ロマサガ短編集(妄想劇場) (鞍馬エル)
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 トーマの孤独

 私のお気に入りカンバーランドのお話

お気に入りなので、何度も何度も滅亡させたりしてました(外道)

勿論、ハロルド王に相談されてそのまま放置したこともあります


 

 

 

 

私の名はトーマ

 

カンバーランド王ハロルドが第二王子である

王などと言っても辺境の地方国家と呼べるかすら怪しいところではあるのだが

 

 

 

 

 

カンバーランド

 

モンスターの跋扈するステップの北にあり、この大陸最北端の国家

我々の祖先がこの地に国を興す時、ステップのモンスターの脅威から国を護るべく、長城と呼ばれる大陸の東端から西端に至るまで封鎖する建造物を造り、その後に成立したとされている

 

西にオレオン海、東に難航路として名高いコムルーン海峡を持ち西のバレンヌ帝国が南北バレンヌ地方を統一していた頃は交易が盛んだったと伝わる

現在はバレンヌ側の窓口である港町ソーモンがモンスターにより占拠されており、バレンヌ側との交流は途絶している

 

 

 

さて、私には兄と姉がいる

 

 

兄は父ハロルドが第一王子であるゲオルグ

私達の長兄であり、幼い頃より武芸に励んだらしく、その結果このカンバーランドで最高の武人として名高い

 

尚武の気風が強いネラック城守備を父ハロルドより命じられており、ステップに程近いネラックで長城のモンスターへの対処を任されている

私の自慢の兄だ

 

些か子供扱いが過ぎるのが玉に瑕だが

 

 

姉はハロルドが第一王女であるソフィア

父ハロルド唯一の娘であるが、武芸に優れる兄を見てなのかソフィアねぇはどちらかというと内政などに重きを置いている

その結果、父ハロルドよりカンバーランド第一の商業拠点であるフォーファーを任されるに至った

 

更に姉はフォーファーにてその手腕を発揮し、元々食料などをバレンヌ地方から輸入する事で賄っていた食糧事情の解決に着手している

それにより、少しずつではあるがカンバーランドは裕福になりつつあった

 

この姉も兄に負けず劣らず私には甘い

正直なところどうかと思うのだが

 

 

とはいえ、依然としてモンスターの跋扈するステップにオレオン海対岸のバレンヌ帝国は衰退して久しい

オレオン海を南下しようにも南バレンヌにおいて運河要塞なるものが存在し、自由な行き来を許さないそうだ

姉としてはオレオン海を南下する事でロンギット地方の武装商船団とやらの協力を受ける事で難所であるコムルーン海峡の航路を開拓しようとしているらしい

 

 

 

 

我が父であり国王ハロルドは決して凡庸な人物ではなく、兄や姉がネラック、フォーファーに赴任する前よりバレンヌ帝国より絶えた食糧事情や長城のモンスター対策などを手抜かりなくおこなってきた稀代の名君と言っても差し支えないだろう

 

 

私は父が退位した後、兄ゲオルグに姉ソフィアと共に仕えるだろうし、不満はない

 

 

ないのに、ここ最近少々厄介な事になりつつある

 

 

 

 

 

 

 

宰相サイフリート

僅か10年足らずでこの国の宰相となった男である

 

この男がカンバーランドに仕え始めた年は兄ゲオルグが活発化したステップのモンスター対策に追われ、姉ソフィアもまた姉の政策に反発する過激な連中を抑える為に奔走した年だった

本来であれば、兄や姉が定期的にこのダグラス()へとくる事でダグラスの官吏達の腐敗などを防いでいた

 

サイフリートについても本来なら、兄や姉が一度見極めるべきであったのだがあまりにも多忙な二人に気を遣った父が二人の助けとなるべく雇ったのが奴だった

 

 

私はまだ政治に口を出せる立場ではなかったが、正直あの男を信用する事はないだろう

 

あまりにもタイミングが良すぎるからだ

 

 

 

そしてサイフリートは瞬く間に兄や姉に反発していた者達を懐柔し、その功績をもって父の側近の立場を手に入れた

 

おかしな話だ

連中は兄や姉、私は勿論父上の言葉にすら耳を貸さなかった連中

 

それが何故実績も何もないサイフリートの言葉だけで従ったのか?

あまりにも不自然だった

 

 

更に兄や姉が取りこぼしていた諸問題を解決し、父の更なる信用を得てこの国では初となる宰相の立場を手に入れる

 

 

 

 

 

 

現在私の立場は何故か『次期後継者候補』である

 

おかしな話だろう?

 

 

父王ハロルドの長子は兄であるゲオルグであり、治世の能力という点においてなら姉ソフィアであるはず

 

取り柄のない私が候補に挙がるはずない

 

 

 

聞くところによると、オレオン海の向こうである北バレンヌにて動きがあったらしい

 

かの勇王とも呼ばれたレオン王が亡くなったそうだ

その後継に第二皇子であるジェラール殿がなったとも

 

だが、これは第一皇子であるヴィクトール殿がアバロンにモンスターが押し寄せた際の防衛戦により亡くなっているからだ

 

 

長子が国を継ぐ

でなければ、次子が

 

それはこの大陸における不文律であり、暗黙のルールともいえるもの

 

 

 

それがなさらぬというのであれば、余程長子と次子が国を統べるのに値しないか、若しくは後継を指名した王が愚かだったのか

のどちらかだろう

 

少なくとも諸国はそう受け止める筈だ

 

 

 

兄や姉は言うに及ばず、父も無能とは程遠い

 

にも関わらず、この様な事がダグラスで起きているという事は

そういう事なのだろう

 

 

 

 

 

兄ゲオルグのネラック城は純粋な軍事拠点

 

姉ソフィアの治めるフォーファーと此処ダグラス

以前はダグラスの方が発展していた

当然だろう。まがりなりにも都なのだから

 

ところが現在ではフォーファーの方が町として発展しており、城下も賑わっているそうだ

ダグラスの方が予算が多いのに、だ

 

 

兄や姉が定期的にダグラスへと赴かねばならないのは、ダグラスの官吏達は基本的に言われた事すら(・・)やらない連中が多いのだ

 

父であり国王ハロルドの命ならば渋々従うが、そうでなければ好き勝手手を抜く

 

だから未だもってロンギットへの使者一つ出ていないし、バレンヌの情報はソーモンから密入国した商人からだ

 

 

彼等は噂話などは大好きだが、とにかくやろうという気が一切ない

確かに以前からその兆候はあった

 

が、最近はそれを隠す気もないらしい

 

 

しかもそれを知っているはずのサイフリートは何もしない

私は現在公式な立場を何一つ持たない身であり、影響力はないに等しいのだ

数年前まで仕えてくれていた侍従や侍女達は全て変えられており、どうやら徹底的に私の発言力を消し去るつもりの様だ

 

 

 

父にどうやらサイフリートは『トーマ様であればゲオルグ様もソフィア様も何の差し支えなく仕えましょう』とでも吹き込んでいるのだろう

 

 

既にダグラスの城内に信用できる者はいない

恐らくサイフリートの息がかかった者ばかりだろう

 

 

兄と姉を動かすとなると下手をすれば内乱にもなりかねない

 

 

 

 

バレンヌに託す他ない、か

 

 

 

 

 

トーマは自室より城外へと出る術があり、そこより城外に赴きソーモンへと戻る商人にジェラール王への親書を託した

 

 

 

 

 

その後、バレンヌがダグラスを訪れたのかどうかは定かではない

 

 

 




ロマサガ2の漫画読んでみたかった

またロマサガ2するかぁ!


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 サイフリートという男

 思ったよりアクセスあったので、投下

アンケート調査したいので、よろしければ協力下さい


 サイフリートは元々カンバーランドに住んでいた魔道士であった

 

 

だが、バレンヌ帝国が崩壊した事により、カンバーランド国内の状況が悪化

それを見た若き日のサイフリートはカンバーランドに見切りをつけて各地を放浪

 

幸いと言うべきか、サイフリートは魔法に高い適正を持つ一方でメイスやバックラーといった比較的軽い武器や防具であれば使いこなせる程度の体力とセンスがあった

 

 

その結果、彼は高位魔法を使いこなせつつも、敵の攻撃に対してそれなりの耐性を身に付けることが出来たのである

 

 

 

だが、如何に力量を上げようとも、祖国の行く末に失望しようとも、彼の祖国は間違いなくカンバーランドだった

 

 

 

バレンヌよりの食糧供給が絶たれ、南のステップのモンスターの脅威も取り除けないのであれば、早々にカンバーランドは滅亡する

 

そう考えたからこそ、サイフリートはカンバーランドを出たのだ

 

 

 

 

ところが、サイフリートが気の迷いかカンバーランドの都であるダグラスへ戻ってみると、荒廃する事なく昔の姿そのままの街並みがあった

 

そこには自身が行く先がないと断じていたカンバーランドの姿は微塵も見えなかったのである

 

故にサイフリートはハロルド王に仕える事を決めた

 

既に頑迷とも呼ばれていたネラックの城兵達もゲオルグにより見事に統制されていたし、国を富ます事よりも目先の利益を追いかけていた筈のフォーファーの商人達もソフィアにより纏められている

 

 

であれば、サイフリートは国の中枢であるダグラスの(まつりごと)でハロルド王の役に立とうと決意した

 

 

だが、そんなサイフリートはダグラスや各地の有力者達がゲオルグやソフィアの事をよく思っていない事を思い知る

 

それだけならば、まだ良かった。救いもあった

 

奴等はよりにもよってハロルド王にすら楯突こうとしていた事を知るまでは

 

 

 

ハロルド王がこのカンバーランドをまとめ上げておらねば、カンバーランドという名前はとうの昔に記録だけのモノと成り果てていた事だろう

 

そんな事も理解しようともしない連中にサイフリートは呆れ、憎悪した

 

 

だが、一度に沢山の者を除けば反発は必死

 

少しずつ、サイフリートは邪魔者を処理していった

 

 

 

そこでサイフリートが利用したのは武勇優れるゲオルグでも智謀溢れるソフィアでもなかった

 

平凡と呼ばれ、末子である為にハロルド王に最も愛されているトーマだった

 

 

トーマを担ぎ出そうとする連中の狙いは明白だ

 

一番操りやすいから

 

 

 

 

ならばトーマ派の中心をサイフリートが担う事でそいつらをコントロール出来るはず

サイフリートはそう考えた

 

 

そして時は流れ、老齢の域に差し掛かったハロルド王

 

 

既にトーマに付けられていた有力者の手の者は排除したし、つまらない(はかりごと)にトーマを巻き込んでは王が嘆き悲しむだろうと敢えて孤立させた

 

他者から見れば、ダグラスの実権を掌握し、トーマ様を意のままに操る奸臣にみえるだろう

それは王などに反発する連中の支持をこのサイフリートに集める事となり、結果として連中の行動をコントロールできる事に繋がるのだ

 

 

 

 

更にサイフリートが最近気にかけているのは、南方のステップにおいて伝説である『七英雄』を名乗る者が策動している事であった

 

実はサイフリートの元にもその七英雄の一人であるボクオーンなる者からの使者が極秘に訪れている

 

要件はカンバーランドをサイフリートの手により統一させる事

つまり、ハロルド王やゲオルグ、ソフィア、トーマを亡き者とする

 

そういう事だった

 

 

見返りはカンバーランド全土と引き換えに永遠の命

 

 

 

 

サイフリートは一蹴したかったが、それは躊躇われた

 

 

理由はオレオン海の対岸にあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カンバーランドより西に広がるオレオン海

 

 

オレオン海を更に西に進むと、北バレンヌ

そこにはすっかり衰退してしまったバレンヌ帝国がある

 

バレンヌ帝国の皇帝レオンは日々、バレンヌ帝国再興の為にモンスター退治などに勤しんでいる事は商人などから聞いている

 

更に武に優れる嫡男ヴィクトールに文に優れるジェラール

 

 

南バレンヌと北バレンヌ統一なら結構であるが、どうもバレンヌ地方においてバレンヌ帝国とはこの世界の殆どを制圧した大国、という話になっているそうだ

 

 

 

???

サイフリートは商人から話を聞いた時、訳が分からなかった

 

少なくとも、若き日に大陸各地を放浪したサイフリートだが、一度としてそんな話を聞いた事も見た事もない

 

なのに、どうやら皇帝レオンはそれを愚直に信じているそうだ

 

 

 

つまり、このカンバーランドにもいつか攻め寄せてくる可能性は捨て切れない

 

現在はボクオーンとやらによると、ソーモンの七英雄クジンシーとやらがバレンヌ帝国の拡大を防いでいるそうだが、万が一のことを考えるのもサイフリートの立場では当然だった

 

 

 

 

大陸統一などという夢物語(世迷い言)を真剣に考える連中だ

危険視するのは当たり前

 

 

 

まだ年若いゲオルグやソフィアにトーマではその輝きに目を灼かれかねない

 

その為、サイフリートはボクオーンと一部協力体制をしく事にしたのだ

 

確かにボクオーンは危険だ

だが、長城とネラックが正常に機能する限り、領内へのモンスターの侵入はある程度阻止できる

 

だが、海路はそういかない

 

 

 

 

 

サイフリートは人間

 

手を伸ばせる範囲には限界があるのだ

ステップの遊牧民やマイルズの連中には悪いが、サイフリートはカンバーランドの宰相である以上、カンバーランドの民やその生活を守る義務がある

 

 

 

更にいざというときの為にカンバーランド最北端に砦を建設する事とした

 

ステップのモンスターやバレンヌ帝国が侵攻してきた場合の最終拠点として

 

ステップはネラックで阻止できよう。ネラック城自体が巨大な防壁の役割を果たしていたから

だが、海路から来られた場合、その防衛戦は都であるダグラスにて行なわねばならなくなる

その場合、ネラックから兵力を抽出すれば良いと思いがちだが、仮に帝国がステップを制圧した場合だと、マイルズからステップ経由で兵を送り込む可能性は捨て切れない

 

その場合、ネラックの城兵は長城という防衛ラインに沿って展開するだろう

 

長城の防衛網に穴を開けずにダグラスへと充分な増援を派遣できるか?と聞かれたなら、否である

 

如何に精強で鳴らしたネラックとて少ない戦力では防衛し切れると思えない

 

 

だからこそ、最北端なのだった

 

 

 

 

 

 

 

皇帝レオンが死に、跡をジェラールが継いだそうだ

 

 

 

このジェラール、何を血迷ったか

 

 

雑魚モンスターの巣などいつでも叩ける!

父上の仇を討つのが先だ!

 

と即位早々言い放ったそうだ

 

 

その雑魚モンスターにより、バレンヌの首都であるアバロンは略奪されたというのに、だ

 

 

マトモに民を慈しむなら、その雑魚モンスターの巣を無力化するなりして敵討ちに行けばよいものを

 

 

 

 

 

もうすぐ不心得者どもの始末も終わる

 

 

そうなれば、今までの事を陛下にお詫びした上でゲオルグ様にソフィア様、トーマ様にもしっかりお詫びせねばならない

 

だが、今暫し奴等をコントロールせねばならぬ故、この臣の不忠を許されよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抜かったわ

 

まさかトーマ様にあそこまでの行動力があるとは

 

 

 

何をどうやったのか分からぬが、トーマ様が書いた親書がバレンヌ帝国に届いたそうだ

 

確かに私は奸臣にしか見えぬ

それにしても上手いことよ

 

ハロルド様の不調を知らせた上で、バレンヌの皇帝に世継ぎをどうするか?とそれとなく仄めかすとは

 

 

これでバレンヌの皇帝ジェラールの考えが見えるというもの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 という訳でカンバーランドの悪党であるサイフリートを独自解釈してみました

ゲームシステム上仕方ないとはいえ、ハロルド王やゲオルグ、ソフィアに素直に従う者達ばかりではなかったと思った

というか、ヘンリーやアト王(同列にするレベルではないが)みたいな者が若輩であるゲオルグとソフィアを積極的に活用しているカンバーランドで起こらない方が不思議だと思っていた 

なお、私はネラック城兵が喋らないのを見て

あー、帝国の皇帝だから嫌われたんだな
って思ってました(笑)


ネラック城の独特な構造は


流石前線に近い城だな
とも思ったましたね


てな理由からこんな内容となりました


ではご一読いただきありがとうございました


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 わたしが村長です

ロマンシング・サガではなくロマンシングサ・ガだった事を今更ながらに思い出したので昔書いていたものを投下する

多分プレイしていたプレイヤーの半分くらいがこの人に


この野郎

と思ったと個人的に思ってたり


モンスター

 

それは暴虐の象徴であり、厄災そのものと言っても良い

一部の者たちはモンスターを倒す事も出来るだろうが、殆どの者たちからすればモンスターと出会う事はそのまま死に直結する

 

 

 

男はツヴァイクの北にある村の(おさ)であった

 

 

 

ツヴァイクとは北方地方では随一の国力を有する国家であり、現王が一代で興した新興国

 

男の治めるギトランドは西のユーステルムへ向かうツヴァイク地方の交通の要所である

 

 

だが、ツヴァイクのトップはツヴァイクを作り上げた実績があるからか自己顕示欲が強く、王都であるツヴァイクの発展にこそ熱心であるが、辺境地域についての開発などについては無関心と言っても良かった

 

ツヴァイクにおいては世界で唯一武闘会を開催しており、世界一の都市であるメッサーナ王国の首都ピドナや南方のロアーヌ公国のミュルスへの航路を持つ

現在は聖王に従ったフェルディナントの興した歴史ある国、そのロアーヌの若き指導者であるミカエル侯の妹であるモニカ姫を自身の息子の妻にするべく動いている

 

ロアーヌと友好関係を結ぶ事により、歴史の浅いツヴァイクの国威を上げようとしているらしいが

 

 

更にツヴァイクの民衆はツヴァイクこそが世界一の国家であると男からすると理解し難い考えを持っている

 

 

 

確かに北方地域においてならば、ツヴァイクは強国だろう

 

 

 

だが、ツヴァイクより東にあるポドールイ

此処はかの有名な『ヴァンパイア』が国を治めており、国力としてはともかくとして純粋な軍事力としてはツヴァイクのそれを上回るだろう

 

 

更に言うと死食により、モンスターの活動が活発になっており、ツヴァイク領内においてもその脅威は増えつつある

 

 

 

 

ギトランドは辺境の街であり、そうであるからこそ変化を嫌う風潮があった

 

村の人間は今の生活を維持する事に必死であり、少し前に村を出たポールの様な若者は多い

窮屈なのだろうし、退屈なのだろう

 

村長としては複雑であるが、それもまた仕方ない事だと半ば諦めている

 

 

 

それだけではない

 

この村の側にはモンスターの巣窟があり、度々村人が襲われていたりするのもあるのだろう

とはいえ、少し前までならば近付かねば犠牲も出なかった

 

 

 

そう、少し前までは

 

 

 

とある日の事だった

 

モンスターが村の少し離れたところで木材の伐採をしていた村人に襲いかかったとの話を男は聞いた

 

村長である男はそれこそ年単位で色々なモンスターによる被害の報告を受けてきた

だからこそ、男は感じた

 

 

 

おかしい

 

 

 

モンスター達はそれぞれ縄張りがあり、それを侵すと襲いかかってくる

 

言い方は悪いが、人間というものはモンスターからすれば食べるところが少なく、あまり嬉しくない獲物のはずだ

 

 

実際、ギトランドではモンスターに襲われかけた時は近くのモンスターの側に誘導する事で難を逃れられる事はそれなりに知られていた

 

 

それなのに、村人は襲われた

 

 

嫌な予感がした

 

 

 

 

 

 

 

男は直ぐにツヴァイクへ人を送り、その対策を求める事とした

ユーステルムからの物資はギトランドのみならず、生産力の低い寒冷地であるツヴァイクの発展に欠かせないものであるのだから

 

無駄に虚栄心の高い公はメッサーナ王国という歴史が長く、しかも軍事力においても自国を優越している所との繋がりを歓迎していないから未だにツヴァイクの外交ルートはないに等しい

 

はっきりと言えば、器が小さいのだ

 

 

メッサーナ王国と交易を大々的に行なえば、このツヴァイクももっと大きく豊かになる

 

それこそ少し頭を下げて、力を蓄えたならツヴァイクは発展できる

 

 

なのに、それをしない

いや、出来ないのがツヴァイク公という男

 

 

 

野心はある

だが、その野心の為に耐えるという事をしないのがツヴァイク公であり、ロアーヌのミカエル侯爵に接触したのも現時点ではツヴァイクの方が国力においてロアーヌに勝るからだ

 

まだ亡き父親の跡を継いだミカエル侯は実績に乏しく、感情面からもロアーヌの貴族達に認められていないからだけなのだが

 

 

国力という一点においてならば、優越するはずのポドールイに聖杯の要求をせず、武闘会で優勝した者にそれを依頼するのも、事を荒立てたくないというよりも手を出す度胸がないから

 

 

 

それでも自国領内の問題であれば、ツヴァイク公とて動いてくれる

 

男はそう考えていた

 

 

 

 

 

 

 

何故だ!何故軍を動かさぬ!!

 

 

ツヴァイクよりの返書を見た男は声を荒げた

 

 

 

支援の用なし

現状を維持せよ

 

 

つまり、ツヴァイクは兵を出さぬというのだ

 

 

 

これには勿論理由があった

 

ツヴァイクが迂闊に兵を動かせば、周辺地域に無駄な緊張状態を生みかねない

それが表向きの理由

 

実際には、ツヴァイク公はツヴァイクの西の森に住まう教授に兵器開発を依頼しており、それが軌道に乗るまでは積極的にモンスター討伐をする気はなかった

 

ツヴァイクの武闘会には態々自身の腕利きの部下を参戦させておいて、領内の問題には向き合おうとしない

男にはそう見えていた

 

 

 

だが、ツヴァイク公の考えは別にあった

 

現在ギトランドの村長を務めている男はそれこそギトランドという村ができた時からの人物であり、忌々しい事に北方工芸関連の事業にも少なからぬ影響力を持っていた

 

男からすれば、ギトランドを発展させる為に必要だったからこそ、そうしたのだがそれはツヴァイクの支配体制を盤石としたいツヴァイク公にとって非常に目障りな存在として認識されている

 

 

であればこそ、公はギトランドに兵を送るつもりは一切ない

 

報告によると、モンスターの被害を食い止めるにはギトランド単体でどうにかなるものではない

ならば、村の取れる手段は限られてくる

 

村人を犠牲にするのか、それとも

 

 

 

 

 

 

 

 

男は何度もツヴァイクに文を出した

 

流石に村長である自分がギトランドを離れる訳にはいかなかったから

 

 

 

 

そして、進退極まった村長は

 

 

 

 

 

 

 

ええ、実は私どもの村の側に凶暴なモンスターがおりまして

 

いえいえ、何の関係もないあなた方を巻き込む訳にはまいりません。私どもの中から生贄を出せば済む話ですからな

 

 

男はそう言って、冒険者の同情を誘い、その冒険者を生贄とする事にしたのだ

 

村人達も当初は顔を顰めていたが、自分達が犠牲にならない方法としてその内に受け入れる様になる

 

 

ツヴァイク公の誤算はモンスターを恐れるが余りに村長に同心する村人が多かった事だろう

 

勿論、それでも反対する村人もいた

 

 

 

彼等は生贄となる事を選んだ

いや、選ばせられたのだ

 

 

 

若い者達はそんな大人達に失望して殆どがギトランドを離れる

残ったのは、ニーナという女性だけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしていつもの様に村長は身なりの良い女性達を生贄としようとした

 

 

 

それが男の破滅への始まりとも知らずに




リマスターでぼっこぼこに出来ると思ったのに出来なかった挙句、リユニバースで何故かキャラとして登場した事を知って唖然とした

うーん、この


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