俺は仕事の内容を知らない (kagemin)
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俺は今加賀島というところに居る

 

書類を研究施設に届けるのが今回の仕事であり

その目的地である研究施設に向かっている

 

この島は人の気配がない

古びた民家があるので昔は人が住んでいたのだろう

 

船を降りて1kmくらい歩いただろうか

 

目的地はまだまだである

 

俺の名前は・・・・なんという名前だったかな

 

自分の名前を確かめるために自分の名前が書かれた資料をリュックから取り出す

 

柳田隆一 

これが俺の名前だ

 

ついでに加賀島の地図を取り出し自分の位置と目的地を確認する

 

目的地まであと7~8㎞くらいありそうだ

 

船に乗る前に情報漏洩対策として自分の財布とスマートフォンを取り上げられ

代わりに会社支給のガラケーみたいな携帯を支給された

携帯電話はネックストラップが付いてあり首に掛けるようになっていた

 

その時携帯電話が支給されたとき一緒に腕時計も支給された

その腕時計は社員証代わりになるから左手首に付けるよう指示された

 

指示通りにその腕時計を左手首に着け携帯電話はジーパンの右前ポケットに押し込んだ

 

俺は喉が渇いたので目的地に行くためのルートを外れコンビニか自動販売機を探してみた

 

しばらく歩くと自動販売機を見つけた

 

俺は小銭入れを財布とは別に持っていたので小銭入れからお金を取り出し自動販売機に入れた

 

しかしお金は返却口に落ちた

 

もう一度試したが同じだった

 

自動販売機が壊れているのか?珍しいなと思い目的地から外れたルートを歩き出した

 

歩きながら目的地に行くルートを歩いていたらコンビニや自動販売機があったかもと

思いながら歩いていると黒い大きな塊が見えた

 

何だろう、こんな道のわきに何か不法投棄か?と思い近づいてみるとそれは

大きなゴキブリが集まっていることが分かった

 

そのゴキブリは手のひらよりはるかに大きい

 

驚いた俺は自分の周辺を見渡し周辺状況を確認した

 

確認した結果として自分の周りに巨大ゴキブリは居ない

紺色の靴と時計らしき金属の物が巨大ゴキブリの近くに見える

 

とりあえず来た道を戻る

その後で考えようと思った

 

追いかけてくる気配がなかったから走って元のルートに戻った

 

1㎞以上走ったが息切れすることもなく走れた

 

体力はありそう

 

とりあえず武器が必要だと思った俺は当たりを見ながら目的地へ向かった

 

あれは何だったのだろう

あの時計は自分が今手首にしている時計に似ていた

まさか・・・

 

今からはこの先の事を考える事にしよう

 

取り敢えず木の棒を拾った

 

もしあの連中が襲ってきてもこんな木の棒で身を守ろうとしても無理だろうが

無いよりはマシか

 

木の棒を手に取り目的へ向かった

 

 



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ここで今までの事を整理することにした

 

船から10時頃降りる

船は夕方の5時に迎えに来る

だから今戻っても船が無いため戻ることができない

なので今は予定通りに目的地に行くのがいいだろう

この島は民間人が住んでいなさそうである

店もないし自動販売機も動いていない

そして一番の問題は巨大ゴキがいる

目的地である研究施設は何を研究しているか分からないが

その研究施設から逃げ出したのかもしれない

 

俺は携帯電話を見るため木の棒をリュックに刺してポケットから

携帯電話を取り出した

 

電波は圏外

時間は10時30分

 

役に立たない携帯電話、腕時計の方がましだ

 

ここでマンガの主人公なら巨大ゴキの場所に戻って巨大ゴキを退治するのだろうが

あんなのに一斉に襲われたら勝てる自信がない

あと巨大ゴキ以外の巨大昆虫がいたら危険だ

 

今いる道は目的地まで指定された道だ

多分この道が比較的安全なんだろう

 

あんな種類のゴキが存在するのかもしれないと思いながら

目的地に向かうことにした

 

それから1㎞くらい歩いた

 

10メートルくらい先にショウリョウバッタが3匹道のわきにいる

 

俺は道に落ちていた鉄の棒を拾い近づいた

 

やはり大きい

50~70㎝くらいはありそうだ

 

この大きさのバッタなら勝てそうだ

 

自分の周りを見渡し敵がいないかか確認しつつ戦闘シミュレーションをした

一匹突っついて襲ってきたら各個撃破

昆虫は連携しないだろう

 

そして俺はバッタの背後に回り込み一匹鉄の棒で突っついた

 

ピョンピョンピョン

 

三匹全部逃げて行った

 

俺はあっさり勝った

 

まぁ、バッタだから現実はこんなもんだろうな

 

これが2メートルくらいあれば俺は危なかっただろう

襲ってこなかったけど・・・

 

思っていたより安全に目的地に着くかもしれない

 

考えてみればあの時のゴキも金属棒で地面を叩きながら近づけば逃げて行ったかもしれない

 

危険な昆虫はいるのかな?

 

カブトムシとかクワガタは肉食ではなさそうだから大丈夫かな

カマキリは怖いかもしれない

 

周辺を気を付けながら危険そうな奴いたら近づかなければ大丈夫だろう

 

漫画や映画はいつの間にか近くにいて突然襲ってくる

 

周辺を注意しながらいるとそんなことは絶対起きない

 

歩いているとトンネルがあった

 

このトンネルを越えなければいけない

 

自分の来た道を振り返った

 

危険そうな虫は居なさそうだ

走ってトンネルを抜ければ大丈夫だろう

 

しかし自分の考えは甘かった

 

全速力で走ると走る音に反応したせいなのか出口辺りに何か集まってきた

 

しかも直ぐに息切れし足も痛い

 

これはヤバいな

 

後ろに振り向いてみると入口辺りに何か動いているものが見える

 

殺虫スプレーがあればよかったなとくだらないことを思った

 

とりあえず選択肢を4個思いついた

 

一つ目はまだマシそうな入口側を走って戻る

 

二つ目は出口側に近づいたら全速力で走って逃げる

 

三つ目は金属棒を叩きながら威嚇して出口に向かう

 

四つ目はここでじっとして居なくならないか様子を見る

 

ビビりな俺は四つ目を採用した

 

 



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俺はトンネルの入り口と出口を見た

 

トンネル内で入口と出口と言い方がおかしいが

入ってきた方を入り口、トンネルを抜ける方を出口と言い方にしている

 

出口の方が大きそうな奴がいる

 

ここは島なので来た道を引き返したところで帰ることはできない

 

それならゴキがいた所の道を行けば遠回りになり行けなくもないが

この道より安全とは限らない

なら進むしかない

 

何か入口方向を見ているとトンネル内の端の方が動いたような気がした

 

両腕に鳥肌が立った

 

金属棒を両手で持ち身構える

 

相手は黒色で背中部分が光ってる

 

大きさは20㎝くらい

 

3匹は目視で確認できた

 

俺はトンネルの中央に移動して近くに来た奴に目掛けて金属棒を振り下ろした

 

金属棒は大きな音を立て地面を叩いた

 

腕が痺れた

 

「くそっ!!」

 

俺はこの金属棒をなまくらと名付けた

 

ここで一匹でも倒したかったが外した自分にイライラし右手で持ってるなまくらを振り下ろした

 

何かへんな音とともに右手に何かを叩いた感触があった

 

後ろを振り向くと1メートルくらいありそうな大きなカマキリが倒れている

 

俺はトンネルの入り口側ばかり気にしていた為出口側から虫が来ていた事に気づいていなかった

 

自分の周りを確認し虫が居ない場所に素早く移動した

 

倒れたカマキリはまだ元気そうだがトンネル内部に居た虫達が集まってカマキリの足を食べ始めた

 

カマキリは最初のうちは抵抗していたがその内動かなくなり虫の餌となった

 

もし俺が倒れて虫たちが一斉に襲い掛かってきたらと思うと怖くなった

 

虫たちは俺を素通りしてカマキリの所に集まり

カマキリを食べてる虫を更に他の虫が食べるといった地獄絵図が始まった

 

ここから早く逃げよう

そう思い出口側に向かって歩いた

 

しかしホラー映画などで急に自分の後ろにゾンビなどが現れてびっくりさせるシーンがあるが

あれはリアルにあるんだなと思った

 

たまたまなまくらに当たってカマキリを倒しけど

もし足を噛まれて動けなくなった所で一斉に襲われてしまったらと思うとゾッとする

 

この島は何かヤバい研究をしているのか?

この資料とはいったい何だろうか

 

そしてこれが映画だったらきっとラスボスが出てくるに違いない

せめて武器として大きい殺虫剤が欲しい

 

何にせよ今のところ自分の選択肢がすべて外れているような気がする

 

その予感は見事に当たった

 

トンネル出口を見ながら歩いていると出口の上部から何かが落ちた

 

あー、何かヤバそうな奴だ

 

大型の蛇みたいな感じ

 

ラスボス登場かな?中ボスなら嫌だなぁ

 

近くまで行って走り抜けれないだろうか

 

なまくらをラスボスに投げて走り抜ける

 

これだ!

 

俺の戦術はラスボスに近づく

 

ラスボスが俺に注目していなければ走り抜ける

 

俺に注目していればなまくらをラスボスに目掛けて投げて走り抜ける

 

ラスボスはなまくらに注目すれは俺は余裕で通り抜ける事ができるに違いない

 

わざわざラスボスを倒す必要ないな

 

所詮虫けらだ

敵意を向けて襲ってくるなら話は別だが目の前をすり抜けても襲ってくる事は少ないはず

 

俺は静かにラスボスに近づいた

 

 

 



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俺はラスボスを見た

 

蛇みたいな細長い胴体

 

その胴体にたくさんの脚がついている

 

ムカデだ

 

巨大ムカデがいる為なのかカマキリを食べにトンネル中央に

移動した為なのか他の昆虫たちは居なくて助かった

 

敵を観察することにした

 

サイズが大きいと細部まで見えて更に気持ち悪い

 

黒い胴体に赤い足

このタイプは日本によくいるムカデだ

 

威嚇行動なのか腹ばいになって頭を上げてこちらを見ているようだ

 

巨大ムカデは口に大きな牙みたいなものが見える

 

その牙は頭の次の胴体から口元に向かって生えている

 

頭の先端は触覚だろう

うねうねと動いている

 

足の先端は尖っていて皮膚に刺さりそう

 

色、姿だけで危険な生物だと分かる

 

気を付ける点は近くに来て抱きつかれないようにする

 

抱きつかれると足が身体に刺さり動けなくなる

そしてあの凶暴な口で噛まれる

 

こんな感じだな

 

ムカデは毒をもっている

 

毒は頭だろうか?お尻の触覚みたいなところにあるのだろうか?

 

今はどちらか分からないのでなまくらを頭に向かって投げて

頭にぶつかったら衝撃で頭はお尻の方に向くだろう

 

そこで走り抜けれは成功だ

 

もしお尻の方から走り抜けようとしてお尻に毒があれば危険である

 

これで完璧な作戦だ

 

俺はゆっくり巨大ムカデに近づきなまくらを頭に向かって投げた

 

なまくらは巨大ムカデに当たらずトンネルの外の草むらに消えていった

 

俺の作戦は一瞬で失敗に終わった

 

巨大ムカデはこちらを見ている

 

俺は背負っているリュックを前に持ってきて胸ガードにする事にした

 

そうするとリュックの中から木の棒が飛び出しているのが分かった

 

これはなまくらを拾う前に道端に落ちていた木の棒だ

すっかり忘れていた

 

俺は木の棒を素早く取り出しリュックを背負った

 

胸ガードにすると木の棒を振り回す時に邪魔になるからだ

 

巨大ムカデがじりじりと近づいてきたので木の棒を

バットをスイングするように右から左、左から右へ振り回した

 

木の棒を左から右にスイングした時巨大ムカデに当たり

巨大ムカデはトンネル出口ギリギリまで転がりウネウネしながら体制を整えた

 

巨大ムカデは足が2本外れたがそんなにダメージはなさそう

 

これはいける!

 

左から右にスイングした時当たったので打撃力が弱かったので

距離を一気に縮めて右から左にスイングすれば巨大ムカデのダメージは大きいはず

 

何故なまくらを持ってる時点でこの戦術で戦わなかったのか後悔した

 

こちらを威嚇してる巨大ムカデに向かって距離を縮めて木の棒を右から左へスイングした

 

空ぶった

 

しまった!巨大ムカデが怖くて距離を縮めることができなかったのだろう

 

思いっきりスイングした為砂を踏んでバランスを崩して尻もちをついてしまった

 

その瞬間巨大ムカデが俺に素早く覆いかぶさるように襲ってきた

 

俺はここで終わるのか?

 

この島で俺の考えはすべてはずしている

俺は本当にダメな男だ

 

俺の足は巨大ムカデに抱き着かれ動くことが出来ない

 

目の前の巨大ムカデの牙と口がはっきり見える

 

ああー気持ち悪い

俺はカマキリの様に食べられて終わる

 

俺は目を閉じた

 

今に巨大ムカデに刺されて毒で身体が動かなくなるのだろう

カマキリは脚を食べられたら抵抗しなくなったな

何故死ぬ時まで抵抗しないのだろうと疑問に思ったが

その気持ちが今ならわかる

そんなことを考えていたら俺の脚に抱き着いていた巨大ムカデは離れていった

 

 



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何があった?

 

俺はゆっくり目を開ける

 

巨大ムカデの動きが止まっている

 

俺は持っている木の棒で巨大ムカデを押しのけた

 

俺は自分の足元を見ると少し大きめな蟻が走り回っている

 

次に巨大ムカデを見るとお尻側にたくさんの蟻が群がっている

 

蟻が俺を助けてくれたのか?

 

俺はゆっくり蟻を踏まないように立ち上がった

 

俺は巨大ムカデを見ているとしまいに動かなくなり

 

巨大ムカデは蟻によってどんどん分解されていく

 

しばらく見ていると巨大ゴキが一匹巨大ムカデに近づいた

 

この巨大ゴキは巨大ムカデを食べにきたのだろう

 

巨大ゴキは巨大ムカデを食べ始めると蟻が巨大ゴキに攻撃を始めた

 

巨大ゴキは1分もかからず蟻の餌となった

 

蟻凄いな・・・助けてくれてありがとう

そう思いながら巨大ムカデが分解されていく様を見ていた

 

そろそろ目的地に向かうかと思い木の棒を見た

 

一匹の蟻が木の棒にしがみついている

 

恩人に対して振り落とさないようにと思いそっと地面に木の棒を置いた

 

地面に置いた木の棒をしばらく見てると蟻が集まってきた

 

蟻達は木の棒に触れると動きを止めていた

 

蟻達はこの木の棒が好きなんだろうか?

助けてくれたお礼としてここに木の棒をこの場所に置いていくことにした

 

俺はトンネルを抜け巨大ムカデと格闘した時の金属棒(なまくら)を拾い上げ目的地へと向かった

 

歩きながら思ったのだがトンネル内での戦いで一匹も倒していない

 

なまくらがカマキリに偶然当たったくらいだ

 

巨大ムカデの時も一匹虫を巨大ムカデに渡せば巨大ムカデは虫を食べるだろう

 

その虫を食べているうちにトンネルから出ることが出来たのではないだろうか

 

わざわざ敵を作って戦うなんてバカだな

 

しかし蟻は俺に攻撃しなかった

なぜ?

巨大ムカデを敵認定して俺の事は敵認定しなかった

いろいろ考えてみても分からなかった

 

そう思いながら歩いていると白い建物が見えてきた

建物には加賀島ラボラトリーと書いてある

 

結構大きい建物だ

 

玄関らしき所にインターホンがある

 

その前に行きなまくらをリュックの中に入れ資料を取り出した

 

資料の届け先に加賀島ラボラトリーと書いてあることを確認しインターホンのボタンを押した

 

男の声ではいと聞こえたので資料を持ってきましたと答えた

 

扉のロックが解除されたのかガチャといった音が聞こえ「どうぞ」と聞こえた

 

俺は取っ手を回し扉を押して入った

 

中は動物園のように歩道の脇は檻のようになっている

 

中に動物か何か居るか確認しながら歩いたが何もいなかった

 

しばらく歩くと扉があり取っ手を回し扉を押したが開かなかった

 

カギがかかっているのか?

壁を見てもインターホンらしきものは無い

 

押してダメなら引いてみるかと思い取っ手を回しながら扉を引くと開いた

 

やっと建物内に入ったことで俺は安心できた

 

建物の中に入るため靴を脱いでスリッパに履き替えたところで30代くらいの細身の男性がくると

 

「こんにちは。どうもお疲れ様です」と言ってきたので

 

俺は「これが依頼の資料です」といって男性に渡した

 

俺は資料を渡しこの建物に用事がなくなったのでスリッパから靴に履き替えようとしたら

男性が「時間があれば休んでいきませんか」と聞いてきた

 

俺は喉が渇いて疲れていたのでハイと答えた

 

 

 

 

 



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俺はスリッパに履き替え案内された客室に入った

 

室内を見渡すとウォーターサーバーが有ったので嬉しくなった

 

「部屋を出て右に進むと突き当りにトイレがあります。このウォーターサーバーはこの紙コップを取り出しご自由にお使いください。あとこちらのパンやクッキーなどは当社で開発したものです。食べて感想を聞かせてもらえると今後の開発に役立つので助かります」

 

「分かりました、ありがとうございます」

 

「あと帰るときはこちらのインターホンで111を押して下さい。そうすると私のいる部屋に繋がります。それでは船の出発時間までごゆっくり」

 

「はい、ありがとうございます」

 

そう言い残して男性は出て行った

 

部屋を見渡したがカメラらしきものは無かった

 

俺は紙コップを取り出し水を注いでテーブルの上に置いて

個別包装されているパンとクッキーを手に取りソファーに座って食べてみた

 

感想は普通だな

不味くなければ美味くもない

パサパサしたパンとクッキーだった

水は美味しかったので紙コップで3杯飲んだ

 

あー疲れたなぁ

船は17時だったな

今は12時だから15時までにここを出れば間に合うな

帰りも同じことがあるのだろうか?

もし虫たちに襲われた時の対処としてここにある甘そうなフルーツケーキで虫の注意を引き付けて逃げればいいのではないかと考えた

 

とりあえずフルーツケーキを3個リュックに入れた

 

この会社の研究内容、会社概要が書かれた物が無いか見渡したが何もない

客間なら何かあるものだが何もない

あるのは試食品だけである

食料品の研究施設ならこんな離れ島にあるのも変だ

そんなことを思いながら部屋の中を探ってみた

 

この会社の情報は見当たらないが小窓がある

この小窓を開いてみようとしたが開かない

その時入り口からノックの音が聞こえた

俺は「ハイ」と答えた

 

この会社の男性が入ってきた

その男性は椅子に座り「帰りの船は何時出発ですか?」と尋ねてきた

 

「17時に出発です」

「ここから歩いて1時間もかからないのでゆっくりしていってください」

「私ここに来るとき大きい虫に襲われたのですが・・・」

俺は思い切って尋ねてみた

 

「これは誠にすいませんでした。うちの会社は虫の生態も研究していましてそこから抜け出してしまった虫かもしれません。」

「虫の研究ですか・・・」

「はい、この先食糧難など災害のために昆虫食材も研究しています。そして昆虫を大型化することなどの研究もしていましてその昆虫が抜け出したのでしょう」

「昆虫食⁉」俺はクッキーを見た

「安心してください。こちらの物は昆虫食材ではありませんので安心してください」

 

俺はホッとした

昆虫は嫌いで自分の部屋で見つけても叩き潰すことができない

なので食べるとかとても無理である

今回は命がけだったので仕方なく戦うことを選んだのだ

 

俺は「帰りもそんな虫に出会ったらどうしよう」と無意識に口から出てしまった

「それなら私が車でお送りしましょう」

俺はホッとした

「すごく怖かったのでよろしくお願いします」

「それでは16時出発でよろしいですか?」

「はい、お願いします」

 

男はそう言って部屋から出て行った

 

俺は安心した

 

 

 



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ここを出発するまで時間がある

しかし今の話を聞いて大きい虫がいたのも納得である

それにしても脱走したといったレベルじゃないくらい沢山いたな

この島全体で育ててる可能性がある

これが世間にバレると問題になるだろう

それで情報流出が出来ないように持ち物検査があったのだろう

もし俺が特に何か探って分かったところで何も出来ないだろうな

 

下手に何か知ってしまうとこの会社に来るときに見た様に昆虫の餌になるだけだ

多分あれは何か知ってしまった人だろう

 

今は無事に帰るためおとなしくしていよう

 

しかしここに来るまで昆虫と戦っていたせいなのか少し眠い

トイレに行ってソファーで横になろう

もし寝てしまっても送ってくれる人居るから起こしてくれるはず・・・

 

俺はこの部屋を出てトイレに向かった

 

もしかして見られている可能性があるから変な行動しないように気を付けなければいけない

 

特に問題もなく用を足して部屋に戻った

 

俺はソファーに横になり「あー、眠い」と独り言をいってあくびをした

 

何かカチッと音がしたがリュックが倒れていたのでリュックが倒れた音と思った

 

ブーーーン

 

何の音だ?

 

凄く眠い

 

まだまだ眠いが何とか目を開けて音のする方を見た

 

白っぽい何かいる

 

長い足がたくさん生えてるな

 

羽もあるので飛べるのだろう

 

イメージとして白いゲジゲジに羽が生えてる感じだ

 

何故こんなところにそんな虫が・・・

 

眠くて思考が追い付かない

 

そんな白いゲジゲジが俺に向かって飛んできた

 

あーーー!

 

俺は顔を両腕で庇った

 

白いゲジゲジは首の付け根に張り付いた

 

俺は追い払おうとしたが胸元からシャツの中に入ってしまった

 

胸あたりを走り回っている脚の感触が気持ち悪い

 

サワサワサワサワというか何とも言えない気持ち悪い感触だ

 

「あーー、あーーー」

 

自分の発した言葉に目が覚めた

 

胸に奴が這いずり回ってる感触がある

 

慌ててシャツを脱いだが奴は居ない

 

そして部屋を見渡したがここは自分の部屋だ

 

私は夢を見ていたのか?

 

胸に嫌な感触がまだ残ってるので身震いをした

 

何だ今のは??

 

時計を見ると日曜の朝の8時

私の名前は村上真由

洗面所で顔を洗った時に鏡を見た

「うん、自分の顔だ」

夢にしてはリアルだったな

 

早くお出かけの準備してエトランゼに行かなくちゃ

エトランゼとは喫茶店だ

学生の私はよくここでモーニングを頼む

 

10時までに・・・

 

私はエトランゼに到着し中に入り

カウンターに座ってモーニングを注文した

 

モーニングはトーストとコーヒーのセット

コーヒーはミルクと砂糖多めで飲むのが好きだ

 

その時隣の席に中年の女性が座った

他に空いてる席がたくさんあるのに何故隣に座る?

 

「突然すみません」

私の隣に座った女性が話しかけてきた

私は彼女の顔を見たが全く見覚えのない人だ

 

「私は柳田みゆきといいます。あなたの夢の話を聞かせてください」

 

 

 

 

 



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あくまでも夢の話

私は何の話か分からず混乱した

この人は何言ってるのだ?

夢の話とは?

将来の夢?それとも眠った時に見る夢?

 

私が混乱してると彼女は話しはじめた

 

「私に29歳の息子が居ます

息子はアルバイトで県外に行くと言って家を出ました

その後警察から電話があり息子が釣りをしていて波にさらわれたと・・・

ちなみに息子は釣りはしません

アルバイトに行くと言っていたのにおかしな話です

私は息子に何があったのか知りたくて自分でいろいろ調べたのですが分かりませんでした

そこで私の知り合いに勘の鋭い人がいるので相談してみるといいと聞きその人と会って話をしました

その人が言うには今日エトランゼという喫茶店に行きカウンター席に

座っている人に夢の話を聞いてくださいと言われここに来ました

息子の名前は柳田隆一です」

 

私は彼女用にコーヒーを頼み今朝の不思議な夢を思い出し彼女に話をした

 

彼女は話を聞きながら何か考え込んでいるのかボーっとしたり私の話を聞いているのか聞いていないのか分からない態度だったが構わず話をつづけた

 

私は一通り話を終えてこれはあくまでも今朝みた夢の話ですと付け加えると彼女はゆっくり頷いた

 

「息子はまだ見つかっていません。届いた荷物に60㎝くらいの金属棒がありました」

そう言って柳田さんはコーヒーを一口飲んだ

 

私は何を言っていいのか分からず無言でトーストを食べた

 

もしこの話をしたことで私が事件の関係者と思われるのは困るな、

早まってしまったかと思っていたら柳田さんは

「小説のような話で面白かったです。ありがとうございました。

うちの息子とは無関係な夢の話だと思います」

 

私は顔に出ていたのか柳田さんに気を使わせてしまった

そう思い柳田さんを見ると彼女は涙を拭いていた

 

「ごめんなさいね、あなたの話を聞いていたら息子を思い出してしまって。

歳をとると涙もろくなっちゃって」

 

私は今まで無感情だったが柳田さんの泣いている姿を見ると急に胸が苦しくなった

 

「まだ息子が死んだと決まってないのに涙が・・・」

 

私は彼女になんて言っていいのか分からなかった

息子さん早く帰ってくるといいですね、なんて簡単に言えない

 

柳田さんは「今日はありがとうございました」と言って紙の手提げ袋を渡され私の分の伝票を持ってレジに行った

 

私はこういうときなんて言えば分からなかったが「こちらこそありがとうございます」と何とか言った

 

柳田さんは素早く会計を済ませこちらを見て手を振った

 

私は頭を下げ顔を上げると柳田さんの姿はもう見えなくなっていた

 

紙の手提げ袋の中身を確認すると個別包装されたクッキーが入っていた

 

 

 



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