AI: ソムニウム ファイル the previous Trigger (ボルメテウスさん)
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光を継ぐ物

「それで、なんて言ったの?」

 

 そう言いながら、みずきは現状の状況に怒りを隠せないのか、目の前で普段通りの顔をしている義父である伊達に睨み付けている。

 

「いやぁ、だから今日から家族になる白野だ。

 

 弟分だと思って、可愛がってくれ」

 

 そう言いながら、伊達は、隣の席に座っている白野の肩を叩きながら、みずきに向けて言う。

 

 アビスに所属する伊達は、最近まで謎の怪事件を追っていた事、キャバクラやバーで飲みすぎて酔っ払っちゃ状態で家に帰ってくる事が多く、未だに厄介な事ばかり持ち込んでくる事はみずきも既に慣れていた。

 

 だが、まさかいきなり自分と同年代の少年を連れてきて、一緒に住もうというのは、乙女であるみずきにとっては予想外だった。

 

「いきなり帰ってきたと思ったら、また変な事を言って、この馬鹿!」

 

「馬鹿とは失礼な! 

 

 これも一応は仕事の一環だぞ!」

 

「あんたは仕事と言って、いつも飲んで酔っ払って帰ってきたんでしょうが!」

 

 そうやって二人は喧嘩を始めるのだが、それを止めるかのように、二人の前に座っている白野は口を開いた。

 

「何か困った事があるのか?」

 

「あんたの事で言い争っているの! 

 

 というよりも、あんたは何他人事みたいにしているのよ!!」

 

「いや、その、俺もあまりよく分からないから」

 

「よく分からないって」

 

「あぁ、みずき」

 

 白野の様子を見て疑問に思ったのかみずきは首を傾げる。

 

 そんなみずきに対して、伊達は笑みを浮かべると白野について説明を始めた。

 

「実はこいつには記憶がないんだ。

 

 どうも自分の名前以外何も覚えていないらしいんだよ」

 

「え? どういう事なのよ」

 

「まぁ、詳しい事情は、結構やばい所に突っ込むからな。

 

 今は、そういう事で、納得してくれ」

 

 伊達の言葉を聞いて、白野の方を見ると、その表情は未だに現実を直視していないのか、無表情のままであった。

 

 そんな様子にみずきはため息をつくと、改めて白野を見つめる。

 

 そして、しばらく見つめた後。

 

「もう良いわ。

 

 少なくとも伊達よりは素直そうで良いわ」

 

「俺よりも素直って、どういう事だよ」

 

「別に。

 

 という事で、今日からよろしく白野」

 

 そう言い、みずきは手を白野に向ける。

 

 それに白野は首を傾げるが

 

「握手よ、握手。

 

 何、そんな事も分からないの」

 

「それが、人間のルールなのか?」

 

「はぁ?」

 

 白野の言葉にみずきは再び呆れたような声を出す。

 

 だが、すぐに白野の手を掴むと、無理矢理手を握ってしまう。

 

 白野はその行動に疑問を感じたが、特に気にしない事にしたのか、黙ってしまう。

 

 そんな二人の様子を眺めていた伊達だったが、少しすると立ち上がる。

 

「さて、俺はそろそろ仕事に戻るとするか。

 

 後は二人で仲良くしろよ」

 

「ちょっと待ってよ! 私はまだ……」

 

「じゃあな、白野の事頼むぜ」

 

 そう言い残し、伊達はそのまま部屋から出ていく。

 

「たくっ、あいつはぁ! 

 

 もぅ良いわ、とりあえず白野、一緒に買い物に行くわよ」

 

「買い物?」

 

「そう、晩ご飯! 

 

 いや、外食もありか。

 

 今日は伊達の金で美味しいのを食べよう!」

 

「金を勝手に使うのは良くない事じゃないのか?」

 

「どうせ、あんたを放って、どっかに飲みに行ったんでしょ。

 

 だったら、私達も美味しいのを食べないと割に合わないでしょ」

 

「そういうもんなのか」

 

「そういうもん」

 

 みずきはそう言うと、白野を連れて部屋を出て行く。

 

 みずきはそのまま外食という事も兼ねて、この街の事を案内する事にした。

 

 街を案内している間、最初は少し不思議な雰囲気のあった白野に対しては苦手意識はあったが、目に映る物を珍しそうに見る白野に対して、子犬のような可愛さを感じてか、自然と笑みを浮かべた。

 

「ほら、ここがゲームセンターよ」

 

「これが?」

 

 白野は目の前にある大きな建物を見ながら呟く。

 

「ふふん、中々面白い所よ。

 

 色んなゲームがあるから、今度一緒にやってみましょうよ」

 

「……なぁ、みずき」

 

「なに?」

 

「あれは、一体、何をしているんだ?」

 

 そう、白野が指を指した場所。

 

 そこには1人の少年が、集団で虐められている様子だった。

 

「あぁ、あいつら、またぁ!!」

 

 それを見たみずきはそのまま集団の中へと突っ込んでいく。

 

「あんたら、また虐めをしているの!!」

 

「ひっひぃ!!」

 

「あのっみずきだっ」

 

 そのみずきを見た瞬間、恐怖に駆られたのか、その集団は一斉に逃げ出した。

 

「みずき、なんだか怖がられているようだったけど?」

 

 その様子を見ていた白野はそのままみずきに対して問いかける。

 

「んっ、少し前に他に虐めていたからね。

 

 全員の前歯を折った程度よ」

 

「なるほど」

 

 みずきがそう答えた直後、白野は納得したように小さく首を振る。

 

「それで、あんた、また虐められていたの、カコ?」

 

 そう、みずきは虐められていた少年に向けて言う。

 

「うるせぇ、今から、あいつらに復讐をしようとしていたんだよ」

 

「復讐って、どうやってよ」

 

「こいつでだよ」

 

 そう言いながら、カコが取り出したのは、何かの怪獣が描かれたUSBだった。

 

「何よそれ。

 

 そんなので「みずき、離れて」えっ?」

 

 みずきが呆れていると共に白野がみずきを守るように、前に出る。

 

 それに疑問に思っていると

 

【ゴルバー】

 

「これで、俺はぁ!!」

 

 その言葉と共に、ゴルバーという音声が鳴り響いたUSBをそのまま身体に押し込む。

 

 すると、カコと呼ばれた少年の姿が変わっていく。

 

 それは、軽く周りの建物を簡単に壊す事ができる程の巨体へと変わるが、何よりも変化したのはその姿だった。

 

 全身に岩石を彷彿とさせるディティールが見られる硬質的な外観に背中に赤い羽。

 

 それを見ると、まさに怪獣だった。

 

「何よ、これ、どうなっているのよ」

 

 あまりの光景に言葉を失うみずき。

 

 そんなみずきに対して、白野はみずきの手を握る。

 

「みずき、逃げるよ」

 

「えっ、うっうん」

 

 そのまま二人はその場から離れる事にした。

 

 そして、怪獣の姿になったカコは、そのまま周りの建物を破壊始める。

 

 一見、無作為に見える行為だが、その行く先には、みずきは気づいた。

 

「やばいっ、あの方向は」

 

「みずき?」

 

 みずきは何かに気づいたのか、足を止める。

 

「あっちは、さっきの奴らが逃げていった方向だ。

 

 カコの奴、あいつらを殺すつもりだっ」

 

 その狙いに気づいたみずきは慌てて白野を連れて走り出す。

 

 それと同時に、後ろから爆発音が聞こえてくる。

 

 振り向くと、先程まで居たゲームセンターが跡形もなく消えていた。

 

 どうやら、カコはゲームセンターで暴れた後に、さらに街の方にも被害を出す気らしい。

 

「早く行かないと」

 

「けど、今はみずきの安全が先だ」

 

「それがどうしたのっ!」

 

 そう言い、みずきは白野を睨み付けるように言う。

 

「すぐそこで誰かが殺されそうになっているのよ。

 

 それを見捨てたら、私は私を絶対に許さない! 

 

 だから、お願い、白野。

 

 あんたは先に逃げて」

 

「でも」

 

「大丈夫よ、私だったら、すぐにここまで走ってこれるから」

 

 そう言いながら、みずきは勝ち気な笑みを浮かべる。

 

 それを見た白野は

 

「みずき、本当は怖がっている」

 

「こっ怖がっていないわよ」

 

「けど、俺、みずきの事が好きになったみたいだ」

 

「はっはぁ!?」

 

 いきなりの告白にみずきは驚きを隠せずに目を見開く。

 

 そして、その表情を見てか白野は少しだけ微笑む。

 

 その笑みを見た瞬間、みずきは顔を真っ赤にする。

 

 まるで、恋する乙女のように。

 

 それを見た白野は

 

「だから、みずきの為に、戦うよ、俺」

 

「えっ、ちょ」

 

 何を言っているのか、分からず、戸惑っている間にも、白野が取り出したのは、先程のカコが使ったUSBと同じだった。

 

『Ultraman Trigger Multi Type!』

 

「白野っ!」

 

 それに驚きを隠せない中で、白野は懐から取り出したのは銃だった。

 

 SF映画に出てくるような近未来的であり、みずきは首を傾げてしまう。

 

『Boot up! Zeperion!』

 

 そうしている間にも白野はそのまま銃にUSBを挿入する。

 

 すると、銃の形は扇のように開く。

 

「未来を築く、希望の光!!」

 

 右手で持ち、掲げる。

 

「ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

 その叫びと共に、人差し指で変身トリガーを引く。

 

『Ultraman Trigger Multi Type!』

 

 鳴り響く音、それと共に白野の姿は変わっていく。

 

 その大きさは先程のカコのように徐々に巨大になっていくが、その大きさは怪獣と同じ巨大だった。

 

 しかし、その姿はカコのような怪獣ではなかった。

 

 ボディーカラーは銀を基調に赤と紫の2色を配し、胸元の光は菱形だった。

 

 胸部のプロテクターや手足のモールドには、古代の壁画を思わせる複雑な紋様が彫られており、どことなく東南アジアなどの仏像を思わせる雰囲気を漂わせている。

 

 その姿に、みずきは驚きを隠せなかった。

 

「あれって、確か、ニュースで出ていた」

 

 それは最近になって話題になっている巨人。

 

 最近、空想の産物とされていた怪獣と共に、その怪獣から人々を守った巨人。

 

 その名前は、なぜか判明されていた。

 

 その名をゆっくりとみずきの口から呟く。

 

「ウルトラマントリガー」

 

 そう、トリガーは怪獣であるゴルバーに向けて、構える。

 

 ゴルバーもまたトリガーの存在に気づいたのか、雄たけびを上げる。

 

 その声は大気を振るわせるほどの衝撃だった。

 

 しかし、その程度でひるむ事なく、トリガーもゴルバーに向かって走り出す。

 

 お互いがぶつかると同時に、その衝撃波によって周りの建物が吹き飛ばされていく。

 

 その光景を見ながら、みずきはただ呆然と見ていた。

 

 先程まで、自分の隣にいた少年が突然、巨大化して怪獣と戦っているのだ。

 

 あまりにも現実離れした出来事に、思考が追い付かない。

 

 そんな時、彼女の耳に聞こえたのは。

 

「たっ助けてくれ」

 

 それはカコを虐めていた少年の姿だった。

 

 彼は恐怖に怯えながら、必死に逃げていた。

 

 だが、その背後から迫る存在は、彼の命など簡単に奪う事が出来るだろう。

 

 そう思っていると、ゴルバーの拳がカコの背中に迫る。

 

 それに気づいたみずきは思わず叫ぶ。

 

「白野!!」

 

 みずきは同時に少年に向かって走りながら、トリガーに向けて言う。

 

 それに気づいたトリガーはすぐにゴルバーの動きを封じる。

 

 同時にみずきはその超人的な動きで逃げ遅れている少年を抱える。

 

「たっ助かった」

 

「どうでも良い! 

 

 さっさと逃げろ!」

 

「はっはいっ」

 

 みずきの怒声に少年は慌てて逃げ出す。

 

 それを確認した後、みずきはゴルバーを見る。

 

 その瞳は怒りに燃えており、彼女に狙いを変え、襲い掛かる。

 

 しかし、それは戦っている相手であるトリガーに対して大きな隙だった。

 

 トリガーはそのままゴルバーに向けて、回し蹴りを喰らわす。

 

 それによって、よろめいた所をさらに追撃として、連続で殴りつける。

 

 一方的に殴られ続ける事に苛立ったのか、ゴルバーはトリガーの攻撃を腕で防ぐ。

 

 そして、そのまま力任せに押し返す。

 

 その勢いで、トリガーは後ろに大きく跳ぶ。

 

 両腕を前に突き出し交差させてから大きく横に広げてエネルギーを溜める。

 

 すると、体中から赤い光が漏れ出し、やがてそれが両手に集約される。

 

 それを確認してから、一気にL字に構えて放つ。

 

 放たれたその光線は真っ直ぐとゴルバーに直撃する。

 

 光線が当たった箇所が爆発を起こし、それに巻き込まれないように、すぐにその場から離れる。

 

 そして、数秒後にゴルバーは爆散し消滅した。

 

 それと同時にトリガーの変身も解け、白野の姿に戻る。

 

「白野」

 

「みずき、勝てた」

 

「うん、勝てた。

 

 だけど、カコは」

 

 そう先程まで怪獣だったカコを心配する。

 

「大丈夫、あの少年は無事」

 

「えっ?」

 

 そう言い、白野はみずきの手を引いて、歩く。

 

 そこには、爆心地を中心に気絶しているカコがいた。

 

「どういう事」

 

「怪獣に変身しても、残ったエネルギーで、怪獣になった人間を元に戻せる」

 

「あんた、どうして、そんな事を」

 

「それは」

 

「そこからは、俺が話す」

 

 そう言い、みずき達は後ろを見る。

 

 そこには伊達が立っており、ため息を吐いていた。

 

「白野。

 

 みずきにはあまり事情を言うなと言ったはずだろ」

 

「ごめん。

 

 けど、緊急事態だったから」

 

「まぁ、そうかもしれないが」

 

「ちょっと、伊達」

 

 その会話の中である程度分かったみずきはそのまま伊達に近づく。

 

「どういう事か、説明してよね」

 

 みずきの威圧感に少し気圧されながらも、伊達は答える。

 

 その時、遠くの方でパトカーのサイレン音が聞こえてくる。

 

「とりあえず、詳しい話は署でやるぞ」



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認められる為に

新たにアビスで活動するメンバーを募集しています。
皆様の応募、お待ちしています。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=282623&uid=45956


 怪獣騒ぎがあった翌日、みずきは伊達から全ての事情を聞く為に家で睨んでいる。

 

「今、この東京にはこんなのをばらまいている奴がいる」

 

 そう言いながら、伊達が見せた画面にはUSBを思わせる物が写された。

 

「これは一体」

 

「GUTSハイパーキー。

 過去の遺跡にある怪獣の細胞やデータを元に作られたキーだ。

 こいつは差し込んだ生き物のDNAを書き換える事ができる」

 

「簡単に言えば、人間を怪獣に変える事ができるアイテムよ」

 

「人間を怪獣にって」

 

「実際にみずきも見たはずだ。

 今は、アビスを始めとした様々な組織がこれに対抗する為に様々な事を行われている」

 

「GUTSハイパーキーに対抗する為にGUTSハイパーキーをこちらに使う。

 毒をもって毒を制する訳だ」

 

「それじゃ、白野は一体」

 

「それは俺にも分からない。

 なんだって、白野は遺跡の中で見つかった子だからな」

 

「遺跡の中って」

 

 その言葉と共にぼーっと外を見つめる白野を見るみずき。

 

「あいつは遺跡に刻まれた人々を守ったとされる存在、ウルトラマントリガーに変身する事ができる。

 そういう意味でも、白野に関する事はトップシークレットとして扱っている。

 そして、白野に関するフォローも兼ねて、俺の家で預かる事になった」

 

「私には内緒に」

 

「悪かったって」

 

「まぁ良いわ。

 つまり、私にも、今後はアビスとして「何を馬鹿な事を言っている」はぁ」

 

「お前はまだ小学生だ。

 何よりも今回の相手はこれまでの奴らと違って、本物の怪獣だ。

 確かに身体能力は高いが、お前が関わる訳にはいかない」

 

「ちょっ」

 

「話はこれで終わりだ。

 お前らも、とっと学校に行け」」

 

「ちょっ伊達!!」

 

 その言葉と共に伊達はそのまま出て行ってしまった。

 

「まったく、あいつは。

 いつもは親らしい事なんて、してないのに」

 

「みずき、怒っているのか?」

 

「えぇ、もぅカンカンにねぇ! 

 あんたはウルトラマンに変身できるから特別扱いだから良いかもしれないけど、こっちからしたら、仲間外れで嫌なのよ」

 

「……すまない」

 

 そう、みずきの怒る言葉を聞くと共に白野はそのまま頭を下げる。

 

「……こっちこそ、ごめん。

 あんたは何も悪くなかったのに」

 

 その言葉と共にみずきはそのままスマホへと視線を向ける。

 

 そこには、ここ最近になって話題になっている行方不明事件であり、不可思議な点が多い事件であった。

 

「……ねぇ、白野。

 これって、もしかしてGUTSハイパーキーに関係しているの?」

 

「えっ、うん、たぶん」

 

「だったら、これよっ! 

 とにかく、この事件を解決すれば、私も認められるはずよ!!」

 

 そう言いながら、みずきは自身のスマホを白野に見せつける。

 

 そこには最近になって話題になっている連続子供誘拐事件であり、現在も警察が調査を行っているが、未だに犯人は見つからない。

 

「その必要はないだろ。

 

 俺達は小学生だ、その事件の解決も伊達達がやってくれるだろ」

 

「嫌よ。

 

 あんたはウルトラマンに変身できるから良いけど、私は子供扱いされて、嫌なの」

 

「実際にまだ小学生ではないのか」

 

「とにかくっ!!」

 

 そう言いながら、みずきは立ち上がる。

 

「この事件は私達で解決する! 

 

 居候のあんたにも、協力してもらうからね!!」

 

 みずきが白野に対して指を突きつけた後、みずきは勢いよく走り出した。

 

 それに遅れて、白野も慌てて立ち上がった後、走る。

 

「それで、まずはどこに向かう?」

 

「まずは最初に誘拐が行われた場所に向かうわよ!」

 

 二人は住宅街を走り抜けて、誘拐された場所へと向かう。

 

 そして、その場所には小さな公園があった。

 

 そこに辿り着くと、二人とも息を整えた後、公園の中に入る。

 

 公園の中は誘拐事件が起きた現場という事もあってか、あまり子供が遊んでいる様子は見られない。

 

 また、二人の目の前では警官が数名ほど、忙しなく動いており、誘拐事件の調査を行っていた。

 

「……警察がいるようだな。

 

 これでは調査は」

 

 白野はそのままみずきが諦めるのかと、思い、振り返る。

 

「えっと、あいつらが見張っていない場所はっと」

 

 しかし、みずきはそんな事を気にせずに公園中を見渡した後、少し離れた茂みに向かって走り出す。

 

 それを見て、白野は溜め息を吐いた後に、その後に続く。

 

 それから二人が茂みに近づくと、そこには誰もいなかった。

 

 白野はその事に驚きながらも、さらに奥へ進んでみる。

 

 すると、そこには一人の警察官が立っており、何やら話し合っていた。

 

「なんか話している様子ね。

 

 ねぇ、あんた、ウルトラマンなんだから、これぐらいの距離だったら、話し声が聞こえるんじゃない」

 

 茂みから出れば、確実に見つかる事もあって、みずきは隠れたまま、小声で白野に話しかける。

 

「確かに聞こえてはいるが、何を言っているのかは分からないな」

 

「ちっ。

 

 だったら、警察官が喋っている内容をそのまま話して」

 

 舌打ちをしながら、それでもなお、耳を傾ける。

 

「……誘拐された子供の足跡は途中で途絶えている。

 

 犯人の足跡も見られないっと」

 

 どうやら、先程の会話の内容をまとめていたらしく、白野は警察官が呟いていた言葉を繰り返す。

 

「じゃあ、後はここを探せば何か分かるかも」

 

 そう言って、みずきは茂みの隙間から顔を覗かせる。

 

「そうだな」

 

 白野もまた同様に茂みから顔を出した時、二人の視線の先に、一人の少年の姿が映った。

 

 その少年は特に変わった様子もなく、一人で遊んでいたが、二人はすぐにその場から離れようとしたが。

 

「っんぐっ!!」

 

「んっ」

 

「なに、今の声」

 

 疑問に思い、白野とみずきは少年の悲鳴がした方に目を向ける。

 

 そこには水色に明滅する顔が特徴的な奇妙な怪人が、まるでピエロのように、少年を攫っていく姿が見えた。

 

「白野っ!」

 

「あぁ」

 

 怪人はそのまま近くの建物に飛び込み、その姿を消す。

 

 それを確認してから、みずきは立ち上がり、走り出した。

 

「あっ! ちょっと君達っ!!」

 

 警察官が呼び止める声を無視して、二人はそのまま建物の中に入ろうとする。

 

 しかし、扉を開ける事は出来なかった。

 

「嘘っ! 鍵が掛かっている!!」

 

 建物の扉はしっかりと施錠されており、開く事が出来ない。

 

 だが

 

「白野、どいて」

 

「えっうわぁ!?」

 

 白野が振り返るとそこには鉄パイプを手に持ったみずきがいた。

 

 彼女はそのまま鉄パイプで建物の鍵を無理矢理破壊する。

 

 それからドアノブを掴むと、一気に扉を開いた。

 

「そこまでよ、犯人っ、あれ?」

 

 建物の中に入った瞬間、みずきは誘拐犯に大声で問い掛ける。

 

 その質問に対し、誰も答える者はいない。なぜならば、建物は外見とは裏腹に、内装はとても広い空間となっていたからだ。

 

「どういう事? なんでこんなにも建物が広くなっているの?」

 

 みずきの言葉通り、そこは外から見ていたよりも広くなっていた。

 

 それは明らかにおかしいと、白野は周囲を見渡す。

 

 そこには子供はおらず、また、誘拐犯らしき人物もいない。

 

 不気味なほど静まり返っていた。

 

 その事に不安を覚えた白野は、みずきの方を見る。

 

 しかし、彼女もまた、この状況に驚いているのか、呆然としていた。

 

 そんな時、白野の視界に再びあの怪人の姿が見える。

 

「みずきっ!」

 

「えっ!」

 

 咄嵯に白野は叫びながらみずきの手を引きながら前へと飛び込む。

 

 すると、二人の背後にあった壁が破壊され、そこからは先程の怪人が二人を掴んだ。

 

「いやぁ、こんな可愛い子供が二人もいるとはねぇ!」

 

 男はそう言いながら、掴んだ二人の体を持ち上げ、宙に浮かべる。

 

 それと同時に、二人の体は壁の中へと吸い込まれていった。その様子を目の当たりにした他の警察官達は慌てて駆け寄るが、既に遅かった。

 

「はははははははっ!! !」

 

 高笑いしながら、男は壁に手を触れると、そこから先は一瞬にして崩れ落ち、元のただの壁に戻る。

 

 その様子に警官たちは困惑し、互いに顔を見合わせた。

 

「離しなさいよっ」

 

 そう言いながら、みずきは何とか逃げ出そうと抵抗するが、怪人の腕力は強く、逃げる事は出来ない。

 

 そんな彼女の行動に怪人は愉快そうに笑う。

 

 そうして、たどり着いたのは、どこかの工場だと思われる場所だった。そこにある作業台の上に二人は放り出される。

 

「くっ! 痛いじゃない!!」

 

 そう言ってから、みずきはすぐに立ち上がり、目の前にいる男を睨みつける。

 

「ふむふむ、実に子供らしい子だ。

 

 そっちの子は大人しくて、良い子だねぇ」

 

 そう、2人を見つめる怪人はニヤリと笑った。

 

 だが、次の瞬間には、彼はその場から姿を消し、みずきの背後から姿を現す。そして、彼の右手が彼女の小さな顎に触れる。

 

 その感触に、彼女は驚きながら後ろを振り向いた。

 

 しかし、すぐに顎を掴まれた彼女は顔を強引に動かされ、怪人の顔が視界一杯に広がる。

 

「あんた、子供を攫って、何をするつもりなのよっ」

 

「ふふっ、攫うとは人聞きが悪いなぁ。

 

 僕は子供を愛しているだけだよぉ」

 

 そう言いながら、怪人は再び彼女を見つめる。

 

 そんな彼に、みずきは嫌悪感を抱きながらも、彼を押し退けようとする。

 

「ふざけないでっ! どうして子供ばかり狙うのよっ」

 

「言っただろ、愛する為だと。

 

 大人は邪魔だ。

 

 だから僕は、子供達だけの楽園を作るつもりなんだ」

 

「そんな事出来る訳無いでしょう!? 」

 

 みずきは怒りを込めて叫ぶが、怪人はそれを無視して話を続ける。

 

「そうかい? 

 

 今はできなくても、僕の愛でゆっくりと洗脳すればいいんだ。その為にはまず、この子達を私の物にしないとね」

 

「……みずき、あれは愛なのか?」

 

「ただの変態よ!!」

 

「なるほど、ならば倒せば良いのか」

 

 その言葉と共に、白野はそのまま腰にあるガッツスパークレンスの引き金を引く。

 

 それによって、放たれたビームは怪人に当たり、そのまま吹き飛ばされる。

 

「ぐっぐうぅ!!」

 

「はあぁぁぁ!! 

 

 怪人がそれに当たる事で、悶えている隙を狙い、そのままみずきはそのまま怪人に向かって、鉄パイプを殴りかかる。

 

 その動きは小学生とは思えない程に高く、鋭くなっていた。

 

 その一撃は見事に命中したのだが、怪人はまだ倒れず、反撃として腕を伸ばしてくる。

 

 しかしその攻撃に対して、素早く後ろに下がる事で回避し、距離を取った。

 

 その間に白野も体勢を立て直す。

 

「まったく、悪い子ですねぇ。

 

 少しお仕置きが必要ですかね」

 

「悪いけど、あんたみたいな変態の相手は慣れているのよ、こっちは!」

 

 そう言ってから、再び彼女は怪人に近づき、攻撃を繰り出す。しかし、怪人はそれを難なく避けてしまう。

 

 それから怪人の攻撃も始まるが、それも素早い動きで回避されてしまい、中々当たる気配は無い。

 

「ぐっ、こいつはぁ!!」

 

 怪人は苛立ちながら声を上げると、突然地面を思い切り踏み付ける。

 

 すると、床が抜けて、そこに居た白野とみずきは落ちてしまう。

 

 その衝撃から、白野はすぐにみずきを助けるように抱き抱えて、何とか無事だったが、怪人は、こちらに手を向けている。

 

 すると、そこから光線が発射しようとする。

 

「ここまで暴れるんだったら、少し、手足を駄目になって貰おうか」

 

「おい、悪いが、そいつは俺の子供だ。

 

 手を出すなよ」

 

【ブーストアップ! アシッド!】

 

 聞こえてきた声、それと共に遠くから聞こえた音声と共に怪人に向かって、強酸弾を放たれる。その弾丸は怪人に命中し、大きな爆発が起きる。

 

 それに気づいた二人はすぐにその場所から離れると、そこには1人の男性が立っていた。

 

「伊達っ、なんでここに」

 

「お前達が攫われたのをアイボゥから聞いたからな。

 

 白野のガッツスパークレンスにあるGPSでここまで来た」

 

「だったら、早く助けなさいよ」

 

「悪かった。

 

 だけど、お前達が暴れているおかげで、攫われている子供を助ける事ができた。

 

 そう答えながら、彼は怪人がいた場所に目を向ける。

 

 先程の怪人の姿は無くなっており、代わりに1人の男が立っていた。

 

「ツキヤマ。

 

 連続幼児誘拐事件の現行犯で、お前を逮捕する」

 

「巫山戯るなよぉ!!」

 

 その言葉と共に構える。

 

【ギランボ】

 

 それと共に、手に持ったGUTSハイパーキーをそのままツキヤマは自身の腕に差し込む。

 

『Ultraman Trigger Multi Type!』

 

「白野っ!」

 

「あぁ」

 

 伊達の言葉に頷くと共にガッツスパークレンスを構える。

 

『Boot up! Zeperion!』

 

 そうしている間にも白野はそのままガッツスパークレンスにウルトラマントリガーのハイパーキーを挿入する。

 

「未来を築く、希望の光!!」

 

 右手で持ち、掲げる。

 

「ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

 その叫びと共に、人差し指で変身トリガーを引く。

 

『Ultraman Trigger Multi Type!』

 

 闇の街を照らすように、その巨人・トリガーが姿が現れる。

 

 トリガーはそのまま目の前にいるギランボをゆっくりと構える。

 

「クフフフッ」

 

 ギランボは気味の悪い笑みを浮かべながら、そのままトリガーに向かっていく。

 

 トリガーも迎え撃つべく、ギランボに向かって拳を振りかざす。

 

 しかし、次の瞬間にはギランボの姿はなく、代わりに背後に気配を感じる。

 

 振り向くと、そこには既にギランボの姿があり、腕を伸ばしてトリガーの顔に触れようとしていた。

 

 だが、その寸前でトリガーは顔を横に向けると、伸びてきた腕を掴み取る。

 

 そして、そのまま力任せに投げ飛ばした。

 

 だが、ギランボはまるでピエロを思わせるような動きで、宙を舞いながら受け身を取る。

 

 そのまま空中で一回転して着地すると、再びトリガーに向けて、不気味な顔から次々と光弾が放たれていく。

 

 目映い光と共に放たれる、それらに対して、トリガーは避けようとしたが、すぐに自身の後ろにある建物を見る。

 

 そこには、未だにギランボによって攫われている子供達がおり、彼らがまだ救助をされている途中だった。

 

 それに気づいたトリガーはすぐにその場に留まると同時に、両手を前に翳して、両手から放つ虹色がかった光の盾でギランボの攻撃を防ぐ。

 

 光の盾は、ギランボの光弾を次々と防いでいき、全て出し切ると確認すると共に光の盾を解除する。

 

 だが、広がった先には、既にギランボの姿はなく、すぐにトリガーは周りの景色からギランボを探すように見渡す。その時、トリガーのすぐ側で、突如爆発が起きる。

 

 爆風と煙の中で、トリガーの視界を遮るようにギランボが立っていた。

 

 そのままギランボは手を伸ばし、光弾を放つが、トリガーは体を仰け反らせる事でそれをかわした。

 

 そこから更にギランボは続けて、トリガーに向けて光線を放ち続ける。

 

 それらの攻撃をトリガーは、先ほどと同様に防御していく。

 

 だが、さすがに何度も連続して攻撃を受け続ければ、反撃できる余裕もなくなっていく。

 

 そうしている内に、とうとうギランボの放った攻撃の一つが、トリガーに命中した。

 

 爆音と共にトリガーの体が少しだけ飛ばされる。

 

 それを見たギランボはニヤリと笑った。

 

 同時に、それと共にトリガーのカラータイマーが青から赤へと変わり、点滅をし始める。

 

 それはつまり、今の一撃がトリガーにとって大きなダメージになったという事を示していた。

 

 ギランボはさらに追撃をかけようと、光弾を撃ち込んでいく。

 

 だが、次の瞬間、その光弾を邪魔をする存在が現れる。

 

「っ!!」

 

 ギランボはすぐにその邪魔をした存在を探した。

 

 その存在は上空からギランボに向かって、突撃していた。

 

 大きさは巨人であるトリガーやギランボに比べれば小さく人間が1人乗り込める程度の大きさの戦闘機だった。

 

 光に照らされ、僅かに機体の色が分かると共に、それは青い機体だった。

 

「あれって」

 

「今、俺が操作している」

 

 それを操作しているのはトリガーとギランボから少し離れた場所の車の中で伊達だった。

 

 疑問に思いながら、みずきは目の前の光景を見る。

 

 エンジンのかかっていない車の中で突然現れたその操縦席はまるで戦闘機のコックピットを思わせる物であり、空を飛ぶ戦闘機が伊達が操縦しているとは思えなかったからだ。

 

「アイボゥとリンクする事で、あの飛行機を遠隔操作する事ができる。

 

 まぁ、馬鹿みたいに経費はあるけど、怪獣対策として用意されたらしい。

 

 という事で、行くぜ、ガッツスワロー」

 

 それと共にガッツスワローはそれと共にギランボに向けて、次々と機関砲の攻撃を浴びせる。

 

 人間相手ならば脅威に近い、その攻撃だったが、ギランボにとっては僅かに痛みを与える程度だった。

 

 しかし、ギランボのピエロを思わせる奇妙な動きを封じる事には確かに成功した。

 

 それを感じたトリガーはすぐにギランボに向かって走り出す。

 

 そして、そのまま右手を大きく振りかざすと、ギランボを殴り飛ばす。

 

 ギランボの体は地面に叩きつけられるが、すぐに体勢を立て直すと共に光線を放つ。

 

 それに対し、トリガーは、両腕を前に突き出し交差させてから大きく横に広げてエネルギーを溜めた後、ギランボに向けて、L字に構えて光線を放つ。

 

 トリガーの必殺技であるゼペリオン光線がギランボへと向かっていき、命中する。

 

 ゼペリオン光線の一撃を食らうと共にギランボはその場で固まると同時に一瞬で、その身体は爆散する。

 

 それによって、戦いは終わりを告げる。

 

 だが

 

「まったく、お前、どれだけ無茶しているのか、分かっているのか」

 

 白野が合流する頃には、みずきは伊達から説教を受けていた。

 

「……」

 

「けど、みずきのおかげで、助かった」

 

「白野」

 

 その言葉と共に、白野はみずきの隣にいる。

 

「お願い、伊達。

 俺はみずきと一緒に戦いたい」

 

「はぁ。

 まさか、お前から言うとはな」

 

 その言葉と共に、伊達は懐から取り出したのは、ガッツスパークレンスだった。

 

「これって」

 

「白野は、今後、色々とトリガーとして戦う。

 だが、確実に俺達が近くにいるとは限らないからな」

 

「伊達、ありがとう。

 そして、白野もこれからも一緒にお願いね」



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親との拮抗

「ここが、私の行きつけの店よ!」

 

 そう言いながら、みずきが白野の手を引きながら、連れてきたのは、一つの店だった。

 

 そんな白野は小さな隠れ家を思わせる喫茶店であり、その雰囲気に首を傾げる。

 

「どういう店?」

 

「ここのケーキはね、とっても美味しいのよ! 

 

 最近開店した店で、シャルモンというの」

 

 それと共にみずきはそのまま店の中へと入っていった。

 

「いらっしゃい! 

 

 あら、みずきちゃんじゃない。

 

 そっちの坊やは初めてね」

 

 そう言いながら、店の中に入ると共に、白野を出迎えたのは、鍛えられた体格とスキンヘッドという出で立ちながらもバサバサのつけまつ毛を付け、やや上品なオネエ口調で喋る人物だった。

 

「初めまして、白野です。

 

 みずきのお世話になっています」

 

「まぁ、もしかして、みずきの彼氏! 

 

 見てみると、なかなかに良い男じゃない」

 

「凰蓮さん。

 

 白野は私の所の居候よ。

 

 別に彼氏じゃないんだから」

 

「あら、そうなの。

 

 けど、ワタクシの目から見ても、とっても良い子だと思うわよ。

 

 白野君、みずきの事をこれからもよろしくね」

 

「はい」

 

 それと共に凰蓮と呼ばれた男性(?)が指先を向けると、そのままテーブル席まで案内される。

 

 だが、みずきの方はやや不満げな表情を浮かべていた。

 

「まったく、凰蓮さんはそういう所があるから」

 

「ねぇ、みずき」

 

「何よ」

 

「彼氏って、どういう意味」

 

「あぁ」

 

 それと共に白野の質問を聞くと、みずきは少し呆れたような声を出す。

 

「もしかして、そこまで知らないの。

 

 彼氏って言うのは、恋人の事を言うのよ」

 

「じゃあ、みずきは僕の事が好き?」

 

「ちょっと、いきなり何を言ってんのよ!」

 

 唐突な発言に対し、慌てるみずきを見て、白野は首を傾げた。

 

「違うの? 僕はみずきと一緒にいて楽しいし、好きだけど」

 

「いや、それは私も同じだけれど、そういう意味じゃないから。

 

 あぁ、もぅややこしい!!」

 

 天然な言動が目立つ白野に対し、みずきは頭を掻きむしりたくなる衝動を抑え込むと、大きく深呼吸をした。

 

 そして、白野の隣へと座ると真剣な目つきとなる。

 

 それを不思議そうに見つめている白野に対して、みずきは呆れていると。

 

「お待たせ、さぁ今日はワタクシからのサービスよ!」

 

 その言葉と共に運ばれたケーキとドリンク。

 

 だが、それは普通のではなく、まるでカップル専用を彷彿させる物であった。

 

「ちょっ、凰蓮さん!!」

 

「それでは、ワタクシはここで」

 

「待て、オカマ!!」

 

 みずきの言葉を無視し、ウインクすると凰蓮はそそくさと奥の部屋へと消えていく。

 

 その様子を見て、唖然とするみずきを余所に

 

「これがケーキ。

 

 うん、美味しい」

 

 白野は運ばれてきたショートケーキを口に運ぶ。

 

 すると、口の中で溶けるような食感に驚きながらも、幸せそうな笑みを浮かべた。

 

 その姿を見た瞬間、みずきの顔が呆れてしまった。

 

「あんたねぇ」

 

「みずきも食べてみたら」

 

 その言葉と共に白野は自分のケーキをみずきに渡した。

 

「えっちょ」

 

 その天然な行動に戸惑うも、目の前の光景を見て、苦笑いをしながら受け取ると。

 

 そのままフォークを使って口に運んだ。

 

「どう?」

 

「おっおっ美味しいわっ」

 

 一口食べると、みずきは思わず感嘆の声を上げる。

 

「……みずき」

 

「えっ白野」

 

 そんなケーキの感想をしている間に、白野はみずきの顔に近づいていた。

 

 その突然の行動に驚きを隠せなかった。

 

 ゆっくりと、目の前に迫っている白野に視線を向ける。

 

 その瞳は何かを訴えるように、ジッと見つめていた。

 

 そのまま頬に手を当てると、顔を引き寄せて

 

「あれ、なんだか怪しくない」

 

「へっ?」

 

 その言葉と共に白野はみずきの顔を変えて、窓の外を見せた。

 

 そこには地味な格好をしている学生があり、その様子は明らかに可笑しかった。

 

「もしかしたら、GUTSハイパーキーを持っているかも。

 

 みずき、一緒に、みずき?」

 

「っ」

 

 一瞬、キスをすると思っていた事もあったのか、慌てて顔を背ける。

 

 その姿を見て、白野がキョトンとした顔で見つめていた。

 

 それを見ると恥ずかしくなったのか、赤面した表情を見せると。

 

 みずきは大きく咳払いをして、誤魔化す様に言った。

 

「えっと、それで、あいつね?」

 

 そう言いながら、白野に誤魔化すようにみずきは窓から見える人物の事を訊ねる。

 

 すると、白野が静かに窓の方を見つめる。

 

 そこに映っている人物はオレンジ髪の人物であり、その手には確かにGUTSハイパーキーがあった。

 

「行くわよ、白野!」

 

「うん。

 

 えっと、料金料金」

 

 そう言いながら、白野は懐から金を出して、そのまま店kら出て行く。

 

 そのオレンジ髪の人物を尾行するように、2人は足を進めた。

 

 そして、数分後、少年が辿り着いたのは、どこかの会社だった。

 

「父さんも母さんも、認めてくれないならば、ここで潰してやるっ」

 

 そう言うと同時に、少年は扉を開いて中に入っていった。

 

 それを見て、2人も社内へと侵入していこうとした。

 

「行こう」

 

「えっうん」

 

 白野の声に答えるように、ミズキも共に室内へと入っていく。

 

「アジサイ、なんでここに」

 

 そこにはオレンジ色の髪をした青年、アジサイの父親だと思われる人物が向き合っていた。

 

 見れば、どこにでもいる普通のサラリーマンであり、アジサイが来る事は予想外だった。

 

「父さん、俺、前にも言っただろ。

 

 もっとファッションとして、ピアスやタトゥーを認めて欲しいって。

 

 それがどうして分からないんだよ」

 

「何度言われても、それはダメだ」

 

 そう言うと、アジサイは悔しそうな表情となる。

 

 だが、父親である男性は溜息を吐くと、諭すような声音で言う。

 

「そんな事をすれば、お母さんが悲しむだろう。

 

 それぐらい、お前だって分かっているはずだ」

 

「分からねぇよ! 

 

 なんで、いけないんだよ、最高にクールだろうが!」

 

「そんな一時の感情で、身体を怪我したらどうするんだ」

 

 そう言っている間にも、アジサイは怒りを抑えられずに叫んだ。それはまるで、自分の思い通りにいかず、駄々っ子のようにも見えた。

 

「だったら、無理矢理でも、認めさせてよる!」

 

 その言葉と共に、GUTSハイパーキーを取り出した。

 

【ムカデンダー】

 

 鳴り響く音声と共に、アジサイはそのまま自身の身体にGUTSハイパーキーを差し込む。

 

 同時にアジサイの身体は光ると共に、徐々に巨大化していく。

 

「あぁ、もぅ!」

 

 それを見たみずきは懐にあるGUTSハイパーキーを取り出し、ガッツスパークレンスに挿入する。

 

【ブーストアップ! クトゥーラ】

 

「やるんだったら、外でやりなさいよねぇ!!」

 

 その言葉と共に徐々に巨大化しそうになっているアジサイの身体は銃口から出たエネルギーの触手に掴まれ、そのまま外へと投げ飛ばす。

 

「白野!」

 

「うん」

 

 みずきの言葉に合わせるように、同時に白野はそのまま外へと飛び出す。

 

『Ultraman Trigger Multi Type!』

 

『Boot up! Zeperion!』

 

 そうしている間にも白野はそのままガッツスパークレンスにウルトラマントリガーのハイパーキーを挿入する。

 

「未来を築く、希望の光!!」

 

 右手で持ち、掲げる。

 

「ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

 その叫びと共に、人差し指で変身トリガーを引く。

 

『Ultraman Trigger Multi Type!』

 

 ウルトラマントリガーへと、変身した白野はそのまま目の前の怪獣と向き合う。

 

 そこには、その名の通り、百足を思わせる胴体を持つ怪獣、ムカデンナーは両手に持つ鞭を振り回しながら、近づく。

 

 仕掛けられる鞭の攻撃を、両腕を十字に構えることで受け止める。

 

 するとムカデンナーが笑うように口を広げた。

 

 直後、口の中に炎の球を白野に向けて、放つ。

 

 白野は反射的に腕を振るった。

 

 両腕を交差して、振るうことで火球を打ち返す。

 

 打ち返された火球がムカデンナーの横を抜け、ビルに命中した。爆発が起こり、周囲が熱気に満たされるが、構わず白野は駆け出す。

 

「っ」

 

 自身の防御で、火事が起きてしまった事に動揺を隠せない白野。

 

 だが、そんな彼の動揺を知らないとばかりにムカデンナーは鞭を伸ばして、その先端にある刃を白野に向ける。

 

 それを横に飛ぶことで回避する白野だったが、ムカデンナーはすぐさま鞭を戻し、今度は振り上げるようにして白野を狙う。

 

 縦横無尽に動くムカデンナーの攻撃をどうにか避けるが、反撃に出られない。

 

 そこに、再び火球が襲い掛かる。

 

 今度は横へ跳躍することで逃れるが、直後に、地面が爆ぜた。

 

 どうやらムカデンナーはこちらの動きに合わせて、先ほどの火球を放っているらしい。

 

 それを悟った白野は、ムカデンナーが放った火球を拳で叩き落とす。

 

 今度は被害を抑える事ができたか、不安になる。

 

 そんな白野の隙を狙うように、ムカデンナーの鞭が白野の首を締める。

 

「ジュワッ」

 

 声を上げて白野は首を絞められた状態のまま、地面に倒れ込む。そのまま首を持ち上げられ、宙吊りになった状態でムカデンナーの攻撃を受ける。

 

 腹部を殴打され、胸部を蹴り飛ばされる。

 

 それらの攻撃を受けながら、その胸にあるカラータイマーは青から赤へと変わり、点滅を始めた。

 

 鳴り響くカラータイマーを聞こえながらも、拘束を抜け出す事ができない。

 

 その時だった。

 

 ムカデンナーの鞭を切り裂く光が現れる。

 

 光は、そのまま白野の前に辿り着く。

 

 疑問に思いながら、白野は、その光に手を伸ばす。

 

【サークルアームズ!】

 

 光の中から、音が聞こえると共に、それは完全に姿を現す。

 

 丸い輪に鋭い刃が生えた形状をしており、刃は完全に閉じた状態となり、一本の刀身を形作っている。

 

 何よりも記憶のない白野たが、そのサークルアームズを握ると驚く程に手に馴染んでいた。

 

 同時にムカデンナーは再び、鞭を使い、白野に襲いかかる。

 

 瞬時にサークルアームズを振り上げると共に、その切れ味は鋭く、いとも容易くムカデンナーの鞭を切り裂く。

 

 更に追撃として、振り上げたサークルアームズをそのまま一回転させてムカデンナーの胴体を切る。

 

 横に真っ二つとなったムカデンナーは悲鳴を上げ、身体を震わせる。

 

 だが、それも束の間である。

 

 切り離された首と胴体がそれぞれ別々に動き、白野に襲いかかる。

 

【Maximum Boot Up! Multi!】

 

 しかし、それよりも早く、サークルアームズの刀身に目映い光の刃を作り出すと共に、白野はその場で回転斬りを行う。

 

 まるで竜巻のような一撃によって、ムカデンナーの首と胴体はバラバラになり、倒れる。

 

 白野は倒れたムカデンナーを眺めつつ、その腕を下げる。

 

 するとサークルアームズも光となって消えていく。

 

 やがて、ムカデンダーとなっていたアジサイはそのまま元の身体に戻っており、その近くにみずきが来ていた。

 

「あんたさぁ、ピアスやタトゥーを入れたら、両親が悲しむ事なんて、分かりきっていたでしょ」

 

「そんなの、知っているよ! 

 

 けど、外国では常識で、格好良いじゃないか」

 

「あのねぇ、日本じゃ、まだそんなの受け入れられていないの!」

 

 言い争いをしている中、白野が近づいてくる。

 

「喧嘩は駄目だよ。仲良くしないと」

 

「白野はぁ」

 

 そう言いながら、白野はそのままアジサイの近くにいく。

 

「ピアスやタトゥーは分からないけど、それって身体を傷つけてまでやる事?」

 

「お洒落には、必要な事だから」

 

「うーん、俺には理解できないな」

 

 苦笑しながら、白野は答えた。

 

「だったら、心配されないようなお洒落にしたら。

 

 ピアスやタトゥーに拘るだけじゃ、お洒落じゃないと思うから」

 

「……」

 

 その言葉と共にアジサイは黙る。

 

「それにお洒落の事を理解して欲しいならば、その両親の心も理解しないと。

 

 自分の方だけ一方的に理解して貰おうというのは、無理があると思うよ」

 

「それは、確かに、そうだけれど。でも、僕にとっては、大事なことで、譲れないんだ!」

 

「だからこそ、両親の心も理解しよう」

 

 その言葉にアジサイも納得したのか、大きく溜息を吐き出す。

 

「こんな餓鬼に言われるとはな。

 

 けど、その通りだな」

 

 ゆっくりと、その言葉と共にアジサイはそのまま警察に連れられるように、向かう。

 

「とにかく、せっかくのケーキが台無しよ。

 

 ほら、白野行くわよ」

 

「うん」

 

 その言葉と共に白野はみずきに連れられるように向かう。

 

 そんな2人を見る視線に気づかず。



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その力は何の為に

「白野、今日の晩飯は外食にしようか」

 

「外食?」

 

 その日の学校帰り、みずきは白野にそう告げた。

 

 白野が伊達の家に居候する事になり、ほとんどみずきとの共同生活になってから既に三週間は過ぎた。

 

 最初の1週間程はみずきの動きを見ながら、学習し、現在では白野は立派な家政婦というべき動きで家で働いていた。

 

「もしかして、今日の晩ご飯、俺が作るの嫌だった」

 

「白野の料理は絶品だから、良いけど、白野にも、1度は食べて欲しい所があるのよ」

 

「食べて欲しい所?」

 

「とにかく、ついてきて」

 

 そう疑問に思いながら、みずきに連れられて、そのままとある場所に向かった。

 

 そこには無国籍料理店「ブラフマン」と書いていた。

 

 店の中はかなり狭く、カウンター席が数席と机の椅子が4つほどしか無かった。

 

「厳ちゃん、今日もよろしく!」

 

 店に入った瞬間、みずきは手慣れた感じで入っていく。

 

「いらっしゃい、みずきちゃん。

 

 そっちの子は」

 

 そう言いながら、みずきを歓迎したのは1人の男性だった。

 

 その身体はかなりの筋肉質で、全身は白い布で覆われており一切肌を見せない。

 

 さらには顔には愛らしいマスクを着用している。

 

「この子は、私の所の居候の白野。

 

 白野、この人がここの店長の厳ちゃんだよ」

 

「よろしくお願いします」

 

「あぁ、よろしく。

 

 それで、注文は」

 

「おすすめ」

 

「はい」

 

 白野の言葉を聞いて、厳は手早く何かを作り始める。

 

 数分後、出てきたのはビーフシチューだ。

 

 ビーフシチューといっても肉は入ってないが、しっかりと味わえばそれはビーフシチューだと言う事は分かった。

 

 そして、その味はとても美味しかった。

 

「どう、美味しい」

 

「うん、とっても! 

 

 凄いですよ、厳さん!!」

 

「そう言って貰えると、嬉しいな」

 

 みずきと白野が笑顔で言う。

 

 白野にとって今まで食べた食事の中で一番美味しいと思った。

 

 それからは厳は様々な料理を出してくれた。

 

 どれもこれもが絶品だった。

 

「それにしても、厳さんは、なんでマスクをつけているんですか?」

 

 ふと、気になった事があり、厳に尋ねる。

 

 すると、厳は一瞬、身体を固まる。

 

「それは」

 

「白野、それはあんまり聞かないで」

 

 厳が答えようとした時、みずきは厳しい口調で言う。

 

「ごめんなさい」

 

 普段とは違う雰囲気に驚きながらも白野は謝る。

 

「気にしないでくれ。

 

 まぁ、気になるのは無理はないよ」

 

 そう言うと、厳は自分のマスクを触る。

 

「あまり、素顔は人に見せたくないんだ」

 

「けど、厳さん、結構格好良いと思うけどね」

 

「格好良い?」

 

 その言葉に厳は思わず首を傾げる。

 

 だが、そうしている共に聞こえたサイレン。

 

 気になり、すぐに店の外を見る。

 

「あれは」

 

 店の外に見た光景。

 

 それは一匹のロボットが暴れている光景だった。

 

 それはまるでドラゴンを思わせる姿をしたロボット怪獣であり、その名はギャラクトロンだった。

 

 ギャラクトロンは口から光線を放ちながら町を破壊していた。

 

 人々は逃げ惑う人々、その中で建物の一部が彼らに向かっていた。

 

「っ!!」

 

 白野もみずきも気づいたが、動く事ができなかった。

 

 しかし、厳は、ただ1人、その瓦礫に向かって走って行った。

 

「うおおぉぉぉ!!!」

 

 巨大な体格の厳はその瓦礫を軽々と受け止めると、それを放り投げる。

 

 そのスピードはかなり速く、かなりの距離があったにも関わらず、白野とみずきの目の前に落ちる。

 

 それを見て、2人は唖然とする。

 

 そんな2人を余所に厳は逃げている人々を見る。

 

「大丈夫ですかっ」

 

 そう、振り返るが

 

「ばっ化け物っ」

 

「っ」

 

 それは、先程の瓦礫で、彼のマスクが外れていたからだ。

 

 そこから露わになった素顔は、とても人とは思えないような歪な顔をしていた。

 

 その絶叫と共に、再び人々は逃げ始めていた。

 

 助けた人々からの避難を受け、厳は仮面をつける。

 

 そして、彼は自分の拳を見つめながら呟く。

 

「やはり、俺は」

 

「厳さん、やっぱり格好良いよ」

 

「えっ?」

 

 そう自分を非難しようとした厳に対して、白野は呟く。

 

「白野君、俺の顔はこんなに」

 

「顔は、確かに少し変わっているけど、それが何? 

 

 厳さんは、俺達でもすぐに動けなかったのに、咄嗟に人を助けた。

 

 それは、凄い事じゃないか」

 

 白野の言葉を聞いて、厳は言葉を返せない。

 

 そんな彼に白野は笑顔で言う。

 

「だから、胸を張ってください!」

 

 その言葉に厳は目を閉じる。

 

「そうですね、ありがとうございます」

 

 そう言って、再び愛らしいマスクを着けた。

 

「君達も早く「厳ちゃんが素顔を見せたんだよ」えっ?」

 

 そう厳が避難を促そうとした時、みずきは笑みを浮かべる。

 

「白野も、正体を隠す必要はないよね」

 

「うん、そうだね」

 

「正体?」

 

 厳が疑問に思うよりも早く、白野は懐からガッツスパークレンスを取り出す。

 

「それは」

 

「未来を築く、希望の光!! ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

【Ultraman Trigger Multi Type!】

 

 鳴り響く音声と共に、白野の身体は光に包まれる。

 

 同時に街を破壊するギャラクトロンに対して、そのまま蹴り上げる。

 

「あれはっ」

 

 そこには巨人が立っており、それこそが白野の正体。

 

「厳ちゃんも知っているでしょ」

 

「えぇ、ウルトラマントリガーっ、まさか白野君がそうだとは」

 

 驚きを隠せない厳を余所に、白野はそのまま目の前にいるギャラクトロンに構えながら、その手にはサークルアームズを手に取り、走り出す。

 

 サークルアームズの刀身がギャラクトロンに向けて、振り下ろされる。

 

 しかし、ギャラクトロンは白野の腕を掴む。

 

 それと同時に電撃が白野を襲う。

 

 それにより怯むが、そのまま回し蹴りで吹き飛ばす。

 

 しかし、すぐに態勢を立て直す。

 

「あいつ、なんて硬い装甲なのっ」

 

「ロボットだから、その装甲にダメージは受けつかないのかっ」

 

 そうしている間にもギャラクトロンは後頭部から伸びる大きな鉤爪の付いたギャラクトロンシャフトで白野を拘束する。

 

 その拘束力は高く、そのまま持ち上げられてしまう。

 

 更に胸部にあるレーザー砲を向けて発射しようとする。

 

 このままでは、あの一撃を食らってしまう。

 

 そう思った時だった。

 

「現場に来ると、これか」

 

「えっ?」

 

 そう聞こえたのはツンツンした黒の短髪が特徴的な青年だった。

 

「あんたは?」

 

「アビスに所属するエージェントである烏丸だ。

 

 あんたは確か伊達さんの娘の、だったら良いか」

 

 そう言うと共に烏丸はその手にガッツスパークレンスを構える。

 

 すると、その顔は人間の顔からまさに鳥を思わせる姿だった。

 

「えっ宇宙人!」

 

「俺はレイビーク星人だからな。

 

 さてっと!!」

 

 その言葉と共にガッツスパークレンスを構える。

 

 それと共に地上に現れたのは巨大な戦車と言うべき存在であり、ガッツスティンガーが現れる。

 

 ガッツスティンガーは、その上部にある車載弾薬を真っ直ぐとギャラクトロンに向けると共に、その口を開いた瞬間にミサイルが放たれた。

 

 それらは次々と命中していき、大爆発が起こる。

 

 それを見て、白野は解放され地面に落ちる。

 

「負けられない。

 

 厳さんの力のように」

 

 そう言いながら、白野は立ち上がる。

 

 同時にその腰にあるガッツハイパーキーが赤く光輝いている。

 

「これは、試してみる!」

 

【Ultraman Trigger Power type! Boot up! Deracium!】

 

 白野はそのまま赤いガッツハイパーキーをそのままガッツスパークレンスにセットする。

 

「勝利を掴む、剛力の光!! ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

【Ultraman Trigger Power type!】

 

 その音声と共に白野の姿は変わる。鳴り響く音声と共に、白野の身体は徐々に変わっていく。

 

 先程までは赤と紫だったボディは赤一色へと変化する。

 

 同時にその身体にあるプロテクターの形もたすきがけのようなスタイルへと変わっていく。

 

 その姿こそが、白野が厳との交流を通して得られた新たな姿。

 

 ウルトラマントリガーパワータイプである。

 

 姿が変化した事に多少驚きを感じたギャラクトロンだが、未だに無傷な状況もあり、後頭部にあるギャラクトロンシャフトを白野に向けて放つ。

 

 先程までの白野ならば、その鉤爪に簡単に捕らえられてしまっただろう。

 

 だが

 

「ハァッ!」

 

 白野はその叫び声と共に、ギャラクトロンシャフトを片手で掴んだ。

 

 その事に驚きを隠せないギャラクトロンはすぐにギャラクトロンシャフトを戻そうとするが、びくともしなかった。

 

 同時に白野は片手で掴んでいたギャラクトロンシャフトをそのまま引っ張り、根元から引き千切った。

 

「っ!!」

 

 ギャラクトロンシャフトが引っ張られた事で、その箇所からは火花を散らしていた。

 

 同時に白野は掴んでいたギャラクトロンシャフトをその場で捨て、真っ直ぐとギャラクトロンに向かって、走ってくる。

 

 それを察知したギャラクトロンもまた、その腕にあるギャラクトロンブレードを展開し、白野に対抗するように振り下ろす。

 

 先程までの圧倒的な力の差が嘘のように、白野はその攻撃をまた軽々と受け止める。

 

 マルチタイプに比べても、スピードは多少落ちているように見えるが、それを上回る程のパワーがあり、白野の力によって受け止められたその一撃は地面に叩きつけられ、大きくクレーターを作っていた。

 

 そんな一撃を受け止めた白野に対して、ギャラクトロンは一度距離を取り、そして先ほどと同じように、胸部からレーザーを放つ。

 

 今度は二方向から放たれたレーザーに対し、白野もまた同じように両手を前に突き出し、そのまま両腕を広げていく。

 

「ハアァァッ!!」

 

 それと同時に、全身を赤く光らせ、腕を広げた状態で円を描くように動かし、そこからまるで炎のようなエネルギーを放出する。

 

 それは迫る二つのレーザーを飲み込み、そしてそのままギャラクトロンにも襲い掛かる。

 

 その攻撃に対し、ギャラクトロンは左腕にある大剣を盾にして防ぐ。

 

 しかし ドガァン! と、ギャラクトロンの腕は爆発を起こす。

 

 威力自体は大した事はないが、それでもダメージとしては十分な物だ。

 

「ハアッ!」

 

 そこに白野の回し蹴りが入り、ギャラクトロンはそのまま地面へと吹き飛ばされる。

 

 その攻撃には流石のギャラクトロンもダメージを受けるが、同時に白野も自身の変化を感じ取る。

 

(力はただ振り回すだけじゃない。

 

 どう使うのが重要だ)

 

 パワータイプへと変わり、確かに力は上がるが、本来ならば身軽な身体が自由に動かせない。

 

 だからこそ、力が上がった分、白野はそれを上手く使いこなす為に、冷静にギャラクトロンの動きを伺う。

 

 厳が瓦礫から人々を救ったように、白野は人々の未来を守りたいと思ったのだ。

 

 それならば、今ここで負ける訳にはいかない。

 

 それは一瞬で全ての力を出し切るように、脱力させながら、一瞬のチャンスを逃さないように集中して、白野は構える。

 

 それと共にギャラクトロンは白野に向かって駆け出す。

 

 その速度は先程までとは段違いであり、すぐに距離を詰められる。

 

 だが、白野は慌てる事無く、その攻撃を見切るように構える。

 

 同時に、白野はギャラクトロンの攻撃を一瞬で避けると体と両腕のプロテクターが同時に発光同時に、そのエネルギーを溜め込んだ赤い光球を集め、ゼロ距離で放つ。

 

「デラシウム光流」

 

 必殺の一撃はギャラクトロンの腹部に命中する。

 

 しかし ギャラクトロンは腹部に穴が空いた状態になり、ゆっくりと、その身体は倒れる。

 

 同時にギャラクトロンを中心に爆風が舞い上がり、その戦いは白野の勝利で幕を閉じた。

 

 そして、ギャラクトロンとの戦いが終わった、その夜。

 

「ギャラクトロンに変身していた奴はどこまで純粋に未来のことを考えた結果、人口削減を行うべきだと考えた過激派の奴らしい。

 

 一応、今は刑務所で大人しくしているよ」

 

 そう言いながら、戦いに協力してくれた鳥丸から事件の詳細をブラフマンで食べながら、聞いていた。

 

「まったく、とんでもない奴もいたもんねぇ」

 

「うん」

 

 そう言いながら、白野もみずきも頷きながら言う。

 

「にしても、あんた、人間の変装を取っているけど、良いのか?」

 

「あぁ、普通の店だったら、嫌だけど、ここの店主には、もうバレているし。

 

 それに、こうやって気軽に素顔で食べられる店って、なくて嫌だったんだよなぁ」

 

「まぁ、私自身は人の事を言えないからね」

 

 そう言いながら、厳もまた笑みを浮かぶ。

 

「あんたの素顔だっけ? 

 

 別に宇宙人からしたら、そこまで酷いとは思えないけど、それをつけたままにするのか?」

 

「えぇ、確かにこの素顔を受け入れてくれるのは、それこそ宇宙人ぐらいでしょう。

 

 けど、今ではこのマスクも、また私の一部なので」

 

 そう言いながらも、男はマスクを触る

 

 その事に白野は少しだけ驚くが

 

「うん、それは良かった」

 

「厳ちゃんのそれ、見ていないと少し落ち着かないからね」

 

 そう白野とみずきも同意するように言った。




白野とみずきが2人で食事をしている時、その存在は見つめていた。

「トリガー、まさか復活して、あんな子供に現を抜かすなんて」

そう言いながら、その存在はじっと睨み付ける。

「まぁ良いわ、いずれ、いずれ、お前の心は私の物にする!」

それと共に、その存在はゆっくりと消えていく。


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人間の力

「白野、人間は生きる上で、必要な事はなんだと思う」

 

 そう言いながら、白野の目の前には、彼を引き取ってくれた男、伊達は真面目な言葉と共に、窓の外の景色を見る。

 

 一昔前にあった刑事ドラマで行われた、ボスが窓の外の景色を見るように後ろにいる白野に優しく語りかける。

 

「登山家は、なぜ雪山の頂きを目指すのか。サーファーは怪物のような波に乗ろうとするのか。高い鉄塔の上まで登り、そこで懸垂する連中は! 彼らはなぜ、そんな無茶な真似をするのか!」

 

「それは、分からないです」

 

 伊達の言葉に対して、白野はさらに疑問に思うように首を傾げる。

 

 そんな白野に対して、そっと彼の肩に手を置く。

 

「スリルを得る為だ」

 

「スリル?」

 

「あぁ、生きている事の素晴らしさを体感するんだ。生きることを素晴らしいと思いたい!」

 

「伊達!」

 

 その言葉を聞くと共に白野は眼を輝かせながら、伊達を見つめる。

 

「お前も、それが分かるはずだ」

 

「いや、何を言っているのよ、あんたは」

 

 そんな伊達の言葉に対して、突っ込みを入れたのはみずきだった。

 

「みずき、俺は白野に生きる事の素晴らしさを知ってもらう為に言ったんだ」

 

「どこか生きる事の素晴らしさを教えるよ! 

 

 あんた、ただ単に白野にエロ本を見られて、敬遠されない為に言っただけでしょう!」

 

 そう言い、白野の手にはエロ本があった。

 

 そのエロ本は白野が部屋を掃除していた時に、伊達が秘密に隠していたのを発見した物だ。

 

 未だに記憶喪失な事もあり、それがどういう本か分からない白野は疑問に思いながら、読んでいた。

 

 そして、みずきはそれを見て、顔を赤くし、伊達を怒鳴りつけ、それに対しての答えが先程までの会話であった。

 

「でも、みずき。

 

 俺、感動したよ、伊達があそこまで深い事を言っていたなんて!」

 

「白野、あいつが言っている事はただのでまかせよ。

 

 信じちゃ駄目よ」

 

 白野はすっかりと伊達の言葉に感動している様子を見ながら、みずきは呆れた様子で白野に諭すように言う。

 

「でまかせなもんか。

 

 俺は自分の気持ちを正直に言っただけだ」

 

「悪影響が出たらどうするつもりよ、このエロ河童!!!」

 

 そんな言葉を聞いて、不満を持つように伊達は言うが、みずきはそれに対して怒鳴りつけるように言う。

 

「大丈夫だって、これくらいの事じゃ悪影響なんか出ないから」

 

「思いっきり、悪影響が出るわよ! 

 

 というよりも、白野はなんで、不満そうにエロ本を見ているの!!」

 

「う~ん、なんというか、伊達が言うようなスリルが分からなくて」

 

 そう言いながら、白野は手に持っているエロ本を開き、その内容を確認するように見る。

 

 そこに描かれていたのは裸体の女性が描かれており、白野にとっては理解できない内容だった。

 

 それを見ながら白野はため息を吐く。

 

「白野にはまだ早かったかな」

 

「うん、よく分からない」

 

「とりあえず、白野。

 

 伊達のようには決してならないでよね」

 

 そう言い、白野の肩を叩き、みずきは彼の手にあるエロ本を取り、ゴミ箱の中に投げ捨てた。

 

「俺のエロ本!!!」

 

 それを見た伊達は、思わず叫んでしまった。

 

 そうして、叫んだのと同時にぐたりと、力無く垂れていた。

 

 だが、それは一瞬だった。

 

「マジか」

 

「どうしたの?」

 

「少し厄介な事になった。

 

 白野、いけるか?」

 

「……うん」

 

 それが、何を意味するのか、分かった白野はすぐに頷いた。

 

 それと共に彼らはすぐに走り始めた。

 

 向かった先に見えたのは、空を舞う怪獣だった。

 

 その怪獣の姿を見た瞬間、白野はすぐにガッツスパークレンスを取りだそうとした。

 

「ふんっ!」

 

「っ!」

 

 だが、そんな変身を邪魔するように現れた影に攻撃を阻まれる。

 

 すぐに、白野はその方向を見ると、赤と黒を基調としたカラーリングに鎧状のディテールをしており、どことなく白野が変身するトリガーに似ていた。

 

「なにこいつっ」

 

「まさか、遺跡にあった」

 

『久し振りだな、我が好敵手』

 

「好敵手?」

 

 その言葉に白野は首を傾げる。

 

「白野、あいつの言葉が分かるのか」

 

「うん、久し振りとか、好敵手だって?」

 

 そう言いながら、目の前にいる存在に疑問に思いながら、構える。

 

『悪いが、今回はヒュドラムの奴の頼みでな。

 

 あのツイフォンという奴の力の実験をしないといけない。

 

 なので、ここで足止めさせて貰う』

 

「ヒュドラム、それがガッツハイパーキーを配っているのかっ」

 

「それって、あいつらがガッツハイパーキーを配っている奴らという事!」

 

 その言葉にみずきもすぐにガッツスパークレンスを構える。

 

『我が名はダーゴン。

 

 さぁ、勝負だ』

 

 そう言い、ダーゴンはゆっくりと構える。

 

 白野もまた、構えようとしたが、それを止めたのは伊達だった。

 

「伊達」

 

「お前は怪獣をなんとかしろ。

 

 こいつは俺がなんとかする」

 

「なんとかって」

 

 白野は心配そうに言うが、伊達は不適な笑みを見せる。

 

「さぁ、見せてやるぜ、人間の力を」

 

「人間の」『力?』

 

 白野とダーゴンの言葉が重なるように呟くと共に伊達が懐から取り出したのはエロ本だった。

 

「『???』」「……」

 

 その行動に疑問に思った白野とダーゴンは首を傾げるが、みずきは冷たい眼で伊達を見つめる。

 

「ほうほぅ、なるほどなるほど」

 

 そんな視線を見つめられながら、伊達はエロ本を見る。

 

 そして

 

「えーろーほーん……っ!!」

 

「『っ!!』」

 

「パワァァ──ーっ……!」

 

 伊達はエロ本を読み終えると同時に叫び出す。

 

 それと同時に、まるで伊達を中心に衝撃波が広がったかのように白野とダーゴンを吹き飛ばした。

 

「見せてやるぜ、人間の力を、とぅ!!」

 

 それと共に伊達はそのまま素早くダーゴンの目の前に迫る。

 

 一瞬で接近された事に気づいたダーゴンはすぐに、その拳を伊達に向けて振り下ろす。

 

 振り下ろされた拳は、コンクリートの道を軽々と砕き、その拳の、ダーゴンの怪力の凄まじさを証明していた。

 

 だが、伊達はその拳を避けると共に、素早く蹴り上げる。

 

『なっ』

 

 一撃はそれ程重くなかった。

 

 だが、ダーゴンはそれよりも自身の攻撃が人間に避けられた事に驚きを隠せなかった。

 

 そんなダーゴンの隙を見逃さないように、伊達は続けて攻撃を繰り出す。

 

 腕を振り回すダーゴンに対して、伊達は冷静に、最小限の動きで避けていく。

 

 それを見た白野は、伊達の戦い方を見て、思わず驚いていた。

 

 彼の動きは、今まで見たことの無い戦い方であり、それに驚いたのだ。

 

「これが、人間の力っ」

 

『まさか、人間がここまで強くなっているとはっ』

 

 その伊達の動きに驚きを隠せない白野と伊達は思わず呟く。

 

 だが

 

「いや、ただの変態だから」

 

 みずきは冷たく呟く。

 

「急げ、白野!」

 

「っそうだった!」

 

 伊達の言葉を聞くと共に白野は頷くと共に、そのままガッツスパークレンスにガッツハイパーキーを挿入する。

 

「未来を築く、希望の光!! ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

 その叫び声と共に、白野はすぐにウルトラマントリガーへと変身する。

 

 白野がウルトラマントリガーへと変身すると同時に、既に空中で待ち構えていたツイフォンがその両手鎌で襲い掛かってくる。

 

 瞬時に白野はその手にサークルアームズを召喚すると共に、攻撃を仕掛けてきたツイフォンの両手鎌を受け流す。

 

 だが、その空中から襲い掛かってきた勢いは凄まじく、そのまま白野は地面へと倒れる。

 

 そうしている間に、ツイフォンはそのまま再び空中へと飛びながら、そのまま再び白野に襲い掛かる。

 

 高速で空を飛びながら、何度も白野に攻撃を仕掛けていく。

 

 白野もすぐに空を飛ぼうとしたが、ツイフォンはその隙を与えないように攻撃していく。

 

 何とかして白野は両手鎌の攻撃を防ぐのが精一杯であった。

 

 このままでは白野には勝機が無いと判断したのか、襲い掛かる攻撃に対して、サークルアームズで受け止めるのではなく、避けて逃げ回る事で回避する。

 

 しかしツイフォンもまた、白野を追うように動き回っていた為、中々白野はツイフォンと戦う事が出来なかった。

 

「伊達のように素早かったらっ」

 

 そう先程の伊達の動きを見ながら、呟いた瞬間だった。

 

 その言葉と共に白野の懐にあったガッツハイパーキーが青く光り始めた。

 

 

 

「これは、もしかしたら!」

 

 同時に白野は頷くと共に、そのままガッツハイパーキーをガッツスパークレンスにセットする。

 

【Ultraman Trigger Sky Type! Boot up! Runboldt!】

 

「天空を駆ける、高速の光!! ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

【Ultraman Trigger Sky Type!】

 

 音声が鳴り響くと共に、その姿は紫と水色が中心のカラーへと変わり、胸部のプロテクターはカラータイマーの下を通り抜ける形状になる。

 

 

 

 その変化が起きると共に、その手に持っていたサークルアームズの形態を刃を180度に展開し、サークルアームズをスカイアローへと変形する。

 

 襲い掛かるツイフォンに対して、姿を変えたサークルアームズの光の弦と矢が形成し、襲い掛かるツイフォンに対して、白野は構える。

 

 襲い掛かる両手鎌を、そのサークルアームズで防ぐ。

 

 それと共に白野は光の弦を引き、ツイフォンに向けて矢を放つ。

 

 これまでの攻撃とは変わり、ツイフォンは驚きを隠せず、後ろに下がる。

 

 それと共に、白野は身体に力を込めると共に宙を舞う。

 

 白野がツイフォンと空中戦を行い、互いに地上からは援護できないような高さまで飛び上がった後、白野はサークルアームズを構え直す。

 

 一方でツイフォンの方は、先程までの空中からの攻撃を封じられてしまい、逆に追い詰められた事を理解する。

 

 その事にツイフォンは動揺を隠しきれなかった。

 

 空中では、ツイフォンの方の優位性はなかった。

 

 さらには、白野のその手に持つサークルアームズはこれまではできなかった素早い遠距離攻撃が可能となった弓矢形態へとなる事ができる代物だ。

 

 ツイフォンは追撃を行うように、すぐに白野に迫るが、まるでその攻撃が来るのが分かるように、白野は光の弦を引くと共に、その矢はそのままツイフォンへと向かっていく。

 

 それに対してツイフォンは、その攻撃を避け、反撃を行おうとするが、白野は既に次の矢を引いていた。

 

 そして放った光の矢はそのままツイフォンに直撃し、地面に落下させる。

 

【Maximum Boot Up! Sky!】

 

 それと共に地面へと向かって、落ちていくツイフォンに向けて、最後の一撃を放つ為に、スカイタイプのハイパーキーをサークルアームズに装填する。

 

 それと共にこれまでの光の矢とは異なる青い閃光の矢が生成され、それを放つ。

 

 放たれた青い矢はそのままツイフォンに命中し、ツイフォンはその攻撃を受け止める事は出来ずそのまま地面に墜落していく。

 

 墜落すると同時に、その値を中心にツイフォンは爆散する

 

 

 

 それにより、戦いは終わりを迎える。

 

『どうやら、実験は失敗に終わったようだな』

 

 戦いの決着を見たダーゴンは納得すると共にすぐにその場から離れる。

 

「待てっ」

 

 そう言いながら、ダーゴンを追うとしたが、すぐに伊達の前に闇が現れ、行く手を防ぐ。

 

『また会おう、人間よ!』

 

 その言葉と共にダーゴンの姿は闇の中に消えていった。

 

「伊達、みずき、無事!」

 

 そうして、ウルトラマンの変身を解除した白野は真っ直ぐと伊達とみずきの元へと向かう。白野が変身を解除し、自分の方へと走って来るのを確認した伊達は安堵の息を吐く。

 

「どうやら、無事のようだな」

 

「うん、それよりも伊達、凄いよ! 

 

 あれが、エロ本の力!!」

 

「その通りだ、さぁ「いや、駄目だから」ぐえぇ」

 

 伊達はすぐに懐からエロ本を取り出そうとしたが、それをみずきが阻む。

 

「良い、白野。

 

 あんたが、この力を手に入れたら、本当に嫌いになるから!!」

 

「うぅ、みずきに嫌われるのは、嫌だ」

 

「分かったらよろしい。

 

 ほら、晩ご飯を食べましょ」

 

 それと共に、家に帰っていく。

 

 道路で気絶している伊達を放っておいて。



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妖麗な戦士

「伊達めっ、エロ本を買いに行く為に私を置いていくとはっ」

 

 そう言いながら、白野は目の前にいる存在に疑問を思いながら首を傾げる。

 

 それは金色の目を中心に、白い透明な肉で覆われており、形としてはハムスターを思わせる存在だった。

 

「……誰?」

 

「んっ、お前は白野だったか」

 

 白野がそう疑問に思っていると、その存在は白野に会うとそのままトコトコと近づく。

 

 少し不気味な印象を持つが、外見がハムスターによく似ている事もあって可愛らしく歩くその存在に白野は興味津々だった。

 

「私はアイボゥ。

 

 普段は伊達の左目にいる存在だ」

 

「伊達の?」

 

 その言葉と共に白野は伊達の左目が色が違う事を思い出す。

 

 同時に、その時の瞳の色が丁度目の前にいるアイボゥとまさに同じだった事に気づく。

 

「それじゃ、なんで、そのアイボゥが外に?」

 

「伊達の奴がエロ本を買う為に私を充電したまま出て行きやがった。

 

 今日は大事な運用日だと言うのに」

 

 そう言いながら、アイボゥは怒りの声を上げる。

 

「運用日?」

 

「あぁ、以前回収したギャラクトロンのデータを元に開発された兵器だ。

 

 それの操作が今日だと言うのに。

 

 仕方ない、悪いが白野、私をそこまで連れて行ってくれないか」

 

 その言葉と共にアイボゥはそのまま白野の頭に乗る。

 

「それは良いけど、なんで頭の上に?」

 

「その方が私が可愛らしいだろ」

 

「そういうもんなの?」

 

「そういうもんだ」

 

「そうなんだ」

 

 アイボゥの行動に疑問と共に聞いていくが、そのまま丸め込まれるように言われ、納得する白野。

 

「それでは、出発だ」

 

「おぉ」

 

 アイボゥの言葉を聞くと共に、家を出て行く。

 

「それで、どこに行くの?」

 

「ギャラクトロンはアビスの基地で保管されている。

 

 そこまで向かえば良い」

 

 そう、頭の上にいるアイボゥに質問しながら、白野は歩いていた。

 

 その姿は周囲からすれば異様な光景だが、白野は特に気にする事なく歩き続ける。

 

「それにしても、お前も記憶喪失だとはな」

 

「記憶喪失?」

 

「あぁ、伊達も少し前までは記憶喪失だったからな」

 

「それは、本当なの」

 

 それは、これまで知らなかった情報という事で、アイボゥに思わず聞いていく。

 

「6年前は、その全ての記憶を失っている。

 

 まぁ、今はその記憶を取り戻しているがな。

 

 だからこそ、お前にはいつも心配そうに見ていた」

 

「分かるの?」

 

「私は伊達の左目だぞ。

 

 その視線の方向ぐらいは分かるぞ。

 

 同時にお前がみずきに好意があるのもな」

 

「好意?」

 

 その言葉を聞いて、疑問に思うように首を傾げる。

 

「俺、みずきの事は好きだけど、伊達や他の皆も好きだよ」

 

「そういう意味ではないぞ。

 

 まぁ、君にはまだ早いかもしれないな」

 

「早いのか、アイボゥは俺が知らない事をいっぱい知っていて、凄いな」

 

「当たり前だろ」

 

 その言葉を聞きながらも、アイボゥと話をしながら歩いていると、目の前に人影を見つける。

 

 その人物を見て、白野は思わず立ち止まる。

 

 そこに居たのは、白髪の女性だった。

 

 肩と右足は勿論、胸元が開いて胸の谷間が露わになっており、白い布の様な物を羽織っている女性だった。

 

「誰?」

 

「っ、白野っ警戒しろ!」

 

「警戒?」

 

「久し振りだね、トリガー」

 

 その言葉と共に女性はゆっくりと白野に優しく声をかける。

 

「俺の事を」

 

「勿論だよ、私とお前は愛し合ったのだから」

 

「愛し合っただと?」

 

 女性の言葉にアイボゥは疑問に思いながら、言葉を続ける。

 

「あぁ、そうだよ。

 

 お前が私達を裏切って、封印した超古代から私達は愛し合っていた。

 

 まぁ、今のトリガーは記憶がないから仕方ないけど」

 

 その言葉と共に女性はゆっくりと近づく。

 

「トリガー、私達の元へと帰ってきな。

 

 お前に光は似合わない。

 

 私達、闇の勢力こそ、お前の居場所だよ」

 

 そう、甘い誘いの言葉と共に、白野に近づく。

 

 それに対して、白野はどうすれば良いのか困惑していく中で

 

「白野、お前はみずきの事が好きだったよな」

 

「みずき」

 

 そう、アイボゥの言葉を聞き、白野は目を見開く。

 

「機械人形が、何を言っている」

 

「私は単純な質問をしただけだ。

 

 白野、お前はみずきを思うと自然とポカポカとしないか? 

 

 目の前にいるあいつから、それは感じるか?」

 

「しない」

 

「だったら、みずきと離れるとどう思う」

 

「嫌っ!!」

 

「トリガーっ!!」

 

 白野はアイボゥの言葉を聞き、すぐに構える。

 

 そんな白野の態度を見て、女性は眉をひそめる。

 

「また、人間の女に手を出すのかっ」

 

 女性はそう言いながら、睨み付ける。

 

「俺は、みずきと一緒にごはんを食べたい。

 

 一緒に遊びたい! 

 

 だから、お前の所には行けないっ、カルミラ!」

 

「カルミラ?」

 

 その言葉にアイボゥは疑問に思うように首を傾げる。

 

「んっ、カルミラ? 

 

 なんで、俺、あいつの名前知っているんだ?」

 

 それは白野もまた同じだった。

 

「……まぁ良いわ。

 

 だったら、無理矢理連れて行けば良い話」

 

 同時にカルミラは指をパッチンと慣らす。

 

 それと共に、どこからか地響きがすると共に現れたのは怪獣だった。

 

「怪獣だとっ」

 

「こいつはガマクジラ。

 

 色々と便利そうだから、使っているけど、今はトリガー。

 

 あんたを捕らえる為に使うわ、やれ!!」

 

 その名の通りガマガエルとクジラを合成したような姿をした怪獣、ガマクジラはそのまま白野を飲み込もうと舌を真っ直ぐと向けて伸ばしていた。

 

 だが、それよりも早く、白野は腰にあるガッツスパークレンスを構える。

 

「未来を築く、希望の光!!」

 

 右手で持ち、掲げる。

 

「ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

 その叫びと共に、人差し指で変身トリガーを引く。

 

【Ultraman Trigger Multi Type!】

 

 鳴り響く音声と共に、白野の姿は光に包まれ、巨大化し、ウルトラマントリガーへと変身する。

 

 ウルトラマントリガーへと変身した白野はそのまま自身を飲み込もうとしていた舌を掴みながら、そのまま構える。

 

 ガマクジラは振り払おうと暴れるが、白野はそれを無視して、舌を掴んだまま地面に叩きつけた。

 

「グォオオオオッ!?」

 

 痛みに叫ぶガマクジラ。しかし白野はその隙も与えずにそのまま地面から引き剥がして投げ飛ばす。

 

「ジュアァアッ!」

 

 空中に投げ飛ばしたが、ガマクジラはそのまま舌で体勢を整えて着地する。そしてすぐに口から泡を吹き出して白野に向けて放つ。

 

 放たれた大量の泡を避けようとしたが、途中で軌道を変えてきたため、咄嵯に腕で防ぐ。

 

 だがそれで視界を防ぐ事には成功したのか、ガマクジラは勢いよく走り出す。

 

「っ!!」

 

 勢い良く突進してくるガマクジラの攻撃に対して、白野は避ける事はできず、防御する事しかできなかった。

 

 その結果、吹き飛ばされてしまい、ビルに激突してしまう。

 

 さらに追撃を仕掛けようとガマクジラは再び接近してくる。

 

 白野はすぐに手の先から青白い光弾を連続で発射する。

 

 だが、ガマクジラのその全身は、吹き出ている油によってか、光線は弾き返されてしまう。

 

 逆に跳ね返された光弾が命中してしまい、怯んでしまう。

 

 その間にガマクジラは跳躍すると、そのまま落下と同時に、押し潰すように白野に向かってくる。

 

 それを見た白野は、咄嵯に回避しようとしたが、間に合わなかった。

 

「ぐっ」

 

 その一撃を受けると共に、白野の胸元にあるカラータイマーが青から赤へと変わり、鳴り響く。

 

 鳴り続ける音が聞こえながら、白野に襲い掛かるガマクジラは何度もジャンプを繰り返しながら攻撃を繰り出してくる。

 

 なんとか避けてはいるが、それでも徐々にダメージは蓄積されていく。

 

(このままじゃ……)

 

 そう思った瞬間だった。

 

「待たせたな、白野」

 

 聞こえる声と共に、ガマクジラは吹き飛ばされる。

 

 何が吹き飛ばした存在を見つめる。

 

 ボディーカラーは抹茶と黒の迷彩柄。

 

 欠損していたギャラクトロンシャフトの代わりに予備バッテリーと弾倉を兼ねたバックパックを背負っており両肩に装備された二門の大型機関砲をしており、その機械怪獣に。

 

「ギャラクトロン?」

 

「これこそ、アビスが開発した機械怪獣。

 

 ギャラクトロン・アサルトだ!」

 

 それと共にギャラクトロン・アサルトを操縦するアイボゥは白野に話しかける。

 

 白野に手を伸ばすアイボゥに対して、頷きながらそのまま手を握り、立ち上がる。

 

 同時にガマクジラもまた、襲い掛かるように動き出した。

 

 それに対してアイボゥはバックパックに搭載されたミサイルポッドを展開し、一斉射撃を行う。

 

 それによりガマクジラはダメージを受けるが、まだ致命傷には至らなかった。

 

 再び突撃しようとしたが

 

【Ultraman Trigger Power type!】

 

 同時に白野の姿はマルチタイプからパワータイプへと変わる。

 

 それと共に、その手にはサークルアームズがあり、その形は刃を爪のように展開し二本となり、切る事よりも突く、叩く、押さえつけるといった打撃に特化したパワークローになっていた。

 

 パワークローを手にした白野はそのままガマクジラを切り裂こうとするが、それを察知したのか、すぐにガマクジラは飛び退く。

 

 しかし逃さないと言わんばかりに白野も追いかけるように走る。

 

 そしてガマクジラに追いつくと、そのまま背中に乗り込む。

 

 ぬるりっと、ガマクジラの油で落ちそうになるが

 

【Maximum Boot Up! Power!】

 

 鳴り響く音声と共に、パワークローに赤いエネルギーが集まると共にそれをガマクジラに直接叩き込む。

 

 そのまま力任せに振り下ろすと、ガマクジラの巨体が地面に倒れ込み、爆発したかのように大きく揺れ動く。

 

 やがてガマクジラの身体は塵となって消えていく。

 

「やったな!!」

 

「うん」

 

 そう言いながら、ギャラクトロン・アサルトと共に握手しながら、光へと変わっていく。

 

 そうして、ガマクジラを倒したその日の夜。

 

「そう言えば、アイボゥは今も俺の中にいるんだよな」

 

 それは、丁度変身する時に巻き込まれるようにアイボゥもいた。

 

「あぁ、同時にその時のデータによって、ギャラクトロンを上手く操作する為のデータも手に入ったからな」

 

 そうしながら、アイボゥは返答した。

 

「それにしても、あれ、どうしたら良いの?」

 

 そうしながら、白野はその目線の先にいる2人を見る。

 

「あんな巨乳で美人が白野の彼女。

 

 マジでか!!」

 

 そうしながら、アイボゥが写したカルミラの写真を見て、驚きを隠せない伊達。

 

 そして

 

「なによ、こいつ。

 

 乳でかいからだって、調子に乗って。

 

 えっ、私が好き? 

 

 いやいや、そんな訳、でも、うぅ」

 

 カルミラとの会話を聞きながら、その容姿に嫉妬しながらも、白野の言葉を思い出して、顔を赤くしながら転がるみずき。

 

「どうしたら良い?」

 

「とりあえず、放っておこう!」

 

 そう明るい声で、アイボゥは呟いた。



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その力の使い方

「以前から思っていたけど、あんたの武器って、結構変だよね」

 

 その日、白野と一緒にいたみずきが話しかけた。

 

「武器って、サークルアームズ?」

 

「そう、あの円みたいな奴」

 

 それと共に話題に出たサークルアームズの事についてを思い出す。

 

 丸い輪に鋭い刃が生えた形状をしており、刀身を動かすことで、後述の3つの形態に変形可能な武器である。

 

「けど、あんた、あんまり使いこなせていないように思うけど」

 

 その言葉に白野もまた納得するように頷く。

 

 白野も何度か使ってみたことがあるのだが、どうも上手く扱うことが出来ないのだ。

 

「ああいうのはね、慣れよ。何回も使っていくうちに段々と扱い方が分かってくるものなんだから」

 

「そういうもんかなぁ……」

 

 白野は少し不安になった。そんな白野に対して、みずきは呆れたような顔をしながら言う。

 

「まあ、あんたがどうしてもって言うなら、私が使い方を教えてあげても──―」

 

 そこまで言いかけた時だった。

 

「拘りすぎるんだ、お前は」

 

「んっ?」

 

 そんな話をしていると、人目を惹く程度には麗しい女性的な細面と丁寧で物静かな態度と柔らかい物腰の中学生くらいの外見の青年がいた。

 

「拘るって、何のことかしら、ねぇ白野」

 

「お前の事は既に知っているぞ、トリガー。

 

 それに伊達さんの娘」

 

「あぁ、もしかして、アビスのメンバー?」

 

「まぁな。

 

 一応は石上神道流という流派の皆伝であり所謂殺人剣の使い手だ」

 

「ふぅーん……まあいいわ。

 

 それで? さっきの言葉、どういう意味?」

 

「そのままの意味だ。

 

 サークルアームズという武器は距離を関係なく戦う事ができる万能な武器だ。

 

 だが、君はその力に最も発揮できる形に拘りすぎている」

 

「拘り過ぎているかな」

 

 それと共に白野はそのままみずきに向けて疑問を問う。

 

「そんなの、私が分かる訳ないでしょ」

 

 みずきは、そう呆れるように言った。

 

 そして白野は思う。

 

 そんな白野達の困惑を余所に、街に大きな騒ぎ始める。

 

 見ると、そこには額に一本の角と三つ口を持っており、肉食の獰猛な怪獣であるプラズマと、そんなプラズマとよく似た容姿をしており、大口を開けた間抜けそうな顔をしてはいる怪獣マイナズマ。

 

 その二体の怪獣が街に降り立っていた。

 

「どうやら、さっそく実践のチャンスらしいな」

 

「たく、行って来なさいよ、白野」

 

「うん」

 

 その言葉と共に白野もまた、走りながら、その手にあるガッツスパークレンスを構える。

 

「未来を築く、希望の光!! ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

【Ultraman Trigger Multi Type!】

 

 トリガーへと変身した白野もまたその手に持つサークルアームズをマルチソードにしながら、構える。

 

 プラズマとマイナズマはその身体から雷を放ちながら、白野に構えながら、真っ直ぐと襲い掛かる。

 

 白野もまた、サークルアームズを迫りくるプラズマとマイナズマに対して、横薙ぎの一閃を放った。

 

 ──―ガキィィン!! 激しい金属音が鳴り響きながら、プラズマとマイナズマの二体は同時に後ろへ跳躍すると、空中で一回転してから着地する。

 

 同時に2体はそのまま白野を囲みながら、襲い掛かる。

 

 サークルアームズで、その攻撃をいなしていくが、2対1では分が悪いのか、少しずつ押され始めていた。

 

 プラズマとマイナズマの攻撃によって、白野は段々と後退させられていく。

 

 そしてついに壁際まで追い詰められると、白野は咄嵯の判断で空高く飛び上がる。

 

 それを見たプラズマとマイナズマは同時にその角からレーザー光線を白野に向けて放つ。

 

 放たれたレーザーが当たり、爆発が起きると同時に煙が立ち込める中、マイナズマもまた襲い掛かる。

 

 しかしその時だった。

 

 立ち込めていた煙の中から、白い閃光が飛び出した。

 

 それは瞬く間にマイナズマに接近し、サークルアームズを振りかざす。

 

 だが、マイナズマはその大きな口でサークルアームズを受け止める。

 

 それと共にプラズマはすぐに白野に襲い掛かる。

 

 プラズマは鋭い爪を伸ばし、白野の腹部を狙う。

 

 それを察知した白野はすぐさま身を捻って回避するが、体勢が崩れてしまう。

 

 そこに追い打ちをかけるかのように、プラズマは尻尾を叩きつける。

 

 白野は何とかして受け流すも、吹き飛ばされてしまった。

 

「このままじゃっ」

 

 2体の怪獣の連携に対して、苦戦を強いられ、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている白野。

 

「どうすれば」

 

 その時、手に持つサークルアームズと共に

 

「そうか、俺は形に拘りすぎた」

 

 その言葉と共に、再び襲い掛かるマイナズマ。

 

 巨大な口を開く。

 

 だが、瞬時にサークルアームズの形が変形する。

 

 サークルアームズは剣の形をしていたマルチソードから刃を爪のように展開し二本の爪であるパワークローに変わり、そのまま襲い掛かるマイナズマの口を受け止める。

 

「ガグッゥ!?」

 

 あまりの力に苦しげな声を上げるが、それでも押し返そうとしてくる。

 

 白野も負けじと力を入れると共に、マイナズマを押し返す。

 

「っ!」

 

 それに驚きを隠せないプラズマはすぐに襲い掛かろうとする。

 

 だが、サークルアームズの形を刃を180度に展開し、弓を思わせる形態、スカイアローに変形すると共にプラズマの一本の角に向けて光の矢を射る。

 

 プラズマは咄嵯に身を捩るが、避けきれずにそのまま一本の角に命中。

 

 その瞬間、プラズマの角は砕け散った。

 

 更に続けてもう一発、マイナズマのもう一本の角に直撃させると、その角も砕ける。

 

 それと共に2体の怪獣はその攻撃に耐えきれず、互いに支えるように倒れる。

 

 それを見ると共にサークルアームズをマルチソードに再び戻す。

 

【Maximum Boot Up! Multi!】

 

 鳴り響く音声と共に、サークルアームズに巨大な光の刀身が伸びる。

 

 サークルアームズを両手で持ち、構える。

 

 そして走り出す。

 

 プラズマとマイナズマは起き上がろうと必死にもがく。

 

 だが、そんな2体に構わず、サークルアームズを振り下ろす。

 

 その一撃により2体は真っ二つになり、地面に倒れ、爆散する。

 

 無事に勝利を納めた白野。

 

 それを迎えるように、みずきは肩を叩く。

 

「やったじゃない。

 

 まさか、サークルアームズにあんな事ができるなんて」

 

「俺もびっくりした。

 

 そう言えば、さっきの人は」

 

「さぁね、どっか消えていったわ」

 

「そうなのか」

 

 そう、少し残念そうに言いながら、白野はそのままみずきと向き合う。

 

「それじゃ、帰ろうか、白野」

 

「うん」

 

 そう言いながら、白野はそのままみずきと共に家に帰る事にした。

 

「凄いな、さっきのヒーロー」

 

 そんな帰り道、聞こえた声にふと白野は見つめる。

 

 そこにはみずきと似た水色の髪をした眼鏡の少女がいた。

 

 一瞬、その声が気になったが、そのまま白野はそのまま家に帰る事にした。



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8話

「それで、白野、今日の晩飯はどうするつもりなの?」

 

 その日の学校帰り、白野とみずきは何時ものように近くにあるスーパーに立ち寄っていた。

 

 白野がみずきの家に居候するようになってから、ほとんどの家事は白野が行うようになっていた。

 

 その事もあってか、みずきと白野が打ち解けるのに、それ程時間は掛からなかった。

 

 小学生ながら、同棲している事もあってか、学校の生徒達はその事で噂する事は多かった。

 

 ただし、白野はそれがどのような事が理解しておらず、みずきはからかわれたらすぐに制裁を行う事もあって、この事は学校では本人達の前には話さないようにしていた。

 

「えーっと……今日はお肉を買おうかな」

 

 白野は買い物かごを手に取り、店内を見渡す。

 

 白野は、買い物かごの中に野菜類を入れる。

 

 だが、その時、白野は一瞬、背後から何か視線を感じて、振り返る。

 

「どうしたの、白野?」

 

 そんな白野の様子を見て、みずきは一瞬、首を傾げる。「ううん、何でも無いよ」

 

 白野はそう言って、笑みを浮かべる。

 

(何だろう? 今、誰かに見られているような気がしたけど……)

 

 しかし、周囲を見る限り、特に変わった様子は無かった。

 

 その為、白野は気にせず、再び買い物に戻る。

 

 だが、しかし。

 

「ふむ、記憶はなくても、本能で理解していたようですね」

 

 そんな白野を遠くから、観察する怪しい視線は確かにあった。

 

「しかし、あれがトリガーですか。

 

 気になる事は多くありますが、ふむ、とりあえずは実力を見ておきたいですねぇ」

 

 そう言いながら、男はその場から姿を消した。

 

 その後、二人は買い物を終えて、帰路についていた。

 

「ねえ、白野、今日は何を作るつもりなの?」

 

「ん~、そうだね……」

 

 白野は腕を組み、考え込む。

 

「やっぱり、カレーとかハンバーグかなぁ」

 

 白野の言葉を聞きながら、ゆっくりと帰路へと歩いていく。

 

 すると突然、空の方から爆音が響いてきた。

 

 見ると、そこにはまるで閻魔大王を思わせる怪獣エンマーゴが街を破壊していた。

 

 その姿を見た瞬間、白野とみずきはすぐに駆け出した。

 

 二人が現場に到着すると、そこでは人々が逃げ惑っていた。

 

「もぅ、こんなお腹が空いているのに!! 

 

 白野、さっさと倒してきて頂戴!!」

 

「うんっ、分かった」

 

 みずきの言葉を聞くと共に白野はすぐにGUTSスパークレンスを取り出す。

 

 そのままGUTSスパークレンスにガッツハイパーキーを挿入する。

 

「未来を築く、希望の光!! ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

 その叫び声と共に、白野はすぐにウルトラマントリガーへと変身する。

 

 

 

 同時に白野はウルトラマントリガーに変わると共に、その手にはサークルアームズをエンマーゴに振り下ろす。

 

 エンマーゴは、ウルトラマントリガーの存在に気づくと共に、その手に持った剣でサークルアームズを受け止める。

 

 互いの刃がぶつかり合い、激しい火花が散る。

 

 そのまま互いに力比べとなり、一歩も譲らない。

 

 しかし、次の瞬間、エンマーゴは口から火炎を放つ。

 

 それを食らい、ウルトラマントリガーは大きく後退する。

 

 その隙を逃さず、エンマーゴは一気にウルトラマントリガーに迫るエンマーゴはそのまま手に持った剣を何度も振り下ろす。

 

 ウルトラマントリガーはすぐにその手に持つサークルアームズで、その攻撃を受け止める。

 

 激しく、そして重い一撃がサークルアームズを通して、ウルトラマントリガーの腕に伝わる。

 

 このままでは不利と判断したのか、白野は一旦、距離を取る。

 

「勝利を掴む、剛力の光!! ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

【Ultraman Trigger Power type!】

 

 鳴り響く音声と共に、ウルトラマントリガーの姿は赤く変化し、迫り来るエンマーゴの攻撃を受け止める。

 

 パワータイプへと変わった事によって、先程以上の力が溢れてくる。

 

 そのまま、サークルアームズでエンマーゴの身体を押し返し、さらに連続で攻撃を加えていく。

 

 攻撃を受けたエンマーゴは怯んだように、後ろに下がる。

 

 そこにすかさず、ウルトラマントリガーは追撃を加えるべく、距離を詰める。

 

 だが、その時、上空から何かが降り注ぐ。

 

「っ!!」

 

 同時に上を見上げると、そこにいたのはこれまで見た事のない存在だった。

 

 見た目は闇の巨人と特徴が似ており、青、白、黒の三色を基調としたカラーリングで、右上腕部から右肩にかけて風を象った意匠が突出している。

 

「久し振りですね、トリガー」

 

「誰だ、お前は」

 

 その姿を見て、白野は疑問に思う。

 

「まったく、記憶喪失というのは本当のようですね。

 

 ですが、関係ありません。

 

 あなたをここで倒して見せましょう、このヒュドラムがね」

 

 そうヒュドラムは、右腕の短剣を構えた。

 

 ヒュドラムとエンマーゴの2体を相手に、ウルトラマントリガーは苦戦を強いられていた。

 

 まず、ヒュドラムの持つダガーヒュドラムと呼ばれる武器は、非常に切れ味が良く、その一閃だけでかなりのダメージを負う事になる。

 

 パワータイプへと変わった事によって、スピードが落ちている事もあって、ヒュドラムのスピードに翻弄される事になり、反撃の機会すら与えられない状況になっていた。

 

 また、エンマーゴの繰り出す剣技も厄介であり、ヒュドラムの素早い動きで回避されながらも、着実にダメージを与える事が出来ていた。

 

 しかし、それでもウルトラマントリガーは諦めなかった。

 

 負けじとエンマーゴに攻撃を仕掛けるが、その攻撃を軽々と避けられてしまう。

 

 それどころか、エンマーゴの攻撃が徐々に命中するようになり、ウルトラマントリガーは徐々に追い詰められていった。

 

 その様子を見て、ヒュドラムは嘲笑うかのように言う。

 

「トリガー、どうやらすぐに終わりそうですねぇ!!」

 

 その言葉と共に、ダガーヒュドラムでウルトラマントリガーを攻撃する。

 

 一方、エンマーゴは今度は剣で連続斬りを仕掛ける。

 

 その二つの猛攻の前に、ウルトラマントリガーは膝をつく。

 

 もはや、これ以上の戦いは不可能かと思われた時だった。

 

「があぁぁ!! 

 

 なんだぁ!!」

 

 ヒュドラムの身体に火花が散る。

 

 後ろを見れば、それは戦闘機だった。

 

 音もなく迫ってきた事もあり、その接近を直前まで気づく事ができなかった。

 

「まったく、人間如きが「ジュワァ!!」なっ!!」

 

 一瞬、後ろを見ていたヒュドラム。

 

 しかし、それが決定的な隙となった。

 

 ウルトラマントリガーはすぐにその場で力を込めて、ヒュドラムを蹴り上げる。

 

 それによって、ヒュドラムは遠くに吹き飛ばされた。

 

 しかし、そんなウルトラマントリガーに向かって、エンマーゴは襲い掛かろうとしたが

 

【ブーストアップ! チャージドパーティカル!】

 

 そんな音声と共にエンマーゴに向かって、巨大な光線がエンマーゴを襲い掛かる。

 

「白野! 

 

 さっさと決めなさいよ!!」

 

 その光線を撃ったのは、みずきだった。

 

 みずきの言葉を聞くと共に、頷くと、そのまま手に持ったサークルアームズを構える。

 

【Maximum Boot Up! Power!】

 

 音声が鳴り響くと同時に、サークルアームズの刀身に赤い光を纏わせる。

 

 そして、それを頭上で回転させながら構えると、一気に駆け出した。

 

 ウルトラマントリガーは、その勢いのままに高く飛び上がる。

 

 すると、サークルアームズは巨大で真紅に輝く光の刃を、真っ直ぐとエンマーゴに向けて振り下ろした。

 

 その一撃を受けたエンマーゴは完全に倒された。

 

「ぐっぐうううぅ人間如きがぁ!!」

 

 それを見た、ヒュドラムは怒りの声を上げる。

 

【Ultraman Trigger Sky Type!】

 

 だが、ヒュドラムの周囲にはいつの間にか、トリガーの姿があった。

 

 先程の攻撃を行った後、瞬時にスカイタイプへと変わると共に、ヒュドラムの背後に回り込んだのだ。

 

 それに気づいたヒュドラムは慌てて振り返ろうとするが、それよりも早くトリガーはヒュドラムの背中に、サークルアームズを叩きつける。

 

 それにより、ヒュドラムは大きく吹っ飛んだ。

 

「てめぇ、この野郎!!」

 

 その言葉と共にヒュドラムがそのまま襲い掛かろうとしたが、その後ろに闇のゲートが広がる。

 

「ヒュドラム、もう帰るぞ」

 

「離せ! 

 

 あの野郎は俺が始末する!!」

 

 闇のゲートから現れたダーゴンがそのまま闇のゲートの中へと連れて行く。

 

 暴れるヒュドラムをそのまま無理矢理、闇のゲートへと連れて行く。

 

 それと共に、ゲートの中にいたカルミラが見つめた先には

 

「やっぱり邪魔だね、あの小娘は」

 

 そう、視線の先にはみずきがいた。

 

 それだけ呟くと、そのまま闇のゲートの中へと消えていった。

 

 そうして、戦いが終わると共に白野もまた変身を解除した。

 

「白野、お疲れ」

 

「うん、ただいま」

 

 白野は笑顔を浮かべたまま、水樹の方を見る。

 

 しかし、すぐに表情を変えると、心配そうな顔で話しかける。

 

「大丈夫? 怪我とかしていない?」

 

「えっ!? あっ……うん、平気だよ!」

 

 いきなり白野に問いかけられた事に驚きながらも、笑みを見せる。

 

 白野はその言葉を聞いて安心したのか、ほっとした様子を見せた。

 

「そっか、良かった。じゃあ帰ろう」

 

 そんなみずきに連れられながら、ゆっくりと帰って行く。

 

 




「まったく、少しは落ち着いたか?」
「えぇ、申し訳ございません。
それにしても、やはり厄介ですね、トリガーは」
「さすがは我が友だな」
「けど、邪魔なのは変わりないね」
「でしたら、これを使うのはどうでしょうか?」
そう言いながら、ヒュドラムが取り出したのは一本のGUTSハイパーキーだった。
「こいつを?」
「えぇ、上手く行けば、我々が動いている間、トリガーの動きを封じられます」
「ふぅん、面白いじゃない」


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9話

 白野は、まるでその森に導かれるように迷い込んでいた。

 

 

 

 周りは見渡す限り樹木ばかりであり、どこへ進めばいいのか分からない。

 

 ただ一つ分かることは、この森が尋常ではないということだけだ。

 

 木漏れ日の射す森の中は薄暗く、人の手が加えられていない自然の美しさがある。

 

 しかしその一方で、人を拒むような異様な雰囲気があった。

 

「……ここは、一体どこなんだ」

 

 小学校の授業を終え、何時ものようみずきと一緒に帰っていたはずが、何時の間にかこの場所に立っていた。

 

 学校からここまで歩いてきた道のりを覚えているし、間違いなく今までいた場所と同じ街だというのは間違いない。

 

 だが目の前に広がる光景はどう見ても街の中ではなく、木々や草花が生い茂る森林だった。

 

「それよりも、みずきは」

 

 そんな不安な状況よりも、白野が最初に考えたのは、一緒にいたはずのみずきの行方だった。

 

 この不思議な現象に巻き込まれたのは自分だけなのか、それとも彼女も同じ場所にいるのか。

 

 どちらにせよ一刻も早く彼女を探さなければと焦るが、どこに行けばいいのか皆目検討もつかない。

 

 途方に暮れて立ち尽くしていると、不意に背後から声をかけられた。

 

 振り返るとそこには、巨大な目がこちらを睨んでいた。

 

 金色の鎧を思わせる外殻を持ち、その巨体は怪獣と呼んで差し支えないだろう。

 

「まさか、これは、あの怪獣が」

 

「正確には、あの怪獣ともう一体の怪獣が作り出しているのよ、トリガー」

 

 そう、白野を呼ぶ声に後ろを振り返る。

 

 そこに立っていたのは

 

「カルミラ」

 

 それは、白野の敵対している相手の1人である闇の三巨人の1人にして、リーダー格であるカルミラだった。

 

 白野はすぐにGUTSスパークレンスを、真っ直ぐとカルミラに向ける。

 

「ここは一体どこだ」

 

「ふふっ、情熱的じゃないかい、トリガー。

 

 まぁ、慌てる必要はないわよ、この空間には私達の邪魔をするあの小娘はいないわよ」

 

「……どういう事だ」

 

 カルミラの言葉に、疑問に思いながら、カルミラに問いかける。

 

「この空間は、あのゴルドラスとこことは別の空間にいるシルバゴンの2体で形成された異空間。

 

 この異空間を脱出するには、その2体を倒す必要がある」

 

「なんで、そんな説明をする」

 

「無駄だからよ。

 

 シルバゴンはここではない遠い未来で実体化させている。

 

 それを倒す手段は、今のあなたにはない」

 

 カルミラはそう言いながら、ゆっくりと、まるで誘うように白野に手を向ける。

 

「トリガー、あんたにはあの小娘や、人間の生活は似合わない。

 

 また、私と一緒に破壊と殺戮を楽しもうじゃない!」

 

 そしてカルミラの手から伸びたのは光の鞭だった。

 

 鞭はそのまま白野を捕らえる為に伸びるが、それを白野は避ける。

 

 しかし鞭の動きは素早く、白野を捉えようと何度も襲う。

 

 白野はそれを何とか避けながらも、隙を見てスパークレンスを向けた。

 

 しかしカルミラはその動きを読んでいたかのように、指先から光線を放ち、白野の体を拘束する。

 

 そのまま地面へと叩きつけられ、身動きが取れなくなった白野にカルミラは近づく。

 

「くそっ! 離せ!!」

 

「ほらほら、暴れても無駄だって」

 

 抵抗するも全く意味はなく、白野は無力にも地面に押さえつけられる。

 

 カルミラは動けない白野を見下ろしながら笑みを浮かべた。

 

「ふふっ、なぁに心配する必要はないよ、トリガー。

 

 ここで、あんたをたっぷりと可愛がってあげるわ」

 

 そうカルミラは言うと、ゆっくりと近づく。

 

 だが

 

「とぉりゃあああぁぁぁぁ!!!」

 

 聞こえてきた叫び声。

 

 その声と共に白野に近づくカルミラに対して、攻撃を仕掛けた人物がいた。

 

 その事にカルミラは驚きを隠せず、目を見開きながら、避ける。

 

「誰だい、あんたは!」

 

「私を忘れたとは、良い度胸じゃない。

 

 ここがどういう場所か分からないけど、丁度良いわ。

 

 あんたをここでぶっ倒すわ」

 

 その言葉と共に、その攻撃を仕掛けた人物の姿を目に見える。

 

 腰まで届く水色の髪は三つ編みに結ばれており、女子高生を思わせる衣服を身に纏いながら、その手に持っているのは近未来を思わせる鉄パイプだった。

 

 その後ろ姿しか見えない白野は疑問に思いながら、どこか見覚えのある女性に疑問に思っていた。

 

「誰だか知らないけど、邪魔をする以上は容赦はしないわよ」

 

 そうしながら、未だに鞭によって、身動きが取れない白野に変わって、女性に向けて、カルミラはそのまま鞭を振る。

 

 その攻撃に対して、女性はその手に持った鉄パイプで弾いた。

 

 弾かれると共に、そのまま女性は真っ直ぐとカルミラに向かって走る。

 

 そしてその勢いのまま拳を突き出した。

 

 だが、カルミラもただ黙っているわけではなく、その攻撃を難なく避ける。

 

 するとカルミラは、その女性の足を払うようにして蹴り上げた。

 

 その一撃を受けて、女性は体勢を崩すが、まるで舞うようにくるりと回転して着地した。

 

 カルミラは、そのまま手に持った鞭をまるで剣のように固定化させると共に、そのまま女性に接近する。

 

「はあぁぁ!」

 

「ふんっ!!」

 

 その剣と、鉄パイプがぶつかると共に、火花を散らす。

 

 そこから、互いに一歩も引かずに攻防を繰り広げていた。

 

 一方、白野はというと、ようやく拘束が解けて立ち上がると同時に、目の前の女性に視線を向ける。

 

 その顔立ちに、白野はどこか既視感を覚えた。

 

(なんだ、この感覚は)

 

 それが何なのか分からず、思わず眉間にシワを寄せている中で、戦いは激化していく。

 

 その決着をつけたのは以外な一撃だった。

 

 女性はカルミラの攻撃を受け流しつつ、懐に入ると、そのまま腹部に回し蹴りを叩き込んだのだ。

 

 カルミラもその衝撃で後ろに下がる中、女性は腰からとある武器を手に持つ。

 

「あれって」

 

【ブーストアップ! トルネード!】

 

「空の彼方まで吹き飛べえええぇぇ!!!」

 

 女性は、その武器の銃口から吹き出る突風は、カルミラを上空へと打ち上げる。

 

 カルミラは、抵抗する事すら出来ずに、そのまま遠くへ飛ばされていった。

 

 それを見た白野は、女性が構えた武器を見て、確信する。

 

 それはGUTSスパークレンスと、同じ形をした物だった。

 

「それは」

 

「君っ、大丈っ」

 

 そう、女性はそのまま白野の方へと向ける。

 

 心配そうに見つめた表情は一変。

 

 それは、信じられない物を見るような瞳だった。

 

 青く透き通るような目と、まるで機械を思わせる金色の目。

 

 それは両方とも見たことがあり、その顔立ちは、白野はとても知っている。

 

「白野」

 

「みずきなの?」

 

 それは白野にとっても信じられない人物だった。

 

 小学校で、同級生であり、一緒に暮らしているみずきが高校生ぐらいに一気に成長している事に。

 

「アイボゥ、これって。

 

 やっぱり、本物なの」

 

 そう、みずきは驚きを隠せず、そのまま白野を抱き締める。

 

 まるで、いなくなった大切な存在を、やっと見つけたかのように。

 

「みずきなの?」

 

「うんっ、私だよっ、白野っ」

 

 白野の言葉に、嬉しそうに答える。

 

 その姿は、白野が知るいつもの姿ではなく、少し大人びた容姿になっていた。

 

「でも、なんで? 

 

 みずきは、俺と同じぐらいだったはずだけど」

 

『おそらくだが、この時空は未来と繋がっている為だろう』

 

 そうして、みずきの目から飛び出たのは

 

「アイボゥ? 

 

 なんで」

 

『悪いが、詳しい事情は話せない。

 

 未来の情報を話せば、本来辿るはずだった歴史が大きく崩れる可能性もあるからね』

 

「本来の歴史」

 

 そう、みずきの表情は暗くなっていた。

 

 それが、どういう意味なのか、白野はなんとなく察した。

 

「みずき」

 

「うぅん、分かっている。

 

 歴史は、元に戻さないといけない、だけど」

 

「未来で、何が起きるか分からないけど、俺は絶対にみずきの元に帰るよ。

 

 過去でも、未来でも」

 

「っうん」

 

 その言葉と共に涙を流しながら、頷く。

 

『だが、どうやってこの空間から脱出する?』

 

「カルミラが言っていたけど、未来にいる怪獣をなんとかしないらしいけど、どうすれば」

 

『未来、もしかしたら、可能性はあるかもしれないな』

 

「どういう事、アイボゥ」

 

『私に任せたまえ』



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10話

新たに活動報告で募集しております。
皆様の応募、お待ちしています。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=285818&uid=45956


「それで、倒すのは、その怪獣で間違いないのかな?」

 

『あぁ、おそらくな』

 

 そう言いながら、白野はみずきの上に乗っているアイボゥと共に目的地に向かっていた。

 

『お前が私達の前にいる事、そしてカルミラの言葉からもこの事件はあの怪獣ゴルドラスが関係している事は間違いないだろう。

 

 時空が既に変わっているならば、直前の私のデータも大きく変わっているはず。

 

 それが、変わっていない以上』

 

「ゴルドラスは倒せている。

 

 それって、向こうにいる怪獣も倒せた可能性があるという事」

 

『その通りだ。

 

 だがらこそ、白野。

 

 今回はお前が頼りだ、分かっているな』

 

「うん、任せて! 

 

 みずき達を絶対に元の時代に戻すから」

 

 そう白野は言う。

 

 同時にみずきの顔が一瞬、暗くなっていた。

 

「みずき、俺」

 

 そうみずきに言葉を言おうとした瞬間、聞こえた叫び声。

 

 見ると、ゴルドラスがこちらまで迫っていた。

 

『白野!』

 

「っうん! 

 

 勝利を掴む、剛力の光!! ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

【Ultraman Trigger Power type!】

 

 その言葉と共にウルトラマントリガーへと変身した白野はそのまま、この森の主というべき怪獣ゴルドラスへと構える。

 

 ゴルドラスもまた、白野の存在を確認すると共に、咆哮を放つと共に角から閃光を真っ直ぐと放ってくる。

 

 白野はすぐにその場を避ける。

 

 そして、手の先から青白い光弾を連続でゴルドラスに向けて、発射する。

 

 だが

 

「グルルルルッ」

 

 ゴルドラスは、その光弾に対して、その角から出た金色のバリアで白野に向けて跳ね返す。

 

 それに一瞬驚いた白野だが、すぐにその手にサークルアームズを呼び出す。

 

 そして、そのまま跳ね返ってくる光弾を切り落とした。

 

 同時に白野はそのまま真っ直ぐとゴルドラスに向けて、サークルアームズの刀身を真っ直ぐと振り下ろした。

 

 振り下ろされた刀身に対しても、ゴルドラスはそのまま金色のバリアで、受け止める。

 

 同時に巨大な尻尾をまるで鞭のように振り回し、白野に襲う。

 

 襲い掛かる尻尾の攻撃に対して、無防備な状態の白野はそのまま吹き飛ばされる。

 

 その衝撃により、木々が倒れ、地面が大きく凹む。

 

 だが、それでも白野は起き上がる。

 

 それと同時にゴルドラスが今度は口から熱線を吐きだす。

 

 それに対して白野は即座に手に持つサークルアームズを盾にして防ぐ。

 

 その隙を狙い、ゴルドラスは突進してくる。

 

 それに対し、白野もすぐさま走りだし、回避する。

 

 しかし、ゴルドラスは、白野の動きに合わせるように方向転換し、再度突進を仕掛けてくる。

 

 それをなんとか白野は避けるが、その際に足を滑らせてしまい、転倒してしまう。

 

 そこにゴルドラスは容赦なく、襲い掛かる。

 

 だが、その時だった。

 

「キシャアアアァァ!!」

 

 聞こえた声、同時に見つめた先には、ゴルドラスとは違う白い怪獣だった。

 

 その怪獣は、まるで砲弾のように吹き飛ばされて、ゴルドラスにぶつかる。

 

 その衝撃にゴルドラスは怯み、その瞬間に怪獣は、その怪獣を睨む。

 

 同時に白野は疑問に思い、その横を見つめる。

 

 未だに霧に包まれており、それが僅かに人の形をしているのが僅かに分かる程度。

 

 だが、その身体は白野と同じく巨人である事がなんとか分かる程度だった。

 

 胸元には、トリガーとしての姿で、特徴的なカラータイマーが僅かに見えており、多くの共通点が見える。

 

「……」

 

 それが、誰なのか、白野は分からない。

 

 それでも、今は怪獣を立ち向かう為に、力を合わせるべき存在だと認識した。

 

 未だに霧の向こうで、その正体が分からない中でも、白野は再びゴルドラスともう一体の怪獣に向けて構える。

 

 怪獣達も再び咆哮と共に、白野達に向かって襲い掛かる。

 

 それに対して、白野はゴルドラスに、もう1人の巨人はもう一体の怪獣と戦い始める。

 

 ゴルドラスは先程と同様にバリアを張り、攻撃を防ぐと同時に光線を放つ。

 

 それに対して白野はそのバリアに拳をぶつけることで相殺させる。

 

 そして、ゴルドラスに反撃しようと駆け出す。

 

 しかし、その前にゴルドラスの前足が振るわれ、白野はそれを回避する。

 

 同時に、その前足の爪による一撃が地面に激突すると、その部分が爆発を起こす。

 

 それにより、周囲に煙が立ち込める。

 

 それを見た白野はすぐに警戒するように構えるが、その煙の中からゴルドラスが飛び出し、角から光線を放ちながら突進する。

 

 白野はそれをギリギリで回避するが、その隙を狙って、ゴルドラスの尻尾が襲い掛かる。

 

 それに気づき、すぐに白野は後ろに飛ぶことで避けようとするが、間に合わず、そのまま吹き飛ばされてしまう。

 

 だが、白野もただではやられないとばかりに、ゴルドラスに向けて蹴り飛ばす。

 

 だが、ゴルドラスはゆっくりと近づく。

 

 危機的状況は、白野も、もう一体の巨人も同じだった。

 

 その時だった。

 

 白野の持つGUTSハイパーキーが光輝く。

 

 それは、もう一体の巨人も似たような反応をした。

 

 疑問に思いながらも、白野はそのまま手に持ったGUTSハイパーキーを翳す。

 

 同時に、もう一体の巨人が出したカード。

 

 そのカードは、白野の持つサークルアームズへと集まる。

 

 それと共にサークルアームズは大きな変化が起き、そのまま互いの手に新たな武器を手に持つ。

 

 2人の手に持った武器の特徴は多々あるが、それでも同じ武器だというのか分かる。

 

【Boot up! Dual Sword! Dual Sword!】

 

 その音声と共に、白野はその武器、ウルトラデュアルソードを構える。

 

 黄金に輝く刀身はまるで鏡のように輝き、その剣先からは光が溢れる。

 

「ふぅ」

 

 そのままウルトラデュアルソードを真っ直ぐとゴルドラスに向かって、振り下ろす。

 

 それに対して、ゴルドラスはその斬撃を受け止める為に、その黄金のバリアで防ごうとした。

 

 だが、ウルトラデュアルソードは、その黄金のバリアを簡単に切り裂く。

 

 そして、そのままゴルドラスを一閃した。

 

 それと共に、白野の手には先程のカードが二つを、そのままウルトラデュアルソードにスキャンする。

 

【デッカーフラッシュ! トリガーマルチ! デュアル! フラッシュマルチスクラム!】

 

 鳴り響く音声と共に、ウルトラデュアルソードから虹色を思わせる光を真っ直ぐとゴルドラスに放つ。

 

 放たれた虹色の光を受けたゴルドラスは、そのまま爆発し、消滅した。

 

 その様子を見た白野は、変身を解く。

 

 既に森に霧によって、視界は遮られており、互いに正体は分からない。

 

 それでも、白野の手に持つ新たな力は、遠い未来の誰かとの絆。

 

 そう思わせる力だった。

 

 そして、そのまま変身は解除されると共に、そこにはみずきがいた。

 

「みずき」

 

「これで、お別れなんだね」

 

 そうしていたみずきは寂しそうな笑みを浮かべていた。

 

「お別れ、じゃないよ」

 

「えっ?」

 

「未来で、何が起きるか分からないけど、でも、俺は絶対にみずきに会うよ。

 

 だから、みずきは待っていてね」

 

 そう白野はみずきに笑みを浮かべる。

 

「ぷふぅ、本当、白野に慰められるとはね。

 

 分かったわ、あんたの事を、何時までも待ってあげる。

 

 だから」

 

 そうすると、みずきはそのまま白野に近づく。

 

 同時にその唇を塞がれる。

 

「私に寂しい思いをさせた分、絶対に返しなさいよ」

 

 その言葉を最後に霧は晴れた。

 

「……」

 

 霧が晴れた後、白野は頬を赤くしたままだった。

 

「あぁ、いたぁ!!」

 

 そうしていると、後ろから来たみずきの声に振り返る。

 

「あれ、白野、どうしたのよ、その顔は」

 

「えっと、なんでもっ、ないよ」

 

「んっ?」

 

 白野の様子に変化した事に、みずきは驚きを隠せなかった。

 

「ちょっ何が起きたのよ!!」

 

「少しびっくりな事が起きて」

 

「ちょっ、白野!! 白野!!!」



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11話

 その日はみずきに連れられて、とある喫茶店に来ていた。

 

 白野は最初は何が目的なのか、分からなかったが。

 

「あぁ、お姉様!!」

 

 そう言いながら、みずきを呼んでいたのは女子高生だった。

 

 明らかにみずきよりも年上という事もあり、白野は何が起きているのか、困惑してしまう。

 

「あぁ、白野には初めてだったわね」

 

「申し遅れました。

 

 私、稚枝絆と申します。

 

 お姉様というのは、私の方から呼ばせて貰っています」

 

「そうだったのか」

 

 多少の困惑はあるが、白野はそのまま受け入れるように頷く。

 

「それで、相談って、一体どうしたの?」

 

「実は、最近、施設の子で少し怪しい動きをしている子がいまして」

 

「怪しい?」

 

「その、ナイン君と言うんです。

 

 普段から良い子なんですけど、最近、悪い子と繋がっている噂がありまして、それで」

 

「心配になって、私に相談した訳ね」

 

「はい、それに、その奇妙なアイテムを持っていまして、なんというか、USBのような」

 

「まさか、それって」

 

「うん」

 

 その証言を聞くと共に、何かを察したみずきはすぐに白野の方へと目を向ける。

 

「任せて、その子は私達がなんとかするから」

 

「本当ですか!!」

 

「えぇ、任せなさい! 

 

 という事で、白野!」

 

「うん!!」

 

 それと共にみずきに言われると共に、白野もまた動き出した。

 

 まずはナインの居場所を探る為に、街を歩き回る白野とみずき。

 

 しかし、いくら探しても見つからず、時間だけが過ぎていく。

 

 そんな中で、二人は公園を見つける。

 

 そこでベンチに座っている人物がいた。

 

「あれって」

 

 それと共に、みずきは取り出したスマホの画像を見る。

 

 それは絆が探しているナインであった。

 

「あれが、ナイン?」

 

「そうだね、それじゃ、話しかけようか」

 

 それと共に、白野達はナインの元へと向かう。

 

 そして、声をかける前に、ナインの方がこちらの存在に気付いた。

 

 そのまま、立ち上がり、白野達の元にやってくる。

 

 その顔はどこか怯えた様子だ。

 

 まるで、二人を恐れているかのようにも見える。

 

「えっと、あなたがナインですか?」

 

「そっそうですけど」

 

 白野の言葉に続いて、みずきはすぐに質問を続ける。

 

「あんた、最近、何かやっているの? 

 

 なんだか、絆っちが心配しているけど」

 

「そっそれは「おいおい、ナイン君よぉ」えっ?」

 

 そうしていると、ナインの後ろから迫ってきたのは明らかな不良を思わせる男であった。

 

 金髪にピアスといった見た目をしており、一目見ただけで危険な相手だと分かる。

 

 そんな相手に白野は思わず警戒するが、それを制するようにみずきは一歩前に出る。

 

「えっと、その」

 

「おいおい、もうそろそろ次の仕事だろぉ。

 

 なんだぁ、そんな餓鬼相手に何をしているのかなぁ」

 

「そっそれは」

 

「仕事って、何をしている訳?」

 

「あれぇ、知らないの? 

 

 まぁ良いけど。

 

 こいつはなぁ」

 

 そう言いながら、ナインの懐から取り出したのはGUTSハイパーキーだった。

 

「こういうのを使っているんだよなぁ」

 

「やっぱり」

 

 その言葉と共にナインの顔は恐怖に満ちていた。

 

「おいおい、お前の所の施設にバレたくないんじゃないか? 

 

 だったら、ここで始末しないといけないよなぁ」

 

「そっそれは」『グワーム』

 

「さっさとやれよなぁ!!」

 

 同時に不良はそのままナインに差し込む。

 

 それと共にナインは怪獣の姿へと変わった。

 

「ほらほらぁ、さっさと始末しろ、ぶげぇ!!」

 

 そうしていると、みずきはそのまま不良を蹴り飛ばした。

 

「まったく、このバカ共は。

 

 白野!!」

 

「あぁ、分かった

 

 そのみずきの言葉と共に、そのまま白野もまた立ち上がる。

 

「未来を築く、希望の光!! ウルトラマントリガー!!」

 

【Ultraman Trigger Power type!】

 

 ウルトラマントリガーへと変身すると共に白野は目の前にいる怪獣を見つめる。

 

 その怪獣、クワームは骨を思わせる白い身体に首長竜を思わせる。

 

 クワームはそのまま白野に目を向けると共に、口から吐き出す赤い煙を白野に向けて放つ。

 

 白野はその攻撃をかわすと、そのままの勢いで走り出し、クワームに向かって拳を叩き込む。

 

 だが、その攻撃を受けてもなおクワームにはダメージはなく、逆に腕を振るって白野を吹き飛ばす。

 

 しかし、鋼鉄の身体を思わせるクワームは吹き飛ばされながらも地面に着地すると、そのままクワームに対して構えを取る。

 

 そして、クワームも白野が敵であると認識したのか、再び口から炎を吐きだすと白野を攻撃する。

 

 それに対して白野は地面を蹴ると空高く飛び上がると同時に、上空から光線を放つ。

 

 それはクワームの攻撃よりも早く放たれ、クワームに命中して爆発を起こす。

 

 しかし、僅かに火花を散らす程度しかダメージを受けていないクワームを見て白野は驚く。

 

「やっぱりダメか」

 

 クワームの装甲のような皮膚を貫く事が出来ない事を確認した白野は一度距離を取っていく。

 

 そう思いながらどうするかを考える白野に対し、クワームは口を大きく開くとそこから青いエネルギー弾を放ち、白野に当てていく。

 

 その攻撃によって大きく吹っ飛ぶ白野であったが、すぐに立ち上がると共に、すぐに姿が変わる。

 

「天空を駆ける、高速の光!!」

 

『Ultraman Trigger Sky Type!』

 

 鳴り響く音声と共に、白野の姿は青い姿、スカイタイプへと変わる。

 

 スカイタイプへと変わると共に、白野はそのまま空へと飛ぶ。

 

 クワームもまた白野に向けて、攻撃を行う為に、口を開けようとするが、それよりも先に白野の方が動き出す。

 

 スカイタイプへと変わった事による、スピードを大きく上がった白野は、先程とは比べ物にならない程の速度で移動を行い、一気に距離を詰める。

 

 それに気づいたクワームは慌てて口から青いエネルギー弾を放つが、それよりも前に白野の蹴りが命中し、クワームは大きく怯む。

 

 更に追い打ちをかけるように白野は連続で蹴りを入れ続け、最後に回し蹴りを当てて、クワームを吹き飛ばしていく。

 

 しかし、その硬い装甲は未だに大きなダメージを負わせる事は出来ず、むしろ怒りを買ったかのように白野に対して突進を仕掛けてくる。

 

「……そうだ」

 

 同時に、白野はとある考えを思いつくと共に、その手に以前の戦いで手に入れたGUTSハイパーキーを手に取る。

 

『Boot up! Dual Sword! Ready?』

 

 その音声と共に、その手に持っていたガッツスパークレンスの形は黄金の剣であるウルトラデュアルソードへと変わる。

 

 そして

 

『ティガスカイ! サージ! ウルトラコンボ!』

 

 まるで白野の思いに答えるように、その手には2枚のカードが現れ、そのままウルトラデュアルソードにスキャンする。

 

 音声が鳴り響くと共に、ウルトラデュアルソードの刀身には超低温の冷気を纏う。

 

 クワームは白野の方へと向けると共に再び炎を真っ直ぐと白野に向ける。

 

 それに対抗するように白野もまた、ウルトラデュアルソードを真っ直ぐと振り下ろす事によって、冷気を纏った斬撃が放たれる。

 

 斬撃はそのまま、炎を真っ二つに切り裂くと共に、グワームへと激突する。

 

 だが、斬撃は激突するだけであり、その装甲はダメージはなかった。

 

 しかし

 

『Maximum Boot Up! Sky!』

 

 グワームが怯んでいる間に、瞬時に接近した白野はそのまま手に持ったサークルアームズをスカイアローにして、構えていた。

 

 青い閃光の矢を発射してグワームを貫く。

 

 

 

「がっがあぁあ!!」

 

 同時に、その鋼鉄を思わせる身体はヒビが割れ、砕け散る。

 

 それは鋼鉄のような身体だったグワーム。

 

 しかし、その鋼鉄だからこその弱点だった。

 

 グワームが攻撃する炎は鋼鉄の身体を急速に高温の鉄に変える。

 

 その高温の鉄に対して、急速な冷気で冷やされる事によって、脆くなるのだ。

 

 だからこそ、白野はその熱を一気に冷却する事により、グワームの装甲を破壊したのだ。

 

 その結果、グワームは悲鳴を上げると同時に、その肉体は徐々に崩れていく。

 

 既に勝負あったと思ったのか、白野は一度地上に降り立つ。

 

 それと同時に、クワームは完全に力尽きるように倒れ込む。

 

 そして、ナインへと元に戻っていた。

 

「ぐっ、こいつ化け物めっ」

 

「まったく、くだらない事をして」

 

 そう言いながら、みずきは不良達を倒した後、白野とみずきはナインに目を向ける。

 

「それで、なんでこんな事をしたの?」

 

「……その、最初は出来心だったんです。

 

 怪獣になっている間は、本当に何もかも解放された感じだったので。

 

 それを不良達を見られて」

 

「脅された訳ね。

 

 まぁ、でも、ここで止まれて、良かったんじゃないの」

 

「それは」

 

「それに、ナイン君には心配してくれている人がいるから。

 

 絆さんとか」

 

「うぅ、そうですねっ」

 

 そう、ナインは涙を流しながら、ゆっくりと頷く。

 

「にしても、まさかこうした子供まで出回るとはね」

 

「やっぱり、あの闇の巨人をどうにかしないとね」

 

「うん、どうするか、だよね」

 

 そう、心配しながら、呟く。



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12話

 白野達の、その戦いは突然始まった。

 

 ウルトラマントリガーへと変身している白野は、目の前に襲い掛かる存在を見つめる。

 

「トリガー!!」

 

 それは、白野と敵対している闇の巨人の1人であるカルミラだった。

 

 カルミラは、その手から光の鞭を、白野に向けて薙ぎ払っていく。

 

 その光の鞭に対して、白野はサークルアームズの刀身で、その鞭で切り払う。

 

「ぐっ……!!」

 

「……っ」

 

 カルミラが振るう光の鞭は、かなりの威力があったのか、白野の腕に痺れを残す。

 

 しかし、そんな痛みなど気にもせず、白野は再び構えてカルミラに斬りかかる。

 

 だが、白野の攻撃に対して、カルミラは簡単に避けていく。

 

「ふっ!! はぁあああっ!!!!」

 

 そして、そのままカルミラは光の鞭を振るっていき、白野を追い詰めていく。

 

「くぅ……!!」

 

 それと共に、白野のカラータイマーが鳴り始める。

 

「頃合いだねぇ」

 

 それを見たカルミラは、自身の手から闇を放つ。

 

「私の呪術で、あんたを闇の巨人に戻してやるよ、トリガー!!」

 

 それと共にカラータイマーに向けて放たれた闇の一撃。

 

「ぐっ!」

 

 その闇は、そのまま白野を覆いつくしていく。

 

 それにより、白野は苦しみの声を上げながら倒れそうになる。

 

 だが、それを何とか堪える。

 

 身体を蝕むように闇が身体を覆っている中で、白野は意識を保つ。

 

(……このままじゃ)

 

 このままでは負けてしまう。

 

 そう思った瞬間、カルミラが放つ闇の中に、一筋の光が見えた。

 

 その光を見て、白野は目を開く。

 

(……そうだよね)

 

 この闇の中で、自分は諦めかけていた。

 

 何よりも、みずきが待っている事に。

 

「負けるかぁ!!」

 

 それと共に、白野は闇を薙ぎ払うように、両手に力を込め、そのままゼペリオン光線を放つ。

 

 放たれた光線は、そのまま闇を払う。

 

 払われた闇の先にある光へと、白野は向かう。

 

「はぁ! 

 

 んっ」

 

 それと共に飛び出した先の光景に驚きを隠せなかった。

 

 先程まで、町中ではなく、古代都市を思わせる光景だった。

 

「えっと、ここは? 

 

 というよりも、あれ?」

 

 それと共に白野は自分の身体を見る。

 

 先程までウルトラマンとなって戦っていたはずの自分が何時の間にか人間の姿へと戻っていた。

 

「これは一体っ」

 

 同時に鳴り響く地響き。

 

 すぐにその地響きのした方角を見ると、そこには闇の巨人達が暴れていた。

 

 3体の闇の巨人、カルミラ、ダーゴン、ヒュドラムだった。

 

「一体、どういう事なんだっ」

 

 白野は疑問に思いながら、すぐにガッツスパークレンスを取りだし、トリガーへと変身しようとした。

 

 だが

 

「あれっ、ない!?」

 

 変身する為のアイテムがない事に気づく。それと同時に、目の前に現れた存在。

 

 そうしていると共に、白野が目の前に現れた巨人。

 

 それは白野が変身するトリガーに、いや間違いなくトリガーだった。

 

「なんで、トリガーが?」

 

 疑問に思っている間にも、目の前にいるトリガーは白野に向かって襲い掛かろうとした。

 

 だが

 

「っ!」

 

 そんなトリガーから放たれた光線を、白野に襲い掛かろうとした瞬間。

 

 誰かが白野を守った。

 

「…………」

 

 白野を守るようにして現れた人物、それはみずきによく似ていた。

 

 白いローブを身に纏っており、フードを被っているため顔は見えない。

 

「誰?」

 

 白野の言葉と同時に、トリガーはその女性へ攻撃を仕掛けようとする。

 

 女性はすぐに手を翳すと、そこから光の紋章の盾で防いだ。

 

「ぐっ」

 

「どうすれば、これは」

 

 それと共に、白野が手に持っていたのはGUTSハイパーキーだった。

 

 すぐにGUTSハイパーキーを起動させると、ウルトラデュアルソードが手元に現れた。

 

「だったら!!」

 

『レッドキング! エレキング! ブラックキング! デュアル! トリプルモンスクラム!』

 

 その音声が鳴り響くと同時に、ウルトラデュアルソードから出てきた3体の怪獣が現れ、トリガーを吹き飛ばす。

 

「怪獣を召喚した!?」

 

「とにかく、早く逃げよう」

 

 白野はそう言い、少女の手を掴んでその場から離れていった。



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13話

 突然、連れてこられた場所。

 

 白野はそう言いながら、周りの光景を見る。

 

 そこは、白野はゆっくりと見渡す。

 

 現代で生活をしていた白野にとっては驚きを隠せない光景だった。

 

 だが、自然と思ったのは、懐かしいという気持ちだった。

 

「お前は一体何者だ」

 

 そうしながら、フードで顔を隠していた人物の顔を見る。

 

 その人物は、白野にとっては一番大切だと思っているみずきによく似ていた。

 

「君は」

 

「ユザレ。

 

 それで、君は一体何者なの?」

 

「それが、自分でも」

 

 そう言いながら、周りを見る。

 

 未だに何が起きているのか分からない。

 

「さっきのは、カルミラ達だよね。

 

 それに、あのトリガーは」

 

「トリガー。

 

 確かにあいつは闇の巨人の中でも最強の存在だ」

 

「最強の?」

 

 そう言われ、困惑する。

 

 自分自身の事とは言え。

 

「あの、闇の巨人の目的は?」

 

「……この先にあるエタニティコアよ」

 

「エタニティコア?」

 

 それまで、聞いた事のない単語に、首を傾げる。

 

「このビッグバンを起こし、宇宙を意のままに創りかえる事ができる力の事。

 

 とにかく、奴らを止めないと」

 

「止めるって、どうやって?」

 

「とにかく、今すぐに行かないと」

 

 そう言いながら、ユザレは向かった。

 

 それに合わせるように、白野も走り出す。

 

 人間が通るのに難しい道でも、白野もユザレも特に苦戦する事なく進む。

 

 そして、辿り着いた先は。

 

 そこは、巨大な空間。

 

 その中心には光る球体があり、そこから黄金の光が漏れている。

 

「あれが、エタニティコア」

 

 そうしながら、ユザレは言う。

 

 だが、それを見た白野はその力に、思わず喉を鳴らす。

 

 ユザレの言う通り、確かに宇宙を意のままに作り替える事ができる程の力が、そこから感じる。

 

「どうするの?」

 

「闇の巨人達が来る前に対処する。

 

 えっと、あんたは」

 

「白野です」

 

「白野か、悪いけど、少し離れていて。

 

 巻き込まれたら危険だから」

 

「分かった」

 

 白野は言われた通りにその場から少し離れる。

 

「ユザレは、その。

 

 なんで自分から戦いに?」

 

「……そうね、正直に言えば、戦いは面倒だよ。

 

 けどね」

 

 そう言いながら、ユザレはエタニティコアを見つめる。

 

「これで私の、家族や、仲間がいなくなるのが嫌。

 

 だから、やっているの」

 

 そう呟いた、ユザレの姿に、白野は自然と目が離せなかった。

 

 それは、とても美しく感じてしまったからだ。

 

 それから、エタニティコアへと近づくユザレ。

 

「人間を守りたいから」

 

「まぁ、私も人だけどね」

 

 そう言いながら、苦笑いを浮かべる。

 

 その姿に、白野は何故か惹かれてしまう。

 

「ねぇ、貴方はどうして戦うの? 人間を守る為に」

 

「それは、分からない。

 

 けど」

 

 そう言いながら、ユザレとみずきの姿が重なる。

 

「私は目の前で守れるんだったら守りたいかな」

 

 その時の笑顔に白野は目を奪われる。

 

 そして、無意識に手を伸ばす。

 

 だが、そこで手を止める。

 

 自分自身の行動に戸惑いを覚える。

 

「そっか、僕はもしかしたら」

 

 そうしている間にも、巨大な地震が襲う。

 

 その揺れに足を取られながらも、何とか倒れないように踏ん張る。

 

 すると、空に亀裂が入り、そこから降り立ったのは、4体の闇の巨人だった。

 

「もぅここまで!」

 

「ユザレ、それになんだ、その餓鬼は!!」

 

 同時にカルミラが白野達に襲い掛かる。

 

 反射的に、白野達は避ける。

 

「くっ! カルミラ達か」

 

 そう言いながら、カルミラ達を見る。

 

 そこにはカルミラ達が立っている。

 

 そして、白野とユザレを睨みつける。

 

「まぁ良いか。

 

 さぁ、トリガー。

 

 エタニティコアを」

 

 そう、カルミラに促されるように、トリガーは無言でエタニティコアに近づく。

 

 そして、その光の球体に触れる。

 

 それと同時に、エタニティコアが輝き始める。

 

「まずいぞ。

 

 このままでは」

 

 そう言いながら、トリガーを止めようとするが、その瞬間にカルミラによって妨害を受ける。

 

「このままじゃ」

 

 それと共に白野は見つめた先にあったのは。

 

「ガッツスパークレンス? 

 

 いや、少し違う」

 

 そこには、白野がトリガーに変身する時に使うガッツスパークレンスによく似たアイテムだった。

 

 なぜ、そこにあるのか白野は疑問に思った。

 

 だが

 

「使うしかない」

 

 それと共に、青い石を思わせるスパークレンスを手に取る。

 

「やるしかない」

 

 それと共に、構えた。

 

「白野!!」

 

「あいつ、一体何を」

 

 そう、その場にいる全員が思っている間にも、白野はスパークレンスを構える。

 

 同時にスパークレンスから光が照らし出す。

 

 それと共に白野は、そのまま光に包まれると共にトリガーへと吸い込まれる。

 

 トリガーの中へと吸い込まれた白野。

 

 そう、白野はゆっくりと闇の中を歩く。

 

 そこに現れたのは、黒き巨人だった。

 

 その姿を見た時、白野は確信した。

 

「この時代の、僕」

 

 そう、白野の言葉に応えるように振り返る。

 

 それと共にトリガーは白野に襲い掛かる。白野はそれを避け、反撃する。

 

 しかし、トリガーには効かない。

 

 そして、そのまま吹き飛ばされてしまう。

 

 だが、吹き飛ばされながらも、白野はトリガーに向かって、叫ぶ。

 

「僕は、人を守りたい!」

 

 そう言いながら、トリガーを見つめる。

 

「みずきや、ユザレや、伊達が。

 

 色々な人を見てきた。

 

 守るべき価値がある人を!」

 

 そう叫びながら、立ち上がる。

 

 再びトリガーに向かう。

 

 それと共にトリガーも動く。

 

 トリガーは、そう白野は、必死に叫ぶ。

 

「人が醜い事も知っている。

 

 それでも」

 

 それと共にトリガーは再び攻撃をする。

 

 白野は、避ける。

 

 それ共に白野は、トリガーを見る。

 

 トリガーの姿は、記憶にない自分だ。

 

「僕は、僕達は! 

 

 人を守りたいはずだ!!」

 

 それと共にトリガーを殴る。

 

 その、拳に答えるように、クロスカウンターを決める。

 

 そう、互いに倒れそうになるが、踏ん張った。

 

 互いに互いを見つめ合う。

 

 それは、まるで鏡のように。

 

 そして、白野はトリガーの手を掴む。

 

「もう一人の僕」

 

 そう、言った。

 

 その時、白野を通してトリガーに思いが伝わる。

 

 それが、トリガーの中に思いが伝わる。

 

 それに連動するように、現実のトリガーの外側にも変化が起きる。

 

 トリガーがエタニティコアに触れようとした。

 

 だが、それに触れる直前だった。

 

 その前に、白野がトリガーへと触れた。

 

 ガイコツの鎧を身に纏っていたトリガーに徐々に変化していく。

 

「白野には、一体」

 

 みずきは、白野とトリガーに何が起きているのか疑問に思う。

 

 それは、闇の三巨人も警戒するように見つめる。

 

 だが、それはすぐに終わる。

 

「未来を築く、希望の光!! ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

 トリガーの内側から響き渡るのは白野の声。

 

 やがて、トリガーの姿も大きく変化する。

 

 ガイコツを思わせる鎧が弾け飛ぶと共に、その姿は変わっていく。

 

 銀を基調に赤と紫の2色を配したものとなっている。

 

 

 

 その姿は闇の巨人ではない。

 

 まさしく、光の巨人に相応しい姿だった。

 

「白野と、トリガーが一つになった姿」

 

 それに、ユザレは驚きを隠せなかった。

 

「なんだいっ、その醜い姿はぁぁ!!」

 

 それを見たカルミラは叫ぶ。

 

 カルミラはその手には光の鞭で、真っ直ぐと襲う。

 

 しかし、その攻撃を、トリガーは素早く避ける。

 

 そのまま飛び上がると同時に、空中で身体を回転させながら蹴りを放つ。

 

 その攻撃により、カルミラは大きく吹き飛ばされる。

 

 さらに、着地すると同時に走り出す。

 

 そして、両手を広げると光線を放った。

 

 光線を受けたカルミラは膝をつく。

 

 そんなカルミラに対して、トリガーはさらに攻撃を仕掛けていく。

 

 だが、左右から瞬時にダーゴンが拳で、ヒュドラムはダガーで攻撃を仕掛けてきた。

 

 その攻撃に対して、トリガーは両手に武器を召喚する。

 

 サークルアームズとウルトラデュアルソード。

 

 その二つの剣で、襲い掛かる二人の攻撃を受け止める。

 

 さらに、そこから反撃に出る。

 

 トリガーは右手に持つサークルアームズを振るう。

 

 その一撃によって、ダーゴンの腕が斬り裂かれる。

 

 次に左手のウルトラデュアルソードを振り下ろす。

 

 それにより、ヒュドラムの首元が斬られた。

 

 だが、二人とも致命傷には至らずに、後ろに下がる。

 

 その間にも、トリガーに向かってカルミラが光の鞭での攻撃を行う。

 

 それに対して、トリガーは腕を大きく振るって薙ぎ払う。

 

 それによって、カルミラの放った鞭による攻撃は全て弾き返される。

 

 さらには、トリガーは両手の武器を構えて走り出した。

 

 まずは、ダーゴンに向けて振り下ろした。

 

 ダーゴンは両腕を使って受け止めようとする。

 

 しかし、トリガーの攻撃力は凄まじく、その防御を打ち砕いた。

 

 続いて、ヒュドラムに向けてトリガーは横なぎの一撃を放つ。

 

 それをヒュドラムは避けようとしたが間に合わずに直撃を受ける。

 

 そこに追撃として、トリガーは蹴りを叩き込む。それで、ヒュドラムを吹き飛ばす。

 

 だが、そこでカルミラによる光の鞭が飛んできた。

 

 それを避けきれずに受けるものの、ダメージを受けたのは一瞬だけ。

 

 すぐに体勢を整えて、トリガーは再び駆けだして行った。

 

「どうなっている! 

 

 確かにトリガーは強いけど、これ程の強さなど」

 

「まさか、エタニティコアの影響がっ」

 

 そう疑問に思っている間にも、トリガーの身体に変化していく。

 

 それはエタニティコアの黄金の光が、トリガーと共鳴していく。

 

 その輝きを受けて、トリガーの姿が変化していく。

 

 全身が黄金に輝く。

 

 それと共に、光は、闇の三巨人に襲いかかっていく。

 

 その姿はまさしく光の勇者だった。

 

「ぐぉぉぉぉっ!!」

 

 その強烈な一撃を受けて、ダーゴンとヒュドラは苦しみの声を上げる。

 

 それでも、何とか踏み止まろうとするが、トリガーの圧倒的な強さの前に打ち破られる。

 

「馬鹿なっ!! こんなことがぁ」

 

 そう叫びながら、彼らは徐々にその身体を石化していく。それと同時に、トリガーもまた光に包まれていった。

 

 やがてトリガーは姿を消していき、その場に残されたのはエタニティコアだけだった。

 

 エタニティコアの力を使い果たしたことで、トリガーは元に戻った。

 

 変身を解除して、白野の姿に戻る。

 

 そして、トリガーと分離した白野は、また時空の渦に巻き込まれる。

 

「そうだったのか」

 

 未だに分からない事は多い。

 

 卵が先か、鶏が先か。

 

 どちらか分からない。

 

 それでも

 

「俺が、光の巨人になれたのは、みずきの。

 

 ユザレのおかげなんだな」

 

 そう、しながら、白野の意識は未来へと戻っていく。



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14話

 白野が過去に飛ばされている間。

 

 現代で取り残されたトリガーの肉体。

 

 それは、何も動かずにいた。

 

 見守るように、アビスのメンバーの多くが警戒態勢を取っていた。

 

 その中で、アビスが所有するヘリのようなローターで飛行する戦闘機、コネリー008がトリガーの周りを警戒している。

 

「白野」

 

 そんな、未だに倒れている巨大なウルトラマントリガーの肉体を心配そうに見つめる。

 

「みずき、そんな所でいると、風邪を引くぞ」

 

「別に。

 

 あいつが目覚めるまで、ここにいるんだから」

 

 そうしながら、みずきに話しかける伊達に対して、そっけなく答える。

 

 そして、トリガーの方へと目を向ける。

 

 すると、その視線の先には、闇に覆われた。

 

 それを見た瞬間、みずきの背筋に悪寒が走る。

 

 あれが何を意味をするのか。

 

 同時にトリガーは無言で起き上がる。

 

 それと共にトリガーの身体は、まるで骸骨を思わせる鎧を身に纏っていた。

 

「しっ白野」

 

 それが白野だとは、思えなかった。

 

「あれは、白野、いやっ」

 

 そう考えている間に、そのトリガーはまるで獣を思わせる叫び声と共に手から放つ赤黒い光弾を周りの建物に放つ。

 

 破壊される建物を見て、みずきは慌ててその場から離れる。

 

 すると、その光弾は地面に当たり爆発を起こす。

 

 その威力は、先ほどまで見ていたトリガーの攻撃とは比べ物にならない威力だった。

 

 だが、それと同時に、周りにいるアビスのメンバーも慌てふためく。

 

 それと共に、コネリー008を始めとした戦闘機がトリガーに向けて、攻撃を始める。

 

「まっ待ってよ! 

 

 伊達、あいつは」

 

「だとしても、このまま放っておく訳にはいかない」

 

 そう言いながら、目の前で暴走しているトリガーに向けて、伊達は苦い顔をしながら言う。

 

 これまで、多くの人々を救ってきた光の巨人であるトリガー。

 

 だが、そのトリガーは、今は人々を殺戮するためだけに動いているようにしか見えない。

 

 それは、あの時と同じ光景のように見えていた。

 

 初めてトリガーと出会った時に、トリガーの正体を知った。

 

 その時と同じように、トリガーの瞳は何も映さず。

 

 ただ、破壊を繰り返すだけの怪物になっていた。

 

 そして、トリガーの拳はコネリー008を殴り飛ばす。

 

 その一撃だけで、コネリー008は破壊されてしまう。

 

「白野っ! 馬鹿な事をしないで、早く目を覚ましなさいよ!!」

 

 みずきは必死にトリガーに向けて叫ぶ。

 

 だけど、今のトリガーはその言葉を聞いていないかのように暴れ続ける。

 

 そんな中で、みずきはふと、トリガーの顔を見る。

 

 トリガーの目は、全てが闇で染まっていた。

 

 同時にトリガーは、その手から再び赤黒い雷を、みずき達に向けていた。

 

「みずきっ!」

 

 伊達はすぐに、その雷を身を挺して守ろうとした。

 

 降り注がれようとした雷。

 

 だが、その一撃は、目の前にある光の壁によって、防がれる。

 

「えっ」

 

 その光の壁から現れた存在。

 

 それは、目の前にいるトリガーに変身しているはずの白野だった。

 

「白野?」

 

「ただいま、みずき」

 

 そう、みずきに対して、白野は笑みを向けてくる。

 

 それは、いつもと変わらない様子の白野だった。

 

「白野っ! 

 

 まったく、心配をかけるんじゃないわよ!」

 

 そうみずきは、そのまま白野に向けて言う。

 

「ごめん。

 

 だけど、今は、あいつを。

 

 トリガーダークを倒すよ」

 

 そうしながら、今は骸骨の鎧を身に纏っているトリガーこと、トリガーダークを見つめる。

 

「トリガーダーク?」

 

 そう疑問を答えるよりも早く、白野はすぐに構える。

 

「おい、白野! 

 

 お前のガッツスパークレンスだ」

 

 そう言い、伊達はそのままガッツスパークレンスを投げる。

 

 それを受け止めると共に、ガッツスパークレンスにGUTSハイパーキーを挿入する。

 

「未来を築く、希望の光!! ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

 その叫び声と共に、白野はそのまま再びウルトラマントリガーへと変身する。

 

 そうする事によって、光のトリガーと闇のトリガー。

 

 2人の巨人が対峙している。

 

「この戦い、どうなるんだ」

 

 そうしながら、伊達が見つめる中で、2人のトリガーの戦いが始まる。

 

 最初に動いたのは、トリガーだった。

 

 すぐさま走り出し、拳を振り上げる。

 

 対するトリガーダークもすぐに動き出す。

 

 拳を突き上げながら、互いにぶつかり合う。

 

 その衝撃により、周囲は大きく揺れ動く。

 

 だが、それでも、お互いに引く事無く戦い続ける。

 

 トリガーダークは腕を伸ばして攻撃しようとするが、それに対して、トリガーは回し蹴りを放つ事で反撃をする。

 

 それにより、両者ともに吹き飛ばされるが、すぐに体勢を整え直す。

 

 今度はトリガーダークの方から仕掛けてきた。

 

 先ほどと同じように、その手から赤黒い光線をトリガーに向けて放つ。

 

 それに対して、トリガーは、それに対抗するように青いエネルギー弾を放って相殺させる。

 

 それによって発生した爆発の中へ、トリガーダークが突っ込んでくる。

 

 そして、拳を叩きつけるが、それをトリガーは受け流す。

 

 同時に、そのまま相手の腹に膝蹴りを打ち込む。

 

 だが、それと同時に、相手もまたトリガーの顔面に向かって殴りかかる。

 

 互いの顔を狙った攻撃をどうにか回避し合いながらも、両者は激しい攻防を繰り広げていく。

 

 それはまるで互角の戦いであり、お互い一歩も引かない状況である。

 

「白野っ、そんな奴に負けるなぁ!!」

 

 みずきは、その雄叫びが街中に響き渡る。

 

 同時に、トリガーの胸元のカラータイマーが黄金に輝き始める。

 

「それは一体」

 

 それは、何なのかみずきにも分からなかった。

 

 だが、みずきは、それによってトリガーは、白野の目の前に黄金のGUTSハイパーキーが現れる。

 

 白野は、それをしっかりと掴む。

 

『Glitter Trigger Eternity! Boot up! Glitter Zeperion!』

 

「宇宙を照らす、超古代の光!! ウルトラマン……トリガアァァーッ!!!」

 

『Glitter Trigger Eternity!』

 

 

 

 カラーリングは銀・金・オレンジで構成。

 

 トリガーの特徴であるモールドの複雑な紋様や眉間のクリスタルが無くなり、より一体化したデザインになっている。

 

 

 

 胸の菱形カラータイマーは三つに増え、一つの逆三角形を作り出す様に配置された「トライアングルクリスタル」へと変化している。

 

 

 

 それは、まさしく黄金のトリガーだった。

 

「黄金のトリガー」

 

 その姿に、伊達も、その場にいた全員が驚きを隠せなかった。

 

 同時にとトリガーダークは、トリガーに向けて、必殺の光線を放つ為に構える。

 

 それに対して、トリガーもまた、同じように構える。

 

 互いに腕をL字に組んで放つ、必殺光線。

 

 そのゼペリオン光線の決着は一瞬でつく。

 

「きゃぁ!」

 

 その勝者は、トリガーだった。

 

 黄金の姿になった事で、トリガーのパワーは、トリガーダークの力を圧倒する程になっていたのだ。

 

 トリガーの一撃によって、トリガーダークは、瞬く間に闇の粒子となって飛び去る。

 

「白野!」

 

 同時にトリガーもまた、光となった。

 

 その事にみずきは驚きを隠せなかった。

 

「白野っ、まさか」

 

「うぅ」

 

 だが、その不安は当たらなかった。

 

 トリガーから元の姿に戻った白野はそのままみずき達の近くで戻っていた。

 

 それを見ると共に

 

「この馬鹿!!」

 

 そうしながら、みずきはそのまま白野に向かって、飛びつく。

 

「うぅ、みずき。

 

 そんなに勢い良く抱きつかないでよ」

 

「バカバカ! 

 

 こっちは、どんだけ心配していたと思っているのよ!」

 

 そう言いながら、白野を強く抱きしめる。

 

 それと同時に、他の仲間達も駆け寄る。

 

 白野達が無事な事を確認できたと同時に、周りには人が集まり始めていた。

 

 その中で、トリガーダークの闇はゆっくりととある場所に集まっていた。

 

 それは、伊達の持つGUTSハイパーキーに

 

 その事は、その場にいた全員は未だに知らない。



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15話

「話を纏めると、超古代の時代。

 

 お前は闇の巨人だった。

 

 だけど、そこで出会ったみずきそっくりの巫女ユザレ。

 

 彼女をきっかけに、お前は光の巨人として覚醒したんだな」

 

 そう、伊達は先日まで過去に行っていた白野から事情を聞く。

 

「ふむ、なるほど。

 

 未だに分からない事だらけだが、一つだけ言わせておく」

 

「なに?」

 

「もうちょっと、タイプを考えた方がぐぇ!」

 

 そう伊達はため息をつきながら言った一言に対して、みずきはそのまま蹴り飛ばす。

 

「たくっ、伊達! 

 

 あんたは余計な事を言わないの! 

 

 それで、白野!」

 

「なに?」

 

 伊達を蹴り飛ばした後、そのままみずきは白野の方を睨み付ける。

 

「あんたは、そのユザレ、だったかしら。

 

 そいつと私、どっちが大事なの」

 

「それを聞くのか、みずき」

 

 伊達はその質問に対して、思わずため息を吐く。

 

 だが、そんな伊達に対して、みずきは再度睨み付けると共にすぐに離れる。

 

 既にアビスのメンバーが多く集まる中で、白野の答えが気になるのか、全員が聞き耳を立てる。

 

「俺、ユザレに関してはあまり分からなかった。

 

 だから、今の正直な気持ちは、みずきが大好きだと思う」

 

「そっそぅ。

 

 まぁ、そう分かっていれば良いのよ、分かっていれば」

 

 そう、頬を赤くしながら、みずきはそのままそっぽを向く。

 

「みずきちゃん、結構照れているわね」

 

「これが小学生の恋愛か、なかなかにねぇ」

 

「ボスも皆も、勝手に盛り上がらない!!!」

 

 そう、みずきの態度にアビスの全メンバーがニヤニヤとしている中、一人だけ何かを思い出すように呟く。

 

「まったく。

 

 それじゃ、白野君が手に入れた力だけど」

 

「エタニティだったね」

 

 そう、言いながら、過去から手に入れた力。

 

「この光のパワーは制御不能な程強大になっており、留め置けないエネルギーが常時垂れ流し状態だ。

 

 それは、これまでのトリガーの力とは比べものにならない程に強力だ」

 

 それは実際に使った白野だからこそ分かる。

 

「この力はこれまで以上に危険で恐ろしい物だと感じる」

 

 そう言って、手に持っているエタニティを見る。

 

 そして、それを見ていた伊達は少し考える。

 

「白野、その力はあまり使うな。

 

 理由は、分かるだろ」

 

「けど、闇の巨人に対抗するには」

 

 そう、白野は

 

 言うが、伊達は首を横に振って否定する。

 

「闇を倒す事は出来るかもしれない。

 

 だが、同時にお前自身を滅ぼす結果にもなるかもしれない」

 

 その言葉に白野は目を見開く。

 

「分かっていると思うけど、エタニティコアの力を使うな」

 

 そう、伊達の言葉に対して。

 

「……」

 

 素直に答える事ができなかった。

 

 それに対して、不安に覚えている中で。

 

「皆、大変だ!」

 

 その言葉が聞こえる。

 

 同時に映し出されたのは、一匹の怪獣、デマゴーグだった。

 

「こんな時にって、白野!」

 

 そうして、驚いている間に、白野は飛び出していた。

 

「未来を築く、希望の光!! ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

 トリガーへと変身した白野。

 

 相対するように、スーパー必殺怪獣デマゴーグも、また構える。

 

 白野は、瞬時にその手に持ったサークルアームズを手に取る。

 

 同時にその刃を真っ直ぐとデマゴーグに振り下ろす。

 

 だが、その攻撃は、デマゴーグの腕から放たれた鞭によって防がれる。

 

「っ!」

 

 驚きを隠せない白野。

 

 だが、そんな隙を逃さないように、デマゴーグは次の行動に移した。

 

 その右腕には、サークルアームズよりも巨大な剣を召喚する。

 

 その剣に対して、白野はすぐに姿を変える。

 

『Ultraman Trigger Power type!』

 

 その音声と共に、トリガーの姿はパワー重視のパワータイプへと変わる。

 

 同時にサークルアームズもまた、パワークローへと変形する。

 

 その剣に対して、パワークローで受け止める。

 

 同時にもう片方の手で殴る。

 

 強烈な一撃に対して、デマゴーグは吹き飛ばされる。

 

 だが、吹き飛ばされたデマゴーグはその姿を消す。

 

 同時に、背後に立っていたデマゴーグは、その両腕の鎌で斬りかかる。

 

 二つの刃の一撃を受け、白野は前に転んでしまう。

 

『Ultraman Trigger Sky Type!』

 

 だが、前に転びながら、青い姿であるスカイタイプへと変わる。

 

 そのまま宙を飛び、その手の、サークルアームズをスカイアローに変形する。

 

 スカイアローの光の矢を、デマゴーグに構える。

 

 スカイタイプに変わった事によって、空を飛ぶ白野。

 

 そのまま、デマゴーグを囲むように、次々と光の矢を放っていく。

 

 その光の矢の攻撃に対して、デマゴーグは全てを防ぐことはできずに直撃する。

 

 光の矢を受けたデマゴーグだったが、傷一つ無かった。

 

「なんなのよ、あいつっ! 

 

 今まで、白野が戦ってきた怪獣の能力を使っているっ」

 

「このままじゃ」

 

 そうしている間にも、デマゴーグの猛攻は、白野に襲い続ける。

 

 腕の鞭による攻撃に加え、口から放つ光線や、両腕からの斬撃。

 

 更には巨大化して足から放つ蹴りなども繰り出してくる。

 

 それらの攻撃を、白野はひたすら避けるか、防ぐしかできなかった。

 

 反撃に転じようにも、デマゴーグには遠距離攻撃が無いため、逆にこちらの攻撃チャンスを逃してしまう状況だ。

 

 この現状を打破するためには。

 

「これしかないっ」

 

 その言葉と共に、白野は一つの力を思い浮かぶ。

 

 だが、それを使うには、未だにコントロールができていない。

 

 それでも

 

「みずきを守る!」

 

 その決意と共に、黄金の力を解放させる。

 

『Glitter Trigger Eternity!』

 

 鳴り響く音声。

 

 それと共にトリガーは、これまでの姿とは一変した。

 

 全身は黄金に輝き、片手にはグリッタートリガーエタニティの専用武器であるグリッターブレードを構える。

 

「ぐっ」

 

 これまでとは明らかに力が違いすぎるトリガー。

 

 だが、それは同時に激しい消耗を意味しており、その胸元のカラータイマーは既に赤く点滅していた。

 

 その力の大きさに、デマゴーグは戸惑いを隠せなかった。

 

 それでも、デマゴーグは恐れることなく立ち向かう。

 

 その姿を見たトリガーもまた、覚悟を決める。

 

 そして、二人は同時に動き出す。

 

 最初に仕掛けたのは、デマゴーグだった。

 

 両腕の鎌による連続攻撃を行う。

 

 それに対して、トリガーは剣を振るう。

 

 ぶつかり合う二つの刃。

 

 だが、それは一瞬で決着をつく。

 

 デマゴーグは、そのまま吹き飛ばされる。

 

『Multi Photon!』

 

 それと共に、白野はグリッターブレードを回転させ、紫のクリスタルを合わせて発動する。

 

 3人に分身する。

 

 分身した3人はマルチ、パワー、スカイのそれぞれに対応する色のオーラを帯びている。

 

 グリッターブレードでデマゴーグを切り裂いて行く。

 

 その刃の一撃に、デマゴーグは徐々に押されていく。

 

 やがて、グリッターブレードの一撃が、デマゴーグを捉える。

 

 だが、デマゴーグは倒されてなかった。

 

「そんなっ」

 

「今の、完全にコントロールができていないトリガーじゃ」

 

 そうしている間にも、限界に近いトリガーに対して、デマゴーグが攻撃を仕掛けようとした瞬間。

 

「ギブゾーグギガアローストライク」

 

 その叫び声と共に放たれた一撃。

 

 同時にデマゴーグは、強力な光の矢に貫かれる。

 

 同時に地上に現れたのは、白野が変身するトリガーでも、闇の巨人でもない。

 

 全く未知の巨人だった。

 

 その瞳は青く鋭かった。



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16話

 その巨人は、一見、闇の巨人と変わらなかった。

 

 鮮やかな青色に染まっている光るつり上がった目を見て、味方だと思う者は少なかった。

 

 だが、そんな巨人は、既に力がほとんど残っていない白野の前に立っていた。

 

 それは彼を倒す為ではなく、守る為に。

 

 目の前にいる怪獣、デマゴーグから。

 

「キシャアアァァァ!」

 

 同時にデマゴーグは起き上がる。

 

 先程の巨人から受けた一撃は既に回復しているのか、再び向かって行く。

 

「ハアアァァ!」

 

 それに対して、巨人は対抗するように走り出す。

 

 互いに建物を大きく超える巨体。

 

 それによって、走る度に地面はまるで地震を思わせる地響きが起きる。

 

 そんな巨大な存在はやがてぶつかり合う。

 

 体格では、デマゴーグの方が圧倒的に大きく、力が強い。

 

 それを見た多くは、デマゴーグが勝ると思っていただろう。

 

 だが

 

「ジュワァ!」

 

 巨人はデマゴーグを軽く吹き飛ばした。

 

 体格差など、まるで関係ないというように。

 

 その光景に誰もが驚愕した。

 

 そうしている間にも、巨人は既に次の行動に移していた。

 

 その手には金棒状の武器があった。

 

 まるで自分の手足のように、振り回しながら、再度デマゴーグに襲い掛かる。

 

 しかし、それを喰らったデマゴーグも負けてはいない。

 

 今度は爪を立てて、巨人の身体を引っ掻く。

 

 巨人はそれを受け止めると、逆に押し返す。

 

 そのままデマゴーグを蹴り飛ばす。

 

 それでもすぐに立ち上がり、巨人に向かっていく。

 

「ムジナ!」

 

「えぇ」

 

 だが、それよりも早く、巨人から声が聞こえる。

 

 それは、同じくトリガーに変身していた白野しか聞こえなかった。

 

 その声の主は、目の前にいる巨人からだった。

 

『レイキュバス! モンスロード!』

 

 鳴り響く音声と共にデマゴーグに向けて、巨人は武器を向けた。

 

 同時に武器からは光の玉が現れる。

 

 それと共に光の玉はやがて形が現れる。

 

 エビとカニを合成したような外見で、前脚はシオマネキのような左右非対称の大きさのハサミ。

 

 そう、巨人が召喚したのは、怪獣だった。

 

「かっ怪獣!?」

 

 驚きを隠せない中で、レイキュバスと呼ばれた怪獣はそのままデマゴーグに目を向けた。

 

 同時にその口から炎を放った。

 

「ジュワァ!」

 

 それに反応して、巨人は飛び上がり、デマゴーグに命中する。

 

 その威力は凄まじかったようで、爆発に巻き込まれたデマゴーグはそのまま地面に倒れた。

 

 だが、まだ完全に倒れている訳ではないらしく、立ち上がろうとしている。

 

 しかし

 

『レイキュバス! モンスアタック!』

 

 鳴り響く音声と共に、巨人の右腕にレイキュバスが纏う。

 

 巨大なハサミとなったそれを真っ直ぐとデマゴーグに向けながら

 

「「レイキュバスシザーズバスター」」

 

 巨人の、その叫び声と共に、炎と冷気が入り交じった一撃を真っ直ぐとデマゴーグに放たれる。

 

 放たれた一撃にデマゴーグは耐えきれず、そのまま倒れる。

 

 そして、その姿のまま消えていく。

 

 同時に巨人の姿もまた、消えるようにいなくなった。

 

 後に残ったのは、静寂だけだった。

 

「あれって、一体なんなんだ?」

 

 そう言いながら、白野はトリガーから、元の姿へと戻る。

 

 同時に

 

「白野!」

 

「あっうっ」

 

 姿が戻った事で、みずきが近づいていた。

 

「あんた、また無茶をして!」

 

「ごっごめんなさい」

 

 みずきからの怒りの声に思わず白野は小さくなってしまう。

 

「とにかく、無事で良かった。

 

 だけど」

 

「さっきの巨人は一体」

 

 そう、白野もまた疑問に思った。

 

「あっいたいた。

 

 君だね」

 

 そうして、後ろから声が聞こえ、振り返る。

 

 そこには、白野が知らない人物だった。

 

 その青年は一言で言えば、どこにでもいる普通の青年だった。

 

 衣服なども変わった所はない。

 

 だが、その声はどこか聞き覚えがあった。

 

「この子が、ウルトラマン」

 

 それと共に青年の後ろにいたのは白い軍服を身に纏った女性だった。

 

 容姿端麗な見た目をしており、それにはみずきも驚きを隠せなかった。

 

 同時に白野も首を傾げる。

 

「えっと、どこかで?」

 

「さっき会ったばかりだからね」

 

 その一言に、一瞬、首を傾げる。

 

 だが、驚きに目を見開く。

 

「もしかして」

 

「そう、俺がさっき戦った巨人。

 

 ウルトラマンジードこと、朝倉陸。

 

 それでこっちは俺の相棒で、その恋人の」

 

「ムジナ。

 

 よろしく」

 

「ウルトラマン?」

 

「ジード?」

 

 その言葉に、白野もみずきも首を傾げる。



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17話

今更ですが、少し前からゲストで出てきた朝倉陸とムジナはこちらの小説からのゲストです。
これからもよろしくお願いします。
https://syosetu.org/novel/256448/


「それにしても、他の世界のウルトラマンかぁ」

 

 そう言いながら、白野の目の前にいる朝倉を見つめていた。

 

 その青年は小学生の白野からしたらかなりの年上であるというのは目に見えて分かる。

 

「ウルトラマンというのは、もしかして俺の事?」

 

 そう、白野は疑問に思いながら、聞く。

 

「あぁ、さっき、僅かに見えたけど、見た目から分かったけど、ウルトラマンティガに良く似ているね。だとしたら、ウルトラマンティガみたいに3つのタイプになれるのかな。しかもさっきのはグリッターだったよな! つまりは自在にグリッターになれるなんて、とんでもない強さじゃないか! それは「陸、少しストップ」わぷっ」

 

 そう、朝倉の言葉を止めたのは、彼と一緒に来たムジナが止めた。

 

「それで、なんだっけ、ウルトラマンって、一体なんなの?」

 

 そう話している間に、みずきは疑問に思ったように首を傾げながら、問いかける。

 

 それはこの場にいたアビスのメンバー全員が疑問に首を傾げる。

 

「そうだな。

 

 それじゃ、ウルトラマンについて説明してあげよう」

 

 そして、彼は語り始める。

 

 かつて宇宙から来た光の使者にして、地球を護るために戦う戦士たちの物語と歴史を────―

 

 朝倉の世界では、テレビの中のヒーローだと思っていた。

 

 だが、実際に存在し、朝倉自身もウルトラマンの力が宿ったらしい。

 

「だけど、どうして朝倉さんにもそんな力があるんですか?」

 

 不思議そうな表情で、白野は問い掛ける。

 

 何故なら、朝倉の世界には、そういう超人的な存在はいないのだ。

 

 それを見ていたムジナは笑いながら口を開く。

 

「まぁ、色々と理由はあるんだろうけどね。

 

 そこは、まぁね」

 

 そうムジナははぐらかした。

 

 それ以上は話す気がないようだ。

 

 だが、そこで空気を読んだのか、朝倉は咳払いをして話を戻そうとしはじめた。

 

「えっと、俺は元々ウルトラマンの血を受け継いでいたんだ。

 

 俺自身も知らなかったけど」

 

 そこまで言うと、ふぅーと息を整えた後にこう告げる。

 

「それで、俺はウルトラマンジードという名を持っているんだ。

 

 それにしても」

 

 そう言いながら、朝倉はそのまま白野に近づく。

 

「えっと、どうしました?」

 

「君、まだ力を十分にコントロールできないでしょ」

 

「うっ」

 

 それはグリッターの力を使いこなせていない事だった。

 

 それに対して、白野は言葉を詰まらせる。

 

 確かに、先程の怪獣相手でも苦戦していた。

 

 それを見ていた朝倉は言葉を続ける。

 

「このまま戦い続けるのは難しいと思うよ」

 

「それは、分かっていますけど」

 

 それは白野自身理解していたことだ。

 

 グリッターの力は確かに強力だ。

 

 しかし、その強すぎる力を完全にコントロールできていない。

 

 だから、今はただの足手まといにしかならないだろう。

 

(でも)

 

 それでも諦めたくないと思った。

 

 自分の為に戦ってくれている人達の為にも、自分も一緒に戦いたい。

 

 そんな気持ちが湧いて来る。

 

 その目を見たムジナは感心するように呟く。

 

「ほぉ」

 

「だったら、学ぼうか。

 

 力の使い方を」

 

「使い方? 

 

 一体どうやって?」

 

 そう疑問に思っていると

 

「えっと、確か、ここに」

 

 そう言いながら、朝倉が取り出したのは

 

「ウルトラマンを見よう」

 

「なんで、そうなるのよ」

 

 みずきは思わず叫んでしまう。



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18話

 朝倉陸が、この世界に来てから1週間。

 

 その間、彼らはほとんどをウルトラマンを見る事に費やしていた。

 

 その事に関して、みずきは思わずジト目で見る。

 

「これ、本当にパワーアップに繋がるんですか?」

 

「さぁ?」

 

 そう言いながらみずきは、この家で居候をしているムジナに話しかける。

 

「正直、陸は暴走している事があるからね」

 

「本当に、その様子だけど。

 

 でも、本当に学んでいるの?」

 

 そうしながら、白野は、何かを関心していた。

 

「そうか、力の側面をそこしか見ていなかった。

 

 だからこそ、考えるべきなのは」

 

「えっと、白野?」」

 

 そうしていると、何か聞こえた。

 

 その地響きと共に見つめた先には赤い闇の巨人ダーゴンだった。

 

「あれは、ダーラム! 

 

 いや、この世界で言う所のダーゴンか」

 

『我が友よ。

 

 今こそ、決着をつける時だ』

 

「ダーゴンが、呼んでいる。

 

 決着をつける為に」

 

「……だったら、学んだ事を活かせるか?」

 

 その言葉に、白野は頷く。

 

 同時に白野は、その手にグリッタートリガーエタニティキーを取り出す。

 

『Glitter Trigger Eternity! Boot up! Glitter Zeperion!』

 

「宇宙を照らす、超古代の光!! ウルトラマン……トリガアァァーッ!!!」

 

『Glitter Trigger Eternity!』

 

 ウルトラマントリガーへと変身した白野はゆっくりと深呼吸を行いながら、自身の力を見つめる。

 

 黄金の、宇宙を作り替える程の力を秘めているエタニティコアの力。

 

 その一部とはいえ、所有している事で発揮されるグリッタートリガー。

 

 その力をこれまで使いこなす事ができなかった。

 

 エタニティコアの強力な力に振り回されるような感覚。 

 

 その力は今でも残っている。

 

 だが、その強力な力に対して、白野は今、一つの理解を得ていた。

 

「……そうか」

 

 それは先程の戦いの中で得たもの。

 

 あの時、白野はグリッタートリガーの力を振るうと同時にある事を思っていた。

 

 ──この力で、皆を守りたい。

 

 自分の大切な仲間達を、自分の居場所を守るために、グリッタートリガーの力で。

 

 その思いと共に朝倉陸が、ウルトラマンを通して教えてくれた。

 

 強大な力を持つ力には責任が伴うと。

 

 だからこそ、グリッタートリガーという強大な力に飲み込まれないよう気を付けなければならない。

 

 そして何より、今の白野は理解していた。

 

「グリッタートリガーは僕自身なんだって」

 

 グリッタートリガーは確かに凄まじい。

 

 だが、それをずっとエタニティコアの力という面しか見ていなかった。

 

 だから、エタニティコアの力を引き出せなかった。

 

 けれど、違うのだ。

 

 グリッタートリガーもエタニティコアの一部なのだから。

 

「ほぅ、良い目をしたな、我がライバル」

 

 そう、目の前にいるダーゴンが白野に言う。

 

「裏切り、光へとなり、どのように変わったのか、この豪腕の前に見せてみろ」

 

 そうダーゴンは身体から暴れ出る闇と共にこちらに向ける。

 

 それに対して、白野もまた、身体から黄金の光を出しながら構える。

 

 力を完全にコントロールし、そして使う。

 

 それができるまで、グリッタートリガーで戦う。

 

「いくよ、友よ」

 

 そう白野は静かに呟くとダーゴンはどこか笑った気がした。

 

 次の瞬間、大地を響かせながら、二人は激突する。

 

『ゴォアァッ!!』

 

 まず最初に動いたのは、白野だった。

 

 今までのよう力任せではないが、確かな全力で放つ拳を放つ。

 

 それに対し、ダーゴンはその巨大な右腕を振り上げ、迎え撃つ。

 

 両者の攻撃がぶつかり合い、周囲に衝撃波が生まれる。

 

 だが、それだけでは終わらない。

 

 互いに互いの攻撃を弾き飛ばすようにしながら、両者は間髪入れずに動き出す。

 

 ダーゴンの右拳による一撃に対し、白野は左腕を振るう。

 

 白野の腕に纏われた金色の光が刃となって放たれた斬撃となる。

 

 それにダーゴンは拳で対抗しようとする。

 

 しかし、斬撃に対して拳をぶつけるのは危険だと判断したのか、ダーゴンは即座に回避行動を取る。

 

 それを見た白野は追撃を行うべく、地面を踏み抜く。

 

 まるで爆発が起きたかのような衝撃を生み出し、それと同時に白野は一気に加速すると、そのままダーゴンへと迫る。

 

 しかし、ダーゴンは地面を大きく両手で叩く。

 

 その衝撃で地面は大きな土の壁を生み出す。

 

 白野はそれを見て止まる事無く跳躍を行い、壁を乗り越えると、その勢いのまま蹴りを放った。

 

「ぐっ!?」

 

 流石にこれは予想外だったのか、ダーゴンは苦悶の声を上げる。

 

 吹き飛ばされそうになるものの、両足で踏み止まり、耐え切る。そんな彼の様子に白野は着地してすぐに、再び走り出した。

 

 ──もっと速く!! その想いと共に駆け抜ける白野はさらに速度を上げて、突き進む。

 

 ダーゴンもそれに応じるかのように拳を放ち始めた。

 

 次々と繰り出される拳に対し、白野は全てを捌き、時には受け流す。

 

 そして、カウンターとして拳や足を叩き込む。

 

 そこから更に戦いの流れが変わった。

 

 互角の戦いを繰り広げていた二人だったが、徐々にではあるが白野の動きについていけなくなったダーゴンは徐々に押され始める。

 

「面白いぞ! 

 

 あの頃よりも、この時代に蘇った時よりも、強くなっているぞ、我が友よ!」

 

 ダーゴンは楽しげな声を上げながらも、白野の攻撃を防ぐ。

 

 けれど、それは段々と余裕がなくなり始めていた。

 

「そうだ、それでいい!!」

 

 ダーゴンは声をあげつつ、拳を構えて、振り下ろす。

 

 それにより生み出された衝撃波と衝撃波がぶつかり合う事で周囲を覆う。

 

 それと共に互いに大きく離れる。

 

 同時にダーゴンは、両腕でエネルギーを発生させたのち、右腕を炎の衝撃波を真っ直ぐと白野に向けて放つ。

 

『Power Photon!』

 

 それと共に、白野もまたグリッターブレードを回転させ、赤いクリスタルを合わせて発動する技。

 

 思い切り地面を踏み込んで跳躍し、グリッターブレードの刀身に赤いエネルギーをまとわせた刺突を放つ。

 

 互いの攻撃はぶつかり合う。

 

「「はああああぁぁ!!!」」

 

 互いの必殺技であり、その競り合いに負ければ、勝負が決する。

 

 だからこそ、二人は譲れないのだ。

 

 そこで両者は気づく。目の前にいる相手と戦う事に楽しさを感じている事を。

 

 だからだろう、先程までの拮抗した状態が崩れたのは。

 

 白野は鍔迫り合いの状態になりつつも、僅かに身体を前に出すと、少しずつだが押し始めていく。

 

 そして、ついに、白野の一撃は、ダーゴンの衝撃波を切り裂く。

 

「ふっ、さすがだ」

 

 ダーゴンはその一言と共に、白野の一撃を受け止める。

 

 光に包まれながらも、ダーゴンが最後に感じたのは、戦士として敗北した事による喜びだった。

 

 そして、その一撃に包まれたダーゴンは光の中へと消えていった。

 

「……」

 

 光となり、ダーゴンは、空へと消えていく。

 

 その瞬間を見ていた白野は、見届けるように、空を見つめていく。



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19話

「それにしても、こうしてお前と一緒に暮らすようになって、結構経つな」

 

 そう言いながら、伊達は白野が煎れてくれたコーヒーを飲みながら、話しかける。

 

「そうなのか?」

 

 白野はそう言いながら、首を傾げながら、問いかける。

 

「お前をこうして引き取ってから、多くの戦いを乗り越えたからな。

 

 そうして、ようやく闇の巨人の1人を倒したからな」

 

 その伊達の言葉に白野は言う。

 

「ああ、そうだな」

 

 そして、白野は言う。

 

「だけど、俺もまだまだ。

 

 闇の巨人も、まだ2人残っている」

 

「あぁ、そうだな。

 

 だけど、せっかくだ、これはご褒美だ」

 

 そう言いながら、伊達が服の中にある物をゆっくりと渡す。

 

 それは本だった。

 

 その内容は、表紙を見るだけでも分かる。

 

「これは?」

 

「エロ本だ。

 

 なかなかのレアものだぞ」

 

 そうニヤッと笑みを浮かべる。

 

 それに対して、白野はパラパラとエロ本を見始める。

 

 しかし、すぐに白野の顔色が曇る。

 

 エロ本をパタンと閉じて、ため息をつく。

 

「やっぱりダメか?」

 

 伊達は残念そうな顔をする。

 

 白野は無言のまま、こくんと静かにうなずいた。

 

 この反応に対して、伊達は納得するように頷く。

 

「やはり、お前は拘りが強いようだな」

 

「あんたは、白野に何を見せているのよ!」

 

 そう言いながら、伊達の背後からみずきは思いっきり殴った。

 

「おい! 何をする!」

 

 痛む後頭部を押さえながらも、伊達は抗議の声を上げる。

 

 だが、そんな事はお構いなしに、みずきは呆れたような表情で言う。

 

「アンタねぇー、子供相手にエロ本の読み聞かせなんて変態行為をするんじゃないわよ」

 

 そして、白野の方を見て言った。

 

「白野も、こんな本を見ないの!」

 

「伊達に勧められたから。

 

 けど、あんまり興味はない」

 

「だったら、なんで読んだの?」

 

「よく分からないけど、みずきを見ている時のようにポカポカになってきたんだ」

 

 白野の言葉を聞いて、みずきは思わず赤面してしまう。

 

 それを見た白野は不思議そうな顔をしながら聞く。

 

「どうした?」

 

「別になんでもないわよ!」

 

「んっ、みずき。

 

 まさか、お前は「伊達は黙ってる!」ぐぇ!」

 

 余計なことを言いかけた伊達の背中を踏みつけるようにして、無理やり黙らせた。

 

 一方、白野はキョトンとした様子で伊達を見ていて、それを見ていたみずきは何とも言えない気持ちになっていた。

 

(やばい。

 

 完全に私の方が悪役みたいじゃん)

 

 そう思った時だった。

 

 地面を大きく揺れる。

 

 それには、その場にいた全員が驚きを隠せなかった。

 

 すぐに窓の外を見た。

 

 そこには全身が鈍い光沢を帯びた灰色、全て貪らんとする大きな口、申し訳程度の小さな腕、腕と対照的に力強い脚と、ティラノサウルスやカルノタウルスを思わせる体型をしている怪獣がいた。

 

 その怪獣は、近くの建物を喰らっていた。

 

「白野っ!」

 

「あぁ」

 

 みずきの言葉を聞くと共に白野は懐からガッツスパークレンスを取り出す。

 

「未来を築く、希望の光!! ウルトラマン……トリガーッ!!!」

 

『Ultraman Trigger Multi Type!』

 

 その言葉と共に、白野は瞬く間に巨人であるウルトラマントリガーへと変わる。

 

 同時に、ウルトラマントリガーへと姿が変わると共に、ビルを喰らっている怪獣に向かって、飛びかかる。

 

 上空から勢いよく跳びかかり、そのまま首根っこを掴む。

 

 だが、目の前にある建物を食べる邪魔した事に、怪獣は怒りの声を上げて暴れだす。

 

 そして、自分の首を掴んで離さない相手の手を掴み、そのまま投げ飛ばす。

 

 すると、壁にぶつかった衝撃によりウルトラマントリガーの手が離れてしまう。

 

 一方、怪獣の方もまた着地すると同時に後ろに大きく転ぶ。

 

 しかし、すぐさま立ち上がると、すぐに此方に走って向かってきた。

 

 それに対して、白野は瞬時に構える。

 

 それは、トリガーの必殺の光線であるゼペリオン光線だった。

 

 L字に構えた光線は、真っ直ぐと怪獣へと放たれた。

 

 光線を受け止めた怪獣だった。

 

 しかし、その光景に白野は驚きを隠せなかった。

 

 それは、戦闘を見ていたみずき達もだった。

 

「嘘でしょ」

 

 それは、ゼペリオン光線を喰らっている光景だった。

 

 その強力な光線を、口の中で受け止めているのだ。

 

 いや、そもそも口から体内に吸収している様に見えた。

 

 何より驚くべきなのは、それに耐えるどころか逆にエネルギーを吸収し始めている事だ。

 

 その光景を見て驚く一同だったが、それはさらに変化する。

 

 エネルギーを吸収しながら、それまでエネルギー不足だった身体に力がみなぎって来たのか姿が変わっていく。

 

 翼のような形状の背中の巨大な突起物と、人間の金切り声を思わせる不気味な咆哮が特徴。腹部には6つの目玉のような模様。

 

 

 

 それは、先程の怪獣と同じ姿とはまるで違った。

 

「姿がっ変わった」

 

 みずきの言葉を皮切りに、その怪獣が白野に襲い掛かる。

 

 その力は、先程とは比べものにならないほど強かった。

 

 押し倒されてしまい、白野の首元を掴む。

 

 それと同時に、首筋から血が流れた。

 

 それは、あの時の傷跡だった。

 

 今度は、噛みつくのではなく爪を立てて切り裂いたのだ。

 

「白野っ!」

 

「ぐっ」

 

 本来だったら、すぐにでもグリッターになれば、対抗できる。

 

 だが、その隙はない。

 

「まだ、来ないの!」

 

「ここまでは予想外だったからっ」

 

 すぐにでも助けたかった。

 

 しかし、未だにABISのメカが来ない。

 

 それに苛立ちを隠せなかった時だった。

 

「伊達」

 

「なんだ、こんな時に」

 

「お前、何時の間にそんなGUTSハイパーキーを持っていた」

 

 その言葉と共に、伊達は懐にあるGUTSハイパーキーを見る。

 

 それに描かれていたのは、白野が変身するトリガーとよく似た姿。

 

 だが、それは

 

「これって、闇の巨人のトリガーじゃ」

 

「なんで、これが」

 

 そう、疑問に思う。

 

 しかし。

 

「今はこれしかないのかっ」

 

「伊達っまさか!」

 

「止めろ、危険だ!」

 

 アイボゥの言葉を聞きながらも、伊達はそのまま自身のガッツスパークレンスに、その闇のトリガーのGUTSハイパーキーをセットする。

 

『Trigger Dark……! Boot up……! Dark Zeperion……!』

 

「未来を染める漆黒の闇……! トリガーダーク!!」

 

『Trigger Dark……!』

 

 それと共に伊達はそのまま引き金を引く。

 

 同時に伊達はその姿をトリガーダークへと変わる。

 

 トリガーダークとなった伊達は、そのまま怪獣を蹴り上げる。

 

「っ!!」

 

 トリガーダークの出現。

 

 それに驚きを隠せない白野は思わず構える。

 

「大丈夫かっ、白野」

 

「まさかっ伊達!」

 

 伊達がトリガーダークに変身している。

 

 その事に、白野は驚きを隠せなかった。

 

「ぐっ、これはっやばいっ」

 

 しかし、伊達はそのまま頭を抱える。

 

「本来ならば、闇の制御は難しい。

 

 やるんだったら、早くしろ、伊達!」

 

 そう、伊達にアイボゥの言葉に頷く。

 

「この状況でっすぐになんとかするにはっ、白野っ」

 

「っあぁ」

 

 伊達の言葉を聞くと共に、大きく頷く。

 

『Boot up! Glitter Zeperion!』

 

「宇宙を照らす、超古代の光!! ウルトラマン……トリガアァァーッ!!!」

 

『Glitter Trigger Eternity!』

 

 その言葉と共に、白野はグリッタートリガーへと変わる。

 

 同時に白野と伊達は同時に構える。

 

 それは、先程白野が行ったゼペリオン光線。

 

 だが、それは先程よりも遙かに威力の高い必殺の光線。

 

 怪獣は、再びその光線を受け止めようとした。

 

 だが、先程以上の光線に、それを受け止めるのは困難だった。

 

 しかも、それは二つ同時に。

 

 なんとか吸収したはずのゼペリオン光線を再び喰らい、その身体は大きく揺らぐ。

 

 やがて吸収する限界が訪れ、怪獣の姿は完全に消滅した。

 

「ふぅふぅ」

 

 それによって、白野も伊達も息切れを起こす。

 

 同時に、そのまま変身を解除する。

 

「伊達、なんでトリガーダークが」

 

「俺も正直に言って、分からない。

 

 さて、どうしたもんか」

 

 そう言いながら、伊達はその手元にあるトリガーダークのGUTSハイパーキーを見る。



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20話

 その場所は、アビスの中にある施設にある研究所。

 

 そこにある椅子に伊達は座っていた。

 

「それで、検査の結果はどうだったのピュータ」

 

 そう言いながら尋ねた1人の女性。

 

 ABISの指揮官を務めている女性。

 

 アビスにいるボスは目の前にいる研究員であるピュータに尋ねる。

 

「そうですね、極めて正常としか言いませんね」

 

 そう言いながら、ボスからの言葉を答えるようにピュータもまた頷きながら言う。

 

「それで、伊達君。

 

 本当に、闇の巨人になったのね」

 

「あぁ、正直言って、俺も困惑しかないが」

 

 それと共に伊達を含めて、全員が先日の事件での戦いを思い出す。

 

 白野が怪獣との戦いに苦戦をしている時に、伊達が所持していた謎のGUTSハイパーキー。

 

 そのGUTSハイパーキーには、かつて白野が変身していた姿であるトリガーダークの力が込められていた。

 

 苦戦し、戦いに負けそうになった白野を助ける為に、伊達は咄嗟にそのトリガーダークのGUTSハイパーキーを使用した事によって、その身をトリガーダークへと変身した。

 

 トリガーダークへと変身し、戦いを終わった後に、その身体に異常はないのか、アビスで詳しい身体検査を行われた。

 

 結果、その身体には異常はなかった。

 

「アイボゥの方は何か分かったの?」

 

「戦闘中の記録は一応残っていますけど、観測した所、身体的には何も問題ないようです」

 

「身体的には? 

 

 つまりは、精神的には何か負担があるの?」

 

 ピュータの一言に気になったボスは思わず尋ねてしまう。

 

「闇の巨人の力に関して、未だに未知な部分が多いです。

 

 だけど、未だにGUTSハイパーキーを使用した者は、その力に強い依存性があると考えて良いでしょう」

 

「それは、つまり、俺にもその依存があるのか?」

 

 それに気になった伊達はそのままピュータに尋ねる。

 

「核心を持っては言えません。

 

 けど、このトリガーダークの力は伊達さんに強力な力を与える代わりに巨大な破壊衝動を引き出します。

 

 そして、それがあまりにも強い場合は使用者の精神に大きなダメージを与えます。

 

 だから、このGUTSハイパーキーは使用しない方が良いです」

 

「確かにな。

 

 変身した時の僅かな間でもな」

 

 そう言いながら伊達は自分に起きた現象を思い出した。

 

 自分が初めて闇の巨人への変身した時、少しの間だけでも正気を失い掛けた事を、そんな状況ではまともに戦えるはずもない。

 

 それを考えるならば、確かに他のGUTSハイパーキーを使うよりも危険性が高いと言えるだろう。

 

 だが、それでも、自分はあの時のような恐怖感を感じてはいなかった。

 

「どうかしたか、伊達?」

 

 そう言いながら、検査が終わり、迎えに来た白野がいた。

 

「いいや、なんでもない」

 

 その言葉と共に伊達は不敵に笑みを浮かぶ。

 

 今、自分が使っているトリガーダーク。

 

 その闇は、元々は目の前にいる少年そのものだからだ。

 

 僅かな間だが、伊達は確かに白野の事を息子のように感じていた。

 

 だからこそ、これまでは様々なメカで、白野を支援してきた。

 

 だが、それでも白野を前線で戦い続けさせたのは変わりなかった。

 

「ピュータ。

 

 これの調整はできないか」

 

「なっ、何を言っているんですか。

 

 さっきの話を聞いていたんですか!」

 

 そう、トリガーダークキーを再度使えるように、相談する。

 

「あぁ、暴走する可能性はある。

 

 そんなのは百も承知さ」

 

「だったら、なんで」

 

「子供1人で戦わせる訳にはいかないだろ。

 

 俺は、一応はこいつの保護者だからな」

 

 そう、伊達は白野の頭を撫でる。

 

 白野は戸惑いながらも嬉しさがあったのか照れているようであった。

 

 そんな様子を見て、思わず微笑ましく思ってしまうボスとピュータであったが、すぐに表情を引き締め直す。

 

 トリガーダークの力は強力であるが、危険な代物でもあるのだ。

 

「危険は承知なのね」

 

「あぁ」

 

 ボスは伊達に再度忠告するように、言うと、それに対して、伊達は大きく首を縦に振る。

 

 もし、再び闇の巨人へとなった場合のリスクを考えれば、確かに危険を伴うであろう。

 

 しかし、それ以上に伊達の気持ちが強くなっていた。

 

「どうやら、決意は固いようね。

 

 ピュータ、頼めるかしら」

 

「はぁ、本当に、こういう無茶ばっかり」

 

 そうボスからの言葉を聞き、ピュータは渋々といった様子で調整に入った。

 

 それは、この場での決断と言うよりは、むしろ諦めに近い感情によるものだ。

 

 そんな時だった。

 

「伊達警部はここにいるか」

 

「えっ?」

 

 突然、アビスに入って来た人物。

 

 それは、同じく警部だと思われる人物だった。

 

「何の用かしら?」

 

「お前に殺人容疑で逮捕する」

 

「殺人? 

 

 それって、どういう事かしら」

 

 ボスはそのまま問いかけるように、警部に話を聞く。

 

「数時間前、伊達警部だと思われる人物がナイフでの殺人を行っていたのを目撃した」

 

「ナイフ? 

 

 そんなの、俺は持っていないぞ。

 

 第一、俺は数時間前からずっとここで検査を行っていたぞ」

 

 そう伊達はアリバイを話した。

 

 だが

 

「身内同士で固めている可能性があるからな」

 

「そこまで言うならば、その証拠を見せてくれるわよね」

 

「ちっ、これだ」

 

 その言葉と共に、警察官の1人が持っていたタブレットをそのまま渡す。

 

 全員が、それに覗き込むように見る。

 

 そこに映っていたのは、確かに伊達だと思われる人物だった。

 

 ただ違うのは、伊達が浮かべるとは思えないような狂気的な笑みを浮かべながら、その手にはダガーを持っていた。

 

 伊達達からしたら、その人物は

 

「犀人」

 

 そう、呟いた。

 

 だが、そんな彼らとは違う意見が白野から出た。

 

「こいつ、ヒュドラムだ」

 

「ヒュドラム? 

 

 それって、あの青い奴か?」

 

「あぁ、けど、なんで伊達の姿に?」

 

 白野はすぐに首を傾げる。

 

 だが、伊達は同時に納得するように言う。

 

「あの事件を知っていると言う事か」

 

「事件?」

 

 何を言っているのか分からず、白野は思わず首を傾げる。

 

 それは、未だに白野が知らない、伊達の過去にまつわる事件を。



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21話

 伊達の身に起きた事件。

 

 その内容は奇妙な事件だった。

 

 左目をくり抜かれた死体の発見を皮切りに、伊達の過去に関わる多くの出来事。

 

 そして、ヒュドラムが伊達と同じ姿に変装した訳。

 

 それらを聞いた白野は少し困惑した。

 

「悪いな、お前には、少し信じられなかったか」

 

「そうだね。

 

 けど」

 

 そう言いながら、白野は。

 

「伊達は俺と同じように変わった。

 

 だから、俺は伊達を信じるよ」

 

「……そうか、そうだな」

 

 かつては闇の中にいた。

 

 そして、今は光の中にいる。

 

 ある意味、自分と同じような存在だと感じれる。

 

 それが、伊達の中に決意があった。

 

「悪いが、白野。

 

 あいつとは、俺が決着をつける。

 

 暴走してしまうかもしれない。

 

 その時は」

 

「しないよ。

 

 伊達はきっと俺とみずきの元に帰ってきてくれるから」

 

「……まったく」

 

 それと共に、伊達は立ち上がる。

 

「ピュータ、大丈夫か」

 

「本当だったら、止めたい所ですけど、無理なんでしょ」

 

 その言葉と共にピュータはそのまま伊達にトリガーダークキーを渡す。

 

「伊達君。

 

 絶対に戻ってきなさい」

 

「了解、ボス」

 

 その言葉を聞くと共に、伊達は、そのままヒュドラムがいるだろう場所に向かう。

 

 向かった先。

 

 そこは伊達にとっては因縁のある場所。

 

 そこには人間の姿でいたヒュドラムがいた。

 

「待っていましたよ、伊達さん」

 

「その姿でわざわざ犯罪をするなんて。

 

 何が目的なんだ?」

 

「なに、トリガーの保護者という事で興味が出ましてね。

 

 以前から調べてみましたが、まさかこんな面白い人物だとは思わなかったのでねぇ」

 

 笑みを浮かべ、ヒュドラムは伊達に言う。

 

「伊達さん。

 

 どうですか、私と共に、好きに暴れるのは。

 

 あなたは、とてもではないが、こちら側の方が合っているはず」

 

「悪いが、俺はこれでも保護者でね。

 

 あいつらの期待を裏切るつもりはない」

 

『Trigger Dark……! Boot up……! Dark Zeperion……!』

 

「なるほど、では、せめて面白く死んでくださいよ!!」

 

 同時にヒュドラムはその身体を巨大化する。

 

 それを身ながらも、冷静に、伊達は構える。

 

「未来を染める漆黒の闇……! トリガーダーク!!」

 

『Trigger Dark……!』

 

 それと共に伊達はそのまま引き金を引き、同時に伊達はその姿をトリガーダークへと変わる。

 

 伊達がトリガーダークへと変身を終えると共に、闇の中からヒュドラムがその左腕にあるダガーによる奇襲を行った。

 

 暗い、夜の闇からの奇襲に対して、トリガーダークの身体に火花を散らしながら、そのままヒュドラムを睨む。

 

「おやおや、まだ始まったばかりじゃないですかねぇ!!」

 

 その言葉と共にヒュドラムはさらに追撃するようにダガーで突いてくる。

 

 山よりも巨大なはずのヒュドラム。

 

 だが、その動きはまるで風のように素早く、無駄はなかった。

 

 まるで嵐を思わせるような攻撃に対して、トリガーダークはなんとか捌いているものの、反撃を行う暇がない。

 

 さらにヒュドラムから放たれる拳により大きく吹き飛ばされてしまう。

 

 地面へと叩きつけられながられる。

 

「もぅ終わりですか!」

 

「悪いけど、俺は格闘よりも射撃の方が得意なんだよ」

 

 その言葉と共にトリガーダークはその手に闇を集め、真っ直ぐとヒュドラムに向けて放った。

 

 闇はまるで銃弾のようにヒュドラムの身体に当たる。

 

 それに驚くヒュドラムだが、そうしている間にもトリガーダークは走りながら、さらに追撃するように放っていく。

 

「ちっ、調子に乗るんじゃねぇぞ、クソ野郎!」

 

 ヒュドラムはトリガーダークからの反撃に怒りを覚え、荒い口調と共に、姿を消す。

 

 トリガーダークはそれを見ると共に、構える。

 

 先程の闇からの奇襲を再び行う。

 

 それを察したトリガーダークはゆっくりと構える。

 

 周囲で、何時から襲撃があっても良いように。そしてトリガーダークの真後ろからヒュドラムが現れると同時にダガーを振るう。

 

 それを見たトリガーダークは振り向きざまに両手を前に出して闇の壁を作り防御する。

 

 一瞬にして闇の壁に刃がぶつかる音が響き渡る。

 

 しかし次の瞬間には闇の壁は崩れ去り、ダガーを受け止めることに成功する。

 

 それと同時にトリガーダークはそのままもう片方の手でヒュドラムを掴む。

 

 そのまま地面へと叩きつけようと力を込める。

 

 だがヒュドラムは笑みを浮かべるとトリガーダークの腕を掴んだまま飛び上がる。

 

 それによりトリガーダークもまた地面に叩きつけられることはなく空高く飛んでいく。

 

 空中ではお互い距離を取り合うかのように移動する。

 

「ウォォォァァァーッ!! ……絶対に許さねぇぞゴミカス共ォ!!」

 

 それと共に、ヒュドラムはダガーに自身のエネルギーを集める。

 

 それに対して、トリガーダークもまた両手を広げてエネルギーを溜める。

 

「「ハアアァァ!!!」」

 

 それと共にヒュドラムはそのダガーから青い閃光を、トリガーダークはL字にして、光線を放つ。

 

 2人の技が衝突すると辺り一面を吹き飛ばすほどの爆発が巻き起こった。

 

 しかし、未だに二つのエネルギーは激突は続く。更にパワーを増し続ける2つの光によって、戦場は再び荒れ狂いだす。

 

「「ぐぐぐっ!!」」

 

 その激突の中でも、ヒュドラムは自身のプライド。トリガーダークは自分が守るべき物を守る為に。

 

 互いの想いをぶつけるようにして二つの光がぶつかりあい、やがて決着がつく。

 

「はあああぁぁ!」

 

「ぐっこんなっ!」トリガーダークの勝利だ。

 

 だがそれも限界まで力を出した結果であり既にトリガーダークのカラータイマーは点滅を始める。

 

 だがそれでもまだ倒れない。何故なら彼は父親だからだ。

 

 そんな彼にヒュドラムは苦悶の声を上げながら。

 

「俺はっぐぅがあぁあぁあ!!」

 

 そう言い残すと地面に落下していく。

 

「はぁはぁ、なんとか」

 

 それと共に、トリガーダークの変身もまた解除された。



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22話

 闇の巨人達の戦いは既に佳境を迎えた。

 

 白野との決闘で、ダーラムは倒される。

 

 伊達との戦いで、ヒュドラムもまた倒される。

 

 3体いた闇の巨人は既に2体は倒されている。

 

 そして、その最後の闇の巨人の1人であるカルミラは。

 

「それにしても、まさか簡単にお前を捕らえられるとはね」

 

 そう言いながら、カルミラはその傍らにみずきを捕らえながら、歩いていた。

 

 伊達とヒュドラムが戦っている間に、みずきがカルミラによって、捕らわれてしまった。

 

「あんた、私を捕らえて、どうするつもりなのよ」

 

「黙りな。

 

 あんたと話していると、あの巫女を思い出して、虫唾が走るんだよ」

 

 そうカルミラはみずきを睨みながら、呟き。

 

「巫女って、確か白野が過去に行った時に言っていた」

 

「そうだ、私のトリガーを奪った、あの忌々しい奴」

 

 それと共に、カルミラは舌打ちをする。

 

「ふぅん、つまり私に対しては八つ当たりという訳か。

 

 まぁ、今じゃ、白野の一番は私だけどね」

 

「どうやら、あの巫女とは似ているのは、顔だけではなく、性格も似ているようね」

 

 そうしている間に辿り着いたのはどこかの遺跡だった。

 

「なに、ここは?」

 

「エタニティコアがある場所。

 

 これを開くには、巫女であるユザレの魂が必要。

 

 そのユザレの魂がお前にはあるからね」

 

 そう言いながら、みずきに対して、カルミラは笑みを浮かべる。

 

「そんな事に私が手伝うとでも思うの」

 

「別に。

 

 ただ、無理矢理、巫女の力を使わせて貰うだけだよ」

 

 カルミラはそう言うと同時にみずきの腕を掴む。

 

「痛い!」

 

「さっきから騒いでいるけど自分の立場を理解していないようだねぇ」

 

 そう言ってカルミラは、そのまま祭壇の前まで連れて行き、みずきを磔にする。

 

「何する気!?」

 

「あんたが大人しくしないならここで死んでもらうだけさ」

 

 そう言いながらカルミラはその手をみずきにかざす。

 

 すると彼女の身体から黒い光が放たれ始める。

 

「これは? 何をしたのよ!」

 

「言っただろ利用するって」

 

 そうして黒い光を浴びた事によりミズキから青い粒子が立ち昇り始め。

 

 それと同時に彼女は絶叫を上げる。

 

「あああああああ!!!!!!」

 

 それを見たカルミラは笑い声をあげる。

 

 同時に、その祭壇の後ろから黄金の粒子がカルミラに向かっていく。

 

「これが、エタニティコアの力ぁ!!」

 

 その叫び声と共にカルミラの身体は徐々に巨大化していく。

 

 手足と尻尾を持つオーソドックスな怪獣のフォルム。

 

 ただし、右手の指が1本だけ極端に長いという特徴を持ち、微妙に左右非対称という歪な容姿をしている。

 

 

 

「これで、お前にはもう用はない!!」

 

 同時にカルミラはみずきに向けて、その手を振り下ろす。

 

 先程の影響なのか、身体に力が入らないみずき。

 

 もう既にカルミラの攻撃を防ぐ力は彼女にはなかった。

 

「白野っ」

 

 みずきは、白野の名前を呟く。

 

 それと同時だった。

 

『Ultraman Trigger Multi Type!』

 

 響いた音。

 

 それと共に、みずきに襲い掛かろうとしたカルミラの攻撃を防いだ巨人の腕。

 

「白野!!」

 

 それは、白野が変身したウルトラマントリガーだった。

 

 白野は、みずきの方を見て、頷くと共に、そのままカルミラを吹き飛ばす。

 

「トリガー!!!」

 

 同時に白野を見たカルミラは咆哮と共に、襲い掛かる。

 

 瞬時に白野もまた構え、カルミラに腕を振り下ろす。

 

 白野はそのままみずきを腕の中で抱えると共に、その場から離脱する。

 

 追撃するようにカルミラは、身体から触手を伸ばして攻撃していく。

 

 白野はみずきを抱えたまま、彼女を安全な場所まで飛び去る。

 

「白野ありがとう助かったわ」

 

「いえ、それよりも、みずきが無事で良かった」

 

 それと共にカルミラに相対する。

 

「けど、どうすれば」

 

「大丈夫。

 

 俺だけじゃなくて、伊達もいるから」

 

「伊達?」

 

 その言葉と共に、カルミラの触手が伸びてきた攻撃。

 

 それを闇の刃によって、斬り裂かれた。

 

「今のは」

 

「間に合ったか!」

 

 それと共に辿り着いたのは、ダークトリガーへと変身している伊達だった。

 

「伊達、もしかして、またその姿に」

 

「これでも結構無茶したんだ。

 

 にしても、結構やばそうだな」

 

 それと共に白野と伊達はそのままカルミラに対して、構える。



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23話

 夜の闇によって、覆われた森の中で、その存在は雄叫びをあげる。

 

 雄叫びだけでも、地震が起きたと思われる程の迫力があり、その存在に対して、2人は構える。

 

 かつては、闇の巨人の1人であり、妖艶な姿を見せたカルミラ。

 

 だが、そのカルミラはエタニティコアの力を得た事によって、その姿はオーソドックスな怪獣のフォルムとなっているメガロゾーアへと変えていた。

 

「油断はするなよ、白野」

 

 そう、伊達が変身した闇の戦士であるトリガーダークは、隣にいる戦士に声をかける。

 

「勿論だよ、伊達」

 

 同時に光の戦士であるトリガーへと変身している白野もまた頷く。

 

 かつては同じ存在であった2人のトリガーは、その身体を二つに分かれ、今は親子のような関係となっている2人。

 

 その2人は、目の前にいるメガロゾーアへと立ち向かう為に、走り出す。

 

 トリガーがまず仕掛けるように、その拳を真っ直ぐとメガロゾーアに向けて放つ。

 

 放たれた拳に対して、メガロゾーアはその巨体で受け流しながら、尻尾でそのまま白野に叩きつける。

 

 だが、それに合わせるようにトリガーダークはメガロゾーアに向けて蹴りを放つ。

 

 その蹴りに対し、メガロゾーアは口から光線を放ち、相殺する。

 

「……っ!?」

 

 トリガーダークはその衝撃により吹き飛ばされるが、空中で体勢を整えて着地し、そのまま再びメガロゾーアに向かっていく。

 

 そんなトリガーダークを見ながら、トリガーの攻撃に対処したメガロゾーアを見て、白野は考える。

 

(……やっぱり、エタニティコアの力はやばいっ)

 

 目の前にいるカルミラはかつての力よりも強い。

 

 今のメガロゾーアは、あの時とは比べ物にならない程に強くなっている事は分かっている。

 

 

 

 だからこそ、油断せずに立ち向かわなければならないのだ。

 

 しかし、だからといってこのままやられっぱなしになるつもりはない。

 

「さぁ、こっちも始めようか!!」

 

 そう言いながら、白野は剣を構える。

 

 すると、トリガーダークも同じように構えると、白野と共にメガロゾーアに立ち向かう。

 

 2対1の状況となりながらも、メガロゾーアは臆する事なく、トリガーダーク達に襲い掛かる。

 

 メガロゾーアから放たれた触手による攻撃を、トリガーダークは避けると同時に、拳を放って殴り飛ばす。

 

 一方で白野の方にも別の触手が伸びてくるが、それを白野は自身の持つ剣であるサークルアームズで斬り裂きながら回避していく。

 

 そんな中でも、白野は隙を見つけては攻撃するが、メガロゾーアの装甲には傷一つ付けられない。

 

 やはり、エタニティコアの力で強化されているせいなのか、今まで戦ってきた相手と比べても桁違いの強さを持つようになっているようだ。

 

 だが、それはトリガーダークも同じであり、トリガーダークもまた触手による攻撃を弾き飛ばしているものの、ダメージらしいダメージを受けていない。

 

「これは……」

 

「ああ、かなり硬いな」

 

 白野の言葉にトリガーダークは同意するように呟く。

 

 正直言ってしまえば、このまま2人がかりで戦ったとしても、倒すのは難しいだろう。

 

「白野っ!」

 

「あぁ」

 

 同時に白野もまた、その手にグリッタートリガーエタニティキーを握り絞める。

 

「宇宙を照らす、超古代の光!! ウルトラマン……トリガアァァーッ!!!」

 

『Glitter Trigger Eternity!』

 

 

 

 同時に、白野もまたエタニティコアの力が宿った黄金の姿、グリッタートリガーエタニティへと変わる。

 

「伊達!」

 

「あぁ」

 

 同時に白野はその腕装着されたグリッターブレードを構え、もう片方の手にあるサークルアームズを伊達に投げ渡す。

 

 同時に、トリガーダークは受け取った武器をそのままメガロゾーアに向け、斬撃を放つ。

 

「っ! このぉっ!!」

 

 メガロゾーアはその攻撃を防ごうとするが、グリッタートリガーエタニティとなった白野の攻撃は先ほどまでとは違い、威力を増しており、その防御すらも貫いてダメージを与える。

 

 それと共に、息を合わせるように2人は連続で攻撃を仕掛けていく。

 

 その一方で、伊達は渡された武器であるサークルアームズを使いこなしていた。

 

 本来であれば、こういった特殊な形状の武器を扱う事は苦手なのだが、伊達は持ち前の器用さを生かし、すぐに扱い方を理解して使いこなす。

 

 そして、そんな2人の攻撃を受け続けたメガロゾーアは徐々に追い詰められていき、ついに限界に陥る。

 

 だが、メガロゾーアは、最後の力を振り絞るように全身から光線を放ち、周囲を攻撃する。

 

「ぐっ、白野!」『Maximum Boot Up! Dark Zeperion!』

 

「はい!」『『Violet! Eternity Zerades!』

 

 二人の光と闇。

 

 二つの力が合わさるように、その力が宿った剣が真っすぐとメガロゾーアに向けられた瞬間だった。

 

『Guuooo!?』

 

 その攻撃によってメガロゾーアの体は切り裂かれ、悲鳴のような声を上げる。

 

 それと同時に周囲に放たれていた光線が消え去り、その場に倒れ込む。

 

 どうやら、完全に倒したようだ。

 

「ふぅ……何とか倒せたか」

 

「えぇ……」

 

 そう思った時だった。

 

 そして、メガロゾーアの姿は大きく変わっていた。

 

 巨大なアンモナイト状の体から触手が生え、顔は下顎に目が付いているという極めて奇怪な姿に変わっていた。

 

 

 

「おいおいっマジかよっ」

 

 そう考えている間にも、メガロゾーアはゆっくりと立ち上がる。

 

 その姿を見た二人は驚きながらも構える。

 

「まだ倒せないのかっ」

 

 そうしている間にも、二人のカラータイマーが点滅を始める。

 

「このままじゃっ」

 

「白野、いったんこの場は下がるぞ」

 

「だけど」

 

「みずきを助ける目的を、忘れるんじゃないぞ」

 

 そう、伊達の言葉を聞くと共に、頷く。

 

 同時に白野はみずきを抱えると共に、すぐにその場から逃げる。

 

 それに対して、メガロゾーアは、その場を動かずに立っていた。



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24話

 無事に、脱出する事ができた白野達。

 

 彼らはその基地にて、カルミラが変化した姿を解析する。

 

「カルミラはおそらくはエタニティコアの力を得て、暴走しています。

 

 このまま暴走を続ければ、おそらくは」

 

 そう、解析したピュータはそのまま暗い表情と共に呟く。

 

「どうにかする方法はないのか? 

 

 今だったら、俺と白野がウルトラマンになれる。

 

 それと共に」

 

「伊達さん。

 

 あなたは既に3度もトリガーダークに変身しています。

 

 既にあなた自身も限界なのは分かっているはずです」

 

『ピュータの言う通りだ

 

 伊達、お前の今の精神状態で再びトリガーダークになっても、戦力になる所が、さらに障害が増えるだけだ』

 

「だったら、どうすれば」

 

 そう、アイボゥの言葉と共に伊達は強く握り締める。

 

「カルミラは、光のエタニティコアと自分の闇を一つにした。

 

 だったら」

 

 同時に白野はそのまま、トリガーダークのGUTSハイパーキーを握る。

 

「白野?」

 

「トリガーダークは元々、僕自身。

 

 ならば、二つの力を一つにすれば、対抗できるはず」

 

「それは、確かに可能かもしれません。

 

 けど、それでも勝率は低い!」

 

 そうピュータは叫ぶ。

 

「それでも、僕は守りたい。

 

 だから」

 

 そう、白野は真っ直ぐと言う。

 

 それに対して、周りは黙る中で

 

「白野」

 

 みずきは、白野の手を重ねる。

 

「絶対に帰ってきて。

 

 それだけは、約束して」

 

「みずき」

 

 みずきの言葉。

 

 それに対して、白野もまた強く頷く。

 

 同時に白野は飛び出す。

 

 その先には既にカルミラがエタニティコアの力を得た姿であるメガロゾーアがいた。

 

 港の先に見える光景。

 

 海の先から迫り来るメガロゾーアはまさしく悪魔としか言えない存在だった。

 

 両腕は腕と同様にハサミ状に変化し、更に背中の貝殻のようなパーツからはタコのような触手が生えており、より冒涜的な外見をしたメガロゾーアはそのまま港へと迫る。

 

 そんな港に迫るメガロゾーアの目の前に1人の巨人が降り立つ。

 

 その姿は、これまでのトリガーとは違い、赤と紫の配色を逆に、プロテクターの一部が黒くなり、体の各部や顔にはトリガーダークを連想させる黒い模様がタトゥーのように入った事で、やや禍々しくなりながらもより光と闇の力の調和がとれている印象を受ける。

 

 その姿こそが、トリガーが光と闇の力の二つを受け入れた姿。

 

 トリガートゥルースである。

 

 トリガートゥルースは変身すると共に、着地する。

 

 巨人だからこそ、海は僅かに足に浸かる程度であり、着地した衝撃と共に巨大な波が起きる。

 

 同時にトリガートゥルースは真っ直ぐとメガロゾーアと向き合う。

 

 メガロゾーアはそのままトリガートゥルースの姿を確認すると共に、その貝殻から無数の触手を真っ直ぐと伸ばす。

 

 伸ばされた触手は、そのままトリガートゥルースに襲い掛かる。

 

 しかし、トリガートゥルースは手刀や蹴りと共に光と闇が混ざった衝撃波を放つ。

 

 衝撃波はそのまま無数の触手を切り裂き、更にメガロゾーア本体にもダメージを与える。

 

 メガロゾーアはダメージを受けると叫び声を上げながら、それでも怯む様子はなかった。

 

 トリガートゥルースもまた、そのまま真っ直ぐとメガロゾーアに向かって走り出す。

 

 トリガートゥルースに向けて、無数の触手が襲い掛かるが、それらに対してトリガートゥルースは拳で弾き飛ばす。

 

 そしてそのまま接近すると、まずは左腕に闇のエネルギーを込めて殴りかかる。

 

 しかし、それを察したのか、メガロゾーアは右腕を振るわれ、吹き飛ばされる。

 

 だが、それと同時にトリガートゥルースも右手を振りかぶっており、振りかぶられた右手には光が纏われていた。

 

 そのままトリガートゥルースは光の一撃を放ち、それは見事に命中して大爆発を起こす。

 

「……これで終わりか?」

 

 トリガートゥルースがそう呟くと同時に、煙の中から無傷のメガロゾーアが現れる。

 

 どうやら、あの程度のダメージでは倒せないようだ。

 

「ならば!」

 

 今度は両手に光のエネルギーを集めて放つ。

 

 それを見たメガロゾーアは、再び触手を伸ばして攻撃を防ごうとするが、触手は全て弾かれてしまう。

 

 そして放たれた光の攻撃はそのまま直撃し、爆発を引き起こす。

 

 しかし、やはりメガロゾーアは健在だった。

 

『グオオオォッ!!』

 

 怒りの声を上げると共に、今度は両腕に魔力を集中させて放つ。

 

 放たれたのは闇黒電撃であり、そのまま一直線にトリガートゥルースに向かっていく。

 

 これに対してトリガートゥルースは回避する事無く、そのまま正面から受け止める。

 

『ぐっ……!』

 

 正面から受け止め、後ろに大きく下がる。

 

 メガロゾーアは、その闇黒電撃でトリガートゥルースを倒す気でいた。

 

 そして、トリガートゥルースもまた負けるつもりはない。

 

『うおおぉっ!!』

 

 雄たけびを上げて突撃する。

 

 そのまま勢いよくパンチを放って、メガロゾーアを吹き飛ばす。

 

『ガァッ!?』

 

 思わぬ反撃を受けてしまい、思わず声を上げるメガロゾーア。

 

 だが、すぐに起き上がると触手を再び伸ばしてくる。

 

 それに対してトリガートゥルースの身体を拘束する。

 

『ぐぅっ……! こいつ、俺の動きを止める気か?』

 

『グルルルルゥッ……』

 

 トリガートゥルースの言葉通りであった。

 

 この触手によって動きを止めている間に、確実に仕留めようとしているのだ。

 

 このままトリガートゥルースが動けなければ、やがては触手によって絞め殺されてしまうだろう。

 

 まさに絶対絶命の時だった。

 

「白野っ」

 

 トリガートゥルースの耳に聞こえた声。

 

 それは彼にとっては大事な人であるみずきの声だった。

 

 だが、みずきだけではない。

 

 まるでトリガートゥルースを応援するように声が聞こえる。

 

 その声を聞いたトリガートゥルースは……。

 

『みんなっ!!』

 

 彼は叫ぶと同時に、闇黒電撃を放ちながら腕を大きく振るった。

 

 それによって触手を引きちぎると、さらにトリガートゥルースは拳を振るってメガロゾーアを殴り飛ばした。

 

 それにより、吹き飛ばされたメガロゾーアは海へと落ちる。

 

 しかし、すぐにメガロゾーアはそのまま立ち上がる。

 

 だが、同時にトリガートゥルースにも大きな変化が起きていた。

 

 先程までの子供達の声援。

 

 それがトリガートゥルースに力を与えた。

 

 それと共にトリガートゥルースは腕が完全に直線で、肩から広げる。

 

 同時に、彼の身体には黄金の光と夜のような闇。

 

 二つの力が集まる。

 

 それと共に、と体の各部にある装飾が虹色に発光する。

 

 そして、その腕をL字に組んで放つ光と闇が混ざった光線を放つ。その威力は凄まじく、一瞬にしてメガロゾーアを飲み込むほどだ。

 

 その一撃で、メガロゾーアを倒すことに成功した。

 

『光が』

 

 聞こえた声、それはカルミラだった。

 

 白野はそれに向けて、ゆっくりと手を伸ばす。

 

『もしも、また来た時でも、君を止めるよ。

 

 だけど、一緒に笑えたら、嬉しいな』

 

『私が欲しかったのは、あんたの愛だよ。

 

 けど、あんたの愛は、あいつの物のようだね』

 

 その言葉と共にカルミラは呆れたように、その姿を消していく。

 

「白野!」

 

 同時に港の近くに、みずきはいた。

 

 トリガートゥルースはそのままみずきに近づく。

 

「みずき」

 

 そう、手を伸ばす。

 

 巨人と少女。

 

 まるで神話を思わせる光景。

 

 しかし、それを遮るように巨大な地震が起きる。

 

「これは」

 

『これは地殻変動っ! 

 

 中心となっているのは、エタニティコアがあった場所っ!』

 

 それと共にピュータの通信が聞こえる。

 

『カルミラがエタニティコアを使った事で、エタニティコアの暴走は収まらず、地球ひいては宇宙そのものが消滅する危機があるっ』

 

 そう、アイボゥの言葉も聞こえる。

 

「だったら、どうすればっ」

 

「……エタニティコアをコントロールすれば、なんとかできるかもしれない」

 

「白野?」

 

「まさか、白野っ」

 

「エタニティコアの内部に入り込み自らその力を制御することでコアの暴走を防ぎ、地球の危機を救う」

 

 そう、白野は決意するように言う。

 

「駄目だよっ、そんな、白野」

 

 そう、すぐに止めようとするみずき。

 

 だが、トリガートゥルースは白野へと変わり、そのままみずきに近づく。

 

 同時にそのまま抱き締め、キスをする。

 

 みずきにとってはファーストキス。

 

 それに驚きを隠せない間にも。

 

「行ってきます」

 

 同時に白野は再び、トリガーへと変身する。

 

「白野!!」

 

 そう、みずきはそのまま手を伸ばす。

 

 だが、トリガーはそのまま姿を消した。

 

 そして、彼は、トリガーは世界を救った。

 

 それから、時はあまりにも早く過ぎていった。

 

 小学生だったみずきは、既に高校卒業間近となっていた。

 

 そこはトリガーが最後に戦った港において、みずきはそっとケーキを近くに置き、そのまま海を見る。

 

「まったく、あんたは何時まで寝ているの。

 

 私はもうすぐ大人のレディになるのに」

 

 そう言いながら、未だにエタニティコアの封印を続ける白野に向けて言う。

 

「成人を迎えて、熟女になって、お婆ちゃんになった頃に戻ってきたら、もう可愛いみずきちゃんは見られないんだぞ。

 

 だから、早く帰ってきてよね、白野」

 

 そう、寂しい笑顔と共に、見つめる。

 

 その時代、地球はスフィアによるNAIXによる侵略が始まろうとしていた。

 

 そして、新たなウルトラマンによる戦いも始まっていた。

 

 同時に、みずきも知るだろう。

 

 白野とみずきが出会う日は、既に近い事も。



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25話

 闇の巨人からの侵略の脅威が去ってから、既に7年の月日が経った。

 

 あの頃は小学生だったみずきも、現在は成長し、既に卒業を間近に控えている高校生となっていた。

 

 腰まで伸びた三つ編みの美少女と言う事もあってか、街に出ればナンパをされる事はあるが、その高すぎる身体能力を見て、ビビってしまう者は多くいる。

 

 何よりもみずき自身は小学生の頃に約束した恋人である白野の帰りを今も待っている。

 

「それにしても、これ、本当にどうなるのよ」

 

 そう呟きながら、上を見上げる。

 

 古代からの闇の巨人からの侵略。

 

 それを乗り越えた後に、まるで立て続けに起きるように、新たな脅威であるスフィアが現れる。

 

 その生態系は未だに謎であり、現時点での地球で対抗する勢力は数少ない。

 

 みずきが現在所属している組織であるABISもまた、スフィアの侵略に対抗する為に日々奮闘をしているが、未だにスフィアの目的が見えない。

 

 しかし、このままではいずれ、人類は滅ぶかもしれない。

 

 だからこそ、今は少しでもスフィアの情報を集める必要があった。

 

 だが、それでもまだ足りないのだ。

 

 何よりも白野が目覚めるまで戦う。

 

 それまでに出来る限りの事をしておかなければ。

 

「……ん?」

 

 そんな時だ。

 

 みずきの持つ携帯から呼び出し音が聞こえる。

 

 その電話が誰なのか、疑問に思い、出る。

 

「もしもし?」

 

「みずき、聞こえるかしら?」

 

 聞こえた女性の声。

 

 それはみずきが所属しているABISのボスだった。

 

 本名は未だに聞いていないが、それでもみずきにとっては昔から世話になった相手だった。

 

 そんなボスが何を連絡するのか、疑問に思う。

 

「先程、スフィアが新しい動きが見られたわ。

 

 奴ら、本格的に侵略を始めるわよ」

 

「なんですって!」

 

 見上げれば、遠くだが、確かにスフィアの大軍がいた。

 

 おそらくは、それに対抗する為の招集だと思い、すぐに愛用の原付に乗り込む。

 

「あなたにはすぐに向かって欲しい所があるの」

 

「向かって欲しい所?」

 

 それに疑問に思い、首を傾げる。

 

「エタニティコアが隠されている山。

 

 スフィアはそこに向かっているわ」

 

「エタニティコアっ!」

 

 それを聞くと、みずきは目を見開く。

 

 未だに白野が目覚めない中で、エタニティコアに接触すれば、どうなるのか。

 

 それはみずきでも容易に想像する事ができる。

 

 宇宙開闢と同等のエネルギーを秘めるとされるエタニティコアを取り込めば、スフィアはもうこの地球で勝てる相手はいない。

 

 そして、もしも制御が失敗すれば、この地球が消滅する危険性もある。

 

「だから、あなたにはエタニティコアを、白野を守る為に向かって欲しいわ」

 

「分かったよ、ボス!」

 

 ボスからの言葉を聞いたみずきはそのまま電話の電源を切り、そのまま行く先をエタニティコアが封印されている山に向けて、走らせた。

 

 頭上では、ボスの言うようにスフィアがエタニティコアを探すように飛んでいるのが見えた。

 

(私達が戦っている間、白野を狙うなんて……)

 

 ボスからの電話で白野が狙われている事を知らされた時、みずきの心の中に怒りが込み上げてきた。

 

 それは白野の恋人として当然の事だ。

 

 しかし、今はその感情を押し殺してでも、スフィアを止める為に、エタニティコアがある場所に走らせる。

 

 やがて、エタニティコアがある場所まで来る。

 

 同時に、見ると、エタニティコアがある入り口までスフィアが迫る。

 

「やらせるか!」

 

 同時にみずきは腰にある銃、GUTSスパークレンスを手に持ち、真っ直ぐとスフィアに向けて引き金を引く。

 

 それと共にGUTSスパークレンスから放たれた光線を真っ直ぐと放った。

 

 放たれた光線で、スフィアは爆散する。

 

 だが、それによって、スフィアの大軍はすぐにみずきに狙いを定める。

 

「さぁて、暴れますかぁ」

 

 そう言い、GUTSスパークレンスを構えながら言う。

 

 それを合図に、スフィアは次々とみずきに向かって迫る。

 

「うわっと!?」

 

 その数の多さに驚きながらも、なんとか回避しながら、その銃口を真っ直ぐと放つ。

 

 それによって、何体かスフィアが爆散していく。

 

 すると、スフィア達は一斉に飛びかかる。

 

 だが

 

『BOOSTUP! TORNADO』

 

 その音声と共に、GUTSスパークレンスから放たれた弾丸。

 

 それはまるで台風を思わせる竜巻を発生させて、みずきに迫っていたスフィア達を吹き飛ばす。

 

 それだけで終わらず、他のスフィアに直撃し爆発四散させる。

 

 そして……

 

『BOOSTUP!』

 

 再び聞こえてきた音声。

 

 それと同時に、GUTSスパークレンスの銃口が赤く光り輝いた瞬間。

 

 そこから光線を放つと同時に竜巻も発生させて周囲のスフィアを巻き込んでいく。

 

 それにより吹き飛ばされていくスフィア。

 

「よしっ!」

 

 思わずガッツポーズを取る。

 

 これでスフィアを一掃できたかと思ったのだが……。

 

「やはり、邪魔をするか」

 

「っ」

 

 聞こえた声と共に振り返れば、そこにいたのは仮面の男だった。

 

「あんたは」

 

「スフィア、いや、新たな救世主だよ」

 

 そう、狂気染みた言葉と共に近づく。

 

 みずきはすぐにその手にあるGUTSスパークレンスを構える。

 

 だが、そんなみずきの行く手を阻むように次々とスフィアが襲い掛かってくる。

 

「くぅう!?」

 

 咄嵯に回避するが、避けきれずに吹き飛ばされてしまう。

 

 そして、地面に倒れ伏すみずきに向かって容赦なく光弾を放つ。

 

 だが、みずきはすぐにその攻撃を避けるが、仮面の男は既にエタニティコアへと手を伸ばした。

 

「止めろ!!」

 

 そう、GUTSスパークレンスの銃口を向けて叫ぶも、男は意にも返さずエタニティコアに手を伸ばす。

 

「……邪魔をするなら容赦しないぞ?」

 

「くっ! 私はお前達の好きにはさせない!」

 

「ふん。貴様らがどう足掻こうとも無駄だ。この俺がいる限りなぁあああ!! さぁ、エタニティコアよ、俺に力を!!」

 

 その叫びと共にスフィアが次々とエタニティコアに近づく。

 

 エタニティコアから発する光に対して、スフィアは次々と爆散していくが、着実に力は吸収される。

 

 同時に吸収したスフィアはそのまま仮面の男へと集まり、その姿が変わる。

 

 そこに立っていたのは、トリガーだった。

 

 しかし、白野が変身するトリガーとは違い、目付きは釣り目に見えるよう黒く縁取られているという違いがある。また、普段は青い目をしている。

 

「悪のトリガー。

 

 イーヴィルトリガーと言った所ね」

 

「イーヴィルとは酷いじゃないか。

 

 私は、この世界を一つにする為に活動するだけだ」

 

「一つですって?」

 

 その言葉にみずきは首を傾げる。

 

「あらゆる人々は一つになる事で、その争いを無くす事ができる。

 

 だからこそ、私達はスフィアで一つになり、永久の平和を手に入れる」

 

「そんな平和、考えられるか!」

 

 イーヴィルトリガーの言葉に怒りを覚えたみずきはそのままGUTSスパークレンスの引き金を引く。

 

 放たれた弾丸は、イーヴィルトリガーに当たるが、まるでダメージがない様子だ。

 

「ならば、ここで死ぬが良い」

 

 その言葉と共にイーヴィルトリガーはその右腕から放つ紫色の光弾でみずきに攻撃を行う。

 

「ぐっ」

 

 その攻撃によって、みずきは吹き飛ばされてしまう。だが、倒れずになんとか踏ん張った。

 

「どうした? もう終わりか?」

 

 イーヴィルトリガーはそう言うと今度は左腕からも光線を放とうとする。

 

「白野」

 

 そう、静かに呟く。

 

 それと同時だった。

 

 エタニティコアの光が強くなる。

 

 それと共に、みずきに放とうとしたイーヴィルトリガーに向けて、拳が飛んできたのだ。

 

 それは光輝く手甲を装着した腕であり、その一撃を受けてイーヴィルトリガーは大きく仰け反り、そして吹っ飛んだ。

 

「ぐぉ!?」

 

 何が起きたのかわからないイーヴィルトリガーはそのまま地面に叩きつけられて倒れる。

 

 そこに追撃をかけようと光の戦士が迫る。

 

「貴様……!」

 

 その姿を見てイーヴィルトリガーは睨み付ける。

 

 そして、みずきは笑みを浮かべる。

 

「お待たせ」

 

 そう、現れた光の巨人、トリガーだった。

 

 そして、トリガーから聞こえるのは、みずきにとっては待ち望んでいた人である白野の声だった。

 

「あんたは本当に、遅いんだから!」

 

 文句を言いながらも、その顔は笑みを浮かべていた。

 

「トリガーっ、まさかここで復活するとは」

 

 そう、イーヴィルトリガーは構える。

 

「お前が何者かなんて、関係ない。

 

 今はただ、みずきを傷つけたお前を、許さない!!」

 

 そう、トリガーは駆け出す。



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26話

 復活したトリガーは、そのまま目の前にいるイーヴィルトリガーと構える。

 

「フッ……」

 

「ハッ!」

 

 そして二人は同時に動き出すと、拳をぶつけ合った。

 

「ヌウゥン!!」

 

「ハアァ!!」

 

 お互いの拳がぶつかり合う度に衝撃波が発生して周囲にある岩を吹き飛ばす。

 

 それと共にトリガーにそのまま足払いを行うようにイーヴィルトリガーは蹴りを放つも、それをトリガーはジャンプして回避した。

 

 しかし空中で体勢を立て直す前にイーヴィルトリガーはそのまま腕を交差させると光弾を放ち、トリガーはそれを両腕を前に出して防ぐ。

 

 だがその威力により地面に叩きつけられてしまい、さらにそこにイーヴィルトリガーが追撃を仕掛けた。

 

 地面を踏み砕きながら放たれた回し蹴りがトリガーに命中し、吹き飛ばされるもすぐに起き上がる。

 

「……フッ」

 

「……」

 

 イーヴィルトリガーは余裕なのか小さく笑う中、トリガーは再び構えると再び走り出した。

 

「ハッ! ヌウウン!!」

 

 イーヴィルトリガーもまた走り出し、お互いに接近すると掴み合う。そして二人の力が拮抗する中でイーヴィルトリガーはもう片方の腕で殴りかかるも、それはトリガーが体を捻って回避する。

 

「ハアッ!!」

 

 そのまま振り向き様にトリガーは拳を叩き込むが、それはイーヴィルトリガーによって受け止められてしまう。

 

 しかしそれでもトリガーの攻撃は止まらず、連続で拳や肘打ち、さらには蹴りまでも繰り出すが全てイーヴィルトリガーに受け止められてしまった。

 

「ふっ」

 

 そう、イーヴィルトリガーは不敵な笑みを浮かべる。

 

 だが

 

『Ultraman Trigger Power type!』

 

 鳴り響く音と共に、トリガーの姿は赤く染まった。

 

 それがトリガーのパワータイプへと変わった時だった。

 

 それによって、トリガーの拳を受け止めていたイーヴィルトリガーは吹き飛ばされる。

 

「っ!」

 

 同時にトリガーは再びイーヴィルトリガーに接近する。

 

 振るわれた拳は、先程とはまるで別物と言っても良い程の威力だった。

 

 イーヴィルトリガーは、それをなんとか受け流すものの、あまりの力強さ故に僅かに後退してしまう。

 

「フンッ!!」

 

 トリガーはさらにそこから連続して攻撃を行い、イーヴィルトリガーを追い込んでいく。

 

 だがそこでイーヴィルトリガーは反撃として、蹴りを放った。

 

 それは見事に命中するも、やはりというべきか、大したダメージにはなっていない。

 

「ふんっ!」

 

 それと共にイーヴィルトリガーの戦法は変えた。

 

 先程までは格闘戦とは一変し、何度も光弾を放っていく。

 

 トリガーに距離を詰めさせないようにしながら、光弾を撃ちまくっていたのだ。

 

「チィッ……!」

 

 流石にこれには対処できず、光弾が次々と命中していく。

 

 それによりトリガーはダメージを受けていき、後ろに下がっていく。

 

 トリガーはそれに対して、その手に光の盾を作る。

 

 それで光弾を受け止めながら、後ろに下がる。

 

「防御するだけかぁ!!」

 

 そうイーヴィルトリガーは叫びながら、トリガーに撃ち続ける。

 

 だが

 

『Ultraman Trigger Sky Type!』

 

 その身体は紫色に染まる。

 

 同時に光弾の嵐によってできた土煙と共に、姿を消す。

 

「なっ!」

 

 同時にイーヴィルトリガーの背後を取ったトリガーは後ろにいた。

 

 その手には既にトリガーが愛用した武器であるサークルアームズをスカイアローモードで弓矢を構えた。

 

「ぐっ!」

 

 イーヴィルトリガーはすぐに先程のように光弾を何十、何百と放っていく。

 

 しかし、サークルアームズから放っていく光の矢はそれらを瞬く間に打ち抜き、そして……。

 

「ハァアアッ!!!」

 

 トリガーはその勢いのまま、イーヴィルトリガーに向けて弓を引き絞った状態で突撃し、サークルアームズを突き刺すように放つ! 

 

「ガハッ!?」

 

 それはイーヴィルトリガーの腹を貫き、そのまま地面に激突させた。

 

「まだっ」

 

 しかし、イーヴィルトリガーはそのまま立ち上がる。

 

「終わっていない!!」

 

 その言葉と共にイーヴィルトリガーの身体にスフィアが次々と纏っていく。

 

 その身体は元々は巨人のサイズだったイーヴィルトリガーが、さらに巨大なサイズへと変貌していったのだ。

 

『フゥウウッ……!』

 

 その姿はまるで怪獣のような見た目であり、顔も人間ではなく獣の顔をしていた。

 

 同時に、その拳を真っ直ぐと、トリガーに振り下ろす。

 

 地震が如く衝撃が地面を揺らし、トリガーを潰した。

 

 それはトリガーが負ける。

 

 そう思われていた。

 

「ずっと待っていた。

 

 お前達の言う、一つにならなくても、みずきは待っていてくれた」

 

「なっ」

 

 だが、イーヴィルトリガーによって潰された拳の下から光が漏れ出る。

 

「一つにならなくても、心は繋がっている。

 

 だから、お前には、負けない!」

 

『Glitter Trigger Eternity!』

 

 同時に、トリガーは黄金の姿であるグリッタートリガーへと変わっていた。

 

 その手には、グリッターブレードとウルトラデュアルソードの、二つの黄金の剣を持っていた。

 

 イーヴィルトリガーは、そんなグリッタートリガーに向けて、光弾を放つも……

 

「甘い! 私の剣技の前に消えろ!」

 

 グリッタートリガーは、二つの黄金の剣を交差させながら振り抜き、全ての光弾を打ち消した。

 

「っ!?」

 

 同時に、巨大なイーヴィルトリガーの身体に向けて、斬っていく。

 

 その攻撃により、傷だらけになっていくイーヴィルトリガーだが、それでもまだ戦える様子だった。

 

「ガアアァァァ!!」

 

 イーヴィルトリガーは、最後の一撃を放つ為に青みがかっている黒の光を両腕を前に突き出し交差させてから大きく横に広げて溜めた後、L字に構えて放つ。

 

 それに対して、トリガーは。

 

『Violet! Eternity Zerades!』『Decker Flash! Trigger Multi! Ultra Combo! Dual Flash Multi Scram!』

 

 その音声が鳴り響くと共に、二つの黄金の剣には紫色の光を纏う。

 

 イーヴィルトリガーに放たれる攻撃に対して、トリガーはその光を纏った剣で受け止める。

 

 そして、その光が消え去ると同時にトリガーは、そのままイーヴィルトリガーを真っ二つに斬り裂く。

 

「ぐあぁああああ!」

 

 斬られた痛みにより叫び声を上げながら地面に倒れるイーヴィルトリガー。

 

「私はっ私はぁ!!」

 

 同時に、その身体は光となって、消える。

 

 それと共に上を見れば、既にスフィアが消えていた。

 

「白野」

 

 その言葉を聞き、トリガーは、白野へと戻る。

 

 同時に空を見れば、戦いが終わっていた事が見て分かる。

 

「スフィアの戦いも終わった。

 

 そして、白野っ」

 

 だが、みずきは驚きを隠せなかった。

 

 そこには確かに白野だった。

 

 しかし、小学生の姿ではなく、高校生ぐらいの。

 

 みずきと同じ体格だった。

 

 しかし、問題は。

 

「なんで裸なのか!!」

 

「あっ」

 

「あっじゃないわよ、馬鹿!」

 

 そう言いながら、みずきは呆れながら言う。

 

 だが、それが日常へと戻った事に、安堵するように。

 

 そう笑みを浮かべる。




これにて、今作は最終回を迎えました。
当時はまさか年の終わりで、最終回を迎えるとは思いもしませんでした。
今作では、あまりAiソムニウムらしさは出せませんでしたが、ここまで応援して貰い、本当に感謝しています。
皆様、本当にありがとうございました。


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