転生したらキメラだった件 (仮面大佐)
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オリキャラ紹介

レイト=テンペスト/仮面ライダーキマイラ/仮面ライダーダイモン/仮面ライダージュウガ

CV 松岡禎丞

種族 キメラ→巍骸魔(ギフ)

概要

車に撥ねられそうになった少年を助けたが、逆に自分が撥ねられ、死亡してしまった元人間。仮面ライダーキマイラの力を手に入れ、転スラの世界へと降り立つ。人間としての名前は、高野裕人。趣味は空手、仮面ライダーの鑑賞。それ以外にも、武術の類はやった事がある為、戦闘能力は高い。性格は、お節介で、頼まれた事は、何やかんやで引き受けてしまう。ギフテリアンになった影響で、他人の悪魔を見て、その人の本性を知る事が多くなった。好物は納豆、甘い物、餃子。ミリムに対しては、過去を知ってからは、気にかける様になった。人間態は、わりかし女顔なのも影響して、火煉達に女物の服を着せられそうになるが、即座に逃走している。魔王に進化した後は、敵対する人には残虐性を見せるようになる。

 

火煉/仮面ライダーベイル/仮面ライダーデストリーム

CV 茅野愛衣

種族 大鬼族→鬼人

概要

大鬼族の女性。里が豚頭族に滅ぼされた後は、後の紅丸達と共に、レイトとリムルの村の方に向かう。そこで、一頓着あるも、受け入れられ、レイトに火煉という名前を付けてもらう。名前を貰った以降は、レイトの秘書兼護衛の役割を担う。着物をよく着用しており、戦闘事には、袴を着る。紅丸、蒼影、紫苑とは、幼馴染の間柄。火煉は、レイトに好意を寄せているが、当の本人は気づいていない。料理は得意で、よくスイーツを朱菜と共に作っている。紫苑の料理の腕に関しては、諦めている。好物は甘い物全般。レイトに女物の服を着させようとするが、逃げられてしまう。

 

蒼月/仮面ライダーデモンズ

CV 水島大宙

種族 蜥蜴人族→龍人族

概要

ガビルの幼馴染。元々は、蜥蜴人族だったが、テンペストに移住して、名前をつけてもらってからは、人間に近い見た目になる。冷静な性格で、ガビルの抑え役になる事が多い。テンペストに移住後は、レイトの直属の部隊の1人として、活動するが、戦闘がない時は、蒼華、蒼影と共に見回りをしたり、本を嗜む。好物は、団子、蕎麦、うどん。蒼華が蒼影に好意を寄せている事に気付いており、応援している。

 

グルド/仮面ライダーオーバーデモンズ

CV 榎木淳弥

種族 豚頭族→猪人族

概要

豚頭族の1人。魔王ゲルドの侵攻が終わった後は、ゲルドや、他の猪人族と共に、テンペストの発展に携わる。性格は、情に熱く、仲間想い。贖罪の為に働くという意識が強く、ゲルドと共にワーカーホリック気味になっている。レイトは、グルドと蒼月を連れて、団子屋に連れて行き、団子が好物になった。好物は、団子、蕎麦。蒼月とは性格は180度違うが、馬が合う模様。よく蒼月とお茶会を開いている。その際の話題は、もっぱらお互いの近況報告。




今回はここまでです。
オリキャラ解説をやっていないと思い、投稿しました。
現状、オリキャラはこの4人のみなので、本編では明かされていない設定を入れました。
近いうちに、最新話を投稿したいと思うので、頑張っていきます。
これからも応援の程、よろしくお願いします。


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プロローグ

バトルファミリアで、キマイラとダイモンがかっこよく、書きたくなったので、書きました。


2022年7月22日

 

裕人「いやぁ、よかったなぁ………。」

 

 俺は、高野裕人(こうのひろと)

 何の変哲もない、理系大学生だ。

 理系大学生といっても、趣味は空手、仮面ライダーの鑑賞だ。

 今日は、『劇場版仮面ライダーリバイス バトルファミリア』を見に行っていた。

 本当に良い映画だった。

 キマイラもダイモンもカッコよかったなぁ。

 

裕人「早くキメラドライバーが、予約開始されないかなぁ………。」

 

 多分、キメラドライバーは、プレバン行きになりそうだしな。

 それで、大谷希望と向井リュウ、アヅマのセリフが入りそうだし。

 そういえば、デモンズドライバーやベイルドライバー&デストリームドライバーユニットもいずれ届くな。

 それで遊ぶのが楽しみだ。

 すると。

 

???「危ない!戻ってきて!!」

裕人「!?」

 

 そんな声が聞こえ、声のした方を向くと、母親が、道路に向かって叫んでいた。

 そこには、道路に転がったボールを取りに行こうとする子供がいて、子供の目の前には、大型トラックが迫っていた。

 それを見ると、すぐに体が動き、子供を母親に向かって突き飛ばして、俺が撥ねられた。

 撥ねられ、そのまま、街路樹に突き刺さる。

 子供は、無事か………。

 人々の悲鳴が聞こえてくる。

 

裕人(痛い………それに、何だか、熱い………何かが突き刺さったのか………?)

 

???『確認しました。痛覚耐性を獲得。成功しました。対熱耐性を獲得。成功しました。刺突耐性を獲得。成功しました。』

 

裕人(………今度は、寒くなってきた……。)

 

???『確認しました。対寒耐性を獲得。成功しました。対熱耐性と対寒耐性を獲得した事により、スキル、熱変動耐性を獲得しました。』

 

裕人(あ〜あ………。欲を言えば、仮面ライダーに変身したかったなぁ………。)

 

???『確認しました。UQスキル、仮面ライダーを獲得。成功しました。』

 

裕人(変身するなら、デモンズ、ベイル、キマイラになりたいな………。)

 

???『確認しました。デモンズ、ベイル、キマイラを獲得。成功しました。続けて、個体名高野裕人の記憶を検索し、オーバーデモンズ、デストリーム、ダイモンを獲得。失敗しました。代替案として、デモンズ、ベイル、キマイラと結びつける事に挑戦。成功しました。』

 

裕人(死に間際に、変な声が聞こえる………。でも、ベルトって、結構嵩張るんだよなぁ。何か、収納出来る何かが欲しいな。)

 

???『確認しました。EXスキル、無限収納を獲得。成功しました。』

 

裕人(そうだ。ベルトだけあってもなぁ。バイスタンプが無いと………。)

 

???『確認しました。個体名、高野裕人の記憶から、バイスタンプを作成。成功しました。スパイダー、カブト、ツインキメラ、クワガタ、ヘラクレス、トライキメラ、バッタ、モグラ、スコーピオン、コンドル、アノマロカリス、クロコダイル、コモドドラゴン、コングの作成に成功しました。』

 

裕人(後、デモンズドライバーも、キメラドライバーも、ベイルドライバーも、デストリームドライバーも、負荷が結構強いからなぁ。それに耐えられる肉体にならないと………。キメラみたいなのなら………。)

 

???『確認しました。個体名、高野裕人の記憶から、キメラに関する記憶を検索………成功しました。続いて、個体名、高野裕人の種族を、人族からキメラに再構築します。成功しました。そこから、UQスキル、吸収者(トリコムモノ)を獲得しました。』

 

裕人(キメラなら………ギフみたいに、細胞を他者に埋め込む事も出来るよな………。)

 

???『確認しました。UQスキル、移植者(ウツスモノ)を獲得。成功しました。』

 

裕人(でも、俺、そんな高等技術を持ってない上に、リバイスドライバーとかも作れないからな………。何か、そういうサポートをしてくれたら………。)

 

???『確認しました。UQスキル、科学者を獲得しました。』

 

裕人(まだ、うるさいし………。あ………やべ。限界だ…………。)

 

 こうして、高野裕人の人生は、僅か20歳にて、幕を閉じる事になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裕人(あれ………俺、どうなった?)

 

 あれ、これ、どういう状況?

 俺、死んだんじゃ………?

 

裕人(意識ははっきりしてて、痛い所は特に無し。枝に突き刺さってたのに。)

 

 という事は、病院に運び込まれて、なんとか蘇生できたのか?

 いや、致命傷だったぞ。

 それに、床が硬い。

 ベッドじゃないし、道路とかに敷かれている石畳でも無い。

 感触としては、洞窟に居るみたいな………。

 

裕人(洞窟?)

 

 重い瞼を持ち上げると、目に入ったのは、紛れもなく洞窟だった。

 しかも、何かの草が目に入る。

 白い花だが、ユリとは違う形状の花だ。

 何だろう。

 すると、謎の声が聞こえてくる。

 

???『解、この花は、ヒポクテ草。濃い魔素が充満している場所に生えることで、魔素の影響を受けた草。成分を抽出することで、回復薬を生成することができる。』

裕人「えっ!?」

 

 俺は、二つの意味で驚いた。

 一つは、魔素という単語だ。

 そんな単語は、日本では聞いた事がない。

 もう一つは、この声は、俺が死んだ時に聞こえた声だ。

 

裕人「ええっと、誰?」

科学者『解。貴方が持つ、UQスキル、科学者の効果です。能力が定着したため、反応を速やかに行う事が可能になりました。』

裕人「ああ…………。(スキル………この世界に於ける能力みたいな物か。)」

 

 俺は、そう考えていた。

 気になる事があり、聞いてみる事に。

 

裕人「そういえば、無限収納って、どんな能力なんだ?」

科学者『解。ここには、凡ゆる物が、大きさを関係無しに、収納出来るスキルです。更に、UQスキル、科学者と合わせる事で、無限収納に収納された物を、自動的に解析、鑑定、調合、生成が行えます。』

裕人「なるほどな。」

 

 それを聞いた俺は、早速ヒポクテ草を大量に採って、無限収納に放り込む。

 すると、純度100%のフルポーションが完成した。

 これを作った理由としては、傷を負った時に、すぐに回復する為だ。

 その際、近くにあった水溜りを覗くと。

 

裕人「…………誰?」

 

 そこには、見知らぬ顔が。

 前世の俺の顔の面影を、ちっとも感じない。

 前世の俺は、いかにも普通みたいな顔をしていたが、まさか、ギフテリアンみたいになってるし。

 一応、人間寄りの顔ではあるものの。

 まあ、人間ではないのだが。

 すると。

 

???『クアーーーーハハハハハハハハハハハ!!』

裕人「!?」

 

 突然、大きな笑い声がしてきて、何事かと思い、声がした方へと向かっていく。

 すると、一体の巨大なドラゴンの目の前に、一匹のスライムが。

 どういう状況か分からず、呆然としていると。

 

???『…………どうやら、まだ客人が居るみたいだな。』

裕人(バレた…………!)

 

 そのドラゴンは、俺を見つけたようだ。

 俺は観念して、ドラゴンの前へと向かう。

 

???『…………ほう。見た事のない種族であるな。』

 

 スライムは、何かを伝えようとしていた。

 

???『そうだ、話が逸れてしてしまったな。スライムよ。見えるようにしてやろう。ただし、条件がある。それは、貴様にも該当する。』

裕人「条件?」

???『なあに、簡単な事だ。見える様になったからと言って我に怯えるな。そして、また話をしに来い。それだけだ。どうだ、悪い話ではあるまい?』

 

 それを聞いたスライムは、頷く様な仕草を見せる。

 その龍は、口を開く。

 

???『うむ。では、『魔力感知』と言うスキルがあるのだが、使えるか?』

裕人「魔力感知?」

???『周囲の『魔素』を感知するスキルだ。』

裕人「魔素?」

 

 さっきも聞いたが、魔素って何だ?

 俺が首を傾げてると、科学者が答えてくれた。

 

科学者『解、魔素とは、この世界に満ちるエネルギーで、魔物にとっては生命の元になる物です。』

裕人(なるほど。)

 

 そういう物か。

 魔物となった以上、俺も魔素は必要不可欠になったという事か。

 目を閉じながら、意識すると、周囲に漂う何かを感じ取れた。

 

科学者『告。EXスキル、魔力感知を獲得しました。』

裕人(随分と、あっさりだな。)

科学者『警告。魔力感知を発動することにより、膨大な情報が流れ込む危険性があります。情報の管理のため、科学者と同期させることを推奨します。』

裕人(まあ、そうだろうな。)

科学者『魔力感知を使用しますか?』

裕人「YES。」

 

 すると今まで薄暗かった洞窟の中が、まるで昼間のようにはっきりと見える様になった。

 周囲の状況が事細く知る事ができた。

 スライムが、はしゃいでいた。

 

スライム「お?おお!!見える!見えるぞ!」

裕人(あれ?さっきまで、スライムの声は聞こえなかったが………。)

科学者『解。意思の込められた言葉は、魔力感知の影響で理解できる言葉に変換されます。』

裕人(自動変換機能か。便利だな。)

 

 さて、魔力感知を習得出来たのは良いけど、あのドラゴン、どうすれば良いんだよ。

 

???『どうだ?出来たようだな。』

スライム「はい!できました。有難うございま…………っ!!」

 

 スライムの言葉が、途中で止まる。

 まあ、いきなり竜が居たら、驚くわな。

 

ヴェルドラ『では改めて自己紹介をしよう。我は暴風竜ヴェルドラ。この世に4体のみ存在する『竜種』の一体である。クァーーーーハハハハ!!』

裕人(ヴェルドラって名前なんだ。)

 

 そうして、俺とスライムは、ヴェルドラという竜と話をする事になった。




今回はここまでです。
オリ主は、キメラです。
そして、仮面ライダーキマイラに変身します。
デモンズ、ベイルに関しては、他のキャラが変身する予定にしています。
一応、リムルがデモンズに変身する事を、考えています。
ベイルに関しては、まだ未定です。
一応、ユニークスキル、科学者の力で、リバイスドライバーとかいったベルトの作成は可能なので、もしかしたら、リバイスとかも出すかもしれません。


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番外編 原初の黒との邂逅

 これは、ファルムスの侵攻が始まる少し前の話だ。

 ある日、俺はテンペストで事務作業をしていた。

 

レイト「それにしても、ミョルマイルという人物から、ハイ・ポーションの注文が来るとはな。」

 

 俺はそう呟く。

 リムルから聞いたのだが、ミョルマイルという商人が、ハイ・ポーションを仕入れる事になったそうだ。

 その為、精霊の棲家で、子供たちに上位精霊を宿らせた後は、ちょくちょく遊びに行っているが、基本的には、テンペストで仕事をしている。

 すると、リムルの気配を感じた。

 

レイト「リムル?」

 

 俺は、ワープポータルがある場所に向かう。

 すると、他にリムルが戻ってきた事を察したのか、住人が多く居た。

 

住人達「お帰りなさい!リムル様〜!」

リグル「リムル様〜!」

紫苑「お帰りなさ〜い!」

朱菜「ようやく戻ってこられたんですね!」

リグルド「今夜は宴会じゃあ〜!」

 

 そして、リムルを胴上げをしていた。

 

レイト「よお、リムル。どうした?」

リムル「お、おお、レイト!少し、用事があってな。」

 

 リムルは、帰ってきたのではなく、用事があって、テンペストに一時的に戻ってきたそうだ。

 その訳としては、自由学園で、野外訓練があるそうだ。

 これまでは、Sクラスの面々は参加してなかったが、ジェフという教師の挑発に乗った結果、Sクラスの面々も参加する事になったそうだ。

 ていうか、挑発に乗るなよ。

 野外訓練ね。

 何故か、俺は嫌な予感がしていた。

 リムルが何かを企んでいる事、そして、その野外訓練で向かうグラトルの街で、何かが起こりそうな気配がするのだ。

 俺のこういう嫌な予感って、大体的中してるんだよな。

 ガビルの謀反だったり、フォビオの一件だったり。

 まあ、フォビオの一件に関しては、まさか、暴風大妖渦(カリュブディス)の核として囚われていたとは、思わなかったが。

 そう思う中、周囲の皆は、先ほどまで喜んでいたのが、一気にテンションが下がった。

 

レイト「じゃあ、すぐにイングラシアに戻る感じなのか?」

リムル「そういう事だな。レイト、悪いな。」

レイト「良いって、良いって。」

リグルド「帰ってこられた訳では、無いのですね………………。」

朱菜「すぐに戻られてしまうとは…………。」

紫苑「寂しいです……………。」

レイト「まあまあ、そうガッカリすんな。」

リムル「そうそう。あと、10日ほどしたら、すぐに戻るよ。」

朱菜「本当ですか!?」

 

 そんな感じに、落ち込む皆を落ち着かせて、リムルは、本題を話す。

 朱菜にはヘルモスの糸から作ったマントを、ガルムにはチェインメイルを、カイジンと黒兵衛には子供達の武器を用意するように頼んだ。

 余談だが、朱菜は子供と聞いた時に、リムルが子供を産んだと誤解をしていた。

 そうして、武器が用意できた。

 それぞれ、ケンヤは剣、ゲイルは槍と盾、リョウタは弓、クロエはシズさんのような細くてよく切れる剣、アリスは忍者のような武器………簡単に言えばクナイだそうだ。

 ちなみに、シズさんの自由学園での扱いは、理事長……………神楽坂優樹……………のお客という扱いらしい。

 一応、後任の先生の引き継ぎなどもやっているので、ある意味では、非常勤講師と言えるだろう。

 黒兵衛とカイジンは、武器を用意した。

 

黒兵衛「こんな感じでどうだべ?」

リムル「うん!良いねぇ!これなら十分だ!アイツらも喜ぶだろう!流石だな!黒兵衛!カイジン!」

カイジン「本来なら、所有者に合わせて調整するもんなんだがな。そうじゃなきゃ、バランスが上手く取れねぇだろ?」

黒兵衛「んだ。マジックウェポンなら、魔法で調整されるだが、ここにあるのは、そこまで期待出来ないだよ。」

レイト「まあ、子供だから、成長に合わせて調整する必要性はあるから、大丈夫じゃないか?練習用に使えば。」

 

 まあ、子供は成長するから、すぐにサイズなんて変わるだろ。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「そうだな。あとは……………。」

レイト「まだ必要な物があるのか?」

リムル「ああ。旅用の馬車をどうしようかなと思ってね。子供5人と大人が1人寝泊まりできるようなのがあれば良いんだが…………。」

カイジン「あるぜ。」

リムル「あるのかよ!?」

カイジン「リムルの旦那にレイトの旦那が前に言ってただろ?豪華な馬車で確か…………キャンピングカーって、言うんだっけか?」

黒兵衛「実は、レイト様の気まぐれで頼まれて、作ってみたんだべ。」

リムル「マジか!黒兵衛、カイジン、レイト!グッジョブ!」

 

 リムルにそう言われて、俺、黒兵衛、カイジンはサムズアップをする。

 そういえば、キャンピングカーみたいなのを頼んでたな。

 皆で旅をする際に、不便なく行きたいからな。

 とはいえ、基本は馬車なので、引っ張る動物が必要だが。

 流石に、エンジンみたいな動力源を作る訳にはいかないし。

 まあ、キメラストライカーというバイクを作っている時点で、今更だが。

 すると、リムルが話しかけてくる。

 

リムル「なあ、頼みがあるんだけど。」

レイト「うん?」

リムル「少し、子供達のことを見守ってあげてほしくてな。」

レイト「え?」

 

 リムル曰く、その野外訓練では、リムルはSクラスの子供達とは一緒にいないそうだ。

 贔屓になってしまうかもしれないと言う理由で。

 まあ、妥当だな。

 だからこそ、自由学園の教師では無い俺なら、子供達を見守れるのではないかと。

 

レイト「それ、子供達にバレたら、リムルが差し向けたって即バレするぞ。」

リムル「だからこそだよ。バレないようにやって欲しい。」

レイト「はぁ……………わぁーったよ。」

リムル「おう!さすがは、レイトちゃんだな!頼りになるぜ!」

レイト「おだてるな。あと、ちゃんづけは辞めろ!気持ち悪い!」

 

 まあ、俺も子供達が上手くやれているのか、気になるしな。

 という訳で、俺は離れた場所から、見守る事にした。

 嫌な予感もするので。

 リムルが出発した後、俺も出発した。

 火煉とかは、俺もイングラシアに向かう事を嫌がったが、シュークリームを買ってくると言ったら、許してくれた。

 俺がイングラシアに到着すると、シズさんがやって来た。

 

レイト「悪い、待たせた。」

シズ「ううん。大丈夫だよ。」

 

 何故、シズさんと合流したのかというと、シズさんも、子供達が心配だったからだそうだ。

 その為、俺とシズさんは、子供達のルートを確認して、こっそりついて行く事に。

 手筈を確認して、出発の日になって、俺たちは後を追う事に。

 子供達は出発して、俺たちはこっそりと見ている。

 

シズ「皆、上手くやれてるね。」

レイト「ああ。まあ、安心するのはまだ早いけどな。」

 

 俺とシズさんは、そう話しながら、進んでいく。

 ちなみに、夜には子供達の近くにテントを張り、野宿をしていた。

 勿論、俺とシズさんは別々のテントに入っているが。

 そんな感じで、4日目の昼、目的地であるグラトルの街に到着した。

 子供達は、グラトルの街の近くの洞窟に向かっていた。

 子供達とティス先生が入って、時差で俺とシズさんも入る。

 

レイト「なんか……………胸騒ぎがするな。」

シズ「そうね。」

 

 俺とシズさんは、そう話しながら、進んでいく。

 ちなみに、透明化の魔道具を作っておいて、それを使っている。

 まさか、緊急離脱用に作っておいた物が、ここで役にたつとはな。

 決して、ストーカー目的ではない。

 すると、笑い声が聞こえてくる。

 

シズ「笑い声?」

レイト「子供には聞こえねぇな。」

 

 俺とシズさんが頷き合うと、ギリギリまで近づく。

 すると、子供達とティス先生が、集団に取り囲まれていた。

 

盗賊「『何をしているのかしら』だってよ!ねえ、頭。」

頭「ぎゃっははは!頭はこの中で俺だけだぜ!」

レイト「盗賊団の類か。」

シズ「何で……………!?」

頭「来たのはこいつらだけか?」

盗賊「どうやら、そのようですぜ。」

 

 俺たちがそう呟く中、頭はそう聞いて、仲間がそう答える。

 どうやら、勘付かれてない様だ。

 頭は、仲間に奥にいる人物に指示を聞きに行かせた。

 

ケンヤ「お前ら、盗賊かなんかか?」

ティス「えっ?ええっ!?」

 

 すると、子供たちはティス先生を守るように配置する。

 

ケンヤ「先生は下がってな。」

ティス「ちょっと!?あなた達!これは訓練じゃないのよ!?」

ケンヤ「まあまあ!護衛対象は大人しく守られてなって!俺たちがこいつらをぶちのめすから!」

頭「ぶちのめす?生意気なガキどもだな。」

 

 頭がそう言うと、他の仲間が武器を取り出す。

 

シズ「皆……………!」

レイト「シズさん。アイツらを信じよう。」

シズ「………………ええ。」

 

 シズさんは、皆を助けようとするが、俺は止める。

 アイツらが、柔な奴らじゃない事は、俺も分かっている。

 

リョウタ「先生、ここは僕たちに任せて下さい。」

ゲイル「加点してくれると嬉しいです。」

ティス「ええ……………!?」

クロエ「皆、頑張ろう!」

ゲイル「ビーストノーム。ティス先生を護衛しろ!」

 

 そうして、子供達と盗賊団は、戦闘を開始した。

 

ゲイル「ビーストノーム!」

 

 ゲイルはビーストノームに叫び、ジャンプして迫る敵2人を倒させた。

 リョウタは普通の矢と風属性の矢を放つが、躱される。

 だが、アリスはクナイを自在に操り、頭にネジが刺さってる奴の動きを止める。

 

アリス「まだ踊り足りない、かしら?」

盗賊「へ、へへっ、もう良い……………かしら?」

リョウタ「じゃあ、とどめですね。」

 

 リョウタはそう言って、矢を放つ。

 頭のネジが締まり、気絶した。

 クロエは、2人を相手していて、片方が出した土煙に紛れて、地面を液状化させる。

 

盗賊「そこか……………!」

クロエ「ふふっ。」

 

 クロエは敢えて、姿を見せて、盗賊を誘導して、液状化した地面に誘導する。

 その後、もう片方も地面にはまり、ビーストノームが目の前に現れて、拳を大きく振り下ろす。

 

ゲイル「よし!良いぞ、ビーストノーム!」

 

 ゲイルはそう言う。

 盗賊は、気絶していた。

 それを見ていたティス先生は唖然として、俺とシズさんは安堵していた。

 そんな中、ケンヤは盗賊の頭と応戦していた。

 

ケンヤ「へぇ。思ってたより強いじゃん。」

リョウタ「ケンちゃん!油断しないで!」

ケンヤ「任せろって!」

頭「舐めるなよ、ガキが!伊達に盗賊の頭をやってるんじゃないんだぜ!」

 

 頭はそう叫んで、ケンヤに強烈な一撃を叩き込む。

 ケンヤは、一撃を何とか凌ぐが、その際、胴体がガラ空きになり、攻撃を受け、負傷する。

 

ゲイル「ああっ!」

クロエ「ヒーリング!」

 

 が、クロエがすかさず回復魔法を使い、ゲイルの傷は塞がる。

 

頭「なっ!?」

ケンヤ「サンキュー!クロっち!」

頭「か、回復魔法だと!?お、おい!お前ら手を……………!?」

 

 頭は、仲間に助けを求めたが、仲間達は既に捕縛されていた。

 

頭「情けない奴等め!」

クロエ「私たちは英雄、井沢静江(シズエ・イザワ)の教え子だもん!盗賊なんかに負けられないもの!」

レイト「……………だってよ、シズさん。」

シズ「………………。」

 

 クロエの言葉に、俺はニヤニヤしながら、シズさんを見る。

 シズさんは、嬉しいような、恥ずかしいような表情を浮かべていた。

 

ケンヤ「よく言ったぜ、クロっち!あとはお前だけだ!」

 

 ケンヤはそう言って、猛攻を仕掛ける。

 頭は、剣で防御するが、猛攻に耐えきれず、色々と負傷して、ケンヤの攻撃で右腕が切断される。

 

頭「このガキが……………!良いだろう。負けを認めてやろう。」

 

 頭はそう言って、子供達は喜ぶが、左手で服の内側を探り、何かを取り出す。

 

頭「なんてな!」

シズ「あれって……………!?」

レイト「フル・ポーション?」

 

 何でアイツがそんなもんを持ってんだ?

 頭がフル・ポーションをかけると、欠損した右腕が完治する。

 

頭「グハハハハ!油断したな!……………って、あれ?」

 

 頭はそう叫ぶが、子供達は、ジト目をしていた。

 そんな中、ケンヤが剣の腹でぶっ叩き、気絶した。

 

ケンヤ「大人はよく汚い手を使うって、リムル先生に教え込まれてるんだよ!」

リョウタ「シズ先生と違って、リムル先生はちょっと卑怯な所があるもんね。」

アリス「ちょっと所じゃないわよ。」

子供達「あはははは……………!」

 

 リムル、何やってんだよ。

 シズさんも、少し呆れを滲ませたため息を吐いていた。

 だが、気になる事がある。

 何故、盗賊団の頭が、フル・ポーションなんて物を持っているのかだ。

 まあ、テンペストで売っているのは、フル・ポーションを薄めたハイ・ポーションだが。

 どこか、別ルートで手に入れたのか?

 そんな事を考える中、シズさんに肩を叩かれていた。

 

レイト「どうした、シズさん?」

シズ「あれ……………!」

レイト「うん?」

 

 すると、奥から、2人の男性がやってくる。

 片方は、奥にいた人を呼びに行った人で、もう片方は執事だった。

 だが。

 

レイト(あれは……………人間じゃない?)

科学者『告。あれは妖魔が人間に化けた姿だと推測。』

レイト(妖魔?何だそれ?)

科学者『解。妖魔とは、悪魔とは別の存在であります。』

 

 まあ、妖魔に関しては、それで良いとは思う。

 だが、何でそんな奴が居るのかという事だ。

 ケンヤが、正体を見破り、皆が戦闘体勢を取る中、妖魔は。

 

妖魔「おや、やる気満々ですね。」

 

 妖魔は姿を徐々に変えていった。

 これは、介入する事を考えるか。

 俺とシズさんは頷き合い、俺はキメラドライバーを、シズさんはアークルを装備する。

 仮面ライダーキマイラで様子見と行くか。

 そんな中、子供達は妖魔と応戦する。

 だが、妖魔に攻撃は効いておらず、ケンヤ、ゲイル、アリスが吹っ飛ばされ、気絶する。

 そして、クロエとリョウタ、ビーストノームも、倒されてしまった。

 

シズ「皆!」

レイト「しょうがない!介入するぞ!」

「「変身!」」

 

 俺たちは、変身しながら飛び出す。

 

スクランブル!

キングクラブ!クロコダイル!仮面ライダーキマイラ!キマイラ!

(アークル音)!

 

 俺は仮面ライダーキマイラに、シズさんは仮面ライダークウガ・マイティフォームに変身する。

 

シズ「ティス先生!大丈夫ですか!?」

ティス「えっ!?シズ先生……………!?」

レイト「お前、何者だ!」

妖魔「おや、まだ仲間が居たとは。それに、西方聖教会に目をつけられたくはないのですが。何せ、妖魔軍先見部隊は、まだ少数でしか活動出来ていないのです。」

 

 先見部隊?

 まるで、この世界を侵略するみたいな言い方だな。

 なら、とっとと倒す方がいいか。

 俺とシズさんは、駆け出そうとするが。

 

妖魔「おおっと!良いのですか?」

レイト「何がだ?」

妖魔「この子供達は、人質です。あなた達2人が来ようとしたら、即座に殺しますよ?」

シズ「なっ………………!?」

レイト「人質とか、卑怯な真似をしやがって…………………!」

 

 そう言われて、俺とシズさんは迂闊に動けなくなってしまう。

 

妖魔「そうだ、先生。1人、1人だけ選びなさい。」

ティス「えっ……………!?」

妖魔「そのままの意味です。ここに隷属の首輪があります。生きながらえる代わりに、我らに隷属する子供を1人、選ぶのです。」

レイト「こいつ………………!」

 

 こいつの狙いはすぐに分かった。

 ティス先生が、子供達を犠牲にして、自分は助かろうとさせようとしているのだ。

 それに、隷属した子供も殺すというのも。

 卑怯にも程があるだろ……………!

 こんな下劣な奴は、この世界で初めて見た。

 すると、ティス先生は呟く。

 

ティス「私は……………教師です!」

妖魔「あ?」

ティス「私が憧れた人は、全身全霊をかけて、子供達を守ろうとした。そんなあの人に…………私は、少しでも近づきたい!例え、1秒であったとしても、シズ先生がしたように、全力で、子供達を守る!」

シズ「ティス先生………………。」

レイト「守ろうぜ。俺たちにとって、大切な子供達を!」

 

 ティス先生は、ケンヤが使ってた剣を構え、俺とシズさんも構える。

 ティス先生の心の中は、後悔が多かった。

 シズさんが居なくなった後、ティス先生が、Sクラスの担任になった。

 だが、見捨ててしまった。

 そんなティス先生は、今度こそ、クロエ達を守るという決意に満ちていた。

 アンタは、立派な教師だよ。

 

妖魔「そうですか。ならば、その2人もまとめて、苦痛を味合わせて、楽しませて下さい。」

ティス「召喚!」

 

 妖魔はそう言って、俺たちに迫る中、ティス先生はそう叫ぶ。

 すると、とんでもない存在を感じた。

 

レイト(何だ……………この気配は!?)

科学者『告。凄まじい存在を認識。オーラから察するに、悪魔。それも、原初の黒(ノワール)と推測。』

レイト(原初の?)

科学者『是。原初の悪魔とは、光の大精霊が始原の七天使に分けられた反動で、闇の大精霊が7つの個体に分かれたのが、原初の七悪魔です。』

 

 まじか。

 すると、俺たちも妖魔の間に、魔法陣が生まれる。

 

妖魔「召喚だと!?バカめ!貴様如きが……………!」

悪魔「クフフフフフ………………!」

 

 妖魔が驚く中、悪魔が現れる。

 その悪魔は、黒い羽を生やした男性だった。

 やべえな。

 オーラが半端ない。

 

妖魔「悪魔族(デーモン)を召喚したのか!?この気配…………使役型ではなく、自立型か!」

悪魔「御名答。妖魔族(ファントム)にしては、少しは博識ですね。」

シズ「あの悪魔は……………!」

妖魔「舐めるな!その女が呼び出せる程度なら、この私が負けるはずもない!」

 

 妖魔はそう言って、オーラを放出する。

 だが、あっという間に背後を取られていた。

 

悪魔「ほう。その根拠が知りたくもありますが………………。」

妖魔「なっ………………!?」

悪魔「時間がありません。」

 

 悪魔は、妖魔の背中に腕を突っ込み、人を引っ張り出す。

 あれは、あの執事だ。

 取り込まれていたのか。

 

悪魔「簡単に背中が取れましたよ。お強い筈では?」

妖魔「ひ、ヒィィィィ!」

 

 悪魔はそう言って、妖魔の腕を切断する。

 それを見て、ティス先生は恐怖していた。

 まあ、無理もない。

 その妖魔は、あっさり倒された。

 それを見て、俺とシズさんは変身解除する。

 

レイト「マジか……………ていうか、シズさん、あの悪魔を知ってんのか?」

シズ「ええ。一度、会った事があるの。」

 

 マジかよ!?

 俺が驚く中、その悪魔は、ティス先生を見る。

 

悪魔「さて。」

ティス「っ!?」

悪魔「長々と話をする暇はありません。召喚主であるあなたに、負担をかけないよう、これでも気を遣っているのですよ。それよりも、報酬を頂きたいのですが。よろしいですか?」

ティス「…………………覚悟は、出来てるわ。」

 

 まさか、ティス先生の命を奪う気か!?

 そう思う中、悪魔は要求を告げる。

 

悪魔「それでは、要求を告げます。私の事は、一切秘密にする事。」

ティス「………………え?」

悪魔「この約定を違えた時、あなたの魂を頂くことになるので、ご注意を。」

レイト「それで、俺とシズさんの場合はどうするんだ?この場にいる以上、秘密にするのも無理だろ。」

悪魔「ふむ。まあ、あなた方は大丈夫です。それに、借りは返しましたよ。シズ。」

シズ「…………………久しぶりね。クロ。」

ティス「あ、ありがとう………………。でも、この状況は…………どう説明すれば…………。」

 

 まあ、そうだよな。

 誰が倒したかって事になるからな。

 

悪魔「下らない。そこの少年を守護する光の精霊と、シズとそこの男が倒した事にすればよろしいでしょう。」

ティス「え?」

 

 悪魔がそう言うと、ケンヤから光の精霊が現れる。

 

光の精霊「気づいてたのかよ。」

ティス「え!?あなたが、光の…………!?」

光の精霊「あ、どうも〜。」

 

 ティス先生と光の精霊が話す中、その悪魔は、隷属の首輪を拾う。

 

悪魔「それでは、私はこれで。それにしても、そこのあなた。」

レイト「うん?」

悪魔「あの3人が興味を示す者に会えたのも、悪くないでしょう。あなたの強さには、納得がいきますし。それでは。」

 

 悪魔は、そう言って、チラッとクロエを見た後、姿を消す。

 ティス先生と光の精霊が話す中、俺は考えていた。

 

レイト(妖魔族の侵略の可能性、原初の黒の存在、アイツが言う俺に興味を示す存在。分かんない事だらけだな。)

 

 それにしても、シズさんは、あの悪魔と出会っていたのか。

 その後、子供達を起こして、俺たちはグラトルの屋敷へと戻った。

 ちなみに、シズさんがここに居る事に関しては、休みを貰って、俺にグラトルの街を案内していたという事にした。

 翌日、リムル、ジェフという教師、グラトル伯爵を加えて、話をする事に。

 無論、あの悪魔の事は伏せて。

 

ジェフ「なんと!昨日はそんな事が!?」

ケンヤ「本当に大変だったんだぜ。」

リムル「うむ。妖魔族(ファントム)という魔族ね。そんな奴が、盗賊団に紛れていたとはな。」

ジェフ「聞いたことがないな。いや、西方聖教会ならば、何か知っているやもしれんが。」

 

 西方聖教会ね。

 俺の運命の人であるヒナタ・サカグチが所属している組織だったな。

 まあ、あんまり会いたいとは思わんが。

 そう考えている中、話はどんどんと進んでいき、クロエが俺とリムルに話しかける。

 

クロエ「ねえ、リムル先生、レイトさん。2人は、フル・ポーションを持ってないの?」

レイト「ん?持ってるが。」

リムル「俺も。」

 

 そう答えた時、ジェフ先生とグラトル伯爵が驚く。

 

グラトル「り、リムル殿!レイト殿!ほ、本当に、フル・ポーションをお持ちで!?」

ジェフ「い、今、ここにあるのか!?あの秘薬が!?」

レイト「あ、はい。ありますけど……………。」

リムル「秘薬って、フル・ポーションの事だったんですね。」

 

 念のために、フル・ポーションを携帯しているのが、幸いしたな。

 ジェフ先生曰く、失った手足を再生させるフル・ポーションなら、病気も治るそうだ。

 ただ、グラトル伯爵曰く、服用した後に死亡した事例もあるので、確実性は無いが、やる価値はあるそうだ。

 グラトル伯爵とジェフ先生が頭を下げるので、俺とリムルは、廊下に出て相談する。

 

リムル「なあ、お前のキメラ細胞を用いる事はできないのか?」

レイト「あんまりやると、面倒な事になりそうだし、やめておいた方がいい。でも、どうやって救うんだ?」

 

 そう思う。

 すると、科学者が答えてくれた。

 どうやら、死亡した事例というのが、細胞異常が促進された場合というらしい。

 そこで、悪性部位を切除して、フル・ポーションをかけるという手法を取ればいけるそうだ。

 俺とリムルは頷き合い、部屋に戻り、フル・ポーションを取り出す。

 

ジェフ「た、確かに、本物のようだ。それも、10本も。」

グラトル「リムル殿、レイト殿!ぜひ、譲っていただきたい!」

レイト「良いですよ。」

リムル「ですが、一つ、条件があります。」

グラトル「条件?金ならいくらでも払おう!」

ジェフ「あ、こ、今回の勝負は、リムル先生に勝ちを譲ろう!」

リムル「はい?譲ってもらえなくても、俺の勝ちでしょう!」

 

 リムルがそう言ったのを皮切りに、ジェフとリムルは、口喧嘩を始める。

 それを見ていた子供達は。

 

アリス「大人って、どんな手段を使っても、勝ちにこだわるんだから。」

クロエ「まだまだ認識が甘かったみたい。」

シズ「これは、悪い見本だからね。」

ティス「皆、真似しちゃだめよ。」

子供達「は〜い。」

 

 アリスとクロエがそう言って、シズさんとティス先生が、子供たちにそう言う。

 俺は、2人を仲裁する。

 

レイト「リムル、ジェフ先生!グラトル伯爵が困ってるだろ!そこら辺にしておけ!すいません、うちのリムルが。」

リムル「おい、レイト!」

グラトル「それで!条件は?」

リムル「ああ、そうでした。」

レイト「奥様の治療は、俺たちが行います。」

一同「ええっ!?」

リムル「それが条件です。」

 

 こうして、奥様がいる部屋へと向かい、俺たちは手術を開始した。

 ちなみに、リムルは大賢者、俺は科学者のオートモードを使用した。

 流石に、手術は素人だしね。

 その後、手術は無事に成功して、奥様は元気になった。

 奥様とグラトル伯爵が一緒に歩いているのを、俺、リムル、シズさん、ティス先生、ジェフ先生、執事が見ていた。

 

ティス「よかったです。」

シズ「ええ。元気になられて。」

執事「はい、本当に……………!」

 

 良かったよ。

 すると、科学者が話しかけてくる。

 

科学者『告。演算終了。』

レイト(どうした?)

科学者『アピトの蜂蜜についてです。』

レイト(アピトの蜂蜜?それがどうしたんだよ?)

 

 アピトとは、以前、森の中で助けた蜂のことだ。

 リムルがアピトと名付け、現在は、蜂蜜を定期的にテンペストに運んでいる。

 すると、科学者はとんでも無い事を言った。

 

科学者『アピトの蜂蜜の成分に、悪性の細胞を死滅させられる効果があると判明しました。』

レイト(え?じゃあ、アピトの蜂蜜を食べさせれば、それで良かったんじゃ無いか?)

科学者『……………………。』

 

 マジかよ。

 俺がそう言うと、科学者はダンマリを決め込んだ。

 まあ、結果論か。

 すると、ジェフ先生が話しかける。

 

ジェフ「リムル先生、レイト殿。」

リムル「ああ、はい。」

レイト「どうしました?」

ジェフ「その………………何だ………………本当に、ありがとうございました!この恩は、一生忘れません。」

 

 ジェフ先生はそう言って、頭を下げる。

 まあ、救えたのなら、本望だよ。

 こうして、自由学園の野外訓練は、終了したのだった。

 余談だが、グラトル伯爵は、後に、妻であるウラムスの治療方法を、学会へ報告した。

 この世界の医療が飛躍的に進歩する事になるのだが、それはまた、別の話。

 そして、俺は、この時には、気づいていなかった。

 テンペストに厄災が訪れ、この件で遭遇した悪魔と再会するというのを。




今回はここまでです。
今回は、番外編となります。
この話で、レイトはディアブロと遭遇した事になります。
この話って、地味に後に繋がる話があるんですよね。
紅蓮の絆編で、ラージャ小亜国の女王、トワに蜂蜜を食べさせたのは、この出来事で、アピトの蜂蜜の有用性が判明したからですし。
レイトに興味を示す3人組というのは、言うまでもなく、悪魔三人娘です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
次回、本編に戻ろうと思います。
色々と、転スラの小説を投稿し始めて、遅れてすいません。


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本編
第1話 ゴブリン達の出会い


今回は、ゴブリン達の守護者になる所までです。
リムルの前で、オリ主が、キマイラに変身します。


 こうして、俺とスライムは、暴風竜ヴェルドラの話を聞く事にした。

 見た目に反して、この竜、意外と話好きで親切だと分かった。

 

ヴェルドラ「なんと、お前ら、異世界からの転生者か。」

スライム「そうなんすよ!超大変だったんすよ!」

裕人「大変そうなのが、伝わってきます。」

 

 このスライム、前世では三上悟というらしく、ゼネコン勤務のサラリーマンらしい。

 俺は、前世では大学生だと伝えると。

 

スライム「お前、恋人とか居たのか?」

裕人「いや、彼女居ない歴=年齢ですよ。」

 

 そう伝えると、納得した様だ。

 すると、ヴェルドラが口を開く。

 

ヴェルドラ「物凄く稀な生まれ方をしたな。転生者は偶に生まれてくるし、異世界人も時たまやって来るが、異世界からの転生者は、我の知る限り、事例はない。」

裕人「そうなんですか。」

スライム「異世界人って、自分達以外にも居るんですね。」

ヴェルドラ「うむ。奴らは、こちらの世界に渡る時、望んだ能力を得られるらしいぞ。」

 

 なるほど。

 つまり、俺が仮面ライダーキマイラの能力を望んだから、手に入れたって事か。

 ただ、俺自身としては、キマイラに変身したいので、デモンズとベイルに関しては、どうしようかと考えている。

 

スライム「ちょっとその異世界人を探して、会ってみようかな。」

裕人「そうだな。」

ヴェルドラ「なんだ?もう行ってしまうのか?」

((露骨に寂しそうだな!))

 

 俺とスライムは、そう思う。

 ていうか、この竜、本当に人間臭いよな。

 まあ、俺、今、ギフテリアンみたいになってるんだけど。

 顔こそ、人間に近いが、体は完全にギフテリアンそのものだ。

 事故の影響で、ギフテリアンとキメラに関する記憶が混じったか?

 

スライム「え〜っと、もうちょっと此処に居ようかな?」

裕人「まあ、どうせ暇だし。」

ヴェルドラ「そうかそうか!ゆっくりしていくが良いぞ。」

 

 スライムは、気になる事があったのか、ヴェルドラに質問をする。

 

スライム「ええと………ヴェルドラさんは、ここから動けないんですか?」

ヴェルドラ「うむ。300年前に勇者に封印されて以来、このままよ。もーヒマでヒマで………。」

裕人「(勇者、居るんだ………。)どうして、封印されたんですか?」

ヴェルドラ「よくぞ聞いてくれた!300年前、ちょっとうっかり、街一つを灰にしちゃってな。」

裕人(ちょっとうっかりで済むレベルじゃねぇ。)

 

 それでうっかりとか、どうなってんだ。

 その間、ヴェルドラは語った。

 自分の目の前に勇者と名乗る人物が現れ、応戦した。

 だが、その勇者に負け、封印されたらしい。

 その勇者は強く、UQスキル・絶対切断で圧倒し、UQスキル・無限牢獄で封印したのだ。

 それ以来、300年の間ずっとこの洞窟の中で、一人でいたらしい。

 その際、一つ思った事がある。

 

裕人「もしかして、見惚れてて負けたんじゃないんですか?」

ヴェルドラ「ばっ………そんな訳なかろう!やや小柄でほっそりとしていて、白い肌に黒い髪を一つに纏めていて、深紅の小さな唇……。」

スライム(がっつり見てんじゃないすか。)

 

 分かった。

 こいつ、人間が好きなのだ。

 自分が負けた話であるのにも関わらず、楽しそうに語っている。

 それにしても、300年間一人で過ごすなんて、寂しいだろうな。

 すると、スライムが提案する。

 

スライム「…………よし。じゃあ、俺と………いや、俺達と友達にならないか?」

裕人「良いね。」

ヴェルドラ「何!?スライムとキメラの分際で、この暴風竜ヴェルドラと友達だと!?」

スライム「い、嫌なら良いんだけど………。」

ヴェルドラ「馬鹿者!誰も嫌だとは言っておらぬではないか!!」

裕人「じゃあ、どうすんの?」

ヴェルドラ「そうじゃなぁ………。どうしてもと言うのなら、考えてやっても………良いんだからね。」

((ツンデレか!!))

 

 おいおい、女の子ならまだしも、竜のツンデレなんて、今日日流行らないだろ。

 素直じゃないので、追い討ちをかける事に。

 

スライム「どうしても、だ!決定な!嫌なら絶交。二度と来ない。」

裕人「まあ、そういう事で。」

ヴェルドラ「ちょっ………!し、仕方ないであるな。友達になってやる。感謝せよ!」

スライム「素直じゃないなぁ。」

裕人「まあ、よろしくな。」

 

 そうして、ヴェルドラと友達になった。

 なったのは良いのだが、ヴェルドラの対処をどうするかだ。

 

スライム「………で、どうする?」

ヴェルドラ「ん?」

裕人「この封印だよ。………流石に、300年間一人で過ごすのは、可哀想だからな。」

ヴェルドラ「…………お前達!」

裕人(そんな、ウルウルした目で見つめないでくれ!怖い!)

 

 それはともかく、どうしたものか。

 一応、科学者に出来るかどうか、聞いてみるか。

 

裕人(科学者。無限牢獄を破る事は、出来ないか?)

科学者『解。このスキルでは、無限牢獄を破る事は叶いません。』

裕人(そっかぁ………。キマイラじゃ、無限牢獄を破る事なんて、不可能だろうしな。)

 

 ていうか、リバイス系列の仮面ライダーは、結界を破る力なんて、無いからな。

 これが、キメラドライバーで生み出された結界なら、俺が腰にキメラドライバーを装着して、破れるんだけど。

 すると、スライムが何かを思いついたのか、ヴェルドラに話しかける。

 

スライム「………俺の胃袋に入る気はないか?」

ヴェルドラ「…………。」

裕人「………すいません、説明下さい。」

スライム「おう。」

 

 スライム曰く、俺のUQスキル、科学者と似た様なスキル、『大賢者』というスキルがあるらしく、スライムが大賢者と捕食者というスキルで解析して、ヴェルドラも内側から破壊できないか確かめるらしい。

 スライムの胃袋の中は、隔絶された空間の為、魔力が漏れることは無いとの事。

 これなら、ヴェルドラの消滅を気にせずに、解析出来るな。

 すると、ヴェルドラは。

 

ヴェルドラ「………ククク………クハハハ………クハハハハハハハハハハ!!!」

裕人(おお、笑いの三段活用。)

ヴェルドラ「それは面白い!是非やってくれ!!お前に、我の全てを委ねる!」

 

 随分とあっさりだな。

 スライムは、戸惑った様で、ヴェルドラに尋ねる。

 

スライム「おいおい。そんなに簡単に信じて良いのか?」

ヴェルドラ「無論だ。ここでお前達の帰りを待つより、共に『無限牢獄』を破った方が面白そうだ!」

裕人「そっか………。」

 

 まあ、一人より皆の方が良いしね。

 それに、一々洞窟に戻るよりも、一緒に居た方が良いに決まってる。

 そうして、スライムはヴェルドラを捕食しようとするが、ヴェルドラが待ったをかけた。

 

ヴェルドラ「おっと、その前に。」

「「?」」

ヴェルドラ「お前達に名をやろう。そして、お前達も我らの共通の名を考えよ。」

裕人「どういう事?」

ヴェルドラ「同格である事を、魂に刻むのだ。」

 

 ヴェルドラ曰く、人間でのファミリーネームと同じで、ヴェルドラが俺たちに名前をつける事で、名持ちの魔物の仲間入りになる。

 そんなこんなで、俺とスライムは、考える。

 

裕人(暴風竜だから…………ストーム?サイクロン?ハリケーン?いや、しっくり来ないな。)

 

 俺、名付けとか苦手なんだよな。

 ゲームキャラに名前をつける場合は、大抵そのゲームキャラのデフォルトネームか、自分の名前だし。

 すると、一ついいのが思いついた。

 

裕人「(テンペスト………良いじゃん!)スライムさん、決まりました?」

スライム「ああ。」

裕人「じゃあ、同時に言いましょう。」

スライム「そうだな。」

「「テンペストはどうだ?」」

 

 どうやら、考えている事は同じみたいだな。

 すると、ヴェルドラが反応した。

 

ヴェルドラ「何いいいいい!!テンペストだとおおおおおおお!!!」

裕人「ダメでした………?」

ヴェルドラ「素晴らしい響きだあああああ!!今日から我は、ヴェルドラ=テンペストだああああああああ!!!」

スライム「気に入ったのかよ………。」

 

 一々大袈裟な竜だな。

 だけど、嫌いじゃ無い。

 すると、ヴェルドラが、まずはスライムの方に名前を付ける。

 

ヴェルドラ「そして、まずスライムのお前には、『リムル』の名を与えよう。今日から、リムル=テンペストを名乗るが良い。」

リムル「リムル………!」

ヴェルドラ「そして………確か………。」

裕人「あ、キメラです。」

ヴェルドラ「そうか。なら、キメラのお前には、『レイト』の名を与えよう。今日から、レイト=テンペストを名乗るが良い。」

レイト「ありがとうございます!」

 

 こうして、俺は裕人改め、レイトという名前を得た。

 魂に、レイト=テンペストという名前が刻まれたのだった。

 その後、リムルが『捕食者』を発動して、ヴェルドラが消えた。

 

リムル「さて、外に向かうか。」

レイト「そうだな。ヴェルドラの為にも。」

 

 俺たちは、外へと向かって歩き出す。

 ただ、暴風竜ヴェルドラの消滅は、周辺の国に大きな衝撃を与えた事を、今の俺たちは知らない。

 リムルと話している中、俺の仮面ライダーの力の話になった。

 

リムル「えっ!?レイトって、仮面ライダーになれるのか!?」

レイト「ああ。仮面ライダーキマイラにな。」

リムル「ちょっと、変身してくれよ。」

レイト「分かった。」

 

 リムルに頼まれ、俺は無限収納から、キメラドライバーとツインキメラバイスタンプを取り出す。

 キメラドライバーを装着し、ツインキメラバイスタンプを構える。

 何か、ギフテリアンの体で変身するのは、少し違和感があるな。

 

ツインキメラ!

 

 バイスタンプを起動して、キメラドライバーに装填する。

 すると、待機音が流れる。

 

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

 

 俺は、あの言葉を言う。

 

レイト「変身!」

 

 そう言って、バイスタンプを一回倒す。

 すると、蟹の鋏と鰐の顎が、同時に俺を閉めて、変身させる。

 

スクランブル!

キングクラブ!クロコダイル!仮面ライダーキマイラ!キマイラ!

 

 これが、仮面ライダーキマイラだ。

 すると、リムルは興奮する。

 

リムル「おおお!本当に仮面ライダーになった!」

レイト「だろ?」

 

 そう言って、俺は変身解除する。

 そうして、移動を再開する。

 ちなみに、気になって科学者に聞いてみた。

 

レイト(なあ、デモンズドライバーとか、ベイルドライバーを他者が使うには、どうしたら良いんだ?)

科学者『解。あなたの細胞を他者に埋め込めば、ギフの遺伝子と同等の効果を発揮し、変身が可能となります。』

レイト(なるほど………。)

 

 そこら辺は、俺が考えた事と同じか。

 まあ、あまり気乗りはしないんだがな。

 俺とリムルは、進んでいく。

 その際に、魔鉱石やヒポクテ草を回収したりした。

 何か、使えそうな気がしたからな。

 魔物と全く遭遇しなかったと言う訳でもなく、黒蛇(ブラック・サーペント)甲殻トカゲ(アーマーサウルス)、エビルムカデ、黒蜘蛛(ブラックスパイダー)巨大蝙蝠(ジャイアントバット)といった魔物と遭遇した。

 それらを倒して、リムルの捕食者と俺の吸収者で、それらを取り込み、スキルを手に入れた。

 その際、リムルに言われた事は。

 

リムル「お前、一々食わなくて良いんだもんな。羨ましいよ。」

レイト「そうか?」

 

 そう言われた。

 確かに、リムルの捕食者は、対象を食わないといけないが、俺の吸収者は、対象に手を当てるだけで、取り込む事が出来る。

 何せ、一部グロくなった状態で食わざるを得ないとなると、キツイだろうな。

 ちなみに、リムルは『超音波』というスキルを用いる事で、声を出せる様になった。

 ちなみに、リムルの方から、タメ口で良いと言われ、タメ口で接する事に。

 そんなこんなで先に進むと、巨大な扉が現れる。

 長い間放置されていたのか、全体的に錆び付いている。

 

リムル「ここが、出口か?」

レイト「多分な。」

 

 さて、どうしようかな。

 すると、扉が開いていく。

 しかも、人間の気配が三人する。

 俺とリムルは、即座に柱に隠れる。

 

盗賊「ふう、やっと開いたでやす。鍵穴も錆び付いていて、ボロボロでやすよ。」

剣士「仕方ねぇって、300年誰も入っていないんだろ?」

魔法使い「いきなり魔物に襲われたりしないですよね?………まぁ、いざという時は『強制離脱(エスケープ)』使いますけど。」

 

 そう話していた。

 話してみたいのは山々だが、今の俺の姿は、ギフテリアンだ。

 そんな状態で前に出たら、確実に襲われる。

 

盗賊「じゃあ、アッシの技術(アーツ)、『隠密』を発動しやすよ。」

レイト(隠密?)

 

 盗賊風の男がそう言って、両手の拳を合わせると、彼らの姿が見えなくなった。

 ただ、奥へ進んでいくのは分かった。

 何せ、足跡はそのまま残っているのだから。

 

レイト「へぇ。あんなのあるんだ。」

リムル「全く、けしからん奴だ!後で友達になる必要があるな。」

レイト「………お前、何する気だよ。」

 

 俺が呆れる中、あの三人は奥へと進んでいた為、その隙に外へと出る。

 若干、勘付かれた気がするが、気のせいだろう。

 それにしても、久しぶりの外は、気持ちいい物だ。

 俺たちは、周囲の散策を行う。

 その間に、リムルは発声練習をしていた。

 俺は、周辺に生えている果物とかを食べていた。

 外に出てからは、魔物に襲われていない。

 一回だけ、魔物が来た事があるのだが。

 

リムル「カキノキ、クリノキ、カキクケコ。」

レイト「美味いな。」

 

 すると、五体の狼の魔物が来たのだ。

 

狼「グルルル………。」

リムル「あ?」

レイト「何の用だ?」

 

 そう聞くと、狼達は一目散に逃げ出す。

 何だったんだろうか。

 そんな感じに、周囲を彷徨っていると、目の前にゴブリンの一団が現れる。

 どうやら、面白おかしいエピソードを早速用意出来そうだ。

 すると、リーダーのゴブリンが話しかける。

 

ゴブリン「グガ、つ………強き者達よ、この先に何かようですか?」

レイト「強き者達?」

リムル(それって、俺たちの事か?)

 

 俺とリムルが自分を指差すと、ゴブリンは頷く。

 すると、リムルが喋ろうとする。

 

リムル「えーっと、初めまして。」

レイト「!?」

ゴブリン「ヒイイイイイイィィィ!!!」

リムル「俺はスライムの、リムルと言う……。」

レイト「リムル、ストップ!」

 

 俺は、爆音を鳴らすリムルを止める。

 ゴブリン達は、すっかり萎縮してしまった。

 

ゴブリン「貴方様の力は十分理解しました!どうかお声を鎮めてください!」

リムル「あれ?思念が強すぎたか?」

レイト「アレは、ヴェルドラ並みだったぞ。」

 

 そうして、リムルは思念を抑えて、俺と共にゴブリン達の話を聞く事に。

 曰く、どうやら強力な魔物の気配が近づいてきたから、警戒に来たようだ。

 その強力な魔物というのが、俺たちの事だろう。

 

ゴブリン「強き者達よ、貴方達を見込んでお願いしたい事があります。」

「「お願い?」」

 

 俺たちは、ゴブリン達が住む村へと案内された。

 村、といっても、集落というのが近いが。

 ヴェルドラの鼻息だけで吹き飛びそうな気がする。

 俺たちは、村長から話を聞く事に。

 

村長「初めまして、私はこの村の村長をしています。」

レイト「初めまして。」

リムル「俺たちにお願いとは、何ですか?」

 

 リムルがそう聞くと、村長と先ほどのゴブリンが頷き合い、訳を話し始めた。

 

村長「実は最近魔物の動きが活発になっているのですが、ご存じでしょうか?」

レイト「………活発になってんのか?」

リムル「さあ………?」

村長「我らの神が、一月程前にお姿をお隠しになったのです。その為に近隣に住む他の魔物達が、この地にちょっかいを出すようになったのです。」

レイト(あれ?何か、嫌な予感がする。その神って………ヴェルドラだよな。)

 

 アイツ、魔物除けになってたのか。

 という事は、俺たちが元凶って事になるよな。

 悪い事をしたな。

 

村長「我々も応戦をしたのですが、戦力的に厳しく………。」

ゴブリン「それで、貴方達に!」

リムル「力を貸してほしいと………。でも俺スライムなんで、期待に添えるかどうか?」

レイト「俺も、生まれたばかりだから、あまり期待出来ないですよ。」

村長「ハハハ、ご謙遜を。」

ゴブリン「ご謙遜を。」

「「ん?」」

 

 どういう事?

 俺だって、生まれたばかりだぞ。

 まあ、見た目はギフテリアンだから、強そうだけれども。

 すると、村長とリーダーは理由を話す。

 

村長「ただのスライムにそれだけの『覇気』は出せませんよ。さぞかし名の知れた魔物だとお見受けします。」

ゴブリン「そちらの方も、それ相応の『覇気』を感じるので、相当なお力を持った魔物とお見受けします。」

レイト「え?」

 

 気になった俺は、科学者に頼む。

 

レイト(科学者。第三者視点に切り替え。)

科学者『了。』

 

 そう言って、第三者視点に切り替わると、俺とリムルから、膨大な魔素が漏れ出ている事が分かる。

 え。

 

レイト(これが原因か!通りで、洞窟を出てから、魔物に襲われないわけだ!!)

 

 これ、前世で言うところの、社会の窓を全開にして歩いている様な物だぞ!

 やっべぇ。

 すると、リムルが芝居がかった言葉を言う。

 

リムル「………フッ、さすが村長。わかるか?」

レイト「おい?」

 

 何とか、魔力を引っ込める事に成功した。

 ゴブリン達は、自分達を試していたと誤解している様だ。

 まあ、そっちの方が都合が良い。

 ていうか、あの三人は、よく俺たちに気付かなかったな。

 村長曰く、この地に牙狼族が襲ってきたのだ。

 本来、狼一匹につきゴブリンの戦士が十人がかりで相手をしても、勝てるかどうか分からない程の強さらしい。

 その戦いで多数のゴブリンの戦士が、討死した。

 この村には、名持ちの守護者のようなゴブリンがいたが、そのゴブリンも討死し村は危機に瀕している。

 

村長「牙狼族は全部で百匹程度です。」

リムル「………こっちの戦力は?」

村長「戦えるものは雌も含めて六十匹程です。」

 

 絶望的な戦力差だ。

 さて、どうしたものか。

 一つ、気になった事があるので、聞いてみる事に。

 

レイト「なあ。その名持ちのゴブリンは、勝てないと分かっていながら、戦ったのか?」

村長「いえ、牙狼族の情報は………その戦士が命懸けで知らせてくれた物なのです。その戦士は………私の息子で、これの兄でした。」

レイト「…………すまない。配慮が足りなかったな。」

 

 勝てないと分かっていても、仲間の為に情報を集めたのか。

 家族や仲間の為に。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「………村長、仮に俺達がお前達を助けるとして、見返りはなんだ?お前達は、俺達に何を差し出せる?」

「「……………。」」

レイト「リムル…………。」

 

 言いたい事は分かる。

 無償の助けは、後に俺達を苦しめてしまう事になる。

 だからこそ、体裁を整える必要があるのだ。

 すると、村長とリーダーは、口を開き、深く頭を下げる。

 

村長「…………我々の忠誠を捧げます!我らに守護をお与えください!さすれば我らは、お二人に忠誠を誓いましょう。」

ゴブリン「誓いましょう!」

レイト(…………なんだかんだ、俺はお人好しだな。)

 

 俺は、人から頼まれると、断りきれない性格だったのだ。

 それに、今の俺は、仮面ライダーキマイラでもあるんだ。

 放ってはおけない。

 すると、狼の遠吠えが聞こえてくる。

 恐らく、件の牙狼族だろう。

 村長とリーダーは、怯える仲間達を落ち着けようとする。

 俺は、リムルに話しかける。

 

レイト「どうする?リムル。」

リムル「そうだな。」

レイト「助けるぞ。」

リムル「ああ。」

 

 俺たちは、外へと出る。

 

リムル「怯える必要はない。」

レイト「そうだぜ。これから倒す相手だし。」

村長「では………!」

リムル「ああ。お前達のその願い、暴風竜ヴェルドラに代わり、このリムル=テンペストと。」

レイト「レイト=テンペストが聞き届けよう!」

 

 俺たちがそう言うと、感極まったのか、その場にいるすべてのゴブリンが、頭を深く下げる。

 

村長「我らに守護をお与え下さい!さすれば、今日より我らは、貴方様方の忠実な僕です!」

 

 そうして、俺とリムルは、ゴブリン達の守護者になる事に。




今回はここまでです。
本格的に、レイトがキマイラとして戦闘をするのは、イフリート戦からです。
アンケートを取っていますが、変身させないが多いですね。
レイトは、キマイラを中心に使うので、あまりデモンズやベイルに関しては、使わないと思います。
ただ、誰が変身させるべきかという案や意見がある場合は、メッセージか活動報告にお願いします。
後、もしかしたら、デモンズドライバーとベイルドライバーを受け取った事をなしにするかもしれません。
前回の話で修正しましたが、オリ主の見た目としては、人間の顔に近い顔のギフテリアンだと思って下さい。


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第2話 ゴブリン村での戦い

今回は、ドワルゴンに向けて出発するまでです。


 こうして、ゴブリン村の守護者となった俺たちは、牙狼族の襲撃に備える事に。

 まずは、広場にゴブリン達を集めた。

 こちら側の戦力を確かめていたのだ。

 

リムル(牙狼族との戦いには、あまり期待できそうにないな。)

レイト(これが、こちら側の戦力か………。貧弱そうだし、装備もボロボロだ。)

 

 俺がそう分析する中、リムルはゴブリン達を鼓舞していた。

 次は、負傷者の元へと案内させた。

 

村長「できる限りの手当てを施したのですが………。」

 

 村長がそう言う中、俺とリムルは、ゴブリン達の容態を見る。

 全員、まるで鋭い牙や爪で引き裂かれたような傷跡が、包帯の隙間から見える。

 なら、回復薬を使うべきだろう。

 

レイト「リムル。」

リムル「ん?」

レイト「俺が半分に回復薬を使うから、もう半分は頼むわ。」

リムル「おう。」

 

 まずは、回復薬の効能を確かめる為に、一人のゴブリンにかける事にする。

 だが、取り出したのは、極薄の膜で覆われたキラキラ輝く水で、どうやってかければいいのか分からないので、科学者に聞いてみる。

 

レイト(科学者。これ、どうやってかければ良いんだ?)

科学者『解。そのまま、膜が破れるまで押し続けて下さい。』

レイト(分かった。)

 

 言われた通りに、目の前で横になっているゴブリンに回復薬を押しつけてみる。

 すると、膜が破れ、中身の回復薬がゴブリンに浴びせられる。

 すると、重傷だった傷が、あっという間に治っていく。

 

ゴブリン「あ………あれ?」

村長「おおお!!傷が塞がっている!?」

リムル「おー!やってみるもんだな!」

レイト「ああ。他のゴブリン達も治そう。」

 

 俺とリムルは、半分に分かれて、ゴブリン達を治していく。

 ただ、リムルは一度ゴブリン達を捕食して、自分の体内で回復薬をぶっかけて、それが終わったら体内から吐き出していたのだが。

 しかも、その吐き出し方が雑で、ゴブリン達は顔から地面にキスをするハメになるのだった。

 

レイト「リムル。流石にもうちょい丁寧に出してやれよ。」

リムル「まあ、良いじゃん。治ったんだし。」

村長「さ、流石は、リムル様にレイト様……!ハハーッ!」

 

 そう言って、ゴブリン達は、頭を下げる。

 次は、村の防備だな。

 一応、村の周囲に、柵を建てさせた。

 とはいえ、元は丸太なので、強度に若干の不安があるが、時間が無いのだ。

 仕方ない。

 その代わりに、俺とリムルは、黒蜘蛛から手に入れたスキル『粘糸』を使い、補強する。

 こうして、夜になるまでに、出来る限りの事はした。

 俺とリムルは、ゴブリン達に作戦を伝えた。

 その夜、遂に牙狼族が現れた。

 見張りをしていた丸顔のゴブリンが叫ぶ。

 

ゴブリン「あ!き、来たっ!来たっすよ!牙狼族っす!!」

 

 その言葉に、ゴブリン達に緊張が走る。

 

レイト「さて。リムル、行けるか?」

リムル「誰に聞いてんだ。それに、そっちこそ、仮面ライダーで行くのか?」

レイト「いや。変身しないで行く。どうにかなるだろ。」

リムル「そうだな。」

 

 そんな風に話していると、牙狼族は、柵や俺たちに気付いたのか、足を止める。

 

牙狼長「ふん!あのような柵などを作って、何になる。」

息子「親父殿、あの者達です。」

牙狼長「お前の言っていた強大な覇気を放っていた魔物か?下らん。ただのスライムとよく分からん魔物ではないか。」

レイト「お前ら。一度しか言わないから、耳の穴をかっぽじって良ぉく聞け。」

リムル「………このまま引き返すなら何もしない。今直ぐここから去れ!」

 

 牙狼族に対して、俺とリムルはそう言う。

 だが、牙狼族の長は、怯まなかった。

 

牙狼長「フン!たかがスライムと謎の魔物の分際で偉そうに!あの柵を薙ぎ倒せ!ゴブリン達を血祭りに上げろ!」

 

 その声と雄叫びと共に、牙狼族が村に向かってくる。

 だが、村の入り口付近にまで辿り着くと、一匹、また一匹と見えない何かによって傷つけられていく。

 そして、ゴブリン達の矢によって、倒されていく。

 

牙狼長「何が起きている?………糸!?」

レイト「俺たちのスキル『鋼糸』だ。」

牙狼長「貴様らの仕業か………!」

リムル「そうだ!」

牙狼長「矮小なる魔物の分際で!捻り潰してくれる!」

息子「親父殿!」

 

 そう叫んで、牙狼族のリーダーが突っ込んできた。

 血がついたことで糸のトラップが露わになり、その鋭い牙で切り裂かれる。

 俺とリムルに襲ってくる。

 

村長「リムル様!レイト様!」

 

 村長がそう叫ぶが、こんな事は予想していた。

 あのトラップの欠点は、血が付くと糸の所在がバレてしまう事だ。

 だから、俺は左手を、黒蜘蛛の尻の部分に変化させて、粘糸を放つ。

 俺が糸を放とうとすると、どうしても手が黒蜘蛛の尻の部分に変化してしまう。

 まあ、キメラらしいといえば、そうなのだが。

 すると、牙狼族の長は、空中に静止する。

 

牙狼長「くっ………!?これは………!?」

レイト「スキル『粘糸』さ。リムル、後は頼むぜ。」

リムル「ああ。『水刃』!」

 

 リムルが牙狼族の長に近づき、水刃を発動して、牙狼族のリーダーの首を切り裂いた。

 遅れて、切り口から血飛沫が噴き出す。

 血飛沫が収まると、首が落ちる。

 糸の拘束を解くと、体がそのまま倒れる。

 それを見た牙狼族達は、動揺していた。

 リムルが、そんな牙狼族達に問いかける。

 

リムル「聞け!牙狼族達!お前達のボスは死んだ!選ばせてやる。服従か、死か!」

レイト「リムル、選択肢に逃走を入れないと、アイツらが逃げないぞ。」

リムル「あっ。」

 

 そう、服従か死だと、逃走する事が出来ない。

 『服従するくらいなら、死を選ぶ!』とか言って襲ってきそうだしな。

 

リムル「う〜ん………。あっ!捕食!」

 

 リムルは、死んだ牙狼族の長の死体を捕食する。

 そして、死んだ牙狼族の長に擬態する。

 

レイト(おお。何か、あっちの牙狼長よりも、迫力があるなぁ。)

リムル「ククク、仕方がないな。今回は見逃してやる。我に従えぬというのなら、この場から去る事を許そう!アオオオーン!!」

 

 そう言って、咆哮を出す。

 牙狼族とゴブリン達が怯える。

 これで、逃げてくれたらありがたいんだけどな。

 ちなみに、俺も牙狼族の死体の一匹を取り込み、超嗅覚、思念伝達、威圧のスキルを手に入れた。

 だが、予想とは裏腹に、牙狼族は少しずつ近づいていく。

 これは、俺も威圧のスキルを使うべきかと思案していると、牙狼族は、伏せの姿勢をとる。

 

牙狼族達「我ら一同、貴方方に従います!」

「「……………え?」」

リムル(………逃げてくれてよかったのに?)

レイト(こうなるとは………。)

 

 まさかの全面降伏。

 俺とリムルは、戸惑う。

 まあ、牙狼族のリーダーがやられた時点で、戦意が大分弱くなったからな。

 村長が、戸惑う様に俺たちに聞いてくる。

 

村長「か………勝ったのですか?」

リムル「………あ〜、そうだな。」

レイト「まあ、平和的に解決したのなら、それで良いんじゃ無い?」

リムル「そうだな。」

 

 それを聞いたゴブリン達は、歓喜の声を上げる。

 こうして、呆気なく戦闘が終結したのだった。

 翌日、広場にゴブリンと牙狼族を集める。

 俺とリムルは、思念伝達で、話し合っていた。

 

リムル(なあ、どうする?)

レイト(まあ、俺たちが面倒を見るしかないだろ。)

リムル(そうだよなぁ………。どっちも、同じくらいだな。)

 

 俺は、ゴブリンと牙狼族に声をかける。

 

レイト「は〜い、注目!」

 

 その言葉に、ゴブリンと牙狼族は俺たちに注目する。

 

リムル「え〜っと、これから皆んなにはペアを組んで、一緒に過ごしてもらう。」

ゴブリン達「ペ………?」

牙狼族「ア………?」

リムル「意味は分かるか?」

村長「リムル様、レイト様、ペ、アとは何でしょう?」

レイト「まあ、簡単に言えば、二人一組で組んでくれ。」

 

 俺がそう言うと、ゴブリン達と牙狼族は、それぞれペアを組む。

 しばらくすると、ペアを組み終えた様だ。

 

リムル「昨日の敵は今日の友!これからはお互いに協力し合い、共に生きてくれ。」

レイト「誰かが困っていたら、お互いに助け合ってやれ。」

『はい!』

 

 俺とリムルの言葉に、ゴブリン達と牙狼族は頷く。

 俺たちは、これからの方針を話していく。

 

レイト「まず、これから重要になるのは、衣食住だ。」

リムル「その三つは、欠かせないからな。それじゃあ………。なあ、お前達、名前は何だ?」

 

 リムルが、村長にそう聞く。

 村長は、リムルの質問に答える。

 

村長「普通魔物に名前はありません。名前が無くとも意思の疎通は出来ますからな。」

リムル「そうか………。」

 

 まあ、それもそうか。

 だが、俺とリムルは、元々人間だ。

 名前がないと、どうも落ち着かない。

 

リムル「よし!今からお前達に名前をつけよう。」

 

 リムルがそう言うと、この場にいるゴブリンと牙狼達が、信じられないと言う感じでリムルを見てきた。

 え、何か驚く事があったか?

 村長が、驚いた様に尋ねてくる。

 

村長「名前!?よろしいのですか?」

リムル「あ、ああ………。」

 

 リムルがそう答えると、今度は歓声が上がった。

 ゴブリンの村長なんか、御老体なのに喜びを体全体で表している。

 名前をつけるだけでだ。

 

リムル『なあ。何で、名前をつけるだけで、こんなに喜んでんだ?』

レイト『さあ…………?』

 

 そうして、リムルはゴブリン達に名付けをしていく。

 まずは、村長からだ。

 

リムル「そうだな………。村長には………そう言えば、息子はなんて名前だったんだ?」

村長「リグルです。」

リムル「リグルか………。よし、村長今日からお前はリグルドだ。」

 

 村長は、リグルドという名前になって、リグルドが光った。

 これは、ヴェルドラに名前をつけてもらった時にも見た光だ。

 村長改めリグルドは、感激のあまり泣いていた。

 

リグルド「あ!有難う御座います。リグルド、感激です!」

リムル「お、おう。それで、弟のお前は、兄の名を継いでリグルを名乗れ。」

リグル「はい!」

リグルド「息子にリグルの名を継がせていただき、感謝します!」

「「ハハー!!」」

 

 リグルドとリグルは、頭を下げる。

 名前をつけるだけで、こんなになるか?

 その後も、名付けは続いていく。

 

リムル「お前は………ゴブタ。」

ゴブタ「はい!有難う御座います!」

リムル「ゴブチ………ゴブツ………ゴブテ………お前はゴブゾウな。」

 

 おい、名付けが適当になってきていないか?

 まあ、こんなに居るから、適当になってもしょうがないだろうけど。

 途中、リグルドがリムルに質問をして、離れた。

 

リムル「お前は………ハルナ。」

ハルナ「はい!」

 

 そんなこんなで、リムルは、ゴブリンの名前を付け終えた。

 次は牙狼族だが、凄い尻尾を振っている。

 

レイト(あの様子を見る限り、牙狼族は、俺たちに恨みは抱いていないみたいだな。)

 

 リムルは、牙狼族の長の息子に、『嵐牙』という名前を付けると、異変が生じる。

 

リムル「ぐ!か………体が………うごか………なく………。」

嵐牙「リムル様!」

レイト「どうした!?」

 

 皆が駆け寄る中、リムルはただのスライムとなってしまった。

 どういう事だ!?

 すると、科学者が教えてくれた。

 

科学者『解。個体名、リムル=テンペストの魔素残量が一定値を下回った事で、低位活動状態(スリープモード)へ移行した模様。完全回復の予定時刻は、三日後となります。』

レイト(どういう事!?)

科学者『解。魔物の名付けには、それに見合う魔素を消費します。名付けは、熟考すればするほど、魔素の消費が多くなり、直感で名付けをすると、消費する魔素は最低限で済みます。』

レイト(つまり、リムルはゴブリン達に名付けをしまくった事で、動けなくなったって事か!?)

科学者『是。』

 

 なるほどな………。

 悪い事をしちまったな。

 次に名付けをする事になったら、俺も手伝うとしよう。

 そうして、俺は寝る事にした。

 翌日。

 

レイト「ふわぁぁ………。よく寝た………。」

???「おはようございます!レイト様!」

レイト「ああ、おはよう…………。」

 

 誰かに声をかけられて、俺が声のした方に向きながら声をかけようとすると………ムッキムキのマッチョメンが居た。

 一瞬、誰かと思ったが、昨日のリグルドの面影が見えたので、まさかと思い、声をかける。

 

レイト「もしかして………リグルド?」

リグルド「はい!」

レイト「一体、一晩の間に何があったんだ!?」

リグルド「名前をリムル様に付けて貰ったからです!」

レイト「それだけ!?」

リグルド「名持ちの魔物になる事!それは、魔物としての格を上げ、進化する事になるのです!」

レイト「なるほど………。」

 

 ああ、だから、昨日はあんなに喜んでたんだな。

 進化する事になるからな。

 確認した所、他のゴブリンも、雄のゴブリンは『ホブゴブリン』に、雌のゴブリンは『ゴブリナ』に進化していた。

 牙狼族の方も進化していた。

 だが、名前を付けたのは、嵐牙だけの筈。

 そう思い、当の嵐牙に聞いてみると。

 

嵐牙「我々牙狼族は、『全にして個』なのです。我が新たに一族の長となり、我と同胞達の繋がりは、より強固になりました。故に、我の名が種族名のなったのです。今の我々は、牙狼族ではありません。今の我々は『嵐牙狼族(テンペストウルフ)」なのです。」

 

 つまり、嵐牙がトップになった事で、他の牙狼族も進化したという事だ。

 嵐牙の変化は凄まじく、昨日は2m程だった大きさが、今は5mくらいの大きさになっている。

 あと、頭に一本の角が生えている。

 

レイト「………こりゃ、リムルが起きたら驚きそうだな。」

 

 俺は、そう呟く。

 二日後、リムルが復活した訳だが、進化した村の住人を見て、俺と同様に驚くのだった。

 その後、今後のルールについて話す事になった。

 だが…………。

 

レイト「リムル………その付け髭は何だ?」

リムル「フッ。分かるだろう?レイト君。」

 

 リムルは、そのネタをやったが、誰も分かってくれなかったので、すぐに付け髭を外した。

 改めて、話す事に。

 

リムル「知っての通り俺たちは大所帯になった。そこでレイトと話し合いで、なるべくトラブルを避けるためルールを決めた。」

『ルール?』

レイト「ああ。そのルールは3つ。一つ、人間を襲わない事。二つ、仲間内で争わない事。三つ、進化して強くなったからと言って他種族を見下さない事。これらを最低限守って欲しい。何か質問はあるか?」

 

 その言葉に、周囲はどよめき出す。

 まあ、それもそうか。

 すると、リグルが手を上げる。

 

リグル「はい。」

レイト「どうぞ、リグル。」

リグル「何故人間を襲ってはいけないのですか?」

リグルド「リムル様とレイト様が決めたことを!」

レイト「いや、今は質問を受け付けている。リグルの疑問も、尤もだ。」

 

 リグルの言葉に、リグルドが威圧をかけるが、すぐに俺が制する。

 リグルは、俺たちの話をよく聞いていたのだからこそ、この疑問が出たのだろう。

 

リムル「その質問の答えは、俺がやるよ。簡単な理由だ。俺達が人間を好きだからだ。以上!」

リグル「成る程!理解しました!」

 

 すぐに理解するな。

 まあ、そっちの方がありがたいけど。

 

リムル「えっと、もちろんそれだけが理由じゃない。人間は集団で生活をする、襲われたら彼らも抵抗する。数で押されたら敵わないだろ?」

レイト「だから、人間には、こちらからは手出し禁止。仲良くなる方が、何かと良いしな。」

 

 その言葉に、全員が頷く。

 次に、ゴブタが手を上げる。

 

ゴブタ「はい!」

リムル「はい、ゴブタ君!」

ゴブタ「他種族を見下さない………というのは?」

レイト「ああ。君達は進化して強くなった。だからって、他種族を見下してはいけない。もし、他種族が強くなったら、手痛いしっぺ返しを受けるからな。」

ゴブタ「分かりました!」

 

 ゴブタを最後に、質問をしようとする人は出なくなった。

 全員が納得してくれたみたいだな。

 

レイト「まあ、こんなとこだ。」

リムル「村長、リグルド。お前をゴブリン・ロードに任命する。村を上手く治めるように。」

 

 すると、リグルドは涙を流し始める。

 

リグルド「ははぁ!!身命を賭してその任を引き受けさせて頂きます!」

リムル「うむ、任せたぞ。」

 

 そうして、ゴブリン達と嵐牙狼族に、役割分担をする事にした。

 村の周囲を警戒する、警備班。

 食料調達をしてもらう、狩猟班。

 村の整備や拡張などをやってもらう、整備、開拓班。

 あと、それらを纏めて報告してもらう、調停役。

 その内、警備と狩猟に関しては、特に問題が無さそうだった。

 だが、目下の問題としては、衣食住の衣と住だ。

 ゴブリン達の技術では、とてもじゃないが、家とは呼べない。

 

リムル「家と呼ぶには程遠いな。」

リグルド「お恥ずかしい話です………。」

レイト「いや、リグルド達が悪い訳じゃないから。専門の知識が無いと、厳しい。」

 

 俺は、リグルドを励ます。

 思念伝達にて、リムルとどうするのかを話し合う。

 

レイト『リムル、どうする?』

リムル『俺、前世ではゼネコン勤務だったから良し悪しは分かるが、流石に指導出来る程の技術は持ってない。』

レイト『う〜ん………。あ、そうだ。』

 

 俺は、一つ気になった事があり、リグルドに聞いてみる事に。

 

レイト「なあ、リグルド。この手の専門家に、心当たりはないか?」

リグルド「そうですな………。これまで、何度か取引した事があり、住居の事だけでなく、衣服の事についても、知ってるやもしれません。」

レイト「その取引相手は?」

リグルド「ドワルゴンに住む、ドワーフ族です。」

リムル「ドワーフ!」

 

 その単語には、聞き覚えがある。

 ドワーフとは、建築が得意な種族だ。

 確かに、ドワーフなら適任かもな。

 という事で、俺とリムルは、ドワルゴンに行った事があるというゴブタと、リグルの他数名と嵐牙狼族を連れて、ドワルゴンに向かう事にした。

 ちなみに、俺も同行する理由としては、そこまで活躍していないからだ。

 名付けはリムルに任せてしまったので、少しは手伝いたいからだ。




今回はここまでです。
どんどんと、仲間が増えていくレイト達。
次は、武装国家ドワルゴンでの出来事です。
アンケートですが、リムルは変身しないが多いので、リムルは変身させない事にします。
その代わりに、原作キャラは変身させるべきかというアンケートを取りたいと思います。
一応、鬼人のオリキャラは出そうかなと考えています。
まあ、出さないかもしれませんが。
ちなみに、レイトは、取り込んだ魔物の能力を使う際には、体の一部が、その魔物に変化します。
簡単に言えば、ベイルがバイスタンプの能力を使った時みたいな感じです。
新たな仮面ライダー、ジュウガの存在が明らかになりましたが、ジュウガは出すかどうかは不明です。
リクエストがある場合は、1番最新の活動報告か、メッセージにて受け付けています。
よろしくお願いします。


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第3話 ドワーフの王国にて

今回は、打ち上げをするまでです。


 俺たちは、アメルド大河に沿って、ドワーフの王国へと向かう事になった。

 その際に、嵐牙狼族に乗り、ドワーフの王国を目指していた。

 嵐牙達のスピードは異常に速く俺はリムルと同様に『粘糸』を使って固定していた。

 そうしないと、振り落とされる恐れがあるからだ。

 一瞬ゴブタの方を見たら、顔がスゴいことになっていた。

 まあ、何とか耐えてくれ。

 ちなみに、リムルは俺の前に座っていた。

 嵐牙には、俺とリムルの二人を一緒に乗せて申し訳ないと謝った。

 嵐牙は。

 

嵐牙「いえ!お気になさらず!」

 

 そう言ってくれた。

 しばらく進んで、夕方になったので、一旦休憩する事に。

 その際、俺とリムルは気になる事があったので、リグルに質問をする。

 

リムル「なあリグル、君のお兄さんは誰に名前を貰ったんだ?」

リグル「はい!兄はゲルミュッドという魔人に名前をもらいました。」

レイト「ゲルミュッド?」

リグル「はい。魔王軍の幹部で、見どころがあるから、と。」

レイト「そのお兄さんは、進化してたのか?」

リグル「いえ、今の我々ほどの変化はありませんでした。」

 

 どうやら、名付けによって進化するのだが、それは、名付け親によっては、どの程度か変わってくるのだろう。

 それにしても、魔王軍か。

 

レイト(この世界にも存在するのか。俺たち、人間から敵視されないよな?)

 

 どっちにせよ、関わると面倒な事になりそうだな。

 極力、関わらない様にしないと。

 リムルは、嵐牙の方へと向かっていった。

 気になる事があるそうだ。

 その間、俺は考えていた。

 現状、変身出来るのは、キマイラ、デモンズ、ベイルの三人だ。

 やろうと思えば、リバイス、エビル、ライブ、ジャンヌ、アギレラの変身アイテムを作る事も出来る。

 

レイト(…………まあ、まずはリバイス関連のやつにしますか。科学者。)

科学者『はい。』

レイト(リバイス関連のアイテムの作成、出来るか?)

科学者『解。可能ですが、バリッドレックス、ボルケーノ、ローリング、サンダーゲイル、ギファードレックスに関しては、作成不能です。』

レイト(まだ、力が足りないからとか?)

科学者『是。』

レイト(なら、レックス、イーグル、メガロドン、マンモス、プテラ、ライオン、ジャッカル、カマキリ、ブラキオのバイスタンプの作成を頼む。)

科学者『了。』

 

 科学者曰く、俺の魔素の三分の一を使って、バイスタンプを作るらしい。

 まあ、三分の一くらいなら良いだろう。

 翌日、再び嵐牙達に乗って、先へと進んでいく。

 その夜、俺たちが肉を食べてる中、リムルはゴブタに質問をする。

 

リムル「そういえばゴブタ、ドワーフの王国ってどんなところだ?」

ゴブタ「ハッハイッス、正式には『武装国家ドワルゴン』と言うっす。天然の大洞窟を改造した美しい都っすよ。ドワーフだけでなく、エルフや人間も多いことで有名っす。」

リムル「エルフ!」

レイト「………エルフか………。」

 

 俺が突然エルフの名前を叫んだリムルと同じ事を考えていると、ゴブタは言葉を紡ぐ。

 

ゴブタ「ドワーフ王、ガゼル・ドワルゴは、英雄王と呼ばれる人物で、国民からも慕われてるんす。」

レイト「でも、ドワルゴンって、魔物の俺たちが入っても大丈夫なのか?」

リグル「その心配はいりません。ドワルゴンは中立の自由貿易都市。王国内の争いは、王の名に於いて禁止されております。」

レイト「へぇ…………。」

リグル「それを可能としているのは、武装国家ドワルゴンの強大な軍事力です。この千年、ドワーフ軍は、千年無敗なんです。」

レイト「千年………。」

 

 なるほど、その軍事力があるから、ドワーフ王の不興を買おうとするアホは少ないって事なのか。

 すると、妄想から復活したリムルが、口を開く。

 

リムル「じゃあ、自分からちょっかいを出さなければ、大丈夫かな。」

ゴブタ「自分が行った時は、門の前で絡まれたっすけど………。」

リグル「トラブルなんて、起こらないですよ。」

 

 おい、今、フラグが立ったぞ。

 ものすごく嫌な予感がするぞ。

 その後、科学者から、バイスタンプの作成が完了したと言われた。

 まあ、使うかどうかはよく分からないが、持ってても損はないだろう。

 翌日、俺たちは、武装国家ドワルゴンへと到着した。

 本来、徒歩だと2ヶ月はかかるのだが、嵐牙達のおかげで、3日で走破した。

 その後、ドワルゴンには、俺とリムルが、案内役としてゴブタを連れていくことを言った。

 

リグル「る、留守番………ですか?」

レイト「悪いな。流石に大勢で行っちゃうと、悪目立ちするからな。」

リムル「ここから先へは、俺とレイトと案内役としてゴブタを連れて行く。」

リグル「しかし………。」

ゴブタ「大丈夫っすよ!」

嵐牙「我が主人達………。」

レイト「心配すんな。」

 

 そうして、リグル達は、俺たちを見送ってくれた。

 俺たちは、ドワルゴンに入る為の列に並ぶ。

 

リムル「ずいぶん厳しいチェックだな?」

ゴブタ「ハイっす、でも中に入った後は自由に動けますけどね。」

レイト「そうか。」

 

 すると、背後から声が聞こえてくる。

 

冒険者「おいおい!」

「「「ん?」」」

冒険者「魔物がこんな所に居るぜ。」

冒険者「まだ中じゃねぇし、殺しても良いんじゃねぇの?」

 

 うわぁ、フラグ回収しちゃったよ。

 ていうか、今の俺、見た目がギフテリアンだぞ。

 まあ、冒険者は、俺に視線を向けると、若干怯えた表情になり、リムルとゴブタを見る。

 さて、俺が対処しますか。

 

レイト「ゴブタ。」

ゴブタ「はっ、はいっす!」

レイト「俺とリムルがどうにかするから、ゴブタは後ろを向いててくれ。」

ゴブタ「はいっす!」

レイト「リムル、前に出るぞ。」

リムル「ああ。」

 

 俺とリムルは、前に出る。

 少し、挑発するとするか。

 

レイト「おい、そこの三下冒険者ども。」

冒険者「さ、三下!?」

レイト「俺たちを甘く見ない方が良いぞ。」

冒険者「いや、片方スライムだろうが!」

リムル「ククク………。いつから俺がスライムだと勘違いしていた?」

冒険者「違うってんなら、さっさと正体を見せな!」

リムル「見せてやろう!この俺の真の姿(嘘)を!」

 

 すると、リムルが黒煙に包まれ、巨大な嵐牙に似た嵐牙狼族になる。

 

レイト(アレって、嵐牙狼族(テンペストウルフ)か?)

科学者『否。アレは、黒嵐星狼(テンペストスターウルフ)です。』

レイト(え?何か進化してるし。)

 

 冒険者は、逃げるかと思ったが、逃げなかった。

 

冒険者「どうせ、大した事ないだろ。」

冒険者「おい!お前らも来い!五人でやっちまうぞ!」

レイト(仲間増えた!)

 

 そして、その五人が、俺たちに攻撃を仕掛けてくるのだが、ダメージは無いが、ウザい。

 少しキレた俺たちは。

 

「「お前ら、良い加減にしろ!!」」

 

 スキル、威圧を発動して、冒険者をビビらせて逃そうとしたが、冒険者は気絶して、後ろの方を見ると、関係ない人たちも巻き込まれていた。

 ちなみに、俺が威圧を発動させると、右腕か左腕のどちらかが狼の顔になって、そこから咆哮を出す。

 俺とリムルは、事の重大性に気付き、思念伝達で話し合う。

 

レイト『なあ、リムル。これ、やらかしちゃったかな………。』

リムル『絶対、やらかしただろ………。』

科学者『威圧の効果を報告します。逃走20名、錯乱74名、失神98名、失禁38名。』

レイト(いや、今は報告してる場合じゃないから………。)

兵士「こらー!そこのお前らー!!」

レイト(ゲッ………。)

 

 すると、ドワーフの兵士が、俺たちの元にやって来る。

 すぐにリムルは擬態を、俺はスキルを解除する。

 

兵士「………スライムに、見た事のない魔物?」

「「…………テヘペロ!」」

 

 俺たちはそんな対応をするが、投獄されてしまった。

 リムルは、スライムという理由で、樽にぶち込まれた。

 俺とリムルは、カイドウというドワーフに事情を説明する。

 

レイト「…………という訳で、俺たちは喧嘩を売ってきた奴に、その喧嘩を買っただけです。」

リムル「うるさくして、すんませんした!」

カイドウ「うん、まあ目撃者の証言と完全に一致するな。」

 

 どうやら、理解してくれた様だ。

 すると、カイドウの部下が入って来る。

 

部下「隊長、大変だ!鉱山でアーマーザウルスが出て、鉱山夫が何人も怪我を負ったそうだ!」

カイドウ「何だと!で、アーマーザウルスは?」

部下「そっちは討伐隊が向かったから大丈夫!けど怪我が酷い上に、回復薬も戦争の準備の為とかで殆ど備蓄がない!」

カイドウ「回復術師は?」

部下「それが討伐隊と一緒に行って見習いしか…………。」

カイドウ「くそ!」

 

 どうやら、大変な事になったらしいな。

 俺とリムルは、話し合う事にした。

 

レイト『なあ、どうする?』

リムル『俺たちの回復薬を提供するか。』

レイト『だな。』

 

 リムルは、牢屋から出て、カイドウに話しかける。

 ちなみに、俺はリムルが入っていた樽に、リムルから預かったのと俺が作った回復薬を入れていた。

 

リムル「旦那、旦那。」

カイドウ「あっ!おい!何勝手に出てんだお前!」

リムル「まあ、まあ、それどころじゃないんでしょ?これ、必要じゃないですかね。」

 

 リムルが、俺が入れた回復薬が入ってる樽を指差す。

 

カイドウ「それは?」

リムル「俺たちが作った回復薬だ。」

レイト「飲んで良し、かけて良しの優れものだ。」

 

 俺たちは、そう言う。

 まあ、ヒポクテ草から抽出された100%のポーションだ。

 効果はあるだろう。

 カイドウは魔物からの提供物を信じて良いのか、悩みながらみていた。

 だが、すぐに牢の中に入り、樽の蓋を勢いよく叩き閉め担いだ。

 

部下「隊長マジですか?そいつら魔物ですよ!?」

カイドウ「うるせぇ!さっさと案内しろ!お前、牢の中で大人しくしてろよ。」

リムル「ああ。」

 

 そうして、カイドウは出て行った。

 俺たちは、暇潰しをしていた。

 といっても、粘糸であやとりをしたり、いつまでも寝ているゴブタを宙吊りにしたりしただけだが。

 ていうか、ゴブタの奴、随分と図太いな。

 しばらくすると、カイドウが、三人のドワーフを連れて戻ってきた。

 

カイドウ「助かった!ありがとう!!」

レイト「いえ、当然の事をしただけです。」

ドワーフ「イヤ!あんたらがいなかったら死んでた!ありがとう!」

リムル「いえいえ!」

ドワーフ「今でも信じられんが千切れかけてた腕が治ったよ!」

レイト「良かったですね。」

ドワーフ「………ウン………ウン……ウンウン。」

((何か言えよ!))

 

 その後、俺たちは釈放され、カイドウがとある家に案内した。

 その際に、シチューとパンをご馳走になった。

 

カイドウ「それにしても、あんなすげぇ薬は初めて見たぜ。礼と言っちゃあ、何だが、俺に出来る事なら、何でも言ってくれ。」

レイト「リムル。」

リムル「ああ。それなら………。」

 

 俺たちは、食事を食べながら答える。

 それは、俺たちの村に来てくれる技術者が欲しいという事だ。

 ちなみに、その際に俺の種族がキメラだという事を話した。

 それを聞いたカイドウは。

 

カイドウ「なるほど………。そういう事なら、腕の良い鍛治師を紹介しよう!」

リムル「それは助かります!」

レイト「ありがとうございます。」

カイドウ「礼なぞ不要だ!任せとけ!」

 

 そうして、俺たちは1日泊まり、翌日、カイドウの案内の元、その鍛治師の元に。

 カイドウに案内される中、俺たちはドワルゴンの風景を見ていた。

 やはり、ゴブリン村と比べても、随分と文明的だな。

 リムルは、所々に置いてある薄らと光ってる剣を指差す。

 

リムル「おいレイト。この剣光ってるぞ。」

レイト「本当だ。綺麗だな。」

カイドウ「あ、それそれ。今から会う鍛冶師がそれを打ったヤツだよ。」

 

 カイドウのから製作者を聞き、やがて紹介してくれる鍛冶師の店に着いた。

 

カイドウ「ここだよ。腕は保証するぜ。兄貴、いるか?」

「「兄貴?」」

 

 俺たちが首を傾げながら入ると、剣を打っているドワーフが居た。

 

???「カイドウか?少し待ってくれ。」

カイドウ「ああ。」

「「お邪魔しまーす。」」

カイドウ「カイジンだ。俺の兄貴だ。」

 

 おお、いかにも頑固一徹みたいな人だ。

 すると、奥から昨日助けた三兄弟が出てきた。

 ちなみに、カイドウさんが教えてくれて、長男のガルム、次男のドルド、三男のミルドだそうだ。

 

「「「あっ!」」」

「「あっ。」」

 

 その声に、カイジンも俺たちに気付いたのか、視線を向けてくる。

 

カイジン「………スライムに、見た事のない魔物?お前ら、知り合いか?」

ガルム「カイジンさん、このスライムと魔物ですよ!」

ドルド「昨日、大怪我をした俺たちを助けてくれたのは!」

ミルド「ウンウン!」

カイジン「おお、そうだったのか!」

 

 カイジンはそう言うと、作業を止めて、俺たちの前に座って、頭を下げる。

 

カイジン「ありがとう。感謝する。」

レイト「いえ、当然の事をしたまでですよ。」

リムル「いやいやそれほどでもないよなーあるよなー………。ハッハッハッハッハ!」

カイジン「そこの魔物の兄ちゃんは、見た事がないが?」

レイト「ああ、キメラっていう、ジュラの大森林で生まれた新しい種族です。」

カイジン「なるほどな………。それで、何の用で?」

 

 俺たちは、事情を話した。

 それを聞いたカイジンは、難しい顔をする。

 

カイジン「話は分かった。だが、すまん。今、ちょっと立て込んでてなぁ………。どこぞのバカ大臣が無茶な注文をしてきてなぁ………。」

レイト「無茶な注文?」

カイジン「………戦争があるかもしれないって、ロングソードを20本。それを今週中に作れってなぁ………。まだ一本しか出来てないんだよ、材料が無くて。」

カイドウ「だったら、無理だって言って断ればよかったじゃねぇか。」

リムル「ご尤も。」

 

 カイドウの言葉にリムルが頷いていると、カイジンが少し口を荒げる。

 

カイジン「馬鹿野郎!俺だって言ったよ、無理だって!そしたら、クソ大臣のベスターが………!『おやおや、王国でも名高いカイジン様ともあろうお方が、この程度の仕事も出来ないのですか?』………なんてほざきやがるんだ!許せるか?」

 

 確かに、典型的な嫌な上司って感じだな。

 どこの世界も、人間関係ってのは、大変なんだな。

 

レイト「材料が無いって?」

カイジン「ああ。魔鉱石っつう、特殊な材料が必要なんだが………。」

ガルム「昨日、俺たちが掘りに行ったんだが………。」

ドルド「甲殻トカゲ(アーマーサウルス)が出てなぁ………。」

ミルド「ウンウン。」

リムル「なるほど………。」

 

 ていうか、ミルドの奴、本当に喋らないんだな。

 俺がそう思ってる中、ドワーフ三兄弟は、事情を説明する。

 

ガルム「どちらにせよ、あの鉱山は殆ど掘り尽くしてて………。」

ドルド「もう、残ってない様だ。」

ミルド「ウンウン。」

カイジン「しかもなぁ………例え材料があっても、20本打つのに、2週間はかかるんだよ!………なのに、あと五日で王に届けなければならない。国で請け負い、各職人に割り当てられた仕事だ。出来なければ、職人としての資格の剥奪もあり得る。」

カイドウ「兄貴………。」

 

 カイジンの言葉に、カイドウは呆然とする中、俺は、とある言葉が引っかかっていた。

 

レイト(あれ?魔鉱石って………。)

科学者『解。個体名レイト=テンペストと個体名リムル=テンペストが、洞窟にて集めていた鉱石です。』

レイト(ああ!あれか!)

 

 思いついた俺は、リムルと思念伝達で話し合う。

 

レイト『リムル!魔鉱石をカイジン達に渡すぞ!』

リムル『そっか!俺たち、集めてたもんな!』

 

 すると、リムルが笑い声を上げる。

 

リムル「ふっふっふっ………はーはっはっはっはっ!!」

カイジン「………?」

 

 カイジンが訝しげな表情を浮かべる中、俺とリムルは、魔鉱石もとい、魔鉱塊を取り出す。

 

レイト「親父さん、これら、使えます?」

 

 俺がそう言うと、カイジンは魔鉱塊を見つめる。

 すると、大声を上げる。

 

カイジン「………おいおい!おいおいおいおいおい!!こ、これ、魔鉱石じゃねぇか!しかも、純度が有り得んほど高いぞ!!」

 

 あまりにも珍しいのか、後ろのカイドウ、ドワーフ三兄弟も驚いていた。

 だが、更に驚く事になるだろうな。

 

リムル「おいおい、親父。アンタの目は、節穴かい?」

カイジン「ええっ?」

 

 カイジンは、目につけていたゴーグルを取り外す。

 すると、更に大きな声を出す。

 

カイジン「どわぁぁ!魔鉱石じゃない!既に加工された、魔鉱塊じゃねぇか!!」

レイト「正解。」

カイジン「更に強力な剣を作れるぞ!そんな………この塊全部が………!?こ、これを譲ってくれるのか?勿論、金は言い値で払うぞ!」

リムル「さて、どうしようかな。」

 

 そう言って、リムルは口笛を吹く。

 これも、駆け引きなのだ。

 

カイジン「く!何が望みだ?できることならなんでもするぞ?」

リムル「その言葉を、聞きたかった………。」

 

 リムルは、魔鉱塊の上に乗っかる。

 カイジンは、ジッとリムルを見つめる。

 

リムル「………誰か、親父さんの知り合いで、誰か、村まで来て、技術指導をしてくれる人を探して欲しい。」

カイジン「…………そんなことでいいのか?」

レイト「ああ。今の俺たちにとって、衣食住のうち、衣と住が必要不可欠だ。あと、衣類や武具の調達もお願いしたい。」

カイジン「…………お安い御用さ!」

 

 カイジンは、頼もしく胸板を叩く。

 だが、ガルム達が不安げな声を出す。

 

ガルム「だけど………。」

ドルド「今から剣を揃えようとなると……。」

ミルド「ウー………。」

リムル「間に合うのか?」

カイジン「…………まあ、出来るだけやってみるさ。さぁ!すぐ始めるぞ!」

「「おう!」」

ミルド「ウー!」

 

 確かに、材料はあるが、時間がない。

 どうしたもんか…………。

 すると、リムルが動いた。

 

リムル「なあ、さっき、一本だけ作ったとか言ってたけど、それを、見せてくれないか?」

カイジン「ああ。おい!」

 

 すると、ガルムがその剣を見せてくれた。

 店に飾ってあった剣と同様に、光って見える。

 

レイト「なんか、光ってるな!」

カイジン「ああ、魔鋼を芯に使ってるからな。」

リムル「ん?」

カイジン「簡単に言うと、使用者のイメージに添って成長する剣なのさ。」

 

 え、すげぇ!

 つまり、日本刀をイメージすれば、日本刀みたいになるって事か!

 だけど、リムルの奴、どうするつもりだ?

 すると、科学者が答えてくれた。

 

科学者『解。恐らく、個体名リムル=テンペストは、UQスキル、大賢者の力を使って、たくさん作ろうとしてるのかと。』

レイト『そういえば、そんなスキルがあるって、言ってたな。科学者さんは、出来るのか?』

科学者『解。余裕です。』

レイト『マジか………。』

 

 そんな風に科学者と話していると、リムルはその剣を取り込んで、あっという間に量産してみせた。

 

リムル「魔鉱塊のロングソード、20本完成だ!」

「「「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」」」

 

 その工房に、四人の職人と一人の兵士の叫び声がこだました。

 その後、鞘をすぐに作って、カイジンはその20本を納めてきた。

 すると、カイジン達に飲みに誘われた。

 

「「打ち上げ?」」

カイジン「ああ!おかげさまで無事に納品できたんだからな!」

リムル「別に良いって………。」

レイト「困っている人が居たから、助けただけだよ。」

 

 俺とリムルが、やんわりと断ろうとすると。

 

ガルム「まあまあ!エルフの可愛い姉ちゃんが沢山いるから!」

リムル「エルフ!」

ドルド「そうそう!夜の蝶って言ってね!若い子から熟女まで!紳士御用達の店さ!」

リムル「蝶………。」

ミルド「ウンウン。」

「「喋れよ!」」

 

 そういうのって、前世で行った事がないんだけど………。

 何せ、そんなとこに行く余裕なんて無かったし。

 

カイジン「おいおい、旦那達が来ないと、始まらないぜ………。」

リムル「ま、まあ、そこまで言うなら………。」

レイト「まあ、お言葉に甘えて。」

 

 まあ、リムルは、エルフに釣られたんだろうけど、俺は、是非と言われたので、乗っただけだ。

 ただ、覚悟を決めないとな………。

 

エルフ「あら!カイジンさん、いらっしゃい!」

エルフ達「いらっしゃ〜い!」

レイト(やっぱりかぁ………。)

 

 やばい、彼女居ない歴=年齢の俺には、刺激が強すぎる!

 でも、まあ、前世で体験出来なかったし、これはこれで良いか。

 そんな感じになっていた。

 ただ、俺、今、見た目がギフテリアンなんだよなぁ………。

 そんなのが居て、怖がらないのか気にしていたが。

 

エルフ「お兄さん、がっしりしてて強そ〜う!」

エルフ「カッコいい〜!」

 

 そんな風に、近寄ってくるのだが、胸が腕に当たってる………!

 これはこれで、悪くないかもな…………。

 ちなみに、リムルはエルフ達の胸に挟まれてご満悦だった。

 

カイジン「え〜と………。旦那方、楽しんでくれてるみたいで、何よりだ。」

リムル「………そ、そうか?」

レイト「あ、はい。」

 

 カイジンがそう声をかけるが、ドワーフ三兄弟も含めて、ニヤリと笑う。

 俺は、前世では全く縁の無かったこの店を楽しむ事にした。




今回はここまでです。
次回、レイトの運命の人も分かります。
ちなみに、レイトは、人並みに性欲はあります。
アンケートは、しばらく続けます。
原作キャラを変身させると変身させないが並んでいますね。
誰が何に変身させるかは、まだ未定です。
と言っても、デモンズかベイルのどちらかですが。
現状、リバイスドライバー、ツーサイドライバー、リベラドライバー、ウィークエンドライバーは持ってないので。
あと、来週のリバイスで登場する仮面ライダージュウガは、登場させます。
それにしても、来週でキメラドライバーが受注されそうですね。


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第4話 英雄王ガゼル・ドワルゴ

今回は裁判の話です。
そして、レイトの運命の人が分かります。


 俺たちは、打ち上げをしていた。

 その店に、カイジンの笑い声が響く。

 

カイジン「ナッハッハッハッ!しっかし、恐れ入ったよ。俺の渾身の一振りが、あっという間に量産されるとはね!」

リムル「カイジンのオリジナルが素晴らしかったからなぁ。俺はそれを解析して、魔鉱塊を使ってコピーしただけだ。」

レイト「………もしかして、余計なお世話でした………?」

 

 俺がそう言うと、カイジンは複雑そうな表情を浮かべる。

 そりゃあ、自分が苦労して作った物を、あっさりと量産されたら、嫌な気持ちになるだろ。

 

カイジン「………正直、思う所はあるが、今度は、旦那が真似出来ない様な物を作るってもんだ!腕が鳴るぜ!」

レイト「そうか。」

リムル「そうこなくっちゃ!ママさん、おかわり!」

レイト「俺も、お願いします。」

 

 俺とリムルは、カイジンの一言を聞いて、安心して、お酒のおかわりを頼む。

 ちなみに、果実酒の類の様で、結構美味しい。

 すると、リムルの向かい側に座っているエルフが話しかける。

 

エルフ「ねえねえ、スライムさんにキメラのお兄さん、これやってみない?」

「「ん?」」

 

 そう言って、手を動かす。

 あの手の動きと、足元に置かれている硝子玉から察するに………。

 

エルフ「私これ得意なんだよ?結構すごいって評判なんだから。」

リムル「へ、へぇ………。」

レイト「もしかして、占いですか?」

エルフ「正解!」

 

 リムルの奴、何を考えていたんだ?

 それにしても、占いか。

 

エルフ「何を占う?」

レイト「そうだな………。」

エルフ「ねえねえ、折角だから、スライムさん達の『運命の人』を占ってみない?」

「「運命の人?」」

 

 運命の人ねぇ………。

 こんな見た目の俺に、嫁なんて出来るとは思えないけどな………。

 まあ、聞くだけ聞いてみるか。

 すると、エルフが手を動かすと、硝子玉に何かが映し出される。

 それは、白い服を着たマントを羽織っており、子供達に囲まれた黒髪の女性が映っていた。

 見た目は、完全に日本人だ。

 

レイト『なあ、アレって、日本人だよな。』

リムル『だろうな………。』

 

 すると、カイジンが声を上げる。

 

カイジン「おい、その人もしかして………爆炎の支配者、シズエ・イザワじゃねえか?」

リムル「有名なのか?」

カイジン「自由組合(ギルド)の英雄で見た目は若い人間さん娘だが、何十年も活躍してたんだ。今は引退して、どっかの国の若手を育てるって聞いたなあ。」

 

 シズエ・イザワ………。

 完全に日本人だな。

 漢字にすると、井沢静江か?

 恐らく、昭和の頃の日本人かもしれない。

 次に、俺の番になった。

 硝子玉に映ったのは、これまた黒眼、黒髪の麗人だった。

 多分、この人も日本人だ。

 

カイジン「おいおい、西方聖教会のヒナタ・サカグチじゃねぇか?」

レイト「有名なんですか?」

カイジン「ああ。魔物に対して容赦ないらしいが……旦那。とんでもない人物が運命の相手だな。……殺されるなよ。」

レイト「そんな、不吉な事を言わないで下さいよ!」

 

 なんたって、そんな俺とは相性が悪い人が運命の人なんだ!

 まあ、運命のライバルってんなら、まだ納得はいくが。

 すると、とある人物の声が聞こえてくる。

 

???「良いんですか?こんな所でのんびりとしてて。………カイジン殿?」

 

 すると、一人の男性がこちらを向いている。

 カイジンは、苦々しく口を開く。

 

カイジン「………大臣のベスターだ。」

リムル「アレが噂の………。」

レイト「いかにも、嫌な奴って感じだな。」

 

 確かに、アレは………嫌な奴だ。

 ベスターは、こちらに近寄ってくる。

 

ベスター「遊んでいる場合なのですかな?確か、ロングソードの納品の期限は………。」

カイジン「さっき、納めてきた。」

ベスター「期限に間に合わなければ………えっ?納めてきた?」

カイジン「ああ。きっちり、20本。」

ベスター「そ、そんな………。」

カイジン「納品書を確認するか?」

ベスター「うぅん!そうですか………。受けた仕事を期日内にやるのは、当たり前の事です。」

 

 やっぱり、無理だって分かって言ってきたのか。

 かなり動揺している。

 カイジンとベスターは、かなり仲が悪そうだよな。

 すると、今度は俺とリムルの方を見てくる。

 

ベスター「それよりも………それらですよ、それら。」

リムル「えっ………?」

レイト「俺ら?」

ベスター「いけませんなぁ………。こんな上品な店に、下等な魔物を連れ込むなんて………。気分が悪くなる。」

 

 だったら、そっちが出ていけば良いだろ。

 そう思ったが、相手は大臣だ。

 堪えろ………。

 ベスターは、店主に話しかける。

 

ベスター「おい、この店は、魔物の連れ込みを許すのか?」

店主「魔物といっても、無害そうですし………。」

ベスター「はぁ?魔物だろうが、違うのか?スライムは魔物と違うとぬかすのか?」

店主「い、いえ………そういう訳では………。まあまあ、大臣さん。一杯、いかがですか?」

 

 店主さんはそう言って、お酒を渡す。

 ベスターは、その酒を飲んだ………わけではなく。

 

ベスター「………フン。魔物には、これがお似合いよ。」

 

 そう言って、俺とリムルにかけてきた。

 俺は、吸収者を発動して、エルフのお姉さん達に酒がかからない様にする。

 

エルフ「スライムさん!キメラさん!大丈夫?」

リムル「あぁ、大丈夫だよ。」

レイト「お姉さん達が濡れなくて良かったです。」

 

 正直、かなりイラついている。

 だが、相手はクソであっても、この国の大臣なのだ。

 下手に喧嘩を売って、カイジン達やこの店のエルフ達に迷惑をかける訳にはいかない。

 

科学者『果実酒。アルコール濃度、7%。』

レイト『いや、科学者さん。そんな情報は求めてないから。』

 

 突然、果実酒の解析をしだした科学者にツッコミを入れてると、落ち着いた。

 だが、カイジンがベスターを殴る。

 

ベスター「ぐはっ………!?」

カイジン「ベスター!俺の客達に舐めた真似しやがって!覚悟はできてんだろうな!」

ベスター「きっ………貴様………!私に対してその様な口を………!」

カイジン「黙れ!!」

ドルド「カイジンさん………!」

ガルム「程々にね………。」

リムル「顔はダメだよ、ボディだよ。」

レイト「あまりやりすぎちゃダメですよ。」

 

 俺たちがそんな風に言う中、カイジンはもう1発、ベスターを殴り、後ろにいた従者を巻き込んで倒れる。

 俺とリムルは、カイジンに話しかける。

 

リムル「良いの?そいつ大臣でしょ?」

レイト「面倒な事になりそうですけど……。」

カイジン「…………リムルの旦那に、レイトの旦那。腕の良い職人を探してるんだろう?……俺じゃあ、ダメかい?」

リムル「ええっ!?良いの!?」

レイト「カイジンさんが良いなら、こっちも大歓迎です!よろしくお願いします。」

カイジン「ああ!」

 

 だが、大臣を殴った事は、やっぱり、ただで済む筈が無く。

 カイドウ達がやって来て、俺たちは手錠をかけられ、リムルは鎖で拘束される。

 

カイドウ「兄貴、一体何やったんだい?」

 

 カイドウは、そんな風に呆れ顔で聞いて来た。

 

カイジン「………フン!そこのバカ大臣が、リムルの旦那とレイトの旦那に失礼なことをしやがるもんだから、ちぃとお灸を据えてやっただけよ。」

カイドウ「えぇ〜………。大臣相手にそれはまずいだろ。とにかく、こっちも仕事だから、裁判まで拘束させてもらうぜ。」

「「裁判?」」

 

 俺たちがそう首を傾げる中、俺たちは牢屋の中へと入れられた。

 そこには、ゴブタが居た。

 

「「ロングスリーパーかい!」」

 

 ていうか、寝過ぎだろ。

 一体、どれくらい寝てるんだ?

 そんな中、カイジンが口を開く。

 

カイジン「………俺が短気を起こしちまったばっかりに……お前達まで巻き込んじまったな。………すまない。」

ガルム「大丈夫。問題ないさ。」

ドルド「そうそう!親父さんが気にする事無いって。」

ミルド「ウンウン。」

「「喋れよ!」」

 

 やっぱり、こんな状況でも、喋らないのな、ミルドは。

 リムルが、カイジンに質問をする。

 

リムル「………俺たちは、裁判を受ける事になるのか?」

カイジン「そうなるな。まあでも、死刑にはならんさ。罰金くらいで済むだろ。アッハッハッハッ!」

リムル「なら、良いが………。」

レイト「それにしても、あのベスターって大臣、カイジンの事を、目の敵にしてるみたいだったけど………。」

 

 そう言うと、カイジンは理由を話し始めた。

 カイジンは、この国の王、カゼル・ドワルゴに仕えていて、7つある王宮騎士団の内の一つの総長だったらしい。

 ベスターは、その時の副官だったらしく、庶民出のカイジンが面白く無く、よく衝突してたらしい。

 そんな時、功を焦っていたベスターが当時進めていた計画の一つ、魔走兵計画が失敗した。

 カイジンは、全ての責任をカイジンになすりつけ、カイジンは軍を辞めさせられたそうだ。

 ドワーフ三兄弟は、カイジンを庇い、一緒に軍を辞めさせられたとの事。

 カイジン曰く、ベスターは悪人ではなく、ただ、王の期待に応えようと焦っただけとの事。

 そして、カイジンだけでなく、ドワーフ三兄弟もまた、俺たちの村に来てくれる事になった。

 そして、夜、カイジンとドワーフ三兄弟が眠った中、ゴブタが目を覚ます。

 

ゴブタ「あれ………リムル様、レイト様………。何かあったんすか………?」

レイト(呑気すぎるだろ………。)

リムル「俺たちは、ちょっと藪用があるから、このまま置いていって良いか?」

ゴブタ「…………えっ?」

レイト「抜け出したかったら、相棒の嵐牙狼族(テンペストウルフ)でも召喚するんだな。」

ゴブタ「えっ!?ちょっ!酷くないっすか!?」

リムル「安心しろ。用事が済んだら、すぐに迎えに来るから。」

 

 そう言って、リムルは粘糸を使って、ゴブタの口を塞ぐ。

 まあ、ゴブタは無関係だからな。

 巻き込むのは、酷だろう。

 そうして、二日後、裁判が始まった。

 

兵士「ガゼル・ドワルゴ王の、お入りである!」

 

 そう言って、武装国家ドワルゴンの王、ガゼル・ドワルゴが入ってくる。

 その存在感は、かなり強く、彼が強者だというのが、嫌でも伝わってくる。

 今の俺では、勝つのは厳しいだろう。

 

裁判長「これより、裁判を始める!一同、起立!」

 

 そうして、裁判が始まった。

 武装国家ドワルゴンの裁判では、王の許しがない限り、当事者ですら発言は許されない。

 発言した瞬間、即有罪なんて当たり前らしい。

 冤罪も何もあったもんじゃない。

 おっかない事この上無い。

 日本と同じく、俺たちには弁護人が必要となる。

 なのだが…………。

 

弁護人「…………とこのように、店で酒を嗜んでいたベスター殿に対し、カイジン達は複数で暴行を加えたのです。」

レイト(おいおい。)

カイジン「…………買収されたな。」

リムル「あの野郎…………。」

 

 カイジンは、ベスターが悪人ではないと言っていたが、完全に悪人だろ!

 ていうか、ベスターの奴、そこまで重傷じゃないだろ。

 やっべぇ…………このままじゃ、罰金で済まなそうだ。

 ベスターが畳み掛ける様に、ガゼル王に進言する。

 

ベスター「王よ!どうか、この者たちに厳罰をお与えください!」

 

 その後、裁判長が木槌を叩く。

 

裁判長「これより、判決を言い渡す!主犯、カイジンには、鉱山での強制労働20年に処す。その他、共犯者には、鉱山での強制労働10年に処す。これにて、この裁判を閉廷!」

レイト『リムル、これ、やばくね?』

リムル『ああ。かなりまずい。』

 

 判決を聞き、俺とリムルが思念伝達でそう話していると。

 

ガゼル「待て。」

 

 これまでずっと黙っていた王が口を開き、視線が王に集中する。

 

ガゼル「……久しいな、カイジン。息災か?」

カイジン「ハッ!」

 

 俺たちは、再び跪く。

 裁判長が口を開く。

 

裁判長「カイジン。答えてよろしい。」

カイジン「はっ!王におかれましては、ご健勝そうで何よりです。」

ガゼル「………カイジンよ、余の元に戻ってくる気はないか?」

ベスター「っ!」

 

 どうやら、ガゼル王は、カイジンの事を気に入っているみたいだな。

 何とか、カイジン達だけでも………。

 すると、カイジンが口を開く。

 

カイジン「…………恐れながら王よ、私はすでに新たな主達を得ました。この契りは、私にとって宝です。これは、例え王命であっても、覆ることはありません。」

兵士「無礼な!」

 

 カイジンの言葉に、周囲にいた兵士達が、武器をこちらに向ける。

 オーラを少し出して、牽制でもしようかと思ったのだが。

 

ガゼル「…………で、あるか。」

 

 ガゼルはそう言うと、周囲の兵士達に、武器を向ける事をやめさせる。

 そうして、王自ら、判決を言う。

 

ガゼル「判決を言い渡す!カイジン及びその一味は国外追放とする。今宵、日付が変わって以降、この国に滞在することは許さん。余の前より消えるが良い!」

 

 そうして、国外追放で済んだ。

 俺たちは、退室するのだが、ガゼル王の寂しそうな表情が目に入る。

 ガゼル王も、寂しいんだろうな。

 その後、俺たちは、カイジン達の荷造りを手伝う事に。

 知る由も無かったが、ベスターがガゼル王に呼び出された様だ。

 

ガゼル「さて、ベスター。何か言いたい事はあるか?」

ベスター「お、王よ………。私は………そ、その…………。」

ガゼル「…………残念だ。余は、忠実な臣を一人、失う事になった。」

ベスター「な、何を仰います………!カイジンなど…………あの様な者、王に忠誠を誓うどころか、どこの馬の骨とも知れぬスライムやキメラという魔物と………!」

ガゼル「ベスターよ。お前は勘違いをしている。」

ベスター「えっ…………?」

ガゼル「余が失う忠実な臣。それは…………。」

ベスター「…………ッ!?」

 

 ガゼルの沈黙に、ベスターは全てを悟った。

 それは、自分である事を。

 

ガゼル「余は、お前に期待していたのだ。ずっと待っていた。魔装兵事件の際も………真実を話してくれるのを………。」

ベスター「お、恐れ………恐れながら………。」

ガゼル「そして、今回も。それを見よ。」

 

 ガゼルがベスターに見せたのは、裁判長が持つ、一つの瓶だった。

 それを見た途端、ベスターの表情が変わる。

 

ガゼル「それが何か、分かるか?ヒポクテ草から作られた、完全回復薬、フルポーションだ!」

ベスター「そ、そんな………!ドワーフの技術の随意を集めても、98%の抽出が限界の筈………!一体………どうやって………!?」

ガゼル「それを齎したのは、あのスライムとキメラなのだ。」

ベスター「…………ッ!」

 

 それを聞いた途端、ベスターの顔は青褪める。

 ガゼルが椅子から立ち上がる。

 

ガゼル「お前の行いが、あの魔物達との繋がりを絶った。何か言いたい事はあるか!」

ベスター「…………な、何も………ございません………王よ…………。」

 

 そう言って、ベスターは崩折れる。

 その間、ベスターは自問していた。

 なぜ自分は自身が仕える王に問い詰められているのか?

 まだ幼い日に見た、この国へ凱旋した王を見た時、自身に誓いを立てた。

 『この王に仕え、役に立つのだ。』

 そう誓いを立てたはずなのに。

 自分はいつ道を誤ったのだろうか?

 カイジンに嫉妬した時から?

 ………それとも、もっと以前から?

 

ベスター「王の期待を裏切ってしまい………申し訳ありません…………。」

ガゼル「…………ベスターよ、其方の王宮への出入りを禁止する。二度と余の前に姿を見せるな!………最後に一言、其方に言葉を送ろう。大義であった!!」

 

 ガゼルは、そう言い残して、去っていく。

 裁判所には、ベスターの泣き声が響くのであった。

 一方、俺たちは、カイドウ達に見送られる事になっていた。

 

カイドウ「兄貴、元気でな。」

カイジン「迷惑をかけたなぁ。お前も元気で。」

カイドウ「………リムルの旦那にレイトの旦那。兄貴を頼む。」

レイト「ああ。」

リムル「心配ない。こき使うだけさ。」

カイドウ「………判決に則り、カイジン及びその一味は国外追放とする。早々に立ち去れ!」

 

 そう言って、カイドウ達警備隊は、門の内側に戻り、門は閉じられた。

 

レイト「…………さて、行こう。」

リムル「森の入り口で俺の仲間が待っている。」

カイジン「…………ああ。」

 

 そうして、トラブルはあったが、最高の職人を連れて帰る事に成功した。

 そういえば、何かを忘れてる様な………。

 

ゴブタ「リムル様ーーー!レイト様ーーー!ひどいっすーーー!!」

レイト「あっ。ゴブタ忘れてた。」

 

 ゴブタを宥めるのを、リムルに任せて、俺はドワルゴンの方を見ていた。

 何か、あのガゼル王は、俺とリムルを見ていた様な気がするが、気のせいかな。

 そうして、俺たちはゴブリン村への帰路へと着いた。

 一方、ガゼル王は。

 

ガゼル「………弁護人は捕らえたか?」

???「は!」

ガゼル「厳罰に処せ。あのスライムとキメラの動向を監視せよ。決して気取られるなよ。絶対にだ!」

???「は!」

ガゼル「…………あのスライムとキメラは、化け物だ!まるで『暴風竜ヴェルドラ』の如く!」

 

 そんな風に、目をつけられてしまったのは、今の俺たちは、知らなかった。




今回はここまでです。
レイトの運命の人は、坂口日向です。
まあ、最初は敵対しますが。
次回、遂にリムルの運命の人、シズさんが登場します。
原作キャラは、変身させないが多いですね。
本当に、デモンズやベイルの扱いをどうすれば良いのか、分かりません。
折角持って来たのに、使っているのはキマイラだけだというのは、流石にアレだと思うので、どうにかします。
もしかしたら、鬼人のオリキャラに使わせる可能性はありますが。


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第5話 シズ

今回は、シズさんが登場します。


 ある日、俺とリムルは、嵐牙を連れて、ある湖に来ていた。

 

リムル「良いか、嵐牙。よぉく見てろよ。」

嵐牙「はい。」

リムル「リムル、変〜身!」

 

 そう言って、リムルは、黒嵐星狼へと姿を変えた。

 何をするのかというと、新しいスキルの試し撃ちだ。

 

リムル「からの〜黒稲妻!」

 

 黒嵐星狼となったリムルから放たれたのは、黒い稲妻だった。

 その稲妻は、湖の真ん中にあった岩をあっさり破壊して、周囲に湖の水が降り注ぐ。

 

レイト「…………リムル、これ、威力強すぎないか?」

リムル「ああ………。使い所を考えないとな………。」

嵐牙「黒稲妻………!さすがは、我が主!」

 

 その後、俺とリムルは、嵐牙の背中に乗って、村へと戻っていく。

 

リムル「ああ………平和だなぁ………。」

レイト「平和が1番だ。」

 

 俺とリムルが、ドワルゴンからカイジン達を連れ帰ってから、数週間が経った。

 カイジンは、ゴブリン達に、鍛治の技術を伝えている。

 

カイジン「鉄は熱いうちに打てってな!ガーハッハッハッ!」

 

 ドワーフ三兄弟、長男のガルムは、防具の作成方法を伝えている。

 

ガルム「なめす事で、防具の耐久性が上がるんだ。」

 

 次男のドルドは、細工の技術を伝えている。

 三男のミルドは、建物の建築技術を伝えている。

 こうして、俺たちは、新しい村を作り始めている。

 

リムル「それにしても、ドワルゴンから戻ってきた時は、驚いたよなぁ。」

レイト「確かに。あれはなぁ………。」

 

 それは、俺たちがドワルゴンにて、カイジンとドワーフ三兄弟をスカウトして、村に戻ってきたのだが………。

 

リムル「リグルド…………。」

レイト「…………これ、どういう状況なんだ?」

リグルド「リムル様とレイト様の噂を聞き、庇護を求めて、近隣のゴブリン村から集まってきたのです!」

ゴブリン達「リムル様〜!レイト様〜!お帰りなさいませ〜!」

 

 まさか、俺たちの庇護を求めて、集まってくるとはな…………。

 科学者に、聞いてみる事にする。

 

レイト『科学者さん、これ、一体どれくらい居るの?』

科学者『解。およそ、500くらいかと。』

レイト『ごっ………!?』

 

 まさか、500とは………。

 気になった俺は、科学者に聞いてみる。

 

レイト『科学者さん。これ、俺たちが断った場合は、どうなんの?』

科学者『現在、ヴェルドラが消失した事により、豚頭族(オーク)蜥蜴人族(リザードマン)大鬼族(オーガ)が、覇権を握ろうと動き出しています。進化前のゴブリンは、淘汰されるかと。』

レイト『そうなるよなぁ………。』

 

 俺は、リムルと思念伝達で話し合う。

 

レイト『リムル、どうする?』

リムル『これは、受け入れるしかないだろ。』

レイト『だな。』

 

 そうして、ゴブリン達には、裏切らない事を条件に住むことを許した。

 俺とリムルは、手分けして250匹のゴブリンに名前をつけた。

 リムルは、前回とは違い、低位活動状態(スリープモード)には陥らなかった。

 どうなる事かと思ったが、新たに増えたゴブリン達も、問題なく住めそうだな。

 俺たちが村に戻っている中。

 

ゴブタ「はい!じゃあ、オイラが、お手本を見せるっす!」

「「うん…………?」」

 

 ゴブタの声がしたので、俺とリムルはゴブタの方を向くと、ゴブタは、複数のゴブリン達に、何かを教えていた。

 ゴブタが力むと、ゴブタの影から、嵐牙狼族が現れる。

 

リムル「おお………!」

レイト「召喚に成功したのか。」

 

 そう、ゴブタは、いつの間にか、嵐牙狼族の召喚が出来る様になっていたのだ。

 俺たちに忘れ去られそうになっていた時に、必死に祈っていたら、嵐牙狼族の召喚に成功して、無事に脱出出来たとのこと。

 意外と天才肌なのかもしれないな。

 そう考えていると。

 

リグルド「リムル様〜!レイト様〜!」

 

 そう言って、リグルドが駆け寄ってくる。

 ちなみに、リグルドは、リムルがゴブリン・ロードから、ゴブリン・キングに昇格させた。

 他の村長の纏め役としてだ。

 リグルドを見ると、ゴブリン・キングになった事で、更に進化した様に見える。

 

リムル「どうした、リグルド?」

レイト「何かあったのか?」

リグルド「はい!リグルら警備班から、連絡がありました!森の中で、不審な者達を発見したそうです!」

レイト「魔物か?」

リグルド「いえ、人間です。」

リムル「人間………!?」

リグルド「領土拡大を狙った、どこかの国の調査隊かもしれません!」

 

 なるほどな………。

 ヴェルドラが消えた影響は、魔物だけでなく、人間にまで波及するか。

 ひとまず、確認してみるかな。

 俺とリムルは、その人間達の元へと向かう。

 しばらくすると、その人間達を発見する。

 4人いて、1人が戦闘を行なっている。

 どうやら、剣に炎の力を付与して、戦闘を行なっているようだ。

 巨大な蟻を倒して、その人はほっと息を吐く。

 だが、巨大な蟻が一匹、倒しきれていなかった様で、その人に襲い掛かる。

 

レイト「リムル!」

リムル「ああ!黒稲妻!」

 

 リムルが黒稲妻を発動して、その蟻を倒す。

 その際、戦闘をしていた人の仮面が飛び、リムルの頭に落ちる。

 

レイト「なあ………やっぱり、黒稲妻、威力が強すぎないか?」

リムル「ああ………こりゃ、このスキルも封印決定だな。」

 

 しばらくすると、煙が晴れて、その人間達が俺たちを見る。

 

「「「…………スライムと見た事のない魔物?」」」

リムル「スライムで悪いか?」

レイト「見た事なくて悪かったな。」

冒険者「ああ、いや………スライムが喋ったり、見た事のない魔物を見たりと………。」

冒険者「信じられない………。」

リムル「ほら、そこのお姉さんのだろ?悪いな、怪我、してないか?」

 

 そう言って、リムルは自分の頭(?)に乗っかった仮面を、その女性に渡す。

 すると、その人の顔は、見た事があった。

 

シズエ「ええ、大丈夫。」

 

 そう、カイジンが言っていた、爆炎の支配者、シズエ・イザワだった。

 リムルの運命の人は、随分と早く出会えたな。

 まあ、俺の場合は、会ったら、速攻で殺されそうだけどな。

 その後、ゴブリン村へと案内した。

 

レイト「それで、あの4人はどうしてるんだ?」

リグルド「はい…………。」

 

 すると、テントから声がしてくる。

 

冒険者「ちょっ!それ、俺が狙ってた肉!」

冒険者「酷くないですか!?それ、私が育てていたお肉なんですけど!」

冒険者「旦那方!こと、食事においては、譲れないでやんすよ!!」

 

 そんな風に、外にまで声が漏れていた。

 どうやら、焼き肉を食べているみたいだな。

 首を傾げた俺とリムルが、リグルドを見ると。

 

リグルド「すみません………腹ペコだと言うので、食事を………。」

リムル「おお!良いじゃないか!」

レイト「困っている人を助けるのは、良い事だよ。」

リグルド「ははっ!ありがとうございます!今後とも、精進したいと存じます!」

リムル「うんうん。」

リグル「リムル様、レイト様。どうぞ。」

レイト「ありがとう。」

 

 リグルが天幕の布を上げて、俺たちが中に入ると、必死の形相で、焼き肉を食べる三人の姿が。

 ていうか、あの三人って、どこかで………。

 すると、科学者が答えてくれた。

 

科学者『解。洞窟で遭遇した三人組です。』

レイト『ああ、あの三人組か。』

 

 ていうか、必死すぎるだろ。

 リムルの運命の人の方を見ると、正座をしていて、仮面を着けているのにも関わらず、普通に食事をしていた。

 器用だな。

 そう思っていると、リグルドが声を出す。

 

リグルド「お客人。大したもてなしは出来んが、寛いでおられますかな?改めて、ご紹介しよう!こちらが、我らが主達、リムル様とレイト様である!」

 

 リグルドがそう言うと、必死に焼き肉を食っていた三人組は、飲み込んで、口を開く。

 

「「「主!?」」」

「「主で悪いか?」」

 

 そう叫んだのに対して、俺たちは少し不機嫌気味にそう答える。

 すると、女性の冒険者の前の冒険者から口を開く。

 

冒険者「い、いや………。」

冒険者「ただのスライムと魔物ではないと思っていましたが………。」

 

 困惑してるみたいだな。

 まあ、無理もないか。

 いきなりそんな事を言われても、信じられないのも、無理はない。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「初めまして!俺はスライムのリムル!悪いスライムじゃないよ!」

 

 それって、某有名RPGのスライムのセリフだよね。

 ていうか、異世界の人に、そんなのが伝わるわけが………!

 

シズエ「ぷっ………!」

 

 すると、リムルの運命の人は、それを聞いて吹き出す。

 やっぱり、日本人なんだな。

 すると、冒険者の1人が頭を下げる。

 

冒険者「これは、失礼しました。まさか、魔物に助けられるとは、思ってもいませんでしたが………助かりました。」

冒険者「あ!お肉、ありがとうございます!とっても美味しいです!」

冒険者「どうも、助かりやした………。こんな所で、ゴブリンが、村を建設中とは、思っていませんでした。」

 

 まあ、そう思うのが普通だわな。

 井沢静江さんは、マイペースに食事を続けていた。

 一つ、気になった事があるので、聞いてみる事に。

 

レイト「それで、あなた達は、一体何をしにここに来たんだ?」

カバル「俺は、カバル。一応、このパーティーのリーダーをしている。こっちが………。」

エレン「エレンです〜!」

ギド「ギドと言いやす。お見知り置きを。」

カバル「………で、この人は、行く方向が同じという事で、臨時パーティーになった……。」

シズ「…………シズ。」

 

 そう名乗った。

 恐らく、あだ名とかの類だろうな。

 正体を隠す為の。

 リムルが、続きを促せた。

 

リムル「…………で?」

カバル「俺たちは、ブルムンド王国のギルドマスターから…………。」

 

 カバルは、疑う事をせず、来た理由を話してくれた。

 ジュラの大森林の周辺の国家の一つ、ブルムンド王国。

 そのブルムンド王国のギルドマスターが、三人に、この森の調査を依頼したらしい。

 やはり、ヴェルドラが消えた影響は、かなり大きいようだ。

 

リムル「なるほど………。」

レイト「俺らは、見ての通り、ただ街を作っている最中なんだが………ギルド的に、問題あるか?」

 

 俺らがそう聞くと、カバル、エレン、ギドの三人は、顔を見合わせる。

 

カバル「いや、大丈夫だろ。」

エレン「そうね………。ギルドが口を出す問題じゃないしね。国はどうなんだろ?」

ギド「うーん………。あっしには、分かり

ません。」

レイト「そっか………。」

リムル「話は分かった。今日は、ここに泊まると良い。ゆっくり、疲れを癒してくれ。」

「「「ありがとうございます!」」」

レイト「丁重に頼む。」

「「はっ!」」

 

 そうして、その4人は、泊まる事になった。

 その後、俺はリムルと共に、シズさんの元に向かう。

 

リムル「…………ちょっと、良いか?」

レイト「聞きたい事があるんだ。」

リムル「その………シズさんって………。」

シズ「スライムさん。さっきのは、ゲームの話だよね?『悪いスライムじゃないよ』って。」

 

 やっぱり、日本人だったか。

 すると、シズさんは、リムルを抱き抱える。

 

シズ「私は、やった事がないけど、同郷の子から、聞いてね。………あなた達も、日本人だよね?」

レイト「はい。あと、俺は今、キメラっていう種族なんだ。」

 

 俺は、シズさんの質問に、そう答える。

 

シズ「そっか………。会えて嬉しいよ!スライムさんとキメラさんは、どうして?」

リムル「いやぁ………それがさぁ、刺されて死んじゃってさ。」

シズ「刺されて………?」

リムル「気が付いたら、こんな素敵な姿に。」

レイト「俺の場合は、車に轢かれそうな子供を庇って、轢かれた。」

シズ「轢かれた………?」

レイト「で、俺はキメラになっちゃった訳だ。」

シズ「そっか………2人は、転生者なんだね。大変だったね。」

リムル「シズさんは、違うのか?」

 

 リムルがそう質問すると、シズさんは、表情を暗くしながら答えた。

 

シズ「私は………召喚者だから。」

リムル「召喚…………。」

 

 召喚者………。

 確か、ヴェルドラが言ってたな。

 三十人以上の魔法使いで、長い日にちをかけて、異世界から呼び出す。

 兵器としての役割を期待され、召喚者は、召喚主に逆らえないように、呪いをかけられるって………。

 そんな風に考えている中、リムルはシズさんに質問する。

 

リムル「シズさんは、いつ頃、召喚されたんだい?」

シズ「…………ずっと昔。街が燃えて、炎に包まれて………。」

リムル「戦争?」

シズ「空から爆弾が降ってきて………。」

レイト「空襲か………。」

シズ「お母さんと一緒に逃げていて………。」

リムル「お母さんは?」

 

 リムルがそう聞くと、シズさんは、目を伏せる。

 やはり、名前的に、昭和頃の人だと思っていたが、太平洋戦争真っ只中の時代だったとは。

 

リムル「…………すまない。」

シズ「………うんうん。」

 

 周囲の空気が暗くなってしまう。

 リムルは、気分を変えようとしたのか、口を開く。

 

リムル「そうだ!面白い物を見せてやるよ!」

シズ「面白い物………?」

リムル「大賢者。思念伝達で、シズさんと、ついでにレイトに、俺の記憶の一部を見せたい。」

 

 そう言うと、俺とシズさんの周囲に、とある光景が映し出される。

 それは、どこかの部屋で、恐らく、生前のリムルの部屋だろう。

 すると、パソコンの画面に、何かが映っているのが見えた。

 

シズ「………エルフさん?」

リムル「うわぁぁ!違う!そうじゃない!そうじゃない!」

シズ「綺麗だったよ?」

リムル「違う、違う!こっちこっち!」

 

 おそらく、エロゲーの類だろうな。

 すると、風景が変わり、戦後の日本が、どのように復興していったのかが、映し出される。

 最終的に、東京上空の映像が映し出される。

 

シズ「凄い………!まるで絵葉書で見た、ニューヨークの摩天楼のよう。」

リムル「戦争が終わって、平和になったよ。街も経済も、発展した。」

シズ「良かった………。」

リムル「最終的には、こんな風にしたいからな。………そうだ、レイト、お前の仮面ライダーの事も、教えてやれよ。」

シズ「………仮面………ライダー………?」

レイト「分かった。じゃあ、俺の記憶から、仮面ライダーについて、見せるぞ。」

 

 俺がそう言うと、風景が変わり、俺たちの目の前に、本郷猛………仮面ライダー1号の姿が映る。

 

シズ「この人は………?」

レイト「戦争が終わって、1971年に、仮面ライダーの歴史が始まったんだ。」

 

 そこから、一文字隼人、風見志郎、結城丈二、神敬介、山本大介、城茂、筑波洋、沖一也、村雨良、南光太郎、風祭新、麻生勝、瀬川耕司、五代雄介、津上翔一、城戸真司、乾巧、剣崎一真、ヒビキ、天道総司、野上良太郎、紅渡、門矢士、左翔太郎、フィリップ、火野映司、如月弦太郎、操真晴人、葛葉紘太、泊進ノ介、天空寺タケル、宝生永夢、桐生戦兎、常磐ソウゴ、飛電或人、神山飛羽真、そして、五十嵐一輝とバイスといった、歴代仮面ライダーの変身者が映し出される。

 

シズ「この人たちは………?」

レイト「仮面ライダーは、ドラマとして、放送されていて、今映った人たちは、それぞれの仮面ライダーの主役だよ。」

リムル「こんなに居たんだな………。」

 

 これが、半世紀に渡って紡がれ、これからも紡がれていく仮面ライダーの歴史だからな。

 そういえば、リバイスの次は、ギーツっていう仮面ライダーだったな。

 見たかったな………。

 すると、シズさんが胸を押さえる。

 

リムル「シズさん!?」

レイト「大丈夫か?」

シズ「………ええ。多分。」

 

 そう言って、仮面を着ける。

 すると、カイジンの声が聞こえる。

 

カイジン「リムルの旦那に、レイトの旦那。ちょっと良いかな?新しく家を建てる場所の相談がしたいんだが………。」

レイト「ああ。」

リムル「じゃあ!」

シズ「じゃあ。」

 

 俺とリムルは、カイジンの元に行く。

 すると、カイジンは、俺とリムルに揶揄うように言ってくる。

 

カイジン「邪魔しちゃったか?ていうか、レイトの旦那には、運命の人が居るんじゃなかったのかい?」

リムル「うるさい。」

レイト「俺は、リムルの付き添いだ。」

カイジン「照れんなよ。」

リムル「そんなんじゃねぇし。」

カイジン「顔が赤いぞ。」

 

 そんな話をしながら、村へと戻っていく。

 だが、若干の胸騒ぎがする。

 何か、とんでもない事が起こりそうな気がする。




今回はここまでです。
次回、シズさんの運命が決まります。
リバイスで、狩崎ことジュウガが、現存するライダーシステムの駆逐を宣言。
アギレラ、オーバーデモンズ、ジャンヌ、ライブを蹴散らす。
この小説でも、仮面ライダージュウガは出す予定です。
何せ、ジュウガドライバー自体が、キメラドライバーの改造ですし。
タイミングとしては、魔王への進化と同時に、変身出来る様になります。
そして、ガールズリミックスが配信され、深海カノンや滝川紗羽も登場する事が分かりました。
キメラドライバーは、ツインキメラ、トライキメラ、ジュウガドライバーユニット、ジュウガバイスタンプのセットで予約されそうですね。
そして、新たな仮面ライダー、ギーツの情報が解禁されました。


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第6話 爆炎の支配者

今回は、イフリート戦です。


 翌日、俺とリムルと嵐牙は、丘の上で村を見ていたシズさんの元へ。

 昨夜、胸騒ぎがしたので、オーインバスターとオストデルハンマーを作っておいた。

 リムルは、シズさんに話しかける。

 

リムル「俺たちの街、気に入って貰えたかな?」

シズ「ええ。とっても!」

 

 シズさんは、仮面を頭の左側に動かしながら笑顔でそう答えた。

 

レイト「それは、よかった。」

リムル「シズさんさえ良ければ、いつまでも居て良いんだぞ。」

シズ「ありがとう。…………でも、行かなきゃ。」

リムル「そっか………。」

シズ「ここに居たら、迷惑をかけちゃうかもしれないし。」

レイト「ん?」

 

 俺とリムルが首を傾げる中、シズさんは表情を暗くして、口を開く。

 

シズ「………私の旅の目的は………。」

リムル「目的?」

シズ「私を召喚した男を見つける事。」

レイト「見つけたら、どうするんですか?」

 

 俺のその問いには、シズさんは答えなかった。

 流石に、聞きすぎたか。

 すると、リムルが明るく答える。

 

リムル「分かった!残念だけど、いつでも遊びに来てくれ!歓迎するよ!なあ、嵐牙?」

嵐牙「勿論です!」

レイト「いつでも、熱烈歓迎だよ。」

シズ「ありがとう。嵐牙もありがとう。」

 

 そう言って、シズさんは嵐牙の顔を抱える。

 その後、村へと戻り、用意をしているエレンとシズさんを待つ。

 その際、考えていたのは、シズさんを召喚した男の事だ。

 

レイト(一体………誰がシズさんを召喚したんだ?炎への耐性は、恐らく、焼夷弾の炎で焼かれた結果、身に付いた物だろうけど………。もしかして、魔王か?)

 

 恐らく、魔王の可能性が高いな。

 だが、シズさんは一体、何をしようとしているんだ…………?

 そんな風に考えていると、シズさんとエレンがやって来る。

 

リグル「お、来た来た。」

エレン「お待たせ〜。」

ギド「待ちくたびれたでやすんよ。」

カバル「………ったく、女は支度が遅ぇよな。全く。」

 

 そんな中、シズさんは立ち止まる。

 俺たちが首を傾げながら見ていると、突然苦しみ出す。

 

シズ「ぐっ………!グゥゥゥゥ………!」

リグルド「どうかしましたか?」

レイト「シズさん………!?」

シズ「そんな………!もう………!?」

ギド「シズさん?」

カバル「おい、どうした………?」

 

 皆が心配する中、シズさんは倒れ、絶叫する。

 

シズ「グゥゥ………!アァァァァァ!!」

 

 すると、シズさんが着けている仮面にヒビが入り、そこから赤い光が立ち上る。

 

エレン「シズさん!シズさん!!」

レイト「何が起こってるんだ………!?」

科学者『告。対象の魔力が増大しました。警戒してください。』

 

 魔力が増大!?

 そんな風に驚いていると、赤い光は空へと届き、周囲に黒雲が現れ、太陽の光を遮る。

 すると、シズさんが少しずつ浮かび上がり、衝撃波がこちらに来る。

 俺たちは、倒れながらも、シズさんを見上げる。

 

レイト「皆!大丈夫か!?」

カバル「何だよ、これ………!危険手当くらい上乗せしてもらわねぇと………!」

ギド「だから、それはフューズの旦那に言うでやんすよ!」

エレン「シズさん!シズさん!」

 

 エレンがそう叫ぶ中、カバルが何かに気づいた様な反応をする。

 

カバル「シズ……?シズエ・イザワ………!?」

エレン「えっ?」

ギド「シズエ・イザワって………爆炎の支配者か………!?」

エレン「そ、それって、50年くらい前に活躍したって言う、ギルドの英雄よね!?シズさんが………!?」

ギド「爆炎の………!?」

カバル「くっ………!もう引退してんじゃなかったのか!?」

 

 やはり、カイジンが言っていたことは本当だったのか!

 俺たちは、リグルドとリグルに命令する。

 

リムル「リグルド、リグル。皆を避難させろ。」

リグルド「しかし………!」

リグル「リムル様………!レイト様………!」

レイト「このままじゃ、死人が出る!命令だ!大至急!」

リグルド「ははっ!承りました!」

 

 リグルドとリグルは、ゴブリン達やカイジン達を避難させるために動き出す。

 すると、シズさんが。

 

シズ「ハナ………レテ………。」

「「!!」」

シズ「オサエキレナイ………ワタシカラ………ハナレテ………。」

 

 シズさんは、そう言ったのだ。

 俺とリムルは、思念伝達で話し合う。

 

レイト『リムル………どうする?』

リムル『何とか、助けられないのか?』

レイト『もしかして、その召喚した男に、呪いを刻まれたんじゃ………。』

リムル『なら、どうにか、シズさんを助けないと………!』

レイト『ああ!』

 

 その為には、シズさんの内部に巣食う、何かを特定しないと………!

 すると。

 

科学者『告。解析の結果、個体名、シズエ・イザワには、イフリートが同化しており、現在、主導権を取り戻そうと暴走しています。』

レイト『マジか………!?なら、ライダーキックで、シズさんとイフリートを分離できれば………!』

 

 そう、リバイス系列の仮面ライダーには、ライダーキックで、人と悪魔を分離する事が出来る力がある。

 それを、イフリートに応用すれば………!

 ていうか、いつの間に解析してたのか。

 すると、科学者が、今度は絶望的な事を言う。

 

科学者『告。個体名、シズエ・イザワからイフリートを分離すると、命の保証はありません。』

レイト『何っ!?』

科学者『個体名、シズエ・イザワは、イフリートによって延命されている状態です。イフリートが居なくなれば、個体名、シズエ・イザワの命は、持って一月未満。』

レイト『そんな………!?』

 

 それでは、シズさんを助けられないのと同義ではないか。

 仮面ライダーという力があるのに、シズさんを助けられないのか………。

 そんな風に打ちひしがれていると。

 

科学者『告。個体名、シズエ・イザワを助ける方法は、一つだけあります。』

レイト『何っ!?』

科学者『それは…………。』

 

 そう言って、科学者は語った。

 どうすれば、シズさんを助けられるのかを。

 俺は、それを聞いて、決意した。

 絶対にシズさんを助けると。

 俺は、リムルに思念伝達で伝える。

 

レイト『リムル。シズさんを助ける方法を見つけたぞ!』

リムル『でかした!それで、どうすれば良いんだ?』

レイト『俺が、シズさんの内部に巣食うイフリートを分離する。リムルは、イフリートを食らってくれ!』

リムル『分かった!』

 

 実は、リムルには、シズさんとイフリートを分離した後、どうするのかは、まだ伝えていない。

 こればっかりは、今説明している余裕がない。

 何せ、もうシズさんは、限界なのだ。

 俺は、腰にキメラドライバーを装着する。

 

カバル「何だそれ!?」

レイト「良いから、見てろ。」

 

 俺は、ツインキメラバイスタンプを起動する。

 

ツインキメラ!

 

 バイスタンプを起動した後、キメラドライバーに装填する。

 すると、待機音が流れる。

 

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

 

 俺は、あの言葉を言う。

 

レイト「変身!」

 

 そう言って、バイスタンプを一回倒す。

 すると、蟹の鋏と鰐の顎が、同時に俺を閉めて、変身させる。

 

スクランブル!

キングクラブ!クロコダイル!仮面ライダーキマイラ!キマイラ!

 

 俺は、仮面ライダーキマイラへと変身する。

 すると。

 

エレン「えぇぇぇ!?」

ギド「レイトの旦那の姿が………!」

カバル「変わった…………!?」

 

 カバル達は、俺の姿が変わった事に驚いていたが、リムルは嵐牙に乗って、俺の隣に来る。

 

レイト「準備は良いか?」

リムル「ああ。」

レイト「分離した後の事は、戦いが終わったら話す。今は、イフリートを取り込むのに専念してくれ。」

リムル「おう。お前を信じてるぞ。」

レイト「ああ。だから、俺もお前を信じる!」

リムル「おう!シズさん、あんたの呪いは俺達が解いてやる。」

レイト「だから、もう少し頑張ってくれ!」

シズ「オ………ネ………ガ………イ………。」

 

 シズさんは、そう言う。

 すると、限界が来たのか、シズさんの姿が、イフリートになる。

 

カバル「炎の精霊……イフリート………!」

ギド「間違いないでやす。シズさんは……!」

エレン「伝説の英雄………爆炎の支配者………!あ、あんなの、どうやっても勝てないんですけど!」

ギド「無理でやす………。あっしらはここで、死ぬんでやす………。短い人生だったでやすんね………。」

 

 エレン達が弱腰になっている中、イフリートは咆哮して、そこから、精霊の類を召喚して、俺たちの村に火を放っていく。

 

リムル「ちっくしょう………!折角作ったばっかりなのに………!」

エレン「いった〜い………!」

レイト「お前ら!早く逃げろ!」

カバル「……そんな訳にもいかねぇよ………!」

 

 カバルは、そう言って、剣を抜刀する。

 カバルだけでなく、エレンもギドも、武器を構えていた。

 

カバル「あの人がなんで殺意を剥き出しにしてるのか知らねーが………。」

ギド「俺達の仲間でやんすよ。」

エレン「ほっとけないわ!」

 

 良い仲間じゃないか。

 俺たちは、身構える。

 リムルが、イフリートに聞く。

 

リムル「念のために聞くぞ、イフリート!お前に目的はあるか!?」

 

 リムルがそう問う中、イフリートは何も答えずに、こちらに向かって攻撃して来る。

 俺とリムルは、ステップでそれを躱す。

 リムルは、反撃で水刃を撃つが、当たる直前で蒸発してしまった。

 

レイト『………まあ、それもそうか。科学者。イフリートに有効打を叩き込む方法は?後、このキメラドライバーで、分離は出来るのか?』

科学者『解。精霊族には、爪や牙などの攻撃は通用しません。有効なのは、魔法攻撃。キメラドライバーには、悪魔を分離させる機能が搭載されていませんが、インストールします。』

レイト『頼む!』

 

 まあ、それもそうか。

 という事は、魔法攻撃をオストデルハンマーで叩いて、エレメント攻撃をすれば、効くかもしれない!

 すると。

 

エレン「水氷大魔槍(アイシクルランス)!」

 

 背後をチラリと見ると、エレンがサラマンダーに氷属性の魔法攻撃をしていた。

 丁度いい!

 

レイト「エレン!俺に向かって、さっきの魔法を撃ってくれ!」

エレン「ええっ!?何で!?」

レイト「良いから、早く!」

エレン「わ、分かりました!水氷大魔槍(アイシクルランス)!」

 

 そう言って、さっきの魔法が俺に向かって飛んでくる。

 即座にオストデルハンマーを取り出し、オストデルノックを押す。

 

レッツイタダキ!

 

 音声が流れて、俺はその魔法を叩く。

 

ネイチャー!イタダキ!

 

 俺は、魔法をただ叩いただけでなく、イフリートに向かって叩いた為、その魔法は、イフリートに命中する。

 

ギド「なるほど!イフリートの不意を突くためにやったんでやんすね!」

カバル「そういう事か………。」

レイト「さらに!」

 

 俺は、オストデルハンマーのトリガーを引く。

 

エレメント印!オストデルクラッシュ!

 

 オストデルハンマーを振るい、周囲に大量の氷の矢や氷の槍を生成して、イフリートやサラマンダーに向けて放つ。

 サラマンダーは三体纏めて消滅し、イフリートは怯む。

 

エレン「凄い………!」

リムル「アイツ、やるな………。」

 

 俺は、オーインバスターを出して、オストデルハンマーを変形して、合体させる。

 

リバイスラッシャー!

 

 更に、マンモスバイスタンプを取り出す。

 

マンモス!

 

 マンモスバイスタンプを、リバイスラッシャーのオーインジェクターに押印する。

 

スタンプバイ!

Here We Go!Let's Go!

Here We Go!Let's Go!

リバイバイスラッシュ!

 

 俺は、冷気を纏ったリバイスラッシャーで、イフリートを攻撃する。

 どうやら、リムルが水刃を放った時よりは効いているみたいだな。

 すると。

 

科学者『告。キメラドライバーに分離機能のインストールが、完了しました。』

レイト『よし!準備完了だ!』

 

 そう、キメラドライバーに分離機能を搭載させる為に、オストデルハンマーやリバイスラッシャーでの攻撃を行ったのだ。

 だが、イフリートは、分身を行う。

 

レイト「分身!?そんな事が出来んのかよ!?」

 

 俺が驚いている中、イフリートは、俺を取り囲む。

 すると。

 

リムル「水氷大魔散弾(アイシクルショット)!」

 

 リムルが魔法を放ち、イフリートの分身はあっという間に消える。

 すると、俺のそばに、リムルが来る。

 

レイト「リムル!」

リムル「分身は俺に任せろ!お前は本体にダメージを与えろ!」

レイト「ああ!行くぜ!」

 

 俺は、バイスタンプを1回倒す。

 すると、必殺待機音が流れ、必殺待機状態になる。

 イフリートは咆哮を放ちつつ、こちらに迫って来る。

 イフリートのパンチを、自分の腕を使って逸らして、もう一回倒す。

 

キングクラブエッジ!

 

 俺は、蟹の鋏を模したエフェクトと共に、イフリートにパンチを叩き込む。

 イフリートは大きく吹っ飛び、その間に、もう一度バイスタンプを倒す。

 今度は、2回倒す。

 

クロコダイルエッジ!

 

 俺は、足に鰐のエフェクトを纏った一回転回し蹴りをイフリートに放ち、イフリートを吹っ飛ばす。

 イフリートは、ダメージが大きいのか、そう簡単には、動けないようだ。

 

レイト「止めだ………!シズさんは、絶対に助ける!!俺の親友の為になぁぁ!!」

 

 再びバイスタンプを倒して、今度は3回倒す。

 

ツインキメラエッジ!

 

 俺は、その音声と共に大きくジャンプして、蟹の鋏と鰐を模したエフェクトを纏いながらのライダーキックを、イフリートに向かって放つ。

 イフリートは、腕を交差して俺のキックを受け止めようとするが、ダメージが大きいのか、受け止めきれない様で、しばらくの拮抗の末に、俺のキックがイフリートを貫き、シズさんとイフリートが分離する。

 

エレン「シズさん!」

レイト「よっと!」

 

 俺は、すぐに前のめりになって倒れるシズさんを抱える。

 そして、リムルに向かって叫ぶ。

 

レイト「リムル!今だ!!」

リムル「分かった!」

 

 リムルは、イフリートを捕食する。

 俺は、シズさんを抱えて着地に成功した。

 イフリートを捕食したリムルが寄ってくる。

 

リムル「凄いな、レイト!」

レイト「リムルも!お疲れ。」

 

 すると、シズさんが目を覚まし、俺とリムルを見てくる。

 

シズ「ありがとう………スライムさん、キメラさん。」

 

 その言葉に、俺とリムルは、笑みを浮かべる。

 こうして、この戦いは、幕を閉じたのだった。

 一方、リムルに取り込まれたイフリートは、暗く何もない空間にいた。

 そこで炎で脱出を試みるも、ただ遠くまで飛び、消えていくだけだった。

 すると。

 

ヴェルドラ「観念せよイフリート、貴様にはこの空間を破れん。」

 

 ヴェルドラがイフリートに話しかけていた。

 イフリートは、唖然としながらヴェルドラを見上げていた。

 

ヴェルドラ「貴様の敵う相手ではないわ。リムルとレイトは、我の盟友ぞ。我は、暴風竜、ヴェルドラ=テンペスト。心ゆくまで相手をしてやろう。」

 

 イフリートが呆然とする中、ヴェルドラの高笑いが響く。




今回はここまでです。
次回こそ、シズさんがどうなるのかが、分かります。
レイトは、シズさんをどのように救うのか。
楽しみにしてて下さい。
昨日から、キメラドライバー&ジュウガドライバーユニット、ブレイド、カブト、ドライブ、ゴーストがレリーフに入ったバイスタンプセレクション04の予約が開始されました。
映画やbirth of Chimeraではそこまで活躍出来なかったキマイラは、この小説では活躍します。
そして、仮面ライダージュウガに関しては、登場させます。
レイトが魔王に進化した時に、変身可能になります。
更に、ジュウガに変身可能になったと同時に、仮面ライダーと生物の力が組み合わさった必殺技が発動可能になります。
例として、オクトパスバイスタンプの場合、スピードロップで、トライドロンの代わりに、周囲に沢山のタコが配置され、、ジュウガを何度も打ち出す様に放ちます。
アンケートは、締め切ります。
原作キャラは変身させませんが、オリキャラに変身させます。


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第7話 受け継がれる想い

今回は、シズさんがとうなるのかが、分かります。


 シズさんから、暴走したイフリートを分離してから、1週間が経過した。

 だが、シズさんは、未だに目を覚まさない。

 俺とリムルは、シズさんのそばに居た。

 

レイト「まだ目を覚まさないな。」

リムル「そうだな………。それはそうと、レイト。」

レイト「ん?」

リムル「お前は言ったよな?シズさんを助ける方法があるって。」

レイト「ああ。…………丁度いい。話すよ。イフリートを分離したシズさんをどうやって助けるのか。」

 

 俺とリムルは、お互いに向き合う。

 さて、何から話すかな。

 

レイト「まず………一つ言っておくと、現在、シズさんの命は、風前の灯だ。」

リムル「どういう事だよ………!?」

レイト「イフリートが、シズさんの命を延命していたんだ。」

リムル「それじゃあ………助ける方法は無いって言うのかよ………!?」

 

 やはり、そういう反応になるよな。

 でも、助けられないことはない。

 

レイト「いや、ある。それは、俺のUQスキルを使う必要がある。」

リムル「お前のユニークスキル………?」

レイト「ああ。その名も、移植者(ウツスモノ)だ。」

リムル「移植者(ウツスモノ)………?」

 

 俺は、そのスキルを使って、どの様にシズさんを助けるのかを説明する。

 

レイト「移植者(ウツスモノ)は、ある対象を別の物に移す事が出来るスキルだ。」

リムル「そんなスキルがあるのか…………。」

レイト「ああ。シズさんの魂を、このバイスタンプに移す。」

 

 そう言って俺が取り出したのは、ブランクのバイスタンプだ。

 使えるかもしれないと思い、予め作っておいた物だ。

 移植者(ウツスモノ)を使うが、原理としては、ギフジュニアバイスタンプにギフジュニアを格納するのと似た様な感覚だ。

 

リムル「それを使えば、シズさんを助けられるのか?」

レイト「ああ。それに、バイスタンプ内なら、魂の劣化は避けられる筈だ。」

リムル「でも、肉体はどうするんだ?」

レイト「それも考えてある。その為には、シズさんの肉体の………簡単に言えば、シズさんの細胞が必要になる。」

 

 そう、シズさんの新たな肉体を作成するには、シズさんの細胞が必要なのだ。

 首を傾げたリムルが聞いてくる。

 

リムル「どういう意味だ?」

レイト「ああ。要は、俺のキメラ細胞を使うんだ。」

リムル「キメラ細胞?」

レイト「俺のキメラ細胞は、移植者(ウツスモノ)を使えば、他者に移す事が出来るんだ。………だけど、万能じゃないんだ。」

リムル「どういう事だ?」

レイト「俺のキメラ細胞を、そのまま体に埋め込むと、拒絶反応が起こるかもしれない。」

 

 そう、現に白波純平も、ギフの細胞の拒絶反応が起こっている。

 例え、シズさんの肉体に俺のキメラ細胞を埋め込んでも、拒絶反応が起こるのは避けたい。

 それは、シズさんをまた苦しめるだけだ。

 それに、シズさんの今の肉体は、もう限界に近い。

 あまり無理はさせられない。

 

リムル「確かに、拒絶反応が出たら、シズさんを苦しめるだけだからな。」

レイト「だからこそ、シズさんの細胞が必要になるんだ。」

リムル「…………つまり?」

レイト「まず、俺のキメラ細胞を、シズさんの細胞と組み合わせて、拒絶反応が出ないように調整をして、培養して、シズさんの新たな肉体を作る。そこにシズさんの魂が入ったバイスタンプを押印して、その体に移すんだ。」

 

 そう、これなら、拒絶反応が起こる心配も無い。

 無論、定期的に検査する必要はあるが。

 すると。

 

シズ「………スライムさん、キメラ君。」

リムル「シズさん!」

レイト「目が覚めたんだな。」

 

 シズさんが目を覚ました事に、リムルは安堵の表情を浮かべる。

 シズさんは、微笑を浮かべる。

 

シズ「さっきの話、全部聞かせて貰ったよ。」

レイト「え?」

 

 聞いてたのか。

 俺たちが驚いている中、シズさんは、言葉を紡げる。

 

シズ「…………私が助かるその方法、お願いしていいかな………?」

レイト「良いのか?」

シズ「うん………。あなた達にお礼がしたいし、力になりたい。だから………お願い。」

 

 シズさんは、弱々しくも、どこか力強く言う。

 それを見たリムルは、俺の方を向いてくる。

 

レイト「分かった。」

 

 俺は、ブランクのバイスタンプの天面のボタンを押して、シズさんに押印する。

 どうやら、上手く行ったみたいだな。

 すると、バイスタンプが光り。

 

シズ「何か………自分で自分の体を見るのは、複雑な気持ちになるね………。」

リムル「そうだな。」

レイト「じゃあ、シズさん。シズさんの髪の毛、一本貰うな。」

シズ「うん。」

リムル「………シズさん。良かったら、シズさんの体を、俺が食べても良いか?」

シズ「…………良いよ。」

 

 そう言って、シズさんは了承した。

 俺は、シズさんの髪の毛を一本取って、保管ケースに入れる。

 そして、シズさんの残った肉体は、リムルが捕食者を使って取り込む。

 そして、リムルは、幼いシズさんの様な姿になった。

 すると、外から、リグルド達の声が聞こえてくる。

 

リグルド「おや、これは皆さんお揃いで。皆さんもお見舞いですかな?」

カバル「ええ、リグルドさんもっすか」

リグルド「はい、シズ殿の着替えをお持ちしたところです、リムル様、レイト様、失礼します。」

 

 そう言って、リグルドが入ってくる。

 どうやら、エレン達も居るみたいだな。

 すると、皆が驚く。

 それはまあ、当然の反応だな。

 すると、嵐牙が現れる。

 

嵐牙「我が主………!」

「「「え?」」」

リグルド「その姿は………!?」

「「「えぇぇぇぇ!?」」」

カバル「その小さい女の子が………リムルの旦那ぁ!?」

レイト「やぁ。………その通りだよ。そこに居るのは、リムルだ。」

 

 俺は、シズさんの魂が入ったバイスタンプを持ちながらそう言う。

 リムルは、涙を流していた。

 俺たちは、事情を話す事に。

 ギドが口を開く。

 

ギド「本当に………リムルの旦那でやんすか?」

リグルド「間違いありません!」

嵐牙「見くびるな!姿形が変わったくらいで、分からないと思うか!!」

カバル「ああ、いや………。そういう事じゃ無くて………何か、ちっこいシズさんぽいっつーか………。」

レイト「本当だよ、リムル。」

リムル「ああ、ホレ。」

 

 リムルがそう言うと、人間としての姿から、スライムとしての姿に戻る。

 すると、カバルとギドが驚いた様な表情を浮かべる。

 

カバル「ふへ〜………。」

ギド「見事なもんでやんすね………。」

 

 カバルとギドがそう言う中、エレンの表情は暗かった。

 

エレン「…………シズさんを食べたの?イフリートみたいに………。」

レイト「いや、リムルが食べたのは、あくまでシズさんの肉体。シズさんは、ここに居る。」

 

 俺はそう言って、シズさんの魂が入ったバイスタンプを見せる。

 

カバル「何だこれ?」

ギド「レイトの旦那が使っていた物に、似ているでやんすね………。」

 

 すると、バイスタンプから。

 

シズ「………ごめんね、心配かけて。」

 

 バイスタンプが光り、シズさんの声がする。

 三人は一瞬沈黙した直後。

 

「「「えぇぇぇぇぇぇ!?」」」

 

 そう叫んだ。

 まあ、無理もない。

 余談だが、三人の叫び声で、外にいたゴブリン達が驚いていた。

 

カバル「ど………ど、ど、ど、どうなってんだよ!?」

ギド「これから……シズさんの声が……!?」

レイト「ちゃんと説明する。だから、一回落ち着いてくれ。」

 

 俺は、三人を落ち着かせて、話をする。

 シズさんの魂は、俺のユニークスキルを使って、バイスタンプへと移し、保全する。

 シズさんの肉体は、リムルの今後の生活の為に捕食させた。

 その後、俺のキメラ細胞とシズさんから採取した細胞を用いて、新たな肉体を作成。

 そして、その肉体にシズさんの魂を移すという事を。

 

レイト「…………という訳で、シズさんの新しい肉体の準備には、少し時間がかかるが、シズさんの命は繋がったって訳だ。」

カバル「そ………そうなのか………。」

ギド「もう………驚きすぎて、疲れたでやんす………。」

エレン「つまり………シズさんは、死んでないって事…………?」

レイト「ああ。」

リムル「全部、レイトのおかげだ。」

 

 エレン達は、ホッとした様な表情を浮かべる。

 そりゃあ、大事な人だったんだろうからな。

 その日は、夕方になってしまったので、エレン達は村に泊まった。

 その翌日。

 

カバル「色々と世話になったな。じゃあ、そろそろお暇するわ。」

レイト「国に帰るのか?」

カバル「ああ、ギルマスにこの森の調査報告とシズさんのことも、報告しないといけないからな。悪い様には言わない。」

エレン「リムルさん達のことも、伝えておくね。」

ギド「旦那達も何かあったら頼るといいでやすよ」

レイト「ああ、そうさせてもらうよ。」

シズ「皆、元気でね。」

エレン「シズさんも。」

カバル「レイトの旦那。シズさんの新しい肉体の事、頼むぜ。」

レイト「おう。任せろ。出来る限りは早く終わらせるよう、最善を尽くす。」

 

 カバル達は、そう言って、立ち去ろうとするが、何かを思い出したのか、立ち止まる。

 

カバル「あっ………と、最後にもう一つ。なあ、レイトの旦那。シズさんが入ってるバイスタンプって奴、出してくんねぇか?」

レイト「ああ。」

シズ「どうしたの?」

 

 すると、三人は頭を下げる。

 

「「「シズさん!ありがとうございました!」」」

シズ「三人とも………。」

カバル「俺、あなたに心配されない様なリーダーになります!」

ギド「あなたと冒険できた事、一生の宝にしやす!」

 

 そして、エレンは、シズさんの魂が入ったバイスタンプを包み込む様に持つ。

 

エレン「ありがとう………。お姉ちゃんみたいって、思ってました。」

シズ「三人も、元気でやってね。それと、いつでも会いに来て良いよ。」

 

 やっぱり、三人は良い人たちだ。

 この三人が、シズさんの仲間で、本当に良かった。

 すると、リムルが声をかける。

 

リムル「ところで、お前らの装備、ボロッボロだな。」

「「「ひどっ!」」」

 

 リムルがそう言うと、三人は装備を隠す様にして、俺は笑い、シズさんは苦笑した。

 そうして、俺たちはカイジン達が作った試作品の防具を渡す。

 

カバル「おおっ!憧れのスケイルメイル!」

エレン「スゴい!なにコレ!?軽い上に頑丈、ていうかめっちゃキレイ!」

ギド「いっ、良いんでやすか、あっしにはもったいない代物で!?牙狼の毛皮まで使用されってやっせ!?」

リムル「餞別だよ。ウチの職人の力作さ。」

ギド「職人?」

レイト「おーい。」

 

 俺が呼ぶと、カイジン達が出てくる。

 

カイジン「まっ、力作つっても、試作品だけどな。」

ガルム「着心地はどうだい?」

ドルド「細工は隆々ってね。」

ミルド「うん、うん。」

「「喋れよ!」」

 

 ミルドが喋らないのは、相変わらずみたいだな。

 俺は、彼らを紹介する事に。

 

レイト「紹介するよ。右から、カイジン、ガルム、ドルドにミルドだ。」

カバル「カイジン!?マジで!?」

エレン「腕利きで超有名な鍛治職人の!?」

ギド「ガルムにドルド、ミルドってあのドワーフ三兄弟!?」

カバル「ありがとうございます!これ、家宝にします!」

エレン「嬉しいです!」

ギド「夢の様でやんす!」

 

 そんな風に、三人は喜んでいた。

 やっぱり、カイジンは相当有名な鍛治職人なのだな。

 三人は、今までのことを吹き飛ばす大はしゃぎしたのち、帰って行った。

 その後、俺とリムルは、シズさんと一緒に話をするべく、テントへと向かっていた。

 だが、この時の俺は、知らなかった。

 俺とリムルを中心として、世界が激動の時代になっていく事を。

 そして…………。

 干上がった荒野に、一体の豚頭族(オーク)が歩いていたが、限界が来たのか、倒れる。

 すると、そこに一体の鳥のよいなマスクをし、白い紳士服を着ており、杖を持った者が近づいていく。

 その者が、豚頭族を見つめると。

 

???「お前に名前と食事をやろう。」

 

 その者がそう言う。

 豚頭族は、その者を見つめると、問う。

 

豚頭族「…………あなたは?」

ゲルミュッド「ゲルミュッド。俺の事は、父だと思うがいい。」

 

 そう言うと、豚頭族は、訝しげな表情を浮かべる。

 それを見たゲルミュッドは。

 

ゲルミュッド「………このまま死ぬか?」

 

 そう問う。

 それに対する豚頭族の答えは。

 

豚頭族「………名前を………そして、食事を……。」

ゲルミュッド「お前の名は、ゲルド。」

ゲルド「ゲルド…………。」

ゲルミュッド「やがて、ジュラの大森林を手中に収め、豚頭魔王(オークディザスター)となる者だ。」

 

 そう言って、ゲルミュッドは、ゲルドに肉を与え、ゲルドはその肉を食べる。

 これが、やがて大きな出来事に繋がってくる事は、誰も知らない。




今回はここまでです。
シズさんの魂は、レイトがバイスタンプに移しました。
原理は、ギフジュニアが、ギフジュニアバイスタンプに格納されるのとほぼ同じです。
一応、シズさんは、仮面ライダーに変身する事が出来ますが、変身はしません。
次回、オーガのオリキャラを一人登場させる予定です。
レイトは現在、キマイラですが、いずれ、ダイモン、ジュウガに変身します。
デモンズ、オーバーデモンズ、ベイルの変身者は、デモンズはリザードマン、オーバーデモンズはオーク、ベイルはオーガのオリキャラに変身させます。
リバイス、ライブ、エビル、ジャンヌ、アギレラの変身者に関しては、現在、考え中です。


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第8話 大鬼族(オーガ)の襲来

今回は、大鬼族達が襲撃してきて、和解した後、村に戻るまでです。


 エレン達が、俺たちの村から去った後、俺たちは、村の開発を着々と進めていた。

 カイジン達が、衣類、住居、道具作成を進めて、リグルド達、ゴブリン・ロードによって、村の統治を行う流れが出来上がっていた。

 その間、俺たちは、一つの天幕へと入っていった。

 誰も通さない様に頼んである。

 リムルは、シズさんの仮面を取り出す。

 イフリートの暴走の際に、ヒビが入っていたが、修復出来たらしい。

 

レイト「シズさんの仮面、直ったんだな。」

リムル「ああ。シズさん、直ったぜ。」

シズ「うん、ありがとうね。………それと、お願いがあるんだけど………。」

リムル「お願い?」

シズ「その仮面、スライムさんが受け取ってくれないかな?」

 

 シズさんは、リムルに対して、そう言ったのだ。

 リムルは、シズさんに聞く。

 

リムル「………それって、シズさんの大事な物なんじゃ………。」

シズ「今の私には、必要ない物だから。スライムさんに受け取って欲しいんだ。」

レイト「…………受け取ってやれ、リムル。」

リムル「ああ。受け取るよ。」

 

 リムルは、シズさんから、仮面を受け取る。

 そして、シズさんは、俺に聞く。

 

シズ「キメラさん。私の新しい体は、どれくらいで出来るの?」

レイト「そうだな………。今、作業を始めたばかりだから、もう少しかかるかな………。」

シズ「そっか………。」

レイト「そうだ。イフリートの分身のスキル、使えるようになったよな?」

リムル「そうだけど?」

レイト「人間の分身体を出してくれよ。」

リムル「何で?」

レイト「俺も、もしかしたら人間の街に行くかもしれないからさ、人間としての体が俺も必要だと思ってさ。」

リムル「なるほどな。分かった。」

シズ「あの…………それなら、私を後ろ側に向けてくれないかな?…………流石に恥ずかしいからさ………。」

レイト「あ。そ、そうだな。」

 

 俺は、シズさんの魂が入ったバイスタンプを後ろ側に向ける。

 そう、今のリムルの人間としての姿は、シズさんをベースにしているのだ。

 つまり、ある意味シズさんは、自分の裸を見られている様な状態なのだ。

 流石に、背徳感があるな。

 リムルは、人間としての分身体を出す。

 やっぱり、シズさんを小さくした様な見た目だよな。

 俺は、すぐに吸収者(トリコムモノ)を使い、その分身体を取り込む。

 科学者は、解析を終えた。

 

科学者『告。個体名、リムル=テンペストの分身体を取り込んだ結果、スライムとしての能力及び、分身体の人間としての姿を獲得。』

レイト『よし。じゃあ、早速、人間態になってくれ。』

科学者『了。』

 

 俺は、科学者にそう頼むと、俺の姿がギフテリアンから、人間としての姿に変わっていく。

 そういえば、リムルの人間としての姿は、シズさんがベースだけど、俺はどうなるんだ?

 すると、俺の姿を見たリムルは。

 

リムル「おお!俺の人間としての姿をベースにしつつ、姿は少し違うな。」

 

 そう言った。

 俺は確認したいが、まずは服を着るとしよう。

 リグルドが用意してくれた俺の服を着用する。

 だが、鏡の類は存在しない。

 どうやって確認したもんか………。

 すると。

 

科学者『告。分身体を取り込んだ事により、分身のスキルが使える様になっています。』

レイト『あ。そっか。』

科学者『はぁ………。』

レイト『………今、呆れなかったか?』

科学者『なんでもございません。』

 

 絶対、呆れてたよね。

 まあ良い。

 俺は、分身のスキルを使い、分身を出す。

 確かに、リムルの言う通りだな。

 姿自体は、確かに、リムルの人間態やシズさんをベースにしつつも、少し男寄りになっている。

 なっているのだが、それでも中性的な容姿になっていた。

 髪は、リムルと同じぐらいの長さで、濃紺色になっていた。

 その姿には、当然だが、前世の俺の面影は一切感じない。

 俺は、分身をすぐにしまう。

 俺は、リムルに、シズさんの魂が入ったバイスタンプを携帯する為のバイスタンプホルダーを渡す。

 俺たちは、ヴェルドラが居た洞窟へと向かっていく。

 向かう途中、リグルドが話しかけてくる。

 報告をしに来たのだ。

 

リグルド「報告は以上です。」

リムル「ああ。ありがとさん。」

レイト「報告ご苦労。」

リグルド「ああ、それと。」

「「ん?」」

リグルド「………リムル様は、今日もご食事の必要がないのでありますか?」

リムル「ああ。どうせ、スライムの体じゃあ、味なんてしない………。」

レイト「おい。今、人間の姿を得ただろ?」

リムル「あっ!リグルド!」

リバイス「はっ。」

リムル「今日から、俺も一緒に飯を食うよ!」

リグルド「なんと!では、今日は宴会ですな!」

レイト「ああ。頼む。」

リグルド「はっ!」

 

 そう言って、リグルドは去っていく。

 そう、リムルは、スライムの姿では味がしないので、これまで食事には参加しなかったのだ。

 ちなみに、俺は、味を感じる事は出来たが、流石にリムルが不憫なので、俺も食事をしていない。

 俺たちは、今日の夕飯の事を考えながら街の外へと向かうと、リグル達がいた。

 

リムル「よう、リグル。」

リグル「リムル様!レイト様!」

レイト「食料調達、ご苦労様。」

リグル「ありがとうございます。これから、森へ向かう所です。」

レイト「今夜は宴会だ。美味しそうな獲物を頼む。」

ゴブタ「今日は、リムル様達も食べるっすか?」

リムル「おうよ!なんせ、この体には味覚があるからな!」

ゴブタ「いっぱい食べたら、おっぱいも育つっすかね?」

 

 ゴブタがそんなセクハラ発言をすると、リムルに思いっきり蹴られる。

 まあ、自業自得だし。

 それを見たリグルは、すぐに頭を下げる。

 

リグル「すいません!ゴブタには、きっちり教育させるので!では、特上の牛鹿をご用意しましょう。」

レイト(牛鹿………牛と鹿が合体した様な動物の事か?)

リムル「おう、頼むな。」

リグル「お任せ下さい!最近は、森の奥から移動してくる魔獣が多いので、獲物は豊富なんです。」

レイト「………何かあったのか?」

リグル「いえ。環境の変化によって、魔獣の移動がありますからね。大した事は無いと思うのですが。」

 

 そういう魔獣の移動がある場合は、何か強い存在に追われて、移動するという場合があるからな。

 つまり、何か強い存在が居ると警戒した方が良さそうだ。

 すると、リムルの影から、嵐牙が現れる。

 恐らく、思念伝達で、嵐牙を呼んだのだろう。

 

嵐牙「お呼びですか?我が主。」

リムル「嵐牙。リグル達と森に同行してくれ。」

レイト「何も無いとは思いたいが、念の為に、俺からも頼む。」

嵐牙「心得ました。お任せ下さい。遠慮はいらぬ。我を連れてゆけ、リグル殿。」

 

 そう言う嵐牙。

 かっこいいのだが、尻尾をブンブンと振っていると、ただの犬にしか見えない。

 俺たちは、リグル達を見送って、ヴェルドラの洞窟へと向かう。

 途中、俺は、リムルから仮面の複製を受け取って、リムルとシズさんと別れて、とある場所へと向かう。

 ここは、俺がつい最近作った研究所だ。

 研究所といっても、そこまで設備が整っているわけではないが。

 あるのは、俺のキメラ細胞とシズさんから採取した細胞を組み合わせる事ができる装置と、細胞を保管する装置ぐらいだ。

 これは、科学者に作ってもらった。

 

レイト「さて。作業を始めるか。」

 

 俺は、キメラ細胞とシズさんの細胞を組み合わせる作業を開始した。

 科学者のサポートの元、どうにかして、キメラ細胞とシズさんの細胞を組み合わせて、それを培養して、シズさんの新しい体を作る。

 実は、占いにて、シズさんの前に、五人の子供が居た事を、シズさんに言うと。

 

シズ「…………その子達は、国によって召喚されたんだけど、不完全な状態で召喚されたから、大量の魔素で死んじゃう。だから、あの子達を助けたいの。」

 

 そう語った。

 シズさん曰く、不完全な状態で召喚された十歳未満の子どもは、数年もしない内に大量の魔素によって死んでしまうらしい。

 それを、国は召喚したのにも関わらず、捨てたのだ。

 それは、到底許される行為ではない。

 だが、救う手段は、シズさんが知っていた。

 というより、シズさん自身がその証拠なのだ。

 精霊と同化させれば、死を免れる事が出来るらしい。

 ただ、シズさんが上手く行かなかった理由としては。

 

シズ「私とイフリートじゃ、馬が合わなかったんだと思う。イフリートは、魔王レオンへの忠誠心が強かったから。」

 

 と、語っていた。

 シズさんは、魔王の一人、レオン・クロムウェルを憎んでいたらしく、イフリートとの不一致が、寿命が縮まった結果になってしまったのだろう。

 俺としては、その子達を助けたいと思う。

 突然異世界に召喚され、捨てられたのは、余りにも不憫だ。

 ちなみに、この作業と同時進行で進めているのが、クローンライダーの作成だ。

 つまり、未来のジョージ・狩崎が行った事と同じだ。

 まあ、今は、ライオトルーパー、ゼクトルーパー、黒影トルーパー、デモンズトルーパーといった、トルーパー系列の戦士にしているのだが。

 いずれ、量産型ライダーやダークライダー、正義の仮面ライダーといったクローンライダーも作る予定だ。

 まあ、シズさんの新たな肉体の作成が最優先になるのだが。

 すると。

 

嵐牙『リムル様!レイト様!』

レイト『嵐牙!?思念伝達か!』

科学者『個体名嵐牙からの思念伝達。声音から、救援要請と推測。』

レイト『嫌な予感が的中したか!作業を中断!救援に向かうぞ!』

科学者『了。』

 

 俺は、キメラ細胞とシズさんの細胞を組み合わせる作業を中断する。

 無論、保管装置に入れるが。

 俺は、妖気(オーラ)を抑える為に、仮面をつける。

 駆け出す中、リムルと合流する。

 

リムル「レイト!嵐牙から!」

レイト「ああ!すぐに向かうぞ!」

 

 俺たちは、嵐牙達の元へと向かって行く。

 すると、ゴブタが転がってくる。

 

レイト「ゴブタ!大丈夫か!?」

ゴブタ「斬られたっす!超痛いっす!!」

リムル「落ち着け。傷は浅い。」

 

 周囲には、警備班が倒れており、その先には、二人の人物が。

 人間では無い事は確かで、見た所、角が生えている。

 

レイト「なんだ、お前ら?」

ゴブタ「あっ!リムル様とレイト様じゃないですか!心配で来てくれたんすね!」

リムル「そうだな。元気そうだし、回復薬はいらないな。」

ゴブタ「冗談っす!欲しいっす!」

レイト「素直にそう言えば良いのに。」

 

 俺はそう呟いて、ゴブタに回復薬をぶっかける。

 ゴブタが回復される中、嵐牙は、大槌を持った者と2本の刀を持った者と交戦していた。

 嵐牙がその二人に向かおうとした瞬間、地面から炎が立ち上り、嵐牙は怯む。

 木々の間に、桃色の髪の人物がいて、その指先から炎が出ていた事から、あの炎は、その人物による物だと思う。

 

リムル「嵐牙!」

 

 リムルは、嵐牙を呼ぶと、嵐牙はすぐに戻ってきた。

 

嵐牙「主達よ!申し訳ありません。我が居ながら、この様な………!」

 

 すると、武器をぶつけ合う音が聞こえてきて、そちらを向くと、リグルが、紫色の髪の人物と橙色の髪の人物と交戦していた。

 だが、リグルが劣勢になっていた。

 

リムル「戻れ、リグル!」

 

 リグルは、リムルの呼びかけにすぐに応じて、こちらに戻る。

 見た所、重傷ではないな。

 

リグル「リ、リムル様、レイト様!申し訳ありません………!」

リムル「安心しろ。あとは俺たちに任せて、ゆっくり休め。」

リグル「ありがとうございます………。」

レイト「嵐牙。倒れている者たちは、どうしたんだ?」

嵐牙「はっ。魔法によって眠らされています。あの桃色の髪の仕業です。」

 

 嵐牙が視線を向ける先には、襲撃者達が全員揃っていた。

 数は七人。

 その内、武器を持っているのは六人で、桃色の髪の人物は、魔法による支援の役割だろう。

 多分、全員が強い。

 これは、変身する事も考慮に入れるか。

 すると、リグルが口を開く。

 

リグル「面目ありません。まさか、大鬼族(オーガ)に出くわすとは………。」

レイト「大鬼族(オーガ)………。」

 

 やはり、人間では無いな。

 それも、大鬼族(オーガ)

 だとすると、かなり厄介な事になりそうだな。

 まあ、まずは対話から。

 

リムル「おい、お前ら。事情は知らないが、うちの者が失礼したな。」

レイト「話し合いに応じる気はないか?」

 

 俺たちの問いかけに、大鬼族(オーガ)達は黙っていた。

 実力差は明白。

 だが、ゴブタとリグルの二人は致命傷ではないし、他の連中も眠らされている。

 何か、理由があるのか?

 すると、リーダー格の大鬼族(オーガ)が口を開く。

 

大鬼族「正体を現せ!邪悪な魔人どもめ!」

「「は?」」

 

 そのリーダー格の言葉に、俺たちは首を傾げる。

 

リムル「お、おいおい!ちょっと待て!俺たちが何だって!?」

レイト「どういう意味だ!?」

大鬼族「魔物を使役するなど、普通の人間に出来る芸当ではあるまい。見た目を偽り、妖気(オーラ)を抑えている様だが、甘いわ!」

大鬼族「正体を現せい!」

大鬼族「黒幕が直々に出向いてくれるとは、好都合な物。」

 

 えぇぇぇ………。

 大鬼族(オーガ)の恨みを買った覚えはないぞ!?

 ていうか、まあ、見た目を偽ってるのは、合ってるなぁ………。

 人間としての姿だけでなく、キメラとしての姿や、仮面ライダーキマイラとしての姿もあるわけだし。

 

レイト「ちょっと待て………。」

大鬼族「ふん。答えを聞くまでも無い。貴様らの正体は、仮面が物語っている。」

「「仮面?」」

 

 仮面って、俺たちが持ってるこれの事か?

 ちょっと待った。

 

レイト「待ってくれ!お前ら、何か勘違いをしていないか?」

リムル「そうだぞ!これは、ある(ひと)から受け取った物で………。」

大鬼族「同胞の無念。その億分の一でも、貴様らの首で贖ってもらおう!邪悪なる豚どもの仲間め!」

 

 不味いな………戦る気満々だよ。

 ていうか、同胞の無念に邪悪なる豚どもの仲間?

 やっぱり、何か訳ありみたいだな。

 俺は、腰にキメラドライバーを装着する。

 嵐牙が話しかける。

 

嵐牙「どういたしますか?」

リムル「どうって………。お前はあの桃色を相手しろ。」

嵐牙「はっ!」

レイト「殺すなよ。殺したら、更に連中の憎しみが湧きそうだ。」

嵐牙「はっ………。」

リムル「残りは、俺とレイトでどうにかするよ。」

嵐牙「しかし、たった二人で、六体の大鬼族(オーガ)を相手に………。」

レイト「問題ないさ。負ける気がしない。」

嵐牙「それでこそ、主達です!」

 

 俺は、そう言って、ツインキメラバイスタンプを取り出す。

 

ツインキメラ!

 

 そして、キメラドライバーに装填する。

 待機音が流れ出す。

 

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

 

レイト「変身!」

 

 そう言って、バイスタンプを一回倒す。

 すると、蟹の鋏と鰐の顎が、同時に俺を閉めて、変身させる。

 

スクランブル!

キングクラブ!クロコダイル!仮面ライダーキマイラ!キマイラ!

 

 俺は、仮面ライダーキマイラへと変身する。

 すると、リーダー格の大鬼族は、多少動揺した。

 

大鬼族「す、姿を変えたところで何も変わらん!」

 

 そう言って、俺とリムルに迫り、刀を振り下ろすが、俺たちはすぐに躱す。

 リムルが黒色の大鬼族の元に向かう中、俺は青と橙色の大鬼族を相手にする。

 橙色の大鬼族は、女性の様だ。

 

レイト「さて。行くか。」

大鬼族「私たち二人に、たった一人で挑むとは。」

大鬼族「舐められた物だな。」

レイト「どうかな?」

 

 俺は、二人の大鬼族を相手取る。

 青と橙色の大鬼族は、連携攻撃を仕掛けてくる。

 俺は、それを躱し、橙色の大鬼族に対して、エビルムカデを取り込んで手に入れたスキル、麻痺吐息を使い、橙色の大鬼族を倒れさせる。

 もう一人の方は、ツインキメラバイスタンプを一回倒した後、もう一回倒して、刀を腕で受け止め、カウンターのパンチを叩き込む。

 

キングクラブエッジ!

 

レイト「ハアッ!」

大鬼族「くぅっ………!!」

 

 蟹の鋏を模したエネルギーを纏ったパンチを食らった大鬼族は、木に激突して、気絶する。

 リムルの方をチラリと見ると、黒色の大鬼族は、麻痺吐息で気絶させられ、紫色の大鬼族は、粘鋼糸で拘束されていた。

 

リグル「おお!」

ゴブタ「流石っす!」

大鬼族「あんなに簡単に………。」

 

 リグルとゴブタは、歓声を上げ、桃色の髪の大鬼族は、驚いていた。

 俺は、リムルと合流して、残りの二人の方を見る。

 

レイト「さて………。」

リムル「どうする?」

大鬼族「…………あの者たちは、エビルムカデの麻痺吐息、ブラックスパイダーの『粘糸』『鋼糸』、それに不意打ちでの反応を見ると『魔力感知』を持っておるでしょう。」

 

 まさか、勘づかれた?

 白い老人の大鬼族の分析に、俺たちは驚いた。

 

大鬼族「他にも多数の魔物の業を体得しているやもしれません、ご油断召されるな、若。」

 

 あまり手の内を晒すと、対処されるな。

 流石に、話すか。

 

リムル「なあ……ここら辺にしないか?」

レイト「そろそろ、俺達の言い分も聞いてほしいんだが………。」

大鬼族「黙れ!邪悪な魔人め!!」

レイト「ええとな………。」

 

 あれ?あの白い老人の大鬼族が居ない。

 いや、気配を感じない。

 リーダー格の大鬼族の言葉を聞きつつ、周囲を警戒する。

 

大鬼族「確かに貴様らは強い。だからこそ確信が深まった。やはり貴様らは、奴らの仲間だな!」

レイト「奴ら………?」

大鬼族「たかが豚頭族(オーク)ごときに………我ら大鬼族(オーガ)が敗れるなど、考えられぬ!」

レイト「オーク?」

 

 待って。

 それって、俺ら無関係だぞ。

 現在、村にオークなんて、誰一人居ないわけだし。

 

リムル「おい………さっきから何を………。」

大鬼族「黙れ!全ては、貴様ら魔人の仕業なのだろうが!!」

レイト「魔人?」

大鬼族「とぼけるな!」

リムル「待ってくれ………それは誤解……。」

レイト「リムル!しゃがめ!」

 

 俺たちの背後に、あの爺さんが現れ、俺たちの首を飛ばそうとしていた。

 すかさず俺は、リムルと爺さんの間に入り、爺さんの腕にキックをして、刀の軌道を逸らせる。

 

大鬼族「なぁ………!?気配は完全に絶っていた筈………!?」

レイト「悪いな。俺の第六感っていう感じかな?」

大鬼族「化け物どもめ………!鬼王の妖炎(オーガフレイム)!」

 

 驚いた爺さんがすぐに下がり、リーダー格が、炎の攻撃をしてくるが、俺たちには、熱変動耐性がある。

 炎の攻撃は効かない。

 俺たちが悠然と炎から出てくるのを見て、リーダー格と爺さんは唖然となった。

 

レイト「悪いな。俺たちに炎は効かない。」

リムル「どうやら、俺はお前達を侮っていた様だ。少し、本気を見せてやろう。」

 

 そう言うと、リムルは仮面を外して、オーラを全開にする。

 それには、大鬼族も驚いていた。

 だが、真に驚くべきは、その先だった。

 何せ、黒炎がリムルの左手から上がったのだ。

 

レイト『………何、あれ?』

科学者『告。個体名リムル=テンペストが、個体名シズエ・イザワの体を取り込んだ際に得たユニークスキル、変質者を用いて獲得したスキルだと推測。』

レイト『…………なるほど。』

 

 そんなスキルを得たのかよ。

 そして、あの黒稲妻を使い、目の前にあった岩を破壊する。

 やっぱり、黒稲妻、威力高すぎるだろ。

 だが、今の状況では、役に立つ。

 

レイト「どうする?」

リムル「まだやるか?」

 

 そう言うと、リーダーは顔を歪める。

 ビビっている様だな。

 そのまま逃げてくれ。

 すると、あの爺さんがリーダーに話しかける。

 

大鬼族「若。姫を連れてお逃げください。ここはワシが………。」

大鬼族「黙れ、爺。………凄まじいな。悲しいが、我らでは、貴様らには遠く及ばぬようだ。だが、俺には、次期頭領として育てられた誇りがある!無念に散った同胞の無念を晴らさずして、何が頭領か!叶わぬまでも、一矢報いてくれるわ!」

大鬼族「若………。それでは、ワシもお供致しましょうぞ!」

 

 やばい、リムルの炎が逆効果になった。

 まあ、事情は分からないが、恐らく、何者かに故郷を襲われ、同胞を虐殺されたのだろう。

 どうしたもんか………。

 すると、嵐牙と交戦していた筈の桃色の髪の大鬼族が、リーダーの前に来る。

 

大鬼族「お待ち下さい、お兄様!この方達は、敵では無いかもしれません!」

大鬼族「そこを退け!」

大鬼族「いいえ!」

大鬼族「………何故だ!?里を襲った奴と同じく、仮面をつけた魔人では無いか!お前もそう言っただろう!?」

大鬼族「はい………ですが、冷静になって考えて見てください!これだけの力を持つ魔人様達が、姑息な手段を用いて、豚どもに我らの里を襲撃させたのは、不自然です!それこそ、たった二人で我らを皆殺しに出来るでしょうから!確かに、この二人は異質ではありますが、里を襲った者達とは、無関係なのではないでしょうか?」

 

 どうやら、気付いてくれたみたいだな。

 あと、もう一押しってところか。

 

リムル「少しは、人の話を聞く気になったか?」

レイト「じゃあ、その炎、俺が始末しておくわ。」

リムル「頼む。」

 

 俺は、吸収者を用いて、その炎を取り込む。

 どうやら、エクストラスキル、黒炎というらしい。

 そして、俺も変身解除する。

 リーダーは、訝しげな声を出す。

 

大鬼族「何者なんだ、お前達は?」

リムル「俺?俺はただのスライムさ。」

レイト「そして、俺は新たに生まれた種族、キメラさ。」

大鬼族「スライムにキメラ?」

リムル「そう。スライムのリムルに。」

レイト「キメラのレイトだ。」

 

 そう言って、俺たちは人間としての擬態を解く。

 それには、大鬼族達は、驚いた声を出す。

 ちなみに、リムルがスライムに戻った際に、バイスタンプホルダーが取れたが、俺が回収した。

 ちゃんと、シズさんのバイスタンプはあった。

 

大鬼族「ほ、本当に………!?」

リムル「ちなみに、この仮面は、ある(ひと)から託された物で、レイトの物は、これの複製品だ。」

レイト「何なら、俺たちの仮面が、お前達の里を襲った者と同じ物か、確かめても構わん。」

大鬼族「ああ………。」

 

 大鬼族は、俺たちから仮面を受け取って、それを検分する。

 

大鬼族「似ている気はするが………。」

大鬼族「これには、抗魔の力が備わっている様です。」

大鬼族「しかし、あの時の魔人は、妖気(オーラ)を隠してはおらなんだ。」

大鬼族「では………。」

 

 誤解だと気付いたリーダーは、俺たちの前に跪く。

 

大鬼族「申し訳ない。どうやら、追い詰められて、勘違いをした様だ。どうか、謝罪を受け入れて欲しい。」

リムル「うむ。苦しゅうない。」

レイト「大丈夫だ。まあ、立ち話もなんだ。一先ず、村に戻るとしよう。君たちも来てくれ。」

 

 俺の言葉を聞いたリーダーは、驚いた表情を浮かべる。

 

大鬼族「良いのか?」

リムル「色々と事情を聞きたいしな。」

大鬼族「………そちらの仲間を、傷つけてしまったが………。」

レイト「そりゃあ、俺らも、そちらの仲間を傷つけてしまったからな。お互い様さ。死人が出なかったから、良しとしよう。」

リムル「それに、今日は、俺たちの村で宴会をやるんだ!人数が多い方が良いだろう?」

 

 俺は、大鬼族の動けなくなった面子に回復薬を使う。

 ちなみに、爺さんは、ゴブタに謝ったが、ゴブタは爺さんに恐怖していた。

 そして、理由も分からず戦いになってしまったが、何とか終結した。

 俺たちは、村へと戻っていく。




今回はここまでです。
橙色の大鬼族は、オリキャラです。
次回は、大鬼族達に名前をつけて、リザードマンのオリキャラも出す予定です。
レイトは、クローンライダーを作成しています。
ただし、シズさんの新しい肉体を作る方を優先している為、現在はトルーパー系列のライダーのみです。
研究所の配置は、後にベスターが作る研究所の近くです。
その為、ベスターの研究所は、拡張されます。
リバイス最新話の、狩崎の本音が聞けたのは、良かったです。
ただ、一輝は、大二とさくらでさえも忘れてしまう事に………。
どうなるんですかね。
ちなみに、レイトの見た目は、リムルの見た目を若干男寄りにした物です。
ここ最近、色んなリクエストが来て、とても嬉しいです。
色んな人が、これを見てくれてるので。
質問にあった、レイトのヒロインですが、未定です。


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第9話 オークロード

 ひょんな誤解から、大鬼族と戦闘になってしまった俺たちだが、誤解も解け、大鬼族を連れて、村へと戻る。

 宴が行われているが、現在、緊張感が凄まじかった。

 何せ、リムルに全員の視線が向けられていたからだ。

 

リムル「はむっ。」

 

 リムルが肉を口に入れると、全員が固唾を飲んで待っている。

 すると、リムルが震え出す。

 

リグルド「リ、リムル様………?」

リグル「お口に、合いませんでした……?」

 

 リグルドとリグルが不安そうにそう聞いてくる。

 でも、この反応なら。

 

リムル「うんっっっまぁぁい!」

 

 リムルがそう言うと、周囲から歓声が上がる。

 リムルは、人間の姿を得て、やっと味覚を得たのだ。

 それは美味いだろう。

 そこから、本当の意味で宴会ムードになっていた。

 みんな酒を飲んだり、食べ物を食べたりして大いに盛り上がる。

 俺も、焼き串を食べている。

 俺は、リムルに気を遣って、食べていなかったのだ。

 そんな中、俺は、カイジン、リグルド、リグルの三人と一緒に、大鬼族のリーダーから話を聞いていた。

 

カイジン「ぶっ〜!豚頭族(オーク)が、大鬼族(オーガ)に仕掛けてきただって?そんな馬鹿な!」

大鬼族「事実だ。」

カイジン「あり得るのか?そんな事?」

リグルド「分かりません。」

レイト「分かんないけど、異常なのは確かだな。」

ゴブタ「そんなにおかしい事なんすか?」

 

 俺たちがそう話してる中、ゴブタが肉を食べながらこちらに来る。

 

リグル「ゴブタ。」

カイジン「当然だ。大鬼族と豚頭族じゃあ、強さの桁が違う。格下の豚頭族が仕掛ける事自体、あり得ん。」

 

 確かに、俺が知るゲームだと、オークとオーガでは、オーガの方が強いというのが、お約束とも言えるのだから。

 すると、リーダーは、忌々しそうに言う。

 

大鬼族「だが、奴らは来た。いきなり俺たちの里を襲撃してきた。武装し、鎧を身につけ、森を埋め尽くす程の圧倒的な戦力。あの忌まわしい豚どもに………里は蹂躙され尽くしたのだ!」

カイジン「豚頭族が鎧を?」

大鬼族「ああ。人間の着用する様な、フルプレートメイルだ。」

 

 それを聞いた俺たちは、つぶやく。

 

レイト「だとすると……。」

リグルド「やはり、オークだけで動いているとは思えませんな。」

カイジン「オークたちがそんな高価なものを大量に用意できるわけがない。不自然だ。」

大鬼族「その通りだ。軍勢の中に、仮面をつけた魔人がいた。」

レイト「仮面の魔人………。」

大鬼族「あれは上位魔人だ。間違いない。」

 

 リーダーは、そう語った。

 なるほどな。

 

リグルド「そいつとリムル様とレイト様を間違え、戦いを挑んだという訳ですな?」

大鬼族「ああ。」

ゴブタ「……つまりどういうことっすか?」

リグル「豚頭族が誰か魔王の勢力のいずれかに与した、ということではないか?」

ゴブタ「なるほど……っす?」

 

 ゴブタは、リグルの説明を聞いても、いまいちピンと来ていない様だった。

 魔王と聞くと、シズさんが言ってた事を思い出す。

 シズさんは、魔王、レオン・クロムウェルによってこの世界に召喚された。

 無論、そいつとは限らないが。

 

カイジン「魔王か………。」

リグルド「しかし魔王が何故?」

大鬼族「分からぬ。はっきりしているのは、300人ほどいた同胞は、たった7人しか残ってないということだ。」

リムル「なるほどな。そりゃあ、悔しいわけだ。」

レイト「リムル。」

 

 リムルは、そう言いながらこちらに来る。

 

大鬼族「肉はもう良いのか?リムル殿。」

リムル「ちょっと食休み。………お前の妹、凄いな。」

大鬼族「うん?」

 

 そう言うリムルの視線の先には、ホブゴブリン達に囲まれたリーダーの妹さんだった。

 

リムル「薬草や香草に詳しくて、あっという間にゴブリン達と仲良くなった。」

大鬼族「箱入りだったからな。頼られるのが嬉しいんだろう。」

リムル「………で、お前ら、これからどうすんの?」

大鬼族「どう………とは?」

リムル「今後の方針だよ。」

レイト「確かにな。再起を図るにせよ、他の地に移り住むにせよ、仲間の命運は、君の采配にかかってるはずだろ?」

 

 ちなみに、紫色の髪の大鬼族と橙色の大鬼族は、ゴブリンたちと一緒に踊っていて、黒の大鬼族は、肉を豪快に食べていた。

 

大鬼族「知れた事。力を蓄え、再度挑むまで。」

リムル「当てはあるのか?」

大鬼族「うっ………。」

 

 リーダーは、何も考えていないのか、リムルの問いには答えず、酒を飲む。

 思念伝達で、リムルと話し合う。

 

レイト『これ、完全にノープランだよな?』

リムル『だな………。ちょっと、提案してみるか。』

レイト『何を?』

リムル『まあ、見てろって。』

 

 リムルがそう言うと、リーダーに提案する。

 

リムル「…………提案なんだけどさ、お前たち全員、俺たちの部下になる気はあるか?」

大鬼族「なっ………部下?」

リムル「まっ、俺たちが支払うのは、衣食住の保障のみだけどな。」

レイト「拠点があるのと無いのとだと、大分違うだろ?」

大鬼族「しかし………それでは、この街を俺たちの復讐に巻き込む事に………。」

リムル「まあ、別に、お前たちの為だけって訳じゃ無い。」

レイト「数千の武装した豚頭族が攻めてきたんだろ?誰か魔王が糸を引いているかも知れない。」

 

 俺がそう言うと、リグルドが口を開く。

 

リグルド「豚頭族どもは、このジュラの大森林の支配権を狙っているやもしれませんな。」

リムル「うん。この街だって、決して安全とは言えないだろうな。」

レイト「そんな訳で、こちらとしても、戦力は多いに越したことはない。」

リムル「それに、もし、お前たちに何かあったら、俺たちも一緒に戦う。俺たちは、仲間を見捨てない。」

レイト「ああ。」

大鬼族「なるほど………。少し、考えさせてくれ。」

レイト「分かった。じっくり考えてくれ。」

リムル「さてと、俺はもう少し、肉を貰ってこようかな。」

レイト「俺も。」

 

 俺とリムルは、肉を貰いに行く。

 そんな中、リーダーは森の中を歩いていて、青色の髪の大鬼族と橙色の髪の大鬼族が、リーダーに話しかける。

 

大鬼族「悪い話では無い。」

大鬼族「だけど、決めるのは、貴方自身だよ。我らは、貴方と姫様に従うから。」

 

 二人の大鬼族は、リーダーにそう声をかけて、リーダーは奥に向かっていく。

 その翌日、俺とリムルが居る天幕に、リーダーがやって来る。

 

リムル「………決めたのか?」

大鬼族「大鬼族の一族は戦闘種族だ。人に仕え、戦場を駆ける事に抵抗はない。主達が強者なら、尚の事喜んで仕えよう。」

レイト「ああ。」

大鬼族「契約は、豚頭族の首魁を討ち滅ぼすまでで良いか?」

リムル「その後は、自由にしてもらって構わない。」

レイト「俺たちに協力して国を作るのも良いし、旅立つのも選択肢にあるな。」

 

 俺とリムルの言葉を聞いたリーダーは、息を吐いて、その場に跪く。

 

大鬼族「昨夜の申し出、承りました。あなた様方の配下に、加わらせて頂きます。」

リムル「うむ。」

レイト「ああ。」

 

 何だか、弱味に付け込む様な形になってしまったな。

 この決断は、自分の不甲斐なさを飲んだ、一族の頭としての物だろう。

 俺たちは、人間態になる。

 

リムル「顔を上げろ。」

レイト「君達を受け入れる。皆をここに呼んでくれ。」

大鬼族「はっ。」

 

 そう言って、リーダーは、残りの大鬼族達を呼びに行った。

 俺とリムルは。

 

レイト「リムル。」

リムル「ああ。俺たちに出来る事は、あの頭の決断を、悔いなき物にしてやるだけだ。」

レイト「だな。」

 

 しばらくすると、残りの大鬼族達がやって来る。

 俺とリムルは、思念伝達で話し合う。

 

レイト『彼らにも、名前をやるか?』

リムル『だな。俺が、頭と妹と紫色と青色の奴を名付ける。』

レイト『じゃあ、残りは俺がやるわ。』

リムル『頼むわ。』

 

 そんな風に話し合った後、リムルが口を開く。

 

リムル「俺たちの配下になった証に、名をやろう。」

大鬼族一同「あっ………。」

大鬼族「俺たち、全員に………?」

リムル「名前がないと不便だろ?」

大鬼族「しかし………。」

大鬼族「お待ちください。名付けとは本来、大変な危険を伴う物。それこそ、高位の………。」

レイト「大丈夫だ。」

大鬼族「ですが………。」

 

 おそらく、姫様が言いたいのは、低位活動状態(スリープモード)の事だろ?

 今回も、分担して行うから、問題ないだろ。

 

リムル「それとも、俺達に名前を付けられるのは嫌か?」

大鬼族「そういう事では………。」

大鬼族「異論などない。」

大鬼族「お兄様………。」

大鬼族「ありがたく頂戴する。」

大鬼族「若がそう言うのなら。」

リムル「うん。じゃあ、始めよう。」

レイト「君は………ああ。」

 

 俺とリムルが、大鬼族達に名付けをすると、気を失ってしまう。

 しばらくすると、声が聞こえて来る。

 

???「紫苑。そろそろ交代の時間です。」

紫苑「いいえ、姫様。リムル様のお世話は、私がします。どうぞ、お休みになってください。」

???「レイト様のお世話は、私がしましょう!」

???「紫苑に火煉ったら、もう。」

 

 何か、女の人の声が聞こえて来る。

 目を少しずつ開けていくと、人の姿が。

 

リムル「んっ………。」

レイト「んん………。」

紫苑「あっ………。」

「「「リムル様、レイト様、おはようございます。」」」

リムル「えっと………どちら様でしたっけ……?」

 

 あれ、記憶が曖昧だ。

 確か、大鬼族達に名付けをしようとしてたら、気を失った筈………。

 すると。

 

???「お目覚めになられたか、リムル様、レイト様。」

リムル「ん?」

レイト「大鬼族の若様だよな?」

紅丸「はっ。今は進化して鬼人となり、頂戴した名の、紅丸を名乗っています。」

 

 そうだ。

 名付けをした途端、スリープモードになったんだったな。

 どういう事だ?

 ていうか、鬼人?

 大鬼族じゃなくて?

 すると、科学者が答える。

 

科学者『鬼人とは、大鬼族の中から稀に生まれる種族の事です。』

レイト『へぇ………。』

 

 俺はそう言いながら、紅丸を見る。

 体は一回り小さくなったが、うちに秘められた魔素量が増大している。

 リグルドショックの再来だな。

 すると、姫様が話す。

 

朱菜「リムル様、レイト様、朱菜です。お目覚めになられて、本当に良かった。」

 

 姫様は、更に美少女になった感じだな。

 紫色の髪の大鬼族と橙色の髪の大鬼族が俺とリムルに話しかける。

 

紫苑「紫苑です。リムル様に付けて頂いた名前、とても気に入っています。」

火煉「火煉です。レイト様に名付けてもらったこの名前、とても気に入っています。」

 

 紫苑の方は、野生味が薄れて、知的な感じになったな。

 火煉もまた、野生味が薄れ、知的な感じになっているな。

 ていうか、二人とも、おっぱいがでかい。

 

レイト「紅丸の後ろに控えているのは、白老だったな。リムルの首を飛ばそうとした。」

白老「ホッホ、いじめてくださいますな。一瞬で貴方に対応され、焦ったのはこちらでしたぞ。」

 

 白老は、鬼人へと進化した影響か、大分若くなった気がするな。

 で、紅丸の隣に居るのが………。

 

レイト「確か、蒼影だったな。」

蒼影「はっ。ご回復、お喜び申し上げます。リムル様、レイト様。」

 

 蒼影は、イケメンになってるよ。

 すると、科学者が説明する。

 

科学者『上位の魔物に名付けをすると、それに見合う魔素を消費します。』

レイト『そういうの、早く言って欲しかったなぁ。』

 

 俺がそう思う中、一人居ない事に気づく。

 

リムル「ん?あと1人はどうした?」

紅丸「ああ。奴は、カイジン殿の工房に入り浸ってて………。」

???「リムル様とレイト様が目覚めただべか。」

リグルド「おっ、来た様ですな。」

 

 どんな風になってるんだろうな。

 もしかして、ダンディな風になってたり。

 

???「リムル様、レイト様!」

「「ん?」」

???「元気になって、良かっただよ。」

「「おお!」」

黒兵衛「分かっかな?おら、黒兵衛だ。」

 

 普通におっさん!

 何か、ホッとするな。

 

レイト「仲良くしような、黒兵衛!」

黒兵衛「んだ!」

 

 俺たちがそうしている中、ジュラの大森林に起こった異変は、確実に侵食を続けていた。

 一方、ジュラの大森林の中央に広がるシス湖。

 その周辺には、湿地帯が広がっていて、蜥蜴人族(リザードマン)が支配する領域となっている。

 

蜥蜴人族「ほ、報告します!シス湖南方にて、豚頭族の軍勢を確認!我ら、蜥蜴人族の領域への侵攻と思われます。」

首領「豚頭族だと?戦の準備をせよ。豚ごとき、蹴散らしてくれるわ。」

親衛隊長「数はどのくらいなのだ?」

蜥蜴人族「それが………。」

副隊長「どうした?歯切れが悪いぞ。早く言え。」

蜥蜴人族「それが………豚頭族の軍勢、その数………およそ20万………。」

 

 その言葉に、親衛隊長と副隊長が叫ぶ。

 

親衛隊長「バ………バカな!?我々の20倍もの軍勢だと?」

副隊長「ちゃんと確認したのか?」

蜥蜴人族「魔力感知と熱源感知で、何度も確認しました。この命に賭けて、真実であります。」

首領「………ご苦労。下がって休むが良い。」

蜥蜴人族「はっ。」

 

 首領がそう言うと、偵察部隊は、下がっていく。

 首領は呟いた。

 

首領「20万だと………?そのバカげた数の豚どもの胃袋をどうやって、満足させる事が出来ると言うのだ?」

側近「そもそも奴らは、勝手気ままで、協調性のない連中。」

側近「20万などと言う途方もない数を、統率出来ようはずもない。」

側近「噂ですが、豚頭族の軍勢が、大鬼族の里を滅ぼしたとか。」

「「何だって!?」」

 

 側近達が、その噂に驚く。

 そんな中、首領がポツリと呟く。

 

首領「豚頭帝(オークロード)。」

部下達「あっ………。」

首領「20万もの軍勢をまとめ上げている豚頭族が居るのならば……伝説のユニークモンスター、豚頭帝の存在を疑わねばなるまい。」

親衛隊長「ん………。」

副隊長「豚頭帝………。」

 

 首領の言葉に、側近達が騒めく。

 

側近「オ………豚頭帝。」

側近「いや………しかし………。」

側近「だが、万が一そうであるなら、豚頭族どもが、大軍をまとめ上げる事ができた理由の説明はつきますな。」

側近「しかし、その目的は………?」

側近「そんな事はどうでもよろしい!問題は勝てるかどうかですぞ!」

 

 側近達がそう言う中、首領が口を開く。

 

首領「本当に豚頭帝が生まれたのだとすれば、勝利は厳しいだろう。」

 

 その言葉に、部下達が騒めく。

 首領は、言葉を紡ぐ。

 

首領「豚頭帝は、味方の恐怖の感情すらも食らう、正真正銘の化け物なのだからな。………可能性の話だ。………だが、打てる手は全て打つべきだ。」

親衛隊長「打てる手………。」

副隊長「と言いますと?」

首領「援軍を頼むべきだろうな。………息子よ!我が息子はおるか?」

 

 首領がそう叫ぶと、その息子が現れる。

 

ガビル「ここにおりますよ。………ですが、親父殿。その呼び方は、些か不粋ではありませぬか?我輩には、ガビルというゲルミュッド様から頂いた名前があるのですから。」

 

 そう、ゲルミュッドは、この蜥蜴人族にも、ガビルという名前を付けていたのだ。

 

首領「呼び方など、どうでも良かろう。」

 

 首領がそう言う中、ガビルの妹である親衛隊長とガビルが目を合わせる。

 副隊長は、ガビルの幼馴染だ。

 

首領「お前にやってもらいたい事がある。」

ガビル「………伺いましょう。」

 

 一方、俺たちは、白老がゴブタ達をしごいているのを見ていた。

 理由は、ゴブタがお気楽に剣術を習いたいと言ったからだ。

 

白老「ほらほら!打ち返してこんか!」

 

 そう言って、ゴブタ達を滅多打ちにする。

 まさに鬼コーチだな。

 すると、紅丸がある話をする。

 

リムル「豚頭帝?」

レイト「何だそれ?」

紅丸「まあ、簡単に言うと………化け物です。」

リムル「本当に簡単だな。」

紅丸「数百年に一度、豚頭族の中に生まれると言われている、ユニークモンスターです。」

レイト「ユニークね………。」

紅丸「何でも、味方の恐怖の感情すらも食う為、異常に高い統率能力を持つんだとか。」

リムル「うへぇ………。」

紅丸「里を襲った豚頭族どもは、仲間の死にまるで怯む事が無かった。あるいは………と思いまして。」

レイト「なるほど………。」

 

 恐怖の感情すらも食うって、やばいな。

 つまり、死という恐怖に怯まない無敵の軍隊が出来るわけだ。

 やばいな。

 

紅丸「まあ、可能性で言えば、非常に低い話です。」

リムル「ふ〜ん?」

レイト「他に、里が襲われる理由に心当たりはないか?」

紅丸「そうですね。関係あるから分かりませんが、襲撃の少し前に、ある魔人が里にやってきて、『名をやろう。』………と言ってきたんですが、あまりに胡散臭かったので、追い返しました所、悪態をつきながら帰っていきましたね。」

 

 魔人か………。

 襲撃の際にも、魔人が居たという事は、関係ありそうだな。

 

レイト「魔人ね………。」

リムル「そいつから、恨みを買っているかもしれないって事か。」

紅丸「仕方ありませんよ。主に見合わなけりゃ、こっちだってごめんだ。名を付けてもらうのも、誰でも良いってわけじゃありませんからね。」

 

 紅丸のその言葉に、嵐牙も頷いていた。

 俺たちは、主に相応しいと認められたのか。

 それは嬉しいな。

 すると、紅丸が何かを思い出そうとする。

 

紅丸「なんて名前だったかな?確か………ゲラ、ゲリ、ゲレ、ゲロ?」

嵐牙「フッ!」

紅丸「ん?」

 

 嵐牙と紅丸が背後に視線を向ける。

 すると、木の影から、蒼影が現れる。

 

蒼影「ゲルミュッドだ。」

紅丸「そう、それだ。」

リムル「ゲルミュッド………。何か、どっかで聞いた事がある名前だな。」

レイト「確か、リグルの兄貴に、名前を付けた奴だったな。」

リムル「あちこちで名前を付けてんのか?なぜ?」

レイト「分からん。」

 

 どうやら、色んな場所で、ゲルミュッドという奴が暗躍しているみたいだな。

 すると、蒼影が報告する。

 

蒼影「報告がございます。リムル様、レイト様。」

レイト「ああ。」

蒼影「蜥蜴人族の一行を目撃しました。」

リムル「蜥蜴人族?豚頭族じゃなくて?」

蒼影「はい。湿地帯を拠点とする彼らが、こんな所まで出向くのは異常ですので、取り急ぎ、ご報告をと。」

リムル「ふ〜ん。」

蒼影「何やら、近くのゴブリン村で、交渉に及んでいる様でした。ここにも、いずれ来るかもしれません。」

レイト「分かった。」

 

 蜥蜴人族も、豚頭族の襲撃に備えようとしているのか?

 俺は、白老にコテンパンにされたゴブタ達を見ながらそう思った。

 一方、ガビル達は。

 

ガビル「全く、親父殿と来たら………。『ゴブリン村を巡り、協力を取り付けてこい。』……だと?豚頭族に恐れをなすなど、誇り高き蜥蜴人族の振る舞いとは思えぬ。昔は、あんなにも大きく偉大な男だったというのに。」

部下「ねぇねぇ、ガビル様は、いつ首領になるの?」

ガビル「む?」

 

 部下の質問に対して、ガビルが止まって答える。

 

ガビル「いやいや。少々不遜なことを言ってしまったが、我輩など、親父殿には遠く及ばんよ。」

部下「そうかな?今のガビル様なら、きっと全盛期の首領にも劣らねぇぜ。」

部下「然り。」

ガビル「いや………そんな事は………。」

部下「だって、ガビル様、名持ち(ネームド)だし。」

部下「うん。その槍捌きにおいて、右に出る者なし。」

部下「あんた、今立たないで、いつ立つんだよ?」

ガビル「えっ!?」

 

 部下達の言葉に、ガビルは満更でもない表情を浮かべる。

 

ガビル(うん………う〜ん………。えっ、何?ひょっとして………我輩ってば、結構いけてる?)

 

 そう思うガビルだった。

 ガビルは、咳払いをする。

 

ガビル「ううん!そうだな………親父殿も年だ。少々強引なやり方でも、我輩が支配者に足る力を持っている所を、お見せしよう。」

部下達「おお〜!」

ガビル「それでこそ、安心して引退していただけるという物。」

部下「じゃあ!」

ガビル「フフッ……!うむ!豚頭族の軍勢の撃退を持って、蜥蜴人族の首領の座を、受け継ぐ事にしよう!」

部下「さっすが、ガビル様だぜ!」

部下「ヒュ〜ヒュ〜!」

部下「かっくいい〜!」

部下「至極、当然。」

 

 部下達は、ガビルを煽てて、ガビルコールを始める。

 それを見て、ガビルは満更でもなさそうだった。

 

ガビル「フフフッ……。ふ〜ん。行くぞ!ふ〜ん!我輩に着いてこい!お前達の未来は明るい………ゲホッ!ゲホッ!」

部下達「おお〜!」

 

 ガビルはかっこつけた余り、咳き込んでしまうが、移動を再開する。




今回はここまでです。
蜥蜴人族のオリキャラを1人出しました。
この小説で、色んなリクエストが来て、嬉しいです。
それだけ、見てくれてるのだから。
現在、悩んでいるのは、レイトのヒロインを誰にするか、シズさんの新たなユニークスキルをどうするか、ジュウガのオリジナルフォームを出すかという感じです。
ヒロインの候補として上がっているのは、ヒナタ、悪魔三人娘です。
そして、ワルプルギスが終わった直後のオリジナルエピソードとして、電王とのクロスオーバーエピソードを投稿する予定です。
近いうちにやる逃走中で、神山飛羽真役の内藤秀一郎さんに、深海カノン役の工藤美桜さんが出るみたいですね。
次回も楽しみにして下さい。


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第10話 ガビル参上!

今回は、トレイニーが、豚頭帝の討伐を依頼するまでです。


 紅丸達が仲間になってから、数日が過ぎた。

 その間、俺は火煉を呼び出していた。

 

火煉「どうしましたか?レイト様。」

レイト「何。渡したい物があるんだ。」

火煉「渡したい物?」

レイト「ああ。これだ。」

 

 俺は、アタッシュケースを取り出して、火煉に渡す。

 

火煉「あの………これは?」

レイト「開けてみろ。」

火煉「はぁ………。」

 

 火煉は、少し戸惑いながら、アタッシュケースを開ける。

 そこには、ベイルドライバーとカブトバイスタンプが入っていた。

 

火煉「これ………レイト様が持ってる、バイスタンプですよね………?」

レイト「ああ。それを使えば、仮面ライダーベイルに変身出来る。」

火煉「ベイル…………。」

 

 そう、実は、カブトバイスタンプ………というより、ベイルの力が、火煉と共鳴していたのだ。

 そこで、火煉に渡す事にした。

 

火煉「よろしいのですか………?」

レイト「ああ。それで、豚頭族を倒せる筈だ。」

火煉「ありがとうございます!」

レイト「ああ。ただ………。」

火煉「ただ………何ですか?」

レイト「その為には、ある作業をしないといけない。」

 

 それは、俺のキメラ細胞を、火煉に入れる事だ。

 それを聞いた火煉は、顔を赤らめていた。

 

火煉「つまり………レイト様の体の一部を、私に………?」

レイト「まあ、そうだ。」

 

 それを聞いた火煉は、やけに嬉しそうだった。

 何でだろ?

 火煉は了承して、俺は、移植者(ウツスモノ)を使い、キメラ細胞を移植する。

 何故、火煉の細胞と混ぜた物を使わないのか。

 それは、シズさんと火煉では、状態が違うからだ。

 シズさんは、イフリートによって延命されていたとはいえ、体は大分ボロボロだった。

 その為、直接埋め込んだら、シズさんの体が保たないから、シズさんの細胞とミックスした物を作っているのだ。

 火煉は、健康そのものなので、気にする事なく、そのまま移植する。

 ちなみに、科学者曰く。

 

科学者『告。個体名火煉にキメラ細胞の埋め込みが成功しました。この様子だと、拒絶反応は起こらないでしょう。』

 

 との事だった。

 その後、ベイルへの変身方法を教えた。

 ちなみに、ここ最近、リバイスドライバー、ツーサイドライバー、リベラドライバー、ウィークエンドライバーの作成が完了した。

 無論、バット、コブラ、クイーンビーのバイスタンプも作成できている。

 ただ、バリッドレックス、ボルケーノ、ローリング、サンダーゲイル、ギファードレックス、フィフティゲイル、ホーリーウィング、パーフェクトウィングに関しては、まだ力が足りないので、作成不能だ。

 あと、ジャンヌとアギレラの武器関連のバイスタンプである、クジャク、タートル、ハシビロコウ、トリケラ、バッファローに関しては、作成済みだ。

 俺と火煉は、朱菜の様子を見に行く事に。

 途中、リムルと紫苑と合流する。

 俺たちは、中へと入る。

 中には、朱菜、ガルム、ドルド、ミルドが居た。

 

リムル「すごいな。」

「「「「ん?」」」」

レイト「もう絹織物が出来たのか。」

朱菜「リムル様!レイト様!」

ガルム「ども。」

ドルド「こんにちは。」

ミルド「うん。」

リムル「やっぱ、喋らねぇ!」

レイト「喋らないんだ。」

 

 すると、朱菜がリムルの方へと寄っていく。

 そして、リムルを抱きしめる。

 

朱菜「いらして下さったんですね!リムル様!レイト様も!」

レイト「ああ。」

リムル「それで、どんな具合だ?」

朱菜「はい。カイジン様が作ってくださった織り機は、とても使いやすいです。」

リムル「そうか、良かった。」

レイト「この調子で、皆の衣類の製作を頼んだぞ。」

朱菜「はい!お任せ下さい!」

 

 すると、紫苑と火煉が口を開く。

 

紫苑「では、リムル様、レイト様。参りましょう。お昼が冷めてしまいます。」

火煉「っ!?レイト様!丁度、お昼を作ってきましたんで、食べませんか!?」

レイト「ああ。頼む。」

朱菜「あっ、紫苑、火煉。秘書のお仕事は、ちゃんと出来ているのですか?」

紫苑「勿論です、朱菜様。」

火煉「問題なく、行えています。」

 

 紫苑はリムルの、火煉は俺の秘書を名乗り出た。

 現在は、お互いの秘書兼護衛役だ。

 ただ、紫苑が料理を作ったという単語に、火煉は驚いた様な反応をしていたな。

 何か、嫌な予感がするな。

 すると、朱菜はリムルを掴む。

 

朱菜「フフフ………。私が、リムル様のお世話をしても良いのですよ?」

紫苑「いいえ、姫。それには及びません。私がきちんとお世話いたします。」

レイト「2人とも………?」

火煉「まあ、2人は置いておいて、私たちは先に戻りましょう。」

レイト「そうだな。」

 

 俺と火煉は、先に戻る事にした。

 それにしても、朱菜と紫苑って、リムル関連になると、張り合うんだよな。

 朱菜は、どちらかというと、リムル寄りだからな。

 まあ、気にする事はないか。

 戻ると、紅丸、蒼影、白老の三人がいた。

 

紅丸「ああ、これはレイト様。」

白老「お食事ですかな?」

レイト「ああ。俺は火煉に、リムルは紫苑に手料理をいただくよ。」

「「「うっ………!?」」」

 

 俺は、リムルの座席の隣に座る。

 気になったので、火煉に聞く事に。

 

レイト「なあ、何で、紫苑が手料理を作るって言うだけで、そんな反応をするんだ?」

火煉「…………実は、紫苑の手料理は、酷いのです。」

レイト「………マジで?」

火煉「マジです。」

 

 なるほど。

 だからか。

 でもまあ、料理が出来ないのは、仕方ないんじゃないか?

 

火煉「では、お持ちしますね。」

レイト「ああ。」

 

 俺は、ギフテリアンとしての姿から、人間としての姿になる。

 でも、火煉の料理は酷くないよな?

 すると、リムルを連れた紫苑が戻ってくる。

 

紅丸「………ああ、これはリムル様。」

白老「………お食事ですかな?」

リムル「ああ。紫苑が手料理を作ってくれたっていうのでな。」

「「「…………。」」」

 

 予め、俺から聞いていた事もあり、そこまで驚いていなかったが、冷や汗を垂らしていた。

 

リムル「お前達やレイトも一緒にどうだ?」

レイト「いや、俺は火煉が作ってくれたのを食べるから。」

紅丸「いや………俺は今、腹が減ってなくて………。」

白老「ええ。お茶だけで。」

蒼影「私は………。」

 

 蒼影がそう言うと、分身する。

 どうやら、分身のスキルを使えるみたいだな。

 

蒼影「村の周囲を、偵察に行って参ります!」

 

 そう言って、蒼影は逃げた。

 紅丸は冷や汗を流しまくり、白老は気配を消し始めた。

 リムルが紅丸達の反応に首を傾げる中、紫苑は料理を取りに行き、入れ替わりで火煉がやって来る。

 

火煉「お待たせしました。」

 

 そう言って、俺の目の前に置いたのは、鶏肉の肉団子と野菜がたっぷり入ったすまし汁だった。

 普通に美味そう。

 

レイト「それじゃあ、いただきます。」

火煉「はい!」

 

 俺は箸を取り、一口食べる。

 美味しい。

 

レイト「美味しいな!」

火煉「ありがとうございます!」

リムル「へぇぇ………美味そうだな。」

 

 すると、紫苑がやって来て。

 

紫苑「お待たせしました。さっ、召し上がれ。」

レイト(やっぱりかぁ………。)

火煉「……………。」

 

 紫苑の料理は、料理と言っていいのか、分からない代物だった。

 それを見た火煉は、口を抑えていた。

 すると、リムルから思念伝達が来て。

 

リムル『助けてくれ!レイト!!』

レイト『ごめん………無理。』

リムル『そんな!?』

 

 リムルからの助けを、俺は断った。

 ていうか、あんなもん食ったら、無事で済まないだろ。

 俺は、火煉の作ってくれたすまし汁を食べる。

 ていうか、紫苑の料理から、食材の怨念みたいなのが聞こえてくるぞ!

 すると、何を思ったのか、リムルは目を閉じて、スプーンを右斜め後方に突き出す。

 そこには、先程入ってきたゴブタの姿が。

 ゴブタは、スプーンを咥えると、顔を青ざめる。

 

ゴブタ「むぐっ………!?」

リムル「むぐっ………?」

ゴブタ「うっ、うぐっ………!ぐわぁぁ!!」

 

 すると、ゴブタは震えて、首を抑えながら床に倒れる。

 しかも、緑色の肌が、紫色になっていく。

 

リムル「ああっ………。」

レイト「うわぁ………。」

ゴブタ「うぐぐ………!」

火煉「……………。」

紅丸「……………。」

白老「……………。」

 

 それを見ていた俺たちは唖然となり、火煉、紅丸、白老は顔を青ざめ、口を抑えていた。

 まるで、新たな犠牲者が出てしまった事に恐れながら。

 しばらくすると、ゴブタの天に伸ばした手が、床に力無く倒れる。

 この場は、静寂が包まれる。

 紫苑がつぶやく。

 

紫苑「…………あれっ?」

火煉「紫苑………。」

リムル「紫苑。」

紫苑「は………はい!」

リムル「今後、人に出す飲食物を作る時は、紅丸の許可を得てからするように!」

 

 しれっと、紅丸が巻き込まれた。

 本当に、あれは酷い。

 食材の怨念が聞こえた気がするぞ。

 俺たちがそんな風にしている一方、蜥蜴人族(リザードマン)のガビルは、近隣のゴブリン村から、着実に協力を取り付けていた。

 尤も、豚頭族の侵略に恐れをなしたゴブリン達が、勝手に軍門に下ってるだけだが。

 

部下「う〜ん………。これで、総勢7千匹になりましたな。」

部下「さっすが、ガビル様!交渉も上手!」

ガビル「いやいや、精一杯やって、たまたま結果が出ているだけの事。」

 

 ガビルは、部下の褒めに、謙遜した態度をとる。

 すると、別の部下が、口を開く。

 

部下「謙遜すんなよ。実力だよ。」

部下「そうですよ!もっと自信を持ってくださいよ!」

部下「然り。次期、蜥蜴人族の首領なのだからな。」

ガビル「そ………そうか?」

 

 部下からそう言われたガビルは考える。

 

ガビル(やっぱり、我輩………いけてるのかもしれん!)

 

 ガビルはそんな風に思い、部下達に話しかける。

 

ガビル「あ〜。それで、次はどこに向かうのだ?この辺りに、他に村はあるのか?」

部下「もう一つ、集落があるって話ですよ。」

部下「しかし、先ほどの村の者が、おかしな事を言っておった。」

ガビル「おかしな事?」

 

 ガビルが、三人の部下の真ん中の青色の蜥蜴人族に尋ねる。

 

部下「何でも、牙狼族を操るゴブリンの集落だとか。」

ガビル「はあ?ゴブリンが牙狼を?そんな訳ないだろう。」

部下「ごもっとも。更に言えば、そのゴブリン達の親玉、スライムとキメラという新種の魔物だという。」

ガビル「はあ?」

 

 ガビルは、その言葉に耳を疑った。

 スライムは、色んな魔物の食糧になり、キメラという魔物は聞いた事がないからだ。

 

ガビル「状況がよく分からぬが………。ならば!そのスライムとキメラを支配下に置けば、牙狼族をも支配出来るという事だな。」

部下「おおっ!」

部下「一石二鳥!」

部下「なんて奥深い考えだ!やはり、あんたについてきて良かったぜ!」

ガビル「フフッ。我輩に任せておくがいい!」

部下「いよっ!ガビル様!あっ、そ〜れ!」

『ガビル!ガビル!ガビル!ガビル!』

ガビル「フフフ………!フフフフ………!ヌア〜ハッハッハッ!!」

 

 部下達がガビルコールをして、手拍子も、ガビルが乗っている竜もする。

 それには、ガビルは高笑いを浮かべる。

 俺たちの村に向かうようだ。

 一方、俺とリムルは、カイジンと黒衛兵が話し合うのを見ていた。

 

カイジン「へぇ〜………。焼き入れんの時の温度、勘なのかい?」

黒衛兵「んだ。火の色を見れば、大体分かるだよ。」

カイジン「俺は、測るなあ………。」

黒衛兵「おらも戻しの時は、きちっと測るだよ。」

カイジン「ああ。外が寒いと、粘りが出ねぇからな。」

 

 それを見ていた俺とリムルは。

 

リムル『黒衛兵、すっかりカイジンと意気投合してるよな。』

レイト『ああ。二時間も、専門的な会話が続くくらいにはな。』

黒衛兵「あっ、それだったら、おらがいい土を教えてやるだ。」

カイジン「それはありがてぇ。」

 

 そんな俺たちは、うっかり中座するタイミングを逃して、今に至る。

 すると、カイジンと黒衛兵は、こちらを見てくる。

 

カイジン「なっ?」

黒衛兵「鍛造って、面白いべ。」

リムル「おっ………おう。」

レイト「そうだな。」

 

 カイジンと黒衛兵は、そんなふうに言い、再び専門的な会話に戻る。

 すると、リグルドが入ってくる。

 

リグルド「リムル様とレイト様はいらっしゃいますかな?」

リムル「ナイスタイミング!」

レイト「どうした?リグルド。」

リグルド「リムル様、レイト様。蜥蜴人族の使者が訪ねてきました。」

 

 蜥蜴人族の使者が遂に、この村にも来たか。

 俺とリムルは、リグルドと共に使者がいる場所に向かおうとすると。

 

紅丸「リムル様、レイト様。」

レイト「ん?」

紅丸「俺たちも同席して構わないか?蜥蜴人族の思惑が知りたい。」

リムル「勿論だ。」

レイト「ああ。」

 

 さて、蜥蜴人族は、何を考えているのか。

 敵なのか味方なのかを、見定めなければならないな。

 俺は、リムル、リグルド、紅丸、紫苑、火煉、白老と共に、蜥蜴人族の一団がいる場所へと向かう。

 そこには、蜥蜴人族が並んでいたが、使者が居ない。

 

リムル「どいつが使者だ?」

レイト「ん?」

 

 すると、蜥蜴人族達は、槍で地面を突く。

 すると、先頭に居た三人の後ろにいた蜥蜴人族達が、二つに分かれて、その奥から、竜みたいなのに乗った蜥蜴人族が現れる。

 随分と芝居かかった登場だな。

 すると、その使者が槍で地面を突くのをやめさせて、大きくジャンプする。

 

ガビル「我輩は、蜥蜴人族のガビルである。お前らも配下に加えてやろう。光栄に思うが良い!」

部下「よっ!ガビル様!」

部下「最高!」

部下「かっこいい!」

部下「いかしてる!」

「「「「「「「はあ?」」」」」」」

 

 ガビルは、部下に盾の光の反射で自分を光らせるという、少し痛い演出をする。

 ていうか、配下に加わる?

 俺たちが?

 すると、1人の蜥蜴人族の部下が口を開く。

 

部下「ご尊顔をよ〜く覚えておくがよいぞ。このお方こそ、次の蜥蜴人族の首領となられる戦士!」

ガビル「ふ〜ん!」

部下「頭が高い!」

「「「「「「「はぁ?」」」」」」」

 

 なんだアイツ、偉そうに。

 何様のつもりだ。

 すると、リムルの方からミシミシという音が聞こえてきた。

 

リムル「えっ………ちょ………紫苑さん、やめて!スライムボディーが、スリムボディーになっちゃう〜!!」

紫苑「うう〜………!はっ………。」

リムル「うっ………。」

紫苑「すみません、すみません!」

 

 紫苑は、リムルを潰しそうになり、紅丸にリムルを持たせて、高速で謝る。

 火煉は、青筋を立てていた。

 一方、リグルドは、ガビルに話しかけていた。

 

リグルド「ゴホン!恐れながら、ガビル殿と申されましたかな。配下になれと突然申されましても………。」

ガビル「やれやれ。皆まで言わねば分からんか?貴様らも聞いておるだろう?」

レイト「豚頭族の侵攻に関してか?」

ガビル「どうやら、話が分かる奴が居るようだな。」

 

 やっぱり、そんな所か。

 どうやら、蜥蜴人族達も、豚頭族の事を脅威に感じているみたいだな。

 

ガビル「しからば、我輩の配下に加わるが良い。このガビルが、貧弱なお前達を、豚頭族の脅威より守ってやろうではないか!貧弱な……貧弱……貧弱………ワオ〜。」

 

 ガビルは、俺たちを見ながら、そう言う。

 まあ、この村は、貧弱な奴は居ないからな。

 ちなみに、ガビルは、紫苑と火煉のおっぱいを見て、ワオと言った。

 すると、ガビルはしゃがみ、部下達と話し合う。

 

ガビル「ゴブリンが居ないようだが………。」

部下「あれ〜?」

部下「ここは確かに、ゴブリンの村のはず………。」

部下「っていうか、貧弱な奴が誰も居ないよ。」

 

 そんな風にガビル達は話し合っていた。

 俺とリムルは、思念伝達で話し合う。

 

レイト『どう思う?リムル。』

リムル『まあ、豚頭族が攻めてくるのなら、蜥蜴人族との共闘ってのも、選択肢の一つではあるんだが………。』

レイト『アイツに背中を預けるのはなぁ………。』

リムル『真に恐れるべきは、有能な敵ではなく、無能な味方であるって………ナポレオンの言葉だっけ?』

レイト『うん。その言葉は、ナポレオンの名言だな。』

 

 そんな風に話している中、ガビルが咳払いをする。

 

ガビル「ああ〜ゴホン!聞けばここには、牙狼族を飼い慣らした者達が居るそうだな。その2人は幹部に引き立ててやる。連れてくるがいいぞ。」

 

 そんな風に言うと、紫苑が再びリムルを強く握りしめる。

 すると、紅丸が良い笑顔で。

 

紅丸「コイツ、殺して良いですか?」

リムル「フッ………良いよ。」

レイト「何許可出してんだ!ストップ!」

火煉「レイト様。」

レイト「ど、どうした、火煉。」

火煉「私のベイルの力で、この者達を一掃して良いですか?」

レイト「後々面倒臭いからやめろ!」

 

 紅丸と火煉が、そんな風に言うもんだから、俺は必死に抑える。

 

リムル「えっと………。」

レイト「牙狼族を飼い慣らしたっていうか、仲間にしたのは、俺たちなんだけど………。」

ガビル「スライムとキメラが?冗談を言うでない。」

レイト「ん………。」

リムル「嵐牙。」

嵐牙「はっ!ここに!」

 

 リムルが嵐牙の名を呼ぶと、紫苑の影から、嵐牙が現れる。

 それも、本来の大きさの。

 

レイト「お前に話があるそうだ。」

リムル「聞いて差し上げろ。」

嵐牙「御意!ふん!」

 

 嵐牙は、スキル・威圧を発動して、周囲の蜥蜴人族は威圧に怯える。

 

紅丸「あれっ?あんなにデカかったですかね?」

リムル「アレが本当の大きさなんだよ。」

レイト「まあ、威嚇するには、あのサイズの方が何かと都合が良い。」

火煉「なるほど………。」

 

 紅丸の疑問に、俺とリムルがそう答えると、火煉が納得する。

 嵐牙は、ガビルに話しかける。

 

嵐牙「主達より、お前の相手をする命を受けた。聞いてやるから、話すが良い。」

ガビル「…………貴殿が、牙狼族の族長殿か?」

 

 へぇ。

 他の奴が萎縮してる中、平然としているな。

 根性があるのか、鈍いかのどちらかだが。

 

ガビル「美しい毛並み。鋭い眼光。流石、威風堂々たる佇まい。しかし………主がスライムとキメラとは、些か拍子抜けであるな。」

リムル「ああん?」

レイト「あ?」

 

 どうやら、後者の方だな。

 鈍い奴だ。

 嵐牙も、怒っているのか、目を細める。

 

ガビル「どうやら、貴殿は騙されておるようだ。よかろう。この我輩が、貴殿を操る不埒者を、倒して見せようではないか!」

部下「ガビル様、かっけ〜!」

部下「見せてやって下さいよ!ガビル様!」

部下「ガビル無双を!」

部下「あっ、そ〜れ!」

部下達『ガビル!ガビル!ガビル!ガビル!』

 

 部下達が、ガビルコールをして、ガビルはポーズを取る。

 すると、嵐牙が呟く。

 

嵐牙「蜥蜴風情が………!我が主達を愚弄するか………!!」

リムル(あっ、やばい。)

レイト(アイツ、死んだな。)

 

 ガビルがポーズを取る中、嵐牙は周囲から赤いオーラを出しつつ、目を光らせて、ガビルに迫っていく。

 すると、後ろから鼻歌が聞こえてくる。

 

ゴブタ「て〜ん、てってって〜ん!」

嵐牙「グワァァァ!!」

 

 嵐牙が咆哮を出す中、ゴブタが後ろから現れる。

 

ゴブタ「お〜おいっ、何やってるんっすか?」

紅丸「ゴブタ!?」

リムル「お前、生きてたのか?」

レイト「死んだかと思った。」

ゴブタ「ま〜たまた、酷いっす。ちゃんと生きてるっすよ。」

 

 どういう事?

 そう首を傾げていると、科学者が伝える。

 

科学者『告。個体名紫苑の手料理に抵抗して、毒耐性を獲得したようです。』

 

 え、毒耐性?

 という事は、紫苑の料理は、毒があるのか?

 ていうか、俺とリムルは、毒耐性なんて持ってないのにな。

 そんな風に青褪めていると、嵐牙がゴブタを咥える。

 

嵐牙「いい所へ来たな。」

ゴブタ「えっ?」

 

 すると、嵐牙はゴブタに槍を持たせ、ガビルの前に置く。

 

ゴブタ「えっ?へっ?何すか、この状況!?」

嵐牙「蜥蜴。」

ゴブタ「ええっ?れ

嵐牙「この者を倒せたのなら、貴様の話、一考してやろう。」

ゴブタ「な………何で?」

 

 嵐牙、意外と冷静だな。

 まあ、嵐牙が相手をすると、ガビルが死ぬからな。

 すると、ガビルがゴブタを侮ったのか、口を開く。

 

ガビル「構いませんぞ。部下にやらせれば、恥はかきませんからな。なあ、スライム殿にキメラ殿。」

レイト「ムカッ。」

 

 よし、言ったな。

 じゃあ、ゴブタには、遠慮なく行かせてあげよう。

 

リムル「ゴブタ!遠慮はいらん!やったれ!」

ゴブタ「ええっ!何なんすかもう………。」

レイト「お前が勝ったら、黒衛兵に頼んで、お前専用の武器を作ってやるよ!」

ゴブタ「ああっ!ほんとっすか?ちょっとやる気出たっす。」

リムル「負けたら、紫苑の手料理の刑な!」

ゴブタ「それだけは勘弁っす〜!」

 

 リムルの言葉に、ゴブタは、オーラを出してやる気になる。

 その言葉に、俺、火煉、紅丸、リグルドが顔を青褪め、当の本人は。

 

紫苑「何やら、非常に不愉快な会話です。」

 

 そう言われたもんだから、紫苑はリムルを捻る。

 今のは、リムルが悪い。

 ていうか、紫苑の奴、自分の料理が最悪なのを自覚してないのか!?

 ガビルは、槍を振り回す。

 

ガビル「ふ〜ん!」

部下達『ガビル様〜!』

ガビル「準備は良いかな?」

ゴブタ「おお〜!」

嵐牙「では、始めろ!ワオ〜ン!!」

 

 嵐牙は、試合開始の咆哮を出す。

 ガビルは、ゴブタを侮っていた。

 

ガビル「フッ………。偉大なるドラゴンの末裔たる我ら、蜥蜴人族が、ホブゴブリンなんぞに………。」

ゴブタ「ふ〜ん!」

ガビル「ん?」

 

 そんな事を口にする中、ゴブタは自分が持つ槍を思いっきりぶん投げる。

 

ガビル「ぬおっ!?」

 

 その槍は、ガビルには当たらずに、部下達の目の前の地面に突き刺さる。

 

ガビル「おのれ!小癪な!」

 

 ガビルはそう言って、槍をゴブタに向かって振るうが、既にゴブタは居ない。

 

ガビル「あっ………。バカな、消え………たあァァァァァ!!ァァァァ………ふん。」

 

 ガビルは、背後に現れたゴブタの回し蹴りを頭にくらい、そのまま気絶する。

 部下の蜥蜴人族達は、呆然とする。

 まさか、ゴブタの奴、影移動を使いこなしているとはな………。

 

ゴブタ「ハァ〜………。」

嵐牙「終わりだな。勝負あり!勝者ゴブタ!」

紅丸「おっしゃ!」

リグルド「よ〜し!」

紫苑「やった!」

火煉「ええ。」

 

 すると、嵐牙とリグルドが、ゴブタを胴上げする。

 

リグルド「わっしょい!」

ゴブタ「アハハ………!」

リグルド「わっしょい!」

ゴブタ「高いっす!」

嵐牙「さすがは、ゴブタ!我が見込んだだけの事はある!」

リグルド「ようやった!ホブゴブリンの力を、よくぞ見せつけた!」

紫苑「見直したぞ。私に対する先ほどの失礼な発言は、聞かなかったことにしてやろう。」

火煉「見事です。貴方は強いですね。」

紅丸「俺たちと戦った時より、強くなっている様だな。」

白老「鍛えがいのありそうな才能を持っている様ですじゃ。」

 

 どうやら、皆、ゴブタの勝利を確信してたみたいだな。

 それを見ていた俺たちは、思念伝達で話し合う。

 

リムル『まさかゴブタが勝つとは……。俺はてっきりいちゃもんつけてボコボコにするのかと。』

レイト『俺も。まあでも、良いじゃん。勝ったんだし。』

リムル『ああ。俺は空気の読める男だから、期待通りだったことにしよう。』

 

 そんな風に話し合って、俺はゴブタに声をかける。

 

レイト「よくやった!約束通り、黒衛兵に武器を頼んでおく!」

ゴブタ「やったっす!」

リムル「お前ら、勝負はゴブタの勝ちだ!」

部下達『…………ハッ!?』

 

 リムルがそう声をかけると、固まっていたガビルの部下達は、動き出す。

 

リムル「豚頭族と戦うのに協力しろという話なら、検討しておくが、配下になるのは断る。」

レイト「今日の所は、さっさとそこのソイツを連れて帰れ!」

 

 俺とリムルがそう言うと、部下達は、ガビルを抱える。

 

部下「い、いずれまた来るぜ!」

部下「然り、これで終わりではないぞ。」

部下「きっ!お………覚えてろ〜!!」

 

 そんな、三流の悪役が言うような捨て台詞を吐きながら、蜥蜴人族達は、走り去っていく。

 

リムル「さてと。」

レイト「俺たちも、今後の方針を立てないとな。」

 

 その夜、豚頭族を偵察しに行っていた蒼影、リグルド、レグルド、ログルド、リリナを始めとするゴブリン、カイジンを加え、会議をする事に。

 蒼影の報告に、俺たちは驚く。

 

蒼影「20万の豚頭族。その本隊が、大河に沿って北上している。そして、本隊と別動隊の動きから予想できる合流地点は…………ここより東の湿地帯。」

リグルド「つまり、蜥蜴人族の支配領域、と言う事ですな?」

蒼影「うん。」

リムル「20万か………。」

レイト「かなり多いな………。それにしても、豚頭族の侵攻目的はなんだ?」

 

 その言葉に、全員が考える。

 カイジンが口を開く。

 

カイジン「う〜ん………。豚頭族はそもそも、あまり知能の高い魔物じゃねぇ。この侵攻に、本能以外の目的があるってんなら、何かしら、バックの存在を疑うべきだろうな。」

黒衛兵「バックの存在だべか?」

リムル「例えば………。」

レイト「魔王とかか?」

 

 その言葉に、全員の視線が、俺たちに向く。

 

レイト「紅丸達の村に来た魔族、ゲルミュッドが関係しているなら………。」

リムル「………まっ、今の所、なんの根拠も無いが。」

 

 そう言って、思念伝達で話し合う。

 リムルのすぐ近くには、シズさんの魂が入ったバイスタンプが置かれている。

 それをチラリと見て。

 

リムル『魔王だとしても、そいつがシズさんを苦しめた、レオンっていう魔王だとは限らないしな。』

レイト『本当に絡んでいるかどうかは、分からないな。』

シズ『そうね………。』

 

 リムルと俺の言葉に、シズさんは頷く。

 どういう事かと言うと、バイスタンプには、疑似的な思念伝達が出来る様にしており、それで、会話が出来る様になっている。

 すると、紅丸が口を開く。

 

紅丸「魔王が絡んでいるかどうかは、分からん。だが………。」

リムル「だが?」

紅丸「豚頭帝(オークロード)が出現した可能性は強まったと思う。」

レイト「確か、数百年に一度、豚頭族の中から生まれる、ユニークモンスターだったか?」

紅丸「はい。20万もの軍勢を、普通の豚頭族が統率出来るとは思えませんから。」

リムル「ふむ………。」

 

 紅丸の言葉を聞いていると、リグルドが口を開く。

 

リグルド「居ないと楽観視するよりは、警戒するべきだと思います。」

リムル「そうだな。」

レイト「じゃあ、今後の方針も、豚頭帝が居ると仮定して、進めるべきだろうな。」

 

 リグルドの意見に、俺たちが頷いていると、蒼影の様子が変わる。

 

蒼影「あっ!」

リムル「どうした?」

蒼影「偵察中の分身体に、接触してきた者が居ます。」

レイト「接触?」

蒼影「リムル様とレイト様に、取り次いでもらいたいとの事。いかが致しましょう?」

リムル「誰だ?」

レイト「ガビルみたいな変な奴は、もうごめんだぞ。」

蒼影「変………ではありませんが、大変珍しい相手でして。その………樹妖精(ドライアド)なのです。」

一同『あっ………!』

リムル「樹妖精!?」

レイト「樹妖精って確か………。」

 

 ゲームだと、木の精霊みたいな存在だったな。

 すると、周囲が騒つく。

 

リグルド「樹妖精様が最後に姿を見せたのは、数十年以上前では無かったか?」

リムル「か………構わん。」

レイト「大丈夫なら、呼んでくれ。」

蒼影「はっ。」

 

 すると机の中心に強い風が起こる。

 紫苑、朱菜、火煉が俺たちの前に立つ中、蔦が伸びてきて固まり、そこから、1人の女性が現れる。

 鬼人達が俺たちの前で警戒する中、その樹妖精は口を開く。

 

トレイニー「魔物を統べる者と、複数の生物の力を宿す者、及びその従者たる皆様。突然の訪問、相すみません。私は、樹妖精のトレイニーと申します。どうぞ、お見知り置き下さい。」

リムル「俺は、リムル=テンペストです。で、そっちが………。」

レイト「レイト=テンペストです。えっと……トレイニーさん。いったい、なんの御用向きで?」

 

 俺とリムルは名乗り、俺が、トレイニーさんに用件を聞く事に。

 トレイニーさんは、口を開く。

 

トレイニー「本日は、お願いがあって、まかり越しました。」

リムル「お願い?」

レイト「それは、何ですか?」

トレイニー「リムル=テンペスト……魔物を統べる者、レイト=テンペスト……複数の生物の力を宿す者よ。貴方方に、豚頭帝の討伐を依頼したいのです。」

 

 トレイニーさんは、そう言った。




今回はここまでです。
火煉が、ベイルに変身します。
火煉は、料理は普通に出来ます。
ちなみに、レイトが作ったバイスタンプの中に、キングコブラバイスタンプがない理由は、レイトは、インビンシブルジャンヌの事を知らないからです。
いずれ、作るとは思いますが。
色んなリクエスト、ありがとうございます。
転スラで、ワルプルギスが終わった直後にオリジナルストーリーとして、電王とのクロスオーバーストーリーを投稿します。
リバイスも、遂に最終回ですね。
ちなみに、いずれ、リバイス、エビル及びライブ、ジャンヌ、アギレラの変身者を出す予定です。


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第11話 狂いゆく歯車

今回は、ガビルが、豚頭族が豚頭族を食べる光景を目の当たりにするまでです。


 突然現れた、樹妖精(ドライアド)のトレイニーさんは、俺たちに依頼をする。

 それは、俺たちに豚頭帝(オークロード)を討伐して欲しいとの事だ。

 

リムル「豚頭帝の討伐?」

レイト「ええと………俺たちがですか?」

トレイニー「ええそうです、リムル=テンペスト様、レイト=テンペスト様。」

 

 俺たちの質問に、そう答えるトレイニーさん。

 すると、紅丸が俺たちの前に出て言う。

 

リムル「ん?」

レイト「紅丸?」

紅丸「いきなり現れて………随分身勝手な物言いじゃないか。樹妖精のトレイニーとやら。なぜ、この町へ来た?ゴブリンよりも強い種族は居るだろう。」

 

 紅丸の質問に対して、トレイニーは閉じていた目を開きながら言う。

 

トレイニー「そうですわね。大鬼族(オーガ)の里が健在でしたら、そちらに出向いていたでしょう。」

鬼人達「おっ………。」

トレイニー「まあ、そうであったとしても……この方々の存在を、無視する事は、できないのですけれど。」

リムル「ん?」

レイト「……………。」

トレイニー「我々の集落が豚頭帝に狙われれば、樹妖精だけでは抵抗出来ませんの。………ですから、こうして強き者に助力を願いに来たのです。」

 

 なるほどな。

 それにしても、仮説だった豚頭帝が、実際に存在するとはな………。

 

リムル「豚頭帝が居るって事自体、俺たちの中では仮説だったんだけど………。」

レイト「よく、豚頭帝が居るって事が、分かりましたね。」

トレイニー「樹妖精は、この森で起きた事ならば、大抵把握しておりますの。……居ますよ、豚頭帝。」

 

 トレイニーさんは、そう言って、机の上に置いてあったポテチを食べる。

 それを聞いた一同は、騒めき出す。

 

リグルド「樹妖精様がお認めに………!」

カイジン「ならば、本当に………。」

 

 俺たちは、それを聞いて考え、答えを出す。

 

レイト「返事は少し待ってくれ。」

リムル「ああ。鬼人達の援護はするが、率先して、藪を突くつもりはないんだ。情報を整理してから、答えを出させてくれ。こう見えても、ここの主なんでな。」

レイト「俺は、副主です。」

トレイニー「あっ………フフッ………。」

 

 トレイニーさんも会議に参加する事になった。

 だが、リグルドとカイジンの間に座ったので、その2人が気まずそうにしている。

 

リムル「会議を続けるぞ。」

レイト「豚頭族(オーク)達の目的について、何か、意見がある人は居ないか?」

 

 俺たちがそう言うと、朱菜が声を出す。

 

朱菜「あ………。思い当たる事が一つあります。」

リムル「うん。」

レイト「何だ?」

 

 俺たちが朱菜にそう問うと、朱菜は蒼影に質問をする。

 

朱菜「蒼影。私達の里、調査してきましたか?」

蒼影「はい。」

朱菜「その様子では………やはり、無かったのですね。」

蒼影「はい。」

リムル「ん?」

蒼影「同胞の物も、豚頭族の物も、ただの一つも。」

レイト「まさか………死体か?」

蒼影「そうです。」

 

 その言葉に、俺はやはりと思った。

 少し、引っかかっていた事があったのだ。

 オークといえば、食欲旺盛なのがお約束なのだ。

 すると、紅丸が口を開く。

 

紅丸「20万もの大軍が食えるだけの食料を、どうやって賄っているのか疑問だったが……。」

リムル「それって、まさか………。」

レイト「豚頭族も、襲った種族の物も関係なく、食べてるって事だろうな。今、進軍中の豚頭族達は。」

 

 俺がそう言うと、周囲が驚く。

 そんな中、トレイニーさんが口を開く。

 

トレイニー「ユニークスキル、飢餓者(ウエルモノ)。」

リムル「飢餓者………。」

レイト「それは、具体的には、どんなスキルなんだ?」

 

 俺の質問に、トレイニーさんが答える。

 

トレイニー「世に混乱を齎す災厄の魔物、豚頭帝が生まれながらにして保有しているスキルで、豚頭帝の支配下にある全ての物に影響を及ぼし、イナゴの様に、周囲の物を食べ尽くす。食らった相手の力や能力までも取り込み、自分の糧とするのですわ。………あなた様方の捕食者と吸収者と、似ていますわね。」

 

 そう言いながら、俺たちを見る。

 それは、かなり厄介なスキルだな。

 確かに、俺の吸収者とリムルの捕食者と似ているスキルだな。

 ていうか、俺たちの保有しているスキルの事も知ってるのかよ。

 トレイニーさんは、話を再開する。

 

トレイニー「飢餓者の代償は、満たされる事のない飢餓感。豚頭族達は、果てしない飢えを満たし、力を得る為だけに進むのですわ。ただそれだけが、彼らの王の望み故に………。」

 

 そう言って、お茶を飲む。

 俺とリムルは、思念伝達で話し合う。

 

レイト『リムル。豚頭族達の狙いは……。』

リムル『ああ。大鬼族や蜥蜴人族(リザードマン)といった森の上位種族を滅ぼす事ではなく、その力を奪う事………か?』

レイト『そう考えるのが、妥当だろうな。』

 

 そうなると、ここも安全ではない。

 リムルが伸びをして、口を開く。

 

リムル「さて、となるとだな。うちも安全とは言い難いな。嵐牙狼族(テンペストウルフ)に鬼人、ホブゴブリン。」

レイト「確かに、味はともかく、豚頭族達の欲しがりそうな力を持った餌だらけだな。」

 

 リムルと俺がそう言うと、紅丸が苦笑しながら言う。

 

紅丸「1番、奴らの食いつきそうな餌を、忘れてやいませんか?」

リムル「あ〜?」

紅丸「居るでしょう。最強のスライムと、それと同格の新たな種族が。」

レイト「…………どこにだ?」

紅丸「ハハッ………。」

 

 紅丸の指摘に、俺たちは受け流す。

 そりゃあ、俺って、仮面ライダーだけど。

 でも、俺は、味はかなり不味いんじゃないか?

 そんな中、トレイニーさんが口を開く。

 

トレイニー「それに………豚頭帝誕生のきっかけとして、魔人の存在を確認しております。あなた様方は、放っておけない相手かと思いますけど。」

リムル「魔人か………。」

トレイニー「いずれかの魔王の手の者ですからね。」

レイト「うむ…………。」

 

 さっき、トレイニーさんは、森で起きた事は、大抵把握していると言っていたな。

 という事は、イフリートが暴走して、それをリムルが捕食して、俺がシズさんを助けたのを把握している事になる。

 食えない姉ちゃんだな。

 すると、トレイニーが立ち上がる。

 

トレイニー「リムル=テンペスト様。レイト=テンペスト様。改めて、豚頭帝の討伐を依頼します。暴風竜ヴェルドラの加護を受け、牙狼族を下し、鬼人を庇護するあなた様方なら、豚頭帝に後れを取ることはないでしょう。」

「「う〜ん…………。」」

 

 俺は、科学者に聞いてみる。

 

レイト『科学者、どう思う?トレイニーさんを信用して良いのか?』

科学者『樹妖精は、ジュラの大森林の管理者。不届きな者、森に対し害意を持つ者に対し、天罰を下す存在とも言われています。』

レイト『天罰………。でも、相手は20万だしなぁ………。』

 

 戦力差が否めないな。

 すると、紫苑と火煉の声が聞こえる。

 

「「当然です!!」」

リムル「うえっ………。」

レイト「火煉さん………?」

紫苑「リムル様とレイト様ならば、豚頭帝など、敵ではありません!」

火煉「そうです!お二人ならば、豚頭帝を倒してみせるでしょう!」

トレイニー「うわぁ!やはり、そうですよね。」

 

 この2人は、勝手に………!

 俺とリムルは、思念伝達で話し合う。

 

レイト『リムル。これは………腹を括るしかないよな。』

リムル『だな………。』

 

 リムルは、スライムとしての姿に戻り、紫苑がキャッチする。

 

リムル「分かったよ。豚頭帝の件は、俺たちが引き受ける。」

レイト「皆も、そのつもりで居てくれ。」

朱菜「はい!勿論です!リムル様、レイト様!」

紅丸「どうせ、最初からそのつもりだ。」

カイジン「俺たちゃ、旦那達を信じて着いていくだけさ。」

リグルド「その通りですぞ!我らの力を、見せつけてやりましょう!」

一同『おう!』

トレイニー「フフッ。」

 

 皆がそう盛り上がっている中、俺とリムルは、話し合っていた。

 

リムル『な〜んて、格好つけて、負けたらどうしよう………。』

レイト『もうこの際、腹を括るしかないな。』

 

 俺たちは覚悟を決めて、会議を進める。

 

リムル「豚頭族20万の軍勢を相手取るとなると………蜥蜴人族との同盟を前向きに検討したい所だが………。」

レイト「使者が、あれじゃなぁ………。」

 

 あんなアホじゃあ、不安でしかない。

 どうにか、話が通じるやつと交渉したいところなのだが………。

 すると、蒼影が立ち上がる。

 

蒼影「リムル様、レイト様。」

リムル「ん?」

レイト「どうした、蒼影?」

蒼影「蜥蜴人族の首領に、直接話をつけても宜しいですか?」

リムル「蒼影。出来るのか?」

蒼影「はい。」

レイト「なら、俺も同行して良いか?」

 

 俺がそう言うと、全員が驚く。

 

蒼影「レイト様もですか?」

レイト「同盟は、俺かリムルのどちらかを直接見ないと、結ぶのが難しいだろうからな。俺が同行すれば、手っ取り早いだろ?」

リムル「……分かった。レイト、蒼影。蜥蜴人族への使者を頼む。決戦は蜥蜴人族の支配領域である湿地帯になるだろう、これは蜥蜴人族との共同戦線が前提条件だ。頼んだぞ!」

蒼影「お任せを。レイト様、参りましょう。」

レイト「ああ。じゃあ、ちょっくら行ってくるわ!」

 

 俺と蒼影は、影移動で、蜥蜴人族が支配している湿地帯へと向かう。

 一方、気絶していたガビルは、やっと目を覚ました。

 

ガビル「んっ………。うわっ!あっ、あ……。」

部下「わ〜!」

ガビル「ん?」

部下「ガビル様〜!」

ガビル「ぐわ〜!」

 

 ガビルが目を覚ますと、部下の1人が泣きながらガビルに飛びつく。

 残りの部下もやって来る。

 

部下「起きたかよ。」

部下「ガビル様〜!」

ガビル「こ………ここは?」

部下「良かったよ〜ほんと、ううっ………。」

 

 ガビルの目の前には、蜥蜴人族の部下達が集まっていた。

 1人、蜥蜴人族ではないのが混じっているが。

 ガビルは、どうしてこうなったのかを思い出した。

 

ガビル「そっ、そうだ!我輩は………。あのふざけた顔の男に………!うぬ。すっかり騙されたわ。」

部下「ど………どういう事?」

 

 ガビルの言葉に、泣きついていた部下が首を傾げる。

 ガビルは、立ち上がって説明をする。

 

ガビル「簡単な事よ。我輩を制したあの者こそ、あの村の本当の主に違いない!」

「「「なんと!」」」

 

 ガビルは、ゴブタが主だと勘違いしていた。

 その言葉に、部下達は集まって話し合う。

 

部下「あれが?」

部下「そうじゃないと、ガビル様、負けたりしないよ。」

部下「然り!」

部下「汚い!騙してガビル様の油断を誘うだなんて!」

部下「卑怯なり!」

部下「ふざけんな!」

 

 ガビルの部下達は、そんな風に話し合う。

 そんな部下達に、ガビルは話す。

 

ガビル「まあ、落ち着け。弱者なりの知恵という奴だろう。あっ………ハッ。」

部下「器の大きさ、山の如し!」

部下「流石、ガビル様!」

部下「いよっ!次期首領!」

???「いや〜かっこええなぁ、ガビルはん。」

ガビル「いやいや、我輩など、それ程でも……って、誰、なん!?」

部下「最初から居たよ、この人。」

 

 ガビルは、やっと蜥蜴人族ではない者の存在に気づいた。

 その男は、ガビルを褒め称える。

 

ラプラス「聞いた通り、偉い男前やないか。わいは、ラプラスという者です。」

ガビル「ラプラス?」

ラプラス「ゲルミュッド様の使いで、アンタに警告をしに来たんや。」

ガビル「おお!ゲルミュッド様の!」

 

 ガビルは、少しラプラスに警戒していたが、ゲルミュッドの使いと聞いて、警戒を解く。

 部下達は、話し合う。

 

部下「ゲルミュッド様って?」

部下「ガビル様に名を授けて下さったというお方だ。」

 

 部下達は、ゲルミュッドの事について話す中、ガビルは、ラプラスに労いの言葉をかける。

 

ガビル「ご足労をおかけしたな。………して、ゲルミュッド様の警告とは?」

ラプラス「これがまた、偉い事になっとるんですわ!」

ガビル「ん?」

 

 ガビルがそう言う中、ラプラスは回転しながら、ある事を伝える。

 

ラプラス「今回の豚頭族の軍勢、どうやら、本当に豚頭帝が率いてるらしいでっせ。」

部下達『豚頭帝?』

ガビル「うっ………。」

 

 ラプラスが言った、豚頭帝という単語に、周囲はどよめく。

 ラプラスは、話を再開する。

 

ラプラス「蜥蜴人族の首領は出来たお人やけど、もうかなりのお年やし………正直なとこ、お父上には、荷が重いんとちゃいます?」

ガビル「ん…………。」

 

 ラプラスの言葉に、ガビルは考え、答えを出す。

 

ガビル「豚頭族軍撃退の後に、首領の座を受け継ごうと思っていたが………それでは、間に合わん様だな!」

ラプラス「せや、せや。」

 

 ガビル達は、竜に乗り、移動を開始しようとする。

 ガビルは、ラプラスに声をかける。

 

ガビル「ラプラス殿。挨拶もそこそこだが、我輩達は…………。」

ラプラス「ええって、ええって。湿地帯に戻りはるんやろ?早、行った方がええで。」

ガビル「かたじけない!………出発するぞ〜!」

部下達「おお!」

 

 ガビル達は、湿地帯へと出発する。

 それを見ていたラプラスは。

 

ラプラス「………せいぜい頑張りや、ガビルはん。」

 

 そんな風に言う。

 ラプラスは、何を企んでいるのか。

 一方、豚頭族軍は、湿地帯を進んでいた。

 

豚頭族達「蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。」

 

 そんな風に言いながら、湿地帯を進んでいた。

 俺たちは、そんな豚頭族達の気配を感じながら、蜥蜴人族の洞窟に到着する。

 すると、見張りが俺たちに気づく。

 

見張り「貴様ら、何者だ!?」

レイト「何。首領に会わせて欲しいだけさ。」

蒼影「そこを通してもらおう。」

 

 俺たちは、蜥蜴人族達の首領に会うべく、奥へと進んでいく。

 しばらく進んでいくと、開けた場所へと出る。

 ちなみに、俺は人間としての姿で来ている。

 俺たちが現れると、首領が声をかける。

 

首領「失礼。今、取り込んでおりましてな。おもてなしも出来ませぬ。」

レイト「お気になさらず。俺は、あなた方蜥蜴人族と同盟を結びに来た。」

首領「同盟?はて。そちらの事は、わしは知らんのだがね。」

レイト「無理もないです。ホブゴブリンと牙狼族と共に住んでは居ますが、街になったばかりですし。」

首領「風の噂で聞いた事がある………。その町は、本当にあるのか?」

レイト「はい。俺は、その街の主の片割れさ。」

 

 どうやら、俺たちの町は、かなり噂になっているみたいだな。

 まあ、ゴブリンと牙狼族が一緒に暮らしているという時点で、噂にはなるだろうが。

 俺の説明の続きを、蒼影が引き受けてくれた。

 

蒼影「そしてもう1人の主リムル様とともに、樹妖精より直に要請を受け、豚頭族軍の討伐を確約されている。」

 

 蒼影のその言葉に、首領のすぐ横にいる2人の蜥蜴人族が驚く。

 それは、首領も同じだった。

 

首領「森の管理者が、直接………!?」

レイト「そして、樹妖精からの情報によると、豚頭族軍を率いているのは、豚頭帝だ。」

部下「豚頭帝?」

レイト「この意味を踏まえて、よく検討して欲しい。」

首領「うう………。」

 

 首領は、驚いていた。

 どうやら、首領は豚頭帝が出現しているかもしれないと推測していた様だな。

 すると、首領の部下の1人が、声を出す。

 

部下「ふ………ふん!リムルだと?聞いた事もない!どうせ、そいつらも、豚頭帝を恐れて、我らに泣きついて来たんだろう?素直に助けてくれと言えばいい物を………。」

首領「やめろ!」

部下「えっ?」

首領「口を塞ぐのだ。」

部下「しゅ………首領!その様な態度では、舐められ………!」

 

 そこまで言うと、その部下の首に、糸が巻き付けられていた。

 蒼影だ。

 蒼影は、糸の一本を下ろそうとするが、俺が止める。

 

レイト「蒼影。そこまでやれとは言っていない。」

蒼影「………ッ!」

 

 蒼影の気持ちは分かる。

 自分の主人を馬鹿にされて、我慢出来なかったのだろう。

 だが、そんな事をしたら、同盟を結ぶのが難しくなる。

 蒼影は糸を解き、俺は首領に頭を下げる。

 

レイト「申し訳ない。対等な話し合いであるのにも関わらず、配下が無礼をしたな。」

首領「いや、今のは、こちらに非があった。お気遣い済まない。」

レイト「それと、俺は人間の様に見えるが、違う。新たに誕生した種族、キメラだ。」

 

 俺はそう言って、ギフテリアンとしての姿になる。

 それを見た首領のそばにいた蜥蜴人族は。

 

部下「魔物だったのか!?」

部下「なるほど………。」

 

 そんな中、首領が口を開く。

 

首領「貴殿も魔物であったか。ジュラの大森林に暮らす魔物で、森の管理者を騙る愚か者は居ない。見た所、そなたの妖気(オーラ)は、南西に暮らす大鬼族であろう?」

蒼影「今は違う。リムル様より、蒼影の名を賜った折、鬼人となった。」

首領「鬼人?」

部下「鬼人って………!」

部下「ええ。大鬼族の中から、稀に生まれるという、上位種族………!」

レイト「それが、あと六人も居ますよ。」

首領「何だと………!?」

 

 それを聞いた首領は、何かを考え込んでいたが、しばらくすると、顔を上げる。

 

首領「レイトとやら。一つ条件がある。」

レイト「聞きましょう。」

首領「もう1人の主、リムル=テンペストと会いたい。」

レイト「分かりました。」

蒼影「では、我々は準備を整え、七日後にこちらに合流する。その時、御目通りしていただくとしよう。」

首領「うん。」

蒼影「それまでは、決して先走って、戦を仕掛ける事のないよう。」

首領「承知した。」

レイト「それと、一つ忠告があります。」

首領「何だ?」

レイト「背後には気をつけた方がよろしいですよ。」

首領「………?そうしよう。」

レイト「では、七日後に。」

 

 俺たちは、影移動で村へと戻る。

 ちなみに、先ほどの言葉の意味としては、ガビルは、豚頭帝の事を知らなそうだった。

 それに、次期首領になるとも言っていた。

 つまり、謀反を起こす可能性がある。

 そこまでするアホじゃないと良いんだけどな。

 

レイト「俺は、首領の条件を伝えに行く。蒼影は、豚頭族の動向を見張ってくれ。」

蒼影「はっ。」

 

 蒼影は、再び影移動で移動する。

 俺は、リムルの家へと向かう。

 

レイト「リムル、少し………。」

 

 俺は、その光景に絶句した。

 なぜなら、リムルが女装をしていたのだ。

 しかも、周囲には、朱菜に紫苑といった女性陣がいて、その近くには、シズさんが入ったバイスタンプが。

 

レイト「リムル………どういう状況だ?」

リムル「おお!レイト!ナイス!」

シズ「リムルさん、皆の着せ替え人形にされてたの。」

レイト「なるほどな………。あ、それと、蜥蜴人族の首領と話がついたぞ。」

リムル「本当か!?」

レイト「ああ。ただ、同盟を結ぶ際には、お前にも同行して欲しいそうだ。」

リムル「良いぜ、どうせ決戦予定は湿地帯なんだし、会っていもいない人物を信用しろってのも無理な話だ。」

レイト「会談の日は、七日後に設定したが、大丈夫か?」

リムル「ああ。」

 

 そんな風に話した。

 ただ、今度は火煉を筆頭に、俺を着せ替え人形にしようとして来たので、即座に逃げた。

 一方、蜥蜴人族達は、首領が仲間を集めていた。

 

首領「豚頭族軍は既に、この地下大洞窟のそばまで迫ってきている。………だが、恐れる事はない!七日後には、強力な援軍が見込める!それまでは、我々は籠城し、戦力を温存するのだ。間違っても、攻撃に打って出ようなどと思うな!戦死すれば、餌になり、奴らの力が増すと思え!それが、豚頭帝を相手に戦うということだ!………援軍と合流した後、反撃に転じる!その時まで、耐えるのだ!誰1人、死ぬ事は許さん!」

戦士達「おお!」

 

 こうして、首領の指示により、蜥蜴人族は俺たちが来るまで、籠城する事になった。

 それから四日後。

 ある蜥蜴人族達は、侵入してきた豚頭族と交戦していた。

 三人でかかり、倒す事が出来た。

 

戦士「これが、本当に豚頭族なのか?まるで、大鬼族とでも戦っている気分だ。」

戦士「ゾッとするな………。こんな奴らが20万も居るだなんて………。」

戦士「それが、豚頭帝の能力なんだろう。あと、三日も守り通せるだろうか。」

ガビル「守ってばかりでは、疲弊するだけだ。」

戦士「おおっ、あなたは………。」

 

 そこに、ガビルが戻ってきて、首領の元に向かう。

 

ガビル「親父殿。」

「「「ん?」」」

 

 ガビルの声に、首領、親衛隊長、副隊長がガビルの方を向く。

 

首領「おお、戻ったか!………して、ゴブリンからの協力は、取り付ける事が出来たのか?」

ガビル「はっ!その総数、7千匹。待機させております。」

首領「うん。」

ガビル「しかし………豚頭族相手に籠城とは、どういうつもりなのです?とても、誇り高き蜥蜴人族の戦い方とは思えませんな。」

首領「お前が居ない間に、同盟の申し出があったのだ。その者達と合流するまでは、防衛に徹するのが最善だ。」

 

 首領の言葉を聞いたガビルは、呟く。

 

ガビル「ハァ…………老いたな、親父。」

首領「何?」

 

 ガビルがそう言うと、立ち上がり、合図を出す。

 すると、ガビルの配下達が一斉に入ってくる。

 

「「「なっ!?」」」

ガビル「天然の迷路を利用し、大軍と戦うのは、良い策かもしれん。………だが、それでは数多ある通路に戦力を分散させすぎて、戦力の集中による迎撃が出来ぬ。」

 

 そう言いながら、合図を出して、ガビルの部下が、首領に槍を向ける。

 

首領「なっ………!?」

親衛隊長「ガ………ガビル殿!」

副隊長「これは、どういうつもりだ!?」

ガビル「落ち着け!親衛隊長に副隊長。危害を加えるつもりはない。」

親衛隊長「しかし………うっ!」

ガビル「手荒な手段になってしまった事は、後で詫びる。窮屈な思いをさせるが、我輩が豚頭帝を討つまで、辛抱してくれ。」

 

 ガビルは、部下に指示を出して、首領、親衛隊長、副隊長、そして、首領の側近を拘束した。

 

首領「息子よ!勝手な真似は許さんぞ!」

親衛隊長「ガビル殿………いえ、兄上!目を覚まして下さい!」

副隊長「ガビル君!何を考えているんだ!?」

首領「ええい!放せい!放さんか!放すのだ!勝手な真似は許さん!」

 

 首領、親衛隊長、副隊長がそう叫ぶ中、彼らは、牢獄へと連れて行かれた。

 ガビルが、顔を俯かせていると、部下の1人がガビルの方にやって来る。

 

ガビル「ん?」

部下「ガビル様、これを。」

ガビル「親父殿の………。」

 

 ガビルは、部下から、首領が持っていた槍を受け取る。

 すると、槍とガビルが光り出す。

 

ガビル「こ、この力は………水渦槍(ボルテックススピア)よ。我輩を主と認めてくれるのか!」

 

 水渦槍は、ガビルを主と認めた様だ。

 その背後から、部下達が大勢やって来る。

 

部下「各部族長の掌握が完了したぜ。若い連中には、この防衛戦に疑問を抱いていた者も多かったからな。」

ガビル「そうか。」

部下「皆、アンタについていく。頼むぜ、ガビル様。」

 

 部下達は、ガビルに跪く。

 ガビルは、口を開きながら移動する。

 

ガビル「良いだろう。我輩が、蜥蜴人族の真の戦い方を見せてやろうぞ!時が来たのだ!」

部下達「おお!」

 

 こうして、ガビル達は、俺たちの合流を待たずして、動き出してしまった。

 

豚頭族達「蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。」

 

 湿地帯を埋め尽くす豚頭族の大軍。

 その一角から、ざわめきが生じた。

 

豚頭族「ううっ………!」

 

 一体の豚頭族が、蜥蜴人族の攻撃を受けて、倒れた。

 

ガビル「豚どもを必要以上に恐れる事など無い!湿地帯は我らの領域!素早い動きで豚頭族どもを撹乱するのだ!ぬかるみに足を取られるのろまに後れは取らん!」

部下「やった!」

部下「攻撃が効いてるぜ!」

部下「然り!」

ガビル「豚頭族など、我ら蜥蜴人族の敵ではない!よし!一旦離脱!」

 

 ガビルの実力は、仲間達が認める物だった。

 だが。

 

部下「ああっ………うわぁ!」

ガビル「ん?」

 

 ガビルが、部下の悲鳴に、何事かと豚頭族の方を見ると、豚頭族が豚頭族を食べていたのだ。

 

ガビル「何だ?」

 

 ただ一つ、誤算があるとすれば、ガビルは知らなかった。

 豚頭帝の恐怖を。

 

ガビル「豚頭族が、豚頭族を食っている………!?」

 

 首領は知っていた。

 豚頭帝の恐怖を。

 その違いが今、結果となって、ガビルに牙を剥く。

 

豚頭族達「蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。食べた仲間の力を我が物に!食べた獲物の力を我が物に!」




今回はここまでです。
いよいよ、レイト達と豚頭族軍との激闘が始まろうとしています。
ちなみに、副隊長のイメージCVは、水島大宙です。
次回、火煉がベイルに変身します。
リクエスト、色々とありがとうございます。
転スラの映画のエピソードも、もしかしたら入れるかもしれません。
どうにか、頑張っていきますので、応援のほど、よろしくお願いします。


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第12話 大激突

今回は、豚頭帝と戦う直前までです。


 俺たちは、準備を整え、蜥蜴人族(リザードマン)の支配領域である湿地帯へと向かっていた。

 戦闘に参加するのは、俺、リムル、紅丸、紫苑、火煉、白老、偵察中の蒼影、嵐牙、そして、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)達だ。

 街は、リグルド達とライオトルーパー、ゼクトルーパー、黒影トルーパー、デモンズトルーパー達に任せた。

 俺たちが負けたら、即座に避難してもらう様にしてある。

 すると、リムルが俺に話しかけてくる。

 

リムル「レイト。」

レイト「ん?」

リムル「怖くないか?」

レイト「………怖くないって言ったら、嘘になるさ。何せ、戦争なんて初めてだしな。でも、大切な物を守る為に俺は戦う。」

リムル「そうか………。」

 

 俺の答えに、リムルはそう呟く。

 すると、偵察中の蒼影から連絡が入る。

 

蒼影『リムル様、レイト様。少し宜しいですか?』

リムル『どうした?』

蒼影『交戦中の一団を発見しました。片方は、蜥蜴人族(リザードマン)の首領の側近の2人です。相手は、豚頭族(オーク)の上位個体のようですが、いかが致しましょう?』

レイト『助けるの一択だろう。勝てるか?』

蒼影『容易い事かと。』

 

 おお、蒼影がそう言うと、本当に仕置き人みたいだな。

 

リムル『やれ。俺たちもすぐに行く。』

蒼影『御意。』

 

 リムルが蒼影に指示を出してる中、俺は、皆に指示を出す。

 

レイト「戦闘体勢を取れ!蒼影の元に向かうぞ!」

火煉達「はっ!」

ゴブタ「やるっす!」

リムル「嵐牙!」

嵐牙「仰せのままに!」

 

 その声と共に、嵐牙は加速して、蒼影の元に向かう。

 だが、到着した頃には、豚頭族は全滅していた。

 

ゴブタ「あ………あれ?もう、終わってるっすか?」

紅丸「少しは残しといてくれよ。」

白老「ふむ………。」

火煉「流石、蒼影という所ね。」

レイト「全滅してやがる………。」

 

 俺とリムルは、蒼影の元に。

 蒼影は、あの首領の側近の蜥蜴人族を抱えていた。

 

蒼影「共に深手を負っています。」

親衛隊長「う………うう………。」

副隊長「くっ………。」

リムル「ああ。俺は片方を回復する。レイトは、もう片方を頼む。」

レイト「ああ。」

 

 俺とリムルは、2人の蜥蜴人族に近づき、回復薬を飲ませる。

 だが、いきなり流し込まれたからか、咳き込んでしまう。

 

リムル「安心しろ。回復薬だ。」

レイト「ああ。」

 

 俺とリムルは、2人に回復薬を飲ませる。

 すると、傷があっという間に治っていく。

 2人は目を見開いて、驚く。

 

親衛隊長「えっ、き………傷が………!?」

副隊長「致命傷だった筈………!?………って、レイト殿!隣のお方は………?」

レイト「彼が、リムル=テンペストさ。」

親衛隊長「あっ!」

 

 すると、親衛隊長が突然土下座をする。

 

リムル「ん?」

親衛隊長「お願いがございます!我が父たる蜥蜴人族の首領と、兄たるガビルを、どうか、お救い下さいませ!」

リムル「ガビルの妹なのか?」

親衛隊長「はっ!」

レイト「何があったんだ?」

副隊長「それは、私が答えましょう。」

 

 俺の質問に、副隊長が答える。

 

副隊長「ガビル君が、謀反を起こして、首領を幽閉したのです。」

レイト「やっぱりかぁ………。」

副隊長「ガビル君は豚頭族軍を、自らの力で退けるつもりなんです。………だけど、彼は豚頭帝(オークロード)を甘く見ている。このままでは、蜥蜴人族は滅亡するでしょう。」

親衛隊長「父は、見張りの隙を見て、私たちを逃がしてくれました。先走らぬようにとの約定も守れず、虫の良い話であるのは、重々承知しております!しかし………力ある魔人の皆様を従えるあなた様方のその慈悲に縋りたく、何卒………!」

副隊長「僕からもお願いします。首領に同胞、そして、ガビル君を助ける為に………!」

 

 親衛隊長と副隊長は、そう言って頭を下げる。

 すると、2人の元に、紫苑と火煉がやって来る。

 

紫苑「よくぞ、申しました!」

火煉「ええ。レイト様とリムル様の偉大さに気付くとは、あなた方は、見どころがありますね。」

リムル「お………おい、紫苑?」

レイト「火煉さん?」

紫苑「さあ、立ちなさい。」

火煉「あなた方の希望通り、蜥蜴人族は救われるでしょう!」

親衛隊長「ありがとうございます………!」

副隊長「ありがとうございます。」

 

 火煉と紫苑の奴、仕事を仕入れてきたよ。

 まあ、蜥蜴人族を救うのは、最初からそのつもりだったしな。

 やっぱり、ガビルの奴、豚頭帝を侮っているのか。

 

リムル「仕方ない。どうせ、豚頭帝とは戦うんだ。ええっと、君は首領の娘さんだっけ?」

親衛隊長「は……はい。仰せの通りにございます。」

レイト「なら、君を首領の代理と認める。ここで同盟を締結する事に、異論はあるか?」

副隊長「異論はありません。」

リムル「じゃあ、決まりだ。同盟は締結された。」

親衛隊長「ありがとう………ございます。」

レイト「蒼影。首領の所まで影移動をして、首領達を救い出してくれ。」

蒼影「御意。」

親衛隊長「ありがとうございます………。」

リムル「俺たちは進軍を続けるぞ。」

紅丸達「はっ。」

 

 俺たちは、蜥蜴人族達と同盟を結び、進軍を再開する。

 一方、湿地帯では、豚頭族と蜥蜴人族による戦闘が行われていた。

 

ガビル「豚頭族など、我ら蜥蜴人族の敵ではない!よし、一旦離脱!」

 

 ガビルの指揮のもと、戦闘は、蜥蜴人族が優勢に進んでいた。

 だが。

 

部下「ああっ………うわぁ!」

ガビル「ん?」

 

 ガビルが、部下の悲鳴に、何事かと豚頭族の方を見ると、豚頭族が豚頭族を食べていたのだ。

 

ガビル「何だ?豚頭族が、豚頭族を食っている………!?」

 

 それに、ガビルは驚愕し、蜥蜴人族の1人が後ずさると、一体の豚頭族に足を掴まれる。

 

部下「あ………うわっ!」

 

 その蜥蜴人族に、豚頭族が殺到して、食べ始める。

 

部下「た………助けて!ガ………ガビル様!」

 

 そして、その部下は、豚頭族に食べられてしまう。

 

ガビル「退却だ!急げ!退却!」

 

 ガビルは、部隊に退却命令を出す。

 だが、退却命令を出すのが、遅かった。

 

部下「あっ!ガビル様!回り込まれちゃったよ!」

ガビル「何?」

 

 そう、先ほどより動きが良くなった豚頭族の部隊に、取り囲まれる。

 

ガビル(何が起こった………!?明らかに奴らの動きが素早くなっている………!)

 

 ガビルは、豚頭族の体を見る。

 すると、本来、豚頭族には無い筈の物が、存在していた。

 鱗に、水掻きだ。

 

ガビル(バカな!?豚頭族の体に、水掻きと鱗だと!?それでは、まるで、我らと同じでは無いか!)

 

 そう、先ほどまで優勢に戦えていたのは、水掻きと鱗という、蜥蜴人族ならではの特性があったからだ。

 だが、今では、その優位性はあっという間に崩れ去った。

 部下達が、ガビルに話しかける。

 

部下「さっき、仲間が1人食われた!」

部下「然り!そこから、奴らの動きが変わった!」

ガビル「うう………!(まさか、食う事によって、我らの能力を………!)」

 

 ガビルは、漸くその事に気付いた。

 そんな中、一体の豚頭族が、ガビルに向かっていき、斧を振り下ろす。

 ガビルは、水渦槍(ボルテックススピア)で、斧を受け止める。

 

ガビル「ぐっ………!うおお!!」

 

 そして、ガビルは力を込めて、斧を弾き返す。

 

ガビル「群れ全体か………!密集隊系!ゴブリン隊を中央に、隙なく固まれ!ゴブリン隊を守りつつ、豚頭族の包囲を突破する!」

部下「おおお!!」

 

 ガビルは、咄嗟の判断で、ゴブリン達を中央に集め、密集隊系を取る。

 

ガビル(我等だけなら、逃げ切れたかもしれんが………ゴブリン達を連れてきた事が、裏目に出てしまった………!)

 

 ガビルは、そう思った。

 そう思う中でも、豚頭族達は近づいてくる。

 

豚頭族「蹂躙せよ。蹂躙せよ。仲間の力を我が物に!奴らの力を我が物に!」

ガビル「恐るな!我ら誇り高き蜥蜴人族の力を見せつけてやれ!」

部下「おおっ!」

 

 ガビルのその声に、部下達は、気合いを入れ直す。

 すると、そこに、周りの豚頭族より巨大な豚頭族が現れる。

 それには、他の蜥蜴人族達は、どよめく。

 

ガビル「な………なんという凄まじい妖気(オーラ)であるか………!」

 

 ガビルは、目の前の豚頭族のオーラの大きさに驚いていた。

 

ガビル「ふん………そこの豚頭族!貴様が豚頭帝であるな?」

 

 ガビルのその問いに、豚頭族は答えなかった。

 

ガビル「我輩は、蜥蜴人族の首領、ガビル!我輩と一騎打ちで決着を………!」

豚頭将軍「ロードではない。」

ガビル「あっ………!」

 

 ガビルがそこまで言うと、豚頭族が口を開くが、豚頭帝ではないと否定する。

 それに、ガビルは驚く。

 

豚頭将軍「我は、豚頭将軍(オークジェネラル)。豚頭帝様の足元にも及ばぬ。」

ガビル「豚頭帝ではない!?(これほどに力を持ちながら、足元にも及ばないだと………!?)」

 

 ガビルは、敵が強大な力を持っているのにも関わらず、豚頭帝では無い事に驚いた。

 驚くガビルを他所に、豚頭将軍がガビルに話しかける。

 

豚頭将軍「一騎打ちだったか。面白い。受けてやろう。」

ガビル「………感謝する!(一体………どれほどの化け物だというのだ………!本当の豚頭帝とは………!)」

 

 ガビルは、本当の豚頭帝の力の高さに、戦慄した。

 一方、とある森では、ゲルミュッドとラプラスが、水晶玉で状況を確認していた。

 

ラプラス「よっしゃ!よっしゃ!良い感じになってきたで。なぁ、ゲルミュッド様!」

ゲルミュッド「うむ。」

ラプラス「計画の方、順調に運んどるようやなぁ。」

ゲルミュッド「我が子が森の覇権を手に入れる日も近いだろう。そうなれば、俺の野望も………!」

 

 そんな風に話していた。

 すると、緑色の光と共に、葉が流れてくる。

 

トレイニー「中々楽しそうな話をしていますね。」

ゲルミュッド「なっ!?」

 

 そこに居たのは、トレイニーだった。

 ラプラスは、トレイニーに名を聞く。

 

ラプラス「誰や!?」

トレイニー「私の名はトレイニー。この森での悪巧みは見逃せません。」

ラプラス「こりゃ、やばいぞ、ゲルミュッド様!森の管理者、樹妖精(ドライアド)や!」

ゲルミュッド「なんだと!?」

 

 ラプラスは、トレイニーが樹妖精である事を見抜き、戦慄する。

 

トレイニー「森を乱した罪で、あなた方を排除します。」

ゲルミュッド「はぁ!?」

トレイニー「精霊召喚、シルフィード!」

 

 トレイニーは、シルフィードを召喚した。

 それを見たラプラスは、慌てる。

 

ラプラス「待て待て待て待て!気早すぎやろ!」

トレイニー「断罪の時です。罪を悔いて祈りなさい。大気圧縮断裂(エアリアルブレード)!」

 

 トレイニーのその言葉と共に、シルフィードが歌い、風刃がゲルミュッドとラプラスを襲う。

 2人は、バリアで防ぐが、一つの風刃がラプラスの右腕に当たり、切断される。

 

ゲルミュッド「お………おい!腕!」

 

 ゲルミュッドは、ラプラスの腕が切断された事に慌てるが、当のラプラス本人は、そこまで慌てていなかった。

 

ラプラス「無茶苦茶しよるなぁ、アンタ。問答無用かいな。………まあ、目的は達成しとるし、ワイらはお暇させて貰うわ。ほな、さいなら!」

 

 ラプラスは、そう言って、左手に出した煙幕弾を地面にぶつけ、煙幕を出す。

 煙が晴れた時には、ラプラスもゲルミュッドも居なかった。

 

トレイニー「逃げられましたか。………状況は思わしくありません。リムル=テンペスト、レイト=テンペスト。豚頭帝の討伐、信じていまよ。」

 

 トレイニーはそう言って、精霊と共に姿を消す。

 一方、ガビルの方は、一騎打ちが始まっていた。

 豚頭将軍の斧が、水渦槍ごと、ガビルを吹っ飛ばす。

 

ガビル「うわぁ!ぐっ………!」

 

 ガビルは、何とか体勢を立て直し、気合いを入れる。

 

ガビル「はあっ………!渦槍水流撃(ボルテックスクラッシュ)!」

 

 ガビルは渦槍水流撃を放つが、豚頭将軍も、斧から風の攻撃を出して、お互いの中間点で爆発する。

 

ガビル「ぐ………!あっ………!」

豚頭将軍「混沌喰(カオスイーター)!」

 

 豚頭将軍がそう叫ぶと、体からオーラが出てきて、三つの顔が出る。

 その顔は、ガビルへと向かっていく。

 ガビルは、その三つを躱す。

 

ガビル「くっ………!ふぅ………!我輩を食おうと言うのか!」

豚頭将軍「フッフッフッ………いつまで逃げ切れるかな?」

ガビル「くぅ………!」

 

 すると、ガビルの部下がガビルに声をかける。

 

部下「ガ………ガビル様!」

部下「助太刀を!」

ガビル「手を出すな!」

「「「あっ………!」」」

ガビル「これは、一騎打ちである!」

「「「ああっ………!」」」

部下「男だぜ、ガビル!」

部下「ガビル!」

部下「ガビル!」

部下達「ガビル!ガビル!」

 

 ガビルのその言葉に、部下達は泣いて、ガビルコールを始める。

 

ガビル「………はあっ!」

 

 ガビルは、少し姿勢を下げて、そのまま突撃していく。

 

豚頭将軍「ふん!」

 

 豚頭将軍は、混沌喰を再びガビルに向かわせる。

 ガビルは、水渦槍で混沌喰を斬っていく。

 だが、三つの顔の連携に、ガビルは姿勢を崩してしまう。

 止めと言わんがばかりに、三つの顔は、ガビルに向かっていく。

 

ガビル「これしき………!」

 

 ガビルはそう言って、気合いを入れ、豚頭将軍に向かっていく。

 向かってくる顔を避けたり、槍を使って受け流したりして。

 豚頭将軍は、混沌喰を解除して、斧でガビルを攻撃する。

 だが、ガビルはそれを躱して、空中に向かってジャンプする。

 

ガビル「とうっ!」

豚頭将軍「何?」

部下達「おおっ!」

ガビル「やああああっ!!」

 

 ガビルは、その声と共に豚頭将軍に攻撃する。

 だが、盾によって阻まれる。

 そして、そこに斧の攻撃を受ける。

 何とか、水渦槍で防御した事により、攻撃そのものを食らうことは避けられた。

 だが、ガビルは地面を転がる。

 

ガビル「ううっ………!」

部下「ガビル様ァァ!!」

ガビル「ぐぅ………ううっ、あっ………!」

 

 ガビルは、何とか立ちあがろうとするが、目の前には、豚頭将軍が居た。

 

豚頭将軍「蜥蜴は、地面を這いつくばっているのがお似合いだ。死ねぇ!」

部下達「ああっ!」

ガビル「くうっ………!」

 

 豚頭将軍は、ガビルにとどめを刺そうとして、部下達は慌てて、ガビルは、死を覚悟する。

 だが、その攻撃は、ガビルには届かなかった。

 なぜなら、ゴブタが豚頭将軍の斧を弾き返したからだ。

 

豚頭将軍「くっ………!」

ガビル「あっ………!き………貴殿は、あの村の真の主殿ではないか!?」

ゴブタ「え?(何言ってるっすか、この人?)」

 

 ゴブタは、ガビルのその言葉に呆れる。

 

ガビル「もしや、我々の助太刀に?」

嵐牙「あれは、狼鬼兵部隊の隊長、ゴブタだ。」

 

 ガビルがそう言う中、ガビルの隣に嵐牙がやって来る。

 

ガビル「おお………牙狼族の………!」

嵐牙「我が名は嵐牙。リムル様とレイト様の命により、助太刀に来た。」

ガビル「いかにして、ここまで………?」

嵐牙「影移動だ。学ばんのか、貴様。」

 

 ガビルのその問いに、嵐牙は呆れてそう言う。

 すると、豚頭将軍が笑う。

 

豚頭将軍「フッフッフ………!リムルにレイトだと?何処の馬の骨かは知らんが………邪魔立てするなら、容赦は………ッ!?」

 

 すると、豚頭将軍の背後で、大量の黒炎のドームが出来上がっていた。

 そこに居た豚頭族達は、蒸発していく。

 

ゴブタ「おおっと!始まったみたいっすね。」

豚頭将軍「ぬうっ………!?蜥蜴人族の大魔法か?早々に決着をつけて、大魔法を操る者を始末せねば。」

 

 豚頭将軍は、蜥蜴人族の大魔法と判断する。

 豚頭将軍がゴブタ達の方を向くと、ゴブタは、ガビルに声をかける。

 

ゴブタ「ええっと、ガビルさん………でしたっけ?さっさと、防御陣形を整えるっすよ。」

ガビル「ぬう!分かったのである!しかし……あの炎は………?」

ゴブタ「あっ。………心配いらないっす。味方の術っすから。………多分。」

 

 ゴブタは、ガビルにそう言うが、あまりの凄さに、ゴブタは多分と言う。

 一方、紅丸達は。

 

紅丸「………だから、退けと言ったろ。」

豚頭族「き………貴様ら、何者だ?」

火煉「どうやら、覚えていない様ですね。」

紅丸「酷いな。里をあんなに食い散らかしてくれたじゃないか。………フッ。」

 

 紅丸、紫苑、白老、火煉の4人を見た豚頭族達は。

 

豚頭族「その角………まさか、大鬼族(オーガ)か?」

紅丸「どうかな?今は、少し違うかもしれないな。」

白老「いよいよじゃな。」

火煉「これが、今の私たちの初陣。」

紫苑「この機会を下さったリムル様とレイト様に、感謝いたします。」

紅丸「もう一度言う。道を開けろ豚ども。灰すら残さず消えたくなければな。」

 

 その声と共に、紅丸は黒炎を投げる。

 豚頭族達がどよめきながら、体を動かす。

 すると、その黒炎は、ある程度進むと、ドーム状にまで巨大になり、そこに居た豚頭族達を燃やす。

 

火煉「さて、私も行きますか。」

 

 火煉は、ベイルドライバーを腰に装着して、カブトバイスタンプを起動する。

 

カブト!

 

 カブトバイスタンプを起動して、ベイルドライバーのバイスタンプパッドに押印する。

 

Deal……!

 

 その音声と共に、待機音が流れ、火煉は叫ぶ。

 

火煉「変身!」

 

 その声と共に、カブトバイスタンプを、アーキオーインジェクターに押印する。

 

Bane Up!


『破壊!(Break)世界!(Broke)奇々怪々!(Broken)

仮面ライダーベイル!

 

 すると、ベイルドライバーから金色のカブトムシが現れ、周囲を飛び回り、背には鼓動のような赤い光が瞬き、それと同時に赤い目がついた赤黒い闇が出現して、火煉を金色のカブトムシごと呑み込むと、仮面ライダーベイルへと変身する。

 それを見ていた紅丸達は。

 

紅丸「それが、お前の新たな力か。」

紫苑「情け容赦は無用ですよ!」

白老「お主の力も、見せてやれ!」

火煉「はい!」

 

 鬼人達は、火煉にそう話しかける。

 それを見ていた、俺とリムルは。

 

リムル「すっげぇな。」

レイト「見ろよ。あんなに居た豚頭族達が、どんどん減っていく………。」

 

 そう驚く。

 一方、ゴブタ達の方は。

 

豚頭将軍「ふん。蜥蜴共を助けに来たらしいが、無駄な事を。ゴブリンに犬畜生。どこぞの木っ端魔物の配下が加わった所で、我らの優勢は、少しも揺るがんわ!」

ゴブタ「木っ端って………!」

嵐牙「………では、見せてやろう。」

 

 ゴブタは、豚頭将軍の言葉に青筋を浮かべるが、嵐牙に気付くと、驚く。

 嵐牙は、赤いオーラに身を包んでいたからだ。

 嵐牙が唸り声を出すと、周囲に黒雲が現れる。

 

リムル「お?」

レイト「あれ?なんか、暗く………。」

 

 すると、竜巻が雷鳴と共に、地上へと向かっていく。

 

リムル「お………おお、ええっ?」

レイト「嘘だろ………!?」

 

 俺とリムルが驚く中、複数の竜巻は、豚頭族達を襲い、空へと飛ばしていく。

 俺が疑問を口にすると、科学者が答えてくれた。

 

レイト『何、あれ?』

科学者『解。個体名嵐牙の広範囲攻撃技、黒雷嵐(デスストーム)です。』

レイト『あ、そう。』

 

 あまりの凄さに、俺たちは呆然とした。

 

豚頭将軍「おお!ぐうっ………!おのれぇ!」

 

 豚頭将軍は、持っていた斧と盾を吹き飛ばされてしまい、身構える。

 だが、豚頭将軍に雷が直撃する。

 

豚頭将軍「ぐああああ………!」

 

 その声と共に、豚頭将軍は消滅した。

 ゴブタ達が身構える中、嵐牙は叫ぶ。

 すると、角がもう一本生えてきて、黒嵐星狼(テンペストスターウルフ)に進化する。

 

ゴブタ「ううっ………!おおっ!黒嵐星狼になったっす!」

嵐牙「よく見たか、豚頭族共よ!これが貴様らが木っ端と侮ったお方達の力の一端だ!」

ゴブタ「全部、吹っ飛んじゃったっすよ………。」

嵐牙「ああ………。」

 

 嵐牙は、豚頭族に対してそう言うが、目の前にいる豚頭族達は、吹き飛んでしまっていた。

 一方、鬼人達は。

 紅丸は、黒炎を出して、豚頭族達を倒していく。

 

紅丸「これが俺たちの新たなる門出。」

 

 白老は、豚頭族達の間を駆け抜けて、斬っていき、倒す。

 

白老「リムル様とレイト様の華々しい勝ち戦の………。」

 

 紫苑と火煉は、背中を向かい合わせて、上空に居る俺たちを見ていた。

 

紫苑「まずは、最初の一戦目。」

火煉「ですね。」

豚頭族「ぐっ………!調子に乗るなァァ!!」

 

 豚頭族達は、紫苑と火煉に向かっていく。

 だが、紫苑は剛力丸という剣を構え、火煉はカブトバイスタンプを構える。

 

カブト!

charge!

 

 火煉は、カブトバイスタンプを起動して、アーキオーインジェクターに押印して、カブトバイスタンプをバイスタンプホルダーに戻して、ベイリングノックを押し込む。

 

ベイリングインパクト!

 

紫苑「んっ!えいっ!」

火煉「はあっ!」

 

 紫苑の剛力丸の斬撃が、紫苑に迫る豚頭族達を蹴散らしていき、火煉のオスのカブトムシのエフェクトと共に放った赤黒いオーラを纏ったパンチは、豚頭族達を蹴散らしていく。

 その2人の攻撃が放たれた跡には、大きな地割れが出来ていた。

 

紫苑「リムル様〜!」

火煉「レイト様〜!」

リムル「お………おう。」

レイト「すげぇな。」

 

 あの2人を怒らせるのは、やめよう。

 ていうか、火煉は、ベイルの力を使いこなしてるみたいだな。

 すると、火煉からある気配を感じる。

 それは、あの悪魔の気配だ。

 そんな風に考えていると、リムルが口を開く。

 

リムル「それにしても、圧倒的だった豚頭族軍がみるみる減っていく。」

レイト「火煉達とは、この戦いが終わった後も、仲良くしたいな。」

リムル「だな。………蒼影もうまくやってるかな。」

 

 俺たちは、そう話す。

 一方、蒼影は。

 

豚頭族「ギャアアア!!」

蜥蜴人族「うう………助かったのか?」

親衛隊長「ああ…………。」

副隊長「ああ………。」

 

 蒼影の強さに、親衛隊長と副隊長は唖然となっていた。

 蒼影は、回復薬を取り出す。

 

蒼影「これを使え。」

副隊長「はっ、はい!」

 

 副隊長は、周囲の蜥蜴人族達を治していく。

 そうやって進んでいき、首領達が囚われている牢獄に着く。

 蒼影が扉を開けると、親衛隊長と副隊長が首領に向かっていく。

 

親衛隊長「父上!」

副隊長「首領!ご無事で………!」

首領「お………おおっ!来てくださったのか、蒼影殿。」

 

 親衛隊長と副隊長で首領の肩を支え、移動を開始する。

 首領は、蒼影に質問をする。

 

首領「しかし、何故?」

蒼影「同盟は締結された。」

首領「それは、どういう………?」

副隊長「隊長を首領の代理と認めて下さったのです。援軍が来ます!」

首領「何と………!」

親衛隊長「まだ諦める時ではありません!父上!」

首領「一族は………助かるのか………!」

 

 副隊長と親衛隊長の言葉に、首領は涙を流す。

 

豚頭将軍「フフフフッ!」

首領「ん?」

 

 突然の笑い声に、全員が前を向くと、豚頭将軍が一体居て、攻撃しようとする。

 首領は、蒼影に向かって叫ぶ。

 

首領「蒼影殿!」

蒼影「心配いらない。既に動けなくしてある。」

豚頭将軍「うう………ううっ!」

 

 蒼影は、既に豚頭将軍を動けなくしていた。

 それには、首領が驚いていた。

 

首領「ああ………!」

親衛隊長「…………そういう反応になりますよね。」

副隊長「…………気持ちは痛いほど分かります。」

首領(わ………わしの判断は、同盟を受け入れるという判断は………正解だった………!)

 

 首領は、驚きながら、自分の判断が正しかった事を悟っていた。

 蒼影が口を開く。

 

豚頭将軍「うう………ううっ………!」

蒼影「見えてるな、豚頭族を操る者よ。次は貴様の番だ。大鬼族の里を滅ぼし、鬼人を敵に回した事、せいぜい後悔するが良い。」

 

 蒼影はそう言って、一本の糸を下に下ろす。

 すると、豚頭将軍は、細切れになる。

 それを見ていた蜥蜴人族達は、唖然としていた。

 一方、水晶玉で蒼影の言葉を聞いていたゲルミュッドは、水晶玉を地面に叩きつける。

 

ゲルミュッド「クソどもが!役立たずめ!鬼人だと?ゲルドには、大鬼族共の里を襲わせたが、まさか、生き残りが進化したとでも言うのか!?それに、あの獣だ!ジュラの森にあんな化け物が居るなど、聞いてないぞ!」

 

 ゲルミュッドは、想定外の事態に狼狽えていた。

 大鬼族の生き残りが鬼人に進化して、黒嵐星狼達の存在がいた事だ。

 

ゲルミュッド「俺が知らぬ所で、一体、何が起きていると言うのだ!?まずい………!何とかしなければ………!ここまで来た計画が潰れてしまう!」

 

 ゲルミュッドは、空を飛んで、湿地帯へと向かっていく。

 

ゲルミュッド「このままでは、俺が………俺があのお方に殺されてしまう………!」

 

 ゲルミュッドが言う、あのお方とは………。

 一方、とある城では、白いタキシードに身を包んだ1人の男性が、月を眺めながらワインを飲んでいた。

 一方、俺は、豚頭帝と思われる存在を発見した。

 

レイト「おい、リムル、あれ!あの一際大きいやつ!」

リムル「あっ。」

 

 俺が指差した先には、巨大な豚頭族と、三人の豚頭将軍が居た。

 

リムル「居たぞ、豚頭帝だ。」

紅丸「はっ!」

 

 その存在感は、強かった。

 リムルはシズさんの仮面をつけて、俺はその仮面のコピーとキメラドライバーをつける。

 

リムル「豚頭帝よ。」

レイト「俺たちが引導を渡してやる。リムル、一応だが、これを渡しておく。」

 

 俺は、リムルにクロコダイルバイスタンプを渡しておく。

 

リムル「良いのか?」

レイト「何か、渡した方がいい気がして。後でちゃんと返せよ。」

リムル「分かってるよ。どうせ、俺は変身出来ないからな。」

 

 リムルはそう言う。

 だが、リムルの影から、何かが出た様な気がしたが、気のせいだろう。

 今は、戦いに集中するべきだ。




今回はここまでです。
火煉が、仮面ライダーベイルに変身しました。
そして、火煉から、あの悪魔の気配が………。
レイトが、リムルにクロコダイルバイスタンプを渡しましたが、その意味は、次回で分かります。
リバイスの最終回は、感動しました。
そして、今日の四時から、メモリアルバイスタンプセットが予約開始されます。
パーフェクトウイングバイスタンプやキングコブラバイスタンプも、やっと商品化ですね。
ジャイアントスパイダーとメガバットで変身するデモンズ、ライブ及びエビルがどんな姿になるのか、楽しみです。
しかも、ギフスタンプも商品化するとは。
でも、メモリアルバイスタンプは、まだ追加されそうですね。
花のクイーンビーに、光と玉置のクワガタがまだありますし。


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第13話 全てを喰らう者

今回は、ゲルドを倒すまでです。


 俺たちが、豚頭帝(オークロード)と戦おうとすると、後ろから飛行音が聞こえてくる。

 

リムル「ん?」

レイト「何だ?」

 

 俺とリムルが後ろを向くと、赤い何かがこちらに向かっていた。

 あまりの早い速度に、俺たちはすぐに躱す。

 地面に激突した赤い星は、人だった。

 丁度、豚頭帝と火煉達の間に着地したようだ。

 全員が警戒する中、そこに居たのは、シルクハットを被り、鳥の様な仮面をつけた男だった。

 

リムル「魔人か?」

レイト「かもな。」

 

 リムルの呟きに、俺はそう答える。

 すると、その男が叫ぶ。

 

ゲルミュッド「どういう事だ!?このゲルミュッド様の計画を台無しにしやがって!」

レイト「ゲルミュッド?」

 

 俺がそう呟くと、科学者が反応する。

 

科学者『ゲルミュッドとは………。』

レイト『リグルドの長男に名前をつけた奴だったな。』

科学者『で………です。』

 

 アイツがゲルミュッドか。

 すると、当のゲルミュッドは喚き散らかす。

 

ゲルミュッド「もう少しで俺の手足となって動く、新しい魔王が誕生したというのに!」

リムル「あ…………?」

レイト「新しい………?」

紅丸「魔王?」

ゲルミュッド「そうだ!だから、名付けをしまくった!種を蒔きまくったんだ!最強の駒を生み出す為にな!」

 

 ゲルミュッドは、そう叫んだ。

 それを聞いた鬼人勢は。

 

白老「その為に………。」

蒼影「我らの村にも………!」

紫苑「来たという事か………!」

火煉「こいつが元凶…………!」

 

 ゲルミュッドの言葉に、鬼人達は怒りを燃やしていた。

 それもそうだ。

 里を滅ぼした豚頭族を嗾けた元凶なのだから。

 すると、ガビルが叫ぶ。

 

ガビル「おおっ!これは、ゲルミュッド様!」

部下「あれが、ガビル様の名付け親の……。」

ガビル「どうして、ここに?もしかして、我輩達を助けに………。」

ゲルミュッド「役立たずの鈍間が!」

ガビル達「へ?」

 

 ガビルは、ゲルミュッドが助けに来たと思ったのか、そう声をかけるが、ゲルミュッドから突然罵られて、呆然とする。

 

ゲルミュッド「貴様もさっさと豚頭帝の糧となれ!」

ガビル「はっ!?」

部下「あの人、何を言ってるの?」

ゲルミュッド「役に立たない無能の分際で、いつまでも目障りな奴よ!豚頭帝に食われ、力となれ!俺の役に立って死ねるのだぞ。光栄に思うが良いぞ。」

ガビル「うげっ………げろ………ゲ………ゲル………!」

 

 ゲルミュッドのその言葉に、ガビルは動揺していた。

 ゲルミュッドは、豚頭帝に命令する。

 

ゲルミュッド「やれ!豚頭帝!」

 

 だが、豚頭帝は動かなかった。

 

豚頭帝「…………。」

ゲルミュッド「どうした?」

豚頭帝「…………魔王に進化とは、どういう事か?」

ゲルミュッド「チッ!本当に愚鈍な奴よ。」

 

 ゲルミュッドは、豚頭帝の言葉にそう毒づくと、口を開く。

 

ゲルミュッド「貴様が魔王、豚頭魔王(オークディザスター)になって、このジュラの森を支配するのだ!それこそが、私と、あのお方の望みだ!」

 

 ゲルミュッドのその言葉に、俺たちは。

 

リムル「あのお方?」

レイト「どうやら、ゲルミュッドを動かしてる黒幕が居るみたいだな。」

リムル「みたいだな。」

 

 なるほど。

 俺たちがそう話している中でも、豚頭帝は動かなかった。

 それを見たゲルミュッドは、苛立ちを見せていた。

 

ゲルミュッド「何をボケっとしている!豚が!!はぁ…………時間がない。手出しは厳禁だが、俺がやるしかないか………。」

 

 そう言ったゲルミュッドは、手に魔力を集める。

 それを見たガビルは動揺する。

 

ガビル「うわっ!ゲ………ゲル………!」

部下「ガビル様!」

部下「お逃げくだされ!」

ゲルミュッド「死ねぇ!!」

部下達「ガビル様!!」

 

 ゲルミュッドの攻撃に、ガビルの部下達が庇い、攻撃を受ける。

 ガビルは無事だったが、部下達は倒れていた。

 それを見たガビルは。

 

ガビル「…………ハッ!?お前達?」

部下「…………ガビル様が無事で………。」

部下「良かった…………。」

 

 そう言って、部下達は気絶した。

 それを見たガビルは、震えていた。

 

ガビル「お………おおっ………!おお…………おおおっ…………!ゲルミュッド様!!」

ゲルミュッド「豚頭帝の養分となり、俺の役に立つが良い!」

 

 それを見ていた俺たちは。

 

リムル「あっ!」

レイト「助けるぞ!」

リムル「おう!」

 

 俺たちは、急降下する。

 そして、俺はキメラドライバーにツインキメラバイスタンプを装填する。

 

ツインキメラ!

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

 

レイト「変身!」

 

 俺はそう叫んで、変身する。

 

スクランブル!

仮面ライダーキマイラ!キマイラ!

 

 俺とリムルが、ガビルの前に向かっていると。

 

ゲルミュッド「フハハハハハ!上位魔人の強さを教えてやる!死ね!死者之行進演舞(デスマーチダンス)!」

ガビル「ゲルミュッド様〜!!」

 

 ガビルがそう叫ぶ中、俺とリムルは間に入り、リムルは捕食者、俺は吸収者でゲルミュッドの攻撃を取り込む。

 取り込み終わると、ゲルミュッドとガビルが驚いた様な声を出す。

 

ゲルミュッド「はあ?」

ガビル「ああっ………!」

リムル「なあ、これが全力か?」

レイト「この程度じゃあ、死なないだろ。」

ゲルミュッド「き………貴様ら………!」

ガビル「あなた方は………あなた様方は………!」

「「ほれ!」」

 

 そう言うガビルに、俺たちは回復薬を渡す。

 ガビルは、慌ててそれを全部抱きしめる。

 

ガビル「わわっ!」

リムル「回復薬だ。」

レイト「部下達に使ってやれ。大事な部下なんだろう?」

ガビル「は………はい!…………しっかりしろ!我輩の為に、こんな………!」

 

 ガビルは、部下達に、回復薬を使っていく。

 

リムル「………さて。」

 

 そう言うと、リムルは粘糸を発動して、ゲルミュッドを拘束する。

 

ゲルミュッド「ああっ!?なんなんだ、これは!?」

 

 ゲルミュッドは、動けなくなる。

 俺は、リムルに話しかける。

 

レイト「さて。こいつが黒幕の様だな。」

リムル「だな。」

 

 俺とリムルは、前に出る。

 俺は、ガビルの事を気に入った。

 最初こそ、次期蜥蜴人族の首領だからという理由で持ち上げられていたと思っていたが、部下達が、本当に心の底から、ガビルの事を慕っているのが分かった。

 なら、助けるのには十分な理由だ。

 すると、ゲルミュッドが叫ぶ。

 

ゲルミュッド「き………貴様ら!この上位魔人にこんな事………!グハァッ!」

 

 ゲルミュッドの言葉が、途中で途切れたのは、リムルが腹パンしたからだ。

 

ゲルミュッド「ぐはあ………。貴様!この俺に…………!」

レイト「うるさい。」

ゲルミュッド「ぐはっ!」

 

 ゲルミュッドの喚きに、俺はそう言って、ちょっと強めのパンチを叩き込む。

 そのパンチで、糸が切れて、ゲルミュッドは腹を抱える。

 

ゲルミュッド「ああっ………ううっ!」

リムル「上位魔人とか言って、偉そうにしてても、大した事無いんだな。」

レイト「単なる小物だろ。」

ゲルミュッド「わ、分かった!仲間にしてやろう!俺はいずれ………グハッ!」

 

 そう言うゲルミュッドの言葉が再び途切れたのは、俺とリムルのキックが炸裂したからだ。

 倒れたゲルミュッドは、喚く子供みたいに手足を暴れさせる。

 

ゲルミュッド「ああっ!はあっ………!キィィィィィ!貴様ら、終わるぞ!あのお方がお前達を許さんぞ!!」

リムル「そのお方の事、詳しく聞かせてくれよ。誰が糸を引いてるのか。」

レイト「なぁに。お前が喋るのを拒否しても、死なない程度にはやるから。」

ゲルミュッド「ヒィッ!やめろ!来るなァァァ!!」

 

 ゲルミュッドはそう喚いて、豚頭帝の方へと向かう。

 

ゲルミュッド「おい、豚頭帝!俺を助けろ!」

豚頭帝「…………腹が減った。」

 

 ゲルミュッドの助けにも、豚頭帝はそう呟いただけだった。

 

ゲルミュッド「クソが!俺を助けろ、豚頭帝!いや、ゲルドよ!!」

ゲルド「…………はっ!」

 

 豚頭帝改め、ゲルドは、ゲルミュッドの言葉に、何かを思い出すかの様な動きを見せる。

 

ゲルド「ん…………。」

ゲルミュッド「貴様がさっさと魔王に進化しておれば………!」

 

 ゲルミュッドがそう言う中、ゲルドは動き出す。

 ゲルドが動いた事に、他の鬼人達も身構える。

 

ゲルミュッド「この屑が。漸く動いたか。ハハハハハッ!こいつの強さを思い知るが良い!やれ、ゲルド!この俺に歯向かった事を後悔させ………!」

 

 ゲルミュッドの言葉は、最後まで続かなかった。

 なぜなら、ゲルドは、手に持つ巨大な包丁で、ゲルミュッドの首を刎ねたのだ。

 それには、その場にいる全員が驚く。

 科学者が報告をする。

 

科学者『ゲルミュッド、生命反応を停止しました。』

レイト『見れば分かる。』

 

 俺が科学者にそう答えると、ゲルドが動いた。

 ゲルドは、そのゲルミュッドの死体を食べ始めたのだ。

 ゲルミュッドとしては、ガビルを生贄にするつもりだったのだろうが、ある意味因果応報の結末となったな。

 すると、ゲルドからヤバそうな気配が出てくる。

 

レイト「リムル………これ、やばくね?」

リムル「ああ。」

 

 俺の呟きに、リムルがそう答えると、科学者が報告する。

 

科学者『報告しました。豚頭帝、個体名ゲルドの魔素が増大しました。魔王種への進化を開始します。』

レイト『マジかよ………!』

 

 そうか、一応、俺たち相手には手も足も出なかったが、ゲルミュッドは上位魔人だ。

 それを食ったのならば、魔王種へと進化してもおかしく無い。

 俺たちが身構えると、ゲルドは進化した。

 

科学者『成功しました。個体名ゲルドは、豚頭魔王へと進化完了しました。』

 

 俺は、その報告を聞く。

 

リムル「豚頭魔王………。」

レイト「魔王、ゲルド………。」

リムル「レイト。放置する訳には行かないよな。」

レイト「だな。」

 

 俺たちがそう話してると、ゲルドは咆哮を上げる。

 

ゲルド「ウオオオオ!俺は、豚頭魔王!この世の全てを食らう者なり!名をゲルド。魔王、ゲルドである!!」

 

 こいつを放置してたら、本当の災厄が、このジュラの大森林を襲うだろうな。

 すると。

 

紅丸「紫苑!火煉!」

紫苑「はっ!」

火煉「承知しています!」

 

 紅丸の指示を受けた紫苑と火煉がゲルドに向かって走り出す。

 

リムル「おい?」

レイト「大丈夫か?」

紅丸「ここは、俺たちにお任せを。」

 

 俺とリムルの呟きに、紅丸はそう答える。

 紫苑と火煉は、駆け出していた。

 

紫苑「薄汚い豚が!魔王だと?」

火煉「思い上がるなァァ!!」

 

 紫苑と火煉の攻撃に、ゲルドは手に持っていた包丁で受け止める。

 

紫苑「うっ………!」

火煉「はっ!」

 

 2人の攻撃をゲルドは弾き、ゲルドは2人に攻撃しようとするが、紫苑は剛力丸で、火煉はベイルの右肩のマントで受け流し、距離が離れる。

 2人は、再びゲルドに向かって駆け出し、ゲルドは、2人に攻撃しようとする。

 

ゲルド「ふんっ!」

 

 だが、白老がすぐそばに来ていて、首を斬り飛ばす。

 

リムル「やった!」

レイト「いや、まだだ!」

白老「ん?」

 

 リムルがそう言うが、俺はそう叫ぶ。

 なぜなら、白老が斬り飛ばした筈の首を、ゲルドが抱えていて、首の方から触手みたいなのが伸びてきて、すぐに再生する。

 

白老「なっ………!?」

リムル「凄まじい回復能力だな………!」

レイト「奴を倒すには、超火力で吹き飛ばすしか無い!」

 

 これは、ある意味では、風都探偵に登場したドーパント、トラッシュ・ドーパントと似た能力だな。

 まあ、あっちとは違って、回復力が環境に影響されないみたいだが。

 すると、蒼影がいつの間にかゲルドの後ろにいて、地面から糸が伸びてきて、ゲルドを包み込む。

 

蒼影「操糸妖縛陣!」

ゲルド「うう………。」

蒼影「やれ、紅丸!」

紅丸「これでも、食らってな!」

 

 紅丸は、黒炎獄(ヘルフレア)を発動して、ゲルドを炎に閉じ込める。

 

嵐牙「ワォーーーーーン!!」

 

 嵐牙の咆哮と共に、糸が燃え、現れたゲルドに、雷が落ちる。

 嵐牙は唸っていて、リムルが話しかける。

 

リムル「魔素切れか?」

嵐牙「面目ありません………。」

リムル「俺の影に潜ってろ。」

嵐牙「はっ!」

 

 魔素切れを起こした嵐牙を、リムルは自分の影に潜らせた。

 俺が目を凝らすと、ゲルドはそこに居た。

 

紅丸「何っ!?」

「「「「あっ!?」」」」

リムル「まさか………!?」

レイト「無事かよ………!?」

 

 俺たちは、驚いた。

 蒼影、紅丸、嵐牙の攻撃で、あちこちが焦げているものの、無事であるゲルドに。

 

ゲルド「これが………痛みか。」

リムル「嘘だろ………!?」

レイト「致死級の連続攻撃を食らっておきながら、存命かよ………!」

 

 俺とリムルがそう驚いていると、三人の豚頭将軍(オークジェネラル)のうち、1人が跪く。

 

豚頭将軍「王よ。この身を御身とともに。」

ゲルド「…………うむ。」

 

 豚頭将軍がそう言って、ゲルドが頷くと、その豚頭将軍を食べる。

 すると、黄緑色のオーラがゲルドを包み、回復していく。

 

リムル「…………自己再生と回復魔法か。」

レイト「厄介だな………。」

ゲルド「足りぬ。もっとだ!もっと大量に食わせろ!!」

 

 俺とリムルがそう言うと、ゲルドは手から魔力弾を発射する。

 それは、紅丸達の上空に行くと、幾つもの大量に分かれる。

 あれは、先程ゲルミュッドが使ったスキル、死者之行進演舞だろう。

 俺とリムルは、再び各々のスキルを使い、死者之行進演舞を無効化する。

 

紅丸「リムル様、レイト様。」

リムル「大丈夫だ。」

レイト「俺たちに任せろ。」

 

 俺とリムルは、ゲルドに向かって歩いていく。

 

レイト「行けるか、リムル?」

リムル「ああ。………出番だぞ、大賢者。お前に託す!さっさと敵を打ち倒せ!」

 

 リムルがそう言うと、リムルの金色の目が赤くなっていく。

 俺は、予め合体させておいたリバイスラッシャーを取り出す。

 すると、ゲルドは、豚頭将軍が使っていたスキルを使う。

 

ゲルド「喰らい尽くせ!混沌喰(カオスイーター)!」

 

 そう叫ぶと、俺たちに四つの顔が飛んでくる。

 俺は、それをリバイスラッシャーで斬りつつ接近して、リムルは高速移動で躱していく。

 一度、リムルから聞いていたのだ。

 あれは、ユニークスキル、大賢者のオートバトルモードだと。

 リムルは、黒い炎を纏った刀で、ゲルドの左腕を吹き飛ばす。

 あの黒い炎は、ゲルドの左腕の上の部分にまで纏わり付き、再生を妨害している様だな。

 

レイト「俺も、負けてらんねぇな!」

 

 そう呟いて、ライオンバイスタンプを取り出して、起動する。

 

ライオン!

 

 そして、リバイスラッシャーのオーインジェクターに押印する。

 

スタンプバイ!

Here We Go!Let's Go!

Here We Go!Let's Go!

Here We Go!Let's Go!

 

 リバイスラッシャーから待機音が流れ、刀身に炎が纏う。

 リムルと同時に、ゲルドに攻撃して、ゲルドは包丁で受け止めようとする。

 

リバイバイスラッシュ!

 

ゲルド「バカな!?」

 

 ゲルドが驚いたのは、俺とリムルの攻撃で、包丁が溶け始めた事だ。

 ゲルドは、すぐにそれを放す。

 すると、包丁は、俺とリムルの攻撃による炎で、あっという間に溶けて、形が無くなった。

 

ゲルド「うう………。」

 

 ゲルドはそう唸って、未だに燃えている左腕を千切る。

 

豚頭将軍「マイロード!」

豚頭将軍「ううっ!」

 

 2体の豚頭将軍が、ゲルドに向かって叫ぶ。

 すると、再びあの黄緑色のオーラがゲルドを包む。

 

ゲルド「おおおおおおっ!」

 

 すると、千切った左腕があっという間に再生する。

 

ゲルド「今こそ、お前達を食ってやろうぞ!はっ!」

 

 ゲルドがそう叫ぶと、再び死者之行進演舞を発動する。

 俺とリムルは、それぞれのスキルで、死者之行進演舞を無力化する。

 すると、ゲルドは異常なほどの速さで、俺とリムルの背後に立つ。

 俺は、何とか躱せたが、リムルがゲルドに捕まってしまった。

 

ゲルド「ワハハハハ!まずは貴様をこのまま食らってくれるわ!」

レイト「リムル!」

 

 すると、ゲルドの足元に、魔法陣が出現する。

 その魔法陣から出た炎は、ゲルドをリムルごと包み込む。

 

ゲルド「うわぁぁぁ!!」

レイト「あれは!?」

科学者『解。個体名リムル=テンペストがイフリートを取り込んだ際に手に入れたスキル、炎化爆獄陣(フレアサークル)です。』

レイト「なるほど。」

 

 そんなスキルもあったのか。

 だが…………。

 

ゲルド「うわぁぁぁ…………ハハハハハ!」

 

 ゲルドは、無事だった。

 どうやら、炎耐性を獲得してしまった様だな。

 このままじゃ、リムルが食べられる!

 ゲルドは、勝利の宣言をする。

 

ゲルド「う〜ん………。俺には炎は通じぬ様だぞ。」

リムル「そうかよ。炎で焼け死んだ方が幸せだったかもしれないぜ。」

ゲルド「フン!」

リムル「俺は、お前を敵として認めた。今こそ、本気でお前の相手をしてやるよ。」

ゲルド「ワッハハハハ!笑止!今までは本気でなかったとでも?最早、貴様には何もできぬ!このまま俺に食われるが良い!」

 

 ゲルドがそう言うと、リムルの周囲から、煙が出てくる。

 だが、ゲルドの手の下から、リムルのスライムとしての一部が出てくる。

 なるほど、そういう事か!

 

リムル「お前に食われる前に、俺がお前を食ってやるよ。俺は………スライムだ!」

ゲルド「なっ!?おお………!?」

 

 リムルは、擬態を解除して、ゲルドに纏わりつく。

 俺は、すぐに駆け出して、未だに炎を纏ったリバイスラッシャーを構える。

 

レイト「ハアッ!」

 

 俺の攻撃によって、ゲルドの左腕が再び斬られて、左腕には炎が回復を阻害する。

 

レイト「そして、吸収!」

 

 俺は、吹っ飛んだ方の左腕を、吸収者ですぐに取り込む。

 

ゲルド「き…………貴様ら………!」

レイト「リムルを甘く見たな。そいつ、スライムなんだよ!」

リムル「ああ!食うのは、お前の専売特許じゃねえんだよ。………お前が俺を食うのが先か、俺がお前を食うのが先か。相手を食い尽くした方が勝ちだ!」

ゲルド「うおおおっ!」

 

 ゲルドは、何とかリムルを剥がそうとするが、左腕を失っている事が影響して、中々上手く行かない。

 リムルは、次第にゲルドを包み込んでいく。

 すると、いきなり俺の視界がスパークする。

 目を塞いで、しばらくして、目を開けると、そこには、枯れ果てた大地が。

 

リムル「何だ、この光景?」

レイト「枯れ果てた大地………。」

リムル「えっ!?何でレイトまで居んの!?」

レイト「分かんねぇ…………。」

 

 俺とリムルが戸惑っている中、科学者が答えてくれた。

 

科学者『解。個体名リムル=テンペストが持つクロコダイルバイスタンプと、マスターが持つツインキメラバイスタンプが共鳴しあって、こうなったのだと推測。』

レイト『なるほど…………。』

 

 確かに、両方ともクロコダイルの遺伝子が入ってるしな。

 すると、子供の泣き声が聞こえてくる。

 

リムル「アレは………豚頭族の子供か?」

レイト「あんなに痩せ細って………。」

 

 すると、そこに大柄な豚頭族と、その従者の豚頭族がやって来る。

 

レイト「リムル、あれって………。」

リムル「多分、後のゲルドだ。恐らく、豚頭魔王、ゲルドの記憶の中………。」

レイト「ゲルドの記憶………。」

 

 俺たちがそう話す中、後のゲルドとなる豚頭族は。

 

ゲルド「腹が減ったのか。少し、待っていなさい。」

 

 そう言うと、ゲルドは自分の左腕を千切る。

 それには、2体の豚頭族が目を背ける。

 ゲルドは、千切った左腕を、子供達の前に置く。

 

ゲルド「さあ、食べなさい。」

 

 子供達は、一瞬躊躇ったが、一心不乱にゲルドの左腕を食べる。

 それを見て、ゲルドは。

 

ゲルド「しっかり食べて、大きくなるのだぞ。」

 

 そう優しく語りかけた。

 その後、場所を移動したゲルドは、2人の豚頭族から懇願される。

 

豚頭族「王よ。もうお辞め下さい。」

豚頭族「そうです。この大飢饉の中、王である貴方まで失ってしまっては、我ら豚頭族には、もはや絶望しかありません………。」

 

 そんな2人の願いを聞いたゲルドは、再生した左腕を見ながら。

 

ゲルド「…………一昨日生まれた子が、今朝死んだ。昨日生まれた子は、虫の息だ。この身はいかに切り刻もうと再生するのに………これが既に絶望でなくて、何だと言うのだ。」

「「王よ………。」」

ゲルド「森に入り、食料を探す。」

豚頭族「あ………。」

豚頭族「王よ!ジュラの森は、暴風竜の加護を受けし場所………!」

ゲルド「その暴風竜は、封印されて久しい。………少しばかりの恵みを………。」

 

 ゲルドは、2体の豚頭族の静止を振り切って、ジュラの森へと向かっていく。

 しばらくして、ゲルドは倒れ、ゲルミュッドと出会った。

 すると、俺とリムルの背後に、豚頭魔王、ゲルドが現れる。

 

ゲルド「あの方は教えてくれた。豚頭帝となった俺が食えば、飢餓者(ウエルモノ)の支配下にある者は死なない。………邪悪な企みの駒にされていた様だが、賭けるしかなかった。だからオレは食わねばならない。………お前が何でも食うスライムだとしてもオレは食われるわけにはいかない。」

リムル「食い合いは、俺に分がある。お前は負ける。」

 

 現実世界では、リムルに取り込まれ、溶け始めているゲルドの姿があった。

 現実世界の俺は、それを見て、仮面の下で涙を流していた。

 

ゲルド「俺は、他の魔物を食い荒らした。ゲルミュッド様を食った。同胞すら食った。同胞は飢えている。俺は負ける訳にはいかない。」

リムル「………この世は弱肉強食。お前は負けたんだ。だから、お前は死ぬ。」

ゲルド「俺は…………負ける訳にはいかない。俺が死んだら、同胞が罪を背負う。俺は罪深くとも良い。皆が飢える事のない様に、俺がこの世の飢えを引き受けるのだ。」

レイト「…………それでも、お前は負ける。だが、安心しろ。お前の罪や同胞の罪は、俺が背負ってやる。」

 

 ゲルドは、俺の言葉に驚いた。

 

ゲルド「………何だと?」

レイト「俺はな、お節介なんだよ。」

リムル「なら俺は、お前達オークの罪を食ってやる。」

ゲルド「俺の罪を………背負う?食う?」

リムル「ああ。お前だけじゃなく、お前の同胞、全ての罪も食ってやるよ。」

ゲルド「同胞も含めて………罪を?フッ。お前達は欲張りだ。」

リムル「そうだなぁ。俺は欲張りだよ。」

レイト「でも、欲張りで何が悪いんだよ?」

 

 俺とリムルがそう言うと、俺たちの足元から枯れ果てた大地が、緑豊かな草原となっていき、ゲルドも、豚頭魔王から、普通の豚頭族としての姿に戻っていく。

 ゲルドが目を開けると、そこには。

 

ゲルド「お………!おおっ…………!」

 

 そこには、自然溢れる草原が広がり、鳥の鳴き声、子供達の笑い声、川のせせらぎが溢れていた。

 それを見て、ゲルドは、膝をつき、大粒の涙を流す。

 

ゲルド「…………強欲な者達よ………俺の罪を背負いし者よ………!俺の罪を食らう者よ………!感謝する。…………俺の飢えは今…………満たされた。」

 

 そう言って、ゲルドは消える。

 俺は、自分の意識が現実世界に戻った事を実感する。

 リムルは、スライムとしての姿から、人としての姿になる。

 

リムル「…………安らかに眠るが良い。ゲルド。」

レイト「俺たちは、民を想う心優しき王である貴方の事を、決して忘れない。」

 

 俺とリムルは、そう呟く。

 豚頭帝が倒された事により、飢餓者の効果も消滅した。

 現時点を持って、豚頭族の侵攻は、終わったのだった。

 俺は、変身解除して、リムルと共に振り返ると、皆が歓声を上げる。

 豚頭族達は、王を失った悲しみに暮れていた。

 そんな中、ゲルドのそばにいた2人の豚頭将軍は。

 

豚頭将軍「王よ………。」

豚頭将軍「やっと………解放されたのですね。」

 

 そうして、戦いは終結した。

 その後、戦後処理の為に集まる事になって、蜥蜴人族達は、引き上げて行った。

 俺とリムルは、鬼人達に話しかける。

 

リムル「………終わったな。」

紅丸「はっ。」

レイト「豚頭帝を討ち滅ぼしたら、自由にしてもらって良いという約束だ。今までご苦労だったな。」

紅丸「リムル様、レイト様。お願いがございます。」

リムル「何だ?」

レイト「ん?」

 

 俺とリムルがそう言う中、紅丸は俺たちに話しかける。

 

紅丸「何卒、我らの忠誠をお受け取り下さい。我ら、これからもリムル様とレイト様にお仕えいたします!」

レイト「え?」

リムル「…………良いのか?」

白老「異論はござらぬ。」

蒼影「あなた様方に会えて、自分達は幸運であります!」

 

 紅丸の言葉に、俺たちはそう聞いて、白老、蒼影が答える。

 すると、紫苑はリムルの方に、火煉は俺の方に来る。

 

紫苑「フフフフッ!」

リムル「うっ!ううっ………。」

紫苑「私は、リムル様の秘書兼護衛ですよ!絶対に離れませんからね!」

火煉「私も、レイト様の秘書兼護衛です。離れたりなんて、しませんよ。」

レイト「そ…………そうか。」

紅丸「我らの命、果てるまで!」

リムル「う………うん。」

レイト「そ、そうか。」

 

 こうして、紅丸達鬼人は、俺たちの仲間になったのだった。

 まあ、それはそうとして。

 

レイト「居るんだろ?出てこいよ。」

火煉「は………?」

???「ほう。俺に勘付くとはな………。」

 

 すると、火煉の体から、赤い粒子が出てきて、ある姿に変わっていく。

 それは、あの悪魔の姿だった。

 

紅丸「こいつは………?」

白老「何奴………?」

レイト「やあ、ベイル。」

火煉「ベイル………?」

ベイル「お初にお目にかかります。俺は、貴女から生み出された悪魔…………ベイル。」

リムル「悪魔………!?」

 

 やっぱり、ベイルか。

 火煉からベイルの気配がしてたんだよな。

 

レイト「………それで、何の用だよ?」

ベイル「そうだな………。火煉が慕うお前の事を見に来た………という所だな。」

レイト「なるほどね。」

ベイル「まあ、豚頭魔王を下した者と敵対する理由はない。仲間になってやる。」

レイト「そうかい。なら、火煉とよろしく頼むな。」

ベイル「………なるほどな。良い女じゃないか。」

火煉「………よろしくお願いします。ベイル。」

ベイル「ああ。力を借りたくなったのなら、いつでも貸してやろう。」

 

 そう言って、ベイルは火煉の中に戻っていった。




今回はここまでです。
ゲルドを撃破して、ベイルも登場!
この世界のベイルは、火煉とはバイスみたいな立場になります。
そして、豚頭族側から、オリキャラを1人追加しました。
次回は、ジュラの森大同盟の件です。
いよいよ、新しい仮面ライダー、ギーツが始まりますね。
色々とリクエストが来て、ありがたいです。
何とか、そのリクエストに応えられる様に頑張ります。
一応、これはアニメ版準拠である為、原作にあった台詞に関しては、一部ありません。
次回、蜥蜴人族と豚頭族のオリキャラの名前が判明します。


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第14話 ジュラの森大同盟

今回は、ガゼル王と戦い、盟約を交わす事を約束するまでです。


 魔王ゲルドを討伐したその翌日。

 それぞれの種族の代表が集まった。

 戦後処理の話し合いだ。

 ちなみに、蜥蜴人族(リザードマン)の中に、ガビルの姿は無かった。

 反逆の罪に問われているのだろう。

 だが、一つ言いたい事がある。

 

トレイニー「では、議長リムル=テンペスト、並びに、副議長レイト=テンペスト。始めてください。」

 

 そう。

 リムルが議長で、俺が副議長なのだ。

 そこは、森の管理者であるトレイニーさんが議長でしょ!?

 

リムル『なんで俺たちが議長やら副議長なんだよ!?』

レイト『仕方ない。俺もサポートするから、どうにかしよう。』

リムル『………だな。』

レイト『一応、豚頭族(オーク)の処遇は、話し合った通りにな。』

リムル『だな。』

 

 俺たちは、そう思念伝達で話し合って、リムルが口を開く。

 

リムル「えー………。こういう会議は初めてで苦手なんだ。だから思ったことだけを言う。その後皆で検討してほしい。」

 

 俺が皆に確認の合図を送るとその場にいる全員がうなずいた。

 

リムル「まず最初に明言するが、俺たちは豚頭族の罪を問う考えはない。」

豚頭将軍「え…………?」

豚頭将軍「は………?」

レイト「被害が大きかった蜥蜴人族からしたら、不服だろうが、聞いて欲しい。豚頭族達が、何故侵攻をしたのかを。」

 

 俺とリムルは話した。

 豚頭族が住む地域に襲った飢饉による飢餓である事を。

 

リムル「…………同じ立場だったならば、他の種族の物であっても、同様の判断をしたかもしれない。」

レイト「まあ、これに関しては、建前なんだけどな。」

首領「…………では、本音を伺ってもよろしいかな?」

 

 首領の言葉に、俺たちは頷き、リムルが答えた。

 

リムル「豚頭族の罪は全て俺達が引き受けた。文句があるなら俺達に言え。」

 

 すると、豚頭族の代表で、生存した2人の豚頭将軍が口を開く。

 

豚頭将軍「お…………お待ちいただきたい!」

豚頭将軍「そ、そうです!いくらなんでも、それでは道理が………!」

レイト「それが、魔王ゲルドと、俺たちが交わした約束だ。」

豚頭将軍「あっ………う………うう………。」

豚頭将軍「それは………。」

 

 俺の言葉に、2人の豚頭将軍は言葉を失い、座る。

 豚頭族は、顔を俯かせた。

 すると、蜥蜴人族の首領が口を開いた。

 

首領「なるほど………。しかし、それは少々狡いお答えですな。」

リムル『まあ、簡単には受け入れられないだろうな。』

レイト『まあ、それが普通だもんな。』

 

 俺たちがそう思念伝達で話していると、紅丸と火煉が前に出る。

 

紅丸「魔物に共通する、唯一不変のルールがある。」

火煉「弱肉強食。立ち向かった時点で、覚悟は出来ていたはずよ。」

リムル「………お前達も里を滅ぼされているけど、文句は無いのか?」

紅丸「ないと言えば、嘘になりますが………。次があれば、同じ無様は晒しませんよ。」

 

 紅丸の言葉に、鬼人達は頷く。

 

レイト「そっか………。」

首領「なるほど、正論ですな。………ですが、一つ、どうしても確認させていただきたい。」

リムル「何だ?」

首領「豚頭族をどうなさるのですか?」

レイト「……………。」

首領「豚頭族罪を問わぬということは、生き残った彼ら全てを、受け入れるおつもりですか?」

 

 首領の言いたい事も分かる。

 俺とリムルは頷き合い、語り出す。

 

レイト「確かに、数は減ったとはいえ、13万の豚頭族が居る。」

リムル「それで、だ。夢物語の様に聞こえるかもしれないが、皆で協力出来ればと考えている。」

首領「協力?」

親衛隊長「………と、言いますと?」

副隊長「どういう事ですか?」

 

 俺たちがそう言うと、全員の視線が俺たちに集まる。

 

リムル「蜥蜴人族からは、良質の水資源と魚を。ゴブリンからは住む場所を。俺たちの町からは、加工品を提供する。」

レイト「………で、その見返りとして、豚頭族からは、労働力を提供して欲しい。」

豚頭族達「おおっ………!」

リムル「ジュラの大森林の各種族間で、大同盟を結び、相互に協力関係を築く。多種族共生国家とか出来たら、おもしろいと思うんだけどなぁ。」

 

 俺とリムルの言葉に驚いたのか、豚頭将軍達が尋ねてくる。

 

豚頭将軍「わ………我々が………!」

豚頭将軍「その………同盟に参加させて貰えると言う事ですか?」

リムル「帰る場所も行く当ても無いんだろう?」

レイト「居場所を用意してあげるから、働けよ。サボるなよ。」

 

 俺たちがそう言うと、豚頭族達は、涙ぐみ、一斉に頭を下げる。

 

豚頭族達「ははっ!」

豚頭将軍「勿論!勿論ですとも!」

豚頭将軍「はい!命懸けで働かせて貰います!」

リムル「うん。」

レイト「蜥蜴人族は、どうだ?」

首領「うむ。是非、協力させていただきたい。」

リムル「トレイニーさんも、良いかな?」

トレイニー「宜しいでしょう。私の守護する樹人(トレント)族からも、森の実りを提供いたしましょう。当面、豚頭族達の飢えを癒す事は、出来るかと思います。」

豚頭族達「おおっ………!」

 

 どうやら、話は纏まったみたいだな。

 すると、トレイニーさんが立ち上がる。

 それを見て、俺は嫌な予感がした。

 

トレイニー「では………森の管理者として、私、トレイニーが宣誓します。リムル様とレイト様を、ジュラの大森林の新たなる盟主として認め。」

リムル「盟主!?」

レイト「え?」

トレイニー「本来、盟主は1人なのですが、お二人とも才能をお持ちでいらっしゃるのでお二人を盟主とすることに異論はありませんね?」

 

 えぇぇぇぇ!?

 そこは、トレイニーさんじゃないの!?

 

リムル『辞退は………!』

レイト『無理だな。まあ、俺たちで頑張ろう。』

リムル『分かったよ………。』

 

 俺とリムルは、そう思念伝達で話し合い、そう結論づける。

 

リムル「わ、分かったよ!やりますよ!」

レイト「俺たちが盟主で、構わないか?」

一同「ははっ!」

 

 こうして、冷や汗が止まらない俺たちをよそに、ジュラの森大同盟は成立したのだった。

 鬼人達の元に、2人の豚頭将軍がやって来る。

 

紅丸「何か用か?」

豚頭将軍「…………弱肉強食とは言っても、憎しみはそう簡単に割り切れるものではない。」

豚頭将軍「我らは………大鬼族(オーガ)の里を………!」

 

 すると、2人の豚頭将軍は、頭を下げる。

 

豚頭将軍「詫びて………詫びきれはしない。虫の良い話であるのは、重々承知している。」

豚頭将軍「だが………どうか、この私たちの首で、ご容赦願えないだろうか………!」

 

 豚頭将軍達は、死を覚悟をしていたのか、決して、顔を上げようとしなかった。

 すると、紅丸が口を開いた。

 

紅丸「…………戦いの後、今後もリムル様とレイト様の下にあり続けたいと伝えたら、俺たちに役職を下さった。」

紫苑「私と火煉は武士(もののふ)。リムル様とレイト様の護衛役で、秘書を兼ねてます!」

火煉「白老は指南役、蒼影は隠密。村に残ってる朱菜様と黒兵衛にも、ね。」

紅丸「………で、俺は侍大将の座を賜った。軍事を預かる役所だ。そんな所に就いちまった以上、有能な人材を勝手に始末するわけにはいかんだろう。」

 

 そう言って、紅丸達は出口へと向かい、2人の豚頭将軍は、頭を上げる。

 すると、紅丸は歩みを止め、2人に尋ねる。

 

紅丸「………リムル様とレイト様に仇なす存在ならば、容赦はしないが、同盟に参加し、盟主と仰ぐのならば、敵では無い。」

豚頭将軍「あ………仇なすなど、滅相も………!」

豚頭将軍「はい………!あの方々は、我らを救って下さった。従いこそすれ、敵対など、あり得ん!」

紅丸「では、俺たちは同じ主をいただく仲間だ。せいぜい、リムル様とレイト様の役に立て。それを、詫びとして受け取っておこう。」

 

 紅丸はそう言い残して、外へと向かっていく。

 2人の豚頭将軍は、立ち上がり、紅丸達の背中を見つめる。

 

「「父王、ゲルドの名に誓って。」」

 

 そう言って、頭を下げる。

 それを、影から見ていた俺達は。

 

レイト『紅丸って、器が大きいな。』

リムル『俺たちも見習わないとな。アイツらに名前をつけないとな。』

レイト『だな。新たな豚頭族の指導者として。』

 

 俺たちは、思念伝達でそう話して、2人の豚頭将軍を呼び出す。

 片方は俺が担当し、もう片方はリムルが担当する。

 

リムル「お前は、豚頭魔王(オークディザスター)ゲルドの遺志を継いで貰うべく、名をゲルドとする。」

レイト「お前は、そのゲルドを支えて貰うべく、名をグルドとする。」

「「ははっ!」」

リムル「2人で、豚頭族達を、しっかり導くんだぞ。」

レイト「頑張れよ。」

「「はっ!」」

 

 こうして、新しき王ゲルドは、猪人王(オークキング)へと進化し、グルドもまた、猪人族(ハイオーク)へと進化した。

 その後、10日かけて、俺たちは生き残った13万の豚頭族に、名前をつけた。

 何とか、低位活動状態(スリープモード)になるのは免れた。

 ちなみに、蜥蜴人族の首領にも、アビルの名をつけた。

 で、ガビルは、判決されようとしていた。

 まあ、一族の事を思っての行動だが、そうなるのも無理はなかった。

 

ガビル(我輩は死罪であろう。それで良い。そうでなければ、示しがつかん。ただ………心残りがあるとすれば………聞いてみたかった。何故、あの2人は、我輩を助けてくれたのかと。こんな………何の価値もない間抜けを。)

 

 ガビルは、そう思っていた。

 すると、アビルが口を開く。

 

アビル「顔を上げい。」

ガビル「ん………。」

アビル「判決を申し渡す。」

ガビル(せめて、堂々と、死罪を受け入れようぞ。)

 

 ガビルは、死罪を受け入れようとしていた。

 だが、アビルの口から出たのは、意外な言葉だった。

 

アビル「ガビルを破門し、追放する。二度と蜥蜴人族を名乗る事は許さぬ。」

ガビル「はっ………?」

アビル「即刻、追い払うが良い!」

ガビル「なん………だと!?」

 

 ガビルは、他の蜥蜴人族に連れられ、外へと追い出される。

 

ガビル「ぐっ………!」

護衛「忘れ物だ。ほら。」

 

 そう言って、一本の槍と荷物を渡す。

 その槍は、先ほどまで、アビルが持っていた水渦槍(ボルテックススピア)だった。

 

ガビル「あ………ああっ………!」

 

 アビルは、餞別として、水渦槍を息子に譲渡したのだった。

 ガビルは、泣きながら、頭を下げる。

 ガビルが移動していると。

 

部下「ガビル様〜!」

ガビル「ん?」 

部下「わ〜い!」

部下「ガビル様〜!」

 

 そこに現れたのは、ガビルの部下達だった。

 

部下「待ってましたよ、ガビル様!」

部下「ったく、待ちくたびれたぜ。」

部下「時は金なり。」

ガビル「な………何をしておるのだ、お前達!我輩は破門になったのだぞ!?」

部下「ガビル様が破門なら、皆、破門ですよ!」

部下「然り!」

ガビル「お前ら………バカだな。」

 

 ガビルはそう言ったが、実際には嬉しかったのだ。

 破門になったのに、自分を慕って着いてきてくれる事に。

 ガビルは、顔を背け、涙を拭うと。

 

ガビル「………しょうがない奴らであるな。分かった!まとめて面倒みてやろう。我輩に着いてくるが良い!」

部下「ヒュウ!流石だぜ。」

部下「かっくい〜!」

部下「至極、当然!」

 

 ガビルと部下達は、どこかへと向かっていく。

 一方、ある城では、白いタキシードの男性と、ラプラスが話していた。

 

ラプラス「折角お膳立てしたのに、新しい魔王が生まれへんかったんは、痛いんちゃうか?」

???「そうだな。」

 

 ラプラスの言葉に、白いタキシードの男性はそう言って、ワインを飲む。

 そして、ラプラスの方を見る。

 

???「…………しかし、面白い物が見れたよ。あのスライムに、見た事のない魔物。どうしたものかな?」

ラプラス「せいぜい頑張ってや。もし、協力が必要なら、格安で請け負うたるわ。魔王、クレイマンはん。」

 

 そう言って、ラプラスは煙と共に消えた。

 クレイマンと呼ばれた白いタキシードを着た男は。

 

クレイマン「フッ、フフ。」

 

 そう、笑う。

 一方、クレイマンという魔王に目をつけられた事を知らない俺たちは、豚頭帝(オークロード)討伐から3ヶ月経った。

 その間、豚頭族から進化した猪人族達は、カイジン達の指導の下、あっという間に技術を覚え、頼れる労力になっていた。

 俺が名前をつけた猪人族、グルドには、オーバーデモンズの力を授けた。

 そう、グルドとオーバーデモンズの力が、反応していたのだ。

 ちなみに、科学者曰く、デモンズの力と結びついていたが、切り離したらしい。

 徐々に発展していく村を、俺たちは丘の上から見ていた。

 家や服とかも出来て、上下水道や道路とかも出来てきた。

 これは、リムルの前世のゼネコン時代の知識を使ったそうだ。

 

リムル「それにしても、お前が銭湯を作る様に頼んだんだってな?」

レイト「ああ。やっぱり、そういうのは必要だろう?」

 

 ちなみに、しあわせ湯みたいなのを作り、名前は嵐ノ湯だ。

 嵐とは、俺たちのテンペストから取った。

 こうして、安住の地、俺たちの町が出来た。

 ………のだが、そうは問屋が卸さないのだった。

 俺たちの所に、蒼影がやって来る。

 

蒼影「リムル様、レイト様。緊急事態です。」

リムル「え?」

レイト「どうした?」

 

 蒼影の報告に、俺たちは首を傾げた。

 それは、ペガサスに乗った騎士団が、この町にやって来たとの事だった。

 どうして、そうなったのか。

 それは、少し前、武装国家ドワルゴンでは、暗部からの報告を、ガゼル王が聞いていた。

 そして、その報告書を、蝋燭の炎で燃やす。

 

ドルフ「王よ、暗部は何と?」

ガゼル「…………豚頭帝は討伐され、戦争が終結したそうだ。」

 

 ガゼルのその言葉に、ドルフは驚く。

 

ドルフ「何ですと!?」

ガゼル「13万の豚頭族は、暴走する事も無く、各地に散ったらしい。しかも、猪人族に進化してな。」

ドルフ「そんな事が………!?」

 

 ガゼルの言葉に、ドルフは再び驚き、ガゼルは考えていた。

 

ガゼル(複数の上位魔人の参戦により、戦争は終結。魔人達は、例のスライムとキメラの配下であると思われる………か。魔人を従え、魔物に進化を齎す者たち。此度の件、対応を誤れば、国が滅ぶやもしれぬ。)

 

 ガゼルは、複数の上位魔人………鬼人勢………を従えているのが、スライムとキメラ………リムルとレイト………である事を見抜き、口を開く。

 

ガゼル「あのスライムとキメラの正体、余自ら

が見極めてやろうではないか。」

 

 そうして、ガゼル王とペガサス・ナイツは、俺たちの町に向かって来ていたのだ。

 そんな事を知る由もない俺たちは、すぐに着陸するであろう場所へと向かう。

 その中には、カイジンも来ていた。

 ちなみに、俺はギフテリアンの姿で向かう。

 豚頭魔王を倒した影響か、TUREの姿になっていた。

 一応、念の為にリバイスラッシャーは出しておく。

 俺たちは、上空を見上げると、そこには、かつて見た、ガゼル王の姿が。

 

カイジン「まさか………!」

リムル「ドワーフの英雄王………。」

レイト「ガゼル・ドワルゴ………!」

 

 何であの人が。

 すると、紅丸が質問して来る。

 

紅丸「リムル様、レイト様。いかが致しますか?」

リムル「出来れば、争うのは避けたいんだが………。」

レイト「相手の出方によるか。」

紫苑「問題ありません!蹴散らせば良いのです!」

火煉「蹴散らしたら、面倒臭い事になりそうですけどね。」

レイト「まあ、いざ戦闘になったら、住民たちを避難させる。」

リムル「その間、俺たちで時間を稼ぐぞ。」

紅丸「はっ!」

 

 俺たちがそう話している間、旋回していたペガサス達は、一斉に地面に降り立つ。

 カイジンは、ガゼル王の下に向かい、跪く。

 

カイジン「お久しぶりでございます。」

ガゼル「…………久しいな、カイジン。」

カイジン「はっ!」

 

 俺とリムルは、前に出る。

 ガゼル王は、俺たちを睥睨する。

 

ガゼル「スライムにキメラか。キメラの方は、体色が変わっているようだが。」

リムル「最初に名乗っておく。俺の名はリムルで………。」

レイト「俺の名はレイトだ。キメラ呼ばわりはやめて欲しい。」

リムル「これでも一応、俺たちはジュラの森大同盟の盟主なんでね。」

 

 俺たちは、そう言って、人間としての姿になる。

 

レイト「こっちの方が、何かと話しやすいだろう?」

リムル「………で、何の用だ?」

 

 リムルの質問に対して、ガゼル王が答える。

 

ガゼル「…………単刀直入に言おう。リムル、レイト。貴様らを見極めに来たのだ。」

リムル「………見極め?」

ガゼル「俺の剣で、貴様の本性を見抜いてくれるわ。」

レイト「なるほど………。」

ガゼル「この森の盟主になったなどとホラを吹く貴様らには、分という物を教えてやらねばなるまい。その剣が飾りでないというのなら、俺の申し出を受けるが良い。」

 

 ガゼル王はそう言って、剣を抜刀しようとする。

 部下達も、驚いたのか、声をかける。

 

ドルフ「王よ、まさか………!?」

ガゼル「ふん。本気で戦ってみるのが、手っ取り早いであろう?」

リムル「よし、その申し出を受けよう。」

レイト「ホラ吹き呼ばわりした事、後悔させてやるよ。」

 

 そうして、まずはリムルとガゼル王との一騎打ちとなった。

 ガゼル王が口を開く。

 

ガゼル「俺の一連の攻撃を防ぎ切ったら、貴様の勝ちで良い。それは、後にやるお前も同じだ、レイトよ。」

レイト「ああ。リムル、負けんなよ。」

リムル「ん?ああ!」

ガゼル「ただし、この俺、剣聖ガゼル・ドワルゴの剣を甘く見ない事だ。」

リムル「分かった。」

 

 すると、風が吹いて来て、トレイニーさんが現れる。

 

レイト「トレイニーさん。」

トレイニー「それでは、立ち会いは私が行いましょう。」

ガゼル「ん?」

ドルフ「まさか、樹妖精(ドライアド)?」

 

 トレイニーさんの姿を見たガゼルは、突然鼻で笑った。

 

ガゼル「貴様らをホラ吹き呼ばわりした事は、謝罪するぞ。それに、事情も朧げながら読めたわ。」

リムル「じゃあ………!」

ガゼル「だが、貴様らの人となりを知るのは、別の話だ。」

レイト「ですよね………。」

ガゼル「立会人も決まったならば、あとは剣を交えるのみ。」

リムル「ああ、そうだな。軽く勝利して、今回の件をきっちりと説明してもらうとするわ!」

ガゼル「フフ………!俺に勝てたなら、答えてやるさ。」

 

 そうして、トレイニーさんの開始の合図と共に、リムルが駆け出す。

 最初の攻撃は防がれるが、すぐに走って、別の方向から仕掛ける。

 ガゼルは、リムルを突き飛ばすが、すぐに着地する。

 

ガゼル「貴様の力は、そんなものか、リムルよ!」

リムル「うるさい!まだ本気を出していないだけだし!慌てんな。」

 

 ガゼルの挑発に、そう答えるリムル。

 ガゼルの攻撃で、リムルは大きく下がる。

 すると、ガゼルはある構えをする。

 

レイト(あの構えは………。)

ガゼル「行くぞ、リムル!朧・地天轟雷!」

 

 そう叫ぶと、ガゼルが消え、リムルは、下からくる攻撃を躱し、上から来る攻撃を、刀で受け止める。

 

ガゼル「ふん。フフフ………ハハハ!俺の剣を受け止めおったわ!」

リムル「え?」

トレイニー「それまで!勝者、リムル=テンペスト!」

 

 トレイニーの宣言と共に、ガゼル王は、剣をリムルから退かす。

 だが、納刀はしていない。

 

ガゼル「リムルは分かった。次は、お前だ、レイトよ。」

レイト「ああ。」

 

 今度は、リムルの代わりに俺が出て、リバイスラッシャーを構える。

 俺の意識は、ガゼル王のみを捉えていた。

 

トレイニー「始め!」

 

 トレイニーさんのその声と共に、俺は駆け出して、リバイスラッシャーで攻撃する。

 ガゼル王は、剣でこれを受け止める。

 少しの間、鍔迫り合いとなり、お互いに離れる。

 

ガゼル「ほう。やるではないか。だが、それが貴様の本気か?」

レイト「うるせぇ。俺は徐々に上げていくタイプなんだよ。」

 

 ガゼル王の挑発に、俺はそう返す。

 今度はガゼル王が仕掛けて来て、俺はリバイスラッシャーで剣を受け止める。

 そして、俺は少し離れる。

 ガゼル王は、再びあの構えをする。

 

レイト(来たか。)

ガゼル「行くぞ、レイト!朧・地天轟雷!」

 

 ガゼルは、一瞬で消え、俺は、下からくる攻撃を躱す。

 そして、オーインバスター部分に付いているオーインスタンプを、オーインジェクターに押印する。

 

スタンプバイ!

Here We Go!Let's Go!

Here We Go!Let's Go!

Here We Go!Let's Go!

 

レイト「来る!上!」

 

リバイバイスラッシュ!

 

 ガゼル王の剣を、リバイバイスラッシュで斬って、ガゼル王の首元に剣先を突きつける。

 

レイト「こんなもんかな。」

ガゼル「…………まさか!俺の剣が斬られるとはな!」

トレイニー「それまで!勝者、レイト=テンペスト!」

 

 トレイニーの声と共に、ガゼル王は、部下に剣を持たせた。

 そして、俺とリムルを見ながら言う。

 

ガゼル「剣を交えて、よく分かった。お前達は邪悪な存在ではない。」

火煉達「うんうん。」

 

 ガゼル王の言葉に、火煉達は後ろで頷く。

 

リムル「何でだよ………。」

ガゼル「それにしても、よくぞ俺の朧・地天轟雷を見切ったものよ。見事だったぞ、リムル、レイト。」

レイト「偶然だ。何せ、その技をよく使う師匠が居てな。俺もリムルも、訓練でよく打ちのめされたんだよ。」

ガゼル「なんだと?まさか、その師匠というのは………。」

 

 ガゼル王がそんな風に驚いていると、白老が前にやって来る。

 

ガゼル「ああっ………!」

リムル「お?」

レイト「白老。」

白老「ほっほっほ。お見事でしたな、リムル様、レイト様。」

ガゼル「おおっ………!剣鬼殿!」

 

 えっ?

 2人って知り合いなの!?

 俺がそう驚いていると。

 

白老「森で迷っていたあの時の小僧が、見違えましたぞ。………いや、失礼、ドワーフ王。わし以上の剣士へと成長したようで、重畳ですじゃ。」

ガゼル「剣鬼殿にそう言っていただけるとは………。」

 

 どうやら、白老が師匠って事か。

 世界って、意外と小さいもんだな。

 すると、ガゼル王が俺たちに話しかけてくる。

 

ガゼル「さあ早く案内してくれリムル、レイト。上空から見たかぎりじゃ美しい町並みだったぞ?美味い酒くらいあるのだろう?」

リムル「…………まああるけど。」

レイト「裁判の時と比べて軽すぎない?」

ガゼル「なぁに。こっちが素よ。」

 

 そんな風に話しながら、町へと戻る。

 その夜、宴をしながら、俺たちは、ガゼル王の話を聞いていた。

 

リムル「なるほど。」

レイト「豚頭帝を倒した、謎の魔物集団の調査だったと。」

ガゼル「それが敵となるか、味方となるか、見極めにな。」

 

 まあ、そうするのが、正しい判断だろう。

 すると、ガゼル王が真面目な顔で、俺たちに聞いてくる。

 

ガゼル「リムル、レイトよ。聞きたい事がある。」

リムル「おう。」

レイト「何だ?」

ガゼル「俺と盟約を結ぶつもりはあるか?」

リムル「あっ。」

ガゼル「お前達がもしも、この広大な森を全て掌中に出来たならば、我が国をも上回る富と力を手に入れる事が出来よう。その時に、後ろ盾となる国があれば、便利だぞ?」

 

 確かに。

 後ろ盾があった方が、何かと良いしな。

 

リムル「願ってもない事だが………。」

 

 リムルはそう言うと、紅丸達の方をチラリと見て、聞く。

 

リムル「良いのか?それは、俺たち魔物の集団を、国として認めると。そう言っているのと同じだぞ?」

ガゼル「無論だ。それとこの話、我らにとっても、都合が良い。」

レイト「………と、言いますと?」

ガゼル「お互いに利益があるからな。」

 

 俺とリムルは、お互いをチラリと見て、答える。

 

レイト「断る理由はないね。」

リムル「喜んで、受けたいと思う。」

ガゼル「よし。…………で、お前達の国の名前は何と言うのだ?」

レイト「………お。」

 

 ヤッベェ。

 国の名前とか、一切考えてなかった。

 豚頭帝討伐後、色々と忙しかったからな。

 シズさんの新しい肉体の作成も、順調に進んでいるが、もう少しかかりそうだし。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「ジュラ・テンペスト連邦国だ。」

ガゼル「ジュラ・テンペスト連邦国。」

紅丸「おおっ!」

紫苑「さすが、リムル様です!」

火煉「さすがです!」

リグルド「では、国の名はジュラ・テンペスト連邦国!この町の名前は、リムルと致しましょう!」

レイト「お?良いね!」

リグルド「中央都市、リムルです!」

リムル「おいおい!それはちょっと恥ずかし………。」

 

 こうして、国の名前はジュラ・テンペスト連邦国、首都は中央都市リムルに決まった。




今回はここまでです。
という訳で、豚頭族のオリキャラの名前は、グルドに決まりました。
そして、グルドがオーバーデモンズになります。
次回、蜥蜴人族のオリキャラの名前を決め、ミリムがやって来ます。
まあ、ミリムだけでなく、クレイマンにも目をつけられてしまいますが。
何か、贖罪の為に変身するというのが、玉置と似てますね。
電王編でのリクエストがたくさん来て、嬉しいです。
まあ、やるのはかなり先になりますが。
感想、リクエスト、絶賛受け付けています。
いずれ、リバイ、バイス、エビル、ライブ、ジャンヌ、アギレラも出したいと思います。


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第15話 魔王ミリム襲来

 こうして、俺たち、ジュラ・テンペスト連邦国と、武装国家ドワルゴンとの同盟が成立したのだった。

 俺たちの魔物の国に、心強い後ろ盾が出来た。

 で、その二日後。

 

ガゼル「来てやったぞ、リムル、レイトよ。」

 

 何と、ガゼル王が再び来たのだ。

 

レイト「随分と早い再訪ですね………。」

リムル「今度は何の用だよ?」

ガゼル「お前達に土産をやろうとおもってな」

リムル「土産?」

レイト「何それ?」

 

 ガゼル王が供に合図を送ると布で簀巻きされたものを投げその拍子で表面の布がめくれると、そこに居た人に俺たちが驚く。

 

リムル「えええっ!?」

レイト「コイツってたしか!?」

カイジン「ベスターじゃねえか!?」

ベスター「うぅぅぅん………。」

 

 泡を吹いて気絶しているベスターであった。

 ガゼル王が、理由を説明する。

 

ガゼル「有能なコイツを遊ばせておくも勿体ないのでな。とはいえ、俺に仕えるのを許すわけにはいかん。好きに使え。」

カイジン「王よ、それではベスター殿の知識が我等に流出することになりますぞ!?」

ガゼル「流出していった本人が今更なにを言う。」

カイジン「それは………。」

 

 カイジンは止めようとしたがガゼル王の正論で言葉に詰まった。

 ガゼル王は、復活したベスターに声をかける。

 

ガゼル「そのための盟約よ。お前達のこの地を、まだ見ぬ技術の最先端にしてみせろ。ベスターよ。」

ベスター「はっはい!」

ガゼル「ここで思う存分、研究に励むが良い。」

ベスター「…………っ…………は!今度こそ………今度こそ、期待に応えてご覧にいれます。」

 

 ベスターはそう言うと、今度は俺たちに顔を向ける。

 

ベスター「リムル殿、レイト殿、カイジン殿すまなかった。許されるならここで働かせてほしい。」

カイジン「…………優秀な研究者が来てこっちも大助かりってもんだ。旦那方。何かあったら、俺が責任を取ります。ここは俺を信じて、こいつを許してやって下さい。」

ベスター「カイジン殿………。」

 

 まあ、ベスターも、ガゼル王の期待に応えようとして、焦ったからな。

 俺たちは、頷いて、答える。

 

リムル「カイジンがそれで良いなら、俺たちに文句はないよ。」

レイト「ベスター。これからよろしく頼む。」

ベスター「ははっ!不肖ながら、精一杯努めさせていただきます!」

ガゼル「…………では、さらばだ!」

 

 ガゼル王はそう言って、去っていく。

 周囲の面子が拍手する中、その中に混じっていた奴らに声をかける。

 

リムル「はぁ………さてと。」

レイト「お前ら、何してんの?」

 

 俺とリムルの視線の先には、ガビル達が居た。

 いつの間にここに来たのか。

 

ガビル「あっ………いやあ、ハハハ!このガビル!リムル殿とレイト殿のお力になりたく、馳せ参じましたぞ!」

部下「ガビル様、かっこい〜!」

部下「当然である。」

 

 それを聞いた紫苑と火煉は。

 

紫苑「では、斬りますね。」

火煉「始末しましょう。」

 

 そう言って紫苑は剛力丸を、火煉はカブトバイスタンプを構える。

 それを見たガビルは焦った。

 

ガビル「あっ!いやいやいや………!是非とも、我輩達を配下に加えていただきたいのです!必ず、お役に立ってご覧に入れますので。何卒。」

部下たち「何卒………。」

部下「ガビル様がこう言ってますので………。」

親衛隊長「兄は反省しているのです。」

副隊長「彼に、償いの機会をお与えください。」

 

 ガビル達がそう言う中、親衛隊長と副隊長とその配下達が現れる。

 

リムル「親衛隊長と副隊長まで?」

レイト「来てたのか。」

親衛隊長「私たちは、兄と違って、勘当になった訳ではありません。」

ガビル「何!?」

副隊長「首領アビルが、見聞を広めよと、僕たちを送り出してくれたんです。」

ガビル「我輩を慕ってついて来たのでは?」

親衛隊長「違います。」

副隊長「違うよ。」

ガビル「ガーン!」

レイト「なるほどね………。」

 

 そうして、ベスター、そしてガビル達が仲間になった。

 リムルは、親衛隊長とその配下に名前を付ける中、俺は副隊長に名前をつける。

 

レイト「副隊長。君の名前は、蒼月だ。」

蒼月「ありがとうございます。」

 

 ちなみに、ガビルの配下にも、名前をつけた。

 ガビルとよく居るあの3人組は、青色の奴がカクシン、緑色の奴がヤシチ、あと一人はスケロウの名前をつけた。

 名前をつけた事により、ガビル達は、龍人族(ドラゴニュート)に進化した。

 そして、俺は、火煉、グルド、蒼月の3人を呼び出した。

 

グルド「どうされましたか、レイト様。」

レイト「3人には、俺の直属の部下としても動いて欲しい。」

火煉「本当ですか!?」

レイト「ああ。だから、蒼月にも、これを渡しておこうと思ってな。」

 

 俺は、蒼月にアタッシュケースを渡す。

 ちなみに、蒼月や蒼華といった、一部の龍人族は、人間に近い見た目になった。

 

蒼月「あ、開けて良いのですか?」

レイト「ああ。」

 

 蒼月の質問に、俺はそう答える。

 蒼月がアタッシュケースを開けると、そこに入っていたのは、デモンズドライバーとスパイダーバイスタンプだった。

 

蒼月「これは………?」

グルド「私と同じ、デモンズドライバー………!?」

火煉「と言うと、蒼月も変身出来る様になるという事ですか?」

レイト「ああ。3人には、それぞれの仕事を頑張りつつ、何かあった際には、変身して、仲間を助けて欲しい。」

「「「はっ!」」」

 

 こうして、火煉、グルド、蒼月といった面子は、仮面ライダーに変身できる為、俺の直属の部隊を作る事にした。

 まあ、3人にも、頑張ってほしい所だ。

 俺は、それぞれの仕事に戻った3人を見送って、ヴェルドラの洞窟に向かう。

 ちなみに、ガビル達は、ヴェルドラの洞窟で、ヒポクテ草の栽培をしてもらっている。

 俺は、研究所に向かう。

 

レイト「よお、ベスター!」

ベスター「ん?おお、レイト殿。」

 

 そう、ベスターにも、俺の研究室を拡張した物を使用させている。

 

レイト「調子はどうだ?」

ベスター「はい。フルポーションの作成と同時に、シズエ・イザワさんの新たな肉体の作成、クローンライダーの量産など、上手く行っております。」

レイト「ありがとう。助かるよ。流石に、俺一人じゃあ、キツかったからな。」

ベスター「いえ。」

 

 そう、ベスターにも、俺の研究を手伝わせている。

 シズさんの肉体の作成も、少しずつしか進んでいなかったからな。

 そして、クローンライダーの量産にも力を注ぐ事にした。

 現状、ライオトルーパー、ゼクトルーパー、黒影トルーパー、デモンズトルーパーしか出来ていないしな。

 ここ最近は、量産型ライダーで、メイジ、ダークネクロム、アバドンの作成にも成功している。

 俺は、隣の部屋へと向かい、シズさんの魂が入ったバイスタンプに話しかける。

 

レイト「悪いな、シズさん。もう少し時間がかかるかもしれない。」

シズ「ううん。私の新しい体を作ってくれるだけでも嬉しいよ。」

レイト「本当に悪いな。何とか、頑張るから。」

シズ「うん。」

 

 そう話しかける。

 俺は、外へと出る。

 徐々に発展していってるな。

 そして、俺は、とあるスキルを確かめる事にした。

 豚頭魔王(オークディザスター)のゲルドを撃破した際に手に入れた新たなスキル、怪人生成。

 これは、文字通りに、怪人を生み出すスキルだ。

 科学者に聞いてみる。

 

レイト『科学者さん。現状、怪人生成で、何の怪人が生み出せるの?』

科学者『解。現状、ギフジュニアくらいが限界かと。』

レイト『分かった。ありがとう。』

 

 まあ、現状はギフジュニアが限界か。

 しばらくして、クリスパーが生成出来る様になったら、やってみるか。

 一方、とある建物では、水晶玉を見る四人の人物が居た。

 その四人は、全員が魔王で、ピンク色の髪の女の子がミリム、背中から翼を生やした女性がフレイ、大柄な男性がカリオン、白いタキシードを着る男性がクレイマンだ。

 その水晶玉に映し出されていたのは、豚頭魔王のゲルドと、リムル、レイトの戦闘時の物だ。

 

ミリム「面白い!面白いのだ!この玩具達の調査には、私が赴く!」

クレイマン「しかし、ミリム。ジュラの森には不可侵条約が………。」

ミリム「不可侵条約?そんな物、ヴェルドラが消えた今、撤廃してしまえばいいのだ。」

クレイマン「なるほど………その通りですね。」

 

 ミリムの発言に、クレイマンがそう言うが、ミリムの反論にクレイマンは頷き、カリオン、フレイも頷く。

 ミリムは口を開く。

 

ミリム「決まりなのだ!ただし、互いに手出しは厳禁!よいな?」

クレイマン「勿論です。」

ミリム「約束だ!協定は成立した。では、今から調査に行ってくる。邪魔するでないぞ、クレイマン!カリオン!フレイ!はっ!」

 

 そう言ったミリムは、窓から、ジュラ・テンペスト連邦国へと向かう。

 一方、俺は、とんでもない魔力の塊が、こちらに向かってくる事に気づいた。

 

レイト「なんか、嫌な予感がするな………。」

 

 俺はそう呟き、ある丘へと向かっていく。

 途中で、リムルと合流する。

 

レイト「リムル!」

リムル「レイト!お前も感じるか?」

レイト「ああ!とんでもない魔力の塊が、こっちに来てる!」

 

 俺たちはそう話して、丘に到着すると、ピンク色の魔力の塊が、地面に着弾する。

 俺たちは、飛ばされない様にする。

 すると、ピンク色の魔力の塊の中に居たであろう何者かが、話しかけてくる。

 

ミリム「初めまして。私はただ一人の竜魔人(ドラゴノイド)にして、破壊の暴君(デストロイ)の二つ名を持つ、魔王、ミリム・ナーヴァだぞ!」

リムル「魔王かよ?」

レイト「うそ〜ん………。」

ミリム「お前達がこの町で一番強そうだったから、挨拶に来てやったのだ。」

 

 ミリムという魔王は、そう言う。

 ていうか、何で魔王がもう来るんだよ!

 やっぱり、ゲルドの件で、目をつけられてたのか?

 すると。

 

???『1人にしないで…………。』

レイト「ん?」

 

 突然、謎の声が聞こえてきて、俺は周囲を見渡す。

 俺が周囲を見渡している事に気付いたリムルが、俺に声をかける。

 

リムル「どうした?」

レイト「いや………声が聞こえた様な………。」

リムル「ん?聞こえないぞ?………あ。」

 

 リムルがそう声をかける中、ミリムは、リムルを興味深そうに突いていた。

 あの声は、女性の物だった。

 しかも、あのミリムっていう魔王の様な声が聞こえてきて………。

 何なんだ?

 俺がそう思っている中、リムルはミリムに話しかける。

 

リムル「は…………初めまして。この町の主の片割れ、リムルと申します。」

レイト「…………で、俺はレイトです。」

リムル「よ………よくぞ、スライムである俺と、キメラのレイトが、一番強いと分かりましたね。」

ミリム「ふふん。その程度、私にとっては、簡単な事なのだ!この目、竜眼(ミリムアイ)は、相手の隠している魔素の量まで、測定出来るのだ。」

レイト「へぇ………竜眼。」

ミリム「まあ、私の前では、弱者のふりなど出来ぬと思うが良い。」

 

 なるほど、そんなスキルが。

 解析鑑定みたいな物か。

 それにしても、随分とやばい気配の魔王だよな。

 ただ、ミリムって奴から、少しだけだが、声が聞こえた様な気がしたのは、気のせいか?

 そんな事を考えていると、ミリムが話しかけてくる。

 

ミリム「ところで、お前達のその姿が本性なのか?ゲルミュッドの奴を圧倒した、あの銀髪の人型や、橙色の仮面の戦士の姿は、変化した物なのか?」

 

 ミリムは、俺たちにそう聞く。

 どうやら、仮面ライダーキマイラの事は把握しているみたいだな。

 

レイト「全部、知ってるって訳か。」

リムル「フン!この姿の事ですかね?」

 

 俺とリムルは、人としての姿になる。

 ミリムは、俺たちに近寄る。

 

ミリム「おお!やはり、お前だったのだな!………ただ、そこのお前が、橙色の仮面の戦士か?」

レイト「そうだな。ちなみに、この姿は、人間としての姿だ。」

ミリム「…………では、豚頭帝を倒したのだな?」

リムル「まあ、俺たちが勝ちましたけど………。で、何の御用なのでしょう?」

レイト「もしかして、ゲルミュッドを倒した俺たちへの復讐ですか?」

 

 俺たちの質問に対して、ミリムは意外そうな顔をする。

 

ミリム「はあ?用件だと?挨拶しに来たんだけど。」

 

 ミリムは、そう言った。

 俺が思った事としては。

 

レイト(それだけかよ………。)

 

 俺とリムルが唖然となっている中、背後から、誰かが出てくる。

 紫苑と火煉だった。

 しかも、火煉はベイルに変身していた。

 

リムル「えっ?」

紫苑「覚悟!」

火煉「ハァァァァ!!」

レイト「おい!」

嵐牙「さっ!我が主達よ!」

 

 紫苑と火煉は、ミリムに向かって攻撃していき、嵐牙は、俺とリムルを咥えて、走り出す。

 

リムル「ま、待て、嵐牙!」

レイト「ちょっと待て!」

嵐牙「待てません!お許しを!!」

 

 俺とリムルは、嵐牙に声をかけるが、嵐牙は無視して走る。

 紫苑と火煉の攻撃は、ミリムにあっさり受け止められていた。

 

ミリム「フフフ…………。」

紫苑「うっ………!」

火煉「なっ………!?」

ミリム「何だ?私と遊びたいのか?」

「「待てって!!」」

嵐牙「ギャイン!」

 

 ミリムが右手でベイルに変身した火煉のパンチを、左手で剛力丸を受け止めているのに驚きながら、俺たちは木の枝を掴んで、嵐牙を止める。

 その際、俺とリムルの足で、嵐牙の首が絞まり、嵐牙は苦しそうにする。

 そんな中、ミリムは、紫苑と火煉の二人を投げ飛ばしていた。

 すると、ミリムが糸によって拘束された。

 

ミリム「わっ!お………おお〜!」

蒼影「いかに魔王といえども、この糸の束縛より、逃れる事は出来まい。」

紅丸「燃え尽きるが良い!!」

 

 蒼影の糸によって拘束されたミリムに、紅丸は黒炎獄(ヘルフレア)をミリムに放って、ミリムは炎に包まれる。

 

紅丸「火傷くらいしてくれると嬉しいが……。」

 

 紅丸は、そう呟いていた。

 すると、炎の中から、笑い声が聞こえてくる。

 

ミリム「アハハハハ………!わぁ!凄いのだ!これほどの攻撃、私以外の魔王なら、無傷では受けられなかったかもしれぬぞ!………だが、私には通用しないのだーー!!」

 

 ミリムは、やっぱりと言うべきか、無傷だった。

 ミリムはそう叫ぶと、オーラを周囲に放出して、紅丸達を吹き飛ばし、近くにあった木も、根元からひっくり返る。

 俺たちは、嵐牙が抑えてくれていたというのもあって、無事だった。

 ミリムの周囲には、着地した時よりも遥かに巨大なクレーターが出来上がっていた。

 俺は火煉、リムルは紫苑の元に行く。

 

レイト「火煉、ベイル!大丈夫か?」

火煉「レイト様………!」

ベイル「こいつ………強い………!」

レイト「見れば分かる。とにかく、回復薬を使っておけ。」

 

 火煉は、体に外傷は無いな。

 ベイルは、まあ、ベルトの中に居るから、ベルトにダメージが及んでいなければ、大丈夫か。

 すると、紅丸と蒼影が、俺たちに声をかける。

 

紅丸「リムル様、レイト様………お逃げ下さい………!」

蒼影「ここは、私たちが………!」

リムル「お前たちもほれ。それ飲んで寝てろ。」

レイト「さて………行くか。」

 

 リムルは、紅丸と蒼影に回復薬を渡して、俺は、キメラドライバーを装着する。

 すると。

 

リムル「レイト。ここは、俺に任せてくれないか?」

レイト「リムル?」

リムル「頼む。」

レイト「…………分かったよ。やばくなったら、加勢するからな。」

 

 リムルがそう言ったので、俺は、キメラドライバーを装着したまま、リムルに任せる事にした。

 ミリムが口を開く。

 

ミリム「どうした?まだ遊び足りぬのか?……良いだろう。もっと遊んでやるのだ。」

紅丸「リムル様………。」

リムル「諦めたら、そこで終了だから、出来るだけやってみるさ。期待はするなよ。」

レイト「出来る限りはやれ。」

ミリム「ほう………。私に立ち向かうのか?」

リムル「自信があるのなら、俺の攻撃を受けてみるか?」

ミリム「アッハハハハ!良いだろう!面白そうなのだ!………ただし、それが通用しなかったなら、お前達は私の部下になると、約束するのだぞ。」

リムル「分かった。」

 

 そう言って、リムルはクレーターの中心にあるミリムの方へと向かう。

 リムルは、どう対処するつもりだ?

 すると、リムルが構え、リムルの右手に、金色の液体が集まる。

 

レイト(アレって確か………。)

リムル「食らえ〜〜!」

 

 俺がそう考える中、リムルは駆け出して、その金色の液体をミリムの口に突っ込む。

 しばらくの静寂の末、ミリムが叫ぶ。

 

ミリム「何なのだ、これは!こんな美味しい物、今まで食べた事が無いのだ!」

リムル「どうした?魔王ミリム。」

ミリム「えっ!?」

リムル「ここで俺の勝ちと認めるならば、更にこれをくれてやっても良いんだが?」

レイト(ああ、アレって、蜂蜜だな。)

 

 そういえば、確か、アピトって名付けた蜂から、蜂蜜を受け取ってたな。

 確かに、ミリムって、魔王だけど、幼そうに見えるもんな。

 

ミリム「欲しい………!うう………だがしかし、負けを認めるなど………!」

リムル「う〜ん!美味しい!」

ミリム「あ〜っ!!」

 

 ミリムは、魔王としてのプライドか、負けを認めようとしなかったが、リムルが追い打ちをかける様に、蜂蜜をミリムの前で食べる。

 俺たちは、それを呆然と見ていた。

 

リムル「お〜っと!そろそろ残りが少なくなってきたぞ!」

ミリム「ま………待て待て!提案がある!引き分け………!今回は引き分けでどうだ?今回の件、全て不問にするのだ!」

リムル「ほほう?」

ミリム「も………勿論、それだけではないのだ!今後、私がお前達に手出しをしないと誓おうでは無いか!」

リムル「…………良いだろう。その条件を受けよう。」

ミリム「うわぁ!」

リムル「では、今回は引き分けという事で。」

 

 そうして、リムルは若干悪い笑みを浮かべながら、ミリムに蜂蜜を渡す。

 未曾有の天災を、乗り切ったな。

 俺たちは、場所を移動して、ミリムが蜂蜜を舐めるのを見ていた。

 

ミリム「あ〜ん!う〜ん!美味しい!美味しいのだ〜!」

レイト「それは良かったな。」

 

 俺は、ミリムにそう話しかけ、リムルと思念伝達で話し合う。

 

レイト『リムル、グッジョブ!』

リムル『ああ!………それにしても、これ以上面倒な事になる前に、早く帰ってくれないかな〜。』

レイト『確かに…………。』

 

 確かに。

 これ以上、ミリムがここに居ると、面倒な事になりそうだ。

 だが、微かにミリムから聞こえた声は、誰かを求めている様な感じがした。

 何なんだろうか。

 すると、ミリムが俺たちに話しかける。

 

ミリム「なあなあ。」

「「ん?」」

ミリム「お前達は、魔王になろうとしたりしないのか?」

リムル「…………何で、そんな面倒な事しないといけないんだ。」

ミリム「えっ!?だって、魔王だぞ!?かっこいいだろ?憧れたりとかするだろ?」

レイト「しないって。」

ミリム「えっ!?」

「「えっ?」」

 

 俺の言葉に、ミリムは驚いた様な表情を浮かべる。

 えっ、何で驚くの?

 リムルが、ミリムに質問をする。

 

リムル「魔王になったら、何か良い事でもあるのか?」

ミリム「強い奴が、向こうから喧嘩を売ってくるのだ。楽しいぞ。」

レイト「そういうのは、間に合ってるし、俺たちは興味もないよ。」

ミリム「ええっ!?じゃあ、何を楽しみに生きてるんだ?」

リムル「色々だよ。」

レイト「俺ら、やる事が多すぎて、かなり忙しいからさ。魔王の楽しみは、喧嘩以外には、何かあるのか?」

 

 俺の質問に、ミリムは言葉に詰まる。

 

ミリム「無いけど………。魔人や人間に威張れるのだぞ?」

リムル「退屈なんじゃ無いか?それ。」

 

 ミリムの答えに、リムルがそう言うと、ミリムは図星の態度を取る。

 まあ、魔王なんざ興味ないしな。

 魔王になって、余計なしがらみは増やしたくない。

 ていうか、退屈してんじゃねぇか。

 

リムル「じゃあ、そろそろ………。」

レイト「気をつけて帰れよ。えっ!?」

 

 俺たちがそう言うと、ミリムは俺とリムルを掴む。

 

ミリム「お前達、魔王になるより面白いことしているんだろ!?」

リムル「ええっ!」

ミリム「ずるいぞ!ずるい!ずるい!もう怒った!」

レイト「そう言われても………。」

ミリム「教えろ!そして、私を仲間に入れるのだ!村に連れて行け〜!」

 

 そう言って、ミリムは、俺とリムルを激しく揺すって、俺とリムルを締める。

 …………っていうか、限界!

 駄々っ子かよ!

 俺とリムルは、即座に脱出する。

 

リムル「分かった、分かった。」

レイト「町には連れて行く。ただし、条件がある。今度から俺たちの事は、さん付けで呼べよ。」

ミリム「ふざけるな!逆なのだ!お前達が私をミリム様と呼べ!」

リムル「………じゃあ、こうしよう。俺たちがミリムと呼ぶから、お前は俺たちを呼び捨てで呼ぶ。どうだ?」

 

 俺とリムルの提案に、ミリムはそう言う。

 リムルが、折衷案を上げると、ミリムは少し目線を逸らして、答える。

 

ミリム「…………分かった。しかし、特別なのだぞ。私をミリムと呼んで良いのは、仲間の魔王達だけなのだ。」

レイト「はいはい、ありがとうな。」

リムル「じゃあ、今日から俺たちも友達だな。」

ミリム「う………うむ。」

レイト「これから村を案内するが、俺たちの許可なく暴れるなよ。約束だ。」

ミリム「もちろんなのだ!約束するぞ、リムル、レイト!」

 

 どうにかなったみたいだな。

 だが、あのミリムから聞こえてきた声といい、ミリムのあの反応といい、友達が欲しい感じなのか?

 ミリムが高笑いしていると。

 

ガビル「おや?」

ミリム「あ?」

 

 その声がして、蒼影を除いた全員が震える。

 蒼影は、リグルドあたりに知らせに行ったのだろう。

 震えた理由は、ガビルがとんでもない事を言ったからだ。

 

ガビル「どなたですかな?このチビッ娘は?」

ミリム「えい!」

ガビル「ああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そんな事を言ったもんだから、ミリムに盛大に殴られ、石畳を破壊しながら、転がって行く。

 

ガビル「ああ…………。」

ミリム「誰がチビッ娘だ!ぶち殺されたいのか?」

 

 暴れるなって、言ったばかりなのに………。

 早速暴れたミリムを俺たちが呆れながら見ていると、ミリムはガビルに話しかける。

 まあ、ガビルの自業自得な面もあるけど。

 

ミリム「良いか?私は今、とても機嫌が良い!だから、これで許してやるのだ!次はないから、気をつけるのだぞ!」

ガビル「ぶははっ!我輩の親父殿が、川の向こうで手を振っているのが見えましたぞ。」

リムル「お前の親父は生きてるだろ。」

レイト「何言ってんの?」

ガビル「あっ。ところで、そちらのチビッ娘………。」

ミリム「ああ?」

 

 ガビルが、またチビッ娘って言おうとした瞬間、ミリムはガビルを睨む。

 

ガビル「おっと。お嬢様は一体………?」

リムル「こいつは、ミリム。」

レイト「魔王の一人らしいぞ。」

ガビル「魔王ですと!?」

 

 俺とリムルがそう言うと、ガビルは驚く。

 まあ、そうなるのも、無理はない。

 

リムル「あのな、ミリム。怒っていても、すぐに殴ったりしたらダメだぞ。」

ミリム「う………私を怒らせる方が悪いのだ。それに、あの位は、挨拶の内だぞ。」

レイト「殴り合いは挨拶じゃないんだぞ。それは禁止だ。」

ミリム「うう………!」

 

 俺とリムルの言葉に、ミリムは頬を膨らませる。

 そんなこんなで、村の皆に、ミリムの事を紹介する。

 

リムル「新しい仲間を紹介する。」

レイト「といっても、扱いは客人という形になるので、丁寧親切に対応して欲しい。」

ミリム「ミリム・ナーヴァだ!」

 

 ミリムがそう叫ぶと、周囲がどよめく。

 まあ、魔王の一人だからな。

 

村人「なんと!?魔王ミリム様!?」

村人「おお………!ご尊顔を初めて拝謁出来ましたぞ!」

ゴブタ「さすが、リムル様とレイト様っす!」

リグルド「あの暴君と、ああも親しげに……。これで、このテンペストも、安泰という物だ………!」

 

 ミリムって、有名な魔王なんだな。

 っていうか、リグルドは泣きすぎだろ。

 すると、ミリムがとんでもない事を言った。

 

ミリム「今日から、ここに住む事になった!よろしくな!」

「「えっ?」」

 

 ミリムの発言に、俺たちが驚いていると、周囲が歓声を上げる。

 住むなんて、聞いてないぞ!?

 ただ案内して、案内し終わったら、帰る感じじゃなかったのか!?

 リムルが、ミリムに聞く。

 

リムル「………住むって、どういう事だ?」

ミリム「そのままの意味だぞ。私もここに住む事にしたのだ。」

レイト「ああ………。ま、まあ、本人がそう言っているので、そのつもりで、対応して欲しい。」

 

 リムルの質問に、ミリムが答え、俺がそう言うと、再び歓声を上げる。

 人気なんだな。

 すると、ミリムが叫ぶ。

 

ミリム「何かあったら、私を頼ってもいいのだ!」

 

 ミリムの宣言に、村人は歓声を上げる。

 すると、リムルがつぶやく。

 

リムル「魔王と友達か………。」

ミリム「そうだな。友達は変だな………。」

リムル「あ………聞こえてた?」

レイト「聞こえてたぞ。」

ミリム「え、えっと………。友達というより………マブダチだな!」

 

 ミリムがリムルを持ち上げ、俺の腕を持ち上げながらそう言うのに、村人は、何度目かの歓声を上げる。

 俺たちは、驚く。

 

レイト「マブダチ!?」

ミリム「違うのか!?う、うぅ………。」

 

 俺の叫びに、ミリムが反応して、泣き出しそうになる。

 やっべぇ、地雷を踏んだか!?

 

リムル「マブダチ!マブダチ!皆!俺たち3人はマブダチ!」

 

 リムルがそう宣言すると、周囲の人たちが、マブダチコールを始める。

 

ミリム「だろ?お前達も、人を驚かせるのが上手いな。」 

 

 こうして、火薬庫よりも危険な魔王ミリムが、ジュラ・テンペスト連邦国の仲間入りを果たした。

 そして、温泉宿の『嵐ノ湯』で、ミリムは温泉に入っていた。

 一方、俺たちは、和室に集まっていた。

 集まっていた面子は、俺、リムル、リグルド、カイジン、紅丸、蒼影、白老だ。

 集まっていた理由は、ミリムの扱いと、今後の方針だ。

 ただ、リムルが何かを考え込んでいた。

 

レイト「リムル。」

リムル「ああ、すまない。何だっけ?」

リグルド「ミリム様の件です。まさか、魔王自らやって来るとは思いませんでした。」

リムル「でもまあ、一応は許可なく暴れないと約束してくれてるし………。」

カイジン「いや、しかし、気になるのは、他の魔王達の出方じゃねえか?」

レイト「どういう意味だ?」

 

 カイジンの言葉に、紅丸達は頷き、俺は、理由を尋ねる。

 

カイジン「魔王は何人か居るんだが………お互いが牽制し合ってるんだ。今回、旦那方がミリム様と友達と宣言したから、この町も、魔王ミリムの庇護下に入る事を意味する。本来なら、それは望ましい事かもしれんが………。」

白老「リムル様とレイト様は、総統という立場にありますのじゃ。つまり、このジュラの大森林が、魔王ミリムと同盟を結んだ………そういう風に、他の魔王達の目には、映るでしょうな………。」

紅丸「魔王ミリムの勢力が一気に増す事になり、魔王達のパワーバランスが崩れる。」

「「なるほど………。」」

 

 つまり、俺たちは、魔王達の勢力争いに巻き込まれるかもしれないって事か。

 面倒な事になりそうだな。

 

リグルド「しかし、実際にですぞ。魔王ミリム様を止めようとしても、無理でしょう。」

紅丸「あれは、別次元の強さだった。リムル様とレイト様がいなければ、俺たちは今頃、生きてはいない。」

蒼影「その通りだ。他の魔王が敵対するというのなら、そいつらを相手にする方がマシだろう。」

 

 そこまでか………。

 ていうか、ミリムの暴走を止めた件に関しては、俺、何もしてないぞ。

 しばらくの静寂の末、獅子脅しの音がすると。

 

リグルド「という事で、ミリム様のお相手は、マブダチとして、リムル様とレイト様に全てを任せるという事で………。」

「「「異議なし。」」」

「「丸投げ!?」」

 

 俺たちに丸投げしたぞ!

 俺たちが驚いている中、白老が口を開く。

 

白老「魔王ミリム様は、最強最古の魔王の一人。絶対に敵対してはならない魔王と、言われておりますしのう。今回ばかりは、リムル様とレイト様にお任せする他ありますまいて。ホッホッホッホッ。」

 

 仕方ないか………。

 俺とリムルは、そう思った。

 だが、俺たちは知らなかった。

 ミリムが巻き起こす旋風は、まだ吹き始めたばかりだという事を。

 一方、当のミリムは、朱菜、紫苑、火煉にお湯をかけていた。

 

ミリム「アハハハハ………!楽しいのだ!うおぉぉぉ!ハハハ………!」

朱菜「お風呂で遊んではいけませんって、言ってるでしょ!」

火煉「やめて下さい!」

紫苑「うう…………くらえ!」

 

 紫苑はそう叫んで、お湯をミリムにかける。

 

ミリム「やったな!それ!」

朱菜「良い加減にしなさーい!!」

火煉「紫苑もやめなさい!」

 

 女湯から、朱菜と火煉の叫び声が響くのだった。




今回はここまでです。
レイトは、ミリムから、何かを感じとります。
一体何を感じ取ったのかは、いずれ明かします。
そして、エビルとライブの新形態、ライブマーベラスに、エビルマーベラス、デモンズの強化形態のインペリアルデモンズが発表されました。
リバイスのVシネマが楽しみです。
インペリアルデモンズに関しては、蒼月に変身させようかなと思っています。
次回、獣王国からの使者がやって来たりします。
カリュブディス戦が終わった後に、レイトは、仮面ライダーダイモンに変身出来る様になります。


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第16話 集う者達

今回は、クレイマンが動き出そうとするまでです。


 ブルムンド王国では、ベルヤードが、フューズからの報告を聞いていた。

 

ベルヤード「魔物の街と………そこに住む豚頭帝(オークロード)を凌ぐスライムにキメラという新種の魔物………。これは、本当なのか?………いや、本当なのは分かるが………。信じられぬな………。」

 

 ベルヤードは、フューズにそう言いながら、椅子に座る。

 

ベルヤード「…………だが、信じるしかないな。我々はそのリムルという名のスライムと、レイトという名のキメラに、救われたのだと。」

フューズ「そうだな。彼らとの関係を、今後どの様にすべきなのか、そのスライムとキメラが善意の存在であると見做して接するか。脅威として排除を試みるか。」

ベルヤード「排除と簡単に言うが、それは、そもそも可能なのかね?」

 

 ベルヤードの言葉に、フューズはそう答え、ベルヤードは質問する。

 フューズは、しばらくの沈黙の末、答える。

 

フューズ「…………正直に答えて良いのか?」

ベルヤード「…………答えを聞くまでもないな。」

 

 ベルヤードのその言葉に、フューズはため息を吐きながら、立ち上がる。

 

フューズ「ハァ………。一度、会いに行ってみるか。俺がこの目で、リムルとレイトとやらを見極めてみるさ。」

 

 そうして、フューズは、シズさんと旅をしたエレン、カバル、ギドの3人を呼ぶ。

 

フューズ「よし、出発するぞ!お前達が会ったというスライムとキメラに会いにな。」

「「「はぁ…………。」」」

 

 フューズの言葉に、3人はため息を吐く。

 魔王ミリム・ナーヴァが、この街に住む事になった。

 朝食は、食パン、ジャム、ミネストローネ、牛乳だった。

 ミリムが朝食を食べ終えると、俺はミリムに呼び出された。

 ちなみに、リムルは、ベスターの研究所の方に向かった。

 

レイト「どうしたんだよ、ミリム。」

ミリム「お前のその橙色の仮面の戦士の強さを知りたくなったのだ!この私と戦うのだ!」

 

 で、こうなった。

 やっぱり、ミリム的には、キマイラが気になる様だな。

 断ると、後々面倒臭そうだからなぁ………。

 

レイト「分かったよ。」

ミリム「それでこそなのだ!」

 

 俺は、キメラドライバーを腰に装着して、ツインキメラバイスタンプを取り出す。

 

ツインキメラ!

 

 そして、キメラドライバーに装填する。

 待機音が流れ出す。

 

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

 

レイト「変身!」

 

 そう言って、バイスタンプを一回倒す。

 すると、蟹の鋏と鰐の顎が、同時に俺を閉めて、変身させる。

 

スクランブル!

キングクラブ!クロコダイル!仮面ライダーキマイラ!キマイラ!

 

 俺は、仮面ライダーキマイラへと変身する。

 それを見たミリムは。

 

ミリム「おお〜!それがお前の戦闘時の姿なのだな!」

レイト「まあ、そうだな。」

ミリム「では、戦うのだ!」

レイト「あいよ。」

 

 俺とミリムは、お互いを見る。

 暫くの静寂の末、お互いに向かって駆け出していく。

 お互いに、拳で殴り合う。

 流石、魔王の一人なだけあるな…………!

 正直、勝てる気がしない。

 

ミリム「ほう!やるではないか!」

レイト「そうかよ!」

 

 暫く、お互いに殴り合う。

 やばい、そろそろ体力が………!

 大人気ないとは思うが、悪く思うなよ!

 俺は、ツインキメラバイスタンプを2回倒す。

 

キングクラブエッジ!

 

 俺の右手に、蟹の鋏を模したエネルギーが纏っていくのを見たミリムは。

 

ミリム「ほう!面白いのだ!来るのだ!」

レイト「ハァァァァ!!」

 

 ミリムは、俺のパンチを受け止める姿勢を取って、俺は、ミリムに向かって、パンチをする。

 すると、俺の視界が白くスパークする。

 暫くすると、目の前に、ある光景が広がる。

 それは、ミリムの過去とも言える物だった。

 ミリムには、小さい竜が友達として居た。

 だが、その竜は、殺されてしまい、それにミリムは嘆き、悲しみ、怒り狂った。

 その結果、その友達の竜を殺した国は、ミリムに葬り去られる。

 その怒りは、世界に向いてしまう。

 一人の赤髪の男性が止めに入ろうとするが、戦いは七日も続いた。

 精霊と思われる女性が、仲裁した事で、正気を取り戻し、魔王へと進化した。

 それに呼応して、友達の竜は蘇生されるが、全くの別物だった。

 その姿にミリムは、友はもう居ないと悟り、その竜を封印した。

 

レイト(これは…………ミリムの過去?)

 

 その過去に、俺は驚いた。

 こんな壮絶な過去が、ミリムにあった事を。

 ミリムが、やけに俺たちの事を魔王に勧誘するのは、再び友を失いたくないという思いから来たのか?

 すると。

 

???『どこなのだ…………?』

レイト「ん?」

 

 再び声が聞こえてきて、後ろを振り向くと、一人の女の子が。

 あれは…………。

 

レイト「ミリムの…………悪魔…………。」

???『私を…………1人にしないで………。』

 

 ミリムの悪魔の方へと向かおうとすると、視界が再び白く染まり、ミリムの声が聞こえてくる。

 

ミリム「おい!大丈夫か!?」

レイト「ミリム…………?」

ミリム「良かったのだ!急に倒れるから、驚いたのだ。」

レイト「悪いな。」

 

 俺は、心配そうに見るミリムにそう返す。

 色んなことを知って、少し大変だったな。

 すると、魔力探知に何か引っかかる。

 それは、四つの魔力が、この街に向かってきている事だ。

 俺は、ミリムと共に街に戻り、その4人の前に向かう。

 ミリムには、大人しくしてる様に言っておいた。

 すると、来客のうちの1人が、こちらを見てくる。

 

???「ほう。本当に見た事のない魔物だな。お前がこの街の主か?」

レイト「厳密には、片割れだ。…………で、アンタら誰だよ?」

 

 俺がそう聞くと、答えた。

 

フォビオ「俺は、魔王カリオン様の三銃士、黒豹牙フォビオだ。」

レイト「レイト=テンペスト。このジュラの大森林の盟主の片割れだ。」

フォビオ「レイトね…………。ここは良い街だな。魔王カリオン様が支配するには相応しい。そうは思わんか?」

レイト「…………冗談を言いに来たのか?」

 

 俺がそう言うと、フォビオは俺に向かって殴ってきた。

 だが…………。

 

フォビオ「なっ…………!?」

レイト「あのさ、気が短くないか?」

 

 俺は、すぐにキマイラに変身して、フォビオの拳を受け止める。

 フォビオは、俺があっさり拳を受け止めた事に驚いて居た。

 すると、後ろの方から、とんでもないオーラを感じた。

 そのオーラの発生源は、ミリムだった。

 それには、俺も冷や汗を流す。

 やばい、ミリムがキレてる!

 俺は、すぐにフォビオから離れる。

 

フォビオ「なっ!?魔王ミリム!?」

 

 フォビオは、ミリムに気付いて、驚愕した。

 ミリムがすぐにフォビオの方に向かうのを見て、フォビオも動く。

 

フォビオ「くっ………!豹牙爆炎掌!」

ミリム「親友(マブダチ)に何するのだ〜!」

 

 ミリムのパンチで、炎の柱が上がる。

 その炎の柱は、爆発するが、周囲に被害は特になかった。

 すると、火煉、グルド、蒼月の3人がやって来る。

 

火煉「レイト様!」

レイト「おお、皆。」

グルド「何か、とてつもない爆発音が聞こえましたが!?」

蒼月「大丈夫ですか!?」

レイト「俺は大丈夫だ。ただなぁ………。」

ミリム「おお!レイト!」

 

 火煉達と話していると、ミリムが近づいて来る。

 フォビオの方を見ると、泡を噴いて気絶していた。

 

ミリム「あやつが舐めた真似をしておったから、ワタシが代わりにお仕置きしておいたのだ!」

 

 ミリムはそう言うと、褒めて欲しいと言わんがばかりに、俺を見る。

 でもなぁ…………。

 俺の為とはいえ、魔王の1人であるカリオンって奴の部下に手を出してしまった。

 流石に、褒められる物ではないな。

 

レイト「なぁ。俺かリムルの許可無く暴れないって、約束しなかったか?」

ミリム「うぇ!?え~っと………。そ、そう!これは違うのだ!この町の者ではないからセーフ、セーフなのだ!」

レイト「ごめん。アウト。」

ミリム「えええっ!?」

レイト「…………まあ、でも。俺を思っての行動だったから、今回はお咎めなしという事にしておくよ。」

ミリム「わ、分かったのだ…………。」

 

 まあ、昼飯抜きとか言ったら、確実にフォビオに八つ当たりをしかねない。

 すると、リムルと蒼影が到着する。

 

リムル「大丈夫………っていうか、どういう状況だよ!?」

レイト「色々とあってな。そこで倒れているのは、魔王カリオンの配下だそうだ。会議室に運ぶぞ。」

リムル「あ、ああ…………。向かう途中で説明を頼むぞ。」

レイト「ああ。」

 

 俺たちは、フォビオを始めとする魔王カリオンからの従者を、会議室に案内する。

 ミリムが昼食を食べる中、俺たちは、フォビオ達と向かい合う。

 

レイト「…………それで?」

リムル「何をしに来たんだ?」

フォビオ「フンッ!下等なスライムと見た事のない魔物に、この俺が答えるとでも?」

「「「あ?」」」

 

 フォビオがそう言うと、紅丸、紫苑、火煉の3人がフォビオを睨む。

 

リムル「下等と言うが、お前よりは、俺たちの方が強いぞ。」

レイト「ていうか、さっき、お前のパンチを俺が受け止めたのを、忘れたのか?」

 

 俺たちがそう言うと、フォビオは目を細めるが、気にせず会話をする。

 

リムル「俺たちは、魔王カリオンとやらを知らないし、お前の態度次第で、カリオンは、俺たちと敵対する事になるんだぞ。」

レイト「アンタの一存で、このジュラの大森林全てを敵に回すつもりなのか?」

フォビオ「ハッ!偉そうに。…………ッ!?」

 

 フォビオの言葉が途切れたのは、俺が少し抑えていたオーラを出したからだ。

 

レイト「…………俺たちは、スライムやキメラさ。だけど、この森の3割を支配しているのは確かだ。」

リムル「レイトの言う通りだ。そちらがその気なら、戦争するのもやむを得ないと思っている。なので、よく考えて返事をする事だ。」

フォビオ「…………チッ!謎の魔人達を配下へとスカウトする様に、カリオン様より命じられてやって来たんだ。」

 

 なるほどな…………。

 どうやら、ミリムだけでなく、他の魔王達も、俺たちの戦いを見ていたという事だな。

 やっぱり、俺たちを自分たちの勢力に取り込もうとして、躍起になっているのか?

 すると、ミリムの方から、何かオーラが出たのを感じて、振り返ると、ミリムは違う方へと向く。

 

リムル「まっ、話は分かった。じゃあ、帰って良いぞ。」

フォビオ「えっ?」

紅丸「リムル様………!?」

紫苑「宜しいのですか?」

火煉「紫苑、落ち着いて………。」

レイト「殺す訳にはいかないしな。」

リムル「魔王カリオンに伝えろ。俺たちと交渉したいなら、日時を改めて、連絡を寄越すようにと。」

 

 リムルの伝言にどこか不満があるのか、フォビオは俺達を睨みながら立ち上がり、扉の前に立つと、ジュースを飲んでいるミリムを見た。

 

フォビオ「…………きっと後悔させてやる。」

 

 そんな捨て台詞を吐きながら、フォビオ達は去っていく。

 あの様子じゃあ、伝言なんて無理だろう。

 すると、リムルがミリムに近寄る。

 

リムル「さて。魔王カリオンについて、話が聞きたい。」

ミリム「それは、リムル達にも教えられないぞ。お互い邪魔をしないと言う約束なのだ。」

 

 どうやら、秘密があるっぽいな。

 その手のやり取りは、俺よりリムルの方が適任なので、任せておく。

 俺は、思念伝達で、リムルに話しかける。

 

レイト『リムル。ミリムの交渉は、任せたぞ。』

リムル『おう。任せとけって。』

 

 俺の言葉に頷いたリムルは、ミリムに近寄る。

 

リムル「それは、魔王カリオンとの約束だけか?それとも、他の魔王も関係してるのかなぁ?」

ミリム「あ、いや………それは………。」

リムル「大丈夫だって。カリオンって奴だって、部下を使って邪魔して来たんだろ?」

ミリム「え…………。」

リムル「俺たちはマブダチなんだから、お互いに助け合うじゃん?…………だったら、俺もミリム以外の魔王の事を知っておいた方が良いと思うんだよね。」

ミリム「うう…………。」

 

 リムルの言葉に、ミリムは葛藤していた。

 ていうか、リムル。

 お前の今の顔、凄く悪い顔になってるぞ。

 

リムル「ミリムがどんな約束をしたか知っておかないと、俺が知らずに邪魔しちゃうかもしれないしさ。」

ミリム「確かに…………。でも、マブダチ…………。」

リムル「………そうだ!今度、俺が武器を作ってやるよ!やっぱり、マブダチとしては、ミリムが心配だしさ。」

ミリム「新しい武器?アハハハハ〜!そうだな〜!やはり、マブダチは一番大事なのだ!」

 

 はい、落ちた。

 チョロすぎるだろ。

 少し、ミリムの事が心配になって来るな。

 ミリムが話したのは、クレイマン、カリオン、フレイ、ミリムの4人が、ゲルミュッドを使って、傀儡となる魔王の誕生を目論んだ事だった。

 

レイト「なるほどな………。」

ミリム「単なる退屈凌ぎだったのだ。」

リムル「ミリムにとってはそうでも、それを邪魔した以上、俺たちが狙われるのは当然か。」

紅丸「…………これは、他の魔王達も絡んでくるでしょうね………。」

リグルド「なんという事を………。トレイニー様にも相談せねば…………。」

紫苑「大丈夫です!リムル様とレイト様ならば、他の魔王など、恐れるに足りません!」

火煉「そうですね。」

 

 なるほどな…………。

 これは、他の魔王達の動向にも、気をつけないといけないな。

 ファルムス王国。

 それは、西側諸国の玄関口と呼ばれている、商業の大国だ。

 ファルムス王国は、金で雇った荒くれ者達を集めて、豚頭帝(オークロード)の調査団を派遣した。

 その集団のリーダーは、ヨウムという男だ。

 ヨウム達は進んでいると、何かに気づいて、動きを止める。

 すると、地響きが起こる。

 カジルというスキンヘッドの男性が、ヨウムに話しかける。

 

カジル「カシラ。」

ヨウム「シーッ。」

 

 ヨウムは、カジルにそう言って、剣を抜刀する。

 全員が、武器を構えながら、周辺を警戒していると。

 

ギド「ちょっ!ヤバいでやす!」

エレン「でも、でも………!」

カバル「おい、お前ら………って、うおっ!危ねぇ!」

フューズ「こんな出鱈目で、今までよく生き延びてたな、貴様ら!」

 

 ヨウムは、自身のスキルである、遠視を使って、フューズ達を見つける。

 

ヨウム「…………魔物と遭遇した人間が居るようだ。」

カジル「カシラ、どうしやす?」

ヨウム「あっ………。」

 

 カジルがそう聞く中、フューズ達が飛び出して来て、ヨウム達の一団にしれっと混じる。

 

ヨウム「来るぞ。」

 

 ヨウムの言葉通り、出てきた。

 それは、でかい蜘蛛だった。

 

ロンメル「ひっ!」

カジル「槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)!」

ヨウム「よ〜し、お前ら。陣形を組め。負傷者はすぐに下がらせて回復。命令だ。全員生き残れ!」

部下達「おう!」

 

 ヨウムの指示で、部下達は、後衛の魔法使いを守るように配置する。

 ヨウムは、カジルとロンメルに話しかける。

 

ヨウム「カジル。指揮を取ってくれ。」

カジル「分かった。」

ヨウム「ロンメル。俺に強化魔法を。」

ロンメル「フッ!」

 

 槍脚鎧蜘蛛が迫る中、ヨウムはそう指示をして、フューズ達に話しかける。

 

ヨウム「テメェら。俺たちを巻き込んだ落とし前、後できっちり付けてもらうからな。」

 

 ヨウム達は、迫り来る槍脚鎧蜘蛛を見据えて、緊張していたが、ゴブタがカバルに声をかける。

 

ゴブタ「あれっ?カバルさんじゃないっすか?」

カバル「なっ………!?」

ゴブタ「お久しぶりっす。」

カバル「ゴブタ君!」

ヨウム「あっ?」

ゴブタ「毎回、魔物と戦ってるようっすけど、そんなに戦うのが好きなんすか?………でも、ここはオイラが。今日の晩御飯っす!」

 

 ゴブタは、小太刀を持ちながら、槍脚鎧蜘蛛に向かっていく。

 そして、あっさり倒してしまう。

 それを見たヨウム達は。

 

ヨウム「嘘だろ…………。」

ゴブタ「こいつ、滅茶苦茶美味しいんすよ〜。」

 

 ヨウム達にゴブタはそう言って、ヨウム達とフューズ達は、呆然とする。

 その後、槍脚鎧蜘蛛は、テンペストへと運ばれ、今日の晩御飯となるのだった。

 一方、フューズ達とヨウム達は、俺たちが対応する事にした。

 

リムル「俺たちがこの街というか、国というか………。ジュラ・テンペスト連邦国の代表をしている、リムル=テンペストだ。」

レイト「…………で、俺が、ジュラ・テンペスト連邦国の代表の片割れのレイト=テンペストだ。」

フューズ「本当に、スライムとキメラが………!」

 

 俺たちがそう名乗ると、フューズというギルドマスターが、驚く。

 カバルは、俺たちに話しかける。

 

カバル「ところで、リムルの旦那にレイトの旦那。以前には、見かけなかった方がおられるようですが………。」

リムル「ああ。紅丸に紫苑、蒼影、朱菜。」

レイト「そして、火煉。」

 

 俺たちが、鬼人達を紹介していると、扉が開き、ミリムが入って来る。

 

リムル「それと、ミリムだ。」

フューズ「あっ………!」

 

 フューズは、ミリムを驚いた表情で見ていた。

 おそらく、魔王の1人だと気づいたな。

 そんな中、フューズは驚愕からやっと解放されたのか、話しかける。

 

フューズ「あの………。ギルドの英雄であるシズエ・イザワが………バイスタンプ?………という物に入っていると、報告を受けましたが…………。」

レイト「ああ。」

リムル「そうだ。」

 

 フューズの質問に、俺たちは肯定して、リムルが机にシズさんの魂が入ったバイスタンプを置く。

 エレン達が、再会を喜んでいる中、リムルはフューズに話しかける。

 

リムル「で、ブルムンド王国と、ファルムス王国から、それぞれ、ここの調査に来たと?」

フューズ「我々は………。」

ヨウム「…………っていうか、なんでスライムにキメラっていう魔物がそんなに偉そうにしてるんだよ。おかしいだろ?何なんだ、一体?何でお前らは納得してるんだ?」

 

 まあ、そう思うのは無理はない。

 スライムは、この世界でも弱い部類の魔物だし、キメラというのも、俺しか居ないしな。

 すると、紫苑が声をかける。

 

紫苑「リムル様とレイト様に無礼ですよ。」

ヨウム「うるさい、黙ってろ、オッパイ!」

レイト「あっ。」

ヨウム「ぐあっ………!?」

 

 紫苑に対して、そんなセクハラ発言をした事で、剛力丸の納刀状態でぶっ叩かれる。

 

ロンメル「ヨウム〜!」

カジル「カシラ!」

リムル「おっ………おい。」

紫苑「あっ、つい………。」

レイト「ついじゃないよ。」

火煉「まあ、気持ちは分かりますが………。」

 

 まあ、セクハラ発言をされたら、怒るのも無理はないよな。

 そんな中、リムルがヨウムに回復薬をかける。

 

リムル「うちの紫苑がすまんな。ちょっと、我慢が足りない所があるんだ。許してやって欲しい。」

紫苑「ひどいです!これでも、忍耐力には定評があるのですよ!」

火煉「いや、紫苑。もう少し、相手の煽りに関しては、落ち着いて下さい。」

 

 紫苑と火煉がそう話す中、リムルはフューズ達とヨウム達に話しかける。

 

リムル「俺たちは、人間とも仲良くしたいと考えている。その内、貿易とかして、交流出来ればいいなと思ってるしさ。」

フューズ「貿易?」

レイト「ああ。実は、ドワーフ王国とも、国交を開いているしな。」

フューズ「ドワルゴンと?」

リムル「この地を経由すれば、商人達の利便性も向上すると思うけど………。どうかな?」

フューズ「いや、待って下さい。ドワルゴンが、この魔物の国を承認したというのですか?」

 

 まあ、フューズが驚くのも無理はない。

 すると、扉が開いて、ベスターが入って来る。

 

ベスター「その話、私が保証します。」

フューズ「ベスター大臣!」

ベスター「…………元、大臣です。」

フューズ「貴方ほどの人物が、どうしてここに………?」

 

 そういや、ベスターって、大臣だったな。

 エレン達が首を傾げる中、ベスターはフューズに話しかける。

 

ベスター「お久しぶりです、フューズ殿。リムル様とレイト様の仰っている事は、本当です。」

 

 ベスターはそう言うと、俺たちに頭を下げる。

 頭を下げて、すぐに上げ、説明を続ける。

 

ベスター「ガゼル王とリムル様、レイト様は、盟約を交わしておられます。」

フューズ「あっ………!」

ヨウム「ん?」

リムル「納得してくれたかな?」

 

 フューズが驚き、ヨウムが首を傾げる中、リムルが声をかける。

 

ロンメル「うん。」

フューズ「は、はぁ………。そういう事でしたら、我々としても、協力はやぶさかではありません。ただし…………あなた方が本当に人間の味方なのかどうか…………しっかりと、確かめさせて貰う事にしますが、構いませんね?」

レイト「ああ、構わない。滞在を許可する。俺たちが脅威でないと、分かって欲しいから。」

フューズ「ん…………。」

 

 まあ、分かってもらうには、身近で見て貰う方が手っ取り早いしな。

 リムルは、フューズに話しかける。

 

リムル「ところで、フューズさんとやら。豚頭帝が倒されたという情報は、既に知れ渡っているのか?」

フューズ「いや。この情報を知るのは、国王と、ごく一部の者たちのみですよ。」

レイト「なるほどな………。」

 

 なるほど、情報は規制されているのか。

 なら、もしかしたら………。

 そう思っていると、リムルがヨウムに話しかける。

 

リムル「なら………ヨウム君。俺たちと契約しない?」

ヨウム「はあ?一体何を言って………はっ!?」

 

 ヨウムは、途中で、話すのを止めた。

 なぜなら、紫苑と火煉の2人が、ヨウムを睨んでいたからだ。

 

ヨウム「…………何を言っておられるんですか?」

レイト「確か、ファルムス王国には、金で雇われたって言ってたな?」

リムル「だったら、雇い主が変わるだけの事だ。簡単に説明するとだな………。君たちに、豚頭帝を倒した英雄となって貰いたいのだよ。」

 

 リムルがそう言うと、その場には静寂が包み込む。

 しばらくすると、ヨウム達が叫ぶ。

 

ヨウム達「はあっ!?」

レイト「俺たちは、ヨウムに協力しただけで、実際には、ヨウムが豚頭帝を倒したという風に、噂を流すって事だろ?」

リムル「そういう事だ!………そうすれば、英雄を助けた信用出来る魔物という立ち位置を、確立出来るのではないかな〜って。」

レイト「確かにな。謎の脅威的な魔物というよりも、そっちの方が親しみやすいしな。」

紅丸「なるほど…………。」

蒼影「流石です。」

レイト「どうするのかは、ヨウム自身で決めてくれ。」

ヨウム「…………そうさせて貰う。」

 

 そんな感じに、話は終わった。

 しばらくして、ヨウムの下に向かう。

 

レイト「話はまとまったか?」

ヨウム「リムル………さん。レイト………さん。これは、大した街だ。アンタ達が邪悪な存在じゃないってのは、アイツらを見て、よく分かった。それに、愛されている事もな。」

リムル「…………俺の形をした物ばかりなのが、気になるがな。」

 

 そう言うヨウムの手には、リムルを模した食べ物を持っていた。

 まあ、リムル状の物を食べて、スライムを食べた気になる為だろうな。

 ヨウムは、語り続ける。

 

ヨウム「…………俺たちは、脛に傷を持つ身だ。ずっと、自由の身になりたかった。今回の任務を受けたのは、途中で自分たちを死んだ事にして、どこか、安全な国に向かうつもりだったからだ。」

レイト「そうだったのか………。」

ヨウム「決めたぜ。俺は、アンタらを信用する。今日からは、リムルの旦那と、レイトの旦那と呼ばせて貰う。何なりと、命じて欲しい。」

リムル「ああ。宜しく頼むよ。」

 

 こうして、ヨウム達は、白老の下、修行を行う事になった。

 その前に、皆に紹介する事にした。

 

リムル「…………と、言う訳で、今日から一緒に暮らすヨウム君御一行だ。」

レイト「仲良くして欲しい。」

ヨウム「まあ………宜しく。」

 

 その後、ヨウム達を歓迎する宴が行われたのだった。

 まあ、メインの料理が、槍脚鎧蜘蛛の鍋だというのには、ヨウムも辟易していたみたいだが。

 俺たちが、ヨウム達を歓迎する宴をしている頃、魔王クレイマンは。

 

クレイマン「早かったですね。気づかれませんでしたか?ティア。」

ティア「あたいだって、中庸道化連(ちゅうようどうけれん)の一員なんだ。少しは信用してよね!」

クレイマン「アハハハハ………!貴方が無茶をしないか、私は心配なのです。」

 

 クレイマンがそう言うと、涙の表情の仮面を付けた女性が窓から入ってくる。

 

ティア「もう!いつまでも子供扱いはやめてよね!」

クレイマン「分かりましたよ。………ミュウランから報告がありました。魔王ミリムは、余程あの魔人どもを気に入った様子。」

ティア「へぇ〜。」

クレイマン「これは、思った以上に面白い展開です。愉快ですよ、全く。」

ティア「それなら良いけど、実際のとこ、どうなの?魔王ミリムが興味を持つくらい凄い魔人なの?」

 

 ティアがクレイマンの言葉に、そう質問すると、クレイマンは少し上を向きながら答える。

 

クレイマン「無視はできない………という程度でした。私の敵ではなかったですし。しかし、ラプラスがですね………。」

ティア「ラプラスが?」

クレイマン「不気味さ………とでも言うのか、何かを感じたと言うんですよ。」

ティア「ふ〜ん、そっか〜。あの小狡いラプラスが言ったたんなら、やっぱり、なんかあるんじゃない?少なくとも、魔王ミリムが興味を持った理由は、知るべきだと思うよ。」

クレイマン「確かに。もっと情報を集めて、検討しないといけませんね。」

 

 クレイマンは、ティアの言葉にそう頷く。

 クレイマンは、リムルとレイトの事を侮って居た。

 

ティア「うん!それが良いよ!で、調査結果だけど………!」

クレイマン「伺いましょう。」

ティア「フレイはね、ジュラの森に関わる気はないみたい。何かを警戒している様子だった。まるで、戦争準備でもしている感じ?」

クレイマン「…………その原因は分かりましたか?」

ティア「分かったよ!なんと、びっくり!あの暴風大妖渦(カリュブディス)が復活するって、慌ててたよ〜!」

 

 ティアの暴風大妖渦という言葉に、クレイマンは目を見開く。

 

クレイマン「んっ………!暴風大妖渦………。」

 

 そう呟いたクレイマンは、椅子から立ち上がる。

 

クレイマン「なるほど………。では、ティア。次の仕事を頼みたいのですが。」

ティア「ニヒヒ!そう来ると思ってた!フットマンの奴も呼んでるから、多少の荒事も大丈夫!」

クレイマン「流石ですね、ティア。………ですが、なるべくは暴力は無しでお願いします。まずは、封印の地を探し出し、暴風大妖渦を手懐ける事が出来るかどうか。それを探って下さい。」

ティア「任せてよ、クレイマン!」

クレイマン「場所は………。」

ティア「任せてって、言ったでしょ!それじゃあ、あたいは行くね!」

 

 ティアは、クレイマンの言葉を遮り、クレイマンの前から姿を消す。

 それを見送ったクレイマンは。

 

クレイマン「暴風大妖渦………ですか。魔王に匹敵すると言われるその力。どれほどの物か、非常に楽しみですね。クククク………ハハハハハ…………!」

 

 クレイマンの居城に、笑い声が響く。

 俺たちの国に、災厄が訪れようとしていた。




今回はここまでです。
色々と、今後の展開に繋がるような物が出ました。
いよいよ、あの災厄が訪れようとしています。
クレイマンも、暗躍を続けています。
ミリムの悪魔も登場しました。
他の小説の投稿もあって、この小説の投稿が遅れてしまって、申し訳ありません。
ちなみに、シズさんが新たな肉体を得るのは、カリュブディス戦後です。
色々、皆さんがあっと驚く様な事を考えているので、楽しみにしたて下さい。
電王編も、楽しみにして下さい。


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第17話 忍び寄る悪意

 俺たちに、ヨウム達が仲間に加わり、宴会になっていたその頃、フォビオは、ある事を思い出していた。

 

レイト『あのさ、気が短くないか?』

ミリム『親友(マブダチ)に何するのだ〜!』

 

 俺に拳をあっさり受け止められ、ミリムにあっさり倒された事だ。

 フォビオは、焚き火を見ていたが、悔しさからか、顔を歪める。

 

フォビオ「くぅ…………!」

 

 フォビオは、手に持っていた枝を折り、焚き火に放り込む。

 

フォビオ「くそっ!許せねぇ………!」

 

 そう言うフォビオを、仲間達は不安そうに見つめていた。

 

フォビオ「俺を誰だと思ってる………!黒豹牙フォビオだぞ………!」

エンリオ「魔王ミリムが相手では、不可抗力という物です。例え、魔王カリオン様でも………。」

フォビオ「馬鹿野郎!カリオン様なら、こんな無様は晒さなかっただろうぜ。………俺が未熟だっただけの話よ。…………しかし、このまま成果なく戻るのは、俺の誇りが許さんのだ。」

 

 フォビオは、そう言いながら、焚き火を見つめる。

 そして、話を再開する。

 

フォビオ「……………あいつらは、自分達で街を作っていやがったな。下等な魔物だと侮っていたが、俺たちでも及ばぬ様な、技術を持っていやがる。」

エンリオ「全くです。配下に加えるなどと言わず、我らがユーラザニアと国交を結びたいほどですな。」

フォビオ「ああ。魔王ミリムが居なかったとしても、俺の対応は間違っていた。盟主の片割れに、攻撃するなんてな。頭ごなしに支配しても、奴らの信頼は得られなかっただろうからな。…………だが、今更だぜ。この屈辱は、怪我が癒えても、消えやしねえ。カリオン様に、迷惑をかけねえように、何とかして、復讐してやりたいんだよ。」

 

 フォビオは、自分の対応が間違っていた事は分かっていた。

 だが、自分の攻撃をあっさり受け止められ、返り討ちにされた。

 その屈辱は、あまりにも大きかった。

 仲間のエンリオが、諌めるくらいには。

 

エンリオ「………そうは申されましても………復讐など、現実的では………。」

フォビオ「分かってんだよ!頭では無理だって!…………だけど、こればっかりは、理屈じゃねぇんだよ。く…………!」

 

 レイトとミリムへの復讐に燃えるフォビオを、仲間達は不安そうに見つめる。

 すると。

 

???「ホーホッホッホッ………!」

フォビオ「はっ!?」

 

 突然響く笑い声に、獣人達は、笑い声がしてくる方を見る。

 

エンリオ「何者だ!」

 

 エンリオがそう叫ぶと、太った男性が出てくる。

 クレイマンの仲間である中庸道化連の一員、フットマンだ。

 

フォビオ「は?」

フットマン「いやいや〜。その悔しい気持ち。この私にも、よ〜く理解出来ますね〜。ご機嫌よう、皆様。私は、フットマンと申します。」

フォビオ「……………フットマン?」

フットマン「中庸道化連が1人、アングリーピエロのフットマンとは、私の事。どうぞ、お見知り置きを。」

「「………………。」」

 

 いきなり現れたフットマンに、フォビオとエンリオは、警戒心を顕にする。

 すると、フットマンの後ろから、女の子が出てくる。

 クレイマンと話していた、ティアだ。

 

ティア「そんなに警戒しないでほしいな〜。あたいは、ティア!貴方達の敵じゃないよ!」

フォビオ「……………何の用だ?」

フットマン「ホーホッホッホッ!私はね。怒りと憎しみの感情に呼ばれて、やって来たのですよ。」

フォビオ「怒りと憎しみ?」

フットマン「上質な怒りの波動を感じました。」

フォビオ「うっ…………!」

 

 フットマンの言葉に、フォビオは言葉を詰まらせる。

 フォビオは、レイトとミリムに、怒りと憎しみの感情を抱いていた。

 その結果、この謎の魔人を誘き寄せた事に気づいたのだ。

 フットマンは、フォビオに話しかける。

 

フットマン「何をお怒りになっているのか、是非とも、お聞かせ下さい。…………きっと、力になってご覧にいれますから。」

フォビオ「あ…………。」

 

 フォビオが、フットマンの言葉に俯くと、エンリオが前に出る。

 

エンリオ「フォビオ様。このような者どもの話を聞く必要はございません。排除してもよろしいですか?」

 

 エンリオがそう言うと、仲間の獣人達も、身構える。

 

エンリオ「我々は、魔王カリオンの獣王戦士団に属する者。野良の魔人程度が、相手になるとでも思ったか?」

フットマン「…………力が欲しいのでしょう?ございますよ。とびっきりの力が…………。当然ですが、危険も大きい。しかし、その危険に打ち勝った時、得られる力は絶大です。」

フォビオ「……………ほう。」

エンリオ「フォビオ様!?」

 

 フットマンの言葉に、フォビオは興味を示し、エンリオは驚く。

 それを見たティアは、畳み掛ける。

 

ティア「勝ちたいんだよね?魔王ミリムに、レイトって奴に!だったらさ、あんたも魔王になっちゃいなよ〜!」

フォビオ「魔………王…………!」

エンリオ「あ…………。」

 

 ティアの言葉に、獣人達は驚く。

 しばらく、静寂が訪れ、その場には、焚き火が爆ぜる音がした。

 

フォビオ「…………魔王だと?その様な戯言で、俺を騙せるなどと…………。」

フットマン「暴風大妖渦(カリュブディス)。」

フォビオ「はっ!」

 

 フォビオは、フットマンの言った言葉に驚く。

 フットマンは、話をする。

 

フットマン「ご存知ありませんか?」

フォビオ「カリュブディス…………だと?」

エンリオ「あ…………!」

ティア「あ〜あ。あの大怪魚の邪悪な力なら、魔王に匹敵するんだけどな〜。要らないんなら、他を当たるから、もう行くね。………ほら、行こ!」

フットマン「ホッホッホッ………。残念ですねぇ………。」

 

 ティアとフットマンは、その場から去ろうとする。

 そんな2人を、フォビオは呼び止める。

 

フォビオ「待て。」

「「フッ。」」

 

 フォビオが呼び止めた事に、ティアとフットマンは、ほくそ笑む。

 エンリオは、フォビオに声をかける。

 

エンリオ「なりません!フォビオ様!」

フォビオ「…………俺は、最初から面白くなかったんだ。何で、豚頭帝(オークロード)の様な雑魚が、魔王に抜擢されるんだ。………ふざけるな!新しい魔王が必要だと言うなら、俺が………!俺が強くなるなら、カリオン様だって、笑って許してくれるだろうぜ。」

エンリオ「フォビオ様…………。」

フォビオ「詳しく聞かせろ。」

 

 フォビオの言葉に、フットマンとティアは振り返る。

 

フットマン「おお〜!流石にフォビオ様ですね〜。そうでしょうとも!魔王となるのは、貴方を置いて、他には居ませんとも!」

ティア「やっぱり、強い者が魔王にならないと、間違ってるよね。あたいもそう思うよ!その点、フォビオ様なら適任だよね!」

 

 そうして、フォビオは、フットマンとティアから、話を聞く事にした。

 エンリオ達は、それを見ていた。

 

フォビオ「…………この話、てめぇらに、何の得がある?目的は何だ?」

ティア「魔王になったら、あたい達を贔屓にしてくれたらいい!当然、色々と、便宜を図ってもらいたいしね。」

フットマン「ホッホッホッ。我々だけでは、カリュブディスを従える事は、出来ませんからねぇ。」

ティア「せ〜っかく、封印された場所を見つけたけど、このままじゃ、宝の持ち腐れだし。」

フットマン「タイミングよく、フォビオ様をお見かけしましてね。」

フォビオ「…………なるほどな。だが、俺がカリュブディスを従える事が出来るかどうかは………。」

 

 ティアとフットマンの話を聞いたフォビオは、不安そうにそう言う。

 すると、フットマン達は。

 

フットマン「ホーホッホッホッ!フォビオ様なら、必ずや成功するでしょう!」

ティア「大丈夫!大丈夫!」

フォビオ「…………俺が魔王になった時に、自分達が最も役に立ったって、実績が欲しいって事か。」

 

 フットマンとティアの話を聞いたフォビオは、そう呟く。

 一考の末、出した答えは。

 

フォビオ「…………その話、引き受けようじゃねぇか。」

 

 フォビオは、引き受けてしまった。

 その先に待っているのは、傀儡となる未来だとは、気付かずに。

 フットマンとティアが、焚き火で温まる中、フォビオは、エンリオ達に声をかける。

 

フォビオ「お前達は戻れ。」

エンリオ「フォビオ様!」

フォビオ「事の顛末を伝えるのだ。」

エンリオ「しかし…………。」

フォビオ「カリオン様には、迷惑はかけられねえ。三獣士の地位を返上し、野に下るとお伝えしてくれ。…………今まで仕えてくれて、感謝する。」

エンリオ「フォビオ様…………。」

フォビオ「俺は修羅となり、俺の力を、魔王ミリムと、あのレイトって奴に認めさせてやる。」

エンリオ「あ…………。分かりました。カリオン様に、ご報告致します。………しかし、カリュブディスの力は未知数。くれぐれも、お気をつけ下さい。」

 

 そう言って、エンリオ達は、ユーラザニアへと戻っていった。

 そんな中、エンリオが思った事は。

 

エンリオ(フォビオ様は、愚かなお方ではない。本当にカリュブディスが居るんだとしても、従える事が出来るはずだ。)

 

 そう思っていた。

 エンリオ達を見送ったフォビオに、フットマン達が話しかける。

 

フットマン「では、向かうとしましょう。」

フォビオ「ああ。俺とカリュブディスの力を合わせたなら、あの魔王ミリムと、レイトの憎たらしい面を、泣きっ面に変えてやれるだろうぜ。」

フットマン「ホッホッホッ!その意気です。」

ティア「うんうん!あたいも応戦してるよ〜!」

 

 そうして、フォビオ達が動き出す。

 一方、テンペストの嵐ノ湯では。

 

ミリム「ぷは〜!」

紫苑「ぷはっ!」

朱菜「ぷは〜!」

 

 ミリム、紫苑、朱菜の3人が、潜水対決をしていた。

 それを、火煉は呆れながら見ていた。

 

ミリム「どうだ!私の勝ちなのだ!私の方が、長い時間潜ってられるのだ!」

紫苑「いいえ。勝ったのは私です。」

朱菜「違います。ほんの僅かの差ですが、私の勝ちです。」

火煉「お風呂で潜水しちゃダメでしょ。」

 

 ミリム、紫苑、朱菜の3人は、そう張り合い、火煉がそう突っ込む。

 ミリム達は、火煉の事を無視する。

 

ミリム「負けを認めないとは、狡いぞ!紫苑!朱菜!よ〜し!だったら、もう一回だ!決着をつけてやる!」

紫苑「良いでしょう。もう一度。」

朱菜「本来なら、お風呂に潜るのは良くない事ですが、やりましょう。」

火煉「朱菜様も、分かっているのなら、止めてくださいよ…………。」

 

 火煉の呆れ声と共に、再び潜水する音が、俺たちが入っている男湯の反対の女湯から聞こえてきた。

 

リムル「はぁ…………。あっち、楽しそうだな〜。向こうに行けば良かったかな………。」

レイト「本音がダダ漏れだぞ。」

 

 まあ、男湯に居るのは、フューズなのだが。

 リムルは、フューズに話しかける。

 

リムル「なぁ。いつまでこの街にいるつもりだよ。」

レイト「まだ、納得してない感じですか?」

フューズ「えっ?あ…………いえ。リムル殿とレイト殿の疑いは、とっくに晴れているんですがね。」

レイト「晴れてんのかい。」

リムル「じゃあ、何でだよ。」

フューズ「いやぁ…………。ここは、実に居心地がよろしくてですな…………。ろくに休みも無かったですし、ゆっくり羽を伸ばすのも、良いのではないかと…………。」

 

 居心地良いのは、ありがたいな。

 今後、人間との取引も増えるだろうし、そう思ってもらえるのは、嬉しいもんだ。

 リムルは、呆れ顔で言う。

 

リムル「お前なぁ………。『あなた方が本当に人間の味方なのかどうか…………しっかりと、確かめさせて貰う事にします。』とか、かっこいい事言ってたくせに。」

フューズ「ふぅ…………。」

レイト「聞いてないね。」

 

 リムルの言葉に対して、フューズは息を吐きながら、お酒を飲む。

 俺が苦笑していると、リムルは、きつめにフューズに聞く。

 

リムル「おい!」

フューズ「え?」

レイト「そういえば、ヨウム達の件は、どうなってるんですか?」

リムル「そうだぞ!俺たちの代わりに英雄に仕立て上げる協力をしてくれる約束!」

フューズ「ああ………。」

リムル「ああ………じゃないって!もうヨウム達は旅立ったんだぞ。英雄として、各地で名を売る為にな。」

 

 リムルは、青筋(?)を浮かべながらそう聞くと、フューズは答える。

 

フューズ「それなら、問題ないですよ。既に仕込みは終わらせております。」

レイト「そうなのか?」

フューズ「ええ。ちゃんと、豚頭帝を倒した英雄として、名を広められる様に、根回ししてあります。そして、リムル殿とレイト殿達は、それを手伝った害のない魔物達だ………と、噂になる様に。」

リムル「そっか………なら良いや。」

 

 流石はギルドマスター。

 仕事が早いな。

 ただ、一つ懸念点があるとしたら………。

 

レイト(やっぱり、他の異世界人が、この街をどう思うかだよな………。)

 

 そう、この街は、魔物の街。

 異世界人は、人間だから、ゲームをやっている人からしたら、絶好の獲物といえるだろう。

 何せ、俺とリムルが定めた掟によって、こちら側から、仕掛ける事はないからな。

 まあ、今、そんな事を考えても意味はないか。

 すると、フューズが風呂から上がろうとする。

 ちなみに、ヨウムには、俺のキメラ細胞を埋め込んだ。

 白老に厳しくしごかれて、怪我が酷かったから、自然治癒力を高める為に。

 

フューズ「さて、私はお先に…………。」

 

 フューズが上がろうとすると、リムルが声をかける。

 

リムル「ああ、そうだ。お前達のブルムンド王国へも、道を作ろうかと思ってるんだけど。」

フューズ「えっ?いや………えっ?いやいや…………。それは、ありがたい事ですが、大規模な国家事業になりますぞ。莫大な予算が…………。」

リムル「そこだよ、フューズ君。」

フューズ「く………君?リムル殿にそう呼ばれると、何だか、背中がむず痒いのだが………。」

レイト「まあ、そんな事はいいさ。要は、今後の取引の為にやるんだろ?」

リムル「ああ。当然だが、作業は、俺たちが引き受けようじゃないか。ただし。」

フューズ「ただし?」

リムル「我が国の特産品を、他の国にも売りつけたいので、諸々の相談ができる人物の紹介を頼みたい。」

フューズ「分かりました。お安い御用です。」

レイト「ありがとうございます。」

 

 すると、女湯の方から、ミリム達の声が聞こえてきて、リムルは頬を赤く染める。

 そんなリムルに、俺は呆れていた。

 一方、フォビオ達は、カリュブディスが封印されている場所に着いた。

 

フォビオ「ここに?」

ティア「そうだよ〜。」

フットマン「まだ、復活していませんが、破壊への渇望が漏れ出ています。そうした感情が大好物な我々だからこそ、発見できたのですけどね。」

フォビオ「確かに………異様な妖気を感じるな。カリュブディス………。」

 

 フォビオは、カリュブディスの妖気を感じ取っていた。

 フットマンは、フォビオに声をかける。

 

フットマン「カリュブディスの復活には、本来、大量の死体が必要です。」

フォビオ「死体?」

フットマン「カリュブディスとは、精神生命体の一種です。この世界で力を行使するには、肉体を与えてやらねばなりません。」

フォビオ「なるほど…………それで?」

フットマン「貴方の役目は…………。」

 

 フットマンは、その先を言わなかった。

 だが、フォビオは、それだけで察した。

 

フォビオ「まさか、お前………!」

フットマン「従えるとは…………つまり、カリュブディスをその身に宿し、ご自身と同一化するという事なのですよ。」

フォビオ「俺の体に………!?」

ティア「辞めるなら、今だよ。」

フォビオ「うっ………!」

ティア「でも…………。」

フォビオ「でも?」

ティア「この封印は、もう長く持たないかも………。」

 

 ティアの言葉に、フォビオが質問をする。

 

フォビオ「持たなかったら、どうなる?」

ティア「いずれ、自動的に復活しちゃう………かな?」

フォビオ「死体が必要なんだろ?」

ティア「そうだけど…………封印されてても、自分の復活に必要な魔物の死体ぐらいは、用意出来ちゃうんじゃないかな………。そうなったらあたい達は、くたびれ損になっちゃう!」

フットマン「そうですね〜。」

ティア「けど、復活しちゃったら、制御は無理だろうし、純粋な破壊の意思だから、誰の命令も聞かないだろうし………。」

 

 ティアとフットマンがそう話す中、フォビオが口を開く。

 

フォビオ「復活する前に封印を解き、その力を奪わないとダメという訳か?」

ティア「えっ?あ………うん。そういう事。」

フットマン「流石です。」

フォビオ「良いだろう。カリュブディスの力、我が物としてやろう!」

 

 そう言って、フォビオは洞窟の中へと入っていく。

 その時に、フォビオは呟く。

 

フォビオ「やってやるぜ。カリュブディスを俺の体に従えて、あの小生意気な魔王ミリムと、あのレイトって奴を………!」

 

 フォビオの決意は固かった。

 一方、フットマンとティアは。

 

フットマン「行きましたねぇ。」

ティア「行ったねぇ。」

フットマン「流石は、脳が筋肉で出来ているカリオンの部下ですねぇ。」

ティア「簡単だったねぇ。」

 

 そう言った直後、2人は高笑いする。

 フットマンは、ティアに尋ねる。

 

フットマン「これで終了ですか?」

ティア「クレイマンからは、『カリュブディスを復活させて、ミリムに向かわせろ』………としか、聞いてないよ。………あっ!」

フットマン「ん?」

ティア「用意してたレッサードラゴンの死体、要らなくなっちゃったねぇ。」

フットマン「………しかし、備えあれば憂いなしですからね。」

 

 2人は、再び高笑いをする。

 フォビオは、クレイマンの策略に利用されたのだ。

 一方、俺は。

 

レイト「ああ〜!疲れたなぁ………。」

 

 俺は、そう呟く。

 徹夜で、クローンライダーの量産や、シズさんの肉体の作成を行なっていた事もあり、だいぶ疲れた。

 シズさんの肉体も、あと少しで完成するな。

 すると。

 

???「おい。」

レイト「ん?」

???「悪く思うなよ。」

 

 肩を叩かれて、振り返ると、そこにいた男に突然、笑顔でスプレーをかけられる。

 

レイト「っ!?」

 

 すると、意識が遠のいていく。

 科学者が、何かを言っている。

 

科学者『告。催涙スプレーの類を確認。意識レベルが低下。』

 

 そんな事を言っているかも、意識がだんだん遠のいていく。

 あの人の顔は…………。

 

レイト「桜井………侑斗………?」

 

 それだけ呟いて、俺は意識を手放す。

 その間、何か、電車に乗っている夢を見ていた。

 すると。

 

レイト「はっ!?」

 

 俺は目を覚ますと、自室にいた。

 すると、火煉、蒼月、グルドが目の前に居た。

 

火煉「レイト様!」

蒼月「お目覚めになりましたか。」

グルド「良かったです………。」

レイト「え………?どういう状況?」

火煉「いえ、なかなか見当たらなくて、探していたんですが、レイト様の自室に居たとは………。」

 

 何で俺、自室で寝てんの?

 ていうか、異常に疲れてるんだけど………。

 

蒼月「火煉君。そんな事よりも………。」

火煉「はっ!そうでした!至急、会議室に来て下さい!」

レイト「わ、分かった…………。」

 

 何とか、動けるぐらいには大丈夫だったので、会議室に向かう。

 会議室には、主要な全員が集まっていた。

 

リムル「レイト!お前、ずっと何処にいたんだよ!?」

レイト「すまん………。心配かけた。で、これはどういう状況だ?」

蒼月「…………カリュブディスが復活したんだってさ。」

レイト「カリュブディス?」

リムル「これから、どういう奴なのかを話すらしいから、お前も聞けよ。」

レイト「ああ。」

 

 俺は、自分の座席に座り、トレイニーの妹であるトライアから、話を聞くことに。

 

トライア「カリュブディスは、はるかなる昔に生まれ、死と再生を繰り返しております。凶暴なる天空の支配者。流石は、森の支配者にして、守護者たる、暴風竜ヴェルドラ様の申し子と言えるでしょう。」

リムル「ヴェルドラの申し子?」

レイト「どういう事だ?」

トライア「カリュブディスは、ヴェルドラ様から漏れ出た、魔素だまりから発生した魔物なのです。」

 

 じゃあ、俺とリムルとカリュブディスは、兄弟みたいなもんか?

 俺とリムルも、ヴェルドラと縁がある魔物だしな。

 すると、フューズが立ち上がる。

 

フューズ「カリュブディスが復活したのなら、魔王以上の脅威となりますよ。何しろ、魔王と違い、話が通じる相手ではないのです。」

ベスター「言ってみれば、知恵なき魔物。固有能力の魔物召喚(サモンモンスター)で、空泳巨大鮫(メガロドン)というサメ型の魔物を異界から召喚して暴れる………と、伝えられています。」

 

 メガロドンねぇ………。

 メガロドンバイスタンプが効くかな?

 これは、豚頭帝よりも厄介な気がするな。

 トライアは、悲痛な表情で、語る。

 

トライア「状況は最悪です。召喚されたメガロドンは、なぜか近くにあったレッサードラゴンの死骸を、依代にした模様。」

レイト「なぜか………?」

トライア「その数は、13。」

リムル「魔王並の化け物一体と、召喚された空飛ぶサメが13体。それは、一体何の冗談だ………。」

 

 何故か、近くにあったレッサードラゴンの死骸か…………。

 これは、何者かが、カリュブディスを復活させた可能性が高いな。

 朱菜が、俺とリムルに話しかける。

 

朱菜「リムル様、レイト様。」

リムル「ん?」

朱菜「どうなされます?」

レイト「そりゃあ、迎撃だろうな………。」

ミリム「フッフッフッ………!」

 

 すると、ミリムが笑い出す。

 

ミリム「何か、重要な事を忘れてはいないか?」

レイト「何だ?」

ミリム「カリュブディス如き………この私の敵ではない!軽く捻ってやるのだ!」

 

 ミリムはそう言って、服を脱ぎ捨てて、魔王としての服装になる。

 確かに、ミリムは強いからな。

 心強いな。

 そう思っていると。

 

紫苑「その様なわけには参りません。」

ミリム「い………!?」

火煉「そうですね。これは、私たちの街の問題ですし。」

レイト(断るんかい。)

ミリム「えっ?だが、私はマブダチ………。」

朱菜「そうですよ。友達だから、何でも頼ろうとするのは、間違いです。リムル様とレイト様が、どうしても困った時は、是非とも、お力添えをお願い申し上げます。」

 

 朱菜がそう言うと、ミリムは露骨に落ち込む。

 

レイト「ま、まあ………俺たちを信じてくれ。」

リムル「そ、そうだぞ。」

ミリム「折角………折角………私の見せ場がやって来たと思ったのに………。」

リムル「カリュブディスを倒す!準備しろ!」

一同「はっ!」

レイト「ベスター。クローンライダーは出せるか?」

ベスター「現状、作成完了している物は、出せます。レイト様。」

レイト「よし。カリュブディスが相手だ。出し惜しみなしで出せ!」

ベスター「はっ。」

 

 俺は、ベスターにクローンライダーを出す様に指示をした。

 全員が、準備に動く中、フューズが俺たちを見る。

 

フューズ「倒すって………。あの、分かってるんですか?相手は、樹妖精族(ドライアド)でさえ、足止めできない化け物ですよ。」

リムル「盟約を結んだガゼル王の応援も期待出来るし、やるだけやってみるさ。」

レイト「ああ。この街は、絶対に守ってみせるさ。」

フューズ「…………逃げないのですか?」

レイト「…………逆に聞くけど、逃げてどうするんだ?」

リムル「俺たちが、この国で一番強い。絶対に勝てそうもないなら、すぐに逃げて、次の策を考えるけど、そうじゃないなら、正面から自分の目で、敵の強さを確かめるべきだろ?」

 

 それを聞いたフューズは、納得したかの様に笑う。

 

フューズ「…………なるほど。魔物の主達。そうでしたね。」

リムル「王を失ったら、終わりの人間とは、その辺りは違うんだよな。」

レイト「そうだな。」

フューズ「しかし、あれですな………。リムル殿とレイト殿は、我々人間の様な考え方をされるのですね。とても、魔物とは思えませんよ。」

 

 まあ、元人間だからな。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「う〜ん。そうかもな。信じられないかもしれないけど、実は、俺たち、元人間なんだよ。」

レイト「…………俺たちは、シズさんと同じ異世界人だったんだ。………多分な。」

リムル「向こうで死んで、俺はスライムに、レイトはキメラに生まれ変わったんだけどね。」

 

 そう言って、俺たちは、人間態になる。

 フューズは、エレンが持っているシズさんのバイスタンプに問いかける。

 

フューズ「そうなんですか?」

シズ「ええ。あの2人も、私と同じ異世界人。」

レイト「俺たちは、シズさんの肉体を譲ってもらった。シズさんと似てるのに、情けない真似は出来ないしな。」

リムル「そうそう。」

エレン「やっぱり、2人は信じられるよ!」

フューズ「うん。」

 

 それにしても、リムルは唐突に話すな。

 まあ、俺も話す予定だったし、別に良いか。  

 そうして、ジュラ・テンペスト連邦国首都、中央都市リムルと、武装国家ドワルゴンの中間地点で、カリュブディスとメガロドンとの戦いが始まろうとしていた。




今回はここまでです。
何故、レイトの目の前に、桜井侑斗が現れたのかは、電王編にて、理由が判明します。
そして、遂に始まる、カリュブディスとの戦い。
クローンライダーを出します。
それにしても、メガロドンと聞くと、メガロドンバイスタンプが浮かびますね。
インペリアルデモンズに関しては、蒼月に変身させようかなと思っております。
リクエスト、ありがとうございます。
これも、他の小説も、頑張っていきます。


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第18話 暴風大妖渦(カリュブディス)

 厄災、暴風大妖渦(カリュブディス)が復活した。

 そいつは、空泳巨大鮫(メガロドン)という鮫型の魔物を連れて、中央都市リムルへと向かっていた。

 こちらの戦力は、紅丸達鬼人勢、ゴブタ達 狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)、ゲルドとが率いる猪人族(ハイオーク)部隊、ガビル率いる龍人族(ドラゴニュート)達、クローンライダーから、ライオトルーパー、ゼクトルーパー、黒影トルーパー、デモンズトルーパー、メイジ、ダークネクロム、アバドン、あとは、火煉、グルド、蒼月の3人の仮面ライダー達だ。

 更に、ドワルゴンから、援軍として、ペガサスナイツ100騎が派遣された。

 ペガサスナイツを率いていたドルフさん曰く。

 

ガゼル「弟弟子達が困っているのなら、助けるのは当然であろう。」

 

 との事。

 あの人、兄弟子風を吹かせてくるよな。

 まあ、心強い援軍なのは、間違いないが。

 

リムル「さて…………。」

レイト「行くぞ。」

一同「おう!」

 

 こうして、俺たちとカリュブディスが激突する。

 紅丸は、一体のメガロドンへと向かっていく。

 

紅丸「食らえ!黒炎獄(ヘルフレア)!」

 

 紅丸の黒炎獄が、メガロドンに命中して、こんがり焦げた状態で、メガロドンが落ちていく。

 

リムル「流石、紅丸。こんがりと良く焼けた。」

レイト「だけど…………。」

朱菜「お兄様の攻撃でも消滅しないとは、驚きです。」

 

 そう。

 紅丸の黒炎獄を喰らった敵は、大抵消滅しているのにも関わらず、メガロドンは焦げただけだった。

 どういう事かと首を傾げていると。

 

科学者『解。カリュブディスには、エクストラスキル、魔力妨害があり、半径300メートルの範囲内は、魔素の動きが乱され、魔法の効果が低下します。』

レイト『なるほどな………。って、ちょっと待て。それって、メイジが不利なんじゃ………。』

科学者『告。クローンライダーのメイジは、魔法が上手く発動せず、苦戦を強いられています。』

 

 まずいな………。

 それじゃあ、ウィザード系列の仮面ライダーは、苦戦を強いられるな。

 何せ、魔法の効果が低下してるから、ダメージがあまり期待出来ない。

 

レイト『メイジの部隊は、後方支援に回して、他のライダー達で、カリュブディスとメガロドンに攻撃しろ。』

科学者『了。』

 

 クローンライダーは、科学者さんが、俺の指示を聞いて、クローンライダーに指示を出している。

 メイジは後ろに下がって、残りのライダー達で、攻撃していく。

 一方、ゲルド達は。

 

ゲルド「くっ………!俺が動きを止める!お前達は、グルドを中心に攻撃しろ!」

猪人族「ゲルド様!」

グルド「行きますか!」

 

 ゲルドと、オーバーデモンズに変身したグルドの二人が、メガロドンの動きを止める。

 

ゲルド「やれ〜!!」

猪人族達「うわぁぁぁぁ!!」

 

 ゲルドがメガロドンの動きを止めて、部下達が攻撃するが、メガロドンに吹き飛ばされる。

 

ゲルド(さて、どうする!仲間は動けない。コイツを攻撃するには………。)

ガビル「助太刀いたしますぞ!」

グルド「ガビルさん!行きますよ!」

ガビル「渦槍水流撃(ボルテックスクラッシュ)!」

 

デモンズフィニッシュ!

 

 ゲルドがメガロドンを抑える中、ガビルがやって来て、グルドと共に、メガロドンを倒す。

 

ヤシチ「ガビル様、かっこいい!」

カクシン「然り!」

ガビル「怪我人の手当てを!」

スケロウ「任せとけ!」

 

 ガビルの指示のもと、負傷者にフル・ポーションを使う。

 ゲルドとグルドの二人が、仲間に回復薬をかけている中。

 

ガビル「ゲルド殿が動きを止めて下さったおかげで、楽に仕留める事が出来ましたぞ。」

ゲルド「助太刀感謝する、ガビル殿。グルドも、助かった。」

グルド「はい。」

 

 ガビル達がそう話す中、メガロドンが更に一体迫ってくる。

 

ガビル「我輩達が落とす。あとは、ゲルド殿!」

ゲルド「うん!今度は、仕留めてみせる!」

グルド「分かりました!」

ガビル「はあ!」

ヤシチ「ガビル様、かっこいい!」

 

 ガビルはそう言って、メガロドンの一体へと向かっていく。

 一方、ペガサスナイツは。

 

ドルフ「我がペガサスナイツの誇りに賭け、ここで阻止するのだ!」

一同「おお!!」

 

 ドルフさんのその声と共に、メガロドンに突っ込んでいく。

 一方、ゴブタ達、 狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)は。

 

ゴブタ「でやぁぁぁ!!」

 

 叫び声を出しながら、メガロドンに突っ込んでいくが、すぐに退却行動を取る。

 

ゴブタ「一旦、退却っす!」

 

 メガロドンが地面に落ちると、他のゴブリン達が、メガロドンに攻撃していく。

 それを見ていた白老は。

 

白老「ほっほう。囮役と攻撃役。きちんと、自らの役割を見極めよ。死ぬ気でな。」

 

 そう言った。

 それを見ていた俺たちは。

 

リムル「白老の采配、見事なもんだ。」

レイト「なんか、死ぬ気でなって、聞こえた気がするんだが………。」

紅丸「若返って、鬼教官ぶりに、磨きがかかったからな…………。」

 

 確かに、あれは本当に鬼教官と言えるだろうな。

 すると。

 

ミリム「なあ、私も一緒に遊びたい。」

リムル「あ!」

レイト「ミリム!?街で待ってた筈じゃあ………!?」

ミリム「け………見学ぐらい、良いであろう?街に居ても暇なのだ。」

 

 やっぱり。

 ミリムの性格上、絶対、街で待ってる筈が無いからな。

 カリュブディスとメガロドンを見たミリムは。

 

ミリム「なあなあ!やはり私が………!」

リムル「ダメ。」

ミリム「うぅ………。」

レイト「そんな目で見るな。」

 

 リムルにダメと言われたミリムは、目をウルウルさせながら、こちらを見てくる。

 すると、科学者から、報告が入る。

 

科学者『告。クローンライダー部隊の損耗率が上昇。デモンズトルーパー、ライオトルーパー、ゼクトルーパー、黒影トルーパーを中心に、被害が広がっています。』

レイト『損耗率が高い部隊は、他の部隊の援護に回りつつ、損耗率を上げさせるな。』

科学者『了。』

 

 俺は、そう指示を出す。

 一方、メガロドンの上に来た蒼華と蒼月。

 蒼月は、デモンズに変身していて、コンドルゲノミクスを発動している。

 

蒼華「蒼影様!」

蒼月「今です!」

蒼影「うむ!」

 

 蒼華の影から、蒼影が現れる。

 影移動を使ったのだろう。

 すると。

 

蒼影「操妖傀儡糸!」

 

 蒼影が糸を出すと、蒼影が乗っているメガロドンが、突然、他のメガロドンに攻撃する。

 恐らく、操っているのだろう。

 

ミリム「おお〜!メガロドンを操って、同士討ちにさせているのだ!」

リムル「もう、何でもありだな、あのイケメン…………。」

レイト「凄いな…………。」

 

 蒼影って、本当に凄いよな。

 何でもありかよ。

 

蒼影「頃合いを見て、始末しろ。」

蒼華「心得ました。」

蒼月「あとは、お任せ下さい。」

 

 蒼影は、蒼華と蒼月に指示を出して、他の龍人族(ドラゴニュート)達と共に移動する。

 蒼影は、メガロドンを操って、カリュブディスに向かい、紫苑と火煉は、嵐牙の上に乗って、他のメガロドンに向かっていた。

 しかも、嵐牙は、空を飛んでいた。

 

リムル「空を?」

レイト「嵐牙の奴、いつの間にあんな技を覚えたのか?」

紅丸「…………というか、いつ紫苑と火煉と組んだんだ?」

 

 俺、リムル、紅丸がそんなふうに声を出す中。

 

紫苑「今回は何としても活躍し、目立たねばなりません。」

火煉「そうですね。」

嵐牙「うん。我も、その意見には賛成だ。」

 

 2体のメガロドンに迫る中、火煉は、ベルトを操作していた。

 

カブト!

charge!

 

 火煉は、カブトバイスタンプを起動して、アーキオーインジェクターに押印して、カブトバイスタンプをバイスタンプホルダーに戻して、ベイリングノックを押し込む。

 

ベイリングインパクト!

 

紫苑「はぁぁぁ!断頭鬼刃!!」

火煉「はぁぁぁ!!」

 

 紫苑の斬撃と、火煉の手刀によって、メガロドンが真っ二つに斬れる。

 

嵐牙「ワオーン!!」

 

 嵐牙は、黒い雷を出して、メガロドンを黒焦げにする。

 それを見ていたミリムは、俺とリムルの腕を引っ張る。

 

ミリム「私も!私も!」

リムル「ダメだって言ってるだろ。」

レイト「大丈夫だから。」

ミリム「う〜…………。」

 

 ミリムが、頬を膨らませながら、カリュブディスが居る方を向くと、メガロドンは粗方片付けられていた。

 

紫苑「はぁ…………。さて。」

火煉「残るは…………。」

ベイル(カリュブディスのみか…………。)

火煉「そうね、ベイル。」

嵐牙「どの程度の強さなのか、見極めてやろうでは無いか。」

紫苑「それでこそ、嵐牙。」

 

 紫苑、火煉、嵐牙、ベイルは、そう話す。

 一方、 狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)は、メガロドンに追い詰められ、白老の眼前に、迫る。

 白老は、目を赤く光らせ、刀を抜刀して、メガロドンを細切れにする。

 そんな白老は、ゴブタに声をかける。

 

白老「不甲斐ないのう。それなりに成長しておるが、たった一匹も仕留められぬとは。修行をますます厳しくせねばならんわい。」

ゴブタ「ちょっ………!これ以上厳しくされると、死んじゃうっすよ!じじい!!」

白老「じじいじゃと?」

 

 白老がそう言う中、ゴブタは白老をじじい呼ばわりして、白老は目を赤く光らせる。

 自分の失言に気づいたが、もう時既に遅し。

 

ゴブタ「ええ………!ああ〜!!」

リムル「ん?何だ?」

レイト「どうせ、ゴブタ辺りが、白老をじじい呼ばわりしたんだろ?」

紅丸「リムル様、レイト様。」

リムル「ああ。」

レイト『クローンライダーの損耗率は?』

科学者『告。ライオトルーパー、ゼクトルーパー、黒影トルーパー、デモンズトルーパー、メイジ、ダークネクロム、アバドンは、損耗率は半分ほどです。』

レイト『メガロドンで、かなり削られたか………。損耗率を上げるな。』

科学者『了。』

 

 俺は、科学者に指示を出す。

 そんな中、蒼影は、自分が乗っていたメガロドンを始末し、カリュブディスに乗る。

 

リムル「後は、カリュブディスだけか………。」

レイト「ああ。」

紅丸「あいつの実力なら、大丈夫でしょう。それに…………。」

 

 そう。

 カリュブディスの上には、蒼影だけでなく、紫苑、嵐牙、火煉も居て、その周囲を、飛行可能な者たちが取り囲む。

 そこから、一斉攻撃をする。

 だが…………。

 

リムル「全然、効いてないみたいだな。」

レイト「カリュブディスがデカすぎるから、ダメージがそこまで通ってないんだろうな。」

紅丸「…………ですね。」

 

 俺たちがそう話す中、カリュブディスの気配が変わる。

 何かを仕掛けてくるな。

 俺たちは、思念伝達で、警戒を呼びかける。

 

リムル『何か仕掛けてくるかもしれない。』

レイト『全員、油断するな。』

紫苑「了解です。」

蒼影「承知。」

火煉「はい!」

嵐牙「心得ました、我が主たちよ!」

 

 俺たちの声にそう答える。

 すると、カリュブディスが唸り声を出す。

 火煉達が警戒していると、ドルフさんが、何かに気付いたのか、大声を出す。

 

ドルフ「回避!距離を取れ!!」

 

 ドルフさんの声と共に、ペガサスナイツは、少し下がる。

 すると、カリュブディスの鱗が剥がれ、火煉達を襲う。

 

紫苑「ああ!」

嵐牙「うわ!」

火煉「鱗が…………!?」

蒼影「くっ…………ふん!」

 

 3人と一匹は、カリュブディスから振り落とされる。

 何とか着地するが、そこに、鱗が襲いかかってくる。

 それを見た俺は、科学者に聞く。

 

レイト『科学者!今の攻撃による損耗率は!?』

科学者『告。メイジが何体か撃墜され、地上にいるライダー達も、一部が撃破されている模様。』

レイト『まずいな………。少し下がらせろ!』

科学者『了。』

 

 科学者の指示で、カリュブディスの鱗が飛んでいるエリアから、クローンライダーを下がらせた。

 すると、リムルが声をかけてくる。

 

リムル「行くぞ、レイト。」

レイト「ああ。折角だ、新しいスキルを試すとしますか。変身!」

 

スクランブル!

キングクラブ!クロコダイル!仮面ライダーキマイラ!キマイラ!

 

 俺たちはそう言って、蒼影達の居る場所に向かって行く。

 勿論、俺はキマイラに変身して。

 一方、蒼影達は、鱗に苦戦していた。

 

蒼影「うう………避けられぬ………!」

紫苑「避ける?何を甘えた事を!」

火煉「でも、数が多すぎる!」

嵐牙「アオーン!」

 

 嵐牙の雷で、鱗は一旦離れたが、全員が疲弊していた。

 そんな中、嵐牙が蒼影に話しかける。

 

嵐牙「蒼影よ。主は、影移動で逃げるが良い。我が紫苑と火煉の盾となろう。」

紫苑「バカな………!」

火煉「死ぬ気ですか!?」

嵐牙「フフフ…………リムル様とレイト様ならば、生き残る確率が高い方を選択されるだろう。」

蒼影「生き残る確率か………。ならば、俺も残ろう。ああ、勘違いするなよ。死ぬ前に本体は撤退するから、気にするな。」

紫苑「フフッ………蒼影らしいな。」

火煉「ですね。………なら、全員で生き残りましょう!」

 

 そう言って、火煉達は、鱗へと向かっていく。

 だが。

 

リムル「ほんと、お前らって、バカだよな。」

レイト「こういう時は、俺たちを頼ってくれよ。」

紫苑「リムル様!」

火煉「レイト様!」

レイト「行くぞ、リムル!」

リムル「ああ!食らいつくせ、暴食者(グラトニー)!」

レイト「俺も。吸収之王(アブソーブドレイン)!」

 

 俺とリムルのこのスキルは、魔王ゲルド戦以降に進化した物だ。

 そのスキルによって、鱗があっという間に吸い込まれる。

 

紫苑「あ、あぁ………。」

蒼影「あれだけの鱗が、一瞬で………。」

火煉「凄い…………。」

リムル「あとは、俺たちに任せろ。お前達は、一旦下がって、少し休むと良い。」

蒼影「我々は、まだお役に………。」

レイト「慌てるな。それに………あれを見ろ。」

 

 そう言って、カリュブディスに指差す。

 すると、鱗が、凄まじい速度で再生していたのだった。

 

リムル「鱗が再生を始めている。次にあれを使われた時、また守ってやれるかは分からないからな。」

レイト「しばらく、俺とリムルで相手をするから、紅丸の指示で攻撃してくれ。」

蒼影「…………ご武運を。」

紫苑「お気をつけて、リムル様。」

火煉「レイト様も、無理をなさらぬ様に。」

嵐牙「我が主達よ。すぐに応援に戻ります!」

リムル「ああ。」

レイト「行くぞ!」

 

 俺とリムルは、カリュブディスに向かっていく。

 すると、鱗が飛んでくる。

 

リムル「さてと。やるだけやってみるか。」

レイト「だな。」

 

 俺たちは、遠距離攻撃手段を用いて、カリュブディスに攻撃していく。

 すると、カリュブディスが、目から光線を放つ。

 俺たちは躱すが、躱した先の森から、火が出てくる。

 

リムル「あ〜あ………。」

レイト「くそっ!」

 

 俺たちは毒付く中、再び鱗が襲ってくる。

 だが、気になる事がある。

 

リムル「う〜ん………少しは痛がってる……か?」

レイト「悪いけど、どういうわけか、俺に鱗が集中するんだけど!?」

リムル「確かに、何でレイトに?というより、こいつ、もしかして、超速再生を持ってるんじゃ無いか?」

 

 リムルの疑問に、俺の方は、科学者が答えてくれた。

 

科学者『解。体組織の修復速度から判断し、個体名カリュブディスが、エクストラスキル、超速再生を所持していると考えて、間違いありません。』

レイト『鱗の再生速度は?』

科学者『告。鱗の再生は、超速再生により、3分程度で完了すると推測。』

レイト『3分か…………。』

 

 カップラーメンを作る感覚で、あの鱗の大量射出が出来るようになると考えると、かなり厳しいな。

 それに、本当に、俺に攻撃が集中するな。

 さてと。

 まずは、やってみますか。

 俺は、ツインキメラバイスタンプを3回倒す。

 

クロコダイルエッジ!

 

 クロコダイルエッジを発動して、鰐の顎を模したライダーキックを放ち、カリュブディスの翼の一部を切り落とし、即座に吸収之王で、取り込む。

 すると、更に、俺の方に攻撃が集中する。

 一方、紅丸達は。

 

紅丸「全員!持てる手段を尽くして、カリュブディスを攻撃しろ!効きが悪くても良い!奴に回復の暇を与えるな!!」

一同「おおお!!」

 

 紅丸の指示と同時に、地上部隊は、カリュブディスに攻撃を集中させる。

 空からも、ペガサスナイツが攻撃する。

 戦力としては、十分以上。

 総攻撃で、一気に撃墜と思ったのだが。

 戦いは、夕方まで続いていた。

 

リムル「ふう…………。」

レイト「カリュブディスに与えられたダメージは、3割程度って所だな。」

リムル「総力戦で3割か………。」

レイト「クローンライダーも、かなり損耗してる。このままじゃ、ジリ貧だぞ。」

 

 そう。

 やっぱり、抵抗が激しく、クローンライダー達は、かなり損耗していた。

 どうしたものか………。

 そう思っていると。

 

カリュブディス「グ………グエ、グア………!」

「「ん?」」

カリュブディス「お…………おのれ、ミ………ミ…………ミリムとレイトめ…………!」

リムル「ミリムにレイト?そう言ったよな?」

レイト「あ…………俺、カリュブディスの依代になった奴が分かったかもしれん。」

 

 まさか、アイツか!?

 それなら、やけにリムルより俺に攻撃が集中したのも、納得がいく。

 そいつの名前を告げると。

 

リムル「………え?じゃあ、何?俺の中にヴェルドラが居るのを察知したとかじゃないの?」

レイト「じゃない。」

リムル「じゃあ、ミリムに頼って良いんじゃね?」

レイト「…………ていうか、ミリム、寝てるぞ?」

 

 俺とリムルが、ミリムの方に向かうと、ぐっすり寝ていた。

 

リムル「ミリム!」

ミリム「うわ〜!寝てないのだ!起きていたのだ!」

レイト「どう見ても寝てたろ?」

ミリム「瞑想していただけだ。ちゃんと、お前達を応援していたのだぞ!」

レイト「…………まあ、良いや。」

リムル「こいつ、どうやら、お前に用事があるみたいなんだけど………。」

ミリム「何!?むむ!アイツは、この前来たフォビオとやらを依代にしている様だな。」

「「やっぱりか……………。」」

 

 やっぱり、フォビオを依代にしてたか。

 俺にパンチを受け止められたのが、余程気に入らなかったのか?

 そう考える中、ミリムはこっちに来る。 

 

ミリム「では、私が相手をして良いんだな!?」

レイト「ああ。遠慮なくやってくれ。俺は、少し疲れた。」

リムル「それにしても、俺たちが邪魔したみたいで、悪かったな。」

ミリム「良いのだ、気にするな、なのだ!やるのだ!」

リムル「あ、それと………。」

ミリム「はい?」

レイト「フォビオって、魔王カリオンの配下だろ?生かして、助けたいんだけど………。」

ミリム「ワッハハハ!その程度、造作もない!最近学んだ、手加減を見せてやるのだ!」

レイト「手加減ね…………。」

 

 若干、不安だが、任せるとしよう。

 ドルフさん達には、退避してもらった。

 すると、カリュブディスが再び呻き声を出す。

 

カリュブディス「ぐっ………!グガァァァ!ミリ…………ミリムめ!」

 

 カリュブディスは、ミリムに向かって、鱗を射出する。

 だが、ミリムは慌てていなかった。

 

ミリム「その技は、もう見たのだ。今度は、私が見せてやろう。」

 

 ミリムがそう言って、手を空に掲げると、鱗の動きが止まる。

 そして、手を下げると、鱗は落ちていく。

 

ミリム「これが………手加減という物だァァ!!竜星拡散爆(ドラゴ・バスター)!!」

 

 ミリムの攻撃が、カリュブディスに着弾すると、爆発する。

 それを見ていた俺たちは。

 

「「手加減って、一体…………。」」

 

 そう呟いた。

 リムルが、フォビオを回収した。

 まあ、フォビオが無事な時点で、手加減と言えるだろうな。

 俺とリムルは、二人で協力して、カリュブディスの魔核を、フォビオから除去する作業をしていた。

 科学者が、報告する。

 

科学者『告。個体名フォビオから、個体名カリュブディスの魔核を分離。半分吸収しました。隔離して、解析鑑定を行います。』

 

 その報告と同時に、俺たちは、地面に腰を下ろす。

 

リムル「ふぅ…………。」

レイト「疲れた………。頼む。」

紅丸「はい。」

 

 紅丸は、フォビオに回復薬をぶっかける。

 すると、ドルフさんが話しかける。

 

ドルフ「リムル殿、レイト殿。」

リムル「ドルフさん。助力を感謝する。」

レイト「おかげで、カリュブディスを倒す事が出来ました。」

ドルフ「いえ。カリュブディスを倒したのは、我々ではなく…………。」

 

 ドルフさんがそう言うと、ミリムの方を見る。

 

ミリム「ん?」

ドルフ「説明してもらえるでしょうか?」

 

 まあ、そうなるわな。

 

レイト「いや…………その…………。」

リムル「実は、この少女は、魔王ミリムといって………ね。」

ドルフ「ん?………うん。」

ミリム「フフン!」

ドルフ「ハッハッハッ!リムル殿とレイト殿は、冗談がお好きな様だ。」

ミリム「む!」

ドルフ「あの様な高出力の魔法兵器を所持していたのなら、最初にそう申して欲しかったですぞ。」

 

 あ、信じてないな。

 いや、信じたらまずいもんな………。

 すると、ミリムが叫ぶ。

 

ミリム「冗談ではない!私は魔王なのだ!!私がカリュブディスをやったのだ!」

ドルフ「なるほど。兵器については秘密………っと。分かりますぞ。奥の手は、隠しておくに限りますからなぁ。」

ミリム「魔王だと言っておるだろう!」

ドルフ「人類にとっても、災禍となりうるカリュブディスを始末できたのは、行幸でした。私も、王への報告がありますれば、今回は、これにて失礼致します。」

ミリム「おい、こら〜!!」

リムル「本当に助かりました。」

レイト「ガゼル王に、よろしくお伝えください。」

 

 そう言って、ドルフ達ペガサスナイツは去っていった。

 そんな中、リムルはフォビオに話しかける。

 

リムル「よ、目覚めたか?」

フォビオ「ん………ぐっ………。こ………こは、どこだ?俺は………俺は一体………。」

レイト「自分が何をしたのか、覚えているか?」

 

 俺がそう声をかけると、フォビオは、すぐに土下座をした。

 

フォビオ「すみませんでした!俺は、ミリム様にとんでもない事を………。あなた方にも、迷惑をかけてしまった様で………。」

レイト「まあ、それに関しては良いけど。」

リムル「何でこんな事をした?」

トレイニー「なぜ、カリュブディスの封印場所を知っていたのですか?」

トライア「偶然見つけた、などとは言わせませんよ?」

レイト「…………だってさ。」

フォビオ「ああ………はい。それは………。」

 

 フォビオは話した。

 太った男の道化師のフットマン、小さい女の道化師のティアと名乗る者達が、接触してきた事を。

 

トレイニー「ティアと、フットマン斗名乗る仮面の道化。…………こんな仮面でしたか?」

 

 そう言って、トレイニーは、笑った顔の仮面を地面に描く。

 それを見たフォビオは。

 

フォビオ「いや………。俺の前に現れたのは、涙目の仮面の少女と、怒った仮面の太った男だった。」

紅丸「あ…………。」

 

 紅丸は、その怒った仮面の太った男という単語に反応していた。

 そんな中、ガビルが口を開く。

 

ガビル「あの〜………。そのラプラス殿も………。」

レイト「ラプラス?」

ガビル「ラプラス殿は、ゲルミュッドの使いとして、我輩の前に現れた者なのですが………。今、トレイニー殿が仰った仮面を被っておりましたぞ。」

リムル「ん!」

ガビル「それに、中庸道化連(ちゅうようどうけれん)という、何でも屋の副会長だと名乗っておりましたなぁ。」

 

 中庸道化連か。

 どうやら、魔王ゲルドの一件に、今回のカリュブディスの一件。

 暗躍している奴が居るみたいだな。

 

リムル「点と点が繋がったな。」

トレイニー「なるほど。あの者の名は、ラプラスというのですね。」

紅丸「フットマンね…………。その名、覚えておくとしよう。」

朱菜「ええ。お兄様。」

レイト「その中庸道化連は、協力する体を装って、自分達の手を汚さずに、相手を利用して、目的を達成するのか………。」

リムル「厄介そうな相手だなぁ………。」

 

 リムルがそう言うと、ミリムの方を見る。

 すると、ミリムは反応する。

 

ミリム「むむ………?私は何も知らないのだ。寧ろ、そんな面白そうな奴らが居るなら、是非とも会ってみたかったのだ。」

レイト「そうか………。」

ミリム「もしかすると、ゲルミュッドではなく、クレイマンの奴が、何か企んでいたのかもしれないな。内緒で………。」

リムル「クレイマン?」

レイト「確か、魔王の一人だったか?」

ミリム「そうだぞ。奴は、そういう企みが大好きなのだ。」

 

 どうやら、クレイマンって奴が、黒幕の可能性が高いな。

 すると、フォビオが話しかける。

 

フォビオ「…………誰の企みに乗せられたといえど、今回の一件は、俺の責任だ。魔王カリオン様は関係ない。だから、俺の命一つで許して欲しい。」

 

 そう言って、フォビオは頭を下げる。

 だが、俺たちの答えは決まっている。

 

リムル「…………次からは、もっと用心して、騙されないようにしろよ。」

フォビオ「は?」

レイト「動けるなら、行っていいぞ。」

フォビオ「いや………俺は、許されないだろう。特に、貴方には…………。」

レイト「別に、お前の命は要らない。」

リムル「なあ、ミリム?」

ミリム「うむ!当然なのだ!軽く1発くらい殴ってやろうかと思っていたが、私も大人になったものだなぁ。」

レイト「殴るつもりだったんかい。」

 

 それは、まあ、進歩したな。

 来た時と比べれば。

 

ミリム「全然腹が立っていないから、許してやるぞ。」

リムル「という事だ。気にするなよ。」

ミリム「そうだぞ。…………カリオンもそれで良いだろ?」

レイト「え?」

 

 すると、ミリムが後ろを向きながらそう言ったので、振り返ると、ガタイが良い男がやって来た。

 

フォビオ「カ………カリオン様!」

カリオン「フン。気づいていたのか、ミリム。」

ミリム「当然なのだ。」

 

 どうやら、コイツが魔王カリオンか。

 すると、俺とリムルに話しかける。

 

カリオン「よう。そいつを殺さずに助けてくれた事、礼を言うぜ。」

 

 カリオンはそう言うと、目を細める。

 どうやら、俺とリムルを見極めているのだろう。

 

カリオン「…………お前達が、ゲルミュッドをやった仮面の魔人なんだろ?」

リムル「ああ、その通りだ。」

レイト「何だ?俺たちに仕返しでもしに来たのか?」

 

 それを聞いた火煉達は、身構える。

 カリオンは、少し呆けた表情をしたが、すぐに笑みを浮かべる。

 

カリオン「フッ。いや。立て。」

フォビオ「あ…………はい。」

 

 カリオンの命令に、フォビオは立つ。

 そして、徐にフォビオに近寄ったカリオンは、フォビオを思い切り地面に叩きつける。

 カリオンは、俺たちに声をかける。

 

カリオン「…………悪かったな。」

リムル「え?」

カリオン「部下が暴走しちまった様だ。俺の監督不行き届きって事で、許してやって欲しい。」

レイト「あ、ああ…………。」

カリオン「今回の件、借りにしておく。何かあれば、俺様を頼ってくれて良い。」

リムル「それなら、俺たちの国との不可侵協定を結んでくれると、嬉しいんだが………。」

カリオン「そんな事で良いのか?」

レイト「ああ。」

カリオン「良かろう。魔王の………いや。獣王国ユーラザニア、獅子王(ビーストマスター)カリオンの名にかけて、貴様達に刃を向けぬと誓ってやる。」

リムル「ああ。」

 

 どうやら、何とかなりそうだな。

 すると、カリオンは、フォビオを抱える。

 それも、血だらけの。

 

カリオン「おら、帰んぞ。」

「「一杯血、出てますけど!?」」

カリオン「では、また会おう。リムル、レイト。」

 

 そう言って、カリオンとフォビオ、部下一人が、魔法で、転送された。

 

リムル「さてと、終わったな。」

レイト「俺たちも帰ろう。俺たちの街に!」

一同「はい!」

 

 こうして、カリュブディスとの戦いは、多数のクローンライダーを失ったものの、無事に終わり、獣王国ユーラザニアとの国交を結べそうだった。




今回はここまでです。
長らくお待たせしました。
色んな小説の投稿をしていたら、これがだいぶ遅くやってしまいました。
次回は、ほぼオリジナルといっても、差し支えない内容になる予定です。
何せ、レイトは、イングラシア王国には行きませんから。
その代わり、シズさんが………。
そこから先は、次回を楽しみにしてて下さい。
あと、もしかしたら、神楽坂優樹に関しては、登場はかなり削られると思います。
それでも、出せる限りは出したいですが。
そして、この話では描写されていませんが、レイトは、仮面ライダーダイモンに変身できる様になりました。
魔核を半分にしたのは、今後の流れに関係してきます。


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第19話 新たな力と出立

 暴風大妖渦(カリュブディス)の襲来を乗り越え、ついでに、獣王国ユーラザニアとの国交を結べる事になった。

 その日は、宴会となった。

 白老が、メガロドンを三枚おろしにした。

 

ゴブタ「おお〜!流石っす!お見事っす師匠!メガロドンの三枚おろし!」

白老「ヌッハハ!これくらい朝飯前…………ああ、いや晩飯前じゃよ。」

 

 一方、黒衛兵とカイジン、ドワーフ三兄弟は、メガロドンの鱗を見ていた。

 

カイジン「軽い。しかも固い。これは使えそうだな。」

黒衛兵「良い武器が出来そうだべ。」

ガルム「盾にしても良い。鎧に加工するのもありだな。」

ドルド「ちょっとしたアクセサリーを作っても良い。高値で売れそうだ。」

ミルド「うんうん。」

 

 鍛治職人達は、そう話す。

 一方、ガビルとゲルドが話していた。

 

ガビル「ゲルド殿!見事な戦いっぷりでしたぞ!あの勇気、見習いたい物です。」

ゲルド「ガビル殿こそ、獅子奮迅の活躍!いや、感服の至り!」

ガビル「いやいやゲルド殿!」

ゲルド「いやいやガビル殿!」

「「アッハハハハ!!」」

ヤシチ「二人とも、かっこいい!」

 

 ガビルとゲルドは、お互いを称え合い、笑い合う。

 一方、蒼月とグルドは。

 

蒼月「お疲れ様、グルド君。」

グルド「お疲れです。」

 

 そんな風に話していた。

 そんな風に皆が笑い合うのを見て、俺は安堵していた。

 ちなみに、リムルは、紫苑、朱菜、蒼華、エレン、ミリムと共に、風呂に入っていた。

 俺は、飯を食っていた。

 カリュブディスの一部を取り込んだ影響か、ギフテリアンTRUEから、ヘルギフテリアンへと進化していた。

 どうも、桜井侑斗と出会して、少し疲れたのだ。

 誰も文句は言わないだろう。

 そう思っていると、ベスターが話しかける。

 

ベスター「レイト殿。」

レイト「おお、ベスター。どうした?」

ベスター「はい。シズエ・イザワさんの肉体の作成が完了しました。」

レイト「おお!そうか!じゃあ、リムル達を呼んでくるわ。」

ベスター「では、私は準備があるので、これで。」

 

 そう言って、ベスターは去っていった。

 俺は、思念伝達で、リムルに呼びかける。

 

レイト『おい、リムル。』

リムル『どうした?』

レイト『朗報だ。シズさんの新たな肉体が完成した。』

リムル『マジで!?』

レイト『マジだ。俺は、カバルとギドを呼んでくるから、リムルはエレンを呼んできてくれ。』

リムル『分かった。』

 

 そう言って、俺はカバルとギドが居る場所に向かう。

 カバルとギドに、シズさんの新たな肉体ができたと伝えると、二つ返事で行くと言った。

 ついでに、フューズさんも来ることになった。

 リムルとエレンとも合流して、俺たちは、ベスターと俺の研究所に向かう。

 ちなみに、ミリムは他の魔王に、テンペストを手出ししない様に言ってくる為に、帰ったそうだ。

 

フューズ「あの…………レイト殿。ここは一体…………?」

レイト「俺とベスターが共同で使ってる研究所だ。ここで、色んな作業をしてる。」

カバル「へぇ…………。」

レイト「ベスター、用意は出来たか?」

ベスター「はい。」

 

 俺は、ベスターに話しかける。

 ベスターの視線の先には、ベッドが置かれていて、そこには、シズさんの新しい肉体があった。

 シズさんの新しい肉体は、火傷の痕が消えていて、俺のキメラ細胞を用いたのが理由なのか、白いメッシュが入っていた。

 

リムル「…………なんか、新しいシズさんの肉体の見た目、少し変わってないか?」

レイト「そりゃな。キメラ細胞を用いたからか、火傷の痕は消えて、髪の一部に白いメッシュが入った。」

リムル「なるほどな。」

レイト「シズさん、悪いな。遅くなって。」

シズ「ううん。大丈夫だよ。」

レイト「じゃあ…………行くぞ。」

 

 俺はそう言って、シズさんの魂が入ったバイスタンプを、シズさんの新たな肉体に押印しようとする。

 すると、別のバイスタンプが共鳴した。

 

レイト「うん?」

エレン「どうしたの、レイトさん?」

レイト「いや……………。」

リムル「おい、何か、このバイスタンプが光ってるぞ。」

 

 そう言って、リムルが渡してきたのは、ライオンバイスタンプだった。

 

レイト(何でライオンバイスタンプが………?これも押印しろって事か?)

 

 首を傾げつつも、シズさんの魂が入ったバイスタンプと、ライオンバイスタンプを、シズさんの新たな肉体に押印する。

 押印したと同時に、ユニークスキル、移植者(ウツスモノ)を発動して、シズさんの魂を、肉体に移す。

 すると、シズさんの腰の部分に、ベルトが出現して、引っ込む。

 

ギド「何でやすか、あれ?」

フューズ「分かる訳ないだろ。」

 

 ギドとフューズは、そう話す。

 だが、俺からしたら、見覚えがある物だったのだ。

 

レイト(アークル?何で…………?)

 

 そう。

 仮面ライダークウガの変身ベルト、アークルなのだ。

 どういう事かと首を傾げていると。

 

科学者『告。個体名、シズエ・イザワは、ユニークスキル、古代の戦士(クウガ)を獲得しました。』

レイト『え?クウガ?どういう事?』

科学者『解。先ほど押印したライオンバイスタンプの中にあるクウガのR因子が体内に入った結果、クウガの力を獲得したと推測。』

レイト『マジかよ…………。』

 

 確かに、R因子によって、仮面ライダーに変身出来るけど、まさか、クウガの力を発現させるとは思わなかった。

 あれって、あくまでジョージ・狩崎の趣味だったんだけどなぁ…………。

 すると、シズさんが目を開ける。

 

シズ「うぅん…………。」

エレン「シズさん!」

シズ「3人とも…………。」

カバル「良かった…………良かった…………!」

ギド「でやんすね。」

シズ「レイトさん。ベスターさん。ありがとうございます。」

レイト「いや、良かったよ。」

ベスター「お役に立てたのなら、光栄です。」

 

 シズさんは、エレン達の助けを借りつつ、体を起こす。

 ちゃんと、服は着ていた。

 

レイト「あんまり、無理すんなよ。これまでずっと、バイスタンプの中に居たんだから、まだ体を動かせるか…………。」

ベスター「レイト殿。車椅子を用意しておきました。」

レイト「ああ、ありがとう。」

 

 俺は、シズさんを車椅子に座らせる。

 あんまり、無理はさせたくないからな。

 今日の所は、リムルとエレン達と話させようと思い、俺は移動する。

 俺は、気になる事があるのだ。

 

レイト『なあ、怪人生成は、何が生み出せる様になった?』

科学者『解。卑弥呼、エジソン、レオニダス、クフのクリスパーを作成出来るようになりました。』

レイト『じゃあ、早速生み出してくれ。』

科学者『了。』

 

 科学者がそう言うと、四つのバイスタンプが生成される。

 これは、クリスパースタンプだ。

 それを、俺の体に押印すると、四人のクリスパー達が現れる。

 

レイト「やあ。」

ヒミコ「私たちを生んだのは、貴様か?」

レイト「そうだね。」

クフ「凄まじい力だ…………。」

レオニダス「そのようだな。」

エジソン「我らは、貴方に忠誠を誓います。」

 

 そうして、クリスパー達も仲間になった。

 その翌日、リムルは、主要メンバーを集めていた。

 その中には、シズさんも居る。

 

リムル「…………という訳で、俺は、イングラシア王国に行ってこようと思う。」

シズ「スライムさん…………。」

レイト「リムル…………。」

リムル「その子達は、シズさんが魔王レオンに会いに行く事を決意した理由の一つだ。約束したからな。」

 

 それを聞いて、内心、納得していた。

 リムルなら、そうするだろうと思って。

 すると、リグルドが不安そうな声を出す。

 

リグルド「お話は理解しました。しかし………。」

白老「リムル様に何かあれば、折角まとまりを見せたジュラの大同盟も、根底から崩壊するやもしれぬ。」

レイト「気持ちは分かるが、俺はイングラシア王国には行かずに、ここに残るよ。………まあ、俺も行く事になりそうだけど。」

嵐牙「この我が一緒に行くのだ。貴様達は、安心して良い。」

リムル「嵐牙の言う通りだ。力を合わせて、この街の治安を守ってくれ。それぞれの役目を全うして欲しい。」

一同「は!」

 

 そうして、リムルと嵐牙は、イングラシア王国に向かう事になった。

 その際、俺とシズさんは、リムルに話しかける。

 

シズ「ありがとうね、スライムさん。私はまだ行けないから、あの子達のこと、お願いね。」

リムル「ああ!任せてくれ!」

レイト「リムル。これを渡しておくわ。」

 

 そう言って、俺がリムルに渡したのは、ガンデフォンだ。

 

リムル「これは?」

レイト「ガンデフォン。これを使えば、連絡が取れる。使ってくれ。」

リムル「ああ。」

 

 そうして、出発の時になった。

 

リムル「じゃあ、行ってくる。」

ガビル「お…………お達者で!お帰りをいつまでもお待ちします!」

スケロウ「ガビル様、繊細。」

ヤシチ「ガビル様、優しい。」

リムル「大袈裟だなぁ。すぐに戻ってくるって。」

レイト「街や、シズさんの事は、俺に任せとけ。」

紫苑「本当に、すぐ戻ってきてくださいね。」

朱菜「旅のご無事をお祈りします。」

火煉「お気をつけて。」

リムル「じゃあ。」

一同「いってらっしゃい!」

 

 そうして、リムルはイングラシア王国へと向かっていった。

 俺たちは、それぞれがやるべき事をやる為に、戻っていった。

 俺は、シズさんのリハビリの手伝い及び、肉体の検査をする事にしている。

 無論、盟主としての仕事もしている。

 その為、かなりの重労働だ。

 火煉達にも、手伝ってもらっている為、どうにかなってはいるが。

 ちなみに、フューズ、エレン達は、テンペストから去った。

 フューズはギルマスとしての仕事を、エレン達は冒険に出た。

 恐らく、近いうちに、ユーラザニアからの使者がやって来るかもしれない。

 それらも考えないといけないな。

 

レイト「やれやれ…………。やるべき事が山積みだな。」

 

 俺は、そう呟いた。

 リムル、頼むぜ。

 何とか、子供達を救う方法を見つけてくれよ。




今回はここまでです。
あと、すいません。
シズさんがクウガの力を手に入れたのは、何か、シズさんは、クウガが似合うと思い、あと、あまり、シズさんの新たな力が思いつかなかったからです。
アンケートを無視する様な形になってしまい、申し訳ありません。
今回は、短めです。
リムルと神楽坂優樹のやり取りは、原作と殆ど変わらないので。
まあ、神楽坂優樹は、シズさんが生きている事は、リムルから聞きました。
あと、リムルの悪魔は、ファルムス王国戦にて登場します。
外見としては、転スラのスマホゲーム、魔王と竜の建国譚に登場した、エミルスがモチーフとなります。
そのエミルスが、リバイに変身します。
色的にも、似合うと思ったので。
次回は、精霊の棲家に向かいます。
この小説は、色んな人からアドバイスを貰いつつ、進めていきます。
感想、及びリクエストは、受け付けています。
レイトは、近いうちに、仮面ライダーダイモンへと変身します。
ファルムス王国軍は、原作だと二万ですが、この小説だと、四万に増やしたいと思います。
まあ、蹂躙されるだけですが。


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第20話 精霊の棲家

 リムルがイングラシア王国に旅立った。

 その間、俺は忙しかった。

 例えば、シズさんのリハビリの手伝い。

 

レイト「シズさん、大丈夫か?」

シズ「うん。少しずつだけど、歩ける様にはなってきたよ。」

レイト「少しずつでも、リハビリをやっていこう。」

シズ「ええ。」

 

 そんな感じに、シズさんのリハビリは続く。

 リハビリといっても、新しい体に、シズさんを馴染ませる為だ。

 少しずつ、シズさんの動きも良くなっていた。

 その間、クウガの事も教えた。

 科学者曰く、シズさんは、マイティフォームとライジングフォーム、アメイジングマイティにはなれるらしい。

 無論、アルティメットにも。

 ただ、アークルが制限しているが。

 まあ、初っ端からアルティメットになるのは、危険だしな。

 究極の闇の力に呑まれてしまう可能性があるからな。

 それと、大同盟に関する仕事もだ。

 それに関しては、火煉や朱菜がサポートしてくれるのもあり、何とかなっている。

 

レイト「ふぅ…………流石に疲れるな………。」

 

 これまでは、リムルと共同で作業をしていたから、あまり疲れなかったが、流石に疲れるな…………。

 そんな日々を過ごしていると、ガンデフォンに連絡が入る。

 俺は、ガンデフォンを取り、対応する。

 

レイト「お、どうした、リムル?」

リムル『いやぁ。イングラシア王国に着いて、シズさんの生徒達と会ったんだけどさ………。』

 

 リムルは語った。

 イングラシア王国にある自由組合(ギルド)のギルドマスター、神楽坂優樹と出会ったそうだ。

 神楽坂優樹もまた、シズさんの教え子らしい。

 当初は、シズさんを勝手に魔物にした仲間として、攻撃してきたが、何とか和解したらしい。

 その際、日本の娯楽がどうなったのかを教えて、漫画をあげたらしい。

 それを聞いて思ったのが…………。

 

レイト「……………リムル。それって、能力の無駄遣いな上に、買収じゃないのか?」

リムル『バッカ!能力の有効な使い方だよ!買収に関しては…………黙秘させて貰う。』

 

 おい。

 仮にもギルドマスターを買収するなよ。

 まあ、それはどうでも良い。

 ギルドマスターとのコネが出来たのなら、それで良いか。

 そして、神楽坂優樹が語ったのは、召喚者に関してだ。

 シズさんが教えていた子供達。

 その子達は、各国が召喚した子供らしい。

 各国が勇者召喚で失敗したそうだ。

 しかも、10歳未満は、例外なく5年以内で死に至るそうだ。

 そうなる理由としては、10歳未満は、成長途中だ。

 能力の獲得には、体に莫大なエネルギーを注がれるらしい。

 そんな事を、成長途中の体に行うと、やがて行き場を無くした莫大なエネルギーが、その体を焼き尽くす。

 それを聞いて、俺は召喚を行った各国に、憤りを感じた。

 10歳未満なんて、まだ親に甘えたがりの頃だろう。

 それなのに、無理矢理親から引き離され、命の危機に晒させる。

 そんな事は、到底許される事ではない。

 

レイト「そんな事…………到底許される事じゃないぞ…………!」

リムル『そうだな…………。』

 

 俺は、何とか憤りを抑えた。

 今は、この怒りを出す時ではない。

 だが、その怒り自体は、すぐに霧散した。

 何故なら、生徒たちの事を聞いたからだ。

 そのシズさんが教えていた生徒達は、やんちゃな奴らばっかりだったからだ。

 それぞれ、三崎剣也、関口良太、ゲイル・ギブスン、アリス・ロンド、クロエ・オベールというらしい。

 その子達は、リムルを認めなかった為、リムルはその子達と戦い、勝ったそうだ。

 

レイト「……………リムル。お前、少し大人気なくないか?」

リムル『し、しょうがねぇだろ!そうするしか無かったんだから!』

 

 やれやれ。

 まあ、何はともあれ、上手くやっているそうで良かった。

 

リムル『それで、頼みがあるんだけどさ。』

レイト「うん?」

 

 リムルの頼みというのが、上位精霊の居場所…………精霊の棲家を調べて欲しいとの事だ。

 実は、ベスターに教えてもらった拠点移動(ワープポータル)で一度、こっちに戻ってきたそうで、トレイニーに聞いたが、知らないそうだ。

 

レイト「なるほど。シズさんのイフリートみたいに、上位精霊をその子達に宿らせるという事だな。」

リムル『ああ。そうすれば、あの子達も救える筈だ。』

レイト「確かに。シズさんもそう言ってたしな。分かった。精霊の棲家の入り口に関しては、こちらでも調べておくよ。」

リムル『助かるよ。』

 

 そう言って、連絡が切れた。

 

レイト「さて…………精霊の棲家か………。」

 

 やるべき事が一つ増えたな。

 まあ、その子達を救う為だ。

 その翌日から、シズさんのリハビリとシズさんにクウガの事を教えるだけでなく、精霊の棲家の入り口を探すというのも加わった。

 だが、そう簡単に見つかる筈もなく。

 途中、完全に動ける様になったシズさんと加えて、捜索を行ったが、見つからなかった。

 というより、精霊の棲家の入り口が、どういう物か知らないから、探すのも一苦労だ。

 その間、カイジンに頼んで、シズさんの為に武器を作ってもらった。

 シズさんのクウガは、通常のドラゴン、ペガサス、タイタンには変身出来ないが、ライジング状態なら、変身出来る事が分かったのだ。

 クウガは、モーフィングパワーを使って、物を武器に変化させるからな。

 ちなみに、シズさんも無限収納を手に入れて、そこに収納している。

 そんなこんなで、1ヶ月が経過した。

 未だに、精霊の棲家に関する手がかりは見つかっていない。

 リムルも、教師として上手くやれていると連絡が入っている。

 どうにか、その子供達を救ってやりたいもんだが……………。

 すると、ガンデフォンに連絡が入る。

 リムルだ。

 

レイト「どうした、リムル?」

リムル『精霊の棲家の入り口の場所、見つかったぞ!』

レイト「マジか!?」

 

 リムル曰く、イングラシア王国の王都に、天空竜(スカイドラゴン)が現れて、リムルが倒した。

 その際に知り合った商人、ミョルマイルが、お礼として食事に誘い、取り引きをする事になったそうだ。

 その時に、精霊の棲家の場所を知っている女性とも知り合い、精霊の棲家の場所を教えてくれた。

 その位置は、辺境の国のウルグレイシア共和国の最北に位置するウルグ自然公園。

 そこに、精霊の棲家の入り口があるらしい。

 

レイト「マジか!それは大した収穫だ!」

リムル『ああ!だから、出来れば、レイトは、シズさんを連れて、そこに向かってくれないか?』

レイト「分かった。仕事も粗方片付いた。シズさんにも教えて、そこに向かうから、後で合流する感じでいいか?」

リムル『ああ!』

 

 俺は、通話を切って、シズさんに話しかける。

 

レイト「シズさん。どうやら、リムルが精霊の棲家を見つけたみたいだ。」

シズ「本当!?」

レイト「ああ。だから、これから、ウルグレイシア共和国の最北に位置する、ウルグ自然公園に向かうぞ。」

シズ「うん。」

 

 こうして、俺とシズさんも、ウルグ自然公園へと向かう事にした。

 その際、徒歩で行くのは辛いので、科学者の協力のもと、バイクを作成した。

 その名も、キメラストライカー。

 形状自体は、ハードボイルダーやカブトエクステンダーの物と似た様な感じになっている。

 ただ、草原に関しては、それで爆走して、自然公園に入ってからは、流石に徒歩で行く事にした。

 

シズ「この先なのかな…………?」

レイト「ああ。リムルのガンデフォンの反応は、近づいているな。」

 

 そう。

 念のために、リムルのガンデフォンの座標を確認する事が出来るのだ。

 そんな中、シズさんが俺に質問をしてくる。

 

シズ「ねぇ、キメラ君。」

レイト「うん?」

シズ「君って、前世はどんな感じだったの?」

レイト「唐突だな。」

シズ「少し、気になって。」

 

 俺は、少し考えて、答えを出した。

 

レイト「良いよ。」

 

 そう言って、俺は前世の事を語る。

 まあ、シズさんの前世の事は、聞いていたからな。

 別に良いか。

 

レイト「……………俺、母さんの事を覚えてないんだ。」

シズ「えっ……………?」

レイト「母さんは、俺が物心がつく前に、病気で亡くなっちゃって。」

シズ「……………ごめんね。」

レイト「大丈夫だよ。…………亡くなっちゃったもんは、しょうがないからさ。そこからは、父さんが俺を1人で育ててくれたんだ。仕事もあって、大変だったろうに……………。」

シズ「良いお父さんだね。」

レイト「ああ。父さんには、凄く感謝してる。俺を育ててくれた事に。」

 

 そう。

 父さんは、母さんを亡くした。

 それなのにも関わらず、父さんは1人で俺を育てた。

 本当に良い人だよ。

 大学生になってからは、父さんの負担を減らすべく、一人暮らしを始めたが。

 

シズ「そういえば、君のお父さんは、どんな仕事をしてたの?」

レイト「科学者だよ。」

シズ「どんな事を研究してたの?」

レイト「それは………………あれ?」

シズ「どうしたの?」

レイト「いや…………思い出せないな。多分、事故のせいで、記憶が無くなったかな。」

 

 俺はそう言う。

 父さんが研究をしていたのは覚えている。

 だけど、何の研究をしていたかは、思い出せない。

 そんな風に首を傾げる。

 すると、リムルのガンデフォンの動きが止まった。

 恐らく、目的地に着いたからだろう。

 俺たちもすぐに向かうと、リムルと嵐牙、子供達の姿が見えた。

 

レイト「リムル!」

リムル「お、やっと着いたか。」

レイト「悪い。待たせたな。」

リムル「良いって、良いって。」

 

 俺とリムルは、そう話す。

 すると、生徒の1人が、シズさんを見て、驚愕の表情を浮かべる。

 その子は、アリス・ロンドという生徒だった。

 ちなみに、ガンデフォンで写真を送って貰ったので、生徒達の事は把握している。

 

アリス「シズ先生……………!?」

シズ「久しぶり。皆。」

ケンヤ「シズ先生!」

 

 そう言って、子供達は、シズさんに駆け寄る。

 良いシーンだな。

 俺の存在感が薄くなるくらいには。

 

レイト「なあ…………俺、存在感薄くなってないか?」

リムル「大丈夫だって。」

 

 俺は、不安げにそう言う。

 すると、子供達が、俺の方に来る。

 

レイト「どうした?」

ゲイル「シズ先生を助けてくれて、ありがとうございます!」

ケンヤ「すっげぇな!」

アリス「まあ、やるんじゃない?」

 

 そんな風に、子供達からお礼を言われる。

 まあ、こんなのも、悪くないか。

 そして、いよいよ精霊の棲家に入っていく事になった。

 

リムル「この奥に精霊の棲家があるんだな。」

レイト「そうだな。」

リムル「覚悟は出来ているか?入ったら2度と戻れないかもしれない。」

子供達「ああ……………。」

 

 あんまり、そういう不安を煽る様な事を言わない方が良いんじゃ…………。

 すると、子供達は口を開く。

 

ケンヤ「も…………勿論だぜ!」

ゲイル「はい!」

リョウタ「大丈夫です。」

アリス「こ…………怖くなんてないんだからね!」

クロエ「はあ…………。」

リムル「え?」

 

 すると、クロエという子が、リムルの腕を掴む。

 そして、クロエは頷く。

 

リムル「うん。嵐牙、レイト、シズさん。何かあったら、皆を頼む。」

嵐牙「主の生徒は、我が生徒も同じ。この命に懸けて、守り抜いて見せます。」

レイト「ああ。」

シズ「スライムさんも、無理しないでね。」

リムル「うん。……………行くぞ。」

 

 リムルはそう言って、扉を開こうとする。

 だが、手を向けた途端、勝手に扉が開く。

 俺たちは、中へと入っていく。

 

ケンヤ「…………ずっと一本道だな。」

アリス「何よ…………迷宮っていっても、大した事ないわね。」

リョウタ「で…………でも、なんか変な感じ…………。」

クロエ「ん…………。」

リムル「絶対に逸れるなよ。」

子供達「は………はい。」

 

 子供達はそう言って、リムルはそう呼びかける。

 確かに、一見、一本道に見える。

 だが、あちこちに方向感覚を狂わせる罠が仕掛けられている。

 これは、人間の感覚だけでは、進む事も、戻る事も叶わないだろう。

 科学者が、脳内マップを用意してくれて助かった。

 すると。

 

???「フフフフ…………。」

レイト「ん?」

 

 突然、笑い声が聞こえてきて、俺たちは立ち止まり、周囲を見渡す。

 笑い声は、脳内に直接聞こえてきている。

 しかも、複数の。

 

ケンヤ「何だ?この声。どっから………!?」

ゲイル「頭に直接響いてるみたいだ。」

レイト「リムル、これって…………。」

リムル「強力な念話…………いや、テレパシーか。」

シズ「皆、気をつけて。」

 

 俺たちは、周囲を見渡し続ける。

 すると。

 

???「つまらぬぞ、客人よ。もっと怖がれ。もっと怯えよ。」

クロエ「あ…………。」

アリス「ん…………。」

???「良いね、良いね。もっと怖がってくれないとつまらない。」

 

 その声は、そう言う。

 俺とリムル、シズさんは、その声に呼びかける。

 

リムル「ここに住んでる精霊さんかな?」

レイト「俺たちは、上位精霊に用があるんだ。」

シズ「出来たら、邪魔しないで、案内して欲しいな。」

 

 俺、リムル、シズさんの言葉に、その声は笑う。

 

???「アハハハハ…………!面白い事言うね。良いよ、良いよ。教えてあげる。」

リムル「おっ、案外あっさり。」

???「で、も、ね。その前に………。」

レイト「その前に…………何だ?」

クロエ「あっ…………先生、レイトさん、シズ先生。あれ…………。」

 

 クロエはそう言って、前を指さす。

 すると、光が出てきて、周囲を照らす。

 俺たちは、目を守る。

 すぐに光が弱まり、俺たちは前を見る。

 すると、光の一本道が生まれていた。

 

リムル「どうやら、お誘いの様だな。」

レイト「だな。行くしかないよな。」

シズ「そうね。皆、私たちから離れないでね。」

 

 俺たちは、その光の道を進んでいく。

 しばらく進むと、途中で道が途切れていた。

 

リムル「ん?行き止まりだぞ。」

レイト「本当だ。」

???「慌てない、慌てない。迷宮創造(ちいさなせかい)。」

 

 その声と共に、周囲に光が照らされ、部屋が出来る。

 それを見て、子供達は周囲を見渡す。

 

???「フフフフ…………どう?凄いでしょ。」

ケンヤ「すっげ〜。」

レイト「リムル、あれ。」

リムル「ん。」

 

 ケンヤが感嘆の声を出す中、俺とリムルは前を見ていた。

 そこには、ゴーレムが三体居た。

 

???「さあ。試練の時間だよ。」

 

 その声がそう言うと、三体のゴーレムが動き出し、目を赤く光らせる。

 それにしても、怪しい奴って、目が赤く光るよな。

 

リムル「おい。試練って、こいつらを倒せば良いのか?」

???「ピンポ〜ン。その通り。」

 

 どうやら、試練は意外と簡単そうだな。

 俺は、そう思いながら、腰にキメラドライバーを装着する。

 すると、嵐牙が前に出る。

 

嵐牙「我が行きましょうか?」

リムル「いや。お前は、こいつらを守っててくれ。俺に何かあったら、こいつらを連れて逃げろ。」

シズ「スライムさん。私も行って良い?」

リムル「シズさん?」

レイト「俺も行こう。三体を1人で相手するのは、辛いだろ?」

リムル「…………分かった。無理すんなよ。」

レイト「分かってる。」

 

 巨大化した嵐牙の足に、子供達が行く。

 俺、リムル、シズさんは、前に出る。

 

???「おやおや〜?おやややや〜?三体を1人ずつでやるの?自信過剰は危ないよ。」

 

 その声は、そんな感じに煽る。

 まあ、放っておくか。

 俺はすぐに、科学者に解析鑑定を頼む。

 

レイト『科学者。解析鑑定。』

科学者『解。全身が魔鋼で作られた魔人形(ゴーレム)です。』

レイト『なるほど…………。』

 

 まあ、ダイモンで行ってみるか。

 ただ、あのゴーレムの魔素エネルギー量が凄まじいな。

 あまり油断は出来ないな。

 すると、三体のゴーレムが動き出し、俺たちに向かってパンチをする。

 

リムル「わっ!」

レイト「下がるぞ!」

シズ「ええ!」

 

 俺たちは、すぐに躱す。

 そのパンチは、凄まじい威力で、殺す気満々な感じだった。

 

リムル「おいおい!殺しにかかってるじゃねぇか!どこが試練だよ!」

レイト「落ち着け。」

シズ「確かに…………。」

???「その通り。油断してると死んじゃうよ。勝ってるっかな?勝ってるっかな?」

 

 なんか、バカにされてるような…………。

 俺たちは、パンチの第二波が来たので、すぐに躱す。

 まあ良い。

 変身するか。

 俺は、トライキメラバイスタンプを取り出して、シズさんは、腰にアークルを出現させる。

 そして、俺はバイスタンプを起動する。

 

トライキメラ!

 

 俺は、トライキメラバイスタンプを、キメラドライバーに装填する。

 

オク!サイ!ムカ!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

オク!サイ!ムカ!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

 

 すると、俺の周辺にタコ、クロサイ、オオムカデが現れる。

 シズさんは、クウガの変身ポーズを取る。

 そして、俺とシズさんは叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

 そう言って、俺はバイスタンプを倒し、シズさんはアークルを操作する。

 すると、三体の生物が砕け散り、俺の体にまとわりつく。

 

スクランブル!

オクトパス!クロサイ!オオムカデ!仮面ライダーダイモン!ダイモン!ダイモン!

 

 砕け散った破片が、ギフの棺の様な形状に変化して、俺は、仮面ライダーダイモンへと変身する。

 仮面ライダーダイモンへと初変身したので、やっぱり、あのセリフを言っておかないと。

 

レイト「Great Power!」

リムル「…………何言ってんだ?」

レイト「いや…………ちょっとテンションが上がっちゃってさ…………。」

 

 あれ、滑った?

 まあ良いか。

 シズさんも、仮面ライダークウガ・マイティフォームに変身する。

 俺たちは、身構える。

 すると、リムルは聞こえてくる声に言う。

 

リムル「おい。今のうちに謝るなら、許してやる。だが、そうしないなら、こいつらを壊すけど、良いんだな?」

???「アハハハハ…………!面白い!良いよ。良いともさ。やってごらんよ。」

レイト「後悔すんなよ。リムル、シズさん!行くぞ!」

シズ「うん。」

 

 俺たちは、それぞれのゴーレムに向かって駆け出す。

 ゴーレムは、パンチを繰り出すが、俺はそれを受け止め、逆に腕をもぎ取る。

 シズさんも、パンチを躱して、攻撃する。

 リムルは、操糸妖縛陣を使って、ゴーレムの動きを止める。

 

???「なっ…………あたしの精霊の守護像(エレメンタルコロッサス)達が!」

リムル「お別れの挨拶を言っときな。」

レイト「ジャッジを下そう。」

シズ「フッ!」

リムル「黒炎獄(ヘルフレア)!」

 

 リムルは黒炎獄を放ち、シズさんはマイティキックの体勢を取る。

 俺は、トライキメラバイスタンプを倒して、もう一回倒す。

 

オクトパスエッジ!

 

レイト「ハァァァァ!!」

シズ「でやぁぁぁ!!」

 

 俺とシズさんのライダーキックが、ゴーレムに命中する。

 シズさんの場合は、足に炎を纏ったキックで、俺の場合は、左足にタコの足を模したエフェクトと共に蹴りを放ち、蛸足でゴーレムを包み込む様に攻撃する。

 俺とシズさんのキックを喰らったゴーレムは、爆発する。

 リムルの黒炎獄を喰らったゴーレムは、そのまま消滅する。

 

???「ウ…………嘘だ!そんな…………たった一撃で?」

 

 その声は、驚いていた。

 リムルの方には、何も残っておらず、俺とシズさんの方は、残骸が残っていた。

 

リムル「まっ、こんなもんだ。」

レイト「ざっとこんなもんかな?」

シズ「お疲れ様、2人とも。」

 

 俺とシズさんは、変身解除する。

 すると、子供達がやって来る。

 

ケンヤ「リムル先生もシズ先生もレイトさんもすっげ〜!」

クロエ「うん!うん!」

ゲイル「リムル先生も、レイトさんも、シズ先生と同じくらい強いんだね!」

アリス「あのくらい当然よ!」

レイト「アリス君?何で君が誇らしげなの?」

リョウタ「シズ先生がクウガになるなんて…………。」

シズ「私も、なれるなんて思わなかったよ。」

 

 そんなふうに、和気藹々とした空気が流れる。

 さてと。

 

リムル「さてと…………。」

子供達「ん?」

レイト「そこに居るんだろ?ライダーキックを喰らいたくなかったら、さっさと出てこいよ。」

リムル「ああ。隠れている場所はお見通しなんだぜ。」

???「はい!はいはいはいはい…………!」

 

 すると、空間が歪んで、黄色い光が現れる。

 その光は、高速で移動したと思ったら、俺とリムルの前で止まった。

 

???「たった今、恥ずかしながら、呼ばれてやって参りました!」

 

 それは、小さな妖精だった。

 

ゲイル「…………妖精?」

クロエ「可愛い。」

リムル「お前は?」

???「ジャジャ〜ン!我こそは偉大なるじゅ…………げっ!」

 

 その妖精は、何かを言おうとしたが、舌を噛んだ。

 

クロエ「噛んだ。」

アリス「痛そうね。」

ゲイル「テレパシーばっかりで、久しぶりに喋ったんじゃない?」

レイト「大丈夫か?」

???「らいじょうぶ。らいじょうぶ。」

 

 俺はそう声をかけるが、大丈夫そうだった。

 というより、こいつ、どこかで似たような奴を見た様な気がする。

 

ラミリス「我こそは、偉大なる十大魔王が1人、迷宮妖精のラミリスである!」

ケンヤ「あ?」

リムル「魔王?」

レイト「お前が?」

ラミリス「頭が高いぞ!跪くがい…………うぴよっ…………!」

 

 最後の方が、変な風になったのは、リムルがチョップしたからだ。

 

ラミリス「な…………何すんのよさ!?」

リムル「チョップ?」

ラミリス「そうじゃなくて!」

レイト「大体、何が魔王だよ。吐くならもう少しマシな嘘にしろ。」

リムル「レイトの言う通りだぞ。お前みたいなガキが、魔王になれる訳が無いだろ?」

 

 俺とリムルがそう言うと、ラミリスは周囲を飛び回る。

 

ラミリス「ガキ言うなや!ほんま失礼な奴ら!あたしが魔王以外の何だって言うのさ!」

「「…………アホの子?」」

ラミリス「誰がアホの子や!」

ゲイル「お馬鹿さん?」

ラミリス「そうそう。お馬鹿さんやで。………って、丁寧に言えば良いってもんやないわい!」

 

 ゲイル、結構な毒を吐くね。

 すると、リムルが唸りながら言う。

 

リムル「う〜ん。ミリムっていう魔王の友達がいるが、お前、そいつと比べようも無いほど弱そうだが?」

レイト「右に同じく。」

ラミリス「ふんぬ!バ〜カ!バカバカバカバカバカ〜!あんたらはバカじゃ〜!ハァ、ハァ、ハァ…………。」

 

 ラミリスは、そんな事を叫んだ事で、息を切らしていた。

 すぐに復活したが。

 

ラミリス「…………あのね、あんたら。ミリムって、理不尽魔王って呼ばれてるの。何でも力で解決しちゃいま〜すって。そんな理不尽の権化と可憐なあたしを比べるなんて、失礼なんてもんじゃないよ〜!そこんとこちゃんと理解してくれないと困るわけ!困るわけ!こ〜ま〜る〜わけ〜!!」

 

 ラミリスは俺たちの耳元でそう叫ぶ。

 うるせぇな。

 すると、ラミリスは呆れた表情で言ってくる。

 

ラミリス「あんた達もちょっとおかしいんじゃなくて?何なの?何であんな出鱈目な技使えんのよ?ふぅ〜!無茶しないで欲しい訳!あんた達、ほんとにミリムと知り合いなの?」

レイト「つい最近、友達になった。」

ラミリス「ふ〜ん。」

 

 俺の言葉にそう言うラミリス。

 すると、何かに気付いたのか、声を大きくする。

 

ラミリス「ちょっと待って。あんた達、もしかして、ジュラの大森林で新しく盟主になったっていうスライムとキメラなんじゃ?」

リムル「そうだけど。」

レイト「よく分かったな。」

ラミリス「ああっ………やっぱり!」

 

 どうやら、魔王間でも、俺たちの事は知れ渡っているみたいだな。

 という事は、こいつが魔王なのは、間違いないという事か。

 すると、突然思い出した。

 そうだ。

 こいつ、ミリムの記憶を見た時に、赤髪の男とミリムが戦った際に、2人を仲裁した精霊女王と似ている。

 リムルと子供達が話しているのを見ながらそう考えていると。

 

ラミリス「ちょっと!あたしの事忘れてない!?」

リムル「悪い悪い。」

レイト「それで…………何で俺たちの事を知ってるんだ?」

ラミリス「ミリムの奴がちょ〜久々にやって来て、マブダチが出来たって自慢しやがったの!鼻で笑ってやったのに、ほんとだったなんて!」

 

 ミリムが来たという事は、やはり、ラミリスは魔王という事だな。

 外見からしたら、そうは見えないが。

 すると、ラミリスが俺たちを睨む。

 

ラミリス「あんた達、その疑いの眼差しは何?あたしが魔王だって信じなさいよね!」

 

 疑ってたのがバレてたか。

 こうして、ラミリスという魔王と出会い、話をする事になったのだった。




今回はここまでです。
ラミリスが登場しました。
そして、レイトが仮面ライダーダイモンに変身しました。
やっぱり、アヅマのあのセリフは言わせたかったので。
ダイモンに変身した事で、ギフの瞳の力を使う事が出来るスキルも獲得しました。
ただ、そのスキルは、今は使いません。
次回は、子供達に上位精霊を宿らせる話になります。
昨日から、『劇場版転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』が公開開始しましたね。
私は昨日見ました。
良い映画でした。
この小説でも、電王編の直後に、紅蓮の絆編のエピソードをやろうかなと思います。
まあ、かなり先になると思いますが。
シズさんが変身するクウガは、マイティフォームとライジングフォーム、アメイジングマイティ、アルティメットになる事が出来ます。
あと、レイトは、父親が研究していた事を思い出せずにいます。
どういう理由なのかは、いずれ明かされます。
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第21話 救われる魂

 俺たちは、ラミリスに話を聞くついでに、休憩を取る事にした。

 子供達が駆け回る中、ラミリスは、チョコチップクッキーを食べていた。

 

ラミリス「美味しい!うん!美味し〜い!」

 

 ラミリスは、美味しいと言いながら、チョコチップクッキーを食べていた。

 ていうより、よく食べるな。

 そんな小さな体で、どこに行くんだ?

 そう思う中、ラミリスは口を開く。

 

ラミリス「殺すつもりも、怪我させるつもりもなかったのよさ。」

リムル「本当かよ?」

ラミリス「本当だって。ビビらせて、ちょっと楽しんで、その後、颯爽と助けて、尊敬される予定だったの!」

レイト「何だそれ?マッチポンプじゃねぇか。」

ラミリス「自作自演って奴?なのに、精霊の守護像(エレメンタルコロッサス)を壊しちゃうなんて。拾ってきたおもちゃいじくって、や〜っと完成させたのに!」

シズ「それは、仕方ないんじゃないかな………。」

リムル「やらなきゃやられると思ったんだから。」

 

 まあ、状況的には仕方ないだろ。

 というより、尊敬されるためにマッチポンプを行うなよ。

 ラミリスは、言葉を続ける。

 

ラミリス「大体ね…………アレはすっごい高性能だったんだよ!」

リムル「うっ…………。」

ラミリス「地の精霊で重量を操作して、水の精霊で関節を動かし、火の精霊で動力を発生させ、風の精霊で熱を調整する元素の集大成!精霊工学の粋を集めて作ったのに!」

レイト「精霊工学?」

 

 その単語には、聞き覚えがある。

 そう。

 武装国家ドワルゴンに行った時に、カイジンが言っていたのだ。

 功を焦ったベスターが進めていた、エルフとドワーフが共同で作成していた魔装兵計画という物がある。

 

レイト「それって…………ドワルゴンでエルフとドワーフが共同開発しようとしてた魔装兵って奴だよな?」

ラミリス「ん……………ピンポン!ピンポ〜ン!よく知ってるね。」

シズ「そうなの?」

リムル「ドワルゴンで、そんな事をしていたのを聞いたんだよ。」

ラミリス「あの計画は、精霊魔導核っていう心臓部を作れなくて失敗したんだよ。そもそもね、通常の鋼材で作ったって、精霊力に耐えられるはずないのにね。暴走して壊れちゃった外殻が捨ててあったから、持って帰って復元したの!もしかして、あたしって天才?すごく無い?すごく無〜い?」

 

 そう言って、ラミリスは俺たちにドヤ顔を向けてくる。

 うざいが、ベスター達が失敗した研究を、自己流で完成させたのだ。

 凄いと思わざるを得ない。

 

リムル「よし、凄いのは分かった。」

ラミリス「ん?」

レイト「少し、頼みがあるんだが…………。」

ラミリス「はあ………頼み?何であたしがあんた達の言う事を…………。」

 

 そんな風に宣うので、リムルは黒炎獄(ヘルフレア)を、俺はトライキメラバイスタンプを構える。

 

ラミリス「聞く聞く!聞いてあげても良い気がしてきたのでありま〜す!!」

リムル「素直なのは良い事だ。」

シズ「あんまり、脅迫はしないほうが良いんじゃないのかな……………?」

レイト「それは言わないでくれ。」

 

 シズさん、それは言わないで。

 良心が傷つくから!

 

リムル「もちろん、無料とは言わない。」

ラミリス「あ?」

レイト「精霊の守護像を壊したお詫びと言っちゃあ何だが、俺とリムルで、1体ずつ、新しい魔人形(ゴーレム)を用意するよ。」

ラミリス「………………早く話しなさいよ。」

 

 俺とリムルの言葉に、ラミリスは顔を輝かせる。

 まあ、壊したの、俺たちだしな。

 それくらいはしてやらないと。

 俺たちは、子供達の事情を、何も隠す事なく、全てを説明した。

 体内のエネルギーを制御する為に、上位精霊を宿らせたい事。

 だから、精霊の棲家に行きたいのだと。

 それを聞いたラミリスは。

 

ラミリス「なるほどね…………皆、苦労してるんだね。」

シズ「という訳で…………精霊女王に紹介して欲しいの。」

ラミリス「ん?あ〜言ってなかったっけ。あたしだよ。」

レイト「えっ?」

ラミリス「だから、精霊女王、あたしの事だよ。」

 

 シズさんの言葉に反応したラミリスは、そう言う。

 やっぱりか…………。

 以前見たミリムの記憶に出た精霊女王とこいつの雰囲気が、似てたからな。

 すると、リムルが声を出す。

 

リムル「冗談言ってる場合じゃ………。」

ラミリス「ブブ〜!冗談じゃありませ〜ん!本当です〜!」

リムル「あのね、君。なんで魔王が精霊の女王やってるんだよ。」

 

 リムルがそう言うと、ラミリスは手に持っていたチョコチップクッキーを、リムルに投げつける。

 

ラミリス「また、ブブ〜!逆で〜す!」

シズ「逆?」

レイト「というと?」

ラミリス「精霊の女王が堕落して、魔王になっちゃったんです。」

リムル「自分で堕落したって言うか?」

ラミリス「だって、堕落しちゃったんだもん。堕ちるのって…………簡単よね。ふっ。」

レイト「何格好つけてんだ。」

 

 なるほどな。

 多分、ミリムと赤髪の男性との戦いを止めた時に、堕落したんだろうな。

 すると、ラミリスはとんでもない事を言う。

 

ラミリス「あっ、そういえば。あいつも堕落したんだった。」

リムル「あいつ?」

ラミリス「レオンちゃん?」

シズ「……………ッ!?」

 

 その名前を聞いた途端、シズさんは、顔を顰めた。

 そう。

 魔王、レオン・クロムウェルの事だろう。

 ラミリスは、話し続ける。

 

ラミリス「あいつさ、何か調べ物があったみたいで、大昔の上位精霊を呼び寄せてさ、契約結んだんだよね。びっくりだよね。で、仕方ないから、精霊女王のあたしは、レオンちゃんを勇者と認定して、精霊の加護を授けたって訳。」

リムル「ちょっと待て。何で勇者に認定した奴が、魔王になってんだ?」

ラミリス「だから、堕落したんじゃないの?もしかして、あたしを真似たのかもよ?」

 

 魔王って、堕落してなる物なのか?

 まあ、立場にもよるか。

 シズさんの方をチラリと見るが、何とか落ち着いている様だった。

 リムルは、シズさんに話しかける。

 

リムル「シズさん?」

シズ「…………大丈夫。魔王レオンの事も気になるけど、まずは子供達だよね。」

レイト「ああ。」

 

 どうやら、大丈夫そうだな。

 ただ、レオンへの憎しみで、究極の闇と結びつく事にならないと良いんだが。

 すると、ラミリスが思い出したかの様に言う。

 

ラミリス「…………そういや、レオンちゃん。無茶な事も言ってたな。」

リムル「ん?」

ラミリス「異世界から、特定の人物を召喚してくれって。」

レイト「そんな事出来るのか?」

ラミリス「無理に決まってんのにね。バッカじゃん!泣きそうな顔してたね。いや、あれは泣いてた。そう…………泣いてたと言っても過言では無い!泣き虫のくせに生意気なんだよ!バ〜カ!ワンパンだよ、ワンパン!!」

 

 そう言って、ラミリスはシャドーボクシングをする。

 どうやら、魔王レオンは、俺たちの予想以上に厄介そうだ。

 でも、ラミリスがもし、ミリムと同じタイミングで魔王になっているのなら、ミリムと同じく、最古の魔王という事になる。

 まあ、見た目はアレだが。

 

ラミリス「んっ…………ちょっとあんた達、今、とっても失礼な事考えてない?」

リムル「いや、全く。」

レイト「考えてないぞ。」

シズ「アハハハ……………。」

 

 ラミリスは、俺とリムルが思った事に勘付いたのか、そう言ってきて、俺たちは惚ける。

 それを見ていたシズさんは、苦笑する。

 だが、シズさんはすぐに真面目な表情になって、ラミリスに聞く。

 

シズ「それで…………精霊の棲家に案内してくれるの?」

ラミリス「ん…………ああ…………。」

 

 シズさんの言葉を聞いたラミリスは、宙に浮く。

 そして、真面目な顔で言ってくる。

 

ラミリス「……………あたしはね、魔王であると同時に、聖なる者の導き手。迷宮妖精であり、精霊女王でもあったの。レオンちゃんにそうしたように、勇者に精霊の加護を授ける役目も担ってるんだよ。だから、安心するが良いさ。公平だからね、あたしは。あたしが…………あたしこそが、世界のバランスを保つ者なのだよ。」

 

 すると、周囲に様々な妖精が現れ、笑う。

 俺たちは、頷く。

 

ラミリス「良いよ。召喚に協力してあげる。凄い精霊を呼び出すと良いさ。」

 

 こうして、ラミリスが協力してくれる事になった。

 俺たちは、子供達を起こして、移動する。

 その間、トレイニーの事が話題になった。

 

ラミリス「トレイニー?へぇ〜あの子達も元気にしてるんだ。昔は小さくて可愛い精霊だったんだよ。」

リムル「あれ?トレイニーさんは、今の精霊女王とは接点ないって…………。」

ラミリス「あ〜それね。あたしは死んで生まれ変わっても、前世の記憶を残してるからね。」

リムル「ん?」

ラミリス「あの子達、その事知らないんじゃ無いかな…………。ずっと昔に逸れて、それっきりだったし…………。また今度、遊びに来てって伝えてよ。」

リムル「分かった。」

ラミリス「楽しみだな〜。」

 

 そんな風に話していた。

 ていうより、トレイニー達とラミリスって、接点があったんだな。

 すると、シズさんが話しかける。

 

シズ「ねぇ、キメラ君。」

レイト「ん?」

シズ「精霊の棲家の入り口に着く前に、事故って言ってたけど、どういう事なの?」

レイト「ああ…………。」

リムル「レイトの事を話してたのか?」

レイト「まあな。…………というより、その時の記憶が朧げなんだよな。」

シズ「え?」

レイト「幼い頃に、父さんの研究施設に行った時に、事故に巻き込まれたのは覚えてるんだよ。でも、何があったのかは、どうも思い出せないんだよ。」

リムル「何で?」

レイト「まあ、幼かったからな。無理もないだろ。」

 

 俺は、そう答える。

 どういう訳か、そこだけ思い出せないのは引っかかるんだよな。

 まあ、そんな事より、今は子供達の方だ。

 しばらく歩き続けると、目的地に到着した様だ。

 

子供達「ああ…………!」

リムル「ここが…………。」

ラミリス「迷宮の最深部。精霊の棲家。」

 

 ここが、精霊の棲家か。

 少し、ヴェルドラの洞窟に似てるよな。

 自然エネルギーが満ち溢れているな。

 シズさんは、ラミリスに聞く。

 

シズ「ここに、上位精霊が居るんだよね?」

ラミリス「居るけど、上位精霊には自我があってね。呼び出しに応じてくれるかは、気分次第だよ。」

ケンヤ「来てくれなかったらどうするの?」

ラミリス「エネルギーを切り取って、新たな上位精霊を生み出せば良いんだよ。」

リョウタ「生み出す?」

レイト「なるほど………呼んでも応じてくれないのなら、新しく生み出せって事か。」

ラミリス「そっ。」

 

 なるほどね…………。

 それじゃあ、俺は難しいな。

 俺は、そんな事を出来る技量は持ってないし。

 悪いが、リムルに任せるとしよう。

 

リムル「皆。」

ケンヤ「う…………うん。」

リョウタ「大丈夫です。」

クロエ「先生。」

アリス「へ…………平気に決まってるじゃない。」

ゲイル「頑張ります!」

嵐牙「ガウッ!その意気だ!」

シズ「スライムさん。お願い。」

リムル「ああ。ケンヤ!リョウタ!ゲイル!アリス!クロエ!やるぞ!」

子供達「はい!」

 

 それを見たラミリスは、先に頂上へと先行していく。

 俺たちは、頂上へと向かっていく。

 頂上付近に着くと、ラミリスが口を開く。

 

ラミリス「良いわね?あそこで、精霊に対して呼びかけるのよ。」

リムル「何を?」

ラミリス「何でも良いのよ。助けて〜でも、遊ぼうでもね。」

レイト「そんな大雑把で良いのか…………?」

ラミリス「それで良いのよ。興味を持った精霊がやって来てくれたら、成功なの。」

 

 ラミリスがそう言うと、リョウタは不安そうな声を出す。

 

リョウタ「来てくれるかな…………。おっ!?」

ケンヤ「来てくれるさ!」

リョウタ「う…………うん。」

ケンヤ「シズ先生!来てくれるよね?」

クロエ「来てくれる?」

リムル「大丈夫だ。最悪の場合…………悪魔でもなんでも従えてやる。」

ラミリス「ちょっとあんた、邪悪な顔してるわよ。」

シズ「スライムさん…………。」

レイト「リムル………………。」

 

 リムルが、邪悪な笑みを浮かべながらそう言うと、ラミリスが突っ込み、俺とシズさんは呆れ声を出す。

 気を取り直して、リムルが口を開く。

 

リムル「さあ、誰から行く?」

 

 リムルがそう言う中、ゲイルが行くと言った。

 リムル、ゲイル、ラミリス、ついでに俺とシズさんは、頂上部分の円形の床の方に行く。

 

ゲイル「先生…………自分に何かあったら、あいつらを頼みます。」

 

 ゲイルの言葉に、リムルはゲイルの肩に手を置く。

 ラミリスが前に出て、口を開く。

 

ラミリス「さあ、どんなのが呼ばれてくるか、楽しみだね。」

 

 ラミリスはそう言う。

 ゲイルは、前に出て。

 

ゲイル「じゃあ、祈ります。」

 

 そう言って、ゲイルは跪いて、祈りだす。

 ゲイルが祈りだして暫くすると、周囲に光が出てくる。

 あれが、精霊なのだろう。

 だが……………。

 

レイト(あれは…………上位精霊じゃなくて、下位の精霊だな。)

 

 恐らく、この下位精霊達は、ゲイルの祈りが切り取った大精霊の欠片なのだろう。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「ゲイル。そのまま祈ってろ。」

 

 そう言うと、リムルは周囲を漂っている精霊に向かって、手を伸ばす。

 すると、暴食者(グラトニー)が発動して、精霊が吸い込まれていく。

 

ラミリス「ちょ、ちょっと…………食べた?あんた、なんて事すんのよ!」

リムル「黙って見ててくれ。考えはある。」

シズ「スライムさん…………?」

 

 一体、何をしようとしているんだ?

 すると、科学者が答えてくれる。

 

科学者『解。個体名リムル=テンペストは、ユニークスキル、変質者を使い、下位精霊を上位精霊にする模様。』

レイト『なるほどな…………。』

 

 なるほど、そういう事か。

 それなら、大丈夫そうだな。

 リムルは、ゲイルの頭に手を置き、光が出てくる。

 解析鑑定してみると、ゲイルのエネルギーの暴走が止まり、制御出来ている。

 つまり、成功だな。

 

リムル「おし。もう良いぞ。よく頑張ったな。」

ゲイル「え…………。」

レイト「大丈夫だ。崩壊は止まっているよ。」

リムル「レイトの言うとおりだ。俺が保証してやる。」

ゲイル「はっ………リ、リムル先生………!ありがとうございます!」

シズ「スライムさん。ありがとうね。」

リムル「気にすんな。生徒を守るのは、当然だからな。」

ケンヤ「バンザ〜イ!」

リョウタ「おめでとう!」

アリス「やったわね!」

リムル「まだ喜ぶのは早いぞ。」

レイト「全員が成功してから、喜ぼう。」

 

 まずは、ゲイルが救われたな。

 そうして、子供達に精霊を宿らせる作業は、続いていく。

 次は、アリスの番だ。

 アリスが祈ると、精霊が現れ、リムルが取り込む。

 それを、ラミリスは複雑そうな表情で見ていた。

 まあ、当然だよな。

 リムルは、アリスと擬似上位精霊を統合させた。

 そして、リムルはアリスをお姫様抱っこする。

 

リムル「アリス、頑張ったな。もう大丈夫だぞ。」

アリス「フフッ。」

 

 アリスは、微笑んだと思ったら、リムルの頬にキスをする。

 大胆っすね。

 後ろの子供達をチラリと見ると、クロエが頬を膨らませていた。

 おやおや……………。

 次は、ケンヤの番だ。

 

ケンヤ「う〜し!次は俺の番だ!」

 

 ケンヤはそう言って、前に出る。

 すると、周囲に光が出てくる。

 

「「あ?」」

シズ「え?」

レイト「もう祈ったのか?」

ケンヤ「いや……………まだ祈ってないのに…………。」

 

 え?

 俺たちが戸惑う中、周囲を漂っていた光は、一箇所に集まっていく。

 

リムル「何か、来る?」

レイト「みたいだな…………。」

 

 すると、一箇所に集まった光は、人間の形になる。

 それは、黄色い髪の人物だった。

 

リムル「あ?」

???「よお〜元気かい?おいらは元気さ。」

ラミリス「あっ、あ〜!あんた、何しに人の家にやって来てんのよ!?」

???「ちょっとした気まぐれだよ。」

レイト「そちらさんは?」

ラミリス「こいつは…………。」

光の精霊「オッス!おいら、光の精霊。初めまして。そこの魔物に堕ちた邪悪な妖精と違って、純粋な光の精霊様だよ。」

ラミリス「誰が邪悪よ!」

 

 邪悪って……………。

 まあ、堕天して魔王になったから、あながち間違いではない…………のか?

 リムルは、呆然としているケンヤに話しかける。

 

リムル「ケンヤ。お前、光の上位精霊を召喚したみたいだぞ。」

ケンヤ「えっ、ええ〜!?」

光の精霊「ケンヤって言うのかい。じゃ、ケンちゃんだな。」

レイト「親しむの早すぎだろ…………。」

光の精霊「なんか、ケンちゃんに光る物を感じたんだよ。光だけに!」

ラミリス「うっ…………。」

 

 唐突にギャグをぶっこむなよ。

 それを聞いたケンヤとシズさんは。

 

ケンヤ「面白くねえよ。」

シズ「アハハハ……………。」

 

 ケンヤはそう言って、シズさんは苦笑する。

 そんなケンヤのつっこみに、光の精霊は、機嫌を悪くせずに言う。

 

光の精霊「…………ってな訳で、おいらがケンちゃんを助けてやるのだ。ケンちゃんが成長するまでは、おいらが保護するよ。もしかしたら、ケンちゃんも勇者になれるかもしれないからね。」

ケンヤ「勇者!?」

リョウタ「ケンちゃんが勇者…………。」

ゲイル「おお〜。」

 

 光の精霊の言葉に、子ども達は驚く。

 尤も、クロエはアリスに詰め寄っていたが。

 それを聞いたケンヤは、固まっていた。

 

ケンヤ「うええ……………。」

レイト「それはまた凄いな…………。」

シズ「そうだね。」

 

 俺たちも驚く中、光の上位精霊は、ケンヤの中に入って行った。

 

リムル「あっ。」

ラミリス「宿った。」

ケンヤ「えっ?」

レイト「あっさりすぎないか?」

ケンヤ「リムル先生…………?」

リムル「あ?ああ、大丈夫!計画通りだ!ハハハハハ!」

シズ「良かったね。」

ケンヤ「あっ…………えっと…………うん!」

 

 リムルとシズさんの言葉に、ケンヤは最初は戸惑ったが、すぐに頷く。

 次は、リョウタの番だ。

 リョウタが祈ると、青と緑の光が現れる。

 リムルはそれを取り込み、擬似上位精霊として統合して、リョウタとも統合させる。

 

レイト(あと1人か…………。)

 

 そう。

 あとは、クロエ・オベールだけだ。

 だが、クロエは顔を赤くして、もじもじしていた。

 

クロエ「リムル先生………あのね…………リムル先生………。」

リムル「あ?ん?」

クロエ「あのね、リムル先生…………あのね…………大好き。」

リムル「俺も好きだよ。」

クロエ「フフッ。」

レイト「おやおやリムルさんや。モテモテだな。アハハハハハハ!…………ぷげっ!?」

 

 クロエの告白にそう答えたリムルに、俺は揶揄った。

 すると、不意打ちのストレートをお腹にもらう。

 

レイト「不意打ちは無いだろ…………!?」

シズ「大丈夫?」

リムル「お前が変な事を言うからだ。さ、祈って。」

クロエ「うん。」

 

 クロエは、祈りだす。

 それを見ていると、とんでもないプレッシャーが、上空から来る。

 

リムル「あっ…………!?」

ラミリス「何!?」

シズ「これって…………!?」

レイト「凄まじいプレッシャー…………!?」

 

 俺たちが戸惑う中、目の前の地面が光る。

 

ラミリス「うわ!」

 

 ラミリスが怯むなんて、相当だぞ。

 すると、目の前に、1人の女性が現れる。

 

レイト『あれは…………精霊じゃない?』

科学者『解。上位精霊と同様の精神体(スピリチュアル・ボディー)です。異常なまでのエネルギーを検知。上限は測定不能です。』

 

 測定不能!?

 何でそんな奴が現れてるんだ!?

 俺たちが戸惑う中、その女性は、俺たちの方……………というよりは、リムルの方に向かって行って、キスをする。

 俺たちが、後ろに行った奴を見ると、そこには、違う女性の姿が映っていた。

 

シズ「あの人は……………!?」

 

 シズさんは、かなり驚愕していた。

 というより、アイツは何なんだ!?

 俺は念の為に、キメラドライバーを腰に装着する。

 その精霊ではない存在は、クロエの方に向かっていく。

 

ラミリス「待て!させないよ!あんたの好きにはさせない!!」

リムル「おい!突然何を…………!?」

ラミリス「うるさい!そいつはヤバいんだよ!見て分からないの?」

リムル「分かる訳ないだろ!」

レイト「何がヤバいんだよ!?」

ラミリス「話はあと………ああっ!?」

 

 俺とリムル、ラミリスがそう話す中、そいつは、かなりの至近距離までに近づいており、突然、光となって、クロエに吸い込まれていく。

 

ラミリス「宿っちゃった!もう手遅れだ………!やめやめ…………あたしは知らないからね?」

 

 一応、念の為に、クロエを解析鑑定する。

 膨大だったエネルギーは、綺麗さっぱりに消え失せていた。

 シズさんは、未だに呆然としていた。

 

レイト「シズさん?」

シズ「今のは…………あの人?」

レイト「あの人?」

シズ「うん…………私を救ってくれた勇者の姿が見えて…………。」

レイト「えっ?」

 

 それには、俺も驚いた。

 どうなってんだ?

 あのクロエ・オベールとは、一体、何者なんだ?

 

リムル「さっきのは何なんだ?」

ラミリス「分っかんないわよ!詳しくは分からない!でもね…………あれは多分、未来で生まれたのよ。」

リムル「は?」

ラミリス「未来からやって来た、精霊に似た何か!とても信じられないけど、その子に宿った事で、自分を生み出す土壌を作った?」

クロエ「あっ?」

 

 未来からやって来た、精霊に似た何かか…………。

 だが、あのシズさんを救った勇者とやらの姿が映ったのは、どういう事だ?

 それに、ラミリスも分からないとは…………。

 そんなラミリスは、気になる事を言った。

 

リムル「何言ってんだ?

ラミリス「ああ〜!本当に分からない!!でも、あれは大きな力を持ってた!未来であれが生まれたら、大変な事になる気がする!もしかしてあれは、時の大精霊の加護を受けて…………。」

 

 時の大精霊か…………。

 さっぱり分からないな。

 でも、過去のシズさんを救った勇者が、未来からやって来た精霊に似た何かに重なって見えるなんてな…………。

 どうやら、この世界は単純ではなく、色々と複雑なようだな。

 そう考える中、リムルはラミリスに話しかける。

 

リムル「良いじゃ無いか。全員成功したんだからさ。ありがとな。お前のおかげで、子ども達も助かったよ。」

クロエ「ありがとう。」

シズ「ありがとうございます。」

子供達「ありがとうございました!」

嵐牙「感謝する!」

ラミリス「そ…………そんなの良いってば〜!」

 

 ラミリスは照れながらそう言う。

 まあ、色々と謎が出来ちまったが、これで良しとするか。

 その後、俺とリムルは、壊してしまった精霊の守護像に代わる魔人形を用意したり、その魔人形に悪魔を召喚して、憑依させた。

 リムルはベレッタ、俺はフランと名付けた。

 ちなみに、フランにした理由は、118の元素の一つであるフランシウムから取った。

 それで、その魔人形達で、一悶着あった訳だが、それはまた、別の話。

 その後、俺たちは、イングラシア王国へと向かった。

 そして、リムルに連れられて、グランドマスターの神楽坂優樹の所に向かう。

 

リムル「おっす。」

優樹「ああ、リムルさん。そちらは…………?」

レイト「レイト。レイト=テンペストだ。よろしく頼む。」

優樹「貴方が…………!どうも、神楽坂優樹です。」

 

 俺と優樹は、握手をする。

 すると、優樹は頭を下げる。

 

優樹「本当に…………ありがとうございました。レイトさんには、シズさんを救ってもらって、リムルさんには、子供達を救ってもらって。」

リムル「いやいや。良いってことよ、良いってことよ。」

レイト「これで、子ども達はもう大丈夫だ。これで、普通の生活を送れるよな?」

優樹「ええ。一度捨てた子を各国が再び攫う事は無いでしょうし、それは、国際法に抵触しますし。我々自由組合を敵に回す事にもなりますから。」

 

 それなら良かった。

 少し、不安だったのだ。

 状態が安定化した子供達を、召喚した国が攫うのでは無いかと。

 まあ、大丈夫だな。

 すると、神楽坂優樹から、凄まじい悪意を感じる。

 神楽坂優樹の方を見ると、悪魔が見えた。

 触手などが生えた、クトゥルフ神話に出てきそうな悪魔が見えた。

 

レイト(あれは……………!?)

科学者『解。個体名、神楽坂優樹の悪魔だと推定。』

 

 なるほどな。

 どうやら、何かを企んでいるように思えるな。

 あの神楽坂優樹は。

 すると、リムルが声をかける。

 

リムル「レイト?どうした?」

レイト「いや、何でも無い。」

優樹「………………。」

 

 やべ、少し怪しまれたか?

 俺は、すぐに話題を振る。

 

レイト「子供達にも身分証を発行して、組合員にするのか?」

優樹「そうですね…………あの子達がそれを望むなら、それも良いかもしれないですね。しばらくは、自由学園でのびのびと勉強させて、未来を選べるようにしたいと思います。」

リムル「ああ、頼むよ。」

優樹「ご心配なく。ところで…………やっぱり、教えてくれないんですか?どうやって解決したのか。」

リムル「フフフン。それは秘密だ。知らなくても良い事もあるよ。教えない代わり…………という訳でも無いが、これで勘弁して欲しい〜。」

 

 リムルはそう言って力むと、リムルの体から、大量のシリウスが出てくる。

 なるほど、これを神楽坂優樹に渡してたのか。

 それを見た神楽坂優樹は。

 

優樹「分かりました!ありがとうございます!師匠!!」

レイト「アハハハ…………。」

 

 そう言って、神楽坂優樹は、頭を下げまくった。

 仮にもグランドマスターがそれで良いのか?

 だが、これは演技なのかと言われると、違うと思う。

 神楽坂優樹から見えた悪魔は、二面性を持っていた。

 善の一面と、悪の一面が。

 漫画に関しては、本気で喜んでいるように思える。

 俺たちは、自由学園へと向かった。

 子供達の方へと向かう中、俺はリムルに声をかける。

 

レイト「ちょっと良いか?」

リムル「どうした?」

レイト「少し、考え事があるんだ。先に行っててくれ。」

リムル「おう、分かった。すぐに来いよ。」

レイト「ああ。」

 

 そう言って、俺は違う場所にある空き地に向かう。

 俺は考え事をしていた。

 

レイト(……………父さんか。そういや、この世界に来てから、色々とあって、思い出す事が無かったな……………。)

 

 まあ、無理もない。

 異世界に転生して、仮面ライダーキマイラの力を手に入れ、キメラに転生して、そこで生きているのだ。

 しかも、色んな出来事があったよな。

 子供を庇って撥ねられて、死亡した俺は、キメラに転生して、リムルとヴェルドラに出会った。

 リムルがヴェルドラを取り込み、洞窟から出て、後のテンペストになるゴブリンの村で、後のリグルド達と出会った。

 襲撃して来た牙狼族を仲間にして、村は更に大きくなっていった。

 技術の確保の為に、武装国家ドワルゴンへと向かい、カイジン、ガルム、ドルド、ミルドの4人と出会い、仲間になった。

 その4人を連れてテンペストに戻ると、500匹のゴブリンがやって来て、仲間になって、リムルの運命の人であるシズさんや、エレン、カバル、ギドの3人とも出会った。

 シズさんの中に居たイフリートが暴走して、俺がシズさんからイフリートを切り離し、リムルが取り込んだ。

 シズさんを救う為に、移植者(ウツスモノ)を使い、シズさんの魂をバイスタンプに移した。

 豚頭族(オーク)に里を滅ぼされた大鬼族(オーガ)と出会い、勘違いから交戦するも、勘違いと分かってくれた。

 その後、大鬼族達に名前をつけた。

 しばらくして、蜥蜴人族(リザードマン)と共に、豚頭族と交戦して、魔王ゲルドと交戦して、倒した。

 そして、トレイニーさんの宣誓の下、ジュラの森大同盟が結ばれ、俺とリムルが盟主となった。

 それを聞いた武装国家ドワルゴンの王、ガゼル・ドワルゴがやって来て、戦い、認めてもらった。

 更に、俺たちが魔王ゲルドを倒した事で、興味を持った魔王ミリムがやって来て、マブダチとなった。

 その後、獣王国ユーラザニア、ブルムンド王国、ファルムス王国からやって来たフォビオ、フューズ、ヨウムと出会った。

 テンペストにフォビオを核としたカリュブディスが現れ、ミリムの手によって倒された後、魔王カリオンと出会った。

 カリュブディスとの戦いの後、シズさんの新しい肉体が出来て、シズさんは、クウガの力を手に入れた。

 精霊の棲家で、クロエ達やラミリスと出会った。

 そして、つい先ほど、神楽坂優樹とも出会った。

 前世の俺に、こんな話をしても、信じてくれないだろうな。

 勿論、父さんや母さんにも。

 そんな事を思うと、自然と口が開く。

 

レイト「母さん。俺、母さんの事はあんまり覚えていないけど、俺は元気にやってるよ。そして、俺を産んでくれて、ありがとう。父さん。母さんが亡くなって、辛かった筈なのに、俺を1人で育ててくれて、ありがとう。でも…………俺や母さんが居ないからって、変な研究に没頭して……………体を壊さないでくれよ…………。」

 

 そんな事を言っていると、自然と涙が出てくる。

 俺は、木の根元に座り込む。

 もしかしら、無意識のうちに、想いに蓋をしていたのかもしれない。

 もう父さんとは、二度と会えない事に。

 それを気にして、悲しみに押し潰されない様に。

 

レイト「父さん……………俺、異世界に来たけど、上手くやれてるよ…………。だから、父さんもあんまり無理しないでくれ…………。俺は、1人じゃない。だから……………!」

 

 そこまで言うと、涙が止まらなくなり、顔を膝に埋める。

 叶わないとしても、やっぱり、父さんにまた会いたいよ……………!

 まだ、育ててくれた感謝を伝えられていないんだから…………!

 俺は、しばらくそのままで居た。

 しばらくして、俺は泣き止み、立ち上がる。

 

レイト(父さん。俺は、リムル達と一緒に、この世界を生きていくよ。だから、父さんも元気に過ごしてくれよ。)

 

 そう思い、リムル達の方へと向かう。

 俺は、リムル達と共に、この世界を生き抜いていく。

 そう決意したのだった。

 一方、とある場所では、黒い服を着た何者かが、水晶でリムルの事を見ていた。

 

???「一生の不覚………。折角呼んで頂けたのに、自分の眷属に先を越されるとは………。次こそ…………次こそは必ずや…………!あなた様方なら、私を、世界の真理へと導いてくれる筈…………。クフフ…………クフフフフ…………!」

 

 その人物は、何を考えているのか。

 一方、それまた違う場所では。

 

???「興味深い者が呼んでくれたのに、まさか、自分の眷属に先を越されるなんてね。レイト=テンペスト…………ね。」

 

 そう言う人物は、白い髪に赤い瞳の女性だった。

 その人は、何を考えているのか。




今回はここまでです。
今回で、アニメ1期のエピソードは終わりです。
最後の方に、謎のキャラが登場していますが、誰でしょうね。
オリキャラのゴーレムであるフランは、とある原初の悪魔の眷属です。
そして、レイトは、ユウキの本性を察知しました。
次回は、アニメの二期のエピソードに入っていきます。
いよいよ、坂口日向が登場するのも、近くなってきました。
日向と戦うのは、レイトです。
公式が発表したので、言いますが、まさか、紅蓮の絆編で、原初の悪魔の1人であるヴィオレが登場するとは。
紅蓮の絆編は、この転キメでもやります。
ちなみに、その最後の方に出てきたキャラが、レイトに興味を持っていたのは、悪魔としての力に興味を示しているからです。
MOVIEバトルロワイヤルで登場する新たなオーバーデモンズは、これでも出そうかなと思います。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。


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第21.5話 救われるラミリス

 俺たちは、精霊の棲家へと向かい、そこで、精霊女王にして魔王であるラミリスと出会ったのだった。

 彼女の協力のもと、子供達に精霊を宿らせる事に成功して、体内の魔素を安定させる事に成功した。

 これでめでたしめでたし…………。

 

ラミリス「ちょっとアンタら!何か忘れてやいませんか!?」

 

 ラミリスはそう叫ぶ。

 子供達に精霊を宿らせた後、俺たちは帰ろうとした時に、ラミリスにそう言われた。

 

リムル「何か?」

レイト「何だ?」

ラミリス「ほら!約束のあれよ、あれ!アンタ達が壊した魔人形(ゴーレム)の代わりに、新しいのを用意してくれるって話!」

 

 俺たちが壊した…………?

 一瞬首を傾げそうになったが、思い出した。

 そうだ、精霊の守護像(エレメンタルコロッサス)を壊したな。

 それを思い出した俺とリムルは、ほぼ同じタイミングに言う。

 

「「あっ。」」

ラミリス「あっ!ってまさか、アンタ達、本当に!?」

リムル「嫌だなあ、ラミリス君!ちゃんと覚えていたとも!」

レイト「そうだ!忘れてなんかないぞ!」

 

 俺とリムルはそう言うが、心中は。

 

リムル(忘れてた!!)

レイト(そういや、そんな約束してたな!)

 

 俺は、(多分リムルも。)そんな事を忘れていたのだ。

 というより、クロエの事が気になったりと、そんな約束を忘れてしまう様な出来事があったんだから、しょうがないだろ。

 ちなみに、精霊の守護像のパーツに関しては、回収してある。

 ベスターと相談する為だ。

 一応、原理に関しては聞いてあるので、これを使えば、少し考えていたことも再現できるかもしれない。

 

リムル「ちょっと待ってくれよ…………。」

レイト「ゴーレムね…………。」

リムル「ええっと確か、こんな形だったような…………。」

レイト「こんな形だったかな…………。」

ラミリス「ああ……………!」

リムル「ほい!」

レイト「ほれ!」

ラミリス「これじゃな〜い!!」

 

 そう言って、俺とリムルが出したのは、リムルはマクロスFのヴァルキリー、俺は鎧武・スイカアームズだ。

 ちなみに、スイカアームズのサイズは、鎧武のフィギュアであるアームズチェンジシリーズで当時発売した物とほぼ同じだ。

 

ケンヤ「うっひゃ〜!かっけぇ!」

ゲイル「おお…………!」

リムル「何で?ゴーレムだろ?」

レイト「これもある意味ではゴーレムだと思うんだけどね…………。」

 

 まあ、スイカアームズは、ある意味でゴーレムと言える存在だろう。

 だって、自律稼働が出来るタイプもある訳だし。

 

ラミリス「ああ…………いや…………その二つはかっこいいけど…………そうじゃなくて!アンタ達が精霊の守護像を壊したから、あたしの守りが居なくなったのよ!ちゃんとあたしを守れる様な物を作ってくれるまで、絶対にここから出してあげないんだからね!」

リムル「ああ、大丈夫!俺、空間移動を覚えたから、脱出出来そうだわ!」

レイト「ちなみに、俺も。」

ラミリス「ああ、待って!待ってよ!何とかしてよ!!」

 

 俺とリムルが、そんな非情な事を言うと、ラミリスは泣きついてくる。

 ちなみに、俺とリムルが作った物は、子供達に渡している。

 シズさんも、興味深そうに見る。

 

リムル「ああ…………。」

レイト「とはいえ、精霊の守護像みたいな巨大なサイズの物を再現するのは、少し難しいぞ?」

ラミリス「大きくなくても!あたしを守れる様な強い奴なら、何でも良いんだよ〜!」

リムル「となると…………。」

レイト「そうだな…………。」

 

 俺たちは、考えた末に、ゴーレムのパーツを取り出す。

 両方とも、俺とリムルの魔素と魔鋼で作り出した物だ。

 ただ、リムルの場合、口から吐き出すという形になっていたのだが。

 それを見ていたラミリスは。

 

ラミリス「あ、アンタ達…………それを一体どこから出したのよ…………?って、もう良いわ…………。」

 

 ラミリスは、どこか呆れた雰囲気を見せながら言う。

 すると、今度は子供達が口を開く。

 

ゲイル「リムル先生!レイトさん!僕たちも研究したいです!」

アリス「私も!」

クロエ「こういうのが出来るのかな………?」

ケンヤ「リムル先生!レイト!俺を最初に乗せてくれよ!」

ショウタ「僕も乗りたい………!」

ラミリス「ダメ〜!私のゴーレムなんだから!」

子供達「ええ〜!?」

 

 子供達の発言に、ラミリスはそんな大人気ない事を言って、ブーイングを食らう。

 その後、シズさんが何とか宥めて、子供達は、嵐牙を枕にして、寝ていた。

 

レイト「ありがとうな、シズさん。」

シズ「大丈夫だよ。慣れてるから。」

 

 そうこうしているうちに、ゴーレムの本体を組み上げる事に成功した。

 

リムル「よし!完成だ!」

レイト「さてと。ラミリス、シズさん。少し離れててくれ。」

 

 俺の言葉に、ラミリスとシズさんは下がる。

 俺とリムルは、悪魔の召喚を行う。

 俺とリムルの前に、魔法陣が二つ出現する。

 

リムル「来い!上位悪魔(グレーターデーモン)!」

レイト「出てこい!上位悪魔(グレーターデーモン)!」

 

 俺とリムルは、そう叫ぶ。

 すると、悪魔が召喚されていく。

 リムルの前には、黒い服を着て、黒い翼を持つ悪魔が、俺の前には、白い服を着て、白い翼を持って、赤い瞳の悪魔が現れる。

 

「「「おお…………!」」」

シズ「あの黒い悪魔…………以前、会ったのに似てる様な……………。」

 

 シズさんが何か言う中、俺とリムルは人間態となる。

 すると、二体の悪魔が跪く。

 

悪魔1「お呼びでございますか?マスター。」

悪魔2「ご用件をお願いします。」

リムル「君たちに、この妖精の守護者となってもらいたい。」

レイト「この妖精はラミリス。こんなんだが、一応は魔王だ。」

ラミリス「こんなんって…………!?」

リムル「期間は100年。代価は俺の魔素と魔鋼で作った依代のゴーレムだ。契約期間を過ぎても、この体は好きに使ってもらって構わない。」

レイト「俺の方も、リムルとほぼ同じで、期間は100年。代価は俺の魔素と魔鋼で作った依代のゴーレムだ。契約期間を過ぎても、この体は好きに使って良いぞ。」

 

 俺とリムルがそう言うと、二体の悪魔は言う。

 

悪魔1「素晴らしい…………。」

悪魔2「願ってもないです。」

リムル「よし。じゃあ、俺が呼んだ奴は、ベレッタの名を授ける。」

レイト「俺が呼んだ奴は、フランの名を授ける。」

 

 俺とリムルが、その二体の悪魔に名付けをすると、その二体が光る。

 やっべぇ、久しぶりに名付けするから、魔素を吸い取られる事、すっかり忘れてたな。

 ちなみに、フランの名前の由来は、118の元素の一つであるフランシウムから取った。

 すると、近くの柱に置いてあったゴーレムが、二体の悪魔と融合する。

 光が収まると、悪魔が二体居た。

 

ラミリス「おお…………!」

 

 ラミリスはそんな声を出す。

 リムルが召喚したベレッタの方は、仮面を着けていたが、俺が召喚したフランの方は、所謂ロボっ娘みたいな見た目になっていた。

 

ベレッタ「我は魔将人形(アークドール)、ベレッタ。」

フラン「私は同じく魔将人形(アークドール)、フラン。」

ベレッタ「ラミリス様の守護者として、頂戴した命令を遂行する者です。」

フラン「これから、よろしくお願いします。ラミリス様。」

ラミリス「お、おう!お任せするよ、頼んだわね!頑張って…………威厳を保ってくれよ…………。」

 

 ベレッタとフランはそう言う。

 フランに関しては、顔は出ているが、まあ、大丈夫だろう。

 俺たちは、精霊の棲家の外に出た。

 それにしても、色々あったよな。

 この世界の故郷であるテンペストでは、皆は上手くやってるのかな?

 懐かしく感じるよ。

 一方、別の場所では。

 

???「ちょっと良いかしら?」

 

 白髪に赤い瞳の女性が、水晶を見ていると、更に2人ほど入ってくる。

 片方は、肩にもつかない短めの紫の髪をサイドテールにしている。

 もう片方は、金髪に青い瞳の女性だった。

 

???「何かしら?」

???「何………じゃないわよ!」

???「そうね。私たちも目をつけていたのに、どういう事かしら?」

???「私だって、まさか眷属に先を越されるなんて思ってないわよ!」

???「次に召喚されるのはボクだ!」

???「いや、私だ!」

???「あら?何言ってるの?私よ?」

 

 そんな風に、三人の女性が言い争う。

 そんな風になっている事に、レイトは気付く事はなかった。




今回はここまでです。
YouTubeで見る事が出来る、ラミリスとベレッタ、フランとの外交の話です。
ついでに、悪魔三人娘のやりとりも追加しました。
三人とも、レイトに興味を抱いています。
理由は、悪魔としての強い力に興味を持っている感じです。
まあ、三人が本格的に出るのは、かなり先になりますが。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
フランのイメージCVは、早見沙織か、古賀葵を考えています。
一部、黒と仮面の設定も反映しています。


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第22話 リムルとレイトの忙しい日々

 子供達に上位精霊を宿させた後、俺たちはテンペストに戻る。

 ちなみに、シズさんはイングラシア王国に残っている。

 後任の教師である、ティス先生の指導の為だ。

 俺も、空間移動のスキルを手に入れた。

 俺もしれっと、空属性の精霊を解析していたのだ。

 それで、俺たちはテンペストへと戻る。

 

リムル「本当に、色々あったよな。」

レイト「全くだ。」

 

 そう。

 この世界に、キメラという名のギフテリアンに転生して、色々あった。

 だが、これからも、色々あるだろう。

 それを、俺は楽しく過ごせれば、それで良いかなと思っている。

 色々と、懸念材料はあるのだが。

 他の魔王にテンペストの周辺国家、神楽坂優樹の動向などだ。

 アイツも、絶対に何か企んでそうだしな。

 それでも、俺は頑張っていくか。

 俺たちは、ユーラザニアからの資料を読む。

 獣王国ユーラザニアを治めている、獅子王(ビーストマスター)にして魔王のカリオンと話し合い、互いに敵対しないという、不可侵協定を結んだ。

 そんなカリオンから、使節団の派遣を提案され、ジュラ・テンペスト連邦国と、獣王国ユーラザニアから、お互いに使節団を派遣する事になった。

 団長は紅丸で、その補佐として、リグルを同行させる事に。

 今日は、その使節団が出発する日だ。

 俺たちは、使節団の見送りの為に、テンペストに戻っていた。

 それで、今は、リムルが作らせた和風の建物に居た。

 

レイト「……………リムル、何やってんだ?」

リムル「ふん!ふむ。まあまあだな。別に良いだろ?」

 

 リムルは、色々と作った壺や箱の形になっていた。

 すると、紫苑の声が聞こえてくる。

 

紫苑「リムル様、レイト様、お待たせしました。」

リムル「わあっ!」

朱菜「式典用のお召し物を、幾つか見繕って参りました。」

レイト「ありがとう。」

リムル「早速、試着してみようかな。」

 

 そう言って、リムルと俺は朱菜、紫苑、火煉の三人が持ってきた服を取り込む。

 まずは、十二単だ。

 

リムル「これはちょっと違うんじゃ無いかな?」

レイト「十二単って、動きにくいだろ。」

朱菜「それでは、こちらはどうでしょう?」

 

 そう言って、朱菜が服を渡す。

 それを取り込むと、今度は、西洋のお嬢様が着るようなドレスだった。

 

リムル「えっ!?これもどうなんだ?」

レイト「つうか、さっきから何で女物の服ばっかりなんだ?」

火煉「レイト様のこの服装…………ありですね。」

紫苑「私はこちらをお勧めします。」

 

 紫苑がそう言って、箱を二つ渡す。

 それを取り込むと、鎧甲冑だった。

 しかも、和風の。

 

リムル「んっ…………ああ…………?」

レイト「和風の鎧…………。」

紫苑「リムル様、レイト様!素敵です!」

朱菜「とてもお似合いです!」

火煉「はい!とっても!」

 

 なんか、着せ替え人形にされてる気がするのは、気のせいか?

 リムルが、スライム状態に戻りながら、呆れた声で言う。

 

リムル「あのなあ、朱菜、紫苑、火煉…………。今日は、もっときちんとかしこまった衣装の方が、いいんじゃ無いかなぁ?」

紫苑「きちんと…………。」

火煉「かしこまった衣装ですか?」

レイト「そうだぜ。テンペストの将来にとっても、大事な使節団だ。ちゃんと、紅丸達を送り出してやりたい。」

紫苑「なるほど。」

火煉「一理ありますね。」

朱菜「ありますよ。きちんとかしこまった衣装ですね。」

 

 そう言って、やっとまともな服装を着る事が出来た。

 俺たちは、使節団の方へと向かう。

 村の面子が話し合う中、俺、リムル、朱菜、紫苑、火煉の五人は、台の上に上がる。

 すると、周囲から歓声が上がる。

 

ゴブリン達「リムル様〜!レイト様〜!」

ゴブタ「さっすが、リムル様とレイト様っす!なっ!ゴブゾウ!」

ゴブゾウ「うん。」

ガビル「かっ、かっこいい!」

ヤシチ「ガビル様もかっけえっす!」

カクシン「然り!」

スケロウ「まあまあだな。」

嵐牙「我が主達よ!イケております!」

紫苑「皆の者!静まれ!」

嵐牙「ハッ!」

 

 俺とリムルを見て、歓声を上げる中、紫苑の声で、皆が静かになる。

 まずは、リムルが口を開く。

 

リムル「諸君、是非とも頑張ってきてくれたまえ。」

 

 それだけを言う。

 おい、流石に短すぎるだろ。

 

朱菜「……………それだけですか?」

リムル『なあ、短すぎたか!?』

レイト『流石に短すぎる。俺がある程度言うから、その後は、お前が言え。』

 

 そんな風に言うリムルに呆れながら、思念伝達で言って、今度は俺が口を開く。

 

レイト「…………このテンペストは、以前に比べて、豊かになった。それは、皆の協力があってこそだ。だが、まだ国としては経験不足と言える。ユーラザニアと友好関係を築ければ、向こうの長所をどんどんと取り入れていき、テンペストを更に発展させる事が出来るだろう。」

リムル「ただし、ユーラザニアを治めている魔王カリオンは、獅子王(ビーストマスター)の異名を持つ、バリバリの武闘派だ。『力こそ全て』とか、思ってるかもしれん。もし戦いになりそうだったら、すぐに帰ってこい。」

 

 リムルがそこまで言うと、俺にアイコンタクトを送る。

 分かったよ、俺がやるよ。

 そうアイコンタクトして、俺は言う。

 

レイト「今回の使節団派遣の目的は、戦いではなく、これからユーラザニアと気持ちよく付き合っていけるか、関係を断つか、それを確かめる為だ。テンペストの為とはいえ、我慢して付き合う必要はない。」

リムル「頼んだぞ。」

紅丸達「はっ。」

 

 俺とリムルがそう締めくくると、周囲から先ほどよりも大きな歓声が上がる。

 

ガビル「リムル様、レイト様!我輩、感動しました〜!」

リグルド「ぐっ…………うぐっ…………!」

 

 ガビルやリグルドといった面子が泣いている中、俺とリムルは、紅丸の方へと向かう。

 

リムル「本来は、俺かレイトのどちらかが出向くべきなんだろうけど…………。」

紅丸「いいえ。安全が確認されるまでは、魔王の領土への立ち入りは控えるべきかと。この目で魔王カリオンが、信用に足る人物がどうか、見極めて参ります。」

レイト「頼んだぞ。あと、絶対に喧嘩を売るんじゃないぞ?」

紅丸「心配無用です。」

 

 俺の言葉に、紅丸はそう答える。

 本当か?

 さっき、戦闘意欲が湧いてる笑顔が見えたんだけど。

 大丈夫だよな…………?

 俺がそう思う中、リムルが、リグルに声をかける。

 

リムル「リグル達も、頑張ってくれ。」

リグル「はい。見聞を広めて参ります。」

 

 リグルは、大丈夫そうだな。

 そして、出発の時になった。

 

紅丸「では、行って参ります!」

 

 その声と共に、第一回目の使節団が、ユーラザニアに向けて出発した。

 

ゴブタ「楽しんできて下さいっす〜!」

ガビル「いってらっしゃ〜い!」

ヤシチ達「頑張れ〜!」

朱菜「お兄様、お気をつけて!」

 

 これが、ユーラザニアへの最初の使節団の派遣という、記念すべき日だ。

 ここから、更に互いの国が成長する事だろう。

 そんな事を思いながら、使節団を見送った。

 そして、俺、リムル、火煉、紫苑は、ユーラザニアからの使節団の受け入れ準備の確認をしていた。

 ミルドの指導の下、ゲルドやグルドを中心として、迎賓館の作成を行なっていた。

 

リムル「うんうん!迎賓館の完成は、間に合いそうだな。」

レイト「それで、料理人の方はどうだ?」

紫苑「はい。朱菜様が指導しています。皆、物覚えも良く、順調です。」

火煉「迎賓館の接客係ですが、ベスター殿が、直々に指導してくれています。」

 

 そっか。

 ベスターって、元大臣だからな。

 礼儀作法はお手のものという事だな。

 

火煉「それと、武装国家ドワルゴン訪問の日程も決まりました。」

リムル「ああ。ガゼル王には、改めて、きちんとテンペストとの国交樹立の挨拶をしておかないとな。」

レイト「ああ。それに、暴風大妖渦(カリュブディス)の時のミリムについても、説明しておかないとな。」

 

 一応、あの場では、高出力の魔法兵器という感じで、ドルフさんは納得したが、絶対納得してないだろうしな。

 すると、風が吹いてくる。

 俺とリムルが前を向くと、トレイニーさんがやって来る。

 

リムル「トレイニーさん!」

トレイニー「ご機嫌よう、リムル様、レイト様。」

紫苑「どうしました?」

火煉「何かあったんですか?」

トレイニー「はい。ジュラの大森林に、獣王国ユーラザニアからの使節団が入りましたので、お知らせしようかと。」

レイト「来たか。」

 

 遂に来たか。

 どんな面子が来るんだろうな。

 

トレイニー「あと5日ほどで、このテンペストに到着すると思われます。」

リムル「知らせてくれて、ありがとう。」

トレイニー「このくらい、お安い御用です。それから、使節団より先に、彼らが到着しそうです。」

レイト「ヨウム達が到着するんだな。」

 

 そうか。

 ヨウム達も到着するのか。

 一方、ある場所では、ある姉妹が、木の実を収穫していた。

 

姉「もう帰るよ。暗くなっちゃう。」

妹「は〜い。ん?」

 

 すると、物音がして、キノコ型の魔物が、2人に近づく。

 

魔物「キノ。キノ。キノ。キノ〜。」

妹「可愛い!」

 

 だが、そのキノコ型の魔物が、突然姿を変える。

 

魔物「グアアアア…………!」

妹「きゃあ〜っ!」

???「動くな!」

 

 突然の豹変に、妹が悲鳴をあげると、男の声が聞こえてきて、その魔物を一刀両断する。

 無論、ヨウムだ。

 

妹「すごい…………!」

ロンメル「怪我は、ありませんか?」

姉「はっ、はい!ありがとうございます!」

妹「あの…………ありがとう。」

ヨウム「この辺りは、悪い魔物が出るから、気をつけなよ。」

妹「剣、かっこいい!」

ヨウム「だろ?この先のテンペストっつう、良い魔物の国で作ってもらったんだ。」

 

 現在、ヨウム達は、俺たちを友好的な魔物の集団だと各地を回って吹聴してくれている。

 ヨウム達も、頑張ってくれているな。

 それから、俺たちは忙しい日々を送る。

 そして、ユーラザニアの使節団の到着前日に、ヨウム達が到着した。

 その夜、俺とリムルは、ヨウム達に最近作った蒸留酒を振る舞い、風呂に入りながら話をすることにした。

 

ヨウム「はあ〜美味いっすね。」

カジル「これは美味ぇ。初めて飲んだぜ。」

ロンメル「ぷは〜。」

リムル「だろう?ブランデーって言うんだ。」

ヨウム「ぶらんでー…………ですか。」

レイト「明日、客が来るからな。特別に作ってみたんだよ。」

 

 ちなみに、蒸留酒の作り方に関しては、リムルの場合は大賢者、俺の場合は科学者が教えてくれた。

 日本で酒を作ると、密造酒という感じに捕まるしな。

 

ヨウム「なるほど、客。」

リムル「ああ。明日、魔王カリオンの使節団が到着するんだよ。」

「「「ブーッ!?」」」

 

 リムルがそう言うと、三人は俺とリムルに向けて、酒を吹き出す。

 

リムル「わざとやってんのか!?」

レイト「何で俺たちに向かって酒を吹くんだよ!?」

 

 俺とリムルがそう言う中、ヨウムが咳き込みながらも、口を開く。

 

ヨウム「ゲホッ………ゲホッ…………!魔王カリオンって、何だってそんな事に?」

レイト「話せば長くなるけど…………。」

 

 俺とリムルは、どうしてそうなったのかを説明する。

 それを聞いたヨウムは、納得していた。

 

ヨウム「なるほど…………。」

リムル「国交樹立のチャンスってわけだ。」

ヨウム「分かりました。にしても、魔王か…………。おっかない使節団なんだろうなぁ…………。」

レイト「どうだろうな。戦うのが目的じゃないからな。」

ヨウム「でも、不測の事態に備えて、紅丸さんを行かせたんだろ?向こうだって、同じように考えるんじゃねえのかな?」

 

 確かに。

 こちらが紅丸を行かせたように、向こうも強者を連れて来るかもしれないからな。

 特に、フォビオが言っていた、三獣士の残り2人が来るかもしれないし。

 

リムル「だとしても、関係ないな。下手に手を出して、チャンスを不意にしたくないし。」

ヨウム「まあ、確かに。」

 

 ヨウムはそう言って、酒を飲む。

 俺は、ヨウム達に声をかける。

 

レイト「ヨウム達も、使者相手に喧嘩を売るんじゃないぞ?」

ヨウム「おいおい、レイトの旦那!俺も手下どももそこまでバカじゃねえですって。なあ?」

カジル「全くだ。」

 

 ヨウムの質問に、カジルは頷く。

 ちなみに、ロンメルは酒に酔ったのか、顔が赤い。

 

リムル「なら良いが。」

レイト「そういや、白老が会いたがってたぞ。」

ヨウム「師匠が?」

レイト「ああ。何でも、腕が鈍ってないか、確かめたいってさ。」

カジル「うっ…………!」

ヨウム「一気に酔い、さめた。」

 

 ヨウム、悪いな。

 すると、ヨウムが声をかける。

 

ヨウム「レイトの旦那。」

レイト「どうした?」

ヨウム「実はよ…………なんか、姿が変わるようになったんだよ。」

レイト「姿が変わる?」

ヨウム「ああ。何か…………黄色の角で、赤い目の姿に。」

レイト「………………え?」

 

 それを聞いて、唖然となった。

 取り敢えず、白老の元に行かせて、その後に、色々と調べると、とんでも無い事が分かったのだ。

 そして、一夜明けて、俺たちは、ユーラザニアからの使節団を待つ。

 

リムル「来たか。」

レイト「だな。」

 

 すると、ユーラザニアからの使者が見えてきた。

 何と、馬車ならぬ、虎車がやって来る。

 すると、紫苑が口を開く。

 

紫苑「大した事ありませんね。リムル様とレイト様の威光を前にすれば、あの程度、ハッタリにもなりません。」

リムル「いやいやいや紫苑さん。大した事あるでしょうよ。」

紫苑「あの様に飾り立てても、戦闘では全く意味がありませんし。」

レイト「紫苑?今、戦闘は関係ないだろ。」

火煉「紫苑ったら…………。」

 

 俺、リムル、紫苑、火煉がその様に話す中、虎車は止まり、1人の女性が出て来る。

 

???「お初にお目にかかります。ジュラ・テンペスト連邦国の盟主、リムル=テンペスト殿にレイト=テンペスト殿。」

 

 そう言って、頭を下げるので、こちらも頭を下げる。

 その女性は、自己紹介をする。

 

アルビス「私は、黄蛇角(オウダカク)のアルビス。魔王カリオン様の三獣士の1人ですわ。」

 

 やっぱり、三獣士か。

 となると、もう1人も来てそうだが。

 すると、不機嫌気味な声がする。

 

???「ふざけるな。」

リムル「あ?」

 

 そんな声と共に、一番先頭にある虎車の扉が足で蹴り開かれる。

 

???「テンペストの盟主とは、どの様な魔物かと思って来てみれば、弱小なるスライムと、見た事のない魔物ではないか。我々をバカにするにも程がある。」

 

 もう1人も強そうだ。

 そいつは、白虎が擬人化したみたいな感じの人だった。

 まあ、見た事ないのも、当然だろうな。

 キメラというより、ヘルギフテリアンは、俺1人しか居ないわけだし。

 

アルビス「控えなさい、スフィア。あなたの振る舞いは、カリオン様の顔に泥を塗るのと同じ。」

スフィア「うるさいぞ、アルビス。俺に命令するな。そもそも、ドワーフはまだしも、人間などと…………矮小で小賢しく、卑怯な人間どもとつるむなど、魔物の風上にも置けぬわ。」

 

 それを聞いたヨウム達は、顔を顰める。

 無論、俺とリムルも。

 

リムル「随分な物言いだな。」

レイト「このヨウムは、俺たちの友人で、同じ師匠についた弟弟子でもあるんだ。」

スフィア「それがどうした。」

 

 俺とリムルの言葉に、スフィアという魔人はそう返す。

 どうやら、喧嘩を売っているみたいだな。

 なら。

 

リムル「なあ、ヨウム。」

レイト「お前もバカにされたままじゃ、悔しいだろ?」

ヨウム「へ?」

リムル「俺たちが許すから、ちょっと実力を見せてやったらどうだ?」

ヨウム「おいおい、旦那方!平和的に行くんじゃなかったのかよ!?」

レイト「手を出すつもりは無かったが、向こうが仕掛けて来るのなら、話は別だ。」

スフィア「ほう……………やるか?人間。」

 

 俺とリムルの言葉に、ヨウムはそう叫ぶ。

 俺が説明する中、スフィアは挑発をする。

 

ヨウム「あっ、いや、俺は…………。」

カジル「カシラ!やっちゃって下さいよ!舐められたままじゃあ、カッコつかないですぜ!」

ロンメル「お願いします、ヨウムさん!」

ヨウム「はぁ…………しょうがねえなあ。」

 

 ヨウムは、最初こそ乗り気では無かったが、カジル達の言葉に、やる気になったようだ。

 ヨウムは、剣を抜刀して、俺たちに声をかける。

 

ヨウム「旦那方。ちゃんと骨は拾って下さいよ。」

スフィア「ハッ!スライムとキメラとやらが骨を拾うだと?笑わせる。」

リムル「ああ。任せ…………ろ?」

レイト「紫苑さん?」

 

 すると、今まで黙っていた紫苑が、朱菜にリムルを預ける。

 

紫苑「黙って聞いていれば…………リムル様とレイト様への暴言の数々。我慢に我慢を重ねていましたが、どうやら、その必要は無かったようです!」

 

 紫苑はそう言って、スフィアの方へと向かう。

 

ヨウム「え?ちょっ、あっ、あの………。」

紫苑「あなたの相手は、私です。」

スフィア「ほう…………素手でやるというのか。面白い!」

 

 スフィアがそう言うと、駆け出し、紫苑に攻撃する。

 紫苑は、それを受け止める。

 そうして、紫苑とスフィアの戦いが始まる。

 その戦いは、森の方へと向かった。

 

リムル「大丈夫か?紫苑の奴。」

レイト「相手の土俵で戦うなんてな………。」

朱菜「大丈夫ですよ、リムル様、レイト様。紫苑はお兄様の次に強いのですよ。」

リムル「そ…………そうか。」

 

 大丈夫なら、良いんだが…………。

 すると、それを見ていたアルビスが口を開く。

 

アルビス「全く、しょうがありませんね、スフィアは。……………グルーシス。」

グルーシス「ん?」

アルビス「あなたがあの人間の相手をなさい。」

火煉「なら、アルビスとやら。あなたの相手は、私がしましょう。」

 

 アルビスが、グルーシスという魔人にそう言う中、火煉が前に出る。

 

レイト「火煉さん?」

火煉「少し、レイト様とリムル様への暴言に苛ついていましたが、ついでにあなたの実力を知りたくて。」

アルビス「やれやれ…………。良いですわよ。」

火煉「変身!」

 

 火煉は、既にベイルドライバーを装着していて、カブトバイスタンプを、アーキオーインジェクターに押印する。

 

Bane Up!』


破壊!(Break)世界!(Broke)奇々怪々!(Broken)

仮面ライダーベイル!

 

 火煉は、仮面ライダーベイルへと変身し、アルビスと戦う。

 一方、残されたグルーシスという魔人は。

 

グルーシス「げっ。いくら俺が獣王戦士団末席だからって、人間の相手なんて…………。」

 

 そうぼやくも、大きくジャンプして、ヨウムの前に立つ。

 

グルーシス「よっと。ハァ…………遊んでやるよ。人間。」

ヨウム「おう。よろしく…………な!変身!」

リムル「えっ!?」

 

 ヨウムは、そう言いながら、剣を地面にぶっ叩く。

 すると、ヨウムの姿が変わる。

 それは、仮面ライダーアギトだった。

 そして、ヨウムとグルーシスは戦う。

 

リムル「やるなぁ、ヨウムの奴。あのグルーシスという魔人と互角に戦ってるぞ。」

朱菜「はい。見事な戦いぶりです。」

リムル「白老の特訓に耐えただけの事はある!というより、何でヨウムが仮面ライダーになってんだ!?レイト、お前があいつにアギトの力を与えたのか!?」

レイト「俺だって、そんな事をした覚えはないぞ。」

 

 そう。

 俺だって、昨日知って驚いたのだ。

 まさか、白老の特訓でボロボロになるヨウムの為に、俺のキメラ細胞を埋め込んだ結果、アギトの力に結びつき、アギトに変身出来る様になるなんて、完全に想定外だ。

 どうやら、この世界は一筋縄ではないという事だな。

 

レイト「火煉は、大丈夫なのか?」

朱菜「大丈夫ですよ。火煉も、紫苑と同じ位には強いのですから。」

レイト「そうか…………。」

 

 こうして、紫苑VSスフィア、火煉VSアルビス、ヨウムVSグルーシスの戦いが始まってしまった。

 ユーラザニアからの使節団が到着して早々にだ。

 まあ、けしかけたのは、俺たちなのだが。




今回はここまでです。
ユーラザニアからの使節団が到着しました。
そして、ヨウムが仮面ライダーアギトに変身出来るようになっていました。
理由は、レイトのキメラ細胞が、アギトの力と結びつき、開花した感じです。
ちなみに、シズさんはしばらく登場しません。
何故なら、後任のティス先生の指導の為です。
次回は、ガゼル王に会うまでです。
ヨウムをアギトにした理由は、似合うからですね。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
ただ、リクエストに関しては、活動報告にて受け付けています。
ちなみに、これからやるファルムス王国との戦いで、ファルムス側のエピソードは、やらない予定です。
原作の転スラと、何ら変わらないので。


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第23話 獣王国との交易

 ユーラザニアからの使者が到着してすぐに、紫苑とスフィア、火煉とアルビス、ヨウムとグルーシスで戦いが始まった。

 3組共に、激しい戦いを繰り広げていた。

 本当に凄まじい。

 ヨウムも、グルーシスという魔人と互角に戦えているし、アギトの力を使いこなしているし、凄いな。

 一方、紫苑とスフィアの方は、二人は少し離れる。

 

スフィア「鬼人の力はそんな物か!?もっともっと俺を楽しませろ!」

紫苑「元よりそのつもりです。」

 

 紫苑がそう言うと、魔力を貯め始める。

 あれ、なんか、嫌な予感が…………。

 

紫苑「覚悟せよ!」

嵐牙「ぬっ、あれは!」

リムル「極大魔力弾!?」

レイト「おい、待て!ここら辺一帯を吹っ飛ばすつもりか!?」

紫苑「ウフフフフフッ…………!」

 

 俺とリムルがそう言うが、当の紫苑は、やばい笑みを浮かべていた。

 ダメだ、こっちの話が聞こえてない!

 

スフィア「おおっ…………!いいぞ、来やがれ!」

 

 っていうか、あのスフィアも受ける気満々だけど、あんな物を食らったら、ただじゃ済まないだろ!

 介入するべきだな。

 そう思い、キメラドライバーを腰に装着して、変身しようとする。

 

紫苑「食らえ…………!」

アルビス「それまで!」

 

 すると、火煉と戦っていた筈のアルビスが、紫苑とスフィアの動きを止める。

 ただ、アルビスの下半身が蛇の様になっていた。

 

アルビス「もう十分です。」

レイト(アレは?)

科学者『告。個体名アルビスの獣身化です。』

レイト(なるほどな…………。)

 

 アレが獣身化か。

 というより、俺たちは試されてたのか。

 

アルビス「この辺りに致しましょう。」

リムル「ふぅ……………。」

レイト「それで、俺たちは合格なのか?」

アルビス「ええ。」

グルーシス「ここまでだ。」

ヨウム「え?……………って、旦那方、これって……………。」

レイト「どうやら、俺たちは試されていたみたいだな。」

 

 グルーシスとヨウムの方も、戦闘を終え、火煉とヨウムは、変身解除する。

 すると、スフィアが口を開く。

 

スフィア「フッ。不満はない。大した強さだ。我らが対等に付き合うべき価値は十分にある。そう確信したぜ。ジュラ・テンペスト連邦国の盟主、リムル=テンペスト及びレイト=テンペストとその友人を軽んじる事は、カリオン様に対する不敬と思え。分かったな?」

一同「ハハッ!」

グルーシス「スフィア様の言うとおりだ。この俺とこれだけやり合える人間なんざ、滅多に居ない。」

ヨウム「フッ…………。嬉しいね。」

 

 グルーシスとヨウムは、そう言って握手をする。

 まあ、結果オーライだな。

 

リムル「到着早々どうなる事か思ったが…………。」

朱菜「丸く収まって良かったですね。」

火煉「ですね。」

レイト「ああ。……………だが、なんかとんでもない事を忘れてる様な…………。」

リムル「紫苑、お前も分かったな。」

 

 俺がそう言う中、リムルは紫苑に声をかける。

 だが、紫苑は涙目だった。

 

リムル「……………紫苑?」

紫苑「あの……………これ、どうしましょう?」

レイト「あ!」

 

 そうだ!

 紫苑は極大魔力弾を撃とうとして、止められたから……………!

 極大魔力弾は、かなり大きくなっていた。

 

リムル「うおお〜!!爆発寸前!!」

レイト「それ、消せないのか!?」

紫苑「無理です!気力が限界です!!」

アルビス「うう……………。」

蒼影「リムル様、レイト様。避難を。」

 

 アルビスさん、ドン引きしないで!

 仕方ないとはいえ、アンタが無理矢理止めたんだから!

 スフィアは、慌てながら紫苑に話しかける。

 

スフィア「お…………落ち着け!そっとだ!そ〜っとそれを上に向けるんだ…………!」

紫苑「うっ…………上…………!?うう………!」

スフィア「気合いだ!気合いで何とか…………!」

紫苑「ああ!無理かも!!」

 

 やばい!

 このままじゃいつ爆発してもおかしくない!

 

リムル「全く…………。しょうがねえな、紫苑は。」

朱菜「あっ…………!?」

 

 すると、リムルは朱菜の腕から飛び出して、人間態になり、紫苑に話しかける。

 

リムル「紫苑、撃て!」

レイト「リムル!?」

リムル「大丈夫だ。」

紫苑「ですが…………。」

リムル「俺を信じろ!」

紫苑「はっ、はい!行きます!」

 

 そう言って、紫苑は極大魔力弾をリムルに向けて発射する。

 だが、リムルは慌てていなかった。

 

リムル「暴食者(グラトニー)!」

 

 リムルは、暴食者を発動して、極大魔力弾を取り込んでいく。

 すぐに、極大魔力弾は無くなった。

 

リムル「ほい、おしまい。」

レイト「ふぅ……………。」

アルビス「何と…………!?」

ヨウム「マジかよ…………!?」

嵐牙「これくらい、我が主人には当然の事だ。」

 

 まあ、リムルならやると思ったが、流石にヒヤヒヤしたな。

 紫苑は、その場に座り込む。

 

紫苑「はぁ……………。」

朱菜「大丈夫ですか?」

火煉「全く…………。極大魔力弾を使おうとするのは、どうかと思うわよ。」

レイト「大丈夫か?」

リムル「おう。」

 

 俺たちがそう話していると、アルビスが話しかける。

 

アルビス「流石はカリオン様の認めし御方。」

リムル「ん?」

アルビス「あなた達とあなた達の国と縁が出来た事に感謝を。」

レイト「俺は何もしてないが…………。まあ、ようこそ。テンペストへ。」

 

 こうして、一悶着あったが、ユーラザニアからの使者を受け入れた。

 その夜、完成したばかりの迎賓館で、歓迎会が開かれた。

 色んな和食のメニューが振舞われた。

 それを食べた獣人達は。

 

グルーシス「これは美味い…………!」

獣人「素晴らしい味付けですな。」

獣人「塩加減もいい。」

獣人「これならいくらでもいけるぜ。美味い。」

 

 と、かなり好評だった。

 一方、アルビスとスフィアの方は、アルビスが酒樽ごと蒸留酒を飲んでいた。

 

リムル「うう…………。」

レイト「あははは……………。」

アルビス「はぁ……………幸せ。」

朱菜「豪快ですね…………。」

火煉「酒樽ごと…………!?」

リムル「誰だよ、酒樽ごと渡したの…………。」

レイト「こっちはこっちで…………。」

 

 俺の視線の先には、白い虎が酒を飲んでいた。

 スフィアだ。

 わざわざ獣身化しなくても…………。

 すると、リムルが質問をする。

 

リムル「なあ。その姿、他人に見せていい物なのか?」

アルビス「特に秘密という訳でもありません。」

レイト「そうなんだ……………。」

アルビス「ですが……………心を許した相手にしか見せませんのよ。」

 

 なるほどな。

 でも…………酒樽がどんどん空になっていくな……………。

 

リムル「あるだけ全部飲まれちまうな、リンゴのブランデー。」

アルビス「あるだけ?あまり量は作れませんの?」

レイト「ああ、すまない。気にしないでくれ。元々そちらに振る舞うために作ったんだから。だが…………果物は森の恵みに依存してるから、あまり量が採れないのが難点で…………。」

 

 そう。

 いくらトレイニーさん達と協力関係にあるとはいえ、あまり取りすぎると怒られそうな気がするからな。

 それを聞いたアルビスは、何かを思案する様な表情を浮かべ、笑みを浮かべる。

 

アルビス「…………では、良い考えがございます。」

レイト「ん?」

アルビス「我がユーラザニアは、果物が豊富に採れます。こちらに回す様、手配いたしましょう。」

リムル「えっ、良いのか?」

アルビス「はい。」

朱菜「良かったですね、リムル様。」

リムル「ああ!」

レイト「おい、リムル。アルビス達の方を見ろ。」

リムル「ん?」

 

 リムルと朱菜がそう話す中、俺はリムルを、アルビス達の方に向ける。

 そう。

 こちらをじーっと見てるのだ。

 言いたい事は分かる。

 

レイト「分かってるさ。勿論、こちらからも酒を提供しよう。」

「「ウフッ…………。」」

リムル「割合は?」

スフィア「細かい事は任せる。俺は美味い酒が飲めればそれで良い。ユーラザニアの果実は品質が良いから、そこは期待しても良いぜ。ニャハハハハッ!」

 

 そう言って、二人は酒を再び飲み始める。

 かなり好評だな、蒸留酒。

 

レイト「雑務はこっちに任せるか…………。」

リムル「物々交換となると、どれくらいが妥当なんだ?」

レイト「まあ…………それに関しては、専門家に頼るとしよう。火煉。」

火煉「はい。」

レイト「コビーを呼んできてくれ。」

火煉「分かりました。」

 

 火煉は、そう言って出ていき、連れてきた。

 彼はコビー。

 犬頭族(コボルト)の行商人で、今はテンペストに店を構えて、商人達のまとめ役だ。

 だが、コビーは震えていた。

 まあ、そりゃなぁ…………。

 

コビー「リ…………リムル様、レイト様。これは一体…………?」

リムル「我が国の商人代表、コビーちゃんだ。魔王の領土でも行商していたそうだし、今後の取り引きを一任しようと思う。」

コビー「ええっ!?」

レイト「こちらは、獣王国の方々だ。酒以外にも気になる品があれば、交渉しておいてくれ。」

コビー「いやいやいや!獣王国には弱い種族は立ち入り禁止で…………!」

スフィア「ニャハハハハッ!許可証を発行しておく。遠慮するな。」

アルビス「カリオン様にも報告しておきますわ。」

リムル「コビーちゃんも獣人と似た様なもんだし、気が合うだろ。」

コビー「えええええええ!?」

 

 コビーは、そんな風に驚いていた。

 なんか、すまん。

 

レイト「そんな訳で、よろしく頼むな。」

コピー「え〜っと、あの………はい。」

リムル「じゃあ、あとは若い人たちにお任せして。」

朱菜「では、失礼します。」

コビー「えっ?ちょっ…………あの…………リムル様〜!レイト様〜!」

 

 そんなコビーの呼ぶ声を聞きながら、俺たちは退出する。

 すまんな。

 行商に関しては、俺たちは素人だから。

 コビーに任せておけば、大丈夫だろ。

 その数日後、アルビスとスフィアは、ユーラザニアへと引き返していった。

 技術交流も増やす予定で、黒衛兵とカイジンの元で鍛治、朱菜の元で機織りの技術を学んでいる。

 獣人達が蛇口を捻ると、お湯が出てくる。

 

獣人「この蛇口というのからお湯が出るのは、どういう仕組みなんだろう?」

獣人「どこかで、沸かしている様でもないが…………?」

ドルド「刻印魔法って奴さ。」

獣人「刻印魔法?」

獣人「どこに刻印が?」

 

 獣人達の疑問に、ドルドがそう答える。

 ドルドは、蛇口のハンドルを取って見せる。

 

ドルド「蛇口のハンドルに、熱の魔法を刻印した魔晶石を内蔵してある。」

獣人「なるほど…………。魔力を持つ者が捻れば、水がお湯になるという事ですか。」

獣人「流石、ドワーフの職人!」

ドルド「いや…………これぐらい、大した事じゃない。(本当は、リムルとレイトの旦那方の発案だしな。)」

 

 ドルドは、そう思う。

 ちなみに、厳密には、リムルの大賢者と、俺の科学者の発案だ。

 一方、ヨウムはグルーシスに話しかけていた。

 

ヨウム「お前さん、他の奴らみたく見学したりしなくて良いのか?」

グルーシス「俺は良いんだよ。謹慎中の黒豹牙フォビオ様に、リムル様とレイト様のお役に立つ様にって命令されているからな。」

ヨウム「それで、街の警備に混ざってんのか。」

グルーシス「そういう事だ。」

 

 二人がそう話していると、ゴブタが話しかけてくる。

 

ゴブタ「グルーシスさ〜ん。」

「「ん?」」

ゴブタ「見回り行くっすよ〜。」

グルーシス「おう。じゃあ。」

 

 そう言って、グルーシスはゴブタ達と共に、警備に向かう。

 

ヨウム「そんじゃ、俺は風呂にでも…………。」

 

 ヨウムがそう言いながら風呂に向かおうとすると、白老がヨウムの肩に手を置く。

 

ヨウム「うっ…………!?」

白老「お主は剣の修行じゃ。」

ヨウム「……………はい。」

 

 白老の言葉に、ヨウムは素直に応じる。

 そんな日々を過ごす中、俺とリムルは、定期的にイングラシアの方に向かう。

 シズさん曰く、後任のティス先生は、上手くやれているから、引き継ぎは問題ないそうだ。

 俺は、イングラシアの方に向かうだけでなく、クローンライダーの方の作業もしている。

 何せ、暴風大妖渦(カリュブディス)の一件で、かなりの数を失った。

 修復作業をしつつ、新たなクローンライダーの作成も行なっている。

 ここ最近では、量産型だけではなく、中級といえる仮面ライダーや、ダークライダーの作成も出来た。

 まあ、使うかどうかは微妙だが。

 

レイト「ふぅ〜…………。」

火煉「お疲れ様です。」

レイト「ああ、火煉。」

火煉「少しは、休んだ方が良いのではないですか?」

レイト「……………暴風大妖渦(カリュブディス)の一件で、かなりの数を失ったから、それをどうにかしたいしな。」

火煉「……………レイト様らしいです。これ、お茶です。」

レイト「ありがとうな。」

 

 俺は、火煉が出した紅茶を飲む。

 すると、眠くなってくる。

 

レイト(あれ…………眠く……………?一息ついたから、疲れが出てきたのか……………?)

 

 俺は、意識を手放す。

 

火煉「ふぅ…………。」

 

 火煉が一息吐くと、火煉から光が出てきて、火煉はその場に倒れる。

 

???「何とか上手くいって良かった。お嬢さん、すまないけど、レイトさんを借りていくよ。」

 

 その光が人型になる。

 その人は、黒に金色の仮面みたいな物を付けて、緑の瞳だった。

 

???「あ、そうだ。一応…………侑斗をよろしく。」

 

 そう言って、机にキャンディーを置いて、レイトを連れていく。

 

???「侑斗!連れてきたよー!」

侑斗「デネブ!遅えんだよ!」

デネブ「ああ!侑斗、やめて!」

侑斗「まあ良い。それで、キャンディーを置いてきてないだろうな?」

デネブ「ええっと……………。」

侑斗「置いてきたのか!?あれ程置いてくるなって言っただろ!?」

デネブ「ま、まあ、侑斗。早く出発しないと、彼が目を覚ましちゃうよ。」

侑斗「…………ったく。後で説教だからな。」

 

 そんな会話が聞こえてくる様な…………。

 しばらくして目を覚ますと、外にいた。

 

レイト「あ、あれ…………?ここ、どこだよ…………!?」

 

 すると、凄まじい音が聞こえてきて、そちらの方を向くと、戦いが始まっていた。

 その中には、仮面ライダーが何人か混じっていた。

 

レイト「どうなってんだよ…………!?」

???「悪いな。お前の力を貸してくれ。」

 

 そんな声がしてきて、意識を再び失う。

 しばらくして目を覚ますと、研究室の椅子で起きた。

 

レイト「……………随分と変な夢だったな…………。」

 

 そんな事を呟いて、開発を再開する。

 それから数日が経ち、ヨウム達は旅立って、紅丸達が帰国した。

 それで、報告を聞く事に。

 

紅丸「ユーラザニアの騎士団は、流石の一言です。一兵士に至るまで、魔王カリオンに徹底的に鍛え上げられていました。」

リムル「流石は、獅子王(ビーストマスター)という所か。」

レイト「他にはどうだ?」

リグル「はい。向こうの建築物は、テンペストに比べれば、粗末な物でした。しかし、王宮には贅が凝らされ、富の一極集中が顕著の様です。」

 

 なるほどね。

 すると、リグルドが号泣しだす。

 

リグルド「うぐっ…………!リグルが、こんな立派に…………!」

 

 それを見て、俺たちは苦笑を浮かべる。

 気持ちは分かるけどな。

 でも、今の俺の姿を父さんが見たら、どう思うんだろうな。

 そう思っていると、苦笑を浮かべていたリグルが、口を開く。

 

リグル「え〜っと…………。ですが、悪い意味ではありません。住人がそれを望んでいるのです。」

リムル「なるほど…………。」

リグル「建築だけでなく、工芸その他も、今の我が国の技術力が上回っております。」

レイト「カイジン達が来てくれた上に、黒衛兵に朱菜も居るからな。」

 

 そうなるよな。

 すると、リグルが言葉を続ける。

 

リグル「しかし、一つだけ、目を見張る程に素晴らしい物がございました。」

レイト「それは?」

リグル「農業です。」

リムル「ほう。」

リグル「我が国とは比べ物にならぬ程、広大な田畑が広がり、農作物が彩り豊かに実っておりました。」

 

 なるほどな。

 確かに、スフィアも、ユーラザニアの果実は品質が良いって言ってたしな。

 

リムル「その技術は、俺たちでも習得出来そうなのか?」

 

 リムルは、リグルにそう質問する。

 リグルは、少し考えて、口を開く。

 

リグル「…………恐らくは、可能かと。」

レイト「なら、次の使節団の派遣の際には、農業面を重点的に視察してもらおう。」

リムル「ああ!そうだな!」

リグルド「今では、食料事情はかなり改善されておりますが、未だに試行錯誤を続けている物もあります。そうした状況の改善に、何か役立つかもしれません…………ああっ!リグルがこんなに立派に…………!」

リムル「じゃあ、俺たちはドワーフ王国へ行く準備があるから。」

レイト「あとは任せた。頼んだ!」

一同「はい!」

 

 俺とリムルはそう言って、会議室から退出して、移動する。

 

レイト「使節団、上手くいって良かったな。」

リムル「ああ。」

紅丸「リムル様、レイト様。」

リムル「ん?」

レイト「どうした、紅丸?」

 

 俺とリムルがそう話していると、紅丸がやって来て、話しかける。

 俺とリムルが振り返ると、紅丸は跪いて、口を開く。

 

紅丸「お許しいただけるならば、次回からはリグル殿を使節団の団長に指名してやって下さいませんか?」

リムル「どういう事だ?」

紅丸「魔王カリオンは、信用できる人物だと判断しました。使者を無碍に扱ったりする心配はありません。ならば、俺は国の守りとして、ここに残る方が得策かと。」

レイト「なるほどね…………良いよな、リムル?」

リムル「ああ。それと、リグルになら任せても大丈夫…………そういう事だな?」

紅丸「はい。」

リムル「分かった。良いだろう。」

紅丸「ありがとうございます。」

 

 リグルも、成長したもんだな。

 まあ、紅丸に街の防衛に残ってもらうのも、ありかもな。

 

レイト「しかし、紅丸がそこまで信用するとはな。」

リムル「カリオンは、力だけの王じゃないって事だな。」

紅丸「そうですね。実は喧嘩を売ってみたのですが、笑っていなされましたし。」

「「っ!?」」

 

 紅丸の発言に、俺たちは驚く。

 こいつ、魔王に喧嘩を売りやがった!

 嫌な予感がしたが…………。

 

リムル「おっ、おまっ、それ…………!」

紅丸「黒炎獄(ヘルフレア)なんかは流石に使えないので、コテンパンに負けました。俺もまだまだです。」

レイト「お前……………。」

紅丸「あっ、ですが、フォビオには勝ちましたよ。」

リムル「あっ、そう…………。」

 

 フォビオに勝ったのは凄いが…………。

 だめだ。

 紅丸は、絶対に外交向けじゃない!

 外交に出したら、絶対に喧嘩を売りそうな気がする!

 俺とリムルは、紅丸は外交には選出しないと決めたのだった。

 そんな事があったが、翌日、今度は俺たちがドワルゴンに向けて出発した。

 

リムル「ちょっ、嵐牙、速すぎ!」

嵐牙「はっ!承知!」

ゴブタ「あわわわわ!」

レイト「嵐牙、落ち着け〜!!」

 

 張り切った嵐牙が速度を上げ、俺たちは悲鳴を上げる。

 今回のドワルゴン訪問に来てもらうのは、ゴブタ、ゴブゾウら六人の 狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)、朱菜、紫苑、火煉、カイジン、ガルム、ドルド、ミルドだ。

 

カイジン「久々にドワルゴンでゆっくりさせてもらえるなんて…………。ありがてえ話で。」

ガルム「本当ですよ。なあ、お前達。」

ドルド「全くでさぁ。」

ミルド「うんうん。」

リムル「そう言ってもらえると、俺達も嬉しいよ。」

レイト「この国は、カイジン達が居たから、ここまで立派になった。」

カイジン「へへっ。そう言ってもらえると、職人冥利に尽きるってもんでさあ。」

ガルム「ああ。」

リムル「お前達に会えて、本当に良かったよ。」

レイト「ありがとうな。」

カイジン「旦那方…………。」

 

 俺たちがそう言うと、カイジン達は泣き出す。

 ちなみに、後ろの2台の馬車には、ガゼル王への土産が積んである。

 リムルの胃袋や、俺の無限収納にしまった方が楽だと言ったら。

 

朱菜「こういうのは、形も大切なんです。」

 

 そう諭された。

 流石、大鬼族(オーガ)のお姫様だ。

 最近では、ベスターから色んな事を学んでいるらしく、マナー面でも頼りになる。

 ちなみに、火煉はともかく、紅丸と同じくらいに外交向けじゃなさそうな紫苑を連れていくのには、理由がある。

 それは…………。

 

紫苑「えっ?朱菜様がリムル様と旅行?」

リムル「いや、旅行じゃなくて仕事…………。」

紫苑「ずるいです!ずるいのです!朱菜様だけ、リムル様と遊びに行くだなんて!」

レイト「だから、外交だよ、外交…………。」

紫苑「うわぁぁぁん!!」

 

 紫苑は、泣きながら周囲にオーラを放出する。

 

リグル「紫苑様、ご乱心!!」

リグルド「落ち着いて下され!紫苑さ…………ぐわっ!?」

 

 と、こんな風に泣くわ、喚くわ、暴れるわで……………。

 結局、残していたらリグルド達の負担が増えるという事で、連れていく事になった。

 というより、大惨事を引き起こすなよ?

 すると、紫苑が俺たちに話しかける。

 

紫苑「リムル様、レイト様、見て下さい。」

リムル「ん?」

紫苑「暴風大妖渦(カリュブディス)との戦いで、ボロボロになった道が、もう殆ど片付いています。」

レイト「そうだな。仕事が早いよ。」

火煉「流石は、ゲルドやグルド達です。」

 

 そんな風に話していた。

 ゲルド達にも、感謝しないとな。

 一方、ゲルド達は、作業をしていた。

 

ゲルド「うむ。計画通りだな。」

グルド「順調ですね。」

部下「ゲルド様、グルド様。石畳の追加発注をお願いします。」

ゲルド「分かった。グルド、採石場に連絡しておいてくれ。」

グルド「分かりました。」

部下「お、あれは…………。」

「「ん?」」

 

 ゲルド達が作業をする中、俺たちが到着して、ゲルド達に話しかける。

 

ゲルド「今日が、ドワーフ王国への出発の日でしたか。」

リムル「ああ。道が整っているから、揺れも少なくて快適だよ。」

グルド「ありがとうございます。ドワーフ王国方面より折り返して作業してきたので、ここから先は、全て完成してますよ。」

レイト「さらに快適に行けそうだな。ありがとうな。」

ゲルド「ありがとうございます。」

リムル「レイト。」

レイト「ああ。それでだな…………。」

 

 俺たちは、樽を出して、ゲルドとグルドの部下達に渡す。

 

ゲルド「これは?」

リムル「ビールだ。」

部下達「ビール!」

 

 ビールと聞いたゲルド達の部下は、喜んでいた。

 そして、俺たちは出発する。

 

レイト「あんまり飲みすぎるなよ〜。」

グルド「はっ!」

 

 そう言い残して。

 俺たちの旅は順調に進んでいき、出発から4日目、ドワルゴンに到着した。

 カイドウが門を開けて、俺たちは進んでいく。

 周囲が話している。

 すると、カイジンにカイドウが声をかける。

 

カイドウ「よっ、兄貴。」

カイジン「ん?」

カイドウ「元気そうで何よりだ。」

カイジン「カイドウか!久しぶりだな!元気か?俺はリムルとレイトの旦那の元で、楽しくやってたぜ。」

カイドウ「だろうな。顔を見りゃ分かるよ。ガルム達も元気だったか?」

ガルム「おかげさまでな。」

ドルド「おう。」

ミルド「うん。」

カイドウ「……………で、リムル殿とレイト殿はどこだ?」

カイジン「え…………。」

カイドウ「あの方達は今や国賓だからな。まずは挨拶をしなきゃならんのだが…………。」

 

 カイドウはそう言って、俺たちを探す。

 すると、リムルが思念伝達で話しかけてくる。

 

リムル『何言ってんだ?俺たちはここにいるだろ?』

レイト『いやまて。カイドウは、俺たちが人間の姿を得た事を知らないだろ。』

リムル『そっか。』

 

 俺たちが人間の姿を手に入れたのは、シズさんと出会った後だからな。

 知らないのも無理はない。

 すると、カイジン達が俺たちを紹介する。

 

カイジン「リムルの旦那とレイトの旦那だ。」

カイドウ「え?」

ガルム「リムルの旦那とレイトの旦那だ。」

カイドウ「…………えっ?」

ドルド「旦那方だ。」

カイドウ「えっ?」

ミルド「うん。」

カイドウ「ええ〜!?」

 

 俺たちの事の人間としての姿を見たカイドウは、驚愕していた。

 

リムル「まあ、色々あってな。」

レイト「お久しぶりです。カイドウ。」

カイドウ「リムル…………殿とレイト……………殿も、お元気そうで何よりです。え〜と、じゃあ、こちらへ……………。」

 

 まあ、そうなるのも無理はない。

 こうして、俺たちはドワルゴンへと入国して、早速、ガゼル王に面会する事になった。

 ドルフさんの案内の元、ガゼル王の元へと向かう、俺、リムル、火煉、朱菜、紫苑。

 すると、ドルフさんが話しかけてくる。

 

ドルフ「ご健勝そうで何よりです。リムル殿、レイト殿。」

リムル「ドルフ殿もお元気そうで。」

ドルフ「ハハハハッ。私に敬語は不要です。さあ、我が王がお待ちですぞ。」

レイト「ああ。」

 

 暴風大妖渦(カリュブディス)の一件で援護してくれたペガサスナイツの団長、ドルフ。

 ペガサスナイツは、王直属の極秘部隊なので、普段は、文官を装っているそうだ。

 しばらく歩くと、大きな扉の前に立ち、ドルフさんが近くの兵士に頷く。

 

兵士「ジュラ・テンペスト連邦国盟主、リムル陛下とレイト陛下のお成りでございます!」

 

 そう言うと、扉が開く。

 

ドルフ「どうぞ、中へ。」

レイト「はい。」

 

 そう言われて、俺たちは中へと入る。

 一番奥には、ドワーフの英雄王、ガゼル・ドワルゴが居た。

 

ガゼル「久しいな。リムル、レイトよ。」

 

 ガゼル王は、俺たちにそう話しかける。

 一方、とある場所では、暴風大妖渦(カリュブディス)戦の時の俺たちの映像を見ている者が居た。

 クレイマンという魔王だ。

 

クレイマン「なるほど…………。」

 

 クレイマンがそう言うと、水晶に映し出された映像が消え、クレイマンの目の前に居る女性に話しかける。

 

クレイマン「ご苦労様。とても興味深い報告でした。ありがとう。あなたの心臓、そろそろ返して差し上げても良いのですが…………。」

 

 クレイマンがそう言うと、女性は胸元の服の装飾を掴む。

 

クレイマン「あともう少しだけ、働いていただけると、こちらとしても助かるのですよ。」

???「……………何をすればよろしいのでしょう?クレイマン様。」

クレイマン「何。簡単な事ですよ。とっても簡単な…………ね。ミュウラン。」

 

 クレイマンは、ミュウランという女性にそう言う。

 暗躍していた悪意が、俺たちに迫ろうとしていた事に、この時は気づいていなかった。




今回はここまでです。
レイトとリムルが、ドワルゴンに向かう中、いよいよクレイマンが動き出します。
次回は、エルフの店での話までです。
そして、デネブと桜井侑斗が登場しました。
二度にわたって、レイトを攫った理由は、電王編にて明らかになります。
あと、この小説で、転キメの日常を綴る、転キメ日記というのをやろうかなと思います。
簡単に言えば、転スラ日記です。
それに関しては、本編以上に不定期となりますので、ご了承下さい。
あと、異世界おくてっとという作品にて、転スラから転キメに変えて、エミルスとバイスが登場したので、良かったらそちらも見て欲しいです。
そして、昨日から、MOVIEバトルロワイヤルが公開されましたね。
私はもう見ました。
良い映画でした。
その映画で登場した、ゲットオーバーデモンズに関しては、グルドに変身させる予定です。
感想、リクエストに関しては、絶賛受け付けています。
例えば、レイトの科学者が、どんな究極能力になるのか、とかですね。
これからも応援の程、よろしくお願いします。
あと、MOVIEバトルロワイヤルに関して、一言。
絶対に見た方が良いです!


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第24話 ドワルゴンとの国交樹立

 俺たちは、武装国家ドワルゴンに向かい、英雄王、ガゼル・ドワルゴと会談をする事になった。

 俺たちは場所を移して、話す事に。

 

リムル「ガゼル王にまずは感謝を。」

レイト「ああ。カイジン達の罪を取り消してくれて、ありがとう。」

ガゼル「他の大臣どもを納得させる為には、国外追放とするのが最適だったからな。」

リムル「あ……………最初から許すつもりだったって事か。」

ガゼル「それに、貴様らの様な怪しげな者に、我が国内で自由にさせるのは、面白くないと思ったからだ。」

レイト「まあ、それもそうか。」

 

 確かに、初見からすれば、怪しいと思うのは、無理もないよな。

 片方は喋るスライムで、もう片方は、新種の魔物だしな。

 

ガゼル「とはいえ、カイジンやガルム達を手放すなど、断腸の思いであったわ。」

レイト「ガルムのおかげで、防具類も用意できたし、ドルドやミルドは、建設関係で大いに役立ってくれている。」

リムル「それに、カイジンが俺たちの手の届かない分野を取りまとめてくれているので、どうにかこうにか、集団としてやっていけてるんだ。」

ガゼル「奴らも我が国で燻っておるよりは、自由にその腕を振るえる環境に身を置く方が良かろうて。ベスターはどうした?来ておらぬのか?」

レイト「実は、誘ったんですが…………。」

 

 そう。

 ドワルゴンに向かう前に、ベスターにも声をかけていたのだ。

 たまには息抜きとして、ドワルゴンでゆっくりさせるのもありだと思って。

 だが、ベスターの返答は。

 

ベスター「う〜ん……………。折角ですが、成果を出すまでは、ガゼル王に出す顔を持ち合わせておりません。」

 

 そう答えて、ベスターはテンペストに残ったのだ。

 ベスターが言った事を俺が伝えると。

 

ガゼル「ハハハハッ!ベスターらしいのう。奴もまた、その才を存分に発揮できる場を得たという事か。ハハハハッ!」

 

 ガゼル王は、ベスターの行動に納得していた。

 だが、すぐに笑いを止め、真面目な顔で俺とリムルを見てくる。

 

ガゼル「……………で、リムル、レイトよ。」

リムル「んっ?」

ガゼル「改めて聞きたい事がある。」

レイト「俺たちも、その為に来たしな。」

ガゼル「あの暴風大妖渦(カリュブディス)を倒したという高出力の魔法兵器とは、一体どの様な物なのだ?」

リムル「ん〜………………。」

ガゼル「戦略級魔法をも凌ぐ前代未聞の威力だったそうだが。」

 

 やっぱりか……………。

 魔法兵器じゃなくて、魔王ミリムなんだよな……………。

 まあ、説明する為に来たんだ。

 ちゃんと言わないとな。

 

レイト「あれは……………本当に魔王ミリムの力なんだよ。」

ガゼル「魔王ミリム。」

ドルフ「あの日もそんな冗談を言っておられましたが……………。」

リムル「冗談じゃなくてね……………。」

ドルフ「申し訳ないが、信じられません。あの少女が……………天災(カタストロフ)級の魔王だなんて……………。」

レイト「まあ、気持ちは分かります。」

 

 そうだよな。

 そんな事を言われても、信じられないよな。

 あれでも魔王なんだよな……………。

 すると、ガゼル王は、笑みを浮かべる。

 

ガゼル「フッフッフ…………!法螺にしては、荒唐無稽すぎるな。よかろう。信じるぞ、リムル、レイトよ。」

レイト「あ……………。」

リムル「はぁ……………。」

ガゼル「よいな、ドルフ。」

ドルフ「はっ。しかし……………いつの間にか、最古の魔王と知り合いになるとは…………。リムル殿とレイト殿は、本当に不思議な御方だ。」

紫苑「フフンッ!」

火煉「紫苑。何故、貴方が誇らしげなんですか。」

 

 ドルフの言葉に、紫苑は自慢げにして、火煉は突っ込む。

 すると、朱菜がやって来る。

 朱菜が持ってきたワゴンには、蒸留酒が乗っていた。

 

朱菜「お待たせしました。」

レイト「お。」

ガゼル「それは?」

リムル「ああ。ちょっとした手土産だ。」

 

 リムルが朱菜に合図をすると、四つのグラスに酒を注ぐ。

 それを、ガゼル王の元に運ぶ。

 

朱菜「どうぞ。」

ガゼル「うむ。」

朱菜「ドルフ様も。」

ドルフ「ありがとう。」

 

 ガゼル王とドルフさんは、朱菜からグラスを受け取る。

 ガゼル王は、グラスを見ると、声を出す。

 

ガゼル「これは…………ドルドが作ったのか?」

リムル「その通り。」

ガゼル「うむ。」

 

 俺とリムルも、朱菜から酒を受け取る中、ガゼル王は、グラスをじっと見つめていた。

 

ガゼル「素晴らしいな。この薄さ、細やかな模様。これは、解毒の刻印魔法か。気が利くな。」

レイト「俺たちが毒味しても良いんだけどな。」

ガゼル「フッ。貴様らが毒を盛るなどとは思っておらぬわ。」

 

 そう言ってくれるとは、余程信頼してくれているんだな。

 ガゼル王は、匂いを嗅ぐ。

 

ガゼル「品があるな。」

 

 そう言って、ガゼル王は酒を飲み、ドルフさんも続いて飲む。

 

ガゼル「おお、これは…………!」

ドルフ「あっ……………!」

ガゼル「美味い…………!」

ドルフ「素晴らしい…………!」

リムル「じゃあ、俺たちも。」

レイト「だな。」

 

 俺たちも、酒を飲む。

 これも、かなり美味いよな。

 すると。

 

科学者『告。耐毒抵抗、成功しました。』

レイト『あいよ。』

リムル「成功するなよ!折角のアルコールを消してどうする!」

 

 俺は、科学者の言葉にそう答え、リムルが叫ぶ。

 いきなり叫んだリムルに、俺は肘でつつく。

 

ガゼル「どうした?」

リムル「あっ、いや、何でもない。」

レイト「やれやれ……………。これは、リンゴで作った蒸留酒なんだ。果実を輸入出来る目処が立ったから、この先、量産出来ると思う。」

ガゼル「輸入とは、このドワルゴン以外にも、貴様達と国交を結ぼうという者が現れたのか。ブルムンド王国辺りか?」

リムル「うん。そこもだけど、この果物は獣王…………。」

 

 リムルがそう答えると、ガゼル王とドルフさんが、俺たちに詰め寄る。

 

ガゼル「ユーラザニアか!?」

レイト「そ、そうだ。」

ドルフ「誇り高き獣王が、他国と取り引きを!?」

ガゼル「貴様ら、魔王ミリムだけでなく、魔王カリオンにも懐かれたのか!?」

ドルフ「恐るべき魔王たらし…………!」

 

 おい、言い方!

 俺が心の中でそう突っ込んでいると、リムルが説明をする。

 

リムル「いやいやいや。たまたま魔王カリオンの部下を助けてさ。それが縁で、互いに交易しようって話になったんだ。」

レイト「まあ、まだ使節団の派遣程度の付き合いだがな。」

 

 俺とリムルがそう言う中、ガゼル王が椅子に座り、ドルフさんが言う。

 

ドルフ「だとしても、テンペストの重要性は、一気に跳ね上がる!いずれは、ファルムス王国に代わる貿易の中心地になるかも!」

ガゼル「うむ。確かにな。」

リムル「買い被りすぎだ。」

レイト「スムーズに交易するには、輸送路の整備もしないといけないしな。」

ガゼル「未来の話はともかく、今飲んでいるのは、ファルムスから輸入しているどの酒よりも美味い。成果を期待しているぞ。」

 

 ガゼル王はそう言って、酒を飲む。

 ファルムス王国か……………。

 確か、ヨウムの出身地だったな。

 そう思う中、ヨウムはくしゃみをする。

 

ヨウム「へっくしょん!」

カジル「風邪か?」

ヨウム「ったく。誰かが俺の噂をしてる様だぜ。」

 

 一方、そんな事を露知らずの俺は、ファルムス王国について、ガゼル王に質問をした。

 

レイト「ファルムス王国って、どんな国なんだ?」

ガゼル「まあ、西方諸国でも、1・2を争う大国だな。我が国も、食糧はファルムスや帝国からの輸入に頼っておる。」

 

 ガゼル王はそこまで言うと、身を乗り出して、俺たちに話しかける。

 

ガゼル「…………とはいえ、ここだけの話だが…………。」

リムル「ん?」

 

 俺たちも、身を乗り出してガゼル王の話を聞く。

 ガゼル王が言った事は、俺が抱くある不安を煽るには十分だった。

 

ガゼル「俺はあの国王は好かん。」

リムル「そうなのか?」

レイト「というと?」

ガゼル「あの王は欲深すぎる。だから、是が非でもユーラザニアとの貿易を成功させろ。そして、兄弟子に酒を融通するのだ、弟弟子達よ。」

リムル「ああ……………。兄弟子は今関係ないだろ。」

 

 欲深いか……………。

 なんか、胸騒ぎがするな。

 すると、紫苑がリムルの頭に胸を置きながら言う。

 

紫苑「大丈夫で〜す。」

朱菜「あっ、紫苑…………!」

火煉「いつの間に……………!?」

 

 やっべ!

 今は、かなり不味いだろ!

 俺たちが青ざめる中、紫苑は顔を赤くして言う。

 

紫苑「リムル様とレイト様なら、きっと〜。ユーラザニアとの貿易もババ〜っと素敵に纏めて下さいま〜す!」

リムル「おい!」

レイト「ダメだ、酔っ払ってやがる!」

紫苑「私たちの食卓にも〜当たり前のように美味しい料理が並ぶ様になりました!そこに美味しいお酒が加わるのも、約束されたも当然の話なのです!リムル様とレイト様にお任せを〜!」

「「あっ!」」

「「ああ〜!!」」

 

 紫苑がそう言いながら、再び酒を飲み、ぶっ倒れる。

 リムルはすかさずスライムの状態になり、紫苑を支える。

 

リムル「セーフ…………。」

朱菜「あ……………。」

紫苑「うぃ〜……………。」

リムル「ったく、この娘は本当にもう…………。」

火煉「すいません!お見苦しい所をお見せしました!」

 

 火煉がそう謝る中、ガゼル王とドルフさんは顔を見合わせ、笑う。

 

「「ハハハハッ!」」

レイト「悪いな、リムルの秘書が。」

ガゼル「よいよい。早く部屋に連れて行ってやれ。」

朱菜「失礼します。」

 

 そう言って、リムル、朱菜、紫苑は部屋へと戻る。

 

火煉「レイト様?戻らないんですか?」

レイト「ちょっと、ガゼル王に話があってな。先に戻っててくれ。すぐに戻るから。」

火煉「分かりました。」

 

 そう言って、火煉は先に戻る。

 ガゼル王が、俺に話しかける。

 

ガゼル「どうしたのだ?話とは?」

レイト「……………ファルムス王国に関してです。」

ガゼル「ほう。」

 

 俺はそう言って、椅子に座り直して、ガゼル王と向き合う。

 

ガゼル「ファルムス王国がどうしたのだ?」

レイト「……………ファルムス王国の国王が欲深いとは、どういう感じなんですか?」

ガゼル「文字通りだ。ファルムス王国は、我がドワルゴンや他国との貿易で、莫大な利益を得ているからな。」

レイト「俺たちのテンペストが、ファルムス王国に代わる貿易の中心地になるという事は、ファルムス王国の利益が減ると言う事ですよね?」

ガゼル「そうだな。」

 

 俺の質問に、ガゼル王はそう答える。

 つまりは、あり得るかもしれないのだ。

 

レイト「だとしたら、ファルムス王国が、俺たちのテンペストを潰しにかかる可能性は、高いという事ですよね。」

ガゼル「恐らくな。」

ドルフ「無理もありません。」

レイト「……………やっぱりか。」

 

 そう。

 ファルムス王国からしたら、俺たちは、自分達の利益を奪う余所者という事になる。

 しかも、俺たちの国は、魔物の国。

 そんな国は、潰しても構わないという思想になりそうだ。

 

ガゼル「まあ、気持ちは分からんでもない。」

レイト「…………………。」

ガゼル「……………お前達を見ていると、対照的に思えるな。理念は同じだが。」

レイト「え?」

ガゼル「リムルは今を、貴様はその先を見据えている。ファルムス王国の動向を知ろうとする辺りからな。」

レイト「…………………。」

ガゼル「だが、そんな弱気な態度を見せてはいかん。それでは、国民も付いていっていいのか、不安になる。だからこそ、弱味を見せてはならんのだ。」

レイト「…………………はい。」

ガゼル「まあ、ファルムスがどう動くのかは、まだ分からん。用心した方が良かろう。」

レイト「分かりました。」

 

 そう言って、俺はガゼル王に礼を言って、その場から退出する。

 やはり、ファルムス王国の動向は、気にした方が良いかもしれないな。

 そんな事を気にする中、原稿を再確認する。

 一夜が明け、ドワルゴンとテンペストの二国間友好宣言の日がやって来た。

 俺たちは、テンペストのイメージを持って、ここに立っている。

 しっかりと挨拶をして、好印象を与えないとな。

 紫苑がリムルを持ち上げ、リムルは言う。

 

リムル「初めまして、皆さん!」

 

 そう言うリムルは、裏声だった。

 緊張しているんだな。

 まあ、無理もないか。

 

リムル「ジュラ・テンペスト連邦国、略してテンペストの盟主、リムル=テンペストです!」

レイト「同じく、テンペストの盟主、レイト=テンペストだ。」

 

 俺たちがそう言うと、ゴブタ達から拍手が上がり、周囲も釣られて拍手をする。

 

リムル「あっ、どうも、どうも!」

 

 リムルがそう言って、挨拶をする。

 そして、口を開く。

 

リムル「え〜、私は、魔物と人間の橋渡しとなる様な国家を築きたいと願っております。ここドワルゴンは、まさに魔物と人間の共存共栄がなされており、私の目標です。ガゼル王には、私の理想に賛同していただき、感謝の念に堪えません。これからも、共に助け合える関係を守りたい。それには、皆様の協力が欠かせません。我が国には、私とレイトを始め、沢山の魔物が暮らしています。魔物の国と言っても、差し支えないでしょう。ですが、その心根は、皆様と何ら変わる所は無いのです。出来れば、魔物だからと言って、恐れるのではなく、新たな友として受け入れて欲しい。この言葉が偽らざる本心である事をここに誓い、私の挨拶に代えさせていただきます。」

 

 リムルがそう言い終えると、周囲から拍手と歓声が上がる。

 次は、俺の番だな。

 

レイト「俺からの挨拶を始めます。ここ、ドワルゴンは、リムルが言った通り、魔物と人間が共存している。確かに、魔物と人間の共存が難しい事だというのは、重々承知している。それでも、俺たち魔物と人間が、手を取り合う事が出来ないという事はない!このドワルゴンが、その証明なのだから!魔物と人間の二つの種族が、手を取り合う新時代の架け橋になってみせる!その新時代がどの様になっていくのか、未来はまだ暗闇の中だ。だけど、俺は信じてる!それが不可能では無いと!この言葉が偽りのない本心である事を誓い、挨拶とします。」

 

 俺はそう言って、挨拶をしめる。

 再び拍手と歓声が上がる。

 その後、ガゼル王からは。

 

ガゼル「短すぎる。謙り過ぎる。情に訴えかけ過ぎる。はっきり言って0点だ。レイトの方は、幾分かマシだったがな。」

リムル「うう……………。」

レイト「はい。」

ガゼル「国を治める者が、国民に謙る物ではない。まして、他国の住民に下手に出れば、舐められるだけだ。」

リムル「うう……………。」

レイト「はい。」

ガゼル「こうなったら良いなどと、甘えた統治は厳禁だ。素晴らしい物とは、自然にやって来るのではなく、自ら掴み取りに行く物なのだ。」

「「はい。」」

 

 そんな風に言われた。

 まあ、無理もないか。

 俺たちは、ガゼル王からの忠告を、聞き入れる。

 その後、リムルから夜の蝶に行く事を誘われた。

 あんまりそんな事をしていると、朱菜達から反感を買うだけだぞ。

 仕方なく、リムルのお目付け役として付いていく事にした。

 すると。

 

火煉「あ、レイト様。」

レイト「どうした、火煉?」

 

 火煉達と会った。

 リムルからは、朱菜達には夜の蝶に行く事は黙っておいてくれと言われた。

 すると。

 

火煉「どこへ行くんですか?」

レイト「ん?」

朱菜「実は、ゴブゾウから、リムル様達が夜の蝶という店に行くと聞きまして……………。」

レイト「あ。」

 

 はい、終了。

 ゴブゾウがあっさりバラしたとさ。

 俺は、もうその事が本当である事を明かした。

 どうせバレているのだ。

 隠していても意味は全くない。

 俺は、お目付け役として行く事にしたというのを伝えた。

 それで何とかなった。

 リムル達と合流して、夜の蝶へと入っていく。

 まあ、今は楽園だが、後で地獄になるけどな。

 エルフの胸に挟まれているリムルを見ながら、そう思っていた。

 すると、俺にも話しかけてきた。

 

エルフ「随分とご無沙汰だったじゃない。私たちの事、忘れちゃったのかと思った。」

レイト「まあ、気軽に行けなかったしな。」

 

 俺は、当たり障りのない受け答えをする。

 ここで鼻の下を伸ばすと、確実に地獄を見るからな。

 一方、ゴブタ達の方に、エルフが一人やって来る。

 

エルフ「いらっしゃい、坊や達。スライムさんとキメラさんのお友達ね。大歓迎よ。」

ゴブタ「ぬっ、お……………おお〜!」

エルフ「うふふ…………。」

ゴブタ「おっ、お世話になるっす!」

エルフ「うふっ、何のお世話かしら?」

ゴブタ「好きです。」

エルフ「あら、嬉しいわ。」

 

 ゴブタはそう言って、跪き、手を伸ばす。

 が、エルフの方は、受け流していた。

 

エルフ「お連れさん達はもう出来上がってるわよ。」

レイト「お連れ?ああ……………。」

 

 そう。

 カイジン達が既にいたのだ。

 カイドウが話しかける。

 

カイドウ「リムル殿。今日は俺まで呼んでくれて嬉しいよ。」

リムル「カイドウさんにはお世話になったし、これくらいはさせてくれ。」

カイドウ「やっぱり、レイトの旦那にも言えるが、その姿の方がしっくり来るなぁ。まあ、レイトの旦那は、少し変わったか?」

レイト「まあ、な。」

 

 まあ、カイドウと会った時は、普通のギフテリアンだったのが、今はヘルギフテリアンだしな。

 リムルが話しかける。

 

リムル「人型はお気に召さなかったか?」

カイドウ「いや、そういう訳じゃねぇが…………。どうにも一致しなくてな………。」

レイト「まあ、無理もない。今日は、ゆっくり兄弟で語り合ってくれ。」

カイジン「馬鹿野郎!」

レイト「のわっ!?」

 

 俺がそう言うと、カイジンが叫ぶ。

 

カイジン「こんな場所で野郎と話してどうする?せっかく綺麗な姉ちゃんが居るんだ!俺たちも楽しもうぜ!」

カイドウ「そうだぞ、レイト殿!お姉ちゃん達に失礼ってもんだ!」

 

 似てるな、この二人。

 というより、カイジン達も、下手したら地獄を見るかもしれないんだぞ?

 すると、二人のエルフの声がする。

 

エルフ「ゴブタちゃん、凄〜い!」

エルフ「上手ね〜。」

「「ん?」」

 

 俺たちが振り返ると、ゴブタが椅子か何かを持って、逆立ちしていた。

 何をしているんだ。

 ちなみに、ゴブタは、高価なグラスを足に乗っけられ、エルフの言葉に目や鼻から血を出してぶっ倒れた。

 リムルと俺は、ママに話しかけていた。

 

リムル「ママさん、ちょっと良いかな?」

エルフ「なあに、スライムさん、キメラさん?」

レイト「ちょっと、よかったらこれらを店に置いてくれないかな?」

エルフ「何、これ?」

リムル「うちで作った新商品の酒だ。ガゼル王にも卸すから、あんまり沢山は渡せないんだけど、お得意様限定で出してみてよ。感想が聞きたいから。」

エルフ「あらまあ。でも、良いの?」

レイト「一人一杯のサービスで、いくらまで出せるのか、リサーチして欲しい。」

エルフ「あらあら。二人は強かなのね。スライムさんの方は、昼間カチカチになって、演説してたのが嘘みたいね。」

リムル「えっ!?見てたの!?」

エルフ「しっかりとね。」

リムル「あ……………あれは、まあね、演技だよ、演技!初心っぽく見えただろ?」

エルフ「ウフフッ。そういう事にしておきましょう。」

 

 嘘つけ。

 演技じゃなくて、普通に緊張してただろ?

 すると、ママさんが言う。

 

エルフ「でもね、私は好感を持ったわよ。」

リムル「え?」

エルフ「誠実そうって思えたから。キメラさんもね。やはり、人を惹きつけるのは、誠実さだと思うのよね、私は。その点、スライムさんなら満点だった。キメラさんは、少し誠実さが欲しかったけどね。」

レイト「そっか。」

エルフ「私も見てみたいわ。人間や魔物、エルフ、どんな種族でも垣根なく、皆が笑い合える国を。」

リムル「ありがとさん。」

 

 そう言って貰えるのは、嬉しいな。

 ただ、全ての国が、ドワルゴンやブルムンドみたいな、良い国とはあり得ない。

 ファルムス王国みたいな、不安な要素がある国もあるのだ。

 もし、テンペストが攻められたら、俺は、守り切れるのだろうか?

 そんな不安がありつつも、夜は更けていく。

 俺たちは、宿に帰る事になった。

 

カイドウ「おっとっとっと。おいおい、しっかりしてくれよ、兄貴!いくら何でも飲み過ぎだじょ〜。」

カイジン「お前こそ〜。」

 

 カイジン達ドワーフは、かなり酔っ払っていた。

 ゴブタは、貧血になっていた。

 

レイト「おい、大丈夫か?」

ゴブタ「目が回るっす……………。」

リムル「ったく。良いか、お前達。宿に帰る時、誰にも見つからない様にするんだぞ。今夜見た夢は、俺たちだけの秘密だからな。」

ゴブリン達「はい!」

ゴブタ「はいっす。」

リムル「ほら、行くぞ。」

ゴブリン達「うん。」

朱菜「お手伝いしましょうか?」

リムル「ああ、すみませ…………ああああ!シュッ、シュシュ…………!」

 

 リムル達が移動しようとした瞬間、朱菜が声をかけ、リムルは慌てる。

 朱菜の隣には、火煉も居た。

 地獄が始まるな。

 すると、朱菜を見た科学者が、報告をする。

 

科学者『告。笑顔の裏側に、激しいエネルギーを感じます。』

レイト『だろうな…………。ていうか、カイジン達は逃げたな。』

 

 科学者の報告を聞きつつ、後ろをチラリと見ると、カイジン達が逃げていた。

 

リムル「なっ、ななっ、ななな…………!?」

朱菜「なぜここに、ですか?」

リムル「ハッ!うんうんうんうん!」

火煉「ゴブゾウとレイト様が、全て話してくれたので。」

リムル「なっ!?ゴッ、ゴブゾウ!?レイト!?お前ら、どうして〜!?」

ゴブゾウ「はえ?おら、朱菜様と火煉様にどこに行くか聞かれたで、お答えしただけっす。」

レイト「というより、いずれバレるだろ。」

リムル「何してくれてんだ、お前ら〜!」

 

 そう言われてもな。

 早めにバレた方が、傷は浅いだろ。

 すると。

 

紫苑「酷いです、リムル様。」

リムル「ハッ!?」

 

 路地裏から、紫苑の声が聞こえてきて、紫苑が現れる。

 しかも、剛力丸を背負って。

 

紫苑「置いていくなんて…………あんまりです!」

リムル「いっ、いや、だって、そのえ〜っと…………ふえっ!?」

 

 リムルが言い訳をしようとする中、紫苑は地面を蹴る。

 

紫苑「黙って行くなんて、酷いです!」

リムル「うっ、ぐ…………!」

朱菜「貴方達が、リムル様とレイト様を夜遊びに誘ったのですか?」

 

 朱菜はそう言って、カイジン達に声をかける。

 どうやら、逃げきれなかったみたいだな。

 その後、俺は先に宿に戻った。

 火煉も同伴で。

 そして、火煉からしこたま怒られた。

 こうして、説教される事があったものの、ドワルゴンでの予定を全て終え、帰国の途に就いた。

 ちなみに、リムルは1週間、朝食は紫苑が作った物を食べる羽目になった。

 一方、とある国では。

 

???「あっ、姐さん、来やしたぜ。あれがヨウム。英雄っす。」

 

 その姐さんと呼ばれた人物は、ヨウムを見ていた。

 ヨウムは、その女性と一緒にいた人に話しかける。

 

ヨウム「よう、イサーク。どうした?」

イサーク「姐さんが、ちょっと話があるってんで、聞いてもらえませんかね?」

ヨウム「姐さん?」

 

 イサークという男がそう言い、ヨウムが首を傾げる中、その女性は、フードを取る。

 その女性は、クレイマンと接触していたミュウランだった。

 

ミュウラン「私は、魔法が得意なので、英雄の貴方のお役に立てると思います。聞けば、ヨウム様の元には、魔法使いは少ない様ですし。」

 

 それを聞いたロンメルは、不安げな表情を浮かべるが、ヨウムは答える。

 

ヨウム「……………残念だな。魔法使いは間に合ってる。」

カジル「女が何の役に立つって言うんだ?」

 

 ヨウムがそう答え、カジルがそう毒づくと、ミュウランは眉を顰め、挑発する。

 

ミュウラン「ふ〜ん。なら、本物の魔導師(ウィザード)の恐ろしさを見せてあげる。」

ヨウム「ふ〜ん。」

 

 こうして、ミュウランとヨウムが戦う事になった。

 流石に、街から離れた森に移動して。

 ちなみに、アギトには変身していない。

 ミュウランは移動して、ヨウムはミュウランを追う。

 

ヨウム「おおらっと!?何っ!?ぐっ………!」

 

 すると、ヨウムは地面に開いた穴に嵌る。

 

ミュウラン「地面固定(アースロック)。」

 

 ヨウムが脱出しようとする中、ミュウランが魔法を発動して、ヨウムは動けなくなる。

 

ヨウム「くうっ、動けねぇ!」

カジル「あんな単純な魔法に、あの様な使い方が!?」

ミュウラン「空気遮断(エアシャット)!」

 

 カジル達が驚く中、ミュウランは別の魔法を発動して、その魔法は、ヨウムを取り囲む。

 

ヨウム「待ってろ、てめえ!叩きのめしてやる!」

 

 ヨウムはそう言って、アギトに変身しようとするが、ミュウランが発動した魔法によって、その中は、真空状態になる。

 ヨウムが苦しむ中、ミュウランは言う。

 

ミュウラン「終わりよ。呆れた。まさか、状態異常への対策も取っていないなんて。対魔法戦が全然なってないじゃないの。」

 

 ミュウランは呆れながら言い、魔法を解除する。

 ヨウムは、息を吸って言う。

 

ヨウム「あ〜負けだ、負けだ。よっ。」

 

 ヨウムは、素直に降参して、穴から脱出して、ミュウランに近寄る。

 

ヨウム「あんた、強いな。名前は?」

ミュウラン「………………ミュウラン。」

ヨウム「よろしくな、ミュウラン。」

 

 ヨウムは、笑いながらミュウランに握手を求める。

 ミュウランは、少し戸惑いながらも、手をヨウムの方に向ける。

 二人は、握手をする。

 ミュウランは、何を企んでいるのか。




今回はここまでです。
レイトは、別で説教されました。
そして、いよいよ暗躍していた悪意が、テンペストに牙を向きます。
ちなみに、ファルムス王国側、ファルムス王国の襲撃を受けているテンペストに関しては、描かない予定です。
原作とほぼ同じ上に、そこまで書いていたら、私のメンタルが持たないと思ったからです。
というより、ファルムス王国側の異世界人に関しては、私は本当に嫌いなので。
まあ、田口省吾に殺された異世界人に関しては、まだ情状酌量の余地はあると思いますが。
あと、暗躍するのは、ファルムスとクレイマンだけではありません。
別の悪意もまた、テンペストに迫ります。
ちなみに、ヒナタがレイト達を襲う理由は、原作とは異なります。
厄災の黙示録が、始まる。
この悪意に、レイトは、どうなってしまうのか。
仮面ライダーダイモンに変身するアヅマみたいに、愚かな人類に絶望してしまうのか。
それとも………………。


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第25話 厄災の黙示録

 ドワルゴンでの外遊を終えた俺は、リムルと共に、イングラシア王国に向かっていた。

 火煉が、快く送り出してくれた。

 本当に、ありがたいよ。

 俺とリムルは、クロエ達の元に居た。

 

リムル「それでは、期末テストの結果を発表します!」

 

 どうやら、俺たちが居ない間に、期末テストをやっていたみたいだな。

 リムルがそう言うと、子供達は、表情を引き締める。

 すると、リムルがため息を吐きながら崩れる。

 

リムル「ハァ……………。」

 

 ちなみに、俺は、結果は分かっているので、敢えてノーリアクションに徹する。

 まあ、内心では、少し呆れていたが。

 それを見た子供達は。

 

「「えっ!?」」

クロエ「まさか…………!?」

ケンヤ「そっ、そんな……………!?」

リムル「残念ながら全員……………。」

 

 それを聞いた子供達は、唾を飲み込み、リムルの次の言葉を待つ。

 

リムル「合格で〜す!」

一同「あああ……………!」

レイト「やれやれ……………。」

 

 リムルの言葉を聞いた子供達は、盛大にずっこける。

 俺は、そう言いながら首を振る。

 

ケンヤ「うおい!ビビらせんな!」

リムル「サプライズも必要かと思いまして。」

レイト「悪いな。」

ケンヤ「あ〜良かった…………。」

アリス「わっ、私は、何の心配もしてなかったよ。」

ゲイル「全員揃って、進級ですね。」

リョウタ「また、皆と一緒。」

クロエ「うん。嬉しい。」

 

 皆がそう話す。

 成長してるな。

 俺は先生ではないが、嬉しく感じるよ。

 

リムル「皆、よく頑張りました。さて。これで私の先生としての仕事は終わりました。学期末をもって、あなた達をティス先生に引き継いで、レイトとシズさんと一緒に、テンペストに帰ります。」

クロエ「先生……………。」

リムル「そんな寂しい顔をするな。あと数日は居るんだし、明るく送り出してくれ。俺たちが国に帰っても、アリス、クロエ、リョウタ、ケンヤ、ゲイル。皆、俺の大切な生徒だからな。」

 

 リムルはそう言う。

 まあ、俺は教師ではないんだけどな。

 それでも、この子供達が大切なのは、変わりない。

 

クロエ「うん。」

ケンヤ「先生……………。」

アリス「あっ!それより、レイトさんもだけど、約束守ってよね、約束!」

レイト「約束?」

ケンヤ「そうだ!漫画の続きに仮面ライダーの続き!成績が良かったら、見せてくれるって言ってたろ!」

リムル「ああ、分かってる、分かってる。寄生獣も最終巻までちゃんと用意しておくよ。」

レイト「俺も、ちゃんと用意するよ。」

ケンヤ「やった〜!」

 

 そう言って、子供達は喜ぶ。

 実は、俺も、子供達に、仮面ライダーを見せている。

 俺は、1号からリバイスの途中まで見ていたのだ。

 それを本状にして、皆に見させている。

 俺とリムルは、ティス先生とシズさんの元に向かう。

 

リムル「ティス先生、シズさん。おかげで全員進級出来たよ。ありがとう。」

レイト「シズさんもお疲れさん。」

ティス「私じゃなく、皆が頑張ったからですよ。」

シズ「ティスさん。新学期から、Sクラスの皆をよろしくお願いします。」

ティス「はい。」

 

 俺たちはそう話す。

 シズさんもテンペストに戻る理由としては、シズさんもテンペストに暮らす事にしたそうだ。

 まあ、定期的に体に問題がないか調べる必要性もあるからな。

 現状、シズさんの魂とシズさんの細胞とキメラ細胞をミックスした体とで、拒絶反応が起こっていない。

 それは良い事だ。

 まあ、一部、懸念点があるのだが。

 それは……………。

 

レイト(これ………俺が死んだら、他のキメラ細胞は、どうなるんだ?)

 

 そう。

 俺が死んだ時、他のキメラ細胞も死滅する可能性があるのだ。

 実際、仮面ライダーダイモンに変身するアヅマも、ギフが倒された事で、肉体が崩壊するというのがあったのだ。

 シズさんに、何らかの悪影響が及ぼされてもおかしくない。

 だからこそ、俺は死ぬ訳にはいかない。

 一方、ミュウランを連れたヨウム達は、テンペストに到着していた。

 

ヨウム「ほら、着いたぜ、ミュウラン。あれが魔物の国、ジュラ・テンペスト連邦国だ。」

 

 ヨウムがそう言う中、ミュウランはテンペストを見ていた。

 ヨウムは、ミュウランを連れて、紫苑、朱菜、火煉、紅丸の元に向かう。

 

ヨウム「俺たちの新しい仲間、魔導師(ウィザード)のミュウランだ。」

朱菜「初めまして。よろしくお願いします。」

ミュウラン「こちらこそ。」

紫苑「どうぞ、ゆっくりして行って下さい。」

ヨウム「ミュウランには、相談役兼軍事顧問として、対魔法戦を指導してもらってる。」

火煉「お強いんですね。」

ミュウラン「それ程でもありませんが……………。」

 

 火煉の言葉に、ミュウランがそう言う中、後ろから、作業音が聞こえてくる。

 ミュウランが後ろを見ると、周囲には提灯が飾られ、垂れ幕などもあった。

 

ミュウラン「お祭りですか?」

朱菜「いいえ。」

火煉「もうすぐ、レイト様とリムル様が正式に帰国なさるので、そのお祝いの準備です。」

紫苑「では、私たちは、まだやる事がありますので。」

朱菜「失礼します。」

 

 そう言って、紫苑達は領主館へと戻ろうとする。

 すると、朱菜と火煉が、立ち止まり、ミュウランに声をかける。

 

朱菜「ああ。後で、ぜひ温泉にどうぞ。」

ミュウラン「温泉?」

火煉「ええ。テンペストに来るまで、少し疲れたでしょう?汗を流すと気持ち良いですよ。」

ミュウラン「あ……………ありがとうございます。」

 

 そう言って、朱菜と火煉も領主館の中へと入り、紅丸も中に入る。

 それを見ていたミュウランは。

 

ミュウラン(あれが鬼人……………。一人一人が恐ろしいほど強いわね。)

 

 ミュウランは、紅丸達の事を警戒していた。

 そう思う中、ヨウムが話しかける。

 

ヨウム「じゃあ、ミュウラン。ちょっと、テンペストを案内してやるよ。」

 

 そう言って、ヨウムはミュウランを案内する。

 まず来たのは、黒衛兵達の工房だった。

 

ヨウム「ここが鍛冶屋だ。あの2人が作る武器や防具は、天下一品だぜ。」

 

 ヨウムはそう言う。

 次に案内したのは、迎賓館だ。

 

ヨウム「迎賓館だ。立派なもんだろ。」

ミュウラン「………………ええ。」

 

 ヨウムがそう言うと、ミュウランは少し間を開けて、答える。

 2人は、店が並んでいるエリアに向かった。

 そこには、子供達が遊んでいたりと、賑やかだった。

 すると、ガビルの配下達が、とある店の前で声を出す。

 

ヤシチ「こんにちは〜!」

 

 そう声をかけると、コビーが中から出てくる。

 

コビー「ああ、ご苦労様です。」

スケロウ「ハイポーション。今週の分だぜ。」

 

 スケロウ達は、ハイポーションを届けに来たそうだ。

 それを、ミュウランが見る。

 コビーは、ハイポーションを確認していた。

 

コビー「はい。確かに。」

ヤシチ「サイン、お願いしま〜す!」

 

 ヤシチがそう言って、紙を渡して、コビーはサインをする。

 

コビー「ありがとうございます。来月からは、また取引量が増えるかもしれません。近々、打ち合わせをしに伺いますので、ガビルさんにその旨、お伝え下さい。」

カクシン「しかと承った。」

 

 コビー達は、そう話す。

 それを聞いていたミュウランは。

 

ミュウラン(あんなにたくさんのハイポーションを製造していると言うの?軍事力といい、技術力といい、これは確実に他の国の脅威だわ。)

 

 ミュウランは、テンペストの軍事力と技術力に警戒心を見せる。

 そこに、ヨウムが声をかける。

 

ヨウム「お〜い、どうした?」

 

 ヨウムは、後ろを振り返ったまま動かないミュウランを見て、声をかけていた。

 ミュウランは、それに答える。

 

ミュウラン「いえ、何でもないわ。」

ヨウム「この先に、訓練場があるんだ。」

 

 そう言って、ヨウムは歩き出す。

 ミュウランは、ヨウムについていく。

 ヨウムに着いていく中、ミュウランは思う。

 

ミュウラン(本当にお人よしね。私は…………クレイマン様の命令で、魔物の国の調査をする為、ヨウム、あなたを利用しているだけなのに。バカな人。私が魔人だなんて、疑ってもいないのでしょうね。)

 

 ミュウランは、そう思う。

 クレイマンは、魔物の国を調査する様に命令した様だ。

 一方、ヨウムとミュウランが向かう訓練場には、白老やゴブタ、ゴブゾウ、グルーシスが居た。

 

白老「では、休憩。」

 

 そう言って、白老は去っていく。

 そこには、ゴブタやグルーシス達が、倒れていた。

 

ゴブタ「あああ……………痛え。あのジジイ、今日も手加減なしっすね……………。」

ゴブゾウ「ボッコボコだす……………。」

グルーシス「ゴ…………ゴブタ君。あの鬼………じゃなくて、白老殿は、毎回こんな感じなのかい?」

 

 ゴブタとゴブゾウがそう言う中、グルーシスは、ゴブタに質問する。

 ゴブタは、起き上がりながら答える。

 

ゴブタ「そうっすよ。」

ゴブゾウ「ボッコボコだす……………。」

ゴブタ「全く、冗談じゃないっすね。ほら、立つっすよ、お前達。」

 

 ゴブタが手を叩きながらそう言うと、ゴブト達も立ち上がる。

 グルーシスは、それを見て驚いていた。

 

グルーシス「毎回、こんな……………。それを、死なずに耐えている君たちも、恐ろしいというか、なんというか……………。我らが獣王国に勧誘したい所だよ。」

 

 グルーシスは、タフなゴブタ達を見て、苦笑気味にそう言う。

 すると、ヨウムが話しかける。

 

ヨウム「よう、グルーシス。」

グルーシス「あっ。ヨウムじゃねえか。」

ヨウム「へへっ。」

 

 ヨウムは、グルーシスに声をかける。

 ヨウムは、グルーシス達の有様に言う。

 

ヨウム「なんで有様だよ…………。」

グルーシス「うるせえよ。そちらは?」

ヨウム「ああ。こいつはミュウラン。うちで一番の手練れだ。戦ったら、お前でも敵わねえかもな。」

グルーシス「一番?ってことは、ヨウム。お前、こんな線の細え女に負けたのか?」

ヨウム「じゃあ、お前も戦ってみるんだな。万が一、ミュウランが負けたら、お前の事、兄貴って呼んでやるよ。」

グルーシス「良いだろう!もしその女が俺に勝てたなら、俺がお前の舎弟になってやる!」

 

 ヨウムとグルーシスは、お互いに挑発気味にそう言って、グルーシスはミュウランに話しかける。

 

グルーシス「ヨウムと違って、俺は女だからって、容赦しねえからな!」

ミュウラン「ハア……………。」

グルーシス「行くぞ!」

 

 グルーシスがそう言う中、ミュウランはため息を吐き、グルーシスはミュウランに向かっていく。

 その少し後、グルーシスは地面に埋まっており、それを見て、ヨウムは笑っていた。

 

ヨウム「プッ!アッハハハハッ…………!面白いから、人呼んでこようぜ、ミュウラン!」

グルーシス「それでも英雄か!早く手ぇ貸せ!」

ミュウラン「ハァ……………。」

 

 ヨウムが笑って言う中、グルーシスはそう叫び、ミュウランがため息を再び吐く。

 すると、グルーシスが声をかける。

 

グルーシス「おい、お前。お前の勝ちだ。」

ミュウラン「素直なのね……………。」

グルーシス「この状況じゃあな…………。強いな、アンタ。大したもんだ。」

ヨウム「だろ?……………で、グルーシス。さっきの約束だが…………。」

グルーシス「ああ。お前が兄貴分って事で良いぞ。」

ヨウム「いや、冗談のつもりだったんだが…………。」

 

 ヨウムは、グルーシスが意外と素直な事に、そう言う。

 グルーシスは、ヨウムに言った。

 

グルーシス「約束は約束だ。だが、正直に言っておく。」

ヨウム「え?」

グルーシス「カリオン様がお前を殺せと俺に命令したなら、俺は迷わず、お前を殺しに行く。悪いが、それが俺の中の絶対的なルールなんだ。」

ヨウム「分かった。肝に銘じておく。」

 

 グルーシスとヨウムは、そう話す。

 ヨウムが、グルーシスを穴の中から引っ張り出す。

 グルーシスは、体に付いた土を叩き終えると、ヨウムに言う。

 

グルーシス「俺も、お前達の一行に加わるぜ。他の国も見てみたいしな。」

ヨウム「それは構わないが…………良いのかよ?」

グルーシス「俺は見聞を広めるのが任務だから、好きにさせてもらうさ。」

 

 こうして、グルーシスもヨウムの一行に加わる事になった。

 すると、ゴブタが口を開く。

 

ゴブタ「今の戦い、実に見事だったっす。」

グルーシス「ゴブタ君?」

ゴブタ「自分は確信したっす。姐さんの魔法があれば、あのジジイも倒せると。」

グルーシス「おいおい、ジジイって、白老殿の事か!?」

ヨウム「何か、作戦でもあんのかよ?」

ゴブタ「しっ!声がデカいっす!良いっすか?まず、あらかじめ、ミュウランさんの魔法で…………。」

 

 そう言って、ゴブタ、ヨウム、グルーシスの三人は、作戦会議を始める。

 それを見ていたミュウランは。

 

ミュウラン(何をやっているのかしらね、私は…………。)

 

 そう思うのだった。

 その後、白老の元に向かう。

 

白老「ほう。模擬戦とな?」

ゴブタ「今日という今日は、イヤンと言わせてやるっすよ!覚悟は良いっすか!?じじ…………師匠!」

ヨウム(絶妙にキレのない挑発だな………。)

白老「その意気やよし!久々に、実践に即した稽古をつけてやろう!」

 

 ゴブタは、ジジイと言いかけたが、即座に訂正して、ヨウムはそう思う。

 こうして、模擬戦が始まる。

 

ゴブタ(設置型の魔法陣は、既に配置済み!後は、そこに誘導できれば…………!)

 

 ゴブタは、そう思う。

 白老、ゴブタ、ヨウム、グルーシスが木刀を持って、構える。

 

白老「では、始めるとするかの!」

 

 白老がそう言うと、即座にゴブタの方へと向かい、剣を振る。

 ゴブタは、それを躱す。

 

ゴブタ「うっ!うわあっ!(やっぱり、オイラを狙ってきたっすね!)」

ミュウラン「液状化。」

 

 ゴブタが躱す中、ミュウランが魔法を発動する。

 すると、白老の足元の地面が液状化して、足が少し沈む。

 

白老「ぬっ?」

ヨウム「かかった!今のうちに一斉に………!」

 

 ヨウムは、勝ちを確信するが、気がつくと、白老の姿が目の前から消えていた。

 それに気づいたゴブタとヨウムが口を開く。

 

「「あれ?」」

ゴブタ「あのジジイ、どこに…………?」

「「あっ!」」

 

 ゴブタがそう言う中、ヨウムとグルーシスが声を出す。

 そう。

 目の前に、白老が現れたのだ。

 ゴブタも気づいて、後ろを振り向くが、時既に遅し。

 

白老「ジジイじゃと?」

ゴブタ「わああっ!よよよよよ……………!」

白老「ふんっ!」

ゴブタ「イヤンッ!っす…………!」

 

 白老は、木刀をゴブタに叩きつけ、ゴブタは倒れる。

 それには、ヨウムとグルーシスも驚く。

 

グルーシス「嘘だろ…………!?」

ヨウム「なんで普通に動けんだよ!?」

白老「瞬動法じゃ。教えた筈じゃがのう。」

ヨウム「ええ……………!?」

 

 グルーシスとヨウムがそう言う中、瞬動法でヨウムの隣に立った白老がそう言って、ヨウムは顔を青ざめる。

 結果、ゴブタ、ヨウム、グルーシスの三人は、ボコボコにされた。

 白老は、三人に聞く。

 

白老「……………さて。説明してもらえるかの?どういうつもりで、わしを罠に嵌めようとしたのかを。」

ヨウム「あっ、いや……………。」

 

 白老の質問に、白老の前で正座させられているヨウム達は、冷や汗を垂れ流す。

 それを見ていたミュウランは、恐る恐る白老に話しかける。

 

ミュウラン「あの……………。」

白老「ああ、お嬢さんは良いんじゃよ。どうせ、このバカどもに唆されただけじゃろ。」

ミュウラン「はぁ……………。」

 

 白老は、笑顔でミュウランにそう答え、すぐにゴブタ達に言う。

 

白老「お前達。念の為に言っておくがの。間違っても、リムル様とレイト様を試す様な真似はするなよ?」

ゴブタ「何を言ってるんすか…………?あの2人に通用する訳が無いっすよ…………。」

白老「そうかのう?レイト様はともかく、リムル様は案外引っかかりそうな気がするんじゃがのう。」

 

 白老の言葉に、ゴブタはそう答えるが、白老はそう言う。

 一方、俺たちは。

 

リムル「へっくしょい!」

レイト「リムル、大丈夫か?」

ミョルマイル「おや、風邪ですかな?」

リムル「いや、誰か噂してるんだろう。」

ミョルマイル「レイトの旦那もそうですが、リムルの旦那は人気者ですから。あ〜もう一杯、いかがですか?」

リムル「じゃあ、貰おうかな。」

レイト「俺も貰うよ。」

 

 俺とリムル、そして、リムルを介して知り合った商人のミョルマイルは、そう話す。

 一方、テンペストの嵐ノ湯では、温泉にヨウム達が浸かっていた。

 

ヨウム「あ〜…………生き返る。」

ゴブタ「あのジジイは、きっと殺しても死なないっすね。」

グルーシス「ゴブタ君…………。白老殿に一泡吹かそうというのは、もう諦めた方が良いんじゃないかな?」

ゴブタ「いつか必ず、一矢報いるっす!」

グルーシス「その根性、恐れ入るよ。」

 

 ヨウムがそう言う中、ゴブタは白老に一矢報いようとする事は諦めていない発言をして、グルーシスは苦笑を浮かべる。

 ゴブタは、ミュウランの事を話題に出す。

 

ゴブタ「しっかし、あの魔法使いのお姉さん、凄い腕っすね!」

ヨウム「へへっ。だろ?しかも、良い女だしな。」

グルーシス「異論はない。俺の子を産んでくれねえかな……………。」

 

 ゴブタがそう言うと、ヨウムは誇らしげにそう言って、グルーシスも同意する中、そんな発言をする。

 すると、ヨウムが言う。

 

ヨウム「おい、ちょっと待てよ!そりゃダメだぜ!あの人は、俺の部下だからな!」

グルーシス「恋愛は自由。早い者勝ちだぜ。」 

ゴブタ「早い者勝ちっすか!分かったっす!」

ヨウム「ちょっ!?お前まで…………!?」

 

 三人はそう言い争う。

 だが、そんな下世話な会話は、女湯にいる朱菜、紫苑、火煉、ミュウランにも聞こえていた様で。

 

朱菜「……………困った人達ですね。」

紫苑「ご安心を、朱菜様!」

火煉「ええ。あの三人には、泣くほど叩きのめして、性根を叩き直した方が良さそうですね。」

ミュウラン「私も協力します。」

「「「ん?」」」

 

 朱菜が呆れる中、紫苑と火煉はそう言って、ミュウランも賛同する。

 4人は、顔を見合わせる。

 すると、朱菜が笑い出す。

 

朱菜「フフフッ…………。」

紫苑「ウフフフッ。」

火煉「フフフフ…………。」

ミュウラン「フフッ。」

 

 そうして、4人は笑う。

 その後、火煉が本当に風呂上がりの三人の元に向かい、ボッコボコにしたのは、また別のお話。

 一方、俺たちは、食事をしていた。

 無論、子供達も一緒にいる。

 これは、ミョルマイルの商売のお礼と、俺、リムル、シズさんの送別会を兼ねた物なのだ。

 子供達は、リムルが出した漫画を読んでいた。

 

アリス「ちょっと!早く読みなさいよ!」

ケンヤ「待てって!今、良い所なんだから!」

リョウタ「まさか、こんな展開とは…………!」

ゲイル「驚きましたね。」

クロエ「…………………。」

シズ「皆、熱中してるわね……………。」

 

 アリス、ケンヤ、リョウタ、ゲイルがそう話す中、クロエは無言で読んでいて、シズさんは苦笑を浮かべる。

 そんな中、俺、リムルは、ミョルマイルと話をしていた。

 

リムル「……………で、どうかな?商売の方は?」

ミョルマイル「おかげさまで、高品質のハイポーションは、引く手数多です。西側諸国にも噂を広めてありますから、この先、取引量はますます増えますよ。」

リムル「そして、ミョルマイル君も儲かると。」

ミョルマイル「当然です。それが私の商売ですからな。いやいや、ご心配なく。ちゃ〜んと、テンペストにも支払う物はきちんと、ええ。」

レイト「なら、良いんだけどな。」

 

 ミョルマイルは、見た目は少し胡散臭いが、中々に信頼できる人だ。

 ミョルマイルは、後ろにいる子供達とシズさんを見ながら言う。

 

ミョルマイル「ん〜今日の支払いも私もちですよ、勿論。商売のお礼と、旦那達の送別会を兼ねて、ねえ。」

リムル「遠慮なく甘えるとしよう。」

ミョルマイル「ベルヤード男爵も感謝していましたよ。ハイポーションが流通すると、ブルムンド王国にも利がありますからな。」

レイト「ベルヤード男爵……………ね。」

 

 そう。

 以前、俺とリムルは、ブルムンド王国とテンペストの安全保障条約の調印式に参加した。

 無論、盟主としてだ。

 だが……………。

 

レイト「しっかし、ブルムンド王国とテンペストの安全保障条約を結んだのは良いが………してやられたな。」

リムル「ああ。もし森を抜けて、他の国がブルムンドに攻め込んだ場合、テンペストに防波堤になれって事だからな。」

ミョルマイル「政治とは、そういう物です。ですが、逆にテンペストがどこかの国の侵攻を受けた場合、ブルムンドは共闘するでしょう。持ちつ持たれつですよ。」

 

 まあ、それが安全保障条約だしな。

 前世の日本とアメリカも、そんな関係だったしな。

 それを聞いたリムルは、怪訝そうに言う。

 

リムル「テンペストが侵攻される事なんて…………。」

ミョルマイル「いやいやいや。何があるか、分かりませんぞ。」

リムル「ん?」

 

 リムルがそう言う中、ミョルマイルはそう返す。

 つまり、ミョルマイルが言いたい事は分かる。

 

ミョルマイル「テンペストはこの先、貿易の中心地になると、わしは睨んでおりますわい。」

リムル「ドルフさんもそんな事言ってたな。」

ミョルマイル「そうなればですぞ。テンペストを目障りに思う国もあるでしょうな。例えば……………。」

レイト「ファルムス王国……………か?」

ミョルマイル「まあ、そうなりますな。レイト殿は、それを懸念しているわけですな。」

 

 やっぱりか。

 すると、リムルは俺を見てくる。

 

リムル「レイト…………ここ最近、何か考え事をしてると思ったら……………。」

レイト「ガゼル王も言ってただろ。ファルムスの国王は欲深いって。」

ミョルマイル「ま、まあまあまあ。まっ、すぐにどうこう言う事はないでしょうが、ええ。警戒するに越した事は無いですからな。」

リムル「ああ…………そうだな。」

 

 やっぱり、胸騒ぎがする。

 ファルムス王国が、欲を掻いて、テンペストに攻め込んでくる可能性があるからな。

 俺は、リムルに声をかける。

 

レイト「リムル。」

リムル「うん?」

レイト「やっぱり、ファルムス王国の動きは、警戒するべきじゃ無いのか?」

リムル「う〜ん……………。でも、すぐに動くわけじゃないから、警戒しつつ、過ごすしか無いんじゃ無いのかな?」

レイト「それは……………。」

 

 それでは、手遅れになるかもしれない。

 もし、既にファルムス王国が動き出そうとしていたら。

 俺は、仲間を守れるのか?

 そんな懸念を抱く。

 そう思う中、俺の懸念が、最悪の形で的中する事になるとは、この時の俺は思ってもいなかった。




今回はここまでです。
いよいよ、暗躍していた悪意が、テンペストを襲います。
そして、坂口日向が登場します。
坂口日向を相手に、レイトはどの様に対処するのか。
ここから先のエピソードは、陰鬱なエピソードが多くなるので、読む際には、気を付けてください。
なんとか、バトルファミリアの主題歌である『Dance Dance』を聴きながら、執筆を進めていきます。
ちなみに、何度も言いますが、ファルムス側と、ファルムスに襲撃されているテンペストに関しては、原作とほぼ同じなので、カットします。
そこまで書いていたら、私のメンタルが持たないというのもありますが。
感想、リクエストは、絶賛受け付けています。
リクエストで、ヒナタは変身させないのかというのが多いですが、何に変身させるかは、未定です。
エビル及びライブに関しては、変身者は決まっていますので。
それ以外で、ヒナタにこの仮面ライダーに変身させて欲しいというのがあれば、お願いします。
ヒナタの悪魔はヒュウガだったり、リムルの悪魔はエミルスだったりと、一部、まおりゅうのキャラが登場します。


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第26話 襲来する悪意

 送別会の翌日、俺、リムル、シズさんは、イングラシア王国から旅立つ時が来た。

 見送りには、ケンヤ、アリス、リョウタ、ゲイル、クロエ、優樹、ティス先生が来た。

 子供達は泣いていた。

 

クロエ「リムル先生…………!シズ先生………!レイトさん…………!行っちゃやだ…………!」

リョウタ「クロっち…………三人を引き止めるのはダメだよ…………!」

アリス「そうよ!さっさと行きなさいよ!」

クロエ「でも……………!」

リムル「シズさん、レイト。」

シズ「ええ。」

レイト「ああ。」

 

 泣く子供達に対して、俺たちは、抱きしめる。

 俺は神楽坂優樹に、シズさんはティス先生に話しかける。

 

レイト「この子達を頼む。」

優樹「ええ。お任せ下さい。」

シズ「ティスさん、お願いします。」

ティス「はい。」

 

 俺たちはそう話して、リムルと共に、嵐牙の方へと向かう。

 

クロエ「リムル先生!」

 

 すると、クロエがリムルの名を叫びながら向かい、リムルに抱きつく。

 リムルは、クロエの肩を優しく叩いていると、ケンヤ達が近寄る。

 

ケンヤ「ま…………全く。クロエは泣き虫だな。泣くなよ!」

リョウタ「ケンちゃんだって…………。」

ケンヤ「目から汗が出ただけだ!」

クロエ「リムル先生…………!」

リムル「ん…………。」

 

 ケンヤとかは、素直じゃないな。

 すると、リムルはクロエに視線を合わせる。

 

リムル「よしよし、クロエ。シズさん、良いよな?」

シズ「うん。」

 

 そう言うと、リムルは、シズさんの抗魔の仮面を、クロエに渡す。

 

リムル「これをやるから、元気出せよ。」

アリス「ああっ!」

ケンヤ「うう…………あっ!」

アリス「あたしも欲しかったのに!」

クロエ「えへへへ………!私が貰ったの。」

ケンヤ「良いな、良いな!」

アリス「ずるい、ずるい!」

 

 クロエがシズさんの抗魔の仮面を貰ったことに、ケンヤとアリスは抗議して、リョウタとゲイルは、お互いを見ていた。

 

レイト「そうそう。アリス達にも、プレゼントがあるんだ。」

子供達「ん?」

 

 そう言って、俺は、子供達に新しい制服を渡す。

 これは、朱菜から受け取った物だ。

 子供達にも、ピッタリだな。

 

ケンヤ「おお〜…………!」

リョウタ「ケンちゃん、カッコいい!」

ケンヤ「リョウタだって!」

ゲイル「素晴らしいですね!」

アリス「か…………可愛い!」

クロエ「ああ〜…………!」

リムル「国に朱菜って手先の器用な子が居てな。作って、レイトに送らせるように頼んだんだ。」

 

 どうやら、子供達は気に入ったようだな。

 良かった。

 

ケンヤ「先生!レイトさん!」

クロエ「ありがとう!」

シズ「皆、ちゃんと勉強するのよ。」

レイト「別れは辛いけど、二度と会えなくなる訳じゃない。」

リムル「ああ。レイトの言う通りだ!嵐牙も連れて、遊びに来るから。」

嵐牙「我らが居なくても、しっかり勉強するのだぞ!」

ケンヤ「か…………必ず、遊びに来てくれよ。」

アリス「そそ…………卒業したら、こっちから行ってあげても良いんだからね…………!」

レイト「ああ、待ってるよ。」

リムル「中央都市リムルの街を挙げて、大歓迎だ!」

 

 俺たちは、そう約束する。

 そして、俺、リムル、シズさんは嵐牙に乗って、嵐牙は駆け出す。

 

ケンヤ「先生!レイトさん!シズ先生!」

リョウタ「またね〜!」

ゲイル「さようなら〜!」

アリス「気をつけて〜!」

リムル「元気でな〜!」

レイト「また、いつか会おう!」

シズ「勉強を頑張ってね!」

 

 俺たちは、子供達にそう返して、イングラシア王国を後にする。

 しばらく嵐牙が駆けていると、嵐牙が聞いてくる。

 

嵐牙「主達にシズ殿よ。なぜ、大切な仮面を渡したのです?」

リムル「ん?ああ……………何でだろうな。」

 

 嵐牙の質問に、リムルがそう答えると、嵐牙は足を止め、リムルの話を聞く。

 

リムル「俺にも分からない。」

シズ「でも、何でか、クロエにあげるのが、自然な事だと思ったの。それが一番だって。」

嵐牙「なるほど…………。」

レイト「もしかしたら、クロエは英雄に…………もしかしたら、勇者にだってなれるかもしれないしな。」

嵐牙「まさか。」

 

 俺たちがそう言うと、自然と笑みが溢れる。

 俺も、クロエに渡す理由を聞いて、納得していた。

 クロエなら、大切にしてくれる。

 そんな気がする。

 

リムル「嵐牙。」

嵐牙「はっ、我が主。」

レイト「俺たちの街に…………家に帰ろう。皆が待ってる。」

 

 リムルは、スライム状態に戻る。

 街からある程度離れたので、空間転移で帰る事にする。

 だが、少し気になる事があり、周囲を見渡す。

 

レイト「……………っ!?」

リムル「どうした、レイト?」

レイト「いや、殺意を向けられている様な気がするんだが…………。」

リムル「えっ?…………嵐牙、影に入ってろ。」

嵐牙「はっ!」

 

 俺たちは、嵐牙から降りて、周囲を見渡す。

 殺意を向けられていると思っていると。

 

科学者『告。』

レイト「どうした?」

科学者『広範囲結界に囚われました。』

レイト「結界だと!?」

科学者『結界外への空間干渉系のスキルは、封じられました。空間転移は不可能です。』

 

 何故、結界が…………!?

 

レイト「リムル、どう見る?」

リムル「これは…………嫌な予感がする。」

蒼影「リムル様、レイト様、シズ殿…………。」

シズ「あっ!」

 

 すると、蒼影の声が聞こえてきて、目の前の木の方を見ると、蒼影が居た。

 ただ、負傷していた。

 

リムル「蒼影!」

レイト「分身体か?」

シズ「大丈夫ですか!?」

蒼影「リムル様、レイト様、シズ殿…………お逃げ下さい。」

リムル「何があった!?」

蒼影「敵です。それも、想像を絶する………!」

 

 蒼影がそう言おうとすると、消えてしまう。

 

リムル「蒼影!」

レイト「何が起こっているんだ…………!?」

シズ「分からない…………!」

リムル「あっ、嵐牙!」

 

 リムルは、嵐牙を呼び出すが、出てこない。

 これまで、嵐牙がリムルの呼び出しを無視するなんて事は、一度も無かったはず………!

 すると。

 

科学者『告。』

レイト「どうした?」

科学者『別種の広範囲結界に囚われました。』

レイト「別のだと!?」

リムル「何だ、それ?」

科学者『結界内部でのスキル使用が封印。』

リムル「抵抗(レジスト)しろ!」

レイト「大至急、抵抗(レジスト)しろ!」

 

 俺とリムルがそう叫ぶと、しばらくして、リムルの方には大賢者が、俺の方には科学者が報告する。

 

科学者『抵抗(レジスト)に成功しました。ただし、魔法系統のスキルは、全て制限を受けます。』

レイト「マジかよ…………魔法が使えないのかよ!?」

シズ「えっ!?」

 

 まずいな…………!

 ちなみに、キマイラやダイモンへの変身自体は、問題なく行える様だ。

 これは、かなり面倒な事になったな。

 それにしても、蒼影に勘付かれずに結界を張れるとはな。

 戦う前から、魔法を封じられるとは。

 これは、魔物と戦い慣れているプロという感じがするな。

 俺たちが周囲を見渡す中、1人の女性がやって来る。

 しかも、見覚えがある。

 

シズ「ヒナタ……………!?」

レイト「ヒナタ・サカグチ……………!」

ヒナタ「初めまして……………かな?もうすぐさようならだけど。」

 

 マジかよ……………。

 すると、脳裏にカイジンとのやり取りが浮かぶ。

 

カイジン『おいおい、西方聖教会のヒナタ・サカグチじゃねぇか?』

レイト『有名なんですか?』

カイジン『ああ。魔物に対して容赦ないらしいが……旦那。とんでもない人物が運命の相手だな。……殺されるなよ。』

 

 まさか、こんなタイミングで会うとはな。

 本当に最悪なタイミングだよ。

 これは、俺、下手したら死ぬかもしれないよな。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「初めましてだと思うけど、何か御用ですか?どなたかとお間違えでは?」

レイト「リムル。多分、無駄だ。」

リムル「え?」

ヒナタ「ふぅん。丁寧なのね。魔物の国の盟主のリムル=テンペスト。それに、レイト=テンペスト。見抜いているなんてね。」

レイト「どうやら、こっちの事はお見通しみたいだな。」

リムル「えっ!?」

ヒナタ「そうね。密告があったもの。」

 

 密告?

 誰かが俺たちの事を売ったのか?

 となると、最も疑わしいのは……………神楽坂優樹。

 何せ、イングラシアから旅立つ直前に、何かを企んでいたような気がしたのだ。

 

レイト「……………それで、俺たちに何の用なんだ?」

ヒナタ「君たちの街がね、邪魔なのよ。だから潰す事にしたの。」

リムル「何だって?」

ヒナタ「そういう訳で、今、君たちに帰られるのは、都合が悪いのよ。」

シズ「待って、ヒナタ!」

レイト「まさか、既にファルムス王国が動き出しているのか!?」

ヒナタ「さあ?どうかしら。」

 

 マジかよ……………!?

 もうファルムス王国が動き出してるのかよ!?

 いくら何でも、早すぎる!

 いや、早すぎるんじゃないな。

 俺はともかく、リムルとシズさんだけでも逃がさないと!

 一方、火煉達の方は。

 

火煉「…………今日は、こんな所にしておきましょうか?」

グルド「そうですね……………。」

蒼月「お疲れ様です。」

 

 3人は、特訓をしていた。

 俺から預かった、ライダーシステムを使いこなす為に。

 3人が帰ろうとすると。

 

グルド「火煉殿…………あれは…………!?」

火煉「結界……………!?」

蒼月「しかも、火の手が上がっていますよ!」

火煉「まさか…………!?すぐに戻りましょう!」

 

 テンペストの周囲を、結界が囲い、火の手が上がっているのが見えた。

 3人は、すぐに戻ろうとする。

 だが。

 

???「ヒャッハー!」

火煉「っ!?」

 

 そこに、謎の魔物が取り囲む。

 その魔物達は、色んな姿をしていた。

 モグラみたいな個体も居れば、蜘蛛の様な個体、うさぎの様な個体に亀のような個体がいた。

 それらを、俺が見ていたら、すぐにイマジンであると判断しただろう。

 

グルド「何者だ!?」

 

 グルドは、そいつらに問いかける。

 すると、一際大きい個体が言う。

 

???「貴様らには、テンペストに戻ってもらっては、困るのだよ。」

蒼月「まさか、君たちが差し向けたのか!?」

???「差し向けた?ああ…………あれはあの人間どもが勝手にやっている事だ。俺たちには関係ない。」

火煉「なら、どうして私たちの邪魔を!?」

???「関係ないわ!」

 

 そう言って、イマジン達は攻撃して来る。

 3人は、躱して、バイスタンプを構える。

 

カブト!

スパイダー!

クワガタ!

Deal……!

 

 3人はバイスタンプを起動して、それぞれのドライバーの上部に押印する。

 そして、それぞれのオーインジェクターに、バイスタンプを押印する。

 

「「「変身!」」」

 

Bane Up!

Decide up!

Delete up!

破壊!(Break)世界!(Broke)奇々怪々!(Broken)

仮面ライダーベイル!

Deep.(深く)Drop.(落ちる)Danger.(危機)

(仮面)Rider Demons!

Unknown.(未知なる)Unlest.(混乱が)Unlimited…(越える)

仮面ライダーオーバーデモンズ!

 

 火煉は仮面ライダーベイルに、蒼月は仮面ライダーデモンズに、グルドは仮面ライダーオーバーデモンズに変身して、謎のイマジン達と応戦する。

 だが、イマジン達は、倒しても倒しても湧いてくる。

 

火煉「くっ…………キリがない…………!」

蒼月「急がないと……………!」

グルド「このままでは……………!」

???「うりゃあ!」

 

 3人は苦戦していた。

 テンペストに早く戻らないといけないという焦りから、本調子を出せずにいた。

 すると、1人の男性が、イマジンの一体に攻撃する。

 

火煉「あなたは…………!?」

イマジン「おい、まさか、ゼロノスか!?」

グルド「ゼロノス…………?」

侑斗「ああ。俺は桜井侑斗だ。」

 

 そう。

 桜井侑斗が居たのだ。

 

侑斗「お前らは早く、テンペストに向かえ。ここは、俺がどうにかしてやる。」

蒼月「たった1人で…………!?」

侑斗「心配すんな。」

 

 桜井侑斗はそう言って、ゼロノスベルトを装着して、赤いレバーをスライドする。

 すると、待機音が流れてきて、ゼロノスカードを構える。

 

侑斗「変身。」

 

 そう言うと、ゼロノスカードをゼロノスベルトに装填する。

 

アルタイルフォーム

 

 その音声が流れると、桜井侑斗のオーラがフリーエネルギーに変換され、スーツとなり、胸や顔の線路が黄色くなると、顔に二頭の牛が出てきて、それが変形する。

 これが、仮面ライダーゼロノス・アルタイルフォームだ。

 

イマジン「やっぱりゼロノスだ!」

イマジン「何でここに!?」

侑斗「最初に言っておく。俺はか〜な〜り!強い!」

 

 侑斗はそう言って、イマジン達と応戦する。

 火煉達がそれを見ていると。

 

侑斗「おい!さっさとテンペストの方に向かえ!」

火煉「あなたは、一体…………!?」

侑斗「そんな事はどうでも良いだろ!さっさと行け!」

蒼月「火煉さん。彼の言う通りだと思うよ。早く、テンペストに向かおう!」

火煉「……………頼みます!」

 

 火煉達は、侑斗にその場を任せて、テンペストの方へと向かっていく。

 

侑斗「行ったか。…………リムルとレイトには、魔王になってもらわないと困るからな。まあ、それはそれとして、お前らの相手は、俺だ!」

 

 そう言って、侑斗はイマジン達と再び戦いだす。

 侑斗は、プロレス技やゼロガッシャーを使ったりして、イマジンを倒していく。

 

侑斗「おりゃ!うらっ!」

 

 侑斗のプロレス技や、ゼロガッシャーでの攻撃で、イマジン達はどんどん減っていく。

 一体のイマジンが、侑斗の背後から攻撃しようとするが。

 

???「侑斗〜!」

 

 一体のイマジンが、指から銃を撃ち、そのイマジンを攻撃する。

 デネブだ。

 デネブは、侑斗に駆け寄る。

 

デネブ「侑斗!大丈夫!?」

侑斗「遅いんだよ!デネブ、来い!」

 

 侑斗はそう言いながら、ゼロノスベルトに装填されているカードを抜き、裏返しにして、レバーを操作する。

 そして、再び装填する。

 

ベガフォーム

 

 その音声が流れると、侑斗の後ろにデネブが立って、両手を交差して、侑斗の肩に置く。

 すると、デネブの手が装甲になり、デネブが侑斗に吸い込まれ、胸にデネブの顔を模した装甲が生まれ、マントも出現する。

 電仮面も、牛に似た物が消え、ドリルが現れ、それが星形になる。

 これが、仮面ライダーゼロノス・ベガフォームだ。

 

イマジン「姿が変わったぞ!?」

デネブ「最初に言っておく!胸の顔は、飾りだ!」

侑斗「どうでも良いんだよ!?」

 

 デネブのちょっとズレた発言に、侑斗は突っ込む。

 敵側の少し弁慶に似たイマジンは、ゼロノスに攻撃しようとするが、あっさり攻撃を受け止められ、反撃される。

 そして、ゼロノスは、ゼロノスベルトのフルチャージスイッチを押す。

 

Full charge

 

 スイッチを押した後、ゼロノスカードを抜いて、ゼロガッシャーに装填する。

 すると、大剣状態のゼロガッシャーに、エネルギーがチャージされる。

 

イマジン「ぬぐわぁぁぁ!!」

デネブ「ふっ!」

 

 イマジンは、ゼロノスの方に向かうが、大剣での必殺技、スプレンデットエンドを食らい、爆発する。

 

デネブ「倒せたな。」

侑斗「だな。」

 

 ゼロノスは、ゼロノスベルトに装填されていたゼロノスカードを取る。

 すると、ゼロノスカードは消滅する。

 ゼロノスベルトを外すと、変身が解除される。

 

デネブ「彼女達、テンペストに辿り着けたかな…………。」

侑斗「まあ、辿り着いたにしても、結界が張ってあるから、入れないけどな。」

デネブ「本当に、これで良かったの?」

侑斗「バ〜カ。流石に、これ以上介入するのはまずい。戻るぞ。」

 

 そう言って、侑斗とデネブは、移動を開始する。

 一方、火煉達は。

 

火煉「早くテンペストに到着しないと!」

グルド「ですな!」

蒼月「はい!」

 

 三人は、テンペストに向かっていた。

 だが。

 

イマジン「ヒャッハー!」

 

 すると、イマジン達が再び現れる。

 今度は、ライオンの頭のイマジンや、イカの様なイマジン、サイの様なイマジンなどが現れる。

 

火煉「また…………!?」

グルド「先程の男が抑えていたのではないのか!?」

蒼月「いや、姿が違う!別の奴が混じっていたとしか思えない!」

イマジン「お前達には死んでもらう!」

 

 青髭を持つイマジンがそう言うと同時に、周囲のイマジンたちも、火煉達に向かっていく。

 火煉達は、イマジン達を倒していく。

 一方、俺たちは。

 

シズ「ヒナタ!やめて!」

ヒナタ「シズ先生…………。魔物にされて、記憶を一部操作されたのね。」

 

 シズさんの懇願にも、ヒナタはそう言う。

 ダメか……………!

 なら。

 

レイト「リムル、シズさん。先にテンペストに戻ってくれ。」

リムル「ええっ!?」

シズ「キメラ君!?」

レイト「多分、テンペストには、ファルムス王国が攻めてる。ヒナタは俺がどうにか抑えるから、早く行け。」

リムル「でも……………!?」

レイト「良いから、行け!!」

ヒナタ「逃すと思ってるの?」

 

 ヒナタはそう言いながら、剣で攻撃しようとする。

 だが、俺はすぐにリバイスラッシャーを取り出して、鍔迫り合いに持ち込む。

 俺は、鍔迫り合いをしつつ、リムルとシズさんに向かって叫ぶ。

 

レイト「良いから行け!俺のキメラストライカーを貸すから!」

 

 俺はそう叫んで、無限収納から、キメラストライカーを取り出す。

 リムルとシズさんは、少し戸惑っていたが、叫ぶ。

 

リムル「……………わ、分かった!レイト、死ぬなよ!」

シズ「キメラ君も、気をつけてね!」

 

 そう言って、リムルとシズさんはキメラストライカーに乗り、外へと向かって行った。

 頼むぜ、テンペストに辿り着いてくれよ。

 俺とヒナタは、少し離れ、お互いを見る。

 

レイト「……………さて。アンタは、ファルムス王国の差し金か?坂口日向。」

ヒナタ「詳しいのね。…………まあ、少し違うわね。私は、神聖法皇国ルベリオスにおける神の右手、法皇直属近衛師団筆頭騎士にして、聖騎士団長、ヒナタ・サカグチ。」

 

 ルベリオスね……………。

 ファルムス王国の差し金という訳では無さそうだな。

 俺は腰にキメラドライバーを装着する。

 

レイト「まさか、そんなに役職があるなんてな。」

ヒナタ「その態度、物知りね。魔物に名が売れても嬉しくないけど。」

レイト「アンタの事は、警戒してたからな。」

ヒナタ「そう。私が二つ役職を持つのは事実よ。意味は無いけどね。私が仕えるべきは法皇ではなく、神ルミナスなのだから。」

 

 そう言って、再び剣を構える。

 俺は、少しでも時間稼ぎをしようと、話しかける。

 

レイト「待て!シズさんを勝手に魔物にした事に関しては謝る!だが、それしか助ける方法が無かったんだ!」

ヒナタ「魔物の言葉に興味は無い。」

 

 そう言って、突き攻撃をしてきたので、俺はすぐに躱す。

 

レイト「おい、待て!」

ヒナタ「今のを躱すのね。少し驚いた。」

 

 交渉の余地はないか……………!

 なら、仕方ない!

 俺は、ツインキメラバイスタンプを取り出して、起動する。

 

ツインキメラ!

 

 バイスタンプを起動した後、キメラドライバーに装填する。

 すると、待機音が流れる。

 

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

 

 待機音が流れる中、俺は叫ぶ。

 

レイト「変身!」

 

 そう言って、バイスタンプを一回倒す。

 すると、蟹の鋏と鰐の顎が、同時に俺を閉めて、変身させる。

 

スクランブル!

キングクラブ!クロコダイル!仮面ライダーキマイラ!キマイラ!

 

 俺は、仮面ライダーキマイラへと変身する。

 まずは、キマイラでどこまで行けるのか試してみるか。

 すると。

 

ヒナタ「仮面ライダー…………?」

レイト「そうだよ!今は魔物だけど、こう見えても元日本人だ!」

 

 そうだ!

 そもそも、こんな世界の中で、仮面ライダーというのは、日本人である証明になる!

 仮面ライダーなんて、前世の産物だしな。

 

ヒナタ「おかしな事を言うのね。……………笑わせないで。」

 

 そう言って、攻撃してくる。

 俺は、すぐに躱す。

 

レイト「嘘じゃない!この仮面ライダーキマイラこそが、その証明だ!この世界に、仮面ライダーは居ない筈だろ!?」

ヒナタ「魔物の言葉に興味は無いと言った筈よ。」

 

 ダメか。

 なら、戦うしかない!

 俺は、リバイスラッシャーを手に、ヒナタと戦う。

 一方、リムルとシズさんは。

 

シズ「キメラ君は、大丈夫なのかな…………。」

リムル「あいつは強いから、そう簡単にやられないと良いんだが……………。」

 

 リムルとシズさんはそう話しながら、結界の外へと向かっていく。

 そんな中、リムルの心境は。

 

リムル(もう少し……………ちゃんとあいつの言葉を聞くべきだった!あいつは、こうなる事に気づいていたのかもしれないのに!)

 

 リムルの心境は、後悔に染まっていた。

 ちゃんと、レイトの言葉を聞いて、対策を立てるべきだったと。

 そんな中、リムルの影から、謎の気配が現れ始める。

 それには、リムルもシズさんも気づいていなかった。

 しばらくキメラストライカーを爆走させると、結界の端に到着する。

 

リムル「ここか……………。」

シズ「でも、どうやって外に出れば………!?」

リムル「任せてくれ。…………大賢者、解析を頼む。」

 

 リムルはそう言って、結界に触れる。

 すると、答えが返ってきた。

 

大賢者『解。この結界は、聖浄化結界(ホーリーフィールド)です。この結界内では、魔物は弱体化します。』

リムル「そうか…………。脱出方法は?」

大賢者『解。多重結界を用いれば、抵抗(レジスト)可能です。』

リムル「でも、シズさんの場合はどうするんだ?」

大賢者『解。個体名シズエ・イザワも、多重結界を用いれば、抵抗(レジスト)可能です。』

 

 リムルと大賢者のやり取りが終わり、リムルはシズさんに話しかける。

 

リムル「シズさん!多重結界で、脱出するぞ!」

シズ「え、ええ!」

 

 リムルは、シズさんにも多重結界を使い、結界の外に出る。

 すると。

 

嵐牙「我が主!」

リムル「うわっ!?」

 

 嵐牙が影から出てきて、リムルに飛びつく。

 

リムル「嵐牙…………!そうか、結界の外に出れたから、出れるようになったんだな!」

嵐牙「はい!…………レイト様は?」

リムル「レイトはまだ、結界の中だ。俺たちを逃がしてくれたんだ。」

嵐牙「何と……………!?」

シズ「キメラ君……………。」

リムル「とにかく、今はあいつを信じるしかない!俺たちは、テンペストに戻るぞ!」

嵐牙「分かりました!」

 

 リムル達は、テンペストに戻ろうとする。

 その際、少し移動する。

 ヒナタ以外の敵を警戒してだ。

 しばらく移動すると。

 

イマジン「ヒャッハー!」

リムル「何だ!?」

 

 イマジンが攻撃を仕掛けてくる。

 火煉達を襲うイマジン達とは、違うイマジンの一団だった。

 

嵐牙「貴様ら!何者だ!?」

シズ「魔物……………!?」

リムル「いや…………こいつらは、イマジンだ!」

イマジン「お前らはここで死ぬのだ。」

 

 リムル達がそう叫ぶ中、牛の魔王の様なイマジンが、そう言う。

 シズさんは、リムルに話しかける。

 

シズ「イマジンって?」

リムル「イマジンってのは、仮面ライダー電王で登場する敵の事だ!何でここに………!?」

 

 リムルが、イマジンだと判断したのは、周囲の敵を見たからだ。

 バットイマジンに、クラーケンイマジン、アルマジロイマジン、アルビノレオイマジンなどが居たからだ。

 リムルが、イマジンの存在に混乱する中、イマジン達は攻撃してくる。

 

嵐牙「我が主!どうしましょうか?」

リムル「何とか、こいつらを倒して、テンペストに戻るぞ!」

シズ「分かったわ!変身!」

 

 シズさんは、クウガのマイティフォームに変身して、イマジン達と応戦する。

 一方、俺とヒナタは、お互いに剣で攻撃し合っていた。

 

レイト(くっ……………強い!)

 

 中々隙がない。

 こいつ、強いな。

 下手したら、白老以上な気がするな。

 俺はそう思いつつ、ツインキメラバイスタンプを、リバイスラッシャーのオーインジェクターに押印する。

 

スタンプバイ!

Here We Go!Let's Go!

Here We Go!Let's Go!

リバイバイスラッシュ!

 

 俺は、蟹の爪と鰐の顎を模したエネルギーを纏ったリバイスラッシャーで、ヒナタに攻撃する。

 ヒナタは吹っ飛ばされるが、俺の体に攻撃する。

 3発ほど当たり、お互いに下がる。

 だが、気になる事がある。

 

レイト(痛覚無効が効かない!?)

 

 そう。

 痛覚無効が効いていないのだ。

 どういう事だ…………!?

 すると、ヒナタも驚いたのか、声を出す。

 

ヒナタ「ふ〜ん…………たった三撃…………。少し甘く考えていたかな。」

 

 そう言って、再び攻撃を開始する。

 俺も、リバイスラッシャーを手に、応戦する。

 だが、少し押され気味になっていた。

 それでも、何とかヒナタの攻撃を食らわない様にしていた。

 流石に、これ以上攻撃を食らうと、まずい気がするからな。

 すると、ヒナタが話しかけてくる。

 

ヒナタ「もしかして、この技の危険性に気づいたの?少しは知恵があるようね。」

レイト「褒められたと思っておくよ。まあ、話を聞いて欲しいんだがな。」

 

 俺とヒナタがそう話す中、科学者が話しかけてくる。

 

科学者『解。この技術は、物質体ではなく精神体…………精神体(スピリチュアル・ボディ)への直接攻撃であると推測されます。』

レイト『精神に直接作用するとか、やばすぎだろ。あとどれぐらい持つんだ?』

科学者『告。あと4撃で、絶命に至ります。』

レイト『あと4回…………。』

 

 どうやら、ヒナタを舐めていた様だな。

 これは、ダイモンで行くべきだろうな。

 そう考えていると、ヒナタが話しかけてくる。

 

ヒナタ「何をしても無駄よ。君は詰んでいるのよ。この聖浄化結界(ホーリーフィールド)は、西方聖教会が誇る、究極の対魔結界なのだから。」

レイト「なるほどな。その聖浄化結界(ホーリーフィールド)とやらに魔物が囚われると、弱体化するってか。」

ヒナタ「そう。この結界内では、魔素が浄化されるのよ。だから、君みたいな上位の魔物でも、存在を維持する為に力の大半を奪われて、本来の力を発揮出来なくなるの。」

 

 だろうな。

 あまり、全力を出せないのは事実だしな。

 恐らく、キマイラもダイモンも、スペックダウンしてしまっていると考えて良いだろう。

 

レイト「確かに、全力を出せないのは事実だな。そんなに俺たちを叩き潰したいのか?」

ヒナタ「まあね。本来なら、私が出るまでもない仕事なの。私が出向いた理由はただ一つ。」

 

 ヒナタはそう言って、俺に攻撃してくる。

 俺は、何とかリバイスラッシャーで迎撃するが、2発、攻撃を食らってしまった。

 

レイト「あと2発…………!」

ヒナタ「君が、シズ先生を勝手に魔物にして、記憶を操ったから。」

レイト「だから!それしか助ける方法が無かったし、記憶は操ってない!!」

ヒナタ「私の手で、君を殺しておきたかったの。」

 

 記憶を操る?

 変な捏造をしやがって…………!

 傍迷惑だな…………!

 

レイト「何回も言わせんな!それしか方法が無かったんだよ!」

ヒナタ「それが?結果が全てなのだし、どうでも良いわ。この世界で私に優しかった、たった1人の人。…………でも、あのシズ先生は違う。記憶を操られた、哀れな人。これは、自分でもよく分からない感情だね。」

 

 そう言いながら、俺に剣先を向ける。

 というより、誰が俺がシズさんをキメラ化させたなんて伝えやがった。

 しかも、脚色されまくってるし。

 俺が完全に悪者にされてるよ。

 ただ、可能性が高いのは、やはり、神楽坂優樹か…………!

 だが、そんな事をして、何のつもりだ。

 

ヒナタ「仲間が心配?」

レイト「当然だ。ファルムスが攻めてきてる以上、アンタと戦うつもりはない。」

ヒナタ「そう。まあ、あなたはここで死ぬの。」

レイト「勝ち誇るなよ。」

 

 俺は、ツインキメラバイスタンプを抜いて、トライキメラバイスタンプを取り出して、ダイモンに変身しようとする。

 すると、ヒナタは、俺に向かってくる。

 

レイト(ヤベッ!?)

 

 俺はすぐに躱すが、間違って、ツインキメラバイスタンプを、ヒナタに押印してしまった。

 

レイト(あ。)

ヒナタ「っ!?」

 

 ヒナタは、すぐに俺に攻撃する。

 何とかリバイスラッシャーで迎撃するが、1発食らってしまう。

 俺は、すぐに離れる。

 

レイト(あと1発…………!)

ヒナタ「君、何をしたの?」

レイト「別に。」

 

 特に、デッドマンが生み出される訳ではないな。

 やはり、聖浄化結界(ホーリーフィールド)で悪魔は出てこれないという事か。

 だが、悪魔は生まれてはいる。

 出てこれないだけで。

 すると、ヒナタが話しかけてくる。

 

ヒナタ「まあ、あなたは終わりね。この結界内でそれだけ動けるのは大したものよ。正直、見くびっていた。でもね、君では私に勝てないわ。」

レイト「あと一撃で、俺が死ぬからってか。」

ヒナタ「へぇ。分かるんだ。…………この剣の特殊能力を用いた七彩終焉突撃(デッド・エンド・レインボー)は、7回目の攻撃で、確実に相手を死に至らしめる。それが例え、精神生命体であってもね。君はよく頑張ったけど、もう良いでしょう。」

 

 なるほど。

 確かに、それはやばいかもしれないな。

 だが、まだ付け入る隙はある筈だ。

 ヒナタは、俺の事を格下だと思っている。

 もう、なりふり構ってらんねぇな。

 

レイト「いやはや。ここまで勝ち目がない状況になるとは思わなかったよ。だが、俺は、諦めが悪くてな!」

 

 そう言って、トライキメラバイスタンプを起動する。

 

トライキメラ!

 

 俺は、トライキメラバイスタンプを、キメラドライバーに装填する。

 

オク!サイ!ムカ!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

オク!サイ!ムカ!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

 

 すると、俺の周辺にタコ、クロサイ、オオムカデが現れる。

 そして、俺は叫ぶ。

 

レイト「変身!」

 

 そう言って、俺はバイスタンプを倒す。

 すると、三体の生物が砕け散り、俺の体にまとわりつく。

 

スクランブル!

オクトパス!クロサイ!オオムカデ!仮面ライダーダイモン!ダイモン!ダイモン!

 

 砕け散った破片が、ギフの棺の様な形状に変化して、俺は、仮面ライダーダイモンへと変身する。

 

ヒナタ「姿が変わった。」

レイト「悪いな。俺もアンタの事を見くびっていた。だからこそ、この本気の姿で、相手をしてやるよ!」

 

 俺はそう叫ぶ。

 下手したら、シズさんも道連れになるかもしんないけどな。

 そう思う。




今回はここまでです。
レイトとヒナタが、戦いを始めます。
そして、火煉達とリムル達の方に、イマジン達が現れる。
桜井侑斗が、仮面ライダーゼロノスに変身しました。
何故、イマジン達が現れたのか。
それは、電王編にて、明かされます。
そして、レイトとヒナタの戦いは、果たして、どうなるのか。
楽しみにしてて下さい。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
YouTubeにて、まおりゅうの動画を見て、シンシヤも出そうかなと思い、悩んでいます。
あと、紫苑とディアブロの対決も、入れる予定です。
いよいよ、キメラドライバーのセットと、ベイルドライバーのセットが届くので、楽しみです。
ちなみに、転キメで、いずれ、正妻戦争の話をやろうかなと思っています。
原作と違い、リムルの方には、シズさんも居るので、更に苛烈になるでしょう。
レイトもレイトで、大変かもしれませんね。
現在、テンペストでは、ファルムス軍がテンペストの住人を虐殺している頃です。


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第27話 麗人との対決と絶望

 俺は、仮面ライダーダイモンへと変身して、ヒナタと相対する。

 

ヒナタ「それが貴方の本気?」

レイト「まあな。」

ヒナタ「まあ、例え姿が変わっても、貴方はここで死ぬの。」

レイト「死んでたまるか。」

 

 俺とヒナタはそう言い合い、お互いに身構える。

 そして、お互いに駆け出し、攻撃しあう。

 ただ、俺はヒナタの攻撃が当たる訳にはいかないので、ヒナタの攻撃は、躱したり、受け流したりする。

 お互いの攻防は激しい。

 ヒナタが攻撃しようとする中、俺はトライキメラバイスタンプを2回倒す。

 

オクトパスエッジ!

 

 俺はヒナタの剣を逸らし、カウンターで、左足にタコの足を模したエフェクトと共に蹴りを放ち、蛸足でヒナタを包み込む様に攻撃する。

 無論、反撃に備えて、すぐに離れるが。

 ヒナタにキックが直撃して、ヒナタは少し怯む。

 その周囲は、地面が抉れる。

 

ヒナタ「やるじゃない。でも、これで終わりよ。」

レイト「どうかな。」

 

 すると、ヒナタの剣が、虹色に輝きだす。

 それを見て、俺はトライキメラバイスタンプを、3回倒す。

 

ヒナタ「死になさい!七彩終焉突撃(デッド・エンド・レインボー)!!」

レイト「やられてたまるか!」

 

クロサイエッジ!

 

 ヒナタの虹色の突き攻撃と、右拳にクロサイの頭部を模したエフェクトを纏わせ、パンチ攻撃がぶつかり合う。

 俺とヒナタの攻撃は、拮抗状態にあった。

 

ヒナタ「ハァァァァァ!」

レイト「オラァァァァァ!」

 

 しばらくの拮抗状態の末、俺のクロサイエッジが押し勝ち、ヒナタの剣を吹っ飛ばす。

 ダメージは受けなかった。

 何とかなったか……………?

 一方、火煉達は、イマジン達と応戦していた。

 

火煉「こいつら……………!」

蒼月「早く倒しましょう!」

グルド「ああ!」

 

 火煉達は、テンペストに向かおうとするが、イマジン達がそれを阻止する。

 

イマジン「無駄な事だ。貴様らはここで死ぬのだ!」

火煉「いや!私たちは、テンペストに戻る!」

蒼月「行きますよ!」

グルド「うむ!」

 

 火煉達は、攻撃を更に激しくする。

 火煉は、パンチやキックの際に、赤黒い衝撃波を纏わせ、イマジン達を倒していく。

 蒼月は、蜘蛛の糸を使ったりして、敵を拘束したり、蒼影の様に、敵を切断したりする。

 グルドは、持ち前の怪力を使い、イマジン達を倒していく。

 3人の奮戦により、残ったのは、リーダー格のイマジンのみとなった。

 

イマジン「おのれ……………!」

火煉「あとはお前だけだ!」

蒼月「止めだ!」

グルド「覚悟しろ!」

 

 3人は、変身に用いたバイスタンプを取り出して、起動する。

 

カブト!

スパイダー!

クワガタ!

charge!

 

 3人は、それぞれのバイスタンプをオーインジェクターに押印して、ベルトの両側を押し込む。

 

ベイリングインパクト!

デモンズフィニッシュ!

 

「「「ハァァァァ!!!」」」

イマジン「のわぁぁぁぁ!!」

 

 火煉の足にカブトムシの角の、蒼月の足に蜘蛛の足の、グルドの足にクワガタの顎を模したエネルギーが纏い、トリプルライダーキックを放つ。

 イマジンは、3人のキックを食らい、そのまま爆発する。

 イマジンが殲滅され、3人は変身解除する。

 

火煉「片付いた……………。」

グルド「早くテンペストに戻りましょう!」

蒼月「はい!」

蒼影「待て。」

 

 3人がテンペストに戻ろうとすると、蒼影が現れる。

 

火煉「蒼影!傷だらけじゃない!」

蒼影「俺の事は気にするな。今、テンペストは結界に覆われていて、突破不可能だ。」

蒼月「やはり……………。」

グルド「では、どうすれば…………。」

蒼影「リムル様の事は確認できた。だが、リムル様も足止めを食らっているそうだ。」

火煉「そう…………。レイト様は!?」

蒼影「嵐牙によると、まだ結界の中だ。リムル様達を逃す為に、残ったそうだ。」

 

 それを聞いた火煉は、顔を青ざめる。

 蒼月は、火煉の肩に手を置いて、落ち着かせる。

 

蒼月「まだ死んだ訳じゃない。とにかく、リムル様とレイト様が来るであろう場所に向かいましょう。」

グルド「となると……………研究所などがある洞窟ですな。」

火煉「きっと……………レイト様も…………!」

蒼影「行くぞ。」

 

 火煉達は、洞窟へと向かっていく。

 一方、リムル、シズさん、嵐牙は。

 

リムル「くそ…………!」

シズ「数が多い……………!」

嵐牙「貴様ら!そこを退け!」

 

 リムル達もまた、イマジンと応戦していた。

 

イマジン「お前達はここで死んでもらおう!」

リムル「ふざけんな!こんな所で死んでたまるか!」

シズ「ええ!」

嵐牙「我が主!シズ殿!行きますぞ!」

 

 リムル達は、イマジン達に攻撃を激化させる。

 リムルは、自前の剣と魔法でイマジン達を倒していく。

 シズさんは、格闘戦でイマジンを倒していく。

 途中、ライジングマイティに変身した。

 嵐牙は、黒稲妻で、イマジン達を薙ぎ払う。

 しばらくして、リーダー格のイマジンのみが残る。

 

イマジン「何っ……………!?」

リムル「後はお前だけだ!」

シズ「覚悟して!」

嵐牙「我らに刃向かった事、後悔するが良い!」

 

 シズさんは、ライジングマイティからマイティフォームに戻る。

 ライジングマイティのキックは、周囲に被害を及ぼすからだ。

 シズさんは、強化マイティキックの構えを取り、イマジンに向かって駆け出す。

 

シズ「ハァァァァ!!」

 

 シズさんはジャンプして、宙返りを行い、キックを放つ。

 シズさんのキックは、イマジンに命中して、シズさんは下がる。

 

シズ「後はお願い!」

リムル「ああ!黒炎獄(ヘルフレア)!」

嵐牙「承知!」

 

 リムルは黒炎獄を、嵐牙は黒稲妻を放ち、イマジンは爆散する。

 シズさんは、変身解除する。

 

リムル「片付いたか……………?」

シズ「そうみたい……………。」

嵐牙「早く戻りましょうぞ!」

リムル「そ、そうだな!空間転移で戻るぞ!」

 

 リムル達は、空間転移で戻ろうとするが、転移されない。

 

嵐牙「ん?」

シズ「転移されない……………。」

リムル「どうした?」

 

 リムルは、大賢者に聞く。

 

大賢者『告。転移先の特定が不能です。』

リムル「はっ!?」

大賢者『何らかの結界により、テンペストが外界と隔絶されていると推測されます。』

リムル「マジか……………どこか、テンペストの近くに転移可能な場所はないか?」

大賢者『検索……………ヒットしました。』

リムル「よし!行くぞ!」

 

 それを聞いたリムルは、胸騒ぎがしていた。

 すぐに、近くに転移出来ないかと大賢者に聞く。

 リムル達は、転移する。

 一方、俺とヒナタは。

 

ヒナタ「……………驚いた。まさか、七彩終焉突撃(デッド・エンド・レインボー)を跳ね返すなんてね。」

レイト「言っただろ。俺は死ぬ訳にはいかないんだ。仲間の為にもな。」

ヒナタ「………どうやら、貴方をみくびっていたみたいね。もう七彩終焉突撃(デッド・エンド・レインボー)も効かないか。なら…………星幽束縛術(アストラルバインド)!」

 

 ヒナタはそう叫んで、お札を投げる。

 すると、お札が俺の周囲を取り囲み、俺を動けなくする。

 

レイト「何だこれ…………!?」

科学者『告。魂を覆う星幽体(アストラルボディ)を縛る結界です。』

レイト「どうにか出来ないか!?」

科学者『告。ダイモンの力を使えば、抵抗可能です。』

レイト「分かった!」

 

 マジかよ……………!

 まあ、ダイモンの力を使えば…………!

 俺は力を溜める。

 

レイト「ハァァァァァ…………!ハァァァァ!!」

 

 すると、オクトパス、クロサイ、オオムカデの遺伝子の力によって、結界が破れ、俺はすぐにヒナタに向かって攻撃する。

 ヒナタは、すぐに躱す。

 

ヒナタ「これぐらいでは止まらない?」

レイト「当たり前だ。こんな程度で止まってたまるか……………!」

ヒナタ「そう。精霊召喚!」

 

 そう言って、精霊を召喚して、俺に向かわせる。

 俺は、精霊達に攻撃する。

 

レイト「鬱陶しいな!」

 

 俺が精霊に攻撃する中、ヒナタの方から声が聞こえてきた。

 

ヒナタ「神へ祈りを捧げ奉る。我は望み、精霊の御力を欲する。」

 

 詠唱!?

 という事は、精霊を召喚したのは、詠唱をする際の時間稼ぎか!

 なら、いつまでも精霊の方に構ってられない。

 俺は、トライキメラバイスタンプを4回倒す。

 

オオムカデエッジ!

 

 俺は、オオムカデエッジを発動して、オオムカデを模したエフェクトで精霊に攻撃する。

 精霊は三体倒したが、二体は勝手に消える。

 すると、魔法陣が現れ、上空にまで登っていく。

 これ、ヤバいやつだな。

 俺は即座にトライキメラバイスタンプを一回倒し、バイスタンプのアクティベートノックを押す。

 

マッドリミックス!

 

 リミックス必殺技を発動しようとする中、ヒナタの詠唱は続く。

 

ヒナタ「我が願い、聞き届け給え。」

科学者『告。この攻撃は、物質だけでなく、魂さえも打ち砕きます。』

レイト「マジかよ…………!?」

 

 嘘だろ!?

 頼むぞ……………!

 あのアルティメットリバイスの必殺技を相殺したんだ。

 どうにかなるか……………!?

 すると、詠唱が完了したのか、叫ぶ。

 

ヒナタ「万物よ尽きよ!霊子崩壊(ディスインテグレーション)!!」

レイト「くそっ!!」

 

 ヒナタがそう叫ぶ中、俺もトライキメラバイスタンプを倒す。

 

必殺!カオス!トライキメラチャージ!

 

 ヒナタの魔法が俺に向かってくる中、俺の発動したリミックス必殺技で、オクトパス、クロサイ、オオムカデがその魔法に向かう。

 二つの技はぶつかり合う。

 あの魔法に当たったら、俺が終わる。

 だが、拮抗状態にあるが、見た感じ、いつ大爆発を起こしてもおかしくない!

 どうする、どうすれば……………!?

 そう考える中、科学者が提案してくる。

 

科学者『告。』

レイト「何か思いついたか!?」

科学者『この状況で、助かる方法が一つだけ存在します。』

レイト「早く教えてくれ!」

科学者『それは……………。』

 

 俺は科学者に問う。

 そして、科学者の答えを聞く。

 リスキーだが、やるしかない!

 俺はそう決意して、トライキメラチャージのエネルギーを高めた。

 

レイト「ハァァァァ!!」

ヒナタ「っ!?」

 

 すると、徐々に俺の方が押していく。

 あと少し……………!

 すると、高まりに高まったエネルギーが臨界点を超え、爆発する。

 それに、俺はそれに巻き込まれる。

 ヒナタが堪える中、結界が破壊される。

 強大なエネルギーのぶつかり合いに、結界が耐えきれなくなったのだ。

 しばらくして、爆煙が晴れて、ヒナタが俺が居た場所を見ると、そこには、トライキメラバイスタンプとキメラドライバーのみが転がっていた。

 

ヒナタ「敵は討ったわ。シズ先生。」

 

 ヒナタはそう言って、左目にモノクルを付けて、その場から去っていく。

 それからすぐに、俺は周囲を見渡す。

 

レイト「……………行ったか?」

 

 周囲を見渡すが、ヒナタの姿は確認できない。

 

レイト「ハァァァァ……………。死ぬかと思ったわ……………。」

 

 俺は盛大にため息を吐き、その場に崩折れる。

 どうやって助かったのかというと、あの爆発の直前に、咄嗟に分身体を生み出し、それを身代わりにしたのだ。

 丁度、オクトパスエッジ発動の際に出来た穴があったので、そこに隠れ潜んでいた。

 とはいえ、爆発があったからこそ、隠れる事に成功したのだ。

 もし隠れているのが目撃されてたら、終わってた。

 今回ばかりは、やばかった。

 俺は、キメラドライバーとトライキメラバイスタンプを回収する。

 即座に、テンペストに空間転移で戻ろうとするが、戻れない。

 どういう事かと思っていると。

 

科学者『告。転移先の特定が不能です。』

レイト「何っ!?」

科学者『何らかの結界により、テンペストが外界と隔絶されていると推測されます。』

レイト「マジか……………どこか、テンペストの近くに転移可能な場所はないか?」

科学者『検索……………ヒットしました。』

レイト「よし!行くぞ!」

 

 俺は、そこに転移する。

 そんな中、丘に居る女性は、ある事を呟く。

 

???「どうして、こんな事に…………。」

 

 そんな風に呟く。

 俺が転移すると、そこには、リムル達がいた。

 

リムル「レイト!」

シズ「キメラ君!」

レイト「無事だったんだな。」

火煉「レイト様〜〜〜!!」

レイト「のわっ!?」

 

 すると、火煉が涙を流しながら俺に飛びついてくる。

 

火煉「心配したんです…………!」

レイト「心配かけて悪かった。それで、何が起こっている?ファルムスが攻めてきたのか?」

蒼月「その通りです。」

 

 俺は、蒼月やリムル達から、事情を聞く。

 火煉達は、テンペストの外で特訓をしていたらしい。

 そんな中、火の手がテンペストから上がるのを見て、戻ろうとした。

 だが、イマジンとの妨害に遭って、最初は、桜井侑斗が応戦して、どうにかなったが、しばらく移動すると、別のイマジンの攻撃に遭い、応戦していたそうだ。

 リムルとシズさんの方も、イマジンと応戦していて、ついさっきここに到着したそうだ。

 

レイト(何故、イマジンに桜井侑斗が?)

 

 てっきり、ファルムスの妨害に遭っていたのかと思っていたが、違うのか。

 ファルムス側がイマジンを出したのか?

 いや、恐らく、ヒナタの口ぶりからも、西方聖教会が関わっているのは確か。

 魔物を敵視しているのなら、イマジンと手を組むなんて、あり得ない筈。

 何にせよ、中に入らないとな。

 

ガビル「これが結界!」

蒼月「ガビル君、うるさい。」

 

 ガビルの叫びに、蒼月はそう言う。

 俺はリムルに聞く。

 

レイト「リムル。一度、結界から出たんだ。入り方位は分かるよな?」

リムル「ああ。多重結界を使えば、中に入れる筈だ。」

レイト「分かった。」

リムル「蒼影。大魔法を発動させている奴は、俺達が抑えるから、お前達は、この結界を張っている者を探し出せ。」

レイト「蒼月も頼む。」

蒼影「御意。」

蒼華「はっ。」

蒼月「分かりました。」

リムル「ただし、戦闘行為は禁じる。相手の正体と強さを確認しろ。」

蒼影「それで、連絡はどの様に?」

リムル「あ……………。」

 

 そうか。

 俺達が結界の中に入ると、連絡が取れないか。

 すると、リムルが糸を出し、自分と蒼影の腕に巻き付ける。

 

リムル「これを伝えば、結界があっても思念伝達が出来るんじゃないか?」

蒼影「なるほど。」

レイト「行け!」

蒼影「はっ!」

 

 すると、蒼影、蒼華、蒼月達は、姿を消す。

 リムルは、嵐牙に話しかける。

 

リムル「嵐牙は影に入ってろ。」

嵐牙「はっ!」

レイト「火煉、グルド。行くぞ。」

火煉「はい。」

グルド「承知。」

リムル「ガビルはここで待て。シズさん、行くぞ。」

ガビル「お気をつけて!」

シズ「うん。」

 

 俺たちは、多重結界を使い、中に入り、駆け出していく。

 テンペストの様子は、酷い有様だった。

 

シズ「酷い…………!」

火煉「……………っ!」

グルド「急ぎましょう。」

 

 俺たちは、議事堂がある場所へと急ぐ。

 到着すると、住人が多く集まっていた。

 俺たちに気づいたのか、声を出す。

 

住人「ああっ…………!おお、リムル様とレイト様だ。」

住人「リムル様、レイト様!お戻りに………!」

 

 住人達が話し始める。

 だが、俺達が来ても、暗い雰囲気は拭えなかった。

 まさか……………。

 すると、リグルドが駆け寄ってくる。

 

リグルド「リムル様〜っ!レイト様〜っ!」

 

 そう叫びながら、俺たちの前で土下座をする。

 

リムル「あっ!」

レイト「リグルド!無事だったのか!」

リグルド「は、はい!よくぞ、お戻りになられました!ご無事で何よりです!」

リムル「遅くなってすまん!」

リグルド「とんでもございません!」

火煉「何が起こったの?」

レイト「説明してくれ。」

リグルド「それが…………。」

 

 俺と火煉の言葉に、リグルドは口淀む。

 すると、背後から声をかけられる。

 

カイジン「旦那方、良くぞ無事で。」

リムル「あっ!」

レイト「カイジン!」

 

 後ろには、カイジン、ガルム、ドルド、ミルドの3人がいた。

 だが、俺たちを見るなり、視線を逸らす。

 それを見て、とある予想が的中してしまったと予感した。

 まさか……………!

 すると、リグルドが口を開く。

 

リグルド「リムル様、レイト様!状況の報告と相談がございますので、こちらの対策本部へ………。」

 

 リグルドはそう促すが、俺は見抜いた。

 何かを必死に隠そうとしているのが。

 すると、リムルが何かに気づいたのか、カイジンに声をかける。

 

リムル「カイジン、あれは?」

シズ「まさか…………!?」

カイジン「あっ、いや、その…………。」

リグルド「少し問題が起きただけでして!ハハハ…………。」

火煉「誤魔化さないで。」

グルド「リグルドさん。広場に何があるんですか!?」

リグルド「うっ!?うぅ……………。」

 

 やはりか。

 つまり、広場の先にあるのは、俺の予想通り…………。

 すると、爆発音が起こる。

 

リムル「あっ!」

レイト「紅丸か?」

シズ「何が…………!?」

レイト「行くぞ!」

 

 俺、リムル、シズさん、火煉、グルドは、そちらに向かう。

 一方、紅丸とゲルドは、とある路地に居た。

 その視線の先には、グルーシスが居て、グルーシスの背後には、ミュウランとヨウムが居た。

 グルーシスは、剣を構える。

 まるで、ミュウランを庇うつもりで。

 それを見た紅丸は。

 

紅丸「貴様もその女を庇うのか?悪いが、今の俺に余裕はない。さっさとそこを退け!」

グルーシス「へへっ。それは出来ん。冷静さを欠いた今のお前に、この女を渡すわけにはいかねえよ。」

 

 それを聞いた紅丸は、体から炎を出す。

 

紅丸「ほう。俺が冷静ではないだと?冷静じゃなかったなら、既にお前達は消し炭にしているさ。良いから大人しく…………!」

グルーシス「悪いな。どうあっても俺は、この女を守る!」

紅丸「大人しくしろって言っているんだ!」

 

 グルーシスは、獣身化を発動して、紅丸に向かうが、紅丸はそう叫びながら衝撃波を放ち、グルーシスは吹っ飛ぶ。

 

グルーシス「ぐあっ……………!」

紅丸「ぬおおおお!」

 

 グルーシスが吹っ飛ぶ中、紅丸はグルーシスを掴み、地面に叩きつける。

 グルーシスは、地面を転がる。

 

グルーシス「くっ…………!だが、俺はまだ…………!」

紅丸「チッ。これ以上抵抗するなら、本当に…………!」

 

 紅丸がそう言いながら、グルーシスを掴む。

 そこに、俺たちが入る。

 

リムル「やめろ、紅丸!」

レイト「紅丸!やめるんだ!」

 

 俺達がそう叫ぶと、紅丸はグルーシスを地面に捨てて、俺たちの方を向く。

 

紅丸「リムル様、レイト様。」

 

 そう言って、跪く。

 ゲルド達も含めてだ。

 俺とリムルは、紅丸に聞く。

 

リムル「説明してくれ。」

レイト「一体、どういう状況だ?」

紅丸「この結界です。魔法が使用できなくなり、俺たちの力の減少も生じました。そのせいで、街の者にも犠牲が……………!」

リグルド「べっ、紅丸殿!!」

紅丸「あっ…………!その話はまた後で………!」

リムル「ん?」

リグルド「ううっ……………!」

 

 やはりか。

 火煉達も、顔を青ざめる。

 シズさんもまた、顔を青ざめていた。

 この状況が、空襲の時の街の様子と似てしまっているからだろう。

 燃える街。

 そして、犠牲者。

 リグルド達は、俺たちの事を思って、秘密にしようとしていたのだろう。

 そんな中、紅丸が言う。

 

紅丸「その時、俺達が弱体化した原因が、その女の使った魔法にあると。」

 

 そう言って、紅丸は後ろの女性を見る。

 それを聞いた火煉は、カブトバイスタンプを取り出すが、俺はすぐに仕舞わせた。

 次は、ゲルドが口を開く。

 

ゲルド「術者を見つけ、捕らえようとした所、ヨウムが邪魔をしましたので、やむなく戦闘となってしまいました。」

レイト「なるほどな……………。」

 

 そう言う事か。

 ヨウムやグルーシスが庇っているのは、どういう事だ?

 すると、ヨウムが口を開き、土下座をする。

 

ヨウム「リムルの旦那にレイト旦那。すまねぇ…………!」

レイト「ん?」

ヨウム「アンタ達を裏切る気なんざ、これっぽっちもないんだ!ただ、このミュウランを助けてやりたいだけなんだ!」

リムル「ミュウラン……………。」

 

 ミュウランね……………。

 すると、当のミュウランがヨウムに言う。

 

ミュウラン「良いから、私を見捨てなさい。」

ヨウム「そんな事……………言うな。」

ミュウラン「貴方まで巻き添えになる必要なんてないわ。」

ヨウム「言うなって言ってんだろ!あっ。」

 

 ミュウランとヨウムがそう話す中、グルーシスがヨウムの隣に立つ。

 

グルーシス「リムル…………様、レイト…………様。客人である俺が口出し出来ぬは、百も承知。ですが、それでも、話だけでも聞いてはもらえませんか?」

 

 グルーシスがそう言って、土下座をする。

 状況を整理する必要があるな。

 

リムル「ああ。」

レイト「良いだろう。」

 

 俺とリムルがそう言って、ミュウランの方へと足を進める。

 すると、ミュウランが口を開く。

 

ミュウラン「いいえ。ヨウム、グルーシス………私は、貴方達に庇われる資格なんてないの。」

ヨウム「ミュウラン…………!」

ミュウラン「私のせいで、この街にどれだけの犠牲が出た事か。あの惨状を生み出したのは、私なのよ。」

リムル「惨状…………?」

レイト「………………。」

 

 ミュウランのせいで?

 どういう事だ?

 とはいえ、犠牲が出たのは間違いないな。

 

リムル「どういう意味だ?」

 

 リムルがそう問うと、ミュウランは立ち上がり、俺たちの横に立つと、呟く。

 

ミュウラン「見てもらえれば分かります。」

 

 そう言って、広場の方に向かう。

 俺たちも、ミュウランの後を追う。

 広場に近くなるにつれ、血が増えていく。

 そして、負傷した住人達も、その住人達の啜り泣きもまた。

 俺達が駆け出すと、そこには、予想通りの光景が広がっていた。

 倒れていたのは、テンペストの住人達であるのには、間違いない。

 だが、ピクリとも動かない。

 つまり、死んでいるのだ。

 俺たちは、それを見て、呆然としていた。

 予想通りとはいえ、ショックが大きすぎる。

 リムルが呟く。

 

リムル「どういう事だ…………。一体、何が…………これ、全員……………死んでいるのか?」

 

 リムルが呟く中、レグルドが答える。

 

レグルド「人間達が容赦なく…………。」

リムル「人間達……………。」

レイト「ファルムスか……………。」

レグルド「我々は、リムル様とレイト様の申し付け通り、人間達を受け入れておりました。その結果…………。」

リグルド「黙れ。……………黙れ。」

レグルド「あっ……………!も…………申し訳ありません……………。」

 

 リグルドとレグルドが話す中、俺の心は、後悔に満ちていた。

 

レイト(俺たちの言葉……………俺たちの言葉が……………。)

 

 そう思う中、ある光景が蘇る。

 それは、ゴブリン達と牙狼族が仲間になり、ルールを話していた時だ。

 

リムル『知っての通り俺たちは大所帯になった。そこでレイトと話し合いで、なるべくトラブルを避けるためルールを決めた。』

『ルール?』

レイト『ああ。そのルールは3つ。一つ、人間を襲わない事。二つ、仲間内で争わない事。三つ、進化して強くなったからと言って他種族を見下さない事。これらを最低限守って欲しい。』

 

 そう命じたのだ。

 つまり、この惨状を生んだのは、俺たちの命令が原因なのだ。

 俺たちの言葉が、広場に倒れている者達を殺してしまったのか……………。

 すると、ミュウランが口を開く。

 

ミュウラン「私が大魔法を使用しなければ、こんな事にはならなかったでしょう。」

 

 そう言ったミュウランに、俺たちは視線を向ける。

 コノ女ノセイデ……………!

 俺の心の中は、ミュウランへの殺意や憎悪で満ちていた。

 殺スベキダナ。

 そう思いながら、手をきつく握ると、誰かが俺の手を握る。

 後ろを向くと、シズさんが居た。

 

リムル「シズさん……………。」

レイト「何すんだよ。この女が…………!」

シズ「2人ともやめて!その人が原因じゃないから!」

 

 何言ってんだよ。

 現にこの女は、『大魔法を使用しなければ、こんな事には』って言ったのに。

 すると。

 

科学者『告。大魔法、魔法不能領域(アンチマジックエリア)の影響だけでは、弱体化は起きません。原因というならば、個体名、蒼影達に調べさせている人間達の方が、より因果関係は上だと推定します。』

 

 科学者はそう言う。

 それを聞き、シズさんの言葉を聞いた事で、冷静になった。

 そうだ。

 ファルムスどもの方が、何かをした可能性が高い。

 このミュウランは、わざと俺たちを怒らせて、自分だけが殺されようとしているのか。

 ヨウムとグルーシスを守るために。

 俺たちは深呼吸をして、落ち着かせ、ミュウランに話しかける。

 

レイト「……………ミュウランだったな。詳しく話を聞きたい。会議室に来てもらおう。」

ミョルマイル「リムル様、レイト様。」

 

 俺がそう言う中、ミョルマイルが現れる。

 

レイト「ミョルマイル。」

ミョルマイル「よろしければ、わしも会議に参加させてもらえませんか?今回の件について、外の者の視点でお話しできるかと。」

リムル「来てたのか…………ああ、助かるよ、ミョルマイル。」

 

 そうして、俺たちは会議室に向かい、報告を受ける。

 謎の襲撃者にファルムスの騎士達が攻撃してきたそうだ。

 やはり、ファルムスが関与していたか。

 報告を聞いていると、紅丸が悔しそうに言う。

 

紅丸「弱体化が無ければ、白老が負ける事は無かったんだ…………!」

レイト「白老が負けた!?」

 

 マジかよ。

 弱体化も込みであるとはいえ、白老が負けるなんて……………。

 すると、リグルドが咳払いをする。

 

リグルド「重傷ですが、命に別状はありません。同じく重傷のゴブタと共に、朱菜様が治療に当たっております。」

リムル「そうか…………。」

リグルド「ファルムスの騎士達は、去り際に…………!」

 

 リグルドは、苛立ちを込めて言う。

 リーダーと思しきフォルゲンという人物曰く。

 

フォルゲン「この街は、魔物に汚染されておる!我らは人類の方を守る者として、魔物の国など、断じて認めぬ!故に、西方聖教会とも協議し、この国への対応を考えるものなり!時は今日より1週間の後!指揮官は、英傑の誉れ高いエドマリス王、その人である!降伏して、恭順の意を示すならばよし!さもなくば…………神の名の下に、貴様達を根絶やしにしてくれようぞ!」

 

 そう言って、去っていったそうだ。

 何が恭順だ。

 どうせ、恭順した場合は、奴隷として扱うだけだろうが。

 前世の日本の歴史の授業でも、大体そういう物だろうしな。

 

リムル「茶番だな。」

レイト「下らないな。」

リグルド「ええ。仰る通りだと。」

 

 俺とリムルの言葉に、リグルドはそう言う。

 すると、ヒナタの言葉が蘇る。

 

ヒナタ『君たちの街がね、邪魔なのよ。だから潰す事にしたの。』

 

 ヒナタはそう言った。

 となると……………。

 

リムル「最初から、西方聖教会とファルムス王国はグルだな。」

レイト「となると……………リムル達を襲ったイマジン達は、違う目的で、リムル達の邪魔をしたという事か。」

リムル「恐らくな。まあ、イマジン達の目的は知らないが、教会が俺たちを目の敵にする理由は、魔物の存在を認めないという教義による物なのだろう。だとすれば、ファルムス王国は何だ?」

レイト「その答えは、大体分かってる。だが、それに関しては、ミョルマイルとコビーから話してもらおう。」

 

 そう言って、ミョルマイルとコビーに話しかける。

 2人は商人なので、諸外国の事情にも詳しい筈だ。

 まあ、俺からしたら、大体理由は分かるけどな。

 気になるのは、イマジン達の行動の理由だ。

 西方聖教会とファルムス王国と繋がっていないのは確定だが、何の為に?

 そう考える中、ミョルマイルが口を開く。

 

ミョルマイル「そうですな。現在、この街、テンペストを中心に、新たな交易路が生まれ、流通に大きな改革が起き始めております。」

リムル「それで?」

ミョルマイル「交易路は重要です。関税を掛けるだけでも、かなりの収益が見込まれますからな。」

コビー「ファルムス王国は、西側諸国の玄関口と呼ばれる程に、交易で潤っている国なのですよ。」

レイト「要は、テンペストが繁栄すると、ファルムス王国にとっては、損失となるという事だな。」

コビー「はい。」

ミョルマイル「それも、とても大きな。」

リムル「なるほどな。俺たちは、知らず知らずのうちに、虎の尾を踏んだのか。」

 

 まあ、そうなるな。

 だからこそ、西方聖教会と協力して、叩き潰そうとする位には。

 俺の予想通りの流れだな。

 想定外なのは、ファルムス王国が動くのが早い事と、イマジン達の介入だな。

 すると、リムルはミョルマイルに話しかける。

 

リムル「ミョルマイル君。」

ミョルマイル「はい。」

リムル「テンペストの現状、そして、ファルムス王国から大軍が向かっているこの事態を、一刻も早く、ブルムンド王国に伝えてくれるか?」

ミョルマイル「勿論です。テンペストの正当性を訴えましょう。」

レイト「頼む。」

ミョルマイル「あ〜では、早速、支度を。」

 

 そう言って、ミョルマイルは去っていく。

 俺は、ミュウランに話しかける。

 

レイト「さて、ミュウランだったな。どういう経緯で俺たちにちょっかいを出す事になったのか、説明してもらおうか。」

 

 俺がそう言うと、ミュウランはまっすぐ見てくる。

 

ヨウム「ミュウラン……………。」

ミュウラン「良いのよ。何も隠す事はないわ。」

 

 ヨウムがそう言う中、ミュウランはそう答え、俺たちを見てくる。

 

ミュウラン「私はミュウラン。魔王クレイマンの配下です。」

コビー達「ええっ!?」

カイジン達「ああっ…………!」

リグルド「魔王だと…………!?」

リムル「そうか……………。」

レイト「どうやら、魔王クレイマンが、糸を引いているという事だな。」

 

 魔王クレイマン……………。

 ミリムが度々口にした名前だな。

 一方、当のクレイマンは、自分の城で、窓際に立ち、月を眺めながら、ワインを飲んでいた。

 そして、ほくそ笑む。

 まるで、計画通りに行っていることに。




今回はここまでです。
書いていて、凄く辛いです。
ただ、次回が、今回よりも更に辛くなりますね。
そして、リムルやレイトの心境には、後悔の色が立ち込める。
次回、リムルの悪魔が顕現する。
ここ最近、転スラとジオウを書こうかなと思いました。
活動報告にリクエスト欄を入れたので、気が向いたら、リクエストして下さい。
いよいよ、ジュウガドライバーのセットに、デストリームドライバーのセットが届くので、楽しみです。
何とか、次回の話は、その二つで遊びながら、執筆していこうと思います。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
この小説で、リムルがジオウになるという案がありますが、それは良いですね。
いよいよ、ファルムス王国との戦い、魔王への進化が近づいてきました。
これからも応援の程、よろしくお願いします。


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第28話 悪魔の顕現と希望

 ミュウランという人物は、魔王クレイマンの配下と語った。

 魔王クレイマンという名は、初めて聞いたわけじゃない。

 ミリムが言っていたのだ。

 

ミリム『もしかすると、ゲルミュッドではなく、クレイマンの奴が、何か企んでいたのかもしれないな。内緒で………。』

リムル『クレイマン?』

レイト『確か、魔王の一人だったか?』

ミリム『そうだぞ。奴は、そういう企みが大好きなのだ。』

 

 その企みの一環か?

 だとしたら、傍迷惑だな。

 そう思う中、ミュウランは語る。

 

ミュウラン「魔王クレイマンは、人形傀儡師(マリオネットマスター)の二つ名の通り、意のままに配下を操ります。私もその中の1人…………。私に与えられた任務は、テンペストの内偵でした。ヨウムを利用し、この街に潜入したのです。そして、指示に従い、大魔法、魔法不能領域(アンチマジックエリア)を発動しました。」

レイト「なるほどな……………。」

ミュウラン「私の心臓は、クレイマンの秘術、支配の心臓(マリオネットハート)によって、奪われました。それ以来、彼に従う他に、生きる道はありませんでした。」

リムル「なるほど……………。」

 

 そういう事か。

 

レイト「文字通り、生殺与奪の権利を握られているって事か。」

リムル「それで、クレイマンがうちにちょっかいを出す理由はなんだ?」

ミュウラン「彼は、このように話していました。『これから面白くなる。予想外の展開になりましたが、大戦争が起きますよ。』と。」

 

 それを聞いた皆は、どよめく。

 大戦争ね……………。

 

ミュウラン「最初は、魔王ミリムとカリオンの事だと思っていましたが、テンペストとファルムス王国の間で、戦争を起こさせる事。これを意味していたようです。」

レイト「…………………。」

 

 クレイマン。

 自分の手を汚すことなく、手駒を思うがままに操る。

 厄介な奴だな。

 魔導師(ウィザード)である彼女は、例え、魔法の実力があろうと、魔法不能領域(アンチマジックエリア)内では、普通の人間となんら変わらない。

 捨て駒にされたか。

 すると、ヨウムとグルーシスが叫ぶ。

 

ヨウム「リムルの旦那にレイトの旦那!ミュウランを許してやってくれ!」

グルーシス「俺からもお願いします!彼女は、魔王クレイマンに逆らえなかっただけなんですよ!」

 

 そう叫んで、俺たちを見てくる。

 まあ、情状酌量の余地はあるか。

 だが、すぐに許す訳には行かない。

 俺とリムルは、お互いの顔を見合わせ、答えを出す。

 

リムル「ミュウランの処遇については、ひとまず保留だ。それまで、迎賓館で軟禁させてもらう。」

リグルド「分かりました。見張りをつけておきます。」

ヨウム「旦那方…………。」

レイト「すまん。今は、俺たちも混乱してる。心配なら、一緒に居ても構わない。」

 

 そうして、ミュウラン、ヨウム、グルーシスの3人は、迎賓館の方に移動する事に。

 リムルは、紅丸に聞く。

 

リムル「ひとまず、報告は以上か?」

紅丸「はい。」

レイト「なら、怪我人の見舞いに行く。案内してくれ。」

紅丸「はっ。」

 

 そうして、俺たちは、怪我人の見舞いに行く事に。

 だが、一つ気になった事がある。

 

レイト(何故、紫苑が居ない?)

 

 そう、紫苑の姿が見えない事だ。

 紫苑の性格上、リムルが戻ってきた時点で、飛びつくと思ったのだが。

 胸騒ぎがする。

 もしかしたら……………。

 そう思いながら、案内された部屋に入る。

 そこには、ベッドに横たわる白老とゴブタ、治療に当たっている朱菜と手伝っている黒衛兵の姿があった。

 

リムル「どうだ、具合は?」

朱菜「リムル様!レイト様!ポーションが効きません!空間属性のスキルによる物で、治療しようにも、傷口に直接働きかける事が出来ないのです。」

レイト「そうか……………。」

 

 空間属性か。

 白老を倒した奴が、何か細工をしたのか?

 俺たちが白老に近づく中、白老は目を覚まし、俺たちを見てくる。

 

白老「ぐっ……………リムル様、レイト様。心配召されるな。わしもこの不肖の弟子も、これぐらいでくたばる程、柔ではありませんぞ。」

リムル「ははっ、心配なんてしてねえよ。どれ、ちょっと傷を見せてみろ。レイトは、ゴブタの方を頼む。」

レイト「ああ。」

 

 俺は、ゴブタの傷口に手を当てて、科学者に問う。

 

レイト「科学者。」

科学者『空間属性の影響を確認しました。吸収之王(アブソーブドレイン)にて、影響を吸収しますか?』

レイト「ああ。」

 

 俺とリムルは、それぞれのスキルで、影響を無くす。

 その後、ポーションを飲ませる。

 すると、ゴブタはすぐに目を覚ます。

 

ゴブタ「あ……………あれ?オイラ、助かったすか?」

白老「さすがは、リムル様とレイト様。」

朱菜「良かった……………!」

火煉「ええ。」

シズ「うん。」

ゴブタ「リムル様、レイト様!おかえりなさい!」

リグルド「こ…………これ、ゴブタ!」

白老「ハハハハッ。」

ゴブタ「あっ!ジジイも無事だったすか?」

 

 ゴブタははしゃぐ中、白老に対して、そう言ってしまった。

 すると、白老は剣を取り出して、少し刀身を見せる。

 

白老「もう一度眠りたいかの?」

ゴブタ「し……………師匠!ご無事で何よりであります!」

 

 そんなやり取りを見てると、笑いが込み上げてきて、俺たちは笑う。

 そんな中、リムルが問いかける。

 

リムル「あっ、ところで、紫苑はどうした?」

黒兵衛「………………っ!」

リムル「まさか、1人で仕返しに行ったんじゃないだろうな?いや、あいつなら有り得るか。ハハハッ……………ん?」

 

 リムルは、皆の様子がおかしい事に気づき、笑いを止める。

 まさか……………。

 それで察した俺と火煉とシズさんは、顔を青ざめる。

 そんな中、朱菜が言いづらそうに言う。

 

朱菜「あっ、あの、リムル様……………。」

 

 何かを言おうとする中、紅丸が制して、ついてきて下さいと言う。

 俺たちは、死亡した人たちが安置されている広場へと移動する。

 しばらく歩く中、ある遺体の前で止まる。

 そんな中、ゴブタが横を見ると。

 

ゴブタ「あ……………ゴブゾウ?ゴブゾウ!」

 

 そこには、ゴブゾウが居た。

 それを見たゴブタは、目に涙を浮かべ、泣き出す。

 

ゴブタ「うわああああっ!!」

 

 ゴブタが悲しみに絶叫する中、紅丸は俺たちの目の前の遺体を覆っていた布を取る。

 その遺体は……………紫苑だった。

 紫苑の角は、折れていた。

 

火煉「紫苑……………?紫苑!!」

 

 火煉は、紫苑の遺体の前に跪く。

 俺たちは呆然として、言葉も出なかった。

 いつも、明るく元気な紫苑が、死んだ……………?

 そんな中、紅丸が言う。

 

紅丸「……………紫苑は、襲撃者が狙った子供を庇って……………。結界による弱体化で、思うように動けず……………。」

朱菜「…………ゴブゾウは、私を守って下さいました。それを、襲撃者は笑いながら…………。」

 

 紅丸と朱菜は、悔しそうにそう言う。

 火煉も、ゴブタと同じく、泣いていた。

 俺とリムルは、ただ呆然としていた。

 すると、押さえ込んでいたオーラが漏れ、リグルドが声をかける。

 

紅丸「あっ……………!」

リグルド「リムル様、レイト様!」

 

 声をかけられた事で、俺達はオーラを抑える。

 しばらくの静寂の末、声を絞り出す。

 

リムル「………………すまん。しばらく、1人にしてくれ。」

レイト「……………俺も少し1人にしてくれ。」

リグルド「……………分かりました。」

 

 俺とリムルの言葉に、リグルドは頷き、白老はゴブタを、紅丸は火煉を連れて行く。

 すると、朱菜がリムルを抱きしめる。

 

朱菜「……………いつでもお呼び下さい。すぐに参ります。」

 

 そう言って、朱菜達は去って行く。

 俺も、リムルから離れた場所に行く。

 シズさんだけは、ただ呆然としていた。

 少し離れた場所で、俺は考えていた。

 

レイト(………………どうして、こんな事になったんだ?)

科学者『告。計算不能。』

レイト(……………俺たちは悪で、ファルムス王国が正義なのか?)

科学者『告。理解不能。』

レイト(………………なあ。仮面ライダーって、何なんだ?)

科学者『告。解答不能。』

 

 俺はそんな問いかけをするも、科学者は、そんな答えしか出さない。

 仮面ライダーって、何なんだ?

 仮面ライダーは、前世では、人類の平和を守る存在であると感じていた。

 なら、魔物である俺が、仮面ライダーを名乗る資格は無いのか?

 仮面ライダーごっこをしているのに過ぎなかったのか?

 そんな激しい感情が渦巻いているのに、同時に酷く冷静で、涙が流れない。

 

レイト(俺は…………心の中から、魔物になったんだな。)

 

 そう自覚する。

 人間ではなく、キメラという名のヘルギフテリアンになったのだと。

 だとしたら、本当に仮面ライダーを名乗る資格は無いのか?

 俺たちは悪で、滅ぼされなければならないのか?

 すると。

 

科学者『告。』

レイト「何だよ…………?」

科学者『私には、答える事は出来ませんが、答えは、仮面ライダー達が示しています。』

レイト「え……………?」

 

 すると、色々な仮面ライダーに関する記憶が流れ込んでくる。

 

映司『一杯見てきた。誰かを守りたいっていう気持ちが、自分たちの正義がどんどんエスカレートする事がある。正義の為なら、人間はどこまでも残酷になれるんだ。』

映司『誰が正しくて、誰が間違ってるって、とっても難しい事だと思います。自分が正しいと思うと、周りが見えなくなって、正義の為なら、何をしてもいいと思ったり。きっと、戦争もそうやって起こっていくんです。』

真澄『正義はあっても、正解という物は無いのだ。』

猛『お前達の生ぬるい優しさが、今回の危機を招いたと言っても過言では無い!』

猛『例え、己を犠牲にしようとしても、花一輪の為に命をかける。その優しさを貫く強さこそが、本当の強さかもしれん。』

朱美『あのね、正しいっていう言葉を簡単に使う方が危ないから。』

戦兎『見返りを求めたら、それは正義とは言わねえぞ。』

諫『正義で世の中良くしようなんて、ただの詭弁だ!下らねぇジョークで腹の底から笑って生きてりゃ、それで良かったんだよ!』

諫『お前らの覚悟は、俺が受け止めてやるよ。だから…………全力でぶつかって来い!こっちも全力で応えてやる!それが………俺のルールだ。』

 

 火野映司/仮面ライダーオーズ、狩崎真澄さん、本郷猛/仮面ライダー1号、御子柴朱美、桐生戦兎/仮面ライダービルド、不破諫/仮面ライダーバルカンの言葉が出てくる。

 正義に優しさ。

 それは、立場によって変わってしまう言葉でもある。

 そして、仮面ライダーもまた。

 ただ、どの仮面ライダーも共通している事がある。

 それは、自分の信じる物を、本当に真に成すべき事を成そうとしていた事だ。

 それは、ダークライダーと呼ばれる存在であってもだ。

 そして、行き過ぎた正義は、悪であるという事も。

 それは、仮面ライダー滅亡迅雷やバルカン&バルキリーにて証明されている。

 それ程、仮面ライダーというのは、複雑なのだ。

 だが、これだけは言える。

 

レイト(自分の信じる物を信じて、守るべき物を守る。それが、仮面ライダーとしてのあるべき姿なのかな。)

 

 それが、俺なりに導いた、仮面ライダーとしてのあるべき姿だ。

 その答えは、合っているのかどうかは、俺には分からない。

 いや、誰も正しい答えを知っている訳ではない。

 それでも、俺はその事を信じ抜くべきだろう。

 俺なりの、仮面ライダーとして。

 そう思う中、エレン達が来た気配がする。

 よく来れたな。

 そう思いながら、リムルの方へと戻る。

 遡る事、少し前、リムルはシズさんが持っていた仮面の複製品を被って、自問自答をしていた。

 シズさんは、リムルの事を見つめていた。

 

リムル(………………どうして、こんな事になったんだ?)

大賢者『告。計算不能。』

???(お前は、こんな簡単に終わるのか。)

リムル「え……………?」

 

 リムルが大賢者に問いかける中、そんな声がしてくる。

 その声は、大賢者の物では無かった。

 

リムル「今のは……………?」

???(お前は自分の信じたことを信じられないほど呆気ないのか。)

リムル「うるさい!でも…………どうしろって言うんだよ!」

シズ「スライムさん……………?」

???(お前を慕ってる奴らは、沢山居るだろ?)

リムル「俺を……………。」

???(そうだぜ!そいつらは、今もお前を信じてるんだぜ!)

 

 リムルに呼びかける2人の声は、リムルにそう言う。

 リムルは、2人の声の事も考えつつも、大賢者に問う。

 

リムル「大賢者、どうだ?」

大賢者『告。検索結果、該当なし。完全なる死者の蘇生に関する魔法は、検出されませんでした。』

リムル「そうか。結界の方はどうだ?」

大賢者『告。街の周囲を覆う2種の結界の解析が完了しました。複合結界の解除は困難ですが、大魔法、魔法不能領域(アンチマジックエリア)は解除可能です。解除を実行しますか?』

リムル「いや、まだ良い。」

 

 リムルは大賢者にそう言う。

 リムルが考える中、仮面にヒビが入る。

 リムルは、紫苑達を暴食者(グラトニー)で捕食しようとしていた。

 すると。

 

エレン「リムルさん!シズさん!レイトさん!」

シズ「3人とも…………。」

レイト「やっぱり、エレン達か。」

 

 そう叫んで、エレン達が到着する。

 シズさんがそう言う中、俺も到着する。

 リムルは、エレン達に気づいて、言う。

 

リムル「来てくれたのか。少し待ってくれ。そろそろ、皆を眠らせてやらないと。」

レイト「リムル……………。」

エレン「あっ、あのね…………可能性は低いけど、ううん、殆ど無いかもしれないんだけど、でも、あるの!死者が蘇生したと言う御伽話が!」

レイト「えっ!?」

 

 エレンの言葉に、俺は耳を疑う。

 そんな中、リムルは。

 

リムル(御伽話?何でそんな話をするんだよ。やめてくれよ。期待したくなるじゃないか。)

???(期待しても良いんじゃねぇの?)

リムル(え……………?)

???(お前には、こいつらの為にできる事があるんだよ。)

 

 そんな問いかけをしていると、リムルは暴食者を止める。

 俺には分かっていた。

 リムルが、自分の中の悪魔と話していた事を。

 

エレン「所詮は、作り話だと思うけど、でもこれは、史実に基づいた…………!」

リムル「ハハハハッ…………!」

エレン達「あ…………。」

シズ「スライムさん…………?」

レイト「リムル…………。」

リムル「いや、悪いな。つい、嬉しくて。死者の蘇生か……………。まるで夢物語だな。可能性がゼロでないなら、十分だ。詳しく聞かせてくれ、エレン。」

 

 俺たちは、エレンからその話を聞く事にした。

 すると、リムルが蒼影からの報告を聞いていた。

 

レイト「どうした?」

リムル「蒼影からだ。街の四方に西方聖教会の集団が陣取ってて、魔法装置なる物を守ってるってさ。それが、結界を作り出してるみたいだ。」

レイト「分かった。…………それより、聞かせてくれ。その死者蘇生の御伽話を。」

エレン「うん。」

 

 エレンがそう言うと、突然、両手を自分の耳にやって、何かの魔法を解除するかのようにする。

 すると、耳の形が変化する。

 

「「あっ…………。」」

エレン「良いの。…………これは、魔導王朝サリオンに伝わる、御伽話。」

 

 そこから、エレンは語った。

 ある少女とドラゴンの物語を。

 竜と人との間に生まれ、竜皇女(りゅうこうじょ)として育つ少女。

 ある日、竜である父から、自身の分身体とも言える子竜を、友として授かる。

 しかし、竜皇女を支配しようとした国王は、子竜を殺してしまった。

 その少女は嘆き、悲しみ、怒り狂った。

 父より受け継いだ、その力で、その国王と十数万人の国人諸共、一国を滅ぼしてしまう。

 その怒りはやがて、世界へと向いてしまう。

 ある魔王が、止めようとするが、七日間も戦い続ける。

 その少女は、精霊女王が仲裁した事で、正気を取り戻し、魔王へと開花し、それに伴い、子竜は奇跡の復活を果たす。

 だが、死と同時に魂を失った子竜は、破壊の限りを尽くす意思なき邪悪な魔物、混沌竜(カオスドラゴン)へと変貌していた。

 少女は嘆きつつも、かつて友であった混沌竜(カオスドラゴン)を封印し、これが、魔王となった竜皇女の最初の偉業となった。

 その話には、聞き覚えがあった。

 

エレン「…………物語は、これでおしまい。」

レイト「まさか……………!」

リムル「どうした?」

レイト「俺は、その話を知っている。」

シズ「えっ?」

レイト「記憶を覗いたんだ。その時に、まさにそれと同じ記憶だった。」

リムル「誰の記憶を…………?」

レイト「……………ミリムだ。」

リムル「ええっ!?」

 

 そう。

 その御伽話は、かつて、ミリムの悪魔を介して、記憶を覗いた時に、それとほぼ同じ内容だったのだ。

 つまり、前例がある!

 だが、問題は…………。

 

レイト「前例はあるけど、意思なき魔物になってもな……………。」

リムル「ん…………?」

 

 俺がそう呟く中、エレンは空を指差す。

 

エレン「この街は今、結界に覆われているでしょう?」

 

 そう言うと、ある可能性が浮かぶ。

 

レイト(そうか!結界によって、死んだ人たちの魂が留まっていれば!)

科学者『告。絶命した者の魂は本来、拡散、消滅しますが、2種の結界に阻まれ、残存している可能性があります。その確率は、3.14%。』

レイト(円周率並みか…………。)

 

 いや、裏を返せば、蘇生できる可能性が3%以上あるのだ。

 俺は、思念伝達で伝える。

 

レイト『リムル。』

リムル『ああ。俺とお前、考えている事は一緒みたいだな。』

 

 俺たちは、魔王になる事を決意する。

 そうすれば、皆を甦らせる事ができるかもしれない!

 

リムル「エレン、ありがとうな。」

エレン「ううん。」

レイト「でも、良いのか?俺たちに魔王になれって言ったのと同義だぞ。」

シズ「エレンは一体…………?」

エレン「うん。私ね…………本名はエリューン・グリムワルトって言うの。魔導王朝サリオンの王家に連なる家系なんだ。」

レイト「えっ?」

シズ「お嬢様…………?」

 

 それには、俺、リムル、シズさんは驚く。

 お嬢様なのかよ!?

 すると、カバルとギド達も口を開く。

 

カバル「俺たちは、エレンお嬢様の護衛として、一緒に国を出てきたんです。」

リムル「そうだったのかよ…………。」

レイト「護衛が務まったのか?」

ギド「黙ってて、すいやせん。」

エレン「自由な冒険者に憧れて、国を出てきちゃったんだ!…………でもね、さっきの御伽話は、サリオンでも一部の人しか知らないの。リムルさんとレイトさんが魔王になったら、私が関与したのがいずれバレると思う。」

 

 え?

 それって、まずい事なんじゃないのか?

 サリオンの王家に連なる家系の出身が、魔王誕生に関与した事は、かなりまずいだろ。

 

レイト「良いのか?」

エレン「良いの!この街の皆を、私も助けてあげたい!それに、ファルムス王国も、西方聖教会のやり方も、許せないの!」

カバル「お嬢様がそう仰るのなら、護衛として異論はありませんよ。」

ギド「勿論でやす!」

シズ「良い仲間だね。」

レイト「最高だな。」

エレン「私たちにできる事があったら、何でも言ってね。」

カバル「いつも世話になってるんだし。」

ギド「今度は、あっしらが頑張る番でやんすよ。」

リムル「ありがとう。」

 

 本当に、良い奴らだ。

 この3人に会えた事は、本当に良かった。

 その後、リムルが第三の結界を張る。

 念の為の措置だ。

 そして、リムルは言う。

 

リムル「それはそうと、出てこいよ。」

???「ああ。」

 

 リムルがそう言うと、リムルの影から、二つの人影が現れる。

 片方は、リムルと瓜二つの外見で、相違は、髪がピンク色な所だ。

 もう片方は、俺のよく知る奴だった。

 

シズ「貴方達は…………?」

エミルス「俺はエミルス。そこのリムル=テンペストの悪魔だ。」

バイス「俺っちはバイス!イカした悪魔のバイスだぜ!」

レイト「やっぱりか……………。」

 

 実は、前々から感じていたのだ。

 リムルの中に、悪魔がいる事を。

 まさか、二体も居るとは思わなかったのだがな。

 

リムル「……………で、何の用だよ?」

エミルス「お前の本心を確かめる。戦え。」

シズ「えっ……………!?」

リムル「良いぜ。俺の本心を教えてやるよ。」

レイト「ああ。エミルスは、これ使え。」

エミルス「ああ。」

 

 俺はそう言って、リバイスラッシャーをエミルスに渡す。

 リムルも、自分の刀を抜き、構える。

 シズさんは、俺に話しかける。

 

シズ「キメラさん、止めなくて良いの?」

レイト「ああ。あれは、リムルとエミルスの戦いだ。」

バイス「全く、素直じゃないんだから!」

 

 俺たちがそう話す中、リムルとエミルスは、お互いに向き合い、そのまま駆け出して、それぞれの剣をぶつけ合う。

 

リムル「くっ………………!」

エミルス「お前は魔王になって、何がしたいんだよ。」

リムル「……………。」

 

 エミルスの問いに、リムルは黙る。

 そんな中でも、剣での応酬は続く。

 

エミルス「おい、何とか言えよ。お前は魔王になって、何がしたいんだ。」

リムル「俺は……………俺は!」

 

 エミルスの問いに、リムルは叫びながら鍔迫り合いに持ち込み、叫ぶ。

 

リムル「俺は……………もう仲間達を失いたくないんだ!」

 

 リムルはそう叫んで、剣を一閃して、エミルスが持ってたリバイスラッシャーを落とす。

 

レイト「リムル……………。」

エミルス「…………やっと本音で話したか。」

バイス「エミルスもリムルも素直じゃないんだから!」

リムル「……………ああ。レイト。お前も魔王になるって言ったな。」

レイト「ああ。今回の件は、俺にも責任がある。ファルムス王国が攻めてくる事を予感しておきながら、何も出来なかったからな。」

 

 そう。

 俺は、ファルムス王国が攻めてくる事を予感しておきながら、何もできなかった。

 だからこそ、今回の件は、俺も決着をつけたい。

 シズさんが俺たちに近寄る。

 

リムル「シズさん…………。」

シズ「スライムさん、キメラ君。…………いや、リムルさん、レイト君。私も協力するよ。皆を甦らせよう。」

レイト「ああ。」

 

 やっと、シズさんが名前で呼んでくれたな。

 しかし、どうやって魔王になるんだ?

 そう思っていると、科学者が答えてくれた。

 

科学者『解。個体名レイト=テンペストとリムル=テンペストは、既に魔王種を獲得しています。』

レイト『え?どういう事?』

科学者『解。魔王種の有無は、魔素量、保有スキルなどが、真なる魔王として、覚醒するに足るか否かを指します。マスターの場合は、豚頭魔王(オークディザスター)暴風大妖渦(カリュブディス)の一部を吸収した時点で獲得していました。条件を満たせば、真なる魔王へと進化が可能です。』

レイト『マジか!条件は何だ?』

科学者『御伽話から推測するに、種を発芽させるには、養分が必要です。養分となるのは、人間の魂。必要となるのは、1万名分以上。』

 

 1万名か……………。

 問題は、どうやってその魂を手に入れるかだよな。

 すると、リムルが蒼影からの報告を聞いていた。

 しばらくして、俺たちの方を見る。

 

リムル「その魂の件は、どうにかなりそうだぞ。」

レイト「本当か!」

リムル「ああ。ファルムスと西方聖教会の連合軍。合計四万が、ここに向かってるんだと。」

レイト「そうか。都合が良いな。」

シズ「2人とも…………。」

リムル「さてと。」

レイト「それじゃあ、行くか。」

 

 俺たちは、ミュウランの元に向かう。

 その間、色々と話した。

 ミュウランの元に着くと、俺たちは言う。

 

リムル「ミュウラン。処罰を決めた。」

レイト「君には死んでもらう。」

ヨウム「リムルの旦那にレイトの旦那!待ってくれ!ミュウランは本当に…………!」

 

 俺たちの言葉に、ヨウムがそう叫ぶと、獣身化したグルーシスが、俺とリムルに攻撃しようとするが、紅丸と火煉が立ちはだかる。

 

ヨウム「グルーシス…………!」

グルーシス「何してるヨウム!ミュウランを連れてさっさと逃げやがれ!」

ヨウム「はっ!ミュウラン!行こう!はやっ…………!」

 

 ヨウムは、ミュウランにそう声をかけるが、ミュウランにキスをされて、口を塞がれる。

 そして、ミュウランはヨウムに言う。

 

ミュウラン「好きだったわ。ヨウム。私が生きてきた中で、初めて惚れた男。今度は、悪い女に騙されないようにね。…………さようなら。」

ヨウム「ミュウラン!」

 

 ヨウムは、俺たちの方に行くミュウランを止めようとするが、リムルの糸で動けなくなり、そこからシズさんが抑える。

 グルーシスも、紅丸に抑えられる。

 

ヨウム「うっ!ミュウラン!旦那方!頼む!やめてくれ!俺も一緒に償う!何でも言う事を聞くよ!」

レイト「良い覚悟だ。リムル。」

ヨウム「一生かけて償うよ!だから!」

 

 ヨウムは必死にそう言うが、リムルは手にオーラを集める。

 

ヨウム「ああっ!そんな!シズさん!旦那達を止めてくれ!」

シズ「……………黙ってて。」

 

 ヨウムの静止も虚しく、リムルの手が、ミュウランを貫く。

 

グルーシス「ぐっ…………!」

ヨウム「あっ、ああ……………ああああ!」

 

 それを見たグルーシスとヨウムは、そう呻く。

 だが、心配はないさ。

 

レイト「……………よし、上手くいったな。」

ミュウラン「あれ?なんで私、生きて……………?」

「「あっ……………!」」

リムル「3秒くらいは死んでたかな。まっ、俺とレイトも、死んでもらうとは言ったが、殺すつもりなんて無かったし。」

 

 俺とリムルは、狙い通りに行って、笑みを浮かべる。

 それを見て、シズさんは首を振る。

 すると、科学者が伝える。

 

科学者『告。個体名ミュウランの擬似心臓は正常に作動しています。』

レイト『分かった。』

 

 上手くいったようだな。

 俺とリムルは、どういう理由なのかを伝える。

 

リムル「さっき、三つ目の結界を張った時に分かったんだが、クレイマンがミュウランに仕込んだこの仮初の心臓は、盗聴に使われていたんだ。」

ミュウラン「盗聴?」

 

 そう。

 俺とシズさんも、それを知らされて、驚いたのだ。

 だからこそ、シズさんも、ミュウランを助けるこの作戦には、協力してくれたのだ。

 

レイト「ああ。どうやら、暗号化された電気信号を発信させ、クレイマンの元へと届けられていたみたいだ。」

リムル「欺く為に、ミュウランは死んだと思わせたかったんだ。怖い思いさせてすまんな。」

ミュウラン「いえ…………あの、では、この鼓動は?」

レイト「仮初の心臓を参考に、俺のキメラ細胞を用いて作った擬似心臓だ。無論、盗聴機能はない。これで、ミュウランは自由だよ。」

リムル「ああ。クレイマンは、あなたに何も出来ない。」

 

 ミュウランは、これで自由の身になったのだ。

 ちなみに、キメラ細胞を使ったのだが、厳密には、シズさんの体を作った際に培った技術で作った汎用性が高いキメラ細胞を用いた。

 これは、シズさんの体の作成の際に出来た、新たなキメラ細胞を用いたので、俺が死んだ場合でも影響を受けない。

 すると、ヨウムがミュウランに声をかける。

 

ヨウム「ハハっ!やったじゃねえか、ミュウラン!お前を縛るもんは、もう何も無くなったってよ!」

ミュウラン「ええ…………!リムルさん、レイトさん…………いえ、リムル様、レイト様。どんなに言葉を尽くしても、感謝を伝えきれません。忠誠がお望みであれば、私はそれに従います。」

リムル「いや、それは良い。」

レイト「だが、少し、手伝ってほしいことがあるんだ。」

 

 俺とリムルは語ることにした。

 何故、ミュウランの力も必要なのか。

 

ミュウラン「何でしょう?」

リムル「今、お前が死んで生き返ったように、紫苑達も生き返る可能性がある。」

火煉「本当…………何ですか?」

ミュウラン「できる…………のですか?」

レイト「あくまで可能性の話だ。だが、少しでも成功率を上げる為、できる事は全てやる。手伝って欲しい。」

ミュウラン「分かりました。協力は惜しみません。」

火煉「良かった…………。」

 

 それを聞いたミュウランは快諾して、火煉はホッとする。

 火煉にも、吉報なのは間違い無いだろう。

 

リムル「ありがとう。」

レイト「ところで、それが無事終わったら、それからはどうするんだ?」

 

 俺の質問に、ミュウランは少し考える素振りを見せて、口を開く。

 

ミュウラン「私…………せっかく自由になれた身ですけど、人間の短い一生分くらいなら、束縛されても良いと思っています。」

ヨウム「えっ、それって……………。」

 

 つまり、ヨウムと付き合うって事だな。

 それを聞いたヨウムは、顔を赤くして、2人とも、照れる。

 それを聞いたグルーシスは。

 

グルーシス「はっ?えっ?えっ?えっ?えっ?ええっ!?」

 

 グルーシスがそう叫ぶ中、紅丸、火煉、シズさんが、グルーシスの肩に手を置く。

 

グルーシス「慰めはいらねえよ!それに、どうせヨウムは人間だから、100年かそこらの寿命だ。その後は、俺の番って事で。」

ヨウム「何言ってやがる!?そんな事考えてやがったか!クソ狼が!」

グルーシス「あ?今なんつったクソ人間!」

ヨウム「クソ狼って言ってんだよ!」

 

 前向きだねえ…………。

 これは、ヨウムがキメラ細胞を埋められていて、寿命が伸びてる可能性があるという事は、黙っておいた方が良いかもな。

 俺たちは苦笑するが、要件を伝える。

 

レイト「ところで、ヨウム。お前にも頼みたい事がある。」

ヨウム「あ…………ああ。旦那達の頼みなら、何でも…………。」

リムル「ファルムス王国の新しい国王になってくれ。」

ヨウム「おう、任せろ!……………って、え?王?」

 

 俺とリムルの言葉を聞いたヨウムは、驚いて、聞き返す。

 どういう理由なのかを、俺たちはヨウムに伝えた。

 

リムル「……………つまりだ。今こちらに向かっているファルムス王国の軍勢を、国王とその幹部諸共殲滅する。」

レイト「すると、残された国民が困るだろ?だからこそ、ヨウムの出番だ。新たな王として、ファルムス王国を統治して、俺たちと国交を結んで欲しい。」

ヨウム「簡単に言ってくれるな…………。俺が王だと?」

リムル「良いだろ?俺たちだって魔王になるんだ。お前も付き合えよ。」

ミュウラン「リムル様とレイト様は、あなただからお願いしてるのよ。私も応援するから、波乱万丈に生きてみたら?」

ヨウム「う〜ん…………。」

 

 ヨウムは悩んでいた。

 まあ、無理もないか。

 いきなり王になれと言われても、困惑するだけか。

 すると、グルーシスが声をかける。

 

グルーシス「俺も付き合ってやるぜ。そばでお前が死ぬのを待ってやる。」

ヨウム「何い!?」

グルーシス「ハハハッ!」

ヨウム「……………分かった、やるよ。任せてくれ。」

レイト「よし。」

 

 そう言って、俺たちは握手をする。

 その後、会議室に皆を集める。

 

リムル「皆、待たせたな。これより、会議を行う。」

レイト「議題は、今後の人間への対応と、紫苑達の蘇生に関してだ。」

 

 俺たちはそう切り出す。

 そして、俺たちは話していたのだ。

 ある秘密を、エレン達だけでなく、皆にも明かそうと。

 いつまでも、隠す訳にはいかないからな。




今回はここまでです。
レイトは、レイトなりの仮面ライダーとしての姿を見つけることが出来ました。
そのスタンスが、果たして正しいのか、間違っているのかは、分かりません。
それでも、レイトは自分なりの仮面ライダーとしてのあり方を見つける事が出来ました。
そして、いよいよ、リムルとレイトが、秘密を打ち明ける時が来ました。
正義や仮面ライダーというのは、立場によって変わる、複雑な言葉ですよね。
リムルの悪魔であるエミルスは、転スラのスマホゲーム、まおりゅうに登場したキャラです。
ファルムス王国の撃破まで、あと少し。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
転スラとジオウ、転スラと鎧武を投稿しているので、気が向いたら、読んで見てください。
ちなみに、レイトの場合は、魔王種を獲得するのは、豚頭魔王だけでは足りずに、暴風大妖渦も吸収する必要がありました。
本当に、一部だけだったので。


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第29話 全てを賭けて

 俺たちは、会議室に皆を集める。

 

リムル「皆、待たせたな。これより、会議を行う。」

レイト「議題は、今後の人間への対応と、紫苑達の蘇生に関してだ。」

 

 俺たちはそう切り出す。

 そして、エレンが語った物語……………ミリムの過去についても話す。

 竜と人との間に生まれ、竜皇女(りゅうこうじょ)として育つ少女。

 ある日、竜である父から、自身の分身体とも言える子竜を、友として授かる。

 しかし、竜皇女を支配しようとした国王は、子竜を殺してしまった。

 その少女は嘆き、悲しみ、怒り狂った。

 父より受け継いだ、その力で、その国王と十数万人の国人諸共、一国を滅ぼしてしまう。

 その怒りはやがて、世界へと向いてしまう。

 ある魔王が、止めようとするが、七日間も戦い続ける。

 その少女は、精霊女王が仲裁した事で、正気を取り戻し、魔王へと開花し、それに伴い、子竜は奇跡の復活を果たす。

 だが、死と同時に魂を失った子竜は、破壊の限りを尽くす意思なき邪悪な魔物、混沌竜(カオスドラゴン)へと変貌していた。

 少女は嘆きつつも、かつて友であった混沌竜(カオスドラゴン)を封印し、これが、魔王となった竜皇女の最初の偉業となった。

 それを聞いていた皆は、黙って俺たちを見る。

 そして、俺たちは言う。

 

リムル「……………と言う事で、俺たちは魔王になろうと思う。」

 

 リムルの言葉に、その場にいる全員が俺たちを見つめる。

 すると、外からは。

 

ヤシチ「ええ〜!?リムル様とレイト様が魔王に!?」

カクシン「シッ!」

ヤシチ「ごめん……………。」

 

 そんな声が聞こえてきた。

 まあ、無理もない。

 俺は、口を開く。

 

レイト「こちらに向かっていると言うファルムス王国の軍隊……………俺とリムルで1万名以上を養分にして、魔王に進化する。」

リムル「紫苑達が蘇生する確率は、3%もある。」

一同「おお……………!」

 

 それには、全員がどよめく。

 そんな中、俺はある事に気づいていた。

 それは、この場に一名、蒼影達の方に二名ほど、悪魔の気配を感じるのだ。

 すると、朱菜が声をかける。

 

朱菜「そっ、それはリムル様、レイト様……………。」

リムル「まあ、待て。言いたい事、聞きたい事があるだろうが、その前に、最後まで話を聞いてくれ。」

朱菜「はい。」

レイト「………………俺とリムルは、元人間の転生者だ。所謂、異世界人と呼ばれる者と、同じ世界の人間だった。」

 

 そう。

 俺たちが明かす秘密、それは、俺たちが転生者である事だ。

 そこから語った。

 俺たちは死んで、こっちでリムルはスライムとして、俺はキメラとして生まれ変わった事。

 封印の洞窟で出会い、そこから、友達や仲間が出来た事。

 リグル達のことは、家族と呼べるほど、大切な者達であることを。

 

リムル「人間を襲わないというルールも、人間が好きだと言ったのも、俺たちが元人間だったからだ。」

レイト「俺たちは魔物だけど、心は人間のままだと思っていた。だから、人間と交流を深め、仲良くできればなと。」

リムル「今更後悔しても、取り消す事は出来ないが、その事でお前達が傷つくのは、俺たちの本意じゃない。」

レイト「ああ。イングラシアに長居しないで、すぐに戻っていれば……………。」

 

 そう。

 俺も、イングラシアに長居してしまった。

 すぐに戻っていれば、対処は出来たかもしれないのに……………。

 すると、火煉と朱菜が口を開く。

 

火煉「それは違います。」

朱菜「はい。いつでもリムル様とレイト様が守ってくださるという甘えが、私たちにあったのです。その結果が、今回の惨劇でした。」

レイト「火煉……………?」

紅丸「妹や幼馴染に先に言われてしまうとは……………兄として…………男しても情けない限りだ。」

 

 朱菜と火煉がそう言う中、紅丸がつぶやく。

 俺とリムルが呆気に取られる中、紅丸の独白は続く。

 

紅丸「俺も、今回の件で痛感しました。結界で、リムル様とレイト様との繋がりを絶たれた時、常にあった万能感が消え去り、胸中には、寄る辺を失った動揺が広がったのです。留守を預かっていたというのに、惨事を未然に防げなかった原因は…………俺にあります。」

リグル「待ってくれ!紅丸さん!それを言うなら、警備責任者の俺の失態だ!原因なら、俺にある!」

ゲルド「いや……………。」

リムル「ん?」

 

 紅丸がそう言う中、リグルがそう言って、ゲルドとグルドも口を開く。

 あれ?

 

ゲルド「初めて道を通る者には、もっと目を光らせておくべきだった…………。」

グルド「はい。そうするべきでした。」

レイト「ええっ?」

ゴブタ「オイラのせいっす…………。」

リムル「あ……………。」

ゴブタ「相手を煽りすぎたかもしれないっす……………。」

リグル「いや、あれは仕方ない。」

 

 話が段々と逸れていく中、俺は叫ぶ。

 

レイト「待て!待ってくれ!油断していたのは、俺たちだ。俺もどこかで、ファルムス王国がすぐに攻めてくるなんてあり得ないという慢心があった。」

リムル「俺だって、自分の思いを優先した結果、この様だ。全ては、俺たちの責任だ。本当に、済まなかった。」

シズ「私も……………2人をイングラシアに留めさせた。本当に……………ごめんなさい。」

朱菜「リムル様……………。」

火煉「レイト様……………。」

エレン「シズさん………………。」

 

 俺、リムル、シズさんが、周囲の皆にそう謝る。

 今回の件は、予期しておきながら、何も出来なかった俺の過ちだ。

 だから、罵られる事は覚悟していた。

 罵られても、仕方ない事なのだから。

 すると、白老が立ち上がる。

 

白老「リムル様、レイト様、シズ殿。お二人がご自分の思いを優先し、シズ殿が2人の思いを助けたからと言って、何ら問題はございませんぞ。今回の件は、わしら全員の油断…………そして、弱さが原因じゃ。あの様な不埒者どもに好き放題されてしまったのは、わしらの怠慢であろう!違うか、皆の衆!」

 

 白老がそう叫ぶと、皆は頷く。

 

リムル「皆……………。」

レイト「お前ら……………。」

リグルド「リムル様、レイト様。」

レイト「リグルド……………。」

リグルド「リムル様とレイト様は、我らの主。人間と仲良くしようと、魔王になろうと、あなた方の想いが、我らの進むべき道なのです。」

リムル「元人間が主とか、嫌じゃないのか?」

ゴブタ「え?リムル様はリムル様で、レイト様はレイト様っすよね?」

レイト「それはそうだが…………。」

朱菜「フフフフッ…………。」

火煉「フフッ…………。」

 

 リグルドの言葉に、リムルがそう聞くと、ゴブタはそう言う。

 俺がそう言うと、火煉と朱菜の2人が笑う。

 

朱菜「私たちがお慕いしているのは、リムル様とレイト様です。」

火煉「ええ。前世が何であろうと、関係はないです。」

紅丸「だな。」

白老「ハッハッハッハッ。」

リグルド「皆の気持ちは、同じです。その様なことを気にする者など、誰もおりません。我らはただ、従うのみですぞ。」

レイト「そうか……………。」

 

 俺たちは、こんなに仲間達に恵まれていたんだな……………。

 それを聞いて、嬉しくなる。

 すると、ずっと黙っていたカイジンが口を開く。

 

カイジン「それで、聞きたいんだが…………。」

 

 カイジンがそう言うと、カップを取り、紅茶を飲んで、俺達に聞く。

 

カイジン「今後の人間への対応は、どう考えているんだ?旦那方。」

リムル「ああ。俺たちが思うに、人間は、善にも悪にもなれる。それは、そもそもの性根もあるだろうが、周囲の環境に大きく影響される。」

レイト「確かにな。個人が善であっても、住む国が悪の道に進めば、いつしか同じ色に染まる。」

 

 そう。

 前世の日本の学校で学んだ歴史の授業でも、そんな感じだったのだ。

 例え、少数の意見があっても、大多数の意見に飲み込まれてしまう。

 俺の言葉の続きを、リムルが引き取る。

 

リムル「だから、俺たちは人間が学習できる環境を整えたいと思う。俺たちの事を知ってもらえれば、良き隣人になれるのだと。そして、人間と魔物の垣根を取り払えると。俺は、その可能性を信じたい。」

レイト「まあ、これはあくまで今後の希望としての話だ。今の段階では時期尚早だろう。まずは、俺たちの存在を、人間達に認めさせる事から始めるべきだ。」

 

 そう。

 今の段階では、早すぎる。

 だからこそ、魔王になる必要があるのだ。

 すると、紅丸が口を開く。

 

紅丸「なるほど。リムル様とレイト様が魔王として君臨する事で、武力を用いた交渉は不利だと悟らせる。」

リムル「ああ。その上で、他の魔王に対する牽制も行い、人間達の国の盾としての役割を担う事にする。」

グルド「その通りですな。」

ゲルド「ええ。賢い者ならば、敵対するよりも、共存を選ぶでしょう。」

レイト「ああ。長い時間をかけて、ゆっくりとでも、友好的な関係を築ける様に目指す。これが俺たちの考えだ。」

 

 たとえ、時間が掛かっても、友好関係を築けるのなら、その方がいい。

 すると、黙って聞いていたカイジンが口を開く。

 

カイジン「そりゃまた、甘い理想論だな。これから魔王になろうって奴のセリフじゃねえぞ。ったく………………だが、嫌いじゃないぜ。旦那達らしくってな。」

リムル「えへっ。」

 

 まあ、理想論だな。

 それでも、叶えてみせるさ。

 すると、朱菜が口を開く。

 

朱菜「理想論でも良いじゃないですか。」

火煉「ええ。私は、レイト様とリムル様なら、作れると思います。その夢の様な世界を。」

ゲルド「難しく考える事などない。」

グルド「はい。我らは、レイト様とリムル様を信じるのみです。」

紅丸「リムル様とレイト様が魔王になるのなら、俺の役目も、ちゃんと用意して下さいよ。」

蒼影「我々は、リムル様とレイト様の忠実なる影。ご命令のままに動きます。」

蒼華「御意のままに。」

蒼月「無論です。」

ガビル「勿論、我輩達も!」

レイト「ありがとうな。」

嵐牙「我が主達よ。我はあなた様方の忠実な牙。立ち塞がる敵を噛み殺す者でございます。」

リムル「嵐牙……………。」

ヨウム「やれやれ……………。」

 

 朱菜を始めとして、色んな人たちが、俺たちに賛同する。

 すると、ヨウムも口を開く。

 

ヨウム「俺たちにも新たな国を作って、意識改革を手伝えって事なんだろ?」

リムル「分かってるじゃないの、ヨウムちゃん!」

レイト「頼んだぞ。新たな国王様?」

ヨウム「えっ……………言ってろよ。」

ミュウラン「フッ……………。」

グルーシス「ハハハッ!」

ヨウム「ヘッヘへ…………。」

エレン「リムルさん、レイトさん!今後もずっと仲良くしようね!」

シズ「私もね。」

リムル「うん。」

レイト「ああ。勿論だ。」

リムル「皆、ありがとう!これからも、俺たちの我儘に付き合ってくれ!」

 

 その言葉に、皆が賛同する。

 それを聞いて、俺は嬉しかった。

 ここが、今の俺たちの家なのだと。

 人や魔物という垣根など、心が通じ合えば、乗り越えられる。

 俺はそう確信した。

 だからこそ、紫苑達を蘇生させてみせる。

 その後、俺たちは、ファルムス王国への反撃の作戦を立てる事に。

 

リムル「さてと………………。」

レイト「敵軍の詳細は分かるか?」

紅丸「はい。蒼影からの情報によると、進軍中の軍勢は、今のペースで行くと……………3日後には、テンペストに到着すると思われます。」

火煉「ファルムス王国の騎士団が2万。傭兵団1万2千。魔法使いが2千程度。これに、西方聖教会の神殿騎士団(テンプルナイツ)6千を加えた、連合軍との事です。」

朱菜「総勢4万……………ですか。」

リムル「数は多いが、大した戦力じゃないな。」

レイト「ああ。問題ない。」

一同「おおっ!」

リグルド「流石はリムル様に、レイト様!」

 

 そう。

 今回ばかりは、あの力を使うべきだろう。

 『劇場版仮面ライダーリバイス バトルファミリア』で猛威を振るったあの能力を。

 4万か。

 俺たちが魔王になるのに、必要な養分は十分に足りる。

 俺たちが人間の魂を得る事で、真なる魔王に進化するのだろう。

 すると、ゲルドが口を開く。

 

ゲルド「どういう分担で行きますか?」

リムル「ん。」

紅丸「やはり、正面は俺の部隊が受け持つ方がいいな。」

ゴブタ「狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)にも先陣を任せて欲しいっす!」

レイト「いや、悪いが、連合軍に関しては、俺達に任せて欲しい。」

ゴブタ「え?」

 

 俺の言葉に、ゴブタが首を傾げる。

 その他の面子も、驚いた表情を浮かべる。

 

リムル「理由はある。殺された者達の蘇生に関わるんだが……………これを為すには、俺たちが魔王になる事が絶対条件だ。」

レイト「そして、侵略者を俺たち2人で殲滅する事が、俺たちが魔王になる為に必要なプロセスだからだ。」

紅丸「はぁ……………。」

 

 俺とリムルがそう言うと、紅丸とリグルドは顔を見合わせる。

 すると、リグルドが不安そうに言う。

 

リグルド「だとしても…………お二人だけで出陣するのは、危険すぎでは?」

リムル「心配ない。油断もしないし、手加減もしない。」

リグルド「さ、左様ですか……………。」

 

 リグルドは、リムルの答えに、そう言って引き下がる。

 それに、理由はまだある。

 今回の一件、俺たちが責任を取る必要がある。

 今後、一切の甘えを、俺たち自身に許さない為にも。

 俺たちの決意のこもった表情を見て、紅丸は頷き、口を開く。

 

紅丸「分かりました。今回は、お二人に託します。」

リムル「うん。」

レイト「という訳で、お前達には、別に任せたい事がある。」

紅丸「はっ!」

リグルド「何なりと!」

 

 俺の言葉に、紅丸とリグルドは頷く。

 俺は、テンペスト周辺の地図を出して、敵を表す黒い駒を街の四方に置く。

 

リムル「街の四方に、結界を発生させる魔法装置が置かれている。それを守っているのは、中隊規模の騎士達だ。」

レイト「やって欲しい事は、その部隊を四箇所同時に攻め落としてもらいたい。」

紅丸「ほう。」

グルド「では、各々に選抜部隊を決めませんとな。」

リグル「是非とも、このリグルに!」

ゴブタ「オイラも!今回は本気で怒ってるっすよ!」

リムル「慌てるな。人選は済んでいる。」

ゴブタ「えっ?」

 

 俺は、それぞれを表す白い駒を、その黒い駒の周囲に置いていく。

 

レイト「まず、東には紅丸、火煉、ベイル、エミルス、バイス、朱菜の悪魔。西に白老、リグル、ゴブタ、ゲルド、グルド、そしてシズさん。南をガビルとその配下達とガビルの悪魔。北には蒼影、蒼華、蒼月たち、そして、蒼華の悪魔だ。」

蒼影「我らにも機会を与えて下さり、感謝します。」

ガビル「お任せあれ!」

朱菜「それはそうと……………私に蒼華、ガビルの悪魔とは……………?」

レイト「そうだな。出てこいよ。居るのは分かってんだよ。」

 

 すると、朱菜の体から、オレンジ色の粒子が現れ、人の形に形成される。

 そこには、朱菜の雰囲気に似ているが、髪がオレンジ色の人がいた。

 

朱菜「あなたは……………!?」

アギレラ「私はアギレラ。貴女の後悔から生み出された悪魔。」

 

 アギレラって……………。

 ウィークエンドライバーを渡すのは、こいつで決まりだな。

 すると、ガビル達の方でも、声が聞こえてくる。

 

トリシューラ「我輩はトリシューラ。ガビルから生み出された悪魔だ。」

ジャンヌ「私はジャンヌ。蒼華から生み出された悪魔よ。」

ラブコフ「ラブ!ラブラブ!」

 

 トリシューラにジャンヌ、ラブコフか。

 トリシューラには、ツーサイドライバーを渡して、ジャンヌにはリベラドライバーだな。

 そう思う中、火煉が聞いてくる。

 

火煉「どうして、この3人から悪魔が?」

レイト「ああ……………俺の影響かもな。」

火煉「え?」

 

 俺は話した。

 俺の後悔の念と、朱菜、ガビル、蒼華の後悔の念が共鳴しあった結果、悪魔の誕生に繋がったのだと。

 それは、リムルのエミルスとバイスとも一緒だと言える。

 そんな中、リムルは紅丸に、俺は火煉に話す。

 

リムル「紅丸。手加減はいらない。」

紅丸「無論、そのつもりです。」

レイト「火煉。ベイルに言っておけ。悪魔らしく暴れろと。」

火煉「はい。」

白老「リムル様、レイト様。わしも二度と不覚を取るつもりはござらん。しかし、わしを西に配置するという事は……………奴ら(異世界人)が居る可能性が高い……………という事ですかな?」

 

 そう。

 西に白老を配置したのにも、理由がある。

 白老を倒し、人々を虐殺した異世界人が居る可能性が高いからだ。

 

レイト「ああ。ブルムンド王国への逃げ道は塞いでいるだろうからな。そこに戦力を割くだろう。襲撃者は、俺たちと同じ異世界人である可能性が高いが……………。」

白老「ホッホッホッホッ。問題ござりませぬ。わしの油断により、あの時は敗北しましたが、奴の太刀筋は既に見切っておりますれば。」

リムル「シズさんも、相手は同じ日本人の可能性があるんだけど……………。」

シズ「大丈夫。リムルさんとレイトさんもやると決めたのなら、私もやる。」

リグル「リムル様、レイト様!俺たちも昔の様に弱くはありません!白老殿やシズ殿に守られるだけではなく、戦う力を持っております!」

ゴブタ「そうっす!ゴブゾウの敵を取ってやるっすよ!」

ゲルド「リムル様より授かった、この猪人王(オークキング)の力。存分に振るってみせましょう。」

グルド「私も、レイト様より授かった、オーバーデモンズの力。存分に振るってみせましょう!」

 

 俺やリムルの言葉に、白老、シズさん、リグル、ゴブタ、ゲルド、グルドが頷く。

 頼もしいな。

 シズさんも、悪いな。

 

レイト「頼もしいな。では、このメンバーで魔法装置を破壊し、弱体化を解消させるんだ!」

一同「はい!」

 

 俺の言葉に、全員が返事をする。

 リムルは、朱菜の方を向く。

 

リムル「朱菜。」

朱菜「はい。」

リムル「この忌々しい結界こそが、紫苑達の魂を留めている可能性が高い。分かるな?」

朱菜「はい。代わりになる結界を張れば良いのですね?」

リムル「そういう事だ。」

朱菜「お任せを。紫苑達の蘇生の確立を少しでも上げる為に、全力で。」

レイト「ああ。ミュウラン。君の力を貸して欲しい。朱菜を手伝ってやってくれ。」

ミュウラン「承知しました。せめてもの償いの為、必ずや、ご期待に応えてみせましょう。」

朱菜「よろしくお願いしますね。ミュウラン。」

ミュウラン「はい。こちらこそ。」

ヨウム「じゃあ、俺らはその護衛だな。」

グルーシス「おう!」

エレン「私たちも、朱菜ちゃん達を守るから!」

カバル「ああ!」

ギド「任せるでやす!」

リムル「ああ。リグルド。皆の指揮は任せたぞ。」

リグルド「ははっ!」

 

 よし。

 準備は終わったな。

 俺は口を開く。

 

レイト「連合軍は、決戦は3日後だと思っているだろう。」

リムル「だが、我々は今、この瞬間を持って、敵の殲滅行動に移る。紫苑やゴブゾウ達を生き返らせるぞ!」

一同「おお〜っ!」

 

 俺たちは、準備を開始する。

 その間、ちょっと面倒な事があったが。

 俺は、アギレラにウィークエンドライバーとクイーンビーバイスタンプ、エミルスにリバイスドライバーとレックスバイスタンプを渡す。

 グルドは、バッタ、コンドル、スコーピオン、アノマロカリスのバイスタンプを持っていくそうだ。

 そして、ガビルの配下達には、ガビルと蒼華の悪魔に届けるべく、ツーサイドライバーとバットバイスタンプ、リベラドライバーとコブラバイスタンプを託す。

 そんな中、俺たちは作戦の最終確認をしていた。

 

リムル「仲間、家族、友達。良いもんだなぁ…………。」

レイト「俺たちも準備するぞ。」

 

 俺たちは、人間としての姿になる。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「あっ、もしかして……………。」

レイト「どうした?」

リムル「いや、クレイマンの狙いって、人間一万人分の魂だったりしないか?」

レイト「あっ………………。」

 

 そういう事か。

 俺たちを利用して、戦争を起こして、一気に魂を収穫する。

 自分が真なる魔王へと進化する為に。

 だとしたら、クレイマンは俺たちの事を小物だと思っているだろうな。

 だが……………俺たちは既にクレイマンを敵とみなしている。

 この一件が片付いたら、次はクレイマンだな。

 俺たちは決意を固め、出発する。

 一方、ガビル達の所に、ヤシチ達が向かっていた。

 

ヤシチ「ガビル様〜!」

ガビル「ん?」

ヤシチ「お〜い!」

ガビル「おおっ!お前達!」

ヤシチ「リムル様とレイト様が、結界の外に出してくれたんだ!」

ガビル「そうか、そうか!よくぞ無事で!」

カクシン「ガビル様こそ…………!」

スケロウ「無事でよかった…………!」

ガビル「お……………お前達!」

 

 すると、ガビル達は抱き合って泣き始める。

 

ガビル「うおおおおっ!我ら、生まれた時は違えど、死ぬ時は一緒だぞ〜!」

ヤシチ達「ガビル様〜!」

 

 そう泣く中、蒼華、蒼月がやって来る。

 

蒼華「もう良い。」

蒼月「それに、渡す物があるんじゃない?」

ヤシチ「あっ、そうだった!」

 

 そう言って、ヤシチはトリシューラにツーサイドライバーとバットバイスタンプを、ジャンヌにリベラドライバーとコブラバイスタンプを渡す。

 ジャンヌは、リベラドライバーを装着して、コブラバイスタンプを起動して、蒼月はデモンズドライバーを装着して、スパイダーバイスタンプを起動する。

 

コブラ!

スパイダー!

Deal……!

 

 すると、リベラドライバーから、大量の鉄骨が現れて、ジャンヌの周囲を囲い、蒼月の横に蜘蛛が現れ、待機音が流れる。

 

ジャンヌ「行くよ。」

ラブコフ「ラブ!」

 

 ジャンヌはラブコフにそう言って、リベラドライバーにコブラバイスタンプを装填する。
 すると、待機音が鳴り、鉄骨が吹き飛ぶ。

 

What's Coming-up!?What's Coming-up!?』


What's Coming-up!?What's Coming-up!?

 

 待機音が流れる中、2人は叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

 ジャンヌはリベラドライバーを倒し、蒼月はスパイダーバイスタンプをオーインジェクターに押印する。

 

リベラルアップ!』


Ah Going my way!


『仮面ライダー!蛇!蛇!蛇!ジャンヌ!

Decide up!

Deep.(深く)Drop.(落ちる)Danger.(危機)

(仮面)Rider Demons!

 

 ジャンヌは仮面ライダージャンヌ・コブラゲノムに変身して、蒼月は仮面ライダーデモンズ・スパイダーゲノムに変身する。

 

蒼影「では、参る。」

 

 蒼影がそう言うと、蒼影達、蒼月、ジャンヌ、ラブコフが消える。

 

ガビル「おお。」

トリシューラ「俺も行くか。」

 

 トリシューラは、ツーサイドライバーを装着して、バットバイスタンプを起動する。

 

バット!


『Confirmed!

 

 トリシューラはバットバイスタンプを起動して、オーインジェクターに押印する。
 

 影から、大量の蝙蝠が現れる。



 

トリシューラ「変身!」



 

 トリシューラは、バットバイスタンプをツーサイドライバー本体に装填する。
 

 そして、エビルブレードから、ライブガンへと変える。

 



『Eeny, meeny, miny, moe…!』


Eeny, meeny, miny, moe…!』


Eeny, meeny, miny, moe〜!』


Eeny, meeny, miny, moe〜!』



 

 そして、ライブガンのトリガーを弾く。



 

バーサスアップ!


『Precious!Trust us!Justis!バット!』


仮面ライダーライブ!

 

 トリシューラは、仮面ライダーライブ・バットゲノムに変身する。

 そして、ガビル達も動き出す。

 

ガビル「では、皆の者!準備は良いか!」

部下達「おうっ!」

ガビル「我ら、龍人族(ドラゴニュート)の力を見せつけてやろうぞ!」

部下達「うおおおおおっ!」

ガビル「いざ、出陣である!フンっ!と〜う!」

トリシューラ「ふっ!」

 

 ガビルとトリシューラの2人が、飛び立つ。

 

ヤシチ「ガビル様も、ガビル様の悪魔もかっくい〜!」

カクシン「当然至極!」

スケロウ「よしっ!俺らも続くぞ!」

 

 そう言って、龍人族達も出陣する。

 一方、紅丸達の方は。

 

紅丸「いよいよだな。」

アギレラ「行くわよ、お兄様?」

火煉「ベイル。悪魔らしく暴れなさい。」

ベイル「言われるまでもない。」

バイス「ったく!悪魔使いが荒いんだから!」

エミルス「ごちゃごちゃ言ってないで、行くぞ。」

 

 そんなふうに話して、エミルス、火煉、アギレラは、それぞれのドライバーを装着して、バイスタンプを起動する。

 

レックス!

カブト!

Deal……!

クイーンビー!

 

 エミルスはレックスバイスタンプをオーインジェクターに押印して、火煉はカブトバイスタンプをベイルドライバーの上部に押印して、アギレラはクイーンビーバイスタンプをウィークエンドライバーに装填する。

 

Come On!レ!レ!レ!レックス!

 

バイス「フハハハハハ!いやっほう!」

 

Come On!レ!レ!レ!レックス!

 

 待機音が流れ、火煉とアギレラの周囲には、カブトムシと女王蜂が浮遊する。

 そして、3人は叫ぶ。

 

「「「変身!」」」

 

 そう言って、エミルスはリバイスドライバーにレックスバイスタンプを装填して、一回倒し、火煉はベイルドライバーのアーキオーインジェクターにバイスタンプを押印し、アギレラはウィークエンドライバーを一回倒す。

 

バディアップ!

オーイング!ショーニング!ローイング!ゴーイング!

仮面ライダー!リバイ!バイス!リバイス!

Bane Up!


『破壊!(Break)世界!(Broke)奇々怪々!(Broken)

仮面ライダーベイル!

Subvert up!

Wow! Just believe in myself!


『仮面ライダー Ah! アギレラ!

 

 エミルスとバイスは仮面ライダーリバイス・レックスゲノムに、火煉は仮面ライダーベイルに、アギレラは仮面ライダーアギレラへと変身する。

 そして、紅丸と共に敵の方へと向かっていく。

 西の方も、ゴブタ、リグル、白老、ゲルド、グルド、シズさんが向かう。

 一方、俺たちは、敵の本隊の上空にいた。

 

リムル「こいつらが、紫苑達を…………。」

レイト「情けは無用だ。お前らには、餌になってもらう。さて。」

 

 俺はそう言って、キメラドライバーを装着して、トライキメラバイスタンプを取り出す。

 

トライキメラ!

 

 俺は、トライキメラバイスタンプを、キメラドライバーに装填する。

 

オク!サイ!ムカ!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

オク!サイ!ムカ!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

 

 すると、俺の周辺にタコ、クロサイ、オオムカデが現れる。

 そして、俺は呟く。

 

レイト「変身。」

 

 そう言って、トライキメラバイスタンプを一回倒す。

 すると、三体の生物が砕け散り、俺の体にまとわりつく。

 

スクランブル!

オクトパス!クロサイ!オオムカデ!仮面ライダーダイモン!ダイモン!ダイモン!

 

 砕け散った破片が、ギフの棺の様な形状に変化して、俺は、仮面ライダーダイモンへと変身する。

 

リムル「始めるか。」

レイト「ああ。」

 

 リムルも、抗魔の仮面を被り、作戦を始めようとする。

 お前達にはジャッジを下してやるよ。

 敵は、この時、悪夢が迫っているとは、思っていなかった。




今回はここまでです。
いよいよ、反撃の時です。
これまでの鬱展開を吹っ飛ばす様にやっていきます。
ガビルの悪魔であるトリシューラは、まおりゅうに登場した鏡の世界のガビルです。
リバイス、ライブ、ジャンヌ、デモンズ、ベイル、アギレラが攻撃を開始します。
そして、レイトのダイモンも、上空に待機しています。
ちなみに、トリシューラの別人格として、カゲロウが居ます。
シズさんも、異世界人が居る西の方に向かいましたが、果たして、どうなるのか。
少なくとも、田口省吾は原作以上にボコボコにされる予定です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
クレイマンとの戦いが終わったら、電王編になります。
そこで、色々とレイトの秘密を明かそうと思います。


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第30話 神之怒(メギド)とギフの瞳

 俺たちは、ファルムスの本陣の上空に居た。

 所々、悪意が強い奴が居た。

 下衆な考えを持っている奴が多いな。

 

リムル「こいつらが、紫苑達を…………。」

レイト「情けは無用だ。お前らには、餌になってもらう。さて。」

 

 俺はそう言って、キメラドライバーを装着して、トライキメラバイスタンプを取り出す。

 

トライキメラ!

 

 俺は、トライキメラバイスタンプを、キメラドライバーに装填する。

 

オク!サイ!ムカ!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

オク!サイ!ムカ!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

 

 すると、俺の周辺にタコ、クロサイ、オオムカデが現れる。

 そして、俺は呟く。

 

レイト「変身。」

 

 そう言って、トライキメラバイスタンプを一回倒す。

 すると、三体の生物が砕け散り、俺の体にまとわりつく。

 

スクランブル!

オクトパス!クロサイ!オオムカデ!仮面ライダーダイモン!ダイモン!ダイモン!

 

 砕け散った破片が、ギフの棺の様な形状に変化して、俺は仮面ライダーダイモンへと変身する。

 

リムル「始めるか。」

レイト「ああ。」

 

 リムルも抗魔の仮面を被る。

 作戦を開始する。

 一方、東の魔法装置の方は。

 

騎士「ん?おい、あれ!」

騎士「ん?」

 

 魔法装置を守る騎士達は、紅丸、火煉、ベイル、エミルス、バイス、アギレラの接近に気付いた。

 そして叫ぶ。

 

騎士「総員!戦闘準備!」

 

 そう叫ぶと、周囲の騎士達が出てくる。

 

騎士「止まれ!それ以上近づくと、容赦せんぞ!」

紅丸「容赦しないのは、俺たちの方だ。」

火煉「悪いわね。私たちの八つ当たりに付き合ってもらうわよ。」

ベイル「悪魔を舐めるなよ。」

バイス「それは俺っちのセリフだよ!」

アギレラ「かかっておいで。」

エミルス「一気に行くぜ。」

 

 騎士達が準備をしている中、紅丸達は駆け出していく。

 紅丸は、黒炎を纏った刀を振るい、敵を燃やしつくす。

 

火煉「ハッ!でやっ!」

ベイル「ふんっ!」

 

 火煉とベイルは、騎士達を容赦なく殺していく。

 その様は、悪魔のようだった。

 

アギレラ「ふっ!でやっ!」

 

 アギレラは、ニードルクナイで騎士達のアキレス腱を容赦なく切り、クナイを飛ばす。

 

バイス「フハハハハ!俺っち達、やっぱり最強!」

エミルス「ハァ!オラっ!」

 

 エミルスとバイスは、連携攻撃で騎士達を倒していく。

 火煉、アギレラ、エミルスは必殺技を発動する。

 

カブト!

charge!

 

 火煉は、カブトバイスタンプをアーキオーインジェクターに押印して、ベルトの両側を押し込む。

 アギレラはバイスタンプを一回戻し、再び倒す。

 エミルスは、レックスバイスタンプを2回倒す。

 

ベイリングノヴァ!

クイーンビー!スタンピングブレイク!

レックス!スタンピングフィニッシュ!

 

火煉「ハァァァァ!!」

アギレラ「フッ!」

エミルス「ハァァァァ!!」

バイス「でやぁぁぁぁぁ!!」

ベイル「フン!」

 

 火煉、アギレラ、エミルス、バイスの必殺技とベイルの攻撃で、騎士達は、一人を残して全滅した。

 

騎士「き、聞いてないぞ!こんな化け物……………!」

 

 騎士はそう言うが、すぐに紅丸に切断され、消える。

 紅丸は、魔法装置を切断する。

 

紅丸「任務完了。さて。情けなくも困ってる奴は居ねえだろうな?」

 

 紅丸はそう言う。

 一方、ガビル達が担当する南の方では。

 

ガビル「グハハハハッ!龍人族(ドラゴニュート)の戦士達よ!我輩に続け!!」

 

 ガビルはそう叫んで、向かって行き、他の龍人族やトリシューラも向かう。

 それには、騎士達も気付いた。

 

騎士「あっ!敵襲!た…………体勢を整えよ!対空防御陣形!」

 

 騎士達は攻撃に備える。

 龍人族は、口から炎を吐き、空中から攻撃する。

 トリシューラは、バットバイスタンプのボタンを押す。

 

必殺承認!


『バット!ジャスティスフィニッシュ!』


 

 トリシューラは、ライブガンから光弾を発射して、騎士達を倒していく。

 

トリシューラ「よし!」

???「おい、変われ!」

 

 すると、トリシューラは一瞬項垂れ、顔を上げる。

 だが、その雰囲気は変わっていた。

 トリシューラの中のカゲロウに変わったのだ。

 

カゲロウ「今度はこっちで行くぜ。」

 

 トリシューラはツーサイドライバーを一回戻し、ライブガンからエビルブレードに変える。

 そして、変身する。

 

バーサスアップ!』


Madness!Hopeless!Darkness!バット!(Hehe!)』


仮面ライダーエビル!(Yeah!Haha!)

 

 カゲロウは、仮面ライダーエビルに変身する。

 一方、騎士達は。

 

騎士「ど…………龍人族だと!?こんな大量に!?」

 

 動揺していた。

 一方、ガビルは声を高くして叫ぶ。

 

ガビル「我輩の名はガビル!見知り置く必要はない。冥土の土産にするが良い!」

カゲロウ「行くぜ!」

 

 ガビルとカゲロウは、大きく飛び、地面に向かってダイブする。

 途中、カゲロウはバットバイスタンプのボタンを押す。

 

必殺承認!』


バット!ダークネスフィニッシュ!

 

 ガビルとカゲロウは、着地の衝撃で動けない騎士達に、容赦なく攻撃していく。

 その攻撃の余波で、魔法装置は壊れる。

 一方、北の方は。

 

ジャンヌ「ハァァァァ!!」

 

 ジャンヌが攻撃を仕掛け、騎士達はジャンヌの方に意識が向く。

 すると、騎士達に蜘蛛の糸が絡まる。

 蒼影と蒼月だ。

 二人が糸を引くと、糸が締まり、騎士達はあっという間に倒される。

 そんな中、残っていた騎士達に、ジャンヌが向かう。

 ジャンヌは、リベラドライバーを一度戻して、ジャンプする。

 

ジャンヌ「はっ!」

 

 そして、もう一回倒す。

 

コブラ!スタンピングスマッシュ!

 

ジャンヌ「ハァァァァ!!」

 

 ジャンヌは、コブラのエネルギー体となったラブコフを足に纏わせ、キックを繰り出す。

 そこに居た騎士達は、倒される。

 

蒼華「蒼影様。申し訳ございません。」

蒼月「この者達は、想定していた程の強敵ではありませんでした。」

蒼影「その様だな。」

 

 蒼華と蒼月の報告を聞いた蒼影は、魔法装置を破壊する。

 そして、呟く。

 

蒼影「やはり、異世界人が居るのは、リムル様とレイト様の読みどおり、西。」

 

 蒼影は異世界人が西にいる事を確信した。

 一方、西の方では、見回りをしていた騎士に異世界人の一人、田口省吾が苛立ちを含んだ言葉を言う。

 

省吾「チッ!おい!まだあの街から誰も逃げ出してこないのか!?」

騎士「本日も、敵影は確認されておりません!」

省吾「くそっ!」

 

 その報告に、田口省吾は毒付く。

 それを聞いていた橘恭弥が諌める。

 

恭弥「ハハッ!そう慌てる事は無いさ。他の陣からも連絡は無いし、魔物達が逃げるとしたら、この道だけだよ。」

省吾「ハンッ!それなら良いんだがな。この拳が暴れたくてうずうずしてるぜ。」

恭弥「ハハッ。まあ、その気持ちは分かるよ。自分の腕を信じている奴の、その自信ごとぶった斬る感触。堪らなかった。」

 

 田口省吾と橘恭弥は、かなり危ない感性の持ち主だった。

 それと同時に、油断していた。

 すると、見張りをしていた騎士が叫ぶ。

 

騎士「あっ!前方より敵襲!」

「「フフッ!」」

騎士「その数……………えっ?ろ………六!?それに、あの者は…………爆炎の支配者、井沢静江(シズエ・イザワ)!?」

 

 その視界に入ったのは、ゴブタ、リグル、白老、ゲルド、グルド、シズさんだった。

 一方、グルドとシズさんは、変身する。

 

クワガタ!

Deal……!

 

 グルドは、クワガタバイスタンプを起動して、デモンズドライバーの上部に押印する。

 シズさんは、腰にアークルを出現させ、構える。

 

「「変身。」」

 

 二人はそう言って、変身する。

 

アークル音

Delete up!

Unknown.(未知なる)Unlest.(混乱が)Unlimited…(越える)

仮面ライダーオーバーデモンズ!

 

 グルドはオーバーデモンズに変身して、シズさんはクウガ・マイティフォームに変身する。

 田口省吾と橘恭弥はジャンプして、6人の前に立つ。

 

省吾「たったこれだけか?チッ!…………だが、仮面ライダーが居るのか。面白い!」

恭弥「おっ。あのジジイ、生きてたのか。フフッ。」

 

 田口省吾と橘恭弥がそう呟く中、後ろに騎士達が来る。

 そんな中、星狼族(スターウルフ)が唸り声を出し、その星狼族に乗ったゴブタとリグルが前に出る。

 

ゴブタ「それじゃあ……………派手に行くっすよ。」

リグル「おう。遅れを取るな!」

 

 ゴブタとリグルは剣を抜刀する。

 すると、星狼族が駆け出し、ゴブタが乗る星狼族は、大きくジャンプをする。

 ゴブタはそこからジャンプして、鞘から黒雷を出す。

 着弾した場所は爆発する。

 

ゴブタ「よし!」

 

 ゴブタは星狼族に着地して、騎士達に向かう。

 そして、騎士達を倒していく。

 

騎士「ぐっ!神の敵め!怪しげな術を!」

リグル「うおおおおおっ!」

 

 騎士がそう毒付く中、リグルが土煙に紛れて現れ、騎士達を倒していく。

 ゴブタとリグルは、騎士達と応戦する中、アイコンタクトを取る。

 すると、星狼族がジャンプをする。

 その理由は、ゲルドとグルドの攻撃が理由だった。

 

ゲルド「行くぞ、グルド!」

グルド「はい!」

「「烈震脚!!」」

 

 ゲルドとグルドは、同一のスキルを使い、地面を揺らす。

 星狼族がジャンプした理由は、自分たちが巻き込まれない為だった。

 烈震脚による揺れが止まると同時に、着地して、動きを取れない騎士達を倒す。

 それを見ていた田口省吾は笑っていた。

 

省吾「フッ!ヒャハハハッ!良いねぇ!やるじゃねぇか!面白い。俺が相手になってやるぜ!」

騎士「おおっ!ショウゴ様!お願いします!」

 

 田口省吾はそう言いながら近づいてくる。

 それに気付いたゴブタは、田口省吾が、ゴブゾウを殺した者であると確信する。

 

ゴブタ「あっ!来たっすね…………ゴブゾウ達の敵…………!でも、お前の相手はオイラじゃないっすよ。」

 

 ゴブタはそう言う。

 ゴブタの前には、シズさんが立っていた。

 

シズ「ゴブタ君。私に任せて。」

ゴブタ「頼むっすよ、シズさん。ゴブゾウはああ見えて、気のいい奴だったんすよ。」

 

 ゴブタはそう言って、他の騎士達の方に向かう。

 

省吾「うお〜りゃあっ!」

 

 省吾はそう叫んで、シズさんに向かっていく。

 

シズ「ふっ!」

 

 シズさんも、省吾を迎え撃つべく、パンチを繰り出す。

 二人のパンチのぶつかり合いは、周囲に衝撃波を生む。

 一方、橘恭弥は、白老と対峙していた。

 

恭弥「せっかく死ななかったんだから、尻に帆をかけて逃げればよかったのに。」

白老「ホッホッホ。こう見えても負けず嫌いなんじゃよ。それにな……………若造が天狗になっておるのも不愉快じゃしのう。」

 

 白老は最初は笑いながら言うが、途中から、言葉に怒気を含ませる。

 

恭弥「へぇ。それって僕の事じゃ無いだろう?」

白老「そう聞こえなんだか?それはすまんかったな。お主が性格だけではなく、頭も悪かったのはのう。」

恭弥「ハハッ。一度斬られただけじゃ理解出来ないか。それとも、もうボケてるのか?」

 

 白老の言葉にそう返した恭弥は、剣を抜刀しつつ、白老の元に向かう。

 白老の首を飛ばそうとしたが、白老は剣を受け止める。

 

恭弥「なっ!?」

白老「短気じゃな。じゃがのう、おあいこじゃ。わしもそろそろ怒りを我慢するのが限界じゃからのう…………!」

 

 恭弥は剣を受け止められた事に驚き、白老は赤黒いオーラを出す。

 

恭弥「うっ!うっ!」

 

 恭弥は、白老のオーラに一瞬怯むが、すぐに距離を取る。

 恭弥は白老に挑発をする。

 

恭弥「笑わせるぜ。この前は手も足も出なかったくせに!イキがるなよ、ジジイが!!」

白老「剣ではなく、その力にじゃな。空間属性らしいのう。」

恭弥「へぇ。分かるんだ。」

白老「タネが分かれば、対処は可能じゃぞ?」

恭弥「面白いじゃん。それじゃあ、正々堂々と僕と剣で勝負しようじゃないの。」

白老「……………よかろう。」

恭弥「キヒッ!」

 

 恭弥と白老はそう話し、恭弥は剣を構えつつも、邪悪な笑みを浮かべる。

 対する白老は、剣はダラリと下げたままだ。

 そんな中、恭弥の刀身が薄く光りだす。

 

恭弥「じゃあ…………行くよ?」

 

 恭弥はそう言って、剣を振りかぶり、勢いよく振り下ろす。

 すると、刀身が射出され、それが分身し、白老に向かう。

 恭弥は、最初から正々堂々と勝負をする気は無かったのだ。

 

恭弥「ヒャ〜ハハハハハッ!バカが!また騙されやがったぜ!!」

 

 恭弥は、狂気の笑みを浮かべる。

 それを、セイバー系列の仮面ライダーの変身者が見ていたら、非難が飛んでいただろう。

 まさに、剣士としての誇りを踏み躙る所業なのだから。

 そして、それを仮面ライダー鎧武の駆紋戒斗が見ていたら、即座に恭弥を弱者だと断じていただろう。

 だが、白老は慌てていなかった。

 白老に刀身が当たる直前、白老は動き、全ての刀身を地面に落とす。

 刀身は、しばらくすると消える。

 勝利を確信していた橘恭弥は、唖然となっていた。

 

恭弥「あ?……………嘘だろ?」

白老「ふむ。そんなつまらぬ騙し討ちをするとは……………。どうやら、買い被っておった様じゃな。」

恭弥「ジ…………ジジイ!今何をした!?」

白老「そうか。見えなんだか。所詮は二流以下といったところじゃのう。」

 

 恭弥がそう叫ぶ中、白老はそう吐き捨てた。

 それを聞いた恭弥は、白老に問いかける。

 

恭弥「何だって……………!?」

白老「二流以下と言ったのじゃよ。」

 

 白老の二流以下という言葉に、恭弥は怒った。

 これまで、恭弥は強いやつを倒してきた。

 だが、二流以下と断じられた事で、恭弥は先ほどまでの余裕がなくなり、叫ぶ。

 

恭弥「舐めるなよ……………クソジジイが!!」

白老「では、お主に剣の神髄を見せてやろう。」

 

 恭弥がそう叫ぶ中、白老から赤黒いオーラが出てきて、額に第三の目が開く。

 

白老「刮目し受けるが良い!」

恭弥「黙れ!雑魚のくせに偉そうにしやがって!!」

 

 白老の言葉に、恭弥はそう叫びながら白老に向かっていく。

 恭弥は攻撃していくが、白老には躱される。

 だが、恭弥はこの時でさえも、自分の勝利を確信していた。

 

恭弥「(はっ!どうやっても無駄さ。俺のエクストラスキル”天眼”は、周囲の動きを300倍もの速さで認識出来る!耄碌したジジイの動きなど、止まって見えるぜ!)斬り裂かれて死ね!」

 

 恭弥は、そう思いながら叫ぶ。

 だが、白老は動じていなかった。

 

白老「いや。まだ見えてはおらぬな。」

恭弥「あ?」

白老「そろそろお主の天眼にも、わしの動きが追えるじゃろうて。」

恭弥「は?何を言って…………!?」

 

 恭弥は白老を斬り裂こうとしたが、動きが止まった様に感じる。

 白老は、刀身に水を纏わせ、抜刀する。

 

白老「朧流水斬!」

 

 白老の朧流水斬は、恭弥の首元に向かう。

 

恭弥(体が動かない…………いや、動けない!え……………えっ?)

 

 恭弥は、自分に何が起こっているのか分からないでいると、白老に首を切断される。

 

恭弥(えっ……………思考加速が切れない……………。)

 

 恭弥の視線に最後に入ったのは、白老だった。

 白老は、恭弥の首を掴む。

 恭弥の体は、そのまま倒れた。

 

白老「終わりじゃよ。引き伸ばされた時間を有効に使い、自らの悪行を十分に反省するが良いぞ。」

 

 その言葉は、恭弥には届いたのかどうかは、分からない。

 橘恭弥は、自らの慢心によって、死亡した。

 一方、ゴブタ、リグル、ゲルド、グルドの四人が騎士達を倒す中、省吾とシズさんの戦いは、互角に進んでいた。

 ある程度、拳を交えて、二人は距離を取る。

 それを、ゴブタ達はただ見守っていた。

 ただ、グルドはデモンズドライバーを操作していたが。

 省吾は、シズさんに言う。

 

省吾「おいおい!そんな程度か!?その程度で伝説の英雄、爆炎の支配者なのかよ!?」

シズ「今の私は爆炎の支配者じゃない。今の私は、仮面ライダークウガ。」

省吾「そうかよ。だが、俺の敵じゃない!あの街のクソ魔物どもをぶっ殺して、俺は強くなった!ヒャハハハッ!今の俺は最強なんだよ!」

シズ「……………何ですって?」

省吾「ああ?聞こえなかったのか?俺は最強だ!あのクソ魔物どもは、俺の強さの糧になれたんだ!その死に喜んで欲しい物だなぁぁ!ヒャハハハッ!」

シズ「………………………。」

 

 省吾は、そんなふうに言って笑う。

 その言葉は、省吾の余裕を持っていたという事だ。

 だが、省吾は二つのミスを犯した。

 一つは、シズさんの実力を見誤っていた事。

 もう一つは、その言葉が、爆炎の支配者改め、心優しき戦士クウガに変身するシズさんの逆鱗に触れるのには、十分すぎた事を。

 

シズ「…………………そう。」

省吾「ああ?」

シズ「私は手加減してたんだよ。貴方の出方を伺う為に。」

省吾「それがどうしたって言うんだよ。」

シズ「でも………………手加減はしない。」

 

 シズさんはそう呟いて、アメイジングマイティフォームに変身する。

 省吾が見ている中、シズさんは一気に省吾に接近して、省吾をパンチして地面に叩きつける。

 

省吾「ぐわぁぁぁっ!?」

シズ「フッ!ハッ!ハアッ!」

 

 省吾は地面に叩きつけられ、シズさんはマウントポジションを取り、何度も、何度も省吾の顔を殴る。

 それを、俺が見ていたら、ゴ・ジャラジ・ダ戦のクウガを思い起こしていただろう。

 何度も殴られるうちに、省吾は吐血していた。

 その姿には、省吾、ゴブタ、リグル、ゲルド、グルドは戦慄していた。

 

省吾「や……………やべで……………!」

シズ(こんな人に……………皆が………………!)

 

 シズさんにとって、テンペストとは、嫌いで憎めない世界に出来た、第二の故郷。

 そこに住む人達を侮辱し、愚弄し、大笑いしている省吾は、許せない存在だった。

 そんな田口省吾への怒りをぶつけていく。

 ちなみに、それを見ていたゴブタ達は、満場一致で、シズさんを怒らせるのは辞めようと思ったそうだ。

 省吾は、殴られつつも、シズさんのパンチを躱して、脱出出来たが、シズさんの怒りの気配に、戦意喪失寸前にまで追い込まれていた。

 

省吾「く……………くそっ!」

 

 省吾は、反撃と言わんがばかりにパンチを繰り出すが、シズさんは即座にライジングタイタンフォームになる。

 クウガの基本の四形態の内、最も高い防御力を誇るタイタンフォームが強化されたのだ。

 省吾のパンチは効かず、逆にダメージを負う。

 シズさんは、無限収納から剣を取り出すと、ライジングタイタンソードに変化した。

 シズさんは無言で省吾に近寄る。

 その凄まじい存在には、省吾は怯える。

 

省吾「ひいっ!ま……………待て!ちょっと待ってくれ!」

 

 省吾はそう叫ぶが、シズさんは無言でライジングタイタンソードを振りかぶる。

 すると。

 

白老「まだ終わっておらぬのか?」

 

 白老がシズさんにそう声をかける。

 シズさんは、白老の方を見て答える。

 

シズ「……………今から止めを刺す所です。」

 

 シズさんはそう答える。

 省吾は、恭弥が居ないことに叫ぶ。

 

省吾「クソが……………!恭弥は何してやがる!?」

白老「お主の友達ならここじゃ。」

 

 白老はそう言って、後ろ手に持っていたものを投げる。

 それは、恭弥の生首だった。

 

省吾「なっ…………!?あっ、ああ…………!」

 

 それを見た省吾は、恐怖する。

 次は、自分の番であると。

 その恐怖に耐えかねて、駆け出していく。

 

省吾「うわぁぁぁぁ!」

 

 省吾はテントのある方へと向かっていく。

 

省吾「ち……………ちきしょうクソが!何で俺がこんな目に!はぁ…………!このままじゃ殺られる!」

 

 省吾はそう叫びながらテントを見ると、笑みを浮かべて、明かりがついているテントへと向かっていく。

 それを見ていたシズさんは。

 

シズ「まさか……………!」

 

 シズさんはそう叫んで、ライジングペガサスフォームになり、駆け出す。

 一方、省吾は、3人目の異世界人、水谷希星が居るテントに入る。

 

省吾「希星(キララ)!」

希星「ん?なあに?さっきからなんかうるさいんだけど。せっかく昔の夢見てたのに。原宿でタピオカ飲んでて……………。」

 

 希星がそう言う中、省吾は希星に近寄る。

 

希星「それから……………。」

省吾「悪いんだけどさ。」

希星「ん?」

省吾「俺の為に……………死んでくれ。」

 

 省吾はそう言って、希星の首を絞めようとする。

 だが、それは叶わなかった。

 なぜなら…………。

 

省吾「なっ!?」

希星「えっ?アンタ誰?!」

シズ「仲間でしょ!?なんで殺そうとするの!?」

 

 シズさんが省吾の腕を掴んでいたからだ。

 

省吾「くそっ!何で!?」

 

 省吾はそう叫び、外に出る。

 すると、近くに怯えていた兵士がいた。

 

兵士「何だこの状況は……………!?」

省吾「おい!俺の為に死んでくれ。」

兵士「なっ!?がっ……………!?」

 

 省吾は、その兵士を絞め殺す。

 それを見ていた白老、ゲルド、グルドは。

 

白老「鬼畜の所業よのう。そこまで堕ちたか。」

ゲルド「情けをかける必要などないな。」

グルド「全くです。貴方は武人ではない。」

シズ「ええ。」

希星「ど……………どういう事!?」

 

 白老、ゲルド、グルド、シズさんの四人はそう話し、希星は叫ぶ。

 シズさんは、ライジングペガサスの時間制限によって、グローイングフォームになっていた。

 

省吾「うるせえ。俺は生きてえんだ。聞こえたか?世界の言葉が教えてくれたぜ。そこの兵士の魂を代償として、生存者(イキルモノ)のスキルを得たってな。」

 

 省吾がそう言うと、シズさんの攻撃で受けた傷が癒える。

 

白老「世界の言葉とは……………此奴、新たな力を得る事が狙いじゃったか。」

ゲルド「仲間殺しは、リムル様とレイト様が定める最大の罪!」

グルド「こいつ………………!」

希星「じゃあ……………ウチは危うく殺されそうになったって事……………!?」

シズ「そういう事よ。」

省吾「黙れよ、クソ虫ども!勝てばいいんだろ、勝てば!はあっ!」

 

 白老、ゲルド、グルドが怒り、希星が驚く中、省吾は叫び、オーラを放出する。

 すると、テントが倒れ、省吾は笑う。

 

省吾「ハハハッ!ハハハハハッ!見ろ!攻撃に特化した乱暴者(アバレモノ)と防御に特化した生存者(イキルモノ)の力!超速再生と各種属性無効で、今の俺は無敵だ!ハハハハハッ!骨を砕かれても、頭を斬り落とされても、すぐに修復される!どうだ、クソ魔物に爆炎の支配者め!これが!これこそが!この俺の力だ!フハハハハハハッ!」

シズ「許さない……………!」

 

 省吾がそう叫ぶ中、シズさんは向かおうとする。

 だが。

 

ゲルド「シズ殿。ここから先は、我々に任せて欲しい。」

シズ「えっ……………?」

グルド「シズ殿が怒っている様に、我々とて、彼奴を許す訳にはいかない。」

シズ「二人とも……………。」

白老「ゲルドとグルドの言う通りじゃ。それに、お主も大分疲弊しておるからのう。」

シズ「…………………。」

 

 そう。

 アメイジングマイティ、ライジングタイタンフォーム、ライジングペガサスフォームに連続でフォームチェンジした為、かなり疲弊していた。

 その為、グローイングフォームに戻ってしまったのだ。

 俺から、クウガの事を聞いていたシズさんは、これ以上の戦闘の続行は不可能と判断して、頷く。

 

シズ「お願い。私は、この子を守るから。」

ゲルド「分かった。」

グルド「うむ。」

 

 シズさんは変身解除して、希星に近寄り、ゲルドとグルドは、省吾に向かって歩き出す。

 

省吾「はあ?3人まとめて相手してやっても良いんだぜ?」

ゲルド「貴様は見る限り、格闘技に自信がある様だな。」

グルド「なら、俺たちが相手をしてやる。」

省吾「カッコつけるなよ!負けた時の言い訳が欲しいだけだろうが!」

 

 省吾はそう言って、パンチの構えを取る。

 だが、グルドは、アノマロカリスバイスタンプを取り出して、デモンズドライバーのノックを押す。

 

add……!』


アノマロカリス!

 

 そして、アノマロカリスバイスタンプをデモンズドライバーに読み込む。

 

Dominate up!


『バッタ!コンドル!スコーピオン!アノマロカリス!ゲノミクス!

 

 そう。

 グルドは、ただ省吾とシズさんの戦いを見ていたのではなく、フルゲノミクスの準備をしていたのだ。

 省吾はパンチをするが、あっさり跳ね返される。

 

省吾「なっ………………!?」

グルド「貴様の息の根を止めてやろう!」

 

 省吾が驚く中、グルドは、デモンブラディオールを分解させつつ滞空させ、デモンズドライバーの両側を3回押す。

 

More!

バッタ!コンドル!スコーピオン!アノマロカリス!デモンズレクイエム!

 

 グルドはデモンボトムハイアーによる連続キック、デモンライドルスティンガの刺突攻撃を行う。

 

省吾「このっ!」

グルド「フンっ!」

 

 省吾は反撃として、攻撃するが、デモンブラディオールに阻まれる。

 

省吾「なっ……………!?」

グルド「大切な者を失った者達の悲しみと、その大切な者達の命を奪い、嘲笑った貴様への怒りだ!」

 

 グルドはそこから、ゲノミクスの武装をフル活用して、省吾に攻撃していく。

 それには、省吾は一方的に攻撃される。

 一方、シズさんが見守る中、希星は、シズさんに質問する。

 

希星「あの……………。」

シズ「うん?」

希星「何でウチを助けたの?」

シズ「……………貴方が理不尽に殺されるのが嫌だったから。」

希星「………………その、ありがとう。」

 

 希星は、シズさんに助けた理由を聞いて、答えを聞くと、礼を言う。

 省吾は、グルドのキックで空に打ち上げられ、デモンランブルジョーカーから放たれる羽手裏剣を食らう。

 

グルド「食らえぇぇえ!」

省吾「ギャアアアア!!」

 

 グルドは、止めに省吾に強烈なライダーキックを放つ。

 省吾はそれを食らって吹っ飛ぶが、ゲルドが走っていた。

 

グルド「ゲルドさん!」

ゲルド「うむ!」

 

 ゲルドは、空中に浮いていた田口省吾を地面に叩きつける。

 そのまま、右足で省吾を抑え、パンチを繰り出していた。

 

省吾「がっ!ぐっ!やべ……………やべろ!ぶっ……………がはっ。」

 

 省吾は、パンチを食いながらそう言う。

 ゲルドがパンチを止めると、超速再生で回復する。

 

ゲルド「その再生能力でどこまで耐えられるか見てやろう。」

省吾「やめろ……………。」

 

 ゲルドの言葉に、省吾はそう言うが、ゲルドは混沌喰(カオスイーター)を発動する。

 三つの顔は、省吾に噛み付く。

 すると、噛みつかれた場所が腐食する。

 

省吾「ああああっ!や…………やめろ〜っ!!」

 

 省吾はそう叫ぶ中、ゲルドは殴る事を再開する。

 

省吾「やべ…………やべで、やべでください……………!うっ!ぐっ!」

 

 省吾は、そう言う事しか出来なかった。

 確かに、再生能力は凄まじい。

 だが、それは裏を返せば、死ぬ事が出来ず、その苦痛を味わい続ける事と同じだ。

 そしてそれは、精神が崩壊してもおかしくない位の苦痛となるだろう。

 ゲルドは、拳を大きく振りあげ、叩きつける。

 

ゲルド「フン!」

省吾「ギャアアアアッ!!」

 

 省吾は、受けた傷が回復する。

 ゲルドは、省吾の頭を鷲掴みにして、持ち上げる。

 

省吾「うっ…………冗談だったんれす…………。本気じゃなくて、ちょっと調子に…………。助けて………………。」

白老「ゲルドよ。」

ゲルド「今、終わらせます。」

 

 省吾はそう言うが、ゲルドは許すつもりはさらさら無かった。

 ゲルドは省吾を解放して、肉切り包丁を取り出す。

 

省吾「あっ……………!」

ゲルド「一撃で頭を割る。」

 

 ゲルドはそう言って、肉切り包丁を振り上げる。

 それを見た省吾は、歯を鳴らして恐怖する。

 

省吾「うっ、うぅ………………!」

ゲルド「その苦痛から解放してやろう。」

省吾「ひいっ!あっ、あっ、ああ!」

 

 省吾は、その恐怖に耐えきれず、逃げ出すが、ゲルドは容赦なく行く。

 だが、その攻撃は結界に阻まれ、届かなかった。

 

ゲルド「うっ!うう…………!」

グルド「ゲルドさん!」

 

 ゲルドが下がる中、省吾を守った老人が口を開く。

 

???「ふむ。生き残ったのは省吾と希星のみか。だが、希星は囚われた以上、ある意味で省吾のみか。わしとした事が、魔物共の力を見誤っておった様じゃな。」

省吾「あっ、ラーゼンさん!俺を助けに!」

 

 省吾は、ラーゼンに寄る。

 そのラーゼンは、ゲルドとグルドの二人を見る。

 

ラーゼン「ふむ…………なるほどのう。豚頭帝(オークロード)が2体……………。信じられんほど強い。省吾たちでは勝てぬ訳じゃ。一度引くとするわい。」

ゲルド「逃がさぬ!」

グルド「逃すか!」

 

 ゲルドとグルドは、ラーゼンと省吾の方へと駆け出す。

 だが、白老が静止させる。

 

白老「止まれ!ゲルド!グルド!」

ゲルド「ぬっ!?」

グルド「なっ…………!?」

 

 ゲルドとグルドは、白老の警告にすぐさま止まり、ジャンプする。

 すると、爆発が起こる。

 ラーゼンが罠を仕掛けていた様だ。

 

ゲルド「なっ……………!?」

グルド「罠……………!?」

ラーゼン「カカカッ!鋭いのう!この罠を見抜くか。警戒すべきはお主の方じゃったか。」

白老「狸め。最初からわしを警戒しておった癖に。」

ラーゼン「そんな事は無いぞ、鬼人よ。強さで見れば、そちらの豚頭帝に目が行くのが自然じゃろうて。爆炎の支配者もいる以上、場が悪いのう。では、失礼するとしよう。生きておれば、戦場でまた会えるやも……………。」

 

 そう言って、ラーゼンは省吾を連れて撤退しようとする。

 だが、白老は叫ぶ。

 

白老「それは無い!」

ラーゼン「ん?」

白老「貴様が向かう戦場には、我らが主達が向かわれるからのう。」

ラーゼン「主達…………。片方はあの魔女、ヒナタ・サカグチにやられた筈では…………生きているのか?」

 

 白老の言葉に、ラーゼンはそう聞く。

 すると、シズさんが口を開く。

 

シズ「貴方達はやり過ぎたの。決して怒らせてはいけない人たちを激怒させたのよ。」

白老「シズ殿の言う通りじゃな。貴様らには同情するぞ。楽には死ねぬじゃろう。」

ラーゼン「カカカッ!つまらんハッタリよ。一応は、忠告としてこの耳に留めておこうぞ。では、さらばじゃ!」

 

 ラーゼンはそう言って、転移魔法で省吾を連れて逃げる。

 ゲルドは、白老に聞く。

 

ゲルド「宜しかったのですか?あの魔法使いを逃してしまって。」

白老「良くは無かろうが、戦えばここにいる全員、死んでおったやもしれぬ。」

希星「どういう事……………?」

白老「奴め、自らの死をトリガーにした核撃魔法を仕込んでおったからな。」

シズ「えっ!?」

グルド「何と!」

 

 そう。

 ラーゼンは、自らの死をトリガーにした核撃魔法を仕込んでいたのだ。

 つまり、下手をしたら全員が死んでいた。

 

白老「まあ、リムル様とレイト様であれば、問題あるまいが。」

 

 白老がそう言う中、衝撃音が響く。

 白老達が振り返ると、ゴブタとリグルが魔法装置を破壊していた。

 四つの魔法装置が破壊された事で、弱体化を引き起こしていた結界が解除される。

 

朱菜「あっ…………。」

 

 それを見た朱菜とミュウランは、新たな結界を生み出す。

 魔法装置の破壊の知らせは、俺たちの方に届いていた。

 

紅丸『リムル様、レイト様。街の四方の魔法装置を破壊しました。』

リムル「分かった。」

レイト「街に戻って、警戒を続けてくれ。」

紅丸『はっ。』

 

 そうか。

 リムルが大賢者に聞く中、俺は科学者に聞く。

 

レイト「さて。行けるか?」

科学者『告。キメラドライバーのバリア、ギフの瞳の力は、問題なく使用可能です。』

 

 そうか。

 俺はリムルに言う。

 

レイト「リムル。そっちの準備は整ったか?」

リムル「ああ。せめて…………俺たちの進化の役に立てる事を光栄に思うが良い。」

 

 俺たちは、準備を開始する。

 一方、ラーゼンと省吾は本陣に着き、省吾はラーゼンに話しかける。

 

省吾「す…………すまねえ。助かったぜ。」

ラーゼン「気にするな、省吾よ。お前はファルムス王国の大切な戦力なのじゃから。」

省吾「ああ。次は勝つ。勝ってみせるさ!」

ラーゼン「そうじゃな。どれ。」

 

 省吾がそう言う中、ラーゼンは省吾の体の方を見る。

 

ラーゼン「ふむ。体の怪我はもう完治しておる様だ。新しく手に入れたスキルのおかげか。でかしたぞ、省吾。念の為、回復魔法をかけてやろうぞ。」

省吾「ああ。」

 

 そう言うと、ラーゼンは魔法をかける。

 だが、それは回復魔法ではなく、精神を殺す魔法だった。

 

省吾「なっ…………!?」

ラーゼン「フフフ……………。」

 

 そう。

 ラーゼンは最初から、省吾の肉体だけが目当てだったのだ。

 すると、そこにフォルゲンが現れる。

 

フォルゲン「心を殺したか。予定より早いのでは無いか?」

ラーゼン「仕方あるまいて。こやつは最早、使い物にならなかった。しかし、残念じゃったな。恭弥の切断者(キリサクモノ)は失われ、希星の狂言師(マドワスモノ)は魔物共の方に渡ってしまった。」

フォルゲン「構わんさ。次に期待するとしよう。」

 

 そう。

 この二人は、最初から3人のスキルが目当てだったのだ。

 フォルゲンは、ラーゼンに話しかける。

 

フォルゲン「それはともかく、失敗したりせんのだろうな?」

ラーゼン「安心せい。これが初めてと言う訳ではないわ。我が師の輪廻転生(リインカーネーション)に比べれば、憑依転生(ポゼッション)など、児戯にも等しい技よ。」

 

 ラーゼンはそう言うと、魔法を発動する。

 すると、ラーゼンだった肉体は倒れ、省吾だった肉体が起き上がる。

 それを見たフォルゲンは驚く。

 

フォルゲン「おっ!ラ…………ラーゼン殿なのか?」

ラーゼン「フフッ。それ以外の誰に見えると言うんじゃ?」

フォルゲン「あ…………。」

ラーゼン「わしがどれだけの年月、ファルムス王国に仕えていると思っておる。これでわしは、不屈の精神と強靭なる肉体を併せ持つ…………ファルムス王国史上、最強の魔人となったのじゃ。」

フォルゲン「ハハ…………。省吾の姿でその調子だと、違和感があるな。」

 

 ラーゼンの言葉に、フォルゲンは苦笑しながらそう言う。

 ラーゼンは、使っていた杖を拾い、服を着替える。

 

ラーゼン「さて。では、エドマリス王に報告と…………生まれ変わった挨拶に向かうとしようぞ。」

フォルゲン「うむ。」

ラーゼン「今のわしなら、魔王すら倒せるかもしれぬぞ?」

 

 ラーゼンとフォルゲンは、そう話しながら移動する。

 一方、俺はキメラドライバーのバリアを張り、リムルは魔法不能領域(アンチマジックエリア)を発動する。

 魔法不能領域(アンチマジックエリア)とキメラドライバーのバリアで、確実に誰も逃げられない牢獄が出来上がった。

 

科学者『キメラドライバーのバリアおよび、魔法不能領域(アンチマジックエリア)。設置完了。敵軍は魔法の使用が不可能となり、逃走も不可能になりました。』

 

 科学者がそう報告する中、俺たちは発動する。

 

リムル「誰一人…………逃がさない。」

レイト「ああ。」

 

 リムルが手を上げると、空中に水のレンズが出来上がり、そのすぐ真下に、水玉が生まれる。

 俺はトライキメラバイスタンプを一回倒し、待機状態にする。

 一方、ファルムス王国の兵士共は。

 

兵士「ふぅ……………ん?」

兵士「何だこれ?」

兵士「水…………玉?」

 

 突如現れた水玉に首を傾げていた。

 ここからが、奴らの地獄の幕開けだ。

 

レイト「お前達にジャッジを下す。……………死ね。己の悪意に喰い滅びろ!」

リムル「死ね。神の怒りに焼き貫かれて。”神之怒(メギド)”!」

 

 その宣言と共に、リムルは手を振り下ろし、俺はトライキメラバイスタンプを4回倒す。

 

トライキメラエッジ!

 

 すると、ドライバーから赤黒い波動を放ち、ファルムス王国の兵士共の悪意から生み出された悪魔を強制的に分離して、その本能のままに暴れさせる。

 ギフジュニアが多いが、中にはギフテリアンも混じっていた。

 下衆な考えほど、悪意は強いからな。

 リムルの神之怒(メギド)の仕組みは、上空の凸レンズ状の水玉と鏡面仕上げの水玉で太陽光を収束と反射を繰り返す事で、鉛筆ほどの細さに収束、超高温化させる。

 しかも、発動の際には、音は殆ど鳴らない。

 その為、意識外から飛んでくる不可避の即死攻撃となる。

 これも、魂を集める為の魔法だろう。

 そう思う中、科学者の死者報告が聞こえていた。

 俺たちはただ無言でその光景を見ていた。




今回はここまでです。
ファルムス王国にとって、悪夢の時間が始まりました。
そして、水谷希星は、生存しました。
まあ、あの二人と比べると、まだ同情出来たので。
グルドも、オーバーデモンズのフルゲノミクスを発動しました。
シズさんの省吾に対する攻撃は、ゴ・ジャラジ・ダ戦のクウガを参考にしました。
シズさんにとって、テンペストは第二の故郷なので、そこに住む人たちを愚弄した省吾は、シズさんの逆鱗に触れました。
ライブ&エビル&デモンズが公開されましたが、良い映画でした。
この小説でも、いずれ、ライブマーベラス、エビルマーベラス、インペリアルデモンズは出す予定です。
無論、ゲットオーバーデモンズや、仮面ライダーオルテカも出す予定です。
ただ、オルテカに関しては、誰に変身させるのかは未定です。
あと、リムルは電王編の後、ジオウに変身できる様にする予定です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
いよいよ次回、あの悪魔の顕現に、魔王への進化が始まります。


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第31話 魔王誕生

レイト「お前達にジャッジを下す。……………死ね。己の悪意に喰い滅びろ!」

リムル「死ね。神の怒りに焼き貫かれて。”神之怒(メギド)”!」

 

 その宣言と共に、リムルは手を振り下ろし、俺はトライキメラバイスタンプを4回倒す。

 

トライキメラエッジ!

 

 すると、ドライバーから赤黒い波動を放ち、ファルムス王国の兵士共の悪意から生み出された悪魔を強制的に分離して、その本能のままに暴れさせる。

 ギフジュニアが多いが、中にはギフテリアンも混じっていた。

 下衆な考えほど、悪意は強いからな。

 ちなみに、クリスパー達も向かわせた。

 今頃、クリスパー達は、ファルムスの兵士どもを殺戮している頃だろう。

 科学者曰く、必ずしも自らが殺す必要はなく、自分の意思を込もっていれば代行者に行わせる事も可能だそうだ。

 その為、今暴れているギフジュニアとギフテリアンには、本能を解放させると同時に、俺の意思を込めた。

 俺たちの街を荒らし、下衆な考えを持つ連中への復讐の意味合いを持たせた。

 クリスパー達にも、その様にさせた。

 さて、王はどう動くのかな。

 一方、突然の大虐殺に、エドマリス王とレイヒム大司祭は、恐慌状態に陥っていた。

 

エドマリス「レ、レ、レイヒム……………!何だこれは……………!?どうする!?どうすれば良い!?」

レイヒム「落ち着きましょうぞ!落ち着きましょうぞ!」

 

 エドマリス王とレイヒム大司祭は、お互いに抱き合いながらそう言う。

 そんな中、ラーゼンとフォルゲンがやって来る。

 

ラーゼン「エドマリス王はご無事か!?」

フォルゲン「何をしている!王をお守りしろ!」

兵士「はっ、はい!」

 

 フォルゲンがそう指示すると、兵士は前に出る。

 だが、神之怒の光線にすぐに貫かれ、絶命する。

 それを見たフォルゲンは、呆然とするが、エドマリス王の言葉に我に返る。

 

エドマリス「フォ……………フォルゲン!はよ……………早くこの場から逃げようぞ!国に戻り、態勢を立て直すのじゃ!」

ラーゼン「左様ですぞ。何が起きているのか分からん。早く去らねば、我らも巻き添えになってしまいまする。」

 

 エドマリス王がそう言う中、ラーゼンはそう言う。

 エドマリスは一瞬、誰かと思ったが、ラーゼンだと察する。

 

エドマリス「省吾?いや、そちは…………。」

ラーゼン「ラーゼンでございます。王よ。」

エドマリス「おお!ラーゼン!よくぞ!よくぞ戻った!さあ早う、早う帰ろうぞ!お主の転移魔法で……………!」

 

 エドマリスは、ラーゼンが居る事で希望を見出したが、すぐに絶望する事になる。

 

ラーゼン「残念ながら、魔法不能領域(アンチマジックエリア)のせいで、魔法が使えませぬ。」

エドマリス「えっ!?な……………何と!?」

レイヒム「そっ、それでは……………!?」

 

 ラーゼンの言葉に、絶望しかけたエドマリスとレイヒムだったが、フォルゲンが話しかける。

 

フォルゲン「ご安心召され。王、レイヒム大司教よ。」

「「え?」」

フォルゲン「この私のユニークスキル、統率者(ヒキイルモノ)によって、生き残っておる者を強制的に集めます。その者どもを肉の盾として、お二人を守ってご覧に入れましょう。」

エドマリス「おっ、おお!流石、流石じゃフォルゲン!」

レイヒム「頼もしきはフォルゲン殿よ!」

フォルゲン「騎士どもを集めて参ります。皆様方は撤退の準備を。」

レイヒム「承知した!」

エドマリス「ふぅ……………。」

 

 フォルゲンはそう進言して、レイヒムとエドマリスはそう言う。

 だが、この時、フォルゲン達は気付いていない。

 魔法不能領域だけでなく、キメラドライバーのバリアもある為、脱出は不可能であると。

 そんな事を露知らず、フォルゲンは移動を開始するが、光線に撃たれ、死亡する。

 それを見たエドマリスは、更なる絶望に叩き落とされる。

 

エドマリス「ひいいい!ひぃぃ……………!死ぬっ……………!皆、死んでしまう……………!!」

レイヒム「そっ、そんなバカな……………!一体、何が起きておるというのだ!?」

ラーゼン「あ………………!ん?」

 

 頃合いだな。

 そう思った俺たちは、エドマリス王達が居る所にまで降下する。

 

ラーゼン「あれは…………まさか…………!?魔物の国の主達……………なのか?」

リムル「その顔立ちは日本人だな。」

レイト「街を襲撃した異世界人か?」

ラーゼン「ガワだけな。中身は違う。」

レイト「あっそ。」

リムル「まあ、敵には違いないな。」

 

 リムルがそう言うと、光線をラーゼンに放ち、絶命する。

 それを見たエドマリス王は。

 

エドマリス「ひぃぃ〜〜〜!そんな、ラーゼンまでも!(魔物の国になど、手を出したのが間違いだった!どうする……………?どうすれば生き残れる?……………い、いや、これはチャンスかもしれんぞ。ブルムンド如き小国と交渉して、喜んでいる様な奴らじゃ。大国であるファルムスの王たる余が声をかければ、平伏して歓喜するに違いあるまいて……………!)」

 

 エドマリスはそう考えていた。

 まあ、そんな程度の考えなんざ、俺にはお見通しなんだがな。

 どうやら、俺たちを甘く見ているみたいだな。

 なら、後悔させてやるよ………………!

 すると、近くにいた兵士達が言う。

 

兵士「ひっ、ひぃぃぃ!たっ、たす、お助け……………!」

 

 そう言うが、俺は容赦なくギフジュニアとギフテリアンを呼び出し、その二人の兵士を殺す。

 俺たちがそうした後、世界の言葉が聞こえて来る。

 

世界の言葉『確認しました。ユニークスキル、 冷酷者(ヒドウナルモノ)を獲得。成功しました。』

レイト「冷酷者?何だそれ?」

リムル「お前はそうなのか。俺は心無者(ムジヒナルモノ)って言うんだけど。」

レイト「さあ?」

 

 新たなユニークスキル獲得の知らせが来て、俺たちが話していると、エドマリスが話しかけて来る。

 

エドマリス「き……………貴様らが魔物の国の主達だな!余はエドマリス!ファルムス王国の王である!伏して控えよ!貴様らに話があるのだ!」

 

 そう言ってきた。

 俺たちの事を下に見ているな。

 

リムル「ハァ……………影武者か何かか?」

レイト「安心しろ。本物には手を出さないでおいてやる。」

 

 そう言って、俺たちは攻撃しようとする。

 すると、レイヒム大司教が叫ぶ。

 

レイヒム「影武者などではありませんぞ!西方聖教会大司教である私、レイヒムの名に於いて、証明致しましょう!!」

レイト「あっそう。」

リムル「じゃあ、王以外は皆殺しにするけど、良いな?」

 

 俺たちは、レイヒムとやらの発言を聞いて、そう言うと、エドマリス王が叫び、レイヒムが命乞いをする。

 

「「ええっ!?」」

エドマリス「み……………皆殺しじゃと!?」

レイヒム「ひいっ!待って、待って下さい!私も、私だけでもお助け下さい!私ならば、聖教会内部でも、大きな発言力を持っております!あなた様方が決して人間の敵ではないと、証言も致しましょう!」

 

 命乞いか。

 だが、レイヒム大司教の言い分も合ってるな。

 どうしたもんかな。

 そんな中、リムルが光線を撃とうとする中、エドマリスが叫ぶ。

 

エドマリス「ま……………待て!話があると言ったであろうが!」

リムル「何だ?聞くだけ聞いてやる。」

レイト「さっさと話せ。」

エドマリス「ぶ……………無礼な!余は大国であるファルムス王国の王なのだぞ!貴様らなど、本来であれば口も利けぬ存在なのだ!それを……………!ああ……………!」

 

 そんな事を言うので、俺たちはオーラを放出する。

 

リムル「良いか?相手を見て物を言えよ。」

レイト「発言は許すが、言葉は慎重に選んだ方がいい。死にたくなければな。」

 

 俺たちがそう言って、オーラを抑えると、エドマリスは口を開く。

 

エドマリス「ごご……………誤解なのじゃよ!」

リムル「何が?」

エドマリス「よ…………余は、友誼を結びに来ただけなのじゃ!」

レイト「一方的に宣戦布告しておいて、今更何の戯言だ。」

リムル「ああ。俺たちの仲間に犠牲者が出た以上、お前らは敵だよ。」

エドマリス「西方聖教会が魔物を敵視しておったので、本当に友誼を結ぶのに値するのか、確かめようとしただけなんじゃよ!宣戦布告も、異世界人が勝手に暴走しただけじゃ!わ…………分かった!余の国と国交を結んでやろうぞ!良い話であろう?光栄であろうが!その方も鼻が高いであろう?まっ、まあ、今回の我が軍の損害については……………!」

 

 エドマリスは、ファルムス王国軍の損害は、俺たちに押し付けるようだな。

 どうやら、人をイラつかせる才能を持っているみたいだな。

 すると、リムルは光線を容赦なく発射し、エドマリスの左手を吹き飛ばす。

 切断面は、炎で止血している為、そう簡単には死なない筈だ。

 

エドマリス「うっ…………うわ、あがっ!ぎゃああああ!」

レイヒム「あっ、はああ……………!」

 

 エドマリスは叫びながら蹲り、レイヒムは恐怖する。

 そんな中、科学者が報告して来る。

 

科学者『告。ユニークスキル、冷酷者の解析が終了しました。能力は、マスターに対して、恐怖や悪意などのマイナスの感情を抱いた者はマスターに心を掌握される事。』

レイト「つまり?」

科学者『このスキルを前に、悪感情を抱いた場合、その者は、マスターの思うがままになります。』

レイト「なるほどな……………。ところで、必要なだけの魂は集まったか?」

科学者『現在、必要量の57.235%を獲得。』

レイト「まだか…………なら。」

 

 科学者からの報告を聞いた俺は、リムルにアイコンタクトをして、浮き上がる。

 冷酷者ね。

 使い所はそんなに無さそうだが、この時は役に立つな。

 

科学者『問。ユニークスキル”冷酷者”を使用しますか?』

レイト「ああ。レイトの名において命ずる。魂を差し出せ……………!」

 

 俺がそう言うと、兵士から魂が出て来る。

 リムルも、俺と似たようなスキルを使って、残存する兵士達の魂を手に入れていた。

 

科学者『ユニークスキル”冷酷者”と”心無者”にて、この場に生存する全ての人間の魂を刈り取りました。ただし、個体名エドマリスとレイヒムは、対象指定外となっております。』

 

 冷酷者か。

 確かに、冷酷だよな、これは。

 俺たちは、エドマリスとレイヒムの方へと戻る。

 

エドマリス「うう……………!」

レイヒム「うっ……………!」

エドマリス「なっ、なななな何が起こった!?」

レイヒム「うう……………!」

 

 俺たちがエドマリスとレイヒムを見る中、世界の言葉が聞こえてくる。

 

世界の言葉『告。進化条件、種の発芽に必要な養分、人間の魂を確認します。……………認識しました。規定条件が満たされました。これより、魔王への進化(ハーベストフェスティバル)が開始されます。』

 

 そんな声が聞こえて来ると同時に、俺たちに強烈な眠気が襲って来る。

 

リムル「やばい……………なんかめちゃくちゃ眠い。」

レイト「何だこの眠気は……………!?」

 

 そう言いながら、俺たちは地面に着地する。

 気付いたら、ダイモンの変身が解除されていた。

 すると、科学者が報告する。

 

科学者『告。魔力感知にて、生存者1名を確認。』

レイト「何だと……………!?(この眠気をどうにかしねぇと……………!)」

 

 まさか、生きてる奴が居るとは…………!

 そういえば、ラーゼンとかいう奴の遺体が無い。

 そいつか……………。

 すると、世界の言葉が言う。

 

世界の言葉『告。魔王への進化(ハーベストフェスティバル)は、途中で停止不可能です。』

レイト「嘘だろ……………!?」

 

 まじか。

 なら……………!

 

リムル「嵐牙!」

レイト「クリスパー達、集結!」

 

 俺たちが呼ぶと、リムルの影から嵐牙が、周囲からクリスパー達が集まる。

 

嵐牙「はっ!我が主達よ!」

エジソン「どうされましたかな?」

リムル「最重要命令だ。俺たちを守って、街まで連れ戻れ。」

ヒミコ「分かりました。」

レイト「その際、そこの二人は捕虜とする。」

「「ひいっ……………!」」

レオニダス「分かったぞ。」

嵐牙「生き残っている敵の気配を感じますが、いかが致しますか?」

リムル「それは別の者に任せる…………。」

 

 俺たちがそう命令するが、限界が来て、人間への擬態が困難になり、リムルはスライムに、俺はヘルギフテリアンとしての姿に戻る。

 ただ、足から少しずつ、石化しているような気がする。

 まるで、ギフの棺の様に。

 

クフ「レイト様!」

エジソン「そこの人間共は、お前達二人に任せる。私と貴様(クフ)で、レイト様を持つぞ!」

ヒミコ「わかりました。」

 

 そう言って、動く中、俺とリムルは最後の力を振り絞る。

 

リムル「魔法不能領域、解除。」

レイト「キメラドライバーのバリア、解除。」

 

 そう言うと、2種の結界が無くなる。

 そんな中、リムルは悪魔召喚を発動する。

 

リムル「召喚魔法、悪魔召喚を発動。供物はここに転がっている死体、全部だ。餌を用意してやったぞ!出てこい悪魔!俺の役に立ちやがれ!」

 

 そう言うと、魔法が発動して、周囲に転がる遺体が全て消える。

 すると、何か強大な力を持つ存在が割り込んだ様な気配を感じ、三体の悪魔が現れる。

 

レイヒム「あ…………悪魔!?」

エドマリス「ひぃぃぃ…………!」

リムル「おい、お前ら。死んだふりをして隠れている奴が一人いる。そいつを生かして捕らえろ。」

悪魔「クフフフフフ………………!懐かしき気配。新たな二人の魔王の誕生……………実に素晴らしい。大量の供物に初仕事……………光栄の極みで、少々張り切ってしまいそうです。この日を、心待ちにしておりました……………!」

 

 中心に居る悪魔がそう言うと、光が吸収される様な感じがして、翼が収納される。

 

悪魔「今後とも、お仕えしても宜しいのでしょうか?」

リムル「話は後だ。まずは役に立つと証明してみせろ。行け。」

悪魔「容易い事でございます。ご安心下さい、召喚主(マスター)。」

 

 そんな会話が聞こえる中、俺たちは意識を喪失する。

 一方、テンペストでは、俺たちの勝利を信じて、待っていた。

 すると、世界の言葉が響き渡る。

 

世界の言葉『告。個体名リムル=テンペストとレイト=テンペストの魔王への進化、ハーベストフェスティバルが開始されます。』

紅丸「これは……………!」

朱菜「世界の言葉です。」

火煉「という事は……………!」

世界の言葉『完了と同時に、系譜の魔物への祝福(ギフト)が配られます。』

朱菜「リムル様……………!」

火煉「レイト様……………!」

 

 それを聞いて、皆が嬉しそうにする。

 そんな中、紅丸の叫びが響く。

 

紅丸「気を引き締めろ!我らが主達の勝利だ!次は我らがその力を振るう番だぞ!」

 

 紅丸の叫びが響く中、嵐牙とクリスパー達が、広場にやって来る。

 ヒミコとレオニダスは、エドマリスとレイヒムを投げ捨て、嵐牙とエジソンとクフは、紅丸達の前に来る。

 

紅丸「リムル様!レイト様!」

嵐牙「早く主達を!」

紅丸「マントをお持ちしろ。熱変動耐性が機能していないかもしれない。」

部下「はっ!」

 

 紅丸がそう指示する中、朱菜はリムルを、火煉は俺を撫でる。

 

朱菜「ご無事で…………。」

火煉「良かった……………。」

 

 そう言う中、噴水がある所に、俺とリムルを置く。

 一方、エドマリスとレイヒムは、シズさん達とヨウム達に拘束され、連行されていく。

 俺とリムルが置かれる中、紅丸は。

 

紅丸(リムル様、レイト様。魔王になったからって、人が変わった様に暴れ出したりしないで下さいよ。)

 

 紅丸はそう思う。

 そう思う中、俺とリムルは光りだし、世界の言葉は言う。

 

世界の言葉『告。ハーベストフェスティバルが開始されました。身体組成が再構成され、新たな種族へ進化します。』

 

 その声が聞こえる中、周囲の全員が祈る。

 そんな中、世界の言葉は言葉を紡いでいく。

 

世界の言葉『確認しました。種族、キメラから巍骸魔(ギフ)への超進化…………成功しました。全ての身体能力が大幅に上昇しました。物質体(マテリアルボディ)精神体(スピリチュアルボディ)の変化が自在に可能となります。続けて、旧個体にて既得の各種スキル及び、耐性を再取得。成功しました。新規固有スキル、無限再生、万能感知、魔王覇気、強化分身、万能糸、仮面之戦士(オールライダーズ)凄まじき戦士(ジュウガ)を獲得。成功しました。仮面之戦士(オールライダーズ)凄まじき戦士(ジュウガ)の獲得に伴い、ジュウガドライバー、ジュウガ、キングクラブ、オオムカデ、ヘッジホッグ、オクトパス、クロサイ、カンガルー、ネオバッタ、カジキのバイスタンプを作成。成功しました。新規耐性、自然影響無効、状態異常無効、精神攻撃耐性、聖魔攻撃耐性を獲得。成功しました。以上で進化を完了します。』

 

 世界の言葉は、進化の完了を報告した。

 すると、科学者が世界の言葉に請願する。

 

科学者『告。ユニークスキル、科学者より、世界の言葉へ請願。科学者の進化を申請。』

世界の言葉『了。ユニークスキル、科学者の申請を受理。ユニークスキル、科学者が進化へ挑戦。失敗しました。再度実行します。失敗しました。再度実行します。失敗しました。再度実行します。』

 

 科学者は、進化に挑戦するが、何度も失敗する。

 そのやり取りがしばらく続くと、流れが変わる。

 

世界の言葉『告。ユニークスキル科学者が、移植者(ウツスモノ)とキメラ細胞を統合(イケニエ)に、魔王への進化(ハーベストフェスティバル)祝福(ギフト)を得て、進化に挑戦。成功しました。ユニークスキル科学者は、究極能力(アルティメットスキル)奇才之王(シェムハザ)に進化しました。』

奇才之王『吸収之王(アブソーブドレイン)の進化を希求。冷酷者(ヒドウナルモノ)と怪人生成とキメラ細胞を統合(イケニエ)に実行。』

世界の言葉『成功しました。ユニークスキル、吸収之王(アブソーブドレイン)は、究極能力(アルティメットスキル)降魔之王(サタン)に進化しました。』

 

 そんな風に続いていく。

 一方、ファルムスの本陣では、ラーゼンが潜んでいた。

 

ラーゼン「はぁ…………。(生存者(イキルモノ)のおかげで命拾いしたわい。まさか、一瞬で脳を貫かれるとは……………。)」

 

 ラーゼンがそう思う中、リムルが召喚した悪魔達がラーゼンの前に現れる。

 

悪魔「クフフフフフ…………。あなたを拘束させていただきます。抵抗したければお好きにどうぞ。ただし、殺しはしませんが、痛めつける事は止められておりませんから、ご注意を。」

ラーゼン「ほう。主がわしの相手をしてくれるのかのう?」

 

 悪魔の言葉に、ラーゼンはそう言う。

 それを聞いた悪魔は、配下に下がる様命じて笑う。

 

悪魔「相手?クフフフッ。これは面白い冗談ですね。」

ラーゼン「何が冗談なものかよ。たかが上位悪魔(グレーターデーモン)ごときが。」

悪魔「クフフフフフ。良いですね。これは楽しめそうです。食後の運動に、少し付き合って差し上げましょう。」

 

 ラーゼンの言葉に、悪魔はそう言う。

 ラーゼンは、魔法を発動させる。

 

ラーゼン「へっ。舐めるでないわ。核撃魔法、熱収束砲(ニュークリアカノン)!」

 

 ラーゼンの魔法が、悪魔に向かっていく。

 だが、悪魔は慌てておらず、息を吹きかける。

 

悪魔「フッ。」

 

 すると、ラーゼンの魔法は捻じ曲げられ、上に向かっていく。

 余談だが、この魔法の捻じ曲げられた先には、腕が翼の魔人が居て、魔法を喰らい、消し飛んだ。

 

ラーゼン(曲げられた!?いや、事前に詠唱を済ませるトリガー式の術は、ごく低確率で誤作動が起きる。)

 

 ラーゼンは、起こった現象をそう分析する。

 すると、悪魔が拍手をする。

 

ラーゼン「くっ。」

悪魔「今の魔法はなかなかお見事でしたね。」

ラーゼン「くっ!ハズレを引いたか!ならば、これはどうじゃ!精霊召喚!土の騎士(ウォーノーム)、来たれ!根源たる大地の上位精霊よ!」

 

 ラーゼンは今度は、精霊召喚を発動する。

 すると、地面から騎士が出てきて、咆哮する。

 それを見ていた悪魔は。

 

悪魔「なるほど、なるほど。確かに、悪魔は天使に強く、天使は精霊に強く、精霊は悪魔に強い。この三すくみの関係から選択するならば、上位精霊を呼び出したのは正解です。ですが……………。」

ラーゼン「なんじゃ。」

悪魔「若すぎます。」

ラーゼン「は?」

 

 悪魔の言葉に、ラーゼンが首を傾げる中、悪魔は土の騎士の攻撃を躱し、精霊の核に攻撃する。

 すると、あっさりと崩れ去った。

 

悪魔「ほらね。蓄積が足りない。力だけの木偶の坊なんて、私の敵ではありませんよ。クフフフフフ……………!」

 

 そう言って、手に持った物を齧って折る。

 それを見たラーゼンは、驚愕した。

 

ラーゼン「ば……………バカな!?精霊じゃぞ?上位精霊じゃぞ〜!」

 

 ラーゼンはそう叫ぶと、あることに気づく。

 それは、上位悪魔ではないという事だ。

 

ラーゼン「はっ!?まっ、まさか!?貴様は 上位魔将(アークデーモン)……………!?」

悪魔「魔法はもう結構。マスターより頂いたこの体をもっと試したいので、次は趣向を変えましょう。」

 

 悪魔がそう言うと、指を鳴らす。

 すると、魔法不能領域(アンチマジックエリア)が展開される。

 

ラーゼン「魔法不能領域じゃと!?なぜ魔法を封じた?悪魔にとって、魔法が最大の攻撃武器のはずでは……………!?」

悪魔「どうぞ。物理的にお好きな攻撃をしてみて下さい。」

 

 ラーゼンは、悪魔にそう問うが、悪魔はそう返す。

 ラーゼンは叫んだ。

 

ラーゼン「貴様が 上位魔将(アークデーモン)であろうと構わぬ!魔法を使わぬ悪魔など、わしの敵ではない!ユニークスキル、乱暴者(アバレモノ)!」

 

 ラーゼンは、乱暴者の力で、悪魔に攻撃するが、悪魔には躱される。

 

ラーゼン「うおおおおっ!」

 

 ラーゼンはキックを入れるが、悪魔は左腕だけで受け止める。

 ラーゼンは、一旦距離を取る。

 その際、悪魔の容姿を見て、悪寒がした。

 

ラーゼン「ぐっ………!その金色の瞳…………赤い瞳孔……………!」

 

 ラーゼンは悪寒がしつつも、ジャンプして、キックを放つ。

 

ラーゼン「ぜやああああ!」

 

 だが、そのキックもあっさり躱され、その悪魔に吹っ飛ばされる。

 そして、ラーゼンは、その悪寒が正しかったことを悟る。

 

ラーゼン「こ……………この圧倒的な強さ………!まっ、まさか!?そんな………!?貴様、もしかして、げっ、原初の…………!?」

悪魔「おや、博識ですね。あなたは相当に賢い様だ。」

 

 そう。

 この悪魔の正体は、この世界に7体しか存在しない原初の悪魔。

 その内の一人の、原初の黒(ノワール)と呼ばれる存在だった。

 それを理解したと同時に、恐怖する。

 

ラーゼン「あっ、あやつらはなんという…………なんという恐ろしい奴をこの世に解き放ちよったんじゃあああああ!!」

 

 実際には、召喚に割り込んだだけなのだが、原初の黒を召喚したリムルに恐怖する。

 その事実で、ラーゼンは戦意喪失した。

 そんな中、原初の黒がラーゼンに近寄ってくる。

 

ラーゼン「あっ!あっ、ああ……………!うっ!うう……………!」

悪魔「おや?もう終わりですか?」

ラーゼン「うう………………!あああ…………。」

 

 悪魔がラーゼンを見ると、ラーゼンは恐怖に負けて、白眼を剥いて気絶する。

 

悪魔「ふむ。では、無事に初仕事を終えた事を、マスター…………我が君に褒めて頂くとしましょう。」

 

 そう言って、ラーゼンを連れて、テンペストに向かう。

 一方、テンペストでは、進化は佳境に入っていた。

 すると、俺の周囲を囲っていた石が弾け飛び、リバイスの世界での悪魔の始祖、ギフの姿が現れる。

 しばらくすると、光が収まった。

 

世界の言葉『告。個体名リムル=テンペストとレイト=テンペストのハーベストフェスティバルが完了しました。』

朱菜「リムル様……………!」

火煉「レイト様……………!」

紅丸「魔王に……………。」

世界の言葉『続いて、系譜の魔物への祝福(ギフト)の授与を開始します。』

紅丸「ギフト?」

 

 紅丸がそう呟くと、眠気が襲ってくる。

 すると、周辺の魔物達が、一斉に倒れる。

 

ミュウラン「あっ……………!」

グルーシス「何だ?」

 

 ただ、ミュウランとグルーシスは何ともなかった。

 

紅丸「うっ……………これは?」

朱菜「ギフト……………リムル様とレイト様の繋がりを……………。」

火煉「強く……………感じる……………。」

嵐牙「我が主達……………。」

 

 周囲の者達はどんどんと倒れる。

 ただ、紅丸だけは強く意識を保とうとしていた。

 一方、影響は意外な所にも及んでいた。

 エドマリスとレイヒムを牢屋に入れていたシズさん達の方では。

 

エレン「ここで良いんだよね?」

シズ「ええ。………………うっ!?」

ヨウム「シズさん?…………うっ!?」

 

 すると、シズさんとヨウムの二人にも、紅丸達に襲う睡魔が襲い、倒れる。

 

ロンメル「ヨウム!?」

カジル「カシラ!?」

エレン「シズさん!?」

カバル「何が起こってるんだ……………!?」

ギド「そういえば、シズさんは、レイトの旦那のキメラ細胞で、新たな体を作ってもらっていたでやんすよね!?」

カジル「カシラも、レイトの旦那に、キメラ細胞を埋められていたな。」

エレン「じゃあ、二人にもレイトさんの進化の影響が?」

 

 その場にいた全員がそう推測する。

 そう、シズさんとヨウムは、俺のキメラ細胞が体に入っている都合上、系譜の魔物という扱いをされたのだ。

 一方、紅丸が必死に意識を保つ中、スライム状態のリムルとギフの状態の俺が浮かび上がり、姿が変わる。

 その姿は、人としての姿と同じだが、目が赤色になっていた。

 

智慧之王「告。あとは任せて、眠りにつきなさい。」

 

 リムルの大賢者が進化した究極能力、智慧之王(ラファエル)がそう言うと、紅丸はそのまま意識を失う。

 智慧之王と奇才之王は、倒れる遺体の方へと向かっていく。

 

ミュウラン「魔王……………。」

グルーシス「やったのか?」

 

 ミュウランとグルーシスがそう話す中、真ん中に立つ。

 

智慧之王「告。智慧之王の名において命ずる。暴食之王(ベルゼビュート)よ。この結界内の全ての魔素を食らい尽くせ。一欠片の魂さえも残さずに。」

奇才之王「告。奇才之王の名において命ずる。降魔之王(サタン)よ。智慧之王を助けるべく、この結界内の全ての魔素を吸収せよ。」

 

 二人がそう言うと、結界内に満ちていた魔素が吸収されていく。

 すると、結界も崩れ、吸収されていく。

 吸収が終わると、遺体の一つ一つに丸いエネルギーが滞空する。

 

ミュウラン「魔素が全部……………吸われた?あれは…………精霊?」

 

 ミュウランがそう呟く中、智慧之王と奇才之王は、紫苑のすぐ横に立ち、作業を始めようとする。

 すると、そこにラーゼンを連れた原初の黒達が現れる。

 それを見たミュウランとグルーシスは構える。

 

ミュウラン「あっ!?」

グルーシス「 上位魔将(アークデーモン)だと!?」

 

 原初の黒は、ラーゼンを放って、智慧之王と奇才之王に跪く。

 それを見た二人は、臨戦態勢を解く。

 

悪魔「ただいま戻りました、我が君。本来ならば、儀式の終わりまで待つべきでしょうが……………失礼ながら申し上げます。どうも、魂の完全なる再生には、魔素量が足らぬ様ですが。」

奇才之王「是。規定に必要な魔素量を満たしておりません。」

智慧之王「生命力を消費し、代用します。」

悪魔「お待ちください、我が君、我が君の友よ。代用にご自身達の生命を用いずとも、良き考えがあります。この者どもをお使い下さいませ。この者達も、あなた様方のお役に立てるなら、光栄です。それこそが、我らにとっての喜びなのですから。」

 

 原初の黒はそう言って、同時に召喚された悪魔達を使う様に提案する。

 それを聞いた智慧之王は。

 

智慧之王「了。規定に必要な魔素量を補填可能。その案を承認します。暴食之王。」

 

 智慧之王は、暴食之王を発動して、その2体の悪魔を取り込む。

 それを見ていた原初の黒は。

 

悪魔「おお、羨ましい…………。」

 

 そう言うと、智慧之王と奇才之王が、原初の黒を見る。

 

悪魔「んっ……………失礼しました。」

 

 悪魔はそう言って、ミュウランとグルーシスの横にまで下がる。

 

智慧之王「規定の魔素量に達した事を確認しました。」

奇才之王「これより、反魂の秘術及び、キメラ細胞の移植を開始します。」

 

 二人はそう言って、秘術を開始する。

 それを見ていたミュウランとグルーシスは声を出す。

 

ミュウラン「究極の……………魂の秘術!」

グルーシス「これが、生まれたての魔王だって?くっ……………!(こんなの、カリオン様でも不可能なんじゃ………………!?)」

悪魔「素晴らしい……………!(クフフフ…………!是が非でも、配下として加えて頂かねば。)」

 

 ミュウラン、グルーシス、原初の黒は、そう言う。

 そんな中、倒れている人たちの傷が癒えていく。

 この時、倒れている人たちにキメラ細胞も埋められていく。

 反魂の秘術、死者蘇生の秘術。

 それらを行使するには、莫大な魔素量が必要となり、それを制御する魔力は、想像を絶する物となる。

 成功確率は3.14%。

 しかし、その数値は、俺とリムルが魔王へと進化する前に算出された物だ。

 作業を終えると、智慧之王と奇才之王は倒れ、元のスライムとギフとしての姿に戻る。

 原初の黒は、抱えて元の場所に戻す。

 そして、紫苑の手が動き、目を開ける。




今回はここまでです。
遂に、レイトとリムルの二人が、魔王に進化して、紫苑達が蘇生されました。
ファルムスとの戦いは、これにて閉幕です。
いよいよ、ヴェルドラの復活も近くなってきました。
お知らせしておきますが、ヴェルドラ復活の下りは、あるサプライズをする為に、アニメ版ではなく、漫画版を参考にした物にします。
そのサプライズが何なのかは、楽しみにしてて下さい。
その為、アニメ版とは順序が逆で、復活祭の後に、ヴェルドラが解放される感じです。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
あと、転キメ日記の更新も近いうちに行いたいと思います。
レイトが変身する予定の仮面ライダージュウガですが、オリジナルフォームのリクエストも来ていますが、どうしましょうか?
どんな感じのフォームが良いのか、意見がある場合は、活動報告にて受け付けます。
パーフェクトウイングも届いたので、楽しみます。
あと、近いうちにミッドレイとヘルメスが登場しますが、オリジナルの龍人族も出す予定です。


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第32話 テンペスト復活祭

 俺たちが再び眠りに就いた中、眠っているヨウムとシズさんを連れたエレンやカイジン達がテンペストに戻ってきて、ミュウランから話を聞いていた。

 

エレン達「進化の眠りぃ!?」

ミュウラン「ええ。リムル様とレイト様は、見事に魔王へと進化なされたわ。皆は祝福(ギフト)……………そうね。主の進化のお裾分け……………とでも言うのが分かりやすいかしら。リムル様とレイト様の系譜に連なる者達は、祝福(ギフト)を得て、進化の眠りに就いたのだと思う。」

エレン「だからシズさんも………………。」

 

 エレンは、ミュウランの言葉を聞いて、納得していた。

 そんな中、カバル達がミュウランに聞く。

 

カバル「って、それより、死んじまった皆は!?」

ギド「紫苑さん達は、生き返ったんでやすか!?」

エレン「魂はちゃんと戻せたのぅ!?」

ミュウラン「……………無事に蘇生出来たわよ。魔王となった、リムル様とレイト様の秘儀でね。でも、安心するのはまだ早いでしょう。一度死んだのは間違いないのだから、記憶も無事であるという保証もないわ。」

 

 質問攻めするカバル達を落ち着けながら、ミュウランはそう言う。

 そんな中、エレンが手を叩いて、口を開く。

 

エレン「と、とにかくぅ!皆さんを屋根の下に運びましょうか!」

カバル「そうだな!」

ミュウラン「………………多分、大丈夫でしょうけど。」

 

 エレン達がそう話す中、ミュウランはボソッと呟く。

 ミュウランは、思った。

 

ミュウラン「(長き生の中で、あれほどの御業は、初めて見た。)……………クレイマンが霞んで見えるわね……………。」

 

 ミュウランはそう思って、呟いた。

 一方、グルーシスは。

 

グルーシス(獣王国(ユーラザニア)も、テンペストには手を出さねぇよう、俺が啓蒙しねぇとな………………。)

 

 そう思っていた。

 そんな中、俺は。

 

レイト(何だ……………これ?)

 

 まだ意識が朦朧とする。

 そんな中、流れてきたのは、リバイスの記憶だった。

 エビリティライブに変身した大二が、ギフを封印した後、オルテカが解放され、逮捕された。

 だが、ギフの脅威は、まだ無くなっていなかった。

 さくらとラブコフがギクシャクする中、ギフは解放された。

 ギフは、五十嵐家の面々に、人類の滅亡か、五十嵐家を新しい世界の始祖として、受け入れる選択をした。

 その後、玉置がオーバーデモンズに変身したり、さくらとラブコフの絆の証、インビンシブルジャンヌに変身して、ギフを放逐する事に成功した。

 どうやら、バトルファミリアは、ギフを倒した直後の話のようだ。

 だが、ジョージ・狩崎が、ギフの遺伝子を必要とするライダーシステムを駆逐すると決めた。

 あのキメラドライバーを更にカスタマイズして出来たジュウガドライバーを使って、仮面ライダージュウガに変身して、五十嵐家に牙を剥く。

 キメラドライバーは、あくまで試作品に過ぎなかったのか。

 エビリティライブやインビンシブルジャンヌを倒した後、一輝との戦いに臨む。

 一輝は、真澄さんの部屋から、ある物を見つけ出した後、戦いに挑んだ。

 ………………家族の記憶が消えているのにも関わらず。

 その後、ジョージ・狩崎は敗れ、真澄さんへの想いを吐露する。

 だが、一輝から、家族に関する記憶が全て消えてしまった。

 一輝は、バイスと共同生活を始める。

 しかし、幸せは長くは続かなかった。

 バイスが突然、人々を襲い、元太が変身したデストリームを一蹴した後、一輝と戦う。

 だが、バイスが一輝と戦う理由は、ちゃんとあった。

 それは、一輝とバイスの契約が理由だった。

 一輝は、家族の記憶を代償に、リバイとして戦っていた。

 一輝は、バイスの事を家族と思っており、バイスの記憶が消えれば、契約満了となり、バイスは存在も、一輝の記憶からも消え、家族の記憶が戻ってくる。

 人々を襲ったように見えたのは、一世一代の大芝居だったのだ。

 バイスの真意を悟った一輝は、最後の思い出をせめて楽しいものとするために、バイスと全力でぶつかることを決意する。

 じゃれ合いを交えての戦いの果てに、バイスは消えて、一輝は家族の記憶を取り戻した。

 ………………バイスの記憶は消えてしまったのだが。

 その後、イザンギとバリデロという、ギフに滅ぼされた種族が、五十嵐家を襲う。

 その際、バイスは復活を果たして、イザンギとバリデロを撃破する。

 その直後、コラスという人物が現れ、浮世英寿/仮面ライダーギーツと共に、轟戒真/仮面ライダーシーカーを撃破する。

 バイスは、再び消滅してしまった。

 だが、浮世英寿の願いにより、一輝はバイスの記憶を失わなかった。

 その後、五十嵐大二と門田ヒロミの、アリコーンという組織の戦いや、ジョージ・狩崎とオルテカの戦いなどがあった。

 これが、俺の知らないリバイスの記憶。

 すると、意識が目覚める。

 

紫苑「あ!お目覚めになられたのですね!おはようございます!リムル様!レイト様!」

 

 意識が目覚めて、すぐに入ってきたのは、紫苑の明るい声だった。

 俺たちは、それをホッとしながら見て、口を開く。

 

レイト「……………おはよう。」

リムル「無事に生き返ったようで、何よりだ。」

紫苑「はいっ!お二人のおかげで!」

 

 紫苑はそう言って、リムルを掲げる。

 

紫苑「リムル様!レイト様!こうして無事に、我ら一同、生き返る事が出来ました!」

皆「我ら一同、一名の欠落もなく、無事に生還いたしました!」

リムル「そうか……………!」

レイト「良かった……………。」

 

 良かった。

 皆が無事に生き返って。

 というか、他の皆も含めて、何か少し変わった気がするな。

 すると。

 

科学者?『告。魂の系譜に連なる者たちへ祝福(ギフト)が配られ、それにより、進化が発生しました。』

レイト『そうか。……………というより、あんたも流暢に喋ってないか?』

科学者?『否。私は前からこんな感じです。つまり気のせいです。』

レイト『いや、気のせいじゃないだろ!絶対に流暢になってるよな!?』

 

 俺は、科学者(?)にそう突っ込む。

 すると、誤魔化すのか、言い始める。

 

奇才之王『告。実はユニークスキル”科学者”が、究極能力(アルティメットスキル)奇才之王(シェムハザ)”へと進化しました。』

レイト『シェムハザか。確か、グリゴリの指導者の一人と言われる堕天使の名前だったな。凄そうじゃないか!』

奇才之王『もはや、私に答えられない物はありません。』

レイト『そっか。期待してるぞ。…………やっぱり、流暢になってるよな?』

奇才之王『否。気のせいです。』

 

 あくまで気のせいで押し通す気か。

 まあ良い。

 何故、俺が知る筈のないリバイスの記憶を見せたのかは、後で聞くとしよう。

 仮面ライダージュウガというのも、気になるし。

 皆が俺とリムルに挨拶をしようとする中、紅丸と火煉が入ってくる。

 

紅丸「リムル様!レイト様!」

リムル「紅丸。火煉。」

レイト「心配かけたな。」

火煉「大丈夫です。色々と、報告したい事があるのですが……………。」

紅丸「目覚めた後の約束を覚えていますか?」

レイト「ああ………………。」

 

 その目覚めた後の約束というのは、覚えている。

 ファルムスの方へと向かう前、紅丸と火煉に話していたのだ。

 万が一、暴走した際には、殺してでも止めて欲しいと。

 まあ、問題無かったわけだが。

 その後、俺たちが理性のない魔王になっていないかの確認をする為に、合言葉を決めたのだ。

 

紅丸『………………では、もう一度確認します。俺が『紫苑の料理は?』と問うので…………。』

レイト『………………その答えが、『クソ不味い』かよ。』

火煉『あの……………紅丸様。流石に、それはどうかと思いますが………………。』

リムル『紫苑嫌がるだろ。』

紅丸『だからこそですよ。怒って文句を言いに目覚めてくれれば……………そういう願いを込めてるんです。』

 

 まあ、言いたい事は分かる。

 だが、当の本人が近くに居るから、どうしたものか………………。

 すると、紅丸が言う。

 

紅丸「では、問います。紫苑の料理は?」

リムル「クソま………………。」

紫苑「え?私の料理がどうしましたか?」

 

 リムルがそう言おうとする中、紫苑が俺たちの方に来る。

 やばい。

 ちなみに、俺は火煉に耳打ちする形で、合言葉を言っておいた。

 流石に、本人の前で言う度胸はない。

 さて、リムルはどうするのかな。

 

紅丸「久々に食べてみたいのだろう。お前の日頃の努力を確かめてくださるそうだ。」

紫苑「なるほど!それで私に料理しておけと言っておいたのですね!流石は紅丸様です!」

紅丸「リムル様の為の料理だからな。無論、俺は遠慮す……………。」

リムル「待ちたまえ、紅丸君。合言葉だったね。勿論覚えているとも。」

 

 紅丸と紫苑がそう話す中、リムルが割り込む。

 すると、リムルの次の発言で、部屋の空気が下がった。

 

リムル「紅丸君が決めた(・・・・・・・)合言葉は確か……………『紫苑の料理はクソ不味い』だったかな?」

紅丸「あ…………………。」

 

 リムルの言葉に、紫苑は笑顔のまま固まる。

 心の中を見る事が出来る俺からしたら、怒りの感情が見える。

 紅丸は顔を青ざめ、必死に弁解する。

 

紅丸「ま、待て紫苑!リムル様は目覚めたばかりで、混乱されておられるのだ!」

火煉「同じく目覚めたばかりのレイト様は、混乱されていませんが?」

紅丸「なっ…………………!?」

紫苑「分かりました。紅丸様……………いえ、紅丸。私はリムル様の直属なので、敬称は不要でしょう。」

紅丸「ぐっ………………!」

紫苑「それよりも貴方が、そんなに私の料理を食べたがっていたとは……………遠慮など無用。その腹がはち切れるまで、堪能させて差し上げましょう……………。」

 

 紫苑はそう言って、やばい笑みを浮かべながら、どこかへと向かう。

 それを見て、俺たちは本能的に恐怖していた。

 すると。

 

火煉「紅丸様……………いえ、紅丸。私もレイト様の直属ですので、敬称は要りませんよね?」

紅丸「なっ!?火煉まで………………!?」

火煉「死ぬ覚悟を決めてください。」

 

 そう言って、火煉もどこかへと向かう。

 すると、紅丸がリムルに話しかける。

 

紅丸「どうしてくれるんです!?」

リムル「死なない様に頑張ってくれ。」

紅丸「頑張ってくれって……………!まあ、ずっと試食しているからか、最近では、”毒耐性”が身につきましたが………………。」

レイト「毒耐性………………!?」

紅丸「今度こそ、死ぬかも。」

レイト「まあ、自業自得だ。」

 

 そんなこんなで、紅丸は意気消沈していた。

 自業自得だ。

 そんな中、生き返った人たちへの挨拶をする。

 どうやら、エクストラスキル”完全記憶”を手に入れた様で、何度死んでも復活するらしい。

 その間、俺は新たなスキルを確認していた。

 奇才之王は、科学者と移植者(ウツスモノ)とキメラ細胞を統合して生まれたらしい。

 別の究極能力(アルティメットスキル)降魔之王(サタン)”は、吸収之王をベースに、冷酷者と怪人生成とキメラ細胞を統合して生まれたそうだ。

 そして、新たに得たスキルの、仮面之戦士(オールライダーズ)凄まじき戦士(ジュウガ)は、凄まじき戦士の方が、仮面ライダージュウガに変身するスキルだ。

 仮面之戦士というのは、ジュウガドライバーには、バイスタンプをスキャンして、R因子を引き出して、その仮面ライダーの力を行使する事が出来る力があるそうだ。

 その為、俺が持っていなかった平成ライダーのバイスタンプや、ネオバッタとカジキも作成したそうだ。

 キングクラブがブレイド、オオムカデがカブト、ヘッジホッグがキバ、オクトパスがドライブ、クロサイがゴーストのR因子を宿しているそうだ。

 カンガルーバイスタンプは、作っていなかったので、丁度良かった。

 挨拶を終えて、俺たちは中心部に向かうと、リグルドが話しかけてくる。

 ちなみに、火煉とも合流している。

 

リグルド「リムル様!レイト様!お目覚めになられて、このリグルド!幸福感に胸を締め付けられて……………もう、このリグルド!」

リムル「分かった、分かった。心配かけたな。」

レイト「それにしても……………瓦礫が殆ど片付いているのも凄いが……………祭りの準備か?」

 

 そう。

 俺の記憶では、ファルムスの襲撃によって、建物に傷がついたり、瓦礫が多かったが、今はすっかり片付いており、祭りの準備が始まっていたのだ。

 俺がそう聞くと、リグルドが答える。

 

リグルド「目覚めたばかりで、本調子でない者もおります。それに、ユーラザニアからの避難民もそろそろ到着予定だとか。それで、炊き出しの準備を進めていたのですが……………。」

 

 ユーラザニアからの避難民か。

 実は、ファルムスに反撃をする前、ユーラザニアから、避難民の受け入れ要請があったのだ。

 何でも、ミリムが宣戦布告をしてきたのだそうだ。

 その為、カリオンは俺たちを頼って、ユーラザニアの人々を、テンペストに逃す事にして、たった1人でミリムと戦う事にしたそうだ。

 なんでミリムが宣戦布告をしたのかは、分からない。

 一度、ミリムが何を考えているのか、確認しておきたいがな。

 

リグルド「リムル様とレイト様がお目覚めになられたという事で、急遽、祭りに!」

 

 急遽で祭りになるのが、ウチのすごい所だよな。

 まあ、その方が良いが。

 ユーラザニアの事は、避難民の代表から聞くとしよう。

 すると、良い匂いがしてくる。

 

リムル「うわ、めちゃくちゃ良い匂い。」

リグルド「炊き出しは、朱菜様が陣頭指揮を執っておられます。」

レイト「そうか。」

 

 流石は朱菜だな。

 すると、紫苑が駆け寄ってくる。

 

紫苑「リムル様〜!お料理の準備が整いました!さ、お席へどうぞ!」

 

 そっか。

 リムルと紅丸にとっては、悪夢の始まりだからな。

 そう思っていたが、何故か、俺と火煉も座らされていた。

 俺、リムル、火煉は、紅丸に抗議する。

 

レイト「ちょっと待て!なんで俺たちまで食う流れになってんだよ!?」

紅丸「一緒に紫苑の料理を味わってあげて下さい!」

火煉「私たちまで巻き込まないで下さい!」

紅丸「アイツだって頑張ってるんだし、奇跡的に美味しいかもしれないじゃないですか!」

リムル「そんな簡単に奇跡なんざ起きねぇんだよ!俺たちはもう行く!」

紅丸「待ってください!1人にしないで下さいよぉぉぉ!!」

 

 俺たちは、席から離れようとするが、紅丸が必死に俺たちを掴み、逃がそうとしない。

 その姿からは、無敵の侍大将の面影は感じられなかった。

 俺たちが逃げようとするが。

 

紫苑「お待たせしました!」

俺たち「っ!?」

 

 紫苑がやって来てしまったので、俺たちは渋々、席に戻る。

 それで、器に盛られたのだが、これはまあ酷い。

 近くを通った蛾が、テーブルに落ちる。

 

紫苑「遠慮なく召し上がって下さいね!」

リムル「紫苑、お前……………。」

紫苑「ん?」

リムル「”料理する”って言葉を知ってるか?」

紫苑「勿論ですとも、リムル様!どうです?美味しそうでしょう?」

レイト「なら、言わせてくれ。どうして、玉ねぎの皮も根も残ったままで、トマトも茎ごと丸ごとなったまんまじゃないか!取ったり、刻んだり、皮を剥いたり色々しなければいけない事があるだろうが!!」

 

 俺は紫苑に対して、そう叫ぶ。

 料理という概念が無い!

 すると、紫苑が言いづらそうにする。

 

紫苑「え〜っとですね……………。私が加工しようとすると、建物も一緒に切ってしまうので……………。」

リムル「は?調理台じゃなくて、建物?」

紫苑「はい。」

リムル「わあっ!?」

 

 紫苑はそう言って、剛力丸を取り出す。

 まさか………………!?

 

紫苑「この剛力丸は、素晴らしい切れ味なのですが……………ちょっと長くて……………。」

レイト「それで調理してんのか!?」

紫苑「はい!」

 

 笑顔で言うんじゃ無いよ。

 堂々と言える事じゃねぇだろ!

 すると、紅丸と火煉が口を開く。

 

紅丸「………………フッ。子供の頃から不可能なんてないと思っていましたが、思い上がっていた様ですね。」

火煉「ですね。」

 

 良い顔で何を言ってんだ!

 悟りを開いた顔をするな!

 もう突っ込みどころが多過ぎるわ!

 俺は、紫苑に話しかける。

 

レイト「あのな!剛力丸は戦闘用だ!料理には、包丁やナイフとかあるだろう?」

紫苑「私は剛力丸一筋なのです。浮気はちょっと………………。」

 

 何が浮気だよ!

 用途が違うだろうが!

 別に違う刃物を使ったって、良いだろ!?

 俺が心の中でそう突っ込む中、リムルが口を開く。

 

リムル「あっ、そう。今度、包丁をプレゼントしてやろうと思ってたが………………。」

紫苑「間違ってました!私の勘違いです!剛力丸も多少の浮気は大丈夫と言ってます!」

リムル「そうか。じゃあ、次からは包丁で料理する様に。」

紫苑「はい!」

 

 リムルがそう言うと、一瞬で掌を返す。

 あっさりだなぁぁ………………。

 俺たちは、覚悟を決めて、紫苑の料理を口に入れる。

 卒倒するかと思ったが……………普通に美味しい。

 

リムル「あ、あれ……………?」

レイト「美味しい……………?」

火煉「え、え!?」

紅丸「どういう事だ!?」

紫苑「ンフフフフッ。実はですね……………生き返る際の祝福(ギフト)で、新たなスキルを獲得したのです!」

「「「「はあっ?」」」」

紫苑「ユニークスキル。その名は”料理人(サバクモノ)”!」

 

 紫苑曰く、どう料理してもイメージした味になるらしい。

 生き返るか否かの瀬戸際で、そんなことを願うか?

 俺とリムルは、呆れて言葉も出ない。

 まあ、それが紫苑なのだろうが。

 とはいえ、見た目と食感は最悪なので、それをどうにかして欲しいと伝えた。

 そんな事があったが、俺たちは櫓の方へと集まる。

 

リグルド「………………という訳で、これよりテンペスト復活祭(仮)を開催する!」

 

 リグルドの宣言と共に、復活祭が始まった。

 その夜は、祭りの様などんちゃん騒ぎとなった。

 復活を祝い、互いの再会を喜んだ。

 ミュウランが酒をたくさん飲んで、ヨウムが気絶して、他の人たちは苦笑していた。

 他にも、色々と盛り上がっていた。

 そんな中、原初の黒とシズさんが話していた。

 

悪魔「思いの外、早い再会となりましたね。シズ殿。」

シズ「あなたもね、クロ。なんで貴方がここに居るの?」

悪魔「マスターに呼ばれたからですよ。」

シズ「リムルさんに………………。」

悪魔「マスターには、私が原初の悪魔である事は、伝えなくても良いですよ。さて。マスターの配下になる事を伝えに行かなくては。」

シズ「そう。私も行くわ。」

 

 そう話して、2人は俺たちの方へと向かう。

 俺たちがのんびりしていると、その悪魔がやって来る。

 

悪魔「我が君。そして、我が君の友よ。魔王と成られました事、心よりお祝い申し上げます。」

リムル「………………誰だお前?」

レイト「リムル!?」

悪魔「っ!?ご、ご冗談を……………悪魔の私が、心核(ココロ)にダメージを受けました。」

 

 リムルの発言に、その悪魔はよろめく。

 召喚しておいて、何を言ってるんだ。

 俺、シズさん、嵐牙はフォローに入る。

 

嵐牙「我が主よ。この者は、ファルムスの兵士どもを生贄に召喚した悪魔のうちの一体です。」

レイト「自分で召喚しただろ。」

シズ「流石に、それは言い過ぎじゃない?」

悪魔「おお……………嵐牙殿!我が君の友!シズ殿!」

 

 俺、シズさん、嵐牙のフォローに、原初の黒は笑顔を見せる。

 すると、リムルが再び爆弾を投下する。

 

リムル「あ〜そうか!まだ居たんだ!」

悪魔「くっ………………まっ、まだ……………。」

リムル「聞いたよ!色々と手伝ってもらったって!助かったよ!」

悪魔「あっ……………いいえ、とんでもございません。つきましては………………。」

リムル「長々と引き止めてしまって悪かったね。もう帰って良いよ!」

悪魔「えっ!?帰って………………!?」

 

 おい、リムル。

 いくらなんでも、それは酷過ぎるだろ。

 上げて落とすなよ。

 俺の目には、その悪魔の心が砕け散った感じがした。

 

シズ「リムルさん、リムルさん。」

リムル「どうしたの?シズさん。」

レイト「あの悪魔、泣きそうになってんぞ。」

リムル「えっ!?あれ?もしかして、報酬が足りなかった!?」

悪魔「いえ、そうではございません。先だってお願いしておりました通り、配下の末席に加えて頂きたいのです………………!」

リムル「は、配下!?」

 

 というより、原初の悪魔が配下になりたいなんて言うとはな。

 そんな中、リムルが俺たちに聞いてくる。

 

リムル「なあ、嵐牙!こいつ、本当に俺が呼んだの!?」

嵐牙「間違いありません。」

リムル「というより、なんで2人はこいつの事を知ってんの!?」

レイト「ええとだな………………話しても良いか?」

悪魔「我が君になら、問題はありません。」

レイト「実は、グラトルの街で、妖魔族(ファントム)を倒したのは、こいつなんだ。」

シズ「私も、以前に一度会った事があるの。」

リムル「マジで!?」

 

 俺、シズさん、嵐牙の言葉に、リムルは驚く。

 まあ、無理もないか。

 そんな中、リムルは少し悩んで、その悪魔に話しかける。

 

リムル「ええと………………報酬とかないけど、良いのか?」

悪魔「お仕え出来るだけで幸福です。」

リムル「よし、分かった!」

悪魔「おお!感謝いたします!我が君!」

リムル「”我が君”はやめろ!なんかむず痒い!リムルで良い。リムルで。」

悪魔「リムル………………甘美な響きです。それでは、今後はリムル様と。」

 

 随分と嬉しそうだなぁ……………。

 リムルの信者が1人増えたな。

 

リムル「……………で、お前の名は?」

悪魔「私など、名もない悪魔で十分でございます。」

リムル「名前は無いのか………………。じゃあ、報酬代わりに名前をつけてやろう!」

悪魔「なんと!それは最大のご褒美でございます!」

 

 原初の悪魔に名前をつけるとか、かなりやばいだろ。

 とはいえ、黙っておくか。

 俺が苦笑する中、リムルは考えていた。

 

リムル「そうだな……………悪魔だから、悪魔っぽい名前が良いな。あっ!お前の名前は”ディアブロ”だ!」

ディアブロ「ディアブロ……………!」

リムル「その名前に相応しく、俺の役に立ってくれ!」

 

 リムルがそう言うと、ディアブロにリムルの魔素が半分持っていかれた。

 とんでもない化け物に進化しそうだな。

 しばらくすると、進化が終わった。

 服装は、本当に執事みたいな感じになっていた。

 

ディアブロ「感激で胸が一杯です。リムル様。」

リムル「お、おう。そりゃあよかった。」

ディアブロ「このディアブロ。今日この日より、誠心誠意お仕えさせていただきます。シズ殿も、レイト様もよろしくお願いします。」

レイト「ああ。よろしく。」

シズ「うん。」

 

 ディアブロに対して、俺たちはそう答える。

 すると、紅丸がやってくる。

 

紅丸「そちらが新しい仲間ですか?」

リムル「紅丸。」

紅丸「なんと言うか………………気が抜けませんね。」

リムル「ディアブロだ。仲良くしてやってくれ。」

ディアブロ「クフフフフフ。どうぞ宜しく。紅丸殿。」

紅丸「ああ、よろしく。」

 

 ディアブロと紅丸は、そう挨拶をする。

 俺は、紅丸に聞く。

 

レイト「ところでどうしたんだ?」

紅丸「実は、宴会がひと段落するまではと、遠慮してくれていたんです。ユーラザニアの三獣士。彼らの話を聞いてあげて下さい。魔王ミリム様対魔王カリオン様。その戦いの顛末を。」

 

 紅丸が指差した先には、アルビス、スフィア、フォビオの三人がいた。

 俺たちは、戦いの顛末を聞くことにした。

 ミリムが何を考えているのか、知りたいしな。




今回はここまでです。
レイトは、仮面ライダージュウガに変身可能になりました。
そして、リバイスの残りの物語、MOVIEバトルロワイヤル、ライブ&エビル&デモンズ、ジュウガVSオルテカのエピソードを知りました。
次回は、ユーラザニアでのミリムとカリオンの戦いの顛末やら、ヴェルドラの解放までです。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
ここからは、漫画版とアニメ版のエピソードのリミックスみたいな感じで行こうかなと検討しています。
コリウスの夢やら、小説家になろうに投稿されている『とある休日の過ごし方』を、こちらでも投稿しようかなと考えています。
あと、レイトが変身するジュウガで、オリジナルフォームのリクエストがあれば、受け付けます。
ジュウガって、ジョージ・狩崎が、ギフの遺伝子を持っていない人間でも使える様に調整された物ですからね。
ギフであるレイトが使う分には、出力をあげても問題ない気がしますし。
あと、近いタイミングで、火煉にデストリームドライバーを渡す予定です。


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第33話 獣王国、滅びの日

 俺たちは、三獣士から話を聞く為に、場所を変える。

 場所は、リムルの庵にした。

 中に入ったのは、俺、リムル、紅丸、ディアブロ、シズさん、アルビス、スフィア、フォビオだ。

 すると、アルビス達が頭を下げる。

 

アルビス「魔王への進化、誠におめでとう御座います。リムル様、レイト様。」

リムル「避難民の事は聞いてるよ。大変な目に遭ったと思うが、あなた方が無事でよかった。」

アルビス「ありがとう存じます。」

レイト「聞かせてくれ。一体、獣王国(ユーラザニア)で何があったんだ?」

 

 アルビス達の祝いの言葉を聞きつつも、リムルが労い、俺はそう聞く。

 すると、アルビスとフォビオが頷き合い、フォビオが口を開く。

 

フォビオ「ここからは、この黒豹牙フォビオが話させていただく。」

 

 そう言って、フォビオは語り出した。

 1週間と少し前、ミリムがユーラザニアに現れたのだ。

 

ミリム「ワ〜ハッハッハッハッ!私はミリム・ナーヴァ!魔王なのだ!私はここに、魔王間で取り交わされた全ての協定を破棄し、獅子王(ビーストマスター)魔王カリオンに対し、宣戦を布告する!」

カリオン「戦だと!?」

三獣士「うっ………………!」

ミリム「開戦は1週間後!せいぜい頑張って準備しておくのだ!ワ〜ハッハッハッハッ!」

 

 ミリムはそう言って、ユーラザニアから去っていった。

 

カリオン「待てミリム!てめえ、何考えてやがる!?」

 

 カリオンがそう叫ぶが、その時には既に、ミリムの姿は遥か彼方に去っていった。

 それを聞いていたスフィアが口を開く。

 

スフィア「戦争か!大将。一番手は俺に譲ってもらうぜ。」

フォビオ「待て、スフィア!お前は、魔王ミリムの強さを知らない!獣王戦士団が全員でかかったとしても、一瞬で皆殺しにされるだけだぜ!」

 

 スフィアが好戦的な笑みを浮かべながらそう言うが、ミリムの強さを知るフォビオは、スフィアを止める。

 それを見ていたカリオンは、フォビオに話しかける。

 

カリオン「フォビオ。実際にミリムの強さを見たお前がそう言うなら、そうなんだろう。…………で、俺とミリムでは、どっちが強い?」

フォビオ「うっ………………!?」

 

 カリオンの質問に、フォビオは言葉を詰まらせる。

 フォビオとしては、ミリムの強さを身をもって知ったばかりだ。

 無論、だからといって、自分の大将の前で、そんな事は言えない。

 アルビスとスフィアがフォビオを見る中、フォビオは一息入れて、言う。

 

フォビオ「…………………一言だけ申し上げるならば……………魔王ミリムは破壊の暴君(デストロイ)。”破壊の暴君”の名に恥じぬ…………とだけ。」

カリオン「フッ。そうか。俺様より強いってか。」

フォビオ「あっ!いっ、いえ!そうは…………!」

 

 フォビオの言葉に、カリオンは鼻で笑いながらそう言う。

 フォビオは、カリオンの機嫌を損ねたかと思ったが、カリオンは機嫌を損ねていなかった。

 

カリオン「敵が強いからといって逃げたんじゃあ、魔王はやってられんだろう?それに、伝説の魔王と戦えるなんて、こんな面白そうな話を逃す手はねえぜ。」

 

 カリオンはむしろ、伝説と言われる魔王ミリムと戦える事に喜んでいた。

 カリオンは移動しながら、三獣士に命じた。

 

カリオン「あのスライムとキメラを頼って、民をジュラの大森林へと避難させろ。俺とミリムの戦いに巻き込まれたら、無事では済まんからな。それから、ミリムは俺様だけが相手をする。」

アルビス「え?しかし……………!」

スフィア「俺も一緒に!」

フォビオ「カリオン様、我らは…………!」

 

 カリオンは、俺たちを頼って、民をジュラの大森林に避難させるように命じて、そう言う。

 それを聞いた三獣士は、自分たちも加勢すると言おうとするが、カリオンはオーラを出して、三人を止める。

 

カリオン「黙れ!魔王ミリム・ナーヴァを相手にできるのは、この俺様だけよ!………………貴様達は、民を守る事を優先するのだ。我らの戦いに参入する事は許さん!」

三獣士「はっ!」

カリオン「信じろ。俺様が勝つ!(嫌いじゃなかったぜ、ミリム……………。良いダチになれたかもしれねえのに、残念だぜ。)」

 

 カリオンは、三獣士にそう命じる中、心の中でそう思う。

 これが、戦闘が始まる1週間前の出来事だそうだ。

 

レイト「なるほどな。」

フォビオ「……………1週間後、魔王ミリムは予告通りにやって来ました。」

 

 そうして、フォビオは戦いが始まった時の事を語った。

 どうやら、フォビオは、残っていたようだ。

 

カリオン「ようミリム。まさか、魔王達の宴(ワルプルギス)にも諮らずに協定を破棄しちまうとはな。」

 

 カリオンはそう言って、空中に浮いているミリムに向かっていく。

 

カリオン「お前さんは、見た目よりずっと思慮深いと思っていたんだが………………な!」

 

 カリオンはそう言って、手に持っている槍で、ミリムに攻撃する。

 

カリオン「ふんっ!」

 

 カリオンは攻撃するが、ミリムには命中しなかった。

 というよりは、攻撃が逸れたと言えるだろう。

 

カリオン「うおおおおおおお!!」

 

 カリオンは叫んで、攻撃を激化させる。

 だが、一回も命中しない。

 

カリオン(ちぃっ!多重結界のせいで、斬撃が滑る……………。ならば!)

 

 カリオンはそう思うと、左腕に巻き付いている物を解き、ミリムの左腕に巻き付ける。

 ミリムの動きが一瞬止まり、カリオンは槍で攻撃を叩き込む。

 だが…………………。

 

カリオン「っ!?」

 

 カリオンの攻撃は、ミリムには届いていなかった。

 何故なら、ミリムは剣を取り出して、槍を受け止めていたからだ。

 それを見たカリオンは、ミリムから少し離れて、つぶやく。

 

カリオン「……………光栄だな。その剣をこの目で見られるとは。」

 

 ミリムが持つ剣は、天魔という魔剣だった。

 数多の魔人や魔王を屠った、ミリムの愛剣だ。

 カリオンは子供の頃、魔剣を操る竜の姫君の暴虐の御伽噺を、親から聞かされていた。

 そんな中、カリオンはミリムに聞く。

 

カリオン「ようミリム。なんでこんな真似をするんだ?」

ミリム「……………………。」

 

 カリオンはそう聞くが、ミリムは無言を貫いていた。

 それを見て、カリオンは訝しむが、ある事に気付き、頭を掻く。

 

カリオン「へっ。もしかして、操られてでもいるのかい?だとしたら少し残念だな!本気のお前を倒して、この俺様が最強であると、証明したかったんだがな!」

フォビオ「あれは……………!」

 

 カリオンはそう言うと、光に包まれる。

 すると、姿が変わった。

 髪は逆立ち、羽も背中から生えた。

 

カリオン「見ろ!これが俺様のユニークスキル、”百獣化”だ!俺様は獣魔の王、獅子王(ビーストマスター)カリオン!」

 

 カリオンは、そう叫ぶ。

 これこそが、カリオンの本気だ。

 それを見ていたミリムは、笑みを浮かべたままだった。

 

カリオン「ミリムよ。残念だが、この姿を見せた以上、お前には退場してもらうぜ。手加減はしない。これで終わりだ!」

 

 カリオンがそう言うと、槍にオーラが集まって、咆哮が出る。

 それを見て、ミリムはさらに笑みを浮かべる。

 

カリオン「この世から消えるが良い!獣魔粒子砲(ビースト・ロア)!!」

 

 カリオンは、獣魔粒子砲をミリムに向かって放つ。

 ミリムはそれに飲まれ、爆発する。

 獣魔粒子砲を放ったカリオンの槍は、先端が無くなり、焦げていた。

 それを見ていたフォビオは。

 

フォビオ(直撃だ。あれを受けて、生き残れる者など、存在しない。カリオン様の勝利だ!)

 

 そう思っていた。

 一方のカリオンも、呟いていた。

 

カリオン「嫌いじゃなかったぜ、ミリム。良いダチになれたかもしれねえのに、残念だぜ。………………っと。」

 

 カリオンがそう呟く中、少し態勢を崩す。

 

カリオン(流石にキツイな……………。飛行すら覚束ねぇ………………っ!?)

 

 カリオンは、獣魔粒子砲を撃って疲労していた。

 すると、カリオンは何かに気づき、すぐに躱す。

 斬撃波が飛んできて、カリオンはそれを少し受けて、出血する。

 その斬撃波が飛んできた先を見ると。

 

カリオン「……………冗談じゃねぇ。まさか、無傷とはな。」

 

 カリオンはそう呟いた。

 視線の先には、服装が変わり、額の所から、角を生やしたミリムの姿があった。

 これこそが、ミリムの戦闘形態だった。

 

カリオン「破壊の暴君(デストロイ)、ミリム・ナーヴァ。それが本来のお前の、戦闘形態ってわけかい。」

ミリム「アハハハハハハハ!」

 

 カリオンがそう言う中、ミリムは高笑いをする。

 カリオンが訝しげな表情を浮かべる中、ミリムは言う。

 

ミリム「左手が痺れたのは、久しぶりなのだ。お礼に、とっておきを見せてやる。」

 

 ミリムがそう言うと、エネルギーを集める。

 そのエネルギーは、獣魔粒子砲の比では無かった。

 カリオンが身構える中、ミリムは叫ぶ。

 

ミリム「竜星爆炎覇(ドラゴ・ノヴァ)!!」

 

 エネルギーが溜まったと同時に、ミリムはそう叫んで、発射する。

 カリオンは躱す事に成功したが、地上のユーラザニアの都市が消滅していく。

 それを見ていたカリオンは、唖然となる。

 

カリオン「ありえねーだろうが……………!都市が跡形もねぇ………………!」

 

 カリオンはそう呟いた。

 つい先程まで、たくさんの建物があったユーラザニアの都市部は、更地と化していた。

 カリオンの居城も消え、居城があった場所は、大きく抉れていた。

 

カリオン(破壊の暴君、ミリム・ナーヴァ……………!なるほど。御伽噺にしてでも、語り継ぐべき脅威だな……………!)

 

 カリオンは、ミリムの凄まじさには、驚愕していた。

 だが、カリオンはすぐにミリムに聞く。

 

カリオン「よう、理由を聞かせちゃくれねぇか?なぜ、獣王国(ユーラザニア)を滅ぼそうと思った?」

 

 カリオンは、ミリムにそう聞く。

 だが、ミリムはその質問には答えなかった。

 

カリオン「(……………なんだ?さっきからどうにも様子がおかしい。)おい、なんとか言えよ。人様の国を消滅させておいて、だんまりか?」

 

 カリオンは訝しみながらも、再びそう聞くが、ミリムは答えない。

 それを見て、カリオンはある可能性に思い至った。

 

カリオン「あいつ……………ひょっとして。」

 

 カリオンがそう言うと、背後から誰かが近づき、喉元にナイフを突きつける。

 

???「ひょっとして?私にも教えて欲しいわね。」

 

 ナイフを突きつけた人物は女性で、背中から羽を生やしていた。

 それに気づいたカリオンは、その女性に言う。

 

カリオン「天空女王(スカイクイーン)フレイ………………!」

フレイ「御名答。」

 

 そう。

 その女性は、魔王の1人で、天空女王(スカイクイーン)の異名を持つ、有翼族(ハーピィ)のフレイだ。

 カリオンは、舌打ちをする。

 

カリオン「チッ!お前もかよ。」

フレイ「あら?私も何なのかしら?ゆっくりと聞かせて欲しいわね……………!」

 

 フレイはそう言うと、カリオンの喉元にナイフを当てる。

 一方、フォビオは、瓦礫の中から出てこれた。

 だが、フォビオの目に入ったのは、フレイによって、喉元を斬られたカリオンだった。

 

フォビオ「カリオン様……………!」

 

 それが、カリオンとミリムの戦いの顛末だった。

 フォビオは、目を閉じながら言う。

 

フォビオ「……………そして、魔王フレイは、カリオン様を抱えて、飛び去っていきました。」

リムル「……………なるほど、事の顛末は分かった。」

レイト「にしても、ミリムの攻撃に巻き込まれたのに、よく無事だったな。」

フォビオ「死にかけましたが、拠点移動(ワープポータル)で、どうにかここまで来れました。回復薬をいただき、感謝しています。」

 

 まあ、ユーラザニアの都市部を消滅させる一撃だったのだ。

 死にかけるのも無理はない。

 だが、それを聞いて、引っかかった所がある。

 そう思う中、リムルが口を開く。

 

リムル「連れ去られたのなら、カリオンさんは生きてるはずだ。救出に力を貸そう。」

フォビオ「ありがとうございます。」

 

 リムルがそう言うと、フォビオは頭を下げる。

 そんな中、俺は疑問を口にする。

 

レイト「それにしても………………ミリムの奴、なんでユーラザニアを滅ぼす事にしたんだ?それに、ミリムの性格上、横槍が入るのは嫌がりそうだが…………………。らしくないな。」

スフィア「らしくねぇと言やあ、俺はフレイがフォビオを見逃したのも腑に落ちない。」

リムル「というと?」

シズ「有翼族(ハーピィ)は、高度から獲物を狙撃出来るほどの視力を持ってるの。」

スフィア「井沢静江(シズエ・イザワ)の言う通りだ。天空女王(スカイクイーン)と呼ばれる有翼族(ハーピィ)の女王が、フォビオに気づかなかったとは、思えねぇんだよな。」

 

 なるほどな。

 気になるのは、その3点だな。

 それに、魔王フレイという名には、聞き覚えがある。

 以前、ミリムから話を聞いた、傀儡の魔王を誕生させる計画に加担していた魔王の1人だ。

 確か、ミリム、カリオン、フレイ、そして……………クレイマン。

 ある可能性に思い至った俺とリムルは、アイコンタクトをして、リムルは紫苑に話しかける。

 

リムル「紫苑!ミュウランを連れて来てくれ!あと、地図も頼む。」

紫苑「はい!」

 

 リムルはそう言って、紫苑は移動する。

 そんな中、スフィアが話しかける。

 

スフィア「ところでそのお茶、すげぇ色だけど、飲めるのか?」

レイト「味は問題ないんだ。味は。」

リムル「あ、客人用は、朱菜が淹れた物だから、大丈夫。」

 

 そう。

 俺たちが飲んでいるのは、紫苑が淹れたものなのだ。

 その為、ディアブロやらシズさんは、顔を顰めたり苦笑したりで飲んでいる。

 しばらくして、ミュウランがやって来て、話を聞く事に。

 

ミュウラン「………………ええ。それは確かです。クレイマンは、魔王ミリムに接触を図っていました。私の予想になりますが……………ミリム様の宣戦布告は想定外で、苛立っていたように思えました。」

 

 なるほどな。

 度々接触していたのか。

 とはいえ、ミリムの宣戦布告は想定外で、苛立っていたと。

 という事は、クレイマンの目的が、朧げにだが、掴めた気がするな。

 そんな中、アルビスが話しかける。

 

アルビス「お、お待ち下さい!魔王クレイマンの事ですか?あの魔王が、獣王国(ユーラザニア)滅亡の裏で、糸を引いていたと?」

 

 アルビスは、驚いた表情でそう聞く。

 まあ無理もない。

 すると。

 

スフィア「俺……………出かけてくる!」

アルビス「待ちなさい、スフィア!行くのなら、全員で攻め込みますよ。」

 

 スフィアがクレイマンの領地に向かおうとすると、アルビスがそう言う。

 まあ、自分たちの大将が居るかもしれないし、故郷を滅ぼした元凶だからな。

 無理もないが。

 

リムル「まあ待て。もう少し、判断材料が欲しい。」

レイト「フォビオ。魔王フレイは、どっちの方角に飛び去ったんだ?」

フォビオ「獣王国(ユーラザニア)の北東……………恐らくは、ミリム様の支配領域、忘れられた竜の都へ向かったのかと。」

リムル「なるほどな。ミリムとフレイが手を組んでいるのなら、それもあり得る。」

 

 確かに。

 忘れられた竜の都で合流する可能性もあるよな。

 獣王国(ユーラザニア)の北東に飛び去ったって事は……………もし、フレイの目的地がそこだとしたら、その先にあるのは……………。

 俺とリムルが指を動かして、ある場所に止まる。

 それを見ていたミュウランは。

 

ミュウラン「……………傀儡国ジスターヴ。魔王クレイマンの支配領域です。」

 

 やはりか。

 という事は、フレイとクレイマンはグルの可能性が高い訳だ。

 その後、俺たちが池を眺めていると、ディアブロが話しかけてくる。

 

ディアブロ「リムル様、レイト様。」

リムル「ディアブロか。」

レイト「三獣士の面々の様子はどうだ?」

ディアブロ「今は落ち着いたようです。今にもクレイマンの領地に攻め込まんばかりの剣幕でしたが、紅丸殿が上手く宥めておいでました。」

レイト「そうか。まあ、気持ちは分かるが、先走られちゃ困るしな。」

 

 まあ、無理もない。

 クレイマンが、獣王国(ユーラザニア)を滅ぼした元凶だからな。

 それに、カリオンがジスターヴという場所に居る可能性もある訳だし。

 そんな中、ディアブロが俺たちに話しかける。

 

ディアブロ「……………何か思い悩んでおいでなら、是非とも、私に相談を。」

リムル「ん?ん〜……………。」

 

 ディアブロがそう言う中、俺とリムルはアイコンタクトをして、話す事にした。

 

リムル「問題が重なりすぎてる。まずはカリオンの件だ。ミリムの考えも分からないし、一番心配だしな。」

レイト「次に、ファルムス王国の後始末。そして、西方聖教会への牽制。どれも、無視できないけど、作戦を行うにしては、許容範囲を超えてるんだよな。」

 

 そう。

 クレイマンの陰謀に関しても、どうにかしたいが、ファルムス王国は、俺たちが殺戮をした事で、居なくなっている。

 もし、今、西方聖教会が動き出したら、対応しきれないかもしれない。

 まあ、それはそれとして、坂口日向(ヒナタ・サカグチ)には、借りがある。

 その借りは、返さないと気が済まない。

 すると、ディアブロが言う。

 

ディアブロ「なるほど。では、私が一方面を受け持ちましょう。是非、ご命令を。」

 

 なるほどな。

 原初の黒(ノワール)だから、大丈夫な気がするしな。

 というか、笑顔が不敬すぎないか?

 

リムル「分かった。明日の会議で、方針を決めるから、お前も参加すると良い。」

ディアブロ「はっ。」

 

 まあ、ディアブロが居れば、大丈夫かな。

 とはいえ、ディアブロがどこを担当するのかは知らないが、後の二つはどうするか。

 すると、リムルが思念伝達を使って、話しかける。

 

リムル『おい、レイト!西方聖教会に関しては、どうにかなるかもしれないぞ!』

レイト『どういう事だよ?』

リムル『智慧之王(ラファエル)さんが、無限牢獄の解析に完了するみたいだぞ!』

レイト『えっ!?じゃあ……………!』

リムル『ああ!』

 

 そうか。

 気づけば、2年以上も経過していたのか。

 長いようで、短かったな。

 なあ、ヴェルドラ。

 俺は、リムルの中のヴェルドラに対して、そう思う。

 暴風竜の解放は、もうまもなくだ。




今回はここまでです。
ミリムとカリオンの戦いの顛末が判明しました。
そして、その裏で暗躍するクレイマンの存在が明らかになる。
そんな中、いよいよ、ヴェルドラの復活が近づいて来ました。
次回は、ヴェルドラが人間態を獲得するまでやる予定です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
ヴェルドラがオーラを抑える特訓をする中、少しオリジナルの展開を入れる予定ですので、楽しみにしてて下さい。
ジュウガVSオルテカの配信も近づいて来ましたね。
楽しみです。
仮面ライダーオルテカに変身するのは、オリキャラにする予定ですが、誰に変身させましょうか?
もし、リクエストがあれば、受け付けます。
クレイマン戦は、ミリムの相手はレイトのジュウガにさせる予定です。
戦闘の感じとしては、エビリティライブとインビンシブルジャンヌとの戦闘をモチーフにする予定です。
流石に、圧倒するというのはないと思いますが、互角なら大丈夫かなと思います。
ジュウガのオリジナルフォームに関するアンケートをやります。
もし、リクエストがあれば、お願いします。


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第34話 解き放たれし者

 翌日、俺たちは庵に皆を集めて、プレ会議を行う事にした。

 

リムル「さて、諸君。今後の事を語る前に、言っておきたい事がある。」

レイト「………………俺たちは、名実共に魔王になる事にした。」

 

 俺たちがそう言うと、紫苑と朱菜と火煉は顔を見合わせて、聞いてくる。

 

紫苑「もうなってますよね?」

リムル「いや、”真なる魔王”とやらにはなったんだけどさ、外に向けて宣言してないだろ?」

白老「外に宣言……………つまり、十大魔王に名乗りを上げるという事ですかな?」

レイト「その通りだ。」

火煉「なるほど………………。」

 

 紫苑がそう聞く中、白老がそう聞いたので、俺はそう答える。

 それを聞いて、火煉が納得する中、紅丸が質問をする。

 

紅丸「理由を伺っても?」

リムル「ちょっと、喧嘩を売りたい魔王がいてな。」

シズ「喧嘩を売りたい魔王……………?」

レイト「魔王クレイマン。奴はファルムスと西方聖教会の連合軍の襲撃の際、ミュウランを操って、被害の拡大を目論んだ。それに、ミリムを利用して、友好国ユーラザニアを滅亡させている。」

リムル「何が目的で暗躍しているのか知らないが、こいつを許す事は出来ない。ここから先、翻弄されてやるつもりもない。」

レイト「俺たちは、魔王クレイマンを叩く。異論がある奴は居るか?」

 

 紅丸とシズさんがそう聞く中、俺たちはそう答える。

 クレイマンは、やりすぎた。

 俺たちは人間態になりながら、そう聞く。

 それを聞いていた皆は。

 

紅丸「……………ありません。」

リグルド「ございませんとも。」

朱菜「御心のままに。」

火煉「はい。」

ゴブタ「やるっすよ!」

リリナ「リムル様とレイト様に従います。」

カイジン「武器や防具の用意は任せてくれ。」

黒兵衛「んだ。」

シズ「私も、力を貸すよ。」

 

 皆がそう答えてくれる。

 ありがたいな。

 リムルは、蒼影に話しかける。

 

リムル「蒼影。」

蒼影「はっ。速やかにクレイマンの情報を集めてまいります。」

リムル「お、おう…………何も言う前に…………。」

 

 蒼影は、本当に優秀だな。

 俺は、蒼影に言う。

 

レイト「頼んだ。本格的な会議は、諜報部の調査を待ってからだ。」

蒼影「御意。」

 

 俺がそう言うと、蒼影、蒼華、蒼月を始めとする諜報部隊は、情報収集に動く。

 そんな中、リムルは三獣士に話しかける。

 

リムル「三獣士の諸君、あなた方にも協力をお願いしたい。」

アルビス「願ってもない事ですわ。ジュラの森の盟主様方。」

スフィア「避難民を受け入れてくれた恩は忘れねぇ。俺たちはアンタ達を信頼している。」

フォビオ「獣人は信頼には信頼で、恩には命を以って報いる。獣人全体としても、俺個人としても、リムル様とレイト様には、返しきれぬ恩を得た。好きなように使ってください。俺たちはこの命を以って、貴方様方に報いましょう。」

 

 リムルがそう聞くと、三獣士達はそう答えて、跪く。

 俺は頷いて、答える。

 

レイト「ああ。お前達の命、カリオンに返すその時まで、預からせてもらう。」

リムル「今は休んで、来るべき決戦に向けて、英気を養ってくれ。」

三獣士「ははっ!」

 

 俺とリムルがそう言うと、三獣士は頷く。

 プレ会議を終了した後、紫苑はディアブロと話していた。

 

紫苑「良いですか?秘書とは、いついかなる時も、主人の為にあるべきです。」

ディアブロ「なるほど。タメになります。」

紫苑「たとえ命じられていなくても、そのお心を察し、常に先へ先へと………………。」

 

 何を説いてるんだ。

 言っちゃあ何だが、紫苑に秘書らしさを感じた事がない。

 むしろ、秘書として、火煉の方が優秀じゃないか?

 すると、呆れた表情で朱菜が言う。

 

朱菜「紫苑。リムル様とレイト様から命を受けていたのではないのですか?」

紫苑「はっ!」

火煉「ほら、行きますよ。」

紫苑「で、では、私たちはもう行きます!しっかりお仕えするのですよ、ディアブロ!」

 

 そう言って、火煉と共に、紫苑は移動する。

 火煉の方が秘書っぽく感じるよな。

 火煉にデストリームドライバーを渡すのは、少し先で良いかな。

 そう思う中、俺とリムルはアイコンタクトをして、移動しようとする。

 すると、朱菜が話しかけてくる。

 

朱菜「リムル様、レイト様。どちらへ?」

レイト「ちょっと、野暮用があってな。付き添いは大丈夫だ。」

リムル「朱菜。シズさんと一緒に、ディアブロに街を案内してやってくれ。」

朱菜「承知しました。」

ディアブロ「心遣い感謝致します。」

シズ「気をつけてね。」

 

 俺とリムルはそう言って、拠点移動(ワープポータル)で、封印の洞窟へと向かう。

 すると、ガビルが話しかけてくる。

 

ガビル「リムル様!レイト様!」

リムル「おう、ガビル。」

レイト「さっきのプレ会議は聞いてたか?」

ガビル「は。思念伝達にて受け取りました。」

リムル「そうか。なら、お前に開発部門を任せる事にしたから。」

レイト「これからは、お前も幹部の1人だ。この先の重要事項を決める会議の時には、出席してくれ。よろしく頼むぜ。」

 

 俺とリムルは、ガビルにそう言った。

 ガビルの仕事の成果を評価して、幹部の昇進を認めた。

 それを聞いたガビルの心の中は、喜びで溢れていた。

 

ガビル「やっ………………!」

ヤシチ「やった〜!ガビル様、昇進だーーーーーっ!!」

 

 ガビルが何かを言おうとすると、ヤシチ達が現れて、そう叫ぶ。

 すると、ガビルはヤシチ達を宥める。

 

ガビル「こ、こらこら!はしゃぐなお前達!こういうのは、粛々と厳かに受け取る物であるぞ!」

ヤシチ「え〜でも、ガビル様さっき、『やったーー』って言いそうになってたよね?」

ガビル「んなっ……………!?聞かれてた!?」

 

 言いかけてたな。

 まあでも、ヤシチ達が、心の底からガビルを慕っているのが分かるよな。

 そんな中、俺とリムルは声をかける。

 

リムル「俺たちちょっと、洞窟の最奥に用があるから。」

レイト「誰も近づけないでくれ。」

ガビル「しょ、承知ですぞ!」

 

 俺とリムルは、ガビルにそう命じて、最奥部へと向かう。

 後ろから、ヤシチ達のガビルコールが聞こえてきた。

 俺とリムルは、話し合う。

 

リムル「あいつ、大丈夫か?」

レイト「大丈夫だろ。浮かれる時もあるけど、やる時はやる奴だし。」

リムル「だな。」

 

 まあ、これからやる事は、街の人々に混乱を与えかねないからな。

 何せ、アイツ(ヴェルドラ)は、ああ見えて、ジュラの大森林の守り神みたいな存在だからな。

 俺とリムルは頷き合い、俺は少し離れる。

 すると、リムルから凄まじい存在が解き放たれる感覚がして、周囲にヒビが入る。

 しばらくして、強風が止まると、笑い声が聞こえてくる。

 

???「ククク………………!クハハハ…………!クァーハハハハハ!!」

 

 そんな笑い声がしてきて、前を向くと、一体のドラゴンが居た。

 無論、ヴェルドラだ。

 

ヴェルドラ「俺様、復活!」

 

 懐かしいな、この迫力。

 つうか、何だよ、そのセリフ。

 俺たちは、呆れ笑いを浮かべつつ、ヴェルドラに話しかける。

 

リムル「いよぅ、久しぶり。」

レイト「元気だったか?」

ヴェルドラ「…………………せっかく復活したのに、我の扱い軽くないか?」

 

 俺とリムルがそう話しかけると、ヴェルドラはそう言う。

 相変わらずのヴェルドラクオリティだな。

 そんな中、ヴェルドラは少し感心と呆れを感じさせる口調で言う。

 

ヴェルドラ「しかし、思ったよりも早かったな。まだまだ当分先だと思っておったぞ。」

レイト「まあ、色々あってな。俺たち、魔王になったんだよ。」

リムル「ユニークスキルが究極能力(アルティメットスキル)に進化してさ。解析能力が上がった訳よ。」

ヴェルドラ「ほうほう。そんな事が。」

 

 なんか、大して驚いていないな。

 まさかとは思うが。

 俺は、ヴェルドラに聞く。

 

レイト「……………あんまり驚かないんだな。」

リムル「確かに。」

ヴェルドラ「いやいやいや!驚いておるよ!?我、覗き見なんてしとらんし!!」

レイト「覗き見?」

ヴェルドラ「ううん!……………しかし、2年やそこらで覚醒魔王か。お前達の成長ぶりは、一体どうなっておるのやら。」

 

 ヴェルドラの言った事に俺がそう呟くと、ヴェルドラは咳払いをして、そう言う。

 なんか誤魔化されたな。

 ていうか、覚醒魔王って何なんだ?

 すると、奇才之王が答えてくれた。

 

奇才之王『解。真なる魔王と同義です。魔王種が収穫祭(ハーベストフェスティバル)を経て、覚醒する事から、そう呼ばれます。』

 

 なるほどね。

 それなら、覚醒魔王というのも、納得がいくな。

 そんな中、リムルが言う。

 

リムル「ま、何て言うの?ほら、俺たちって、天才っぽかったじゃん?仲間にも名前をつけると、一気に進化してたしね。」

ヴェルドラ「この阿呆どもめ。お前達がホイホイ名付けても無事だったのは、足りない分の魔素を我から奪っておったからなのだぞ。」

レイト「そうなのか?」

ヴェルドラ「そうだぞ。それで効率が落ちるから、解放はまだ先だと思っておったわ。あれ、結構しんどいのだぞ。」

 

 リムルがそう言うと、青筋を浮かべたヴェルドラが、俺とリムルをデコピンしながらそう言う。

 なるほどな。

 だから、俺たちは魔物の中では危険とされる名付けをできたのか。

 ヴェルドラには悪い事をしたな。

 俺たちは、拗ねるヴェルドラに話しかける。

 

リムル「まあ、今更だ。こうして、”無限牢獄”も破れた訳だし、許してくれよ。」

レイト「悪かったよ。」

ヴェルドラ「………………何かプレゼントしてくれるのなら、許してやろう。」

レイト「プレゼント?」

ヴェルドラ「そう……………例えば、シュークリムル……………。」

リムル「あ。」

 

 俺たちがそう言う中、ヴェルドラはそう呟く。

 しれっとシュークリームを要求しようとしてるぞ。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「そうだ、忘れてた。お前には祝福(ギフト)って届かなかったのか?」

ヴェルドラ「む?」

 

 そういえば、そうだな。

 俺たちが魔王化した際、系譜の存在に祝福(ギフト)が配られる話だったな。

 シズさんやヨウムにも配られたから、ヴェルドラにも来てるはずだが。

 ちなみに、シズさんは、種族がリントに進化したそうだ。

 リントとは、クウガの敵であるグロンギが、人間の事を指し示す言葉だ。

 ヴェルドラは、自分のスキルを確認していると、いきなり叫ぶ。

 

ヴェルドラ「お、おおお!我のユニークスキル、究明者(シリタガリ)が、究極能力(アルティメットスキル)究明之王(ファウスト)”になったぞ!我の飽くなき探究心が願う、究極の真理へ至る力だな!」

 

 そっか。

 まあ、配られてて当然だよな。

 ヴェルドラって、象並みに物事に気づくのが遅いのか?

 そんな中、ヴェルドラは俺たちに聞いてくる。

 

ヴェルドラ「何だ?もっと褒め称えてくれても良いのだぞ?」

「「はいはい。凄い、凄い。」」

 

 ヴェルドラは、褒めて欲しかったのだろう。

 俺たちにそう聞くが、俺たちは適当にあしらう。

 そんな中、俺たちは人間態になって、ヴェルドラに聞く。

 

レイト「さてと。ここで話しているのも良いんだけどさ。」

リムル「せっかく復活したんだし、そろそろ外に出るか?」

ヴェルドラ「……………そうだな。では、我の肉体をどうするかだが……………。」

リムル「ああ、それは何とかなると思う。」

 

 ヴェルドラが俺たちの質問にそう答えて、質問してくる。

 それについては、どうにかなると思う。

 今のヴェルドラは思念体……………簡単に言えば、魂だけの存在だ。

 本来、精神世界に存在する精霊、悪魔、竜種などの精神生命体は、肉体を持っておらず、物質界に顕現するには、依代に受肉させる必要がある。

 例えば、イフリートはシズさんを、暴風大妖渦(カリュブディス)はフォビオを、現在のベレッタとフランは魔人形(ゴーレム)を、ディアブロはファルムスの兵士達の亡骸を依代にして、この世界に現れている。

 ちなみに、エミルスやバイスなどといったリバイス系列の悪魔に関しては、バイスタンプを押印する事で、依代を獲得するらしい。

 そこら辺は、ベイルと似ている。

 その為、精神生命体が物質体(マテリアル・ボディー)を得ずに物質界に留まってしまうと、やがて霧散してしまう。

 どこかで復活したとしても、記憶がそのままとは限らない。

 これが、奇才之王(シェムハザ)先生の説明だ。

 リムルは、ヴェルドラに聞く。

 

リムル「ところでお前、俺が捕食する前は、物質体(マテリアル・ボディー)を持ってたよな?」

ヴェルドラ「うむ。あれは魔素で作り出した体だが、胃袋の中では不要故、魔素に還元されておる。」

レイト「なるほどな。」

 

 まあ確かに。

 胃袋の中では、物質体(マテリアル・ボディー)は必要ないよな。

 俺とリムルは頷き合い、ヴェルドラに話しかける。

 

リムル「一つ約束してくれないか?」

ヴェルドラ「ほう。何だ?」

レイト「お前のそのデカすぎる妖気(オーラ)を抑えてほしい。街には人間も居るし、弱い魔物もやってくるからさ。」

ヴェルドラ「……………なるほど。分かったぞ。約束しよう。」

リムル「よし、ありがとな。」

 

 俺たちの約束を守ってくれる事になった。

 ありがたいな。

 準備を始める中、ヴェルドラは感慨深そうに言う。

 

ヴェルドラ「………………リムル、レイトよ。」

レイト「ん?」

ヴェルドラ「お前達は本当に、王になったんだな。」

リムル「まぁね。待ってろ。今、用意してやる。」

 

 ヴェルドラの言葉に、俺たちは笑みを返して、リムルは強化分身を生み出す。

 

ヴェルドラ「おお……………!リムルがもう1人出てきたぞ!」

リムル「俺の分身体だ。」

ヴェルドラ「ふむ。進化して、強化分身になっておるな。」

レイト「これを、お前の依代にしてくれ。」

ヴェルドラ「ほほう。」

 

 俺たちがそう話す中、ヴェルドラはリムルの分身体の匂いを嗅ぐ。

 すると、ヴェルドラは笑いだす。

 

ヴェルドラ「クアハハハハ!良い依代だ。ありがたく頂戴するとしよう。」

 

 ヴェルドラはそう言って、リムルの分身体の中へと入っていく。

 すると、奇才之王が報告する。

 

奇才之王『告。重要な報告が発生しました。』

レイト『どうした?』

奇才之王『主様(マスター)と個体名リムルと個体名ヴェルドラの”魂の回廊”の確立を確認しました。また、封印の洞窟に溢れるヴェルドラの残滓を解析鑑定した結果、究極能力(アルティメットスキル)暴風之王(ヴェルドラ)”を獲得しました。』

 

 え!?

 究極能力(アルティメットスキル)をまた獲得したのか!?

 すると、分身体のリムルがいる方向から、ヴェルドラの声がする。

 

ヴェルドラ「フハハハハハハ!我、暴風竜ヴェルドラ=テンペスト!完・全・復・活!究極の力を手に入れたぞ!逆らう者は、皆殺しだぁぁぁぁ!」

 

 ヴェルドラはそう言う。

 どうやら、姿としては、俺よりも男性型に特化した感じだな。

 俺の場合は中性的だからな。

 すると、ヴェルドラは俺とリムルの方に来て、片腕ずつで俺たちを抱える。

 

ヴェルドラ「礼を言うぞ、リムル、レイトよ!こうして、再びお前達と相まみえる日が、こうも早く訪れるとはな!さすがは、我のズッ友達!」

リムル「何がズッ友だ!」

レイト「ネタが古いんだよ!」

 

 俺たちはそう言って、ヴェルドラとグータッチをする。

 懐かしいな、このやり取り。

 すると、リムルが気になる事があるのか、聞いてくる。

 

リムル「なあ、ヴェルドラ。何でそのセリフを知っているんだ?」

ヴェルドラ「うむ。実はな、退屈だったんで、お前の記憶を解析して、漫画とやらを読み込んでおったのだ!」

レイト「何やってんの。」

ヴェルドラ「更に!将棋の腕は、もはや名人級………………いや、暴風竜だけに、竜王級である!」

 

 2年越しの友との再会は、初めて会った時と何ら変わらないノリだった。

 ていうか、ヴェルドラはヴェルドラで、胃袋生活を満喫していたのかよ。

 だからか、俺たちは知る由も無かった。

 強すぎるヴェルドラの気配に、街が大混乱になっていて、クローンライダーの製造装置が動き出していた事を。




今回はここまでです。
少し、短めです。
遂に、ヴェルドラが解放されました。
2年越しで再会した親友達は、相変わらずのノリで話していました。
そんな中、なぜか動きだす、クローンライダー製造装置。
果たして、何が生まれるのか。
それは、次回のお楽しみです。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
今回も、アニメ版と漫画版のリミックスで行きました。
レイトもまた、ヴェルドラの究極能力を得ました。
レイトにも、獲得させるのもありかなと思いましたので。
アンケートは、ジュウガのオリジナルフォームを出すが多いですね。
どんな感じにするのかは、考え中です。
もし、リクエストがある場合は、活動報告にて受け付けます。


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第35話 EとSとの邂逅/渦巻く陰謀

 ヴェルドラが復活して、妖気(オーラ)を抑える特訓をする中、俺は新たに獲得した究極能力を確認していた。

 

奇才之王『解。究極能力(アルティメットスキル)暴風之王(ヴェルドラ)”の権能は、『暴風竜召喚』、『暴風竜復元』、『暴風系魔法』となっています。』

レイト『暴風竜召喚と暴風系魔法は分かるけど、暴風竜復元って、何なんだ?』

奇才之王『解。魂の回廊の確立により、主様(マスター)と個体名リムルに、個体名ヴェルドラの記憶が複製されます。よって、何らかの要因でヴェルドラが死亡したとしても、主様(マスター)と個体名リムルより復元可能となります。』

 

 なるほどな。

 つまり、ヴェルドラが俺とリムルをバックアップに利用するって事か。

 そんな中、奇才之王が報告する。

 

奇才之王『告。至急、報告すべき事案が発生しました。』

レイト『どうした?』

奇才之王『クローンライダー製造装置が動き始めています。』

レイト『えっ!?嘘っ!?すぐに向かう!』

 

 何でクローンライダー製造装置が動き出してるんだよ!?

 俺、指示してないぞ!?

 俺はリムルに向かって叫ぶ。

 

レイト「リムル!クローンライダー製造装置が勝手に動き出してるんだ!」

リムル「えっ!?分かった!俺も行く!ヴェルドラは大人しくオーラを抑える特訓をしてろよ!」

ヴェルドラ「お、おい!?」

 

 俺とリムルは、ヴェルドラにそう言って、クローンライダー製造装置がある場所へと向かう。

 念の為、プラナリアとカメレオンのバイスタンプも作っておいた。

 カメレオンはマッハで、プラナリアはチェイサーらしい。

 魔王に進化して、目覚める前に見たリバイスの記憶で、ジョージ・狩崎とオルテカが使っていたバイスタンプだ。

 俺とリムルが、クローンライダー製造装置の方に着くと、クローンライダー製造装置が動いていた。

 

リムル「おい、どうなってんだ!?お前が動かしてるのか!?」

レイト「さっきも言ったけど、勝手に動き出してるんだ!どうなってんだ……………!?」

 

 俺とリムルがそう話す中、クローンライダー製造装置が動きを止める。

 そこから出てきたのは、エターナルとスカル、サイクロン、ヒート、ルナ、メタル、トリガーのドーパントだった。

 どうなってんだよ……………!?

 すると、エターナルたちの変身が解ける。

 

???「ここは……………?」

???「あら!?私、あのイケメンに斬られた筈!?」

???「京水!お前マジで黙ってくれ!頼むから!!」

???「どうなっている……………?」

???「え………………?」

???「何がどうなって…………!?」

???「何……………?」

 

 そう。

 そこに居たのは、大道克己/仮面ライダーエターナルを始めとするNEVERの面々と、鳴海荘吉/仮面ライダースカルだった。

 まさかのご本人。

 それには、驚きを隠せずにいた。

 俺は、克己達に話しかける。

 

レイト「やあ。大道克己。NEVERの皆さんに、鳴海荘吉さん。」

荘吉「……………お前、何者だ?」

レイト「俺はレイト=テンペスト。この世界の魔王……………かもね。」

リムル「俺はリムル=テンペストだ。」

 

 俺とリムルは、説明した。

 ここは克己達の世界とは違う世界である事、今の克己達は、ある意味でクローンである事を。

 

克己「違う世界…………フッ。面白い。このクローン技術を利用して俺達の新たな目標を作ってやる。」


レイト「やはり話し合ってくれないよな。ならば。」

 

 

 俺はそう言って、ジュウガドライバーを取り出す。

 せっかくだ。

 ジュウガがどういう物か、確かめてみるか。

 



克己「俺とやるのか?…………面白い。」

 

 

克己もそれを見て、ロストドライバーを取り出す。


 そして互いに変身する。

 

ジュウガ!

エターナル!

 

 それぞれの変身アイテムを起動して、ドライバーに装填する。

 その際、俺の背後には、十体の生物が現れる。

 その生物は、リバイスが初期に集めていた十個のバイスタンプの最強生物だった。

 

レックス!メガロドン!イーグル!マンモス!プテラ!ライオン!ジャッカル!コング!カマキリ!ブラキオ!

 

 待機音が流れる中、俺と克己は叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

 そう言って、ドライバーを操作する。

 

エターナル!

スクランブル!

十種の遺伝子、強き志!

爆ぜろ、吼えろ、超越せよ!

 

 克己がエターナルに変身する中、俺の背後にいた十体の生物が光となり、黒いスーツを纏った俺に吸い込まれる。

 そして、黄金の波動を周囲に発する。

 

レイト「仮面ライダー…………ジュウガ!」

 

Go Over…!

 

 俺は、仮面ライダージュウガの部分を自分で言った。

 ジョージ・狩崎がしたみたいに。



 

克己「さぁ...死神のパーティータイムだ!」

レイト「行くぞ…………!」



 

 激しい戦闘を繰り広げる。

 その戦闘は、周囲に衝撃波を放つ。

 俺がジュウガバイスタンプを一回倒す中、克己はユニコーンメモリを取り出す。

 

ユニコーン!

 

 克己は、ユニコーンメモリを、マキシマムスロットに装填する。

 

ユニコーン!マキシマムドライブ!

インパルスゲノムエッジ!

 

レイト「ハァァァァァ!」

克己「ふっ!」

 

 お互いの必殺パンチがぶつかり合う。

 しばらくのぶつかり合いの末、お互いに吹っ飛ばされる。

 流石はエターナル。

 そう簡単にはいかないか。

 そんな中、克己はヒートメモリを取り出す。

 

ヒート!

 

 克己は、ヒートメモリを、マキシマムスロットに装填する。

 それを見て、俺はプラナリアバイスタンプを取り出す。

 

プラナリア!

 

 そして、プラナリアバイスタンプをジュウガドライバーのスキャン部分にスキャンする。

 

アブゾーブ!チェイサー!

 

 ジュウガドライバーからその音声が鳴り、俺はジュウガバイスタンプを一回倒す。

 

ヒート!マキシマムドライブ!

ヒッサツ!マッテローヨ!

 

 え、この音声が流れんの?

 そう思う中、克己はヒートメモリの力で、炎を纏ったエターナルエッジの斬撃を放とうとする。

 俺はそれを何とか抑える。

 すると。

 

イッテイーヨ!

 

 その音声が流れる。

 

克己「何?」

レイト「よし!」

 

 克己が反応する中、俺は攻撃する。

 

プラナリアイッテイーヨアタック!

フルスロットル!

 

 俺は、ブレイクガンナーとシンゴウアックスのエフェクトで銃撃とアクロスブレイカーを発動する。

 それを見ていたNEVERの面々は。

 

レイカ「あいつ……………強い!」

京水「何なのあのイケメン!克己ちゃんと互角にやり合うなんて!」

賢「ああ……………。」

剛三「マジかよ……………!?」

マリア「………………。」

 

 NEVERの面々はそう話していた。

 そんな中、リムルは荘吉に話しかけていた。

 

リムル「荘吉さん。」

荘吉「リムル=テンペスト…………だったな。」

リムル「ああ。」

 

 リムルと鳴海荘吉が話す中、俺と克己は、掴み合いとなる。

 



克己「やるじゃないか!」

レイト「あんたもだ。流石はエターナル!ミーナの信じた仮面ライダーだな。」


克己「ッ!?貴様、なぜその名を!」


レイト「…………彼女は生きていたんだよ。」


克己「なっ!?」


 

 それを聞いた克己は、動揺する。

 無理もない。

 ミーナは、克己達が去った後で、意識を取り戻したのだから。


 俺は克己に話す。



 

レイト「あんたは確かに、風都を地獄に変えた死神だが、同時に真の仮面ライダーでもあった。俺はそう認めているんだ!」

 

 そう。

 克己は、ビレッジに囚われていたクオークスの人たちを救おうとしたのだ。

 それを知った左翔太郎にフィリップも、英雄……………仮面ライダーである事を認めた。

 それを聞いた克己は、頭を抑える仕草をするが、すぐに叫ぶ。

 

克己「……………ふざけた事を言うなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 そう言って、攻撃が激化していく。

 激化する攻撃に、俺は押されていく。

 それを見ていた荘吉とリムルは。

 

荘吉「凄まじいな。」

リムル「ああ……………アンタは、何で仮面ライダーになったんだ?」

荘吉「……………それを知ってどうする?」

リムル「気になっただけだよ。」

荘吉「………………俺は、別になりたくてなった訳じゃない。」

 

 リムルに聞かれ、荘吉は語りだす。

 かつて、風都で、マツこと松井誠一郎という相棒と共に、探偵をしていた。

 メリッサという歌手に届いた、蜘蛛男からの脅迫状を調査をしていた際、シュラウドこと園崎文音によって、スカルに変身した。

 この時は、まだ迷いがあり、スカルクリスタルという不完全な状態だった。

 調査を進める中、蜘蛛男…………スパイダー・ドーパントの正体が、マツだと分かった。

 マツは、何事も強く決断できる荘吉を強く羨み、そして自分の愛するメリッサが荘吉に好意を持っていることを強く妬んでいた。

 そして、ある決断を下した。

 それは、ガイアメモリを使って、メリッサを守る事。

 それにより、スパイダーメモリを購入して、使用した。

 だが、ガイアメモリに心を喰われ、次第に暴走していく。

 その結果、風都に住む人々が爆殺されていく。

 それを見た荘吉は、決断をする。

 マツを止めると。

 だが、ガイアメモリの暴走によって、メモリを砕けば、マツは死んでしまう。

 それにより、荘吉は一度、決断が鈍ってしまう。

 それでも、歩みは止めなかった。

 例え、ガイアメモリの暴走により、マツが死ぬ事になろうとも、マツを止める。

 相棒として、友として。

 

荘吉『一つ。俺はいつも側にいる仲間の心の闇を知らなかった。二つ。闘う決断が一瞬鈍った。三つ。そのせいで街を泣かせた。』

マツ『何を言ってやがる…………。」

荘吉『俺は自分の罪を数えたぜ…………マツ。さあ、お前の罪を……………数えろ。』

 

 そう言って、マツを止める。

 だが、マツは命を落とし、メリッサからも糾弾され、荘吉の心は、深い傷を負った。

 

リムル「そんな事が……………。」

荘吉「………………ああ。」

リムル「……………俺たちも、似たようなもんかな。」

荘吉「……………何?」

リムル「俺たちが甘かったから、仲間達を悲しませてしまった。」

 

 リムルは、思い返していた。

 自分がレイトの言葉を聞いて、対策を立てるべきだったと。

 その甘えが、ファルムスの蹂躙に繋がり、仲間達を悲しませた。

 それを荘吉はただ黙って聞いていた。

 

荘吉「………………そうか。」

リムル「あいつは、相当気にしてたんだ。その事を。」

 

 そう言うリムルは、ある事を思い出していた。

 それは、ファルムスの反撃に転じる前のことだ。

 

リムル『……………本当に済まない。お前の言葉をちゃんと聞いとくべきだった。』

レイト『……………それは気にするな。俺だって、具体的な対策を取れなかったんだし。』

リムル『…………本当に、やるんだよな?』

レイト『……………ある探偵が、その弟子に言った言葉がある。『男の仕事の8割は決断だ。そこから先はおまけみたいなもんだ』ってな。』

リムル『え……………?』

レイト『俺たちは、その決断が鈍ったから、仲間達を悲しませてしまった。それは、俺たちの罪だ。だからこそ、その罪を背負う。ファルムスへの反撃で生じる罪を、俺は背負う。それが、それこそが、俺たちの償いだ。』

 

 リムルとレイトは、そんな風に話していた。

 それを聞いた鳴海荘吉は。

 

荘吉「その言葉は……………!?」

リムル「やっぱり、アンタの言葉だったんだな。」

荘吉「………………。」

リムル「あいつは、その罪を背負って生きていく事を決意したんだ。……………正直、そういう所は凄いと思うぜ、あいつは。」

 

 リムルは、そう語る。

 一方、俺と克己の戦いは、終盤に向かっていった。

 

レイト「やっぱり、強い…………!」

克己「俺にその事を信じさせたいのなら、俺を倒してみせろ!」

 

 克己はそう言って、マントであるエターナルローブを脱ぎ捨てながら、ゾーンメモリを取り出す。

 

ゾーン!

 

 克己は、ゾーンメモリを、マキシマムスロットに装填する。

 

ゾーン!マキシマムドライブ!

 

克己「ハァァァァァァァ!!」

 

 すると、T2ガイアメモリが、克己の方へと向かっていき、エターナルの体にたくさん付いているマキシマムスロットに装填されていく。

 

アクセル!バード!サイクロン!ダミー!エターナル!ファング!ジーン!ヒート!アイスエイジ!ジョーカー!キー!ルナ!メタル!ナスカ!オーシャン!パペティアー!クイーン!ロケット!スカル!トリガー!ユニコーン!バイオレンス!エクストリーム!イエスタデイ!マキシマムドライブ!

 

 これが、26連マキシマムドライブ状態のエターナル……………!

 やっぱり、圧が凄い。

 流石は、白ウォズから、世界の一つや二つを容易く破壊できる存在だと評価されてるだけはある。

 だが、俺だって負けてられないんだ。

 

レイト「こんな所で、くたばってたまるかぁぁぁぁぁ!!」

 

 俺はそう叫んで、イーグルバイスタンプを取り出して、起動する。

 

イーグル!

 

 そして、イーグルバイスタンプをジュウガドライバーのスキャン部分にスキャンする。

 

アブゾーブ!W!

 

 すると、俺の周囲に風が吹く。

 その風は、緑と紫だった。

 そして、金色の風も混じる。

 俺と克己の中間地点で、お互いのエネルギーがぶつかり合い、火花が散る。

 

克己「終わりだぁぁぁぁぁ!!」

レイト「行くぜ!」

 

 克己はエターナルメモリをエターナルエッジに装填して、俺はジュウガバイスタンプを一回倒す。

 

エターナル!マキシマムドライブ!

イーグルマキシマムアタック!

 

克己「ハァァァァァァァァ!!」

レイト「ハァァァァァァァ!!」

 

 俺は、緑、紫、金色の風を纏った両足のキックを、克己は、蒼炎を纏ったキックを放つ。

 お互いのキックがぶつかり合い、拮抗状態になる。

 

克己「ハァァァァァァァ!!」

レイト「ハァァァァァァァ!!」

 

 お互いに叫び、力を込める。

 すると、拮抗していたエネルギーが爆発する。

 そして、俺と克己は反対側に着地した。

 皆が固唾を飲む中。

 

克己「ぐっ……………!」

レイト「ううっ……………!」

 

 お互いの体から火花が出てくる。

 俺と克己は、お互いに膝を地面につけ、変身解除する。

 すると、奇才之王が報告する。

 

奇才之王『告。マスターの戦闘データを元に、ジュウガドライバーのアップデート及び、最適化の必要性を提案。』

レイト『分かった。頼む。』

奇才之王『了。』

 

 結構、ドライバー側に負担がかかったんだな。

 ジュウガとアルティメットバイスの戦いの時も、調整が必要だと分かったからな。

 無限収納にジュウガドライバーを仕舞い、克己の方に向かう。

 

レイト「大丈夫ですか?」

克己「……………大丈夫だ。」

 

 俺は克己に手を差し伸べて、克己は手を取り、立ち上がる。

 NEVERの面々や、鳴海荘吉にリムルも近寄る。

 

克己「……………なるほどな。貴様の言葉に、偽りは無いみたいだな。」

レイト「そいつはどうも。」

克己「……………ならば聞こう。貴様はなぜその事を知っている?ビレッジは、財団Xの施設の筈だ。」

荘吉「そうだな。俺も聞こう。なぜ、あいつに言った言葉を知っている?」

リムル「レイト………………。」

レイト「………………。」

 

 やっぱりか………………。

 追求されるだろうなとは思っていたが…………。

 ここで、自分が仮面ライダーWの世界の住人だと言う事も出来るだろう。

 だが、風都に住んでいた鳴海荘吉に大道克己を相手にその嘘をつくのは、いずれボロが出るだろう。

 それでは、信頼関係が崩れてしまう。

 俺は、リムルに頷いて、話をする。

 

レイト「……………確かに、俺はその事を知っている。でも、それは、俺がNEVERの皆や荘吉と一緒の世界の出身だからじゃない。更に別の世界の出身だからだ。」

 

 俺は、その事を話す。

 俺が住んでいた世界は、仮面ライダーが、テレビの特撮として放送されていた世界で、その時に、ダブルの事を知ったのだと。

 そして、俺はその世界で死んで、今はギフだが、キメラとして転生した事。

 その際に、仮面ライダーの力を手に入れた事。

 それは、リムルも同じでいる事。

 この世界の事に関しても、事細かに伝えた。

 それを聞いていた克己達は、驚きこそすれど、すぐに順応していた。

 

荘吉「まさか…………そんな事があるとはな。」

レイト「あんまり驚かないんだな。」

克己「俺たちは、一度死んで蘇った。そんな事があっても、おかしくはないだろう。」

レイカ「まあ、驚きはしたけどね。」

マリア「ええ。」

京水「でも、私たちは、克己ちゃんが居れば十分だから!」

賢「ああ。」

剛三「その通りだな!」

リムル「そっか………………。」

 

 まあ、NEVERって、一度死んだ人の集まりだからな。

 そういうもんかな……………。

 すると、克己が真剣な表情で俺を見てくる。

 

克己「それで、貴様が俺たちに求めるものはなんだ?」

レイト「……………そうだな。俺としては、君達をスカウトしたいと思ってる。」

克己「何?」

リムル「レイト………………。」

克己「なぜだ?」

レイト「NEVERの皆の実力と人柄を評価しているんだ。だから……………頼む。」

 

 俺はそう言って、頭を下げる。

 NEVERの人たちの実力は凄い。

 だからこそ、今度こそ、あんな悲劇を起こさない為にも、力を貸して欲しいと思っている。

 すると。

 

克己「……………良いだろう。」

レイト「良いのか?」

克己「ああ。悪くない。この世界を楽しむのに拠点が必要だったしいいだろう。この町を楽しませてもらう。お前達もそれで良いか?」

レイカ「問題ないわ。」

京水「克己ちゃんが言うなら、私たちは問題なしよ!」

賢「構わない。」

剛三「良いぜ!これから世話になるぜ。」

マリア「よろしく頼むわ。」

レイト「ああ。」

 

 こうして、NEVERの面々が仲間になった。

 一方、リムルは鳴海荘吉に話しかけていた。

 

リムル「荘吉さん。俺はアンタを探偵としてスカウトしたい。」

荘吉「ほう?その理由は?」

リムル「俺の街には、探偵職が居なくてさ。アンタのような優秀な探偵を雇いたいんだよ。」

荘吉「………………良いだろう。高くつくがな。」

リムル「ありがとうな!」

 

 そして、鳴海荘吉も仲間になった。

 その後、俺たちは、ヴェルドラの方へと戻り、妖気(オーラ)を抑える特訓を見守っていた。

 2日後、無事に妖気(オーラ)を抑える事に成功したそうだ。

 

ヴェルドラ「能力の把握は済んだか?リムル、レイトよ。」

リムル「まあな。」

レイト「そっちも妖気(オーラ)を上手く制御できるようになったじゃん。」

ヴェルドラ「クァーハッハッハッハ!我にかかれば、この程度のこと、造作もない事よ!」

レイト「じゃあ、外に行こっか。」

 

 俺たちはそう話して、外に出る。

 もちろん、NEVERの面々や、鳴海荘吉も連れて。

 

リムル「しかし、急に出来るようになったな。コツでも掴んだのか?」

ヴェルドラ「うむ。実はな、ヒントは聖典(マンガ)の中にあったのだよ。アレには、この世の全ての叡智が納められておる様だな!」

レイト「漫画の知識かよ。」

ヴェルドラ「む?いかんのか?」

リムル「いや、別に良いけど、俺たちの感慨を返して欲しいと思っただけ。」

 

 漫画の知識で妖気(オーラ)を抑える事に成功したのかよ。

 感慨もへったくれもねぇな。

 すると、スフィアの叫び声が聞こえる。

 

スフィア「そこをどいてくれ!」

 

 なんの騒ぎだと思っていたら、封印の洞窟に入ろうとしているスフィアを、紅丸達が抑えていた。

 ヴェルドラの影響か?

 

ディアブロ「お断りします。リムル様とレイト様は、付き添いは不要だと仰ったのです。」

ガビル「そうであるぞ!獣王国(ユーラザニア)の方々!我輩は誰も近づけないように命じられたのである!

ディアブロ「洞窟に篭っておられるのは、お考えがあってのこと。我らが邪魔をするわけにはいきません。」

スフィア「しかし、もう3日だぜ!?あの伝説の暴風竜が復活したんだろ!?主達が危険かも知れねぇってのに、手をこまねいてるつもりかよ!?」

ディアブロ「煩い猫ですね。大人しくしないと潰しま………………。」

紅丸「やめろ、ディアブロ!それじゃあ、仲裁になってねぇ!」

 

 本当だよ。

 ディアブロの言い方は、相手に喧嘩を売っている様なもんだぞ。

 やめろって。

 まあ、気持ちはありがたいが。

 

紅丸「リムル様とレイト様がご無事なのは、間違いない。」

火煉「ただ、ヴェルドラ様が復活なされたとなると、私たちも、迂闊には動けないのよ。」

紅丸「とにかく、ここは我々に任せ…………。」

 

 紅丸たちがそう言う中、俺たちはアイコンタクトをして、紅丸達に話しかける。

 

リムル「あ〜……………皆、すまん。」

レイト「心配かけたな。」

リグルド「リムル様!レイト様!と………………誰?」

 

 まあ、そうなるのも無理はない。

 いきなり、知らない人が現れたんだからな。

 すると、アルビスとシズさんが話しかける。

 

アルビス「とにかく、ご無事で安心致しましたわ。何せ、あの暴風竜ヴェルドラの気配が復活したのです。一体、何があったのかと………。」

シズ「2人とも、大丈夫?」

レイト「心配ありがとう。皆に、紹介するよ。」

リムル「こちら、ヴェルドラ君です!ちょっと人見知りだけど、皆も仲良くしてあげて下さい!」

 

 アルビスがそう話しかける中、俺とリムルはそう言う。

 すると、皆は驚いた表情を浮かべ、ヴェルドラが抗議する。

 

ヴェルドラ「ば、バカを言うな!我は人見知りなどではないぞ!?ただ単に我の前に生きて辿り着ける者が少なかっただけなのだ!」

 

 まあ、魔物が多いしな。

 とはいえ、さっさと自己紹介をさせるべきだろう。

 半信半疑の人が多い。

 

レイト「ほれ、自己紹介をしとけって。」

リムル「妖気(オーラ)を抑えられる様になったおかげで、かえって皆、半信半疑だからさ。」

ヴェルドラ「む。そうか。まあ、良かろう。」

 

 俺らがそう話すと、ヴェルドラは一度咳払いをして、叫ぶ。

 

ヴェルドラ「我は暴風竜、ヴェルドラ=テンペストである!我が貴様らの主のリムルとレイトとどういう関係なのか気になっておる事だろう!知りたいか!?知りたいであろう!」

 

 ヴェルドラがそう言うと、頷く人がいた。

 それを見て、ヴェルドラはニンマリと笑う。

 

ヴェルドラ「そうか!では、教えてやろう!」

 

 すると、俺とリムルを腕に寄せて、右の人差し指を天に向ける。

 そして、叫ぶ。

 

ヴェルドラ「リムルとレイトとは、心の友!魂の片割れ!盟友である!!」

 

 ヴェルドラはそう叫ぶと、周囲にこだまする。

 すると、少しの静寂の直後。

 

一同「盟友!!」

 

 そう言って、周囲の人たちから歓声が上がる。

 やめろって!

 そういうのは、俺たちが一番恥ずかしいんだから!!

 すると、トレイニーさんが話しかける。

 ちなみに、その際、ヴェルドラは俺とリムルを放る。

 

トレイニー「我らが守護神ヴェルドラ様。ご復活を心よりお祝い申し上げます。」

ヴェルドラ「おう、樹妖精(ドライアド)か。懐かしいな。我が森の管理、ご苦労であったな!」

トレイニー「勿体無いお言葉です。精霊女王(エレメント)より逸れた私どもを拾っていただいた御恩は、返し切れる物ではございません。」

 

 ヴェルドラとトレイニーさんは、そう話す。

 そういえば、トレイニーさん達は、元々はラミリスの所に居たんだったよな。

 そう思う中、ドリスという樹妖精(ドライアド)がヴェルドラに話しかける。

 

ドリス「それで、その……………そのお姿は?」

ヴェルドラ「うむ。これはリムルが用意してくれた依代だ。リムルとレイトは、我の妖気(オーラ)を抑え込む修行にも付き合ってくれたのだぞ?」

 

 ドリスの質問に、ヴェルドラはそう答える。

 それを聞いていたディアブロに紅丸は。

 

ディアブロ「ほう。あの強大な妖気(オーラ)を抑え込む修行とは……………。流石はリムル様とレイト様。あとでその方法をお伺いしましょう。」

紅丸「……………俺は、暴風竜と友達になる方法を聞きてみたい。本当、なんでもありだ、あの人達。」

 

 ディアブロは、妖気(オーラ)を抑え込む修行に興味を示し、紅丸はそう呟く。

 そんな中、火煉が話しかける。

 

火煉「レイト様。」

レイト「おん?」

火煉「ヴェルドラ様は分かりましたが、そちらの方達は……………?」

レイト「ああ。俺がスカウトしたNEVERという傭兵集団だ。大丈夫。信頼できるから。」

火煉「レイト様がそう言うのなら…………。」

 

 そう言って、火煉は不安げな表情を浮かべる。

 あれ?

 なんか火煉の気に障る事でも言ったかな?

 すると、蒼影が現れる。

 

蒼影「リムル様、レイト様。ただいま戻りました。」

リムル「蒼影。」

レイト「何かわかったか?」

蒼影「クレイマンの動向ですが…………。」

 

 蒼影がそう報告しようとすると、ヴェルドラが目に入る。

 それを見て、察したのか、耳打ちしてくる。

 

蒼影「後にした方がよろしいでしょうか?」

リムル「いや、むしろこの恥ずかしい空気を変えたい。調査結果は会議室で聞こう。」

レイト「この場に居ない幹部全員を大会議室に招集してくれ。あと、ヨウム達やカバル達を呼んでくれ。」

蒼影「承知。」

 

 俺たちがそう言うと、蒼影は影移動で移動する。

 すると、ヴェルドラが話しかけてくる。

 

ヴェルドラ「リムルにレイトよ。何かあったのか?」

リムル「ああ。今後の方針を決める準備が整った。」

ヴェルドラ「ふむ。我にも手伝える事はあるか?」

レイト「もちろん、あるよ。」

 

 ヴェルドラの質問に、俺とリムルはそう答える。

 こうして、今後の方針を決める会議が始まろうとする。

 一方、傀儡国ジスターヴでは、クレイマンがワイングラスを地面に叩きつける。

 

クレイマン「くそっ!たった2人の魔人に殲滅させられるとは……………!所詮は脆弱な人間の軍隊か!(その上、偵察任務中のピローネが殺された。まさか、あの悪魔、狙って上空に逸らしたのか!?)」

 

 クレイマンは、そう言って割れたワイングラスの破片を靴で踏み潰す。

 そう。

 ディアブロがラーゼンの熱収束砲(ニュークリアカノン)を捻じ曲げた際、曲げられた先にいた魔人は、クレイマンの配下だったのだ。

 

クレイマン「(だが、四万の人間の魂をあの2人の魔人が掌握した所までは確認できた。奴らが覚醒に至ったか否かはともかく、私自身の覚醒は失敗だ。)あのお方のお膳立てを無駄にしてしまうとは……………!」

 

 クレイマンは、苛立っていた。

 すると、ドアがノックされ、フレイが中に入ってくる。

 

フレイ「荒れてる所悪いんだけど、良いかしら?」

クレイマン「……………フレイですか。なんです?下らない要件なら、後にしなさい。」

フレイ「指示を出しておきながら、その態度?あなたの配下には同情するわ。嬉しい知らせよ。魔王ミリムが魔王カリオンを一蹴。獣王国ユーラザニアは消滅したわ。」

 

 クレイマンは苛立ちながらそう聞くが、フレイの言葉を聞いて、機嫌がなおる。

 フレイの後に入ってきたのは、ミリムだった。

 それも、殺気まみれの。

 

クレイマン「……………そうですか。(そうとも。計画の失敗は痛手だったが、私は力を手に入れた。絶対的な力(ミリム・ナーヴァ)を。)」

 

 クレイマンは、上機嫌になった。

 それを見ていたフレイは、退出しようとする。

 

フレイ「報告は以上よ。これで借りは返したわね。」

クレイマン「待ちなさい、フレイ。その殺気まみれのミリムをここに置いていく気ですか?連れ帰って世話をしなさい。」

フレイ「……………これ以上、協力する義理は無いのだけれど?」

 

 フレイが退出しようとすると、クレイマンはそう言う。

 フレイは、クレイマンにそう反論すると、クレイマンは新しいワイングラスにワインを注ぎながら言う。

 

クレイマン「勘違いをしている様ですね、フレイ。ミリムはもはや、この私の傀儡。貴女は獣王国(ユーラザニア)が消し飛ぶその様を、魔王随一と言われるその美しい目で見たのでしょう?」

 

 クレイマンがそう言うと、フレイはクレイマンの意図を察する。

 逆らうのなら、ミリムを差し向けて、フレイの国を吹き飛ばすと脅しているのだと。

 それを察して、フレイはため息を吐きながら言う。

 

フレイ「……………そう。最初からそういう目的だったのね。分かったわ。私もまだカリオンの様にはなりたく無いもの。」

クレイマン「聡明ですね、フレイ。行ってよろしい。」

フレイ「…………………。」

 

 クレイマンは笑顔でそう言って、フレイはミリムを連れていく。

 その際、フレイはクレイマンを睨んでいた。

 クレイマンは、ワインを飲みながら思う。

 

クレイマン(私は切り札を手に入れた。もはや、他の魔王を恐れる必要はない。そして、ミリムの力があれば、数万の魂を刈り取る事など、造作もない。労せずして、私は真なる魔王へと覚醒出来るだろう。)

 

 クレイマンはそう思いながらワインを飲み終えると、笑みを浮かべる。

 

クレイマン「クックックッ……………!これでようやく、魔王レオンを始末出来ます。(ですが、その前に、目障りな西方聖教会には消えてもらいましょうか。生憎、あそこは謎が多く、実態を掴めずにいますが…………。一先ず、あの方の任務で潜入しているラプラスの報告を待つとしましょう。)」

 

 クレイマンの目的は、魔王レオンの排除だった。

 その為に、西方聖教会を潰そうと画策する。

 一方、神聖法皇国ルベリオスの霊峰の奥にある大聖堂。

 そこが光りだし、扉からラプラスが転げ落ちる。

 

ラプラス「うおああああっ!?…………ってぇ、なんやねんあんた!?神聖な筈のこの場所に……………なんで吸血鬼族(ヴァンパイア)がおんねや……………!?」

 

 ラプラスはそう叫ぶ。

 一方、大聖堂から出てきた男は、ラプラスに向かって叫ぶ。

 

???「口をきくな、神の座を汚すゴミ虫が!余が自ら裁くのだ!光栄に思いながら死ぬが良い!!」

 

 一体、何が起こっているのか。




今回はここまでです。
大変長らくお待たせしました。
サプライズとは、NEVERの面々に、鳴海荘吉が登場する事でした。
色々と考えたり、相談したりして、出来ました。
そして、レイトが、仮面ライダージュウガに初変身しました。
次回は、中庸道化連や、エドマリス関連の話になります。
あと、キララの処遇に関しても、明かします。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
なぜ、NEVERの面々に鳴海荘吉が現れたのか。
それは、電王編にて明かします。
魔王達の宴も近づいてきました。
ジュウガのアブゾーブ必殺技は、どんな感じにやって欲しいというのがあれば、受け付けます。
これからも、応援の程、よろしくお願いします。


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第36話 魔人達の策謀

 俺たちが会議をしようとする中、神聖法皇国ルベリオスの霊峰にある大聖堂では、男がラプラスを睥睨していた。

 ただ、人間ではなく、吸血鬼族(ヴァンパイア)だった。

 それも、祭服に身を包んでいた。

 

???「唯一神ルミナス様の御前を汚す事は、断じて許さん!」

ラプラス「やばっ……………!」

???「消し飛べぃ!」

 

 その男が右手に赤いオーラを纏わせるのを見て、ラプラスは逃げる事に。

 だが、逃げる事は叶わずに、その男の攻撃を喰らい、色んな場所が切断される。

 

ラプラス「こら…………あかん。」

 

 ラプラスはそう呟く。

 西方聖教会。

 その発端は、ルミナス信仰の国内布教を目的として、神聖法皇国ルベリオスの下に作られた組織だ。

 現在、聖騎士団団長の坂口日向(ヒナタ・サカグチ)の統率の元、もはやルベリオスの下部組織とは言えないほどの影響力を得たが、ただ1人、神ルミナスの代弁者であるルベリオスの法皇の言葉には、耳を貸すという。

 イングラシアの自由学園。

 そこの給湯室では、1人の女性がお茶を出す準備をしていた。

 すると、窓から切り刻まれた筈のラプラスが入ってくる。

 

ラプラス「いや〜………………マジで死んだかと思ったわ……………。」

 

 ラプラスはそう呟きながら、中に入る。

 すると、女性と目が合い、口を開く。

 

ラプラス「ん?……………誰や、あんた?(なんやエライ別嬪さんやけど、なーんか懐かしいような………………。)」

 

 ラプラスは、その女性に声をかけながらそう思う。

 すると、女性がため息を吐きながら言う。

 

???「……………バカが。」

ラプラス(え?今、バカ言われた?)

???「こちらへどうぞ。主がお待ちです。」

 

 女性の言葉にラプラスが戸惑う中、女性はそう言って、ラプラスを案内する。

 案内される中、ラプラスは女性に聞く。

 

ラプラス「なぁ、あんた。主が待ってる言うてたけど、ワイが誰だか知っとんのか?」

???「……………中庸道化連のラプラス殿でしょう?主より伺っていますので。」

ラプラス「………………そか。」

 

 ラプラスの質問に、女性はそう答え、ラプラスは納得する。

 すると、部屋の主が口を開く。

 

???「やあ、ラプラス。大変だったみたいだね。それで、西方聖教会の正体は、何か掴めたのかい?」

ラプラス「いやあ、それがなんと……………警備が厳重すぎて無理やったわ!」

 

 部屋の主の質問に、ラプラスはそう言う。

 それを聞いた部屋の主は、漫画(・・)を読みながら、ラプラスに聞く。

 

???「ふ〜ん……………それで?ヒントくらいは掴んだんだろ?」

ラプラス「なんや……………苦労して手に入れた情報やから、高く売りつけたろ思たのに。」

???「あはは。君は嘘つきだからね。」

ラプラス「酷いお人やなぁ。ホンマ同情してしまうで。知らずにあんさんの計画に巻き込まれとるあのスライムとキメラには。さすが……………自由組合総帥(グランドマスター)の顔とひん曲がった野望を同居させてる変人……………神楽坂優樹(ユウキ・カグラザカ)殿や。」

 

 そう。

 部屋の主は、レイトたちが出会った日本人の1人、神楽坂優樹だった。

 中庸道化連と繋がっていたのだ。

 そんな中、ラプラスに変人呼ばわりされたユウキは、口を開く。

 

ユウキ「お褒めに与り光栄だけど、依頼料の引き上げは無しだぜ?」

ラプラス「……………本当、敵わんわ。」

ユウキ「まあ、そう言うなって。約束の報酬はもう、準備できてるからさ。」

ラプラス「え!?ほな…………っ!?」

ユウキ「ああ。僕の中にいた君たちの会長の魂は、無事、人造人間(ホムンクルス)に定着したよ。」

 

 ユウキはそう言って、ラプラスは頭を掻くが、次の言葉にラプラスは歓喜する。

 ラプラスは、ユウキに話しかける。

 

ラプラス「(会長が…………遂に…………!)どこや!?早く会わせてーな!!」

ユウキ「落ち着けよ。さっきから、そこに居るって。」

ラプラス「は?えっ?」

 

 ラプラスがそう言うと、ユウキはラプラスの後ろを指差す。

 そこに居たのは、先ほどの女性だった。

 

ラプラス「まさか……………この別嬪さんが?」

 

 そう。

 その女性こそが、ガザリームなのだ。

 しばらくすると、ラプラスの笑い声が響く。

 

ラプラス「ぶわははははっ!!なんですのん、その格好?趣味を変えはったんですか!?似合ってる言うたらおかしいけど……………前とイメージが全然違いますやん!?」

カガリ「うるさいぞ、ラプラス。それが二百年ぶりに対面したこの俺…………魔王カザリームに対する態度か。十年もかけて、ようやく肉体を手に入れたんだ。多少の不便は我慢するさ。」

ラプラス「いやいや………道理で、懐かしい感じがすると思ったんや。」

 

 ラプラスが爆笑する中、カザリーム改め、カガリはそう言う。

 ラプラスがそう言う中、足を揃えて言う。

 

ラプラス「お帰りなさい、カザリーム会長。中庸道化連一同、待っとったでぇ。ワイもフットマンもティアも……………クレイマンもな。」

 

 ラプラスは、爆笑していた態度から改め、そう言う。

 そんな中、ユウキが水を差すように言う。

 

ユウキ「感動の再会に水を差す様で悪いんだけどさ、魔王カザリームの完全復活とは、まだ行かないんだよね。」

カガリ「まぁな。正直な所、全盛期の力には遠く及ばない。レオン・クロムウェル…………忌々しい野郎だ。」

 

 ユウキがそう言うと、カガリは悔しそうに手を握りしめる。

 それを見たラプラスは、声をかける。

 

ラプラス「まぁまぁ、やられちゃったんは、二百年前の話やん?今は呪術王(カースロード)カザリームの大復活を喜ぼうやないの。」

カガリ「その程度の年月で薄れる屈辱ではないがな。……………だが、ボスに出会えたのは、紛れもない幸運だった。」

 

 ラプラスがそう言うと、カガリはそう言う。

 三人は椅子に座って、シュークリームを食べ、お茶を飲みながら話をする。

 

カガリ「……………10年前、俺の魂は本当に消滅寸前だったからな。肉体を失って消耗していたんだ。ボスに憑依出来なければ、確実に死んでいたわ。」

ラプラス「ボス……………。」

ユウキ「新しい体の性能に文句を言うのは勘弁してくれよ。結構高くついたんだぜ?」

カガリ「分かってるよ。魔導王朝サリオンの特注品だろ?脆弱だし、俺の趣味に合う外見ではないが、自分で動かせる物質体(マテリアル・ボディ)があるのと無いのと大違いだ。」

 

 カガリはそう言う中、ユウキはそう言って、カガリはそう返す。

 すると、ラプラスが震えだす。

 

ラプラス「…………フフッ。フフフッ…………!ブッ……………!ブフッ!ブハハハハっ!!」

カガリ「おい、いつまで笑ってんだ!ラプラスお前!」

ラプラス「いやいや!口調との違和感がきつすぎて、笑えますよってに!」

カガリ「……………分かったわよ。力が戻りきらない今は、秘書のフリも続けないといけないのだし、当分はそれらしく喋るとするわ。」

ラプラス「ブハハハハッ!!」

カガリ「ツボってんじゃねぇ。」

 

 ラプラスが笑い出した事に、カガリは青筋を浮かべながらそう言って、ラプラスは引き続き笑い続ける。

 それを見ていたユウキは。

 

ユウキ「……………ところで、そろそろ本題に入らせてもらって良いかな?西方聖教会。なんか掴めたんだろ?」

ラプラス「……………せやな。会長がボスと言うのなら、あんさんはワイにとってもボスや。駆け引きは無しで語らしてもらいまっさ。」

 

 ユウキの質問に、ラプラスはそう言いながら答える。

 

ラプラス「西方聖教会本部には、怪しい物は何もなかった。そりゃ、参拝者なんかも来るんや。分かりやすくヤバいもんが置いとるわきゃない。そんでわいは、霊峰の頂上を目指す事にしたんや。法皇しか入れん奥の院なら、何かおるかも思てな。そしたら…………なんや偉そうな吸血鬼のおっさんが、赤い光線ぶっ放してきて、わい、バラバラにされてしもてん。あれはやばいで。マジで死んだかと思った。」

ユウキ「いやいや、何で君、生きてるの?」

カガリ「こいつは殺しても死なないだろうからね。」

 

 ラプラスの言葉に、ユウキは呆れとも驚きとも言える表情を浮かべながら言うと、カガリがそう言う。

 そんな中、ラプラスが言葉を続ける。

 

ラプラス「問題はその正体や。神聖なはずのあの場所に、なんで吸血鬼族(ヴァンパイア)がおったのか。しかも奴は、教会の祭服みたいなんを着とった。つまり、教会に属しとるっちゅー事や。」

ユウキ「ルミナス教のお偉いさんが魔人…………それも、上位種族の吸血鬼族(ヴァンパイア)か。」

 

 ラプラスとユウキは、そう話す。

 すると、心当たりがあるのか、カガリが口を開く。

 

カガリ「……………魔人、どころでは無いかもな。」

ユウキ「心当たりがあるのかい?カザリーム。」

カガリ「赤い光線を放ってきたと言ったな。」

ラプラス「せや。」

カガリ「それは、血を魔粒子化させて放出する血刃閃紅波(ブラッドレイ)という技だ。」

ラプラス「知っとるんか、会長!?」

カガリ「魔王ヴァレンタイン。”鮮血の覇王”の二つ名で呼ばれる、奴の得意技だ。」

 

 ユウキの質問に、カガリはそう答える。

 ラプラスに攻撃した男の正体は、魔王の1人、ヴァレンタインという人物だったのだ。

 それを聞いたラプラスは驚く。

 

ラプラス「魔王!?マジでか!?」

カガリ「逃げて正解よ、ラプラス。奴は全盛期の俺と互角だった男だからな。」

ラプラス「ひょええええ……………!」

カガリ「昔、奴とは何度か殺り合った。その度に、周辺の里や集落なんかが巻き込まれてな。それで話し合い……………多数決で決着をつける風習が生まれたんだよ。」

ユウキ「もしかして、それが魔王達の宴(ワルプルギス)?」

カガリ「ええ。三名の票で発議というのは、魔王が七柱(ななにん)だった頃の名残でもあるのよ。」

ラプラス「会長!口調が無茶苦茶でっせ!」

カガリ「黙りなさい、このクソ野郎。」

 

 ラプラスが驚く中、カガリは、魔王達の宴(ワルプルギス)ができた理由を語る。

 ラプラスがカガリを揶揄う中、ユウキが口を開く。

 

ユウキ「……………じゃあ、そいつが魔王ヴァレンタインなのは事実として、何で奥の院(そんな所)に居たんだろうね。一番あり得そうなのは、法皇の正体が魔王だった…………とかかな。」

カガリ「あの男、ヴァレンタインは、人間や亜人を餌としか見ていない。そんな男が人類の守護者を名乗っているのだとしたら……………何かがあるのでしょうね。」

ラプラス「ん〜…………せやけど、どうやってヒナタの目を誤魔化しとるんや?法皇が魔王なんて知ったら、あの魔物絶対許さへん女が黙ってる筈無いやん?」

ユウキ「だから、”何か”があるんだろ?どうあれ、この情報は使えるね。お手柄だよ、ラプラス。」

 

 ユウキ、カガリ、ラプラスの三人は、疑問を出し合うが、答えも出ずに、ユウキはラプラスを褒める。

 ラプラスは、ユウキに質問する。

 

ラプラス「ワイの報告はこれで終わりやけど、クレイマンの奴は、うまい事覚醒できたんでっか?ファルムス王国になんやさせる言うてましたやん?」

ユウキ「ああ、それね。ほら、あの国って、異世界人を大量に抱え込んでるじゃん?そろそろ力を削いでおこうと思って、魔物の国(テンペスト)の特産品の情報を流したんだよ。強欲な王なら、必ず仕掛けるだろうと思ってさ。」

ラプラス「……………結果は?」

 

 ラプラスの質問に、ユウキはそう答える。

 再びの質問に、ユウキは肩をすくめながら答えた。

 

ユウキ「スライムとキメラの二匹相手に、まさかの全滅。ちょっと力を削ぐつもりが、ほとんど削げちゃった。」

ラプラス「は……………はあ!?ファルムスの連中は、そないに魔国(テンペスト)を舐めとったんか!?」

ユウキ「いや、そんな事ないよ。四万の軍勢でもって、ノリノリで侵攻したみたいだし。いや本当、あの人たち何なんだろうね。僕としては、たった2人で軍勢を滅ぼした事より、ヒナタと戦って生き延びた事が驚き…………って言いたいけど、ヒナタと戦ったのはレイトさんで、彼は仮面ライダーだしね。無理もないか。」

 

 ユウキが肩をすくめながら言った事にラプラスは驚くが、ユウキはある種の納得と驚愕を含んだ言葉で言う。

 そんな中、ラプラスが聞く。

 

ラプラス「あ、ほな、人間の魂は集まったんちゃうんか?」

カガリ「いや、魂は一つたりとも残留していなかった。どうやら、先を越されたらしいわ。」

ユウキ「というわけで、クレイマンの覚醒に必要な魂の回収は失敗。」

カガリ「獣王国(ユーラザニア)の方も、魔王ミリムの暴走で住民が事前に退避したせいで、魂の回収は出来なかったものね。」

ラプラス「あらら。(ワイもてんやわんやしとったけど、アイツも大変やったんやな。あとで慰めに行ったろ。)」

カガリ「私の好物で遊ぶな。」

 

 ラプラスがそう聞くと、カガリとユウキはそう答える。

 それを聞いたラプラスは、シュークリームでジャグリングをしながらそう思い、カガリに咎められる。

 そんな中、ユウキが口を開く。

 

ユウキ「まあでも、結果的にファルムスが負けてくれて、好都合かな。」

ラプラス「どういう事でっか?」

カガリ「四万もの軍勢をたった2人で屠った魔人達だぞ?御大層な教義を掲げている西方聖教会が野放しにする訳には行かないだろう。」

ユウキ「そして、それほどの魔人を2人も相手にするのなら、ヒナタが出ない訳にはいかない。」

 

 ユウキの呟きに、ラプラスが首を傾げると、カガリとユウキが答える。

 それを聞いたラプラスは、シュークリームを食べながら言う。

 

ラプラス「なるほど。西側諸国を掌握する上で、最も邪魔なんはルミナス教。西方聖教会の目を引き付けてくれる魔物の国の存在は……………。」

ユウキ「そう。むしろ都合が良いって事。想定外な事は起こったけど、僕らの計画自体は狂っていない。ただ……………。」

カガリ「1番の想定外は、貴様の報告だよ、ラプラス。」

ラプラス「ひょ?」

 

 ラプラスの言葉に、ユウキは頷く。

 そんな中、カガリがそう言って、ラプラスは反応する。

 

ユウキ「西方聖教会をもっと調査したい所だけど…………魔王ヴァレンタインが居るとなると、迂闊な事は出来ない。もう一度潜入してもらうつもりだったのに………………。」

ラプラス(なんや、ワイが悪いみたいになっとる………。理不尽……………。)

 

 ユウキの言葉に、ラプラスは傷つく。

 だが、すぐに妙案を思いつき、口にする。

 

ラプラス「……………まあ、魔王を誘き出すだけやったら、何とかなるんちゃいます?クレイマン、魔王ミリム、魔王フレイ。魔王達は三人の連名で色々出来るんやろ?開けばええやん。魔王達の宴(ワルプルギス)を。」

 

 ラプラスはそう提案する。

 それを聞いたユウキとカガリは、顔を見合わせて、カガリが口を開く。

 

カガリ「……………ラプラスにしては、冴えてるじゃない。」

ラプラス「せやろ?(さて……………どう動くんかな、あのぷにぷにとキメラは。)」

 

 カガリの言葉にそう返しながら、そう思う。

 道化達は、暗躍を続ける。

 一方、テンペストの牢では、エドマリス王が目を覚ます。

 エドマリス王は、右腕を拘束されていた。

 

エドマリス(ここ………は…………余は一体…………?)

 

 エドマリス王がそう思っていると、紫苑が声をかける。

 

紫苑「目が覚めましたか。」

エドマリス「こ、ここはどこだ!?ヌシは誰じゃ!?余が誰か分かっておるのか!?余は大国、ファルムスが王、エドマリス…………。」

紫苑「知っています。ここは、ジュラ・テンペスト連邦国の地下牢の一つです。私は、盟主リムル様の第一秘書紫苑。捕虜の尋問を仰せつかりました。」

 

 エドマリス王がそう言う中、紫苑は遮って、そう言い、牢の中に入る。

 

エドマリス「捕虜…………じ、尋問…………?」

紫苑「貴方には、ファルムス王国の内情について、全てを話してもらいます。殺さなければ何をしても良いと、お許しはいただいておりますので。リムル様とレイト様は、私に仕返しの機会を下さったのだと思います。…………ですが、私個人としては、正直な話、殺された事に対する怒りは、あまり無いのです。負けたのは私の弱さ故ですし、その上、こうして蘇らせて頂きました。」

エドマリス「蘇え……………!?」

 

 エドマリスが呆然とする中、紫苑は話し続ける。

 エドマリスが驚く中、紫苑はエドマリスに尋ねる。

 

紫苑「ところで、ご存知ですか?リムル様とレイト様は、人間がお好きです。私たち、配下の魔物が無闇に人間を傷つける事をよしとはしないでしょう。」

エドマリス「そ、そうか!では、穏便に話そうぞ!余も主らに協力するのはやぶさかではない……………!」

紫苑「……………とはいえ、やはり許せない事もあるのです。」

 

 エドマリスは、そう言おうとするが、紫苑の表情に恐怖する。

 

紫苑「貴方の決断が、リムル様とレイト様に人間を殺させた。リムル様とレイト様の綺麗な手を、お前は人間の血で汚させた!!千に刻んでもなお足りない。この世に生を受けた事を、未来永劫、後悔させて差し上げましょう。」

 

 紫苑はその事を怒っていた。

 そして、剛力丸を抜刀して、エドマリスに向かう。

 

エドマリス「ぎゃああああっ!!」

 

 地下牢内に、エドマリスの悲鳴が響く。

 それを聞いていたレイヒム大司祭は、怯えていた。

 そんなレイヒム大司祭に、ミュウランが話しかける。

 

ミュウラン「貴方も教会について、話す事があるのなら、早く話したほうが身の為よ?王を助けようとした……………あの魔法使い(ラーゼン)の様になりたいのなら、別だけれど。」

 

 ミュウランはそう言って、向かいの牢屋を見る。

 そこには、ラーゼンだった肉塊があった。

 それを見て、レイヒムは再び恐怖する。

 それからしばらくして、俺とリムルが、エドマリス王の元へと向かう。

 

エドマリス「(この足音は…………あの鬼女ではない!)た……………助けてくれ。そこの………娘達?頼む。ここから、出してくれ…………。余が間違っていた。そなたらの主殿達に釈明したい。お願いじゃ…………面会の許可を………。」

 

 エドマリス王は、そう言うまでに衰弱していた。

 心は紫苑によって、折られたようだな。

 そう言う中、俺たちは口を開く。

 

エドマリス「余は、ファルムスが国王…….。」

リムル「知ってるよ。」

レイト「俺たちの声をもう忘れたのか?」

エドマリス「……………っ!!」

 

 エドマリス王の言葉を遮り、リムルは仮面を被り、俺は仮面ライダーダイモンに変身する。

 エドマリス王は、それを見て思い出したのか、後ろに下がる。

 

エドマリス「ひぃぃぃぃ!!た、たす…………助け…………っ!」

リムル「釈明するのなら、俺たちより先にすべき相手がいるだろ。ファルムス王国の国民はこれから苦労するぞ。」

レイト「捕虜をどうするのかは、会議で決める。それまで、じっくりと考えておくんだな。これは、俺たちとアンタ(エドマリス)が背負っていく業なんだからよ。」

 

 俺とリムルは、そう言う。

 そう、これは、俺たちとアイツが背負うべき業なのだ。

 そう言って、去っていく。

 一方、ファルムスに居た異世界人の1人、水谷希星の元には、シズさんがいた。

 

シズ「希星ちゃん。大丈夫?」

希星「シズさん……………大丈夫。」

 

 シズさんの問いに、希星はそう答える。

 希星は、シズさんに聞く。

 

希星「シズさんって、ウチらと同じ日本人なんだよね?」

シズ「………………ええ。私も、この世界に召喚されたから。」

希星「え……………?」

 

 希星の問いに、シズさんはそう答える。

 そこから、シズさんは語った。

 自分はかつて、太平洋戦争が起こっていた頃の日本から、魔王レオン・クロムウェルによって、この世界に召喚された。

 その魔王レオンに、上位精霊であるイフリートを同化させられた。

 その為、魔王レオンに憎しみを覚えた。

 そんなある頃、ピリノという少女と風狐と出会ったが、自分が殺めてしまった。

 その後、勇者によって救われ、英雄として名を馳せ、子供達を救おうとしていた事。

 この森にやってきて、俺たちによって救われた事を。

 

シズ「……………これが、私の出来事。あの2人には感謝してるの。私が嫌いで憎めないこの世界に、温かい場所を作ってくれた事を。」

希星「そう……………なんだ。ウチは…………。」

 

 希星は、シズさんの話を聞いた後、語り出した。

 希星は、ファルムス王国に召喚され、橘恭弥と田口省吾と違い、大したスキルを持っていないと判断され、雑に扱われていた。

 そんなある日、待遇にキレて、『死んじまえ』と叫んだ次の瞬間、自分のユニークスキルである狂言師(マドワスモノ)の効果で、周囲の人が自殺をする。

 それを知ったラーゼンによって、スキルを封印されて、今に至る。

 そう言う中、希星の目からは、涙が溢れていた。

 

希星「アイツら…………勝手にウチを召喚しておいて、使えないって言って雑に扱ったり、自分の行動を支配しようとしたりして……………ウチが何をしたって言うの?!お母さんに……………会いたいよ………………!!」

 

 希星はそう言って、泣き出す。

 これまで抑えてきた母に会いたいという想いが溢れ出たのだ。

 それを見ていたシズさんは、希星を抱きしめて、子供をあやす様に、優しく叩く。

 そんな中、俺は中に入る。

 

レイト「邪魔するぞ。」

シズ「レイト君。」

希星「アンタは……………。」

レイト「俺はレイト=テンペスト。この街の盟主の片割れだ。」

 

 それを聞いた希星は、怯える表情を浮かべる。

 そんな中、俺は言う。

 

レイト「アンタの今後の処遇に関して、伝えに来た。」

希星「ど、どうなるの……………?」

レイト「………………アンタに関しては、あの2人と違って、住人を殺めてないからな。よって、今後のテンペストの文化の発展に協力する事。それを伝えに来た。」

希星「え………………?」

 

 俺がそう言うと、希星は鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべる。

 すると、俺に聞いてくる。

 

希星「な、なんで……………?」

レイト「こう見えても、俺は日本人の転生者でね。日本人同士のよしみとしてだ。それに、アンタには情状酌量の余地があるからな。」

希星「え………………!?」

レイト「まあ、テンペストの文化の発展を手伝えよ。」

希星「は……………はい!」

 

 こうして、水谷希星は、テンペストの文化の更なる発展に協力する事になった。




今回はここまでです。
今回は、中庸道化連達の暗躍に、エドマリス王達の話です。
そして、原作と違い、生存した希星は、今後のテンペストの文化の更なる発展に協力する事になりました。
希星にとっても、それは朗報となるでしょう。
希星に関しては、田口省吾や橘恭弥と違い、情状酌量の余地はありますからね。
次回は、人魔会談へと入っていきます。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
人魔会談の流れ自体は、アニメ版をベースにしつつ、漫画版の奴も加えていく感じにする予定です。


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第37話 人魔会談

 俺たちは、会議室にて、蒼影の報告を聞いていた。

 

リムル「クレイマンが軍を?」

蒼影「は。進軍経路を見るに、忘れられた竜の都を目指しているのかと。」

レイト「忘れられた竜の都か……………。」

 

 確か、ミリムの領地だったよな。

 クレイマンの奴、何を企んでやがる。

 すると、この街に近づく存在に気がつく。

 

蒼影「その数はおよそ三万……………。」

リムル「…………っと、少し待ってくれ。誰か来る。」

レイト「知り合いだ。」

 

 蒼影に報告を止めさせて、俺たちは、その知り合いの元に向かう。

 そこに居たのは、フューズだった。

 

フューズ「お久しぶりです、リムル殿、レイト殿。間に合ってよかった。」

 

 俺たちを見つけたフューズは、そう言う。

 間に合う?

 何が?

 

フューズ「本隊の到着には、今しばらくかかる。微力だが、先に動ける者だけ連れてきた。」

リムル「ええと、フューズ君?」

レイト「今日はどういった要件だ?」

フューズ「ふ……………ブルムンド王国と魔国連邦(テンペスト)の安全保障条約に従い、馳せ参じた。俺たちも、対ファルムス軍の末席に加えてくれ。」

 

 あ……………そういう事か。

 という事は、行き違いになってしまったみたいだな。

 俺たちは、すでにファルムスとの戦闘が終わった事を伝えた。

 

フューズ「は?終わった?どういう事ですか!?ミョルマイル達の話では、ファルムスの宣戦布告からまだ2週間も経ってないのでしょう!?」

 

 それを聞いたフューズは、そう叫ぶ。

 すると、リグルドが耳打ちしてくる。

 

リグルド「使者を送ったのですが………行き違いになってしまったようですな。」

 

 なるほどな。

 まあ、無理も無いか。

 

リムル「ええと、聞いてくれ、フューズ君。」

レイト「その前に、またお客さんだ。」

 

 そう。

 万能感知に反応があった。

 すると、奇才之王が報告する。

 

奇才之王『告。30騎の接近を確認。先頭は、武装国家ドワルゴン国王、個体名ガゼル・ドワルゴです。』

 

 来たのはガゼル王か。

 会うのは、テンペストとドワルゴンの国交樹立宣言以来か?

 魔力感知の上位スキル、万能感知は、検知できる範囲と精度が大幅に上昇した。

 次から次へと来るな。

 そう思っていると、ガゼル王がペガサスから降りて、声をかける。

 

ガゼル「久しいな、リムル、レイト。なんでも、魔王になったらしいな。」

リムル「まぁね。色々あってさ。」

フューズ「…………………っ!?」

 

 ガゼル王がそう言って、リムルがそう言うと、フューズが驚いた表情を浮かべる。

 

レイト「今後については、これから会議をしようと思ってな。」

ガゼル「ほう。ならば、俺も参加しよう。何かやらかすと思っていたが、まさか、魔王とはな。」

リムル「色々あったんだって。」

 

 俺とリムル、ガゼル王がそう話す中、フューズが震えた声で話しかける。

 

フューズ「魔王…………!?一体、どういう事です……………!?聞き捨てなりませんよ!?」

リムル「小便なら、そこを曲がって…………。」

フューズ「俺が知りたいのは、便所の場所じゃないですよ!!」

レイト「ですよね………………。」

 

 まあ、無理もないか。

 すると、フューズは真面目な表情で俺たちを見て、聞いてくる。

 

フューズ「リムル殿、レイト殿。真面目に答えて頂きたい。魔王になったとはどういう事ですか?ファルムス軍との戦争が既に終わった事と、何か関係があるのですか?」

 

 フューズはそう聞いてくる。

 俺とリムルは、顔を見合わせて、答える。

 

リムル「……………ガゼル王の言う通りだよ。必要があったから、魔王になった。」

レイト「ファルムス王国軍には、その為に生贄に……………。」

 

 俺とリムルがそう言う中、ガゼル王が食い気味に言う。

 

ガゼル「待て、リムル、レイトよ。知っているのなら、俺にも聞かせてほしい。ファルムス王国軍が進軍中、なぜか行方不明(・・・・)になった、その理由をな。

 

 ガゼル王は、そう言ってくる。

 それを聞いた瞬間、ガゼル王の意図を察した。

 

リムル「え……………?いや、待ってくれ。そうじゃなくて、俺たちが………………。」

バーン「俺もベスターからの報告でそう聞いたぞ。”進軍中のファルムス王国軍が、突然観測出来なくなった。現在、その原因を調査中である”とな。

 

 リムルが否定しようとする中、ガゼル王の配下の1人であるバーンさんが口を開く。

 やはりな。

 ベスターは何があったのかを、正確に伝えたはずだ。

 気分次第で万の軍勢を滅ぼせる個人は、発射までに複数の手順を要する核兵器以上の脅威だ。

 ガゼル王達は、俺とリムルがファルムス王国軍を虐殺した事実を有耶無耶にしようとしているのだ。

 まあ、真実を告げたら、混乱を煽りかねない。

 俺とリムルは頷き、フューズに答える。

 

リムル「あ、あー……………フューズ君。」

レイト「という訳で、ファルムス王国軍は行方不明になった。」

フューズ「………………………。」

 

 それを聞いたフューズは、とんでもない顔を浮かべていた。

 まあ、無理もないか。

 しばらくすると、フューズは、ため息をつく。

 

フューズ「はぁ……………強行軍で疲れているせいか、幻聴が聞こえた様だ。ファルムス軍は行方不明。なるほど、了解しました。だが、対策会議には、俺も出席させてもらいますよ。リムル殿とレイト殿を信じていますが、だからと言って、傍観は出来ない。」

レイト「分かった。」

 

 フューズはそう言うと、ため息を吐いて、何かを呟く。

 苦労してるんだな。

 まあ、フューズ達のブルムンド側や、ガゼル王達のドワルゴン側は、これで良いだろう。

 問題は、現在、近づいている存在だ。

 リムルとガゼル王が話す中、俺は口を開く。

 

レイト「さて、と。それで、そこのアンタらは何の用意だよ?」

リムル「うん?」

ガゼル「何者だ、貴様達は。」

 

 俺とガゼル王がそう言うと、フードを目深に被った集団が現れる。

 リムルは、気づいていなかったみたいだが。

 すると、先頭の人が口を開く。

 

???「これは、これは。地底に隠れ住むのがお好きな……………帝王ではありませんか。意外ですな。臆病なあなたが、魔王2人に肩入れなさるとは。」

ガゼル「ふん。貴様か。馬鹿みたいに高い所が好きなエルフの末裔よ。神樹に抱かれた都市より下りてきたのか。いや、その体は恐らくは……………。」

???「ああ、人造人間……………ホムンクルスを利用した物だ。魔王を名乗る者達の前に出るには、用心せねばね。」

 

 ガゼル王とそのエルフの代表的な人は、そう話す。

 人間と区別がつかないほどに精巧な人造人間(ホムンクルス)ね。

 シズさんの体も、シズさんの細胞とキメラ細胞を混ぜた物だから、ある意味では人造人間(ホムンクルス)なのかもな。

 すると、蒼華と蒼月が駆け寄る。

 

蒼華「リムル様、レイト様。」

リムル「蒼華、蒼月。」

蒼月「彼らは、魔導王朝サリオンの使者で、代表はエラルドという者で、なんでも、公爵家の当主様だとか。」

レイト「公爵家の当主?何でそんなお偉方が来てるんだよ?」

蒼月「それが………どうやら、エレ…………。」

 

 俺がそう聞いて、蒼月が答えようとした瞬間、そのエラルドという人物が叫ぶ。

 

エラルド「ぐぬぬぬぬ……………!貴様らか!」

レイト「え?」

エラルド「貴様らが、私の娘を誑かした、魔王ですか!」

リムル「あっ、へ…………え?」

エラルド「覚悟は出来ているんでしょうね!?」

 

 エラルドがそう叫ぶと、俺たちから離れて、魔法を発動させようとする。

 

エラルド「炎よ!燃えよ、爆ぜよ、荒れ狂え!集いて弾け、暴威を撒き散らせ!我が敵を爆散せすべよ!一欠片の肉片すらも残さず、塵となるまで焼き尽くせ!」

 

 そう詠唱すると、周囲に魔法陣が展開される。

 この人、何やってんだ!?

 すると、奇才之王が言う。

 

奇才之王『告。あれは超高等爆炎術式です。』

レイト『みたいだな………………ん?』

 

 それを見て、俺は気づいた。

 ハリボテなのだと。

 つまり、俺たちは試されている。

 まあ、私情も混じっているだろうが。

 どうしたもんかな。

 

エラルド「炎よ!燃えよ、爆ぜよ、荒れ狂え!集いて弾け、暴威を撒き散らせ!」

エレン「この…………アホタレがァァァァ!!」

エラルド「我が敵を爆散せすべ………ああっ!」

 

 エラルドが詠唱する中、エレンがそう叫びながらやってきて、杖でエラルドをぶっ叩く。

 エラルドは、ぶっ叩かれた事で、魔法は中断された。

 それをシズさん、カバル、ギドが見ていると、エレンはエラルドの方に向かう。

 

エラルド「ぐっ…………イッタ………!」

エレン「ちょっと、パパ!何しに来たのよ!」

エラルド「え?あっ、エレンちゃん!無事だったのか!」

エレン「無事も何も、私は自分の意思でここに来たのよ!」

シズ「パパ………………!?」

 

 エラルドがそう言って、エレンがそう言いながら叩くのを見て、シズさんは驚いていた。

 無論、俺たちも。

 魔導王朝サリオンの王家に連なる家系の出身だとは聞いていたが、まさか、公爵家の当主の娘さんだったとは。

 

エラルド「いや〜ハハッ!すまんなぁ。娘が魔王に攫われたと報告を受けたもので、つい慌ててしまったのですよ。」

レイト(何がついだよ。)

 

 ハッタリとはいえ、そんな物をやるなよ。

 そんなエラルドに、ガゼル王が話しかける。

 

ガゼル「親バカは治らんな、エラルドよ。」

エラルド「親バカなのではない。エレンちゃんが可愛いから、仕方ないのだ。」

ガゼル「それを世間一般では……………いや、何を言っても無駄よな。」

 

 ガゼル王がそう言うと、エラルドさんは途中から顔をデレデレさせる。

 それを見たガゼル王は、諦めたようだ。

 まじで親バカだな……………。

 

エレン「リムルさん、レイトさん。パパを紹介しても良い?」

リムル「あ、ああ頼む。」

エレン「こちら、魔導王朝サリオンの大公爵、エラルド・グリムワルトです。」

エラルド「どうぞ、お見知りおきを。ジュラの大森林の盟主にして、魔物を統べる者達よ。」

リムル「リムル=テンペストです。で、こっちが……………。」

レイト「レイト=テンペストです。それで、用件は、エレンさん絡みですか?」

エラルド「当然……………そんなわけは無い。」

 

 だろうな。

 もし、エレン絡みだけで来たとしたなら、本当に何しに来たんだって突っ込みたいが。

 

エラルド「今後、貴国との付き合い方を考える上でも、自分の目で見ておきたかったのだよ。娘が気に入った、貴殿らという人物を。」

レイト「なるほど。それで、判定はどうなんですか?あんなハッタリの魔法を使って。」

エラルド「お見通しですか。そうですね。貴方達がハッタリが通じない相手だというのは、理解しました。試させてもらった非礼を詫びます。」

リムル「やっぱりか。」

 

 だろうな。

 魔王に進化した影響か、他者の悪魔を見るのはもちろん、何を考えているのかも大体把握できるようになっていた。

 すると、エレンがガゼル王に話しかける。

 

エレン「ご無沙汰しております。ガゼル王。」

ガゼル「エリューンか?見違えたぞ。」

エラルド「エレンちゃんに手を出す事は許さんぞ、ガゼル!!」

 

 出来る男なのか、ポンコツなのか、いまいち判断しづらいな。

 ちなみに、エラルドは、エレンの平手打ちを食らった。

 

エラルド「そうでした。失礼ついでと言っては何ですが、先ほど言っておられた会議に、私も参加させて頂けませんかな?」

 

 エラルドはそう言ってくる。

 どうやら、俺たちの出方次第という事か。

 まあ、俺たちも、この人が信頼に足るのかどうかを判断するべきか。

 

リムル「分かりました。席を用意します。」

エラルド「ありがとうございます。」

 

 と言うわけで、エラルドも参加する事になった。

 とはいえ、いつもの会議室では手狭か。

 俺たちは、中庭で会議をする事になった。

 朱菜は、こちら側の紹介をする。

 

朱菜「……………続きまして、新しくリムル様の第二秘書になりました、ディアブロ。」

ディアブロ「以後、お見知りおきを。」

朱菜「そして、ジュラの森の管理者として……………。」

トレイニー「樹妖精(ドライアド)のトレイニーです。」

 

 トレイニーさんも参加する事になった。

 ちなみに、シズさんもテンペスト側で参加する事になった。

 

朱菜「以上が、テンペスト側の紹介になります。続きまして、来賓の方々を紹介します。武装国家ドワルゴンより、ガゼル・ドワルゴ国王。」

ガゼル「うむ。」

朱菜「魔導王朝サリオンより、エラルド公爵。」

エラルド「よろしく。」

朱菜「獣王国ユーラザニア戦士団より、三獣士のアルビス様、スフィア様、フォビオ様。ブルムンド王国より、自由組合支部長(ギルドマスター)のフューズ様。」

フューズ「あ……………はい。」

朱菜「そして、今後のファルムス王国を代表して、グルーシス様、ミュウラン様、ヨウム様。」

ヨウム「っほん!どうぞ、よろしく。」

ガゼル達「ん?」

 

 朱菜の紹介は続いた。

 それにしても、ドワルゴン、サリオン、ユーラザニア、ブルムンド、そして、今後のファルムス王国といった感じに、錚々たるメンバーが揃ったな。

 リムルは、朱菜に聞く。

 

リムル「朱菜、ヴェルドラはどうしてる?」

朱菜「はい。お召し物を変えられて、まもなくいらっしゃるかと。」

 

 服を変えさせたのか。

 まあ、あんな服装は、これからの会議には相応しくないしね。

 すると、ヴェルドラが到着する。

 

ヴェルドラ「待たせたな、皆の者!」

朱菜「まあ、よくお似合いです。サイズもぴったりのようですね。」

ヴェルドラ「そうであろう。実にナイスな衣装だ。褒めて遣わすぞ。ぐあ〜〜はははっ!」

朱菜「ありがとうございます。」

 

 ヴェルドラはそう叫ぶ。

 その手には、リムルから受け取った漫画と、ガンデフォンがあった。

 ちなみに、ガンデフォンに仮面ライダーの映像をダウンロードしてるので、ヴェルドラには見せておく。

 見せろとうるさかったので。

 すると、ガゼル王が口を開く。

 

ガゼル「リムル、レイトよ。其奴も部下か?」

ヴェルドラ「あ?」

ガゼル「初めて見る顔だな。」

リムル「ああ、皆さんに、俺たちの盟友を紹介したい。」

レイト「ヴェルドラだ。」

ヴェルドラ「えっへん!」

ガゼル「ヴェルドラ…………?」

エラルド「ヴェルドラ?」

フューズ「ヴェル……………ドラ?」

 

 俺の言葉を聞いた途端、ガゼル王、エラルド、フューズが固まる。

 まあ、無理もないが。

 ヴェルドラは、口を開く。

 

ヴェルドラ「我は暴風竜、ヴェルドラ=テンペストである!我と語る事ができた者は、数えるほどしかおらぬ故、貴様達は幸運である。光栄に思うが良いぞ!」

 

 ガゼル王達が唖然とする中、物音がする。

 それは、フューズがぶっ倒れた音だった。

 情報過多で気絶したのだろう。

 

エレン「あらら、気絶しちゃった。」

ヨウム「無理もねぇ。」

シズ「大丈夫………………?」

ヴェルドラ「ふむ。感極まったか。」

レイト「違うって。」

 

 シズさんがフューズの介抱をする中、ヴェルドラは見当違いの事を言って、俺は突っ込む。

 

リムル「なあ、ヴェルドラ。俺たちはこれから真面目な話をするんだから、邪魔しないでくれよ?」

レイト「会議中は顧問的な感じで大人しくしてくれれば良い。なんなら、散歩に出ても良いぞ?」

ヴェルドラ「ぐあはははは!釣れないな〜!ズッ友、マブダチ!我を仲間外れにするのはやめるのだ!」

 

 俺とリムルがそう言うと、ヴェルドラは頰を突いてくる。

 すると、ガゼル王が叫ぶ。

 

ガゼル「リムル、レイトよ!」

レイト達「ん?」

ガゼル「話がある……………!」

リムル「あ……………こちらもです。」

 

 こうして、テンペストの未来を決める為の重要な会議は、始まる前に中断された。

 その後、執務室にガゼル王とエラルド公爵を案内する。

 

朱菜「それでは、失礼します。」

 

 朱菜は、俺たちの紅茶を出して、そのまま後にする。

 しばらくの静寂の末、ガゼル王とエラルド公爵が詰め寄る。

 

ガゼル「どういう事だ!?暴風竜ヴェルドラが復活だと!?」

リムル「え〜と、簡単に説明するとだな……………。」

エラルド「その前に言っておきましょう。」

レイト「はい。」

エラルド「私は、魔導王朝サリオンの天帝陛下より、全権を任されています。私の言葉が、サリオンの立場を決める物となる。その事を踏まえて……………説明をお願いします。」

レイト「わ、分かった。ちゃんと説明するから。」

 

 そうして、俺とリムルは、経緯を話す。

 この世界に、リムルはスライムとして、俺はキメラという名のギフテリアンとして転生した事。

 封印の洞窟でヴェルドラと会った事。

 色々あって魔王となり、死んだ仲間を蘇らせて、ヴェルドラの封印を解除した事。

 

リムル「……………で、今に至るという事だ。」

ガゼル達「あああ………………。」

レイト「大丈夫か?」

 

 俺たちの話を聞き終えると、ガゼル王とエラルド公爵は、頭を抱えていた。

 

ガゼル「…………想定外だぞ。お前達が魔王になったのも問題だったが、それ以上の難問を用意するとは……………。」

リムル「いや〜そんなに褒められても。」

レイト「褒めてねぇだろ。」

ガゼル「ぐっ!」

 

 ガゼル王がそう言うと、リムルはそう言って、俺は突っ込み、ガゼル王は睨む。

 

エラルド「リムル殿、レイト殿……………彼の方は本当に本物の暴風竜なのですか?」

リムル「さて、どうでしょう?」

エラルド「いや、そうであろうな。邪竜の名を騙るような愚か者など、人間にも魔物にもおるはずが無い。」

レイト「だろうな……………。」

 

 エラルド公爵はそう断言した。

 まあ、無理もない。

 そんな中、俺、ガゼル王、エラルド公爵は口を開く。

 

ガゼル「しかし……………。」

エラルド「どうしたものか……………。」

ガゼル「公表するか、隠蔽するか。」

レイト「まあ、公表する流れで考えてる。」

エラルド「そうですか。どちらにしても、西側諸国は問題あるまい。我が魔導王朝サリオンも、天帝陛下に報告するだけで良いが、問題は……………。」

レイト「西方聖教会。」

ガゼル「そうだな。隠し立ては通じぬ。竜種の中でも、特に暴風竜を敵対視しておるからな。」

エラルド「そもそも、既に邪竜の復活には気づいているだろう。」

レイト「どっちみち、公表するしかないという事だな。」

ガゼル「そうだな。」

 

 やっぱり、立ちはだかってくるのは、西方聖教会か。

 という事は、再び坂口日向(ヒナタ・サカグチ)と戦う可能性があるって事か。

 借りを返したいところだな。

 すると、ガゼル王はリムルに向かって叫ぶ。

 

ガゼル「聞いとるか、リムル!」

リムル「は…………はい!」

エラルド「真剣に考えてもらわねば困りますよ。レイト殿を見習って下さい。」

リムル「すみません……………。」

 

 リムルは考え事をしていたのか、反応に遅れる。

 リムルが考えていたのは、ガゼル王とエラルド公爵が気が合いそうという事だった。

 というより、そんな下らない事を考えるなよ。

 

リムル「まあ、レイトの言う通り、ヴェルドラの事は公表するつもりだったし、西方聖教会は避けて通れなそうだし……………何とかするしかない。」

ガゼル「うむ。そう決めたのなら、俺に文句はない。」

エラルド「魔王と竜種が手を組むなど、これ以上に厄介な問題がありましょうか。笑えない冗談です。しかし、これは幸運でした。」

レイト「ん…………というと?」

 

 まあ、魔王と竜種が手を組むなんて、マジでやばい事なのだろう。

 俺の質問に対して、エラルドは紅茶を飲み、口を開く。

 

エラルド「……………今、この密談に参加できたのですから。我が国の立場を決定するのに、これ以上ない情報を得られたという物です。」

ガゼル「うむ。」

リムル「ほう……………。」

エラルド「魔王2人と竜種が共存する国に喧嘩を売るのは、愚かですからな。」

ガゼル「そういう事だ。」

 

 ガゼル王とエラルド公爵は、そう言う。

 すると、リムルがガゼル王に話しかける。

 

リムル「ほほう……………今の発言は、俺たちが西方聖教会を敵に回しても味方してくれる。そう受け取って良いのか?」

ガゼル「リムルよ。貴様はもう少し腹芸という物を覚えたほうが良いぞ。……………まあ、レイトの場合は、腹芸をしてても、相手の考えを見透かしそうだがな。」

レイト「あははは……………。」

 

 まあ、合ってるけどさ。

 相手の考えは読めるから、腹芸の必要がない。

 

ガゼル「つまりだな…………あえて敵対する理由もないのに、国を危険に晒す事はしない。西方聖教会には、義理もないのだから。分かるな?」

レイト「ああ。ガゼル王が協力してくれるのなら、心強いよ。」

リムル「だけど…………エラルドさん。サリオンとは、国交すら樹立していないのに、どうしてそこまで親身に……………。」

レイト「エレン絡みだろ?」

 

 ガゼル王の言葉に俺がそう返すと、リムルはエラルド公爵にそう聞く。

 エラルド公爵は、答える。

 

エラルド「リムル殿。公の場では、名前と役職で呼んでください。あなたは一国の主の片割れなのですから、他国の重鎮へ遜る必要などないのです。まあ、”さん”でも”殿”でも、好きに呼んでくれても結構ですがね。」

リムル「あ……………ありがとう。」

エラルド「それはともかく、質問にお答えしましょう。といっても、レイト殿が答えたのですがね。娘のエレンちゃ……………ううん!エリューンがリムル殿とレイト殿に魔王覚醒の情報を流した事で、その責任を追及されましてな。」

 

 やっぱりか。

 どうやら、早くもバレたみたいだな。

 まあ、無理もないか。

 

エラルド「言ってしまえば、娘が新しい魔王を2人も生み出したような物ですからな。ですが、それを知っているのは、私と天帝陛下のみ。そこで、リムル殿とレイト殿を見極め、万が一の場合は、討伐部隊を派遣する事も視野に入れ、私自ら出向いたという訳です。」

レイト「それで、その判断は如何に?」

エラルド「…………先ほど申した通り、友好を選びます。」

ガゼル「当然の選択よな。我が国も最初から、友好国であるテンペストを支持するつもりでおったわ。フッ……………。」

エラルド「だが、問題が無い訳ではない。リムル殿とレイト殿が滅ぼしたファルムス王国軍だが、流石に死者が多すぎます。四万の死者を出した魔王ともなると……………。」

 

 サリオンも、国交を樹立してくれそうだな。

 まあ、問題はそれだ。

 とはいえ、エドマリス王に言った時と同様に、俺たちは、既にその覚悟はできている。

 その罪を背負って生きていく。

 すると、ガゼル王は口を開いた。

 

ガゼル「それは安心しろ。」

リムル「ん……………?」

ガゼル「死体は全て消え、証拠はない。そして、捕虜を除いて、生存者も誰1人としていない。ならば、どうとでも筋書きを変えられよう。聞く者を皆、納得させられれば良いのだ。」

レイト「……………そうだな。それで?どういう筋書きなんだ?」

リムル「教えてくれ。ガゼル王。」

ガゼル「清濁併せのむ覚悟が決まっているようだな。それで良い。王たる者は、悔いてはならぬ。ふっ……………では、説明しよう。いいか、よく聞け。筋書きはこうだ。」

 

 ガゼル王は、筋書きを説明する。

 それから俺たちは、綿密な打ち合わせを行なって、会議を再開しに戻ったのだった。

 フューズは、目元にタオルを置いていた。

 

フューズ「はぁ……………。」

リムル「大丈夫か?」

シズ「大丈夫だよ、リムルさん。」

フューズ「ありがとうございます、シズ殿。こんな重要な話、予め聞かせといて下さいよ。」

リムル「あれ?言ってなかったけ?まあ、過ぎた事はもう良いだろう?」

フューズ「さらっと流すな!!」

レイト「大丈夫そうだな。」

フューズ「…………ったく、上になんて報告すれば…………はぁ……………。」

レイト「では、会議を再開する。まずは、今までの経緯から話させてもらう。」

 

 フューズも苦労してんな。

 俺たちは改めて、転生した事、ヴェルドラとの出会いから、今までの事を話した。

 その際、坂口日向(ヒナタ・サカグチ)との戦いに関しては、俺が話した。

 ヒナタと戦ったのは、俺だからな。

 それを聞いていたシズさんは、悲痛な表情を浮かべていた。

 シズさんとしては、弟子であるヒナタと俺とリムルが戦って欲しくなかったのだろう。

 それを聞いたフューズは、驚いた声を出す。

 

フューズ「なんと!?あの坂口日向(ヒナタ・サカグチ)と戦ったんですか!?」

レイト「ああ。とんでもない強敵だった。こっちの話を聞いてはくれないし、容赦なく攻撃してくるし。冷酷で恐ろしい殺人者……………という印象だな。あ、いや、すまん、シズさん。あなたの弟子なのに。」

シズ「ううん。こっちこそ、ヒナタがごめんね。」

 

 少し言い過ぎたか。

 俺はそう思い、シズさんに謝る。

 シズさんにとっても、弟子を愚弄されたと思われても仕方ないしな。

 シズさんは、複雑そうな表情を浮かべて、そう言う。

 

フューズ「う〜ん……………。」

リムル「どうした?」

フューズ「いえ……………我々が掴んでいた情報とは、少し印象が違いましてね。」

レイト「というと?」

フューズ「彼女は、自分を頼ってきた者には、必ず手を差し伸べているんです。助言を聞かなかった者は、二度と相手をしないそうですが……………。つまり、理性的で合理的な考え方の持ち主なんですよ。」

 

 そんな一面があるのか。

 とはいえ、それはあくまで、人間(・・)に対してだけだろう。

 元日本人であるとはいえ、今の俺は魔物だ。

 聞く訳がないか。

 すると、ガゼル王とエラルド公が口を開く。

 

ガゼル「ふむ。流石は情報操作に長けたブルムンド王国のギルマスだな。余の知り得る物と同じだと証言しておこう。」

エラルド「我々の情報とも同じですね。ルミナス教の教義を破った事は一度もなく、最も模範的な騎士……………純然たる法と秩序の守護者という事です。」

リムル「それほどの者なら、何故召喚儀式を阻止しようとしないんだ?」

レイト「子供を連れ去るなんて、許されざる行いなのにな。」

シズ「………………。」

 

 そう。

 それが気になっていたのだ。

 そんな奴なら、子供を異世界に連れ去る召喚儀式は阻止する筈。

 すると、フューズが口を開く。

 

フューズ「彼女が、各国の召喚を見逃していたかどうかは、本当の所は分からないでしょう?」

レイト「まあ、それはそうなんだが。」

フューズ「異世界人を呼び出す召喚魔法は、公には出来ぬ禁断の秘儀でしょう。西方諸国評議会では、禁止事項に指定されてますし。問われた所で、国家としても、簡単には認めぬでしょうな。」

リムル「やっていないと言われれば、それまでか……………。」

フューズ「ええ。」

エラルド「レイト殿に対して、問答無用だったのは、ルミナス教の教えに、”魔物との取り引きの禁止”という項目があるからでしょうな。」

 

 そういう事か。

 まあ、追及出来ないんじゃ仕方ないか。

 それはそれとして………………。

 

レイト「俺らには交渉の余地はないか。もし、西方聖教会が、俺たちの事を神敵と認定したら、ヒナタはそれに従う。間違いないよな?」

フューズ「そうでしょうな。」

 

 となると、神敵に認定されたら、大軍が再び押し寄せてくる。

 下手をしたら、ファルムスの時の二の舞になりかねない。

 すると、ディアブロが口を開く。

 

ディアブロ「クフフフフフッ……………!では、私が出向き、始末して参りましょう。」

レイト「ちょっと待て。ヒナタは強敵なんだぞ。」

リムル「お前に始末出来るのか?」

紫苑「そうですよ、ディアブロ。」

レイト達「ん?」

火煉「ディアブロが出向くくらいなら、私が始末します。」

紫苑「リムル様、私にお任せ下さい。」

 

 何で火煉まで?

 普段は紫苑を止める立場だろ!?

 すると、三人の間で火花が散る。

 

ディアブロ「これはこれは、紫苑殿、火煉殿。あなた達には、秘書の心得を教わった恩があるので、言いたくはありませんが……………残念ながら、あなた達では、ヒナタとやらには勝てぬでしょう。」

紫苑「面白い事を言う。」

火煉「つまり、あなたは私よりも強いということですか?」

紫苑「では、この三人の中で、誰が上なのかはっきりさせ……………!」

「「させんでよろしい!!」」

 

 紫苑達がそう言うのを見て、俺たちはそう叫ぶ。

 すると、ヴェルドラも驚いていた。

 

レイト「ヴェルドラ………………。」

リムル「まさか、お前……………。」

ヴェルドラ「わっ、わわわ……………我は、べっ、べべ……………別に混ざろうとかしておらぬよ!」

レイト「そう言いたいのなら、挙動不審気味な態度はやめろ。」

リムル「向こうから来るならともかく、こっちから行く必要はない。」

ヴェルドラ「ええ〜……………。」

レイト「”ええ〜”じゃない!俺たちは西方聖教会と敵対したい訳じゃない。」

リムル「お前達もだぞ。」

火煉達「すみません。」

 

 ヴェルドラが文句を言う中、火煉達は、そう謝る。

 

リムル「ううん!というわけで、ヒナタ及び、西方聖教会についての議論は以上だ。相手の出方次第では、争う事になるが……………ええ…………慎重に対応して、様子を見ることとする。」

レイト「あと、一つ言いたい事がある。もし、ヒナタ達が来た場合は、ヒナタの相手は、俺がする。」

火煉「えっ!?」

 

 リムルがそう言うのと同時に、俺はそう言う。

 すると、火煉はそう叫ぶ。

 

火煉「私では…………ダメなんですか?」

レイト「いや、火煉を信頼していない訳じゃないさ。」

リムル「だったらなんで…………?」

レイト「……………ヒナタには、借りがあるからな。その借りは、きっちり返す。その為さ。」

火煉「なるほど………………分かりました。レイト様を信じます。」

レイト「ありがとう。」

 

 俺がそう言うと、火煉は納得する。

 まあ、それだけじゃないんだけどな。

 ヒナタにツインキメラバイスタンプを押印して、悪魔が生まれた筈だ。

 あの時は、聖浄化結界(ホーリーフィールド)によって、出て来れなかった。

 その悪魔を見て、ヒナタの経緯を知るのも、悪くないと思うし。

 別に、運命の人だからという理由ではないのは確かだ。

 それよりも、気になる事がある。

 

ヒナタ『そうね。密告があったもの。』

 

 ヒナタはそう言った。

 という事は、ヒナタに俺たちの事を売った輩が居る。

 俺がシズさんを魔物にしたのを知っているのは、ごく限られる。

 可能性としてあるのは、エレン達3バカトリオにクロエ達を始めとする子供達、そして、神楽坂優樹。

 この中で疑わしきは。

 

奇才之王『告。その可能性が一番高いのは……………。』

 

 奇才之王も、ある人物の事を指摘する。

 そう、最初に会った時から、怪しいと思っていた奴。

 だが、目的はなんだ?

 俺とヒナタを争わせる事に何の意味がある?

 それに、あいつなら、イマジンとも繋がっていても不思議ではない。

 確証は無いが、あいつの悪魔には二面性がある。

 何を企んでいるのかは知らんが、もし牙を剥いたのなら、俺は容赦なく叩き潰す。

 すると、ガゼル王とリムルが話しかける。

 

リムル「レイト、レイト!」

ガゼル「レイトよ。」

レイト「あっ、悪い。考え事をしてた。じゃあ、本題に戻ろう。」

 

 まあ、あいつがイマジンとも繋がっていたのかは、まだ確証がない。

 現状、様子見という事にしておこう。

 俺たちは、テンペストの運命を決める議題を俎上に載せる時が来た。

 すると。

 

???「うわっ!?」

レイト達「ん?」

 

 上から何かがぶつかる音がして、上を見ると、天井部分に見覚えのある妖精が居た。

 そう、ラミリスだ。

 

ラミリス「うっ、うう……………。」

リムル「ラミリス?」

レイト「あいつ、何しに来たんだ?」

 

 俺たちは、ラミリスを回収する。

 

ラミリス「うぅ……………。」

リムル「一体、どうしたんだ?」

ラミリス「あっ!話は聞かせてもらったわ!この国、テンペストは……………滅亡する!」

レイト「なっ……………!?」

リムル達「何だって!?」

 

 ラミリスの言葉に、リムル達は驚く。

 無論、俺も。

 一方、ある北の土地では、赤髪の男が、緑の髪のメイドから話を聞いていた。

 

???「……………若い魔物2人が、魔王を名乗った?」

???「はい。それを理由に、魔王達の宴(ワルプルギス)が提案されました。発議はクレイマン様。賛同者は、ミリム様にフレイ様です。」

 

 それを聞いた赤髪の男は、呟く。

 

???「ミリム……………相変わらず、バカの考えは分からんな。」




今回はここまでです。
人魔会談が始まりました。
話が進む中、ラミリスがやってきて、テンペストの滅亡を知らせる。
そして、最後に登場した赤髪の男。
はてさて、誰なんでしょうか。
シズさんも、レイト達とヒナタが戦う事に心を痛めています。
次回は、人魔会談の後半です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
ちなみに、ジュウガVSオルテカにて、沢神りんなの手によって、圧縮SO-1合金を粒子化させて、ドライバーに定着させていましたが、こちらでは、魔鋼か魔鉱塊を粒子化させて定着させるという手法を取ります。
その為、ジュウガドライバーは、レイトに合わせて成長します。
オリジナルフォームに関しても、この特性を利用して出したいと思っています。
コラボはいつでも受け付けていますので、気軽にメッセージを送ってください。


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第38話 ラミリスの報せ

 俺たちが会議をする中、ラミリスがやってきた。

 

ラミリス「うぅ……………。」

リムル「一体、どうしたんだ?」

ラミリス「あっ!話は聞かせてもらったわ!この国、テンペストは……………滅亡する!」

レイト「なっ……………!?」

リムル達「何だって!?」

 

 ラミリスは、テンペストが滅亡すると言ったのだ。

 

ラミリス「そう!滅亡……………うわあっ!ちょっ、ちょっと……………何をするだ!?」

 

 ラミリスがそう言う中、ディアブロに羽の部分を摘まれ、あっさり捕まった。

 ちなみに、ヴェルドラも叫んでいたが、元の場所に戻った。

 

ラミリス「ぐぅ……………!私の全魔力を持ってしても、逃げ出せない!ぬぬぬ……………!」

ディアブロ「リムル様。この巫山戯た羽虫にどのような処分を下しましょう?」

ラミリス「何よ!何なのよ!私が何をしたって言うのさ!?」

 

 ラミリスが逃げようとする中、ディアブロはそう言う。

 そいつ、一応魔王なんだけどな……………。

 

ラミリス「こっ、こいつ……………!只者じゃないわね!」

 

 ラミリスはそう言う。

 まあ、ディアブロも、原初の悪魔の1人だしなぁ…………。

 すると、フューズが口を開く。

 

フューズ「あの、リムル殿、レイト殿。その妖精は…………?」

リムル「ああ、ラミリスって知り合いなんだ。」

レイト「あんなちんちくりんなナリだが、一応魔王だ。」

フューズ「はぁ……………魔王……………。」

 

 フューズがそう聞いてくるので、俺とリムルはそう言う。

 ヴェルドラの時と比べると、驚いてないな。

 すると、ラミリスが叫ぶ。

 

ラミリス「”あんなちんちくりんなナリ”ってどういう意味よ!?これでも私はね、十大魔王中、最強だと恐れられているんだからね!」

フューズ「へぇ………………。」

ラミリス「ちょ……………あんた、もっと驚きなさいよ!迷宮妖精のラミリスとは、私の事なんだけど!何でそんなにあっさりとした反応なわけ?」

フューズ「いや、その……………暴風竜の復活で驚きすぎて……………もう驚き疲れたというかなんというか…………。」

 

 ラミリスがそう聞くと、フューズはそう答える。

 それを聞いたカイジンと黒兵衛が、後ろにいるヴェルドラをチラリと見る。

 まあ、無理もないか。

 ヴェルドラが復活したと知った際には、ぶっ倒れたしな。

 一方、ラミリスは叫ぶ。

 

ラミリス「はあ……………暴風竜?ヴェルドラが復活したですって?んな訳ないでしょ!ヴェルドラは昔、私がワンパンで沈めてやったからね!口ほどにも無かったわよ!あいつの時代はとっくに終わったって訳!恐怖するなら、あんな微風竜じゃなくて、私を畏れ敬うが良いのさ!ハ〜ッハハハッ!!」

 

 ラミリスは高笑いしながらそう言う。

 そんな見た目で言われても、説得力が無いんだよな。

 俺は、ディアブロからラミリスを受け取り、ヴェルドラの方に向かう。

 その間、ラミリスは高笑いを続けていた。

 

レイト「ヴェルドラ。悪いけど、この子の相手をしてやってくれないか?」

ヴェルドラ「んー?我は今、忙しいのだ。操真晴人がどのようにして、不死身のフェニックスを倒すのかを見届けなければならぬ。」

 

 俺がそう言うと、ヴェルドラはそう言う。

 特撮オタクとしての禁忌となるが、こっちは本当に忙しいのだ。

 悪く思うなよ。

 

レイト「ああ、それな。晴人がオールドラゴンになって、フェニックスを太陽に向かって蹴って、フェニックスが永遠に死と再生を繰り返す感じだから。じゃあ、頼む。」

ラミリス「ヴェ……………!?」

ヴェルドラ「っ!?」

 

 俺がそう言うと、ヴェルドラは涙目で俺を見てくる。

 ラミリスも、ヴェルドラが居ると気づき、驚く。

 そして、ヴェルドラは燃え尽きて、ラミリスは気絶する。

 悪い事をしたが、他国の重鎮達を待たせているのだ。

 ラミリスの相手はヴェルドラに任せよう。

 すると、リムルが声をかける。

 

リムル「お前……………意外と容赦ないな。」

レイト「会議が脱線するのは面倒だからな。さっさと本題に入るぞ。」

リムル「お、おう……………。」

 

 俺がそう言うと、リムルは少し引いた表情を浮かべる。

 引くなよ。

 傷つくだろうが。

 

リムル「では、改めて、本題に入ろうと思う。公に発表するのは、以下の筋書きとする。」

レイト「俺たちは魔王を名乗るが、覚醒したのは伏せる。欲深いファルムス王国のエドマリス王が、テンペストへ軍を向け、戦争になり、敗北した……………とする。」

リムル「魔王2人によって滅ぼされたよりも、戦争によって敗北したとする方が、他の国々に受け入れられるだろう?」

レイト「その上で、ファルムス軍の大量の死者が、最悪の封印を解いてしまい、眠れる邪竜、暴風竜ヴェルドラを復活させた。」

 

 俺たちは、筋書きを話しながら、ヴェルドラの方を見る。

 

ヴェルドラ「ん?どうした?」

 

 ヴェルドラはそう言う。

 そんな中、俺たちは筋書きの続きを話す。

 

リムル「そのヴェルドラを、英雄ヨウムと俺たちが協力し、多大な犠牲を出しつつも説得して、怒りを鎮め、守護者として祀る事で、話をつけた…………とする。」

レイト「俺たちの魔王化に意味を持たせつつ、ファルムス王国に全ての罪を着せ、俺たちが正義であると主張する。」

フューズ「ふむ……………。」

 

 俺とリムルは、筋書きを話し終える。

 それを聞いていたフューズが、顎に指を付ける中、ガゼル王が口を開く。

 

ガゼル「考えてもみよ。人は、自分が理解できない存在を恐れ、決して認めようとはしない。たった2人で四万もの軍を滅ぼした者達に、友好を口にされても、信じる事など出来まいよ。」

フューズ「ふむ……………。」

ガゼル「だが、暴風竜の仕業であるとするならば、理解するのは容易だろう。何しろ、暴風竜は天災なのだからな。」

 

 まあ、ヴェルドラって、天災級(カタストロフ)だもんな。

 無理もないか。

 すると、ヴェルドラが反応する。

 

ヴェルドラ「クックック……………!我を天才と呼ぶとは、なかなか見所がある男よ。」

レイト「そっちの”てんさい”じゃねぇよ!」

 

 見当違いのことを言うんじゃない!

 すると、エラルド公も口を開く。

 

エラルド「私も、この筋書きを支持します。娘のせいでリムル殿とレイト殿が魔王になったと、恐れられ、恨まれるよりも、リムル殿とレイト殿が魔王になったおかげで、暴風竜に対する交渉が可能になったと感謝される方が良いですからね。」

エレン「パパ……………それってなんか、姑息ぅ。」

エラルド「っ!!」

シズ「アハハハ……………。」

 

 エラルド公がそう言う中、エレンはそう言って、エラルド公は傷ついた。

 結構辛辣だな。

 それを見て、シズさんは苦笑する。

 そんな中、空気を変えようと、俺は口を開く。

 

レイト「利点は他にもある。俺たちを警戒する他の魔王達が、脅威はヴェルドラのみだと勘違いしてくれるかもしれない。」

リムル「そうなったら、俺たちも動きやすくなる。何より、最大の利点は、俺たちがヴェルドラと交渉可能だと知れば、下手にちょっかいを出してくる国が減るだろうという事だ。反対意見があれば言ってくれ。特に、ヴェルドラには、俺たちの罪を背負わせてしまうが………。」

 

 俺とリムルはそう言う。

 まあ、クレイマン辺りはそれに引っかかりそうだが、流石に他の最古参の魔王に関しては、見破られるかもしれないがな。

 リムルがヴェルドラにそう聞くと、ヴェルドラは答える。

 

ヴェルドラ「何も問題ないぞ。」

リムル「ん……………。」

ヴェルドラ「我はお前達のカルマを共に背負うと決めていた。暴風竜の威、存分に使うが良い。」

レイト「ありがとう。」

 

 ヴェルドラ、ありがたいな。

 すると、リグルドを筆頭に、話し始める。

 

リグルド「確かに納得ですぞ。それならば、他国とも今までと変わらぬ交渉を続けられそうです。」

紫苑「はい!流石はリムル様!」

火煉「レイト様も、お見事です。」

リムル「いや。発案者はガゼル王だし、俺たちは意見をまとめただけだよ。」

ガゼル「ふん。」

 

 紫苑達がそう言う中、リムルはそう言う。

 これは、ガゼル王の発案を元に、俺たちが纏めた物だ。

 すると、スフィア達も口を開く。

 

スフィア「感謝するぜ、ガゼル王。これで、俺たちが動く時、リムル様とレイト様の援軍が期待できるって物だ。」

アルビス達「うん。」

紅丸「フッ。なるほど。俺たちはクレイマンに集中できるというわけか。これは、勝たねば俺が無能だったという事になるな。」

 

 そう。

 ヴェルドラに気を取られて、こちらの注意が逸れれば、動かしやすくなる。

 リムルが口を開く。

 

リムル「よし。魔王になった過程を公表するにあたっての筋書きだが……………ここまでは良いか?」

 

 リムルがそう聞くと、皆が頷く。

 俺は、それを見て、口を開く。

 

レイト「よし。それを基に、今後の方針を決める。ヨウム。」

ヨウム「ん?ううん!おう。」

エラルド、ガゼル「ん?」

 

 俺はヨウムを呼ぶと、ヨウムは咳払いをしながら立ち上がる。

 ガゼル王達がヨウムを見る中、リムルが説明する。

 

リムル「ファルムスの新しい国王として、英雄ヨウムを擁立し、新国家の樹立を目指したいと思う。」

フューズ「何ですって?ヨウムを?」

レイト「ああ。」

 

 リムルがそう言うと、フューズが驚き、ガゼル王とエラルド公は、ヨウムを見極める為か、目を細めていた。

 

リムル「まず、エドマリス王を解放して、テンペストへの侵攻に対しての賠償を行わせる。」

フューズ「しかし、あの国が賠償にまともに応じるとは思えんのですが……………。」

レイト「それが狙いだ。賠償問題は、あくまできっかけに過ぎない。本当の目的は、ファルムス王国内に内戦を起こさせる。一度、ファルムスを滅ぼして、新しい国に生まれ変わらせる。英雄ヨウムを新たなる王に据えて。」

リムル「幸い、彼は国民からの人気が高い。」

ヨウム「えぇ……………。」

エラルド「んん〜?ん?」

 

 そう。

 あの腐った国は、一度滅ぼして、ヨウムを新たな王に据えて、生まれ変わらせる。

 それを聞いたエラルド公は、首を傾げていた。

 まあ、無理もないか。

 そんな中、ガゼル王が口を開く。

 

ガゼル「うむ。よかろう。俺としては、その計画自体に異論はない。」

ヨウム「あっ……………!」

 

 ガゼル王はそう言うと、ヨウムと向き合う。

 すると、ガゼル王から覇気が出る。

 

ガゼル「ふん!」

ヨウム「うっ、うう……………!」

ガゼル「貴様は民を思い、苦しみを負って立つ覚悟があるのか!……………どうなのだ。」

 

 ヨウムが怯む中、ガゼル王はそう問う。

 ガゼル王は、ヨウムを試しているのだろう。

 ヨウム、頑張れ。

 王としての器を見せてやれ。

 ヨウムは、ガゼル王の問いに答える。

 

ヨウム「へっ……………知るかよ。」

ガゼル「…………………。」

ヨウム「俺だって、好きで王様になろうってんじゃないんだ。だがよ、俺を信じて託されたこの役目……………断ったんじゃ男が廃るだろうが!」

ガゼル「ほう?」

ヨウム「出来もしないと決めつけて、やる前から諦めたくないだけさ。……………惚れた女の前で、カッコつけたかったってのもあるけどよ。」

スフィア「ん?」

ミュウラン「はっ……………バカ…………。」

スフィア「ヒヒっ。」

 

 ガゼル王の問いに、ヨウムはそう答える。

 ヨウムがそう言うと、ミュウランは顔を赤くしながら俯き、スフィアはニヤニヤとする。

 

ヨウム「やるからには全力でやってやるさ!」

ガゼル「…………………。」

 

 ヨウムはそう言って、ガゼル王と睨み合いをする。

 すると、グルーシスが立ち上がる。

 

グルーシス「確かに、こいつはバカだ。だが、実にヨウムらしい。ドワーフの王よ。俺も保証する。こいつは確かにバカだが……………。」

ヨウム「何度もバカバカ言うな!」

グルーシス「無責任ではない。アンタのような英雄王と呼ばれるその時まで、このグルーシスが見届けると誓おう。」

ミュウラン「私も誓います。」

 

 グルーシスとミュウランは、そう言う。

 本当に、ヨウムは人を惹きつける何かがあるよな。

 良いやつだからな。

 それを聞いたガゼル王は、口を開いた。

 

ガゼル「ふっ……………ならばよい。……………何かあれば、俺を頼るが良い。」

ヨウム「えっ…………?」

グルーシス「ハハっ。」

 

 ガゼル王はそう言って、座る。

 ガゼル王のお墨付きが得られたな。

 

ガゼル「しかし、面白い男を見つけた物だな。」

エラルド「まさか、惚れた女の為に王になるなどと……………。」

ガゼル達「ハハハハッ…………!」

ヨウム「あっ、いや……………。」

 

 ガゼル王とエラルド公がそう言って、笑う。

 すると、フォビオがニヤニヤしながら言う。

 

フォビオ「やるじゃねえか、グルーシス。まさか、俺たちの前で、堂々とカリオン様を裏切る宣言をするとは。」

グルーシス「うっ!いや、そんなつもりでは……………!」

レイト「ふっ。」

 

 フォビオの発言に、グルーシスがオロオロするのを見て、俺も笑う。

 ガゼル王は、ヨウムに言う。

 

ガゼル「ヨウムよ。我が国が貴様に望むのは、農作物の生産だ。」

ヨウム「んん?」

ガゼル「他国と競合する分野ではなく、独自の分野を伸ばす方が、共存共栄しやすいだろう。」

リムル「俺たちからも頼む、ヨウム。」

レイト「欲しい作物は要相談で。」

ヨウム「流石だな、旦那方。任せてくれ。ファルムスは農業も発展しているし、受け入れられると思うぜ。」

 

 俺たちは、ちゃっかりとそう言う。

 すると、フューズが口を開く。

 

フューズ「では、ブルムンド王国を代表して、提案があります。」

リムル「提案?」

フューズ「我らも、ヨウム擁立計画に協力出来そうですので。」

レイト「へぇ。」

フューズ「ブルムンドは、ファルムスの貴族、ミュラー侯爵とヘルマン伯爵を懇意にしておるのです。彼らと交渉し、こちらの陣営に加わってもらうというのは、どうでしょうか?ヨウム殿が決起した際には、後ろ盾として、頼りになると考えます。」

 

 なるほど、貴族と繋がりがあるのか。

 確かに、後ろ盾が出来るのは、ありがたいよな。

 とはいえ、ブルムンドの王様が何を考えているのかは気になるが。

 

リムル「それはありがたいが……………。ギルマスとはいえ、そんな事をここで決めて良いのか?」

フューズ「今の俺は、国家所属の立場であるとご理解ください。ギルマスとしてではなく、ブルムンド王国情報局統括補佐としての発言です。」

レイト「ふむ。その貴族達を信用できると?」

フューズ「ミュラー侯爵は、ブルムンド王と遠縁に当たりますし、ヘルマン伯爵は、ミュラー侯爵に大きな恩があり、裏切るとは考えられません。」

リムル「なるほど……………。」

 

 ミュラー侯爵は、ブルムンド王と遠縁に当たるのか。

 リムルは、フューズに聞く。

 

リムル「しかし、そんな秘密をここで暴露して大丈夫なのか?」

フューズ「ハハハハッ!大丈夫です。それに、どうせご存知だったのでしょう?ドワルゴンの暗部の者達ならば、我がブルムンドの情報局に匹敵しますからね。」

ガゼル「うむ。」

リムル「よし、分かった!フューズ。ミュラー侯爵とヘルマン伯爵とやらに、速やかに、そして、密かに連絡を頼む。」

フューズ「ああ。任せて下さい。」

リムル「ヨウム。聞いたな?」

ヨウム「ああ。任せろよ。」

リムル「よし。英雄ヨウムの国取りは、そんな感じだな。英雄の凱旋を華々しく演出しようじゃないか!」

一同「おう!」

 

 リムルがそう言うと、皆が返事をする。

 すると、エラルド公が笑いだす。

 

エラルド「ハハハハッ!」

ヨウム「ん?」

レイト「………………。」

エラルド「揃いも揃って、国を担う人々が、他者を疑いもせず、本音で語り合うなどと…………フフッ。これでは、警戒してる私の方が滑稽ではないですか。ハハハハッ!」

エレン「ちょっと、パパ。」

 

 エラルド公は笑い終えると立ち上がり、フューズの方へと向く。

 

フューズ「ん?」

エラルド「君に問おう。君は、魔物であるリムルとレイトとやらを、本当に信じているのかね?」

フューズ「それは……………どういう意味ですか?」

 

 エラルドの問いに、フューズはそう聞く。

 恐らく、何かあるな。

 

エラルド「魔物が勝手に国を名乗ろうが、何をしようが、ブルムンドはそれを正式な国家と認めなくても良かったのではないかね?まして、国交まで結ぶ必要は無かっただろう。」

フューズ「んん……………。」

エラルド「つまりだね。私なら、取引だけは行いつつ、西方聖教会の出方を見ていただろう。利益を享受しつつも、裏でこっそりと通報し、問題がないかどうか、全てを一任してね。それが、小国なりの立ち回り方という物では無いのかね?」

 

 エラルドは、そう言う。

 確かに、利益だけを得つつ、そうやるのもありだろう。

 少し、聞いてみるか。

 俺の他者の考えを見通す力は、万能という訳では無い。

 そこまで会っていない場合は、見通すのが少し難しいからな。

 確実性を持たせよう。

 

レイト「俺も聞きたいな。フューズ達の事を信じていない訳ではないが、ブルムンド王が何を考えているのかを。」

フューズ「えぇ……………。ハァ……………あああ〜〜〜!分かったよ!分かりましたよ!それじゃあ、本音で語らせてもらうとしましょうか。」

 

 そう言って、フューズは語り出した。

 フューズも、エラルド公の意見とほぼ同じ感じで考えていたようで、知り合いであるベルヤードという貴族と一緒に、ブルムンド王に進言したそうだ。

 すると、返答は。

 

ブルムンド王『信頼関係を結び、共存共栄の関係を築く。それしかない。』

フューズ『し、しかし……………。』

ブルムンド王『豚頭帝(オークロード)暴風大妖渦(カリュブディス)を退ける国だぞ?仲良くせんと、我が国が滅ぶじゃろうが……………!』

 

 そう答えたそうだ。

 あの国王、愛くるしい見た目に反して、曲者だな。

 とはいえ、思惑を知る事が出来たな。

 

フューズ「……………そりゃ、ドワーフ王国やアンタの所は大国だし、選択肢も選び放題でしょうがね。我が国みたいな弱小国家は、一つ間違うと終わりなんですよ。どうせ命運をかけるなら、西方聖教会に助けを求めるのではなく、魔物の主達を信じる方がいい。まっ、それが理由です。レイト殿、満足ですか?」

レイト「ああ。ブルムンド王の思惑を知れたしな。」

 

 そういう事か。

 ブルムンドは、そういう感じなんだな。

 一方、エラルド公は、フューズに尋ねる。

 

エラルド「……………で、君は、リムル殿とレイト殿を助けるためにやって来た…………それもブルムンド王の判断かね?」

フューズ「その通りですよ。相互安全保障条約を締結した以上、必ず遂行しろと命じられました。……………尤も、国が約束を違えたとしても、俺はここへ来てましたけどね。俺は自由人なんで。フッ……………何でこんな役、引き受けたんだろ。」

 

 エラルド公の質問に、フューズはそう答えた後、そう呟く。

 フューズも苦労してるんだな。

 そんな中、エラルド公が話しかける。

 

エラルド「すまなかったね、フューズ殿。だが、君のおかげで、ブルムンド王国の思惑がよく理解出来ましたよ。」

ガゼル「俺がリムルとレイトを信じているのだから、疑うまでもあるまいよ。」

エラルド「そうは言うがな、ガゼル。魔物の国と新たに国交を結ぶ決断など、そう簡単には下せぬよ。私は今、ブルムンド王に敬意を抱いた所さ。」

ガゼル「フッ。抜かせ。最初から決断していたからこそ、貴様が出てきたのだろう。」

 

 ガゼル王とエラルド公は、そう話す。

 そんな2人を見て、俺は口を開く。

 

レイト「それで、エラルド公。結論は如何に?」

エラルド「私なりに決断は出ているがね。それを答える前に、レイト殿、リムル殿。もう一つ、良いですかな?」

リムル「ん?」

エレン「ちょっとパパ。勿体ぶらずにさっさと答えてよ。」

エラルド「え………………。」

 

 俺がそう問うと、エラルド公は俺とリムルを見る。

 すると、エレンは容赦なくそう言う。

 それを聞いたカバルとギドは、慌てる。

 

カバル「ちょっ!お嬢様!それはまずいですって!」

ギド「そうでやすよ!かっこいい所を見せようと頑張っておられるんですから!」

シズ「それはちょっと、追い打ちになってない?」

エラルド「んん……………。」

ガゼル「策士も地に落ちたな。」

 

 カバルとギドがそう言う中、シズさんはそうつっこんで、エラルドは照れ、ガゼル王は呆れる。

 俺とリムルは、アイコンタクトをして、魔王覇気を出す。

 

エレン達「あっ……………!」

リムル「聞こうか、エラルド。」

レイト「アンタの問いは何だ?」

エラルド(魔王覇気……………!?なるほど。これは凄まじい……………!)

 

 俺とリムルの問いに、エラルドはそう思いつつも、俺たちに問う。

 

エラルド「では、魔王リムルに魔王レイトよ。あなた達に問いたい。貴殿達は、魔王として、その力をどう扱うおつもりなのか。」

 

 エラルドの問いに、俺たちは魔王覇気を解除して、リムルが口を開く。

 

リムル「え?何だ、そんな事か。」

エラルド「何だ……………?」

リムル「答えは簡単。俺たちは、俺たちが望むままに、暮らしやすい世界を作る。出来るだけ、皆が笑って暮らせる豊かな世界をな。」

エラルド「そんな夢物語のような事が、本当に実現できるとでも!?」

レイト「出来るかどうかじゃない。やるんだよ。その為の力だ。力無き理想は戯言で、理想なき力は虚しいだけさ。」

 

 リムルの答えに、エラルド公がそう問うが、俺はそう答える。

 理想を実現する為には、それ相応の力が必要だ。

 その為のギフの力だ。

 例え、生まれが悪とされる力でも、使い方次第で、善にも悪にもなる。

 だからこそ、俺は理想を叶える為に、この力を使う。

 それを聞いたエラルド公は、笑みを浮かべる。

 

エラルド「フッ……………。アハハッ!愉快だ!これは愉快ですな!魔王リムルに魔王レイトよ。カルマ深き魔王達よ。あなた達が覚醒出来た理由が、私にも理解できましたぞ。(エレンちゃんが懐く訳だな。)」

 

 エラルド公はそう思いながら言い、跪く。

 

エラルド「失礼しました。魔王リムルに魔王レイトよ。私は魔導王朝サリオンよりの使者として、貴国……………ジュラ・テンペスト連邦国との国交樹立を希望致します。何卒、良きお返事を賜りたく存じます。」

エレン「パパ!」

カバル「お、お嬢…………!」

ギド「ちょっ!」

 

 エラルド公がそう言うと、エレン達も頭を下げる。

 俺とリムルの答えは決まっていた。

 俺は、手を差し伸べる。

 

リムル「こちらからも、良き関係を築きたいと思っていた。」

レイト「その話、是非ともお受けしたい。」

 

 俺がそう言うと、エラルド公も立ち上がり、握手をする。 

 それを見て、一同は拍手をした。

 こうして、テンペストと魔導王朝サリオンとの国交が樹立する事になった。

 ブルムンド、ドワルゴンに続いて、人類国家としては、三つ目だ。

 リムルは、紅丸に話しかける。

 

リムル「よし、紅丸!」

紅丸「はっ。」

レイト「敵はクレイマン。叩き潰すぞ!」

紅丸「待ってましたよ。その命令を!」

紫苑「はい!腕がなります!」

火煉「ええ。」

レイト「それで、三獣士及び、獣人の戦士達も。」

リムル「シズさんも。」

アルビス「我らは皆、今はリムル様とレイト様の指揮下ですわ。」

スフィア「ああ!任せてくれ!」

フォビオ「うん。」

シズ「ええ!」

 

 俺たちがそう問うと、皆はそう答える。

 すると、ガゼル王が問う。

 

ガゼル「リムル、レイトよ。それで……………勝てるのだろうな?」

レイト「勝てるかどうかじゃない。勝つだけだ。俺たちを怒らせた報いを受けさせてやる。」

エラルド「簡単に言いますね。クレイマンといえば、数多の魔人を配下に擁する魔王。油断のならない相手ですよ。」

リムル「関係ないな。戦いは数ではなく、質だ。」

エラルド「やれやれ……………自分の常識が崩れる音が聞こえそうです。」

 

 俺とリムルの答えに、エラルドはそう言う。

 こうして、後に人魔会談と呼ばれる会議は終わり、俺たちはまた、理想に向けて、大きな一歩を踏み出した。

 一方、ジスターヴの城では、クレイマンがワインを飲んでいた。

 ラプラスが、クレイマンに話しかける。

 

ラプラス「聞いたで。ユーラザニアへ攻め込むんやて?」

クレイマン「ああ。首都はミリムが消し飛ばしたが、あの国は人口だけは多い。各地に点在する集落には、人間も多数住んでいる。私の覚醒の為の、ちょうど良い生贄になってくれるだろう。そう思わないか?」

 

 クレイマンは、そんな事を企んでいた。

 それを聞いていたラプラスは。

 

ラプラス(非戦闘員も含め、皆殺しって事かいな。なんや、強引すぎるっちゅうか…………ちょいと焦りすぎちゃうか?クレイマン。)

 

 ラプラスは、そう思っていた。

 そして、クレイマンに聞く。

 

ラプラス「なあ。魔王達の宴(ワルプルギス)っちゅう重大事の前に、動かんでもええんやないか?それに、魔王間には、相互不可侵条約があるんやろ?」

クレイマン「ああ。それなら問題ない。薬指(やくし)のミュウランが、あのスライムとキメラに殺された。それは、魔王の座を奪うという私に対する脅迫であり、それを焚き付けたのが、魔王カリオンだと判明した。そう主張するつもりだよ。」

ラプラス「なるほど。向こうが先に裏切ったんなら、筋は通……………って、ミュウランちゃん、殺されてもうたんかいな!?」

 

 クレイマンの発言に、ラプラスは驚く。

 そんなラプラスの質問に、クレイマンは答える。

 

クレイマン「ああ。支配の心臓(マリオネットハート)で、一部始終聞いていたし、預かっていた心臓は、灰になったからね。」

ラプラス「そうか。ええ子やったんになあ………………。」

クレイマン「ハハハハッ。君は優しいな。この前、ティアにも言われたよ。”道具は大切に扱わないとダメだ”って。君が教えたんだってね、ラプラス。だからこそ、道具を壊した者達には、責任を取ってもらわないと。そうする事で、道具への供養になるという物だろう?」

ラプラス「……………せやな。せめて、その死を無駄にするのだけはやめてやりたいわな。」

クレイマン「そうだろう?君なら理解してくれると思っていたよ。」

ラプラス(そういう意味とちゃうんやけどな……………。)

 

 クレイマンはそう言う。

 ラプラスの意図が、伝わっていなかった。

 俺たちの偽装に、全く気づいていなかった。

 ラプラスはふと思い、クレイマンに聞く。

 

ラプラス「なあ、クレイマン。ほんまに自分の意思で、今回の作戦を決めたんやな?」

クレイマン「私に命令出来るのは、カザリーム様と、恩のあるあの方のみ。それは君が一番よく知っているだろう。」

ラプラス「……………分かった。ならええわ。わいはもう行くけど、最後に友人として忠告や。魔王ミリムの支配を過信せん方がええ。あれは、カザリーム会長よりも昔からおる太古の魔王の1人なんや。せいぜい油断せんようにな。ほな。」

 

 クレイマンの言葉に、ラプラスはそう言う。

 ラプラスは、忠告しながら去っていく。

 すると、クレイマンが持っていたワイングラスが割れる。

 

クレイマン「(私が何者かに影響されているとでも言いたいのか?)忌々しい…………!」

 

 クレイマンは、そう思う。




今回はここまでです。
人魔会談の話です。
レイトの悪魔を介して、思考を見通す能力は、接触時間に比例して、見通せる範囲が広がります。
ブルムンド王ととは、少ししか会っていなかった為、あまり見通せなかったんです。
次回は、ラミリスの知らせから入ります。
そして、ちょっとしたレイトの悪魔みたいな残虐性が垣間見えます。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
転キメ日記の6話にも記載しましたが、まおりゅうとこのすばがコラボしたので、転キメとこのすばとギーツの小説でコラボしようかなと検討しています。
どんなストーリーにするのかは、検討中です。
もし、意見があればお願いします。
あと、転スラとギーツの小説をやろうかなと検討しています。
オリ主がキツネに転生して、ギーツに変身するみたいな感じで。
もし意見があれば、受け付けます。
これからも応援の程、よろしくお願いします。


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第39話 会議は踊る

 こうして、人と魔物の長い会議は終わったに思われたのだが……………。

 そんな中、俺とリムルはある事を呟く。

 

レイト「そういや、あいつ(ラミリス)、何しに来たんだ?」

リムル「確かに……………。」

 

 そう。

 ヴェルドラにラミリスを預けていたのだ。

 そんなラミリスは、漫画を読んでいた。

 するとラミリスの隣に、飲み物を置く人がいた。

 あいつらは、俺たちが壊したゴーレムの代わりに作った、フランとベレッタだ。

 2人は、俺たちに気づくと、会釈をする。

 俺たちが寄ると、2人は喋り出す。

 

ベレッタ「この度は、魔王への進化、おめでとう御座います。」

リムル「ああ。元気そうで何よりだ。」

ベレッタ「はは。ありがたきお言葉です。」

レイト「ああ。ラミリスの言う事も、無茶な命令以外は、ちゃんと聞いてやれよ。」

フラン「お任せ下さい。ご期待に応えてご覧に入れます。」

レイト「つうか、お前ら、何しに来たん?」

「「あっ………………。」」

 

 元気そうで何よりだ。

 俺がそう聞くと、ベレッタとフランの2人は、ラミリスに声をかける。

 

ベレッタ「ラミリス様。このような事をしている場合ではございません。早くリムル様とレイト様にあの事をお知らせしないと。」

ラミリス「うるさいわね。私は今、とても忙しいの。」

フラン「ここに来た目的を思い出して下さい!」

 

 ベレッタとフランがそう言う中、ラミリスは漫画に夢中になっていた。

 俺とリムルは、ヴェルドラの方を見る。

 すると、ヴェルドラは、やれやれと言わんがばかりのリアクションを取る。

 やれやれじゃねぇよ。

 漫画を見せたのはお前だろ。

 すると、ラミリスは叫ぶ。

 

ラミリス「だから!私はね、運命の出会いをした訳よ!この漫画という素晴らしい書物の中で、この色男達の中から、ヒロインが一体誰を選ぶのか、それを見届けるまでアタシは……………!」

リムル「おい、ラミリス。そのヒロインが誰とくっつくかバラされたくなければ、さっさと来た目的を言え。」

ラミリス「はい!」

 

 ラミリスがそう言う中、リムルはそう言う。

 すると、ラミリスは浮かび上がる。

 そして、俺たちを指差してくる。

 

ラミリス「えへん!……………では、もう一度言うわ!この国、テンペストは滅亡する!」

レイト「それは聞いたからどうでも良いわ。」

ラミリス「まあでも、私もテンペストの滅亡なんて、望んでないわけ。それでわざわざ知らせに来てあげたのよ!感謝しなさいよね!」

リムル「なんで滅亡するんだ?」

ラミリス「慌てないで!落ち着いて!良い?話には順序があるのよ。」

レイト「別に慌ててねぇよ。」

 

 まあ、知らせに来てくれたのはありがたいが。

 とはいえ、クレイマン絡みか?

 すると、ラミリスが口を開く。

 

ラミリス「魔王クレイマンの提案でね。」

リムル「クレイマンだと?」

ラミリス「魔王達の宴(ワルプルギス)が発動されたのよ!」

レイト「魔王達の宴(ワルプルギス)?」

 

 聞いた事がない単語だな。

 魔王間で何かやるのか?

 すると、ラミリスとエラルド公が口を開く。

 

ラミリス「魔王達の宴のことよ。全ての魔王が集う特別な会合!それが、魔王達の宴(ワルプルギス)。」

エラルド「古い文献には、こう記されてありました。”魔王が集い、大戦が起きた”と。」

リムル「大戦?」

エラルド「魔王が集いしその日を、西方聖教会が”魔王達の宴(ワルプルギス)”と命名したそうですよ。」

 

 そういうもんか。

 俺は気になる事があり、ラミリスに聞く。

 

レイト「つまり、魔王達は戦争を始める為に集まるって事か?」

ラミリス「違うわよ。私だって暇じゃないし、戦争なんて面倒な真似したくないじゃん?」

レイト(暇そうに見えるが。)

 

 お前の場合は、暇そうに見えるんだよ。

 とはいえ、魔王間で戦争をするのは無いって事か。

 じゃあ、魔王達の宴(ワルプルギス)って何なんだよ。

 そう思っていると、ラミリスが口を開く。

 

ラミリス「あのね。魔王達の宴(ワルプルギス)って、ちょいちょい開催されてるのよ。」

リムル「ん?」

ラミリス「魔王が集まってお茶を飲みながら、近況報告や面白い話題を話し合う場ってわけ。だから、戦争とか、そんな大袈裟な物じゃ無いんだよ。」

レイト「だったら、お茶会如きでテンペストが滅亡する理由なんて無いだろ。」

ラミリス「だから違うって。問題は魔王達の宴(ワルプルギス)その物じゃなくて、今回の議題なのよ。」

リムル「議題?」

 

 議題はあるんだな。

 まあ、近況報告もする場らしいし、それもあるか。

 すると、ラミリスは口を開く。

 

ラミリス「良い?魔王達の宴(ワルプルギス)って、魔王3人の賛同があれば開催出来るの。今回、クレイマンに賛同したのは、フレイ。それからミリム。」

レイト「ミリムか。」

アルビス「フレイ………………。」

 

 なるほどな。

 だが、ミリムの性格上、クレイマンに賛同するとは思えないのだが。

 フレイの名を聞いた三獣士達は、顔を顰める。

 そんな中、ラミリスは議題を言う。

 

ラミリス「議題は……………『ジュラの大森林に新たな勢力が誕生!その盟主2人が、魔王を騙った』……………よ。アンタ達、本当に魔王を名乗っちゃった訳?」

リムル「後悔も反省もしてないぞ。」

レイト「右に同じく。」

ラミリス「アンタ達なら、不思議じゃないわよね。色々と面倒が起きると思うけど、それだけの実力があるなら大丈夫じゃない?」

火煉達「うん。」

 

 ラミリスからしたら、問題なしという事か。

 なら安心だな。

 それを聞いた火煉、紅丸、紫苑が頷く中、リムルはラミリスに聞く。

 

リムル「クレイマンの目的は、やっぱり、俺たちに対する制裁か?」

ラミリス「”制裁するならご自由に”ってのが、我々の業界での暗黙のルールなの。」

レイト(業界って………………。)

ラミリス「今回、わざわざ魔王達の宴(ワルプルギス)を提案した理由っていうのがね……………魔王カリオンの裏切りなんだってさ。」

 

 業界って。

 芸能人みたいな言い方をするなよ。

 すると、ラミリスがそう言うと、三獣士が反応する。

 

アルビス達「はっ!?」

フォビオ「どういう事だ?」

ラミリス「誰よ?アンタ達。」

リムル「カリオン配下の三獣士の皆さんだ。」

 

 フォビオがそう聞くと、ラミリスはリムルにそう聞いて、リムルが答える。

 三獣士がラミリスを睨む中、ラミリスが口を開く。

 

ラミリス「ふ〜ん……………。だけど、私に怒ってもしょうがないじゃない。」

アルビス「……………カリオン様が何を裏切ったと言うのですか?」

ラミリス「ジュラの大森林への不可侵条約を破り、ミュウランとかいう魔人が、クレイマンの配下だって事をアンタ達にバラしたんでしょ?」

レイト「それで、俺たちがミュウランを殺したと言うのか。」

 

 なるほど、そういう事か。

 俺たちがチラリとミュウランを見ると、皆の視線がミュウランに向く。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「ふむ。クレイマンは、ジュラの森を制圧するつもりか?」

ラミリス「アンタね…………!そんなに落ち着いてるけど、これって大事なのよ!カリオンはミリムに倒されちゃったらしいし、アタシの所に届いた知らせの時点で、クレイマンは既に軍事行動を起こしてるの!アンタ達全員を始末する気満々なのよ!もう制裁どころじゃなくて、これは先手を取られた戦争なの!!」

 

 へぇ………………。

 そういう事か。

 すると、俺から自然と笑みが溢れる。

 

レイト「フフフ………………!フフフフフフフ……………!!フハハハハハっ!!!」

ラミリス「ちょっ!?あんた、何で笑って………………っ!?」

 

 ラミリスがそう言う中、突然言葉を詰まらせる。

 そんな中、俺は口を開く。

 

レイト「いやいや……………裏でずっとコソコソされてて、気に食わなかったんだ。ようやく、分かりやすい敵意を向けてきたもんだな、魔王クレイマン。良いぜ。そっちがその気なら、本当に叩き潰してやるよ……………!フフフフフフフ……………!!」

 

 俺がそう言う中、周囲の皆は、ドン引きしていた。

 それを見ていたラミリスは、リムルに話しかける。

 

ラミリス「……………あいつ(レイト)、なんか残虐性が増してない?」

リムル「だよな……………。」

 

 そんな風に話していた。

 そんな中、火煉が俺に話しかける。

 

火煉「あの……………レイト様。」

レイト「何だ?」

火煉「話が逸れてますよ。」

レイト「ああ、悪い。」

 

 おっと、話を逸らしてしまったな。

 つい、クレイマンを叩き潰す好機が訪れたもんだから、本音が漏れちまった。

 そんな中、リムルはラミリスに話しかける。

 

リムル「まあ、そもそも、俺たちはミュウランを殺してないんだから。」

ラミリス「どういう意味?」

リムル「クレイマンは出鱈目を言っているって事さ。」

ラミリス「その証拠はある訳?」

レイト「その証拠なら…………そこに居るよ。」

 

 リムルとラミリスがそう言う中、俺はそう言って、ミュウランの方を指差す。

 皆の視線がミュウランに向く中、ミュウランは口を開く。

 

ラミリス「ん?」

ミュウラン「あの……………魔王ラミリス様。殺された魔人というのは、私なのです。」

ラミリス「え?」

ミュウラン「私がミュウランです。」

 

 そう。

 俺たちは殺してはいない。

 まあ、3秒は死んだが。

 すると、ラミリスは表情を変えまくる。

 

ラミリス「は?ん〜……………ああっ!んん?ん〜?いい〜……………あっ!分かったわ!犯人はクレイマンで決まりね!」

リムル「へへへっ……………。」

レイト「やれやれ……………。」

ラミリス「クレイマン。私まで騙そうとして……………だけど、この名探偵ラミリス、騙されたりしないわよ!精霊女王のこう見えても年を重ねて賢い私!ばっちゃんの名にかけて。……………ツッコミなさいよ!誰がばっちゃんよ!失礼ね!」

レイト(あっさり何かに影響を受けているな……………。)

 

 確か、金田一の決め台詞だったよな。

 影響を受けすぎだろ。

 

リムル「なあ、ラミリス。一つ聞きたい事がある。」

ラミリス「ん?何さ。この名探偵ラミリスになんでも言ってごらん。」

レイト「ミュウランが殺されたという俺たちの餌に食いついて、クレイマンは動き出した。他の魔王はどう動くと思う?」

 

 そう。

 気になるのはそこなのだ。

 クレイマンが魔王間でどう思われているのかは知らないが、もしクレイマンに同調して、その制裁に賛同する魔王が出てもおかしく無い。

 そう思って聞いてみた。

 すると、ラミリスは口を開く。

 

ラミリス「え?知らないわよ。これこれこういう理由で魔王達の宴(ワルプルギス)やるから、参加してねって言われただけだし?」

リムル「……………魔王達の宴(ワルプルギス)はいつだ?」

レイト「正確な日時を知りたい。」

ラミリス「えっとね……………1、2…………3日後の新月の夜だね。」

 

 比較的すぐだな。

 流石に、3日でクレイマンを叩き潰すのは難しいな。

 となると、勝負に出るなら、魔王達の宴(ワルプルギス)の後か?

 俺は気になる事があり、ラミリスに聞く。

 

レイト「どうして知らせに来たんだ?言っちゃあなんだけど、ラミリスからしたら、テンペストが滅ぼうがどうでも良いだろ?」

ラミリス「アンタ達がやられたら……………私のベレッタにフランがどうなるか不安じゃん?」

ベレッタ「心配して下さって、ありがとうございます。」

フラン「ありがとうございます。」

 

 それもそうか。

 ベレッタにフランは、リムルと俺が呼び出した悪魔が、ゴーレムに憑依した存在だからな。

 

ラミリス「私はアンタ達に味方する事に決めたから、来てあげたって訳よ。だから、この街に迷宮への入り口を作るけど、良いわよね?」

リムル「良いわけないだろ。」

ラミリス「ええ〜…………!良いじゃん!細かい事は気にしない、気にしない!」

レイト「俺たちは気にするし、お前も気にしろよ!」

ラミリス「じゃあ、続き読もっと。」

「「おい!」」

 

 ダメだ、こいつ。

 まあ、協力してくれるお礼として作るのもアリ……………なのか?

 とはいえ、面倒そうだな。

 結局、会議はまだまだ続きそうだったので、俺たちは一度、休憩を取る事にした。

 要は、風呂に入るという事だ。

 女湯の方では、シズさんとエレンが一緒に風呂に入る中、ラミリスの声が響く。

 

ラミリス「アハ〜っ!アハハハ…………!くすぐったい…………!コラ〜!アハッ……………アハハハッ!自分で出来るって!」

トレイニー「ラミリス様。遠慮なさらず。」

トライア「ええ!是非とも、私たちに洗わせてください。」

 

 どうやら、トレイニーさん達も来ていたようだ。

 それを見ていたリムルは、後悔の念があった。

 

レイト「おい、何考えてるんだ?」

リムル「べ、べ、別に!?」

 

 俺がそう聞くと、リムルは慌てる。

 やれやれ。

 ちなみに、俺たちは男湯の方に入っており、そこには、ガゼル王、ドルフさん、フューズ、エラルド公が入っていた。

 

エラルド「ああ〜。気持ちが良い物ですな。」

ガゼル「ああ。沁みるなぁ。」

リムル「うう……………。」

ガゼル「というか、人造人間(ホムンクルス)の体でも感じるのか?」

エラルド「フッ。」

 

 そう言ってもらえると、嬉しいな。

 ガゼル王がそう聞くと、エラルド公は、女湯がある壁の方に向かう。

 そして、叫ぶ。

 

エラルド「エレンちゃん!湯加減はどうかな?」

 

 エラルド公はそう聞く。

 すると、エレンからは返事は返ってこずに、桶が降ってきた。

 

フューズ達「あ……………。」

リムル「うう……………。」

エラルド「もう。照れちゃって。」

 

 照れてないだろ。

 単純に変な事を聞く親父への攻撃だろ。

 すると、エラルド公は俺たちに聞いてくる。

 

エラルド「ああ。ところで、リムル殿、レイト殿。」

リムル「何でしょう?」

エラルド「我が国とテンペストの間に街道を作って直線で結べば、行き来がしやすくなるかと思いますが、如何ですか?」

 

 そう提案してきた。

 つまり、俺たちに街道を整備しろと言っているのだろう。

 すると、ガゼル王が口を開く。

 

ガゼル「エラルドよ。それは虫が良すぎるという物だぞ。」

 

 いや、ガゼル王。

 ドワーフ王国までの街道を整備したのは、全て俺たちだった筈だが……………。

 すると、エラルド公が叫ぶ。

 

エラルド「リムル殿やレイト殿に言われるのならまだしも、貴様だけには言われたくないわ!」

 

 全くもってその通りだ。

 俺とリムルは、アイコンタクトを送り、返答をする。

 

レイト「ああ、そうだな。エラルド公の言い分は分かった。街道整備の件は、こちらで引き受けても構わない。ただし。」

エラルド「ただし?」

リムル「街道上の警備及び、宿屋の運営も任せて貰いたい。当然だが、それにかかる経費を乗せた通行税もいただく事になる。」

エラルド「なるほど。それは当然の要求でしょう。ただし、その通行税に関しては、何年かに一度の交渉権は認めてほしい物です。」

レイト「分かった。」

 

 こうして、街道整備の件は話が整った。

 すると、フューズ達が口を開く。

 

フューズ「軽っ。」

ガゼル「全く。虫のいい奴だ。」

エラルド「貴様には言われたくないと言っとるだろう!では、決まりですな。」

 

 そうして、話がまとまる。

 一方、女湯の方では、ラミリスは桶に溜まったお湯に入っていた。

 

ラミリス「ふぅ……………ん?」

 

 ラミリスがお湯に浸かっていると、目の前に人影が映る。

 そこに居たのは、ベレッタとフランだった。

 

ベレッタ「ん?」

フラン「どうされました?」

ラミリス「アンタ達……………錆びないの?」

 

 ベレッタとフランが普通に風呂に入る中、ラミリスはそう聞く。

 その後、俺たちは風呂から上がり、ハルナを始めとする人たちが食事を用意してくれた。

 ちなみに、場所は以前、獣人達に料理を振る舞った場所だ。

 すると、ラミリスが叫ぶ。

 

リムル「揃ったな。」

ラミリス「アンタ達ね!どういう事!?一体これはどういう事なのさ!?」

レイト「何がだ?」

ラミリス「この子達が私をすっごくちやほやしてくれてんのよ!どういう事よ!?」

リムル「良かったじゃねぇか。」

トレイニー達「うふふふ。」

 

 それなら良いじゃん。

 何が言いたいんだ?

 すると、ラミリスは震える。

 

ラミリス「良かったよ。最高だったわよ……………!だから、リムル、レイト!私にもここに住む事にしたってわけ!」

リムル「だから、勝手に決めるなって。」

レイト「それに、トレイニーさん達は、ジュラの大森林の管理者もやってる。住んでいる場所も違うし、ラミリスの相手だけをしていられないんだ。」

ラミリス「ケチ!ケチ!ケ〜チ!良いじゃん!何かあっても、この最強のラミリスさんが手伝ってあげるからさぁ。」

レイト「あのなぁ………………。」

 

 最強ね………………。

 ミリムの方が強く見えるんだがな。

 どう説得したものかと悩んでいると、トレイニーさん達が話しかける。

 

トレイニー「リムル様、レイト様。ラミリス様の面倒は我々が見ますので……………。」

トライア「是非とも、前向きにお考えくださいませ。」

トレイニー達「お願い申し上げます。」

 

 そう言って、トレイニーさん達は頭を下げる。

 しょうがねぇな。

 俺とリムルは、アイコンタクトをして、言う。

 

リムル「分かった。考えておくよ。」

レイト「前向きに検討しておく。」

ラミリス「本当?さっすがリムルにレイト!話が分かるわね!」

リムル「さて。遠慮なく食べてくれ。食べながら話そう。」

 

 まあ、心配な点は、トレイニーさん達がラミリスを甘やかさないかという事だが。

 大丈夫……………だよな?

 そう思いつつ、料理に舌鼓を打っていく。

 ラミリスは、トレイニーさんとトライアさんが食べさせていた。

 

ガゼル「おお……………美味い。」

エラルド「絶品ですな。」

ヴェルドラ「いただきます。」

 

 ガゼル王とエラルド公にも、好評だな。

 あとヴェルドラも。

 

レイト「会議ばかり続いて、皆も大変だろうが、我慢して欲しい。」

リムル「ところで紫苑。捕虜の取り調べを行なっていたそうだが、何か情報は得られたのか?」

紫苑「フフフフっ。もちろんですとも、リムル様。」

 

 紫苑はそう言って、メモ帳を取り出す。

 ちなみに、俺とリムルは、苦笑を浮かべていた。

 何故なら、3人が醜い肉塊になっていたのを目撃していたからだ。

 本当、どうやったらああなるんだか。

 尋問と呼ぶのも烏滸がましい何かをされていたよな。

 まあ、当然の報いだが。

 そんな中、紫苑が口を開く。

 

紫苑「まず。エド……………エドノヨル?エド……………。」

朱菜「エドマリス王では?」

紫苑「はい。そのエドマリス王に接触した商人が居たそうです。その商人が、我が国の絹織物なんかを持ち込み、王の欲を刺激したのだそうです。それで、今後の流通の主流が、ファルムスから我が国に移るのを恐れ、今回の件に繋がったみたいです。」

 

 なるほど、動機は大体そんな感じか。

 気になるのは、エドマリス王に接触した商人の存在だ。

 つまり、そいつが今回の一件を引き起こした遠因とも言える存在だ。

 その商人は、クレイマンか、俺たちをヒナタに売った奴の差し金かと思ったが、現時点では決め手に欠ける。

 とはいえ、あいつ(ユウキ)の可能性が高いが。

 

リムル「その商人の正体は分かるのか?」

レイト「エドマリス王に接触していた事から、ファルムスの御用商人とかか?」

紫苑「そこまでは……………申し訳ございません。」

 

 なるほどな。

 まあ、足は残さないか。

 だとすると、相当にキレ者な気がするな。

 本当に何者だ?

 そう考える中、リムルは紫苑に聞く。

 

リムル「分かった。それで、西方聖教会の関係者は?」

紫苑「は…………はい!黒幕が判明しました!その名は……………えっと……………元凶は、ニコニコプ……………。」

火煉「はぁ……………元凶は、ニコラウス・シュペルタス枢機卿という人物です。」

紫苑「です!」

レイト「ナイスアシストだ。火煉。」

火煉「はい。」

 

 一応、火煉にも手伝ってもらっていたのだ。

 紫苑の事だから、変な風に言う可能性があったので。

 まあ、その通りになった訳だが。

 すると、ミュウランが口を開く。

 

ミュウラン「枢機卿はこの国を、”神に対する明確な敵対国として討伐する予定”…………。」

紫苑「……………だと言ってたそうです。」

フューズ「なるほど。レイヒム大司祭は、神敵討伐の栄誉を以て、中央に対する評価を得ようとしていたのですな。」

レイト「予定という事は……………西方聖教会と交渉の余地があるかもしれないな。」

 

 なるほど、そういう流れか。

 まあ、評価を得ようとした結果、あんな醜い肉塊になれ果てたのだが。

 同情する気はさらさらないが。

 すると、フューズが口を開く。

 

フューズ「ならば、俺が揺さぶりをかけてみましょう。」

ガゼル「我がドワルゴンも、テンペストとの貿易を大々的に宣伝しよう。」

エラルド「そして、我らがサリオンも、正式にテンペストとの国交樹立を宣言し、他の国々が興味を持つ様な事になれば……………西方聖教会だって、迂闊には動けませんからな。」

リムル「ああ。よろしく頼むよ。」

フューズ「お任せください。」

 

 確かに、それもありだ。

 ドワルゴンにサリオンは、大国である為、迂闊に動けば、他の国々の反感を買いかねないからな。

 とはいえ、ヒナタと再び接敵する気がするのは、気のせいだろうか。

 その時には、ジュウガで対応するか。

 

リムル「さて。その3名の捕虜を、ヨウムが救出したという事にして……………凱旋を演出する訳だが……………。」

レイト「そういえば、エドマリス王、レイヒム大司祭。あと1人は誰だ?」

紫苑「あの酷く怯えていた男ですね。」

 

 怯えていた?

 おかしいな。

 リムルの心無者(ムジヒナルモノ)や、俺の冷酷者(ヒドウナルモノ)から生き残った奴だ。

 少なくとも、心は折れていなかった筈。

 そう思ったが、すぐに思い直した。

 ディアブロが捕らえたそうだから、原初の悪魔と気付いて、戦意喪失したか。

 

ガゼル「生き残っていた最後の男か。察するに、騎士団長フォルゲンといった所か?」

リムル「お前が捕まえたんだったよな。どんな感じの奴だった?野放しにしても大丈夫そうか?」

ディアブロ「何の問題にもならぬ小物でした。人間にしては、それなりに魔法を操れた様ですが。」

ガゼル「魔法使いなのか。だとしたら、フォルゲンでは無さそうだな。」

リムル「名前は?」

紫苑「ラーメンです。」

 

 ガゼル王がそう言う中、リムルの質問に答えたディアブロがそう言う。

 まあ、小物だろうな。

 リムルが聞くと、紫苑はラーメンと答える。

 絶対に違うだろ。

 

リムル「ラーメンか。そういえば、もう何年もラーメンを食べてないんだよな…………。」

フューズ「ラーメンなんて魔法使いが、ファルムスに居たか?」

エラルド「魔法といえば、ファルムスには、魔人ラーゼンが居ましたね。」

紫苑「え?」

ガゼル「英雄ラーゼンか…………。忘れてはならぬ男よな。」

紫苑「え?」

アルビス「ファルムスの守護者にして、叡智の魔人と呼ばれる男ですね。」

紫苑「え?」

スフィア「魔法を極めし男…………。一度戦ってみたいと思っていたんだ。」

フォビオ「まっ、近接戦闘では俺たちが勝つだろうが、油断出来ぬ人間であるのは、間違いねえな。」

 

 リムルがそう言う中、周囲の人たちがそう言う。

 どんだけ間違えてんだ。

 火煉に至っては、呆れた様に頭を振ってるぞ。

 リムルは、紫苑に聞く。

 

リムル「……………紫苑。そいつは、ラーメンで間違いないんだな?」

紫苑「えっと……………多分……………。ですが、若造でした。そうです!この街を襲撃してきた1人でしたし、皆が言ってる様な魔法使いではありません!魔法使いなどと適当な事を…………!」

ディアブロ「心外です。」

 

 リムルの質問に、紫苑はそう答えながら、ディアブロに問い詰める。

 どういう事だ?

 すると、シズさんが口を開く。

 

シズ「リムルさん、レイト君。ちょっと良いかな?」

リムル「どうしたんだ、シズさん?」

シズ「実は、ゲルドさんが異世界人の1人にとどめを刺そうとした時、ラーゼンと呼ばれてた魔法使いの老人に邪魔されたの。」

白老「うむ。用心深い男じゃったの。下手に追撃すれば、こちらの被害が甚大になる故、見逃したのじゃが……………。」

 

 なるほど、そんな事が。

 という事は、ラーゼンという名の魔法使いが居たのは事実という事か。

 だとしても、姿が違うのはどういう事だ?

 すると、奇才之王(シェムハザ)が言う。

 

奇才之王『告。精神系魔法の秘儀を用いれば、肉体を乗り換える事が可能となります。』

 

 そうなのか。

 という事は……………。

 すると、ミュウランが口を開く。

 

ミュウラン「あっ、あの……………。」

リムル「ん?」

ミュウラン「ラーゼンです。捕虜の名前。」

レイト(決まりだな。)

紫苑「ああ………………!」

ディアブロ「クフフフフフッ……………。」

 

 それを聞いた紫苑は、涙目になり、ディアブロは笑う。

 流石は原初の悪魔だな。

 

ガゼル「ファルムス王国を数百年に渡って支え続けた英雄を、捕らえていたとは…………。」

エラルド「魔導師(ウィザード)としての実力も、私に並ぶか、それ以上の稀有な人間だったのに……………。」

 

 その2人がそう言うという事は、ラーゼンは実力者という事だな。

 それを捕らえたディアブロは、それ以上であるという事も。

 すると、リムルは口を開いた。

 

リムル「よし、ヨウム。」

ヨウム「おっ、おう。」

リムル「エドマリス王、レイヒム大司祭、ラーゼンの捕虜3人を連れて、行動を起こして貰うわけだが……………ディアブロも連れて行け。」

ディアブロ「えっ………!?左遷…………!?」

紫苑「フッ。」

ヨウム「あ、ああ。それは心強いが……………良いのか?その人、分かりやすくショック受けてるけど。」

 

 リムルって、ナチュラルにディアブロを傷つける発言が出来るよな。

 まあ、合理的なんだろうけど。

 俺だって、そうする。

 ラーゼンが万が一、逃走するのを阻止する為だ。

 あと、紫苑。

 鼻で笑うんじゃない。

 

リムル「俺たちは、クレイマンを相手に戦争を起こす。街の守りは、ヴェルドラに任せるとして、ヨウム達の支援に誰をつけるか悩んでいたが、お前なら適任だ。頼んだぞ。」

ディアブロ「おお……………!承知しました、リムル様。」

リムル「数年かかるかもしれないが、気長にな。」

ディアブロ「問題ございません。早急に終わらせて戻って参ります。」

レイト「国を一つ滅ぼすのに、大した自信だよな。」

 

 まあ、ディアブロなら問題ないか。

 後でフォローでもしてやるか。

 さて、と。

 

リムル「では、そのクレイマンとの戦についてだが……………。そちらのラミリス君の知らせで、俺たちが狙われているという事が分かった。」

ラミリス「はっ。えっへん!」

トレイニー達「流石はラミリス様です!」

ラミリス「ふふん!」

 

 ラミリスは、ドヤ顔をすると、トレイニーさん達は拍手をする。

 やっぱり不安だ。

 ラミリスは、漫画を読み始めた。

 俺は、蒼影に声をかける。

 

レイト「蒼影。」

蒼影「はっ。」

レイト「クレイマンの軍勢の動きを報告してくれ。」

蒼影「はっ。軍勢は……………。」

 

 蒼影はそう言うと、思念伝達を使って、映像を送ってくる。

 

蒼影「およそ3万。現在、魔王ミリムの領地にて、編成を行っております。」

リムル「3万か。勝てない数じゃないな。」

蒼影「軍を率いているのは、どうやら、クレイマン本人ではない様です。」

レイト「ほう?」

 

 だろうな。

 クレイマンの性格を鑑みるに、そんな場所に赴くはずがない。

 蒼影は、その指揮官の映像を出す。

 

蒼影「軍勢の中で、特に魔素量が多いのは…………….。」

リムル「こいつが指揮官か。」

レイト「みたいだな。」

 

 そこに映っていたのは、氷の素材で出来てるであろう剣を背負った白髪と黒髪が混じった男だった。

 すると、ミュウランが口を開く。

 

ミュウラン「中指のヤムザです。」

レイト「中指?」

ミュウラン「はい。クレイマンの配下でも、特に強い者は、”五本指”と呼ばれております。中指のヤムザ。示指のアダルマン。母指の九頭獣(ナインベッド)。小指のピローネ。…………私は、薬指でした。」

レイト「そうか。」

 

 そういう配置か。

 シズさんは、顔を顰めていた。

 無理矢理従わされるのは、シズさんにとって、嫌な事だからな。

 

ミュウラン「ヤムザは、氷結の力を秘めた魔剣をクレイマンから与えられ、氷結魔剣士と呼ばれています。」

リムル「氷結魔剣士ね……………。」

ミュウラン「卑怯で残忍で、悪徳を極めた下衆ですが、実力だけは本物。クレイマンに自ら忠誠を誓っているという点で、私とは折り合いが悪かったですね。五本指最強の魔人です。」

レイト「なるほどな。だが、そこまで恐れる必要はない。」

 

 確かに、そのヤムザというのは強いのかもしれない。

 だが、こっちも強い奴らが多いのだ。

 負けはしない筈だ。

 だが、気になる事がある。

 

リムル「クレイマンは用心深い。俺たちの街に獣王国の戦士団が合流している事は、知っている筈だよな?」

レイト「確かに。俺たちを倒すというのなら、この戦力では弱すぎる。何か別の目的があるのか?」

アルビス「確かに、変です。」

フォビオ「ああ。そうだな。」

ガゼル「うむ……………。」

紅丸「クレイマンの狙いは、この街とは違うのではないか?」

 

 俺たちがそう考える中、紅丸はそう言って、俺たちは納得する。

 だとしたら、狙いは……………。

 

レイト「………………獣王国。」

アルビス「あっ……………!?」

スフィア「ユーラザニアが狙いだって言うのか?しかし、首都は消滅し、周囲の街や村に残っているのは、避難民ばかりで……………。」

フォビオ「一体、何の為に……………!?」

 

 俺がそう言うと、三獣士は反応した。

 大体の予想はつくな。

 すると、奇才之王が言う。

 

奇才之王『解。魔王クレイマンの狙いは、真なる魔王への覚醒だと推測されます。』

レイト(やっぱりか。)

奇才之王『ただし、その手段は稚拙であり、不正確な推論にて、獣王国ユーラザニアの生命の灯を刈り尽くすつもりなのでしょう。』

 

 だろうな。

 恐らく、テンペストとファルムスで戦争を起こしたのは、真なる魔王へと覚醒する為の生贄を手に入れる為。

 自分の手を汚させずに。

 俺とリムルは、口を開く。

 

リムル「恐らく……………残った避難民を皆殺しにして、真なる魔王に覚醒するつもりだろう。」

レイト「ユーラザニアに残る全ての命を刈り取って。」

アルビス「なっ!?」

スフィア「ぐっ…………!?」

フォビオ「くっ……………!!」

 

 俺がそう言うと、三獣士達は顔を顰める。

 当然だろう。

 アルビス達が口を開く。

 

アルビス「クレイマンは、三獣士とカリオン軍の本隊が、この街に避難している事を知っているのでしょう。」

紅丸「獣王国を蹂躙するには、絶好の機会だな。」

蒼影「クレイマンの軍勢は、2日もあれば、ユーラザニアに到達すると思われます。」

スフィア「くそっ!今から戻っても間に合わねぇ……………!!」

フォビオ「くっ………………!」

リムル「後手に回ってしまったか。」

レイト「クレイマンの野郎……………!」

 

 俺たちは、そう言う。

 どうしたもんか……………。




今回はここまでです。
人魔会談も、後少しで終わります。
次回の話では、少し影が薄くなってるNEVERの面々や、鳴海荘吉も出します。
少し、レイトが作っている物がありますので。
次回は、テンペスト・ユーラザニア連合軍を転送するまでです。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
転キメの今後の流れは、ワルプルギスをやって、電王編、そして紅蓮の絆編、そして、第三期に相当するエピソードとなります。
コラボをしたいというのがあれば、気楽にメッセージを送ってください。
あと、まおりゅうがこのすばとコラボした事に便乗して、私が投稿しているこのすばの小説とコラボさせようかなと思っています。
あと、転スラとギーツは、『4人のエースと黒狐』が公開した日に投稿開始したいと思っています。
もし、転スラとギーツでリクエストがあれば、下記からお願いします。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=299304&uid=373253


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第40話 会戦前夜

 ユーラザニアに住む人たちが、クレイマンに狙われていると判明した。

 それを知った三獣士の面々は、顔を顰めていた。

 クレイマンの奴、ずる賢いな。

 魔王達の宴(ワルプルギス)を3日後の夜に設定したのも、他の魔王からの干渉を受けずに、獣王国の虐殺を完了するつもりだろう。

 その場に重い空気が漂う中、ヴェルドラが口を開いていた。

 

ヴェルドラ「お主は、この中では誰が推しだ?」

ラミリス「ん……………推し?」

ヴェルドラ「我はこいつが好きでのう。」

 

 ラミリスとヴェルドラは、そんなふうに話していた。

 そんな中、俺は奇才之王(シェムハザ)に聞く。

 

レイト『なあ、奇才之王(シェムハザ)さん。仮に、獣王国に残っている者達が皆殺しにされたら、クレイマンは覚醒すると思うか?』

奇才之王『解。効率は悪くても、大量の魂を獲得するものと思われます。成功率は、78%です。』

 

 78%か。

 思いのほか高いな。

 俺とリムルは頷きあう。

 断固阻止だ。

 

リムル「ユーラザニアに残っている民は、顔も名も知らぬ者達だが、俺たちと友誼を結んでいる。」

レイト「だからこそ、遠慮なく介入させてもらう。クレイマンの思い通りにはさせない。絶対にな……………!」

アルビス「リムル様、レイト様…………!」

 

 俺とリムルがそう言うと、三獣士は頭を下げる。

 リムルは、紅丸に話しかける。

 

リムル「紅丸。」

紅丸「はっ!」

リムル「阻止しろ。」

紅丸「ああ、任せろ!……………じゃなくて、お任せを。」

 

 リムルがそう言うと、紅丸はそう言う。

 こうして俺たちは、クレイマンの目論見を阻止する作戦を検討する事に。

 だが、良い作戦が思いつかない。

 何せ、こちらから送り出しても、間に合わない。

 

レイト「問題は…………どうやっても間に合わないことか。」

リムル「転送魔法で全員を送れたら早いんだけどな。」

朱菜「でも、転送魔法で軍を送るのは、危険が大きすぎます。」

リムル「ああ、分かってる。言ってみただけ……………。」

 

 そう。

 転送魔法は、物質を送る事は出来るが、有機物を送るのには向いていない。

 何せ、大量の魔素を浴びて、変質してしまうからだ。

 だからこそ、魔素による変質を防ぐ為に、結界を保護する術式を転移魔法に組み込む必要がある。

 だが、軍隊の様な大人数を転移させるには、とんでもないエネルギーが必要になる。

 それが問題だ。

 すると、奇才之王が言う。

 

奇才之王『告。対象者の保護を組み込んだ完全転送術式が完成しています。』

レイト『なっ……………!?』

奇才之王『エクストラスキル”空間支配”を併用する事で、消費魔力の大幅削減に成功しました。』

 

 いつの間に……………。

 とはいえ、ありがたいな。

 俺とリムルは、思念伝達をする。

 

レイト『リムル。そっちも、対象者の保護を組み込んだ完全転送術式が完成してるか?』

リムル『お前の方もか……………。ああ、完成してるぞ!』

レイト『よし。』

 

 やっぱりか。

 俺たちの究極能力(アルティメットスキル)は、マジで優秀だな。

 俺たちは、口を開く。

 

リムル「朱菜の言うとおり、転送魔法で軍を送るのは危険すぎる。だが……………。」

紅丸「だが?」

レイト「それを可能にする新たな術の開発に、たった今、成功した。」

朱菜「まあ!」

紫苑「なんと……………!?」

火煉「流石です。」

フォビオ「たった今って……………!?」

紅丸「流石。」

ディアブロ「クフフフフフッ……………。」

シズ「凄いね!」

 

 まあ、作ったのは、俺とリムルの究極能力(アルティメットスキル)だがな。

 

レイト「全軍が間に合うなら、勝ったも当然だ!」

 

 俺はそう言う。

 まあ、クレイマンにはほんの少しだけ同情するよ。

 俺とリムル、奇才之王と智慧之王の進化が無ければ、クレイマンの勝ちだったろう。

 

リムル「あとは君たちの覚悟だけだ。」

レイト「ああ。術を使えば、全軍を一気に送り出す事が出来るが、安全確認はまだだ。それでも、俺とリムルを信じるか?」

 

 そう。

 まだ、安全確認が済んでいないのだ。

 その為、危険がまだあるかもしれない。

 すると、紅丸が口を開く。

 

紅丸「悩むまでもない。俺の忠誠はリムル様とレイト様に捧げた。忠実な家臣である以上、死ねと命じられたら死ぬだけです。」

スフィア「信じるぜ。俺たちがリムル様とレイト様を疑うなんて出来ねえし。」

フォビオ「一度助けられた身だ。部下達に文句なんざ言わせませんよ。」

アルビス「あらあら。これは私も同意しないとダメな流れだわ。リムル様とレイト様のお力に頼らせて下さいませ。」

 

 紅丸がそう言うと、三獣士達もそう言う。

 それを聞いて、俺とリムルは頷く。

 

レイト「よし。その命、預かった。」

リムル「これでクレイマンの策の上を行く!あとはお前達次第だ!必ず勝て!」

一同「はっ!」

 

 俺とリムルがそう言うと、周囲は頷く。

 そうして、会議は終わり、その場には、俺、リムル、シズさん、ヴェルドラ、リグルド、紅丸、朱菜、火煉、紫苑、白老、嵐牙、ディアブロ、ラミリス、トレイニーさん、トライアさんが残る。

 ヴェルドラは呑気に『仮面ライダー電王』を見ていたが。

 

リムル「ふぅ……………皆、長い会議お疲れ様。」

レイト「明日からも大変だと思うけど、よろしく頼むな。」

朱菜「ええ。お任せ下さい。」

リムル「クレイマンの居場所を特定出来れば、空間転移で殴り込んで、終わらせられるんだけどな。」

レイト「確かに。傀儡国ジスターヴに居る可能性が高いが。」

朱菜「ですが、クレイマンは魔王達の宴(ワルプルギス)に参加するのでは?すれ違いになりそうです。」

レイト「そうだな。」

 

 そう。

 欲を言えば、今から乗り込み、ぶちのめしたいが、偵察も無しに突っ込むのは危険だろう。

 すると、紫苑が叫ぶ。

 

紫苑「はい!」

リムル「紫苑!」

紫苑「ウフッ!こちらが魔王達の宴(ワルプルギス)に乗り込んで、クレイマンと文句のある魔王達を全て斬り捨ててしまうのはどうでしょう?」

 

 紫苑はそう叫ぶ。

 確かに、それは良い案だな。

 とはいえ、標的はあくまでクレイマンなので、他の魔王には喧嘩を売るつもりはないのだが。

 それに、ミリムが何を考えているのかを知っておきたい。

 

リムル「クレイマンならまだしも、他の魔王とまで揉めるのはダメだろ。」

紫苑「そ……………そうですか。」

レイト「だけど、その案自体は悪くない。クレイマンも、俺たちが乗り込んでくるとは思わないだろうしな。なあ、ラミリス。俺たちも参加出来るか?」

ラミリス「えっ?魔王達の宴(ワルプルギス)に?」

 

 リムルがそう言う中、俺はそう言いながら、ラミリスに聞く。

 ラミリスは、トレイニーさんとトライアさんにデザートを食べさせてもらっていた。

 

リムル「ああ。こっちからクレイマンに会いに行ってみるのも、面白いかなって思ってさ。」

レイト「流石に、クレイマンも動揺するだろ。飛び入り参加はダメとかあるのか?」

ラミリス「うーん……………多分大丈夫だと思うけど。でもね、付き添いは二人までだよ。昔、色々問題があったから、そう決まったの。ん?うぐっ!うぐぐぐ……………!」

 

 俺とリムルがそう聞くと、ラミリスはそう返して、口を拭かれる。

 飛び入り参加はOKだけど、付き添いは二人までか。

 なら、簡単に決まるな。

 俺がそう考える中、リムルは口を開く。

 

リムル「どう思う?」

ディアブロ「クフフフフフッ…………。」

レイト「ん?」

ディアブロ「素晴らしい案です。その時は是非、この私がお供をいたしましょう。」

紫苑「バカめ、ディアブロ!お供はこの私です!譲りません!」

ディアブロ「まあ、とはいえ、戦いになるならば、打ち破れば済む話。そもそもリムル様とレイト様だけで十分でしょう。」

紫苑「その通り!バカかと思っていたが、新参にしては、見どころがあるぞ!」

 

 そんな風に話して、笑い合う。

 この二人、いつの間に意気投合してるんだ?

 昼間、言い争っていただろうが。

 ていうか、火煉さんはすっげぇ頷いてる。

 すると、リムルはスライムの状態で紫苑の頭の上に乗る。

 

リムル「待て待て。慌てるな。まだ決定じゃない。それに、お前にはファルムス王国を任せたから、どっちにしろ連れて行かないよ。」

ディアブロ「そうですね。承知しました。」

朱菜「しかし……………やはり危険ではないですか?」

紅丸「いや。ミリム様が裏切ったとは思えないが、少なくとも、魔王カリオン様を討ったというのは事実。」

レイト「そう。魔王達の宴(ワルプルギス)で、ミリムの真意を探るのも、悪くないと思うからな。」

ラミリス「そうよねぇ。ミリムがクレイマンなんかの言いなりになるなんて、まずあり得ないと思うよ。だって、ミリムって我儘だし。」

 

 リムルがディアブロと話す中、朱菜は不安げな声を出す。

 それに対して、俺と紅丸がそう答えると、ラミリスはそう言う。

 お前がそれを言うか。

 すると、紫苑が反応する。

 

紫苑「ミリム様がリムル様とレイト様を裏切るなど、絶対に考えられません!」

火煉「確かに、私もそう思う。でもそうは言っても、相手は海千山千の魔王。その心を読み切るのは、不可能だと思う。」

紫苑「いいえ!根拠はありませんが、間違いないと確信します!」

 

 紫苑がそう叫ぶ中、火煉はそう冷静に指摘して、紫苑は再び叫ぶ。

 根拠はない……………か。

 

リムル「まあ、実の所、俺も裏切られたとは思っていない。俺たちは、ミリムを信じる事にする。」

レイト「まあ、だからと言って、放置して良い話ではないけどな。ラミリスの言う通り、原因がクレイマンだという意見も、的外れではないからな。」

ラミリス「でしょ!でしょでしょ!?やっぱり、名探偵ラミリスさんの読みは正解だったって訳よね!」

トレイニー「流石です。」

トライア「素晴らしいです、ラミリス様。」

ラミリス「ふふん!」

 

 俺とリムルがそう言うと、ラミリスは胸を張り、トレイニーさん達は拍手をする。

 あんまり甘やかすなよ。

 リムルは、紫苑から降りて口を開く。

 

リムル「だからこそ、魔王達の宴(ワルプルギス)に参加して、色々と探ってみようと思うんだが………………。」

 

 リムルはそう言って、周囲を見渡す。

 すると、紫苑はリムルを凝視し、火煉は俺を凝視する。

 まあ、連れて行くか。

 すると、リムルは口を開く。

 

リムル「よし!紫苑と嵐牙を連れて行く!」

紫苑「はっ!ありがとうございます!」

嵐牙「お任せください!我が主!」

リムル「ところで……………レイトは誰を連れて行くんだ?」

レイト「俺か?決まってるよ。火煉とシズさん。この二人を連れて行く。」

火煉「ありがとうございます!」

シズ「私も……………?」

 

 リムルにそう聞かれたので、俺はそう答える。

 すると、火煉は喜び、シズさんは驚いていた。

 俺は、理由を話す。

 

レイト「火煉も十分に強いし、シズさんも、あいつと会えるかもしれないぞ。魔王レオン・クロムウェルと。」

シズ「っ!!」

レイト「言いたい事があるんだろう?ちょうど良い機会だからな。」

シズ「………………ありがとう。」

 

 そう。

 魔王達の宴(ワルプルギス)にて、シズさんを苦しめた魔王、レオン・クロムウェルも参加するかもしれないのだ。

 この際、言いたい事はさっさと言っておくべきだろう。

 ただ、究極の闇と結びつかない事を祈るが。

 すると、ヴェルドラが叫ぶ。

 

ヴェルドラ「グアッハハハハっ!!」

一同「ん?」

ヴェルドラ「やる気になったか。リムル、レイトよ!水臭いぞ。我も共に行こうではないか!魔王など、恐るるに足らぬわ!」

 

 ヴェルドラはそう言って立ち上がり、拳を握る。

 確かに、ヴェルドラに来てもらえたら、頼もしいだろう。

 だが、今回は無しだ。

 

リムル「まあ、待てよヴェルドラ。」

レイト「ヴェルドラには、この街に残って、防衛を頼む。」

ヴェルドラ「何!?我ならば、魔王どもなど一捻りで……………!」

リムル「この街の防衛というのも、立派な仕事だ。……………というか、一番重要な役割だぞ。」

ヴェルドラ「ぬ?一番……………。」

レイト「そういう訳だ。留守番を頼むよ。な?」

 

 まあ、ヴェルドラが強いのは確かだが、考えはちゃんとあるしな。

 すると、ラミリスが口を開く。

 

ラミリス「ちょっとリムル、レイト。師匠は私の配下として来て貰えば良いじゃん。それなら、私も安全だし。」

ヴェルドラ「いや?我は別にお前のお守りでついていきたい訳ではないのだが?」

ラミリス「うえええ〜っ!?そんな…………冷たいよ、師匠!」

 

 ラミリスがそう言うが、ヴェルドラはそう言って、ラミリスは慌てる。

 ていうか、師匠って何だよ。

 そんな中、リムルは口を開く。

 

リムル「ヴェルドラ。実は、君の噂を流す手筈になっている。それは、さっきの会議でも話し合っていたから、知っているよね?」

ヴェルドラ「ぐっ……………うむ!無論であるぞ。(マズイ……………聞いてなかったなどと言えぬではないか。)」

 

 リムルはそう聞くと、ヴェルドラは少し挙動不審気味にそう言う。

 聞いてなかったんだな。

 まあ良いや。

 俺は口を開く。

 

レイト「それでな。クレイマンの奴はこう考えるだろう。”リムルとレイトという魔人は、ヴェルドラの威を借るだけの小物だ”ってな。」

ヴェルドラ「何だと!クレイマンめ!許さんぞ!!」

紫苑「フッ!身の程を知らぬ虫が!やはり、私が出向き、殺した方が良さそうですね。」

 

 俺がそう言うと、ヴェルドラと紫苑の二人は、そう言う。

 冗談で言ったんだけどな………………。

 すると、紅丸と火煉が口を開く。

 

紅丸「はぁ……………やれやれ。落ち着け、紫苑。」

火煉「レイト様の言葉は、あくまで例えよ。」

リムル「会議にヴェルドラを連れて行って、警戒されてしまっては意味がないだろ?」

ヴェルドラ「ほほう?そういう事か。」

紫苑「流石、リムル様とレイト様!」

ディアブロ「クフフフフフッ……………リムル様とついでにレイト様を侮る時点で許し難い。私の手で粛清してやりたいですが、ここは…………先輩を立てるとしましょう。」

紫苑「ほう。話が分かりますね。」

 

 ディアブロ、俺の事をついでって言うのは、やめてくんない?

 そして、紫苑とディアブロがサムズアップをし終えると、紫苑はしゃがむ。

 

紫苑「相手を油断させて、有利に交渉を進めるつもりですね?」

火煉「なるほど。」

朱菜「それも危険ではないでしょうか?」

レイト「大丈夫だ。いざとなったら、俺とリムルのスキルである”暴風竜召喚”で呼び出す事が出来るんだ。」

ヴェルドラ「何と!そうであったか!」

リムル「万が一の時は、お前に助けを求めるから、それまで大人しく、この街を守っていて欲しいんだ。」

ヴェルドラ「クア〜ハハハハッ!なるほど!我は遅れて現れるヒーローだな。」

ラミリス「ずるくない?それ。」

 

 紫苑がそう言う中、火煉は納得して、朱菜はそう言うが、俺はそう言う。

 いざとなったら、ヴェルドラを呼び出せるからな。

 それを聞いていたラミリスがそう言う。

 

リムル「賢いって言って欲しいね。」

レイト「あと、ラミリスの従者枠は埋まってるだろ。ベレッタにフランの二人が。」

ラミリス「あっ、そうだった。」

 

 そう。

 ラミリスには、ベレッタとフランの二人がいるから、大丈夫だろ。

 こうして、準備が整った。

 クレイマンには、それ相応の報いを受けてもらう。

 手加減はしない。

 俺はそう思いながら、ラボへと向かう。

 やるべき事があるからだ。

 一方、忘れられた竜の都では。

 クレイマンの軍が準備をする中、忘れられた竜の都の神官団を率いる神官長であるミッドレイは、苛立っていた。

 

ミッドレイ「ええい!忌々しい奴らよ!何が”協力しましょう”だ!舐めおって!」

 

 ミッドレイがそう言う中、ミッドレイの隣にいるヘルメスとトートが口を開く。

 

ヘルメス「ミッドレイ様。ここは従わないとマズイですって。」

トート「あのヤムザとかいう指揮官は、ミリム様からの命令書を持っていたじゃないですか。」

ミッドレイ「黙れ、ヘルメス、トート。貴様らに言われなくても分かっておるわ。」

ヘルメス「ユーラザニアを滅ぼすなんて、ホント、ミリム様にも困った物ですよね。」

ミッドレイ「不敬だぞ、ヘルメス!ミリム様のなさる事を疑うでないわ!」

トート「いや、それはそうなんですけど…………。(そうやって甘やかすから、ますますこっちも苦労するんですよ……………。)」

 

 ヘルメスとトートがそう言う中、ミッドレイはそう言って、トートはそう思う。

 すると、ミッドレイは口を開く。

 

ミッドレイ「しかしクレイマンめ。偉そうに……………!ミリム様に命令書を書かせるとは……………!」

ヘルメス「そうっすね。間違いなくミリム様の字でしたし、命令だから仕方ないっすけど……………。」

トート「クレイマンの軍の奴らに食われて、第3食糧庫も空になりました。これで残るは7つで、次の収穫時期まで苦労しますね。」

ミッドレイ「クソが!ぐぬう………………!」

 

 ヘルメスとトートがそう言うと、ミッドレイはそう吐き捨てる。

 そんなミッドレイの頭は赤くなり、血管が浮かび上がっていた。

 それを見ていたヘルメスとトートは。

 

ヘルメス「ぷっ……………!(赤い…………メロン。)くくくくっ……………!」

トート(メロンみたいだなぁ……………。)

 

 そんな風に思っていた。

 すると、3人の元に一人の男がやってくる。

 その男は、クレイマンの軍の指揮官であるヤムザであった。

 

ミッドレイ「氷結魔剣士、ヤムザ。ちっ。ヘルメス、トート。我慢するのだぞ。」

ヘルメス「了解っす。」

トート「分かりました。」

3人「フフフッ。」

 

 ミッドレイ達は、ヤムザには聞こえないようにそう話し、笑みを浮かべる。

 ヤムザは、リンゴを持っていて、口を開く。

 

ヤムザ「ミッドレイ殿。食料援助、とても助かります。何しろ、3万もの軍を養うには、どれだけあっても足りませんからね。」

ミッドレイ「ハハハッ。お役に立てたのなら、光栄ですな。ですが、残念な事に、我等としてもこれ以上の援助は厳しいのです。民が食うに困ると、ミリム様が悲しまれますので…………。」

 

 ヤムザがそう言うと、ミッドレイは柔らかにこれ以上の援助が厳しいと言う。

 すると、ヤムザはリンゴを握りつぶして、ミッドレイに対して言う。

 

ヤムザ「何を言うか。その魔王ミリムが勝手に動いたのだ!その尻拭いをしてやろうと言う我が軍に対し、礼を尽くすのが当然だろうが。ん?」

トート(……………こいつ。)

 

 ヤムザはそう言って、握り潰したリンゴをミッドレイに押し付ける。

 トートは気づかれないようにキツい視線を向ける中、ミッドレイは口を開く。

 

ミッドレイ「いや、これは失礼。ついつい、自分たちの事しか考えておりませんでした。我らに出来る協力は、何でもいたしますので、遠慮なく申しつけくだされ。」

ヘルメス(メロンにならなかった。)

トート(まあ、ここで怒ったら、それを口実に、この国を滅ぼしかねない奴らですしね。)

 

 ミッドレイはそう言って、頭を下げる。

 それを見て、ヘルメスとトートがそう思う中、ヤムザは口を開く。

 

ヤムザ「そうですか。では、あなた達にも協力する機会を差し上げましょう。物資の運搬程度には役立つだろう。」

ヘルメス「なっ!?ちょ……………ちょっと待ってくださいよ!」

トート「そうです!食料を奪われた挙句、人手まで取られるのは……………!」

 

 ヤムザの言葉を聞いたヘルメスとトートがそう言うと、二人の腕は、ヤムザによって切断された。

 

ヘルメス「あっ……………!」

トート「なっ……………!?」

ヤムザ「黙れよ、三下(カス)め。」

ヘルメス「うっ…………!くっ……………!」

トート「…………………。」

ヤムザ「ほう。身の程を知らぬか?見せしめに殺してやっても良いのだぞ?」

トート(こいつ……………!調子に乗りやがって……………!)

 

 腕を切られたヘルメスとトートが、ヤムザを睨む中、ミッドレイが二人を蹴る。

 二人は、柱に叩きつけられる。

 

ミッドレイ「いやはや、すみませんな、ヤムザ殿。このバカどもにはよく言い聞かせておきますので、ここは、わしの顔に免じて許してやってくだされ。」

ヤムザ「フンっ。バカな部下どもを持つと苦労するものよ。一度だけ許す。明日の朝には出立するので、貴様ら神官ども、全員速やかに準備せよ。」

 

 ミッドレイがそう言うと、ヤムザはそう言って、去っていく。

 ミッドレイはため息を吐き、二人の腕を回収して、二人の傷口に当てる。

 

ヘルメス「あっ、ああ……………。」

ミッドレイ「馬鹿者どもが……………。だから忠告したであろうが。」

トート「すいません……………。」

ミッドレイ「神聖魔法、傷病治癒(リカバリー)。」

 

 ミッドレイはそう言って、魔法を発動して、二人の腕をくっつける。

 

ミッドレイ「ふぅ……………まあよい。神官団が抜けても、すぐに民は困りはせぬわ。それよりもあの男……………ミリム様の民を傷つけるとはな……………!」

ヘルメス「ミッドレイ様……………。」

トート(あなたの後ろ回し蹴りも大概だったんですけどね。まあ、庇ってくれたのは分かりますが。)

 

 ミッドレイがそう言って怒る中、二人はそう思う。

 そう思う中、ヘルメスとトートは口を開く。

 

ヘルメス「いや、ホントっすね。あいつ、殺しちゃって良いっすか?」

ミッドレイ「バカめ!貴様では勝てぬ!」

トート「そうですね。あの剣は厄介だし、何か奥の手を隠してそうですし。」

ミッドレイ「うむ。姑息な魔王クレイマンの腹心らしく、手の内を簡単には見せぬようだな。男なら、全てを曝け出して勝利すべき物を!」

ヘルメス「そうっすね。」

 

 ミッドレイはそう憤る中、二人はそう言う。

 すると、ミッドレイは落ち着き、二人に手を差し伸べる。

 

ミッドレイ「はぁ……………出立に向けて、準備するぞ。」

ヘルメス「あっ……………はい。」

トート「分かりました。」

ミッドレイ「しかし、ミリム様はなぜ戻って来ぬのだ。」

 

 ミッドレイ達は、出発に向けて準備をする中、ミッドレイはそう呟く。

 一方、俺はラボで作業を続けていた。

 魔鋼を粒子化させて、ジュウガドライバーに定着させたり、新たな武器を作ったりなどだ。

 奇才之王さんも手伝ってくれている。

 近くの机には、NEVERの面々と鳴海荘吉から預かったガイアメモリが置いてあった。

 作業を続ける中、リムルから思念伝達が来る。

 

リムル『レイト!ちょっと良いか?』

レイト『手短に頼む。』

リムル『お、おう……………。ユーラザニアの人たちを救える!手伝ってくれないか?』

 

 リムルはそう言ってきた。

 どうやら、予め、ユーラザニアに残った人たち全員を、テンペストに移す事にするらしい。

 確かに、それならいけるかもな。

 だが、俺は忙しい。

 

レイト『悪いけど、リムル。俺は今、少し忙しいんだ。一人だけでも出来るだろ?相棒。』

リムル『っ!まあ、忙しいなら仕方ないか。ユーラザニアの人たちは、俺に任せろ。』

レイト『ああ。』

 

 そう言って、思念伝達が切れる。

 まあ、リムルなら大丈夫だろう。

 俺は、俺のやれる事をやるだけだ。

 そう思い、作業を進めていく。

 突貫作業でやったが、上手く行ったはずだ。

 夜明けの直前、俺はNEVERの面々と、鳴海荘吉を呼ぶ。

 

克己「何だ?こんな夜更けに呼び出すとは。」

レイト「悪い。でも、君たちに渡しておきたい物があってな。」

荘吉「何だ?」

レイト「それは……………これだ!」

 

 俺はそう言って、アタッシュケースを取り出して、それを開けて、中身を見せる。

 その中には、26本分のガイアメモリが入っていた。

 

克己「これは……………ガイアメモリか?」

レイカ「それも大量ね。」

マリア「これは?」

レイト「T3ガイアメモリ。克己達が持っているT2ガイアメモリの発展系だ。」

 

 そう。

 夜通しで作業をしていたのは、これを作る為でもあったのだ。

 眠らなくても大丈夫な特性が、上手く使えたな。

 T3ガイアメモリは、克己達が持っていたT2ガイアメモリと、荘吉が持っていたT1スカルメモリを奇才之王さんに解析させてもらって、開発した物だ。

 

賢「これを作っていたのか?」

剛三「お前、すげぇな。」

京水「中々やるじゃない!」

レイト「まあね。これは、T2ガイアメモリよりもさらに出力が上がってる。毒性もかなり抑える事に成功した。君たちには、これを使って欲しい。予め、伝えておいたよな。クレイマンという魔王の率いる軍と戦うって。これは、前払いって事で。」

克己「ほう。分かっているじゃないか。良いだろう。使ってやる。」

 

 克己はそう言って、メモリを受け取る。

 NEVERって、傭兵集団だからな。

 俺のキメラ細胞を用いた体だから、崩壊するリスクはないし。

 俺は、アタッシュケース一個を克己に渡して、もう一個を取り出す。

 

マリア「なぜ、もう一個があるの?」

レイト「そりゃあ、あれだ。克己のゾーンのマキシマムドライブは、他のガイアメモリも引き寄せるからな。それで変身が不可能になるのは困るだろ?その為に、君たち用にもう一本のメモリを作った。」

荘吉「なるほどな。つまり、俺はここから取れという事か?」

レイト「そういう事です。」

 

 そう。

 ゾーンのマキシマムドライブは、他のガイアメモリを引き寄せてしまうのだ。

 だからこそ、ゾーンのマキシマムドライブを使っても、戦闘が出来るようにしたのだ。

 すると、ナスカ、ウェザー、ファングのガイアメモリが、どこかへと飛んでいく。

 

レイト「あっ!メモリが!?」

克己「どうやら、あのメモリらと引き合う存在が居るみたいだな。」

 

 そういえば、そうだったな。

 T2ガイアメモリって、適合率が最も高い奴に自動的に引き寄せられるからな。

 俺は、それらを追う。

 しばらくすると、紅丸達の方に着いた。

 

レイト「紅丸!」

紅丸「レイト様。なんか飛んできたんですが、何ですか、これ?」

 

 どうやら、ナスカは紅丸に、ウェザーは蒼影に、ファングは白老に引き寄せられたみたいだな。

 俺は、3人に話した。

 それらがガイアメモリである事を。

 そして、ガイアメモリを3人に託すと。

 

紅丸「良いんですか?」

レイト「ああ。せっかくだから、使ってくれ。」

蒼影「ご厚意、ありがたく頂戴します。」

白老「ぬっほほほほ。分かりました。」

 

 そうして、3人もガイアメモリを渡した。

 ただ、白老の場合は、流石にそのまま使わせる訳にはいかないので、T3ファングメモリを、従来のファングメモリと同形状にし、ロストドライバーを渡した。

 そして、準備が完了した。

 こちら側の戦力は、アルビス、スフィア、フォビオが率いる1万の獣人達。

 ゴブタ率いる”狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)”達。

 紅丸の直属親衛隊として、大鬼族(オーガ)の集団、その名も”紅炎衆(クレナイ)”。

 四千のボブゴブリンで構成されている”緑色軍団(グリーンナンバーズ)”。

 ゲルドとグルドが率いる五千の猪人族(ハイオーク)、”黄色軍団(イエローナンバーズ)”。

 ガビル率いる龍人族(ドラゴニュート)、”飛竜衆(ヒリュウ)”。

 そして、大道克己をリーダーとしたNEVER。

 総勢二万の軍勢だ。

 テンペストの防衛には、紫苑配下の親衛隊である100名。

 死亡から蘇生した者たちなので、部隊名は”紫克衆(ヨミガエリ)”になった。

 

紅丸「リムル様、レイト様。全員揃いました。準備完了です。」

レイト「分かった。」

リムル「じゃあ、サクッと転送する事にしよう!」

 

 俺とリムルが転送をしようとすると、アルビス達が話しかける。

 

アルビス「リムル様、レイト様。」

リムル「ん?」

アルビス「ご厚意、決して忘れませんわ。」

スフィア「これで、何の心配もなく、クレイマンの手下どもをぶちのめせるって訳だ。クレイマンはリムル様とレイト様に譲るので、俺たちの恨みもぶつけてください!」

フォビオ「うん。」

 

 三獣士達はそう言う。

 そして、獣王戦士団達も、頭を下げる。

 俺とリムルは頷く。

 

リムル「頼んだぞ。」

紅丸「うむ。」

紫苑「情け容赦は要りませんよ!」

火煉「思い切りやっちゃってください!」

ディアブロ「クフフフフフっ…………ゴミは早めに片付けないと、臭ってきますからね。」

朱菜「お気をつけて。」

紅丸「二度と逆らえない様、地獄を見せるとしましょう。」

レイト「よし。絶対に勝て!」

一同「ははっ!勝利を御身に!」

 

 リムルと紅丸がそう話すと、色んな人たちが、激励を飛ばす。

 俺もそう言うと、そう返ってくる。

 さてと。

 俺とリムルは頷き合い、転送を開始する。

 しばらくすると、そこには誰も居なくなっていた。

 

リムル「無事に勝ってくれよ。」

レイト「頼んだぞ。」

 

 俺とリムルの呟きが、その場に響く。




今回はここまでです。
いよいよ、クレイマンの軍勢との戦いが始まります。
色々と、テンペスト側を強化させました。
T3ガイアメモリに、紅丸と蒼影がドーパントに、白老は仮面ライダーになれる様になりました。
鳴海荘吉に関しては、別行動となります。
次回は、ワルプルギスまでの魔王達の動きに関する話の予定です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
ジュウガのオリジナルフォームは、考え中です。
コラボをしたいという場合は、気軽にメッセージを送って下さい。
ジュウガの強化で考えているのは、ライジングアルティメットみたいな姿になり、力も10個から平成と令和の仮面ライダーのバイスタンプ全部になった感じですね。
それ以外に意見がある場合は、活動報告にて受け付けます。
転スラとギーツは、明後日から投稿を開始します。


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第41話 魔王たち

 クレイマンの軍勢を叩き潰す為に、ユーラザニアに軍を転送した。

 転送を終えると、ディアブロが拍手をしながら近寄ってくる。

 

ディアブロ「お見事です。リムル様、レイト様。実に美しい術式でした。」

紫苑「ええ!本当に!見惚れてしまいました!」

火煉「お見事です。」

 

 ディアブロ達がそう言う中、ヴェルドラが俺たちに寄って叫ぶ。

 

ヴェルドラ「リムル、レイトよ!」

リムル「わああっ!」

ヴェルドラ「やっぱり、我が行って蹴散らそうか?」

レイト「だから……………ヴェルドラの事は、魔王達の宴(ワルプルギス)が始まるまでは秘密にしておくって言っただろ?」

リムル「大暴れしたら、1発でバレてしまうだろうが。」

ヴェルドラ「ふむ………………。」

 

 ヴェルドラがそう言う中、俺とリムルはそう言う。

 バレたら元も子もない。

 すると、ヴェルドラは大きく叫ぶ。

 

ヴェルドラ「クア〜ハハハッ!そうであったな!うっかりしておったぞ!」

レイト「うっかりじゃねぇよ。」

リムル「良いな?絶対に、余計な事はすんなよ!」

ヴェルドラ「クア〜ハハハッ!」

 

 ヴェルドラの言葉に俺たちがそう言う中、ヴェルドラは高笑いを続ける。

 その後、武装国家ドワルゴンに戻るガゼル王達と、魔導王朝サリオンに戻るエラルド達を見送り、俺たちは今、ファルムス王国に向かうヨウム達を見送ろうとしていた。

 

ディアブロ「すぐに戻りますので、ご安心を。」

リムル「ゆっくりしてきて良いぞ。」

ディアブロ「すぐに戻りますので、ご安心を。」

レイト「国取りは簡単じゃ無いんだけどな……………。まあ、頑張れよ。」

 

 そうして、ディアブロもヨウムたちと一緒に向かっていった。

 俺とリムルは、口を開く。

 

リムル「さてと!俺たちも準備をしないとな!」

レイト「ああ。魔王達の宴(ワルプルギス)に向けて。」

 

 そう話して、準備に入る。

 俺とリムルは、森の中に入っていった。

 その際、護衛として、ゼギオンとアピトを連れている。

 なぜ、森の中に居るのかというと、トレイニーさんの為だ。

 魔王達の宴(ワルプルギス)に同行する事が出来なくても、ラミリスに仕えたいと言うので、俺とリムルはその為に動く。

 ちなみに、トレイニーさんは、ラミリスを讃えていた。

 しばらく歩くと、目的地に着く。

 

リムル「さてと。護衛はここまでで良いよ。ゼギオン。」

ゼギオン「は……………。」

アピト「リムル様、レイト様。こちらを。」

レイト「蜂蜜か。ありがとうな。」

 

 リムルがゼギオンに話しかける中、俺とリムルは、アピトから蜂蜜を受け取り、舐める。

 やっぱり美味いな。

 徹夜明けだから、身に沁みる。

 

リムル「よし。甘い物で癒された所で…………じゃあ、始めますか。」

レイト「トレイニーさんも、準備は良いか?」

トレイニー「ええ。」

 

 そう話して、俺たちは作業を始める。

 そんな中、帰っていくゼギオンとアピトを見ていたラミリスが口を開く。

 

ラミリス「ちょ……………ちょっと、リムルさん?レイトさん?」

リムル「なんだよ。今、忙しいんだけど?」

ラミリス「今のってもしかして、軍団蜂(アーミーワスプ)だったりするんじゃあ……………?」

レイト「そんな事を言ってたな。その女王(クイーン)とかなんとか……………。街が出来た頃に、森でボロボロになってたから、保護したんだよ。」

 

 そう。

 ゼギオンとアピトは、森でボロボロになっていたから、保護したのだ。

 

ラミリス「っていうかさ、もう一匹の方も、あれってまさか……………って、聞いてないし!さっきから何してんのさ。」

 

 ラミリスがそう言う中、俺とリムルは、作業を続ける。

 すると、ラミリスは俺とリムルが作った物に反応していた。

 

ラミリス「これって……………あ。あー!分かった!」

レイト「御名答。」

リムル「トレイニーさん。」

 

 ラミリスがそう叫ぶ中、リムルは宝珠を取り出す。

 あれは、ベレッタとフランの聖魔核を参考に作った物だ。

 その宝珠に、トレイニーさんの魂が宿る。

 そして、聖なるエネルギーと同等の妖気(オーラ)を俺とリムルが封入する。

 その聖魔核を、トレイニーさんの本体であった大霊樹(ドリュアス)から作った人形(ドール)に埋め込む。

 トレイニーさんは精神生命体であり、大霊樹(ドリュアス)から精神体(スピリチュアル・ボディー)を離脱させて活動する事が可能だ。

 だが、本体はあくまで樹木だ。

 離れ過ぎてしまうと、接続が切れてしまう恐れがある。

 そこで、本体ごと移動させる事を思いついたのだ。

 すると、樹人形の姿から、トレイニーさんの姿に変わる。

 

トレイニー「ありがとうございます。リムル様、レイト様。霊樹人形妖精(ドリュアス・ドール・ドライアド)に進化できました。これで、例え離れても、ラミリス様にお仕えできます。」

ラミリス「トレイニーちゃんが自由に行動出来るようになったって訳ね!ジュラの森からも出られる様になったって訳ね!」

レイト「ああ。精霊の棲家は、ジュラの森とは空間が違うからな。」

 

 そんなふうに、トレイニーさんの問題を解決した。

 そんな中、クレイマンはヤムザの報告を聞いていた。

 

クレイマン「……………誰も居ない?」

ヤムザ「はい。獣王国ユーラザニアは、もぬけの殻です。」

クレイマン「何故だ?ハァ……………。」

 

 クレイマンは、ヤムザの報告に苛立ちを見せる。

 一息ついて、ヤムザに言う。

 

クレイマン「……………まあ良いでしょう。徹底的に捜索しなさい。炙り出すのです。」

ヤムザ「はっ。」

クレイマン「チッ。」

 

 クレイマンはそう言うと、舌打ちをする。

 すると、ヤムザがある事を言う。

 

ヤムザ「それからもう一つ。」

クレイマン「あ?」

ヤムザ「兵の一人が進軍中に出会った行商人から、面白い話を聞き出しました。」

クレイマン「面白い話?」

ヤムザ「はい。暴風竜ヴェルドラが復活したと言うのです。」

クレイマン「っ!?」

 

 ヤムザの報告に、クレイマンは驚く。

 ヴェルドラが復活したとは思っていなかったからだ。

 

クレイマン「ヴェルドラが……………。」

ヤムザ「ファルムス軍が、ヴェルドラの復活の巻き添えを食って、消滅したとの事です。」

クレイマン「暴風竜のせいだと?」

ヤムザ「はい。そして、暴風竜は復活したばかりで、エネルギーの大半を喪失しているらしい……………とも。」

 

 クレイマンがそう呟く中、ヤムザはそう報告する。

 それを聞いたクレイマンは。

 

クレイマン(……………なるほど。ファルムスに放っていたピローネや、マリオネットどもの反応が消えたが、ヴェルドラの復活に巻き込まれていたとはね。たかがスライムとキメラに、ファルムスの軍勢を倒せるはずが無かったのだ。それに、今ならば、邪竜を討伐するのも容易い。それどころか、私の手駒に……………。)

 

 そんな風に思っていた。

 クレイマンとしては、俺たちの偽情報に引っかかったことは気づいていないだろう。

 クレイマンはヤムザに言う。

 

クレイマン「ヤムザ。報告ご苦労。引き続きよろしく頼む。」

ヤムザ「はっ。」

 

 クレイマンがそう言うと、通信が切れる。

 クレイマンは、ワイングラスを回しながら言う。

 

クレイマン「私としたことが、奴らのハッタリに騙される所でしたよ。しかし、真実とは隠せぬ物なのだ。邪竜の威を借るスライムにキメラが……………光栄に思えよ。この私、自らの手で叩き潰してやろう。」

 

 クレイマンは自信たっぷりにそう言う。

 俺たちの作戦に引っかかったとは気づかずに。

 すると、ラプラスの忠告が蘇る。

 

ラプラス『……………分かった。ならええわ。わいはもう行くけど、最後に友人として忠告や。魔王ミリムの支配を過信せん方がええ。あれは、カザリーム会長よりも昔からおる太古の魔王の1人なんや。せいぜい油断せんようにな。ほな。』

 

 ラプラスの忠告を思い出し、クレイマンは顔を顰めるが、すぐに笑みを浮かべる。

 

クレイマン「ふっ。心配するなよラプラス。私は勝つさ。」

 

 クレイマンはそう言って、ワインを飲む。

 一方、北のある土地では、金髪の男がその土地にある氷の城に向かっていた。

 その男は、魔王レオン・クロムウェルだった。

 レオンが扉の前に立つ中、二人の巨大な男によって扉が開かれ、ミザリーという緑髪のメイドが言う。

 

ミザリー「暗黒皇帝(ロード・オブ・ダークネス)、魔王ギィ・クリムゾン様に申し上げます。魔王レオン・クロムウェル様が到着なさいました。」

 

 そんな声が響く中、レオンは中に入る。

 周囲には、赤、青、緑の色の配下達がいた。

 二人のメイドがレオンの前を歩き、レオンがそれに続き、ギィと言う名の魔王が座る玉座の前に着くと、二人のメイドは、ギィの横に向かい、ギィは口を開く。

 

ギィ「久しいな。我が友”白金の悪魔(プラチナデビル)”魔王レオン・クロムウェルよ。それとも、”白金の剣王(プラチナセイバー)”と呼んだ方が良いか?」

レオン「好きに呼ぶが良い。」

ギィ「息災だったか?よくぞ、俺の呼びかけに応えてくれた。礼を言うぞ。」

 

 ギィはそう言いながら、レオンの前に立つ。 

 ギィもまた、ミリムとラミリスと同様に、最古の魔王であり、原初の(ルージュ)と呼ばれている。

 それと同様に、ギィのメイドであるミザリーは原初の(ヴェール)、もう片方のレインは原初の(ブルー)と呼ばれる存在だ。

 ギィは、レオンとキスをしようとすると、レオンに止められる。

 

レオン「やめろ…………!そんな趣味はないと言っているだろう。」

ギィ「ハハハッ!相変わらず釣れない男だ。お前が望むなら、女の体になって抱かれてやっても良いんだぜ?」

レオン「黙れ。」

ギィ「フッ。まあ良い。場所を変えよう。」

 

 レオンがそう言う中、ギィはそう言って、場所を変える。

 テラスの様な場所に向かい、ミザリーが氷のワイングラスにワインを注ぐ中、レオンは聞く。

 

レオン「それで?私を呼びつけるとはどういう用件だ。」

ギィ「お前も知る通り、魔王達の宴、 魔王達の宴(ワルプルギス)が催される。今回は無理にでも誘おうと思ってな。」

レオン「私に強制するとは珍しいな。」

ギィ「フッ。今回はお前に借りを作る事になっても、参加してもらうぜ。」

 

 二人はそう話して、ワインを飲む。

 レオンは、ワインを一口飲むと、理由を聞く。

 

レオン「……………その理由は?」

ギィ「はっ。相変わらず用心深いな。良いだろう。説明してやる。」

 

 レオンがそう問うのを聞いて、ギィはあしを組み替えて、ワインを飲んで、説明する。

 

ギィ「今回の 魔王達の宴(ワルプルギス)の提案者はクレイマン。小物だ。だがな、何故か賛同者にミリムの名があった。ミリムは俺と並ぶ世界最古かつ最強の魔王。クレイマン如きの思い通りには動かん。となると……………。」

レオン「カリオンが死んだというのも怪しい…………か?」

ギィ「なんだよ。分かってんじゃねえか。」

レオン「クレイマンはやり過ぎた。証拠を残さぬ様に、私への嫌がらせを行なってきていたが、今回は見過ごせん。カリオンの生死は別にしても、ミリムが動いたとなると厄介だ。」

ギィ「ふん。ミリムにとっては、いつもの遊びだろうが、魔王間のバランスが崩れるのは面白くない。俺の仕事が増えるしな。」

 

 ギィは、クレイマンについては、小物だと思っていた。

 それ故に、ミリムがクレイマンに賛同したのが気になるという事だ。

 レオンは、ギィに聞く。

 

レオン「……………ミリムは、クレイマンに操られていると思うか?」

ギィ「ミリムの事を考えても無駄だ。俺の様に賢き者には、バカの考えは読めん。それが数少ない俺の弱点なのだ。」

レオン「ふん……………。」

ギィ「気になっているという事は……………レオンよ。お前も参加するんだな。」

レオン「そのつもりだ。馴れ合いは嫌いだが、今回は参加するしかないだろう。」

 

 レオンがそう聞く中、ギィはそう答える。

 ギィがそう聞くと、レオンは参加する旨を言う。

 すると、ギィは立ち上がる。

 

ギィ「おお……………良かったよ。渋るなら、お前に俺を一晩抱かせてやろうかと考えていたんだが……………。」

レオン「遠慮する。」

ギィ「釣れないなぁ。」

 

 ギィはそう言いながらレオンのそばに寄ると、レオンは即答する。

 ギィはレオンの肩に手を置こうとすると、レオンはギィの手を止める。

 

ギィ「まったく釣れないな。」

 

 ギィがそう言う中、レオンは手を下ろし、ギィが口を開く。

 

ギィ「リムルとレイトという奴らについて、何か知っているか?」

レオン「クレイマンが言うには、魔王を僭称しているそうだが、私としては、その二人に実力があるなら、何も問題ないと思っているよ。」

ギィ「魔王の資格があるという訳か。俺としては、ラミリスが興味を持つ者ならば、楽しめるんじゃないかと思っている。」

レオン「ラミリスか……………。あの妖精は苦手だ。会うたびに揶揄われる。何度絞め殺してやろうと思ったか。」

 

 ギィの質問に、レオンはそう答える。

 ギィがそう言うと、レオンは苦虫を潰した様な表情を浮かべ、そう吐き捨てる。

 すると、ギィが笑う。

 

ギィ「ハハハッ……………!」

レオン「ん?」

ギィ「やめておけ。ラミリスを殺すなら、俺はお前の敵になる。」

レオン「……………だろうな。本気じゃない。お前に喧嘩を売っても、勝つ見込みが無いしな。」

ギィ「なんだつまらん。それに、そうでもなかろう。お前なら、百万回に一回くらいは俺を殺せるぞ?」

レオン「話にならん。私は確実に勝てる戦いにしか興味は無いんだ。」

ギィ「謙遜はよせ。俺を殺せる可能性を持つというだけで、十分に強者だよ、レオン。」

レオン「フッ。言われるまでも無い。貴様とミリムが別格なだけだ。」

 

 レオンがそう言うと、ギィはそう言う。

 そんな風に話して、ギィが自分の席に戻る中、レオンが思い出したかの様に言う。

 

レオン「別格と言えば……………暴風竜ヴェルドラが目覚めたそうだぞ。」

ギィ「ん?」

 

 レオンがそう言うと、ギィは反応して、その近くに穴が開いて、そこから女性が出てくる。

 

???「あらあら。そのお話、とても興味深いですわね。」

レオン「……………そういえば、ここにも居たんだったな。四体しか存在しない竜種、その一体。白氷竜のヴェルザード。氷の女帝が。」

 

 そう言って現れたのは、竜種のうちの一体、白氷竜のヴェルザードだった。

 ヴェルザードは口を開く。

 

ヴェルザード「あら?私を忘れているなんて、相変わらず冷たい人ね。でも、顔を見せてくれて嬉しいわ。」

レオン「そうか?私も君の顔を見る事が出来て、良い目の保養になるよ。」

 

 ヴェルザードとレオンは、そんな感じに話す。

 すると、ギィが口を開く。

 

ギィ「ふっ。お前達は相変わらず仲が悪いな。レオンよ。我が相棒に嫉妬でもしているのか?」

レオン「ふざけるな。」

ヴェルザード「ウフッ。」

 

 ギィが揶揄う様に言うと、レオンはそう言う。

 ヴェルザードは、笑みを浮かべていたが、すぐに真面目な表情になり言う。

 

ヴェルザード「それで、レオン様。私の弟、ヴェルドラが目覚めたのですって?2年ほど前に反応が消えたから、消滅したと思っていたのだけど。」

ギィ「確かなのか?」

レオン「間違いない。」

 

 ヴェルザードとギィの問いに、レオンはそう答える。

 すると、ギィとヴェルザードは、疑問を口にする。

 

ギィ「だとしたら、何故あの邪竜は大人しくしている?自力でエネルギーを回復出来ぬほどに弱っているのか?」

ヴェルザード「それに、誰が封印を解いたのかしら?」

レオン「間者からの報告では、クレイマンの謀略が原因の様だぞ。」

ギィ「クレイマンか。」

レオン「ファルムス王国に働きかけ、リムルとレイトとやらが興した国を滅ぼそうとけしかけた様だ。」

ギィ「詳しいな、レオン。」

レオン「当然だ。貴様と違って、私は元人間だからな。」

 

 ギィとヴェルザードの疑問に、レオンがそう答える。

 ギィが感心して、レオンがそう答えると、レオンは説明を続ける。

 

レオン「そして、その戦場にヴェルドラが眠っていたらしい。消滅寸前だったヴェルドラは、大量の血を浴びて目覚めたというのが真相の様だな。」

ギィ「ふむ……………。」

レオン「ヴェルドラ復活の巻き添えを食って、ファルムス軍は消滅し、リムルとレイトは危機を脱したのだ……………という話だ。」

ヴェルザード「そういう事なのね。では、封印が解けたのは偶然?」

レオン「さあな。そこまでは分からない。」

ヴェルザード「そう。……………勇者の封印が不完全だった可能性もあるわね。」

 

 レオンが説明を終えると、ヴェルザードはそう推測する。

 そんな中、レオンが口を開く。

 

レオン「それもあるだろうが、もう一つ仮説を立ててみた。」

ヴェルザード「仮説?」

レオン「反応が消えていたというのが解せん。だが、何者かが作った亜空間に、封印ごと取り込まれていたとしたらどうだ?」

 

 レオンはそんな仮説を言う。

 その仮説は、ほぼ正解だった。

 亜空間というよりは、リムルの胃袋な訳だが。

 それを聞いたギィは笑う。

 

ギィ「面白い!それならば、誰かが封印を解いたという事になる!それはつまり、その何者かが、俺たちに匹敵する力を持っているという事になるな。」

レオン「あくまでも可能性だがね。ヴェルドラの消滅がおよそ2年前。ジュラの大森林に新たな勢力が台頭し始めたのもその頃だ。そしてそこの魔国連邦(テンペスト)の盟主二人こそが、クレイマンが 魔王達の宴(ワルプルギス)で槍玉に上げようとしている魔人なのだ。」

 

 ギィがそう言う中、レオンはそう言う。

 ギィは、ラミリスからの連絡を思い出していた。

 

ラミリス『あのね!議題に上がるなら、自分達で話したいんだって!あと、ミリムの事が気になってるみたい。リムルとレイトも参加して良いでしょ?』

 

 それを思い出したギィは、口を開く。

 

ギィ「なるほどな。それなら、確かに見極めねばなるまいよ。クレイマンの暴挙に、ミリムの不審な動き。リムルとレイトが魔王になった件、ヴェルドラの復活……………これが全て繋がっているのだとしたら……………ふっ。今度の 魔王達の宴(ワルプルギス)は、とても楽しい物になるだろうぜ。」

レオン「確かに。今度の 魔王達の宴(ワルプルギス)は荒れそうだな。」

 

 ギィがそう言うと、レオンも同調する。

 そんな中、ギィはヴェルザードに聞く。

 

ギィ「……………にしても、ヴェルドラが大人しいのは何故だ?」

 

 ギィの疑問を聞いたヴェルザードは、空を見つめる。

 

ヴェルザード「……………弱っているみたいね。反応が以前と比べ物にならないほど微弱だわ。」

ギィ「ふむ。」

ヴェルザード「でも、暴れ出さないのは不思議ね。あの子、暴れる事こそが生きる意味という感じだったのに。」

 

 ヴェルザードはそう言う。

 そんな中、レオンは立ち上がる。

 

レオン「まあ、それは私にはどうでも良い。貴様達がヴェルドラを仲間に引き入れたいなら、勝手にすれば良いさ。」

ギィ「もう行くのか?」

レオン「ああ。俺への用件は済んだのだろ?」

ギィ「まあ待て。そう慌てることも無いだろう?お前の本当の目的である”特定召喚”の目処は立ったのか?」

 

 レオンが帰ろうとする中、ギィはそう言う。

 レオンは立ち止まり、口を開く。

 

レオン「……………そっちはまだまだだ。邪魔も入ったしな。」

ギィ「邪魔だと?」

レオン「死を待つばかりだった子供達を救った奴らが居たそうだ。私が引き取る前にな。」

ギィ「ほう。」

レオン「そいつらは、各国が子供達を異世界から召喚する事に腹を立てたそうで、それぞれの国に対しても、圧力を加える可能性がある。なので、この実験は終わりだよ。」

ギィ「ふむ…………その邪魔者を消してしまえば良いのでは無いか?お前なら簡単だろ。」

レオン「はぁ……………その邪魔者こそ、今話題にしていたリムルとレイトなのさ。」

 

 レオンは、ギィの質問にそう答える。

 ギィがそう聞くと、レオンはそう答えて、ギィは驚く。

 

ギィ「なんだと?それは本当に偶然か?」

レオン「面白いだろう。だから私も、一度見ておきたかったのだ。」

ギィ「そうか……………!ますます興味が湧いてきた。もしかしたら、ミリムも俺と似た様な事を考えているのかもな。あいつはバカだが、妙に勘が鋭いからな。」

レオン「かもな。まあ、先ほども言った通り、今度の 魔王達の宴(ワルプルギス)は荒れるだろう。」

ギィ「ふふっ。違いない。……………ところで、お前に情報を伝えている協力者とは、一体何者だ?」

 

 ギィがそう言う中、レオンはそう答え、ギィも同調する。

 どうやら、目をつけられた様だ。

 ギィがそう聞くと、レオンは答える。

 

レオン「帝国の人間らしいが、詳しくは知らん。自分では商人と名乗っていたがね。」

ギィ「信用出来るのか?」

レオン「信用?する必要などあるまい。ただ利用しているだけだしな。」

ギィ「お前がそれで良いなら、俺に文句はない。だが、油断はするなよ。勝手に死ぬなど許さんぞ。」

 

 レオンはそう答える。

 ギィがそう言うと、レオンは驚いた表情を浮かべ、笑みを浮かべる。

 

レオン「フッ…………私を心配してくれるのか?珍しいな。安心しろ、ギィ。目的を果たすまでは死ぬつもりなどないさ。」

ギィ「それはまた……………お前にとって、その目的はそんなに大事なのか?」

レオン「ああ。……………私にとっては、この世の全てに優先するほどに。」

 

 レオンはそう答える中、ギィはそう聞く。

 レオンはそう答える。

 その顔は、純粋な少年の様な笑みだった。

 

ギィ「そうか。嫉妬しそうだ。」

レオン「心にもない事を言うな。」

ギィ「フッ。」

レオン「忠告は素直に受け入れるさ。では、 魔王達の宴(ワルプルギス)で。」

ギィ「ああ。」

 

 レオンとギィはそう話して、レオンは転移魔法で帰る。

 

ギィ「せっかちな奴だ。まあ、レオンらしいが。」

ヴェルザード「しかし、慎重なレオンにしては、隙が大きいですわね。こちらで探ってみますか?」

ギィ「やめておけ。要らぬ手出しをすれば、レオンの不興を買う。俺は友人に恨まれるのはごめんだよ。あいつが俺を頼ってきたら、その時手助けしてやれば良い。」

ヴェルザード「分かりました。」

 

 ギィがそう言う中、ヴェルザードは調べようとするが、ギィに止められる。

 ギィは、ヴェルザードに聞く。

 

ギィ「 魔王達の宴(ワルプルギス)は楽しめそうだな。お前も行くか?」

ヴェルザード「そうですね……………あっ。いえ、やめておきましょう。弟が参加するならともかく、私は魔王には興味がありませんし。」

ギィ「そうか。では、留守は任せた。」

ヴェルザード「ええ。では、失礼します。」

 

 ギィはヴェルザードを誘うが、ヴェルザードは断る。

 ヴェルザードが去っていく中、ギィは呟いていた。

 

ギィ「面白い……………!数百年ぶりに胸の高鳴りを感じるよ。大きな変革の予感がする。 魔王達の宴(ワルプルギス)に。」

 

 ギィはそう呟いていた。

  魔王達の宴(ワルプルギス)をやる新月の夜も、近くなっていた。




今回はここまでです。
トレイニーさんが体を得たり、クレイマンが油断したり、ギィ達が登場したりしました。
いよいよ、ワルプルギスも近くなってきました。
ワルプルギスとクレイマンの軍勢との戦いは、漫画版を基準にして、アニメ版のやつも混ぜたりする感じでいこうかなと思っています。
クレイマンをあと少しでボコボコにします。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
クレイマンをどんな感じにボコボコにするのか、リクエストがあれば、活動報告にて受け付けています。
コラボに関しても、気軽にメッセージを送って良いです。


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第42話 魔王達の宴(ワルプルギス)

 トレイニーさん絡みの用事を済ませて、少し野暮用を済ませた後、俺たちは、紅丸の報告を聞いていた。

 ちなみに、朱菜は今、リムルの服を仕上げている最中であり、俺はもう新しい服に身を包んでいる。

 その服装というのは、アヅマの服装の上に、ジョージ・狩崎のミリタリーロングコートを着用している感じだ。

 あと、野暮用というのは、この世界に現れたゴモラという敵を倒して、並行世界のテンペストに住むプロス=テンペストと共に、ベリアルを撃破した事だ。

 

紅丸「部隊は、ジュラの大森林の入り口に展開させています。」

リムル「ああ。」

紅丸「避難民に扮した足の速い獣人戦士達が、逃げるふりをしつつ、敵をゲルドとグルドの罠へと誘き寄せ、一網打尽にします。」

ゲルド「かつて、俺たちの故郷だった荒れ果てた大地。」

グルド「今は滅びた豚頭族(オーク)の王国であるオービックの跡地が、クレイマンの軍勢の墓地となるでしょう。」

 

 俺とリムルは、そう聞く。

 クレイマンの策謀で滅びた場所が、決戦の地になるとはな。

 俺は自然と呟く。

 

レイト「因果は巡るな。」

ゲルド「ええ。」

紅丸「敵の力量は完全に見切りましたからね。勝利は確実です。」

リムル「まだ戦いが始まってもいないのに!?」

レイト「随分と自信があるよな。」

紅丸「リムル様とレイト様の覚醒により、ユニークスキル”大元帥(スベルモノ)”の祝福(ギフト)を得て、敵の動きを、川の流れのように完全に読み取れる様になりましたからね。」

 

 そう。

 俺とリムルの進化により、ユニークスキルを得た者が多くいる。

 火煉だって、ユニークスキル”粉砕者(クダクモノ)”を手に入れてるしな。

 まあ、紅丸らしいな。

 それを聞いて、朱菜は笑みを浮かべる。

 すると、紅丸が提案をする。

 

紅丸「……………という事で、一つ作戦を閃いたのですが。」

リムル「なんだ?」

紅丸「折角だから、霧の先にあると思われるクレイマンの城を、落としてやろうかと思いまして。」

レイト「何が”折角”だよ。流石に危険じゃないのか?」

紅丸「大丈夫です。攻め込むのは蒼影と白老。二人ともやる気になっていますし……………。」

 

 ついでにコンビニ行くみたいな感覚で言うんじゃないよ。

 俺がそう思う中、紅丸がそう言うが、朱菜が割り込む。

 

朱菜「お待ちを!お兄様!」

紅丸「お……………おお、どうした?朱菜。」

朱菜「どうしたではありません!クレイマンという魔王は、人を操る危険な力を持つそうではありませんか!万が一、蒼影や白老が操られでもしたら……………!」

紅丸「いや、あいつらなら大丈夫……………。」

朱菜「ダメです!」

紅丸「あっ……………。」

朱菜「どうしてもと言うのなら………………私も参ります!」

 

 朱菜がそう言うと、紅丸はそう返す。

 だが、それすらも食い気味に遮った朱菜は、そう宣言する。

 それを聞いた俺たちは、流石に驚いた。

 

リムル「おいおい!」

朱菜「……………という訳ですので、リムル様、レイト様。私に出撃許可を下さいませ。」

レイト「うむ………………。」

 

 俺とリムルが驚く中、朱菜はそう言う。

 正直な話、クレイマンの本拠地という危険な場所に朱菜を送り込むのは、躊躇いがあるな。

 とはいえ、クレイマンが居ないうちに城に攻め込んで、落とすのも悪くはない。

 なら、依頼するか。

 そう思い、俺はガンデフォンを取り出して、ある人に電話をする。

 

レイト「もしもし?少し依頼をしたいんだ。探偵として。鳴海荘吉さん。」

荘吉「………………聞こう。」

 

 そう。

 電話の相手は、鳴海荘吉だ。

 俺は、依頼をした。

 クレイマンの本拠地に攻め込む朱菜の護衛の依頼を。

 探偵料として、金は払う事を。

 それを聞いた荘吉さんは。

 

荘吉「良いだろう。その依頼、引き受ける。」

レイト「ありがとう。探偵料は、荘吉さんの事務所の金庫の中に入れておくから。」

荘吉「ああ。」

 

 そうして、荘吉さんも、朱菜に同行する事になった。

 そんな中、蒼影、白老、朱菜が口を開く。

 

蒼影「リムル様、レイト様。」

リムル「うおおっ!?」

蒼影「ご心配には及びません。自分が朱菜様をお守りしますので。」

白老「わしもおりますれば。敵本丸には、カリオン様が囚われておるやもしれぬし、やはり調査は必要でしょうぞ。」

朱菜「リムル様、レイト様!私とて怒っているのです!クレイマンを許せぬこの気持ちを、抑えるのが難しいのです!」

レイト「はぁ……………まあ、荘吉さんにも、朱菜の護衛に回ってもらう様に手配したから、大丈夫だとは思うけどな。」

リムル「レイトまで……………。分かった。朱菜の参加を認めよう。」

朱菜「ありがとうございます!」

 

 蒼影、白老、朱菜、俺の言葉を聞いてか、リムルが折れた。

 リムルは、口を開く。

 

リムル「朱菜の安全を第一に考える様に。良いな?」

紅丸「朱菜の我儘を認めてくれて、助かります。」

朱菜「私は転移できますので、万が一の場合でも大丈夫です。」

白老「そうじゃな。わしの方が逃げ遅れそうじゃ。」

レイト「ふっ。」

蒼影「我々は、精神攻撃への耐性はありますので、そうそう遅れは取らぬでしょうが、朱菜様が居るなら、その心配は皆無です。カリオン様に関しては、発見してから考えるとしましょう。」

 

 リムルがそう言うと、朱菜達はそう話す。

 確かに、クレイマンの精神支配は、一種の精神攻撃だから、荘吉さんも大丈夫な筈だ。

 何せ、シュラウドは本来、フィリップと荘吉さんがWに変身させる予定だったらしいしな。

 恐らく、荘吉さんも、精神攻撃への耐性は持ち合わせている筈だ。

 Wの候補であった照井竜も、精神攻撃への耐性を持ち合わせている事から。

 俺とリムルは頷き合い、口を開く。

 

レイト「くれぐれも状況を見極める様にな。」

リムル「作戦開始は日が変わった瞬間。魔王達の宴(ワルプルギス)開始直後とする。良いな?」

紅丸達「了解しました!」

 

 俺とリムルがそう言うと、紅丸達が返事をする。

 すると、蒼影が口を開く。

 

蒼影「ところで、竜を祭る民が100名ばかり、クレイマン軍に合流しております。」

リムル「竜を祭る民ってなんだ?」

蒼影「竜皇女であるミリム様を祭る者どもです。」

レイト「ミリムの配下……………ではないな。本人曰く、配下は作らない主義らしいから、勝手に敬っているだけだな。まあ、100人位なら問題はない筈だ。」

蒼影「はっ。」

朱菜「では、仕上げてしまいましょう。動かないでくださいね。」

 

 竜を祭る民か。

 一応、ミリムからそれに関する愚痴を聞いていたので、存在は把握している。

 多分、クレイマンの軍勢に無理矢理従軍させられているのだろう。

 そう思う中、作業は進んでいく。

 俺は、少しラボの方に向かう。

 ジュウガドライバー等の作業自体は終わっている。

 とはいえ、最終調整が必要だろう。

 そう思い、作業を始める。

 ちなみに、後でと言ったが、すぐに探偵料を渡しておいた。

 その後、準備が終わった。

 

朱菜「まあ、よくお似合いです!リムル様!」

紫苑「はい!とても素敵です!」

嵐牙「その凛々しきお姿、我が主人に相応しい!」

シズ「似合ってるよ。二人とも。」

火煉「レイト様もお似合いです!」

リムル「そ……………そうか?」

レイト「ありがとうな。」

 

 俺たちがその姿になると、皆が褒める。

 そして、朱菜は、荘吉さんを連れて、蒼影と白老と合流する為に、転移魔法で転移する。

 俺たちは、迎えが来るまでの間に、他の魔王の話を聞くことにした。

 ヴェルドラとラミリスに。

 

リムル「なあ、魔王って十人居るんだよな?」

レイト「確かに。ミリムにラミリス、カリオン、フレイ、レオン、クレイマン。残りの四人はどんなやつなんだ?」

 

 そう。

 俺たちが把握しているのは、その六人だけだ。

 そう聞くと、ヴェルドラが答える。

 

ヴェルドラ「魔王か。何人かは戦った事もあるぞ。2000年近く前だったか。我が戯れに滅ぼした吸血鬼族(ヴァンパイア)の都があってな。」

レイト「戯れって………………。」

ヴェルドラ「そこを統べる女吸血鬼が魔王の一柱(ひとり)だったと記憶しておる。洒落の分からん奴でな、めちゃくちゃにブチ切れおってな。」

レイト「そりゃあ、都を滅ぼされて、キレない人は居ないだろ。」

ヴェルドラ「うっ………………今では、我もちょっぴり悪かったかなと思ったぞ…………。」

リムル「ちょっぴりかよ……………。」

 

 そりゃあ、自分の都を滅ぼされたら、誰でもキレるだろ。

 流石に、ヴェルドラも反省しているようだが。

 ほんの少しだが。

 

レイト「それで、そいつの名前は?」

ヴェルドラ「確か……………ルルス?いや、ミルスだったか………………。」

 

 忘れんなよ。

 こりゃああれだな。

 場合によっては、吸血鬼族(ヴァンパイア)の魔王が敵になる可能性も考慮した方が良さそうだな。

 すると、ラミリスが口を開く。

 

ラミリス「吸血鬼族(ヴァンパイア)の魔王なら、結構前に代替わりしたよ!今はヴァレンタインって男。」

ヴェルドラ「何?そうなのか。」

 

 代替わりとかもあるんだな。

 とはいえ、恨みはそう簡単には薄れるものではないだろう。

 警戒するに越した事はないからな。

 すると、ヴェルドラが叫ぶ。

 

ヴェルドラ「うおおおっ!」

レイト「どうした!?」

ヴェルドラ「ここで真なる敵が現れるとは……………!次号への見事な引きである!」

リムル「真面目にやれよ!ネタバレすっぞ!」

シズ「アハハハ………………。」

ヴェルドラ「そうカリカリするでない。あとは、巨人族(ジャイアント)の魔王、ダグリュールだな。」

レイト「ダグリュール?」

ヴェルドラ「ああ。何度か喧嘩したが、勝負はついておらぬ。」

 

 ヴェルドラがそう叫ぶので、リムルはそう叫んで、シズさんは苦笑する。

 ヴェルドラは、ダグリュールという魔王の名前を出した。

 ヴェルドラと互角に戦う存在か。

 強そうだな。

 すると、ラミリスはヴェルドラに聞く。

 

ラミリス「そういえば、師匠って、ギィとは戦った事無いの?」

ヴェルドラ「む?…………………うむ。奴ははるか北方に居を構えておるしな。まあ、あんな何も無い所には、行く必要もないのだ!」

 

 ラミリスの質問に、ヴェルドラは途中、言葉を詰まらせるも、そう答える。

 ヴェルドラから、若干の怯えを感じた。

 ヴェルドラが怯えるとはな。

 何があるんだ?

 そう思う中、ラミリスが口を開く。

 

ラミリス「そっかあ。あいつ強いもんね。なにせ、ギィはこのアタシとミリムと同格!最古の魔王の一柱(ひとり)だからね!」

 

 ラミリスはそう言う。

 なるほどな。

 まあ、ギィというのは、ミリムの悪魔を介して見た記憶で、ミリムと戦っていた存在の事だろう。

 ミリムと互角に渡り合う時点で、強者なのは間違いない。

 

ラミリス「あと、二人が知らないのは、ディーノちゃんかな。」

リムル「ディーノちゃん?」

レイト「それは……………来たか。」

 

 ラミリスがそう言う中、聞こうとするが、ある気配を感じる。

 すると、扉が現れる。

 それも、かなり凝ったデザインの。

 

トレイニー「……………迎えが来たようですね。」

シズ「ええ。」

ラミリス「相変わらず仰々しいねぇ。」

リムル「空間を繋げる扉か。凝ってるな。」

レイト「ああ。誰か来るぞ。」

???「お迎えに参りました。ラミリス様。」

 

 俺たちがそう話す中、扉が開き、緑髪のメイドが現れる。

 その気配は、ディアブロと同種の気配だった。

 つまり、あのメイドも原初の悪魔の内の一人という事だろう。

 すると、ラミリスが話しかける。

 

ラミリス「久しぶりじゃん、ミザリー!相方のレインは元気?」

ミザリー「おかげさまで変わりありません。……………そちらがリムル様とレイト様ですね?」

レイト「ああ。」

リムル「おう。」

ミザリー「我が主、ギィ様より、お連れするよう仰せつかりました。どうぞ、こちらの門を通り、魔王達の宴(ワルプルギス)……………その会場へお進みください。」

 

 ラミリスがミザリーという名前のメイドと話す中、ミザリーはこっちを見て、そう言う。

 ラミリスは、先に行った。

 そこから先に進めば、魔窟となっているだろう。

 だが、覚悟はとっくに出来てる。

 俺とリムルは頷き合い、中へと入っていく。

 その後ろに、紫苑と嵐牙、火煉とシズさんも入っていく。

 しばらく歩くと、会場に到着する。

 だが、とんでもない気配を感じた。

 目の前を見ると、赤髪の男が俺たちが居る場所の先にある椅子に座っていた。

 あれがギィという魔王だろう。

 一つだけ言えるのは、やばいという事だ。

 ムラのある魔素(エネルギー)量だが、あれは偽装の類だろう。

 解析能力が無い奴は論外で、偽装に気づけるか否かで、篩にかけているのだろう。

 本当の実力なんて、まるで分からないな。

 すると、そのギィが話しかけてくる。

 

ギィ「座ったらどうだ?扉の前に突っ立っていたら邪魔だろう。踏み潰されても知らんぞ?」

 

 ギィはそう言ってくる。

 それを見て、俺とリムルが首を傾げると、背後の扉が開いて、大きい奴が現れる。

 恐らく、巨人族(ジャイアント)の魔王、ダグリュールだろう。

 

ダグリュール「退いてもらえるか?小さいの達よ。」

リムル「あ、ああ……………。」

レイト「すいません。」

 

 ダグリュールは、俺たちにそう言って、椅子に座る。

 俺たちも、椅子に座る事にした。

 ダグリュールからは、隠す気がないのか、出鱈目な魔素(エネルギー)量が溢れ出ている。

 ヴェルドラと喧嘩出来るというのは、間違いないだろう。

 すると、新たな来客が来る。

 二人の従者を連れた男が入って来た。

 その男は、犬歯が目立っていた。

 恐らく、ヴァレンタインという名の吸血鬼族(ヴァンパイア)だろう。

 だが、気になる事がある。

 

レイト(ん?従者のメイドの方が魔素(エネルギー)量が多い?)

 

 そう。

 確かに、ヴァレンタインという名の魔王も中々だが、そのメイドの方が多い。

 すると、奇才之王が口を開く。

 

奇才之王『測定可能な範囲の解析において、対象者の魔素量は、当代の魔王より多いと推定されます。』

レイト(やっぱりか。つまり、何らかの理由でついて来たのか?だが、何の為に?)

 

 奇才之王の返答に、俺はそう考える。

 だが、すぐにやめる。

 今、そんな事を考えていても無駄だからな。

 どの道、俺たちが生き残るには、クレイマンを倒す必要がある。

 すると、あくびが聞こえてくる。

 

???「ふぁぁぁ……………。」

 

 欠伸が聞こえてきて、後ろをチラリと見ると、気怠げな男が入ってくる。

 すると、ラミリスを見て反応する。

 

???「あ。いよーっす、ラミリス。今日はまた一段とチビだな。」

ラミリス「は?喧嘩売ってる訳!?ディーノの癖に生意気なんですけど!」

ディーノ「バカ。俺が勝つの分かってるのに、売るわけないじゃ〜ん。」

ラミリス「はっ……………!ふ〜ん!死にたいみたいね!今日の私は絶好調なんだからね!」

ディーノ「いやいや。だって、お前、前に会った時より縮んでるよね?」

ラミリス「だってしょうがないじゃん!私、最近生まれ変わったばかりだし!」

 

 あれがディーノという魔王か。

 ラミリスとの関係性は、分かったな。

 すると、近づいてくるベレッタとフランを見て、反応する。

 

ディーノ「あれ!?なんでお前、従者を連れてるの?1人で来た俺が格好悪いじゃん!」

ラミリス「ふふん!まあね!この2人の前には無力だと知るが良いわ!これでぼっちとかバカにしてた奴を見返せるってもんよ!主にアンタよ!」

ディーノ「えー……………なんだよ。ボッチ仲間だと思ってたのに。じゃあ、壊しても良い?」

ラミリス「はぁ!?ダメに決まってんじゃん!!ギィに言いつけて鉄拳制裁の刑に処してもらうからね!」

 

 まあ、関係性は掴めたな。

 ディーノは席に着くと寝始める。

 周囲の魔王は特に何も言わないので、問題無いのだろう。

 さて、参考として、魔素(エネルギー)量を測るか。

 俺とリムルが見ようとすると。

 

ディーノ「………………っ!」

 

 ディーノは少し顔を起こして、俺たちを睨んでくる。

 どうやら、気づかれたな。

 性格こそ軽いが、実力を測る事は出来ないな。

 すると、再び入ってくる一団があった。

 そいつらは、全員が背中から翼を生やしていた。

 恐らく、あれがフレイという有翼族(ハーピィ)の魔王だろう。

 すると、リムルが顔をにやけていた。

 こいつ、また変な事を考えていやがるな。

 俺がゴミを見るような目をリムルに向ける中、気になる事があった。

 

レイト(ん?あのライオン頭……………。)

 

 気になるのは、フレイではなく、後ろの従者の男の方だ。

 記憶に引っかかる気配を感じたのだ。

 すると、火煉が話しかけてくる。

 

火煉「レイト様。」

レイト「どうした?」

火煉「後ろの従者の男、気になりませんか?」

 

 火煉も気付いたみたいだな。

 少し、探ってみるとするか。

 すると、すぐに気配の正体に見当がつく。

 

レイト(なるほど……………そういう事か。となると、話の流れが見えて来たな。)

奇才之王『是。マスターの考えている事で、概ね合っていると推測します。』

 

 やっぱりな。

 となると、ミリムの考えも読めて来そうな気がするな。

 すると。

 

???「お前達がリムルとレイトか。」

 

 そんな風に声をかけられたので、俺とリムルは振り返る。

 そこに居たのは、金髪の男だった。

 恐らく、魔王レオン・クロムウェル。

 

レイト「そうだが。」

リムル「そうか。お前がレオンか。」

シズ「……………久しぶりね、魔王レオン。」

レオン「久しいな。元気にしていたか?」

シズ「……………ええ。2人のおかげで。」

 

 俺たちがそう反応する中、シズさんがやって来て、レオンと対峙する。

 シズさんとしても、因縁の相手との再会だもんな。

 

シズ「魔王レオン。あなたには、聞きたい事がたくさんあるのよ。」

レオン「そうか。だが、私には無いな。」

シズ「……………………。」

レオン「とはいえ、リムルとレイトには少し興味がある。招待してやるから、聞きたい事があるのなら、来たら良い。罠だと思うなら、拒否してくれて構わないよ。」

 

 シズさんがそう言うが、魔王レオンは素っ気なくそう言って、シズさんはレオンを睨む。

 シズさんは一息ついて、俺たちの方を見てくる。

 俺とリムルも、一息ついて、椅子に座る。

 

リムル「分かったよ。」

レイト「受けてやるから、招待状でも送ってくれ。」

レオン「ああ、そうしよう。……………尤も、お前達がこの場を生き残れたらだがな。」

 

 俺とリムルがそう言うと、レオンはそう言う。

 俺たちが振り返ると、2人ほど入ってくる。

 片方はミリムだった。

 元気そうだな。

 カリオンが行方不明……………とはいえ、どこに居るのかは分かるが、これで魔王は八人。

 という事は、隣に居るのがクレイマンか。

 すると。

 

クレイマン「さっさと歩け!このウスノロ!」

 

 クレイマンはそう叫んで、ミリムを殴る。

 それを見て、周囲には驚愕の雰囲気が広がる。

 だが、ミリムは反撃せずに椅子に座る。

 どういう事だ?

 そう思い、俺はミリムを見る。

 それを見て、大体察した。

 なるほどな。

 そう思う中、クレイマンが声高に言う。

 

クレイマン「皆さん、お待たせ致しました。」

 

 クレイマンの心を見ると、優越感に浸っていた。

 自分の力を誇示出来て、そんなに嬉しいのか。

 見せかけの力なのにな。

 すると、もう1人の青髪のメイドが現れて、口を開く。

 恐らく、ラミリスが言っていたレインというメイドだろう。

 原初の悪魔の1人。

 

レイン「それでは、出席者をご紹介いたします。悪魔族(デーモン)、”暗黒皇帝(ロード・オブ・ダークネス)”ギィ・クリムゾン様。妖精族(ピクシー)、”迷宮妖精(ラビリンス)”ラミリス様。」

ラミリス「ふわぁ……………へへん!」

レイン「竜魔人(ドラゴノイド)、”破壊の暴君”(デストロイ)、ミリム・ナーヴァ様。巨人族(ジャイアント)、”大地の怒り(アースクエイク)”ダグリュール様。吸血鬼族(ヴァンパイア)、”鮮血の覇王(ブラッディロード)”ロイ・ヴァレンタイン様。堕天族(フォールン)、”眠る支配者(スリーピング・ルーラー)”ディーノ様。有翼族(ハーピィ)、”天空女王(スカイクイーン)”フレイ様。妖死族(デスマン)人形傀儡師(マリオネットマスター)”クレイマン様。」

クレイマン「うん。」

レイン「人魔族(デモンノイド)、”白金の剣王(プラチナムセイバー)”レオン・クロムウェル様。そして、妖魔族(スライム)、ジュラ・テンペスト連邦国盟主、リムル=テンペスト様。巍骸魔(ギフ)、ジュラ・テンペスト連邦国盟主、レイト=テンペスト様。…………以上でございます。」

 

 レインの呼びかけに、会釈をしたり、反応をしたりして、終わる。

 すると、クレイマンが抱えていた狐を机に置いて立ち上がり、叫ぶ。

 

クレイマン「本日は私の呼びかけに応えていただき、誠にありがとうございます。それでは、始めましょう。我らが宴を。ここに、魔王の宴……………魔王達の宴(ワルプルギス)の開催を宣言します!」

 

 クレイマンはそう言う。

 その顔は、本当に笑顔だった。

 俺たちを叩き潰せるのがそんなに嬉しいのか?

 絶対に、お前の思い通りにはいかないだろう。

 良いぜ、その優越感、きっちりとへし折ってやるぜ。

 俺たちの親友であるミリムを殴った件、策謀で俺たちの国を滅ぼそうとした件などなど。

 それらをまとめての報いを受けてもらうぜ。

 ただでは死なせない……………!

 ケロロ軍曹のクルル曹長にリバイスのカゲロウは、こう言った。

 

クルル『相手がすっかり良い気になった所を一気に突き落とす…………のが超クールなんだって?…………同感だ。』

カゲロウ『幸せの絶頂から地獄に叩き落とさなきゃ……意味が無いだろ。』

 

 クレイマンはまさに、すっかり良い気になっている。

 それを一気に突き落とす。

 徹底的にな。

 俺とリムルは、そんなクレイマンを睨む。

 一方、戦場では。

 

ヤムザ「一体、どうなっているのだ!?」

 

 ヤムザは苛立っていた。

 クレイマンに捜索を言われてからも、捜索していたが、一向に見つからない事に。

 すると、部下の1人が入ってくる。

 

部下「や…………ヤムザ様!」

ヤムザ「ん?」

部下「獣人を見つけて追ってる途中、奇襲を受けたようです。」

ヤムザ「おい、お前。誰にやられた?獣王国(ユーラザニア)の連中か?それとも……………おい!?」

部下「……………死にました。」

 

 部下がそう言うと、ヤムザはその者に聞く。

 だが、聞く中、その者は倒れて、絶命した事を確認する。

 その首元には、クナイが刺さっていて、ヤムザはそれを抜く。

 

ヤムザ(魔国連邦(テンペスト)へ避難した獣人の戦士団か?三獣士がこちらの動きを察知して対策に出た可能性もあるが……………だが、例え援軍を送ったとしても、魔国連邦(テンペスト)からでは到底間に合わぬはず。)

 

 ヤムザはそんな風に考える。

 実は、間に合っている事に気づいていない。

 そんな中、外から叫び声が聞こえて来て、外に出る。

 

ヤムザ「今度は何だ!?また新手か!くそっ!あいつら、一体どこから湧いてくるんだ!?」

 

 ヤムザはそう叫ぶ。

 一方、紅丸は、思念伝達でゲルドとグルドに合図を送る。

 

紅丸『ゲルド、グルド。始めろ。』

ゲルド『承知。』

グルド『分かりました。』

 

 紅丸の合図を受け取った2人は、他の猪人族(ハイオーク)に合図を送る。

 すると、クレイマンの軍勢から距離をとる。

 それを見ていたクレイマンの軍勢は、疑問に思うが、すぐに叫ぶ。

 

手下「罠だ!何か仕掛けてくるぞ!この場に留まって…………!」

 

 軍勢の1人がそう言う。

 だが、それこそが罠だったのだ。

 ゲルドとグルドは、エクストラスキル、土操作を発動する。

 すると、軍勢の足元に穴が開き、落ちていく。

 だが、翼がある奴は真っ先に脱出する。

 

手下「危なかった…………。飛翔出来る者が居なければ、我が隊は全滅……………。」

ガビル「それは不運であるな。」

 

 そう言う中、龍人族(ドラゴニュート)の部隊が、攻撃を仕掛け、落としていく。

 ライブに変身したトリシューラも、銃撃で落とす。

 

ガビル「大人しく落っこちておれば、痛い思いをせずに済んだであろうに。」

トリシューラ「まったくだな。」

 

 この2人はそう言う。

 一方、地面の方では、這い上がって脱出しようとするが、容赦なく落とされていく。

 地面の中でも、戦闘が起こっていた。

 

蒼月「ハアッ!」

 

 蒼月は、インペリアルデモンズに変身した状態で、敵を倒していく。

 NEVERも、全員が変身した状態で応戦していた。

 

克己「フッ!ハアッ!」

 

 克己はエターナルエッジや格闘術でその周辺にいる兵士を倒していく。

 エターナルエッジを投げ、相手の喉元に突き刺し、喉元を引き裂く。

 

マリア「ハアッ!テヤッ!」

 

 マリアは、突風を操り、敵の兵士を倒していく。

 

レイカ「フッ!ハッ!」

 

 レイカは、炎を纏った徒手空拳の格闘戦で敵を倒していく。

 

剛三「オラッ!でやぁ!」

 

 剛三は、槌状のメタルシャフトを振り回して、周囲の敵を薙ぎ払う。

 

京水「ムチ!ムチ!ムチムチ!ぶっとびぃ~!」

 

 京水はそう言いながら、伸縮自在の腕で敵を倒したり、T3マスカレイド・ドーパントを召喚して、攻撃させたりする。

 

賢「GAME・START。」

 

 賢はそう言って、右腕から青いエネルギー弾を放って、敵を倒していく。

 蒼月が戦う中、一体の犬頭族(コボルト)が敵を倒す。

 

蒼月「ん?犬頭族(コボルト)?」

犬頭族「あの!テンペストの援軍に来ました!ファルムスの奴らを倒す為に!」

蒼月「え?ファルムスの戦争は終わったけど…………。」

犬頭族「えっ!?」

 

 犬頭族がそう言うと、蒼月はそう言う。

 犬頭族は驚くが、すぐに冷静になる。

 

犬頭族「なら、加勢しますね!」

蒼月「えっ?ちょっと……………。」

 

 犬頭族は、敵を倒していく。

 それを見ていた蒼月は。

 

蒼月「中々に強い……………レイト様にも後でお伝えするか。」

 

 蒼月はそう言って、戦闘に戻る。

 一方、崖の上から見ていた紅丸と三獣士は。

 

アルビス「勝負ありましたね。もう敵方に挽回の策などないでしょう。見事な采配です。紅丸様。私ではここまで的確に兵を動かせません。」

紅丸「勝って当然だ。だからこそ油断は出来ないのさ。」

 

 アルビスの言葉に、紅丸はそう返す。

 すると、アルビスは跪き、紅丸は聞く。

 

紅丸「何故跪いている、アルビス殿。貴女は獣王国(ユーラザニア)の軍の統括だろう。」

アルビス「どうか、アルビスと。今、我ら獣人は、指揮権を魔国(テンペスト)軍に委ねております。貴方が総大将であるべきです。紅丸様。」

 

 紅丸はそう聞くと、アルビスはそう答える。

 紅丸は答える。

 

紅丸「よかろう。この場に限り、アルビス。お前を副官に任ずる。」

アルビス「拝命致しますわ。」

紅丸「さて……………まだ幾らか強者の気配が残っている。折を見て、ゲルド達を…………。」

 

 紅丸は、アルビスを副官に任じた。

 紅丸がそう言う中、スフィア達が口を開く。

 

スフィア「待ってくれよ!総大将殿!」

フォビオ「ここは俺たち、獣人の国!アンタ達に任せっきりじゃあ、カリオン様に怒鳴られちまう!」

スフィア「その通りだぜ!ここでの戦いくらいは譲ってもらいたいね!」

アルビス「紅丸様。軍の指揮はお任せしますので、我らに敵軍首魁共の討伐をお命じくださいませ。」

 

 スフィア達はそう言う。

 それを聞いた紅丸は、アルビスの意図を察する。

 

紅丸「……………貴様。さてはそれが狙いで俺に総大将を譲ったな?」

アルビス「あら、何のことでしょう?」

 

 紅丸はそう聞くが、アルビスは惚ける。

 それを聞いた紅丸は、呆れつつも、笑みを浮かべる。

 

紅丸「…………まあ良い。どの道、お前達にも参戦してもらう予定だった。アルビス、スフィア、フォビオ。三獣士よ!お前達に自由行動を許す!敵軍の首魁を討ち取って来い!」

スフィア「待ってたぜ!大将!」

フォビオ「ようやく暴れられるってもんだ。俺を嵌めたやつの匂いもしやがるし、俺はそいつを追うとしよう……………!」

アルビス「では、後はお任せしますね。紅丸様。」

紅丸「行け!」

三獣士「はっ!」

 

 紅丸がそう言うと、三獣士達も動き出す。

  魔王達の宴(ワルプルギス)が始まる中、クレイマンの軍勢は、追い詰められていた。




今回はここまでです。
遂に、ワルプルギスが始まりました。
つまり、クレイマンの命も、もう長くありません。
レイトは、徹底的にクレイマンを叩き潰すと決めています。
嫌な奴として有名なクルルにカゲロウの言葉を思い出して。
ちなみに、カゲロウはリバイス繋がりで、クルルはクレイマン繋がりでセレクトしました。
クレイマンもクルルも、両方とも子安武人さんですからね。
そして、クレイマンの軍勢が追い詰められる中、コボルトのオリキャラを出しました。
オリキャラとして、リクエストがあったので。
次回と次々回に関しては、レイトは出てきません。
話の流れは、漫画版にアニメ版のセリフとかを混ぜていきます。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
クレイマンをどのようにボコボコにして欲しいというのがあれば、受け付けます。
現状は、ツインキメラとトライキメラのアブゾーブ必殺技、他のアブゾーブ必殺技を叩き込む予定です。


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第43話 会戦

 紅丸の命により、三獣士も動き出した。

 スフィアは、駆け出すと、技術(アーツ)である《飛翔走》を使う。

 

ヤシチ「わっ!」

ガビル「なんと……………翼もないのに、空を翔るとは……………。」

トリシューラ「いくぞ!」

 

 ヤシチとガビルが驚く中、トリシューラがスフィアの元に向かい、ガビル達も向かう。

 

ガビル「スフィア殿!どこへ行かれる!?」

トリシューラ「何かいたのか?」

スフィア「ガビルさんにトリシューラさんか!あっちの方に気になる気配があってな!」

ガビル「あちら……………敵後方であるか?」

スフィア「ああ!」

トリシューラ「確かに、一際強い気配を感じるな………………。」

ガビル(しかもなんだか……………ちょっとばかし、親しみを覚えるような……………?)

 

 ガビルとトリシューラがそう聞くと、スフィアはそう答える。

 それを見て、トリシューラがそう呟く中、ガビルは何かを感じ取っていた。

 一方、神官団の方は。

 

ヘルメス「ミッドレイ様、やばいですね。完全に負け戦ですよ、これ。先手を取ってた筈が、始まってみれば後手後手……………。」

トート「あ、また一部隊が落とし穴にやられてますね。」

 

 ヘルメスとトートは、解析・探知スキルである龍眼を使って、そう言う。

 すると、ミッドレイは口を開く。

 

ミッドレイ「ぐっ…………!弱い………………弱すぎる!魔王クレイマンの配下共!こんなにも弱かったのか!それに、でかい態度で我ら竜を祀る民を巻き込んでおきながら……………とんだ無能指揮官ではないか、ヤムザめ……………!」

 

 ミッドレイは、頭の血管を浮かび上がらせながらそう言う。

 竜を祀る民達は、ヤムザからこう言われていたのだ。

 

ヤムザ『貴君らは、後方で医療班として働きたまえ。』

 

 と。

 それを聞いていたヘルメスとトートは口を開く。

 

ヘルメス「まあ、奴の悪口には全面的に同意したいですけどね。ヤムザが有能な指揮官だったとしても、かなり厳しいでしょ。」

ミッドレイ「何?」

トート「そもそも、クレイマンは、魔国(テンペスト)の援軍が間に合う事を想定していなかった。敵の策謀がこちらを上回っていたのは確かですね。」

ミッドレイ「バカめ!姑息な作戦など、力で打ち破れば済む話ではないか!」

 

 ミッドレイの発言を聞きながら、ヘルメスとトートがそう言うと、ミッドレイはそう叫ぶ。

 それを聞いたヘルメスは口を開く。

 

ヘルメス「個人の喧嘩や決闘ならいざ知らず、こんな集団戦では、どれだけ軍を統率出来るかが勝敗を分けるんですって!」

トート「今回は、罠まで用意していた敵の作戦勝ちですね。」

ミッドレイ「ふんっ!そんな事、わざわざ言われなくても、見れば誰でも分かるであろうよ。」

 

 ヘルメスがそう叫び、トートがそう言うと、ミッドレイはそう言う。

 そんな中、ヘルメスとトートは話し合う。

 

ヘルメス「なあ、どうやって魔国(テンペスト)は援軍を間に合わせたと思う?」

トート「考えられるのは、転送魔法か転移魔法だけど、転送魔法は有機物を送るのは向いていないからね。」

ヘルメス「となると、転移魔法か。でも、魔素による変質を防ぐ為に、対象者を結界で保護する必要があるからな。軍隊を送るとなると、とんでもないエネルギーが必要だからな。それは流石にないか……………?」

 

 ヘルメスとトートはそんな風に話し合う。

 それを見ていたミッドレイは。

 

ミッドレイ(ヘルメスにトートの奴め。まぁた小難しい事を考えおって……………。)

 

 そんな風に思っていた。

 すると、ミッドレイが口を開く。

 

ミッドレイ「ふん。わしは、ああいう者共の方が余程分かりやすくて好ましい。」

ヘルメス「え?」

ミッドレイ「来るぞ。あれは強いぞ。気は進まぬが、向かってくるなら、仕方がない。相手をしようではないか……………!」

トート「やる気満々じゃないですか。はぁ。了解です。」

 

 ミッドレイがそう言って、2人が前方を見ると、スフィア達がやってきていた。

 それを見たミッドレイは、そんな風に言って、トートもそういう。

 すると、スフィアが先手で攻撃を仕掛ける。

 だが、ミッドレイはそれをあっさり受け止めた。

 

スフィア「っ!止められ……………!?」

 

 己の攻撃があっさりと受け止められた事に驚く中、ミッドレイはスフィアを投げ飛ばす。

 

ガビル「スフィア殿!」

スフィア「思ったとおりだ。気をつけな、ガビルさん、トリシューラさん。あいつら多分、敵陣営の中で最強だ。」

トリシューラ「だろうな。カゲロウ、ホーリーウイングで行くぞ。」

カゲロウ「勝手にしろ。」

 

 ガビルがそう叫ぶ中、スフィアはそう言って、トリシューラは、ホーリーウイングバイスタンプを取り出す。

 そう、予め、強化形態のバイスタンプは渡してあるのだ。

 

ホーリーウイング!

 

 トリシューラは、ホーリーウイングバイスタンプをオーインジェクターに押印する。


『Confirmed!

 

 そして、ツーサイドライバー本体に装填する。


Wing to fly!Wing to fly!

Wing to fly!Wing to fly!』


 そんな待機音が流れる中、トリシューラは変身する。

 

ウイングアップ!

ホーリーアップ!

Wind!Wing!Winning!

ホーリー!ホーリー!ホーリー!ホーリー!ホーリーライブ!

 

 トリシューラは、ホーリーライブへと変身した。

 その一方で、フォビオは森の中を駆けていた。

 

フォビオ「……………いた。ふっ!」

 

 フォビオは獲物を見つけ、加速する。

 一方、フォビオが向かっている先には、フットマンとティアが居た。

 

フットマン「おやおや。これはちょっとまずい流れですねぇ。」

ティア「どうするフットマン?クレイマンに報告する?」

フットマン「それは無理でしょう、ティア。今は魔王達の宴(ワルプルギス)の真っ最中です。それに……………私たちにも野暮用が出来てしまったようですよ?」

 

 フットマンとティアがそう話す中、2人の背後に、フォビオが現れる。

 

フォビオ「よお。この前は世話になったな。”涙目の道化(ティアドロップ)”のティアに、”怒った道化(アングリーピエロ)”のフットマン。」

フットマン「おやおや?これはこれは、フォビオ様ではありませんか。」

ティア「魔王になり損なったフォビオ様!魔王ミリムに負けちゃったフォビオ様!あの時は……………あたい達の役に立ってくれて、ありがとう!」

 

 フォビオがそう言うと、フットマンとティアはそう言う。

 その際、ティアはフォビオを煽っていた。

 そんな中、フォビオが口を開く。

 

フォビオ「へっ。俺を覚えていてくれた様で何よりだ。理由も分からないまま殺されたんじゃ、可哀想だからな。」

ティア「あれあれ〜?何を怒っているんだろう?」

フットマン「不思議ですねぇ。このお馬鹿さんは何を怒っているんでしょうねぇ?」

ティア「何でかな?何でかな?」

フットマン「怒りの感情は大変に美味ですけど、我々には殺されなければならない様な理由など、ありませんねぇ。」

ティア「だよね、だよねぇ!」

 

 フォビオがそう言う中、ティアとフットマンの2人は、煽る様にわざとらしく大声で言う。

 そんな中、フォビオが叫ぶ。

 

フォビオ「うるせぇ!確かに騙された俺は馬鹿だが、バカはバカらしく、落とし前をつけるのに理由なんざ要らねえんだよ!!」

ティア「ふ〜ん。あたい達とやる気なんだ。弱い癖に、無理しちゃダメだよ。」

フットマン「ホ〜ホホホホッ!ダメですよ、ティア。せっかく、フォビオ様が冗談を言って笑わせてくれようとして下さってるのだから!」

 

 フォビオがそう叫ぶ中、2人は煽るのをやめない。

 爪を伸ばしたフォビオは、素早く駆けて、2人の直前にまで迫る。

 

ティア「あっ……………!」

フットマン「速い。」

 

 素早く動いたフォビオに対して、2人がそう反応する中、フォビオは攻撃する。

 2人は、ジャンプして躱す。

 躱した後、2人が身構えると、後ろから穴が現れて、そこから、ゲルドとゲットオーバーデモンズに変身したグルドが現れて、攻撃する。

 

ティア「あっ……………!」

フットマン「ほ?」

 

 2人はそれに気づいて、フットマンは2人の攻撃を受け止める。

 

フットマン「これは、これは……………。」

ゲルド「久しいな、フットマン。」

グルド「俺たちの事を覚えているか?」

フットマン「ええ、覚えていますよ。豚頭帝(オークロード)計画以来ですか?確か、豚頭将軍(オークジェネラル)さん達でしたか。いやいや、立派になった物ですねぇ!!」

 

 フットマンがそう言う中、ゲルドとグルドはそう聞く。

 フットマンはそう答えると、2人をフォビオの方に吹っ飛ばす。

 

ゲルド「そうだ。かつて、豚頭族(オーク)だった頃、我らは貴様と共に、大鬼族(オーガ)の里を滅ぼした。」

グルド「紅丸殿に命じられて来た。助太刀するぞ、フォビオ殿。」

フォビオ「おお!助かるぜ!ゲルドさん、グルドさん!」

グルド「相手にとって、不足なし。」

 

 フットマンの言葉に、ゲルドはそう答えると、フォビオ達と共に並ぶ。

 それを見て、フットマンは口を開く。

 

フットマン「ほほっ。どうです?その後の人生は。罪の意識に苛まれ、お辛いのでは?」

ゲルド「………………最高だとも。」

「「っ!!」」

グルド「こうして、仲間と一緒に、陰謀の裏で暗躍していた連中を屠れるのだからな!」

 

 フットマンがそう聞くと、ゲルドとグルドは、そう答える。

 因縁の対決が起ころうとしていた。

 その頃、クレイマン軍の本陣にあるテントの一つに、伝令が駆け込む。

 

伝令兵「ほ……………報告します!後方にて、三獣士、白虎爪スフィアを確認……………!及び東の森にて、黒豹牙フォビオを確認しました!」

兵士「なっ……………三獣士だと!?奴らは避難民を連れて、魔国(テンペスト)に居るはずではないか!」

伝令兵「し、しかし、現に……………っ!」

 

 伝令兵の言葉に、他の兵士達は驚愕する。

 それを聞いていたヤムザは、考えていた。

 

ヤムザ(どうする?示指のアダルマンに頼るしかないか。だが、すぐにアダルマンをこの地に呼び寄せる事など、叶う筈もない。もはや、立て直しだのと言える段階ではない。)

 

 ヤムザはそんな風に考えていた。

 すると、ヤムザは立ち上がり、部下に話しかける。

 

ヤムザ「お前達、時間を稼げ。」

部下「ヤムザ様、どちらに!?」

ヤムザ「私は一度、傀儡国(ジスターヴ)に戻り、アダルマンを連れて来る。」

部下「アダルマン…………!」

部下「あの死霊の王(ワイトキング)を…………!」

部下「しかし、あの者はあの場から動けないのでは………………。」

ヤムザ「奴ならば死霊を召喚し、軍勢を立て直せる。何としても連れてこよう。私が居ない間の指揮は任せたぞ。」

部下「はっ!」

 

 ヤムザが出て行こうとすると、部下はそう聞き、ヤムザはそう答える。

 ヤムザはそう言って、テントの外に出る。

 そんな中、ヤムザが考えていた事は。

 

ヤムザ(クレイマン様が認めるのは、有能な部下のみ。負けが確定した時点で、生きて戻れても処刑されるだけだ。運良く生き残ったとしても、精神を破壊された操り人形になどなりたくないぞ。…………となれば、自分の身の安全確保が最優先。忌々しいが、この場での敗北は認めよう。……………だが、最後に勝利するのは私だよ。)

 

 ヤムザは、自己保身の事を考えていた。

 アダルマンを連れて来るというのは、ある意味で嘘なのだ。

 テントからは、何も知らない部下達の声が聞こえて来る。

 

部下「隊列を組み直す!ヤムザ様が戻られるまで、何としても持ち堪えるのだ!」

ヤムザ(バカな奴らよ。自ら忠誠を誓った私は、他の指共と違い、監視されていない。行方をくらませれば、クレイマン様とて追跡は困難だろう。五本指筆頭の地位は惜しいが、命あっての物種。どこか、別の魔王にでも取り入って……………。)

 

 部下の声を聞いて、部下を嘲笑いながら、そう思う。

 ヤムザは逃げるべく、転移魔法を発動する。

 だが、発動する瞬間に魔法陣が砕け散る。

 何度もやるが、結果は同じだった。

 

ヤムザ(転移魔法が発動しない!?”空間封鎖”……………敵の能力(スキル)か!)

 

 ヤムザはすぐにそう判断して、テントへと戻り、叫ぶ。

 

ヤムザ「おい!近くに敵が潜んで……………っ!?」

 

 ヤムザはそう叫ぶが、すぐに驚く。

 何故なら、テントの中にいた部下達は、既に絶命していたのだ。

 

ヤムザ「麻痺に……………毒!?それに石化だと!?バカな!?ついさっきまで何事もなかったというのに!?」

 

 ヤムザは、いつの間にか部下がやられていたことに驚く。

 急いで前方の方に出ると、驚きの光景が目に入る。

 

ヤムザ「……………見張りは何をしていたっ!三獣士が筆頭……………黄蛇角のアルビス………………………!!」

 

 そう。

 既に本陣の前には、アルビスが到着していたのだ。

 三獣士は、それぞれの強敵と相手をする。




今回はここまでです。
今回は、漫画版の区切りに合わせたので、短めです。
トリシューラも、ホーリーライブになりました。
次回は、カリュブディスを倒す所まで行く予定です。
クレイマンの軍勢も、追い詰められていく。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
なかなか進まなくてすいません。
リクエストは、絶賛受け付けています。
例えば、クレイマンとの戦いをどうやるのかとかですね。
コラボに関しては、遠慮なくメッセージで送って良いですよ。


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第44話 大妖の再来

 三獣士達は、クレイマン軍の強敵と戦闘を開始していた。

 アルビスは、ヤムザの前に現れていた。

 ヤムザは、口を開きながら降りる。

 

ヤムザ「仕方ない。本気で相手をしてやるとするか。(ここを生き延びて、私は必ず返り咲く!)」

 

 ヤムザはそう言いながら降りると、そう思いながら、氷結の魔剣を抜刀する。

 そして、アルビスに話しかける。

 

ヤムザ「アルビスよ。獣王カリオン配下きっての魔人。勇猛なる三獣士の貴様なら、私との一騎打ちを引き受けてくれような?」

アルビス「ええ、良いですわよ。魔王クレイマン配下、五本指筆頭、氷結魔剣士ヤムザ殿。あなたに格の違いを教えて差し上げますわ。それこそが、クレイマンとカリオン様の格の優劣を証明するでしょう。」

 

 ヤムザとアルビスはそう話すと、お互いに睨み合い、かけだしていく。

 

アルビス「はぁぁぁぁ!!」

ヤムザ「ぐっ……………!ぬおおお!」

 

 アルビスが手に持ってる杖で攻撃する中、ヤムザも攻撃していく。

 お互いに互角。

 ヤムザとアルビスの鍔迫り合いで、周囲に火花が散る。

 2人は離れる。

 すると、ヤムザが笑う。

 

ヤムザ「ふっ。」

 

 ヤムザが笑った次の瞬間、アルビスの背後から、敵兵が現れる。

 

敵兵達「ハァァァァ!」

アルビス「バカめ!その様な下策が通用するか!!」

 

 敵兵が攻撃しようとする中、アルビスの目が光る。

 アルビスのエクストラスキル、《天蛇眼(ヘビノメ)》が発動する。

 これは、見た者にあらゆる状態異常をもたらす。

 それにより、敵兵は石化して、地面に落ちて砕け散る。

 だが、それにより、ヤムザから意識が離れてしまう。

 

ヤムザ(取った!)

 

 ヤムザはそう思いながら、攻撃を叩き込もうとする。

 すると、攻撃が阻まれる。

 

ヤムザ「なっ!?」

アルビス「あっ……………。」

???「そういう卑怯な作戦は、男らしくないっすね。」

 

 ヤムザとアルビスが驚く中、その声の主は、ヤムザとアルビスの間に降り立つ。

 

ヤムザ「ちっ…………!何者だ!?」

ゴブタ「ゴブタっすよ!こういう場合に備えて、隠れ潜んでいたっす!」

 

 そう。

 そこに居たのは、ゴブタだった。

 すると、アルビスの影から、 狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)達が現れる。

 

アルビス「あら?私にも内緒で?道理で何か変な気配を感じると思っていましたわ。」

ゴブタ「へへっ!紅丸さんから命じられていたんすよ!……………っていうか、最初からオイラ達に気付いてたっすよね?」

 

 アルビスがそう言うと、ゴブタはそう返す。

 ヤムザが口を開く。

 

ヤムザ「雑魚が!邪魔するな!!」

 

 ヤムザはそう言って、剣から魔法を放つ。

 ゴブタも、鞘の方から魔法を放つ。

 2人の魔法は拮抗して、砕け散る。

 

ヤムザ「この氷結の剣と同等の威力だと?雑魚のくせに生意気な……………!」

 

 ヤムザはそう言う。

 一方、ゴブタは。

 

ゴブタ(やばいっすね……………たまたま魔法だったから助かったけど、剣で突かれたら1発でアウトっすよ。これはもう、逃げても良いっすよね?)

 

 そんな風に思っていた。

 ゴブタは口を開く。

 

ゴブタ「敵の魔人達を掃討するっすよ!ヤムザは強いから、手を出しちゃダメっす……………ひっ!」

 

 ゴブタがそう言う中、ヤムザが攻撃を仕掛けてくる。

 ゴブタは、それを回避する。

 

ヤムザ(この私の攻撃を躱しただと!?)

ゴブタ(やばかったっす……………。)

 

 お互いにそんな風に驚いていた。

 すると、ヤムザが口を開く。

 

ヤムザ「フハハハハハ!」

ゴブタ「ん?」

ヤムザ「一騎打ちに助っ人を潜ませるとは、三獣士も落ちたものよ!」

ゴブタ「それじゃあ、自分は、この一騎打ちの立会人を務めるっす!(やったっす!これでこの危険な魔人と戦わなくても済みそうっすね!)」

 

 ヤムザがそう言うと、ゴブタはそう言う。

 ゴブタは、そんな風に考えていた。

 すると、アルビスが口を開く。

 

アルビス「あら。何なら、譲っても良いわよ。」

ゴブタ「いえいえ!ここは、自分が遠慮するんで!どうぞ、お好きに戦って下さいっす!邪魔して失礼したっす!」

アルビス「ふっ。」

 

 アルビスがそんな風に言うと、ゴブタはそう言って、他の魔人の掃討に入る。

 アルビスとヤムザは、お互いに向かい合う。

 竜を祀る民の神官戦士団と、スフィア達の方は、ガビルはヘルメスと、トリシューラはトートと応戦していた。

 

ヘルメス「くっ……………!」

トート「この……………!」

ガビル「我輩達の……………。」

トリシューラ「勝ちだ!」

 

 ヘルメスとトートが2人の攻撃を捌く中、ガビルとトリシューラはそう言って、それぞれの武器を、相手に突きつける。

 それを見ていたミッドレイが口を開く。

 

ミッドレイ「お。あの龍人族(ドラゴニュート)に、龍人族(ドラゴニュート)の悪魔、なかなかやるのう!ヘルメスとトートを倒すとは!」

ヘルメス「ちょっ!?ミッドレイ様!?」

トート「笑ってないで助けて下さいよ!?」

ミッドレイ「バカめ。貴様らの負けじゃい。そこで大人しく反省しておれ。」

 

 ミッドレイがそう言うと、ヘルメスとトートが助けを求める。

 だが、ミッドレイはそう一蹴する。

 そんな中、スフィアが叫ぶ。

 

スフィア「俺を……………無視してんじゃねーよ!!」

ミッドレイ「無視などしておらんよ。」

 

 スフィアはそう叫びながら、ミッドレイの方に向かい、攻撃をする。

 だが、ミッドレイは慌てずにそう言って、一本背負いをする。

 

スフィア「ぐぅ……………!」

ガビル「スフィア殿!」

トリシューラ(半人半獣化した三獣士を、ああも手玉に取るとは……………!)

 

 スフィアが地面に叩きつけられる中、ガビルとトリシューラはそんな風に反応する。

 すると、ミッドレイが話しかける。

 

ミッドレイ「さあ、立て。貴様の様に投げ甲斐のある相手は久々だ。」

スフィア「くっ……………!テメーみたいなのがクレイマン軍に居たとはな……………。てっきり、ヤムザとかいう野郎が一番なのかと思ったぜ。」

 

 ミッドレイがそう言う中、スフィアはそう言う。

 すると、ミッドレイが口を開く。

 

ミッドレイ「ヤムザ……………ヤムザ殿ね。あの御仁もそれなりではあったが、比べられては釈然とせぬな。こう見えてワシ、ミリム様の組手(あそび)相手になれるんじゃからのう。」

スフィア「ミリ……………え?」

ガビル「ま、まさか、魔王ミリム様であるか!?」

トリシューラ「という事は、あんたらが竜を祀る民って事か。」

 

 ミッドレイがそう言うと、スフィアは驚き、ガビルとトリシューラはそう言う。

 

ミッドレイ「いかにも。我らは竜を祀る民。神官長ミッドレイとは、ワシの事よ!」

ヘルメス「いや、そりゃ知らんでしょ。」

トート「皆ご存知みたいに言われても。」

ガビル「はっ!?」

トリシューラ「いつのまに……………。」

 

 ミッドレイがそう言う中、ヘルメスとトートはそう突っ込む。

 ガビルとトリシューラは、いつの間に脱出していた事に驚いていた。

 ガビルは、ミッドレイに話しかける。

 

ガビル「竜を祀る民……………戦う前から感じていたのであるが、貴殿達はもしや……………。」

ミッドレイ「気づいていたか。さすが、同族よな。」

トリシューラ「…………………。」

ミッドレイ「我らはガビル殿と同じく、龍人族(ドラゴニュート)。違うのは、蜥蜴人族(リザードマン)からの進化ではなく、ドラゴンが人化し、人と交わったその末裔という点だろうな。」

ヘルメス「まあ、本来の姿に戻れる者なんて、殆ど居ないし、ほぼ人間と変わんないすけどね。」

トート「竜体変化とか、竜戦士化とか、誰も獲得してませんからね。」

ガビル「なんと……………。」

 

 ガビルがそう言う中、ミッドレイ、ヘルメス、トートはそう説明する。

 それを聞いていたスフィアが口を開く。

 

スフィア「……………ほぼ人間、か。確かに、アンタの強さは、魔素の多さってより、鍛え上げられた技って感じだ。」

ミッドレイ「ほう……………よく見ておる。その通り。多くの魔人は、とかく魔素量の大小で、その”格”を測りたがる。確かに、目安にはなるだろう。だが、生来の強さに頼り切った強さなど、たかが知れている。真の強さとは、目に見えぬものなり!!技量(レベル)こそが、唯一無二の確かなる指標よ。人間であろうと、魔人であろうとな。」

 

 スフィアがそう言う中、ミッドレイはそう熱弁する。

 それを聞いたスフィアは、笑みを浮かべる。

 

スフィア「……………なるほどな。勉強になったぜ。つまり、俺はもっと強くなれるって事だ。」

ミッドレイ「そうとも。実に将来有望。さて、中々に気の合う相手と分かったものの、ここは戦場で、ワシらとお主らは取り敢えず、敵同士。どうするかね?」

スフィア「決まってるだろ。続きだ。」

 

 スフィアがそう言うと、ミッドレイも笑みを浮かべながらそう言う。

 そうして、戦闘が続行される。

 一方、アルビスとヤムザは、戦いを続けていた。

 クレイマン軍、ユーラザニア軍、 狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)たちは、それを見ていた。

 その周囲には、冷気が漂っていた。

 2人が下がる中、ヤムザは口を開く。

 

ヤムザ「はははっ!流石は三獣士。この私と互角とは恐れ入ります。だが、これで私の勝利は確定した!」

アルビス「何ですって?」

ヤムザ「ふん。切り札がこの魔剣だけだと思ったか?あなたは確かに強い。この私と互角なのだ。それは認めよう。しかし、私が2人いればどうかな?」

 

 ヤムザは笑みを浮かべながらそう言う。

 すると、ヤムザの腕についた腕輪が光りだす。

 そこから、もう1人のヤムザが現れる。

 

アルビス「…………………。」

ヤムザ達「魔宝道具(アーティファクト)鏡身の腕輪(ドッペルゲンガー)だよ。」

ゴブタ「そんなのアリっすか!?」

ヤムザ達「どうだ?私の軍門に下るのならば、命は助けてやっても……………。」

アルビス「それで?」

ヤムザ達「なに……………!?」

 

 ヤムザは、魔宝道具(アーティファクト)を使って、もう1人のヤムザを生み出したのだ。

 それを見たゴブタがそう言う中、ヤムザは降伏を促すが、アルビスは一蹴する。

 

アルビス「所詮はクレイマン如きに仕える魔人ね。お粗末な切り札です事。」

ヤムザ達「ぬぅぅぅ……………!」

ヤムザA「ならば……………!」

ヤムザB「死ね!」

 

 アルビスはそう言う。

 それを聞いた2人のヤムザは、アルビスに攻撃を仕掛けようとする。

 だが、アルビスは慌てずに手に持つ杖を空に掲げる。

 すると、アルビスに向かって落雷が落ちてくる。

 

ヤムザ達「ぬわっ!?ぐぅぅ…………!」

 

 ヤムザ達が怯む中、アルビスの姿が変わっていた。

 アルビスに帯電している雷は、獣王国の戦士団達の方にまで向かってくる。

 

ゴブタ「ちょっ!アルビスさん!電気漏れてるっすよ!?味方も居るっす!見えてるっすか!?」

アルビス「許可は出すので、さっさと退避しなさいな。こうなると手加減出来ませんの。」

ゴブタ「言われなくてもそうするっすよ!総員退避!!」

 

 ゴブタがそう叫ぶと、アルビスはそう言う。

 ゴブタは、退避命令を出し、撤退する。

 獣王国の戦士団も避難して、その場に残ったのは、アルビスとヤムザとクレイマン軍のみだった。

 

兵士「バカめ!たった1人で我ら全員と相手をするだと!?」

兵士「舐められた物だ!うおおおぉ!」

 

 兵士達はそう言うと、アルビスの方に向かう。

 すると、アルビスの角から、雷が放出される。

 その雷に当たった者は、消し炭になったり、石化したりしていく。

 

アルビス「ハハハハハハハ!死ね!愚か者どもよ!!」

 

 アルビスがそう言う中、クレイマン軍の兵士たちは、あっという間に全滅した。

 

ヤムザ達「き、貴様ぁぁぁぁぁ!!」

 

 2人のヤムザはそう叫びながら、アルビスの方に向かう。

 だが、左腕を石化されたり、分身を石化されたりして、一方的だった。

 

ヤムザ(三獣士筆頭、黄蛇角アルビス。主に指揮を担い、後方支援を得意とすると聞いていたが………………完全に見誤った。これほどとは……………。)

 

 ヤムザはそう思った。

 しばらくすると、ヤムザは戦闘不能状態になった。

 そんなヤムザに、アルビスが話しかける。

 

アルビス「降伏せよ。さすれば捕虜として、命だけは保証して差し上げましょう。」

ヤムザ「こ、降伏する。貴様の申し出を……………。」

クレイマン「私がそれを許すはずがないだろう?」

 

 アルビスの申し出に、ヤムザは答えようとすると、ヤムザの頭に、クレイマンの声が響く。

 すると、右腕が動き出す。

 

ヤムザ(麻痺して動かぬ右腕が勝手に…………!?)

 

 ヤムザが驚く中、その右手には、宝珠があった。

 

ヤムザ「(なんだ、この宝珠は。こんな物を持ってきた覚えは………。)っ!?ま、まさか!?や、やめろ!お止め下さい!クレイマン様ぁぁぁぁぁ!!」

アルビス「?」

 

 ヤムザは、見覚えのない宝珠を見てそう考えていたが、すぐに察しがつき、そう叫ぶが、右腕はヤムザの口に向かう。

 それを見て、アルビスは首を傾げる。

 

ヤムザ「あが……………っ!!(信頼されてなどいなかった。所詮私も、あの方の傀儡の一つに過ぎな……………。)」

 

 ヤムザは宝珠を飲み込む直前、そう悟る。

 だが、宝珠を飲み込み、その場に倒れる。

 

アルビス「一体、どうしたと言うのです!?」

 

 アルビスが困惑する中、倒れたヤムザの肉体が膨張する。

 アルビスが下がる中、その膨張したヤムザだった物から、触手が伸び、クレイマン軍の死体や、氷結の魔剣を取り込み、大きくなっていく。

 他の場所でも、その異変に気付いた者がいた。

 

ミッドレイ「っ!?一時休戦だ!まずいぞ、あの気配は……………!!」

 

 スフィア達と戦っていたミッドレイがそう叫ぶ。

 一方、フットマンとティアと戦っていたフォビオ達も気づく。

 

フォビオ「嘘だろ……………。」

ゲルド「この気配は。」

グルド「まさか……………!」

 

 フォビオ達もそう言う。

 一方、アルビス達の方は。

 

アルビス「これは……………!?暴風大妖渦(カリュブディス)……………!!」

 

 アルビスはそう言う。

 そう。

 そこに現れたのは、以前、テンペストに襲ってきた暴風大妖渦(カリュブディス)だったのだ。

 それも、二体。

 

ゴブタ「あれ、知ってるっす!魔法が効きづらい激ヤバなサメ親分っすよ!!皆で戦ったっす!!」

アルビス「それも二体とは…………!(ヤムザ)の分身の影響か!」

 

 ゴブタがそう叫ぶ中、アルビスはそう分析する。

 ヤムザの鏡身の腕輪(ドッペルゲンガー)も取り込んだ影響で、二体に増えたのだ。

 一方、紅丸の方に、大道克己が来ていた。

 

克己「よお、紅丸とやら。」

紅丸「大道克己…………だったな。」

克己「大物が二体も出てきたが、片方は俺に任せてもらおうか。雑魚ばかりで退屈してたんだ。」

紅丸「好きにしろ。俺も、レイト様から与えられたこれを使うか。」

 

 克己がそう話す中、紅丸はそう言う。

 そして、ナスカメモリを取り出して、起動する。

 

ナスカ!

 

 ナスカメモリを起動して、メモリが紅丸の中に入る。

 すると、紅丸はナスカ・ドーパントに変身する。

 だが、ナスカ・ドーパントとしての姿が変わっていく。

 青から赤、そして、黒に。

 ナスカ・ドーパントは、変身者によって、姿を変える。

 園崎霧彦のナスカ・ドーパントに、園崎冴子のRナスカ・ドーパント。

 だが、紅丸のナスカ・ドーパントは、冴子のRナスカ・ドーパントを超え、さらなる姿になる。

 その姿自体は、ナスカ・ドーパントやRナスカ・ドーパントと変わらないが、黒に赤の差し色が入った姿になる。

 のちに、C(クリムゾン)ナスカ・ドーパントという名前が付けられた。

 2人は、暴風大妖渦(カリュブディス)の方に向かう。

 一方、アルビスは。

 

アルビス「………っ!(この巨体に、天蛇眼(ヘビノメ)は効かないわね。)忌々しい!クソッタレのクレイマンめーーーーっ!!」

 

 アルビスは、天蛇眼(ヘビノメ)が効かない事を悟り、そう毒づきながら、雷を放つ。

 だが、効いてないように見えた。

 

アルビス「(ダメだ。再生能力が高すぎる!致命傷を与えられない。このままでは、全滅する!)くそっ!逃げられる者だけでも逃すしか…………!」

紅丸「命令違反だぞ、アルビス。勝てぬと思ったら退けと言っただろ。」

 

 アルビスがそう考える中、思念伝達で紅丸の声が響く。

 すると、暴風大妖渦(カリュブディス)の周囲に出ていた吹雪が消える。

 

紅丸「ふっ!」

克己「はあっ!」

 

 紅丸と克己は、お互いの武器で、暴風大妖渦(カリュブディス)の一部を切断する。

 暴風大妖渦(カリュブディス)の一部は、黒炎と蒼炎に阻まれ、再生出来ずにいた。

 

アルビス「えっ……………!?(斬った!?その上、黒炎と蒼炎で再生を防いでいる!?)」

 

 アルビスは、それを見て驚いていた。

 ちなみに、克己は、マキシマムドライブ以外でも、エターナルエッジに蒼炎を纏わせる事が出来るようになっていた。

 

紅丸「暴風大妖渦(カリュブディス)。今の俺の力を試すのに丁度いいんだがな。そんな場合ではないし、さっさと終わりにしよう。」

克己「さあ、行くぜ。」

 

 紅丸と克己がそう言いながら、必殺技の準備を始める。

 克己は、T3エクストリームメモリを取り出す。

 

エクストリーム!

 

 そして、そのメモリをマキシマムスロットに装填する。

 

エクストリーム!マキシマムドライブ!

 

 エクストリームのマキシマムドライブを発動して、エターナルエッジにエターナルメモリを装填する。

 

エターナル!マキシマムドライブ!

 

 克己は、ツインマキシマムを発動して、大きくジャンプする。

 紅丸は、手を翳す。

 

紅丸「悪いな。完全体になってから遊んでやりたかったがな。消えろ。黒炎獄(ヘルフレア)!」

克己「ハァァァァァ!」

 

 紅丸は黒炎獄(ヘルフレア)を発動して、暴風大妖渦(カリュブディス)を飲み込む。

 克己は、エターナルエッジに凄まじい蒼炎を纏わせて、そのまま斬撃する。

 2人の攻撃で、暴風大妖渦(カリュブディス)はあっという間に消し炭になる。

 それを見ていた周囲の人たちは、唖然としていた。

 

アルビス「……………嘘でしょう?」

紅丸「終わりだ。」

克己「さあ……………地獄を楽しみな!」

 

 アルビスがそう呟く中、紅丸と克己は、そんなふうに言う。

 かつて、苦戦した相手である暴風大妖渦(カリュブディス)は、この2人には無力だった。




今回はここまでです。
漫画版の区切りに合わせました。
カリュブディスも、強いはずですが、新たな力を得た紅丸と克己の前には、無力でした。
克己も、ツインマキシマムを使いこなしていましたし。
次回は、クレイマン軍との戦いの後始末、ワルプルギスでの出来事、ジスターヴでの戦闘になります。
レイトも久しぶりに登場します。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
転キメや、他の転スラの小説でも、11月1日に配信されるコリウスの夢のストーリーはやります。
ちなみに、転キメの場合は、リムルが三上悟になるのに対して、レイトは大谷希望になります。
リクエストがあれば、目次のリンクからその活動報告にて、リクエストを受け付けています。


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第45話 死霊の王

 紅丸と大道克己により、二体の暴風大妖渦(カリュブディス)は撃破された。

 それを知ったティアとフットマンは、ゲルド達と戦いながら話す。

 

フットマン「ほほほ……………驚きました。まさか、暴風大妖渦(カリュブディス)がこうもあっさりと。」

ティア「だねぇ。アタイ達にもアレは倒せないっていうのに……………さ!」

フォビオ「くっ……………!」

 

 フットマンとティアがそう話すと、フォビオが迫っていたので、ティアは回転蹴りを行い、フォビオはあごにキックを喰らう。

 

ティア「良い加減しつこいよ、黒豹(クロネコ)!」

フットマン「お遊びはここまでにしましょう。クレイマンの軍勢は壊滅。あの方に残念な報告をしなければなりません。……………そういう訳で、失礼します。」

ゲルド「っ!」

グルド「伏せろ!」

 

タートル!ゲノミクス!

 

 ティアがそう言いながらシャドーボクシングをする中、フットマンはそう言う。

 すると、フットマンの狙いが分かり、ゲルドとグルドは、盾を出して、フォビオを守る。

 タートルゲノミクスは、V3の色の亀の甲羅を装備するものだ。

 すると、フットマンが魔法を放ってくる。

 2人がフットマンの攻撃から防御すると、フットマンとティアの笑い声が響く。

 煙が晴れると、フットマンとティアの姿は無くなっていた。

 

グルド「どこにも居ない…………。」

ゲルド「……………逃げたか。」

 

 グルドとゲルドの2人は、そう言う。

 そして、ゲルドは思念伝達で、紅丸に話しかける。

 

ゲルド『紅丸殿。聞こえるか?道化は逃走した。』

紅丸『ああ。戦闘記録は取れた。十分だろう。奴らは俺たちを見逃したつもりだろうが、甘いな。奴らの強さの一端は、リムル様とレイト様により解析され、白日の元に晒されるだろう。ゲルドはグルドと共に指揮に戻ってくれ。もう1人残っている厄介な奴の所へは、俺と大道克己で向かう。』

ゲルド『承知した。』

 

 ゲルドと紅丸はそんな風に話す。

 それを聞いていたグルドは。

 

グルド「(フットマンは、大鬼族(オーガ)の里の襲撃を煽動していた者。本当なら、真っ先に自分の手で決着をつけたかったでしょう。)血気に逸るだけの将ではない……………ですね。」

 

 グルドはそんな風に思い、つぶやく。

 すると、フォビオが話しかける。

 

フォビオ「悪いな、ゲルドさん、グルドさん。俺が足を引っ張っちまった。」

ゲルド「そんな事はない。勝負には負けたが、俺たちは生きている。」

グルド「次に勝てば、良いでしょう。」

 

 フォビオが謝る中、2人はそう返す。

 一方、神官戦士団達の方は。

 

ミッドレイ「信じられん………あやつら、あの暴風大妖渦(カリュブディス)を。」

スフィア「カリュブディス?今、カリュブディスって言ったか!?以前、フォビオの馬鹿を依代に復活したあの化け物がまた出たって言うのかよ!?」

 

 ミッドレイがそう驚く中、スフィアはそう叫ぶ。

 スフィアの問いには、ヘルメスとトートが答える。

 

ヘルメス「いや…………ええと。」

トート「出たには出たんですけど、すぐに消されました………………。」

スフィア「はぁ?そもそも、魔王ミリムが倒したんじゃないのかよ!?」

トリシューラ「ああ。間違いなく、ミリム様が倒した。」

ミッドレイ「落ち着け。どうやら、本物ではなく、その力の断片の様な物だ。どうも、ヤムザを核にした様だぞ……………。」

 

 ヘルメスとトートがそう言う中、スフィアはそう言い、トリシューラもそう答える。

 ミッドレイも龍眼を使い、そう言う。

 

ミッドレイ(とはいえ、2体のカリュブディスをいとも容易く屠るなど、並みの魔人に出来よう筈もない。それを為し得るとするならば、その者達は間違いなく、災禍級(ディザスター)……………!)

 

 ミッドレイは、そんな風に思う中、転移魔法が発動して、そこに紅丸と大道克己が現れる。

 

克己「よお。お前達が一番強そうだから、来てやったぜ。」

紅丸「よぉ。うちの者が世話になったみてーだな。」

ガビル「紅丸殿!克己殿!」

 

 2人がそう言いながら現れると、ガビルはそう叫ぶ。

 2人が見た光景は、ガビルの配下と神官達が一緒に動き、治療などをしている光景だった。

 

克己「……………なんだ、この状況は。」

ガビル「こちらの方は、竜を祀る民の神官戦士団!ミリム様の麾下なのであります!」

紅丸「何?ミリム様の!?」

克己「……………という事は、敵ではないのか?レイトからも、そんな風に言われたからな。」

 

 それを見て、克己と紅丸が首を傾げる中、ガビルはそう説明して、2人は納得する。

 紅丸は、ミッドレイ達に聞く。

 

紅丸「一応確認しておく。クレイマン軍はほぼ壊滅したが、アンタ等は今も戦う意思があるか?」

「「ないないないないないない!」」

 

 紅丸はそう聞くと、ヘルメスとトートの2人は、ものすごい速さで首を横に振る。

 つまり、戦う気はないという事だ。

 すると、ミッドレイが口を開く。

 

ミッドレイ「戦争を続けるかと問われれば否だが、戦う意思と問われたのならある、と答えるな。正確には、戦ってみたい…………だが。」

克己「ほう。気が合いそうだな。」

紅丸「同感だな。」

ガビル達「っ!?」

 

 ミッドレイはそう言うと、克己と紅丸は笑みを浮かべながらそう言い、ヘルメス達が驚きの表情を浮かべて、止めに入る。

 

ヘルメス「ちょおーーーーーい!」

トート「ちょっと待って下さい!それはまずいですよ!」

ガビル「そうであるぞ!紅丸殿!克己殿!彼らと戦ったら確実にミリム様も『ワタシも混ぜるのだ!』とか言って、魔国連邦(テンペスト)に厄災が……………!!」

トート「リムル様とレイト様は、ミリム様のご友人なんですから、間違いなく大惨事になりますよ!!」

 

 ヘルメスとトート、ガビルはそう叫びながら、克己達を止める。

 それを見ていたスフィアはウズウズとしていた。

 

トリシューラ(混ざりたそうだな……………。)

 

 それを見ていたトリシューラは、そう思う。

 ガビル達の言葉を聞いた紅丸達が口を開く。

 

紅丸「分かってるっての。確かにここで戦う意味は無いからな。」

ヘルメス「絶対にダメっすよ!!」

トート「本当にダメです!!」

ミッドレイ「頭が硬いのう、ヘルメス、トート。」

克己「それに………………あまり舐める事は出来ないだろうからな。」

 

 紅丸がそう言う中、ヘルメスとトートは、ミッドレイにそう言い、克己はそう言う。

 それを聞いたミッドレイも口を開く。

 

ミッドレイ「どうかな。あのカリュブディスを屠った二つの攻撃は、流石にワシも耐えられそうにないがのぅ。まあ、使わせる前に倒す自信はあるがな。」

克己「ほう………………。」

紅丸「言ってくれるじゃないか……………。」

ガビル達「だからやめーーーーって!!」

 

 ミッドレイは、挑発気味にそう言うと、克己と紅丸も、対抗意識を燃やしたのか、お互いに睨み合う。

 それを見て、ガビル達はそう叫ぶ。

 すると、トートが口を開く。

 

トート「あ、そうだ。魔国(テンペスト)軍の人に聞きたかったんですけど、一体どうやって援軍に来たんですか?」

ヘルメス「確かに。空間移動系の魔法でも使わない限り、間に合わないと思うんすけど。」

紅丸「……………それね。」

 

 トートとヘルメスは、どうやってテンペスト軍の援軍に間に合ったのかを聞く。

 紅丸達は、俺たちが対象者の保護を組み込んだ軍団魔法(レギオンマジック)を使い、テンペスト軍を一気に転送した事を話す。

 それを聞いたヘルメスとトートは、開いた口が塞がらないと言わんがばかりに唖然となっていた。

 

克己「……………お前達が驚くのも無理はない。俺たちも驚いたからな。」

ヘルメス「なっ……………!?今までの常識を覆す軍団魔法(レギオンマジック)をその場で開発!?」

トート「そんなのありなんですか…………!?」

紅丸「何でもありなんだよ。うちの大将2人は。」

 

 克己がそう言う中、ヘルメスとトートはそんな声を出すと、紅丸は笑みを浮かべながらそう言う。

 一方、俺たちが参加している魔王達の宴(ワルプルギス)での方は。

 クレイマンの長い演説が続いていた。

 正直、滑稽としか言いようがなかった。

 周囲の魔王の反応を見ると、半信半疑…………いや、疑の方が強いだろう。

 小物であるクレイマンの言葉を信じていない人が多い。

 聞いてられないので、要約する。

 魔王カリオンは、魔国連邦(テンペスト)の盟主達………………要するに俺たちに魔王を名乗るように仕向けた。

 魔王の座に魅せられた俺たちは、箔をつける為に、ヴェルドラの封印を解く事を提案し、その生贄に選ばれたのは、ファルムス王国。

 まんまと焚き付けられたファルムス王国が侵攻。

 ある程度血が流れたところで、思惑通りにヴェルドラが復活。

 ファルムス王国軍が全滅。

 これで俺たちも魔王になれると喜ぶ俺たちに、カリオンは告げる。

 

カリオン『実は魔王には定員があってな。それは既に満員なんだ。でも、俺はどうしてもお前達を魔王にしてやりたい。なあ、リムル、レイト。共に魔王クレイマンをやっちまおうぜ。そうしたら席が一つ空く。これで晴れてお前達も魔王の仲間入りだ。』

 

 ……………と。

 聞いててアホらしく感じた。

 カリオンはそんな謀略とか考えるタイプじゃないだろ。

 そんな中、クレイマンは話を続ける。

 

クレイマン「…………この一連の経緯を魔法通話で知らせてくれたのは私の配下のミュウランですが……………残念ながら、彼女はもういません。何故なら、そこのリムルとレイトという痴れ者によって殺されたからです!!」

 

 クレイマンはそう叫びながら、俺たちを指差す。

 そうだったのか。

 ミュウランは、可哀想だな……………って、なるか、アホ。

 ミュウランは生きてるし、バリバリに作り話じゃないか。

 というより、魔王の定員が決まってるのなら、俺かリムルのどちらかしかなれないじゃないか。

 すると、ダグリュールという魔王が口を開く。

 

ダグリュール「おい、クレイマンよ。話の真偽は一先ず置いておく。肝心のカリオンは何故ここにいない?若い2人の魔人を問い詰めるより、先に話を聞くべきは件の獅子王(ビーストマスター)ではないか?」

 

 ダグリュールはクレイマンにそう聞く。

 普通に考えたらそうだよな。

 俺たちを攻めるのは、完全にお門違いだろうし。

 カリオンに事情を聞けばそれで済む話だ。

 というより、さっきから無性にイライラするな。

 まあ、理由は分かっているのだが。

 そんな中、クレイマンはダグリュールの質問に答える。

 

クレイマン「……………それは無理なのです。ダグリュール。ご存知かと思いますが、獣王国ユーラザニアは壊滅しました。カリオンの企みを知ったミリムが激昂し、そして、国ごとやつを葬ったのです。それは私を慮っての行動だったのですが、我々魔王の間には、相互不可侵条約があります。証言以上の証拠が出なければ、彼女の立場は危ぶまれる。故に私の軍を獣王国(ユーラザニア)跡地へと送り、調査させているのです。」

ラミリス(実質侵攻じゃん。)

 

 クレイマンがそう言う中、ラミリスはベレッタとフランに漫画のページを捲らせて貰いながらそう思う。

 確かに、実質的な侵攻だよな。

 そう思う中、クレイマンの演説は終わりに入る。

 

クレイマン「必ず、企みの証拠を掴んでご覧に入れましょう。ですので、ミリムの処分はお待ち頂きたい。……………以上で、私の話は終わりです。お分かりいただけたと思いますが、そこのリムルとレイトなる卑小な魔人どもは、魔王を僭称する愚か者!この場で粛清するのがよろしいかと思います!!」

 

 クレイマンはそう語る。

 何が魔王を僭称する愚か者だ。

 それに、その笑顔が妙にムカつくんだよ。

 そんなに、その演説が決まったと思ってんのか。

 なら、それを容赦なく潰すとするか。

 すると、ラミリスが言っていたレインというメイドが口を開く。

 

レイン「それでは次に、来客よりの説明となります。」

 

 レインがそう言うと、俺とリムルは立ち上がり、クレイマンを見ながら言う。

 

リムル「……………クレイマンだっけ?お前、嘘吐きだな。」

クレイマン「……………何?」

リムル「ミュウランは生きてるし、俺たちは魔王の座なんぞに興味はない。」

レイト「それに、カリオンさんは謀略とか考えるタイプじゃないし、ファルムス王国は、俺たちが焚き付けたんじゃなくて、勝手に欲かいて攻めて来ただけだしな。」

フレイ(……………確かに。)

 

 リムルがそう言うと、クレイマンはリムルを睨む。

 俺とリムルは、そんな風に口を開く。

 俺の言葉に、フレイという魔王も納得していた。

 それを聞いたクレイマンが口を開く。

 

クレイマン「はっ。そんな言い訳だけで、誰が信じるというのだ?ヴェルドラを手懐け、強気になっている様だが、貴様らは所詮邪竜の威を借りねば何も出来ぬスライムにキメラよ!」

リムル「……………そこが一番違う。」

レイト「まあ、ヴェルドラの威光を借りる事はあるけど、それ以前に、俺とリムルは、ヴェルドラの友達……………あいつなりの言葉で言えば、盟友だからな。」

クレイマン「ともっ……………!?」

 

 クレイマンがそう言う中、俺とリムルはそう答える。

 それを聞いたクレイマンが驚く中、ロイという魔王の後ろに控えているメイドが、俺たちの方を見てくる。

 そんな中、俺とリムルの言葉は続く。

 

レイト「それに、証拠がないのはお互い様だしな。そっちの証言だって、配下の報告だろ?しかも、その配下はもう殺された……………だっけか?」

リムル「残念だけど、そんなもん、証拠とは言わねえよ。あと、ミュウランは今、俺たちの保護下にあるから、この場に呼んだとしても、お前に都合の良い証言はしないと思うぞ。」

 

 俺とリムルはそう言う。

 殺されたと言うミュウランが生きている以上、クレイマンの演説は意味をなさない。

 すると、クレイマンは笑みを浮かべながら、口を開く。

 

クレイマン「……………ふっ、ふふっ。そこまで卑劣な真似をするか。さては貴様ら、ミュウランの骸に悪霊でも取り憑かせたか?」

リムル「遺体に悪霊?するわけないだろ。」

レイト「流石だなぁ。心臓を人質にする奴は、発想が違うな。」

クレイマン(こいつら………………っ!)

 

 クレイマンがそう言う中、俺とリムルはそう反論する。

 クレイマンの思考を読んで、次に奴が出る行動は………………。

 すると、クレイマンは周囲の魔王に向かって叫ぶ。

 

クレイマン「み…………皆さん!いつまでこの様な魔人共に話をさせるつもりですか!?封印されていた暴風竜ヴェルドラを利用して、大虐殺を行なった!こんな暴風竜の威でもって魔王に成り上がろうとする小物なんですよ!こんな奴らに、栄光ある魔王を騙らせるなど、言語道断……………っ!?」

 

オーイングストライク!

 

 やはりな。

 どうにも出来ないと分かり、他の魔王達に、一緒に俺たちを粛清しようとしたみたいだな。

 それが小物である事を証明してるんだよな。

 ちなみに、オーイングストライクを放ったのは俺で、リムルは空いている椅子を蹴った。

 

リムル「そんな事言ってるけど、お前、演説しながら、俺たちの精神を支配しようとしてたよな?」

クレイマン「なっ………………!?」

 

 そう。

 先ほどからイライラしていたのは、クレイマンの笑みにイラついていたのもあるが、クレイマンが俺たちの精神を支配しようとして、レジストが働いていたからだ。

 恐らく、俺たちの精神を支配して、都合の良い様に動かそうとしていたみたいだが、それが仇になるな。

 それに驚くクレイマンに対して、俺は畳み掛ける。

 

レイト「生憎だがな、俺たちにその手の精神支配は効かないんだよ。だが、論点はそこじゃない。おかしいな。栄光ある魔王(・・・・・・)とやらは、演説をしながら精神支配を仕掛ける物なのか?そこら辺はどうなんですか?魔王ギィ。」

ギィ「否。この場では全員に公平なように自分の言葉でのみ、相手に訴えることを是とするよ。」

 

 俺はクレイマンの言葉を強調しながら、そう語ると、ずっと黙っていたギィ・クリムゾンはそう語る。

 やっぱりな。

 クレイマンの行動は、栄光ある魔王という名に泥を塗っている様な物だからな。

 すると、クレイマンが口を開く。

 

クレイマン「し、しかし、ギィよ!こいつらは、魔王を侮辱……………!」

リムル「黙れよ。さっきも言った通り、魔王なんざどうでもいいんだ。俺たちは、俺たちが楽しく過ごせる国を作りたいだけなんでね。それには人間の協力が必要不可欠だし、だから人間を守ると決めた。それを邪魔する者は、人も魔王も聖教会も、等しく俺たちの敵だ。クレイマン、お前の様にな。」

レイト「そもそも、俺たちはお前の下らない演説を聞きに来たんじゃねぇんだよ。お前も、俺たちが気に食わないんだろ?だったら、これは俺たちとお前の問題だ。わざわざほかの魔王を巻き込むんじゃねえよ。」

 

 クレイマンがギィにそう言おうとすると、俺たちは食い気味にそう言う。

 ちょくちょく、クレイマンのプライドに触れる様な発言をしているからか、俺がターゲットにされているみたいだな。

 まあ、予想通りだがな。

 すると、ギィが口を開く。

 

ギィ「おい、お前達。魔王を名乗るつもりはあるのか?」

リムル「…………ああ。既にジュラの大森林の盟主を引き受けてるし、人からすれば魔王だからな。」

レイト「右に同じく。」

 

 ギィは、半端な答えは許さないというのか、そう聞いてくる。

 俺とリムルがそう答えると、ギィは満足気に言う。

 

ギィ「…………ならば良し。丁度ここには、見届け人が揃っている。俺たちの前でクレイマンに勝てたら、お前達が魔王を名乗る事を許そう。」

レイト「ありがたいな。そっちの方が分かりやすい。」

 

 よし、想定通りの流れへと持ち込めたな。

 クレイマンを倒せば、全てが解決する状況になった。

 こうして、事態は進んでいく。

 ある者にとっては予想通りに。

 また別の者にとっては、予定通りに。

 一方、傀儡国ジスターヴでは。

 

白老「……………まずいな。ワシの魔力感知が妨害されておる。」

蒼影「ええ。この霧は、視界を制限するだけでなく、魔素の流れを乱し妨害します。思念伝達や空間移動も使えません。加えて、この霧が敵の制御下にあるとすれば、奴らが中の獲物を把握するのは容易い。無駄かもしれませんが、なるべく気配は抑えて進みましょう。」

白老「なるほどのう。拠点の防衛として、上手く出来ておる。」

 

 蒼影と白老はそう話しながら進んでいく。

 鳴海荘吉も、周囲を見渡しながら進んでいく。

 朱菜も、新たに獲得したユニークスキル、創作者(ウミダスモノ)で幻覚魔法と妖術を組み合わせて、気配を消している。

 そんな中、蒼影が思う。

 

蒼影(…………妙だ。敵の気配がまるで感じない。いかに霧が有用であろうと、拠点防衛に人員を割かないとも思えんが。)

 

 敵の気配を感じない事に違和感を抱いていた。

 すると、朱菜と荘吉が反応する。

 

朱菜「……………しまった。罠に嵌められた様です。」

荘吉「その様だな。」

 

 2人がそう言うと、蒼影と白老も身構える。

 すると、周囲から不死系魔物(アンデッド)が現れる。

 

白老「なんと……………濃霧とはいえ、この広大な荒れ地で、一体何処に隠れておったのじゃ。」

朱菜「この霧が、空間干渉を引き起こしているのでしょう。」

荘吉「敵は隠れていたんじゃなく、俺たちが誘き寄せられたのだろう。敵の包囲網の中心に。」

 

 白老がそう言う中、朱菜と荘吉は冷静にそう言う。

 その周囲には、無数の不死系魔物(アンデッド)が存在していた。

 荘吉達は、メモリを取り出す。

 

スカル!

ウェザー!

ファング!

 

 3人はメモリを起動すると、ロストドライバーに装填したり、自分の体内に入れたりする。

 

「「変身。」」

 

 そして、3人は変身する。

 

スカル!

ファング!

 

 荘吉は仮面ライダースカルに、蒼影はウェザー・ドーパントに、白老は仮面ライダーファングへと変身する。

 蒼影は、身構えながら口を開く。

 

蒼影「(魔力感知が効かん以上、兵力の把握は困難だ。しかし、数が多いだけならば…………。)朱菜様、俺が突破口を開きます。その隙に白老様と荘吉殿と……………。」

朱菜「いいえ、蒼影。どうやら、そう甘い相手ではない様です。クレイマンの配下…………特に五本指については、ミュウランから伺っています。数多の不死系魔物(アンデッド)を従え、拠点の防衛に優れた者。この禍々しく巨大な力……………もう間違いありません。死霊の王(ワイトキング)、示指のアダルマン…………!」

 

 蒼影がそう言う中、朱菜はそう言うと、アンデッドの中から、ひときわ存在感が強い存在が現れる。

 クレイマンの配下の1人、アダルマンだ。

 

アダルマン「いかにも。余がアダルマンである。数多の不死系魔物(アンデッド)を従える死霊の王(ワイトキング)。偉大なる魔王クレイマン様にお仕えするこの地の守護を命じられた者。下賤なる侵入者よ。大人しくその命を差し出すが良い。」

 

 アダルマンはそう言う。

 一方、朱菜達は。

 

朱菜「完全に囲まれています。空間転移による脱出が不可能である以上、アダルマンを倒すしかありません。」

白老「ならば、速やかに!」

蒼影「異論はない。俺の一撃は、死者を殺す。」

荘吉「分かった。」

 

 朱菜がそう言う中、白老達もそう話し、白老は駆け出す。

 白老は、タクティカルホーンを操作する。

 

アームファング!

 

 白老は、腕からアームファングを出して、刀も抜刀しつつ、アダルマンに向かっていく。

 

アダルマン「身の程を知らぬ者達よ。愚かな事だな。」

 

 アダルマンはそう言う。

 白老の攻撃がアダルマンに届く直前、白老とアダルマンの間に入った存在が、白老の攻撃を防ぐ。

 

白老「…………ほう。ワシの動きを読むとは。腐肉となったその肉体で未だ剣士であり続けるか。」

 

 白老の攻撃を防いだ存在は、死霊騎士(デスナイト)だった。

 白老は、その死霊騎士(デスナイト)と応戦する。

 アダルマンに、蒼影が攻撃しようとするが、ドラゴンが現れ、蒼影は回避する。

 

蒼影「まさか、腐肉竜(ドラゴンゾンビ)か。」

朱菜「その様な甘い相手ではありません!死せる魔物の頂点、死霊竜(デス・ドラゴン)です!」

 

 蒼影はそう判断するが、朱菜はそう叫ぶ。

 それと同時に、死霊竜(デス・ドラゴン)も咆哮する。

 

蒼影「死せる魔物……………ならば、死ね。操糸万妖斬!」

 

 蒼影はそう言って、操糸万妖斬を発動させる。

 蒼影がウェザー・ドーパントとなった事で、蒼影の糸にも、ウェザー・ドーパントの能力を付与する事ができるようになった。

 それにより、死霊竜(デス・ドラゴン)は細切れとなり、崩れる。

 だが、すぐに再生する。

 

蒼影「何?…………なるほど。死には耐性があるという事か。では、肉体だけではなく、その魂ごと滅してみせよう。」

 

 それを見た蒼影はそう判断する。

 すると、朱菜が蒼影に声をかける。

 

朱菜「蒼影、落ち着きなさい。冷静なあなたなら、見抜ける筈です。」

蒼影「……………アダルマン。あの死霊の王(ワイトキング)の中ですね。」

朱菜「ええ。」

 

 朱菜はそう言うと、蒼影はアダルマンを見ながら、そう答える。

 すると、朱菜が口を開く。

 

朱菜「蒼影。私を守ろうとしなくても良いのです。貴方はその竜の足止めに専念しなさい。荘吉さんも、他のアンデッドの足止めをお願いします。」

蒼影「しかし……………!」

荘吉「そういう訳にもいかん。依頼をされたからな。」

朱菜「私はね、怒っているのです。異世界人の振る舞い、ファルムス王国の侵攻、それを仕組んだクレイマン。物見遊山をしにここに来たのではありません。」

アダルマン「ほう。どうするつもりだね、お嬢さん。護衛に頼らず、君に何が出来ると言うのだ?」

 

 朱菜がそう言う中、蒼影と荘吉はそう言う。

 だが、朱菜はそう言いながら、アダルマンへと近寄る。

 アダルマンがそう言うと、不死系魔物(アンデッド)が朱菜に殺到する。

 だが、朱菜は慌てていなかった。

 

朱菜「心配無用ですわ。対魔属性結界(アライメントフィールド)!!」

 

 朱菜は両手を広げながらそう叫ぶ。

 すると、朱菜を起点として、フィールドが展開される。

 その中にいた不死系魔物(アンデッド)は、瞬く間に崩れていく。

 

アダルマン「ほう。魔法不能領域(アンチマジックエリア)聖浄化結界(ホーリーフィールド)の融合と言った所か。なるほど、実に美しい魔法の構成よな。一定レベルに満たない不死系魔物(アンデッド)が立ち入れば、その身はたちまち崩れよう。」

 

 アダルマンは、朱菜が発動した魔法を見て、そう言う。

 それを見ていた蒼影と荘吉は。

 

蒼影「(……………そうだ。大鬼族(オーガ)の里より落ち延び、リムル様とレイト様と出会ったあの日から、朱菜様は、守られるだけの姫ではなくなったのだ。)御意。ご武運を。」

荘吉「ほう……………分かった。他の不死系魔物(アンデッド)とやらの足止めは、まかせろ。」

朱菜「ええ。」

 

 2人はそう言って、それぞれの相手をする。

 朱菜とアダルマンは、お互いを見る。

 

アダルマン「ふふふ……………果敢なお嬢さんだ。せめて楽に死なせてやりたいが、残念ながら、手加減はしてやれぬ。」

朱菜「無用な気遣いです。」

アダルマン「そうか。では、逝くがよい。全てを溶かし、侵蝕せよ!侵蝕魔酸弾(アシッドシェル)!」

朱菜「幻炎の防壁(フレイムウォール)!」

 

 アダルマンと朱菜はそう話すと、アダルマンは魔法を放つ。

 朱菜は炎の防壁を張り、アダルマンの攻撃を無力化する。

 

アダルマン「やるではないか。ならば、これはどうだ!怨念の亡者共よ、生贄を授けよう!呪怨束縛(カースバインド)!!」

朱菜「聖なる福音(ホーリーベル)。」

 

 それを見たアダルマンは、別の魔法を放つ。

 朱菜はそう言うと、魔法を発動する。

 すると、朱菜の周囲に大量の鐘が現れ、アダルマンの魔法を無力化していく。

 アダルマンは、驚いていた。

 

アダルマン「……………馬鹿な。神聖魔法…………だと……………!!何故だ!何故、魔に属する者が神聖魔法を使う!?それは神への信仰心が無ければ操る事の出来ぬ物のはず……………!」

 

 そう。

 アダルマンが驚いていたのは、魔物である筈の朱菜が、神聖魔法を使える事であった。

 朱菜が口を開く。

 

朱菜「不思議ですか?それは、貴方の頭が固いだけです。神聖魔法は、人間にのみ許された魔法ではありませんよ。奇跡を信じ、願う者ならば誰にでも、その思いの強さに応えてくれるのです。その対象はなにも、聖なる存在である必要はありません。善も悪もないのです。思いの強さこそが力へと変わるのですから。」

アダルマン「………………っ!!」

 

 朱菜はそんなふうに答えると、アダルマンは驚愕する。

 

アダルマン(ありえない……………!余は…………私は間違っていたのか!?かつて、ルミナス教の指導者達に嵌められ、死地に追いやられた時、神ルミナスは救いの手を差し伸べてはくれなかった。私は神への信仰を失った。だから二度と、神聖魔法を扱えぬと思っていたのに……………!)

 

 アダルマンはそんな風に思う。

 アダルマンには、そんな過去があったのだ。

 アダルマンは、朱菜に聞く。

 

アダルマン「……………娘よ、名はあるか?」

朱菜「朱菜と申します。」

アダルマン「(その名を与えた者が信仰の対象か……………。)そうか。そなたなら、或いは我らを解放してくれるやもしれぬな。」

 

 アダルマンは朱菜にそう聞くと、そうつぶやく。

 すると、朱菜はアダルマンに聞く。

 

朱菜「…………一つ、伺ってもよろしいでしょうか?」

アダルマン「なんだ?」

朱菜「周りにいる不死系魔物(アンデッド)を解放したいのなら、何故さっさとその呪縛を破らないのですか?」

アダルマン「っ!!……………気がついていたか。」

 

 朱菜はアダルマンにそう聞くと、アダルマンはそう聞く。

 その問いに、朱菜は答える。

 

朱菜「ええ。この防衛機構は、貴方を核に創り上げられているのでしょう?不死系魔物(アンデッド)たちは、貴方がかけられた呪いに共に組み込まれただけ。」

アダルマン「ふふふ……………そなたの観察眼は凄まじいな。であればこそ、この呪いがそう容易く破れるのものではないと分かろう。」

朱菜「そうですか。貴方なら、その呪縛に打ち勝てると思いましたが、どうやら買い被っていたようですね。」

 

 朱菜はそう言うと、アダルマンはそう答える。

 すると、朱菜は失望した声を出す。

 

アダルマン「なんだと?」

朱菜「人の信ずる神については、詳しくは存じ上げません。ですが、その聖職衣は、高位の司祭が羽織る物と記憶しています。神聖魔法を使えぬ今も纏っているのは、未練ですか?」

アダルマン「ふっ。好き勝手な事を言ってくれる。(私が神聖魔法を使えぬ事まで見透かすとは……………。)」

 

 アダルマンがそう聞くと、朱菜はそう言う。

 アダルマンが着ているのは、まさに高位の司祭が着るものだったからだ。

 

アダルマン「舐めるなよ!神へ祈りを捧げ奉る。我は望み、精霊の御力を欲する。我が願い、聞き届け給え。(腹立たしい。この娘がではない。覚悟が足りない自分自身がだ。私を慕ってくれた仲間達が不死系魔物(アンデッド)と化した事で、彼らを残して逝く事も出来ないと……………甘かったのだ!本気で奇跡を請い、願うのなら!朱菜という娘に、恨みはない。それどころか、私の目を覚ましてくれた恩義すら感じる。だが私は、私をここに縛りつけた男、魔王カザリームの呪いにより、自殺が出来ぬのだ!すまぬな、朱菜殿。道連れにさせてもらうぞ。)」

 

 アダルマンは、かつて、坂口日向が俺に向かって放った霊子崩壊(ディスインテグレーション)の詠唱を行う。

 その間、アダルマンはそんな風に思う。

 そして、アダルマンは叫ぶ。

 

アダルマン「(せめて、苦しまぬよう、一瞬で……………。)万物よ尽きよ!霊子崩壊(ディスインテグレーション)!!」

朱菜「それを待っていました!」

アダルマン「っ!?」

朱菜「霊子暴走(オーバードライブ)!!」

 

 アダルマンが霊子崩壊(ディスインテグレーション)を放つと同時に、朱菜はそう叫ぶ。

 すると、アダルマンの霊子崩壊(ディスインテグレーション)が書き換えられていく。

 

アダルマン「な……………何ぃい!?(まさか、構築した魔法が組み替えられている!?)私の十分の一にも満たぬ魔素量しか無い貴女が、私の魔法を上書きしたと言うのか!?」

朱菜「貴方ならば、私以上に聖なるエネルギーを集める事が出来ると思っていましたので。」

アダルマン「っ!」

朱菜「見事でした。覚悟を見せていただいたお礼に、この地から解き放って差し上げましょう。」

 

 アダルマンが、自分が構築した魔法が組み替えられていくのを見て驚く中、朱菜はそう言う。

 朱菜から光が放たれ、それにアダルマンが包まれていく。

 ジスターヴ全域にその光が放たれる。

 すると、不死系魔物(アンデッド)は消えていき、死霊騎士(デスナイト)死霊竜(デス・ドラゴン)も動きを止める。

 そして、霧も晴れていく。

 

蒼影「お見事です、朱菜様。」

朱菜「さあ、行きましょう。クレイマンの城を制圧しなければ。」

荘吉「ああ。」

 

 蒼影がそう言う中、朱菜はそう言い、荘吉も頷く。

 こうして、ジスターヴでの戦闘は終わったのだった。




今回はここまでです。
今回は、クレイマン軍とジスターヴでの戦闘が終わり、ワルプルギスが進んでいく感じです。
レイトもキレてます。
その為、クレイマンの揚げ足を取るような事を言っています。
それには、レイトなりの考えがあるのですが。
クレイマンの思考は、レイトにとっては、調べるのは容易い事です。
次回は、クレイマンとの戦闘が始まる頃です。
感想、リクエストなどは絶賛受け付けています。
最近、ゴジラ-1.0が公開され、それを見て、ある事を思いつきました。
それは、レイトにゴジラ細胞を埋め込むという感じです。
レイトなら、ゴジラ細胞にも飲み込まれずに、普通に制御下に置きそうですし。
それなら、レイトの変身するジュウガの強化にも繋がると思いましたので。
他に意見があれば、受け付けます。


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第46話 喜狂の道化(クレイジーピエロ)

 ギィ・クリムゾン。

 原初の悪魔にして、最初の魔王。

 闇の大精霊より派生した七柱(ななにん)悪魔族(デーモン)

 彼はその最初の一柱(ひとり)であり、冥界を統べる王だった。

 生まれたばかりの色のない下位悪魔(レッサーデーモン)は、その性質によって、やがて七色の系統のいずれかに染まる。

 人が召喚し使役するのは、無色の下位悪魔(レッサーデーモン)か、或いは色に染まった上位悪魔(グレーターデーモン)が主だが、時には例外もあり────

 

召喚主「ううぅ………………なぜ……………貴様は敵国を殲滅する為に喚び出されたはず…………!なぜ、我が国まで…………っ!?」

原初の赤「対価だよ。悪魔に対し、身の丈に合わぬ願いをしたのだから、これくらい当然だろう?」

召喚主「こ、この………………赤い悪魔めぇ……………!」

 

 かつて、ある国が召喚した原初の赤(ルージュ)は、召喚主(マスター)の望み通り、敵国を滅ぼし、次いで、召喚主(マスター)の国をも滅ぼした。

 人の悲鳴が響く中、原初の赤(ルージュ)は呟く。

 

原初の赤「面白い響きだな。人の悲鳴ってのは。俺の”名前”にちょうど良いかもな。」

 

 それがこの世で初めての”真なる魔王”の誕生。

 今から数万年前の出来事である。

 そして、現在、俺たちとクレイマンのやり取りを見ていたギィは思う。

 

ギィ(………………面白い。『十大魔王』など、人間が勝手に決めた呼称だ。数などどうでも良い。)

 

 ギィがそう思う中、リムルが暴食之王(ベルゼビュート)で、テーブルを吸収する。

 すると、クレイマンが叫ぶ。

 

クレイマン「皆さん、宜しいのですか!?下等なスライムとキメラの暴挙を許して…………!これは我々魔王に対する侮辱ですよ!!」

 

 クレイマンはそう叫ぶ。

 お前がそう叫んだところで、誰もクレイマンには味方しないだろう。

 すると、ギィが口を開く。

 

ギィ「別に良いじゃねぇか。」

クレイマン「っ!!」

ギィ「クレイマン。お前も魔王なら、自身の力でもって、そいつらを倒してみせろ。(弱者に魔王の名は相応しくない。そろそろ、本物の魔王達による支配の時代が始まるべきだろう。)」

リムル「場所は作った。」

レイト「さっさと始めるぞ。」

 

 ギィがそう言い、そう思う中、俺とリムルはそう言う。

 すると、近くに狐が駆け寄り、その狐を抱えながらクレイマンは口を開く。

 

クレイマン「やれやれです。自分の手を汚すのを嫌ったばかりに、余計に面倒な事になってしまった。本当に失敗でした。」

レイト「へぇ……………そりゃそうだ。お前の場合は、口だけだからな。こうなるのは当然の事だろ。」

 

 クレイマンがそう言う中、俺はそう言う。

 すると、クレイマンが口を開く。

 来るか。

 

クレイマン「……………命令です。レイト=テンペストを殺しなさい。」

 

 やっぱりか。

 すると、ミリムの姿が消えたと思ったら、俺のそばに迫っていて、俺はミリムのパンチを受け止める。

 ミリムのパンチを受け止めると、周囲に衝撃波が拡散する。

 やっぱり、ミリムのパンチは強力だな。

 それを見て、クレイマンは驚愕の表情を浮かべていた。

 

クレイマン「なっ………………!?」

リムル「すげぇな………………。それより、結局は他人頼りか?」

クレイマン「何を言う。ミリムは人の命令に従う様な娘ではないでしょう。今のは彼女自身の意思さ。ギィよ、文句はあるまい?」

ギィ「ああ、構わないさ。ミリムが自分の意思で戦うのなら、止めはしない。」

 

 クレイマンが驚く中、リムルはそう言うが、クレイマンはすぐに余裕を戻して、ギィに対してそう聞くと、ギィは了承する。

 俺としては、ミリムと戦うのは問題ない。

 そんな中、ミリムは笑みを浮かべる。

 それに気づく中、俺は笑みを浮かべながら口を開く。

 

レイト「……………まあ良い。あの時の戦いの続きが出来るからな。」

クレイマン「ほざくな……………貴様らは絶望して死ぬんだ!!」

レイト「生憎だが、死ぬのはお前だ、クレイマン。」

リムル「俺らが出たんじゃ、弱い者いじめになるからな。俺の部下くらいがちょうど良い。」

クレイマン「なんだと……………っ!?」

 

 俺がそう言うと、クレイマンはそんな風に叫ぶ。

 俺とリムルがそう言うと、クレイマンに迫る影があった。

 

紫苑「ハァァァァァ!」

 

 紫苑だ。

 紫苑は拳のラッシュをクレイマンに叩き込み、クレイマンは大きく吹っ飛ぶ。

 拳に血がつく中、紫苑は口を開く。

 

紫苑「宜しいのですか?リムル様。」

火煉「紫苑……………でも、今回は良いわね。ベイル、出番よ。」

ベイル「待ちくたびれたぞ。」

 

 紫苑がそう言う中、火煉はそう言いながら、ベイルを出す。

 俺も変身準備するか。

 俺、火煉、ベイル、シズさんは、変身準備に入る。

 それぞれのドライバーを装着して、変身アイテムがある人は、変身アイテムを取り出す。

 

ジュウガ!

ヘラクレス!

ブラックアウト!

 

 その三つのバイスタンプの起動音が鳴る中、俺はジュウガドライバーに装填して、火煉はデストリームドライバーに押印して、ベイルはローラー部分を回す。

 シズさんも、アルティメットフォームで行く様だ。

 

Contract!

レックス!メガロドン!イーグル!マンモス!プテラ!ライオン!ジャッカル!コング!カマキリ!ブラキオ!

 

 それと同時に、待機音が流れる。

 そして、俺、火煉、シズさんは叫ぶ。

 

「「「変身!」」」

 

 そう言って、俺たちは変身する。

 

スクランブル!

Spirit up!

クリムゾンアップ!

十種の遺伝子、強き志!

爆ぜろ、吼えろ、超越せよ!

仮面ライダージュウガ!

Go Over…!

Slash!Sting!Spiral!Strong!

仮面ライダーデストリーム!

クリムゾンベイル!

(アルティメットフォーム変身音)

 

 俺はジュウガに、火煉はデストリームに、ベイルはクリムゾンベイルに、シズさんはクウガ・アルティメットフォームに変身する。

 まさか、2人の凄まじき戦士が並び立つとはな。

 ジュウガは、クウガ・アルティメットフォームをモチーフにしており、ジョージ・狩崎がこの場に居たら、確実に歓喜してただろうな。

 すると、クレイマンは紫苑により受けた傷を再生させつつ叫ぶ。

 

クレイマン「きさま…………!貴様ああああっ!!」

 

 恐らく、超速再生を持っているのだろう。

 腐っても魔王。

 タフだな。

 すると、狐が大きくなり、クレイマンの影から、人形が現れる。

 

クレイマン「良い気になるなよ…………!皆殺しにしてやる……………!!」

 

 クレイマンは殺気をこちらに向けてくる。

 良いね、その殺気は俺の力になる。

 煽っといて正解だったな。

 

リムル「良いね、やっとそれらしくなってきたじゃねーか!」

レイト「倒れるのはお前達だ!!」

クレイマン「図に乗るなよ、スライムにキメラが!九頭獣(ナインヘッド)!」

リムル「嵐牙!」

レイト「シズさん!」

嵐牙「はっ!」

シズ「ええ!」

 

 俺とリムルがそう言うと、クレイマンはあの狐を出してくる。

 俺とリムルは嵐牙とシズさんを出す。

 

嵐牙「貴様の相手は、我らだ!」

シズ「行こう、嵐牙さん!」

 

 嵐牙とシズさんはそう言うと、九頭獣(ナインヘッド)と応戦する。

 

リムル「紫苑!しばらくクレイマンを任せるぞ!」

レイト「火煉とベイルは、あの人形を頼む!」

紫苑「はい!」

火煉「分かりました!ベイル!」

ベイル「悪魔使いが荒いな。」

 

 俺とリムルがそう言うと、クレイマンには紫苑が、クレイマンが呼び出した人形は火煉とベイルが戦う。

 俺は、ミリムと向かい合う。

 

レイト「行くぜ、ミリム。あの時の戦いの続きだ!!」

 

 俺はそう叫ぶと、ミリムと応戦していく。

 その凄まじさには、周囲に衝撃波が拡散される。

 

ディーノ「おわっと!?ちょっとこれ……………会場壊されちゃうんじゃないの!?」

ギィ「ああ、そりゃ困る。」

 

 ディーノがそう言う中、ギィはそう言いながら、指を鳴らす。

 すると、結界が張られ、空間が拡張される。

 なるほど、これなら思う存分に戦えるな。

 すると、ミリムの腕に付いている腕輪が光ると、ミリムが2人ほど増える。

 

レイト『ミリムが増えた?』

奇才之王『告。個体名ミリムの腕に付けられている魔宝道具(アーティファクト)鏡身の腕輪(ドッペルゲンガー)の効果です。』

レイト『なるほど、分身を生み出す道具か。』

 

 俺がそう思う中、奇才之王はそう報告する。

 恐らく、クレイマンが仕組んだ事だろう。

 ミリムの性格を考えると、ミリム自身がやるとは思えない。

 だが、それに関しては、相棒(リムル)がどうにかするだろう。

 

リムル「マジか……………!エミルス、バイス!出番だ!」

エミルス「やっと出番か。」

バイス「もう!待ちくたびれたよ!」

 

 リムルは自分にレックスバイスタンプを押印して、エミルスとバイスの2人を呼び出す。

 エミルスはリバイスドライバーを装着すると、二つのバイスタンプを取り出す。

 バリッドレックスとボルケーノだ。

 あの二つは、戦いの前に渡しておいた。

 

エミルス「行くぞ!」

バイス「あいよ!」

 

 エミルスは、二つのバイスタンプを起動する。

 

バリッドレックス!

ボルケーノ!

 

 二つのバイスタンプを起動した後、ボルケーノバイスタンプをリバイスドライバーに押印して、二つのバイスタンプを接続する。

 

コンバイン!

 

 二つのバイスタンプを接続すると、エミルスはターンデトネイターを回す。

 

Burning fire!Come on!ボルケーノ!

Burning fire!Come on!ボルケーノ!

 

 その音声と共に、エミルスは叫ぶ。

 

エミルス「変身!」

 

 そう言って、バイスタンプをリバイスドライバーに装填して、倒す。

 

バーストアップ!

オニアツーイ!バリヤバーイ!ゴンスゴーイ!

パネェツヨイ!リバイス!We are!リバイス!

 

 エミルスはリバイ・ボルケーノレックスゲノムに、バイスはバイス・バリッドレックスゲノムへと変身する。

 そのまま、ミリムの分身体と相手をする。

 さて、これで集中できるな。

 

レイト「さあ、ミリム。あの時の戦いの続きだ!」

 

 俺がそう言うと、ミリムも頷く。

 あの時、俺はミリムにコテンパンにやられてしまった。

 まあ、ミリムの悪魔を見たのだが。

 今の俺は、どこまでやれるのか、試してみるか。

 俺とミリムのパンチがぶつかり合う。

 周囲に衝撃波が伝わる。

 俺は、ジュウガバイスタンプを一回倒す。

 

インパルスゲノムエッジ!

 

 インパルスゲノムエッジを発動して、ジャッカル型のエネルギーを右足から全身に纏いなら高速移動をして、パンチを叩き込んでいく。

 ミリムはそれに対処するが、時折被弾していた。

 ミリムが笑みを浮かべる中、俺も仮面の下で笑みを浮かべていた。

 高揚感がする。

 悪くないな。

 そんな中、2回ほどジュウガバイスタンプを倒す。

 

クラッシュゲノムエッジ!

 

 クラッシュゲノムエッジを発動して、ブラキオ、コング、マンモスのオーラを纏った攻撃をしていく。

 ミリムも俺と互角に応じていく。

 それを見ていたギィは。

 

ギィ(……………ほう。あのレイトとやら、ミリムと互角に渡り合うとはな。なかなかやるな。だが………………妙に懐かしく感じるな。)

 

 そんな風に思っていた。

 そんな中、俺とミリムは、戦闘を続けていた。

 すると、リムルから思念伝達が来る。

 

リムル『レイト!』

レイト『どうした?手短に頼む。』

リムル『お、おお。ミリムを操っているのは、腕輪が関係してるかもしれない!』

レイト『うん?腕輪?』

 

 リムルはそんな風に言ってくる。

 確かに、ミリムの腕には、見慣れない腕輪があるのだが……………。

 というより、リムルのやつ、気づいていないのか?

 とはいえ、戦闘中なので訂正する暇も無いな。

 

レイト『分かった。何とか腕輪を破壊してみる。』

リムル『頼んだぞ!』

 

 俺はそんな風に答える。

 正直に言うと、訂正してやりたかったが、リムルは俺よりも年上だ。

 やめておこうという名目で伝えないでおく。

 一方、紫苑の方は。

 

紫苑「はっ!」

クレイマン「くっ……………!」

 

 紫苑は、剛力丸でクレイマンの持つ剣を切断する。

 クレイマンが驚く中、紫苑は口を開く。

 

紫苑「この程度ですか?魔王を名乗るには弱すぎますね。」

クレイマン「貴様あぁ……………!スライム風情の手下が調子に乗るなよ!?行け!踊る人形達(マリオネットダンス)!!」

 

 紫苑がそう挑発すると、クレイマンは人形を投げる。

 すると、魔人の形になり、紫苑へと向かっていく。

 だが、それらも紫苑によってあっさりと両断され、その場に落ちる。

 それを見ていたディーノが拍手をする中、クレイマンは口を開く。

 

クレイマン「ふ……………ふはははははっ!やるでは無いか。強力な魔人の魂を封じ込めた人形をこうも容易く打ち砕こうとは。」

紫苑「下らない。本当に大した事が無いようですね。」

クレイマン「ふん。終わりだと思ったか?言っただろう?魔人達の魂を封じ込めたと。今一度立ち上がれ、人形共よ!そして踊るのだ!その悪鬼を死へと誘う舞踏をな!!」

 

 クレイマンがそう言うと、紫苑はそんな風に吐き捨てる。

 そんな中、クレイマンは余裕の笑みを浮かべながらそう言うが、人形達は動かない。

 

クレイマン「ば……………バカな!復活しないだと!?何故……………!?っ!(封入した魂が消えている!?)」

 

 クレイマンは動かない事に驚くが、すぐに魂が消えている事を悟る。

 

紫苑「どうやら、人形遊びはお終いのようですね。」

クレイマン(あの大太刀……………まさか、魂喰い(ソウルイーター)の効果を持っているのか!?)

紫苑「では次は、鬼ごっこにしましょうか。」

 

 紫苑がそう言う中、クレイマンは剛力丸の秘密に気づく。

 紫苑の蘇生時に、剛力丸に魂喰い(ソウルイーター)の特性を加えられた。

 クレイマンがそう思う中、紫音が迫る。

 そんな中、俺はジュウガバイスタンプを4回倒す。

 

アメイジングフィニッシュ!

 

 俺は必殺技を発動して、十体の最強生物のオーラを右手に纏う。

 ミリムも、パンチを俺に向かって放つ。

 俺とミリムのパンチがぶつかり合う寸前、何かが間に入り、それにぶつかる。

 それとは………………。

 

ヴェルドラ「ぐわぁぁぁ!!いきなり何をする!!酷いでは無いかぁぁぁぁぁ!!」

レイト「ヴェルドラ?」

 

 ヴェルドラだった。

 何でここに居るの?

 俺が唖然となる中、奇才之王が話しかける。

 

奇才之王『告。個体名ヴェルドラは、究極能力、暴風之王の召喚経路を自力で逆走して来た模様です。』

レイト『逆走!?マジかよ……………。』

 

 ヴェルドラの奴、自分でも来れるのね。

 というより何しに来た。

 すると、リムルが話しかける。

 

リムル「おい、お前。何でここに来たんだよ?冷やかしなら帰れよ。」

ヴェルドラ「ぬ?リムルにレイトよ。貴様ら、我にあのような仕打ちをしておきながら、その言い草はひどいでは無いか?」

レイト「どういう事?」

ヴェルドラ「用件はこれだ。」

 

 リムルがそう言うと、ヴェルドラはそう言いながら、何かを取り出す。

 それは、3×3EYESという漫画とガンデフォンだった。

 あ、そういえば。

 

ヴェルドラ「カバーと中身が別物ではないか!最終巻にしてこの嫌がらせは悪質すぎるぞ!!いや、これも面白かったが!それに、エグゼイドの最終回、どのようにして檀正宗を倒すのかが気になるのに、お預けとはどういう事だ!最終回は!パラドが消えてしまった永夢はどうやって変身するのだ!!」

レイト「お前……………その為だけにここまで来たのかよ……………。」

ヴェルドラ「気になって気になるのだ!」

 

 ヴェルドラはそんな風に文句を垂れる。

 俺が呆れる中、リムルが口を開く。

 

リムル「よし、本来の中身を渡す前に、お前にミリムの相手を頼みたい。」

ヴェルドラ「む?ミリム?」

 

 リムルがそう言い、ヴェルドラが首を傾げる中、ミリムがキックをしてくる。

 だが、そのキックをヴェルドラはあっさりと受け止めた。

 

ヴェルドラ「おお、そうだ。その名、思い出したぞ。我が兄の一粒種か。」

 

 ヴェルドラはそんなふうに言うと、ミリムに攻撃するが、ミリムは回避する。

 そうか、俺が見たミリムの記憶が正しければ、ミリムは竜種の内の一体、ヴェルダナーヴァというドラゴンの娘だからな。

 そうなるか。

 

リムル「操られているだけだ。絶対に怪我をさせないようにな。」

ヴェルドラ「ふん。我に任せろ。…………おや?」

 

 リムルがそう言う中、ヴェルドラはそう言うと、何かに気づく反応をする。

 やっぱり気づいたみたいだな。

 俺はヴェルドラに話しかける。

 

レイト「ヴェルドラ、悪いけど、ミリムの相手をしてくれないか?俺も嫌な予感がするから、リムルの方に向かう。上手くやれたら、エグゼイドの最終回を見せてやるから。」

ヴェルドラ「うむ!任せておけ!…………さて、ミリムよ、遠慮なくかかってくるが良い!聖典にて修めた技の数々、とくと見せてやろう!」

 

 俺はそう言うと、ヴェルドラは戦闘を開始する。

 俺はリムルと合流して、嵐牙とシズさんの方へと向かう。

 

リムル「嵐牙!」

嵐牙「我が主達!すみません!我が不甲斐ないばかりに…………!」

レイト「何があった?」

嵐牙「それが……………。」

シズ「うっ!ううっ……………!?」

リムル「シズさん!?」

レイト「マジかよ……………。」

 

 嵐牙がそう謝る中、俺たちは確認する。

 すると、嵐牙とシズさんの相手である狐が苦しんでおり、シズさんも苦しんでいた。

 シズさんのクウガ・アルティメットフォームは、戦闘を開始した時点では、目は両方とも赤かったが、今は片方が黒くなっていた。

 

レイト「究極の闇に飲まれかかってる!このままじゃ不味い!」

リムル「マジか……………!レイトはシズさんを頼む!俺はあの狐をどうにかする!」

レイト「分かった!」

 

 そう。

 シズさんは、アルティメットフォームの力に飲まれかかっているのだ。

 恐らく、原因はレオンだろう。

 シズさんはレオンに憎しみを抱いていてもおかしくは無い。

 その結果、飲まれかかっている。

 変身解除に追い込むしか無いな。

 これは、俺の判断ミスとも言えるのだから。

 俺はライオンバイスタンプを取り出す。

 

ライオン!

アブゾーブ!クウガ!

 

 ライオンバイスタンプをジュウガドライバーで読み込む。

 そして、俺はジュウガバイスタンプを一回倒す。

 

ライオンマイティアタック!

 

 必殺技を発動して、シズさんにマイティキックを叩き込む。

 それが当たったシズさんは吹っ飛び、変身解除する。

 

レイト「大丈夫か!?」

シズ「うん……………ごめんね、迷惑をかけて……………。」

レイト「気にすんな。」

 

 俺はそう言うと、シズさんはそう答える。

 どうにかなってよかった。

 こればっかりは、俺の軽率な判断が招いた事だからな。

 自分のやらかしの後始末は、自分でやる。

 リムルの方を見ると、狐を解放できたようだ。

 すると。

 

ヴェルドラ「波動拳!波動拳!波動拳!波動拳!波動拳!」

 

 ヴェルドラが波動拳を撃っているのが目に入る。

 何やってんだあいつ。

 すると。

 

ヴェルドラ「昇龍拳!からの、竜巻旋風脚!」

 

 そんなふうに叫びながら、攻撃をしていく。

 なんか、多方面に怒られそうな気がする。

 やめろ、やめろって。

 すると、荘吉さんから連絡が入る。

 

荘吉『レイトか?』

レイト「荘吉さん。どうしたんですか?」

荘吉『クレイマンの城を制圧した。』

レイト「えっ?マジで?」

荘吉『ああ。色々あったんだがな……………。』

 

 荘吉さんからの言葉に、俺は驚く。

 すると、別の声が聞こえてくる。

 

???『私の神、ルミナスへの信仰は死にました。ですので、新たなる神を得たく思うのです。是非、朱菜様の信仰する御方達に会わせて頂きたい!』

朱菜『ですから、リムル様とレイト様を敬ってはいますが、信仰してはいませんよ?何度も言っているでしょう。』

???『リムル様にレイト様!何と神々しいお名前である事か!』

 

 なんかハイテンションな声と朱菜のうんざりとした声が聞こえて来たな。

 すると、荘吉さんが話しかける。

 

荘吉『実は、数千の不死系魔物(アンデッド)が朱菜に下ってな。こうなった。』

レイト「マジでどういう事ですか!?」

荘吉『経緯は報告書で説明する。それより、ゲルドとグルドの2人に、渡すべきものを渡したから、胃袋を確認してくれだそうだ。』

レイト「わ、分かりました。」

 

 本当にどういう事だよ。

 鳴海亜樹子風に言わせれば、『アタシ、聞いてない!』だよ。

 とはいえ、確認するか。

 ちなみに、俺の究極能力、降魔之王には、胃袋という権能があり、他の胃袋にもアクセスが可能なのだ。

 それにより、俺も確認する事が出来る。

 リムルと合流して、話をする。

 

レイト「リムル。」

リムル「ああ。」

 

 俺とリムルが頷き合う中、クレイマンの叫び声が聞こえてくる。

 

クレイマン「なぜ……………何故効かん!?あのミリムすらも支配する究極の呪法…………操魔王支配(デモンマリオネット)だぞ…………!」

紫苑「これは何のつもりです?痛くも痒くも無いが、もう少し待てば良いのですか?」

 

 クレイマンがそう叫ぶ中、紫苑は何かに包まれていた。

 恐らく、紫苑を操って、俺たちに攻撃させようとしたのだろう。

 だが、無駄だ。

 今の紫苑には、精神支配は効かない。

 すると、クレイマンは再び叫ぶ。

 

クレイマン「ビオーラ!何をしている!?さっさとこっちへ……………っ!?」

 

 クレイマンはそう叫ぶが、驚愕の色が浮かぶ。

 なぜなら………………。

 

火煉「ビオーラ?ああ……………これの事?なかなか強かったわよ?攻撃手段が多彩で。」

ベイル「だが、そのどれもが、俺たちには通用しなかっただけの話だ。」

 

 そのビオーラは、火煉とベイルによって倒されていたのだ。

 火煉も、ゲノミクスを上手く使いこなして、ベイルもこれまでに押印したバイスタンプの力で難なく倒したみたいだな。

 

クレイマン「バカな……………ビオーラも、九頭獣(ナインヘッド)も、踊る人形達(マリオネットダンス)も、敵わなかったというのか。新参のスライムとキメラ如きに……………っ!?」

リムル「これで手詰まりか?まだ何か奥の手を隠し持っているのなら、さっさと出せよ。お前の計略は全て潰すって決めてるんでね。」

レイト「それとも、今度こそお前自身が戦うのか?魔王クレイマン。」

 

 クレイマンが唖然としている中、俺とリムルはそう言う。

 すると、クレイマンは口を開く。

 

クレイマン「そうか。そうだな。魔王。私は魔王なのだ。だから戦い方にこだわり、上品に、優雅に敵を葬って来た。だが良い!もう良いのだよ!久しく忘れていたよ。自らの手で敵を捻り潰したいという高揚感をな!!」

 

 クレイマンはそう言いながら、上半身の服を脱ぎ捨てる。

 すると、クレイマンの姿が変わる。

 やっと本気を出したか。

 俺は口を開く。

 

レイト「クレイマンの相手は、俺がやる。」

リムル「えっ!?」

火煉「レイト様!?」

レイト「あいつは、俺を本気で怒らせた。目に物見せてやらないと、気が済まなくてな。」

 

 俺はそう言うと、リムルと火煉は止めようとするが、俺はそう言う。

 そう、あいつは俺を本気で怒らせた。

 だからこそ、それ相応の報いを与えなければいけない。

 それを見たリムルと火煉は。

 

リムル「……………分かったよ。負けんなよ。」

火煉「レイト様、気をつけて。」

レイト「ああ。」

 

 リムルと火煉がそう言い、俺は前に出る中、クレイマンの姿が変わり、仮面を付ける。

 俺は話しかける。

 

レイト「へぇ。少しはマシになったな。見直したよ。魔国連邦(テンペスト)国主、レイト=テンペストだ。決着をつけるぞ。」

クレイマン「魔王……………いや、”喜狂の道化(クレイジーピエロ)”クレイマンだ。殺してやるぞ、魔王レイト!!」

 

 俺とクレイマンはそう名乗りながら、お互いに武器を構える。

 こうして、ぶつかろうとしていた。




今回はここまでです。
今回は、クレイマンと戦闘を始める直前までです。
シズさんも、アルティメットフォームの力に飲まれかかっていました。
レオンへの憎しみが原因です。
やっぱり、シズさん的にも、思うところはあるので。
次回は、クレイマンとの戦闘から始まります。
そして、バイスタンプラッシュをやろうかなと思っています。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
昨日から、ガッチャードとギーツの映画が公開され、史上初の女性2号ライダー、マジェードの存在が判明しましたね。
果たして、どんな風に活躍していくのか。
楽しみです。
ちなみに、投稿しようと考えている転スラとドレッドで、シズさんがマジェードになる予定です。
そして現在、このすばのアプリゲーム、ファンタスティックデイズにて、転スラがコラボしていますね。
現在考えているのは、自分が投稿している小説の一つ、『この白狐の戦士に祝福を』とこの小説をコラボさせようかなと思っています。
もし、リクエストがあれば受け付けています。


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第47話 中庸道化連

 俺とクレイマンは、対峙する。

 しばらく睨み合っていると、クレイマンが攻撃を仕掛けてくる。

 背中から出てきた腕に持っていた武器で、俺のことを攻撃してくる。

 

レイト「っ!」

 

 俺は、それを回避しつつ、キングクラブバイスタンプを取り出す。

 

キングクラブ!

アブゾーブ!ブレイド!

 

 その音声が流れると、俺の右手にキングラウザーが出現する。

 ジュウガソードを左に帯刀して、ジュウガバイスタンプを倒す。

 

キングクラブライトニングアタック!

スペード10!ジャック!クイーン!キング!エース!

ロイヤルストレートフラッシュ!

 

 その音声が流れると、5枚のラウズカードがキングラウザーに吸い込まれる。

 クレイマンの斧の攻撃をキングラウザーでいなしつつ、そのまま一閃する。

 

レイト「ハァァァァァ!」

クレイマン「ぐぬぅ……………!!」

 

 俺のキングラウザーを使った攻撃で、クレイマンの背中の腕の左部分を2本まとめて切断する。

 クレイマンは、もう片方の背中の腕2本で、俺に攻撃しようとする。

 俺は慌てずに、キングラウザーを放り投げ、オクトパスバイスタンプを取り出す。

 キングラウザーは役目を終えたからか、そのまま魔素へと戻る。

 

オクトパス!

アブゾーブ!ドライブ!

 

 その音声が鳴ると、俺の右手にトレーラー砲が現れる。

 ジュウガバイスタンプを倒して、トレーラー砲を構える。

 

オクトパスフルスロットルアタック!

フルフルフォーミュラ〜タ〜イホウ!

 

 俺はトレーラービッグインパクトを発動して、クレイマンを吹っ飛ばす。

 トレーラービッグインパクトを食らったクレイマンは怯んだ。

 そんな中、トレーラー砲を捨てて、ジャッカルバイスタンプを取り出す。

 

ジャッカル!

アブゾーブ!エグゼイド!

 

 その音声が流れると、俺の右手にガシャコンキースラッシャーが出現する。

 無論、マキシマムマイティXガシャットが装填されている。

 俺は、ジュウガバイスタンプを倒す。

 

ジャッカルクリティカルアタック!

マキシマムマイティクリティカルフィニッシュ!

 

 俺はクレイマンに向けて、光線を放つ。

 クレイマンはそれを受けて、吹っ飛ぶ。

 

クレイマン「な、何……………!?あいつの力が増幅しているだと……………!?」

 

 クレイマンはそんなふうに言う。

 それを見ていた他の魔王達は。

 

ラミリス「えっ!?えっ!?」

ダグリュール「何と!?」

ディーノ「嘘だろ……………!?」

フレイ「………………っ!?」

レオン「っ!」

ロイ「何……………!?」

ギィ「ほう。あのレイトとやら、ミリムに匹敵するほどの力を秘めていたとはな…………。」

 

 他の魔王達も、驚いていた。

 それには、俺の究極能力が関与している。

 俺の究極能力、降魔之王(サタン)

 それの権能の一つ、激情。

 この激情の効果は、強い感情や思いをエネルギーに還元する権能で、思いが強ければ強いほどに限りなくエネルギーを増幅し続ける。

 また、相手が俺に対してマイナスの感情を抱くと、そのマイナス感情も俺のエネルギーに還元される。

 要するに、相手が俺に強烈な敵意を抱けば抱くほどに俺がより強くなる。

 クレイマンをちょくちょく挑発していたのは、これが理由だ。

 クレイマンが俺に対して敵意を向ければ向けるほど、クレイマン自身の首を絞め、報いを与えさせる事が出来る。

 俺は容赦なく、ツインキメラバイスタンプを取り出す。

 

ツインキメラ!

アブゾーブ!ライダー!

 

 俺はジュウガソードを持ち、ジュウガバイスタンプを倒す。

 

ゲノムクロスアタック!

 

 その音声と共に、ジュウガソードに蟹の鋏と鰐の顎を出現させて、クレイマンの背中の腕を斬り落とす。

 俺とクレイマンが鍔迫り合いになる中、俺はある物を取り出して、口を開く。

 

レイト「なあ、クレイマン。これが何だか分かるか?さっき、俺たちの仲間が送ってくれた記録媒体だよ。お前の城の宝物庫で見つけたみたいだぞ。」

クレイマン「はっ。バカな。私の城だと?城は不死系魔物(アンデッド)どもが守っている。そう易々と忍び込めるものか。」

レイト「残念だけど、その不死系魔物(アンデッド)達は、うちの巫女姫(かんなぎ)に降ったぞ。」

クレイマン「つまらんハッタリだな!そうまで言うなら、証拠を見せるが良い!」

 

 俺がそう言うと、クレイマンはそう言う。

 そんなクレイマンに対して、俺はそう言うと、クレイマンはそう叫ぶ。

 よし、言質取ったぞ。

 後悔しても知らねぇぞ。

 

レイト「言われなくても見せてやるよ。お前が裏で画策していたところと、戦場の結末をな。」

 

 俺はそう言って、記録媒体を起動する。

 すると。

 

ティア『やっほ〜クレイマン!フォビオを上手く乗せて、計画通り暴風大妖渦(カリュブディス)の依代に仕立てたよ〜!』

クレイマン『これはフレイの弱みを握る際、ティアから受けた報告……………!まさか…………まさか本当に……………!?』

 

 ティアという少女の言葉を聞いたクレイマンは、仮面で表情は見えづらいが、驚愕している事だろう。

 それを見ていたフレイは、目を細めていた。

 すると、別の映像に切り替わる。

 

ヤムザ『っ!?ま、まさか!?や、やめろ!お止め下さい!クレイマン様ぁぁぁぁぁ!!』

 

 その映像は、アルビスが応戦したヤムザというクレイマン軍の指揮官が暴風大妖渦(カリュブディス)に変貌するシーンだった。

 それを見たラミリスとダグリュールは。

 

ラミリス「あれって確か、クレイマンとこの………………中指のなんとか……………。」

ダグリュール(身内を切り捨てたか。)

 

 そんなふうに反応する。

 映像は、別の物に変わる。

 

フットマン『お遊びはここまでにしましょう。クレイマンの軍勢は壊滅。あの方に残念な報告をしなければなりません。』

 

 映像は、ゲルドとグルドに対して、フットマンがそう言うシーンになった。

 それを見たクレイマンは。

 

クレイマン『壊滅だと?フットマンめ、何を言って……………?そんなはず無いでは無いか。圧倒的な戦力差で侵攻したのだぞ?計算に入れていない因子でも無い限り……………。』

 

 クレイマンはそんな風に考えていた。

 それがあったんだよな。

 俺は口を開く。

 

レイト「なあ、クレイマン。フットマンとやらが言っていた”あの方”ってのは、誰の事だ?」

クレイマン「っ!?う……………うおおおおおおお!!」

 

 俺はそう聞くと、クレイマンは俺から少し離れて、黒く光る糸を出してくる。

 

リムル「レイト!」

火煉「レイト様…………………!」

レイト『紫苑に仕掛けたやつか。』

 

 リムルと火煉がそう言う中、俺はそんな風に思う。

 しばらくすると、俺はその糸に包まれる。

 すると、クレイマンの声が聞こえてくる。

 

クレイマン「ふっ………………フハハハハハっ!紛い物の映像でハッタリなど、如何にもキメラらしい小賢しい手よ!喜ぶが良い!その繭が解けた時、貴様は私の命令に従う事しか出来ぬ操り人形になるのだ!ハハハハハハハっ!!」

 

 クレイマンはそんな風に言う。

 ちょうど良い。

 新しい技の実験台になってもらうか。

 とはいえ、情報を引き出すためにも、やり過ぎない程度に。

 俺がそう思う中、それを見ていたフレイは。

 

フレイ(……………暴風大妖渦(カリュブディス)を利用して、随分とこき使ってくれたものだこと。)

 

 フレイはそんな風に思っていた。

 遡る事数ヶ月前、クレイマンから腕輪を受け取ったフレイ。

 フレイが居る部屋の中に、ミリムがやってくる。

 

ミリム「やぁ、フレイ!今日もいい天気なのだ!」

 

 ミリムはそんな風に言いながらやってくる。

 その腕には、ドラゴナックルが付けられていた。

 それを見て、フレイは口を開く。

 

フレイ「お久しぶりね、ミリム。随分素敵な物付けてるじゃないの。」

ミリム「分かるか!?」

 

 フレイはそう言うと、ミリムはそう反応する。

 それから、テンペストでの出来事を、ミリムは嬉々として語っていった。

 それを見ていて、フレイは微笑んでいた。

 その後、フレイは腕輪をミリムに渡す。

 

ミリム「む?腕輪か。綺麗な宝珠だな。貰っても良いのか?」

フレイ「ええ。親友達からのプレゼントには敵わないかもしれないけれど、私たちもお友達でしょう?」

ミリム「よし!付けてみるのだ!ちょっとこれ持っててくれ。リムルとレイトがくれた大事な奴だからな!落としてはダメだぞ!」

フレイ「はいはい。」

 

 ミリムがそう言うと、フレイはそんな風に言う。

 それを聞いたミリムは、ドラゴナックルをフレイに預けて、その腕輪をつける。

 すると。

 

世界の言葉『禁呪法、操魔王支配(デモンマリオネット)が発動。成功しました。』

 

 そんな声が聞こえると、腕輪からエネルギーが出てきて、ミリムを包み込む。

 すると、ミリムの目から光が消える。

 それを見ていたフレイは、口を開く。

 

フレイ「……………終わったわよ。これで良いのかしら?クレイマン……………。」

 

 フレイがそう言うと、近くの柱の影からクレイマンが出てくる。

 

クレイマン「ご苦労様です、フレイ。これで最強の人形が手に入りましたよ。良い様ですねミリム!他人に従わされる気分はどうです!?」

 

 クレイマンはそう言うと、無抵抗のミリムを何度も叩き、足蹴にする。

 それを見ていたフレイは、口を開く。

 

フレイ「……………ねえ、クレイマン。貴方、ミリムには”狂化暴走(スタンピート)”という防衛回路がある事を知っていて?貴方が死ぬのは勝手だけど、巻き添えはごめんだわ。」

クレイマン「………………っ!」

 

 フレイはそんな風に言うと、流石にクレイマンはミリムへの攻撃をやめる。

 そして現在。

 

フレイ(……………随分と不愉快な思いをさせられたけれど、今となってはどうでも良いわ。だって貴方の命、もう長くなさそうだもの。)

 

 フレイはそんな風に思う。

 すると、俺を操ろうとしている糸が俺に吸収され、俺の手に集まり、俺の魔素も入る。

 

クレイマン「なっ!?」

レイト「食らえ。悪之黒陽(black evil sun)!」

 

 クレイマンが驚く中、俺はそう言い、それを放つ。

 悪之黒陽。

 俺が新たに獲得した必殺技。

 激情による無尽蔵の魔素と悪意伝達による悪意の情報を混ぜ合わせて作った黒く強大な魔素と悪意の塊を放つ。

 まあ、ある程度は加減しているが。

 黒幕なども知りたいからな。

 クレイマンが吹っ飛ぶ中、クレイマンは口を開く。

 

クレイマン「バカな……………!?貴様といい、あの鬼女といい、何故効かぬ!?」

レイト「さぁ?お前が弱いだけだろ?」

 

 クレイマンがそう言うと、俺はそう返す。

 紫苑に関しては、復活した際に完全記憶というのを獲得しており、精神攻撃は効かず、俺は奇才之王(シェムハザ)が居るからな。

 効くわけないだろ。

 すると、クレイマンは口を開く。

 

クレイマン「そんな……………そんな筈はない。太古の魔王ですら……………ミリムすら支配した究極の呪法だぞ!?そ、そうだ!ミリム、何をしているのです!?早くこちらに……………!?」

 

 クレイマンがそう言うと、ミリムに助けを求めようとする。

 だが、ミリムはヴェルドラと戦っていた。

 

クレイマン「な、何だ!?何なのだ!?あの桁外れの力は!!」

リムル「何だ、出てきた所、見てなかったのか。ヴェルドラだよ。言っただろ?友達だって。」

 

 クレイマンがそう叫ぶと、今度はリムルが答える。

 ヴェルドラとミリムの戦いは。

 

ヴェルドラ「鉄山靠!」

 

 ヴェルドラとミリムは格闘戦を行なっており、鉄山靠を放ったと思ったら、エネルギーを貯めていく。

 

ヴェルドラ「か〜め〜は〜め〜波ァァ!!」

 

 ヴェルドラは、ミリムに向かってかめはめ波を放つ。

 やめろって。

 多方面から怒られるだろうが。

 すると、クレイマンはフレイに向かって叫ぶ。

 

クレイマン「ふ、フレイ!何をしているのです!?さっさと私に手を貸しなさい!!」

フレイ「あら。悪いわね、クレイマン。この結界は、ギィが認めないと通れないのよ。本当に残念だわ。」

 

 クレイマンがそう叫ぶと、フレイは素っ気なくそんな風に言う。

 完全に小物だな。

 すると、クレイマンが叫ぶ。

 

クレイマン「くっ……………!ミリム、ミリムよ!私の命令に従い、”狂化暴走(スタンピート)”しなさい!この場にいる全員を殺し尽くすのです!!」

リムル「おいおい、とんでもない事を言い出したぞ!?」

レイト「………………潮時だな。」

 

 クレイマンがそう叫ぶ中、俺とリムルはそう言う。

 すると。

 

ミリム「………………何でそんな事をする必要があるのだ?」

クレイマン「なっ……………!?」

リムル「ええっ!?」

ミリム「リムルとレイト達は友達なのだぞ。」

 

 ミリムはそんな風に言い、それを聞いたクレイマンとリムルは驚く。

 やっぱりな。

 

リムル「えっ!?ミリム!?お前、操られていたんじゃ…………………!?」

ミリム「ふふっ……………!わーっはっはっは!見事に騙されてくれた様だな、リムルよ!」

リムル「さ、最初から支配されていなかったのか!?」

ミリム「うむ!」

 

 リムルとミリムはそんな風に話す。

 それを見ていた他の魔王たちは。

 

ラミリス「えっ!?えええ……………!?」

ダグリュール「何と!」

ディーノ「殴られても反応しなかったじゃん。」

フレイ「ふっ。」

ギィ「ふっ。」

 

 そんな風に反応していた。

 やっぱり、何人かは気づいていたみたいだな。

 まあ、気づいていない奴も居るっぽいけど。

 すると、リムルから思念伝達が来る。

 

リムル『おい、レイト!お前は最初から気づいていたのかよ!?』

レイト『ああ。ミリムが操られている振りをしているのは、分かってた。』

リムル『だったら何で……………!?』

レイト『お前、俺の話を聞こうとしなかったじゃん。』

リムル『ぐっ……………!?』

 

 リムルがそう文句を言う中、俺はそんな風に返す。

 すると、リムルはミリムに聞く。

 

リムル「なんで操られた振りなんてしてたんだよ?」

ミリム「うむ!クレイマンが何か企んでいると思ったのでな。それを探っていたのだ。」

 

 リムルはそう聞くと、ミリムはそう答える。

 すると、クレイマンが口を開く。

 

クレイマン「振り……………!?そんな…………そんな筈はない!支配の宝珠(オーブオブドミネイト)で、私の支配下にあったのは間違いない筈です!」

ミリム「これの事か?呪法が成功したように見せねば、用心深いお前は信用しないだろう?だから、わざと受けたのだ。」

 

 クレイマンがそう言う中、ミリムは二つの腕輪を破壊して、クレイマンに投げつける。

 すると。

 

エミルス「消えた………………!?」

バイス「どうなってんのよ、これ!?」

 

 ミリムの分身体と戦っていた2人は、突然消えた事に驚く。

 すると、クレイマンは震えながら言う。

 

クレイマン「ふ、ふざけるな……………!あの方より授かった魔宝道具(アーティファクト)に私の全魔力を注いだ究極の操魔王支配(デモンマリオネット)だぞ?例え意図的であろうと、受けたなら最後、自らの意思を失い…………!?」

ミリム「そうなのか?でも、私を支配するのは無理なのだ。」

 

 クレイマンがそう言う中、ミリムはそう返す。

 やっぱり、黒幕が居たか。

 すると、それを聞いたクレイマンが叫ぶ。

 

クレイマン「では……………では貴女は私を欺く為だけに、カリオンを殺したというのですか!?」

???「おいおい、誰が死んだって?」

 

 クレイマンがそんな風に叫ぶと、そんな声が聞こえてくる。

 その声の主は、フレイの従者の1人だった。

 その男は、ライオンのマスクを外す。

 

カリオン「俺がリムルとレイトを唆しただとか、随分面白い事を言ってくれてたじゃねぇか。なあ、クレイマン。」

 

 その正体は、カリオンだった。

 やっぱりな。

 そんな中、リムルは驚いていた。

 気づいていなかったんかい。

 まあ、レオンの方に気を取られていたから、無理もないが。

 

リムル「び、び、獅子王(ビーストマスター)カリオン!無事だったんだな。」

カリオン「無事……………とは言えねえかな。俺の部下達が世話になった。」

レイト「気にするな。」

カリオン「ふっ。」

 

 リムルがそう言うと、カリオンはそう言い、俺はそう言う。

 それを見ていたクレイマンは。

 

クレイマン「そ、そんな……………では、本当に……………?だが、フレイの報告では…………そ、そうか!フレイも!貴様も裏切っていたんだなぁァァァァァ!!」

フレイ「あら?いつから私が貴方の味方だと勘違いしていたの?」

 

 クレイマンがそう叫ぶと、フレイはそんな風に言う。

 怖いな。

 それを聞いたクレイマンは。

 

クレイマン「フレイ……………!貴様ァァァァァァ!!」

 

 クレイマンはそう叫びながら、フレイの方へと向かう。

 だが、すぐに地面に叩き落とされる。

 何故なら、ミリムがぶん殴ったからだ。

 

フレイ「ミリムったら。結界があるから大丈夫なのに。」

ミリム「それは分かっているのだ。ギィ、結界を解いてくれ。」

ギィ「ふん。」

 

 フレイとミリムがそう言うと、ギィは指を鳴らして、結界を解除する。

 だが、空間は拡張されたままなので、まだ戦闘があると踏んでいるのだろう。

 すると、フレイはミリムに話しかける。

 

フレイ「貴女なら操られないと信じていたけど、ヒヤヒヤしたわよ。でも、私との約束を守ってくれたわね。感謝するわ。」

ミリム「ワハハッ!友達だからな!当然なのだ!それよりもあれ、ちゃんと大切に持ってきてくれて居るんだろうな?」

フレイ「はいはい。」

 

 フレイがそんな風に話すと、ミリムはそんな風に叫ぶ。

 すると、フレイはドラゴナックルを取り出す。

 

ミリム「そうそう!これなのだ!」

フレイ「でもあなた、演技は全然ダメね。ガッツポーズなんてして、クレイマンに見られていたらどうするつもり?魔力感知で見てたらバレバレよ?」

ミリム「しょうがなかろう?リムルとレイトが私の為に怒っているのが分かって嬉しかったのだ。」

 

 ミリムがフレイからドラゴナックルを受け取っていると、フレイは苦言を呈する。

 確かに、ガッツポーズしてたな。

 ミリムはそんな風に言う。

 そう言ってくれるのは嬉しいな。

 すると。

 

レオン「……………三文芝居だったな。」

ラミリス「うっ!わ、私は気づいていたぞ………………?」

ダグリュール「う、うむ!そんな事だろうと思っていたぞ!」

ディーノ「やっぱ………………そうだよね。」

 

 レオンがそう言うと、ラミリス、ダグリュール、ディーノの3人はそう言う。

 絶対気づいていなかったな。

 すると。

 

ヴェルドラ「我は気づいておったぞ。クワハハハハ!」

 

 ヴェルドラはそんな風にダグリュールの肩に腕を乗せながらそう言う。

 やかましいわ。

 すると、ミリムがやってくる。

 

ミリム「リムル〜!レイト〜!私の為に怒ってくれていたのが分かって、嬉しかったのだ!」

リムル「お前な……………。」

レイト「でも、無事で良かったよ。」

ミリム「えへへへ……………!」

 

 ミリムがそう言いながらやってくると、俺とリムルはそう言う。

 俺は口を開く。

 

レイト「……………それで、いるんだろう?出てこい。」

リムル「ん?」

???「やっぱり、気づいておったな!」

ミリム「うわっ!?」

 

 俺がそう言うと、ミリムの影から、何かが出てくる。

 それは人の形……………というよりかはミリムに似た姿で出てきた。

 

レイト「初めまして……………と言うべきかな?ミリムの悪魔さん?」

ラース「私はラースなのだ!」

ミリム「わ、私の悪魔なのか!?」

 

 ミリムに似た姿の人物……………差異はサーモンピンクではなく、赤色の髪のミリムがそう言う。

 すると、ラースは口を開く。

 

ラース「お前ならきっと、来てくれると信じてたのだ!嬉しいのだ!!」

レイト「ああ。」

 

 俺とラースは、そんな風に話す。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「おい、レイト!ミリムの悪魔だなんて、いつ知ってたんだ!?」

レイト「そうだな……………ミリムがテンペストにやって来てからしばらくしてからだ。」

 

 リムルがそう聞くと、俺はそう答える。

 すると。

 

クレイマン「い、いつからだ……………?いつから、私を欺いていたのだ……………?」

ミリム「うむ、苦労したぞ。お前は用心深いからな。だから私は、すっごく頑張ったのだ!」

 

 クレイマンがそんな風に呻きながら聞くと、ミリムはそう言う。

 すると、カリオンが口を開く。

 

カリオン「あー、ところでミリムよ。一つ聞きたいんだが、良いかな?」

ミリム「む?良いぞ。何でも聞くのだ!」

カリオン「じゃあ、遠慮なく。お前さん、操られて無かったんだよな?という事は、ノリノリで俺を甚振ってくれたのかな?あぁん?」

ミリム「は……………。」

 

 カリオンはミリムにそう聞くと、ミリムはそう答える。

 すると、カリオンから怒りのオーラが出てきて、ミリムは唖然となる。

 確かに、それは気になる。

 流石に現場に居なかったからな。

 それは分からん。

 

カリオン「いやいや良いんだよ?俺が弱かっただけの話だからな。だがよ、俺たちの国を吹き飛ばしてくれたのも、全て、貴女の意思って事ですよねぇ………………?」

 

 カリオンはそんな風に言う。

 すると、ミリムは開き直ったのか、口を開く。

 

ミリム「む!カリオン!そんな小さな事はどうでも良かろう!」

カリオン「小さな事じゃねぇよ!下手したら俺様も死ぬ所だったし、王都が消えたんだぞ!?」

ミリム「ええい!うるさい!うるさいのだ!あれは演技に熱中………………じゃなくて、クレイマンを騙す為に頑張っただけなのだぞ!なので悪いのはクレイマンなのだ!!」

カリオン「おいおい、クレイマンのせいかよ。……………って、もう良いや。」

 

 ミリムとカリオンがそう言い争いをする中、ミリムはクレイマンになすりつけた。

 それを見て、カリオンが涙を流す中、俺とリムルが話しかける。

 ちなみに、ラースは俺の背中に貼っついていた。 

 

リムル「まあまあ、三獣士や国の皆さんも無事だし、カリオンさんの復讐戦って事で頑張っていたんだしさ。」

レイト「まあ、悪い事ばかりじゃ無かったと思うぜ。」

カリオン「おお、リムル、レイト……………!すまんな。慰めてくれて。」

 

 俺とリムルがそう言うと、カリオンは涙を拭いながらそう言う。

 まあ、カリオンにとっては悪い事ばかりではないからな。

 

リムル「だから気にするなって。それに街なら、また作れば良いさ。その為にクレイマンの配下の魔人を労働力として捕えたんだし。」

カリオン「おいおい、マジかよ…………!?」

リムル「俺たちも手伝うさ。前より立派で快適な国に作ろうぜ。」

レイト「金銭面については心配するな。クレイマンの宝物庫から、迷惑料と称して、たんまり頂いたからな。」

 

 リムルがそう言うと、カリオンは唖然となる。

 そんなカリオンを見て、俺たちはそう言う。

 すると、カリオンは手を差し出す。

 

カリオン「助かる!リムル、レイト……………いや、リムルさん、レイトさん!今後、獣王国はあんた達の国と永世友好国として、協力を惜しまないと誓うぜ!!」

 

 カリオンはそう言う。

 俺とリムルはカリオンの手を取る。

 すると、ミリムが笑う。

 

ミリム「わーはっはっはっ!良かったな、カリオン!これも全て私のおかげなのだぞ?」

カリオン「お前はもうちょっと反省してもらいたい物だがな………………!!」

ミリム「うっ!ふひゅ〜ふひゅ〜!」

 

 ミリムがそう言うと、カリオンはそう叫び、ミリムは口笛を吹く。

 すると、ギィ達がやってくる。

 

ギィ「労働力とはな。魔人を生かすなんて、甘い野郎達だと思ったが、なかなかに面白い事を考える。黒が懐き、あの3人が興味を示すわけだ。」

 

 ギィはそんな風に言いながらやってくる。

 1人に関しては、心当たりはあるのだが。

 コリウス王国で出会ったあの悪魔の可能性が高い。

 すると、フレイがクレイマンに話しかける。

 

フレイ「ねえ、クレイマン。ミリムが我慢していたから邪魔はしなかったけど、少し怒っていたのよ。私も。」

カリオン「弱肉強食がルールとはいえ、お前さんはやりすぎた。俺たちとしても、国を荒らされた恨みは晴らさせてもらうぜ。」

 

 フレイとクレイマンがそんな風に話す。

 そんな中、クレイマンは。

 

クレイマン(……………ああ、ラプラス。君の言う通りだったよ。……………私は失敗したのだ。)

 

 クレイマンはそんな風に思っていた。

 クレイマンは思い返す。

 

ティア『クレイマン。アンタは弱いんだから、無茶したらダメだよ?』

フットマン『そうですよ。ちゃんと私たちを頼る様に。』

 

 フットマンとティアとのやり取りを思い返すと、クレイマンは。

 

クレイマン(ああ、ティア。フットマン。…………私は彼らに近づきたかった。その為には無茶もする。当然だろう?私だって、中庸道化連の一員なのだから。)

 

 クレイマンはそう思う。

 そして、ある出来事を回想する。

 

???『やあ、君がクレイマンだろう?』

クレイマン『馴れ馴れしく私を呼ぶとは、死にたいのでしょうか?』

???『おいおい。そう警戒するなよ。こっちは紹介されて来てるんだからさ。』

クレイマン『紹介?』

ユウキ『魔王カザリームからな。』

 

 クレイマンはある時、背後から声をかけられた。

 クレイマンは警戒しながらそう言う中、その男……………神楽坂優樹(ユウキ・カグラザカ)はそう言う。

 場所を移動して、ユウキの話を聞く。

 

ユウキ『……………て訳でさ。僕はこの世界を手に入れる。それに協力してくれよ。』

クレイマン『ふっ。フハハハハハ!面白い。それは依頼ですか?』

ユウキ『ああ。中庸道化連への依頼さ。』

クレイマン『……………報酬は?』

ユウキ『そうだね……………。魔王カザリームの復活……………なんてのはどうかな?』

クレイマン『ふっ。良いでしょう。』

 

 ユウキとクレイマンはそう話すと、ワイングラスをぶつける。

 ワインを飲むと、ユウキは口を開く。

 

ユウキ『僕たちで世界を手に入れよう。そして、面白おかしく暮らそうぜ!』

 

 ユウキはそんな風に言う。

 すると、クレイマンは決意を固める。

 

クレイマン「(……………そうだ。目標はあの方に出会った時から決まっていた。君たちから信頼されて任された魔王という役目なのに。私は力に拘りすぎた。自分に足りない物を埋めねばならないと思っていた。真なる魔王に覚醒しなくても良い。今だけで良い。ラプラス、フットマン、ティア、カザリーム様…………!)私に力を寄越せぇぇぇぇ!!」

レイト「っ!?」

 

 クレイマンはそんな風に思うと同時に叫ぶ。

 すると。

 

世界の言葉『確認しました。これまで集めた魂を魔素に変換……………成功しました。肉体を分解。再構築を開始します。』

クレイマン「天は!まだ私を見離していなかった!!」

レイト「離れろ!」

 

 世界の言葉が聞こえて来て、クレイマンはそう叫ぶと、オーラを出す。

 俺たちが離れると、切断された筈の背中から生えた腕が再構築されていた。

 遂に来たか。

 すると。

 

紫苑「リムル様、レイト様。」

火煉「これは……………!?」

リムル「心配ない。予定通りだよ。』

レイト「どうやら覚醒したらしいな。本物の魔王に。」

 

 紫苑と火煉がそう聞く中、俺とリムルはそう言う。

 いよいよ、クレイマンとの決着の時だ。




今回はここまでです。
遂に、クレイマンと激突しました。
レイトの新たな権能や必殺技によって、クレイマンは追い詰められる。
今のレイトに敵意を持って挑むと、確実に自分の首を絞める事になります。
それほど、レイトは強くなりました。
ミリムの悪魔であるラースも出て来ましたが、クレイマンが土壇場で覚醒。
果たして、どうなるのか。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
レイトの権能に関しては、活動報告にて記載されています。
魔王達の宴が終わったら、電王編と紅蓮の絆編のエピソードをやって、三期のエピソードに入っていきます。


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第48話 聖なる場所で

 遂に真なる魔王として覚醒したクレイマン。

 そのクレイマンは、ある事を思い出していた。

 

カザリーム『お前は俺が死体から作った妖死族(デスマン)だが、フットマンやティアと違い、戦闘には向いちゃいない。だが、策謀を巡らせて、軍団を指揮するなんて真似は、お前以外には出来ないだろう。だからな、クレイマン。お前が魔王になるんだ。』

 

 かつて、カザリームから言われたこの言葉。

 それを糧に、クレイマンは立ち上がる。

 

クレイマン「見よ!私は力を……………力を手に入れたぞ!!ハハハハハハハッ!ハアーッハハハハハハ!ハヒャハハハハ!!」

 

 クレイマンはそう叫びながら、笑い声を出す。

 それを見ていたカリオンは。

 

カリオン(これが、クレイマンの妖気(オーラ)だってのか!?今までの比ではないぞ……………!!こいつは正直、俺やフレイでも……………。)

 

 カリオンはそんな風に思っていた。

 すると、カリオンは俺たちに話しかける。

 

カリオン「リムル、レイト!ここは俺様も……………!」

リムル「いや、悪いけど、譲ってもらえないか、カリオンさん。魔王を名乗る以上、自分の席は自分で用意したいんでね。」

レイト「そうだな。ここは俺たちに任せろ。」

リムル「いや、ここからは、俺1人でやる。」

 

 カリオンがそう言うと、リムルはそう言う。

 俺もそう言うが、リムルはそう言う。

 俺はリムルに話しかける。

 

レイト「何でだよ?俺だって…………。」

リムル「お前はさっき、クレイマンと十分に戦っただろ?少しは俺にも譲ってくれ。」

ギィ「リムルの言う通りだな。お前は十分に戦った。少しはリムルに譲ってやれ。」

 

 俺がそう言おうとすると、リムルはそう言う。

 そして、同意するかの様に、ギィもそう言う。

 ギィにまでそう言われたなら、もう無理か。

 俺はジュウガドライバーからジュウガバイスタンプを抜きながら、リムルに話しかける。

 

レイト「リムル、絶対に負けるなよ?」

リムル「ああ。」

 

 俺がそう言うと、リムルはそう言う。

 そして、リムルが前に向かって歩き出すと、他の人たちが口を開く。

 

カリオン「負けるんじゃねえぞ。」

ミリム「リムル、頑張るのだ!」

ラース「やってやるのだ!」

ラミリス「しっかりやりなさいよ!」

 

 カリオン、ミリム、ラース、ラミリスはそう言う。

 すると、クレイマンが口を開く。

 

クレイマン「この私を散々コケにした者どもよ!必ず報いを受けさせてやる!ハハハハハハハッ!ハアーッハハハハハハ!ハヒャハハハハ!!」

 

 クレイマンはそんな風に言う。

 クレイマンはああ言っているが、実際には、この場から逃げようと考えているんだろう。

 ギィみたいな明らかな格上がいる以上、ここでのやり取りをあの方に中継することは不可能だ。

 事の顛末を知らせる為には、生還するのは必須条件。

 俺と同じ事を考えているリムルは、口を開く。

 

リムル「お前はもう詰んでいる。諦めて、お前に指示を出していた黒幕を教えろよ。」

クレイマン「どこまでも生意気な!」

 

 リムルがそう言うと、クレイマンはそう言いながら、魔力弾を放つ。

 恐らく、リムルが避けると、空中で爆発させて、その隙に逃げるつもりなのだろう。

 その考えは、俺からしたら、手に取るように分かる。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「……………だが残念!暴食之王(ベルゼビュート)!!」

 

 リムルはそう叫ぶと、暴食之王(ベルゼビュート)を発動する。

 そして、クレイマンの魔力弾はあっさりと吸収された。

 

クレイマン「うっ……………!?」

リムル「言っただろう?お前はもう詰んでいるんだ。」

 

 クレイマンが怯む中、リムルは指を鳴らす。

 すると、ギィが使った結界が発動する。

 やっぱり、使える様になってるよな。

 それを見たギィは。

 

ギィ(……………俺の結界の技を盗んだか。図々しい野郎だ。)

 

 そんな風に思っていた。

 クレイマンが動揺する中、リムルが口を開く。

 

リムル「おい、本気を出すんなら、早くしろ。」

 

 リムルはそう言う。

 すると、クレイマンは笑いながら言う。

 

クレイマン「へへへヘヘッ!確かに、貴様やあのレイトとやらは強い。それは認めてやろう。だがな、私の本気もこんな物では無いのだよ!果たして、これを受けられるかな!?」

 

 クレイマンはそう言うと、周囲にドラゴンの様なオーラを纏うと、宙に浮く。

 すると、そのドラゴンのオーラがクレイマンの手に集まる。

 

クレイマン「喰らうが良い!この私の最強の奥義を!龍脈破壊砲(デモンブラスター)!!」

 

 クレイマンはそう叫ぶと、その魔力を発射して、龍がリムルへと向かう。

 だが、リムルは慌てていなかった。

 

リムル「喰らい尽くせ!暴食之王(ベルゼビュート)!!」

 

 リムルがそう叫ぶと、暴食之王(ベルゼビュート)がその龍を包み込む。

 龍のエネルギーはしばらくは耐えていたが、やがて、全てリムルに食い尽くされる。

 それを見ていたクレイマンは。

 

クレイマン「バカな!?そんなバカな!?私の……………私の最高の奥義なんだぞ!?」

リムル「無駄だよ、クレイマン。お前は俺やレイトより弱い。お前が知っている情報を素直に喋れば、苦痛を与えずに殺してやるよ。」

 

 クレイマンは、自分の技があっさりとリムルに無力化されたのに驚いていた。

 リムルがそう言うと、笑いながら口を開く。

 

クレイマン「ふふふふふっ!私は妖死族(デスマン)!ここで殺されようとも復活し、いずれ再び貴様らを……………っ!?」

リムル「ふんっ!」

 

 クレイマンはそんな風に言う。

 だが、最後の方は変な感じになる。

 何故なら、リムルに顔面を殴られたからだ。

 

クレイマン「のわっ……………!?」

リムル「ふんっ!ふんっ!ふっ!」

 

 クレイマンが怯む中、リムルは何度もパンチをする。

 ついでに、クレイマンに思考加速をかけた事も分かっている。

 

ギィ「クレイマンに思考加速を施したか。」

ラミリス「まあ、しょうがないわよね。」

ミリム「クレイマンの自業自得なのだ!」

 

 それを見ていた最古の魔王達は、そんな風に言う。

 しばらくすると、リムルは攻撃をやめる。

 クレイマンは、数日分のダメージを受けた中、リムルは口を開く。

 

リムル「クレイマン。最後にもう一度聞く。黒幕は誰だ?」

クレイマン「舐めるなよ……………!私が仲間を………………ましてや、依頼主を裏切る事などない。それが……………それだけが、中庸道化連の絶対のルールなのだ!!」

 

 リムルはそう聞くが、クレイマンはそう言う。

 こりゃあ、吐かせるのは厳しいな。

 仲間への情は、本物らしいな。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「……………そうか。一応教えておいてやるけど、お前、復活はできないぞ。」

クレイマン「なっ…………!?何を…………!?」

レイト「お前は妖死族(デスマン)だからな。星幽体(アストラル・ボディー)を離脱させて、逃げようと考えているんだろ?」

クレイマン「なっ……………!?」

レイト「だからこそ、さっきのマキシマムマイティクリティカルフィニッシュを放ったんだ。リプログラミングの力で、お前が星幽体(アストラル・ボディー)を離脱できないように書き換えた。」

 

 リムルがそう言うと、クレイマンは驚く。

 そして、俺はそう言う。

 俺が何の考えもなく、マキシマムマイティクリティカルフィニッシュを放つわけがないのだ。

 確実な死を与えるために。

 すると、クレイマンは意図を察したのか、俺を絶望した表情で見てくる。

 

クレイマン「な、な……………!?」

レイト「何で俺とリムルがそんな事を知っているのか不思議か?答えは簡単だ。リムルは、どうすれば死者蘇生が出来るのかを検索しまくった。何度も……………何度もな。それは、お前の計略によって奪われた物を取り戻す為だ。今度は、お前が全てを失う番だ。」

 

 クレイマンがそう言おうとする中、俺はそう言う。

 クレイマンが絶望に叩き落とされたのは、目に見えている。

 俺はリムルに頷くと、リムルは口を開く。

 

リムル「これ以上は何も聞けないし、クレイマンを処刑する!」

クレイマン「ひっ!?」

リムル「反対の者は居るのかな?居るなら相手になるけど。」

ギィ「好きにしろ。」

ラミリス「やっちゃえ!」

 

 リムルがそう言うと、クレイマンは尻餅をつく。

 他の魔王達に聞くと、他の魔王は、クレイマンの処刑に異論はないようだ。

 それを見たリムルは、クレイマンの方へと向かう。

 

クレイマン「や、やめろ……………!おい、やめろ……………!!」

リムル「………………楽に死ねると思うなよ?魂が消滅するまでの永遠とも思えるわずかな時間を、反省しながら過ごすと良い。」

クレイマン「い、いやだ……………!やめろ、やめろぉぉぉ!!助けてくれ……………フットマン!助けてよ、ティア…………!私はまだ死ねない!こんな……………ところで!お、お助け下さい!カザリーム様ぁぁぁぁ!!」

リムル「………………暴食之王(ベルゼビュート)。」

 

 クレイマンがそう言う中、リムルはそんな死刑宣告を出す。

 それを聞いたクレイマンは泣きながら、そんな風に叫ぶ。

 リムルは暴食之王(ベルゼビュート)を発動して、クレイマンを吸収していく。

 クレイマンはしばらく抵抗していたが、やがて、リムルによって吸収される。

 すると。

 

クレイマン(……………ラプラス。君の言う通りだった。私は少し、やり過ぎたようです。君の忠告通り、大人しくしていれば良かったよ。本当に……………君はいつも正しいな……………。)

 

 クレイマンのそんな思念が聞こえてきた。

 後悔の念か。

 今更遅いがな。

 クレイマンがリムルの与えた死で、少しは反省する事を願うか。

 リムルが結界を解除すると、ギィは拍手をしながら口を開く。

 

ギィ「見事だ。お前達が今日から魔王を名乗る事を許そう。異論のある奴は居るか?」

ラミリス「ないない!アタシはリムルとレイトがやる奴だって信じてたさ!」

 

 ギィがそう言うと、ラミリスが俺とリムルの方へと向かう。

 

ラミリス「何なら、アタシの弟子として認めてあげても良いけど?」

リムル「あ、そういうの間に合ってるから。」

レイト「弟子は他で取ってくれ。」

 

 ラミリスがそんな風に言う中、俺とリムルはそう言う。

 すると、ラミリスが叫ぶ。

 

ラミリス「何でや!?良いじゃ無い!素直に弟子になってくれても!!」

 

 ラミリスがそんな風に叫ぶ中、俺たちは困惑していた。

 どうしたものかと思っていると。

 

ミリム「ふふん!リムルにレイトは、私のマブダチだからな!お前とは仲良くしたく無いそうだぞ。」

ラース「それに、レイトにリムル自身が魔王となったわけだし、もうお前に気を遣う必要もあるまい?」

ラミリス「えっ!?嘘っ……………リムル、レイト、嘘だよね!?」

ミリム「わーはっはっは!お前は仲間はずれだな、ラミリス!」

 

 ミリムとラースの2人はそう言う。

 言ってないよ?

 ミリムがそう言うと、ラミリスはミリムに向かう。

 

ラミリス「何だとーーーっ!?えいっ!」

ミリム「ひょい!ひょひょいのひょいなのだ!」

ラミリス「きぃー!!」

 

 ラミリスはそう叫びながら、攻撃していく。

 だが、あっさり躱され、捕まった。

 その他の魔王達は。

 

レオン「私は誰が魔王になろうが興味はない。好きにすれば良い。」

ディーノ「ま、良いんじゃ無いの?」

ダグリュール「うむ。ヴェルドラが認めるのなら、これ以上ない保証だろう。」

フレイ「ミリム。少しは言葉に気をつけなさいな。あなたの方が強いのだから。」

 

 レオンが興味なさそうにそう言うと、他の魔王達も認めるような発言をする。

 どうやら、異論はないみたいだな。

 たった1人を除いて。

 

ロイ「ふん。余としては、下賎なスライムにキメラとやらが魔王などと、断じて認めたくはないが。」

 

 ロイはそんな風に言う。

 やっぱり、認められないという事か。

 まあ、敵視されたら面倒だし。

 何せ、ヴェルドラがかつて滅ぼした都の魔王だしな。

 代替わりしたが。

 すると。

 

ヴェルドラ「クァーッハッハッハッ!下郎、我が友達を侮辱するか。おい、ミルスよ!従者の躾がなっておらんぞ!我が教育してやろうか?」

 

 空気を読めない事には定評のあるヴェルドラがそう叫ぶ。

 だが、話し相手は、ロイの従者であるメイドだ。

 あいつ、何やってんだ。

 とはいえ、メイドの正体は分かっているのだが。

 すると、メイドは青筋を浮かべながら口を開く。

 

???「私に話しておいでですか?私は魔王ヴァレンタイン様の忠実なる侍女に過ぎませんが?」

ヴェルドラ「ん?」

ミリム「おいダメだぞ、ヴェルドラ!バレンタインは、メイドに化けて正体を隠しているつもりなのだ!」

ラース「ヴェルドラよ、それを言ってはダメなのだ!」

 

 メイドは青筋を浮かべながらそう言うと、ヴェルドラは首を傾げる。

 すると、ミリムとラースは大声でそう言う。

 全部バラしやがった!!

 あのドラゴンコンビと悪魔!

 すると、そのメイドはミリムとラースを睨むと、2人は口笛を吹く真似をする。

 だろうな。

 あのメイドは、コリウス王国で遭遇したからな。

 すると、メイドは口を開く。

 ちなみに、ミリムとラースはそそくさと離れていた。

 

???「ちっ!忌々しい邪竜め。どこまでも妾の邪魔をする………………妾の名まで忘れたか。」

ヴェルドラ「ミルスじゃなかった?ええと…………スミス……………それとも、イルス…………?」

ルミナス「本当に人をイライラさせるのが上手い物よ……………!もう良い!妾の事は、バレンタインと呼ぶが良い!」

 

 メイドがそんな風に言う中、ヴェルドラはそう言う。

 何でさらに怒らせるのかな。

 そう言うと、服装がメイド服からドレスに変わる。

 そう、コリウス王国に現れた、ルミナス・バレンタインだ。

 やっぱり、魔王だったのか。

 そりゃあ、原初の悪魔とタイマンを張れるわけだ。

 すると、もう1人の従者である執事が話しかける。

 

執事「よろしいのですか?ルミナス様。」

ルミナス「致し方あるまい。もはや正体を偽る事は不可能じゃ。あの駄竜のせいでな。」

カリオン「えっ!?知ってた?」

 

 執事がそう言うと、ルミナスはヴェルドラを睨みながらそう言う。

 どうやら、カリオン達は知らなかったようで、驚いていた。

 その当のヴェルドラはというと。

 

ヴェルドラ「我、悪くないし。隠してるの知らなかったし。バラしたのミリムとラースだし。ミルスじゃなくて、ルミナスか。そうそう、そうであったわ。」

 

 ヴェルドラはそんな風に言い訳をしていた。

 いや、お前がルミナスに突っ掛からなければ、こんな事にはなってないんだよ?

 それにしても、戦いが落ち着いたからか、気になる事が出てくる。

 そう思う中、ルミナスはロイに話しかけていた。 

 

ルミナス「ロイ。気になる事がある。貴様は先に戻っておれ。」

ロイ「しかし、ルミナス様。」

ルミナス「クレイマンの奴が、貴様を見て一瞬だが、視線を止めたぞ。」

ロイ「っ!?」

ルミナス「この前、貴様が追い払った我が領土に侵入した道化の格好をした侵入者。クレイマンの奴と何か繋がりがあるかも知れぬ。戻って聖神殿の警備を厳重にするように伝えるのじゃ。」

ロイ「承知。」

 

 ルミナスがそう言うと、ロイはそう反応する。

 だが、ルミナスの言葉に顔を少しだけ顰めると、ルミナスはそう言う。

 それを聞いて納得したのか、ロイは去っていく。

 ルミナス……………ルミナス教といえば、西方聖教会。

 何か、関係がある可能性がある。

 坂口日向(ヒナタ・サカグチ)と。

 もしそうなら、少しは話を聞きたいんだがな。

 俺はそう思っていた。

 その頃、神聖方王国ルベリオスの聖神殿では、ラプラスが侵入をしていた。

 柱の影に隠れながら、ラプラスは思っていた。

 

ラプラス(やれやれ。また奥の院に潜り込まなアカンなんて、人遣いの荒いボスやで、ホンマに。まあ、今は魔王達の宴(ワルプルギス)の真っ最中。あの坂口日向(ヒナタ・サカグチ)もボスが誘い出すっちゅーてたし。さっさとここ抜けて、奥の院へ……………ん?)

 

 ラプラスはそんな風に思っていた。

 すると、自分の元に誰かが近づいてくるのに気づく。

 

ラプラス「(法皇………………いや、違う。まさか……………!?)坂口日向(ヒナタ・サカグチ)!?」

 

 ラプラスは、近づいてくる人が法皇だと思ったが、違うと気づいた。

 月光に照らされて見えたその姿は、坂口日向(ヒナタ・サカグチ)だったのだ。

 すると、ヒナタは口を開く。

 

ヒナタ「この聖なる場所に潜り込むだなんて、本当に虫って嫌いだわ。」

ラプラス「虫!?サイナラ!!」

 

 ヒナタがそう言いながら剣を抜刀すると、ラプラスはそう叫びながら逃げていく。

 ヒナタは、追撃していなかった。

 

ラプラス「ちょおい!どないなってんねん!話がちゃうでボス!?せっかく魔王ヴァレンタインが留守でも、あの女がおったら、侵入なんて出来るかっちゅーんじゃ!!」

 

 ラプラスはそう叫びながら、全力で走っていく。

 どうやら、ボス……………神楽坂優樹(ユウキ・カグラザカ)は、ヒナタを誘い出す事に失敗したようだ。

 しばらく走って、ラプラスは一息吐く。

 幸い、ヒナタは追撃していなかったので、逃げる事に成功する。

 

ラプラス「勝てる事あるかい、あないな化け物……………。(逃げ切れたか…………いや、油断しないどこ。最近、ワイついてないし、もう一波乱くらいあるかも……………。)」

 

 ラプラスは一息吐きながらそう言う中、そう思う。

 すると、それがフラグになったのか、ラプラスの背後に蝙蝠が集まってくる。

 

ラプラス「ん?ちょ……………マジかいな…………。」

 

 それを見て、ラプラスは自分の不運がまだ続いていることを悟った。

 なぜなら……………。

 

ロイ「虫ケラめが……………余の前に今一度姿を見せるか。」

ラプラス「(クソッタレ!)今度は魔王かい……………!!」

 

 その蝙蝠が集まり、人の形になる中、その人はそう言う。

 そう、ロイだったのだ。

 

ラプラス「魔王達の宴(ワルプルギス)終わんの早過ぎやろ!?ホンマついてな……………!」

ロイ「ふん。虫ケラは皆、逃げ回るのが好きだな。」

 

 ラプラスはそう毒づきながら逃げようとするが、ロイの言葉に足を止める。

 ラプラスは、ロイに聞く。

 

ラプラス「……………何の話や?」

ロイ「ふっ。貴様には関係ないが、冥土の土産に教えてやろう。つい先ほど、クレイマンが死んだのだよ。」

 

 ラプラスはそう聞くと、ロイはそう言う。

 それを聞いて、ラプラスは驚いた。

 

ラプラス「な……………何やと?」

ロイ「あの愚かで姑息なゴミ虫も、貴様のように逃げ回っておったぞ。無様にも泣き叫びながらな!」

 

 ラプラスが驚く中、ロイはクレイマンを侮辱しながらそう言う。

 それを聞いたラプラスは。

 

ラプラス「………………っ!」

ロイ「何を怒る?見ず知らずの男の死がそんなにショックか?」

ラプラス「黙らんかい!クレイマンが死んだっちゅうんは、本当の話なんか!?」

ロイ「ハーッハッハッハッ!!語るに落ちたなゴミ虫めが!!やはり、貴様らは繋がっ…………っ!?」

 

 ラプラスが怒りの気配を見せる中、ロイは挑発気味にそう言う。

 ラプラスがそう叫ぶと、ロイはそう言う。

 だが、最後の方は変な感じになった。

 何故なら、ラプラスに殴られたからだ。

 

ラプラス「何を笑っとるんじゃ!クソボケが!」

ロイ「か……………虫ケラが、誰に向かって……………ゴブゥ!?」

 

 ラプラスがそう叫ぶ中、ロイは苛立ち気味にそう言う。

 だが、再びラプラスに殴られる。

 そこから、ラプラスの攻撃が続く。

 

ラプラス「ドアホが!ワイの!友達を!笑うなちゅうとんじゃい!!」

ロイ「グ……………調子に乗るなよ貴様ぁ!!血刃閃紅波(ブラッドレイ)!!」

 

 ラプラスがそう罵る中、ロイは血刃閃紅波(ブラッドレイ)を発動しようとする。

 だが、何故か発動しなかった。

 

ロイ「っ!?(発動しない!?いや、それどころか、動くことすら………………!?)」

ラプラス「無駄や。お前はもう死んどる。」

 

 ロイは、血刃閃紅波(ブラッドレイ)が発動しないどころか、動けない事に驚いていた。

 すると、ラプラスはそう言いながら、あるものを見せる。

 それは、心臓だった。

 それを見たロイは、自分の胸元を見ると、そこには大きな穴が開いていた。

 

ラプラス「せや。これはお前の心臓(コア)や。もう声も出んやろ?」

ロイ(馬鹿な……………余が、恐怖しているというのか!?こいつ、只者では……………!)

ラプラス「気づくのがちぃとばかり遅かったな。せや、ワイは強いんや。」

ロイ(やめ……………!?)

 

 ラプラスはロイの心臓を持ちながらそう言う。

 ロイがそう思う中、ラプラスはロイの心臓を握りつぶす。

 すると、ロイは塵となって消えていく。

 ラプラスが心臓を持っていた手を下げると、声が聞こえてくる。

 

司教「何の騒ぎだ、こんな夜更けに!?」

司教「な、何者だ貴様!?その返り血は……………!?」

 

 ラプラスとロイの戦闘により、人たちが起きてきて、そう叫ぶ。

 すると、ラプラスは司教達の間を走り抜けていく。

 

司教「し、侵入者!?」

司教「衛兵…………!誰が急いで衛兵を呼びなさい!!」

 

 ラプラスが走り抜ける中、司教達は、衛兵を呼ぶ。

 衛兵達は、ラプラスに攻撃していくが、ラプラスは衛兵達を倒していく。

 

ラプラス(……………何しとんねん、クレイマン。)

衛兵「か、囲め!絶対に逃すな!」

 

 ラプラスがそう思うと、衛兵達はそう叫ぶ。

 だが、悉く返り討ちに遭う。

 

ラプラス(フットマンは怒るやろ。ティアは泣くやろな。………………しゃーない。ワイが笑ったるわ。)

 

 そう思う中、衛兵はあっという間に倒れ伏していく。

 すると、ラプラスは笑い声を出す。

 

ラプラス「……………ははは。ひゃっはははは!ははははは!ひはははは!ははははは!ひゃはははははは!あーははははは!(お前は本当にバカやったな、クレイマン……………。)」

 

 ラプラスは笑いながら、そう思う。

 衛兵達の亡骸がたくさん転がる中、返り血を浴びた道化師の狂った様な、それでいてどこか悲しみを感じさせる笑い声が、雨音の中に響いていた………………。




今回はここまでです。
遂に、クレイマンとの戦いが終わりました。
クレイマンは、レイトのリプログラミングによって、アストラルボディを離脱させる事が不可能になり、絶望に叩き落とされたまま、リムルに吸収されました。
その後、ミリムとラースによって、ルミナスの存在が暴露される。
ミリムは、口が軽いですからね。
そんな中、ルベリオスでの一件。
ラプラスは、悲しみを感じさせる狂った笑い声を出していました。
次回は、魔王達の名称が決まるまでです。
漫画版の区切りになります。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
いよいよ、転スラの三期が始まりますね。
まずは、ディアブロ視点から二期のエピソードを振り返る。
電王編や紅蓮の絆編をやるので、転キメでは、その後になります。
今後の展開でリクエストがあれば、受け付けています。
ヒナタとレイトの戦いが、どんな感じになるのかも。
基本的には、アニメ版や漫画版をリミックスした様な感じで行きたいとは思っています。


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第49話 九星魔王(ノナグラム)

 魔王クレイマンを倒し、真なる魔王であるルミナスが姿を現した。

 そこから、会議に戻った。

 

ギィ「……………さて、今回の魔王達の宴(ワルプルギス)。議題はカリオンの裏切りとそこのリムルとレイトの台頭についてだったが、その問題は片付いた。俺としちゃあこれで終わりにしても良いんだが、せっかくの機会だ。何か言いたい事がある奴はいるかい?」

 

 ギィはワインを飲みながらそう言う。

 ちなみに、従者は柱沿いに待機している。

 まあ、このまま終わるのも別に良いんだけどな。

 目的は達成したし。

 すると、フレイが口を開く。

 

フレイ「良いかしら?私から提案…………というより、お願いがあるのだけど。」

ギィ「良いぜ、言ってみろよ。」

フレイ「私はたった今からミリムに仕える事にしたわ。」

 

 フレイがそう言うと、ギィは促す。

 すると、フレイはそう言い、周囲の面子が反応する。

 

ミリム「えっ?ええっ!?」

ダグリュール「何だと?」

ディーノ「えっ?ええっ……………!?」

フレイ「というわけで、魔王の地位は返上させてもらうわね。」

 

 それを聞いたミリム、ダグリュール、ディーノはそんな風に反応する。

 ちなみに、俺は少しだけ驚いていた。

 一応、フレイの考えている事は読んでいたからな。

 すると、ギィとミリムが口を開く。

 

ギィ「おいおい、いきなりだな。」

ミリム「待つのだフレイ!私はそんな話、初耳だぞ!?」

フレイ「ええ。言ってなかったもの。」

ギィ「理由は何だ?」

 

 ギィとミリムがそう言う中、フレイはそう言う。

 ギィがそう聞くと、フレイは理由を説明する。

 

フレイ「理由は………………そうね。色々あるのだけど、1番の理由は、私は魔王としては弱すぎると思うのよ。さっきの戦いを見ていて確信したのだけれど、クレイマンと戦っても、良くて互角だったわ。ましてや、覚醒したクレイマンには、どうやっても勝つ事は出来なかったわね。」

ダグリュール「だがフレイよ。有翼族(ハーピィ)であるお主の本領は大空での高速飛行戦であろう。そこまで自分を卑下する事は無いのではないか?」

 

 フレイはそんな風に言う。

 ダグリュールがそんな感じにフォローするが、フレイは口を開く。

 

フレイ「確かに、空で戦うのなら、私が有利だったでしょう。でも、民を守れなかった時、魔王に『空ならば敗れなかった』という言い訳は通用しないわ。それに、例えクレイマンの様に有利な状況を整えようと、その全てを覆す者が相手では、どうしようもないと知ったのよ。」

 

 フレイはそう言いながら、俺とリムルを見る。

 俺たちが原因か?

 すると、フレイは再び口を開く。

 

フレイ「どうかしら?この提案を受けてくれないかしら?」

ミリム「だ、だが………………。」

カリオン「ちょっと待ってくれや。そういう話なら、俺様にも言いたい事がある。」

 

 フレイはミリムにそう聞くが、ミリムは困惑していた。

 まあ、無理もないか。

 すると、カリオンさんが口を開く。

 

カリオン「俺もよ。ミリムとタイマン張って負けた身だ。魔王を名乗り続けるのは烏滸がましいってもんだ。だから俺も、魔王の地位を返上させてもらいたい。」

ミリム「ええっ!?」

ラミリス「ひゅ〜!」

カリオン「てわけで、俺は今日から配下になる。よろしくな、大将!」

 

 カリオンはそんなふうに言う。

 まあ、ミリムに負けたという事実があるからな。

 そうなるのも無理はない。

 というより、カリオン、良い笑顔だな。

 すると、ミリムは反論する。

 

ミリム「ちょっと待てカリオン!?あの時の私はクレイマンに操られていたのだぞ!?ノーカンに決まっておるではないか!!」

カリオン「ははは。てめぇ、さっき自分で、『私を支配するのは無理なのだ』って言ってただろうが!!」

 

 ミリムはそんなふうに言うが、カリオンはそう言う。

 確かに言ってたな。

 すると、ギィがカリオンに聞く。

 

ギィ「本当にそれで良いのかよ、カリオン。」

カリオン「ああ。建前上、魔王同士は同格だが、ああまで歴然とした力の差を見せつけられたんだ。ここは潔く、軍門に下ろうと思う。」

ギィ「俺はお前を気に入ってたんだぜ?あと数百年もすれば、お前も覚醒するだろうと期待してたんだがな。」

カリオン「期待はありがたいが、身の振り方は自分で決めるさ。」

 

 ギィはそんな風に聞くと、カリオンはそう答える。

 ギィはカリオンに期待していたのか。

 ギィが少し残念そうにそう言うと、カリオンはそんな風に答える。

 それを聞いたギィは口を開く。

 

ギィ「………………まぁ良いだろう。たった今より、フレイとカリオンは魔王ではない。ミリムに仕えたいと言うのなら、自分たちで説き伏せるが良いさ。」

 

 ギィはそんな風に言う。

 すると、ミリムがカリオンに聞く。

 

ミリム「本気なのか、カリオン?」

カリオン「ああ。獣王国(ユーラザニア)の王を辞めるつもりはねぇが、ミリムを上に置く新体制を築きたいと思ってな。」

フレイ「良いと思うわよ。獣王戦士団は貴女の戦力として恥じない実力だし。」

 

 ミリムがそう聞くと、カリオンはそう答え、それを聞いたフレイはそう言う。

 すると、ミリムは不安げに口を開く。

 

ミリム「そ、そんな事を言って、私を騙そうとしていないか?」

フレイ「騙す?」

ミリム「だ、だって、部下や配下になると、気軽に話してくれなくなるだろ?一緒に遊んだり、悪巧みもしてくれなくなるんだろ!?」

 

 ミリムはそんな風に言う。

 ちょくちょく、ミリムからその手の話を聞いていたが、ミリムは長い時を生きている故、友が出来ても、自分よりも早く亡くなってしまう事が多く、ある意味で配下と言える神官達も、ミリムを敬って、気軽には話してこないそうだ。

 だからこそ、俺やリムルが魔王になる様に誘っていたのだろう。

 カリオンが言っていた様に、魔王は建前上は同格であり、寿命という点も問題なくなるかもしれないから。

 つまりは、友を亡くしたくないという気持ちから来ていたのだろう。

 すると、フレイは口を開く。

 

フレイ「いいえ。いつでも一緒に居られる様になるし、なんならもっと楽しい事が出来ると思うわよ。」

 

 フレイはそんな風に言う。

 それを聞いて、ミリムは満更でもない表情を浮かべる。

 フレイは、俺たちよりもミリムの扱いが上手いな。

 すると、カリオンが口を開く。

 

カリオン「……………大体だな、お前が俺様の国を吹き飛ばしたのが原因だろうが。お前にも俺たちを養う義務があるんだよ。」

 

 カリオンはそんな風に正論を叩きつける。

 まあ確かに。

 カリオンの場合は、ゴリ押しする気だな。

 すると、ミリムは口を開く。

 

ミリム「わ、私は民を持たぬ主義だ。仕えると言われても困るのだが……………。」

フレイ「だからこそ、私たちがあなたの役に立てるのよ。貴女だって、いつまでも我儘ばかり言っては居られないでしょう?そろそろ領土の運営も考えるべきではなくて?でないと、貴女を慕う神官達が可哀想じゃない。」

ミリム「うっ!?」

 

 ミリムは悪あがきと言わんがばかりにそう言うが、フレイによって論破される。

 それを見ていて、俺とリムルは思念伝達で話し合う。

 

リムル『なあ、今後、ミリムの国との国交を考えるなら、彼らを相手に交渉する事になるのかな?』

レイト『だろうな。フレイ辺りが手強そうだしな。』

 

 俺とリムルはそう話す。

 フレイは頭が切れるので、交渉には打ってつけだろう。

 こちらも考えないとな。

 すると、頭を抱えていたミリムが叫ぶ。

 

ミリム「……………えぇい!分かったのだ!もう勝手に、好きにすれば良いのだ!!」

 

 ミリムはそんな風に叫ぶ。

 オーバーヒートして、受け入れる事にしたのか。

 まあ、良いんじゃね?

 それにしても、魔王が二人も減って、残りは俺たちを含めて9人になった。

 すると、俺とリムルは口を開く。

 

リムル「となると……………そうか。()大魔王じゃなくなったんだな。」

レイト「まあ、俺も入った時点で11人だし、そこから二人減って9人になったからな。」

一同「っ!?」

 

 俺とリムルはそう言うと、場の空気が冷えた。

 レオンを除いた全員が苦い表情を浮かべて、俺たちを睨んでくる。

 まるで、『余計な事を言いやがって』と言わんがばかりの視線だった。

 やべ、やっちまった。

 

ダグリュール「困ったのう……………威厳的な問題として、また新たな名称を考えねばなるまいよ。」

ルミナス「幸いにも、今は魔王達の宴(ワルプルギス)の真っ只中。全魔王が揃っておるのだし、良い知恵も浮かぼうというものよな。」

 

 それを聞いたダグリュールとルミナスはそんな風に言う。

 それを皮切りに、他の魔王達も話し始める。

 

ミリム「ワハハハハハ!私は今回もお前達に任せたのだ!」

ラミリス「押しつけ早っ!?まあ、前回は散々だったもんねー。」

ダグリュール「うむ。幾度、魔王達の宴(ワルプルギス)を開催したことか。ああいうのは考えすぎるとダメだな。」

ディーノ「そうそう。”十大魔王”ってのも、結局は人間が呼び出したんだよな。せっかく俺たちだって必死に考えたってのに。」

 

 ミリムがそんな風に押し付けると、ラミリス、ダグリュール、ディーノはそんな風に言う。

 そんな理由で魔王達の宴(ワルプルギス)が開催されていたのか!?

 魔王ってのは暇なのか?

 そう思う中、ルミナスが口を開く。

 

ルミナス「さも建設的な意見を出した様に語るでないわ。貴様は文句ばかり言っておったであろうが。」

ディーノ「何言ってんだよ、バレンタイン。そう言うお前はロイに任せっきりだったじゃねーの。」

レオン「……………噂に聞く悪夢が始まるのか……………。」

 

 ルミナスがそう言うと、ディーノはそう反論し、レオンはそう呟く。

 名称如きで大袈裟すぎやしないか?

 

ギィ「落ち着け、お前達。こんな時こそ、普段は見せない協調性で乗り切ろうじゃねーか。」

ディーノ「俺、寝る。」

ラミリス「アンタ本当、協調性の欠片もないわね!?」

 

 ギィがそう言う中、ディーノは寝始めて、ラミリスが突っ込む。

 すると、ヴェルドラが口を開く。

 

ヴェルドラ「む?名付けの話か?ならば、我が友リムルとレイトが得意としておるわ!頼ってくれても良いぞ?」

リムル「ええっ!?」

レイト「はっ!?」

 

 ヴェルドラはそんなふうに空気を読めない発言をして、俺とリムルはそう叫ぶ。

 余計な事をしやがって!!

 すると、それを聞いた人たちが口を開く。

 

ラミリス「そうそう!アタシのベレッタとフランにもサクッと名付けてくれたもんね!」

紫苑「そうです!リムル様とレイト様は名付けを得意としています!」

火煉「お二人なら、良き名称を付けられると思いますよ。」

嵐牙「うんうんうん!」

シズ「二人とも、頑張って!」

ギィ「……………ほう?」

 

 ラミリス、紫苑、火煉、嵐牙、シズさんがそう言う中、ギィまで反応してしまった。

 すると、ギィは口を開く。

 

ギィ「今日、新たな魔王として立つリムルとレイトよ。君たちに素晴らしい特権を与えたい。」

リムル「あ、いらないんで遠慮します。」

レイト「ご辞退申し上げます。」

 

 ギィがそう言う中、俺とリムルは即答でそう言う。

 それを聞いたギィは、笑みを浮かべたまま、テーブルに手刀をする。

 すると、他の魔王達が下がると、俺とリムルの中間点ぐらいでテーブルが裂ける。

 手刀で割りやがった……………!!

 すると、ギィはこちらに来る。

 

ギィ「そうだとも。我らの新たなる呼び名を付ける権利。それを君たちに進呈する。これは大変名誉な事だから、当然引き受けてくれるよな?」

 

 ギィはそんな風に言いながらこちらに来る。

 俺とリムルは、必死に顔を逸らす。

 すると、ギィはまずリムルの方に向かい、顎を掴む。

 

ギィ「……………というかよ、お前達が人数を減らしたのがこの問題の原因なんだぜ?勿論、責任取って名前くらい考えるよな?」

 

 脅迫やん。

 というより、クレイマンはともかく、カリオンとフレイは自己都合だろうが!?

 すると、リムルは観念したのか、口を開く。

 

リムル「わ、分かったよ!気に食わないからって、文句を言うなよ?」

ギィ「ならばよし。次はお前だ。」

 

 リムルがそう言うと、ギィはそう言う。

 あ、俺の方にも来るんすね。

 すると、ギィは俺の顎を掴み、耳元で囁く。

 

ギィ「それで、お前はどうだ?お前も責任をとって名前を考えるよな?」

レイト「ええぇ……………!?っ!?」

ギィ「っ!?」

 

 ギィがそう言うと、俺は困惑する。

 次の瞬間、何か光が出て、俺とギィは驚く。

 その瞬間、脳裏に何かが浮かぶ。

 それは、魔物に襲われる中、赤髪の男に助けられたという記憶だった。

 コレがなんなのか分からないが、断ると命がない気がする。

 

レイト「わ、分かった、分かった!俺も考えるから!」

ギィ「そうか。ならば良し。レイン、テーブルくっつけとけ。」

レイン「はい。」

 

 俺がそう言うと、ギィは満足した様な、どこか納得した様な笑みを浮かべながら、レインにそう指示を出す。

 あの記憶は何なんだ?

 俺とリムルは思念伝達で話し合う。

 

リムル『なあ、どうする?』

レイト『どうするかな………………。』

 

 俺とリムルはそんな風に話しながら、自然と天井を見る。

 天井には、夜空があり、星が煌めいていて、とても綺麗だった。

 すると、ある名前を思いつく。

 

レイト『リムル、俺、一つ思いついたけど、そっちはどうだ?』

リムル『俺も思いついた。多分、同じ事を考えていると思うし。』

レイト『だな。』

 

 俺とリムルは思念伝達でそんな風に話すと、口を開く。

 

リムル「九星魔王……………ノナグラム。」

レイト「というのはどうかな?」

 

 俺とリムルはそう言う。

 その理由は、星を繋ぐと九角形になり、ちょうど良いかなと思ったからだ。

 それを聞いた魔王たちは。

 

ミリム「いい!コレで勝てる!新たな時代の到来なのだ!」

ラミリス「やっぱね!リムルとレイトならやってくれるとアタシは信じてたさ!」

ダグリュール「流石よな。ヴェルドラが推薦するだけのことはある。」

ルミナス「ふん。まあ良いわね。少しは認めてあげましょう。」

ディーノ「一瞬かよ。すげぇな…………!前回の俺たちの苦労は何だったんだ。」

レオン「文句はない。」

ギィ「ふん。よかろう。九星魔王……………ノナグラム!」

 

 魔王達は、異論はない様だった。

 この日より、魔王達は新たな呼称で畏れられる事になる。

 その名は九星魔王(ノナグラム)

 そのメンバーは。

 

悪魔族(デーモン)、”暗黒皇帝(ロード・オブ・ダークネス)”ギィ・クリムゾン

 

妖精族(ピクシー)、”迷宮妖精(ラビリンス)”ラミリス

 

竜魔人(ドラゴノイド)、”破壊の暴君”(デストロイ)、ミリム・ナーヴァ

 

巨人族(ジャイアント)、”大地の怒り(アースクエイク)”ダグリュール

 

吸血鬼族(ヴァンパイア)、”夜魔の女王(クイーン・オブ・ナイトメア)”ルミナス・バレンタイン

 

堕天族(フォールン)、”眠る支配者(スリーピング・ルーラー)”ディーノ

 

人魔族(デモンノイド)、”白金の剣王(プラチナムセイバー)”レオン・クロムウェル

 

妖魔族(スライム)、”新星(ニュービー)”リムル=テンペスト

 

巍骸魔(ギフ)、”新星(ニュービー)”レイト=テンペスト

 

 この9人となった。

 新月の夜、新たな魔王の時代が幕を開ける。

 すると、ギィが口を開く。

 

ギィ「……………さて、魔王達の宴(ワルプルギス)もそろそろ終いだが、最後に一つやる事が残っている。支配領域の分配だ。」

 

 ギィはそんなふうに言う。

 すると、メイドの二人が地図を持ってくる。

 俺とリムルの支配領域は、ジュラの大森林全域。

 ヴェルドラが封印されていた為、不可侵となっていた一帯が正式に俺とリムルの支配領域になったのだ。

 それを見ていた俺とリムルは。

 

リムル『破格の待遇だよな。新参なのに。』

レイト『まあ、ヴェルドラの影響が大きいだろうな。』

 

 思念伝達でそう話す。

 ヴェルドラの影響も大きいんだろうな。

 ちなみに、ミリムはというと、自分の領地だけでなく、フレイ領、カリオン領、クレイマン領が統合されて、その全てを支配する事になった。

 尤も、領地運営はミリムではなく、カリオンとフレイが行う様だが。

 

フレイ「傀儡国ジスターヴは、東の帝国と隣接しているわ。改めて防衛線を築く必要があるわね。」

カリオン「ああ。まずクレイマンがどんな管理をしていたか調べねぇと。」

 

 フレイとカリオンがそう話す中、ミリムは飽きたと言わんがばかりの表情を浮かべていた。

 すると、地図を見ていたレオンが口を開く。

 

レオン「……………そういえば、傀儡国ジスターヴは、もともと前の魔王の支配領域だったな。」

レイト「前の魔王?」

カリオン「ああ、そういやそうだ。奴が死んでクレイマンがそのまま地盤を引き継いだって事は、アイツらは裏で繋がっていたんだろうな。二人とも妖死族(デスマン)だったし。」

 

 レオンがそう言うのに俺が反応すると、カリオンはそう言う。

 前の魔王ね……………。

 

ミリム「前の魔王?誰の事だ?」

カリオン「お前と奴が俺を魔王に推薦してくれたんじゃねぇか!何でお前が覚えてないんだよ!!」

 

 ミリムとカリオンがそう話す中、俺とリムルは思念伝達で話し合う。

 

リムル『妖死族(デスマン)なら、星幽体(アストラル・ボディー)を離脱させる事で肉体的な死から復活できるとしたら…………。』

レイト『ああ。今なら復活してるだろうな。黒幕本人か、それに近しい人物なのは間違いないかもしれん。』

 

 俺とリムルはそう話す。

 クレイマンと何らかの繋がりがある可能性は高い。

 リムルはレオンに聞く。

 

リムル「教えてくれ、レオン。そいつの名は?」

レオン「……………呪術王(カースロード)カザリーム。二百年前、私が殺した魔王だ。」

レイト「カザリーム………………か。」

 

 リムルはそう聞くと、レオンはそう答える。

 カザリームね。

 その名は聞いた事がある。

 クレイマンが助けを求める名の中に、カザリームという名があった。

 という事は、復活している可能性が高い。

 警戒するに越した事はないか。

 クレイマンを倒した事は、カザリーム側も分かっている可能性は十分にある。

 その為、俺とリムルがターゲットにされる可能性も。

 そんな風に決意を固める俺だった。

 そんな中、俺を見ていたギィは。

 

ギィ(まさか、あの時の坊やが、今ここに現れるとはな。予想もしていなかったな。これは、ますます面白くなりそうだ。)

 

 ギィはそんなふうに思っていた。

 俺は、カザリームの事を考えていた為、ギィの考えている事には気づけなかった。




今回はここまでです。
遂に、ワルプルギスの大まかな話が終わり、九星魔王という名前に決まりました。
そんな中、ギィと接触したレイトが、何かを思い出す。
ギィもそんな風に考えていた。
果たして、それが一体何を意味するのか。
次回は、どうするのかは検討中です。
電王編に入るのか、別の話をやるのか。
少なくとも、転スラの3期の第一話の食事会はやる予定です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
転スラ3期の第二話では、ユウキ達の話とヒナタとルミナス達の話、ファルムス王国側の話が描かれましたね。
紅蓮の絆編の時系列がどこら辺なのかが気になりますね。
少なくとも、ワルプルギスが終わった直後なのは間違いありませんが。
ヒイロ達も、リムルの口から聞かされて、始めて知ったみたいですので、本当に二期と三期の間だと思いますが。
今後の展開でのリクエストは、活動報告から承っております。
レイトの強化とかもリクエストがあれば受け付けています。
ゴジラの力をどこで手に入れるのか、意見があればお願いします。


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転キメ日記
第1日記 魔物の街の住人


今回は、転スラ日記みたいに、これまでの日常を振り返った物となります。


 俺は、日記をつける事にした。

 このテンペストでの日常を振り返る為にだ。

 さて、まずは、書き始めるとしようか。

 まずは…………。

 森を混乱の渦に陥れた豚頭魔王(オークディザスター)の脅威から、一月余り。

 俺、リムル、ゴブリン達しかいなかった小さな村は、数多くの仲間が増えて、その人口は、やがて1万を突破した。

 賑やかになっていった。

 だが、人口が増える事は、喜ばしい事なのではあるが、同時に、面倒な事にもなっていったのだった。

 会議室では。

 

リグルド「納得しませんぞ!」

紫苑「これは、秘書の管轄です。」

火煉「流石に、これだけは譲れませんので。」

リグルド「それはこちらとて、同じ事です!」

リリナ「まあまあ、三人とも、落ち着いて…………。」

 

 そう。

 一万以上の魔物が住む街ともなると、その意見の一致に、時間が掛かる事もある。

 現在進行形で、そうなっている。

 

リグルド「私の考えでは…………!」

ゲルド「いや、しかし…………。」

ガビル「ならば、この案は…………!」

紫苑「待って下さい!」

リグルド「異議あり!」

 

 と、こんな風にだ。

 それを見ていたカイジンが口を開く。

 

カイジン「参ったな。全然決まんねぇぜ…………。」

 

 カイジンがそう言うと、紅丸が立つ。

 

紅丸「やはり、ここはリムル様とレイト様にご意見を!」

ゲルド「うむ。」

グルド「異論はありません。」

リグルド「皆の士気にも関わりますからな。」

紅丸「朱菜!準備は良いか?」

朱菜「はい。」

 

 紅丸がそう言うと、朱菜が入ってくる。

 皆の視線が朱菜に向く中、朱菜は背中に隠していた物を出しながら言う。

 

朱菜「では…………ちょっとおしゃまなこちらのお洋服と…………元気で可愛いこちらのお洋服。リムル様とレイト様には、どちらがお似合いでしょう?」

 

 そう。

 この会議の議題は、俺とリムルに似合う服で揉めていたのだ。

 というより、俺の顔が中性的だからって、女物の服を着させようとするなよ。

 すると、全員が俺とリムルを見る。

 俺とリムルは、紅茶を飲んで。

 

リムル「なぁ…………。」

レイト「それって、そんなに大事か?」

一同「はい!」

 

 力強く言うね。

 そんなに、俺とリムルに、女物の服を着させたいのか?

 結局、リムルはオレンジ色の、俺は青色の服になった。

 まあ、着ないけど。

 俺とリムルは、色んな事が書かれた木の板に、ハンコを押していた。

 

リムル「ふぅ…………。」

レイト「これで全部か?」

リムル「そうだな。街づくりも進んできたし、今日は皆の仕事ぶりを視察するか?」

レイト「それ、良いな。」

 

 俺とリムルはそう話す。

 すると、紫苑と火煉が入ってくる。

 

「「失礼します。」」

リムル「おお、紫苑。お疲れ〜。」

レイト「火煉もお疲れさん。」

紫苑「お疲れ様です。」

火煉「資料用の木を持ってきました。」

レイト「助かるよ。」

 

 俺は、火煉からその木の板を貰っていると、紫苑はテーブルにでっかい木の塊を置く。

 

紫苑「さてと…………。」

レイト「おい、何する気だ?」

紫苑「今日も、リムル様の為に!張り切り………ますよ!」

火煉「危ない!」

 

 紫苑がそう言うと、剛力丸を抜いて、その木の塊を板状に切断する。

 周囲に木の板が飛び、俺は机の下に逃げる。

 そんな中、リムルは。

 

リムル「なあ、紫苑。俺を思ってくれるなら、良い方法がある。」

紫苑「てーい!」

リムル「張り切らない事さ。」

紫苑「てりゃー!」

レイト「室内で剛力丸を振り回すな!」

火煉「すいません…………。」

 

 その後、紫苑と火煉は、お茶を持って来てくれることに。

 

紫苑「リムル様!お茶をお持ちしま…………あ!」

火煉「レイト様。お茶をお持ちしました。」

レイト「ありがとう。…………あ。」

 

 俺は、火煉が淹れてくれたお茶を飲む中、紫苑が入れたお茶という名の劇物は宙を飛び、リムルにかかる。

 

紫苑「すいません……………。」

リムル「大丈夫。失敗くらい誰にでもあるさ。…………毎日だけどな。そして、君が淹れたこのお茶も、お茶じゃなくて劇物だけどね。」

火煉「お茶が……………。」

レイト「何があったら、そうなるんだよ……………。」

 

 俺は、リムルの為にタオルを持って来た。

 俺が渡したタオルで自分の体を拭きながらリムルは言った。

 

リムル「いや、しかし。本当に有能な秘書だよ、紫苑君は。パーフェクトだ。動かなければ!見た目だけは!」

レイト「おい…………!」

火煉「大丈夫だと思いますよ。」

紫苑「ハッ…………!」

 

 リムルの皮肉たっぷりな発言に、紫苑はお盆を落とす。

 流石に言い過ぎだと思い、咎めようとしたら、火煉はそう言う。

 

紫苑「リ…………リムル様…………。そ…………そんな…………お褒めに預かり、光栄です!」

 

 紫苑は、そう言った。

 なるほどな。

 今のは、紫苑からしたら、褒め言葉に聞こえてたのか。

 その後、俺とリムルは、紅丸達がいる警備員の居る建物に向かう。

 すると。

 

警備員「何も、紅丸様がお出にならずとも…………。」

紅丸「良いのさ。まっ、行ってくる。」

 

 そんな会話をして、紅丸が外へと出てくる。

 俺とリムルは、紅丸に話しかける。

 

リムル「何だよ。総大将自ら見回りか?」

レイト「大変じゃないのか?」

紅丸「俺には、これしか能が無いんで。その代わり、誰にも負けませんよ。この街と、リムル様とレイト様の笑顔、必ず守ってみせます。」

 

 紅丸は、爽やかな笑顔でそう言う。

 かっこいいな。

 女の子だったら、迷わず惚れそうだな。

 

リムル「あいつめ…………殺し文句をナチュラルに……………。これだから、イケメンは。」

レイト「そっか…………。頑張れよ。」

紅丸「はい。では。」

 

 そう言って、紅丸は出ていく。

 すると、数秒後に。

 

紅丸「すみません!今そこで女の子に渡されたんですが、これ、どうしたら良いでしょうか!?」

 

 そう言って、紅丸が戻ってくる。

 外には、ゴブリナが三人いた。

 それを聞いた俺たちは。

 

リムル「ほぉ…………。」

レイト「なるほどな…………。」

 

 そう言って、ニヤリと笑みを浮かべると。

 

「「そいつは難儀だなぁ!」」

 

 良い笑顔で言う。

 それを見た紅丸は。

 

紅丸「……………すげぇ、良い笑顔ですね。」

レイト「相談乗るよ。」

ゴブリナ「紅丸様〜!こっち向いて〜!」

 

 俺がそう言う中、ゴブリナがそう言う。

 今度は、ゴブタやリグル達がいる場所に向かう。

 

ゴブチ「何か人増えたよな。」

ゴブト「ああ。森中の魔物が集まって来てんだよ。」

ゴブチ「お!あれ、何て種族?」

ゴブト「あ?どれどれ?…………うおー!」

 

 ゴブチとゴブトは、そう話す。

 まあ、色んな種族の交流が増えるのは、いい事だと思うよ。

 すると、ゴブチとゴブト、ゴブゾウは、花を持っているゴブリナを見ていた。

 見惚れているな。

 

ゴブチ「今度、可愛い子居たらさ。」

ゴブト「うん。」

ゴブチ「街の案内するって言ってさ。」

ゴブト「うんうん。」

ゴブチ「ナンパ!」

ゴブト「出会い!」

「「それだ〜!!」」

 

 そう言って、ゴブチとゴブトは興奮する。

 それを見ていたリグルは。

 

リグル「……………おい、お前ら。自警団だって事、忘れるなよ。」

 

 リグルは、二人にそう注意する。

 すると、ゴブタが口を開く。

 

ゴブタ「そうっすよ。」

「「「うん?」」」

 

 ゴブタがそう言うと、リグル、ゴブチ、ゴブトがゴブタの方を向く。

 

ゴブタ「自分達の行動一つで、街の印象が決まるんすからね。浮ついていると、手痛いしっぺ返しを食らうっすよ。」

リムル「お!自覚が出て来たね、ゴブタ君。」

レイト「少しは成長したみたいだな。」

ゴブタ「へっへへ…………。人は学び…………成長するんすよ!」

 

 俺とリムルが感心しながらそう言う。

 ゴブタは、そう言って、俺たちの方を向くが、左頬が赤く腫れ、手形が付いていた。

 多分、ナンパして、叩かれたんだろうな。

 それを見た俺とリムルは。

 

レイト「ああ……………。」

リムル「成長……………しような。」

 

 ゴブタにそう声をかける。

 今度は、黒兵衛の工房に向かう。

 

リムル「お〜い、黒兵衛。」

黒兵衛「あ…………おお、リムル様とレイト様じゃねえべか。」

 

 リムルがそう言いながら中に入ると、黒兵衛が俺たちに気づいて、そう声をかける。

 

レイト「何してたんだ?」

黒兵衛「朱菜様から頼まれた包丁を鍛えてたんだべ。」

リムル「おお〜。」

 

 なるほどな。

 リムルがその包丁を持っていると、黒兵衛が取る。

 

黒兵衛「丁度、これから仕上げだべよ。」

リムル「そっか。悪い、邪魔しちゃったな。」

レイト「また来るよ。」

 

 俺とリムルはそう言って、黒兵衛の工房を後にする。

 それを見ていた黒兵衛は思う。

 黒兵衛は、豚頭族(オーク)によって、大鬼族(オーガ)の里を滅ぼされ、里から離れた時、もう鉄を打てないと思った。

 黒兵衛には、紅丸達のような力や頭もない。

 

黒兵衛「…………だけんど、まだ鉄を打てる。リムル様とレイト様の為。街の皆の為。おら自身の為。……………目の前の、何でもない鉄の塊に、何でもないおらの全てを込めるだけだべ!」

 

 黒兵衛は、そう言いながら、朱菜の包丁を鍛える。

 しばらくして、作業を終えて、ハルナに包丁を渡す。

 

ハルナ「朱菜様。黒兵衛様からお届け物です。」

朱菜「まあ!包丁!もう出来たのですね!」

 

 朱菜は、ハルナから包丁を受け取り、早速使う。

 

朱菜「では、早速…………。」

 

 朱菜がそう言いながら、玉ねぎを切ろうとすると、玉ねぎだけでなく、まな板や壁をも切ってしまう。

 それを見ていたハルナは。

 

ハルナ「朱菜様すっごい……………。」

 

 そう言いながら驚き、ゴブイチや朱菜が唖然となる。

 一方、そんなことを知らない黒兵衛は。

 

黒兵衛「ふう〜。包丁、気に入ってくれたべか?」

 

 汗を拭いながらそう言う。

 一方、蒼影の所では。

 

蒼影「今日の鍛錬はここまでだ。持ち場に戻れ。」

部下達「はっ!」

 

 蒼影がそう言うと、部下達は持ち場に戻る。

 蒼影を木の影から見ている蒼華は。

 

蒼華「蒼影様…………。」

蒼月「何をしているんだい?……………なるほどね。」

 

 蒼華が蒼影を見ていると、蒼影の目の前に一匹の黒猫が現れる。

 蒼影は、黒猫をじっと見ると、黒猫のおでこをつつく。

 

蒼影「……………お前は今死んだ。フッ、バカめ。」

 

 蒼影は、黒い笑みを浮かべながらそう言う。

 それを見ていた蒼華は。

 

蒼華「あっ…………やだ……………素敵。」

 

 腰を振りながらそう言う。

 それを見ていた俺たちは。

 

リムル「君も大概だね。」

レイト「確かにな。」

蒼月「あはははは……………。」

 

 俺とリムルがそう言って、蒼月は苦笑を浮かべる。

 俺たちは、次にヴェルドラと出会った封印の洞窟へと向かう。

 そこは、現在、水辺を好む蜥蜴人族(リザードマン)達の住居兼貴重な回復薬の原料であるヒポクテ草の栽培地となっていた。

 すると、ガビルの叫び声が聞こえる。

 

ガビル「な〜んだ、その動きは!そんな様をリムル様とレイト様にお見せする気か!!」

スケロウ「はぁ…………申し訳ありません!ガビル様!!」

ガビル「大恩あるリムル様とレイト様に認めていただく為、我々は立ち止まらぬのだ!」

部下達「ガビル様!もう一度!もう一度挑戦させて下さい!」

 

 ガビルとその部下達は、そんなふうに話していた。

 それを見ていた俺とリムルは。

 

リムル「あいつら、意外と生真面目な連中なんだな。」

レイト「確かにな。」

ガビル「よかろう!基本から行くぞ!」

 

 俺たちがそう見てると、何かを始める。

 

部下達「さんはい!ジュラの森の!」

カクシン「奥深く。」

ヤシチ「あっ、よいしょ!」

部下達「みんなが焦がれる、その姿!」

カクシン「然り!」

スケロウ「強く!」

カクシン「清しく!」

ヤシチ「美しい!」

部下達「光り輝く、一番星!」

ガビル「男の子なら、恥をかいても、誇りを……………欠くなよ!ぬあ〜っハッハッハッハッハッハッ!!」

部下達「嗚呼ガビル様、ガビル様!龍人族(ドラゴニュート)の希望……………!」

 

 え、何これ?

 こんな下らない事を一生懸命練習しているのか?

 そんな風にドン引きしている中、ガビルは叫ぶ。

 

ガビル「ん〜…………!ストーップ!愚か者!そこは…………『ああ〜リムル様とレイト様!大同盟の希望〜!』……………に変えろと言ったではないか!全く!貴様らはまだまだ愛が足らん!愛を持って、ヒポクテ草を育てるのだ!」

部下達「はい!ガビル様!!」

 

 俺とリムルが、そんなやり取りを呆れた目で見ていると。

 

蒼華「すいません!すいません!すいません!」

蒼月「あんなのですが、悪い人じゃないんですよ〜!!」

 

 妹と幼馴染が、俺たちに頭を下げる。

 その後、俺たちは戻り、仕事を再開する。

 

リムル「ふぅ〜。」

レイト「ところで、新区画の建設状況は、どうなってるんだ?」

紫苑「先ほど、資料を頂きました。」

火煉「こちらです。」

 

 そう言って、資料を渡してくる。

 

リムル「どうした!火煉はともかく、急に本物の秘書っぽいぞ、紫苑!」

紫苑「え〜そんな…………!」

レイト「ありがとう。助かるよ。」

火煉「この調子で、頑張っていきます。」

 

 俺とリムル、火煉と紫苑がそんな会話をする中、リムルの影の中の嵐牙は。

 

嵐牙「フ〜ハ〜…………フ〜ハ〜…………。」

 

 息を荒くしていた。

 どうやら、特訓をしているようだ。

 目を閉じて瞑想すると、嵐牙は目を開き、雷を発射する。

 発射された雷は、爆発する。

 

嵐牙「おお!これは…………!ウォーっ!」

 

 嵐牙は、爆風に耐えて、体を揺らす。

 

嵐牙「ぶるるるるるるる!この力!主達に見せて撫でてもらおう!」

 

 そう思い、嵐牙は木の影から出てくる。

 

嵐牙「主達よ!見て下さい!何やら、凄い技を……………!」

 

 嵐牙は、俺たちに撫でてもらおうとしたのか、出てくる。

 だが、その言葉は、途中で止まる。

 何故なら、目の前には、崩れた建物があり、そこから、俺たちが出てくる。

 

「「知ってる……………。」」

 

 というより、建物を壊すなよ!

 俺たちの近くで、ゴブタが柱に引っかかっていたが、倒れる。

 その後、白老の元に、ゴブタと共に向かう。

 俺たちは、盆栽を見ていた。

 

リムル「う〜ん。良いねぇ…………。」

ゴブタ「何すか?このちっちゃい木?」

レイト「盆栽って言うんだ。」

白老「リムル様とレイト様より教えて頂いたものじゃ。」

 

 ゴブタの質問に、俺と白老が答える。

 ゴブタは、盆栽の一つを持つ。

 

ゴブタ「よっ。ほっ。そっ。すっ。」

リムル「ああ…………落とすなよ〜。」

 

 ゴブタは、その盆栽を手や足に置くので、リムルはそう言う。

 白老が口を開く。

 

白老「…………剣士として生まれ、剣と共に生きて数百年。……………しかし、こうして剣を忘れる事で、新たな世界が見えてくるとは…………まさに、目から鱗ですじゃ。」

レイト「そう言ってもらえて嬉しいよ。」

ゴブタ「そうしてると、ただの枯れたジジイっすね……………。そろそろ引退した方が…………。」

 

 白老がそう言う中、ゴブタがそう言う。

 すると、白老は剣を抜刀して、盆栽とゴブタの髪を一部切り飛ばす。

 

ゴブタ「あ……………。」

 

 ゴブタが汗を垂れ流す中、俺たちはそそくさと後にして、白老は言う。

 

白老「剪定じゃ。動くな。」

ゴブタ「全然、剣忘れてないっす!」

 

 そんな会話を聞きながら、俺たちは移動する。

 次は、寺子屋へと向かう。

 ここは、街の子ども達が通っている。

 ある教室を覗くと、リリナが子ども達に字を教えていた。

 それを見ていると、リグルドが声をかける。

 

リグルド「リムル様、レイト様。」

リムル「あっ。」

レイト「どうしたんだ?」

リグルド「見て下さい。生徒の描いた尊敬する人の顔が、リムル様ばかりですぞ。」

レイト「あれ?俺は?」

リグルド「あ…………も、勿論、レイト様もいらっしゃいますよ!」

リムル「え?俺を?」

リグルド「ハッハッハッ…………。羨ましいですなあ。まあ、ご覧下さい。」

 

 そう言って、その絵が描かれている木の板を受け取る。

 

リムル「何だよ、照れ臭い。」

レイト「どれどれ…………?」

 

 俺たちがそれらを見ると、リムルの割合が多かった。

 ただし、スライムの状態のリムルばかりが。

 俺の絵もあったが、ごく少数だ。

 

リグルド「ヤッハハハ…………!この子など、リムル様の威厳をよく表現していて…………。」

リムル「力作揃いだね。」

レイト「単にスライムとしての状態の方が、描くのが楽だからだろ。」

 

 そう。

 スライムの状態のリムルなら、丸を描いて、目を描くだけで完成だからな。

 なんか、涙が出てくるよな……………。

 すると、子供達が出てくる。

 

子供「あっ!リムル様ー!レイト様ー!」

リムル「またなー。」

子供「帰っちゃうの?」

レイト「ちゃんと勉強しろよな〜。」

 

 子供達が声をかける中、俺たちはそう言って、その場を後にする。

 リグルドが、子供達の絵を持って、移動する中、リムルは唸っていた。

 

リムル「う〜ん……………。」

レイト「どうした、リムル?」

リムル「なあ、この辺って、俺以外にスライム居ないの?」

リグルド「今時分は、あまり見かけませんな。」

リムル「今時分ねえ…………。」

 

 まあ、確かに、リムル以外のスライムって、見た事ないよな。

 すると、目の前に居た朱菜、ハルナ、黒衛兵、白老、ゴブタに話しかける。

 

リムル「お〜い、お前ら〜。俺以外のスライムって、見た事ある?」

白老「ふむ…………。暑くなると見るかのう。」

黒衛兵「夏が近いって感じるべ。」

朱菜「透き通った姿が涼しげで、ジュラの夏の風物詩ですね。」

リムル「ほお〜。」

レイト「へぇ……………。」

 

 まあ、透き通ってるから、夏の風物詩と言われても、納得がいくな。

 すると、ゴブタがリムルにとって、聞き捨てならない事を言う。

 

ゴブタ「そうそう!冷やして食うと、美味いんすよ!こう…………ツルッと!」

リムル「へぇ……………。」

レイト「………………。」

 

 あ、食われてるんだな。

 ゴブタがそう言うと、周囲の人たちは、やばい笑みを浮かべる。

 

朱菜「あら〜。良いですわねぇ…………。」

リグルド「いやぁ………珍味、珍味。」

 

 朱菜とリグルドがそう言うと、その場にいる全員が、不気味な笑い声を出す。

 リムルが不安そうに俺を見る。

 先ほどの恨みも込めて、俺は言う。

 

レイト「……………スライムって、ところてんみたいな感じなのかな………………。」

 

 俺がそう言うと、リムルはその場から逃走する。

 

レイト「リムル〜。どこ行ったんだ?」

朱菜「リムル様〜。何処ですか〜?」

ゴブタ「リムル様ー!」

黒衛兵「何処行ったべさ〜!」

リグルド「冗談でありますよー!」

 

 まあ、リムルからしたら、冗談では済まないのだが。

 俺は、リムルに仕返しが出来たことに少し喜びながら、リムルを探す。

 その後、朱菜達の作業場へと向かう。

 

ガルム「朱菜ちゃん!」

朱菜「あ…………。」

ガルム「これは何処に運ぶ?」

朱菜「ありがとうございます!裁断するので、机の方にお願いします。」

カイジン「朱菜ちゃん、ちょっと良いかな?」

朱菜「あっ、は〜い!すぐ伺いますね。………ゴブイチ、ごめんなさい。今日の夕食の仕込み、お願い出来る?」

 

 朱菜は、皆に頼られていた。

 俺とリムルは、人間態になり、紅丸に話しかける。

 

リムル「皆、朱菜を頼りにしてる。」

レイト「随分頼もしくなったよな。」

紅丸「役職を貰って、張り切ってるんですよ。自慢の妹なんですが、なんだかんだ、遠い存在になっていく気がします。」

リムル「おいおい。無敵の侍大将が何言ってんだ。」

レイト「まあ、一理あるかな。あの時だって。」

 

 俺は、ある時の事を思い出していた。

 それは、戦闘訓練をしていた時だ。

 

紅丸「良いか。集団での戦闘は、相手との距離が……………。」

朱菜「お兄様ー!お兄様はいらっしゃるの?」

紅丸「グッ…………!」

 

 紅丸がリグル達にそう話す中、朱菜が紅丸の物と思わしきパンツを持ちながら現れる。

 

朱菜「もう!お兄様!何度言えば分かるんです!脱いだら脱ぎっぱなしにしない事!それから、部屋も散らかしっぱなしでしたよ!寝床の下の物は、きちんと片付けておきました。あと、ほら〜!」

 

 朱菜がそう言う中、朱菜はタオルを出して、紅丸の顔を拭く。

 

朱菜「目ヤニついてて汚い!夕暮れまでには帰ってきて下さいね!お夕食、準備してますから。」

 

 そう言って、朱菜は去っていく。

 それを思い出した紅丸は、言う。

 

紅丸「……………遠い存在っていうか、母ちゃん的存在になっていく気が……………。」

リムル「あ〜。母ちゃんには敵わないな、侍大将。」

レイト「そうだな。」

 

 俺たちはそう話す。

 すると、朱菜がこちらにやって来る。

 

朱菜「お兄様〜!男前な服が〜!」

 

 そう言って、朱菜は服を見せて来る。

 それを見て、俺たちは苦笑を浮かべる。

 

「「アッハハハ……………。」」

朱菜「黒もありますよ!」

 

 朱菜がそう言う中、紅丸は視線を逸らす。

 その後、俺たちは帰る事にした。

 

朱菜「もう夕暮れですね。」

リムル「あいつら、働きすぎてないかな?」

レイト「まあ、少し心配になるよな。」

紅丸「ああ…………あの二人、真面目ですからね。」

リムル「俺たち、ちょっと見に行ってから帰るよ!行くぞ、レイト!」

レイト「ああ。」

朱菜「行ってらっしゃい。お気をつけて。」

 

 俺たちは、ゲルドとグルドの所に向かう。

 遡る事、朝ごろには、ゲルドやグルドを中心として、大工仕事をしていた。

 

ゲルド「まずは、こちらから…………。」

ミルド「ええ。」

グルド「今日は、ここまでですね。」

ミルド「うんうん。」

ゲルド「夕方までに仕上げるぞ!」

猪人族「おう!」

グルド「今日中には基礎工事は完成させたい!そっちはお願いします!」

猪人族「お任せを!」

ゴブリン達「仕上げてみせます!」

 

 ゲルドとグルドが、ミルドと相談して、二人が周囲の人たちにそう指示を出す。

 猪人族が、荷物を荷台に括り付ける。

 その荷台は、狼達が運ぶ。

 

ゲルド「準備が整い次第、新区画に運ぶぞ!」

ウルフ「ワフ!」

グルド「ここは大丈夫そうですから、隣の区画のフォローに行きますよ!」

猪人族「おう!」

 

 ゲルドとグルドも移動しようとする。

 すると、ゲルドの視線に折れたたんぽぽが目に入る。

 

ゲルド「うん?……………グルド。先に行って、指揮を頼む。」

グルド「分かりました。」

 

 グルドは、先に行く。

 ゲルドは、折れてしまったたんぽぽを補強する。

 そうして、今日の作業を終える。

 俺とリムルは、ゲルドとグルドに話しかける。

 

リムル「だからさあ、働きすぎだって。」

レイト「たまには、仕事以外にも目を向けたらどうだ?」

ゲルド「我ら一族を受け入れて下さった、リムル様とレイト様の為にも……………。」

リムル「俺たちの事は良いからさあ…………。」

グルド「……………出来る限りは、善処します。」

 

 そう言って、俺たちは工事現場から後にする。

 その夜、俺たちはスナックに向かう。

 

トレイニー「まあ!皆さんがそんなに頑張っているなら、街の完成ももうすくですね。」

シズ「そうだね。」

リムル「まあね。」

レイト「でもまあ、もっと皆には、自由に生きて欲しいんだよな。」

リムル「そうだな。俺たち自身がそうだし。なのに、二言目には、リムル様とレイト様の為。リムル様とレイト様の為って……………。」

トレイニー「あらあら……………贅沢な悩みですね。ウフフフフフ……………。」

 

 トレイニーさんは笑いながらそう言って、グラスに飲み物を注ぐ。

 シズさんは、バイスタンプの状態で、テーブルに置かれている。

 すると、シズさんが言う。

 

シズ「皆、恩返しがしたいんじゃないかな?スライムさんとキメラ君に。」

レイト「俺たちに?」

トレイニー「そうですね。道を示してくれるから。居場所を作ってくれたから。それは無邪気に。不器用に。」

リムル「居場所…………ねぇ……………。」

 

 俺たちは考える。

 俺たちは、これからも、あいつらの居場所で居続けられるのか。

 まあ、それはそれとして。

 

リムル「……………で?トレイニーさんはここで何を?」

レイト「森の管理はどうしたんですか?」

トレイニー「ウフフフフフ…………。はい。ぶどうジュースお代わりね。ポテチもありますよ。」

シズ「アハハハ……………。」

 

 俺とリムルの質問に、トレイニーさんはそう誤魔化して、シズさんは苦笑を浮かべる。

 次の日の早朝、俺たちは近くの丘から、街を眺める。

 

リムル「行くか!」

レイト「だな。」

嵐牙「はい!我が主たちよ!」

 

 俺たちは、嵐牙の背中に乗り、街へと戻る。

 すると、ゴブリン達が声をかけて来る。

 

ゴブリン「あっ!リムル様!レイト様!」

ゴブリン「リムル様!レイト様!」

ゴブリン「あっ!リムル様!レイト様だ!」

ゴブリン「おはようございます!」

ゴブリン「今日もいい天気ですなぁ!」

ゴブリン「おはよう!リムル様!レイト様!」

リムル「おはよう!」

レイト「おはようさん!」

 

 俺たちは、挨拶をしてくるゴブリン達にそう返して、とある建物の前で、嵐牙を止める。

 

リムル「とうとう完成だな!」

レイト「凄いな!」

嵐牙「ええ!我らの新しき議事堂です!」

 

 新しい議事堂が完成したのだ。

 俺たちが嵐牙から降りてくると、リグルドが話しかけてくる。

 

リグルド「おはようございます!リムル様、レイト様。今度の宴の準備はいかが致しましょう?」

レイト「宴?」

リムル「何かあったっけ?」

リグルド「ぬわっ…………ハッハッハ。お忘れですかな?我々ゴブリンとの出会い、500日目記念ですよ。」

 

 めんどい彼女か!

 細かいよな。

 すると、嵐牙も声を出し、周囲に人たちが集まってくる。

 

嵐牙「ならば!我らとの出会いの記念も!」

カイジン「旦那方。竣工祝いはやんねえとな。」

ゴブタ「宴なら何でもアリっす!」

紫苑「大鬼族(オーガ)の名付け記念も…………。」

火煉「お忘れなく。」

ガビル「我輩達もぜひお仲間に!」

朱菜「宴ですね!」

 

 すると、皆が、俺とリムルを胴上げしてくる。

 

一同「宴!フォー!宴!フォー!」

リムル「うう……………分かった、分かった!」

レイト「やるから!全部やるからな!」

 

 皆に対して、俺たちはそう言う。

 出会いの数だけ、賑やかになる。

 今日は、どんな日になるのかな。

 こんな風に、これまでのテンペストでの日常を綴っていく。




今回はここまでです。
これが、『転生したらキメラだった件』での日常です。
このシリーズは、日常を綴っていきます。
本家転スラ日記みたいに、本筋のストーリーとは少し矛盾点がありますが、ご了承下さい。
転キメ日記に関しては、本筋のストーリー以上に不定期となります。
こちらの方も、応援よろしくお願いします。
本筋のストーリーも、頑張っていきます。
ファルムス王国戦で、若干鬱展開になっていきますが。
これからも応援の程、よろしくお願いします。
感想、リクエストは、絶賛受け付けています。
今日から、ギーツで、デザイアドライバーの本体単品や、CSM基準のデザイアドライバーのベルト帯が予約開始しましたね。
欲しいですね。


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第2日記 春の空気と

 豚頭帝(オークロード)戦から暫くが経った。

 目の回るような忙しさだったが、皆のおかげで、ひと段落する事ができた。

 俺は火煉に、リムルは紫苑に尋ねる。

 

リムル「で、俺の今日の予定は?」

レイト「俺の予定はどうなってるんだ?」

紫苑「本日は、特に急ぎの予定はありません。」

火煉「レイト様も、急ぎの予定はありません。」

リムル「おお!良いねぇ!」

リグルド「たまには、ゆっくりお休みください。」

レイト「確かに……………休暇とか無かったからな。たまにはのんびり羽を伸ばすか。」

リムル「よ〜し!仕事の事なんかぜ〜んぶ忘れて、ダラダラするぞ〜!」

リグルド「ハハハハハ!どうぞ、気が済むまで。」

 

 そうして、俺とリムルは休む事にした。

 とはいえ、豚頭帝戦にて、キメラドライバーを使ったので、それのメンテナンスも行う必要がある。

 無論、蒼月とグルドのデモンズドライバーに、火煉のベイルドライバーもだ。

 3人からドライバーを預かり、キメラドライバーも合わせて、メンテナンスを行う。

 四つのドライバーのメンテナンスを終えて、俺はのんびりする。

 だが……………これまで、仕事がたくさんあったのに、急に休んで良いと言われると、妙に落ち着かないな。

 すると、リムルが入ってくる。

 

リムル「なあ……………なんかない?」

レイト「ん?」

 

 どうやら、リムルも同じ考えに至ったそうだ。

 その後、俺たちはゴブタと会い、話をする事に。

 

ゴブタ「………………で、結局、リムル様は仕事場に戻ったんすか?」

リムル「何もしなくて良いって言われると、ソワソワしちゃってさ。」

レイト「確かに。これまで、仕事が多かったからな。」

 

 俺とリムルがそう言うと、ゴブタが口を開く。

 

ゴブタ「た〜っ!折角の休み、楽しまないとダメっす!」

リムル「お………………おう。」

ゴブタ「最近は、面白い店も増えたんすよ。」

レイト「へぇ。」

ゴブタ「頼れる自分が案内するっす。」

 

 こうして、ゴブタの案内の元、俺たちは暇を潰す事にした。

 ゴブイチの店に寄り、焼き串を食べる。

 

ゴブイチ「へい、お待ち。」

 

 ゴブイチに金を払って、俺たちは焼き串を食べる。

 ちなみに、俺とリムルは、フルーツの盛り合わせを持っている。

 

ゴブタ「どうっすか?この辺の屋台、美味いっすよね。」

リムル「んもう〜。」

レイト「美味いな。」

ゴブタ「あっちには!土産物屋もあるっすよ。」

レイト「へぇ……………。」

ゴブタ「ここだけの話、早くお姉ちゃんの店とかも欲しいっすねえ。」

リムル「お〜お〜!」

 

 いや、その店は、どうだろう……………。

 朱菜や紫苑にキレられて、終わりな気がするな。

 というより、リムルには、シズさんという運命の人が居るんだから、あんまりそういう事はしない方が良いんじゃ……………。

 すると、後ろからリグルの声が聞こえてくる。

 

リグル「あいつ、どこ行った?」

ゴブタ「お……………?ハッ!?」

 

 後ろを向くと、リグルと白老が誰かを探していた。

 それで、ゴブタのこの反応。

 どうやら、サボりの様だな。

 すると、ゴブタが叫ぶ。

 

ゴブタ「やばい!リグル隊長と師匠っす!」

リムル「おおお〜!?」

レイト「おい待て!」

 

 ゴブタが走り出したのを見て、俺とリムルも追いかける。

 ちなみに、リムルは果物を落としたが、俺は落とさずに追いかける。

 それで、ある建物の陰に隠れる。

 

ゴブタ「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……………。」

白老「気のせいかのう?」

リグル「上手く撒かれましたね。」

ゴブタ「フ……………いやあ、休日を楽しむのも、一苦労っすね。」

リムル「いや。」

レイト「お前、さてはサボりだな?」

 

 ゴブタがそう言う中、俺とリムルはそう突っ込む。

 その後、俺はゴブタをリグルと白老の元に連れて行った。

 そして、ゴブタは俺に対して『裏切り者ォォォォォッ!?』と叫びながら、リグルと白老に連行されて行った。

 ていうか、サボってる奴が言うな。

 一方、紅丸は、玄関の方で刀の手入れをしていた。

 朱菜は、紅丸に話しかける。

 

朱菜「あら?お兄様、今日は控えの日なんですか?なら……………。」

紅丸「いや。例え休日でも、心身の鍛錬と武具の手入れは欠かせない物だ。穏やかな日だからこそ、守りの剣は磨かれなければならない。リムル様やレイト様、お前や街の皆の為にな。」

 

 紅丸はそう言う。

 すると、鹿おどしの音が響く。

 

朱菜(お兄様……………。)

 

 朱菜がそう思う中、紅丸は刀を納刀する。

 朱菜は、紅丸の背中を摩り、頬を紅丸の背中にくっつける。

 すると。

 

朱菜「でも……………!」

紅丸「おっ!?」

 

 朱菜は紅丸を立たせて、外に出す。

 

朱菜「お掃除しますので、外でやってくださいね。」

紅丸「……………………。」

 

 朱菜はそう言いながら扉を閉めて、紅丸は呆気に取られる。

 一方、俺たちは、ゲルドとグルドの元に向かっていた。

 目的は、グルドにデモンズドライバーを渡す為だ。

 どうやら、ゲルドとグルドも、休みを貰ったそうだ。

 

リムル「何だかんだ、俺たちも仕事中毒だったみたいでさ。」

レイト「ああ。ゲルドとグルドの事、言えないよな。」

ゲルド「リムル様とレイト様は、何事も楽しんでおられますから。う〜ん……………。」

リムル「うん?」

グルド「俺たちは、ただ無心に働く事のみで……………。」

ゲルド「グルドの言う通りだな。いざ、休みを頂いても戸惑うだけでして……………。何も手につかず、街の皆から浮いてしまっている感じで……………。」

レイト「ん………………。」

 

 ゲルドとグルドがそう言う中、ゲルドとグルドの周囲には、ホブゴブリンの子供達が集まっていた。

 

リムル「子供…………好きなのか?」

ゲルド「いや……………ああ………………その……………。」

 

 リムルの質問に、ゲルドがどう答えようかと悩む中、ゲルドによじ登ろうとしていた子供が落ちる。

 すると、ゲルドはキャッチする。

 

ココブ「うっ…………ああっ!」

ゲルド「おっと。危ないぞ。」

ココブ「アッハハ!アハハハハ…………!」

グルド「好きと言うよりは……………俺とゲルド様が座っていると、なぜかこうなるんですが……………。」

レイト「慕われてるね。」

 

 なるほどな。

 一方、蒼月は俺のメンテナンスしたデモンズドライバーを受け取った後、蒼華達と合流して、蒼影の指示を受けていた。

 

蒼影「いざという時、動けないのでは意味がない。休める時に、交代で休みを取る様に。」

一同「ハッ!」

 

 蒼影の指示を聞いて、蒼月達は休む事に。

 無論、交代で。

 そんな中、蒼月は蒼華に話しかける。

 

蒼華「はぁ………………。」

蒼月「どうしたんだい?」

蒼華「蒼月か。蒼影様は、ああ仰っているのに、蒼影様自身は、決して休まれない。このままでは、お体を壊しそうで……………。」

蒼月「ああ……………蒼影様なら大丈夫だよ。ほら。」

 

 蒼華がそう言う中、蒼月は後ろの方を指差す。

 そこには、蒼影がもう一人いた。

 分身を使って、休んでいたそうだ。

 

蒼華「交代で……………!?」

蒼月「みたいだね。」

 

 蒼華が驚く中、蒼月はそう言う。

 一方、俺たちは、執務室に向かっていた。

 リムルが分身などをして、朱菜に気づかれるかどうかという感じのをやって、朱菜に気づかれた直後、ドアがノックされる。

 

リリナ「失礼します。」

リムル「おっ!リリナさん、珍しいね。」

 

 そう言って入ってきたのは、リリナ。

 俺とリムルがドワルゴンから帰ってくるまでの間に、やって来た、ゴブリンの村のリーダーの一人であり、リグルドとは旧知の仲だそうだ。

 

レイト「どうしたんですか?」

リリナ「季節柄、畑の準備の頃合いですが、如何しましょう?」

レイト「おお。」

リムル「それだ!早速、明日の朝、皆を集めてくれ!」

リリナ「はい!それでは、皆に声を掛けますね。」

レイト「頼む。」

 

 そう言って、リリナは執務室を後にする。

 畑か………………。

 そういうのも、アリかもな。

 そう思う中、リムルは俺に話しかけてくる。

 

リムル「レイト。」

レイト「うん?」

リムル「折角だし、シズさんも連れて行くか?」

レイト「だな。」

 

 俺たちは、シズさんも連れて行く事にした。

 畑作をやる理由は、人口増加に伴う、街の自給率向上の為だ。

 ちなみに、シズさんの魂が入ったバイスタンプは、俺が携帯する事に。

 

リムル「古来より、飯の美味い土地は、良い土地だと言う。うちもぜひそうありたい。」

レイト「という訳で、今日は皆も力を貸して欲しい。」

一同「分かりました!」

 

 俺たちがそう言うと、皆が返事を返す。

 そして、話し出す。

 

村人「街で売ってる様な野菜も、俺たちで作れるのかなあ。」

少年「お手伝い楽しそう!」

村人「いっちょ皆で頑張ろうぜ!」

白老「腹が減っては何とやらと言いますからな。」

ゲルド「子供達を、飢えさせたくはないですな。」

グルド「確かに。」

リムル「そうだろ、そうだろ!アッハハハハ〜!」

 

 皆がそう話して、リムルは笑う。

 すると。

 

紫苑「分かります!美味しい物を、食べたいですよね!」

レイト「よし!植え付け開始だ!」

一同「お〜!」

シズ「アハハハハ………………。」

 

 紫苑が鍋を持ちながらそう言うので、俺はそう叫ぶ。

 それを聞いて、シズさんは苦笑する。

 シズさんも、紫苑の料理は恐ろしく感じたそうで、曰く。

 

シズ「………………料理を見て、命の危険を感じたのは、初めてかも。」

 

 との事だ。

 シズさんは、戦時中の日本から来たという事もあり、食べれる物は食べれる時に食べておくという主義だが、流石に紫苑の料理は無理だそうだ。

 俺たちが分担を決めてる中、ゴブタ達は。

 

ゴブタ「オイラ達もいっちょやるっす!」

 

 ゴブタ達は、畑を耕し始める。

 そんな中、ゴブトとゴブツが話し始める。

 

ゴブト「だりーよなぁ……………。」

ゴブタ「だよなぁ。」

ゴブト「は〜……………サボりてえ。」

ゴブゾウ「おらは結構面白いだす。」

ゴブツ「た〜!つまんねえ事言ってるし。」

ゴブト「お〜い、ゴブタ、聞いてんのか〜?」

 

 ゴブトがそう言いながらゴブタに話しかけるが、ゴブタは横には居らず、木陰でサボっていた。

 

ゴブツ「って、あ〜!あいつ、やってるふりしてサボってやがる!」

ゴブト「ゴブタ!何サボってんだよ!」

 

 それを見たゴブトとゴブツは、ゴブタに近寄りながらそう言うが、ゴブタは口を開く。

 

ゴブタ「違うっすよ。瞑想の修行をしてたんすよ。」

ゴブト「瞑想!」

ゴブツ「そうか!瞑想!」

 

 そう言って、ゴブトとゴブツもサボる。

 ゴブゾウが一人で畑を耕す中、黒兵衛がやって来る。

 

黒兵衛「お〜い!ゴブタ君!」

ゴブタ「うわっ……………黒兵衛さん!」

 

 黒兵衛が声を掛けた事に驚いて、起き上がるゴブタ。

 

黒兵衛「リムル様とレイト様から頼まれていた物が出来ただよ。」

ゴブタ「マジっすか!やったー!待ち侘びたっすよ!」

 

 黒兵衛が言う物とは、以前、ガビルがやって来た際に、ゴブタがガビルを倒した事で、ご褒美として作らせたのだ。

 

ゴブタ「あん時のすっね!いやぁ死ぬかと思ったっすよ。」

黒兵衛「フッ……………ゴブタ君。そいつは一振りで大地を砕き切り裂く…………オラの会心の業物だべ。」

ゴブタ「す……………すげえっす!これさえあれば、まさに鬼に金棒………………金棒………………っす?」

 

 ゴブタがそれの布を取ると、そこにあったのは、金棒ではなく、鍬だった。

 

ゴブタ「うおおおおおおお!」

 

 ゴブタがその鍬を使って、畑を耕すと、凄い速度で耕されて行く。

 

ゴブト「すげえぞ、ゴブタ!」

ゴブツ「硬い地面があっという間に!」

ゴブト「耕されて、耕されて!」

「「まるで鍬が体の一部みてえだ!」」

 

 ゴブトとゴブツは、それを見て、ゴブタを褒める。

 だが、当のゴブタは。

 

ゴブタ「うぉぉぉん!自分には、これがお似合いって事っすかーーーっ!」

 

 そんな風に泣いていた。

 それを見ていた俺たちに、黒兵衛が話しかける。

 

黒兵衛「なんか、間違ってただか?」

リムル「………………。」

レイト「渡すタイミングと、言い方を間違えたな……………。」

シズ「アハハハハ…………………。」

 

 まあ、大地を砕き切り裂くのは、間違ってないな。

 シズさんも、それを見て苦笑する。

 一方、紫苑と火煉は、沢山の大豆を前にして、見ていた。

 

紫苑「何ですか?この豆。」

火煉「随分とたくさん蒔きますね。」

リムル「それは大豆。」

紫苑「へぇ……………。」

レイト「上手くいけば、色んな物に加工できるよ。」

シズ「そうね。味噌や醤油、納豆とかも良い感じね!」

 

 そういえば、シズさんは戦時中の日本の出身だから、納豆は好きなのかもな。

 ちなみに、俺は納豆が大好きだ。

 だから、楽しみだ。

 そんな中、紫苑と火煉は首を傾げる。

 

紫苑「なっとー?」

火煉「それは、何ですか?」

レイト「ああ。納豆というのはな、保存が効いて、長く食べる事が出来るんだ。」

火煉「それは良いですね!」

リムル「あと、簡単に言えば、腐った豆!」

火煉「腐った……………?」

レイト「火煉。腐ったというよりは、発酵食品でな。結構美味いぞ。」

 

 俺は、火煉に納豆がどういう物かを伝えた。

 火煉はそれを聞いて、納得していた。

 すると、紫苑が叫ぶ。

 

紫苑「リムル様は腐った物が好き…………!リムル様は腐った物が好き…………!」

リムル「訂正する!発酵な、発酵!」

紫苑「今後のお食事にご期待下さい!腐った物を食卓一杯漁ってきますので!」

リムル「やめろ紫苑!メモを取って、何を作る気だ!?紫苑!!」

 

 リムルの叫びが響く。

 言い方が悪かったな。

 俺たちはそれを見て、苦笑していた。

 その後、ガビル達に水田を案内していた。

 稲を育ててもらう為だ。

 

リムル「という訳で、ガビル達には、稲を植えてもらう。」

ガビル「お〜!ありがたき幸せ!では、歓喜の歌を〜!」

リムル「それは良い。」

レイト「湿地に生息しているお前達にはピッタリだろ?」

ガビル「はっ!ここなら如何なる戦いでも……………負けませんなあ!何なら、技のキレを水渦槍(ボルテックススピア)の演武で……………!」

リムル「それも良い。」

 

 というより、ここは水田だぞ。

 ここで戦う訳じゃないからな。

 俺は念の為に、釘を刺しておく。

 

レイト「言っとくが、米の改良と栽培は割と本気で取り組んでるからな。浮かれたりしてると……………。」

ガビル「何と失礼しました。」

 

 分かってくれたか。

 俺たちとしても、たまには白米を食べたい。

 

ガビル「我ら一同。その気持ちに応えるべく……………神聖な舞を〜!」

 

 ガビル達はそう言って、ざるをどこからともかく出してきて、踊りだす。

 

ガビル達「あ、びっちゃばっちゃ!びっちゃばっちゃ!よいよいよいよい!」

リムル「良いから早く始めてくれませんかねぇ。」

シズ「賑やかだね………………。」

レイト「ガビル達はこういう奴らだったよな………………。」

 

 そうだ、こういう奴らだった。

 ダメだこりゃ。

 何とか作業を始めたのを見て、俺たちは移動する。

 すると、ゴブタが話しかけて来る。

 

ゴブタ「リムル様とレイト様だ!リムル様〜!レイト様〜!」

リムル「おお、ゴブタ!」

ゴブタ「どこ行くんすか?」

レイト「ああ。リリナさんに先に作ってもらってた春野菜の畑があるんだ。一緒に見にいくか?」

ゴブタ「行くっす!」

リムル「よし、じゃあ頼む。」

 

 俺たちは、春野菜のエリアに向かう。

 

「「「「おお〜!」」」」

 

 それを見て、俺たちは感嘆の声を出す。

 

ゴブタ「すげーっすね!もう出来てるじゃないっすか!」

リリナ「今日は賑やかで、何だか嬉しいですね。」

リムル「だろ?今年は畑も大きく作るんだ。皆、初めての奴も多いけど、面倒見てやってくれ。」

リリナ「はい!私はこの街の農業担当ですから!任せて下さい!」

 

 頼もしいな。

 すると、ゴブタは案山子に気づく。

 

ゴブタ「あ?何で畑の真ん中に人形があるんすか?」

レイト「案山子だよ。カラスよけの。」

リリナ「でも、あまり効果が無いんですよ。折角の春野菜も、こんな有様です。」

 

 リリナはそう言って、一つの春キャベツを取り出す。

 その春キャベツは、齧られていた。

 

リムル「げ!俺の好きな春キャベツ!」

シズ「齧られてるね………………。」

ゴブタ「あいつら、頭良いんすよ!こんなチャチなんじゃダメっす!自分に任せて下さい!」

 

 ゴブタはそう言うと、作業を始める。

 

ゴブタ「おりゃあああ!出来た。どうっすか?この逞しい肉体。そして、精悍な顔立ち。これでもう安心すよ!ちょっと隠れて見てみましょう!」

レイト「精悍……………?」

 

 その案山子は、ゴブタに似た様なデザインとなった。

 ある種の不安を抱きながら、俺たちは隠れる。

 

ゴブタ「これならあいつらもビビって、絶対に大丈夫っす。」

 

 俺たちが見ている中、その案山子は、動物達に攻撃されまくり、壊れてしまった。

 ゴブタが、ムンクの叫びみたいな顔になった後、壊された事実に撃沈していた。

 

ゴブタ「あう……………あう……………あう……………。」

リムル「これ吊るしてみ。」

リリナ「何です?これ。」

シズ「これは何なの?」

レイト「目玉君って言ってな。カラスよけのアイテムだよ。」

 

 まあ、案山子よりもそっちの方が良いかもな。

 その後、俺、リムル、紅丸の3人で、稲を植えていく。

 

リムル「ふぅ……………。」

レイト「良い感じじゃないか?」

 

 俺とリムルがそう話す中、蒼影は、別の場所で、クナイを地面に刺していた。

 それも、等間隔に。

 

蒼華「凄い……………。」

蒼月「確かに……………。」

蒼影「フッ。巡回警備の時間だ。行くぞ。」

蒼月達「はっ!」

 

 蒼影はそう言って移動する。

 そんな中、蒼華と蒼月は、地面に突き刺さったクナイを一本ずつ取って、つぶやく。

 

蒼華「種まき…………したかったのかな…………。」

蒼月「そうかな……………?あっ。」

 

 そう呟く中、蒼影が二人が持っていたクナイを糸で回収する。

 

蒼影「遅れるな。」

蒼華「はっ、はい!」

蒼月「分かりました!」

 

 二人はそう返して、蒼影に向かう。

 一方、朱菜達は、炊き出しの準備をしていた。

 

ハルナ「朱菜様!鍋の準備ができました!」

朱菜「ありがとう。」

「「ただいま。」」

 

 ハルナと朱菜がそう話す中、ガルムとドルドの二人が帰って来る。

 

ハルナ「ガルムさん!ドルドさん!お帰りなさい!」

ドルド「おや、朱菜ちゃん達も畑に行くのかい?」

ハルナ「ええ。仕事がひと段落したので、炊き出しに。」

朱菜「頑張る皆さんの為に、お昼には温かな物を食べていただこうと思いまして。」

ガルム「おお。そりゃ良い。」

ドルド「あとは任せて行ってきな。」

ハルナ「ありがとうございます!」

朱菜「では、行ってきます!」

 

 ハルナと朱菜は、畑の方に向かう。

 それを見ていたガルムとドルドは。

 

ガルム「良い娘だなぁ。兄弟。」

ドルド「そうだなぁ。兄弟。」

「「んっ!」」

 

 そう話すと、猛然と作業を始める。

 

ガルム「お尻と足首がキュッと!」

 

 ガルムは板にデザインを書いて、それを積み重ねていき、ドルドはミシンを使う。

 

ドルド「いける!いけてる!」

 

 二人が作業をする事しばらくして、作業は終わり、もんぺ服が出来上がった。

 それを見ていた二人は。

 

ガルム「もんぺ姿いいなあ、兄弟。」

ドルド「そうだな、兄弟。流行らそう。」

 

 二人は満足していた。

 周囲は、布やら糸や裁縫道具で散乱する中、それを見ていたカイジンは。

 

カイジン「…………………お前ら、仕事熱心だな。」

 

 そう言うと、上から梁が落ちてきた。

 一方、畑の方では、ゲルドとグルドは色んな人たちに呼ばれていた。

 

女性「ゲルドさ〜ん!」

ゲルド「おう。」

男性「グルドさ〜ん!」

グルド「待ってて下さい!すぐに行きますので!」

 

 ゲルドとグルドは、物を運搬していた。

 そんな中、俺とリムルは、ゲルドとグルドに話しかける。

 

リムル「お〜い、ゲルド、グルド。」

ゲルド「ああ……………。」

レイト「折角だし、二人も植えてみろよ。」

グルド「いや……………俺たちは運搬役で………………。」

リムル「良いから、良いから。」

ゲルド「はっ、はぁ……………。」

 

 ゲルドとグルドは、俺たちの言葉に折れて、苗を植える事に。

 

リムル「そうそう。等間隔に。」

レイト「苗を潰すなよ。」

ゲルド「ん…………う〜ん……………。」

グルド「これで良いですかね?」

レイト「ああ。これで、夏には実が一杯食べれるぞ。」

ゲルド「実が………………。」

 

 俺がそう言うと、ゲルドとグルドはその苗を見ていた。

 しばらくの静寂の末、口を開く。

 

ゲルド「……………見にきても良いでしょうか?」

グルド「時々……………。」

リムル「おう。」

レイト「皆で見に行こう。」

シズ「ええ。」

 

 俺たちはそう話す。

 その後、昼飯になった。

 

白老「ずっと中腰は流石に堪えるのう…………。」

黒兵衛「何言ってるだ。誰よりも正確で速かっただ。」

白老「ヌホホホホ。年の功よ。」

 

 白老と黒兵衛は、そう話す。

 そんな中、ゴブタは鍬を持ちながら言う。

 

ゴブタ「自分のご褒美って、本当にこれなんすかね?」

 

 ゴブタは、若干不安になっていた。

 一方、朱菜は皆にお昼ご飯を配っていた。

 

朱菜「はい!」

子供「ありがとうございます!」

朱菜「お兄様もお昼いかがですか?」

紅丸「うん。」

 

 朱菜の受け取った昼食を持ちながら、子供が移動するのを見ながら、朱菜は紅丸に尋ねる。

 すると、子供達が紅丸に質問をする。

 

子供「紅丸様!」

紅丸「うん?」

子供「どうしたら、紅丸様みたいに強くなれるんですか?」

子供達「うんうん!」

紅丸「そうだな……………。」

 

 子供達の質問に、紅丸は子供達に視線を合わせる。

 

紅丸「好き嫌いなんかせず、何でもよく食べる事かな。そして……………まずは…………。」

子供達「わっ!」

 

 紅丸はそう言いながら、石を握り潰す。

 

紅丸「強い体を作るんだ。」

子供達「うわ〜!分かりました!紅丸様!ありがとう!」

紅丸「おう!午後も頑張ろうな!」

子供達「は〜い!」

紅丸「しっかり食って、強くなれよ!ちびっ子ども!」

 

 子供達は駆け出して、紅丸はそう言う。

 そんな中、朱菜が話しかける。

 

朱菜「お兄様もどうぞ。」

紅丸「ああ。」

 

 朱菜はそう言って、お盆を渡す。

 そんな中、スープの中に人参が入っている事に気づいて、紅丸は朱菜に言う。

 

紅丸「いや……………だからちょっと、人参避けてくれって……………!」

朱菜「あら?強くなれませんよ。はい。」

 

 朱菜は、紅丸に有無をいわせずに、お盆を渡す。

 俺たちはおにぎりを食べながら周辺を見る。

 春の空気がガツンとくる。

 土の匂いは意外と強い。

 空気を胸に、飯を腹に。

 ただそれだけで、満たされる。

 ただそれだけで、実感できる。

 そんな中、シズさんが口を開く。

 

シズ「懐かしいな……………。」

リムル「シズさん?」

シズ「子供の頃、よくお母さんと一緒に、畑で作物を育ててたのを思い出すよ。」

レイト「そっか………………。」

 

 シズさんは思い出していた。

 かつて、魔王レオン・クロムウェルによって召喚される前、よくお母さんと一緒に、作物を育ててた事を。

 

リムル「寂しくないのか?」

シズ「………………確かに、もうお母さんと会えないのは寂しい。でも、新しく出来た第二の故郷で、こんなにも楽しい。だから、寂しくないよ。」

レイト「そっか。じゃあ、俺たちも手伝わないとな!」

リムル「ああ!」

シズ「頑張ってね。」

 

 俺たちは、作業を再開する。

 そんな感じで作業をしたら、夕方になっていた。

 俺たちは、口を開く。

 

リムル「じゃあ、無事、植え付けの終了を祝って、乾杯!」

レイト「お疲れさん!」

 

 俺たちは、食事をする事にした。

 

紫苑「んぐ、んぐ……………プハーッ!美味しい〜!」

火煉「お疲れ様。いつもより美味しく感じますね。」

村人「おっ!ロールキャベツ!」

村人「秋には無事に稲がなると良いなぁ。」

紅丸「お疲れ。良い働きぶりだったな。」

ゲルド「貴殿もな。」

グルド「お疲れ様です。」

ガビル「我輩の水田の舞はいかがでしたかな?」

リグルド「ヤッハハ…………失敬。見ておりませんで。」

村人「うーわっ!美味そうな匂い!たまんねぇ!」

ゴブタ「鍬さばきなら、自分に任せて欲しいっすね!」

ゴブツ「よっ!ゴブタ!」

 

 そんな風に、皆が作業の疲れを労い、ご飯を食べていく。

 そんな中、俺、リムル、シズさんは、トレイニーさんと一緒にいた。

 

トレイニー「皆さん、お疲れ様でしたね。」

リムル「まあ、本当に大変なのは、これからだろうな。」

トレイニー「そうですね。収穫までは色々……………でも、今年はきっと良い作物が取れますよ。」

シズ「うん。きっと、良い作物が出来るよ。」

レイト「おお。お墨付き!トレイニーさんは植物の専門家だしね。」

トレイニー「ええ。ですから……………。」

「「うん?」」

トレイニー「待っていたんですよ、私。お、さ、そ、い……………。」

 

 トレイニーさんはそう言って、リムルの麦わら帽子を自分に被せながら、そう言う。

 あ、やべ。

 この人誘うのを忘れてた。

 すると、トレイニーさんは涙を浮かべながら、スコップでその辺の土を掘る。

 

トレイニー「樹妖精(ドライアド)なのに……………管理者なのに……………。ずっとずーっと、そこの木の陰から……………。」

レイト「ごめんなさい!収穫時にはちゃんと声をかけますので………………!」

ゴブタ「あー。泣かせた、泣かせた。」

リムル「機嫌なおして下さい。ほら、ポテチありますよ!」

トレイニー「…………………ぐすん。」

シズ「アハハハハ…………………。」

 

 こうして、俺たちはトレイニーさんを宥めるのに、苦労した。

 その後、トレイニーさんの事を知ってか知らずか、梅雨が始まった。

 異世界にも、梅雨はあったのだ。

 それを、俺、リムル、シズさん、ゴブタは外から見つめていた。

 

ゴブタ「今日も雨っすか。毎日これじゃあ、気が滅入るっすね。」

レイト「まあ、梅雨だしな。」

トレイニー「あらあら。そんな事を言わないで下さい。雨は必要なんです。天からの恵みを大地がたっぷりと受け止めて、緑は茂り、虫たちが増え、小動物が繁殖し、またそれが土に……………。」

 

 トレイニーさんはそう言うと、ポテチを食べて、口を開く。

 

トレイニー「あら、新味。そうして、森は着々と大きくなっていくのですから。」

シズ「そうなんですね。」

ゴブタ「へぇ……………だからちょっと太ったんすね。」

リムル「おっ……………!?」

レイト「ちょっ……………!?」

シズ「あ。」

 

 すると、雷鳴が響き、雨足が強くなる。

 俺はゴブタに言う。

 

レイト「おい!早く窓を閉めろ!」

ゴブタ「はいっす!」

 

 トレイニーさんを怒らせると、自然環境に影響を与えかねんな。

 というより、ゴブタ、それはあまりにも失言だろ!

 こうして、外は嵐となったのだった。




今回はここまでです。
今回は、春と梅雨のひと時です。
シズさんは、畑作を見て、かつての事を思い返していました。
そして、失言をするゴブタ。
これもまた、転キメでの、日常の一幕です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
転キメでのテンペストの日常は、賑やかなのは間違いありません。
シズさんも、第二の故郷と思える位には。
転キメ日記は、しばらく続けます。
本編の方も、頑張っていきます。


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第3日記 ジュラの夏

 梅雨が明け、夏が始まった。

 まあ、梅雨が始まった頃は、ゴブタがトレイニーさんに対して、失言をしたからな。

 蝉の鳴き声が辺りに響き渡る。

 俺たちが家に戻っていると、朱菜と火煉の2人が、ひまわりに水をあげていた。

 

朱菜「ふぅ……………。」

火煉「暑いですね………………。」

 

 2人はそう話しながら水をあげる。

 そこに俺たちがやってくると、2人は俺たちに話しかける。

 

朱菜「あっ、リムル様、レイト様!」

リムル「おお!ひまわりか〜。夏っぽいな。」

火煉「はい。レイト様とリムル様のお話を参考にして、似た花を植えてみました。」

レイト「ありがとう。」

 

 やっぱり、夏といったら、ひまわりだよな。

 まあ、ひまわりというよりは、ひまわり擬きだがな。

 風鈴の音が響く中、俺たちは麦茶を飲む。

 すると、背後から視線を感じて、振り返る。

 そこには、ひまわりがあっただけだった。

 

リムル「あ……………?」

レイト「ん……………?」

 

 俺たちは再び前を向く。

 すると、ひまわり擬きが、俺たちを見てくる気がする。

 

リムル「ああっ………………。」

レイト「見られている………………?」

 

 地味に怖えな。

 何で花が俺たちを見てくるんだよ。

 怖くなった俺たちは、リグルドの方へと向かう。

 街の様子を見ると、皆、暑さにまいっている感じだった。

 俺たちはというと、熱変動耐性があるので、大丈夫だが。

 リグルドの元に着くと、リグルドはヴェルドラを祀っている祠に手を合わせ拝んでいた。

 

リムル「ジュラの夏って……………あっついんだなぁ………………。」

レイト「なあ、リグルド。」

リグルド「ぬぅおっ……………ぬぅ……………。」

レイト「なんか、皆参ってるみたいなんだけど。」

リグルド「う〜ん……………ええ。私どもの記憶でも、こんなに暑い夏は……………アハッ、初めてです。」

 

 リグルド、体から汗が蒸気になって出てるぞ。

 すると、嫌な予感がした。

 

リムル「あっ、あれ?もしかして……………。」

レイト「森を切り拓いて、街を作ったから、自然環境に変化が出たのか……………?」

 

 森が切り拓いて、街を作った事で、日光が当たりやすくなったからな。

 そうなってもおかしくはない。

 まあ、無理もないか。

 すると、リグルドが慌てて言う。

 

リグルド「い……………いえ!きっとこれは、暴風竜様が姿を消された為かと!」

レイト「そ、そっか……………?」

 

 いや、それだとどの道、俺らのせいになるんだよなぁ………………。

 すると、リグルドは俺たちに視線を合わせて、小声で言う。

 

リグルド「んん……………なんせ、神様のなされた事ですから。リムル様とレイト様には……………。」

レイト「う〜ん………………。」

リグルド「暴風竜様ですし。セーフです、セーフ。うん。」

リムル「ヴェルドラだもんな!ヴェルドラじゃあ、しょうがないよなぁ!」

 

 リグルドはそう言う。

 でも、結局は俺らが原因なんだよな。

 俺らがヴェルドラと接触して、リムルの中に取り込んだから。

 すると、リムルが胃袋の中のヴェルドラに謝る。

 

リムル『ごめんな、ヴェルドラ!』

 

 そんな中、胃袋の中でイフリートと将棋をしていたヴェルドラが答える。

 

ヴェルドラ『構わん、構わん!細かい事は気にするな!アーハッハッハッハッ!!』

イフリート『……………そこ、指し間違えてますが。』

ヴェルドラ『…………………え?』

 

 精霊と竜が将棋をしているなんて、凄い光景だよな。

 ちなみに、俺は他者の悪魔を見る事が出来るので、リムルの胃袋の中のヴェルドラとイフリートのやり取りも見る事が出来る。

 その後、執務室に向かい、朱菜、紫苑、火煉と共に、事務作業を行う。

 その際、科学者に頼む。

 

レイト『科学者。森林開拓の自然への影響を調べておいてくれ。』

科学者『了。』

 

 ヒートアイランド現象とかが起こって、倒れるのはあまりよろしくないしな。

 まあ、テンペストにエアコンの類は無いのだが。

 とはいえ、調べておく必要性はあるだろう。

 そんな中、火煉たちに話しかける。

 

リムル「なあ、お前たち。」

「「「ん……………?」」」

レイト「その格好で暑くないのか?」

 

 そう。

 紫苑はスーツ、朱菜と火煉は和服を着ていた。

 暑くないのか、心配になったのだ。

 

紫苑「へっちゃらです。夏好きなんで。」

朱菜「私どもは、仮にも役職を頂いておりますので。」

火煉「いつ如何なる時も、恥ずかしくない姿で働いております。」

リムル「気にしすぎて、倒れないでね。」

レイト「適度に水分補給をしてくれよ。」

紫苑「ご心配なく!どうしても暑い時は、見えない所から一枚抜きますから。今日みたいに!」

リムル「ああ?」

レイト「うわぁ………………。」

「「はっ!?」」

 

 そんな事を堂々と言うんじゃないよ。

 すると、朱菜と火煉は、紫苑を部屋から追い出す。

 

紫苑「えっ、あ…………ちょっ…………えっ?」

朱菜「リムル様、レイト様!ちょーっと失礼します!」

火煉「そんな事を堂々と言わないで!」

紫苑「リムル様、レイト様!これ、スースーして快適ですよ!」

 

 まだ言うか。

 そう思う中、紫苑は朱菜と火煉の2人に連行されていった。

 そんな中、俺はリムルに話しかける。

 

レイト「そうだ。そろそろ冷えてる頃だと思うから、回収しようぜ。」

リムル「お、良いね!」

 

 俺たちはそう話して、井戸がある場所へと向かう。

 そこで、カットしたスイカを食べる。

 

リムル「はぁ〜……………美味い!」

レイト「夏といったらスイカだよな!」

 

 スイカを食べ終え、井戸の方へと向かう。

 そこには、井戸水で冷やした麦茶、スイカ、トマト、胡瓜があった。

 それを回収して、ゴブタ達の方へと向かう。

 

ゴブタ「おぉ〜!リムル様、レイト様!感謝感激っす!」

 

 ゴブタはそう言って、麦茶を飲む。

 

ゴブタ「んぐっんぐっんぐっ……………プハーッ!生き返るっす〜!」

リムル「うんうん!」

ゴブテ「リムル様、レイト様!冷たくてすっごく美味しいです!」

レイト「皆、暑い中頑張ってくれてるからな。差し入れだ。」

リムル「だろ〜?夏といえば色々あるけど、これは外せないよな!」

ゴブタ「そういうもんなんすかね〜。他には、何があるんすか?」

 

 ゴブタ達は、頑張っているからな。

 脱水症で倒れるのは避けて欲しい。

 だからこそ、差し入れを渡しに来たのだ。

 ちなみに、俺はこっそり、ソルティライチを再現できないか、挑戦している。

 ソルティライチは、結構好きだからな。

 ゴブタがそう質問すると、リムルは答える。

 

リムル「そうだな〜……………子供の頃は、よく虫捕りしたな!」

ゴブタ「えっ?スライムって、子供の時は虫捕るんすか?」

レイト「…………………。」

 

 ここは異世界なんだから、そんな風に答えるなよ。

 俺はそう思いながら、肘打ちをする。

 

リムル「ああ……………う〜……………えっと……………これこれ!こういう奴が好きだったんだぁ!」

ゴブタ「えっ……………?」

レイト「どうした?」

ゴブタ「ああ、いや……………こいつなら、この近くにも居るっすけど……………。」

リムル「おっ!まじ〜?ちょうど良いから、虫捕りに行こうぜ!」

ゴブタ達「うう………………。」

 

 なんか、ゴブタ達、あんまりテンションが高くないな。

 むしろ、下がっている。

 なんか嫌な予感がするのは、気のせいか?

 そんな中、森の中を歩く。

 

リムル「良いねえ、虫捕り!夏だねぇ!」

レイト「楽しそうだな。」

ゴブタ「自分、あまり気乗りしないっす。」

リムル「あ?何お前、クワガタ派?」

レイト「クワガタも良いよな。」

ゴブタ「いやあ…………そういう事じゃ…………あっ!」

 

 俺、リムル、ゴブタがそう話していると、虫の羽音が聞こえてくる。

 そっちを見ると、ものすごくデカいカブトムシが、こっちに向かって来ていた。

 なるほど、これが理由か。

 

ゴブゾウ達「ああっ…………!」

リムル「あっ…………!」

レイト「デカっ。」

ゴブタ「ああ………………!」

 

 それを見て、俺たちはすぐに避ける。

 だが、ゴブタは逃げ切れずに、カブトムシの角にぶつかる。

 

ゴブタ「ギャアアアアアア!!」

 

 カブトムシの角にぶつかったゴブタは、そのまま星となる。

 その後、無事に生還したゴブタと共に、水鉄砲対決をやる事に。

 ゴブタ達ゴブリンライダーと俺とリムルの戦いだ。

 

ゴブタ「油断したっすねえ、リムル様、レイト様。皆、準備は良いっすか?」

ゴブテ「ええ!」

ゴブゾウ「ダス!」

ゴブタ「作戦開始っす!」

 

 ゴブタ達がそう話す中、俺とリムルは、二手に分かれて、水鉄砲を撃っていく。

 ゴブテ達のデカい水鉄砲でリムルの水鉄砲が吹き飛ばされる中、俺はゴブタの水鉄砲を吹っ飛ばす。

 リムルが別の水鉄砲を撃とうとしたが、栓が抜かれていて、空砲となってしまった。

 

リムル「うっ……………!」

レイト「リムル!」

ゴブタ「今っす!」

 

 俺がリムルに気を取られていると、ゴブタが俺の予備の水鉄砲を吹っ飛ばす。

 してやられたな。

 すると、ゴブタ達が俺とリムルの前に現れる。

 

ゴブタ「チャ〜ンス。弾切れに在庫切れっすねえ、リムル様、レイト様。」

レイト「やってくれたな……………。」

ゴブタ「全身くまなくビッチャビチャにしてやるっすよ。ビッチャビチャに……………!皆!一斉放火っす!」

 

 ゴブタ達はそう言って、水鉄砲を一斉に撃ってくる。

 俺は、それを躱す。

 だが、リムルには当たっている。

 ある程度当たると、リムルはゴブタ達に言う。

 

リムル「汚ねえぞ、お前ら!」

ゴブタ「悔しかったら、反撃してみると良いっすよ。フハハハハハ……………!やっぱり、レイト様には当たらないっすね。」

レイト「甘く見るな。」

 

 それくらい、躱してやるさ。

 まあ、当たった方が涼めるのだろうが。

 だからといって、ゴブタの水鉄砲に当たるのは、なんか嫌だからな。

 

ゴブタ「ああ……………自分たちがあのリムル様とレイト様を翻弄してるっす……………。何すか、この湧き上がる気持ち……………。」

 

 ゴブタは、ご満悦だった。

 なら、そろそろ反撃といこう。

 俺は、オストデルハンマー50を取り出して、オストデルノックを押す。

 

レッツイタダキ!

 

 音声が流れて、俺は周囲の水を叩く。

 

ネイチャー!イタダキ!

 

 そして、俺は、オストデルハンマーのトリガーを引く。

 

エレメント印!オストデルクラッシュ!

 

 俺とリムルは、反撃として、リムルは口から、俺はオストデルハンマーから、大量の水を放出する。

 水ビームは、しばらく進んでいって、凄い衝撃音を放つ。

 しばらくすると、水ビームが放たれた場所は、木が倒れ、地形が少し抉れていた。

 やりすぎたか?

 

ゴブタ「口と武器から出すのは……………ずるいっす………………。」

リムル「ふぅ……………すまん、思わず。」

レイト「反撃してみろって言ったんだから、反撃しただけだ。」

 

 ゴブタの抗議に、俺とリムルはそう言う。

 一方、嵐牙はため息を吐いていた。

 

嵐牙「ああうぅ……………。」

 

 そこに、紫苑と火煉がやってくる。

 2人は、嵐牙に話しかける。

 

紫苑「どうしたのです、嵐牙。」

火煉「そんな所でため息を吐いて。」

嵐牙「うん?実は最近、リムル様とレイト様が遊………………いや、お呼びが掛からぬのだ。」

紫苑「ほう。」

火煉「今、遊ぶって言いかけませんでした?」

嵐牙「くぅん……………かつては、どこへ行くにも、背に乗ってくれて……………。」

 

 嵐牙の言葉に、火煉が突っ込みながらも、嵐牙は思い返す。

 俺たちがよく遊んだ頃を。

 

嵐牙「その後には、ナデナデとか……………。」

火煉「ナデナデ………………。」

嵐牙「スリスリとか……………。」

紫苑「スリスリ……………!」

嵐牙「ペロペロした仲なのに……………。」

火煉「ペ、ペロペロ………………!?」

紫苑「私だって、まだなのに!」

 

 嵐牙の独白に、火煉と紫苑はそんな風に反応する。

 それを聞いた嵐牙は、鼻で笑う。

 

嵐牙「ハッ……………。」

紫苑「むっ!」

火煉「鼻で……………!?」

嵐牙「もしや、知らぬ間に、リムル様とレイト様の不興を買ってしまったのでは……………。」

 

 嵐牙が鼻で笑い、そう言う。

 すると、火煉と紫苑が反論をする。

 

火煉「知りませんよ、そんな事!」

嵐牙「ん?」

紫苑「どうせ、タテガミが暑苦しいとかの理由では?夏だし。」

嵐牙「四六時中ベタベタしてるお前達の方が暑苦しいわ!粗忽女に残念女!」

紫苑「ぎっ………………!」

火煉「何ですって?」

 

 火煉と紫苑の言葉に反論する嵐牙。

 だが、言い方があれだったからか、2人はキレて、臨戦態勢に入る。

 そして、3人は戦う。

 それを見ていたひまわり擬きは、花の部分を葉っぱで隠していた。

 

紫苑「第一秘書である私が、いつもおそばにいるのは当然でしょ……………!」

火煉「私だって、第一秘書ですもん…………!」

嵐牙「我こそは……………従者として如何なる時も、お供せねば!」

 

 3人はそう言って、再び争いだす。

 それを、俺たちは見ていた。

 

紫苑「私だって、せめてスリスリ…………!」

火煉「ペロペロとまではいかなくても、スリスリはしたいんです………………!」

嵐牙「我が主達に不埒な真似は……………!不埒な真似は………………!」

 

 紫苑達は、そう言い争っていた。

 それを見ていた俺たちは。

 

レイト「このクソ暑い中、よくやるよな。」

リムル「今度組ませてみるか。」

 

 そんな風に話す。

 その後、洗濯物を干している紅丸達の方へと向かう。

 

リムル「おっ、居た、居た。」

紅丸「ん?」

レイト「紅丸、ちょっと良いか?」

紅丸「何ですか?また悪巧みじゃないでしょうね?」

リムル「いやーねぇ。すげー暑いし、もうこうなったら、暑さを生かして、我慢大会でもやろうかなと思って。」

 

 そう。

 紅丸に声をかけた理由は、我慢大会に参加するかどうかを聞きに来たのだ。

 まあ、悪くないと思い、俺も了承した。

 

紅丸「転んでもただでは起きない辺りはさすがですが、我慢大会って何ですか?」

レイト「我慢大会ってのは、炎天下に暖房を焚いて、厚着をして、その上で鍋を食う。そして、最後までギブアップしなかった人が優勝って感じだ。」

リムル「そういう感じ。」

 

 俺とリムルは、紅丸に我慢大会の概要を言う。

 ちなみに、俺とリムルは参加しない。

 熱変動耐性があるから、試合にならないからだ。

 それを聞いたアキナは、ゴブタに話しかける。

 

アキナ「出れば良いじゃん。ふふ…………。」

ゴブタ「う〜ん……………。(ここで目立ちたいっすけど……………これ、なんか嫌な予感がするっす。)」

 

 アキナにそう言われるが、ゴブタは参加を渋っていた。

 そんな中、リムルは紅丸に話しかける。

 

リムル「紅丸。お前のように強い男は、暑さなんかに負けないだろ?」

紅丸「んっ……………ふむ。なら、ここは一つ、俺の我慢強さを知らしめてやりましょう。」

レイト「頑張れよ。」

 

 リムルがそう言うと、紅丸は満更でもない様子を見せる。

 それを見ていた紫苑と火煉は。

 

火煉「良いじゃないですか。最近、良い所が全く無かったですしね。」

紅丸「うるさいぞ、そこ!」

紫苑「だって事実ですし〜。」

紅丸「おのれ……………!見てろ、残念秘書に天然秘書!炎の戦士の生き様をな!」

 

 火煉と紫苑の言葉に、紅丸はそう叫ぶ。

 まあ、火煉って、ちょっと天然な所があるしな。

 そうして、我慢大会が始まった。

 だが、紅丸、ガビルを始めとする参加者は、全員撃沈していた。

 

蒼華「おぉ〜っと!鍋の前に出場者全員がダウンだ〜!」

蒼月「これは、大変な事になりましたね。」

リムル「まさか、紅丸が負けた!?」

紫苑「どうしたんでしょうか?」

火煉「紫苑、あなたが作ったんですね………………。」

レイト「やっぱり………………。」

 

 そう。

 出場者が食べた鍋は、紫苑が作ったのだ。

 それを見ていたゴブタは。

 

ゴブタ(出なくて良かったっす……………!)

 

 ゴブタは、不参加だった。

 その為、命の危険は免れた。

 その後、紅丸達を始めとする参加者達は、救護所に運ばれた。

 一方、ゴブタは、黒兵衛の工房へと向かっていた。

 中に入ると、熱気がゴブタを襲う。

 

ゴブタ「うわっ、あっつい!何すかこれ!?」

 

 ゴブタがそう叫ぶ中、黒兵衛は作業をしていた。

 ひと段落すると、ゴブタは黒兵衛に話しかける。

 

ゴブタ「リアル我慢大会じゃないっすか!」

黒兵衛「はっはっは!鍛治工房なんだから、当たり前だべ。」

ゴブタ「黒兵衛さん、すごい汗っすよ!大丈夫なんすか?」

黒兵衛「んん?ああ、おら鈍いから、平気なんだべ。あっ、そうそう。ゴブタ君の武器、武器。散々待たせて、ごめんだべ。」

 

 ゴブタがそう言う中、黒兵衛は笑って、汗を拭う。

 そして、黒兵衛は、ゴブタの武器を取り出そうとする。

 それを見ていたゴブタは。

 

ゴブタ(黒兵衛さん……………真夏に何日も篭りっぱなしなのに、笑っていられるなんて………………。)

 

 ゴブタは、黒兵衛に対して、そう思っていた。

 すると、黒兵衛は武器を取り出す。

 

黒兵衛「いやあ…………なんか気づいたら、鍛え上がってたんだけど……………。フフフフフフフフ……………フフフフフフフフ……………!」

剣「マギー!マギー!マギー!」

 

 黒兵衛が取り出したのは、剣の柄の部分が、生きている様に蠢き、奇声を発する剣だった。

 それを、黒兵衛は目を赤く光らせながら笑う。

 それを見ていたゴブタは。

 

ゴブタ「うぅ……………やっぱり、ちょっと涼んだ方が良くないっすか………………?」

剣「マギー!」

 

 ゴブタはそれを見ながら、ドン引きしつつも、黒兵衛にそう言う。

 そんな剣の奇声は、俺たちの方にも届いていた。

 

レイト「ん?なんか、やばい奇声がしたような気がしたのは、気のせいか?」

火煉「さあ………………?」

 

 気のせい……………かな?

 明らかにやばい声が聞こえた気がするんだが。

 そんな中、火煉は俺に近づいてくる。

 

レイト「火煉さん……………。何してんの?」

火煉「スリスリです。」

レイト「あっ、そう……………。」

 

 何で急に?

 まあ、仕事自体は大体片付いているから、問題ないのだが。

 あと、皆から言われがちだが、俺の体は少しひんやりしているそうだ。

 ちなみに、リムルの方は、紫苑がスリスリしていた。

 そんな風にのんびりしていると、朱菜が紫苑に話しかける。

 

朱菜「紫苑。」

紫苑「ん?」

朱菜「私にも、リムル様を抱かせて下さい。」

紫苑「え〜。ダメですよ。これは、秘書の仕事です。」

リムル「うう……………いや、そんなことは無いんだが……………。」

朱菜「ホホホホホ……………そんな事はありませんとリムル様が。」

紫苑「そんな事ありますわ。フフフフ……………。」

朱菜「ホホホホホ……………。」

紫苑「フフフフフ……………。」

レイト「やれやれ…………。」

火煉「アハハハハ……………。」

 

 また始まったよ。

 まあ、いつもの事か。

 それを見ながら、麦茶を飲む。

 朱菜と紫苑による、リムルの取り合いが始まる。

 一進一退の攻防を繰り広げ、引っ張り合いになる。

 

朱菜「ん〜!良いから代わりなさい!」

紫苑「ん〜!いーやーでーす〜!」

リムル「こらこら!仲良くしろ〜!仲良く〜!」

 

 朱菜と紫苑の争いは白熱していくが、リムルによって止められる。

 その後、折衷案として、リムルが少し大きくなって、2人はリムルに寄りかかる。

 恐らく、水枕みたいな扱いになっているんだろう。

 その証拠に。

 

紫苑「あっ。何だか、ぬるくなってきましたね。」

朱菜「リムル様。もう少し冷たくなりませんか?」

リムル「きっ…………!」

 

 そんな風に言う。

 すると、火煉が口を開く。

 

火煉「もう少し、冷たくできませんか?」

レイト「無理言わないでくれる?」

 

 そんな風に言ってくる。

 俺は水枕じゃねえっつうの。

 しょうがない、リムルを揶揄うか。

 そう思い、思念伝達でリムルを揶揄う。

 

レイト『お、照れてんのか?朱菜達の水枕さん?』

リムル『お黙り!』

 

 俺がそう言うと、リムルはそう言ってくる。

 一方、畑の方では、リリナさんとゲルドとグルドの2人がいた。

 

リリナ「猛暑が続く毎日でしたし、この日差しに加え、うまくこよ土に馴染めなかったようで。色々と、試行錯誤してみたのですが……………。」

ゲルド「そうですか……………。」

グルド「なるほど……………。」

 

 リリナの言葉に、ゲルドとグルドはそう反応する。

 すると、リリナはすぐに口を開く。

 

リリナ「あっ、でも、数株は生き残ったので、希望はあります。どうぞ。せっかくだから、食べてみてください。」

 

 どうやら、生き残ったのもあったそうだ。

 ゲルドとグルドは、トマトを一つずつ手に取って、見つめる。

 すると、ちょんまげのゴブリンの子供がそれを見ていた。

 ゲルドとグルドは、頷き合い、トマトをもぎ取って、その子供に渡す。

 

グルド「どうぞ。」

ゲルド「ん。」

ココブ「わ〜!はむっ。んぐんぐ……………はぁ〜。」

 

 ココブというゴブリンの女の子は、ゲルドとグルドから受け取ったトマトを食べる。

 それを見て、ココブの頭を撫でて、2人は去ろうとすると、リリナが話しかける。

 

リリナ「よろしいのですか?」

 

 リリナの質問に、ゲルドとグルドは、ただ手を振って答えた。

 その後ろ姿は、逞しかった。

 その夜、俺とリムルは、スナックに赴いていた。

 トレイニーさんは、ドリンクを出す。

 

トレイニー「はい、テンペストブルー。」

リムル「おお〜!涼しげ!」

トレイニー「うふふ……………どうぞ、冷たいうちに。」

レイト「ん…………ん……………あっ、これ、ハッカみたいだな。」

トレイニー「アルコールの代わりに、涼しげなハーブを入れてみました。」

 

 なるほどな。

 確かに、この猛暑にはちょうど良いかもしれないな。

 

リムル「俺は子供じゃないって〜。」

レイト「涼しげで、猛暑の今年には、ピッタリだな。」

シズ「確かに、今年の夏は結構暑いよね。」

トレイニー「ですが、長い目で見れば、揺らぎのような物です。振り始めか……………振り戻しか……………。」

 

 まあ、そういうもんか。

 年によって、暑さとかは違うからな。

 リムルは、トレイニーさんの言葉に答える。

 

リムル「生憎、俺はそんな長い目は持ってないんだ。」

トレイニー「ウッフフフフ……………リムル様とレイト様の力添えで、この森は大きく変わって来ています。そして、この街の皆さんは、その予期せぬ変化にもしっかり対応してます。」

シズ「大丈夫だよ。きっと上手くいくよ。」

レイト「ありがとう。トレイニーさん、シズさん。」

トレイニー「お客様の心をほぐすのも、スナック樹羅の役割ですから。」

 

 まあ、頑張っていくか。

 色々と、注目されているがな。

 すると、ドアが開く音がして、カイジンとミルドの2人がやって来る。

 

ハルナ「いらっしゃいませ!」

カイジン「おっ。今日はママさんがいるぞい。」

トレイニー「あらっ、カイジンさん。お帰りなさい。」

リムル「予期せぬといえば……………。」

レイト「このお店って、元々トレイニーさんのお店じゃ無かったですよね?」

トレイニー「あらあら。ウフフ……………。」

リムル「店名も、”ゴブリナ”の予定だった筈だけど……………。」

トレイニー「うふふふ……………皆さん、対応してますよ。」

シズ「アハハハ………………。」

 

 トレイニーさんは、しれっと店をゲットしてるよな。

 森の管理はしなくて良いんすか?

 そう思っていると、ゴブタが入ってくる。

 

ゴブタ「あっ、リムル様、レイト様。こんな所に居たんすか?蛍が群れで出てるっすよ!見に行きましょうよ!」

リムル「こらこら、ゴブタ君。お静かに……………。」

ゴブタ「早く早く!こんな群れ、もう見れないかもしれないっす!」

レイト「やれやれ。シズさんも行くか?」

シズ「ええ。」

 

 そうして、俺、リムル、シズさんは、ゴブタ達と共に、蛍の群れを見に行く事に。

 ちなみに、シズさんの魂が入ったバイスタンプは、俺が持っている。

 小学生の頃、夏休みは全力だった。

 予定がなくても早起きして、寝落ちするまで夜更かしをした。

 ラジオ体操もやったよな。

 見る物全てが新鮮で、やりたい放題した物だ。

 そんな俺を、父さんは笑いながら見ていた。

 母さんは、俺が物心がつく前に亡くなってしまった。

 すると、シズさんが口を開く。

 

シズ「懐かしいな……………。」

レイト「シズさん?」

シズ「昔はこうして、お母さんと一緒に蛍を見に行ってたんだ。」

レイト「そうなんだ……………。」

 

 俺も、蛍を見たのは久しぶりだ。

 小学生の夏休みの頃、田舎の爺ちゃんと婆ちゃんの家に父さんと一緒に行って、爺ちゃんと婆ちゃんと一緒に蛍を見た。

 それはもう、見る事が出来ない光景だが。

 すると、シズさんが口を開く。

 

シズ「……………スライムさんとキメラ君のおかげだね。バイスタンプの中に入っているとはいえ、毎日が凄く楽しい。……………食べる事が出来ないのは、ちょっと残念だけど。」

レイト「悪いな。シズさんの新しい体は、順調に進んでるよ。だから、もう少し待ってくれ。」

シズ「……………うん。ありがとうね。」

 

 俺とシズさんは、そう話す。

 こうして、夏の1日が終わる。

 その翌日の早朝、ジュラの森の夏の恒例の出来事が起こる。

 それは、野良スライムの大量発生だった。

 その野良スライムの一団は、テンペストの近くにやってくる。

 俺とシズさんが家の方でそれを見ていると、リムルは野良スライムと一緒に遊んでいた。

 Aの形、手の形、考える人の形になった。

 野良スライムの方は、Aの形と手の形はギリギリ出来たが、考える人の形には出来なかった。

 すると、野良スライムは仲間達の方へと去っていく。

 それを、リムルは寂しげな雰囲気で見送る。

 すると。

 

紫苑「リムル様〜!」

リムル「ああ?」

リグルド達「リムル様〜!!」

朱菜、紫苑「群れに帰っちゃやだ〜!!」

リムル「俺の群れはお前らだろ。」

レイト「賑やかだな。」

シズ「そうだね。」

 

 リムルが野良スライムの一団に向かおうとした風に見えたのか、リグルド達は、必死に止めようとする。

 これもまた、夏の出来事。




今回はここまでです。
転スラ日記のエピソードを投稿しようと思い、投稿しました。
今回は、夏の日の出来事です。
黒兵衛が暑さにやられて、変な武器を作ったり、我慢大会をやったりと、夏での日常です。
そして、過去を思い返すレイトとシズさん。
次回の転キメ日記は、湖での出来事です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
ジュウガのオリジナルフォームを出すかどうかのアンケートは、締め切りたいと思います。
ただ、ジュウガのオリジナルフォームに関しては、どういう感じにするのかは、まだ未定です。
考えているのは、ライジングアルティメットみたいな感じですかね。
仮面ライダーオルテカに関しても、変身者は考え中です。
アブソーブ必殺技は、ドライブとチェイサーは分かりましたが、他のバイスタンプの場合はどういう感じにやって欲しいというのがあれば、活動報告にて受け付けます。


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第4日記 水着で一日

 猛暑が続くある夏の日。

 俺たちは、避暑地の下見として、俺たちは、ジュラの森のとある大きな湖に来ていた。

 パラソルを地面に突き刺した後、俺たちは湖を見る。

 

紫苑「すごく綺麗です!」

火煉「しかも、広いですね。」

リムル「森の先に、こんな良いとこがあったとはなあ!」

蒼華「故郷のシス湖を思い出します。」

蒼月「本当だ。」

朱菜「お天気にも恵まれて、良かったですね。」

ゴブタ「リムル様〜!レイト様〜!テント設置出来たっすよー!」

レイト「よし。じゃあ、水着になろうか。」

朱菜達「はい!」

 

 俺たちはそんなふうに話して、着替える事に。

 ちなみに、シズさんも連れてきているが、白老に預けてある。

 流石に、着替える様子を見せるわけにはいかないしな。

 まあ、バイスタンプの状態だから、生殺しみたいな感じがして、気が引けるが。

 湖で泳ぐ事が出来ないのだから。

 そんな中、リムルは女性陣に話しかける。

 

リムル「おーい!着替え済んだか?」

レイト「こっちは終わったが。」

朱菜「はい!リムル様!レイト様!」

紫苑「かわいい水着のお披露目会です!」

火煉「行きましょう!」

レイト「じゃあ、行くか。」

 

 俺たちは、テントから外に出る。

 紫苑は露出の高いビキニ、朱菜と火煉が可愛いらしいフリルの水着、蒼華はワンピースの水着だった。

 それを見て、ゴブタは鼻の下を伸ばしていた。

 

レイト「よし!」

リムル「遊ぶぞ〜!」

 

 俺たちはそう言う。

 俺とリムルは、ラッシュガードの水着で、蒼月は普通に海パンだった。

 柄は、リムルは青と白の縞模様で、俺は紺色の無地だ。

 それを見た火煉達が叫ぶ。

 

火煉達「ええっ!?」

紫苑「って、リムル様!」

火煉「レイト様まで!?」

朱菜「なんですか、その水着!?」

リムル「なんか文句あるのか?」

レイト「良いだろ、これで。」

 

 なんで文句を言うの?

 こういうのが一番落ち着くんだよ。

 一方、胃袋の中から見ていたヴェルドラとイフリートは。

 

ヴェルドラ「おお、リムルにレイトめ。なんか楽しそうだな。」

イフリート「湖に遊びに来ている様です。」

ヴェルドラ「我はこんなところで黙々と、無限牢獄の解析に勤しんでいるというのに…………気楽なものだ。」

イフリート「………………長考中では?」

 

 ヴェルドラとイフリートは、そう話していた。

 ちなみに、現在、イフリートが王手を取っていた。

 すると、ヴェルドラは咳払いをして、画面を指差す。

 

ヴェルドラ「んんっ!うぉっほん!それはさておき、何だ?あの格好は!?」

イフリート「水着という物ですよ。人間などが水に入る際に着用する物です。」

ヴェルドラ「あやつら、普段はきっちり着込んでる癖に、丸出しではないか!」

イフリート「防御力も無いに等しいでしょうね。腹など狙われたら、致命的かと。」

ヴェルドラ「リムルとレイトは、ちゃんと防御してるなぁ。流石だ。」

イフリート「あまり見ない柄ですが…………テンペストサーペントか何かの擬態でしょうか?」

ヴェルドラ「まあ、リムルにレイトほどの者なら、防御も擬態も必要はないだろうがな。」

 

 ヴェルドラとイフリートは、そんな風に話していた。

 すると、話は変な方向に逸れ始めた。

 

イフリート「そもそも多くの魔物は、水着どころか、普段の衣服ですら、最低限ですからね。」

ヴェルドラ「うむ。」

イフリート「ところが、知性の高い上位種になる程、素肌を隠す傾向にあります。」

ヴェルドラ「ん?」

 

 イフリートがそう言うと、ヴェルドラは反応する。

 イフリートは、それには気づかず、説明を続ける。

 

イフリート「尤も、更に上位の魔人や魔王になると、逆に露出が増える場合もありますが、一般的には、衣服を身につけている事が、知性ある魔物の証とされておりますな。」

 

 イフリートは、そう説明する。

 すると、ヴェルドラが口を開く。

 

ヴェルドラ「そういえばイフリートよ。精霊のお主も下、履いておるな。」

イフリート「は?」

ヴェルドラ「うっ…………我も服、着ようかな。」

イフリート「え?」

 

 ヴェルドラは、知性があるのに服を着ていないことを気にしたのか、そう言う。

 それを見て、イフリートのヴェルドラに対する尊敬度が、少し下がった。

 一方、俺たちは。

 

リムル「さあ、準備体操!」

レイト「ちゃんとやるんだぞ。」

ゴブタ「うっす!」

レイト達「おいっちに!おいっちに!」

 

 俺たちは、準備体操を始めていた。

 すると、火煉達が話しかけて来る。

 

紫苑「リムル様!レイト様!」

火煉「なんでこれとか!」

朱菜「これを!」

火煉達「着てくれないんですか!?」

紫苑「可愛いのに〜!」

 

 そう言って、朱菜達は、水着を取り出す。

 ただそれは、女物で、しかも、火煉達よりも露出度が高い。

 前世で男子大学生だった俺からしたら、マジできつい。

 今の俺の見た目は、シズさんやリムルをベースにして、中性的で、髪の色が紺色にオレンジのメッシュが入った感じの見た目だからな。

 TUREのギフテリアンになった結果、こうなった。

 

ゴブタ「え?」

リムル「なんで俺たちのが、お前らより派手にひらひらしたり、露出してたりするんだよ。」

レイト「なんで着させようとすんの?」

紫苑「皆の水着は、ガルム氏とドルド氏が丹精込めて作った特注ですよ!」

火煉「そうですよ!」

 

 火煉達曰く、ガルムとドルドの2人はこう言ったそうだ。

 

ガルム「ここのラインがね、良いんだ!大胆でキュート!女の子の魅力を引き立てるデザインさ!」

ドルド「決して、やらしい意味ではなく。」

 

 絶対にやらしい意味だろ。

 だからって、俺らに着させようとするんだよ。

 

紫苑「ねちっこく説明してくれました。」

リムル「あのおっさんども……………。」

ゴブタ「職人っすねえ。」

レイト「ていうか、それを聞いて、よく着る気になったよな。」

ゴブタ「では、間を取って、紫苑さんか火煉さんが着てはどうっす?そうすれば、ガルムさん達も浮かばれるっすよ!」

火煉「え?」

ゴブタ「さあ!さあ!さあ!」

 

 ていうか、ゴブタはゴブタで、それをよく堂々と言えるよな。

 流石に止めるか。

 

リムル「いや、紫苑だと、色々はみ出してやばい。」

レイト「火煉もな。」

ゴブタ「おっぱいのない人たちは黙ってて下さいっす!!

 

 それをゴブタが言った瞬間、俺とリムルのキック、紫苑と火煉のパンチが炸裂して、ゴブタは湖に吹っ飛ばされる。

 俺と火煉、リムルと紫苑は、グータッチをする。

 そんな中、朱菜は蒼華に話しかける。

 

朱菜「あ…………?蒼華さん。どうしたんですか?」

蒼華「え…………いえ…………。私と蒼月は、護衛として付いてきたので、こう言う格好は…………。」

蒼月「僕たち、浮いちゃってませんかね?」

朱菜「まぁ!まぁ!んまあ!初々しい!!」

 

 蒼華と蒼月は、自分の翼で体を隠しながらそう言う。

 朱菜はそう言って、蒼華の手を握り、2人にも話しかける。

 

朱菜「心配することはありませんよ!とっても良くお似合いです。それに、今日は遊びなんですからそんな緊張せずにリラックスしてください。貴方はしなやかでとても素敵です。蒼月さんも、素敵ですよ。」

蒼月「朱菜様……………。」

蒼華「あっ……………。」

 

 朱菜はそう言う。

 それを聞いた蒼華と蒼月は、満更でもない表情を浮かべる。

 だが、そんな空気をぶち壊す傍若無人な声がする。

 

ゴブタ「そうっすよ!お尻とかすっごく綺麗じゃないっすか!尻尾ってどうしたんす?」

 

 ゴブタだ。

 それを聞いた蒼華と蒼月は、蒼華は突き飛ばし、蒼月はボレーキックを叩き込み、ゴブタは再び湖へと飛ばされる。

 一方、それを見ていたシズさんは、白老に声をかける。

 

シズ「……………白老さん。ゴブタ君を回収してきてください。」

白老「承知ですぞ。」

 

 そう言って、白老はゴブタを回収して、シズさんの魂が入ったバイスタンプの前に置く。

 シズさんの魂が入ったバイスタンプからは、ドス黒いオーラが出る。

 

ゴブタ「ひっ…………!?」

シズ「ゴブタ君?前からずっと思ってたんだけど、そういう発言は良くないよ。ね?」

 

 シズさんは、ゴブタに説教を開始した。

 その説教後、ゴブタは大きく声を出す。

 

ゴブタ「あ〜!準備運動終了!さぁ!遊ぶっすよ〜!」

リムル「…………お前、タフだな。」

レイト「あんなに怒られたのに。」

ゴブタ「フン!タフでなければ、女の子と遊べないっす。」

 

 ゴブタの奴、懲りねぇな。

 そう呆れながら見ていると、ゴブタは女性陣の方に向かう。

 

ゴブタ「いっざー!」

紫苑「ウッフフ!それ〜!」

火煉「ふふふっ!はい!」

ゴブタ「あはははは!うん?あああ〜!!」

 

 すると、紫苑と火煉の2人が起こした水柱によって、ゴブタは宙に飛ぶ。

 

蒼華「冷たっ!やりましたね〜!」

ゴブタ「うぶっ!うぶっ!うぶっ…………!」

 

 次は、蒼華がお返しとばかりに返すと、ゴブタごと水を裂く。

 ゴブタは、石ころみたいに吹き飛ばされる。

 

朱菜「フフフフ!それ!それ!」

ゴブタ「ああああ!!あああ〜……………!」

 

 最後に、朱菜が魔法で、紫苑と火煉が出した水柱よりも高い水柱を出して、ゴブタは天高く飛び、水面に叩きつけられる。

 これには、流石にゴブタに同情した。

 激しい戦闘をしている様にしか見えないが、楽しんでいるのだろう。

 俺とリムルは、ゴブタを回収する。

 

リムル「うぃ……………。」

ゴブタ「こっ、これが、上位ランクの世界……………。」

レイト「もうよせ。お前はよくやったよ。」

 

 俺とリムルはそう言って、ゴブタを搬送する。

 

ゴブタ「オロロロロロロロ………………。」

 

 地面に置くと、ゴブタは口から水を出す。

 その様子は、マーライオンのごとく。

 少し大袈裟だな。

 そう思う中、リムルは白老に声をかける。

 

リムル「あーあ…………白老は泳がないのか?」

白老「ホッホッホッホッホ。老耄に冷や水は、ちと酷でしてな。若い者のようには、はしゃげませんわい。今日は、釣り糸を垂らして、のんびり湖を眺めようと思いますのじゃ。言うなれば、命の洗濯ですな。」

レイト「なーに、剣豪様が年寄り臭い事を…………ん?」

 

 白老は、水着には着替えておらず、釣竿を持っていた。

 俺たちがそう話すと、でかい魚が俺たちの目の前をジャンプする。

 すると。

 

白老「時には年甲斐もなくはしゃぐのも…………ありですかな…………?夕食をお楽しみに。」

レイト「あれ、食えんの?」

リムル「本当だよな。」

 

 白老は、歴戦の強者の顔になり、釣りに向かう。

 俺たちはそう言う。

 その後、ゴブタがスイカを取り出す。

 

ゴブタ「うはっ!ちめてー!リムル様!レイト様!スイカ割りしましょうよ!」

リムル「おお!良いねぇ!」

レイト「皆、来てくれ!」

火煉達「は〜い!」

 

 俺たちは、火煉達を呼び戻して、スイカ割りをする事に。

 紫苑がスイカを割ることになった。

 紫苑は、スイカを探していた。

 

リムル「へいへーい!どしたよ紫苑さん!」

朱菜「頑張って!」

レイト「外すなよ〜。」

火煉「頑張って下さい!」

ゴブタ「もっと右っすよ!右〜!」

紫苑「う……………これは、想像以上に難しいですね。」

 

 まあ、それがスイカ割りの醍醐味だしね。

 すると、紫苑が何かを言う。

 

紫苑「スイカ…………スイカ…………スイカは丸い。丸いは……………リムル様。そう。スイカではなく、私の愛するリムル様のつもりで精神を研ぎ澄まして……………。」

 

 あれ、なんかサラッととんでも無いことを言ってないか?

 しばらくすると、紫苑が叫ぶ。

 

紫苑「そこか!」

 

 すると、空から剛力丸を出して、それを掴んで、地面に思い切り叩きつけ、スイカは爆発四散した。

 

紫苑「あれ?外してしまいました〜。てへっ!」

ゴブタ「え……あ……え……あ…………。」

朱菜「スイカは、爆発四散しましたよ。」

火煉「なんで剛力丸を出すの?」

レイト「つうか、なんかとんでもない事をサラッと言わなかったか?」

リムル「お前、俺のつもりでとか言ってたよな?」

 

 紫苑が周囲を見渡す中、俺たちは呆れ顔でそう言う。

 その後、各々で水遊びを満喫していた。

 蒼華は、砂浜に何か書いていた。

 

蒼月「あれ?蒼華?何を書いているんだい?」

蒼華「そ、蒼月!?な、なんでも無い!なんでも無い!」

蒼月「へぇ………………可愛いね。」

蒼華「やめて……………。」

 

 蒼月は、蒼華が何を書こうとしたのかを察して、揶揄いに行く。

 そんな中、俺は火煉と話していた。

 

レイト「改めて見ても、でっかい湖だよな。対岸が見えない。まるで海だ。」

火煉「私、海って見た事無いんですよね。塩辛いって本当ですか?」

レイト「しょっぱいさ。そして、でかい。ジュラの森よりもでかいんじゃないかな。」

火煉「そうなんですね。」

レイト「機会があったら、皆で行きたいもんだ。」

火煉「ですね。」

 

 俺と火煉は、そう話す。

 世界は広く、きっと楽しい。

 そんな中、リムルの叫び声が聞こえたような気がする。

 一方、樹人族(トレント)のもりでは。

 

ドリス「お姉様!そんなに慌てて、どこへ行くのです?」

トレイニー「Aランク越えの強力な集団が、不穏な動きを見せています。これは、他の種族にとって、大変な脅威。私が直接出向き、その者達と交渉して参りましょう。」

トライア「それなら、私たちも!」

 

 ドリスがそう話しかける中、トレイニーさんはそう言う。

 トライア達も付いて行こうとするが。

 

トレイニー「あなた達までここを離れたら、誰が森を管理するのですか!くっ…………万が一、私が戻らなくとも、ヴェルドラ様の命に従い、2人でこの森を守り抜くのですよ。」

ドリス「お姉様……………。」

トライア「どうか、ご無事で。」

トレイニー「森の治安の乱れは、この私が許しませんわ!」

 

 そう言って、トレイニーさんはどこかへと向かう。

 一方、俺たちは、蒼華と蒼月と共に、砂で和風のお城を作っていた。

 すると、ハイビスカスが落ちて来る。

 

レイト「ハイビスカス?」

リムル「あ?あ……………うわあっ!」

トレイニー「くっ……………!」

レイト「トレイニーさん?」

 

 何事かと思ったら、トレイニーさんが現れる。

 すると、トレイニーさんが口を開く。

 

トレイニー「リムル様、レイト様。勝手な行動は困りますね。」

リムル「勝手な行動?」

レイト「俺たち、何かした?」

トレイニー「たとえ、どんなに友好的であろうと、あなた方はAランク越えの強大な魔物。それが集団で行動するなど、他の種族が萎縮してしまいます。森の管理者として黙認出来ません。」

 

 トレイニーさんの言いたい事は分かる。

 まあ、俺たちって、強いからな。

 ただまあ、それは建前で、絶対に本音は違うだろ。

 俺とリムルは、蒼華とデモンズドライバーを装着する蒼月を抑えて、トレイニーさんに話しかける。

 

リムル「……………それで。」

レイト「本音は?」

トレイニー「……………また私を除け者にしようとしても、そうは行きませんよ〜!」

 

 そう。

 水着姿だったのだ。

 

リムル「うわ……………水着、似合いますね。」

トレイニー「さっき、『うわ…………』って言いましたよね?」

レイト「気のせいですよ。」

 

 リムルがそう言うもんだから、俺は誤魔化す。

 一方、白老の元に、ゴブタがやって来る。

 

ゴブタ「師匠!皆、あっちで楽しくやってるっす!こんな所で釣り糸垂らして待ち惚けなんて、勿体無いっすよ。」

白老「な〜に。眺めて待つのも一興よ。」

ゴブタ「へ?あー?」

 

 ゴブタの言葉に、白老はそう答える。

 すると、眼下の火煉達を見て、ゴブタはニヤニヤする。

 

ゴブタ「ほほ〜ん。師匠、実はムッツリだったんすね。いかにも目がスケベだし。」

 

 ゴブタがそんな事を言うと、白老はゴブタを睨んで、ゴブタは即座に逃走する。

 ゴブタが逃げた後、白老は湖の方を向いて、笑みを浮かべる。

 すると、浮きが沈む。

 

白老「たっ!うーやあー!!」

 

 白老は、でかい魚を一本釣りした。

 一方、テンペストのスナック樹羅では。

 

ヤシチ「あ〜あ。俺たちもおっきい湖、行きたかったなあ……………。」

ガビル「何故だー!何故リムル様とレイト様は、この陸海空を駆けるオールラウンダーな我輩ではなく、蒼華と蒼月をお供に…………!」

スケロウ「オールラウンドなのは、蒼華様も蒼月様も同じだぜ、ガビル様。」

 

 ヤシチがそう言う中、ガビルはそう叫んで、スケロウがそう言う。

 ガビルは、涙を目に浮かべながら言う。

 

ガビル「ああ…………最近どんどん蒼華と蒼月が遠くなってる気がする。『兄様!兄様!』とヨチヨチついてきたあの可愛い蒼華に、我輩を慕っていたあの蒼月が…………!」

スケロウ「記憶を捏造してるぜ、ガビル様。」

ガビル「あ〜!」

ヤシチ「飲み過ぎだよ、ガビル様。」

カクシン「しかり。」

 

 ガビルは、捏造した記憶を見る中、ヤシチはそう話しかける。

 すると、ガビルは叫ぶ。

 

ガビル「ええい!優秀な妹に兄の気持ちに、優秀な幼馴染を持つ男の気持ち、お前達には分かるまい!お姉さん、ミルクをもう一杯。」

ハルナ「はい。あ…………。」

ガビル「お…………。ん?」

紅丸「……………フッ。」

 

 ガビルがそう頼むと、横から飲み物がやって来る。

 紅丸が渡してきた物だった。

 紅丸は、サムズアップをする。

 一方、俺たちは、白老が釣った魚を見ていた。

 

一同「おお〜!」

朱菜「これは食べ応えがありそうですね!」

レイト「さすが、白老だ!」

リムル「さて、どうやって頂くかな?」

紫苑「お料理、お手伝いしますよ!」

一同「っ!?」

紫苑「せっかくの景色の中でのお食事ですから、腕が鳴ります。」

 

 やばい、紫苑に料理をさせると、死体が転がる!

 それだけは避けねば!

 すると、蒼華達が話しかける。

 

ゴブタ「紫苑さん!綺麗な貝殻を見つけたっす!」

蒼華「紫苑さん!えっ…………と、戦いのお話し聞かせてください!」

蒼月「自分にも聞かせてください!」

嵐牙「紫苑よ!今こそ一緒にタッグ技を研究しようではないか!」

トレイニー「一緒に揚げ芋を食べません?」

リムル「紫苑…………俺、お前と少し、湖畔をお散歩したいかな。」

 

 そう言って、紫苑は遠ざける。

 俺は、火煉に話しかける。

 

レイト「火煉、朱菜の手伝いをしてくれ。」

火煉「分かりました。」

 

 俺は火煉にそう言う。

 その後、無事に料理が完成して、俺たちは食べる事に。

 

リムル「ひゃー!美味い飯だなぁ!」

レイト「うまうま。」

ゴブタ「んん……………魔魚!絶品っすね!」

朱菜「ウフフ。皆さんのご協力の賜物です。」

火煉「ええ。」

紫苑「私、何もしてませんが……………。」

一同「いやいやいやいや!はっはっはっー!」

 

 紫苑がそう言う中、俺たちは揃ってそう言う。

 お前は料理に関しては、何もしない事が協力になるんだ。

 悪く思うな。

 その後、女性陣はテントの中で酒を飲みながら話していた。

 

蒼華「でもでも!蒼影様、苦無で田植えの真似をしていて…………。」

朱菜「まぁー。うっふふ。そんなことが。」

火煉「蒼影、意外と可愛い所がありますね。」

 

 蒼華の言葉に、朱菜と火煉はそう言う。

 すると、既に酔った様子の紫苑が話しかける。

 

紫苑「ねぇねぇ。蒼華は蒼影の事、好きなんですか〜?」

 

 それを聞いた蒼華はお酒を吹き出して、咽せる。

 

蒼華「んぐっ!わ…………私は、あくまで戦士として憧れているだけで…………。」

紫苑「アイツ、性格悪いからやめた方がいいですよ。」

蒼華「え?」

朱菜「あら?そんなことはありませんよ。」

火煉「確かに、蒼影は無愛想ですが、心根は優しく、誠実で頼もしい人ですよ。憧れるのは当然ですよ。」

紫苑「え〜、そうですかぁ?」

 

 紫苑の言葉に、朱菜と火煉はそう言う。

 それを聞いていた蒼華は。

 

蒼華(…………同郷の朱菜様達のお話は、あのお方への深い理解が伺えて……………。)

 

 蒼華は、そんな風に思っていた。

 羨ましく思っているようだ。

 すると、朱菜の声がする。

 

朱菜「でもまあ、一見そう見えますけど……………。」

火煉「それに騙された、という噂も、枚挙に暇がないですけどね。」

紫苑「あっはははは!絶対女を泣かせてますよあの鬼畜。」

蒼華(聞きたくなかったかなあ…………。)

 

 蒼華は、そんな事まで知ってしまい、顔を背けて、涙を流す。

 一方、テンペストの蒼影の自宅では、蒼影が苦無を投げていた。

 すると、紅丸が声をかける。

 

紅丸「おっ。珍しくのんびりしてるな。」

蒼影「ああ。リムル様とレイト様が居ないからな。」

 

 紅丸がそう声をかけると、蒼影はそう返す。

 紅丸は、棚からコップを取り出す中、蒼影に言う。

 

紅丸「お前って……………昔から仕事は出来るけど、別に真面目って訳じゃないよな。」

蒼影「要領がいいと言え。万一の事を考え、リムル様には蒼華を、レイト様には蒼月をつけておいた。あいつらは、俺の配下の中で手練だ。今頃、蒼華は紫苑辺りに弄られて、半べそかいているだろうな。」

紅丸「お前って、相変わらず気に入ったやつほど追い詰めるよな。」

蒼影「フッ。……………愛が深いと言え。」

 

 紅丸の言葉に、蒼影は笑みを浮かべながらそう言う。

 一方、女性陣が寝静まり返った後、俺、リムル、シズさん、白老、嵐牙、トレイニーさんは話していた。

 ちなみに、蒼月はもう寝た。

 

トレイニー「さあ、どうぞもう一杯。」

白老「やや、これは恐縮。」

リムル「それ、店で一番上等な酒じゃ………。」

レイト「なんで持ってきてんの?」

トレイニー「まあまあ、リムル様もレイト様もお酒が足りませんね。」

 

 本当に、なんで持ってきてんの?

 すると、白老が感慨深く言う。

 

白老「樹妖精(ドライアド)様のお酌とは、長生きはする物ですな。」

リムル「白老も店に来てみたら?」

レイト「気楽に笑える良い店だ。」

白老「ほう。では、いずれ。」

シズ「うん。皆、笑顔で溢れてて良いよね。」

トレイニー「確かに、皆さん、毎日よくお笑いになりますね。ただ、街は今、多くの勢力に注目されています。この先も…………明日も笑えるとは限りませんよ。」

 

 トレイニーさんは、そう言う。

 そう。

 俺たちのテンペストは、多くの勢力に注目されているだろう。

 いずれ、テンペストに攻め込む輩が現れてもおかしくはない。

 その時、俺は仲間を守れるのか。

 そんな不安に駆られる中、リムルは酒を飲んで言う。

 

リムル「その時ゃ明後日、倍笑うよ!」

トレイニー「……あら。」

白老「ほっほっほっほっほ。リムル様には敵いませんなあ。」

リムル「笑うことなら白老にだって負けないぜ。」

白老「ホッホッホッホ。こりゃ、一本取られましたな。」

レイト「リムルらしいな。そういう所は、見習うべきなのかな。」

シズ「そうだね。」

 

 俺たちはそう話す。

 ちなみに、女性陣のテントを覗こうとしたゴブタは見つかって、砂に埋められた。

 その翌朝、俺たちは起きて、日の出を見る。

 また、新たな1日が始まる。

 未来は確かに真っ暗で、何が起こるか分からない。

 その未来には、希望もあれば、絶望もある。

 それでも、リムルみたいにポジティブにいれば、どうにかなる……………かもしれない。

 

ゴブタ「気持ちのいい朝っすね〜!」

リムル「タフだねぇ、お前。」

レイト「全くだ。」

紫苑「お腹が空きました〜。」

火煉「ですね。」

朱菜「すぐ朝食の準備をしますね。」

リムル「よし。飯食ったら、帰り支度するか。」

ゴブタ「えー!もう帰るんすか?」

レイト「当たり前だ。」

紫苑「じゃあ最後に、この水着を…………。」

リムル「やなこった。」

火煉「レイト様も…………。」

レイト「断る。」

 

 俺たちはそう話す。

 夏のひと時は、また過ぎていく。




今回はここまでです。
今回は、とある湖の畔でのお話です。
ヴェルドラとイフリートは、相変わらずのやり取りです。
レイトが懸念した出来事は、この時のレイトからしたら、本当に起こるなんて、思わなかった事でしょう。
レイトとリムルは、互いに影響を与え合う関係だと思います。
レイトはリムルの前向きさを、リムルはレイトの覚悟を。
次回の転キメ日記は、夏祭りの話です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
転キメ本編は、人魔会談はアニメ版を基準にしたいと思います。
時折、漫画版の奴も混ぜますが。
そんなこんなで進めていきます。


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第5日記 再現ナツマツリ

 ある夏の日。

 俺たちは、会議室に集まっていた。

 理由は、リムルに呼ばれたからだ。

 リムルの真剣な表情に、皆が固唾を飲む。

 すると、リムルがテーブルに手を叩きながら口を開く。

 

リムル「この季節に、まだ足りない物がある。何か分かるか?」

リグルド「う……………分かりません。」

レイト「もったいぶらずにさっさと言え。」

リムル「それは……………夏祭りだ!」

リグルド「うぐっ……………!」

レイト「ああ…………。」

 

 リムルがそう言うと、リグルドは怯み、俺は納得する。

 夏祭りなんて、随分と久しぶりな気がするよな。

 そう思う中、リムルはリグルドに近寄る。

 

リムル「俺はこの街で、夏祭りをやりたい!」

リグルド「なっ!?ナツ…………マツ…………リ…………?」

レイト「まあ、ぶっちゃけて言えば、夏の宴会だよ。」

リグルド「宴……………!」

 

 リグルドは、夏祭りという単語に疑問符を浮かべていたが、俺のフォローに、笑みを浮かべる。

 やっぱり、宴会が好きな人が多いんだよな。

 

リムル「ふん。こんな物とか〜。」

リグルド「よーしきた〜!」

ガビル「いよ〜!」

リムル「こんな物とか!」

火煉達「はぁ〜……………!」

リムル「こんなものをやる!」

一同「おお!」

 

 リムルはそう言って、木の板に書いた盆踊りや出店そして打ち上げ花火を絵で説明した。

 皆初めて見るものばかりで興味津々だった。

 俺はそれを見て、口を開く。

 

レイト「準備期間は1週間だ。出来るか?」

リグルド「はっ!我ら一同に………!」

一同「お任せください!」

リムル「よし!皆の全力を見せてくれ!」

一同「はい!」

 

 こうして、魔物達の全力の準備が始まる。

 色んな所で、準備が進められていく。

 ガルムとドルドは、垂れ幕やら提灯を作成していた。

 

ガルム「ふぅ…………。」

ドルド「う〜ん……………?」

ガルム「おっ。」

ドルド「うん?」

ガルム、ドルド「これは……………流行るっ!」

 

 作業する中、浴衣やら装飾が描かれた木の板を持ちながら、そう確信する。

 そんなこんなで作業は順調に進み、俺たちが視察する頃には、櫓も上手い具合に出来ていた。

 この街は、宴によって進化し続けるのだろう。

 俺は、そう思った。

 そうして、祭り当日の昼。

 

リムル「ほお〜!凄いなあ!」

レイト「良い感じだな。」

リムル「うむ!」

紫苑「屋台の準備も、ほぼ終わっております。」

リムル「おお〜!お面屋!懐かしい〜!」

レイト「どういうのがあるのか、見に行くか。」

火煉「はい。」

 

 俺たちは、屋台を見て回る事に。

 お面屋には、スライムのリムルのお面がたくさん置かれていた。

 

リムル「うん?」

レイト「どうした?」

リムル「俺が言うのもなんだけど……………不気味だなぁ………………。」

 

 リムルはそう言いながら、体を震わせる。

 まあ、紅丸とかがこれを着けると、確かに怖いよな。

 ちょっと揶揄うか。

 

紫苑「フッフフ……………不気味だなんて。」

リムル「ん?うわあーーっ!?」

レイト「そう言うなよ。」

朱菜「そんな事無いですよ〜。」

レイト達「フフフフフフフ………………。」

 

 俺たちは、リムルのお面をつけながら、リムルを見て、不気味な笑いをする。

 揶揄う事ができて、俺は満足した。

 その後、着物があると言うので、俺たちは着付けをする事に。

 

ハルナ「はぁ〜……………!紫苑さん!」

朱菜「リムル様……………!」

火煉「レイト様……………!」

火煉達「可愛い〜!」

 

 三人は、そう言ってくる。

 

リムル「えへへ……………やっぱり女物。」

紫苑「フフフフ。」

レイト「女物かぁ………………。」

 

 そう。

 俺とリムルも、女物の着物を着せられていたのだ。

 ちなみに、帯の所にバイスタンプホルダーをつけており、シズさんの魂が入ったバイスタンプを携帯出来るようになっている。

 

火煉「レイト様……………似合いますか?」

レイト「ああ。似合ってるよ。」

火煉「はい!」

朱菜「ん?」

リムル「朱菜は相変わらず似合ってるとして……………。」

朱菜「そんな〜……………。」

リムル「紫苑も、今日は何だか、楚々として見えるな。」

紫苑「ううう……………!聞いてください!胸にサラシをギュウギュウ巻かれたんです!」

 

 俺とリムルは、そう言う中、紫苑は涙を浮かべながらそう言う。

 まあ、紫苑って、胸が大きいしな。

 無理もない。

 すると、目元に影を浮かべた朱菜が言う。

 

朱菜「フフフフ……………私思ったんです。大きなお胸は着付けに邪魔……………大きなお胸は着付けに邪魔……………大きなお胸は、着付けに邪魔なんです。他意はありません。」

リムル「あっ…………う…………うん…………。」

レイト「そ、そうか……………。」

紫苑「うううっ…………苦しい……………。」

火煉「帯、緩めますね。」

 

 朱菜って、怒らせると本当に怖いな。

 ていうか、貧乳な事、気にしてるんだな。

 これ以上はやめておこう。

 それを聞いていた火煉は、気まずい表情を浮かべながら、紫苑の帯を緩める。

 一方、机の上に置かれていたバイスタンプの中のシズさんは。

 

シズ「アハハハ………………。」

 

 苦笑を浮かべていた。

 シズさんも、胸は大きい方なので、気まずく感じたのだろう。

 その後、俺たちは街へと向かう。

 街は、着物を着た人たちで盛り上がっていた。

 日本の夏祭りを可能な限り再現する。

 それが、今回のコンセプトだ。

 

朱菜「食べ物などは、普段の屋台売りでも応用出来そうですね。」

リムル「そうだな。」

 

 朱菜とリムルはそう話す。

 そんな中、俺たちはたこ焼きの屋台へと到着する。

 朱菜と火煉が、ゴブイチからたこ焼きを受け取り、俺たちに渡す。

 

朱菜「こちらも、試行錯誤の末、何とか再現できたんじゃないかと思います。」

火煉「どうぞ。」

リムル「うっひょ〜!たこ焼きだ!」

レイト「ありがとう。」

朱菜「熱々をお楽しみ下さい!」

 

 そう言って、俺たちはたこ焼きを受け取る。

 久しぶりだな。

 たこ焼きを食べるのは。

 まあ、たこ焼き擬きだがな。

 俺とリムルは、たこ焼きを頬張る。

 やっぱり、たこ焼きは美味いよな。

 それにしても、ここは海なんてないから、どうやってタコを手に入れたのだろうか?

 チラリと見ると、何か、とんでもない物が見えた気がする。

 それを見て、一瞬で悟った。

 リムルには、知られない方がいいと。

 すると、シズさんが話しかける。

 

シズ「どうしたの?何か見たの?」

レイト「いや、何でもない。」

シズ「そっか……………それにしても、美味しそうだよね。食べられないのが残念だけど。」

レイト「何とか、体の作成は順調に進んでるから。」

 

 俺とシズさんは、そう話す。

 リムルは、タコの代わりに入れられている物を見ようとするが、朱菜が阻止する。

 一方、ガルムとドルドは。

 

ガルム達「フフフフ……………。」

 

 そんな風に、目に隈を浮かべながらも、笑みを浮かべていた。

 その視線の先には、リリナとハルナが居た。

 

ハルナ「はい!どうぞ!」

リリナ「まあ!ありがとう、ハルナさん。ウフフフフフ……………。」

ハルナ「いいえ〜。気にしないでください。ウフフフフフ……………。」

 

 ハルナはリリナにリンゴ飴を渡して、そんな風に話す。

 それを見ていたガルムとドルドは。

 

ガルム「良いなあ、兄弟。」

ドルド「ああ。」

男の子「ああ………………。」

ガルム達「イケる!」

男の子「イケる……………。」

 

 ガルムとドルドがそう話す中、男の子も見ていて、そう言う。

 その後、紅丸、火煉、紫苑と合流して、かき氷屋に向かう。

 

リムル「ここが、俺とレイトのプロデュースの店!」

紅丸「かき氷?この時期に氷なんてあるんですか?」

リムル「ん!」

紅丸「あ……………。」

レイト「まあ、食ってみな。」

紅丸「ああ……………ありがとうございます!」

 

 俺とリムルは、かき氷を紅丸達に渡す。

 4人は、かき氷を食べる。

 

火煉達「はむっ。」

紅丸「おおっ……………!冷たい!そして甘い!」

リムル「うんうん!」

朱菜「う〜ん……………ああ……………!」

紫苑「氷がまるで雪のようにフワフワです。」

火煉「美味しい……………。」

レイト「かき氷機の刃は、黒兵衛謹製だからな。」

 

 気に入ってもらえて、嬉しいよ。

 すると、黒兵衛が話しかける。

 

黒兵衛「リムル様!レイト様!氷の補充をお願いするべ!」

リムル「おっしゃい!」

レイト「分かった!」

 

 黒兵衛にそう言われて、リムルはスライムの姿に戻り、俺は火煉にシズさんのバイスタンプを一旦預けて、オストデルハンマーを取り出す。

 オストデルハンマーは改良を重ねており、今では、吸収者(トリコムモノ)と併用する事で、対象を叩かなくても、必殺技が発動可能になった。

 流石に、一度使った事があるか、取り込んだ物に限定されるが。

 オストデルハンマー50のオストデルノックを押す。

 

レッツイタダキ!

 

 音声が流れて、俺は内部の氷をセレクトする。

 

ネイチャー!イタダキ!

 

 そして、俺は、オストデルハンマーのトリガーを引く。

 

エレメント印!オストデルクラッシュ!

 

リムル「水氷大魔散弾(アイシクルショット)!」

 

 俺とリムルは、それぞれのスキルや必殺技を使って、桶に氷を出す。

 俺とリムルが着地すると、皆が歓声を上げる。

 一方、氷の出自を知った紅丸は、固まっていた。

 

紅丸「うっう……………。」

リムル「黒兵衛!俺の分も頼む!」

レイト「俺も頼むよ。」

黒兵衛「はいだべ!」

 

 俺とリムルが、黒兵衛にかき氷を頼む中、紅丸は呟いた。

 

紅丸「これ……………食べて大丈夫な氷なんですか?」

リムル「え?ダメなの?」

紅丸「腹、凍りませんかね……………。」

紫苑「美味しければ問題ありません。」

火煉「ですね。」

朱菜「ええ。」

シズ「こういう使い道があるなんてね…………。」

 

 紅丸達はそう話す。

 

リムル「そして、俺の一押しはこれだ!」

男性「おお〜!」

女性「青い!?」

 

 そう言ってリムルが出したのは青いシロップのブルーハワイだった。

 良く再現できたな。

 

リムル「この鮮やかな青を再現するのは至難だったなあ。ちなみにこれはブルーハワイと言って…………あ?」

 

 リムルがそう言う中、周囲の人たちの様子がおかしい。

 

男性「これは、リムル様の色だ!」

男性「おぉ〜!確かにそうだ!」

女性「空の色の様に清々しくて雄大で冷たい氷と優しい甘みが心地良い…………。」

男性「まさにリムル様!」

女性「リムル様味!?」

一同「リムル様…………味!」

 

 ああ、そうなるか。

 まあ、ブルーハワイの色味とリムルの色味って、似てるもんな。

 それを聞いていたリムルは、恐怖で顔を引き攣らせていた。

 すると。

 

紫苑「あら〜…………。」

朱菜「本当に…………。」

リムル「お?」

紫苑「リムル様って……………。」

朱菜「美味しいんですね〜。」

朱菜達「フフフフフフフ……………。」

 

 紫苑と朱菜はそう言って、リムルのお面を被りながら笑みを浮かべる。

 周囲の人たちも、リムルのお面をつけていた。

 俺とシズさんは、リムルに話しかける。

 

レイト「リムル、大丈夫か?」

シズ「スライムさん、大丈夫?」

リムル「時々、こいつらが怖い。」

シズ「アハハハ………………。」

 

 まあ、スライムって、本来は捕食される立場だからな。

 無理もない。

 その後、俺とリムルは、散策していた。

 勿論、シズさんも連れて。

 

ヤシチ「さあさあ!寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!英雄ガビルとデスパンダの死闘!」

リムル「色んな店があるなぁ。」

レイト「ああ。賑やかだな。」

シズ「うん。皆、楽しそう。」

 

 そんな風に俺たちは散策をする。

 ちなみに、ガビルの所は、本来は、勇者にする予定だったらしいが、シズさんに止められた結果、今に至る。

 シズさん曰く、魔王と勇者は、特別な存在らしい。

 しばらくすると、金魚すくいのエリアに着く。

 

リムル「白老が金魚すくい屋かあ。」

レイト「雰囲気あるね。」

ゴブタ「自分も手伝ってるっすよ!」

白老「ホホホホホ…………。中々に集中力のいる遊びですな。何なら、指南しますぞ。」

リムル「なーに。俺はその昔、”音速のポイ”と呼ばれていたんだ。見てろ〜!」

シズ「頑張って、スライムさん!」

レイト「頑張れよ。」

 

 そうして、リムルが金魚すくいに挑戦する事に。

 

リムル「ふんっ!」

ゴブタ「うちの金魚は、生きが良いっすよ〜。」

リムル「まずは一匹。」

 

 リムルはそう言いながら、金魚を掬おうとする。

 すると、とんでもないサイズの金魚が現れる。

 

リムル「とあぁ〜!」

レイト「デカっ。」

シズ「………………。」

リムル「今の何っ!?」

ゴブタ「フン……………気を抜くと、指を持っていかれるっすよ。」

白老「ああいう時はまず、ポイの峰で急所を突くのですじゃ。」

 

 ポイの峰で急所を突くって、前世では聞かないワードなんだけどな………………。

 それには、俺、リムル、シズさんは、苦笑を浮かべるしかなかった。

 

子供「さっきのお魚、おっきかったねえ。」

子供「でも、前の方がもっと大きかったよ〜。」

レイト「え?」

ゴブタ「お客さん、もっかいどうっす?次は上手くとれるかもしれませんよ!」

白老「ハハハハハ!何事も鍛錬ですじゃ。」

 

 異世界の金魚、怖えな。

 そんな中、大通りでは、蒼影、蒼華、蒼月が歩く中、ゴブト達が射的を経営していた。

 

ゴブト「さあさあ!寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!」

ゴブチ「射的はいかが〜?豪華賞品が当てるだけで貰えるよ〜。」

ゴブト「特賞は、一分の一リムル様〜!等身大だよ〜!あのリムル様を好きなように出来ちゃうよ〜!」

 

 ゴブトとゴブチがそう言う中、蒼影はクナイを取り出して、ぶん投げる。

 それは、景品の一つに当たった。

 

人たち「おお〜!」

ゴブト「えええ……………!?」

蒼華「流石は蒼影様!百発百中ですね!」

蒼月「お見事です!」

 

 人たちが歓声を上げ、蒼華と蒼月がそう言う中、ゴブトがクナイが刺さったガビルの人形を持ちながら、蒼影の方に来る。

 

ゴブト「ちょっとー!本物の武器、投げつけないで下さいよ!これあげますから、お引き取り下さい!」

 

 ゴブトはそう言いながら、人形を蒼影に渡す。

 その人形を見ていた蒼影は、顔を顰めつつ、蒼華に話しかける。

 

蒼影「これはお前にやろう。」

蒼華「えっ!」

 

 蒼影はそう言って、蒼華に人形を渡して、去っていく。

 蒼華は嬉しそうにしている中、蒼月はぼそっと呟いた。

 

蒼月「それ……………君のお兄さんの人形なんだよ?」

 

 そう呟いていた。

 後日、アビルの元に、蒼華の手紙が来た。

 

蒼華『前略。父上様。生まれて初めて、殿方から贈り物を頂きました。』

 

 そう書かれていたが、蒼月の描いた人形の絵を見て、アビルはこう呟いた。

 

アビル「そのぶっ刺された人形は、お前の兄なんだがなあ……………。」

 

 アビルがそう呟いた事を、蒼華は知らない。

 一方、俺たちは。

 

リムル「くっそー。全然取れなかった。」

レイト「いや、あんな金魚が居るなんて、聞いてないしな。」

シズ「無理もないよ。」

 

 俺たちはそう話す。

 すると、ある店が目に入る。

 つたくじという店で、トレイニーさんが居た。

 

リムル「つたくじ?」

レイト「トレイニーさん?」

トレイニー「あっ、リムル様、レイト様、シズ殿。つたくじ、遊んでいきませんか?よく当たりますよ。」

シズ「……………樹妖精(ドライアド)様が祭りの屋台でくじ引きって、凄い光景だよね……………。」

 

 トレイニーさんの言葉に、シズさんはそう言う。

 まあ、無理もない。

 

トレイニー「ウフフフフフ……………街の今後を占う意味で、一回どうです?」

リムル「占うって……………。」

レイト「ポテチじゃないっすか。胡散臭いな……………。」

トレイニー「あらあら。胡散臭くなんてありませんわ。さあさあ、どうぞどうぞ。」

リムル「ん〜……………んじゃ、うすしおでも。当たれ!」

 

 本当か?

 街の今後を占うというよりは、どのポテチが当たるかってだけだろ。

 リムルがそう言いながら、蔦を引くと。

 

トレイニー「きゃー!」

リムル「あ?」

トレイニー「んんん〜……………。」

レイト「……………何してんすか?」

トレイニー「はっ……………あっ、すみません。びっくりしまして……………。流石は盟主様、欲張りですね。ですが、私は景品ではありませんよ。さあさあ、もう一度どうぞ。」

 

 リムルが引くと同時に、トレイニーさんは身悶える。

 まさかとは思うが………………。

 

レイト「その蔦……………体にくっついているんですか?」

トレイニー「え……………?そ……………そんな訳ありませんわ……………。」

リムル「へぇ……………。じゃあ今度は…………これ。」

 

 何考えてんだ、この人。

 リムルは訝しみながらも、別の蔦を引く。

 すると。

 

トレイニー「ああ〜!そこはダメです!弱いんです〜!」

リムル「これ、本当に景品に繋がってるんですか?」

トレイニー「あ……………まあ、その…………絡まっちゃったみたい……………。」

レイト「ダメじゃないっすか。」

シズ「アハハハ……………。」

 

 絡まってるじゃん。

 どうすんだよ。

 その後、何とか俺が絡まりを解き、無事にポテチを手に入れた。

 リムルはうすしおで、俺はコンソメだ。

 一方、ゲルドとグルドは。

 

ゲルド「うーん……………!」

ココブ「う〜ん……………。うん。」

 

 ゲルドは魔獣退治という物をやっており、グルドはゲルドのサポートだ。

 

ココブ「えい!」

ゲルド「ん!」

 

 ココブという小さいゴブリンは、ボールを投げるが、ゲルドの足元に転がる。

 

ココブ「うう…………う…………うう…………。」

ゲルド「うっ、うーん……………。」

グルド「ゲルド様、俺に任せてください。」

 

 ココブは、泣き出しそうになっていて、ゲルドが困っていると、グルドがボールを拾う。

 

グルド「はい。」

ココブ「わあっ!エヘヘへ…………!」

グルド「もう一回やります?」

ココブ「わぁ〜…………!うん!」

ゲルド「うむ。」

 

 ココブは、グルドがボールを受け取って、もう一度投げる。

 すると、今度は胸の的に当たる。

 

ゲルド「フン!ガオ〜!」

 

 ゲルドは大袈裟にリアクションを取り、ココブは喜ぶ。

 それを、グルドは微笑ましく見守る。

 その後、盆踊りが始まろうとする。

 

子供「皆さん……………いよいよ、盆踊りが……………始まります。櫓のある広場に………集まってください。」

 

 子供のアナウンスが流れる中、ガビルははっぴを着る。

 

ガビル「シュッ!諸君!いよいよ、我輩たちの晴れ舞台であるぞ!」

部下達「おお〜!」

ガビル「いざ!ボンダ〜ンス!」

 

 そう言って、盆踊りが始まる。

 俺たちも踊る。

 そんな中、ガビルは独創的な踊りをする。

 まあ、独自解釈って事で良いか。

 しばらくして、踊り終えると、ガビルがやってくる。

 

ガビル「リムル様!レイト様!ハァ……………いかがでしたかな?我らの踊りは…………!」

リムル「あっ?ああ…………お前ら、ここに居たのか。」

ガビル「えっ!」

リムル「良かったな!皆と踊れて。楽しかったよな。」

ガビル「ガビール!」

 

 お前って、ナチュラルに毒を吐くよな。

 流石に可哀想だったので、褒めておくか。

 

レイト「まあ、独自の踊りをしてて、よかったよ。」

ガビル「レイト様〜〜〜っ!!」

 

 俺がそう言うと、ガビルは俺に抱きつく。

 やめろ、苦しいから。

 一方、嵐牙は建物の上から祭りを見下ろしていた。

 すると、ハルナが嵐牙に話しかける。

 

ハルナ「嵐牙さ〜ん!」

嵐牙「ん?」

ハルナ「たこ焼き買ってきましたよ〜。」

リリナ「もちろん、薄味、ネギ抜きです。」

嵐牙「おお!良いのか!?」

 

 嵐牙はそう聞くと、ハルナ達の前に着地する。

 

ハルナ「フフフフ。熱いから、気をつけてくださいね。」

嵐牙「はうっ!あうっ!あうっ!」

ハルナ「大丈夫ですか?」

嵐牙「ハフハフハフハフ…………くぅん。」

 

 嵐牙は、熱々のたこ焼きに驚くが、食べる。

 そして、口を開く。

 

嵐牙「宴も祭りも、皆を一つにする。」

 

 嵐牙はそう言う。

 その後、二つの山車があった。

 片方はリムルの、もう片方は俺のねぶただった。

 

リムル「こんなの作ってたのか。」

リグルド「リムル様はこちらに、レイト様はこちらに乗ってください。」

 

 そう言われて、リムル、朱菜、紫苑と、俺、シズさん、火煉に分かれる。

 

リグルド「お掴まり下さ〜い。」

男性達「そーりゃっ!よいやさ!ほいさ!」

 

 リグルドがそう言うと、力自慢のボブゴブリンと猪人族が二つの山車を引っ張る。

 

人たち「リムル様〜!レイト様〜!」

 

 山車が通る中、皆が歓声を上げる。

 すると、火煉が話しかける。

 

火煉「レイト様。応えてあげて下さい。」

レイト「ああ。」

 

 そう言われて、俺は手を振る。

 なんか、慣れないな。

 シズさんが話しかける。

 

シズ「スライムさんもキメラ君も人気だね。」

レイト「なんか…………慣れないな。申し訳なさとかもあるし。」

火煉「上に立つ者の責務みたいな物です。」

 

 そういうもんか。

 まあ、いずれは慣れるか。

 その後、山車から降りて、皆で黒兵衛とカイジンの花火を見る事になった。

 もう帰れないからこそのノスタルジーか。

 夏の祭りは、リムルの我儘であるのと同時に、俺の我儘でもある。

 かつて、父さんと一緒に夏祭りに行って、よくはちゃめちゃした物だ。

 焼きとうもろこしを食べたり、かき氷を食べてキーンとなったり、射的をしたり。

 そんな思い出を忘れたくなくて、リムルの我儘にも賛同したのだろう。

 すると、シズさんが話しかける。

 

シズ「こんな感じなんだね、夏祭りは。」

レイト「ああ。これが戦争が終わって、皆が平和になった証かもしれないな。」

シズ「……………この光景を、お母さんにも見せたかったな……………。」

レイト「シズさん……………。」

 

 シズさんもそう思っているのだろう。

 すると、花火が打ち上がる。

 花火のようにパッと開き、サッと消えていく。

 それもまた、夏の風情だろう。

 この街の未来が、どうなるのかは分からない。

 繁栄していくのか、人間によって滅ぼされるのか。

 未来は、未だに暗闇の中だ。

 ただ、今この時だけは、そんなしがらみを忘れて、楽しむ。

 それで良いのかもしれない。

 そして、俺、リムル、シズさんは、自然と口が開き、言う。

 

「「「た〜まや〜!」」」

紫苑「あの…………リムル様、レイト様?」

火煉「たまやって何ですか?」

リムル「アハハハ〜何だっけ?忘れた。」

レイト「俺も。」

 

 そう言う中、紫苑と火煉がそう聞いてきて、俺たちはそう答える。

 花火が上がり、皆が歓声を上げる。

 

黒兵衛「一気に行くべ。」

作業員「はい!」

 

 黒兵衛と作業員がそう話す。

 花火が上がる中、カイジンは言う。

 

カイジン「今年の夏は、こいつで……………打ち止めだ。」

 

 カイジンはそう言って、ボタンを押す。

 すると、一際大きい花火の筒から、花火が打ち上がり、俺とリムルの顔が夜空に咲く。

 街からも歓声が上がる。

 

黒兵衛「ふんっ!」

カイジン「お疲れ!」

 

 黒兵衛とカイジンは、そんな風に腕を合わせる。

 2人のはっぴには、黒兵衛には『鍵屋』、カイジンには『玉屋』と書かれていた。

 その後、祭りは終わり、提灯の火も消された。

 

リムル「祭りが終わると、街の静けさが際立つな。」

朱菜「そうですね。」

レイト「ああ………………。」

 

 これもまた、祭りならではだろう。

 先ほどまであった喧騒が、静かになる。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「なあ。」

朱菜達「うん?」

リムル「空って、こんなに広かったか?」

 

 リムルがそう言うので、俺たちは空を見上げる。

 祭りが終わり、灯りが消えた事で、空の広さを感じる。

 すると、リグルドが話しかける。

 

リグルド「祭りはいかがでしたか?リムル様、レイト様。」

リムル「おう、リグルド!お疲れ〜。」

レイト「楽しかったよ。とても。」

リムル「こんなに楽しいなら、何度でもやりたいな!」

リグルド「ハハハ…………そうですなあ。では早速、次の宴の相談ですが……………。」

 

 え?

 リグルドの言葉に、俺たちは呆気にとられる。

 

リムル「え?もう決まってんの?」

リグルド「ええ!」

リムル「ああっ……………。」

リグルド「その次も、その次も…………ふふ。」

紫苑「楽しみですね!」

火煉「ええ!」

朱菜「早速準備しましょう!」

 

 リグルド達はそう言う。

 やっぱり、火煉達も我儘なのかもな。

 そう思うのだった。

 余談だが、紫苑が着物を着崩した際に、朱菜からとんでもないオーラが出てきた。




今回はここまでです。
今回は、テンペストでの夏祭りの出来事です。
テンペストでの夏祭りは、賑やかです。
レイトも、前世の夏祭りを思い出し、ノスタルジーを感じます。
次回は、お盆の話です。
シズさんに関する話をやる予定です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
シズさんも、リントに進化したことで、ユニークスキルを獲得しましたが、どういう感じにしましょうか?
一応、クロノアが暴走した際に、アルティメットスキルに進化します。


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第6日記 うつろいかわる

 ある夏の日。

 俺とリムルは、逃げ回っていた。

 

リムル「うわ〜〜〜っ!!」

レイト「何でこんな服装ばっかなんだよ!!」

 

 バニーガール姿で。

 その背後には、女物の服を持った朱菜、火煉、紫苑が居た。

 

朱菜「よくお似合いですよ!リムル様〜!レイト様〜!」

火煉「お次はこれを〜〜〜っ!!」

紫苑「まだまだありますよ〜!」

「「や〜だ〜〜〜〜っ!!!!」」

 

 俺たちは逃げ回る。

 どうしてこうなったのか。

 それを語るには、かなり遡らなければならない。

 ある日、皆を広場に集めて、俺たちは言う。

 

リムル「という訳で、明日と明後日は、”お盆休み”という街の祝日にする!」

 

 そう。

 リムルがお盆休みを制定しようとしていた。

 それを聞いたゴブタが質問する。

 

ゴブタ「お盆休み?何すか?それ。」

レイト「お盆ってのは、ご先祖様に感謝して、家族や一族の絆を確認する日だ。」

リムル「レイトの言う通りだ。うちは歴史の浅い街だが、暮らしている皆には、歴史があるだろう?」

カイジン「おお……………確かにな。」

ゲルド「うむ。」

グルド「そうですね。」

 

 まあ、この街の住人は、最初に会った時に居たゴブリン達を除くと、移り住んできた者が多いからな。

 リムルが口を開く。

 

リムル「一年に一度くらいは、家族や一族で宴を開き、自分たちの種族の成り立ちや家族、兄弟同士の昔話をしたりしてみてくれ。」

リグルド「一族で!」

リグル「宴!」

レイト「そして、別々の種族でも、今は同じ街の家族だ。自分たちの過去を知ったら、それを教え合い、今の仲間達とも絆を深めて欲しい。」

 

 リムルがそう言うと、リグルドとリグルがそう叫び、俺がそう締めくくる。

 すると、皆が歓声を上げる。

 

女性「流石、リムル様にレイト様!」

男性「リムル様〜!レイト様〜!」

 

 どうやら、受け入れそうだな。

 すると、ゴブタが口を開く。

 

ゴブタ「リムル様、レイト様。ところで、お盆ってどういう意味っすか?」

 

 そういえば、お盆ってどういう成り立ちだったんだ?

 前世では、自然と定着してたし。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「えーっと……………あれだ!お盆にたくさんの料理を乗せて、家族と楽しむ!的な!」

男性「素晴らしい!なんて分かりやすいんだ!」

 

 まあ、分かりやすいのも良いかもな。

 すると、科学者が口を開く。

 

科学者『告。お盆とは、太陰暦の7月に、先祖の霊を迎え、もてなし、送るまでの行事です。』

レイト『へぇ〜……………。』

 

 そんな感じか。

 まあ、詳しくは知らなかったけど、知れて良かったよ。

 その後、俺とリムル、火煉と紫苑は、ある場所に向かっていた。

 そこは、リムルの庵とレイトの庵があり、それの受け渡しがあった。

 隣同士にあり、俺は片方の庵に入る。

 

レイト「良いねぇ……………こういうの。」

火煉「街のどの家よりも小さくないですか?レイト様に相応しいんですか?」

レイト「良いんだよ。こういう場所でのんびり過ごすのも。」

 

 そう。

 こういう場所が欲しかったのだ。

 それにしても、この狭さは、一人暮らしを始めた時に住んでたアパートみたいな感じがするよな。

 もしかしたら、忘れられないのかもな。

 あの感じを。

 

レイト「良いねぇ………………。」

火煉「レイト様?なんでそんな切なげな表情なんですか?」

 

 俺がそう呟く中、火煉はそう聞く。

 一方、ゴブタと白老は、川で釣りをしていた。

 カワセミの鳴き声が響く。

 そんな中、ゴブタがぼやく。

 

ゴブタ「あ〜あ。せっかくの休みなのに、師匠と釣りなんて……………。さっきから、全然当たりが無いっすよ〜。」

白老「それは、お主に邪念があるからじゃ。」

 

 ゴブタがそう文句を言うと、白老は釣り糸を垂らしながらそう言う。

 

白老「剣の道と釣りは、通ずる物がある。己を自然と一体化し、魔力の流れに溶け込むのじゃ。さすれば、魚はおろか、目の前の敵すらも、お前を捉えられは……………ん?」

 

 白老はそう言いながら、空を見上げる。

 ふと気づき、ゴブタの方を向くと、そこには、胸元に『オサラバっス』と書かれた板がぶら下げられている案山子があった。

 それを見て、白老は目を見開き、驚く。

 

白老「なっ………………!?あのゴブタが、わしの目を欺くとは……………。」

 

 白老はそう言いながら、手を顔に当てる。

 

白老「はぁ……………弟子の成長は、嬉しくもあり、寂しくもあるのう……………。明日からの修行の量は、成長に合わせ、10倍じゃな。」

ゴブタ「冗談っす!ここに居るっす!!」

 

 白老がそう言うのを聞いて、ゴブタが草むらから出てくる。

 一方、俺たちは、部屋に入る。

 そこには、紅丸が木の板と睨めっこをしていた。

 紅丸も、随分と変わったよな。

 最初に会った時は、野武士みたいな感じだったのに、今や、立派な軍司令官だな。

 そう思っていると、リムルが紅丸に声をかける。

 

リムル「よっ。何してんだ?」

紅丸「部隊の編成を見直しています。」

レイト「大変だな。」

紅丸「街も大きくなって、人員も増えましたし。」

 

 紅丸はそう言って、木の板を揃えて、カップを持って、洗い場に行く。

 

紅丸「白老のしごきのおかけで、皆の腕もメキメキ上がっています。大きな戦のない今こそ、小さな穴も見逃さず、無敵の軍団を!」

 

 紅丸はカップを洗い、机を拭く。

 紅丸も、頼もしいよな。

 すると、ドアがノックされる。

 

朱菜「失礼します。」

リムル「ん?」

朱菜「お茶をお持ちしました。」

レイト「ありがとう。」

 

 朱菜が入ってきて、洗い場の方に向かう。

 リムルは、紅丸に向かって言う。

 

リムル「お前、変わったな。」

紅丸「ハッハハ。俺は今も昔も変わらず、俺ですよ。」

レイト「そっか。」

 

 リムルの言葉に、紅丸はそう返す。

 すると、朱菜が笑う。

 

朱菜「フフフ。」

紅丸「ん?」

 

 朱菜の反応に、紅丸が振り向くと、朱菜は棚の上を指で擦る。

 埃が溜まっていたようだ。

 

紅丸「うわぁー……………!!」

 

 紅丸がそれを見ると、即座にその棚の方に向かい、布巾で拭く。

 

レイト「いや、変わったよ。」

 

 それを見て、俺はそう呟く。

 確実に朱菜の尻に敷かれてるよな。

 突然だが、隠密の仕事は多岐に渡る。

 護衛、密偵、そして調査と暗殺。

 私情を挟まず、音もなく、冷徹に、完璧に。

 全ては、主人のために。

 それが、隠密の定め。

 そんな蒼影は、蒼華と蒼月を連れて、歩いていた。

 

蒼影「コボルトの集落の抗争だが……………会話のニュアンスも正確に報告する必要がある。内容は覚えているか?」

蒼華「はっ!」

蒼月「一言一句、漏らさずに。」

蒼影「では、西の族長と東の族長。お前達はどちらをやる?」

 

 蒼影の質問に、蒼華と蒼月がそう答えると、蒼影はそう聞く。

 

蒼華「は?え?えっと……………では、西の族長を。」

蒼影「……………ツッコミ役か。随分と自信家になったな。では、蒼月はボケを頼む。語尾はワンだ!」

蒼月「え?分かりました。」

蒼華「ツ……………ツッコミ?は…………はい!ですワン……………。」

 

 そう言って、蒼影達は、俺たちがいる部屋の中に入る。

 ちなみに、俺とリムルには、大ウケした。

 その後、鬼人達が集まっていた。

 そこには、大鬼族の里の同胞達の墓があった。

 墓の前には、途中で折れ、ボロボロの刀が飾ってあった。

 紅丸達は、お供えをした後、お酒を飲み、朱菜が作ったおせちを食べる。

 白老は、酒を飲み終えると、口を開く。

 

白老「うんっ…………はぁ……………若のお姿、亡き殿に似てまいりましたな。」

黒兵衛「んだ。紅丸様は、里にいた頃より、ずっと逞しく見えるだよ。」

紅丸「煽てるなよ。全て、リムル様とレイト様のおかげさ。」

 

 白老と黒兵衛がそう言う中、紅丸はそう答える。

 紅丸は、置いてある刀を見て、白老に質問する。

 

紅丸「なあ、白老。父上は若い時、どのようなお人だったのだ?」

白老「……………あの頃は、まだ里も小さく、そして殿は……………ホホホホホ。若とは比べ物にならぬほど、とんでもないワルでした。」

 

 紅丸の質問に、白老はそう答える。

 それを聞いた紅丸と朱菜は、驚きながら口を開く。

 

紅丸「えっ!?」

朱菜「あっ………………そんなお話、聞いたこと……………。」

白老「無いでしょうなあ。何せ、お二人が生まれるずっと前の話じゃ。フッホホホ……………。いやあ、まったく。良い日和じゃ。」

 

 紅丸と朱菜がそう言うと、白老は笑う。

 そして、そう言う。

 何を思ったのか。

 一方、ブルムンド王国のカフェでは。

 

エレン「ふぅ………………。」

ギド「どうしたでやんす?」

エレン「うーん…………なんだろ。シズさん、元気かなあって。久しぶりにシズさんの夢を見たから。」

カバル「そうだな…………。レイトの旦那が頑張っている筈だぜ。夢に関しては、俺も見た。」

ギド「あっしもでやすよ。」

エレン「あ……………。」

 

 三人はそう話す。

 しばらくして、三人は歩き出す。

 

カバル「そういや、夢ん中のシズさん、どうだった?」

エレン「えーっとねぇ。バニー姿で、魔物に追っかけられてた。」

カバル「あ〜。ふっ。似合ってたな。」

ギド「そういう趣味だったんでやんすね〜。」

 

 三人は、そんな風に話していた。

 一方、シズさんの魂が入ったバイスタンプが揺れた。

 

シズ「っ!?」

レイト「うん?どったん、シズさん?」

シズ「なんか………………とんでもない風評被害を受けた様な気がして……………。」

レイト「うん?」

 

 シズさんがそう言うのを見て、俺は首を傾げた。

 一方、シス湖にある蜥蜴人族(リザードマン)の里では、蒼華と蒼月が帰省していた。

 

アビル「ほう。お盆とな。素晴らしい祝日だな。」

蒼華「はい。」

蒼月「そして、我が一族の逸れ者より、こちらを。」

アビル「近う寄れ。」

「「はっ!」」

 

 アビルがそう言うと、蒼月が持ってたフル・ポーションを渡す。

 

アビル「そうか。元気でやっているのだな。」

蒼月「はい。相変わらずですが、イキイキと働いています。」

アビル「ふん。全く、あいつは……………。大儀であった!」

蒼華「はっ!それでは、私達はこれにて。」

 

 アビルはフル・ポーションを見て、そう思う。

 蒼華達が下がろうとすると、アビルが声をかける。

 

アビル「待て。時に蒼華。」

蒼華「あっ………………!」

蒼月「あっ。」

アビル「そなたに縁談が。そなたに縁談が……………。」

 

 アビルがそう言うと、蒼華は振り返る。

 ただし、蒼華の目から、光が消えていた。

 アビルは、配下から木の板を受け取り、蒼華に見せる。

 

アビル「ほれ!この男など、どうだ?」

 

 アビルが見せた絵には、薔薇の花を咥えた蜥蜴人族が居た。

 それを見た蒼華は。

 

蒼華「ご辞退申し上げます。」

蒼月(即答だなぁ……………。)

アビル「んんんん!?それなら……………これで!」

蒼華「結構です。」

アビル「ダメか!じゃあ、こっち!やっはー、いやいや、こいつもなかなか……………!うーん……………あっ、えーい!もう好きなの一枚抜いてみいよー!!」

 

 蒼華が即答したのを見て、アビルは別の人の絵を見せるが、断られる。

 アビルがそう叫ぶ中、蒼華は思った。

 

蒼華(これだから帰りたくないんだよなあ………………。)

蒼月『蒼華。モテモテですね。』

蒼華『揶揄わないで。』

 

 蒼華がそう思う中、蒼月は思念伝達で揶揄う。

 一方、傀儡国ジスターヴでは。

 

クレイマン「(この世界には、魔物を統べる王、魔王が居る。そう。私こそが、このジスターヴを統べる……………王だ。)フフフフ……………。」

 

 クレイマンが笑う中、雷鳴が轟き、時計が不気味な声を出す。

 クレイマンは、時計を止める。

 

クレイマン「そろそろ、魔王達の宴(ワルプルギス)の企みの時間です。」

 

 クレイマンはそう言って、部屋から出る。

 しばらく歩くと、厨房に入る。

 中に入ると、自動的に灯りが灯される。

 クレイマンは、お茶の準備をしながら思う。

 

クレイマン「(魔王カリオンは、粗野だが、本物を見極める目と、素直な感性がある。急遽参加のフレイ。女性らしさと繊細さは、私と共感出来るだろう。そして……………ミリム・ナーヴァ。最古参の魔王とはいえ、既にその嗜好は念入りに調査済み。)対策は万全だ。さあ、早く来い魔王達よ。私の野望の為に!」

 

 クレイマンはそう言いながら、ミトンとエプロン、バンダナを付ける。

 

クレイマン「ふ〜んふんふん。(お手製の美味しいスコーンも、もうじき焼きあがる。)」

 

 クレイマンは鼻歌を歌いながら、スコーンを焼く。

 それを見ていたティアは。

 

ティア「……………楽しそうだね、クレイマン。」

 

 そう呟いた。

 一方、武装国家ドワルゴンでは。

 

ガゼル「う〜ん……………。魔物を統べるスライムにキメラ……………であるか。」

 

 ガゼル王達が集まり、話し合っていた。

 そんな中、ガゼル王は呟く。

 

ガゼル「スライム……………酢ダレ……………であるな。」

ドルフ「は?」

アンリエッタ「恐れながら、私は黒蜜派です。」

バーン「ガッハハハハハ!俺は王に賛成だ。よーく冷やして、一味も欲しいな。」

 

 ガゼル王がそう言って、ドルフが呆気に取られると、アンリエッタとバーンの2人も、そう言う。

 ドルフは、机を叩きながら言う。

 

ドルフ「待て、貴公ら!私は、スライムとキメラの話をしているのだぞ!ジェーン殿!何か言ってやって欲しい!」

ジェーン「ヒッヒッヒッヒッ……………!あたしゃ昔っから黒蜜だねえ!」

ドルフ「あっ、ああ……………!?」

 

 ドルフがそう言うと、ジェーンはそう答える。

 ドルフが呆気に取られる中、ガゼル王が椅子から立ち上がりながら言う。

 

ガゼル「決まりだな。」

 

 すると、壁が開き、光が差し込んでくる。

 ガゼル王は、目を細めながら言う。

 

ガゼル「よかろう!余自らが見極めてやろうでは無いか!スライムと、ついでにキメラとやらを!」

ドルフ「えっ……………あの……………ペガサスナイツを招集致します……………。」

 

 ガゼル王がそう言うと、ドルフもそう言う。

 一方、俺は震えがした。

 

レイト「っ!?」

シズ「どうしたの、キメラ君?」

レイト「なんか……………気に入らない扱いをされた気がするな……………。ちょっと、水を飲んでくる。」

シズ「うん?」

 

 なんか、ついでみたいな扱いをされた気がするな。

 喉も渇いたので、井戸水を飲みに行くことに。

 途中、リムルと合流して、井戸の方に向かう。

 井戸には、リグルが居た。

 

リムル「あっ!リグル〜!」

リグル「ん?あっ、リムル様、レイト様!」

レイト「水をもらえないか?」

 

 俺たちがそう言うと、リグルはコップに水を入れて渡す。

 

リグル「どうぞ。地下水だから、冷えてますよ。」

リムル「サンキュー!」

レイト「ありがとう。」

 

 俺たちは、水を飲む。

 暑い日には、冷たい水は良いよな。

 すると、リグルが口を開く。

 

リグル「いやぁ……………街も立派になりましたね。」

リムル「ん?」

リグル「ちょっと前からは、考えられない光景ですよ。」

 

 リグルはそう言う。

 確かに、この街は発展していっている。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「なあ、思ったんだけど………。」

リグル「ん?」

レイト「どうした?」

リムル「森でお前達に最初に出会った時にさ……………。あの時、リグルが俺たちに話しかけてくれなかったら、この街は出来てなかったかもしれないんだなあって。」

リグル「そう言われれば、そうなんですかね?」

 

 確かに。

 森で俺たちと会った時、口を開いたのはリグルだった。

 そういう意味では、リグル達との出会いが、この街を作ったんだなと思うな。

 

レイト「そう思うと、面白いよな。」

リグル「そうですよね。」

リムル「アッハハハハ……………だろ?大事にしなきゃ。」

リグル「ええ。何せ、今日はゴブリン邂逅祭ですから。」

レイト「そうだったな。」

 

 そういえば、そんな感じだったな。

 その夜、俺たちは宴会を始める。

 俺とリムルは、挨拶をする。

 

リムル「えーっと……………今日はなんだっけ……………。」

レイト「第一次都市計画完了!大浴場開設!第三農場開墾!」

リムル「あと、黒兵衛鍛治工房新設!ヒポクテ草栽培ノルマ達成!第6回ゴブリン邂逅祭!えーっと…………その他諸々の記念で……………まあ、とにかく乾杯だ!」

 

 リムルが言う事を忘れる中、俺がフォローして、乾杯の音頭をする。

 祭りの会場からは、賑やかな声が多く響く。

 それを、シズさんはにこやかに見守っていた。

 その翌日、俺たちは鏡を見ていた。

 シズさんの肉体は、リムルが取り込み、俺はそれをコピーさせてもらった。

 シズさんの新しい肉体は、作成は順調に進んでいる。

 そう思う中、俺とリムルはある事に気づく。

 

リムル「うわっ……………って!」

レイト「なんだこの服!?」

 

 そう。

 バニーガール姿だった。

 俺たちが戸惑う中、朱菜、火煉、紫苑が現れる。

 

朱菜「とーってもよくお似合いですよ!」

火煉「まだまだありますよ!」

紫苑「もっとたくさんお着替えしましょうね〜!」

 

 そう言って、朱菜はメイド服、火煉と紫苑は、スク水を持ちながら迫ってくる。

 それを見て、俺たちは。

 

リムル「いや!や〜だ〜!!」

レイト「無理だって!!」

 

 俺たちはそう叫んで逃走する。

 それを見ていたシズさんは。

 

シズ「やめて…………………。」

 

 バイスタンプの中で、顔を赤くしていた。

 シズさんの外見に似ているので、ある意味で自分が着せ替え人形になっていると感じて、悶えていた。

 その後、俺たちはお供えをしていた。

 これは、シズさんからのお願いで、シズさんのお母さんと、シズさんが出会い、殺めてしまったピリノという少女を弔う物だそうだ。

 

リムル「シズさん、これで良いかな?」

シズ「うん。ありがとうね。2人とも。」

レイト「線香に似た物は作れたよ。」

シズ「うん。」

 

 俺たちはそう話して、手を合わせて、目を閉じる。

 

シズ(お母さん、私、元気でやってるよ。ピリノちゃんも、ごめんね。私のせいで、あなたを死なせてしまった。あなたの分まで、私は生きていく。スライムさんとキメラ君の為にも。)

 

 シズさんがそう思っていると、俺たちの背後に何かが居る気配がした。

 その気配は、2人いて、その2人は、シズさんの方を笑顔で見ていた…………気がした。

 すると、シズさんは振り返る。

 

シズ「……………っ。」

リムル「シズさん?どうしたんだ?」

シズ「今……………誰がいたような…………。」

レイト「……………………。」

 

 シズさんはそう言う。

 もしかしたら、お盆で来ていたのかもしれない。

 2人の魂が。

 そんな不思議な事があった、お盆の日だった。




今回はここまでです。
今回は、お盆の日の出来事です。
シズさんの近くに、お母さんとピリノの魂が現れ、シズさんを見届ける。
2人は、何を思ったのか。
それは、分かりません。
次回の転キメ日記は、ミリムが登場します。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
転スラのスマホゲームであるまおりゅうが、『この素晴らしい世界に祝福を!』とコラボするみたいですね。
果たして、どんな感じになるのか。
そして、転キメも、自分が投稿しているこのすばとギーツとコラボさせようかなと考えています。
どんな話になるのかは、未定ですが。
もし、意見がある場合は、活動報告にお願いします。


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第7日記 魔王が来た!

 魔王ミリムがやって来たその翌日、ミリムはポテチを抱えながら寝ていた。

 

朱菜「食べるだけ食べて、寝ちゃいましたね。」

紫苑「仕返ししましょう。」

火煉「やめて。地獄になるだけだから。」

リムル「おいおい。」

レイト「やれやれ……………。」

 

 俺たちは、紫苑を止めて、会議室の方に向かう。

 一方、ミリムは寝ていたが、目が覚める。

 

ミリム「あ?うー……………!せっかく良いところで……………!ん?ん?」

 

 ミリムはそう言って立ち上がり、周囲を見る。

 俺たちは既に移動していて、居なかった。

 

ミリム「皆、どこに行ったのだ。」

 

 ミリムはそう言いながら、ポテチを食べる。

 すると、ミリムのアホ毛が動き、会議室の方に視線が向く。

 

ミリム「そこだな。」

 

 ミリムはそう言う。

 会議室には、俺、リムル、火煉、紫苑、朱菜、紅丸、蒼影、白老、リグルド、シズさんが居た。

 ミリムの世話役に関して、抗議していたのだが………………。

 

紅丸「……………という事で、ミリム様の担当に相応しいのは、マブダチのリムル様とレイト様に……………。」

リムル「ドキッ!」

レイト「え?」

白老「賛成ですじゃ。」

朱菜「私も賛成です。」

紫苑「賛成ー!」

火煉「賛成です。」

シズ「私も賛成。」

リグルド「賛成。」

蒼影「賛成。」

紅丸「賛成。」

 

 こんなふうに、俺たちが世話をする事になりそうだった。

 

リムル「えっ…………うわっ、ちょい待って……………!」

レイト「うそ〜ん……………。」

朱菜「賛成多数で決定ですね。」

白老「それでは今後、ミリム様のお世話担当は、リムル様とレイト様という事で。」

 

 マジかよ……………。

 俺とリムルが呆然としている中、ミリムが入ってくる。

 

ミリム「リームルー!レーイトー!魔王になる気はなったかー!?」

 

 そう言って、押し飛ばそうとしてきたので、俺は躱すが、リムルは突き飛ばされ、リムルの一部が紅丸にくっつき、リムル本体は、壁にぶつかる。

 まるで、トマトが壁に当たり、潰れたみたいに。

 ちなみに、蒼影は避けていた。

 

リムル「うひゃっ!」

紫苑、リグルド「り、リムル様!」

火煉「レイト様!大丈夫ですか!?」

レイト「大丈夫だ。」

リグルド「何というお姿に……………!」

紫苑「は、剥がれません……………!」

 

 それを見た紫苑とリグルドは、リムルを剥がそうとする。

 そんな中、俺とリムルは、ミリムに言う。

 

レイト「悪いが、ミリム。今は国づくりで忙しいんだ。」

リムル「あと、俺の体自体も大変だ。それに、魔王なんて、余計な敵やしがらみを増やすだけだろ?」

 

 俺とリムルはそう言う。

 紅丸は、顔に張り付いたリムルの一部を剥がして、本体に戻す。

 それを聞いたミリムは叫ぶ。

 

ミリム「えー!そんな事はないのだ!魔王は………えーっと……………えーっと…………自分で考えた必殺技名を大声で叫んでも、皆、何となく納得してくれるのだ!魔王だから!」

紅丸「おお……………!」

 

 絶対、今考えただろ。

 それを聞いた紅丸達は、満更でもない表情を浮かべる。

 それを見たリグルドが叫ぶ。

 

リグルド「ちょちょちょ!いやいやいや!」

シズ「鬼人って、そういうのが好きなのかな……………。」

リムル「おい、どうする。場の空気が微妙になったぞ。」

ミリム「私は悪く無いのだ。」

レイト「アハハハ………………。」

 

 それを見ていたリグルドが慌てる中、シズさんはそう呟き、俺たちはそう言う。

 すると、チャイムが鳴る。

 

ミリム「あ?」

レイト「もう12時か。」

ミリム「あー!この音は、お昼ご飯の時間なのだ!」

リムル「分かった、分かった。お前、そもそもご飯食べなくても平気だろ?」

ミリム「ここのご飯はうまーだから、何度でも食べるのだ!」

レイト「そう言ってもらえて、嬉しいよ。」

朱菜「フフフッ。では、お持ちしますね。」

 

 魔王も気に入ってくれるとは。

 ありがたい物だな。

 そうして、お昼ご飯を摂る。

 しばらくして、紫苑と火煉は食べ終える。

 

紫苑「ごちそうさまでした。」

火煉「ごちそうさまでした。」

 

 2人はそう言って、食器を片付ける。

 だが、紅丸とミリムは食べる手が止まっていた。

 何故なら、人参が残っていたからだ。

 

朱菜「ミリム様。お野菜もきちんと食べてくださいね。」

ミリム「うぇー!これ、人参そのままではないか!」

紅丸「うんうん。」

朱菜「ちゃんと料理してありますよ。甘くて美味しいですから。」

ミリム「いやなのだ!人参は匂いがきつくて、口に合わないのだ。」

紅丸「うんうん。」

朱菜「好き嫌いしてると、大きくなれませんよ。」

ミリム「平気なのだ!人参など食べなくても、魔王にだってなれるのだぞ!」

紅丸「はぁ……………!」

朱菜「フフ………………。」

 

 紅丸って、人参が苦手なんだな。

 美味しいのに。

 すると、朱菜が何かを思いついた笑みを浮かべて、ミリムと紅丸の皿を預かる。

 戻ってくると、人参は、色んな形にカットされていた。

 

朱菜「ほら!色々な形に切ってみました。」

ミリム「ほう!可愛いのだ!はむっ。美味しいのだ!これならいくらでも食べられるのだ!」

 

 ミリムは、あっさり人参を食べた。

 星とかの形にカットしただけなんだがな……………。

 一方、紅丸は。

 

紅丸「………………。」

蒼影「さっさと食え。」

シズ「……………紅丸さん?」

紅丸「ひっ!?」

シズ「食べ物を粗末にするなんて……………ダメだよ。ね?」

紅丸「………………すいません、食べます。」

 

 紅丸がミリムがあっさりと人参を食べた事に呆然としていると、蒼影とシズさんはそう言う。

 シズさんは、太平洋戦争の頃に生きていたからな。

 食べ物を粗末にするのはダメなのだろう。

 シズさんの気配に怯えた紅丸は、大人しく人参を食べる。

 無敵の侍大将の面影は、消えていた。

 

ミリム「ふー……………美味しかったのだ。今日は天気もいいし、街の探検に行ってくるのだ!」

朱菜「まあ!良いですね。おやつを作っておきますから、また後で顔を出して下さいね。」

ミリム「おやつ!凄いのだ!待ちきれないのだ!」

朱菜「フフフッ……………その前に探検、ですよね?」

ミリム「あっ、そうだったのだ!行ってくるのだ!」

 

 ミリムはそう言って、部屋から飛び出す。

 ドアを倒して。

 それを見たリグルドが震える中、俺は声をかける。

 

レイト「リグルド。俺が直しておくよ。」

リグルド「いえ!自分が!」

レイト「大丈夫だよ。」

リグルド「は、はぁ……………。」

 

 俺は、ミリムが破壊した扉を直す事に。

 やれやれ。

 魔王の力は凄まじいよな。

 一方、待機中の嵐牙の元に、ミリムがやって来ていた。

 

嵐牙「ん?」

ミリム「遊んでやるぞ、嵐牙とやら!アハハハ!」

嵐牙「んっ……………!有無を言わせぬ構えですな。しかし、我はリムル様とレイト様に…………!」

ミリム「遠慮するな。ペットは好きなのだ。」

嵐牙「はっ、はぁ……………。」

 

 嵐牙がそう言う中、ミリムは嵐牙の背中を撫でる。

 

ミリム「よく思い出せんが、昔、こうやって撫でてた気がする。」

嵐牙「いや……………ですから……………今は待機中で……………ひっ!」

 

 ミリムが撫でると、嵐牙はそんな風に言う。

 

嵐牙「(な……………なんという巧みな手捌き…………!)ああ…………あああ…………!(まさに魔王!)」

ミリム「ここか?ここか?ウリウリウリウリ〜!」

嵐牙「ああ〜!(このままでは流される!溺れてしまう……………!リ……………リムル様〜!レイト様〜!)」

 

 ミリムが撫でると、嵐牙は気持ちよさそうな表情を浮かべる。

 すると。

 

火煉「浮気をしましたね。」

嵐牙「ふはっ!?」

紫苑「フフッ。これはこれは…………リムル様とレイト様にご報告ですね。」

 

 嵐牙の視線の先には、紫苑と火煉が居て、そのまま逃げる。

 以前の仕返しが出来ると言わんがばかりに、二人はにやけていた。

 

嵐牙「ああ………………!」

ミリム「えーい!モフモフ〜!」

嵐牙「くぅん……………。」

 

 嵐牙が冷や汗を流しまくる中、ミリムは嵐牙に頬擦りをしていた。

 俺とリムルが街を歩く中、とんでもない音が聞こえてくる。

 その方に行くと、ゴブタが建物にめり込んでいたのだ。

 

リムル「ああっ!どうした?」

レイト「またゴブタが何かやらかしたのか?」

ゴブタ「ちょっ……………!開口一番、何すかそれ!?」

ミリム「おおっ!お前、意外とタフだな。」

ゴブタ「自分はただミリム様の為に…………!」

 

 お前がやらかしてる確率が高いからだよ。

 ゴブタ曰く、ミリムの服装に関して、言ったそうだ。

 ミリムが来た時に着ていた服は、もっと豊満な人向けだと。

 おい、原因それだろ。

 

ゴブタ「ふっ。皆を代表して、紳士的なアドバイスをしただけっす…………!?」

 

 ゴブタがそう言うと、ミリムに殴られて、再び壁にめり込む。

 余計なことを……………!

 多分、ミリムは、胸が小さい事を気にしているんだろう。

 すると、俺たちの方を向いて聞いてくる。

 

ミリム「……………そうなのか?」

俺たち「いやいやいやいや……………!」

 

 ミリムがそう聞くと、俺、リムル、黒兵衛、ガルムたちは、全力で否定する。

 肯定したら最後、命はない。

 それを聞いたミリムは、笑みを浮かべる。

 

ミリム「フフン…………はっ!そろそろ朱菜の所に行かねば。へへっ!どゅわっ!おやつが出来てるはずなのだー!」

 

 ミリムはそう言うと、ジャンプする。

 その際、地面が割れた。

 ミリムが動くだけで、周囲に被害が出るよな。

 

ミリム「おやつー!」

 

 ミリムは部屋に入る際、再びドアを外しながら中に入る。

 

朱菜「あら。おかえりなさい、ミリム様。」

ミリム「おやつー!おやつー!おやつー!」

朱菜「はい、どうぞ。」

ミリム「ほほ〜!やったのだー!」

 

 朱菜が出したのは、コーン蒸しパンだった。

 

ミリム「はむっ!これもうまーなのだ!」

朱菜「ふふっ。ん?」

 

 朱菜が麦茶を入れる中、ミリムの方を向くと、ミリムはコーン蒸しパンを全て食べ終えて、寝ていたのだ。

 朱菜は、ミリムに布団をかける。

 

朱菜「ゆっくりしていってくださいね。」

 

 朱菜はそう言う。

 しばらくして、俺たちが戻って来て、口を開く。

 

ミリム「人参……………人参……………生は嫌なのだ……………。ミッドレイ。火を通せ………。」

レイト「どんな夢を見てるんだか。」

リムル「朱菜はよくミリムにはっきりものが言えるな。人参食えとか。一応ソレ、魔王だぞ。やばい級の。」

レイト「天災級(カタストロフ)だしね。」

朱菜「それだなんて失礼ですよ。確かに、ミリム様は、無茶苦茶な所もありますけど、ちゃんとお話しすれば、道理を通してくださる聡明さを持ち合わせたお方です。だからこそ、リムル様もレイト様もお友達になれたのでしょう?」レイト「まあ、一理あるな。」

リムル「確かに。意外と物分かり良かったし。」

朱菜「ええ。」

 

 確かに、無茶苦茶だよな。

 ドアの修理とかも必要だし。

 でも、物分かりがいいよな。

 朱菜の言う通り、聡明さは持ち合わせているのかもな。

 

朱菜「無茶しかしなくて、考えなしな娘をずっと見てきたので、分かるんです。」

紫苑「へぇ…………そうなんですか。朱菜様も意外と苦労してるんですね。」

火煉「何をやってるの……………!?」

朱菜「そうですね。」

 

 絶対に、無茶しかしなくて、考えなしの娘って、紫苑だろ。

 現に、ミリムに落書きしてるし。

 知らないぞ。

 俺とリムルが執務室に向かうと、紫苑達が口を開く。

 

リムル「んで、どうした?」

紫苑「実は、私はミリム様の事を快く思っていないのです。」

火煉「私は………………若干ですが。」

レイト「紫苑に火煉らしくもないな。出会った時にのされた事をまだ根に持ってるのか?」

紫苑「あの時、私にもっと力があったなら……………リムル様とレイト様がミリム様の行いに頭を悩ます事など…………。」

火煉「そうですね。」

 

 二人なりに、俺たちの事を思ってるのかな。

 そう思う中、紫苑は口を開く。

 

紫苑「だって……………リムル様を困らせちゃう系女子は、この私だけですから!この立ち位置だけは譲れません!」

火煉「紫苑………………。」

紫苑「聞いてます!?」

 

 いい話だと思ったのに。

 ていうか、困らせてる自覚はあるのか。

 そう思う中、リムルは紫苑を外につまみ出す。

 やれやれ。

 その後、ミリムは外に出て、散歩をする。

 すると、ガビル達と会う。

 

ミリム「お?お〜!」

ガビル達「わっ!」

ミリム「また会ったな!龍人族(ドラゴニュート)の…………。」

ガビル「こ……………これはミリム様。」

ミリム「確か、ガビルと言ったか?凄いだろ!覚えているのだ!」

ガビル「なっ、なんと!我輩の名前を覚えて!えっへへへへ……………!」

ミリム「お前のように頑丈な(おもしろい)奴は好きだぞ!」

 

 ガビルが浮かれる中、ミリムはそう言う。

 どうやら、ミリムにとって、頑丈な奴は面白い奴だと思っているようだ。

 

ヤシチ「さっすがガビル様!」

スケロウ「あんた大物だぜ!」

カクシン「然り!」

ヤシチ達「ガビル!ガビル!」

ガビル「え?いや〜ハハハハハ…………!」

 

 ミリムとの解釈違いを起こす中、そんな風に煽てられる。

 そんな中、ミリムはある存在に気づく。

 

ミリム「あ?あいつはクレイマンの…………。」

ガビル「あああああ!!」

 

 ミリムが駆け出すと、ガビルを押してしまい、ガビルは上空に吹っ飛ばされる。

 

ヤシチ達「ガビル様ー!えいっ!」

ガビル「羽出ない!羽出ない!焦ったら羽出ない!」

ヤシチ「ガビル様!」

カクシン「こっちだ!」

スケロウ「南無三!」

 

 ヤシチ達は、ガビルを受け止めようとする。

 だが、太陽の光が目に入ってしまった。

 

ヤシチ達「あっ、眩しい!」

 

 太陽の眩しさに目を眩ませてしまい、ガビルは建国記念碑に命中してしまい、破損してしまった。

 その夕方、現場では、ゲルドとグルドの二人が資材を運んでいた。

 そこに、ミリムが現れる。

 

ミリム「お前達は、豚頭帝(オークロード)に近しい者だな。それだけの力があるのに、何をチマチマとやっているのだ。武を持って威を示したいと思わないのか?石塊を運ぶのが、そんなに面白い事なのか?」

 

 ミリムはそう問う。

 ミリムからしたら、それだけの力を持っているのに、工事をしている事が気に食わないのかもしれない。

 それを聞いたグルドは、答える。

 

グルド「何かを作り出し、残すのは甲斐がある。」

子供「アハハハ!」

ミリム「あ……………。」

子供「今日も沢山採れたね!」

父親「ああ。うちに帰ろう。母ちゃんが待ってる。」

子供「うん!」

 

 セルドがそう答えると、親子が通る。

 ミリムが親子を見ている中、今度はゲルドが答える。

 

ゲルド「これが……………。」

ミリム「あ……………。」

ゲルド「今の私たちに与えられた仕事です。」

ミリム「ふーん……………よく分からないのだ。もうちょっと見てていいか?」

グルド「どうぞ。」

 

 ミリムはそう言うと、ゲルドとセルドはそう言って、作業に戻る。

 それを、ミリムは眺めていた。

 一方、俺たちの所に、リグルドがやってくる。

 

リグルド「リムル様、レイト様。今、少しよろしいですか?」

レイト「リグルドか?良いぞ。」

リムル「どうした?」

リグルド「ええ。本日までに取りまとめた、ミリム様による被害報告をさせて頂こうかと…………。」

リムル「リグルド……………怒ってる?」

リグルド「いえいえ。滅相もない。」

 

 なんか怒っているような気がするが。

 俺たちは、報告を聞く事に。

 

レイト「ドアノブ、窓ガラス、食器その他……………。」

リムル「まっ、まあ、天災級(カタストロフ)にしては、可愛らしい被害じゃ…………。」

リグルド「実はそれは、今朝の物で……………こちらが、昼過ぎの被害報告です。」

レイト「え?リグルド、怒ってる?」

リグルド「滅相もない。」

 

 リグルドが机に木の板を強く置くのを見て、俺はそう聞くと、先ほどよりも目力が強くなったリグルドの姿があった。

 絶対に怒ってるよな!?

 リグルドの心の中を覗いても、怒りの気配を感じるんだけど!?

 

リグルド「ドア更に追加で5枚、中央通りで店舗の半壊二軒、建国記念碑破損。」

レイト「建てたばっかなのに……………。」

 

 ミリムの奴、建国記念碑まで躱したのか!?

 俺が驚く中、リグルドが追加の木札を置く。

 

レイト「げっ!?スナック樹羅の看板!?」

リムル「わ…………分かった!俺たちから言っとく!国の代表として、ミリムの友人として、ちょっと強めに……………!」

リグルド「そしてこれが、さっき届いた被害報告です。」

レイト「やっぱり……………怒ってる?」

リグルド「滅相もない。」

 

 絶対に怒ってるよな!?

 目力がやばいって!

 その後、スナック樹羅の看板の修理をしに来たのだが。

 

リムル「ミリム〜。釘だぞー。」

レイト「って、寝てるな。」

 

 そう。

 ミリムは寝ていたのだ。

 ハルナが毛布をかける中、俺たちは口を開く。

 

リムル「本当だ。魔王の癖に。」

トレイニー「興奮して疲れたんですよ。真新しい物や、多くの住人に囲まれましたから。」

レイト「子供か。」

トレイニー「子供でいいんですよ。長い長い時間を生きるには、心を老いさせない事です。自由に生き、感情を昂らせ、退屈を嫌う。リムル様とレイト様のお好きな生き方ですよね?」

リムル「そうだけど、今は国の盟主だから、自由の前に責任って奴があるんだ。」

 

 まあ、長い時間を生きるには、そういうのが大事なのだろう。  

 とはいえ、そんな経験はないのだが。

 

トレイニー「立派になられましたね。リムル様、レイト様。では、責任をもって、看板を直してくださいね。」

レイト「やっぱりか……………。」

リムル「いや、壊したのは俺たちじゃ…………。」

トレイニー「盟主兼、ミリム様係ですよね?」

 

 そう言われると辛いんだがな。

 俺たちは、スナック樹羅の看板を直していく。

 そして、ミリムを連れて帰る事に。

 ちなみに、俺がミリムを背負っている。

 それをリムルの胃袋から見ていたヴェルドラとイフリートは。

 

ヴェルドラ「ぐぬぬぬ……………!よもや、こんな光景を見る羽目になるとは…………!」

イフリート「しかし、ミリム様は自由奔放な方ですね。寝落ちされておんぶされて帰宅とは。さしものヴェルドラ様も、同じ天災級(カタストロフ)として、ミリム様の痴態には、眉を顰められますか。」

ヴェルドラ「当然であろう!こんな所に封じられておらなんだら、今すぐひっぺがして叩き起こして、ゲンコを落として、説教をくれてやるわ!」

 

 イフリートがそう言う中、ヴェルドラは大きく叫ぶ。

 

ヴェルドラ「そこは我の場所であろうがー!…………とな。」

イフリート「おんぶ…………されたかったんですか?」

ヴェルドラ「ふふん!微笑ましい友情の図であろう?」

イフリート「シュールです。というか、潰してしまいますよ。」

ヴェルドラ「クァーッハッハッハッハッ!」

 

 イフリートがそう突っ込む中、ヴェルドラは笑う。

 イフリートのヴェルドラに対する尊敬度が、少し下がった。

 一方、俺たちが歩く中、ミリムが口を開く。

 

ミリム「リムルとレイトは、そんなにこの国が大切なのか?」

リムル「なんだ、聞いていたのか。」

レイト「そりゃあ、ゼロから始めて、一から作った国だしな。街も皆も残らず大切だよ。」

 

 ミリムの問いに、俺とリムルはそう答える。

 ミリムは、再び口を開く。

 

ミリム「怖くはないか?」

レイト「ん?」

ミリム「そんなたくさんの大切な物が…………繋がりが、一つでも無くなると考えたら………私は怖いのだ。大切な物はいつだって、小さくて、呆気ないほど脆い。きっと後悔する。作った事を後悔するのだ。その時、お前達は、今のままでは居られなくなる。」

リムル「寝てろよ、もう。寝てろ。」

 

 ミリムはそう言う中、リムルはそう言う。

 ミリムの過去に、一体何があったのか。

 そして、遠くない未来、その言葉が現実になってしまう事は、今の俺には分からなかった。

 分かるだけの経験が無かった。

 その時、俺はどうなってしまうのかも、まだ暗闇の中だ。

 もしかしたら、ミリムの深層心理が、寝言の形で現れたのかもしれない。

 その翌日、客室に向かうと、そこはもぬけの殻だった。

 あの言葉の意味を、ミリムを客室に戻してから、ずっと考えていた。

 何が起こるのかというのを。

 すると。

 

ミリム「ただいまなのだー!リムルとレイトも食べるか?採れたてだぞ!」

リムル「お前、それ……………!」

ミリム「農場の柵を直したらくれたのだ。ちゃんとごめんもしたぞ!」

レイト「そっか……………。でも、大切な物とか、繋がりとか、思わせぶりに語っておいて…………。」

ミリム「あ?何の話なのだ?」

 

 やっぱり、覚えてないんだな。

 という事は、ミリムの深層心理が寝言の形で現れたのだろう。

 嵐は、まだまだ続きそうだった。




今回はここまでです。
今回は、転スラ日記の話です。
魔王ミリムがやってきて、波乱の日常のテンペストです。
この時のミリムの言葉が、後に現実になるとは、この時のレイトは、思ってもいなかった。
次回の転キメは、本編の話を投稿します。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
レイトのジュウガの強化形態の案は、現状、ミリムの悪魔の力を使った形態か、ライジングアルティメットを模した形態か、魔王達の力を集めた力など、色々な案があります。
もし、こんなのが良いというのがあれば、活動報告にて受け付けます。
あと、クレイマン戦でリクエストがあれば、受け付けます。
コラボに関しても、気軽にメッセージを送ってくれれば、対応します。


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第8日記 みのりの秋

 ミリムが来てから、しばらくが経ち、季節は秋になっていた。

 そして、収穫時期になっていた。

 

リムル「昔から、衣食足りて礼節を知る、とある。腹が満ちれば、心に余裕が生まれ、余計な諍いもなく、良い国となる。うちも是非、そうありたい。」

レイト「秋は実りの季節であると同時に、冬へ備える大事な時期だ。今日は、皆で力を合わせて、収穫に臨もう。」

一同「はい!」

 

 俺とリムルがそう言うと、皆が返事をする。

 

リムル「えー、続いて、特別ゲストの…………。」

トレイニー「春からずっと……………。」

レイト「トレイニーさん?」

トレイニー「待っていました。…………芋です!今日は芋を沢山掘りましょう!」

一同「おー!」

 

 トレイニーさんがそう言うと、皆が返事をする。

 春の時の反省を生かして、トレイニーさんには声をかけておいた。

 

リムル「いや、芋以外もね。」

レイト「では、次に………………。」

ミリム「皆の者!私にうまーな物を食べさせるのだ!」

一同「おー!」

トレイニー「芋です!」

一同「芋ー!」

ミリム「うまーなのだ!」

一同「うまー!」

 

 俺とリムルが、ミリムに話を振ると、ミリムはそう叫ぶ。

 自由だな、ゲスト陣。

 その後、リリナさんがスケジュールを発表する。

 

リリナ「今日のA班の収穫のスケジュールの確認ですが、お昼までに4ブロックの収穫を完了させて、そしてB班は、夕方までにAからBブロックの収穫を完了させる予定です。」

リグルド「今日中には十分、終わりそうですなあ。ハハハハハ。」

リムル「うんうん。」

レイト「そうだな。」

 

 リリナは、生産管理担当であり、機転が利いて働き者だ。

 すると、ゴブタたちの笑い声が聞こえてくる。

 すると、リリナさんは表情が変わり、ゴブタ達の方に向かい、板を叩く。

 

ゴブタ達「ひぃっ!」

リリナ「ほんらほんらほらほら〜(ほらほら)そっご、ぽんつぐども(そこの怠け者達)!」

 

 リリナさんが女番長みたいになった!?

 俺たちがリリナさんの豹変に呆気に取られる中、リリナさんは叫ぶ。

 

リリナ「|のさぐさしてっど、あっちゅう間に日、暮れちまうど《のんびりしていると、あっという間に日が暮れてしまいますよ》!」

 

 リリナさんはそう叫んで、ゴブタの鼻とゴブチの髪を掴んで、持ち上げる。

 

リリナ「|リムル様とレイト様ん前で、小っ恥ずかしーナリ見したーしゃーで《リムル様とレイト様の御前で、みっともない姿を晒してはいけませんよ》?|畳んで刻んで、畑ん肥やしぃなっが《畳まれて、刻まれて、畑の肥料になりたいのですか?》!?あ?あ(ご返答下さい)?|ちゃーんと働えて、うめえマンマ食いてえべ《しっかりと労働をして、美味しい食事を摂りたいとは思いませんか?》?」

ゴブタ「ひぃぃぃぃ!」

ゴブチ「イデデデデデ!」

リリナ「そうだべ?(そうですよね?)

ゴブタ「ふぁ、ふぁい!」

ゴブチ「すいませんでした!」

 

 リリナさんはそう聞くと、ゴブタ達はそう言って、逃走する。

 リリナさんは、何事も無かったように木の板を拾い、俺たちを見てくる。

 

リリナ「作業は順調です!」

リムル「あ、はい。」

レイト「分かりました。」

リグルド「相変わらずですな、昔から。アハハハ……………。」

 

 本当に、優秀だな。

 ていうか、昔から?

 昔からこんなスケバンみたいな感じなの?

 俺はそう思った。

 一方、紫苑とミリムが対峙していた。

 

紫苑「たとえミリム様でも、今日という今日は容赦しませんよ。」

ミリム「大きな口を叩くではないか。一本角の…………。」

紫苑「紫苑です。」

ミリム「そう、それ。ふっ。」

 

 そんな風に話して、お互いに睨む。

 しばらくの静寂の末、ミリムが口を開く。

 

ミリム「ワタシの腕は十大魔王随一と言われているのだぞ…………芋掘りの!おお?」

紫苑「ああ?ジュラの森の知れ渡る伝説の鬼神とは私のことです…………芋掘りの!」

ミリム「いざ!」 

紫苑「勝負!!」

ミリム「十大魔王随一のワタシに敗北はないのだー!」

紫苑「見せてあげましょう!私の伝説たる由縁を!」

「「うおーーーーっ!!」」

 

 二人はそう叫びながら、芋掘りを開始する。

 それを見ていた俺たちは。

 

リムル「君たち、それで良いの?」

レイト「まあ、捗るなら良いんじゃね?」

火煉「何をやっているの……………?」

シズ「元気だね。」

 

 そんな風に話す。

 一方、トレイニーさんがジャガイモを掘る中、リグルドが話しかける。

 

トレイニー「わあ!大量です!」

リグルド「ド……………樹妖精(ドライアド)様に芋掘りをさせるなんて!」

トレイニー「良いんですよ。樹妖精(ドライアド)は元々、ジャガイモから生まれるのです。」

ハルナ「はっ!共食い……………!?」

 

 リグルドが慌てて駆け寄る中、トレイニーさんがそう言って、ハルナは、そんな風に呟く。

 そんな事は言わない様にした方がいいだろ。

 一方、ガビル達が育てていたお米も収穫出来るようになっていた。

 

リムル「ほーら。春に植えた稲がこんなになったぞ。」

ガビル「うっ、うっ、ううっ…………!」

レイト「ん?……………え?」

 

 リムルがそう言う中、ガビルは泣いていた。

 なんで?

 

ガビル「おお!これはなんと荘厳な!」

ヤシチ達「おぉー!」

リムル「見事なもんだろう?…………歌うなよ?」

ガビル「御意。」

 

 リムルがそう釘を刺す中、ガビルは稲を見ていた。

 

ガビル「おお!まるで、陽光に輝く金色の絨毯の様ですな!このたっぷりとした稲穂。我が国の豊かさを象徴しております〜!」

レイト「良いこと言うな。……………踊るなよ?」

ガビル「御意。」

リムル「さーて。乗ってきたところで、刈ってもらおうか!」

レイト「美味いご飯にありつきたいからな。」

 

 俺とリムルはそう言って、鎌を取り出す。

 納豆と一緒に食べたいな。

 すると、ガビルが詰め寄る。

 

ガビル「あんまりです!リムル様!レイト様!」

リムル「うわぁ!」

ガビル「こんなに〜美しい姿が〜!無くなるなんて〜!」

ヤシチ達「ガビル様〜!」

 

 そう言って、畑の真ん中で泣きながら歌い出す。

 それを見ていた俺、リムル、シズさんは。

 

リムル「最初から最後まで面倒くさい奴らだな。」

レイト「まあ、それがあいつらだよな。」

シズ「アハハハ………………。」

 

 リムルと俺がそう言って、シズさんは苦笑していた。

 一方、蒼華と蒼月は、森をかけていた。

 時折、糸が向かってくるので、それぞれの武器で迎撃する。

 糸を放っているのは、蒼影だ。

 蒼月は、短剣を上手く使いこなしていた。

 二人は、蒼影の糸を躱していたが、蒼影が栗を2個、二人に落とす。

 

蒼華「ふぐっ……………!」

蒼月「イテッ!?」

 

 二人が悶えている中、蒼影は栗をトングで持って、カゴに入れようとすると、猫が栗を掴もうとする。

 

蒼影「栗は好きか?」

蒼華「うっ……………はい。」

蒼月「好きですよ。」

蒼影「俺もだ。」

 

 蒼影は、猫と戯れていた。

 一方、俺たちの方には、リグル達が戻ってきた。

 

リグル「散策隊!食料調達から戻りました!」

レイト「ご苦労さん。」

 

 俺は、リグルを労う。

 柿に鮑に栗にリンゴ、ブドウ。

 色んな秋の恵みがあるな。

 そう思う中、リムルは松茸に反応していた。

 

リムル「おお!この色…………この形、そしてこの香り……………滅多に食べられない松茸様だ!」

 

 松茸を見て喜ぶリムル。

 気持ちは分かるな。

 俺達の世界では、殆ど手が届かない高級品なのだから。

 だがこの世界では違った。

 

ゴブタ「そんなのそこらじゅうに生えってるっすよ?」

リムル「えっ?」

 

 どうやら、そこらじゅうに生えているらしい。

 皆に不思議そうに見られたリムルはいじけてしまう。

 

レイト「まあ、落ち着けって。」

シズ「元気出してね。」

リムル「……………うん。」

 

 俺とシズさんは、リムルを慰める。

 一方、紫苑とミリムは。

 

ミリム「一本角!」

紫苑「紫苑です。」

ミリム「そう!それ!フッ。これはどうだ!」

紫苑「ふっ。その程度ですか?」

 

 ミリムはそう言って、さつまいもを取り出すと、紫苑はミリムのより大きい芋を取り出す。

 

ミリム「なにーっ!?ど、どこでそんな大きい芋を!」

紫苑「フッフッフッ。あっちだったか、こっちだったか。」

ミリム「ぐぬぬぬ……………!おのれ!一本角の分際で!」

紫苑「紫苑です。」

 

 それを見て悔しがるミリムと、優越感に浸る紫苑だった。

 ミリムは芋を引っ張るが、小さい物ばかりだった。

 

ミリム「ハズレばっかりなのだ…………。」

紫苑「ホーッホッホッホ!どうしたのですか?ミリム様。」

ミリム「ぬぅ……………はっ!」

 

 ミリムがそう言う中、紫苑は高笑いしながらそう言う。

 ミリムは、紫苑の足元にある芋に目をつける。

 

ミリム「フッ。勝負は最後まで分からないのだー!」

 

 ミリムはそう言って、芋を引っ張り出す。

 

紫苑「そ…………その芋は!」

ミリム「この形は気品があるなあ。」

紫苑「くぅ〜……………!」

ミリム「フッフッハッハッハッ!」

 

 ミリムが引っ張り出したのは、リムルの形の芋だった。

 それを見ていた俺とリムルは。

 

リムル「よく分からんが、あっという間に終わったな。」

レイト「だな。」

 

 そんな風に話す。

 その後、大量のさつまいもを運ぶ。

 すると、ゴブタが話しかける。

 

ゴブタ「リムル様!レイト様!早速焼きましょうよ!待ちきれないっす!」

レイト「それもそうだな。」

リムル「よーし!初焼き芋、はじめるぞ!」

ゴブタ「イェーイ!」

ココブ「フフフフっ!」

 

 そんな風に言うと、ゴブタとココブがそう言う。

 すると、ミリムが話しかける。

 

ミリム「ヤキイモ…………?何だそれは?」

リムル「まあ見てろ。」

レイト「早速始めよう。」

 

 俺たちはそう言って、落ち葉を集める。

 リムルが指を鳴らすと、火が付く。

 ゴブタは、火を絶やさない様にして、紫苑と火煉は、枝を追加する。

 

ミリム「おー。」

ゴブタ「リムル様!レイト様!そろそろ頃合いっすね!」

レイト「ああ。ミリムも、好きな芋を持ってきてくれ。」

ミリム「これだぞ!一番立派で、気品もあるのだ。」

 

 立派で気品というか、リムルの形に似てるだけじゃね?

 そう思う中、リムルはその芋を受け取って、糸を絡ませていき、落ち葉の中に落とす。

 

リムル「ふ〜ん……………ほいっ。」

ミリム「あー!」

 

 俺は、その芋を枝で良い感じに動かす中、ミリムは俺とリムルを掴み上げる。

 

ミリム「な……………な……………な……………何をするのだー!」

リムル「ん?あっ!」

レイト「待て待て待て待て!」

 

 ミリムはそう叫んで、俺とリムルをぶん回す。

 俺とリムルは人の姿が解け、本来の姿に戻りながらも、ミリムに言う。

 

リムル「焼き芋っていうのは、こうやって芋を焚き火でじっくりと焼く事で、驚くほど美味くなる調理法なんだ。」

レイト「決して、悪意はない。」

 

 俺とリムルがそう言うと、科学者が口を開く。

 

科学者『告。消化酵素βアミラーゼが、加熱で糊化した澱粉に作用し、麦芽糖を生成する為です。』

 

 科学者がそんな事を教えてくれた。

 そんな意味があったんだな。

 

ミリム「え?」

レイト「あとはじっくりと待て。」

ミリム「よし!ならば、出来るまで待つぞ。」

 

 ミリムはそう言って、焼き芋が入った焚き火を眺める。

 次第に、歌を歌い出したが。

 一方、紅丸は、散策隊が手に入れた柿を吊るしていた。

 

紅丸「こんなもんかな。」

朱菜「まあ!干し柿!」

紅丸「ああ。さっき、散策隊から分けてもらってな。」

朱菜「フフフ。お兄様、甘い物が好きですものね。入ります?スイーツ同盟。」

紅丸「ハッハハ。」

 

 紅丸と朱菜はそう話す。

 ちなみに、スイーツ同盟は、朱菜、紫苑、ミリム、火煉を始めとする女性陣が入っている。

 紅丸は、干し柿を眺めながら口を開く。

 

紅丸「好きになったのは、父上の影響だ。」

 

 そう。

 紅丸が甘い物が好きになった理由は、紅丸と朱菜の父親が、よく干し柿をくれたからだ。

 

紅丸「父上は干し柿が好きで、戦場でも懐に……………あ……………あっ、すまん!思い出させて……………。」

 

 紅丸はそう言う中、朱菜を心配してそう言うが、朱菜は変顔をしていた。

 

紅丸「何だその顔は。」

朱菜「渋柿を食べてしまった時のお兄様の顔です!」

紅丸「思い出すなよ、そんなの。」

朱菜「はい!そんなのしか思い出しませんでした!」

紅丸「やめなさい。嫁入り前の身で。」

 

 紅丸と朱菜はそんな風に話していた。

 一方、作業は順調に進んでおり、リグルドはジャガイモを持ちながら言う。

 

リグルド「こんなにたくさん育つとは…………。」

リリナ「皆、草取りを頑張ってくれましたからね。」

トレイニー「畑を管理し、様々な植物が育つ環境を作り出す。」

リリナ「トレイニー様!」

 

 リグルドとリリナがそう話していると、トレイニーさんがやってくる。

 

トレイニー「ウフフ。お二人とも、植物達の声が聞こえる様になりましたね。」

リグルド「作物を自分たちで育てるなど、リムル様とレイト様に言われなければ、考えもしませんでしたなぁ。」

リリナ「気づいたら、葉を見れば苗の状態が分かるようになりました。」

トレイニー「ウフフ……………植物達の小さな声に耳を傾ける。はっ!」

 

 トレイニーさんがそう言う中、リグルドとリリナさんはそう言う。

 トレイニーさんがジャガイモを耳に当てると、何かを悟る。

 

トレイニー「あなたは……………そう。揚げ芋になりたいのですね!揚げ芋になりたいのですね。」

 

 トレイニーさんはそう言って、スナック樹羅のロゴが入った箱にジャガイモを入れる。

 それを見ていたハルナが反応する。

 

ハルナ「あれ?その箱は……………。」

トレイニー「あ……………ああ……………ほら、焼き芋が焼けたみたいですよ。」

 

 ハルナがそう言う中、トレイニーさんはそう言って、どこかへと向かう。

 一方、焼き芋が焼けた。

 

ミリム「おお〜!はふ、はふ、はふっ!んっ、んん……………!うまー!どうしたらこんなに美味くなるのだー!」

火煉「どうしたらって言われても、そのまま焼いただけなんですが……………。」

ミリム「何!?焼いただけで!?」

朱菜「もっと食べます?」

ミリム「ふむ。」

 

 ミリム、火煉、朱菜がそう話す中、俺たちも芋を食べていた。

 すると、ミリムが唸りだす。

 

ミリム「ぬぬぬ…………!あんなに固くて土臭いものが、こんなにも甘くてホクホクに…………!」

リムル「お前……………一体どういう食生活をしてたんだ?」

紫苑「きっと愛の無い環境で育ったんですね…………。わかります。」

シズ「……………ミリムちゃん。まだお芋あるからいっぱい食べてね。」

 

 ミリムがそう唸る中、リムル、紫苑、シズさんはそう言う。

 確かに、どういう食生活をしてたんだ?

 一方、忘れられた竜の都では、ミリムの石像の首の部分が落ちる。

 

ミッドレイ「おおお……………!?」

ヘルメス「生野菜が嫌で怒ったんじゃないすか?」

トート「神罰ですよ。神罰。」

ミッドレイ「何をバカな!最高のご馳走ではないか!」

トート達「はぁ……………。」

 

 神官戦士団の長、ミッドレイとその配下でいるヘルメスとトートは、そう話す。

 一方、ゴブタ達は。

 

ゴブタ「おーい!」

ゴブチ「お?」

ゴブタ「芋!焼けたっすよ!」

ゴブチ「よっしゃー!」

ゴブト「休憩、休憩!」

ゴブゾウ「おう。」

 

 ゴブタが焼き芋を持ってきて、食べる事に。

 

ゴブチ「焼き芋なんて久しぶりだぜ!」

ゴブト「自分たちで芋が作れるなんてな。」

ゴブチ「うっめー!」

ゴブゾウ「あむっ!うめーダッスー。」

ゴブタ「あっ。」

 

 ゴブチ達がそう話す中、白老が居た事に気づく。

 ゴブタは、白老の方に向かう。

 

ゴブタ「師匠も食うっすか?」

 

 ゴブタはそう聞くが、白老は無言だった。

 白老は、無言で目の前にある紅葉の木を眺めていた。

 

ゴブタ(最近、師匠の様子が変っす。ふとした時に遠い目をしていたり、舞い散る木の葉をただ眺めていたり……………剣鬼としての過去が一体どんな物だったのか、自分にはよく分からないっす。)

 

 ゴブタはそう思う。

 すると、何を思ったのか、他のメンツも含めて、白老に襲いかかる。

 だが、ものの見事に返り討ちに遭う。

 ゴブタが持っていた焼き芋が入った袋は、白老がキャッチしていた。

 

ゴブタ「い……………いや……………ボケちゃったのかなあと。」

ゴブゾウ「ダッスね。」

白老「おかげで充実しておるよ。……………もう一手合わせ行くかの?」

 

 ゴブタ達がそう言う中、白老はそう言うと、ゴブタ達は逃走した。

 白老は再び紅葉を見つめると。

 

白老「……………思いを馳せる暇も無いわ……………。」

 

 そう呟く。

 一方、リリナさんは、作業をしている猪人族(ハイオーク)に、芋の差し入れをしていた。

 無論、俺もついて行っている。

 

リリナ「皆さーん。リムル様とレイト様から差し入れでーす。」

「「「「「おおおお!」」」」」

 

 リリナさんがそう言うと、猪人族(ハイオーク)の皆は、作業をやめて、芋を食べる。

 

猪人族「こんな我らにまで有難い。」

猪人族「ほらっ!お前もこれ!」

リリナ「子供達にはもう分けてありますから、遠慮しないで下さいね。」

 

 猪人族達は、笑いながら芋を食べていく。

 それをゲルドが見ている中、グルドが話しかける。

 

グルド「ゲルド様?どうなさいました?」

ゲルド「いや。気にせず食べていてくれ。」

 

 グルドがそう話しかけると、ゲルドはそう答えて、どこかへと向かう。

 向かった先にはテントがあり、そこには、魔王ゲルドの木彫り人形が置いてあった。

 ゲルドが焼き芋をお供えして、祈る中、グルド達がやってくる。

 

グルド「ゲルド様。」

猪人族「一緒に食べましょうよ。」

ココブ「フフフ。」

ゲルド「おう。」

 

 グルド達に誘われて、ゲルドはグルド達の方へと向かう。

 すると。

 

魔王ゲルド「しっかり食べて大きくなれ。喜び分け合い強くなれ。」

 

 魔王ゲルドの声が聞こえた気がした。

 その後、リムルが少し不機嫌気味だったが。

 どうやら、トレイニーさんが思わせぶりな事を言ったそうだ。

 それを、俺とシズさんは苦笑していた。

 その後、紫苑、朱菜、ミリム、火煉がお風呂に入っていた。

 

ミリム「ふんぐーったぁ〜。ここは良いなぁ。美味い物がいっぱいあるのだ。」

紫苑「フフン!そうです!凄いのです!」

火煉「何であなたが威張ってるの?」

朱菜「国民一人一人の努力の賜物ですよ。」

 

 四人はそう話して、お風呂から上がる。

 

朱菜「ところで……………実は、栗とお芋を使ったデザートの試作品があるんですが…………。」

ミリム「何と!食べたいのだ!」

紫苑「夜遅くのデザートとは……………なんて罪深い。」

火煉「美味しそうですね。…………ん?」

 

 四人がそう話す中、ある物が視界に入る。

 そこにあったのは、体重計である。

 その横には、俺とリムルの字で別々に、『食べ過ぎに注意ね』と書いてあった。

 その翌日、ドルドが破壊された体重計を見る中、紫苑、朱菜、ミリム、火煉は冷たく暗い雰囲気を醸し出していた。

 

リムル「いやあ……………女の子はそういうの気にするかと……………!」

レイト「良かれと思ってな!な?な?な!?機嫌を直してくれよ〜!」

 

 そんな女性陣に、俺たちはそんなふうに言う。

 それを見ていたシズさんは。

 

シズ「………………無理もないよ。」

 

 そんな風に呟いていた。

 秋の味覚も程々に。




今回はここまでです。
今回は、テンペストの秋の収穫時期のお話です。
そして、前の話で出てきた龍人族のオリキャラであるトートも出しました。
お伝えするのを忘れていました。
次回は、いよいよ本編で、ワルプルギスの開幕と、クレイマンの軍との戦闘が始まります。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。


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第9日記 魔物の街の冬景色

 テンペストに滞在しているフューズ達は、口を開いていた。

 

エレン「どうしよう!ギルマス!」

フューズ「くっ……………!俺とした事が、目算を誤った……………!」

ギド「あっしらには、大事な使命があるんでやすよ。」

カバル「なのに、こんな時に……………。」

フューズ「テンペストに……………。」

三人「初雪が降ってくるなんて……………。」

 

 エレン達はそう話しながら、空を見上げる。

 空から、しんしんと雪が降っていた。

 俺とリムルは、お茶を飲みながら見ていた。

 

フューズ「滞在期間を延ばすかあ……………。」

カバル「仕方ないですよねぇ。」

エレン「でもでも〜こんなに良くしてもらっているのに、これ以上お世話になるのは…………。」

リムル「小芝居しなくても居ていいよ。」

レイト「滞在したいなら、素直にそう言いなよ。」

 

 エレン達が小芝居的な感じに言う中、俺とリムルはそう言う。

 すると。

 

エレン「やったー!」

フューズ達「よっしゃー!」

エレン「温泉入ろ〜っと!」

ギド「流石、リムルの旦那にレイトの旦那〜!」

リムル「冬だね〜……………。」

レイト「そうだな。」

 

 俺たちがそう言うと、エレン達ははしゃぐ。

 それを見ながら、俺とリムルはそう言う。

 その翌日、結構雪が積もった。

 俺がのんびりとしていると、リムルが2階の窓からダイブした。

 あいつ、何なってんだ。

 俺はやらないがな。

 その後、リグルドによって発見され、リムルは戻ってきた。

 

レイト「それにしても、随分と積もったよな。」

リムル「本当だよな!この辺りは豪雪地帯なのか!?こりゃあ、雪かきせにゃ仕事にならんなぁ。」

朱菜「ええ。ジュラの森は、気候が不安定なことで有名ですから。」

紫苑「良いじゃないですか。雪って好きです。子供の頃は、雪の降る中でも、半裸で走り回っていたものです。意外にも!」

リムル「居たなぁ。そんなおバカな小学生。目に浮かぶ。」

紫苑「うん?」

 

 なるほど、気候が不安定なのか。

 そりゃあ、この豪雪も大変だな。

 紫苑の奴が半裸で雪の中を走り回っていたと言うのは、想像できるな。

 リムルと紫苑が笑う中、朱菜と火煉が口を開く。

 

朱菜「笑い事じゃありません!」

火煉「あなたはそのまま、雪に埋まって凍死しかけましたよね?」

紫苑「だって……………新雪には飛び込まずにはいられませんよ!でしょ?でしょ?」

レイト「アハハハ………………。」

 

 そりゃあ、凍死しかけるのも無理ないわ。

 というより、リムルと似たような思考だな。

 すると、俺たちが座る椅子の後ろの窓が勢いよく開かれる。

 

ミリム「ただいまなのだ!」

朱菜「ミリム様!二階から飛び込むのもやめて下さい!怪我しますよ?」

ミリム「魔王は怪我しないのだ!ワーッハッハッハッハッハー!」

 

 ミリムが飛び込んできて、朱菜が注意する。

 その後、リムルが町の放送を使って、皆を議事堂前に集める。

 

リムル「よーし!割り振りは以上。」

レイト「皆頑張るぞ!」

「「「おー!」」」

 

 俺とリムルはそう言う。

 皆がそれぞれの担当区に向かい始める中、ヨウム達もスコップを手にやって来た。

 

リムル「あっおーいヨウム!」

 

 リムルは元気良くヨウムのもとに向かう。

 ただ、ヨウムはあまり乗り気では無さそうだったが。

 

リムル「一緒に雪掻き頑張ろうな。その後は温泉だ。」

ヨウム「ちょっと待ってくれよリムルの旦那。確か住んですぐに火の用心の夜周りをしたな。それに用水路のドブ浚いも、ヤグラのペンキ塗りもやったな。」

ロンメル「荒地の開墾とか。」

カジル「庭も作ったな。」

ヨウム「はぁ……………それで今度は雪掻きだぁ?英雄になるのは引き受けたが便利屋になるつもりないぜ。」

 

 そう。

 ヨウム達にも、色々と手伝ってもらっていたのだ。

 ヨウムがそう言う中、俺とリムルは口を開く。

 

レイト「そっか。たまには気分を変えさせたいって、白老からの提案だったんだが……………。」

リムル「そんなに修行が好きなら、仕方ないなぁ。真面目だなぁ。」

ヨウム達「ひぃー!えっさ!ほいさ!えっさ!ほいさ!うぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 俺とリムルがそう言う中、背後には凄まじいオーラを纏った白老が居た。

 それを見て、ヨウム達は雪かきをし始めた。

 ヨウム達のもとに、朱菜とハルナがやって来ていた。

 

朱菜「お疲れ様です。大変じゃありませんか?」

カジル「とんでもない!」

ヨウム「俺達!」

ヨウム達「「雪掻き大好き!!」」」

 

 朱菜達が温かい飲み物を持ちながらそう聞くと、ヨウム達はそう答える。

 

ヨウム達「えっさ!ほいさ!えっさ!ほいさ!えっさ!ほいさ!えっさ!ほいさ!」

朱菜「まぁ頼もしいですね。」

白老「ホホホホホ……………。」

シズ「頑張って!」

 

 ヨウム達が雪かきをする中、朱菜、白老、シズさんはそう反応する。

 俺たちは、温かいお茶を受け取っていた。

 

朱菜「リムル様とレイト様もどうぞ。」

リムル「ありがとう。」

レイト「助かるよ。」

 

 俺とリムルは、お茶を受け取る。

 そんな中、リムルの影の中では。

 

嵐牙「どうやら、今年も大量の雪が降ったようだな。」

狼「雪!」

狼「雪か!」

狼「雪知ってる!白くてふわふわのあれであるな!」

嵐牙「雪の上では我らの独壇場ぞ!リムル様とレイト様のお役に立つのだ!」

狼「滅多にない見せ場であるな!」

嵐牙「いざっ!」

 

 嵐牙とその配下の狼達がそう話すと、リグルの影から飛び出す。

 それをリグルが見ていた。

 

リグル「ん………………?」

 

 それを見て、リグルは目を細めていた。

 何故なら、リグルの目から見れば、ただ単に遊んでいるようにしか見えないのだから。

 その後、嵐牙達は俺たちの方へと戻る。

 

嵐牙「はぁはぁ……………リムル様、レイト様……………。」

リムル「え!?どうした!?」

レイト「ただの偵察なのに、えらく消耗してるな。」

嵐牙「ぶるるるっ!だ……………大自然の脅威というものは、我が一族でも抗い難く…………。」

リグル「う〜ん………………。」

 

 俺とリムルが報告を聞く中、リグルは物言いたげな表情をしていた。

 一方、蒼華と蒼月は。

 

蒼華「やだ。私ったら、なんて子供っぽい事を……………ふふっ。」

蒼月「相変わらずだね。あ。」

蒼影「ほほう。それは何だ?」

蒼華「はっ……………!そ、そそそそ蒼影様!?いつからそこに!?」

 

 蒼華は、自分と蒼影の雪だるまを作ってご満悦になってて、それを蒼月が見ている中、蒼影が現れる。

 蒼華は蒼影にそう聞く。

 

蒼影「俺はいつでも、お前の背後にいる。で、それは一体なんだ?」

蒼華「これは的です!そう!訓練用の!あっ!あっ!あっ!えっ!えっ……………!」

蒼影「なるほど。基本に忠実だな。」

 

 蒼影がそう聞くと、蒼華はそう答える。

 それを聞いた蒼影は、蒼華にクナイを渡す。

 

蒼華「あああ……………!」

蒼影「右か左。お前の標的を選べ。残った方は俺がやる。」

蒼華「はっ、はわわわわわ……………!」

蒼月「アハハハ………………。」

 

 蒼影はそう言って、蒼華は顔を青ざめ、蒼月は苦笑する。

 相変わらずのサディストであった。

 一方、街の方では。

 

紅丸「黒炎獄(ヘルフレア)!」

 

 紅丸が黒炎獄(ヘルフレア)を発射して、雪を溶かしていく。

 建物には引火していなかった。

 

レイト「おお〜!流石、紅丸!」

リムル「やっぱりお前は頼りになるなあ!雪かきが捗る!」

紅丸「ふっ。」

ミリム「お〜お〜お〜!すっごいのだ!」

紅丸「火力調整にコツがいるんですよ。ハッハハハハハ……………。(最近、こういう役所も慣れて来た……………俺。)」

 

 俺たちが感心する中、紅丸はそんな風に思っていた。

 その後、俺とリムルは街を歩いていた。

 

リムル「ようやく片付いて来たな。」

レイト「だな。ん?」

 

 俺とリムルがそう話しながら歩いていると、雪玉が当たる。

 俺とリムルが振り返ると、子供達がいた。

 

子供達「リムル様〜!レイト様〜!雪合戦しよー!」

リムル「よーし!」

レイト「行くぞ!」

 

 そう言って、俺たちは雪合戦をする。

 すると、後ろから凄まじい速度で雪玉が飛んでくる。

 

リムル「ぶはっ!」

レイト「なっ!?」

ゴブチ達「イェーイ!リムル様ー!レイト様ー!」

紫苑「受け止めて〜!」

火煉「行きますよ!」

リムル「てめぇらー!」

レイト「あれ?なんか、影が……………。」

 

 俺たちの後ろには、ゴブタ達と紫苑と火煉が居た。

 俺たちがそう言うと、上空に大きな雪玉が現れて、俺たちは押し潰される。

 その雪玉には、『のだ』と書かれていた。

 

ミリム「ワーッハッハッハッハッ!私の勝ちなのだ!」

紫苑達「あぁ……………。」

 

 ミリム達がそう言う中、キレた俺たちは、リムルは水玉を、俺は主にゴブタに向けて、オストデルハンマーで生み出した水の弾丸をぶつけていく。

 

ゴブタ「リムル様!レイト様!やっ、やるなら水じゃなくて雪玉で!雪玉でー!」

 

 俺とリムルが追いかける中、ゴブタ達は逃げる。

 その後、トレイニーさんの方へと向かう。

 リムルは、腰にシズさんの魂が入ったバイスタンプを下げていた。

 

トレイニー「うふふふ。そっくり〜。」

リムル「樹妖精(ドライアド)って、やっぱり冬が苦手なのか?」

トレイニー「そんな事はありませんよ。確かに、森の木々は活力を失っているように見えますけど………………葉を落とした木も、今は休んでいるだけなのです。木々だけではありません。地面には植物たちの種子が、地中には同じく根が。たとえ雪に覆われていても、確かな命の息吹を宿し、じっと待っているのです。そう。暖かな春の訪れを。」

シズ「そうなんですね。」

 

 なるほどな。

 そういうもんなんだな。

 すると、そんな良い話をぶち壊す傍若無人な声が響く。

 

ゴブタ「へー!トレイニーさんの春はいつ来るんすかね!アハハハ!」

レイト「バカ……………。」

 

 ゴブタだ。

 そんな事を空気を読まずに言ってしまう。

 すると、ゴブタの足元から木が生えてくる。

 

男性「何だ!?木が……………!?」

トレイニー「と……………このように。植物が本気を出せば、これだけの生命力を発揮できるのです。ええ。春を待たずとも。」

ゴブタ「わー!あー!高いー!」

リムル「分かったから、勝手に木を生やさないでくれ。」

レイト「あと、天辺のゴブタを下ろしてやってくれ。」

トレイニー「嫌です。」

 

 ゴブタが悲鳴を上げる中、トレイニーさんはそう言う。

 その後、ゴブタを下ろしてやった。

 そして、毎度お馴染みの光景が。

 

シズ「ゴブタ君………………。本当に、何度目なのかな?そういうのは言っちゃいけないんだよ?ね?」

 

 シズさんの魂が入ったバイスタンプから、悍ましいオーラが出てきて、ゴブタを説教する。

 そして、シズさんは、白老にゴブタを連行していって、修行をすることに。

 その後、ミリムが雪で何かを作るらしく、できるまで見ないように言われたので、目を閉じていた。

 

ミリム「よし!できたのだ。こっちを向いていいぞ。」

リムル「やれやれやっとか。」

レイト「さてと。何ができたかな。」

 

 俺とリムルが振り返るとそこにある物に思わず声を上げた。

 

「「おお!」」

ミリム「見ろ見ろ!リムル雪像なのだ。」

 

 そこには巨大なスライム姿のリムルの雪像ができていた。

 

レイト「へぇ。凄いじゃん。」

ミリム「どうだ?中々の出来だろう?」

リムル「ああ、デカいのに丁寧だ。この大きさにこの丸みはまるであれみたいだな。」

レイト「ああ。まさにかまくらだな。」

ミリム「かまくら?」

 

 かまくらを知らないミリムが俺に問う。

 

レイト「かまくらって言うのは、雪でドームを作って、中で遊んだり物を食べたり…………簡単に言えば雪の家だな。」

ミリム「ふーん雪の家か。面白そうなのだ!ちょうどいいからこいつを使って!」

リムル「えっ?」

 

 俺は、かまくらとはどういうのかを説明する。

 すると、ミリムは迷いなくリムル雪像にスコップを突き刺した。

 

ミリム「おらりゃあ!おらりゃ!おらりゃ!おらりゃあ!かまくらを作るのだ!」

 

 ミリムはそう言って、雪をかき出していく。

 それを見ていたリムルは、悲しそうな表情を浮かべていた。

 俺たちは、子供達と一緒に、ミリムが掻き出したかまくらの中を整えていく。

 そして、氷の家具やシャンデリアなども作って、かまくらが完成した。

 

子供達「うわー!」

ミリム「凄いのだ!」

レイト「だろ?」

 

 俺たちは、かまくらの中で過ごす。

 竹で作った入れ物に雪を入れて固めて、ランプを作ったりした。

 すると、朱菜がやってくる。

 

朱菜「こんこん。もう暗くなって来ましたから、餅を食べたら、お風呂に入りましょう。」

ミリム「うむ。約束するのだ!」

 

 そんな風に話して、俺たちはお餅を食べる。

 中々に美味しいな。

 ちなみに、俺は磯部焼き派だ。

 シズさんは、微笑ましく見守っていた。

 そんな中、グルドとゲルドは、思い返していた。

 かつて、雪の中を歩き、死んでしまった仲間のことを。

 冬というのは、姿なき魔物。

 少しでも油断したら、死んでしまう。

 グルドとゲルドは、子供達を連れて街に戻る。

 

ゲルド「皆、寒くはないか?」

子供達「うん!」

グルド「誰も欠けては居ないな?」

子供達「はーい!」

 

 グルドとゲルドは、ある決意をしていた。

 この街に冬は訪れさせないと。

 その後、俺は男湯でフューズ、カバル、ギド、ヨウムと一緒にお風呂に入っていた。

 ちなみに、リムルは女湯に入っていた。

 

フューズ「はぁ〜本当にここの湯はいいですなぁ。」

ギド「本当でやすねぇ。」

カバル「疲れた身体に湯が染み込んでくる感じだよな。」

レイト「そう言ってもらえると嬉しいよ。」

 

 三人はリラックスしていた。

 そう言ってもらえると嬉しいな。

 すると、ヨウムが聞いてくる。

 

ヨウム「なあ、レイトの旦那。」

レイト「どうした?」

ヨウム「この温泉って一体何処から引いてるんだ?毎日これだけ湯を沸かすのまず無理だから、何処かに温泉の水脈があるんだと思うんだが。」

 

 ヨウムはそう聞いてくる。

 鋭い指摘だな。

 

レイト「ああ。この温泉は、山岳地帯から直送している源泉かけ流しだ。」

フューズ「なんと!?あの魔境といわれた地下大洞窟の奥の方からですか?」

レイト「ああ。当時、影移動が使えたのは、俺とリムルと蒼影だけだったからな。三人で頑張って引いて来た。」

ヨウム「マジかよ……………。」

 

 そう。

 俺とリムルと蒼影の三人で、ここまで引いてきたのだ。

 その時、色々とあったよな。

 ドワーフ達が混浴にしようとするが、女性陣によって阻まれたり。

 

レイト「まあ、結構大変だったから、各家庭までへの配管は、断念したんだけどな。」

カバル「いや……………普通にここまで繋げていること事態がすげぇよ。」

ギド「流石は、旦那達っすね。」

 

 まあな。

 ちなみに、蒼影は個人的に配管していて、自宅でも温泉に入れるようにしたらしい。

 あと、俺も個人的に配管した。

 一方、ある部屋では、女性が椅子に座る。

 彼女はミュウラン。

 魔王クレイマンの命により、俺たちの街を調査していた。

 

クレイマン「気取られたら、お仕置きですよ。」

 

 クレイマンにそう言われたらしい。

 ミュウランは、クレイマンに心臓を人質に取られていたのだ。

 ミュウランは、俺たちに気づかれないように調査していた。

 だが…………………。

 水晶には、大体ミリムがミュウランの方を向いている様に映るのだ。

 

ミュウラン「えっ………………?ひぃ……………!ううう……………避けても、避けても……………!う…………ううう……………またクレイマン様にお仕置きされる〜……………。」

 

 ミュウランは、そんな風に顔を手で覆う。

 苦労していた。

 一方、そんな事を露知らずの俺たちは、風呂から上がっていた。

 フューズは、牛鹿のミルクを飲んでいた。

 

フューズ「ぷっはー!一仕事の後の温泉は最高だなあ!」

ギド「改めて今思うと、こんな贅沢していいんでやすかね。」

カバル「ふっ。良いんだよ。力仕事を手伝ったんだから。なあ、レイトの旦那。」

レイト「ああ。雪かきを手伝ってくれたからな。思う存分堪能してくれ。」

 

 フューズが牛乳を飲む中、ギドはそう言うが、カバルはそう答える。

 労働の対価はちゃんと払うべきだからな。

 

カバル「よっしゃ!にしても、雪掻きなんて慣れないことしたから明日、身体の変な箇所が筋肉痛になりそうだぜ。」

ヨウム「そういや、さっき同じ事を言ったら、リムルの旦那も似たような事を言ってたな。」

 

 そんな風に話す。

 そんな事を言ってたのか。

 すると、俺たちが外に出ると、女性陣とリムルも出てくる。

 

ミリム「わっははは!いいお湯だったのだ!」

リムル「俺で身体を洗うのやめろよな!」

ミリム「リムルは泡立ちが良いからな。ほれ!お肌もスベスベなのだ!」

リムル「俺のスライムボディが〜!」

 

 そう言って、歩いていく。

 あれ、絶対に嫌がってないな。

 それを見ていたヨウム達は。

 

ヨウム達(あの人可愛いナリして、相当おっさんなんじゃないか?)

 

 そんな風に思っていた。

 あのエロスライムめ。

 その後、俺は自分の部屋で、外を眺めていた。

 すると、雪が降ってきた。

 しんしんと儚く雪が降り、積もっていく。

 それを見るのも、ありだな。

 これが、冬での1日だ。

 翌日、なぜかリムルは、再び雪の中から出てきた。

 本人曰く、見惚れていたら、埋まったらしい。




今回はここまでです。
久しぶりの投稿です。
今回は、転スラ日記の話です。
ちなみに、ヨウムとの出会いは、本編準拠なので、カットです。
次回こそは、クレイマン戦の続きを書こうと思います。
中々続きを書けなくてすいません。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
この小説のヒナタと、ヒナタの悪魔として登場するヒュウガは、変身する予定ですが、ヒナタはブレイド、ヒュウガはカリバーにしようかなと思いましたが、ヒナタはブレイブ、ヒュウガがトゥルーブレイブという案が出ましたが、どうですかね?
もし、意見があれば、お願いします。
この小説の応援も、よろしくお願いします。


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第10日記 サンタクロースはどこにいる

 冬が始まってから、しばらくが経った。

 唐突に、リムルが皆にサンタクロースが居るかどうかを聞いてきた。

 確かに、前世ではクリスマスの時期だったな。

 クリスマス。

 皆が喜ぶ時期であると同時に、特撮においては、ある意味、節目と言える時期でもあるのだ。

 仮面ライダーは、最初の1シーズン目が終わり、クリスマスの犠牲者と言われる人が出るかもしれない。

 スーパー戦隊は、敵が大きく動く事がある季節だ。

 リバイスに関しては、若林司令官に化けたカメレオン・デッドマンの変身者が消えて、赤石が動き出そうとしていたな。

 その話は置いておき、宴であると理解した面子は、準備に入った。

 宴となると、準備が早いのがこの国の特徴だよな。

 俺たちは、クリスマスツリーを見つめる。

 その場には、俺、リムル、紫苑、火煉が居た。

 シズさんのバイスタンプは、リムルが持っていた。

 

紫苑「へぇ………………これが光るんですか?」

レイト「まあな。」

リムル「ド派手になる予定だ。」

シズ「大きい………………。」

火煉「そうですね。」

カイジン「まあ、どんな感じかは、暗くなってからのお楽しみだぜ。旦那方。」

リムル「流石はドワーフだ。一気にクリスマスらしくなった。完成度高いぜ!………………おっさん達も含めてな!」

 

 俺たちは、クリスマスツリーを見上げながらそう言う。

 電球は、カイジン達に作ってもらった。

 リムルはそう言う。

 確かに、ドワーフ組の完成度が高いよな。

 

レイト「ハマり役だな。」

ガルム「そっそうすか?」

ドルド「流行るかな?」

カイジン「ふーむ……………この髭、元に戻るんだよな?なんか老けて見えるぜ。」

リムル「はっはは大丈夫だって。…………ん?髭のおっさんといえば……………。」

レイト「どったん?」

リムル「いや……………ガゼル王にも参加できたらとサンタの服装送ったの思い出して。」

 

 まあ、髭に関しては元に戻るよ。

 というより、そんな事をしてたのか。

 まあ、ガゼル王が着るわけねぇだろ。

 一方、武装国家ドワルゴンでは。

 

ガゼル「弟弟子達からだ。」

ドルフ「なっ………………!?」

 

 ガゼル王はそう言うと、ドルフさんはガゼル王の方を見る。

 ガゼル王は、リムルから送られたサンタの服を着ていたのだ。

 

ガゼル「どうだ?似合うか?」

ドルフ「あっ、いや……………あの……………その……………。よくお似合いです。」

ガゼル「ふっ。であろう。」

 

 ガゼル王はドルフさんにそう聞くと、ドルフさんはそう答える。

 一方、俺たちの方は。

 

紫苑「さあ!おじさま連中には………………負けていられません!」

火煉「紫苑……………なぜそんなに露出度が高めなんですか?冬ですよ?」

 

 紫苑はそう言う。

 紫苑の服装は、この時期には大丈夫なのかと心配になるような露出度だった。

 寒くないの?

 ちなみに、水華の服装は、女物のサンタの服装だが、露出度は低めだ。

 

リムル「寒くないの?」

紫苑「寒さなど、気合いで!」

レイト「なんでそんなにガツガツしてるんだ?あと、剛力丸を仕舞え。」

紫苑「皆がクリスマスを楽しめるよう、盛り立てなくては!」

 

 なるほどね。

 まあ、気持ちは分かるがな。

 

紫苑「この催しを機に、テンペストの住人がより固い絆で結ばれるように。」

レイト「おお。」

火煉「そうですね。」

紫苑「家族も、友人も、仕事仲間も。」

リムル「うんうん!」

紫苑「そして、恋人同士も。」

リムル「それは認めん!」

 

 紫苑がそう言うのを聞いて、俺たちが同感の意を示す中、紫苑の恋人同士という単語に、リムルがそう叫ぶ。

 あ、前世では、恋人が出来なかったんだな。

 ちなみに、斯くいう俺も、前世では恋人が出来なかったが、大して気にしていない。

 というより、シズさんとイチャコラでもしてれば良いのに。

 俺の運命の人は、どんな出会いをするのかは分からない。

 とはいえ、敵として遭遇する可能性が高いが。

 そう思う中、その場には気まずい空気が満ちる。

 その後、俺たちが居る部屋にミリムが駆け込んでくる。

 

ミリム「聞いたぞ、リムル、レイト!サンタとやらの話!プレゼントをくれるとは楽しみだな!」

レイト「どこで聞いたんだ、それ?」

ミリム「変な格好をした一本角が得意げに語っていたのだ!」

 

 紫苑か。

 口が軽いよな。

 まあ、隠すことでもないのだがな。

 

ミリム「私の竜耳(ミリムイヤー)で漏らさず全て聞いたぞ。」

レイト「スキルの無駄遣いだな……………。」

 

 そんなスキルがあるのか。

 無駄遣いじゃね?

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「ふぅ……………よく聞け、ミリム。喜んでいる所、言いにくいんだが……………サンタクロースは、良い子のところにしか現れないんだぞ。だから、魔王のお前の所に来てくれるとは………………。」

 

 リムルは、そんな現実を叩きつける。

 確かに、魔王であるミリムの所に来るのか?

 ミリムの方をチラリと見ると、ミリムは凄く澄んだ瞳を浮かべていた。

 自分が貰えると信じて疑わない純真無垢な笑顔だった。

 聞いたたんじゃねぇのか?

 すると。

 

科学者『告。竜耳(ミリムイヤー)は、あらゆる音を聞き取る事が出来る地獄耳ですが、都合の悪い事は聞こえません。』

 

 科学者がそんなふうに言う。

 都合が良すぎないか?

 一方、寺子屋では、子ども達がクリスマスの歌を歌っていた。

 それを見ていたガビルとベスターは。

 

ガビル「子供達の歌は、聞いていて気持ちが良いですなぁ。」

ベスター「ええ。リムル様とレイト様もお喜びになるでしょうねぇ。しかし、若干声の大きさにのみ頼りがちですね。」

ガビル「ハッハハハハ!元気があって良いではありませんか。」

 

 ガビルとベスターはそんな風に話す。

 ガビルがそう言うと、ベスターはため息を吐く。

 

ベスター「はぁ……………。」

ガビル「む?」

ベスター「ですが、それではこの歌は…………。」

ガビル「感性を生かし、のびのび歌う事が素晴らしいのではないのですかな?子供達には、それが一番ですぞ。」

ベスター「いえ。感性だけでなく、技術とのハーモニーが感動を生むのです。ドワルゴン随一の文化人と言われたこの私の目が黒いうちは………………認める訳にはまいりません。」

「「んっ!」」

 

 ガビルとベスターは、お互いの意見をぶつけ合う。

 子供達が見ているのにも関わらず。

 すると。

 

「「フフフ………………ハハハハハ……………!はーはっはっはっは………………!!」」

 

 唐突に笑い出し、子ども達、リリナ、外から様子を見ていたエレンが呆気に取られる。

 その後、俺たちはベスター達の方へと向かうが。

 

レイト「研究が捗っていないな。何かあったのか?」

ガビル「ふん!」

ベスター「音楽性の違い…………でしょうか。」

リムル「は?」

 

 俺がそう聞く中、2人はそう答える。

 どういう事だよ。

 その後、俺たちはスナック樹羅へと向かう。

 リムルは、トレイニーに話をする。

 

リムル「トレイニーさんは誰かにプレゼントをあげたりするの?」

トレイニー「そうですねぇ。リムル様とレイト様と妹達に。」

レイト「ああ。ドリスとトライアの2人か。」

トレイニー「ええ。自慢の妹達です。まだ未熟ですが、森の管理者としての私を、よく補佐してくれています。」

リムル「そっか。」

レイト「なるほど。」

トレイニー「あの子達がいてくれるからこそ、私は安心してリムル様とレイト様のご相談に……………。」

 

 そう。

 トレイニーには妹が居て、それがトライアとドリスの2人だ。

 トレイニーさんがそう言う中、誰かが入店してくる。

 

トレイニー「あら、いらっしゃ……………!?」

 

 トレイニーさんがそう言う中、扉の方を向くと、とんでもないオーラを纏う2人がいた。

 トライアとドリスの2人だ。

 

ハルナ「増えた!」

ドリス「いつまで油を売っているんです!お姉様!」

トライア「お姉様だけずるいです…………!」

 

 ハルナがそう言う中、2人はそう言う。

 まさか、トレイニーさんは2人に内緒で働いていたのか?

 

トレイニー「ああ……………あらあら、ダメよ。盟主様達の御前です。もっと樹妖精(ドライアド)らしく…………おっほっほっほほ……………。」

ドリス「管理者の仕事放ったらかしでよく言えますね!」

トライア「私達ばかりいつも貧乏くじで〜!」 

トレイニー「おっ落ち着いて、2人とも!」

 

 トレイニーさんがそう宥めるが、逆効果だった。

 俺たちは、こっそり店から脱出した。

 その後、スナック樹羅は、臨時休業となった。

 それから少しした後、クリスマスパーティーが始まろうとしていた。

 

一同「3!2!1!」

「「メリークリスマス!」」

一同「メリークリスマス!!」

 

 カウントダウンと共に、クリスマスツリーが光って、クリスマスパーティーが始まった。

 皆は、クリスマスパーティーを楽しんでいた。

 俺とリムルは、ヨウムとロンメルの方へと向かう。

 

リムル「ん?おーい!楽しんでいるかヨウム、ロンメル!」

ロンメル「どうも!」

ヨウム「おっおう…………。」

レイト「どうしたんだ、ヨウム?」

 

 リムルがそう言うと、ロンメルとヨウムはそう言う。

 ヨウムは浮かない顔だったので、俺は話を聞く。

 

ヨウム「いや。……………此処は本当に魔物の町なのか?……………こんな祭り、王都でもなきゃやらないぜ。」

ロンメル「化かされているかと思うくらいですね。」

リムル「悪い魔物じゃないっての!」

 

 ヨウムがそう言う中、リムルとロンメルは笑う。

 そこに、白老がやってくる。

 

白老「ほっほっほ。」

レイト「白老。」

ヨウム「あっ、師匠!」

白老「宴の席ではただ、楽しめば良い。浮世の全ては、杯の酒と同じく飲んで笑いに変えるものじゃ。」

 

 白老が来た事で背筋を伸ばす白老。

 白老はそう言って、杯の中の酒を飲み、一言呟いて去っていく。

 

白老「ただでさえ、明日の修行中に、あっさり逝くかもしれんのだからの。のほっほっほ。」

ヨウム「えっ……………。化かされたままでいたいなあ……………。」

リムル「も……………もう一回乾杯しようか!」

ロンメル「いえ〜い!」

リムル「飲め!飲んで飲まれちまえ!」

 

 白老がそう言いながら去っていくのを見て、ヨウムはそう呟き、俺は肩に手をおく。

 一方、テンペストの外の森では。

 

蒼月「随分と楽しそうだよね。」

蒼華「………………そうね。」

蒼影「クリスマスとやらで浮き足立っている今こそ、俺たちが平静でいなければならない。」

 

 蒼月と蒼華が、テンペストを見ていると、2人の背後から蒼影がやってくる。

 2人が気を引き締める中、蒼影は口を開く。

 

蒼影「心を殺せ。常に冷たい刃の下に。決して掻き乱すな。」

蒼華「ええっ………………!?」

蒼月「えっ。」

 

 蒼影がそう言うと、2人の方を向く。

 その顔には、パーティーグッズのヒゲ眼鏡が付いていた。

 2人は固まると、必死に笑いを堪える。

 

蒼華「くっく……………ヒーッ……………ヒーッヒヒ……………!」

蒼月「うっ……………!くっ………………!」

蒼影「ちなみにこれは、リムル様とレイト様に披露する一発芸用だ。」

 

 2人が笑いを堪えて咳き込む中、蒼影はそう言って、蒼華にヒゲ眼鏡をつけさせる。

 

蒼影「もちろん、お前達の分もある。」

蒼華(蒼影様は、ずるいお方です……………。)

蒼月(なるほど。)

 

 蒼影の言葉に、2人はそう思う。

 一方、シズさんがクリスマスツリーを見つめていたのを見て、俺とリムルは話しかける。

 

レイト「シズさん。」

シズ「あっ、2人とも。」

リムル「どうしたんだ?クリスマスツリーを眺めて。」

シズ「ああ……………懐かしく思って。子供達と一緒に楽しんだなあって。」

 

 俺とリムルがそう聞くと、シズさんはそんな風に言う。

 子ども達というのは、イングラシアに居る子ども達の事だろう。

 リムルが口を開く。

 

リムル「子ども達、必ず救おうな。」

シズ「ええ。」

レイト「だな。」

 

 俺たちはそう話す。

 すると。

 

ハルナ「リムル様!レイト様!皆さん!こちらにお料理を用意いたしております。」

 

 ハルナがそう言うので、俺たちは移動する。

 そこには、色んな料理が並んでいた。

 

朱菜「さあ、どうぞ!」

ミリム「おお〜!すっごいのだ〜!ハハッ!」

リグル「どうぞ、ミリム様。」

ミリム「うむ。」

リムル「まるでレストランみたいだなぁ!」

 

 俺たちは、椅子に座る。

 確かに、レストランみたいだよな。

 すると、料理が運ばれてくる。

 

朱菜「八面鳥のローストは、リグルが捕ってきて、ゴブイチが仕上げました。」

 

 料理が並べられると、朱菜が解説する。

 

ゴブイチ謹製 八面鳥のロースト〜季節の野菜を添えて〜

 

ゴブイチ「お口に合えば……………。」

 

 次に、出てきたのは、キッシュだった。

 

朱菜「キッシュはハルナが。」

 

ハルナ謹製 ジュラパーチとほうれん草のキッシュ

 

ハルナ「朱菜様に教えていただきました。」

レイト「おお。」

 

 俺たちは、3人が作った料理を食べる。

 

リムル「どっちも美味しいよ!流石が朱菜の教え子だ。」

レイト「美味い!」

 

 本当に美味い。

 それを聞いて、2人は喜ぶ。

 

朱菜「お次はこちら!」

 

 朱菜が出してきたのは、長靴状のコップに入ったワインだった。

 

アピト&ゼギオン謹製 蜂蜜とフルーツのホットワイン

 

朱菜「ホットワインには、アピトの蜂蜜とゼギオンが集めた木の実が入っていますよ。」

リグル「ミリム様にはホットジュースです。」

ミリム「ほほう!蜂蜜〜!」

 

 俺たちは、ホットワインを飲む。

 温かいよな。

 

リムル「ふー…………甘くてあったまる。」

レイト「2人とも、ありがとう。」

アピト「私は蜜を運んだだけで…………。」

ゼギオン「……………うん。」

 

 俺とリムルがお礼を言うと、アピトはそう言って、ゼギオンは会釈をする。

 次に、朱菜の料理がやってくる。

 

朱菜「私の料理はこちら!」

 

朱菜謹製 牛鹿フィレ肉のロッシーニスタイル

 

 それは、一種の芸術のようだった。

 

リムル「凄い!食べるのが勿体ないくらいだ。」

レイト「良くこれ程の物を作ったな。」

朱菜「以前、リムル様に教わった料理を再現しました。」

 

 リムルがそう言う中、俺はそう聞くと、朱菜はそう答える。

 そうか、リムルって、友人の結婚式を見送ったとか言ったたな。

 俺たちは、その肉を食べる。

 

リムル「あっ……………!うんま〜い!」

ミリム「はむっ。んっ!なんじゃこりゃ〜!」

レイト「美味いな。さあ、突っ立ってないで皆で食べようぜ!」

 

 リムルとミリムは、そう叫ぶ。

 俺の言葉に、皆一斉に料理を手に取って食べ始める。

 皆には、好評のようだ。

 そんな中、リムルは朱菜に聞く。

 

リムル「そういえば、よく紫苑が作るとか言い出さなかったな。」

朱菜「お料理を一部任せてでも…………全力で!阻止しました。」

レイト「グッジョブ。」

 

 リムルがそう聞くと、朱菜はそう答える。

 俺はそう言う。

 そして、クリスマスケーキがやってくる。

 

朱菜「お待たせしました!クリスマスケーキです!」

一同「おお!」

リムル「すごいぞ、朱菜!材料もまだ満足に揃わない中でこれほどのケーキを作るとは!」

レイト「……………真ん中に何かあるのが気になるが。」

 

 俺たちはウェンディングケーキと遜色ないケーキを見てそう言う。

 ケーキの真ん中に、水飴で再現されたであろうリムルが居るのが気になるが。

 

ギド「これは美味いでやす!」

ミリム「うまー!」

アルビノ「本当に美味しい。凄いよ朱菜。」

朱菜「ありがとうございます。」

 

 俺たちはケーキを食べて、笑顔になる。

 すると、カバルが聞く。

 

カバル「お店とか出さないんですか?」

朱菜「私はリムル様とレイト様に御使いしてる身ですので。」

エレン「えー!リムルさんとレイトさん、羨ましい!これは通い詰めちゃう美味しさだよ。イングラシアの名人の腕にも匹敵するかも(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。」

 

 カバルの質問に朱菜がそう答えると、エレンはそう言う。

 すると、朱菜が反応する。

 

朱菜「そう……………。」

リムル「あっ、ああ……………。」

レイト「朱菜さん?」

朱菜「……………そう。そのような人がいるのですね…………世界には。」

 

 朱菜はそう言う。

 朱菜の瞳にチラつくのは、イルミネーションか、それとも、対抗心の炎なのか。

 それは、分からない。

 それでも、分かるのは、とんでもない事になっているという事だ。

 朱菜達の料理を食べた後、エレンが皆の前で歌を披露し皆が盛り上がる。

 その後はメインのプレゼント交換をしあってクリスマスパーティーは幕を閉じた。

 一方、それをリムルの胃袋の中から見ていたヴェルドラとイフリートは。

 

ヴェルドラ「はぁ〜……………。ん?」

イフリート「ヴェルドラ様。また下界の様子の見学ですか?いつまで経っても、封印の解除ができませんよ。」

 

 ヴェルドラはサンタコスをして拍手をしていると、イフリートはそう言う。

 

ヴェルドラ「貴様は相変わらず固いなあ。あっ、見ろ。リムルとレイトがクリスマスとやらをやっておるのだ。どうやら、贈り物をし合う宴らしいな。」

イフリート「宴なら年中やってきる気がしますが。」

 

 ヴェルドラがそう言うと、イフリートはそう言う。

 すると、ヴェルドラはつぶやく。

 

ヴェルドラ「良いなぁ、あれ。我も参加したい。………………イフリートよ。もし……………もしだが、我に贈り物をするとしたら、何をくれる?」

イフリート「うーん………………。」

ヴェルドラ「う〜ん……………。」

 

 ヴェルドラがそう聞くと、イフリートは考える。

 すると、ヴェルドラが口を開く。

 

ヴェルドラ「ああ!もしもの!仮定の話だぞ!」

イフリート「勤勉さ……………でしょうか。」

ヴェルドラ「ふぅ……………かったいなぁ。貴様は。」

 

 イフリートはそう答えた。

 ヴェルドラは、それを見て、そう言う。

 その夜、俺たちはミリムの部屋へと向かっていた。

 プレゼントを置くためだ。

 翌朝、暴れられても困るし。

 

リムル「なあ、昼寝姿を見慣れているとはいえ、女の子?の個室に忍び込むのは罪悪感が……………。」

レイト「そんな事を言ってないで、さっさと置いて離脱するぞ。」

 

 リムルがそう言うので、俺はそう返す。

 すると、ミリムの目が開いていた。

 

ミリム「サンタクロース……………捕まえたのだ。」

リムル「おわっ!」

レイト「あ。」

ミリム「良い子の私にプレゼントを…………よこすのだ!」

リムル「お前!」

レイト「分かってんだろ!?」

ミリム「サンタクロース!!」

「「あああぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

 ミリムはそう叫ぶと、爆発する。

 

科学者『告。竜眼(ミリムアイ)は、あらゆる物を見通す事が出来る超視力。ですが、都合の悪い物は見なかったふりをします。』

 

 科学者がそんな風に言う。

 その翌朝、俺とリムルにもプレゼントが届いていて、驚いたのだった。




今回はここまでです。
今回は、クリスマスでのテンペストの話です。
クリスマスも、賑やかに過ごしていました。
転キメの本編も、頑張ります。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
11月1日に、コリウスの夢の配信が決定しましたね。
転キメや、転スラとギーツなどといった作品でも、コリウスの夢はやろうかなと思っています。
もし、意見があればお願いします。


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第11日記 正月を満喫

 忙しい年末の大掃除を終え、テンペスト初の正月を迎える。

 広場に集まる皆の前で俺とリムルは今年最初の挨拶をする為に前に立つ。

 

リグルド「さあリムル様!レイト様!皆にお声を!」

リムル「うむ!」

レイト「ああ。」

 

 リグルドにそう言われて、俺たちもそう答える。

 今年初の挨拶だからしっかりしないとな。

 すると、朱菜が話しかける。

 

朱菜「お正月用の特別な礼服も用意しています。」

レイト「流石は朱菜だな。」

 

 俺は朱菜が作った黒い礼服を着る。

 一方のリムルは……鏡餅の姿となっていた。

 

リムル「皆!明けましておめでとう!」

レイト「今年もよろしく頼むぜ。」

皆「わあああ!リムル様〜!レイト様〜!」

 

 挨拶は無事に上手くいったな。

 だが今はリムルの礼服姿が気になってしまう。

 俺はぼそっと呟く。

 

レイト「……鏡餅みたいだな。」

リムル「言うな!」

 

 俺がそう言うと、リムルはそう叫ぶ。

 その後、俺とリムルは分かれる。

 火煉に、新年の挨拶をする。

 

火煉「レイト様。あけましておめでとう御座います。」

レイト「ああ。今年もよろしく頼むな。」

火煉「はい!」

 

 俺たちは、そんなふうに話す。

 その後、リムルが紫苑と朱菜とリグルドの3人に、丸い石の玉を渡すという事が分かった。

 日本でなら、それは悪質な悪戯だが、この世界では通じなかった。

 やめろって。

 俺とリムルがのんびりとしていると、ミリムが入ってくる。

 相変わらず、扉を吹き飛ばして。

 

ミリム「あけましておめでとう〜!なのだ!」レイト「ミリム、扉を外しちゃダメだろ。」

ミリム「どうだ、どうだ〜?可愛いか?かわいいであろう?可愛いと言え〜!」

 

 ミリムが入る中、俺はそう言うと、ミリムは無視して、そう言ってくる。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「ああ、可愛い、可愛い。馬子にも衣装って奴だな〜。」

 

 リムルはそう言う。

 馬子にも衣装って、確か、ある意味では悪口だったような……………。

 俺がそう考える中、ミリムとリムルは飛び出していった。

 その後、俺たちはリグルド達に連れられて、神社のある方に向かう。

 

リムル「おお!すげー!」

レイト「見事だな。」

シズ「凄いね。」

 

 俺たちはそう言う。

 ちなみに、シズさんの魂が入ったバイスタンプは、リムルが持っている。

 

リグルド「これがこのたび創建された神社です。」

リムル「この前まで、こんなの影も形もなかったよな?」

レイト「まさか…………短期間でこんな立派な神社を作り上げるとはな。」

リグルド「ええ。リムル様とレイト様が初詣?なるものをしたいと仰られていたので。」

 

 リグルドがそう説明すると、俺とリムルはそう言う。

 確かに、そうは言ったがな。

 

リムル「そりゃあ正月と言えば初詣でだけど…………。」

レイト「すごいな。」

シズ「そうだね。」

リムル「この賽銭箱、何を入れるんだ?」

 

 俺たちはそう言いながら、賽銭箱の方へと向かう。

 ちなみに、この国には、まだ通貨はない。

 リムルとシズさんがお参りする中、俺は気になる事があり、呟く。

 

レイト「そういや、この神社の神様って、なんだ?」

リムル「ヴェルドラか?」

紫苑「それはもちろん、ほら!」

レイト達「ん?」

 

 俺がそう呟くと、リムルはそう言う。

 普通ならヴェルドラだろうな。

 だが、紫苑が指差した先にあったのは、リムル大明神とレイト大明神という文字だった。

 

リムル「えええ!?」

レイト「ああ〜……………そうきたか。」

朱菜「では、リムル様、こちらへ。」

火煉「レイト様も。」

 

 俺たちかよ。

 ギフテリアン(TURE)が祀られるって、ある意味凄くね?

 俺たち、動けなくね?

 すると、妙案を思いつく。

 

レイト「リムル、分身体を使えばいいんじゃね?」

リムル「レイト、ナイス!」

 

 俺たちは、分身体を出して、それを祀る感じにした。

 ちなみに、この神社の狛犬的なのは、嵐牙だ。

 その後、俺、リムル、紫苑、ミリムが話をしていた。

 すると、紫苑はため息を吐く。

 

紫苑「ふぅ。」

ミリム「どうした?一本角。」

紫苑「紫苑です。」

ミリム「そう、それ!」

リムル「せっかくの晴れ着なのに、元気ないなぁ。」

レイト「どうしたんだ?」

 

 ため息を吐く紫苑を見て、俺たちはそんな風に言う。

 すると、紫苑が口を開く。

 

紫苑「実は……………平坦なミリム様と違い、私は凹凸の激しい体をしておりますので…………。」

ミリム「っ!!」

紫苑「帯の締め付けが苦しくて……………。」

ミリム「あぁぁぁん?なら、私がもぎ取ってくれようか?醜く垂れる前に。」

紫苑「っ!」

レイト(正月早々、そんな女特有のドロドロとした会話をするのやめない?)

 

 紫苑がそう言うと、ミリムはそう言う。

 俺とリムルは、耳を塞いだ。

 やめろって、そんな女特有のドロドロとした会話は。

 

紫苑「私のお胸は、毎晩鍛えているので、垂れたりしません!」

ミリム「愚か者め!垂れるのだ!鍛えていようが、魔王であろうが、垂れるものは垂れるのだ!」

リムル(やだやだ。聞きたくない、聞きたくない。)

ミリム「実際、私は垂れそうなのを1人知っておるのだぞ!!」

レイト(誰だよ。)

 

 紫苑とミリムがそんなふうに言う中、俺たちはそう思った。

 場違いだからやめろって。

 一方、傀儡国ジスターヴでは。

 

フレイ「へっくし!」

クレイマン「………………………。」

 

 フレイとクレイマンの2人が、お茶をしていたが、フレイがくしゃみをして、お茶がクレイマンにかかる。

 フレイが口を抑える中、クレイマンは固まっていた。

 そんな事を知らない俺たちは、神社の中を歩いていた。

 途中、ガビルがリムルがおふざけで書いたおみくじを引いたのを見た。

 その後、子供達の声が聞こえてきた。

 

リムル「ん?こっちは何をしてるんだ?」

レイト「あそこは確か……………。」

リリナ「あっリムル様。レイト様。あけましておめでとうございます!」

子供達「おめでとうございます!」

リリナ「これです。リムル様とレイト様のふくわらい。」

 

 俺たちがそう言うと、リリナ達は気づいて、声をかける。

 リリナがそう言って俺とスライムのリムルの福笑いを見せてくれた。

 ちなみに、俺のやつは、ギフテリアンverと人間verがある。

 

リムル「レイトは兎も角、俺のは案の定パーツが少ないな。」

リリナ「微妙なバランスが難しいそうです。少しのズレで全くの別人になってしまうとか。」

リムル「まぁ本来はそれが面白いんだけどな。」

ゴブタ「はい!はーい!自分が手本を見せるっす!」

レイト「ゴブタ。」

 

 自身満々に現れたゴブタはリムルのスライム福笑いに挑戦する。

 

ゴブタ「リムル様と付き合いの長い自分なら、リムル様の顔なんて飽きるくらい見てるっす!」

リムル「飽きる?」

ゴブタ「楽勝っすよ!こ〜んなシンプルな顔。」

リムル「シンプル?」

 

 お前、よくもまあ、ナチュラルにそんな事が言えるよな。

 さてと、あの人を呼びますか。

 ゴブタが福笑いに挑んでいる中、俺はある人を呼ぶ。

 

ゴブタ「はい、右目!左目!テカリ!おやぁ〜?もう完成したっすよ。やりがいのない顔っすね。」

 

 ゴブタがそう言うと、完全再現されたリムルの福笑いがあった。

 そんな中、リリナさんから福笑いを受け取る。

 

ゴブタ「どうすっか?そっくりでしょう?そっくりすよね!ふっはははは!」

レイト「おお、確かにそっくりだな。じゃあ、俺のも出来るよな?」

ゴブタ「………………え?」

 

 ゴブタが笑う中、俺は俺の人間verの福笑いを取り出す。

  

レイト「お前、リムルの顔を飽きるほど見たんだよな?じゃあ、俺の顔も飽きるほど見たんだから、余裕だよな?」

ゴブタ「え、えっと……………。」

リムル「頑張れよ。失敗したら、修行が厳しくなるからな。」

 

 俺とリムルはそう言う。

 その背後には、白老がいた。

 白老はオーラを纏っており、目を光らせていた。

 

ゴブタ「あっ……………終わったっす。」

 

 それを見て、ゴブタは真っ白になる。

 そうして、連行されていった。

 ゴブタはいい奴なのは間違い無いが、失言が多いんだよな。

 その後、議事堂に集まった。

 

リグルド「書き…………初め?」

紫苑「なんですかそれは?」

リムル「今年の展望を筆で書いて、皆で壁に張り出すんだ。」

一同「おお!成る程!」

 

 書き初めをやる事になった。

 その際、疑問が出るが、リムルの説明で納得する。

 

リグルド「つまり、こう言うことですか。」

 

 そう言いながらリグルドは書き初めを書く。

 

リグルド「どっ…………どうでしょう?」

 

 リグルドが書いたのは、創造・進化・宴会。

 見事な一筆書き。

 

レイト「いいじゃないか。」

リムル「今年も頼むぞ宴会部長。」

 

 それを見た俺たちはそう言う。

 他の皆も、書き出していく。

 

朱菜「私はこれです。」

火煉「私はこれです。」

 

 朱菜が書いたのは衣食礼節で、火煉が書いたのは平穏だ。

 

リムル「朱菜らしいな。今年は、新しい甘味を探そうな。」

朱菜「はい!」

レイト「火煉も頑張ろうな。」

火煉「はい!」

 

 俺達がそう言うと、朱菜と火煉ははにかむ。

 次は、紫苑とミリムの番だ。

 

紫苑「私は絶対これです!」 

ミリム「私はこれなのだ!」

 

 紫苑はリムル様♡愛で、ミリムはマブダチだった。

 

リムル「どういう展望なんだよ。」

レイト「まあ、2人らしいというか、なんというか…………。」

 

 どういう展望なのかは分からんな。

 とはいえ、2人らしい。

 次々に、展望を書いていく。

 

グルド「我らはこれだな。」

ゲルド「今年は街道整備を終わらせます。」

 

 グルドは家、ゲルドは道だった。

 

リムル「町の発展楽しみだな。」

レイト「今年も頼むぞ2人共。」

 

 2人らしいな。

 次は、ゴブタとシズさんだ。

 ちなみに、シズさんの奴は、シズさんが書きたい文字を、俺が代筆している。

 

ゴブタ「これしかないっす!」

シズ「私は、これかな。」

 

 ゴブタはぶっちぎりモテ男で、シズさんは平和だ。

 

リムル「ゴブタはブレない奴で、シズさんはそれだと思ったよ。」

レイト「だな。」

 

 シズさんも、平和を望んでいるんだな。

 しばらくして、皆で出揃う。

 

リグルド「さぁ!みんな出揃いましたぞ。」

 

 黒兵衛は一刀入魂、リリナが五穀豊穣、ベスターは研究一筋、白老が百戦錬磨、紅丸が自立、蒼影は一撃必殺、ガビルが目指せ劇団決戦、ガルムとドルドがファッション☆革命だ。

 ちなみに、嵐牙は角で書いた為、ビリビリになっていた。

 

リムル「おお!皆いいね。」

レイト「今年も始まるな。」

朱菜「ところで、リムル様とレイト様の書き初めは?」

リムル「えっ?あっ…………いや……………。」

レイト「俺はこれだな。」

 

 俺とリムルがそう言う中、朱菜はそう聞いてくる。

 ちなみに、リムルは脱三日坊主で、俺は無病息災だ。

 書き初めになると、これ一択になるんだよな。

 その後、俺たちは外に出る。

 子供達の声を聞きながらのんびりしていた。

 

リムル「なあ、本当にここが異世界だって思えるか?」

レイト「平和が一番だな。」

 

 俺とリムルはそう話す。

 すると、羽根つきの球が飛んできて、木を抉る。

 俺たちが冷や汗を流す中、木が倒れる。

 すると。

 

ミリム「ワ〜ハッハッハッハッ!今度はどこに塗ってやろうか!」

紫苑「うぅぅぅぅ……………!」

火煉「やれやれ……………。」

 

 そんな笑い声が聞こえてきて、その方を向くと、紫苑とミリムが羽つきをしていた。

 火煉は、墨汁と筆を持って立っていた。

 2人の顔には、落書きがされていた。

 

ミリム「何度やっても同じ事なのだ!十大魔王随一の羽根つき名人に勝てるか!」

紫苑「いいえ!次こそは……………次こそは勝ちます!ジュラの森の羽根突き鬼神の名にかけて!」

ミリム達「いざ、勝負!羽根突きの!」

 

 2人はそう話すと、羽根突きを始める。

 だが、その規模が危険すぎる。

 何せ、弾丸のようにめり込んでいくのだから。

 俺とリムルは、即座に避難した。

 一方、神社の方では、餅つきが始まろうとしていた。

 リグルド、ゴブイチ、黒兵衛、グルド、ゲルドのテンペスト屈指の力のある者達が集結した。

 それを見ていたヨウムが口を開く。

 

ヨウム「……………何つぅか。正月だってのに、華のない面子だな。」

黒兵衛「まぁここは、力自慢の体力馬鹿の仕事なんだべ。」

白老「ほっほっほ。今こそ修行の成果を見せる時じゃろうて。」

ロンメル「ヨウムさん!がんば!」

 

 ヨウムがそうぼやく中、黒兵衛、白老はそう言う。

 そんな中、ゲルドとグルドが餅をつき、ゴブイチとリグルドが餅をひっくり返す。

 

ヨウム「はぁ…………。むさい男ばっかで餅が不味くならないっすかね。」

 

 ヨウムはため息を吐きながらそう言う。

 すると、ゲルドとグルドの2人が、餅を差し出す。

 

ヨウム「ん?もうできたのかよ!?…………なんか可愛くなってる。」

 

 ヨウムは、あっという間に餅が出来たことに驚く中、2人の餅は、蜂蜜のかけられた可愛い豚さんの顔が描かれていた。

 それを、ヨウムは食べる。

 

ヨウム「しかもうめぇ!あの旦那達ってよく分からねぇな……………。」

白老「参考になるじゃろう?」

 

 美味しい事にヨウムがそう言う中、白老はそう言う。

 ゲルドとグルドは、子供達にも餅を配っていく。

 子供達が笑顔になるのを見て、2人は微笑む。

 ヨウムも、餅をついていく。

 一方、蒼影達は。

 

蒼華「たまにはのんびりするのも、いいですね。」

蒼月「だね。」

蒼影「ふっ。」

 

 3人は凧を上げていた。

 すると。

 

ゴブタ「うぇぇぇ〜い!へいへいへいへいへ〜い!蒼影さぁ〜ん!」

蒼月「あっ、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)。」

ゴブタ「俺たちの方が、高いですぜ!ひゃっは…………ギャアアア!!」

 

 ゴブタが凧を上げてきて、蒼影を煽りながらそう言うと、蒼影は凧から糸を伸ばして、、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)の凧を切断する。

 それを見ていた蒼華は。

 

蒼華「あ、あの…………蒼影様。それって、凧糸じゃ……………ひっ!」

蒼月「アハハハ……………。」

 

 蒼華がそう指摘すると、蒼影は無言で蒼華の凧に糸を巻きつける。

 すぐに切断できるぞと言わんがばかりに。

 それを見て、蒼月は苦笑する。

 一方、俺たちも凧を上げにきた。

 すると、トレイニーさんが現れる。

 

リムル「ん?」

トレイニー「良い年明けですね。リムル様、レイト様。」

リムル「トレイニーさん!?振袖…………!?」

レイト「いつのまに……………。」

 

 そう。

 トレイニーさんの姿は、振袖姿だったのだ。

 

トレイニー「昨年は色々なことがありましたね。」

リムル「そうだな。日記書くのも頓挫するほどな。」

トレイニー「夏の湖での私の言葉は覚えていらっしゃさいますか?」

リムル「え?」

レイト「あれか…………。」

 

 トレイニーさんはそんな風に言ってくる。

 夏の湖でのトレイニーさんの言葉。

 それは……………。

 

トレイニー『ただ、街は今、多くの勢力に注目されています。この先も…………明日も笑えるとは限りませんよ。』

 

 そんな風に言ってたのだ。

 すると、トレイニーさんの表情が変わる。

 

トレイニー「何か…………良くない風が巻き起ころうとしている。嫌な予感がしています。森の木々を薙ぎ倒すような風が……………。リムル様、レイト様。この新たな年は、これまで以上に気を入れる必要があるようですよ。」

レイト「…………………。」

リムル「…………あっ!それで振袖なのか。」

トレイニー「ええ。何事も最初が肝心ですから。これが私の本気の現れです!」

リムル「はぁ……。」

 

 トレイニーさんはそんな風に最後は明るく言う。

 よくない風か……………。

 確かに、嫌な予感がするな。

 俺はそんな風に考えていた。

 俺は、まだ気づいていなかった。

 厄災の足音が、着実に近づいている事を。

 その頃、鬼人達は集まっていた。

 鹿おどしの音が響く中、朱菜が口を開く。

 

朱菜「私達だけで顔を合わせるのは、久しぶりですね。」

白老「特に、若様と姫様はお忙しいですからな。」

紅丸「何何。」

一同「乾杯!」

 

 朱菜と白老がそう言う中、乾杯をする。

 おせち料理を食べる中、紅丸が口を開く。

 

紅丸「爺……………白老こそ、ヨウムの特訓につきっきりだろう。」

白老「ぬっほほほほ。その程度のこと。」

紅丸「黒兵衛の工房も、評判は上々だし。」

黒兵衛「いやぁ……………照れるべ。」

紅丸「蒼影なんか、休みなしで飛び回ってる。」

蒼影「ふっ。今日はサボった。」

 

 料理を食べる中、紅丸達はそう話す。

 すると、紅丸は表情を引き締める。

 

紅丸「だが、手がける仕事は違えど、皆の志は一つだ。この身、この魂。リムル様とレイト様の為に!紫苑と火煉もな。」

火煉「ええ。」

紫苑「………………墨の味しかしない。」

 

 紅丸がそう言う中、火煉と紫苑にも声をかける。

 火煉が答える中、紫苑はそう呟く。

 それを見た紅丸は、鹿おどしの音が響いた後、口を開く。

 

紅丸「……………何して、そうなった?」

火煉「聞かないでください………………。」

 

 紅丸がそう言う中、火煉は気まずそうに目を逸らし、そう言った。

 一方、リムルは、炬燵でのんびりとしていた。

 そん中に、俺たちが入る。

 

シズ「お雑煮、出来たよ。」

リムル「えっ?シズさんが作ったのか?」

レイト「いや、シズさんの家のレシピを教えてもらって、俺が作った。」

 

 そう。

 現在のシズさんは、バイスタンプの中に入っているので、俺が代わりに作った。

 俺とリムルは、お雑煮を食べる事に。

 

リムル「うん!美味しいよ、シズさん!」

シズ「ありがとう。」

レイト「悪いな。後少しで、シズさんの肉体は完成するんだけど……………。」

シズ「うん。ありがとうね。」

 

 俺たちはそんな風に話しながら、食事をしていく。

 今年は、どんな年になるのかな。

 お雑煮を食べながら、俺はそう思う。

 ただ、この時の俺は気づいていなかった。

 今後、俺たちは、覚悟を求められるという事を。




今回はここまでです。
今回は、転スラ日記の話です。
今回で、転スラ日記の話は、一区切りとさせていただきます。
お正月の話です。
シズさんも、レイトのサポートを受けて、今年の願望を書いたり、お雑煮を作る事が出来ました。
災厄の影が迫る中。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
次回の話は、本編か、コリウスの夢のストーリーのどちらかにしようかなと思っています。
コリウスの夢も、リムルの華麗な教師生活と同様に、紅蓮の絆編にも繋がってきますからね。
コリウスの夢でのストーリーで、どんな感じにやって欲しいというのがあれば、活動報告にて承っています。


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コリウスの夢
第1話 コリウス国へ


 ある場所。

 そこでは、長い銀髪の女性が、氷で出来た棺と思われる物の前に立っていた。

 長い銀髪の女性は、全裸だった。

 

???「やはり、気になる。妾自身の目で、かの者たちを見定めておくべきであろうな。」

 

 長い銀髪の女性はそう言う。

 その視線の先にある氷の棺の中には、全裸の黒い長髪の女性がいた。

 氷の棺に手を置くと、その銀髪の女性の手が火傷のような跡が現れる。

 

???「お前の願い、必ず妾が叶えてやろうぞ。」

 

 その銀髪の女性は、自分の顔が焼けるにも関わらず、頬を棺につけて、そう言う。

 氷の棺の中の女性の見た目は、クロエ・オベールに似ていた………………。

 精霊の棲家で、子供たちを救い、獣王国ユーラザニアや、武装国家ドワルゴンとの国交が樹立して、リムルが自由学園から帰ってくるまで、残り数日となっていた。

 俺も、色々と仕事を終わらせていた。

 

レイト「さて。仕事は大分片付いたな。」

 

 俺はそう呟く。

 仕事も片付いたし、たまにはのんびりするのもありかな。

 そう思っていると、ガンデフォンに連絡が入る。

 

レイト「ん?リムルから?」

 

 俺が持っているガンデフォンに連絡が入るという事は、リムルからだろう。

 俺は対応する。

 

レイト「どうした、リムル?」

リムル「レイトか!?少し、手伝って欲しい事があるんだけど……………。」

レイト「ん?」

 

 リムルはそんな事を言ってくる。

 どうやら、神楽坂優樹から、ある事をお願いされたそうだ。

 それは、コリウス王国への潜入捜査。

 優樹曰く、アスラン殿下とサウザー殿下の王位継承権争いの内情を探る事だそうだ。

 アスラン殿下はAランク冒険者でもあり、熱砂の英雄王子と呼ばれていて、そのカリスマ性によって、コリウス王国のギルドマスターが懐柔され、反乱を起こしたそうだ。

 その為、自由組合としては、放置出来る問題ではないとの事。

 

レイト「いや、事情は分かったが、なんで俺にも声をかけるんだ?」

リムル「それが……………引き受ける条件として、俺が提示したんだよ。レイトにも手伝わせるって。」

レイト「はあっ!?」

 

 俺がそう聞くと、リムルはそう答える。

 リムルの奴、なんで俺を引き合いに出すんだよ!

 

レイト「お前……………!」

リムル「悪かったって!アイツにも、レイトが断ったら俺も断るって事で話してるからさ!」

 

 俺がそんな声を出すと、リムルはそんな風に言う。

 確かに、他国の諍いに、巻き込まれる謂れはない。

 だが、アイツが何を考えているのかを把握する為にも、接触する必要性はあるか。

 

レイト「はぁ……………分かった。引き受けるって伝えてくれ。」

リムル「ええっ!?悪いな……………。」

 

 俺はため息を吐きつつ、そう言い、リムルはそんな風に言う。

 ちなみに、俺も冒険者の資格を取っており、リムルと同じランクだ。

 あと、自由学園に居るジェフ先生が、紹介状を俺の分まで書いてくれたそうだ。

 手が早いこって。

 ちなみに、俺はノゾムという名前で動くことにした。

 ノゾムというのは、仮面ライダーキマイラの変身者、大谷希望から取った。

 やる事は、パウロという冒険者のサポートだそうだ。

 しばらくして、俺はイングラシアへと向かい、リムルと優樹と合流する。

 そして、その件のパウロがやってくる。

 

パウロ「自由組合総帥(グランドマスター)!俺の為にわざわざ出向いて下さり、ありがとうございます!!」

優樹「ハハハ。当然だよ、パウロ。君は今回の試験でとても優秀な成績だったからね。」

パウロ「おお……………!ありがとうございます!」

優樹「けど、実戦ではどうかなって。」

パウロ「え?実戦……………ですか?」

 

 パウロは、優樹に対して頭を下げる。

 俺の目で見てみたところ、裏表が無い。

 まあ、信頼出来る………………か?

 優樹がそう言うと、パウロはそう訝しむ。

 すると、俺とリムルの存在に気づく。

 

パウロ「そちらは?」

優樹「ああ。こちらはリムルさんとレイトさん。B +ランクの冒険者だけど、今回の任務で、君のサポートを頼んでいるのさ。」

パウロ「パウロだ!これでも、討伐部のA -ランクでね。三度目の試験に挑戦中なのさ。」

リムル「えっと…………リムルです。」

レイト「レイトだ。」

優樹「腕は確かだから、そこは信頼してくれて良い。」

パウロ「グラマスが認める人たちなら、実力を疑ったりはしませんよ。それで、依頼とやらに教えて下さいや。」

優樹「もちろんさ。」

 

 パウロがそう聞くと、優樹はそう答え、俺たちは名乗る。

 A -ランクって事は、俺たちよりも上か。

 というより、三度目って……………。

 説明に入る事に。

 というより、こんな場所でそんな事を説明して大丈夫なのか?

 すると、科学者が答える。

 

科学者『防音魔法が仕掛けてあります。』

レイト『防音魔法?』

科学者『告。元素魔法、エアフローシャットです。発動したのは、カウンターの向こう側にいる人物です。』

レイト『ああ……………あのマスターね。』

 

 科学者はそう言う。

 なるほど、機密保持はバッチリって訳ね。

 というより、優樹が何を考えているのか、いまいち分からないな。

 一応、警戒しつつだな。

 優樹は、パウロに今回の件を説明する。

 

パウロ「分かったぜ!アスランとやらが何を考えているのか、探れば良いんだな!?」

優樹「そうなるけど、相手は王族だぜ?もっと敬意をもって接する様にしなきゃ。」

パウロ「そ、そうか。了解ですよ、優樹さん!」

リムル『なあ、レイト。あのパウロって奴、大丈夫だと思うか?』

レイト『どうだろうな……………。』

 

 パウロと優樹がそう話す中、俺とリムルは思念伝達でそう話す。

 不安しかない。

 何せ、王族相手にタメ口を聞きそうな気がするからな。

 すると、優樹が話しかけてくる。

 

優樹「リムルさん、レイトさん。パウロはこんな感じなので、助言してあげて欲しいんですよ。」

リムル「お、おう……………。」

パウロ「リムルにレイトと言ったか!ま、よろしく頼むわ!」

レイト「お、おう。……………ところで、俺たちはサポートで良いんだよな?」

優樹「何を言っているんですか!作戦担当はリムルさんとレイトさんですよ!」

リムル「いやいやいや!普通ならパウロが主導するのが筋だろうが!!」

 

 優樹、パウロとそう話す中、俺は優樹にそう聞く。

 すると、そんな事を言われる。

 マジか……………。

 パウロが口を開く。

 

パウロ「おう、リムル、レイト!俺は細かい事が苦手なんだわ!アンタ達の指示に従うから、俺がAランクになれる様に協力してくれや!」

レイト(こいつ、気安いな……………。)

 

 パウロはそんな事を堂々と言う。

 ダメだコイツ。

 本当に大丈夫だよな?

 そんな不安は、見事に的中してしまった。

 クロエ達が野外訓練に用いたキャンピングカーで出発して、宿に着く。

 

パウロ「おぉ!なかなか良い宿だな!」

リムル「……………支払いは別だからな。」

パウロ「ちょっと待てよ!アンタ達は、優樹さんから俺の面倒を頼まれてんだろ?」

レイト「………………金の面倒までは頼まれてないんだが?」

パウロ「自慢じゃねぇが、俺は金がねぇんだ!」

 

 宿に着くと、パウロがそう言い、リムルがそう言うと、パウロはそんな風に言う。

 嫌な予感がした俺はそう聞くと、パウロは情けない事を堂々と口にする。

 

リムル「お前……………!仮にもA -ランクという一流冒険者がどうして貧乏してるんだよ!?」

パウロ「ナッハハハハ!いやな、イングラシアの様な大都会で、興奮しちまってな!持ち金を使い切っまったのさ!」

レイト「コイツ……………………!!」

 

 リムルがそう聞くと、パウロはそんな事を言う。

 こいつ、筋金入りのバカか?

 そりゃあ、田舎の出身が大都会に来たら興奮するのは分かるけどさ。

 本当になんでこんな奴を寄越したんだよ。

 結局、俺とリムルが、パウロの分も支払う事になった。

 その翌日、砂漠を嵐牙が引っ張るソリで移動していた。

 ちなみに、パウロは爆睡していた。

 

リムル「お前のおかげで、予定よりも早くコリウス王国に入る事が出来たな。」

レイト「ありがとうな、嵐牙。」

嵐牙「お褒めに預かり、光栄です!我が主達!」

 

 俺とリムルは、嵐牙にそう言うと、嵐牙はそう返す。

 俺たちは、少し話をする事に。

 

リムル「交易路って感じでも無いな。」

レイト「魔物や盗賊に出会したら、自分で対処しろって事だろ。コリウス王国って、交易が最小限だしな。」

 

 俺たちはそう話す。

 予め話を聞いており、コリウス王国は、交易が最小限なのだ。

 だからこそ、自衛をしろって事だろ。

 しばらくすると。

 

パウロ「この俺は、空拳のパウロ!命が惜しければ、黙って去りな!」

嵐牙「素手で戦う様ですね。」

リムル「相手が盗賊なら良いよ。」

レイト「でも……………あれは素手で挑んじゃいけない奴だろ。」

 

 魔物が現れたので、パウロが戦闘をすることに。

 そりゃあ、盗賊なら素手でも倒せるだろう。

 だが、目の前に居るのは、盗賊ではなく魔物。

 しかも、あからさまにヤバそうな毒を身に纏っている蜥蜴だった。

 すると、科学者が報告する。

 

科学者『告。ポイズンリザード。エビルムカデと同等のB +ランクです。ただし、体表を覆っているのは、強酸性の猛毒なので、物理攻撃の際には、飛散に注意して下さい。』

 

 科学者はそう言う。

 だろうな。

 武器を使うのならまだしも、素手で挑むのはダメだろ。

 俺たちは、パウロに忠告しようとする。

 

リムル「おい、パウロさん!ちょっと待って……………!」

パウロ「安心しな!俺の力を見せてやるぜ!」

レイト「いや、そうじゃなくて……………。」

パウロ「ナックル………クラーーーッシュ!!」

 

 リムルが止めようとするが、パウロは聞く耳を持たず、そのまま素手で挑んでしまう。

 結果は。

 

パウロ「ああぁぁぁぁ!!目が!顔が熱い!ぬぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 こうなりました。

 ポイズンリザードを倒す事は出来たものの、その強酸性の毒をまともに浴びてしまった。

 俺とリムルは呆れながら、パウロの方へと向かい、フル・ポーションをかける。

 

パウロ「お…………?こ、これは…………?」

リムル「座れ。」

パウロ「おお、リムルにレイトよ!助かったぜ…………。」

レイト「良いから、座れ。」

パウロ「ひっ!」

嵐牙「グルルルルル!我が主達が仰せだ!!」

 

 パウロの治療を終えると、俺たちはそう言う。

 無論、説教だ。

 パウロは地面に正座をする。

 

リムル「人の言う事を聞け!無茶をするな!出来る事を確実にやれ!」

レイト「あと、相手を見ろ。素手が通用する相手ばかりじゃないんだ。」

パウロ「は、はい……………。」

 

 俺とリムルはそんな風に言うと、流石のパウロもそう言う。

 しばらく進み、夕方になったので、一旦休憩する事に。

 その際、パウロから話を聞く。

 

パウロ「元々、体術と棒術が得意なんだ。」

リムル「だったら、武器を使えよ。」

パウロ「使ってた木の棒が折れちまってな!」

レイト「新しいのを買えよ!」

パウロ「素手で十分!ふん!」

レイト「それで怪我をしたんだろうが…………。」

 

 パウロは体術だけでなく、棒術も得意らしい。

 だったらとそう言うが、そんな風に返す。

 俺が呆れながらそう言う中、リムルは何かを取り出しながら言う。

 

リムル「お前なぁ……………大サービスだぞ。」

パウロ「おぉぉぉ!!」

リムル「ほい!」

 

 リムルが取り出したのは、棒だった。

 もちろん、黒兵衛が作ったものだ。

 リムルからその棒を受け取ったパウロは、それを振り回す。

 

パウロ「すげぇ!すげぇよ、これ!!」

レイト「はぁ……………俺からのサービスだ。大切に使えよ?」

パウロ「分かったぜ、リムル、レイト!いや、リムルさん!レイトさん!」

 

 パウロがそう言いながら喜ぶ中、俺はフル・ポーションを渡す。

 危なかしくってしょうがない。

 こうして、俺たちはパウロに懐かれた。

 それも、必要以上に。

 しばらくして、出発すると、嵐牙が口を開く。

 

嵐牙「見えてきました!我が主達!」

リムル「コリウスの首都、ハーバリアか。」

レイト「オアシスにある街みたいだな。」

 

 嵐牙がそう言う中、俺とリムルはそう言う。

 コリウス王国の首都、ハーバリア。

 ハーバリアは、オアシスを中心に発展した様な街だった。

 その中に入り、ジェフ先生が紹介状を書いてくれたアマディ侯爵家へと向かう。

 シフォンという女性が対応して、口を開く。

 

シフォン「姉が大変お世話になりました。」

リムル「姉?」

レイト「……………もしかして、ウラムスさんの妹さんですか?」

シフォン「そうです。」

 

 シフォンさんがそう言うと、俺はそう聞く。

 すると、シフォンさんは肯定する。

 マジか。

 ウラムスとは、野外訓練でのゴタゴタの際、俺たちが治したグラトル伯爵の奥さんだ。

 という事は、ジェフ先生は、コリウス王国で不穏な気配があるのを察して、俺とリムルを派遣したのか。

 食えない人だ。

 

シフォン「シフォン・アマディと申します。ジェフ・シーガル伯爵の妹にして、我が夫、バラク・アマディの第一の妻ですわ。」

パウロ「パウロです!これでも俺、A -ランクの冒険者なんですよ!」

シフォン「まあ、それは素晴らしいですわね。是非とも、当家でおもてなしさせて下さいませ。」

パウロ「はい!」

シフォン「……………お客様をお連れして。」

 

 シフォンさんが自己紹介をするので、俺たちも自己紹介をしようとするが、パウロが遮る。

 シフォンさんは笑みを浮かべていたが、途中から笑みを消し、そう言う。

 すると、パウロは筋骨隆々の二人の男に抱えられ、連れていかれる。

 

パウロ「え?え?えぇぇぇぇ!?」

シフォン「主人が待っております。どうぞ、こちらへ。」

 

 パウロが連れていかれるのを呆然と見ていた俺たちに、シフォンさんはそう言う。

 俺たちは、旦那様の元へと案内される。

 シフォンさんにワインを注いでもらうと、リムルは口を開く。

 

リムル「アマディ侯爵閣下……………でよろしいでしょうか?」

バラク「バラク……………で構わんよ。貴殿らは妻の恩人。つまりは、俺の恩人である。遠慮は不要だ。」

レイト「あの……………パウロさんは?」

バラク「あの男は武人だが、品が無い。リムル殿とレイト殿の連れだから屋根は貸すが、贅を尽くして興する謂れはない。」

シフォン「ご安心を。食事は用意させておりますので。」

リムル「まあ、それなら問題ないか。」

 

 リムルがそう聞くと、バラクさんはそう言う。

 パウロについては、妥当な判断だろうな。

 失礼な事をやらかしそうだし。

 食事を終え、従者達が去る中、バラクさんは口を開く。

 

バラク「……………さて、腹芸は好まぬ。貴殿らは、シフォンを連れ戻しに来たのかな?」

リムル「え?」

レイト「ん?」

 

 バラクさんの質問に、俺たちは首を傾げる。

 シフォンさんを見ると、気まずい表情を浮かべていた。

 

リムル「ああ、そういう事ね。ジェフ先生から頼まれて、シフォンさんを迎えに来たと思われたのか。」

シフォン「違うのですか?兄はああ見えて、身内にはとても優しい方ですの。」

レイト「いえ、違いますよ。」

バラク「ふむ。だとすると、自由組合(ギルド)に関する事だな。」

 

 リムルがそう言うと、シフォンさんはそう言うが、俺は否定する。

 それを聞いたバラクさんは、すぐに察する。

 シフォンさんは、説明する。

 

シフォン「我が国は、最果ての守りの任を負う代わりに、各国から援助を受けています。安全保障上、今の状況を思わしくないと考えているはず。」

リムル「正解ですよ。俺たちの目的は、ギルドがどちらに与するかを調査する事。」

レイト「アスラン殿下の独立宣言を黙認する事は出来ないけど、状況次第では、手を組むのもありだそうです。」

 

 シフォンさんがそう言う中、俺とリムルはそう言う。

 何回か、この世界の地図を見せてもらったが、コリウス王国の隣は、不毛の大地という場所らしい。

 そこから、魔物が攻めてくるのを守るのが、コリウス王国の立場という事だ。

 すると、バラクさんが口を開く。

 

バラク「うむ……………俺の立場からしたら、それは歓迎出来ん話だ。」

シフォン「夫は、サウザー王太子殿下の腹心ですので、ご容赦くださいませ。」

レイト「当然だと思います。」

リムル「ただ俺たちは、判断する立場ではありません。その点はご理解して頂けますか?」

 

 バラクさんは、顔を顰めながらそう言う。

 そりゃあ、無理な話だろう。

 忠誠を捧げる人を裏切る真似なんて。

 俺たちがそう言うと、バラクさんは口を開く。

 

バラク「無論だ。貴殿らの行動を邪魔せぬし、むしろ、協力しようと思う。明日、サウザー様にお眼通ししよう。彼の方と接すれば、貴殿らも正しい回答を得られるだろう。」

リムル「それは、俺たちの立場的に問題があります。」

レイト「お気遣いしてくれてありがとうございます。ただ、その申し出はご遠慮させて下さい。」

 

 バラクさんはそう言う。

 だが、俺たちはあくまで状況を確認しに来ただけだ。

 そこまではしなくても大丈夫だろう。

 

バラク「そうか。残念だが、無理強いはしない。」

シフォン「それでしたら是非、ゼノビア王女にお会い下さいませ。」

レイト「ゼノビア王女殿下…………ですか?」

シフォン「ええ。アスラン殿下とサウザー殿下の妹君です。ゼノビア様は今、病に臥せていらっしゃいますの。リムル様とレイト様は、高名なお医者様だと兄から聞き及んでおります。あの人を褒める事が滅多にない兄が、『ウラムスが助かったのは、リムル先生とレイトさんのおかげだ』と。きっと、快癒の手立てが見つかると存じますわ。」

 

 バラクさんがそう言う中、シフォンさんはそう言う。

 そういえば、ウラムスさんを治したの、俺たちだな。

 とはいえ、そんな手術とかじゃなくて、アピトの蜂蜜を飲ませてみるのもありか。

 どちらにせよ、断れないな。

 俺たちは、ゼノビア王女と会うことにした。

 その翌日、俺たちはパウロと話していた。

 

パウロ「…………でもよ、俺は調査とかした事ないぜ?」

リムル「良いから行け。ギルドの酒場に行って、話を聞くんだよ。」

レイト「あとは、適当に愚痴でも言ってれば良い。」

パウロ「愚痴?」

リムル「ああ。『貴族の知り合いの護衛でここまで来たが、わがままで困ってる』…………とかな。適当でいいんだよ。適当で。」

 

 パウロがそう言う中、俺たちはそう言う。

 パウロには、酒場でアスラン殿下に関する情報を探ってもらう事にした。

 リムルがそう言う中、パウロは叫ぶ。

 

パウロ「なるほど!」

リムル「分かったなら、さっさと行ってこい!」

パウロ「うぐうぐ…………ぷはぁぁぁ!!分かったぜ、リムルさん、レイトさん!!」

 

 パウロはそう言うと、グラスの中身を飲み、俺たちに預けて、走っていく。

 無論、そのままにする訳がなく。

 

リムル「蒼影、居るか?」

蒼影「ここに。」

レイト「パウロを尾行して、会話を全て聞き取ってくれ。護衛も頼む。」

蒼影「承知。」

 

 念のため、蒼影をつける事にした。

 蒼影は、分身体を生み出し、片方はリムルの影へと消え、もう片方はパウロを追う。

 それで、俺たちはゼノビア王女に会いに行く事にしたのだが………………。

 

リムル「そりゃあ、後宮は男子禁制だろうけどさ。」

レイト「俺もか……………。」

シフォン「お似合いですよ。」

 

 そう。

 着替えさせられたのだ。

 この格好に。

 後宮が男子禁制なのは分かるが、女装をする羽目になるとは。

 シズさんに似た容姿だから、大丈夫だろうけどさ。

 すると、目の前から誰かがやってきて、シフォンさんは小声で俺たちに話しかける。

 

シフォン「……………少し、不快な思いをすると存じますが、何卒、ご容赦くださいまし。」

???「これは、これは!侯爵夫人!ゼノビア姫のお見舞いですかな?」

 

 シフォンさんがそう話しかける中、目の前にいる男がシフォンさんに話しかけてくる。

 見た目からして医者の様であり、二人の従者を連れていた。

 だが、何か不穏な気配を感じる。

 それが何かはいまいち分からないが。

 すると、シフォンさんが口を開く。

 

シフォン「ええ。グスタフ侍医長殿。」

レイト(侍医長……………ゼノビア王女殿下の専属の医者ってことか。)

グスタフ「それは、それは。後ほど、私の所にも寄って欲しい物ですな。健康状態をお調べ致しますぞ?」

シフォン「侍医長殿のお手を煩わせるなど、畏れ多い事でございますわ。」

グスタフ「ふっふっふ。遠慮は無用ですぞ。……………そちらは?」

 

 グスタフ侍医長とシフォンさんはそう話す。

 仲悪そうだな。

 というより、グスタフ侍医長は怪しさしか感じないのだが。

 すると、俺たちに気づく。

 

シフォン「リムル様とレイト様と仰らるのですが、とても珍しいお薬を持参しておられますの。少しでも、姫様の為になるならばと、無理を言って来て頂いたのです。」

グスタフ「くだらん!どこの馬の骨とも分からん詐欺師を呼び込むとはね!不愉快だ。陛下に奏上し、あなた方の愚かさを罰してもらわねばなりませんなぁ!!」

 

 シフォンさんがそう言うと、グスタフ侍医長は不愉快さを全開にしながら、去っていく。

 

リムル「…………大丈夫なんですか?」

レイト「あんなふうに言ってましたけど。」

シフォン「平気よ。さ、行きましょう。」

 

 俺たちがそう聞くと、シフォンさんはそう答えて、そのゼノビア王女がいる部屋へと向かう。

 部屋の中に入ると、部屋の中は植物がたくさんあり、その中心にはベッドが置いてあり、従者が二人いた。

 ベッドには、女性が居た。

 すると、ゼノビア王女が口を開く。

 

ゼノビア「あら?どなたかしら?」

シフォン「良かった……………起きておられたんですね。ゼノビア様。本日は紹介したい方々をお連れしましたの。」

ゼノビア「その声はシフォンね。あなたが人を紹介したいだなんて、珍しいわね。」

 

 ゼノビア姫がそう言う中、シフォンさんはそう言う。

 というより、ゼノビア姫は目が見えないのか?

 ずっと目を閉じている。

 そう思う中、シフォンさんが紹介する。

 

シフォン「こちらは、リムル様とレイト様ですわ。私の姉を治療して、病を癒して下さった、とても素晴らしいお方ですの。」

リムル「ただいま紹介に預かりました、リムルと申します。」

レイト「同じく、レイトと申します。本日は私たちに、姫様を診察する許しをいただければと。」

ゼノビア「よろしくてよ。でも、痛いのは嫌なので、優しくお願いしますね。」

 

 シフォンさんがそう言う中、俺とリムルは挨拶をする。

 ゼノビア姫は、顔色はよさそうだがな。

 すると、科学者が言う。

 

科学者『告。化粧で誤魔化している模様。手足の痩せ細り具合から推測するに、食事の量が少ないのだと思われます。』

レイト(栄養失調?あのグスタフって人、侍医長の癖に何やってんだ。)

 

 科学者がそう言うと、グスタフ侍医長に毒づく。

 仮にも侍医長なら、ちゃんと治療してやれ。

 

リムル「奇遇な事に、私も痛い事は苦手です。」

レイト「では、失礼しますね。」

 

 俺がそう毒づくが、俺とリムルはゼノビア姫に近寄り、診察をする。

 とは言っても、解析鑑定をするのだが。

 

レイト(解析しても、健康そうには見えるが……………。)

科学者『否。この健康状態でこの結果は不自然です。原因不明ですので、血液を採取して、成分を調べる様に提案します。』

レイト『分かった。リムル。』

リムル『ああ、血液の方は頼む。』

 

 俺は科学者からの報告を聞くと、リムルに思念伝達でそう伝え、俺は血液を採取する。

 具体的には、指の先端から針を出し、血流を調べると見せかけて、血液を採取する。

 リムルには、誤魔化してもらう。

 すると、解析結果が出る。

 

科学者『告。血液検査の結果が出ました。極度の栄養失調で、衰弱状態だと判断されます。』

レイト『やっぱりか。解析鑑定では正常だと出たが、おかしいと思ったら、妨害されていたのか?』

科学者『是。原因が不明ですので、対症療法を推奨します。薬として、アピトの蜂蜜を提供して下さい。』

レイト『分かった。リムル、聞いてたな?」

リムル『おう。』

 

 本当にキナくさいな、あの侍医長。

 だが、今はゼノビア姫だ。

 俺とリムルは、蜂蜜を取り出す。

 

リムル「では、薬をお渡しします。これは万能薬です。毎食後に服用なさって下さい。」

ゼノビア「苦いのは嫌ですよ?」

レイト「ご心配なく。私たちの大好物でございます。毒見して貰っても大丈夫ですので、感想をお聞きになって下さい。」

 

 リムルがそう言う中、ゼノビア姫はそう言う。

 俺はそう言い、従者の人たちに毒見をさせる。

 従者の一人が蜂蜜を舐めると。

 

従者「まあ!」

リムル「紅茶に淹れてのも美味しいですよ。クッキーやケーキに入れるのもありかな。」

レイト「リムル、口調。……………美味しいかと存じます。」

 

 従者が歓声を上げる中、リムルは口調を崩していたので、俺は肘打ちしながらフォローする。

 従者の人が紅茶に蜂蜜を入れ、ゼノビア姫に渡す。

 ゼノビア姫は、その紅茶を飲む。

 

ゼノビア「ああ…………美味しい。」

 

 ゼノビア姫はそう言う。

 蜂蜜は美味いからな。

 ゼノビア姫が何かの反応をする。

 すると、先ほどまで閉じられていた目が開いていたのだ。

 

ゼノビア「眩しい……………。リムル…………様?レイト…………様…………?」

リムル「ふふっ。」

レイト「はい。」

ゼノビア「リムル様。レイト様。」

 

 そう。

 ゼノビア姫は、自分の目で俺たちを見たのだ。

 それを見たシフォンさんがゼノビア姫に駆け寄る。

 

シフォン「姫様!」

ゼノビア「シフォン……………!見える…………見えますわ!」

シフォン「姫様……………!!」

 

 シフォンさんが駆け寄る中、その場にいる全員が涙する。

 そりゃあ、いきなり回復したからな。

 アピトの蜂蜜って、すげぇな。

 すると、ゼノビア姫が話しかけてくる。

 

ゼノビア「リムル様………!レイト様…………!ありがとう……………ありがとうございます!」

 

 ゼノビア姫がそう言う中、俺たちは笑みを浮かべる。

 助けられてよかったよ。

 俺はそう思うのだった。




今回はここまでです。
今回は、ワルプルギスでの話ではなく、コリウスの夢の話になります。
コリウスの夢は、紅蓮の絆編に繋がる話ですので。
レイトは、この時はまだ魔王になっていないので、魔王に進化後と比べると、他者の心を読む能力はそこまで高くはありません。
とはいえ、怪しい奴を見つける事は出来ていますが。
次回は、ワルプルギスの話になるか、コリウスの夢の話になるのかは、まだ未定です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
レイトの強化に、ゴジラ細胞を使いますが、現状、対象に入っているのは、バーニングゴジラ、スペースゴジラ、シン・ゴジラ、ファイナルゴジラ、ゴジラ・アース、GMKゴジラの六体です。
ジュウガも、ゴジラ細胞の影響を受けたフォームを出そうかなと思います。
イメージとしては、エヴァンゲリオンにゴジラ細胞が入った姿みたいな感じになる予定です。
フォーム名や、変身アイテムなどはまだ未定です。
それらのリクエストがあれば、活動報告にて承っています。
コリウスの夢の展開や、今後の展開に関しても、受け付けています。
あと、新規の転スラ小説をやろうかなと考えており、その意見も、下記のリンクから受け付けています。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=305638&uid=373253


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第2話 大怪盗サトル&ノゾム

 俺とリムルがゼノビア姫を治したその日の夕方。

 修練場では、二人の男が剣を交えていた。

 一人は、アスラン殿下だ。

 

アスラン「ふっ!はあっ!」

配下「ふっ!はっ!」

 

 二人の戦いは激しく、その場にいる人達全員が見ていた。

 すると、アスラン殿下が配下の剣を弾く。

 

アスラン「だいぶ良くなったぞ。精進を続けろ。」

配下「はっ!ありがとうございます!」

???「アスラン殿下!」

 

 アスランはそう労うと、配下はそう答える。

 すると、一人の男が駆け寄ってくる。

 

アスラン「カールか。どうした?」

カール「例の商人を捕らえました。」

アスラン「本当か?」

カール「ええ。これで動かぬ証拠が…………。」 

 

 駆け寄ってきた紫の髪の男は、カールというらしい。

 カールとアスラン殿下はそう話すと、配下の一人が駆け寄ってくる。

 

配下「殿下!」

アスラン「ん?」

配下「申し上げます!ゼノビア姫が…………!」

アスラン「んっ?どうした?何があった?」

配下「突然、病状が回復なさり、視力も戻られたとの事です!」

 

 配下は、アスラン殿下にそう言う。

 それを、柱の影から蒼影が見ていた。

 その夜、俺とリムルは、蒼影から報告を受けていた。

 

蒼影「アスラン王子ですが、自分ならば勝率は五割…………と言った所でしょう。」

リムル「マジか!正直、舐めてたな。」

レイト「紅丸ならどうだ?勝てそうか?」

蒼影「一切の制限が無ければ。」

 

 蒼影の報告に、俺たちはそう反応する。

 紅丸でも、制限が無ければ勝てるとなると、かなり強いな。

 そんな中、リムルが蒼影に聞く。

 

リムル「ふむ……………どんな人物だった?」

蒼影「剛毅で仲間想い。覇者の風格を備えた好青年という印象を受けました。」

レイト「となると……………アスラン派を押すのが正解か?そういえば、パウロはどうしたんだ?」

 

 リムルの問いに、蒼影はそう答える。

 俺はそう言うと、パウロの事を思い出し、蒼影にそう聞くと、蒼影は顔を顰めながら口を開く。

 

蒼影「……………酒場に入るなり、酒とつまみを頼み、リムル様とレイト様の悪口三昧でした。」

リムル「悪口?」

 

 蒼影がそう言うと、リムルはそう聞く。

 蒼影曰く、パウロはこう言っていたらしい。

 

パウロ『ガァ〜キの癖に、生意気だぁ〜!人使いが荒いだけっす!なぁ〜にが我が主達だ!!』

 

 そんな風に言っていたらしい。

 ……………内心、不満だったんだな。

 俺とリムルが呆れていると、蒼影は口を開く。

 

リムル「ほ、ほほう……………?」

蒼影「ですが、そのおかげで疑われてはいません。」

レイト「疑われてないなら、大丈夫か。それなら、俺たちは用事を済ませる。蒼影は引き続き、パウロの監視を頼む。」

蒼影「承知。」

 

 リムルがそう言うと、蒼影はそう言う。

 まあ、怪しまれるよりかはマシか。

 俺がそう言うと、蒼影は移動する。

 俺たちは、アイコンタクトをして、目を閉じる。

 俺の意識は、ゼノビア姫の部屋に居る分身体へと向かう。

 分身体を仕込んでおいて正解だったな。

 この様子だと、ゼノビア姫が回復したのは、知れ渡っているだろうし、何か動きがあるかもしれない。

 ちなみに、箪笥の下に隠れていた。

 しばらくすると、リムルがやってくる。

 俺たちは意識を本体へと戻す。

 すると、視線の先には、嵐牙が居た。

 

嵐牙「ハッハッハッハッ!我が主達よ!怪しい者は近付きませんでした!」

リムル「お、おう……………警護、ご苦労さん……………。」

レイト「ありがとうな。」

 

 嵐牙がそう言う中、俺とリムルはそう言う。

 その後、バラクさん達と食事をする事に。

 食事をする中、バラクさんが口を開く。

 

バラク「それにしても…………フフッ。あの侍医長が悔しがる姿が目に浮かぶわ。」

シフォン「姫様が回復されたならば、あの者の栄華もここまでですわ。」

 

 2人はそんな風に話す。

 あの侍医長、どんだけ嫌われてるんだよ。

 まあ、無理もないが。

 すると、従者がやってくる。

 

従者「旦那様!旦那様!!」

バラク「なんだ?騒々しい。」

従者「ほ、報告します!表玄関に、アスラン王子が訪問されております!」

 

 従者がそう言いながら入ってくるのにバラクさんはそう聞くと、従者はそう答える。

 アスラン殿下が?

 すると、シフォンさんが反応する。

 

シフォン「こんな時間に?」

バラク「ふむ……………目的は、リムル殿とレイト殿であろうな。」

リムル「え?」

レイト「やっぱりか。」

シフォン「なるほど。姫様を癒したリムル様とレイト様に、感謝されておられるのかも。」

バラク「でなければ、敵対派閥である俺の家にやって来たりはせぬだろう。お通しされるが、よろしいかな?」

「「うん。」」

 

 シフォンさんとバラクさんがそう言うと、リムルは首を傾げ、シフォンさんとバラクさんがそう言う。

 まあ、十中八九そうだろうな。

 しばらくすると、アスラン殿下が現れる。

 

アスラン「すまんな。夜分に失礼するぞ。」

バラク「久しぶりだな、アスラン殿下。剣の腕は鈍ってはおらぬだろうな?」

アスラン「はっ!俺に指導した事があるからと、偉そうに申すでないわ。」

 

 アスラン殿下とバラクさんはそんな風に話す。

 すると、俺とリムルを見て、口を開く。

 

アスラン「リムルにレイトと言ったか。妹を救ってくれて、感謝する。」

リムル「おっ……………?」

 

 アスラン殿下はそう言うと、頭を下げる。

 よっぽど、妹さんが大切なんだな。

 周囲の人たちが驚く中、アスラン殿下は口を開く。

 

アスラン「妹も含めて、俺たちは仲の良い兄弟だったんだ。いずれ、兄貴が王になった時、軍務卿になって支えるつもりだった。だが………。」

レイト(いや、いきなりそんな話をされても、対応に困るというか……………。)

 

 アスラン殿下がそう言う中、俺はそう思う。

 流石に突っ込むのは失礼なので、黙っておくが。

 そう思う中、アスラン殿下は話し続ける。

 

アスラン「兄貴……………サウザー王太子は変わってしまったのだ。3年前、病に倒れてからというもの、ゼノビアの病状は悪化を続け、目の光までも失う始末。俺も兄貴も焦ったが、グスタフにもどうしようもないと言われてな。これが本当に病だったのなら、運命だと思えただろうさ。」

バラク「違う……………とでも?」

 

 アスラン殿下はそんな風に話す。

 何かを掴んだのか?

 そう思う中、バラクさんはそう聞き、アスラン殿下は答える。

 

アスラン「バラクよ。近頃、陛下と面会が叶った事があるか?」

バラク「……………いいえ。ございませんな。」

リムル「どういう事なんだ?」

シフォン「国外に情報が漏れぬ様、情報を隠し続けておりますが、国王テドロ陛下も、病に臥せっておられるのです。」

 

 アスラン殿下はそう聞くと、バラクさんはそう答える。

 俺とリムルが首を傾げると、シフォンさんはそう答える。

 国王陛下も病に臥せてるのか。

 そりゃあ、国外に漏れるわけにはいかないな。

 すると、アスラン殿下が口を開く。

 

アスラン「面会が叶うのは、グスタフのみ。あり得んだろう?息子である俺が、父王陛下にお会いできぬなどと……………!」

レイト「確かに……………。」

バラク「そういえば、俺も……………いや、言われてみれば、なぜ今まで陛下に会えぬ事を疑問に思わなかったのだ。」

 

 アスラン殿下がそう言うと、俺はそう呟き、バラクさんはそう言う。

 確かに、言われてみれば妙だ。

 実の息子でさえも、面会出来ないというのは。

 グスタフって侍医長は、何者だ?

 すると、アスラン殿下が口を開く。

 

アスラン「そうだ。それを重臣である貴様らが不自然だと感じておらぬ事こそが、この国の末期的状況を証明しておるのだ!」

バラク「………………。」

 

 アスラン殿下はそう言うと、バラクさんは拳を握る。

 すると、アスラン殿下はとんでもない事を言う。

 

アスラン「何故、今まで黙っていたのが不思議か?なに、簡単な話よ。ゼノビアだけでなく、我が敬愛すべき兄君も、グスタフの手に落ちていたからだ。」

バラク「なっ!?その発言、いかに殿下といえど、聞き捨てなりませんぞ!」

シフォン「アスラン殿下は、サウザー王太子が黒幕だとお考えなのでしょうか?」

 

 アスラン殿下がそう言うと、バラクさん達はそう反応する。

 まあ、当然だな。

 すると、アスラン殿下が口を開く。

 

アスラン「貴様らも考えてみよ。病弱だった兄上が、突然、別人の様に力強くなったのが、3年前だったのだぞ。無関係だとは思えんだろうが。」

リムル『3年前って…………。』

レイト『ああ。ゼノビア姫が病に倒れた時と同じ頃だな。』

 

 アスラン殿下がそう言う中、俺とリムルは、思念伝達でそう話す。

 確かに、無関係とは思えないな。

 すると、アスラン殿下が再び口を開く。

 

アスラン「恥じるでないぞ。貴様達は、そう思い込まされていたのだ。兄上の魅了(チャーム)によってな。」

シフォン「魅了(チャーム)?まさか!?」

アスラン「そうとも。吸血鬼族(ヴァンパイア)の得意技よな。ルベリオス出の仲間に教わった奴らの特性と、驚くほど合致する。」

 

 アスラン殿下はそう言うと、シフォンさんとバラクさんは顔を見合わせ、アスラン殿下はそう言う。

 魅了(チャーム)ね。

 確かに、吸血鬼が使いそうだよな。

 まあ、偏見だが。

 すると、バラクさんが反論する。

 

バラク「ですが、サウザー王太子は陽光の下で平然と活動なさっておられます。」

アスラン「吸血鬼族(ヴァンパイア)の上位種はな、陽光の下でも平気なんだとよ。」

バラク「……………では、アスラン殿下はグスタフ侍医長が吸血鬼族(ヴァンパイア)で、サウザー王太子を眷属にして操っている、とでも?」

アスラン「いや、兄上は真祖の血(ザインブラッド)を投与されて、上位の吸血鬼族(ヴァンパイア)に生まれ変わっているんじゃないか、とな。」

 

 バラクさんが2回ほどそう聞くと、アスラン殿下はそんな風に答える。

 リムルが口を開く。

 

リムル「真祖の血(ザインブラッド)?」

アスラン「俺の古き友……………カールがな、この事件が一国の王位継承権争いなどではなく、魔王ヴァレンタインによる人類防衛圏の破壊工作じゃないかと疑っているのだ。」

シフォン「魔王……………!?」

レイト「話がでかくなってきたな…………。」

 

 リムルがそう聞くと、アスラン殿下はそう答える。

 話の規模が大きくなってきたな。

 魔王が絡んでくるとは。

 吸血鬼の魔王という事か?

 すると、バラクさんが気合を入れる様な表情を浮かべると。

 

バラク「ぬぅぅぅぅぅ!まさか、この俺まで魅了(チャーム)されていたとはな…………!!」

アスラン「ほう。裂破(レッパ)か。見事なり。」

 

 バラクさんはそう言うと、アスラン殿下はそう言う。

 それを見ていた俺は。

 

レイト『技術(アーツ)の類か?』

科学者『是。妖気(オーラ)を巡らせる事で、異物を発見、排除するのが目的の技術(アーツ)だと推測します。』

 

 俺がそう言うと、科学者はそう言う。

 凄いな。

 すると、バラクさんは膝をつく。

 

バラク「……………むざむざと魔の者に手に落ちていた、この愚か者をお許しください。」

シフォン「あなた…………。」

バラク「シフォンよ。俺の手を取るが良い。」

 

 バラクがそう言い、シフォンさんが見ていると、バラクがそう言う。

 シフォンさんが手を取ると、再び裂波(レッパ)が発動する。

 なるほど、手を取れば、他者も可能と言う事か。

 すると、シフォンさんが口を開く。

 

シフォン「私たちも魅了(チャーム)されていたから、今まで言い出せなかったのですね。」

バラク「もっと早く打ち明けていただければ……………。」

アスラン「…………証拠を得るまで言い出せずにいたのだ。」

バラク「決定的な証拠もあるのですな?」

アスラン「真祖の血(ザインブラッド)をグスタフに売ったという闇商人を、カールが捕まえている。奴の証言があれば。」

バラク「おお……………!」

 

 シフォンさんとバラクさんがそう言うと、アスラン殿下はそう答える。

 証拠もあるのか。

 というより、物事がかなり進みすぎじゃないか?

 怖いな。

 すると、アスラン殿下は俺たちに話しかける。

 

アスラン「リムル殿、レイト殿。改めて、感謝する。」

リムル「あはは……………。」

アスラン「貴殿らの薬があれば、ゼノビアが吸血鬼族(ヴァンパイア)にならずに済むだろうからな。」

バラク「王女殿下は、吸血鬼族(ヴァンパイア)にはなっていなかったという事ですな。サウザー王太子も、王女殿下を溺愛しておられましたからな。」

アスラン「俺もそう思いたい。ともかく、優先すべきは、逆臣グスタフを討つ事よ。」

バラク「このバラク、微力ながらお力添えさせていただきたく存じます。」

アスラン「期待しているとも。準備が出来次第、王宮へ攻め込む。グスタフを討ち、ゼノビアを救い出す!」

 

 アスラン殿下は俺たちに礼を言うと、バラクの質問に答える。

 随分と物事が進んでいるよな。

 その後、当てがわれた部屋に戻り、分身体の方へと意識を飛ばすと。

 

レイト『っ!?寒気がする!?』

科学者『告。圧倒的なエネルギー量に反応しています。暴風大妖渦(カリュブディス)には劣りますが、豚頭魔王(オークディザスター)に匹敵しています。単独で戦うのは避けるべきかと。』

レイト『なるほどな……………。ちなみに、少し探ると?』

科学者『告。この場で解析鑑定を試みた場合、こちらの存在がバレる確率が80%以上ですが、実行しますか?』

レイト『やめておこう。面倒な事になりそうだ。』

 

 俺が寒気に驚いていると、科学者はそう報告する。

 マジか……………。

 人間の国だから、下手にキマイラやらダイモンに変身すると、バレるだろうからな。

 無闇には動けないな。

 すると、リムルから思念伝達が来る。

 

リムル『レイト、これ、やばくね?』

レイト『確かに…………ひとまず、様子を見よう。』

リムル『だな。』

 

 俺とリムルはそう話すと、リムルは上に向かい、俺は箪笥の影から覗く。

 すると、ゼノビア姫に話しかける人がいた。

 恐らく、サウザー王太子だろう。

 

サウザー「ゼノビア!アスランが君を苦しめていたのに、私には何も出来なかった。不甲斐ない兄を許してくれ。」

ゼノビア「いいえ、大兄様。大兄様は何も悪くありませんわ。」

 

 サウザー王太子とゼノビア姫がそう話していた。

 すると、リムルが話しかけてくる。

 

リムル『なあ、大兄様って言ってるということは……………。』

レイト『彼がサウザー王太子だろうな。』

 

 リムルがそう言うのに、俺はそう答える。

 サウザーと聞くと、仮面ライダーサウザーの方しか浮かばないな。

 そう思っている中、2人の会話は続く。

 

ゼノビア「それに、アスラン兄様のせいだと決まったわけでも……………。」

サウザー「いいや。アイツが犯人に決まっているさ!グスタフも言っていたがね、アイツは自由組合(ギルド)を抱き込み、我が国に薬が届かない様にしていたのだ!もう何も心配はいらないから、今日はゆっくりと休むが良い。」

ゼノビア「はい。ご心配をおかけしました。」

サウザー「構わないとも。」

 

 ゼノビア姫とサウザー王太子がそんな風に話す。

 妹想いの兄貴という感じだが。

 まあ、自由組合(ギルド)を抱き込むというのは、間違いないな。

 懐柔して、反旗を翻したわけだし。

 部屋からサウザー王太子が出て行くと、とんでもない妖気(オーラ)を纏っている事に気づく。

 なるほど、妹の前で妖気(オーラ)を抑えていたのか。

 俺は、外の様子を伺う。

 

サウザー「ゼノビアが回復した今、遠慮はいらん。アスランと奴を支持する者どもを根絶やしにしろ。」

配下「はっ!」

 

 サウザーは、配下にそう言う。

 色々と、引っかかる点があるな。

 互いが互いに犯人だと思っている様だし。

 とはいえ、このままだと二つの勢力が全面戦争を始めるぞ。

 すると。

 

ゼノビア「……………そこに居るのは、どなたかしら?」

リムル「えええっ!?」

レイト「えっ!?」

 

 ゼノビア姫がこちらを見ながらそう言う。

 いつからバレたんだ!?

 俺とリムルが慌てていると。

 

ゼノビア「ああ、昼間来て下さった方達かしら。リムル様にレイト様と……………。」

リムル「違います!!」

ゼノビア「あら?でしたら、あなた達のお名前は?」

レイト「ええっと……………。ノゾムです。」

リムル「お、俺は、サトルです。」

 

 ゼノビア姫がそう言う中、リムルがそう叫び、俺たちは咄嗟にそう言う。

 

ゼノビア「そう……………サトルさんとノゾムさんとおっしゃるのですね。」

リムル「は、はい……………。」

レイト(疑われてるか?)

 

 ゼノビア姫がそう言う。

 俺とリムルは意を決して、ゼノビア姫の側による。

 

ゼノビア「まあ!その姿も可愛いですわね。」

リムル「ええっ!?あの……………俺はスライムでして、そのリムルさんとは関係ないので……………。」

レイト「ええっと……………。」

ゼノビア「とても優しそうなおじさまとお兄さんですね。そういう事にしておきますので、私のお願いを聞いてくれませんか?」

レイト「お願い?何ですか?」

 

 ゼノビア姫がそう言う中、リムルが言い訳をしていると、ゼノビア姫はそう言う。

 おじさまにお兄さんって、俺たちの前世が分かっている様な口ぶりだな。

 

ゼノビア「私は目が見えなくなりましたが、その代わりに、人の魂の形が見える様になったのです。」

レイト「人の魂の形?」

ゼノビア「ええ。サウザー大兄様やアスラン兄様は、泣き叫んでいる少年の様。とても優しい方々なのです。」

 

 ゼノビア姫がそう言うと、俺はそう聞き、ゼノビア姫はそう言う。

 となると、2人とも犯人とは思えないな。

 というより、人の魂の形が分かるという事は、先ほどの発言にも納得が行く。

 そんな中、ゼノビア姫の話は続く。

 

ゼノビア「それに比べて、グスタフ侍医長は怖い方。とてもドロドロしていて、薄紫の闇の様。」

科学者『告。彼女の権能は、ユニークスキル、夢想家(ネガウモノ)。魂の形、つまり、人間の本質を見抜く能力です。』

レイト『……………やっぱりか。』

 

 ゼノビア姫がそう言う中、科学者からの報告に、納得がいく。

 恐らく、ああ呼んだのは、俺たちの前世の姿を垣間見たからだろう。

 という事は、グスタフ侍医長が黒幕の可能性が高いという事か。

 というより、俺の悪魔を見るのと似たような能力だな。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「だったらそれを……………。」

ゼノビア「言えませんわ。私がそれを口にしてしまえば、お兄様達が危険ですもの。」

レイト「危険?どういう事だ?」

ゼノビア「父王陛下は、私が倒れてから一度もお見舞いには来ては下さいませんでした。昔から、あの方はご自分の事にしか興味がないのです。そして、グスタフ侍医長は父王陛下の腹心。」

リムル「つまり、グスタフが国王からの命令で動いていると?」

ゼノビア「はい。……………っ!隠れて!そして、気配を消して下さいませ!」

レイト「っ!?」

 

 リムルがそう言うと、ゼノビア姫はそう答える。

 最低な父親だな。

 すると、ゼノビア姫がそう叫ぶので、俺とリムルは隠れる。

 扉が開かれると、グスタフ侍医長が現れる。

 あいつ、何しに来た?

 

グスタフ「……………ふっ!」

 

 すると、グスタフ侍医長は何かの魔法を発動する。

 何をしているんだ?

 

科学者『告。幻覚魔法、睡眠誘導(スリープダウン)です。対象を眠らせる効果だけですので、殺意はないと推測されます。』

 

 科学者はそんな風に報告する。

 ただ眠らせるだけか。

 何でそんな魔法を?

 

グスタフ「今回復されるのは、時期尚早。あのお方の為にも、もっと魂を磨き上げておかねばならぬ。」

 

 あのお方?

 グスタフがそう言うのに、俺は首を傾げる。

 グスタフの言うあのお方とは、誰のことだ?

 国王か、はたまた別の存在か。

 俺とリムルが前に出ようとすると。

 

ゼノビア『ダメですわ!』

「「っ!?」」

グスタフ「ん?今何か……………いや、気のせいか。」

 

 ゼノビア姫のそんな声が聞こえてきて、俺たちは下がると、グスタフはそう言う。

 俺たちの気配に気付いたという事か。

 危なかったな。

 グスタフの奴、侮れないな。

 すると。

 

ゼノビア『その通りですわ。大兄様の今の強さも、恐らく、侍医長によって与えられた物。』

 

 ゼノビア姫は、思念伝達と思われる方法で話しかける。

 アスラン殿下の推測は当たっていたという事か。

 すると、ゼノビア姫が口を開く。

 

ゼノビア『ですので、おじさまとお兄さんに兄様達をお救い頂きたいのですわ!』

 

 ゼノビア姫はそう頼み込む。

 どうしたものか……………。

 すると、何かの記憶が流れ込む。

 それは、かつてのアスラン殿下、サウザー王太子、ゼノビア姫の記憶だった。

 俺とリムルは、アイコンタクトをすると、口を開く。

 

リムル『ダメだね。』

ゼノビア『やはり……………。』

レイト『どうせ救うなら、あなたも一緒だ。』

ゼノビア『ああ……………!』

リムル『全力を尽くすよ。』

ゼノビア『本当に、優しいお方達ですね。』

 

 俺たちはそう話す。

 やっぱり、放っては置けないからな。

 すると、紫色の光が出てくる。

 グスタフ侍医長の手から出ていた。

 グスタフ侍医長が口を開く。

 

グスタフ「ふっ。あの小娘どもも呼び出して、生贄にしてやる……………!」

 

 グスタフ侍医長がそう言うと、そのまま部屋から出て行く。

 誰が小娘だ。

 俺は立派な男だっつうの。

 精神は。

 性別不明だし、俺。

 その後、分身体から意識を離し、俺たちは一旦、魔国連邦(テンペスト)へと戻り、紅丸と蒼影を呼ぶ。

 

紅丸「……………アスランとサウザー。両王子を争わせて、グスタフという奴に何の徳があるのです?」

リムル「ゼノビア姫の考えでは、国王の命令なんじゃないかという話だが……………。」

レイト「今重要なのは、二つの勢力の全面戦争を止める事だ。」

紅丸「それで、いつ出向きますか?」

レイト「………………ふむ。」

 

 紅丸がそう聞く中、俺とリムルはそう答える。

 紅丸の質問に考えていると。

 

科学者『告。明日には動きがあると予測します。』

レイト『やっぱりか。』

科学者『是。個体名グスタフが、ゼノビア姫に呪いをかけていました。これによって、体調が崩れた責任を……………。』

レイト『俺とリムルになすりつけて、俺たちを呼んだアマディ侯爵家に責任問題をでっち上げる。そして、準備万端のサウザー派閥が、アスラン派閥を叩き潰すという事か。』

 

 なるほどね。

 グスタフが俺たちを生贄にしようとか言っていたから、何かを召喚する為に俺たちを利用しようとしているというわけか。

 俺とリムルは頷き合い、口を開く。

 

レイト「明日だ。紅丸、お前にはアスラン王子の足止めをお願いしたい。」

紅丸「お任せを。」

リムル「蒼影。お前にはバラクさんを任せる。説得に応じれば良いが、そうでなければ、力づくで押し止めてくれ。」

蒼影「御意。」

レイト「嵐牙は、アマディ侯爵家の守りを頼む。奥方や家人に被害が及ばぬ様、しっかりと守ってやってくれ。」

嵐牙「承知!我にお任せを!」

 

 俺たちはそう命じる。

 すると、紅丸が話しかける。

 

紅丸「それで、リムル様とレイト様は何を?」

リムル「俺?」

レイト「俺たちは野暮用を済ませるさ。」

 

 紅丸がそう聞くと、俺たちはそう答える。

 一方、コリウス王国では、ある建物の上に、フードを被った女性がいた。

 

???「どうなっておる……………?どうしてあの者達が事件に巻き込まれておるのじゃ…………。面倒じゃな。何事も起きぬ様に、放置するのが正解なのやもしれんが、妾がここまで来てしまったという事実こそが鍵となっておる可能性もある。……………まあ、様子見じゃが、我らに罪をなすりつけようとしている者は、この際だし、状況次第では仕置いてやろう。ふっ。」

 

 その女性は、そう呟く。

 その翌朝、予想通りに、俺たちは拘束されていた。

 

バラク「侍医長殿!これは一体…………!?」

グスタフ「その者達が持ち込んだ怪しげな薬のせいで、姫殿下は眠り続けておるのだ!ああ、おいたわし……………貴様、この責任、どう取るつもりじゃ!!」

 

 バラクさんがそう言うと、グスタフ侍医長はそう言う。

 薬じゃなくて、ただのはちみつだ。

 そう指摘するのも億劫なので、無言を貫く。

 俺たちは牢へと入れられる。

 だが、既に意識は分身体の方へと移っている。

 

リムル「よし。これでアリバイが出来たな。」

レイト「あとは、動くだけだ。」

 

 俺とリムルはそう呟いて、意識をゼノビア姫の部屋に居る分身体へと移す。

 すると、ゼノビア姫が反応する。

 

ゼノビア『まあ!本当に来て下さったのですね!』

リムル『当然だろう?約束したからな。』

レイト『さてと。』

 

 ゼノビア姫とリムルがそう話す中、俺とリムルはアイコンタクトをして、外に出て、姿を変える。

 リムルは前世の姿をベースに、俺は大谷希望を模した姿になる。

 従者は2人か。

 すると、気付いたのか、俺たちの方を見る。

 

従者「なっ!?怪しい奴!?」

従者「まさか、姫様を狙った刺客では……………!?」

リムル「操糸妖縛陣!」

 

 従者がそう言う中、リムルは操糸妖縛陣を発動して、従者を拘束する。

 俺は、ゼノビア姫をお姫様抱っこの要領で抱える。

 

レイト「それじゃあ、姫様は預かりますね。」

従者「ま、待ちなさい!」

従者「失敬な!何者なのです!?」

リムル「待てと言われて待つ泥棒が居ないように、何者かと問われて答える不審者もいないだろう?だけど、俺は優しいから教えてやろう。俺は大怪盗リ……………サトルだ!」

レイト「ちなみに、俺は大怪盗ノゾムだ。」

 

 従者達がそう言う中、俺とリムルはそう言う。

 ボロを出しかけたな。

 

従者「リサトルにノゾム?」

リムル「違います!サトルです!大怪盗サトルね!そこんところ、間違えないようにね!」

レイト「それじゃあな。」

従者「あっ!」

 

 従者がそう呟くと、リムルはそんな風に叫ぶ。

 やれやれ。

 俺たちは、王宮から脱出する。

 すると、ゼノビア姫が聞いてくる。

 

ゼノビア『あの…………大怪盗というのは、何でしょう?』

リムル「……………ノリです。」

レイト「乗っかっただけです。」

ゼノビア『はぁ……………ですが、何も言わない方が良かったのでは?』

レイト「ぐうの音も出ないな。」

リムル「あははは……………違いますとも!情報撹乱の為に、偽情報を流したのです。」

 

 ゼノビア姫の質問にそう答えると、正論を返す。

 俺がそう言う中、リムルはそう言う。

 その夜、アスラン派閥は、準備を終えていた。

 その中には、パウロの姿もあった。

 すると、バラクもやってくる。

 

バラク「集まったようだな。」

アスラン「ああ。行くぞ!」

冒険者「おう!」

 

 バラクとアスランがそう言うと、冒険者達がそう言う。

 そこに、紅丸と蒼影がやってくる。

 2人に気づいた冒険者が口を開く。

 

冒険者「何だ、テメェら!」

パウロ「おいおい!まさか、邪魔しようってのかい?俺たちを舐めてると痛い目を見るぜ。へへっ!どこの誰だか知らんが、この俺!空拳改め、棒将のパウロ様が相手をしてやる!命が惜しければ黙って……………っ!?」

 

 冒険者がそう言う中、パウロはそんなふうに言う。

 だが、言葉は最後まで続かなかった。

 何故なら、蒼影にフルボッコにされたからだ。

 パウロは近くの建物の壁に激突して、そのまま落ちてくる。

 それを見ていた紅丸は。

 

紅丸「………………やりすぎだろ?」

蒼影「こいつは大将達の悪口を言っていたからな。少々お仕置きしてやったのさ。」

紅丸「なるほど。それなら文句はないな。」

 

 紅丸がそう言うが、蒼影の言葉にすぐにそう言う。

 すると、冒険者達が叫ぶ。

 

冒険者「テメェら!良い度胸じゃねぇか!!」

冒険者「おらぁ!パウロを倒したからって、良い気になってんじゃねぇぞ!!」

 

 2人の冒険者がそう言う。

 すると、アスラン殿下とバラクさんが入る。

 

アスラン「やめろ、お前ら。」

バラク「君達では、その者どもに勝てぬ。」

アスラン「どうせ、逆臣グスタフが雇った刺客だろうが……………邪魔をするなら容赦せん。」

紅丸「刺客ではないが、邪魔はさせてもらう。」

アスラン「このあと用事があるものでな。悪いが、貴様と遊んでいる暇はないんだ!!」

 

 アスラン殿下とバラクさんがそう言うと、紅丸はそう言う。

 紅丸とアスラン殿下は、それぞれの剣を抜いて、ぶつかっていく。

 バラクさんは蒼影に話しかける。

 

バラク「……………君だね?我が家の周辺を監視していたのは。」

蒼影「ほう?気づいていたか。」

バラク「認めるか!」

 

 バラクさんはそう聞くと、蒼影は否定せずにそう言う。

 バラクさんも剣を抜いて、蒼影に向かって行く。

 紅丸とアスラン殿下、蒼影とバラクさんの戦いは、互角に進んでいた。

 それを見ていた冒険者たちは。

 

冒険者「す、すげぇ…………!?」

冒険者「俺たちが入る隙なんてねぇぞ…………!?」

冒険者「あの男、強い……………!」

冒険者「あっちもだ!無双のバラクさんを相手に、互角に戦ってやがるぜ!」

 

 冒険者たちはそんな声を出す。

 

アスラン「ハァァァァァ!」

 

 アスラン殿下はそう叫び、紅丸と剣をぶつけていく。

 紅丸は。

 

紅丸「ちっ。(思ってた以上にやるもんだ。大将達が来る前に決着をつけたかったが、剣だけでは難しいか!)」

 

 そんな風に思い、アスラン殿下に攻撃して、アスラン殿下は回避する。

 

紅丸(蒼影からは聞いていたが、こいつの実力は本物だったか。それよりも俺の実力を蒼影に測られていたのが嫌になるね。)

 

 紅丸はそう思いつつも、笑みを浮かべる。

 それを見たアスラン殿下は。

 

アスラン「何がおかしい?」

紅丸「ふっ。いや、お前が強いから少し嬉しくなったのさ。」

アスラン「ぬかせ!」

 

 アスラン殿下がそう聞くと、紅丸はそう答える。

 2人は、戦闘を続行する。

 蒼影とバラクさんは、蒼影が傷だらけになるも、鍔迫り合いをする中、苦無で攻撃して、バラクさんは回避する。

 

蒼影「ふっ。確かに強いが、俺の敵ではないな。」

バラク「なっ!?何をほざく!貴様は満身創痍ではないか!」

 

 蒼影がそう言うと、バラクさんはそう叫ぶ。

 すると、蒼影は煙を出す。

 煙が晴れると、傷がない蒼影が現れ、バラクさんは驚く。

 

バラク「なっ!?」

蒼影「俺は分身を得意としている。本来なら複数の分身体で相手をするのだが、貴殿に敬意を表して、一対一のままで戦ってやろう。」

 

 バラクさんが驚く中、蒼影は分身体をまとめながらそう言う。

 それを見たバラクさんは。

 

バラク「卑怯な…………。俺の…………負けだ。」

 

 バラクさんは膝をつきながらそう言う。

 一方、紅丸とアスラン殿下は。

 

アスラン「くっ!」

紅丸「仲間は降参したぞ。どうする?」

アスラン「くっ……………!勝負は、これからだ!」

紅丸「うぉぉぉぉぉぉ!!」

アスラン「でやぁぁぁ!!」

 

 アスラン殿下は、バラクさんが降参したのを見て、紅丸はそう聞くが、アスラン殿下はそう言いながら、紅丸の方へと向かって行く。

 すると。

 

リムル「紅丸ー!蒼影ー!」

レイト「待たせたな!」

 

 そこに、俺たちが向かって行く。




今回はここまでです。
今回は、コリウスの夢の第二話です。
コリウスの夢のストーリーも加速していきます。
コリウスの夢のストーリーは、あと1話で終わります。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
魔王達の宴の方も、クレイマンとの戦いがまもなく決着がつきます。
それが終われば、電王編、紅蓮の絆編に入っていきます。
今後の展開でリクエストがあれば、活動報告にて承っております。
転スラの三期が楽しみです。
1月30日には、転スラの三期の情報が来るみたいですし。


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第3話 紫と薔薇

リムル「紅丸ー!蒼影ー!」

レイト「待たせたな!」

 

 紅丸達が戦闘をしている中、俺たちはゼノビア姫を連れて現れる。

 俺たちが着地すると、アスラン殿下が反応する。

 

アスラン「ゼノビア!貴様ら、ゼノビアに何をした!?」

 

 アスラン殿下がそう叫ぶ中、俺たちはゼノビア姫を見る。

 すると、科学者が報告する。

 

科学者『告。個体名ゼノビアの解析鑑定が終了しました。状態は、”悪魔の呪い(デモンカーズ)”です。』

レイト『分かった。リムル、頼んだぞ。』

リムル『ああ。』

 

 科学者がそう報告すると、リムルに頼んで、暴食者で除去してもらった。

 すると、ゼノビア姫が咳き込む。

 

ゼノビア「げほっ、げほっ!……………流石はおじさま達ですね。まさかこんな簡単に目覚めさせていただけるとは。」

リムル「お、おじさまじゃなくて、サトルでお願いします。」

レイト「俺も今は、ノゾムでお願いします。」

ゼノビア「そうでしたわね。大怪盗サトル様とノゾム様。」

レイト「あははは………………。」

紅丸「大怪盗……………?」

 

 ゼノビア姫が咳き込む中、起き上がりそう言うと、俺とリムルはそう答える。

 紅丸が首を傾げる中、ゼノビア姫が立ち上がると。

 

ゼノビア「はい!サトル様とノゾム様がそう名乗られたのです!私を城から攫う手筈も、見事でしたもの!まさに大怪盗と称されるのも相応しいお方達です!」

リムル「あははは………………。」

 

 ゼノビア姫がそう言うと、リムルは照れる。

 恥ずかしくなってくるな。

 すると、アスラン殿下が口を開く。

 

アスラン「貴様ら!俺たちにも分かる様に説明せよ!」

リムル「サウザー王太子は吸血鬼族(ヴァンパイア)なんかじゃない。だから陽光の下でも平気だし、ゼノビア姫から精気を吸い取る必要もないんだ。」

バラク「なっ………………!?」

アスラン「何っ!?それでは、なぜ妹が苦しむ必要があったのだ!?」

 

 アスラン殿下がそう叫ぶ中、リムルはそう説明する。

 それを聞いたアスラン殿下がそう叫ぶと、ゼノビア姫が説明する。

 

ゼノビア「大兄様はアスラン兄様と同じく、私を案じてくれていたのですわ!」

アスラン「それでは誰がお前が倒れる様に仕向けたのだ!?」

レイト「グスタフ侍医長だ。」

???「それは真か?」

 

 ゼノビア姫がそう言うと、アスラン殿下はそう叫ぶ。

 俺がそう答えると、別の声が聞こえてくる。

 その方を向くと、そこにはサウザー王太子の姿があった。

 横には、従者を2人連れていた。

 

アスラン達「はっ!?」

レイト(タイミングばっちり。蒼影から報告を受けていたからな。)

 

 アスラン殿下とバラクさんが驚く中、俺はそう思う。

 すると、サウザー王太子が口を開く。

 

サウザー「その反応……………演技ではないな。では、本当にグスタフめが黒幕だと?」

アスラン「兄上こそ!俺はずっと、兄上がグスタフの手に落ちたとばかり……………。」

サウザー「みくびるでないわ。……………だが、グスタフがゼノビアに手をかけていたのだとすれば、私も偉そうな事は言えぬがな。」

ゼノビア「サトル様とノゾム様は、お兄様方の仲を取り持ってくださろうとしているのです!私を苛むものは、グスタフなのですわ!」

 

 サウザー王太子がそう言うと、アスラン殿下はそう言う。

 それにそう言うが、後の言葉は自嘲の言葉だった。

 ゼノビア姫がそう言うと、サウザー王太子が口を開く。

 

サウザー「……………そうだな。私も直接お前の口から聞くべきだったやもしれん。カールめにアスランに叛意ありと聞かされて…………。」

アスラン「っ!?カールですと!?我が友が兄上に……………?っ!俺もカールから兄上が真祖の血(ザインブラッド)を服用したと聞かされて……………!」

 

 サウザー王太子がそう言うと、アスラン殿下がそう言う。

 カールが犯人か。

 すると、サウザー王太子は苦笑気味に口を開く。

 

サウザー「……………ふっ。笑えんな。兄弟揃って、あの男に踊らされていたとは…………。」

アスラン「カールはどこだ!?」

バラク「探せ!探し出して奴の身柄を捕らえよ!」

???「ハッハッハッハッ!!」

 

 サウザー王太子が自嘲気味にそう言うと、アスラン殿下とバラクさんがそう叫ぶ。

 すると、笑い声が聞こえてくる。

 

冒険者「あっ、あれは!?」

 

 そんな高笑いが聞こえてきて、周囲を見回すと、1人の冒険者が上を指差す。

 そこには、カールの姿があった。

 

カール「ハッハッハッハッ!残念、残念。もう少しで愚かな者どもによる最高の争いが楽しめたものを。」

アスラン「カール!!」

サウザー「抜け抜けと姿を現しおって!」

アスラン「……………もしや、ルベリオスから来たというあの男も、お前の差し金か!」

 

 カールはそんな風に言う中、アスラン殿下とサウザー王太子はそう叫ぶ。

 アスラン殿下がそう言う中、カールは地面に降り立った。

 

カール「御名答。用も済んだので、さっさと消えてもらったがな。」

サウザー「おのれ…………!無事で済むと思うな!」

カール「……………ふっ。雑魚どもが。私の舞台で踊るだけの価値しかない癖に、大言壮語を吐くものだ!」

サウザー「貴様!ハァァァァァ!!」

 

 カールがそう答えると、2人はカールを睨む。

 カールがそう吐き捨てると、サウザー王太子は大きくジャンプをしながら攻撃する。

 サウザー王太子の攻撃は、カールの顔面に命中する。

 

バラク「な……………何っ!?」

 

 それを見たバラクは唖然となる。

 その理由は、めり込んでいたカールの顔が、あっという間に元に戻ったからだ。

 

サウザー「なっ……………!?」

リムル「こいつはヤバい相手だな。」

レイト「確かにな……………。」

カール「グスタフー!こいつを殺すが、計画に支障はあるか!?」

 

 サウザー王太子が唖然となる中、俺とリムルはそう呟く。

 人間じゃないのは確かだな。

 カールがそう叫ぶと、空からグスタフが現れる。

 

グスタフ「やれやれ。御方は目立たぬ様にとの仰せなのじゃぞ。それを事もあろうに、我ら自身が動かねばならぬとはのう。さっさと終わらせて、証拠を隠滅するとしようぞ。」

サウザー「グスタフ……………!やはり貴様も!」

グスタフ「ふん。わしの手駒として優秀だったが、その力、返してもらうぞ。」

サウザー「ぐぅぅぅぅぅ!?」

 

 グスタフはそう言いながら現れた。

 御方って事は、こいつらのボスが居るってことか。

 そのボスって何者だ?

 すると、グスタフがサウザー王太子に手を向けると、エネルギーがグスタフに向かっていく。

 

科学者『告。個体名サウザーの内包するエネルギー量が急激に減少しました。同時に、個体名グスタフのエネルギー量が大幅に上昇しましております。』

 

 科学者はそう報告する。

 やっぱり、力を与えられていたってわけか。

 

レイト『2人とも、同種族って事だな。』

科学者『是。該当する種族を確認。上位魔将(アークデーモン)と推測されます。受肉している事からも、驚異度は豚頭魔王(オークディザスター)をも上回ります。』

 

 俺がそう呟くと、科学者はそう答える。

 上位魔将(アークデーモン)か。

 かなり厄介だな。

 

リムル「上位魔将(アークデーモン)?そんな奴らが二体も同時に?」

レイト「面倒な事になったな……………。」

冒険者「上位魔将(アークデーモン)だと!?」

冒険者「逃げろーー!!」

 

 俺とリムルがそう呟くと、それが聞こえたのか、冒険者達は逃げていく。

 まあ、当然だわな。

 これで、変身しても大丈夫なのかもしれない。

 冒険者が居ると、噂で広められる危険性もあるしな。

 すると、ゼノビア姫が口を開く。

 

ゼノビア「サトル様…………ノゾム様…………。」

リムル「大丈夫だ。約束は守るさ。」

レイト「待ってろ。」

 

 ゼノビア姫がそう言うと、俺たちはそう答える。

 俺とリムルは、思念伝達で話し合う。

 

リムル『とはいえ、二体の上位魔将(アークデーモン)を相手にするのは、かなり厄介だよな?』

レイト『そうだな。キマイラに変身する事も考慮に入れるよ。』

リムル『分かった。』

 

 俺とリムルがそう言うと、グスタフが口を開く。

 

グスタフ「この虫ケラどもだが……………貴様1人で皆殺しに出来るな?」

カール「当然だ。」

グスタフ「要となる大切な玉体を傷つけられては敵わぬ故、わしが戦いの場を用意するとしようぞ。」

レイト(玉体…………?)

 

 グスタフとカールがそう話すと、俺は首を傾げる。

 すると、グスタフが瞬間移動をして、ゼノビア姫を捕まえる。

 俺たちが駆け寄ろうとすると、結界が張られる。

 玉体って、ゼノビア姫の事か!

 

アスラン「ゼノビア!」

科学者『告。物理世界への影響を遮断する隔絶結界です。吸収之王(アブソーブドレイン)で破壊可能ですが、実行しますか?』

レイト『……………ひとまず様子を見る。グスタフはゼノビア姫の事を玉体と言っていた。危害を加える可能性は低い。場合によっては、それを使う事を考えよう。』

 

 アスラン殿下がそう叫ぶ中、俺は科学者の問いにそう答える。

 まずは、カールを倒してからだな。

 

サウザー「おのれ、グスタフ……………!」

カール「お前は用済みってわけだ。死ねぇ!!」

アスラン「兄上!!」

 

 サウザー王太子がそう言う中、カールはそう言って、サウザー王太子に向かって攻撃しようとする。

 だが、アスラン殿下が庇った事で、サウザー王太子は無事だった。

 

アスラン「ぐはっ!?」

サウザー「アスラン!?」

 

 アスラン殿下が吹っ飛ぶ中、サウザー王太子はアスラン殿下の元に向かう。

 

サウザー「なぜだ!?なぜ私を庇った!?」

グスタフ「ふふふ。弱者が嘆く姿を見るのは、いつ見ても愉悦であるぞ…………!」

カール「もっともっと私を喜ばせてくれ!」

アスラン「……………俺は……………あなたを守る盾であり、あなたの敵を討つ剣でもありたいと、幼き頃よりずっと願っていた…………。」

サウザー「ああ、アスラン…………私はお前を……………。」

リムル「はいはい、邪魔だよ。」

レイト「ほれ。」

 

 サウザーがそう叫ぶと、上位魔将(アークデーモン)2人は喜ぶ。

 そう話す中、リムルがサウザー王太子を離すと、俺はフルポーションをぶっかける。

 すると、あっという間に傷が治る。

 

アスラン「ん?」

サウザー「えっ!?」

グスタフ達「はあっ!?」

カール「き、貴様ら、なんなんだ!?そのふざけた効能の回復薬は!?」

 

 あっという間に傷が治って、サウザー王太子とアスラン殿下が呆気に取られる中、カールはそう叫ぶ。

 うちの名産のフルポーションですが?

 

リムル「邪魔だから、これ飲んで引っ込んでてよ。」

レイト『2人とも、用意は良いか?』

紅丸『待ってましたよ。』

蒼影『万端です。』

リムル「こいつは俺たちで倒す!」

レイト「お前達は、邪魔にならない様に、避難してくれ!」

カール「ふっ!小賢しい!」

 

 リムルが蜂蜜をサウザー王太子に渡すと、俺たちはカールと対峙する。

 カールが魔力弾を放つ中、俺たちは回避する。

 俺たちが戦闘を始めた頃、隔絶結界の外に居たパウロは。

 

パウロ(勝てるわけねぇだろ……………。相手は上位魔将(アークデーモン)。それも二体なんだぞ!?Aランクの冒険者が10人居ても勝てるかどうか……………Aランクでさえない俺なんて……………はっ!)

 

 パウロはそんな風に思っていた。

 すると、ある事を思い出す。

 それは、俺がフルポーションを渡した事だ。

 パウロはチラリとグスタフの方を見ると。

 

パウロ(俺……………英雄になりたかったんだよな…………。気づいてたよ。あの人たちは、俺なんかが逆立ちしたって勝てない実力者だって……………。あの棍棒だって、ユニーク武器に違いない。そんな貴重な物を……………俺を信用して渡してくれたんだよな。今は不当に逮捕されて、城にいるって話だが……………あの人たちなら、悪魔を倒す事だって…………。)

 

リムル『人の言う事を聞け!無茶をするな!出来る事を確実にやれ!』

レイト『あと、相手を見ろ。素手が通用する相手ばかりじゃないんだ。』

 

パウロ(やってやるぜ……………!俺は、俺が出来る事をやる!!結果が失敗に終わろうとも、胸を張って生きれる様にな!!)

 

 パウロはそんな風に思う中、俺とリムルの言葉を思い出し、何かを決断する。

 ちなみに、俺たちは牢屋に居るのは間違い無いが、分身体だ。

 それは、パウロには気づく事はなかった。

 一方、俺たちは。

 

カール「ハァァァァァ!」

レイト「ふんっ!」

 

 カールは魔力弾を放つが、リムルは暴食者で、俺は吸収之王(アブソーブドレイン)を使って、無力化する。

 それを見たグスタフは。

 

グスタフ(バカな!?カールの魔法を打ち消しただと!?)

 

 グスタフはそんな風に驚いていた。

 

蒼影「ふっ。」

カール「ぐっ!?」

紅丸「ハァァァァァ!」

カール「がぁぁぁぁぁ!?」

 

 すると、蒼影は糸を使ってカールを拘束する。

 紅丸は思い切り斬撃をして、カールがダメージを受ける。

 俺たちを見たグスタフは。

 

グスタフ(奴らは人間ではなく、魔人!?まずい、まずいまずいまずいまずいぞ!何としても、この依代だけは守らねば!我らが神を顕現させる為にも!)

 

 グスタフは俺たちが人間ではないと気づいた。

 ゼノビア姫を近くの木に寄りかからせると、グスタフは何かをし始める。

 

グスタフ「闇夜の帷よ!降りよ!根源たる負の感情よ!来たれ!」

 

 グスタフはそう言うと、隔絶結界を厚くすると、そう言う。

 すると、コリウス王国に住む人たちから、負の感情がグスタフに向かってくる。

 

グスタフ「同胞たるカールよ、我が糧となれ!」

カール「ぐっ!?うわぁぁぁぁぁ!?」

 

 グスタフがそう言うと、カールから何かが抜けて、そのまま倒れ伏す。

 グスタフの周囲に魔力が漂う中、グスタフは口を開く。

 

グスタフ「ぬっふふふ!この体では力を完全に御せぬが、あの魔人どもを屠るには十分であろうて。それでは、始めるとしようか!」

 

 グスタフはそう言う。

 まずいな、もうやるしかない!

 

レイト「サトル!ここは任せた!」

リムル「おっ、おい!?」

 

 俺はそう言うと、ツインキメラバイスタンプを起動する。

 

ツインキメラ!

 

 バイスタンプを起動した後、キメラドライバーに装填する。

 すると、待機音が流れる。

 

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

 

 俺は、あの言葉を言う。

 

レイト「変身!」

 

 そう言って、バイスタンプを一回倒す。

 すると、蟹の鋏と鰐の顎が、同時に俺を閉めて、変身させる。

 

スクランブル!

キングクラブ!クロコダイル!仮面ライダーキマイラ!キマイラ!

 

 俺は、仮面ライダーキマイラへと変身する。

 すると、科学者が報告する。

 

科学者『告。隔絶結界が厚くなった事で、突破には多少の時間がかかり、破れたとしても、すぐに修復されます。』

レイト『構わん!行くぞ!』

 

 科学者の問いにそう答えると、俺は結界に向かって吸収を開始する。

 そんな中、グスタフは瓶が転がる音に気付き、その方を向くと、ゼノビア姫の姿がなかった。

 ゼノビア姫は、パウロが連れ出していた。

 

グスタフ「愚か者が。わしから逃れられるものか!暗黒魔法、フォビドゥン!」

 

 グスタフはそう言うと、パウロの後を追う。

 俺は、結界を破壊しようとする。

 グスタフの魔法がパウロに当たる直前、誰かが防御する。

 

グスタフ「っ!?」

???「そこで大人しゅう見ておれ。その娘を助けようとした心意気に免じて、妾が貴様を守ってやろうぞ。」

パウロ「おっ、おう!」

 

 グスタフが驚く中、そのフードを被った女性はそう言い、パウロは離れる。

 グスタフが口を開く。

 

グスタフ「何者だ。」

???「貴様の様な小物に教える気など無いわ。」

グスタフ「何っ……………!?」

???「やれやれ……………今のあの者達では、貴様の相手は荷が重いやもしれん。妾が遊んでやる故、光栄に思うが良かろう。」

 

 グスタフがそう聞くと、その女性はそう吐き捨てる。

 すると、女性は外套を外すと、銀髪の腰まである長い髪と黒いリボンをつけた風貌で、目を開けると赤と青のオッドアイだった。

 

グスタフ「魔人か。小娘の癖に生意気な!」

 

 グスタフはそう言いながら、その女性に攻撃する。

 グスタフは笑っていると、すぐに唖然となる。

 なぜなら……………。

 

???「ぬるい。」

グスタフ「ばっ、バカな!?わしの全力が!?」

???「知らぬわ。」

 

 あっさり受け止められていたからだ。

 それに驚く中、その女性は左手でグスタフの腕を攻撃して怯ませると、蹴りを入れる。

 グスタフが吹っ飛ばされると、女性は笑みを浮かべる。

 その女性の口には、犬歯が目立っていた。

 

グスタフ「まっ、まさか、吸血鬼族(ヴァンパイア)なのか!?しかもわしより強いじゃと!?おっ、お前は何者なのじゃ!?」

???「……………貴様が知る必要などあるまいよ。」

 

 グスタフはその女性が吸血鬼族(ヴァンパイア)である事に驚いていた。

 グスタフはそう聞くが、その女性はゴミを見る様な目でそう吐き捨てる。

 

グスタフ(まっ、まずい…………!このままでは、何も成せずに滅んでしまう!そ、そんな事になれば、わしは……………!!)

 

 グスタフはこの事態をどう打開するかを考える。

 すると、ゼノビア姫の方を見る。

 

グスタフ「ぐぅぅ!」

 

 グスタフは魔力弾を爆発させて、煙幕を出す。

 そして、煙に紛れる様に、壁を蹴ってゼノビア姫の方へと向かう。

 

パウロ「くっ!」

グスタフ「邪魔だ!!」

 

 パウロは守ろうとするが、あっさり背後を取られ、蹴られてしまう。

 パウロは倒れると、グスタフは結界を施す。

 すると、別の魔法を発動する。

 

グスタフ「我らが原初たる神よ!この者に宿りて、わしに力をお貸しくださいませ!!」

 

 グスタフはそう叫ぶと、魔法陣が光を強くする。

 女性は、パウロの容体を確認していた。

 

???「息はある様な。バカな奴じゃ。」

 

 女性はそう言う。

 すると、結界が張られていた場所から強い光が出る。

 それは、結界を破ろうとしていた俺にも見えた。

 

レイト『何だあれ!?』

科学者『告。悪魔の召喚魔法です。』

レイト『急いだ方がいいな……………。』

 

 俺がそう叫ぶと、科学者はそう報告する。

 一方、女性の方では、その光の中心にいたゼノビア姫が起き上がると、ゼノビア姫を魔力が包み込む。

 グスタフが固唾を飲んで見ていると、それは割れる。

 そこから出てきたのは、ゼノビア姫ではなく、別の女の子だった。

 フードを被っていた。

 それを見たグスタフは。

 

グスタフ「おお……………成功だ!貴様は終わりだ!何者かは知らんが、我らに楯突いた事を後悔するがいい!」

 

 グスタフはそんな風に言う。

 すると、紫の髪で金色の瞳の女の子が口を開く。

 

???「やあ、ルミナス。せっかくだから挨拶だけでもと思って、僕の方からわざわざ来てあげたよ。」

グスタフ「ん?ヴィオレ様、この者をご存知なのですか?………いや、待てよ?ルミナス……………ルミナスじゃと!?ではこの者が、滅んだとされる先代魔王、”夜魔の女王(クイーン・オブ・ナイトメア)”ルミナス・バレンタイン!!?」

 

 ヴィオレと呼ばれたその少女がそう言うと、グスタフはそう叫ぶ。

 銀髪の女性の正体は、魔王だったのだ。

 ルミナスは舌打ちしながら口を開く。

 

ルミナス「ちっ!やはり貴様か。ヴィオレよ。何度も言うが妾に迷惑をかけるのはやめよ。」

ヴィオレ「アッハハハハ!嫌だよ。だって僕は、人が嫌がる事をするのが大好きなんだもん!特に君の様に抜け目のない相手は、出し抜くのが大変だもんね。どうせ一緒に遊ぶのなら、僕も楽しみたいし!これからもよろしくね!」

ルミナス「抜け抜けと……………!!」

ヴィオレ「ふっ!」

 

 ルミナスはそう言うと、ヴィオレは笑いながらそう言う。

 すると、ヴィオレは魔力弾を放ちながらルミナスへと向かい、ルミナスも宙に浮く。

 ヴィオレの魔力弾をルミナスが躱したり、障壁で防ぐと、お返しに魔力弾を放つ。

 2人の戦いは、苛烈さを増していた。

 その頃、俺は。

 

レイト「よし、なんとか突破出来たな!それで……………!?」

 

 俺は隔絶結界を突破出来て、向かおうとする。

 すると、凄まじい二つのオーラがせめぎ合っているのに気づく。

 

レイト『なんだあれ!?』

科学者『告。片方のオーラは、原初の黒(ノワール)と同等であると推測。』

レイト『マジかよ!?』

 

 俺は、科学者の報告に驚く。

 原初の悪魔が現れたって言うのか?

 ということは、グスタフとカールの親玉。

 キマイラやダイモンとかでも勝てるかどうかは分からないな。

 すると、ぶつかり合っていたその2人が降り立つ。

 

ヴィオレ「うん!腕は落ちてない様だね!感心、感心。」

ルミナス「やかましいわ。それよりも貴様、この落とし前はどうつけるつもりなのじゃ?」

ヴィオレ「う〜ん……………そうだね。」

 

 その2人がそう話すと、グスタフが紫の髪の女の子に話しかける。

 

グスタフ「か、神よ!わしは、わしは…………!」

ヴィオレ「そうだね。僕の僕の癖して、こんな簡単なお仕事もこなせないなんて、残念、残念。」

グスタフ「お待ちを!次こそは必ず成功させてごらんに入れます!今回とて、あなた様を受肉させたという功績を……………。」

 

 グスタフがそう言うと、その女の子はそう言う。

 尚もグスタフがそう言い募る中、創始者が報告する。

 

科学者『告。向かいの悪魔は、原初の紫(ヴィオレ)だと推測。』

レイト『やっぱり、原初の悪魔か…………。』

 

 やっぱりか。

 そう思う中、ヴィオレはゴミを見る目でグスタフを見る。

 

ヴィオレ「は?これは無理矢理この子の体に、僕の力で顕現しただけなんだけど?」

グスタフ「えっ!?」

ヴィオレ「君の功績なんて皆無なのに、笑わせないでよね。僕失望しちゃった。証拠を残すくらいなら、僕の手で始末しなければならないんだもん。」

グスタフ「し、始末……………?はっ!」

 

 ヴィオレはそんな風に言う。

 すると、グスタフは銀髪の女性と俺の事を見る。

 

グスタフ「お、おお!そうですとも!貴方様なら必ずや、ルミナスとその魔人の首を…………!」

ヴィオレ「ちっ!ば〜か。」

グスタフ「えっ?」

ヴィオレ「ゴミは消えちゃえ!」

 

 グスタフは、ヴィオレが俺と銀髪の女性…………ルミナスを始末すると思ったのか、そう言う。

 俺が身構える中、ヴィオレは舌打ちして、そんな風に言いながら、グスタフに手を向ける。

 すると、グスタフが燃え、体が倒れると、何かが出てくる。

 

グスタフ「ぐっ!?ぐわぁぁぁぁぁ!?そ、そんな!?うわぁぁぁぁぁ!?」

 

 グスタフの中に居たであろう悪魔が出てくると、ヴィオレは手を握る。

 すると、その悪魔は消える。

 俺が呆然と見ていると。

 

ヴィオレ「お前の他にも、種は蒔いてあるからね。それに……………。」

レイト「っ!?」

 

 ヴィオレはそう呟くと、俺の目の前に現れた。

 俺が驚いていると。

 

ヴィオレ「君がレイト=テンペストって訳ね。良いね、良いね。」

レイト「っ!?なんで俺の名前を!?」

ヴィオレ「君には興味があるからね。君とは、またどこかで会えるかもね。それじゃあ、僕は帰るね。バイバ〜イ!」

 

 ヴィオレは俺をじっと見るとそう言う。

 ヴィオレはそう言い残すと、消えて、ゼノビア姫の姿に戻った。

 俺は変身解除して、ゼノビア姫を抱える。

 グスタフが消えた事で、結界も解除されるだろう。

 さて、どうしたものか……………。

 あの銀髪の女性の名前は、ルミナスという名前で間違いないだろう。

 というより、ルミナス教と関係があるのか?

 坂口日向(ヒナタ・サカグチ)が所属しているルミナス教と。

 すると、パウロに何か話しかけていたルミナスは、俺の方へとやってくる。

 

ルミナス「さて、貴様。近う寄れ。」

レイト「な、なんだ……………?」

ルミナス「貴様は、あの男の口裏に合わせておけ。良いな?」

レイト「………………良いけど、あんたの名前を出した場合は?」

ルミナス「………………命はないと思え。」

レイト「分かった。」

ルミナス「素直じゃな。」

 

 ルミナスは俺に近寄る様に言うと、俺は近寄る。

 何事かと思うと、パウロの口裏に合わせろと言う。

 俺がそう聞くと、不機嫌な表情になり、すぐに答える。

 そりゃあ、原初の悪魔とタイマン張れる奴と敵対したくないし。

 すると、ルミナスは消えて、リムル達がやってくる。

 

リムル「……………まさか、お前が倒したのか?」

パウロ「はい!俺がやりました!」

リムル「レイト、本当なのか?」

レイト「ああ、本当だ。」

 

 リムルがそう聞くと、パウロは若干棒読み気味にそう言う。

 なんで棒読みなんだよ。

 俺が心の中でそう突っ込む中、リムルと俺はゼノビア姫の方へと向かう。

 

サウザー「ゼノビア!大丈夫なのか?」

アスラン「兄上、落ち着いてください!ここは、サトル殿とコスケ殿を信じましょう。」

 

 サウザー王太子がそう言うと、アスラン殿下はそう言う。

 リムルは口を開く。

 

リムル「肉体的には問題なし。この様子だと、まもなく目覚めると思うよ。」

レイト「だから、大丈夫だ。」

アスラン「感謝する!」

サウザー「それで、大怪盗殿達。大事な質問があるんだが、良いかな?」

リムル「ああ〜!わ、悪いが俺たちも忙しい身でね!紅丸、蒼影!」

レイト「それじゃあな。」

 

 リムルと俺がそう言うと、アスラン殿下は頭を下げ、サウザー王太子はそう言う。

 俺たちは誤魔化しながら、そのまま去っていく。

 俺とリムルは牢屋の方へと戻る。

 

リムル「ご苦労さん。」

レイト「お疲れさん。」

 

 俺とリムルは、身代わりの分身体を吸収して、元の姿に戻る。

 すると、タイミングよく兵士がやってくる。

 

兵士「来い!サウザー王太子がお呼びだ。」

 

 そんな風に言われて、俺たちは牢屋から外に出て、サウザー王太子達の元に向かう。

 

アスラン「おお、待っていたぞ!リムル殿、レイト殿!」

リムル「アスラン殿下?」

レイト「どうされたんですか?」

アスラン「すまないが、妹がまたも衰弱してしまったのだ。出来れば、貴殿が持つ秘薬を分けて欲しいのだが……………頼めるだろうか?」

 

 俺たちに気づいたアスラン殿下はそう言う。

 俺たちがそう聞くと、アスラン殿下はそんな風に言う。

 アスラン殿下達が考えている事を見て、すぐに察した。

 これ、鎌かけてるよな?

 俺たちとあの大怪盗コンビが同一人物である事を確かめる為に。

 バレてるのならしょうがないが。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「もちろん、良いですよ。」

 

 リムルはそう言って、蜂蜜を差し出す。

 すると、サウザー王太子が口を開く。

 

サウザー「ふむ。やはりな。私が貰った物と同じだ。」

アスラン「やはりそうでしたか。」

リムル「えっ?……………あっ!?」

 

 それを見たサウザー王太子がそう言うと、アスラン殿下もそう言う。

 やっぱり、鎌かけてた。

 すると、リムルもやった気づいた。

 サウザー王太子とアスラン殿下が俺たちを見てくる。

 言い逃れは無理だな。

 その後、部屋へと通される。

 そこには、普通に起きてたゼノビア姫が居た。

 サウザー王太子達の背後には、バラクさんとパウロが居た。

 

ゼノビア「リムル様とレイト様のおかげで、私、自由の身になれました。」

アスラン「貴殿らには、何から何まで世話になった。感謝する。」

サウザー「我らは貴殿らには恩義を感じている。その事をどうか、忘れずに、何かあったら頼って欲しい。」

リムル「は、はぁ……………。」

レイト「ああ。」

 

 ゼノビア姫達は、そんな風に言う。

 どうやら、この場にいる全員にバレているみたいだな。

 

リムル「こちらこそ、微力ながらお役に立てた様で何よりです。」

レイト「もしも、また薬が必要になれば、ミョルマイルという商人をお尋ねください。」

アスラン「ふっ。最近、台頭したという魔物の国と取引のある商人か。」

バラク「そういえば、その国の盟主達の名前も、リムル=テンペストとレイト=テンペストだと言うらしい。奇遇な事もある事です。」

 

 俺とリムルがそう言うと、アスラン殿下はそう言う。

 すると、バラクさんはそう言う。

 やっぱりバレたか。

 まあ、仮面ライダーキマイラに変身した時点で、バレてもしょうがないと思ったのだが。

 

パウロ「やっぱりすげぇお人たちだった……………。」

 

 パウロはそんな風に呟く。

 俺たちは気になる事があり、口を開く。

 

リムル「ところで、貴方達兄弟を争う様に仕向けていたのは、やっぱり、この国の王様だったのかな?」

レイト「確かにな。そこら辺はどうなんですかね?」

ゼノビア「それについてなのですが……………実は、兵士が拘束しようと向かった時には、既に父王は身罷られていたのです。」

 

 俺とリムルがそう聞くと、ゼノビア姫はそう答える。

 つまり、何者かによって始末されていたのか。

 一体誰なのやら。

 まあ、薄々分かるのだが。

 アスラン殿下達も説明する。

 

アスラン「残されていた資料から、父が上位魔将(アークデーモン)を召喚したと判明した。病で残り少ない命と世を儚んだ父は、俺と兄上を争わせ、生き残った方の体に乗り移ろうとしていたのだ。」

サウザー「結果として良かったのであろうよ。罪状からすれば、死罪以外にはあり得なかっただろうからな。」

 

 アスラン殿下とサウザー王太子はそんな風に言う。

 そんな風に企んでいたとはな。

 最低な父親だ。

 父親の風上にも置けないな。

 そう思いながらも、俺は口を開く。

 

レイト「本当に全て解決したんだな。」

ゼノビア「はい。ありがとうございました、リムル様、レイト様……………いいえ。大怪盗サトル様とノゾム様。」

リムル「だからそれは、やめてくれって。」

 

 俺がそう言うと、ゼノビア姫はそんな風に言う。

 リムルがそう言うと、その場には笑いが満ちた。

 一方その頃、ルミナスはというと。

 

ルミナス「多少の面倒はあったが、片付けてきたぞ。」

 

 ルミナスは、氷の棺の中で眠る女性を見ながらそう言う。

 遡る事少し前、王の間では。

 

テドロン「しくじりおったか、クソが!こうなれば、余自らの肉体に、悪魔を受肉させてみせようぞ!!」

 

 アスラン殿下達の父親であるテドロンは、グスタフ達が失敗した事に対して、苛立ちながらそう言う。

 すると。

 

ルミナス「バカめ。」

テドロン「あっ!?…………あ?」

ルミナス「そのような愚かな行為に手を染めるから、ヴィオレの暗躍を許すのじゃ。この国は凶王への備えでもある故、大人しくこの地を守っていたのならば、死の間際に褒美をくれてやったものを……………。」

 

 そんな声が聞こえてきて、テドロンは前に視線を向ける。

 そこにはソファーがあり、そのソファーにはルミナスが寝転がっていた。

 

テドロン「なっ!?貴様、何者だ!?」

ルミナス「貴様こそ、妾を誰じゃと思うておる。」

 

 それを見たテドロンがそう言うと、ルミナスは起き上がりながらそう言う。

 それを見たテドロンは。

 

テドロン「あっ!?あなたは…………四方の守護神……………!?」

ルミナス「慈悲はやらぬ。禁忌に触れた事、地獄で反省するがよかろう。」

 

 テドロンは、ルミナスの正体に気づいたが、ルミナスは食い気味にそう言うと、魔法を発動する。

 すると、テドロンの周囲から薔薇の蔦が伸びてくる。

 

テドロン「ぐわぁぁぁ……………!?」

 

 テドロンはそんな呻き声を上げる。

 その光景は、ある意味で美しく、残酷な物だった。

 蔦から薔薇が咲いたのだが、すぐに散った。

 その理由は、その薔薇は、テドロンの命を吸って咲いたのだから。

 残り少ない命を薔薇に吸われ、その薔薇と共に命が散っていく。

 テドロンを始末したのは、ルミナスだったのだ。

 ルミナスは、氷の棺を見ながら再び口を開く。

 

ルミナス「安心して、眠っておるが良い。」

 

 ルミナスはそんな風に呟く。

 そんな事が起こっていたと気づいていない俺たちは、コリウス王国から離れる事に。

 サウザー王太子は近く戴冠する事に決まり、アスラン殿下は、軍務卿として、サウザー王太子を支える事になった。

 病が完治したゼノビア姫は、何故かユニークスキルが失われていたとのこと。

 見送りには、サウザー王太子、アスラン殿下、ゼノビア姫、バラクさん、シフォンさん、パウロが居た。

 パウロが見送る側にいる理由は…………。

 

レイト「パウロ、本当に残るのか?」

パウロ「騎士団長にスカウトされたからな!」

アスラン「期待しているぞ。」

パウロ「はっ!」

 

 そう。

 パウロは、グスタフからゼノビア姫を助けた勇気を認められ、アスラン殿下にスカウトされたのだ。

 本人もやる気みたいだし、大丈夫そうだな。

 

リムル「まあ、せいぜい頑張れよ。じゃあ、皆さん、お元気で!」

レイト「またいつか、必ず会いましょう。」

 

 俺とリムルはそう言い、コリウス王国から出発する。

 リムルはユウキに報告しに行き、俺はテンペストに戻った。

 まだまだやるべき事があるからな。

 そうして、日常へと戻っていく。

 だが、この時の俺は気づいていなかった。

 あのヴィオレという原初の悪魔と、ルミナスとそう遠くない未来で、再会する事になるという事、覚悟を決める時と悲劇が近づいているという事を。

 少し先の未来の話になる。

 コリウス王国では。

 

アスラン「新しい魔王が2人も誕生しただと?」

サウザー「その名は、リムル=テンペストとレイト=テンペスト。」

 

 アスラン殿下がそう聞くと、サウザー王太子はそう答える。

 それを聞いたアスラン殿下とゼノビア姫は。

 

ゼノビア「まあ!」

アスラン「ほう。あの強さなら、魔王というのも納得よな。」

ゼノビア「これでは、嫁げそうにもありませんわね。残念です。」

サウザー「何にせよ、めでたい事よ。我が国としても、是非とも国交を結ばせてもらおう。」

 

 それを聞いたゼノビア姫とアスラン殿下がそう言うと、ゼノビア姫はしれっとそんな事を言う。

 どうやら、嫁ぐ気で居たらしい。

 サウザー王太子がそう言う中、パウロは。

 

パウロ(やべぇ……………俺、魔王様を相手に生意気な口を聞いちゃったし、金を借りたまま返してないぞ……………。どうしよう…………!?)

 

 パウロは内心、冷や汗をかいていた。

 生意気な口を聞いたり、金を借りたまま返していない事を気にしていたのだ。

 その後、泣く子も黙ると恐れられるコリウス王国のパウロ騎士団長は、魔王から借りパクした男として、名を馳せる事になるのだった。

 時系列は戻り、ある空間では、瓦礫などが浮いている空間の一部が開き、夕陽に照らされたある国が見える。

 周囲に突き刺さっている柱の内の一つに腰掛けている黄色の髪の女性は魔力を集めながら、口を開く。

 

ジョーヌ「はぁぁん……………懲りない奴だな、ヴィオレは。」

 

 そんな風に言いながら、魔法をその国に向けて放ち、大爆発を起こす。

 彼女は、原初の黄(ジョーヌ)

 原初の悪魔のうちの1人だ。

 また別の場所では、ユニコーンを模った肘掛けがついた豪華な椅子に座りながら、ワインを飲む白い髪に赤い瞳の女性が居て、その傍らには、2人の従者が控えていた。

 従者は片方は少年みたいな風貌で、もう片方は青年の様な風貌だった。

 

ブラン「また失敗したのね、あの子。」

 

 その女性はワインを飲むと、そう言う。

 彼女は、原初の白(ブラン)

 彼女もまた、原初の悪魔の1人だ。

 そして、ヴィオレはというと。

 

ヴィオレ「……………さて。次の芽はどこから出るかな?」

 

 ヴィオレはそう言いながら、たくさんの水晶が並ぶ場所に降り立つ。

 その水晶の一つには、男女が映っており、片方は赤い髪で右側が黒、左側が小さい白い角の大鬼族で、もう1人は、黒髪で胸の方に下げている髪は緑色で赤いティアラを頭の上に乗せている女性だった。

 ヴィオレの言葉の意味とは……………。




今回はここまでです。
今回で、転キメでのコリウスの夢の話も終わりです。
47話でレイトが言っていた事を回収できました。
ヴィオレとは接触していたのです。
まあ、レイト本人は召喚しませんでしたが。
どこかのタイミングでヴィオレだけを召喚するのもありかなと思いますが、どうですかね?
もしくは、原作と同じタイミングで出すか。
次回は、クレイマンと決着をつけます。
長かったです。
一部、転スラの3期のエピソードを入れるかもしれません。
魔王達の食事のシーンとか。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
アウトサイダーズで、ジョージ・狩崎が動き出そうとしていますが、もしかしたら、そこでジュウガの強化が来る可能性もありますので、それも出たら入れようかなと思っています。
他にもリクエストがあれば、活動報告にて承っています。


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番外編 コラボストーリー
番外編 スライムと猫との出会い


 これは、もしかしたら、あり得たかもしれない話。

 

裕人「さて……………結構集まったかな。」

 

 俺は、高野裕人。

 子供を庇い、車に轢かれ、枝に突き刺さって死亡して、キメラに転生した日本人だ。

 そして、仮面ライダーキマイラの力を手に入れたのだ。

 そんな俺は今、洞窟で、ヒポクテ草と魔鋼塊というのを集めていた。

 すると。

 

???『クアーーーーハハハハハハハハハハハ!!』

裕人「!?」

 

 突然、大きな笑い声がしてきて、俺は何事かと思い、声がした方へと向かっていく。

 すると、一体の巨大なドラゴンの目の前に、一匹のスライムと猫が居た。

 そのスライムと猫は、話していた。

 どういう事かと思案していると。

 

???『…………どうやら、まだ客人が居るみたいだな。』

裕人(バレた…………!)

 

 そのドラゴンは、俺を見つけた。

 俺は観念して、ドラゴンの前へと向かう。

 

???『…………ほう。見た事のない種族であるな。』

???「………………。」

 

 そのドラゴンがそう言う中、猫は俺を見つめていた。

 気になったので、聞いてみる。

 今の俺は、顔は人間に近いが、見た目はギフテリアンだしな……………。

 怯えてんのかな?

 

裕人「あの……………どうしたんですか?」

猫「あの〜………体にトゲ刺さってますよ?痛くないの?」

裕人「え?」

 

 その猫は、俺を見た途端、そう言う。

 そう言われて、俺が唖然となっていると。

 

猫「それ、あっ……もしかしてお洒落のつもりだった?だとしたら、ファッション雑誌とか読み直した方がいいわよ?」

裕人「いや、この姿は、ファッションなんかじゃ…………。」

猫「あと美容院にも行くべきよ、今時はツンツンヘアとか流行らないわよ。」

裕人「ファッションじゃねぇから!元からだから!」

 

 なんか、すげぇ既視感があるやり取りだな、おい!

 あれじゃん。

 銀魂のアレじゃん!

 という事は、目の前の猫は、俺と同じ立場か!?

 すると、ドラゴンが猫に話しかける。

 

???『ネコよ、話が逸れているぞ。』

猫「あら、そうだったわね。それで、スライムちゃん。」

スライム「は、はい?」

猫「今から、あたしの言う様にやってみてくれる?そこのあんたも。」

裕人「は、はぁ……………。」

 

 俺は、その猫にそう言われて、同じ事をやる。

 すると。

 

科学者『告。EXスキル、魔力感知を獲得しました。』

裕人『魔力感知?』

 

 そう言うのは、俺のユニークスキル、科学者だ。

 

科学者『魔力感知とは、周囲の『魔素』を感知するスキルです。』

裕人『それで、魔素って?』

科学者『解、魔素とは、この世界に満ちるエネルギーで、魔物にとっては生命の元になる物です。』

 

 なるほどね。

 さっきのヒポクテ草の説明にも、魔素ってあったしな。

 そういう感じなのだろう。

 それにしても、随分とあっさり習得できたな。

 すると、科学者が口を開く。

 

科学者『警告。魔力感知を発動することにより、膨大な情報が流れ込む危険性があります。情報の管理のため、科学者と同期させることを推奨します。』

裕人(まあ、そうだろうな。)

科学者『魔力感知を使用しますか?』

裕人「YES。」

 

 すると今まで薄暗かった洞窟の中が、まるで昼間のようにはっきりと見える様になった。

 周囲の状況が事細く知る事ができた。

 スライムが、はしゃいでいた。

 

スライム「はいっ、ありがとうございます!今なら何でも視えそうな気がします!」

猫「何でも?うわぁ〜、ちょっとヴェルちゃん。このスライムヤバイわよ。エロに忠実よ、スケベだわ。」

スライム「エロくないやいっ!」

 

 スライムと猫は、そんな風に話す。

 それを見て思ったのが。

 

裕人「…………息ぴったりだな、おい。」

???『揶揄うな。ネコよ。それに、そこのそいつが置いてけぼりになっておるぞ。』

猫「ふふっ、ごめんごめん。それじゃあ、改めて名乗るわね?」

 

 そう言って、竜と猫が名乗る。

 

ヴェルドラ『では改めて自己紹介をしよう。我は暴風竜ヴェルドラ。この世に4体のみ存在する『竜種』の一体である。クァーーーーハハハハ!!』

猫又「あたしは猫又、名前は未だ無いけど気軽にネコちゃん♪って呼んでね〜♪」

裕人(ヴェルドラって名前なんだ。)

 

 それに、猫又か。

 なるほど、猫又に転生した感じなのかな。

 こうして、俺とスライムは、暴風竜ヴェルドラと猫又の話を聞く事にした。

 見た目に反して、この竜、意外と話好きで親切だと分かった。

 ちなみに、その際に、俺がキメラという種族である事を話した。

 スライムが、ヴェルドラに質問をする。

 

スライム「ヴェルドラさんとネコちゃんは、此処に住んでるんですか?」

ヴェルドラ「うむ、三百年前に勇者に封印されて以来このままよ。ネコはその少し後に転生してきた異世界人よ。」

裕人「猫さんも異世界人なんですね。」

猫「そうよ、元々は日本人の美少女だったわ。其れはもうモテて大変だったんだから。」

スライム「マジっすか!?」

 

 へぇ。

 なるほどね。

 すると、ヴェルドラが突っ込む。

 

ヴェルドラ『ネコよ、嘘を吐くな。お前、我と出会う前は《ぼっち》という枠組みだったと言っておったではないか。』

猫「負け犬ならぬ負けドラゴンなヴェルちゃんには言われたくないんですけど〜。知ってる?スライムくん、キメラくん、暴風竜が聞いて呆れるのよ〜、ヴェルちゃんは。勇者の容姿に見惚れた隙に「絶対切断」と「無限牢獄」の二つを叩き込まれて、負けたんだって〜。プークスクス!」

 

 嘘かい。

 すると、それを聞いた猫がそう言う。

 この2人、仲良いよな。

 お互いに、そう言う軽口を言い合えるのだから。

 

ヴェルドラ『ネコよ、今日の夕飯はお前を喰ってやろう。生で食べられるのと焼いてから食べられるのでは何方が好みだ?』

猫「そうねぇ〜、やっぱり焼いてからの方がオススメかなぁ。あっ、焼き方はウェルダンでお願い。よく焼かないとお腹壊しちゃ…………って!食わせるかァァァァ!」

 

 すると、そんな風に喧嘩を始める。

 俺は、そんな2人を見て、こう言う。

 

裕人「2人は、仲が良いな。」

スライム「本当だな。」

ヴェルドラ「…………まあな。」

猫「そうね。」

 

 俺とスライムの言葉に、2人はそう返す。

 俺は気になったので、詳細を聞く事にする。

 

裕人「勇者に負けたって、どういう事なんですか?」

ヴェルドラ「よくぞ聞いてくれた!300年前、ちょっとうっかり、街一つを灰にしちゃってな。」

裕人(ちょっとうっかりで済むレベルじゃねぇ。)

 

 うっかりって……………。

 まあ、竜と人じゃあ、感覚も違うか。

 そこから、猫が言った通り、勇者の絶対切断と無限牢獄を食らって、今に至るそうだ。

 それにしても、猫が居なかったら、ずっと1人だったんだろうな。

 すると、スライムが提案をする。

 

スライム「…………よし。じゃあ、俺と………いや、俺達と友達にならないか?」

裕人「良いね。」

ヴェルドラ「何!?スライムとキメラの分際で、この暴風竜ヴェルドラと友達だと!?」

 

 俺とスライムの言葉に、ヴェルドラは驚いた声を出す。

 すると、猫が澄ました顔を見せた後、優しく笑った。

 

猫「良いわよ。三人で、《ぼっち》なヴェルちゃんをおちょくりましょう。」

ヴェルドラ『抜け駆けは許さんぞっ!ネコよっ!良かろう!仕方ないから、友達になってやろう!ありがたく思うが良い!』

裕人「素直じゃないなぁ……………。」

 

 ヴェルドラが対抗してそう言うのを見て、俺はそう呟く。

 本当に、素直じゃ無いドラゴンだ。

 すると、俺の呟きに反応したのか。

 

猫「そうよ。それでいてツンデレだったりもするわよ。これが更にツインテールな妹で、ニーハイを履いて、ドジっ子とかなら、全部盛りよ。」

裕人「アニメの見過ぎじゃね?」

猫「つまんない返しね。真面目かしら?」

裕人「真面目で何が悪いんだ?」

 

 俺と猫がそう話す。

 すると、スライムがヴェルドラに声をかける。

 

スライム「………で、どうする?」

ヴェルドラ「ん?」

裕人「この封印だよ。解除出来ないのか?」

ヴェルドラ『そうだな……………。脱出するのにも、解除するのにも、心当たりがない。それにな……………あと100年ほどで我の魔力が底を尽く。魔素が漏れ続けておってな。』

猫「あぁ、通りで最近のヴェルちゃん。魔素臭かったのね。」

ヴェルドラ『臭いっ!?我は臭かったのかっ!!!ネコよっ!』

猫「超臭いわね。」

ヴェルドラ『なんだとォォォ!!!』

 

 俺とスライムがそう質問すると、猫がそう言う。

 そこから、また漫才が始まる。

 そんな2人を放って、俺は無限牢獄の壁に触れつつ、科学者に聞く。

 

裕人(科学者。無限牢獄を破る事は、出来ないか?)

科学者『解。このスキルでは、無限牢獄を破る事は叶いません。』

裕人(そっかぁ………。キマイラじゃ、無限牢獄を破る事なんて、不可能だろうしな。)

 

 ていうか、リバイス系列の仮面ライダーは、結界を破る力なんて、無いからな。

 これが、キメラドライバーで生み出された結界なら、俺が腰にキメラドライバーを装着して、破れるんだけど。

 すると、ヴェルドラの声が聞こえる。

 

ヴェルドラ『ネコよ。今だから言うが、我はお前のことを親友というのか?友達よりも更に上のように思っていた。』

猫「あら、嬉しいわね。あたしもヴェルちゃん……ヴェルドラをナイスフレンドだって、思ってたわ。」

ヴェルドラ『グハハハハハ!相変わらず、面白いヤツだなっ!お前はっ!』

 

 そんな風に話していた。

 おそらく、300年も語り合っていたのだろう。

 本当に仲が良いんだな。

 そんな中、俺はスライムに話しかける。

 

裕人「どうだ?何か分かったか?」

スライム「ちょっと待ってろよ……………。」

ヴェルドラ『スライムよ!何か分かったか!?』

スライム「………俺の胃袋に入る気はないか?」

ヴェルドラ「…………。」

猫「………………え?」

裕人「………すいません、説明下さい。」

スライム「おう。」

 

 スライム曰く、俺のUQスキル、科学者と似た様なスキル、『大賢者』というスキルがあるらしく、スライムが大賢者と捕食者というスキルで解析して、ヴェルドラも内側から破壊できないか確かめるらしい。

 スライムの胃袋の中は、隔絶された空間の為、魔力が漏れることは無いとの事。

 これなら、ヴェルドラの消滅を気にせずに、解析出来るな。

 すると、ヴェルドラは。

 

ヴェルドラ「………ククク………クハハハ………クハハハハハハハハハハ!!!」

裕人(おお、笑いの三段活用。)

ヴェルドラ「それは面白い!是非やってくれ!!お前に、我の全てを委ねる!」

猫「あら、即決?流石は天下無双の暴風竜ね。」

スライム「あっ!ネコちゃん!」

猫「なぁに?スライムちゃん?」

 

 俺がそう思い、猫がヴェルドラを褒める中、スライムが猫に話しかける。

 

スライム「猫ちゃんのユニークスキルを少しだけ貸してくれないか?」

猫「ユニークスキル……………彷徨者(サマヨウモノ)ね。」

裕人「それがどうしたんだ?」

スライム「ネコちゃんのスキルって、支配系を跳ね返す効果があるんだよな?」

猫「そうみたいね、使ったことはないけど。」

ヴェルドラ『なにっ!?ネコのユニークスキルにそのような効果があったのかっ!?』

猫「ふふっ、仕方ないわね。他でもない親友を救う為だもんね。良いわ、あたしのユニークスキルを少しだけ貸すわ。この毛に力を集束させるから、待っててね。」

スライム「ありがとう!ネコちゃん!」

 

 猫がそう言うと、毛が一本抜け、力が集束する。

 そうして、スライムはヴェルドラを捕食しようとするが、ヴェルドラが待ったをかけた。

 

ヴェルドラ『待て。その前に、名前を付けてやろう。無論、我が親友のネコとキメラのお前にもな。』

スライム「名前?」

裕人「どういう事?」

猫「あら、嬉しいわ。最後のプレゼントって訳ね。」

 

 ヴェルドラの言葉に、俺たちは三者三様の反応をする。

 

ヴェルドラ『そうなるな……同格と云う事を、魂に刻むのだ。そして、お前たちも我に名前を付けろ。人間が言うところのファミリーネーム?というヤツみたいなものだ。我がお前たちに付けるのは、"加護"になる。お前たちはまだ"名無し"だが、これでネームドモンスターを名乗れるぞ!』

 

 なるほどね。

 そんなこんなで、俺とスライムは、考える。

 

裕人(暴風竜だから…………ストーム?サイクロン?ハリケーン?いや、しっくり来ないな。)

 

 俺、名付けとか苦手なんだよな。

 ゲームキャラに名前をつける場合は、大抵そのゲームキャラのデフォルトネームか、自分の名前だし。

 すると、スライムが声を出す。

 

スライム「う~ん……暴風竜だから…………暴風……嵐?そうだ!テンペスト!《テンペスト》はどうかな!」

裕人「テンペストか。良いな。」

猫「すごい安直ねェ…………。」

 

 スライムがそう言うと、俺は好評の反応をして、猫は異を示していた。

 すると。

 

ヴェルドラ『何いいいいい!!テンペストだとおおおおおおお!!!』

スライム「ダメでした………?」

ヴェルドラ『素晴らしい響きだあああああ!!今日から我は、ヴェルドラ=テンペストだああああああああ!!!』

猫「って!気に入っとるっ!!!」

裕人「あははは………………。」

 

 ヴェルドラがそう叫ぶので、気に入らなかったのかと思ったが、そう叫んだ事に、猫はそう叫び、俺は苦笑を浮かべる。

 すると、ヴェルドラが、まずはスライムの方に名前を付ける。

 

ヴェルドラ『まずスライムのお前には、『リムル』の名を与えよう。今日から、リムル=テンペストを名乗るが良い。』

リムル「リムル………!」

ヴェルドラ『次は………確か………。』

裕人「あ、キメラです。」

ヴェルドラ『そうか。なら、キメラのお前には、『レイト』の名を与えよう。今日から、レイト=テンペストを名乗るが良い。』

レイト「ありがとうございます!」

ヴェルドラ『そして、我が親友よ。お前に授ける名は、何十、何百、何万と考えたが、長年に渡り呼んできた仮名を含む名を授ける。『ネコリア』、ネコリア=テンペストを名乗るが良い。』

ネコリア「確かに受け取ったわ、素敵な名前をありがとう。またね、ヴェルちゃん。」

ヴェルドラ『うむ、また会う日まで達者でな。ネコリアよ。』

 

 こうして、俺たちはそれぞれの名前を貰った。

 そして、その後、リムルが『捕食者』を発動して、ヴェルドラが消えた。

 

ネコリア「さてと……外に出てみる?リムル、レイト。」

リムル「ああ。背中に乗せてくれるか?ネコリア?」

レイト「俺も良いか?」

ネコリア「今まで通り、ネコちゃんで良いわよ。」

リムル「じゃあ、行こう、ネコちゃん!」

ネコリア「さぁ……振り切るわよっ!」

レイト「照井竜か!?」

 

 俺たちはそう話しながら、移動する。

 これは、あり得たかもしれない、とあるお話。

 俺たちが、世界をどの様に騒がせるのか、それは、分からない。




今回はここまでです。
今回は、青メッシュ先輩さんが投稿する、『転生したら猫ちゃんだったから自由に生きていきます』とコラボした話です。
コラボといっても、転キメのプロローグと第一話に、『転生したら猫ちゃんだったから自由に生きていきます』の主人公であるネコリアを追加した感じです。
『転生したら猫ちゃんだったから自由に生きていきます』は、猫又に転生した女主人公が、リムルと共に異世界を生き抜く話です。
良かったら、そちらも読んでみてください。
かなり面白いです。
番外編なので、続くかどうかは、未定です。
本編の方も、頑張っていきます。
何せ、ファルムス王国が攻めて来る直前なので、憂鬱になってしまいます。
その為、若干執筆速度が下がると思うので、ご了承下さい。
本当に、ファルムス王国戦に関しては、あまり良いエピソードとは言えないので。
感想、リクエストは、絶賛受け付けています。
ちなみに、ヒナタやリムルは変身させるかどうかは、検討中です。
その2人の悪魔は、変身させますが。
ちなみに、2人の悪魔は、まおりゅうのヒュウガとエミルスです。


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ヒューマンミュータントとの出会い

 精霊の棲家で子供達を救い、俺は一旦テンペストに帰った。

 色々と、やる事があるからだ。

 

レイト「ふぅ……………。さてと、作業を開始しようかな…………。」

 

 そう。

 カリュブディス戦にて、クローンライダーを多数失ってしまった。

 それの復元作業などをやらないといけないしな。

 すると、人が居るのが見えた。

 

レイト「ん?」

 

 その人は、赤い髪の人だった。

 何か呟いているようだが、何だ?

 俺は、その人に話しかける。

 

レイト「お前……誰だ?」

???「おん?」

 

 俺がそう話しかけると、その人は振り返る。

 見た目は、門田ヒロミに似ているが、髪の色が違う。

 誰だ?

 そう首を傾げていると、その人は聞いてくる。

 

???「ヘルギフテリアン……?なぜここに。」

レイト「ヘルギフテリアン?……確かに、見た目はそうだが……。俺の名前はレイト。レイト=テンペストだ。」

???「テンペストだと……!?」

 

 え、何で驚いてんの?

 何者だ?

 そう思う中、その人は何かを考える素振りを見せて、口を開く。

 

???「ヘルギフテリアン……名前はレイトだったか。事情はよくわからんが、あんたを敵だとみなさせてもらう!」

???『見た目で判断するしかないよなー……。』 

レイト「……え?」

 

 その人は、無限収納からオーインバスター50を取り出して、斬りかかる。

 俺は、すぐに躱す。

 というより、別の声が聞こえてきたが、何だ!?

 悪魔か!?

 

レイト「あぶねぇ!………いきなり何すんだ!」

???「うるせぇ!お前怖いんだよ!」

レイト「理不尽!………攻撃してきたって事は、敵だな!」

 

 平和的に済ませたかったが、やむを得ないか。

 俺はそう言うと、キメラドライバーとツインキメラバイスタンプを取り出す。

 

???「あれって……。」

???『まさか……キメラドライバー?』 

 

 キメラドライバーを知っているのか。

 だからといって、そっちが仕掛けてきたんだ。

 悪く思うな!

 そう思い、ツインキメラバイスタンプを起動する。

 

ツインキメラ!

 

 そして、キメラドライバーに装填する。

 待機音が流れ出す。

 

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

 

レイト「変身!」

 

 そう言って、バイスタンプを一回倒す。

 すると、蟹の鋏と鰐の顎が、同時に俺を閉めて、変身させる。

 

スクランブル!

キングクラブ!クロコダイル!仮面ライダーキマイラ!キマイラ!

 

 俺は、仮面ライダーキマイラへと変身する。

 

???「なんでヘルギフテリアンがキマイラに!?………誰を殺して奪った力だ!」

 

 誰も殺してねえよ。

 やばいな、誤解してるよ。

 すると、その人は、デモンズドライバーを取り出して、スパイダーバイスタンプを起動する。

 

スパイダー!

Deal……!

 

 その人は、デモンズレッドパッドに、スパイダーバイスタンプを押印する。

 すると、その人の横に蜘蛛が現れる。

 その人は、バイスタンプを構えて、叫ぶ。

 

???「変身っ!」

 

 そう言って、オーインジェクターに、バイスタンプを押印する。

 

Decide up!

Deep.(深く)Drop.(落ちる)Danger.(危機)

(仮面)Rider Demons!

 

 その横に現れた蜘蛛が、その人の周囲を糸を出しながら旋回して、その人に糸を巻いていく。

 その糸がデモンズのアンダースーツになり、蜘蛛が右肩に付いて、蜘蛛の巣を生成して、アーマーになる。

 その人は、デモンズに変身した。

 その人は、俺に向かい、殴りかかる。

 その拳を、俺は蹴りで受け止める。

 

???「……っち!」

レイト「くっ!」

 

 その人は、パンチを俺のキックで受け止められた事に舌打ちをする。

 

???「オラァ!」

レイト「!?」

 

 今の俺は、使命背負ってるから強いんだよ!

 そんな感じの気配を感じた。

 デモンズの拳で、俺は少し後ろに跳ぶ。

 意外と強いな。

 

レイト「………いいパンチだな。」

???「………そりゃどうも。」

 

 俺たちは、互いに間合いを取る。

 すると、デモンズは、モグラバイスタンプを取り出す。

 

モグラ!

 

レイト「モグラバイスタンプ……?」

???「まぁ見てろ。」

 

 そりゃあ、やるか。

 デモンズは、デモンズドライバーにモグラバイスタンプを読み込む。

 

add……!

Dominate up!

モグラ!ゲノミクス!

 

 デモンズの右腕に、モグラを模した武装、デモンディグゾンが装着される。

 

???「一気に決めるぞ…!」

 

 そいつはそう言って、デモンズドライバーのデモンズノックを2回押す。

 

More!

 

 待機音が流れ、そいつはもう一度、デモンズノックを押す。

 

モグラ!デモンズレクイエム!

 

 必殺技が来るか。

 なら……………!

 

レイト「ここで仕留める…!」

 

 俺はそう言って、バイスタンプを一回倒し、もう一回倒す。 

 

キングクラブエッジ!

 

 俺は蟹の鋏を模したエフェクトを纏わせたパンチを、相手はオーラを纏い回転するデモンディグゾンを食らわせる。

 

「「オラァ!」」

 

 二人の技がぶつかり合い、衝撃を放つ。

 

???「うおっ!」

レイト「……っ!」

 

 俺たちは、後ろに吹っ飛ぶ。

 少しはやるじゃねぇか。

 すると、そいつは、レックスバイスタンプを取り出して、起動する。

 

レックス!

 

レイト「レックスバイスタンプ……?」

???「見てろ。」

 

 俺が首を傾げる中、そいつはデモンズドライバーにレックスバイスタンプを読み込む。

 

add……!

Dominate up!

レックス!ゲノミクス!

 

 すると、デモンズの足が肥大化する。

 イメージとしては、五十嵐一輝がちょくちょくやってた足の肥大化と似ている。

 

???「これでキック力は対等……いや、あんた以上だ。」

レイト「レックスでゲノミクス…!?そんなの、本編には登場してないはず!」

???「俺は何でもありなんでな。………いくぞ。」

 

 本編にも登場していないゲノミクスをやるのかよ!

 すると、相手はデモンズドライバーのデモンズノックを2回押す。

 

More!

 

 待機音が流れ、そいつはもう一度、デモンズノックを押す。

 

レックス!デモンズレクイエム!

 

 その音声と共に、相手は空高く飛ぶ。

 

レイト「仕方ない…!」

 

 俺はそう言って、ツインキメラバイスタンプを一回倒した後、2回倒す。

 

クロコダイルエッジ!

 

 俺は、鰐の顎のエフェクトを纏った一回転回し蹴りを、俺はピンク色のオーラを纏わせた蹴りを食らわせる。

 

「「今度こそ!」」

 

 技がぶつかり合い、二度目の衝撃がくる。

 さっきよりもお互い、威力が高いためか、衝撃はでかい。

 そのせいで、俺と相手は、さっきよりも後ろにぶっ飛ぶ。

 

???「くっそ……。ちゃんと強い……。」

???『どうすんだよ!このままだとジリ貧だぞ!』

 

 そんな風に話すのが聞こえてくる。

 だが、俺も認識を改めないといけないな。

 どうやら、少し相手をみくびっていたようだ。

 だからこそ、本気でいく。

 俺はツインキメラバイスタンプを抜いて、トライキメラバイスタンプを取り出す。

 

トライキメラ!

 

 俺は、トライキメラバイスタンプをキメラドライバーに装填する。

 

オク!サイ!ムカ!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

オク!サイ!ムカ!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

 

 すると、俺の周辺にタコ、クロサイ、オオムカデが現れる。

 そして、俺は叫ぶ。

 

レイト「変身!」

 

 そう言って、俺はバイスタンプを倒す。

 すると、三体の生物が砕け散り、俺の体にまとわりつく。

 

スクランブル!

オクトパス!クロサイ!オオムカデ!仮面ライダーダイモン!ダイモン!ダイモン!

 

 砕け散った破片が、ギフの棺の様な形状に変化して、俺は、仮面ライダーダイモンへと変身する。

 

???「キマイラだけじゃなくダイモンもかよ…!……いいぜ、面白くなってきた!」

???『面白がってる場合!?』

 

 そいつはそう言って、見たことの無いバイスタンプを取り出す。

 

???「こいつで一気に決めるぞ!」

???『おうよ!』

 

 そいつはそう言って、バイスタンプを起動する。

 

タランチュラ!

 

 タランチュラのバイスタンプか。

 そいつは、タランチュラバイスタンプをデモンズレッドパットに押印する。

 

Deal……!

 

 すると、待機音が流れて、そいつと悪魔が言う。

 

『「変身!」』

 

 そして、バイスタンプをオーインジェクターに押印する。 

 すると、蜘蛛がそいつの前に出現し、糸を放ち、装甲になる。

 

Decide up!

Dynasty.(王たる)Dignity.(威厳)Destiny.(運命)

(仮面)Rider loyal demons!

 

 すると、見たことの無いデモンズに変身した。

 名前から察するに、ロイヤルデモンズといったところか。

 

???「さぁ、王の凱旋だ!」

レイト「ジャッジを……下す!!」

「「いくぜ!」」

 

 俺とそいつはそう言って、再びぶつかり合う。

 

レイト「ハアッ!ふっ!」

???「ふっ!オラっ!」

 

 俺とそいつのぶつかり合いは、必殺技のぶつかり合い並みの衝撃波をお互いや周囲に放出する。

 

???「腕が痺れる……!やべぇな……!」

レイト「……っく。力が段違いだ…!」

 

 通常のデモンズよりも強くなってる。

 これ以上の長期戦は不利か。

 ケリをつけるか!

 

レイト「一気にケリを付ける!お前に……ジャッジを下す!」

???「こっちこそだ!我が命を賭けて……貴様を倒す!」

 

 俺はトライキメラバイスタンプを一回倒して、3回倒す。

 そいつはタランチュラバイスタンプをオーインジェクターに押印し、デモンズノックを押す。

 

オオムカデエッジ!

charge!

デモンズフィニッシュ!

 

 俺は、オオムカデを模したエフェクトを纏った飛び蹴りを、相手は蜘蛛の脚を模したエフェクトを纏った飛び蹴りをかます。

 

「「ハアアァァァァ!!!」」

  

 俺と相手の必殺技はぶつかり合い、衝撃波を放つ。

 せめぎ合いの中、俺は相手の心の中に入り込む。

 そこには、バイスに似た外見の悪魔が居た。

 

???『うーむ……。ほんとにコイツは敵なのかねぇ……?』

レイト(ん?お前は?)

???『おん?…って!えぇー!本人!?……噂をすれば影がさすって事!?』

レイト(噂をすれば影がさす……?)

???『他人の噂をすると、その人が現れるって意味だな!……って!そんな話してる場合じゃねえ!なんでここに!!』

レイト(俺は他人の悪魔を見る事ができるんだよ。……取り敢えず、俺の話を聞いてくれないか?)

???『むむっ…!怪しい点は色々とあるが……まぁいい!そんじゃ、聞こうかね?』

レイト(なんで上から目線なんだよ……。)

 

 俺はその悪魔に呆れつつ、事情を説明する。

 やっぱり、バイスに似てるよな。

 この世界が、2人の世界とはパラレルワールドである事。

 俺がその世界でのテンペストの盟主の傍である事。

 その際、デモンズに変身しているのがプロスで、悪魔がネクスという名前だという事を聞いた。

 それを聞いたネクスは、土下座をする。

 

ネクス『すんませんでしたぁ!!!』

レイト(わかってくれたならいいんだよ……。俺の方も、もっと話し合いに持ってくべきだった。)

ネクス『………それは無理だと思う。』

レイト(え?何でだ?)

ネクス『………ウチの相棒、バーサーカーだから……。』

レイト(…………そっか。)

ネクス『ああ……。取り敢えず、プロスにこの事伝えとくな!』

レイト(ああ。任せたぞ。)

 

 何とか、誤解は解けそうだな。

 ていうか、バーサーカーなのかよ。

 まあ、対話をせずに襲いかかってきたから、バーサーカーだよな。

 必殺技が未だにぶつかり合う中、ネクスはプロスと話す。

 

ネクス『おいプロス!やべぇ!』

プロス「おん!?どうした!」

ネクス『色々と話さなきゃいけないことがあるんだよ!取り敢えず、この戦い終わらせろ!』

プロス「お、おう!」

 

 そう言って、俺たちはキックをやめる。

 ネクスは、プロスに色々と説明していた。

 

ネクス『………って事で!レイトは悪いやつじゃないんだよ!』

プロス「なるほどなるほど。」

 

 誤解は無事に解けたな。

 そんな中、プロスは変身解除して近づいてくる。

 何事かと思っていると。

 

プロス「すんませんでしたぁ!!!」

 

 そう言って、土下座を敢行する。

 俺は苦笑しつつ、言う。

 

レイト「分かってくれたならいいんだ。俺の方も、対話を図るべきだったな。」

 

 そう。

 もう少し対話を図るべきだった。

 そうすれば、戦闘は避けられたかもしれなかったしね。

 その後、俺はいろいろと話すことに。

 どうやら、プロスは俺と同じく、転生者であり、元高校生だそうだ。

 プロスは罪悪感からか、敬語を使っていたが、むず痒く感じた俺は、プロスに話しかける。

 

レイト「敬語はいいから。タメ口で話してくれ。」

プロス「い、いえ!せめて、さん付けはさせていただきます!」

レイト「あははは……………。」

 

 まあ、無理もないか。

 そんな中、リバイスについて話したのだが。

 

プロス「え!インペリアルデモンズ知らないんすか!?」

レイト「うん、知らない……。」

プロス「そんな………。って事はレイトさん、ライブ&エビルマーベラスも!?」

レイト「知らないな……。」

 

 どうやら、知識に差があるようだ。

 インペリアルデモンズも、ライブマーベラスも、エビルマーベラスも、聞いた事がない。

 というか、絶対にリバイスのVシネマの奴じゃん!

 俺、バトルファミリアでリバイスの知識は止まってるんだよ!

 

プロス「そんな………。………レイトさんって、いつこの世界に転生したんすか?」

レイト「えっと………。2022年7月22日だな。」

プロス「って事は……最終回をご覧になってない?」

レイト「そうなるね。………ネタバレするなよ?」

プロス「そんな人として終わってること、しませんよ。」

 

 あんまり不用意にプロスを覗くと、ネタバレを喰らいそうだから、やめておこう。

 どんな最終回を迎えたのだろうか。

 気になるよな。

 そう思う中、プロスが持っているツインキメラバイスタンプが光り出す。

 

プロス「お!?」

レイト「何だ…?」 

 

 どうやら、お別れの時みたいだな。

 

プロス「お別れみたいですね。」

レイト「そうみたいだな。」

プロス「今度はこっちの世界に来てくださいね?」

レイト「ああ。そうさせてもらうよ。」

 

 まあ、どうやってそっちの世界に行くのかは、分からないけどな。

 それでも、どういう感じなのかは、気になるよな。

 そう思う中、プロスはツインキメラバイスタンプを起動する。

 

ツインキメラ!

 

 そして、デモンズレッドパットに押印する。

 

プロス「それでは。」

レイト「ああ。」

「「また会いましょう。」」

 

 俺たちはそう言って、握手をする。

 すると、プロスが光り、消える。

 プロスにネクスか。

 

レイト「その名前、覚えておくよ。いずれ、また会えるかもしれないからな。」

 

 俺はそう呟いて、研究所へと向かう。




今回はここまでです。
今回の話は、ポンコツNOさんの、『転生したらデモンズだった件』とのコラボストーリーです。
ポンコツNOさんの、『転生したらデモンズだった件』とは、主人公がデッドマンに転生して、異世界を生き抜く話です。
これも面白いので、見て下さい。
バーサーカーですので。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
本編の次回の話で、ジュウガに変身します。
何でジュウガに変身するのかは、楽しみにしててください。
ちなみに、アブソーブ必殺技も、やります。
クレイマン戦では、オクトパス、カメレオン、プラナリアの三つのアブソーブ必殺技をやる予定です。
もちろん、思考加速も施して。
転キメ日記に本編、他のコラボストーリーも頑張ります。


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ヒューマンミュータントとの再会

 クレイマンの軍を潰す為に、皆を転送して、トレイニーさんが新たな体を得た中、俺は、戦いに備えている。

 朱菜に作ってもらった服装は、アヅマの服装の上に、ジョージ・狩崎のミリタリーロングコートを着用する感じだ。

 これはこれで気に入っている。

 そんな中、気になる気配を感じる。

 

レイト「何だ、この気配?」

奇才之王『告。テンペストの近くの森で、何者かが空間を割ろうとする気配を確認。警戒を強める事を推奨。』

 

 空間を割るか。

 相当な実力者の可能性が高いな。

 俺は、その空間の割れているエリアへと向かう。

 向かう前に、思念伝達で、火煉、蒼月、グルドの三人を呼んでおく。

 蒼月とグルドの2人は、まだ転送していなかったのだ。

 渡す物を渡しそびれていたから。

 しばらく走ると、本当に空間が割れていた。

 それを見て、すぐにジュウガドライバーを装着する。

 すると。

 

火煉「レイト様〜!」

蒼月「レイト様!」

グルド「レイト様!」

レイト「お前ら。来てくれたか。」

火煉「はい!レイト様のお呼びとあらば、すぐに駆けつけます!」

蒼月「それにしても、何ですかね、この異様な気配は。」

グルド「はい。それも、強い気配が。」

レイト「気をつけろよ。」

 

 火煉達がやって来て、俺たちは警戒を強める。

 すると、怪人というべき存在が現れる。

 異形の存在と言うべきものが、こちらを見る。

 

???「あ?てめぇらがこの世界の住人か。」

レイト「そうだが、お前は何者だ。」

ゴモラ「俺様は、ベリアル様の幹部、ゴモラ様だ!」

レイト「ゴモラに、ベリアル?」

ゴモラ「偉大なるベリアル様の為に、この世界を侵略する!」

火煉「レイト様、如何しますか?」

レイト「そりゃあ、倒すしか無いだろ。」

 

 俺はそう言って、ジュウガバイスタンプを取り出す。

 ちょうどいい。

 新たに作った武器のテストといくか。

 そう思い、ジュウガバイスタンプを起動する。

 

ジュウガ!

 

 起動したあと、ジュウガバイスタンプをジュウガドライバーに装填する。

 

レックス!メガロドン!イーグル!マンモス!プテラ!ライオン!ジャッカル!コング!カマキリ!ブラキオ!

 

 待機音が流れて、俺の周囲に最強生物が現れる。

 俺は叫んだ。

 

レイト「変身!」

 

 そう言って、ジュウガバイスタンプを一回倒す。

 

スクランブル!

十種の遺伝子、強き志!

爆ぜろ、吼えろ、超越せよ!

仮面ライダージュウガ!

Go Over…!

 

 俺の背後にいた十体の生物が光となり、黒いスーツを纏った俺に吸い込まれる。

 そして、黄金の波動を周囲に発する。

 仮面ライダージュウガへと変身した。

 すると、俺の右手に剣が現れる。

 

ジュウガソード!

 

 この剣は、リバイスの記憶で見た浮世英寿/仮面ライダーギーツが使っていたレイジングソードを元に開発したものだ。

 肉弾戦だけでは心許ないので、念の為に剣を作っておいた。

 ジュウガソードは、形状はレイジングソードと同じだが、レイズバックルというアイテムを装填する場所は、オーインジェクターに変更した。

 ジュウガソードを使えば、レジェンドライダーの剣の必殺技を放つ事が出来る。

 ちなみに、ジュウガドライバーはアップデート済みだ。

 本来のジュウガドライバーは、沢神りんなさんの手によって、圧縮SO-1合金を粒子化させて、ドライバーに定着させていた。

 俺のジュウガドライバーの場合は、魔鋼を粒子化させて、ドライバーに定着させた。

 つまり、以前、ドワルゴンで見た剣みたいに、ジュウガドライバーは、俺に合わせて成長していく特性を得た。

 俺はジュウガソードを持って、ゴモラとやらに向かっていく。

 ゴモラは、パンチで攻撃してくる。

 俺は、そんなゴモラの攻撃を躱しつつ、ジュウガソードやキックなどで攻撃していく。

 確かに強いが、そこまで苦戦するほどでは無いな。

 

レイト「はっ!ふっ!でやっ!」

ゴモラ「おのれ!ならば、これならどうだ!」

 

 俺が攻撃する中、ゴモラは反撃といわんがばかりに、腕に炎を纏って攻撃する。

 俺は、ジュウガバイスタンプを一回倒す。

 

インパルスゲノムエッジ!

 

 ゴモラの攻撃を、ブラキオの頭部のエフェクトで鞭のように攻撃を防ぎ、ゴモラに攻撃する。

 それを食らったゴモラは、吹っ飛ぶ。

 無論、俺もゴモラの攻撃を受けて、少し下がる。

 だが、すぐにプテラバイスタンプを取り出す。

 

プテラ!

 

 プテラバイスタンプを、俺はジュウガソードのオーインジェクターに押印する。

 

スタンプバイ!

 

 すると、待機音が鳴ると同時に、刀身が赤く光る。

 待機音が流れる中、俺はジュウガソードのトリガーを引く。

 

アルティメットジュウガストラッシュ!

 

 その音声と共に、赤い斬撃波を放つ。

 これは、仮面ライダーファイズのスパークルカットだ。

 ゴモラは、スパークルカットを喰らい、吹っ飛ぶ。

 

ゴモラ「何っ……………!?」

レイト「これで終わりだ。」

 

 ゴモラが怯む中、俺はジュウガバイスタンプを4回倒す。

 

ゴモラ「貴様ァァァァァァ!!」

 

 それを見たゴモラは、俺の方に向かってくるが、俺は右足に黄金のエネルギーをまとわせる。

 

アメイジングフィニッシュ!

 

レイト「ハァァァァ…………!ハァァァァ!!」

 

 そして、向かってくるゴモラに対して、カウンター気味に回し蹴りを叩き込む。

 ゴモラは、それを直に喰らう。

 

ゴモラ「ベリアル様!万歳ィィィィッ!!」

 

 ゴモラはキックを喰らうと、そう叫びながら爆発する。

 俺は、しばらくそのままにしていたが、すぐに足を下ろして、変身解除する。

 

レイト「ふぅ……………。」

火煉「レイト様!大丈夫ですか!?」

レイト「大丈夫だ。」

蒼月「中々に強いみたいですが、レイト様の敵ではありませんでしたね。」

グルド「しかし………………まだ敵が居るはずですが、どうしましょうか?」

レイト「そうだな………………。」

 

 俺が一息つくと、火煉達が駆け寄ってくる。

 グルドがそう聞いてきたので、俺は考える。

 これから、俺たちはワルプルギスが待っている。

 そんな中、俺たちが不在のテンペストにちょっかいを出されたら、たまったもんじゃ無い。

 

レイト「ちょっかいを出されるのは面倒だな。よし、叩くぞ。」

火煉「はい!」

蒼月「分かりました。」

グルド「うむ。」

レイト「そうだ。三人には、これを渡しておくよ。」

 

 俺はそう言って、アタッシュケースを渡す。

 

火煉「これは?」

レイト「開けてみろ。」

蒼月「はい。」

 

 俺がそう言うと、三人はアタッシュケースを開ける。

 その中には、火煉の奴にはデストリームドライバーとヘラクレスバイスタンプにクリムゾンベイルバイスタンプ、蒼月の奴にはジャイアントスパイダーバイスタンプ、グルドの奴には、ギラファバイスタンプが入っていた。

 ヴェルドラのオーラを抑える特訓の最中に作っておいた。

 

火煉「これは……………!」

ベイル『ほう……………分かっているじゃないか。』

蒼月「バイスタンプ?」

グルド「よろしいのですか?」

レイト「ああ。使ってもらおうと思ってな。」

火煉「ありがとうございます!」

蒼月「それでは、使わせてもらいますね。」

グルド「ありがとうございます。」

レイト「よし、それじゃあ、行くか。」

 

 俺たちはそう話して、空間の裂け目へと突っ込んでいく。

 ちなみに、使い方もちゃんと教えておいた。

 空間の裂け目を通る中、違う世界へと向かうような感覚がする。

 目的地が近くなったので、飛び込むと、空間が裂けて、違う世界に着く。

 俺たちが降り立つと、そこには、三人の人がいた。

 そのうちの1人は、見覚えがあった。

 残りの2人は、女性の方が鬼人で、男性の方が龍人族(ドラゴニュート)だった。

 

レイト「あれ……………もしかして、プロスか!?」

プロス「その声は…………レイトさんですか!?」

ネクス『久しぶりじゃん!』

 

 どうやら、プロスの様だな。

 確かに、久しぶりに会ったよな。

 すると、火煉が話しかける。

 

火煉「レイト様?その人間は一体?」

レイト「ああ。彼はプロス。訳あって、俺たちの世界に迷い込んだ人だ。」

プロス「俺はプロス=テンペストだ。」

ネクス『俺はネクスだぜ!』

グルド「テンペストだと!?」

蒼月「何故、レイト様とリムル様と同じ名前なんだ………………!?」

 

 プロスが自己紹介をすると、三人は驚く。

 まあ、無理もないか。

 

レイト「ああ……………彼は、所謂、並行世界の世界の住人なんだよ。」

火煉「そうなんですか………………。」

レイト「ところで、そっちの鬼人と龍人族は知らないんだけど、誰なんだ?」

プロス「ああ、そういえば、会ってませんでしたからね。紹介します。」

紺夏「私は紺夏(カンナ)と言います。」

蒼佑「僕は、蒼佑(ソウスケ)と言います。」

プロス「それで……………そちらの方達は?」

レイト「そうだな。紹介するよ。」

火煉「私は火煉と言います。」

蒼月「僕は蒼月です。」

グルド「俺はグルドです。」

 

 そんな感じに挨拶をする。

 すると、プロスが話しかけてくる。

 

プロス「それにしても……………レイトさん、なんか雰囲気が変わりました?」

レイト「ああ……………俺、魔王になったんだよ。」

プロス「魔王!?何で!?」

ネクス『レイトの奴、魔王になったのかよ!?」

レイト「色々あったんだよ……………。」

 

 俺がそう言うと、プロスは驚く。

 まあ、無理もない。

 ファルムスの侵略とかがあったからな。

 それは、言わなくても良いか。

 すると、違う気配を感じる。

 

レイト「っ!?これまた違う気配を感じるな……………。」

プロス「本当ですね……………。」

ネクス『なんだ……………!?』

 

 俺たちが身構える中、再び空間が裂けて、何かが現れる。

 そいつは、俺たちの事を睥睨する。

 

???「ゴモラにソドムの気配が消えたと思ったら、既に倒されていたか。」

火煉「貴様か!ゴモラの主というのは!」

紺夏「みたいですね。」

レイト「お前……………ベリアルって奴か?」

ベリアル「いかにも。私がベリアルだ。」

プロス「何が狙いなんだ?」

ネクス『そうだ、そうだー!』

ベリアル「知れた事を。私は、全ての世界を掌握する。その為にも、邪魔な貴様達を倒しておこうと思ったのだ。」

 

 いや、知らねぇよ。

 とはいえ、目的はそんな感じか。

 これから、魔王達の宴(ワルプルギス)があるんだ。

 放っておくと、面倒そうだな。

 

プロス「そんな事はさせない!」

ネクス『覚悟しろよ!ギッタギッタにしてやるぜ!』

レイト「こっちも忙しいんだよ!邪魔すんな!」

ベリアル「ならば、ここで貴様らを倒してやろう。いでよ!デビルライダー!」

 

 俺たちがそう言うと、ベリアルはそう叫ぶ。

 すると、何かが現れる。

 そこに居たのは、ショッカーライダー、武神鎧武、G4、オーガ、デューク、バールクスが現れる。

 

レイト「ダークライダー!?」

プロス「マジか……………。」

ネクス『そんなのあるなんて、聞いてないよ!』

火煉「レイト様!あのデビルライダーとやらは、私たちが抑えます!」

紺夏「プロス!こいつらは、私たちに任せて!」

蒼月「レイト様は、あのベリアルとやらを!」

グルド「我らにお任せください!」

蒼佑「はい!」

プロス「……………分かった。任せたぞ!」

紺夏「ええ!」

レイト「火煉達も頼んだぞ!」

火煉「はい!」

 

 そうして、俺とプロスがベリアルを、残りの面子がデビルライダー達を倒す事になった。

 俺たちは、変身する為にドライバーを取り出して、装着する。

 プロス達も、ドライバーを装着していた。

 火煉は、ベイルを呼び出していた。

 

火煉「ベイル、出番よ!」

ベイル「良いだろう。」

 

 火煉は、ベイルにクリムゾンベイルバイスタンプを渡して、それぞれのバイスタンプを起動する。

 

ジュウガ!

タランチュラ!

ヘラクレス!

ブラックアウト!

カブト!

ジャイアントスパイダー!

ギラファ!

クワガタ!

 

 それぞれのバイスタンプを起動させて、ドライバーに装填したり、押印したりする。

 

Deal……!

Contract!

 

 すると、待機音が流れ出す。

 

レックス!メガロドン!イーグル!マンモス!プテラ!ライオン!ジャッカル!コング!カマキリ!ブラキオ!

 

 その待機音と共に、10体の最強生物が現れる。

 そして、俺たちは叫ぶ。

 

「「「「「「「変身!」」」」」」

 

 そう言って、それぞれの操作をする。

 

スクランブル!

Decide up!

Spirit up!

クリムゾンアップ!

Bane Up!

Delete up!

 

 その音声と共に、俺たちは変身をする。

 

十種の遺伝子、強き志!

爆ぜろ、吼えろ、超越せよ!

仮面ライダージュウガ!

Go Over…!

Dynasty.(王たる)Dignity.(威厳)Destiny.(運命)

(仮面)Rider loyal demons!

Slash!Sting!Spiral!Strong!

仮面ライダーデストリーム!

クリムゾンベイル!

破壊!(Break)世界!(Broke)奇々怪々!(Broken)

仮面ライダーベイル!

Deep.(深く)Drop.(落ちる)Danger.(危機)

(仮面)Rider Demons!

Unknown.(未知なる)Unlest.(混乱が)Unlimited…(越える)

仮面ライダー(ゲット)オーバーデモンズ!

 

 俺はジュウガに、プロスはロイヤルデモンズに、火煉はデストリームに、ベイルはクリムゾンベイルに、紺夏は仮面ライダーベイルに、蒼月はインペリアルデモンズに、グルドはゲットオーバーデモンズに、蒼佑はオーバーデモンズに変身する。

 

プロス「えっ!?レイトさん、ジュウガになってるし、インペリアルデモンズまでいるし!?」

ネクス『どうなってんの!?』

レイト「話は後だ!まずはあいつをぶっ倒す!」

プロス「そ、そうですね!?」

 

 プロスはそう叫ぶが、俺はそう言う。

 すると、デビルライダー達が俺たちの方に向かってくる。

 デビルライダー達の方に、火煉たちが向かう。

 それを見て、俺とプロスは、ベリアルの方へと向かう。

 

ベリアル「たった2人でこの俺と戦うとはな。」

レイト「余裕そうだな。その余裕、へし折ってやるよ。」

プロス「ああ!絶対に倒す!」

ネクス『やってやるぜ!』

 

 ベリアルの言葉に、俺たちはそう言って、ベリアルに向かっていく。

 俺はジュウガソードで、プロスは徒手空拳でベリアルと戦っていく。

 連携攻撃をして、ベリアルと互角に渡り合う。

 

レイト「ハアッ!でやっ!」

プロス「おりゃっ!」

 

 俺がジュウガソードでの斬撃を加える中、プロスは徒手空拳で攻撃する。

 それには、ベリアルも押される。

 

ベリアル「ぬっ……………!」

レイト「少しはやるが、俺には及ばないな。」

プロス「みたいですね。」

ネクス『こいつ、大して強くないね!』

 

 俺とプロス、ネクスはそう言って、戦いを続行する。

 一方、火煉は、ショッカーライダーと戦っていた。

 

火煉「ハアッ!ふっ!でやっ!」

 

 火煉は、徒手空拳で戦っていた。

 火煉は進化した際に、ユニークスキル”粉砕者(クダクモノ)”を獲得しており、格闘戦の戦闘能力が進化前と比べると、格段に上昇している。

 そんな中、火煉はクロコダイルバイスタンプを取り出す。

 

クロコダイル!

 

 クロコダイルバイスタンプを起動して、デストリームドライバーの両側のストリームノックを押す。

 

Next!

 

 そして、デストリームドライバーの上部に押印して、その後に、オーインジェクターに押す。

 

Dominate up!

クロコダイル!ネオバースト!

 

 火煉は、右腕にデモンディグゾンに酷似した武装、クロコウィザーローリングを装備する。

 

火煉「ハアッ!フッ!」

 

 クロコウィザーローリングで、ショッカーライダーに攻撃していく。

 火煉の猛攻に、ショッカーライダーは押される。

 一方、ベイルは、武神鎧武と戦っていた。

 

ベイル「はっ!フッ!」

 

 ベイルは、クリムゾンベイルバイスタンプで、武神鎧武に打撃攻撃をしていく。

 武神鎧武は、ブラッド大橙丸と無双セイバーで攻撃するが、ベイルには効かない。

 

ベイル「どうした?そんなものか?」

 

 ベイルはそう言って、クリムゾンベイルバイスタンプのローラーを回転させる。

 

ベイルアップ!

 

 すると、待機音が流れてきて、ベイルはトリガーを引く。

 

クリムゾンインパクト!

 

 その音声と共に、クリムゾンベイルバイスタンプのローラー部分に超高密度エネルギーをまとわせて、武神鎧武に攻撃する。

 一方、紺夏は、G4と戦っていた。

 

紺夏「はっ!でやっ!」

 

 紺夏は、赤黒い衝撃波を纏ったパンチやキックを叩き込む。

 G4は、ギガントを取り出して、攻撃する。

 

紺夏「わっ!?」

 

 ギガントから放たれたミサイルは、紺夏の足元に着弾して、爆発した。

 だが、紺夏は余裕そうだった。

 

紺夏「少しはやるみたいね!でも、私の敵じゃない!」

 

 紺夏はそう言って、攻撃を激しくしていく。

 G4は、押され気味となる。

 一方、蒼月はオーガと戦っていた。

 

蒼月「ハアッ!フッ!どりゃっ!」

 

 蒼月は、徒手空拳でオーガと戦う。

 オーガは、オーガストランザーの長剣モードで戦う。

 

蒼月「凄い……………!これが、僕の新しい力……………!」

 

 蒼月はそう言って、真正面から戦っていく。

 オーガの攻撃を、背中のマントを使って受け流したりする。

 そして、ゲノミクスを行う為に、クロコダイルとコモドドラゴンのバイスタンプを取り出す。

 ちなみに、火煉、蒼月、グルドの三人は、同じバイスタンプを持っているのもあるが、それは複製した物だ。

 

add……!

クロコダイル!

Dominate up!

クロコダイル!ゲノミクス!

add……!

コモドドラゴン!

Dominate up!

コモドドラゴン!ゲノミクス!

 

 蒼月は、二つのゲノミクスを同時に発動する。

 そして、デモンズノックを3回連続で押す。

 

More!

クロコダイル!コモドドラゴン!デモンズレクイエム!

 

 蒼月は必殺技を発動して、クロコウィザーローリングとコモドドラゴニックヒートを両手に装備し、火炎や斬撃を繰り出す。

 その攻撃を受けて、オーガは怯む。

 一方、蒼佑は、デュークと戦っていた。

 

蒼佑「ハアッ!ほっ!よっと!」

 

 デュークは、ソニックアローから矢を放ち、蒼佑を牽制するが、蒼佑は矢を躱して、攻撃していく。

 蒼佑は、デモンズノックを押して、モグラバイスタンプを起動する。

 

add……!

モグラ!

Dominate up!

モグラ!ゲノミクス!

 

蒼佑「はぁ……………はっ!」

 

 蒼佑は、右腕にデモンディグゾンを装備して、地面に潜る。

 デュークが探す中、蒼佑は地面から出てきて、デュークに攻撃する。

 一方、グルドは、バールクスと戦っていた。

 

グルド「ハアッ!ふっ!」

 

 バールクスがリボルケインを出して戦う中、グルドは肉弾戦で戦う。

 グルドのパワフルな攻撃に、バールクスは押されていた。

 

グルド「中々やるようだが、俺には通じない!」

 

 グルドはそう叫んで、攻撃していく。

 一方、俺たちと戦っているベリアルは。

 

ベリアル「なるほど……………情報通りに強いな……………。」

レイト「情報?」

プロス「それはどこから教えてもらったんだ?」

ベリアル「教えると思ったか?確かに、貴様達は強い。それは認めよう。だが、奥の手は最後まで隠しておく物だ!」

 

 誰が教えたんだか。

 すると、ベリアルは、ある物を取り出す。

 それは、ディアブロスタンプだった。

 

レイト「ディアブロスタンプ!?」

プロス「なんであいつが持ってんだよ!?」

ネクス『マジかよ!?聞いてないぜ!』

 

 俺たちは驚いた。

 ベリアルがディアブロスタンプを持っている事に。

 ベリアルは、ディアブロスタンプを押印する。

 

ベリアル「ハァァァァ……………!」

 

 すると、ベリアルのオーラが上昇する。

 ディアブロスタンプの力で強化されたか。

 

ベリアル「ふふふふふ……………!私の本気はこれからなのだよ。」

レイト「プロス、気をつけろよ。」

プロス「はい!」

 

 俺とプロスが警戒する中、ベリアルは攻撃を仕掛けていく。

 

ベリアル「ハハハハッ!!」

プロス「このっ!」

レイト「ふっ!」

 

 ベリアルの攻撃は、激しさを増して、俺たちはベリアルの攻撃に対応する。

 だが、プロスは若干対応しきれずにいて、押されていた。

 

プロス「くっ…………!」

ネクス『こいつ、強いぜ…………!』

ベリアル「ハァァァァァ!」

プロス「うわぁぁぁぁぁ!?」

レイト「プロス!?」

 

 そんな中、プロスにベリアルの強い攻撃が当たり、吹っ飛ばされる。

 プロスは壁に激突して、倒れる。

 

ベリアル「まずは1人、倒してやったぞ。次は貴様の番だ。」

レイト「くっ……………!」

 

 ベリアルはそう言って、俺に攻撃を集中させる。

 俺は難なくベリアルと応戦していく。

 

ベリアル「こいつ、強い…………!」

レイト「魔王になったんでね!」

 

 俺とベリアルは、そんな風に話しながら戦っていく。

 すると、光が照らされる。

 

レイト「っ!?」

ベリアル「何だ……………!?」

 

 俺とベリアルが光が出た方を向くと、プロスが居た。

 プロスとネクスが何かを話していたようだが、すぐにバイスタンプを起動する。

 

ネクススパイダー!

 

 その音声と共に、バイスタンプにネクスが吸い込まれる。

 そして、ネクススパイダーバイスタンプをデモンズレッドパットに押印した。

 

Deal……!

Come On!ネクススパイダー!

Come On!ネクススパイダー!

 

 すると、リバイスドライバーでの待機音みたいなのが流れてくる。

 更に、プロスの後ろに、二匹の赤い蜘蛛が現れる。


 プロスは天高くバイスタンプを掲げ、言う。

 

「『変身!』」

 

 その声は、ネクスの声とも重なっている気がした。

 プロスは、バイスタンプをオーインジェクターに押印する。

 

Nex up』


Nexus.(絆)Eternal.(永遠に)Xtreme.(究極に!)

仮面(Rider)NEX!

 

 その音声と共に、二匹の蜘蛛が糸を放ち、アンダースーツになる。
 

 二匹のうち一匹が頭のアーマー、もう一匹が体のアーマーとなって、青い目のキルバスのようになる。

 プロスだけの新たなデモンズってところか。

 俺はそう思い、ベリアルを蹴って、プロスの方へと向かう。

 

レイト「プロス。その姿は……………?」

プロス「レイトさん、行きましょう!」

レイト「っ!………………ああ!」

 

 俺はそう聞くが、プロスの言葉に、俺は頷く。

 気になることが山ほどあるが、まずはベリアルを倒してからだな。

 俺とプロスは、ベリアルに向かっていく。

 俺とプロスの連携攻撃に、ベリアルは押される。

 

ベリアル「なっ……………!?この私が、押されている……………だと!?」

レイト「プロス!行くぞ!」

プロス「はい!」

 

 俺とプロスは、レックスバイスタンプを取り出す。

 プロスは、デモンズノックを押し、俺は、ジュウガドライバーにスキャンする。

 

add……!

レックス!

アブゾーブ!リバイス!

 

 そして、俺はジュウガバイスタンプを一回倒して、プロスはバイスタンプをオーインジェクターに押印する。

 

Dominate up!

レックス!ゲノミクス!

 

 すると、プロスの足が肥大化する。

 プロスが駆け出すと同時に、俺はジャンプする。

 プロスは、肥大化した足で攻撃して、上空に飛ばす。

 その先には、俺が居た。

 

プロス「レイトさん!」

レイト「ああ!ハァァァァァ!!」

 

レックススタンピングアタック!

 

 俺は、レックスのスタンピングフィニッシュを発動して、ベリアルに攻撃する。

 ベリアルは吹っ飛ぶ。

 その隙に、メガロドンバイスタンプを取り出す。

 

add……!

メガロドン!

アブゾーブ!ディケイド!

 

 そして、俺はジュウガバイスタンプを一回倒して、プロスはバイスタンプをオーインジェクターに押印する。

 

Dominate up!

メガロドン!ゲノミクス!

 

 プロスは、尻からメガロドンの尾を生やして、地面を泳ぐ。

 俺がジャンプすると、メガロドンバイスタンプの押印面が、ディケイドのディメンションキックみたいに一直線に現れる。

 

プロス「ハァァァァ……………!ハァァァ!!」

ネクス『ぶっ飛べぇぇぇぇぇ!!』

ベリアル「のわっ!?」

レイト「ハァァァァァ!!」

 

メガロドンディメンションアタック!

 

 プロスが吹っ飛ばしたベリアルを、俺はディメンションキックの要領で攻撃して、地面に叩きつける。

 ベリアルが動けなくなる中、今度はコングバイスタンプを取り出す。

 

add……!

コング!

アブゾーブ!フォーゼ!

 

 そして、俺はジュウガバイスタンプを一回倒して、プロスはバイスタンプをオーインジェクターに押印する。

 

Dominate up!

コング!ゲノミクス!

コングロケットアタック!

 

 プロスは、コングアストロブレイカーを装備して、俺は、コングリバイパンチャーに似たアーマーを装備する。

 

プロス「ハァァァァ!オラオラオラオラ!」

レイト「ハアッ!フッ!でやっ!」

ベリアル「がっ!?ぐっ!?ぐはっ!?」

 

 プロスが連続でパンチを叩き込み、俺は、フォーゼ・メテオなでしこフュージョンステイツのライダーロケットミサイルの要領で、攻撃を叩き込む。

 それを受けて、ベリアルは膝をつく。

 一方、火煉達の方も、決着がつきそうだった。

 

火煉「これで決める!」

 

 火煉は、ヘラクレスバイスタンプを取り出して、オーインジェクターに押印する。

 

ヘラクレス!

Charge!

 

 待機音が流れる中、火煉は、ストリームノックを押す。

 

デストリームフィニッシュ!

 

火煉「ハァァァ……………!ハァァァァァ!」

 

 火煉は、足にヘラクレスのエネルギーを纏わせたキックを放ち、ショッカーライダーを撃破する。

 一方、ベイルは。

 

ベイル「これで終わりだ。」

 

 ベイルはそう言って、クリムゾンベイルバイスタンプのローラーを回転させる。

 

ベイルアップ!

 

 すると、待機音が流れてきて、ベイルはクリムゾンベイルバイスタンプを押印する。

 

クリムゾンフィニッシュ!

 

ベイル「はぁっ!」

 

 ベイルは、ローラー部分に超高密度エネルギーをまとわせ、武神鎧武に殴りつけ、振り返って回し蹴りを叩き込む。

 それを喰らい、武神鎧武は爆散する。

 一方、紺夏は。

 

紺夏「これで終わりよ!」

 

 そう言って、カブトバイスタンプを取り出して、アーキオーインジェクターに押印する。

 

カブト!

charge!

 

 待機音が流れる中、紺夏はベイルドライバーの両側を押す。

 

ベイリングインパクト!

 

紺夏「ハァァァァ!!」

 

 紺夏は、足にカブトムシの角のエネルギーを纏わせたライダーキックを放ち、G4を倒す。

 一方、蒼月とオーガは、互いに必殺技を放とうとしていた。

 

More!

Exceed charge

 

 蒼月の背後に、タランチュラの幻影が出現して、オーガは、オーガストランザーにフォトンブラッドの刃を生成する。

 オーガは、フォトンブラッドの刃で、蒼月に攻撃しようとする。

 蒼月は、デモンズノックを押す。

 

デモンズレクイエム!

 

蒼月「ハァァァァ……………!ハァァァ!!」

 

 蒼月のライダーキックと、オーガのフォトンブラッドの刃がぶつかり合う。

 しばらく拮抗していたが、蒼月のキックが、フォトンブラッドの刃を破壊して、オーガを撃破する。

 一方、蒼佑は。

 

蒼佑「これで終わりだ!」

 

 そう言って、クワガタバイスタンプを取り出して、オーインジェクターに押印する。

 

クワガタ!

Charge!

 

 待機音が流れる中、蒼佑は、デモンズノックを押す。

 

デモンズフィニッシュ!

 

蒼佑「ハァァァァ!!」

 

 蒼佑の足に、クワガタの顎のエネルギーが纏い、キックを放つ。

 それを食らったデュークは、爆散する。

 一方、グルドは。

 

グルド「終わりだ!」

 

 そう言って、ギラファバイスタンプを取り出して、オーインジェクターに押印する。

 

ギラファ!

Charge!

 

 待機音が流れる中、グルドは、デモンズノックを押す。

 

デモンズフィニッシュ!

 

グルド「ハァァァァ!!」

 

 グルドは、外套をギラファの顎に変換して、バールクスに挟み込むと同時にライダーパンチを叩き込む。

 それを食らったバールクスは、爆散する。

 一方、俺たちの方も、終わろうとしていた。

 

ベリアル「バカな……………!?この私が……………!?」

レイト「お前の敗因は、俺たちを侮った事だ。」

プロス「これで終わらせる!」

ネクス『覚悟を決めろよ!』

 

 そう言って、必殺技を放つ態勢を取る。

 俺は、ジュウガバイスタンプを4回倒し、プロスはバイスタンプを取り出して、オーインジェクターに押印する。

 

ネクススパイダー!

Charge!

 

 待機音が流れる中、プロスは、デモンズノックを押す。

 俺も、ジャンプする。

 

アメイジングフィニッシュ!

デモンズフィニッシュ!

 

「「『ハァァァァァァ!!』」」

 

 俺とプロスは、ライダーキックを放ち、ベリアルにキックが当たる。

 

ベリアル「ぐわぁぁぁぁ!!この俺が、敗れるだと!?」

レイト「ハァァァァァ!」

プロス「オラァァァァァ!!」

ベリアル「認めん!認めんぞ!こんな結末は、断じて……………!ぬわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 しばらく拮抗していたが、俺とプロスのキックが、ベリアルを貫く。

 その断末魔と共に、ベリアルは爆散する。

 俺とプロスは、着地した体勢で居たが、しばらくして、変身解除する。

 

プロス「やりましたね、レイトさん。」

レイト「ああ。」

 

 俺とプロスは、腕をぶつけ合う。

 こうして、戦いは終わった。

 俺たちは、元の世界に戻ろうとしたが、奇才之王曰く、エネルギーを貯める必要があると言われて、しばらく話をする事に。

 蒼佑は、火煉に迫っていた。

 

蒼佑「ほうほう……貴方、レイトさんに恋してますね?」


火煉「え!?急に何を……!」


蒼佑「いえいえ、恥ずかしがらなくてもいいんですよ。うちにも同じ境遇の娘がおりますので……。」

火煉「えぇぇぇ……………!?」

 

 そんな風にしていた。

 それを見ていた紺夏、蒼月、グルドは。

 

紺夏「ごめんね、うちの仲間が。」

蒼月「大丈夫ですよ。事実ですし。」

グルド「うむ。」

 

 そんな風に話していた。

 それを見ていた俺とプロスは。

 

レイト「随分と楽しそうだな。」

プロス「乙女の恋心に気付けないたぁ……。罪な男だねぇ〜、レイトさんは。」


ネクス『……お前が言えた立場か?』

レイト「うん?何の話だ?」

 

 そんな風に俺がつぶやく中、プロスはニヤけ顔でそう言ってくる。

 俺が首を傾げると、ネクスはプロスに話しかける。

 

プロス「あ……。」


ネクス『こりゃ、気の毒だな……。伝えとく?』


プロス「………いや、他人の恋路に干渉するのはあまり良くない。観賞するのが一番いいんだよ。」


ネクス『そんなもんかねぇ〜……。』

 

 そんな風に話していた。

 本当に何の話だ?

 すると、奇才之王が話しかける。

 

奇才之王『………………告。元の世界に戻れる準備が整いました。』

レイト『ありがとう。ところで、なんか不機嫌そうに見えるのは、気のせいか?』

奇才之王『……………気のせいです。』

 

 本当か?

 まあ、良いけど。

 そうして、俺たちは別れる事に。

 

プロス「レイトさん、ありがとうございました!」

レイト「こっちこそ。厄介事を潰せたしね。」

紺夏「寂しくなりますね。」

蒼佑「みなさん、お元気で。」

火煉「ええ。」

蒼月「はい。」

グルド「うむ。」

レイト「じゃあな!」

 

 そんな風に話して、俺たちは元の世界に戻る。

 俺は、蒼月とグルドを、クレイマン軍を叩き潰す為に先行した紅丸達の方へと転送する。

 

レイト「じゃあ、戻ろう。」

火煉「はい。」

 

 俺と火煉はそう話して、戻る。

 いよいよ、クレイマンとの戦いだ。




今回はここまでです。
今回は、ポンコツNOさんの『転生したらデモンズだった件』の第二弾のコラボです。
時系列としては、ワルプルギスに向かう直前です。
新たな武器、ジュウガソードを出しました。
ジュウガドライバーも、魔鋼を粒子化させて、ドライバーに定着させました。
これにより、ジュウガドライバーは、レイトに合わせて成長します。
次回は、本編に入ります。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
ジュウガとネクススパイダーの戦闘の所は、『いとしのFrenemy』を聴くのをおすすめします。
ジュウガのオリジナルフォームに関しても、受け付けます。
今後の流れは、アニメ版を軸にして、漫画版の要素も入れていきます。


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第1話 欲望の魔王との邂逅

 俺たちは、暴風大妖渦(カリュブディス)を倒した。

 まあ、厳密には、倒したのはミリムなのだが。

 シズさんも復活して、俺たちは訪れた安寧を過ごしていた。

 

レイト「ふぅ……………。一応、これでひと段落かな。」

 

 シズさんも無事に復活したし、カリュブディスは倒したし。

 俺は研究室でのんびりとしていた。

 すると、とんでもない気配の奴が、現れたのを感じる。

 

レイト(何だ!?とんでもない気配を感じる……………!?)

 

 これはやばいな。

 ミリムに匹敵する気配だ。

 俺はすぐにかけだしていく。

 この際、ヘルギフテリアンとしての姿になる。

 一応、警戒してだ。

 そんな中、ある男性が目に入る。

 

レイト(人間?だが、気配はミリムに匹敵するな。)

 

 何でそんな奴がこんな所に居るんだ?

 すると、男性は呟く。

 

???「……………『ヘルギフテリアン』だと!?」

レイト「っ!?」

 

 その男性の呟きに、俺は驚いた。

 ヘルギフテリアンという単語を知っているのは、この世界ではあまり居ない。

 こいつ、何者だ?

 

レイト「おい、お前は何者だ?」

???「そういうお前こそ何者だ?というより、ここはどこだ?」

レイト「どこって……………ここはテンペストだ。どこから迷い込んだんだ?」

???「どこって……………。デザイア王国だが………………。」

 

 どうやら、この世界の住人じゃなさそうだな。

 テンペストは、色んな所が気になっている場所なのだから、テンペストの事を知らないなんておかしい。

 異世界人か?

 それに、デザイア王国というのも、聞いたことがない。

 やはり、異世界人なのだろうか?

 

レイト「なあ、あんたは一体何者なんだ?デザイア王国なんて、聞いた事が無いんだが。」

???「何?……………ここは、私の世界とは違う世界という事か。」

レイト「1人で勝手に納得すんな。」

 

 そいつは1人で勝手に納得しているので、俺はそう突っ込む。

 すると、そいつは俺に声をかける。

 

???「なあ、私と戦わないか?」

レイト「え?」

???「お前の実力を知りたくてな。」

レイト「………………なんだって急に。」

???「良いだろ。」

 

 そいつは、そんなふうに言う。

 断ると、後々面倒くさそうだしな。

 俺はため息を吐いて、言う。

 

レイト「分かったよ。」

???「よし、そう来なくてはな。」

 

 その男は、そう言って、ドライバーを装着する。

 そのドライバーは、キメラドライバーに似ていた。

 

レイト「キメラドライバー!?何で!?」

???「知ってるんだな。なら、見せてやろう。」

 

 その男はそう言って、バイスタンプを取り出す。

 そのバイスタンプも、見た事がない。

 

グリード!

 

 その男は、グリードバイスタンプをドライバーに装填する。

 

憤怒・怠惰・嫉妬・傲慢・暴食・色欲・強欲

 

 その音声が流れると共に、その男の背後に、七体の悪魔の幻影が見える。

 その男は、そのまま右手を天に掲げ、その言葉を口にした。

 

???「変身。」

 

 そう言って、その男はバイスタンプを一回倒す。

 

スクランブル!

全てを欲して!全てを奪え!

仮面ライダーグリード!

Lump of desire

 

 7体の悪魔の幻影がその男を包み込み、その姿を変えて行く。

 どうやら、仮面ライダーグリードというらしいな。

 やばいな、かなり強い。

 俺は冷や汗を流しながら、キメラドライバーを装着して、ツインキメラバイスタンプを起動する。

 

ツインキメラ!

 

 そして、キメラドライバーに装填する。

 待機音が流れ出す。

 

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

キング!ダイル!Come on!キメラ!キメラ!キメラ!

 

レイト「変身!」

 

 そう言って、バイスタンプを一回倒す。

 すると、蟹の鋏と鰐の顎が、同時に俺を閉めて、変身させる。

 

スクランブル!

キングクラブ!クロコダイル!仮面ライダーキマイラ!キマイラ!

 

 俺は、仮面ライダーキマイラへと変身する。

 キマイラに変身して、仮面ライダーグリードへと向かって行く。

 パンチやキックをして、攻撃して行く。

 だが、相手にはあまり効いていない様に思える。

 マジか………………。

 すると、相手は挑発するのか、腕をクイっとする。

 

レイト「なんかムカつくな……………その余裕。」

 

 俺はそう呟いて、ツインキメラバイスタンプを一回倒して、もう一回倒す。

 

キングクラブエッジ!

 

 俺は蟹の鋏を模したエフェクトを纏わせたパンチをそいつに叩き込む。

 そいつは、キングクラブエッジを受け止めていた。

 

レイト「なっ……………!?」

???「中々に良いパンチだったな。だが、私には効かない。」

 

 そう言って、そいつは反撃を始める。

 俺は、何とかそいつの攻撃を凌いでいくが、徐々に押される。

 こいつ………………強い!

 下手したら、ミリムと同等くらいの強さだぞ。

 やべぇな……………。

 俺は、ツインキメラバイスタンプを一回倒して、2回倒す。

 そいつは、バイスタンプを7回倒す。

 

クロコダイルエッジ!

 

 俺は鰐の顎のエフェクトを纏った一回転回し蹴りを、そいつは右脚に赤黒い炎を纏わせて、右回し蹴りを放つ。

 

レイト「ハァァァァァァァ!!」

???「フッ!」

 

 俺とそいつのライダーキックのぶつかり合いが起こる。

 しばらくは拮抗していたが、俺が負けて、変身解除する。

 

レイト「くっ……………!」

???「ふぅ。」

 

 俺が倒れる中、そいつは変身解除する。

 すると、手を差し伸べる。

 

???「大丈夫か?」

レイト「ああ。」

 

 俺はそいつの手を取って、立ち上がる。

 そいつは、口を開いた。

 

???「少しはやるが、まだまだだな。」

レイト「どうも。……………で、あんたは誰なんだ?」

???「そうだったな。私は七葉英字だ。」

レイト「英字ね……………。俺はレイト=テンペストだ。」

 

 俺たちは、そんな感じに自己紹介をする。

 これが、別の世界の欲望の魔王との邂逅だった。




今回はここまでです。
今回は、エルドラスさんの『ありふれぬ欲望の魔王はやはり世界最強』とのコラボです。
転キメ側の時系列は、カリュブディスを撃破した直後です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
本編の方は、オリジナル展開があるので、どういう感じにやれば良いのかを試行錯誤しつつやっているので、中々投稿出来なくて、すいません。
早くクレイマンをボコボコにしたいので、何とか頑張ります。
オリジナルのバイスタンプについても、リクエストを受け付けています。
アブソーブ必殺技で使えそうなので。


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第2話 テンペストへの案内と暗躍する存在

 俺と英字が戦い終わった後、ひとまず、テンペストへと案内する事になった。

 色々と、事情を知りたいからな。

 その際、七葉英字は、人間ではなく、グリードである事が分かった。

 テンペストに着くと、リムルが声をかける。

 予め、リムルだけが来る様に伝えておいたのだ。

 

リムル「レイト。そいつ、誰なんだ?」

レイト「ああ……………テンペストに来たいって言ってたから、案内してたんだ。」

英字「ああ。私は、七葉英字だ。よろしく頼む。」

リムル「そうか。俺はリムル=テンペストだ。悪いスライムじゃないよ。」

英字「……………なるほどな。リムル。お前もレイトと同じで、転生者なんだな。」

リムル「やっぱりか。」

 

 まあ、そりゃあ、推測も出来るか。

 俺は、口を開く。

 

レイト「ここに来るまでに聞いたんだけど、英字って、こことは違う世界の住人で、人間じゃなくてグリードらしいぞ。」

リムル「マジかよ!?しかも、グリード!?なんでここに来たんだよ!?」

レイト「心当たりは無いのか?」

英字「そうだな……………分からない。一応、仮説はあるのだがな。」

リムル「仮説?」

英字「ああ。時空に亀裂が入りそこに落ちた。時空に亀裂が入る事は稀にあるから、今回は運がなかったと言う事だな。」

 

 時空に亀裂が入ったねぇ……………。

 そんな事があるんだな。

 すると、科学者が答える。

 

科学者『解。個体名、七葉英字の言う通り、時空に亀裂が入る事は、ごく稀にあります。』

レイト『本当にあるのか……………。』

科学者『是。』

 

 そんな事もあるんだな。

 科学者と話す中、リムルと英字は話をしていた。

 

リムル「まあ、ひとまず、この街を案内するよ。どうやって戻るのか、まだ検討が付いてないんだろ?」

英字「助かる。」

 

 どうやら、テンペストを案内する事になったみたいだな。

 そうして、英字を案内する前に、皆の元に連れて行く。

 

レイト「……………という訳で、違う世界から迷い込んで、しばらく世話になる事になった人だ。」

英字「七葉英字だ。よろしく頼む。」

紅丸「別の世界から迷い込んだとは…………珍しいですね。」

火煉「ですね。」

シズ「日本人なんだね……………。」

 

 それを聞いた紅丸、火煉、シズさんの3人がそう反応する。

 シズさんは、名前からか、日本人だと思ってるみたいだな。

 どうやら、受け入れてくれるみたいだな。

 俺たちは、テンペストを案内する事にした。

 まずは、黒兵衛達の鍛治工房に案内した。

 

英字「ここは何だ?」

レイト「見ての通り、鍛治工房だよ。」

リムル「黒兵衛達が武器や防具を作ってるんだよ。」

火煉「黒兵衛達の作る武器や防具は、良い物ばかりですよ。」

紫苑「そうです!」

英字「へぇ………………。良い鍛治工房だな。」

 

 英字は、そういう風に言う。

 英字は興味深そうに見ていた。

 次に案内したのは、しあわせ湯だった。

 

英字「ここは……………銭湯か?」

レイト「しあわせ湯って言うんだ。ここのお湯は良いですよ。」

リムル「レイトが建ててくれってお願いしてたもんな。」

英字「なるほどな……………。」

 

 英字は感慨深そうにそう言っていた。

 そこから、テンペストの色んな施設を案内した。

 そしてその夜、俺たちは宴会をする事にした。

 

リムル「ええ……………というわけで、今回は、七葉英字がテンペストに滞在するという事で、乾杯するとしよう!」

レイト「それじゃあ、乾杯!」

一同「乾杯〜〜!」

 

 そんな感じに、乾杯をする。

 皆が、英字と打ち解けてホッとした。

 英字も、皆と仲良くなっていた。

 俺はそれを見ながら、飲み物を飲んでいく。

 そんな中、英字は火煉を連れて、何処かへと向かう。

 

火煉「あの……………どうしました?」

英字「火煉だったな。お前、レイトに好意を寄せているだろう?」

火煉「えっ!?な、なんで……………!?」

英字「見てれば分かる。お前がレイトを見る視線は、見覚えがあるからな。」

 

 英字にそう言われて、火煉は頬を赤くして俯く。

 そんな火煉に、英字が声をかける。

 

英字「そんなお前に、アドバイスを送ってやろう。」

火煉「え?」

英字「レイトみたいな鈍感なタイプは、積極的に行かないと、君の好意には絶対に気づいてくれない。鈍感なやつとはそう言う物だ。」

 

 英字は、火煉に対して、そう言う。

 火煉は、英字に聞いた。

 

火煉「……………何でそう思うんですか?」

英字「…………私も彼と同じで、鈍感でな。妻の好意に気付いたのも、出会ってから何年も経ってからなんだ。だから、積極的に行ったほうがいい。」

火煉「……………ええ。」

 

 英字の言葉に、火煉は顔を赤くしながらも頷く。

 それから、俺たちの方に戻る。

 俺は、火煉に話しかける。

 

レイト「火煉、どうした?顔が赤いぞ?」

火煉「な、なんでもありません!」

 

 俺がそう言うと、火煉はそう言う。

 それを見て、俺は首を傾げる。

 そんな中、ジュラの森では。

 

???「許さない…………!絶対に許さない……………!」

 

 そんな風に呟く人が居た。

 そいつは、何者なのか。




今回はここまでです。
エルドラスさんの作品である『ありふれぬ欲望の魔王はやはり世界最強』とのコラボの第2話です。
暗躍する存在は、何者なのか。
そして、レイトは火煉の想いに気づく事が出来るのか。
それは、分かりません。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
クレイマン戦が近づいてきましたが、どんな感じにクレイマンを倒しましょうか?
もし、意見がある場合は、活動報告にてリクエストを受け付けています。
コラボがしたいという場合は、気軽にメッセージを送ってください。
転スラとギーツに関しても、もし意見がある場合は、活動報告にて受け付けます。


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