不運な味噌屋は帰りたい (ガラクタ山のヌシ)
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不運な味噌屋は帰りたい

わたしは料理が嫌いだ。

それはべつに美味しいものを食べたくないだとか、凝った食事が苦手だとかそういう事じゃあない。

わたしの父親は、料理一筋の人だったらしい。

ウチの先祖伝来の味噌を引っ提げて意気揚々とどこかの名門料理学校に入学叶ったらしい。

しかしそこでは才能及ばず、二年の時点で何かトラブルがあったのか、退学をたたきつけられて逃げるように各地に修行の旅に出、そこで出会った女性と結婚するも、結果としてわたし達家族を捨てた。病弱で入院中の母を残してだ。

その結果、父が家を出たのがわたしが十にも届かない頃。気がつけば嘘か本当か鎌倉の先祖の代からやっていると噂の実家の味噌蔵の仕切りや家事の一通りはわたしの仕事になっていた。

前者は職人達が何人か残ってくれたので何とかなったが授業参観やら、運動会やらと言った家族が集まる学校行事では身内が誰も来ることはなく、ひそひそと周囲から同情やらありもしない無責任な噂やらといった好機の目に晒されてきた。

放っておけばいいのに。人間とはなんとも優越感というやつに浸りたい生物らしい。

まぁ、職人の皆は忙しかったし、味噌に使われる酵母っていうのは温度管理やらなにやらと繊細なものだ。

それに味噌蔵を長いこと空けるわけにもいかないから仕方ない。

ただ、そのおかげで随分とひねくれにひねくれて偏屈かつ嫌味な性格になった自覚はある。

…身内に甘いとはよく言われるが。

 

「お嬢、ポストにこれが…」

「…ゲンさん、なにこれ?」

 

ウチの味噌蔵で最古参の職人が家のポストに入っていたと、恐る恐る差し出して来た封筒の裏には、十五年生きてきて見覚えのない人物の名前が。

 

「……………ハァ」

 

流石に中身も読まずに捨てるのも何だしと、特になんの感慨も無く単なる興味本位で読んでみると…。

 

「…遠月学園?」

「ええ。かつて父君が通われていた名門料理学校ですじゃ」

「なんで今更…落ちこぼれた父に代わってわたしに来いと?…いや、名門ってくらいだからそれはないか…」

 

落伍者の家にわざわざ手紙を送ると言う謎の行動に、ついつい首を傾げてしまう。

そもそもウチは老舗の料亭やホテルでも、新進気鋭のレストランでもない。

歴史だけはあると言う以外に特筆すべき点も無いただのしがない味噌蔵、それ以上でもそれ以下でも無い。

取引先も地元のお得意さんがほとんどで、まかり間違ってもおフランスの三つ星レストランだとか、二十三区のどこかの最上階にあるような会員制レストランに相手してもらえたりは無い。

だから、もしかしたらウチの味噌を学園に卸して欲しいという依頼か?なんてお花畑なことも一瞬頭をよぎったがそれも無いとかぶりを振る。

と言うか、仮にそうだったとしても文面はあまりに簡素で見積も何もあったものじゃあない。

というか…まるで、今年新しく編入する人間に宛てたかのような内容だ。

 

「お嬢、その認識で合ってます」

「…はぁ?」

 

内心が溢れていたようだ。ちくせう。

何でも、父の旧友の金だか銀だかなる男からの話が通ったとか通らなかったとか。

…誰?ってなったのも束の間。

わたしはいつの間にやら用意されていた車で一路、編入試験を受けることになってしまったのだ。

母も後から設備のいい病院に移動させてもらえるらしいので、そこは良かった。

 

ははは…帰りたい。

 

いや…そうしたら母さんが…。

 

 

胃が痛い…。




本作主人公…イメージとして、髪型は黒髪ショート。目の下にクマあり。苦労人。
基本悲観的な性格だが、田所ちゃんとはベクトルが違う。
警戒心が強く、常に眉間に皺が寄っている。

なお、話が続くかは未定。


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2話

続きできました。


「デカい…」

 

それが遠月学園に辿り着いてわたしが最初に言った言葉だ。

建物が、というよりスケールが違う。

見回すといくつもの山に、それぞれの専門だろう建物がわらわらと生えている。こわい。

郵送されたパンフレットを片手に、編入試験会場までどうにかこうにかやって来た。

周囲には何やら荷物持ちらしき人間を連れた育ちの良さそうな連中…まぁ、言うなれば坊ちゃん嬢ちゃんとおぼしき連中がたくさんいる。

…正直言って場違い感がすごい。

文字通り住む世界が違うのかなぁ…なんて呑気なことを考える。まぁ、現実逃避なんだけども。

 

「低俗な庶民がボクと並んで座るなぁ!!」

「うぉっ!?なんだよ急に!?」

 

気晴らしに休憩でもしようと思ってたら、何やらたいそうプライドの高そうな声が聞こえて来る。

 

「…ん?」

 

気になって声の聞こえた方に向かってみると、赤髪の少年が、ベンチに座る坊ちゃんらしき人物に怒られていた。

なんか知らんうちに失礼な事でもしたのかね。

金持ち連中のルールってよーわからんし。

 

しばらく上から目線のお説教を垂れて満足したのかふんっ、と怒りに鼻を鳴らしてどこかに向かう坊ちゃん。

…やっぱ、どこでも人間ってのは変わらんのかね。

まだ時間も早いし会場前のどこか他のベンチにでも移動したんだろう。

もう一人の彼を見ると、何やら呆然としていた。無理もない。

ああ、可哀想に。そう思って少し話しかけようと近づいたわたしだが…。

 

「なんとか編入試験で結果をださねぇと!!」

 

…もう気持ちを切り替えてた。元々ポジティブなタチなのか、それともただ呑気なだけなのか…。

見たところ、そこまでこたえては無さそうだ。

そのメンタリティは腹がたつほど羨ましい。

 

「ん?なぁ、アンタ顔色悪いけど大丈夫か?」

 

キョロキョロと周囲を見回す。

しかし、話しかけられたのだろう人物は彼の視線の先にはいない。

…ひとりを除いて。

 

「え?わたし…?」

「そーそー」

 

わたしに話しかけるな。

お前ともどもヘンな目で見られるだろうが。

ああ胃が痛い。

 

「見たとこ、アンタも編入試験受けるんだろ?」

「はぁ…まぁ…」

 

なんで初対面でここまで話せるんだよ。

あぁ。アレか。周りの話聞くに食堂やってたんだっけ?接客業だもんなぁ…。

そりゃあ人慣れもしてるかぁ…チクショウ。

 

「オレはオヤジに行けって言われてさぁ〜、アンタは?」

「いや…その…な、なりゆきで…」

「なぁ〜んだ!!似たようなモンじゃん!!」

 

全っっ然似とらんわ!!

正直困惑しかしてませぇ〜ん!!

 

「そんじゃあ、オレ会場こっちだから!!お互い頑張ろうなぁ〜!!」

 

ほぼ一方的に喋るだけ喋って彼は去って行った。

良くも悪くも嵐のような男だったなぁ。えぇ〜っと…。

 

…あれ?お互い自己紹介してなくない?

 

まぁいっか。

 

「………」

 

ピラリ…と、同封されていた手紙に目を通す。

 

『キミの父親について、伝えなければならないことがある』

 

じゃあ、そのまんま手紙に書いとけよ。気が利かないな。

 

極め付けはこれだ。

 

『キミの入学、心待ちにしている』

 

「なんで受かる前提なのよ…」

 

ま、言い方は悪いが、最悪落ちたり、途中で退学になったってわたしや味噌蔵に直接ダメージがある訳でも無い。

っていうか、父が退学になった時に落ちる分落ちたろ。知らんけど。

そもそもこっちは別にお願いした立場って訳でも無い。

元々料理人を目指していた訳でもなし。

ライバル…ともいえないだろうが…まぁ、なあなあでやってるような奴がひとりでも減った方が、真剣にやってる人らのためにもなるだろう。

 

「はは…帰りたい…」

 

ただ…。

 

「ホント…デカいなぁ…」

 

何となしに、聳え立つ建造物群を見上げてつぶやく。

 

父の母校の風景を見る機会が得られたのだけは、大きかった…とは思う。

 

ことにした。



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3話

できましたー。

短めー。


「この生徒ですか…」

 

配布された目の前の紙を見ながら、遠月学園が誇る教師陣の数名が机を囲んで話し合っていた。

 

「そうだ」

 

「しかし…彼女は本当に堂島先輩が気にかけるほどの逸材なんです?」

 

投げかけられるそれは当然の質問。

 

それだけ元遠月十傑の、それも第一席を務めていた男の発言力には重みと責任が伴うものだ。

 

しかし、それにも躊躇せずに堂島は答える。

 

「その点なら心配は無い。何故なら…」

 

「何故なら?」

 

「………」

 

若干の間、静寂が空間を穿つ。

そして、堂島銀は口を開く。

 

「彼女はあの『味噌の奇術師』の娘だからだ」

 

「彼の娘さん!?」

 

それを聞くなり、にわかにその場がざわつく。

 

『味噌の奇術師』

 

かつて遠月十傑に最も近かったとされる実力者として知られるも、訳あって遠月学園を離れた紛うこと無き鬼才。

 

嘘か真か、彼の退学騒動の折にはあの学園総帥たる薙切仙左衛門自らが動き、直属の部下を使って彼をひと月に渡って説得、引き止めたほどだったとか。

 

当時を知る者たちは皆口を揃えて彼の努力と才能、そして実力を認めながら「間が悪かった」とそう言うが、その先…実際に何が起きたかについては皆そろって口をつぐむ。

 

彼の実家の味噌蔵の八百年以上に渡る長年の歴史に裏打ちされた知識と技術、そして一癖も二癖もある、正に曲者揃いの遠月の実力者の中にあって、なお穏やかな人柄。

 

そのいずれも非の打ち所がない。

 

強いて言えば、多少悪戯好きな茶目っ気はあったが、それも十分に許容範囲だった。

 

…だからこそ、あの悲劇が起きた、否、起きてしまったのだろうが。

 

「しかし…そうとなると話は変わってきますなぁ…」

「うむ…」

 

事情を理解するなり、今度は深刻な表情を浮かべる。

 

「いや、彼女は何も知らないし、何も知らされていない」

 

「え?」

 

堂島銀のその発言に、一同は意外そうな表情をするものの、それもそうか…と納得した様子だ。

 

「しかし、あの事故は堂島先輩の責任じゃあ…」

 

「言うな」

 

堂島は短く、しかし重く、そう言う。

 

「アイツは…全てを分かっていたからこそ、何も言わずに学園を…そして実家を去った。誰にも、何も言わずにな…」

 

「あのお人好し…」

 

そう零したのは誰だったか。

 

「そして、その娘たる彼女の編入試験での結果は…」

 

『合格』と、ただその二文字が書かれている。

血統のみならず、実力を示したということでもあるのだ。

 

その事実の示すところは即ち

 

運の悪いことに…或いは皮肉なことに、彼女は彼女自身の嫌う料理の才能があったということの証明に他ならない。

 

そしてそれはあまりにも…

 

 

 

 

残酷なことだった。



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4話

はい。


ああ〜、胃が痛い…。

帰りたい。消え去りたい。

 

「母さぁ〜ん…」

 

入院中の母に助けを求めたくなるレベルでやばい。

なんならちょっと泣いてる…。

それと言うのも、わたしは今…。

 

試験を受けた料理学校の入学式の真っ只中だからだ。

 

え?なんで?

そりゃあ、全力でやってダメでしたって言い訳のためにベストは尽くしたけどもさぁ〜…。

なぁ〜んでわたしみたいなズブの素人が通るんですかねぇ〜?

忖度?ワイロ?

それにしちゃあ全っっ然身に覚えないんだけど!?

 

あの赤髪の彼には再会するなり両手を持って腕をブンブンされるし…。

そんな彼は今、わたしの隣でぬぼへ〜っとしてるし…。

何でそんなに気持ちにゆとりがあるのさ。

わたしなんてテンパってないだけ奇跡なんだけど!?

 

「続きまして、編入生からあいさつです」

 

うぇ〜〜!?そんなんあるんかい!?

聞いてない!!わたしは一度も聞いてない!!

そうだ!!隣に座る彼は…。

 

「う〜っす」

 

うわぁ〜全く気負ってない。

すごいなぁ〜。

 

「それでは、編入生くん。あいさつを…」

 

お姉さんからマイクを受け取るなり、彼は少しだけ考える素振りを見せる。

うんうん。分かる分かる。

こう言う場って何から話せばいいか迷うよねー。

長過ぎてもクドイし、短過ぎても逆に印象に残っちゃうから…。

 

「幸平創真っす。ぶっちゃけこの学校のことは踏み台としか思ってないんで。まぁ、客の前に出たことも無い奴らに負ける気はしないんで、それとやるからにはテッペン取るんで。まぁ三年間よろしく〜」

 

って…えぇ〜〜っ!?

何言ってんの!?

何言っちゃってんの!?

 

わたしたち今完っ全アウェーなんだぞ!?

やべーよ。この空気やべーよ。

 

お通夜ってレベルじゃあねぇよ。

針の筵そのものだよ。

どうすんのコレ!?

あっ、司会のお姉さんがどうしたもんかとこっちを見てオロオロしてる。

まあそうだよねぇ〜。わたしだって出て行きにくいもの。

彼がブーイングを受ける分には自業自得だけど、わたし全く関係ないもの。

 

そして彼は言いたいこと言ったからかスタスタと反対側の舞台袖に行っちゃうし!!

行くの!?行けるの!?

恐る恐るステージに出てマイクを受け取り、ある程度静かになった頃合いを見計らって喋り出す。

もういったれ!!

 

「え、ぇ〜っと…ウチ…味噌蔵やってて…その…」

 

「………」

 

無反応。き、気まずい…。

 

「ひ、贔屓にしてもらえればいいかなぁ〜…みたいな…」

 

…………………無反応。

 

ど、どうしよう。ある意味ブーイングよりキツイかもしれない…。

 

「い、以上…ですっ…」

 

逃げるように彼の向かった方の舞台袖に向かうと…。

 

「なんだよー美味かったんなら正直にそういえば…」

「だから!!あれは何かの手違いで…って、あら?貴女、顔色が悪いけれど、大丈夫?」

 

あぁ〜…

 

「帰りたい…」

 

ふらぁ〜

 

「ちょっと!?何があったの!?だ、大丈夫かしら!?」

 

なんか世間知らずっぽい子がワタワタしてた。

 

正直ちょっとだけ気持ちが和んだ。




ホームシック炸裂!!


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5話

はぁ〜…。

 

これでわたしも晴れて…と言って良いかは分からないけど高校生かぁ…。

実家や入院中の母にそのことを連絡したら、何故だか母さんも職人のみんなも嬉しそうにしてたモンだから、辞めようにも辞められないし…。

特にゲンさんは…。

 

「お嬢!!この源三郎!!信じておりましたとも!!」

 

だなんて、電話越しに涙声で言われちゃあねぇ…。

はは…笑えねぇ。

 

それにしても…。

かさ…とカバンから入学式の終わりに渡された紙を見る。

そこに書かれていたのは…。

 

「入寮腕試し…ねぇ…」

 

文字通り、入寮を許可出来るか否かを決定する腕試し。

唯一の救いは何度でも挑めるってとこか。

 

決まりとして、持ち込む食材は基本自由。

寮の担当職員に合格をもらえれば認められる…か。

ほとんど個人の好みに左右されるんじゃあないかこれ?

いやまぁ…名門校の人だし、かなり舌は肥えてるのかな…。

とにかく、最低限の腕があるかは職員自らが審査するってことか。

わたしは別に食事なんて最悪カップ麺でもいい人だから、世の料理人達のこだわりってのはよー分からん。

そりゃあ…味噌に関しちゃあど素人よりは知識もあるんだろうけど、それだって一般人に毛が生えた程度…だと思うし…。

って言うか味噌以外に味の違いなんて正直そんなに分からんし。

 

はは…。我がことながらしょーもな。

 

「なんでこんなめんどくさいことを…」

 

あぁ〜…胃が痛い…。

しんどい、帰りたい。

でも帰れない。

ここは地獄か。

地獄だった。

 

そもそもの話、わたしはただ、実家の味噌蔵で伝統の味を守るだけでよかったんだ。

未だに帰る気配すらない父に対しては、思うところがないわけじゃあ無いけど、それでもあそこはわたしの産まれた場所で、育った環境で、それはこれからも変わらない。

誇りだなんてそんな高潔なモンなんかじゃあ断じて無いけど、それでもあそこは…嫌いになれなかった。

思い出なんて、センチメンタルに浸れるほど人生重ねてなんていないけども。

料理は嫌いだ。まして、赤の他人の食べるものをわざわざ作るなんて冗談じゃあ無い。

 

でもなぁ〜…。

 

「持ってきた材料は重いし…そのせいで寮に着くのは相当遅くなりそうだし…」

 

最悪野宿か?

いやでもなぁ〜。

寝袋とか持って来てないとキツイよなぁ〜。

 

坂道は地味にキツイし、この学園の敷地は恐ろしく広いし…。

 

「わたしなんぞに期待なんかすんなよなぁ〜…」

 

よっ…と荷物の入った鞄を背負い直す。

 

……重い。

 

ちょっと持って来過ぎたか?

 

「はぁ〜…」

 

テンション上がってんのか?わたし…。

 

いや、無いか。

 



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6話

「はぁ〜…予想してたより厳しいモンだなぁ〜…」

 

ぬかった。

正直割と手加減してもらえるモンだと思ってた。

だって曲がりなりにも試験は受かってるし。

何よりあの食べ方自体、手を抜くとかじゃあなく、個人的にすごく好きなのに…。

何故か怒られた。

おばあちゃんこわい。

 

「だ、大丈夫?寒くない?」

 

そう言って、様子を見に来てくれたのは田所恵ちゃん。

 

わたしが入寮腕試しで、今なお黒星を重ねている極星寮の生徒で、かなりの良識人。

 

「わたしゃあ、もぉ〜だめかもわからんね…」

 

寝袋にくるまりながら彼女に背を向けて、弱々しくそういうと…。

 

「え、ええぇえっ!?だ、大丈夫!?体調壊したりとか、お腹減ってたりとか!?」

 

このようにアワアワといい反応を返してくれる。

 

可愛いの〜。

 

「いやいや、冗談。心配してくれてありがとう」

 

ゴロン、と田所ちゃんの方を向いて、精一杯良い顔をしてみる。キリッ。

 

「も〜、またそんなこと言って…こんなこと繰り返してたらホントに困った時とか誰にも信じてもらえなくなっちゃうよ!?」

 

まじめだなぁ〜。

わたしとは大違いだ。

 

「にしても…」

「聞いてる!?」

「聞いてる聞いてる」

 

まさかアレがダメだったとは…。

 

「一発合格イケると思ったのに…」

「合格って……流石にもろきゅうじゃあ、合格はキツイと思うよ?」

 

ダメかぁ〜…。

 

もろきゅう美味しいんだぞ〜もろきゅう。

 

きゅうりを適当に切って、割り箸に刺して、味噌につけて食べる。

ザ・日本!!って食べ方がわたしはすごく好きなのに〜。

 

「でも、二度目はちゃんと工夫したもん!!」

「お味噌の隣にマヨネーズが加わっただけだよね?」

 

くぅっ…この贅沢者めら…。

 

基本的に一番美味い食べ方ってのは一番シンプルな食べ方なんだよ〜!!

 

……たぶんだけど。

 

しっかし…。

 

「う〜〜〜〜ん……」

 

ちょっと転がるかなぁ〜。

もしかしたらなんか出るかも!!

 

しらんけど。

 

ゴロ…ゴロ…。

 

ゴロゴロゴロゴロ…。

 

ゴ〜ロゴロゴロ…。

 

ゴロロ…。

 

「ど、どうしたの?」

 

あ、田所ちゃん、ちょっと引き気味な反応だ。

ショック。

 

「ん?いや、なぁんかいいアイデアでるかなぁって…」

 

くっそ〜…。なんやかんや今のところ四連続敗退…。

 

野宿生活をはじめようとしていたわたしを見るに見かねた田所ちゃんが頼み込んでくれたおかげで、この納屋を借りてはいるものの…夜の寒さを完全に凌いでくれるわけじゃあ無い…。

 

「なんとかしなければ…なんとか…」

 

流石に既に入寮してる生徒に助言を聞くのはダメみたいだし…。

 

「お味噌の一番活かせる料理〜…」

 

パッと思いつくのはお味噌汁…。

うどんや田楽、それと肉とか…いや、どっちかと言うと魚の方がいいなぁ〜…。

というか、今サバの味噌煮とか食べたいなぁ〜…。

 

ジュルリ…。

 

「大丈夫かなぁ〜?」

 

お腹すいたなぁ〜。

 

「かーさん。夕飯はサバの味噌煮がいい〜!!」

「えぇっ!?かーさんって私ぃ!?」

 

田所ちゃんは本当に可愛いなぁ〜。

 

なお、その後、ホントに作って来てくれた。

 

やさしい。



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7話

ふみおさんサイド。


その娘は、最初ふざけているかのような素振りでこちらを茶化して来た。

入寮腕試しでまさかきゅうりと味噌だけなどと、やる気があるのかと、年甲斐も無くつい怒鳴ってしまった。

そして今日で五度目。

どうせまたふざけた料理とも言えない何かを出すのだろうとたかを括っていたが…。

 

「すみません。肝心の材料がまだ完成していなかったもので…」

 

苦笑しつつそういうなり、彼女はいつもとはまるで異なる雰囲気を醸し出していた。

そして、初日に預かってくれと、渡されていたタッパーを冷蔵庫から取り出す。

 

「絶対に中身を見ないでください」と念を押されていたためか、何かしら調理に必要なものだろうことは分かっていた。

長年の寮母生活で秘密主義の生徒も少なからずいたこの寮で、そう言われるのは別に珍しくもない。

 

むしろ今の今までそんなのも預かったなぁ程度の認識でしかなかった。

 

キッチンに立つなり、ゴムベラを借りてもいいか聞かれたので、それに了承し、タッパーから取り出されたものを傷つけないようにゆっ…くりと掘り出す。

 

「それは?」

 

つい気になって問いを投げかける。

 

「サワラの切り身です」

 

そう返すなり、切り身の表面についた味噌をゴムベラでゆっくりと元の味噌床に落とす。

 

「そうかい。今までふざけたモンばっかり出してたのは…」

「ええ。半端な品で満足されては困りますから」

 

彼女は作業を続けつつ、そう薄く笑う。

思えば侮っていたのかもしれない。

確かに、漬け込みと言うのはどうしても時間がかかる。

こちらをからかっているかに思えたあの行動も、彼女が先ほど言っていた理由ならばまぁ頷ける。

 

やがて味噌を落とし終えた切り身を火にかけ、粛々と焼きに入る。

 

「この香り…そうかい。作ってるのは…サワラの西京焼きだね?」

「ええ。よくご存知で…というのは失礼でしたか…ともかく、説明する手間が省けました」

 

西京焼き…というより、味噌というのは、焦げやすいものだ。

そのため、いい焼き色のところにアルミホイルをつけることもあるのだが、彼女はそれをしない。

腕に覚えがあるのか、それともド素人なのか…。

 

やがて出来上がった品を丁寧に盛り付け、浅漬けを添えて提供される。

和を思わせる角皿に盛られるそれは、見た目だけなら旅館で提供されるものと言われても信じてしまいそうになる。

 

「どうぞ。サワラの西京焼きです」

「ふん。まぁ見た目はモノになってるがね…」

 

ともかく、肝心なのは味だ。

そうで無くてはかつてこの寮に住んでいた卒業生達にも申し訳が立たない。

 

箸を手にひと口、食べると…。

 

気がつけば、部屋の鍵を渡していた。




齟齬があったら申し訳ないです〜。


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8話

最近暑いですな。


「なんであれで通るんだろうか…」

 

寮であてがわれた部屋、そのベッドで横になりつつ、わたしは頭を抱えて悶々としていた。

 

おっかしいなぁ〜。

半端な品を出してヘンに期待されないように、すみません。コレが限界なんです。許してください。勘弁してくださいって、心の底から料理人の皆さまへの謝罪と言い訳の気持ちをたっぷりと込めに込めた料理…っていうとおこがましいだろうけども…をお出ししたんだけども…。

運命のイタズラか、合格してしまったわけで。

うっ…思い出しただけでも胃が痛くなる…。

人って何であんな簡単にプレッシャー出せるんだろう。

絶対若い頃なんかやってたってあのおばあちゃん。

…だがまぁ受かってしまったものは仕方ない。

それにいつまでもあの納屋で暮らすってことになれば、帰る以前に確実に体調を崩す。

それでは本末転倒だ。

しかし心配はいらない。別のプランだって練ってある。

どのような経緯であれ、遠月に通う以上はルールに従わなければならない。 

如何にここ…極星寮が事実上の治外法権を有しているとは言え、守らねばならない規定は最低限あるはず。

そう。わたしが目をつけたのはまさにそこだ。

問題行動をして、この寮や遠月にふさわしくないと思われれば、退学処分もやむなしとなるはず!!

とは言え、喧嘩したりだとかは痛いの嫌だし。

かと言って逆に成績が悪かったり、入学式の彼みたく振る舞って悪目立ちしていじめの標的にされるのもわたしの精神衛生上よろしくない。

ならば…自ずと手は限られる。

 

さっそくわたしは計画を実行に移した。

 

クックック…さぁ、どうだ!!

もう就寝時間はとっくに過ぎてるのに、入寮早々深夜に厨房で料理なんかしてる奴がいるぞー!!

校則違反だぞー!!

寮母さーん!!早く叩き出してー!!

およ?部屋の扉が少し開いて…。

チャンスかもしれないなぁ。

そっと、音のした方を振り返る。

やっぱり寮母さんだ!!

さぁ!!いけない生徒を注意するんだ!!

 

「……ふっ」

 

えぇ!?なにその、全部わかってるよ。頑張るんだよみたいな優しい眼差しは〜!!

ヤメロ〜!!そうやってわたしをほだそうとするのはヤメロ〜!!

何も言わずに差し入れを置くな!!

そしてそっと扉を閉めるな〜!!

 

まぁ、後日改めて行われた入寮歓迎会は…楽しかったけども。

 

って言うか、よくよく考えればわたしは総帥殿のいうところの捨て石だろうし。

ま、気負うだけ損だよねぇ〜。

それと…。

 

「手紙の送り主の人からいつ連絡が来るんだろうなぁ…」

 

何でわたしをわざわざ入学までさせたのか…その理由やら目的が不明瞭過ぎてなぁ…。

要件を伝えるだけならそれこそ前も言ったように同じ手紙に書いとくなり、長くなるようなら同封するなり、電話で伝えるなり色々あったろうに…。

 

まさか、わたしに秘められた料理人の才能を見抜いたとか!?

 

……無いか。

 

帰りたい…。

 




水分補給はだいじ。


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9話

極星寮の寮母、大御堂ふみ緒は晩酌をしつつ、かつての出来事を思い出していた。

早速やる気を見せた彼の娘を見たからだろうか。

思わず懐かしさに頬が緩む気持ちだ。

しかし、ふっ…と我に帰ったかのように真顔に戻る。

思えば、ちょうどこんな冷え込む夜だった。

堂島銀が卒業を控え、才波城一郎が学園を去った後、次期十傑第一席候補の話題で生徒達が盛り上がっていたのだ。

そして、その話題には彼もまた挙がっていた。

 

「遠月十傑第一席かぁ…」

「えぇ!!先輩なら必ず…」

「堂島先輩達みたいに、きっと…」

 

彼を慕う後輩達が、キラキラした目でそう言う。

 

「でもなぁ…」

「でも?なんですか?」

「遠月に…いや、これまで十傑を輩出してきた極星寮に身を置くものとして、情けないと思われるかもしれないのだけれど…」

「はい?」

 

困惑した表情で後輩達が首を傾げる。

 

「ぼくはね。そういうのにあんまり興味はないんだ」

 

苦笑しながらそう言う彼に、周囲は困惑していた。

 

「…ぇ?」

「競い合い、高めあい、その研鑽でより優れた技術が手に入る。とても…とても素晴らしいことだと思うよ。十傑に加わることでそれを得られる機会がさらに増えるって言うのは、確かにメリットだ。この学園の競争主義の象徴とも言える十傑評議会ならなおのこと…ね」

「なら…」

「でもね…才波先輩や堂島先輩をみて思ったのだけれど…」

 

そう一拍置くと…

 

「十傑になるってことは、良くも悪くもこれまでの自分ではいられなくなるってことでもあるんだと思う。ぼくはそれが嫌なのさ。確かに料理人に変化や進化は必要だけれど…。同時に変わらない良さっていうのも、確かにあるものだろう?」

 

いわゆる伝統料理は、まさに変わらない良さの典型例だ。

無論時代が進むにつれて進歩、進化はして来たが、それだって作り手側の工夫の域を出ないもの。

ジャンクフードの店で高級料亭の味を出されたり、その逆が困惑されるだけなのと同じことで、独自のアレンジも効きすぎれば最早別物になってしまうものだ。

ほどほどにそこそこに、アイデアも小出しにした方が長いスパンで見ればきっと賢い生き方だ。その意味で才波という料理人は少しばかり生真面目にすぎた。

いや、料理を心から楽しんでいたのも、その実力を期待されて嬉しかったのも、世界各地の料理大会で優勝してはしゃいでいたのも本心だろうし、次から次へと期待に応えてきたのも真実彼の優秀さ故だろう。

しかし、それは『味噌の奇術師』にすれば奇異に思えてならなかった。

 

「伝統を守りつつ、驚きと喜びをお客様に提供する。甘っちょろいのかも知れないけれど…でも、それでいいんじゃあ無いのかな。確かに現場に出ればそんな理想通りともいかないだろうけれどもね。あ、別にキミたちの応援が迷惑だとか、ここのやり方に文句があるとか、そう言うわけじゃあないから。そこは勘違いしないでもらえると嬉しいかな。あくまでぼくが勝手にそう思ってるってだけだから…」

 

困ったような笑顔でそう言われると、後輩達は何も言い返せない。

 

「中村くんには、嫌われちゃったみたいだけれど…」

 

人間とはどこまでも身勝手で、盲目的で、そして欲張りな生き物だ。

一歩引いて、冷静になって見てみればわかることだが、人間とは得てして憧れの相手、すごいと思った人物の光の当たる部分しか見ようとしない。

その当人の影の部分…人知れぬ苦悩や葛藤になどまるで興味もない。

自分達だって、多かれ少なかれ経験してきたことのはずなのに…だ。

天才ならばそんなものは無いと勝手に決めつけ縛り付ける。

勝手に期待して、勝手に失望して…。

その先が、もっと上があることを疑いもしない。

 

『料理人とはひとり荒野をゆく旅人』

 

いつだったか、彼らの先輩が言った言葉だ。

しかし…だからこそひと休みするのも大切だ。と言うのが『味噌の奇術師』の意見だ。

 

そして、それから僅か数日のちの出来事だった。

 

彼が学園を去るきっかけが…その出来事が起こってしまったのは。

 

「バカな子だよ。十傑の第一席と第二席がいなくなって不安な所に余計な軋轢を極力出したくは無かったかったんだろうが…今思い返しても、ありゃあ下策さ。みんながみんな、アンタみたいに器用なわけじゃあ無いんだ」

 

その呟き…いや、ぼやきは誰に聞かれるで無く、ただ虚しく響くだけだった。

 



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10話

「さぁ一色先輩!!遠月十傑第七席の座をかけて、オレと勝負だぁぁ!!」

 

「……………」

 

寝て起きて、朝食を食べに下に降りると、なにやら物騒な発言が聞こえて来た。

たぶん声から察するに、あの挑戦的な編入生くんだろうことは想像に難くない。

他のメンバーも華麗にスルーを決めていたところを見るに、常識外れなことを言っていたのは事実らしい。

よかった。

ズレてるのがわたしの方じゃあなくて本当によかった。

 

「元気だねぇ〜…」

「あはは…まぁでも幸平くんらしいんじゃないかなぁ…」

 

お盆を手に、隣の席に座るのはここに来てからお世話になりっぱなしの田所恵ちゃん。

もう、この極星寮きってのわたしの精神的な癒しだ。

 

「あはは…すまないね創真くん。説明不足だったみたいだ」

 

困ったような笑いを浮かべ、この学園に於ける勝負の概要を話す先輩。

 

遠月学園に於ける学生間の揉め事の対処として行われるのは『食戟』と呼ばれるシステム。

 

勝者は全てを手にし、敗者は全てを失う。

ただ、その食戟を行うにあたり、必要なものがいつくかあるとか。

なお、前提として両者のかけるものも要るそうだ。まぁギャンブルに於ける賭け金みたいなものか。

何も無いならそりゃあ何も賭けられんわな。

 

必要なのは大きく三つ。

ひとつ、正式な勝負と公式に認めてくれる認定員。

ちなみに幸平くんはの欲しがっていた十傑第七席の座は、彼自身の退学を賭けても足りないものらしい。そりゃあそうか。

ひとつ、奇数名の審査員。

ひとつ、対戦者双方の合意。

 

それらがあって初めて成立するとか。

 

…めんどくせぇ。

 

わたしみたいな一般人はそういうのとは縁遠い人生を歩みたいもんだ。

 

「あ、ところで一色先輩」

「うん?なんだい?」

 

笑顔でこちらを向く一色先輩。

胡散臭いけど、悪い人じゃあ無さそうなんだよなぁ。

 

「寮の裏の空き小屋のひとつ、誰も使わないようならわたしが使ってもいいですか?」

 

申請が必要かと思ってふみおさんに聞いたら先輩の許可があればいいとか何とか。

ちょうどいまいるし、正直ダメ元で確認だけでもと思って聞いてみたんだけども…。

 

「うん。構わないよ」

 

爽やかな笑顔で思いの外あっさりと了承がもらえた。

やったね!!

 

…で、後からその小屋の片付けに四苦八苦したのはいい思い出だ。

 

それと言うのも、こういうのは自分のスペースだから準備くらいは自分でやるのが鉄則なんだとか。

まぁ、大掛かりな機材なんかは使えないけど、それを差し引いても大豆やら何やら色々と試せる場所が出来たのは嬉しいけどもさ…。

 

「こんな重労働とは思わないじゃない…」

 

ウチの実家って恵まれてたんやなって…。

はは…思い出したらますます帰りたい…。

 

「が、がんばろ!!」

 

それとなんやかんや応援してくれる田所ちゃんマジ天使…。

 

 




主人公、小屋ゲット。


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11話

「はぁ〜…結構大変だったぁ…」

 

いやぁ〜、自分の小屋も持ててウキウキハッピー♪ってほどじゃあ無いけどまぁ、息苦しい学園内での楽しみが増えたのは良いことだ。

 

「にしても…研究会って思ってたより色々あるなぁ…」

 

気分転換にと思って散策しようと通りがかった廊下の壁いっぱいに張り出されている各研究会やゼミのメンバー募集の張り紙を見てなんとなしにそう思う。

いったいいくつあるんだろうか?

いやまぁ、わざわざ数えるのはめんどくさいからしないけどもさ…。

うん?向こうに何やら人だかりが…。

 

「もうお終いだぁぁぁ!!」

「落ち着け!!まだ終わったわけじゃあ…」

「チクショウ!!なんだってオレ達なんだよ…」

 

うん?

何やら向こうがざわついているな。

編入試験の時みたく、退学処分になった生徒が暴れてるとか?

 

「ちょっと離れておこう…」

 

触らぬ神に祟りなし。

関わり合いになってトラブルに巻き込まれたら溜まったもんじゃあない。

わたしとしては自己保身に走らせてもらおう。

 

「あら?貴女、入学式の時の…」

 

ふぇ?

 

いきなり声をかけられて、何事かとくるりと振り返ると、そこにはあの時の親切な人が。

隣には何やらお付きの人っぽい生徒もいる。

やっぱ金持ちは身の回りのお世話をしてもらえるんだろうか。羨ましい。

 

「あ、どうも…」

 

流石に無視するわけにもいかず、ペコリと頭を下げる。

え?作法?そんなモン庶民がわかるわけねぇでしょ。

 

「その後は大丈夫だったかしら?まだ顔色が悪いようだけれど…」

「えりな様?この者に何か…」

「ええ、入学式の時に足元がふらついていたから…」

 

親切だなぁ…。

こういうのをノブレスなんとかって言うんだろうか…。

 

「む?お前は薙切えりな!!」

 

うん?もしかしてさっきの騒いでた人達?

何やら親切な人の空気も変わったような…。

っていうかよく分かるな。

 

「お前が我らがちゃん研の部室を取り上げようと言う噂は真か!?」

 

高圧的に質問を投げかけられるも、えりなさんとやらは毅然とした態度でいる。

 

「ああ、話が早くて助かります。期日は追って説明致しますのでそれまでに退去の準備を…」

「そうか…ならば、食戟だぁぁ!!」

 

その言葉…いや、叫びに周囲に集まっていた野次馬連中が俄かに騒ぎ出した。

 

「オイオイ…豪田林のヤツ、『食の魔王』の一族に食戟を挑む気かぁ?」

「まして相手は神の舌…勝てるかどうか…」

「だが、全く希望がないわけじゃあ無い以上、挑むのもまた選択肢のひとつだろう」

「珍しいなぁ〜!!絶対見に行くよオレ!!」

 

周囲が騒ぎ立てる中でも、優しい人…薙切えりなさんは「はぁ…」と一息。

 

「いいでしょう。この学園に通う以上、食戟は生徒の権利です。ただし、私が勝ったらあそこは私専用の調理棟にさせていただきます。そもそもちゃんこ鍋研究会はここ最近結果も残せていないようですし、古いと言うだけであぐらをかかれていても不愉快なだけです」

 

うわぁ…伝統を大事にする人間に言ってはいけないことを…。

毎年毎年新しい発展や発見があるわけがないでしょうに。

むしろ、一見地味で地道な日々の積み重ねが大樹の年輪のように少しずつ少しずつ伝統になっていくわけで…。

そう言う意味じゃあ、彼女の観点はどこかズレてる?もしくはわかった上で挑発として言ってるのか?

って言うか、もしかしてこの人…優しくない人?

そういやあ学園総帥の孫娘って聞いたし、小さな頃から常に結果を出すことばかり求められてきたのか、もしくは…。

 

「オイ!!そこの!!」

「はぇ?わたしですか?」

 

いきなり声をかけられたぁ!?

 

「お前、入学式の時、実家が味噌蔵だとか言っていたらしいな?」

 

チクショー!!

ガッチガチに緊張してたとは言え、何であの時あんなこと言ったんだわたし!!

オーマイガッ!!

 

「ちょっと、彼女は関係ないのでは?」

 

庇ってくれてるのか優しい人ぉぉ…。

 

「勘違いをするな。ソイツの実家の味噌とやらに興味があると言うだけだ」

「は、はぁ…一応サンプルは持ち歩いてますが…」

 

わたしは縮こまりつつも恐る恐るそう返す。

まぁ、実家の味噌に興味を持ってもらえたのは素直に嬉しいけども…。

でも、とっさのことだったとは言え、あんなこというんじゃあ無かったかな…。

いやでも、別に悪いことってわけでも無いし…。

 

「でも、何に使うんです?」

 

そんなこんな、教室に移動したわたしは机の上にサンプルをカバンから出しつつ、ちゃん研の人に質問を投げかける。机が廊下側でよかった。

ちなみに薙切さんとはあのあと別れた。

 

「決まっているだろう」

「へ?」

 

決まってる?何が?

 

「もしその味噌が素晴らしいものならば、この女に一泡吹かせられるかもしれんからな。今は少しでも勝利へのピースが多いに越したことはない」

「え」

 

あれ?もしかしてこれ…

 

わたし、巻き込まれてる?

 

 

「か、帰りたい…」

 

そのわたしのぼやきは宙に消え入るばかりだった。




齟齬があったら申し訳ない…。

え?時系列?


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12話

久しぶりな投稿。


 

あの後、ちょっとちゃん研の人らに聞いて見ると、あのパツキンのチャンネーは結構な凄いお人であることが判明した。

まず、学園総帥である薙切仙左衛門の孫娘で、生まれついてのお嬢様。なにそれ羨ましい。

そして『神の舌』なるものを持った天才であり、それを活かした料理の腕も超一流。

その証拠に一年生ながら遠月じゅっけつ?とかいう、かな〜りスゴい人たちの一員に選ばれたらしい。

オイオイ…お嬢様って大抵メシマズなんじゃあねぇの?(偏見)

やっぱ天才ってのはいるもんなんですなあ。

なんだろ?こうまで色々自分と開きがあり過ぎると嫉妬の念すら追いつかないっていうか〜…。

よりいっそう凹むばかりって言うかぁ〜……。

粗相してないか記憶を辿るが、うん。まぁ特に問題はない…と思いたい。

また、彼女に試食してもらうためにわざわざ大枚をはたく料理人も珍しくなく、現に昔から今に至るまで、彼女のもとに新作を持って行く料理人は後をたたないとか。

大事なのは献上するような雲の上の存在じゃあ無くて、あくまでわざわざお店に足を運んでくれるお客さんが満足するかどうかだと思うんだけどなぁ…。

素人意見だよなぁ。

まぁ、箔をつけることの大事さはわからんでもないけども。

 

にしても毎日毎日試食かぁ…。

 

「太んないのかなぁ?」

 

不意に、思ったことが口をついて出てくる。

 

いやまぁ…いっぱいって言っても一口ずつだから、そこまでカロリーなんかも案外気になんないのかもだけど…。

そんなことを考えつつ、わたしは今ちゃんこに合う味噌の調合を黙々と行なっている。

テーマは海老だそうで、ちゃん研の会長…豪田林先輩からは伊勢海老に合う味噌を作ってくれとの依頼を受けた。

それ以外にも使おうと思っている具材なんかもわざわざプリントアウトして持って来てくれた。

いやまぁ、頼まれた以上はやるんだけどもさ。

こういうところで未来の顧客が増えたりするかも知れないし。

机で広げたのは本当にごく一部だったし…。

わたしとしてはサンプル程度の認識だったんだけども、えらく驚かれたなぁ〜…。

ゴ〜リ…ゴ〜リ…と、持ち込んだ自前のすり鉢で、ウチにあった鍋に合う味噌の基本レシピを思い出しつつ、アレンジも加えて見る。

めんどくさがらずに写メるなりしてくれば良かったよ…。

 

ペロッ…。

 

ん〜…もうちょいなんか…深みというか…。

ハァ〜…才能の無い自分が恨めしい…。

気がつけば、朝から始めた作業は夜になろうとしていた。

 

「も〜!!ずっと閉じこもってたから心配したんだよ〜〜!?」

 

ぷんすかしながらそう言ってくる田所ちゃんマジ天使。

 

もう毎日お味噌汁作って欲しい。




…忘れられてないよね?


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13話

続きできたので投稿します。


味噌の歴史は紐解くと思いのほか深く、一番古い文献ではそれこそ平安の時代にまで遡ると言う。

最初は甘味などと同様に貴族のみ口にできる贅沢品であり、時として高い地位の人間の給料として用いられたほどだったとか。

やがて時代が降るにつれ、中国からやって来た僧が伝えたすり鉢で粒味噌を潰し、それが水に溶けやすいことから味噌汁という日本の国民食に発展。一汁一菜という食事の基本はこれが発祥だとも言われる。

室町以降、味噌は庶民にも浸透していき、それ以降も様々な改良や土地ごとの特色も含めて様々な種類が存在する。

その組み合わせはまさしく無限にあり、その扱いひとつで料理人の腕が問われるほど。

当時を知る元ちゃん研主将、豪田林はその時のことを振り返る。

 

「正直、最初は半信半疑でごわした。味噌蔵の娘とは言え田舎者と、心のどこかで侮る気持ちがあったのでごわしょう。或いは、折れかけた自身の心を必死に守ろうと八つ当たりしていただけだったのかも…今となってはただただ己の愚行を恥じ入るばかり…しかし、教室で広げられた味噌を見て、おいどん…いや、我々は夢を見たのでごわす」

 

と、目を細めてそう言った。

 

彼の見た味噌はその一つ一つが綿密で精巧、繊細なものであり…。

 

どこかノスタルジックな思いにさせてもらえるものだったとか。

 

…………………………

 

薙切えりなとちゃん研の食戟が行われた会場にて、その結果が明かされる。

 

「勝者!!薙切えりな!!」

 

……デスヨネー。

 

まぁうん。正直そこまでうまくいくとは思ってなかったよ。

 

いやまぁ?わたしとしてはめっちゃ大柄な先輩方が頭を下げに来て若干ハイになってたのもあるんだろうけどもさ?

ゴシゴシと目を擦ってモニターに表示された票数を確認する。

 

2ー1

 

勝者 薙切えりな

 

うん。改めてどっからどう見てもちゃん研の負けです。ありがとうございました。

 

「申し訳ありません先輩方。お力になれず…」

 

わたしは通路でちゃん研の人たちがやって来るのを待って、通りがかったところを深々と頭を下げる。

力及ばなかったのは確かだし。

先輩は少しの沈黙の後

 

「…いや、あの食の魔王の一族に、一票とは言え土をつけることができたのはそれだけで名誉でごわす」

 

そう、晴れやかな顔で言ってた。

 

「歴史は過去のみにあらず、道途絶えたならば新たなる道を探すだけのこと。貴殿にはそのことを教えられ申した」

 

そう言って、今度は向こうに頭を下げられる。

 

「…は?」

 

いやいや、別にそんなこと教えたつもりは…。

 

「よって我々ちゃん研一同!!貴殿を主将として新たに味噌研究会の立ち上げをする所存…」

「結構です」

 

いやまぁ…負けちゃった以上文句言うなって話だけどもさ〜。

別に今のとこ研究会はいいかなぁ〜…。

 

……………

 

「なぜ、票をちゃん研側に入れたのです?」

 

遠月学園からの帰りの車内にて、何気ない会話のような、しかし問い詰めるような、そんな訝るような質問がひとりの男に投げかけられた。

 

「いえね。彼らの料理にはどこか…覚えがあるような気がしたんですよ」

 

男は遠月学園のOBだった。

 

「…覚えですか?」

「ええ」

 

次いで投げかけられる質問に男は頷く。

 

「まだまだ未熟ではありましたが、しかし…あの味噌の調合は何処か特徴的で、私の心の琴線に直接触れるものでした。えりな様の料理は素晴らしいものでした。しかし心の琴線には触れなかった。だからちゃん研に票を投じた。それだけです。まるで…」

 

奇術にかかってしまったようですね。

 

何かを狙ってか、或いは本当にそう思ってか、ふと口から出たその言葉に、他二名は目をパチクリさせるばかりだった。

 

 




食戟の結果はほんへと変わらないので飛ばしました。


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14話

できましてございますー。


寮に帰ってから田所ちゃんに聞いた話だが、わたしがちゃん研のお手伝いをしてたちょっと後くらいに、同じ極星寮の幸平くんは丼研の存続をかけた食戟で鮮やかに勝利を飾っていたらしい。

いやぁ〜すごいなぁ〜。

嫌味とか皮肉抜きにして純粋に尊敬できるわ。

しかも相手はあのえりなちゃんの傘下の料理人なんでしょ?

いやもう…わたしなんかとは格が違うよね!!

な〜んて…自分で思っててもただただ悲しくなってくるわけで…。

 

「くぅっ…胃が…」

 

同年代との比較は、競争心を促進するうえで必要らしいけど…わたしみたいなタイプには正直キツい。

一刻も早く帰りたい…でも入院中の母さんに必要以上に心配かけるわけにもいかないんだよなぁ…。

 

「それに、あの手紙の差出人の本意を聞かないことには帰ろうにも帰れないしなぁ…」

 

しかも面倒なことに、もうすぐ宿泊研修なるものがあるらしい。

朝食の時におばあちゃんがそんなこと言ってたし。

 

なんでも、例年だと毎日のように強制送還&退学を喰らう生徒が多数出て来て、最終日にはだいたい初日の半分くらいは退学になってるとかなってないとか…。

いやまぁ、厳しい校風なのはなんとなぁ〜く分かってたさ。

でもここまでとは…。

 

「それだけ上昇志向が大事ってことなんかねぇ…」

 

それとも世界に羽ばたく日本人料理人を輩出する名門遠月からすればこのくらい普通なんだろうか?

…普通ってなんだっけ?

 

「え〜っと、今日の授業で持ってく味噌はこんなもんでいいかなぁ…」

 

取り敢えず、悪目立ちはしたくない。

でないといつ退学させられるか分からないストレスに加え、周囲からのよくない感情まで向けられてしまう。

幸い手作りの調味料や材料の使用は学園側も了承してるし問題はない…と思う。

空気になるんだわたし。

出る杭は打たれるんだ…。

打たれるのは痛いんだ…。

大丈夫、いつものことだよね。

 

「とにかく今は、授業を落とさないことを考えないと…」

 

そう呟いて、自室のドアノブをひねり…。

 

「お、スゲー量の味噌だなぁ…ちょっと見せてくんね?」

 

……うわぁ。部屋を出たところで会いたくない人にエンカウントしてしまった…。

ミスター陽キャ、幸平創真。

田所ちゃんの所感ではいい人…らしいが。

ただ、今のわたしには劇薬が過ぎる。

ずっと日の当たらない地下暮らしのモグラさんに、太陽の光は毒なんだよ…。

ただでさえわたしは望んでここにきたわけじゃあないのにさ。

入学早々大活躍されてる姿見せられたらさぁ…。

 

泣きたくなるよね。

 

頼むからそっとしといてくれない?

 

アハハハハハ……はぁ。

 

…帰りたい。

 




次回から合宿編、かなぁ。


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15話

でけましたわー


遠月リゾート。

某県某所にある高級別荘地として有名なそこに、でんと構えるのはアホみたいにデッカいホテル。全然旅行とかに興味無いわたしでも、名前くらいは知ってるくらいには超有名なとこだ。

卒業生の就職先としても有名だとかなんとか…。

普通なら一泊するだけで諭吉さんが十人弱は飛んでいくとかなんとか。

 

「はぁ〜…憂鬱だ…」

「だ、大丈夫?顔色悪いよ?」

「あ〜…うん…ゴメンね、慣れてなくって…」

 

バスの隣の席で心配してくれてる田所ちゃん、相も変わらずエンジェルやでぇ……。

やがて馬鹿広い駐車場でバスを降り、先生方が先導する形で大広間に通される。

なお、豪勢な割にヘンな沈黙が拡がっている模様。

でも、おっかし〜なぁ〜〜…事前に渡されたしおりにはこんな殺伐とした内容だなんて…いやでもまぁ、進学校なんてこんなモンなんかねぇ〜…。

 

「よっ、頑張ろうなぁ〜」

 

そしていつも通りへらへら話しかけてくる幸平くんよ…。

ホント大物だよ君は…。

 

「ステージに注目」

 

うん?

あ…先生だ…。

 

「これより合宿の説明を始める」

 

ざっくりまとめると…。

 

五泊六日の日程で、毎日料理に関するお題を出される。

そして課題の内容は毎年違う。

初日は二十のグループに分かれて、各自指定されたところへ移動する。

講師の評価が一定値を下回れば即失格。

バスに乗って強制送還ののち退学…と。

 

地獄かな?

地獄だったわ…。

 

「そして、審査を一任する遠月学園卒業生に多忙の中集まってもらった」

 

周囲がめっちゃざわついてる。

まぁ、そりゃあそうだよねぇ〜。

で、入場して来た人たちを見てあ〜〜〜〜……なんか…テレビで見たことあるような、無いような〜〜……なんて、呑気なことを思ってるわたしはやっぱ、料理人向いてないんやなって。

 

いやまぁ、スゴい人たちなのはわかるけどもさ。

自分の店持って、きっちり仕切って、ちゃんと稼ぎ出してる時点でちゃんとやることやってるんだろうし…。

まぁわたしの場合はアレ、仕切ってたって言うか、ほぼゲンさんに丸投げしてたんだけどもさ…。

いやまぁ…中学生にはキツいよね流石に。

ほんと、残ってくれた職人達には申し訳なかったなぁ…。

考えごとしてたらいつの間にやら退学を言い渡されてた生徒もいたし…。

やっぱエリートって怖いわぁ〜。

 

やがて壇上にガタイのいい坊主頭のオジサンが登る。

いやまぁ、偉い人なんだろうけども…。

 

「ようこそ。我が遠月リゾートへ」

 

まぁ、こっちも内容としては説明と激励だ。

なんでも従業員として扱うとかなんとか…え?

なにそれ正気?聞いてないんだけど。

しかも講師の材料で一発退学もアリって、そんなん気分次第やんけ。

 

「それでは…移動開始!!」

 

そして、地獄がはじまった。

 

うぅ…胃がぁ…。

 

おうちかえして…。

 




どこの先輩のとこ行かせよ。、


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16話

なんだか筆が乗ったので投下します。


「それぞれの調理台に二十種類の味噌を用意してある。

これらを最適な調合にして、制限時間の三時間以内にふぐの味噌焼きをつくってもらう。なお、ふぐの切り身の毒袋は処理済みだからそこは安心するように」

 

最初の課題は『鮨ひのわ』で板長を務める関守先輩からのものだ。

わたしがペアを組んだのは、包丁さばきにはそこそこ自信があると言う彼。

でも最初の課題が味噌って…それもなんですし屋の先輩から?

いやまぁ、そこまでお高い店なんて行ったことないし、すし屋だからって焼き魚とか出しちゃあいけないわけでは無いんだろうけど…。

…ま、よく分かんないけど先輩なりに考えがあってのことなんだろう。

知らんけど。

料理は嫌いだけど、さすがにそんなわがままにせっかくペアを組んでくれた相手まで巻き込めないからなぁ〜。

公私は分けないとね。うん。

 

「しっかしふぐの味噌焼きとはまたシブいな…」

「どうする?味噌選びは?」

「まぁ、まずは実物を見ないことにはね」

 

実際先輩がどんな味噌を持って来たのか興味はあるし…。

そんなわけで…いざご開帳〜♪

 

うひゃあ。

 

コレは…予想以上だなぁ〜…

 

「よし」

 

数分かけて、一応全種類の味や香り、風味なんかは覚えた。

 

「うん…これなら…」

 

頭の中で合わせる味噌の種類とバランスをパズルのように組み立てる。

ふぐってたしか白身魚で、その中でも脂肪がかなり少ないんだっけ、それなら…。

たぶん、この中に限定するならコレが最適だと思うんだ。

恐らくイケるはず。

きっと、メイビー。

わたしのせいで減点になるのだけは気をつけないとねぇ〜〜…。

 

ーーーーーーーー

 

彼女から流れ出る雰囲気がガラッと変わる。

ただでさえ口数が多くはない彼女の沈黙が更に長く、雰囲気は固くなる。

 

深く、深く、集中しているのが見てとれる。

 

点と点を線となし、線と線とを結んで絵画の如き芸術と成す。

 

そんな、天稟。

 

刹那、堰き止めていた水が流れ出るかの如く、サラサラと書き出すと、ペアの生徒へとそれを差し出し、言う。

 

「…ちょっとお願いしたいんだけど」

「お、おう…」

 

彼女と組んだ男子生徒が若干狼狽えた様子で返事をする。

 

「このメモにある通りに味噌を持って来てくれる?」

「わ…分かったよ」

 

目の前にあるんだから自分で取れば…と、そう思ったのも束の間。

気圧される形でメモを受け取り、その通りの量を持ってくる。

 

「ありがと」

 

そう短く礼を言うと彼女は味噌を持って来るまでの間に用意していたのだろうすり鉢で味噌を混ぜ合わせる。

その動きには無駄や迷いは一切無く

 

「よし。材料の方は…」

「あ、ああ…準備出来てるけど」

「そう…じゃあ、ふぐの焼きはやっておくから、その他お願い」

 

そう言うや、テキパキと作業を始める彼女を見て、卒業生

、関守平は嬉しそうに頷いていた。

 




主人公ちゃん、次はどしよかな。


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17話

できました。


「あぁ〜しんどかったぁ〜〜…」

 

合宿中にあてがわれた自室に戻り、わたしはベッドに倒れ込む。

まさか試験の後に飯を作ることになるとは…。

なんだよ五十人前って、バカなんじゃねーの?

しかもご飯は各々で賄い作れって?

いや、そこは用意しといてほしいじゃん。ってか、普通にあると思うじゃん。

普通に…いや普通に。

しかも幸平くんはあっさりクリアしてたし…。

ってか、なんかイタリア?だかなんだかの金髪イケメン男子にめっちゃ絡まれてたし…ああいうの、よく受け流せるよなぁ。

わたしなら目をつけられたって事実だけで胃が痛くなってそれどころじゃあ無いんだよなぁ…。

しかも、寮母のおばあちゃんからは極星寮全員合格して来いって圧かけられるし…。

もし、仮に、万が一、わたし一人惨めに落ちたりなんかしたら…その時はまた納屋暮らしに戻るんだろうか。

せっかく自分で一から用意した味噌小屋も手放すんだろうか。

それはちょっとやだなぁ…。

 

「しかも明日からまた試験なんだろ〜〜?」

 

どういうわけか田所ちゃんとはグループ違うから、お話しして癒されることもできず…。

わたしのライフはもうゼロ通り越してマイナスなんよ。

 

ふと、手にある感触に意識を傾ける。

そういや、高級ホテルなんだよなぁ。ここ。

ふか…と、押しただけでも何というかうまく言えないが

高級っぽさ?が伝わってくる。

 

「ベッドやーらかいなぁ〜」

 

でも…なんだろ。めっちゃ落ち着かない。

一泊八万とか、普通にお客さんとして家族で旅行にでも来たんならまた違ったんだろうけど…ってか、思い返せばそんな思い出も無いなぁ。

他の子たちは、そんな思い出があるんだろうか。

まぁ…基本坊ちゃん嬢ちゃん学校みたいだし。

両手の指で数えられないくらいあるのかな。

そう思うと、なんかすっげぇここに居たくなくなってきた。

でも疲れて動くのも億劫で………。

 

「ハァ〜〜〜……」

 

思わずため息が出ても仕方ないと思うの。

もういっそのことわざとミスでもやらかして…。

な〜んて、思ったところでできっこないクセになぁ〜〜…。

 

それに……。

 

「流石にそれはなぁ…人としてなぁ…」

 

ヘンに真面目なところが顔を出すのが分かって自分でも嫌になる……。

でも、波風立てたくないんだよわたしゃ…。

幸平くんみたく、堂々となんて無理無理。

 

「でも、決まったレシピ通りに作れば良いってんならラクかもなぁ〜…」

 

ベッドの上でゴロゴロしつつ、はたとそんなことに思い至る。

でも内容は卒業生次第でしょ?

そんな甘くはないっかぁ〜〜。

 

だだっ広い部屋。

清潔な布団。

派手派手なシャンデリアに、ベッド脇の…えっと、ナイトテーブルだっけ?…には、荷物を置きに部屋に着くなり喉が乾いてソッコー冷蔵庫から取り出して水を飲んだコップが置きっぱだ。

 

「後で…片さないと…なぁ…」

 

疲労とストレスからか、わたしは目を閉じるとそのまま、意識を手放した。



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18話

続きできましたー


遠月学園の宿泊研修は無事初日の日程を終え、順調に進んでいた。

遠月リゾートの一室にて、遠月学園の教師陣にOB、及びOGが今日一日を振り返っての感想や抱負、各々興味や関心を持った生徒に関して話し合っている。

話題にのぼるのは薙切えりな、幸平創真、水戸郁魅などと言った注目株から、意外な活躍を見せた生徒まで随分と幅広い。

それというのも、この合宿は有能な生徒を卒業前にヘッドハンティング…要するに青田買いするための場でもあるからだ。

そして、名を挙げられた生徒の中に『彼女』の名もまたあった。

 

「それで…どうでしたか?彼女は」

「そうだな、正直想像以上だった。『味噌の奇術師』の娘に出会え、あまつさえその試験までできるとは光栄の至りだよ」

 

『味噌の奇術師』

 

遠月でそう呼ばれた彼を、今なお慕う料理人は意外と多い。

特に和食に携わる者ならばなおのこと、彼の学生時代のレシピや、料理人としての在り方に興味関心や敬意を持つものだ。

 

「でも関守先輩。流石に課題がいきなり味噌なのは露骨だったじゃありませんか?」

 

そういうのは乾日向子。

今も試験の時と同じように割烹着を着て、のほほんとお茶を飲んでいる。

一見おっとりして、のんびり屋な雰囲気を醸し出してはいるが、実際は遠月の卒業生にふさわしく、現在は料亭『霧のや』の女将を務めるほどの凄腕の料理人だ。

 

「そうかな。しかしそうでもしなければ彼女の実力の程はわからなかったろうさ」

 

伝統の範囲でそれとなくアレンジを加え、しかも主張は控えめで、むしろ基礎を際立たせる。

今回のふぐの味噌焼きひとつとっても、その抜きん出た実力の片鱗も分かろうというもの。

 

「しかし…野心を全く匂わせないのはどういうつもりなんでしょうねぇ…」

 

あのくらいの若さならば良い悪いは置いておいて、それ相応の貪欲さや野心といった、己の身の丈以上のものを自ずと望むようになるものだ。

ましてや遠月は他の学校とは比にならないほどに厳しく激しい競争主義。

抜きん出たものを持つものは、それだけにかけられる期待も大きい。

そして、それをモノともしない精神性を持つ者でなければプレッシャーに押し潰されてしまいかねないのだ。

 

実力はあれど、君臨を望まない。

奇しくも、彼女は料理人としての在り方さえ父親に似ていた。

しかしそれは、ともすれば遠月を否定しているようにも思えるが、彼の、或いは彼女の料理からそういった軽薄さや、伝統を軽んじようとするような投げやり感はない。

 

むしろある種の潔さまで感じ取れ、爽やかですらある。

そしてそれはある意味で、とても遠月らしかった。

 

「血は争えない…ということでしょうか」

「お前も興味を持ったか?」

 

関守からそう問いを投げかけられるや、乾は意味深にニコリと微笑むだけだった。

 



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19話

お久しぶりです。


ねむいだるいめんどくさい。

ついさっきまで放送で大宴会場に集まれって言われたから集まってたのはいいけど…。

 

「なんだよ朝食作りって〜〜……」

 

わたしはぼふぅっ…と自室のベッドに倒れこみながら愚痴をこぼす。

テーブルの上のコップから水がちょっとこぼれた気がしたが、わたしは悪くない。

ステージ上の堂島先輩のドヤ顔が今でも思い出せるわぁ〜〜……。

ブン殴りてぇ…いやまぁ無理なんだけどもさー。

朝食はホテルの顔だぁ?知らねぇーよそんなこと。

こっちゃ別に料理人志望でもなんでもねーんですよ〜〜。

ただでさえ五十から八十食に増えたノルマに疲れてんだよこっちはぁ〜…。

田所ちゃんも見たとこクタクタだったみたいだから甘えるわけにもいかなかったし…。

って言うか、田所ちゃんクビになりそうだった〜みたいな話を聞くけどまさかね〜。

しかもそれを賭けて幸平くんが先輩に食戟を挑んだって…まぁあくまで噂だよねー。

 

はぁ〜…忙しさからかいつになく心が荒む。

帰りたい。出来ることなら今すぐ実家に帰りたい。

でも出来ないからチクショウ!!

この逡巡も遠月来てから何度目なんだろ。

来年にはわたしの胃に穴が空いてんじゃあないか?

しかも先輩曰く、驚きのある一品を作れって?

制限時間は明日の朝六時で?それまでには試食できるようにって?なんぞそれ?どんだけノルマガッチガチなんですかね。

メイン食材の卵…どーしよっかなぁ〜…。

厨房は今間違いなくごった返してるだろうし…。

あぁ〜…しかもビュッフェ形式?だから、ひと工夫必要?みたいなことも言ってたようなー。

 

卵かぁ〜…………。

ふと、遠い日の思い出にふけっちゃう。

卵と言えば、まだ母さんが入院する前、よく行ってた近所のお店のおでんがホントに美味しかった。

 

「お母さん料理もできなくってごめんね?お袋の味って憧れだったのだけど…」

 

そんなふうに、困ったような笑顔をこっちに向けて来て…。

いやまぁ、体弱いんだから仕方がないんだけどもさ。

問題は未だに帰ってこようともしないどっかの誰かさんなわけで…。

 

「そういや、最近おでんの卵とか食べてないよなぁ〜〜〜……」

 

かと言って、おでん種から色々作って出汁で煮てってするとけっこう手間なんだよなぁこれが。

 

うん?おでん…たまご…味噌…。

 

「これだぁ!!」

 

わたしは天啓を得たかのようにガバリと起き上がる。

ありがとう母さん。

お店の人の見よう見まねだけども、何とかなる…といいなぁ…。

あとは驚きって点だけど…これはまぁ、アレをアレして…。

もうこうなりゃ、半ばヤケだよね!!

わたしは椅子にかけてあった割烹着をふんづかみ、厨房へと向かったのだった。

もうどうにでもな〜れ!!




次の更新は、たぶんすぐかなぁ…たぶん…。


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20話

お久です〜。


堂島銀は視察も兼ねて各会場を見て回り、とある生徒のブースを発見する。

用意される食器や、お題などから推察するに彼女の出すものは……。

 

「アイツの料理は…ほう、田所恵と同じおでんか」

 

堂島は引き続き興味深そうに彼女の動きを観察している。

 

この試験において最も懸念すべきこと…それは同じ会場の他の生徒とお題が被ってしまうことだ。

無論、個人の創意工夫などで差別化こそ図れるが、しかし比較対象ができてしまうのは難しくもある。

同じ料理なうえ、似たような味付けであるなら客足も遠のくし、同じなら別にいいやと客の側としても食傷気味にもなってしまいかねない。

まず食べてもらうことが大前提のこのお題に於いて、それは後々まで響く致命的な打撃となってしまう。

とは言え、単純に興味から味の違いを比較したがる客もいるだろうし、絶対にそれがいけないというわけではないが。

しかし、彼女の料理を見た瞬間堂島はなるほど、と頷いた。

 

「やはりと言うべきか…アレは味噌おでんか」

 

味噌おでん。

それは名古屋や鹿児島で親しまれるおでんであり、醤油ベースでは無く味噌ベースの味付けが特徴的なものだ。

味噌蔵生まれの彼女らしい料理と言えるだろう。

見たところ、具材は卵にこんにゃく、ちくわに大根などなど…比較的オーソドックスだが、それが逆に注目を集める結果につながった。

 

「田所恵のひとくちサイズの朝食おでんとはまた違った切り口でやって来たな」

 

そうこうしているうちに、ひとり、またひとりと彼女のブースにちらほらと人が集まる。

とは言え…問題はその客の反応なわけだが…。

 

「なんと…なんと言うことだ…」

 

紳士然とした男が呟く。

 

「赤味噌や八丁味噌、甘口辛口などの癖のあるいくつもの味噌をブレンドしているにも関わらず、味も濃くなりすぎず互いの味噌同士の主張が喧嘩もしない…」

 

次いで老人が一口食べて驚く。

 

「極め付けはこの卵…まろやかな味わいに、味噌に入っている生姜がほのかに香る…」

 

生姜味噌おでん。それは青森の方で食べられる郷土料理でもある。

恐らく今回彼女はそれを参考にしたのだろう。

 

「あはは…まぁ、山の朝は冷えるって聞きますし…お味噌にはミネラルや塩分など、一日の活力になる成分が豊富に含まれていますから…なんて、つまらないお話を…ともあれ、お口にあったのなら何よりですよ」

 

周囲からの賛辞に困ったように笑うその様は、彼女の父親に本当に瓜二つで…堂島は微笑ましく思うと同時に、思わず顔を背けてしまいたくなる。

 

「…いやはや、驚かされた。これほど繊細に味噌を調合するとは…さぞや苦労なすったろう」

 

老人が微笑み労いの言葉をかける。

 

「いえ…わたしはわたしにできることをして来ただけのことです。特別なことなど、なにも…」

 

その後、彼女が200食を達成するのは最早当然のことだった。

 




おでんの具だと大根と卵が好きです。結局王道が一番美味しいんですよね(隙自語)。


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21話

お久しぶりです〜


「あ〜疲れた…」

 

五十食やら八十食作らされて、その次は二百食…これまでに無いほど調理したからか、かなり疲れた。

 

「いやぁ〜、圧力鍋って偉大だわぁ〜」

 

文明の利器最強!!

とは言っても…かなり四苦八苦したけども…。

教科書通りに包丁扱うだけでも精一杯だったわホント。

 

「片付け…結構手間だなぁ…」

 

ぶつくさ言いつつ、手は動かす。

いやもう、この合宿で身についたのは下っ端根性くらいなモンだよね!!アハハ…笑えねぇ。

 

何せ二百食分だ。

重いしキツいしめんどいし…。

世の料理人はコレを毎日やってると思うと…まぁ、無碍にはできないなぁ…なんて思いはするけどもさぁ…。

 

「にしても…やっぱり味噌ってウケがいいんかねぇ〜」

 

ポケっとそんなことを考える。

でも…正直そろそろキツいモンがあるよなぁ〜。

これまではわりと騙し騙しやってきたけど、それだっていつまでも出来るわけじゃあ無い。

今回のことだって、味噌の知識っていうアドバンテージがあったから通ったようなモンだろうし〜。

それが無かったらたぶん実家に顔向けできなくなっちゃうもんね。

 

「前途多難にも程があるよなぁ、ホント…」

 

しかも突如として流れたアナウンスによれば、この後でもう一個プログラムがあるんだろ〜?

そのうえ…従業員として扱う〜って割には給料も出ないっぽいし。

いやまぁ?ポジティブに考えれば、在校生的には卒業生の先輩方へのアピールの場ってもとれるのかねぇ?

まぁ、わたしは別に料理人志望ってわけじゃあ無いんだけどもさ…。

 

「あぁもう!!ダメだダメだ!!」

 

疲れからかついつい考えすぎちゃうわぁ〜…。

っと…取り敢えず、片付けは済んだし…次の予定までは四時間あるから、大人しく部屋で寝てますかねぇ…。

そう思って、いざ部屋に向かおうと思っ…

 

「少しいいかな?」

「え?わたしですか?」

 

部屋へと戻る廊下で声をかけられたのは…堂島先輩だ。

 

「すまないが、ついてきてくれ」

 

それだけ言うと、クルリと背を向けてツカツカと歩いていく。

…断られるとか思わないんだろうか?

いやまぁ…拒否権なんて無いんだろうけどもさぁ…。

 

「は…はぁ…」

 

にしても…何なんだろう?

キョロキョロと同じ境遇の生徒を探して周りを見回すも…他に該当者らしき生徒は居ない。

 

え?わたしだけ?

え?もしかしてなんかしちゃいけないことでもした?

 

他の生徒達は片付けの最中で、何やらいいのかなぁ?なんて思いつつエレベーターに乗り、最上階にある偉い人用の部屋っぽい所に案内される。

途中、会場でお客さんとしてやってきていた先輩方が通りすがったので慌てて頭を下げるのを繰り返す。

その度に意味ありげに笑みを向けられて気が気じゃない。

正直言って緊張がハンパないんだけど…。

まぁ…呼ばれた部屋に他の先輩方がいないだけマシだと思おうかなぁ…。

 

「さて…キミを呼んだ要件だが…」

 

そう言うと堂島先輩は懐から小さな鍵を取り出すと、それを使って机の引き出しを開ける。

 

「コレを、返しておこうと思ってね」

 

取り出されたのは…透明な袋に入れられた、かなり使い込まれたのだろうボロっちいノート。

 

「えっと…これ、わたしのじゃあ…」

 

身に覚えのないものを受け取るわけにはいかないと思って、受取拒否しようとしたものの…。

 

「あぁ、コレは…君の父親の在学時のノートだ」

「……へ?」

「いつか、返さなければならないと思ってな。約束なんだ」

 

…えぇ?どゆこと?

 

「アイツは…訳あって、この遠月に戻ってこられない身だからな…」

 

堂島先輩はそう、真剣な目で言ってくる。

 

 

 

……えっこれ、どう返すのが正解なのよ?

 

ははっ…帰りたい…。




合宿編はたぶん次回で終わり…かなぁ?

遅くて申し訳ない…。


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22話

続きできました〜。


ふぃ〜…緊張したぁ〜。

 

結局あの後聞きそびれたけど、父さんの学生時代のノートって…なに?忘れ物ってこと?

あれか、中退した帰り際に引き出しの奥の方に追いやられて、いつしか存在も忘れられた頃に掘り出されるって言うやつか?

約束って、忘れ物あったらとっといてね〜って?そんなことある?無いよなぁ?

そもそも単に忘れただけなら郵送なりすれば済む話だろうし…。

さも大事なモノみたく鍵付きの引き出しに入ってたから、よっぽど父さんと堂島先輩の仲が良かったのか、それともこのノート自体にそれだけの価値があるってことなのか…。

かと言って、詳しく聞こうとちょっと踏み込んだ質問してみると、「今はこれ以上は何も言えない」ってそればっかりで、全然当時のことなんて聞けなかったんだけども…。

 

「ど〜すんのよこれ〜?」

 

自室で椅子に腰掛けつつ、どうしたモンかと思考する。

いやまぁ、本当の持ち主がこの場にいない以上、わたしが持ってるしかないんだろうけどもさぁ〜…。

ここの責任者である立場の先輩がわざわざ丁寧にしまってくれてたモンだから間違っても粗末に扱うわけにはいかないし…。

 

「行き詰まった時はコレを読むといい。きっと助けになってくれるはずだ。だが…」

 

決して他の誰かに見せちゃあいけない…か。

やたらと念入りに、真剣な顔で言われたから思わず頷いちゃったけどもさぁ…。

あの眼光の鋭さなんなん?絶対なんかやってるって。

 

「もう中身見てやろうかなぁ」

 

行き詰まった時とか、正に今だし。

別に何百年前の貴重な遺物…それこそ源氏物語かなんかの原本ってわけじゃあ無し……。

って言うか、わたし以外に見せちゃあいけないって、それアレかな?一族秘伝のレシピ的なかなんかかな?…無いか。

そもそもウチの家系で料理人を目指そうって飛び出したのはわたしの知ってる限りじゃあ父さんが初みたいだし〜…むむ〜…このままだと謎が謎を呼んで、タコ足配線みたくこんがらがりそうだなぁ…。

 

「ハァ…」

 

まぁ、そんなこと思ったところで何だけどもさぁ…我ながら無駄な抵抗がすぎるなぁ…。

 

「それに…遠月に戻ってこられないって、どういうことよ?」

 

まるで意味がわからない。

来たけりゃあくればいいんじゃ無いの?

 

憂鬱な思いを抱いて、考えばっかりが頭を巡り、気がつけば次のプログラムまで一時間を切ってた。チクショウ。

 

考えすぎるのも悪い癖…母さんにも言われて、頭じゃあ分かってんだけどなぁ〜。

にしても先輩方よ…そんなに後輩苦しめたいんかこのやろー。

 

帰りたい……。

 



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23話

続き出来ましたー。


なんとか余剰分の時間をギリギリまで休憩に費やし、部屋から少し時間的に余裕を持ってロビーに向かい、辿り着く。

既にわたし達以外にも、試験を生き残った生徒達が続々と集まっていた。

まぁ、遅れたりしてクビになったらそれこそこれまでの頑張りがパーだもんなぁ。

 

はぁ…でも、正直あんま休めてないんだよなぁ…。

ブラック過ぎないこの合宿?

いやまぁ、プロの世界が厳しいのはそうなんだろうけども…。

 

そして…やってきた先輩方。

堂島先輩がマイクを手に、労いの言葉をわたし達にかけ、長いお話の後…なんと、先輩方の料理を味わえるとか。

 

それで、各々用意された席につき、出された料理を食べてみたんだけども…なんっ……て言ったらいいんだろうなぁ…。

いや、美味しいよ!?

めちゃくちゃ美味しいし、滅多に食べられない料理なのは周りの反応からしてひしひしと伝わってくるんだけども…生まれてこの方、いかんせんこういうのにまっっったく縁が無かったモンで、味の…深み?素材を活かした味?ってくらいにしか表現方法がわかんない。

まぁコレはわたし自身が単純に知識とか語彙力不足なせいなんだろうけども…。

せいぜい、あぁこの料理には隠し味にあの味噌使ってるなぁ〜とか、この味噌入ってるなぁ〜くらいなもんで、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいなんだわ…。

 

そもそもわたしは味噌以外には基本貧乏舌なもんで、同じテーブルを囲む田所ちゃんが「美味しいね〜」なんてニッコニコ幸せそうな笑顔で言ってきても「アッウン、ソウダネ〜」くらいしか返せなくって…。

 

どっちかって言うと、テーブルマナー云々で誰かしらシェフの機嫌を損ねるんじゃあないかってそっちにばっかり気がいっててなぁ…。

 

いやまぁ、せっかく合格したんだし、貴重な機会なんだから素直に楽しめばいいんだろうけども…。

初日に香水でクビになってる人(全然知らない人だったけど)のことを思い出すとそこまで呑気にはなれないんだよなぁ…。

 

……単純にわたしが小心者なだけなんだろうけどもさぁ…。

 

しかもさっきからチラホラ聞こえてくる秋のセンバツ?だか何だかも何やら不穏な気配がしてヤバい…。

 

「あのさ、田所ちゃん…」

「え?どうかしたの?」

「その…さっきから聞こえてくる秋の…」

「ああ、選抜のこと?」

「やっぱ、極星寮からも出るのかなって…」

「そうだねぇ〜…創真くんもそうだけど、他にもスゴい人結構いるから…」

 

となると…また寮母のおばちゃんからなんか言われるのかなぁ…。

今から憂鬱だ…。

 

「でも、スゴいね!!もう秋の選抜のことに意識が向いてるなんて…私なんか今合宿通過できただけで胸がいっぱいだよ〜」

 

感心したような視線をこっちに向けてくる田所ちゃん。

いや、そう言うんじゃあ無いんだって。

 

「あはは…実際わたしもそんなモンだよ。ちょくちょく話題に出てたから聞いてみただけ…」

 

心なしか和やかな空気が少しピリついたような…。

おかげでノートのこと話題に出しそびれた…。

なんかヒントとか貰いたかったのにチクショウ!!

 

「はぁ…」

 

帰りたい…。




主人公ちゃんは生粋の庶民なのです。


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24話

『味噌の奇術師』の過去をひとつまみ。


遠月リゾートにあるスイートの一室。

既に生徒達を学園に見送り終えて、部下に後片付けの仕事を言い渡して、今回最後の会合だ。

そこに集うのはかつて遠月十傑と呼ばれた一廉の料理人達。

 

その中心で深刻な面持ちで机を睨むのはここのオーナーシェフである堂島銀だ。

 

「……で、言えなかったんですか?」

「…ああ」

 

その返事に、乾日向子は困ったようにオロオロしている。

 

「はっきり言えば良かったじゃあ無いんですかね?」

 

その空気に耐えかねたのか、眼鏡をかけたフレンチの匠、四宮小次郎が口を開く。

 

「ちょっと、四宮先輩…」

「四宮…無神経」

 

 

乾に続き、水原もまた四宮を嗜める。

が、当の四宮は気にした風でもなく、いつもの調子で辛辣な言葉を続ける。

 

「遠月学園七十期生『味噌の奇術師』を潰したのは他でもない、当時の十傑のーーーー」

「四宮…それ以上の侮辱は看過できんぞ」

 

珍しく怒りを露わにする堂島に、他のメンバーは少し引き気味で、その様子にハッとした様子の堂島が気を鎮めるためにか「ふぅ」と一息つく。

 

『味噌の奇術師』こと、彼は他寮の生徒達にも気をかけ、望む者には笑顔で門戸を開いて、自身の味噌小屋で味噌の何たるを教示していた。

かと言って遠月十傑に野心を見せているわけでも無く、挑まれる食戟もまた全て拒否していた。

当時の十傑達がそんな彼を不気味に思うのも無理からぬこと。

やっと極星寮出身の第一席が卒業、第二席が退学して次は自分たちの時代だ、と言う時に十傑クラス…それもなったとしたら第一か第二席かと噂されるくらいには優れた技術とカリスマ性のある料理人が、その椅子に興味すら示さない。

それに加えて、元々彼が外様であったということ、度々ある引き抜きに首を横に振っていたと言うこと、そして…噂程度の話ではあるが、彼はそもそも十傑というシステムそれ自体に首を傾げていたとも言われており、仮に彼がその第一席についた暁には、もしかしたら今日まで遠月十傑というモノは残っていなかったかも知れないとまことしやかに語られる。

そして、それを焚き付けたのは他でもない…堂島銀その人だ。

 

「お前が奴を語るな」

 

堂島は静かに睨む。

それに気圧されたように、四宮は舌打ちをして口を閉ざす。

 

「アイツは誰よりも優しく、誰よりも気高く、そして…皆に愛された料理人だった」

 

だから、託したかった。

遠月の未来を、その行く末を。

自分や才波では辿り着けなかった所にまで、学園のレベルを引き上げてくれることを願って。

 

「オレが勝ったら、お前が次の遠月十傑第一席となれ!!」 

「あはは…まぁ、ぼくが先輩に勝てるとは思いませんが…でも、コレで最後にして下さるのなら、ぼくは構いませんよ」

 

何度目かの挑戦状を、やっとこぎつけた彼からの承諾の言葉に、当時の己は有頂天になっていた。

やっと彼の底を知ることが出来る。

彼を、相応しい地位につけてやることが出来る。そう、歓喜していた。

後は審査員やら諸々の人をかき集め、薙切仙座右衛門の許可を取り付けるのみとなった。

 

その挙げ句が…あの悲劇的過ぎる事故だ。

 

「先輩。彼らは誰も…何も…悪くないんですよ」

 

事態の異常に気付いて、堂島達が極星寮に戻って来たのは悲劇の通り過ぎた後であり…寮内の荒らされた厨房や設備。

戦利品として飾られていた数々の調理器具はそこら一帯に散乱しており、その奥にはいつものように…いや、額に汗を流しつつ、見るからに無理をして優しく微笑む彼の利き腕からは…夥しいほどの血が流れていた。

 

「どうして…アイツみたいないい奴が…」

 

堂島は当時を思い返して、瞼を閉じる。

今でも夢に見る。

どうしてアイツはああまで他の生徒を庇い立てたのか、どうして自分たちに何も言ってくれなかったのか、どうしてーーーー。

しかし、償おうにも既にその足取りは掴めなかった。

『味噌の奇術師』は文字通り、奇術の如くその姿をくらませた。

 

だからこそ、せめてもの償いにと…あのノートを彼の娘に託した。

約束を果たすため、何より己が楽になりたかったがために。

 

然るべき時、真実は必ず彼女の耳に届くだろう。

その時は…………。

 




次回…とあるキャラとの絡みがあるかも。


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25話

久しぶりの更新です〜。


週末の休みを使って、わたしは帰省することにしていた。

まぁ田所ちゃんも帰省するっぽいし、居てもせっかくのお休みを無駄にしそうで何だかなぁ…って感じだったし…。

いやまぁ、榊さんとかはあの後使ってる麹に関して小一時間聞かれたり、ちょっとわたしも乗ったりもしたけども…。

 

ただ、それで味噌小屋の中身はそのまんまにするわけにはいかないからってんで、榊さんが面倒見てくれることになったし、良かったっちゃあ良かった…のかなぁ?

まぁ、温度調節のメモも渡してあるし、麹の扱いは丁寧だろうから、その点の心配は多分いらないんだろうけど。

 

さて…ここからが帰省した本来の目的だ。

うちの実家からタクシーで二十分。

少しツンとくる薬品の匂い。

どこまでも白い、潔癖な壁。

少し、気持ちは落ち着かないけれど…それでもわたしはここにきた。

 

受付を済ませて五分か十分ほど待って、苗字を呼ばれると通い慣れた個室の扉を開ける。

ベッドから上半身を起こして夕焼けに染まる窓の外を見ていた女性が、コチラに顔を向ける。

海が見える部屋がいい。

 

そう言ってこの部屋にしてもらったのを、何となしに思い出す。

 

「久しぶり。元気してた?母さん」

 

数ヶ月ぶりに見るその顔に、わたしは安堵を覚えた。

 

「ふふ…本当に、久しぶりねぇ。あなた、少し背が伸びたかしら」

 

いつものように、優しい声色。

ああ、母さんだ。

そう思うと甘えたくなる。

…でも、しっかりしなきゃ。

わたしはお見舞いの品の果物を机に置いて、折り畳みの椅子をベッド脇に運んで、開き、座る。

顔を覗き込んで、ホッとひと安心して胸を撫で下ろす。

 

「今日は顔色いいね。良かったぁ…」

「もう、心配しすぎよ」

 

母さんは口に手を当て、嬉しそうにニコニコと笑う。

何から話したものか…。

 

「その…ごめんね」

 

気がつくとバツが悪く、わたしはそう言っていた。

たぶん、顔はそらしてた。

 

「ん?何を謝っているの?」

「いやホラ、遠月学園で寮に入ってから、全然ここに来られてないし…」

 

自分で望んだことじゃあないとは言え、入院中の母さんを放って置いて…そんな罪悪感は心のどこかにあった。

あり得ないことだけれど、万が一にでも怒られたら…そんな不安が頭をよぎる。

が、しかし、キョトン…と数秒固まった後、母さんはクスクスと笑う。

 

「ああ!!そのことね、ふふ…気にしすぎよ。ホント、優しい子なんだから…」

 

母さんは手を伸ばして、ベッド脇の椅子に座ったわたしの頭を撫でる。

 

「別に直接会わなくっても電話なりなんなりで近況は知れるんだから。気にしすぎ!!それに、便りがないのは元気の証、でしょ?」

「そう…だね…味噌蔵の方はゲンさんが仕切ってくれてるし…」

「もう!!あなたの口から一番聞きたいことが聞けてないわ?」

「え?」

 

また無意識にそらそうとした顔両手で掴まれ、自分と同じ、鳶色の瞳がこっちの目を見つめる。

 

「学校はどう?楽しい?」

「……………」

 

正直、キツい。

心配はかけたくないけど、嘘をつくのも気が引ける。

我ながらめんどくさいやつだ。

ズルいわたしは、話題を直接のそれから少し逸らした。

 

「その…母さんは、知ってたの?」

「なにを?」

「堂島さんって…人のこと…」

「そうね〜…有名人だからね…って言うのは冗談よ。もう、そんな顔しないの」

「うぅ…」

 

母さんはこういう茶目っ気がある人だ。

またからかわれたって、悔しくなるし…安心する。

 

「でもそうねぇ〜…ちょっとだけ、教えてあげてもいいかな」

「え?」

「ノート、渡してもらったんでしょ?」

「あっ…うん…」

「それを、よ〜〜〜〜く読んでごらん?ソレがヒント♪」

 

母さんはそう言うとウインクする。

……相変わらずちょっとヘタだ。

 

「ヒント…」

「そう。最初から答えを教えるのは簡単。でもコレは…あなた自身が考えて、出す答え。わたしと…お父さんからの宿題」

 

宿題…父さんからの?

 

「母さんは…悔しくないの?」

「何で?」

「だって、父さんは…わたし達を置いて…」

 

なんでこんな嫌なことを聞いたんだろう。

我ながら嫌な子だ。

でも。何も教えてくれない側にも問題があると思う。

 

「…それも、宿題が終わってからね♪少なくとも、お母さんはお父さんと結婚したことを後悔はしてないし…」

 

ほっぺを優しくつまむ。

 

「あなたっていう宝がこの世に産まれてきてくれたんだもの。それだけでも幸せなのよ?」

 

正直、誤魔化された感は拭えない。

いやまぁ、話題を逸らしたわたしが言えた義理ではないんだろうけども‥。

 

でも…分からない。

父さんが今どこで何をしてるのか。

それを教えてもらえないし、かと言って無理に切り出すことも出来ない。

 

結局、その日は母さんの都合のつく限界までお見舞いをさせてもらって、実家に戻るのだった。




せっかくの週末のお話、もう一話くらい書きたいですねぇ。


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26話

久しぶりの投稿です。

過去話〜。


雨が、降っていた。

 

ピンポーン

 

今から十年ほど前のその日、幼い日の彼女の実家の歴史だけはある味噌蔵に、一人の来客があった。

 

カラララ……

 

「はい、どちら様でしょう?」

 

多忙な家主、そして病弱で入院中のその妻に代わって職人衆筆頭である中西源三郎が玄関に赴いて客を迎えに出ると、そこには見覚えの無い若い男が立っていた。

 

男は仕立てのいい服を着ており、その雰囲気からはどこか気品めいたモノまで醸し出していた。

しかしそれ以上に、彼の視線は冷たく…その後ろには高級車…リムジンが止まっていた。

 

それを見て、思わず源三郎は身構えてしまった。

 

「そう警戒されなくて結構ですよ。べつに取って食おうなんて思ってはいません」

「む…これはお客様に失礼をば…」

 

頭を下げる源三郎に、男は仮面のような表情で微笑みかける。

 

「はじめまして。私は薙切薊と申します」

 

薙切…その名を聞いてピンと来た。

食の魔王。といえば料理人やその周囲で知らぬものは無い。

ここの家主はかつて遠月学園に通っていたことからも、その因果も分かろうというもの。

とは言え、当時のことは源三郎自身聞いた事くらいしかなかったが。

 

「それで、本日は当味噌蔵に如何用で?」

 

目の前の若者が誰であれ、味噌を買い付けに来た客でないことだけは確かだ。

源三郎の直感が、そう伝えていた。

 

「フフ…」

 

警戒心を隠しつつ、そう尋ねる源三郎が滑稽なのか、男は薄く笑う。

 

「ご主人にお伝えを。貴方の後輩が迎えに来た…とね」

 

訳もわからず、家主を呼ぶ源三郎。

家主は客人が誰かを知ると、とても驚いた表情を浮かべていた。

 

「おや、中村くん?」

「旦那様?お知り合いで?」

「うん。ぼくの後輩。久しぶりだねぇ」

 

穏やかにそう挨拶する家主に、薙切と名乗った青年は硬い表情で言う。

 

「先輩。少々お話が」

「うん?別にいいけど…」

 

庭先で何かしら話し込む二人。

瞬間。この味噌蔵のあるじは少しばかり、普段の穏やかな顔色を変えた。

 

そして…その日、一家の父は姿を消した。

 

「ちょっと出かけてくるからね」

 

そう、いつものように穏やかな笑顔を浮かべながら。

 

妻に何かしらの手書きのことづけを渡すよう源三郎に頼み、若い男の乗ったリムジンに自ら乗ったのだ。

 

「旦那さま!!奥様やお嬢にはなんと…」

 

呼び止める源三郎に、主人は振り返ると

 

「うん。大丈夫。訳は話せないけれど…ぼくの可愛い娘と妻を頼んだよ?」

 

それ以上、何をいうでも無く車に乗り込むと、嘘のように居なくなってしまったのだった。

 



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