陵辱悪堕ちゲーに転生したけど、貰ったチートがエロシーン介入だった (科学式暗黒魔女 )
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一話 私の輝かしい転生大活躍

 

 

 ──リーゼ・アストリアはこの『魔堕ル魔法少女 ~消耗される少女達~』において、序盤のみ登場する魔法少女である。

 才能に溢れ、自信に満ち溢れたリーゼ。

 

 この世界に蔓延る人ならざる者、その名は魔族。

 連中は人々を殺し、犯し、魔法少女を悪に堕とす醜悪なる種族であり、世界征服を目論む悪の存在。

 

 そんな魔物など自分ならば余裕だと、血気盛んに挑むお嬢様キャラ。

 

 誰にでも分かる敗北フラグを積み重ね、主人公をコケにした後はご想像の通り……、物の見事に敗北する。

 

 肉体改造やら何やらと、凄まじいまでにボロボロになった挙げ句にアヘ顔を晒す無様っぷり。

 その後はあっさりと悪堕ちして主人公と対峙して打倒されるだけのキャラ。

 

 なんて事はないエロゲーによくあるモブなのだが……。

 

 

 

「俺がそいつに転生するとはな!!! 

 だが、転生したって事は絶対チートとかあるんだろ??? 

 はい、勝ち確~~~~、俺の時代が始まるぜ!!!!」

 

 

 

 転生させられたわけだが、ただで転生させたなんて非道があるわけない。

 無職で身寄りもなかった俺を哀れに思い、神がこの世界で幸福に暮らせるようにしてくれたのだ。

 特に言及はしてないが、絶対そうだろう。

 

 転生前に住んでいたボロアパートで、貧乳お嬢様(一般人)となった俺は、これからの明るい未来にガッツポーズを掲げていた。

 

 鏡を見れば、長い銀髪の胸は無いがスラリと柔らかい肉体が自らの意思で動き、感じる。

 それだけで自分がお嬢様系美少女となった実感が湧き出てきた。

 

「しかし……、お嬢様キャラじゃなかったのか? 

 何でまたこんなボロアパートからスタートなんだよ……」

 

 このキャラクターの設定を思い出してみる。

 だが魔法少女としての才能としては最強格であり、自信過剰である──。

 それ以外の設定がどうしても思い出せない。

 

 一応、設定集も買った筈なのだが、このキャラクターはこの作品最強格以外の解説が無かった筈だ。

 つまり……。

 

「設定が無いから、元の俺の人生の要素を少し借りてるのか?」

 

 元となったゲームの街の設定は非常に大雑把で、主人公達が犯されるための舞台でしかないのだ。

 

 抜きゲーなんてそんなもんだろうから、仕方なくはあるのだが、やはりお嬢様なのだから家くらいは良いものをさ……。

 

「辞めだ辞め、それよりも明日から輝かしき我がお嬢様人生が始まるのだ。

 チート内容とか聞いてなかったけど……、まあ素晴らしいものだろう」

 

 そうして、明日から始まるこのゲーム世界の物語。

 どんな改変を引き起こしてやろうかと、ワクワクしながら眠りに付いた……。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ゲヘヘヘヘ、一人は胸はねえが感度は良さそうだ。

 もう一人は……、くく、彼氏持ちかぁ……」

 

 ……牢屋で私ともう一人、このゲームの主人公の少女が、魔力を全て奪われた状態で鎖で繋がれていた。

 

 あれ? 速攻で捕まりましたわよ? 

 何で? 何で? 何で?? 

 

「辞めて……! この娘は逃して!!」

 

「へぇ……、じゃあお前が全ての責めを受けるのかい……? 

 くくくく……」

 

「それで構わない……! 

 リーゼ、安心して。私が……貴女を助けるから……」

 

 このゲームの主人公、桜城剣夜(さくらぎけんや)は持ち前の正義感で魔物を睨み付ける。

 

 黒いポニーテールの爆乳の少女の衣服は、既にビリビリに破り捨てられあられもない姿を晒しているが、その闘志に揺らぎはなかった。

 一方、自分は何とか服だけは死守、順番的に犯されるならこいつだと、ひとまずの安心感を得ていた。

 

 正規ルートだと主人公をコケにした後、そのまま仲間も呼ばずに魔物の巣窟である娼婦に乗り込んだのだ。

 

 此処は堕とした魔法少女達が裏社会のお偉い様や政府の要人達の御用達、NG行為無しの魔族が運営する娼婦。

 

 そこで捕まっている魔法少女諸共、皆殺しにするつもりで挑んだが、快楽にあっさりと敗北したリーゼ。

 だが、このキャラに憑依した俺はそのルートを回避したのだ。

 

 俺はまず主人公と共闘するように持ちかけた。

 

 

 

 これならば敗北する事もない、更には秘められた才能やチートが目覚め、主人公を踏み台にするヒーローになる筈だった。

 

 ……筈だったのだけれど。

 

「私捕まってますわよ?? 

 あれっ? 覚醒は? チートは? 大活躍は何処??」

 

「何だテメエ! テメエからやられてえかっ!?」

 

 荒々しいオークのような魔族が、俺に怒鳴り散らしてくるがキレたいのはこっちだ。

 

 この世界に俺を転生させた奴はチートも無しに、俺をこの世界に呼び寄せたのか? 

 マジで??? 

 

「そんな転生有りかよ……!!」

 

「り、リーゼ……? 

 大丈夫、私が全部……!!」

 

「おいおい、これを見てもそんな事が言えるかぁ……?」

 

「何……?」

 

 ギイィと牢屋びドアが開かれる。

 そこに現れたのは……。

 

「よ、剣夜お姉ちゃん……!」

 

「つ、司……!!」

 

 そう、この主人公の幼馴染で結婚を誓った仲の司というショタっ子である。

 このゲームはおねショタカップルの女を寝取るゲームでもあったのだ。

 

「卑怯者!! 司は関係ないでしょう!?」

 

「おいおい、勘違いするなよ。

 コイツは自分から此処に乗り込んだんだぜぇ? 

 俺達も別に巻き込むつもりなんてなかったのによぉ」

 

 あれっ? この展開って中盤じゃなかったっけ? 

 これで寝取られた司くんが、絶望して入った、娼婦の魔法少女達にほいほい付いて行って搾り取られる。

 

 それを見たキッカケで主人公が絶望。そこから悪に堕ち、魔法少女相手に、レズふ○なりプレイとか起きる筈だったのだが……。

 

「序盤から詰んでない……?」

 

 そんな俺を尻目に魔族の連中は話を続けている。

 

「司くぅん、しっかりと君のお姉ちゃんが犯されるところを見てるんだぞぉ~~」

 

「お、お姉ちゃん……!!」

 

「大丈夫よ司。こんな連中に何をされたって私は……!!」

 

 うわぁあああああっ!? 詰むっ! 詰んじゃうっ!? 

 抜きゲーだから死ぬ程展開が早いっ!!! もう終わらせに来てるっ!! 

 

 魔族のオークは剣夜と同じく、あられもない姿を晒す。

 

 その下半身の棒は人間の足と同じくらいの長さと太さを兼ね備えており、あんな物を打ち込まれれば、ただでは済まない。

 だが抵抗の手立てすらない、剣夜は為す術もなく……。

 

「じゃあ司くんの前でしっかり犯されようね~、剣夜お姉ちゃん」

 

 ”俺の服を破り捨てた。”

 

「……はっ?」

 

 一瞬、何が起きたか理解出来なかった。

 あれっ? これから寝取りプレイするんだよな? 何起きてるの?? 

 

「あ、あの……寝取りプレイではなくて?」

 

「あ、ああ、そうだっ! このガキの前で爆乳女を犯してだな……」

 

「じゃあ何で私の服を!?」

 

 オークは困惑した表情で顔を逸し、考え始めたかのように、ブツブツと独り言を始めた。

 自分の言っている事と行動の違いに、オーク自身が理解出来なかったらしいが……。

 

「ひ、ひひひっ!! お前を犯しても寝取りプレイになるんだよぉ!!」

 

「意味不明ですわぁっ!?」

 

 

 

◇◇◇

 

「オラッ! 肉体改造だっ!!」

 

「おぎょろろろろろろろぉっ!?」

 

◇◇◇

 

「オラァっ!! 箱化っ!!」

 

「にぎゅぁあああああぬぎゅぅううううっ!!? ぬにゅろぉおおおおおっ?!」

 

◇◇◇

 

「しゃあっ! 乱れ突きっ!!! 」

 

「んにょろげぇええええええっ!?」

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 そして、数時間後。

 一通りのプレイを受け、敗北したかに見えた私だったが……。

 

「フッ、なんですのこの程度……。

 ○ニコーンの3000FEVERやリ○ロの赤フラの脳汁に比べたら……、この程度の快楽なぞ屁でもありませんわっ!!」

 

 そう、私は魔族に打ち勝っていた。

 連中は精根尽き果て、テクノブレイクで昇天。そして私の力を理解した。

 

 それは<エロゲシーンを書き換え、全て私が被害者になるチート>!!! 

 一見、デメリットにしか見えないこのチート能力。

 

 だが、パチンコやスロットで焼かれ切ったこの脳味噌では、魔族の快楽など通用しなかったのだ。

 

「大丈夫ですの? 剣夜さん」

 

 私は剣夜に手を差し伸べる。すると彼女は頬を赤くして……。

 

「り、リーゼ。君はなんてエロいんだ……!!」

 

 ──んっ? 

 今なんて言いやがりましたの、この女は。

 

「その……リーゼ……。

 救ってくれたお礼だけど……、私を救ってくれなかった司くんなんて捨てるから……。

 私を犯してっ!!!!」

 

 んんっ? 

 

 んんんんっ??? 

 

「え、何この流れは」

 

 私はこの時、気付きもしなかった。

 私のもう一つのチートの力に……。




そんな長くないです。


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二話 ジャンル変更すると、エロ展開は通じない

 

 

 

 娼婦での魔族との戦いの後、俺は家に帰り、自身に何が起きたかを考えていた。

 

「一つ目のチートは全エロシーンが私になってしまう。

 それは分かった。だけどもう一つは……」

 

 いや、実際は何となくだが理解をしていた。

 自身に起きた事、そして剣夜のあの変貌が俺の力によるもので、何故ああなったのかが感覚でだが分かる。

 

「するとこれは……」

 

「もう部屋が汚いぞリーゼ。片付けてあげるからじっとしてろ」

 

 俺をエロいと言い放ち、我が物顔でこのボロアパートに上がり込んだ剣夜が、ビール缶などで汚れた部屋を片付け始める。

 出会って一日も経たずして、この好感度の高さは恐ろしくもあったが、自分の力によってこうなったのだから、文句も言えない。

 

「……これは決して好感度チートなんかじゃない」

 

 そう、これは好感度チートではない。

 これは……、”キャラジャンル変更チート”だ。

 

 剣夜はレズゲージャンルに変更されてしまったのだ……!! 

 

 世界にはそれぞれルールという物がある。

 この世界で言うならば、魔法少女はいくら強かろうが、魔族という悪に屈してしまい悪に堕ちる──、といったもの。

 

 だがこのキャラジャンル変更チートを使えばどうなるのか。

 

 

 そう、”世界のルールから外れ、変更されたジャンルのルールに沿い始めるのだ”。

 

 

「剣夜で言うならば……。

 レズゲージャンルになったのだから男は要らないというルールに基づき、男からの陵辱が失くなった。

 更には彼氏を踏み台に、私と付き合うまでに至った……!」

 

 それならば、俺のハーレムが始まると楽観的に居られただろう。

 だが、問題は別にある。

 

「この力……、恐らく変更されるジャンルは選べず、完全なランダム。

 今回、たまたまレズゲージャンルに変更されたから良かったものの、下手をしたら……!」

 

 リョナゲージャンルになったキャラなど目も当てられない。

 あまりにもガチャ要素が大きすぎるチート能力に頭を悩ませていると……。

 

 ガバッ──。

 

 剣夜がいきなり俺を押し倒してきたではないか。

 

「あ、あの……、剣夜さん?」

 

「ごめん……、そんな憂いている顔をしているリーゼを見ていると、何だかムラムラしちゃって……」

 

 レズゲーの女ってこんなに淫獣なのか? 

 何時もなら、ば喜んで一夜を共にしたのだろうが、この変貌っぷりには困惑しか無い。

 

 だが、彼女はそんな俺の事など気にせずにキスをする。

 

「うぇえっ!?」

 

「今夜は……、あのオークに辱められた身体を私で上書きしてあげる」

 

 そうして、私は二度目のエロシーンに突入をした。

 

 

◇◇◇

 

 

 次の日、私はエロシーンで傷付いた身体と心を癒やすべく、パチンコ屋に来ていた。

 

 お金? 

 設定もなく、ボロアパートに住み、高校生くらいの年齢でしか無い私が持っている筈がなかったのだが……。

 部屋に何故か見慣れぬ金庫があり、開けてみると暫くは生活に困らぬ程度のお金が入っていたではないか。

 

 これが何を意味するか。

 

「神よ、ギャンブルで勝ち増やせって事ですね」

 

 そんな神からの啓示に従い、パチンコ店に足を踏み入れたのだが……。

 

 

 

 十分後──。

 

「ありえませんわ!!!!」

 

 追い出された。

 入って数歩で店員に声をかけられ、18歳以下のご遊戯は禁止だと。

 

 そこで、私は18歳以上だと店員に怒鳴り散らしたら、今度は店長がやってきてお説教。

 なんて店だ、此処は。客に負けさえさせてくれないのか。とんでもない店である。

 

「やってられませんわっ! 

 おクソッタレですわ……、ええとタバコタバコ……。

 切れてるじゃねえですかっ!」

 

 仕方がなくコンビニに行き、タバコを購入しようとしたが……。

 

「済みません、年齢を確認出来るもの御座いますか?」

 

「はぁっ???」

 

「ごめんなさい、高校生ですよね貴女。

 学校何処ですか? ちょっと連絡を……」

 

 無言で逃走を選ぶ。

 学校は何処かすら実は分からない。

 

 何故ならば、リーゼは学生である描写はあるが、主人公とは違う高校の上、何処に通っているのかすら描写が無いからだ。

 

 改めて、このキャラクターが序盤のエロ要因でしかない事を自覚する。

 如何に世界観などが作り込まれていても、所詮は抜きゲー。エロ敗北をするだけのキャラでしかない。

 

 だがそれ以上に……。

 

「パチスロは打てず、タバコと酒も飲めない。

 こんな世界、苦しみしか存在しないじゃないか……」

 

 逃げ込んだ路地裏で項垂れる。

 魔法少女になった事で、転生前とは比べ物にならないくらいに持久力は上がっているが、

 それ以上に心の疲弊があまりにも強い。

 

 いくら素晴らしいレズハーレムを築こうと、これでは何の意味もない。

 このまま私は死んでしまう、そう思ったのだが……。

 

「よぉ見てたぜ。

 お前ガキの癖に堂々とタバコと酒買おうとして、度胸あんなぁ」

 

 コトッ──。

 

 隣にストロングゼロとマルボロが置かれる。

 もしかして……、これって……。

 

「やるよ、魔法少女同士仲良くやろうぜ」

 

 パッと見て190センチは超えるであろう、背丈の魔法少女がそこに立っていた。

 ああ、この人は……。

 

「神か……!?」

 

「神じゃねえよ、アタシはバーンレッド。

 強さを求める魔法少女さ」



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三話 アタシったら最強の魔法少女ねっ!!

 

 

「……そういえば何で魔法少女って戦ってるんでしょう」

 

 根本的な疑問、何故戦うのか。

 そこら辺の設定ってなんだったっけ。

 

 全く覚えていない。

 

「あぁ? そんなの決まってるじゃねえか。アタシの為だ」

 

 ……んっ? どういう意味だろうか。

 もしかして、某魔法少女アニメのように、魔族を倒さないと魔女になったりとかするんだろうか? 

 

「アタシが魔法少女、いやこの世界で最強の存在である事を証明する為だ。

 アタシが最強である事を証明し続ける為には、連中が存在しなければならねえ。

 

 アタシが雑魚狩りをしても何の意味もないし、力無き者には興味もない。

 アタシの為に連中には力があり、魔法少女を屠れる程度の力を持っている。

 アタシに打ち倒される為に魔法少女達は破れ、連中は強敵であり続ける。

 それを打ち倒せるアタシが最強である。

 

 ──理に適ってないか?」

 

 このタイミングで気付いた、この女もまたそこらでやられるモブ魔法少女だ。

 だが、何だこの最強脳は。異常と言う他ない。

 

 間違いなく、自分のチートが発動し、この女のジャンルが変わっている。

 一体何のジャンルだろうか。バトル系エロゲ? 

 

 いや何だかその表現も違和感がある。

 これは……。

 

「厨二系か……?」

 

「あっ?」

 

「ああ、いやこっちの話ですわ」

 

 その上でだ。

 私のもう一つのチート能力によって、この世界で行われるエロシーンは全て私が対象となる。

 

 こうなってしまえば、もう原作知識など何の役にも立ちはしない。

 最早、キャラ設定などあって無いようなものだ。

 

「もう嫌ですわ……。

 絶望的な新しい人生が確定したというのに、ストレス発散にパチスロも打てないなんて……。

 犬○叉、カ○リネ……。お前達とも戦いたかった……」

 

「あ、何だお前? パチスロ打ちてえのか? 

 アタシは何時も打ってるが」

 

「それは貴女が大きいからでしょう? 

 私は背丈が150センチ程度ですから、高校生なのに中学生にすら間違われる始末ですわ……」

 

 私のこの絶望が表情に出ていたのだろうか。

 彼女は何とも呆れた顔で、頭をポリポリと掻きながら、私に救いの手を差し伸べた。

 

「実機……やろうか? 

 古いマックス機とかライトミドル機だけどよ……」

 

「……ちなみに何の機種?」

 

「乙○ェスとか銀河○女だが……」

 

「貴女が神か」

 

 あの頃、キラキラと輝き、私の心を掴んで離さなかった名機達が帰ってくる。

 ギャンブルは出来ないが、懐かしの名機が何時でも遊べるという感動で心が震えてしまっていたのだ。

 

 ”因みにだが、私は転生前は50歳を超えている”。

 その上で、バキバキの童貞無職だ。

 

「それによ、ギャンブルしてえならもっと良い場所があるぜ?」

 

 ニヤリと笑い、彼女は私を再び、魔族との戦いに誘う。

 そんな気がする。

 

「魔族が運営する裏闘技場……って知ってるかぁ?」

 

 

◇◇◇

 

 

 ゴッ──! 

 

 

「しゃあっ」

 

「ぐぁあああああああ!!」

 

 ぐるりと中央の砂のステージを囲む観客席から、魔族達の歓声があがる。

 その中央では数十メートルもある、大型の人型魔族を真正面から殴り合い、打ち勝っている彼女がいる。

 

 既に数十万の勝ちが確定している私も混ざり、共に歓声をあげていた。

 

「あぁああああああ!!! 素晴らしいっ! 素晴らしいですわっ! 

 お脳みそから脳汁が止まりませんわぁああああああ!!! 

 この一瞬で、数万が飛んでしまいそうな不安から、そのお金が一気に何倍にも膨れ上がる快感っ! 

 魔族の快楽責めなんてゴミですわ、ゴミっ! 

 このいつ人生が終わるかの、ギリギリのクソみてえな生き方最高ぉおおおおおっ!!」

 

 彼女は単身、この闘技場に選手として乗り込み自分にかけろと言ってきた。

 出会って間もない彼女を信用するのは、中々怖かったがそれがギャンブルだ。

 

 何とも言えない不安だが、自分ならば勝てるという無根拠な自信で、この賭けに挑んだわけだが……。

 

「丸儲けですわぁああ、ゲヒヒヒイッ! ヒヒヒヒヒイ!!!」

 

 笑いが止まらねえ、キャラジャンル変更チートのおかげでこんな美味しい思いが出来るなんてなぁ! 

 

 一方、彼女は……。

 

「ふむ、貴様ら鍛え方や経験の問題ではないぞ。

 根本から弱い、脆い、浅い。もう少し自らの生き方から考えたらどうだ。

 魔族といえども、鍛えればそれだけ強くなる、経験を積めばカンやタイミングが分かる。

 そんな物はどんな弱者でも、生き残れば掴めるのだ。

 

 だが、徹底して弱者を相手にしてきたのが分かるぞ。強者と戦うくらいの気概は見せてみろ。

 まあ死んでしまっているから独り言に過ぎないのだが、言いたかったから言っただけだ。聞かないで構わん」

 

 何ともつまらなそうな顔をして、魔族達の無数の死骸を見つめていた。

 自らは最強である、そして自分よりも強い者が居たならば、その者を打倒し最強の座を掴む。

 

 それが彼女の生き方の筈なのに、これでは何の手応えもない。

 

 だが仕方あるまいと納得もしている。何故ならば連中は最強であるアタシではない。

 最強のアタシ以外の存在が、最強のアタシに勝てると思ってもいない。

 

 この結果も当たり前に訪れた結末だと。

 

「もういい、さっさと帰せ。

 金だけ貰ってもう帰ろうと思う」

 

 すると、ゾロゾロとステージ裏から魔族達が現れ始め、観客席の連中も一斉に彼女に向かい言い放つ。

 

「馬鹿がっ! 逃げられるとでも思ってんのかっ!? 

 此処がはテメエ等を勝たせる為に存在してるんじゃなく、テメエ等をリンチして犯して楽しむためにあるもんだっ! 

 たった独りでこの人数に勝てるわけもねえっ! やっちまえっ!!」

 

 何ともテンプレじみた台詞だが、彼女はこの状況に絶望するでもなく、ましてや楽しむ表情すら浮かべずに、

 淡々とこう言い放った。

 

「ああ良いぞ、来い。

 だが悲しいな、結局のところアタシは最強のままだったのだ。

 この戦いにあまり意味はない、群れで襲われたところで、個の最強すら捨てた貴様らとの戦いにアタシは楽しめない。

 だが、仕方あるまい。アタシを楽しませられるのも恐らくアタシだけだ。

 アタシに対して悪く思わないでもいいぞ、仕方ないと知っている」

 

「何を言ってやがるっ! 死んじまえぇっ!!!」

 

 次の瞬間──、お約束のように……。

 

「はっ??? 

 何でまた私を脱がしてるんですの??」

 

 魔族の連中は私の衣服を破り捨てている。

 いや、ここでチート発動するの?? 

 

「うるせえっ!! あの女を倒すために犯し……犯し……。

 何言ってるんだ、俺は? 

 まあいい、アイツを倒すためにお前を犯すんだよ、ギャハハハハハハハ!!」

 

 支離滅裂である。

 だが暴力の最強が彼女、バーンレッドであるならば。性耐性の最強が私、リーゼなのだ。

 

 ならばこそ、どんな凌辱エロも通用はしない。

 さあ来い!! 今度は生やしてみろ!! 貴様らのケツ穴を掘ってやる!!! 

 

 

◇◇◇

 

「おらぁっ! ふ○なり強制絶頂!」

 

「うぎょろぉおおおおおおろろろろろろ!!?」

 

◇◇◇

 

「脳味噌を直接弄ってやるぜ!!」

 

「それでもっ!」

 

◇◇◇

 

「ひゃはははっ! 触手の味はどうだっ!!」

 

「あんま美味しくないですわね……。

 私、うにとかいくら苦手なんですのよね……」

 

◇◇◇

 

 

 

「ふぅ……、こんなものですわね」

 

 そうして周囲の魔族を片付けたのだが、私が相手をした魔族は総数の一割にも満たない。

 彼女が引き受けた魔族の数は、数千を超えている筈だが大丈夫だろうか? 

 

 なんて心配をしたのも束の間……、想像を絶する光景がそこに広がっていた。

 

「フンッ!!! }

 

 はたしてどれほどの衝撃と轟音が炸裂しただろうか。

 その一撃は地を真っ二つに砕く程の威力を一度に360度……、全方向に打ち出している。

 

 その驚異の鉄拳一発に果てる魔族は数十、こんな物相手になるわけがない。

 

「下らんっ!! 度し難いぞ、貴様らっ!! 

 アタシを楽しませろ、アタシを満足させろっ! 貴様らの命などその為だけにあるっ!!」

 

 最強であると謳った彼女は──、文字通り暴力最強だった。





今までの登場人物

リーゼ・アストリア
パチンコ・スロットの魔法少女

元童貞無職の50歳のオッサンだったが、序盤に悪堕ちするモブ魔法少女のリーゼ・アストリアに転生。
そして、二つのチート<エロシーン介入>と<キャラジャンル変更>に目覚める。
銀髪ロングのロリ貧乳で、好きな物は酒とタバコと二郎。


桜城剣夜
レズの魔法少女

元々はおねショタカップルだったが、リーゼのチートによりレズに覚醒。
黒髪ポニーテールの爆乳低身長。


バーンレッド
暴力の魔法少女

彼女も元々はやられ役のモブ魔法少女だったが、<キャラジャンル変更>チートにより覚醒。
最強であり続け、最強の座を掴み続ける、圧倒的なる個の暴力の体現者。


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四話 ゲーム終わっちゃったよ!?

 

 

 全ての惨状が終わった後……、私は闘技場の真ん中で項垂れていた。

 

「アンタ面白い奴だな。

 大抵連中の趣味に付き合わされた魔法少女は使い物にならなくなっちまうが、

 逆に倒しちまうとはな。アタシにはねえ、別の強さだ」

 

 全く褒められている気がしない。

 そもそも、この耐性も人生が終わる程のギャンブルを数回して得た脳汁によって、ボロボロになったからだ。

 

 我ながらクソッタレな生き方だと自負はしている。

 反省も後悔もしていないが。

 

「それよりも、ちゃんと私が勝ったお金は貰えるんでしょうね?」

 

 何よりも大事なのは金だ。

 賭けに勝ったのならば、金が欲しい。至極当然の話だろう。

 

 負けたのならば、大金を失うのも仕方がない。

 だが私は勝ったのだ。だったのならその報酬を受け取りたいという主張は当たり前で、咎められる事ではない筈だ。

 

「ああ……、探せば金がある筈だ。

 アタシとアンタで山分けだ、約束は守る」

 

 家にある金庫にある金も、どれ程溜め込んであるか分からない。

 だったら、ある程度収入が必要だったからこれは助かった。

 

 バーンレッドは金が溜め込んである金庫を見つけ、ガサゴソと漁っていた。

 

「それで私の取り分は?」

 

「どれくらいあるかは分からねえけど、ほらよ。

 暫くは困らねえだろうが」

 

 すると、何千万だとかはあるであろう札束をいくらか渡してくれた。

 だが……。

 

 あまり嬉しさがない。

 これで生活は一安心だから、安堵感はあるが多幸感が無い。

 

 一体何故か。

 

「あぁそうか……」

 

 眼の前のバーンレッドを見てつぶやく。

 

「この女なら最初から勝つと分かっちゃったからか」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 バーンレッドと再び会う約束をして別れた。

 彼女は私と居たら、面白い事がありそうだと、何かあったら連絡をしてくれると約束をして。

 

 これ以降、何かしらのイベントに引っ切り無しに付き合わされる事が確定したわけだが、

 どうにも憂う気分にもならない。

 

「……チート貰った筈なのに楽しくねえなぁ~」

 

 そう、楽しくないのだ。

 確かに魔族との戦いに遅れを取ったり、負けたりする事はないだろう。

 

 だけども何でも思い通りになるわけでもなく、心が踊ったりする事もない。

 

「何か……もっと良い事ねえもんかねぇ」

 

 そんな風に独りで公園で黄昏れていると──。

 

「……お姉さん?」

 

「あっ……?」

 

 そこに居たのは、剣夜に見事に振られた哀れな少年。

 

 司くんだった。

 

 

 

 

 

 

 ブンッ! ブンッ!! 

 

 司くんは公園でたった独りで、正拳突きの真似事を何度も繰り返している。

 この行為に一体何の意味があるのかと、思いもしたが、自分も男だったから分かる。

 

「……まあ悔しいし、嫌な気分だったろうな。

 だからこういう事して……、気を紛らしてるんだろうけど」

 

「でも、あれは僕が弱かったから仕方ないんですよ」

 

「そんな事言うなよ……」

 

 自虐されると何とも反応に困ってしまう。

 あの場で弱かったのは彼女と俺だ。だからこの子が責任を背負う必要なんてないのだ。

 

 今はこんな見た目だが、中身は50のオッサンだ。

 こんな子供が悲しそうな顔をする必要はない。

 

「……正拳突きか」

 

 ならもっと良いやり方がある。

 そう司に言って、俺は構えをとった。

 

 リーゼというキャラクターだが、僅かではあるが戦闘描写がゲーム内で存在したのだ。

 それは格闘技。流派とかそんな物は一切分からない。

 

 だけども、動きは何となく肉体が分かっている。だったら……。

 

 ヒュンッ──。

 

 空を切り裂く音が鳴り響き、光すらも砕ける衝撃が一直線に放たれ、遥か遠くの建物に直撃。

 凄まじい音を掻き鳴らしながら、建物が圧縮されながら無へと収束され、跡形もなく消滅してしまった。

 

「……あぇっ?」

 

「えぇ……?」

 

 これで理解した。リーゼは本当に才能のあった魔法少女だったと。

 ただただ……、エロ調教でやられてしまっただけで、本当は魔族なんか殲滅しきれる程の力があった事を。

 

 そして、今俺は大勢の人を殺してしまい……。

 

 直後、スマホから着信が入る。

 バーンレッドからだ。一体何があったのだろうか。

 

 いや何があったのかではない。

 恐らく私が今やらかした事だろう、それを問い詰められ……。

 

『おいリーゼ。お前の魔力を感じた。

 アレお前だな? お前……。

 

 魔族の親玉が居た、魔族の本拠地が潰れたぞ』

 

「えっ?」

 

 ──このゲームが終わった瞬間である。

 

そして、同時に新たなゲームが始まった事を今の私は知りもしなかった。

 

思いもよらなかった。まさかレズゲーがあんなに怖いモノだったなんて。

魔族のエロ調教くらいであったならば、何とも救われていたんだと。

 

彼女は見ていたのだ。

元カレの司と、その後付き合った私が、公園で仲良くしているところを。

 

「……浮気、浮気なの、リーゼ?

 許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない

 ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない

 

 でも大丈夫よ、リーゼ。

 私がちゃ~~~んと……、調教してあげるから」

 

その時の彼女の表情は、どんな顔だっただろう。

何とも歪んだ……、悪魔のような……。

 

そんな顔を……。



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