を詰める。

「どの方向から斬撃が来るか読ませない技か、ちょこざいな」

 敵の発砲は左手に持った鞘で弾く。この鞘にはロイド殿にブレイズルミナスを仕込んでもらっているのだ…なかなか便利である。そしてようやく相手はそこで気がついたらしい。

「貴様!手に持っていた武器はどうした!」

「今更気づいたか?だがもう遅い!」

「何!?」

 モニカ殿の背後に回ったのは両手に逆手持ちで刀を持った敵の姿をしたモニカ殿。

「背後にッ!?」

 モニカ殿は一瞬の内に三回転し、計六度の斬撃を浴びせる。これぞ藤堂流剣術二太刀術の奥義の一つ、回天刀部六連だ。

「こんな…時代遅れの武器にィ!」

 あの技を受けてまだ動けるとは…なかなかタフだがこれで終いだ。

 俺はモニカ殿の姿が構えた銃を抜刀を模した手刀で叩き落とし、その勢いを殺さずに左手に持っておいた鞘で顔面を殴りつける。

「これが藤堂流剣術抜刀術の双龍斬だ。覚えておけ」

 一瞬の間の後全身の刀傷から血を噴き出し、モニカ殿は倒れ、次の瞬間元の男の姿に戻った。

「こちらも片付きました。先を急ぎましょう」

「分かった」

 どうやら俺とモニカ殿で一人を相手している間に他の敵は咲世子殿が始末してくれたらしい。このまま神殿に全速前進し、ナナリー殿を助けなければ。我々の前に敵がいたということは他の皆の所にも来ていたはず、他の皆は上手くやっているだろうか。

 

 

 

 我々は神殿裏からの接近を狙います。ルルーシュの話だと私達のところが最も敵が多いだろうとのことですが、問題ありません。それにしても…

「スザクは初めて乗る機体なのに随分上手く扱えているようですね」

『いえ、これでも結構手一杯です。それにフレームコートはやはり重過ぎるかなと』

『殴り合いには向かないわよねぇ…まぁ、火力と稼働時間が長いのはわかるけどさ』

 確かにフレームコートはその機体重量と付属武器の大型化から殴り合いには向かないかもしれませんね…。殴り合いには。

『そうだね、こればっかりは使って慣れていかないと』

 どうやらスザクも同じ意見のようです。

「ふふ、スザクとカレンさんとこんな風に話ができる日が来るなんて思いませんでした」

『…そ、そうだね』

 すると奇襲を受けました。まぁ、こちらは常に警戒しているので有効打にはなり得ませんが

 確かにフレームコートは殴り合いには向きません。それはこのフレームコート・ピンクタスクでも同じ。しかし、殴り合う必要はありません、何故なら…

「平和を乱したジルクスタンの皆さん!降伏してください!」

 私の願いは聞き届けられず、無情な発砲という返事が返ってきました、悲しいことです。

「…諦めて欲しかったんですけど、ダメですか?では…」

 戦場には沢山の敵が居ますね、これは殴り甲斐がありそう。

 

「皆殺しです。」

 

 ピンクタスクの大型のハーケンフィストであるビッグフィストを射出し、更にビックフィストの指であるハーケンフィストを射出。

「お行きなさい!ハーケンフィスト!」

 単純計算でユーウェイン5機分の攻撃で敵の機体を殴り潰します。ピンクタスクのハーケンフィストをくらいジルクスタンの皆さんはあっという間にひしゃげていきます。圧殺です。

「さぁ!スザクとカレンさんも早く!虐殺です!!」

『ぎゃ、虐殺はまずいよユフィ…』

『あくまで刃向かう相手限定って事で頼むわよユフィ!』

 スザクもカレンさんも容赦ない範囲攻撃で数を一気に減らしているようですね。

 すると、私のハーケンフィストの一つが何者かによって破壊されてしまいました。更にその機体は一気に距離を詰め、ピンクタスクを蹴ったのです。

「私を足蹴に…?無礼でしょう!」

『流石に硬いか、だがこのエクスカリバーなら!』

 恐ろしく早い手刀…!ガードに回したハーケンフィストがブレイズルミナスごと切られた…?だったら…!出し惜しみはせず全てのハーケンフィストを射出、この機体に対して全方位から同時に攻撃を仕掛けます!撲殺です!

『甘い!』

 !両手の手刀で同時に襲い掛かる拳を全て叩き切った…!?そんな…!

『我が名はエクスカリバー!全てを切り捨てる聖剣なり…!』

 素早い相手にピンクタスクでは勝てません…!こうなれば奥の手を…!

 

 

 

 僕が敵を薙ぎ払っていると突如、ホワイトファングに接近する機体を感知した。そしてその機体からの攻撃を回避しつつ、攻撃が来た方に視線を向けると難民キャンプで見た新型のナイトメアのようだ。

『スザクさん!勝負です!』

 あの機体に乗っているのはシャリオらしいな。

「来い!シャリオ!修行の成果…見せて貰うぞ!」

『はい!僕は貴方を超えて…最強の戦士になるんだ!最初から全力で行きます…メギストス…オメガッ!!』

 早い…!それに分身した!?

『このモードは機体各部に取り付けたフロートシステムを起動して機体各部の重量を軽くして運動性能を高める…!ついてこられますか?スザクさん!』

「なるほど、それがその機体本来の性能と言うことか!」

『えぇ!』

 このフレームコート・ホワイトファングでは重過ぎる…!シャリオの猛攻を防ぎ切れない…!重い…?重い物を着て動き回ったということは僕は更に鍛えられているということだ。つまり…!

『なんだ!?動きが速くなった!?』

「マッスルデバイス…パイロットの筋肉量、つまり耐えられる負荷量に応じて自動的に期待の最大出力をセーブするシステムだ。」

『そんな…!僕と戦ったこの一瞬で更に鍛えられたとでも!?』

「そうだ」

 僕にかけられた『鍛える』ギアスが僕と、シャリオの互いを鍛えさせ、その鍛錬により僕の肉体は更にパワーアップ!マッスルデバイスが僕の筋肉を読み取って出力を上げているんだ…!

『僕は!姉さんのために、民の為に戦っているんだ!負ける訳には行かない!』

 なんだ…!?またシャリオの動きが速くなった…誰かのために戦うという心の筋肉によって動きが良くなったとでも言うのか!

「しまっ…」

『これで…トドメです!!』

 サーベルによる一刀でホワイトファングは地に墜ちた。まさか僕が負けるなんて…!いや、ナナリーのために負けられないというのならこちらだって誰かのために戦っている!それに…!

 ホワイトファングの各アーマーをパージさせ、僕は再び空へと舞い戻る。元よりフレームコートは文字通りナイトメアに着せる追加装甲だ。

『なんだ…!?中から…これは……!』

「ランスロットsiN…これからが僕の本気だよ、シャリオ!」

『スザクさんの…本気!…来い!僕は貴方から教わったこの技で…貴方を超える!!』

「正面から捩じ伏せてやる!最終ラウンドだ…行くぞ!」

 僕とシャリオは陽昇流誠壱式旋風脚を繰り出し、お互いの脚部をぶつけ合う

 

「『だぁぁぁああああああああ!!!!」』

 

『もっと…もっとだ!もっと僕にパワーを!スザクさんが筋肉で更に強くなるなら、こっちだって薬の量を増やせばッ!!これだけの力があれば僕にもう…予言なんて要らないッ!!』

 ランスロットが押されている…!?そんな馬鹿な!いや、思い出せ…さっきまでフレームコートという重りをつけて戦っていた…そして今はその重りを外している…つまり僕はさっきまでよりもより鍛えられた状態で身軽に動ける!

 

 と言うことは今の僕はとても鍛えられた状態!!

 

「君の覚悟、受け取った!だがここは!!」

『押し負けている!?僕が…!こんな事ならもっと早く筋肉を鍛えるべきだった…!』

 ランスロットの脚がシャリオのナイトメアの脚を砕く。続け様に拳を叩き込み顔面をブチ壊す。そしてよろめいたところにフットスタンプを叩き込むとシャリオは落ちていった。まぁ、この高さなら死にはしないだろう。

 するとユフィから通信が入った。あちらも終わったのだろうか?

『ごめんなさいスザク、やられちゃいました…』

 …ユフィのユーウェインが負けたのか!?相手は一体…

「!」

 瞬時にMVSを引き抜きクロスしてその斬撃を防ぐ。

「この…太刀筋は…!」

『シャリオ様を破るか…だが、ここは、抜かせん…!』

 ユフィを倒すほどの相手だ…油断は出来ない。

『この機体こそエクスカリバー!切れぬもの無き聖剣なり!』

「…まさか!その言い回し…ビスマルクさん!?」

『…我が名はエクスカリバー!見るが良い、メギストスオメガを!!』

 この機体も分身できるのか!?見た限り相手は近接戦特化型…だったら…

『遠距離から銃を放てば勝てる、と?愚かなり』

 なっ…思考を読まれた!?咄嗟のガードをすり抜けての一撃でヴァリスが破壊されてしまった。こんな的確に…!

 距離を取るための蹴りを躱され、一瞬にして背後に回られる。エナジーウィングをブレード代わりに薙ぎ払うがそれすらも読まれていたのか高度を落とされ下に潜り込まれていた。

「強い…!」

 相手はあのビスマルクさんだと考えるべきだ。これはその先読み、そうでなければ説明がつかない!

『死ぬが良…むっ!?』

 相手が誰であろうと、いや、ビスマルクさんならばなおさら、僕のやることは変わらない。

 

「鍛える…!」

 

 この鍛えるギアスとマッスルデバイス、そしてランスロットsiN…この機体ならば相手の知覚速度など無視しての攻撃が可能な筈!

「くらえ!陽昇流誠壱式旋風脚!!」

『その技は!』

 かつてビスマルクさんにとどめを刺した技!これならッ!

『ッ!』

「クソ!」

 僕の蹴りは当たったかのように見えたがギリギリで躱されていた…やはり早い!

『残念だったな。先程の蹴り…今ので覚えたッ!』

 MVSでの斬撃を同じく手刀で返され弾かれると再び僕とビスマルクさんの間に距離ができる。ランスロットsiNを一気に急上昇させ、続けて急降下、右脚が無いなら左脚で蹴ればいいじゃ無いか。ゼロとして戦う中で習得した左陽昇流誠壱式旋風脚!これで…!

 

『言ったはずだぞ?今ので覚えたと!』

 恐ろしく早い手刀によりランスロットsiNの脚は切り裂かれてしまい、蹴りは不発に終わる。

 しかしこれで逆に僕の心までを読んでいるわけでは無いと確信した。

『これでその癖の悪い脚は切り落とした。これで…』

 僕は再び距離を取るためにランスロットsiNを走らせる。

『逃すか!』

 逃げる?それは違う!全てはこの攻撃につなげるための布石!ランスロットsiNを停止させ逆方向…つまり追ってくるビスマルクさんへとMVSを投擲!

『武器の投擲で意表を突いたつもりか?無駄な事!』

 MVSは残念ながら手刀によって弾かれる…

 

 

 が、それは一本目の話!MVSは二本投げている!!

 

 

『な、何ッ!?まさか…同じ軌道で二本投げたのか!?…はっ!?』

 二本目は一本目を弾いた方とは逆の腕に突き刺さり破壊した、後は…一気に距離を詰めての接近戦!!

『隙を生じぬ二段構えならぬ三段構えだと!?それに…早い!』

 貴方との再戦で僕は更に鍛えられた!シャリオとの連戦、そして脚部を失うと言う追い込み、更に脚がなくなった分身機体は軽い!!これにより僕は凄まじい速度での急成長を遂げているッ!!この、速度を乗せた手刀でッ!!

『愚かなり!エクスカリバーたる我にただの手刀で挑むなど!!』

「いいや、違う…これはただの手刀なんかじゃない!」

『何ッ!?』

 そうだ、ビスマルクさんはかつて言っていた…ビスマルクさんの手刀は皇帝シャルルにより鍛えられた物だと、ならば僕だって…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは僕の"アロンダイト"!今まで僕が!!出会ってきた!!!全ての人によって!!!!鍛えられた… 聖 剣 だァーーーッ!!!!!!」

 

 ルルーシュ達との出会い、そして別れ、再会と戦い、ユフィにコーネリアさん、鍛えるギアス、ラウンズのみんな、皇帝シャルル、そしてマリアンヌさん、ゼロとして生きる日々、それからシャリオ達も、今までの経験がこの手刀に宿っている!!

 僕とビスマルクさんの手刀がぶつかり、そのまま僕のアロンダイトがエクスカリバーを砕く。そのまま手刀はビスマルクさんのナイトメアを切り裂いていく。

『…!?…敗れる!?こ、この私が…私のエクスカリバーが!』

 そのままの勢いでコクピットを両断し突き抜ける。

 

『…二度も敗れるとは…枢木 スザク、見事…!』




モニカの事は変な語尾で認識する卜部

藤堂流剣術では普通の剣術の他に二太刀術や抜刀術が学べます。因みにスザクのMVS二本投げも藤堂流剣術の二太刀術ですね。ジョジョだと思ったら今度はるろうに剣心だよイカれてんなこの作者

恐ろしく早い手刀、ルルーシュやスザクやユフィやシュナイゼルや咲世子やジェレミアや卜部や星刻じゃなきゃ見逃しちゃうね。(ロロは見逃しはしないが今はもう対応できない)
見逃さない奴多すぎる問題

脳筋世界だとシャリオくんは心の筋肉に目覚めるので生存します。

Q.ユーウェインsiNの戦闘描写は?
A.キングクリムゾンッ!!(殴打)

Q.アロンダイトって何?
A.スザクはただの手刀じゃないと言っているが、ただの手刀。しかし厳密に言えばメチャクチャ早いこととランスロットsiNが強いため「滅茶苦茶強いただの手刀」である。

●オマケ● オリジナルナイトメア紹介
『エクスカリバー』
・ナギドシュメインと同型機のエクスカリバー専用機。パイロット名と機体名と武器名が全て同じで混乱する。
・ナギドシュメインと異なり、武器とフロートシステム以外のほとんどの機能を削ぎ落とし近接戦闘に特化している。
・武装は両手の手刀(名称は機体名と同じエクスカリバーである)はMVS並みの切れ味を誇り、パイロットの技量とナイトメアの性能と合わせることで並みのブレイズルミナスであれば切り裂くことが可能。
・メギストスオメガももちろん使用可能。パイロットの筋肉量の関係で薬を用いず使用できる。(但し負荷はかかるので負担にはなる)


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TRAINING FINAL L.L.の契約

「ボルボナ フォーグナー!この贅肉者がァ!!」
 コーネリアはユフィに教わった撲殺の殴打としての連打がボルボナ フォーグナーの腹に突き刺さる。二人のナイトメア戦はコーネリアの優勢に終わったが、ボルボナ フォーグナーの自爆により二人はナイトメアを降りての肉弾戦に発展していたのだ。
「ぐぅ…!だが!この腹はそのまま貴様の拳から致命傷を防ぐ防御壁よ!更にこれで動けまい!」
「何ィ!?腕が抜けないだと!?」
 ボルボナはコーネリアの拳を腹に沈ませ拘束する。コーネリアは両腕を引き抜こうと腕を引っ張るが脂肪と脂肪の間に挟まれており、がっちりとホールドされていた。そしてそのままボルボナは手を振り上げ、コーネリアの腕に手刀を加えていく
「戦場で沢山の命を殺めた悪き魔女の腕はこの腕か!?この腕か!この腹かァ!?」
 完全に拘束されての手刀の連打は流石のコーネリアでも耐え難く顔を歪めていく。
「痛みでガードの緩んだ今が好機!この拳で貴様の顔を汚してやる!」
 拘束を解き、拳を振り被るボルボナだったが、それは悪手であった。
「…拘束を解いたな?脆弱者がッ!!痛みなどで屈する私では無い!!」
 コーネリアはボルボナ フォーグナーの拳に対して体を投げ出すように大きく踏み込んですり抜けると全体重を乗せた拳を顔面に叩き込んだ。
「ユフィに何度も食らって今や体に染み込んだ…カウンター技…実戦では初めて使うが、上手く決まったな…!」

 コーネリアのジョルトカウンターが決まったところで最終話スタートです!


「私がシャムナよ。この場の制圧はこれで封じさせてもらった…つまりチェックメイトよ」

 チェックメイトだと…?この俺が…

「やりなさい!マリオ!」

『ナムジャララタック!』

 振り下ろされるのは月下の廻転刃刀。C.C.は再生途中、月虹影は動かせない、俺はナイトメアから降りている。ここは素手でなんとかするしかないだろう。そう思って身構えるとシャムナから声が掛けられた。

「最早脱出不可能よ!ゼロ、貴方はチェスや将棋で言うところのチェックメイトにハマったのだから!」

 そして俺は廻転刃刀を右腕で受け止めた。

 

「次にお前は…『何故廻転刃刀で切れない!?』と言う」

 

「何故廻転刃刀で切れない!?…ハッ!?」

「馬鹿かお前。筋繊維だよ筋繊維。極限まで鍛えた幾億層もの筋繊維が斬られるはずがないだろうが。俺の筋肉を甘く考えたお前の負けだ。」

 俺は左腕を変化させ、その握力で廻転刃刀を破壊し、一気に月下に近付き輻射波動を叩き込む。

『なんだこれは…!?クソ…!』

 どうやら月下のパイロットは脱出したようだな。

「マリオ…!?くそ…こうなったら…!」

 …?なんだ?シャムナは銃を取り出して…

 

 瞬間、俺の視界にはシャムナが手に持っていた銃を紛失し困惑している様と、心臓を抑えて蹲っているロロの姿が写った。

「ブ、ブラザー…!い、今の、うち…デス…!」

「…貴様いつの間に…一体どうやって…!」

 もうギアスは使えないと言っていたが…この土壇場でギアスを再び発動させるとはな…流石は俺の弟だ。

 

 そして確信した。シャムナが手に持った銃…その銃で何をするつもりだった?対肉ダルマ弾でも俺に撃つつもりだったか?あり得ない、生半可な銃撃では俺には当たらないことは何度もやり直したなら分かるはず。実際に、この距離なら確実にキャッチできると断言出来る。では何のために銃を?簡単だ、自分に使うためだ。自分が死んだら過去に戻るギアス。それが相手の能力…!

 俺はクラウチングスタートの姿勢を取り、瞬時にシャムナに接近した。

「な、何を!?」

 今回は膝蹴りではなく、思い切り手刀を首に叩き込む。恐ろしく早い手刀、放っている俺ですら見逃してしまうそれは確実に意識を切り裂き丸一日は眠る事になるだろう。ぶっ倒すと思った時には既にその行動は終わっている…!こいつのギアスがいつまで戻れるかは不明だが、恐らく10時間も戻ることはできないはず。戻れるのなら俺達が監獄から出られないように手を打つはずだからな。念のために20時間後に神殿が崩れるように神殿を爆破するとして…問題はナナリーだ。とっくに装置から出したのに意識がない。

「もしかしてCの世界に意識を取り残されてるんじゃないのか?」

 なるほど、あり得る。システムの一部として取り込まれているということか。俺は単独でのアクセスに自信がなかったため仕方なくC.C.と二人でナナリーを迎えにいく事になった。

 

「これがCの世界か、俺のせいなのか…随分前とは異なる雰囲気だな。」

「あぁ…ナナリーはあっちの方にいるな。迎えにいくのはお前一人に任せていいか?私は少し寄りたい所がある」

「分かった。」

 C.C.と別れ、言われた方向に進むとナナリーを見つけた。…そこには確かにナナリーが居た。この世で最も可愛らしく、目に入れても痛くなかった、そして見た目だけでなく中身も完璧な我が妹だ。だが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故かナナリーは腕を組んでの仁王立ちでこちらを睨んでいる。可愛い。

 

「お兄様!迎えに来るのが遅いです!」

「あ、はい、すみません」

 ここはCの世界だからなのか、足が不自由な筈のナナリーが普通に走ってこちらに寄って来る。その走る姿はかつて本国で何度も見た母上そのものだ。…いかん、嫌な予感がする!バックステップを踏むと目の前をナナリーの足が振り上げられた。

「チッ!」

 舌打ち…!?というか今の軌道…

「金的を狙っていたのかナナリー!?」

「よくもあの時殴りましたね!!そのお返しです!!」

 ダモクレスでの事を根に持ってたのか…確かにあの時はああするしかなかったから腹パンしたが…いや、ここは素直に謝ろう。

「あ、あの時はすまなかった、だが…」

「言い訳は聞きたくありません!」

 ナナリーの怒りは本物だ…!低身長を活かしての低姿勢の潜り込むようなステップワーク…今まで車椅子生活だったナナリーが何故こんな体術を繰り広げられるかは謎だが、まぁ…俺の妹で母上の娘だからな…。瞬間脛に激痛が走った。それはナナリーによる足払いだ。俺の認知を超えるスピードだと…!?

「な、何をするんだナナリー!許さんッ!」

「許さないのは私の方ですッ!」

 腹に膝をブチ込まれるが、その程度が俺に効くはずはない。ナナリーを捕まえようと腕を振るうが、悲しくも空を切り、後頭部に膝蹴りをブチ込まれる。向き直った俺に対し、ナナリーは既に次の攻撃行動に移っていた。

「たぁっ!」

 声は可愛らしいが攻撃は全く可愛らしくないナナリーの喉潰しを腕を掴んで防ぐと掴んだ腕のファニーボーンに的確に膝をブチ込み刺激してくる。いや、一体いつ覚えたんだそんな攻撃…。溜まらず手を離しつつ距離を取るが既にナナリーの姿は視界にはない。振り返れども姿はない。再び正面を向き直すと首を掴まれ、腕を振りかぶるナナリーが視界に映る。

「俺でも捉えられない動きとはな…!」

 

「お兄様ッ!歯ァ食いしばって下さいッ!!!」

 

 顔面にナナリーの拳が突き刺さるという貴重な体験をすると、ナナリーは途端に大人しく成りその場に座り込んだ。可愛い。そんなナナリーをダンベルのように抱き抱える。…少し重くなったか?ナナリー…逞しくなったんだな、身も心も。

「もう、お兄様ったら…また私をダンベル代わりにして」

「ナナリーの成長を感じるにはこれが一番だと思ってな。…みんなのところに帰ろうか、一緒に」

「はい」

 

 Cの世界から出るとどうやらC.C.も出たところらしく目が合う。

「そっちの用は済んだのか?」

「…あぁ、お前達も無事に出られたようで安心したぞ。」

 真母衣波にはロロに乗って貰い、俺とC.C.で月虹影に乗る。ナナリーを膝の上に乗せて発進させ、離脱を図る。

「お兄様…何だか懐かしいですね、C.C.さんと三人でナイトメアに乗るなんて」

 思い出されるのはガウェインの中だ。あの時と異なり今回は俺が後部座席だが。

「…そうだな。あの時の約束をようやく守れた気分だ」

「えぇ、これで針を千本飲まなくて良くなりましたね」

「はは、そうだな」

 その後、神殿に集結した味方を確認するといくつかのナイトメアはやられたものの全員無事なようだ。それにシュナイゼルによる上陸作戦も始まっている。これで完全勝利だと言えるだろう。

 

 スザクが連れてきた少年、シャリオにシャムナが死んだ事を伝えると悲しそうな顔こそしたが受け入れてくれたようだ。見た目よりも心が鍛えられているらしい。

「…私は君の姉の仇だ。怒りはないのか?」

「…復讐とか、戦いはもう良いんです。僕の身体を維持する為に今まで多くの民が犠牲になった…これ以上犠牲を出す前に、これを機にジルクスタンは変わろうと思います。予言ではなく、これからは自らの意志と脚で歩いていこうと思います。…僕は歩けませんけど」

 聞けば彼は脚が悪いらしい。脚が不自由なのにスザクと互角に渡り合えるとは…。その話を聞いた俺の背中に居るナナリーは興味を示し始めた。…きっとジルクスタンはこれからそう言った体の不自由な人を助けるための技術を開発する国として発展していくのだろう。今回の戦いで失った物は多いだろうが…人も国も失敗や苦労を糧に成長し、前に進んでいく。

 

 

 …つまり筋肉と同じだな!

 

 

 ナナリーとはCの世界で拳を交え分かりあった。ナナリーはもう俺の手を離れてもきっと上手く生きていける。寧ろ俺がいたら足枷となってしまうだろう。…というかジルクスタンの技術でナイトメアを作ってもらう気満々らしい。Cの世界のことを考えると…まぁ俺の妹だ。訓練すればあっという間に俺を凌駕するパイロットになるだろう、なって誰と戦うんだと言う問題はあるがな。是非ともナナリーが戦場の恐怖になる時代が来ない事を祈るばかりだ。

 何にしても問題は全て片付いた。となると俺には果たさねばならない約束がある。電話を取り出しその番号にかける。

『はい、もしもし?』

「やぁ、シャーリー。俺だ、ルルーシュだ」

 シャーリーには全てが終わったらシャーリーの気持ちに返事をすると約束をしていた。結局俺はあの後ゼロレクイエムで約束を破ってしまった訳だが、生き返ったのなら話は別だ。

『ルル!?本当のルルなの!?良かった!上手くいったんだね!』

「あぁ、そうらしい。」

『らしいって…なんで人事みたいに言ってるの?まぁ、ルルらしいけど』

 おかしそうに笑う声を聞けばクスクスと笑う彼女の顔が思い浮かぶ。

『それで?返事、聞かせてもらえる?』

「あぁ…散々待たせておいて済まないとは思う、シャーリーの好意も…素直に嬉しい。だが、やはり俺はシャーリーとは一緒にならない。」

『はー…やっぱりかぁ…。C.C.さんでしょ?」

「…そうだ。」

 しばらく言葉が止むが、ここは何も言わず黙ってシャーリーの返事を待とう…。

『ルルの、ばかやろー!』

「うわっ!?」

 耳を澄ませていた後に突然の大声だったので流石に焦る。あまり驚かされると謝って握りつぶしかねないからやめてほしいのだがな…。

『はぁ、スッキリした!じゃあC.C.のこと、よろしくねルル』

「あぁ。ありがとう、シャーリー」

 電話を終えると視界の端に大きな荷物を担ぎ、ヨロヨロと歩き出すC.C.を捉えた。…アイツ何してるんだ?

 

 

 

 奴隷時代に重たい荷物を持つのは慣れていたつもりだったが、いざ久しぶりにやるとなると結構キツイ、そんな訳で俯いていた私の前に人影が差し込んだ、

「どこへ行くんだぁ…?」

「な、難民と一緒に国外に行く準備だ」

 ルルーシュにはルルーシュの居場所がある。私はクールに去るさ…

「一人で行く気か?」

 瞬間私の体が軽くなり、ルルーシュが荷物を代わりに担いだ。

「…お前、私と一緒に来る気か?ナナリーはどうする」

「何怒ってるんだ。もうナナリーは一人でも立派に生きていけるさ、それに頼れる友人や姉上、ユフィだって居る。それに弟のロロもな。」

 更にルルーシュは私まで担ごうとした方が流石にそれは遠慮すると少し残念そうな顔をした。こんな人の多いところで肩車なんてされたら恥ずかしすぎる。肩車ウサギ跳びのトラウマは今でも偶に夢に見るのだぞ…。

「俺はもうお前と同じ不老不死だ。いつまでもどこかの組織にいたら異常性に気付かれて面倒なトラブルが起こる。だから俺達はお互いにそばにいる方がいい。だろ?」

 それは…。

「それに…ありがたいことに何故か俺は不死身でありながら筋肉も鍛えられるらしいからな。だが…筋肉とは己の為に鍛えるものじゃない。守る相手がいてこその筋肉だ。」

「…!」

「お前を守ると約束したからな。これからはお前の隣でお前のために体を鍛えるとしよう。これは…L.L.とC.C.との間の契約だ。お前は俺の側に居ろ、その代わり俺がお前を守ってやる。」

 ルルーシュ…お前名前まで捨てて…そうか…。

 

「あぁ、結ぼう…その契約」

 

「そういえば…お前これからどうするつもりなんだ?」

 L.L.に話しかけられ、私は首を捻る。どうするもこうするも特に目的などない。離れるためにあそこを離れたのだから…

「いや、特に何かをするつもりはない。目的のない気楽な観光の旅でもしようと思ってたんだ。今まではお前を取り戻す旅だったからな。まずは置いてきてしまったトラックを買い戻そうと思ってる。」

「なるほど、目的のない旅か…それも悪くないな。生まれてこの方目的もなく出かけるなんて経験はなかったからな」

 こいつの今までの人生は皇族、人質、ブリタニア転覆を目論む反逆者、悪虐皇帝…確かに暇する時間は無さそうだな。

 そんな雑談をしつつ二人で歩いていると、周りの難民達が響めき、空を見上げていた。それに釣られて私たちも空を見ると、流れ星のような物が落ちていく。

「あれは…ギアスの、欠片…?」

「…ギアスの欠片?何だそれは」

「詳しくは分からん。だが自然とそう思っただけだ」

 するとL.L.はため息を吐いた後ニヤリと笑った、

「ギアスに関するものならば人の世に放置するわけにはいかない。全て回収するぞ、C.C.」

「…どうやら早速旅の目的が出来てしまったみたいだな」

「ふっ、そうだな。だが、勿論俺に着いてきてくれるのだろう?C.C.」

 

「当たり前だろう?L.L.…何故なら我々は永遠の契約した…共犯者なのだからな!」

 

  ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 完




これにて「ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜」の物語は完結です!

R1、R2、そして腹筋のルルーシュ(復活のルルーシュシナリオ)を読んで下さりありがとうございました!

今回は縦読みはありませんよ。(笑)

キリの良さを重視して9月までは活動しようかなと思います。なので9月の4週目までだったら「え?あのキャラはどうなったの?」的なリクエストをいただけると…もしかしたら作者は書くかもしれませんね。(受付は活動報告にて行っています)
なお、リクエストがあったからと言って書かないかも知れませんので悪しからず。


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EXTRAINING
REQUESTRAINING01


【警告】これより先はオリジナルカップリングがイヤな人は読んではいけない

感想を見た。 →リクエストが来た。
           ↓       
         書いた。→投稿した。
                ↓
           シチュエーションは
             モニカの結婚式だ。

  独自のカップリングだ 原作で絡みがない二人だ。
    モニカ 日本人とモニカ


 これは俺とC.C.がギアスの欠片回収の旅を始めてまだ間も無い頃の話だ。ロロの奴からあるメールが届いた。内容は…

「…おい、見てみろC.C.」

「うん?なんだ…?…何?モニカが結婚…!?あの変な語尾女がか!?」

 どうやら相手は卜…じゃなかった、表屋らしい。まぁ、婿養子らしいからまた名前を戻すかもしれないがな。

「しかし、あいつがモニカとくっ付くとはな…そんなに接点あったか?」

「…確か太平洋で交戦して、国外追放される時にカレンが連れてきたモニカを最初に見つけたのもあいつで…天子誘拐の時も交戦していたか。それと俺がシャルルと戦ってる時にも交戦してたらしいな」

「…そこからどうやって恋愛に発展するんだ…?」

 そんなことを俺に聞かれても困る。メールにはタキシードを着た卜…いや、表…あぁもう面倒臭い、卜部と着物に身を包んだモニカが写っている。普通逆じゃ無いか…?仲人はどうやら藤堂らしい。画面端に写っている千葉を見る限り…あの二人は上手く行ってないようだな。

「しかしブリタニア人と日本人がまた結婚できる時代になるとはな。」

「あぁ、それだけ平和ということだろう。…良いことだ。」

「その平和を存続させるためにも我々は役目を果たさなければな」

 C.C.の言葉に頷き、今までいた建物から退出する。ギアスの欠片を集めて何かを企む謎の人物…マッドドッグ。組織が個人かもまだ掴めていないが、ギアスに関わるものを人の世に残すわけには行かない。幸い痕跡から次の目的地は絞り込めたのでC.C.を肩に乗せ俺は駆け出した。

 

 

 

「モニカの着物姿、記録ニャ」ニャ

「モニカさん、表屋さん、ご結婚おめでとうナリ」ナリー

「アーニャ、ナナリー、お祝いありがとモニ」モニー

 拝啓、ルルーシュとC.C.、僕はまた、あの催しの中にいるよ。

「表屋…じゃなくてクルシェフスキーさん、ほらもっと笑ってウゴ」ウゴ

「朝比奈…そうは言ってもだだな…やはりこの服は動きにくいぞ」

「表…クルシェフスキー、また語尾を忘れてるドウ」ドウ

 卜部 巧雪改めて表屋 稚炎改めてコウセツ クルシェフスキーとなった彼とモニカの結婚式は当然のように語尾がモニカ式という謎の催しをミレイ会長の一言を発端にモニカが承諾、場は混沌としたカオスになっていた。ルルーシュ、僕は君が羨ましいよ。この場にいないで済むのだから

「ゼロ、どうかしたのゼル?」ゼル?

 シュナイゼル殿下…ゼロに仕える貴方まで…

「いえ、何も問題ないゼロ」ゼロ

 僕はゼロ、名前が二文字しかないので語尾はそのままゼロだ。笑えない。

「まさか元ラウンズで初めに結婚するのがモニカだとはな、アタシも予想外だったノネ」ノネ

「…皆まで言うなノネット…あんな変な語尾に先に結婚された自分が惨めになってくるテア」テア…

 ノネットさんもしれっと生きてたドロテアさんもモニカの結婚には少なからずのショックがあるらしい。まぁ、無理もないだろう。だってモニカだし。

 

『それでは、ケーキ入刀グヤーーー!!!』グヤーーー!!!

 

 …神楽耶のアナウンスが入り、モニカ達がゴットバルト農園作のオレンジウェディングケーキ…なんで農園がケーキ作ってるのかは謎だけど…の前に立つが、トラブルが起きた。

 

「モニ!ケーキに入刀するナイフが無いモニ!」モニーン‼︎

 

 モニカは焦ってるようだ、まぁ大事な催しだしね…。するとみんなの視線が藤堂さんに集まる。しかし、流石の藤堂さんも結婚式に帯刀などしてる訳もなく申し訳なさそうに首を振っていた。こうなれば僕の手刀で…!するとモニカ達のところにある人が歩いていく。

 

「ケーキ入刀に大切なものはなんだ…?それはナイフだ!…ルキ」ルキ

 

 そうしてしれっと生きてたブラッドリー卿から手渡されたナイフを受け取り、モニカと卜部さんはケーキに入刀…。

 

 …ちょっと待ってほしい。卜部さんは藤堂流剣術道場の師範、そしてモニカはその一番弟子だ。そしてブラッドリー卿はナイフの手入れを欠かさない…

 剣術家二人が切れ味の良い刃物を同時に振るったらどうなるか、考えれば分かる。

 

 案の定、勢い余ってケーキの乗る台と更に勢い余って床を切り裂いた。

 

「切れすぎるのも考えものバル…」バル…

 それを見ていたシェフことジェレミアさんは苦笑いをしている。

 

 …でもまぁ、何はともあれ二人とも、結婚おめでとう。




オチなんて無いバブ

「サンライフさん」のリクエスト「モニカの結婚式」バブ

リクエストされたお話は「REQUESTRAININ(リクエストレーニング)」、作者が考えた追加エピソードは「EXTRAINING(エクストレーニング※extra+training)」をタイトルとして書いていきます。


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REQUESTRAINING02

 ジルクスタンでの一件を終え、僕はまたゼロとして仮面を被り活動を続けている。しかし、一度乱れた平和は残念なことに直ぐには元通りにはならず、世界の各地で再びテロが起きていた。

 

 人道支援の名の下に、僕は再びランスロットに乗り空を駆ける。

 

「こちらゼロ、指定されたポイントに到着した。敵の位置は?」

『…申し訳ありませんゼロ、ロストしてしまいました』

「問題ない、引き続き情報の取得を頼む。」

 レーダーがダメなら目視だ。モニターを眺めていると違和感に気が付き、そこにヴァリスを撃ち込む。

『チッ!バレたか!』

 どうやらステルスなだけでなく視覚的にも偽装して隠れていたらしい。しかし僕の視覚を簡単に騙すことはできない。一気に急降下し、MVSを構えてすれ違い様に切り裂く。その後も現れるテロリストのナイトメアを薙ぎ倒し制圧する。…少しだけ疲れたな。

「こちらゼロ、テロリストは制圧した。これより帰還する。」

『…いえ、少々お待ち下さい』

「…?」

 言われた通り待っていると別の通信につながった。相手は…ナナリーか。

『スザク』

「今はゼロです。ナナリー名誉顧問」

『失礼、ゼロ。今から送る座標に向かいなさい。あとはわかりますね?』

 それだけ言ってナナリーは通信を切ってしまった。座標を見る感じだと…E.U.の国かな…?念のためシュナイゼル殿下に座標を送り意見を聞いてみることにした。

『やあゼロ、君に送ってもらった座標なんだがね』

「なんだ?」

『イタリアンドルチェ専門店のようだよ』

 やっぱりか。

「シュナイゼル、ナナリー名誉顧問の好みは把握しているか?」

『勿論だとも。私は腹違いとは言え彼女の実の兄だからね』

 そう言ってシュナイゼル殿下は通話を切ってしまった

 

 …?

 

「シュナイゼル!何故通話を切った!?」

『済まないねゼロ、通信状況が悪かったみたいだ』

「嘘を吐くな。ナナリー名誉顧問が喜びそうなドルチェをピックアップして欲しい」

 シュナイゼル殿下は返事をすることなく通話を切った。そして直様メールが送られて来た。中を確認するとリストが添付されていた。

「…ティラミスが5つにパンナコッタも5つ…あとは…」

 …全部5つずつだけど何か理由があるんだろうか?

 

 指定された店の近くにランスロットを停め、店に入る。

「いらっしゃいま…ゼ、ゼロ…!?」

 あ、うん、そりゃ驚くよね。店にいきなりゼロが入って来たら。

「このリストのものはあるだろうか」

「あ、はい」

 店員さんにリストを渡し、商品を用意して貰う。

「保冷剤はどうなされますか?」

「2時間で頼む」

 

 帰還してナナリーの元へ戻ると、すぐに部屋に呼ばれた。ドアをノックするとナナリーの手だけが扉から出てくるのでいつものように手渡す。

「ナナリー名誉顧問、依頼の品お待ちいたしました。」

「ご苦労様」

 そしてそのままナナリーは扉を閉めて部屋に戻ってしまった。しばらくすると中から話し声が聞こえて来たのでナナリーには悪いと思いながらも聞き耳を立てる。僕くらい身体を鍛えるとその気になれば部屋一つを隔てたってクリアに聞こえるのさ。

 

『やっとスイーツが届きました!』

『ナナリー、カテゴリーとしてはイタリアンドルチェと言うらしいぞ』

『まぁ!コーネリアお姉様は物知りなのですね!』

 あ、今日はコーネリア殿下も着てるのか。

『今日はユフィ姉様もチートデーなんですよね!』

『そうなの!ナナリーやお姉様、お兄様と甘い物を戴くこの日が楽しみだったわ!』

 あ、ユフィも来て…ん?お兄様?

『こうやって成長した妹達と共に楽しいひと時を過ごせるようになるとは…私は幸せ者だね』

 …シュナイゼル殿下…これで4人だけど…あと一人は誰だろう?…あ、ここにはいないけどルルーシュの分…とかなのかな。

 まぁ、元ブリタニア皇族のお茶会なら仕方ないよね、うん。

 

 …そう言えばこう言うのって経費で落ちるのかな?総督補佐の時から領収書だけは貰ってはいるんだけど。そう思った途端扉が開き、中からシュナイゼル殿下が現れた。

「忘れていたよ。建て替えありがとう、ゼロ。お釣りはいらないからね」

 そう言って渡された額はどう見ても今回の費用には足りていない。…でもまぁ払ってもらえただけ良いとしようかな、うん‥.

 

 …。

 

 今日はシャリオのところに行こう。よしビシバシ鍛えるぞ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なんかすみません、僕まで呼んで頂いて』

 

 …ん?シャリオの…声…?

『構わないさ、君はナナリーと同じく脚が不自由だからね、これからの政策の為に是非意見が聞きたいと思っていたんだ』

『僕なんかの意見で良ければ』

 

 …。

 

「…もしもしカレンかい?よかったら今から虫しょ…」

 あ、切られた。…何がいけなかったんだろう?




「のえーのえー」さんのリクエスト「ゼロになってもパシリのスザク」


スザクはどれだけいじめても良いみたいな風潮、よく無いと思います。


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REQUESTRAINING03

 カフェゼロ二號店、玉城には商才があったらしく、今では主に黒の騎士団員…専ら元扇グループにカテゴリされるメンバーの今の溜まり場のようになっている。

 そう言う私も部下に連れられこの店によく通っている。

「次の広報資料に使う写真、どちらにしましょうか星刻さん」

「そうだな…やはり天子様、ナナリー殿、神楽耶殿の三人が仲良く写るこれが良いのではないだろうか。各国が国境を超えて手を取りあっていることがよくわかるだろう」

 不思議な事に部下の南とはよく気が合う。南は旧黒の騎士団の時からガタイが良いとも思っていた。

「よぉ〜!南ぃ、しんくーも久しぶりだなぁ!まーた俺の店で仕事の話かぁ?」

「なんだ玉城、邪魔するな向こうへ行け」

 南は玉城と古い仲な事もあり中々ストレートなやり取りだ。

「済まないな店長、オススメの小料理を二皿追加してくれ」

「あいよ!ちょっと待ってな!」

 長居をする時はこうして追加で注文を頼むのが最低限のマナーだろう。ここの料理は特別おいしい…というわけではないが、こうして人と話しつつつまむにはちょうど良い塩梅だ。

 暫く南とは天子様や神楽耶殿の魅力をどう広報宣伝しようか話し合っていると、注文した料理を玉城が持ってきたようだ。

「よぅ!お待ちどうさん!」

「済まないな」

「いいって事よ!金は貰ってるわけだしよ!…そういやぁしんくーはあの噂知ってるか?」

 あの噂?どの噂だろうか、取り敢えず心当たりは無いため首を横に振ると、玉城は何故か南の隣に着席した。

「お前店は?」

「別に俺が居なくたって問題ねぇって。それよりも噂ってのは、最近のゼロについてのことなんだよ」

 ゼロの噂…。生きていたルルーシュのゼロなのか今尚仮面を被り続けるもう一人のゼロのことなのか、どちらのことなのだろうか?

 

「最近よぉ、ゼロがな?パシリにされてんだとよ!」

 

 玉城の発言に南は呆れたような顔をしていた。

「お前またその話か?くだらない噂を広めるのはやめろ。ゼロに失礼だぞ」

 しかし玉城も譲らない。

「本当だって!この前知り合いのやってるイタリアンドルチェの店に来たって言ってたんだよ!メモ出してよ、『これください』ってよ!…しっかし、あの姿で店に来られたら可笑しくって商売なんてできねぇよな!ははははは!」

 言っては悪いが、あの格好で店に入るのは普通に不審者だろうと思う。

「店長!サボってないでちょっと来てください!」

「サボってねぇよ!ちょっと待ってな!」

 言っては悪いが、客の隣に座って駄弁ってるのは普通にサボりだろうと思う。仕事をしに行っただろう玉城が突如叫び声を上げたので、ふと入り口を見ると…

 

「済まない、この店で蜜柑モナカは取り扱ってるだろうか?近場はどこも売り切れでね。遠くに買いに行こうにもいますランスロットはメンテナンス中で出せないんだ。」

 

 ゼロが立っていた。…絵面は完全に不審者だな。というか、ランスロットをそんなに気楽に乗り回すな。

「蜜柑モナカか、ちょっと待っててくれ。確か…お、ラスイチだ、ラッキーだったないがゼロ!ほらよ!」

「感謝する。これで名誉顧問に怒られずに済む。それでは」

 商品を受け取り颯爽と去っていくゼロだったが、その背中からはもはや哀愁すら感じる。

「嘘だろ」

 目の前の惨状に言葉を漏らしたのは南だ。私もそう思う。ゼロがパシられてたんだ。誰だって驚く、私だって驚く。

 

 その後、ゼロはパシられているという噂が爆速で広がったことは…言うまでもないだろう。

 




「砂糖掛け舎利別漬け蜂蜜饅頭さん」や「ラグビー好き」さんからのリクエスト「黒の騎士団にパシられてるのがバレたゼロ」のお話

リクエストは活動報告にておこなっています。
一言で終わるようなリクエストでも受け付けてますのでお気軽にどうぞ(期限:令和四年九月二十四日)


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REQESTRAINING04

珍しく長くなりました。


 最近世間を…少しだけ騒がしくしているのは突発的な小規模のテロ。声明ではマッドドッグと名乗ってるらしい。個人かも団体かも分からないけれど…まぁ超合衆国が対応に当たっているし多分大丈夫だろう。

 

 思うところがあるとすれば、マッドドッグは『何者にもなれない者』への訴えと僅かながらの支持を得ている事だろうか。確かに世間は平和になった。だけど、それで全ての問題が解決する訳じゃない。最近ではブリタニアと日本もかなり関係が改善されはしたけど、お互い一部の人の敵対意識とでも言おうか、人の心は簡単には変わらないと言うことだろう。私は今の黒の騎士団と超合衆国の体制になってからはハーフであることを公言し、中立的な橋渡しや同じハーフの人達からの相談などを受けている。戦うくらいしか役に立てないと思ってたけど、ハーフなことが役に立つなんて…人生何があるか分からないものだと思う。

 規定の時間になったので仕事場のデスクにて通信を受け取る。私が思っていたよりも世の中にはハーフの人は多く、みんな苦しんでいたらしい。私のようにハーフであることを公言し、生きている人がいる事は皆んなの心の支えになるらしかった。

「はい、こちら紅月 カレンです、何かお悩み事ですか?」

『え、えぇ…こちらでお悩み相談に乗っていただけると聞いたフスキ…』フスキ…

「私でお力になれることがあればなんでも言ってください」

 …ん?なんか今変な語尾が聞こえたような…いや、気のせいだろう。どうやら相手は大人の男の人みたいだけど。

『実は娘が先日結婚したフスキ』フスキ

「それは…おめでとうございます?」

『…実は相手が日本人なのフスキ』フスキ

 なるほど、これから生まれてくるかも知れない孫の心配か…。初めてのケースだ。にしてもやっぱなんか変な語尾が聞こえる気がする。いや、絶対気のせいだ。

「ハーフとして生まれてくるお孫さんのご心配ですか?」

『え、えぇ…娘の相手が日本人なのは別に良いのフスキ。娘が選んだ相手なのですから私の口出すことでは無いフスキ』フスキ…

 ダメだ、やっぱ変な語尾で全然頭に入ってこない。

『やはりハーフだと差別とかされるものフスキ?』フスキ?

「そうですね…昔はそういう時期もありました。ですが、今はもう違います。各国が手を取り合い始めてお互いを理解しようと歩み寄っていますから。それに、家族の方がハーフでも気にされず接することが一番大事ですよ」

 私の時は時代のせいもあってその辺が複雑だった。不在の父、メイドになった母、そして継母…別にそのせいだと言うつもりはないが、私はあの家から逃げ出すようにゲットーに行ったのはそれも原因だろう。

『そうですね…初孫だからと心配しすぎたのかも知れないフスキ。もし生まれてきてくれたなら両手を上げて祝福したいと思うフスキ』フスキ

「はい、そうしてあげてください。」

 相手も納得してくれたらしい。最後は満足そうな声が聞けたので安心だ。一つの相談が終わり、すぐに次の相談が入る。悩んでいる人は多いようだ。

「はい、こちら…」

『紅月カレンさん…ですね?』

 どうやら相手は声を機械で変えているらしい。まぁ、悩みを話すのだからそれは別に珍しいことではない…けど、なんだろう、この違和感は…?

『ハーフでありながら…成功した日々を過ごしているようだね』

「…何か、ご相談ですか?悩みでも?」

『相談…あぁ、そうだね。相談だ。人手が足りなくて困ってるのが…悩みかな。俺の仲間になってくれないか?』

 …仲間になってくれ?当然だけどそんな悩み相談は初めてだ。そもそも私はもう黒の騎士団に所属していているし、突然仲間になってくれと言われても困る。

『あんたもハーフなら分かるだろ?ブリタニアと日本の間に生まれ、ブリタニア人になれず、日本人にもなりきれない、何者にもなれない、その苦しみが。』

 それは…全くわからない話ではない。でも…

『それに、あんたはナイトメアのパイロットとしてトップクラスの技術を持ってる…平和な世の中じゃぁつまらなくないか?』

 …こいつ、まさかマッドドッグ!?

『あんたが仲間になってくれれば俺はあんたに思う存分暴れられる機会を…』

「ふざけるな!黙って聞いていれば…私は暴れるために戦ってたわけじゃない、日本を取り戻すために戦ってたんだ!紅月 カレンを安く見るな!」

 そこで通信は途絶えてしまった。…しまった、相手が本物なら逆探知とかしてもらうべきだったかも…。

 

 その日は報告だけ行い、帰路に着く。しばらくすると、見覚えのあるオレンジ髪が跳ねているのが見える…シャーリーだ。

「あ!こんばんはカレン、お仕事の帰り?」

「えぇ、シャーリーと…シャーリーのお母さんですね、こんばんは」

「えぇ、こんばんは」

 今私が住んでいる場所はそれなりにシャーリー達の家からも近い。その為、たまにこうして出会ったりもする。お母さんもたまにシャーリーと出会うらしい。お互い明るい性格だからか結構気が合うんだとか。まぁ、日本人とかそういう事を気にしないシャーリーの性格によるところも大きいんだとは思うけど。

「二人でお出かけ?相変わらず仲が良いのね」

「うん、今日はお父さんのお墓参り。この前ジルクスタンでの騒ぎとか、最近また小さなテロが増えてるでしょ?だから行ける時に行こうと思って」

 墓参り…そう言えば兄さんの墓参り、随分と出来てないな…

「そういえばカレンのお父さんってどうしてるの?」

 …シャーリー、あなたって偶に突然とんでもないところに踏み込んでくるわよね…。私の態度にシャーリーのお母さんは何かを察してくれたらしく、シャーリーを嗜めていた。

「…私の父親…ね、もう随分と会ってないし、話なんて最後にいつしたかなんて覚えてないわ。お母さんに何言ったかは知らないけど、家に帰ったら急に母さんから私はブリタニア人になれる、シュタットフェルトの娘として生きろと言われたわ。気付いたら私はカレン シュタットフェルトになってた」

 あの家の中で正直私は苦しんでいた。でも誰も助けてくれる人なんて居なかった。だから私は強くなろうとしたのだ。それでも…まぁ、ナナリーを守ろうとしたルルーシュなんかには敵わなかったわけだけど…あいつの言葉を借りるなら自分のためか他人のためかの違いだったのかな。

「…ごめんカレン、変なこと聞いちゃって」

 シャーリーに悪気がないのがわかっているので、これ以上何かを言うつもりはない。それに、良くも悪くも父のことを考える良い機会だったのかも知れない。結局許せないままなのは…私がまだまだ子供だってことなのかもね。

 帰り際、シャーリーが見つめてきたので少しだけ見つめ返してから私は口を開いた。

「何?」

「あ、うん、ごめんね?お節介かも知れないんだけど…」

「ううん、構わない。言ってみて?」

 

「私はね?許せないことなんてないとは思ってる。でも、許したくないならそれでも良いと思う。でも、生きているのなら、一度話してみたら?判断はそれからでも遅くないと思うんだ、私」

 

 ううん…実際に父を失っているシャーリーから言われると言葉の重みが違う…。

「じゃあね、カレン」

「ええ、またね」

 そうしてお互いに手を振り合い別れて私は再び帰路に着いた。と言っても私はもうシュタットフェルトの家には帰っていない。東京に小さいけれど、お母さんと二人で暮らせる家がある。私の帰る場所はもうそこなのだ。母さんの罪状はゼロの亡命の際何故か軽くなり、もう仮釈放も受け、今ではカフェで働いている。多分、イレブンに対して温情をかける事でそれ以上の反乱を起こさせないことが目的だったのだろう。骨折も無事に治り、今ではウザいくらい明るい性格がウケているとか。まぁ、たまに客と店員としてならあの口調も気にならないのかな…。

「お母さん、ただいま!」

「あら、おかえり、カレン」

 靴を脱ごうと玄関見ると見慣れない男物の靴があることに気が付く。一体誰だろう?星刻さんとかなら私に連絡が来るから違うと思うし…。そう思いながらリビングに向かう。

「やぁ、おかえりカレン。…久しぶりだね、随分と大きく…立派な女性になった物だ。嬉しいよ、また会うことが出来て」

 そう返してきた男は…シュタットフェルト伯爵…つまり、私の父だった。

「今更…なんのつもり?」

「…そう言われても仕方のない事をしたと思っている…。だが、私は…」

 この人は…自分と本妻の間に子供が生まれなかったからと私を引き取った男だ。それに、お母さんの望みがあったとはいえ、妾とその娘と継母の3人を同じ屋敷に入れて…自分はろくに帰っても来ない、そんな男だ。それに、そもそも私を引き取ったのだって本来は兄さんのついでだ。私なんかより、叔父さん達の方が家督を継ぐべきだと思っている。

 

 …しかし、さっきシャーリーに言われた言葉もある。これは…何かのきっかけだろう。違法プロテインで私はお母さんと仲直りできた。新しい一歩を踏み出すきっかけになったと思う。だから、一度だけ向き合ってみようと思った。

「私は、何?言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ。貴方父親でしょ?」

「…!父と言ってくれるのか、そうか…。まずは仕事を言い訳にずっと放ってしまっていたこと、許して欲しい。」

 …それは、まぁ、今となっては私もレジスタンスとして、黒の騎士団として過ごすためのきっかけになったとも言えるし、それが日本の解放に繋がったとするならば…許せなくも、無いのかも、知れない?ふと、お母さんを見るとお母さんは微笑んでいた。…お母さんは許してるらしい。まぁ、母のことだ『りょ!許す!』くらいのノリで許してそうだ。

「まぁ、放ったらかしにされたのは文句も言いたいけど、許すわ。貴方の仕事が忙しかったのは知ってるし。で、それだけ?」

 放ったらかしていたと言っても、お金だけはちゃんと融通してくれている。今もお母さんと私の稼ぎの他にこの人からの仕送り…まぁ、手は付けてないけど…を貰っているのだから忘れているというわけでは無いのだろう。

「あ、あぁいや…今日は相談があって来たんだ。」

「相談?」

「実はまた仕事でしばらくこっちに…あー…日本にいることになったんだ。それで…また一緒に暮らせないか、と思ってな…」

 お母さんを見ると、お母さんはまた微笑んでいた。

「カレン、貴方の判断に任せるわ」

 珍しく真面目な声と口調で言われ困惑しつつ、返事を考える。一緒に暮らす…?今更?いきなり帰ってきていきなりこれだ。急過ぎる。

「1週間後また来て。いきなり言われても判断出来るわけないでしょ」

「…それもそうだな。いや、でも迷ってくれるだけ嬉しいよ…てっきり即答で断られると思っていたから」

 それは…多分普段の私なら即答だろう。『ふざけるな 紅月カレン 安く見るな』と。うーん、字余り。でも、シャーリーに言われた生きている内にという言葉、無視も出来ないだろう。だから、少しだけ考えることにした。

 

 そうして約束の一週間が経ち、再び父が家を訪ねてきた。私はお母さんと父に着いてきてとだけ伝えて家を出る。

「…前に来た時も思ったが、この辺も随分変わったね」

「分かるー!偶に私もまた迷っちゃうからね」

「君は…相変わらずだな、初めて会ったときも君は道に迷っていたね」

 …この歳になって両親の馴れ初めを聞かされると小っ恥ずかしくなってくる。正直言ってやめて欲しい。

「君が入院したときも見舞いに行かなくて悪かったな」

「良いの良いの。久し振りに会うのにあんな姿は恥ずかしい」

 そんな両親のイチャ付きを聞かされるという精神攻撃に耐えつつ、私たちは目的地に辿り着く。

「ここは…」

「ここはお墓よ。兄さんの」

「ナオトのか…。」

 そうして三人でお墓に手を合わせる。…父も日本の作法に合わせてくれるらしい。お墓参りを終え、再び両親のイチャ付きを聞かされながら帰路に着いていると、またまた見覚えのあるオレンジ髪…要はシャーリーと遭遇した。

「あれ、カレン久し振り…ってほどでも無いか、あはは」

「うん、お兄ちゃんのお墓参りに行ってたの」

「そっかぁ…あれ?」

 シャーリーも私の両親に気が付いたらしい。

「シャーリー、紹介するわ。この人は…シュタットフェルト伯爵、まぁ…私の父親よ。」

「初めまして、シャーリー フェネットです。カレンさんにはいつも仲良くしてもらってます」

「初めましてシャーリーさん。娘と…カレンと仲良くしてくれてありがとう。これからも良き友人であって下さい」

 両親には先に帰るように促し、シャーリーともう少しだけ話をすることにした。

「カレンはお父さんのこと、許す気になったの?」

「わからない。でも、シャーリーの言葉が無視できなかったから、話すことにしたの。話してみないと許せるか許せないかも分からないしね。」

 笑顔で頷くシャーリーとはそこで別れ、家へと帰宅した。既に両親は話をあらかた終えたのか、黙って私が席に着くのを待っているようだ。私が席に着くと、父親は口を開いた。

「…答えを聞こう」

 また父と暮らすか、その答えは…一週間よく考えて答えを出してある。私の答えは…。

 

「一緒には暮らせない。悪いけど」

 

 答えは、ノーだ。父はその答えに余り驚かず、小さくそうかと呟き項垂れた。でも、私の答えには続きがある。

「はいこれ」

 私はメモを父の前に差し出した。私の声に父は項垂れるのをやめ、そのメモを受け取る。

「私の携帯番号。今度から来る時は連絡して欲しい。都合が合えば会うし、食事だって一緒に食べるわ。…私達は家族だし。それは一緒に暮らしてなくても、そうでしょ?」

「…そうだな、ありがとう。…本当に。そうだ、今度『東京クロヴィスランド』に行かないか?それと、またナオトの墓参りをさせてほしい。今度はしっかり花も供えて…綺麗にしてやろう」

「分かった」

 別に完全に許した訳じゃ無い、でも完全に許さない訳でも無い。そんな半端な答えだけど、別に全ての答えを白黒ハッキリさせる必要も無いだろう。

 

 だって私は…ハーフなんだから

 




活動報告に頂いた「野良犬ジョーさん」からのリクエスト「カレンと父の和解」のエピソードでした。

Q.筋肉要素関係なく無い?
A.その質問を待っていた(殴打)書いてたらどんどん話しが真面目になって筋肉要素入れる余地が無くなったんだよ仕方ないだろ(殴打)仕方ないよな?(殴打)仕方ないと言え!(殴打)


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EXTRAINING08 ロロの絶対停止

EXTRAININGのナンバリングは順番の意味はありません。


 ナナリー義姉さんを救出する為の「全速前進作戦」僕は兄さんと同じ部隊となり、C.C.さんと共に月虹影に乗って兄さんの後を追っていた。

「私はここで降りる、あとは頼んだぞ」

「分かりました。C.C.さん、お気を付けて」

「ふん、誰に言っている」

 そう言ってC.C.さんは降りた後、しばらくして月下に踏まれてしまった。

「ナイトメア!?いけない…!」

 月虹影は未完成、武装もろくにない…!そして迷わず攻撃してきた月下に押され、すぐに月下は兄さんへと襲い掛かっていた。

「兄さん!」

 

 しかし、兄さんは素手(?)で月下を返り討ちにした。流石兄さんだ。これで安心…と思った矢先、僕の目には兄さんと、銃を取り出すシャムナらしい女の人が見えた。兄さんは言っていた。「まだ相手のギアスの発動条件までは分かってない」って。

 だから、あのまま銃を持たせておくことは不味いと直感が働いた。でも、僕はもう無力だ。月虹影だって結局ただ動かしただけで役になんて立ってない。さっきだって僕は反応すらできなかった。

 

 結局僕はギアスしか取り柄もなく、そのギアスももうないただのデクノボウなのだ。

 

 しかし…その瞬間、僕の頭には兄さんとの日々が駆け巡った。そしてその風景には僕と兄さんが肩を組み腕をクロスさせる姿が映る。

『そうデス。ボクとブラザーは産まれこそ違えど魂で繋がったソウルブラザーなんデス』

 …そうだ。ボクと兄さんは…魂で繋がってるはずだ。それに、ブラザーの鍛えてくれた心と…魂の筋肉はまだ残ってるはず!

 

 つまり、ボクはまだ…マッスルガイなはずデス!ギアスとはCの世界…つまり精神に作用する力、普通の心臓の時は出来てたんダ。それが人工心臓になったからって使えなくなるはずナイ!当たり前だト、出来て当然と思うことデス!

 

「お願いデス…!発動してくだサイ!ボクのギアス!!一度だけでイイ!一瞬でもイイ!」

 

 "絶対停止"ッ!!

 

 その一瞬、僕は感じたんデス。ボクの人工心臓の鼓動が世界の鼓動とがしっかりと共振したのヲ。

 

 月虹影を飛び降り心臓が止まっても筋肉の衰えた体に鞭を打ちシャムナから銃を奪いマス。そしてそこで時間切れ…ボクは痛みのあまり心臓を抑えて蹲ってしまいマス。でも…これでブラザーの作戦勝ちは揺らぎまセン…!

 

「…貴様いつの間に…一体どうやって…!」

 そしてブラザーは何度も見せたあのクラウチングスタートの構えを取り…次の瞬間にはシャムナは倒れていた。な、何をしたのか全く見えなかった…!筋肉は衰えても未だに目だけは衰えていない僕ですら見逃してしまうナニカができるなんて…流石僕のブラザーだ!

 

 ブラザーの指示で20時間後に爆発するように爆薬を仕掛け、月虹影に乗った兄さんとC.C.さんとナナリー義姉さんの代わりに僕は真母衣波に乗り、神殿を後にする。

 

「あぁ、ロロ…ここにいたのか」

「ブラザー、ナナリー義姉さんが無事で良かったね。」

「なに、お前のおかげさ。お前が絶対停止を使ってくれなければ危なかった。感謝する」

 僕が絶対停止を使ってなくてもきっとブラザーならなんとかしていただろう。ブラザーは僕に肩を組んできた。その意味は簡単にわかる。細くなってしまったけれども僕もブラザーに肩を組み、腕を前に出してブラザーの腕とクロスさせる。

「俺とお前は」「魂で繋がった」

 

「「ソウルブラザー!!」」



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REQESTRAINING04-IF

REQESTRAINING04のIFストーリーです。

勘のいい読者ならどんなことになるかこの時点で既に察したと思う()


「実はまた仕事でしばらくこっちに…あー…日本にいることになったんだ。それで…また一緒に暮らせないか、と思ってな…」

 お母さんを見ると、お母さんはまた微笑んでいた。

「カレン、貴方の判断に任せるわ」

 私はお母さんの言葉に笑顔で頷く。

 

 そしてとりあえず拳を握り締めて父の顔面に叩き込む。

 

「ふべらっ!」

「ふざけるな…!今更のこのこやってきてまた一緒に暮らそう!?虫が良すぎるだろ!紅月 カレンを安く見るな!お前なんか父親じゃ無い!」

 吹っ飛んだあの男は顔を抑えゆっくりと立ち上がった。指の間から見える目はこちらを捉えている…。…来るか!?

「人に暴力を振るうなど…そんな娘に育てた覚えはないぞ、カレン!」

「アンタに育てられた覚えなんてない!」

 お母さんから聞いていた父の竜巻旋風脚を前に転がることで躱し、すぐに振り返って相手の肘打ちを腕で防ぐ。

「ほう、この動きを躱したか、流石は父さんの娘だな」

「黙れ!アンタなんか父親じゃないって言ってるだろ!」

 しかし、その一瞬の会話に気を取られ、腹部に拳を叩き込まれてしまった。思わず後ろに吹き飛び、壁を突き抜け庭に転がってしまう。

「会話に気を取られるとは、まだまだ青いな、カレン」

「クソ…!娘に手を挙げるなんて!」

「おや?私は父親ではないと言ったのはカレンだろう?」

 追撃のアッパーを後ろに仰反ることで躱し、そのまま回転しつつ手で地面を弾いて体制を整える。ルルーシュやスザクほどではないがあの男はゴリマッチョだ。それに今の動き…闘い慣れてる!

「しかしカレンがこれほど動けるとはな、父さん嬉しいぞ。」

 ニカッと笑い白い歯が褐色肌とのコントラストで良くも悪くも映えさてやがる。ふざけやがって…!

「それじゃあ父娘のスキンシップの続きと行こうか」

 そう言って地を蹴って距離を詰めてくるアイツにに拳を突き出すが、意外にもそれを顔面で受け、そのまま両腕で私の体を拘束してきた。

「捕まえたぞカレン」

 まさか拳を顔面で受けてなおそのまま突っ込んでくるなんて…!

「クソ!離せッ!」

「おやおやおや、カレンは勇ましいね。父さんとのハグはそんなに嫌かい?」

 背骨がミシミシと音を立て始めている…いけない、このままでは…!思い切り仰け反って両肘を肩に叩き込む…が、緩まない!

「肩を叩いてくれるのかい?嬉しいなぁ、親孝行してもらえるなんて思ってなかったからね」

 こ、こうなったら…!死ぬほど恥ずかしいけど…この窮地を脱するためにこの手を使うしかない…!背骨ももう限界だ…このままコイツにベアハッグをされ続けたら確実に殺られる!覚悟を決めろ…紅月 カレン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパ、だーいすき!」

 

「!?」

 よし、緩んだ!死ぬほど…死ぬほど恥ずかしいが、渾身の猫か被りボイスで放ったこの言葉なら…!恥ずかしさはとてつもないが、ルルーシュに肩車されたままウサギ跳びで民衆の中を突っ切ってきたC.C.に比べればこれくらい致命傷だ。あれに比べれば傷は浅い!!あれに比べればだけど!

「パ…パパ、だと!?」

 よし、まだ動揺している!腕が緩んだ一瞬に拘束から抜け出す。そのまま地面に着地し、そのまま両手と両脚をクラウチングスタートの要領で上へと弾く。

 

「ここだァーーーーーー!!!」

 このまま、膝で、睾丸を、ブチ抜くッ!

 

「ミ°ッ!?」

 普段のコイツなら睾丸を守るくらいしていただろう、だが、完全な油断を狙ったこの一撃…耐えられるはずがない!

「…会話に気を取られるなんて、アンタもまだまだ青いんじゃないの」

「ぐっ…み、見事だ…カレン。効いたぞ…さっきの言葉、それに睾丸への攻撃も…」

 股間を抑え地に伏す様を見下ろす。しかし、この男の目はまだ死んでいなかった。

「…カレン、勝ったと思っているな?」

「…」

 私は答えない。すると、男は懐から何かを取り出して…あれは…ボイス、レコー…ダー…!?

 

『パパ、だーいすき!』

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 急いで取り上げ踏み潰して破壊するが、ニヤつきは終わっていない。

「無駄だよカレン。既に音声データはクラウド上に保存してある。」

「なっ…!?」

 思わず私は庭にへたり込んでしまった。

「まぁ、そんな顔するな。これから…その、父親らしいことをさせてはくれないか?」

 未だに股間を抑え、地に伏したままで格好のつかない男が何かを言っている。

「父親らしいことね…なら…」

 今更だけど、シャーリーの言葉もある。お互い生きているのならいつか許せる日が来るかも知れない。それまでは偶に会うのも良いかも知れない。…今度こそ完膚なきまでに叩きのめさないと気が済まないし…

「あぁ、なんでも言ってくれ」

 なんでも、そう、なんでもね…じゃあ…

 

「とりあえず家の壁の修理代、出して」

 

 私はブチ開けられた壁を指差してそう言うと父は黙って頷いた。




脳筋世界では拳で語る親子のコミュニケーションは一般的。
多分この後墓参りとかもするんじゃないですかね()

ミートギアス本編でもシュタットフェルト夫人がムキムキなルルーシュを好みと言っていたのだからシュタットフェルト伯爵が筋肉モリモリマッチョマンでもなんらおかしくはない。納得したね?(殴打)


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EXTRAINING02 コーネリアの憂鬱

 神聖ブリタニア帝国の第二皇女コーネリア リ ブリタニア、私が姫様と慕うお方だが、最近溜息が多い。もしかしたらこの前のジルクスタンで大暴れした反動で最近の平和さに退屈でもしているのだろうか?

「…姫様、最近ため息が多い様に感じられますが」

「…む、そうか?済まない、聞き苦しかったか」

「いえ、そんなことは…。何かあったのですか?」

 どうやら自覚はなかったらしい。

「ほら、この前…モニカの結婚式があっただろう?」

「えぇ…」

 …うん?結婚式?結婚式と溜息になんの関係が…

「私もな、結婚が…したい」

「なんと…!姫様にもそのような願望があったのですか!?」

「どう言う意味だギルフォード」

 まさか姫様がそのような願望をお持ちだとは思わなかった。

「別にな、女の幸せは結婚だとかを言うつもりはない…が、憧れるものは憧れるだろう。」

「さようですか。では気になる殿方でも?」

「ん?んー…それはだなぁ…」

 姫様がお答えになる前に天井を突き破り何者かが乱入してきた。大体の察しは付く。何故なら天井を突き破られるのはこれで三度目だからだ。

「お姉様!話は聞かせていただきました!」

「やぁユフィ、そろそろドアかせめて窓から入ってきてくれ。部屋が汚れて敵わん」

 姫様も既に順応し始めている。良くない傾向だ。

「私は認めませんよ!お姉様の妹たる私よりも弱い殿方にお姉様はお任せできません!」

「いや…ユフィ、私は別に私を愛してくれるのなら強さなど別に」

「よくありません!脆弱者にお姉様をお任せするなんて!」

 本人の意思を無視して暴走する辺りがユーフェミア様らしい。そしてそんなユーフェミア様に甘いのが姫様だ。するとユーフェミア様は何故かこちらを見てサムズアップをしてきた。…まさかこれは私にチャンスを…?なるほど、私の好意など見抜かれていたと言うことですか。

「ではユーフェミア様、私と決闘していただきたい。」

「ギルフォード!?」

「私が勝ったら…姫様は頂きます!」

「えぇ、どうぞご自由に」

「え、私の意思は…?」

 安心して下さい姫様、私は姫様の騎士!そしてユーフェミア様は私に姫様を託さんと今回このような条件を提示したのでしょう。庭に出て向き合い、姫様の合図を待つ。

「そ、それではユフィとギルフォードによる決闘を開始する。双方構え…始め!」

 それでは行きますよユーフェミアさ

 

 次の瞬間私は首から下を地面に突き刺されていた。なんで?

 

「えっ、私の騎士…弱過ぎ!?」

「ギルフォード、あなた弱過ぎますよ」

 これは私が弱いのか?ユーフェミア様が強すぎるの間違いでは?

 …いや、これは私が弱すぎるのだろう、確かにこんな体たらくでは暇様の伴侶になど相応しくない、鍛え直さなくては。私は決心し、頷く。そして覚悟を決め…

 

「すみません、とりあえずここから出してはいただけませんか」

 

 ずっぽりとハマってしまい身動きが取れないので二人に頼み、首を掴まれなんとか無理やり引っこ抜いて貰う。

 待っていてください姫様、必ず私が姫様の憂鬱を切り裂いてみせます!

 

 そして次の日のことだった。

「やぁギルバートGPギルフォード」

「これは…シュナイゼル殿下、何故フルネームで?」

「君はコーネリアの婿候補に名乗りを挙げたようだね?」

 その言葉に頷くと突如意識が刈り取られてしまった。

 

 そして目を覚ますと再びシュナイゼル殿下が口を開く。

「君は弱過ぎるね。そんな実力では可愛い妹を任せられないな」

 シュナイゼル殿下は微笑んでいるが、恐らく怒っているのだろう。そして再びシュナイゼル殿下の姿が消えたかと思うと私の意識は刈り取られてしまった。

 

 …申し訳ありません姫様、暫く憂鬱は続きそうです。

 

 




実は作者、ユーフェミアの憂鬱一ミリもイベントストーリー読んで無かったりします。
古戦場とスプラ3で忙しかったんじゃ…


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EXTRAINING77 ナナリーinクロヴィスランド

この二次創作はフィクションです。実際の団体…以下略ゥ!!


 日本にはブリタニアが支配しているうちに建造し、未だに残る施設が幾つかある。その一つにクロヴィスランドがあった。今では東京クロヴィスランドと名を改め、はブリタニアと日本の友好の象徴の一つとして日本人の多くが楽しむ娯楽地として人気のスポットとなっている。その人気は根強く、最近では東京クロヴィスシーと呼ばれる娯楽施設の建造を予定されているほどである。世界観重視のアトラクションの他にほぼ宙吊りにされ凄まじい速度で回転、逆走、捻りとなんでもありの本格的絶叫マシンまで揃うため、老若男女さまざまな人々から支持を得ているのだ。

 

 そしてこの日、超合衆国は世界の平和の一つとして『娯楽施設の視察』ということで東京クロヴィスランドの貸切が行われていた。そしてそんなクロヴィスランドの中を二つの車椅子が移動していく。

「ジルクスタンではこう言った娯楽施設はありませんからね、勉強になります。」

「実は私も来るのは初めてなんです」

「あれ、そうなんですか?」

 車椅子の主はジルクスタンのシャリオと名誉顧問ことナナリー、ナナリーは脚が不自由な上に、ゼロレクイエムが行われジェレミアにギアスキャンセラーをかけて貰うまでは目が見えなかったのである。そんな訳でナナリーは体験できる娯楽が限られており、クロヴィスランドに来ることはなかった。

「ここクロヴィスランドでは事前に申請をすれば車椅子の方でも殆どのアトラクションを体験できるようにスタッフさんが対応してくれるみたいですよ」

「へぇ、あぁ言うのにも乗れるんですか?」

 シャリオが指を刺したのは所謂ジェットコースターだった。それを見てナナリーは頷く。

「事前に申請をしておけば車椅子から乗り物への乗り降りを助けてくれるみたいです。それに、ここの創設者がバリアフリーを徹底したそうで」

「へぇ…。ブリタニアって確か98代シャルル皇帝の時代は体の不自由な人は切り捨てるような政策をしてたんじゃ無かったでしたっけ」

「…えぇ、でも…クロヴィス義兄様は無視したみたいですね」

 そしてナナリーはそれがクロヴィスなりのナナリーへ謝罪の一つなのだろうと考えていた。もしも生きていてくれたのなら楽しんでほしい、と。結局目が見えず仕舞いだったので今まで訪れることはなかったが。

「早速乗ってみましょうか」

「はい」

 

 早速乗った二人だが、感想は以下の通り

・お兄様より遅い

・僕のナギドシュメインのメギストスオメガの方が早い

 

 …この二人は感覚がズレているので仕方のない話だった。そもそもメギストスオメガは薬剤を使用しての高速移動なので、そんなものとくらべるのが間違いである。それからもアトラクションを一通り経験して行ってはナナリーは兄ルルーシュと比較し、シャリオはナギドシュメインと比べた。きっとクロヴィスが生きていたなら泣いていたであろう。恐らく悲しみで。

 

 アトラクションの他にもクロヴィスランドにはマスコットキャラクターによるパレードなども行われる。代表的なキャラクターはブリタニアの国旗にも描かれるライオンと蛇から取られたであろう、尻尾が蛇になっているデフォルメされたライオンのキャラクター『アームズ レオン』だ。要は着ぐるみだが、軽快な動きや時折発する言葉で見るものを楽しませていた。

『よぉ!俺アームズ、よろしくな!へへっ!』

 そんな馴染みの低音ボイスでの台詞にナナリーは年相応の女の子として喜び、シャリオは娯楽の形に感心していた。

 

 最後に二人が訪れたのは乗り物に乗ってゆっくりと世界観を見て回るタイプのアトラクション。どうやら女の子が執事の格好をしたウサギを追いかけて不思議な世界に迷い込むお話のようだった。白いナイトと赤いナイトが女の子を取り合う為に少し左右に揺られたり、キセルを吸う芋虫が吐く煙…と言っても無害なものであるが…を浴びせられたり…そこでナナリー達はその女の子を見て一つの感想を抱く。

 

 その女の子はナナリーそっくりなのだ。髪色こそクロヴィスを彷彿とさせる明るい金色であったが、顔立ちは幼い日のナナリーに似ている。そしてアトラクションを終えたナナリー達が効いた話ではキャラクターデザインはクロヴィス自らが手がけだのだと言う。

 

「…腹違いとは言え、クロヴィス義兄様も実のお兄様だったんですね」

 

 帰り際、クロヴィスランドの入口にあるアームズ レオンと手を繋ぎクロヴィスランドの創設者として手を掲げているクロヴィスの像にナナリーは微笑んだ。

 




アームズ レオンくんは独自設定です。


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REQESTRAINING05

「ナナリー名誉顧問、そろそろリハビリの時間ですが」

 僕がいつものようにナナリーの所を訪れると、そこには僕を睨むナナリーの姿があった。

「…イヤです。」

「我儘言わないでください名誉顧問。リハビリが辛いのは分かりますけど」

「私は車椅子で十分です。リハビリなんて必要ありません」

 ぷいと顔を背ける仕草は可愛らしいが、そうは行かない。ここは心を鬼にしてナナリーをリハビリに連れていかなくては。

僕が近づくと観念したように車椅子を動かし、部屋を出て…

 

 瞬間!ナナリーの車椅子が恐るべきスピードで廊下を駆けて行く。

「待て!逃げるなナナリー!!」

 流石はルルーシュの妹…あの皇帝陛下の娘であり、『しいのせかい』にて機敏な動きで僕と肉弾戦を繰り広げたマリアンヌさんの娘といったところか、尋常じゃないスピードにあっという間に背中が小さくなっていく。しかし、僕はゼロ!全力を出せば車椅子に追い付くくらい!

 僕も加速してナナリーを追うと、やがて廊下の角に近づいた。車椅子では減速せざるを得ない、このまま捕まえて…

 

「ゼロ、あなたは今から『そんな馬鹿な!?』と言う!」

 

 そうナナリーが叫んだかとおもうと、ナナリーの車椅子は轟音と共にドリフト走行をして直角に曲がっていった。

「そんな馬鹿な!?…なっ!?」

 しまった…!目の前に壁が…曲がりきれない!!

 

 そのまま壁を突き破り僕は7階から転落してしまった。

 

 

 

 なんだか壁を突き破るような音と何かが落ちて地面が爆散するような音が聞こえた気がするが…何かあったのだろうか?すると、廊下の向こう側からナナリーが凄まじいスピードで車椅子を走らせている様子が見え…と言うか既に目の前に迫っていた。流石は我が妹だ。走る速さはまるで閃光のようだ。

「コーネリアお姉様!退いてください!!」

 その時、インカムに枢木からの連絡が入った。

『コーネリア殿下!ナナリーがリハビリを拒んで脱走しました!捕まえて下さい!』

 その瞬間私の横を凄まじい速度でナナリーが走り抜け、私はその背中を見送る。

「済まないなゼロ、私にあれは止められんよ」

 手を出してみろ、手がもげる。というか、目が見えるようになってからのナナリーは今までのように電動の車椅子に改造を施し手で回す事で加速できるようになっているようだ。…まぁ、それであんな速さが出せるのならもうリハビリなんて良いんじゃないかとさえ思う。というか、あれが完全な脚を取り戻してみろ、誰も止められんだろうに。

『わかりました、コーネリア殿下…それじゃあユフィに頼んでみます!』

 枢木とユフィの二人ならあるいは…。まぁ、私も見学くらいはさせて貰おうかな。

 

 

 

「退いてくださーい!危なーい!」

 あら?この声はナナリー?声をした方を見ると…あら、すごいスピードでナナリーが迫ってきます。それにしても腹違いとは言え実の姉である私に退けだなんて…ナナリーは少し解らせる必要があるようですね。

 敢えて私は廊下の真ん中に仁王立ちし、ナナリーの行方を阻みます。

「ユフィ姉様!?」

「ナナリー、私はユーフェミア リ ブリタニアですよ!この私を相手にそのままのスピードで突っ込むことが出来ますか?」

 姉としての威厳を見せるため、決して動かずナナリーを待ちます。すると…

「仕方ありません!」

 ナナリーは車椅子を器用に操りまるでバスケやサッカーのドリブルのように私の身体を回転するように躱し抜き去っていきます。

「なっ!?姉に対して無礼でしょう!」

「ごめんなさいお姉様!」

 ダメだ、カチンときました。ナナリーにはお仕置きが必要です!油断していたとは言え、抜かれると言うのもなんだか腹が立ってきました。すぐにナナリーの後を追うと、インカムからスザクの声が聞こえてきました。

『ユフィ、聞こえるかい?ゼロだ。ナナリーを捕まえてほしいんだけど…できるかい?』

「私を誰だと思ってるのですか?ユーフェミア リ ブリタニアですよ?」

『ありがとう、ユフィ。でも気をつけて、ナナリーの車椅子ドライブテクニックは異常だよ。ドリフト走行だって身に付けてるみたいだ』

 確かにさっきの動きを見ればドリフト走行だってやってのけるだろう。廊下を走りナナリーの追跡を続けていると、ナナリーはもうすぐ角に差し掛かるみたい。どうにか足止めしないと…。

 すると、少し先の扉からギルフォードが顔を覗かせています。

「先程廊下を走り抜けて行ったのは…ナナリー名誉顧問か?…流石は姫様の妹様だ…もう、なんでもありなんだな…」

 これは使えそうです!

「ギルフォード!ちょっと出てきなさいな」

「?なんです?ユーフェミア様」

 扉から出てきたギルフォードを掴み、角に向かって投擲します!

「お行きなさいギルフォード!ナナリーを捕まえるのです!」

「そんな無茶を…のわぁ!?」

 ギルフォードは壁に激突し、上手いことナナリーの進路を妨害…

「お次にユフィ姉様は…『ありえません!』と言います!」

 ナナリーはそう宣言するとドリフト走行しつつ、更に急ブレーキ、つんのめって前に倒れるところを体重移動と腕の筋肉で車椅子を前宙返り…そんな…!

「ありえません…!なっ!?」

 そして私はナナリーの超絶技巧に気を取られ、壁をブチ抜き、6階から転落してしまいました。

「いたた…膝を擦りむいてしまいました…」

「姫、ご無事で何よりです。」

 背後から聞こえたのはギルフォードの声、振り返ると…

「あら」

「出来れば引っこ抜いて頂けますでしょうか」

 ギルフォードは首から下が埋まっていました。…何故?

 

 

 

 ジルクスタンの一件以降、世界は再び小さな混乱が起きつつある。悲しいものだね、何故人はこうも愚かなのか…。いや、いけないな、こう言う考え方は。するとインカムにゼロからの連絡が入ったようだ…なんだろうね?

「やぁゼロ。私に何か用かい?」

『実は名誉顧問が現在建物内を逃走中でして、車椅子の超絶技巧に私もユフィも手をこまねいている状況です。なんとかしてリハビリを受けさせたいのですが』

 …ゼロとユフィを振り切れるのならもうナナリーにリハビリは必要ないんじゃ無いかな。それにナナリーが車椅子に乗っているのは交渉において必ずしも不利では…あぁ、いや、こう言う考え方も改めなくてはね。

「分かったよゼロ。ナナリーの件は私が引き受けよう」

『お願いします』

 ふむ、まずは…

「やぁ、私だよ。今すぐ来てくれるかい?あぁ、よろしく頼むよ。」

 さて、仕込みは済んだ。あとは私自ら出向くとしよう。

 

 

 

 現在3階を逃走中…後方にはユフィ姉様もスザクも居ませんね。この建物はバリアフリー構造、故にこのまま順調に進めば…

「!」

 角を曲がる前、何かとても嫌な予感がして車椅子を止めると拍手が送られて来ました。

「…おやおやおや、ナナリーは鋭いね。」

 角から姿を見せたのはシュナイゼル義兄様…!すると、私のすぐ後ろの防火シャッターが勝手に降りてしまいました。

「ナナリー、君は次に『いったい何故…!』と言うね?」

「いったい何故…!…あっ!?」

「ナナリー、ここを通りたいのなら…私を越えていくと良い。」

 あの構えは…以前スザクから聞いたシュナイゼル義兄様の『天地知闘の構え』…!

「その様子だとこの構えが何か知っているようだね。的確に相手の弱点を切り裂く私の手刀が天から降り注ぎ、如何なる攻撃をも受け流す技を地から放ち、そしてそれを可能にする私の知略による先読み。これを同時に行うのがこの天地知闘の構えだよ。後の防火シャッターを突き破るにはその位置からでは加速が足りない。ならばナナリー、君は私に向かってくるしか無いよね。」

 微笑みながら構えを取っているが、まさにその通り、確実に言えることはお兄様でさえ破れなかったあの構えを私が破るなど不可能…。

「くっ…」

「どうしたんだいナナリー?向かってこないのかい?このままここで睨めっこをしても構わないけど、もうすぐこの場にゼロもユフィも到着してしまうよ?」

 私はナナリー ヴィ ブリタニア…こんなところで諦めるわけには行かないのです…!

 私はその場で車椅子を高速回転させました。これこそが私の打開策!

「…!?ナナリー、まさか君は…!」

 このまま高速回転させた状態で後ろのシャッターに突撃!シャッターを見事突き破ることが出来ました。

 

 …が、シャッターを突き抜けた瞬間、私の車椅子が斬り裂かれてしまいました。そしてその方に抱きつかれて捕まってしまいます。

「モニ〜!ナナリー様捕まえたモニ」モニモニ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果として、ナナリーのリハビリは中止になった。ナナリーは目を離すとその隙を見逃さず、逆立ちで逃走を企てるからである。どこぞのサーカス芸顔負けの技術を見てもうみんなが「リハビリ要らねえやもうこれ」となったのが理由だ。

 

 …なんで逆立ち走りで僕らと大差ない速度で走れるんだろ…ナナリー。

 

 




「野良犬ジョーさん」からのリクエスト、「ナナリーのリハビリ」です。

何?リハビリしてないだって?(殴打)


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EXTRAINING∞ (セリフ集)シャムナの行方

シャムナとジョジョのボスキャラセリフの親和性が高すぎる問題

気まぐれで追加するかもしれない。


第一部

 

「やめるのです、考え直しなさいゼロ!貴方にやり直す機会を与えようではないか!汚名を返上できる、ナナリーと幸せに生きれるわ…ゼロ!」

 

 

第二部

 

「我がギアスは『やり直し』無限新生のギアス!!」

 

「その無惨なる姿!美しいわ!シャリオよ!勝つのはおまえだわ!勝って合衆国どもの技術でその傷をいやそうぞ!!!!」

 

「死ねば良かろうなのだァー!」※自殺

 

第三部

 

「愚かな…知ると良い…『無限新生』の真の能力は…まさに!『世界を支配する』能力だということを!『無限新生』!!」※自殺

 

 

第四部

 

「この世のどんな事よりも信頼して言えることがある『無限新生』に『弱点』はない…」

 

「ジルクスタンは戦争無しでは存続できないという『サガ』を背負ってはいるが…『繁栄させてみせるわ!』」

 

「『誘拐』もバレタ…『ギアスの能力』もバレた…『発動条件』もバレた…もうどうやら安心して入浴できないらしい、ただし『今夜』だけよ!」

 

「わたしには生死は問題ではない…ジルクスタンは『繁栄する』…立派に『繁栄して』みせる」

 

「お風呂いっしょに…入っても…いいかなぁ~~~っ?『シャリオ』!?姉さんと久しぶりに…」

 

「ゼロにシャリオが負けたという『事実』さえも消して来たッ!それが『無限新生』ジルクスタンは誰にも負けれないッ!ジルクスタンを倒せる者はだれもいないッ!」

 

「『追いつめられた時』こそ…冷静に事態に対処し『チャンス』をものにするのよ…このシャムナいつだってそうやって来たのだ…今まで乗り越えられなかったトラブルなど一度だってないのよ!」

 

『シャムナのギアスの発動条件は死ぬことだ!ロロ!シャムナに引き金を引かせるなー!』

「いいや!『限界』だッ!死ぬねッ!」※自殺

 

 

第五部(腹筋のルルーシュから引用)

 

「この『無限新生』の前では何者だろうとその『行動』は無意味となる!誰であろうとこのジルクスタンの永遠の繁栄を脅かす者は許さない…決して!確実に消え去って貰う…『最初の人類』はこのシャムナだッ!!」

 

「我が『無限新生』の能力の前ではこの世の全ての時間が巻き戻り、そして全ての人類は巻き戻す前の時間の中で動いたことを覚えていないッ!空の雲は千切れ飛ぶ事を忘れ、消えた炎は消えた瞬間を炎自身さえ覚えていない!『記憶』だけだ!この世界のことは私の『記憶』だけに残る!!」

 

「シャリオよ…おおシャリオ…わたしのかわいいシャリオ…おまえにわたしの『予言』を与えてやったのを忘れたのか?それを使うのだ」

 

 

第六部

 

「一瞬考えたなッ!!その『差』が命とりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」※自殺

 

「撃ちなさい…その方が聖職者らしくこの世を去って行ける貴方達と決着をつけるのは未来のためよ」

 

「『時間のやり直し』により『時間』の行きつく究極の所!『過去』は一巡したッ!『新しい人類』だッ!人類の一人目の始点に到着し『夜明け』を迎えたのだッ!」

 

「悪い出来事の未来も知る事は『絶望』だと思うだろうが逆だッ!6時間後『死ぬ』とわかっていても『ギアス』があるから幸福なんだ!『ギアス』は『絶望』を書き換えるからだッ!ジルクスタンはこれで変わるッ!これがわたしの求めたものッ!『無限新生』だッ!

 

 

 

 

 

 

 

 暗闇の中、シャムナは息苦しさで目が覚めた。ピクリとも体は動かず、息苦しさだけが思考の全てを支配していた。

「…はッ!?…こ、ここは…?く、苦しい…!」

 すると、暗闇の中にホログラムのように少女が浮かび上がる。その少女は時折ノイズが混ざるように姿が乱れるが、彼女には害はないらしい。

『初めましてね、シャムナ』

「…貴方は?」

『私は時空の管理者。』

 シャムナは聞きなれない言葉に首を傾げ…ようとするが、やはり体は動かない。苦しさに耐えながら必死に頭を回転させる。

「時空の…管理者…?…6時間戻ったのなら私はまだジルクスタンに居るはず…だがここは…」

 ようやく紡ぎ出した疑問に少女は口を開いた。

『覚えていないようね、貴方がどうやって死んだのかを…』

 そしてシャムナの目に映るのは自らが神殿に横たわる様と、神殿の崩落であった。そしてシャムナは真実を理解した。

「…!こ、これは…気絶させられている間に神殿が爆破して…!?」

 そしてシャムナは苦しさが頂点に達し…

「…はッ!?こ、これは…生き埋めになって…!?

 シャムナは理解した。

「わ、私は何回死ぬんだ!?次はど…どこが…い…いつ『崩れて』くるんだ!?」

『貴方はもうどこへも行くことはない。貴方が現実に達することは決して…死ぬという現実にさえ到達することはない…終わりがないのが終わり、それが「無限新生」』

 

 シャムナは、二度と現実には戻れなかった。生と死の間を彷徨い、無限に死が確定した時間をやり直すのだ。そして、死にたいと思っても巻き戻るので…そのうち、シャムナは考えるのをやめた。

 




特に吉良とディアボロとの親和性が高い(能力的にも)

プッチ神父は言ってることを逆にするとしっくりくることがあります。未来を進めることで未来を知り絶対を覚悟できる世界を作るプッチ神父と、未来を知り過去へ戻ってやり直すことで絶望を覚悟することのない世界を作ろうとしたシャムナ


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EXTRAINING01 ブリタニア式バスケ

「今回の取材…なんめわざわざ受けたんですか?会長」

「リヴァル…もう私は会長じゃないって言ってるでしょ?」

「すみません、癖で…つい」

「全く…」

 リヴァルとミレイが乗っているのはジルクスタン行きの飛行機であった。ナナリー名誉顧問誘拐の事件以降、どうしても人々はジルクスタンから距離を置きたがったのだ。リヴァルもどちらかと言うとそちら側の人間だが、ミレイが強引に連れ出したのである。

「そうそう、シャーリーから聞いたんだけど、カレンがね、お父さんと東京クロヴィスシーに行くんですって」

「…あれ?カレンってお父さんと折り合い悪かったんじゃなかったっけ?」

「最近仲直りしたらしいわ」

 父親と仲直りしたと聞き、リヴァルは少し複雑そうに視線を逸らす。その様子を見たミレイは呆れたようにため息を吐いた。

「あんたねぇ…まだお父さんと仲悪いわけ?」

「しょうがないじゃないですか…今更帰りにくいですし…」

 その言葉を聞き、ミレイはオーバーにやれやれと首を振る。

「私もついてってあげるから、この仕事終わったらカルフォルニアに行くわよ。」

「…えっ?それってどういう…」

 ミレイからの答えを書く前に飛行機内に着陸が近い旨のアナウンスが入り、結局リヴァルは問の答えは有耶無耶になってしまった。

 

 

 

「テレビをご覧のみなさーん!こんにちは、ミレイ アッシュフォードでーす!本日はジルクスタンよりお送りしてます。かつて戦士の国として傭兵を輩出していたこの国ですが、今現在では超合衆国における連携の下、体が不自由な人でも快適に過ごせるような技術の開発などに国の舵を切っているようです。また、近年ではジルクスタンの傭兵育成技術を活かして様々なスポーツ選手を育成し、各国に輸出する事で大いに活躍している…戦士の国は選手の国に生まれ変わったと言う事なんですね〜」

 ジルクスタンは例の一件を受け、傭兵家業からいわゆる「助っ人外国人」として各国に強靭な選手を輩出するスポーツ業に力を注いでいた。ジルクスタン代表のシャリオ曰く戦争は無くなるがスポーツは無くならないからとのこと。そして今日ミレイ達がジルクスタンを訪れたのは何を隠そう、新スポーツ『ブリタニア式バスケ』によるブリタニアとジルクスタンの親善試合があるのだ。

「本日はジルクスタンにお越し頂きありがとうございます。ナナリー名誉顧問…いや、ナナリー監督」

「えぇ、よろしくお願いしますね。シャリオ監督」

 ナナリーとシャリオの両監督が握手を終えるとベンチへと戻っていく。ナナリーは選手であり、自身の兄姉である三人を見つめ喝を飛ばした。

「徹底的に叩きのめしてあげてください」

「…いや、ナナリー?これ親善試合…」

 ナナリー監督の余りの物言いにコーネリアは焦るが、ナナリーはコーネリアに睨み返すと

「監督は私です!」

 と言い返す。余りの圧に最早コーネリアは何も言えなくなってしまった。

 

『会場の皆さーん!そして、中継をご覧の皆さーん!こんにちは!実況のミレイ アッシュフォードでーす!これからブリタニア式バスケのルールについて軽くおさらいをしまーす!ルールは簡単、通常のバスケットボールを3人の選手で行うだけ!ただし、通常よりも試合時間は短いですよ〜。それでは選手の入場です!』

 

 ブリタニア側の選手はシュナイゼル、コーネリア、ユフィの3名。それぞれブリタニア式バスケにおける必殺…必勝技と呼ばれる特技を持っている。

 対してジルクスタン側の選手はボルボナ フォーグナー、ビドゥル、クジャパットの3名。選手同士も握手を終えると早速死合…ではなく試合が始まった。先に攻めるのはブリタニア側、ユフィからノールックパスを受け取ったコーネリアがドリブルで進んでいく。その前に現れたのは元山賊のビドゥル。

「この先は行かせねぇ!」

 ビドゥルはそのガタイの良さを活かし、相手選手に圧と長いリーチによるボール簒奪が得意な選手であった。しかし、今回は相手が悪かった。

 コーネリアはボールを高速回転させつつ凄まじい速さでパスを射出した。そのボールは地面にワンバウンド、回転の影響でコーネリアの狙い通りに飛んでいく。

 

 そしてボールが到達したのはビドゥルの腹であった。その凄まじい速度と回転によりビドゥルは壁に吹き飛び、ビドゥルにやって反射したボールをコーネリアは受け取ると更にドリブルで突き進んでいく。

『でました!コーネリア選手の必殺技、閃光のように鋭い正にキラーパス!あの技で多くの選手を葬ってきました。ブリタニアの魔女と恐れられるコーネリア選手による閃光のようなボール捌きからシャイニングウィザードと呼ばれています。』

 そしてコーネリアはゴールに向かってボールをシュート…するが、そのボールはボルボナ フォーグナーによって叩き落とされた。ボルボナ フォーグナーはブリタニアに負けたあと必死で肉体改造を施し結果にコミットした結果、年齢を感じさせないマッスルガイに変貌していたのだ。

「ボルボナ フォーグナー…!最早贅肉者でも脆弱者でも無いようだな…!」

「我が褐色の城壁と言う異名は伊達では無い!」

 しかし叩き落とされた先に待っていたのはユフィだった。

「ユフィ、ボールを私にパスしてくれるかい?」

 ユフィに対して声を掛けたのはシュナイゼルだったが、ユフィがボールを渡した先はなんとクジャパット。

『おっと!?ユフィ選手、ここでなんとパスミスです!』

 ミレイは知らぬ事だが、ユフィは確かにシュナイゼルにパスを出したつもりだった。そう、クジャパットは人物の認識を入れ替えるギアスで己とシュナイゼルの姿を入れ替えて認識させたのだ。

 

Q.ルール違反では?

A.ギアスを使ってはいけないなどと言うルールはバスケットボールのルールには記載されていない。(殴打)

 

「私はスポーツマンシップなど持ち合わせていないのでねぇ…」

 ニヤリと笑いドリブルで突き進むクジャパットだったが、その前に現れたのはシュナイゼル。ビドゥルは未だに起き上がれず、ボルボナ フォーグナーはゴール前でコーネリアにマークされている。ユフィの認識は入れ替えたが、明らかに自軍ゴールを狙う動きでどうやらギアスの事を把握されたらしく既にシュナイゼルの姿をしているクジャパットに向かってきていた。

 つまりクジャパットに残された選択はシュナイゼルに対してフェイントを仕掛けて抜き去る事である。しかし、それが不味かった。既にシュナイゼルはブリタニア最強の防御である天地知闘の構えを取だていたのだ。シュナイゼルは相手の視線や筋肉の動きで行動を先読みし、的確にフェイントを弾き、更に手刀でボールを奪う。そしてすぐにユフィにパスを出した。ユフィは先程ボルボナ フォーグナーにコーネリアのシュートが塞がれていたことを思い出しダンクシュートを決めることにした。そしてユフィは思い切り踏み込んで跳躍する。そして、ダンクシュート。

 

 ブリタニアは3点を先制した。

 

 ブリタニアは3点をダンクシュートで先制した。

 

『今回も出ました!ユーフェミア選手のスリーポイントダンクシュート!最早止める術はありません!』

 結果として、コーネリアのシャイニングウィザードでクジャパット試合続行不可となり、ボルボナ フォーグナーではユフィのダンクシュートを止められず試合は一方的に決まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …と思っていたのか?

「選手交代!僕!」

 意識不明の重体のビドゥルに代わり、シャリオがコートに入った。ブリタニア式バスケにおいては健常者と車椅子プレイヤーの両方がコートに入ることが許される。スポーツとはより広い人に楽しまれる自由なものであるべきなのだ。そして車椅子プレイヤーには車椅子バスケのルールが適用される。そしてシャリオはボルボナからボールを受け取ると、かつてナナリーが見せた超絶テクニックで車椅子を飛ばし、なんとシャリオもスリーポイントダンクシュートを決めたのだ。ブリタニア式バスケにおいてスリーポイントシュートやダンクシュートはできて当たり前の世界であり、その両方を合わせたスリーポイントダンクシュートの成功確率が勝敗を分けるのである。

 再度ボールを手にしたコーネリアがすかさずシャイニングウィザードでボルボナを葬り去らんとするが、ボルボナはコミットした身体で耐えた。そしてまたシャリオにボールを渡すとスリーポイントダンクシュートが放たれる。しかし、更に試合が動いた。

「選手交代!私!」

 なんとナナリーもコーネリアと交代しコートに入ったのだ。そして忘れてはならないのがナナリーはあのマッスルガイシャルルと運動神経化物のマリアンヌの悪魔合体によって爆誕した子供…。あのルルーシュの妹である。よって彼女の車椅子捌きはシャリオを圧倒し、また上半身も胸筋以外は見た目以上に発達していた。ゴール前から相手ゴールへの正確なスリーポイントシュートを叩き込めば最早止められず、シャリオのスリーポイントダンクシュートもシャリオが射出される前に垂直跳びをする事で進路を妨害…正しく言えばナナリーのいるところにシャリオが突っ込んできているだけなので反則にはならない…すると、その点差は丸々うちに開いていく。結果としてダブルスコアでジルクスタンを圧倒したのだ。

 

「今回の試合、MVPはナナリー監督だと思われますが、今のお気持ちはどうですか?」

 ミレイによってマイクを向けられると、ナナリーは可愛らしく笑う。

「このまま技術を研鑽して、篠崎監督率いる日本チームに今度こそ勝ちたいと思います。」

 

 そう、このブリタニアチームですら篠崎流には勝てないのだ。恐るべき篠崎流。

 

 

 因みに、今回の一件でジルクスタンを避ける動きは減ったとかなんとか。

 




ブリタニアの全速前進作戦のお陰とカレンがマッスルデバイスで原作より一方的だったため、ビドゥルは死亡回避。
クジャパットは卜部に鞘で殴打ぶん殴られ気絶しただけなので死亡回避。

コーネリアのシャイニングウィザードはプロレス技のシャイニングウィザードではありません。


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REQESTRAINING06

「…筋肉を…彼の筋肉を認めて…私は…」

 帝都ペンドラゴン跡地を一人、全裸で歩く男がいた。そう、ナニを隠そう…じゃなくて何を隠そう、彼こそが神聖ブリタニア帝国第一皇子のオデュッセウスだ。

 

 突如帝都ペンドラゴンを襲った破壊の光、ありとあらゆるものが…空気すらをも掻き消したそれは正に絶対的兵器、放たれれば万物を飲み込み、飲み込まれれば粉微塵になって無くなる。それがフレイヤである。

 しかし、あのシャルルですら耐えられないお転婆なナナリーの金的を受けても長男だからと耐えられた男がいた事を覚えているだろうか?

 

 そう、神聖ブリタニア帝国第一皇子オデュッセウス…ルルーシュ曰く凡庸な男は見事フレイヤにも耐え切ったのだ。

 

 全裸のまま認めし筋肉を持つルルーシュを探して彷徨い歩くオデュッセウスは、帝都を目指してバイクを走らせていた男達に絡まれてしまった。

「おい見ろよ!このオッサン全裸で歩いてるぜ!」「なんかどっかで見たことあるような…」「腹に板チョコでも付けてんのかい?」

 フレイヤによって身につけていた衣服を全て粉微塵になって消されたオデュッセウスは現在全裸であるが、どうやらバイクに乗っていた彼等はそれを面白がったようだ。そして暴れ者である彼等は周りに誰もいないのをいいことに乱暴を働いたのである。殴る、蹴るでは飽き足らず、ついには道具を持ち出し彼に危害を加えんとした。

 

 が、無意味。フレイヤで傷つかない彼が人間の暴力で傷が付くか?答えは勿論ノーだ。シュナイゼルがあらゆる攻撃を予測し的確に弾き、『当たらない』ことで全ての攻撃を無効化するのに対し、オデュッセウスは全てを受けるものの『ダメージが無い』ことで全ての攻撃を無効化するのだ。回避特化と防御特化みたいなものの違いだと考えてほしい。

 

 そんな訳で三人がかりの暴力にも屈さないオデュッセウスは現在ルルーシュの『我が筋肉を認めよ』というギアスにかかり、彼によって『ブリタニアの兵士となって我が敵と戦え』と命令を受けていた。全ての攻撃を受け切ったオデュッセウスはギアスにかかった頭でこの乱暴者達を敵と判断し、普段は温厚で人を殴ったことなどないのだが兵士として戦うことに決めた。

「私は…神聖ブリタニア帝国元第一皇子…オデュッセウス ウ ブリタニア…今から君達を我が主君ルルーシュに逆らう敵として始末させて貰うよ。」

 そして彼は拳を振りかぶって一人の男の腹を渾身の力でブチ抜いた。速度こそそこそこだが、何せオデュッセウスは頑丈なのだ。拳は驚くほどに固く、今まで一方的に痛め付け(られると思っ)ていた相手からの反撃にガードできなかった乱暴者には十分な威力だったのだ。

 こうして乱暴者を逆にボコボコにしたオデュッセウスはギアスに操られた頭ながら流石に何か着た方が良いと考え始めた。そして目の前に転がる男から革ジャンを剥ぎ取り、裸革ジャンという危ないファッションに身を包んだ。ついでにサングラスも拝借し、移動のための足となるバイクも奪ってその場を後にした。

 

 

 

 そしてオデュッセウスはルルーシュの敵…つまり、ルルーシュを殺害したゼロと超合衆国を敵視していた。そしてあろうことかテロリストになっていたのだが、指揮攻略に乏しい彼ではうまいことはいかず、あっという間に囚われてしまった。そしてオデュッセウスがテロリストだと聞いたシュナイゼルはコーヒーを吹き出しつつ、コーネリアに事情聴取を命じた。どうにも話が噛み合わず、話の噛み合わなさにピンときたコーネリアはジェレミアを呼び寄せたのだ。そしてギアスキャンセラーを受けることで本来の自分を取り戻したのである。因みにシュナイゼルは未だにギアスに掛かったままである。

 そんなオデュッセウスは本日ジルクスタンにてナナリー監督率いるブリタニア選抜…という名の皇族チームとジルクスタンの親善試合を見学していたのだ。試合が終わると彼は弟妹達に労いの言葉をかけようと近づいて行った。

「やぁシュナイゼル、見事なディフェンスだったね。」

「ありがとうございます兄上。」

 オデュッセウスはシュナイゼルにタオルを手渡したが、とうのシュナイゼルは汗をかいていなかった。悲しいことである。

「コーネリアも、見事なパスだったよ」

「ありがとうございます、兄上」

 オデュッセウスはコーネリアには飲み物を手渡していたが、途中交代した際に水分補給していたのでコーネリアには不要であった。

「ユフィも…ユフィ?どこに行くんだいユフィ!ユフィー!?」

 ユフィは…持ち前の跳躍力で何処かへと飛んでいってしまった。

「あら、オデュッセウス義兄様、来てたのですか」

「やぁ、ナナリー。見事な采配だったよ。」

「ありがとうございます」

 オデュッセウスは自分の足を見て、ナナリーを見て、再度足を見た。

「何か?」

「ははは、ナナリー、車椅子で私の足を踏んでるんだよ。車椅子の車輪の軸が悪くなるといけないからどかした方が良いんじゃないかな」

「あら、失礼しました」

「ナナリーは相変わらずお転婆だね」

 お転婆という発言にナナリーは可愛らしく恥じらった表情を見せると

「それでは失礼します」

 と言い、車椅子でオデュッセウスの足を轢きつつ去っていった。

 

 オデュッセウスは現在シュナイゼル達と同じ施設にて働いていた。つまり、一応は黒の騎士団員と言うことになる。元第一皇子とはいえ、今やナナリーでさえ働く時代、オデュッセウスとて例外なく働かなければならないのである。とは言え、彼は凡庸だった。本来の気性を取り戻した彼は争いごとには向かず、器用さもなく、知略に富む訳でもない。

 

 そんな訳で彼は今施設内の清掃員として実に穏やかな表情で廊下を清掃しているのである。すると、オデュッセウスのインカムに連絡が入った。

『オデュッセウス殿下!私です、ゼロです!ナナリー名誉顧問が逃走しました!捕まえて下さい!』

「それは大変だね。」

 ゼロからの連絡を受けて直ぐにオデュッセウスはその視界に車椅子で爆走するナナリーとその背後をダッシュで追うゼロを捉えた。

「予防接種は嫌です!!注射怖い!!」

「子供みたいなこと言わないでください名誉顧問!!」

「私はまだ子供です!!」

 オデュッセウスはそんな仲睦まじいゼロとナナリーを見ながら微笑み、廊下の真ん中で仁王立ちした。

「オデュッセウス義兄様!?しまった…!」

 結果として、オデュッセウスに激突した車椅子は爆散し粉微塵になって消えた。ナナリーは微笑みの表情のまま、車椅子爆散の影響でほぼ全裸になってしまったオデュッセウスに抱っこされる形になったのである。

 

 因みにナニも…ではなく、何も知らない紅髪の職員がその様子を見て変質者がナナリーを誘拐しようとしていると勘違いして殴りかかったりしたのだが、まぁ、それは瑣末な出来事だろう。




「漣十七夜さん」からのリクエスト「弟妹達を微笑んで見守るオデュッセウス」のお話

Q.なんでフレイヤに耐えられたんですか?
A.長男だからさ

ここで光和こそこそ噂話!
腹筋のルルーシュシナリオでは、ルルーシュはギアスを使ってないんですよ。


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EXTRAINING04 孤高のグルメ

 元ナイトオブラウンズのドロテア エルンスト、彼女は新生ナイトオブラウンズとして現れたロロにより敗北したが、しれっと生き残ってその後は各地を放浪としつつ、偶然街で『物直しの天才』と称して修理屋として働いていたルキアーノと再会し、同じ街で暫くゆったりと生活を送っていた。ジルクスタンの一件の後、モニカの結婚式の際に何故か呼ばれた為、日本へと向かい、その後は趣味の読書で培った筋肉を見る目と、各地を放浪とした経験から個人で筋肉雑貨の貿易商を営むことになった。因みに最早結婚については諦めたらしくノネットに「結婚は守るものが多くなって人生が重くなるからしない」と言い訳じみた謎の決意表明をしている。

 

「それではシャーリー殿、取引ありがとうございました。」

「いえいえ、ドロテアさんが持ってきてくれる雑貨はどれも素敵でいつも助かってます!」

 ドロテアは一仕事終え、帰路に着いた。しかし、そんな彼女にある問題が降り注ぐ。

「…腹が空いたな。」

 時間や社会に囚われず、幸福に空腹を満たす時、つかの間、彼女は自分勝手になり自由になる。誰にも邪魔されず、気を使わずものを食べるという孤高の行為。この行為こそが現代人に平等に与えられた、最高の癒しと言えるのだろう。そんな訳で彼女は次の仕事の予定まで時間があることを確認し、店を探して街中を歩き始めていた。

「…よし、今日はここにしよう」

 彼女は選んだ店に入るとカウンター席に座り、メニューを眺めたり、店の中の壁にかけられたメニューに目を通した。耳では店内の音を聞き、その雰囲気を楽しむのが彼女の流儀である。

「よぉ、しんくーに南ぃ!また来てくれてありがとなぁ!今日は何にする?いい魚が入っててよぉ!キンメダイの煮付けとかどうだ!?」「いや、今日は軽めのメニューを頼む」「そういう訳だ、悪いな」「しゃーねーなぁ…」

(キンメダイの煮付け…確かワショクと呼ばれる日本の料理か、我々がかつて占領した国の料理…味わい私が再度占領するのも一興か)

 彼女は空腹になるとたまに意味のわからないことを口走るのだ。そんな訳でキンメダイの煮付けは確定、他に何を食べようかと迷っていると、おすすめランチの文字が目に止まった。

(こういう店は気を衒わずに店主のおすすめが一番美味いものだ。よし、決まった)

 常連であろう客から店員が離れたのを見計い、店員を呼びつけるとキンメダイの煮付けとおすすめランチを注文した。自分の注文したものを待っている間も店の音と匂いを楽しむことを忘れない。

「あいよしんくー!お待ちどう!肉ニラ玉と青椒肉絲だ!」「お、来た来た。冷めないうちに頂こう。」「そうだな」「「頂きます」」

(…ほう、この店では中華連邦の料理も食べられるのか。それに手を合わせてのアレも確か日本の文化だったか)

 ドロテアは聞き耳の結果、余裕があるなら青椒肉絲も食べようと決意した。彼女は食べる時は食べるのだ。…そしてたまに後で後悔する。

「あいよぉ!ねぇちゃんお待ちどう!キンメダイの煮付けとおすすめランチだ!…見た感じアンタブリタニア人だろ?箸…あーチョップスティックは使えるか?」

(ね、ねぇちゃん…?)

 呼びなれない呼ばれ方に少しだけ困惑したが、料理の匂いを嗅げば多少馴れ馴れしい店主の態度も気にならなくなる。そして当然ドロテアは箸は使え無い為、首を横に振る。

「そういうお客にはナイフとフォークだ。まぁ、ナイフで切るほど硬くはねぇけどな!」

「気遣い感謝する。」

 ドロテアは店主の馴れ馴れしさもこの店の味わいの一つなのだろうと考え、常連らしき男二人に習い、ぎこちなく手を合わせる

「頂きます」

 ドロテアは右手にナイフ、左手にフォークを構え、早速キンメダイに突撃した。

(おお、柔らかい…)

 店主の言っていた通り、ナイフなど不要な程に柔らかくなったキンメダイに、ドロテアは驚きつつもまずは身を食べ易いように削いでから口に含んだ。

(うむ、旨い。歯応えのあるステーキ肉も嫌いでは無いが、口の中で解けるような柔らかさと、甘辛いタレとの絶妙なバランスが堪らん…)

 ドロテアは器用にナイフとフォークでライス…要は白米を口に運び、またキンメダイの煮付けを頬張った。

(甘辛い味付けのキンメダイが甘い米を進ませる…!)

 本来はおすすめランチの米を半分ほど平らげてからドロテアはようやくおすすめランチのメニューについて確認を始めた。

(これは…キムチ、だったか?あとは味噌スープにキャベツの千切り、それにこれは…揚げ物か…平べったく、尻尾が出ている…魚、だろうな)

 おすすめランチのメインはアジフライであった。これにはドロテアも思わず苦笑いをしてしまう。

(キンメダイの煮付けとアジフライ…いかんな、魚と魚が被ってしまった。)

 しかしドロテアは気を取り直し、今度はアジフライに齧り付いた。揚げたての衣がサクサクと音を鳴らし、アジ自体の味付けもあったため、何も掛けずともドロテアは一つ目のアジフライを平らげてしまう。

(ううむ、ナイフとフォークが止まらん…)

 そのままドロテアのナイフとフォークは減速することなくライスを平らげ、キンメダイの煮付けを平らげ、アジフライを平げた。

 

 しかし、ドロテアは止まらない。

 

「済まない、追加の注文いいだろうか」

「おお?ねえちゃんよく食うなぁ、何にすんだい?」

「青椒肉絲とライスの中をくれ」

「あいよっ!」

 ドロテアの追加注文に顎髭にバンダナの店長はニカッと笑い厨房へと戻っていった。しばらくして運ばれた青椒肉絲とライスもあっという間に平らげるとようやくドロテアは満足げに目を閉じた。

(…美味かった)

 すると、常連らしき客は会計を済ませたらしく、ドロテアは入り口の開く音を聞いた。

「美味かったぞ玉城、ご馳走様」「また利用させてもらう。馳走になった。」「おうよ!また来てくれよなー」

(ご馳走様…か、うむ、食事の前と後にも挨拶か、悪く無い文化だ。)

 ドロテアは手を合わせて

「ご馳走様」

 と言うと、会計を済ませにレジへと向かった。支払いを済ませると店主はドロテアに向かった

「ねえちゃん、ありがとな!また来てくれ」

 と笑いかけた。ドロテアも少しだけ口角を上げると

「日本に来た際にはまた寄ろう」

 と答え店を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回ドロテアが向かったのは筋肉雑貨の仕入れ先の店。

「頼んでいた品は出来ているだろうか」

「あ、ドロテアさん、いらっしゃいませ。はい、出来てますよ」

 取引先のもやし男に店の奥へ案内され、ドロテアは約束の品を確認した。

「素晴らしい。ここまで見事に筋肉を表現したフィギュアを作れるのはロロ殿しか居ないな」

 木彫りのマッスルガイを手に取り、ドロテアは満足気に頷いた。

 




Q.そういえばドロテア、ルキアーノの居場所はどうやってモニカにバレたの?
A.腹筋のルルーシュシナリオの後、トラックを買い戻す際にルルーシュに発見されたため、スザクに居場所が伝わり、招待客に元ラウンズを呼びたいというモニカの願いに卜部がスザクに相談したため、間接的に伝わった。

Q.筋肉要素薄く無い?
A.(殴打)

因みに、クソどうだも良い話ですが、作者は煮魚が嫌いです。


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ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 蒼穹に散らないゼロ プロローグ

 これは、あり得たかもしれないもしものお話

 ルルーシュはゼロとしてC.C.と共にガウェインに乗り、紅蓮に乗るカレンと共に黒の騎士団に、旧日本軍メンバーを主とした黒の騎士団に恭順しないテロリストの殲滅に当たっていた。すると、ランスロットに乗ったスザクが現れた。ブリタニアとしてもテロリストの殲滅は仕事であり、このままではテロリストである黒の騎士団に功績が取られてしまう。それを避けるためにスザクが遣わされたのだ。

 とはいえ、これはスザクを信頼して任せたと言うよりも、取り敢えず先んじて誰か向かわせる事となった際にスザクなら最悪使い捨てられると向かわせただけである。そして、ランスロットが出動したと言う真実さえあれば後の功績は全てブリタニアのものにできる。

 そして唐突だが、ガウェイン、紅蓮弐式、ランスロットの3機は突如発生した謎の空間の穴に引き摺り込まれてしまったのだ…。

※本ストーリーは「コードギアス 〜反逆のルルーシュ〜 蒼穹に散るゼロ」がベースとなったお話です。


 目を覚ますと、モニターには見慣れぬのどかな草原が映った。先ほどまで居たところとは明らかに景色が異なる。俺は後ろを振り返りC.C.の様子を確認した。

「…C.C.?意識が無いのか…おい起きろ。」

 軽く揺さぶると気が付いたらしい。

「…ここは?」

「分からん。」

 ガウェインで探知できる範囲内にナイトメアは確認できなかった…何がどうなっているのやら。とりあえず外気に有毒物質などが無いことが確認できた為、ハッチを開け空を見上げ…ん?

「おい、なんで空に島が浮いてるんだ?」

「なんだルルーシュ、お前でも冗談が言えるんだな」

 俺が空を指を刺し、つられてC.C.も空を見た。そして驚いたように目を見開く。

「…おいルルーシュ、なんで空に島が浮いてるんだ?」

 俺の質問に俺と同じ質問で返すやつがあるか。それに風の匂いや湿度、雲の形に植生を見るとどうやら日本では無い様だ。そもそも地球ならば空に島が浮いているはずなど無い。フロートシステムという線もあるが…確認しようにもガウェインのエナジーは残り20%と心もとなかった。

「…その様子だとガウェインを使って探索…と言うわけには行かなそうだな」

 俺はC.C.のその言葉に首を振った。

 

 横に

 

「うん?もうエナジーは無いのだろう…?充電できる見込みもなしに…」

 俺はあるものを取り出した。

「…それは?」

「こう言う時のためにラクシャータに作らせておいた手回し発電機だ。こいつを俺の全力で1時間回せばフルチャージが可能だ。」

「こういう時ラクシャータを称賛すべきかお前の筋肉を誉めるべきか判断に困るな」

 それはもちろんラクシャータだろう。俺はシステム…ようはソフト関連ならそれなりに疲れるがハード系はからきしだ、1時間全力で発電機を回すにも準備が必要だ。それが、食事と水分。発電するにはそれなりに何かを消費する必要があるのだから当然である。エネルギー保存の法則というやつだ。

 すると、ガウェインのセンサーが熱源…人間を数人感知したらしい。

「これは好都合だ。向かうとしよう」

 ガウェインで空を駆り、熱源に向かうと、どうやら女性が甲冑姿の人物達に追われている様だった。

 ガウェインの操縦をC.C.に任せ、ガウェインから飛び降り、女性と甲冑姿の人物達の間に降り立つ。

「た、隊長!空から変なやつが!」「なんだァ…てめェ…?」「なんだその筋肉、肩に騎空艇でも乗っけてんのかい?」

 どうやら甲冑姿の人物達は男の様だ。しかし言語が通じるのはなんとも不思議だ。女性の服装や顔、男達の鎧の感じから過去のブリタニアの洋式とも異なる。まさか異世界などというものがあるかはわからないが…ギアスなんてものやCの世界なるものがあるのだ。異世界だってあったところで不思議はない。とりあえず俺は女の方を見た。

「"なぜ追われている?お前は悪人か?"」

「…理由は分かりません。突然追いかけ回されました。私は悪人ではありません…」

 と答えてきた。その朦朧と質問に答える様子にギアスの効果を感じる。どうやらギアスは正常に作用しているらしい。ありがたいことだ。

「ではお前たち、何故この女を追っている?」

「チッ、面倒な野郎だ。やっちまえ!」

 振り下ろされた剣を腕で防ぎ、兜ごと顔面をぶん殴る。殴られた男は吹っ飛び、近くの岩に激突した。

「…?お前今何した?」

 

「何って、剣を筋肉で弾いて兜ごと人間を素手で殴っただけだが?」

 

「魔法の類か!?」

 …魔法?なるほど、この世界には魔法とやらがあるらしい。取り敢えず男達は3人、話は最後の一人に聞けばいいので鎧ごと腹をブチ抜き気絶させる。

 最後の一人に関しては降伏してきたので武装解除し鎧兜を脱がせた上で話を聞くことにした。女の方は先に帰ってもらっている。お陰でこの世界の事はおおよそ理解することができた。空に島が浮いてると思っていたが、なんと今自分が立つこの地面も空に浮いているらしい。更に文明のレベルからして機械などの概念はあまり浸透していないようだ。…手回し発電があって正解だったな。

 女が向かった先に町があるのだろうと思い、C.C.と二人で向かうことにした。道中謎の生命体…甲冑の男の話ではこの世界に多数存在する魔物と言う生き物らしい…に出会ったが、拳で殴ったら逃げたので問題はないだろう。

 一度、ガウェインを草葉で隠してから俺達は街へと向かった。街に着いたので取り敢えず飲食店に入り栄養を補給することにしよう。

「…おいルルーシュ。お前、支払いはどうするつもりだ?まさか店員を殴って食い逃げなんて…」

「食い逃げ?そんな犯罪犯すはずがないだろう。金ならある。」

 俺は甲冑の男達から迷惑料として財布を拝領していたのだ。これで食い逃げにはならない。

「…カツアゲも犯罪だと思うがな」

 そう言うC.C.だが、店員に渡されたメニュー表を受け取るとなんの遠慮もなくメニュー表を開いていた。

「…ルルーシュ、文字が読めない」

「…言葉は通じたから文字も通じてると思ったが…異世界はそう甘くないか」

 一応俺もメニュー表を覗いてみたが、俺にも読めなかった。仕方が無いので店員を呼び出し、事情を説明してメニューを選ぶ事にした。

「あの、すみません」

「はいはい〜」

 俺の呼びかけにやってきた店員の背はかなり低い。1mもない背丈に童顔、思わず子供かとも思ってしまうが恐らく彼女が「はーゔぃん」なる種族の人物なのだろう。

「実はこの国の文字を我々は読めなくて…」

「おやおや〜これは困りましたね〜。ではどんなものをご用意致しましょうか?」

 するとC.C.に体を叩かれ、そちらを向くとどうやら指を指しているようだった。視線をその先に向けると蒼い髪の少女が美味しそうに何かを食べている。

「はわわ〜!シェロさんのお店のキノコシチュー美味しいです〜!」

 …ふむ、キノコシチューか、いいだろう。きのこは低カロリーな上に栄養素がたっぷりだからな。

「彼女が食べてる…キノコシチューを二つお願いします」

「かしこまりました。シェロちゃんにお任せを〜」

 すると、蒼い髪の少女と同じテーブルに新たに二人の人物が腰を掛けた。

 

 一人は赤と青の目出し帽…というより覆面だろうか?を被る俺並みの筋肉を持つ男…マントの下にはパンツらしい履物以外は身につけていないようだ。…少女の様子から知り合いなのだろうが…犯罪者じゃ無いよな?

 そして同じようなガタイのもう一人は…いや、一人、人…?人なのか?こちらに向けている背中には羽らしきものが見えるが、あまりにも矮小だ。それに…うむ、尻尾があるな。全身オレンジだし…。というか何も着てないし履いてないな。どうやらこの世界には秩序というものはないらしい。すると、彼らにこちらのことがバレてしまったようた。

「なんだぁ?オイラ達をそんなにジロジロ見やがってよぅ。オイラは見せもんじゃねぇ!」

「…済まない、そこの彼女が余りにも美味しそうにシチューを食べていたので」

「はわっ!?見られてたんですね…恥ずかしいです…」

 よく見ると彼女の机には…シチューの皿が…あー…10皿はあるな。どうなってるんだ…?胃袋…。俺のチートデーより食べてるんじゃ無いだろうか。そして目出し帽の男は俺のもとまで歩いてくると手を差し出してきた。握り返すと彼は空いている手でサムズアップし

「ナイスバルク」

 と言ってきた。その言葉に俺もサムズアップで返し

「ナイスバルク」

 と答えた。

 すると、先程の店員がシチューを持ってきたようで、俺たちの近くにやって来た。

「おや〜?グランさん、もしかしてまた依頼でも受けたんですか?」

 …依頼?彼はもしかして騎空士とやらなのだろうか?魔法や魔物のいるこの世界には何でも屋のような存在が有る…それが騎空士、浮いた島と島とを騎空艇なる空飛ぶ乗り物で移動して人々を助ける…要は正義の味方だな。

「いえ、まだ何も依頼はして無いんです」

「そうなんですね〜。でもまだって事はこれからされるって事ですね〜。それではごゆっくり〜」

 そうして彼女はシチューを置いて店の奥に消えた。俺とC.C.は自分の分のシチューを持ち、彼らと同じテーブルに着く。

「俺の名前はマッスル、彼女はグレーテルだ。実は困ってることがあって、ここであったのも何かの縁…って訳で依頼をさせてもらいたいんだが、良いだろうか?」

 俺が困っているという話をしただけで蒼髪の少女…自己紹介ではルリアと名乗っていた…はグランと呼ばれたマッスルガイに「力になってあげましょう」などと言っているあたり、彼らは恐らくお人好しだろう。そんな彼らに偽名を名乗るのも少し憚られたが許して欲しかった。

 

 こうして俺達はグランを団長とする騎空団と行動を共にし、騎空艇「グランサイファー」に乗り込むことになった。

 

 

 

「なぁなぁ、お前らと一緒に積み込んだ黒いゴーレムだけどよぅ」

 声をかけてきたのはグランの相棒のビィ。グランと共に修行を積んでいる間に今のような姿になった自称ドラゴンだ。俺がイメージとして知ってるドラゴンとはかなり風態が異なるが…まぁ、そういうこともあるのだろう。多分。

「黒いゴーレム…あぁ、ガウェインのことか」

「それそれ、実はよぅ、うちの団にも居るんだぜぃ」

「誰が?」

「ガウェインって名前の奴がだよ!いつも仮面してて仏頂面なんだぜぃ!」

 まぁ、この世界が異世界とはいえ…そう言うこともあるのか…?…。まさかとは思うが…

「なぁ、もしかしてこの団にランスロットって奴は居るか?」

「お?なんで知ってんだ?もしかして知り合いか?」

「いや…知り合いではない…」

 …。

 

 異世界って…不思議だな!

 




「コードギアス 〜反逆のルルーシュ〜 蒼穹に散るゼロ」が(グラブルとのコラボ)が原作ならクロスオーバーにならないのでは?(トンデモ理論)

クロスオーバータグつけちゃうと語弊が出る気がするんですよね…。


●登場キャラクター紹介●
・グラン
ルルーシュ達が世話になる騎空団の団長。年齢はまだ10代半ばほどだが、ルルーシュの如きマッスルガイ。マントとブーメランパンツのような格好にレスラーのマスクを着用しているものの、素顔は普通にイケメンの部類に入る。寡黙だがお人好し。

・ビィ
グランの相棒にしてライバル。幼少期に両親と離れ離れになったグランの代わりに常にそばに居続けた自称ドラゴン。元々は40センチほどの体長だったが、グランと共に鍛錬するうちにいつのまにかグランと変わらないマッスルガイ(?)に成り果てていた。一人称はオイラ。

・ルリア
グラン達と行動を共にする大食い女。調子がいい時は自身の体積の倍以上の肉塊を胃袋に収めた。蒼く長いストレートヘアに、割と際どいミニスカートな上に若干透けてる白いワンピースに身を包み、足場の悪い崖だろうが、岩山だろうが、鬱蒼とした森だろうが、じめじめとした沼地であろうが、灼熱の大地だろうが、砂漠だろうが、猛吹雪の極寒の地だろうが裸足で歩く強靭な足の裏の持ち主。故に彼女は心のマッスルウーマンである。

・シェロカルテ
大人でも身長が1メートル程度という種族「ハーヴァン」の成人女性。よろず屋を営んでおり、人の斡旋や武器の製造販売、道具の製作販売、物品交換、人身売買、密航、飲食店経営などその事業は多岐に渡る。
噂では彼女に逆らった島が一つ地図から消えたとかなんとか


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ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 蒼穹に散らないゼロ 第一話

 俺はマッスル、C.C.はグレーテルと名を偽り、グランの騎空団に身を寄せていた。初めは筋肉量の差を見せ付けて支配下に置こうとも思ったが、グラン達は筋肉量もお人好しさも桁外れであったため、事情を話すだけであっさりと同行を許可してくれたのだ。

「行くぞグラン!」

「…ファランクス!」

 グランの腹に拳を叩き込むが反応を見るに余りダメージは通ってないようだ。まるで俺の殴打の"ダメージが70%カット"されているかのようだ。

「ウェポンバースト!」

「何ッ!?」

 直様反撃に転じたグランは今まで防御に徹していたのが嘘かのように嵐のような猛打を放ってくる。例えるならそう、"即座に奥義が発動可能"かのようだ。こういう相手と組み手をするのはいい鍛錬になる。

 お互い体が動かなくなるまで組み手を行い、甲板に仰向けに寝転がる。

「…ヒールオール」

 これも魔法なのだろう、グランの言葉でなんというか"体力が回復"した心地になった。すると、船室の方からドカドカと俺のような影がこちらに向かってくる。即ち、ビィだ。

「二人とも、今度はオイラと死合おうぜぇ!今度は負けねえからよぅ!」

 そうしてビィはアドミナブルアンドサイを決めるので俺は負けじとダブルバイセップスを決める。グランも無言でサイドチェストを決めてきた。うーむ、二人とも見事な筋肉だ…。

 

「「「ナイスバルク」」」

 

 そんなやりとりをしていると、C.C.がルリアから借りたであろうエプロン姿で甲板に現れた。…結構似合うな。

「おい、肉ダルマ共、飯ができたぞ。さっさと来い」

 C.C.はグレーテルとしてすっかりこの騎空団の料理担当が板について来たようだ。俺も厨房に立とうとしたが、厨房にはバウタオーダと呼ばれる俺にも負けないマッスルガイ…彼は頭にツノの生えた「どらふ」なる種族らしい…がいた為、俺と彼で厨房に入るとお互いの筋肉が反発し、艇を破壊しかねなかったのだ。よって俺は厨房に立つことを諦め、代わりにC.C.を送り出したのである。C.C.はこの騎空団では猫を被っている事もあり、かなり優秀な人物としてこの団に溶け込んでいる。良好な関係を築いてくれていて何よりだ。

 

 俺達が食堂に向かっていると、ビィがこちらに話しかけてきた。

「そういえばよう、昨日ガウェインのチャージが終わったって言ってたよな?あの黒いデカブツ動くんだよな?飯の後動くところ見せてくれよ」

「…そうだな。こちらでもちゃんと動くか確認は必要か」

「…?他の空域でもここの空域でもそんなに風の感じは変わらないと思うぜ?」

 …空域…。確か、この世界はいくつかの空域なる…元の世界で言う大陸とでも言うものが存在し、空域と空域の間には「瘴流域」と呼ばれる乱気流が発生してるんだったか。よし、ここはその話を利用させてもらおう。

「あぁ、あのガウェインで瘴流域を越えてきたからな、調子が悪くないか心配なんだ」

「マジかよ!瘴流域を越えられるなんてすげぇじゃねぇか!」

 その後、C.C.の飯を食べ終え、俺とC.C.はガウェインの起動実験を行うことにした。しかも態々近くの島に寄ってもらい、人気の無い原っぱでた。

 そしてこの世界でも問題なくガウェインは動き、ありがたいことにフロートシステムも稼働するようだった。そう言えば島が浮くのに俺達は重力に捕まってるってどうなってるんだこの世界。

『すげぇ!あのゴーレム空飛んでるぜぃ!』

『はわわー!凄いですぅ!よーし、私も負けてられません!』

 突如ルリアが青く光ったかと思うと、突如黒い鎧の巨人が現れた。その手に持つビッグサーベルは赤く光り、ブゥンと起動音のようなものを鳴らしている。

『コロッサス!やっちゃえー!』

 ルリアが魔法の類で召喚したであろうコロッサスなる巨人はその手に持つサーベルを地面に突き刺すと、こちらに向かって走り出し勢いよくぶつかってきた。

「ルリアの奴、こんなものをいきなり呼び出して何のつもりだ!?」

「C.C.、口を閉じてろ」

 ぶつかってきた相手とガウェインはお互いを押し合い、地面を穿っている。ナイトメアであるガウェイン並みのパワーとはな…

 俺はガウェインを動かし、コロッサスなる巨人の胸辺りを掴み、更に腕を掴むと背負い投げを仕掛けた。

「おいルルーシュ!いきなりなんて操縦してる!舌を噛んだぞ!」

「だから口を閉じろと言っただろう」

『はわわ…凄いパワーです…。それなら…お願い、リヴァイアサン!』

 またルリアが青く光ると今度は蒼龍のような生き物が現れ、こちらに向けて大きく口を開いた。

「…!いかん、C.C.!ハドロン砲を撃て!!」

「ここでか…?どうなっても知らんぞ!?」

 ガウェインの放ったハドロン砲とリヴァイアサンなる龍の吐いた恐らく水であろうレーザーがぶつかる。なんとかハドロン砲で相殺できたが、逆にいえばただ水を吐くという行為がハドロン砲並みと言うことだ。流石にやり過ぎだと判断したのか、グランがルリアに何かあっているような様子がモニターで確認できたこととコロッサス、リヴァイアサンが消えたことから俺達はガウェインから降りた。

「驚いたよルリア。あんな凄いものを呼び出せるなんて…」

「その、実は私は星晶獣を呼び出す力を持ってるんです」

「せい…せいしょ?…なんだって?」

「星晶獣だよグレーテル。…済まない、出来れば詳しく話してくれると助かる」

 ルリア曰く、ルリアには自身に取り込んだ星晶獣の力を借りてその力を使役することができるそうだ。その力に目をつけられ一時期は悪い国に捕まっていたらしく、そこからなんとか逃げ出し、グランと出会い、今に至るらしい。

 そして星晶獣とは遥か昔に戦争の中で生まれた兵器のようなものらしく、通常は人の手に余るようなものらしかった。どんな世界でも過ぎた力というのは人から恐れられる物だ。

 チラリとC.C.の様子を確認すると、一時期囚われていたという言葉に思うところでもあったのか、珍しく真面目な顔をしていた。

 

 すると、俺達の側に突如影が差した。見上げるとそこには見覚えのある白いナイトメアが居た…スザクだ。

『何事かと駆け付けてみれば…これはガウェイン…!やはり君達も来ていたのか…!』

 どうやら先ほどのガウェインとルリアの闘いに気付いてやってきたようだ。それにしてもやはりスザクもこちらに来ていたか…異世界でこんなに早く再開できるとは思っていなかった。

 ランスロットが着地すると、早速スザクが降りてきた。

「ルルーシュ、君たちも来てたんだね」

「あぁ、スザク。無事に再会できて何よりだ。」

 するとルリア達は俺達を見て首を傾げていた。

「ルルーシュって…?」

 あぁ…そうか、こうなったらもう隠すわけにもいかないだろう。

「済まない、実は俺の名前がマッスルだってのは…嘘なんだ。俺の本当の名前はルルーシュ。今まで隠して悪かった」

 俺がグラン達に頭を下げると、すぐに後頭部に衝撃が走り、思わず顔面が地面に激突した。

 

「君はッ!この世界でも人を騙していたのか!!」

 

 なんとか振り返りってみると、どうやら先ほどの衝撃はグランにやられたものではなく、スザクによるものだったらしい。

 そうかそうか、スザクか、スザクね、はいはい。全くスザクめすぐ俺に暴力を振るうんだから、困った奴だ。HAHAHAHAHA!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …は?ふざけるなよ?

 

 俺は俺の頭を押さえつけるスザク腕を掴み、腕をずらして頭を押さえつけられないようにした。そしてそのまま拘束から逃れると直様反転し、スザクの顔面に拳を叩き込む。

「いきなり暴力を振るうなど何をするんだ!許さん!!スザク、お前が泣くまで殴るのは辞めんッ!!」

 再度拳を叩き込まんとするとスザクはギリギリで躱し、逆に俺のボディに拳を捻じ込んできた。

「はわわ!急に殴り合いが始まっちゃいました!」

「気にするな。こいつらの愛情表現だ。」

 C.C.め、適当な事を…!

「ルルーシュ、僕の前で余所見なんて余裕そうだね」

 一瞬の隙、その隙を見逃さずスザクは的確に俺の腹に拳を叩き込んで来た。くそ…!これしきのことでこの俺が怯むかッ!

 俺はよろけたフリをしてスザクの接近を誘うと、瞬間頭を仰反らせ思い切りスザクの顔面に頭突きを叩き込んだ。

「掛かったな馬鹿が!!」

「な、何ィー!?」

 追撃に腹に膝を叩き込むが流石はスザク、怯まずあちらもこちらの腹に拳を捻じ込まんとしてきた。なんとか突き飛ばし距離を作る。

 

 そして俺とスザクは同時に駆け出し、お互いの顔面へと拳を叩き込まんと拳を振りかぶった。

 

「スザァク!!」

「ルルーシュ!!」

 

「はわわ…お二人の愛情表現激しいです…!」

 そしてお互いの顔面にお互いの拳を叩き込み、俺達は同時に仰向けに倒れる。

 スザクとの挨拶代わりの殴り合いを終え、取り敢えず自己紹介という流れになった。

「…まずは団長達に紹介しよう。こいつはスザク」

「枢木 スザクです!よろしくお願いします!」

 スザクはラットスプレッドをしてニコリと笑い、白い歯を輝かせた。

「そしてスザク、こっちが今俺が世話になっている騎空団の団長のグラン達だ」

 グランは無言でサイドチェストを決めてから

「さっきの闘いは見せてもらったよ…ナイスファイト!」

 と言った。うむ、グランもナイスバルク!

「オイラはビィ!よろしくな!」

 ビィはアドミナブルアンドサイを決めながら答え

「さ、最後は私ですねっ、私はルリアです、スザクさんよろしくお願いしますねっ」

 一生懸命か細い体でダブルバイセップスらしき構えを取っていた。可愛い。

 ビィはドカドカとスザクに歩み寄ると肩を組んでランスロットに指を指していた。

「ところでよぅ!お前のあれもマッスル…じゃなくて、ルルーシュ…だっけかのガウェインと同じ空飛ぶゴーレムなのか!?」

「う、うん。僕のはランスロットって言うんだ」

「ランスロット…?あぁ、だからルルーシュはこの前ランスロットってやつが団に居ないか聞いたかのかぁ」

 ビィの言葉は俺は頷いた。まさか異世界にナイトメアと同じ名前の人物がいるとは思わなかったのである。

「じゃあよぅ!ジークフリートって奴はねぇのかよぅ!うちにも居るんだぜぃ!」

 ジークフリート…知らないな。俺は首を振りスザクを見るが、スザクも同じようで首を横に振った。…そう言えばスザクの奴、どうやってエナジーフィラーを充電したんだ…?

「なぁ、スザク。お前どうやってエナジーフィラーを充電したんだ?」

「あぁ、それはね、ロイドさんがいざという時のために手回し発電機を持たせてくれてたんだ。フロートシステムは燃費が悪いからね。神根島みたいな事もあるし」

 変わり者だとは思ったが、ミレイの婚約者のあの男…あいつがランスロットを作ったのか。しかしなるほど、考えることはみんな同じってわけらしい。

「そう言えばスザク、お前はこっちに飛ばされてから何して過ごしてたんだ?」

「僕?ずっと森の中でサバイバルをしてたよ?」

 …。そういえばスザクは天然だったな。深く考えるのは止めよう。

「なぁ、団長俺から頼みがあるんだが、聞いてもらえるか?」

 グランは無言で頷いてくれたので俺は言葉を続ける。

「スザクとランスロットもグランサイファーに乗せてやってくれないか?」

 俺が頼むとすぐにグランは再び頷き、ビィが白い歯を輝かせながら笑った。

「水臭ぇこと言うなよな!ルルーシュの友達なら俺達の仲間だぜぃ」

「ですね!」

「ありがとう団長」

 こうして、スザクと無事合流できた俺はスザク共々団長の世話になる事になった。

 

「なぁなぁスザク!」

「どうしたんだい?ビィ」

「お前のランスロットも二刀流なのか?」

「うん、そうだよメーザーバイブレーシソードって言うんだ。」

「俺達の団にいるランスロットも二刀流なんだぜぃ!」

 

「へぇ、そうなんだ。異世界って…不思議だね!」




余談ですが、この世界のグランはザンクディンゼルにてヒュドラに殺されてません。

●登場キャラクター紹介
・コロッサス
星晶獣と呼ばれる人知を超えた存在の一つ。黒い甲冑の巨人のような見た目をしている。機械仕掛けの部分もある為、起動音がしたりする。大型ナイトメアであるガウェインを押し戻せるほどのパワーを持つ。火属性

・リヴァイアサン
星晶獣と呼ばれる人知を超えた存在の一つ。本来は海に住み海を綺麗にしたりする役割を持つ。口から高圧で水を噴出する空烈口刺驚はガウェインのハドロン砲と互角の破壊力を誇る。水属性


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ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 蒼穹に散らないゼロ 第二話

 俺とスザクが合流して暫く経ったある日。俺とスザクとグランは依頼で祭りに参加していた。

「「「ソイヤッ!ソイヤッ!!ソイヤッ!!!」」」

 俺とスザクは褌一丁、二人で神輿を担ぎ、神輿の上で同じく褌の団長が太鼓を叩いている。騎空士は魔物退治や人物の運搬護衛ばかりではなく、こう言う地域興行も生業とするらしい。…いや、そんな事をするのはグラン達だけくらいらしいが。

 

 祭りが終わり、俺達三人はヒートアップして熱った身体を冷やしていると、突如声がかけられた。

「あれ…?スザクにルルーシュ…?」

 声のした方にはカレンが居た。…あ、カレンもこっちに来てるの忘れてた。

「…ねぇ、あなたルルーシュよね?」

「カレンか、久しぶりだな」

 俺はダブルバイセップスを決めながら答えた。

「あぁ、なんでこう…その暑苦しいポーズ決めながらじゃ無いと喋れないのよアンタは」

「カレン?元気みたいで良かったよ!」

 スザクはラットスプレッドを決めながらそう喜んでいた。うむうむ、神輿を担ぐと言う運動に今日もキレてるなスザク!ナイスバルク!

「もう突っ込まないわよ。…で、そこの筋肉属性持ちの残念イケメンは誰?」

「僕はグラン。よろしく」

 グランも白い歯を輝かせサイドチェストを見事な披露していた。

何も言わずに目を閉じたカレンにC.C.は肩を叩いていた。

「お前だけでもまともな奴がいて助かったよ」

「…C.C.、アンタが居てくれてこんなに嬉しいと思った事は無いわ」

「お互い様だ。」

 …?あいつらなんの話をしてるんだ…?

 

 とりあえず褌のまま過ごすわけにもいかず、一度待ち合わせ場所を決めカレンと分かれ、暫く経ってから合流した。待ち合わせ場所はカレンがこちらに来てから世話になっていた飲食店だったらしく、行き倒れたカレンに食事と寝床と仕事を与えてくれたらしい。

「異世界に転移…ねぇ、はー…やっぱりそうかぁ…でもまぁC.C.もこっちに居るなら一安心だわ」

 情報交換を終えたカレンの第一声はそれだった。なんでC.C.なんだ…?…あぁ、同性だしな、話の通じるところもあるのだろう。

 

 すると、外から女性の悲鳴が聞こえ、みんなで向かうとカレンの世話になっていたドラフの女性が酷い怪我で倒れていた。

「いけない!すぐに手当てしないと!」

 スザクの声に頷き俺達は近寄るが、正直止血くらいしか出来ることはない。すると、グランは冷静に女性の状況を確認し、傷の具合などを確かめていた。

「…状態異常…これは裂傷か。これはいけない。クリアオール!」

 グランの回復魔法らしきものに女性の顔色は良くなったが、傷は癒えていないようだ。しかし、グランの手当ては止まらない。

「ヒールオール!」

 グランの魔法により傷口が塞がったようだ。魔法って凄いな…。

「後は…ポーションリファイン!」

 グランは突如手に謎の緑色の液体を出現させていた。なんでもありだな魔法って…。その液体を女性にゆっくりと飲ませると先ほどまで死に掛けてたのが嘘かのように安らかな表情へと代わっていた。

「これでよし。後はちゃんとした病院で診てもらって下さい。」

「え、えぇ、ありがとう」

 最早自らの足で病院に向かえるあたりほぼ完治しているだろうが、まぁ念には念をと言うことか。グランと旅を続けて少しだけ経つが、グランは団長として様々な団員と共に闘う人物だ。そして闘う相手、共に戦う味方に合わせて様々な手段をとれるようにとグランはあらゆるジョブなるものを修めたらしい。

 相手の大技には全身の筋肉に力を込めて全ての攻撃を70%カットするファランクスなる防御の技を持ち、一度攻めに転じれば直様奥義を叩き込むための準備を整えるウェポンバースト、仲間が傷付けばヒールオールと言う癒しの魔法を唱え、その肺活量を活かして大声で歌うことで攻撃する事もあると言う。それに今のは…怪我人への冷静な診察と対応はさながらドクターと言ったところか。

 そしてグランは獲物を選ばず、剣や刀、短剣に槍、斧なども巧に操れるそうだ。そして時には銃やギターなどの楽器、杖などを握って相手を殴り、弓でしばき倒すこともあるのだとか。そして時に戦場にて馬に乗って闘い、狼の群れや鳥、熊に猪などの動物と共闘したり、狐とも協力する…極め付けにあのビィと舞うように踊りながら闘うと言う。…最後のは全く想像できないが、とにかく普段はブーメランパンツにマントとマスクの危ないファッショに身を包む彼だが、兎に角努力家であることが窺い知れる。

「…グランは凄いな。俺なんてこの身体を手に入れるので精一杯だったよ」

「僕は騎空団団長のグランだからね。これくらいなんてことはないよ。」

 …俺も黒の騎士団の団長だ。俺ももっと努力しなければな…その為にもいつまでもこちらの世界にいる訳にも行かない。幸運なことにカレンとも合流は出来たのだ。これでようやく本来の目的である元の世界に戻る手段を探すことが出来る。だがその前に、カレンのお世話になった恩人であるあの女性を襲った何者かを捕まえなければならない。そう思って街中に出ると、俺の目の前には驚くべき人物が立っていた。

「…。」

 イカしたセンスに格好いいマントをはためかせた…ゼロだ。

「なんだぁ?あのヘンテコな奴は」

 …何?

「はわわ…センスを疑います…」

 …えっ?

 

 俺は恐る恐るグランを見るが、グランは二人とは違い目を輝かせていた。

「ナイスセンス」

 …良かった、グランは分かってくれるらしい。遅れてやってきたスザクとカレンもゼロを確認すると驚きの声をあげる。

「何あれ…ゼロのコスプレ?なんでこの世界に…」

「異世界って不思議だなぁ」

 当然だがあれを本物だと思っている人物は居ない。何故なら…明らかに筋肉量が足りず、というか胸筋の発達具合から女であることが容易に予測できた。

「ゼロを騙る偽物め、何の様だ。」

 俺の問いに偽物はクックックと笑った。

「何がおかしい」

「お前が愚かにも自らの正体を明かしたから笑ったまでだ」

 …?俺がゼロだということはとっくの昔にスザクにもカレンにもバレている。今更角は必要はないだろう。

「…何!?前々から正体を知っていたのか…!?な、なら…そうだ!お前はブリタニア皇族のルルーシュ ヴィ ブリタニアだろう!」

「そうだが?」

 それもこの前の神根島の時にスザクのやつがバラしやがったからカレンに知られている。

「あ…あぁ…。くそっ!嚮主様の情報はなんの役にも立ちゃしない!」

 奴は何かを投げ捨て、急に走り出した。

「ルルーシュ!」

「皆まで言うな」

 俺とスザクは同時に走り出し、偽物を追った。

「…あいつ何を落としていったのかしら…?…!これってナ…」

 

 カレンの奴が何か叫んでる気がするが、遠すぎて分からん。しかしあの女、俺達より足は遅いくせにやたらと隠れるのが上手いのか、中々距離が詰まらない。そして偽物を街のすぐ側の崖に追い詰めたと思ったが、小型の騎空艇らしき物で空に逃げんとしていた。

「ルルーシュ!」

「分かっている。」

 俺はすぐにその場にうつ伏せになると、スザクが俺の両足を脇の下で挟んだ。そのままスザクは高速回転を始め、俺の体に凄まじい遠心力を生み出す。

「今だ!」

「ミサイルルーシュ発射!」

 おいなんだそのネーミングは…!俺は空中をライフル弾の様に超高速回転しつつ偽物を追う。速度はこちらの方が上だ。もうすぐ追い付け…

 突如、偽物は軌道を大きく右に逸らし、俺と離れていく。

「何!?何故こちらの動きがバレた!?」

 スザクのジャイアントスイングで俺を射出するなど、普通誰にも考え付くはずはない。一体何故バレた…?とりあえず俺は両足を交互に勢いよく踏み込むことで落下を阻止し、空を走る。

「クソ、作戦は失敗だったな。何か奴の足取りが掴めると良いのだが…」

 俺は空中歩行を続けていると、突如俺の近くにふよふよと浮かぶ雲に乗った幼い女児が近付いてきた。

「うわぁ!この人空を歩いてる!キミって凄いね!」

「俺としては雲の上に乗って空を漂ってる君の方が凄く見えるが」

 女児は…なんというかかなり際どいファッションをしていた。そしてよく見ると猿の様な毛の生えた尻尾があり…そしてその尻尾には風呂敷のようなものが巻き付いていた…そして髪の間から見える耳もよく見れば猿のものであることがわかる。恐らく彼女は「えるーん」なる種族の人物なのだろう。ビィの話ではえるーん族は皆恐ろしく露出度が高く、場合によっては水着の時の方が布面積が多いことすらあると言う。俺とナナリーがもしえるーん族だったなら…俺は恐らくナナリーを家に閉じ込めていただろう。ナナリーにこんな破廉恥な格好をさせるわけにはいかないからな。

「あ、ボクはそろそろ行かなくちゃ。あんまり遅いと怒られちゃうから…それじゃあお兄さん、じゃーねー!」

「あぁ、暗くならない内に家に帰るんだぞ」

 彼女と別れ暫く経つとガウェインが現れた。

『一人で空中に飛び出す奴があるか!お前に死なれたら困るのだぞ!』

「問題ない。空中をこのように歩行できるからこそ俺はスザクに射出されたのだからな」

『…お前と話のは疲れる。いいから早く乗れ。さっさと帰るぞ』

 俺はガウェインに乗り、島へと向かった。

 

 偽物を捕まえるのは失敗した上、その原因が謎のままである。そして現状手がかりがない…。不幸中の幸いはグラン達がカレンと紅蓮弍式の搭乗を快く受け入れてくれたことだろうか。そして紅蓮のエナジーは尽きかけていたが、俺とスザクで発電機を回すことで充電し、これにより我々の戦力は整ったといえる。しかし、更なる問題としてカレンの拾った偽物の落とし物から判明した。それは捕らえられたナナリーの写真だったのだ。

「ナナリー…!まさかお前まで巻き込んでしまうなんて…!俺があの時捕まえていれば…!」

 グランサイファーの手摺に拳を叩きつけようとするもその腕は途中で掴まれ止められた。

「ルルーシュ、妹さんが心配なのは分かるけどよぅ、今はどうしようもないぜ…自分をそんなに責めるなよな。…あと、この船に攻撃するのは止めるんだ。ノアに殺されるぜぃ…」

 ビィをここまで恐れさせるとは…のあなる人物は物を大切にする人なのだろう。確かに俺も短慮が過ぎた。人の物に当たろうなど…。そのまま暫くビィと共に風に当たりながらどうにかナナリーを助ける術を考えるが…やはり情報が少な過ぎた。

「せめてあの小型騎空艇がどこに向かったかさえ分かればな…」

「あれ?お兄さんもウチの団員さんだったんだね」

 背後からかけられた最近聞いた幼い声に振り返ると、そこには猿の少女が立っていた。

「よぉアンチラ!さっきはお使い頼んじまって悪かったな!あの島でしか買えない限定のリンゴだから助かったぜぃ!」

 …俺と彼女が会ったのは偽物と分かれて暫く立ってからだ…もしや…

「…なぁ、アンチラ…と言ったか?君、そのリンゴを買った島からこっちに向かう時に小型の騎空艇とすれ違ったりしなかったか?」

「え?なんで分かったの!?キミって凄いね!うん、すれ違ったよ」

「…!ビィ、グランに頼んでそのリンゴの島に向かってくれないか!?そこにナナリーの手がかりがあるはずだ…!」

 

 思わぬところで手掛かりを掴めた俺達は現在グランサイファーで偽物がいると思われる島に向かっている。とは言え、向かうまでには少しだけ時間がかかるのでガウェイン達をフル充電にしても時間が余った。そんな訳で俺達は現在食堂で交流を深めていた。

「ふーん、ガウェインにランスロットと同名の団員ねぇ…流石に紅蓮は居ないみたいね」

「そうですね、グレアさんって一文字違いならいるんですけど」

「グレアの奴も右手がすげぇし似たようなもんかもな!」

 話を聞けばグレアなる女性はドラゴンと人間のハーフだとか…。もしかしてビィみたいな見た目じゃないだろうな…?

「でもよぅ、カレンと同じ名前の団員ならいるぜぃ!」

「えっ?私と?」

「おうよ!この団の副団長もカレンって言うんだぜぃ!今はちょっと外してるけどよぅ」

 

「私と同名かぁ…異世界って…不思議ねぇ…」




●登場人物紹介●
・アンチラ
女児が着るには際どすぎる服装を身に纏うエルーンの少女。どれぐらい際どいかというと、普段着がレオタードタイプの水着よりも脇と背中の布面積が少ない。十二神将と呼ばれる存在における西南西の守護者、申であり、グラン達の団の団員でもある。特別な雲に乗り、単独飛行が可能。

地味に「原作」に全く登場してないセリフあり人物だったりする。(シェロカルテは一応名前か存在だけは出てきてたと思う)


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ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 蒼穹に散らないゼロ 第三話

 破廉恥えるーん女児アンチラの齎した情報により、俺達は偽物を追う手掛かりを得た。そして、ナナリーの囚われていた写真をグランが団員に見せた結果、捉えられている場所が古いエルステ帝国の様式の物だと気付いた者がいた。そこから島の中のエルステ帝国の施設を洗い出し、候補を絞る。同じ団の仲間の妹だからとグランの団員達は協力を申し出てくれたため、最も怪しい施設に俺やスザク、グランと言った主力が向かい、残りの施設は他の団員達が監視してくれると言う手筈になった。多種多様な国家、民族、考えを持つだろうこの団を上手くまとめられているグランには全くもって驚かされる。…全ては彼の人柄による物だろう。

「なぁスザク。」

「なんだい?ルルーシュ」

「俺は元の世界に帰ったら黒の騎士団の在り方を見直すことにした。グランを見て…思い知らされたことがある。だから…」

「ルルーシュ、その話は帰ってからにしよう。君の未来の決定にはナナリーも立ち会う権利がある。」

「…そうだな」

 その言葉に俺は頷き、ガウェインに乗り込む。

「それではスザク、カレン、グラン、ビィ、ルリア!準備はいいか!」

「私には聞かないのか?」

 後ろから流れる雑音は無視し、言葉を続ける。

「これよりナナリー救出作戦を開始する!作戦は時間との戦いだ、故に分かっているな?」

 俺は一度目を閉じ、そして開く。今回の作戦は単純にして明快。

 

「全 速 前 進 だ ! !」

 

 カレンは帝国施設である軍事要塞から現れたゴーレムとの交戦を開始、カレンならばまずやられることはないだろう。そしてスザクからは発着場を封鎖したとの連絡があった。これで相手の逃げ足は封じた。このまま追い詰めてやる…!すると、またしてもスザクから通信が入った。

『ルルーシュ、要塞内部から多数のサザーランドだ!交戦している!』

 …サザーランドだと…?カレンの方にはゴーレムなのにスザクの方にはサザーランド…恐らくサザーランドは余り数がないのだろう。ならばスザクが負けるはずはない。

「スザク、サザーランドはお前一人に任せる。できるか?」

『…勿論だ。俺は…サザーランドの大群を倒して"鍛える"!!』

 よし、あとは施設内を探索しているグラン達がナナリーを見つけてくれるはずだ。

『こちらカレン。聞こえる?ルリア達が要塞内を確認したけど見当たらないって』

「なに?」

 そんなはずはない…ナナリーが居ないのならサザーランドを出す必要なんて無いのだ。…まさか地下か?味方にすら秘密という線はあり得る。何せ俺自身が味方にすら隠し事をして戦っているのだから。そうと決まれば…

「C.C.、後で俺を回収してくれ。」

 事前に入手していた要塞のデータと地質データを考えれば地下の作り方など簡単に予測できる。俺はガウェインから飛び降り、そのままの勢いで地面にフットスタンプを叩き込み岩盤を破壊する。地下に入るとサザーランドと目が合うが、すぐさま回収に来たガウェインにより俺は回収され、乗り込むと同時にスラッシュハーケンをブチ込みそのワイヤーでバラバラに切り刻む。コクピットの中を確認すると無人であり、どうやらドローン化されているらしい。

 

 そのタイミングでサザーランドを殲滅したスザクと同じくゴーレムを殲滅し、グラン達を連れてきたカレンと合流する。全員で進むと、広い空間に出た。そこには台座と、ナナリーの姿が見える。そしてナナリーの前には偽物が立っていた。

 最早首魁が何もせず立っているとは…最早万策尽きたと見える。相手に次の手を打たせる前に速攻で決める、それがこの全速前進作戦の肝だからな。

「終わりだ!偽物!」

『万策尽きた?違うな、間違っているぞゼロ!』

『ルルーシュ!退がれ!!』

 スザクの言葉に瞬時にその場を飛び退くと上から緑の棘の生えたオレンジが現れた。これは…ブリタニアの兵器開発プランにあったナイトギガフォートレス…!?

『ゼロ!私でした!こんな世界で貴方に復讐出来た機会がやってきましたですね?何たる暁光!宿命!数奇!!受けよ!私の屈辱ゥッ!!』

 馬鹿げたフォルムに反してその高速回転による突撃はあらゆる物を軽く穿ち突撃してくる。

『ルルーシュ!』

 咄嗟に庇いに来たスザクがブレイズルミナスで防御するが、その破壊力にブレイズルミナスは砕けてしまう。やられる一歩手前で今度はカレンが現れ、輻射波動を放つことでなんとか防ぎ切った。

『その光ッ…!貴方様ですね?私をこんな姿にしたくださった方は!!』

 どうやらカレンに狙いを定めたらしく、またしても回転突撃を放ってくる。

『来るなら来なァ!』

 再び輻射波動で防ぐカレンの作ってくれた隙を見逃さず、俺はハドロン砲を放つ。

『見 え た』

 瞬間ハドロン砲を躱され接近を許してしまう。図体の割に素早い…!腹にパワーも強いのか…!

 必死でガウェインによる拘束を試みるが、状況は厳しそうだ。すると、青い光が放たれる。

「あれは…コロッサス!」

 ルリアが遣わせたのは星晶獣コロッサス、ガウェインとコロッサスで挟み込むように拘束することでオレンジの抵抗を封じた。

『ここだッ!!』

 そして現れたランスロットによる二振りの剣により装甲を切り刻まれ、オレンジは爆散した。

 

 

 

 あのオレンジのデカブツはルルーシュ達に任せてオイラ達は偽ゼロを捕まえてナナリーを助けるぜぃ!…それにしてもらさっきからなんだが体がポカポカするなぁ?

「くそ!なんでだ!アクティブ ディナイアル システムだぞ!?全身が火傷の痛みのはずなのに!!」

 あくてぃぶ ティナ?でぃ?…なんだって?よくわかんねぇけど、オイラ達くらいのマッスルガイが火傷の痛み程度で動かなくなるはずないぜぃ!何せグランはあのヒュドラの火球を受けてもピンピンしてんだからよぉ!

「なっ…そんな馬鹿な…!生物学的に炎には燃えて然るべきろ…!!」

 オイラ達みたいなマッスルガイは凄まじい新陳代謝で大量の汗を噴出して体を汗の膜で覆えるから実質水属性の性質を持つからなぁ…火属性攻撃は水属性で半減できるって知らねぇのかなぁ?

「じゃあそこの女は!?」

「はわっ!?わ、私ですか…?これくらいバルツに比べれば微風ですよ〜」

「クソ!クソクソ!こうなったら!!」

「せ、星晶獣の気配ですっ!何か仕掛けてきます!」

 ルリアの声に反応して相棒は駆けて居たぜ、相変わらず速えなぁ〜!

「は、速い!だが!」

 相棒のトリプルアタックを躱すなんてアイツやるなぁ!でもよぅ、相棒のターンはまだ終了してないぜぃ!

「今のはツープラトンだ」

「‥何!?」

 相棒のツープラトンは相手に攻撃を仕掛けてその後間髪入れずにもう一度攻撃する相棒の奥の手だぜぃ!ダメージアビリティで使用間隔は15ターンと長めだぜ!…使用間隔ってなんのことだ?オイラは急に何言ってんだ…?まぁいいや。

「な、舐めるなぁ!!」

「おいおい、オイラを無視すんなよなぁ〜」

「背後に!?いつの間にッ!!」

 オイラがアームハンマーを振り下ろすと、間一髪で避けやがった。すげぇなコイツ!オイラ、ワクワクしてきたぜぇ!

「恐ろしく早いビィの不意打ちすら避けるとは…やはりお前、心が読めるようだな。道理で俺とスザクの合体技ミサイルルーシュが外れたわけだ」

「遅かったじゃねえかルルーシュ」

 ルルーシュとスザクが合流してきたぜ、これからが本場って訳だよなぁ!

「あの星晶獣とやらがナイトメアの駆動系に悪さをするらしくてな、来るのが遅れてしまった」

 そういうとルルーシュは肩を竦めてたぜ、ルルーシュってキザだよなぁ

「馬鹿な!お前達の前には鉄格子があったはずだ!!」

「何を言ってる。鉄格子くらいひん曲げれば通れるに決まってるだろ。」

「そうだぜ、オイラ達マッスルガイを舐めすぎだよなぁ」

 圧倒的な筋肉を持ってすれば鉄くらい簡単に曲げられるぜぃ!それに…そろそろ身体もあったまって来たよなぁ〜!

 

「超えてやるかぁ…"理"って奴をよぉ!!」

 

 オイラは奥義『理の超越』で瞬時に偽ゼロの背後に回り込んで回し蹴りを叩き込むぜぇ!

「かはっ!?」

 吹っ飛んだ先には既にスザクが待ち構えてるぜぇ!スザクの奥義『回転くるくるキック』で吹き飛ばされ、グランが奥義の『ドロップキック』で更に弾き飛ばし、最後に…………

 

 

 

 ビィとスザクのコンボからのグランのドロップキック、これで3チェイン…あのダメージでは最早心を読めても無駄な事だ。俺はクラウチングスタートの姿勢をとり、一気に加速した。

「罪のない人間を無闇に傷つけ、目も見えず、足の悪いナナリーを人質にするという蛮行、決して許さん!これで終わりだッ!!」

 

 俺の奥義『流星蹴り』が炸裂し、加速した膝蹴りを叩き込みそのまま突き進む。そして俺とは異なる方向からスザク達が接近し、四人同時に拳を振り被った。

 

「行くぞッ!」

 

 F U L L C H A I N !!

- 筋 肉 の カ ー ニ バ ル -

 

 四方向からの同時攻撃、これは躱せない!

「ごひゅッ!?」

 偽ゼロは吹き飛ぶ事なくその場に崩れ落ちた。これで終わりだろう。…しかし、俺は甘く見ていた。奴の執念を。

「ルルーシュ!背後だ!!」

「何ッ!?」

 ボロボロになった偽ゼロは何かを手に握っていた。そしてそれを俺に突き立ててくる。

「これはなぁ!ブリタニア最新の殺人ウィルスだ!これでお前もは死ぬ!!見ろ、この割れたガラス片を…何かわかるか?そのウィルスへの特効薬が入ってた瓶のガラスだよ!!お前達が散々痛めつけてくれたおかげでお前は死ぬんだ!ざまあみろ!!」

 なるほど、危ないところだったな…これがもしナナリーに刺さっていたらと思うとゾッとする。

 

「…何故だ、何故死なない!とっくに死んでもおかしくないはずなのに!!」

「何故か?簡単な話だな。筋肉だよ。」

「は?」

 俺ほどの筋肉があればウィルスなど無意味!圧倒的筋肉から放たれる圧によりウィルスは死滅!

 即ち俺の体は病気や怪我、そして細菌やウィルスに対しても強靭!無敵!!最強ォ!!!

「ルルーシュ、本当に平気なのかい?」

「当たり前だ。この俺がウィルスなどという矮小な存在に害されると思うか?」

「…思わないな。流石はルルーシュだ。」

 暫くすると、えるーんのように脇や背中の布面積の少ないヒューマンらしき女とどらふのように胸筋の発達した小柄なヒューマンらしき二人組が現れた。

「事案ですか?」

「よぉリーシャにモニカ!こいつが例の通り魔だぜぃ!」

「グラン、今回も犯人確保の協力感謝するモニ」モニィ!

 こうして偽ゼロは秩序の騎空団と呼ばれる組織に引き渡されナナリーも無事に取り戻し、ついでにジェレミアもなんだか俺の顔を見たら正直に戻ったので一件落着となった。

 …ん?なんか今変な語尾が聞こえたような…いや、気のせいだろう。

 

 ルリアが取り込んだ星晶獣の磁力操作と残されて居た謎の装置を操ることでどうやら俺達が来た時と同じ時空の歪みが形成出来たらしい。ドルイドシステム様々だな。

 

 この世界の生活は楽しいものではあったが、俺にはあの世界にやり残したことがある。母の死の真相を暴き、あの男を倒す…!別れは辛いがな。

「はわわ…皆さん帰っちゃうんですね、寂しいです。」

「済まないルリア、俺には元の世界でやり残したことがあるんだ。」

「もう二度と会えないとは思うけどよぅ、俺たちの事忘れねぇでくれよな!」

 お前のような特徴の塊を忘れる奴はいないだろうに

「グラン、お前には…本当に世話になった。それに、お前の団長としての姿に俺は己を見直すことに決めたよ。」

 グランは何も言わずに頷くと、サイドチェストを披露して来た。するとビィも続いてアドミナブルアンドサイを披露し、スザクもラットスプレッドを行っている。そして俺もダブルバイセップスを決めた。

 

「「「「ナイスバルク!」」」」

 

 俺達はお互いの筋肉を褒め称え白い歯を見せ合う。人種も…人種どころか種族も、立場や主義も主張も異なる俺たちがこうして笑い合い筋肉を褒め合う。これが平和というものなのだろう。

「グラン、ビィ、ルリア…それに協力してくれたみんな、ありがとう。お陰で俺はナナリーを取り戻し…元の世界に帰ることができる。再び会う事は出来なくても…きっと俺達は繋がってるはずだ。」

「うん!」

「当たり前だぜぇ!」

「はい!」

 

 

 そう、魂の筋肉でな!

 

 

 

ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 蒼穹に散らないゼロ Fin

 




「river525さん」からのリクエスト「蒼穹に散るゼロシナリオ」でした。

なんとプロローグ+6話+エンディングなはずの原作のうちの4.5話(というかほぼ半分以下)で話を終わらせる暴挙。

●登場キャラクター●
・偽ゼロ
本名はデルフィナ。V.V.と契約して心を読むギアスを得た少女。とある理由からまぁ色々と拗らせて色々やらかした。ぶっちゃけ原作でも同情の余地がない残念な人。詳しくはグラブルやろう。サイドストーリーに常設されてるから初心者でも少し進めればプレイ可能だぞ。

・リーシャ
秩序の騎空団に所属するエルーンみたいに脇や背中の空いた制服(?)を着る女性。グランとは同年代であり、特に秩序を乱すものに対する対応の際にはグランやビィを軽く捻り潰すほどの力を見せる秩序絶対正すウーマン。お前の服装も十分秩序を乱し得ると思う今日この頃。

・モニカ ヴァイスムント
秩序の騎空団に所属するドラフみたいに発達した胸筋と成人女性にしては小柄な身長と童顔が特徴の女性。グランやリーシャよりも歳上なのだが見た目のせいでいつも歳下に見られている。ミートギアス版に限っては語尾が変。いわゆる合法■リという乱れた秩序そのものみたいな存在だと思う今日この頃。


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REQESTRAINING07

サブタイトルを付けるならばコーネリアの憂鬱R2とかですかね


 全戦惨敗、それが私だ。コーネリア殿下の夢…姫様との結婚の条件とはユーフェミア皇女殿下を倒す事。

 

 しかし、試合でもスポーツでも学問でも、勝てない…!

 

 かつては私が教える立場だったナイトメアも今やユーウェインを駆る元ラウンズの腕前を持つユーフェミア様に私が太刀打ち出来ず惨敗、スポーツでは持ち前の筋肉を持って惨敗、学問は筋肉で脳を拡張した脳筋のユーフェミア様に凡人の私では敵うはずなどなかったのだ。

 

「ギルフォード、いい加減諦めたらどうです?貴方のような脆弱にして惰弱な男にお姉様はお任せできません。」

 

 申し訳ございません姫様…私の力が及ばないばかりに…!それにこれは姫様だけのためでは無い。ユーフェミア様の為でもあるのだ。先日、ユーフェミア様にボコボコのボコにされた日、姫様から手当てを受けた…その時の姫様は実に憂鬱そうであり、その呟きは今も覚えている。

『ユフィ…かつて溺愛していた私が言うのもなんだが、そろそろ姉離れできないものか…』

 そう、姫様はユーフェミア様が逞しくなられていくうちにかつてほどの溺愛はなくなっていったのだ。別に姉妹仲は良好ではある。それを悪いとは私も思わない…しかし、姫様の心配もわかる。故に…姫様とユーフェミア様の為にも私は必ずユーフェミア様に勝たねばならない。

 

 そして、今日も惨敗した。女性であるユーフェミア様になら或いはと思い大食い勝負を持ち掛けたのだが、考えが浅はかだったようだ。

「ギルフォード、これで丁度99度目の負けになりますね。」

「…はい」

「お姉様に相応しい強い男になる気はあるのですか?」

 そのつもりも覚悟もある…しかし、こうも壁が絶望的に高いとは…。

「次で決めて下さいね、ギルフォード。私を負かすか、お姉様を諦めるか」

「…はい」

 次…次の戦いでなんとかして勝たねば…!

「なぁ、二人とも…私は別に…」

「お姉様は引っ込んでいて下さい!」

「えぇ…私の結婚なのに…」

 ご安心ください…!次こそは必ず…!

 

 …そうは言ったが、どうすればユーフェミア様に勝てるだろうか。思い出せ…過去の経験の中に必ず勝てるヒントがある筈だ…。

『何?私とギルフォードのどちらを騎士とするか…?ふむ、当然姫様の騎士として相応しいのはより逞しい筋肉を持つ私だろう』

 そうだ。過去には私はダールトン将軍と姫様の騎士をかけて…あの時は結局…

『…ジャンケン?私とギルフォードで?』

『運も実力のうちというだろう?ダールトン、ギルフォード。私の騎士という名誉…見事その運で勝ち取ってみせよ!』

 そうだった。私は姫様の騎士を運で勝ち取ったのだ。ならば今回だって同じこと…!

 

「え?ジャンケン…ですか?」

 

「はい、ユーフェミア様、この私に最後のチャンスとしてジャンケンで勝負して下さい。」

「…まぁ、良いですけど。じゃあルールを決めましょう。『最初はグー、ジャンケン ポン』のポンでお互いに手を出すということで。タイミングはお姉様に確認してもらい、後出しは負けの一回勝負としましょう」

 私はその言葉に頷く。

「後はそうですね、相手への接触は禁止…も追加していただけないでしょうか」

「…。私が最初はグーのグーで殴り飛ばすだなんて考えてたんですか…?」

 …いや、全くそんなこと考えてなかったが…まさかやろうとしてたのか…!?

「しかしギルフォード、貴方にはもう少し期待していたのですが買い被りだったようですね。運に頼るなんて」

「運も実力のうちと言いますので」

 そして姫様の前で拳を突き出し、息を整える。

「「最初はグー!ジャンケン…」」

 

「「ポンッ!」」

 

 ユーフェミア様はパー、私は…

 

「チョキ…!?ギルフォード、あなた…!!」

「勝たせていただきました。ユーフェミア様」

 ユーフェミア様はきっとこう思っただろう、『ジャンケンならば圧倒的筋肉と反射速度から相手の手を直前で確認して勝てる手を出せる』と。しかし今回はそれを逆手に取らせて貰った。この方法はあのダールトン将軍にも通用した秘策。

「…ギルフォード、まさか右手でグーを出しておきながら背中に隠した左手で勝負をしてくるなんて…盲点だったわ。運任せだなんて嘘、しっかり私に心理戦で勝ったといったところかしら」

 そう、グーを出した右手を変化させるのではなく、あらかじめ出しておいた左手を勝負の手として展開するこの方法ならば裏をかくことができるのだ。

 

 こうして私は姫様と…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや…ギルフォードをそんな目でみたことないから…」

 …えっ?

「えっ?」

「えっ?お姉様?」

「えっ…だって私は一度もギルフォードを相手にとは言ってないし…」

 えっ?

 

 えっ…?

「ひ、姫!?それでは…!?」

「すまんギルフォード」

 私は…今まで一体何のために…?

「あー…ギルフォード、なんだ、その…アレだ。」

「何でしょう、姫様…」

 

「お友達から、始めましょう…?」

 

 結論から言えば、姫様の婚活はまだ続いている。ただ、前回と違うことはユーフェミア様という妨害が無いことだろうか。ユーフェミア様はユーフェミア様で婚活…というか武者修行のような事を始め旅に出てしまった。…ユーフェミアの武者修行、通り魔みたいな事をやってないといいが…。

 

 結果としユーフェミア様の姫様離れは出来たというべきだろうか。それだけでも良いとしよう…。




「野良犬ジョーさん」のリクエスト「ユーフェミアのコーネリア離れ」でした。

…いや、結果はリクエスト通りだけど過程がほぼ描写されてないなこれ!?


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ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 蒼穹に散らないゼロ 後日談

…俺、コードギアスの二次創作書いてんだよな?


「よし、こんなものかな。できたよビィ」

「マジかよ!流石だぜ相棒!」

 ルルーシュ達と別れて数日、オイラはどうしてもあの『ないとめあふれーむ』ってのに乗りたかったからグランに頼んで作って貰ったぜぃ!グランは『メカニック』のジョブをマスターしてるからスザク達が壊して放置したうさみみないとめあの『さざぁらんど』の残骸から使えそうなパーツを集めて作ってくれたんだ。

「早速見せてくれ相棒!」

「気に入ってくれるといいんだけど」

 何言ってんだ、相棒がオイラのために作ってくれたならどんな出来でもオイラは気にあるに決まって…

 

『ガガ…ビィ…くん…』

 

 …。オイラの視界に映ったのはキャタピラ戦車っぽい下半身に姐さんことカタリナっぽい見た目のロボットの上半身がついた…そう『キャタピラさん』だったぜぃ… 【見た目のイメージは『キャタピラさん』で検索してくれよな!】

「なぁ相棒。何をどうしたらこうなるんだよぅ」

「なんだよビィ、気に入ってくれないのか…?一生懸命使ったのに…」

 それを言われると辛いけどよぅ、いくらなんでもこれは…

『ガガ…ビィ…くん…ガガ…』

 なんで自我があるんだよぅ!オイラ怖いぜぇ!!

「どろーん?って言うんだったかな。自律で動くみたいだからそっちもいじったらなんか自我が芽生えちゃって」

「芽生えちゃって、じゃねぇぜ!!明らかに別モンじゃねぇか!!」

「なんだよビィ、さっきから文句ばっかり…せっかく作ったのに!もう嫌いだ!やっちゃえキャタピラさん!」

『ガガ…ミサイル!』

 ぬおおお!?いきなりグランがキレたぜぇ!それになんだよミサイルってなんでそんなモン搭載してんだよぅ!!

 ミサイルをモロに食らっちまったぜぃ!16回ヒットのダメージアビリティは効くなぁ…。

「おーいビィくん、グラン、そろそろ機械弄りはおしまいにして『ピザ』を食べないか?」

 声を掛けに来てくれたのは姐さんだ。ルルーシュがレシピを書いて残していってくれたC.C.の大好物、『ピザ』は美味くて団員に好評だったぜぃ。まぁ、オイラとグランは美味いとは思うけどちょっとカロリー的に食べるのが憚られるぜぃ…。…まさか姐さんが作ったわけじゃねぇよな?

 オイラ達が食堂に向かうとルリアがナナリーに友好の証にもらった折り鶴を折ってたぜぃ。今度オイラも鉄板で折ってみようかなぁ?

 

 それにしてもルルーシュ達、向こうでも元気でやってると良いけどよぅ…

 

 

 

 

 

 

「よし、筋書きはこんな感じでどうだい?ルルーシュ。」

「もう出来たのか…流石は兄上だ。」

 グラン達と別れて数日、俺は元の世界とでも言うべきこの世界に戻り、皇族に復帰する事を選んだ。今は癪だが、シュナイゼルに俺の復帰プランについて考えてもらっていた。

 そして俺はスザクやユーフェミア、そしてコーネリアとシュナイゼルらと協力し、シャルルを打倒する事に決めている。ナナリーが政治の道具とならないよう、俺が矢面に立ちブリタニアを変えていく。黒の騎士団の面々も俺がブリタニアの皇子だと打ち明けると初めは驚きはしたが…皆受け入れてくれたようだ。きっとこれも筋肉のおかげだろう。

 グランは俺よりも若いのにその人となりと筋肉で様々な国、人種、人以外の種族をまとめ上げているのだ。俺だって筋肉は負けていない。となれば後は俺が変われば良いだけの事。

 

 俺は必ず実現してみせる。何故なら俺はゼロ!奇跡を起こす男なのだからな!

 

 

 

 

 

 その後、ラクシャータがロイド伯爵とゲフィオンディスターバー関連の実験を行なっているときに些細なミスからグラン達のいる世界と繋がってしまったりしたが…まぁ、そんなことは瑣末な事だろう。…瑣末か…?





●登場キャラクター紹介
・カタリナ アリゼ
『姐さん』ことカタリナ。鎧を着た女性騎士で声優は沢城みゆきさん。滅茶苦茶関係ない話をすると作者が化物語で一番好きなキャラクターは神原駿河だ。(声優繋がり)
ルルーシュ達と関わったこの世界においてのカタリナはルリアを連れてエルステ帝国から離反後、グラン達と行動を共にした。因みに小動物ではなく筋肉が好きなもののため、よくビィの乳首辺りをスリスリする。籠手を嵌めたまま行うのでビィの乳首辺りは擦り切れてしまっている。
そしてかなりの飯マズ(死に至る毒物の類に変貌する)

・キャタピラさん
グランがメカニックのジョブでサザーランドの残骸から組み上げた自律思考型兵器。なに?「そうはならんだろ?」だと?作者に向かってなんだその口の書き方は、現になってるだろ。文句言うな!(殴打)



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EXTRAINING777 ナナリーの悪夢

オマケです。

Q.腹筋のルルーシュでの星刻の存在意義を教えてください。
A.生きてるから呼んだだけです。生きてるから活躍させるとは誰も言っていない!(殴打)


 ラクシャータの集めた天才孤児集団パール・パーティー、それに対を成す孤児集団がある。

 

 それが私の集めた天災孤児集団 裸駆趣味(ラクシュミ)である。

 

 ラクシャータは天才…つまり頭の良い子供達を集めたのに対し、

 私は天災…つまりフィジカルのヤバい子供達を集めたのだ。

 

 そして裸駆趣味は幼いうちからトレーニングを積み、黒の騎士団のエリート部隊として運用を目標としている。

 

 しかしながら、才能ある子供は時に増長する物である。それは裸駆趣味も例外では無く、その怪力無双な子供達は日に日に扱いきれなくなっていった。サザーランド同士の戦いであれば私すら倒しかねない、それが裸駆趣味の子供達である。しかし、筋肉とは鍛えて壊し、それを修復させることでより強い筋肉が生まれる。よって私は彼らにある試練を課す事にしたのだ。

 

「これより君達には今からお呼びするある方と闘ってもらう。」

「へへっ!もう星刻じゃ相手にもなんねーからな!」「敗北を知りたい」「星刻さん、腕のスラッシュハーケン折れてんのかい?」「どんな奴が相手でもボコボコにしてやるぜ!」

 自信満々の裸駆趣味達を見て私は冷ややかに笑うと今回の講師を呼び付けた。

「ナナリー殿、よろしくお願いします。」

 扉が開かれると現れたのは車椅子に乗った美少女。彼女は笑顔で小さく手を振りながら私の横まで車椅子を移動させる。

「皆さんこんにちは、私はナナリー ヴィ ブリタニアと申します。今日はよろしくお願いしますね」

「「「「「可愛い…」」」」」

 

 車椅子に乗る絶世の美少女ナナリー殿にその部屋の中にいた者は皆可愛らしさに声を漏らす。それはこの私とて例外ではない。天子様も可愛いがナナリー殿も引けを取らない。しかし裸駆趣味の子供達は直ぐに持ち前の生意気さを取り戻しナナリー殿を挑発していた。

「車椅子なのに俺らに勝てるのか?」

 するとナナリー殿の姿が車椅子の上から消え、次の瞬間生意気な発言をした少年の顔面を鷲掴み、そのまま押し倒して後頭部を思い切り地面に叩き付けていた。既に私では見えぬ程の動き…流石はあのルルーシュの妹だ…。

 当然足の不自由なナナリー殿も脚を伸ばして座り込む事になるがそれを見た子供達は一瞬にして戦慄しただろう。

 

 あ、こいつヤベェ と

 

 ジルクスタンの科学者…特に足の不自由なシャリオ氏周りの者が超合衆国に合流した事で、足の不自由なナナリー殿もナイトメアに乗ることが可能になった。そして最初は歩くのがやっとだったナイトメアの操縦も、どんどんと卓越したものになり、半年経った今では私も手を焼くお転婆パイロットになった。半年でこれなのだからこのまま行けばどうなるかはお察しである。一度その姿を見たジェレミア殿やコーネリア殿、ノネット殿は『閃光のマリアンヌの再来』だと口を揃えて言っていた。マリアンヌ殿とはルルーシュ達の母親らしい。ブリタニアの皇族は化け物しかいないのか?…コーネリア殿が一番まともだな。そのまともなコーネリア殿も「ブリタニアの魔女」と恐れられていたのだから一般人との水準の差はお察しだ。

 

 そしてナナリー殿と裸駆趣味で始まった模擬戦、一人目を何もさせる事なく圧倒的かつ一方的にねじ伏せたナナリー殿はつまらなさそうな声音で

「面倒ですから全員でいっぺんに掛かってきて下さい」

 と言い放っていた。恐らく自分達のプライドが傷つけられた事でナナリー殿への恐怖を塗り潰したのだろう、3機のサザーランドがナナリーの乗るサザーランドに襲い掛かったが、スラッシュハーケンを放ちそれを巻き取りながらランドスピナーで加速するとそのままスタントンファを展開しつつの殴打で一人、殴打の勢いを殺さずランドスピナーで超信地旋回で一回転したナナリー殿は殴った方とは逆の腕で殴って破壊したサザーランドを掴み、背後から襲わんとする二機のサザーランドのうち、一方に投げつけて牽制しつつ放たれたスラッシュハーケンをスラッシュハーケンで跳ね返し、投げつける前にくすねていたサザーランドの腕を投擲、回避行動をとったサザーランドに対してドロップキックを叩き込んで押し倒すとすぐさまフットスタンプでトドメを刺す。

「これであなただけですね?」

「く、来るな…来るなーーーー!!!!」

 

 そしてこの出来事を裸駆趣味の子供達はのちにこう語る…『ナナリーの悪夢(ナイトメア オブ ナナリー)』と。




語り手が星刻だけど内容は主にナナリーのお話。

まぁ、原作映画でも作戦上における扇の活躍なんてほぼゼロだったことを考えると星刻は活躍がキングクリムゾンされてるだけなのでマシってことで…。


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EXTRAINING23 「新婚旅行に行くモニ!」モニ!

リクエストで結婚式あったから新婚旅行も需要あるかなって


「新婚旅行はE.U.に行くモニ!イタリアのピッツァやパスタを食べるモニ!」

「ふむ、確かに本場のイタリアンには興味があるな」

 そんな訳で私とたくみん(※巧雪=卜部のこと)の二人はE.U.にやってきたモニ。

「モニカ殿と日本人である俺が二人で仲良くE.U.の地を踏む事になるとは…平和を実感するな」

「モニ〜。好きでもない戦いの日々もこの平和のためだったと思えば悪くないモニ」モニモニ

 思えばたくみんとの出会いも戦場だったモニ~

「さて、早速腹が空いたな。ピッツァやパスタの店を探そう。」

「モニ〜!楽しみモニ!」モニ!

 早速店を探しに道端の人に声を掛けると、どうやら表情を顰めているモニ。…ブリタニア人は嫌いだったモニ…?

「あんたら…旅行者か?また大変な時期に来ちまったな…最近この辺は物騒なんだ。悪いことは言わねえ、楽しい旅行がブチ壊れちまう前に街を出るんだな」

「モニ !?まだピッツァとパスタを食べて無いモニ!」モニ⁉︎

「物騒とは…何があった?聞かせてはくれないか?」

 

 声をかけた地元のおじさん曰く、最近この辺では通り魔が出るらしいモニ。夜になると屈強そうな人物に声をかけては一方的にボコボコにするとか…更に被害者の中には屈強な筋肉で凄まじい練りを得意とするピッツァ職人も居たらしいモニ。許せないモニ!!

 

「モニ!たくみん、その通り魔を退治するモニ!」モニィ‼︎

 

「…そうだな。平和とは小さなことの積み重ねの先にある。怠れば簡単に衰えてしまうだろう…筋肉と同じだ。そうなる前に平和を乱す芽は摘み取らねば」

「あ、あんたら…ただの旅行者なのになんて親切な奴らなんだ…頼む、この街を救ってくれ!」

 私とたくみんは頷くモニ

「私たちが帰ってきたらナラの木の薪で焼いた本物のマルガリータを食べさせて欲しいモニ!」モニィ!

「そいつはいい、ボルチーニ茸ものっけてもらおう!」

「分かった!用意しておく!」

 こうして私たちは通り魔が出ると噂の路地に向かったモニ。事前に黒の騎士団からの申請で帯刀許可を貰ってあるモニ。

 すると、噂通り通り魔が現れたモニ…!

 

「…あら、あなた方は…?まぁいいでしょう、強者には変わりないのですから。行きますよッ!!」

 

 その瞬間、通り魔の姿が消えたモニ。そしてたくみんが私を突き飛ばすと、通り魔の攻撃を鞘で受け止めているのが見えたモニ。

「あら、やはり止めるのですね、流石です!」

 凄まじく速い正拳突きモニ!たくみんじゃ無ければ防ぎ切れなかったモニ!

「ユーフェミア殿…!こんなところで一体何を!?」

「モニ!いきなり殴りかかるなんて酷いモニ!」モニモニ!

「私はただ武者修行をしているだけです」

 その結果通り魔になってるのは倫理的にまずいモニ…。

「大丈夫です、殺しはしません」

 そんなの当たり前モニ…。そんなことを自慢げにいうなんて人としてかなり危険域モニ…

「仕方あるまいモニカ殿、刀を!」

「モニ!?たくみん、今ここでやるモニ!?」モニ⁉︎

「ユーフェミア殿はご乱心だ!頭を冷やしていただく必要がある!」

 私はたくみんに刀を預けると距離を取ったモニ。

「私の筋肉に刀は通じませんよ?」

「この街ダメになるかならないかなんだ。やってみる価値はあるだろう!」

 そう言うとたくみんは鞘を腰に刺し直し、居合の構えを取ったモニ

「居合ですか、良いでしょう、試してみなさいな」

「それでは参る…藤堂流剣術…飛龍撃!」

 たくみんは大きく身体をひねりながら、鞘に納めた刀の鍔を親指で弾いて刀を矢のように相手に飛ばしたモニ!

「あら?刃ではなく柄での攻撃ですか?そんなもの私には…」

 甘いモニ!飛龍撃はあくまでも囮!本命はもう一本の刀による斬撃モニ!そもそも私と違い、たくみんは二刀流はあまり得意ではないモニ!

「喰らえユーフェミア殿!龍槌撃!そして龍翔撃!」

 空高く飛び上がり、落下重力を利用した威力の高い斬撃と、峰を右手で支え下から飛び上がりつつ刀の腹で斬り上げる二連撃モニ!そしてこの機を逃す手は無いモニ!まだまだ続くモニ!

「龍巻撃『凩』!『旋』!『嵐』!」

 相手に向かって跳躍し、空中で体を一回捻りつつその勢いを生かして斬り付ける凩、錐揉み状に飛んで相手に突進し斬りつける旋、空中高く飛び上がり、刀を手前に構え前方宙返りにより相手を切り裂く嵐モニ!凄まじい、隙を生じぬ五連撃モニ!

 

「あら、これでおしまい?確かにすごい連撃だったけど…私の筋肉には無意味みたいね」

 

「何ッ…!?」

 そんな…全て受けた上で…傷一つ無く立ってるモニ!?

「これは私が武者修行の最中に身に付けたのだけれど…私の技も受けてくださるかしら?超高速で放つ事で空気との摩擦で燃える様に熱くなった拳を叩き込む、私の修行の集大成…終の火拳『火グー鎚』と名付けたのだけれど」

 技名ダサいモニ…。

 

「行きますよッ!!」「させるか!」

 

 拳を突き出すユーフェミア様に対し、たくみんは突進したモニ…つまり、あれをやる気モニ!

 

 神速を最大に発動させ、剣術の基本である全9方向の斬撃…切落・袈裟斬り・胴・右斬上・逆風・左斬上・逆胴・逆袈裟・刺突を連続で繰り出す、乱撃術にして突進術の技…九頭龍撃モニ!!

 

 しかし、なんとユーフェミア様のだった一振りの拳とたくみんの9回の斬撃は同等…いや、むしろ押し負けたモニ!

「ぐっ!これでもダメか…!」

「今のは少しちくっとしました。でも、あの程度では私には勝てませんね。」

 たくみんは刀を逆手に持ち替え、納刀の動作に入ったモニ

「あら?諦めちゃったのかしら?」

 いや…違うモニ、たくみんの目を見れば分かるモニ!目はまだ死んでないモニ!

 その納刀は高速で行われたモニ!そして鍔と鞘がぶつかり合い、発生する鐔鳴りの高周波の音撃がユーフェミア様を襲ったモニ!通常の人間であれば効果のない距離でも、ユーフェミア様程鍛えた人物であればその聴力も段違いモニ!つまり、ユーフェミア様の聴覚を一時的に破壊する事に成功したモニ!

「なっ!?…こ、これは…!?」

「鍛え過ぎた身体が仇になったようだな、ユーフェミア殿!」

 続けて放つは究極の抜刀術モニ!通常右利きの場合、右足を前にして抜刀するという抜刀術の常識…抜刀術は刀は左から抜刀するため、左足を前にすると抜刀時に斬ってしまう危険性があるモニ…を覆し、その手の振りや腰の捻りの勢いを一切殺さないように抜刀の後に、左足を踏み出し、たった一歩ながらその踏み込みによって生まれる加速と加重が斬撃をさらに加速させ、神速の抜刀術を『超神速』の域の一撃に昇華する技モニ!

 

「喰らえユーフェミア殿!天翔龍煌ッ!!」

 

 咄嗟にガードしたユーフェミア様の左腕に切り傷をつけて、血が少しだけ滲み出る…究極の抜刀がユーフェミア様の筋肉を上回ったモニ!

「…見事、と言うべきでしょうね」

 

 こうして、ユーフェミア様は事態を聞きつけてやってきたギルフォードさんとコーネリア様に連れていかれたモニ。私達はその後ピッツァとパスタを食べて、それからE.U.の各国を観光して回ったモニ

「この後はどうする?モニカ。そろそろブリタニアに帰るか?」

「うーん、まだまだ周り足りないモニ。…そうだ、ピラミッドが見たいモニ!」モニ!

「つまりエジプトか、勿論俺も同行しよう。」

 

「それでは…行くモニッ!」モニーン!

 




Q.なんで23?
A.11+12だから。(殴打)

コードギアス二次創作書いたらはずが、出来上がったものは「るろうに剣心+ジョジョ」だったよ。なんで?

・マルゲリータ、ポルチーニ茸云々→ジョジョ5部のナランチャ
・やってみる価値はある→逆襲のシャア
・藤堂流剣術→ヒッテンミツルギスタイル‼︎
・終の火拳→終の秘剣(るろうに剣心の志々雄)
・エジプト云々→ジョジョ3部


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EXTRAINING185 狂犬のマリオ

「後は一人で帰れるよ。」

「畏まりました、お気を付けて、シャリオ様」

 シャリオはボルボナ フォーグナーと別れると一人車椅子を走らせ自室に向かっていた。その時、背後に気配を感じたシャリオはふと振り返る。そこにはフードを被り顔を隠した人物が立っていた。

「君は…まさかマリオかい?」

「お久しぶりです、シャリオ様」

 シャリオはマリオとは、ジルクスタンの一件以降会っていなかった。そもそも、マリオと交友があったのは主にシェスタールであり、それ以外ではシャリオよりどちらかと言うと姉のシャムナの方がマリオと交友があったのだ。

「今までどこにいたんだい?てっきり死んだものかと思ってたよ。」

「…シャムナ様が死んだと言うのは本当ですか」

 その言葉にシャリオは視線を落とし、小さく肯定の言葉を呟いた。

「…そうですか。…シャリオ様」

 マリオの言葉にシャリオ何も聞かずに首を振る。

「僕らは…ジルクスタンはもう争いの火種に加担はしない」

 そう言い切ったシャリオの顔を見てマリオは苦虫を噛み潰したような顔をした。

「でも…君が足を洗うならばまた僕を頼ると良い。ここは…ジルクスタンは君の故郷、と言えるかは分からないけれど…少なくとも知った仲だ。無下には…したくない。」

 しかし、その言葉の返事と言わんばかりにマリオは懐から銃を取り出した。

「脅しのつもりかい?」

「あなたは何も思わないのか…この世界の異常に…!こんな、何もかも筋肉で…!馬鹿げてると思わないのか!?」

「何を言ってるのか分からないな。筋肉はあらゆることを可能にする万能なものだと言うのは当たり前だろ?」

 ごく当たり前のことのように言葉を話すシャリオだが、マリオは激しく首を振り反論した。

「こんなはずじゃなかった!全部!何が筋肉だ!本当はこんな…ゼロは、ルルーシュはあんな肉ダルマじゃなかった!」

「…何を言ってるんだ…?君は…?」

 マリオの瞳にはギアスの欠片が宿っているのだが、シャリオがそれを知る由もない。兎に角マリオは今の世界は狂っているとシャリオに叫ぶが、シャリオは困惑するだけだった。

「…もういい、あんたは本来なら死んでるべき存在なんだ。だから…死ね!」

 放たれる弾丸にシャリオは超絶的反応を見せると自分の眉間を撃ち抜かんとするそれをキャッチする。そう、弾丸キャッチだ。因みに、ナナリーも最近会得した事で弾丸を撃たれた場合の対処法を持たないのが現存命元ブリタニア皇族でもコーネリアだけになってしまったのだが、そう言うことも…まぁ、あるだろう。

 因みに、オデュッセウスは受けても無傷、シュナイゼルは弾き落とせる、ユフィは弾丸キャッチ可能という具合だ。ルルーシュ?そのいずれも可能だ。

「…!僕を撃つなんて穏やかじゃないね、マリオ」

「クソ…アンタまで…!」

 続けての発砲はシャリオ本人ではなく車椅子に行なわれ、それ故にシャリオは回避も防御もできず走り去るマリオの背を見つめることしかできなかった。

「…マリオ、やはりマッドドッグとは君なのかい。どうしてそんな馬鹿なことを…。」

 シャリオはその日の出来事を胸の奥にしまい、誰にも話すことはなかった。




Q.なんで185?
A.1(い)8(やっ)5(ふー)


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EXTRAINING??? ギアスの欠片

これが最後のお話です。


 この生活を初めてどれだけの月日が経ったのだろう。

 

 反逆者ゼロの登場、黒の騎士団の結成、ブラックリベリオン、中華連邦への国外追放、シャルルとの戦い、世界統一、ゼロレクイエム

 

 そして死んだと思った俺は再び目を覚まし、ナナリーを救い、今はL.L.と名乗りC.C.と共にギアスの欠片を回収する旅を続けている。

 

「…回収できたぞ。今回は結構骨が折れたな。」

「カルシウムが足りて無いのか?C.C.」

「いや、物理的な話じゃない。そして仮に折れても治るだろ。…組織を相手に個人では限界があるな…。それにこちらにはナイトメアも無いから、いくらお前がいるとはいえ相手がただの月下でも大苦戦だ。」

「確かに組織を相手にする難しさはある…が、俺達が表立った組織に入るわけにもいくまい?それともまた嚮主様にでもなるのか?」

「冗談はよせ…あんなのは二度とごめんだ。」

 俺はギアスの欠片を持っていた人物、マッドドッグと名乗っていたテロリストの死体を、自身の左手を変化させて輻射波動で消し飛ばした。別に死体を破壊して楽しむ趣味などないが、過去に死体に干渉するタイプのギアスの欠片との接触があった為、この処置は致し方なかった。

「C.C.こいつのギアスの欠片はどんな能力だ?」

「分からん。だが、何か見えるな…」

 旅の中で得た成果として、俺達はギアスの欠片を使うことができるようになった。無論お互いに効果を与えることはできないが…。使ってみると何かの風景が映し出された。

「…C.C.…これは視覚に何かを映すタイプのギアスのようだな」

「あぁ、そのようだ。懐かしいな、アッシュフォード学園が見えるぞ。」

 確かに懐かしい風景が見える…俺の場合は河口湖のコンベンションホテルの一室だったが。…うん?俺の視界にはユーフェミアの代わりに黒髪の女が現れた。

「誰だ…?こいつは…」

「…L.L.、何かおかしいぞ。見覚えのないナイトメアが見える。見た目は…サザーランドに似ているが…」

 サザーランドに似たナイトメア…?本当だ。俺の視界にも見覚えのないナイトメアが映し出されている。但しこれはサザーランドというより月下のカスタムタイプだろうか。蒼く…クローのついたシールドか…?他にも四肢をユフィ、コーネリア、ナナリーともう1人の計4人に引っ張られている様が見える。俺のあの時は両肩の脱臼のはずだが、これに合わせて股関節までやられるのか、悪夢だな…というかまだ幼いナナリーとユフィともう1人は仕方ない…?として、それなりにもう大きい姉上は何してるんだ…自制してくれ。

 

 それにしても過去によく似た世界…見覚えのない女、そしてナイトメア…

 

 見える過去は既に遠過ぎる過去だ。シャルルのギアスのようにこれが仮に記憶に干渉するものだとしてもそんなことをする意味がない。それに、マッドドッグを追う中で手に入れた断片的な奴の思想、言葉…それらを繋ぎ合わせて考えられる答えは…

「これはもしかして"異なる世界を見るギアス"なのではないか?」

「並行世界ということか?…そんなものを見てなんの意味がある。現実世界に干渉できなければなんの意味もない」

 確かにこのギアスにどんな意味があるかはわからない。実際もう回収出来てしまったし興味深くもあるが、まだ回収すべき欠片は残っているのだ。

「…C.C.、いつまでも別の世界を見ていても仕方がない。次の欠片を回収しに行くぞ」

「あぁ」

 

 だが、もしかしたらこのギアスの欠片の素を発現させた者は"別の可能性"を欲していたのかもしれない。




・異なる世界を見るギアス
マッドドッグことマリオが手に入れていたCの世界を通じ、異なる可能性を秘めた「よく似た別の世界」を鑑賞することができるギアス。但し、干渉はできない上に使用者の一人称で映し出される。
このギアスの暴走の果てには己の視界は常に別世界を映してしまい、現実と関わるのが困難になってしまい、結果として孤独になる。王の力は人を孤独にするのだ。
分類としては「弱いギアス」に含まれるが、良く似た世界なのでそこそこな精度を持った過去視等情報収集が出来なくはない。しかし音声はないので憶測に頼らざるを得なくなる。やっぱり弱え

彼はこのギアスを手に入れたことで筋肉に歪んでいない正常な世界を見てしまったため、筋肉に歪んだ世界を受け入れられなくなってしまった。

9月は休むつもりだったのですが、結局毎日投稿続けちゃいましたね。皆さんの寧ろリクエストを受けてから書き始めるのでかなり綱渡りな書き方したなぁ()

●オマケ● 久し振りに唐突な次回予告
マーヤ「効かないわ!そんな豆鉄砲なんか!」

ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 MACHO STORYS「STAGE01′」


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ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 MACHO STORYS
STAGE01′


 エリア11でブリタニアの学生として生活をしていたマーヤ ディゼルは立場こそブリタニア人の学生だったが、その心は日本人であった。

 ブリタニア人として学問を学び、ジムへ通い、バイト代を稼ぐ。お金は専ら食料…と自身の肉体の維持に費やされた。

 そしてゲットーに向かい、孤児達に食料を届け、筋トレを教え、読み書きなどの勉強を教え交流する平和な日々を彼女は日本人として過ごすのだ。


 これはそんな、"異なる可能性"を秘めた世界の物語。



 私立アッシュフォード学園に通う私は、今日も気が乗らず午後の授業をサボる事にした。数学や物理の授業は気にならないけど、歴史の授業を受けるとなるとどうしても気が重いのだ。

 ゲットーの子供達のために食料を買い込もうと、学園の購買へと歩を進める。こんなのは私の偽善だとわかっているけれど、何もしないのはもっと嫌だった。

「あら、マーヤちゃん今日も買っていくのかい?やっぱりそれだけスタイルが良いと維持も大変ねぇ。肩にナイトメアでも乗っけてんのかい?」

「まぁ、そんなとこかな。私成長期だし。」

 購買の"お姉さん"と適当な言葉を交わし、食料の入った紙袋を持って正門へと向かう。

「おいディゼル、どこへ行く気だ」

「…腕を痛めてしまったので早退します」

 生活指導の先生とその取り巻き…ラグビー部の男子が私の行く手を阻んでいたので軽くブチのめし学園を後にする。上手いこと頭に衝撃を叩き込むことでいい感じに記憶を破壊して問題にならずに済むのだ。

 

 ゲットーに脚を踏み入れると、顔馴染みになった日本人の人たちが挨拶をしてくる。すると何か騒ぎがあるようだ

「やめとけって!あの人に挑むのは!」

「五月蝿え!ブリキの女にお恵みだなんて恥ずかしくねえのか!俺がぶっ飛ばしてやる!」

 前に一度薬と食料を置いていけと私にナイフを向けてきたので、ナイフを粉々に噛み砕きつつ食料と薬を分けてあげたおじさんが、何やら顎髭のあるチンピラっぽい人に絡まれている。

「おじさーん、何かあったんですか?」

「あ、マーヤさん!いえ、なんでも無いんです、こいつはすぐ黙らせますんで!」

「噂をすればこいつがそのブリキのおん…女?これが女か?あぁ、いや、まぁその…確かにスカート履いてるし髪も長ぇけどよ…あぁ、まぁブリキの女基準だと顔も女か…いやしかし…これが女…?…へっ!まぁいいや、テメェはこの玉城 真一狼様が直々にブッ飛ばす!」

 ムカついたので顎髭の男を軽く引っ叩くと近くの崩れた壁にすっ飛んでいき瓦礫の中に埋もれていった。

「玉城!大丈夫か!?」

「おじさん、薬はここに置いておくからねー」

 さっきの人はおじさんに任せて私は陽菜達のところへと向かうとしよう。それにしてもさっきの人にも言われたように、私はブリタニアの人間に見えるようだ。心は日本人…体も日本人のつもりだが、結局半分入っているブリタニアの血に私は悩まされている。それに心は日本人と言っておきながら結局はブリタニア人として不自由のない生活をしている。綺麗な部屋にふかふかのベッド、豊富なトレーニング機材に高タンパク低カロリーな食事、好きな時にシャワーを浴びれるし携帯を持つことだって許されている。…私は卑怯者だ。

 

「あ!マッチョお姉ちゃんだ!今日は何持ってきてくれたの!?お菓子ある?」

「もう、私はマッチョじゃなくてマーヤだって言ってるのに。」

 ブリタニアと日本のハーフである私が日本人に戻れるのは陽菜達、つまりゲットーに住む子供達と接する時だけだ。いつものように幼い陽菜達を抱えたり腕にぶら下げたりしつつ、袋の中から食材を取り出す。

「オレ、大きくなったら姉ちゃんみたいなマッスルガイになるんだ!」

「じゃあ好き嫌いしないでたくさん食べないとね!後筋トレも忘れずにね!睡眠と、高タンパク低カロリーの食事、だからはいこれプロテイン」

「わぁい!ありがとう!」

 卑怯者の私とは違い、懸命に生きる子供達、その眩しさに私は目を細める。

 

 こうして私とゲットーの子供達の少し苦労はありながらも平和な日常は過ぎていく。

 

 

 しかし、ブリタニアに支配されたエリア11における、ゲットーの平和など、ブリタニアの都合で淡く崩れ去る儚いものだということを私達はまだ、知らない。

 

 いや、知らないふりをしていた。

 

 

 

 ある日、いつものように私が学校を抜け出そうとしていると、オレンジ髪の同級生に見つかってしまう。

「あれ、マーヤ…もしかしてまたサボり?」

「う、うん。」

「もう、ダメだよー!そんなにサボってばっかりじゃマーヤも留年しちゃうよ!」

「出席日数と単位に問題はないから大丈夫だよ?」

「もう!マーヤまでルルみたいな言い訳して!」

 私を物理的に止められるものはこの学園においてはとある男子生徒以外には居ないけれど…しかも彼もまたサボり魔であるため実質的には存在しないのと同義…精神的などその他の方法で止められる存在はいる。それが彼女、シャーリー フェネットだ。彼女はサボりを続ける私を本気で心配してくれる、その言葉に私も何も思わないわけではない。それに、彼女は水泳部で中々引き締まった身体をしている。筋肉のある人物には相応の敬意をしなければ心の筋肉はすぐに萎んでしまうだろう。

「さ、マーヤ。教室に戻ろう?」

「はい…」

 こうして私は教室へと戻り、その後授業を受けた。だけれど、その分授業が終わってからは私の動きは加速する。鐘が鳴ると同時に窓から飛び出し、ダッシュでゲットーへと向かう。\コラァ!窓を突き破るなァ!/

 両脇には食料や薬でパンパンの紙袋を抱え、ランニングする若者を追い抜き、自転車を追い抜き、自動車を追い抜き、電車と並走してゲットーへと向かった。…もちろんこれは比喩表現だけど、それくらい早く向かう。

 

 そして、突如平和の終わりを告げる鐘が鳴った。

 

 ゲットーでは聴きなれない音が響いている。

「一体何が起きてるの!?」

 そして気が付けば周りはサザーランドが跋扈し、歩兵が銃を乱射する阿鼻叫喚の地獄へと変貌していた。そして遠くの…陽菜達が住処にしている廃ビルに流れ弾なのか、狙ったのかは定かではないが、弾なのか爆弾なのかが当たり、崩壊していく。

「嘘!?陽菜…!」

 瓦礫が落ちれば陽菜達子供達の命はないだろう。この世界は残酷だ…いとも簡単に命を奪い去る。陽菜達はただ懸命に生きていただけなのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だからこそ、最悪の悲劇だけは回避しなくてはならない!

「もう大丈夫よみんな、何故なら…私がきたわ!」

「マッチョお姉ちゃん!」

 崩れ落ちる瓦礫を両腕で支えて、足腰でしっかりと体を支える、この筋肉は伊達じゃない、いつか心無い暴力から子供達を守るために私はこの筋肉を手に入れたのだから。そして子供達の安全を確保するために瓦礫を思い切りどこかへと放り投げる。擦り傷などはあるものの、子供達はみんな無事だった。彼女達を守れた事に嬉しさの涙を流していると、すぐさま次の困難がやってくる。

「ゲットーに居るものは全て殺せとの命令だ。見たところ孤児達か、災難だったな。死んでもらうぞ。あとそこの…なんだ、お前…学…生?学生か…?学生で…いいんだよな?」

 銃を構える男達のせいで子供達は怯えていた。許せない!

「私たちが、この子達が何をしたって言うの!?ただ一生懸命生きてただけなのに!」

「…悪いが命令なのでな。撃ち方用意…」

「ふんっ!!」

 私は素早く近場の瓦礫を拾い上げると鍛え上げた強肩で瓦礫を投擲、ブリタニアの歩兵をぶちのめすことに成功した。

「くそ!仲間がやられた!構わん、撃ち殺せ!」

 引き金が引かれ、とうとう凶弾が子供達を襲う。しかし、その弾のいずれもが子供達に着弾することはなかった。それは何故か、明白である。

 

「効かないわ。そんな豆鉄砲なんか!」

 

 制服のあちこちに弾痕はあるけれど、私は仁王立つ。そして背中で安心してと子供達に語り、全ての弾丸をその身体で受け止める。

「そんな馬鹿な!何故銃が効かない!?」

「何言ってるの?鍛え抜いた筋肉に銃が効くはずないじゃない!」

 銃が効かず焦る男達に私は迷うことなく接近し、その顔面を殴る。男は吹き飛び、動かなくなる。

「ま、待ってくれ!我々もクロヴィス殿下の命令に従っただけなんだ!俺たちが悪かった、だから見逃してくれ!命だけは…!」

 流石に命乞いをする人を子供達の前で殴り殺すわけにもいかない。ここは許す…というか交渉をする事にした。

「だったら私とこの子達を安全なところまで案内しなさい!そして軍に保護してもらうように頼んで!」

「あなたの隣がこの世で最も安全なのでは…?」

 どうやら交渉は決裂のようだ。いや、頼み方が悪かったのかも。こ、ここは私が美少女女子高生であると言う点を最大限に利用するしかない。

「…案内してくれないの?」

 と上目遣いで頼んでみた。私ほどの美少女からの上目遣い…兵士達は余りの可愛さに断れないはず…!

「じ、G-1の近くなら安全かと、私の方から巻き込まれたブリタニア学生とその後友人ということでなんとか保護してもらえるように頼んでみます…」

「本当ですか!?ありがとう!」

「おじちゃんありがとう」

 ふふん、兵士の人も所詮は男、どうやら私の色仕掛け作戦が成功したようだ。

 

 暫く兵士の人たちに連れられて歩き、案内されたのはG-1近くのトレーラー。兵士の人が優しそうな女の人と何やら喋っている。

「交渉はうまく行きました。後のことはこの特派の方達に一任しましたので私たちはこれで」

 そう言って兵士の人たちは立ち去っていった。

「初めまして、私はセシル クルーミー。あなた達、怖がらせてしまってごめんなさい。」

「保護してくださりありがとうございます。」

「良いのよ。元々罪のない人たちを殺すのは…ね。それに私たちの上官の人にも許可はもらってるから」

 すると、トレーラーの中からメガネの男の人が出てきた。

「あ〜あ、子供の保護ねぇ〜…面倒くさいなぁ。しっかし第二皇子様も物好きだよねぇセシルくん?」

「もう!ロイドさん!…ごめんなさいね、貴方達。狭いかもしれないけどこのトレーラーの中にいれば安全だから。」

 確かに多少狭いけれど、子供達が居る分には平気だろう。私は逆さ腕立て伏せでもして待っていれば良いのだから。

 

 暫くして逆さ腕立て伏せに飽き、二重後宙返りをして暇を潰しているとセシルさん達特派の人たちが慌ただしく走り回っていた。近くにセシルさんが来たので聞いてみよう。

「何かあったんですか?」

「それが…テロリストの一部が包囲網を突破してこっちに向かってきているの」

「…守備の部隊はいるんですよね?」

「それはそうなんだけど…」

 話を聞けば特派の嚮導兵器ランスロットの投入によりテロリストの制圧は進んだものの、一部のテロリストが包囲網を突破、ランスロット投入前に包囲網自体が崩れていたこと、守備や予備部隊も回していたことが災し、現在G-1周辺には本当に最低限の警備しかいないとのことだった。この場合、警護のナイトメアはG-1しか守らない。つまり…このままでは子供達が…

 すると、ロイドさんがトレーラーから出てきて私の体をペタペタと触ってきた。

「ロイドさん!?突然女の子に何してるんです!?」

「いやぁ、彼女良い体してるでしょ?使えるなぁって思って」

「そ、それほどでも」

 私だって伊達に鍛えていない。良い体だと褒められるのは悪い気はしなかった。でも、こんな状況では素直に喜んでもいられない。

「これ着てちょっと待っててくれる?」

「なんですか?これ…」

「パイロットスーツ伸縮性があるから君でも着れると思うんだ」

 

 渡されたパイロットスーツに着替え、暫く待っているとサザーランドが運ばれてきた。

「まさか…ロイドさん!何考えてるんです!?彼女は民間人ですよ!?」

「彼女の身体見たでしょ?良いデバイサーになれると思わない?それにうちの所属って事にしておけば民間人だなんてバレやしないよ。彼女がテロリスト達を追い返してくれれば殿下は命が助かる、彼女は子供達の安全が守れる、僕らはいいデータが取れる。みんなハッピーお め で と う !」

 なるほど、確かに陽菜達を守れるのなら悪くない考えだ。戦うのは怖い…けど、陽菜達を守るためだ。だから私は…逃げちゃダメだ!

 

「やります!私が乗ります!いや、やらせてください!」




9月と言う休載期間を終え、ミートギアスはラストストーリーズの名を騙ったナニカ編に突入!もう一度筋肉に汚染されたコードギアスを一からお楽しみ下さい。

実は本話は8/16時点で既に作成済みだったりしますし、腹筋のルルーシュ完結時点で9話くらいまで書いてました。でもこれの投稿時点では14話までしか書けてません。なんで?
本当は最初から読者による展開予想を解禁したかったんですけどね…。まぁ、一応活動報告の方に展開予想の場所でも作っておきましょうか。

これを書き出した時点でロスストのメインストーリーは完結していない他、マーヤの設定に謎が多いため、マーヤを含む複数キャラに独自の設定などを投入しています。その結果…もはやロスストではなくなりました。多分未プレイでも楽しんで貰えると思いますし、既プレイの方は「こんなロススト知らない()」ってなると思います。(原作準拠はどこ行った?)

Q.このマーヤ、名前を借りてるだけで最早別キャラでは?
A.(殴打)キャラ崩壊のタグが見えねえか(殴打)これはキャラ崩壊の範囲内だ(殴打)
 ロロという前提がある以上こいつはマーヤだ。いいな?(殴打)

元々、マチョストは別作品としての投稿を検討しましたが、内容がミートギアスの閲覧前提なのでミートギアス本編と同じ作品内に投稿することにしています。

●ロスストキャラクターの紹介
・マーヤ ディゼル
ブリタニア人の母と日本人の父を持つハーフ。世間にはハーフであることを隠してアッシュフォード学園に通っているため、日本人の劣悪な扱いと裕福に暮らす自信を比較し罪悪感を持っている。
シャーリー達とは同じクラスではあるが、授業はサボり気味。ゲットーに通っては陽菜達のような孤児達に会いに行っている。
なお、両親は実験中の事故により死亡しており、現在はクラリス ガーフィールドという女性の義娘として同棲している。
自称美少女であり、筋肉はルルーシュ(※ミートギアス)並み。

・クラリス ガーフィールド
メガネをかけた金髪の華奢な女性。美人。しかしながら胸筋は中々発達している。
マーヤの両親は彼女の職場の先輩に当たり、身寄りのないマーヤを引き取った。
現在はエナジーフィラー関連の会社を経営する社長であり、若干多忙気味。

・陽菜
日本人の孤児。他の孤児達と共に暮らしマーヤと交友を深めている。

●本話での他作品小ネタ出典
・ジョジョの奇妙な冒険(空条 承太郎)
・僕のヒーローアカデミア(オールマイト)
・ワンパンマン(超合金クロビカリ)
・新世紀エヴァンゲリオン(碇シンジ)
※今回より、上記のように本話作成において作者が引用した他作品のネタを掲示します。逆にいうと、上記に含まれない作品については作者は想定外のため、感想などで取り上げていただいても微妙な反応をするかもしれません。予めご了承下さい。
特に、作者が履修済みの作品であれば反応可能ですが、その辺はご理解下さい。

●次回予告●
マーヤ「分かりました…結びます。その契約」

●オマケ● テーマソング(再掲)
身体KINNKOTU KINNKOTU
鍛えた肉体を
ジムで更に鍛えに…行こう

この腹いつから割れていたの
絶えず鍛えてた
割れてるエイトパック
腹の動きに合わせて 何度も

あの日 肉体 鍛えた身体の動きが
風を起こし肉食ってきた
筋肉がもっと増えるように

身体KINNKOTU KINNKOTU 筋肉付け
腹筋の時 服破り裂けて

身体KINNKOTU KINNKOTU
鍛えた肉体を
ジムで更に鍛えに…行こう


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STAGE02′

 オールハイルブリタニア!読者の諸君、ご機嫌よう。私はジェレミア ゴットバルトその人である。
 赤いグラスゴーとテロリストのサザーランドによって私はナイトメアを破壊されあえなく脱出、その後殿下のお側に向かいました。しかし途中で陣形を崩すのを確認し、更に聞いてみればテロリスト達が包囲を突破したとのこと!このジェレミア ゴットバルトが殿下のお命をお守りせねば!

 それでは本編をご覧あれ!


『マーヤくん、キミ凄いねぇ本当に動かすの初めて?』

「はい」

 ランドスピナーでゲットーを駆けつつ、接近しつつあるテロリスト達の迎撃に向かっていた。

『マーヤさん、敵のナイトメアは6機よ。ピンチになったらG-1周辺まで撤退すれば守備部隊がなんとかしてくれるわ。危険になったらすぐに脱出してね』

『相手だって正規兵じゃないから素人同然だよ。スラッシュハーケンもアサルトライフルも当てれば倒せるから頑張ってねぇ』

 セシルさんには悪いけど退くつもりはない。ことの発端であるクロヴィス殿下なんて正直どうでも良いけど、陽菜達やよくしてくれたセシルさん達を危険な目に合わせるわけにはいかない。ファクトスフィアで索敵を行うとテロリストの乗るサザーランドが近いことがわかる。

 

 まずは奇襲して数を減らそう。ビルにスラッシュハーケンを突き刺さし、壁を蹴りつつ道路を挟んだ向かいのビルに飛び移る。

『敵か!?クソ…早い!』『なんだよあの動き!』『同じサザーランドのはずなのに!』『良いから撃ちまくれ!』

 空中でスラッシュハーケンをビルに打ち込み移動しつつ、姿勢制御で弾を避けたりスタントンファで弾を弾く。ビルの外壁を走って降りつつ上からアサルトライフルの弾をブチ撒く。

『ぐああー!!』

 まずは1機を仕留められたようだ。地面に降りる前に壁を蹴り、更に地面にスラッシュハーケンを突き刺し、アサルトライフルで牽制つつテロリストに距離を詰める。フットスタンプでサザーランドを踏み潰し、向けられたアサルトライフルを踏み潰したサザーランドの残骸を盾にして防ぐ。

『このやろう!』

 距離を詰めてくるサザーランドに対し、スラッシュハーケンで残骸の腕を切断し、残骸が握っていたアサルトライフルを腕ごと蹴り上げてぶつける。

『なにっ!?』

 よろけるサザーランドにドロップキックを叩き込み、スタントンファで追い討ちを叩き込む。これで残り3機。今しがた破壊したサザーランドの腕を引きちぎって投擲し、スタントンファ部分で胴を穿った所を更に距離を詰めてタックルして押し倒し、脚部を掴んでジャイアントスイング。サザーランド一機は私が振り回すサザーランドで殴り付けて破壊し、スイングしているサザーランドはビルに放り投げる。

『なんなんだこいつ…化け物かよ!?』

 これで残り1機!アサルトライフルを放って牽制、近くにあったサザーランドの残骸を拾いつつ距離を詰める。

『クソ!なめんなよ!』

 あちらもアサルトライフルを放ってくるが、残骸のサザーランドを盾にしつつさらに接近。手に持つアサルトライフルを投げつけ意表を突き、スラッシュハーケンでジャンプしてから更に上からスラッシュハーケンを放ち、一気に距離を詰めてラリアットをブチ込む。倒れたサザーランドに両手のスタントンファを振り下ろすとテロリストは沈黙した。

 

 しかし、背後に気配を感じ振り返るとそこには更なるサザーランド、スタントンファを展開して構えると通信が入った。

『待て、私は味方だ。殿下の危機を守る為、再びサザーランドに乗り込み駆けつけてみれば…これは貴公がやったのか?どこの部隊の者だ?たった一機で6機のサザーランドを…しかも無傷で倒すなど…』

「…と、特派に所属しているマーヤ ディゼルです。…貴方は?」

 敵味方識別信号を見れば味方であることを示していたので警戒しつつ構えを解く。

『特派だったか…。おっと、失礼した、こちらが名乗るのがまだだったな…私の名前はジェレミア ゴットバルト、貴公の腕を見込んで純血派に勧誘したいと思ってな、声をかけさせてもらった」

 純血派…聞いたことがある。ブリタニア軍はブリタニア人のみで構成すべきと言う考えの人たちだ。私も一応ブリタニア人だが、私はハーフ…そういう意味でも純血とは言い難い。それに私はセシルさんとロイドさんのお陰で今回たまたま戦っただけなのだ。

「すみませんがお断りします。」

『そうか…それは残念だ。だが、気が変わったらいつでも私を訪ねてくれたまえ』

 なんというか熱血漢というか面倒見は良い人…きっと悪い人ではないと思えた。

 

 それからクロヴィス殿下による停戦命令を聞き、ロイドさん達のところに戻ると見知らぬ白いナイトメアが佇んでいた。おそらくこれがロイドさん達の言っていたランスロットだろう。カラーリングは白だからすぐわかると言っていたけれど確かにサザーランドには似つかないスタイリッシュなフォルムに白と金のカラーリングだ。サザーランドを降りてロイドさんを探すと、セシルさんと話す見知らぬ少年がいた。彼は私と同じようなスーツを見に纏い、陽菜達から絡みつかれており、なんだか仲が良さそうだった。…少し妬いちゃうな。

「セシルさん、戻りました。えっと…その人は?」

「マーヤさんおかえりなさい。無事でよかったわ。彼はランスロットのパイロット、枢木 スザク一等兵よ」

 枢木…思ってた通り日本人か、だから陽菜達も心を開いたのかな?

「初めまして。うわっ…話には聞いていたけどすごい筋肉だね、腕にスタントンファでもつけてるのかい?まるでルルーシュみたいだ」

 ルルーシュ?どこかで聞いた覚えがあるような…

「初めまして。私はマーヤ ディゼルです。」

「そうなんだ、よろしく。…でもこんな人特派に居たっけ?」

「彼女は事情があって協力して貰ったの。でも凄いわ、初めての実践でスザクくん並みの成果よ」

 セシルさんはそういうけど、流石に買い被りすぎだろう、私は必死に戦っただけだ。それに陽菜達を守りたかっただけだし。

 

 すると軍人らしき男の人がこちらに歩いてきた。

「失礼、ここは特派所属のトレーラーで間違い無いな?」

「ええ、そうですけど…」

 この男の人の声…どこかで聞いたような。

「あれぇ、ジェレミアくんじゃ無いですかぁ。なんなんですぅ?もしかしてウチのデバイサーに」

「その話は断っただろう、アスプルンド卿」

 あ、この人がジェレミア ゴットバルトさんか

「うん?もしや君がマーヤ ディゼル…嬢、で…良い…のか?」

「はい」

 ジェレミアさんは私を見て、脚を見て、胸を見て、顔を見て、また脚を見て胸を見て瞬きを素早くしていた。こういう時は…ダブルバイセップスだ!

「ぬおっ!?…し、失礼、あれほどのパイロットがどんな人物か興味があってね、女性だということは声で分かったが…まさかまだ子供だったとは…。いや、才能ある若者が我がブリタニア軍にいるとは実に喜ばしいことだ。…ところで」

 ジェレミアさんは急に鋭い目つきになり陽菜達とスザクさんを睨んだ。

「何故ここにイレブンが?」

「…自分は名誉ブリタニア人です。」

 先にスザクさんが答えた。ならば陽菜達のことは私から説明すべきだろう

「この子達は私が連れてきました。何か問題が?」

「…そうか、いや失礼、見慣れないものでな」

 その態度からは軽蔑のようなものを感じる。許せない…生まれが日本人だからってどうしてそんなに見下されなくちゃいけないの!?

 そして私は考えるよりも先に拳をジェレミアさんの顔面に叩き込んでいた。

「かはっ!?き、貴公、何をする!」

 ジェレミアさんが私に怒鳴るが私も怒鳴り返す。

「ブリタニア人ってだけでそんなに偉いの!?陽菜達はまだ子供で…孤児なのに必死に生きてるのよ!?貴方にその苦労がわかるの!?わからないなら…」

 私は拳を握り締め歩み出す。

 

「そんな大人、修正してやる!」

 

 もう一度拳を叩き込まんと拳を振り上げる。

「ま、待て!話し合えばわかる!」

 すると後ろから誰かに羽交締めをされ止められた。振り返るとスザクさんだった。

「やめて下さい!同じブリタニア人同士で!…それに子供達も見てます!」

 その言葉で私は力を入れるのをやめた。

「…いや、私の態度にも落ち度はあった。この件は不問とさせていただこう。私はこれで失礼する」

 そう言ってジェレミアさんは背を向け歩き出した。

 

 

 スザクさんが陽菜達に絡みつかれているのを眺めているとロイドさんが話しかけてきた。

「ところでさぁマーヤくん、キミ、これからどうするつもり?」

「どうする…とは?」

「いやぁね?見ての通りゲットーは前にも増してボロボロ、とてもじゃ無いけど子供達が暮らすには過酷だよねぇ」

 確かに、戦闘による衝撃や爆発でゲットーはあちこちがボロボロだ。戦ってるときも私がビルを蹴ったりと暴れたせいで崩れかけてるし、今ある建物はいつ崩れてもおかしく無いだろう。

「悪いけど特派のトレーラーにいつまでも彼等を置いておくことは出来ないんだよねぇ」

「それは…」

 つまり、陽菜達の暮らす場所のことを言っているのだろう。ゲットーでは暮らせない、とは言え私の家…いや、私が世話になっているクラリスさんの家に子供達を招くわけにもいかない。租界で孤児達…しかも日本人が過ごしていくのは犯罪の餌食になるだけだろう。

「頼れる場所がないならさ〜ぁ」

 ロイドさんは急に顔を近づけてきた。

 

「ウチと契約してデバイサーになってよ」

 

 と言ってきた。いや、意味がわからなかった。なぜ陽菜達の暮らす場所からデバイサーの話になるのだろう?

「うちの上司がねぇ、面倒を見る場所は用意するって言ってるの。悪い話じゃないでしょ?でも、流石にタダってわけにはいかないよねぇ〜?だ か ら !キミがうちのデバイサーになって働いてくれたらその代わりに子供達の面倒も見るって契約!…ど〜お?僕らはデータが取れる、君は子供達の生活を守れる、子供達は今までよりも良い暮らしができる…良い話だと思わない?」

「…わかりました。結びます、その契約」

「おやぁ?即決だねぇ」

 私には他に選択肢がなかった。私のバイト代だけで養えるはずがない、クラリスさんに迷惑はかけられない…私が働くことで陽菜達が安全に暮らせるなら…

 そう思っているとクルクルと回り、機嫌良さそうなロイドさんは書類を手渡してきた。

「マーヤくん、一応これが契約書ねぇ」

 中身を見ると、私が特派でナイトメア開発のためのデータ取りに協力する代わりに子供達は施設で保護され、ブリタニア人の孤児と同等の扱いを受けられるらしい。日本語ではないものの教育も受けられるし食事も勿論出る、そしてそれとは別に私には給料も出るようだ。案外良心的だ。そのかわり、機密保持のための守秘義務があるし、契約違反は即解雇…つまり陽菜達を路頭に迷わせる事につながる。なるほど、私を縛り付けるには良い枷だろう。でも、私が働くだけで陽菜達に良い暮らしがさせてあげられる。今までみたいに危険なゲットーで暮らさせることを考えれば安いくらいだ。

「問題ありません。私、頑張ります。」

「うん、よろしくねぇ」

 いつの間にか戻ってきたスザクさんが手を差し出してきた。

「じゃあ改めてよろしく、マーヤさん」

「マーヤで良いわ。私の方が後輩なんだし」

 思い切り手に力を込めるとあちらも力強く握り返してきた。うん、背中を預けるに足りる良い筋肉だ。

「そっか、じゃあ僕のこともスザクって呼んでよ。年齢だって変わらなそうなんだからさ」

「うん、分かった」

 

 こうして私は特派に所属することとなった。

 

「ただいま」

 家に帰ると飛んでくるかのようにクラリスさんが現れた。

「マーヤ!もう、こんな遅くまでどこ行ってたの!?心配してたんだから」

「心配掛けてごめんなさい、でも大したことないから」

 そう言って私は自室に向かう。後ろからクラリスさんの涙声が聞こえるが無視して部屋に入り鍵をかける。…特派に入ったことをクラリスさんにいうつもりはなかった。軍人の真似事をするのだからきっと心配を掛けてしまうだろう。今までのゲットー通いとは訳が違うのだ。

 

 次の日、早速学校をサボって特派のトレーラーに向かうと今日の仕事について説明を受けた。どうやらランスロットのエナジーに関する改善についてらしい。とは言え、中身の話は機密事項なので会議には出れず、代わりに雑用を押し付けられた。まぁ、戦わずにお金が貰えるなら…そう思ってなにに使うわからない『没装備』と書かれた鉄屑っぼいガラクタを整理していると…

『ごめんください』

 となんだかすごく聞き覚えのある声が聞こえてきた。…エナジーに関する…?エナジーフィラー…

 

 

 …あっ

 

 

『マーヤくん代わりに出てくれるぅ?僕今ちょっと手が空いてなくてさ〜ぁ』

 非情な…いや、こちらの事情など知らないのだから本人にその気はないだろうけれど…上司の言葉に従いドアを開けるとそこには良く見知った金髪にメガネの女性…つまり

 

「マーヤ!?なんでこんなところにいるの!?」

 

 クラリスさんが、立っていた。




マーヤですが、ロススト本編でも相手にスラッシュハーケンを刺して巻き取りとランドスピナーで加速して相手の攻撃を避けたりそのままスラッシュハーケンを刺したナイトメアを盾にしたりとかなりなりふり構わない戦いをします。これ書いた後にストーリー読んだので驚きました()
クラッシュハートとかなんたらは本作には多分組み込みません。待ってられないので

Q.ブリタニアに恭順するマーヤなんてマーヤじゃない!狂犬マーヤを読ませろ!
A.うるせえ!(殴打)うちのマーヤちゃんはきょうけんはきょうけんでも強肩のマーヤちゃんなんだよ!!(殴打)ムキムキな狂犬マーヤが見たけりゃ自分で書きな!!!(殴打)殴打!(殴打)五ゥ連打ァ!!

クラリスさんの見た目は検索でもして知っておいてください。あと彼女の基本プロフィールにも目を通していただいた方が恐らく次話楽しめます。

●本話での他作品小ネタ出典
・機動戦士Zガンダム(カミーユ・ビダン)
・魔法少女まどかマギカ(キュゥべえ)

●次回予告●
スザク「いけない…!マーヤ!避けるんだ!!」


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STAGE03′

 こんにちは、枢木 スザクです。
 シンジュクではルルーシュと再会したり、ナイトメアに乗ったりいろいろなことがあって驚いたなぁ…

 それに新しく特派に入ったマーヤ…ルルーシュ並みの筋肉なんで羨ましいや。僕も鍛えないとね!

 今日はキューエルさんっていうあのジェレミアさんの仲間の人が僕に用があるって言ってたけどなんなんだろう?純血派の人って僕苦手なんだよなぁ…

 それでは本編スタートです!


 叫ぶクラリスさんから逃げるように背を向け、ロイドさんの元に駆ける。

「ロイドさん!エナジーフィラーの件でクラリスさんがきましたよ!」

 扉が開きロイドさんが出てきてくれた。よし、これで逃走条件はクリアされたわ!

「はいはい、ありがとねぇ…じゃあはいこれ、君にお仕事。詳細はセシル君から聞いてねぇ」

 ロイドさんから仕事について書かれた書類を受け取り、サラリと流し読みすれば屋外での作業らしい。これは幸運だ、クラリスさんからはさっさと逃げるに限る。

「ねぇ!ちょっとマーヤ!」

「ごめんクラリスさん!私は用があるから!お仕事がんばってね!」

「待ってマーヤ!」

 待ってと言われて待つ奴なんていない。声を掛けるクラリスさんを無視してセシルさんがいるであろう屋外へ逃げる。クラリスさんも特派に仕事できている以上、あまり追っては来れないはずだ。

 

 セシルさんのそばに駆け寄った私はすぐさま仕事の確認をした。さっさとトレーラーから離れたい。

「屋外作業ですよね!何やれば良いんですか?」

「どうしたの…?いやに張り切ってるわね…?まぁ、やる気があるのは良いことよ。この前のシンジュク事変で沢山のナイトメアが破損したでしょう?今日はその回収作業なの。物の拍子で誘爆したり、テロリストに部品を回収されたりすると良くないから」

「なるほど」

 確かに、ゲットーを丸々巻き込んだ戦いだ、荒らせば色々と使えるものも見つかるだろう。

「回収したナイトメアのパーツはこの指定エリアに運んでね、あと…もしも亡くなった方がいたらここに運んで欲しいの。」

「分かりました」

 こうして私は借り物のサザーランドを走らせてパーツ回収の仕事をすることになった。怪しい瓦礫を退けて亡くなった方を見つけたり、パイロットが脱出したサザーランドの残骸、脱出できずに瓦礫に埋もれてしまった残骸…諸々を見つけてはサザーランドでどかし、回収する。もちろんゲットーの中でそれをやるのは私だけではないようだ。

『そこのサザーランド、この瓦礫をどかしたい。協力してはくれないか?』

「分かりました」

 一際大きな瓦礫を2機のサザーランドでどかす。そこには沢山のサザーランドが埋もれていた。不謹慎だが大収穫だろう。

『協力感謝する。それでは』

 運べるだけの残骸を持ってサザーランドは去っていった。…あれ?あっちにも回収エリアがあったのかな?まぁいっか。

 

 そんなこんなで回収任務は終わった。

 

 トレーラーに戻ると…

「もう逃さないわ!マーヤ!」

 死角から飛び出してきたクラリスさんに腕にしがみつかれてしまった。そしてクラリスさんのメガネの奥の瞳には涙が溜まっている。

「聞いたよマーヤくん、クラリスさん…君の義母さんなったってねぇ?感動の再会だね お め で と う 〜」

「もう!ロイドさん、茶化しちゃダメですよ」

 ロイドさんはセシルさんに引きずられてどこかへ行ってしまう。他の特派の人達も目を合わせてくれない。これは…見捨てられたな。

「勝手に軍の仕事を手伝うなんて何を考えてるの!?」

「クラリスさんには関係ないでしょ!」

「関係ないことなんてない!私は貴方の保護者なのよ!?」

「いつまでも子供扱いしないで!」

 私の腕にしがみ付くクラリスさんを引き剥がそうと力を込める…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …が、離れない。

 そう、クラリスさんは華奢な見た目に反して力が強いのだ。

「クラリスさん離して!」

「ならマーヤも話して!」

「…このっ!」

 いつまでもしつこくしがみ付くクラリスさんにビンタを食らわせようと腕を振うと、クラリスさんの姿が消えた。瞬間、私の顎にクラリスさんの爪先が突き刺さる。やはり早い…!

「暴力はよしなさいっていつも言ってるでしょ!?」

「クラリスさんこそ私の顎に蹴りをブチ込んでおきながらそれを言うの!?」

 瞬間顔面に拳が突き刺さる。勿論、私の顔面に、クラリスさんの拳が、だ。

「そうやっていつも口答えして!」

 そう、クラリスさんは華奢な見た目に反して喧嘩が滅茶苦茶強いのだ。その上、温厚そうな見た目とは裏腹に割と手が早いのでタチが悪い。私は筋肉を鍛えてきたが、未だクラリスさんに有効打を与えれた事がない。つまり、義親子喧嘩で勝てたことが一度もないのだ。私はその後、幾度も拳を振るうが全てはクラリスさんの髪を掠めるのが精一杯、膝を腹にブチ込まれ、脚によるヘッドロックから地面への叩きつけ、続け様のアームハンマーに流石の私も動けなくなる。

「ね?軍の仕事なんて危ないから…」

「…それは、嫌。」

 クラリスさんは私の腹部に容赦ない踏み付けを叩き込んできた。思わず腹の中のものを口から出してしまうが、これはチャンスだ。踏み付ける脚を鷲掴む。初めて取った!そのまま寝たままの姿勢からクラリスさんを放り投げる。

「これは私が決めたこと!邪魔しないで!」

 クラリスさんは壁に叩きつけられる

 

 …ことはなく、壁を蹴って一回転してから着地すると、諦めたように構えを解いた。

「…分かったわ…。私のいうことなんてどうせ聞いてくれないものね…でも、私は反対だし、心配もする…そのことは覚えておいてね」

 クラリスさんからの許可もなんとか得られた。これで陽菜達の生活を守ることができる。

 

 その日の仕事は終わりだったのでクラリスさんと一緒に帰ることになった。途中で晩御飯の惣菜の買い物を済ませ、テレビを見ながら空気椅子で食事をする。すると、クロヴィス殿下が殺されたという報道、そしてそれをやったのがスザクだという報道が流れた。

「嘘!?」

「ど、どうしたの?マーヤ」

 自分が罵られていたのに私とジェレミアさんを仲裁しようとしたあのスザクが…クロヴィス殿下を殴り殺すなんてそんなことがあろうはずがない!

 次の日も学校をサボって特派に突撃してロイドさんに聞いてみてもやはりスザクは死亡推定時刻にはランスロットに乗っており、そのログも記録されている。つまりアリバイがあるのだ。

「こんなのおかしいですよ!スザクは白だって証拠があるのに!」

「…ある意味じゃ身内である僕らの証言を取り上げないって決められてるんだ、諦めるしかないよ。こういう事例は珍しくないんだ。君は知らないかもしれないけどね」

 ロイドさんは手をひらひらと揺らし、なんでもないように言っている。

「なんでそんなに平然としていられるんですか!?」

「彼は得難いデバイサーだけどねぇ…別にマーヤくんでもランスロットは動かせそうだし僕としては…」

「もういいです!」

 ロイドさんは変わり者だと聞いていたけどあんなに薄情だとは思わなかった!居ても立ってもいられず、思わずスザクの護送される会場に足を運ぶ。

 拘束着で磔にされているスザクが運ばれてきた。周りの人たちは何も知らないくせにスザクに罵声を浴びせている。こんなの間違ってる…!

 

 その時、事件が起きた。突如護送を指揮していた金髪の男…確か名前はキューエル ソレイシィだったか…が護送部隊を止めた。続けてクロヴィス殿下の御料車が登場し、中から黒尽くめで格好いい仮面とマントに身を包む謎の人物が現れたのだ。

「私の名は…ゼロ!」

 ゼロ…体脂肪率がほぼないと言うことか…!

 するとゼロは見事なダブルバイセップスやサイドチェストを披露しつつ

「クロヴィスを殴り殺したのは私だ!!」

 と叫んだ。

「何故殿下の死因を…!?まさか貴様が!!」

 様子を見る限り真犯人の登場のようだ。そしてゼロとキューエルがやり取りをすると、ゼロは車の装甲を引っ剥がし中から謎のカプセルを露出させた。そういえばニュースで報道されていた毒ガス…まさかあれば毒ガスのカプセルなのではないだろうか。こんなところで毒ガスを使うなんて…いくら周りにいるのがブリタニア人とはいえ、関係ない人を巻き込むのは許せない。今のうちに避難をさせないと…!

「あれ、きっと毒ガスです!皆さん逃げて!」

「えっ!?毒ガス!?」「そういえばシンジュクで毒ガスが…」「嫌だ!死にたくない!」

 すると、こちらをゼロが見た気がした。それと同時にカプセルから紫色の煙が噴き出した。私は一気に息を吐き、吸い込む。これで無呼吸でも3分は活動可能だ。そして私は目を閉じ、反響音と振動で周囲の状況を確認する。

 どうやらゼロはこの混乱に乗じて車の運転手を肩車しつつスザクへと接近し、スザクを奪い去るようだ。混乱したサザーランドの放つアサルトライフルを避けつつ、私はゼロを追いかけた。

「ゼロ!誰かが追いかけてきます!」

「何!?」

 運転手をしていた人が叫んでいる…その声に感じた。何故あの人は毒ガスを防ぐためのマスクとかをしていない?ゼロの仮面はともかくあの人は毒ガスに最も近い位置にいながらその対策をしていないはずがない…まさかあの煙はブラフ!?そもそもあんないかにも毒っぽい紫色の煙なんて可笑しいのだ。やられた…!

 ゼロはスザクを掴むとそのまま駆け抜け出した。スザクが凧のように宙で風を受け靡いている…。そしてゼロ達は高速道路を飛び降りると、なんとゼロは空中で勢いよく足踏みをする事で空気との摩擦により落下速度を軽減しているようだった。物凄い筋肉た…しかし、筋肉なら私だって負けてない、だったら私にだってやれないはずがない!

 私もゼロを追い、高速道路を飛び降りる。右足で勢いよく踏み込み、空気のとの摩擦を発生させる。確かにわずかだが体が浮いた感触があった。

「だったら!」

 それを高速で繰り返すことで落下の速度を怪我しない程度に緩める。

「ゼロ!あの人まだ追ってきます!」

「何!?そいつ本当に人間か!?」

 私は貴方の真似をしているだけなのだからゼロにだけは言われたく無かった。

「スザクを返して!」

 彼は私の言葉に反応し、走るのをやめ、こちらに体を向けた。しかし、人1人を肩車しつつスザクを抱えたまま私並みの速度で走れるなんて…ゼロ、どうやら見せ筋野郎ではないみたいね…!

「君はこの枢木 スザクのなんだ?何故彼を求める?」

「彼は私の職場の先輩よ!貴方が真犯人のなのよね!?もしかしてスザクまで殺す気なの!?」

「まさか、私は彼を勧誘しようと思っただけだ。共にブリタニアを壊すためにな」

 ブリタニアを壊す?そんなことできるはずがない。スザクは何かを話そうとして顔を歪めていた。

「…やはり喋ることはできないようだな。フンッ!」

 彼はスザクの首の機械を握り捩じ切った。やはり凄い筋肉だ…!

「ゼロ、僕を助けてくれたことには礼を言うけれど…君の仲間にはならないよ。僕はこの国を中から変えるんだ」

「…何?この状況で…それを言う事がどういう意味か分かっているのか?」

「殺したければ殺せば良い。僕はどうせ処刑される身だ。ここで僕が逃げれば日本人への弾圧が始まるだけ、僕が罪を背負えば…」

 スザク…!その覚悟、確かに受け取ったわ!

 

 私は近くに落ちていた石を拾い上げ、思い切りゼロの顔面へとブン投げた。

「小癪な!」

 ゼロはそれをあろうことがキャッチした…がそれは想定内!一気に接近してガラ空きになったボディにドロップキックを叩き込む。

「よし!」

「ゼロ!」

 肩車されていた女の人の心配そうな声とは裏腹に…

 

 ゼロは倒れなかった。

 

 私はドロップキックした脚を掴まれ、そのまま片手で振り上げられると地面に思い切り叩きつけられた。なんとか受身を取って軽傷で済んだが、ゼロの筋肉は私以上…肉弾戦の動きもクラリスさん並みだ!なんとか拘束を抜け出し距離を取る。

「中々のパワーとスピードだが…まだまだ甘いな。自分レベルの筋肉の持ち主と闘うのは初めてか?」

「ッ…!」

「図星のようだな」

 そう言って彼は肩車をしている運転手とスザクを空中に放り投げ、クラウチングスタートの構えをとった。

 

「いけない…!マーヤ!避けるんだ!!」

 

 スザクがこんな時に意味のないアドバイスをするとは思えない、瞬時に身構えるが、同時に目の前にゼロの仮面が映る。そして腹筋に力をこめていたはずなのに腹部からメキメキと音が鳴る。まるでトラックにぶつかった時のような衝撃を腹の一端にブチ込まれたのだ。

「カハッ!?」

 思わずそんな声が漏れる。更にゼロは私の顔を掴む。いけない…!さっきの攻撃で全身に力が入らない…!このままじゃやられる!

 

「これで…チェックだ」

 

 ゼロは思い切り仰け反るとそのまま頭突きを叩き込んで来た。

 

 

 そして私の視界は真っ暗になり、崩れ落ちた。




クラリスさんはロスストに出てくるまんまの見た目をしてますが、あの見た目で滅茶苦茶喧嘩っ早い設定になりました。早くも脳筋世界の被害者が現れましたね。いつものことです。気にするな。(殴打)俺は母親にバイオレンス属性をつける性癖の持ち主だったようです。※作者の親子仲は良好です。
なお、作者はロススト主人公のクラリスさんへの当たりの強さには批判的。

偽りのクラスメイトシナリオはミートギアスにおけるマーヤにとってはあまり重要じゃないのでカットしています。

お気づきかもしれませんが、マチョストは基本的にマーヤの一人称視点で進みます。描写されてない部分が多いですが、基本的にミートギアスを読んでくださってる方が多いはずなので問題ありませんよね?
 
活動報告に展開予想場を作りました。需要があるかはわかりませんが、展開予想をしてみたい方はそちらはどうぞ。作者の展開を当ててみな!ハワイに招待してやるぜ!(しない)

●本話での他作品小ネタ出典
・新世紀エヴァンゲリオン(葛城 ミサト)

●次回予告●
マーヤ「…知らない天井だ。」


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STAGE04′

 ご機嫌よう!読者の諸君…私の名は…ゼロ!

 追手の対処は思ったよりも時間を食った。それにスザクめ…結局奴は裁かれるために俺の誘いを断って軍事法廷へと向かっていった。

 …馬鹿め!

 しかし、あの女…マーヤとか言ったか?あの筋肉量、マーヤ…どこかで聞いた覚えが…

 まぁ良い、それでは本編開幕だ!


 熱い…熱い…。炎と煙で前が見えない。

 苦しい…苦しい…。炎の向こうに人影が見える…

『マーヤ…強く、生きて!』

 あれは…

 

「…はッ!?」

 腹部に凄まじい痛みを感じ、私は目を覚ました。それに、何か懐かしいものを夢で見た気がした。

「…知らない天井だ。」

 視界には知らない天井と…点滴の袋、それに仕切りのカーテンが見えた。どうやらここは病院のようだ。腕から点滴のチューブを引き抜き、点滴薬を全て飲み干す。うん、全身に栄養が回る感じがする。

「あ、目を覚ましたのね!?もう、心配したんだから」

 声がした方を見るとクラリスさんがいた。この人はまた泣いているのか…

「ごめんなさい、心配かけて。…また寝る」

 クラリスさんから逃げるように私は寝返りを打ち、背を向ける。もう眠気などなかったが、クラリスさんと話す気にはならなかった。

 

 検査の結果、骨や内臓に異常はなかった。でも、お医者さんの話では常人では骨は粉微塵になり、内臓が爆散していてもおかしくない衝撃だったらしい。ゼロはそれを可能にするほどの身体能力と戦闘センスを兼ね備えた強敵ということのようだ。

 クラリスさんは仕事に行ったようで、クラリスさんの置き手紙を丸めてカバンに放り込みつつ病院を出ると、スザクがピンク髪の女の人と一緒に…というか、スザクがピンク髪の女の人を抱えて疾走するところに出くわした。何事かと私はそれを追った。

「スザク!」

「…マーヤ!よかった、無事に退院出来たんだね、それに元気そうでよかった」

「スザクこそ無事に釈放されたみたいね。でも何してるの?」

 何故スザクはピンク髪の女性をお姫様抱っこして疾走しているのだろう。

「まぁ!こちらの方は凄い筋肉ですね、驚きです」

 この状況でニコニコとしているピンク髪の女性…

 

 ははーん、さてはこの人天然ね?

 

 走る速度を緩めず私たちは街中を疾走する。

「実はこの人、悪い人に追われてるらしいんだ」

「本当に!?大変じゃない…!だから逃げてる訳ね?」

「そういうこと。」

 しばらく走った後、私たちは公園で息を落ち着けていた。

「そういえば、その人って名前なんていうの?」

 スザクに聞くとスザクは返答に詰まっていた。…もしかして名乗ってない?

「あら?私のこと気になります?私の名前は…ユフィ」

 ユフィさんは微笑みながらそう答えた。

「私はマーヤ ディゼルです。」

「よろしくお願いしますね、マーヤさん」

「僕の名前は枢木 スザクです。」

 スザクが名乗り終える前にユフィさんの興味は猫へと移っていた。失礼にも程がある。しかしスザクもそこまで気にしていないようで、ニャーニャー言っているユフィさんと戯れる猫にキスをされていた。

「いきなりキスするなんて中々人懐っこい猫みたいね。」

「あれ噛まれてるんじゃないですか?」

 私が手を近づけてもゴロゴロと言いながら体を擦り付ける止まりだった。キスはしてくれないらしい。残念だ。

「猫って可愛いなぁ」

 そう言ってスザクが手を近づけるとまたキスをされていた。いいなぁ。

「あの、やっぱり噛まれてません?ねえ?聞いてます?あれ?私がおかしいんですか?」

 

 その後、ユフィさん曰く猫が怪我をしていたので手当てをすることになった。近くの薬局で包帯と薬を購入し、私が猫の手当てをした。

「手際、良いんですね」

「…よく子供たちの怪我を手当てしてましたから」

「…優しい方なのですね、マーヤさんは」

 優しい…か、私のは所詮自己満足。ただの偽善だ。結局ブリタニアを否定しながら今も結局ブリタニア人として、ブリタニアの軍の世話になって子供たちを保護してもらっている。ブリタニアを嫌いながらも切り離せない…私はそんな…卑怯者だ。

「マーヤ?どうしたの?」

「…なんでもない。」

 スザクに声が掛けられると同時に処置が終わり、猫はどこかへと駆けて行った。猫って自由で良いわね。

 

 話を聞くとユフィさんは本国から来たらしい。観光だろうか?ならばと思い、どこか行きたいところを聞いた。

「それではマーヤさん、ぷるるぎさん、私にゲットーを案内してください。

「ユフィ、僕はそんな柔らかそうな名前じゃないよ。僕の名前は枢木だ。」

「失礼、噛んじゃいました。」

「違う、わざとでしょ」

 そしてゲットーの慰霊碑に辿り着き、私たちは死者の冥福を祈った。ブリタニア人として生きる卑怯者の私がこんなことをしてもただの偽善、自己満足なのは承知しているが、これをやらないと私は私が許せなくなりそうだ。

「沢山の方が亡くなったのですね…悲しい事です。」

「ユフィさんはブリタニア人なのに日…イレブンの死が悲しいの?」

「マーヤさん、命にブリタニア人もナンバーズもありません。…私はそう思います」

 本当に悲しそうな顔をしているユフィさんを見ていると、少しだけ私も救われた気がした。そうだよね、命に産まれなんて関係ないはずだ。

 

 慰霊碑を離れると、特派のトレーラーがやってきて中からセシルさんが降りて来た。

「スザクくん、マーヤさん大変よ」

「どうしたんですか?セシルさん」

「近くでナイトメア同士が闘ってるの。純血派の内ゲバでね…」

 私たちも特派のトレーラーに乗り込み、詳しく話を聞くと、元々リーダーをやっていたジェレミアさんは最近になって純血派の方針を変えようとしていたらしい。しかしそれに反発したキューエルが発言力を持とうと功績を上げる為にクロヴィス殿下の殺人犯をスザクだとでっちあげた。しかし、知っての通りスザクは冤罪、ゼロという真犯人が現れた訳だが、それを取り逃がしたのは作戦に参加しなかったジェレミアさんのせいだということになったらしい。そしてキューエルはジェレミアさんを始末せんとナイトメアによる粛清を敢行しているとのこと…知らない相手でも無いし、このまま見殺しにするのは気が引ける。

「セシルさん、ランスロットは出せますか!?データを取るいい機会だと思うんです!」

 よし、ここはスザクに便乗しよう!

「私もいい機会だと思います。正規兵にも勝てるとなればランスロットの実用性はより証明できるのでは無いでしょうか!」

「それは…」

「あはぁ〜!面白い意見だねぇ〜!」

 いつのまにか現れていたロイドさんはそう言うと、ランスロットの発進準備を指示していた。

「彼は名誉ブリタニア人ですよね?ナイトメアに乗るんですか?」

「えぇ、彼、すごく才能があるみたいなので」

「そうなのですね」

 …なんでユフィさんはしれっとトレーラーに乗り込んでるんだろう?

 

 そして急に肩を叩かれ振り向くとロイドさんだった。

「はいこれ。マーヤくんにプレゼント!」

 渡されたのは青い鍵…なんだろう?サザーランドのキーに似ているけど…

「それは君のナイトメア『ボールス』の起動キー!戦うのはスザクくんだけだと思ったぁ?残念でした!」

 案内された先で見たのは私専用のナイトメアと言われた『ボールス』見た目はあまりサザーランドと変わらない気がする。でも、普段から予算が無い予算が無いと…雇った私の給料すら絶賛滞納中…陽菜達の方は問題ないらしいけど…の現状で新しくナイトメアを作る余裕なんて…

 

 …うん?サザーランドを改造した様なナイトメア。この前の残骸回収…

 

 …ま、まさか…

「この機体に使われてるパーツってもしかして…」

「あ、もしかして気付いちゃったぁ?そ!マーヤくんにこの前回収してもらったサザーランドをベースに作ってるんだぁ〜!」

「それって横領になるのでは…?」

 この場には…というか私のすぐ隣にはユフィが居るのでもはや揉み消せないと思うのだがどうするつもりだろう。

「大丈夫だよぉ、どうせテロリストに回収されたら鹵獲されたりして正確な数なんてわかりっこないんだから」

 だからそれを言っては揉み消せないんだけど…

 

 …私は何も見てないし、何も聞いてないわ。

 

 そしてユフィと目が合った

「…わ、私は難しいことは分かりません。それにボーッとして何も聞いてませんでしたよ…」

 うん、これで何も問題はないわね!うん!問題ない!きっと!

「これ機体のマニュアルね。ランスロットを突き詰めるのも楽しいけど、気晴らしに新しくナイトメア作るのも楽しいよねぇ〜」

 私は気晴らしで作ったものに命を預けるのか…この人の倫理観どうなってるんだろう…?

 スペックやマニュアルを軽く流し読みして頭に叩き込む。操作感はサザーランドとは大差なさそうだ。ロイドさんの手書きメモなんかによると、どうやらランスロットの予備パーツや廃棄予定だったパーツ…そんなものを使って安全性があるのかは疑問だが…開発予定で没になったパーツなどを組み合わせたワンオフの機体らしい。更にクラリスさんからの試供品の新型エナジーフィラーを乗っけてるとか。…大丈夫かな。不安しかない。不安な要素しかない。もはやサザーランドに乗って出た方がマシと思えるレベルだ。

 コクピットで発進許可を待ちつつ、武装類の項目に再び目を通す。プロトタイプであり、廃棄予定だったとは言えアサルトライフルとは比較にならない火力のプロトヴァリスと、ランスロットにも搭載されている実弾を弾くブレイズルミナス…これには付箋で稼働時間を著しく食うとセシルさんの文字で注意書きがされていた。…これだけでも強力なのはマニュアルを読めばすぐにわかった。それに切り札もある様だ。ただ、最後のページに思わず言葉を失う。

『ランスロット発進!続けてボールス、発進!』

 ボールスを発進させるが、マニュアルの最後にセシルさんのものと思われる走り書き…『脱出機構が外されてる』には笑えなかった。

 

『本当に私を殺す気か…!キューエル!』

『黙れオレンジ!最近貴様が賄賂に手を染めていたことは知っているぞ!だからあのゼロとかいうテロリストは逃走に成功したのだ!お前が全て手を引いていたのだろう!この裏切り者め!』

『何を言う!私が賄賂などと!』

 内ゲバの会場となっているスタジアムからスピーカーの声が聞こえてくるが、ジェレミアさんがそんなことをする人間には思えない、どうやらでっち上げで自分の失敗の責任をジェレミアさんに被せようとしている様だ。争いの場に突入すると…

 

『ヴィレッタ!貴様!』『キューエル卿、流石に看過できません!』『済まぬヴィレッタ』『ジェレミアだけでも始末しろ!』『イエスマイロード!』『オールハイルブリタニア!』

 六体のサザーランドが乱戦をしていた。

 

『マーヤ、聞きたいことがあるんだけど』

「何?」

『どれがジェレミアさんかわかるかい?」

 ふふっ、勿論!

 

 分かるはずがない。

 

 全員同じ装備、同じナイトメア、同じカラーリングだ。私には全部同じに見える。これがもし、どれか一機を取り囲むかの様にしていたのなら判別もできただろうが、しかし現在は絶賛乱戦中。よってこの場合、私たちのとるべき行動は…

 

「スザク、サザーランドを全部倒せば解決よ!」

『なるほど!マーヤは賢いね!』

 

 ブレイズルミナスを展開し、そのままタックルをかましてサザーランドを押し倒す。

『何をする貴様!』

 どうやら乗っているのは女の人らしい。そのままプロトヴァリスで頭と腕を吹っ飛ばし、胴体を蹴っ飛ばす。

『ヴィレッタ!お前もジェレミア同様始末を…』

 私のことを味方だとでも思ったらしいサザーランドは私がボコボコにしたサザーランドに対して銃を構えていたのでドロップキックを叩き込み押し倒す。

『おい!何をする!?敵は…って貴様。サザーランドじゃない!?』

「さよなら」

 踏み付けで頭を破壊し、両腕を引き千切る。

 スザクとやり合っているサザーランドに対し引きちぎった腕を投げ付ける。

『卑怯!背後をバック…しかし、当たらずッ!』

 中々の反応に感心するが、既に王手、私とスザクは速度を緩めず、挟み込んでのドロップキックをブチかます。

 脱出して出てきたパイロットを見ればジェレミアさんの様だ。

「良かった!無事だったんですねジェレミアさん!」

『いや、危うく君達に殺され掛けたんだが…?』

 すると、ボールスの近くをヴァリスが掠めた。…うん?ヴァリスが掠めた?

『まだ残ってたのか…止めてください戦いなんて!同じブリタニア軍同士でしょう!』

「待ってスザク、何を言って…」

『サザーランドなんかこのランスロットで!』

 まさかボールスをサザーランドだと思ってる!?そう思っているとスザクは剣を引き抜いた。

『あれは…MVS…!実用化されていたのか』

 ジェレミアさんの呟きを聞きつつ思考を巡らせる。あの切れ味じゃ普通に腕で防いでもガードこと切られる…

『食らえ!』

 一撃目はMVSでの攻撃…スザクの性格ならフェイントはないはず!バックステップを取ることで回避し、プロトヴァリスを放つ。しかしそれをブレイズルミナスで弾いてきた。私はすぐそばに落ちていたサザーランドの大型ランスを拾い、ランスロットに対して投擲する。

「これでも食らえッ!」

『なんと見事なアンダースロー!』

『早い!ただのサザーランドじゃないのか!?』

 そうよスザク!サザーランドとは違うのよ、サザーランドとは!

 ロイドさんが私のためにカスタムしてくれたボールスの特徴に投擲力の高さがあるのだ。

 ランスをMVSで弾くスザクだったが、その間に私は距離を詰めている。右手のガントレットを展開し、スパイク型MVSを起動。

「これでブン殴るッ!!」

『これは!?』

 スザクのMVSを一本叩き切ることに成功するが、すぐさまもう一本のMVSで右腕を切られてしまった。しかしこちらは蹴りを叩き込んで距離をとり、腰に手を伸ばす。

『こうなったらバーストモードで消し飛ばす!』

「そんな武器なんかッ!」

 放たれたヴァリスに腰から取り出した投擲式反発衝撃弾『スロウ・ヴァリス』を投げつける。お互いのヴァリスがぶつかり合い、凄まじい爆風が起こる。

『そんな!ヴァリスを相殺した!?』

 次のスロウ・ヴァリスに手を伸ばすと、ユフィが現れた。

 

『私、ユーフェミア リ ブリタニアの名の下に命じさせて頂きます!双方とも、剣を収めなさい!!』




Q.マーヤならルルーシュがゼロだって筋肉で気づかないの?
A.マーヤはつき過ぎた筋肉が仇となり鈍感なので気付きません。

ここで一つ補足を。STAGE02′の回収任務のときに協力を申し出てきたサザーランド居ましたよね?あれ中身ルルーシュです。

STAGE03°の後書きでも書きましたが、展開予想に関しては活動報告を用意したのでご活用下さい。

●オリジナルナイトメア紹介●
『ボールス』(外見イメージはロスストのOPに一瞬だけ出てくる奴を思い浮かべてください。※ペンデュラムとは別物)
・マーヤが回収したサザーランドの残骸をベースにランスロットの予備パーツとランスロットの製造過程で没となったパーツ等を組み合わせたナイトメア。因みに残骸の横領は犯罪である。
・頭部には高コスト化が原因で採用されなかった小型ファクトスフィアの試作版を搭載、結果として頭部形状はサザーランドに似るものの、顔は赤い丸のツインアイタイプとなった。
・ベースはサザーランドであるが、フレームの一部はランスロットの知見を得て改良されており、運動性能だけで言えばグロースターにも勝る。但し、機動力を確保するために装甲はサザーランドよりも薄くなった。
・プロトヴァリスは試作版であり、出力を補うために機体からのエネルギー供給が必要な上、ランスロットのヴァリスに比べてノーマルモードの火力しか出ないと機能が制限されている。
・左腕にはブレイズルミナスを装備。但し、エナジーを著しく食うため稼働時間が大幅に減るし、プロトヴァリスの使用にも影響が出る。
・右腕にはランスロットでは没になった展開式のガントレットを装備している。ガントレットによるマニュピレーター保護とガントレットのスパイク型MVSにより破壊力のある殴打が可能。
・というか装甲が薄い関係で雑に殴ったりするとボールスの方が壊れてしまう。ただし、ロイドがマーヤの癖を見たため、脚部フレームはかなり頑丈。ドロップキックやフットスタンプなどの踏み付けの動きには強い。(スザクのような回し蹴りは壊れる)
・ヴァリスのバーストモードと同等の破壊力を持つ投擲式反発衝撃弾『スロウ・ヴァリス』を2個格納している。
・エナジーフィラーはクラリスの会社からの試供品を使用している。
・なお、ロイドにより脱出機構は外された。なんで?
・ロスストでの名称は「サザーランド・カスタム」のようですね。(11/3追記)

●今話で使用した小ネタ出典
・化物語シリーズ(阿良々木&八九寺)
・ぐらぶるっ!(ラカム)
・新世紀エヴァンゲリオン(碇シンジ)
・機動戦士ガンダム(ランバ ラル)

●次回予告
ナナリー「それではお二人とも、見合って見合って…はっけよーい…のこった!」


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STAGE05′

 みなさんこんにちは、シャーリーです。

 最近、マーヤがずっと不登校なんです。彼女のことだから病気や怪我じゃないとは思うけど、心配だなぁ。

 でも、最近カレンさんが顔を出す様になってきて、しかも生徒会に入ってくれたんです。力仕事は任せられないけど、そもそもルルがいれば事足りるし、もっと仲良くできると良いなぁ

 そういえばマーヤっていつもすぐ帰っちゃうけど部活とか入ってるのかな?

 あ、それでは本編スタートです!


 久し振りに登校するとシャーリーに捕まった。

「マーヤ!今日は逃さないからね!」

 腕にしがみ付くシャーリーだけど、私はこのままでも歩行が可能なので正直逃げることは可能だ。

「どうしたの?急に」

「最近全然学校に来ないんだもん!心配したんだよ?」

「最近新しい仕事始めてその関係でね…」

 特派…特にロイドさんは私の学生生活についてはどうでも良いと思ってるらしく…というか私もどうでも良いので意見は合致している…平日でも平気で仕事を入れてくるのだ。私は普通に仕事をしたいし、セシルさんくらいしか反対する人がいなかったのだけれど、ユフィ…じゃなかった、ユーフェミア皇女殿下から学生は学校に通うべきだとお叱りを受けたため、泣く泣く今日から学校に通うことになってしまったというわけだ。

 流石のロイドさんも皇族からの注意には逆らえないらしく、これを機にと反撃に転じたセシルさんによって平日の仕事がキャンセル、暇になった私は仕方なく登校している。正直学校に行っても退屈だし、私は俗に言う脳筋…脳まで筋肉、筋肉=脳、つまり全身が筋肉の私は全身に脳を搭載しているため、脳処理機能が向上している。そういった私の様なタイプの人間のことを脳筋という…なので自慢じゃないが頭は良いのだ。高校の内容くらい余裕なくらいには。

 

 そして今日も退屈な一日が始まるかと思った矢先、驚くことが起きる。

「本日付けを持ちましてこのアッシュフォード学園に入学することになりました。枢木 スザクです。よろしくお願いします。」

「スザク!?なんで!?」

 思わず立ち上がって叫ぶとスザクも私の存在に気付いたらしい。嬉しそうに笑顔で手を振ってくる。そういうところが天然って感じなのよね。

「何だ知り合いなのか、じゃあ席はディゼルの隣だ。リヴァルは空いてる席に座ること、でなければ帰れ!」

「ひでぇ!」

「マーヤ、おはよう!一緒のクラスなんて偶然だね、今日から改めてよろしく!」

 そんな訳でスザクが学校にやってきたのだ。

 

 クラスのみんなはスザクがイレブンであることやクロヴィス殿下殺害の容疑者であったことからざわめいていたけれど、私にとってはどちらもどうでも良いことだ。ハーフである私にとってイレブン…日本人であることは些細なことだし、殺害も無罪であることは知っているのだから。

 意外だったのはクラス一のマッチョのルルーシュくん。彼ならスザクの肉体に秘められた筋肉を感じ取り、取っ組み合いでもするかなと思っていたが、彼は転校生には興味ない様で教室を出てからサイドチェストを決めて己の筋肉のキレを確かめていた。うーむ、この距離からでもわかる…キレキレだ。

「ねぇねぇマーヤ!あのスザクって人と知り合いなの?しかも名前呼びだし!」

「うん、仕事先の先輩なの。」

「どんな人なの?私も仲良くなれるかな?」

「話せばわかると思うけど、優しい人だよ。きっと仲良くなれると思うな。…ちょっと天然だけどね」

 シャーリーの様子を見ていると彼女は相手が何人であれ平等に接してくれるようだ。シャーリーになら私がハーフだってことも…いや、流石にそれは無理か。シャーリーを騙していた事になるんだし…

「そうなんだ!良かった!他には?」

「うーん、あ、筋肉がある」

「そっちは見ればわかるかな」

 折角だし紹介しようと教室を見渡したがスザクは居なくなっていた。どこに行ったんだろう…?

「そういえばマーヤ、気になってたんだけど」

「うん?何?」

「マーヤって何部?」

 ウチの学校は必ず何かの部活動に入る必要がある。そして私は最近まで陽菜達に会いにゲットーに行くかバイトをしていたので当然部活には入っていない。しかし、私のような知恵の回る不良学生は咄嗟のトラブルに対応できるように想定QAを上腕二頭筋辺りに準備しているのだ。

「ウェイトリフティング部だよ?」

 完璧な間からの何でも無いような雰囲気での回答…完璧だ。これで騙さなかった人は居ない。

「嘘、そんな部ウチには無いよ。私生徒会だから予算審査で知ってるんだから」

 しまった。あっさり嘘がバレてしまった。

 

 今日も退屈な授業を終え、さっさと特派に向かおうと帰りの支度をしているとまたしてもシャーリーに捕まってしまった。

「ね、部活の話なんだけど、生徒会に入らない?」

「生徒会?私が?」

「あ、スザクくんもどう?」

「え?僕?」

 今まさに帰ろうとしていたスザクにも声を掛け、シャーリーに押し負けて二人とも腕を引かれて連行されてしまう。まぁ、私もスザクも本気になればシャーリーを引き摺って帰れるので嫌がってないって意味なんだけど。

「会長ぉー!補充メンバー連れてきました!」

「なになに?今度はどんな子!?」

 シャーリーの声に反応して出てきたのはスタイルのいい金髪の綺麗な人、確か…ミレイさんだ。…正直色々サボってるせいで名前が合ってるのか自信が無い。

「あの、はじめまして。本日よりアッシュフォード学園に入学することになりました。枢木 スザクです。よろしくお願いします!」

「知ってるわよ〜!なんたって私は理事長の孫だからね!それにしても元気な挨拶で実によろしい!」

 どうやらこの人も日本人でも特に気にしないようだ。少しだけ好感が持てる。

「それで…!あー…あなたは…」

 なんだろう、私を見た途端に急にテンションが下がったような?

「マーヤ ディゼルです。」

「うん、あなたも知ってる…例の…」

 例の…?例のってなんだ!?

「なーにその顔、自分がどんな噂されてるか知りたい?」

「…ええ、是非」

 …もしかして私って実はモテてたり!?まぁ?確かに?私は美少女ですし?身体も?良い身体だって褒められるから?モテても仕方ないけど?いやぁ面と向かって言われるのは流石に恥ずかしいなー!でも告白とかされたらどうしよう!…私としては私より強い人とど突き合い…じゃなくてお付き合いたいなって思ってるけど…

「成績優秀、筋肉隆々、運動神経抜群、保健室送りの疑い数名、遅刻はゼロだが早退多数、無断欠席も大量の超超問題児よ!」

 うん、全然違ったわ。それにしてもまさか保健室送りを疑われてるなんて…まさか目撃者が!?

「えぇっ!?マーヤ、君真面目に学校は行ってなかったの!?」

 横でスザクが驚いているけど、普通に考えて真面目に行ってるはずがない。

「平日に仕事行ってたでしょ?そりゃあ無断欠席にもなるわよ」

 スザクがセシルさんのサンドイッチ食べた時くらい微妙な顔をしている。そんなにかな…?

「なんです?今日も騒がしいですね…ってお前ら…」

「紹介するわ、今日から生徒会に入る…」

 会長が私とスザクのことをルルーシュに紹介しようとすると、ルルーシュは手で制して不要であるとアピールした。

「二人ともクラスメイトなんで知ってますよ。不良学生と転校生。…これ生徒会の人員補強になるんですか?人手が足りないのはわかりますけどね」

「ルルだってしょっちゅうサボるくせに」

 ボソりとシャーリーが言うと、ルルーシュはバツが悪そうに目を逸らした。

「あのー、体で扉が埋まって部屋に入れないんですけど…」

「あぁ、悪いなカレン。今どくよ」

「あれ?貴方達…」

 こうして生徒会メンバーが集まり、改めての自己紹介となった。

「私こそがご存知!生徒会長のミレイ アッシュフォードよ!う〜ん!ルルーシュにマーヤにスザク!これは今年の特製オーブンは運搬費と設置費用は他に回せそうね…」

 運搬に…設置費用…?何のことだろう。

「次は俺か、副会長のルルーシュ ランペルージだ。生徒会の仕事でわからないことがあったら聞いてくれ」

 相変わらずルルーシュは凄い筋肉だ…まるで皇帝陛下みたいである。

「私のことは二人とも知ってるよね?雑用係のシャーリー フェネットです!水泳部と掛け持ちだけどよろしくね」

 うん、シャーリーの体は今日も引き締まってて良いね。

「書紀のリヴァル カルデモンド…よろしく。はぁ…」

 ?なんだか元気がないみたいだけど、大丈夫かな。

「…会計のニーナ アインシュタインです…。」

 なぜ彼女は怯えてるんだろう?仕切りにスザクの方をチラチラと見てるけど…。

「見習いのカレン シュタットフェルトです。体が弱くてたまにしか来れないけどよろしく」

 …?体が弱い?服を着ているとは言え、私ほどの筋肉をつけた者が見ればそれが嘘だとわかる。細身ではあるけれど、かなり実践的な経験を積んだ遊びのない筋肉をしている。それを見れば病弱だとはとても思えないけど…。まぁ、いきなりみんなの前で詮索するのは野暮だよね、私だってハーフっていう探られたくない身の上だし。

「本日からアッシュフォー…」

「そのくだりは良いから、今日何回目?それ?」

 クスクスと笑うシャーリーに釣られてみんな…ニーナ以外…が笑う。スザクは恥ずかしそうに顔をかいていた。

「改めまして、枢木 スザクです。軍の仕事があるのでたまに外すかもしれませんが、よろしくお願いします!」

 軍と言う言葉にルルーシュとカレンの眉が動いた気がする。しかし、最も大きな反応を示したのはシャーリーだ。

「えっ!?じゃあスザクくんと同じ職場のマーヤって…!」

「あ、うん、私も軍の仕事手伝ってるよ。守秘義務があるから詳しくはいえないけど」

「大丈夫なの?」

 シャーリーは心配をしてくれるが、大丈夫とサムズアップして誤魔化した。技術部なので滅多に危険な目には遭わないが、全く安全かと言われれば答えはノーだ。特にロイドさんはたまに非人道的だし、セシルさんの料理は殺じ…個性的だからだ。

「最後は私ね。マーヤ ディゼルです。不良学生なのでたまにしか来れないけど…」

「サボりはダメよ」

「…私も軍の仕事があるのでたまに休みますけどよろしくお願いします。」

 自己紹介が終わるとその日は解散となった。

 

 次の日、シャーリーから今日の生徒会活動はクラブハウスのホールだと伝えられた。スザクと二人で向かいドアを開けるとクラッカーの音が鳴る。

 横断幕には『生徒会新メンバー歓迎会』と書かれていた。どうやら私とスザクを歓迎してくれてるようだ。

「なんだか照れ臭いね…ってスザクどうしたの?」

 横にいたスザクを見ると何故か涙目だ。

「なんか、嬉しいなこう言うの。」

 涙目を通り越してガチ泣きをし始めた…どうしたんだろう…。

「まさかブリタニアの人から歓迎してもらえるなんて思ってなかったから」

 あぁ…。確かに日本人、名誉ブリタニア人の立場では苦しいこともあっただろう。ミレイ会長は良い人だ。昨日の反応を見ればスザクのことも本気で歓迎しているのがわかる。そしてふと、ホールの角で落ち込んでいるリヴァルを見かけたのでこっそりと近づく。

「はぁ…スザクはともかくあのゴリマッチョのマーヤかぁ…もっと華やかな女の子が良かったぜ…」

 やがて振り向いてこの世の終わりみたいな顔をしたリヴァルにニッコリと笑って無言で拳を叩き込んでからその場を立ち去り、シャーリーからグラスを割れないようにそっと受け取る。

 すると、車椅子に乗った女の子がピザの箱を膝に乗せ入ってきた。

「あの、これってどこに置けば…?」

「あ、ナナリー。私が置いておくわ。」

「ありがとうございます、カレンさん」

 カレンは病弱だと嘘をついていたけど、あのナナリーって女の子に優しく接しているのを見れば悪い人じゃないのは分かった。

「あぁ、あれはルルーシュの妹のナナリーだよ。目も見えないし足も不自由だけど手先が器用だししっかり者なんだ。それに笑顔が可愛いよね。」

 隣にいたスザクが教えてくれたので早速挨拶しに行こうと近づく。…ん?なんでスザクはルルーシュの妹のことなんて知ってるんだろう?

「…あら?お兄様?」

「え?」

 スザクの発言に疑問を思っていつつナナリーちゃんに近づくとお兄様と呼ばれた。目が見えていて私の筋肉を見てそう間違えるなら兎も角、目も見えないのになんでお兄様なんて言われたのだろう。…えっ!?もしかして私汗臭い!?

「あっ、ごめんなさい。…女性の方だったんですね」

「いいのいいの気にしないで。それに、筋肉量で言えばルルーシュにも負けないよ。私はマーヤ。よろしくねナナリーちゃん」

 小さくて可愛らしい手を砕かないように優しく触れて挨拶をすると、さっきまで申し訳なさそうにしていた顔がパッと明るく笑顔になった。可愛い。

「はい、よろしくお願いします」

 陽菜達みたいに逆境にも負けず明るく逞しく生きる輝かしい子だと思える。

「なんだか、懐かしいです。」

「懐かしい?」

「はい、なんだかお姉さ…あっ…いえ、なんでもないです」

 うん?まぁ、何でもないなら良いか…

 

 こうして私とスザクは歓迎会を楽しんだ。

 そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最初から最後に立ちはたがるのは貴方だと思ってたわ、ルルーシュ」

「それはこちらとて同じこと。お前が女だとしても手加減はしない」

「それではお二人とも、見合って見合って…はっけよーい…のこった!」

 ナナリーの言葉と同時に右腕に全力を込める。ルルーシュはさっきまでスザクとの熾烈な戦いをしていたのだ。まだ疲労が溜まっている今がチャンスだ!

 

 しかし、ルルーシュの腕はビクともしなかった。

 

「くっ!?なんで!?」

「スザクとの熾烈な戦いの後で何故疲労もなく腕相撲ができているのか…そう考えているな?」

「なっ…!?」

 思考が読まれている!?流石はルルーシュ、私同様に全身の筋肉で脳味噌の機能を拡張しているようね…!その筋肉を使えば相手の心を読むなど造作もないと言うことか…!

「ヒントをやろう。俺とスザクはさっきまで左腕で腕相撲をしていたんだ」

「なっ!?」

 瞬間、私の右腕が地面に叩き付けられる。

「しまった…!」

「速攻を仕掛け疲労したところに一瞬の動揺…。その隙を突けばいくらお前でも抵抗できまい」

 私は完膚なきまでの敗北という悔しさに頭を抱えて机に両肘をつく。

 

 クソッ!やられた!!

 

「第一回生徒会腕相撲大会優勝はお兄様ですね!」




この世界線だとマーヤが緩衝材になって素早くスザクが馴染むのでルルーシュとスザクの殴り合いは発生しません。これも筋肉のおかげだな!

ミートギアス名物の(腕)相撲回です。コードギアス二次創作界隈でも相撲をするコードギアスのキャラ達が見れるのはミートギアスだけでしょうね(前例がない=良い事では無い)
因みに腕相撲大会の順位
優勝 ルルーシュ
準優勝 マーヤ
3位 スザク
4位 シャーリー
5位 ミレイ
6位 リヴァル
7位 カレン※
8位 ニーナ
※本気を出せば4位

●本話で使用した小ネタ出典
・新世紀エヴァンゲリオン(碇 ゲンドウ)
・デスノート(夜神 月)

●次回予告
ノネット「あぁ、自己紹介がまだだったね。アタシはノネット エニアグラム。一応ナイトオブナインをやらせてもらってるよ」


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STAGE06′

 ようこそ読者!二次創作はお好きかな…?

 私はコーネリア リ ブリタニア、今日は義弟クロヴィスの仇であるゼロを誘き寄せるためにサイタマゲットーを攻める。

 ついでにユフィから聞いた特派のナイトメアとやらも見ておこう。
 …ナンバーズを戦場に出すつもりはないが、もう一方のマーヤとやらは別だ。

 では本編開始と行こうか!


「サイタマゲットー壊滅作戦…ですか」

「そ、コーネリア皇女殿下が是非君にも協力してほしいってさ〜」

 ようやく平日が終わり、今日は休日…つまり仕事の日な訳で、私は特派を訪れていた。そこで見たのはいつもより念入りにボールスを調整するロイドさん。

「自分も出撃するんでしょうか?」

 すでにパイロットスーツに着替えていたスザクだったけど、ロイドさんは首を横に振る

「それがさぁ〜スザクくんって名誉ブリタニア人でしょぉ?コーネリア皇女殿下はナンバーズを区別される方だからねぇ…スザクくんはG-1近くで待機。まぁ前みたいに敵が突破してきたら話は別だねぇ。」

 ロイドさんは残念そうだ。そりゃそうだろう、ロイドさん的には気まぐれで作ったボールスなんかより傑作とも言える嚮導兵器のランスロットの方が宣伝したいに決まってる。

「そう言うワケでさぁ、マーヤくん…くれぐれも活躍してねぇ?今回の作戦で活躍してくれたら特派の予算が増えるかもしれないからさ〜!」

 予算が増える…つまり滞納している給料が支払われる…陽菜達に好きなものを買ってあげられる…!?

「私の頑張ります!」

「うんうん、そのいきだよぉ」

 

 そして開始された作戦…私への指示はなんと、『なし』。しかし、それは別に待機していろと言うわけではない。

『コーネリア皇女殿下がさ〜ぁ、マーヤくんは自由に動けってさぁ〜!もしも個別に命令がある場合は総督自ら指示をくれるって!IFFはついてるから余程なことがないと味方からは撃たれないと思うけど…気をつけてねぇ』

 自由に動け…。確かに軍としての動きはある程度統一された集団としての能力が重要だろう。そうなると私とボールスはいずれもイレギュラー。つまり臨機応変な私の判断能力を試してるって訳だ。

 暫くボールスを走らせていると、味方の動きに違和感を覚えた。するとその味方だろうか、通信が飛んでくる

『こちらサントゥキン ジョーワン!援軍を求む!テロリストに襲われている!誰か援軍を!』

「こちら特派のマーヤ ディゼル。すぐに救援に向かいます。」

『特派…?い、いやこの際誰でも良い!仲間がやられた!やばく救援を!』

 ボールスを走らせると、すでに破壊されたサザーランドが数機と、それを取り囲むIFFの外されたサザーランド達を見つけた。なんとか瓦礫の影で攻撃を凌いでいるのがサントゥキンさん達だろうか?

「出し惜しみはしない、プロトヴァリス行けぇ!」

 狙いを定め、アサルトライフルを乱射する一団のサザーランド達にプロトヴァリスを放つ。

 更に近くにいたテロリストのサザーランドにドロップキックをブチ込みライフルを奪う。奪ったライフルでトドメを刺しつつ、先にプロトヴァリスを放った方の一団を殲滅せんとアサルトライフルを乱射する。

 挟み撃ちにされていた一角を崩したため、後は正規軍人の味方がテロリストに遅れをとるはずもなく、アサルトライフルやスタントンファで反撃していた。私もアサルトライフルでの援護をすると敵の撃退に成功した。

『さっきは失礼した特派のディゼル殿。救援に感謝する。この恩は忘れぬ。それでは我々は一度退がって部体を立て直します。ディゼル殿もご武運を』

「はい、わかりました。」

 サントゥキンさん達と別れ、更にボールスを走らせていると、気絶した人を見つけた。ボールスから降りて確認してみると、顔面に肘を打ち込まれたようで顔面の骨が砕け散っているようだ。

「た…たす…け」

「すぐG-1まで連れて行きます!」

 簡単な応急処置を済ませてから男の人を担ぎ、ボールスに乗せる。男の人は重症だが、処置さえすれば死にはしないだろう

「…お、れ…の…な、ない………うば…」

「喋らないで、傷が開きます」

 しかし男の人は黙らない。

「ないと…め…う、うば、わ…」

「…ナイトメア、奪われたんですか?」

 男の人はゆっくりと頷いた。なるほど、さっきのIFFのないテロリストのナイトメアはこちらのナイトメアをどうにかして奪ったものらしい。ならば仮に味方でも気を付けなくちゃいけないかもしれない。

 一度特派まで戻り、補給を受けつつ怪我した人をセシルさんに預ける。すると私が何かを成す前に全軍撤退の放送が掛かる。これは好機だ。撤退するほど苦戦しているなら今私が残りのナイトメアを一掃すれば活躍になるに違いない!

 

 モニターで戦況を見ていると急にIFFの復帰した機体を見つけた。このタイミングで復帰なんておかしすぎる。確実に罠だ。

 ボールスで接近し、プロトヴァリスを構えると

『畜生!敵味方信号がわからないのか!?味方だぞ!!』

 そう言いながら発砲してきた。本当に味方ならそう言いならが撃ってくるはずがない。サザーランドのアサルトライフルを全て躱し、瓦礫を拾い上げて投げつけ、アサルトライフルを弾き飛ばし、その隙に距離を詰めてガントレットを展開して殴り付ける。プロトヴァリスもブレイズルミナスもエナジーを食うから出来るだけ温存したい。更にまたIFFが復活した機体が現れた。相手は私のことを舐めてるに違いない。

 流石に2機相手なので出し惜しみはせず、プロトヴァリスで一体を確実に仕留めてからサザーランドの前に躍り出る。すると、後方の瓦礫の山から瓦礫が転がってきた。

「背後に伏兵か!」

 スラッシュハーケンでその場で大きく跳躍し、正面にいた残りの敵にプロトヴァリスを撃ち込んだ後、空中でボールスの姿勢を捻り、背後の伏兵にスロウ・ヴァリスを投げ付ける。着地と同時に横っ飛びでその場を跳び退くとバズーカによる爆撃が地面を穿った。

 着弾の角度から敵の位置を予想し、瓦礫を投擲、どうやら二発目のバズーカの弾の爆発は放った本人を飲み込んだようだ。

 更にボールスを前進させようとするが、コーネリア総督から通信が入った。

『私は神聖ブリタニア帝国第二皇女コーネリア リ ブリタニアだ。そろそろ退くが良い。予測される敵の戦力はほぼ殲滅できただろう。これより先は我が親衛隊が行う。…見事な活躍だ誇って良いぞ。』

 見事な活躍と言ってくれたのでこれは予算上乗せ間違いなしだろう。そう思ってG-1に戻ると奇妙なことが起きていた。軍人がナイトメアから出てきたかと思うと、突如ダブルバイセップスをしていたのだ。…しかし凄い筋肉のキレだ。まるで腕にスタントンファでもしてるみたい。更に奇妙なのは周りのナイトメアが暴れ出したことである。そしてダブルバイセップスの主はナイトメアの間を縫うように駆け抜けて去っていく。

『特派のナイトメア!何をしている、貴様も鎮圧に協力しろ!』

「あ、はい!」

 言われるがまま暴れるサザーランドにガントレットによる殴打を見舞う。そして特派に戻りナイトメアを降りるとセシルさんが声を上げた。

「えっ!?ゼロと思わしき人物がG-1に!?」

 ゼロ!あの日の屈辱は忘れない!すぐさまG-1の近くに向かうと先ほどのムキムキな軍人が飛び出てきた。あの筋肉…まさかゼロ!?

「お前は…!」

「ゼロ!ここから先は通さない!」

 ゼロほどの筋肉を持つ男が走って出てくるということは、恐らく返り討ちにあったに違いない。あのコーネリア皇女殿下と熾烈な殴り合いを行い、ゼロは疲れているはずだ。つまり、付け入る隙はある!

「邪魔をするなッ!」

 私の拳をなんとゼロは躱さずにそのまま受け、両腕で私の胴体に拳を叩き込んで来た。

「かはッ!?」

「今は貴様とやり合ってる時間はない!」

 私が腹を押さえた一瞬の隙を見逃さず、ゼロはその場でジャンプして両脚を私の顔面に叩き込んでくる。思わず私は吹っ飛んでしまう。

「大丈夫かマーヤ!?」

 スザクに受け止められたお陰で壁には激突しなかったが、今はそれよりもゼロだ。

「私は平気、それよりゼロを!」

「ゼロ…?」

 私が向き直るとそこにゼロの姿はなかった。

 

 結論から言うと、特派の予算は少しだけ増えた。お陰で滞納されていた賃金も少しだけ振り込まれたため、陽菜達のためにお土産を購入し、施設へと向かった。

「陽菜!みんな!久しぶり!」

「マッチョお姉ちゃんだ!」相変わらず筋肉すごいや!」「脚にランドスピナーでもついてんのかい?」「今日は何買ってきてくれたの!?」

 私を取り囲むみんなに私はカバンからお土産を取り出す。

 

 そう、ご存じプロテインだ!

 

 筋肉は何よりも大切だからね。

「わーい!プロテインだ!」「お姉ちゃんありがとう!」「胸にスラッシュハーケンでもつけてんのかい?」「僕早速筋トレしてくるよ!」

 その日は時間も忘れてみんなと筋トレをしたため、家に帰る時間が遅くなってしまった。

 玄関を開けてすぐに私は汗を流しにシャワールームに向かった。シャワーを終え、リビングに向かうとクラリスさんの作ったご飯が置いてあった。

『今日は遅くなります。先に食べていてください』

 今日…は?今日も、の間違いだろうに。ボールスのデータのおかげでクラリスさんはきっと忙しいのだろう。そしてクラリスさんの作ったご飯を平らげ、筋トレをしていると、セシルさんから電話が掛かってきた。

「もしもし」

『もしもし?マーヤさん?ごめんなさいね、こんな遅くに』

「いえ、平気です」

 私は片脚空気椅子をしながら電話を続ける。

『来週末なんだけどね、ちょっと特別な依頼が入ったの』

「仕事ですか?もちろんやりますけど…特別ってどう特別なんです?」

『それが…私にも詳細はわからないの。ただ、出来るだけ旅行者のような格好をしなさいって…後水着も必要みたいね。』

 旅行者…?潜入でもするのだろうか?それに水着?最近正式競技での使用が禁止されたスラッシュ・レーサー社のものしかないけど…まぁ水着だし大丈夫だよね?とはいえ、セシルさんも聞いていないのだから考えるだけ無駄だろう。

 

 次の日も学校のない日なので特派に行くと、見知らぬ女性と出会った。

「おや、その筋肉…アンタがコーネリア…皇女殿下が言ってたマーヤって子かい?なるほどねぇ良い筋肉だ。」

「あの…あなたは?」

「あぁ、自己紹介がまだだったね。アタシはノネット エニアグラム。一応ナイトオブナインをやらせてもらってるよ」

「ノネットさん…ナイトオブナインの方でしたか、そうですか」

 …ふーん、ナイトオブナイン…ナイトオブラウンズね。…うん?ナイトオブラウンズ!?

「えっ!?帝国最強の12騎士のナイトオブラウンズですか!?」

「あっははは!だからそう言ってるじゃないか」

 驚いた…なんでこんなところにそんな偉い人が…

「これはこれはエニアグラム卿〜お久しぶりです。本日はどんな御用ですかぁ?」

「エリア11にある遺跡の先見調査があってね、ちょっと寄らせてもらったよ。」

「先見調査…ですか」

「そうさ。本調査は皇族の何方かが直接指揮をとられるけどね、皇族の方を調べる価値がなかったり危険のあるところにお連れする訳にはいかないだろう?だからアタシらみたいなラウンズが先行して調べるのさ」

 ノネットさんの発言に私は納得した。そのまま危険が有ればついでに排除しろと言うことだろう。

「それにしてもこれがランスロットかい。グロースターとは随分違うね。アタシもそろそろグロースターカスタムじゃなくてこう言うのに乗りたいもんだ。…っと、そろそろコーネリア…あー、皇女殿下、のとこにも顔を出そうと思ってるんだ。それじゃぁね」

 そう言うとノネットさんは去っていった。

「エニアグラム卿はコーネリア皇女殿下の戦闘指南役だったんだよねぇ。だからその時の癖で思わず呼び捨てになりそうになるってワケ。」

「あぁ、道理で」

 コーネリア皇女殿下と呼ぶのがぎこちなかったワケだ。なんとなく気持ちはわかる。今でもユーフェミア皇女殿下のことはユフィと呼んでしまいそうになる。多分スザクも同じだろう。




MACHO STORYSではノネットさんの出番を増やそうと言う試み。

ノネットさん、ロスストだと一人称が私とノネットさんの使い分け、コーネリアの呼び方もコーネリアと呼び捨てっぽいのですが、解釈違いなので()一人称はアタシに固定、コーネリアへの呼び方は二人きり等限定条件なら呼び捨て、他の人の目がある時は一応皇女殿下なり総督なりをつける感じで行きたいと思います。でもぎこちない。

Q.マーヤが日本人のテロリストを倒すのに躊躇がないのはおかしい。
A.陽菜達の生活のためにブリタニアに従う事を選択しており、テロという行動自体は認めていないため。テロを止めるという事については肯定的(但し虐殺までは認めてはいない)結果としてブリタニア絶対ぶっ壊すウーマンではなくなってしまったので陽菜達の生活と他の日本人を天秤にかけ陽菜達を取っています。


●本話で使用した小ネタ出典
・ジョジョの奇妙な冒険(ジョルノ ジョバーナ)

●次回予告
マーヤ「私の話聞いてた?私だって武器を持たないか弱い女子よ!」


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STAGE06.5′

まず初めに謝罪です。

手違いで05′と06′を両方6日に投稿してました。

という訳で即興で話を…書く!


「どうだった?久し振りのエリア11は。…尋ね人は見つかったかい?」

 ナイトオブラウンズ達が何もない時に控える部屋にて、部屋に入ってきたノネットに声を掛ける者がいた。

「どうもなにも、アタシが出るまでもないただの遺跡だったよ。それに尋ね人の方も収穫はナシさ」

「そう」

 ノネットに声を掛けた女は短く答えると視線を下げ、ペラペラと紙をめくっていく。

「そうだドロテア。貴方にお土産よ。」

「うん?」

 ノネットに声をかけたのはドロテア エルンスト、ナイトオブラウンズの一人であり、読書と甘味が好きな女性である。

「はいこれ、貴方が好きだと思って」

「これは…!L.L.の筋肉写真集初回限定版特別ポージングDVD付き!?一体どこでこんな…!?」

「アタシが途中で立ち寄った小さな店に売ってたのさ。」

 しっかりと付録のDVDがついていることを確かめたドロテアは最早歓喜の涙を流し、ノネットにしがみついた。

「ありがとうノネット!私がL.L.を知ったのは写真集が再再販されてからなんだ。この恩は忘れん…!」

「そ、そう…そんなに喜んでくれるとは思わなかったけど、プレゼントした甲斐があったってもんだね…」

 ノネットは筋肉写真集に関する事になると我を忘れてしまうドロテアに若干苦笑いを浮かべドロテアを引き剥がす。

「そう言えばアイツは見つからなかったんだけどさ、代わりに面白いやつに会ったんだ。」

「…面白い奴?」

「マーヤ ディゼルって言ってね、陛下にも劣らぬ筋肉なのさ」

「何!?まさかその写真集も!?」

「アンタ一回写真集から離れた方がいいよ…」

 シャルル皇帝の筋肉写真集に魅入られてからというもの、ドロテアの狂いっぷりにはノネットはしばしば頭を悩ませていたのである。

「それにマーヤは女だからね、写真集は出さないんじゃないかな」

「…そうなのか、それは残念だ」

「モニ!陛下並みの筋肉女子モニ!?」モニニッ!

 その辺な語尾を聞き、ノネットはドロテアの3倍頭を悩ませ始める。ドロテアの筋肉好きはまだ大人しい方である。何故なら彼女は見て楽しむだけだからだ。しかし、この辺な語尾…モニカ クルシェフスキーはそうではない。

「機会があったら会ってみたいモニ!」モミィ…

「…せめて一言断ってからにしなさいよ」

 モニカは一度シャルル皇帝の乳首をしばこうとして、その場にいたラウンズ総出で止めに入れる事件を起こしたラウンズの問題児の一人なのだ。とは言え、ナイトオブラウンズ…そのナイトメアの実力さえあれば資格を得うる称号にはある問題があった。

 モニカとドロテアという筋肉好きの問題児の他にも問題児を抱えているのだ。マイペースで何でもかんでも写真を撮る肖像権侵害行為を多発させるアーニャに、いつもナイフを舐め舐めして過剰の絶えない自称人殺しの天才ルキアーノ、現存のラウンズの過半数以上が問題児、つまり変人集団なのだ。

 

「…。今後ラウンズに入ってくる奴がマトモだと嬉しいんだけどね…」

 

 ラウンズの中で最もマトモと称されるノネットは期待と不安を胸にそう、呟いた。

 

 



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STAGE07’

 皆さんこんにちは、私はユーフェミア リ ブリタニアです。

 気軽にユフィと呼んで下さいな。
 河口湖のコンベンションホテルにてサクラダイト分配レートに関する会議があるので今回はそちらに参加したいと思います。

 それに、新しい水着も買っちゃいましたし!
 あ、勿論遊びに行くわけではありませんよ!?

 そ、それでは本編スタートです!


「え?河口湖に旅行?」

「うん!週末にニーナやミレイ会長と行くんだけど、マーヤもどうかなって!」

 河口湖ならお土産を陽菜達に渡せると思い、行きたい気持ちに駆られたが、運の悪いことにその日はセシルさんから伝えられた任務の入っている日だった。

「あー…ごめん、もう予定入ってる…。」

「そっかぁ…残念。」

「でもありがと、誘ってくれて」

 シャーリーの優しさに感謝しつつ、お土産を期待する話をしてその日は学校を終えると特派に向かった。

 ようやく任務の詳細が分かったと言われ説明を受ける。どうやらユーフェミア様の護衛任務らしい…。いや、つい先日軍人になった人間に任せることじゃないと思うんだけど…。

「なんで私にユーフェミア様の護衛任務が…?」

「僕も詳しく聞いてないんだけどさ〜あ!週末、ユーフェミア様が租界を離れて行われる会議に御忍びで参加するみたーい」

「みたいって…」

 話を聞けば行き先は情報漏洩によるテロの危険性を考慮して当日になるまで教えてもらえないが、週末は特派からは私だけがユーフェミア様の護衛任務らしい。因みに護衛役はユーフェミア様本人とコーネリア総督からのダブル指名。理由はユーフェミア様と歳が近く、同性であること、更に護衛として要求されるフィジカルもあるだろうからとのことらしい。一応ユーフェミア様の専任SPも居るのだが、私的には普通に重責だ。

「もしかしたらマーヤくんはこの前の活躍でコーネリア様に気に入られちゃったのかな?だとしたら特派の予算が増えるかもねぇ!予算が増えたら給料が増えるよ!お め で と う !」

「やったねマーヤ、給料が増えるよ!」

 スザクは呑気な事を言っているが、気に入られすぎるのはまずい。興味を持たれすぎて身辺調査をされたら私はどうなる?ハーフだとバレてしまうだろう。スザクは初めから日本人だとわかっているから評価が最初から最低値スタート、後は加点式だから良いけれど私は逆だ。ハーフだとバレればそこからは減点されるばかり、そのせいで陽菜達にまで影響が出たら…!

 とは言え、今回の任務で手を抜く訳にはいかない、万が一のことがあれば私がハーフなんて関係なく陽菜達を路頭に迷わせることになってしまうからだ。こうなったら何事もなく何も評価される事なく平和に終わる事を祈るしかない!祈りの毎日1000回の正拳突きで願掛けしよう。やらないよりはマシだ。

 

 そして任務当日、政庁に向かうと車に乗るように言われその通りにすると、駅で降ろされた。遠くに私服のユーフェミア様が見える。SPそっちのけで手を振って近づいてくるこの人はアレだ…警戒心とか皇族としての自覚はないのだろうか…

「マーヤさん、お久しぶりです。」

「本日は護衛へのご指名ありがとうございます。必ずやお守りしてみせます、ユーフェミ…」

 そこまで言いかけたところでユーフェミア様が私の口に人差し指を突き付けてきた。

「良いですか?今日はお忍びですから、私のことはどうぞただの友人としてユフィと呼んでください。そうだ!提案なんだけど私も今からあなたをマーヤと呼んでもいいかしら?」

「あ、はい」

 皇族から言われたらそれは提案じゃなくて命令なんだよね…。専任SPと思われる人に渡されたチケットを確認すると、どうやら本当に一般人として行くらしい。何故ならチケットの中身が指定席とは言えちょっと裕福な学生でも手の届くレベルのものだったからだ。

「さ、マーヤ、行きましょう!」

 ユーフェミア様に手を引かれ…るが当然私はビクともしない。

「ユフィ待って!電車は逃げないから…!」

 流石に、電車に乗り込んで席に座るくらいの事でトラブルが起こるはずも無く、私達は無事に着席できた。そういえば今日どこに行くのか確認できずじまいだったな…。改めてチケットを見ると目的地が河口湖になっていた。…だから必要な物リストに水着があったんだ…。

 どうしよう。これって観光らしいこともする気って事だよね…?私の水着、公式競技で使用が禁止されるくらいのガチの奴なんだけど…

「マーヤ、予定してる仕事が終わったら河口湖で水遊びしましょうね!」

 やってしまった…。ま、まぁ…水着がガチなタイプだからといって水遊びできない訳じゃ無いしこれくらいはミスにはならないよね…!

 すると背後から賑やかな声が聞こえてきた。まぁ、そりゃ貸切なんてしてる訳ないか

「あっ!私たちの席あそこですよ会長!」

 …ん?会長?そういえば河口湖って…。横を見るとそこにはニーナ、シャーリー、ミレイ会長が座っていた。あ、目が合った。

「あれ?マーヤ?」

「みんな奇遇だね…同じ電車の隣の席だなんて」

 シャーリー達は私達と通路を挟んだ隣の席だった。よりにもよって…。

 別にシャーリー達には予定があると断っただけなので、私が河口湖行きの電車に乗ってるのは良い、だが問題はユフィだ。会長のことだから質問攻めにするに違いない。口を滑らせてしまわないか心配だ。

「まぁ!あなた方はマーヤのご友人の方ですか?初めてまして、私は…ユフィ。どうぞ仲良くしてくださいな」

 ほら今一瞬名前で詰まったじゃん…

「ユフィ…さんですね、よろしくお願いします」

 …あれ?会長にしては意外とテンションが低いような?

「私シャーリー!よろしく!」

「ニーナ…です、よろしくお願いします…」

 シャーリーとミレイ会長、後でユーフェミア様が皇女ってわかったらどんな反応するんだろ。私が怒られたりするのかな。

「あーあ、マーヤとそのお友達とも合流出来るのならルルにもっと強く言ってナナちゃんのことも連れてくるんだったなー。」

 ナナリーのことだから目が見えないから遠慮しちゃったのかな…?

「…ルルに…ナナ…?」

 …?ユーフェミア様がなんでその名前に反応したんだろう。あ、身内ネタだから不快に思ったのかな…

「すみません、そのルルやナナという方はどんな方なのですか?」

 なんでそんなに食い付くんだろ…?まぁいいか

「ルルっていうのは…ルルーシュっていうのは私の同級生の男子です。私くらい筋肉があって…あとはとっても頭が良いですね。それで、その人の妹がナナリーです。とっても可愛いんですよ。」

「そう…なのですね。」

 ユーフェミア様の少しおかしな反応に首を傾げつつ、その後はみんなと雑談を楽しんだ。ユフィが元は本国に来たという話から意外と盛り上がったのだ。そこで意外に思ったのがユフィは結構バスケが得意らしい。私もバスケは得意な方だ。中学の頃にコート中央からのスリーポイントダンクシュート戦法で得点王になったことだってある。まぁ、やりすぎでゴールがぶっ壊れ時には凄く怒られたけど。

 河口湖に着いてからはシャーリー達はチェックインが、私たちも予定があるといって別れ、会議に向かうことになった。まぁ、まさかのシャーリー達との遭遇があったんだからもうトラブルなんてないよね、まさかそんなはずないよ。神様がそんな意地悪する訳…

 

 あったよ。河口湖のコンベンションホテルで行われていた会議中に日本解放戦線と呼ばれるテロリストグループが現れ、ユーフェミア様や私はそれに巻き込まれてしまった。

 そして言われるがまま私達は人質として倉庫のような場所に押し込まれてしまった。こうなったら何も起きない内にコーネリア総督が何とかしてくれるように今度こそ神に祈ろう。そして人質の中にはシャーリー達がいた。運悪く巻き込まれたとは言え、お互いが無事なことは不幸中の幸いかな。まぁ、まさかこんな…一日に二度もトラブルにあったんだから三度目は…

 

 あったよ。二度あることは三度あるよ!怯えたニーナがテロリストをイレブン呼びしてしまい、テロリストは激怒。この世にもし神がいるのなら殴り殺してやる。

 このままだとニーナが危ない。そしてユーフェミア様の性格を考えれば仲良くなった生徒会のみんなの代わりに人質になろうと名乗ってもおかしくない。それはまずい。

「私がなんとかして来ます」

「えっ、でも…」

「大丈夫です。私を信じて下さい」

「…わかりました。民を救うために行きなさい」

「イエス ユア ハイネス」

 小声のやりとりを終え、私は思い切り立ち上がる。

「うわっ!?な、なんだ貴様!!急に立ち上がるな!びっくりするだろうが!!」

 確かに私みたいな美少女がいきなり現れたらびっくりもするか…私ってけっこう罪な女よね…

「その子から手を離しなさい!貴方達に日本人の誇りはないの!?」

「な、なんだと…!」

 よし、作戦は完璧だ。イレブン呼びが気に食わないのならこの『日本男児としての誇りはないのか作戦』は効果的なはず!

「か弱い女の子を怒鳴るなんて誇りのある日本人のすることじゃないわ!」

「お前に日本人の何がわかる!」

「…私の知ってる日本人は武器を持たない女子供に怒鳴ったり暴力は振るわないわ。そんなの…卑怯者のすることよ!」

「よ、よし、だったら貴様が来い!真の日本人とは何たるかをしっかり教え込んでやる!」

 …あれ?おかしいな、私今武器持ってないし、女なんだけど。

「何をしてる!さっさと来い!」

「私の話聞いてた?私だって武器を持たないか弱い女子よ!」

「うるさい!お前のどこがか弱い女だ!」

 何ですって…?カチンと来たわ…良いわよ行ってやる。こうなったら行った上で首謀者ごとボコボコにしてやる。

 

 取り敢えず大人しくテロリストに着いていくと、とある部屋に通された。

「草壁中佐!例の生意気な女を連れてきました!」

『よし、入れ!』

 中に入ると刀を持った男が振り返り、一瞬にしてニヤついた顔が真顔に戻る。

「…おい、それは…おん…女…か?あー、そりゃあまぁ、スカートを履いてはいるし…髪も長いが…あー、何だその…おい貴様、お前は本当に女か?」

 こんな美少女を捕まえておいてなんて失礼な。そしてよくよく見ると失礼な男と机を挟んだソファにゼロが座っていることに気が付いた。

「ゼロ…!」

 そうか、ゼロはこのテロリスト達の仲間だったのか!そうとなれば話は早い、取り敢えず私の周りに居たテロリストの顔面に裏拳を叩き込む。

「なっ!?抵抗するか貴様!」

 失礼な男が刀を抜いたので私は殴り倒した男を投擲し刀を抜いた男にぶつける。

 男は投げ飛ばされた男を退けて立ち上がるが、その顔面に拳を叩き込む。

「ぴでぶ!」

 顔面に叩き込んでやったのが効いたのか、男は気絶したようだ。そして私はすぐさまゼロに向かって拳を叩き込むが、何とゼロは仁王立ちのままその厚い胸板で弾いて来た。すると、ゼロから声をかけられる。

「落ち着け、周りをよく見ろ。」

 促されて後ろを見ると私が殴り飛ばした人達とは別の服装に身を包んだ集団が私に銃を向けていた。しかし甘い、あれくらいの口径の銃なら私の肉体なら跳ね除ける!

「私が銃を恐れるとでも?」

 バックステップを踏んでから助走をつけゼロに向かってドロップキックを叩き込むと、ゼロは腕をクロスさせ防いできた。空中で体勢を整えつつ着地するとゼロは言葉を続ける。

「恐れるさ。たった今、倉庫に居た人質を私の仲間が解放したと連絡があった。この意味がわかるか?」

 …つまりここで抵抗すればユーフェミア様やシャーリー達人質が危ない…!今度はゼロ達のグループの人質になるってことか!

「卑怯な…!」

「安心したまえ、私は君と事を荒立てるつもりはない。」

「…そんなの信用できない!」

「信用するしないは君の好きにしたまえ。だが、君が暴れれば君を恐れた私の仲間が銃を誤射してしまうかもしれないな。それは不幸な事故だ…そうだろう?」

 ゼロ…!この卑怯者め…!

 

 突然ホテルが大きく揺れ、視界からゼロは居なくなっていた。

 

 しまった…逃したか…!急いで窓の外を見てみるとランスロットが見えた。

『みんなー!!』

 スザクがスピーカーで呼びかけているようだ。ゼロの口振りだと自分の保身のために人質は無事だろう。しかし、どうやら私は自力で脱出するしかないようだ。とりあえず壁をブチ抜き、壊れた壁を拾い上げそれを投擲し、それに飛び移る。私がホテルから飛び出ると同時に私の居た部屋は上のフロアに押し潰されてしまっていた。間一髪で脱出成功か…。やがで瓦礫ごと河口湖に着水すると、またスザクの声が聞こえて来た。

『マーヤ!無事だったんだね!』

 ランスロットの呼び掛けに手を振るとスラッシュハーケンが瓦礫に突き刺さったのでスラッシュハーケンにしがみ付くとそのままランスロットに回収された。

 すると今度はゼロの声が聞こえて来た。声のした方を見るとダブルバイセップスをしているゼロの姿が見える。

「ブリタニア人よ。動じることはない、ホテルに捕らわれていた人質は全員救出した。あなた方の元へお返ししよう。人々よ!我らを恐れ、我らを求めるが良い!我らの名は…黒の騎士団!」

 黒の…騎士団?ゼロはポージングをサイドチェストに変えると言葉をつづけた。

「我々黒の騎士団は武器を持たない全ての者の味方である。イレブンだろうと!ブリタニア人であろうと!」

 今度はアブドミナルアンドサイ…服の上からでもゼロの筋肉の凄さがわかる…。

「日本解放戦線は怠惰にも筋肉を鍛えず、卑劣にもブリタニアの民間人を人質に取り無惨に殺害した。」

 ゼロは両手拳を前で合わせたモストマスキュラーのポーズで鍛えた拳を見せつけていた。うーん、キレてるなぁ…

「無意味な行為だ。故に我々が制裁として鉄拳を下した。この私直々にこの拳でな。」

 …確かにあの拳なら私同様人を殴り殺すことは可能だろう。とは言え人を殴り殺すなんてなんて残虐な…!

 それはそれとしてゼロのラットスプレッドフロントはキレキレだ…思わず釘付けになってしまいそうになる。

「クロヴィス前総督も同じだ。武器を持たないイレブンの虐殺を命じた。この様な残虐行為を見過ごすわけにはいかない…故に拳を加えたのだ!私は戦いを否定しない。しかし強い者が弱いものを一方的に殺すことは断じて許さない!人を撃って良いのは…人にぶたれる覚悟のある奴だけだ!!」

 そしてゼロは再びポージングをダブルバイセップスに戻した。ぶたれる覚悟…覚悟なら私にだってある!

「我々は力ある者が力無きものを襲う時再び現れるだろう。例えその敵がどれだけ大きな力を持っているとしても。抵抗して見せよう、この拳で」

 そう宣言するとゼロはマントをはためかせた。く…中々カッコいいじゃない…!

「力あるものよ!我が拳を恐れよ!力無きものよ!筋肉を鍛えよ!世界は我々黒の騎士団が裁き、殴る!!!」

 結局私はスザクに回収されてからは何も出来なかったが、ゼロは宣言通りに人質を解放したようだった。




一昨日は手違いで2話分投稿していたようですみませんでした。まぁ、その代わりに6.5話を書いてノネットさんとドロテアさんの出番が若干増えたのでそれはそれでアリってことでさ…(マチョストでもモニカは変な語尾属性が確定しましたね)

●本話で使用した小ネタ出典
・コロちゃん(小野たえ子)
・ドラゴンボール(桃白白)

●次回予告
リヴァル「うわぁ…マーヤとルルーシュの弁当中身だだ被りじゃん…」


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STAGE08′

こんにちは!あは〜!こんなお話を好き好んで読んでくれるなんて物好きな人達だねぇ

マーヤくん達の通ってる学校、この前の事件の関係でマスコミが賑わってるみたいだねぇ!
お め で と う !

それじゃあ本編スタートだよぉ!


 激しい『功績』は要らない…そのかわり大きな『失敗』もない…。『窓際族』のような仕事を…そんな『安定した仕事』こそ私の目的だったのに…

「直接会うのは初めてだな。私が神聖ブリタニア帝国第2皇女のコーネリア リ ブリタニアだ。君の勇気ある行動により民間人が犠牲になる事なく作戦を終えられた。ブリタニア軍人として模範的な行動だ。そして…ユフィを守ってくれてありがとう、感謝する」

「あ、はい。恐縮です。」

 政庁から呼び出しを受けたときは終わったと思ったけど、なんというか別の意味で終わったと思う。なんかこう、平穏さとかそういうアレが。

「ところで君はナンバーズの孤児の面倒を見ているそうだな?」

 …もしかしてハーフだとバレた…!?上げて落とすつもりなのか…!?

「兄上から支援があるそうだが、私からもそう言った孤児に対する支援を手厚くできるように働きかけようと思わされたよ。それが支配する側の責務だとな。」

 …支配する側の責務…?

「…?どうした?」

「…いえ。なんでもありません」

「そうか、では下がると良い。今後も活躍に期待する。」

「イエス ユア ハイネス」

 …コーネリア殿下はなんというかブリタニアの傲慢さそのものって感じで好きになれないな。でもまぁ…支援が手厚くなるってことは陽菜達の生活がもっと良くなるって事だし、余計な事を言って路頭に迷わせるわけにもいかないしね。

 

 登校しようとすると凄まじい数の報道陣が学園の正門に並んでいた。そして私の前には恐らく私と同じことを考え、迷っているだろう紅い髪の生徒がいる。

「おはようカレン」

「あ、おはようマーヤ」

「ねぇねぇ…カレン。どうする?アレ」

 私は報道陣を指差し、カレンにある提案をする。

「…もしかしてサボりのお誘い?」

 私は頷くとカレンも頷いてくれた。よし、赤信号二人で渡れば怖くない、だ。早速サボろう…と踵を返すと視界にスザクが現れた。まずい…

「やあマーヤ、それにカレン…何故今学園に背を向けたんだい?まさか…サボろうとなんてしてないよね?…マーヤ、セシルさんに言い付けられたいのかい?」

「チッ」

 あ、カレンが舌打ちした。

 

 その後、スザクが声を掛けて報道陣を退かし、なんとか学園に入ることに成功してしまった。無念。

 昼食時になり、最近は恒例となった生徒会室でのランチを取る。まぁ、今日は鶏胸とブロッコリーだけだけど。

「うわぁ…マーヤとルルーシュの弁当中身だだ被りじゃん…」

 リヴァルに言われてルルーシュの弁当と見比べると確かに中身が同じだった。まぁ、同じように筋肉を鍛えているもの同士なら当然とも言える。そして雑談が始まると話題は当然ホテルジャックの話になった。そして話の中でホテルジャックのせいでユフィ…つまりユーフェミア殿下との遊ぶ約束がおじゃんになったという話になり、それに何故かルルーシュが反応した。

「め、珍しいね…ルルが他人に興味を示すなんて!」

 それにいち早く反応したのはシャーリー。こういうのはいつもならミレイ会長だと思うが、電車のときもそうだけど何故かユフィの話題には触れないようにしているようにも思える。

「いや…学園の人物じゃないから気になっただけだよ。」

「なになに?どんな子?女の子!?可愛い!?写真とかある!?てか連絡先とか知ってる!?」

 食い付くリヴァルを引っ叩き大人しくさせるが、見た目を聞かれてニーナが返事をしていた。

「えっと…とっても上品だったけど…どこが天然っぽくて…髪がピンクの美人な人だったよ…?」

「髪がピンクでユフィ…」

 ルルーシュの様子では思い当たる節がある様に見えるけど…どうしたんだろう?そして不思議なのが何故かスザクも焦ったような顔をしている事だ。別にミレイ会長達と交流がある以上それくらいの情報は差し止める方が寧ろ怪しい気がするんだけど…。

「シャーリー、そのユフィって人とはどんな話で盛り上がったんだい?」

「それこそルルとナナちゃんの話ししたら食いついたよ?」

 ルルーシュの疑問にシャーリーが答えると、ルルーシュ目が一瞬だけ目を見開いた。すぐさま元の興味なさそうな顔に戻したけど、よーく見れば顔の筋肉の緊張からポーカーフェイスを維持しようとしていることがわかる。

「も、もしかしてルル…」

「!」

 口を開いたシャーリーに何故かスザクが激しく反応した。だからなんで貴方が反応するの…?

「ユフィと恋人だったりするわけ!?」

「こ、恋人…!?なんでそうなるんだシャーリー!?」

「だ、だって!今思えばユフィはルルとナナちゃんのこと知ってそうな反応だったし、ルルもユフィを知ってそうだし!それに最近ルルって気付いたら居なくなること多いし!学園外の人と恋人になってるなら…!」

 するとルルーシュは少しだけ恥ずかしそうな顔…しかし顔の筋肉を見ればそれは偽物であるとわかる…をして

「元…恋人なんだ。その、過去にいろいろあってね…そうか、彼女こっちに来てたのか」

 と答えた。…皇女様とルルーシュが元恋人?うーん、ルルーシュの顔の汗を見る感じテカってるし嘘じゃないの…?

「な、なーんだ!元…、そっか、元か!なーんだ!元ね!い、いろいろあったんだね!そっかそっか元かぁよかったぁ!」

 安心したようなシャーリーと対照的に、セシルさんの作ったおにぎりを食った後みたいな顔をしているスザクが印象的だった。あと、なんでこんな好きそうな話で会長は終始無言だったのだろう?

 

 その後は午後の講義だが…ブリタニアの歴史の授業だったので受ける気にならず屋上という青空の下で筋トレをして時間を潰すことにした。鐘が鳴ったので下校の準備をするため教室に戻ろうとしたのだが、その前に身だしなみを整えていると、屋上の扉が開いてしまった。

「やばっ」

 もしシャーリーやミレイ会長、先生とかだったら怒られると思い、急いで隠れるとやって来たのはスザクとルルーシュの珍しい組み合わせだった。…普段喋ってる様子もないのに。しかもルルーシュは扉に何かをしている。

「…ルルーシュ?扉に何をしたんだい?」

「扉を歪めておいた。これで誰も屋上に来れない。安心しろ、帰る前にちゃんと元に戻しておく。…まぁ、講義が終わった後だし屋上に来る奴なんていないだろうけどな。…それで?話ってなんだ?」

 …どうしよう、今更出るに出られなくなってしまった。

「ルルーシュ、どういうつもりだい?ユーフェミア皇女殿下と元恋人だなんて嘘を吐いて!」

「仕方がないだろう!ああなってはアレしか手がなかった!それに一応…その、初恋だった。…しかしこんな形で俺が生きていることがユフィに知られてしまうとはな…。姉上にも知られていると考えるべきか…?いや、実際に会うまでは流石のユフィも黙ってるか…。しかしまずい事になった、俺を匿ってくれているアッシュフォード家にも迷惑がかかる…!」

「ルルーシュ…君の初恋なんて…聞きたくはなかったよ!」

 その意見には同意だ。そして大変申し訳なく思う。…?姉上?ルルーシュ達には姉なんて居ないし…もしかしてコーネリア総督のことを言ってる?なんで総督のことをルルーシュは姉上だなんて…ん?そういえば歓迎会の時ナナリーが…

『なんだか懐かしいです。…はい、なんだかお姉さ…あっ…いえ、なんでもないです』

 って言ってたような。…え、まさかルルーシュ達って皇族…?そう考えれば辻褄は合う…ナナリーの姉が懐かしい発言に、ルルーシュとユーフェミア皇女殿下が知り合い、そしてルルーシュによるコーネリア総督の姉上呼び。…でもなんでそれをスザクは知って…そういえばスザクって枢木ゲンブ首相の息子…。首相の息子と皇族なら交流があってもおかしくはない…?…そうか!だから歓迎会の時点でスザクはナナリーのことを知ってたんだ。昔に会ったことがあるから…!というか、アッシュフォード家?え、なに?会長も関わってるの…?

「頼む、スザクの方からなんとかユフィに俺と元恋人同士だったということで話を合わせてくれるように頼んでくれないか!?」

「そんなの無理に決まってるだろ!?マーヤならともかく、僕なんてユーフェミア副総督と1回しか話したことないんだよ?名誉ブリタニア人の僕が皇族の人と話す機会があるはずなんてないじゃ無いか!」

「クソ…!このままではいずれ俺達が生きていたことが本国バレてしまう…!そうなればナナリーが政治の道具に…!」

「…さ、最善は尽くすよ。そうだ!マーヤに頼んで…」

 …生きていたことがバレる?つまりルルーシュ達は死んでいるべき皇族ってこと…?

「ダメだ!マーヤにそんなことを頼めば俺とユフィの関係性に疑問を持たれる!幸いユフィは本国にいた頃は学生として身分を隠していた、皇族と知らずに恋人関係になるのはあり得ない話じゃない!それに、アイツは無関係な人間だ…!巻き込みたくはない」

「そ、そっか…じゃぁ僕がなんとか功績を上げてユーフェミア様に直接話せるような機会を頑張って作るよ!」

「…そ、それしかないか…!それまでバレないことをなんとか祈るしかない…!クソッ!何たる失態だ!」

 …だめだ、もう今更出ていけない…今出て行ったら確実に殺される…。頭がパンクしそうだ…ルルーシュとナナリーはブリタニア皇族で、しかも死んでいるべき皇族、そしてルルーシュ達が皇族だとスザクは知っていた。

 でも…ナナリーを政治の道具にしたくないってルルーシュの気持ちは伝わった。この秘密は墓まで持っていこう。それに、特別仲が良いわけでもない私を巻き込みたくないという言葉…ルルーシュの本音はその言葉だけで十分だ。幸い嘘を吐いたり卑怯なことをするのは慣れてる。

 

 学園終わりに特派に向かうと、既にスザクはパイロットスーツに着替えていた。

「あ…マーヤ、遅かったね。教室にいなかったからもう来てると思ってたよ」

「う、うん…ちょっとね」

「何がちょっとなんだよ。歴史の授業サボる癖…直したほうがいいよ?」

 …スザクは日本人だ。だからハーフの私なんかよりもブリタニアに都合の良い解釈がなされた歴史の授業なんて聞いてて辛いと思うのに、何故そんな平気そうな顔で居られるのだろう…。

「…ねぇ、スザク。」

「なんだい?」

「スザクはブリタニアの歴史の授業、聞いてて辛く無いの?」

 こういうのは本人に直接聞くのが一番だ。

「…?どうしてそう思うんだい?…あぁ、僕がナンバーズだから?気にしなくて良いのに、確かに解釈とかに少し気になるところはあるけど、日本が負けたのは事実だからね」

 そう言ってスザクはなんでも無いようにパイロットスーツの各所を確認している。

「…そう、スザクは強いんだね」

 私もパイロットスーツに着替える為にその場を離れると、私の聴覚でなければ聞き取れないような小さな呟きが聞こえてきた。

「そんなことは、ないよ」

 と。

 

 そういえばなんの指示もなくパイロットスーツに着替えたけど、何するんだろう。もう夜なのに。

「はいこれ、今回の任務だよぉ〜!なんとコーネリア総督直々なんだぁ!これで活躍すればきっと予算も増えるよ お め で と う!」

 渡された司令書に目を通すと見慣れない言葉が目に入る。

「なになに…『違法プロテイン』…?なんです?これ」

 私の疑問に答えてくれたのはセシルさんだった。

「最近、ゲットーや租界の名誉ブリタニア人やイレブンを狙った違法薬物なの。」

 どうやら使うと一時的に莫大な筋肉が得られる代わりにその後は肉体が萎み立つことすらままならなくなるらしい…なんだこのふざけた薬は…!筋肉とは日々の地道な積み重ねである物だ…!この薬はそれを台無しにする、冒涜している…!許せない…!

「被害はブリタニア人にはあんまり関係ないんだけどさ〜ぁ?生産率とか、落ちちゃうでしょぉ?コーネリア総督もこういうのに疎い事は自覚があるみたいでさ〜ぁ」

「それで我々に警戒のパトロール任務ですか」

「そういう事!うちとしてもナイトメアを遊ばせるよりはねぇ!コーネリア総督の方から経費は貰えるしさぁ、断れなくって」

 正直、闇雲なパトロールじゃぁ被害の軽減は望みが薄いけど…何もしないよりはマシだろう。それに総督も対策してるという形は作れるし。

「やります!僕達のパトロールで少しでも被害が抑えられるなら!」

 張り切っているスザクの様子から考えるに…功績を上げてユーフェミア皇女殿下と会うチャンスを作ろうとしてるのかな。なら私もナナリーの為にも協力してあげなくちゃ!




心は日本人のマーヤ、コーネリア総督の無自覚な傲慢さにブチ切れ

●今話で使用した他作品ネタ
・ジョジョの奇妙な冒険(吉良 吉影、ブローノ ブチャラティ)

●次回予告
カレン「ちょっと!いきなり大きな声出さないでよ鼓膜が破れるじゃない!」


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STAGE09′

キツイなぁ、二重生活は…。あ、読者の皆さんこんにちは、紅月 カレンです。

最近は黒の騎士団の活動で睡眠時間が中々…はぁ。

…また廊下であの人が何かしたわね。全く…消えてよ…

あ、それじゃあ本編スタートだから。


「黒の騎士団!」

 うわっ、びっくりした!…欠伸を噛み殺しながら授業を受けていると突然カレンが飛び起き、そんなことを口走る。授業が終わった休み時間、カレンの寝不足について話題を振ってみた。筋肉をつけるには睡眠は大事だからね。

「カレン、夜更かしは筋肉にも肌にも良く無いよ?夜ちゃんと寝てる?」

「う、うん…ちょっとね…。…私に筋肉は関係なく無い?」

 何がちょっとなんだろう。それにまだ私を病弱だと騙せているつもりのようだ。とは言え、実は私も寝不足気味だ、理由はパトロール…普通に考えて悪人は夜の闇に紛れて取引を行う。それを防止する為にこちらも夜に活動するのだから寝不足になるのは当然だ。

 つまり、カレンに言った言葉はまんまブーメランとして私の体にぶち当たり跳ね返…らずに突き刺さる訳だ…うぅ、筋肉のキレが悪い。

「カレン、居眠りならルルーシュに弟子入りしたら?あいつ、授業中はいつも脳味噌を半分ずつ眠らせて居眠りしてんだぜ」

「それ、人間業なの…?」

 リヴァルから良いことを聞いた。脳を半分ずつ休ませる…その手があったか!

 

 それから暫く、ルルーシュの真似をして脳味噌を半分ずつ休ませる作戦で居眠りを行い、睡眠時間を確保した事で睡眠不足は解消された。久しぶりの快眠に朝早く起きてしまったのでランニングがてら学園に向かうと、学園を出ようとしているミレイ会長とバッタリ出会う。…こんな時間に会長が学園の外に出るなんて珍しい…のかな?いつも遅刻ギリギリだから分かんないや。

「あれ?不良学生が朝早くから珍しいわね?」

「会長こそ、こんな時間に学園の外に用事ですか?」

「まぁ、ちょっとね」

 そのまま別れようとも思ったが…私は特にする用事もないし、最近は何かと物騒なので会長について行ってみようかな?

「会長、最近テロとかで何かと物騒ですし、よかったら一緒に行っても良いですか?」

「え?あー…どうしようかなぁ…。うーん、私のお願いを聞いてくれるなら、良いわよ?」

 お願いの内容はその時話すとのことだったので取り敢えず了承し、二人で目的地へと向かう。…そういえばどこに行く気なんだろう?そんなことを考えていると、変な輩に絡まれたのでボコボコに捩じ伏せて返り討ちにし、とある屋敷までやってきた。

「ここは?」

「カレンのお家」

「…やっぱカレンってお嬢様なんですね。…大きな家…」

 なら…もしかして病弱なのが嘘だってバレたのかな?私だと突き破りかねないので代わりに会長がドアをノックをすると、髪色が少しカレンに似たメイド服の人が扉を開けてくれた。

「アッシュフォード学園から来ました。ミレイ アッシュフォードです」

「付き添いのマーヤ ディゼルです。カレンさんに用がありまして参りました。お取次をお願いします」

「かしこまっ!ちょっち待ってて!カレンお嬢様!カレンお嬢様ー!お友達ですよー!」

 このメイドさん…日本人かな?でも、なんでカレンという髪の色が似てるんだろう?その後、現れたのはカレンでは無く金髪の女性だった。

「あら、友達と聞いて来てみれば…おん…女…?え、あれ…スカート履いてるし髪も長いし…うん、おん…女、の子…かぁ…?」

 失礼な。

「私の友達に失礼でしょう!」

 あ、ようやくカレンが出て来た。寝起きで地味に頭が回りきってないのか、カレンが降りてくるスピードは病弱で通しているとは思えない速さだった。

「どちらにお通ししましょうか?客間ですか?それとも…」

「私の部屋に」

 いつものカレンにしては珍しく、冷たくピシャリと言うとそのままカレンの案内でカレンの部屋に通された。

「会長…それにマーヤ?こんな早くになんの用なんです…?」

 しかし会長はこちらに顔を向けてきた。

「あの、マーヤ…約束覚えてる?お願いなんだけど、呼ぶまで部屋の外で待っててくれる?」

「ええ、勿論」

 言われた通り部屋を出て少し待っていると、再び部屋に通された。

「なんの話してたんです?」

 カレンに座るように促されたので、ソファに座るフリをして空気椅子をしつつ二人に尋ねると、カレンはなんでもなさそうに

「私がハーフだってことが学園側にバレたのよ」

 と言ってきた。あぁ、なんだ、カレンがハーフだってバレたのか…。…!?

 

「えっ!?カレンがハーフ!?」

 

「ちょっと!いきなり大きな声出さないでよ鼓膜が破れるじゃない!」

「ごめん」

 驚いた。カレンがハーフだったなんて…。そして机の上に置いてあるのは中学からの成績証明書だろうか?

「部屋から出てもらったのは…カレンの秘密をマーヤに話して良いかカレンに聞きたかったからなの」

 …そりゃあそうだ。私だっていきなり『マーヤ ディゼルはハーフだ!』って触れ回られたらそいつを地獄の果てまで追いかけてそいつの全身の骨を砕いてやる自信がある。でも…

「なんで私にも教えてくれる気になったの?」

「…スザクとも仲の良いマーヤならハーフでも偏見なく接してくれるかなって…。それにマーヤって秘密を言いふらすタイプには見えないしね。…秘密なんて無い方が身軽だしさ」

 もはやハーフだなんだ以前に口調も大分砕けているような気がするが…きっと気のせいだろう。

「私だって人の秘密は知りたくはなるけど、言いふらす趣味は無いわよ」

 非難する会長には思わず笑ってしまった。

「…ありがとうカレン、信頼してくれて。」

 カレンは強い人だ…私はとてもじゃないが明かす気になんてなれない。やっぱり私は卑怯者だと思わされる。カレンは私を信頼してくれてるみたいだけど、私は未だにスザクにも誰にも言えてないのだ。そして、きっとこのまま誰にも言うことはないのだろう。そういう意味では私に身軽さは無い。

 

 …ところでピアノの下にバーベルとかダンベルが置いてあるけど…隠してるつもりなのかな?あれって…

 

 それから学園に行き、それが終われば特派へと向かう。ボールスに乗り込み、アスファルトにランドスピナーを擦り付けながら暗闇を走り抜けていると、突然銃声が聞こえた。

「何!?」

 どうやら私を狙ってのものではないらしい。警戒しながら周囲を見渡すと闇に包まれていた廃倉庫の一つからマズルフラッシュらしき光が瞬いている。

「こちらマーヤ、特派ヘッドトレーラーへ報告。廃倉庫地区で発砲らしき不審な光と音を確認。これより調査します。」

『了解、スザクくんを向かわせるわ。無茶はしないでね?』

 瞬間、私の目の前にナイトポリスが現れた。

「ナイトポリス…?」

 そしてナイトポリスは突然こちらに銃を構えてきた。

「!」

 咄嗟にスラッシュハーケンでジャンプして銃撃を躱すが、意味がわからない…

「こちらは特派のマーヤ ディゼル!こちらは総督からの命令を受けている!これ以上の敵対行動はブリタニアへの反逆とみなす!」

 警告にもかかわらず、更なる発砲…しかもナイトポリスが2機に増えた!

「警告はした!これより制圧を開始する!」

 とは言え、こんなところで迂闊にプロトヴァリスは使えないし、スロウヴァリスなんてもっての外だ。となるとブレイズルミナスとガントレットによる間接戦闘頼りか。

 ナイトポリスの射撃はこちらに都合がいい事にハンドガンだ。放たれる弾丸を躱したり、ガントレットで弾きつつ距離を詰める。スラッシュハーケンで一体を牽制し、ガントレットを展開してナイトポリスの腹にブチ込む。ボールスとグラスゴーを改修しただけのナイトポリスでは運動性能は雲泥の差なのだ。いくら武装を封じられても負けるはずがない。逃げようとしたもう一体にスラッシュハーケンを撃ち込み、倒したナイトポリスから頭部を拝借しての投擲、ランドスピナーの破壊に成功したため、ドロップキックを叩き込む。

『マーヤ!無事かい!?』

 ちょうどそこにやってきたランスロットにパイロットを渡して拘束させ、私は先程マズルフラッシュのあった倉庫に向かう。ランスロットのMVSでは閉所の戦闘は建物への被害が大きすぎるからだ。それにヴァリスは私と同様の理由から使えない。ならば私の方が向いている。

『マーヤ、やっぱりランスロットが行った方がいいんじゃ…』

「いいからいいから。」

 どうせ今回の作戦、私は自分の手柄を全てスザクのものとして報告するつもりだ。だからこの場は私が行って、スザクは確実に関係者を捕らえさせて報告に戻らせる方が良い。スザクが活躍すればナナリーを守れるかもしれないからね。念の為に武装解除としてナイトポリスからそれぞれナイフを押収し、弾切れのハンドガンを踏み潰して破壊してある。

 

 倉庫内に侵入すると想像通り中は荒れていた。しかし、どうやらナイトメア同士ではなく人間同士のようだ。

 ボールスから降りて確認してみると、やはり血が飛び散っている。そしてシャッターに穴が空いている事に気がついた。…?シャッターのところに誰かいる…?

「誰だ!」

 私は直ぐに構え…

 

『…マーヤ!聞こえるかい?マーヤ!』

「…え?」

『良かった。反応がないから心配したよ。何かあったのかい?』

 誰かいると思ったが誰もいなかった。それにスザクからインカムで連絡があったのに気が付かなかったらしい…まだ寝不足気味だったのかな?とりあえずボールスに乗り込みシャッターをくぐると、たくさんの人…が、筋肉が萎んで立たなくなっている様だ。

「これは…違法プロテインの使用者…?」

『な、なんでだよう…こんな体じゃ…復讐できねえよぉ…!』

『カレ…ン…』

 その中にカレンの家で見かけたメイドの人が脚から血を出しているのが見えた。筋肉は萎んでいるだけじゃなくて血まで…?一体…。

「特派ヘッドトレーラーへ報告!違法プロテインの使用者と思われる人物を複数確認!自力で立つこともままならない様子、応援を願います!」

 更に倉庫内を確認すると、犯人らしき人物たちがボコボコに打ちのめされ拘束されているのが見えた。倉庫には大きく『黒の騎士団による鉄拳制裁』と書かれていた。…本当に正義の味方なのかな…?

 

 因みに、私は全ての手柄をスザクに譲り…ロイドさんにはスザクが認められればランスロットも認められ、特派の予算が増えるはずと吹き込んだので改竄は簡単だ…無事、違法プロテイン騒動は特派のランスロットとスザクの活躍により解決したものとされた。残念ながら特派も所詮は軍なのでニュースではコーネリア総督の指揮のもと、軍と警察が連携して取引現場を押さえた事になっている。警察と連携してたのは寧ろ売人の方だったけど…その辺は上手いこと報道されるらしい。それでもこれで特派やスザクは少しでも認められた筈だ。これからも私が手柄をスザクに譲り続ければスザクは認められ、結果的にナナリーや陽菜達が救われる様になるだろう。

 

 …私、頑張るから!




想像の中のブーメランも筋肉で跳ね返そうとするけどキレが悪いので刺さってしまうとかいう高度な筋肉トーク。

ミートギアスでのルルーシュポジションにマーヤが起用されました。


・シティハンター(ゲットワイルドの歌詞)


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STAGE10′

 読者の諸君、私はアンドレアス ダールトンである。

 ここまでついてくるとはどうやら読者の諸君の心の筋肉は見せ筋では無いようだな。

 私は使えるものはなんでも使う主義だが…姫様は流石にナンバーズの枢木を使うことには抵抗があるようだ。仕方あるまい、同じ特派のマーヤ ディゼルを私の指揮下に貰うとしよう。

 それではこれより我々は日本解放戦線の本拠地があると思われるナリタを攻める。本編開始だ!


「週末はナリタで大規模作戦、ですか?」

「そ、日本解放戦線をコーネリア殿下の指揮で壊滅させるみたぁい!最近のスザクくんの活躍のおかげで特派にも参加しろってお話が来たんだ〜!」

 特派に行くとロイドさんからそんなことを言われた。日本解放戦線か…私としては同じ日本人と闘うのは嫌だ。でも、今の私には筋肉はあれども力がない。どうしてもこの手で助けられる人は限られてしまう。…言い訳ばかりして卑怯ね、私って。悪いけれど、見ず知らずの日本解放戦線より見知った陽菜達の方が私には大切だ。だから…

 

 そして次の日、いつものように学校に行くと、珍しくルルーシュに声を掛けられた。

「やぁ、マーヤ。スザクの奴は一緒じゃないのか?」

「確かに職場は一緒だけど住んでるところは別々だからいつでも一緒にいる訳じゃないのよ」

「それもそうか。」

 そんな会話をしていると背後からスザクが声を掛けてきた。

「ルルーシュ!マーヤ!おはよう!二人とも今日は珍しく真面目に朝から出席するみたいだね!」

 いちいち言い方が腹立つけど、それだけのことをしているので非難も出来ないのが更に腹立たしいところだ。

「ちょうど良かったスザク。良かったら週末どこかに出かけないか?ナナリーが会いたがってるんだ。」

「週末…あー…ごめん、その日は予定があるんだ」

 その返事にルルーシュは残念がり、今度は私には視線を向けてきた。

「私も予定有りよ。…何よ、私はスザクの代わり?」

「いや、そう言う訳じゃないんだ。…ナナリーがお前と話したがってるのは事実でさ。ところでスザク、お前一時限目の数学の課題終わってるのか?」

 課題…あー、問題集の何ページかが今日の課題の範囲なのだろう。私は既に全部解いて提出済みなのでその辺は万全だ。…何故か課題を先取りして提出したら『課題だけやっても成績はやらない』と怒られたけど…

「いけない!すぐやってくるよ!」

「頑張ってねスザク」

 ダッシュで教室に向かうスザクだけど…多分間に合わないな。スザクの学力じゃ。

「なぁ、マーヤ」

「ん?何?」

 

「…?ルルーシュ?何か用があって声掛けたんじゃないの?」

 私は首を傾げるが、ルルーシュはつまらなそうな顔で呼んでみただけだと言われてしまった。うーん?

 

 なんだか最近…ボーッとすることが多いような?

 

 まぁ、まだ脳を半分ずつ眠らせる睡眠方法になれてないだけだろう。結局私達が教室に行くとシャーリーに課題を写させてくれと懇願するスザクを見つけたのでルルーシュと二人で取り押さえて妨害した。その後はルルーシュが教えはしたが流石に間に合わなかったようだ。ドンマイ。

 

 

 

 そして迎えた週末。コーネリア殿下の指示でスザクはG-1周辺にてユーフェミア殿下の護衛…と聞けば聞こえはいいけど、未だにコーネリア殿下はナンバーズであるスザクを使うことを躊躇っているらしく、名ばかりの重要任務として主戦場から離され、代わりに私はダールトン将軍に付く事になった。…荷が重いんだけど…?

「貴様がマーヤ ディゼルだな?ふむ、見事な筋肉だ。見せ筋で無いと証明し、活躍して見せろ。…出世のチャンスだ、励めよ」

 白い歯を輝かせて肩を叩いてくるダールトン将軍にそう言われて、ボールスに乗り込む。

『これより貴様は私の指揮下で動く。集団戦闘とはどう言うものかよく見ておくといい。敵の…無頼とかいうグラスゴーモドキには気を付けろよ』

「イエス マイ ロード!」

 資料で見たのは無頼と呼ばれるグラスゴーの改修機…だが、そんな物に遅れを取る私とボールスでは無い。事前に通達された作戦通り山を進んでいく。…不気味なのは敵の反撃がないことだ。この近くに敵の拠点候補地があったはずだけど…

『ダールトン将軍、日本解放戦線の奴ら、我々に恐れをなして逃げ出したようですね!』『ふん、所詮はテロリスト、雑魚にすぎんよ』『何が奇跡の藤堂だ。』

 そんな風に他の隊員が話をしていると、ダールトン将軍から通信が入った。

『馬鹿者!油断するな、我々の目的は敵の殲滅だけでなくNACに繋がる資料の回収もあるのだぞ!』

 そしてそんなダールトン将軍の怒りに呼応したように山が揺れる。

「…何、これ…!何か…まずい!」

 瞬間、私の目に映ったのは大量の土砂…土砂流れの様だ。一体…!

『全軍高所に移動しろ!』

 ダールトン将軍の指示に従い高所へと登ったサザーランドは何者かに銃撃を受け爆散した。まさか日本解放戦線…!?この土石流を使った…山丸ごとを計算に入れた作戦だとでも…!?

 取り敢えず私はボールスで高所へと登り、銃撃をブレイズルミナスで弾く。

「ダールトン将軍!ボールスの後ろならブレイズルミナスで弾は来ません!今のうちに移動を!」

『でかしたぞマーヤ ディゼル!』

 登ってきたダールトン将軍のバズーカが的確に敵のナイトメアを破壊する。そして敵は無頼らしきナイトメアの他に鹵獲されたサザーランドの姿があった。日本解放戦線がサザーランドを鹵獲できるはずがない、それができるのはゼロだけだ。…つまり!

「ダールトン将軍!敵は日本解放戦線だけではありません…これは黒の騎士団です!」

『何!?奴ら手を組んでいたのか…!』

 ゼロ程の筋力があれば大地を穿ち土砂流れを起こすことすら可能とでも言うのだろうか…!意図的な土石流、そしてこの連携、いけない…!

「こ、コーネリア殿下は!?」

『安心しろ、殿下にはギルフォードの奴が付いている。身体の筋肉こそないが忠義の筋肉は私にも引けを取らぬ忠義のマッスルガイだ。それよりも我々はこの包囲を突破することだけを考えるぞ』

 確かに、背後は収まったとはいえ足場の悪い上にここを降りれば高所から一方的に撃たれることになる。

『ダールトン将軍!背後から敵が…ぐわあ!!』

 背後を確認すると足場が悪いはずの地面を突っ切ってくる謎のナイトメアが見えた。無頼ともサザーランドとも違う…青いナイトメア!銃撃を左腕の盾で物ともせず、赤く光る刃の薙刀で脚を取られたサザーランド達が次々に破壊されていっている…!

『なんだあの突破力を持つナイトメアは…!くそ、構うな!前方の敵を始末して逆に背後の敵を高所から狙い撃ちにする!私に続けェー!!』

 ダールトン将軍の指示に従い、ヴァリスを構えて敵に放つ。敵の数が減った事もあり、なんとか高所に避難できた味方により敵を始末した…かに思えたが…

『将軍!左右から敵の援軍です…!どうやら敵は山を要塞化し、ナイトメアの発出口がある模様です!

『くっ!こちらが立て直す前にか…!まずい、このままではあの青いナイトメアに突破される…!』

 この状況を打開するには…スロウヴァリスしかない…!左側はコーネリア殿下の居る方向…退路さえ確保できれば…!

「将軍、今からスロウヴァリスで左側の敵を一掃します!左の敵の撃ち漏らしの始末と右側への牽制をお願いします!」

『待て!貴様は何をするつもりだ!』

 スロウヴァリスを投擲!そして…

「殿を…青いナイトメアは私が止めます!将軍、御武運を!」

 登って来た青いナイトメアと対峙し、ガントレットを展開する。スロウヴァリスは残り1発…ヴァリスは乱発すればブレイズルミナスが使えなくなってしまう…まずは相手の出方を見るために防御に専念だ…!

 

「ッ!?」

 敵のナイトメアの踏み込みは予想以上の速さだった…!あのナイトメア、ボールス並みの…!ガントレットで防ぐが、すぐさまスラッシュハーケンがボールスを掠める。距離をとりつつこちらもスラッシュハーケンを放つも盾で弾かれてしまった。

「この敵パイロット…強い!」

 そしてよく見るとあの薙刀…先端がチェーンソーみたいになって回転してるのか…。続けての斬撃をブレイズルミナスで防ぐが、既に敵のナイトメアはそれを読んでるらしい、振り上げてるあの左腕の盾は…クローアームか…!

「舐めるなァ!」

 ガントレットで弾き、距離を取る。すると、ボールスの目の前に薙刀の先端が迫っていた。

「先端がスラッシュハーケンに!?」

 それもなんとかガントレットで防ぐが、このままではジリ貧だ…ブレイズルミナスは出来てあと120秒…ヴァリスを打ったらもっと減る。ガントレットだけじゃ薙刀とシールドクローの両方は防ぎ切れない…!それに攻めの手が足りないから打開もできない…。そして数度の打ち合いをしている間に気付けばダールトン将軍達とは距離が離れてしまっていた。

 

 こうなったら…!

 

 私はスロウヴァリスを手に取り、投げつける。この距離…爆風は覚悟の上だ…!!

 爆風で吹き飛ぶボールスから飛び降りるとどうやら敵のパイロットもシールドクローで防いだらしいが…機体はかなり損害を受けたらしく、パイロットが降りて来ていた。

「クソ!無茶な戦い方をするやつだ…!」

 女の人…?あれはブリタニアの拘束着だろうか…緑の長い髪…日本人じゃ無さそうだけど…あの筋肉量なら腕力で制圧できる…まさかクラリスさんじゃあるまいし!

 一気に駆け出し、その腹に拳を叩き込む。

「うぐっ…!?」

 …今の手応え、殴られた瞬間に後ろに退いて衝撃を逃した…!?戦い慣れてる…!

「ったく!私に残酷な真似をさせるなよな!」

 手に持ってるのはショットガン…?散弾なんて私には…

 

 発砲音と共に右脚に激痛が走る。撃たれた脚部を確認すると…この傷跡は…スラッグ弾!?この人…私みたいな相手を倒す術を対策してる…!何者だ…!

「スナイパーライフルはデカすぎるからな、持ち運ぶならショットガンの方が良い、それに…散弾なら筋肉で防げると油断したろ?それはヒグマなんかでも正面から顔面をブチ抜ける特性のスラッグ弾だ。動かん方がいいぞ。お前のような肉ダルマを仕留められるようにこっちはわざわざこんなものを常備してるんだからな」

 ご丁寧に弾を込め直しリロードして銃口をこちらに向けている…。あ、脚が…痛い…!痛い…

 

 痛い…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 が、動ける!右足がダメでなら…!私は前のめりに倒れ、そのまま左脚と両手で地面を蹴る

「なっ!?こいつ!」

 続けての発砲は…左腕を犠牲に防ぐ!そしてその顔面を…右腕で…殴るッ!!

「うぐっ!?」

 手応えあり…!でも、私の脚と腕のお返しに…

 

 このまま、親指を目の中に突っ込んで…殴り抜けるッ!!

 

 すると、今度はまた別の青いナイトメアが現れた。左腕が変わったタイプの奴だ…。すぐに茂みへと逃げ込み距離を取る。出血のせいで上手く動けないが、捕まれば確実に殺されてしまうだろう。しばらく進むが、どうやら追っては来ていない様だった。しかし、それで安心したのが良くなかったのだろう、一気に身体が動かなくなりその場にへたり込んでしまった。そしてその直後、誰かが茂みを掻き分ける音が聞こえる。

 

「…そこにいるのはディゼル嬢ではないか!」

 

「その声…ジェレミアさん…!?」

「その出血…怪我をしているのか、どれ…こ、これはスラッグ弾か!?無理に動かないほうがいい。私達が麓まで運ぼう。」

 …私達?ジェレミアさんの方に顔を向けると見知らぬ男性が立っていた。

「あぁ、紹介しよう。彼はフェネット氏だ。地質調査の仕事中、運悪く巻き込まれた様でな…。」

「土石流に巻き込まれて死ぬかと思いましたがなんとか巻き込まれずに済みました…いや、今は私のことより君の怪我だよ。我々が肩を貸そう。」

「…フェネット、シャーリーのお知り合いですか…?」

「…!シャーリーを知ってるのかい!?シャーリーは私の娘だよ」

 そう言われれば…似て…る?うーん、わからないな。でも、今はお言葉に甘えよう。

「そうか、マーヤ ディゼル…。君がシャーリーがよく話してくれるマーヤちゃんか。…手紙に書いてあった通り凄い筋肉だね。」

 ジェレミアさんとシャーリーのお父さんに肩を貸してもらい、私たちは下山した。

「さぁ、後はあの道路を渡れば…」

 その時、私の耳はトラックの走行音を捉えた。その速度は緩まる様子はない。ふと左を見れば今にもこちらに突っ込んできそうだ…。

 

 私は肩を貸してくれている二人を突き飛ばす。

「マーヤちゃん!?何を!」

「い、いかん!やめるんだ!」

 私は二人の前に立ちはだかり、トラックに激突する。

 

 筋肉は『筋繊維の集まり』だ…高密度の筋肉を破壊できる物質は何もなくなる。全てを止められる…!私のこの『筋肉』が完璧なのはそこなのだ!暴走する機関車だろうと止められる!荒巻く海だろうと越えられる!その気になればねェーッ!

 

 瞬間、ゼロに蹴られた様な衝撃で私の身体はぶっ飛んでしまった。そして次の瞬間に見えたのは倒れているジェレミアさんと、白衣を着た…トラックの運転手…だろうか?と話すシャーリーのお父さんの姿だった。

 

 ダメだ、もう…目が…開かない…意識が…

「…男の方だけで十分だろう。」「女の方は?」「トラックに撥ねられたんだ。もう助からんさ」「一応確認しろ」

 私の体に誰かが触れている…気がする。

「…ダメだ、やはり死んでる。」

「実験台に良さそうな筋肉だったが…仕方ないか」

 そして暗闇の中、私に触れていた人は去り際に…

「済まないな、マーヤちゃん」

 と言った気がした…。




C.C.が乗っているのはロスストの「蒼月」です。


・ジョジョの奇妙な冒険(ディオ、ギアッチョ)


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STAGE11′

 読者のみんなこんにちは。僕の名前は…いや、これは言う必要はないかな。

 マーヤが死んだって聞いた時は驚いたよ。でも調べれば簡単に入院先は突き止められたんだ。
 嘘を吐いた馬鹿にはお仕置きをしなくっちゃぁね。

 まぁ良いや、ここらで一度顔でも見せておこうかな。

 それじゃあ本編開始だよ。


『…………………ブリ……アが……る……の…………苦…!凌………い、……よ!』

 熱い…熱い…。炎と煙で前が見えない。

 苦しい…苦しい…。炎の向こうに人影が見える…

『マーヤ…強く、生きて!』

 あれは…

 

「…はッ!?」

 なんだか、またあの時の夢を見た気がする。母さん達が死んでしまった事故…。クラリスさんはたまたま帰省していて、私がたまたま遊びに行っていた。そして起こった事故。研究所は炎に包まれ、全てが吹き飛んだ…。

「あれ…?」

 なんで私、そんなこと思い出したんだろう?前はそこまで覚えていなかったような…。

 すると病室の扉が開き、スザクがやってきた。

「マーヤ!目を覚ましたんだね、良かった…」

「私、どれくらい寝てたの…?」

 もしかして三日とか寝てしまってたんだろうか。どうしよう、あんまり休むと出席日数の計算が狂ってしまう。

「三時間だよ」

 意外と短かったな。逆にいえば…

「動かさないほうがいいよマーヤ。こんなおっきな弾がブチ込まれてたんだから」

 スザクが指で丸を作り大きさを説明してくれる。手と足には包帯が巻かれているし、何もしなくても痛みを感じる。

 再び病室の扉が開き、今度はクラリスさんが現れた。

「マーヤ!」

 クラリスさんはボロボロと目から涙を流している。…また心配をかけてしまった様だ。

 そんなクラリスさんを無視して私はスザクに疑問を投げかけた。

「コーネリア殿下は?作戦はどうなったの?」

「…ユーフェミア殿下に言われてランスロットで助けに行ったから間一髪のところで助けられたよ。でも作戦は失敗だね。それにしてもゼロはどうやら僕らが攻め込む事を事前し知っていたようなんだ。」

「なっ…!?一体どこから情報が漏れたの!?」

「それはわからない。」

 首を振るスザクだったが、今の私の一番の懸念はスザクが情報を流したと言われることだ。スザクは日本人だし…罪を被せるには一番都合が良いから…。

 未だに泣いているクラリスさんを無視しつつ、そんな風に心配をしているとまたまた扉が開いた。今度は誰だろう?

「ここがマーヤ ディゼルの病室だな?」

「ダールトン将軍!?」

「無事…というわけでもないか、だが生きていた様で何よりだ。早速で悪いが…警察の話では足と手にスラッグ弾を撃ち込まれた状態でトラックに轢かれた様だが…何があった?」

 何があったか、どこから話すべきだろうか?…やはりボールスから降りた辺りからだろう

「ボールスのスロウヴァリスで自分ごと敵のナイトメアを爆散させたんです。その後敵のパイロットにスラッグ弾を撃ち込まれました。」

「ふむ、どんな相手だった?」

「緑の長い髪の女の人でした。あと、なぜかブリタニアの拘束着を着てた様な」

「…!」

 …?なんか今スザクが反応したような…?まぁいいか

「ふむ、それで?」

「はい、スラッグ弾を撃ち込まれたお返しに顔面を殴ったんですけど、直ぐに別のナイトメアが来たので逃げました。逃げている途中でジェレミアさんと…」

「ジェレミア?ジェレミア ゴットバルトか?」

 ダールトン将軍が聞き返してきたので頷く。

「…済まない、話を続けてくれ」

「はい。ジェレミアさんとシャーリーのお父さん…あー、私の同級生の父親と会ったんです。それで一緒に下山して、トラックが突っ込んできたので二人を庇ってトラックを止めようと…」

「…。それで、撥ねられた、と…?」

 私が頷き返すとダールトン将軍は目頭に指を当てて目を瞑ってしまった。…そういえばジェレミアさん達はどうなったのだろう…?

「とりあえず事情はわかった。まさかスラッグ弾を二発も撃ち込まれた状態で自らトラックの前に躍り出たとはな…。今後は勇気と無謀を履き違えるなよ…」

 そうしてダールトン将軍は去っていった。そして私の視界に映るのはクラリスさんだ。…寝たフリをしよう。

「クラリスさん、私眠いから…」

「そう…さっきの人も言ってたけど…余り無茶はしないでね…。ごめんなさい、私仕事がまだあるから…」

 そう言ってクラリスさんも去っていった。

「…さっきの人、マーヤのお姉さん?」

 お姉さん…まぁ、クラリスさんって童顔だしそう見えるのかな?

「ううん、私の保護者。両親がいないから引き取ってくれたのがさっきのクラリスさんだよ」

「…あんまり上手くいってないみたいだね」

 スザクは…たまにストレートにものを言うよね…。でも、確かに上手くは行ってない。私が…一方的に避けているからだ。

「勿論ね、感謝はしてるの。でも、私はクラリスさんとは上手くやれない。」

「それは…どうして?」

 私がハーフだからだなんて。ブリタニア人として生きている日本人だからだなんて…言えない。私は…卑怯だ。

 スザクには首を横に振ることで答え、ベッドに横になる。

「…悩みがあるなら聞くから言ってね。じゃあ僕は学園に行くから」

 そうしてスザクも部屋から去っていった。目を閉じても眠くならない。

 

 見たことある天井を眺めていると、またまたまた扉が開き、誰かが入ってくる。今度の来訪者は…。誰だろう?知らない子供だ。

「やぁ、こんにちは」

「…こんにちは。私に何か用?」

 金髪で長い髪、幼いはずなのにやけに落ち着いた雰囲気の男の子だ。それに…なんだか着てるものも高そうだ。

「僕の事、覚えてる?」

 私は首を横に振る。子供達とは関わったことはあるが、私の関わった子供達はみんな日本人だ。

「ごめんなさい。どこかであったことあったかな」

「そっか。まぁまだそのときじゃないから良いけどさ。」

 私は不思議な男の子に首を傾げる。この子は一体何を…あぁ、まぁこれくらいの子供はこう言う遊びをしたがるよね。男の子だし。

「それにしても酷いよね。君が死んだなんて嘘を吐くなんてさ。思わず確かめに来てみればちゃんと生きてるじゃ無いか。…まぁ、確かに普通の人だったら死んでもおかしく無い様な怪我ではあったみたいだけど。」

 そして男の子はベッドから離れていき扉へと向かっていった。

「そうだ。また迎えに行くから待っててね。マーヤ」

 振り向いた男の子はそう言って去って行く。…私、名前言ったっけ…?本当にどこかであったのかな。記憶がないってことは事故が起こる前とか?でも、それにしては彼は幼すぎる様な…。…いや、よくよく考えたら病室なんだから患者が誰かわかる様に名前が掲載されるはずだ。なら名前なんてわかっても当たり前だ。

 そんな風に思考を巡らせているとまたまたまたまた扉が開く。今日は本当に来客が多いな…?

「久しぶりだねマーヤ」

「…!?ノネット エニアグラム卿!?」

 思わず背中を預けていたベッドから上半身を跳び起こす。

「こらこら、怪我人が無理すんじゃないよ。全く、若者は直ぐに無茶するねぇ、アンタといいアイツといい…」

「…アイツ?」

「あぁ、悪い悪い、昔可愛がってた小僧でね、ライって言うんだが…ある日突然行方を暗ませたんだ。ったく…アイツも何やってんだか。ソイツもしょっちゅう無理しては怪我をしてたよ。」

 ノネットさんは懐かしむ様に目を細めている。きっと大切な人だったんだろう。

「今日はどうしてエリア11に?」

「ん?今日はちょっとお偉いさんの護衛にね。」

 ラウンズが出てくるということはかなりの地位に違いない…それにしては今現在持ち場を離れてるみたいだけど…。

「ん?あぁ、今は休憩だよ。ビスマルクのやつが代わりの奴がついてるさ」

「そうなんですか」

 ビスマルクと言う人のことは知らないけれど、多分ラウンズの誰かなのだろう。

「ロイドに見せてもらったけど、テロリストはどうやらブリタニアの最新機にも劣らない新型を投入してきたみたいだね。一体どこにそんな技術があったんだか…。」

 その後、ラウンズであるノネットさんと畏れ多くも他愛無い話をして彼女は部屋を去っていった。

 

 …しまった。今更だけど、あの子の名前聞きそびれちゃった。

 

 結局、動けるまで1週間はかかると言われた怪我を約半日で動けるところまで回復させ、次の日には片脚で飛び跳ねながら学園へと向かった。特徴的な赤い髪を見つけたので後ろから声をかけるとカレンが振り向き、次の瞬間目を見開いていた。

「ちょっ!?マーヤ!?あなたそんな風にここまで登校してきたの!?」

「え?うん。片脚はまだ安静にしてなきゃいけないし」

「安静と激しい運動を両立させながらあなた何言ってるのよ…」

 肩を貸すと提案してきたカレンだけど、病弱な設定でそれはまずい。断るとカレンは誰かに連絡を取っていた。そして教室に向かう途中でシャーリーが現れ、私に肩を貸してくる。

「別に良いのに。体も鍛えられるし」

「ダメだよ!片手片足が怪我でダメになってるのになんで片脚ジャンプで登校してくるの!?」

「だって他に方法ないし」

 そう答えるとカレンもシャーリーも黙ってしまった。うん、これは論破ってやつね。

 …肩を貸すと言えば

「そうそう、シャーリー。私シャーリーのお父さんにも肩を貸して貰ったの」

「えっ?お父さんが?」

「うん、ナリタに行った時にね、たまたまシャーリーのお父さんも巻き込まれかけてたみたいで」

「なんでお父さんがそんなところに…?」

 そんなこと言われても…あ、でも確か地質の調査とか言ってたっけ?

「なんか地質がどうとか言ってたよ。」

「地質?お父さん、地質関係の仕事なんてしてたっけ…?」

 まぁ、親の仕事内容なんて一々把握しているのも珍しいだろう。シャーリーの話だと単身赴任してると言ってたし。

 

 そんなこんなでその日の授業は終わり、生徒会活動の時間となっていた。

「マーヤさん、お怪我大丈夫ですか?」

「心配してくれてありがとうナナリー、平気平気!私、体は頑丈だからさ」

「そうですか…」

 私がどんなに平気と言ってもナナリーは困った様な顔をしている。うーん、困ったな。

「こらこらナナリー、本人が平気だと言ってるんだ、あんまり心配しても迷惑になっちゃうだろ?」

 ナナリーの頭を撫でているのはルルーシュだ。ナナリーへの声は優しく笑いかける様なものだが、実の表情は割と険しめ、私の怪我を気にしてくれてる様だ。

 暫くしてメイドさんがナナリーを連れて行くと、ルルーシュから話があると言われた。何事かと思っていると案の定怪我のことの様だ。

「その怪我、お前程の筋組織を貫通して怪我を負わせるとは…何があった?」

「あぁ、これ?黒の騎士団にやられたの。緑の髪の人が私みたいな肉ダルマ相手用の特殊弾って言ってた。熊でも倒せるスラッグ弾なんだって。ルルーシュも気をつけてね?」

 まぁ、軍人の私とは違い、一般人のルルーシュがスラッグ弾を装填したショットガンを持った相手に襲われるなんて事はそうそうないとは思うけど。

「…お前、スザクもだが…技術部とか言ってなかったか?」

「え?う、うん…それは…ごめん。本当のことではあるんだけど、嘘も…混じってる」

 特派は技術開発部ではあるものの、データを取るために実践投入も辞さない。実戦に出ればこういうこともあるのだ。

「なぁ、マーヤ」

「うん?何?また呼んだだけって奴?」

 

「…って無視?ねぇ、ルルーシュ」

「…いや、その、言い難いんだが…軍を辞める気は無いのか?」

「ないよ?」

 私は即答した。私は契約をしたのだ。私が縛られる代わりに陽菜達の生活は守られる。租界にある施設で不自由なく過ごしてもらうためならこの身が犠牲になろうと構わない。卑怯者だからこそ…それを曲げたら私はもう私でいられなくなってしまう。

「それは子供達のためか?」

「うん、陽菜達の…ってあれ?ルルーシュにその話したことあったっけ?」

「…あっただろ。まぁ無理するのは構わないが…お前が傷つくと悲しむ奴はいる、ナナリーも…その、陽菜とかいう子供達も自分達の為にお前が傷つくのは嫌なんじゃないか」

 それは…そうかも知れない。けど…じゃあどうすれば良いのだろう。私が、私なんかがどうやったら陽菜達を幸せに出来るのだろう。

「…済まない、俺も用事があるから」

 去っていったルルーシュのやたらと広い背中を見送る。

 

 答えは出ない。ならば今まで通り契約を果たすしかないだろう。

 




ライ君は名前だけの登場です。本編には出しません。


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STAGE12′

 拙僧は尋ね人の消息を掴み、中華連邦より泳いでエリア11へ渡って来た者…。

 やはり人が多い所は人のカルマが聞こえてきて辛いものがある。少し静かな山などの場所にでも行くとしよう。
 おや、拙僧の正体について勘付いた者もいるようだな。中々鋭い。

 それでは本編開始といこう。

 聞こえるぞ、お主ら読者のカルマが!お主はこの話を読んだ時『誰だお前!?』と言う!!


 生徒会室に向かうと、今日は休みだったはずのルルーシュが扉から出てきた。

「あれ?ルルーシュ、今日は休みじゃなかった?」

「あぁ、ナナリーがちょっと熱を出してね…。でももう落ち着いたし平気だよ」

「そうなんだ、ナナリーにお大事にって伝えてくれる?」

 ルルーシュは少しだけ口角を上げると

「ナナリーも喜ぶ」

 と言って去って行った。…猛ダッシュで。ナナリーのこと心配だったのかな?改めて生徒会室に入ろうとすると、今度はシャーリーが飛び出てきた為、ぶつかってしまった。

「ごめんシャーリー、怪我してない?」

「う、うん…へ、平気…!私こそごめんね…!そうだ、ねぇ、ルルは!?」

「ルルーシュならダッシュで帰ったけど…」

「…なら追いつけないなぁ…ありがと、私ちょっと行ってくるね」

 …なんだったんだろう?まぁ、ルルーシュはクラブハウスに住んでるらしいからすぐに追いつけるよね。

 

 暫くして戻ってきたシャーリーに話を聞けばどうやらルルーシュとプロレス観戦に行くようだ。…そういえばナリタでシャーリーのお父さんとジェレミアさんと会ったのだが、ジェレミアさんは現在行方不明との話だ。ならばシャーリーのお父さんはどうなのだろう?この前シャーリーに話を振った感じでは何かあった様にも思えないが、単身赴任と言っていたし、ただ情報が入ってないだけかもしれない。

「ねぇ、シャーリー、そのプロレスのチケットって自分で買ったの?」

「ううん、お父さんに頼んで買ってもらったの。お父さんね、私のご機嫌取りにこう言うのをよく買ってくれるの」

 プロレス観戦のチケットを送ってくれるなんてなんて良いセンスのお父さんなのだろう。

「…最近お父さんとは会った?」

「ううん、単身赴任で暫く会ってないけど、なんで?」

「ほら、肩を貸してもらったでしょ?御礼を改めて言おうかなって」

 私がそう答えるとシャーリーは手紙で伝えてみると答えてくれてそれで話は終わった。それから特派から連絡があり、ボールスの修理が終わるまでは私は仕事が休みになった。別にナイトメアがなくてもやれる仕事はあるはずなのだが、普段学校が休みの日は仕事だということもあるので、恐らくセシルさんあたりが気を遣ってくれたのだろう。別に良いのに…。

 陽菜達への顔出しはそれなりの頻度で行っているし、今日は確か施設のイベントで不在にしているはずだ。そうなると休日と言われても筋トレ以外に特にする事は無くなってしまう。そう言う訳で自室で筋トレに励んでいると、クラリスさんから声をかけられた。

「ねぇ、マーヤ…軍のお仕事、まだ続けるつもりなの?」

「…当たり前でしょ」

 私が陽菜達を守るためにはこれしか選択肢はない。だから私が軍を辞めるわけにはいかないのだ。

「私が…マーヤが病院にまた運ばれたって聞いた時どれほど心配したかわかる!?」

 またその話か…もう、うんざりだ!私は窓を突き破ってそのまま逃げるように走り出した。そしてあてもなく走っていると、どうやらナリタまで来てしまったようだ。もう夜も遅く、ロープウェイなどやっていないが…たまには山登りも悪くないだろう。道中熊に襲われた事以外は何事も無く、怪我もなく山頂に到着した。

 

 それにしても…またクラリスさんと喧嘩しちゃったな…。いつも謝らなきゃって思ってはいるんだけど何故か反抗しちゃうんだよね…

「…それはクラリスさんとやらに甘えてるだけであろう」

 …甘えてる、かぁ…そうなのかな。…そうなのかも?…私ってまだまだ子供なんだな…

「作用、お主はまだ子供よ。女子高生なのだからな」

 …卑怯だな、こういう時だけ立場に頼るのは

「卑怯でも良かろう。そうでなくば生きられぬ者も居ろうて。」

 …。んん?さっきから私誰と話してる?というか、私一言も発してないよね?

 私は後ろを振り返るとそこにはサングラスを掛けた男の人が立っていた。

「初めまして、マーヤ ディゼル」

「どうして私の名前を…!?」

 男はゼロほどではないが筋肉隆々だ。それに唯ならぬ雰囲気がある…!この人、強い…!

「そんなことどうでも良かろう。…申し遅れたな。拙僧の名前はマオ。」

 …格好は山伏って感じだけど…その頭から垂れる髪は銀色だ。…日本人ではなさそうだけど…

「人が居ると人のカルマが拙僧に流れ込んでくるので人混みは拙僧には辛くてな。この辺りは静か故好きであったのだが」

 …こ、この人何を言ってるんだろう…?カルマって…頭大丈夫なのかな。

「拙僧には聞こえるのよ、人々のカルマが。お主のカルマも聞こえてくるぞ?ふむ、お主は…人には言えぬ秘密があるな?」

 …!いや、こんなのは占いなんかな常套句だ。

「そ、そんなの誰にだって秘密の一つくらいあるでしょ」

 そんなのあなたは探し物をしていると同じくらい誰にでも当てはまる質問だ。

「では当てよう、お主はハーフである事を皆に隠して生きておる…」

「!」

 な、なんでこの人…!私誰にも言ってないのに…!

「だから言っておろう、人のカルマが聞こえると」

 わ、私が…ハーフだと、この人にバレてしまっている…どこから情報が漏れた…?学校?あり得ない、こんな訳のわからない人に、それもこんなところにいる人に偶然渡ったとは考え難い…ダメだ、答えを絞り込むには…

「情報が足らぬ、だろう?当然だ。何故なら…む?」

 

 こうなったら…ここで情報源を吐かせるしか無いッ!幸い、こんな時間にこんなところに来る人間なんて居やしないんだ!

 

「…お主のカルマが聞こえてくるぞ。次にお主は…『あなたを始末するッ!』と言う…」

「あなたを始末するッ!」

 今、ここでッ!!私は一気に踏み込み、右拳でフェイントを、本命の左脚で蹴りを放つ

「拙僧には聞こえると言ったはずだ」

 フェイントには目もくれず蹴りが弾かれた…!?だったら…

「下段蹴りをしつつ落ちている石を拾う…か?安直だな」

 私は下段蹴りを…なっ!?何故私の行動が!?

「それを私に投擲するか、面白い、当てられるなら当ててみるが良い」

 あぁダメだ。カチンと来たわ。読まれていても関係ない。私は大きく振りかぶり…投げるッ!!

「ふん、胴体を狙っても無駄な事よ」

 マオは右に避けた…が、その時!風と、石の形状がそうさせたのか、石もマオに吸いつかれるように右に曲がった!

「な、何ィッ!?軌道が曲がっただと!?」

 私の攻撃は見切れたのに今のは見切れない…?どうやら私のカルマとやらは聞こえても私にも予測不可能な攻撃には対処し切れないみたいね…!だったら!

「ッ!させるか!!」

「遅い!」

 私は地面を鷲掴み、それを思い切り投擲する。面的に放たれた弾丸のような石礫はいくら私が石を投げることが分かっても避けられはしない。

「間髪入れずとどめの一撃ッ!」

 私は地面を大きく蹴り、ドロップキックを仕掛ける。石礫による猛攻で体勢は崩れている!今なら!

「言ったはずだッ!拙僧には聞こえるのだと!!」

 腕でなんとかガードしたようだけど、勢いまでは殺せてない!大きく弾き飛ばし、マオは地面を転がっていた。よし、これなら…

 

「勝てる…と?」

 

「えっ?」

 目の前に迫る脚に蹴りを腕でガードするが吹き飛ばされ、空中でマオの貫手を喰らい、私は受け身も取れずに地面を転がった。

「拙僧はな。中華連邦の過酷な山々を放浪し、この強靭な肉体を手に入れた。お主のような半端者とは鍛え方が違う!お主が悪いのだ、拙僧はただ静かに過ごしたかっただけなのに!お主が悪いのだ!」

 …完全に油断していた…!決まったと思ってたのに…!私は体に力を入れようとするが、何故か痺れて動かない、一体なぜ…!?

「お主にもようやく効いてきたようだな。拙僧の毒が」

「毒…!?」

「然り。拙僧は人のカルマを聞くことができる故、人との争いでは無敗よ。しかし、野生動物はカルマを持たぬ故そうはいかぬ、ならばと身に付けたのがこの毒の貫手よ。言ったであろう?お主とは鍛え方が違う、と」

 だ、ダメだ…段々呼吸も辛くなってきた…ゼロにも負け、緑髪の女にも負け、この男にも負けるなんて…私は…

「…む?緑髪の女だと!?お主その話…」

 

「その子から離れなさい!」

 

「しまったッ!」

 突如現れた影からのドロップキックを顔面にモロに受け、マオは吹き飛んでいった。

「マーヤ、大丈夫?心配したんだから」

「ク…ラ…」

 私とマオの間に立った細い体はクラリスさんのものだ。…まさか私のことを追って…?私のことなんて放っておけば良いのに、馬鹿な人だ…

「私の娘にこれ以上手を出すことは許しません!」

「…ふん、なにが娘だ…。拙僧には聞こえるぞ、お主のカルマが…!」

「き…を…」

 ダメだ、呂律が回らない…!クラリスさん、アイツに正攻法なんて通じない…!それに毒の貫手のことも教えないと…!

「大丈夫よマーヤ、私が守るからね」

 クラリスさんは少しだけ振り返って私に微笑んでくれた。次の瞬間、クラリスさんの鋭い蹴りがマオの腹を穿っていた。

「な…にぃ!?」

 す、凄い…!流石クラリスさんだ…!その後も容赦ない連続の殴打を続け様に放ち続けている…!回し蹴りを食らったマオは吹き飛んで転がっていた。

「…馬鹿な!カルマは聞こえているのに…!」

「私の師匠はね、あらゆる攻撃をその動きから先読みして的確に防御される凄い方なの。でもね、その師匠が言っていたわ。『分かっていても対処できない物凄い速度で攻撃すれば私も対処できない』ってね」

 クラリスさんの師匠もすごいが、それが実践できるクラリスさんも凄い…!道理で私なんかではクラリスさんに勝てないはずだ…!

「…聞こえるぞ、お主のカルマが」

「…またそれですか」

「お主はマーヤ ディゼルを娘だと言ったが…お主はその娘に隠し事をしているな?」

 …クラリスさんが私に隠し事…?

「ッ!黙りなさい!」

「マーヤ、教えてやろうか、お主の秘密を!お主自身が知らぬ秘密を!」

 私が…知らない秘密…。

「それ以上は!」

 クラリスさんは攻撃に転じたが先程までのキレが無い。…もしかして動揺してる…?それほどまでに私の秘密を私に知られたくないのかな…。でも…!

「何が娘だ!本当は先輩とやらへの罪悪感だけで引き取った癖になぁ!」

「違うッ!」

 クラリスさんが押されてる…。あのマオの人のカルマを聞くという力は恐らく本物、きっと言っていることも事実なのだろう…でも、もう関係ない。

 私は上手く動かない身体に鞭を打ち、クラウチングスタートの構えを取った。

「…!マーヤ、そんな体で動くとは…お主の胆力を侮っていたか、だが無駄な事よ!二人のカルマを聞き対処することくらい拙僧には造作もない!」

 カルマを聞く…カルマとは業だ。だが、これは苦しむクラリスさんを助けるためだ。だからカルマなんて無い。それに、これ以上先の事柄を…

 

 考える必要なんて、無い!

 

「!?」

 私はクラウチングスタートの構えから一気に駆け出していた。そしてクラリスさんにドロップキックをブチかまし、そのままクラリスさんをマオにぶつけていた。クラリスさんごめんなさい。やっぱり考えなしに動くのは良く無いのかも。そんなことを思っていると、次の瞬間クラリスさんの顔面スレスレを拳が掠め、その後ろにいたマオの顔面を私は殴っていた。

「な、何故だ!?カルマが、カルマが聞こえない!!なのに何故お主は動けている!?」

 私は次の瞬間、マオの顔面を掴み、膝を叩き込んでいた。うわ、痛そう。

「マーヤ…まさかあなた体得したのね…!」

 …体得?なんの話だろう。そんなことを考えている間も私はマオの攻撃を的確に弾き、顔面に拳を叩き込んでいる。

「…な、何!?全ての行動を脊髄反射に任せた完全反射行動だと!?」

 なるほど、脳を中継して思考を挟む行動には必ずラグがある。それを今の私はどうやら全てを脊髄の条件反射に体を委ねることで思考を挟まない分、素早く攻撃が可能ということらしい。私今そんなことが出来てるのか、すごいなぁ人間の体って、不思議。

 

 そして私の脚が渾身の力でマオの睾丸を蹴り上げているのが見えた。

 

「ミ°ッ!?』

 

 どうやら…決着はついたみたいね。

 




マーヤ(脳筋)式心を読むギアス対処法:全ての行動を脊髄反射に委ねてボコボコにする。

という訳で謎の男の正体はマオでした。異なる可能性の世界としてマオも筋肉モリモリのマッチョマンという世界線でしたね。


・ジョジョの奇妙な冒険(ジョセフ ジョースター、花京院)
・グラップラー刃牙


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STAGE13′

 これはその、自慢とかではないのだけれど、クラリスさんはあれでも社長だ。そして…まぁ、つまりそのその、義娘の私も社会的立場で言えば社長令嬢と言うことになる。しかも今のところ一応軍属…そして、実に名誉なことにコーネリア総督やユーフェミア副総督に気に入られている…と、言える。何が言いたいかと言うと、結果として私とクラリスさんが対峙した男、マオは中華連邦の人間ということもあり、極刑に処されたそうだ。彼の言動も災いしたのだろう。彼のカルマだのなんだのという言葉は世迷言と言われ、虚言癖として対処されつつ最後には口を封じられたまま銃殺されたらしい。ブリタニアという国は他国民に厳しく、障害のある人物にも容赦は無い。…尤も、健常者だとしてもそのフィジカルはともかくとしてブリタニアの女性社長と社長令嬢を襲ったとなれば結果は変わらないのかもしれないけれど。

 

 それはそれとして、あの一件があってからは少しだけクラリスさんと仲良くなれた気がする。…まぁ、一方的に嫌っていたのは私の方なのでなんというか私が少しだけ素直になれるようになっただけというのが正解なのだけど。

「マーヤ…あのね、あなたに私、言ってないことが…秘密にしていることが…あるの、でも…」

「…いいよクラリスさん。無理しなくても。私がそれを受け止められるようになったと思ったらまた教えて?」

「…えぇ、わかったわ」

 秘密くらい誰にだってあるものだ。それこそ、家族にだって。それに、それを言わないのはそれなりの理由があるのだろう。クラリスさんは優しい人だから、きっとそうだ。

 

 そして、私が特派に居ない頃の出来事として、日本解放戦線が壊滅したらしい。聞けばブリタニア軍を巻き込んでの自爆をしたとかなんとか。そしてそこに黒の騎士団が現れコーネリア総督を襲撃、ランスロットの活躍もありなんとか退けたそうだ。

 

 ボールスの修理はまだ終わらないそうだが、今回は仕事があるらしい。何かと思って特派に向かうと、どうやら今回の仕事はブリタニア政庁だとか。

 

 …嫌な予感しかしない。

 

 ブリタニア政庁に行き、受付を済ませると案内されたのは副総督事務室…つまりは、ユーフェミア様関連…また、どこかに遊びに…いや、出張だろうか。3回ノックをしてから名を名乗り、許しが出てから入室すると、そこには珍しく真面目な顔をしたユーフェミア様の姿があった。

「お待ちしていました。マーヤ」

「は、お待たせしてしまい申し訳ありません副総督」

 これはもしかしてユーフェミア様のことを馬鹿にしていたのかもしれない。そうだよね、副総督だし、何か重要な仕事に違いない。

 

「私、最近太ってしまったの」

 

 …。ん?何か重要な仕事に違いないよな?で?今この人なんて言った?聞き間違いかな?

 

「私、最近太ってしまったの!」

「な、何故それを私に…?」

「太ってしまった乙女がすることと言ったら…ダイエットです!でも、そんなことがお姉様に知られたら馬鹿にされてしまうわ」

 だからといって部下を呼び出す奴があるか。職権濫用も甚だしいけど…まぁ、ユーフェミア様は天然だから何言っても無駄かぁ…

「それで私に何をお望みなのですか…?」

「その、私に…ボクササイズを教えて下さいな」

 ボクササイズ…無論教えることは可能だ。しかし…

「だからといってそれを何故私に…?」

「私、マーヤの逞しい筋肉が好きなんですもの、いけなかったかしら?」

 …なんだ、私の筋肉が素敵だと言われたらもうそんなの断れないじゃない。こうなったら副総督だとか皇女だとか関係なく、一人の筋肉に悩める乙女として力にならなければ!

 

 何故なら私はマッスルウーマン!己の肉体の筋肉のみならず他人の筋肉をも鍛えるのも真のマッスルウーマンとしての鍛錬の一つのはずだ!

 

「その任務、引き受けます。ですが、私のトレーニングは厳しいですよ…!」

「覚悟は、あります!」

「良し!ならば早速テーピングです!」

「はい!」

 

 暫くボクササイズを教えて分かったこととして、ユーフェミア様はかなり筋がいい。あのムキムキな皇帝陛下の子供…そしてあのルルーシュと血が繋がっていると考えれば素質はあるということなのか、とりあえずこのまま鍛えれば必ず見事なマッスルウーマンになるだろう。ただ、恐らく軍人として鍛えているであろうコーネリア総督のあの体格を考えると鍛えても私の様なボディにはならず、引き締まるタイプだと考えられる。でもまぁ、ダイエットとしては程々が丁度良いだろう。あまりやりすぎて筋肉が増えると体重を減らすという意味では失敗に終わる。何故なら筋繊維のパンパンに詰まった私の筋肉は同じ量の脂肪に比べて非常に重いからだ。だから私は体重計に怖くて乗れない。きっとクラリスさんの2倍はあるだろう。だから、怖くて…乗れない。

 

「ふぅ、今日はありがとうマーヤ。やっぱり体を動かすのって良いですね。私も本国でバスケットボールを嗜んでいたのを思い出しました」

 へぇ…結構ハードなスポーツをやってたんだな。意外だ。

「私もバスケットボール得意なんですよ。スリーポイントダンクシュートが得意で」

「スリーポイント…ダンクシュート…!?流石マーヤね、凄いわ!」

 それほどでもある。筋肉はあらゆることを可能にするのだ。

「そうだわ!もうすぐ芸術週間でしょ?式典があるのだけれど、マーヤも護衛についてくださいな」

「…あー、私は構わないんですけど、それは流石に特派の方に問い合わせてもらわ…」

「はい、はい、じゃあそういうことで。今ロイド伯爵から許可をいただきました。これで一緒に回れますね!」

 うーん、行動が早い!

 

 そう言うわけで芸術週間の影響で数学の授業が芸術に関するものに差し替えられ、私とルルーシュは台の上に立ちポージングを決めていた。

「ルルーシュ、マーヤ!いいよ!キレてるよ!」「腹筋に板チョコでも貼ってるのかい?」「ナイスバルク!」

 芸術とは美!即ち筋肉!さぁみんなよく見て私の鍛えた筋肉を!逞しく割れた八つの腹筋、そして爆発寸前かのように膨れ上がるシャーリーの脚よりも太い上腕二頭筋、ミレイ会長のウェストよりもぶっとい大腿筋、そしてニーナよりも豊満な胸筋!!ルルーシュにも負けず劣らずの私の筋肉はまさにベストコンディション!

「凄いなぁルルーシュとマーヤのやつポージング決めてからピクリとも動かないや」

 

 その後は約束通り、ユーフェミア副総督と美術館を回ることになった。無論仕事だ。ユーフェミア副総督がクロヴィス記念美術館の落成式で選ぶ絵を決めるための。

「マーヤはどの絵が好きですか?」

「そうですね…」

 皇帝陛下の見事な筋肉を豪快なタッチで描いた『オールハイルマッスル』も悪くはないが、やはり筋肉の描写の粗が目立つ。この絵は真の筋肉を愛する者が描いたものではないだろう。それよりも…私の目に止まったのは長閑な日本家屋と自然を描いた優しい絵だ。

「私はこの絵が好きですね」

「まぁ、これは…そうね、確かに長閑で…私も気に入りましたわ」

 しかし、そこで問題が起きた。

「そちらは調査の結果、4分の1イレブンの血が入った画家のものでして」

 …。イレブンの…日本人の血が入ってたら絵は評価しない…?そんなの、間違ってる…!私が暴れんとした瞬間、ユーフェミアが口を開いた。

「それが…なんなのですか?私はこの絵を気に入ったのですから、それで良いでしょう?ね、マーヤ」

「…!えぇ、ユーフェミア副総督のご判断で問題ないかと」

「しかし…」

 私が笑顔で腕を捲るとそれ以上言葉を話すことは無かった。やはり美少女の笑顔と肌のチラ見せは中年男性には効果的面のようね。

 

 それから落成式となると、美術館に関係のない質問がユーフェミア様を襲った。

「今回の美術館の建設でイレヴンの業者が排除されたと言われていますが?」

 しかし、ユーフェミア様を以前のお飾り副総督と思ったら大間違いだ。私のスパルタボクササイズを経てユーフェミア副総督は…いや、ユフィは体の筋肉と心の筋肉が鍛えられ、しっかりとこういったことにも対応できる自信を身に付けたのだ!

「現在、そのことについては我々も調査を続けております。そのため、今回は解答を控えさせていただきます。」

 隣に立つダールトン将軍も「ユーフェミア、ご立派になられて…」と涙を流していた。…爺や的ポジションなのかな?

「Hi-TVです!副総督、最近お痩せになられましたよね!?もしかして恋愛などあるのですか!?」

「えっ…?あー、その…ご想像に、お任せします」

 何故一瞬こっちを見たのかは不明だが、先程の自信はどこへやら、ユフィは曖昧な返事をした。やはりまだまだ鍛錬は必要ということか。

「インターセイトのタフガイです。近々騎士をお決めになるとの噂ですが…」

 騎士…そういえばユフィってまだ騎士を決めてないんだっけ?…私とか言わないよね…?しかし、そこで事件が起こった。次々に記者の携帯端末が鳴り始めたのだ。そしてダールトン将軍にもある知らせが届いたらしい。

「モニターに出せ!」

 その言葉で映し出されたのはスザクが複数のナイトメアに押されている光景だった。そしてその動きを見ると違和感を覚え、すぐにその理由が判明した。

「…スザクの動きが読まれてる…!?」

「…何?」

「スザクは…その、戦い方に癖があるんです。模擬戦で何度も戦ってるので分かるんです。例えば今の状況…恐らくスザクは後ろに飛びます。距離を取るために」

 すると画面のスザクは後ろに飛び退いた。

「…ゼロ、やつとは一度手合わせしたがどうやら体だけではなく頭も鍛えている厄介な相手のようだな…」

「スザク…」

 私はここから祈ることしかできない…頑張れスザク…!"ここを凌げば…貴方はもっと鍛えられる…!"

「凄い!また躱したぞ!」「頑張れ、白騎士!」

 だが、流石にスザクは劣勢、剣による三弾突きによりコクピットが破壊され、スザクの姿が露わになった。

「何でイレブンがナイトメアに!?」「冗談じゃない!」

 しかし、スザクはそんなことでは止まらず、むしろさっきよりも機敏に動きゼロ達を圧倒し始めた。

「動きが変わったな…まさか…」

「はい、将軍。恐らくはハッチが切り落とされた分ランスロットの重量が軽くなった事が要因かと」

「やはりか」

 そして黒の騎士団は諦めたのか、チャフスモークを展開して撤退していった。直前にランスロットのランドスピナーを破壊していることでスザクも追うことは出来ないようだ。

「何で追わないんだ?」「ゼロの仲間だからだろ」「なるほど、出来すぎてると思った!」

 そんな記者の声が聞こえると、ユフィはツカツカとそんなことをのたまう記者の頬に強烈なビンタをぶち込んでいく。

「あの戦いぶりをみてそう思うなら記者なんてお辞めなさい。それが命を賭して闘う者への礼儀ですか!…そういえば先程の質問にはまだお答えしていませんでしたね、私の騎士となるのはあそこにいるお方、枢木 スザクです!!」

 その発言に会場はどよめいた。私も自分じゃないことにホッとしつつ、とは言えスザクを騎士にするという判断には流石に驚いた。しかし、実力で言えば十分なことは確かだ。それに筋肉はまだ少し鍛える余地はあるが、人間としてもスザクはかなり真面目だし出来ている。私もサポートすれば十分騎士としての務めを果たせるだろう。

 

「Hi-TVです!副総督もしかして恋愛のお相手と言うのは枢木…」

 このタイミングでそれが聞けるのは凄い勇気だと思う。そして彼女がコーネリア総督に処されないか心配だ。

 

「ななななななんのことかわわわわわわかりませんね!」

 

 ユフィ、動揺しすぎ…




マーヤの苦手なもの:体重計。マーヤは乙女なので重たい体重(筋肉が原因)を見るのは怖いのです。


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STAGE14′

 名誉ブリタニア人とは言え、まさか日本人のスザクが騎士になるなんて驚きだ。さらにテレビ放送も許可したとか。…これで少しでも日本人への風当たりが和らげばと思うが…。すると、私のところにセシルさんがやってきた。

「マーヤさん、コーネリア総督がお呼びよ。」

 …ユフィの次は総督か…なんで私ばっかり…。

 

 そんな訳で政庁に行き、受付を済ませコーネリア総督の部屋を訪れる。しかし、扉の先から聞こえる怒声に思わずノックを躊躇った。

『お姉様!何がそんなに不服なのですか!私の騎士は私が決めます!』

『ここでは総督と呼べユフィ!公私のけじめを…』

 いや、総督も今ガッツリ私的な呼び方したよ。

『兎に角、何故あのような名誉ブリタニア人を騎士に!もっと相応しい人物はいるだろう!例えば、そう、マーヤ ディゼルとか!ユフィも私にそう言っていたではないか!』

『それは…そうですが…。でも騎士は枢木 スザクです!お姉様をお救いしたこともありますし、そのほかの実績や功績も十分あります…実力は十分騎士に相応しい方かと思いますが!?』

『だからここでは総督と呼べユフィ!』

 公私混同しまくりながら言っても説得力無いですよコーネリア総督…。うわぁ、嫌だなこの部屋に入るの。

「おや、ディゼルくん、来ていたのか。…入らないのか?姫様に呼ばれているのだろう?」

「あ、ギルバートGPギルフォードさん…。私、帰っちゃダメですかね」

「何故フルネームで呼ぶ…?君が全力で帰ることを私では止められないと思うが…その場合姫様のお怒りを鎮めることもまた私には出来ないと理解してほしい」

 つまり…入れと言うことだ。意を決してノックすると、扉が爆散した。うーん、安物の扉だったに違いない。

「おぉ、来たかマーヤ ディゼル!今丁度お前の話をしていたのだ!」

「マーヤ!…お姉様、マーヤにまで迷惑をかけるつもりですか!?私はもうスザクを騎士にすると決めたのです!」

「マーヤ!頼む、今から枢木の代わりにユフィの騎士になってくれ!」

 うーん、思ってたように面倒臭い状況だ。しかし、総督には悪いが私にはナナリーを守りたい気持ちがある。故にここはスザクがユフィと近しくなる事を妨害してはならない!

「申し訳ありませんが総督、私もユーフェミア副総督の騎士はご自身で決めることが良いかと思われます…」

「…お前までそんなことを言うのか…!私を裏切ったな!!」

 えぇ…理不尽だ…。

「姫様、先日テレビにて報道してしまいましたし、今更他の人物にというのは難しいかと」

「ギルバートGPギルフォード!我が騎士であるお前まで!!」

「姫様、何故フルネームを?」

「もう良い!貴様ら全員私を裏切るとは…!」

 この人、ユフィへの家族愛でおかしくなってるよ…大丈夫かなブリタニア皇族…。

「まったく…コーネリア…皇女殿下。みっともない声が廊下まで響いてるよ。」

「なっ…」

 突然の来訪者…振り返ればそこにいるのはノネットさんだった。

「たまの休暇に後輩の働きぶりを見に来てみればなんだい。みっともなく騒いでんじゃないよ」

「ノネット先輩!これは極めて複雑な政治的話で…」

「何言ってんだい。極めて単純な好みの話だろ」

「なななななななんのことかわわわわわわわからないな!」

 あー、やっぱりユフィと総督って姉妹なんだなぁ…。動揺の仕方がそっくりだ。

 

 結果として、ノネットさんの介入でコーネリア総督もスザクの騎士叙勲を渋々了承。…因みに扉の修理費用は私の自腹になってしまった。

 

 そして迎えたスザクの騎士叙勲式、私はダールトン将軍の隣でスザクの晴れ舞台を眺めていた。

「…そういえばダールトン将軍、私も参加してていいんでしょうか」

 騎士の叙勲式に参加しているのは貴族だらけ…そして私は社長令嬢とは言え貴族と比べられれば当然庶民に分類される。正直言って場違いだ。

「構わん。総督と副総督が許可を出した。それに副総督の護衛の一人であるならば軍属の貴様がいてもおかしくはなかろう」

 護衛なんてダールトン将軍だけで十分な気がするけど、まぁいいか

「枢木スザク。汝ここに騎士の誓約をたて、筋肉を鍛えブリタニアの騎士として戦うことを願うか」

「イエス ユア ハイネス」

「汝我欲を捨て大いなる正義のために、鍛えた拳で剣となり分厚い胸板で盾となることを望むか?」

「イエス ユア ハイネス」

「わたくしユーフェミア・リ・ブリタニアは汝枢木スザクを騎士として認めます」

 騎士として認められたスザクは貴族達に体を向け、ラットスプレッドフロントをするが、誰も声をかけない。拍手すらもなかった。しばしの沈黙の後のことだ。

「今日もキレてるよぉスザクくん」「胸板に鉄板でも仕込んでるのか?」

 声をかけたのは私達の上司であるロイド伯爵。伯爵だって聞いた時は心底驚いたよ…。そして続けて声をかけたのはダールトン将軍だ。ロイド伯爵だけならともかく、将軍であるダールトンさんには逆らえないのか、堰を切ったように貴族達はスザクに声をかけていった。

「キレてるキレてる!」「腕にスタントンファでも付けてんのかい!」「ナイスバルク!」

 良かったねスザク、少しずつだけどこうやって認められて…。スザクの言っていた中からブリタニアを変えるって言うのももしかしたら実現するかもしれない。

 

 騎士となったスザクと共に様々なパーティに出席することがしばらくの間私たちの仕事だった。とは言え、殆どが貴族の集まりだったり軍の偉い人の集まりだったのでスザクは居心地が悪そうだ。私も正直ハーフだと言うことがバレるんじゃないかとヒヤヒヤしながら愛想笑いを振りまく。

「ようやく終わったね…マーヤ、次のパーティはなんだったっけ?」

「確か…ブリタニア軍筋肉愛好会のタンクトップパーティよ。」

「そっか、ようやく気が休まりそうだね…」

 そう、ブリタニア軍筋肉愛好会ではその身の筋肉こそが正義であり真理である。愛好会としての催しの際は全ての階級は不問であり、より強靭な筋肉を持つ者が賞賛される。スザクはブリタニア軍筋肉愛好会でも5本の指に入る筋肉量を誇るので愛好会においては既に認められているのだ。そしてこの愛好会の現在のトップは…

「枢木 スザク、見事な筋肉で見事騎士の地位を手にしたな。これからも励めよ」

「はい、ダールトンさん!」

 そう、ダールトンさんだ。ダールトンさんはブリタニア軍筋肉愛好会のトップマッスルガイなのである。そしてそのトップマッスルガイによる司会でパーティは進み、高タンパク低カロリーな食材を使った豪華な料理をダンベル片手に空気椅子をしつつ食べながら私達はスザクを祝福した。

「それではブリタニア軍筋肉愛好会ベストマッスルであるマーヤ ディゼルによる締めの挨拶で本パーティはお開きとする。」

 私は頷き、マイクを受け取る。先程トップマッスルガイはダールトンさんだと言ったが、ベストマッスルは私だ。何故筋肉量の勝る私がトップでは無いのかというと、まぁ私は正式なブリタニア軍筋肉愛好会のメンバーではないからだ。誘われてはいるけとね。

「ブリタニア軍筋肉愛好会の皆さん、オールハイルマッスル!」

「「「「「「「「「「オールハイルマッスル!」」」」」」」」」」

 みんなスクワットをしながら私の話を聞こうとしているので凄まじい熱気だ。かく言う私も片手逆立ちをしながら腕立て伏せをしているのでかなりの熱量だろう。

「今回、名誉ブリタニア人と言う不利な立場でありながら、ブリタニア軍筋肉愛好会に所属している枢木 スザクがユーフェミア皇女殿下の騎士に任じられたことは実に喜ばしいことであります。これも偏に彼が努力し、筋肉を鍛えたからかと思います。思いますよね?思うと言え」

「「「「「「「「「「思います!」」」」」」」」」」

 よし、殴打はしないでおこう。

「我々も己の研鑽を辞めず、努力し、より強靭な筋肉を身に付けましょう!今回の騎士叙勲のように筋肉は奇跡を起こすのです!それでは改めて枢木スザクの筋肉を祝ってご一緒に!」

 私はすぐさま逆さ片手逆立ち腕立て伏せをやめてラットスプレッドのポージングを構える。そして会場のマッスルガイと共に叫ぶのだ。

「「「「「「「「「「「ナイスバルク!!」」」」」」」」」」」

 

 タンクトップパーティが終わり、次のパーティの予定を確認するとセシルさんが主催の特派でのパーティらしい。…。どうしよう、とてつもなく嫌な予感がしたので携帯でロイドさんに連絡を入れてみた。

「もしもし?ロイドさんですか?」

『なんだいマーヤくん』

「よろしければ全力でセシルさんを厨房に立てないように画策していただけませんか?今からダッシュで帰って私が料理するので」

『マーヤくん、残念でした!もう手遅れなんだ!』

 その言葉と裏腹に既にロイドさんの声は死にそうなものであった。…。覚悟を決めよう。そして…スザクにはぎりぎりまで言わないでおこう。

 

 そして始まった絶望へのカウントダウン。つまり地獄のセシル飯パーティの始まりだ。

「こんにちはセシル。今日は呼んでくれてありがと」

「…セシルさん、この方は?」

 ピンク色っぽい髪の人は初めて見る人だった。誰だろう?穏やかそうな人だけど…。

「二人とも初めてよね、紹介するわ。この人はカノン マルディーニ伯爵。シュナイゼル殿下の側近の方よ」

「よろしくね」

「あ、はい、よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。」

 シュナイゼル殿下の側近だなんて凄い人だけど…うーん、あんまり筋肉は無さそうね。…そう思っているとカシャリとシャッター音が鳴る。音のした方を見ると今度はピンク髪の女の子が立っていた。

「イレブンの騎士、記録。」

「こーら、アーニャ。彼は名誉ブリタニア人よ。」

 しかし、カノンさんの話を無視して女の子は私にカメラを向けてきたので、咄嗟にサイドチェストを決める。

「ムキムキな女の子、記録」

 そして何やらカタカタと文章を打っているようだ。ブログかな?

「…彼女はナイトオブラウンズのアーニャ アールストレイム卿よ。今日はシュナイゼル殿下の代理で、私はその付き添い」

 こんな女の子が、帝国最強の騎士ナイトオブラウンズの一人…?ノネットさんと比べるとかなり幼い印象だけど…。なんだろう、何故かこの子からは不思議な筋肉の波動を感じる…うまくは言えないけど、心の筋肉…とも違うような…?

「よろしくお願いします。アールストレイム卿。」

「…アーニャで良い。そこのムキムキちゃんも」

 むきむきちゃんってのは私か、まぁ確かにそうだけども。

「よろしくお願いします。アーニャさん」

 そして…一瞬アーニャがニコりと笑った。ふーん…私の次くらいには可愛いかも。

「えぇ、よろしくねマーヤ」

 

 そしてはじまってしまった地獄。早々に犠牲は出た。

 

「あら、何かしらこれ。見たことない料理ね。はむっ…」

 そう言って料理を口にしたカノンさんだったが、みるみるうちに顔色が赤から紫への虹の七色に変わっていく。人間の顔の顔ってあんなコロコロ変わるんだ…例えるなら…そう、ゲーミングカノンさんだ。

「ミ°ッ」

 あ、倒れた。

「倒れたカノン、記録。」

 カノンさん…南無阿弥陀仏…。

「もしかしてロイドさん、この料理って…!」

「そうだよスザクくん。これはセシル君が作ったんだ〜!」

 ロイドさんの目は死んでいた。そして白色になったカノンさんは口から泡を吹いている。

「スザク、私はカノンさんを病院に運ぶからあとはよろしく」

「待つんだマーヤ!カノンさんを運ぶなら僕も…」

 私は首を横に振る。

「主役が離れちゃダメでしょ?それじゃあパーティ楽しんでね!」

 私はカノンさんを担ぎ走り出…そうとするとアーニャさんに腕を掴まれた。

「私も…お願い…!」

 この地獄から逃げ出すまたとない機会に勘づいたらしい。流石はラウンズ…引き際を分かっていると言うことか、私は二人を抱えてその場を逃げ出す。

「マーヤ!!君は僕を!!!裏切ったな!!!!」

 スザクの罵声を無視して私は病院へと駆けた。

 

「ねぇ、マーヤ」

「なんですか?アーニャさん」

 カノンさんをお姫様抱っこしているのでアーニャさんは私に肩車されている状態だ。

「貴女、今幸せ?」

 …まぁ、あの地獄から正当な理由で逃げ出せたのだ。不幸ではないだろう。

「ええ、比較的幸せかなと思います。」

「そう、よかった。」

 …?

「…視線が高い。新鮮。」

 アーニャさんは小柄だし、背が高い状態がどうやら新鮮な体験のようだった。

 

 因みに、ことの顛末をスザクに聞いたところ、トイレというていで一旦その場を後にしたスザクはランスロットを起動し、ヴァリスで料理を処理したらしい。セシルさんにはボコボコにされたらしいが…

 

 死ぬよりはマシだよね!




特派所属のマーヤだとルルーシュに関係のない話がキングクリムゾンされるせいで原作よりも話数が大分前倒しになりますね。

美少女JKマーヤの貴重なタンクトップ回にしてみんな大好きアーニャのゲスト出演回
…まぁ、ミートギアス的には他のラウンズのあの人の方が人気ありそうですけども


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STAGE15′

 まさに地獄であった特派のパーティの翌日、今回スザクが招待を受けたのはナナリー企画の学校でのもの。聞けばこの日のために咲世子さんとルルーシュとミレイ会長がいくつかの日本食とパーティ料理を用意してくれたらしい。

「見事な日本食ねルルーシュ」

「マーヤか。あぁ、すぐにアレンジしたがるミレイ会長を止めるのは大変だったよ。こんな事ならお前にも手伝ってもらうべきだったな」

「呼んでくれれば…あー、でも私最近パーティ続きだったから難しかったかも」

 因みにスザクはと言うと、涙を流しながらうま…うま…と料理にがっついていた。うん、結局昨日は食べれずじまいだったろうしそうもなるよね。

「スザクの笑顔、記録。」

「ん?」

 カシャリというシャッター音がしてまさかと思って声の方を見てみれば何故か学園中等部の制服に身を包んだアーニャがいた。

「アーニャさん…?なんで…?」

「この前パーティで料理食べられなかったから。日本料理…アーニャ、わくわく。」

「マーヤ、この人は?」

「あぁ、うん、この人はアーニャ アールストレイム卿…ナイトオブシックスをやってる人」

 あ、ルルーシュが持ってたお皿落とした。まぁ、私がキャッチするから問題ないけど。

「…なんでそんな人がウチの制服着てパーティに出てるんだ!?」

「またミレイ会長の悪ふざけなんじゃない…?」

「…あり得る…。」

 私たちにはお構い無しにアーニャさんは料理を摘んで頷いていた。どうやら美味しいと思ってくれているようだ。

「お兄様、それに…この熱量、マーヤさん?」

 現れたナナリーの頭を軽く撫でつつ私は笑いかける。

「ナナリー。スザクのために素敵なパーティを考えてくれてありがとうね。」

「はい、私とっても嬉しくて」

 そんなナナリーの存在にアーニャさんも気が付いたようだ。

「アーニャさん、良ければ手を貸していただけますか?」

「?問題ない。」

 アーニャさんの手を引き、ナナリーに触らせる。

「ナナリーは目が見えないから」

「成程…。初めまして。私はナイトオブシックスのアーニャ。よろしく。」

「まぁ!声の感じ私と余り歳が変わらなさそうなのに、ナイトオブラウンズだなんて凄いんですね!私はナナリーです。」

 歳が近いからか不思議とすぐ馴染めているように思える。…もしかしてこういう時意外と堂々としてるのはやっぱ皇族の血なのだろうか?

 そんな時、扉が開いてみんなが今度は誰だよという感じにそちらを見た。これがもしシュナイゼル殿下とかだったら私がブラインドになって二人を見えないようにしないと…

 

「こんにちは!」

 

 やって来たのはロイドさん…とニーナ。なんで一緒にいるんだろ?メガネ仲間なのかな?

「あれ?ロイドさん?何か用ですか?」

「うん、ちょっとね〜。スザクくんとマーヤくんを呼んでくれるかい?」

 私は既に鍛えた聴力で捉えていたため、直ぐに到着し、スザクの方もみんなに声を掛けながらみんなを掻き分けながらやってきた。

「ミレイちゃん、知ってる人?」

 あー、そういえばロイドさんとミレイ会長って婚約者だっけ。この前聞いて驚いたんだよね…

「僕のフィアンセ」

 あ、リヴァルが倒れた。

「倒れた人、記録」

 現場保存は大切だもんね。流石はラウンズ。

「ロイドさん、もしかして軍務ですか?」

「そ、大事なお客様が船でいらっしゃるんでね。お出迎えを。もちろんランスロットとユーフェミア皇女殿下も一緒に。アールストレイム卿もそれのついでで昨日のパーティに来たって訳。」

 

 後日、式根島というところでロイドさんの言う大事なお客様…要はシュナイゼル殿下を待っていると、なんとゼロが仕掛けて来た。幸いボールスも修理は終わっているため、私とスザクがいればユフィを守るくらいはできるだろう。残念なのはアーニャさんはナイトメアを置いてきてしまっているので直接戦えないことか。

「司令部が何者かによって攻撃を受けているとのことです!」

 この状況下なら間違いなくゼロだ。…私がなんとかしないと…!

「ご安心くださいユーフェミア様、自分が守ります!」

「いいえスザク、ここにはマーヤが居ます。あなたは司令部の救援に向かってください」

 その言葉にスザクは頷いていた。

「騎士と皇女殿下のイチャラブ、記録。」

 アーニャさん…?マイペース過ぎない?

「あ、それ今度データ送って貰えます?」

 ユフィまで…こんな時にマイペース過ぎるよ…

 

 暫くするとスザクはどうやらゼロを発見したようだ。通信が入り、そのままランスロットの座標が移動していく。

『ゼロのナイトメアが砂地に飛び込みました、自分も後を追います!』

 それから直ぐにランスロットに異変が起きたらしい。

『ロイドさん…これって』

『…ゲフィオンディスターバーだね。まさかラクシャータが…』

「…そのゲフィオンディスターバーってのはなんなんですか?」

 聞きなれない言葉に思わず口を出してしまった。

『簡単に言えばナイトメアを動かすサクラダイトに影響を及ぼしてナイトメアを動かなくするシステムよ』

「そんなものが…。」

 そしてどうやらスザクの方に誰かから通信が入ったようだ。

『こちらはブリタニア軍式根島基地司令フッキン中佐だ。これよりテロリストに対し地対地ミサイルを撃ち込む。枢木少佐はその場にゼロを足止めせよ』

 …!?それってつまりスザクごとゼロを殺すってこと!?ふざけてる…!人の命をなんだと思ってるの…!?

『ランスロットを壊す気!?』

 そこじゃないでしょロイドさん…!しかし、スザクの反応だとどうやらそれを実行するつもりのようだ。馬鹿げている…!そんな選択をして誰が喜ぶの…!?

『マーヤ!私をスザクのところに連れて行きなさい!』

 …!そうだ、皇女殿下であるユフィがいけばあのふざけた作戦を止められるかも!私はボールスでユフィを抱え、スザクの元へと走り出す。

「スザク!今そっちに向かってる、必ず生き延びて!どんな苦難でも貴方なら乗り越えられる、だから…!」

 そうだ。スザクはそんじょそこらの人間とは鍛え方が違う!こんな逆境くらい乗り越えられる!

『…分かった。僕は…鍛える!ゼロ、相撲で勝負だ!』

『ちょっとちょっとちょっとぉ!?何勝手に動いてるのマーヤくん!?ボールスまで壊す気!?』

 空気を読め…!そのメガネ後で叩き割ってやろうか…!

『私が死ぬと分かっていてもまだ作戦を続けられますか!?』

 ユフィはユフィで時間を稼ぐために軍部に通信をしてくれている。残念ながら応答はなかったが関係ない、このまま突っ込む!

 

 全 速 前 進 よ !

 

「ユフィ、今のうちにコクピットへ!」

『わかりました』

 コクピットにユフィを乗せ、シートに捕まって貰う。

『こんな時に邪魔を…!』

 私の前に立ち塞がったのはナリタの時に出会った緑の髪の女の人が乗っているだろうナイトメアだ。今回は前回とは違う、スピード勝負だ…!

「大盤振る舞いよ!二投流、ダブルスロウ・ヴァリス!」

 開幕からスロウ・ヴァリスを同時に二つ投げつける。

『そんな武器なんかッ!』

 現れたのは赤いナイトメア。その右手が赤く光ったと思うとスロウ・ヴァリスの一つを防いだようだ。

「止めた!?スロウ・ヴァリスを!?」

 だが、一つは着弾して周りをぶっ飛ばしている。なんとかしてスザクを助けなければ…!

「どっけぇぇぇぇぇ!!!」

 プロトヴァリスを構えて兎に角乱射する。敵の数は多いのだから狙わなくても勝手に当たってくれる筈だ。

「マーヤ、あの機械何かしら」

 ユフィに言われて視界に入ったのは謎の円盤機械。砂地に直置きされ、それはスザク達のある砂の窪地を囲むように並んでいる。こんなところに普通の機会があるはずがない。それに見覚えのない形…

「まさかあれがゲフィオンディスターバー!?だったら!」

 狙いを定めゲフィオンディスターバーらしき機械にヴァリスを放つ。

『これ以上邪魔をするな!』

 振りかぶられた薙刀を左腕を犠牲に受け止め、ガントレットを展開する。

「そこだァ!!」

 振りかぶった右拳をナイトメアの腹に叩き込む。そして次の瞬間、私たちのもとに影が落ちた。

「あれは…お兄様のアヴァロン!?」

 ユフィのお兄様…ってことはシュナイゼル殿下!?見上げると、二つの赤い光が見える。そして私達の元に赤い光が降り注ぐ。

 

 それから先、何をしたかは覚えていない。ただ必死に生き残ろうとした後は覚えている。

 

 

 私は…私は何をしていた?ここは…建物の中?痛い。突然頬を叩かれた気がする。

『お前なんて本当の…!』

 本当の…なんだろう。白衣を着た…ダメだ。顔は見えない。

 

『…………………ブリ……アが……る……の…………苦…!凌………い、……よ!』

 熱い…熱い…。炎と煙で前が見えない。

 苦しい…苦しい…。炎の向こうに人影が見える…

『マーヤ…強く、生きて!』

 あれは…

 

「…はっ!?」

 目覚めたのはどこかの浜辺。この感じ…気候や植生の感じからは式根島からは遠く離れていないようだけど、別の島な気がする。まずは水の確保だろう、耳を澄ませると波とは別の、水の流れる音がする。滝、だろうか。暫く進むとお目当てのものに出くわす。

「あった」

 滝だ。海を漂ったから少し髪がベタつくと言うこともあり、取り敢えずパイロットスーツは脱いで滝にあたろう。…実は滝行に興味があったのでいい機会だ。脳天に強く水の当たる感覚が実に刺激的で心地よい。座禅を組んで目を瞑ると心が落ち着く。

 

 結果から言うと、落ち着きすぎて気づいたら夜になってた。どうやら眠ってしまっていたようだ。多分滝がいい感じに入眠のツボを刺激したに違いない。恐らくこの島にスザクやユフィも流れ着いてる筈だけど…そう思ったが流石にこの暗さの中。足場の悪い森の中を歩くのは危険だ。一先ずその辺の木で摩擦を起こして火を起こし、水場で夜を明かす事にした。適当に石を拾い、素早く水中に投擲すると魚が浮かんでくる。焼き魚で腹を満たして眠った。

 

 次の日、森の中を歩いていると人や機械の音が聞こえて来た。誰かいるのかと歩いていくと…

「おや、そのパイロットスーツ…ロイド、君の待ち人がご到着だよ」

「マーヤくん、生きてたんだね、お め で と う !君のお陰でボールスはまた大破だよ。直したばっかりだったのにねぇ!!」

 それは…あー、ごめんなさい。メガネ割るのはやめとこう…。流石に申し訳なくなって来た。

「それにしても君がここにいると言うことはユフィも生きてここに流れ着いている可能性が高いね。」

 …ユフィ呼び…この気品…まさか…

「あぁ、名乗るのが遅れてしまったね。私はシュナイゼル エル ブリタニア。」

「シュナイゼル殿下…!こちらこそ名乗るのが遅れて申し訳ありません、マーヤ ディゼルです!いつも子供達がお世話になってます!」

「ははは、やめてくれないか?私はただ当たり前のことをしているだけだよ。」

 …ん?ユフィを巻き込みかねない作戦…それもユフィの騎士を殺すようなあの作戦、指示する側も相当な地位と権力が必要な筈、それに『お兄様のアヴァロン』から放たれたあの光…

「教えて下さい。あの作戦は殿下が?」

「えぇ、私です。それが何か?」

「スザクやユフィを巻き添えにしようとしたんですか」

「結果的にそうなるね。でもあの場合優先すべきは…おっと」

 私の拳は一人でに動いていた。その拳はシュナイゼル殿下の顔面…ではなく掌に収まり、今尚震えている。…シュナイゼル殿下、この人やっぱり強い…!

「貴様!殿下に向かって何を!」

「うるさいデブ!」

 突如現れたモノクルの男に叫び、私はシュナイゼル殿下を睨む。

「君ほどの筋肉があればあの程度、ユフィを守りつつ切り抜けるなど簡単だと思ったが、違うかい?」

「ではスザクは!?それにあの程度のミサイルでゼロが死ぬとは思えません!…最初からあの赤い光を叩き込むことが狙いだったんでしょう!」

 あの光からはかなり危ないものを感じた。ただの爆発ならいきのこれるかようせいはあるが、あの光はまずいと直感が告げていたのだ。

「だったらなんだい?」

 この人…!こんな人だとは思わなかった!私は一旦バク転で距離をとり、手をついた時に拾っておいた石を投擲する。

「その程度、構えをとる必要もないね」

 石を弾かれたが関係ない、本命はこの…!

「君は今から『その澄まし顔にドロップキックを叩き込んでやる!』と言うね?」

「その澄まし顔にドロップキックを…何!?」

 いつのまにかシュナイゼル殿下は両足を肩幅に開き、片手を下へ、片手を上へと構えていた…いけない!あの構えはまずいと直感が…

「良い機会だから教えてあげよう、マーヤ。的確に相手の弱点を切り裂く私の手刀が天から降り注ぎ、如何なる攻撃をも受け流す技を地から放ち、そしてそれを可能にする私の知略による先読み。これを天地知闘の構えと言うんだ。」

 瞬間、私のドロップキックが簡単に弾かれ、直様私の延髄に手刀が叩き込まれる。

「がッ!?」

 う、動けない…あんな的確に…つ、強い…!

「中々良い動きだけれどまだまだ感情に左右されすぎているね、それでは私どころかクラリスにも一撃を与えることはできないよ。」

 微笑むその顔からクラリスさんの名前が出た…そうか、この人が…クラリスさんの…。碌に動かない体を必死に動かしなんとか立ち上がる。

「おや、あまり無理はしない方がいい。普通の人なら3日は寝込む手刀を叩き込んだからね」

 結局そのあと私は膝から崩れ落ち、木陰で身体を休めることしかできなかった。中で何か音がして、そのあと黒い大きなナイトメアが飛んでいった気がするけど私はそれを眺めているだけだった。




四人で仲良くキャンプしてるのにマーヤだけソロキャンプです。悲しいね。


・狂四郎2030(宇治田)


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STAGE16′

 ご機嫌よう、読者の諸君!私は澤崎 敦。

 現在エリア11…いや、日本はゼロにより混乱している。今こそ私が独立主権国家日本を設立し、日本を取り戻す!

 私には強力な後ろ盾もある。待っていろブリタニア…!

 それでは本編開始!


 私がシュナイゼル殿下に暴行を働こうとした件についてはシュナイゼル殿下の『組手をしただけ』という発言で不問にされたらしい。人としての器が違うということか。そしてスザクはというと、一時は命令違反で捕まったのだが非常時のことだからという事で不問になったそうだ。

 しかし、スザクは命令違反を犯したことを気に病んでいるらしい。

「スザク」

 私はそんなスザクに声を掛けた。…スザクは騎士勲章を手に思い詰めた顔をしている。

「それ、どうするつもり?」

「…返そうかとも…思ったんだけどね。踏ん切りが付かないんだ。」

「スザクは命令より私との約束を守ってくれたんでしょ?生きるってさ」

「…そうだね。あの時僕は本当に死ぬかと思ったよ。黒の騎士団の人達は襲ってくるし、ゼロも立ち塞がった。なんとか乗り越えてランスロットを乗り捨てつつ、海を走って追ってくるゼロから逃げて走ってたら高波に飲み込まれて…。」

 そんなことがあったのか…。

「でもあの神根島でユフィに合流できて良かったよ。あ、でも意外かもしれないけどユフィって結構野草とか木の実に詳しいんだ。」

「へぇ、そうなんだ」

「そういえばマーヤもあの島で遭難してたんだよね?何してたんだい?」

 …言えない、滝行中に寝てほぼ何もしてないなんて…!

「み、水辺で魚を取って食べてたよ…」

「そうなんだ。僕も素潜りして貝とか蛸とか取って食べたんだ。でもユフィってタコが苦手みたいでさ」

「タコ!?タコって食べられるの!?」

「あ、そっか。マーヤもブリタニア人だもんね、タコは馴染みがないか…僕が幼い…日本だった頃はよく食べたんだよ。たこ焼きとか刺身とかさ。」

 そうなんだ…。じゃあ今度施設にタコ差し入れたらみんな喜ぶのかな…?

 

 そういえば、私があの島で見た黒いナイトメアはガウェインと言うらしい。どうやらゼロに奪取されたらしく、ガウェインにはハドロン砲と呼ばれるヴァリスに匹敵する強力な兵器が積まれており、ドルイドシステムと呼ばれる高性能な解析システムも搭載していたとか…。更に単騎で空を飛ぶ事も可能…まぁ、性能マシマシ装甲カタメなナイトメアということか。更に恐ろしいのがシミュレーション上、ガウェインはその巨大さ故、パイロットの生死を無視した挙動をすれば…例えばランスロット並みの動きをさせるとか…ランスロットの比にならない高威力格闘攻撃が可能らしい。ロイドさん以外の科学者はそんな動きは現実的で無いと否定しているらしいが、ロイドさんが興味本位で私の生体データで試してみたところ、生死に影響はなかったらしい。つまり、私以上の筋肉を持つゼロであるならば実現可能と言う事だ。

 

 そして、ある事件が起きた。

『我々は独立主権国家日本の設立を宣言する!』

 澤崎と呼ばれる貧弱なオッサンが何やらほざいていた。そんな筋肉で今更出てきて何を言っているのか…。私は今回はボールス修理中のため、オペレーターの一人として作戦に参加することとなった。モニターにはスザクのランスロットからの映像とコクピットのスザクが映っている。

「スザク、ランスロットの調子はどう?」

『うん、問題無いよ。フロートユニット…まさかランスロットで空を飛ぶ日が来るとは思わなかったけどね。』

「そうね」

 そしてスザクはアヴァロンから発艦し、空を駆けていた。スザク…貴方は今から敵陣に突っ込むことになる…でもきっと大丈夫、スザクの努力は私もよく知っている。

 そして、スザクは澤崎とかいうオッサンとの会話に気を取られたのが発端で追い詰められてしまった。ヴァリスは破壊され、エナジーも切れかけ、フロートユニットは破壊されているので逃げることすらできない。四方八方を囲まれている。まさに絶体絶命ぉ。

『マーヤ…みんなに代わりに謝っておいてくれるかい?』

「馬鹿言わないで!」

 筋肉量こそ私に当たるがそのタフネスは私にも引けを取らない。だからスザク…

 

「貴方ならどんな困難をも乗り越えて、鍛えられて帰ってくるはずよ!」

『そうだね…僕は…いや、俺は…鍛える!』

 するとスザクはMVSを投擲し一体を破壊、更に突き刺さったナイトメアごとバイブレーション機能をオフにしたMVSを持ち上げ、鈍器のように振り下ろしてもう一体を破壊、スラッシュハーケンによるこうげきで4体を同時撃破。

『残り二体…!』

 しかし、その二体は空から降り注ぐ赤い光によって粉微塵に消し飛ばされた。

「!一体何が!?…これは!?」

 スザクがランスロットで見上げなことで私にもそれが確認できた。ガウェインだ。

『枢木スザク、生きているか?』

「あの声はゼロ!?まさか最前線に…」

 するとガウェインはランスロットに向けてその指のスラッシュハーケンを放った。

『くっ!』

 なんとか躱したスザクだったけど、私のモニターにはその動きでランスロットのエナジーが尽きたことが確認できる。

『万事休すか…!』

『ふん、どうやらエナジー切れのようだな。丁度いい。我々は今から澤崎を拘束するため敵の司令部を叩く。精々そこで指を咥えて待っているといい。』

 こうしてブリタニアの作戦は失敗し、澤崎はゼロによって撲殺、中華連邦の首謀者には逃げられる結果となってしまった。

「残念だったねぇマーヤくん、ボールスが壊れて無ければ君も出れたのにねぇ」

「…嫌味ですか」

「あは〜!もうちょっと丁寧に扱ってほしいとは思ってるよぉ。でも、これで黒の騎士団の勢いは益々増すことになる…お め で と う!仕事が増えるねぇ」

 でも、ロイドさんのいうことは尤もだ。私が雑な戦い方をしてボールスを破損していなければ状況は変わっていたかもしれない。この一件でブリタニア…コーネリア総督の支持には少し揺らぎが見える。そして逆に黒の騎士団の勢いは増したように思えるのだ。このままじゃ…。

「ねぇ、マーヤくん。電話鳴ってるけど?」

「えっ?あ、ホントだ。」

 相手は…学校?こんな時間になんだろう。

「はい、もしもしディゼルです。」

『こんばんはディゼル。私だ。…さて、君は自分の立場は分かっているのかな?』

 …立場…?抽象的な会話だなぁ…。

「美少女女子高生、とか?」

『不良学生だよ!!!お前とルルーシュ!お前ら二人は学校をサボりすぎだ!!いくら成績優秀だろうと出席日数が足りないという事実!このままだと留年しかないぞ!』

 別に私は留年でも良いしなぁ…。

『因みにディゼル、お前今『仕事あるから留年でも良い』と思ってるだろう?そんなお前に良いニュースがある』

 …この場合悪いニュースの間違いでは?

『お前の保護者のクラリス ガーフィールドさんから言伝だ。「もしも留年したらお仕置きです!」だそうだ』

「補習、喜んで受けさせていただきます!」

 クラリスさんのお仕置き…何されるか分かった物では無い…!なんとか留年は回避しないと!!

 

「…であるからして」

 黒板の前に立ち、私が既に習得済みの知識を垂れ流す教師は無視しつつ、私はペンを使ってのモールス信号でルルーシュとの会話を試みた。

『ねぇ、ルルーシュ、理解できる?』

『モールス信号か、古典的な手を…。何の用だ?』

 流石はルルーシュ。即座に反応をしてきた。ルルーシュの場合は指だけど。

『補習、スザクの方が必要だと思わない?』

『あぁ…。まぁ、あいつはお前と違ってサボらないからな。成績はかなり赤点ギリギリらしいが』

 それとは対照的に私たちは常にトップクラスの成績だ。こんなの不合理である。

「おい!ディゼル、お前聞いてるのか!」

「先生、黒板のそこ、人物の名前の綴り間違えてますよ」

「あ、ホントだ」

 私ほどの脳筋であれば人とモールス信号で会話をしつつ先生の話を聞いたり黒板の文字を確認するくらい造作もないことだ。

『なぁ、マーヤ』

『何?』

 

「おいディゼル!聞いてるのか!」

 …。ん?いけない、ぼーっとしてた…!?

『教科書42ページ16行目だ。』

「はい、その考え方については…」

 ルルーシュからのアシストによりその場は切り抜けた。…うーん、流石にモールス信号とのマルチタスクは私ほどの筋肉でも負荷が強過ぎたのかな?

 それからもモールス信号で雑談をしながら募集を終えた。去年はサボってすっぽかしてたけど、近々ある文化祭の準備が大変とのことだ。私も手伝わないといけないらしい。それと、文化祭では何かと忙しいと思われるルルーシュに代わりナナリーと文化祭を回ってくれとのことだ。

 そしてルルーシュの予想ではスザクという存在もあり、今年のアッシュフォード学園文化祭は日本人にもオープンなものとなるそうだ。陽菜達も連れてこれるか施設の人に聞いてみよう。

 

 そして迎える文化祭…の準備。工場で製作された大型の謎の機材を私とルルーシュ、そしてガニメデと呼ばれる旧式ナイトメアに乗ったスザクの3人で運んでいく。

「重たい…これなんの機材なの!?」

「巨大ピザ作りのための特製オーブンだよ」

「…デカ過ぎない!?」

「直径15メートルのピザを作る予定だからな」

 馬鹿じゃ無いの…?そんな訳で機材の運搬、さらには組み立て作業を行う。

「三人ともご苦労様!いやー、流石に3人もいると力仕事も楽ねー!」

 普通こういうのは業者を雇うのでは…?

「会長、業者に頼む分を俺達の労働に差し替えて予算を浮かしたんでしょう?計画では元々12メートルって話だったはずです」

「世界一のピザを作るんだからよりおっきな方が良いに決まってるでしょ?」

 …流石会長って感じだ。

「あの、お疲れ様ですマーヤさん」

「あ、ナナリー。」

「はいこれ、お疲れでしょう?どうぞ」

 そう言って笑顔で渡されたのは水のようだ。ありがたい、力仕事で喉が渇いているところだ。

「ありがとう、気がきくのねナナリー」

 そして受け取った水を一気に喉に流し込む…美味い!キンッキンに冷えてやがる…!渇いた体に染み渡る、犯罪的な美味さだ!

「はい、お兄様にも」

「ありがとうナナリー」

 そう言えば学園祭、私がナナリーと回るんだっけ。

「ナナリー、学園祭はよろしくね」

「はい。…でも私が一緒だとマーヤさんにご迷惑じゃないでしょうか?」

「平気よ、私ほどの筋肉があれば迷惑になんてならないわ!」

 そう言って私は力を込めた腕をナナリーに触らせる。

「…そうですね、よろしくお願いします」

 笑ったナナリーを優しく撫でる。施設の人も陽菜達を連れて来ることを許可してくれたため、紹介でもしようと思う。スザクとも仲の良いナナリーなら子供達とも仲良くなれるはずだ。

 

 呼び出されたあの日から最早日課となったその行事、ユフィの部屋を訪れた私はユフィの気配を探る。

「…。」

 これは…

「扉の裏かッ!」

 ユフィの拳を腕でガードする。うん、中々キレのあるパンチになってきた。毎日の鍛錬の成果が出ているようね!

「また防がれちゃいましたか、残念です」

「まだまだユフィに遅れをとるか私じゃ無いわ。でも、こんな短期間にここまでの急成長、やっぱりユフィには才能があると思う。」

 ユフィは服を着ていれば見た目はあまり変わっていないように見える。が、実際には腹筋は割れているし、腕も脚もかなり引き締まっている。胸筋は…あー、脂肪がまだまだ多いわね。鍛錬不足。そう、これは鍛錬不足よ…!ふんだ!!

「そういえば明日は確かアッシュフォード学園の文化祭よね。マーヤ達はどんなことをするの?」

「巨大なピザを作ります。直径15メートルですよ」

「そんなに!?凄いのね…」

 そんな会話に気を取られるとでも思ったのか、ユフィは容赦ない顔面狙いの拳を突き出して来る。私はそれを最小限の動きで躱し、ユフィのお腹を軽く小突く。

「これもダメ…流石マーヤね」

「まだまだ事前動作がわかりやすいのよ。…とは言え、くれぐれも気を付けてね。今のユフィほどのレベルにもならばスザクほど鍛えた相手なら兎も角、普通の人…特にお年寄りや子供を本気で殴れば殺しかねないわ」

「大丈夫です。私はこの力を大切なものを守る為以外には使うつもりはありません。」

 どこまでも優しいユフィに私は笑顔で頷く。

 そう、筋肉とは他者を傷つけるために非ず。己と他者を守る為にあるのだ。

 

 間違っても人を殴り殺すなど…あってはならない。




Q.なんでルルーシュはランスロットを攻撃したの?
A.ご想像にお任せします。

いやー、ユフィのダイエットは順調みたいですねー(棒読み)

原作よりも筋肉勢が多い為地味にピザの大きさが大きくなってます


・カイジ(カイジ)


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STAGE17′

読者の諸君こんばんは…全く、何故私が護衛任務でエリア11などに…

ゼロとやらの抹殺なら兎も角…。
皇帝陛下もご存じのはずなのにな、私が人殺しの天才だと。

さて、そろそろ目的地だ。本編開幕といこう。


「皆さ~ん!お待たせいたしました!これよりトウキョウ租界でいっちばんオープンなアッシュフォード学園の学園祭を始めま~す!」

 今日は待ちに待った学園祭だ。ナナリーと一緒に回る為、初めはこの放送室から始まる。

「スタートの合図はこの一声から!」

「あの…いいんですか?」

 スタートの合図はナナリーがすることになっている。それは、目も見えず脚も不自由なナナリーを気遣い、会長が学園祭に携われるようにと配慮してくれたのだろう。

「いいの!」

「ほらほら早く、みんなナナリーの一声を待ってるんだよ」

「それでは…にゃぁ〜!」

 ふふ、可愛い。すると、外がなんだか騒がしい気がする。

 

『『ナナリーーーーーーーーー!!!!!!!』』

 

 あの大声は…スザクとルルーシュね。人目を気にせず叫ぶなんて、よほど愛が溢れてしまったようね。私も異性だったら…うん、わからないわ。

「じゃあ行きましょう、ナナリー!」

「はい」

 ナナリーの車椅子を押し、ナナリーでも楽しめそうな出し物を見つけては突撃する。10秒をピッタリを目指すストップウォッチチャレンジでは見事10秒ジャストを叩き出し、ブリタニア皇族皇位継承権並び替えクイズも難なくこなしていた。…まぁ、元皇族なら余裕なのかな?吹奏楽部の音楽会などを楽しみ、約束の時間になったので陽菜達と合流した。

「マッチョお姉ちゃんだ!」「肩にナイトメアでも乗っけてんのかい?」「今日もキレてるキレてる!」「ナイスバルク」

「みんな久しぶり」

 私の腕にぶら下がる陽菜達といつものやり取りを交わす。やはり陽菜達との交流は良いものだ。

「この人が前言ってたナナリーさん?」「かわいー!」「お姫様みたーい!」

 うん、実際お姫様なんだよね…

「…そうよ、私の友達のナナリーだよ。ナナリーにも紹介するね。この子は陽菜。それでこの子が…」

 一人ずつ、陽菜達の手を取りナナリーに触れさせる。たまにナナリーに手を触れられて頬を赤くしてる男子がいたりするが自己紹介はすぐに終わった。

「みなさん、初めまして。私はナナリー ランペルージと申します。ご覧のように私は目も見えず自らの足で歩くことすら出来ません。そんな私でよければ是非仲良くしてくださいね」

 ほんのり自嘲気味ながらも微笑むナナリーだが、子供達は素直だ。自分達も日本人…イレブンの孤児という弱い立場であったことが心のどこかにあったのか、みんな口々にそんなの関係ないと言ってくれていた。そして…あー、なんというかこうやって子供達と交流しているナナリーを見ているとまさに皇族というべきなのか、堂々とかつ威圧のないやり取りを見せつけられた。ユフィとは腹違いとは言え実の姉妹だし、似ているところがあるのは必然なのかもしれない。子供達はそれからは別のところを見て回るということで職員の人たちに任せて別れた。

「じゃあナナリー、続きを見て回ろっか」

「はい」

 時間的にはそろそろ世界一のピザ作りだろうか?

「あら?マーヤ!探したのですよ」

 声をかけられ振り返ると、そこにいたのはおそらく変装のつもりで身に付けているのであろう帽子とサングラスを着用したユフィだった。うん、その特徴的なピンクの癖毛を1ミリも隠せていない時点で変装のへの字も無い。なんで誰も指摘しないの?

「その声…ユフィ姉…あっ」

 うん、ナナリー、実は全部知ってるから良いんだけども私はユフィとナナリーの関係を知らない筈なのよ…突然のことに驚いて口走っちゃったのは仕方ないんだけどさ…、

「あー、えっと、マーヤ。悪いのだけれど何処かで話せないかしら…?」

「それならクラブハウスにお願いします。マーヤさん、事情は…そこでお話ししますので」

 私は頷き、ルルーシュ達の住んでいる部屋に向かった。そこで紅茶を準備し、先に着く。先に口を開いたのはユフィだ。

「実はね、私と…ナナリーは実は姉妹なの」

「ナンダッテー」

「驚かせてしまって済みません。今まで…内緒にしていてごめんなさい」

 謝るナナリーだったが、こっちはルルーシュとスザクの会話を盗み聞きしているのだ。謝られるとこちらが申し訳無いのでやめて欲しい。

「あ、この話は出来れば秘密にしておいていただけますか?それにユフィ姉様も…私が生きていることはどうか秘密に…お願いします。」

「それは…」

 悲しそうな顔をするユフィだったが、恐らくナナリーの事情を察したのだろう。最後には納得したのか頷いていた。

「それにしても驚いたわ!まさかマーヤとナナリーが知り合いだったなんて!…あら?だとしたらスザクとも?」

「…スザクニ関係ガアルノデスカ?」

「…マーヤさんは知りませんよね、私とスザクさんは実は昔に面識があったんです。その、人質時代にお世話になっていたのがスザクさんのお家でした」

「ソウダッタノネー」

 ここはもう驚いているフリをして誤魔化すしか無い。我ながら筋肉をフル活用しての完璧な演技だ。

「…これが公にできない秘密だとしてもナナリーが生きていてくれて私は嬉しいわ」

「はい、私もユフィ姉様とまたお話ができて嬉しいです!」

 そんなやりとりを見ていると実に微笑ましい。私も妹とかお姉ちゃんが居たらこんなふうなのだろうか。

「そうだ!ユフィ姉様、覚えてますか?昔お兄様を取り合って喧嘩したこと」

「覚えてる!私とナナリーと、お姉様と…あら、あと一人は誰だったかしら?兎に角四人でルルーシュを取り合って四肢を引っ張ったのよね」

「そうですそうです。誰と結婚するのか今夜決めてと迫ったんです。結局四肢脱臼の大怪我させてお母様に怒られちゃいましたけど」

 ルルーシュにも女の子に四肢を脱臼させられる貧弱な時代があったのね。…うん?今ユフィってお姉様って言った?ユフィのお姉様…まさかコーネリア総督!?何やってんだあの人。

「あ、済みませんマーヤさん。二人だけで盛り上がってしまって」

「ううん、気にしないで。ルルーシュにも貧弱な時代があったって分かって面白かったから」

「そうね、ルルーシュも本国にいた頃は確か筋トレを嫌がってたような?」

「お兄様はスザクさんに会われてから筋トレに励み出したんですよ」

「へぇ、そうだったんだ」

 それから少しだけの間姉妹水入らずの話をしてもらう為席を外した。ルルーシュ達のメイドさんである咲世子さんと、ユフィの護衛のサラさんに暫く外すと伝えて外に出る。しばらく歩いているととある集団が目に入る。

「世界一のピザ、アーニャわくわく」

「楽しみモニ〜」モニ〜

「学生の祭りと聞いていたが想像以上のクオリティだな、ドロテア」

「そうですね、エニアグラム卿…それにしても私はこのオレンジキャンディが気に入りました。そのままでは少し酸味の強いオレンジをあろうことか甘い飴でコーティングするとは。うーむ、中々興味深い。」

「やれやれ、ドロテアのグルメ癖が出たか…。」

 …。なんだあの集団…。アーニャさんに…ノネットさん。と言うことは他の人達って…

「なんだ?そこのおん…女?お…ん、な?女…で良いんだよな?スカート履いてるし…」

「ブラッドリー卿、レディに失礼ですよ。失礼したレディ。このブラッドリー卿はその…人格破綻者なんだ」

「なんだと貴様…家柄だけのお坊ちゃんの分際で…!」

「みっともないですよブラッドリー卿。度々無礼を失礼した。よく言って聞かせますので」

「はぁ…?」

 線は細いがかなりの身長の人と派手髪の男の人…。このお揃いの白い服の人達がこんなに居るってことは…!?

 

「ここがァ…オォプンッな学園祭で有名な…アッシュフォード学園か。」

 

 このガタイに特徴的な喋り方、そしてあの特徴的な白い髪!そして申し訳程度の帽子にサングラス!間違いない、この人シャルル皇帝陛下だ!何してんだこの人!?

「そこの女学生、まだ我々に何か?」

 さらに話しかけてきたのはガタイのいい隻眼の男の人…。私はその人にできるだけ小声で話しかける。

「あの、もしかしてそこにいるのはシャルル皇帝陛下で…あなた方はナイトオブラウンズの皆様では…?」

「…」

 その様子を見れば図星なのがわかる。本当に何やってるのこの人達。

「マーヤ、久しぶり。再会の記念。記録」

「あぁ、そういえばアンタが通ってる学校だったね。先に連絡しておいた方が良かったかい?」

 アーニャさんとノネットさんが話しかけて来るので私も反応を返す。

「あの…騒ぎにならないんですか?こんな皇帝陛下とラウンズ総出で…」

「問題ない。宰相閣下の作戦がある」

 シュナイゼル殿下の…それなら安心だ

「ここはお祭りだからね。アタシ達を見てもコスプレ集団だと思うはずさ。皇帝陛下とラウンズ総出でこんな学園祭に来るなんて誰も思うはずがないだろう?」

「確かに」

 ふと皇帝陛下を見ると…

「すげぇ!シャルル陛下そっくりじゃん!」「筋肉やば!」「ポージングもそっくりだ!」

 うん、誤魔化せてるみたいだ。お祭り効果って凄いなぁ…。

 

 !?いきなり背後に気配を感じ振り返る。そこには綺麗な金色でぱっつん前髪の女の人がいた。…さっき変な語尾で喋ってた気のする人だ。この私が気配に気づかないなんて!

「筋肉、触っても良いモニ?」モニ?

「…あ、はい、どうぞ」

 背後を取られたのは驚いたが、まぁ私はどの筋肉を触りたいという気持ちは分からなくもないし、別に触らせるのはやぶさかではないのだ。

「では遠慮なくモニ」モニ

 すごく綺麗な顔で物凄く変な語尾の女の人だ。私は二の腕に力を込めて力を込めるが、その人の目当ては違うらしい。

「あっ…」

「モニ…凄く逞しいモニ…」モミィ…

 うーむ、まさか胸筋を触ってくるとは…これは意外…。

「モニカ!同性とは言えいきなり初対面の胸を触るやつがあるか!」

「モニィ!?」モニ⁉︎

 ノネットさんと話していた褐色の人が拳骨でモニカと呼ばれた人をぶん殴っていた。うん、まぁ…これは仕方がないわ。

「モニカ、アンタまたやってんのかい…。済まないね、よく言って聞かせておくからさ…」

「はぁ…?」

 

 そろそろ時間もいい頃合いなので陛下と愉快なラウンズ一行と別れようとした時のことだった。

「そこの、女」

 皇帝陛下からまさか声を掛けられるとは…。

「えっ、あっ…はい。いかが致しましたか?…えっとシャルル皇帝陛下…の、そっくりさん」

「良い、筋肉だ。これからも…励が、良い。」

 …皇帝陛下に褒められた…!?

 

 そんなことがありつつも、そろそろ世界一のピザ作りが始まってるだろうということでユフィ達の所に戻り三人で外に出る。ユフィがナナリーの車椅子を押したいということで任せ、歩いているとミレイ会長とルルーシュのいるブースに向かう事となった。

「お兄様」

 ナナリーの呼びかけに振り返ったルルーシュはおそらく瞬時に全く変装のできていないユフィを見て驚愕の表情を浮かべた。あのルルーシュを持ってきてもポーカーフェイスを維持できなかったようだ。

「なっ…!?会長、後は任せます!」

 急いで狭い扉から出ようとしたため、肩が扉につっかえそのまま破壊して出てきたルルーシュはナナリーを肩車し、ユフィと車椅子を抱えて駆け出す。私もそれに着いて行くと、階段のところにたどり着いた。

「私もこの学校に入学しようかしら。ルルーシュとスザク、それにマーヤがいるなら楽しそう。」

 その場合私は常にサラさんの代わりに護衛やることになるんだろうな…給料出るのかな?出るよね?アリだな…!?

「副総督の仕事はどうするんだい?」

「勿論続けますよ?」

 …出席日数足りないんじゃないの…?それ…

「出席日数が足りなくて3人揃って補習だな。」

「あら、私は皇女殿下ですよ?」

「ウチの学校なら容赦なく補習にしそうだ」

 確かに。…その時不意に風が吹き、ユフィの帽子が吹き飛んだけれどルルーシュがすぐに回収してユフィに被せ、その日は他愛のない話をして終わった。

「そう言えばユフィ、なんだか痩せたか?」

「お兄様、女性に向かってそれは失礼ですよ?」

「あ、あぁ、それもそうか…すまない」

 それからルルーシュはユフィにくれぐれもコーネリア総督にも秘密だと釘を刺していた。ルルーシュのナナリーの事情は私は知らないけれど、流石に本人から言われればユフィでも言うことはないだろう。

 

 そしてその夜、例の如くユフィのもとを訪れると、今日は今から会見を開くからと護衛を命じられた。と同時に突き出される拳を小指でいなす。

 用意された会見会場の指定の位置に立って待っていると、ユフィがマイクを手に口を開いた。

「わたくしユーフェミア・リ・ブリタニアはフジサン周辺に行政特区日本を設立することを宣言いたします!この行政特区日本ではイレヴンは日本人という名前を取り戻すことになります。イレヴンへの規制ならびにブリタニア人の特権は特区日本には存在しません!ブリタニア人にもイレヴンにも平等の世界なのです!」

 ユフィの会見の内容はそれだった。行政特区日本…スザクの中から変えるやり方が実を結んだと言えば良いのだろうか。この行政特区日本があれば陽菜達はもっと自由に、そして私もハーフであることを気にせず日本人として生きていけるかもしれない…!




今回の異なる可能性:まさかのラウンズと皇帝が学園祭に襲来

言うほどノネットさんの出番が増えてない件について。


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STAGE18′

 今日は行政特区日本関連の調整事で方々を走り回ることになっていた。

「…ふぅ、ようやく落ち着いたかな」

 調整事も一段落した為、公園の一角で身体を休めていると視界に凄まじい筋肉が映る…つまりルルーシュだ。

「ルルーシュ」

「…マーヤか、奇遇だな?こんなところで」

 ルルーシュが一人租界にいるなんて珍しい気がするし、確かに奇遇だ。

「私は仕事の関係でね。ルルーシュは?」

「あぁ、今からシャーリーと買い物なんだ。…なぁ、マーヤ」

 

「何が行政特区だ!何が援助だ!署名などするものか!」

 突然の叫び声に振り向くとステッキを持った身なりだけはいい男が子供を叩いていた。許せない…!

「ちょっと貴方!そんな子供に暴力を振るって人間として恥ずかしくないの!?」

 私の声に男は手を止めこちらを振り向いた。

「なんだ貴…さ…ま…。」

 こう言う時は私の美少女という特性を最大限に生かす為、上目遣いだ。

「ひぃ…。お、おいお前!何をしてる!早くなんとかしろ!」

 色仕掛けに屈しないように男はすぐ側に立つガタイのいい男に声を掛けていた。

「そこまでだ。学…生?学生…学生…で、良いんだよな?」

「確かに私の可愛さはただの学生とは思えないかもしれないけど、ただの学生よ」

「お、おう…」

 ふふ、私の美少女っぷりにこの男も手を出すのを躊躇っているようね!

「マーヤ、この男は任せろ。」

 するとルルーシュが私とガタイのいい男に割り込んできた。…え、もしかしてルルーシュ、美少女である私を守ろうと…!?

「…あなたは!し、師匠!?」

 どうやらルルーシュと男は知り合いだったらしい。ならば任せても平気かな。

「さて」

 改めて身なりだけは良い男を見る。男は恐らくガタイのいい男がルルーシュと話し合っているのを見てから

「わ、私は失礼する」

 と帰って行った。直ぐにステッキで叩かれていた男の子に駆け寄り様子を見る。叩かれたところが青痣になっているが、それくらい30分もすれば治るだろう。軽く応急手当てだけで済ませれば問題はないだろう。

「ありがとうお姉ちゃん!」

「どういたしまして。…君も筋肉を付けて困っている人を助けてあげてね」

「うん!わかった!」

 男の子と別れてルルーシュと合流する。どうやらルルーシュは弟子であるガタイのいい男を説得して家に帰らせたらしい。

「それじゃあシャーリーと待ち合わせの時間だから」

「うん、じゃあね」

 

 そして特派の仕事と学校で忙しい日々が過ぎ、とうとう行政特区日本の式典の日になった。

「スザク、いよいよね」

「うん。…マーヤもお疲れ様。」

「ふふ、そういうのは式典が終わってからにして」

 そう笑いかけるとスザクも笑って頷いた。ユフィの護衛はスザクがする為、私はダールトン将軍の側に控えて事態の臨機応変な対処が役目だ。

 するとガウェインが現れ、ユフィが喜んだ声でゼロを歓迎していた。

「ようこそゼロ!行政特区日本へ!」

 ユフィは彼を歓迎しているようだけど、正直言って私は懐疑的だ。あの筋肉による圧倒的暴力は流石の私でも抑えきれない…。でもここにはダールトン将軍もスザクもいる。三人ならゼロにも勝てるかもしれない。

「ユーフェミア リ ブリタニア。折り入って話があります。」

「私と?」

「はい。あなたと二人っきりで」

 …!?それは余りにも危険だ!ユフィは自衛できるほどには私とのボクササイズで鍛えているが、流石のゼロには無力だ!ボディチェックを受けているゼロだが、あの筋肉こそが既に凶器、こんなボディチェックには何の意味もない!

「ユフィ!流石にゼロと二人きりは危険よ!

「もう、貴方もスザクと同じこと言うのね。大丈夫です、私を信じて下さい。」

 …ユフィはこう見えて結構頑固だ。言い出したから聞かないだろう…だったら。私はユフィの耳元で囁く。

「いざとなったら股間です。股間を不意打ちでブチ抜いて下さい。そうすれば流石のゼロも悶絶します」

「股間…それは痛そうね。万が一があればそうさせて貰いますね」

 笑顔のユフィを見送り、暫くして走って戻ってきたユフィを出迎える。…あれ?ゼロはどうしたんだろう?もしかして襲われでもしたのかな…?

「どうした。ディゼル、気になることでもあるのか」

「ダールトン将軍…はい、ユーフェミア様が走って戻られたのにゼロの姿が見えないので…もしかしたら襲われたから股間をブチ抜いて返り討ちにしたのかなと」

「股間を…あー…それは…うむ。私と枢木で確認してこよう。貴様はここを頼む。枢木には貴様から伝えておいてくれ」

 相手はゼロ、ならば二人がかりなのも当然だろうか。

「スザク、ダールトン将軍の後を追ってゼロの様子を見てきてほしいの。ここは私が警護するから」

「分かった。僕に何かあったら…ユフィを頼む」

 スザクを見送り、再度ユフィの様子を確認する。幸い怪我はないようだ。そう安心したその時だった。

 

「日本人を名乗るみなさん!殴り殺されてください!」

 

 …?うん?ユフィ?今…なんて言った?その一瞬の空白時間でユフィは既に壇上を降り、お爺さんに向かって拳を振りかぶっていた。今のユフィのパンチのキレならばあのお爺さんの首の骨をへし折るくらいは訳はない!何考えてるのユフィ!?その筋肉は暴力のためじゃないはずなのに!!

 

 しかし、振り下ろされた拳は的確に…そして無慈悲にお爺さんの命を刈り取った。ゴギリという鈍い音と共に首の骨をへし折ったのだろう。…もしもこれが私が鍛えていない前のユフィだったなら、私がお年寄りくらいなら殴り殺せるなどと言わなければ、こんなことにはなってなかったのかもしれない。

「さぁ!兵士の皆さんも早く!日本人を殴り殺してください!」

 ようやく私はそこで正気を取り戻し、ユフィに駆け寄る。

「ユフィ!何を考えてるの!?やめて!なんで急にこんな事を…」

 ユフィはこちらを振り返ると的確に私の股間をブチ抜いてきた。

「うっ!?」

 普段の私との組手とは比にならない殺意に満ちた拳…ユフィ、どうして…!

「あら、マーヤじゃない。ごめんなさい、私は日本人を殴り殺さなくちゃいけないの。…マーヤはブリタニア人よね、だったら…」

 そうして私から視線を外すユフィだったが、ここは仕方が無い。ユフィの腹を的確にブチ抜くッ!…が、ユフィは倒れない…!

「何をするんですかマーヤ…私の邪魔をするのですか?」

 今の一撃でぶちのめすつもりだったのに…!こうなったら…そう思い、私はユフィから視線を外しその後ろの日本人達を見る。未だに事態に混乱して動けないでいる日本人の人たちに私は叫んだ。

「早く逃げて!!」

 その言葉に逃すまいとでも思ったのか、ユフィは振り返ろうとしている。そうはさせない…!

「ユフィ!私はブリタニアと日本人のハーフよ!日本人を殴り殺すって言うならまずは私を殴り殺してみなさい!!」

「…あら、そうだったのですか。マーヤはハーフ…なら殴り殺さないといけないわね」

 瞬間、ユフィの姿が消えた。…ッ!その場を直ぐに跳び退くとユフィの蹴りが空を切る。この動き…明らかにいつものユフィを超えている…!?

「マーヤ、貴女には感謝しています。お陰で私は力を手に入れました。」

 そう言って動きにくそうなロングスカートのドレスでステップを…いや、逆だ!あのロングスカート、脚の運びがこちらには分からない!咄嗟の対応ができない!瞬間、私の腹をユフィの膝が抉った。最初の股間への一撃、私は男性ではないので金的ほどの効果はないが、普通に下腹部への衝撃は遅効性の毒のように身体の動きを鈍らせる。

「マーヤを!撲殺です!」

 ユフィの顔面を貫く様な軌道のパンチ…!それを私は…

 

 噛んで、止めた。

 

「!?なっ!私の拳を…!無礼でしょう!」

 そのまま歯を突き立て、噛みちぎらんと顎に力を込める。距離を取らんと引き抜こうとし、身体を押してきた為噛むのをやめるとユフィは自分が強く押した勢いで後ろに倒れ込んだ。そして起き上がらんとしている…今だ!

 私は起きあがろうとしているユフィの顔面に向け、外側から足を振り回して大腿四頭筋付近をブチ当てる!今のユフィは今まで私がユフィに教えたことよりも明らかに逸脱した動きをしている…油断は出来ない!この技で確実に意識を刈り取る!!大腿四頭筋をぶち当てたことでよろめき仰向けになって倒れるユフィの腹に向かって大きくジャンプし、落下と共に膝で腹を貫く。これで当分は目を覚さないはずだ。すると背後から凄まじい音が聞こえ、扉を突き破ってスザクが吹き飛んできた。転がって受け身を取ったらしく、幸い骨が折れたりはしていないようだ。

「…!ユフィ!?マーヤ、一体どうしたんだ…!?それにこの会場は!?」

 驚いている様子のスザクだったが、私も今気になることがある。ダールトン将軍の姿が見えないことだ。

「スザク、ダールトン将軍は!?」

「ゼロにやられた。僕も何発か貰ってしまったよ。でもゼロの動きはいつもより鈍いんだ。奴を捕まえるチャンスなのに…!」

 そう言って片膝を付いたスザクを見ればかなり満身創痍だとわかる。

「スザク、ユフィを連れてアヴァロンへ行って!ゼロは私が抑える!」

「…ここはそうするしかないみたいだね」

 そう言ってスザクはユフィを連れてアヴァロンに向かって行った。

 

 そしてスザクが飛んできた穴から凄まじい筋肉の波動を感じる…つまりゼロだ!

 

「スザクの次はお前か」

 あの脚の運び…そうか、ゼロは睾丸をユフィにブチ抜かれているんだ…!だから動きが鈍い、これなら勝てるかもしれない…!

「ゼロ、貴女はやはりテロリスト!それだけの筋肉がありながら…ユフィに何をしたの!」

 瞬間、ゼロの姿が消える。

「答える義理は…」

 甘い…!凄まじいスピードで背後を取ったのは見事だと言える、しかし!以前のゼロならば正面から来ていた、つまり!

 私は後ろに回し蹴りを放ち、ゼロの横腹にブチ当てる。

「読まれていた!?」

 よし…!この状態のゼロならば勝てる!あの状態でも私の背後をとれるだけのスピードを出せるのは驚きだが、逆に言えばダメージ覚悟のカウンターを恐れての攻撃!ユフィに睾丸をブチ抜かれ、その状態でダールトン将軍とスザクと連戦したのだ。無事なはずがない!勝てる…!必ず勝ってみせる!!

「チッ…仕方ない…!」

 

 …!?私、なんでまたボーッとして…いけない!その場を離れんとステップを踏むが、脇腹を何かに抉られた。

「ぐっ!?」

 瞬間に思い出す。私の脚にかつて感じたあの痛み…!目を開けて見てみればそこには白い服に身を包んだ長い緑髪の女性がショットガンを構えていた。

「特殊スラッグ弾…!」

「苦しませないで殺すために撃ったんだがな、ギリギリで躱すとは器用な奴だ。だが腹は抉らせてもらったぞ、悪く思うよ?。」

 口を動かしながらも迷いのない的確なリロード…万事休すか…!続けての射撃を最後の力を振り絞り転がって回避するが、今ので私の中の何かが…切れた…。最早立ち上がれず、四つん這いになるので精一杯だ。必死に筋肉と腕で止血を試みるも流石に血が止まらない…。視界も…

『どけぇぇえええええ!!!!』

 色が無くなっていく世界でも真っ白なランスロットがこちらに飛んできている…

『マーヤ!気をしっかり!』

 口が動かない。目も…開かない。衝撃の後、私は誰かに羽交締めにされて引き摺られている。

 

「お願いです!マーヤを、マーヤを、助けて下さい!!

 

 スザクの必死な声を最後に、私の意識は途絶えた。




青痣が30分で治るのはマーヤ基準です。普通の人間はそんな風に治りません。

血染めのユフィは起きちゃうんだなぁこれが!!!

外側から足を振り回して大腿四頭筋付近をブチ当てる技はシャイニングウィザードのつもりで書いてます。


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STAGE19′

 私は…私は何をしていた?ここは…建物の中?痛い。突然頬を叩かれた気がする。

『お前なんて本当の…!』

 本当の…なんだろう。白衣を着た男の人…顔は見えたが、ぼやけていてよく分からない。

『あなた止めて!」

 同じく白衣を着た女の人が男の人に怒っている。

 

 …あぁ、そうだ、私は…もっと強い子になれば怒られないと…そう思ったんだっけ

 

『…………………ブリ……アが……る……の…………苦…!凌………い、……よ!』

 熱い…熱い…。炎と煙で前が見えない。

 苦しい…苦しい…。炎の向こうに人影が見える…

『マーヤ…強く、生きて!』

 あれは…お母さん…これは…

 

「…はっ!?」

 起きあがろうとして激痛が走る。

「まだ動くのは無理よ、安静に寝てなくちゃ」

「セシルさん…」

 どうやらここはアヴァロンの医務室らしい。そうか、私腹にスラッグ弾受けて倒れたんだっけ。

「普通なら死んでもおかしくない出血量だったらしいわ。スザクくんが羽交締めにして引き摺りながらも運んだからなんとか間に合ったみたい。」

「そう、ですか」

 スザクには借りが出来ちゃったな…。

「そのスザクはどうしたんですか?」

「それがね、目覚めたユーフェミア様と殴り合って、それからランスロットに乗ってトウキョウ租界に向かったわ。…行政特区日本の失敗を機に多くの民衆やテロリストが租界に向けて進軍してるの」

 ユフィとスザクが…?それにスザクが租界に…なら、私も行かなくちゃ…!

「じゃあ私はブリッジに居るから何かあったら呼んでね。くれぐれも無理はしないで、今はゆっくり傷を癒やしなさい。」

「…わかりました」

 私は、嘘を吐いた。セシルさんが部屋を出たことを確認し、身体を起き上がらせる。

「大丈夫…ナイトメアくらいなら動かせる…!」

 腹の痛みにも慣れてきた。これくらい軽傷だ。なんてことはない…!傷口だって筋肉で止血できる…!すると扉が開いた。セシルさんが戻ってきたのかと思って身構えるが、その人影はセシルさんに比べてかなり低い。…よく見てみれば前病院で会った男の子…?なんでアヴァロンに…

「肝を冷やしたよマーヤ。君に死なれると少し困るからね。傷の具合はどうだい?」

「…えぇ、少し腹を抉られたけど、ナイトメアの操縦くらいならできるわ」

「そっか。君の頑丈さには正直驚かされるよ。」

 そう言って彼はベッドに腰をかけ、こちらを振り返る。相変わらず整った顔立ちに高そうな服、それに大人びた雰囲気の不思議な子だ。

「君は今から何をしようとしてるのかな」

「…ナイトメアに乗ってスザクを助けようと…」

「そっか、でもね、枢木 スザクを助けてもゼロは倒せないよ」

 そんなことは…ないはずだ。流石のゼロでも生身でナイトメアには勝てないはず。ならばゼロの乗るガウェインを破壊してゼロを直接攻撃すれば…あるいは。いや、あのゼロの強さは生半可ではないし、頭も恐ろしく良い、きっとお互い生身の状態に持っていかれるはずだ。

「なんでか教えてあげようか?ゼロにとっては枢木 スザクなんてどうでも良いんだ。ゼロの目的はね、ブリタニア皇族なんだよ。だからクロヴィスを殺し、ユーフェミアの心を破壊して殺戮人形にしたんだ。」

「そんなことが…!?」

「ゼロにはね、超常の力があるんだ」

「確かにゼロの筋肉は常軌を逸した超常の力とも言える筋肉…その筋肉から放たれるパンチでユフィの脳を破壊して可笑しくしたって事ね!?」

 私の完璧な推理に彼は呆れたように目を閉じる。

「半分正解ってところかな。筋肉じゃないんだ。ゼロにはギアスという人を操る力があるんだよ。」

 そんなもの…あるはずがない。そんなものがなくても筋肉があれば…

「ゼロのギアスはね、大脳に直接干渉するんだ。その時の刺激で少し脳を痛めつけてしまうからね、記憶に混乱が起きたりするんだけど…覚えはないかな。何故ナリタでは黒の騎士団と日本解放戦線が共闘してたんだと思う?土砂崩れを利用してまで」

「…どこからか情報が漏れた…?」

「そう。君からね」

 …私が…!?

「君は既にゼロのギアスに掛かってるんだ。『質問に答えろ』というね。だから君はゼロに聞かれたらなんでも答えてしまうんだよ。」

「仮に…そうだとして、なんで…君はそれを…?」

「ふふ、それは秘密。でもね、君には何度か経験があるんじゃないかな?ゼロと話してる時に記憶が飛ぶ瞬間が」

 …例えば、河口湖のホテル…。あの時私はゼロがとてつもない素早さで動いたのだと思った。でも違う…?私はそのギアスとやらの記憶の混濁で一時的に記憶を失って…。そういえばさっきの式典でもそうだ。撃たれる直前、記憶が飛んだ…。もしかして違法プロテインの倉庫内で誰かがいると思ってたけど、あれもゼロ…?だとしたらスザクからの通信に気がつかなかったことにも納得がいく…!

「私の…せい…?」

「結果的にはそうなるかな?でも、悪いのは君じゃなくてゼロさ。そうでしょ?」

 確かに…そうだ。…待てよ?ゼロの狙いが皇族…。もしゼロがルルーシュやナナリーも皇族だと知ってたら!?コーネリア総督はナイトメアで自衛できる。ルルーシュも…あのゼロに匹敵する筋肉で身を守れるかもしれない。でもナナリーは!?目も見えず、足も不自由だ。ゼロに狙われれば一たまりもない!!助けなくちゃ!私が…!!

 ベッドから飛び出て私は立ち上がる。

「行くんだね?マーヤ。」

「えぇ」

「なら、これを渡しておくよ。」

「…これは?」

 渡されたのは濁った液体…。容器の形状を見た感じ飲むタイプだろうか?

「もし生身の時にピンチになったらそれを飲むと良い。必ず君の助けになるよ。」

「…分かった。」

 今の私は腹にスラッグ弾で風穴が空いている。この液体がなんなのかは知らないが…貰えるものはもらっておこう。

「そうだ。聞きそびれてたんだけど君の名前は?」

「うん?そっか、名前も忘れちゃってるのか。僕はV.V.だよ、マーヤ」

「そう、じゃあねV.V.くん」

 そして私はボールスに乗り込み、機体の状態を調べる。…ふと目に白いサザーランドが映った。その背中にはフロートシステムらしきものが付いている。

「借りますね」

 ボールスからシステムにハッキングし、サザーランドに付けられていたフロートシステムをボールスに装着する。流石はボールス、元々がサザーランドベースだから規格が合ったようだ。

『ちょっとマーヤさん!?何してるの!?』

「すみません!これお借りします!」

 そのままハッキングでハッチを開放して飛び立つ。目指すはアッシュフォード学園だ。

「もしもし?シャーリー?今そっちはどんな感じ?」

『マーヤ!良かった、無事なんだね!なんか黒の騎士団が租界を襲撃しようとしてるから私達は生徒会室にいるの…ルルーシュが出掛けていないからナナちゃんの事心配で』

 よし、これでナナリーは保護できる!ルルーシュの筋肉ならきっと大丈夫だ。できることを確実にやろう。暫く飛んで、学園に着く頃には24時になっていた。

『マーヤさん、聞こえる?』

「セシルさん…はい、聞こえます」

『スザクくんは現在コーネリア総督に呼ばれて政庁の守備に向かっているわ。マーヤさんもそっちに合流して』

「分かりました」

 答えてからすぐにボールスを降り、生徒会室に向かう。

「みんな、無事?」

 私が生徒会室に入るとルルーシュ、カレン、スザク以外のメンバーが揃っていた。その中にナナリーもいることを確認し、ナナリーへと近付く。

「ナナリー、ごめんね?悪いんだけど私ときてくれる?」

「えっ?でも…」

「お願い…!私はナナリーを守りたいの!」

 その言葉に渋々了解してくれたらしく、私はナナリーと車椅子を運び、車椅子はボールスに運ばせ、ナナリーと共にコクピットに入る。

「狭いけどごめんね」

 私の膝の上にちょこんと座るナナリーに声をかけ、ボールスで政庁へと向かう。瞬間、ボールスをハドロン砲が掠めた。

『そこのナイトメア…停止しろ!次は当てる!!』

 ゼロ…!味方の通信で黒の騎士団は政庁外縁に布陣していたと聞いていたのにもうここまで突破されたの…!?

『お前が誘拐した少女を…ナナリーを返せ!!ナナリーをぉ!!!!』

 ガウェインはその指のスラッシュハーケンを放ってくる。

「ごめんナナリー!」

 流石にボールスで応戦しようにもナナリーの車椅子が邪魔だ。渋々廃棄し、ブレイズルミナスで防御する。…まずい…フロートシステムでかなりエナジーを消耗してしまっている…このまま闘うのは…!しかも、V.V.くんの情報通りというべきか、ゼロはナナリーも皇族であることを知っているらしく、抹殺せんと身柄を狙っているらしい。確かに良くも悪くも目立つコーネリア総督より一般人として紛れやすいナナリーを今確実に追う方が皇族狙いとしては正しいか…!

『ナナリーを…ナナリーを返せ!この盗人がァァ!!』

『そうはさせない!』

 私たちの間に割り込んできたのはランスロット…!スザク、来てくれたのね

『マーヤ!君は政庁に!ここは僕が食い止める!』

「分かった!」

『俺の邪魔をするな!スザァク!!』

 あの図体でランスロット顔負けのアクロバティック攻撃…スザク、無事でいて…!政庁周辺にボールスを降ろすと整備班がエナジーの交換をやってくれるようだ。そちらは任せて私はナナリーを抱えて政庁に入る。ナナリーをお姫様抱っこするが、ナナリーが私に触れた時何かに気付いたようだ。ナナリーの手を見ると血がついていた。

「これ…血?もしかしてマーヤさん…」

 急ぎ過ぎて傷口が開いたのかな。でもこんなのは平気だ。それよりもナナリーを安全なところに運ばねば。普段は冷静なあのゼロがあそこまで反応するとは…皇族を標的に何をするかは知らないが、かなりの執念というべきだろう。暫く進むと兵士の方々に命令を行なっているコーネリア総督が見える。

「コーネリア総督!」

「マーヤか、貴様ここで何を…ってその少女はまさか…ナナリーか!?」

「お、お久しぶりです、コーネリアお姉様」

 コーネリア総督は喜びの表情を浮かべていたがすぐにいつもの険しい表情に戻した。

「…何故お前がナナリーを連れている。」

「コーネリア総督、ゼロの狙いはブリタニアではなく皇族そのものです。」

「そんなことは我々も把握している…質問に答えよ。何故お前はナナリーが皇族だと知っていた?」

「この前学園の文化祭でユーフェミア副総督にナナリー…皇女殿下が妹君だと聞きまして」

「ユフィめ、私に黙ってたのか…!まぁいい、ナナリーが生きているのは私も嬉しく思う。…ナナリーが生きているということはまさかルルーシュもか?」

 コーネリア総督の発言に私は頷く。

「はい。しかし、現在行方がわからず…しかしながらルルーシュはあのゼロに匹敵する筋肉の持ち主ですので心配はないかと」

「何?ゼロ並みの筋肉だと…?」

 そろそろ整備も終わる頃だと思い私はコーネリア総督にナナリーを任せてその場を離れた。

「ブリタニア皇族への恨み…まさかゼロの正体は…」

 そんな声が聞こえた気がした。

 

 ボールスを起動し、飛び上がる。さっきまでナナリーを連れていくのに必死で気が付かなかったけれど、空からの風景には何か違和感があった。そう、何か…変だ。普段空なんて飛んだことはないのでそのせいかと思ったが、違った。

 租界の外縁部が崩落していたのだ。

 

 

 そう、陽菜達の施設諸共。

 

 

政庁上空に既にガウェインが迫っていることに気がつく。

『見つけたぞ…ナナリーを攫ったら盗人め…!ナナリーを返せぇ!!』

 

 まさかスザクは負けたの…!?

 



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STAGE20′(final)

 一瞬理解ができなかった。すぐさま施設に電話をするが繋がらない。施設職員さんに電話しても、繋がらない。

「陽菜…?みんな…」

 呼吸が荒くなるのを感じる。一体どうして外縁部が壊れてるの…?訳がわからない。口の中が乾いていくのを感じる。ふと、味方の通信が耳に入る。

『ゼロによる工作で租界外縁部のフロアパーツが一斉パージされ我が軍はかなりの損害を受けています。現在はグラストンナイツとギルフォード卿が防衛に当たっていますが、本国からの応援が来るまで耐えられるかどうか…』

 …そう、ゼロが…ゼロが殺したのね。陽菜を…みんなを…!許さない!!

 瞬間、私はボールスのフロートシステムを解除して高度を下げていた。そして私の居たところにはハドロン砲が放たれている。

『ナナリーは政庁か、コーネリア諸共対処するとして…貴様は邪魔だ。ここで始末する。マーヤ ディゼル!!』

 ガウェイン…ゼロの駆る大型ナイトメア。その図体からは想像できないアクロバティックな動きはその質量だけでボールスを軽く吹き飛ばすことができるだろう。油断はできない…!

『マーヤ!聞こえるかい?』

「スザク!無事だったのね」

 てっきりゼロがここに居るのだからやられてしまったのかとも思ったがそうではないらしい。

『僕は今…赤いナイトメアと交戦中だ。済まないが僕が行くまでゼロを足止めして欲しい!』

「足止め…?冗談、倒すに決まってるでしょ」

『待つんだマーヤ!』

 待たない。ゼロは…陽菜達の仇だッ!遠距離ではまず勝ち目はない、そして中距離ではスラッシュハーケンの餌食だ。ならば狙うはただ一つ、ゼロを確実に葬り去る方法はこれしかない!もう陽菜達は居ないのだ。もう私に…未来なんて必要ない!

「ゼロ!陽菜達の仇ィー!!」

 私はフロートシステムで一気に全速前進し、ガウェインに対して距離を詰める。こちらに放たれたハドロン砲をブレイズルミナスで受け流すようにして躱し、プロトヴァリスを構える。

「そこだァ!」

 砲身のオーバーヒートを気にせずとにかく連射する。ゼロにこのプロトヴァリスが脅威に映ればそれで良い!

『馬鹿が!』

 放たれるスラッシュハーケンにプロトヴァリスを破壊されるが、今の狙いはそれだ。ガウェインにスラッシュハーケンを無駄撃ちさせること!ガントレットを展開し、ガウェインの蹴りを防ぐ。これで距離は詰まったッ!ボールスによるドロップキックを叩き込み、一旦に距離を取る。ガウェインのスラッシュハーケンは巻き取り中だ。

『小癪な!』

 放たれたハドロン砲に対してスロウ・ヴァリスを投擲し相殺、ガウェインの格闘のぎりぎりリーチ外!奴はこちらを見失っている…このタイミングだ!チャンスは一度きり、私はガウェインにスロウ・ヴァリスを投げつける。この距離ならば十分にガウェインを破壊できる…!

『馬鹿が!この私がその程度の策を見抜けないとでも思ったか!』

「何!?」

 スロウ・ヴァリスの爆煙から出てきたガウェインは無傷。その手にはサザーランドらしき装甲の残骸が握られていた。…まさか巻き取られたスラッシュハーケンの先にサザーランドを…!?そのサザーランドを盾にスロウ・ヴァリスを防いだ…!?いけない…!

『これで…チェックだ!!』

 策を破られたという衝撃、その瞬間をゼロが見逃すはずはなく回し蹴りを叩き込まれ、その衝撃でフロートシステムは破損しボールスは墜落した。

 

 それからどれくらい経ったのだろう。どうやらあの後ゼロによる追撃は無かったらしく私は目立った外傷…は腹の穴以外無いようだ。また傷口が開いたことは…パイロットスーツに血の色が滲み出ていることから想像ができた。ボールスはまだ動くがエナジーはかなり心もとなかった。空を見上げるとオレンジ色の丸い何かがガウェインを圧倒している。

「何…あのオレンジ…」

 高速回転しての体当たり…シンプルながらもその破壊力は馬鹿にならないようでガウェインは苦戦しているようだ。

「味方…なの…?」

『現在ガウェインは我が軍の物と思われるナイトギガフォートレスと戦闘中!総員戦闘域から退避せよ!明確な敵対行動はないが攻撃に巻き込まれる危険がある!』

 通信を聞く限りは味方のようだが、どうやら暴走しているというのが正しい表現のようだ。そして…戦闘の最中ガウェインからゼロが飛び降りたかと思うと、ガウェインはナイトギガフォートレスと呼ばれたあれをどこかに押し出さんとしていた。…これ以上イレギュラーを作らせないって訳ね…。更にゼロが飛び降りたであろう地点に一体のナイトメアが降ろされている。ナリタで戦った薙刀のアイツだ。

「まだ動く、ならばゼロを仕留める…!」

 こちらにはもうガントレットとごく短時間しか使いないブレイズルミナスしかない。しかし、ゼロはおそらくあのナイトメアには初めて乗るはず。ならば付け入る隙はあるはずだ。

 恐らく戦線に復帰せんと動く蒼いナイトメアに狙いを定め、手頃な瓦礫を投擲する。

『何!?』

 シールドで塞がれたか、だが!私はボールスの左腕を振りかぶり、ゼロを殴らんとする。

『まだ動けるとはしぶとい奴!』

 薙刀の一振りをブレイズルミナスで弾く。この一瞬だ。この一瞬で勝負を決める!ガラ空きになったボディにガントレットを叩き込む。

『そんな機体で舐めた真似を!』

 左腕のクローで防がれる。届かない…!流石にボールスでは万全の状態の機体には勝てないのか…!

『マーヤ、今すぐ脱出を!』

 スザクの声にすぐさま反応してハッチをブチ抜きボールスから飛び降りると、瞬間MVSが飛来しボールスを串刺しにしてそのまま爆散した。

『何ッ!?』

 突然の近距離爆破に蒼い機体も左腕を吹き飛ばされたらしい。私も咄嗟に腕でガードしてなんとか防いだが、危ないところだった。

『やはり…最後に俺の前に立ち塞がるのはお前か…スザァク!』

『ゼロ!君をここで終わらせる!』

 始まったのは蒼いナイトメアとランスロットの一騎打ち。ランスロットはスラッシュハーケンのメッサーモードによる手刀を、蒼いナイトメアはその薙刀を獲物とし、激突した。

 

 そして結局勝負は互角と言うべきか、どちらの機体も有効打らしい有効打は出ず、共に大破。だが、これはチャンスだ。ナイトメアから降りたのなら…拳は届く!

「ゼロォォォォォォォオオオオオ!!!」

「またお前かマーヤ ディゼル…腹に穴が開いた状態でよく動くな…!」

「穴のひとつやふたつ!今更増えたところでどうってことないわ!」

 私はマッスルウーマン、これしきのことでへこたれてたまるかッ!陽菜達の仇、今ここで!!手頃な瓦礫を拾い上げ、それらを投擲する。

「ふん!瓦礫の投擲など見飽きたぞ」

 ゼロは瓦礫を振り払ったけど…

 

 ひとつ目の瓦礫の影になっていたもう一つには気が付かなかったみたいね!

 

「何ッ!?」

 流石に不意打ちの瓦礫の衝撃によろめいたゼロにすかさずドロップキックを叩き込む。吹き飛んだゼロは空中で回転し受け身を取ったようでダメージは薄いようだ。だが…

「前は微動だにしなかったのに…効いてる!」

「…チィ…戦いの経験を積んだと言うことか…!」

 だがゼロはお返しと言わんばかりに瓦礫を投擲してきた。だが、私はそんなことに付き合うほどお人好しではない、弾くのではなく回避を…

「馬鹿が!」

 恐ろしく速い正拳突き…!?いや、違う…!

「かはっ!?」

 的確に私の腹の穴を狙っての貫手…!距離があったから直撃とまではいかなかったけど、抉られている穴をスーツ越しとは言え触られるのは流石に堪える…!

「何を一息ついている?私の攻撃がアレで終わりだとでも?」

 気がついた時には遅かった。私は喉、鳩尾、下腹部に目にも止まらぬ三段突きを叩き込まれてしまった。…こ、呼吸が…出来ない…!

「これで…チェックだ!」

 いつのまにか距離を取られていた私はクラウチングスタートの姿勢をとるゼロを視認した。…ダメだ…やられる…!

 

 その時、私の体は的確にゼロの膝蹴りを防御していた。

 

「何!?確かに意識の外の一撃だったはず…!」

 その瞬間、私はゼロの腹に拳をブチ込んでいた。この感覚は…!その後も私は考える前に拳を叩き込みゼロの防御を崩し、カウンターを弾き、的確にゼロの腹に拳を叩き込み続けていた。

「一体何が…!この俺が反応速度で負けるなど…!」

 ゼロは知らないだろう、脊髄反射で全ての行動を行うこの技を…咄嗟の危機的状況で偶然発動できた。これならばゼロに勝てる…!!

「くっ…!人間の認識速度をはるかに超えた連撃…一体何が…」

 

 ッ!?私はゼロの拳を両腕でガードしていた。また、意識が飛んでいた…これがギアス!?

 

「なるほど、確かにお前の意識とは関係なく体が勝手に防御しているようだな。」

 先ほどまでと同様に私は全ての攻撃を脊髄反射でおこなっているはずだった。しかし、そのいずれもがゼロに防がれている。

「まさか…貴方も!?」

 そうか、私に質問したのか…!そしてゼロはその技の仕組みを知ることで体得した…!追い詰められて偶然した私と違い、ゼロは己の意識でこれを可能にしたなんて…!戦闘の…天才…!?

「ふん。あと3手で決まるな」

「何!?」

 ゼロに言われたからの2手で私は腕を大きく弾かれていた。対するゼロは既にその場でジャンプしている。…これは…!

「チェクメイトだ!」

 両脚による蹴りをモロに喰らった私は数度跳ねながら瓦礫の中を吹っ飛んでいく。傷口の腹痛どころか、今ので鋭利な瓦礫が何本か腕や脚に刺さってしまった。とてもではないが’…動けない。

 

 ギュピッギュピッと足音を鳴らし、ゼロがこちらに近づいてくる。

 

「よく頑張ったと褒めてやろう。だが、もはやお前は立ち上がることすらできない。」

「どうかしら。油断して近づいた貴方の喉に食らいついて噛みちぎるぐらいのことはできるかもしれないけど?」

 勿論こんなのは虚勢だ。でも、このままやられるなんて嫌だ…何か、何か手は…!

 手頃な瓦礫に手を伸ばそうとすると、瞬間ゼロの方から瓦礫が飛来し指の骨が砕けた。

「ぐっ!?」

「お前の手癖の悪さには私とて警戒している。諦めろ」

 こんな…ところで…!

 

 その時、ふとV.V.くんから貰った液体のことを思い出した。アレがどんなものかは知らない。そして私の体は思い出したかのように勝手に動き、気がつけばその液体を飲み干していた。

「この土壇場で何を…いや、まさか!?」

 力が…力が溢れる…!高まる!あの液体を飲んだ途端、全身の筋肉が弾けるようだッ!

「何をしたかは知らんがッ!この連撃なら!」

 ゼロは凄まじい動きで拳の連打を放とうとしている…が、そんなゼロの動きが…止まって見える!

「ゼロ!それが本気の速さなの?ラッシュの速さ比べなら…今の私は負けないわ!」

 ゼロの拳を全て弾いてお返しに拳を叩き込む。

「この急激な筋肉の増加…まさか違法プロテインか!?」

 なるほど、確かに違法プロテインならば瞬時に爆発的筋肉へのブーストが可能だ。だが、この戦いでゼロを倒せれば私はそれで良い。そして…効果が切れる前にゼロを倒す!!私はクラウチングスタートの構えを取り、一気に加速するとゼロの腹にドロップキックを叩き込んだ。

「かはッ!?」

 すごい…!あのゼロよりも速く!そして強い!無敵!まさに無敵だ!強靭、無敵、最強!!今の私なら全速前進するだけでゼロを轢き殺せるかのようだ!!

「最高にハイッ!って感じね!さぁゼロ、最終ラウンドよ!」

 もはや私の筋肉は皮膚科下に収まりきらぬほどに膨張し、表皮は弾けた。だがそれを持ってあまりあるこの筋肉!相手があのゼロでも負ける気がしない!!私の渾身の一振りをゼロは待ち構えている。

「受け止められないなら…弾く!」

「弾けるものなら弾いてみなさい!!」

 圧倒的筋肉。その凄まじい筋肉の塊から放たれる砲弾のような一撃をゼロは弾くことはできず、その腹に拳がメキメキと音を立てて突き刺さる。そしてそのまま振り抜くとゼロはビルの壁面に吹き飛んでいき、巨大なクレーターを形成した。

 

 今度は私がギュピッギュピッと足音を鳴らしゼロに近づいて行く。ゼロの仮面を握りしめて握力を強めていく。メキメキと仮面は音を立ててひしゃげていった。ゼロが…あのゼロがそんな私の腕を必死に引き剥がそうともがいている!勝った!私はそんなゼロを空中に放り投げ、落下地点で拳を引き絞る。

「受け取りなさいゼロ…これは貴方に殺された陽菜達の分よッ!!」

 この一撃が決まれば恐らく私の拳はゼロの腹部を貫通するだろう。そしたらそこからさらに腹の穴を利用して上半身と下半身を引き裂いてやる。そうなれば流石のゼロも死ぬはずだ!

 

「これでッ!おわっ…」

 

 その瞬間、私は膝から崩れ落ち、目の前が真っ暗になった。






・アルドノアゼロ2期(ライエ、スレイン)
・ジョジョの奇妙な冒険(DIO)
・ドラゴンボール(ブロリー)
・遊戯王(海馬瀬人)


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ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 MACHO STORYS【亡国のアキト編】
PHASE01′


●注意書き●
MACHO STORYSをここまで読んでいただいてお気づきかも知れませんが、基本的にマーヤの一人称視点のため、他キャラ(基本は原作通り)の動きは描写されません。

原作の「コードギアス 亡国のアキト」を見ていない方には不親切な記載方法となっていますのでお気をつけください。


「マーヤ、次の任務の関係で君に紹介しなくちゃいけない人がいるんだ」

 ある日、ラウンズの格好がすっかり板に付いたスザクからそんなことを言われた。

「次の任務…それに紹介したい人?」

 ブラックリベリオン、あの日私はV.V.くんから受け取った謎のプロテインを服用し、凄まじい筋肉を手に入れた。そのブーストはあのゼロを簡単に打ちのめせるレベルであった。しかも驚きだったのは、あれは違法プロテインではなかったらしく、あの後目覚めた私にはちゃんと服用前の筋肉がしっかりと残っていたことだ。恐らく私が倒れたのは効果切れ…その時の副作用で極度の疲労状態になるものだと思われた。何にせよ、あの後ゼロはスザクによって拘束され、私は病院に送られ、スザクはゼロを捕まえたことでナイトオブラウンズになった。

 かく言う私もナナリーを助け出した功績としてナイトオブラウンズになってしまった。あの時私がゼロにとどめをさせなかったのは多分…陽菜達が自分達のために人を殺すなど望んでなかったからなのかもしれない。では今更私は何のために戦うのか、それは分からないが…私はまだクラリスさんから自分の秘密を聞けていないし、聞く覚悟もできていない。だからその秘密を聞ける覚悟が付くまでは…きっとこうやって生きていくことになるだろう。いろんな人を言い訳にして、私はやはり卑怯者だ。

「…マーヤ、聞いてるのかい?」

「聞いてたわよ。スザクはユーロブリタニアに軍師様とやらと一緒に派遣されて、私はE.U.に潜入して内部を探るんでしょ?」

「聞いたたのならそう言う顔をしてくれよ。」

 スザクはナイトオブセブン、そして私はナイトオブツーだ。ハーフの私にはお似合いの数字なのかもしれない。

「それにしてもナイトオブラウンズを二人も投入なんて…皇帝陛下は本気でE.U.を終わらせる気みたいね。」

「そうだね。それで…」

 その時、私とスザクへと向かうギュピッギュピッという足音が響いた。そしてその圧倒的筋肉の波動に振り向くとそこには…

 

 ルルーシュがいた。

 

「ルルーシュ!?良かった、生きてたのね!…あ、その眼帯、もしかして怪我でも…?」

 しかし、ルルーシュは怪訝な顔で私を睨んだ。

「ルルーシュ?誰だそれは。私の名はニクアツ マッスルガイだ。皇帝陛下よりE.U.の攻略を命じられている。…おい、枢木…本当にこんな女が潜入工作員で大丈夫なのか?私の作戦に支障が出ないだろうな?」

 どう見てもルルーシュだが、本人は違うと言い張って居た。私はスザクを見るが、スザクは首を横に振る。どうやら本当に人違いのようだ。ゼロ並みの筋肉で戦略家とは…世の中には私よりも凄い人が沢山いるのだと思わせられる。

「失礼しましたマッスルガイ卿。このマーヤ ディゼル、全力で潜入任務にあたらせていただきます。」

「ふん、ならば良いが…」

 そして私はスザク達よりも一足早くE.U.へと潜入した。私はスザクとは異なり騎士としてメディアには出たりはしていないので、こういった任務にはうってつけなのである。特に私ほどの美少女であれば誰も疑いはしないのだろう。

 

「…えーっと、もう一回言ってもらえる?」

「はい、私を軍に入れていただけないかと!どのような仕事でも構いません!広報でも!なんでも!」

「広報だけは絶対にないから安心して?まぁ、その筋肉なら欲しがるところもあるだろうけど…念のためにIDを出してもらえるかしら」

「はい」

 ニクアツ マッスルガイさんから渡された偽造IDを手渡すとどうやら問題なく審査には通ったらしい。

「はいはい。あー、マーヤ ディゼルさんね。こんな時期に入隊希望なんて珍しいけど、まぁ前線は人が足りてないしね、良いんじゃないの」

 マッスルガイさんからの事前の話通り、E.U.はIDさえ用意できてしまえばかなりザルだ。自分達のシステムが完璧だと勘違いしているのだろう。案内されるがまま廊下を歩いていると、私と同じくらいの美少女とすれ違…えずに肩がぶつかった。うーん、この廊下、狭いのよね。

「あ、ごめんなさい」

「いえ、私の方こそ…肩幅広いのでこう言うことはよくあるんです」

「ふふ、でしょうね」

「ところであなた…見ない顔ね?それに服装も民間人かしら」

「はい。入隊希望なんです。」

「そう、共に闘えることを楽しみにしています。それでは」

 彼女と軽く別れの挨拶を済ませ、私は案内の人に着いて行く。

 事前に用意して貰っていた偽造書類と私の筋肉のおかげですんなりと入隊手続きは終わった。まぁ、基地内を歩いている時に兵士達から聞こえてきたやる気のない発言を聞けば私の様に『前線でも構わない』なんて言う人は使い勝手が良いのだろう。身よりも居ないということになっているのだからその辺も今の軍からすればプラスに働くはずだ。何故なら死んだところで揉み消せるのだから。

「それでは最後にスマイラス将軍との面談で本日は終了です。」

 案内された部屋入るとガタイの良い男の人が机の奥に見える。将軍…ダールトン将軍もだけど、やっぱり軍の偉い人って皆ガタイがいいのかな?

「君のように若く逞しい人物が軍に入ってくれるのは実に喜ばしいことだ。私の名前はスマイラスと言う。」

「私もこの筋肉を国の為に使えることを誇りに思っています。」

「うむ、君の配属希望は特に無し…前線でも構わないとあるが?」

「私の美しさであればもちろん広報にも適しているとは思いますが、私の筋肉は実戦向きでもありますので。」

「お、おう。」

 スマイラス将軍が目を通しているのは私の情報だろう、体力テストやナイトメアの操縦テストがあったのでそれを見れば私の適正がいかに高いかなど容易に判断できるはずだ。

「ふむ、担当者は君を普通の前線に送ろうとしているようだが、君程の能力であれば…それは少し勿体無い。君さえ良ければ特殊作戦部隊に行ってみないかね?」

 特殊作戦部隊…?私が美少女であることを活かしてスパイ活動とかかな?そうなると二重スパイということに…

「wZERO部隊…少数精鋭の特殊部隊だよ。」

「構いません。私は上の指示に従います。」

「よろしい。手続きはこちらから指示しておこう。…そういえば彼女も今日はこちらにいるんだったか。少し待っていてくれ、wZERO部隊の関係者を呼ぶとしよう」

 言われた通り待っていると、スマイラス将軍は端末を操作しているようだ。少しだけの間の後、ノックの音が聞こえてくる。

「入り給え」

「失礼します。お呼びでしょうか、スマイラス将軍。…あら?あなたは…」

「紹介しよう、彼女はwZERO部隊の考案者にして参謀、副司令のレイラ マルカルだ。」

 マルカル副司令は先程ぶつかった女の人だった。こう言うのを運命の出会いと言うのだろうか?

「レイラ、彼女は本日より入隊するマーヤ ディゼルだ。階級は准尉とする。実は彼女の配属をwZERO部隊にしようと考えていてね」

「それは…構いませんが。准尉と言うことはパイロットですよね?彼女は日本人ではありませんが…よろしいのですか?」

「彼女の筋肉を見たまえ、多少のことで死ぬような柔な筋肉ではない」

 私はその言葉に頷き、サイドチェストを見せつける。マルカル副司令もすぐさま反応してサイドチェストを返してきた。うーむマルカル副司令も中々の筋肉ね、服の上からでもキレキレなのがわかるわ。

「分かりました。…よろしくお願いします、ディゼル准尉。」

「はい、よろしくお願いします、マルカル副司令」

 

 それから私はマルカル副司令と共にw ZERO部隊の拠点であるヴァイスボルフ城に向かった。見た目は古城と言った面持ちだが、中身は中々のハイテクである。セキュリティはかなりしっかりしていると言うべきか、ブリタニアよりも発展しているのではと思わされた。

「これがディゼル准尉に乗ってもらうナイトメアの取説です」

「ありがとうございます。」

 渡された資料に目を通していると、どうやら可変ナイトメアフレームのようだ。インセクトモード…四脚で悪路でも高速移動が可能とは、その発想には驚きだ。

「…ん?」

「どうかしましたか?」

 インセクトモードも気にはなるが、それよりも気になるのはこのナイトメアに搭載されているシステム…マッスルデバイスだ。

「このマッスルデバイスとは?」

「あぁ、マッスルデバイスはパイロットの肉体の状態を参照して自動でリミッターが作動するシステムです。我々のナイトメア、アレクサンダで言えば可変機構なんかはパイロットへの負荷が高いですから」

 なるほど、高すぎる負荷を与えないようにパイロットが耐えられる程度に機能を制限するのか。

「ディゼル少尉であれば問題なくリミッター無しで扱えるかと」

 ふむ、このマッスルデバイスというシステムだけでもブリタニアへの土産には十分だ。スザクのランスロットに搭載すれば強力な機体が出来上がりそうに思える。

『マーヤ ディゼル、聞こえているな?聞こえているなら机を指で二度…軽く叩け。…よし、以降そちらから反応を返す必要はないのでそのまま聞くように。』

 イヤホンタイプの通信機からニクアツ マッスルガイさんの声が聞こえる。

『今のマッスルデバイスなるシステム、非常に興味深い。出来れば変形機構のあるナイトメア諸共我が軍で確保したいが、今はまだその時ではない。こちらの指示があるまでは引き続きE.U.のパイロットとして潜入を続けたまえ。君が殺害することになるユーロブリタニアの兵士については君には責任は無いので自分を責めるなよ。それではまた連絡する』

 取説の中身を確認し終えると同時に通信は終わった。そして私のところに複数の足音が向かってくるのがわかる。

「おい見ろよ。知らねえ女奴だ」「すげぇ筋肉だな…」「あれ女…おん…な?女…か?」「今更驚くな。マルカル副司令も似たようなもんだろ…」「暑苦しい…」

 ふふ、私くらいの美少女になると否が応でも注目を集めてしまうようだ。

「丁度良かった。ディゼル准尉、彼らがディゼル准尉と共に戦う日本人の方々です」

 日本人…確かにその顔つきは日本人のものだ。

「代表は…日向 アキト少尉よろしいですか?」

 レイラの呼びかけに三つ編みの少年が面倒臭そうに前に出てきた。

「お呼びですか、マルカル副司令。」

「紹介します。彼女はマーヤ ディゼル准尉、先程も言ったようにこれからあなた方日本人とたまに闘う女性です。」

「よろしくお願いします。」

 

 それから作戦の説明があった。なんとこの城から行ける施設にロケットの発射台があり、アポロンの馬車と呼ばれる輸送ロケットにより敵の背後に降下して急襲すると言うものだった。

『マーヤ ディゼル准尉、私だ。』

 その声に指で二度軽く弾く音を返す。

『ふむ、話が早くて助かる。…アポロンの馬車なる装置、実に興味深い。次の作戦は全力でE.U.の兵士として戦い給え。引き続き君の活動に期待する。』

 …それじゃあ私のスパイとして意味がないじゃない…。ユーロブリタニア軍だって急襲されれば流石に被害が…

『…私が思うに今君は余計なことを考えているだろうから先に言っておこう。私が正式に軍師として着任する前の被害など私にとっては好都合でしかないのだ。分かったな』

 その発言は私にとっては納得し難いものではあったが理解はできた。防げる被害を見逃して次の作戦で自分の有能さをアピールするつもりだろう。マッチポンプ…というほどではないが、あまり私好みではない。

 コクピットブロックに乗り込み…うーん、狭いなぁ…待っているとアレクサンダへの接続と積み込みが始まった。

『ディゼル准尉。俺達の多くは理由があるから戦ってる。お前は何故戦う?』

 突如通信を入れてきたのは日向少尉だった。

「そうね…覚悟を…持ちたいから、かな」

『…持ちたいから?覚悟はないのか?』

 クラリスさんの知る私の秘密。それを知る覚悟を私はまだ持たない。もっと戦いの中に身を置き体と心を鍛えればきっと覚悟が身につくはずだ。

「今はまだ、ありません。…そういう日向少尉は?なんのためなんです?」

『死ぬ為だ。』

「死ぬ為…ですか」

 なるほど、死ぬくらい鍛える為らしい。日向少尉はパッと身スザクよりは筋肉の劣る印象を持ったけど…心は既にかなり鍛えられているようね!

「じゃあ一緒に頑張りましょう日向少尉。死ぬほど鍛えて見事なエイトパックを手に入れましょうね!」

『は?お前何を言って…』

 瞬間、体に重力がかかるのを感じる。うーむ、この負荷をうまく使って身体を鍛えられないものか…

 




レイラもマーヤレベルのマッスルウーマンです。

ニクアツ マッスルガイさんはまぁ、シャルルに記憶を書き換えられたルルーシュです。はい。
マーヤはスザクとは異なりルルーシュ=ゼロと教えてもらえていません。


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PHASE02′

 戦闘が始まって既に1時間は経過しただろうか。結果で言えば奇襲は失敗のように思える。自軍の残存を示すモニターに視線を移すと恐ろしいスピードで減っていくのが見える。爆発音が聞こえると同時にまた一人また一人と消えていく。

「…この爆装、動きにくいわね…」

 アノ…?あれ?なんだっけ…司令の…ムノウ…だったかな?忘れてしまったが、作戦開始ギリギリ前に突如付け足されたというアレクサンダの爆装。爆発力こそ目を見張るものがあるが、要はこれは自爆装置。司令は私達を人間爆弾として敵に突っ込ませる気らしい。

 

 ふざけている…!

 

 お陰でこちらは誘爆を恐れ離れて戦わざるを得ず、そうなると連携もクソもない。

 そして、追い詰められて自爆を選ぶ味方は少なくなかったし、弾薬が尽きれば必死に逃げる敵に食らいつき自爆する人もいるようだ。

「遠慮なくやれって言ったってやり難いんだよねぇ…」

 サザーランドの銃撃を躱しつつ、木々を蹴って飛び跳ねるように移動する。マッスルデバイスのお陰で私はアレクサンダ本来の動きができているらしく、かなり俊敏に動けるように感じる。木を遮蔽に距離を詰めては前腕部に仕込まれたブレードでコクピットを突き刺してパイロットを殺害する。そんなこんなでライフルを極力温存しつつ、私はこの1時間を戦っていた。

『ククク…死ね!』

 この通信は…日向少尉?…また一人味方が爆死した。残りの味方は10…いや、今また死んで9か。

 徐々に敵の動きがこちらを近づけないようにと気を付けているように思えて来た。まぁ当然だろう、近づかれたら特攻されて爆散なんて私ならごめんだもの。

『怯まず前進せよ』

 そんな指令が聞こえて来た。今指令を出してるムノウとかいう人は恐らく相当な間抜けだろう。この自爆装置といい…無闇に戦力を減らすやり方はどう考えで邪道だ。まぁ、王道的なやり方で包囲網を突破できるかと言われればそれが難しいのはわからなくもないが…。そもそも、奇襲してから1時間も戦っていたらもはやそれは奇襲ではないし、自爆のせいで加速度的に戦力差が開いていくのたま。たまにアドレナリンを注入される感覚に少し酔いながら、引き続き戦場を駆け抜けていると更に連絡が入る。

『撤退開始時刻まで残り40分』

 私としては別にユーロピア連合軍の撤退が間に合おうが間に合わなかろうが知ったことではないし、ブリタニア軍人としてはある意味喜ばしい。しかし、今はE.U.側として戦う作戦なのだから仕方がない。標的をライフルで仕留めつつ、次の標的を探した。

 また味方の自爆の爆発が見える。あんなに派手に爆発すれば周りの敵にここで戦っていると知らせるようなものだ。とはいえ、それに釣られた敵を殺すのも私達の役目なんだけどね。

「日向少尉!ご無事でしたか」

『ディゼル准尉か。ライフルの残弾は?』

 言われてから確認するとほぼゼロに近かった。

「ほとんどありませんね」

『ならこれを使え』

 渡されたのは…味方のライフル?

「これは?」

『もう必要ないやつらから預かったものだ。』

 味方の残骸から回収したらしい。だが、これでまだ戦える!

 

 しばらくすると、とうとう私と日向少尉以外の全員がやられてしまったようだ。そして私もこの重たくて取扱注意な爆弾を背負ってどこまでやれるか…正直わからない。サザーランドの弾丸を回避し、木々を盾にしつつ駆け抜ける。日向少尉から貰ったとは言え、再びライフルの弾丸は尽き掛けている。その上私と日向少尉は囲まれてしまっているようだ。これは万事休すかな…。

『自爆装置の解除を許可する』

「爆装解除…?今更…!」

 私は自爆ユニットを解除し、それを敵に投げつけてなけなしの弾丸を放ってそれを爆破、敵のサザーランドの一部を吹き飛ばした。

『ディゼル准尉!俺の分も使え!』

 振り返り様に日向少尉の爆装を受け取り、再びサザーランドに投げつける。ボールスほどではないがこのアレクサンダも中々の投擲力だ。

 そして木々を使い包囲してきた敵をトンファーで蹴散らしつつ包囲の突破を開始した。

「周りにもう5機」

『左の2機は任せろ』

「了解です…ってなんで私の方が多いんです?」

「撃破数を見ればその方が適任だと判断した。…良いからいくぞ」

 あの乱戦で他の機体の撃破数まで確認するとは驚きだ。

 こちらに気付いた相手のライフルをステップで回避し、距離を詰める。木々をブラインドにしつつトンファーでコクピットを穿って撃破し、すぐさま移動、こちらに攻撃を仕掛けてくるサザーランドの右腕を吹っ飛ばし更に連続で攻撃を叩き込む。

「はぁッ!」

 殴打で転倒したサザーランドにとどめを刺しつつ飛んできたランスを回避して剣を持つグロースターにトンファーでの殴打を見舞う。トンファーで剣を引っ掛け叩き落とし、体制を崩したグロースターの両腕をトンファーで吹っ飛ばす。逃げようと背中を晒したところに手首のブレードを差し込み始末した。

 

「…ごめんなさい」

 

 こうして私と日向少尉の2人だけがこの戦いを生き延びた。行きは空から来た為、帰りの足がない。私一人ならなんとかなるがナイトメアもとなるとそれはなかなか骨が折れる話だ。そんなことを考えていると、道沿いに立って車両の出す排気ガスや砂煙を浴びている日向少尉が見えた。…新手のトレーニングかな?自ら汚染された空間に身を置くことで体の内側を鍛える…とか?私も日向少尉の隣に立ち、一緒になって排気ガスと砂煙を浴びる。…ついでにスクワットでもするか…。

「おいアンタ、そこで何してんだ…?」

 やがて一台のトラックが止まり、こちらに声を掛けてきた。

「俺達も運んでほしい。後ろのナイトメアと一緒に」

「あ、あぁ…良いけどよ…なんでそっちの…おん、女…女…だよな?は、スクワットしてんだ…?」

「趣味よ」

「趣味だそうだ」

「そ、そうか…変わったやつらだな…。念の為IDを見せてくれ」

 私と日向少尉がIDを渡すと男は慣れた手つきで確認を行っていた。

「マーヤ ディゼル…あ、やっぱ女か…。そんでこっちは…あ?」

 男は急に舌打ちをすると私たちにIDを投げつけてくる。

「イレブンかよ…乗りたきゃさっさと乗りな。但し荷台にな。ディゼルは隣乗れよ。一人で運転してると退屈なんだ。」

 …ここでも…日本人差別…。命を張って戦ったのは日本人達だっていうのに…!

 

 日向少尉はアレクサンダの近くで布を被り座り込んでいた。

「日向少尉ここ、いいですか?」

「…お前、助手席はどうした」

「断りました。荷台の方が筋トレ出来そうですし」

「…好きにしろ」

 不規則な車両の振動に耐えながらのトレーニング、これは中々効くわ!良い!体のキレが高まるのを感じる!そんなこんなで私は日向少尉の近くで空気椅子や片手指立て伏せなどをしつつ、車両に揺られて帰還する。

「お前はイレブンを差別しないんだな」

 突然声を掛けられたので私は筋トレを継続しつつ答えを考える。私が差別をしないのはハーフだからなのだが、それをいう勇気はなかった。

「日本人差別は…そうですね、そんなことしても筋肉鍛えられないじゃないですか」

「は?」

 差別など愚かしい行動だ。そんなことをしても自分の筋肉は鍛えられない。人を差別する暇があるなら空気椅子や腕立て、スクワットをする方がよほど有意義である。

「…おかしな奴だな」

 それからはお互い何も話すこともなく、私は淡々と筋トレに勤しんでいた。

 

 その後、ナルバ作戦の報告の兼ね合いでマルカル副司令…じゃなくて司令がスマイラス将軍に呼ばれたため、私と日向少尉は護衛としてついていくことになった。

 しばらくスマイラス将軍の部屋の扉の前で待っているとマルカル司令が出てくる。

「お待たせしました。日向中尉、ディゼル少尉」

「いえ、これが我々の今の任務ですので」

 …うん?今更しれっと聞き流したけど私と日向…中尉?なんか階級上がってない?

「私も少佐から中佐に上がったのですが…日向中尉は驚かないのですね。」

「階級なんて俺にはどうでも良いですから」

「そうですか。ディゼル少尉も初陣で素晴らしい活躍でした。これからも力を貸して下さいね」

 マルカル司令のサムズアップに私もサムズアップで返し、そのまま流れで固い握手を交わす。…私は現在進行形で彼らを裏切っているわけだが、手を汚すことを今更躊躇う私ではない。今は任務に集中するだけだ。

「これからナルバ作戦成功を祝しての記念パーティがあるので引き続き護衛をよろしくお願いしますね」

「果たして司令に護衛が必要かは置いておいてそれが任務なのでしたら従います。」

 パーティか…。最後に行ったのはナイトオブツー&セブン歓迎会だっけ。…ルッキーが壁にめり込んだこととあとはモニカに胸を触られたことくらいしか覚えてないわ…。今回のパーティでは何も起きないと良いけど。

 

 上官ではあるが男だからと飲み物をとりに行った日向中尉を見送り、私とマルカル司令は共に空気椅子をしつつ、口頭チェスと洒落込んでいた。…私チェスやったことないんだけどね。

「…チェックメイト」

「…はい、完敗です司令。」

「初めてという割には手強かったですよディゼ…マーヤと呼んでも良いでしょうか?私のこともパーティの時くらいはレイラと呼んでください。」

 少尉の私が中佐を呼び捨てに…?まぁ、作戦の時だけ気をつければ良いのだろうか。

「分かりましたレイラ」

「敬語も不要です。私たち歳も近いんですから」

「分かったわ」

 その時丁度グラスを持った日向中尉が戻ってきた。

「パーティ会場で筋トレしながら口頭チェスに勤しむような女性達に…声をかける男性は居ないようですね」

「日向中尉もジョークとか言うんですね、驚きです。」

「飲み物ありがとうございます。日向中尉」

「気にするな。司令を護衛しつつ飲み物を取ってくるなら俺がいく方が適任だと思っただけだ。お前じゃあの人混みを掻き分けるだけでどれだけのトラブルが起こるか分からん」

「確かに…少し力加減をミスったら壁まで吹き飛ぶかもしれませんね」

 思い出されるのはラウンズ歓迎会の悲劇、皇帝陛下により突き飛ばされたルッキーが壁にめり込み、今なお入院中の大怪我をおった不幸な事故である。

 そんな時、レイラに対し突如声がかけられた

「レイラ!レイラ マルカル!」

「ちょっと失礼…」

 人混みを掻き分けやってきたのはヒョロガリのっぽとデブの二人組だった。

「ダニエルお兄様にステファンお兄様…」

 どうやら今私がクソ失礼な呼び方をした二人はレイラのお兄さん達のようだった…。

「どうして連絡をくれなかったんだい?君に会うのは1年ぶりなんだよ?」

「それにその格好…パーティ会場で軍服だなんて」

 現在行われているこのパーティはマルバ作戦の成功を祝しての催しである。つまり私やレイラの正装としては軍服は間違っていないのだ。

 とは言え、軍人は見た限り私たち三人のみであり、話題も下世話な金の話ばかりだった。

「軍服は私の制服です。」

「その口調も…」

 レイラの態度ややりとりを聞く限り余り良好な関係ではなさそうだ。

 

「これはこれは、ムキムキの妹君じゃないか」

 

 更に今度は両脇に女を連れたナンパなキザ男が…ってこの人もレイラのお兄さんらしい。三人揃っても誰ともレイラは似ていないけれど、レイラって何人兄弟があるのだろうか。

「ヨアンお兄様…」

「ふん…イレブンの中尉殿は護衛か何かか?こいつにそんなもの不要だろうに…。まぁいいか、俺はヨアン マルカル。マルカル家の三男坊だ、以後お見知り置きを…」

 態度の割に丁寧な挨拶をする人だった。意外だ。

「そうだ…これも言っておこうかな。この女はな、俺の…フィアンセなんだよ。…でもなぁそんなのは親が勝手に決めたことだ。あり得ない!こんな!筋肉女と!誰が結婚するか!!」

 その態度にレイラは拳を握りしめていた。いけない…!あの筋肉の動きを見れば今にも睾丸を蹴り砕かん勢いで駆け出しそうだ!

 

 思い出されるのは行政特区日本の惨劇…今度こそ悲劇は私が止める…!

 

 私はまだ口をつけていないグラスを片手にレイラの前に割り込み、ヨアンさんの頭にガラスの中身を振りかけた。

「…は?」

「…マーヤ?」

「なんの真似だ貴様…!」

 よし、レイラが構えを解いた…!そしてこのヨアンさんの注目は私に移っている!ならばここはいつも通り私が美少女であることを最大限に活かした色仕掛けしかない!

 私はいつも通り上目遣いでヨアンさんの目を見つめる。

「頭を冷やしてあげようとしただけですけど…何か?」

「あっはい、なんでもありません。生まれてきてすみません」

 

 よし!作戦はバッチリ成功ね!



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PHASE2.5′

今回はナルバ作戦の裏話(レイラ視点です)
中途半端なところで終わりますがオマケなので悪しからず。


 革命歴228年フロデアル18日、ペテルブルグ奪還のため、作戦を決行した我がユーロピア連合軍132連隊だったが、作戦計画は既にブリタニアに察知されていた。

 よって進路を阻まれ、ペテルブルク南西の町ナルバにて包囲をされてしまっていた。我がwZERO特別攻撃隊はその孤立した132連隊救出のため、敵包囲網に対し突撃作戦を開始した。その攻撃隊の兵士達は旧日本人の少年達と急遽参加の決まった私並みの筋肉を誇るマーヤ ディゼル准尉。

 

 この作戦の生還率は私の体脂肪率並み…つまり限りなく3に近い。私並みの…そう、ディゼル准尉はおそらく帰ってこれるだろう。

 

「にゃあん」

 猫のエリザの鳴き声で私の手は止まった。もうすぐ実行されるあのふざけた作戦を思うと頭が痛くなってくる。

 

 戦争でユーロピア連合軍の兵士が失われることによる、世論の反発を避けたい政治家達は正規の国民にカウントされない旧日本人の命でその埋め合わせをしている。

 …そして私もまた、それに加担している。

 

 

 

 そしてw ZERO部隊とユーロブリタニア軍での戦闘が起こり1時間ほどが経過した。

「8号機自爆確認、2機のナイトメアが消滅!」

「怯むななのだ!もっと前進させるのだ!さっさと敵を捕捉させるのだ!」

 アノウ指令の自爆特攻作戦、ブリタニアの物量相手では下策としか思えなかった。アレクサンダの強みであるインセクトモードによる3次元高速機動を活かせる森という立地を全く生かせていないからだ。それに、無闇に戦力を減らすやり方は戦術としては外道だ。

 撤退まで残り40分、そろそろだろう。本当はもっと早くに手を打つべきだったけれど、それは私の力不足という他ない。自爆して散って行った日本人達に申し訳なく思いながら私は口を開く。

「アノウ指令。」

「なんなのだ!」

「132連隊の撤退まで40分を切りました。」

 アノウ指令はイラつきを隠さずにこちらを睨んで叫ぶ。

「そんなこと分かってるのだ!マルカル参謀…これはどういうことなのだ!君の予測より敵の数機の数が多いのは何故なのだ!」

 この人の語尾には正直虫唾が走るというか、神経を逆撫でされる気分だ。それにしても何故この人が指令などをやらされているのか理解ができない。戦術の基本がまるで分かっていないのだから。

「奇襲とは言え、作戦開始から一時間以上経過すれば作戦域を敵に特定、察知されるのも必然かと思われますが」

「言い訳はいいのだ!そもそもこの作戦に欠陥があったに違いないのだ!」

 都合が悪くなったら人のせい…つくづく人の上に立つことが向いていないと思うのは私だけだろうか?

「直前に作戦計画に修正を加えられたのはアノウ指令です。」

「…自爆システムをアレクサンダに加えたのが不服なのだ?」

「無闇に兵力を消耗させる作戦は戦術としては…邪道です。」

 邪道な上に効果が薄い、最悪の作戦だ。

「ディゼルとかいう筋肉女はどうせ爆発くらい耐えられるのだ!ならば死ぬのはイレブンなのだ!君の青臭いヒューマニズムもイレブンには必要ないのだ!君は知らないのだ?イレブン共は昔から切腹とか神風とか言って死んだり、身体を酷使して鍛えるのが大好きな民族の末裔なのだ!そんなイレブン共に自爆作戦を強いることの何が悪いのだ!」

 残存ナイトメア数が減って行くことを確認しつつ、私は予定通りに話を誘導して行く。

「本当によろしいのですか?」

「な、なんのことなのだ!?」

「このまま彼らが全滅し、ブリタニア軍の迎撃ラインが維持されれば…ナルバから撤退する132連隊は被害を受けます。このアルファ作戦が失敗すれば当然132連隊の脱出路を確保するはずだった我らwZERO部隊の責任が問われます。作戦失敗時に起こるであろう市民からの糾弾をパリの統合本部や政治家が素直に受けるとお思いですか?為政者達は自らの手を汚す事はありません。つまり、責任を取るのは指令である貴方です。アノウ指令。」

 本音を言えば脱出路を確保する作戦にこれだけの戦力しか投入しない方も悪いのだが、そんなことをアノウ指令が考え及ぶはずもないし、それをここでいうメリットもないので黙っておく。私としては彼が暴れてくれた方が都合が良い。

「こ、こんなところで捨て石にされたらたまらないのだ…!私にはまだ…これは、貴様の、貴様のせいなのだ!」

 アノウ指令は銃を取り出し、私に突きつけてくる。無意味な…

「貴様の立てた作戦のために、何故この私が責任を負わなければならないのだ!」

 みっともなく叫び、アノウ指令は発砲してきた。

 

 放たれた弾丸を掴み、そのままアノウ指令の顔面に拳を叩き込む。

 

 狙い通り扉が開き、特務隊のハメル少佐達が入ってくる。

「何事です!誰が発砲したのですか?」

 事前の予定通りハメル少佐は私のへと近づいてくる。

「弾丸キャッチですか?お見事ですね。いや、普通に人間業じゃないんですがねそれ…」

 ハメル少佐は私の顔面パンチで気絶したアノウ司令の脈や呼吸を確認していた。

「生きてはいるようですね。そろそろ状況説明を…」

 そんなことよりも私は私でやることがある。

「緊急指令305号!クラウス中佐!」

「はいはい、クラウス中佐、司令の交代を承認っと…どうぞ、マルカル司令官殿」

 これで私に作戦の指揮権が移った。まずはこの馬鹿げた自爆ユニットの解除からだ…

 

「作戦変更、アレクサンダの自爆ユニットを解除!」

 




筋肉世界の余波?でムノ…アノウ司令の口調が変な口調になってますが、まぁ問題はないでしょう。


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PHASE03′

 パーティの次の日、私と日向中尉とレイラはスマイラス将軍と共に国防四十人委員会の開催会場まで向かっていた。まぁ、出席するのはスマイラス将軍でレイラは見学、私と日向中尉に至ってはあくまでも道中の護衛…まぁ、国内移動なのでその護衛も不要だけど…で会場に着いたら会場の外で待ちぼうけを喰らうことになる。会場周りをランニングでもしていようかな。

 輸送車両に積み込まれたガルドメアのコクピット内で一人揺られながら空気椅子で筋肉を鍛えていると、ニクアツ マッスルガイさんから通信が入った。直ぐに指で二度とコクピット内を弾いて反応を返す。

『相変わらずの反応速度だなディゼル。E.U.のお気楽さが感染していないようで安心したぞ。今お前は国防四十人委員会の開催会場に向かっているな?』

「…えぇ」

 コクピット内ならばこの会話が聞かれることも無いと思い口頭で反応を示した。

『お前には委員会会場に潜入してもらいたい』

「私には立ち入りが許可されていませんが…」

『何のための筋肉だ?警備の眼を掻い潜りなんとか潜入しろ。これは命令だ。』

 …はぁ、簡単に言ってくれる…。

『しかしE.U.の無能な政治家が40人集まったとて我ら神聖ブリタニア帝国を変えることは出来ぬゥ!我が国なるように有能な皇帝陛下が!…皇帝…陛…下が…っ!』

 …ん?どうしたのだろう、通信機の不調だろうか?

『ぐっ…うぅ…スザク…プロテインを…プロテインをくれないか…なぁ…スザ』

 あ、通信が切れた。それにしてスザクとマッスルガイさんはどうやら私が潜入任務をしている間に仲良くなったらしい。確かマッスルガイはスザクのことを枢木と呼んでたと思うけど。

 その瞬間、車両が急ブレーキを掛けたらしく、大きな揺れが起きた。

「日向中尉!」

『まさか国内で襲撃とはな』

 コクピット内から車両ハッチの開放を試みるが、恐らく今の揺れで歪んでしまったらしく反応がない。

「日向中尉、こちらのハッチが開きません」

『こちらもだ』

「分かりました。私が手を打ちます」

 私はガルドメアのコクピットから飛び出し、日向中尉の乗るガルドメアの前のハッチに蹴りを叩き込む。

「ふん!」

 再度の蹴りでハッチが吹き飛んだ。外を確認すると、そこにはグラスゴーが立っていた。

「グラスゴー?一体何でこんなところに…」

 そしてどうやら既にわたしたちとは別の護衛のガルドメアが2機、そのグラスゴーにやられてしまっているようだ。

『どいていろ!』

 スピーカーから日向中尉の声が聞こえ、そこを退くとガルドメアが飛び出ていく。どうやらガルドメアであのグラスゴーとやり合うようだ。私も援護しようと車両を飛び降りる。すると日向中尉のガルドメアは敵のグラスゴーに突っ込んでいき、続けてグレネードを手にした日向中尉が飛び降りてきた。

 

 ので、それを抱き止める。

 

「このままグラスゴーの懐に入るんですよね?」

「お前…!?あの距離から追いついたきたのか!?」

 奇しくもお姫様抱っこの形になった日向中尉を抱えたまま速度を落とさずグラスゴーに突っ込む。

「そのままグラスゴーの股下を走り抜けろ!」

「分かりました日向中尉!」

 言われた通り駆け抜けると、すれ違い様にグレネードを股関節に撃ち込んだらしく、グラスゴーは倒れ込んでいた。

「後は俺がやる。お前は司令の方を見てきてくれ」

「分かりました。」

 これまた言われた通りレイラの乗っていた車両の方に向かうと、爆発して炎上する車両からスマイラス将軍をお姫様抱っこしたレイラがギュピッギュピッと足音を鳴らして出てくるところに出くわした。

「レイラ…司令、スマイラス将軍が無事ですか!」

「あ、あぁ、私は平気だよ。恥ずかしくはあるがね」

「心配してくれてありがとう。でも、これくらいの爆発で傷を負うほどやわな鍛え方はして無いわ、マーヤ」

 そんな風ににこやかに会話をしていると、フードを被った女の子が現れた。

「な、何で…何であの爆発食らって生きてんだよ…!おかしいよあんた!」

 そして刀を構えてこちらに向かってくるが、余りにも遅い。

「んー、顔はやめといてあげるね」

「なっ…」

 私は一気に距離を詰めるとその腹に本気の半分くらいの力で拳を叩き込む。

「かはっ!?」

 女の子はそのまま倒れ込んでしまったので刀を取り上げる。

「この刀…本物?凄いね、ちゃんと手入れされてる…これなら私の皮膚に上手く当てれば傷はつけられるかも…」

「か、返せ…!」

 女の子はこちらを鬼気迫る表情で並んでくるあたり、きっと彼女にとって大切なものなのだろう、へし折るのは勘弁してあげようかな。しかし、この状態で返してあげるほど私はお人好しでもお気楽でも無い。女の子の首根っこを掴んで持ち上げる。

「は、離せ!」

「静かにして」

 握る手にギリギリと力を込めると首がミシミシと音を立てる。最早叫ぶ余裕すらないようだ。

「アヤノを離せ!」

 背後から声が聞こえ振り返ると体に何かを巻きつけた貧弱そうな男の子が叫んでいた。

「早く離せ!さもないとこの爆弾を起爆するぞ!」

 なるほど、さっきのレイラの車両の爆発はあの爆弾が原因なのか。

「レイラ!パス!」

 私は掴んでいた女の子をレイラに投げつける。

「なっ!?」

 それと同時に爆弾少年にダッシュで近寄り、その腹に膝を軽めに叩き込む。

「ごはっ!?」

 それと同時に男の子から爆弾をむしりとり、それを空高く放り投げる。

「ユキヤ!その筋肉女にスイッチを押させるな!」

 パスした後に抵抗したからだろうか、レイラに関節技…あれは海老固めかな…を決められている女の子が必死な表情で叫んでいる。確かにこのタイミングで起爆されれば彼らに最早武器はない。つまり絶対に押されたくない状況なわけである。だが、断る。

「いいえ、限界よ、押すわ!」

 先程これ見よがしに見せつけていた爆破スイッチを男の子の指ごと押仕込む。と、同時に空から凄まじい爆風が降りかかった。…予想よりかなり大規模な爆弾だったようだ…本気で投げておいて正解だったわ。

 

 それからレイラと私による説得が効いたのか、爆弾魔のユキヤ、刀使いのアヤノ、グラスゴーのパイロットのリョウがwZERO部隊の一員となった。彼らは居場所が欲しかったらしい。確かにこの国には日本人には居場所がない。狭い監獄のような一角に隔離収容されるか、ナルバ作戦で散って行った彼らのように肉親を犠牲に市民権を得るか、所謂アンダーグラウンドと呼ばれる無法地帯で生きていた彼らなりの精一杯の生き方だ。その賢明さにはどことなく陽菜達に似たものを感じた。

 幸い、w ZERO部隊はレイラが司令であり、今回スマイラス将軍もレイラに命を救われた形である。そんなレイラとついでに私と言う美少女二人から上目遣いでお願いされては流石のスマイラス将軍も首を縦に振らざるを得なかったらしい。

 それにしてもレイラって上目遣いとかそう言うテクニックは知らなかったようね。

『上目遣い…こうでしょうか?』

『そうそう!そんな感じ!一緒にスマイラス将軍に上目遣いでおねだりしましょう!』

 そんなやりとりをしたのだ。…あ、国防四十人委員会の潜入…できないけど大丈夫かな?

『やぁ、マーヤ。久し振りだね。』

 そんな突然の通信に私は二度軽く咳払いをする。

『マッスルガイ卿は今少し急用があってね…代わりに僕が対応するよ。マーヤの状況は理解してる。国防四十人委員会への潜入は中止だよ。引き続き任務頑張って。僕らもあと1ヶ月もすればユーロブリタニアに派遣されるから。それじゃ』

 1ヶ月…私はその間もずっと潜入してなくちゃいけないのかぁ…。

 

 ヴァイスヴォルフ城での生活、それは実に平和で何もない日々であった。朝早く、いつもの時間に目を覚まし、軽くストレッチをして全身を軽くほぐし、水分を補給。鏡の前に立ち筋肉の調子を確認し、今日の体調を確かめる。

「うん、今日もいい感じね。」

 まずは体力が落ちないようにヴァイスヴォルフ城周辺のランニングだ。レイラも都合がよければ来れるのだが、司令という立場ではやはりデスクワークが多いらしく忙殺されているようだ。靴紐を結び直し走る前に深呼吸をしていると警備部のハメル中佐が通りかかった。

「おや、ディゼル少尉ですか。今日も朝から鍛錬のランニングですか?精が出ますね。」

「えぇ、軍人は身体が資本ですから、オスカー ハメル少佐ー

「何故わざわざフルネームで?」

 ハメル少佐…真面目な印象を受けるメガネをかけた男の人。筋肉はさほどないようだが、どことなくギルバートGPギルフォードさんと似た雰囲気を感じる。

「我々も日々鍛錬を積んでいるつもりですが中々マルカル司令やディゼル少尉のようにはなりませんね」

「まぁ、体質もありますから仕方ありませんよ。でも体を鍛えると言う過程で心に刻まれた心の筋肉は体質に関係なくしっかりと鍛えられているはずですから大丈夫だと思います」

 私はサムズアップを返し、ハメル少佐と別れ走り出した。

 ランニングを終えた後はウェイトトレーニングがてらクレマン大尉のところに出向き資材の運搬を行う。

「マーヤさんがきてくれると資材の整理が早くて助かるよね、クロエ軍曹」

「作業用クレーンだけじゃ時間がかかるもんね、ヒルダ軍曹」

 アレクサンダを開発したクレマン大尉の部下であるクロエ軍曹とヒルダ軍曹、私がここを出るときに彼女達…いや、クレマン大尉だけでも連れ出せばブリタニアはさらに技術を進化させられるのではないだろうか。アレクサンダの装甲やフレームに使う素材を肩に背負い運びながらクレマン大尉に少しだけ視線を移す。

「あっ…何でしょうか?マーヤさん?」

 しまった、目があった…ここで変に話題を晒しても怪しまれるか…何かいい話題を…

『「お茶会に興味がある」と言え』

 突然の通信に驚きつつ、私は言われた通りに口を開く。

「…いえ、クレマン大尉はよくレイラ…司令とお茶会をすると聞きまして、少し興味があるな〜っと…」

「…!そうなんですか?でしたら今日の午後ご一緒にいかがですか?」

 私は正直そんなに興味ないけど言ってしまった以上行かざるを得まい…

「ええ、是非」

 ニコリと筋肉を無理やり動かして笑顔を作り言葉を返した。

 

「ジョウ ワイズ!データを!」

「やっぱり筋繊維の密度が異常です。太さも常人に比べて遥かに逞しい…すごいなぁ」

 今はマッスルデバイスの開発者であるランドル博士と助手のジョウ ワイズさんに筋肉を調べられている。マッスルガイさんはマッスルデバイスそのものをご所望だったが開発者の彼女がいた方がなにかと都合がいいだろう。そんな私の独断で潜入時の自由な時間を活用してこのようにランドル博士の研究に貢献して信仰を深めようと言う私の作戦である。

「この筋肉…ただ鍛えただけじゃない?なにか別の要因が…?」

 沢山の装置をつけられ謎の機械に入っては筋肉に力を入れてはデータを取る。そんなことの繰り返しで時間は過ぎ去っていく。

 

「マーヤさん、今日もありがとう。司令にも手伝ってはもらってたんだけどやっぱり複数の対象からデータを取得した方がより正確なものになるから。また来てちょうだい」

「はい、是非。」

 潜入して少しの間でわかったことが一つある。パンツァーフンメルやガルドメアなど、現在のE.U.の主要ナイトメアに対し、アレクサンダとマッスルデバイス、これらは明らかに技術力のレベルが逸脱している。更にこの前乗ったアポロンの馬車…間違いなくこのwZERO部隊にはE.U.の持つ現在の最先端技術が密集していると言っても過言ではない。ランドル博士とクレマン大尉をこのまま放置しておくのは…まずい。

「どうしたのマーヤちゃん…顔怖いけど…飴要る?」

「いえ、要りません。ジョウ ワイズさん」

「美味しいのに…」

 ちょっと申し訳なかったので棒のついたキャンディーを一つひったくり口にブチ込み噛み砕く。うーん、甘い…。包装を見るとどうやらこれは『トゥゴーパーソナルベンティダークモカチップクリームフラペチーノノンファットミルクに変更ライトアイスソイミルク追加クアトロショットチョコレートソース追加キャラメルソース追加バニラシロップ追加キャラメルシロップ追加アーモンドトフィーシロップ追加ヘーゼルナッツシロップ追加エクストラチップエクストラホイップエクストラパウダー味』らしい。…うん、もはや何なのかは分からないが、イラストを見た感じカフェラテか何かにマシマシになったホイップとその他諸々をイメージした味のようだ。…こんなもの常飲してたら病気になるんじゃないだろうか…。そしてそれを再現したこれも…。ジョウ ワイズさんのまるまると肥えた腹に一瞬だけ視線を移し、背を向ける。

「ご馳走様でした。」

 

 それから、約束通りクレマン大尉とレイラと私とでお茶会となった。まぁ、お茶を用意してくれたのはレイラだし、お茶菓子を用意したのはクレマン大尉だけど。

「…まぁ、そんなことが?」

「…えぇ」

 他愛のない話をしつつ、紅茶を口に含む。うん、普段飲んでいるものよりもかなり上品な香りがするし味わいも異なる。多分レイラのことだから良いお茶っぱでも使っているのだろう。そしてクレマン大尉の作ったお茶菓子、決して甘すぎずかと言って物足りなさもない。クレマン大尉曰くこれで砂糖不使用の低カロリーな代物だと言うのだから驚きだ。

「アンナはね、私とお茶会がしたくて、この味にたどり着くまで何度も試行錯誤してくれたの」

「ちょっとレイラ!」

 なるほど、ライラも私と同じで筋肉を気にする身、そんなレイラとお茶会がしたいがために努力したと言うことか。サクサクと心地よい音を響かせるお茶菓子を楽しみつつ、私は空気椅子でお茶会を過ごした。

 

 たまにはこう言うのも悪くはないのかもね。

 

 



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PHASE04′

 私は現在、E.U.の軍人としてw ZERO部隊に潜入している。そしてE.U.の立場として戦えば敵は当然ブリタニアということになる。特に私が直接刃を交えるのはユーロブリタニアと呼ばれるブリタニアのヨーロッパ支部のような軍。そして私にはとある事情でユーロブリタニアに知り合いがいる。それはミカエル騎士団団長…ミケーレ マンフレディ卿である。彼は元ナイトオブラウンズであり、私と同じくナイトオブツーの名を冠していた。そのために就任後わざわざ私のところに挨拶に来てくれたのである。

『初めましてだな。私がミケーレ マンフレディ、君と同じナイトオブツーだった男だ。』

『初めまして。マンフレディ卿、私はマーヤ ディゼルと申します』

『そう畏まらずとも良い!立場だけで言えば我々はそこまで変わりはないのだからな!しかし、噂には聞いていたが凄まじい筋肉だ。さぞ鍛錬を積んだのだろう?』

 マンフレディ卿とは不思議と気が合った。そしてナイトメアの話になり、マンフレディ卿から画像データを見せられた。それはもう派手な金色のナイトメアであった。ヴェルキンゲトリクス、金色のボディに四脚形態を持ったナイトメアだ。とても格好いいと思ったし、戦場で目立つ金色というカラーリングは、常日頃から凄まじい筋肉で人々から注目を集める身なので性に合っていた。

『ふふ、その目…どうやらこのヴェルキンゲトリクスの魅力に早くも取り憑かれたようだな』

『ええ』

『しかしこいつはユーロブリタニアに運んである。それに、もうこいつを継承させる相手は決まっているのだ。』

 その時は心底がっかりしたものだ。だが、よくよく考えればマンフレディ卿のナイトメアを貰うということはマンフレディ卿に余程の何かがあったということになる。私は考え直し話題を変えることにした。

『その継承先というのは?』

 

『私の部下でな?シン ヒュウガ シャイングという男だ。』

 

 …どうやら夢を見ていたらしい。そこで目が覚め、日課のトレーニングをこなして今日も1日を過ごす。鍛錬こそ欠かさずやっているものの、こうも何もないと鈍ってしまわないかと心配になる。この1ヶ月、リョウ ユキヤ アヤノの日本人三人組は従順であり、シミュレーターの成績も良好らしい。マッスルデバイス的にはユキヤとアヤノはかなりセーブがかかるようだが、ナルバ作戦での実動戦闘データが役に立ったらしく駆動系やプログラミングがより最適化され高性能になったらしい。ついでに聞いた話ではどうやらwZERO部隊の慢性的な人手不足はドローンによって補う方向性になったそうだ。ドローン技術…これまた持ち帰ったら喜ばれそうなものが出て来たわ…。

 そんな風に思っているとレイラから声を掛けられた。

「マーヤ、日向中尉と今日の15:00に中庭まで来てください。少し話したいことがあります。」

「分かったわレイラ」

 今日はあまり筋肉のキレがない…何か悩み事だろうか?最近筋トレする時間がない…とか?いや、それならば日向中尉を呼ぶはずがない。日向中尉にその事を伝えると少しだけ考えるような顔をしてから

「アイツらのことだろうな」

「…アイツら?…あぁ、リョウ達?」

「他に司令は何か言ったたか?」

 私は首を横に振ると日向中尉はわかったと短く答えて去っていった。

 

 約束の時間、少し早めに着くと紅茶を勧められた。うん、良い匂いだ。レイラは紅茶を淹れるのが上手いらしい。きっと私ではこうはいかないだろう。直ぐに日向中尉もやって来た…時間前に到着する辺り、日向中尉って結構真面目なところがあるみたいね。

「日向中尉、わざわざ来て頂いてありがとうございます。」

「いえ、上官の命令ですから。お気遣いは無用です。」

 多分だけど、レイラのこれは気遣いとかではなく素である。1ヶ月共に過ごして分かったのだ。レイラはその鍛え上げられた私に匹敵する筋肉を見れば分かる通り自分には厳しいが、その反面他人にはかなり甘い節がある。だが、そこが彼女の魅力なのだろう。こんな形で出会っていなければ本当の意味で友達になれていたのかもしれない。

「あぁ…そうですね…。お茶でも如何ですか?」

 レイラは再び空気椅子に座ると私に薦めたように紅茶を薦めている。日向中尉は何も言わずに席についた。まぁ、レイラは気付いていないけれど上官の薦める紅茶を部下が断るわけにもいかないだろうに。

「…司令、彼等のことですか?」

 日向中尉…私にはアイツら呼びだったのに。

「えぇ、日向中尉とディゼル少尉の意見を参考に聞かせていただければと。あ、どうぞ」

 日向中尉は紅茶を飲み始めた。これはつまり私から言えと言うことだろう。

「ではまずは私から。まずは佐山 リョウ准尉。まだまだ荒削りですがアンダーグラウンドを生き抜いていただけはあってベースとなる筋肉は中々付いています。恐らく十分な栄養を摂れていないのが主な原因でしょうが、少々身体に不具合が見られるかと。…ただ、ここ1週間でほぼ完全な状態に戻りつつあるのでこれからも適度な運動とトレーニングを積めば彼も立派なマッスルガイになれると思います。」

「なるほど」

「次に香坂 アヤノ准尉。ご存知の通り剣術が得意なようですし、所持していた刀の手入れを見る限り何か特別な思い入れがあるのだと思います。私との組手でかなり洗練されていますので剣術については実用に足るかと。ただ、体質がそうさせるのか、余り筋肉が付いていないようです。…と言うかあれはワザと手を抜いて筋肉がつかないようにしているようにも思えました。ここは私に是非教育的指導をさせていただきたいです。」

「暴力はいけませんよ少尉。」

「最後に成瀬 ユキヤ准尉。彼は…何かを隠しています。顔の筋肉の動きを見れば常に何かを画策しているのが見て取れました。彼は恐らく体質だと思いますが、筋肉がほぼ有りません。しかし、爆弾製造やアンダーグラウンド内でナイトメアを入手した経緯を考えると中々稀有な人材ではないかと。」

「…わかりました。」

 そこで私が日向中尉を見ると、日向中尉はゆっくりとカップを置く。音を立てない辺り、もしかしてかなり育ちが良いのではないだろうか?

「ディゼル少尉の意見は概ね事実ですね。…マルカル司令は彼等がこのまま大人しく出撃するとお思いですか?」

「…?承知してくれたと思っています。」

「フッ…それは司令な願望であって事実ではありません。」

「彼等は…ここから出て生活は出来ません」

 さっきも言ったが、レイラはかなり人に甘い。それに、ゲットーで陽菜達を見てきた私とは違い、整った世界の上でしか暮らしたことがない…それ故にアンダーグラウンドを生きていた彼等の事を正確に予測できていないのだろう。

「彼等が犯罪者であり…イレブンだからですか?」

「私は…」

「構いません。ディゼル少尉同様、お互い事実だけを話しましょう。…司令の考えは彼等も分かっているでしょう。」

 で、あるなら…

「彼等は必ず反乱を起こす…ってことですか、日向中尉」

 私の発言にこちらに視線だけを送り、日向中尉は頷いた。

 

 その次の日の事だ。私が最近始めたトレーニングにヴァイスヴォルフ城の外壁をボルダリングの要領で登ると言うものがあったのだが、その道中レイラの飼い猫であるエリザに出逢った。

「にゃあん」

「あら?エリザ…こんにちは、こんな所でお散歩?落ちないように気を付けてね」

「なーご」

 エリザが通るのを待ち再びボルダリングを続ける。

「…あれ?」

 …エリザって確かレイラが部屋から出ないように飼ってるんじゃ無かったっけ?壁面の細い道出っ張りを慣れたように歩いていたところを見るにどうやら初めてと言うわけではなさそうだけど…。そしてボルダリング中、廊下を歩くアヤノを見かけた。アヤノは壁面に何かをすると壁の中に入っていった。更にその後をレイラが追…おうしたようだが、どうやら隠し通路への入り口は狭く、入れなかったようで、日向中尉を呼び付けて追わせるようだ。私もこのまま呑気に筋トレをしているわけにもいかないと思い、壁面を移動してこのまま部屋に帰ることにした。しかし、私の部屋の中に窓に背を向けて座るユキヤが居るのを見つけた。…私に何か用だろうか?とりあえず窓を開け部屋に入ると、驚いたようにユキヤがこちらを振り返る。

「うわっ!?えっ!?窓から…!?こ、ここ5階だよ!?」

「壁を登ってきたのよ。」

「壁を!?」

「それにしても白昼堂々女の子の部屋に来るなんて…ユキヤって見た目と違って結構大胆なのね。確かに私は美少女だし、ナイスバディだとは思ってるけど…」

 三人の関係をみるとアヤノはどちらかというと妹って感じではあるが、女の子と常に一緒にいるがために距離感の取り方が苦手なのかもしれない。

「は…?何を言ってるんだマーヤ!?というかおいやめろ!近づくな!!爆弾を…」

 よく見ればユキヤは体に爆弾を巻き付けていた。これは危険だ。私は手刀を叩き込み意識を狩り取った。

「ドアからでは届かなくてもこの距離なら流石に押させないわ。…って聞いてないわよね。」

 …というか、なんでユキヤが私の部屋にいるのだろう?自由に出られるようにでもなったのだろうか。念のためにレイラに連絡を取ると、風切り音が聞こえる…走ってるのかな?

「レイラ、聞こえる?今ね、ユキヤが私の部屋に居たんだけど」

『やはりですか、日向中尉は香坂准尉を、私は佐山准尉を追跡中です。マーヤはそのまま成瀬准尉を拘束してハメル少佐に引き渡してください。但し、彼等には生きてもらいます。マーヤもそのように動いて下さいね』

「分かったわ」

 私はユキヤを担ぎ上げ部屋を出てハメル少佐にユキヤを引き渡した。暫くすると日向中尉がアヤノを、リョウをレイラが連れてきた。これで三人仲良くお縄ということである。

「何故逃げようとしたのですか?」

 問いただすレイラをアヤノが睨みつけると悪びれもせずに口を開いた。

「アンタ、私達を使い捨ての駒にするつもりだろ!お前の作戦で何人死んだ!?言ってみろ!!」

「それは…。」

 事実、レイラの立てた作戦…まぁ、そもそもの注文が無茶だったっていうのもあるけど…では多くの日本人が命を落としている。私の様な筋肉を持っていない中では唯一日向中尉が奇跡的な生還をしたのだ。

「戦争である限り…生還率が100%だとは言えません…しかし、私は必ずみんなで帰ってきたいと思います。」

 …うん?みんなで帰ってきたい?その言い草ではまるで…

「みん?なんだ、まるでアンタも行くみたいな言い方だな」

 すかさずリョウが野次を飛ばしてきた。しかしレイラは動ずることなく言葉を続ける。

「えぇ、次の作戦では私も出撃します。」

「はっ…アンタ、それ本気で言ってるとしたら余程おめでたい性格か馬鹿だぜ」

 レイラは馬鹿ではないが、どちらかというとリョウの言う通りめでためな性格をしているのは事実だ。さらにいくらレイラに筋肉があると言ってもその実レイラの筋肉はかなり観賞用に傾向している節がある。弾丸キャッチなどの基本的なスキルは持っているが、ゼロのクラウチングスタートからの膝蹴りや私のドロップキックなどの攻撃的な技を体得していないのだ。

「それは危険よレイラ!」

 今回口を開いたのはクレマン大尉。友人が戦場に行くと聞けばそれは驚いて当たり前だろう。しかし、レイラの表情を見ればそれは無駄なことがわかる。仕方がない、ここは一肌脱ぐとしよう。私は主に上半身の筋肉を重点的に力ませ膨張した筋肉で服を破りさる。

「マーヤ!?」

 驚くクレマン大尉に笑顔を見せ、そのままサイドチェストを決める。

「安心してクレマン大尉。マルカル司令は私が守りますから」

「マーヤ…」

 クレマン大尉は頷き、上着を脱ぎそれを差し出してきた。

「とりあえず…前だけ隠して…下着が丸見えよ…」

「あ、はい。」




マーヤの下着は特別性なので破れません。残念だったな男子諸君。


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PHASE05′

 今回のガンマ作戦はワルシャワに駐屯しているユーロピア共和国軍の援護…。東の前線である24Aエリアに進撃する際に同エリアに居るユーロブリタニア軍の後方に降下し、その背後を奇襲攻撃する。それによって混乱する敵軍の正面を味方の103軍団が攻撃すると言うもの。言葉で聞けばあたかも素晴らしい作戦に聞こえるが…

「敵のど真ん中に降下する…普通じゃ考えられない作戦ね」

 敵陣のど真ん中に少数であるwZERO部隊が降下する、これでは物量で簡単に押し潰されてもおかしくは無い。

 クラウス副司令はこの作戦内容を改めて聞いた時のユキヤとリョウに悲観するなと言い、進撃してくる第103軍団と合流できれば帰還できると言っていたが、四方八方敵だらけの中で生き残るのは至難の業だ。ユーロブリタニアには私のことは伝わっていないため、私だって死ぬ可能性はある。

 …ナイトオブツーとして、何より私の秘密を知るまでは死ぬわけにはいかない。必ず生きて帰る…。今回与えられたナイトメアは前回同様アレクサンダ…タイプ02らしいが正直変化はあまり分からない。レイラのアレクサンダにはドローンオペレーターとしての機能が、リョウにはハンドアクスが、ユキヤには狙撃用ライフルが、アヤノにはブレードが追加装備であるらしいが日向中尉には特別な装備はないらしい。私は事前の要望として投擲式グレネードを3発用意してもらった。

『聞こえるかい、マーヤ』

 聞こえてきたのはスザクの声、アレクサンダのコクピットでは通信が傍受されている可能性があった為、二度指で叩くことで反応を返す。

『うん、聞こえてるみたいだね。あと…大体12時間でペテルブルクに到着するんだ。ようやく君と仕事ができるね。…まぁ、僕らがそちらについても暫く合流はしないみたいだけど。』

 そうなのか…私としてはこれ以上こちらにいるのはバレるリスクなどを考慮して辞めたいところだが…

『僕としてはリスクが大きいからね、早めにマーヤを回収したいところなんだけど、ル…マッスルガイ卿がヴァイスヴォルフ城を攻める段階になるまでは待機らしいんだ。取り敢えず今回もマーヤは全力でE.U.の兵士として闘ってくれって言ってたよ。それじゃあ、頑張って』

 私は再度二度指で合図を送る。

『スザク…プロテインを…』

 …通信の切り側にマッスルガイさんの声が聞こえたけど…マッスルガイさんはトレーニング中だったのかな?何にせよ今はまだこのwZERO部隊の一員として戦わなければならない。ヴァイスヴォルフ城を攻めてくる時まではスパイとして居なければならないし、こちらでの生活を考えれば司令であるレイラを失うのはまずい。スザクとの通信の間に作戦は着地の段階まで進んでおり、他のみんなとはぐれぬように滑空し着地を行う。…あれ?レイラのアレクサンダは?

『ディゼル少尉、司令のアレクサンダは流されて着地が難航した様だ。俺がカバーに入るから周囲の警戒を頼む』

 日向中尉の発言から察するに別にレイラは負傷したとかでは無さそうだ。良かった…。

「了解しま…」

 瞬間、アレクサンダでその場を跳び退くとその場を弾丸が通過する。

「敵…じゃ、無い!?」

『ナイトメア戦なら筋肉は関係ねえ!今までの恨み晴らさせてもらうぞ筋肉女ァ!』

 なるほど、敵では無くリョウ達か、安心した。全く、こんな戦場のど真ん中で強者である私に挑むとは…

「こんな状況で私という強者に挑んで己を鍛えたいとは!リョウも中々熱心なのね!」

『は…?』

 そんなに私の胸を借りたいと言うならば貸してあげよう。私はトンファーを両手に持ち、リョウのアレクサンダに接近する。

『突っ込んでくるなんて間抜けな奴だぜ!』

 放たれるライフルをトンファーを回転させることで弾き、さらに距離を詰める。

『何だよその動き…!あり得ねえ!!』

 そして一気に距離を詰めてドロップキックを叩き込み、衝撃の瞬間にアレクサンダの脚部を延長させて更に衝撃を加える。

「アレクサンダはインセクトモードの時に太腿が伸びる、そのシステムを流用した蹴りよ!覚えておくと良いわ!」

『できるかァ!そんな操作ッ!!』

 さて、トンファーを寸止めでもしてこのトレーニングを終わらせるとしようかな

『リョウから離れろ!』

 次の瞬間、私がその場でインセクトモードになることで屈むと、またしても弾丸が通過した。

『僕らとは比べ物にならない変形速度…!筋肉量の違いか…!』

「筋肉量に応じてマッスルデバイスがリミッターを掛けてるからね、でも今の狙撃は中々正確だったわ!でも奇襲をするなら…」

 私はその場に落ちていた手頃な岩を持ち上げ思い切りユキヤのアレクサンダに投げ付ける。

「静かにすることねェッ!!」

『ユキヤッ!』

 躍り出てきたのはアヤノか、ふむ、本来はアヤノも隙をうかがって奇襲する手筈だったのかもしれないが…阻止できたようね。そして私は狙撃手であるユキヤと私の間にアヤノがいるこの瞬間を逃さない。未だに伏しているリョウのアレクサンダをヘッドロックして盾代わりにユキヤ達に向ける。

『リョウを盾に!?』

『俺ごと撃てユキヤ!』

『クソ!マーヤ ディゼルッ!!』

 突っ込んでくるアヤノに対してリョウのアレクサンダを投げつけてぶつける。

「真正面から挑むなんてまだまだね。三人とも実力はあるのに連携が出来てないわ。だからこうやって利用されるのよ」

 アヤノとリョウが揉み合っている隙に、ユキヤの狙撃を掻い潜りつつ距離を詰める。

『なんで当たらないんだ…!』

「そんなの簡単…筋肉よ!」

『そんな訳あるか!!』

 狙撃手を倒す方法は簡単、距離を詰めて殴る事だ。

「ユキヤ、近付かれたらどうするかまで考えて狙撃手をすることね!」

 ユキヤのアレクサンダの腹を蹴り飛ばし、すぐさま跳び掛かる…と同時に凄まじい爆発が起きた。

 直様通信が入った為、二度指で合図を送る。

『ふむ。久し振りだなディゼル。君に死なれては私の作戦に差し支えるので教えておいてやろう。感謝すると良い』

 どうやらリョウ達もこの状況で鍛錬を積む気は無いらしく動きはなかった。

『現在ユーロブリタニアはお前がいる周辺…つまり前線の背後に対して闇雲に長長距離砲を撃ち込んでいる。非効率的だが、凡人にしては上策だ。当てずっぽうだが今現在お前達を苦しめているだろう?』

 なるほど、どうやっているかはわからないがいきなり背後を取られるなら背後に適当に砲弾をぶち込んでしまえということらしい。

『北北西へ向かえば着弾範囲から出られます!マーヤも早く!』

 レイラからの通信を受けその通りに進むと正面にはブリタニアのナイトメア部隊…とは言え今更ただのサザーランドに遅れをとる私ではない。トンファーを回転させサザーランドのアサルトライフルの弾丸を弾く。暫くするとサザーランドは何者かに狙撃され大破した。…ユキヤかな?

『このまま前方にあるスロニムに全速前進です!』

 マッスルガイさんからの通信はなかったが、この布陣でこの砲撃、確実に進行方向を誘導されているように感じられる。とは言え、事実あの場にいては砲撃の餌食になるのは時間の問題であった。ならば罠と分かっていても進むしかないだろう。

 スロニムという街に着いて最初に感じた違和感は誰もいないということだ。これだけの規模の街に人が一人もいないなどあり得ない、やはり罠だったということか。

『お前がハンニバルの亡霊か!さぁ!殺し合いを始めようかァ!!』

 現れたのは赤いグロースターソードマン。マンフレディ卿から聞いた事がある。確かからの部下のシン ヒュウガ シャイングのお抱え部隊、アシュラ隊の隊長が赤いナイトメアに乗っていたはずだ。つまりこの作戦にはマンフレディ卿が絡んでいるということか。直接戦うのは勘弁願いたいところだ。

『どうした!ハンニバルの亡霊!この程度かよ!!』

 彼の二刀流はスザクに比べれば非常に遅く、まだまだ拙い。欠伸を噛み締めつつ軽く受け流す。

 任務的にはユーロブリタニア軍の殺害は認められているが、相手を知っている今回は話が別だ。直接手を下すのは流石に躊躇してしまう。

『どうしたァ!?守ってるだけじゃ勝てねぇぜぇ!?』

 五月蝿いなぁ…。

『ディゼル少尉、平気か?』

 通信先は…日向中尉か。丁度いいや押し付けてしまおう。

「日向中尉!相手は隊長機かと!私では歯が立たず…!」

『お前が…?まぁいい、それならマルカル司令の護衛を交代してくれ。』

「了解」

 よしよし、上手くいったようだ。

『マーヤ、日向中尉を援護しなくて良いのですか!?』

 レイラにそう言われたが、日向中尉と赤い彼の戦闘はかなり縦横無尽に動き回るものだった。下手に援護に入れば邪魔になってしまうだろう。

「下手に手を出せば返って日向中尉の邪魔になると思うわ。今は周辺の警戒を」

『…わかりました。』

 警戒しながら周辺を巡回していると機体を降りているアヤノを見つけた。

『香坂准尉…!?大丈夫ですか?こちらへ…私のアレクサンダで運搬します。』

 どうやらアヤノも流石に複数相手には勝てず期待を放棄したらしい。他にもレイラの話ではドローンは悉く破壊されているとか。暫くするとリョウを連れたユキヤのアレクサンダと合流した。ユキヤのアレクサンダも酷く損傷しておりまともに戦えそうにはない。道中で現れたナイトメアは取り敢えず邪魔なので全てボコボコに捩じ伏せて蹴り飛ばす。

「これで一先ず周辺の敵は掃討し終えたかと」

 その時…私達一機のナイトメアが頭上を超えた。

「あれは…!?」

 金色のナイトメア…見間違えるはずがない、マンフレディ卿のヴェルキンゲトリクス…!あの人がわざわざ前線に出てくるとは驚きだが不味い事態になった。しかも走り去った方角には日向中尉がいるはずだ。

『マーヤ!我々も行きましょう!』

 レイラは私の返事を待たずに行ってしまった為、私も後を追う。

 

 私たちが日向中尉のところに辿り着くと、四肢をもがれた日向中尉となぜか攻撃をせず棒立ちになっているヴェルキンゲトリクスが見える。

『…誰か立ってる…?』

 レイラの呟きでよく見てみればヴェルキンゲトリクスの肩に誰かが立っている。そのシルエットは細く、マッスルガイであるマンフレディ卿ではないことは確かだ。…誰だ?

 続けて日向中尉もコクピットから出てきて二人は何かを話している。

『…兄さん』

 …日向中尉のお兄さん…?

『アキト…お前は我がミカエル騎士団と…』

 ミカエル騎士団…マンフレディ卿の指揮している軍のはずだ。それなのに今コイツは我がと言った?マンフレディ卿はどうしてしまった…?こちらからスザク達には連絡が取れない為事情は分からないけど…。

『…お前は死ね、私の為に…』

 …そうか、シン ヒュウガ シャイング…『ヒュウガ』…日向か、成程。そして今の日向中尉への言葉で確信に変わった。

 

 この男、マンフレディ卿を殺害してミカエル騎士団とヴェルキンゲトリクスを奪ったに違いないわ!

 

「レイラは日向中尉の回収を!私が時間を稼ぎます!」

『マーヤ!?』

 まずは日向中尉と距離を取らせるか。手持ちの投擲式グレネードは流石に威力がデカ過ぎるのでユキヤから剥ぎ取り没収しておいたユキヤボムを取り出し、投げ付ける。

『なんだ?兄弟の再会を邪魔するとは…無粋だな』

 ヴェルキンゲトリクスのカタログスペックは頭に入っている。あの機体の持つSDAアックスはかなりの切れ味を誇る。恐らく日向中尉のアレクサンダの四肢をもいだのはのその斬撃だろう。

『無粋者は死ねェ!』

 横薙ぎをジャンプで躱し、グレネードを投げつける。

『ふん、投げ物とは野蛮な』

 グレネードを切り裂いたことで発生した爆煙を利用して一度姿を眩ます。

『…ふん、野蛮かと思えば中々の知恵者か?』

 …取ったッ!背後から仕留める!

『奇襲をするなら背後からなど誰でも思い付く…やはり愚者か!』

 ヴェルキンゲトリクスの四つ足の後脚による蹴り…しかしヴェルキンゲトリクスのカタログスペックを知っている私にはその程度の攻撃は容易に見切っている!

『躱された…!?』

 トンファーを構えコクピットに叩き込もうとしたがどうやら腕を犠牲に防いだようだ。

『貴様…!』

 四つ足を使って一気に距離を取られてしまった。おまけに今の攻撃で警戒されてしまっている。次の一撃は中々入れさせてはくれないだろう。だが、マンフレディ卿の仇だ…!

 

 しかし、ヴェルキンゲトリクスは突然踵を返して去っていく。

 

「追います!」

『不要です!マーヤ!』

「…わかりました。」

 ここに残っている戦えるナイトメアは私以外では戦闘初心者のレイラのものだけ、流石に損傷の激しいユキヤや機体を降りている日向中尉達を残してはいけないか…。

 

 それから暫くの後、ユーロピア共和国の本隊と合流した私達は前線かれ退がることになった。しかし、それから30分もせず前線が後退、結局奪還したスロニムも取り返されてしまった。一体何をしてるのやら…。

 スロニムにはアレクサンダの残骸が多く残っている…ブリタニアに回収さているだろうから私の功績がかなり減ってしまうことになった。ドローンにアレクサンダの技術…。うう、アポロンの馬車くらいしかもう献上できるものがない…頑張らないと…。




ニューロデバイスやブレインレイドはないので死ね死ね団は本作には存在しません。

名探偵マーヤの数少ない名推理シーン(ただの勘)


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PHASE06′

 ワルシャワ駐屯地において我々wZERO部隊に与えられた区画はかなり外れにあり、更に狭い。男性3人女性3人で合計2部屋しか与えられていない為、同室にレイラがいることになる。元々狭い空間で三人で寝ようと思うと、私とレイラの間に挟まれるアヤノは『狭い!!そして!!とてつもなく!!暑苦しい!!』と不満を訴えていた。どんな時でも待遇改善は大事よね。まぁ、きっとそれが叶うことはないと思うけれど…

「ねぇ、レイラ」

「なんですか?マーヤ」

 私はレイラと並んでスクワットをしつつ、レイラに話し掛ける。

「来ないわね、迎え」

「はい…。スマイラス将軍は送ってくれると言っていたのですが…。毎日司令部に確認もしてもらっていますし…」

 スロニムでの戦いを終えた私達wZERO部隊は現在ヴァイスヴォルフ城に帰れないでいる。1ヶ月前『明後日には迎えが来る』と言われたのだが、一向にその迎えは来なかった。因みに、その気になれば私は単独で走って帰れはするのだが、ここで単独行動をするのはスパイを疑われる可能性があるのでそれは控えている。

 結局、来るはずの迎えが来ないまま時だけが過ぎていく。良い機会なのでレイラと組み手をしたりして毎日を過ごしているがやはりレイラは守りが主体らしいし、組み手で全力を出すわけにもいかないので鈍っていないか心配になる。

「私は早くこんなところ出て行きたい…!」

 こんな扱いに憤慨するアヤノの意見は尤もだ。そんな私たちの近くにE.U.の兵士達が歩いてきた

「ひっ…筋肉女だ…迂回しようぜ…」

「お、おう…」

 …。

「駐屯地の外にバザーがあるみたいです。駐屯地でいつまでもこうきているより少しバザーを見に行きませんか?」

 バザーね…ダンベルとかも売ってるのかな?

 

 そんな訳でバザーにやってきた私達だが、アヤノから致命的な質問が飛び出てきた。

「バザーに来ても私達お金持ってないけど…」

 …私も持ってない。どうしよう、私が美少女であることにかこつけて『身体で払え』などと言ってきたら…。

「安心してください。私のIDにはクレジット機能があります」

『因みにル…マッスルガイ卿が手配した偽造IDにもクレジット機能はあるよ。10万ユーロ入ってるから自由に使ってくれってさ』

 …そうだったのか、IDって便利なのね…。因みにレイラのは100万ユーロらしい。中佐は伊達ではないと言うことかな。

 ユキヤは可愛らしいクッションを買って貰ったらしく腕に抱えていた。アヤノは服を、リョウは七人の小人の空間のを買おうとしているようで値切り交渉をしていた…服は良いとしてリョウはそれを何に使うの…?しかし自分のお金ではないものの値切りはするところを見るに結構根は悪い奴ではないのがわかる。この1ヶ月、ワルシャワ駐屯地にて物理的にも心理的にも肩身の狭い思いをしたからか、wZERO部隊は比較的結束が深まったように感じる。…だが私はスパイなのだ…こんなふうに信頼を寄せてくれるレイラ達を最後には裏切らなければならない。

 ふと、どの服がいいか迷っているレイラとアヤノの近くで突っ立っている日向中尉を見つけた。

「日向中尉は何か買わないんですか?」

「…必要ない。」

 ふむ、あまり物欲は無いタイプらしい。

『…可哀想に』

「…えっ?」

「…はっ?」

 どこからかお婆さんの声が聞こえた気がする。

『…可哀想に』

 まただ。一体どこから…。

「えー!おかしいよ!壊れてんじゃ無いのそれ!」

 服を買おうとしたアヤノのそんな声にレイラ達の方を確認すると何かトラブルがあったらしい。

「この前点検したばかりだよ。兎に角…服が欲しけりゃ現金持ってきな!」

「どうなってるんだ…?」

 首を傾げたリョウにレイラも答えられなかった。流石に使い切ったなんて事はないだろうし…。私が建て替えることも考えたが、レイラの物と違いこちらは偽造ID…仮にレイラのように何かトラブルがあった時に調べられたらまずい…ここは大人しくしておこう。

 仕方が無いので駐屯地に帰ろうとした時、再度トラブルが起こる。

『コードエラー…登録情報がありませんねぇ、そのIDでは入力出来ません。』

「私たちが出ていく時は確認できたじゃ無いですか!それにこの筋肉!見間違うはずは有りません」

 私とレイラが同時にサイドチェストを決めるが、画面の向こうの男はどこ吹く風という様子だ。

『一般民間人は広報部を通して下さい。』

 結局、私達は金も無く…まぁ、私の偽造IDにはまだ5万ユーロほど残っているが…駐屯地に入れず…バザーの片隅で路頭に迷うことになった。とりあえず私は先程買った重りを抱えつつスクワットをしている。

「可哀想に…呪われた子だ」

 突如お婆さんが現れ、日向中尉の腕を掴んでそう言った。

「…離せ」

「可哀想に、こんなにも呪われてしもうて…その呪いを解いてあげよう…」

 日向中尉に呪い…?呪いと言われるとどちらかと言うと筋肉がつかない体のユキヤの方だと思うが…

「ッ!離せ!!」

「!レイラ、これ持ってて」

 重りをレイラに投げ渡し、お婆さんの背後に回り込む。瞬間、日向中尉が強く払い退けた事でお婆さんは突き飛ばされそうになるが私が受け止める事で転倒を未然に防ぐことができた。

「日向中尉、お年寄りに乱暴はいけませんよ。さぁお婆さん、驚かせてすみません、大丈夫ですか?」

「痛い」

 …え?

「痛い痛いよお!」

 …え?そんなはずは…困惑する私の周りにいつの間にか別のお婆さん達がゾロゾロと集まってきた。

「こんな硬い壁に叩きつけられたから骨が折れちまってるじゃ無いか!」

 嘘…私の筋肉硬過ぎ!?

「そんな!大丈夫ですか!?」

「痛い痛いよお!」

「この骨折が元に寝たきりになって死んでしまうかもしれないよ!でも貧乏なあたし達じゃ医者になんて連れてけないし…せめてギプスが買えるくらいのお金があればねぇ…」

 お金なら偽造IDの中に5万ある…それを使えば…!

「なんだこのババアども…たかりかよ」

「お年寄りになんて酷いことを言うの佐山准尉!鉄拳制裁!!」

 失礼な事を言うリョウの顔面に拳を叩き込む。

「私の筋肉が鋼鉄の様に凄まじい硬度だったばっかりにお婆さんに怪我をさせたのにそんなお婆さん達を泥棒扱いとはどういうこと!?」

「マーヤ、今のでリョウは気絶したよ…」

 ユキヤがそう言うのでリョウの様子を見てみると確かに気絶していた。…鍛え方が甘かったようだ。

「あのさぁ婆ちゃんたち…悪いんだけど私達今お金持ってないんだよね。今日寝るとこもないし」

 アヤノがそう言うと、骨折したはずのお婆さんが行き良いよく跳び跳ね起きで起き上がった。このお婆さん…できる…!

「なんだってぇ?なんてこったい!」

「素寒貧かい、しゃぁねぇなぁ…」

 そんな訳で私達は寝床の提供の代わりに労働を要求された。まぁ、労働と言っても見た目よりは元気なお婆さん達のお世話…と言うものだったが。まずは着替える必要があるのだが、お婆さんの中にちょうど私やレイラに似たガタイのお婆さんが居た為、その人の衣装を借りる事になった。

「本当に岩のような筋肉じゃのう…母に鉄板でも仕込んでんのかい?」

「ありがとうございます。よく言われます。」

 パイロットスーツを脱いだ私はサイドチェストを披露する。

「…良いからさっさと服を着な…」

 

 服を着て外に出ると早速仕事を頼まれた。どうやら私とリョウは薪割りらしい。先にリョウが斧で薪を割っているのを観察し、大体の要領は掴めた。要は既に切られた木材を半分に割けば良いらしい。

「筋肉女、交代するか?斧はこれしかねぇからよ」

「いえ、斧は不要です」

「は?」

 木の繊維を割けば良いだけなのだから素手で余裕だ。半分当たりに指を差し込みそのまま裂けるチーズのように引き裂いて行く。

「…もう俺は何も言わねえ」

「何か言いましたか?佐山准尉」

「いや、さっさと終わらせて他の連中を手伝いに行こうぜ…」

 そう言うわけでテキパキと仕事が終わった私とリョウは別行動となった。多分リョウはアヤノ達の手伝いをするだろうから私は日向中尉かレイラ辺りでも手伝おうかな。

「ちょいとあんた」

 …他の人を手伝おうかと思っていたが、お婆さんに呼び止められたので向かうとどうやら野菜を切れとのことだ。近くには物凄い手際でジャガイモの皮を剥いているユキヤが見える。やはり手先は器用なようね。

 料理はした事ないが、まぁ、なんとかなるだろう。

 

 幸いレイラも来てくれた事だし。

 

「レイラ、マーヤ、でき…!?」

「あぁ、アヤノ…これは…その、違うんです。」

「私が悪いのよレイラ!私が!」

「な、なんでマーヤの腹筋をまな板みたいにしてニンジンを切ろうとしてるの!?それが私たちの口に入るんだよ!?何考えてるの!?料理への冒涜!?」

「ちゃんと洗いましたよ?」

「衛生面じゃなくて!食べる側の!!気分の問題!!!」

 何がいけなかったのだろう…。

「でも私やマーヤが包丁を使うと木製のまな板ごと切れてしまって…」

「いや、そうはならないよ普通…。分かった…あとは私がやるからもう2人は食べ物に触れないで…」

 何かダメだったらしい。私は陽菜達に良く栄養のバランスが取れた食事を提供していたので料理には自信があるのだが…ここに鉄製のまな板がないのが悪いよ…。

 仕方がないのでレイラと2人でワインを運ぶ事にした。木箱には綺麗に並べられたボトルワインが並んでいる。それが3段になっていると言う事は…

「…お婆さん達、こんなに飲むんですか?身体に悪いですよ?もっと他のものを…プロテインとかを飲まれた方が」

「老後の楽しみに水を刺すんじゃないよ…あと老体にプロテインを勧めるんじゃないよ…」

 

 その夜、デカ過ぎてレイラと私の2人が狭い車内で同時に眠るのは難しく、私はハンモックを借りて外で寝る事になった。まぁ、狙いは別にあるのも確かだが。

『やぁ、マーヤ…少し大変な状況になってるみたいだね。』

「スザク…笑い事じゃ無いんだけど?」

『あはは、ごめんごめん。でも僕らからはどうしようもないからね…』

 それは…分かっている。

『こっちはそろそろ動き出すよ。早く合流できるようにお互い頑張ろう!』

「えぇ」

 スザクとの通信を終えると、レイラが日向中尉と話している事に気がついた。ハンモックから出て2人に近付くと会話の内容が聞こえてくる。

「…暗殺事件」

「はい、私が六つの時でした。」

「母上はその時に?」

「はい、父が死んだ混乱の中で…私だけが生き残りました。」

 …両親が死に、自分だけが生き残った…。…私と同じだ。

「縁も縁もない私を育ててくれたマルカル家に感謝はしていますが…私は1人で生きていける力が欲しい。」

 …縁や縁は…あったかもしれない、けれども私を育ててくれたクラリスさんに私が感謝の言葉を伝えられたのはつい最近だ。…この任務が終わったら…クラリスさんにまたお礼を言う事にしよう。そしてその時…秘密を…

「誰だ!…ってディゼル少尉か。」

「…ごめんなさい、盗み聞くつもりはなかったんだけど」

「いえ。…そう言えばマーヤもご両親を亡くされてたんでしたよね」

 …そう言えば軍に入る時身寄りがいないって伝えてたんだっけ。

「はい。事故で亡くしました。」

「そうですか…私達似てますね」

「…えぇ、そうですね」

 確かに育ち方は似ているかもしれない。でも、私とレイラでは歩む道の明るさは別物なようだ。私の手はとっくに汚れているから今更気にはしないけれど、彼女はきっとこれからも日向を歩くのだろう。そして私は日陰を行くのだ。

 

 次の日の朝、レイラと私は長布の縛り作業をしていた。

「じゃあレイラ、しっかり持っててね」

「はい!」

「ふんッ!!!」

 私が思い切り布を絞り上げると水気は見事に弾け飛び乾燥機に掛けたかが如く乾いた仕上がりになった。

「そうはならねえだろ…」

「何か言いましたか?佐山准尉」

「何も言ってねえよ。」

 すると水汲みをするリョウの背後にお婆さんの1人が忍び寄り、尻を揉み始めた。

「やっぱ私はこれくらいの硬さが好みだねぇ…マーヤのは硬すぎるからねぇ」

 鍛え抜いた体から柔らかいはずはないのだから硬すぎると言われても困る。しかしリョウはお婆さんから距離を取る為、後ろ歩きで川の中に入っていき…そのまま背中から入水…そして流されてしまった。

「まずいよ!リョウは泳げないんだ!」

「それは大変ね!レイラ、これよろしく!」

 レイラに布を渡し、溺れているリョウを掴んで引き上げる。

「泳げないなんて意外ね」

「悪かったな…。…と言うかなんでお前濡れてないんだよ。」

「川の上を走ったからですよ?あ、佐山准尉も覚えます?水上走法」

「…そうか、もう俺は…何も言わねえ…。あと…遠慮しとくぜ…」



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PHASE07′

 リョウには水上走法の伝授を断られてしまったが、レイラは持ち前の筋肉と飲み込みの速さから直ぐに体得したようだ。そんなこんなですっかりと時間は夕飯時になり、お婆さん達と共に食事をする事になる。

 こうして大勢とご飯を食べるのは陽菜達と過ごしたゲットーの日々を思い出す。それを奪ったゼロは許さないが、もう捕まってしまっているので今更どうすることもできない。食事中、日向中尉とアヤノが何やら話しているようだ。

「…お寿司もお刺身も食べられないの?」

「あんな生臭いものが食べられるか…!」

 …どうやら日向中尉は魚料理が苦手らしい。魚には身体に良い栄養素がたくさん入っているのに…

 やがてリョウが日向中尉を羽交締めにしてアヤノがムニエルを押し込むと言う事態に発展した。好き嫌いせず食べるというのは私の主義にも反さないので眺めていると日向中尉と目が合った。

「おい!ディゼル少尉!コイツらをなんとかしてくれ!」

「好き嫌いせず食べて下さい。日向中尉」

「俺の方が上官だぞ!」

 おや、珍しく日向中尉が軍隊の階級を持ち出してきた…結構本気で嫌なのかもしれない。

「…では更に上官のレイラに判断を仰ぎます」

「お前…!」

「えっ?私ですか…?うーん、ムニエル、美味しいですよ…?」

「日向中尉、マルカル中佐から食べろとの上官命令みたいですよ」

 私は笑顔でサムズアップを返す。

 

 …ちょっと意地悪だったかな?

 

 そのあと、大祖母様と呼ばれているお婆さんが眠いからという事で私とレイラが2人で送る事になった。レイラが灯りを持って前を歩き、私がお婆さんの手を取って歩く。

「大きな石があります。」

「私が砕いておくわ。フンッ!!」

「レイラにマーヤ、逞しくて良い子だから私が占ってあげよう…アンタ達の未来をね」

 人の好意を無碍にもできず、私とレイラは2人でお婆さんの占いを受ける事になった。まずはレイラからだ。

「クッテネテプロテインバッカノンダラフトール…クッテネテプロテインバッカノンダラフトール…」

 何やら呪文を唱えながら色と模様の付いた石を振っている。それを何やら模様の書かれた紙の上に放り投げるとお婆さんが口を開いた。

「昔森で…ピザの魔女に出会ったんだね?」

「ピザの魔女?」

「その魔女に呪いをかけられた…」

 ピザの呪い…太るとか?いや、それにしてはレイラは凄まじい筋肉が輝く肉体美を手に入れている。もっと別の何かだろうか

「…アレは夢じゃなかった?」

 …どうやら心当たりはあるようだ。

「その力があれば助けることができる…と、石は示している。」

「助ける?誰をですか?」

「それはね、アンタの大事な人だよ」

「大事な…」

 レイラにとって大事な人は一体誰なのだろうか。やはりクレマン大尉だろうか?

「次はアンタだよマーヤ」

「お願いします。」

 お婆さんは同じ呪文を唱え石を振り石を放り投げる。

「…おや、マーヤも呪われているようだねぇ…幼い頃に悪魔に呪いをかけられている…」

 私の…幼い頃…?

「その呪いはアンタに苦難を与え…やがて…むっ!」

 突然、石はひび割れて砕け散ってしまった。

「…こんな事は初めてだよ…これはもしかして石からの警告かもしれないね…」

「警告…ですか」

 その日もハンモックに揺られて寝ることとなったが…呪いに苦難…。…まぁ、占いは所詮、占いだろう…。

 

 次の日、薪拾いに行くと言うリョウとユキヤについて行くことになった私だが、なぜか2人はお婆さん達の車の中に入っていく。

「何故こんなところに?」

「マーヤ、お前だっていつまでもこんなトレーニング器具のないところに居たくないだろ?今からユキヤがヴァイスヴォルフ城に帰るために一仕事するんだよ」

 見たところ古い型のPCだが、そんなもので何をするのだろうか?暫く見ていると小型のディスクからホログラムが映し出され、ユキヤは手元の端末で何か作業をしている。

「成瀬准尉、それ何してるの?」

「ホロディスクでスピードを上げてこのオンボロPCをスパコン並みの計算速度にしてるんだ。」

「それならパスワードの解読には時間が掛からないな」

 リョウの反応を見るとユキヤはこういった事にはかなり手慣れている様だ。

「司令のIDだけどね、何者かが軍のサーバーにハッキングしてデータを書き換えてたんだ。…まぁ、これだけ痕跡を残しまくってるのはハッカーじゃなくてただの馬鹿かな。…不正に改竄されてるから直せばまた使える様になるよ」

「へぇ、成瀬准尉って手先も器用だけどシステム系にも強いんだ。」

「まぁね」

 まぁ、特に悪いことをしようとしているわけじゃ無いようなので後は任せるとしよう。車両を出て予定通り薪を拾っていると、日向中尉とアヤノを見つけた。何やら2人で話しているらしい。

「…お前生まれはユーロピアなのか」

「…そうだよ。アキトは…ってマーヤ」

「お邪魔しちゃったかな?」

 私が問い掛けると日向中尉は首を横に振った。ふむ、では私も混ぜてもらうことにしよう。空気椅子に腰掛け二人の雑談に混ざってみる。

「…俺も生まれはユーロピアだ。」

「そっか、リョウもユキヤも同じだよ。

 純日本人の四人は日本を知らず、半日本人の私だけが日本を知っているとは…少しおかしな話かもしれない。

「いつかみんなで日本に行きたいね。…マーヤも来る?」

「…うん。それは…楽しそうね、とっても」

 私はそう答えるが、日向中尉は行きたいとも行きたく無いとも答えずに小太刀を見つめ始めた。

「…マルカル司令からこの小太刀は預かっていた。作戦が終了したらこれをお前へ返す様にと。」

「…なんでアキトに?」

「マルカル司令曰く、『私やマーヤではふとした拍子にへし折りかねない』だそうだ。」

 …うーん、あり得る…。

「脳筋に見えて冷静な判断は流石だよな。」

 そう言って日向中尉はアヤノに小太刀を差し出すが、アヤノはそれを受け取らなかった。

「アキトが持っててよ。その小太刀は守り刀なんだ。待ってれば魔を祓えるんだって。」

 一応日向中尉とアヤノにも薪拾いは手伝ってもらい、私達がレイラ達の所に戻るとお婆さん達にリョウが揉みくちゃにされていた。

「もっと触ってけ!ババア!!」

 …リョウってそう言う趣味の人だったのか。まぁ、鍛えた筋肉を自慢したくなる気持ちはよくわかる。

「成瀬准尉、IDの改竄は終わったの?」

「当然。それで僕らが帰るって伝えてこの状況って訳」

 なるほど、お婆さん達も色んな思いはあれど寂しくは思ってくれているのだろう。

 そんな訳でその日の夜には宴と言うべきか、お婆さん達は民族楽器らしきものを演奏し、他のみんなは思い思いに踊っていた。ふむ、もしかしたら普段はお婆さん達も楽器の演奏などで日銭を稼いでいるのかもしれない。

 私もこの筋肉をフルに活用したブレイクダンスを披露する事にした。まずは基本のインディアンステップからスピンダウンだ。そしてそのまま6stepsに繋げてフロアを沸かす。

「いいぞー!マーヤ!」「ブレイキンブレイキン!!」「ポゥポゥ!!」

 しかしながら調査に乗って早く回り過ぎたらしい。

「あれ、私また何かやっちゃいました…?」

 気が付いたら私のステップは暴風を巻き起こしていたらしく、みんなひっくり返り、木々を薙ぎ倒していた。やがてリョウが頭を振りながら起き上がった。

「…なぁ、マーヤ…頼むから二度と踊らないでくれ。二度とだ。」

「…はい。」

 その後、吹き飛ばされていた訳ではなく危険を察知して逃げていた日向中尉とレイラが合流しその日の宴は終いとなった。

 

 次の日、漸く手配された輸送機に乗り込みヴァイスヴォルフ城に帰れることになった。

「…司令、見てください。」

 日向中尉がレイラに言った言葉に釣られて日向中尉の差した指の方を見るとお婆さん達が手を振っていた。私も手を振り返し、輸送機に乗り込む。…そう言えば私達がヴァイスヴォルフ城に居ない間にヴァイスヴォルフ城を攻め込めば簡単に落とせたのではないだろうか…?

『…と、思っている頃だと思って連絡させてもらった。』

 …。直様指で二度叩いて合図を返すとよろしい、と呟きが返ってくる。

『司令も戦闘員も居ない状態でヴァイスヴォルフ城が攻められればヴァイスヴォルフ城は簡単に自爆を伴い破棄されてしまうだろう。だが、マーヤ ディゼル…お前達が居る間に攻められれば話は別だ。対抗できる手段が有れば簡単には破棄などできない…そしてそのタイミングで貴様の出番だ。如何なる堅牢な防御も中から崩されれば脆い。貴様が中から守りを崩す。そこを我らがすかさず攻め込み制圧する。…まぁ、他にも必要な物の準備もありはしたがな。この私にユーロピアの攻略など訳は無い。…次の連絡があるまでは引き続きE.U.の兵士として行動したまえ』

 …通信が終わると、丁度日向中尉がレイラ司令に話しかけている所だった。

「司令、いつかみんなで…日本に行ってみたいですね。」

「…!はい!」

 …レイラと日本に…か、そんな日が来るのだろうか…?

 

 ヴァイスヴォルフ城に着いて早々、事件は起きた。世界解放戦線の箱舟の船団なるテロ組織が北海の洋上発電所を爆破したのだ。そして顔までは見えないが、その犯行声明文とも言える動画に映っている人物…その手口、筋肉の量からしてすぐに誰なのか私にはピンときた。ゼロだ…!恐らく、ゼロはその凄まじい筋肉を持ってしてブリタニア本国の牢屋から脱獄し、逃走し、海上を走って逃げ、この地までやって来たのだ。

 …ユーロブリタニアではなくE.U.の戦力を低下させるこの行為にどんな意味があるかは分からないが、ゼロならば何かしらの作戦の一端に違いない…!ニクアツ マッスルガイさんから連絡が無いのも、恐らく軍師としてこのゼロの登場に対する対策を練るため、私に構う時間がないからだろう。だが、これは好機だ…!一度は討ち損ねた今度こそ陽菜達達を奪った事の復讐を果たしてやる…!陽菜達の願いに免じて命までは取らないでやるが、恐らく長期の逃亡生活でロクに筋トレもできていないはず、映像は暗くキレまでは確かめられ無かったものの、万全とは言い難く思える。ならば今の私ならば勝てるはずだ…!

 ヴァイスヴォルフ城の中でも現在のE.U.内の混乱の確認作業が行われている。

「…SNSはデマが多いからね…」

 とユキヤが呟くとそれにアヤノが反応を示した。

「でも、こんなにいっぱい書き込みがあるんだよ…?」

「人間は不幸な出来事に強く反応し、事実を確かめもせずその噂を広める…」

 ネットなどには恐らく私よりも強いユキヤが言うのならそう言うものなのかもしれない。

「誰かがわざと悪い噂を広めてるってこと…?もしかしてあの動画の…」

 ゼロ…。もしかしたらゼロはまだ黒の騎士団の様な組織が作れていないのかもしれない。そのためあの様なデマ動画を作成し、自身の能力を売り込んでいる…?

 あくまで憶測だが、正直情報は足りない。何か手を打てれば良いのだが…。そう思っていると、日向中尉を引き連れたレイラが部屋に入って来た。

「パリの大停電の原因はテロリストによる洋上発電所の爆破ではありませんでした。北海の発電所は今も無傷で存在します。あれは巧妙に作られた動画です。」

 …どこからその情報を仕入れて来たのかは分からないが、それが本当ならば私の想像はある程度現実味を帯びてくる。

「じゃあ、ネットにあるヨーロッパ各所での暴動も?」

「えぇ、全て事実ではありません。デマや噂でユーロピア市民を恐怖で駆り立て騒乱を引き起こしているのです。」

 …そうか、ゼロは恐怖でユーロピア市民を駆り立て、そのままユーロピア市民を扇動しブリタニアにぶつける気なのだ。黒の騎士団の様な己の組織でなくてもそれならば戦力として活用ができる…流石はゼロ、何という人身掌握術…!それに奴にはギアスがある…その気になれば噂やデマが本当になる可能性があるのだ。

「そしてあの箱舟は実在しますがブラフです。人間の不安心理を突くための。」

 ゼロはギアスを持っている…人々を操るあの力があれば極秘裏に造られていた飛行船を強奪し己の手中に収めるなど訳もないということか…!

「…この騒乱を止めるには箱舟の実態を知らしめる必要がある…そうでしょレイラ?」

「えぇ…ワイヴァン隊で箱舟に強襲作戦を行ってもらいます。」

 よし…!待っていなさいゼロ…必ず捕まえて今度は脱法プロテイン無しでボコボコにしてやる…!!




マーヤは相変わらず天然()なため、ルルーシュとゼロ関連については非常にすれ違い気味ですね。


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PHASE7.5′

 ニクアツ マッスルガイ…皇帝陛下に絶対の忠誠を誓う天才軍師。ユーロブリタニア派遣に際してはインペリアルダンベルと呼ばれる皇帝陛下と同じ権限で命令が下せる見た目よりかなり重いダンベルを賜っている。

 …しかし、その正体は皇帝陛下のギアスで記憶を書き換えられたルルーシュだ。僕はその護衛兼見張りとしてこの任務に就いている。

「なぁ…スザク…プロテインを…プロテインをくれないか…プロテインを…」

 記憶の喪失が喉の渇きと感覚が似ているのか、彼はやたらとプロテインを要求してくる。その様子はまるで…鍛錬をした後にプロテインを要求してきた…日本にいた幼き日のルルーシュそっくりだ。…だが、ルルーシュはユフィにあんなギアスを掛け操り、多くの人を騙し、人を殺した…許す事はできない。

 …でも、僕も今マーヤを騙している。ギアスの存在を隠し、ゼロの正体も秘密のままだ。何度かマーヤと遊びに行き、一緒に遊んだ陽菜ちゃん達を失った怒りと悲しみをぶつけることもできていないであろうマーヤからその機会を奪っているのは紛れもない僕だ。

 

 ルルーシュの…いや、ニクアツ マッスルガイの取った世界解放戦線による箱舟の船団作戦は…どこかゼロの時のような作戦にも似ている。人格が異なっても考える事は同じというべきか…。

 ミカエル騎士団のシン ヒュウガ シャイング卿と手を組み、ヴァランス大公を謀り、実権を掌握。ギアスなどなくても結局ルルーシュはこうしてブリタニアに反抗を企てたに違いない。だが僕はナイトオブワンになってエリア11を…日本をもらう。その為にルルーシュを踏み台にしたのだ。今更迷うわけにはいかない。

 

「このユーロブリタニアは私が導いて行く!…チェックメイトだ。」

「お見事です」

 協力者であるシシャイング卿とマッスルガイのチェスはマッスルガイが勝利したようだ。

「君はこのゲームで…現実の世界を重ね合わせたのでは無いかな?…あの時、キミがクイーンを見捨てていれば私は負けていた。」

「どういう意味でしょうか?」

「君には見捨てることのできないものが…いる、違うかな?人は誰しもそのような弱みがある。親、兄弟、友人…それとも恋人?しかし、私は違う」

 普段のルルーシュならば真っ先にナナリーという見捨てられない誰かが居るのだが、皇帝陛下のギアスによりそのことは忘れているようだ。

「貴方は?」

「私が守るべきは!我が命を賭けて守るべきは!皇帝陛下ただ一人!」

 恐らく、本来のルルーシュならば口が裂けても思わないだろう発言だ。そしてそれが悪かったのだろう、ルルーシュ…つまりニクアツ マッスルガイは急に苦しみ始めたのだ。

「ぐぅ…!?皇帝、陛下…?皇帝…!……うがぁあああああ!!!」

 ニクアツマッスルガイは突然両拳を机に叩きつけた。そして机は粉微塵に消し飛び、暴風が巻き起こった。僕も体幹を鍛えていなければ吹き飛んでしまって居ただろう、証拠にシャイング卿は椅子ごとひっくり返っているわ、

「誰だ!!お前はッ!!誰だッ!!!」

 ルルーシュは大きく飛び跳ね、その場でフットスタンプ、これにより更なる暴風が僕を襲い、何とか耐えたものの窓ガラスは全て割れてしまっていた。シャイング卿も壁際まで吹っ飛んでしまっている。

「ち、違う!俺はッ…違う…こ、ここはっ!ここはどこだ!俺は…どこに居る…!?トウキョウ租界…?いや、神根島…?消えろ…!ニクアツ マッスルガイ…!!」

 元のルルーシュは父であるシャルル皇帝陛下を憎んでいた…そんな憎むべき相手に忠誠を誓うなどというのが間違いだったのだ。混乱したルルーシュが取ったポーズはダブルバイセップス…!いけない…!あれはゼロとしてのルルーシュがよく取っていたポージング…今の人格は完全にルルーシュになっている!

「ま、マッスルガイ卿…?」

 かつて椅子だった物の残骸から顔を出したシャイング卿に僕は出ていってもらうことにした。

「彼は気分が悪いようです。申し訳ありませんがシャイング卿、今日はお引き取りください」

 しかし、彼は残骸からゆっくりと体を起こし、体の汚れをはらっていた。

「箱舟の…船団の、作戦を聞いた時…。一人のテロリストのことを思い出した…。エリア11にいたテロリストの名をね。マッスルガイ卿の巧妙な作戦はそのテロリストのものと良く似ている…いや、そのものだ。彼は反逆者ゼロ…そして、ナイトオブラウンズのお前が護衛していることこそがその証拠だ。」

 …バレてしまっては仕方がない…こうなれば…!

「貴方のように勘のいい方は…ここで始末する!」

 僕がシャイング卿を殴ろうと構えた瞬間、ドアからナイトメアが入ってきた。これは…ミカエル騎士団か…!どうやら最初から裏切るつもりだったらしい…やられたな。だが、こちらが何も備えていないと思ったら大間違いだ!

 

「来いッ!ランスロットォ!!」

 

 僕はランスロットの起動キーのボタンを押す。振りかぶられたサザーランドの拳を躱し、現れたランスロットに騎乗する。

「シャイング卿、皇帝陛下の使者の間にナイトメアで踏み入る事がミカエル騎士団の礼儀なのか!」

 僕はMVSを構えて敵の数を確認する。数は多いがランスロットで対応できない数ではない!襲い掛かるサザーランドをMVSによる斬撃と蹴りをブチ込むことで撃退する。歩兵部隊はルルーシュが勝手に暴れるだけで撃退できるだろう。混乱してドラミングをしているルルーシュだが、銃撃はしっかりと躱すか弾くか掴むかしている上、背後に回り込んでジャーマンスープレックスを仕掛ける余裕すらあるらしい。

 敵のサザーランドのメイン装備は斧のようだが、このランスロットのMVSならガードごと斬り裂く事が可能だ。このまま押し切る…!スラッシュハーケンでアサルトライフル持ちのサザーランドを倒し、最後の一機まで減らすが、あれは確かグラックスと呼ばれる新型のナイトメア…かつてエリア11で戦ったあの赤いナイトメア同様伸びるだが特徴だ。とは言え、パイロットとしての技量も、ナイトメアの性能もこちらが上だ。物の数秒でボコボコにするが、生身であるルルーシュの方に問題が起きた。

 ルルーシュは混乱の最中、ナナリーの名を口にして気絶、スナイパーライフルを構えた歩兵により人質となり、僕とルルーシュはシン ヒュウガ シャイングによって捕らえられてしまった。

 筋肉による突破は不可能ではないだろうが、それをすれば秘密がバレてしまう。故に僕は大人しく捕まるしかなかった。

 

「997…998…999…1000!」

 

 捕らえられた部屋の中でルルーシュは1人黙々と腕立て伏せを続けている。今もなお多数のスナイパーライフルを向けられているのだろう。

「スザク、なぁスザク…今日の闘いも熱かったな…なぁスザク。ほら、俺たちの流した汗が蒸発して虹が…綺麗だな…綺麗だな…」

 破綻してしまったニクアツ マッスルガイとしての人格のせいか、今のルルーシュは日本に送られてすぐの頃まで記憶が退行している。そのせいで己に脱出できるだけの筋肉があるものの、そもそもとして捕えられているという状況を認知出来ていないらしい。

「なぁ、スザク…プロテインをくれないか」

「ルルーシュ…」

 僕がプロテインを手渡すと、ルルーシュはにこやかに笑いプロテインを飲み干した。




ランスロットを呼ぶのに叫ぶ必要はありません。


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PHASE08′

 アレクサンダのコクピットの中、私達は再びアポロンの馬車で空へと打ち上げられる。いつもなら通信がありそうなものだが、やはりゼロへの対応で忙しいのかその様子はない。

 なんにせよ私は次の連絡があるまではE.U.の軍人として振る舞う必要がある。それにこのままゼロの好きにさせるわけにはいかない。やがて、大気圏に突入し、ゼロが用意した方舟の中に侵入を果たす。

 

 しかし、なんと表現すれば良いのか分からないが、箱舟の中は不自然なほどに空洞であった。骨組みも最低限…これではただのハリボテだ。一体どう言うことなのだろう?すると、正面に動く何かを捉えた。マズルフラッシュで見えたそれはサザーランドのようだ。私はトンファーを回転させサザーランドの発砲を弾き、距離を詰めて蹴りを叩き込む。

「更に2機…!」

 箱舟内の骨組みを走り接近してくるサザーランドに対し、先程倒したサザーランドからアサルトライフルを奪い合い放つ。こんなハリボテの中で投擲式グレネードは危険だ。そして破壊したサザーランドを改めて見てみると違和感に気付く。

「これ…ドローン…?」

 …ハリボテの箱舟、ドローンによる足止め…まさか…!?

「日向中尉、これは敵の…」

 私が口を開いた瞬間、奥に何かが光るのが見えた。この細い骨組みの上ではほとんど遮蔽物など無い、射線は通り放題だ。轟音とも呼べる連続的発砲音に顔を顰めつつ、私はトンファーを高速回転させ弾丸を弾いていく。マズルフラッシュを見るに、3つのガトリングを束ねた物を両腕に装備しているらしい。あんな物をこんなところで撃てば…思った通りドローンのサザーランドを巻き込み、やたらめったらに弾をばら撒いているのが見える。しかもいくつかの骨組みはあの銃撃で崩壊している。このままでは墜落もあり得る…しかしあの機体…どこかでみたような…?

 その時、ユキヤから通信が入った。

『みんな!あのナイトメア、シュロッター鋼の装甲を纏ってる。僕のライフルによる狙撃でもあれは撃ち抜けない…!』

 こちらの遠距離武器でユキヤのライフルによる狙撃よりも破壊力が高いものは無い。しかし、装甲が厚い相手に勝つ方法など幾らでもある…それは格闘だ。つまり、あの蜂の巣製造マシンのような弾幕の中に突っ込むしかないようだ。こうなれば作戦はただ一つ。

 

 全 速 前 進 よ !

 

「佐山准尉、香坂准尉、成瀬准尉、死なない程度に相手の気を引いてください。私が突っ込みます。日向中尉は私がつっこんだら後詰めとして更に突っ込んで下さい。私が突破口を開きます。」

『…任せたぞ』

 私の依頼通り、3人はそれぞれ攻撃を敵のナイトメアに仕掛けている。装甲を撃ち抜くことは出来ずとも、相手からすれば狙われているとなれば意識が割かれるはずだ。そして私はそこに付け入るのだ。投擲用グレネード2発を用いた爆発により私のアレクサンダは爆風に乗り加速度を得る。

『なんだ!?』

 そして十分に距離が詰まったところで最後の投擲用グレネードを敵に向けて投げ付ける。シュロッター鋼の装甲を破壊することは出来ずとも爆風事態は防げない。ガードするためだろう、敵の銃撃が狙い通り止んだのだ。

「今です!日向中尉!!」

『任せろ!』

 私の背後から躍り出た日向中尉は回転しつつ遠心力を乗せた蹴りを叩き込んだ。いくら装甲が厚くとも衝撃は逃せない!敵のナイトメアは落ちていき、日向中尉もその後を追っていく。私も追いたいところだが、加速度を出すためのグレネードの爆風のダメージのせいかうまく動かなかった。仕方ないので私はアレクサンダを降り、空気を思い切り蹴ることで体を浮かす空中歩行術を使い日向中尉の後を追った。

 

 私が辿り着くと、日向中尉は敵の…赤いナイトメアに対して関節部…つまり装甲の隙間に刃を差し込むことで破壊を行っていた。流石は日向中尉だ。そしてこの距離まで来て敵のナイトメアの姿を見てよく分かった。あの機体はドロテアさんのパロミデスの同型機のようだ。道理で重装備が可能な訳である。しかしそんな物まで用意できるとは…流石はゼロ、敵ながら狡猾さは衰えていないということか

 日向中尉がコクピットにとどめを刺さんとしている時、私は切り落とされていたナイトメアの腕部を投げ付けることで直撃を避けさせていた。

『なんの真似だ?』

 何も助けるつもりで妨害したのでは無い、相手がどんな人物か…仮に相手がゼロの場合なら今回の件は解決だが、ゼロでない場合これで終わらない可能性があるのだ。

「パイロットの確認が必要かと」

『…いいだろう』

 そのままコクピットハッチを斬り裂くと中から少年が出てきた。どうやら危惧した通りゼロでは無いようだ。もしかしたらこの船の中にまだゼロが…?

「はっ!油断するとは馬鹿な女だ!死ねぇ!」

 少年が発砲して来たため、弾丸を掴み投げ返して銃を弾く。

「なっ!?」

 取り敢えず大人しくしてもらうため、一気に距離を詰めてその腹に拳を叩き込んだ。

「少し寝てなさい!」

「カハッ!?」

 それから暫くして3人も合流すると、私のこの鍛え抜いた筋肉からなる聴覚が異音を捉えた。…これは…

「…時限爆弾の音…!」

 やはりゼロの狙いは私達をここに誘い込み、足止めをしたのちに箱舟ごと自爆することで私達のようなゼロに刃向かうものを一掃することにあったようだ。だが、私の筋肉ならばそれを事前に防ぐ事が可能だ!私は脳筋であり、全身が筋肉である私は即ち全身が脳味噌…この天才的筋肉頭脳を持ってすればゼロの作戦を逆に利用することすら可能だろう!

「成瀬准尉、この飛行船には時限爆弾が仕掛けられているわ。」

『爆弾が…?』

「成瀬准尉なら爆発と同時に私たちのアレクサンダのシグナルを誤魔化して死んだと思わせる事が可能よね?」

『それは…できるけどそんなことしてどうするの?』

 決まっている。ゼロ程の相手ならば我々のバイタルがヴァイスヴォルフ城に送られるようになっている事など知っているだろう。だからそれを逆に利用する!ここで我々が始末されていると見せかけ、油断したゼロを奇襲するのだ。

「敵を騙すにはまず味方からよ。」

 私はそれからこの飛行船に仕掛けられた爆弾の一部を私の全身頭脳と勘で解体し、この飛行船が全壊しないように爆発規模を抑える工作を行った。そしてユキヤには頑張ってもらい、逆にwZERO部隊本部の情報はこちらに入るようにしてもらっている。暫くすると、ヴァイスヴォルフ城が襲われ、レイラが降伏するためにブリタニアと交渉するという情報が入った。私がそこに介入すればかなり良い条件にできるはずだ。

 しかし、空から見る限り交渉は決裂しているらしい。レイラ達は複数の相手に囲まれ、銃を向けられている。特に相手は対筋肉を考慮しているらしく、スナイパーライフルを所有している人間の姿も見えた。流石のレイラもあの数のスナイパーライフルを捌き切るのは難しいはず…!

 ユキヤによる狙撃はレイラ達周辺の地面を穿った。あの程度の威力ならば直撃さえしなければレイラの筋肉を考えれば無事なはずだ。よし、そろそろ頃合いだろう。

「みんな、聞こえてますか?こちらはワイヴァン隊、聞こえていたら応答をお願いします」

『…その声、マーヤさん!?…なんで今まで通信してこなかったんですか!?』

「すみません、敵を騙すにはまず味方からですから。」

 日向中尉とアシュレイ アシュラは先に降下を行い、アヤノとリョウも降下を行った。残るは私とユキヤだけだ。結局あの後隈なく探索した物のゼロの姿は無かったので、恐らくブリタニアに紛れたのだろう。流石に逃走ルートは確保しているということらしい。未だにスザクから連絡がないので引き続きE.U.の軍人として活動をする私は箱舟のパーツとユキヤの技術、解体した時限爆弾を利用して投下式爆弾を作成した。ヴァイスヴォルフ城に進軍する部隊に投下して爆発を起こし多大な被害を与えることに成功した。…ここまですればまさか私がブリタニア側の人間だとは思うまい。こうなれば私が裏で手引きするのも容易という物だ。

 だが、次の瞬間私の筋肉が空を裂く何かを感知する。

「何かくる…!?ユキ…」

 轟音が空をつん裂き、フロートシステムのサクラダイト活性炉を何かが貫通したのが見えた。

「まずい!」

 流石にフロートシステムが破壊されれば落下するしかない。私一人なら空中歩行でなんとでもなるが、ユキヤを見捨ててはいけない…どうやら今の衝撃で気絶したらしく、ユキヤからは応答もなかった。幸い、落下予想地点は湖だ。ならばやりようはある…!まずはユキヤのアレクサンダからコクピットを分離させる必要があるが、私の筋肉とテコの原理を持ってすれば…!…よし、うまく分離できた。あとはこのコクピットに思い切り膝蹴りを叩き込めばアレクサンダの衝撃吸収用バルーンが展開するはず、それを浮き輪代わりにすれば水に沈むことはないだろう。

 取り敢えず着水したので無理矢理ハッチを引き剥がしユキヤの様子を確認する。

「うぅ…」

 どうやら腹部から出血しているようだ。取り敢えず応急措置として圧倒的筋肉で止血をする事にした。凄まじい筋肉により止血には成功したが、顔色は悪い。血が足りていないのかもしれない。船のモーターが聞こえてくる。

「おーい!!レイラァー!!!」

「マーヤ!!今行きます!!!」

 レイラを呼ぶと直ぐにボートが到着した。私がユキヤを連れて乗り込み、そのままヴァイスヴォルフ城まで連れて行く。幸い、私とユキヤの血液型は同じだったので私が輸血をする事にし、ユキヤの手術はランドル博士のつてで遠隔からのデバイス手術で行うらしい。

 手術の成功については祈るばかりだが、目前に迫る敵を考えれば今私がすべきは祈ることではなく備える事だ。という事で体が鈍らないように片手指立てさせをしていると、アシュレイがやってきた。

「お、居た居た。黒髪の筋肉女…、お前がマーヤ ディゼルだな」

「…アシュレイ、丁度良かった。貴方に聞きたいことがあったんです。」

 アシュレイはシン ヒュウガ シャイングの部下、つまりはミカエル騎士団だ。ということはマンフレディ卿の事も知っているはず。

「確か貴方の上官…シン ヒュウガ シャイングがミカエル騎士団の団長なんですよね?」

「ん?あぁ、まぁな。」

「…因みに前の団長は誰だったのですか?」

 私は筋トレを続けながら疑問を投げつける。彼は袋に入ったスナックを口に放りながら口を開いた。

「ミケーレ マンフレディ卿だよ。なんか急に自殺しちまったんだよな。」

 思っていたよりもスムーズに聞きたいことを聞くことができた。しかし…マンフレディ卿が自殺…?

「自殺?理由は?」

「知らねぇよ。お前こそ…なんでそんなこと知りたがるんだよ」

 確かにこれ以上は不自然か…。だが、アシュレイの反応を見るにやはりマンフレディ卿の自殺は唐突な物らしい。つまり、やはりシン ヒュウガ シャイングは何かしらの手段で自殺を…いや、そうか、わかったぞ…!

 シン ヒュウガ シャイングはゼロの協力者に違いない…!ゼロの力があれば自殺偽装など容易…。シン ヒュウガ シャイングがミカエル騎士団の団長という権力を得れば協力者であるゼロにとっても都合がいい…!それに未だにマッスルガイさんが連絡を忘れるくらい大変な事態になっているのもシン ヒュウガ シャイングが妨害工作をしていると考えれば不思議ではない…!よし、まずはゼロの手がかりを得るためにもシン ヒュウガ シャイングを捕らえなければ…!

 



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PHASE09′(Final)

 ヴァイスヴォルフ城攻防戦…先日のユキヤの爆弾投下により、敵部隊は約1/3に減らすことができている。とは言え、それでも人数としては彼方の方が圧倒的に多い。偵察に行っていたアシュレイの話では三騎士なる部隊長達は生きており、シン ヒュウガ シャイングの腹心とも言える女騎士、ジャン ロウも生きているとのことだ。

 それに対してこちらの戦力は日向中尉、アシュレイ、私、リョウ、アヤノ、負傷中のユキヤ、アレクサンダドローンが10基とオスカー ハメル少佐率いる警備隊と合計で30にも満たない。相変わらずマッスルガイさんからの連絡はないため、このヴァイスヴォルフ城攻略戦はゼロの協力者であるシン ヒュウガ シャイング率いるミカエル騎士団の独断という事になのだろう。ここで敵の侵攻を許せば私の功績が無くなってしまう。なんとしても守りきらなかれば…。特にアポロンの馬車…ゼロがここの情報を全て知っているならば、ペンドラゴンにも手が届くアレを欲さないはずはない。

 みんなにとっては司令部のあるヴァイスヴォルフ城の死守が大事であろうが、そういう意味では私にとってはアポロンの馬車こそが本丸だ。みんなには悪いが、私は私の目的のために動くとしよう。

「…という訳で、守りの布陣は以上になります。何か質問がある方は居ますか?」

 丁度レイラが説明を終えたらしいので、私はすかさず手を挙げる。

「レイラ、アポロンの馬車の守りはどうするの?」

「アポロンの馬車ですか…?これだけの戦力差ですから余り其方に戦力を回す余裕はないのですが…」

 やはりそこまでは考えが回っていないか、いや…当然か。

「アポロンの馬車周辺はいざという時の脱出ルートとして必要だと思うの。」

「…確かに、余り考えたくはありませんが、逃げ道はあった方が良いかもしれませんね…」

 よし、それらしい言い訳でうまく誘導できたようだ。

「数が割けないのも分かるわ。だから私一人で守ろうと思うの。」

「マーヤ一人でですか…?それは…」

 心配だと言いたげなレイラに対し、私はサイドチェストを披露する。

「任せて。私ほどの筋肉なら一人でも余裕よ!」

「…わかりました。ではアポロンの馬車の防衛はマーヤ…ディゼル少尉にお願いします。…ですが、危険だと思ったらすぐに放棄してくださいね。」

 よし、計画通りだ。

 

 そして作戦の開始前、私のところにアシュレイがやってきた。

「…何か用?」

「いや。一つお前に頼みたいことがあってよ。…もしお前の方に女騎士が…ジャン ロウが来たらよ、なんとかあいつを救ってやってほしいんだ。」

 …救う?おすすめの筋トレでも教えれば良いのだろうか?

「俺とあいつの境遇は似ててよ、親から見捨てられた後に拾ってくれたのがシャイング卿なんだ。だから…あいつはきっとシャイング卿のためならなんでもやる。それが間違ってることでもだ。」

 …ふむ、好きな人のオススメする間違ったトレーニング方法を実践してしまうタイプという事らしい。確かにスロニムで見たシン ヒュウガ シャイングは細かった…私の経験上、素人がやりがちな間違ったトレーニングはスクワットだ。取り敢えず私は白い歯を輝かせつつサムズアップを返す。

「任せて!ジャン ロウって人は私から正しいスクワットの仕方を教えておくわ!」

「は?」

 

 アシュレイと別れ、一人でアポロンの馬車の防衛として待機をしていると、通信からヴァイスヴォルフ城の戦闘が始まったことが分かる。通信を聞く限り、予想よりも侵攻スピードは早そうだ。かなり苛烈な攻め…しかし、相手の背後にゼロがいるならば…これは囮。

『ちっ!ここに守備部隊がいるとは…!』

 アポロンの馬車を破壊させるわけにはいかない。恐らくここを攻める敵こそが本命だろう。見た限り新型が一機に他はサザーランドのドローンのようだ。報告ではヴェルキンゲトリクスは城の攻防戦に参加していることから自らを囮にしているということか。そしてこの新型…恐らくシン ヒュウガ シャイニングにとってかなり信の厚い相手…つまり…

「…貴方がジャン ロウね?アシュレイから聞いているわ。」

『何!?』

「いい?スクワットはね?まず、足を腰幅に開き、つま先は膝と同じ向きにするの。」

『は?』

 うん?あ、そうか…まずは間違いを糺すところからか。

「ごめんなさい。多分だけど、スクワットの時に膝から動いてないかしら?それは間違いよ。スクワットは股関節を…」

 おっと。何故この人は突然切り掛かって来たのだろう?…それにこのナイトメア、腕が伸びるらしい。私のように凄まじい筋肉を鍛え、動体視力と反射神経を鍛えた者でなければ今の不意打ちは防げなかっただろう。

『こんなふざけたやつに!』

 まさか…この人は既に正しいスクワットの仕方を知っていながら間違ったやり方に従っているのだろうか?なるほど、釈迦に説法、私に筋トレ方法だったようだ。

「ごめんなさい…。貴方は…間違っていると知りながらもそれをやろうとしているということね?でも、それは…良くない事よ!」

 間違った筋トレ方法は筋肉が鍛えられないどころか体を壊す原因になってしまうのだ。間違ったスクワットでは膝を痛めてしまうかもしれない。

『お前に何が分かる!』

「分かるわ!」

 ナイトメアに乗っているから分からないだろうけれど、私は自他共に認めるマッスルウーマン!筋トレの方法など熟知している!もはやこの体に染み付いている!

 伸びる腕の斬撃をトンファーで弾き、直様そのトンファーを投げ付ける。不意打ちとはこう行うのよ…!!

『ぐっ!?』

 そしてよろけたその一瞬を私は逃さない。一気に距離を詰めてドロップキックを叩き込み、トンファーでコクピットブロックの側面を思い切り引っ叩く。

『ぐあぁっ!?』

 コクピットハッチを無理矢理引き剥がすとアシュレイと余り歳の変わらなそうな少女の顔が露わになった。

「相手が大事な人だからと言って…間違ったことを続けるのは良くない。それは貴方にも、相手にとっても良くないことよ!」

 筋トレをするというその心意義は立派なのだ。あとは方法さえ間違っていなければ立派なマッスルボディが手に入れられるのだから。

「五月蝿い!」

 何やら発砲してきたので弾丸を摘み、そのまま指で弾丸を潰して見せる。

「これが正しいトレーニングで身につけた筋肉よ。」

「ひぃ…!く、来るな!化け物!」

 更に発砲してきたので今度はそれを噛んで受け止める。そのまま歯で弾丸を砕き咀嚼する。うん、不味い。吐き捨てつつ彼女へと歩を進める。

「!?」

「本当に相手のことが大切なら…止めてあげるべきよ。」

 そう、間違った筋トレで体を壊すなどあってはならない事だ。

「う、うわぁぁぁぁぁあ!!!やだ!!怖い!!!」

 彼女は踵を返すと走り去っていく。ふむ、正しい走り込みのトレーニングがしたいようだ。私も一気に加速し、彼女に並走する。

「いきなり走り出すのは体に良くないわ。まずはウォーミングアップでしっかり体を温めないと。それにちゃんと水分は取ってる?汗をかいたら塩分も補給もしっかりね」

「うわあぁぁぁぁぁあ!?」

 …先ほどから彼女は叫んでいるが…もしかして走る時は叫ぶ方が効果がある等と言われているのだろうか?

うーん、そんなの聞いたことはないが…。

「あ、ペースが落ちてきてますよ。ファイトです!」

 彼女はペースを落とさず走り続け、やがてヴァイスヴォルフ城に到達

「もうすぐゴールですよ!」

「うるさい!!」

 相討ちになったような日向中尉のナイトメアとヴェルキンゲトリクスの脇を抜け、やがて私達は今にも刀に刺されそうな日向中尉と刀を構えるシン ヒュウガ シャイングのもとまでやってきた。

「ふざけるなァ!!死ねェ!アキトォ!!」

 叫ぶシン ヒュウガ シャイングと倒れるアキトの間に私はダッシュで割り込み刀を両手で挟み込んで止める。

「ぬぅ!?舐めるなよッ!!」

 なんと、シン ヒュウガ シャイングは自ら刀をへし折る事で行動を再開、私よりもよほど日向中尉を殺したいのか、折れた刀を日向中尉に向けて突き出した。

 しかし、それを受け止めたのはジャン ロウ。普段の運動不足が祟ったのか、全力疾走を続けた彼女の脚は急には止まらず偶々刀の餌食になってしまったようだ。そして最も呪うべきは彼女の筋肉量の無さ、私やレイラほど鍛えていれば折れた刀による刺突など欠伸をしている時程度の緩んだ筋肉でも弾く事が可能だ。しかし、残念なことに彼女は華奢であり、完全に心臓部を貫通している。

「ジャン…馬鹿な女だ…うぐぅ…!」

 不幸な偶然とは重なるものであり、何故手に持って居たかはわからないが、ジャンの持っていたピストルは恐らく刺された時に衝撃で引き金を引いてしまい、それがシン ヒュウガ シャイングの胸部を貫通していた。銃に対する防衛術など鍛えた筋肉があれば筋肉で弾く、筋肉で止める、掴む、避けるなど様々な手段があるのだが、シン ヒュウガ シャイングはあまりにも華奢すぎた。ギリギリ心臓こそ貫かれていない様だが、もはや止血も意味を成さないだろう。

「こんな、はず…では…」

 私としてもシン ヒュウガ シャイングはゼロにつながる手がかりだった為、彼の死は望ましく無い。

 

 E.U.側はスマイラス将軍を始めとする軍部が多大な被害を受け立て直しを迫られている。しかし、ユーロブリタニアもまた、シン ヒュウガ シャイング率いるミカエル騎士団の裏切りによりラファエル騎士団以外が壊滅、立て直しを迫られている。

 皇帝陛下も流石の軍師派遣も立て直しまでは不要と思ったのか、ニクアツ マッスルガイさんは本国に戻ることになり、それに伴って私の潜入任務も終わりとなった。残念ながらヴァイスヴォルフ城等をブリタニアの手に渡るようには出来なかったものの、ジャン ロウが運び込んでいた爆薬でアポロンの馬車を破壊せよとの指令を受けた私は命令通り破壊した。自らの手に入らないのであれば使えないようにしろと言うことだろう。

 私は私の分のアレクサンダ…つまりマッスルデバイスのみを手土産に本国に帰ることになる。防衛システムをほとんど使い切り、司令部を放棄したヴァイスヴォルフ城にもはや残る事も出来ず、そもそもの支援者たるスマイラス将軍を亡くしたため、wZERO部隊は実質的な解体となった。

 引き上げの際にランドル博士に呼ばれ、彼女の旦那さん…謎の容器で眠っている…を紹介された。とりあえず謎の機械から引っ張り出して思い切り頬をぶっ叩いてやると、なんか飛び起きたのだが、彼はマッスルデバイスの考案者で試作システムの実験中、筋肉に対して大き過ぎる負荷を受けた事で意識を無くし、それからずっと目を覚まさないらしかった。ただのビンタで叩き起こせただけなのだが、ランドル博士には泣いて喜ばれたのでどうせならと私と共にブリタニアに引き込むことにした。これでマッスルデバイス関連の技術を取り込むことができるだろう。

 この際だ。いつか話したみんなで日本に行くと言う話を…現実にしてみたいと私は思った。どうせあとはブリタニアに帰るだけである。潜入任務終了と共に伝えられたスザクとの合流地点に戻るだけなら正直身一つで走って向かうことだってできる。だが、手土産は多い方が良い。

「ねぇ、レイラ…みんなはこれからどうするの?」

「…私は…ワルシャワで出会ったお婆さんたちのところに行こうかと思います。マーヤも一緒にどうですか?」

 ワルシャワの…あぁ、それも悪くはないのだろう。しかし、私は首を横に振る。

「…そうですか。」

「ごめんなさい、レイラ…私ね…レイラにだけじゃなくて、みんなに、ずっと黙ってたことがあるの。…私ね、実はブリタニアの軍人なんだ。」

「…え?」

 目を丸くするレイラだが、その反応は当然だろう。ずっと仲間だと思っていた相手が実は敵だったのだ。当然そう言う反応になる。

「私の正体はね、皇帝陛下直属のナイトオブラウンズ。ナイトオブツーなの。E.U.には潜入任務でやってきた…まぁ、スパイなの。」

「そんな…。でも、マーヤは今まで沢山のユーロブリタニアの兵士を…」

 レイラは本当にお人好しだ。私が裏切り者だったことに怒るわけでもなく、ただ味方を殺し続けた私のことを心配してくれるとは。

「それが私の任務だったから。それにしてもレイラは…怒らないのね?」

「…マーヤが私達に直接危害を加えたと言う実感はありませんし、マーヤが命懸けで戦ってきたことは知っていますから…でも…悲しいです。その、仲間…だと、思ってましたから。でも…」

 レイラは少しだけ涙を流し、震えながら手を差し出してきた。私はそれを力強く握り返す。

「…私たちは…友達、よね?」

「…そうね、そうかも」

 仲間ではない…でも、友達ではあったかもしれない。一緒に筋トレをしたり、お茶会をしたり、筋トレをしたり、筋トレをした…きっと…友達だ。

 

 結局、レイラと日向中尉…じゃなくて、アキトと多くのwZERO部隊の隊員はレイラと共にワルシャワのあのお婆さん達の元に行くらしい。本音を言えばアキトにも来て欲しかったが、アキト自身、シン ヒュウガ シャイングのと斬り合いで、兵士としては致命的な箇所の筋肉や神経を切断されてしまった為に無理は言えない。…それと同じくらい彼にはレイラと支え合って生きてほしいとも思える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、3人は来てくれるのね?」

「まぁな。ババア達とまったり暮らすのも悪くねぇが…お前と一緒に行けばいけるんだろ?日本に」

「ついて行った方が楽しいゲームになりそうだからね。」

「二人が行くなら私も行くに決まってるでしょ!」

「そう…ありがとう」

 こうして私はリョウ、ユキヤ、アヤノ達日本人3名とランドル博士とその旦那さん、アレクサンダを手土産にブリタニア本国に帰国することになった。

 本国に戻るための合流地点に到着し、そこでスザクを待ったのだが、現れたのはスザクではなく、別の人物であった。

「久しぶりだな筋肉女…。」

「ルッキー!どうしてここに?」

 そこに居たのはスザクではなく派手髪ナイフペロペロマンのルッキーであった。直属の親衛隊であるグラウサム・ヴァルキリエ隊も一緒のようだ。

「筋肉女…!貴様何度言ったらそのふざけた呼び方を改めるつもりだ…!?ヘマをした枢木卿の代わりに突如スマイラス討伐任務に呼ばれてその帰りにこの任務も受けさせられただけだ。」

 そんな訳で私はルッキー達と共にE.U.を後にし、ブリタニア本国へと帰還した。




マーヤが亡国のアキト編で収穫したものは以下の通りです。
・リョウ ユキヤ アヤノ
・マッスルデバイス(ランドル博士)
・アレクサンダ
・ヴェルキンゲトリクス

ランドル博士の旦那さんが復活した理由?筋肉です。文句は…ないよな?(殴打)

BRSとか時空の管理者とかあの辺は基本的にカットしているのでアシュレイワープは行っていません。代わりにナイフペロペロ吸血鬼さんがスマイラス将軍を殺害したことになっています。
多分「命を飛び散らせろォ!」したんでしょうね。


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ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 MACHO STORYS R2
TURN01′


 今回のE.U.攻略の任務について、私は報告のために皇帝陛下のもとを訪れて居た。

「ナイトオブツーよ…潜入任務ぅ…ご苦労で、あったァ」

「もったいなきお言葉です。皇帝陛下。」

「貴様の働きによりィ…ユーロブリタニアの立て直しまでE.U.が攻めてくると言うことも、無くなったであろう…ワシは成果を上げた者をォ…正当に評価する、主義だ…貴様が望むゥ…褒美を、やろう。」

 私が望む褒美…。それなら…。

「裏切り者のシン ヒュウガ シャイングが所有していたヴェルキンゲトリクス…あのナイトメアを私に頂けないでしょうか。」

「…あんなガラクタを、なぜ欲するゥ?」

 確かに今はヴァイスヴォルフ城攻防戦により破損してしまっているが、完全に壊れたわけではない。それに、元々は元ナイトオブツーであるマンフレディ卿の機体だったのだ。少なからず思い入れがある。

「まぁ、良い…貴様の望んだ褒美だァ…好きするがァ…良い。それと、貴様の連れてきたイレブン共もォ…貴様が好きにしろ。」

「イエス ユア マジェスティ」

 

 皇帝陛下への報告を終えると、ようやくそこでスザクと会うことが出来た。たまに通信による連絡はできて居たが、こうして会うのは実に久しぶりである。

「やぁ、マーヤ…ごめんよ。ヘマをしてしまったから合流地点にも行けなかったんだ。」

「それは別に良いんだけど…いくらゼロへの対応があったからって言ってあんなに長い間連絡を寄越さないのはどうなの?」

「ゼロへの対応…?」

「ほら、あの…世界解放戦線の奴、あれってゼロでしょ?それにしてもシン ヒュウガ シャイングがゼロと協力してたなんて厄介よね。」

 私の発言に何故かスザクは困惑したような表情を浮かべている…何か変なことを言っただろうか?

「…マーヤはゼロの正体を知ってるんだっけ?」

「何いってるの?知らないわよ?スザクが教えてくれないから知らないままなんじゃない。」

「だ、だよね。…あぁ、そういうことか…。」

 またまた不思議な事にスザクは一人で納得したような表情をしている…勝手に一人で解決しないで欲しいものだ。

「ちょっと、スザク?」

「あぁ、ごめんごめん…。悪かったよマーヤ、僕もマッスルガイ卿もゼロを捕まえるのに手一杯でさ。でもお陰で無事に捕まえれたんだ。」

 なんと、逃走したままのゼロという私の懸念はマッスルガイさんとスザクによって解決して新しい。流石はマッスルガイさんとスザクだ。伊達に筋肉を鍛えて居ないということらしい。

「そういえばマッスルガイさんは?一応任務が終わったことだし挨拶しておきたいんだけど…」

「あー…彼は…殉職したんだ。」

「えっ!?殉職!?」

「う、うん…ゼロとの壮絶な殴り合いでね…」

 なんということだ。あのマッスルガイさんを殴り合いで殺してしまうとは…やはりゼロは恐るべき悪の筋肉の持ち主ということだろう。

「因みにマッスルガイさんはどんな最期を…?」

「えーっと…ぼ、僕を庇って腹部を貫かれたんだ。」

「腹部を!?」

 やはりマッスルガイさんとスザクは仲良くなって居たらしい。しかし、友人を助けるためにその身を犠牲にするとは…マッスルガイさんはなんと立派なマッスルガイなのだろう!名前がマッスルガイなだけはあるということか…。

「…そうか!マッスルガイさんはわざと自分の腹部を貫かせた上で筋肉によって腕を固定して逃げられないようにしたのね!」

「う、うん。テロリストを絶対に許さないが為の勇敢な最期だったよ…」

 聞けば聞くほど惜しい人を無くしたと思えてしまう。しかし、己の責務を全うせんとする姿勢は見習わなければ。

「そういえばスザクはこの後の任務どうなってるの?私は一度エリア11に戻れる事になったんだけど」

「僕はまだ戻れなそうかな。でもこっちに居る間はナナリーと過ごすつもりだよ。」

「ナナリー皇女殿下…確か、幼い頃に日本へ留学しており、スザクと交友のあった方だったっけ?」

「…うん、そうなんだ。」

 目も見えず足も不自由だと聞いている。…それにしても皇族相手に呼び捨てが許されているとは随分と仲が良いようだ。

「もしエリア11に戻って来れそうなら連絡してよね。」

「…うん。そうだ、生徒会のみんなによろしく」

「えぇ、伝えておくね」

 シャーリーからの連絡ではミレイ会長は一部の単位がお見合い絡みの関係で取れて居なかったらしく留年しており、生徒会長を続行しているらしい。リヴァルは相変わらずだらしなく、ルルーシュは度々弟のロロを巻き込んで賭け事に行ってしまうとか。良くも悪くも昔のままということね。

 

 皇帝陛下曰く、私は暫くエリア11に滞在し、治安の維持に努めよとのことだった。エリア11は中華連邦に近いこともあり、重要なエリアである為の措置だろう。幸いな事にエリア11にいるのであれば基本的に自由行動とのことで学園への復学も許された。…まぁ、嫌な授業はサボるけどね。

 E.U.から連れてきたリョウ、ユキヤ、アヤノは私の直属の親衛隊員とは言え、敵国から連れてきたこともあり、しばらくの間本国にて最低限の検査があるらしい。また、私が回収したヴェルキンゲトリクスの改修も終わって居ない。ロイドさん達はランスロット関連や量産機のこともある為忙しいようで無理をさせるが、まぁロイドさんなんかは喜んで仕事をして居そうだ。

 

 私がエリア11に戻って真っ先に向かったのはアッシュフォード学園、復学する事は事前に伝えてあるし、今日はもう授業は終わっている時間なので向かう先は一つしかない。生徒会室だ。

「みんな、ただいま」

 扉を開けて挨拶をしつつサイドチェストを決める。

「おかえりマーヤ!」

 最初に反応してくれたのはミレイ会長…というか会長以外いなかった。

「みんな今日は不在ですか?」

「そうなの!シャーリーは水泳部、リヴァルはアルバイト、ルルーシュとロロは賭け事なのよ。せっかくマーヤが帰ってきたのにねぇ」

 少し残念だが、まぁこういうこともあるだろう。

「って訳で!はい。」

 ?なんだろう、この書類の束。

「これね、明日までの部活の予算の申請書類。」

「…え?」

 なんで?なんでそんなものがこんなに残ってるの?

「お願いマーヤ!手伝って!!」

 さっきまでのニコニコ顔が必死そうなものに変化し、ミレイ会長は私の腕にしがみついてきた。

「二人でこの量をやるんですか!?今まで何してたんですか!」

「ごめーん!なんか忘れちゃってたの!」

 忘れちゃってたって…そんな大事なことを忘れるなんておかしいよ…。とは言え、やらざるを得ない…。

「分かりました。やりましょう…。…せめてシャーリーは呼べません?」

 そしてなんとかシャーリーも水泳部から無理やり誘拐することができ、生徒会の仕事を手伝ってもらい、処理し切ることができた。

「ありがとう二人とも」

「会長…せめてもう1日早く思い出してください…」

 急いで誘拐してきた為、未だにスクール水着に私の上着という、ギリギリなファッションのシャーリーが口を尖らせながら文句を垂れると流石のミレイ会長も苦笑いで誤魔化しかないようだった。

「でも会長だけならともかく、シャーリーもこんな大事な書類仕事の締切日に水泳部行ってるんて珍しいね?」

 シャーリーは掛け持ちではあるが、基本的には生徒会の仕事がある日はそちらを優先している。よくよく思えば妙なものである。

「まぁいいじゃない、終わったんだから」

「それもそっか」

 そして私は生徒会室を出て2人と分かれた。そろそろ帰ろうと校門に向かっていると、校門から近づいてくる二つの巨大な影が見える。あのシルエットはルルーシュとロロだろう。

「マーヤサン!こちらに帰ってたんですネ!」

「久しぶりだな。…ってなんか顔が疲れてるぞ?大丈夫か?」

「誰かさんが賭け事に興じてる間に私は明日までの部活の予算の申請書類と格闘してたのよ…」

 わざと恨みを込めて目を細めて言ってみる。ロロは困ったような顔をしているが、ルルーシュは予想通りというべきか、どこ吹く風と言った様子だった。2人と分かれて向かう先は家ではなく政庁。…私は政庁にも用があるのだ。

「こちらです。」

 案内された政庁の一室、3つの扉で厳重に封鎖されたそこで私は部屋の主と対峙した。

「お久しぶりですねマーヤ。」

「お久しぶりです。ユフィ執行官。」

 現在、ユフィはユーフェミア リ ブリタニアの名を捨ててユフィ タダノとしてイレブン専用の死刑執行官になっているらしい。これはゼロが掛けたギアスのせいであり、コーネリア皇女殿下は現在ギアスの呪いを解く為に奔走中である。

「お茶でもいかがですか?せっかく久しぶりの再会なのですからゆっくりしたいってくださいな。」

 そう言いながらお茶を準備することユフィを私は扉の前で黙って見つめる。次の瞬間、ポッドが飛んできた為、弾くとその一瞬の隙にユフィの姿が見えなくなって居た。直様その場を右に避けると私の右横腹に拳が突き刺さる。…読み違えたか。

「あはっ!良い感触です!」

 だが、たまの一撃が横腹に刺さったくらいで喜んでいるようではまだまだだ。私は弾いておいたポッドをキャッチし、ユフィを思い切りポッドで殴り付ける。

「お返しよユフィ!!」

「ぐぅ…!」

 そしてポッドをガードするのに夢中になった為に疎かになった脚部に脚払いを仕掛けると、ユフィはステップで回避するが、私は思い切り振りかぶった拳をユフィの顔面に叩き込まんと振るう。

「この距離…ギリギリ当たりませんよマーヤ!」

「それは…どうかしら!」

私は腕の筋肉を操作し、関節を外す事でパンチのリーチを伸ばした。関節を外す際に発生する激痛は気合いで和らげると、拳は的確にユフィの顔面を捉える。

「ふんッ!!」

「くぅっ!?」

 ぶっ飛んだユフィを追いかけてその足を掴み、両脇に抱えてのジャイアントスイング、このまま凄まじい遠心力をかけつつユフィの頭部を壁に叩き付ける。流石のユフィもこれには気絶したらしく、今日の手合わせは終了となった。

 ユフィにかけられた『日本人を殴り殺す』という呪いにより、ユフィは定期的に死刑執行官として日本人を撲殺するか、ハーフである私かスザク等の日本人が本気で手合わせしてユフィをねじ伏せないと暴走状態に陥る。その為、本来ならば一斉に執行して然るべき黒の騎士団の団員に対する死刑執行は私とスザクの両名が不在となる今回のE.U.攻略作戦終了までかなり延期されていた。逆に言えば私とスザクさえいれば日本人の社会を遅らせる理由もない為、恐らく数日の後に大規模な死刑執行命令がなされる事だろう。

 

 一仕事終えた私は久方ぶりにクラリスさんの待つ私の家に帰る。ドアを開けて靴を見るとどうやらクラリスさんはもう帰ってきているようだ。

「ただいま。クラリスさん」

「マーヤ!お仕事お疲れ様…無事に帰ってきてくれて嬉しいわ」

 駆け寄ってきてそのまま抱きついてくるクラリスさんを受け止め、そのまま抱き返す。こうしてクラリスさんと過ごしていると、やはりここが私の帰る家なのだと思わされた。

 それからクラリスさんの作る料理を一緒に食べ…るが、突然の帰宅であった為量は一人分であった。

「ふふ、流石に量が足りないわね」

「クラリスさん元々少食だもんね。それに二人で分けたら足りるわけないよ」

 そんな他愛のない事に笑い合い、冷蔵の中を確認して二人で再度晩御飯を作る。家族とはこういうものなのだろう。

 …私は私のお母さんの料理もこうやって手伝いをしたことはあったのだろうか?…やはり過去のことは思い出せなかった。

 再度食卓につき再び食事を行う中で私は私の秘密について覚悟を決めた。ハーフであると私はユフィに告げることができた。そしてE.U.ではレイア達に自らがスパイだと最後の最後に打ち明けることができた。…今の私なら、きっとどんな秘密も受け止められるはずだ。

「ねぇ、クラリスさん。お願いがあるんだけど」

「…?なぁに、マーヤ?」

「ずっと、クラリスさんが守ってきてくれてた秘密を…聞かせて欲しいの。」

 私が告げると、クラリスさんは目を見開き、ゆっくりとフォークを置いた。10秒くらい目を瞑って居たクラリスさんが再び目を開けると、ゆっくりと私のことを見てくる。

「…本当に、良いのね?」

「ええ。」

「…分かったわ。」

 実はクラリスさんが本当は姉だなどと言われても私は驚いたりはしないだろう。それくらい今の私には十分な覚悟がある。

「マーヤ、貴方はね…貴方は…本当はね…」

 そこでクラリスさんは再度目を瞑り、再び目を開けた。

 

「ハーフでは、ないの。」

 



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TURN02′

「マーヤ、貴方はね…貴方は…本当はね…ハーフでは、ないの。」

「…は…?」

 クラリスさんが何を言っているのか、私にはわからなかった。

「だって…私のお母さんはブリタニア人で…お父さんは日本人…」

「…貴方は…貴方のお母さんがブリタニア本国から連れてきた連れ子なの…。貴方のお父さんが誰なのかは私も知らないわ…」

 そんな…だって、だって私は…。ハーフで…ハーフ…だから…。

 

「…じゃあ、私は今まで何のために…?」

 

 私は自分がハーフだと思っていた。だからこそ、ゲットーに行って…陽菜達に自己満足の施しをしてきた…。ハーフだから…

「…だから、言えなかったの。あ、貴方の行動を見ているうちに…!」

 呼吸が荒くなるのを自分でも感じる。クラリスさんが秘密にすべきだと考えた理由にも納得がいく…。…思えば、かつてカレンがハーフだとしるキッカケになった中学からの成績証明…。同じハーフであるならばあのタイミングで発覚してもおかしくはないのだ。それを私は運良くバレなかっただけだと思って居たが…そもそもハーフでないのならバレるもクソもない。

「最初から私は…?なら、なら一体…一体今まで私は何のために…」

 

 私は窓を開け、風を身に浴びる。やはり夜風に当たっても気分転換にはならないようだ。…ここ、10階なのよね。

「クラリスさん、行ってきます。」

「待ってッ!!」

 クラリスさんの叫び声を無視し、私は手摺を飛び越えて重力に身を任せる。

 そのまま直立不動のまま地面に突撃するが地面に穴が開くだけで私は死にはしなかった。生きる意味もなく、死ぬこともできない、醜いな…私は。

 

 結局その後は普通に階段で10階まで戻り、クラリスさんと言葉を交わすこともなく眠りについた。

 

 次の日、学園に向かい授業を受ける。ブリタニアの歴史、普通に受けるのは久し振り…いや、初めてかもしれない。

 授業が終わってもそのまま座っていると、シャーリーが話しかけてきた。

「ねぇ、マーヤ」

「うん?どうしたのシャーリー。あ、ノート見る?私自信あるよ?」

 久しく真面目に受ける授業ではあるが、私の筋肉をフルに活用すればリアルタイムで板書し、先生の話を全て記録し、要約して要点を絞り込むことができるのだ。しかし、シャーリーは首を横に振った。…まぁ、シャーリーは授業を真面目に受けるタイプだから板書はしてるか…

「…何か、あったのかなって。…マーヤが歴史の授業を真面目に受けてるの初めて見たから…。それに筋肉のキレも悪そうだし」

「…そうかな」

「そうだよ。」

 作り笑いで誤魔化そうとするが、シャーリーは不安そうな顔をしている。まぁ、もう秘密にするほどのことでも無いか。

「屋上に来て。全部話すから」

 シャーリーを連れて屋上に向かい、屋上にたどり着くと私は空気椅子に腰を掛ける。

「シャーリーも座ったら?」

「…私はいいかな。スカート汚れちゃうし」

「そう?…私ね、実は日本人とブリタニア人のハーフ…」

「えっ!?マーヤがハーフ!?」

 予測通り驚くシャーリーだが、私の話は終わっていない。

「ってずっと思ってたの。」

「…思ってた?」

「そう。だから歴史の授業は嫌いだったし、ゲットーで日本人の子供たちの世話もしてた、ハーフだと思ってたからクラリスさんとも喧嘩した。でもね、全部私の勘違いだったみたい。」

「そうなんだ…。でも、マーヤがハーフでもハーフじゃなくても…そんなのどっちでもいいじゃない。」

 …どっちでも良い…?

「だってマーヤはマーヤだもの。今は…ナイトオブラウンズなんて凄いお仕事してるけど…。マーヤはクラスメイトで、同じ生徒会のメンバーで、私の友達だよ?」

 友達…。レイラだって私がスパイで…裏切り者だったとしても友達と言ってくれた…。

「それに、マーヤがこれまでやってきたことが無くなるわけじゃないだもの」

「…!」

 そうだ、レイラだって言ってくれたではないか。『マーヤが命懸けで戦ってきたことは知っている』と。それが自分の自己満足の為だったとしても、陽菜達と過ごして来たことに変わりはないはずだ。

 

 仮に人を殴る為に鍛えた筋肉でも、魅せる為に鍛えた筋肉でも、守る為に鍛えた筋肉でも、あの日崩れ落ちる瓦礫から陽菜達を救えたことには変わりはない。その意図はどうにせよ、してきたことには変わりはない。

「ありがとうシャーリー。なんか…吹っ切れたわ!」

「あ、なんかキレが戻ったね?ふふ、良かった」

 それからシャーリーと二人で屋上を離れ、廊下を歩きつつE.U.での思い出話をしているとヴィレッタ先生が何かを探す様に走っているのが見えた。

「あれ?ヴィレッタ先生、何してるんです?」

「あー…シャーリーにディゼルか…いや、ルルーシュの奴を見なかったか?」

「すみません、見てないです先生」

「そうか…クソ、なんで私がこんなことを…」

 そう言ってヴィレッタ先生が走り抜けていく。先生も大変そうだなぁ。

 

 次の日、今日も真面目に授業を受け、帰ろうと廊下を歩いていると前方にルルーシュが見えた。ふむ、昨日のこともあるし少し話しかけてみるか。

「ルルーシュ、昨日ヴィレッタ先生が探してたけど、何かしたの?」

「ん?あぁ…何かしたというか、なにもしてないからというか」

 うん?なんだか要領を得ないなぁ…。すると、廊下の向こうからヴィレッタ先生がこちらに駆けてくる。

「ルルーシュ!」

 すると、私の横のルルーシュはすぐさま踵を返して走り出した。流石はルルーシュ、凄まじい反応速度とスタートダッシュだ。

「またですか、粘り強く根気のある人は男女問わず嫌いじゃ無いですが…しつこいですよ」

「もう逃がさないぞ!…ディゼル!頼む、ルルーシュを捕まえてくれ!補習を受けさせなくちゃいけないんだ!」

 補習を…あぁ、確かに何かをしたというわけではなく、何もしてないから終われてるのか。

「先生、体力勝負を持ちかけた時点で先生の負け…って、マーヤ!?卑怯ですよ先生!他の人を巻き込むなんて!それにマーヤもマーヤだ、俺達生徒会の仲間だろ?」

「ごめんなさいルルーシュ!先生からの命令だからね!」

「顔が笑ってるじゃないか」

 バレたか、今の私がルルーシュにどれだけ通用するか…試してみたいと思っていたのだ。

 流石にスタートで出遅れたためか、走れども走れどもルルーシュの背中は大きくならない。流石ね…!

「二人ともー!頑張れー!」

 ミレイ会長がルルーシュに何かを投げて渡した…しめた!今のでスピードが少しだけ緩んだ…!

「マーヤ…これだけの速度を出してなお振り切れないとは…!」

「逃がさない!」

 するとルルーシュは廊下の窓を突き破って外に出て行った。

「待ちなさい!」

 そして私も後に続き破れた窓から外に飛び出る…が、落ちる瞬間、窓枠にぶら下がっているルルーシュを見つけた。

「やられた…!?」

「残念だったなマーヤ。純粋な体力勝負に捉われたお前の負けだ」

 ルルーシュはそのまま壁を登って屋上に…。くそ、コレじゃもう追いつかない…!

「ディゼル!ルルーシュは!?」

「すみません、逃げられました」

「ディゼルでもダメか…」

 うーむ、やはりルルーシュはただのマッスルガイではなく、頭脳もマッスルガイと言うことがよく分かった。思えばいつも出し抜かれてばかりだ。

 そんなことを思っていると、携帯に連絡が入る。クラリスさんかな?

「…あれ、ギルバートGPギルフォードさんからだ。…もしもし?」

『ディゼルくんか?まだ学園だっただろうか?突然の連絡すまない。』

「いえ、もう授業は終わりましたから。…何か用ですか?」

 正直言って余り絡みのない相手だけど…どうしたのだろう?

『ユーフェミ…じゃなくて、ユフィ執行官が壁を破壊して脱獄及び逃走した。現在我々も行方を追っているが見つからず…』

「ユフィが!?私も探してみます!」

『すまないが宜しく頼む。』

 壁を破壊しての脱獄とは…流石はユフィ、大胆なことをするわね…でも、探してみるとは言ったが手がかりはない…どうしたものか。

 すると、再び携帯に連絡が入った。こんな時に…もしかしてユフィかとも思ったが、別の人物からであった。

『もしもし?マーヤ?僕だよ。』

「ユキヤ?どうしたの急に」

『マーヤの部下ってことで身元も保証されたし、携帯端末も貰えたからさ、僕らの声も聞きたいだろうと思って連絡したんだけど…迷惑だった?』

 ユキヤは捻くれ者に見れるのだが、実を言うとかなり身内には甘い。どうやら私もその身内入りしたらしいがそんな律儀に連絡なんてしなくても…いや、待てよ…?

「ねぇ、ユキヤ。早速頼み事があるんだけどいい?」

『えっ、いきなり…?』

「今ね、ユフィ特別死刑執行官が逃走中なんだけど、居場所を特定したいの。何か手はない?」

 ダメ元でお願いしてみると、ユキヤは少しだけ悩む様にして再び声を出した。

『ユフィ特別死刑執行官…あった。うわ…日本人を撲殺で…?メディア露出も多いし、外見特徴も…うん、多分行けると思うよ。SNSで関連する発信と位置情報を利用すれば…あった!えっと、バベルタワー…ってところに向かってるみたいだ。』

 流石はネットのマッスルガイ…こんな短時間で手がかりを得られるとは…!

「ありがとうユキヤ!リョウとアヤノにも宜しく言っておいて!」

 私はユキヤとの通信を終えるとバベルタワーに向かって走り出した。

 

 バベルタワーに到着したのであとは各階を調べて回るだけだ。いくつかのフロアを走って調べるものの残念ながらユフィの姿はない。

「次はここね。」

 入り口を何故か屈強な男が守っている…怪しいわね。でもことを荒立ててユフィに逃げられるわけにもいかない。幸い相手は男だ。ここはお得意の色仕掛けでいこう…!

「あの〜…」

「招待状はお持ちですか?」

「ううん、私持ってないです…。でも、入れて欲しいな〜って…」

 いつもの上目遣いによる色仕掛け、これで落ちなかった男はいないわ…!

「お引き取り下さい」

 なっ…!?私の色仕掛けが…!?ますます怪しいわね…こうなったら

「私はナイトオブツーのマーヤ ディゼルよ。今からこのフロアを強制捜査するわ!ガッデム!!」

「なっ、ナイトオブラウンズ!?いきなり何を…うわっ!!」

 私が扉を蹴破ると、中はどうやら賭場の様だ。…うーむ、人が多いわね。

「お、お客様。困りますねぇ扉を蹴破られては…」

「すみません、ユフィ特別死刑執行官がこちらにきてると思うのですが」

「話を逸らされては困ります。弁償していただかないと」

 …生憎そんな待ち合わせは無い…が、こちらはナイトオブラウンズ!弁償の必要はないわ!

「捜査の邪魔よ!」

 阻む男を張り倒し私は中へと進む。すると、フロア内に吹き抜けの部分があることに気がついた。

『誰かこいつを止めてくれ!謎の仮面女闘士、既に10連勝中!マスク ド ユフィー!!』

 あれは…ユフィ!?なんと言うことだ。ユフィが闘技場の様なところで男の人をボコボコに殴っている…!なんとかして連れ出さないと…!しかしどうやって…

「お前がここで暴れてるって女か。丁度いい、試合前のウォーミングアッ…」

「うるさい!」

 私の思考を邪魔した男の股間に蹴りを叩き込む。…しまった、やりすぎた…?

「ちょっとちょっと!あんた困るよ!コイツは今から闘技場に出る予定の選手だったんだ!一試合でどれだけの金が動くと思ってる!」

「え、あ、すみません」

「弁償してもらうよ弁償!…ってあんたよく見たらすごい身体だね…決めた!あんたがコイツの代わりに出場しな!」

 呆然とする私をよそに凄まじいスピードで話が進められている…気がつくと私は正体がわからない様にダサい仮面とスーツとマントを着せられ、控室にて出番を待っていた。

「…どうしてこんなことに?」

 というかこの私の衣装デザイン…なんだかゼロに似てるような…?

『会場に御来場の皆様、お待たせ致しました。続いての試合です。』

 私の出番が来た様なので私も闘技場に足を踏み入れる。

『今度こそマスク ド ユフィを止められるか!?』

 私は事前に言われていたポーズ…そう、ダブルバイセップスを披露する。会場は凄い賑わいだ…しかしこんなゼロ紛いの格好で戦う羽目になるなんて…

 

『こちらも謎の仮面闘士…ツーの登場です!!』

 

 




マーヤはハーフではないため、たこ焼きなどの日本食文化に地味に疎かったんですね〜

ミートギアスは原作準拠、今回も忠実に原作を無視していきます()


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TURN03′

 突如始まってしまったユフィとの格闘戦、普段の私なら負けはしないが、何しろ変な仮面のせいで視界には死角が生じ、ピチピチのスーツは動きを阻害する。

「ふふっ、その筋肉…マーヤでしょう?わざわざそんな格好をしなくても私は勝負を受けたのに」

「私もこんな格好をするつもりはなかったのよ!」

 しかし、こう考えるとゼロは狭い視界と動きの阻害される全身スーツで私を凌駕する格闘をしていたことになる…。やはりゼロは強敵…!あのマッスルガイさんの分厚い筋肉をぶち抜いて拳を貫通させただけはあるということか

「でも私の前に立つということは…今日こそ死んでもらいます。マーヤ!!」

 的確にこちらの仮面を使っての死角からの攻撃…!どんどん戦闘センスが上がっている…!なんとか腕で防ぐが、すぐに流れるような動きで背後に回られてしまう。

「そこッ!」

 背後に向かっての後ろ蹴りは空を切った。ならば下…!

「に、居ない!?」

 すぐさま私は地面に広がる影に気がつく。

「上かッ!!」

「遅いッ!!」

 両踵落とし…!危なかった、ぎりぎり両腕で防げたが…この腕の軋み、尋常じゃない破壊力だ…!

「あら、今回のは行けると思ったのにダメでしたか?」

「一体そんな威力をどうやって出してるのかしら…私より筋肉量は劣るのに…!」

「ふふっ、普段よりも動きにくそうですね」

 …!それまで見抜かれて…

「ッ!!」

「あら、これも防ぐのね、流石はマーヤ。」

 会話で気を晒せての不意打ち…!手口は汚いが確実に仕留めに来ている…!このままでは…!それにしてもこのスーツ、まるで拘束着…いつもなら筋肉を膨張させるように力を込められるところを抑え込まれている…!

 

 いや、違う…?拘束着…そうだ、拘束着!つまりゼロは常日頃から肉体に負荷をかけることで己を鍛え続けていたのだ…!なるほど、私がゼロに勝てない理由はそれか…!敵ながら己を鍛えようとする姿勢にだけは素直に感服してしまう。

 

「私と拳を交えている時に他事を考えるなんて余裕ですねッ!!」

 

 ユフィの姿勢は今まさに拳を突き出さんとしている…それに対してこちらは無防備…だが!先ほどまでこの拘束着のようなスーツで闘っていたのだから当然私の筋肉は鍛えられている!この状態で腹筋に力を集中すればッ!!

「ッ!?硬いッ!!」

「怯んだわね?今よッ!!」

「しまったッ!!」

 私は怯んだユフィの頭部をガッチリと掴み、両膝を顔面に叩き込む。よし、これで…

「甘いですよマーヤ…!」

 なっ…腕で防がれた!?

「お返しです!」

 頭部を掴んでいた腕を払われた私は両膝蹴りのせいで空中に浮いている…不味いッ!!

 私は首を掴まれ、ユフィはそのまま身体を後ろに捻りつつ私を背負うように…と言うかこれはまさに背負い投げ…!

「マーヤ自身の鍛えられ重くなった筋肉をそのまま重りに首をへし折るッ!!」

 ふっ、甘いわねユフィ…!この姿勢でも今の私の筋力ならば空中を思い切り蹴る事で勢いを弱めることはできるわ!

「なっ!?勢いが…!!」

 よし、動揺して拘束が緩んだ…!すかさず私はユフィから距離をとり、再び構えを取る。

 

 しかし、お互いに踏み込むと同時に地面が大きく揺れる。あまりにも鍛えすぎたためかとも思ったが、暫くしても揺れが収まっていないところを見ると違うらしい。

「ッ!また余所見!」

 咄嗟のガードで拳を防ぐが、こんな非常事態にも関わらずユフィの拳は止まらない。

「ねぇユフィ、非常事態なんだけど?」

「アクシデントなんて私には関係ありません。死んでくださいマーヤ」

 くそ、やはりダメか…!…あれ?そう言えばなんで私とユフィって殴り合ってるんだっけ…。…私がハーフだからと明かしたからだったような…。つまり…?

「ねぇユフィ、私ね、ハーフだってユフィに言ったんだけど。アレ勘違いなの。」

「…え?」

「私ハーフじゃないの」

「…え?…あら?私は日本人を殴り殺す…でもマーヤはハーフでもない…?あら…?」

 しめた、今がチャンスだ!

「ごめんユフィ!」

 腹に膝をブチ込み、くの字に折れ曲がった所を延髄に手刀を叩き込む。

「当て身ッ!!」

「かッ!?」

 よし、これで一件落着だ。取り敢えず非常階段から脱出しよう。

 

 暫く階段を降りていると、不審な人物達に遭遇した。手には…銃を持ってる?

「ゼロ…!ゼロだ!」「お待ちしておりましたゼロ!」「これだ俺たちはブリタニアに勝てるぞ!」

「え?いや、私はゼロじゃ…」

「何言ってるんですか、その仮面にマスクに筋肉、誰がどう見てもゼロですよ!」

 しまった…脱出するのに夢中でこのツーの格好から着替えるのを忘れてた…!

「ゼロ!我々にご命令を!」「卜部隊長!こちらはゼロと合流できました!…は?卜部隊長も合流できた…?」

 …!そうか、この人達黒の騎士団か…!

「クソ!ゼロの偽物だったのか!」「やっちまえ!」

 なんと言うことだ。一方的に勘違いしたくせに偽物扱いとは、許せん。放たれる弾丸をユフィをバット代わりに打ち返す。

「なっ!?」

「…なんだマーヤ、私が起きているのに気がついていたのですか」

「私の本気でも3分で回復とは相当鍛えたようねユフィ」

 ユフィはニコりと笑うと黒の騎士団と思われる男性に拳をねじ込んだ。腹部貫通とはいかなくとも殴られた男は壁まで吹き飛び、壁が凹むほどの威力だ。

「黒の騎士団…日本人は殴り殺さないと…撲殺です!!」

 

 よし、あとはユフィに任せて私は逃げるとしよう。黒の騎士団を壊滅させたらきっと大人しく牢屋に戻ってくるだろう。

 取り敢えずこのことはギルバートGPギルフォードさんに連絡しておくとして…

 再びタワー内の非常階段を降りていると、今度はロロに遭遇した。

「アレ?マーヤさん?なんでこんなところに居るんデス?」

「私は仕事の関係よ。…ロロこそ何してるの?」

「ボクはブラザーとはぐれてしまったんデス」

 ルルーシュも来ているのか、まぁルルーシュの筋肉ならばこのタワーの崩壊に巻き込まれても命に別状は無いだろう。

「黒の騎士団の襲撃もあるしここは危険よ。一緒に逃げましょうロロ。ルルーシュの筋肉ならこれくらい平気だって」

 暫くロロと階段を降りるが、そもそもルルーシュとロロは何しにバベルタワーに来たのだろうか?

「ねぇ、ロロ…って居ない…!?」

 おかしい…居なくなる瞬間に私が気が付かないなんて…まぁ、ロロの筋肉を考えればルルーシュ同様タワーの崩壊に巻き込まれても平気だろう。

 タワーから脱出し、地上、上層から部隊が導入されているのを確認した私は入口もカラレス総督が待ち構えていることから私の出る幕は無いと確信して帰路に着いた。そもそも本物のゼロはブリタニア本国で捕まっているはずなのだ。スザクから逃げたと言う報告も無いし、エリア11に来ているはずはない。

 

 その後、ギルバートGPギルフォードさんからバベルタワーが崩壊し、カラレス総督が瓦礫に押し潰されて殉職したと聞いた。…なんと言うことだ!筋肉があれば押し潰されても平気だったと言うのに…!そして嫌な予感がしたのだが、総督不在のエリア11、そして私はナイトオブラウンズ…

『マーヤくん…いや、ディゼル卿、新たな総督の就任まで総督代理として指揮を取ってください』

「冗談でしょう!?私まだ学生ですよ!?」

『ですがナイトオブラウンズです。…私も出来る限りの補佐は行います。』

 何か…何か逃れる手段はないか…!

「ユフィ!そう、元皇族のユフィを総督代理に…」

『イレブン全員を撲殺しようとする方に総督代理などもってのほかです!』

 で、ですよね…。仕方がなく政庁に向かいギルバートGPギルフォードさんと合流する。

「ギルバートGPギルフォードさーん!」

「怪しいやつ!止まれ!…ってそのフルネーム呼び…まさかディゼル卿!?なんなんですそのふざけた格好は!」

 しまった、まだツーの格好のままだ。意外とこの締め付け感が癖に…いや、まずはこのヘルメットだ。

「すみません、ちょっと色々あって…ふんっ!」

 …あれ、抜けない。

「フンッ!!」

 あ、抜けない。

「何してるんだ…君は…」

 こうなったらこれしかない…!

「でやァ!!」

 私はヘルメットに拳を叩き付ける。するとヘルメットは粉微塵に粉砕された。

「これでよし。ラウンズの格好に着替えてくるのでちょっと待っててください」

 そして私はラウンズの格好に着替え、赤いマントを羽織る。ギルバートGPギルフォードさんに言われた部屋に向かうと扉の前にギルバートGPギルフォードさんが待機していた。

「では参りましょう。」

 扉を開けると中の人達は突然のカラレス総督の死亡で混乱しているようだった。

「狼狽えるな!」

 ギルバートGPギルフォードさんが叫ぶと、他の人達は驚いたようにこちらを向く。

「ギルバートGPギルフォード卿…それにナイトオブツーまで…!」

 続けてのギルバートGPギルフォードさんの言葉を私は待つが、一向にその気配はない。…あれ、もしかして私が言うの?ギルフォードGPギルフォードさんをチラリと見るとコクコクと首を縦に振っている。

「…新たな総督着任まではナイトオブツーである私、マーヤ ディゼルが指揮を取ります!」

 私の一言でどうやら混乱は完全に収まってくれたらしい。でも私政治とか分かんないよ…。すると、モニターにゼロの姿が映し出された。そんな…!ゼロは本国で捕まってるはずじゃ…!

『私は…ゼロ!日本人よ!私は自らを鍛え直し、再びこの地に帰ってきた!今よりこの部屋が合衆国日本の新たな領土となる…!』

 すぐにスザクに連絡を取ると、今度はその凄まじい筋肉で地面に穴を掘り脱出したらしい。しかもゼロはその類稀な頭脳を持ってして掘った土を巧みに利用し、自身の筋肉像を作り出す事で発覚の遅延を行ったようだ。牢屋という薄暗い環境、そしてそこにマッスルガイの概形が存在していれば…なるほど、発覚が遅れるのも無理はない。それにもしかしたらゼロはその凄まじい筋肉を黒色に輝かせているのかもしれない。だとすれば土で黒くてもカモフラージュになるという訳だ。

『兎に角、近いうちに僕は新総督と共にゼロを再び捕まえるためにエリア11に向かうからそれまでは頼んだよ』

「分かったわ。」

 しかし、現在総領事館に手出しはできない。…取り敢えず補佐してくれると言ってくれたギルバートGPギルフォードさんに仕事をぶん投げその日は帰路に着いた。その夜、明日からの政治のお仕事を憂鬱に思っていると、携帯に連絡が入った。

「最近はいろんな人から連絡が来るわね…ってV.V.くん?」

 これも珍しい人からの連絡だ。

「もしもし?なぁに?V.V.くん。こんな時間まで起きて…子供はしっかり睡眠を取らないと背が伸びないよ?」

『やぁ、マーヤ。…身長のことは言わないでくれ、これでも少しだけ気にしてるんだよ。…それより、君にお願いがあってね。』

「お願い?」

『うん。ちょっと来て欲しいところがあるんだ。明日来れるかな?』

 連絡先を交換してから実は何度かやり取りをしているし、本国に居る頃に会ったりもしているのだが、V.V.くんって今は本国に居るのでは無いだろうか?

 うーむ、来て欲しいと言われても今の私はエリア11の治安維持の為に待機する必要がある。それに名ばかりの総督代理ということもあってエリア11からは余り出たく無いのだ。

「ごめんなさい、今は仕事の関係であまりエリア11からは出られないの」

『…あぁ、心配しないで。来て欲しいのは神根島なんだ。マーヤも一度来たことがあるよね?』

 ふむ、神根島ならエリア11だし問題は無いだろう。

「分かった。ラウンズの権力でなんとかゴリ押しで明日神根島に向かうわ」

『うん、よろしくね』

 そんな訳で次の日ギルバートGPギルフォードさんに神根島に行くと言ったら物凄く嫌な顔をされた。

「…何故こんな時にあんな島に…?」

 しかしこう見えても私は脳筋である。これくらいの疑問は想定済みだ。

「良い?ギルバートGPギルフォード」

「毎回思いますけどなんでフルネームなんですか?」

「ゼロ達黒の騎士団がどこに潜伏していたか…わかる?」

 そう、今回事件を起こした黒の騎士団、彼らを逆に利用させてもらう。

「…いえ」

「ズバリ…神根島…!…かもしれないでしょう?だからラウンズである私が直々に調査を行うのよ」

「…まぁ、筋は通ってますね…。はぁ、分かりました。ではその調査の間は我々に委ねてもらっても?」

 私は首を縦に振る。正直外交とか政治とか分かんないし、ギルバートGPギルフォードさんはあのコーネリア皇女殿下の騎士だ。滅多なことはしないだろう。

「大丈夫です!責任は取りますから!じゃあお願いしますね!」

「…イエスマイロード」

 

 そんな訳で私は神根島に着き、V.V.くんと合流した。…ってこんなところにV.V.くん一人…?どうやってきたのだろうか…?

「僕に着いてきて」

 私の疑問など知らないというふうに彼は歩き出してしまったので私もその後に着いていく。

「V.V.くん、デートにしては随分渋い趣味だね」

「ふふ、笑えない冗談はやめてほしいな…。君の事をそういう目で見たことは無いよ。」

 そうして連れてこられたのは遺跡の中の謎の模様が描かれた壁だった。

 




ここ最近の裏話しますね。
毎日登校前日か当日にぎりぎり書き上がてるので、「あれ、今日は投稿ないな」って思ったら察してください()


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TURN04′

 ふと気がつくと、先程まで寂れた…古い遺跡に居たはずなのに空に浮かぶ謎の空間に私は立っていた。

「ここは…神殿…?」

「神殿…まぁ確かにそんな見た目だよね。でも違うよ、ここはね…武器」

 武器…?私は周りを見渡し、この空間にあるものを観察する。階段状の浮遊する板、神殿らしい柱、そして神殿本殿らしき屋根のある建物…なるほど

「確かにあの柱を振り回せば武器にはなりそうだけど」

「あぁ、うん、物理じゃないんだよ…。これはね、神を殺すための武器なんだ。」

「神を…殺す?」

 神とは…神様のこのだろうか?それとも…。いや、まぁこの年頃の子供はこういう秘密基地でこういう事を考えるものだろう。

「そう言えばなんで私をここに?」

「うん、ここは中継地点でね。連れていきたい場所は別にあるから」

 なるほど、ここはV.V.くんの秘密基地の入り口らしい。

「次はどんなところにエスコートしてくれるのかな?」

「ふふ、きっと喜んでくれると思うよ」

「ふーん?それは楽しみ」

 再び景色が変わったかと思うと、オレンジ色の溶液に浸されたジェレミアさんが見える。

「ジェレミアさん!?」

「安心して?命には別状ないんだ。紆余曲折あってね、今は僕が面倒を見てるんだ。」

 命に別状はないと言われても今のジェレミアさんの肉体には何か様々な機械が取り付けられている。それに顔面も3分の1は機械が付けられているように見える。

「ふふ…」

「…V.V.くん、君は一体…」

「そんなことはどうでも良いじゃない。わざわざ君にあんな遠回りでここに来れる方法を教えたのはね、もしも僕がピンチになったら君に助けてもらおうと思ってるからなんだ。」

 ジェレミアさんを助けて貰っている訳だし、V.V.くんは私の友達だ。まだ子供で非力な彼がピンチになることがあるのならば私もこの筋肉を振るおうと思った。

「うん、分かったわ。約束する。」

「ありがとうマーヤ。じゃあこれは契約だね。」

 約束だと思うのだが…まぁ、子供って難しい言葉を使いたがるものね。私は微笑んでV.V.くんの手を優しく握る。

「うん、契約する。」

「必ず守ってね…ふふ…」

 彼の手を握った瞬間、私の頭に衝撃が走り、脳内に何かイメージが映し出された。

「うぅ…これは…!?」

 二つの…惑星、沢山の少女たち、それに…

 

「大丈夫、それは君にとって害のあるものじゃないから。これまでだってそうだったろう…?」

 

 気がつくと私は神根島の…不思議な模様の壁の前に倒れていた。なんだか変な夢を見ていた気分だ。…V.V.くんは…もう帰ったのだろうか?

 学園に戻る途中、シャーリーから連絡が入った。

「もしもしシャーリー?」

『もしもしじゃないよマーヤ!また学校サボったでしょ!それに今日はルルとロロの生還記念パーティーって言ったじゃん!料理準備するの大変だったんだよ!?』

「ごめんごめん、私も仕事の用事があって」

 正確には仕事ではないが、まぁこう言っておけばシャーリーには誤魔化しが効くだろう。

 学園に戻り、生徒会室に入ると空気椅子に座り足を組んでPCを操作するルルーシュと弟のロロを見つけた。

「二人とも何見てるの?」

「マーヤさん、今ブラザーと写真データの整理をしてるんデス」

「そういうこと。見ろよこれ、失恋コンテストって言うんだ。皮肉だよなぁ、優勝したリヴァルにトロフィーを渡すのが会長なんてさ」

 3人揃ってHAHAHAと笑っていると、ロロが唐突に話を変えた。

「よく逃げ出せタネ。バベルタワーは軍に完全に包囲されていたのに、ブラザーはどうやって包囲網を突破したんダイ?」

「うん?おかしなことを言うなロロは。それを言うならどうやってテロリストから逃げたか、だろ?立ち塞がるテロリストどもを全員拳で黙らせただけだよ。ピストルの弾なんて俺には効かないし…お前にも連絡しようとしたんだけど、ジャミングが酷くてな」

 そんな兄弟の話題に水を差すのも気が引けたが、一つ疑問があるので私もロロに質問するとしよう。

「ねぇ、ロロってなんで途中から私とはぐれたの?」

「あー…それは…実はボク、方向音痴なんデス」

「そっか、なら仕方ないわね」

 方向音痴ならはぐれても仕方ない。…いや、おかしくない?

「待って、私の後を追うのに方向は関係なく無い?」

「えー…あぁっと…ま、マーヤさんの背中を見ていたらやっぱりブラザーが心配になって…それで探しに行こうと戻ったんデス」

 なんだ、それならおかしくないわね。

「それなら声をかけてくれればよかったのに。」

「そうだぞロロ。たまには他人を頼れ。」

「オーケーブラザー」

 そんなルルーシュのお兄さん風に私は少し笑ってしまった。

「何がおかしいんだマーヤ」

「いや、ルルーシュってちゃんとお兄ちゃんなんだなって思って」

「…あぁ、そうだよ。俺は…兄なんだ。」

 その時、ふとロロの携帯に受けられたロケットが目に入った。…ハート型?

「…ねぇ、ロロ。そのロケットって」

「…?これは…ブラザーがくれた大切な物なんデス。ボクの誕生日にくれタ…」

 そう言って目を細めるロロを見ていると先程まで『男にハートのロケットなんておかしい』と言おうとした自分が恥ずかしくなる。

「そう。素敵な…大事な物なのね」

「イエス!これは…ボクの物デス!大切なボクの宝物デス!!」

 贈ったものをこれだけ大切にしてもらえているのだから贈ったルルーシュもさぞご満悦だろうと顔を見ると、何故か難しい顔をしていた。一体、どうして…?

 

 そして次の日、ギルバートGPギルフォードさんに呼び出された私はある決断を迫られることになる。

「…黒の騎士団員の一斉処刑ねぇ…」

「はい。総領事館に逃げ込んだゼロを誘き寄せるための罠です。…自分もこんなことはしたくは有りませんが、ゼロが出て来れば拘束し、こなければ奇跡の起こせないゼロとして信用を失うかと」

 その為の大量処刑…それを全てユフィの拳にやらせるとなると非常に気分が重い。とは言え、丸投げしたのは私である。…責任は取らないとね。

「わかったわ。ナイトオブツーのマーヤ ディゼルが承認します。…処刑した後はキチンと弔う事だけは徹底して」

「イエスマイロード!」

 私にやれることはそれくらいだ。私はできるだけメディア露出を控えている為、後のことはギルバートGPギルフォードさんに任せ、私は計画の確認作業に入った。

「…ユフィ専用のグロースターね。」

 あれだけの人数を処刑する為に用意された機体、既に何度か使用されているためか拳には…色々と付着している。スペックを見るとただのグロースターではなく、かなり実用的にチューンナップされているようだ。装甲は薄いがその分機動力が高い上、殴る事に特化している。私の専用ナイトメアは間に合わないので空いているナイトポリスでも借りて会場警備を立ち会うとしよう。メディア露出を控えるため当日の段取りもギルバートGPギルフォードさんに任せてある。

「ディゼル卿、ショッピングモールにて爆破予告が!」

 このタイミングで…?ゼロが何か準備のための仕掛けをしているのだろうか?ゼロの目的の一つに皇族への復讐がある。…今このエリアにいるのはユフィだけだけど、彼女は既にゼロによって精神を破壊された後だ。ならば黒の騎士団員の解放が目当て…ここで本当にショッピングモールの爆破を行えば二度と支持は得られないだろう。

「ショッピングモールの爆弾は恐らくブラフだ!但し万が一を考え利用客を直ちに避難させるように!残りの人員は全力で処刑予定の黒の騎士団員達の見張りに入りなさい!絶対にゼロを接触させるな!」

「「「イエスマイロード!」」」

 結果として、やはり爆弾はブラフであったらしく、ゼロの本命であろう黒の騎士団員への接触も厳重な警備で防いだ。

「…しかし、何か引っかかるわ」

「何がでしょうか」

「何かはわからないの…でも、本物のゼロだとするならば私は必ず出し抜かれている…そんな気がしてならないの」

「考えすぎでは?今回の奴の囮である爆破テロを見抜き、警備を厳重にしたことで奴は完全に救出の手立てを失ったかと」

 そうなら良いのだが…

 

 こうして、黒の騎士団員の一斉処刑が開始される時刻となった。ゼロは現れ無いようだ。

『イレブン達よ!お前達の信じたゼロは現れなかった!あの筋肉以外全てはまやかし。奴は私の望んだ正々堂々の勝負から逃げたのだ。それではユフィ執行官、よろしくお願いします』

『撲殺です!日本人は全員撲殺です!今日はグロースターで撲殺です!』

 張り切るユフィだったが、それにはすぐさま待ったが掛かった。

『待て!間違っているぞギルバートGPギルフォード!お前たちが処刑しようとしているのはテロリストでは無い…我が合衆国日本の国民たちだ!』

 なるほど、後ろに回ったのか。私はすぐにユフィに通信を入れた。

「ユフィ、処刑は一時中断よ。」

『そんな…残念です』

 だがゼロはここからどうするつもりなのだろう?状況は既に決定的、ゼロは単騎な上にこちらは多数、総領事館に控える部隊もこちらに干渉するには位置が低すぎる。…低すぎる?何か引っかかる…。思い出せ、今までのゼロの手口を…!ナリタ…ブラックリベリオン…。

「…!まさか!」

『ならば私はこの拳で闘う』

 ゼロのナイトメアがナックルガードを展開している。対してギルバートGPギルフォードさんは武装を外し、槍のみになっている。これは罠だ!

「総員退避!ゼロは足場を崩す策をとるはずよ!!総員今すぐ…」

『まさかコチラの策が見抜かれているとはな。肉を切らせて骨を断つ!!』

 何故今そんな諺を…いや、違う!

「早く退避しろ!!足場が崩れるぞ!!」

 叫ぶ私の忠告も虚しく、殆どの兵が足場崩しの混乱に巻き込まれ撃破されている。ギルバートGPギルフォードさんのグロースターもゼロに不意を打たれて破壊されているようだ。いけない…!みすみすここで逃げられては…!

「ユフィ!出番よ!予定通り黒の騎士団員の処刑を!」

『任せてくださいマーヤ。…撲殺です!!』

 よし、ユフィに任せておけば大丈夫だろう、後はコチラだ…!

「ゼロ!マッスルガイさんの仇ィ!!」

『まさか…これに乗って居るのは!?』

 ナイトポリスのシールドでタックルをかまし、ゼロのグラスゴーもどきを吹き飛ばす。

『この戦い方…やはり貴様か!マーヤ ディゼル!!』

「あら、私のこと覚えてて来れたのかしら?嬉しいわ!」

 足場が崩れ、斜面となった地面を滑り落ちつつ私はゼロと対峙する。私の事を脅威と見てくれて居るとは光栄!だが、当然手加減などしない!

 ナイトポリスが格納して居る武器にナイフがある。それを取り出し、シールドの裏に隠しつつしっかりと構える。

『クソ…邪魔をするな!』

「平和の邪魔をしているのはあなたの方よ!」

 私はナイフを投擲した。しかし…

『マーヤ ディゼル!貴様の類稀な投擲センスは私もよく知っている!』

「そう、ならこれはどうかしら!」

 私はすぐさま取り出したピストルを放った。

『この程度!』

 ナックルガードで弾いたか、流石ね…!しかし、そこで邪魔が入った。

『ゼロは私が守る…!』

 この赤いナイトメア…まさかカレンが黒の騎士団員だったなんて聞いた時は驚いたけど…残念だわ。

「カレン!今なら私の友達として減刑くらいはしてあげられるわ!」

 事前情報であの右手には注意を払う必要があることを私も知っている。しっかりと十分な距離を取りつつ、ピストルの残弾数を確認しつつ盾でコチラの動きを隠しながら周囲を確認する。…ゼロの機体はキンニク卿のヴィンセントが追ってくれているようだ。私はジリジリと距離を詰めるとカレンのナイトメアが一気に踏み込んできた。

『はっ!お生憎様!それだけの筋肉がありながらブリタニアに尻尾を振る弱虫がァ!』

 右手による攻撃…!きっとカレンはこう思うだろう、後ろに下がって距離を取ろうとする…と、だが甘い!右の大振りに対して私は踏み込んで距離をさらに詰める!シールドでタックルをかまし、突き飛ばした。

『舐めるなァ!!』

 なっ!?この奇襲を受けて尚攻撃を…しまった、胴体を掴まれたッ…!?

 

『弾けて飛び散れ!!マーヤッ!!!』



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TURN05′

 赤い光の迸りと共にナイトポリスの機能は停止、更に全身を凄まじい高熱が襲って来る。

「あ、熱い…!」

 けたたましいアラートが鳴り響いている。みるみる私の視界は暗くなり…そして…

 

 ここは…研究所だろうか?…あっ、肘が当たって机の上のビーカーを落としてしまった…。

『お前は何度言ったら分かるんだ!』

 痛い。突然頬を叩かれた気がする。

『お前なんて本当の…!』

 本当の…なんだろう。白衣を着た男の人…顔は見えるものの、やはりどこかぼやけていているが…だが、あれは私の…

『あなた止めて!」

 同じく白衣を着た女の人が男の人に怒っている。…今なら分かる。きっとこれはお母さんと…お父さん"だと思っていた人"だ。

 

 …あぁ、そうだ、私は…もっと強い子になれば怒られないと…そう思ったんだっけ。でも、さっき言われた『本当の』…今ならわかる。あれは『本当の子供じゃない』と言いたかったのだろう。研究の邪魔ばかりしてしまう私の…

 

 だから…

 

『…ーヤ…………が強いる、……………の…………苦…!凌………い、…鍛えよ!』

 熱い…熱い…。炎と煙で前が見えない。

 苦しい…苦しい…。炎の向こうに人影が見える…

『マーヤ…強く、生きて!』

 あれは…お母さん…これは…

 

「…そうだ。これしきの熱に私の鍛えた筋肉が負けるはずないッ!!」

 ハッチを蹴破り、爆発と共に脱出、服は多少焼け焦げたが…ふむ、体の調子は問題ない、動ける!

『嘘でしょ!?…アンタ、ちょっと頑丈が過ぎるよッ!!』

 続けての赤いナイトメアの攻撃を流石に素手で受けるわけにもいかず、強く地面を蹴り距離を取る。

『あら、マーヤ…随分苦戦してるようですね』

 私と赤いナイトメアの間に割り込んできたのはユフィのグロースター。

『もう少しで一人処刑できそうでしたがマーヤが死ぬのは私も悲しいですから』

 どうやら撲殺そっちのけで助けに来てくれたらしい。よくよく見るとユフィのナイトメアは既にいくつかの剣撃を受けたらしく、装甲がかなり剥がされているが、こちらの部隊も大分最初の混乱から立て直している。このまま行けば…!

『そこまでだブリタニアの諸君!これ以上は国際問題となるが?』

 中華連邦からの介入…?だが、ここで押せばゼロを捕まえられるはず…どうすれば良いか判断は付かず、すぐさま通信を繋ぐ。

「ギルバートGPギルフォードさん、ここは退くべき…かな?」

『…えぇ、E.U.方面の立て直し前に中華連邦と事を荒立てるのは得策ではないかと。』

 ふむ、確かに…。テロリスト一人の捕縛の為にブリタニアと中華連邦の戦争に発展となれば、それは私一人の力でどうにかなるものでもない。ここは大人しく退いた方が良いか…。私は撤退を命令し、続けて総領事館周辺を厳重に包囲するように命令した。

 

 その夜のスザクの連絡から、明日スザクがこちらに帰ってくるらしい。次の日、ギルバートGPギルフォードさんに『何かあれば連絡を』と言う魔法の言葉を唱えて学園に向かう。

「本日より復学することになりました。枢木スザクです。」

 スザクも復学するようだが、連絡を取った感じではスザクはナナリー皇女殿下もとい新総督の総督補佐となるらしい。もう何かあってもスザクに押し付けてしまえば良いのでは無いだろうか?

「席はルルーシュの隣な」

 先生に言われたスザクがやってくるが、突然ルルーシュがスザクに不意打ちの拳を叩き込んだ!恐ろしく早い殴打…私は見逃さないけれど中々のスピードだったわ!

「!」

 パシッと手で止めたスザクはすぐさま反撃の蹴りを叩き込んでいる。しかしルルーシュとてマッスルガイ、それを容易に腕でいなしていた。

「ふっ、相変わらずの動きだなスザク」

「君こそ、殴りかかるなんてひどいじゃ無いかルルーシュ」

 スザクがルルーシュを見る目はどこか鋭いように感じる。…私の気のせいだろうか?

「あ、ルルーシュ。休学中のノート映させてくれないか?」

「ノートを写すより俺が補習してやるよ」

「ありがとう、助かるよ!」

 いや、気のせいか。あんなに笑顔で話してるし。

 

 スザクが帰ってきたこともあり、生徒会のメンバーで昼飯を食べる事になった。

「…それでね?私たち以外はみーんな帰っちゃったの。先生もよ?」

「なるほど、道理で見ない顔が…」

 私もエリア11に戻ってきてからそのことには驚いたものだ。

「そうだ!スザクの復学記念パーティをするわよ!」

「え、良いんですか?」

「良いんじゃ無…ん?あれ、会長…私の復学記念パーティってやりましたっけ?」

 …あ、ミレイ会長が固まった。さては忘れてたな…?まぁ、良いけど…。それからナイトオブセブン枢木スザク復学記念パーティはナイトオブツーマーヤディゼル&ナイトオブセブン枢木スザク復学記念パーティに名称が変更された。ミレイ会長のお祭り好きににも困ったものだけど、楽しい催しは学園の皆んなにも必要だろう。

 

 そしてパーティの開会式とでも言うべきか。私とスザクは放送室にて待機をすることとなった。

「お待たせしました!これより、ナイトオブツー&ナイトオブセブン歓迎会を始めまーす!開始の一言はもちろんこの方達から!」

「本当に僕もやるんですか…?マーヤだけで良いんじゃ」

「何言ってるのスザク!主役は私達二人なんだから!観念しなさい!」

 やる以上は楽しんで貰うべきだろう、ここで水を差すのは良くない。

「分かったよ…それじゃぁ…」「「せーの…」」

 私とスザクはサイドチェストを決めた。

 

「「ヤーーーー!!!!!」」\It′s my life!/

 

 去年は私とスザク、ルルーシュの三人…あれ、何でロロは設営に参加しなかったんだっけ…?まぁ、いいか…。兎に角三人で設営した特製オーブンは「主役に設営させるわけにいかない」と言う事で今回は業者を雇ったらしい。別に良いのに…。

 

 歓迎会が始まるものの、私はある人を校門で待っていいた。しばらくすると豪華な車が到着し、リョウ、ユキヤ、アヤノが出てくる。

「ここがマーヤの通ってる学校か」

「随分と大きいし、賑やかなんだね。流石はブリタニア」

「ちょっとリョウ!ユキヤ!護衛対象そっちのけで行かないでよ!…ほら、V.V.く…ちゃんも」

 そう、豪華な車はリョウ達三人のためではなく、V.V.くんのためのもの。お祭りを見てみたいと言う連絡をもらった時は驚いたけど、お金持ちとは言えやはりV.V.くんも子供と言うことだろう。…ところで自由な校風とは言え何でV.V.は女装してるの…?

「や、やぁマーヤ…まさかこの歳でこんな格好をされるとは思わなかったよ…。」

「…似合ってるよV.V.くん」

「冗談でもやめてほしいな…。くっ…スースーする…!」

 こちらから目を逸らし、スカートを抑えて恥ずかしそうにしているが見た目はどこからどう見ても少女のそれだ。

 元々顔は整っているし、髪も長い事で女装が似合うのは事実。それにしても『この歳』だなんて…まだまだ子供だろうに。

「じゃあ、みんな行こうか」

 私はスザクと異なりピザ作りの仕事はないので校内を自由に回ることが出来る。確かシャーリー達水泳部はカフェやってるんだっけ?

 

 スクール水着の水泳部員が決めポーズをした。

「美少女から!」

 そして次に複数の水泳部員が破廉恥極まりない水着に身を包むヴィレッタ先生を紹介する様にポーズを決めた。

「アダルティなお姉さんまで!』

 …ヴィレッタ先生…この距離からでもわかる。表情筋がピク付いてますよ…。笑って下さい。せめて。

 そしてルルーシュとロロがブーメランタイプの海パンでサイドチェストを決め、爽やかにスマイルをキメていた。

「「そしてハンサムなマッスルガイも(いるぞ)(いマス)!」」

 

「「「水泳部カフェへようこそ!」」」

 

 …シャーリー、私の事も誘ってくれれば良いのに。

「…ちょっとリョウ、見過ぎだよ。」

「は、はぁ?見てねーよ!」

 うんうん、二人も楽しんでくれてるみたいね。

「僕はコーラにしようかな…V.V.ちゃんは何頼む?」

「ブラックコーヒーのアイス」

 ふふ、V.V.くんったら…まぁ、あれくらいの子供は背伸びしてブラックのコーヒーとか飲みたがるものよね。その時プールサイドにシャッター音が響いた。

 

「ダブルマッスルガイ、記録」

 

 …ん?あの特徴的な喋り方…。もしかしてアーニャ…?

「ん〜!カフェの料理も美味しいモニ。これは世界一のピザも楽しみモニ」モニモニ

 パンケーキを頬張ってるのはモニカ…!?

「ちょっと三人ともここよろしく」

 リョウ達にその場を任せ、私はモニカ達に近付く。

「モニカ、アーニャ、来てたの?」

「うん。この前は陛下の護衛で楽しめなかったから。」

「アーニャ一人じゃ心配だからってジノが付いていけって言われたモニ」モニモニ

 ジノ…アーニャとモニカじゃ正直大差ない気がするんだけど…。すると、アーニャとモニカと同じテーブルにもう一人が着いた。派手な髪の…

「あれ、ルッキー?」

「はぁ…はぁ…悪いが筋肉女、今は貴様とやり取りをする気力もない…」

 あぁ…この様子だとルッキーは多分モニカとアーニャの付き添いに自主的に来たんだな…。ルッキーの部下のマリーカさんと話した感じ、口は悪いけど面倒見は良いらしいし。そして二人に振り回されてるって感じか。

「よーしアーニャ!次の出し物に行くモニ!」モニッ!

「ホラーハウス。わくわく」

「なっ…!?」

 駆け出す二人の背中を絶望した表情で一瞬だけ眺め、すぐさま走って追いかけるルッキーに手を振って送り出す。…苦労人だなぁ…。

 

 それから世界一のピザ作りは無事成功に終わり、灯りを囲んでのダンスとなった。

「なんかスロニムのお婆さん達のこと思い出すね。」

「あの時も灯りを囲んで踊ったっけ」

 スロニムのお婆さん達…それにレイラは元気にしているだろうか?

「…マーヤ、まさか踊ろうだなんて思ってないよな?」

 …バレた…?

「だ、大丈夫だよ…ブレイクじゃなくて大人しめのにするから…」

 一応これでも私はダンスはある程度一通りは踊れるのだ。…どこで覚えたのかは覚えはないけれど、とにかく体が覚えているので舞踏会で踊るようなクラシックな奴だって…

「絶対にダメだからね!」

 うぅ、アヤノに釘を刺されてしまった。

 …そういえば私と同様主役であるスザクはどこにあったのだろう?

 

 それから、新総督補佐であるスザクへの総督代行の業務引継ぎの事務をギルバートGPギルフォードさんに丸投げして任せ、私はリョウ達と共に一度ブリタニア本国へと赴き、新総督を出迎えることとなった。帰りのラウンズ専用の機内の中でなにやらエリア11土産を仕分けしているアーニャとモニカを見て一つ疑問が湧いた。

「…あれ、アーニャ。ルッキーは一緒に帰らないの?」

「ブラッドリー卿はスザクとマーヤの手伝いでエリア11に残るの。」

「言ってなかったモニ?」モニ?

 …聞いてないと言うか、ほとんど話せなかったと言うのが本当のところだ。ルッキーは二人に振り回されて終始死にそうな顔だったことしか覚えがない。

「ところでお土産が色々あるみたいだけど何を買ったの?」

「モニ〜!これはドロテアにあげる『L.L.の筋肉写真集』モニ!本国では中々手に入らないモニ。ドロテアの為に観賞用保存用布教用の3冊を買っておいたモニ」モニ

 へぇ…モニカっていつも変な人だと思ってたけど意外と気が利くところもあるのか…。

「そういえばモニカのフロレンスって元はアレクサンダなのよね?」

「そうモニ!カマキリ型のナイトメアモニ!マーヤもE.U.ではあれに乗ってたと聞いてるモニ〜」モニモニ

 確か一度作戦で破壊されたが再度修繕しているんだったか。リョウ達の新しいナイトメアである『イスカンダル』もベースはアレクサンダ…というかブリタニアで作られたアレクサンダというのがその正体である。本人達も使い慣れている方が良いというのとロイドさんの『E.U.のナイトメアも面白い』という発言から製造されたものだ。

 

 ブリタニア本国に着いて早々に私はエリア11新総督となるナナリー皇女殿下に挨拶をしに行くことになった。まぁ、明日またすぐにエリア

11に出発するし仕方がない。ドアを破壊しないように優しくノックをすると可愛らしい声が聞こえてきた。

『どうぞ』

「失礼します。ナイトオブツーのマーヤ ディゼルです。」

 スザクから聞いた通り、車椅子に乗った非常に可愛らしい女の子だ。目が見えないためか目はしっかりと閉じられ、表情も…あまり笑ってはいないようだ。…心なしかV.V.くんに似ているような気がするけど…気のせいかな?

「お目にかかれて光栄です皇女殿下。明日は私が責任を持って皇女殿下をエリア11にお送りいたしますのでご安心下さい。」

 私は跪いて首を垂れる。

「…はい。ありがとうございます。あの…少し…手を貸しては頂けないでしょうか?」

「手…ですか?」

 私がナナリー皇女殿下に手を差し出すと、彼女は私の手を両手で包み込むように触ってくる。…なんだか少しくすぐったいな…

「マーヤさん、とお呼びしても?」

「え、えぇ、どうぞお好きにお呼びください。」

 私が答えると、どこか表情が和らいだ気がする。

「マーヤさんは私に何か隠し事をしていますか?」

 隠し事…?出会ったばかりの皇女殿下に何かを隠した覚えはない…。私はナイトオブツーだし、名前だってマーヤ ディゼルだ。

「…えぇ、隠し事はしていませんが…?」

「…そのようですね」

「?」

 どうやら私の答えはあまり望ましいものではなかったらしく、表情はまた暗くなってしまった。気まずい空気にふと部屋の中に折り紙があることに気がつく。

「…折り紙、されるんですか?」

「えぇ、昔日本人の方にお世話になる機会があってその時に教えて頂きました。」

 折り紙、私も陽菜達と折った事がある。懐かしい。特にゲットーに居た頃は私が紙を使うのを勿体無いと、その辺に落ちていた鉄板で折ったのだったか。

「…明日エリア11に向かう間…宜しければ一緒に折りませんか?皇女殿下」

「!はい、ぜひ!」

 良かった。ナナリー皇女殿下は喜んでくれているようだ。これも陽菜達と共に時を過ごしたおかげだろう。やはりあの日々は無駄ではなかったのだ。




V.V.くん(精神年齢的にはシャルルより上なオッサン)の女装…需要はどこにあるんでしょうね。"原作"ルルーシュが似合う事とV.V.の表面だけは美形なので似合うとは思います。
学園に来てますが普通にC.C.とかちあってたらC.C.終わってましたね。

本来はエリア11に送られるのはアーニャとジノですが、マチョストR2ではルッキーことルキアーノ ブラッドリーに変更されます。なんで???

マーヤはナナリーに関する記憶を消されているのですが、当然ナナリーにはギアスがかけられないのでお互いの認識にズレがあります。恐らくスザクが何かしらの嘘で誤魔化しているのでしょう。
「マーヤは陽菜達のいた施設がブラックリベリオンで破壊されたことで精神を少し病んでしまい、ナナリーの事を忘れてしまっているし、ゼロとルルーシュの筋肉の共通点からルルーシュを話題に出すのはやめてほしい」
みたいな。無理がありますね???

マーヤが護衛につく為、アプソン将軍は居ません。残念でしたぁ!


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TURN06′

「できました、鶴です」

「おぉ…ナナリー皇女殿下…お早いですね…私なんてまだ半分もできてないのに」

 約束通りナナリー皇女殿下とついでにアヤノも交えて折り紙を折りつつ私たちはエリア11に向かっていた。因みにアヤノは初挑戦なのもあって苦戦しているようだ。

「えぇ…こっからどうやんの…?」

「貸していただけますか?…えーっとですね…」

 アヤノから受け取ったそれを手で確認して次の指示を出しているところを見ていると、目が見えないのが嘘のように思える。

「出来た…!でも、ナナリー…皇女殿下ってエリア11に行ったら総督やるんでしょ?…目が見えないのに大変じゃない?」

 アヤノがようやく1羽目の鶴を折り終える頃、そんな疑問をアヤノが投げかけた。

「そうですね…簡単なことではないと思いますが、スザクさんのように補佐してくださる方もいるので平気です。…マーヤさんもアヤノさんも…その、私に力を貸してはいただけませんか?」

 そんなことをお願いされる私達だったが、私とアヤノは少しだけ見つめあってから私が先に口を開く。

「私たちがナナリー皇女殿下をお助けするのは当然です。ご安心ください。」

 しかし、ナナリー皇女殿下の求めている答えはそうではないのか、表情は余り嬉しそうではなかった。

「そうですよね…皆さんはブリタニアの兵隊さんですものね…」

 すると、突如私の元に通信が入った。

『ディゼル卿!黒の騎士団です!』

「アヤノはすぐにナイトメアに騎乗し黒の騎士団の迎撃に迎え!リョウとユキヤも直ぐに出す!」

「分かっ…あー…イエス、あの、なんだっけ?」

「今はいいから早く行って!」

 それから私はナナリー皇女殿下を車椅子ごと運び、船の中で安全な中枢部に連れて行く。艦長に繋いで状況を確認しないと…

「敵の状況は?」

『はい、陸戦ナイトメアを輸送機で運んでいる様子で…なっ、申し訳ありません、取りつかれました…!』

「旗艦に取り付いたナイトメアはワイヴァンナイツのイスカンダルで対応する!航空機部隊は敵の輸送機を囲んで破壊しろ!」

『イエスマイロード!』

 やり取りをしつつ移動を続け、目的地である艦内庭園にたどり着く。周りに物があったりする場所は危険だ。ここは周りの物体も花などだから安心だろう。さらにここまで中枢であれば簡単には入ってこれない。

「申し訳ありません総督、私はこれから黒の騎士団を迎え撃たねばなりませんので」

「…はい。お気を付けて」

「今度は鶴以外も教えて頂くとします。」

「まぁ…!では、何が良いか考えておきますね。…ご武運を」

 そして私は格納庫に向かい、ナイトメアに搭乗する。

「ワイヴァンナイツ、状況を報告しろ!」

『こちらユキヤ、敵のナイトメアと甲板にて交戦中。…まずいね。味方の航空機部隊は全滅しちゃったよ。』

 何…!?どうやら私の指揮が悪かったようだ。まずいわね…。

『おいマーヤ!なんだよこの赤いナイトメア!滅茶苦茶強いぞ!?』

 リョウはカレンと戦っているのか、いけない…!

「リョウ!右腕に気をつけて、奴の腕はリーチが伸びるの。それに掴まれたらその部位は即刻切り離して、じゃなきゃ死ぬわ!」

『なんだそりゃ!?無茶苦茶だなオイ!』

 あとはアヤノか…

『こちらアヤノ!くそっ…こいつらなんなの!?私なんかより剣の扱いが…!』

 確か黒の騎士団にはスザクの武術の師匠も居るのだったか、厄介な…!

「三人とも、すぐに向かうわ!もう少しだけ踏ん張ってて!」

 私専用のナイトメア…E.U.にて回収したヴェルキンゲトリクスを改修し、問題であったフロートシステムとの干渉を克服…そして四脚への変形機構を廃した金色のナイトメア。直接受け取ることはできなかったけど、同じナイトオブツーとしてマンフレディ卿から受け継いだこの機体で…!

 

「マーヤ ディゼル…『サグラモール』出撃する!」

 

 まずはカレンと戦っているリョウを別のところに向かわせよう。

「リョウ!あとは私が相手をするわ!アヤノのカバーに入って!」

『分かったぜ』

 さて…赤色のナイトメア…その近くには他のナイトメアも居るようだが、よくリョウは耐えてくれた。後は私が対処するとしよう。

「カレン、エリア11での借りは変えさせてもらうわ!この…サグラモールでね!」

『へぇ…流石はマーヤ、趣味の悪い色の機体ねッ!!』

 いきなり右手の攻撃か、だが無駄な事!一旦距離を取って躱し、すぐさま詰め直して右手に展開したスパイク型MVS付きガントレットでブン殴る。

『そんな攻撃なんかッ!!』

 左手を盾代わりに受けたようだが、このまま殴り抜けさせてもらう…!

「無駄ァ!!」

『ぐぅっ…!?』

 盾代わりにされた左腕はひしゃげて使い物にならないからか、すぐさま切り離して距離を取られた。

「流石はカレンね…闘い慣れてる…!」

『貰った!』

 敵のナイトメアによる背後からの斬撃を膝側に展開しているニードルブレイザー付きガントレットからブレイズルミナスを発生させてで防ぎ、すぐさま反撃に蹴りをブチ込む。良い感じに吹っ飛んだところに先程カレンがパージした左腕を投擲し、おまけに飛び蹴りを叩き込む。

 このサグラモールは私用に調整されていると言うこともあり、ボールスよりもアレクサンダよりも私の身体に馴染むように動いてくれる。私が蹴っ飛ばしたナイトメアは甲板から放り出されているがどうやらパイロット脱出したようだ。

『おいマーヤ!アヤノがやられた!脱出はしたが俺とユキヤも四人に囲まれてヤベェ!』

 カレンの相手をするよりもまずはリョウ達の援護が先決か…!

 

 直様向かうと、丁度リョウが脱出するところに出くわす。

『藤堂中佐、ここは私と朝比奈で抑えます。』

『いや、コイツは全員でかかるべきだ。』

 ふむ、4対2か…問題ない。3機からの同時攻撃をフロートシステムで跳び上がり回避し、ユキヤとユキヤに対峙するナイトメアの間に割り込む。敵の機銃による射撃を膝のニードルブレイザーによるブレイズルミナスで防ぐ。

「ユキヤ!狙撃を!」

『了解』

 私が移動すると同時にユキヤによる狙撃が放たれる。敵はこちらの動きに気を取られて躱しきれなかったようで体勢が崩れた。

「そこだッ!」

 スパイク型MVS付きガントレットを展開して腹部をブン殴る。そして前方から別のナイトメアによる縦振りは、殴った方とは別の腕のニードルブレイザーからブレイズルミナスを展開する事で防いだ。

『マーヤ!後ろだよ!』

 背後からの奇襲、だがそんな物この私と『サグラモール』の前には無意味!ヴェルキンゲトリクスに四脚モードがあったように、このサグラモールには四腕モードがあるのだ!

 腹筋と胸筋で操作する事で緻密な動きを可能にした副腕のニードルブレイザーで奇襲攻撃を防御する。

『何!?』

『これを防ぐのか…!』

 その瞬間、私の目の前のナイトメアがルミナスコーンの槍で貫かれた。

『この時代の戦場に出るには…些か遅過ぎたか。藤堂中佐…ご武運を…!』

『仙波ァ!』

 ルミナスコーンを引き抜き、距離取ると同時に黒の騎士団のナイトメアは爆散した。

『クク…戦場の華とは一瞬で咲き乱れ、直ぐ消えゆくからこそ美しい…!』

 どうやらトウキョウ租界から援軍が来てくれたようだ。

「ありがとうルッキー」

『…ふん、勘違いするな筋肉女…。貴様を助けに来た訳ではない。』

「素直じゃないんだから」

『黙っていろ。味方でなければ貴様を散らしているところだ。』

 ルッキーに軽口を叩いているとカレンのナイトメアが再び襲ってきた。

『よくもッ!』

 その恐ろしい右腕も当たらなければどうと言うことはない。副腕でカレンのナイトメアの右腕を白刃取りの様に受け止め、空いた拳で顔面をブン殴る。カレンのナイトメアも吹っ飛んでいき甲板から落下して行った。

『紅月!?…貴様ッ!』

 続けて襲ってきたナイトメアはやられた他の仲間から託されたのか二刀流になっていた。二刀流相手など四腕があれば余裕だと思いたいが、実はそうも言っていられない。まだサグラモールの四腕形態はエリア11で最終調整を行う予定だった。しかもエナジーの観点からこれ以上無駄に使うのは不味い。ルッキーが来たと言うことはもうしばらくすればスザクも到着するはず…ならばここは勝負を決める事にこだわる必要は無い。

『受けてみよ!藤堂流剣術…"回転刀舞六連"ッ!』

 ナイトメアが刀を逆手に持ったかと思うと、ランドスピナーを活用しての高速回転…6度の斬撃が私を襲った。

「だが無意味よ。」

 全ての斬撃をスパイク型MVSで弾いて防ぎきる。

『馬鹿な…!?』

 なかなか悪くない技だけど、私の前で披露するには遅すぎる…。

「私に果敢に挑むなら…このなんともし難い実力の差を埋めてからにすることね!」

 お返しにスパイク型MVS付きの両拳で12度の殴打を見舞い、トドメに蹴りをブチ込むと敵のナイトメアは吹っ飛んでいく。他の機体はルッキーがなんとかしてくれたのだろう。だが、制御を失った護衛艦が旗艦であるこちらを掠め…運が悪いことにフロートユニットをやられたようだ。

『ディゼル卿!このままでは!』

 いけない…ナナリー皇女殿下を中枢に向かわせたのは逆効果だったか…。

「ルッキー、私は今から壁をブチ抜いてナナリー皇女殿下を保護するわ。それまで外で警戒を…」

『…!避けろ筋肉女!!』

 言われた瞬間、私とルッキーがその場を飛び退くと、見慣れた赤黒い光が真下から放たれる。

「何!?」

『飛べるからって…調子に乗るなァ!!』

 赤いナイトメア…カレンが空に戻ってきた!?

『…早く行け筋肉女ここはこの私が…』

「いえ、私の想像が正しければ2人掛かりで無ければ負けるわ…!」

 まさか遠距離攻撃を獲得してくるとは…!それに先程の攻撃、おそらく喰らえばあの右手に掴まれたときと同様の結果になるはずだ。

『次は当てる!喰らいなァ!!』

『馬鹿め、その程度の攻撃私が避けられないとでも…』

 いや、私は避けられない…中にはまだナナリー皇女殿下が居るのだ…!放たれる赤い光を私は両腕のニードルブレイザーからブレイズルミナスを展開して受け止める。

「くっ…!?この威力…!」

『貰ったァ!』

 ミサイル攻撃…!だがこのサグラモールなら!副腕を展開して副腕のニードルブレイザーからブレイズルミナスを展開し、ミサイルを受け止める。

「無駄よ!このサグラモールなら!」

『でも…足は止まったね!』

 …!続けての赤い光は直線的ではなく広域に撒き散らすような物だった。

「ワイドレンジ…!?くっ…機体ダメージが…!」

 エナジー切れも相まって動かない…!?いけない…落下する…!

『チィ…どいつもこいつも世話が焼ける…!』

 落下する私を受け止めてくれたのはルッキーのパーシヴァルだった。

『新総督の救出は枢木卿がやっている。その機体ではこれ以上戦うのは無謀だ。退くぞ。』

 スザクが行っているなら…信じて任せるべきか。

 

 太平洋で一悶着あったものの、ナナリー皇女殿下自体には怪我はなく、ワイヴァンナイツも負傷者ゼロでエリア11別に戻ることができた。そしてナナリー皇女殿下…いや、ナナリー総督による新総督着任の挨拶となる。今頃生徒会では修学旅行の準備中だろう。どうせミレイ会長が何か企んでいるに違いない。

「皆さん、初めまして。私はブリタニア皇位継承権代87位、ナナリー ヴィ ブリタニアです。先日亡くなられたカラレス公爵に代わり、この度エリア11の総督に任じられました。私は見る事も歩く事もできません。ですから皆さんの…」

 カラレス総督…あの人も筋肉がなかったが、ナナリー総督はもっと筋肉がない。私とスザクで守らねば…。

「…どうか、よろしくお願いします。尚早ではありますが、皆さんに協力していただきたい事があります。」

 …あれ?事前の原稿にはそんなこと書かれてないような?スザクの反応を見てみてもやはり予定にないことを話そうとしているようだ。

「私は、行政特区日本を再建したいと思っています。特区日本ではブリタニア人とナンバーズが平等に扱われ、イレブンは日本人という名を取り戻すことになります。かつて、行政特区日本では悲しい行き違いがありましたが、目指すところは間違っていないと思います。等しく、優しく、逞しい世界に。黒の騎士団の皆さんもどうかこの特区日本に参加してください。」

 行政特区…かつてユフィが目指し、ゼロによって妨害されたあの取り組みを…?

「互いに過ちを認めれば、きっと人々は分かりあえる。ゼロ、あなたに罪があることは承知しています。ですが…きっと人は許し合えると思うのです。」

 許す…。私がゼロを…?私は私がハーフでないと知ってからも何度か陽菜達との生活を思い出すことがある。実際にはただのブリタニア人であった私もあの時だけは日本人だと思えていた。だが、そんな陽菜達をゼロは殺したのだ。

 

 だから、そんな日は来ない…きっと。

 




●オリジナルナイトメア紹介
『サグラモール』
・ヴェルキンゲトリクスを改修して製造された第八世代ナイトメアフレームと形容できる金色の機体。当然とんでもなく目立つ。
・マーヤに合わせて格闘戦を重視した武装に変更されており、スパイク型MVS付きガントレットとニードルブレイザー付きガントレットの両方を搭載している。どちらのガントレットも普段は肘側に格納してあるため、高威力の肘打ちを放つことも可能。
・ヴェルキンゲトリクスの課題であったフロートユニットとの干渉を解決したものの、やはりというべきか脱出機構は存在しない。
・空が戦場になったことを受け四脚形態を廃止。代わりにコクピット下部には副腕が折り畳まれており、四腕形態を獲得している。
・副腕にはニードルブレイザーを搭載。計4つのニードルブレイザーから発生するブレイズルミナスはシュタルクハドロン相当の破壊力でなければ防ぎ切れるほどの硬度を誇る。
・因みに副腕は腹筋と胸筋でそれぞれ片腕ずつを操作する為、事実上マーヤにしか扱いきれない。
・ここまで読めばわかるが、なんとこの機体、遠距離攻撃が出来ないというどうしようもない弱点を持っている。…が、マーヤにかかればあらゆる物を投擲し即席の遠距離攻撃が可能であるため実質的に弱点は無い。
・因みに『ヴェルキンゲトリクス』元の開発名はサグラモールだったそうなのでそこから命名

マチョストでも呆気なく死んでしまう仙波大尉。
(追記:描写が雑で分かりにくかったので…というか可哀想なので死に際にセリフを追加しました。)

『イスカンダル』
・アレクサンダを解析し、ブリタニアで製造されたナイトメア。基本スペックはアレクサンダと同じだが、スラッシュハーケンを外付けしていたり、脱出機能がつけられていたりとブリタニア式に改良されている。
・フローレンスとは異なり補助足は無く、アレクサンダと同様の変形を行う。
・リョウ、ユキヤ、アヤノに支給され、各機はベースは同じだが武装が異なる。
・リョウ:斧、マシンガン
・アヤノ:刀、アサルトライフル
・ユキヤ:スナイパーライフル


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TURN07′

 結論から言うと、修学旅行には行けなかった。

「…そんなに拗ねないでよマーヤ、僕だって学園生活の思い出は残したいよ?」

「だったら…」

「でもゼロを…黒の騎士団が潜伏してるのに、総督を放って行くわけにはいかないよ。」

 そんなぁ…。こうなったらスザクに色仕掛けを…

「…そんなに睨んでもダメなものはダメだよ」

 くっ…!やはり朴念仁のスザクに色仕掛けは通用しないか…!

 

「…って事なの。ごめんねシャーリー」

 一緒に周ろうと約束したのだが、シャーリーとの約束を破ることになってしまった。

『仕事なら仕方ないよ。じゃあスザクくんにもよろしくね。お土産期待しておいて!』

 携帯を仕舞い、溜め息を吐く。修学旅行、行きたかったなぁ…

 仕方が無い、幸い私には総督補佐の仕事はないし、租界から出るなとスザクには言われているが、手持ちに仕事がある訳でも無い。それにルッキーが真面目に仕事をこなしてくれるので、私は荒事以外は手出しする必要がない。…というかルッキーがさせようとしない。なんだか扱いが酷い気もするが、政治のことはよく分からないしまぁ良いとしよう。

 

 暇しているのもなんなので政庁の外でランニングをしていると、モニモニと跳ねる金髪を見た気がする。…モニモニ?うん、つまりモニカだ。

「マーヤ!久し振りモニ!」モニ!

「…言われるほど久しぶりではない気がするんだけど…こんなところで何を跳ねてるマヤ?」マヤマヤ

 とりあえず私もモニカの真似をして跳ねてみる。…うん、案外足腰は鍛えられるのかも。

「モニ!実は旅行に来たモニ!河口湖に泳ぎに行くモニ!」モニモニ

 河口湖…そういえば私もユフィに一度誘われたことがあったがホテルジャックのせいで行かずじまいだったな。

「今日はアーニャは一緒じゃないマヤ?」マヤ?

「うん、アーニャは皇帝陛下のご命令でお仕事中モニ!」モニ~

 …子供のアーニャにすら仕事が回されてるのに暇してるモニカって一体…。

「あ、居た居た。全く、いきなり跳ねてどっか行くその癖をいい加減なんとかしな。…それとマーヤ…跳ねるのを今すぐやめな。租界を壊す気かい?」

 失礼な…地震対策の階層構造である租界を私ごときが揺らしたところで破壊できるはずがない。…それにしてもどうやら今回のモニカのお目付け役はノネットさんのようだ。

「言われてすぐ止める所は素直に褒めるよ…それに引き換えモニカは…いや、もう手遅れか。…久しぶりだねマーヤ。E.U.じゃあスパイをやってたんだって?アンタにそんな他人を騙すようなことができるとは思わなかったよ」

「む、失礼ですよノネットさん。私だってそれくらいできます」

「あっははは!ごめんごめん。しかしこんなとこで油売ってていいのかい?新総督就任で何かと立て込んでると思ってたんだけど」

 立て込んでいるのは事実だが…まぁ私は戦力外という事だ。流石に気不味く目を逸らす。

「…ルッキーとスザクがいますから」

「…あぁ、まぁ、うん…。マーヤは戦場の方が活躍できるだろうね」

 うん?それはそれで…なんか失礼なような…?

 そんな話をしていると、政庁からユキヤが走ってこちらに向かってくるのが見える。

「…いたいた、やっぱり政庁の外に居たんだね。」

 最近のユキヤはE.U.に居た頃に比べ少し筋肉がついたように感じる。今も息切れはあまりしていないようだ。

「私に何か用?」

「不審な船舶を発見したって連絡があってね、マーヤに出撃して指揮を取って欲しいってさ」

「早速荒事ってわけね。」

 私がそう呟くとユキヤは不思議そうに首を傾げた。私は二人と分かれ、ユキヤを抱えて政庁なら戻るとすぐにサグラモールを積み込んだ船に乗り込む。

 暫く船で進むと、前方にタンカー船が見える。あれが不審な船舶らしい。手元の航行ルートが記載された申請書類と海図を比較すると、確かに事前の申請と航行ルートが大きく異なっているのが分かる。とは言え私は海の事や船のことはわからない。もしかして流されて道…?にでも迷ってるのかもしれない。

「ディゼル卿、どうなさいますか?」

「まずは注意勧告をして反応を見ましょう。不審な動きがあれば出られる様に準備をしておいて。相手の反応によっては私がサグラモールで空から対応するわ。」

「イエスマイロード」

 私はマイクを手に取る。えーっと確か警告文は…

「こちらはブリタニア軍です。貴船の所属及び航路は申告と違っています。直ちに停船しなさい。これより強行臨検を行います。10分待つ…それまでに全乗組員は武装解除し甲板に並びなさい。」

 しかし、どうもこちらの指示に従う様子はない。と言うことは黒の騎士団だろう。

「時間と同時にポートマンⅡが出られる様に準備を進めて。私のサグラモールの準備はどうなっている?」

『ポートマンⅡの出撃準備は時間までに十分間に合うかと、サグラモールについてはいつでも出せます。』

 よし、ならば準備は万端だ。指定した時間まではまだあるわね…。スクワットをしつつ海図を眺めているとちょうどこのエリアには資源採掘施設がある様だ。

「…ねぇ、この施設って何の資源を採掘してるかわかりますか?」

「…あぁ、メタンハイドレートですよ。」

 メタンハイドレート…そんなものを誤って破壊してしまったら大惨事だ。

「作戦時は施設への攻撃が起こらない様に各艦及びポートマンⅡのパイロットに周知しなさい。…もし損害が出たらスザクに付けておいて」

「ブリタニア軍にそんな間抜けはいませんよディゼル卿。…どうやら時間です。」

 余計な雑談が挟まったが案の定時間になってもこちらの指示は完遂されなかった。ならば仕方がない。

「全艦攻撃開始よ!」

 私の指示で全艦から一斉に砲撃が行われ、いくつかの艦砲射撃がタンカーに直撃し、爆発する。

『ディゼル卿、目標に着弾…対象は轟沈します』

 確かにモニターの映像を見ればそれは分かるが…どうにも違和感がある。

「…あの爆発、不自然に大き過ぎない?」

「そうでしょうか」

「ソナー、ちょっと貸しなさい」

 ソナーマンから機材を奪い取り、海の中の音を聞く。爆発音と…これは…何かの駆動音?ブリタニア軍のものではない、ひとつだけ違う駆動音だ。

「敵は海中に逃れている…!予定通りポートマンⅡを残機出し、我々はこのままアスロックをタンカー周辺に集中させろ!当てずっぽうでもいい、その間にポートマンⅡで包囲網を作れ!私は敵のナイトメアを警戒してサグラモールで出る!攻撃を継続し包囲網は崩さないで」

「イエスマイロード」

 私がサグラモールに乗り込み、空に飛び上がると魚雷発射音を捕らえたと報告があった。どうやらポイントL14にいる様だ。

「攻撃を集中させつつ包囲網を狭めて!」

 …ん?黒の騎士団は何故今更魚雷を撃ったのだ?たかだか数発の魚雷でこの包囲網を突破できるはずはない。それに魚雷を撃たず隠れていればもしかしたら逃げられたかもしれないのだ。

「…敵が魚雷をどの方向に撃ったかわかるか!」

『敵の魚雷ですか?少々お待…う、うわぁ!!』

「!どうした!」

『ディゼル卿!泡が!あわわ…!』

 これは…!?海底から大量の泡が…!これでは船もポートマンも、発射した爆発物も制御を失ってしまう…!やられた…!敵は敢えてメタンハイドレート採掘施設周辺に魚雷を放ったのだ…!

「行動可能な部隊はポイントをL12に集結!被害を報告しろ!」

 私の指示と同時に私の眼があるものを捉える。ナイトメアと…あれは!

「ゼロ!」

 ゼロ…許さんッ!!私はサグラモールを加速させ、一気に距離を詰める。

「いかにゼロの筋肉が強靭でもサグラモールの拳でならッ!」

 よし、完璧に間合いに捉えた!

 

 しかし、サグラモールの拳は空を切る。更に敵に背後を取られていた。

「馬鹿な…!神速!?」

 こ、この私でさえ捉えられないスピードだなんて有り得ない…!

『ぶつな!マーヤ ディゼル!』

「ふん…!今更命乞い?」

『いいや、君が私をぶてば君命に逆らう事になるからな。』

 君命…?一体何のことだ…?

『私はナナリー総督の申し出を受けようと思ってね。そう、特区日本だよ。』

「…降伏するってことかしら。…本気?」

 ゼロは私に応えることはせず、ダブルバイセップスを決めていた。モニター越しでもその筋肉が鍛えられていることは容易にわかった。

『ゼロが命じる!黒の騎士団は全員…特区日本に参加せよ!!』

 やがて浮上してきた潜水艦にゼロは飛び降り、見事な着地を決めていた。

 …特区日本に参加するからといって貴方の罪は消えるわけじゃない…しかし、ここで私が決めていいことではないのも確かだ。行政特区はナナリー総督の発案なのだから。…こちらの被害も想像以上、カレンがまだいることを考えれば退く事が得策か…!

「…良いでしょう。」

 

 それから暫く、行政特区日本に関連して私は機材運搬で忙しく働いていた。私のナナリー総督の為に働きたいという申し出をスザクが受け入れてくれたからだろう。

 今日の分の運搬を終え政庁に帰り、暫く私の執務室…と言う名の仮設ジムで筋トレをしているとユキヤが入ってくる。

「ゼロからの連絡が入ったんだ。枢木卿がマーヤにも出て欲しいって」

「わかったわ。案内して」

 そうしてユキヤに案内された部屋のモニターの前で待機していると、どうやら私以外の出席者も入ってきた様だ。

「やぁマーヤ、遅くなってごめん」

「スザクの方が忙しいんだし仕方ないわ。」

「そうモニ』モニ!

 …なんでモニカが参加してるのだろう?

「何故ここにモニカがいるのか…という顔だな筋肉女」

「ルッキー…ノネットさんは?」

「エニアグラム卿は急遽本国に帰ったよ。お陰でモニカの世話を私にしろと…!一体私を何だと思っているんだ…!!」

 なるほど、道理でルッキーの顔がやつれているわけだ。

「モニ…そんなに怒ると将来ハゲるモニ」モニモニ

「誰のせいだ…!」

 すると、モニターにゼロが映し出された。

『これはこれは、ナイトオブラウンズが3に…んん?4人か…。まぁ良い。しかし総督のお姿が見えないが?』

 いきなりテロリストとの話し合いの場に総督を連れてくるはずがないのに…分かって言っているな?

「これは事務レベルの話よ」

 私に続けてルッキーが口を開いた。

「黒の騎士団の意見は纏まったのか?特区日本に参加すると言ったからには…」

『こちらには100万人を動員する用意がある』

 100万人…!?かなりの大人数だ、一体どうやって…

「本当なのか」

『無論だ。但し、条件がある…私を見逃して欲しい。』

 スザクの問いに対し、ゼロは見逃してほしいと言ってきた馬鹿な…!そんな事ができるがない!

『…とは言え、君達にも事情はあるだろう?ゼロを国外追放処分にするというのはどうだろうか』

 自分だけ国外追放…?つまりそれは黒の騎士団を捨てる気だろうか…?

「モニ…!自分だけ騎士団を見捨てて逃げるなんて話がバレたら組織内でリンチモニ!…まぁ、ゼロの筋肉なら返り討ちかもモニ…」モニィ…

『だから返り討ちにして無駄な血が流れないように内密に話している』

 すると、ローマイヤさんがペラペラと手元の本をめくっていた。あれは確か法律関係の本…内容は全て暗記はしたが知識としては今のところ全く身につけられていないが…何かを探している…?

「あった。エリア特法代12条第8項…こちらを適用すれば総督の権限内でも国外追放処分は執行可能です。」

 ローマイヤさんはゼロの意見に肯定的なようね、確かに組織を捨てて1人で逃げたリーダーなんてのは求心力を失うだろうし、そんな仮面の男1人が国外に逃げのびても何も出来ないだろうとは思う。…それがただの男であるのなら。だが、相手はゼロ!あのニクアツ マッスルガイさんの胴体を貫く鉄の拳を持つゼロであるならあるいは…!

「ゼロを見逃すモニ?」モニ~?

「法的解釈を述べてるだけです。」

『どうだろう?式典で発表しても良い。君たちにとっても都合が良いだろう?』

 事前に知られて暴れられたり、放棄されるよりは直前に知らされて何もできない方がマシだけど…なんだか先程からゼロの話すタイミング、内容…誘導されてるような…

「ふん、ゼロは私が咲かせてやろうと思ったのだが、つまらないな」

「でも悪くない話モニ。トップが逃げたとなればイレブンのテロリスト達は空中分解モニ!」モニ!

 モニカの言う通り少なくとも無血でエリア11のテロリスト達の勢力を大きく削ぐことは出来る…けど、ゼロを見逃すというのは危険にも感じる。それに相手はゼロ…国外追放をされたフリをして潜伏し、奇襲をかけるつもりなのかもしれない!よし、ここは問いただすしかない!

「何を企んでいるのゼロ!貴方本当に国外追放される気?どうなの?答えなさい!貴方はその筋肉に誓って本当に国外追放を受け入れるの!?」

『…。無論私は国外追放を受け入れるつもりだ。この!私のッ!筋肉に誓って!!』

 ゼロは膨張だけで服を破り裂き、ダブルバイセップスを披露してきた。マッスルガイは筋肉に嘘は吐かない…筋肉に誓って国外追放を受けると言うのであれば受けるだろう。

「スザク、ゼロは本気で国外追放を受ける気よ。」

「おい筋肉女、あんな戯言を本気にする気か?」

「私たちみたいなマッスルヒューマンはね、筋肉にだけは嘘を吐かない。筋肉に嘘を吐くということは己の存在そのものの否定と同義だからよ」

「そんな大袈裟な…」

「それに、筋肉に嘘を吐くようなゼロは民衆からの支持を失うもの。仮に国内に残っても民衆の支持のないテロ組織なんてブリタニア軍の敵じゃない、そうでしょう?」

 こうして、私たちの話し合いの結果、ゼロの国外追放が決定した。




スザクに色仕掛けは通用しません()

ミートギアスにおける愉快なラウンズ達の常識度早見表

↑高い
 ノネット(常識があり人間性も非常にまとも)
 ルキアーノ(人格破綻者と言われるほどだったが苦労の果てに矯正。常識人になった)
 ドロテア(但し筋肉に関係ない時に限る)
 ビスマルク(若干脳筋のきらいはある。更に皇帝の命令には忠実)
 スザク(基本的には常識人に該当)
 ジノ(但しお坊ちゃん気質で甘いところがある)
 アーニャ(言うて年相応。モニカと絡む場合は非常に非常識)
 マーヤ(基本的に脳筋)
 モニカ(常にモニモニと跳ねている)
↓低い

そういえばノネットさんの出番全然無かったなって思って出しました。


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TURN08′

 ゼロとの事務レベルの話から数日、ナナリー総督へはスザクから話が上げられている。そして行政特区日本の建設予定地であるシズオカゲットーは百万の人で溢れていた。表向きは多いからという理由だけれど、真の狙いはわざと隙を見せて尻尾を出すのを窺っているためノーチェックで集めているらしい。

 緊張しているのか、スザクの顔はかなり険しくなっている。今回の私の仕事はナナリー総督の護衛、この筋肉ならば生身でも並大抵の攻撃から総督をお守りできるだろう。因みにルッキーはパーシヴァルに搭乗し待機、リョウ達ワイヴァンナイツもイスカンダルに搭乗して会場にて警戒して貰っている。

 …彼らももし本当にゼロが行政特区日本を受け入れ、全てが丸く収まったのなら行政特区に入ってもらう予定だ。幸いスザクは日本人だし、私はハーフだと思っていた時期があった分、日本という存在には寛容であるつもりなのでうまく橋渡しができればと思っている。…間違ってもE.U.のような隔離収容みたいなことにならないように気を付けなければ。だが、それも優しいナナリー総督ならばそんなことにはならないだろう。

「スザクくん、難しい顔モニ。平和はブリタニア人もそうでない人も平等に与えられるべきものだと思うモニ、行政特区日本はその一つの形だと思うモニ」モニ-

「…ありがとうございます。クルシェフスキー卿。」

 モニカはいつもモニモニ言って跳ね回ってるだけかと思えば、こうして細かい気遣いが出来たりする。ドロテアさんへの土産の時もそうだったっけ。…うん?なんでモニカまだ帰ってないの?

「ここにいましたか、クルシェフスキー卿、お願いがあるのですが」

「モニ?」モニ?

 モニカはローマイヤさんに連れて行かれた。なんだろう?お願いって…スザクも知らなそうだし総督からのお願いなのかな?

 それにしてもこの百万人、ゼロの国外追放処分を聞いたらどうなるのだろう。できれば暴れてほしくは無い。鎮圧の名目で殺してしまうのはそれこそ虐殺だ。ユフィがあんな不名誉な呼び名をつけられたように、ナナリー総督にまで不名誉な呼び名をつけられるのは…あまり良い気分ではない。

「日本人の皆さん!行政特区日本へようこそ!たくさん集まって下さって、私は今とても嬉しいです。新しい歴史のためにどうか力を貸して下さい。

「日本人の皆さん、ありがとうございます。ブリタニア人である私を受け入れて下さり、私はとても嬉しいです」

 不気味なほどにナナリー総督の言葉を日本人達は静かに聞いている。ゼロは未だに姿を見せていないけれど、国外追放処分の話をすれば安全を確信して出てくるだろう。奴がそう言う人物であると私は知っている。

「それでは式典に入る前に私達がゼロと交わした確認事項を伝えます。帝国臣民として、特区日本に参加するものは特赦として罪一等を減じ、三等以下の犯罪者は執行猶予扱いとなります。また、自由に筋トレも許されます。ブリタニアからの支援物資として高タンパク低カロリーの食事の提供を約束します。しかしながら、カラレス前総督殺害をはじめとする様々な犯罪は指導者であるゼロの責任は許し難い。よって、エリア特法12条代8項を適用し、ゼロだけは国外追放処分とする。」

 意外な事にローマイヤさんからのこの発表にも日本人は無反応だった。流石に静かすぎる…。そしてどうやったのか、突然モニターが切り替わり、ゼロが映し出された。

『ありがとう!ブリタニアの諸君。寛大なるご処置、いたみいる。』

「ゼロ!来てくれたのですね!」

 一先ず暴動が起きていないことに安心しつつ、私は念のためナナリー総督を庇うように立つ。狙撃とかされてナナリー総督を傷つけるわけにはいかないからだ。

「姿を現せゼロ!自分が拳でぶっ飛ばしつつ君を国外に追放してやる!」

 スザクがそう叫ぶと、画面の中のゼロは静かに笑った。

『人の力は借りない。私ほどになれば海の上を走ってどこにでも追放されることが可能だ。』

 …。それは追放とは言わない気がするけど…?

『それよりも枢木 スザク。君に聞きたいことがある、日本人とはなんだ?』

「いきなりなんの話だ!」

『日本語か?日本という土地か?血の、繋がりか?』

 …日本人とは、か。考えたこともなかったけれど…。

 言葉…?違う、現に私はスザクと日本語やブリタニア語でお互いにコミュニケーションが取れる。別に日本語が話せるから日本人…ということはないはずだ。

 土地…?これも違う、リョウやユキヤ、アヤノ達はE.U.にいたけれど、日本人のままだった。逆もまた然り。別に日本に居るから日本人…ということもないはずだ。

 血の繋がり…?これも違う、直接血の繋がりが無くても例えば養子とかで日本人がブリタニア人になったり、その逆があったという話があったとスザクから聞いた事がある。それに、血が繋がってないから家族じゃないなんて寂しすぎる。共に心を通わせ生きていれば本物の家族になれる筈だ。

 

 つまり、心よ。日本人という心があれば人は日本人になれる。現に私がかつてハーフだと思っていたように、どこに居ても、どんな言葉を話しても、血が繋がっていなくても、日本人という誇りを持ち、何事にも屈しない鍛える心があればそれはきっと日本人のはずだ。

「…それは、心だ!」

 きっとスザクも同じ結論に至ったのだろう。私と同じく心だと説いていた。

『私もそう思う。筋肉、自覚、筋肉、規範、矜持、筋肉つまり、文化の根底たる心と身体の根底たる筋肉があれば、それは日本人なのだ!!』

「それと、お前だけが逃げることになんの関係が…?」

 確かに、今なぜそんな問答を…?もしかして何か仕掛けるつもり!?

 振り向くと突然服を脱ぎ出した屈強な男達が一斉に身体を擦り始め、汗と熱気から水蒸気を形成し、白いモヤとなって視界が遮られてしまった。これでは何をされるか反応が遅れかけない!

「マーヤ!ナナリー総督を安全なところへ!」

「分かったわ!」

 スザクに会場を任せ、私はナナリー総督を連れて野外ステージを後にする。

『全軍鎮圧準備!但し、向こうが手を出すまで絶対に手を出すな!』

『枢木卿、ここは先手を打つべきでは?』

『ブラッドリー卿、ここは自分の指示に従って下さい!』

『ふん…』

 何やら通信でルッキーが仕掛けようとしていたようだが、スザクがためてくれたようだ。

「あの、マーヤさん…日本人の皆さんは大丈夫でしょうか…」

 不安そうに振り返るナナリー総督に私はなるべく優しい声音を心掛けて答える。

「大丈夫です。会場にはスザクが居ますから」

「…そうですよね」

 暫く移動を続けていると続けて通信が入った。

『申し上げます!行政特区日本会場内に無数のゼロが現れましたァ!』

『なにぃ!?』

 無数の…ゼロ?通信では何が起こっているかよく分からないけど…

『全てのゼロよ!ナナリー総督からのご命令だ!彼女の手を煩わせないよう速やかに国外追放処分を受け入れよ!!』

 …そうか!ゼロは確かに筋肉に嘘を吐かず国外追放を受け入れている!だが、ゼロとは正体不明の仮面の人物…故に、会場内の人物を全てゼロと言い張らせれば…その無数のゼロもゼロであり、ゼロであるならばと国外追放されようとしているのだ!やられた…!

『どこであろうと…我々は心と筋肉さえあれば日本人なのだ!さぁ!新天地を目指せ!』

 ここからでは手出しができないけど、スザクはどうするのだろう?仮面を外させる?いや、筋肉量である程度は間引けても正体を知らない以上手間が掛かるだろう。そしてここでゼロを百万人ごと許せばエリア11は…ナナリー総督の手を汚さずに平和になる。確かにその魅力はあるかもしれない。それにここで撃って虐殺にでもなったらどうする…?

 そしてゼロは国外追放処分というのはもう公開してしまった約束事項であり、違えればエリア11はもちろん、他の国民からも信用を失ってしまうだろう。国策に賛同しない不安分子を国外追放なら出来るという点でも利点はある。…スザクはどんな選択を取るのだろうか?

『約束しろゼロ!彼らを救い鍛えてみせると!』

『無論だ。枢木 スザク、君こそ救い鍛えられるのか?エリア11に残る日本人を』

『そのために自分は軍人になった!』

『信じよう。その筋肉を…』

 

 それから暫くして誰も居なくなった行政特区日本にてある問題が起きた。

「モニカが居ない?」

「うん、マーヤなら知ってるかと思ったけど知らないか」

 私はモニカの保護者じゃないし…

「…ルッキーも知らないの?」

「モニカに最後に接触したのはローマイヤだろう、あの女には聞いたのか?」

 そういえばそうか。通信でローマイヤさんを呼び出すと、どうやらモニカを日本人の中に紛れ込ませていたようだ。…うん?モニカが日本人の中に紛れていた?

「そういえば…」

 スザクは何か心当たりがあるようだ。

「歩き去っていくゼロ達の中に『ス、スザクく…モニィ!』ってなんか半ば強制的に連れ去られたゼロがいたような…。」

「それだ…」

 なんて事だ。モニカは無数のゼロに紛れて連れて行かれてしまったらしい。

 

 現状、私たちに中華連邦に助けに行く手段などない以上、モニカの身を心配することくらいしか我々にはできない。しかし、そんな諦めかけた私たちに希望の光が舞い込んだ。

「本国からの命令です。中華連邦で行われるオデュッセウスお兄様と天子様の婚約に関する式典に護衛役として出席してほしいとのことです。スザクさん、マーヤさん、ブラッドリー卿、行ってくださいますか?」

 モニカを助ける絶好の機会…だが、一つ問題がある。

「しかし総督、我々が不在の間エリア11の守りはどうされるのですか?」

「シュナイゼルお兄様が言うにはゼロは中華連邦の攻略で忙しく、エリア11にて行動が起こせはしないと。」

 しかし何もエリア11のテロリストはゼロだけではない。寧ろゼロがいないからこそと言うこともある。

「…それではマーヤさん」

「はっ!なんでしょうか総督!」

 もしかして私に残れと言うのだろうか?それも良いだろう。スザクとルッキーの二人ならば信頼して任せられる。

「ワイヴァンナイツをお貸し頂けますか?彼らが残って下されば…」

 ふむ、確かにただのテロリスト程度ならばリョウ達だけで十分対応できるか…

「しかし総督、彼らはイレブン、しかもE.U.からの裏切り者ですよ?また彼らが裏切れば…」

 リョウ達が裏切るだなんて…侮辱にも程がある…!このクソアマブン殴ってやる…!

 私が拳を握りしめ、顔か腹かあるいは両方か、どこを殴るか悩んでいると、ナナリー総督が口を開いた。

「ミスローマイヤ、彼らは信用に足る人物です。」

「しかし…」

「総督は私です…!」

 珍しくナナリー総督が自身の立場を主張している。あまりの驚きに私は殴ろうという気が吹き飛んでしまった。

「…畏まりました」

 彼女が去った後、私はナナリー総督に感謝を述べた。

「ありがとうございます。総督、彼らへの信頼のお言葉は彼らにも伝えたいと思います。」

「いえ、彼らが忠義を尽くしてくれているのは知っていますので…。それよりも、必ずモニカさんをお助けして下さいね」

「イエスユアハイネス…必ずモニカを連れ帰って見せます!」

 

 …モニカは大丈夫だろうか、何か酷いことをされ…いや、なんか黒の騎士団にも呆れられてそうな気がしてきたわね…?

 



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TURN09′

 中華連邦に来て、オデュッセウス殿下の護衛につき、暫くするとシュナイゼル殿下がやってきた。スザクとルッキーと私の三人で跪き、挨拶を行う。

「シュナイゼル殿下、我々3名は中華連邦ではシュナイゼル殿下の指揮に入れとのことです。何なりと命じて下さい。」

「ナイトオブラウンズが3人も…これは心強い。ナナリーには感謝しないとね…あぁ、ただ…ここは祝いの場だからね、もっと楽にしてくれないと」

 そう言われて私達は立ち上がる。すると、シュナイゼル殿下は私の近くにやってきて耳元で囁いてきた。

「もうすぐゼロが来る。クルシェフスキー卿の救出の段取りは私に任せておいてほしい」

 何故ゼロが来ると言い切れるのだろう…?いや、シュナイゼル殿下は私よりも圧倒的に頭の切れる方だ。私の知らない情報なども仕入れているのだろう。なんにせよゼロが来るならば私やスザクが守らなければならないだろう。

 シュナイゼル殿下は少し微笑むと私から離れて進んでいく。しかし、次のアナウンスを機に場に緊張が走る事になる。

『スメラギコンツェルン代表、皇 神楽耶様ご到着!』

 祝賀会に現れたのは幼い女の子…あれが神楽耶という女性なのだろう…とカレン、そしてゼロだった。私はすぐにシュナイゼル殿下を見るが、殿下は余裕そうな表情をしたままだ。

 ゼロ達は即座に槍を持った貧弱な中華連邦の兵士達に囲まれるが、ゼロは槍の先端を握り潰していた。あんなものがゼロの筋肉に通じるはずがない…!

「やめませんか?諍いは…本日は祝いの席です。それから皇さん、明日の婚姻の儀にはゼロの同伴は控えていただけますか?」

「それは仕方ありませんわーーー!!!」

 うるさっ…

「ははは、賑やかな女性だね」

 シュナイゼル殿下の言葉と槍が効かないという点から兵士達は引き上げていく。貧弱な兵士では意味がなくとも私の筋肉ならばと思い、シュナイゼル殿下の前に立つと、ゼロがノーモーションからの正拳突きを放って来た。

「こんなもの!」

 私の腹にぶち込まれたそれはノーモーションで放たれたことで威力が減衰していたため、腹筋ガードのみで防ぐことができた。

「殿下はやらせない!」

「流石にガードが硬いか」

 すると、ゼロの背後からひょっこりと神楽耶と呼ばれていた女の子が顔を出した。…なんだか陽菜達を思い出してしまう。

「スザクさん、お久しぶりですわーーー!!!」

 前言撤回。うるさい。

「相変わらず煩いな、従姉妹の君は」

 スザクの発言からするとどうやら知り合いのようだ。

 すると、ゼロは今度は大きく半身を引き、拳を握りしめていた。攻撃のモーションだ…私を相手にするにしてもそのモーションは分かりやすくデカすぎる。無駄な動きも多いし、かと言ってモーションの割にその筋肉にはほとんど力が入っていない…つまり見せかけだ。

「どうです?一度手合わせでも」

「ほう?面白いね。」

 シュナイゼル殿下はその場で脚を肩幅ほどに開き、右手を下に、左手を上に構えていた。どうやら誘うためにわざとやっていたようだ。

「私が勝ったら神楽耶様へのプレゼントに枢木卿を頂きたい。」

「では私が勝ったらそちらが捕虜としているクルシェフスキー卿をお返し頂こう。これは…面白い余興になりそうだね。」

 流石はシュナイゼル殿下、早速モニカ救出の段取りをしてしまうとは。シュナイゼル殿下のあの構えは天地知闘の構えだ。いくらゼロとは言え打ち破れるはずがない。それにシュナイゼル殿下には秘策があるようだ。先程囁いてきた時に、この場には似つかわしくない匂いを感じたのだ。

 ゼロをこの手で打ち負かさないのは残念だが、シュナイゼル殿下がゼロをボコボ…

 

「あ、あの!せめて別室でやって下さい、料理に埃がかかります…」

「「あ、はい、すみません」」

 

 …。

 

 天子様の一言で私達は別室に移動した。ゼロとシュナイゼル殿下は部屋の中心で対峙し、殿下は再び足を肩幅に開き、右手を下に構え、左手を上に掲げていた。無闇に動かず体力を温存して俺の攻撃を待ち構え、相手の全ての攻撃を知覚し、的確に防御と反撃を行う最強の構えだ。

 因みにルッキーはオデュッセウス殿下の側で警戒を続けてもらっている。

 ゼロが拳を放った瞬間、その拳は上に弾かれ、同時に手刀を喰らっていた。

「「「「おぉぉぉ…」」」」

 流石はシュナイゼル殿下の天地知闘の構え…!あのゼロの攻撃すら通じないとは!しかし、今のやり取りで分かってしまったことがある。それはシュナイゼル殿下はゼロに負けないが…同時に勝てもしないと。

「マーヤ、どうしたんだい?ゼロは随分苦戦していると思うんだけど」

「えぇ、確かにゼロはシュナイゼル殿下に有効打を与えられていないわ。でも、それは殿下も同じなの。殿下は全ての攻撃を知覚し、的確に反応して防御してそのまま反撃までできる凄い方だけど、殿下の筋肉量ではあの程度のモーションから放つ攻撃ではゼロの筋肉装甲に有効打は与えられないの。」

「それって…」

 そう、決着がつかない…!ゼロはどうやら攻め方を変えるようで、構えを取り直していた。

「行くぞッ!」

「いつでもどうぞ」

 余裕そうにシュナイゼル殿下がゼロの連続殴打に対し、全てを弾き更にすべてに手刀で返しているが、勝負が長引けば不利になるのは実は殿下の方。何故ならあのゼロは私の完全脊髄反射行動を見て知っただけで体得する戦闘の天才…きっと殿下の技の秘密に気がついているはずだ。

「ふむ、君の攻撃は私には効かないし、私の攻撃も君には効いていないね、このままでは決着がつかないが…」

 そう殿下が発した瞬間、ゼロは少し距離をとり、クラウチングスタートの構えを取っていた。

 

 ゼロの全質量を乗せた膝蹴り、あのトラックに衝突されるのと同等の破壊力を誇るあれだけは絶対に弾けない…!そして両脚と両手のバネで加速するため、あの神速の一撃にはシュナイゼル殿下でさえ反応すらできないはずだ。だが、それこそがシュナイゼル殿下の狙い。全ては殿下の掌の上なのだ。ゼロの膝はガツンと何かに当たったように止まり、シュナイゼル殿下は吹き飛びはしたものの、何事もなかったかのように立ち上がり、服の埃を手で払っている。

「やはり腹を狙ってきたね?」

 シュナイゼル殿下は服を捲ると腹にナイトメアフレームの装甲を仕込んでいることを明かした。異臭の原因はアレだ。

「君程の男だ。この婚姻に介入しようと現れることは読んでいたよ。そして私では回避不能の一撃を放ってくると…しかし当たっても通じなければ意味がないよね。」

 流石シュナイゼル殿下…!まさかここまで読んでいるなんて!

 

 その時、突如現れた女性がゼロの腰に何かを当てたのか、パキンと何かが折れて地面に落ちる音がした。

「ゼロ!ユーフェミア様を可笑しくした犯人!!どうしてここにいるのよ!!」

 あの女の人…誰だろう?

「邪魔をする…」

 ゼロが蹴りを放った瞬間、スザクが二人の間に入り両腕をクロスすることでなんとか防御をしていた。そしてよく見れば女の人の近くにはミレイ会長がいる。…さっきまでこの場にいなかったの二人が一緒にて、あの髪色と髪質…そして私やゼロの胸筋より慎ましい胸、まさかニーナか…?

「よすんだニーナ!この男にそんなナイフは通用しない!」

 ニーナと思われる女はスザクによって羽交締めにされていた。

「どうして…!私のユーフェミア様を奪ったのに…!」

 そしてニーナは泣き崩れていた。ニーナとユフィ…何か関係あったっけ?

「ゼロ、勝負はお開きにしよう。それと、くれぐれも明日は出席を辞退してくれたまえ、今度は手刀では済まさないよ。」

 

 昨日のシュナイゼル殿下の言葉が効いたのか、神楽耶さんはカレンだけを連れて現れた。更に、昨日の手合わせはゼロの負けという事なのか、捕虜にされて居たモニカも連れて居た。

「シュナイゼル殿下、ご迷惑をお掛けしたモニ」モニィ

「いやいや、君が無事で居てくれて本当に良かったよモニカ。それにしても…ゼロ、君と言う男がどういう人物かわかった気がするよ。」

 そしていよいよ婚姻が交わされようとした時、乱入者が現れた。

「我は問う!天の声、地の叫び!人の心!そして筋肉!何をもってこの婚姻を中華連邦意志とするか!全ての人民を代表し私はこの婚姻に異議を唱える!」

 剣を持った男は高らかに叫んでいる。…あ、確か総領事館にもいたはずな人だ。

「血迷うたか!星刻!」

「黙れ趙 皓!全ての人民を代表し、私はこの婚姻に異議を唱える!!」

 取り押さえろと誰かが叫ぶが、彼の剣の前にバッタバッタとなぎ倒されていく。筋肉の量はあまりないが、中々洗練された動きね…!

「クルシェフスキー卿、私達でシュナイゼル殿下をお守りするぞ。枢木卿と筋肉女はオデュッセウス殿下を」

「分かったわ」

 ルッキーの指示で私達は動く。

「オデュッセウス殿下、ご無事ですか?」

「心配はいらないよ。頑丈さには自信があるんだ」

 確かにオデュッセウス殿下はがたいだけで言えば私にも劣らないだろう。それにしてもなんだかとても殴りたくなる顔だ…何故だろう?

 シュナイゼル殿下はルッキーが付いているし大丈夫だろう。…あれ?シュナイゼル殿下がモニカに何か言ってる。そしてモニカは跳ねながらどこかに行ってしまった。

「星刻ぅ!星刻ぅ!」

 天子様はどうやら剣の彼に助けを求めているらしい。中華連邦は天子様が納得していると言っていたけど、どうやらやっぱり嘘だったみたいね…。

「我が心に迷いなし!我が筋肉に疲れなし!」

「星刻ぅ!」

 天子様は彼を迎えるように手を広げていたが、不意にブリタニア国旗が落ちてきた。…そして旗の中からは仮面とマントのあの男。マッスルガイのゼロが天子様を抱き抱えた状態で佇んでいた!

「感謝する星刻。君のおかげで私も動きやすくなった。」

「ゼロ…それはどういう意味だ!?」

 星刻と呼ばれた彼が問いただすと、ゼロは天子様のこめかみに指をデコピン状にして近づけた。ゼロの筋肉量ならばデコピンでも天子様の脳を破壊することが可能…なんて卑劣な男なの…!?

「君たちにはエリア11での貸しがあったはずだが…?」

「だからこの婚礼を壊してやる。君たちが望んだとおり…但し、花嫁はこの私がもらい受ける。」

 デコピンの指をちょんちょんとこめかみに当て、抵抗しないように脅しをかけていた。いかに私でもデコピンよりも早く動き彼女を救うことなど出来ない…私はなんて無力なんだろう…!

「星刻ぅ!」

「天子様!…ゼロ、この外道が!」

 星刻と呼ばれている男を始め、この場の誰もが卑劣なゼロを睨んでいるとき、シュナイゼル殿下だけは冷静にゼロを見つめていた。流石はシュナイゼル殿下ね…!この状況ももしかしたらシュナイゼル殿下は予知していたのかもしれない。

「くっ…!ゼロ!天子様を返す気は無いのか!」

「星刻、君なら天子を自由の身に出来るとでも?違うな…」

 すると、ゼロの背後の壁が崩れ、黒の騎士団のものと思われる新型のナイトメアが現れた。

「卜部!シュナイゼルを!」

『うむ、分かった』

 しかし、黒の騎士団のナイトメアの攻撃をフローレンスのスラッシュハーケンが止めていた。そうか、さっきのシュナイゼル殿下はこれを予期して…!

『呼ばれて飛び出てモニニニーン!!」モニニン

『そのふざけた語尾…モニカ殿か!』

『そっちは卜部さんモニ!?」モニ?

 …どうやら二人は知り合いのようだ。えっ…もしかして向こうに囚われてる間に…!?なんだろう…ロマンスの予感…!

 




【11/07/22:27追記】一部不要な文章が残っていたので削除しました。


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TURN10′

 モニカが敵のナイトメアを抑えてくれている為、相手がゼロとは言えこちらは十分殿下達を護衛可能だ。するとシュナイゼル殿下が出口に手を向け、オデュッセウス殿下に進むことを促している。

「兄上、行きましょう」

「どこへ行こうと言うんだい?シュナイゼル…」

「逃げるんですよ。考えればわかるでしょう兄上」

 流石のゼロとて天子様を抱えたまま私やスザクと肉弾戦を行うのは無謀と考えたようで手出しはしてこなかった。会場を離れる際、ふと後ろを振り返ると両脇に天子様と神楽耶さんを抱え、カレンを肩車しているゼロが見えた。あの状態で人並外れた跳躍ができるのだから驚きだ。

 

 屋外に出ると空中でモニカと黒の騎士団のナイトメアが戦っているのが見える。

『行かせないモニ!』モニッ!

 モニカのフローレンスのブレードと敵のナイトメアの刀がぶつかり火花を散らしている。モニカはいつもモニモニと跳ねている変人だが、その変人度合いがあってなおラウンズになるくらいにはパイロットとして実力がある。そのラウンズ相手にも押し負けないとは敵も中々やるようだ。

 モニカは敵と更に数度の斬撃を交えた後、フロレンスの蹴りで距離を取っていた。勝負を決めようとアレを使う気ね…!

『これで決めるモニ!ハドロンブラスター発射モニ-!!」モニニーン!

 しかし、必殺のハドロンブラスターは敵のナイトメアが発生させたバリアのようなもので受け流されていた。

『輻射障壁展開!』

『ハドロンブラスターを受け流したモニ!?』モニ⁉︎

『貰ったッ!』

 いけない…!距離が詰まっている!

『しまったモニ!』モニーン!?

 咄嗟の回避が間に合ったようで、敵の一太刀は本体には直撃しなかったものの、フロートシステムには刃が届き、破損してしまったようだ。

 これで我々は黒の騎士団を取り逃がしてしまうだろう。しかし、シュナイゼル殿下の微笑みの表情からは余裕が見て取れる。

「問題ないよ。私には黒の騎士団の動きが分かっているからね。ただ、これ以上の介入は中華連邦からの要請が必要だ。それまで我々は次の戦いの為に備えようじゃないか。」

 フロレンスを修理しつつ、私達はアヴァロンにて次の指示を待つことになった。やがてシュナイゼル殿下によってラウンズの私達が呼ばれると、畏れ多いことにシュナイゼル殿下直々に説明があるようだ。

「先程ゼロ達はこの渓谷にて中華連邦軍を待ち伏せし、追手を撃破したようだ。その後は蓬莱島に戻りインド軍区との合流を目指しているようだね。」

「…中華連邦も一枚岩ではないということですか。では我々は黒の騎士団とインド軍区を相手にする訳ですね?」

 スザクの問いかけにシュナイゼル殿下が答える前に、カノンさんが焦ったように室内にやってきた。そしてシュナイゼル殿下に耳打ちをするとシュナイゼル殿下が一瞬だけ驚きの表情を見せる。

「…どうやら私でも予測できないことがあったようだ。中華連邦にゼロの作戦を読んだものがいたようだね。彼らは今この地点で闘いとなっているようだ。」

 示された地点は地形的にはあまり特徴の無い土地…平坦な場所のようだ。しかし、シュナイゼル殿下はどのようにしてそんな情報を…?

「シュナイゼル殿下、先程からただの先読みとは思えぬ情報をお持ちのようだ。…一体どんな手を?」

 ルッキーの態度はかなり挑発的だが、シュナイゼル殿下は眉一つも動かしていない。

「何、私には『ウルフ』という優秀な部下が居てね。」

 …なるほど、黒の騎士団には既にE.U.での私のようなスパイを送っているということか。

 

 それから暫くすると、なんと中華連邦があのカレンとそのナイトメアを捕縛したと連絡があった。

「…シュナイゼル殿下、お願いしたいことがあります。」

 カレンが捕まったことに対し反応を示したのはスザクだった。

「おや、何かな?」

「捕虜となった紅月 カレンとそのナイトメアをブリタニアに引き渡すように中華連邦へ交渉していただけないでしょうか」

「ふむ…。可能だとは思うが、それは何故だい?」

 いくら中華連邦でも引き渡せと言って大人しく引き渡すとは思えない。カレン本人だけであれば国外追放したとはいえブリタニアの犯罪者だから可能だろう。だがナイトメアは別だ。現状中華連邦のナイトメアはお粗末なガンルゥと呼ばれるものだけ、高性能の赤いナイトメアを欲してもおかしくはない。

「彼女とあのナイトメアは危険です。もし中華連邦に寝返られ活用されれば脅威となります。」

 それは確かにそうだ。今は中華連邦もブリタニアに従うそぶりを見せているが、仮に我らがブリタニアと再び敵対する時に備え、人質なり報酬なりで飼い慣らせば…いや、あのカレンが飼い慣らされるはずはないか…?

「なんにせよ引き渡しについては交渉してみよう。」

 そう微笑んで部屋を去るシュナイゼル殿下を見送り、私達は一時的に待機となった。

「マーヤ、僕は生徒会のみんなに会長の無事を連絡してくるよ。」

 ロイドさんの婚約者として参加していたミレイ会長も今回の騒動に巻き込まれており、現在アヴァロンにて保護をしている。中華連邦に関する情報統制を考えればミレイ会長の安否が報道されるはずもない。

「分かったわスザク。お願いね。」

 スザクと別れ、艦内をうさぎ跳びで周っていると、ニーナと鉢合わせた。

「あ、マーヤ…ひ、久し振り…」

「うん。ニーナ久し振り。」

 …気不味い。正直あまり話してこなかったし、彼女はどこか私を見て怯えているようにも思えるのだ。取り敢えず話題を…そう言えば私今ニーナが何してるかよく知らないのよね。

「…ニーナは最近何してるの?」

「わ、私はその…シュナイゼル殿下のお陰でインヴォーグって開発チームのリーダーをやらせてもらってるの…」

「開発リーダー?ニーナって凄いのね!どんなものを開発してるの?」

 貧弱な身体をしていると思ったが、私と同い年で開発リーダーに抜擢されるとは、どうやらニーナは頭脳を鍛えしマッスルウーマンだったようだ。私はまだまだ目に見えないマッスルガイやウーマンを見逃してしまうが、それを見逃さなかったとは…やはりシュナイゼル殿下は凄いお方だ。

「うーん、詳細はまだ機密だから言えないんだけど、爆弾…かな」

「ば、爆弾…」

 ニーナっておとなしい見た目に反して結構物騒なもの開発してたのね…。

「シュナイゼル殿下から聞いたんだけど、マーヤってものを投げるのが得意なのよね?」

「え、えぇ。そう言えばそうかも」

「ならフレイヤが完成したらマーヤの為に手投げタイプも作ってあげるね!」

 …フレイヤ…?それがニーナの開発している爆弾の名前だろうか?それにしても手投げ爆弾ならボールスやアレクサンダで使ったことがあるから私にも扱いやすいかもしれない。

「うん、ありがと!無事に完成するといいね」

「うん!」

 …どうやらニーナは私に怯えてたわけじゃなくて少し人見知りをしていただけのようだ。話してみれば案外普つ…いや、兵器の話で盛り上がる女子高生って考えると普通じゃないのかも…?

「じゃあ私はそろそろ行くね。」

「うん、またねマーヤ」

 ニーナと別れ、再びうさぎ跳びをしていると格納庫帰りのモニカがモニモニと跳ねていた。

「モニカ、フローレンスはもういいの?」

「モニ〜!幸い予備パーツで簡単に修繕できたモニ」モニモニ

 することも無いし二人で跳ねながら作戦室に戻る。道中でスザクを見つけたので一緒に跳ねないか提案したが断られてしまった。

「黒の騎士団の捕虜の件だけどね、問題なく引き渡してくれるそうだ。ナイトメアもね。代わりに私は第宦官の彼らにブリタニアの貴族としての地位を約束することになったよ。」

 仮にブリタニアの貴族になれたとしても能力がなければすぐに転落する。怠け者の第宦官にそんなことができるはずはない。…良い条件に見せかけて交渉を取り付けるとは流石だ。

「ただね、それとは別に国土の割譲を条件に反乱軍の鎮圧をしなければならなくなったんだ。…ただ、これは黒の騎士団を壊滅させる好機だね。中華連邦のお陰で黒の騎士団は天帝八十八陵に追い込むことができた。援軍のない籠城戦…これは勝ったね。」

 映し出された図面に表示される黒の騎士団の戦艦と天帝八十八陵、艦首の砲門は連射は効かないがかなりの射程と範囲を誇るそうだ。迂闊には責められないが、それだけの兵器を使うにはかなりのエナジーを消費するはず。かつてのブラックリベリオンでは実質的に政庁周辺での籠城戦ではあった。しかしあればブリタニア本国からの援軍を考慮してのことだ。今回とはそれが異なる。

 

 カレンの引き渡しは無事に終わり、拘束されたカレンを見る。

「…何よ。言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ。」

「いや、残念だと思ったのよ」

「残念?」

 首を傾げるカレンに私は頷く。

「えぇ、私がカレンを倒したいなって思ってたから。」

「ふん…あっそ」

 まだ出撃には時間があるし、もう少しカレンと雑談していても良いだろう。私はカレンの秘密を知っていたし、私はカレンに秘密を秘密にしたままだった。今や敵とはいえ、ここで打ち明ける義理くらいはあるはずだ。

「ねぇ、カレン。私ね、実はブリタニアと日本のハーフ…だと思っていた時期があったの」

「…思ってたってことは違ったってワケ?自分のことなのに変なの。」

「えぇ、私は幼い日の事故で少し記憶が混乱してて、母の連れ子だってことを忘れてたみたい。」

「そう。…だから私がハーフってことを明かした後に何かバツが悪そうにしてたわけね。自分もハーフなのに打ち明けないから」

 やはりカレンは頭がいい。察しが良くて話の流れがスムーズだ。

「で?なんで今更そんなこと?」

「…さぁ?なんでだろ。今なら全部言えるって思ったのかも」

「ふん…。すぐにゼロが助けに来てくれるわ。私はもうあんたと話すことなんて無いから」

 そう言ってカレンが顔を反らしたのと、そろそろ出撃の時間だったこともあり私も背を向ける。

「…ゼロは助けには来ないわ。私が倒すもの」

 

 私がサグラモールに乗り込み出撃すると前方に反乱軍のナイトメアを打ちのめすルッキーの姿が見えた。

『さぁ!戦場に咲かせてやろうお前達の命の華を!!』

 反乱軍の鎮圧はスザクとルッキーが担当。私もモニカは黒の騎士団を相手にすることとなっている。

「モニカ、援護をお願い。」

『任せるモニ!』モニモニ

 私のサグラモールは遠距離攻撃には対応していない。だからハドロンブラスターを持つモニカのフローレンスに援護射撃をして貰い、一気に攻める!

 シュナイゼル殿下の情報によると、敵の航空戦略は限られている。黒いカスタム機が1、青いエース機が3、一般機が1と合計5だ。しかし、こちらの航空戦力を考えれば3機は必要。私とモニカが1機ずつ相手すれば抑えられる!

『ナイトオブツーのマーヤ ディゼルだな?ここでェ!』

 私の前に現れたのは黒いカスタム機だ。振るわれる斬撃をMVS付きガントレットを展開して迎え撃つ。

「拳は、二つあるのよ!」

 もう一方の手にもMVS付きガントレットを展開して殴るが、バリアのようなもので塞がれてしまった。MVSでダメなら…!

 肘側に展開していたニードルブレイザーを拳側に、拳側に展開していたMVS付きガントレットを肘側に展開し直して殴り付ける。

『ぐぅ…!?』

 流石にニードルブレイザー1基分では突破できないか。

「だったら…2つならどう!?」

 私は副腕の一つを展開して二つのニードルブレイザーで殴り付ける。

『何ッ!?』

 よし、このままガラ空きになったところにもう一撃…!

『藤堂さん!』

 !思っていたよりも敵が強いのか、航空部隊だけで3機は抑えられなかったようで、一機が加勢にきたようだ。余らせていた副腕のニードルブレイザーからブレイズルミナスを展開して斬撃を防ぐ。一度黒いナイトメアには蹴りを叩き込み距離を取る。すると、反乱軍のナイトメアが戦場を大きく移動しているのが見える。その背中を追い、ルッキーのパーシヴァルが攻撃を仕掛けるがフロートユニットを掠めた程度のようだ。だが、それを契機に明らかに中華連邦の攻撃は強まっている。

 私は黒の騎士団のナイトメア2機からの攻撃を四つの腕でいなすが、どうやら天帝八十八陵に何かがあったようだ。途中からやってきた青い方の顔面に踵落としをブチ込み黒い方の刀を白刃取りで防ぎつつ見てみると、反乱軍のナイトメアに対する集中砲撃を黒の騎士団の物と思われるナイトメアが防ぎきったようだ。…あんな機体が有るとは聞いていないけれど…恐らくあれをやったのはゼロ…!

『隙有りィ!!』

 敢えて自ら剣を折って私への奇襲としたのだろうが、残念なことにそういう攻撃はE.U.で経験済みだ。

「遅いッ!!」

 副腕のブレイズルミナスで防ぎ、サグラモールの両腕によるアームハンマーを叩き込むことで黒いナイトメアは落下していった。私の相手は恐らくゼロが乗っているであろうあの機体だけ…。

「ゼロなんでしょう?お前をここでッ!!」

『こい、マーヤ ディゼル!生身でも…!ナイトメアでも…ー殴り合いが強いのは私の方だと!その肉体に刻み込んでやるッ!!』




『ウルフ』の正体ですが、既に伏線は張ってあります。

次回、マーヤのサグラモール(四つの腕で殴る機体)VSゼロのミートギアス版蜃気楼(絶対守護領域を展開した拳で殴る機体)
ナイトメア戦とは…?


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TURN11′

 ゼロのナイトメアの胸部が開き、何か不思議な形をしたものを取り出すと、こちらに投擲してきた。確かに早いがこの程度、私とサグラモールに対応できないものではない!

「こんなものが私に効くとでも!?」

 私はそれを弾いて防いだ。

『感謝するマーヤ ディゼル!お陰で私の攻撃は完成した!』

「何!?」

 続けてゼロのナイトメアは何かのビームを放つが、それの狙いは私ではなく、先ほどの物体。ビームは物体に当たると複雑に乱反射し、中華連邦のナイトメアをことごとく切り裂いていく。どうやら先ほどの物体はプリズムのようなものらしい。やられた…!

「私が弾く方向まで計算したってことか…!」

『これで邪魔者は消えた。次はお前の番だ!』

 まんまとゼロの策略にハマってしまったようだ。そして今の攻撃に騙されてはいけない。あのゼロが初手で切り札を見せるはずがない…つまりまだ何かを隠している…!

「切り札を切られる前に倒す!」

『そのナイトメア、情報通り遠距離攻撃は苦手なようだな!』

 くっ…!こちらの弱点を…流石はゼロね!ゼロのナイトメアは手首のところにルッキーのパーシヴァルのようなハドロンショットを搭載しているらしく、それを放ってきた。私はそれを回避してゼロのナイトメアに対して距離を詰める。

「距離は詰まったわ!」

 サグラモールの拳を叩き込むが、それは桃色の障壁に阻まれてしまった。

『絶対守護領域…我が蜃気楼の"奥の手"だよマーヤ ディゼル』

「まだまだァ!」

 今度はサグラモールの四つの腕全てでニードルブレイザーを叩き込む。…しかしびくともしないようだ。なるほど、接近されても絶対的な防御力で防ぐということか、だがこんなもの…!

「たかがナイトメア一機の発生させる障壁如き!サグラモールで打ち破ってやる!!」

 それに防御中は流石に攻撃が出来ないらしい。四つの腕を絶え間なく交互に桃色の障壁、絶対守護領域と呼ばれるそれに叩き込んでいく。

「うおおおおおお!!」

 そしてとうとう私の拳が絶対守護領域を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『と、思っていたのか?』

 

「何!?」

 瞬間、ゼロのナイトメアは拳に桃色の障壁を展開しているのが見える。

「そうか…!さっき奥の手と言ったのはブラフ…!」

『今頃気付いても遅いッ!!食らえ、我が蜃気楼の本当の奥の手…絶対破壊両腕を!!』

 私のサグラモールでもブチ抜けないバリア…その硬さで殴られたなら…!

「まずい!!」

 私は四つのニードルブレイザーからブレイズルミナスを展開してそれを重ね合わせる。ブレイズルミナス4枚分なら…!

「ぐぅ…!」

 凄まじい衝撃ッ…!

『これを防いだか、流石はマーヤ ディゼル。敵ながらよく頑張ったと褒めてやろう』

 思わず蹴りで距離を取るが、次の瞬間ゼロのナイトメアは自身の背後に絶対守護領域を展開し、それを足場として蹴ることで凄まじい加速を得てこちらに突っ込んできた。

「凄まじい破壊力の拳に、絶対的防御力の盾、更に高い機動力ッ…!このナイトメア、無敵なの…!?」

『その通り!我が蜃気楼こそ強靭!無敵!即ち最強ォ!!』

 突き出された拳は再び4枚のブレイズルミナスを展開することで防御できたものの、守ってばかりでは勝機はない。更に機動力も向こうのほうが上だ…このままでは…!何か…何かないか!より高い威力の拳を叩き込む方法は…!

 …!さっき見たゼロが自らのバリアを足場に蹴る…あの発想だ!私はサグラモールの副腕のブレイズルミナスを展開し、サグラモールの肘を当て、その反射を利用してゼロに殴りかかった。

『な、何ィ!?こ、これは…!』

「うぉぉぉぉおおおおお!!!」

 弾力のあるブレイズルミナスの反動を利用してパンチの威力を増幅、故に速い!リングロープの反動を利用するボクサーのパンチのように!「これならッ!!」

『中々早く鋭い、敵ながら見事な攻撃…!だが!今ので覚えたッ!』

「何!?」

 ゼロは自らの膝に当たる位置に絶対守護領域を展開していた。ま、まさか!

『私にも同じことが出来ないとでも?マーヤ ディゼル!』

 ゼロは弾力ある絶対守護領域の反動を利用してパンチの威力を増幅させていた!私と同じように…!でも…負けない!ラッシュの突きの速さ比べだッ!

 

「うぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!」『無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!』

 

 しかし、突如コクピット内にアラームが響き渡った。

「…!エナジーが!?こんな時にッ…!」

『後から参戦した私に耐久戦を持ち込んだ貴様の負けだッ!』

 サグラモールの腕を全てを胴体の前に構えて防御することでなんとかゼロの拳が胴体に直撃するのを防いだものの、その破壊力に腕は爆散してしまう。…だが、私はその爆風を利用して距離を取った。

『ほう、流石はマーヤ ディゼル…!転んでも腕立てしてから倒立しそのまま3回転半して立ち上がるタイプの人間だけはある…!』

 今回は私の負けだ。だが、次こそは必ず勝ってやる…!それに

「私は4回転半するタイプよ!」

『それは失礼。』

 アヴァロンに帰還すると、どうやら大宦官はゼロと極秘裏にやり取りを行い、それが裏目に出たどころか人民による一斉蜂起が発生したらしい。シュナイゼル殿下は今の大宦官達を中華連邦の代表とは認めず、切り捨てることを選択したようだ。結果として先にカレンをこちらに引き渡させていたのは正解だったようね。

 

 これから先のことはみんなが考えてくれるだろう。私がアヴァロンの廊下でうさぎ跳びをしていると電話が鳴った。どうやらシャーリーからのようだ。

「もしもし?」

『ねぇ!聞いてよマーヤ!どう思う!?』

 どう思うと言われても突然すぎて意味がわからない。取り敢えずこういう時は…

「そうよね、プロテインよね!」

『何言ってるのマーヤ!?実はね…』

 シャーリーが言うには、ルルーシュが恋愛に関する相談をしてきたらしく、シャーリーはルルーシュに恋はパワーだと教えたらしい。…。

 

 …恋はパワー…そうだったのか、知らなかった。

 

 恋=パワー パワー=筋肉 …つまり恋とは筋肉だったのか!

 

『そしたらね?ルルーシュったら恋とは筋肉だって言い始めたの!おかしいでしょ!?なんでそうなるの?マーヤもそう思うよね?』

 えっ、恋は筋肉ではないのか…いけない…なんとか正解を見つけなければ…。恋=パワー パワー=筋肉でないとするならば パワー=…なんだろう?…そうか!

 

 パワー=破壊!

 

 つまり破壊するということは恋だということだ!

 

 今までの友人という関係を破壊!

 

 告白できない弱い自分を破壊!

 

 恋のライバルを破壊!

 

 全てを破壊!!

 

「確かにおかしいわねシャーリー。恋とは…破壊だものね!」

『え?』

 そうか…!モニカと黒の騎士団とのロマンスも敵味方という垣根を破壊して…!?それにモニカは常に人としての常識を破壊し続けている。つまり恋する乙女ということだ!うんうん、なんだか恋の話で盛り上がるなんて女子高生っぽい。ニーナと兵器の話をして盛り上がった時とは大違いだ。

「女子トークって楽しいわね!シャーリー!」

『どの辺が女子トークなの!?』

 あれ?待てよ…筋トレとは筋肉を破壊する行為のことよね…つまり筋トレも恋…?

「恋って…奥が深いわね、シャーリー」

『え?あ、うん…』

 すると、廊下の向こうでスザクがジェスチャーでこっちに来いと言ってきた。恐らくシュナイゼル殿下がお呼びなのだろう。

「ごめんねシャーリー、もう電話切らなきゃ。また学園でね!」

『ちょっ…』

 

 呼ばれて向かった先では、シュナイゼル殿下による今後の中華連邦への対応について聞かされた。どうやらあの後ゼロは天子及び反乱軍…つまり中華連邦を味方に付けたらしく、ここから中華連邦の平定を目指すようだ。

「ゼロが中華連邦を手に入れたら次は必ずエリア11を狙う。ならば我々はそれに備えて今のうちに準備するだけのことだよね。」

 シュナイゼル殿下の余裕の笑みは実に心強い。こうして私たちはエリア11に帰還した。

 

 久し振りにアッシュフォード学園内を歩いていると、物陰でロロと会話をしているルルーシュが見えた。

「…はい、ロロ様」

 遠くだったのでよく聞こえなかったが、ルルーシュがロロのことをロロ様と呼んでいた気がする。…気のせいかな?いや、もしかして…弟と兄という関係の常識を破壊…

 

 つまり、恋!?

 

 …なるほど、ロロとルルーシュは恋仲だったのね!男と男、更に実の兄弟、そんな禁断×禁断というまさに禁忌な関係も立ち塞がる常識を破壊する…つまり恋だと考えればおかしくはない。寧ろ立ち塞がる壁が高いほど破壊しがいがあるというものだろう。よく恋はハードルが高いほうがよく燃えるという言葉に通じるものがある。

「…いやぁ、まさかロロとルルーシュが付き合ってたなんて」

「俺とロロがなんだって?」

 おっと…我ながらこの距離まで近づかれても気配に気づかないとは。エリア11に戻ってきて気が緩んでしまったのだろうか?これはよくない…。そうだ!丁度良いし、ルルーシュと組み手でもしてみよう。最近はユフィが私に対して本気で殺すつもりがなくなってしまったため余りトレーニングにならないのだ。

「ねぇ、ルルーシュ。今度時間無い?」

「うん?時間…?予定が結構埋まっててね…あ、確かアリスがキャンセルしたんだっけ。この日の10:30から12:00まだなら空いてるけど。」

 私も予定を確認するとどうやらその日は非番のようだ。これは運がいい。

「ええ、その日は私も空いてるわ」

「そうかい。じゃあ予定をマーヤに変更して…あと待ち合わせは美術館でいいかな。それと出来れば水族館への移動も込みだと嬉しいんだけど」

「待ち合わせと目的地も問題ないわ」

 殴り合いは移動しながらでも可能だし、場所はどこであろうと問題はない。あ、そういえばルルーシュって恋=筋肉だと勘違いしてるんだっけ?

「ルルーシュ、私がその日…恋について教えてあげるわ!」

「…マ、マーヤが…俺に恋を…?」

「それじゃ!」

 あぁ、ルルーシュとの組み手、楽しみだな。

 

 そして今日は待ちに待ったルルーシュと組み手を行う日。いつもと同じように起きて朝の筋トレとジョギングを済ませる。これを終えると大体朝7:00になる。今日の朝ごはんは何にしようか、学園の中で片手逆立ちをして片手跳びで学園の中を徘徊していると、太腿の上にマリーを乗せて空気椅子をしながら弁当を食べているルルーシュが見えた。流石はルルーシュ、ただの空気椅子ではなくマリーを膝に乗せて更なる負荷をかけつつ栄養補給とは…無駄がない!私もそれを真似して朝食として購入したバナナをベンチを膝に乗せて空気椅子に腰掛けることで実践してみた。うむ、中々いい調子ね!

 そんなこんなで朝9:00になっていた。美術館にて黒い服を着た不審者が女性を誘拐しようとして居ると通報があったらしく、たまたま近くを散歩していたラウンズである私に声が掛かったので向かってみるが、恐らく逃げたのだろう、誘拐犯は居なかった。ふと視界の端にジゼルを抱きかかえ爪先立ちで美術鑑賞しているルルーシュを見かけた。ルルーシュが筋肉以外の芸術に興味あるとは意外だ。そういえばこの後の待ち合わせ場所も美術館だし、私もたまには私の筋肉という芸術以外のものも見てみるのも良いだろう。私もルルーシュの真似をしてその辺にあったベンチを抱えつつ爪先立ちで美術鑑賞に興じてみた。

 そんな訳で10:30、ルルーシュは時間ちょうどに待ち合わせ場所にやってきた。

「…で、マーヤ。俺に恋を教えるとのことだが、具体的に何を…?」

「決まってるでしょ?恋とは…破壊よ!」

「…は?破壊…?何を言ってるんだお前は…」

 10:30はすでに過ぎている…ならば!私は一気に脚に力を込め前に踏み込む。

「先制攻撃は貰ったわ!ルルーシュ!」

 ルルーシュの顔面に拳を叩き込み両足でルルーシュの腹を蹴っ飛ばすことで距離を取る。ルルーシュの油断を破壊した我ながら見事な一撃だ。

「…恋とは筋肉だ。つまりこの筋トレも恋!…マーヤは俺に恋をしているのか!?」

 私がルルーシュに恋…ですって…!?いや、確かに私は今ルルーシュの油断を破壊した…どうやら私は知らず知らずのうちにルルーシュに恋をしていたようだ。

「…どうやらそういう事になるみたいね。」

 私とルルーシュは美術館方向に走りつつ、お互いの隙を窺う。相手の隙を破壊する…コレも即ち恋!私は勝負を仕掛けにルルーシュへと走り出すと、ルルーシュもこちらに走り出した。

「ルルーシュ!!」

「マーヤ!!」

 お互いの拳が顔面に突き刺さった。やっぱり組み手って…最高ね!

 




因みに散々マーヤと殴り合った後ルルーシュは12:00からドナと水族館に行き、イルカ達のショーに飛び入り参加します。マーヤも飛び入り参加したから想像にお任せします。

※作者は素面でミートギアスを書いています。


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TURN12′

 私がルルーシュとの組手を終えた後、私はロイドさん達のところを訪れていた。正確には呼び出しを貰っているからなのだが、サグラモールはゼロとの戦いで腕を全て破壊されてしまっているのでその修理のためだろう。

「やぁ、マーヤくん待ってたよぉ〜!」

「サグラモールの修理、よろしくお願いしますねロイドさん。」

「そのことなんだけどさ〜あ!サグラモールの腕にハーケンブースターを仕込みたいんだけど良いかなぁ?」

 ハーケンブースター…確かスザクのランスロットに仕込まれているシステムだったか。

「サグラモールにはスラッシュハーケンはありませんよ?」

「分かってるよぉ!ハーケンの代わりに腕そのものを飛ばそうと思ってるんだぁ!腕が飛べば十日の相手に攻撃ができるよぉ!」

 遠距離攻撃が…それはいい改修案かもしれない。

「じゃあその方向で改修お願いします。」

「そういうと思って実はもうやっちゃったんだぁ!」

 …私に聞いた意味は…?まぁ、相手はロイドさんだし、仕事が早い訳だから別に良いか。

「実はこれねぇ、今手掛けてるナイトメアに搭載予定のシステムなんだぁ〜!」

「…実験って訳ですか」

「そゆことぉ!」

 まぁ、もともとランスロットを手掛けているロイドさんに無理を言ってサグラモールやイスカンダルの対応もしてもらっている。多少の協力はするべきだろう。

 政庁内にはナイトメアが暴れても平気なくらい広い空間が存在する。総督から了承を貰い、今回はそこを運用試験スペースにすることにした。

『じゃあマーヤくん、始めてくれる?』

「了解です。まずは右腕から試してみます。」

『あれ、僕は別に全部の腕を同時でも構わないんだけど』

 ロイドさんの呟きは無視して右腕のハーケンブースターを起動する。

「ロケットパァンチッ!!」

 右腕二の腕が分裂し、切り離された腕部が射出された。中々のリーチとスピードだ。射出後も方向転換が効く点は有り難い。

「巻き戻しは…これね」

 巻き戻しに少々時間はかかるが問題はないだろう。

「次は副腕を飛ばします。」

 サグラモールの四つ腕モードを起動し、更に副腕の2本のハーケンブースターを起動する。

『あのさぁマーヤくん。ロケットパンチはなんかダサいから他の名前考えなぁい?』

「えっ…格好いいと思ったんですけどダメですか?」

 …うーん、スラッシュハーケンのように飛んでいく腕…拳…。

「ハーケンフィストってのはどうでしょうか」

 ロイドさんとの会話をしつつ、副腕の操作を試みる。副腕は腹筋と胸筋で操作するのでなかなか難しい。

『ハーケンフィスト!うんうん、良いじゃない!』

 こうしてサグラモールは新たにハーケンフィストを手に入れた。この新装備があれば今度こそゼロに勝てるかもしれない。時間が許す限り私はハーケンフィストの操作訓練を行う。

 そして気が付けばすっかり夜になっていた。操作訓練を終えてから気が付いたが、どうやらシャーリーから連絡があったようだ。

「もしもし?連絡に気付かなくてごめんね。何かあったの?」

『あのね、今日会長の卒業イベントの発表があったの』

 あぁ、そう言えば会長はもうすぐ卒業だったか。中華連邦から帰って来てからはスザクは総督補佐の仕事が多くなり多忙そうである。反面、エリア11滞在による治安維持はスザクの存在がある分私についてはかなり緩くなっており、要請が無い場合は基本的に自由となっている。スザクが出られない分私が祝う方が会長も喜ぶだろう。

「それで?どんなイベントなの?」

『キューピットの日って言って…男子は青い帽子を、女子はピンクの帽子を被って、相手の帽子を被ったら生徒会長命令で恋人になるってルールなの…』

 …生徒会長ってそんなにすごい権限あったっけ…?

『あ、あと…私聞いたんだけど…』

「うん?何?シャーリー」

『私、相手がマーヤでも負けないから!』

 シャーリーが私に負けない…?一体何のことか分からないが…。勝負を挑まれる以上、私だって負けるのはごめんだ。

「私だってシャーリーには負けないわ。」

『やっぱりマーヤもルルのことが!?…どっちが勝っても恨みっこ無しだから!』

 シャーリーはそう言い残すと電話を切ってしまった。私がルルーシュを…なんだろう?

 

 そしてキューピットの日の当日、何故か会長から放送室に呼び出されてしまった。

「ねぇ、マーヤ。」

「なんです?会長」

「ルルーシュの帽子を私の所に持って来てくれたら…ウェイトリフティング部を正式な部活として認めて予算を付けます。だから私の指揮下に入ってくれない?」

 なん…だと…!?ウェイトリフティング部が正式な部活動に…!?これは…ルルーシュには犠牲になってもらうしか無いだろう。私は会長に対して跪く。

「何なりとお命じください。」

「宜しい。まずはルルーシュに対して開幕と同時に奇襲を仕掛けるわよ!」

「イエスマイロード」

 最近のルルーシュはウェイトリフティング部に対する付き合いが悪い。これはその報いだ。

 

 ルルーシュに対する奇襲を仕掛けるため、隠れ場所を探していると、森の中でアンチマテリアルライフルとミニガンを準備している不審な女性を発見した

「マーヤ様!?」

「あなたは…咲世子さん…!?」

 確かルルーシュ達に仕えるメイドさんだったか、何故こんなところに…というか何故こんな物騒なものを…?

「マーヤ様、これには事情が…」

「こんな物騒なものを用意しておいて事情も何も無いでしょう?…ナイトオブラウンズとして見逃せません…逮捕します!」

「…申し訳ありません!」

 すると煙玉のようなものを投擲し、その煙に乗じて逃げられてしまった。私の知覚範囲から一瞬で流れるとは…メイドさんって凄いのね…。

 しかし、私が物騒なものと思っていたそれはどれも麻酔弾だったらしく、本当に何か事情が…この森に熊でも出たのだろうか。咲世子さんには悪いことをしてしまった…。

 そしてそんなことをしている間にキューピットの日開始の花火が打ち上がってしまう。ウェイトリフティング部の為にもなんとしてもルルーシュの帽子を手に入れなければ!

 

 そして、気がつくと私はロロの腹に拳を叩き込んでいた。

 

 あれ?

「ボ、ボクの…絶対停止が…効、効かない…なんテ…!」

 おかしい、私は確かに森の中に居たはずなのに…広場まで戻って来ている上にあのロロをブチのめしているなんて…。ロロほどのマッスルガイであれば本来私との殴り合いなんて片手を封じられてるような状況でなければ簡単には付かない。一体何があったのだろうか…?

 いや、今はそんなことを考えている場合では無い。一刻も早くルルーシュを捕まえなければ。だが、よくよく考えれば私が普通にルルーシュを追いかけたところでルルーシュを捕まえられるだろうか?答えは否、不可能だ。ルルーシュの筋肉はあのゼロに匹敵する。それにこの前の組手でお互いの実力はよくわかっている。こうなったら…!

「会長、こちらマーヤ。ルルーシュへの奇襲は失敗。でも…一つ考えがあるの」

『考え?』

「ワイヴァンナイツを投入するわ!」

『なるほど、普段一緒に戦ってる部下な人たちがいれば連携をとって追い詰められるってことね!この私が許可します!』

 よし、許可は降りたわね!

「こちらナイトオブツーのマーヤ ディゼル!ワイヴァンナイツ、イスカンダルに搭乗してアッシュフォード学園に急行し、ルルーシュ ランペルージを捕獲せよ!学生のデータは私から端末に送っておくわ!」

『なんだがよくわかんねぇがこいつを捕まえればいいんだな?』

『任せてよマーヤ』

『ねぇ、この人何かしたの?』

「事情は後で話すわ!」

 いくらルルーシュでもナイトメア3機と私から追われれば流石に捕まえられるはず!待ってなさいルルーシュ!

 

 到着したリョウ達との協力の結果、ルルーシュを室内である図書室に追い込むことに成功した。屋内に逃げるとは判断を誤ったわね!

「リョウ!図書室から校舎側への廊下を破壊して逃走ルートを塞いで!」

『おいおいいいのか!?お前の学校だろ?』

「生徒会長から許可は得てるわ!」

 恐らくルルーシュは再び図書室に逃げようとするはず。

「ユキヤとアヤノはこのまま図書室周辺を警戒!私が突入する!」

 私が突入すると、何故かルルーシュはシャーリーを抱き抱えていた。だが好都合…ルルーシュはシャーリーを抱えているので抵抗力と機動力が低下しているわ!

「追い詰めたわよルルーシュ。さぁ、観念してその帽子を渡しなさい」

「マーヤ…!まさかお前まで俺の帽子を狙うとは…!俺の作戦を悉く…!」

 ウェイトリフティング部の部費は頂きよ!私が一気に距離を詰めると、シャーリーは自分とルルーシュの帽子を交換して頭に被っていた。

「なっ…!?」

 しまった…!そんな手が…!ごめん、ウェイトリフティング部のみんな…私…負けちゃった…。

 

 ここからは事後処理の話。会長はワイヴァンナイツの出動について、ナイトメアまで持ち出すとは思わなかったと主張。そして校舎破壊やその他の被害について、全て私が悪いと言うことになり結構な量の損害賠償請求が突き付けられた。そしてウェイトリフティング部の正式な部活認可及び予算は当然白紙になった。

 更に、ワイヴァンナイツを私的に出動させたことについてこっぴどくスザクに怒られてしまった。うぅ、なんて日よ…!散々だわ。

 

 ところで、人間は怒られたりすると不意に変なことを考えるものだ。特に、今まで疑問に感じていなかったことを急に不思議に思い始めることもある。

 疑問とは、ルルーシュとロロについてだ。ルルーシュとロロはクラブハウスに住んでいる。それは学園における周知の事実であるし、別に私もルルーシュ達が学園内のクラブハウスに住んでいる事を批判するつもりはない。シャーリー達は学生寮に住んでいるし、私はたまたまクラリスさんと住んでいる家が近かったから通っているだけだ。

 話は初めに戻るが、なぜルルーシュとロロはクラブハウスに住んでいるのだろう?しかもわざわざ咲世子さんというメイドさんまで雇って。ルルーシュやロロのどちらかが体が不自由ならまだ分かる。例えば車椅子生活だったり、耳が聞こえなかったり目が見えないのなら普通の学生寮では不自由なことがある。だが、誰もが知る通りルルーシュもロロも筋骨隆々、私に匹敵かそれ以上の筋肉が逞しいマッスルガイだ。そんな二人は何故学生寮ではなくクラブハウスに住んでいるのだろう?

「…って訳なんだけど、スザク何か知ってる?」

『…さ、さぁ…?僕に訊かれても困るよ…』

 それはそうか、私のふとした疑問をスザクに尋ねてみたが、そんな事情をスザクが知るはずもない。

「それもそうよね。本人に訊いてみることにするわ」

『う、うん。それがいいと思うよ』

 スザクとの通話を終え、すぐにルルーシュに連絡を取る。少しだけ間があったがルルーシュは電話に出てくれた。

『どうしたマーヤ。こんな時間に』

「ごめんなさい、ふとした疑問があって」

『マーヤが疑問?珍しいね、なんだい?』

「ルルーシュとロロってどうしてクラブハウスに住んでるのかなって。みんな家から通うか学生寮に通ってるわよね?それなのに体が不自由な訳でもない二人だけが特別扱いなのはどうしてなのかなって思ったの。」

 すると、ルルーシュに鼻で笑われてしまった。

『おかしなことを訊くんだなマーヤは。逆に考えてみてくれ、俺やロロが普通の人と暮らせると思うかい?朝起きて筋トレ、ランニング、特別な朝ごはんに筋トレ、そして筋トレ、この身体じゃ嵩張るし、力加減を誤ったらすぐにものを破壊してしまう。そうだろ?』

「確かにそうね」

『だから俺とロロは特別にクラブハウスで暮らしてるんだ。そして俺達のようなマッスルガイだけだとついつい繊細な作業を疎かにしてしまう。そのために咲世子さんを雇ってるんだ。…何か変なところでもあるかい?』

「いえ、なんでそこに思い至らなかったのか不思議だったわ。ふふ、まるで忘れてたみたい。」

 私は笑いかけるものの、ルルーシュは無言のままだ。何か癇に障ったのだろうか?

『なぁ、マーヤ』

「?何?ルルーシュ」

 

 …?可笑しいな、電波環境でも悪いのだろうか?

「ルルーシュ?聞こえてる?」

『あぁ、聞こえてるよ。マーヤは…そうだな、忘れてるだけだよ。全部な。マーヤは悪くないさ』

 




政庁内の広い空間は原作でジノがグラストンナイツ相手にイキってたあの通路です。

マチョストではロロの絶対停止は
体感時間=思考時間を止める=呼吸やロロの心臓以外は止まらない
としています。マーヤ等の脊髄反射で行動可能な人物は脊髄反射に基づいて行動が可能です。
なので、ロロは咲世子に狙撃されずルルーシュを狙って絶対停止を発動させますが脊髄反射でルルーシュが反撃、更に脊髄に基づきルルーシュ達のところまで走って来たマーヤはロロとルルーシュと会敵、ルルーシュは脊髄反射で逃走、マーヤがロロの腹に拳を叩き込む
という流れになっています。



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TURN13′

 エリア11は今の所は平和だ。しかし、その平和はいつ崩れてもおかしくはない。中華連邦…改めて合衆国中華の詳しい内情はあまり入って来ないが、統一は間も無く成されるだろう。

 そもそも、合衆国中華及び黒の騎士団側にはゼロやカレンを倒すほどのパイロットがおり、黒の騎士団は高い技術力を有している。そして中華連邦を纏めるための天子様はゼロ側が保有しているため、旗印を抑えられていることになり、反抗勢力は纏まらず各個撃破され終わりだ。…と、ルッキーが言っていた。

 

 そんな訳で私とワイヴァンナイツはエリア11において、対中華連邦…改めて合衆国中華に重要な土地とされるキュウシュウブロックに赴き、守備部隊の抜き打ち監査を行うことになり、出発の準備が整った頃、政庁内でスザクに出会った。…確かスザクは今日は非番だったはずなのに。

「やぁ、マーヤ。これからキュウシュウだよね?」

「えぇ、合衆国中華…いいえ、黒の騎士団が攻めて来ても大丈夫な様に備える意味でも、これが大切な監査だってのはわかってる。…ところでスザクって今日は非番じゃなかった?」

「うん。そのつもりだったんだけどね。イケブクロでちょっとした事件に鉢合わせたんだ」

 非番の日まで仕事に巻き込まれるとはスザクも運が悪いわね…。それから私はキュウシュウに向かい、監査を行った。一年前に澤崎等の唱えた独立主権国家日本の事件からキュウシュウの脆弱性は見直されている。本国を含む援軍へのスムーズな受け入れ態勢などが最たる例だろう。1日掛かりの監査を終えエリア11に帰り、監査結果を纏めて提出し終えると電話が鳴っていることに気がつく。相手は…V.V.くんのようだ。

「もしもし、V.V.くん?どうしたの?」

『やぁマーヤ』

 V.V.くんが今どこにいるのか分からないが、何故か戦闘音のような物が聞こえる気がする。…ゲームとかかな?

『契約は忘れてないよね?僕は今少しピンチでね…助けに来てくれないかな』

「分かったわ」

 確かにそう約束した。今のV.V.くんがどんなピンチに見舞われているかはわからないが、私自身丁度今仕事も終わったのだ。約束したからには助けに行かないわけにもいかない。

『それと…そうだね。できれば僕が良いって合図を出すまでは何があってもどこかに隠れていてくれると嬉しいな』

「合図ね。分かったわ」

 話を聞く限りきっとそういうごっこ遊びか何かだろう。大したピンチでは無さそうで安心した。

 とは言え、遅くなるのも申し訳ないので私は租界を走り、海を走り、神根島に行き、V.V.くんの秘密基地を訪れる。神殿のような部屋を抜けると、何故か広場が大きく崩れている。それに目の前には傷だらけのV.V.くんが地を這うようにこちらに向かって来ていた。だが、彼が言うには合図があるまでは隠れていろと言うことだったので、近くの瓦礫の背後に身を潜める。暫くすると私が入ってきた入り口から別の人物が現れた。

「やっぱり来てくれたんだね、シャルル。やっぱり最後に頼りになるのは兄弟だね」

「兄さん…ルルーシュに刺客を送ったと言うのは本当ですか?」

 …?現れたのはどう見てもシャルル皇帝陛下…それなのに今彼らはなんと会話した?V.V.くんが…皇帝陛下のお兄さん…?

「お陰で仕返しされちゃった。」

「…兄さんはまた、嘘を吐いた。」

 目の前の事態が全く理解できず、私はそのまま物陰から二人のやりとりを観察することしか出来ない。

 すると、皇帝陛下はゆっくりとV.V.くんに近付いていく。

「我々の契約は世界の嘘を壊し…神を殺すこと。それなのに兄さんは嘘を吐いた…それも、二度も!」

「嘘、ね…シャルルだって自分の嘘には目を瞑ってる癖に。僕の嘘だけを許容しないつもりかい?」

「何…?」

 皇帝陛下は拳を振り上げ、V.V.くんを殴打しはじめた。あんな小さな子供を皇帝陛下ほどのマッスルガイが何度も殴打すれば簡単に死んでしまう。なんと酷いことを…!

「…昔からシャルルは図星を突かれると暴力に頼るよね。」

「ぬぅ…!」

 流石に首の一つや二つ取れてもおかしくないように見えてが、どうやらきちんと手加減をしていたらしく、V.V.くんは話が出来るくらいには元気なようだ。

「…今から兄さんのコードを奪う。兄さんとワシの夢はワシが、叶える…。」

 皇帝陛下はV.V.くんの背中に手を当て何かをしたかと思うと、再びその場を立ち去っていく。それからすぐにV.V.くんから弱々しいこえが聞こえてきた。

「良いよ…マーヤ、来てくれ…」

 言われて駆け寄ると、V.V.くんの怪我はかなりひどい者だった。瀕死と言えるレベルまで拳で痛めつけたような状態であるのだ。

「僕の…胸、ポケットに…プロ…テイン…」

 きっとV.V.くんの胸ポケットにプロテインがあるから取り出してくれと言うことだろう。取り出してみると、それはあの日私が飲んだ物と同じような液体が入っていた。

「これを…飲ませれば良いの?」

 私が訊くと黙って頷いたのでV.V.くんにゆっくりと服用させる。すると、先ほどまで折れていたのではないかと思える腕は忽ちまっすぐになり、酷いあざのあった顔は艶を取り戻し、全身の筋肉はスザクほどに膨張してリトルマッスルガイが爆誕した。

「ありがとうマーヤ。助かったよ。」

「う、うん…」

 そういえば私もゼロとの戦いでプロテインを服用したときに全身の筋肉の膨張以外にも怪我が治ったような感覚があった。なるほど、V.V.くんはそれを利用して自らの怪我を治癒させたようだ。

「色々言いたい事はあるだろうけど話は後にしよう。今は脱出が先だよ。一先ずE.U.方面に行こうか」

 突然の事態に困惑しつつ、私はV.V.くんの後に着いていく。V.V.くんは私を菱形のトンネルまで案内してくれたが、そこでV.V.くんの様子に変化があった。突然苦しみ出し、膝をついたのだ。

「くっ…時間切れか…!」

「大丈夫…?」

 結局、リトルマッスルガイであった肉体は元の身体に戻り、肉体的疲労から立つこともままならないらしい。私はV.V.くんをおんぶして歩く事にし、一先ずE.U.方面に続くらしい菱形のトンネル内を移動していた。やたらと瓦礫や何かの残骸が落ちているが、私はマッスルウーマン、排除することなど造作でもない。

 ある程度進むとトンネルの中には残骸などはなく、ただただ菱形のトンネルが続くだけだ。

「そういえばV.V.くん、皇帝陛下とお知り合いだったの?」

「…あれ?会話の内容聞いてなかった?シャルルは僕の弟だよ?…まぁ、そう言っても信じられる訳ないか。僕の見た目は子供だものね」

 確かに見た目は子供…だが、皇帝陛下も手加減していたとはいえ、ごっこ遊びに付き合って子供を殴るなど異常だ。それに、V.V.くんとは1年の付き合いになるが、言われてみれば陽菜達と比較して、外見に変化がない。これくらいの子供ならもっと成長していてもおかしくはないのに。

 …もしかして筋肉とは別の何かを鍛える事で己の老化を防いだのだろうか?そういば昔、何かの本で読んだことがある気がする。人間の心臓の鼓動は1日で約10万回…つまり、1年で心臓の鼓動を10万回程度に抑えることができれば実質1年を1日にすることができる。1年で100万程度に抑えれば10日…具体的にいつからどれくらい抑えていたかは知らないが、きっとそう言うことだろう。

「…マーヤ、また変なこと考えてるでしょ?君は変わらないな…」

「変わらないって言ったって…1年じゃそんなに変わらないわよ」

 小さな子供ならば1年で大きく変わることもあるだろう、だが私ほどの年齢になればもう1年での変化など筋肉量以外は微少だろう。

「そっか、マーヤは覚えてないものね。僕らはね、8年前に会ってるんだよ。」

 …8年前…?私にとっては全く記憶のない時期だ。つい先日思い出せた記憶も何年まえのものかは定かではないが…

 

「マーヤ、思い出して?君と僕は8年前に契約をしているだろう?」

 

 契約…。なんだろう、頭が痛くなってきた…?

「その時確かに授けたはずだよ?君に、『ギアス』を」

「ギアス…?私に…?でも、私に人を操る力なんて…」

「あぁ、マーヤにとってギアスはそう言うものになってるのか…僕の説明不足だったね」

 頭痛に思わず私は足を止めてしまう。何か、頭の中にビジョンが浮かんでいるような…?どこかは分からない綺麗な建物の中で…目の前にV.V.くんが佇んでいる…。

 

『君に力をあげるよ。“みんながみんなに優しくなる世界"を作るための。その代わりに僕が困った時に助けて欲しいんだ。』

『分かった!』

 幼い私はよく分からないままその話を受け入れたのかな…?

『でも気を付けて?王の力は君を孤独にするんだ。力を得れば君は人とは異なる世界を歩む事になる…異なる時間、異なる摂理…でも大丈夫、マーヤは強い子だからね。だってマーヤは僕の…』

 

 あぁ…そうだ…。だから私…。

「マーヤ、君のギアスは『絶対鍛錬のギアス』他人や己に鍛えざるを得ない状況、つまり苦難を与えるギアス。…もっとも、君はほとんどその力を他人に使ってこなかったようだけど」

「苦難を与えるギアス…?」

 言われてみれば私の人生は苦難というか、困難というか、トラブルに見舞われることが多かった気がする。連子として再婚した両親が事故死し、記憶が混濁し、自分をハーフだと思い込むなど言われてみれば普通ではない。それからも何かにつけて私にトラブルが降り掛かるような…何かに仕込まれたような人生だったようにも思える。

「心当たりはあるようだね。」

「…えぇ、まだ少し…信じられないけど」

 それから、E.U.への道中、私はV.V.くんからギアスとコードについて説明を受けた。

 不老不死のコード、V.V.くんが持っていて、皇帝陛下に奪われたもの。そしてもう一つはC.C.なる女性が持っているらしい。不老不死のコードは文字通り所有者を不老不死にする。いくら鍛えても筋肉が付かないという呪いの類らしく、その影響でV.V.くんは不死身だったようだ。私の心臓の鼓動がどうこうという考察はなんだったのか、恥ずかしくなってくる。

 そしてギアス、私やゼロが持っていて、V.V.くん曰くシャルル皇帝陛下も持っていたらしい。不老不死のコードを持つ者には効かないそうだ。故にV.V.くんと皇帝陛下は不死身の肉体とギアス所有者というパワーバランスが取れていたらしい。

「でもシャルルは僕を裏切った。僕が協力者を生み出そうにもシャルルの『記憶改竄のギアス』は厄介でね。だからあえてコードを渡してシャルルのギアスを封じたんだ。それにこれでシャルルは僕がもう死んだと思い込んでるからね」

 私はこれからV.V.くんに協力してシャルル皇帝陛下からコードを奪う必要があるようだ。…この困難もギアスによるものなのだろうか?正直、ギアスを持っていたなんていきなり聞かされても実感などないし、扱い方などもってのほかだ。

「ギアスの使い方はこれから覚えていけば良いよ。僕が思うに決着が着くにはもう少しだけ時間が必要だからね。」

「ええ」

 それから私たちはE.U.側のトンネルから脱出、偶々E.U.方面に牽制を仕掛けていたアーニャとジノに合流することができた。

「マーヤ久し振り…再会の記念、記録。」

 アーニャを抱き抱えての自撮り、うん盛れてる盛れてる…良い感じの上腕二頭筋ね…!

「でもマーヤってエリア11に居たはずだろ?なんでこんなところに居るんだ?…それにその子供は?」

「えっ?あー…その…この子が黒の騎士団に誘拐されて…そう!追いかけて走ってたらいつのまにかE.U.まで来ちゃってたのよ!」

「なんだ、そうだったのか!エリア11から中華連邦…あ、今は合衆国中華だっけ?を抜けてE.U.方面までやってくるなんて凄いスタミナだなぁ!ははは!」

 よし、ジノがアホで助かったわ…!いや、これも全て筋肉のお陰…?やはり筋肉、筋肉は全てを解決するわね…!

 …そう言えばV.V.くんは私はギアスをほとんど自分にしかと言ったけれど…

 

 一体いつ、誰に使ったのだろうか?

 

 




誰得か不明のV.V.生存ルート。無事に逃げられてシャルルから姿を隠せたね!やったねV.V.!

という訳でミートギアス作者による忠実な原作無視により、マーヤがギアスユーザーになってしまいました。なんで???
●オリジナルギアス紹介
『絶対鍛錬のギアス』
・幼いマーヤが(半ば悪質に)V.V.と契約して手に入れたギアス。
・ギアスの効果は「他人や己に鍛えざるを得ない状況、苦難を与える。」こと。但し、どんな困難か具体的な事は指定できず、周囲の人間や環境が不自然のない範囲で困難を強いるように変化する。
・マーヤはギアスの効果を知らず知らずのうちに己に使用し続け、鍛えざるを得ない状況に身を置き続けた結果、非常に鍛えられた。それはもう、ナナリーを守るために鍛えたルルーシュ並みに。
・マチョストにおけるマーヤに降り注ぐシナリオイベントはマーヤの絶対鍛錬のギアスにより操作されている。

・なお、鍛える状況…つまり困難に耐えられる身体でない場合、対象は最悪死に至る。


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TURN14′

 ジノとアーニャの協力もあり、私とV.V.くんは無事にE.U.からエリア11に戻ることができた。どうやら私達がエリア11に戻るまでの間にゼロが超合衆国憲章なる物を打ち立て、超合衆国の軍隊…黒の騎士団がエリア11に攻め込むと宣言があったらしい。それに対してシャルル皇帝陛下は正面から受けて立つと宣言、エリア11は再び戦場になると言う事だ。

 政庁にV.V.くんを連れて行き、取り敢えず私の執務室に連れて行く。

「じゃあV.V.くん、この執務室は自由に使ってて貰って構わないから」

「…執務室?ジムか何かの間違いじゃないのかな。文字の書かれた紙なんて壁に貼ってある『気合い!』ポスターだけじゃないか」

「…最近はユキヤが書類仕事片付けてくれるから…」

 最近のユキヤの成長は目覚ましい。特に腹筋が割れてきた辺りが。ユキヤ本人も鍛えれば鍛えるだけ筋肉がつくように体質が変わったことに興奮している節があり、自慢のネットを駆使してさまざまなトレーニングをしているとか。突然執務室のドアが開き、雪崩れ込むようにアヤノが入ってくる。

「居た!マーヤ!一体どこ行ってたの!?心配したんだよ!」

「え?あー…うん、V.V.くんが誘拐されたから…ね。取り返しにちょっとE.U.まで…」

「はぁ!?」

 ジノ達に吐いた嘘を再利用し、アヤノを誤魔化すと、今度はリョウが雪崩れ込んできた。

「…リョウ、マーヤの執務室とは言え女性の個室にノック無しで入るのは失礼だよ。」

 今更のノックを三度してから部屋に入ってきたのはユキヤ、うむ…また少し見ない間に筋肉のキレが上がっているような気がする。良いわね。

「…ん?なんでこのガキが執務室に居るんだ?一応ここ執務室だろ?…トレーニング機材置き場だけど」

「確かに。ナイトオブラウンズとはいえ個室に男の子を連れ込むなんて…ねぇ?ここトレーニング機材置き場だけど」

「誘拐されてたから取り返して、その事後処理のためにつれてきたんじゃない?トレーニング機材置き場だけどここ一応執務室だし。」

 うん。酷い言われ様ね。きっとこれも私の絶対鍛錬のギアスのせいに違いない。そうであってほしい。

「ところでリョウとユキヤは何しにきたの?もしかして私が心配だったの?」

「まさか!殺してもお前は死なねえよ」

「確かに。シュナイゼル宰相が及びだからさ。探してたってわけ」

 シュナイゼル殿下が?取り敢えずアヤノとリョウにはV.V.くんと居てもらい、私はユキヤと二人でシュナイゼル殿下のもとに急ぐ。私が廊下で出すことを許可されている制限速度の早歩きにユキヤはなんとか食らいつけているようだ。うんうん、スタミナも付いてきたようね。

 通された部屋ではシュナイゼル殿下がいつもの微笑みを浮かべ、優雅に座っていた。

「やぁ、よく来てくれたねマーヤ。早速で悪いんだけど、君には枢木卿を追ってほしい。」

「…スザクをですか?」

「そうとも。ゼロの狙いはこのエリア11、キュウシュウブロックには本国からの増援でヴァルドシュタイン卿が、エリア11からはブラッドリー卿が向かってくれている。彼らであれば敵軍の本隊は抑えられるだろう。だが、黒の騎士団の…いや、ゼロの狙いは恐らくこのトウキョウ租界。太平洋での闘いでそうだった様にきっと皇族であるナナリーや私を狙って動くはずだ。だから残りの少数精鋭でこのトウキョウ租界を守る…はずだったんだがね、このタイミングで何故か君に続いて枢木卿が突如租界を出てしまったんだ。」

 スザクが…?あのスザクがそんな無責任なことをするはずはない。一体何故…?

「海中から回り込んでくるだろう黒の騎士団の奇襲部隊が到着するまでにマーヤには何としても枢木卿を連れ戻してほしいんだ。やってくれるね?」

「イエスユアハイネス…ですが手掛かりなどはありませんか?」

 私は別にスザクのストーカーなどではない。流石にヒントも無しに人一人を捕まえるのは難しいだろう。

「君には優秀な部下がいるだろう?」

 …優秀な…そうか、ユキヤだ。私が背後に控えるユキヤに振り向くと、ユキヤは頷き、すぐさま手元の端末を操作し始めた。

「…見つけたよ。枢木卿はナイトオブラウンズだし日本人、それにマーヤほどじゃないけど筋肉も逞しくてイケメンだ。そんな人気のある有名人ならネットから簡単に目撃情報が拾える。どうやらこの辺りに向かってると思うよ」

「分かった。ユキヤはナビゲートをお願い。私は今から向かうわ!」

 私はシュナイゼル殿下の横をすり抜け壁をブチ抜いて直ぐにトップスピードに乗る。ユキヤの案内に従い野を駆け山を駆けていると、枢木神社と書かれた鳥居を見つけた。

「枢木神社…?」

 石段を上がって行くと、何やら声が聞こえてくる。

 

「見合って」「見合って」「「はっけよーい…のこったッ!!」

 

 今のはスザクとルルーシュの声だ。こんなところで呑気に相撲とは…。しかし、こんな時に相撲を取ると言うことはきっと漢と漢の真剣勝負に違いない。私はマーヤ ディゼル…得意な事は筋肉を育てることと空気を読むこと!私は階段ではなく近くの林から二人の真剣勝負を見守ることにした。

 スザクの初撃は突っ張りだった。やはりと言うべきか、それはフェイントではなかったものの、残念ながらルルーシュにはバックステップで躱されていた。きっとこの場合、スザクならルルーシュの攻撃を避けるために距離を取るはずね…。移動座標は…X23辺りかしら?予想通りルルーシュはそこに突っ込み、攻撃を仕掛けていた。

「くっ…!式根島の時よりも強くなって居る…!」

「鍛えてるのはお前だけじゃないんだよスザク!」

 二人は互いの学生服をがっちりと掴み、離さない。…あれ?スザクとルルーシュはいつ式根島で相撲を取ったのだろう?確かスザクと式根島で相撲を取ったことのある人物はゼロ…まさかゼロの正体って…!?いや、もしかしたらプライベートで相撲をとっていたのかもしれない。憶測で疑うのは失礼だ。

「答えろ…ルルーシュ!君がユフィにギアスをかけたのか!」

「あぁ、そうだ!」

 一瞬、スザクがルルーシュの身体を持ち上げていた様に見える。しかし踏ん張られた様だ。…ん?ルルーシュがユフィにギアスを…?それってやっぱり…

「日本人を殴り殺せと?」

「俺が命じた!」

 ルルーシュがジリジリとスザクを石段の方へと押し出していくが、スザクも踏ん張り、やがて拮抗した。ルルーシュが…ゼロ…?だとしても一体何故日本人を殺せなどと言う命令を…ゼロにとって日本人は味方ではないのだろうか?

「なぜそんなギアスを…!ふんっ!」

「どっせい!…日本人を決起させるためだ!はっ!行政特区日本が成立すれば…どすこい!…黒の騎士団は崩壊して居た!」

 ルルーシュはスザクを持ち上げ投げ飛ばそうとしたものの、スザクはスザクで体を捻って見事に着地していた。…しかしルルーシュは何で残酷なの…!?そんな理由で日本人を…!

「君にとっては…ぐぬぬっ!…日本人もユフィも!どすこい!野望のための駒に過ぎないのかァ!!」

 スザク達は身体と身体をぶつけあい大きな音を撒き散らしている。しかし、やはり相撲は日本文化と言うべきか、筋肉量で劣るスザクが見事にルルーシュと互角の戦いを演じている。

「全ては盤上のことだ!どすこい!全ての罪はこの俺にある!ふっ!はっ!だが、ナナリーは関係ない!」

「卑怯だ!うぐっ!ナナリーをだしにして!!」

 …?ナナリー総督?何故ここでナナリー総督の話が…?そして、スザクとルルーシュの攻防は階段際になっていた。流石にあの階段を転げ落ちれば私やルルーシュでも打撲くらいするはず…。二人は必死の攻防を繰り返していた。

「ルルーシュ…!きみはっ!どすこい!許されるとどすこい!思ってどすこいどすこい!居るのか!どすこい!」

「どすこいどすこい!許す許さないじゃない!どすこい!俺はナナリーを助けたいだけだ!どすこいどすこい!そのためには!どすこい!お前に頼むしかないんだ!」

「それは人に物を頼む態度じゃないんだよ!!」

「お前が口で言っても分かってくれないからだろ!!」

 ゼロがナナリー総督を助ける…?一体何を言っているのだろう…?

 ふと、スザクの手が緩んだように見えた。もしかしてスタミナ切れ…?まさかスザクが負けるなんて…!そう思った瞬間…

 

「ルルーシュッ!」

 

 ルルーシュの顔面にスザクの拳が突き刺さっていた。

「おい!パンチは相撲じゃ反則だろう!」

「うるさい!ギアスなんてものを使って人を操る君に反則だとか卑怯だとか言われる筋合いはないよ!」

 確かに、ルルーシュ…いや、ゼロにだけは反則だなどとは言われたくはない。スザク…やっちゃいなよ、そんな悪者なんか!

「スザクッ!」

 ルルーシュの拳がスザクの顔面をブチ抜いたが、スザクは反撃に蹴りを繰り出していた。とはいえルルーシュもそんなに黙って殴らたり蹴られたりされるほど柔な鍛え方はしていない。蹴りを腕で防御し、スザクを突き飛ばして距離を取っていた。

 

「かかってこいルルーシュ!君はなぜ僕に鍛えろとギアスをかけた!?」

「…?何の話だ!」

 二人は同時に走り出し、スザクはルルーシュの顔面に一撃を、ルルーシュはスザクの顔面に一撃を叩き込んでいた。お互いに顔面への殴打は中々キツかったのか、ふらふらと距離をとっている。…一度呼吸を落ち着かせるつもりだろう。

 

「クロヴィス殿下殺害の時、俺を助けたのは何故だ!?」

「日本人を信用させるためだ!」

 やはりそういうことか…!ルルーシュ…いや、ゼロめ、許せない!もしかしたらルルーシュは友人であるスザクを助けるためにやったと思ったのに!

 スザクはルルーシュのボディに一撃を、ルルーシュもスザクのボディに拳を一撃ずつ叩き込んでいた。

 人間、顔面に対する殴打による脳震盪ばかりをイメージしがちだけど、あのボディへの一撃というものは中々来るものがあるはず。そして一度距離をとって互いに睨み合っているようだ。

 

「ホテルジャックの時、生徒会のみんなを助け出したのは何故だ!?」

「黒の騎士団のデビューに使えると思ったからだ!」

 やはりそういうことか…!ルルーシュ…いや、ゼロめ、許せない!もしかしたらルルーシュは生徒会のみんなを助けるためにやったと思ったのに!

 三度目の正直というべきか、二人は再度同時に走り出し、スザクはルルーシュの顔面に回し蹴りを叩き込み、ルルーシュは膝蹴りをスザクの腹にブチ込んでいた。

 

 お互いノーガードでの殴り合いに体力がつきたのか、仰向けになって倒れてしまった。

「…嘘だな。君の拳を受ければわかる。君は本気じゃない、わざと僕に殴られて罰を受けて居るつもりか」

 …え?そうなの…?いや、そんなはずはない…だってルルーシュは…いや、ゼロは陽菜達を殺したのだから…!

 

 やがて、体力が回復したのだろう、二人は起き上がり、再び向き合っていた。

「嘘なら…ルルーシュ、君の嘘を償う方法は一つ、嘘を本当にしてしまえばいい。君は正義の味方だと嘘をついた…だったら、本当に正義の味方になってみろ!!ついた嘘は最後まで突き通せ!この戦いを終わらせるんだ!君はゼロ、僕よりも頭が良くて筋肉もある、そんな君にしか出来ないことを!世界を平和に、みんなが幸せになるやり方で!!」

 そう言うとスザクは少しだけバックステップを踏み、ルルーシュを睨んでいた。ルルーシュは何故か頷き、仁王立ちをしている。

 スザクはそこから助走を取ってルルーシュの顔面にドロップキックを叩き込んできた。ルルーシュはそれを甘んじて受け、吹き飛ばされている。石段を転げ落ちたがしばらくすると登ってきてまたスザクと対峙していた。

「ナナリーを守りたいのは僕だって同じさ、ルルーシュ」

「ありがとう、スザク…」

 スザクから差し出された手にルルーシュが手を伸ばしている。突如感じた気配に背後を振り返るとカノンさんが口に人差し指を当てて立っていた。…静かにしろということか。我ながら二人の真剣勝負に魅入ってしまい気配に気が付かなかったらしい。よく見れば数人の歩兵が居り…ふむ、どうやら囲まれている様だ。

 

 そしてスナイパーが現れた、ルルーシュの脇腹を狙撃せんと銃を構え始めた。

「ディゼル卿は我々が発砲したらゼロの確保に向かってください。」

「分かりました。」

 スザクは何故かルルーシュ…ゼロに納得している風だが、私にはそれが理解出来ない。確かにルルーシュはマッスルガイで、付き合いも2年ほどにはなる。だが、ルルーシュは私達を欺いてテロリストとして活動していたのだ。許せることではない。

 

 そしてルルーシュに向けた発砲が行われたので私もすぐに飛び出す。

 

「そこまでよルルーシュ…いえ、ゼロ!」

 流石のマッスルガイであるルルーシュも腹に風穴が開けば思わず痛みでうずくまってしまったようね。というよりも、我々の様なマッスルガイは普段痛みというものにかなり耐性を持っている。故にいざ痛みを感じた際にパニックに陥ってしまうのだ。

 私がルルーシュを地面に押さえ付けると、他の歩兵達も出てきだようだ。ルルーシュはそんな状況に心底驚いたのか、左右を見渡している。

「スザク…!俺の踏み心地はそんなに良かったか!?一度ならず二度までも俺を踏み台にするのか!!」

「ち、違う!ルルーシュ!」

 ルルーシュは押さえつける私を力を振り絞り跳ね除けようとするが、今のルルーシュはスザクとの相撲で体力を消耗し、腹に風穴が開いているのだ。万全の力など出せようはずもない。

「スザク…俺が馬鹿だったよ。お前にだけは…使いたくなかったんだがな!!」

 一体…何を?まさか…!

 

「ルルーシュ ヴィ ブリタニアが命じる!スザァク!!貴様は…"私の奴隷となれ"!!!」

 




補足説明
・式根島にてスザクに鍛える様に仕向けたのはマーヤの絶対鍛錬のギアスです。
・上記により、ルルーシュはまだスザクにギアスをかけていませんでした。


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TURN15′

 一瞬の油断だった。ルルーシュを押さえ付ける私は放たれたスザクの回転蹴りをモロに喰らい、吹き飛んでしまった。

「ふふ…ははは!ははははは!最初から…最初からこうしていればよかったんだ。何が友達だ。馬鹿馬鹿しい…我が奴隷よ!ここにいる目障りな者達を蹴散らせ!」

「イエスユアマジェスティ…」

 吹き飛ばされた私が駆けつける頃には半分以上の兵士がスザクによりタコ殴りにされていた。

「ははははは!いいぞぉ!スザク、お前のマッスルパワーでこの場のブリタニア兵を消し去ってしまえ!」

 流石の私もルルーシュとスザクを同時に相手にするのは難しい…!何か手はないだろうか…!

 そうだ!目には目を!拳には拳を!ボディーブローにはボディーブローをだ!つまり、ギアスにはギアス!私はスザクに意識を向ける。

「スザク!貴方ならギアスになんて負けないはずよ!意志を強く持って!貴方は"鍛えられているのだから"!」

「…う!うぅ…俺は…!僕は…!」

 よし!スザクの動きが止まった!今のうちに…

 

 

 スザクを鍛えないと!

 

 

 スザクの腹にさっきのお返しとしてドロップキックを叩き込み、吹き飛ばされている空中のスザクに追いついてからの!アームハンマー!

 落下地点に先回りして、膝を背骨に叩き込むッ!!

 

 …っあれ?私は一体何を…

「馬鹿な…!この一瞬でスザクが…!?」

 …そうか、スザクを鍛えようとした結果…『私がスザクをボコボコにする』という困難を与えてしまったようね…よし、生きてはいるわね…。

「今よ!ナイトメア部隊!」

 カノンさんの号令で突如ナイトメア部隊が現れ、ルルーシュに対して発砲を開始した。ルルーシュはスザクを庇う様に前に立ち、ナイトメアのアサルトライフル弾を何と拳で弾いていた。

「おい!マーヤ ディゼル!」

 

 …はっ?今私…?

 

「ディゼル卿!今の話は本当ですか!?」

 …どうやらまた"質問に答えて"しまっていた様だ。

「まさかお前もギアスユーザーだったとはな…!自他を鍛えさせるとは何で羨ましいギアスを…こうなったら…!」

 ルルーシュ…いやゼロは突然その全身の筋肉を膨張させ、ダブルバイセップスのポージングを決めた。腹に風穴が開いているはずなのに見事な筋肉のキレだ…!

 

 そしてそれが合図かの様に援軍に来たナイトメア部隊は突然の銃撃に沈み始める。現れたのはグロースターだったが、背中のフロートシステムは何故か黒の騎士団などが使っている物と同じだ。

『ルルーシュ!』

「その声はコーネリア皇女殿下!何故ゼロと…!?」

『マ、マーヤ…!…これには事情が…!』

 何ということだ。おのれゼロ…!スザクだけでなくコーネリア皇女殿下まで奴隷にしたのか…!

 コーネリア皇女殿下の駆る空飛ぶグロースターが瞬く間にブリタニアのナイトメアを無力化していく。流石はコーネリア皇女殿下、奴隷になってもその実力は本物ということだろう。

『姫様!どうして裏切ったのですか!?』

『訳は話せぬ!許せギルフォード!』

 そう言ったコーネリア皇女殿下はギルバートGPギルフォードさんの乗っているヴィンセントを蹴り飛ばし、ルルーシュとスザクを乱暴に掴んでから飛んでいく。

「ディゼル卿…一先ずトウキョウ租界に戻りましょう。このことをシュナイゼル殿下に報告しなければ」

「じゃあ私は先に帰ってますね!」

 一足先にダッシュでトウキョウ租界に戻ると、すぐにシュナイゼル殿下のいる部屋に向かう。ノックをしたら勢い余って扉を破壊してしまったが…まぁそっちは後で弁償すればいいだろう。

「枢木卿がゼロの…ルルーシュの手に堕ちたのは残念だ。それにコーネリアもね。…今は兎に角君だけでも戻ってきてくれた事を喜ぶべきだろうね、マーヤ。…今君にまで居なくなられてはナナリーも悲しむだろうから。…ゼロのギアスなるもの、マーヤは知っているんだよね?君の知っている事を全て聞かせてくれないか?」

「はい。…ルルーシュ…いえ、ゼロの持つギアスは相手を操る事ができます。実は私も『質問に答える』というギアスをかけられている様で…」

「なるほど、だから君はゼロに『今何をした』と訊かれて『何って…絶対鍛錬のギアスを使っただけだが?』と答えたのか…。君のギアスについてはまた詳しく聞くとして…ゼロは枢木卿に奴隷になる様に命令したんだよね?」

 私は頷く。…というか私そんな風に回答したのか。

「…君のその様子だとどうやら君は質問の内容を覚えていない様だね?」

「はい。…というより質問された…いえ、何をされたのかも分からず、ただ少しぼうっとしてたなと思う程度です。」

「なるほど、どうやらゼロのギアス…相手の思考を封じて無理矢理命令に従わせるというプロセスには大脳への介入がある様だね。その副作用とでもいうのか、ギアスの効果の前後では記憶に不具合が生じるのだろうね。」

 …そういう原理だったのか。流石はシュナイゼル殿下、限られた情報からすぐにそんな仮説が立てられるとは。

「それにしても枢木卿には奴隷になれとギアスをかけ、マーヤには質問に答えろと…。ふむ、恐らくゼロのギアスは一人につき一度しか使えない様だね。でなければマーヤにも奴隷になれと命令するはずだからね」

「確かに…」

 それから私の絶対鍛錬のギアスについても説明をするとシュナイゼル殿下は何かを確信した様に頷いた。

「ありがとうマーヤ。君のお陰で全ての手札が私の手の中に集まったよ。」

 それと同時に破壊されたドアからナナリー総督が入ってきた。しかも車椅子を押しているのはユフィである。二人ともシュナイゼル殿下が呼んだのだろうか?

「やぁユフィにナナリー、呼びつけてしまって悪かったね。」

「いえ、私は構いません。シュナイゼルお兄様」

「私も久し振りに牢屋から出られて嬉しかったです。」

 皇族の方だけで話でもするのだろうと思い、私は部屋を出ようと扉の方に歩き始めるとシュナイゼル殿下に呼び止められてしまった。

「待つんだマーヤ。君にも聞いてほしい話なんだ。」

「それは失礼しました。」

 改めてシュナイゼル殿下のそばに戻ると、シュナイゼル殿下は一枚の写真を取り出した。

「まぁ、これは写真ですか?」

「写真?」

 ユフィはともかく、目が見えないナナリー総督に写真を見せても意味はないだろうと思いつつ、写真を見てみるとどうやら子供を含む4人の人物の写真…家族写真だろうか?黒髪の少年と…栗毛の少女…それに黒髪の女性が写っている、そして…

「まぁ!これはルルーシュですね、ナナリーも写ってますよ」

「お兄様と私が?」

 …?ナナリー総督のお兄さんが…ルルーシュ?言われてみれば確かに面影がある。ナナリー総督も目が見えている頃なのかクリクリとした可愛らしい目を見開かせている。…今とは想像ができないほどにアグレッシブなポージングを決めてるのが気になるけど。

「それにこちらはマリアンヌ様ですね。」

「お母様の…私も見たかったです。」

 …正直言って目の見えないナナリー総督の近くでナナリー総督の家族写真を見るなんて新たな嫌がらせなのではないだろうか?しかし気になることがある。

 

 写真には4人の人物が写っているのだ。

 

 黒髪の少年、ルルーシュ。栗毛の少女、ナナリー総督。黒髪の女性、ナナリー総督達のお母さんであるマリアンヌ様。最後の一人は…。

 

 黒髪の少女。

 

「…私は宰相ということもあってね、色んな報告書類に目を通す機会がある。でもね、ブリタニアでは度々書類と人々の記憶が異なる場合があるんだよ。例えば…E.U.攻略のために派遣されたニクアツ マッスルガイなる人物…確かに存在する記録はあったものの、彼の来歴を辿っても彼が存在したという人々の記憶は存在しない。彼の高い能力と筋肉があればいくらでも噂が立ちそうなものだよね?でも、それが無い…」

 記憶と記録が食い違う…。そういえばV.V.くんが皇帝陛下には記憶改竄のギアスがあると言っていたっけ…。まさか…。

「今回ゼロの正体がルルーシュだと分かった今、ある仮説が立てられる。ニクアツ マッスルガイの正体はルルーシュだよ。ニクアツ マッスルガイの高い能力も正体がゼロであるならばおかしくは無い。ゼロやマーヤがギアスを持っていたなら…そうだね、記憶を改竄する様なギアスをブリタニアの誰かが持っていてもおかしくは無いんだ。…例えば父上とかね。…ここまでの話を聞いて何か言いたいことがあるんじゃ無いかい?ナナリー」

 ここでナナリー総督の話…?一体なんだろうか。

「マーヤさん。私は昨年までアッシュフォード学園に通い、生徒会にもよくお邪魔していました。…マーヤさんとも会っています。マーヤさんは覚えてませんか?」

「私が総督と…?」

 何だそれは…全く覚えがない。…あれ?そういえばさっきの写真にロロが写ってなかった様な…

「ルルーシュの弟にロロって人はいますか…?」

「ロロ…?初めて聞く名前だね。…なるほど、ナナリーの代わりにルルーシュに与えられた偽りの弟と言うことか。恐らく監視役だろうか」

 そんな…。

「でもロロとルルーシュはとても仲が…あっ…」

 そうか、ルルーシュには人を意のままに操るギアスがある…!

「監視役のロロにギアスをかけ本当に弟にしてしまったのだろうね。恐ろしい力だよ」

 なんて卑劣なんだ…!ルルーシュめ…許せない…!

「…さて、話を戻すとね、見えてきたんだよ。この写真に写る黒髪の少女の正体が。…君はルルーシュの双子の姉。マーヤ ヴィ ブリタニアだ。」

「なっ…!?」

「まぁ!マーヤがルルーシュの…?」

「つまりマーヤお姉様…ってコト!?」

 私は事故のせいで過去の記憶がない。言われてみれば写真の少女は確かに私。まだ鍛え始める前の…貧弱な美少女時代の私と言えるものだ。

「私も初めて見た時は驚いたよ。それに失礼だがマーヤだとは思わなかった…年月も経っているし、今とは別人だからね。」

 確かに髪色と髪型、髪飾は同じだがそんなものいくらでも変わるものだ。顔に面影があると言ったって今はこんな立派なマッスルウーマンになっているのだ…気付けなくてもおかしくはないだろう。

「そっか、じゃあ私達と一緒にルルーシュの四肢を引っ張った最後の一人はマーヤだったのですね!」

「え?」

「学園祭の時にお話ししたんです。昔お兄様と結婚するって言い争って私、ユフィ姉様、コーネリアお姉様でお兄様の四肢を引っ張って四肢脱臼をさせたって思い出話を」

 学園祭の話も思い出せないし、そんなルルーシュを引っ張った思い出もない…というかコーネリア皇女殿下、あの人…小さい子に混ざって何やってんの!?

「…両手てに花を通り越して両手両足に花とはルルーシュは羨ましいね。ははは」

「まぁ!では今からでも…」

 ユフィはシュナイゼル殿…あー…ゼル兄の腕を掴もうとしたが、ひらりと躱されてしまっていた。

「冗談でもやめてくれ」

 

 しかし、私が仮にルルーシュの双子の姉だとして…父親はシャルル皇帝陛下ということになる。ここまではいい。だが、このマリアンヌさんなる人物が母親…。では私をエリア11に連れて行ったあの科学者の女性はどうなる?…ダメだ。事故やギアスのせいで全く思いだせない…。

 …考えてみればお父様の記憶改竄のギアスはコードを持っていてギアスの通じないV.V.くんには効いていない筈。そしてV.V.くんはお父様のお兄様なわけだから叔父様である。…え、私、ずっと実の叔父にくん付けして呼んでたの…?そして、V.V.くんは私のことを姪だと分かった上で…今まで交流していたの…?

 

 実の叔父を女装させたり抱き抱えたりと無茶苦茶だけど…怒ってたりはしないよね…?




はい、というわけで作者です。
原作を忠実に無視し続けた結果、なんとマーヤはルルーシュの双子の姉になってしまいました。夢女みたいだなぁ()

マーヤがルルーシュ並みのマッスルウーマンなのはブリタニア皇族の血を引いていたからなんですね〜

因みにちゃんとマーヤがブリタニア皇族という伏線は張ってます。時間があれば確認してみてください。
・アーニャ(マリアンヌ状態)の反応
・V.V.の反応
・ナナリーがルルーシュとマーヤを間違える
・マーヤがオデュッセウスの顔を殴りたいと思ってしまう


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TURN16′

 スザクの寝返りにより、トウキョウ租界の守備が手薄になってしまった。その為、比較的余裕のあったキュウシュウからルッキーが戻ってきてくれるらしい。とは言え、それまでは私とワイヴァンナイツが主力、キュウシュウではカレンを倒した星刻という人物と、卜部と呼ばれるモニカと関わりの深いパイロットの存在が確認できたものの、ゼロや藤堂と言った主力は見られなかった。更に、シュナイゼル殿下が潜ませている『ウルフ』からもゼロら主力によるトウキョウ租界への奇襲が報告されているとか。

 私も出撃のために格納庫に行くと、スザクの裏切りにより乗り手不在になったランスロットが目に入る。

「まさかスザクくんがゼロに寝返ったなんて…」

「はーぁ…最高のパーツだったのにな…彼。でもまぁ、戦術兵器のランスロットに戦略兵器を撃たせる事態にならなくて良かったのかもねぇ」

「ふん…結局スザクもイレブンだったってことですよ」

 我々の頭がおかしくなったと思われないためにもギアスのことは一部の秘密となっている為、スザクの意思で裏切ったとも言えず、スザクが悪く言われるのは少し心苦しい。…が、おそらくきっとこれも私のギアスにより無自覚にスザクへと困難が向かっているに違いない。そんなものがあるかは分からないが、ギアスが解かれた暁にはきっとスザクは今よりもずっと鍛えられ…てると良いなぁ…。それにしてもニーナの所属するインヴォーグはエリア11にはない筈。何故ここにいるのだろう?どうやらニーナもこちらに気付いたらしく、こちらに手を振ってきた。私も小さく振り返し歩み寄る。

「中華連邦以来ね。こんなところで何やってるの?」

「前に話した爆弾の話覚えてる?」

「えぇ、勿論。…あぁ、それが完成したってことね?」

 なるほど、それで戦術だの戦略だのと言っていたのか。…ん?戦略兵器?

「マーヤにも約束したでしょ?だから用意したの!マーヤのために作ったフレイヤ…名付けて『フレイヤ・ボール』!」

「フレイヤ・ボールね…」

 見せられたそれはナイトメアの手にいい感じに収まりそうな大きさの球体にしか見えないが…バツの悪そうなセシルさんとロイドさんを見れば危険な代物なのだとわかる。…特にあのロイドさんにすらそんな表情をさせるのだ。普通の兵器なはずがない。

「起動してから3秒後にて内部のサクラダイトが起爆して核分裂反応を起こし半径1kmの球体状のエネルギーを発生させてね発生させたエネルギーに触れたものを跡形もなく消滅させるんだけどこの時球体内部の空気すら消滅してしまって球体の縮小・消滅後は真空となった圏内に周辺の空気が流入して第二次第三次影響圏内に強烈な突風が発生しちゃうから広範囲に甚大な被害を及ぼすんだけど放射能とかは残らないのでとっても安全なの!」

 …なるほど、要約すると3秒後に半径1kmを跡形も無く消し飛ばす爆弾ということらしい。安全とはいうが、強烈な突風をトウキョウ租界周辺で起こそうものなら何が起こるかわかったものではない。

 

 だが、いざという時ゼロを差し違えても倒す為にこれは有効だ。

 

「ありがとうニーナ。大切に使うね」

「ううん!気にしないで!フレイヤ・ボールは10個作ったの!」

 …そんなには…要らないかな…。こうしてサグラモールに2個のフレイヤ・ボールを携帯させ、私は出撃した。

 第二次トウキョウ決戦とでも言うべき戦いにおいて、恒例とでも言うべきゼロの秘策はゲフィオンディスターバー…式根島で見せたサクラダイトに干渉するあのシステム…だった。だが、『ウルフ』によりシュナイゼル殿下はゲフィオンディスターバーを知っていたため、歩兵部隊の爆破処理により早々に復旧、これならば俄然こちらの方が有利…ルッキーが援軍にこれば決定打となる…!

『これは…まさか!読まれていた!?俺の策が…!』

「残念だったわねルルーシュ…いいえ、ゼロ!貴方の相手は私よ!」

 お互いにそんな自覚は無かったとしても…双子の弟なのであれば姉である私が止めるのが務めだろう。

『ディゼル卿、姫様は我々で抑えます、ゼロの相手はお願いします。』

『マーヤ!青いやつと黒いやつは俺達が抑える!お前はゼロを頼んだぜ!』

 敵の主力はギルバートGPギルフォードさんとワイヴァンナイツが抑えてくれる。残りは守備部隊が抑えてくれるはずだ。ならば私はゼロのみに集中すれば良い…!

『…なるほど、中華連邦でのリベンジマッチと言うことか…だが!』

 ルルーシュのナイトメアの胸部が開いた…あのビームが来る!

『受けよ!』

「そんな攻撃が私に…」

『当たらない…か?避けてみるが良い、政庁への攻撃が看過できるならな!』

 残念だけどルルーシュ…その手は効かないわ。ゼル兄が教えてくれたことだけど、政庁への攻撃をするなと部下に命じていることをこちらは知っている…つまり狙いはナナリー!そのナナリーに危害が加わる恐れのある攻撃をルルーシュはできない!

『…チィ!こいつ…!』

 狙い通りルルーシュはビームを撃つことができず、その間に私は距離を詰めることに成功する。

「ルルーシュ!」

『マーヤ!』

 スパイク型MVS付きのガントレットを展開した拳での殴打は当然の如くルルーシュの絶対守護領域に塞がれてしまった。だが!

「ハーケンフィストォ!」

 副腕の一つのハーケンフィストを射出し、ルルーシュの背後へと拳を飛ばす。

『チィ…!後ろからも拳が!』

 これも絶対守護領域で防いだけれど、それは想定内…『ウルフ』の情報ではルルーシュのナイトメア…蜃気楼は破壊力、機動力、防御力の全てが備わった最強のナイトメアではあるが、弱点がある。だから今回はその弱点を突かせてもらう。

 ルルーシュもこちらの猛攻に耐えかねたのか、拳に絶対守護領域を展開し、ハーケンフィストを絶対守護領域で器用に防御しながらこちらにラッシュの連打を繰り出してくる。だが、私はその動きを一度見ている…だから!

「ルルーシュ、その技は既に見切ったわ!」

『何!?』

 自身の策が読まれて動揺し、更にハーケンフィストによる攻撃への防御で集中力を欠いている…そんな不完全な状態なのであれば攻撃を見切る事は可能!ルルーシュの拳を開始して反撃の殴打を見舞う。…流石に絶対守護領域で防がれているけれど

『貴様…まさか蜃気楼のエナジー切れを…!?』

 そう、ルルーシュの蜃気楼の唯一の弱点…それは攻撃、防御、高速移動のいずれにも絶対守護領域を使用すること。当然これだけのものを使用するには相応のエナジーを消費する。故にこちらの狙いはエナジー切れだ。攻めて攻めて攻めまくりエナジーを消耗させる…!補給なんてさせない!更にここでダメ押しというやつよ!

「ルルーシュ!私は本当は貴方の双子の姉よ!」

『何…?何を馬鹿な…』

「ルルーシュが幼い頃四肢を脱臼したことがあるでしょう?ナナリー、ユフィ、ネリ姉、そして最後の一人は私よ!」

『そんな馬鹿なことが…』

 その瞬間、ハーケンフィストが蜃気楼の脚部を破壊することに成功した。本当はコクピット狙いだがギリギリで避けられたようだ。

『…チィ!戯言で俺を惑わせて奇襲とは…!』

 卑怯な手だが、ルルーシュはそれほどの強敵、私には分かっている…あらゆる手段を使い確実に仕留める…!勝てば良かろうなのよ!

「行きなさいハーケンフィスト!」

 私は全てのハーケンフィストを射出し、四方向からの同時攻撃を仕掛けた。

『舐めるな!』

 ルルーシュの取った行動は的確な防御、だが甘い…!

「まだ脚が…残ってるのよ!」

『いけない…エナジーが!』

 要約私は蜃気楼に蹴りをブチ込むことに成功した。流石にこれでやられてはくれないが、かなりの優勢だ。このままいけば勝てる…!

『避けろ筋肉女!』

 …!私がフロートシステムにより高度を上げると、ハドロン砲とは別の赤い光が通過した。一体今のは…?

『ゼロは私が守る!』

 赤い…ナイトメア…あれは!

『筋肉女!何をぼさっとしている!』

 ルッキーのパーシヴァルが赤いナイトメアの射出された右腕を弾き返し、私の前にやってくる。あの赤いナイトメアは紅蓮聖天八極式…乗っているのはカレンだろう。一体何故戦場に…まさか奪われたのか…!

「…ッ!」

 咄嗟にその場から退避すると、真上から蜃気楼のビームが降ってくる。ルルーシュはこの一瞬の隙にプリズムを射出し、反射を利用して攻撃してきたのだろう。だが、今の蜃気楼はエナジー切れ寸前…私がカレンを抑えてルッキーにゼロを攻撃して貰えば…。いや、待てよ…?紅蓮が強奪されたってことは…!

 咄嗟に肘側のニードルブレイザーのガントレットからブレイズルミナスを展開して背後を防御すると、MVSの剣が二振り振り下ろされた。ランスロット…!やはり!

『ふははははは!どうやら戦局は逆転のようだな?マーヤ ディゼル!』

 しまった…完全に失念していた…!まさか政庁にカチコミを入れ、ランスロットを強奪するなんて…!こうなったら…これを使うしかない。フレイヤ・ボール…!跡形も無く消し飛ばすしか…!

『ゼロさえ倒せば!』

 ルッキーがハドロンショットを放つものの、絶対守護領域を破壊することはできず、更にその絶対守護領域を蹴る事で大きく加速…逃げる気か…!

「逃がさない…!」

『我が奴隷のスザクに命じる!マーヤ ディゼルを殺せ!』

『イエスユアマジェスティ…』

 どうにかしてルルーシュを追いかけたいが、カレンとスザクがそれを許すはずはない。

『おい筋肉女!枢木は私が抑える!お前は紅蓮を破壊しろ!』

「でも!」

『早くしろ!ゼロに戻られたら我々の負けだぞ!』

 そしてこのやり取りの中でも、スザクは構わずMVSで切り掛かってくる。サグラモールのニードルブレイザーからブレイズルミナスを展開して防ぎ、ルッキーが背後から攻撃するものの、素早く躱されてしまう。更に紅蓮の射出された右腕…!サグラモールのハーケンフィストは試験運用であり、完成形があれなのだ。輻射波動と呼ばれる必殺の右腕のリーチは今までと比べ限り無く長い…!更に恐ろしいのは紅蓮自身もエナジーウィングと呼ばれる新システムで高い機動力を持っていると言う事…だが、私がやるしかない!この苦難、乗り越えてみせる…!

『一気に決める!』

「させない!」

 射出された紅蓮右腕を回避しつつ、一気に距離を詰める。カレンもエナジーウィングにより距離を取ろうとするが、サグラモールのハーケンフィストのブースターを起動する事でこちらも加速が可能だ。

『へぇ…!流石ね、やるじゃない!』

 ハーケンフィストの一つを後方へ防御の為に回し、残りの三つでカレンを攻撃する。しかし、その圧倒的機動力を前に拳はいずれも空を切ってしまう。

「決めきれない…!サグラモールの性能も上がってるのに…!マシンポテンシャルの違いなど言い訳にしかならない…紅蓮に搭載されたマッスルデバイスにより恐らく今の紅蓮は60%ほどの性能しか引き出せていないはずだ。60%の相手に私は全力で負けている…これは私が鍛え足りないからに違いない…!更に、ルッキー達がいた筈の方向からヴァリスが飛んで来た。

『悪い…筋肉女…!』

 ランスロットを見ると左手と右脚を失った目に入る。ルッキーでもスザクは抑えきれなかったようね…。

 

『マーヤ、12時の方向に最大限の防御を!』

 

 突如入った通信に反応し、私は四基のニードルブレイザーからブレイズルミナスを発生させる。そして次の瞬間、私の眼前にはハドロン砲の赤い光が広がる…これは…シュタルクハドロン…!?サグラモールの出力が上がっていた為、なんとか防げたがかなり危険だった。しかし、私をも巻き込みかねないそれにカレンも流石に反応できなかったようで紅蓮のエナジーウィングを片翼だけ破壊することに成功していた。

「どうしてエリア11に…。E.U.にいた筈じゃ!」

『娘のピンチだもの。母親として当然でしょ?なんてね…』

 …?アーニャは一体何を言っているのだろう?

「アーニャ?」

 

『いいえ、今はマリアンヌ。貴方のお母さんよ』




親子(母娘)共闘とか熱くないですか?(作者の趣味)


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TURN17′

 援軍に来てくれたのはとても嬉しいが、自分よりも年下の女の子が急に『私はマリアンヌでお前の母親だ。』などと言われても正直困惑しかない。…いや、今はなんでも良い。自称お母さんのアーニャが放ったモルドレッドのシュタルクハドロンのおかげで厄介なカレンの乗る紅蓮は戦線離…

「ってそんなわけないわよね!」

 アーニャが変なことを言うから回避が遅れた…!いや、人のせいにするのは良くないか、すぐに右脚をパージすると、右脚はボコボコと内側から歪に膨れ上がりやがて爆散した。…この状況でもまだ戦うつもりとは…流石はカレンね…。

『飛べるからって…調子に乗るなァァッ!!』

 驚いた…右手の輻射波動を爆破させてその反動で浮き上がってくるとは…!

「でも、片翼では精々滑空程度!そんな機体で…!」

『マーヤ、危ない!』

 モルドレッドに蹴られた直後、モルドレッドは蜃気楼のビームの直撃をブレイズルミナスによって防いでいた。そうか…戻ってきたのね…!

「ルルーシュ…!」

『娘を守る…。息子とは闘う…。両方やらなくちゃいけないなんて…母親は辛いわね。マーヤ、私が援護するわ…まだ闘える?』

「当然…!」

 幸いサグラモールの腕は4つともまだ動く。ルッキーのお陰でランスロットの戦力は削げているし、紅蓮も機動力が落ちている。2対3だが絶望するには早いだろう。

『流石はマーヤ、私の娘ね。じゃあ私はルルーシュの相手をしてくるわ。マーヤは他の二人をお願い』

「待って!ルルーシュの蜃気楼は絶対的破壊力と圧倒的防御力、驚異的機動力を兼ね備えた最強無敵のナイトメアよ!モルドレッドの機動力じゃ…」

『あら、マーヤ…知らないの?私がなんで呼ばれていたか…』

 こっちとしてはルルーシュが皇族であったことも、というか私が皇族だったことも、そして自分の母親がマリアンヌという人であることもさっき知ったばかりだ。そのマリアンヌという人の異名など知るはずがない。

「ごめんなさい、知らないわ」

『"閃光のマリアンヌ"よ。たかが20歳前の若造に追い込まれるほど落ちぶれてないわ!』

 なんと、アーニャはシュタルクハドロン砲を侵攻方向とは逆方向に放つ事で機動力を確保し、ブレイズルミナスを展開して突撃していく。…取っている戦法がほぼルルーシュのそれと同じだけど…もしかしたら本当にお母さんなのかもしれない。

『マーヤ ディゼル、お前を処刑する。』

 ランスロットのMVSによる斬撃を躱しつつ、下方から放たれる輻射波動の砲撃をブレイズルミナスで防ぐ。かなり集中力は必要とするが、これならば勝てる…!

「ハーケンフィストォッ!」

 片腕のランスロットならばこれは防げないはず…だが、下からのスラッシュハーケンや輻射波動の砲撃により思うように攻撃ができない。どうにかして下のカレンだけでも止められないだろうか…。

「こちらマーヤ!メインストリートにて交戦中、リョウ、アヤノ、ユキヤ!そっちはどうなってる?」

『だめだ!オレンジ色の変なナイトメアや黒い奴に邪魔されてそっちにいけそうにねぇ!』

 ワイヴァンナイツ達はダメか…なら…

「ギルバートGPギルフォードさん!そっちはどうなってますか?」

『済まないがこちらも手一杯…!』

 …流石はネリ姉、結局この場は私一人でどうにかするしかないということか。

 瞬間私の視界に映ったヴァリスをブレイズルミナスで防ぎつつ、反転してハーケンフィストを射出すると、紅蓮の右手とぶつかった。

『へぇ…流石はマーヤ。やるじゃない』

 この二人…段々と連携が取れ始めている…!早めに決着をつけないと不味いか…。

『マーヤ!避けて!』

 言われてすぐ飛び退くと蜃気楼のビームが飛んできた。

「アーニャ!そっちは大丈夫なの?」

『これくらい平気よ、でも息子の成長が見れてなんだか感慨深いわ。ちょっと今から全方向にブッパするから当たらないでね』

「え?」

 一瞬だけモルドレッドを見ると、モルドレッドの全身に搭載された小型ミサイルがこちらに飛んでくる。ブッパという言葉に違わず、こちらのこともお構い無しの様な放ち方である。だが、お陰でスザクは片手で必死に防御をしている。今ならッ!

「貰ったッ!」

 4つのうち2つの腕を小型ミサイルを防ぐために防御に回しているので、残りの内の一つを射出する。だが、流石はスザク、MVSで小型ミサイルを叩き落としつつ器用に蹴りで弾いてくるとは…だが!

「拳はもう一つ残ってんのよォ!」

 射出したハーケンフィスト…今回はただの拳ではない。少々操作が複雑になるが、ブースターを工夫して拳を錐揉み回転させる。この貫通力なら装甲をブチ抜いて!

『やらせるかァ!』

 …!紅蓮が何かを投げた…お陰で軌道が逸れランスロットへの直撃は叶わなかった。

『今だ。カレン。』

『私に指示するな!』

 カレンに背後を取られた…まだハーケンフィストは巻き戻せていない。ランスロットから放たれるスラッシュハーケンを回避しつつ、背後から飛んでくる輻射波動の砲撃を躱し、ランスロットのMVSを拳で跳ね除ける。腕は2本分だが一気にラッシュを叩き込んでやる…!

「スザクッ!」

 こちらが全力で拳を繰り出しているのにも関わらず、スザクが凄いのか、ランスロットが凄いのか、それともその二つが原因か、サグラモールの拳はいずれも空を切るか、MVSでいなされている。…決めきれない…!?片腕の相手だというのに…!

「まだまだッ!」

 しかし、突如サグラモール内にアラートが鳴り響いた。いけない…流石に激しくやり過ぎたか、追加のエナジーを積んだりして余裕を持たせたつもりだが…エナジーが危険値を示している…!

 まさか手負いのスザクとカレン相手に決め切れないとは…私もまだまだ鍛錬が足りない…!

 ここで問題よ…このわずかなエナジーのサグラモールでどうやってスザクとカレンを打ち倒す?3択…一つだけ選ぶこと。

 答え①脳筋美少女マーヤは突如打開のアイデアを思い付く

 答え②アーニャやワイヴァンナイツの誰かが来て助けてくれる

 答え③打開出来ない。現実は非情である。

 

 答え③?あり得ない。非情な現実など拳で叩き割ってやるわ。故に答えは①か②…だが、視界の端では赤の光を伴い空を駆けるモルドレッドと桃色の壁を形成し動き回る蜃気楼が見える。彼方にこちらを助ける余力はないだろう。そして戦況を確認すればワイヴァンナイツはいずれも健在だが、敵機も落とせている気配がない。故に答え②もないということだ。

 つまり答えは①…きっと数秒後にはこの脳まで筋肉で全身が筋肉のため実質的に全身が筋肉という脳で拡張的思考が可能な脳筋美少女のマーヤが反撃の妙案を思いつくに…思い付いたわ!

 このままじゃやられるのだ。こうなれば少し卑怯な手だが、この前と同じ手でスザクに隙を生じさせるしか無い。そう、天才脳筋美少女である私が導き出した打開のアイデアは…『スザクにギアスを使う』よ!私だって過去に戦闘中のルルーシュから質問をされるという手口を使われているのだ。それに、過程は大切だけど、過程に拘って目的を成さなきゃ意味ないのよッ!

『これで終わりだ』

「そうかしら?」

『何…?』

 スザクにギアスを…絶対鍛錬のギアスで苦難を与えるッ!

 

「マーヤ ヴィ ブリタニアが強いる数々の耐え難き苦難…枢木スザク!凌ぎ、抗い、"鍛えよ"!」

 

 …なんだか小っ恥ずかしい口上がすらすらと出たわ…。これで効いてくれると良いのだけど…

『…!?ぼ…僕は…!?俺は…!?』

 よし!隙が出来た…!ここで私が負けるわけにはいかない…許してねスザク!

 ランスロットの顔面に拳を叩き込み、更に腹に膝蹴りを叩き込む。そして吹っ飛びかけるランスロットの残る脚を副腕で掴んでから2本の腕でアームハンマー叩き込んでブチ折る。…いけない自分のギアスの影響で自分が操られてる気がするわ。

 すると、ランスロットは徐に腰に手を伸ばし、何かを取り出す。あれは…銃…だろうか?今更そんなもの一つでやられるほど私は…いや、待て…何故ランスロットに私が見たことのない武装が…?まさか…!

『逃げてマーヤ!』

 突然の通信…この声はニーナ…やはりあれは…!

『あれはフレイヤ弾頭よ!早く半径10km以内から逃げて!マーヤが消し飛んじゃう!』

「10km!?フレイヤは1kmの筈じゃ…!?」

『フレイヤ・ボールのまで半径10kmにしたら投げるマーヤまで巻き込んじゃうでしょ!?』

 それもそうか…いや、しかしまずい…ここで撃たれたら…政庁に居るナナリーとユフィとゼル兄が…!

「まだ間に合う…いや、間に合わせてみせる!」

 ハーケンブースターを伴う急加速でランスロットに距離を詰め…

『させるかァッ!!』

「こんな時にッ!邪魔をォ…するなッ!カレンまで消し飛びたいの!?」

『アタシを消し飛ばせるもんならやってみなァ!』

 そうか…!黒の騎士団はフレイヤを知らない…!もはやランスロットを止められるのは私だけだ。だからこそ、下からぶっ飛んできた紅蓮を蹴り飛ばし、ハーケンフィストを4つ飛ばす。流石のカレンも片翼のナイトメアでは機動力が足りず、右拳が突き刺さった。だが、この一瞬の攻防をスザクは見逃さず、ランスロットによるフレイヤが放たれてしまう。

「しまった…!」

『何…あれ…何かヤバい!』

 破壊の光が…広がっていく。みんな…みんな死んでしまう。だが…

「また…陽菜達みたいに失うわけには行かないッ!」

 ナナリー達を助けに行こうと政庁に向けて戻る私に対し、行手を阻んだのは…モルドレッドだった。

『ダメよマーヤ。行かせないわ。貴方がV.V.に利用されているとしても…我が子には違いないもの。』

「待って!政庁にはまだ!」

『待たない、抵抗しないでマーヤ。良い子だから。それに…もう手遅れよ』

 見れば破壊の光は政庁を呑み込んでいた。なんという事だ…!…悲しい事だが、こうなればなんとしても生き残りスザクやルルーシュを止めなければ…!でも…あの光の速度…脱出が間に合わない…!

『諦めないでマーヤ、二人で協力すればギリギリ射程外に出られるはずよ!』

 …確かに、モルドレッドとサグラモールのフル出力なら…!

「アーニャ…いいえ、母さん!しっかりサグラモールに捕まってて!」

『ええ、もちろん!』

 しかし、破壊の光は徐々にこちらに迫ってくる。やっぱり…ダメなのか…?

『マーヤ、まだブレイズルミナスを発生させるエナジーは残ってるの?』

「エナジー…?1回分くらいはあるには…あるけど…」

 だが、ニーナの話ではブレイズルミナスで防げるような代物ではないだろう。もうダメよ…お終いよ!逃げ切れるはずがない…!

『だったらブレイズルミナスを発生させなさい。』

「でも…」

『良いから。母さんを信じて、ね?』

 言われた通りブレイズルミナスを展開すると、モルドレッドは突如サグラモールから離れ、肩のアーマーを変形させていく。まさか…!?

「ダメ!母さん!」

 

『最後くらい母親らしい事をしてもバチは当たらないわよね』

 

 モルドレッドのシュタルクハドロンを正面から受ける事でサグラモールは勢い良く加速した。このままならギリギリ10kmから脱出できるだろう。だがそんなことをすれば当然モルドレッドは…

『いい?マーヤ…V.V.を信用しちゃダメよ?私を殺した犯人はV.V.なの。…シャルルにもよろしく言っておいて頂戴。…じゃぁね、マー…』

 

 そのままモルドレッドは破壊の光に包まれ、母さんは粉微塵になって死んだ。




【悲報】アーニャ、肉体を勝手に利用され、そのまま死亡

マーヤの本名バージョンのギアス詠唱ですが、本当は全く必要ありません。まぁ、原作ルルーシュもフル詠唱と命令だけバージョンがありますしね


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TURN18′

 スザクによるフレイヤの発射はトウキョウ租界を呑み込み、多くの命を粉微塵に消し飛ばした。その中には私の母、マリアンヌを名乗るアーニャのものもあった。如何なる命令をも下せる力や記憶を書き換える力、鍛錬を強制する力があるのだ。なんらかの力でアーニャの体に取り憑いて居たのだろう。きっとあれは本当に母だったのだ。そして、その母は死んでしまった。粉微塵になって。

「お母さ…うっ!」

 突然の頭痛に思わず頭を抱えて目を瞑むってしまう。いかに肉体を鍛え、あらゆる外傷に強くなったとしても、こういった内側からの痛みには慣れないものだ。

 

 目を瞑ったはずの私の眼前には、幼い頃に見た研究所が見える。側にはかつて母だと思っていた女性と、父だと思っていた男性が見える。

 そうだ、この日私は不注意から机の上のビーカーを落としてしまって…

『お前は何度言ったら分かるんだ!』

 そうだ、男の人に頬を叩かれたのだ。

『お前なんて本当の…!』

『あなた止めて!」

 女性と男性が言い合っている。そして私はこの時思ってしまった。私は…もっと強い子になれば怒られないと。そしてもう一つ思ったのだ。言い争う彼らを見て…。

 

 人が人に優しくする為に必要なものは何か、それは己の余裕だ。己に余裕が無くなれば自然と人は他人に対し攻撃的になる。では己に余裕を持たせるにはどうすればいいか?簡単だ、多少の困難など笑い飛ばせるほど鍛えられていればいい。

 圧倒的な筋肉。痛みも、怪我も、病気も跳ね除けるほど鍛えられた肉体、どんな過酷な環境も、労働も、苦とも思わぬ筋肉。全身を筋肉とし、同時に脳とする事であらゆる事態に対応できる知識を蓄える。

 

 つまり筋肉。筋肉は全てを解決する。

 

 鍛えるという行為は結果として世界を優しく変えられるのだ。だから…そこからの私はきっと無意識だったのだろう。今ならわかる事だが、恐らく私はあの科学者の女性のところに預けられる前に記憶を書き換えられている。己が皇族であったということを。だが、V.V.くんが私を保険とした理由…私がギアスを持っていることを恐らく皇帝陛下は知らない。知らないが故に、日本に居だ頃も私のギアスは忘れ去られることなく私に宿っていた。

 そして、ギアスは失われたはずの記憶を掘り起こし、こう唱えさせた。

 

『マーヤ ヴィ ブリタニアが強いる、数々の耐え難き苦難…。"お父さん"、"お母さん"は…凌ぎ、抗い、…鍛えよ!』

 

 それがきっかけだったのだろう。彼らはお互いを鍛えようと、何をしたかは知らないが…突如研究所は炎に包まれた。熱い…熱い…。炎と煙で前が見えない。苦しい…苦しい…。炎の向こうに人影が見える…

『マーヤ…強く、生きて!』

 あれは…お母さんだと思っていた人…そうだ。アレは私のギアスが引き起こしたのだ。

 

 そして私のギアスは私に苦難を強いる為、この記憶を封印したのだ。いつか真実を知った時に心を鍛える為に。私のギアスは己や他人に鍛えることを強制する。そして周囲の環境がその人を鍛えんと変化する。でも、もしも鍛えることを強制された人がその苦難に耐えられなかったら?その答えがあの2人だ。彼らは苦難に耐えられず死んでしまった。そして両親の死は私に苦難を与えた。私に苦難を強いるこのギアスは私を鍛える為に私を孤独にするだろう。だが、孤独になろうとも問題はない。何故なら筋肉…筋肉は孤独をも克服する…!

 

 ナナリーを巻き込んだフレイヤのせいか、ルルーシュは黒の騎士団によって撤退させられ、我々ブリタニア軍も立て直しを余儀なくされた。幸い、ルッキーはフレイヤに巻き込まれずに済んだ様で現在はブリタニア軍の立て直し指揮を取っている。ネリ姉もコクピット付近ギリギリまでをフレイヤに飲み込まれていたが幸い怪我もなく無事に見つかり保護された。だが、今は合わせる顔がない。ナナリーもユフィも死なせてしまった私には。ゼル兄を失ってしまった事でブリタニアもかなり困惑するだろう。…あれ、携帯が鳴ってる。V.V.くんから…!?そういえば私の執務室に押し込んでいたのを忘れていた。

「もしもし?V.V.くん!?」

『やあマーヤ。酷いなぁ君も、政庁がフレイヤに飲み込まれても僕のことなんて心配してくれないんだもの。…まぁいいけどさ』

「い、今更だけど無事でよかった…」

『ふふ、これでも僕はシャルルよりお兄さんだからね、こんな子供の姿で長年生きていくにはそれなりの生存スキルが身につくってものだよ。』

 確かにいつまでも子供の姿のままだと何かと不便なこともあっただろう。それにしても生きていると分かったなら何とかして合流したいところだ。

「V.V.くんは今どこにいるの?」

『ここは…君の通ってた学園だね。民間人に紛れて避難してるところさ』

「分かった。すぐ迎えにいくね!」

 エナジー切れのサグラモールから飛び出た私は猛ダッシュで駆け出し、すぐにアッシュフォード学園まで辿り着くことができた。クラブハウスは消滅に巻き込まれているが、他の大部分は無事のようだ。

「あれ?マーヤ!?」

 声をかけられそちらを見ると、オレンジ髪が跳ねながらこちらに近づいてくる。

「シャーリー!無事だったのね!」

「マーヤ、こっちのセリフだよ!リヴァルも会長も無事だよ!…ルルやロロな姿が見えなくてちょっと心配だけど…」

 そうか、まだルルーシュがゼロだとシャーリーは知らないのか…。恐らくロロが居ないのはルルーシュの奴隷となり黒の騎士団に参加させられているからに違いない。

「ルルーシュとロロなら平気よ。だって…」

「鍛えてるもんね、そう、だよね!」

 うんうん、シャーリーもだいぶ話がわかるようになってきたわね。

 

「ここに居たのか、シャーリー」

 シャーリーと話していると、どこかで聞いた覚えのある声が聞こえて来る…誰だったか…?

「お父さん?なんでこんなところにいるの!?」

「トウキョウ租界があんなことになって心配で思わず確かめに来たんだよ。…マーヤちゃんも久しぶりだね」

 そうか、この人シャーリーのお父さんか。道理で聞き覚えのある声だ。

「…そういえばシャーリー、さっき体育館の方でシャーリーを探している女性が居たよ。」

「えっ?会長かな?私行ってくるね!」

 私に会えたことや父親に会えたことで元気になったのかはわからないが、シャーリーは元気よく駆けていった。ああいう明るい人間がいればこういった暗い状況でも人々は徐々に元気を取り戻していけるだろう。だが、今のシャーリーのお父さんの発言、表情、声の震え、汗、目の動き…嘘が混じっている。何故態々シャーリーを遠ざけたのだろう?

「…マーヤちゃん、久しぶりだね。私は…ずっと君に謝りたかったんだ。」

「謝る…?」

「あの事故の有った日…ジェレミアさんを連れ去った集団と私は…同僚なんだ。そして…ジェレミアさんを改造したのも私たちだ」

 そんなことがあったのは驚きだが、何故私に謝るのだろう…?

「聞いたよ。ギアス嚮団がゼロによって潰されたと…お陰で私も解放された。マーヤちゃん、悪いことは言わない…今すぐそのヘッドドレスを…」

「マーヤ、ここに居たのかい。僕の方が探しちゃったよ」

 どうやら私を探してV.V.くんの方から来てくれたようだ。それにしても何故シャーリーのお父さんは怯えたような表情を…?

「マーヤ、その人は知り合いかい?」

「えぇ、クラスメイトのお父さんで…」

「す、済まないマーヤちゃん、私はこれで失礼するよ。本当に…済まない。」

 そういうとシャーリーのお父さんは足早に人混みへと消えて行った。解放…。それに明らかにV.V.くんが現れてから様子がおかしくなった気がするけど…。ヘッドドレス…そう言えばいつもつけているけれど、これもいつから付けているものなのだったか?

「…ヘッドドレスを気にしてるけどどうしたんだい?」

「えぇ、そういえば私いつもこれを身につけてるけど、誰からもらったのかちょっと思い出せなくて」

「それは僕がプレゼントに贈ったものだよ。まさかその歳まで大切にしてくれてるとは思わなかったけどね。」

「V.V.くんが?」

 そうなると…私8年近く身につけてることになるわね…かなり物持ちが良いのではないだろうか。

「大切に使っててくれて僕も嬉しいよ。姪への大事なプレゼントだからね。」

「えぇ、これからも大切にさせてもらうわ」

 何より思い入れもあり、気に入っているし、V.V.くんから8年も前に貰ったものだと言われれば余計大切ないものに思えてくる。

「ふふ、ありがとう。…それじゃあ行こうか。」

「?どこに?」

「決まってるでしょ?神根島だよ。」

 

 突如神根島に行けということで私はV.V.くんをおんぶして海を走った。V.V.くんという重りを背負うことでいつもより負荷のある走りが実現可能、これはまた私鍛えられてるわね、きっとギアスのせいに違いない。

「ねぇ、マーヤ」

「なぁに?V.V.くん。」

「僕の持っていたコードはシャルルに奪われたって話をしたよね?」

 そう言えばそんな話も聞いたか、確か皇帝陛下の記憶改竄のギアスを封じる為にわざと奪わせたようなことを言っていたけど…。

「コードはね、一定以上のギアスを持つ者なら奪うことが可能なんだ。だから…」

「なるほど、私が皇帝陛下からコードを奪えばいいのね?」

「話が早くて助かるよ。君がコードを奪ったら僕と契約して僕にギアスを頂戴?そして僕がマーヤからまたコードを返してもらう。コードを持っていると体が成長しないからね、筋肉がつかないからだなんて嫌でしょ?」

 だから保険…か、皇帝陛下がV.V.くんを裏切ったと言っていたからきっとそれが原因だろう。

「でも困ったなぁ、まさかアーニャの中にマリアンヌが居たなんて。」

「…何か問題があるの?」

「マリアンヌはシャルルに僕が生きていたと話してるはずさ。本当は僕のことを死んでると思ってるシャルルが油断してるところを奇襲したかったけど…」

 …あれ?なんでV.V.くんはアーニャの中にマリアンヌ…お母さんがいたと知っているのだろう?私は誰にも話してないし、お母さんがアーニャの中にいると知っていたならE.U.の時に何か反応があったはずだ。それに、母さんを殺したのがV.V.くんだと母さんは言っていた…。だがルルーシュの記憶を書き換えてニクアツ マッスルガイとしたり私の記憶を書き換えたりもしている。もしかしたら母の記憶すら書き換えて私に差し向けてかとかもしれない。

 

 暫く海を走り、島の中を進むと、グレートブリタニアが停まっているのが見えた。そして窓から皇帝陛下が飛び降り、そのまま空中を強く踏み込むことで階段を降りるように進んでいるのが見える。

「どこかにビスマルクが居ると思うけど彼には見つかりたくないな。とは言え、シャルルの入っていった遺跡の前を見張ってるからどう頑張っても見つかっちゃうね。」

 V.V.くんの指摘通り、さすがのビスマルクさん相手では奇襲を仕掛けても3日は続く殴り合いをする羽目になる。こうなれば一か八かだ。

「グレートブリタニアにいるのが誰か見てくるわ。上手く行けばビスマルクさんを誘導出来るかも」

「…気をつけてね」

 私は一気に跳躍し、そこからは空気を強く蹴り徐々に高度を増していく。そうしてグレートブリタニアに取り付くと、皇帝陛下が出口として利用した窓からグレートブリタニア内に侵入を果たした。

「モニモニ!?今度は窓からマーヤが入って来たモニ!」モニモニ⁉︎

 しめた。グレートブリタニアに居たのはモニカだったようだ。

「…ここを任されてるのはモニカだけ?」

「違うモニ。ドロテアも一緒に来てるモニ〜。ドロテアは今休憩中モニ〜』モニモニ

「そう。私ドロテアさんに用があるから」

 そう言うと、モニカは無警戒に窓の外を見始めた。一応彼女からの見張りとしての警戒のつもりなのだろう。申し訳ないが、警戒すべきはこの私、今まさに急に現れた侵入者である私だ。モニカには悪いが寝てもらう!

「当て身!」

「モ"ニ"ッ⁉︎」モ"…

 よし、これで暫くは起きないだろう。あとは適当にシステムを弄ろう。ついでにドロテアさんの休憩している部屋の扉をロックしてと…。あとはアラートを鳴らせば完璧だ。あとは勝手に部屋から出られなくなったドロテアさんがモニカに連絡をするも反応がなく、次にビスマルクさんに連絡が行くはずだ。皇帝陛下とは逆側の窓から飛び降り、直ぐにV.V.くんに合流する。物陰からビスマルクさんの様子を伺えば予想通りどこからか連絡を受けたであろうビスマルクさんが焦ったようにどこかに駆け出していく。

 

 そして私とV.V.くんは遺跡の中に向かい、神殿のような空間に入る。すると皇帝陛下はこちらに気付いたようでこちらを振り返るとサイドチェストを決めニコリと笑う。

 

「…来たか、久しいなマーヤ。ワシすらも忘れていた我が娘よ…。」



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TURN19′

「私のことを…娘と言ってくださるのですね」

「シュナイゼルの奴がァ…何やら嗅ぎ回っておったァ。あ奴ならば真実に辿り着いたであろう。マリアンヌに写真をねだっていたようだしな。お前もォ…自らがルッルーシュの双子の姉だと知って、おるのだろう…」

「はい。」

 私は頷き、先ほどの皇帝陛下…いや、ち、父上…の言葉を思い出す。

 

『ワシすらも忘れていた我が娘よ』

 

 忘れていた…?一体何故…?

「聞きたいことがあるならばァ…聞くが、良い。」

「では、忘れていたとは…どう言う意味ですか?陛下…いえ、ち、父上」

「そのままの意味よ…。コードを受け継いだ時…ワシはァ全てを思い出した…ワシ自身がワシに掛けた記憶の改竄…。…呼び方はァ…焦らずとも、良い…」

 何故自分自身にギアスを…?私のように己を鍛えたいならばまだしも、自分の記憶を消すことに何かメリットがあるのだろうか…?いや、人は誰しも忘れたい記憶の一つはあるかも知れない。自分の心を守るために…でも、いまの父上を見る限りではそういう目的で使ったようには思えない。

「ワシはァ…お前から皇族である記憶を奪い…お前を知る全てのものからもお前の記憶をォ…奪った。そしてワシは…ワシ自身にもお前を忘れるようにィ…ギアスを、掛けたァ…」

 …なんとなく察しがついた。

「…きっと私のギアスの影響でしょう。私の絶対鍛錬…苦難を与えるギアスにより私は私により困難な人生を歩むように、皇帝であり実の父である父上に記憶を消させたのです。」

「ふはははははは!まさかこのワシすらもォ…無意識に影響を受けておったとは…!流石は、我が娘よ。…して、何故お前はァ兄さん…V.V.と共にィ…ここへ、来た?」

「君が奪ったコードを取り返すためさ。」

「コードならば…ここに、ある。」

 見せられたのは右の掌。平仮名の「ひ」のようなマークが描かれていた。

「マァーヤよ…これが欲しいのならばァ…こちらへ来るが、良い…」

 案外簡単に譲ってくれるようだ。さては私が余りにも美少女過ぎて父親として甘やかしたくなったに違いない。

 言われた通り近付くと、父上はニコリと笑い、白い歯を輝かせてくる。鍛えられた体に白い歯は生えるわね…。

 

 次の瞬間、私の顔面には父上の拳が突き刺さっていた。

 

「ッ!?」

 あまりの衝撃に吹き飛ばされ、床を何度か転がり衝撃を殺す。先ほどまで父上の立っていたところを確認するが、姿は見えない。

「マーヤ!上だ!」

 V.V.くんの声を聞き、直ぐにその場を飛び退くと、先ほどまで居たところに父上の脚が突き刺さっていた。あんな勢いで踏まれたら確実に死ぬ…なるほど、父上は私にコードを渡す気は無いらしい。

「この世の摂理はァ…弱肉強食ゥ!ワシのコードが欲しければァ!力ずくで奪ってみせよォ!マァァァァァァァァァーヤッ!!!」

 恐ろしく早い踏み込みからの拳をなんとか受け流し、反撃に膝をぶち込む。だが、全く効いている気配がない。

「その程度のォ…殴打など!今のワシには無駄ァァアアーー!!!!」

 振りかぶった拳を見て咄嗟に顔面をガードするが、すぐに間違いに気付く。狙いは…!

「愚かなりマァーヤッ!!」

 圧倒的筋肉から繰り出される凄まじい殴打は私の腹に深々と突き刺さる。

「かはァッ!?」

 私の腹筋の守りをまるでないかのように易々と…!貫通してないだけマシというレベルだ。

 正直、一撃一撃がルルーシュの比では無い。流石に鍛えてきた年月が違いすぎる…!技のキレもクラリスさんよりも研ぎ澄まされている…コレが筋肉の力…!

「どうしたマァーヤッ!貴様の筋肉はァ…その程度かッ!」

 次に飛んできた蹴りは痛みに怯む私を軽々と蹴り飛ばした。強すぎる…!圧倒的だ…!でも!

「まだよ…!」

 父上の圧倒的筋肉から放たれる速さと鋭さを持つ攻撃は認識してから考えていては遅過ぎる…だから!私は突き出された拳を右腕で受け流し、左肘を父上の顔面に捩じ込んでいた。

 流石に顔面に肘を食らえばよろけてくれるようだ。

「動きが変わった…か。流石はァ…ワシの娘よ。」

 そして何故か父上はモストマスキュラーのポーズを取り、着ていた服を筋肉の膨張で弾き飛ばす。

「次はもう少し…本気を、出そう…」

 今までのが本気じゃない…!?嘘でしょ…!?

「ッ!?」

「これも、止めるかァ…」

 辛うじて、私の両腕は辛うじて父上の蹴りを防いだ。だが、全脊髄反射行動ですらぎりぎりだなんて…!更に次の殴打、ガードした左腕の骨にヒビが入ったのを感じる。そして目の前に広がるドロップキックをなんとか右腕と左腕をクロスさせる事で防御する。…が、非常にまずい、右腕にもヒビが…それに左の骨は完全に逝ったわね…。

 圧倒的筋肉が生み出す肉の壁は全てを跳ね除ける…まさに強靭

 圧倒的筋肉から放たれる拳は全てを砕く…まさに無敵

 圧倒的筋肉を使っての高速移動は目で捉えることすら困難…まさに最強

 

 強靭、無敵、最強…!強すぎる…!勝てるビジョンが見えない…!

「何をォ…呆けておるッ!!」

 ッ!また、腹パンかッ…!咄嗟に後ろに飛ぶ事である程度の衝撃を軽減するもその拳を受けた私は後ろに吹き飛んでしまう。まともに食らえば背骨が折れていただろう。

「マーヤ、君に負けられると困るからさ。はい、コレ」

 私のもとにやってきたV.V.くんが渡して来たのは…ブラックリベリオンの時にも見たあのプロテインだ。

「結局私はこういうものに頼らないと勝てないってことね…」

「仕方ないよ。シャルルはあの歳まで鍛錬を続けてきたからね、内包されている筋肉はマーヤの何倍もの密度だから。」

 手渡されたプロテインを飲み干すと、瞬間全身の傷が完治したのを感じる。それにこの高揚感…負ける気がしないわ。

「ま、この為にこういうのを開発してたんだけどね」

「兄さん…まだそんなものを…!」

 父上はV.V.くんを睨み付けていた。私はそんな父上の背後に回り込んだ。思わず父上は振り返るが、それすらも止まって見えるようだ。

「何ィ!?」

「父上には…親孝行しないとねッ!!肩、叩きッ!!」

 アームハンマーを左肩に、ブチ込むッ!!

「ぬぅぅぅ!?い、一撃でェ…ワシの肩の骨が粉微塵に砕けよったァ!?」

 さっきまでこんなに可愛い娘を遠慮なくボコボコと殴ったのだ。手加減など不要だろう。

「父上ぇ…肩はまた残ってるわよねぇ?」

「ッ!?」

 父上は咄嗟にまだ無事な肩を守るが、残念な事に私は手段や方法を選ばない主義、先ほど砕いた肩に向けて踵落としを叩き込む。

「ぐぬぅぅぅぅううう!?だ、騙し討ちとはァ…!貴様それでもマッスルガイか!!」

 私はお父さんの顔面をがっちりと両手で掴んでから両膝を顔面に叩き込む。

「失礼ね…私はマッスルウーマンよ。」

 ふふ、力がまだまだ溢れる…高まる!全身に漲るパワーを感じるわ!

 その時、この空間に何者かが入って来た事に気が付く。ルルーシュと緑の髪の女だ。あの女は確か…一度ならず二度までもスラッグ弾を寄越してくれた人だったか?まぁいい…。今更あんなものは瑣末ごとだ。

「ッ!来たかァC.C.!今こそ我らのコードを…一つにィ!」

 父上が右の掌を翳すと、背景が変化し、新たな風景が写し出された。

「アーカーシャの拳でェ…神を殴り殺せば…!」

 神を殴り殺す…だと!?なんだその面白そうな遊びは…!

「良いなぁ…今の私なら神すら殴り殺せそうだ…ふふふ」

 チラリと上を見る。…アレが神だろうか?

「待ていマァーヤッ!神とは集合無意識…物理的に殴ることはァ…できん!」

「なにィ!?」

 肉体がない…?なんて貧弱な…!いや、待てよ?

 

 無いなら鍛えさせて筋肉をつければ良いのでは?

 

 それに、筋肉は全てを解決するのだ。そして筋肉を付けるには?そう、鍛錬だ。つまり鍛錬は全てを解決するために必要!更に都合がいいことに私は相手を鍛えさせるギアスを持っている!私は空を見上げた。

「神よ!集合無意識よ!」

 神にギアスを掛ければいい…!

「無駄な事ォ!王の力では神には…」

「うるさいッ!!」

 父上の顔面に拳を叩き込み、更に腹にドロップキックをねじ込む。邪魔されたけどコレでギアスが使えるわね!

 

「マーヤ ヴィ ブリタニアが強いる数々の耐え難き苦難…!神よ!集合無意識よ!凌ぎ…抗い…鍛えよ!!」

 

 すると、私のギアスのせいか神…?らしき物は何故か粉々に砕けてしまった。どうやら鍛錬が足りなかったようね、ギアスをかけただけで苦難に耐えられず死んでしまうとは。

「ワシの!マリアンヌの夢が!!…ワシの計画通りならば…もう一度マリアンヌとも会えたと言うのにッ!!マァァァァァァァァァーーーヤッ!!この鍛えし愚かものがァッ!!」

 父上は私の首を右手で掴むが、もはや私はその程度の攻撃では怯まない。

「分かってるわ父さん。右肩が…まだだったわね!!」

「待て!マー…」

 左手でがっしりと右肩を掴み、右拳を右肩に振り下ろす。

「ぐぬぁぁぁ!?」

 そういえばコードとか言うものが必要なんだったっけ?どうやって奪えば良いのか分からないけど…そう思って父上の手のひらを見るが先程の模様はどこにもなかった。

「よくやったねマーヤ。コードの継承は上手くあったようだよ。鎖骨あたりだからマーヤからは見えないみたいだけど」

 コードを継承できたという実感は…実感…は…?

 

『E.U.での任務ゥ…ご苦労でェ、あった…。だが…シャルル ジ ブリタニアが刻む新たなる偽りの記憶…。お前はナナリーの事、ルッルーシュが皇族である事を忘れるが良い…。そしてェ…お主もまた、ロロの存在に対するゥ…記憶を、与える。お主はァ…嘘を吐くのが、余り得意では無いだろぅ、ルッルーシュにィ余計なァ情報を与えぬためにもォ…お前には敢えて、ルッルーシュを監視させぬゥ…」

 これは…E.U.から戻ってきた時の…父上に掛けられた記憶の改竄のようだ。

 

『ルルーシュ ヴィ ブリタニアが問いに答えよ。』

『…はい。』

『お前はここに何をしにきた?』

 これは…ホテルジャックの時の…ルルーシュのギアスだろうか

 

『シャルル ジ ブリタニアが刻む新たなる偽りの記憶…お前は皇族である事を忘れェ…只人となるが、良い…。お前の両親は今日からァ…この者らだ。皇族という環境よりも…貴様にはお似合いの環境よォ…過酷な環境でェ…鍛えてくるがァ…良い…。後はワシもォ…お前の事を忘れればァ…』

 これは…私が皇族で無くなる時の…恐らく私が初めて掛けられた記憶の改竄のようだ。

 

 コードなるものの継承はどうやら上手くいったらしい。それにしても不思議な感覚だが、このプロテイン…ブラックリベリオンの時を思い出せばとっくに副作用があってもおかしく無いはずだが…今は全くそう言った気配がない。もしかして私の今の状態がニュートラル扱いになっているのだろうか…?だとすれば

 不死身 不老不死 筋肉パワー!私はこの世の何者もを超越した存在になったという事である。その気になればこの世界を支配する事だって可能な気すらする。

 そう言えば、父上をボコボコにするのに夢中で忘れていたけれど、ルルーシュ達は何をしにきたのだろう?

「シャルルが…マーヤに負けてコードを…。いや、そんなことはどうでもいい!シャルル、お前が死ぬ前に質問に答えて貰うぞ!」

「…よかろう。最早ワシはァ…死を待つ身ィ…この身が滅びィ…Cィの世界に還ればァ…マリアンヌにも会えるゥ…」

「8年前母さんを殺したのは誰だ!何故お前は母さんを守らなかった!」

「今より半世紀前…ワシと兄さんは地獄に居た。親族は皆帝位を争い殺し合う、信じられるのは兄さんと己の筋肉だけ…殺し合いが日常となり怯えながら筋トレをする日々…皆、死んでいった。ワシの母もその犠牲となったのだ。ワシと兄さんは世界を憎み、暴力の根源たる筋肉を恨んだ。だが、同時に身を守るために力を…筋肉をつけた。…そして誓ったのだ。嘘の無い世界を作るために神を殴り殺そう、と。マリアンヌとォ…そこにおるC.C.もその誓いに同意した。だが…兄さん…そこにおるV.V.は…ワシらを裏切ったァ」

「黙って聞いていれば勝手な事を。先に裏切ったのは君の方だろう?シャルル。君はマリアンヌと出会ってから変わってしまったよね?互いに鍛え合うのはそんなに楽しかったかい?…それじゃあコードを継承して体に変の起きない僕だけが置いて行かれてしまうじゃないか」

 なるほど、ここまでの話を要約すると…V.V.くんはお母さんにお父さんが取られて嫉妬した…って事ね。そして…

 

 母さんを殺害し、父上との信頼関係を破壊…つまり!

 

 父上にV.V.くんは恋を…!?



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TURN20′

 ルルーシュの「なぜ母さんを守らなかった」という質問に対し、父上はV.V.くんに裏切られたという話をしていた。そう言えば母さんはV.V.に殺されたと言っていたけど、恐らく私が記憶改竄を受けた後の出来事なのだろう、その出来事に心当たりはなかった。

「ねぇ、ルルーシュ。話の腰を叩き折って悪いんだけど、8年前に母さんに何があったの?」

「?なぜお前が『母さん』と呼ぶんだ…?まぁ良い、今から8年前、俺とナナリーの母親…マリアンヌはテロリストである何者かに殺された…そして俺は父親であるそこのボロ雑巾に『なぜ母さんを守らなかったか』を尋ねたんだ。…母さんの暗殺の後、俺とナナリーはその男に日本に捨てられたんだ!」

 なるほど、母さんの言葉が正しいのであればそのテロリストはV.V.くんと言うわけだ。V.V.くんは見た目こそ子供だが父上の兄…つまり私やルルーシュの叔父である。構造や何かしらの細工は可能だろう。

「ワシはァ…お前達を捨てたわけではァ…無い…」

「何を今更!」

「ワシはすぐにィ…暗殺者の正体が兄さんだとォ…気付きは、した。故にィ…お前達を守る為にィ!ワシは、真実に辿り着けぬようにとォ…遠ざけたのだ。」

 大切な子供達だからこそ突き放し、親子関係を破壊…これも恋、いや愛の形ということか。

「だが!お前は俺たちが日本にいること知りながら戦争を起こしたじゃ無いか!」

「それはァ…ワシの子供であるお前ならばァ…筋肉で解決できると思ったのだァ…」

 流石は筋肉…筋肉は全てを解決する…!戦争の災禍も弛まぬ鍛錬を持ってすれば…。あ、そうか…そう言うことか…。

「ルルーシュ、貴方とナナリーが日本に送られ、その後戦争に巻き込まれた理由がわかったわ」

「何!?」

「きっと全ては私のせいよ。」

 絶対鍛錬…このギアスは自分や相手を鍛える為に過酷な苦難を与えるギアス。ギアスを授かってばかりの幼い私がルルーシュに無意識に使っていてもおかしくは無い。

「なぜお前が出てくる!?」

「ねぇ、ルルーシュ。四肢を脱臼するくらい引っ張られるなんておかしいことだと思わない?」

「それは…」

 そう、アレも私のギアスが原因…四肢をもがれるくらい引っ張っても耐えられるようにと苦難を与えた…。そして私のギアスが原因であるならばネリ姉も四肢を引っ張るのに参戦してもおかしくは無い。

「ふっ…ふはは…は…。ワシすらもォ…ギアスの影響下に置きルッルーシュ達に過酷な人生を歩ませるとは…。マーヤよ…今更ながらァ…これほど逞しく育ったのであればァ…あいつも自慢であろう…。そしてェ…ルッルーシュは見事過酷な苦難に耐え…見事なマッスルガイになりよったァ…流石は…」

「結果論だろうそんなものは!マーヤのギアスなんて関係ない!お前は…俺とナナリーを捨てたんだよ!!」

 だが、ルルーシュの叫びは父上にはもはや聞こえていないようだ。私がボコボコにブチのめしたせいで最早虫の息…意識も朧げといった様子だ。

「マリアンヌ…今…」

「おい!勝手に死ぬな!まだ訊いていないことがある!謝らせたい人がいるんだ!ルルーシュ ヴィ ブリタニアが命じる…"死ぬな"!」

「…」

 ルルーシュは父上の胸倉を掴み、何度も何度も揺さぶっているが既に事切れているようだ。

「クソ…!一人で勝手に満足して死ぬとは…!」

 悔しそうなルルーシュを私はただ見つめることしか出来なかったが、ふと後ろから背中を叩かれる。驚いて振り返るとVV.くんが私の側までやってきていたようだ。

「今のルルーシュは僕に何をするかわからない…守ってくれるよね?マーヤ」

 先ほどまでの様子を見ればルルーシュが父上に対して激しい怒りと憎悪を滾らせていたのがわかる。それが消化不良気味にいなくなったとなれば…どこかに怒りの矛先を向ける可能性はあるだろう。特に現在母さん殺害の黒幕説が濃厚なV.V.くんは格好の的だ。

「…おい、マーヤ…V.V.を渡せ…。」

「断る、と言ったら?」

「"その男をこっちに渡せ"!」

 どうやらルルーシュは冷静さを欠いているようね…。

「私にギアスは効かないわ。」

「だったら!」

 ルルーシュは瞬時に強く踏み込むと、思い切り私の顔面に拳を突き出してくる。…しかし、プロテインを服用し、父上を超えるレベルの筋肉にドーピングされた状態で肉体が固定された今の私にとっては欠伸が出るような速さでしかない。

「無駄よ。」

 私はルルーシュの拳を受け止めつつ、その勢いを殺さないように腕を引き、引っ張られて前に出てきたルルーシュの顔面に拳をブチ込む。

「ぐぬぅ!?」

「ルルーシュ、頭を冷やしなさい。」

「何を偉そうにッ!」

 どうもルルーシュは頭に血が昇ってしまっているようだ。私はルルーシュのお姉ちゃんなのだ…ここは一肌脱いで弟にしっかりと教え込まなければ。そういえばクラリスさんもよく私に言っていたものだ。

 

『マーヤ!貴方が!謝るまで!殴るのを!やめない!』

 

 と。自分が悪いのだと反省するまでボコボコに打ちのめせばきっとわかってくれるはずよ!…それに何だか遠い記憶の母さんも同じようなことを言っていた気がするわ…あ、思い出してきた。

 

『うーん、マーヤがどうしても泣き止んでくれないわね…とりあえず気絶させよっかな。えい、当て身』

 

 なるほど、今思えば暴力による私の反抗の意思を破壊する殴打や当て身による意識の破壊も全ては恋…いや、愛によるものということか!

 今のルルーシュはきっと長年母からの愛情を受けられずに愛に飢えているはず…。ルルーシュのプライドも、反骨精神も、骨も何もかも破壊して愛を叩き込んであげなくちゃ!

「まずは腹に拳を叩き込むわ!腹筋に力入れなさい!ルルーシュ!!」

「何!?」

 言われた通り私はルルーシュの腹部に拳を捩じ込む。圧倒的筋肉を用いることで私は肘関節を外し、筋肉による錐揉み回転を加える。高速回転するドリルのようになった拳は易々とルルーシュの腹筋を破壊し、後方へとブッ飛ばした。外れた肘関節はコードユーザーの不老不死の力で元に戻るし、痛みは気合いで和らげれば問題はない。

「ば、馬鹿な…!俺の腹筋が…!」

 ギュピギュピと足音を鳴らし、ルルーシュへと近づくが、ルルーシュはジリジリと距離を取ろうとしているようだ。姉からの愛を拒むとは…!意地でも愛を叩き込んでやる為、まずは捕まえなければ…だが、本気で逃げるマッスルガイを捕まえるのは一苦労…ここは相手の虚を突くしかないだろう。まずは己の左腕の骨を右手で砕く。

「!?何をしてるんだお前は…!」

 そして思い切り振りかぶって…砕けた左腕をルルーシュへと伸ばすッ!

「ッ!そういうことかッ!」

 私の手はしっかりとルルーシュを掴み離さない。砕けた左腕が治るに従い私とルルーシュの距離は詰まっていく。そしてその顔面に拳をねじ込むッ!!

「…咄嗟に腕を掴んで威力を抑えるなんて中々やるわね、ルルーシュ」

「黙れマーヤ…!貴様の目的は何だ…!」

「前にも言ったでしょ?ルルーシュ、あなたに恋を…いえ、愛を叩き込むのよ!」

「お前は本当にいつも何を言ってるんだ!?」

 会話に気を取られるとはまだまだ甘いわねルルーシュ。いや…これはつまり本能的に実の姉である私に家族愛を感じ甘えてしまっているということ…ルルーシュも口では何だと言っているがまだまだ甘えたりない年頃ということか。

 私はルルーシュの爪先を思い切り踏み付け、掴んでいた左手でルルーシュの胴体を突き飛ばす。

 倒れたルルーシュに対して私は思い切り跳躍し、両脚で勢いよく踏みつける!!

 

 …が、流石に避けられてしまったようだ。

「クソ…勝てない…!C.C.!この場は撤退だ!幸い目的は達成している!」

 そういうとルルーシュは緑髪の女性を抱えて行ってしまった。私にもV.V.くんを守るという目的がある為深追いせず、暫くしてから出る事になった。出た先は何故か神根島ではなく、私がV.V.くんを助けたあの施設だったわ、

「あっちの扉はルルーシュに待ち伏せされる危険があるからね、こっちを直して置いて正解だったよ。…それにしても嚮団員も随分減っちゃったね。…おや?君もいたのかい…フェネット」

「…。」

 フェネット…?聞き覚えがある名前だと思い、見てみると確かにシャーリーのお父さんのようだ。そういえばジェレミアさんをどうこう言っていたっけ。

「シャーリー…だっけ?君の娘は…元気そうでよかったね?」

「…お陰様で」

 どうやらシャーリーの事をV.V.くんも知っているようだ。シャーリーはお父さんとも仲がいいみたいだし、きっと職場の人に自慢の娘だとかで顔写真でも見せびらかしていたに違いない。シャーリーは可愛いし明るいから父親としては自慢もしたくなるだろう。

 …自慢の娘、か。私もそう言って貰えるように成長出来ているだろうか?

 

 そこからの数日、私は崩れた建物の復旧作業をする事になった。V.V.くん曰く、ここの施設建物は黒の騎士団とルルーシュによって攻められてこうなったらしい。戦闘の痕跡を見れば殆ど一方的であったことが分かる。…これじゃ虐殺じゃない…!

「済まないマーヤちゃん、この瓦礫もだかしてくれないか!」

「分かりました。」

 ギュピギュピと歩みを進め、瓦礫をどかす。

「何…コレ…」

 私の目の前に居たのは…瓦礫に潰されめ亡くなった子供達だった。

「…この施設の子ども達です。嚮主V.V.は…こう言った子ども達を集めて親の代わりに育てていたんですよ。」

「…そうですか。どこか、どこかにお墓を…」

 そうだ…自分の弟だからと私は忘れていた。ルルーシュは陽菜達を殺したのだ…何の罪もない、懸命に生きていただけの…!それにこの施設でもこんな虐殺を…!ルルーシュがゼロになったのはナナリーのためだと聞いたが、だからなんだというのだ。こんな虐殺をナナリーが望むのだろうか?いや、望むはずがない…!ナナリーならばきっと一緒に折り紙を追ったり、歌を歌ったり、腕相撲をしたり、そんなふうに遊ぶ事を望むはずだ…!

 やはりルルーシュを許すわけには行かない。私のこの凄まじい筋肉と不老不死の肉体を使って二度とこんな惨劇が起きないようにしなければ…!でなければ何のための筋肉なのだ…!

 

 すると施設の奥から一人の研究員らしき人が慌てたようにやってきた。

「申し上げます!ルルーシュ ヴィ ブリタニアが神聖ブリタニア帝国第99代皇帝に即位しましたァ!」

「何ィ!?」

 ルルーシュが…皇帝に…?

「早速確認しに向かうわ!案内して!」

「はい…」

 案内されたモニター室ではルルーシュが空気椅子で腰掛けている様子が見える。おそらく周りに散らばっている何かは玉座なのだろう。さらに現れたのは新たなるナイトオブラウンズなる人物達…

『紹介しよう。我が騎士、枢木 スザク。彼には私が新たに定めるナイトオブラウンズのナイトオブワンに任命する。…ついでだ、皆も入ってきてくれ』

 モニターに映し出されているルルーシュがそう言うと、男女が三人現れた。

『順番に紹介しよう。彼女のことは知っている者も多いのでは無いか?元第三皇女にして現在は名を改めたユフィ タダノだ。彼女にはナイトオブスリーの称号を与える。』

『我々に逆らうものは撲殺です。』

 ユフィ…!?おかしい…ルルーシュのギアスは一人につき一度のはず。どんな手を使ったかはわからないが、ユフィまで奴隷にしてしまったようだ…。

 次に紹介されたのはマッスルガイ…

『彼は我が弟!名をロロ ランペルージと言う。彼にはナイトオブエイトの称号を与える。』

『ブラザーはボクが守りマス!』

 かわいそうなロロ…操られて奴隷になり、今もあんな見事なキレのダブルバイセップスをさせられているのね…!

 そして最後に紹介されるのは私も知らない日本人の男性だろうか?

『彼は枢木 スザクと同じ日本人だ。名前を卜部 巧雪と言う!前ナイトオブトゥエルブを討ち取った実力者だ。彼にはナイトオブイレブンの称号を与える。』

『ナイトオブラウンズは虚名にあらず。』

 モニカを倒した…!?モニカは確かにモニモニ言って跳ねてる変人残念美女だが、ナイトメア戦闘に関しては私にも引けを取らない実力者…それを打ち破るなんて…!でも私は今ここの瓦礫撤去をしているし、最早ナイトメアも無い。私には何も出来ないのが悔しく思えてくる。

「マーヤ、ルルーシュを止めたいんだよね?でもナイトメアが無いから行けない…そう思ってるんじゃ無いかな?」

「…!どうしてそれを…」

 するとV.V.くんはニコリと笑う。

 

「用意してあるよ。新しい君専用の機体がね」




クラリス式教育方法やマリアンヌ式教育方法については強くオススメをしません。
※マーヤやルルーシュは特殊なギアスによる鍛錬を受けています。真似しないでください。

【悲報】マーヤの脳筋思考、ギアス関係ない

「V.V.が親代わりに育てていた」→嘘は言っていない()

Q.マーヤがコードユーザーになったらどうなる?
A.知らんのか?不老不死を悪用したトンチキ格闘術を披露し始める。


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TURN21′

 私はV.V.くんが用意してくれていた機体に乗り込み、目的地を目指していた。放送ではビスマルクさん、ジノ、ドロテアさん、ノネットさん、ルッキー、ヴァルキュリエ隊、ワイヴァンナイツをはじめとしたラウンズ直属の親衛隊がルルーシュの新たに定めたナイトオブラウンズ達と戦闘を開始。しかし、映像ではスザクの新たなランスロットはヴァルキュリエ隊とワイヴァンナイツを除く親衛隊を軽々と一掃、精鋭であるはずのヴァルキュリエ隊とワイヴァンナイツですらロロ一人にあしらわれていた。ジノは卜部とかいう日本人を相手に早々に敗北し、ルッキーがなんとか互角に渡り合っている。ユフィのナイトメアによってドロテアさんとは撃墜され、ノネットさんも押されているようだ。

 

 私の到着は一歩遅かったというのが正しい。ノネットさんもルッキーも機体を破棄しての撤退を選択し、ロロの相手をしていたヴァルキュリエ隊もワイヴァンナイツも旗色の悪さを感じ取り撤退、ビスマルクさんもスザクとの一騎討ちに敗北してしまったようだ。モニターに映るルルーシュはダブルバイセップスを披露し、服を破り去っている。

『全世界に告げる!今の映像で私が名実共にブリタニアの支配者とお分かり頂けたことと思う。そして見よ!この筋肉を!』

 確かにプロテイン無しで見事な筋肉だ。姉としても誇らしい限りである。だが勘違いしてもらっては困る。ブリタニアの支配者?勝利の余韻はまだ早い…ナイトオブラウンズは…

 

『ナイトオブツーはまだここにいるわ!』

 

 目の前にはスザクが乗っているであろう新型のランスロット。きっとルルーシュがロイドさん達にもギアスを掛けたに違い無い。それにロロの乗るヴィンセントに似た金色の機体、卜部とかいう人の紺色のアレクサンダ、ユフィが乗っているのはドロテアさんのパロミデスと同型機のようだ…色がどピンクなあたりがユフィらしい。4対1…か。まぁ私なら余裕ね。

『その声…その機体に乗っているのは…まさかマーヤか!?』

 スザクからの通信…奴隷として戦わされているなんて可哀想に。せめて私の手で葬ってあげるのが友達としての義理というものだ。

「ええ、そうよ。私はルルーシュを止めるために来た…!貴方達をここで討ち倒し、ルルーシュのブリタニアを否定する!」

『そうは…させない!』

 スザクのランスロットから放たれたのはヴァリスだろうか。しかし無駄だ…!

「そんなもの!」

 この機体にも当然ブレイズルミナスは搭載しているわ!

『防いだ!?このアルビオンのヴァリスを…!?でも!』

 私のブレイズルミナスが無くなったことでチャンスと感じたのだろうが、それは違うと言わざるを得ない。

『撲殺!』

 どピンクのナイトメア…流石はユフィ、私の背後を取るなんてね!でもそれも無駄である。

『何…これは!?』

 このジャンヌダルクの装甲は電磁装甲を使用している…!生半可な火力では傷ひとつつけられないのだ!

 今度は紺色のナイトメアと金色のナイトメアが左右に展開し始めた。どんな攻撃でも防いでみせるわ…!

『卜部サン!ハドロンブラスターヲ!』

『心得た!』

 すぐさま左右からの同時攻撃とは中々の連携だがそれすらもやはり無意味!

『左右からの同時攻撃でもびくともしないとは…まるで鉄壁…!』

『マーヤさんの胸板のように硬いデス…!』

「誰がまな板ですって!?」

『言ってまセン!』

 気にしてるのに…!決めたわ…まずはロロから始末してやる…!ブレイズルミナスを解除すると同時に私はジャンヌダルクを一気に加速させ急上昇し、背後からのスザクの斬撃を躱してみせる。

『見た目によらず早い…!?』

「無駄よスザク。」

 この機体…ジークフリートと呼ばれるナイトギガフォートレスをベースに作られた『ジャンヌダルク』はV.V.くんの研究チームとランドル博士が共同で開発した神経電位接続という、機体とパイロットを物理的に接続して意思で操作するシステムの理念とマッスルデバイスという筋肉をパラメータ化するシステムを融合させた全く新しいシステム、『全身筋肉接続』が用いられている。

 つまり私ほどの筋肉であれば如何なる複雑な各種動作も容易に行えるというわけだ。更に、この世の最高峰レベルの筋肉を搭載し、コードによる不老不死の効果でこの機体にはパイロット対する安全面の考慮などというものは不要。更にニーナが手伝ってくれたのでこのジャンヌダルクの燃費は出力に対して非常に低燃費を実現している。よって一度の補給で何日でも戦い続けられるのだ。え?被曝量?知らないわねそんなもの…。

「攻撃が終わったなら今度はこちらが攻撃する番よ!」

 私はジャンヌダルクを高速回転させ、ロロのナイトメアに突撃する。

「金色のナイトメアって…私のサグラモールと色被ってるじゃ無い!」

『ノウ!そんな理由デ!?』

 6枚ものブレイズルミナスに阻まれてしまったが、それまた私のサグラモールと被っている…なんだかとことん気に食わなくなってきたわね…。

『滅殺ッ!』

 今度はユフィのハーケンフィスト…サグラモールなどのハーケンフィストと比べてかなり大型の物のようだけど…

「ハーケンフィスト!返り討ちにしなさい!」

 ベース機のジークフリートには巨大なスラッシュハーケンがついていたらしいが、私のジャンヌダルクにはスラッシュハーケンではなくハーケンフィストを搭載し、その数も倍に増えている。私のハーケンフィストがユフィのハーケンフィストとぶつかり合い、弾き返す。やはり出力はこちらの方が上のようね…!そして私のハーケンフィストは全身筋肉接続による自在な操作で素早い相手も追い詰める事が可能なのだ。

「捕まえたァ…!」

 よし、ハーケンフィストの一つがロロの左脚を掴んだ!一気に叩き込んでやる…!

『ノウ!こんなハズでハ!』

 ニーナがロイドさん達のところからやってくる時に持ってきたデータの中には紅蓮のデータも入っていた。つまりこのハーケンフィストには…!

「くらいなァ!!」

『これハ…輻射波動!?いけナイ!』

 パージで逃れたようだが、まだまだ攻撃をやめはしない。四方向から同時にハーケンフィストによる輻射波動攻撃を仕掛け、敢えてブレイズルミナスを使わせる。スザク達に対してもハーケンフィストによる牽制で近づけないようにし、私は狙いを定めた。

「これで終わりよ…サグラモールのパチモンなんて…消えなさい!『筋肉我多荷電粒子重砲』を!」

 ジャンヌダルク前面に取り付けられた砲門から荷電粒子重砲が放たれる。たかが二枚のブレイズルミナスではこの攻撃は防げないわ…!

「まずは一人…!…いや!」

 

 煙が晴れた時に現れたのは黒いナイトメア…そう、ルルーシュの蜃気楼のものだ!

 

『無事か、我が弟よ』

『ブラザー!助かりまシタ!』

 なるほど、私の登場で直ぐに駆けつけたというわけか。流石はルルーシュ、だがこちらとしてもルルーシュを倒す事が目的…向かう手間が省けたというものだ!

「ルルーシュ!貴方を止める!殺してでも!!」

『まさかお前が姉だったとはな…だが!異母兄などとっくに殺している!実の姉だろうと関係ない!』

 ルルーシュの蜃気楼による絶対破壊両腕か、無駄なことを!

『何!?これは…!』

「私は貴方の姉…姉に勝る弟なんて居ないのよ!」

 そう、ご存じ絶対守護領域…ルルーシュに扱えて姉の私に扱えないはずがない。なかなか複雑な計算が必要だが…私は脳味噌まで筋肉と良く褒められる。そして私の筋肉はプロテインにより凄まじい事になっている…つまり脳の処理能力も凄まじいことになっているはず!この程度の計算など容易という訳だ。ハーケンフィストに展開したまま射出するという真似こそできないが、この絶対守護領域に覆われたまま突撃すればその破壊力はルルーシュの絶対破壊両腕と同等!…殻に篭って突撃とは母さんそっくりの戦法になってしまうがこれも親子という事だろう。

「行くわよルルーシュ!」

『こんなはずではッ…!』

「ルルーシュ!今から貴方を破壊するわ!姉からのせめてもの慈愛として!!」

 高速回転しつつ筋肉我多荷電粒子重砲を放ち、他のナイトメアを寄せ付けないように牽制、距離をあけさせたタイミングで全てのハーケンフィストをルルーシュに!

『輻射波動による攻撃…そんなもの!』

 流石はルルーシュ、絶対守護領域で耐えて見せているが、この状況、何か気付いたはずだ。

『まずい…このポジションではッ!』

 私は蜃気楼の背後に回り込み照準を合わせた。

 私の筋ピューターが弾き出したデータによれば十基の輻射波動攻撃に耐えるので絶対守護領域は手一杯、筋肉我多荷電粒子重砲が直撃すれば蜃気楼は粉微塵になるわ!

「筋肉我多荷電粒子重砲を叩き込むッ!これで…チェックよ!!」

 放たれた筋肉我多荷電粒子重砲だったが、それは蜃気楼には直撃しなかった。代わりに直撃したのは…

 

『ブラザーは…ボクが…守…』

 

 下半身が破壊され、右腕のみになったロロのナイトメアだった。流石はルルーシュ…奴隷であるロロを盾代わりにしたということか…なんて卑劣なの…!でも最初の予定通りサグラモールのパチモンは排除ができた。これはこれでよしとしよう。一度ハーケンフィストを全て戻し、その場から素早く移動するとランスロットと紺色のアレクサンダの斬撃が空を切る。更にユフィのハーケンフィストをジャンヌダルクのハーケンフィストで弾き返す。

『ロロのラモラックがやられただと…!』

「ロロは貴方のせいで死んだのよ!貴方が奴隷にしてボロ雑巾のように使い捨てたのよ!」

『黙れ!』

 そして私とルルーシュの間にスザクをはじめとした三機のナイトメアが割り込んでくる。どうやらまた盾とするつもりらしい。

 やはりルルーシュを早く止めなければ…ユフィやスザク、卜部とかいう日本人までロロのように盾にして逃げようとするに違いない…!

『ルルーシュ、君は逃げるんだ。今の戦力ではマーヤに勝てない…!』

「逃すはずが無いでしょッ!」

 ルルーシュに向けてハーケンフィストを放ったものの、ワイヤーが紺色のアレクサンダによって切断されてしまった。そんなに簡単に切れるものでも無いはずだけど…中々やるようね…。

『ルルーシュ、早く行ってくれ。…そう何度も切断させてくれるとは限らん。君には成し遂げるべき事があるはずだ』

 ルルーシュが何を成し遂げるかは知らないが…きっとろくなことでは無い。また多くの人を殺すに違いないのだ。

「させない…!ルルーシュはここで止める!」

 今度は紺色のナイトメアにハーケンフィストを更に放つ。今度は切断する隙は与えない…!

 だが、今度はユフィのハーケンフィストによって1つが抑えられ、すかさずスザクによって切断されてしまった。

『お行きなさいなルルーシュ。私と約束したでしょう?新しい世界を作るのだと』

 ルルーシュの作る新しい世界…?きっと暴力に支配された世界に違いない…!そうはさせてなるものか…!今ので2基失ったがハーケンフィストはまだ8基残っている…!

『そうだな…お前達の言う通り逃げるとしよう。』

 やはりみんなを盾にするつもりのようだがそうはいかない…!

「逃がさないわルルーシュ…!ここで必ず止め…」

『だが!逃げる時は全員でだ!ユフィ!』

『心得ました!』

 突っ込んできたユフィに対し、私は絶対守護領域を展開しつつ回転してぶつかり返す。目障りな腕の片方を破壊することに成功したが、ユフィが囮だと言うことにそこでようやく気がついた。

『二人とも、今だ!』

 スザクのヴァリスとエナジーウィングからの攻撃、紺色のアレクサンダのハドロンブラスター、ルルーシュの蜃気楼の胸から放たれるビームと腕のハドロンショットが一斉にジャンヌダルクへと放たれる。

「そんなもの!」

 ジャンヌダルクの絶対守護領域で防御出来るわ…!予想通りかなりギリギリではあるがなんとか防御に成功した。これで私の勝…

『マーヤ、私をお忘れではありませんか?』

 続けての衝撃を受け、ジャンヌダルクにアラートが鳴り響く。一体どうやって絶対守護領域を…!?

『マーヤ、これはロロが一発分だけがを残して私達に遺してくれた…ハドロンブラスターです。』

 …!

『マーヤは勘違いしていたようですが…私達は誰もルルーシュから操られてなど居ないのですよ。』

 そんな馬鹿な…そんなことあるはずが無いッ!ジャンヌダルクは墜落しかけているが、まだ…ハーケンフィストは動く!

「ルルーシュッ!!」

 せめて…ルルーシュだけでも…陽菜達の仇を…!しかし、ハーケンフィストはランスロットや紺色のアレクサンダに弾かれ、放った筋肉我多荷電粒子重砲も絶対守護領域を足場に高速移動して蜃気楼に避けられてしまう。いや、違う…回避はあくまでついでだ…!目的は接近しての…

 

『さようなら、姉さん』

 

 ルルーシュの絶対破壊両腕がジャンヌダルクを貫き、コクピットの私の顔面を捉えた。必死に何かできないかジャンヌダルクを操作しようとするも、アラームが鳴り響くだけで動く気配は無い。

「ダメね…このジャンヌダルクはもう…!」

 すると、アラートが鳴り響くジャンヌダルクのコクピットのモニターの一つにV.V.くんの姿が映し出された。

『やぁ、マーヤ』

「V.V.くん…!ごめん、負けちゃった」

『気にしないで。お陰で邪魔者は全部消せるんだから、ありがとうね。』

 すると、突如私とジャンヌダルクの接続が強制的に解除されたのを感じた。

「V.V.くん…?一体何を?」

『何って…自爆だよ?今ならジャンヌダルクに積み込んで置いたフレイヤ・コアを作動させればルルーシュ達を消し飛ばせるからね。』

 フレイヤによる自爆…?そんなことを聞いた覚えはない。

『安心してよマーヤ。コードを持ってるとは言え、流石に存在が無になったら不老不死も何もないからさ。僕はもうマーヤからギアスを貰ってるし、ギアスの状態を促進させる研究も終わっていたからね。邪魔者のルルーシュは君ごと掻き消えるし、あとはC.C.を捕まえてコードを奪うだけさ。』

 そんな…一体今になって何故そんな…。

『…あっははは!随分と驚いてるね、マーヤ。まぁ、無理もないか、もうすぐ君は粉微塵になって消えるわけだし…冥土の土産に教えてあげるよ。僕の目的は筋肉に歪められた世界の破壊さ。君は何でもかんでも筋肉が解決するこの世界がおかしいとは思わなかったのかい?…まぁ、思ってないからそんな風なんだろうけどさ。』

「何を…言ってるの…?」

 筋肉が…筋肉は全てを解決する、おかしいことなどあるはずはない。だって…筋肉なのだから。

「シャルルも、マリアンヌも、君も!どいつもこいつも筋肉筋肉筋肉っておかしいのさ!だから…このおかしな世界はリセットしなくっちゃね。君も違法プロテインは知ってるよね?』

 違法プロテイン…何故今そんな話を…まさか…!?

『あれを作らせたのは僕さ。元々は筋肉を無くすだけの効果にしたかったんだけどうまくいかなくてね、副作用で一時的な筋肉の増加が起きてたんだ。君や僕が服用した脱法プロテインは副作用だけを起こさせるものだったんだ。』

「じゃあ、まさか…!」

『そう、完成したんだよ?完全な違法プロテインがね。コードが手に入り次第アポロンの馬車に空気散布型の完全な違法プロテインを搭載させて世界中にばら撒いて世界から筋肉を根絶やしにするんだ。あっははははは!皮肉だねマーヤ!筋肉筋肉言ってた君が筋肉根絶やしにする僕に利用されてたなんてさ!』

 そうか…ずっと…ずっと私を利用して…!

「許さない…V.V.ッ!!」

 その瞬間、私はトウキョウ租界で見たあの破壊の光に包まれてしまった。

 




マーヤ、しれっとコードユーザーなので対ロロとナイトメア戦闘できるんですよね。普通ならロロ一人で並み居るパイロット完封出来ちゃうという…。

●オリジナル機体紹介●
『ジャンヌダルク』
・簡単に言うと「様々なシステムを取り敢えず全部載せたゲテモノ」(あれ?主人公機だよな…?)
・V.V.がマーヤの為に作らせたナイトギガフォートレスであり、ベースはジークフリート。カラーリングは白。
・ブレイズルミナス、電磁装甲、絶対守護領域を搭載しており、蜃気楼と同等の圧倒的な防御性を誇る。
・機体の操作方法は神経電位接続とマッスルデバイスを複合させた全身筋肉接続。これにより、コード持ちであり、不老不死かつ世界最高峰の筋肉量を持つマーヤにしか耐えられない出力と運動性を実現している。
・ジークフリートにおける大型スラッシュハーケンは先端が輻射波動機構搭載の腕に置換されており、全身筋肉接続による自在操作のために搭載数を倍化。質より量を取ったために輻射波動砲撃こそ出来ないものの、全身筋肉接続により複数の腕を自在に操る事が可能。
・ジャンヌダルクの前方には筋肉我多荷電粒子重砲を搭載。神虎と同威力の砲撃が可能
・ニーナの協力により、核を組み込んだことで馬鹿みたいな出力とそれに見合わぬ低燃費を実現。但し、パイロットの被曝量がエゲツないのでコード持ち…というかマーヤ以外が乗った場合漏れ無く死亡する。




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TURN22′

 私の身体が…フレイヤの光に…破壊の光に包まれていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だ が !

 

 や は り 筋 肉 !

 

 筋 肉 は 全 て を 解 決 す る !

 

 そ う ! 私 の 筋 肉 は ! フ レ イ ヤ に も !

 

 負 け な か っ た の だ !

 

 光に包まれた時はダメだと思った。だが、やはり筋肉に不可能は無かった。お気に入りのヘッドドレスを含め、ジャンヌダルク諸共周りの全てが掻き消えてしまったのは大変遺憾だが、筋肉さえあれば何の問題もない。走って海の上を渡り、私はヴァイスヴォルフ城を目指した。私の迷いのない晴れやかな気分に呼応してか、何だかいつもよりも風を感じる気がする。

「許さないわV.V.…!自分に筋肉がないからって他人の筋肉を憎むなんて…!」

 世界から筋肉を滅ぼす計画は何としても阻止しなくてはならない。ヴァイスヴォルフ城への道中…森の中を走っていると、なんとレイラを見かけた。あまりの遭遇に私は思わず足を止めて声を掛けてしまった。

「久しぶりね、レイラ。」

「マーヤ…!?驚きました…」

 どうやらレイラも私を見て非常に驚いてくれているようだ。それもそうだろう、何せ私がE.U.への潜入任務をしていた頃ぶりなのだから。

 

「その…何故森の中に全裸でいるのですか…?何か…新しい健康法なのですか…?」

 …。しまった…フレイヤに掻き消されて私今全裸だ…道理で風を感じるわけだ。

「…ちょっと事情があって…。悪いんだけどおばあさん達から服を貰ってきてくれないかしら…?」

「え、えぇ…勿論。ちょっと待っててくださいね」

 その場からダッシュで消え、ダッシュで戻ってきた(その間凡そ15秒)レイラから服を受け取り着用するとなんだかE.U.にいた頃を思い出す。

「…突然どうされたのですか?また、潜入任務ですか…?」

「ううん、今回は違うの。」

「そうですか…。佐山准…あ、リョウやアヤノ、ユキヤやランドル博士は元気ですか?」

「ええ、みんな元気よ。特にユキヤは最近リョウよりもマッスルガイになってきたの」

 そうだ。V.V.を止めなければせっかく逞しくなったユキヤの努力が無に帰してしまう…!そんなことは許してはいけない…!

「そうですか、みんな元気でやっているのですね。こちらは私もアキトも元気ですよ。」

 レイラが元気なのは見ればわかるが、どうやら日向…アキトも元気なようだ。

「そう。それはよかったわ…ごめんなさい、私はもう行かないと!」

「えぇ、また…今度はリョウやアヤノ達と遊びに来てくださいね。アキトと待ってますから!」

 私は頷き、ダッシュ森の中を駆け抜け、ヴァイスヴォルフ城へ、そしてアポロンの馬車まで到着した。その辺りから武装した嚮団員の人達が立ち塞がってきたので全員をボコボコに捩じ伏せて突き進むと、また一人が私の前に現れた。私は迷わずに拳を振り上げ、その顔面に狙いを定める。

「マーヤちゃん!?ま、まま、待ってくれ!!」

 拳が顔面に当たる直前、何とか止めてからよく見てみるとどうやらシャーリーのお父さんのようだ。危ないところだった。

「あ、ごめんなさい。」

「い、良いんだよ…寿命は10年くらい減ったけどね…。でもよかったよマーヤちゃん、生きていてくれたんだね…!フレイヤに巻き込まれたと聞いといたけど、流石はマーヤちゃんだ。フレイヤに巻き込まれる前に脱出できたんだろう?」

「いいえ?フレイヤに巻き込まれたけど筋肉のおかげで耐えたんです。」

「…」

 すると、シャーリーのお父さんは急に周りを気にするような素振りを見せる。

「とにかく無事でよかったよ。フレイヤに巻き込まれてヘッドドレスが無くなったのは幸いだったね」

 言われて気付き頭を確認してみると確かにヘッドドレスが無くなっていた。

「あれ、結構お気に入りだったんですけどね。」

 すると、シャーリーのお父さんは首に横を振る。

「とんでもない…!あれにはV.V.によって盗聴器と発信器が仕込まれていたんだよ…!」

「え…?」

 なるほど、道理で私と母さんが話した事などが筒抜けになっていたわけだ。そうやって保険である私をずっと監視していたらしい。

「V.V.と決着をつけにしたんだろう?案内しよう。こっちだ…着いてきてくれ」

「分かりました。」

 そうして暫く進んだ後、シャーリーのお父さんは足を止めてこちらに顔を向けてくる。

「どうしたんですか?」

「…私はこれ以上は行けない。V.V.にはシャーリーのことを知られていてね…まぁ、ある意味人質さ…この先にV.V.が居る。だから…くれぐれも私のことは内密にしておいてほしい。」

「安心して、ヘマはしないわ」

 私は頷いてからシャーリーのお父さんと別れて歩を進める。暫くすると椅子に座ったV.V.が嚮団員に指示を出しているのが見える。

「うん、それはあっちに運んでおいて。そっちは積み込みをお願いね。…それにしてもまだC.C.は見つけられないのかい?」

「申し訳ございません。嚮主V.V.」

 私はギュピギュピを足音を鳴らして歩いていく。V.V.が驚いたようにこちらを見ているのがとても滑稽だ。

「マ、マーヤ…!?そんな馬鹿な…発信器では確かにフレイヤに巻き込まれたはず…!」

 シャーリーのお父さんの話を疑っていたわけではないが、今ので本当に仕込んでいたと言う事がわかった。どうやら本当に私のことを道具としてしか見ていなかったようだ。とても…残念ね…。

「お陰でフレイヤには巻き込まれたわ。」

「ま、まさか…」

「そのまさかよ。そう、筋肉…筋肉は全てを解決するの。巻き込まれたけど筋肉のおかげで無事だったわ。…何か言いたいことはある?」

 何も言わずV.V.はショットガンを取り出し、こちらに銃口を向けると迷わずに引き金を引いてきた。しかし、私の筋肉は最早フレイヤとて効かない圧倒的な筋肉、銃が効くはずが無いのだ。

 そして私の筋肉はスラッグ弾を弾き返し、弾いた弾丸がV.V.の脇腹を貫通した。

「自業自得ね、V.V.…自分の引いた引金が原因で死ぬなんて。」

「…はは…マーヤに向けて銃を撃つだなんて…判断を間違えちゃったね…それに、余計なことを…ペラペラと喋っちゃった。油断したよ…でも、仕方ないだろう?後もう少しだったんだ。あともう少しで…全部…ふふ、自分の姪に殺される…これもブリタニア皇族の定め…か」

 こうして、V.V.によるプロテイン散布は未然に防ぐことができた。これも全て筋肉のおかげだ。やはり筋肉、筋肉は全てを解決してくれる。

 

 嚮団員達の内、幾人かはV.V.の死亡を知ると逃走したのだが、シャーリーのお父さんを始めとする何人かは残ってくれた。残ったメンバーの中にはニーナやランドル博士もいるようだ。ニーナ達には私の死をルルーシュ達による攻撃だと偽っていたらしい。

 回収したプロテインはニーナが発明した小型フレイヤを用いたあらゆる産業廃棄物を粉微塵に消し飛ばせる画期的ゴミ箱により跡形も無く消え去ったのでとりあえずこれで世界から筋肉が失われることはないだろう。

 だが、問題はまだ残っている…そう、我が弟のルルーシュだ。筋肉が全てを解決するのであれば、ルルーシュもフレイヤを耐え切っている可能性がある。ランドル博士やニーナを筆頭とした科学者には専門ではないものの頑張ってもらい、新たな機体を作ってもらっている途中である。故に私たちは暫くアポロンの馬車発射場周辺で隠れ住むこととなった。

 そして、数日が過ぎニュースを見ていると、やはりというべきか…さすがというべきか、ルルーシュが生きていたことが発覚した。そしてルルーシュは超合衆国憲章に批准するために日本を訪れ、超合衆国の代表達に銃を向け人質とし、日本が占領されてしまった。すると、他の部屋から慌てたように誰かが部屋に入ってくる。

「どうしたんですか?」

「申し上げます!帝都ペンドラゴンにフレイヤ弾頭が撃ち込まれましたァ!」

「何ィ!?」

 黒の騎士団がフレイヤを持っているとは考えにくい、では一体誰が…?すると、映像を見たニーナが驚いたような顔をしている。

「半径100kmに…リミッターが外されてる…?」

 半径10kmでも…トウキョウ租界ですらアレだったのだ。一体どれだけの人が死んだのだろう?中には陽菜達のような幼い子も居ただろう。到底許されるべきことではない。

「マーヤちゃん、映像のここ…何か映ってないか?」

 シャーリーのお父さんに言われた通りに画面を見てみると、たしかに何かが浮かんでいるのが見える。

「これは…何?」

「もしかしてダモクレス…?」

 私には見覚えはなかったが、ニーナには心当たりがあるらしい。

「ダモクレスって?」

「えっと、シュナイゼル殿下が進めてた計画で…簡単に言えば天空要塞、かな。超上空からフレイヤを撃ち込んで一方的に制圧できるの」

 事実、上空から一方的にフレイヤを撃ち込まれるようなことになれば誰もが恐怖してブリタニアに服従していただろう。しかし、今やペンドラゴンはルルーシュが抑えている…ルルーシュがやったのでは無いのならば一体誰が…?…ここで考えてもわかる訳も無いことだ。確かめる為にもアレに乗り込むことにしよう。…幸いここにはアポロンの馬車があるのだから。

 

 全ての準備が整い、私はアポロンの馬車に乗り込む。アポロンの馬車を用いて直接ダモクレスに乗り込み、ダモクレスによる支配を阻止するのだ。アポロンの馬車の打ち上げを待っていると、ニーナから通信が入った。

『マーヤ、聞いて。ダモクレスの高度は徐々に上昇してるみたいなの。もう少し軌道計算に時間が必要になるわ。』

「高度が上昇してるってことはいずれこちらから手が出せなくなるってことね…そうなれば世界は何者かによるフレイヤに怯える事になる…。」

 久し振りの打ち上げと無重力を感じ、私はダモクレスの上空に到達する。…何やらダモクレスは現在何者かに攻撃されている様だ。おそらくはルルーシュだろう。ルルーシュの手助けをするつもりはないが、フレイヤによる支配を許すわけにもいかない。ダモクレスは巨大なブレイズルミナスによって守られており、その出力は巨大が故に桁違いだ。だが常に全方向に張っている訳でもない。特に上空からなど予測していない方向ならば警戒されていないだろう。そのままダモクレスの外壁にへばりつき、壁を破壊して内部に侵入してみると、そこは庭園の様な場所であった。

「きゃっ…!?どなたですか…!?」

 声のした方を見ると、そこには車椅子に乗ったナナリーが座っていた。フレイヤに飲み込まれて死んでしまったものだと思っていたが…まぁ、私とルルーシュの妹なのだ。恐らく何かしらの筋肉でフレイヤを跳ね除けたに違いない。流石は私の妹である。…しかし、そうなるとナナリーかダモクレスを…?

「ナナリー、生きてたのね。また会えて嬉しいわ」

「その声…マーヤお姉様ですか…?…今お外から壁壊して入って来ませんでした…?」

「えぇ、壁をブチ破って侵入したの。そしたら中にナナリーがいたんだもの。驚いちゃった」

「そうなんですね…。私もまさかお姉様が壁を突き破ってくるとは思いませんでしたから驚きました。」

 ナナリーの様子を観察しでみても目や脚以外に特に外傷の類はないようだ。その華奢な肉体のどこにそれだけの筋肉を内包しているのかはわからないが、きっと密度がすごいのだろう。ナナリーとの再開を喜んでいると、ナナリーが手に何かを持っていることに気がついた。何かの…スイッチだろうか?

「ナナリー、大事そうに持っているけどそれは何?」

「これですか?これはダモクレスの鍵…フレイヤを発射する私の罪です。」

 つまりこの装置を破壊すればフレイヤは発射できないということか。

「ごめんねナナリー」

「え?」

「フンッ!」

 私はナナリーからダモクレスの鍵を奪うとそれを思い切り真っ二つに叩き折る。ボキッ!という音を聞けばナナリーも何が起きたのか察したのだろう。

「お姉様!?折ったのですか!?ダモクレスの鍵を…!どうしてこんなことを…!私がお兄様を止めなくちゃいけないのに!なんで酷い…お姉様は化け物です!」

「私が化け物…?いいえ、私は悪魔よ」

 だが、ナナリーはナナリーでルルーシュを止める気持ちがあった様だ。とは言えルルーシュを止める為だからと言ってナナリーにフレイヤを撃たせるわけにも行かない。ルルーシュを止めるだけなら私が殴れば済むことなのだから。




フレイヤを筋肉で耐えるマーヤ

結局あっさりと退場するV.V.

ナナリー涙目の3本立てでしたね。


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TURN23′(Final)

 私がダモクレスの鍵とやらを真っ二つにへし折ると、丁度ナナリーのいる部屋に通信が入った。

『さぁ、ナナリー…フレイヤを。………………ナナリー?』

 どうやら声はゼル兄のもののようだ。生きていてくれたことは嬉しいが、ナナリーにフレイヤを撃たせるようとしていたとは…!

「それが…シュナイゼルお兄様…さっき突然お姉様がやってきてダモクレスの鍵を壊してしまったのです。」

 それにしても、ナナリーだけではなくゼル兄もあのフレイヤに耐えていたとは…もしかしたらブリタニア皇族にはフレイヤに対する耐性であるのだろうか。

『マーヤが…?しかし彼女はフレイヤに巻き込まれて粉微塵になったはずでは…』

「ゼル兄!もちろん私もフレイヤには巻き込まれたわ。でもナナリーやゼル兄と同じような方法で無事だったのよ」

『そうか、流石はマーヤだね。』

 そう、筋肉で耐えると言う方法でね。だが、私の事などどうでも良い。ダモクレスの鍵とやらを失ったナナリーにこれ以上戦闘に介入する力はないだろう。となれば残る問題はゼル兄だ。

「ねぇ、ゼル兄がどこにいるかわかる?」

「シュナイゼルお兄様ですか?下の方のフロアにいると思いますけど…」

「わかったわ。ありがとうナナリー」

 ナナリーの頭を細心の注意を払って撫でてから私は床をブチ抜き下層へと降りて行く。しばらくすると脱出用だろうか?小型の飛行機らしき物が置いてあるフロアに辿り着いた。

「まさか床をぶち抜きやってくるとは…予想外だったよマーヤ。もう少し時間がかかるものだと思っていたけど…」

 ゼル兄はカノンさんと金髪の男の人、そしてもう一人を連れており、どうやら今から脱出するつもりだったようだ。だが、今度は床から突然ルルーシュが飛び出てくる。

「ここだったかシュナイゼル…!…うん?何故マーヤまで居るんだ?」

 ルルーシュは私を見て心底驚いたような顔をしているけど、ルルーシュに耐えられて私にフレイヤが耐えられないはずはない。

「ダモクレスを止める為よ。フレイヤの恐怖による世界の支配なんて私は認め無い!」

 それにフレイヤでは圧倒的筋肉を持つルルーシュには通じ無いのだ。使う意味がないと言える。すると、今度はゼル兄が口を挟んできた。

「ではマーヤ、ルルーシュによる独裁は許すのかい?」

「私はルルーシュによる支配も認め無いわ!」

 ルルーシュは人をギアスで操り、その筋肉でわからせ、虐殺を働く…フレイヤと同じである。到底許すことはでき無い。

「では君はどうしようというのかな?」

「私は皆が皆に優しい世界を作るの。」

「ほう?それはいい考えだね。でもそれは理想論だよ。君は現実を見ていない。君はどうやってそんな世界を実現させる気なんだい?まさか筋肉だとは言わないよね?」

 ?ゼル兄は何を言っているのだろう?筋肉は全てを解決するのだから当然方法など筋肉一択である。

「勿論筋肉よ?」

「あぁ、うん、まぁ…だとは思ったよ…」

 人が人に優しくできるのは自らに余裕があるからだ。そして筋肉はあらゆる物事を解決する…つまり筋肉は人生に余裕を与える。結果として人々は筋トレの果てに優しくなる。そして筋肉は全てを解決する…人々の争いも筋肉があれば解決するはずだ。筋肉のより高みを目指す為には争いなどをしている暇はないのだから。

 きっと、世界の全てが筋肉の魅力を知った時、世界は筋肉を求め争いを止めるだろう。争いに向けられていたエネルギーは筋トレに回され、兵器や武器に充てられていたお金はトレーニング器材やジム建設に回されるはずだ。

 だからこそ世界に知らしめる必要がある。筋肉こそが至高…何度でも言おう!

 

 筋 肉 は 全 て を 解 決 す る !

 

 まずは手始めに私の筋肉でダモクレスを粉砕する。そうすればあらゆる兵器など圧倒的筋肉の前には無力と思い知るだろう。一旦その場にいた全員を圧倒的筋肉で殴り飛ばし、私は壁を破壊してダモクレスの外壁まだ突き進む。

「まてマーヤ!どこへ行く気だ!」

 流石はルルーシュ…あれほどの殴打を受けてもまだ意識があったとは。

「今からダモクレスを破壊するのよ。…あ、ナナリーなら上のフロアに居るわ」

「お前…まぁいい。ナナリーを助けにいかなければ…!」

 天井を突き破って去っていくルルーシュを見送り、私はダモクレスの破壊を続ける。壁を突き破って外に出てみると、多くの人が争っているのが見える。なんと悲しいことだろう。みんなが筋肉を鍛えていればお互いにお互いの筋肉を褒めてより筋肉の高みを目指すだけの友人になれたかもしれ無いのに。しばらくすると、ダモクレスから先ほど見た小型飛行機と、蜃気楼が離れていくのが見える。引き続きダモクレスを破壊していると、突如ダモクレスはフレイヤの光に包まれてしまった。勿論私もフレイヤに身を包まれるが、最早二度目である。痛くも痒くもない…いや、なんだか逆に心地よくすら感じ始めてきた。なるほど、圧倒的筋肉であれば様々な苦難を乗り越え、その極端には安らぎがあるということらしい。やはり筋肉、筋肉は全てを解決し、人々に優しさと安らぎを与える…!実に清々しい気分である。まるで全身が風に包まれているようだ。

 今まで私が救えなかった多くの人は私が鍛え足りなかったのがいけなかったのだ。私は最早自らを鍛えることを許されない肉体、ならば私のやるべきことはみんなを…世界を鍛える事ではないだろうか。

 もしもみんなが…私のように鍛えていればシンジュク事変で私が間に合わなくても陽菜達はその筋肉で瓦礫を跳ね除け、その後もゲットーで肉体の研鑽を続けていただろう。

 もしもみんなが…私のように鍛えていればブラックリベリオンでフロアパーツがパージされても瓦礫に押し潰されず、空気を強く踏む事で落下せず、無事に生きていただろう。

 もしもみんなが…私のように鍛えていればユフィによる日本人の撲殺も起きず、ユフィと日本人が見事に鍛えた己の肉体を用いた素晴らしい筋肉のぶつかり合いを演じ、ブリタニアと日本の友好が深まったはずだ。

 そうだ。私は皆んなが死んでしまったことをルルーシュのせいにしていたが、真の罪は私にある。私がみんなの鍛錬を怠ったのが良くなかったのだ。私には折角『絶対鍛錬のギアス』があったのに。

 

 ダモクレスの一件の後、世界はルルーシュにより支配された。ゼル兄もルルーシュにより捕まったと報じられていた。黒の騎士団も壊滅したらしく、最早ルルーシュに対抗できる勢力はいないと。

 だが、私がここにいる。ニュースを見れば明日、日本でルルーシュが制圧記念のパレードを開くとか。私は夜の闇に紛れてクラリスさんのいる自宅へと帰宅した。

「ただいま。クラリスさん」

「マーヤ!今までどこ行ってたの!心配し…なんで全裸なの!?」

 …しまった。フレイヤに飲み込まれたからまた全裸になってるの忘れてた…。道理で風を感じるわけである。

「クラリスさん、心配かけてごめんなさい。全裸なのは…うん、そう…アレよ…新しい健康法よ。」

「きっとそれは騙されてるわ…マーヤは昔から思い込みが激しいから…!」

 そんな風に思われていたのは少し心外だった。とりあえず自宅に上がるとなんだかとても落ち着いた。本当は皇族だとか、ルルーシュの双子の姉だとか、そんなことは関係ない。ここが私の家なのだと思う。

「…クラリスさん、今までありがとう。お世話になりました。」

「マーヤ?何を…」

 今までクラリスさんには一度も有効打を与えられなかった。でも今の私は圧倒的筋肉を持つ。クラリスさんの背後に瞬時に移動し、その延髄を手刀で叩き斬る。

「当て身!」

 最初で最後の有効打を与え、私は自室から目当てのものを取り出した。

 

 そして迎えたルルーシュのパレードに私は乱入する。捕まった人達を見せつけるような悪趣味なパレードだった。手始めにダブルバイセップスを決める。

 

「ゼロ…!」「体脂肪ゼロだ!」「背中にエナジーウィングでもつけてんのかい?」「なんか仮面のデザイン違くね?」「間違いない!あの肩幅、あのポージング!」「ゼロだ!ゼロが来てくれたんだ!」

 

 そう、私が身に付けたのは謎の仮面拳闘士『ツー』のもの。しかしみんな仮面の筋肉=ゼロと刷り込まれているようだ。だが、それはこの際どうでも良い事だ。この圧倒的筋肉を持ってしてルルーシュを倒す…そうすれば世界は筋肉が全てを解決すると理解するはずだ。騒然とした会場を駆け抜け、放たれたヴィンセントの銃撃を圧倒的筋肉で受け止める。

「お返しするわ!」

 筋肉により弾いた弾丸によりヴィンセントは大破、やはり筋肉…筋肉は全てを解決する!

「止まれい!」

 私の前に現れたのはジェレミア卿だった。久しぶりの再会がこんな形とは残念だが、とりあえず顔面を殴ると吹き飛んでいく。

「この拳…まさか君は…!?」

 そんな声が聞こえたが、気にせずに私は再び駆け抜け、カレン達やゼル兄、ナナリーの横を通り抜け、ルルーシュの前の坂へとやって来た。この坂を駆け上がればルルーシュに拳が届く…!

「なんだ貴様…その格好…ロ…ゼロではないな!?誰だ…!?まさか…!?だが、お前はフレイヤに飲まれて死んだはず…!」

「何を驚いているの?筋肉で耐えたのよ。ルルーシュだってジャンヌダルクの自爆の時に筋肉で耐えたんでしょう?」

「馬鹿を言うな!俺はあの時…卜部、スザク、ユフィの三人がその身を呈して庇ってくれたからギリギリ逃げられたんだ!筋肉でフレイヤが耐えられてたまるか!!」

 …筋肉でフレイヤが耐えられない…?そんなはずは…いや、そうか…

「ルルーシュ、まだまだ鍛え足り無いってことね!」

「そう言う次元じゃないだろう!?」

 私は即座にルルーシュの背後に移動する。

「チィ!なんと言うスピード…!」

 ルルーシュの拳は明らかに遅く、私はそれを易々と躱す。まずは手始めにと渾身の腹パンをルルーシュにブチかますと、なんと私の拳はルルーシュの胴体を鉄板でも殴るかのように容易に貫通した。おかしい…ルルーシュほどの腹筋であれば貫通などはし無いはず…。

「ルルーシュ…貴方まさか…!」

「…あぁ、そうだ…これで俺の計画は達成される…ゼロ・レクイ…」

「筋トレをサボったのね!?」

 なんと言うことだ。私を倒し、世界に自らを超える筋肉が居ないからと油断したに違いない。なんと不甲斐ない弟なのだ…!

 私はそんな情けない弟から拳を引き抜き、ダブルバイセップスを決める。とりあえず今は筋肉を見せつけ、世界に筋肉こそが全てを解決するのだと知らしめなければ。

 すると、周囲の建物からギルバートGPギルフォードさんやネリ姉が現れた。

「人質を解放しろ!」

 そして私の拳が応えたのか、両脇を抱えられたジェレミアさんが指示を飛ばしていた。

「いかん、ここは退却しろ!」

 そんなやりとりがなされる中、民衆によるゼロの名前を呼ぶ声が響き渡る。

 

 …私ゼロじゃないんだけどなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方が契約すれば力をくれるって言う筋肉の悪魔?…私は復讐するための力が欲しいな。だから力を頂戴!」

 私のところを訪れた少女は復讐のために力を手に入れたがっているようだった。復讐…つまり私はまた誰かを助けられなかったと言うことだろう。もっともっと世界を鍛えなければこの悲劇は無くならない。

「えぇ、分かったわ。貴方に力を上げる…この力は王の力…王の力は貴方を孤独にし、その人生に困難を授ける。でも問題ないわ、筋肉よ。筋肉があれば大体の困難は解決するわ。」

 そして私は目の前の少女にギアスを与えた。この生活を始めて何年が経ったかは覚えていない。私は私を頼る人々にギアスを与える。そして彼らがギアスを持ったがために降りかかる困難の中で人として、心と体の筋肉が鍛えられて成長すればきっと世界は優しい世界になるだろう。そんな私の住処が襲撃を受けた。また引っ越しの準備をしなければいけないわね…。襲撃者を拳で捩じ伏せ出ていくと、私の前に一人の男が現れる。

「見つけたぞM.M.…!…またこんなにギアスユーザーを…分かっているのか!」

 ルルーシュ…いや、今はC.Cからコードを授かりL.L.と名乗っているのだったか。あの時死んだものと思っていたが、パレード参加前にコードの継承を済ませていたらしく、私の拳に腹を貫かれたのもあそこで死ぬことが目的だったからのようだ。

「分かっているわ。この程度じゃまだまだ足り無いってことは。でも世界を優しくする為には地道にやるしかないのよ。」

 マッスルボディは1日にしてならず…日々の地道な努力こそが最大の近道だ。

 私は世界を優しくするためにギアスを与え続けている。陽菜達を守れなかった私の罪を償う為に、私は世界を強くする。皆に困難を与え、皆が困難を乗り切った時、世界はきっとより強く、優しくなるだろう。そしてこれにはルルーシュにも手伝ってもらっている。

「俺は…ゼロとして世界を守り続ける…!平和を見出すのであれば姉であっても許さない!」

 争いがあれば人は鍛える…鍛える事で人は優しくなる。私は世界にギアスを与え、ルルーシュはそれを止めようと動く。そこには自然と争いが生まれる。全ては今までの私が守れなかった事への罪滅ぼし。世界をより強く、優しく、筋肉に…

 

 それが…私の願い(ミートギアス)

 

 

『ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 MACHO STORYS Fin』

 




はい、というわけでミートギアスシリーズはこれで完全完結とさせて頂きます。綺麗に終われたかは微妙ですね()

今までご愛読ありがとうございました。長かったですね。…日数的にはそうでもなかったですね?

●マチョスト版のダモクレス〜ゼロレクイエムの解説●
・スザク、ユフィ、卜部はジャンヌダルクの自爆フレイヤにて消失済み
・ラウンズ唯一の生き残りのロロが気合いで絶対停止を使用。カレンを抑える。
・ルルーシュがダモクレスを制圧…のはずだったがマーヤによる破壊及びシュナイゼルによる自爆フレイヤでダモクレス消滅)。ルルーシュは蜃気楼で脱出済み
・C.C.からコードを継承し、自らが世界を守り続ける事を決意する
・一応ルルーシュに世界の憎しみは集まっているのでロロにゼロをやらせてゼロレクイエム。…が、ツーに扮するマーヤにより腹貫通。一応世間がツーをゼロと勘違いしてくれている為、ゼロレクイエム自体は成功

●裏話●
因みに作中で未回収なのですが、『ウルフ』の正体は玉城です。マチョストではウルフである玉城がゼロに対する疑念を団員に与え続けている為、騎士団による見限りイベントが発生します。プロットを決め切れておれず、マーヤが騎士団に潜入するシナリオも考えていた為、そちらで回収しようとも思っていたのですがそうならなかったので…
ヒントは1話から出ています。MACHO STORYSのSTAGE01′の玉城の名乗りの名前をよーくみてみてください。あれは誤字ではありません。

そしてマチョスト裏話。実はマオはV.V.かシュナイゼルにより処刑されたように見せかけられて生きている展開にし、後半でマーヤの味方ポジション+V.V.を見限るきっかけにする予定だったのですが、没になりました。「生きてるだろ」予想の方、お見事です。


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あとがき的なもの

〜あとがきの前書き(自己矛盾)〜

本編とそのおまけと蛇足が完全に終わり、作者の書きある全てのコードギアス作品という弾を撃ち尽くしてしまったので今度こそ本当に完結です。連続更新も止まりましたしね。

個人的には筋肉のルルーシュ(ルルーシュ主役)は基本のルートが概ね原作通りなので起きにくかったのですが、マチョストは主人公がが原作に存在しないマーヤ、さらに彼女の登場するロスストはまだ未完結、そしてあろうことか作者が魔改造した結果名前こそマーヤであるものの全くのバケモ…別物になってしまいました。結果として世界は概ね原作通り進むものの、スザク以上にルルーシュとすれ違い続けた彼女視点ではそこそこ新規プロットで進む羽目に。

という訳で今回はマチョストにおいて作者の技量不足やらで没になった設定や撒いたものの回収できなかった伏線?展開?について書かせていただきたいと思います。


●玉城がシュナイゼルからのスパイ●

マチョスト本編でもその設定は生きていますし、一応ミートギアスにおける「何故黒の騎士団はルルーシュを信じきれなかったか」の補足として「玉城が団員達にルルーシュに対する不信感のタネを撒き続けていた」という解答のために生み出しました。ただ、マーヤが黒の騎士団と深く関わるタイミングがなくマーヤが知覚できない=存在しないものに。

…ドロテアさんみたいに特別別視点の話を混ぜればよかったですね…

 

一応、最初から考えていたことだったので玉城のフルネームをよく見てみると名前の最後が「狼」になっています。

 

●マチョストではノネットを活躍させる案●

うーん、まるで活躍してませんね…。R1シナリオではそこそこ出番はあったのですが…。R2でジノの代わりに入れれば良かったんでしょうか…。

 

●マーヤ黒の騎士団潜入ルート●

ロスストの「特派潜入シナリオ」の逆版ですね。本当は入れたかった。でも入れるとルルーシュから「質問に答えろ」のギアスが飛んできて秒でスパイなのがバレるという。

このシナリオが無くなったことで一部のキャラは名前が出なくなったような?

 

●仙波出番増加ルート●

要はミートギアスでの卜部ポジションに仙波を持ってくる案。どこかで私服(?)姿の仙波とマーヤを邂逅させてちょっと仲良くなって欲しかった気もしますが、実力不足で没に。「俺にも娘がいて、本当なら孫もいたんだろうな」みたいな事でも言わせりゃ良かったんでしょうか…まぁ仙波の活躍なんて朝比奈の活躍並に求められてないでしょうしね…。覚醒した仙波が藤堂流剣術でマーヤを追い詰める…!?

 

誰得ですか???

 

●ペンデュラム(脳筋仕様)の登場●

当初は登場するはずだった幻のナイトメア。ペンデュラムくんです。この子はロスストでも登場予定でしたね。

 

・ペンデュラム(脳筋仕様)

拡充された予算を用いてマーヤのために密かに作っていたランスロットタイプのナイトメア。但し、ランスロット以上に格闘戦重視な作りとなっている。

特筆すべきは通常のナイトメアより一回りは大きい腕、常時ガントレットを装備したような状態であり、掌の小指側にはMVSの機能を搭載。これによりボールスでは得られなかった切断攻撃が可能。

つまり、原作に登場するペンデュラムという名を冠してはいるが全くの別物である。

 

こんな設定まで考えてました。でも後半もマーヤがボールスに乗り続けたため存在抹消。因みにそうなった原因はR2での乗機をサグラモールが担うためです。R1を書き終える前にナイトオブツーになったマーヤが元ツーのマンフレディから紆余曲折あって継承する流れよくね?ってなってその為の回収イベント(亡国のアキト)を挟んだわけです。

 

●マーヤ極悪堕ちエンド●

本作のマーヤはあくまでもギャグ的に「筋肉があれば全部解決するしみんなも体を鍛えよう!レッツトレーニング!」みたいなノリで世界にギアスを撒き散らす権化になりましたが、当初の予定はもっと酷かったです。マーヤが世界の崩壊を望むようなそんなエンドを予定していました。

 

●マーヤ達がレイラ達のところに帰るエンド●

これは秒で消しました。だってあの選択は世界からの逃走なので。

マーヤは世界を鍛え続けるという選択から逃げないのです。

 

●アレクサンダ・ジャンヌの登場●

ジャンヌダルク、作者がナイトメア戦闘の描写に疲れて…じゃなかった。R2の空中戦主体のつまらん戦闘を書きたくがないために搭載したスペックの割にあっさりと爆散したジャンヌダルクでしたが、当初はサザーランドジークのジャンヌダルク版を考えていました。でも戦闘する機会がなくても良いのでカット。

 

●ユキヤの筋肉量の変化について●

実はマーヤの血を輸血し、ブリタニア皇族のマッチョブラッドが混入した事で体質が改変、ユキヤは筋肉に目覚めてしまいます。

が、特にそれがわかるタイミングはないので没設定です。

というかあの三人のうちユキヤくらいしか大した活躍してないので…

あとランドル博士もね()

 

●ジェレミアがマーヤのギアスを解除する●

本来はこれで全部の謎を解く予定でした。が、ギアスキャンセラー作ってるV.V.が手駒のマーヤにギアスキャンセラーを撃たせるはずは無く、そうするとジェレミアはルルーシュに取り込まれてしまうという。V.V.を倒してマーヤを解放するとか思ってたのかもしれませんね

 

●マオが生存、マーヤの仲間になる●

カードをなくしたV.V.の心を読んでマーヤを利用しようとしていたことをバラすという流れを予定していましたが、皇帝の記憶操作とか、マオが真実を言っているかマーヤが判断できないのもあり没になりました。

因みに、この場合のマオは「マーヤが見せつけた脊髄反射攻撃」により「心を無にしてギアスで聞こえる声を聞き流す」術を体得、マーヤに感謝している。という感じにマーヤに対するマオの印象が高まる為嘘をついたりしません。…まぁ、彼がいると有利すぎるので存在は消しましたが。

 

 



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オマケ ルルーシュ誕生祭

時系列などが無茶苦茶ですが、混沌としたカオスの筋肉時空だと思ってください。

つまり、いつものミートギアスだな!!


 今日は12月5日…俺の誕生日か。俺ももう高校3年生、今更誕生日を祝って貰うのも小っ恥ずかしいものだ。だからあえていつもと同じように起き、朝食を作る。

「今日の朝ごはんはなんですか?お兄様」

「うん?いつもと同じメニューだよ。もう少しでできるから待っててくれ。」

「分かりました」

 …うん?今の可憐で美しく朝の小鳥の囀りのような心地よい声音は…?再度食卓を振り返るとそこには何故かロロと談笑するナナリーが座っていた。可笑しい…何故我が家にナナリーが…今は総督として政庁にいるはず…さらに今の俺はシャルルによって皇族である記憶を消されているはずなのだ。

「ドウカシタンデスカ、ブラザー」

 ロロは…うん、いつも通りだな。今日も素晴らしい筋肉のキレだ。ナナリーが何故我が家にいるかは分からないが…うん、朝から可愛らしいナナリーの尊顔を拝めたことだしもうどうでも良いか。

「さ、できたぞ。一緒に食べよう。」

「久しぶりのお兄様のご飯、楽しみです!」

「マイニチタベテモアキマセン!」

 朝食を終えるとナナリーは政庁からの迎えで政庁へと出勤して行った。…うん、深いことを考えるのはやめよう。ナナリーの余韻が台無しになる。

 

 それから学園へと向かうと丁度スザクとマーヤにであった。

「やぁ、スザク、マーヤおはよう」

「あ、ルルーシュ」

 スザクが手を振りながらにこやかに笑い、こちらに駆け寄って来る。今日のスザクはやけに爽やかだが、何かいいことでも

「フンッ!!」

「甘い!!」

 スザクの拳を受け止め、お返しに拳を突き出すとスザクはそれを受け止めた。流石はスザク、カウンターを読んでいたか。

「朝からいきなり何するんだスザク」

「今日は君の誕生日だからね、拳をプレゼントしようかと」

 どうやら俺を鍛えるための配慮だったようだ。そしてその瞬間、スザクの後ろにいたはずのマーヤが消えていることに気がつく。

「くっ!」

 思い切り跳躍すると地面からマーヤのものと思われる腕が飛び出てきた。アレに捕まっていたらおそらく足首の骨が砕けていただろう。

「ふぅ、危ない危ない」

「ユダンハヨクナイデスヨブラザー」

 瞬間、俺はロロによるヘッドロックを決められてしまう。流石は我がソウルブラザー、見事な拘束だ…!だが

「この程度の筋力で俺を止めることは出来ぬゥ!!」

 全身の筋肉を瞬時に膨張させることで俺の体積は2倍に膨れ上がる。これにより拘束を解除した俺はロロを逆に拘束し地面に突き立てつつ着地する。

「マーヤもロロも…これは誕生日プレゼントかい?」

「イエス」

 地中に頭部が突き刺さったままロロが答えた。マーヤも地面から這い出たようで笑顔で頷いていた。やれやれ…俺を鍛えようという気持ちは嬉しいが誕生日プレゼントだなんて小っ恥ずかしい真似はやめて欲しかった。

 

 地面に突き刺したロロを三人がかりで引っこ抜くと今度はミレイ会長がこちらに走ってきているのが見える。流石に会長は殴ってきたりはしないだろう。

「大変よルルーシュ!突然この学園に皇帝陛下がいらっしゃったの!」

「…帰る」

 そう言って踵を返すと俺の目の前にはシャルルが立っていた。

「久しぶりだなルッルーシュ!我が、息子よォ…」

「…」

「どうした?ルッルーシュ!」

 シャルルの発言にスザクが近づいて行き、耳打ちをしていた。恐らく俺にかけたギアスの事を言っているのだろう。スザクの耳打ちが終わると同時にスザクは奴の拳で吹き飛ばされてしまった。乱暴な奴だな…!

「ルッルーシュ!なんったる愚かしさァ!まだワシのギアスがァ解けておらぬとはァ!!…まぁ、良い。貴様の誕生日にワシが直々にィ…」

 俺は瞬時にその場を跳び退きシャルルの方を確認した。

「拳を、くれてやろう…!」

 ニヤリと笑ったシャルルの拳は地面を叩き割っており、直撃すれば死を意味することを感じ取った。なんという無茶苦茶な破壊力だ…!

「どうしたァルッルーシュ!!」

 奴が踏み込むと大地は唸り空気が震えた。そしてさっきまでそこに居たはずのシャルルの姿が無くなっていることに気がつく。

「どこを見ておる!ルッルーシュ!!」

 背後からの踵落としを辛うじて両腕で防ぎ、反撃に蹴りを見舞う…が、それは空を切って終わった。

「速い…!」

「それだけでは…ない」

 いつのまにか目の前に迫っていたシャルルの拳は俺の腹へと深々と突き刺さった。

「ワシは速く…更に力強い…技の切れもォ…お前以上だ」

 危なかった。瞬時に背後に跳びつつ腹筋に力を入れる事で耐えることができた。これがもし反応出来ていなければ確実に内臓が全て破裂していただろう。拳を叩き込んだ事で満足したのか、シャルルは攻撃をそこでやめ、急にスクワットを始めた。お返しをしたいところだが、今の俺では勝てないことが目に見えている…これだけ鍛えてもまだ足りないとは…!

 

 すると、恐らくシャルルの護衛役…奴に護衛が必要かはわからないが…であるナイトオブラウンズのアーニャが俺の方に近付いてきた。

「ねぇ、ルルーシュ。誕生日なんだし記念撮影しない?」

 年下だろうに、随分気安く話しかけて来るとは思ったがさっさと終わらせようと了承すると、彼女は携帯端末を取り出し二人で写真を撮った。

「じゃあルルーシュ、お誕生日おめでとう」

「はぁ、ありがとうございます。」

 

 こうして俺の誕生日は終わった。祝って貰うなんて小っ恥ずかしいものだがまぁ、身体も鍛えられたし…良いとするか!

 



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