ミニ四駆がトレセン学園にやってきた (風呂)
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ミニ四駆は掌のモータースポーツ
「じゃーん! ターボだぞ!」
カノープスの部屋に快活な声と共に入ってきたのは、低身長に青く長いツインテール、そしてオッドアイが特徴のウマ娘、ツインターボだ。
「おーどしたんターボ。今日は確か休養日だよね? 忘れ物?」
それに答えるのはナイスネイチャ。
偶々放課後のトレーニング途中にスポーツドリンクの補充に来ていたのだ。
これ見てこれ見て! と、ターボが掲げるのはビニール袋。どうやら中には箱状のものが入っているようだ。
「どれどれ……」
袋を受け取って中の箱を取り出せば、白いボディに青い炎の模様が入った車のイラストが描かれていた。
「えーっと、何だっけこれ。……そうそう、ミニ四駆、だっけ?」
「そうミニ四駆! マグナムセイバーって言うんだ、カッコいでしょ」
「そうだねえ。ま、カッコいい、んじゃない?」
少し歯切れが悪いのは、あまり男の子が好きそうなおもちゃには関心がなかった、という事で勘弁してほしいとナイスネイチャは思う。
「でもなんでいきなりミニ四駆? アンタ、前から好きだっけ?」
「ううん、名前は知ってたけどさっき初めて見た。でもちょー速いんだよ! ビューンって!」
詳しく訊けば買い物で寄った商店街で偶々模型店のそばを通ったとき、親子が楽しそうに走らせているのを見たのだそうだ。そしてその速さに衝撃を受けたのだと。
……そういやあそこの模型店、個人経営の癖に妙に広かったけど、コースがあったからか。
詳しくはないが、ターボがこうまで興奮するほど速いのであれば、それなりの長さ? 大きさ? のコースが必要になってくるだろうと、推察できた。
「でもアンタ、なんでチーム部屋に持ってきたのさ? 自分の部屋で作ればいいでしょ?」
「作ってすぐ走らせたいけど、寮で走らせたらヒシアマに怒られそうだもん。こっちなら作ったら近くの校舎の廊下とかで走らせても放課後だしきっと大丈夫!」
「ほほう、ターボにしては考えましたな」
「どういう意味!?」
アハハ〜と誤魔化し一つ。
「ま、作るのはいいけど、散らかさない、片付けはちゃんとする。いいね?」
「うん、分かったー!」
よしよし、と頷いて新しいスポドリを取り出して部屋を出ていこうとするナイスネイチャ。
その際、ターボは目をキラキラさせながら組み立てを行おうとするのを視界の端に入れ……、
「待った。ターボ待った」
「うぇ?」
慌ててターボの動きを止める。
なんだよネイチャ〜、と抗議されるが、多分これは言わないといけないのでは? と説明書を軽く読んで確認してから言う。
「いや、なに手でパーツもぎ取ろうとしてんのさ。ニッパーだっけ? 道具使いなよ道具」
にっぱー? と呆け顔をするツインターボを見て、あ、こりゃ駄目だと確信する。
「無理矢理この枠? から取ったら割れちゃわない? それにほら、書いてあんじゃん。組み立てにはニッパーとドライバーをお使いくださいって。ターボ持ってる?」
「ううん」
首を横に振るターボを見てまさかと思い、更に問うてみる。
「もしかして電池もない? モーターは入ってるみたいだけど、電池ないと作っても動かないよコレ」
「え、全部入ってないの? 走らないの!? ヤダー!!」
うわーん、と騒ぎ出すターボを見てどうするか考える。
……このままじゃ、少なくとも今日中には完成しないなこれ。仕方ないなぁ。
「わかったわかった。トレーニング終わったら手伝ってあげるから」
「ホント!? ありがとネイチャ〜〜!!」
抱きついてきたターボの頭を擦りながら嘆息するネイチャであった。
ターボが買ってきたのはプレミアムのほう。なので少々手荒に扱っても大丈夫なものとする。
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知力値判定に失敗。幸運値判定でクリティカル。多分そんな感じ
アタシがトレーニングしている間に電池とニッパーを探してきといて、と言われたツインターボは学園内を彷徨っていた。
マグナムセイバーを買った模型屋に戻って買ってこれれば良いのではあるが、流石に門限的に往復する時間はもうなかったのである。
走っていけばどうにかなりそうではあったが、今日はトレーナーから言い渡された休養日。勝手に身体に負荷をかけられないのである。
なのでどうにかしてトレセン学園内で手に入れようという魂胆だったのだが。
「う~、ない。ないなあ。どこにあるんだあ?」
見つからないのである。
購買部に行けば何でも売ってるだろうと思って覗いてみれば、丁度必要な単三乾電池は売り切れてて一回り小さな単四電池しかなく、ニッパーは影も形もなかったのである。
少し駄々をこねて店員を困らせてしまったが、近日中には単三乾電池の方は入荷するとのこと。
……でも、今すぐ作って走らせたい!
初めて買ったミニ四駆に対してそう思うのは無理からぬことであった。
しかし現実問題としてどこに目当ての物があるか予想すらつかない現状、早くも八方塞がりであった。
「どうしよう~」
頭を垂れると釣られて耳と尻尾もへにょっとなる。逆噴射である。
そうして途方に暮れていると、
「あれ? ターボちゃんどうしたの?」
「ん? あ、ファル子!」
声をかけてきたのはファル子こと、スマートファルコン。ウマドルなるものを目指す、ダート専門のウマ娘である。
「実は、電池とニッパーを探してるんだ。ファル子はどこにあるか知ってる?」
「電池? ニッパー?」
疑問符を浮かべるスマートファルコンにターボが事情を説明をすると、彼女は得心がいったようで、
「成程ねぇ。ミニ四駆かぁ。それで電池とニッパーを……。うーん、電池なら私が持ってるのあげようか?」
「ホントか!?」
予期せぬところから救いの手が差し伸べられた。
「うん、ウマドル活動の為の機材によく使うからストックがあるの。だから少しくらいならあげても大丈夫☆」
キャピッ☆と、ポーズをつけつつ笑顔でスマートファルコンはそうターボに返した。
一度栗東寮のスマートファルコンの部屋まで二人で行き(ターボは美浦寮所属なので珍しがってきょろきょろしていた)、ターボは無事に単三乾電池を手に入れた。
その際、予備も含めてという事で四本も電池を貰い、元気にお礼を言うのも忘れなかった。
そんなターボは現在、スマートファルコンと別れ、美術室に向かっていた。
スマートファルコン曰く、
「ニッパーなら美術室にあるんじゃないかな? 確か授業で見た事がある様な……?」
とのこと。
その言葉に一縷の望みをかけのだった。
実はターボは芸術の選択科目では書道(他は美術。音楽は必須科目)を選択していたので、美術室には入学したてのガイダンス以降は行った事がない。なのでそもそも選択肢に入る事すらなかったので、とても助かる意見であった。
数分後、校舎のあまり行き慣れない区域を歩き、美術室へたどり着く。
傍にある廊下には、レースのものに比べれば圧倒的に少ないが、いくつかのトロフィーや賞状、生徒や教師が描いたと思しき絵などが飾られていた。
それらを流し見しつつ、美術室に入る。
中は閑散としており、少々寂しい雰囲気を漂わせていた。
授業後もこういった特別教室は開放されており、ウマ娘達のレースに向けてのメンタル調整や息抜きなどの為に利用されている。
さてニッパーはどこだと視線を漂わせていると、見知った姿が視界に入った。
「あ、ライス!」
「……ターボちゃん? ここに来るなんて珍しいね?」
見つけたのはライスシャワーだ。
「捜し物をしてるんだ! ライスこそ何を描いてるんだ?」
「なな、なんでもないよ!?」
恥ずかしいのか、慌てて今まで描いてたものを隠すライスシャワー。
「ねーねー、見せて見せてー?」
「だ、駄目だよぅ〜」
ライスシャワーの必至の抵抗により、描きかけの絵を見ることを阻まれたターボは仕方なく諦めた。
「む~」
「完成したら! 完成したら、ね? そ、それより捜し物があるんだよね!?」
「あ、そうだった! なあなあライスぅ、ここにニッパーってある?」
「ニッパー? えっと、それなら工具箱に入ってるかも?」
そう言って工具の収納スペースまで歩くライスシャワーと、それについていくツインターボ。
暫く工具箱を漁り、
「あ、ほら、あったよニッパー」
「おお! ありがとうライス! やっと見つけたぞ!!」
「ターボちゃん、しー!」
わーい! わーい! と喜ぶが、ライスにたしなめられて反省するターボであった。それでも喜色満面の笑みを崩さないターボに、
「そういえば、なんでニッパーが欲しかったの?」
「それはな……、ミニ四駆を作る為なんだ!」
「…………、ミニ四駆???」
ターボの予想外な返答に、この日、ライスは初めて無意識に宇宙猫の真似をしてしまった。
別にシリアスでもなんでもないので、こうやってダラダラ書いていくのでご容赦を。
なお、ファル子はミニ四駆についてなんとなく知っていて、ライスは存在すら知らない感じかなと。
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つくってはしろ
「たっだいま~!」
「おー、デジャブデジャブ。お帰りターボ。例のブツは手に入りましたかな?」
「もちろん!」
丁度帰り支度までを終えたナイスネイチャは、この光景、さっきもあったなと思いつつターボを迎え入れた。
ターボの様子を見るに、首尾良く必要なものは揃えられたらしい。
「んじゃ、早速作る?」
「うん!」
元気良くターボが返事をする、だがそこに声がかかった。
「なになに? 何の話?」
「おや? ターボさん、どうされたんです?」
「マチタン! イクノ!」
更衣スペースから出てきたのはカノープスの残りの二人、マチカネタンホイザとイクノディクタスだ。
先程までネイチャと一緒にトレーニングしていた二人だ。
ネイチャが経緯を語るとやはり珍しいのか、興味津々といった様子。
その最中にもターボは既に制作を開始していた。基本的にはこちらは見守るスタイルで、明らかに間違ってそう、危なそうだったりしたら声をかけるだけである。
箱を開けると、まず目に入るのはボディが付いてる枠の部品だ。
やはり一番目立つパーツであり、マシンの顔だ。それをターボはパチリパチリと借りてきたニッパーで切り取っていく。
「おー、案外ちゃんと切れてるじゃん」
「ふむ、切り終えたら次はシールですか。これがシャーシ……」
「カッコよくできたらいいね〜、ターボ」
「ムッフー、まかせろ!」
イクノが説明書を見つつパーツの確認をし、マチタンは口を出さないみたいで完全に見守り態勢だ。
「あっ、ローラー忘れてた。ドライバーあったよね?」
「私取ってくるよ」
席を立ち、ドライバーを取りに行くマチタン。
ニッパーとは違い、ドライバーは色々と使う機会もある為、チーム小屋に常備されているのだ。
「ほい」
「あんがと。ほらターボ、ボディにもローラー付けろってさ」
「うん、そこに置いてて……、あっ!」
ドライバーに少し気を取られたせいだろうか、ビスやワッシャーなどが入った袋を開けようとして力を入れすぎ、中身が飛び出してしまった。
「わっ!? ちょ、ターボ!」
「ごめーん、ネイチャ〜」
「や、怒ってないから。そんな泣きそうな顔しない」
「ターボさん、私達も探しますから」
「このちっちゃい輪っかも部品?」
こうして、四人で散らばった部品を探したり、
「…………」
「ターボ、そ~っとだよ、そ~っと」
「見てるだけでドキドキしますな〜」
「……やった! 出来た!!」
『おおおお!』
シール貼りに緊張しながら挑んだり、
「……あ、それビスのギザギザのとこまでついてんじゃん。貸して、拭いてあげるから」
「……これ、ギアにもつけるんですね」
「ハッ!? これをつけたらお肌スベスベ?」
「ターボ、それは違うと思うなマチタン」
グリス一つに変なことを考えたり、
「成程、ギアとシャフトの組み合わせでこうも見事に。単純ながらも奥が深い」
「イクノ〜、そろそろ返して〜」
「もしかして興味津々?」
「ぽいねー。眼鏡光ってるよ」
ミニ四駆の仕組みに感銘を受けたりしながら制作は進み。
そして――、
「っ〜〜、出来たーー!!」
ついに、ツインターボお手製、マグナムセイバーが完成した。
「やったじゃんターボ」
「おめでとうございます、ターボさん」
「おー、カッコいいカッコいい」
ターボの掲げた手に収まるミニ四駆。漸くの完成だった。
「よーし、走らせるぞ!」
という訳で、走らせる為に早速近くの校舎の廊下へと移動。
移動先の廊下は、普段彼女達が自分の脚で走るコースと比べれば短いが、建物として考えれば結構な長さであり、ミニ四駆を走らせるには十分な長さを誇っていた。
人影は自分達以外にはない。プレハブ小屋から寮に帰るだけなら直接外を歩いていったほうが早く、天気の悪い日でもなければ利用しないからだ。
廊下の端、スタート位置にはマシンを持ったターボとそれを見守るネイチャ、そこそこ距離のある廊下の真ん中辺りにイクノとマチタンがマシンをキャッチする為に控えている。
「じゃあ、そろそろ行くよ」
スタートの合図係でもあるネイチャが構えを取り、ターボがマシンのスイッチを入れる。
シャアア、と唸りを上げて電力の通ったモーターが動き出す。それがギアとシャフトを通じてタイヤを回転させる。
ターボがしゃがみ、スタートの構えを取ると、マシンがゲートに入り今か今かと待つウマ娘の様子とダブって見えて不思議な感じがする。
ターボの様子はというとワクワクで堪らないのか、耳と尻尾がパタパタ揺らしながら笑みを浮かべていた。
「ようい……、スタート!」
手を振り上げると同時、手から離れたマシンが勢いよく飛び出した。
「いっけー! マグナム!」
その後をターボが追いかける。
その後を更に追いかけつつ、ミニ四駆が走っているところを眺めるネイチャ。おもちゃにしては中々速いなとは思いつつも、でもウマ娘ほどではないなとも感じる。
ウマ娘の半分もないくらいの速度であろうか? 確かに純粋なヒトでは追いつくのは難しい速度ではあるが、ウマ娘にとっては流して走っても追いつくくらいでしかない。
しかし、それはまっすぐ走れていた場合の話である。
「わわっ、マグナム!?」
暫く走っていたかと思うと、徐々にコースを外れていき、壁の方に寄っていってしまう。ローラーがあるおかげだろうか。激突してクラッシュする事はなかったものの、弾かれるように向きを変え反対側へ。
「どこに行くんだー!?」
ターボと一緒に確保しようとするも、あっちに行ったりこっちに行ったりと中々に忙しい。何が原因かは分からないが、動きが不規則であり、小さい上に中々にすばしっこくもあって、捕まえるのが容易ではない。
……最高速度では勝ってるけど、こっちが加速する前に方向変えてどっかに行くから面倒っ!
縦の長さは兎も角、横幅が加速するには全然足りていない。
それにマシンを踏んで壊すようなことがあれば、多分ターボが泣く。それだけは避けねばならない。
やりにくさに内心、うにゃー! と叫びつつネイチャも暴走ミニ四駆大追跡に参加した。
「タンホイザさん、私達も」
「うん!」
ゴールで待っていたイクノディクタスとマチカネタンホイザも参戦。マシンを挟んで追い詰める算段だ。
ナイスネイチャから見て右にイクノディクタス、左にマチカネタンホイザだ。
――そして、オチが確定した。
マシンを追いかける事に集中していたターボが頭からイクノの腹に体当たりし女の子が出してはいけない声がイクノの口から出て、マチタンが大分手前で躓いてコケて顔を上げた瞬間にマシンが顔に突っ込んで鼻血が出て叫んで、そこからマシンが幾度か壁などで方向転換したところで、丁度ネイチャの下に来たので片膝をついてマシンをキャッチした。
「――――」
ネイチャは無言でミニ四駆のスイッチを切って立ち上がる。
あまり見たくはないが、仕方ないので恐る恐る顔を上げて目の前の惨状を直視した。
チームメイトが三人重なって倒れる姿に悲哀を感じ、天井を仰ぎ見て、こう呟かざるを得なかった。
「ミニ四駆って、こわぁ……」
外で野放しで走らせればこうもなる一例。(誇張アリ)
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反省会(所要時間15:42)
今、超速GP(ミニ四駆のソシャゲ)で2.5周年記念やってるから気になる人は遊んでみても良いんじゃないかな?(ダイマ)
「えー、トレーニング後のお疲れの中、皆様お集まりいただきありがとうございます。本日これより、カノープスミニ四駆大反省会を始めたいと思いますのでよろしくお願いします。司会進行は私、イクノディクタスが務めさせていただきます。まずは、そうですね。ターボさんなにか言いたそうですね?」
「ターボのマグナム返してよネイチャ〜。ターボ、悪くないもん!」
「昨日のことを忘れたとは言わせないよターボ」
「うぐっ」
昨日の惨劇から丸一日が経った現在。
マグナムセイバーはナイスネイチャのロッカーに、厳重に保管されていた。
言わずもがな、完全に危険物扱いである。
あれから、時間も時間なので解散ということになったが、腫れ物と化したマグナムは哀れ、電池を抜かれ動かないことを確認された上で封印指定をされた。
……残念ながら当然の処置でした。
あの悲劇は繰り返してはならない。乙女の尊厳が破壊されかけたイクノディクタスは重く頷くしかなかった。
「ターボさん、後でちゃんと返しますから、まずはお話をしましょう」
「わーん、イ゛ク゛ノ゛〜〜!」
「あ、鳩尾は駄目です鳩尾は」
今度は声だけでは済まなくなる。ウマ娘同士の接触事故は冗談では済まないのだ。というか昨日のが軽くトラウマになっていた。
乙女の尊厳(真)を失うわけにはいかないイクノディクタスは、抱き着いてきたツインターボをなんとか引き剥がすのであった。
「――おほん。まず、昨日のアレがなぜ起こったかを究明したいのではありますが、その前にそもそもの認識を改める必要があると思います」
「認識?」
と疑問を口にしたのはマチカネタンホイザだ。
「そうですな~。ぶっちゃけ、なにも考えずに外で走らせたら駄目だわミニ四駆」
それに答えるのはナイスネイチャ。その意見はとても正しい。
「ええ、ですのでターボさん。申し訳ありませんが、外で何も対策せずにミニ四駆を走らせるのは原則禁止で」
「ええー!? そんなぁ」
そんなぁ、ではありません。尊厳は大事なんです。
可愛いチームメイトには悪いが、その決意は硬いイクノディクタスであった。
「仕方ないよターボ。私も痛いのはやだし。うーん、あっ、ほら、どこかのコースで走らせればいいんじゃない?」
「コース! そうか、そうだな!」
外でマシンを走らせるのを禁止されてしょんぼりしていたターボであったが、マチタンの言葉に元気を取り戻したようだ。
「んじゃ共通認識は取れたところで、今度は原因を探らないとね」
ネイチャの言うとおり、今度はどうしてああなったかを探る時間だ。
ネイチャに頼んでマシンを取ってきてもらう。
元の箱に仕舞われていたミニ四駆はちゃんと昨日と同じ状態のままであった。
「お〜マグナムぅ」
「はいは〜い、大人しくしようねえ」
マチタンにターボを押さえてもらい、ネイチャと原因究明を開始する。
「廊下の路面状況は考えないものとしましょう。思い返す限り、ミニ四駆の進路を変えるほどの大きさのゴミなどは無かったはずですので」
「そうだね。となるとやっぱりコイツに問題があったってことか……」
イクノディクタスが軽く見た限り、特に不審な点は見当たらない。
廊下の埃でタイヤが少し汚れており、掃除をしなければと思いつつタイヤを弄っていると、
「どうしたのイクノ?」
「……いえ、前輪が緩いような感じがして」
ホイールとシャフトのくっつき具合は問題ないのだが、後輪と比べてブレが僅かに大きいのだ。
更によく見てみる。
するとブレが大きい前輪のシャフトの受け部分のパーツが足りていなかった。
「これは……、
「はとめ?」
ターボが頭上に疑問符を浮かべる傍ら、ネイチャがマシンと一緒に箱に入れていた余りパーツの数を確認する。
「……やっぱり。ほらこれ、金色の奴。一個多いわ」
シャフトとシャーシの受けに付けるべき金属製の部品を二つ見せてくるネイチャ。
本来であれば予備として一つだけ余る筈なのであるが、何度確認しても二つあった。
「そんなのが一つ無いだけであんなことになるの?」
マチタンの疑問はもっともだ。イクノ自身もまさかそんなと思いつつ、更に手の内にあるミニ四駆を調べるが、他にこれといった原因が見つからなかった。
沈黙が部屋を支配する。
……え? 本当にそれだけで? という困惑した想い故であったが。
「……検証、してみますか」
そういう事になった。
はとめを取り付けた後、再び同じ廊下にやってきた。検証するならできるだけ昨日と同じ条件のほうが良いだろうという事だ。
「さあ、今度こそ!」
これまた昨日と同じようにミニ四駆をスタートさせるターボ。
マシンは順調にスタートし、暫く進んだところで逸れる……こともなく、真っ直ぐにイクノ達に向かって走っていた。
……うそぉ、と聞こえなくとも言っているのが分かるネイチャの様子に、イクノは内心激しく同意をする。
「真っ直ぐ、走ってるね」
「そう、ですね」
マチタンにもこちらに向かってくるミニ四駆は見えているようで、どうやらこれはれっきとした現実であるらしい。
「いいぞーマグナム! いっけー!!」
ターボだけが純粋に楽しんでいるのが逆に現実感がないが、しかしやはりそれが真実のようだった。
……あんな小さな部品一つでこうも変わるとは、侮れませんね。
ミニ四駆に畏敬の念を様なものを抱く、イクノディクタスであった。
シャカールきませんでした。でもなんですり抜けでくるんです?サトイモちゃんよ~。
キタちゃん持ってる所為か?
あとなんか感想では言えない言いたい事があれば、活動報告にでも。
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コースデビュー!
ツインターボはその日、ナイスネイチャと共に商店街の模型店に来ていた。
商店街のメインストリートから横にそれた所にあり、しかしそのお陰か、そこそこの坪面積と二階建てという個人店としては住居を兼ねているとしても、中々大きな店舗を構えていた。
「レース~レース~、コース~コース~」
そんな模型店に、ターボは上機嫌に入っていく。朝から楽しみで仕方がなかったのだ。
反省会から数日の間、やっぱりミニ四駆はコースで走らせるべきでは? となったので時間が空いた今日訪れたのである。
「元気ねぇターボ。まあ、あんまり騒ぎ過ぎて迷惑かけないようにね」
「わかってるよー」
軽口を交えつつ入店。
ざっくり言うと、一階は販売フロア。所狭しと壁や棚に模型の箱が積まれており、ターボが購入したマグナムセイバーもこの中に埋もれるようにしてあった一品である。
まずは入り口近くのレジに行き、代金を払い上階のコース使用許可を貰う。
それから壁際に設置されてる狭い階段を上ると、作業台として置かれてる長机とその向こうにある大小二つのミニ四駆コースが目に飛び込んできた。
階段を上がる時から気付いていたが、ミニ四駆の走行音が響いていて既に幾人か(子供が多いが大人も数人いた)がコースに自分の愛車を走らせて遊んでいるところだった。
早速走らせようと、ターボもマシンをもってスタート地点に向かおうとするが、
「ターボ、そっちは早くない? こっちの小さいコースの方が良いんじゃない?」
と、ネイチャが後ろから声をかけた。
「えーでもターボ、大きいコースで走らせたい」
走らせたいって言ってもねえ、とネイチャがコース上を走ったり、他の客の手元にあるミニ四駆を見つつぼやいた。
彼らの持つマシンは、明らかに今の自分達からは考えられない程の改造が施されているのが見て取れる。
対してこちらはドノーマルなマグナムセイバーだ。長く複雑で起伏もある大コースで走らせても、コースアウトして吹っ飛ぶか、周回遅れで他のマシンの邪魔になるのが目に見えていた。
ネイチャからそういった正論を聞かされてシュン、と耳と尻尾が垂れ下がってしまうターボ。
ターボ自身、学力自体は褒められたものではないが、物分かりが悪いという訳でもない。
なので分かった、とネイチャに返事をしようとしたところで、
「走っても大丈夫だよ」
と声がかけられた。
「へ?」
振り向くと声の主は、今の今までマシンを走らせていた少年のうちの一人だ。
「僕ら、今からちょっとマシンの調整するからさ。その間ならこっちのコースで好きに走らせていいよ」
「ホントか!?」
少年の言葉に一気に元気になるターボ。
少年達のグループの他にも客はいたが、見渡してみると誰も異論が無いようだった。
「ありがとう!」
ニカッと笑顔でお礼を言い、スタート地点に向かうターボ。
スイッチを入れ、マシンを構えて、
「レディ……ゴー!」
マシンを走らせた。
と思ったら、
「ああああっ!?」
五秒も保たずに吹き飛んで盛大にコースアウトしてしまった。
「ぐぬぬぅ、もう一度!」
と、勇んでみたもののやはり駄目。ネイチャが先ほど言った通り、コーナーを曲がりきれなかったり、起伏のある場所で飛び出したりと、どうしても一周すらできずにコースアウトばかりしてしまう。
「ぬがー! どうして〜〜!」
終いには頭を抱えて叫ぶほど。
「う~ん、やっぱりこうなったか」
「ネイチャ?」
「あーホラホラ、そろそろ向こうに移るよ」
「あ、ネイチャ、押さないでよ~」
そろそろ周りが走りたそうにしていたのを察したネイチャに背中を押され、小コースの方に移動させられるターボであった。
――なお、ターボが無謀な挑戦をしている間、彼女は気付いていなかったが、他の客達がその姿を見て生暖かい目をしつつ、うんうん頷いていたことを記しておく。
ちょっと別作も更新してたので間が開いたので今回はここまで。後編に続く。
エタってるのでよければそこそこ書いてるのがあるんだぜ(吐血)
あと、量産型リコってドラマに出てくる模型店に行きたいです。
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ネイチャ、ミニ四駆買うってよ
や、ちゃうんすよ。こう暑いとやる気なんて絶不調になるやないですか。それにソシャゲやったりプラモ作ったり動画見たり二次創作読んだりしてたら、書いてる時間なんて無いじゃないっすか。勘弁してもろて……。
あ、恐竜の映画も見ました。
初心者コースに移り、暫く。
「う~~ん」
「どうしたの、ターボ?」
コースを順調に走るマグナムセイバーを見ていたターボが、突然唸りだした。
「ネイチャ……、もっとマグナムを速くしたい」
その言葉を聞いた瞬間、店内の雰囲気が変わったのをネイチャは知覚した。
自分達以外の客達が手を止め、マシンを走らせるのを止め、全力でこちらの様子を窺ってるのを感じ取る。
……え? なにこれ、なんで皆こっち気にしてんの!?
例えば、レース中の雰囲気に似ていると言えるだろうか。
デバフ系のスキルなんて言ってしまえばガンの飛ばし合いの結果なので、相手を意識するという意味では一緒である。
特にネイチャはそういった戦法を多用するので、相手の視線というものには敏感であった。対して、ターボはといえば大逃げスタイルなので駆け引きには疎く、周りの雰囲気には気づいていないようだが。
全ての意識がターボの次の発言を待っていた。ターボの発言一つで今後の展開が決まるような、そんな雰囲気が。
とはいえだからと言ってどうする事も出来なので、ネイチャは若干この空気に気圧されつつも答えた。
「……まあ、私がどうこう言う問題じゃないし、お小遣いの範囲でなら好きにして良いんじゃない?」
実のところ、ネイチャが今回付き添った理由は暇だったのもあるが、ターボのお目付け役というのが主な理由だったりする。
お店なんかに行ったらほぼ確実に新しいミニ四駆か、改造パーツを買うだろうというのが目に見えていたからである。
二人とも、パッとしない成績(ネイチャ談)ではあるが既にデビューも済ませ、そこそこ賞金も稼いでいるのだ。資金力で言えばそんじょそこらの子供(もしくは大人も含め)よりかは、資金力があるのだ。気をつけておかないと買いすぎ、という事態になりかねない。そうならない為の付き添いである。
そんな訳で二人連れだって一階へ、改造パーツの物色をしようと階段を降りようとすると、
「おねーちゃんたち、ミニ四駆の改造ってしたことないの?」
話しかけてきたのは先程上級者コースを譲ってくれた少年とは違う、白い帽子を被った少年だ。
「そうだぞ! でもターボのマグナム、もっと速くしてすぐにそっちのコースでもぶっちぎってやるんだ!」
根拠の無いといえば根拠の無い台詞であるが、どこか期待ないし楽しませてくれそうな自信が感じられる。
……いやあ、ターボのこういうところは感心するわ。
とても自分には真似できないと、心の中で肩をすくめるネイチャである。
「……楽しみにしてるよ。それはそれとして、まだなんにもパーツも工具も持ってないんだね?」
「うん、始めたばっかりだからなーんにも持ってないぞ」
「ふーん、それじゃ、工具は兎も角、いらないパーツあげよっか?」
「ホントか!?」
なんとなんとな提案である。
先の意味においても有意義ではあるが、流石に小学生から貰うのは年上として気が引ける。
「本当に良いの? タダでもらうのは悪いよ」
「構わないよ。使わないパーツだし、持っててもしょうがないし」
成程、不用品処理じゃな? と反射的に思った自分は汚れちゃったなあと、心の中だけでセルフツッコミをしてしまったネイチャのテンションは少し下がった。
「お、そういう事なら俺のもあげようか?」
「あ、僕も僕も」
と、ネイチャたちの会話を聞いていた他の客達も次々に声を上げた。
「!? ありがとうっ!!」
ターボが笑顔でそう言うと、声を上げた者たちが全員顔を緩ませた。
これだから男って奴は……、と反射的に思ったネイチャは(以下略)。
「そういえば、ネイチャさんはミニ四駆はやらないのかい?」
ふと、我らがトレーナーより年上らしき男性にそんな事を問われた。
「え、いや、私は……」
「そーだよ、お姉ちゃんもやろうよ! そっちのねーちゃんも一人だけで走らせたって楽しくないもんな!」
「おお、そうだなネイチャ! ネイチャも一緒にやろうよ!」
「それは良い。やはりこういうのはお互いに切磋琢磨させてこそだと思うよ」
なんだか断りにくい雰囲気になってきたぞ、と思うネイチャであったが、結局流されるままにミニ四駆を始める事になってしまった。
そんなこんなで。
「バンガードソニックプレミアム。『爆走兄弟レッツ&ゴー』に登場する主人公兄弟の兄、星馬烈の二代目ソニック、のシャーシを現代版にしたものだ」
「どうした急に」
「ボディの特徴は取り外し可能なフロントカウルとリアの大型ウィング。シャーシはスーパーⅡシャーシ。現行のシャーシの中では癖のない平均的な性能といった評価」
「そうだな。更に言うとホイールベースが短めだから若干小回りが利くと言ったところかな」
「な、成程ぉ。参考になりますぅ……」
……いきなり玄人による解説が始まって引き気味になったけど、これは許されると思うんだよねアタシ。
流されるままにミニ四駆を買ったら解説されたが、前提となる知識すらない状態では何を言われても理解ができなかったのである。
「ネイチャのマシンのほうが凄いのか!? ずーるーいー!」
「凄くないずるくない」
「実際、マシン形状でそこまで違いはないよ。基本的に好きな見た目で選べば良いよ」
周りの客達が代わる代わる色々教えてくれる。きっと有り難い話なんだろう。
……ただ圧、圧をもう少し抑えてもらってだねぇ。人を自分が浸かってる沼に落としたいのは分かるけど、がっつき過ぎは良くないと思うんですよ。
「おねーちゃん達が困ってるじゃん。なんなら僕が教えようか?」
と、ここで救いの声が。
「あー、お願いしていい?」
これ幸いとお願いした。
名乗りをあげた少年が、
「今日一日でセッティングを細かく煮詰めるのは、知識もない状態じゃ流石に無理なので、分かりやすく基本的な改造パーツの交換と追加で単純にマシン性能を底上げしましょう」
と言って白い帽子の少年を先生にして始まったミニ四駆講座。
年若くはあるが、どうやらこの中でも説明を任せられるくらいには実力があるようだ。
「まずはミニ四駆の心臓部、モーターとギアを変えます。ぶっちゃけ付属のノーマルモーターなんて、低速コースか特殊なレギュでもない限り使いません」
言われたように順番にパーツの交換と追加を行っていくと、あれよあれよという間にマシンの見た目が変わってくる。
基礎的な説明ではあるだろうが、どこそこのパーツを弄る度に何がどう変わったかを教えてくれるので、何故変える必要があるのかというのが良く分かる。
ネイチャは兎も角、ターボですら飽きずにふんふんと頷きながら手を動かしているので、相当に説明が上手である。
「君、教えるの上手だよね。学校の先生とか、やる気があるならウマ娘のトレーナーとか向いてるんじゃない?」
「いやあ、どうですかね。考えた事もなかったなあ」
「ターボもそう思うぞ!」
「あはは……、ありがとうございます」
礼儀もちゃんとしてるし、割といけるのでは? と思うネイチャであった。
白い帽子の少年のイメージはSFC用ソフト「シャイニングスコーピオン」の主人公。スーパーグレードジャパンカップの覇者やぞ。役不足な訳がなかった。あとニシノフラワーと同年齢を想定。
没シーン
「バンガードソニック。『爆走兄弟レッツ&ゴー』に登場する主人公兄弟の兄、星馬烈の二代目ソニックだ」
「どうした急に」
「コーナリングを重視する烈のソニックセイバーのデータを参考にセイバーの生みの親、土屋博士がVプロジェクトにおいて制作した。漫画・アニメにおいて当時敵対関係であったJのプロトセイバーJBに、火口にマグナムセイバーと共に落とされ焼失したソニックセイバーに代わって烈に譲渡された。しかしソニックセイバーを失ったショックからミニ四駆を止めようとしていた烈に碌な整備もされずにレースに出場。またもプロトセイバーに吹き飛ばされてコースアウトするも、それでも走ろうとするマシンの姿に兄弟の目が覚め、その場で兄弟マシンであるビクトリーマグナムと共に整備され復活。プロトセイバーをはじめ、他のマシンをごぼう抜きにして兄弟でワンツーフィニッシュを飾る。なお、これは漫画版でありアニメ版においては……」
「いやもう誰も聞いてねえよ」
オタク特有の早口&長文発言は控えましょう。
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世界でたった一台のあなたのミニ四駆
目の前には、改造されたマグナムセイバーとバンガードソニックがある。
それぞれモーター・ギア・ターミナル等の心臓部。シャフト・軸受け、ホイールやタイヤ等の足回り。そしてバンパーやローラー等のコーナリング機構。ブレーキだって付いてる、ドノーマルと比べたらとても実戦的にチューンナップされたマシンがそこにはあった。
「これが、ターボのマグナム……」
「見様見真似だったけど、それなりにはなるんだねぇ」
前者は感動に打ち震え、後者は初めてのことに対する達成感と共に、自分達のマシンを眺めていた。
とはいえ、どちらのマシンも最低限の装備を付けただけであり、漸くレースシーンにおけるスタートラインについたばかりのひよっこミニ四駆である。
しかしだ。たとえそうだとしても手伝ってもらったとはいえ、初めてのミニ四駆、初めての改造だ。それぞれ思う事はあっても、嬉しいに決まっていた。
「これで貴女達ウマ娘で言えばトレセン学園に入学できた、といったところですね。これからどんな夢を持つ、どんな活躍をするかは貴女達次第です」
白い帽子の少年が言う。このマシン達はここからなのだと。
「うん! ありがとうな! こんなに手伝ってくれて、ターボ嬉しい!!」
「ネイチャさんもお礼を言っておかないとね。他の皆もありがとうね」
少年他一同、いやいやそんな、これくらいどうってことないですよ的な雰囲気をもって、その感謝に返答した。
「それじゃ早速走らせてみましょう。さっきからウズウズしてますもんね?」
「おー!」
ターボとネイチャは初心者コースのスタートラインの両サイドにそれぞれしゃがみ、マシンを構える。
三レーンコースなので勝負は三周。リタイヤせずに戻ってきた方が勝利の単純なルール。
「ネイチャ、負けても知らないからね」
「ターボこそ、あとで泣いても知らないよ」
ミニ四駆に対して最初から興味があろうがなかろうが、そこはウマ娘。勝負事、それにレースとなれば二人共ボルテージが上がる事は必然である。
それに合わせていつの間にか、店内にいたミニ四レーサー達もこれから始まる二人のレースの観客となって、コースの外で集まっていた。
「それじゃ行きますよ」
スタート係の白い帽子の少年が声をかける。
「レディ……」
スタート態勢に入った瞬間、それまで軽口を言い合っていたウマ娘達の雰囲気が一変した。
眼光は鋭くなり、少年の合図のタイミングを窺うその姿は、流石のトゥインクルシリーズを現役で走るウマ娘のそれだ。
少年を初め、その場にいた人達はまるで自分が出走直前の競バ場にいると錯覚する程だった。
「ゴー!」
合図に遅れて、コンマ数秒でマシンが弾けるようにスタートした。
タイミングはほぼ互角、しかし車重が若干軽いマグナムの方が先に飛び出した。
初心者コースとはいえその全長は市販で売られているオーバルサーキットに比べて長い。最初に若干のストレートの後にすぐカーブが左に90°右に180°と続き、若干の猶予の後に右の90°ロングカーブ、スピードが乗ったところでレーンチェンジ、更にそこから膨らむように左90°カーブ、間にストレートを一枚ずつ挟み右90°カーブが二回、そして連続ウェーブが続き最終コーナーの右90°、ホームストレート中に一回スロープセクションを入れて一周となる。
全体としてはクリスマスの靴下のような形になるか。ミニ四駆を始めたばかりの人がレースを楽しむには程良い難易度である。
そんなコースで走り始めた二台のマシンはというと。
「いっけーマグナム!」
「負けるなソニック!」
熾烈なデッドヒートを繰り広げていた。
軽さからくるスピードと加速力で勝るマグナム。
安定性とコーナーでの減速が少ないソニック。
まるで漫画やアニメで語られたような性能差を再現した走りの二台。
抜きつ抜かれつ、二台は走る。観客は歓声に沸き、二人のウマ娘は手に汗握る。
しかしそれも終わりが、決着が訪れる。
ほぼ同じタイミングで最終コーナーを曲がる二台。バックストレートで加速し、スロープを超える時にそれは起こった。
「ああ!?」
僅かに先を行っていたマグナムが空中でバランスを崩し、コースの壁に引っかかってしまったのだ。
もとよりその予兆はあったのだ。スロープを跳び越える度、なんとかコースに復帰している状態だったのでいつコースアウトしてもおかしくなかった。それが最後に起きてしまった。
その隙にナイスネイチャのバンガードソニックが、マグナムと比べれば安定した挙動でスロープを通過し着地。マグナムをしり目にゴールラインを超えた。
「っし!」
それを見てネイチャは小さくガッツポーズ。
「うわあああん! まーけーたー!」
対してターボは頭を抱えて盛大に叫んでしまった。無理もない話である。
「お疲れ様です。ターボさんは残念でしたね」
「う~~、悔しい! 悔しい! なにが悪かったのかな……」
しょんぼりとした様子で耳を垂れされるターボを見て、白帽子の少年は良い兆候だと頷く。
「ターボさん、やっぱり負けっぱなしは嫌です?」
「もちろん! 勝つまでやるもん!」
「えぇ~」
「それじゃマシンの見直しをしましょうか。ブレーキの利きが弱すぎたかな? それとも……」
「おっと、スイッチ入っちゃってますなこれは」
「やるぞ~」
それから、時間になるまでターボとネイチャは目いっぱいミニ四駆を楽しんだ。
競争ウマ娘たる彼女らにとって、気軽に熱中できて何事にも縛られないレース。勿論何かを賭けたほうが楽しめるというウマ娘もいるがそれはそれ。良い息抜きになった。
「ターボ、楽しかった?」
「うん! またレースしたいし、走らせるだけでも楽しい!」
「それはなにより」
そうして店を出ようとしたところで、最後に白帽子の少年が二人に声をかけた。
「ミニ四駆、出来れば大事にしてくださいね。たとえ飽きたとしても、手放すことになったとしても、世界で最初の貴女達のミニ四駆なので」
その言葉に、二人のウマ娘は顔を見合わせた後、少年に向かって笑顔で答えたのであった。
ハイ、自分的にこの小説書き始める時にやりたかったノルマは回収ですわ。
なんのことか分かるかな?ヒント(の半分)はブロワイエ。
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秘密基地って何歳になっても心惹かれるよね、というお話
その代わりいつもよりちょっとだけ長め。
あとお気に入り100件突破ありがとうございます。
ある日のこと。
「おや? ミニ四駆ですかターボさん」
カノープスの部屋でマグナムを取り出してメンテをしていたターボは、カノープスのチームトレーナーである南坂トレーナーに声をかけられた。
声をかけられたターボは彼へ振り返りつつ、そういえば何度かこの部屋でミニ四駆を弄ったことはあるが、トレーナーがいないタイミングばかりだったなと思い返す。
「そうだよ! カッコいいでしょー」
「ええ、そうですね」
穏やかな笑顔で言う南坂はしかし、マシンから目を逸らさなかった。
それに気付いたターボは端的に問いかけた。
「興味あるの?」
「……ああいや、そうですね。実は私も子供の頃にミニ四駆で遊んでた時期がありまして、気になったのですよ」
「本当か!? トレーナーのマシン見せて見せて!」
「いえ、流石に今はもう持ってないですね。実家の押し入れにまだあったかどうか」
どこか懐かしむように彼は答えた。
「そうなのか、残念」
「申し訳ありません。……それでなんですが、少し見せてもらっても?」
「いいよー」
南坂にマシンを手渡す。
元々トレーニングを任せている相手だ。マシンを預ける程には信用していた。
受け取った彼は、色々な角度から見たり弄ったりしながら、時々感嘆の声を上げていた。
「今のミニ四駆は凄いですね。ターボさんがこれを全部一人で?」
「そうだよ。お店に来てた人達に教えてもらいながら作ったんだ!」
楽しそうに語るターボの返答に南坂は良かったですねと、と頷いた。
「ありがとうございますターボさん、とても参考になりました」
「どう致しまして!」
なんでもない日々の中、こんな一幕があった。
この取るに足らない会話が、後に大きな事態になるとはターボは勿論、聡明な南坂にも分かりはしなかった。
それからまた土日が二回程巡った後のある日、カノープスの四人は放課後の空き時間に、初めてミニ四駆を走らせた廊下でマシンを競わせていた。
初回の反省点を踏まえ、マシンには簡単な仕掛けをしてある。
シャーシの底面に短くしたストローをテープで貼り付け、そこに長い紐を通す。
そしてその紐の両端をスタートとゴールに固定すれば完成だ。これにより多少の揺れはあるものの、概ね真っ直ぐにマシンが走ることができる。
更にはゴール地点にはそれぞれのぱかプチを用意。マシンを受け止めるクッションにした完璧な策だ。
「こうして、乙女の尊厳は守られたのです」
「私も痛い思いをせずにすむのですっ!」
「あ、あはは……」
因みに、イクノディクタス考案である。鉄の女ならぬ、ゲ○の女なんて呼ばれたくはないのであった。(当たり前)
「しかしイクノが選んだのがアイアンビークとはねえ。名前的にらしいちゃらしいけど」
ネイチャの言葉通り、カノープス三台目のミニ四駆は、イクノディクタスのアイアンビークだ。
鉄イメージした色とV字型のノーズ。そして二つの小型リアウイングが特徴のマシンである。
改造の方向性としては兎に角頑丈に、耐久性を上げたミニ四駆だ。
内部パーツは全て強化パーツに交換、フロント・リアバンパー共にカーボン製の強化プレートを取り付けてある。
「無事之名車也、ですよ」
「上手い事言うねえ」
眼鏡をクイっと上げながら、イクノディクタスは語るのであった。
その横で二人の会話を聞きつつマシンを走らせていたターボが、ゴールしたマグナムセイバーのスイッチを切りつつマチカネタンホイザに問いかけた。
「……なあなあ、マチタンはミニ四駆買わないのか? 一緒に走らせたいぞ!」
それに対してマチタンは、
「う~ん、私は良いかなー。あんまり速いのは扱いきれないのです」
「あー、うん。そっかー」
「それは納得するしかないわ」
「……コメントは控えさせてください」
皆、初回のあの大惨事を思い出したのか、何とも言えない雰囲気になってしまった。
暫く無言が続くが、そんな空気を吹き飛ばそうと、少々強引にネイチャが話題を変える。
「そ、そういえばさ、
「おお、トレセンコースだな! 面白そう!!」
「ほほう、それは興味深いですね」
「良いね~。でもあれを作るのは大変そうだよ? どうしよっか?」
う~ん、と四人で悩んでいたら、
「ふふふ、お困りかな? お嬢さん方」
唐突に、近くにある昇降口から声をかけられた。
振り向くとそこには、キザったくポーズを取りながら扉にもたれかかっている男性と、その傍に立つもう一人の男性がいた。
「え、あの、ちょっと引くんですけど沖野トレーナー?」
「ゴフッ!」
女子高生のドン引きな態度は成人男性からしたらクリティカルなんだよ! と崩れ落ちながら言うのは、特徴的な髪型といつも咥えているキャンディーと将来有望なウマ娘がいるとすぐに
……沖野さんて改めて考えなくても不審者でアウトだよねー、と思いながら引き続きネイチャが問うた。
「トレーナーも揃ってどうしたんです? 今日はカノープスは皆トレーニングは休みだし……」
「ええ、トレーニングの事での用ではないのですよネイチャさん」
もう一人の男性、南坂が言うには別件という事らしいがどういうことかと聞くと。
「皆さんの為、というかこちらが悪ノリした所為といいますか。取り敢えず見て貰いたいものがあるんですよ」
とのことで、カノープスはトレーナーを含め、後片付けをしてからその場を後にするのだった。
なお、沖野はいつの間にか復活して、彼女らの後をしょんぼりしながらついていった。
辿り着いた先は、チーム小屋のあるエリアより更に奥、普段は人気もなくトレーニングですら使わないような、しかしある程度は平地の広がるエリアだった。
元々はトレセン学園が建設された時の資材置き場としてや、掘り返した土の置き場所等に使われていた場所だ。
管理用に半開放型とも言える倉庫のような小屋があるくらいで、今まで放置されていたのだが、その様子は一変していた。
「……へ?」
「おお、凄〜い!」
「これはまた見事な」
「コースだああああああ!!」
そんな寂れた筈の場所にあったのは、まさにサーキットと呼ぶに相応しいミニ四駆コースだ。
商店街の模型店のコースよりも巨大で、木製だったりプラスチック製だったりとツギハギな印象がある。
しかし、よく見るとどうやら本格的な道具等を用いたようで、出来そのものはとてもしっかりしたものだった。
各セクションもバラエティに富んでおり、公式大会どころかゲームでしか見ないようなものまである。
「あの、これ、どうやって……?」
とんでもないものを見せつけられた衝撃から、辛うじて復活したネイチャが声を絞り出すように問うた。
なお、残りの三人は興味津々でコースを見て回っていた。
「おう、そりゃ儂が知り合いの蹄鉄職人に頼んでな、そこからの伝手で要らなくなった道具やら何やらを譲ってもらった訳よ。あとはここの若え奴らが設計やら作製やらを、な」
そう言って倉庫小屋から出てきたのは、オグリキャップのトレーナーをしていた六平トレーナーだ。
還暦を迎えて久しい彼は既に現役トレーナーを退き、現在はトレーナーのご意見番みたいなことをしているらしい。
「いやいやいや、どう見てもやりすぎでは? あと許可とか……」
「はっは、遊びは全力でするから楽しいんじゃよ」
「ア、ハイ」
……確信犯だわこれ。言質とったら共犯にされる奴だ。
これ以上は触れてはいけないと悟るナイスネイチャ。これが大人か、と思いつつも沈黙することを選択するのだった。
「けどまたなんでこんなことを?」
「ああ、南坂が沖野にツインターボがミニ四駆で遊んでるというのをトレーナーの集まりがあったときに漏らしての。それを聞いた周りが自分もやってたと話が盛り上がった結果じゃな」
懐かしさと悪ノリと行動力の結果らしい。その結果に呆れるばかりなネイチャであった。
「お〜いネイチャー! 話してないで一緒に走らせようよ!」
ターボが大きく手を振りながらネイチャを呼んでいる。その手には勿論マグナムが。
「コースの出来をチェックするためには走らせたが、本番どころか練習走行すらまだだからの。初のお客さんじゃ。楽しみな」
「……はい! ターボ今行くー」
スタート地点に行けば既にターボとイクノの準備は整っているようで、あとはネイチャだけの様子。
それならとネイチャが準備すればスタート五秒前。
「それじゃいくよ〜。……レディ、ゴー!」
マチタンの合図で三台のマシンが走り出した。
元ネタはつべで見たどこかの模型店のミニ四駆コース。
流石に三レーンは殆ど無いけど、一本レーンなら探せばあるらしいよ。
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大人気無い大人「速さとは知識である」
めっちゃありがたくはあるんだけどホントになんでいきなり増えた???
それはそれとして、誤字報告、お気に入り、評価、感想、重ねて感謝いたします。
ひとしきり皆が手作りコースを楽しんだ後のこと。
この秘密基地内には現在、三人の大人がいる。南坂・沖野・六平の三人である。
そして、ターボ達もマシンを持っているのは三人いる。
であるならば、
「勝負だぁ!」
ウマ娘とトレーナーのミニ四駆対決! と、ターボが騒ぐのはある意味当然と言えば当然であった。
しかしすぐさま沖野が止めに入った。
「待て待て、俺たちだってまだ殆ど走らせてないんだぞ。勝負以前に完走するかも怪しいだからお互い練習走行しようぜ」
「えー?」
「えー、じゃないの。それに俺達が勝ったら練習してなかったからだ、なんて難癖つけられたくないしな?」
「なんだとー!? 絶対負けないからなー!」
「……ターボ、チョロすぎるよそれは」
マチタンの言葉にその場にいたターボ以外の全員が内心、同意するのであった。
そんな訳で
制限時間は一時間、それぞれ十五分毎にコースを使用する形だ。勿論、相手チームの走行中でも改造や調整自体は自由。
他のチームの様子を見るのも基本的に自由だが、妨害行為は禁止。
本番には購買で買ってきた電池を使用。モーターはチューン系のみ。公式の大会という事でもないのでその他大雑把なルールは常識の範囲内で、と相成った。
「あとは清く正しく楽しくレースをする事、以上!」
『はーい!』
カノープスの元気の良い返事を合図に練習走行は開始された。
順番はじゃんけんの結果、トレーナーチームが先にコースを使うことになった。
そうして取り出されたそれぞれのマシンを見て真っ先にターボが感想を口に出す。
「おおー、それがトレーナー達のマシン!? あ! 人形が乗ってる! 髭まであってちょっと可愛いな!」
「渋いと言ってほしいんだがなあ」
ターボの感想が飛び出たのは六平のマッハビュレットメタリックスペシャルだ。
クラシック、もしくはヴィンテージカーと呼ばれる車がモチーフのミニ四駆である。
それをスケールモデル風の塗装を施してあるのが特徴だ。
「あまりミニ四駆のことは分からんが、勝負にはなるだろ」
なお、ターボに褒められて台詞とは裏腹に、内心ちょっと嬉しいの内緒である。
「……六平トレーナーもそうですが、南坂トレーナーのマシンも私の物と同じシャーシですね」
「ええ、これらは第三次ミニ四駆ブーム以降のマシンでも比較的販売時期が近いですからね」
そう言いながら自分のマシンを見せるのは南坂だ。
マシンはシューティングプラウドスター。第一次ミニ四駆ブームを牽引したダッシュ!四駆郎シリーズの最新作、ハイパーダッシュ!四駆郎に登場するマシンだ。
南坂が元々好きだったシューティングスター系列の最新機種である。
六平と同じくMAシャーシであり、格好良さと高スペックの両方を兼ね備えている。
なんとシャーシの真ん中にモーターがあるミッドシップレイアウトで低重心、安定感が他のシャーシと比べて段違いだ。
「今回ミニ四駆について調べた中で一番好きになったマシンでして。負けるつもりはありませんよ」
「それはこちらもです。改めてよろしくお願いします」
そんな感じで南坂とイクノディクタス語り合っている横では、ネイチャと沖野が会話していた。
「沖野さん、それはなんて名前なんです?」
「おう、コイツはブレイジングマックスつってな。お前やターボのと同じく、アニメの主人公が使ってた王道の主役マシンなんだよ、しかも後継機」
「主人公、主役……」
「そう、しかもボディは当時品! 俺が遊んでたやつを引っ張り出してきたんだぜ。まあ流石にVSシャーシは今のと比べて一段落ちるから、正当進化系のVZに変えてるけどな」
こちらは爆走兄弟レッツ&ゴー!!MAXに登場するマシンである。
沖野の言葉通り、VSシャーシという現代でも通用するポテンシャルから駆動系の強度と拡張性を底上げ、軽さと柔軟性を重視したシャーシだ。
そうして各々愛機の自己紹介が終わったトレーナーチームは、実際にマシンを走らせつつセッティングに入った。
トレーナーチームの走りは、言ってみれば地味と言えるものだった。
特に六平のマッハビュレットがその傾向がある。あまり派手に改造をしてないらしく、グレートアップパーツは少な目な印象を受ける。
「なんか遅いけど大丈夫で?」
「良いのさこれでな」
マチタンの問いに六平は不敵な笑みを浮かべるばかりである。
他の二人のマシンもいくらかは六平のマッハビュレットよりも速いが、だからといって目を瞠る程と言われると、首を傾げたくなる感じだ。
「これならなんとか勝てそうですね」
イクノの発言に、トレーナー達は肩を竦めるばかりであった。
「意味有りげな態度ですな~?」
「さあ、どうでしょう?」
ネイチャが探りを入れるも、はぐらかすばかりである。
幾らか引っ掛かる様子ながらもトレーナー側の最初の十五分が終了。今度はウマ娘側の番である。
トレーナー達とは打って変わって、練習走行の様子は勢い任せといったところだ。
のびのびと楽しみつつも真剣にマシンの調整をする。言ってみれば特に変わったところの無い、ごく普通の練習風景だ。
しかしその裏ではトレーナー達は一切手を休めず、セッティングの見直しをしていた。
そしてトレーナー側の二回目の練習走行。
セッティングが間に合わなかったのだろうか、数分程してからマシンを走らせ始める大人達。
だが、前回とはまるでマシンの様子が変わっていた。
「おおー、さっきより速くなってる!?」
ターボの言う通り、見違える程そのスピードは上がっていた。
特に沖野のブレイジングマックスが途轍もなく速くなっていた。
「え? ちょ、速すぎません?」
「ん? そりゃそうさ。ハイパーダッシュモーター使ってるからな」
「はあ!? ルール違反じゃん!」
「それは本番走行での話だろ? 練習で使っちゃいけないとは決めてないぜ?」
「それは、そうですが……。本番で使えないのでは意味無いのではないですか?」
「そうでも無いんだな~これが。ま、楽しみにしとけって」
それだけ言って沖野はマシンを回収し、セッティングを再開したのであった。
そうしてウマ娘側のコース使用時間を挟み、練習走行が終了。いよいよ本番である。
遅い&長くなりそうでぷつ切り!な今回。すまんな。
実は北原も出したかったけど、流石に増え過ぎか?と思って出さなかった。
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