超昂大戦 二次創作SS  虜囚の花嫁! エスカチーム、明日へのブーケトス (環 藍河)
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第1章 孤独のバージンロード! 超昂戦士は花婿の鎮魂歌に濡れる

※特に、原作をこれから遊ぶ方の興味を削ぐネタバレは無いはずです。固有名詞もダメ、という方のみ、原作プレイ後にお読みいただければ。


「追い詰めました! 覚悟の時です!」

「投降しろ! 逃げ場は無い!」

「往生際が悪い男は、モテないぞっ」

「なーんかフラグっぽいけど、一対一で勝負する?」

「くっ…」

 

オルタナスタイン壊滅後、ネオ・ノロイ党を標榜する一派の示威行為と並行して続く、旧アルダークの残党による散発的破壊活動。エスカチームの今日の出動も、フーマン部隊を難なく掃討、あとはコマンダー4人を仕留め、呆気なく完了する任務…のはずだった。

 

コマンダー4人が、懐から取り出したリモコンのボタンを押す。

「『〘〔!?〕〙』」

その瞬間、ルビーが、サファイアが、トパーズもアメイズも、四方をそれぞれ歪曲空間の壁に包まれ、声を上げる間も無く、異空間に転送されてしまう。

「ふははははは! 追い詰めたあ? 誘い込んだのはこちらさ。」

「これより、エスカチーム・地獄の結婚式披露宴を執り行う!」

「我々、媒酌人コマンダー4名の意向により、近親者および関係者の臨席は固く断る!」

「追って披露宴の模様は、特別編集の後、余す所無く全世界に配信しよう!」

 

「し…しまった! 近接チーム、アイとメイはコマンダーの逃走阻止、マッハとエイムは足止めの狙撃を!」

「さやかちゃん、解析を!」

『もうやってる! …出たよ。あれは、平行世界で使われたイデアの壁の…劣化版!』

「劣化?」

『うん、原版はエスカレイヤーを幽閉して力を奪い、フラストの思い描く空間で蹂躙するための牢獄だけど、アレは妄想空間を創る力は無い。この世界に実在する場所への転送と、せいぜい精神攻撃くらいね。』

「実在? ならば、ラボのテレメトリーで居場所は追えるのね?」

『いや…それが、防壁としてはイデアの壁より堅牢みたい。場所はすぐ出ても、壁の壊し方が…!』

「わかった。壁の解析、頼むわよ!」

『りょーかい、なる早でっ!』

 

『こちらアイ、敵コマンダー4名、いずれも失探しました! 申し訳ありません!』

『こちらエイム、足留めの狙撃を試みるも、奴らビル陰から出てきません、恐らくワープした模様』

『こちらマッハ、上方からターゲット探索中も、痕跡見当たらず…トキサダのアニキ、申し訳ねえ!』

「…了解、こちらでもターゲットロストした。4名は装甲輸送車にて帰投せよ…。」

……

「うっ…ここ…は?」

一瞬の意識消失の後、ルビーの視力が徐々に回復する。

天井には無数のシャンデリア。振り返ると頭上には天使と神の子の意匠を施したステンドグラスと十字架。横では小型のパイプオルガンとハープが賛美歌を自動で奏でる。

数百人は入ろうかと広がる室内には、幾十もの円卓が整然と並び、ソーサーとカトラリー、中心のブーケが参列者を今かと待ちかねる。

どの卓からも晴れ姿を見渡せる、生涯に一度の舞台に、ルビーは不釣り合いな戦闘服のまま着座していた。

 

《場内の皆様…もとい、お一人様にお知らせ致します。本日の披露宴、空席の分だけ招待状を送付しておりましたが、ご親族・近隣住民および閂市商店街の皆様・ご友人…生憎どなた様も、対ダイビート・テロリズムの犠牲となることを怖れてか、すべてご欠席の返事を賜っております。》

「えっ…!?」

嫌らしく、下卑たニュアンスをたたえた場内アナウンスが続く。

《なお、新婦同僚の皆様方は、只今アルダーク残党による総決起テロに苦戦され、到着の見込みはおろか、既に大半が殉職との情報があり…》

「そ…そんな…!?」

《只今入った情報です。新郎様、先ほど新郎控室にて、我らアルダークにより、この晴れの日が命日となったことが…、確認、されましたっ!!!》

 

「…!!」

ルビーは、理解が追いつかない状況を、努めて冷静に把握しようと深呼吸する。

(つまり…これは、私の結婚式で…、誰も…みんな、来れなくて…、結婚相手も…殺されて…?!)

《ふはははははっ、これは遠くない未来の、お前の現実だあ! 自業自得だぞ、エスカ・ルビーよ!! 既にお前の身元は衆目の周知、お前のような常に死の危険と隣り合わせの女に、家族も友人も、ましてや一生の伴侶など、誰が好んで寄り添うものか!》

「…ああっ…!!」

 

ルビーへの精神攻撃は、対オルタナスタイン戦勝の痛切な代償を、致命的に突いた。

 

がちゃっ。ぐぐぐっ、ぎりぎりぎり〜っ。

(くっ…開かないっ! …こっちも! …ここもっ…!!)

ルビーは会場の扉という扉、ガラス窓に至るまで、こじ開けられるドアを探し脱出を試みる。

《無駄だ、無駄ムダあ! 別次元でエスカレイヤーを散々拘束したイデアの壁より堅牢なのだぞ。人類の希望の英雄様、エスカ・ルビーとて、独りで破るなど不可能!

さあ、諦めて孤立無援の中、恒久の絶望をその身に刻むがいい! それがアルダークに歯向かった安い正義の代償だあ!》

「うっ、ううっ、ぐう〜っ!!」

 

(私…もう、誰とも会えない…?

 カンナ、よっしー、学校のみんな、先生…

 商店街のおじさん、おばさん、パパ、ママ…

 ダイビートのみんな…、ユーノさん、さやかさん、神騎さんや魔女さん、閃忍さん…

 イノリちゃんやライカちゃんにも…!!)

 

広すぎる披露宴会場は、アカリの善行と人徳の深さの賜物。

本当ならば鈴なりの参列者が、彼女と彼女を射止めた果報者の新たな門出を心から祝うことだったろう。

 

だが今は、その容積はアカリの残酷な孤立を浮き彫りにするばかり。

やがてルビーの強き心は、徐々に削り落とされていく。

(…長官…!)

 




初めましての方も、また来たぜいっ、の方も。お読みいただきありがとうございます。作者の環藍河(たまき・あいか)です。
7月の3連休、初日に「ネタ切れですー、1週間ほど待って-」と新人らしからぬ泣き言ほざいてから、舌の根も乾かぬ3日後の本日、新シリーズがスタートの運びと相成りました。
3日前に浮かんでたプロットと全く違う形が浮かび、作って練り込んだら、何だかイケそうな気がしてきて、一気にエンディングまでシナリオルートが3日で突貫開通しました。

予定では全4章。明日の第2章はあらすじ▼のラス前まで一気に、エスカ・チーム残り3人分のストーリーが進むため、環のシリーズ最大スケールでお届けします。
ただし、「溜めて引く」の「タメ」部分のため、鬱内容です。すっきりカタルシスがほしい方は、一晩明けて第3章の投稿を確かめてから第2章を読み始めるのもアリです。

皆様が、明日もその先もお楽しみいただけますように、精一杯練り込んで作って参ります。よろしくお願いします!


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第2章 丘の上のウェディング・ヘル! 戦士のドレスは悲嘆に染まる

※時間軸としては、原作第2部冒頭になります。ネタバレが気になる方はご注意ください。
※シリーズ構成上、この第2章は「溜めて引く」の「タメ」部分、つまり鬱展開になります。


「…痛っ、んもう、デートのエスコートもまともにできないの?」

強がるアメイズが目覚めたのは、結婚式場のドレッシングルーム。純白・ピンク・オレンジ・ライムグリーン…眼前に並べられるウェディングドレスを纏うマネキンは、いずれも色鮮やかなジュエリーを散りばめていた。

ティアラ・ネックレス・コサージュ…一体、合計で何百カラットになるだろうか。

 

さらにその前にはショーケースが調えられ、美しきエンゲージリングが何十、何百と輝きを放っていた。いつか、この一つ一つの輝きの数だけ、伴侶への永遠の誓いが捧げられるのだろう。

「ふう…ん? どういうつもりかなー? 私、宝石にはちょっとうるさいのよ?」

 

だが次の瞬間。

暗転した衣装室、宝石の輝きは、その最悪のルーツをアメイズに映し出す。

「…!!」

 

ティアラとネックレスのダイヤは、独裁国家で女子や幼子を徴用し、深く暗き鉱山で粉塵にまみれ、塵肺を患いながら掘り出された、コンフリクト・ジュエル。出口なき内戦に徴用されたこの国の父親が命からがら自宅に戻ると、迎える妻子は漏れなく血の痰を吐き、あるいは落盤事故で手足を失い、少なからず命を落としていた。

ブリリアント・カットの煌めきを引き立てる、エンゲージリングのピンクゴールドは、廃液を垂れ流す工場で精製され、下流地域の住民は神経障害や骨不形成・胎児畸形に喘いでいた。

 

《エスカ・アメイズ! いや、多国籍複合企業NAUの長・雪城エリーよ! お前もまた、この血塗られた輝きに手を貸した、咎人であろう!》

 

「!! …否定はしないわ…。」

かつて、エリーが承認した、NAU傘下ブランドのジュエル調達計画書。功を焦った幹部社員が、出所の怪しい宝石に手を染めてしまったことを、他の幹部全員が見落とし、決裁してしまった。

皮肉にも、この年に発表したモードは大反響。

独裁者の国庫と武器商人、それに公害の元凶を大いに潤してしまった。

 

《はははっ、笑わせる! お前たち魔女もまた、血塗られた金で生き永らえる、罪深〜い外道どもの集まりではないかあ!》

「…う、ううっ…!!」

取り返しのつかない過去の誤ちに、エリーはうつむき、自らの不徳と屈辱を噛み締めるしかなかった。

 

……

 

「…ぐえ〜っ、最悪…、てゆーか悪趣味…」

コマンダーの罠に嵌められて落とされたにしては、明るく楽しく朗らかな、結婚式場の託児室。ベビーベッドから積み木にジグソーパズル、絵本からジュブナイルまで、子どもを数時間寂しがらせないためのアイテムをふんだんに揃えた、現状とのギャップが激しすぎる一室。

 

「…! 懐かしい〜っ!」

トパーズが手に取ったのは、10年ほど前のヤルトラマンシリーズ作品、ヤルトラマン・エトスのグラビア本。うららの幼少期にヒーローへのリスペクトを決定づけた、彼女のバイブルであった。

 

だが。

「なっ…、何よっ、この、鬼畜外道のエンディングはーーーーーっ!!」

うららがボロボロに擦り切れるまで読み返し、その都度胸と目頭を熱くさせたエトスの英雄伝説・ヒロイックサーガは、そこには無く。

エトスが編み出した必殺技はことごとく敵に解析され、総て破られる。膝を地に付けるエトスは怪人に蹂躙され、遂に胸のタイマーをもぎ取られ、いばら状の拘束帯でその四肢を十字架と伴にする。

この日、地球人類は終焉を迎えた。

 

「…っ、ああっ! …、こっちも、これもっ!! 嘘っ、嘘だっ、違うっ、こっ、こんなのってーーーーーっ!!」

 

メタルヒーローは、人類の科学技術の粋であるコンバットスーツの制御回路図を内通者に売り渡され、侵略者のコンピューターウイルスに侵され機能停止、暁の採石場で哀れにも敵幹部のレイピアに胸を貫かれ、絶命。

 

スーパーヒーロー戦隊は、敵の狡猾な罠により分断され各個撃破。ブルーが光線銃に倒れ、イエローが電磁鞭に手足をもがれ、ブラックとピンクはソニックブーメランに二人抜きされ、天国での再会を誓うように折り重なり、散った。四人の復讐を誓うレッドもまた、誇りのソードを無慈悲に叩き折られ、人類最後の希望ごと、袈裟懸けに断たれた。

 

伝説の少女戦士たちは、一人は護るべき人の心の暗部に毒され、自らを闇に堕とす。今一人は愛した友の変心を受け容れず、現実から逃亡。残された一人は、支え合った二人の瓦解に挫けず、自らを鼓舞し健気に戦場に立つも、本来の力には程遠く、ここに伝説は幻として潰えた。

 

…この本も。あの漫画も。

トパーズが次々に手に取る、ヒーローたちの栄冠の軌跡だったはずの聖典は、改竄を経て闇の経典と化していた。

 

《はーっはっはっ、どうかねトパーズ、貴様の求めるご都合主義の勧善懲悪ヒーローより、よほどリアリティがあろう!?》

「こっ…このゲスめーっ! 出てきなさいよっ、子どもの夢を汚い爪で穢した罪、その身であがなえっ!!」

《夢を? 穢したぁ? 俺がぁ? トパーズちゃんよお、そいつは違うぜえ。俺は近く貴様に訪れる、現実を見せてあげたまでさあ!》

「?! 現実?」

《おうよ、そいつらと同じ惨殺死体になる、お前達の心の拠り所・レジェンド戦士どもの現実だよおー! 見よ!》

 

突如落とされる照明。

代わってプロジェクターが結ぶ像は、本来なら子どもたちが心を一つに、ヒーローの一挙手一投足にエールを送るものだったろう。

だが、そこには。

 

黄昏の空にどす黒く浮かぶ、三つの十字架。

いずれも手首足首は無骨な鉄枷に捉えられ、もはや絶命へのカウントダウンを受諾するのみ。

「斉射隊、構えー!」

エスカレイヤーに、ハルカに、エクシールに、ガトリング砲が向けられる。

「ルビー…ごめんね」「サファイア…無念です」「トパーズさん、アメイズさん…泣かないで、天に還るだけだから…」

「放てーい!」

無慈悲に響く銃声と薬莢の弾け飛ぶ乾いた音が、先輩の最後の言葉をかき消す。

 

「…エスカレイヤー…さん…っ!」

「ハルカさんっ、ハルカさあーん!」

「エリス師匠ーーーっ! ちくしょう、ちくしょおーーーっ!」

「…救えなかった…。私たち、無力だ…」

大空のスクリーンに浮かぶ、憧れ追いかけた希望の、血塗られた末路。救助行動が叶わなかったエスカ・チーム四人の悔恨の嗚咽は、茜空に溶けて消えた。

 

《我等アルダークは、必ずや貴様ら超昂戦士の心をへし折ってくれよう! あらゆる邪道と非道を駆使し、何度でも蘇り、最後に必ずその命脈を断ってやるわあ!!》

「…あはっ…はははっ…」

コマンダーのディープフェイクムービーは、弱ったトパーズの心を根底からえぐり。

キッズルームには、乾いた笑いがこだました。

 

……

 

(…学校の視聴覚室か…会議室?)

幽閉された暗室で、サファイアは現場の状況を把握しようと、五感を研ぎ澄ませた。

20人も入るかわからない程度の空間に、椅子が一つ。正面にはプロジェクターとスクリーン、左右には音響機器が備えられた、試写室であった。

 

《それではこれより、新婦・加古野ヒビキ様の生い立ちを振り返るスライドショーを上映いたします。》

 

コマンダーの、悪意を隠そうともしないナレーションと共に、部屋全面に映し出されるヒビキの幼少時代。

「なっ…こんな写真、どこで…!!」

兄・ハガネに甘え、父に抱き着き、母の膝で眠り…今の凛々しいヒビキからは想像もつかない、あどけない稚児。

(あのヒビキちゃんがねえ…)

(ほんとに立派になったよ…)

本当にヒビキの結婚披露宴でこのスライドショーが上映されたら、参席者一同から、感嘆の声が漏れたであろう。

 

だが、優しき画はここまで。

暗転の後にこれでもかと壁いっぱいに投影されたのは。

模擬戦で打ちのめされ、龍輪功の適性もゼロ、過去最低の烙印を何度も焼きごてで刻まれた、閃忍試験での惨めなヒビキの姿。

ハガネの凶刃に倒れし前頭領・戦部タカムネの亡骸と遺言、跳梁跋扈する滅忍衆を操る兄の影と、地に堕ちた加古野の家名。

ディープフェイクで合成された、上弦衆重鎮たちの悪意に満ちた陰謀が、試写室を生臭く包む。

(後継は他におらぬのか!? あの愚息と、あの能無し娘など、家督図から消してしまうのだ!)

(養子縁組できる閃忍を、いち早く探さねば…!)

(加古野は罪深き子らを成したものだ…)

 

「…めろ…。」

《おやあ? 新婦様、なにかご不満でもぉ?》

「やめろおお!! 兄の愚行と私の無能は、加古野の血とは関係ない! 父を…母を…愚弄するなあああっ!!」

《ふははははははあ! 事実だろうが! 恨むなら自身の不運を呪うのだなあ! なまじ、代々が伝説級の閃忍を輩出した名家になど産まれたが故に、貴様は一生涯、悶え苦しみ続けるのだ!》

 

「黙れ下郎が! 私は…加古野家に生を受けたことを、誇りこそすれ、後悔などしていない!」

色をなすサファイアの叫び。

 

だが、それをも嘲り笑うコマンダーは、挑発を止めない。

《百歩譲って、貴様がそれで良しとしようと、貴様は結婚相手にも、いつか孕むご子息さまどもにも、その烙印を刻み付けるつもりかあ!? 

無能の母からは、やはり無能のガキしか生まれぬ! 

二つ名は頭領殺しの義弟に甥姪! 因循姑息の上弦衆どもだぞ、汚名は消えぬ、末代まで断じて消えぬ! 

貴様が祝言を上げる時、それは同じ煩悶を舐め合う、未来無き不孝者を増やす愚挙なのだ、ああん!?》

「ぐっ…ううう〜っ!!」

 

……

閂市郊外、高台にそびえ立つ、瀟洒な結婚式場。

街を一望できる、永遠を誓う二人の船出の地は、今やイデアの壁に呑み込まれ、エスカ・チーム4名を精神攻撃で翻弄する。

あわや、陥落か。

 

時を同じくして。

さやかの解析結果を受けたトキサダが即座に立案したエスカ・チーム救出作戦が、ダイビート史上最大規模で、極秘裏に進められていた。

 

『はいはーい、只今おかけの発信元番号は、私の知ったこっちゃないヤツでーす。乙女にオレオレ詐欺たあ、いい度胸だコラあ。』

「…ダイビート長官の戦部トキサダだ。君に是非とも、園崎アカリくんの救出のため、力と人脈を借りたい。」

『えっ…ひゃあっ!? 長官さんっ!! さ、サーセン…!!

…って、アカリがっ!? 救出って、アカリがピンチなのっ!?』

「だからこそだっ。いいかい? 君に頼みたいのは…」

……

『おっしゃああっ! まっかせなさいっ、このアタシが声をかければ、百が千でもお茶の子さいさい!』

〘あー、それはアカリっちの人脈であってだな。なぜお主が自らの功績と胸を張るのか、甚だ疑問なのだが?〙

「ああ、君もいたのか。僥倖だ。では、手分けしてその方々に依頼を。集合時間と場所は…」

通信回線切断を待たず、トキサダが司令端末に必要情報を入力。

 

《入電、入電。ロジスティクス部隊に臨場要請。臨時編成されたエスカ・ルビー救出隊員を8小隊に分け搬送せよ。合流ポイントはエリアKG2P。

なお特記事項。隊員は平服で作戦参加せよ。繰り返す、隊員は平服で作戦参加せよ!》




こんばんは、作者の環です。
そんなわけで、アメイズ・トパーズ・サファイアの3人が宗教裁判にかけられる第2章となりました。作者も自分で書いていて、陰鬱な気分になります…が、これも次章のカタルシスに繋がりますので、読者の皆様におかれましては、どうか今しばらく我慢めされよ。
解決編・第3章はまた明晩。
それにしても救出部隊…ダレデショウネー?(すっとぼけ)


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第3章 ヴェールの下の希望! 花嫁戦士に大切なこと

※新たな注意事項やネタバレ警報はございません。前章まで既読の方は、そのままお読みください。


《ふん、魔女が迫害の被害者ぁ? 笑わせるな、貴様らの活動の犠牲者が世界に何万何億といるくせに…!》

「…過去の誤ちは、消えない…、だから…!」

 

ひゅっ。

びしっ。

パキッ…びしびしっ…!!!

 

ぱりっ、ぴきぴきっ…

ぱーーーーーーーーん!

アメイズのウィップの一閃と共に、ショーケースで包まれた悪意は決壊、血塗られた宝石の輝きは、本来の高潔を取り戻す。

「私たちは、誤ち以上の未来を、叶えてみせる!」

紛争ジュエルの片棒担ぎが露見した日から、エリーとNAUの金庫番・節制のクラリスは東奔西走。

ジュエルに関連する数十億ユーロもの全収益を放出し、ダイヤモンド鉱山や金精錬工場を片っ端から買収。

労働改善と人権啓発と、そして。

 

『ふははははははっ! 我等が恋人をたばかり、無辜の民を私欲の贄に供する外道どもよ、今更ひれ伏そうが断固許すまじ! 震えて悔いよ!』

 

ジークフリート派・皇帝のファヴニル率いる魔女師団による実力行使。

腐臭漂う独裁者はひとたまりもなく征伐され、全ての元凶たる内戦は呆気なく終結。悪魔の輝石は一転、民主化された小国の復興の原資となる。

ここにNAUは100%、倫理を備えたエシカルジュエリーを扱うに至ったのである。

 

「私たちが傷つけ、命を落とした人たちのことは、絶対忘れない。

でも、その人たちに報いるためにも、罪に汚れた歩みを、私は止めない。

それが、過去の私への落とし前よ!」

 

……

 

「ふっ…ふひひっ…ははっ…!」

敗れ、堕ちるヒーローの悪夢にうなだれ、肩を震わせるトパーズ。

《あひゃひゃひゃひゃあ! 壊れるには早すぎねえかあ、ヒーローさんよお!》

 

「あーーーーっ、!

はあーーーっはっはっはあーーっ!!」

両の拳を左右に突き上げ、虚像の銀幕を鋭く睨みつけ、トパーズが咆哮する。

「マジうけるんですけどーっ、この私に向かって、ヒーロー論で心をへし折ろうなんざ、一億とんで二千年、早い、早いっ、早すぎんのよーーーっ!!!」

 

《なあっ…何だとお?!》

「いーいっ? もう私たちは、先輩たちに憧れるだけの、おままごと戦士じゃないっ!

だって、私たちの戦いを見て、ダイビートには次々と戦士志願者が来ているんだ! あたしでさえ、今や次の新しいヒーローたちの憧れなのよ!」

 

先の最終決戦の後、エスカ・チームへの直接のファンレターや、SNSでの応援メッセージが爆発的に増加。大半はルビー宛てだが、サファイアやアメイズ、そしてトパーズへの激励も、少なからず届いている。

あるいは、最終決戦は最後のひと押しに過ぎず、エスカ・チームの日頃の草の根的活動が実を結んだのかもしれない。

 

そして、ダイビートでは戦士志願者の他、一般業務で募集した中から選抜し、応募者の適性に応じて戦士採用しているが、その際の辞退者が少ないのも、エスカ・チームの活躍の賜物であった。

 

 

「偉大なヒーローに貰った心で、私たちはもっともっと、強くなる。先輩たちを襲う罠だって、今度は私たちが破ってみせる!」

《馬鹿かっ! お前らが勝てない先輩どもが勝てねえ敵だと言ってんだろ、十字架を七つに増やしてやるぜえ!?》

「上等だ、やってみろお! たとえ先輩たちや私たちが倒れたって、今度は私たちに憧れた後輩戦士たちが、ヒーローになってお前たちを討つ! また負けたとしても、その後輩たちが必ず勝つ!」

《がっ…こ、怖くねえのか、そのときお前は、とっくに負けて死んでるだろうがあ!》

「ヒーローの真髄は、その魂! 先輩の心を私が受け継ぎ、その魂を次が、また次が受け継げば、ヒーローは…不滅よ! 

そして最後には必ず、悪を…あんたを必ず、討ち滅ぼす!」

 

トパーズの求める英雄像は、もはや自分一人だけの矮小なカッコ良さでは、収まらなかった。

勇気をくれる先輩へは、リスペクトと憧憬を。

正義を託す後輩へは、熱き思いに応える矜持を。

そしてその連鎖こそが紡ぐ、終わりなき英雄譚。

たとえ主役でなくとも、その一隅に名を連ねることこそが、トパーズのヒーローたる本懐であった。

 

「中途半端な覚悟であたしを怒らせたその愚かさ、骨の髄まで後悔させてやる! 地獄の閻魔に懺悔しろお!」

 

……

 

《さあ、ヒビキよ。その忌まわしき血を封じよ。兄者はいずれ想破が誅伐しよう。あとは、貴様の自刃で不幸の連鎖は止まる…!》

「…くくっ…くっくっくっ…!」

すすり泣きか、はたまた自嘲か。うつ向いたまま肩を震わせるヒビキが、言葉を続け。

 

「…私が…不幸とは…笑止千万!」

《ぬなっ!?》

きびすを返すヒビキの顔に、生い立ちの不遇への怨嗟は無く。

 

「…私はっ、私はあーっ!

 天下無双の、果報者だああーーーっ!」

 

満面の笑顔と、心の底からの快哉の叫びが、試写室を満たす。

《はあーっ!? 気でも触れたかあ?》

 

「閃忍の素質が無いことが、不幸だと?

 逆だ! 才無きが故に、私は超昂戦士になれた!

 ルビーに、トパーズに、アメイズに…最高の仲間達に出会えた!

 あろうことか、人類の運命が懸かる戦いにまで加わり、皆を護り抜くことができたんだ!

 この僥倖、貴様ごときにわかるものかあ!」

 

《ぬぐっ…だが、ハガネはどうする! 奴の汚名はあ!?》

「言う輩には、言わせておけっ! 私もまた、いつかハガネを討つ戦士! 汚名と言うなら、自らすすぐ!」

《な…な、がっ…!?》

 

「覚えておくんだな。何が自分の幸運か、何が不幸かなど、自分にだってわかりはしない。全ては時が過ぎた後に、自ら顧みて決めるだけのこと。ましてや、結果を見ただけの外野が後付けした不幸なんかに、私は膝を屈したりしない!」

 

刹那、ヒビキの口角が慈愛をたたえ。

 

「私の幸福は、私が決める。」

 

その決意と自負は、痩せ我慢とは程遠く。

眼差しに秘める凛然たる希望は、既に祥を手にした者のそれであった。

 

「お前にも教えてくれよう。私を奈落の底に突き落とし、加古野を愚弄する口実を知り得たその幸運が、その実、己が身の破滅をもたらす、最悪の不幸であったことを。

…これより加古野ヒビキ、修羅となりて、貴様を冥府の果て、魔道の坩堝まで追いつめよう。

推して参る!」

 

アメイズ、トパーズ、サファイア…、三人の心を粉砕し屈服させ、復讐を成す。

そんな、コマンダー三人の下卑た野望は、ここに脆くも潰えた。

 

一方、孤独の牢獄に囚われ続けるルビーに向かう、助けの手は未だ届かない。

急げ救援部隊、イデアの壁を打破し、ルビーに希望の笑顔を取り戻すのだ!

 




連夜のお立ち寄り、ありがとうございます。作者の環です。
つたない出来ですが、ハーメルンさんのPV管理ログで見る限り、ちょっとだけ常連さんもいらっしゃる…のかな? 感謝感激です。

さて、第3章は鬱展開の前章からの伏線回収でしたが…環には参謀(投稿前に客観的に読んでくれる相方)がいないので、敵の罠もヒーローの逆転劇も、両方を自力本願で作ってます。
ただ…まるで超合金ロボかキン肉マン消しゴムで、ぼっちごっこをやってるみたいな気持ちになるんです。
「がおー、超人パワー3億だー、ひれ伏せー」
「なにー、それじゃこっちは4億だー」
「うわーやられたー」
…みたいな。
敵攻撃がショボくないか、ちゃんと敵の力を受け止めてカウント2.9で返せているか、不安になったり。

あ、皆さんがスッキリ読めておられれば無問題ですよー。
今回のアメイズ・トパーズ・サファイアの倍返しが、読者の皆さんのカタルシス(快感)に直撃しておりましたら、環の冥利に尽きます。

それでは最終話、孤独のルビーの伏線回収、また明晩お会いできますことを。


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第4章 絆のプロムナード! 花嫁戦士に大切な4つ目のこと

アメイズは、過去に負けない力を。
トパーズは、未来に絶望しない心を。
サファイアは、運命にくじけない志を。

そして、ルビーを救う、もう一つのアイテムとは…。


……

閂市を街から森から港まで全て見渡せる丘にそびえ、市内屈指の眺望を誇る結婚式場。

夕陽は既に水平線の向こうに沈み、ガーデンにはガス燈が灯され、幻想的なナイト・ウェディングの時間を迎える。

シャンデリアの照度も絞られ、代わって温かな間接照明に浮かぶ参列者席。円卓に一つずつ配置されたスパイラルキャンドルは、主役二人が点す炎を、今か今かと待ちわびていた。

 

《ここで、祝電に代えまして、新婦ご友人、ご家族、近隣住民からのボイスメッセージをお披露目致します。ご歓談の相手もおりませんことですし、何とぞご清聴くださいませ。》

 

(アカリ…裏切ってゴメン…でも…私、やっぱり…やっぱり、死にたく、ないよお…!!)

 

(あなたが選んだ道なら、父さんも母さんも応援するけど、命がかかる道まではムリよ。

アカリ…私達の家に戻るか、このまま戦うなら、親子の縁を切ってからになさい。)

 

(すまねえ…うちにも子や孫がいてなあ…こいつらのためにゃあ、店を護らにゃなあ…。今までは壊されてもダイビートが補填してくれたけど、アルダークがあんなに復活しちまっちゃあ、もうムリだよなあ…?)

 

最初のコマンダーがディープフェイクで合成した音声は、アカリのかけがえない人々の…護り続けてきた人々の、掌返し。

気力みなぎるいつものルビーなら、こんな虚構に心揺さぶられはしなかったであろう。

だが、今の、挫けかけのルビーは、独白する。

 

「みんな…気にしないでね。

みんなが私と一緒にいられなくても、それでも私は…街のみんなを、これからも、変わらず護るよ。

…これは私のやりたいこと。

みんなの平和な生活と、笑顔が続くことが、私の幸せだから…。」

 

ステンドグラスの聖母にも勝る、無償の愛。

そんなルビーの健気な笑顔を見る者は無く。

ゆえに。

 

(でも…、その平和の、すみっこでいいから…、

私も…その中に少しだけ…居たかったな…!)

 

ルビーの涙を見る者も、また居なかった。

 

戦い続けても、護り続けても。

何万人、何億人を救っても。

そこにもはや、私の居場所は、無い。

ならば私は、何のために拳を振るうのか。

隣に寄り添う人も無しで、このまま、ずっと…?

 

「…ダメだ、こんなの…。」

遂にルビーの心が、孤立に耐えかねて、瞳から止めどなく零れ落ちていく。

「誰か…、誰かぁ……!!」

 

 

ばああんっ!

「へいアカリっ、長官さんだと思ったかい? 残念無念、唯一無二の友人代表、カンナさんだあ! ご招待にあずかり只今参上っ!」

「おう大きく出たな同朋よ。ならばこちらは唯我独尊、アカリっちの友人代表・よっしーさんだ。

なお、ご祝儀は出世払いだ、異議は全て却下!」

 

…。

……?!!

 

「…ほへっ…?」

ルビーの鍛え抜いたフィジカルと、ADDDの全出力で放つD2エナジーでも開かなかった、イデアの壁で要塞化された式場の扉は。

超昂戦士でも何でもない、一般人二人が、どばーんと景気よく開け放ってしまった。

「な…なあっ…??!」

 

〘ロビーにてお待ちの、園崎家側ご参席の皆様方にご案内申し上げます。大変長らくお待たせ致しました。式場正面の扉から、どうぞ順番にお進み下さいませ。〙

先程までのコマンダーとは全く異なる、母性愛溢れるアナウンスを合図に、堰を切ったかのように。

 

「うわ〜…、この式場、中はこんななんだ…」

「やだっ、アガる〜。園崎さん、羨ましいっ」

「園崎ー、クラスみんなで来たぜっ!」

「お前はタダメシ食いたいだけだろー」

制服姿のクラスメイト数十人と、担任。

「園崎い、職場体験は先に学校を通せって言ったろ! 急遽決まって今日やるなんて、長く教職員やってるが、前代未聞だぞ!」

「は…はいっ、スミマセンっ!…って、ど、どうしてみんな、ここに来てるのーーーーっ!?」

 

そんな学校関係者御一行様の後方から。

「あ〜、まだるっこしいなあ、おい、左右の非常口から入っちまおうぜ!」

ばあん! ばたんっ!

「おうアカリちゃん、まだ白無垢に着換えなくていいのかい?」

「早く見たいわねえ〜、三が日に晴れ着で暴れた、あのアカリちゃんが…白無垢なんて…ううっ…!」

 

「に…肉屋のおじさん、呉服屋のおばさんっ!? どうして…お店、お休みじゃないでしょ?!」

「おう、本日の閂中央商店会は、会員店舗すべて、臨時休業さ!」

「アカリちゃんの晴れの日に、仕事なんざ手に付くわけがないよっ!」

「祝い酒も生花も、一番いいヤツ持ち込みだかんね、ドォーンと盛大にやろうな!」

(あ…ああっ…!!)

これまた数十人の、ご近所様方御一行。

 

「すみませ〜ん、ちょっと、先に私たちを通して下さい、新婦の父と、母です〜。」

「ぱ…パパあ? ママあ?!」

「全く、いつもと違って、皆さん巻き込む大イベントなんだから、もっと早く言いなさい。礼服だってすぐには整わないし、おじいちゃんたちを呼ぶのだって、グループメッセージ一本ってわけにいかないんだから!」

さらに十数人の園崎家御親戚一同が参戦。

ここまでだけで、都合、100人。

 

……

この後も、引きも切らない鈴なりの参席者の行列だが、いったん置いて、謎の種明かしをしよう。

 

『長官さん、長官さーん。イデアの壁もどき、解析あっがりーっ!!』

「速いなあ! …で、結果は?」

『簡単かんたん、アレは使用者、つまり今回はコマンダーね、その欲望を壁の中で具現化するための装置だから、破るにはその真逆をブチかまして、中和させればオッケー!』

「…つまり?」

『なーんかアイツら、【最悪の披露宴を届ける】とかほざいてたよねー。だったらこっちは、最高の披露宴をプロデュースしてあげればいいのよっ。』

「そ…そんなことで、破れるのか? あのイデアの壁が?」

『だーって、劣化版だもーん。とりあえず、いちばん大きな披露宴会場だけ、ルビーとコマンダーのやり取りがダダ漏れてて傍受可能なんだけど、どうも、ルビーの披露宴にだーれも来ないとか、あり得ないシチュをかましちゃってるから、こっちは式場パンクするくらい、参列者で埋め尽くしちゃえば解決っ!』

 

「…他の三人は?」

『…う〜ん、何カマされてるか聞こえないから…行ってみて臨機応変、あわよくば三人それぞれ、自力解決!』

「雑だなっ!」

『だーいじょーぶ。自力でも他力でも、打ち破れば壁のエネルギーのキックバックが使用者に跳ね返るから、あのコマンダーどもは自滅の運命よっ。あー、短時間でこんだけ的確な解析しちゃう私、すげーっ! お茶の子さいさい、眠くなるほど働かせてもくれないショボ罠だったわねっ、はーっはっはっはーーーーっ!!』

 

 

「…待って! みんな、待ってくださいっ!!!」

突如、大きな式場に響く、新婦の嗚咽。

「みんなが…来てくれて、私、心の底から、嬉しいよ…でも…!

私…もう超昂戦士だって、世界中に正体を知られちゃったんだよ…! 

それなのに、こんな風に私につきあったら…、みんな、みんな私の巻き添えで危険な目にあって…誰かがいつか殺されちゃうかもしれないのに…!

そんなことがあったら、私…、みんなになんて顔をして会えばいいの…?!」

 

…。

……。

「そんなこと…あるのかなあ?」

「…あ〜、ないないっ。万が一あっても、ぜってー園崎のせいじゃないっ。」

(…え?)

「だってさー、まず巻き添えって何? 先に暴れてんのはアルダークで、そこにルビーたちが退治に来てるのに、巻き添えとか真逆だし」

「もしルビーの友達狙いで人質取って、しかも殺したりしたら、絶対ダイビートがフルボッコにするっしょ? 見えてる地獄にわざわざ首突っ込むなんて、相討ちになってでも個人的恨みを晴らしたい、後先考えないバカコマンダーだけっしょ?」

(…あっ…!)

脅迫は、相手の屈服こそが目的。

ゆえに、屈服未達成でいきなり近親者を殺害するなどとは、当人の自己満足と引き換えに、恨みを買って地獄の果てまで追い詰められる、ハイリスク・ローリターンの愚策なのである。

絶対に逃げ切れる確信があれば別だが、ダイビートの索敵・掃討能力を鑑みるに、まあまず不可能。

ゆえに、ルビーの大事な人々に危害を加えるコマンダーなど、逃げ場は無いので、やろうものなら震えて眠れ。

なお、自爆テロという例外はあるが、それなら近親者じゃなくルビーに直撃弾かますだろうから、こちらも案ずるに及ばず。

 

「アカリっち。それとも、君の方がワタシたちと居たくなくなったかね?」

「…そんな…! そんなわけ、ないよっ!」

「じゃあじゃあじゃあ〜、ウチらからアカリを手放したりは、断じてせんぞお。ウチらはネバーエンディング・ズッ友だあ、覚悟しろ〜!」

「…あのね、園崎さん。私たちね、あなたのこと、ずっと超人で特別で、私たちとは別の世界の人だって思ってたんだ。」

(あ…)

「でもね、こないだお話させてもらって、あまりにフツーで、逆にびっくりしちゃった。」

「ホントそれー。地球を護った最終決戦だって、まるでテレビののど自慢か、クイズ番組で優勝しちゃったー、みたいに話すんだもん。」

「クラスメイトがスーパーヒーローなんて、どう接したらいいんだろう…な〜んて悩んでたのが、バカみたいで。…だから、園崎さんはこれからも普通でいてね。私たち、ずっと応援してる!」

 

「嬢ちゃんがた、そいつぁ俺たちが太鼓判を押すぜ。アカリちゃんは絶対、変わらねえ! おチビちゃんのときからずーっと見てっから、間違いねえ!」

「ああ全くだよ。というより、ダイビートが来るずっと前から、アカリちゃんはエスカ・ルビーだったよ。正義感と人思いの固まりで、すぐムチャして、だからこっちもみんな、放っとけなくてさあ…。」

「おうよ、今さら、ちょーっと変身して、ちょーっと地球救ったくらいで、アカリちゃんのことが怖くなったりするもんかい。なあ、忙しくなっても、また商店街、来てくれよっ。コロッケ揚げていつでも待ってるし、定休日でも歓迎するぜ!」

(あ…あああっ…!!)

さっきまで、テロの脅しで孤独を強いられた涙は、今は暴力に屈しない強い絆に喜び震える、嬉し涙に変わっていた。

 

……

蛇足は重々承知で。

さやかの的確な解析の通り、

「『【〘ぐぎゃあああーー〜〜っ!!!〙】』」

式場の隠し部屋からモニタリングし、エスカ・チームを散々貶めたコマンダー4人は、破られたイデアの壁の反力に身悶え、断末魔の叫びを上げていた。

 

こちらもアカリのクラスメイトの的確なプロファイリング通り、

想破の面汚しと里を追われ、己の無能と怠惰を棚に上げ、全てを巡り合せの悪さと現実に目を背け、それゆえ滅忍にもなれなかった下郎と。

かつてウラジミールの取り込みに失敗し、トパーズを誕生させてしまい敗北。命からがら帰還するも、その失態で処罰されたコマンダーと。

NAUアパレル部門の幹部から、紛争ジュエル仲介の引責で更迭され、箱船への逆恨みを胸に日本へ流れ着いた男と。

一度(モブとして)助けられたルビーに自分勝手に恋慕の情を寄せ、ルビーの取り巻きの多さに、自分の偏愛が届かない逆恨みを抱いたキモ男。

 

以上4人がアルダークに取り込まれ、コマンダーとして今回の作戦行動に出るも、玉砕。

なまじ防音室での昇天だったため、誰にも知られることなく雲散霧消していた。

 




作者の環です。
さあ、こちらのシリーズ「超昂花嫁ウェディングルビー」(違う)
今夜の解決編でベストエンド…のはずだったところ、めちゃくちゃ文章量が暴発してしまいました。見切り発車でシリーズ作り始めるから、こんなことに…(涙)。
そんなわけで、予定を変更して、泣きの第5話が入ります。週末には間に合うかと存じますので、今一度お立ち寄りくださいませ~!


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第5章 ライスシャワーは満天の星! 超昂戦士に賛美歌を

※特に新たなネタバレ等の注意事項はございません。
 シリーズ完結章、過去最大ボリュームになりました。お楽しみください。



先刻まで空虚だった披露宴会場を、アカリの大切な人たちが、我も我もと埋め尽くしていく。

先ほどの凍える孤独から一転、アカリは胸を激しく熱く焦がしていた。

……

さらに、後から次々到着するバスからは。

「アカリちゃん、披露宴は先を越されちゃったなあ。私も絶対、恭ちゃんとゴールするからねっ。」

「この式場は何じゃーー! お主はクリスチャンではなかろう! ええいっ、文金高島田と三三九度の盃を用意せーい、注連縄も真榊も清め札も大盤振る舞いじゃあ!」

「あーはいはい、新婦の意向を尊重しろよ、この中身ババア駄々っ子。

…アカリ、お前はいつか、ちゃんと相手とっ捕まえて、幸せになれよ。」

 

「さ…沙由香さん、ノノノちゃん、ユカさん!?」

ダイビートが誇る超昂戦士の面々が、ピストン輸送で数十名、次々入場。

 

さらに。

「そーれめでたいっ、暴れ太鼓で祝福だー!」

「す…凄いっ、大吟醸の大行進…茅社の雪に、新魔左No.96、比良の泉…ここは天国?」

「…なあ風の、まずアカリちゃんを祝えよ? …あ、球磨焼酎、ロックで。」

「全くこれだから想破は…。まあ、めでたき席に免じて、野暮はよしましょう。」

鶴子にフウカ、ゴウカに斗羽大洋…閃忍もまた、想破・久世を問わず数十名。

 

「…仲の悪い英仏伊が、今日だけ連合国…!」

「ええと、アカリさんは三国一の花嫁さんだと言ってます。あ、お嬢様も間もなく」

「ふはははっ、戦士殿の祝宴とあらば、地球の裏からとて馳せ参じようぞ。

では参列者諸兄には、自己紹介から参ろう…」

「ニ、ニルさまあっ、威厳はダメですう! 一般市民の方が壊れちゃうですう!」

「やっほー、ルビマルー! ヴィクトリア派代表ってポジで、来ちゃったよー!」

レヴィにイレーナ、ニルにイーイー、ストナ…箱船3派も勢揃い。

 

「…はあ…っ、ここでアカリが…結婚っ! ヤバい、エモいっ! 一枚絵のモチーフが溢れ出すうううっ! …描きたいっ、今すぐっ!」

「あっ、おっちゃん、おばちゃんも! そっか、アカリのお祝いだもんねー、今日はヨロシクっ!」

「ほほほっ、旧華族・久連家の祝宴にも比肩する、良い式になりそうですわね! …その、ドギーバッグはございますか…?」

キリエル、スケートル、フローレル…地上神騎も祝福の立会人に列をなす。

 

……

さて、その頃、ダイビート基地の司令室では、少々不穏な動きが。

 

「さあて、それじゃ俺たちもそろそろ向かうか。…あ、平服って、このままでいいのか?」

 

「あ〜、まあ、いいんじゃない?」

(…えっ? ユーノさん、さすがにその服で披露宴は…?!)

トキサダ安定のスタイルは、カーキ色のパンツに、ジャケットの下はスキニーシャツの上からベルトをごてごて。

要するに「クソダサベルト太郎」スタイル。

 

なお、一般的には平服と言っても決して普段着のことではなく、カジュアル以上インフォーマル未満の服装を指す。

まして、ドレスコード的にアレな「クソダサベルト太郎服」を容認するユーノに、護衛の隊員がざわついていた。

 

……

再び、式場。

「【『ルビーっ!』】」

「み…みんなあっ、無事だったんだね!」

「うむ。あれしきの罠、捕らえられるだけでも我が身の未熟を恥じるばかりだが…。敵反応は既に消失したようだな。」

「そーそー、みんなビシッと一発、粉砕して来たもんねー。あ、でもルビーはダメだったかな? 『寂しいよお、助けてよお〜』…だっけ?」

「き…聞こえてたのお?! や、やだああああっ!」

(アメイズ…そこは言ってやるな)

 

そして、ふと気付く。

「あ…あの、天界神騎の皆さんは…?」

「あー、エリス師匠が、参列していいかアズエルさんに聞いてくれたんだけど、やっぱり『特定の地上人物への介入は禁忌です。せいぜいご盛会を祈念するに留めなさい』だってさー。あんだけバリバリ地上人生活エンジョイしといて、いまさら冷たいよねー。」

「あはは…仕方ないかな。」

さすがに天使が総出で祝福とあっては、福音が強すぎて世界の幸福バランスを崩しかねない。

 

「アカリちゃーん、そろそろ着替えましょー。このさやかさんってば、イデアの壁解析がショボくてチョロくて、ドひまを持て余したから、ちょちょちょーいっと新作ウェディングドレス、作っちゃったわよっ!」

「えっ、ええええええっっ!?」

そう言えば、ここまでアカリはず〜っと、ルビーの戦闘服のままだった。そんなことも忘れてしまうほど、この数十分はアカリにとって、いろいろなことがありすぎた。

そうして、アカリは連れられた衣装室で、用意されたウェディングドレスに着替える。

……

「お待たせしました! さやかさん、どうですか…えっ?! きゃああああっ!!」

新婦側ドレッシングルームを出たアカリの眼前では。

気絶中のクソダサベルト太郎が、全裸にひん剥かれていた。

 

……

時を少し戻す。

アカリが衣装室に誘導される、少し前。

「あ、トキサダ、そこのドレスの横、ちょっと立ってみてもらえる? そうそう、タキシード、上から軽く羽織ってみましょうか。うん、いいわねえ。」

式場に着いたトキサダを、ユーノがカメラの被写体にしてはしゃぐ。

「おいユーノ、アカリたちが待ってる…」

ぷすっ。

(うっ…!)

ばたっ。

 

「いや〜、自分で撃っておいてアレだけど、魔王に効く矢ってエグいわあ…、ホントにコレで良かったんですかね、ユーノ様?」

「うん、バッチリ。あ、もう一つお願い。トキサダを着替えさせたいんだけど」

「あ〜、それなら天使、張り切っちゃいますっ! LOVEの、ラヴの波動ビンッビンの一着、キメちゃいますっ!」

ユーノの手引きでトキサダを狙撃するは、ノリッノリの天界神騎・リゲル。

この後トキサダは、リゲルの手によりクソダサベルト太郎から強制お色直し…の最中、産まれたままのあられもない姿…要するにおちんちん丸出しの瞬間をアカリに直撃されてしまったのである。

 

…ん? 天界神騎の介入は、ご法度だったような…?

…まあ、バレたら天使長激おこだが、深く考えないでおこう。万一バレても、ユーノがなだめれば逆らえまいし。

 

「それでね、実はアカリちゃんに一つ、お願いがあるの。この式は…」

……

「どう? アカリちゃんしか、できないことよ。」

「は…恥ずかしいです…! けど、でも…、大事なこと、ですから…わかりましたっ!」

「…というわけ。トキサダ、いいわね?」

「えっ…あっ、ユーノ…?」

「い・い・わ・ね?」

完全にユーノに因果を含められ、トキサダは《アカリの職場体験・模擬結婚式》の新郎役を任されることになった。

 

……

〘参列者の皆様、大変長らくお待たせ致しました。只今より、戦部家・園崎家によります、模擬結婚式披露宴を執り行います。新郎・トキサダ様、新婦・アカリ様が入場されます。皆様、盛大な拍手でお迎えください!〙

先程までイデアの壁でびくともしなかった正面扉が厳かに開く。式場を包む万雷の拍手と共に、スモークの中から現れる、主役の二人。

 

恋愛の狩人・リゲルが選び抜いたタキシードは、上品なアイボリーホワイトにシルバーのラペルをあしらい、ネクタイ代わりのスカーフは調和のエメラルドグリーン。チタンブロンドのオッドベストが映え、さっきまでのクソダサが嘘のような凛然たる風格に包まれた、新郎役のトキサダ。

(ただし頭のベルトはキープ。)

 

その隣を固めるは、温かみを含んだシルクホワイトのマーメイドライン。式場の壮大さからはスカートが小さく映るも、かえってアカリの慎ましさやスレンダーなありのままの新婦を引き立て、見る人の好感を誘うウェディングドレス。差し色のリストコサージュは情熱のルビーを思わせるヴァーミリオンレッド、そしてルージュのキャンドルを手にした新婦役のアカリ。

 

式場の時間の都合もあり、通常は式次第の後半、第二部の入場で行うキャンドルサービスが入る変則プログラムで披露宴はスタートした。

 

「長官、こうやってテーブル席を廻ってキャンドルを灯すんです。その時、お客さんとお話しを必ずするんですよ。」 

「ああ、門出の二人が、従前も今後も世話になる人々に謝意を述べる意味があるのか。」

 

…ユーノの、アカリへの依頼。

それは、トキサダを新郎役に就けて、結婚式の流れや意味を教えてほしい、というもの。

「絶望の未来からこの世界にやってきたトキサダには、いちばん縁のなかった〘普通を取り戻す〙営みになるはずよ。こんなチャンスでもなければ、トキサダにとってこの先、ずっと結婚なんて他人事だもの。

お願い、トキサダを式の主役にしてあげて。」

 

高砂に辿り着く二人。

新郎側参列者席には君枝を始めとするダイビート職員…特殊部隊から輸送部隊までもが席を埋めた。

総勢300人にも及ぶ、世界の未来を変えた面々による式典が始まる。

『この後、司会より新郎新婦紹介、来賓からご挨拶と続くのが通常の披露宴ですが、今回は割愛致します。

早速ですが乾杯のご発声を、新郎の腹心の部下であり、新婦の信頼篤き上司であります、ダイビート副官・ユーノ様にお願い申し上げます。』

 

「トキサダ、アカリちゃん、今日はおめでとう。いつか本当の結婚式が、もしかしたらこのペアで迎えられる日が来るかもね。それでは、二人と、お集まりの皆様の弥栄を祈って、ご唱和願います。乾杯」

「【〘『乾杯!』〙】」

商店街の酒屋さんご提供のシャンパン(未成年にはノンアルコールシードル)と、ダイビート隊員食堂謹製のケータリングメニューが振る舞われ、歓談が弾む。

 

ケーキ入刀は互いが一生涯、命の営みを支え合い共にする誓いのファーストバイト。

「あむっ、むふっ、んくっ、〜っ!!

私も知ってる、イギリス式のウェディングケーキなのに、クリームもフルーツも、スポンジまで…なんで日本人は、セレモニー用のケーキまで、全力で美味しく作っちゃうんですか〜! フォークが止まらない、ですう〜」

「あーっ、クラ姉ばっかり、ズルいんだぞー! 」

魔女のスイーツ女子とわんぱくウルフ・クラリスと由雅が、競い合うようにケーキを流し込む。

「台座のケーキは幸せのお裾分けですので、どうか女子に行き渡りますよう、お一人様おひとつで〜。おかわり希望の方にはケーキビュッフェを用意してます。お二人はこちらもどうぞー」

「『ええっ! やったあーっ!!』」

 

本来は披露宴に先立つ挙式で行うマリッジリング交換は、エリーとクラリスのスポンサードで急遽差し込まれる。

「心臓に連なる左薬指に、二人の永遠の愛を誓うプレシャスを。御用命はNAU正規代理店でー、てへっ。」

「くはー、恋人はん、ウチより浪速商人やわー」

…プカルル、君は錬金術師だろ。

 

アカリに填めてもらったリングは、白く清い輝きでトキサダを包む。

「…永遠の、愛か…。明日の命も知れなかった日々が、嘘みたいだな…」

「あっ…長官っ…!」

「…いや、すまない。だからこそ、この指輪が美しいんだ。ほら」

アカリの手を取り、平和の輝きを花嫁の左薬指に。

「長官…ありがとうございます…!」

さっきまでの孤独から、差し伸べられた強く温かい掌。一組のプラチナシルバーが繋ぐ二人の鼓動が、今にも聴こえそうであった。

 

『宴もたけなわ、名残惜しいところですが、お二人の佳き日が次のどなたかの幸せに繋がりますよう、ガーデンにてブーケトスを行い、本日の中締めと致します。皆様、順番にお進みくださいませ。』

ライトアップされたガーデンナイトウェディングは、ガス燈に照らされ、参列者も主役二人も、暮れなずむ紫紺の空に紅く浮かび上がる。

(アカリのブーケ…)

(すごーく、ご利益ありそうっ!)

「神騎さん、飛ぶのナシ! クナイやローラースケート、テザー銃、その他一切、禁止ー!」

([【〈ほしいっ!!!〉】])

クラスメイトが、戦士たちが、魔女も、閃忍も。

たった1%そこらの確率に賭け、身構える。

「せーのっ!」

 

夜空に弧を描くブーケは。

刹那、天上人の悪戯に吹き流され。

 

緊急着陸したのは、離陸した花嫁の掌だった。

(…え?)(…なっ…!)

 

「[【〘《なんじゃ、

そりゃーーーーーっっっ!!!》〙】]」

 

「…なあエリー、この場合、次のゴールインはアカリ、ということで、いいのか?」

「理論上は、ヒビキのその解釈で、正しいっ! だけど…だけどこんなの、道義上と女の子の夢の公平上、絶対認めないわよーーーッ!!」

実際の結婚式でこの事態は、結婚式で新婦の再婚が確定する大変に縁起の悪い事態なので、穏便にやり直すのが吉であるが。

 

そんな悪戯の張本人たちが。

新郎新婦と参列者に祥あらんことを願い。

ガーデンに清々しい神気のつぶてを、季節外れの粉雪のように降り注がせた。

「うわっ…何だろう、コレ…?」

「ふわあっ、キレイ…ぽかぽかする…!」

「ライスシャワーみたい…!」

 

……

「メイファール! ラブディエル! …あああっ、ミカフィールまでっ!!!」

天使長、激おこぷんぷん丸。

「ええっ、ナンノコトデスカー? たまたま、オルトロスを空砲発射してしまいましてー。」

「たまたま、アサシン隊で他の神騎から預かった神気を、たまたま、空砲に驚いて翼からこぼしてしまったんです、不可抗力なんです! …あ〜、あとで軍法会議シマスー。」

「たまたま、ルナティッククラッシュを素振りしなきゃ、という気持ちになりまして…ナンデデショウネー?」

「ああああああああっ、あなたたちっ、揃いも揃って魔王に、魔王に毒されてしまってえええ〜〜っ?! …はふん…」

 

ばたん。

天使長アズエル、失神。

 

なお、神気ライスシャワー散布実働部隊・闇に溶け込むアサシン隊(後の軍法会議で、全員出勤停止1日の処分。その間、謹慎ではないので、ラブディエルの奢りで閂市内食い倒れ慰安ツアー開催となった。)は、一人ひとりが天界神騎から…セラフィールが、ゼブリエルが、イザナエルが…、マリエル・カノープス・ミモザも…、各々の神気を預かって空中待機の後、メイファールの号砲を合図に散布開始、現在ようやく撃ち方止め、あとは撤退。

 

なのだが。

 

「ゔえええええんっ! アカリざんっ、キレイっ。人生で最高に、キレイ、だがらあ…。幸せに、じあわぜに、なっでええええっ!! えぐっ、ぐずっ、ひぐっ…!!」

 

もうすっかり、泣き上戸を隠すことも無くなった、参謀アルゴルの嗚咽が、ギリギリ式場に届かない範囲で響き渡っていた。

 

……

後日。

バカコマンダーの予告とは180度異なる趣きで、この日の模擬結婚式の様子はフェリニの「【勝手に】ダイビート【公式チャンネル】」にて、大層幸せそうなアカリの姿を中心に編集され、全世界配信された。

 

式典費用は一千万円に肉薄するはずだったが、なにしろアルダークに占拠された式場を開放した体だったため、いわゆるハコ代はタダ。

料飲費用もケータリング部分は材料費のみ、人件費もダイビートの固定費に残業手当と、短時間で宴会コース300人前を仕上げた食堂職員のスキルに感謝する臨時ボーナスが乗った程度で格安。

酒代は商店会のご厚意で、ほぼ原価で卸していただき、地酒を飲みまくったフウカやゴウカ、カクテルをぱかすか空けたエイムの分は何とか常識範囲に収まった。

ご祝儀を取らなかったため赤字ではあったが、作戦行動の戦闘費として予算執行できた。

 

なお、NAUのスポンサード料として、マリッジリングはそのまま二人に渡された。

たとえ人前で指に填めることがなくとも。

(あのとき、私…、長官と、確かに、繋がってた…!)

リングを手に取るたび、アカリはトキサダとの絆を確かめ、心のぽかぽかを感じている。

 

(長官と…いつか、ホントのマリッジリングに…?)

そうなるかどうかは、今後の別の話。

 




…ぜはーっ、ぜはーっ…遅く、なりました。作者の環藍河です。
第4章完結予定が、文章量爆発で泣きの5章制作決定、そこから2日間、本業の仕事も爆発で、土日の休日出勤決定。
その現実逃避をしながら、頑張って仕上げていたら、自己レコードの1章6000字超えと相成りました。

オールスターキャスト登場のため、適切なキャラを都度選択するも、まだ引いていないキャラだと口調がおかしかったり…キリエル出すときは、つぼみでお迎えするか、いっそエクシール本編買ってしまうか、とさえ(汗)。

さて、いっぱい新コンテンツ、発表になりましたね。
(1)超昂大戦第1部サントラ・8月13日。ご先祖様と一緒にお迎えして、Brave your heartで熱くなりたいっ! ジャケットのヘッドホンしたルビーも嬉しいっ!
…何っ!? コミケ直参で買うとB2ポスター付きっ!? …あうう~っ!!(ダイビート東北支部辺境出張所の新人トキサダには辛い)
(2)沙由香ASMR、8月上旬。ハルカ→アカリ→ノノノに次ぐ第4弾、ぜひドカンとベストセールスをかっ攫ってほしい。
環もこの2つは欲しいっ!
(3)エスカチーム・水着スキン4人分。環のライト課金はスキン全振りで、ルビー・サファイア・アメイズ3種。宝箱開封を3人の声でやるのが楽しくて、4500円課金してます…追加6000円かぁ…(嘆息)。
(4)エスカレイヤー20周年イベント&超昂フェス・8月2日から。
特に初日限定・SSR6%ガチャ…!
うん、ライト課金組・終了。現在、超30日ログインパス(9000円)でヘビー課金始めました。初回半額だけ引けば、つぼみ単価も下がりますし…(血涙)

…あ、本編が面白いと、SS書く時間が減るのか…ぐぬぬ~!!

さて、次回の環さんは。
いよいよアレが復活します。
最弱四天王を凌駕する、エスカチーム○○化計画、現在水面下で進行中…! 待て続報っ!


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