江戸にて夢を見続ける (すぱーくしーど)
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序章
夢から覚めて


処女作ですので、生暖かい目でよろしくお願いいたします。


 夢はもういい(おやすみ ハイセ)

 

 その言葉を聞きながら、僕は目を閉じた……

 

 

「おーい、人ん家の前で何寝てんだ?」

 

 ふと目を開けると和服を着た銀髪の男性がこちらを見ていた。今どきにしては珍しい服装だなと思っていると、

 

「お、目ぇ覚めたか。ここは俺ん家だから、アンタはアンタん家行って寝な」

 

「すみません、仕事が忙しくてつい……寝不足ですかね、アハハ」

 

 銀髪の男性と少し話をして、自分の部屋に戻ろうとしたが、現在も抱いている疑問を解消するためにも尋ねた。

 

「ここはどこですか?」

 

「ったく、寝ぼけすぎだ。ここは江戸の歌舞伎町だろ?仕事が忙しくても、ちゃんと寝なきゃダメだ。身長も伸びないし美容にも悪い。それに、俺たちみたいな天パはなおさらクルクルになっちまう。ま、いつか俺はさらさらストレートになるんだけどな」

 

 江戸に歌舞伎町?僕が知っている東京は?どこの区だ?疑問を解消するためにした質問で、余計に疑問が増えてしまったと思いながら

 

「あー、ですよね!やっぱりちゃんと寝ないと駄目ですね。天パもクルクルしちゃいますし。僕もう行きますね、扉の前で寝ちゃってすみませんでした」

 

 僕は彼にそう告げ、階段を降りる。さっきまで自分がいた場所に目をやると、『万事屋銀ちゃん』の看板が見えた。

 

 アスファルトで舗装されていない道路を歩きながら考える。クインクスの皆は無事なのか、月山に梟、あの狂った仮面喰種は一体何者なんだろうか?それにビルの屋上にいた筈なのに、気付いたら人の家の玄関前で寝ているし……考えれば考えるほど思考が止まらなくなってくるが考えても仕方がないように思える。

 

 だって、現代とは思えないような木造建築物の数々。反対に少し遠くを見てみれば近未来的なタワーのような物に、ビルが建ち並んでいる。なんなら大きな船が空を飛び交っているし、明らかに人間じゃない生物が我が物顔で道路を歩いている。

 

 それに僕を起こしてくれた男性は、和装で木刀を携行していた。他にも通行人達は皆同じように和装の着物などを着ている。見ている限り、洋服なのは僕や動物人間のような生物だけだ。ここは、和装やコスプレ、特殊メイクが流行っているのだろうか。

 

 今までの東京とは明らかに違う景観と通行人達。今の状況全てがオカシイと納得し、さっきの男性との会話を思い出す。

 

 江戸に歌舞伎町……どうやらここは僕がいた東京ではなさそうだ。

 そう考え、先程の看板を思い出す。

 

「万事屋銀ちゃん…か」

 

 僕は、最初に目覚めたあの場所へと向けて、歩きだした。




ハイセについてですが、喰種特有の人肉と珈琲以外からは栄養接種が出来ない設定を少し変えようと思っています。
銀魂の世界で人食うわけにはいかないですし、それに喰種もいないので共食いもできません。
珈琲でなんとかするのも限界があると思うので、普通に人間の食べ物食べられるようにします。


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万事屋1

銀魂原作の時期なんですが、紅桜篇前にするか、吉原炎上篇前にするか悩み中です。
正直、戦闘の書き方などまだ書いたことないですし、紅桜篇と琲世を書いてみたいなぁって感じがあります。


 万事屋ってことだし、相談にも乗ってくれるだろうという期待を込めて、チャイムを鳴らす。

 

「はーい」

 

 扉を開けてくれたのは、あの銀髪の青年ではなく眼鏡を掛けた黒髪の少年だった。

 

「すみません。看板をみて……」

 

「もしかして、お客さんですか!?銀さん!神楽ちゃん!お客さんが来ました!ぐぅたらしてないで、席空けてください!」

 

「なにアル、シンパチ。ワタシはぐぅたらしてるんじゃなく、身体を休めてるネ。そういう違いが分からないからチェリーメガネなんだヨ」

 

「そうだぞ、ぱっつぁん。俺たちは仕事を完璧にこなすため、こうやって身体を休ませてる訳。あぁ、やっぱり今週も休載かぁ。しょうがないけどね、結局俺らは作者さんを待つしかないわけだし、身体に気をつけてもらって、続きを描いてもらわないとだから。腰は大事に……」

 

「いつまでやってんですか!?お客さんずっと立ちっぱなしですよ!!いい加減どいてください!!」

 

 眼鏡の少年は、雑誌を読む和装の青年と赤い洋服……あれはチャイナ服かな?を着た少女を移動させる。

 大変そうだなと眺めていると、銀髪の青年と目が合った。

 

「さっきぶりだな、調子はどうだい?また布団以外で寝たりしてないか?」

 

「してませんよ。この通り、元気です」

 

「銀ちゃん、このお客さんと知り合いアルか?」

 

「ほら、さっき言っただろ?扉の前で寝てたんで起こしたんだ」

 

「そういえば言ってましたね。体調は大丈夫ですか?」

 

 心配されている。それもそうか。扉の前で寝ている人なんてオカシイし、もしくは倒れた人だと思う。

 だけど別の世界から来ましたとか、今は言えない。だって、何を言ってるんだこいつは、やっぱりオカシイ奴だったのかと思われたくもないし、今はこの世界について少しでも知る必要があるから。

 

「体調は大丈夫です。あの、僕の話を聞いてくれますか?」

 

「あぁ、いいぞ。俺達ぁ万事屋だ。話を聞くなんて余裕のよっちゃんだな」

 

「銀ちゃん、古臭いアル。足もクサいネ」

 

「まぁまぁ、神楽ちゃん……もちろんお話はお聞きします」

 

 良かった。彼らは話を聞いてくれるみたいだ。僕は彼らにオカシイ奴と思われないように話をした。

 

「実は記憶喪失なんです。銀さん?に起こされる前の記憶がなくて、自分の名前ぐらいしか覚えていないんです。仕事とかもあやふやで…警察なのかな、うん、悪い人を捕まえるみたいな仕事をしていたような気がします。ですので、自分の家とか仕事場所がわからなくて…すみません。話が長かったですね。簡単に言うと助けてほしいんです」

 

 異世界とかCGCについてはボカシて記憶喪失を装う。

 今まで本当に記憶が無かったのに、記憶を思い出してから記憶喪失を装うのは、何か皮肉に感じるな。そんなことを思い、万事屋の人達に目を向ける。




カネキ君ですが、精神状態は闇カネキ+琲世のような状態です。カッコよく願望は一旦無くして、身体年齢は18ぐらいです。新八が16、神楽が14、銀さんが26って感じの年齢イメージでやってるので、こんな感じかなぁと。
戦闘シーン書きたいですねぇ。書けるかわからないけど、書きたいなぁ。


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万事屋2

原作キャラともっと絡ませたいですねぇ
※下ネタ注意


 この人たちは、きっと良い人だ。先程の話を聞く反応を見て、僕はそう思った。

 

「そ、そうか、記憶喪失ね。俺もなったことあるから気持ちは分かるよ。ゴリラストーカーと一緒にジャスタウェイ作っちゃったりさ。ま、俺の話はいいわ。『助けてください』って言ったな、具体的にはどうしたいんだ?えぇと、すまん名前聞いてなかったな」

 

 ゴリラストーカーとは何なのだろう。正直こんな状況じゃなければ質問したいぐらいだ。でも、今は僕の話を聞いてほしいし、それに、ここでの会話が今後を左右しそうな予感がする。

 

「名前を伝え忘れてましたね。僕の名前は金木研(ささきはいせ)です。よろしくお願いします」

 

 僕の本名である、金木研ではなく『佐々木琲世』と名乗った。理由は色々とあるが、1番は記憶喪失していた時期の名前だし、こちらのほうが信憑性が出ると思ったからだ。仮に本名が違うと分かっても、この世界で『金木研』はただの金木研だ。悲劇の主人公でも、ムカデでもない。

 それに、琲世という名前は気に入っているからこれでいいと思う。

 

「佐々木琲世……ハイセね。おし、ハイセ、どうしたいんだ?」

 

 どうしたいか、この質問に僕は直ぐ回答出来なかった。なんとかしないと、とは考えていたが、具体的に何をすればいいかは浮かんでいなかったからだ。

 そうして、僕が少し悩んでいると

 

「記憶喪失のヤツが、オマエはどうしたいかなんていきなり聞かれても答えられるわけないネ。この家の前で倒れてたんだし、ババァに頼んで下でバイトでもすればいいんじゃないアルか?」

 

「神楽ちゃんにしては悪くない案だね。住む場所だったら僕ん家で寝泊まりするのも大丈夫かもしれないから、姉上に聞いてみるよ」

 

「童◯メガネが、上から目線で生意気ネ」

 

「おいぃぃぃぃ!どうして◯貞メガネ!?さっきまでチェリーメガネでまだ可愛げある感じだったのに!それに、童◯なめんなよ!?30越えれば魔法が使えるようになるんだぞ!!」

 

「これだから◯貞は駄目ネ、必死になって暑苦しいヨ」

 

「童◯はピュアなの!穢を知らない無垢な人間なんだ!例えるならアイドル!そう、◯貞は身近なアイドルなんです!」

 

「おいおいお前ら、ど……ぱっつぁんの話はそこまでにしてくれ。ハイセがどうしたいか答えられないだろ?それに、お客さんの前で童◯がどーだのって、お前ら中学生か?すまねぇなハイセ。大事な話が右曲がりに逸れてよ」

 

「「お前が1番生々しいネタはなしてんじゃねーよ(ヨ)!」」

 

「タンジロウ!」

 

 すごいな、話のテンポが早いし、ボケに対するツッコミがちゃんとある。ツッコミがちょっと激しすぎる気もするけど……うわ、血が出てる、大丈夫かな。

 

「ま、ふざけるのはここまでだが、実際どうしたい?確実にとは言えねぇが働く所だったら下のババァに頼めばなんとかなるかもしれねぇし。ここは二人も住んでるから厳しいが、部屋ならぱっつぁんの所や切腹することになるかもしんねぇが真選組……警察だな、そこなら働くのも住むのも一発で解決だ。あーでも、お願いしてもOKしてくれなそうだな」

 

 僕は、話を聞いてこの江戸に興味が湧いていた。切腹は嫌だけど、真選組っていうのは面白そうだし、何よりここの人達は、家族みたいに暖かい。そう思って僕は口を開いた。

 

「ここで、働かせてくれませんか?」

 




ちょっとむりやり。
展開を進めたかったんです。
後悔はない。
あと、作者は童◯ではない。
ではないんだ…!


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万事屋 採用試験1

紅桜篇書いてみたいっすねぇ〜


「ここで働かせてくれませんか?」

 

 やはり急すぎただろうか。万事屋の人達も少し困惑しているのが見て取れる。

 

「なるほどな。しかしだ、仮にここ(よろずや)で働くのをOKするとしても、俺達ぁ、ハイセ、お前のことを全くと言っていいほど知らない。それに、現状二人分の給料払うだけで精一杯なんだ。しかも、大食らいが一人だけじゃなく、もう一匹いやがる。ったく、金が足りねぇぜ」

 

 一匹?なんのことだろうと思っていると、ちょうど奥の部屋のドアが開いた。

 

「ワン」

 

 僕の人生の中で、一番大きい犬がそこにいた。白くてふわふわした体だ。触ったら気持ちよさそう。後、口に餌皿を咥えている。確かにこの大きさなら、食費は馬鹿にならないだろう。

 

「わかったわかった、新八ー、定春の餌を頼まぁ」

 

「分かりました。ちょっと待っててね定春、今持ってくるから」

 

「ナルハヤで頼むネ、定春がお腹空かせてるアル」

 

 仕事の話が流れてしまっている。僕は再び話を戻した。

 

 「僕がどんな奴か……ですよね。ここで話した所で本当かどうか分からないと思います。なので、こういうのはどうです?」

 

 僕はこの万事屋の人達と話しながらここで働くにはどうすればいいかを考えていた。そして、自分で言うのもなんだが自信策を思いついていたので、その内容を話した。

 

「採用試験ねぇ……、テストとか俺ぁ作れないぜ?大丈夫か?」

 

「テストである必要はないんじゃないですか?仕事に一回付き合ってもらって、その結果を僕たちで話し合えばいいんじゃ?」

 

「仕事一つお任せして、新八が仕事ぶりを付き添いで評価、その評価を私達に伝えてくれればいいアル」

 

「神楽ちゃん……それ仕事を佐々木さんと僕に任せて自分たち休んでるよね?」

 

 話が進みつつある。ここでさらに次の一手。

 

「新八さんの言っている形で良ければ、ぜひ、お仕事に付き合わせてください。万事屋の仕事に、僕が適しているかいないか、皆さんに判断して頂けるとありがたいです。もちろん、働けたら嬉しいです」

 

 これで、門前払いされる可能性はほぼ0になった。今のところ、仕事ぶりをみて、万事屋で働くか働かないかの段階に来ている。ドアの前で寝ていた人から、万事屋銀ちゃん入社希望者ぐらいにはなれたと思う。

 

「おし、わかった。ハイセ。お前の万事屋で働きたいって熱意は認める。ただ、熱意だけで入れる万事屋銀ちゃんじゃねぇからな。これから、ある仕事にお前も付いてきてもらう。その仕事ぶりを見て、万事屋加入かどうか、俺と新八、神楽で決めさせてもらう。それで大丈夫か?」

 

「はい、大丈夫です。任せてください」

 

 これから行う仕事に、今後が掛かっている。僕は覚悟を決めた。

 




数字っていうのは恐ろしいですね。
もともと、これが書きたい!って思って書き始めたものなのに、気づいたらUAとかの数字を気にしてしまうようになってました。
これで、モチベ下がったら本末転倒なのに…


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万事屋 採用試験2

不定期での更新になりますので、のんびりとお楽しみください。
お気に入り登録などしてくださったら、モチベが上がったり、私が喜びます!


 僕の万事屋加入が決まる依頼は……

 

「猫探し……ですか」

 

「そうだ。猫の名前はネコマル。体色はグレーで首輪を付けてるみてぇだな」

 

「首輪は赤色で、鈴がついてるみたいです」

 

「オス猫アル。性格は慎重、臆病みたいアル。まるで新八ネ」

 

「神楽ちゃん、最後の一言余計だよ……」

 

 ペット探し……定番ではあるが、簡単にはいかなそうだ。

 

「ハイセ、お前ならこの依頼どうやって動く?」

 

「効率を考えてそれぞれ個別に探したり情報収集した方が良いですね。連絡手段は……みなさん携帯持ってますか?それで連絡を取り合いましょう」

 

「この給料未払い常連、貧乏天パが携帯なんて高価なもの持たせてくれるわけないネ。私達は基本一緒に行動するか、個別なら連絡は取り合えないヨ」

 

 携帯がない……?さらに難しいな。連絡手段が無い状態で個別で動くなんて、連携が全く取れないじゃないか!それならまとまって行動した方が……いや、まとまるのは効率が良くないし、時間も掛かる……。

 

 いや、考えすぎるのはよそう。ここは……。

 

「すみません。もう一度考えてみたのですが、上手くまとまらなくて。万事屋の皆さんならどのように動きますか?皆さんの意見をお聞きしたいです」

 

「おう、わかった。ならまずは聞き込みついでにネコマル捜索だな。いくぞ、お前ら」

 

 

ーー5時間後ーー

 

「やっと、見つかりましたね」

 

「何時間も歩いて、大変だったネ」

 

「おし、報告行くか。ハイセ、お前も一緒に来てくれ」

 

「はい、分かりました」

 

 やっと見つかった……。話を聞いて猫を探すのを5時間近く行っていた。マスクを付けて、喰種に話を聞いていたときを思い出す。あれよりこちらの方が大変だった気がする。

 

ーー報告終了後ーー

 

 飼い主さんは、泣きながら喜んでいた。その表情を見れただけでも良かったと心から思う。

 

 飼い主さんに、猫を預けたあと、僕たちは万事屋に帰ってきた。確か、帰ってきてから結果を発表すると言っていたけど……

 

「佐々木さん、お疲れさまでした。初めての依頼はどうでしたか?」

 

「新八さん、お疲れさまです。大変でしたけど、依頼主が喜んでくれたので良かったです」

 

「分かりました。これから銀さんが結果を発表するので、聞いてあげてください」

 

「はい」

 

 少し緊張しているのだろうか。頭を掻きながら銀さんが話し始めた。

 

「あー、まずはお疲れ様、ハイセ。ペットを探すってだけでも半日ぐらい掛かっちまったな。でも依頼料は高額じゃねぇ。割に合わないと思わねぇか?」

 

「確かに、金額としては高くないかもしれません。でも、お金が高ければいいっていう事でもないと思うんです」

 

「お前、いい奴だな。結果を言う前に少し話を聞いてくれ。万事屋で働くっていうのは頑張っても報われねぇと思うことが多々ある。こいつらだって働いてんのに給料が払われないってことがあったりな」

 

「それは銀ちゃんが悪いネ、社会の問題みたいな感じで語ってんじゃネーヨ」

 

「とまぁ、ツッコミが来ちまったが……琲世。お前はどんなことが起きようとも万事屋として俺達と一緒に歩いていけるか?」

 

 銀さんの言葉、いやその姿勢に僕は息を呑んだ。この人、こんな気迫も出せるのかと正直驚いてしまったのはしばらく秘密にしとかないとな。でも、この回答で決まる。僕は確信していた。

 

「命を掛けて共に歩きます。強大な敵が現れたら、手足をもがれても一緒に生きます。」

 

 銀さんは少し笑って、

 

「そうか。よし、これからもよろしくなハイセ」

「よろしくおねがいします。佐々木さん」

 

「ハイセ、万事屋で一番新入りなのはお前ネ、明日酢昆布買ってこいヨ」

 

「ありがとうございます。皆、これからよろしくお願いします」

 

 これから万事屋として、この江戸での生活が始まる……

 

「あ、すみません。実はみんなが想像してた通り、帰る家もわからないので、新八さんのお家にしばらく寄らせて頂いても?」

 

「いいですよ、ハイセさん。あと、ハイセさんのほうが年上だと思うので、敬語もいらないですし、新八で大丈夫ですよ」

 

「わかった。よろしくね、新八くん」

 




おーし、少しずつ進展させることが出来ているぅ


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志村家

※ネタバレ注意
ダークマターが出てきます。



 万事屋加入が決定し、僕は新八くんと共に、彼の家へ向かっていた。新八くんの家は、道場を営んでいたらしく、宇宙人が蔓延る前には道場生も多かったらしい。しかし廃刀令が発令されてからは道場はしばらく休業しているそうだ。

 

 新八くんの家に向かう間、過去の話を聞かせてもらった。銀さんや、神楽ちゃんとの出会い。まだ僕は会っていないが、桂さんという人や万事屋の下にあるスナックお登勢のお登勢さんについての話も聞いた。

 

「僕らの給料どころか、万事屋の家賃も何ヶ月か滞納して……本当に、お登勢さんが優しい人じゃなかったら、僕たち仕事場無くなっちゃいますよ」

 

「そっか、本当に大変なんだ。それにしてもお登勢さんって寛大な人だね。何ヶ月滞納しても許してくれるなんて」

 

「許してくれてる訳じゃないんですけどね。銀さんに、家賃払えー!ってよく言いに来てますし……。着きましたよ、ハイセさん」

 

 新八くんの家についた。道場の話を聞いて、薄々予想はしていたが、やはり大きい。The日本家屋といった感じだ。

 

「ハイセさんは少し待っていてください。今から姉上に説明してきます」

 

「うん、わかった」

 

 新八くんはそう言って、家の中へ入っていった。本当に大きいなぁ、一家族の家と考えると中々大きめな部類に入るんじゃないか。そんなことを思いながら周りを見ていると

 

「こんばんは。新ちゃんから話を聞きました。姉の志村妙です」

 

「こんばんは。今日から万事屋になりました、佐々木琲世です。よろしくお願いします」

 

「あらあら、礼儀正しいわね。話は新ちゃんから聞いたわ。入って入って」

 

「お邪魔します」

 

 新八くんのお姉さん、志村妙さんと挨拶を交わし、家の中に入る。志村妙さん、美人な方だったな。銀さん、実は気になってたりして。そんな邪推をしていると

 

「お家がないって聞いてね、万事屋には銀さんと神楽ちゃんがいるし、お登勢さんにお願いするのも申し訳ないじゃない?だからしばらくの間、この部屋で寝泊まりしていってね」

 

「はい。よろしくおねがいします。もちろん、給料など出ましたら部屋分などしっかりとお支払いしますので。」

 

「本当に礼儀正しいわねぇ。銀さんに爪の垢を煎じて飲んでもらいたいぐらい」

 

「ははは……。ありがとうございます」

 

 銀さん……。寝転びながら雑誌を読んでいた時から思っていたが、もしかして結構ちゃらんぽらんなんだろうか?新八くんとか神楽ちゃんも色々と頑張っているんだろうな。

 

「これから、新ちゃんが軽く家を案内するからよろしくね。私はその間夜ご飯を作るから」

 

「わざわざ、ありがとうございます。本当に、住む場所から食事まで……」

 

「いいのよ。佐々木くんは今大変なんでしょ?だから今後の出世払い、期待してるわね」

 

 志村妙さんが料理を作ってくれるみたいだ。どうしようかな。僕はだいぶ困っている。食事は食べれないし、かといってせっかく用意してくれるというのに断ることも出来ない。

 これは、店長が教えてくれたあの技を使うときなのかもしれないな。

 




ダークマターが出るといったな、すまんなありゃ嘘だった。
※ダークマターが準備運動をはじめました。
いっちにー、さんし。


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志村家 G

遂に…出てくる…
ダークマター…


「誰だ君は!?お妙さんと一体どういう関係なんだ!!」

 

「え……、僕は今日、万事屋に加入した佐々木琲世です」

 

「そうか、佐々木くん。では、なぜ君はお妙さんの家でお泊り出来るんだ!?」

 

「それは、僕、今、記憶喪失で、帰る家も覚えてないんです。なので、働いてお金稼げるようになるまで、新八くんの家の部屋を借りることになったんです」

 

 え?この人は誰だろう。いきなり現れて、色々と質問してきた。もしかして、志村妙さんの彼氏や、旦那さんだろうか?そう考えると、知らない男が家に上がり込んだら怒っても仕方がないよね。

 

「すみません。あなたは妙さんの恋人でしょうか?」

 

「あぁ、(将来はその予定だから)そうだ。いやー、びっくりしたよ。そういうことだったのね。全く焦ったなぁ。そうだ、俺の名前を言ってなかったな。俺は近藤勲、よろしくな佐々木くん」

 

「はい、よろしくおねがいします」

 

 誤解が解けたみたいでよかった。でも新八くんからお姉さんに恋人がいるなんて話は聞いてなかったな。すこし不自然だけど、さすがに恋人じゃない人が家にいたら怖いし、なんなら恋人でも少し怖い。近藤さん、結構重めな人なんだな。

 

「なぁ、佐々木くん。万事屋に入ったんだろう?なら今後は俺達とも交流があるかもしれないな。その時はよろしくな」

 

「そうなんですか?」

 

「そうとも、万事屋のやつらとは何回か仕事を一緒にしてるからな。そのうち佐々木くんとも会うと思うぞ」

 

「そうなんですね、よろしくおねがいします」

 

「おう、よろしく」

 

 僕と近藤さんが握手をしようとしたとき、近藤さんが吹き飛んだ。

 

「なに、自然と家ん中いるんじゃ、おどれはぁ〜!?」

 

 志村妙さんだ。夜ご飯を持ってきてくれたのだろう。しかし、恋人である近藤さんになぜパンチを?最近、喧嘩でもしたのだろうか?

 

「どうしました、姉上!」

 

G(ゴリラ)よ、叩き出しといたわ」

 

「またですか……ゴリラも懲りないですね」

 

「志村さん、最近喧嘩でもしたんですか?」

 

「喧嘩?してないわよ、害虫が家にいたら駆逐するでしょ?それと一緒よ」

 

 これは……ひどい嫌われようだ。とんでもない喧嘩があったに違いない。少ししか話していないが近藤さんは悪い人では無いと思ったので、少しお手伝いをしてあげようと思った。

 

「志村さん、近藤さんも悪いところがあったのは分かります。ただ、話も聞かないで追い出したら、一生そのままですよ」

 

「お妙でいいわよ、ハイセくん。いいのよ、あのゴリラは一生そのままで」

 

「恋人同士、喧嘩するのはあると思いますけど、許してあげるのも、また優しさだと思います。確かに、近藤さんは重そうですけど」

 

「は?」

 

「ハイセさん!違う違う!恋人じゃない!あいつストーカーだから!しかもかなり悪質なストーカー!」

 

 新八くんから話を聞いた僕は、大変な間違いをしていた事に気付いた。近藤さんは恋人ではなくストーカーだったのだ。だからお妙さんはあんな態度を……

 

「お妙さん、本当にすみませんでした。近藤さんからは恋人だと聞いていたので、てっきり本当かと……」

 

「いいのよ、後であのゴリラぶち◯すから。それより、早くご飯食べましょ。冷めちゃうわ」

 

「僕、今日はお昼が重かったから夜ご飯はいいや……」

 

「ありがとうございます。いただきま……す?」

 

 僕は、目の前の景色に目を疑った。




準備運動をしていたのはダークマターだけでなく、ゴリラストーカーこと、近藤さんもでした。
正直、知らない男がお妙さんの家に来たら、近藤さんも動くよね。


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志村家 ダークマター

おまたせしました。やっと登場です。


 これは料理……そもそも食べ物なんだろうか。見た目は一言で表すなら炭だ。ボロボロの炭。この世界の人達は、炭が主食なのか?もしそうなら、

 

 実は僕人肉しか食べれないんですー、テヘ。

 

 って言って納得されたり……いや、そんなことは無いな。確実に引かれる。冗談に思われたとしても、つまらないから空気感が悪くなる。本当になんだこの黒いのは。見てるだけなのに考えまでおかしくなってしまった。

 

「お妙さん、これはなんの料理ですか?」

 

「玉子焼きよ」

 

「アハハ、そうですか〜」

 

 黒い玉子焼きがこの世に存在していることに驚いた。いや、本気で言っているのか?料理と言いつつ実は炭でしたドッキリの方がまだ納得できる。

 黒い玉子焼きに驚いていて、気付かない内に新八くんの姿が見えなくなっていた。近藤さんの話をしていた時までいたはずなのに……。

 

「そういえば、新八くんは?」

 

「今日はお昼ご飯をたくさん食べたんでしょ?さっきそう言って部屋に戻っていったわ」

 

「それ嘘です。おにぎりぐらいしか食べてるの見てません」

 

「もう、新ちゃんったら。ちょっと呼んでくるわね」

 

 一人だけ逃げるなんて許さない。僕は味の拒絶反応に耐えて、新八くんもこの黒いのを食べるんだ。共に逝こう。

 

「いや、本当にお腹いっぱいで、今日はたくさん食べたんですって」

 

「ハイセくんが、おにぎりしか食べてるの見てないって言ってたわよ」

 

「僕を道連れにしましたね!自分は断れないからって!」

 

「道連れ?その話、詳しく聞こうかしら」

 

 うわ、お妙さんの笑顔怖いなぁ。なんていうか凄味がある。これ、食べないと僕もヤバそうだ。

 

「じゃあ、僕いただきますね」

 

 口に入れる寸前、これから訪れる地獄を想像しながら僕は咀嚼した。その瞬間、僕に訪れたのは衝撃だった。一応食べ物だから、と想像していた生臭さや、吐きそうになるくらいの味覚の暴力は感じられないかった。

 

「……」

 

「ハイセさん?」

 

「どう?ハイセくん」

 

 久しぶりだった。食べ物を食べてすぐに吐き出さなかったことは。なんだか久しぶりに人間らしい食事ができたような気がする。ちょっと目が潤んできた。

 

「その……なんというか……ありがとうございます」

 

 喰種は舌の味覚が人間のそれと大きく異なる。食べ物から栄養は摂取出来ないし、人間の飲食物だと珈琲以外は普通に飲むことが出来ない。このことから考えると、この黒い玉子焼きは人間の食べ物としてカウントされていない。そのため、喰種の僕が食べても味覚の拒絶反応が出ないのだろう。かといって生物が食べていいものなのかと問われると微妙なところではある。

 

 この黒玉子焼きを食べてから思考が冷静になってきている。ふと二人の方を見てみると、新八くんは心配そうな目でこちらを見ていて、お妙さんは少し嬉しそうだ。

 

「けっこう、いけま……」

 

 世界がまっくらになった。

 




やっと、ダークマターを出せました。あと、何話かして、原作長篇に入りたいなぁと思ってます。


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嵐の前の静けさ

展開をうごかしていくぞぉ〜。


 万事屋加入から一週間が過ぎた。僕に起きた変化は、黒い玉子焼きを食べてから、人間と同じ味覚に戻ったことぐらいだろう。控えめに言って泣くほど嬉しかった。

 

 味覚が変わってから、僕は色々な人間のご飯を食べた。卵かけご飯に玉子焼き(黒くない)、サラダにサンドイッチ、蕎麦にパフェ、酢昆布……と今まで食べてこれなかった分を食べた。

 

 月山さんにも黒い玉子焼きを食べさせてあげたいな。美食家って言われてる程だし、人肉以上に味の種類が豊富な人間の料理を食べたら、ただでさえオカシイ月山さんはもっとおかしくなるだろうな。

 

 トーカちゃんや、ヒナミちゃんにも食べさせてあげたいけど、食べたあとに倒れてしまうのが難点だなぁ。

 

 そんなことを考えながら蕎麦をすすっていると、長髪の男性が横に座った。

 

「ハイセくん、それは何蕎麦だ?」

 

「月見蕎麦ですよ。桂さんもたまにはかけ蕎麦以外注文してみたらどうですか?」

 

「いいか、ハイセくん。武士たるもの質実剛健、かざりけの無いかけ蕎麦を啜るのが侍というものだ。君の上司みたいにパフェやチョコレートといった軟弱な物を好んで食べるようでは、あいつのように尿が甘くなってしまうぞ」

 

 武士と侍のどっちなのだろうか?と思ったりするが、確かに、銀さんはビックリするぐらいの甘党で糖尿病予備軍と言っても過言ではない。

 

「あいつも攘夷志士たるもの、己を鍛え、週に一回はこうして蕎麦を啜らないといけないというのに……

あ、ハイセくん攘夷s」

 

「結構です」

 

「そっか……。今作初めてだな。セリフ途中で遮られたの」

 

「というか、新八くんと神楽ちゃんは誘わないのに、どうして執拗に僕を勧誘するんですか?」

 

「ハイセくんは、立派な大和男子だろう?新八くんより年上だろうし、そう考えたらそろそろ攘夷してもいい年頃だなと思ってな」 

 

 この人は攘夷を何だと思っているのだろうか?銀さんも桂さんと会話をするとき、基本ツッコミがメインになるし、この人は中々のボケキャラなんだなと理解できた。

 

「まぁ、ふざけた話はここまでで、本題を話そう。これから銀時にも伝えに行こうと思っているのだが、君から伝えてもらったほうが確実かもしれないな」

 

「何かあったんですか?」

 

「ここ最近、辻斬りが頻発していてな。攘夷志士も狙われている。木刀を携帯している銀時も狙わるやもしれん。一応、ハイセくんも攘夷志士だし気をつけて欲しい」

 

「真剣な話でふざけないでください。僕は万事屋です。さりげなく攘夷志士にしないでください」

 

 辻斬り……桂さんも帯刀しているし、銀さんも強さは攘夷志士の桂さんと同等くらいと聞いているので、問題はないと思うが、万が一新八くんやお妙さん、神楽ちゃんが狙われたら危険だな。銀さんや真選組の人達にパトロールをお願いしたほうがいいかもしれない。

 

「ありがとうございます、僕も気をつけます。桂さんも有名人だし、気をつけてくださいね」

 

「ははは、俺を誰だと思っている。狂乱の貴公子、または逃げの小太郎。その名の通り、逃げてみせるさ」

 

 そう言って彼はお店を出ていった。すごい格好良く出ていったが、まだ蕎麦頼んでないんだよな。店員さんも何だったんだろうという表情をしている。

 けど、桂さんなりに警戒を促してくれたのだろう。万事屋に戻ってこのことを銀さんに伝えないといけない。

 

 

 この時桂さんと一緒に万事屋に行けばよかったと、今になって思う。いつも一緒にいたエリザベスがいなかったこと、攘夷志士を狙う辻斬りがいたこと。桂さんなら大丈夫と慢心していたのかもしれない。

 その時までは嵐の前の静けさを平和と勘違いしていた。

 




次回、紅桜篇突入!!


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紅桜篇
不穏


紅桜篇突入!!


「桂小太郎殿とお見受けする」

 

「人違いではなかろうか」

 

 橋の上で佇む2人。両者とも、只者ではない雰囲気を醸し出していた。

 

「心配するな。俺は幕府の犬でもなんでもない」

 

「犬は犬でも血に飢えた狂犬といったところか。それにしても、まさか注意を促された当日に来るとはな。あの子の勘はかなり良いとみた。やはり彼は攘夷s」

 

「何の話をしている、桂小太郎」

 

 ここは原作とは少し異なり、シリアスな空気感が少し緩和されてしまった。

 

「ふっ、こちらの話さ」

 

「まぁ、良い。俺も相棒もあんたのような強者の血を欲していてねぇ。ひとつやりあってくれんかね」

 

 桂が振り返る。辻斬りよりも、辻斬りが持つ刀を見て、桂は驚愕した。

 

「貴様、その刀……」

 

「ありゃ、こんなものかい」

 

 血が舞う。片方は倒れ、もう片方は刀を鞘に戻す。その刀はまるで血のような紅色をしていた。

 

 

 

ー万事屋ー

 

「お茶です」

 

「新八くん、お茶ありがとね」

 

「おい、なんで黙ってるんだよ、コエーよ。なんか言えよ」

 

「新八、お前のお茶が気にくわなかったネ。きっとお客さんはお茶じゃなく珈琲派だったね」

 

「確かに、それはあるかも。僕もお茶より珈琲派かな。琲世の琲は珈琲の琲だし」

 

「ええ、ハイセさんまで何言ってるんですか……」

 

 新八くんはそう言って、珈琲を注いだカップをお客さんとして来ているエリザベスの前に置く。

 

「珈琲です」

 

 エリザベスは動かない。ここまで固まっていると、謎の緊張と恐怖を感じる。また、同時に電話が鳴った。

 

「おれぁ、ちょっと電話出てくる」

 

「新八、こうなったらあれをだすしかないネ」

 

「あれ、銀さんの私物だよ?さすがに……」

 

「仕事行ってくる。お前ら、お客さん頼んだぞ」

 

「銀さん!?そんな……」

 

「持ってくるよ、神楽ちゃん」

 

「もってこいヨ」

 

 銀さんは、仕事と言って外出してしまった。神楽ちゃんと新八くんは何やら怪しい会話をしている。定春はあくびをしていた。おネムなのだろう。そろそろ眠ると思う。

 

「どうぞ!いちごオレです!」

 

 新八くんがいちごオレを持ってきた。なるほど、銀さんのいちごオレを……。いちごオレエリザベスに掛かっちゃってるよ。大丈夫か?お、泣き始めた。

 

「やったネ、新八!」

 

「やったよ!お客さんはいちごオレ派だったんだ!」

 

「そんな感じの涙には見えないけど……」

 

 しかし、いちごオレが要因で泣き始めたのは事実だ。一体何がなんだか、まだ分かることが少ないな。

 

「エリザベス、少しずつでいいから教えてほしい。何があったのかな?」

 

 あまり考えないようにしていたが、最初からずっと臭いがしていた。これまでの平和を壊すような血の匂いを。




ハイセくん、早めに血に気づく感じにします。
喰種なんで。


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紅桜

紅桜篇を復習してますが、完璧になぞんなくてもいいなと思ったり。
ある程度筋が通ってれば問題ないかなと。


「万事屋です。お電話頂いて参りました」

 

 刀鍛冶の音が鳴り響く。万事屋銀ちゃんの銀ちゃんこと坂田銀時は、電話を受けた刀鍛冶の店まで来ていた。

 

「お電話頂きました万事屋です!」

 

 刀鍛冶の音が鳴り響いている。刀の素である鋼を叩いている音で聞こえてないのだろうか。

 

「電話もらった万事屋です!!聞こえてますか!?」

 

「何のようだい!?」

 

「で!ん!わ!もらった!!!万事屋!!!です!!!」

 

「新聞ならいらないよ!!」

 

「ばーか、ばーか、う◯こ、ち◯こ、どうせ聞こえてないだろ」

 

 その刹那、坂田銀時の顔に金槌が飛んできた。

 

「いやー!大変すまないことをした!!見てわかると思うが刀鍛冶をしているからね!!!汗もかいていたし、手が滑ってしまったんだ!!」

 

「いえいえ、大丈夫ですよ。……ぜってぇ、聞こえてたろ」

 

「申し遅れた!私達は兄弟で刀鍛冶を営んでおります!私は兄の鉄矢と申します!おい!鉄子!お前も名乗らんか!」

 

「鉄子です」

 

「声が小さいぞ!鉄子!!これでは万事屋さんがお前を呼ぶときなんて呼べば良いか分からなくなってしまうではないか!鉄子!」

 

「いえ、もうわかりました。さっきからすごい大声で言ってるんで」

 

「そうでしたか!それは失礼しました!!」

 

 少し気まずい銀時は、何かしら話をしていないといけないと思い、行動に移した。

 

「それにしても!廃刀令の時代に刀鍛冶なんて大変ですね!!」

 

「万事屋さん!来てもらったのは他でもない!!ある事を頼みたかったのです!」

 

「無視ですか!お兄さん!!…話聞けよ」

 

「先代の傑作、紅桜が何者かによって盗まれてしまった!」

 

「なるほど!紅桜とは一体なんですかぁ!?」

 

「万事屋さんにはこの紅桜を探して頂きたい!」

 

「お兄さん!話聞いてください!会話のキャッチボールしましょう!!」

 

「先代である我が父、仁鉄が打った紅桜は月明りに照らすと淡い紅色を帯びることから、なんとも妖しい名刀であると評されていましてな!」

 

「そうですか!?それで犯人に心当たりは!?」

 

「しかぁし!紅桜はただの名刀ではない!!打った親父が紅桜を完成させた翌月にぽっくり逝ったことを皮切りに、紅桜に関わる者のほとんどが凶事に見舞われたことから妖刀と恐れられたものなのです!!」

 

「それ、探そうとする俺もヤバくない!?不幸な目に合っちゃうんじゃないですか!?」

 

「坂田さん!お願いします!!これ以上、紅桜による被害を出させる訳には行かないんです!」

 

 そう言って、鉄矢は頭を下げる。元々座っていたこともあって、土下座のような形に近い。銀時は話を全く聞かないことに対して苛立ちはあったが、目の前の男の熱意だけは伝わった。

 

「兄さんの耳元で、大きな声で話すんだ。そうすれば聞こえる」

 

「もしもーし!!!お兄さんー!!!」

 

「うるさい!!!!」

 

「ブベラッ」

 




今後は話の内容だったりが原作と異なる可能性が高くなります。もちろん、ストーリー自体は一緒にするつもりです。ただ、今の状態だと紅桜篇をナゾッている感じがつよいので……。


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辻斬り

うおお!!!戦闘シーンか!?


 エリザベスの目的が桂さんの捜索だということが分かった。僕たちは血の付いた所持品を確認し、桂さんに何か起こったのだと理解した。

 

 それにしても、まさか辻斬りについて注意された次の日に桂さんが襲われるとは……。その辻斬り、かなり恐ろしいのではないだろうか。場合によっては赫子を使わないといけないかもしれない。

 

 エリザベスとなんやかんやした新八くんと、神楽ちゃんと定春、そして僕と分かれて捜索を行うことになった。神楽ちゃんと定春が桂さんを、新八くんとエリザベス、僕が辻斬りを探す。昨日の今日で、辻斬りが現れるとは考えにくいが、地道な調査で、辻斬りを探し、なにより、桂さんを見つけなければならない。

 

「それにしても遅いなぁ」

 

 時刻は、夜の21時を回っていた。銀さんならまだしも、まだ未成年の新八くんや神楽ちゃんが戻ってきていないのはおかしい。何かあったのではないか。

 僕はそう考え、夜の歌舞伎町に駆け出していった。

 

 

 

 琲世が万事屋で待機していた頃、新八の方では動きがあった。

 

「おい、お前ら、こんなところで何してる?」

 

「うわぁ!って、なんだぁ、奉行所の人か〜」

 

「なんだぁ、じゃなくて、こんな所でなにしてるんだ?怪しいぞ?」

 

[お前に語る理由などない]

 

「いや、お前ら分かってるのか?ここらへんでは最近……」

 

「辻斬りが出るって」

 

「っ!辻斬りだ……!」

 

 刀が振り下ろされそうになる瞬間、何かが刀とぶつかる。

 

「刀を探しにこんなところに来たら……。新八、大丈夫か?」

 

「銀さん!」

 

「見たことあるツラだなぁ?」

 

「嗅いだことのあるにおいだ」

 

 男が、被っていた菅笠を取る。その男は以前にも見たことがある岡田似蔵であった。

 

「似蔵か」

 

「人斬り似蔵!?あなたが巷を騒がせていた人斬りだったなんて!!」

 

「アンタだったとはね。桂といいアンタといい、この刀は災いを呼ぶ妖刀と聞いていたが、強者を呼ぶ刀だったようだ」

 

「桂!?あなたが桂さんを!?」

 

「あぁ。お前たちに渡しておいた方が良いと思って持ってきたよ。いやはや、本当に桂は男かい?この滑らかな長髪……。実は女なんじゃないか?」

 

 そう言いながら似蔵は、桂の物と思われる、髪の匂いを嗅いでいた。その様子を見ていた銀時は似蔵に斬りかかった。

 銀時が似蔵と鍔迫り合いの状態になる。あまりに素早い動きに新八は一瞬動きを見失っていた。

 

「負けねぇって言ってんだよ。ヅラがお前みたいなただの人殺しによ」

 

「そう怒るなよ。確かに、俺一人じゃあ勝てないだろうな。だが、斬ったのは俺じゃなく相棒なんだ」

 

 何回か斬り結び、洞爺湖で剣戟を防いでいる銀時は、似蔵の腕から妙な絡繰や管が生え、刀と結びつくのを目前で見た。

 

「おいおい……。生き物みてぇな刀って聞いてたが……、これは、生き物じゃなくて、化け物じゃねぇーか!!」

 




エリザベスと新八は、本作では確認できない所で、しっかり、上下関係出来てます。琲世は、少し引きながらその光景を眺めてました。

気になる方は、新訳紅桜篇をチェック!!


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化け物

戦闘シーンって難しいですねぇ


 似蔵の右腕が膨れ上がった瞬間、今まで以上の力が掛かり、思わず後ずさってしまう。

 

 何だあの強さ……。ヅラはコレにやられたってのか……。

 

 剣戟を交わしてはいるが、銀時は防戦一方、受け流すのでギリギリになっている。それに比べて似蔵は、すずしい表情を浮かべながら攻撃を繰り出している。

 その戦いは、実戦経験が少ない新八からも、明らかに銀時が不利であることが理解できた。

 

「銀さん!!」

 

 新八の声援も虚しく、銀時は橋ごと川に叩き落されてしまう。銀時は既に満身創痍の状態だ。しかし、ボロボロになりながらも洞爺湖は手放さない。なんとか、反撃を加えようとするも、似蔵が突きを繰り出す。

 

 激しい衝動音の後、新八が目撃したのは、折れた洞爺湖と刀が突き刺さって、大量の血を吐いている銀時だった。

 

「銀さーん!!!離して!エリザベス!!」

 

「昔のアンタはこんなもんじゃなかったはずだ。やはり刀を失った者はこの程度なのか。あの人と共に戦っていたのがアンタじゃなく俺だったら……。戦争に負けることもなかった!アンタは、あの戦争に負けて剣を失った腰抜けだ……!だからこんな所で死ぬんだ。白夜叉……」

 

「剣を失った?失ってねぇさ。剣ならあるぜ。とっておきのがもう一本……!」

 

 新八が刀を振るった。エリザベスの刀を奪い、銀時を守るために壊れた橋から飛び降りたのだ。勇気ある一撃は似蔵の右手を斬り落とした。

 

「これ以上、銀さんに手を出してみろ!次は左手も貰う!!」

 

「おお、僕やるねぇ。付き合ってあげたい所だけど、五月蝿い連中が来ちまったようだ」

 

「何をしている!」

 

 似蔵はその場から姿を消した。タイミング良く奉行所の役人たちが来たため、新八には目もくれず、撤退したのだった。

 

「銀さん!銀さん!!」

 

「おお、新八……。よくやったな……」

 

「銀さん!!!」

 

 銀時が目を閉じた。新八が叫ぶ。しかし、銀時は大量の血を流しため意識を失ってしまっていた。

 

 琲世が現場に到着した際に見た光景は、血だらけで運ばれる銀時とそれに付き添う新八、折れてしまった洞爺湖だった。

 

 

 

ーー停泊している船ーー

 

 男が一人、船首に立っていた。煙管を吹かしながら月を眺めている。

 

「おいオマエ、痛い思いしたくなかったら答えるアル。ヅラはどこにいるネ?」

 

「こんなにデカくて明るい月が出ているから、今夜はかぐや姫でも降りてくるかと思ったら……。大層なじゃじゃ馬姫が降りてきたじゃあねぇか」

 

 男が振り返る。左目を頭の包帯で隠した男は、神楽の傘を突き付けられながら、平然と振り向いた。

 

 神楽は男の表情を見た刹那、寒気を感じた。力では勝っているだろうこの男に、なんとも言い難い恐怖を感じたのだった。

 




戦闘シーン難しすぎる!!


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悲哀

戦闘シーンの練習!!


「本当に撃つアル!」

 

「……」

 

 向き合う2人。高杉には恐怖を感じていないのか。刀を抜こうとする素振りもない。

 

「その武器を降ろしな!でなけりゃガキだろうと撃つ!」

 

 新たに、女が現れた。2丁の拳銃を構え、神楽を狙っている。

 

「冗談じゃないっスよ!本当に撃つッス!」

 

 宣言通り、銃弾が飛んできた。神楽は軽々と銃撃を躱し、また子との距離を詰める。上からまた子、股下には神楽が構え、戦況が静まる。

 

「どこの者か知らないが、大人しく降伏しろ!さもなくば当てるっす!」

 

「また子、ちゃんとパンツ替えた方が良いアル。染み付きパンツが丸見えネ」

 

「そんなことない!ちゃんと毎日取り替えてるもん!」

 

「ふっ。そう思うならそれでもいいんじゃないアルか?また子の股はシミだらけ〜」

 

「絶対違うもん!晋助様〜、本当ですよ。この小娘、適当な嘘を吐いてるんです!」

 

 また子が、染み付きパンツで気を逸らした瞬間を狙い、神楽は彼女のバランスを崩し、船内に声を掛ける。

 

「ヅラー!ここにいるんだよネ!?匂いがここにあったって定春が!いるんでしょ、ヅラー!」

 

 神楽が声を掛けるが、反応はない。焦った隙を狙ったかのように、気付いたら周りを包囲されていた。また、動きを止めた瞬間、肩と足に銃弾を貰う。

 

「大人しく投降しなさい。まだ、見た所少女。15にもなっていないだろうに。大人しくすれば、あんまり痛い思いをせずに済むからね。皆さん、殺してはいけませんよ。女子供を殺しては侍の名が廃りますからね」

 

「呆れた。先輩は本当にロリコンっスね」

 

「ロリコンじゃない、フェミニストです。私は幼気な少女を愛でる訳ではない。健気に支え、手を差し伸べるのです」

 

 神楽はそんな勧告には耳も向けず、包囲している男達に攻撃を繰り出す。足技、傘、体術を駆使し、圧倒的な数の差、被弾をモノともしない。

 そんな攻勢を繰り返し、船内の扉を叩き壊した時、中身を見て、動きが止まってしまう。

 

「これは……」

 

「これを見られたら生かして帰せないっすね」

 

 一発の銃声と共に、戦況が静まった。

 

 

 どうして、僕はいつもこう……。いつも、いつもだ。あんていくの時も、月山戦の時も。いつも遅い。

銀さんは、血だらけで新八くんは泣いていた。

 それに、神楽ちゃんは定春を万事屋に帰したが、行方不明だ。僕は……。

 

「ハイセ。そう自分を責めるんじゃないよ」

 

「お登勢さん。でも……」

 

「でもも、なにもあったもんじゃない。アタシ等が今、出来ることは奴らの無事を祈ることさ」

 

「はい……」

 

 今、万事屋ではお登勢さんが、銀さんを看病してくれている。あの重体で、また戦うことはないと思うが……。そういう油断が今回の事態を招いた。

 

 次は、僕も戦う。赫子から出したユキムラを堅く握りしめ、決意した。

 




スーツケース持ってると、怪しいんで、バレないように赫子に収納している感じにしてます。また、赫子はまだ使いません。人外ということをバレたくないので、どうしようもない時以外は使わないかなと思います。


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それぞれの決意

回想などもろもろ


 これは夢、坂田銀時の過去の物語。松下村塾に通い、先生や友人達と共に学び、戦い抜いた物語。

 

「おい、銀時。お前には聞こえねぇか、この声が」

 

 目の前の高杉が似蔵と重なる。高杉が自分を貫き、再び口を開く。

 

「俺ぁ、ただ壊すだけだ。獣の呻きが止むまでな」

 

 目を覚ました。悪夢を見ていたからか、飛び起きてしまったことで傷口が痛む。傍らにはお妙がいて、ウトウトしながら座り込んでいた。

 

「銀さん!起きた?私が誰だか分かる!?」

 

「まな板みたいな胸した女」

 

 顔を殴られる。重症の怪我人にここまでするかと思いながら、他の皆のことを尋ねる。

 

「新八と神楽、ハイセはどこだ?」

 

「皆は用事で外出してます。銀さんは怪我人なので大人しくしてください」

 

「用事って、おまえ……。何の用事だよ。」

 

「用事は用事です。ほら、ジャンプでも読みましょうね〜」

 

「てか、なんでお妙がいるんだ?」

 

「新ちゃんに頼まれたからです。看といて欲しいって」

 

「なんで薙刀があるんだ?」

 

「それも新ちゃんに言われたからです。怪我人は安静にしているようにしてほしいって」

 

「おれぁ、ちょっと……」

 

 少し布団から起き上がろうとすると、目の前に薙刀が突き刺さる。

 

「怪我人が動くなって言ってんだろぉ?おぉ?」

 

 あまりの迫力にうなずくことしか出来ない銀時であった。

 

 

 雨が降っている。川沿いに佇むエリザベスを見つけた僕たちは、彼の元へ歩いて行った。

 

「エリザベスさん、それはもしかして桂さんの……」

 

[皆まで言うな]

 

「エリザベス……。聞いてほしい。昨日から神楽ちゃんが戻って来ないんだ」

 

「定春が、こんな紙を持っていて……。雨で所々見えないけど、多分地図だと思う。銀さんには伝えてない。あの人、こんなこと知ったらあの怪我でも行っちゃいそうだから」

 

 

「ちょっと、お手洗い……イタタタタ!痛い痛い!」

 

「動くなって。傷口開いたらどうするんだぁ?」

 

「いやー、そのおトイレに……」

 

 お妙はペットボトルを持ちながら

 

「コレにしろ、ココでしろ」

 

 トンデモナイことを言い出すお妙と同じタイミングでチャイムが鳴る。お妙が出ると、鉄子が立っていた。しかし、お妙は鉄子を知らないし、逆も然りだ。

 

「ええと、どのようなご要件?」

 

「えっと……。あれ……」

 

「もしかして、銀さん?銀さんなら今は……」

 

「いるよ。ここにいる、入ってこいよ。……来ると思ってたぜ」

 

 

ーー宇宙ーー

 

「万斉様、扉が開きます。万斉様、扉が開きます!万斉さん!扉開きますよ!?聞こえてます!?扉が開くんです!!」

 

「……。あぁ、わかったでござるよ」

 

「万斉様、無事に帰ってきてくださいね」

 

「あぁ」

 

 場所は宇宙、たった一人であの宇宙海賊春雨と話をしに行く万斉。普通に考えた場合、まともに相手にもされないはずだが、高杉一派は普通ではなかった。

 

 拙者の口八丁でこいつらをどうにかして動かす……。冷静に考えれば難しいところだが、これは一世一代のプロデュース……。

 

 気づくと彼は笑みを浮かべていた。

 

 その姿を遠くから眺めていた男たちがいた。

 

「宇宙にはまだまだ面白そうなのがいるね♪」

 

「おいおい……。あいつは外れにある地球って星、そこの時代遅れの侍っていうやつだよ」

 

「強いのかな?」

 

「まーた、団長の病気が始まったよぉ。いくぞ、団長。あいつは客人、客人に手を出すんじゃねぇの」

 

「なーんだ。でも侍か……。本当に面白そう」

 

 侍、そして琲世とこの男の邂逅はもう少し先の話。

 

 




紅桜篇を復習しつつやっております。
これから、長篇をすべて行うと非常に長くなると思うので、けっこー飛ばしながらやっていくつもりです。


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正体

「こっぴどくやられたものですねぇ。紅桜を勝手に持ち出したあげく、そこまでの深手を負わされ逃げ帰って来るとは。腹を切る覚悟は出来ていますよねぇ、岡田さん」

「片腕斬り落とされてもコイツを持ち帰って来た勤勉さを評価してもらいたいもんだよ。それに、コイツにもいい経験になったと思うんだ」

「あんたの最近の身勝手ぶりは、目に余るものがあるッス。しかも、晋助様を刺激するような奴ばかり狙って……。アンタ、自分が強くなったって思ってんスか。勘違いすんじゃないよ。アンタが桂に勝てたのは紅桜のお」

 

 似蔵が鬼のような形相で振り向き、座ったまま手をつき出し、紅桜の管がまた子の首を絞める。

 

「おっとぉ、わるく思わないでくれ。最近はすっかり侵食が進んできてねぇ。コイツは俺の体を自分のものだと思ってるらしい。俺への言動は気を付けたほうがいい」

 

 首を離す。また子は地面に倒れ咳き込んでいる。武市はその時まで、緊張した空気の中、動くことが出来ていなかった。

 

「岡田さん、あなたは……」

「どうにも邪魔でねぇ。俺たちはあの人と、この腐った世で暴れてやろうと集まった輩だ。謂わば伝説になるってことじゃないかい。なのに後ろでキラキラと……。目障りなんだよ。古い伝説には朽ちてもらって、その上に新しい伝説を築くんだ。今、あの人のとなりにいるのは奴らじゃない。俺達なんだ」

 

ーー万事屋ーー

 

「本当のこと、話しに来てくれたんだろ?アレは妖刀なんて言葉で誤魔化すのはナシだぜ。あの化け物、ありゃなんだ?」

「……。紅桜とは、父が打った刀を雛型に造られた、大戦艦用からくり機動兵器。電魄と呼ばれる人工知能を有していて、使用者に寄生することでその体をも操る。戦闘をデータ化し、学習することで能力を向上させる……。まさに、生きた刀。あんなものを造れるのは江戸に一人しかいない」

 

 頭を下げる鉄子。そして、願いを口にする。

「頼む、兄者を止めてくれ。高杉達は、紅桜を使って江戸を火の海にするつもりなんだ」

 

 

ーー紅桜工場内ーー

 

「酔狂な話じゃねぇか。大砲をぶっ放してドンパチする時代に、こんな刀を造るたぁ」

「そいつで幕府を転覆させるという大法螺を吹く貴殿も中々の酔狂だと思うがな!!」

「大法螺を実現してみせるホラ吹きが、英傑と言われるのさ。それに、俺はデキねぇホラぁ吹かねぇ。侍も剣も、まだまだ滅んじゃいねぇっていうことを奴らに思い知らせてやろうじゃねぇか」

「貴殿たちが、何を企み、何を為すかには興味がない!!刀匠は斬れる刀を打つのみ!!ただ、1つ言えることは、この刀に斬れぬ物はない!!」

 

 




紅桜を見つつ、あぁ、こんな感じだったなぁと思って書いてます。PSPでバクチ·ダンサーを聴いてた頃が懐かしいですねぇ。


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万事屋ブルース

ハイセを早く戦わせたい。
琲世のライバルキャラは、すでに決めています。
勘の良い人は分かってるかもしれませんね。


「おれはだしに使われたんだな。妖刀を探せっていうのも、つまり、あの刀に俺の血を吸わせたかったんだろ?または、似蔵に頼まれたか。それとも、その両方か……。それで、今更兄ちゃんをなんとかしてくれって……。お前の面の皮はジャンプスクエア?」

「すまん、返す言葉もない……。だが、事が露見すれば兄者はただでは済まないと……」

「大層、兄想いの妹だねぇ。兄貴が人殺しに加担してるっていうのに、見てみぬふりかい?」

「銀さん……!」

 

 間接的に大怪我をさせられたとはいえ、あんまりの言い草だ。お妙は注意の意味を込めて銀時に声を掛けていた。

 

「死んだ父がよく言ってた。

『刀は所詮人斬り包丁だ。使う相手は選べん。』

 私達の身体に染み付いている言葉だ。兄者は良い刀を打つことしか頭にない馬鹿だ。父を越えようといつも鉄を打ち、気付いたらカラクリについても研究し始めた。その時ぐらいから、変な連中とつるむようになった。でも、私は止めなかった。私達は何も考えず、ただ刀を打っていればいいと思っていたから」

 

 ぽつりぽつりと、言葉と共に涙を流す。

 

「刀は所詮人斬り包丁……。分かってはいたけど、あんな奴らに兄者が魂を込めて打った刀を利用されるのは悔しくて仕方がない……。でも、私一人では止められない所まで来てしまった。私はもう、どうすればいいかわからないんだ」

 

 銀時が鉄子が持ってきた封筒を持ち、立ち上がる。

 

「どうしたらいいかわからないのは俺の方だよ。こっちは大怪我するわ、ツレがやられるわで頭ん中がぐちゃぐちゃなんだよ。ほら、こんな慰謝料いらないから、さっさと持って帰んな。……もうめんどくせぇのはごめんなんだよ」

 

 手に持っていた封筒を鉄子の前に放る。封筒を手にした鉄子は頭を下げ、万事屋から去っていった。

 

「少し驚いちゃいました。銀さん、行ってしまうと思っていたから。こんな怪我でも無理をして。でも、無茶できたのは若い時だけですよね。もう若いって言ってられるのもギリギリのラインになってきましたもの。それは落ち着きますよね。もちろん、今は落ち着いていた方が良いんですけど」

「そんな、若さについて触れないでくれる?ちょっとしつこすぎじゃない?それにお前も行くなって言ってただろ、それでいいじゃあねぇか。というか、お前が買ってきたの、ジャンプでもヤングジャンプ!お母さんみたいなまちがいしてんじゃねぇよ!……買い直してきてくれ」

「はいはい、わかりましたよ。私が買い物で出掛けるからといって外に出たりしたら駄目ですよ?安静にしててくださいね」

「おう、わかってらぁ」

 

 背中を向けてそう言葉を発する銀時。複雑な、しかし確信めいたものをお妙は感じていた。

 

 少し時間が経ち、のそりと立ち上がる銀時。頭を掻きながら玄関に向かうと、彼の服一式と可愛らしい傘が置いてあった。

 

〈私のお気に入りの傘です。必ず返してくださいね〉

 

 大雨の中、銀時に返された封筒を落としてしまう。封筒を拾おうとした際に、自分が入れたお金以外のものが入っているのに気づいた。

〈鍛冶場で待ってろ〉

 

 可愛らしい傘を差しながら、銀色の髪をなびかせた傷だらけの男が歩く。

 

「かわいくねー女」

「馬鹿な人」

 




そろそろ、戦闘シーンが……!ハイセの戦闘シーンが来ます!


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砲撃

多分、ハイセの戦闘シーン来ます……。


 樽の蓋が開き、中から新八が顔を覗く。前回、定春が持っていた地図を辿り、浪人がたむろする港に着いた。

 

「ハイセくん、エリザベスさん、二人共どんな感じだろう?」

 

 新八が周りを見渡す。ハイセからは、防衛以外ではなるべく戦闘を避け、神楽を救うようにと伝えられている。また、そういった潜入がしやすいようにすると聞いているが、一向に彼らの姿が見当たらない。

 

「見渡す限り浪人達だよ……。バレないように怪しいことはしないように……」

 

 彼が見たのは、桂の格好を真似たエリザベスの姿だった。

 

「何やってんだあいつ……!あんなの怪しんでくださいって言ってるようなもんじゃないか……!」

 

 雑談や世間話をしていた攘夷志士達も、長髪の攘夷志士風未確認生物を見て驚きを隠せていない。

 

「おい、お前怪しいぞ。ここに何をしに来たんだ」

「本当に怪しいな。こんな生物見たことないぞ。鳥の天人か?」

「おいおいおい、こいつは怪しいを絵に描いたような奴だな!」

 

 攘夷志士達の気まぐれで、エリザベスが死んでしまうような状況で、エリザベスが動いた。

 

[すいません、道をおうかがいしたいのですが]

 

 攘夷志士達が少し気構える。

 

[地獄の入り口までのな!!] 

 

 プラカードを掲げると同時にエリザベスの口が開き、中から大砲の砲身が姿を表す。そのまま、まっすぐの方向で停泊している船に向けて砲撃した。

 

 

 

ーー船内ーー 

 

「ったぁー、苦しかったぁ。あいつ本当に何なんスか?」

 

 近くのドアから、高杉一派の攘夷志士が吹き飛んでいる。

 

「こっちはもうボロボロっすよ。一人の小娘にいくら時間掛けてるんスか。もうヤッちゃいましょうよ」

「まだ、何も聞き出せていないのに、殺す人がありますか。それに、この年頃の娘は後ニ、三年で最高に輝きます」

「はぁ……。ロリコンも大概にしてくださいよ。先輩」

「ロリコンじゃない。フェミニストです。それに、見てください。あなたに撃たれた傷が一夜にして回復しています。それに尋常ならざる剛力、この白い肌……」

「先輩、いい加減にしてください。」

「だから、お前違うって。フェミニストだって言ってんじゃん!ただの子供好きの」

「それがロリコンってことなんスよ!」

 

 少し呆れた風な武市が立ち上がり、磔に拘束されている神楽に向き合う。

 

「もう、いいですよ。あなたには理解できそうにないから馬鹿が」

「お前が馬鹿」

「あれですよ?私が言っているのは、これは夜兎の特徴と一致しているということです死ね」

「お前が死ね」

 

 夜兎……。宇宙随一の戦闘民族にして、宇宙最強と言わしめる星海坊主の種族である。

 

「なら、こいつはどこに雇われてきたんスか?」

「それが、いくら聞いてもズラとしか言わないんズラ」

「はぁー。先輩、それ舐められてるんすよ。私がこんな小娘一捻りにしてやります」

 

 神楽の前に立ち、威圧しながら尋問を開始する。

 

「あんた、て」

 

 また子の頬にタンが付く。拘束されている神楽がタンを飛ばしたのだ。あまりの行為に、また子は2丁拳銃を構える。

 

「殺すぅ〜!アンタ、今どんな立場だと思ってんスか!?」

「待って!まだ情報聞き出せてないし、この子はニ、三年後すっごいことになるから!」

「離してください!武市変態!!」

「変態じゃない!先輩だから!」

 

 拘束されながらも挑発をやめない神楽に、また子がキレる。

 

「体中のタン汁よ〜!」

「ガラガラガラガラガラ。」

「やめなさいって、二人共。女の子なんだから」

 

 暴発寸前まで貯められたタンを両者が発射する。真ん中にいた武市の両頬に、タンが付いた瞬間、船に爆発音と衝撃が走った。




ハイセの戦闘シーン、次出します。
本当です。本当ですからぁ〜。


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修羅

今度こそ…。


 目の前で大砲がぶっ放された。攘夷志士達は腰を抜かし、仲間たちを呼んでいるようだ。

 

「エリザベス……」

 

 名前を呼びかけ、駆けつけようとした時に、刀を投げつけられた。

 

[早くいけ]

「でも、エリザベスが……」

「大丈夫だよ、新八くん。ここは任せて、先に神楽ちゃんを」

「ハイセくん!」

 

 エリザベスによる砲撃音を聞きつけてやってきた琲世が、新八に告げる。

 

「ありがとうございます!エリザベスさん!ハイセくん!待ってて、神楽ちゃん……」

 

 新八くんが走っていった。よく見ると、空から船が何隻か来てるみたいだ。少し厄介だなと思っていると、

 

「エリザベス、僕も追いつくから、船を頼める?」

 

 その声と同時に、桂一派の攘夷志士が集まってくる。

 

「エリザベスさん!別の攘夷志士一派です!桂さんの報復を名目に、高杉一派とドンパチやろうって魂胆かと!」

「俺は、捜索もせずに桂さんをすぐ諦めてしまった……。まだチャンスがあるっていうなら、俺はエリザベスさんと共に……」

[お前たち……琲世、この人数対処出来るか?]

「任せてください。なんなら、先に船乗っちゃってますよ」

 

 桂一派が船をなんとかするため、自分達の船へ急ぐ。こちらの状況としては、30人以上対1だろうか。しかし、こちらはあんていく時、特等達と連戦し、白い死神とやり合ったんだ。こんな、数だけでは相手にならない。

 

「白黒のあんちゃん。今、降伏するなら痛い思いはしない。ちょっと捕まってもらうだけだ」

「んー、そうですね。逆かな。死にたくない、痛い思いしたくない人は、この場からにげてください……ね」

 赫子は出さないが、喰種として全力で威圧してみる。何人か恐怖を覚えているが、殆どが一人の僕に人数差で勝てると思っているみたいだ。

 

「おいおいおいおいおい、死んだわコイツ」

「あんちゃん……。人数差を分かっているのか?ざっと30対1だ。それに、見たところ浪人でもないし、武器も持っていない……。最後の警告だ。ここで、降伏するんだ」

「優しいですね。大丈夫ですよ。少し鈍ってるかもしれないので、お手合わせお願いします」

 

 バレない程度に赫子を出し、そこからユキムラを装備する。

 

「あんちゃん……。行くぞ、お前ら!」

「おおおおおおお!ベッ」

「うぉぉぉぉぉぉ!ボッ」

 

 ユキムラを握り、まずは突撃してきた5人の内、少し前に出すぎていた2人を狙う。別に命を取るつもりもないので、銀さんの洞爺湖をイメージし赫子内で、切れ味を下げていたユキムラを振るう。2人を倒した流れで残りの三人も斬り伏せた。

 

 うん。少しイメージと動きに差があるかな。こっちに来てからの闘いは初めてだし、ここで慣らしておかなくちゃ。

 

 

ーー数刻後ーー 

 

 戦況は、圧倒的だった。30人以上いた攘夷志士達は、残り10人をきっており、数人は逃亡、残りの何人かは腰を抜かしている。

 

「ヒィ……。ば、化け物……」

「言われ慣れてますよ。あ、ここからは追いかけて来ないでくださいね。少し加減が出来ないかもなので……」

 

 空を見ると、バイクに乗った似蔵が船を落としているのが分かる。

 あれを倒すなら、手加減は難しそうだ。全力は出せないが、本気を出そう。

 

 僕は一度目を閉じ、再度開ける。再び開いた左目は、血のように赫く染まっていた。




やっと、戦闘シーン……。
今まで、戦闘シーン出す出す詐欺みたいだったので、ちゃんと出せてうれしいです。


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襲撃

次は、例の人がスタンバってます。


高杉一派の船に向けて、上空から砲撃が行われる。

 

「真選組か!?政府の犬にもう……」

「いや、違うだろう。別の一派かもしれん」

 

 

ーー船内ーー

「クソ、これも全部似蔵のせいっス。刺激するようなことばっかり……」

「いえ、それだけじゃありませんねぇ。おそらく、紅桜の情報が漏れたのでしょう。桂一派は最近は穏健派として活動していると聞きます。そのため、我々の武装蜂起を阻止しようとしているのかもしれません」

 

 二人は目的の部屋にたどりつき、拘束されていた神楽を前に会話を続ける。

 

「もしかしたら、すべてコイツを助けるための陽動かもしれないっスよ」

 

 

ーー船外ーー

 

「あー、あー。お前らの目的は分かってるっス。こいつっスね。こいつの救助が真の目的ってのは分かってるっス!砲撃を直ちにやめなければ、コイツが……」

 

 船の先頭に磔されている神楽もろとも、砲弾が船が直撃した。

 

「違ったみたいですね」

「そうみたいっスね」

「おい!呑気に話してる場合アルか!?ワタシ砲弾ぶつかるかもしれないネ!人質を真っ先に殺す馬鹿がどこにいるヨ!急いで拘束を外」

 

 再度砲弾が直撃する。神楽がいた辺りが煙によって見えなくなっていた。

 

「しまった!小娘が!」

「あぁ、あとニ、三年で……」

 

 煙が晴れた。磔の状態で拘束されたままの神楽を抱えた新八が現れる。

 

「おまたせ。神楽ちゃん」

「新八ぃ〜!やっぱお前はやれば出来るやつだと思ってたネ!時代は新一ではなく新八アル!!」

 

 

 

ーー船内ーー

「よぉ、お苦しみの所失礼するぜ。お前のお客さんだ。よっぽど派手にやってくれたらしいな。おかげで幕府より先に、面倒な連中ともやり合わなきゃいけねぇようだ」

 

 蹲っている似蔵のもとに、高杉がやってきた。似蔵は、軽く振り返るが、紅桜の侵食がひどく、すぐにまた蹲ってしまう。

 

「桂、やったらしいな。おまけに銀時ともやりあったとか。村田も使って……。どうだい、さぞ立派なデータが取れたことだろう。村田も喜ぶだろうよ。あいつは刀が強くなることしか考えちゃいねぇ」

「アンタはどうなんだい?」

 

 その一言で、高杉の表情が一変する。軽い笑みを浮かべていたはずが、冷たさを感じるような無表情へと変わった。

 そんな表情の高杉が、似蔵へと近づいていく。

 

「昔の同士たちがやられちまって悲しんでいるのか、それとも……」

 

 高杉が刀を振り下ろす。それと同時に似蔵の右腕部分が隆起し、紅桜が刀を受け止めた。

 

「ほぉ、随分と立派な腕が生えたじゃねぇか。仲良くやっているようで安心したよ。文字通り一心同体ってやつか」

 

 高杉が刀を納め、部屋から去っていく。

 

「さっさと片付けてこい。あいつら全部沈めたら今回の件は不問にしてやる。どちらみち、連中とはいずれこうなっていただろうしな」

 

 高杉が、部屋から立ち去る直前にこちらに振り向いた。

 

「それから、二度と俺たちを同士なんて言い方するんじゃねぇ。そんな甘っちょろいもんじゃねぇんだよ、俺たちは。次言ったらその刀ごとぶった斬る」

 

「あれは、本当に斬ろうとしてたねぇ」

 

 侵食されたための汗か、それとも冷や汗か。似蔵は汗をかきながらそう呟いた。




次はVS紅桜になります!


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戦闘シーンだなぁ。


 敵の船からの砲撃を避けるためか、船が上空に向けて飛び始めた。そのこともあって、船首が上に向くため、必然的に地面が坂のような状態になる。

 新八や武市、また子は走っていた。足を止めれば、後ろの物の山に激突してしまうからだ。

 

「あんたら!一体何が目的っスか!?」

「また子さん!走るのに集中したほうがよろしいですよ!あれみたいにおぅ!!」

 

 ロリ【フェミニストです。】の頭に缶が激突し、そのまま、物の山に突っ込んでいった。

 

「神楽ちゃん!カッコよくおまたせとか言ったけど、もう無理!だめだ!助けて神楽ちゃん!!」

「そりゃあねぇーゼ、ぱっつぁん。ほら、足を動かすネ。駆け足アル」

「お前は気楽でいいな!!」

「新八、私、ここでヅラを探したけど見つからなかったね。銀ちゃんやハイセとはどこで合流する予定アルか……?」

 

 再度、船に砲撃が直撃する。爆発の後、新八の手元に神楽がいなくなっていることに気がついた。

 

「シンパチー!」

「神楽ちゃん!」

 

 何とかして、手を掴んだ新八だが、尽力虚しく、手を離す直前、後ろから新八ごと引っ張られた。

 

「「エリザベス!」」

「こんな所まで来てくれたんだね!」

[色々と用があってな]

 

 ほっとしていたの束の間、エリザベスがニ等分される。

「「エリザベス!!」」

 

 

 

ーー船内の別の場所ーー

 

 船を3隻ほど断ち切った似蔵は、侵食のため、一時撤退していた。

 

「侵食……。ひどくなっているねぇ……。所で、僕は何のようだい?初めて嗅ぐにおいだねぇ」

「その腕、前に聞いたより化け物に近づいているんですね。あなたを倒します。理由なんて聞かないでください」

 

 赫い。似蔵はヤツの光を視てそう思った。しかし、その光はどこか見覚えのあるような鈍い光でもある。

 少し考えた後に思い出す。白夜叉と少し似ているのだ。

 

「そうか。白夜叉の小僧か。しかし、そんな禍々しい光ではなかっ……」

 

 鎬を削りあう。紅桜が反応しなければやられる可能性もあった一撃だった。

 

「ただの坊やじゃないみたいだっ!」

「それはどうもっ!」

 

 剣戟が繰り返される。双方とも油断ならない状態での闘いであるが、似蔵は、ハイセの持つ武器にも違和感を覚えた。

 

 紅桜とは違うが、禍々しさを感じる。少し持ち主と似ているような……。

 

「坊や、若いからと言って甘く見ていたよ。名は?」

「佐々木琲世」

「なるほど、赫いの。名は覚えたよ。けれど、ここで仕留める。もう容赦はしない。ここからは殺し合いだ」

「僕を殺そうとするんです。僕にヤラれても文句はなしですからね」

 

 向かい合い、今まで以上の力で衝突した。

 




戦闘シーンが続きゃぁす。


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赫眼

戦闘シィン!


 紅桜とユキムラがぶつかり合う。それぞれ似ているようで異なる、禍々しい刀達は、何度斬り結んでも折れることはない。

 

「中々、やりますね!結構強いんじゃないですか!?」

「俺も驚いたよ。この紅桜にここまで対抗するなんて」

 

 ハイセは焦りを隠せない。本気を出せば勝てると思っていたこともあり、ここまで相手にダメージが通らないことに焦っていた。

 

 同じく、似蔵も動揺していた。戦艦を一刀で落とせる紅桜があってしても、致命傷を与えられない。むしろ、膠着状態になっているのが信じられなかった。

 

「ほんと、厄介な刀ですね!」

「俺の相棒は、特別だからねぇ!」

 

 戦況が変わったのは、ほんの一瞬だった。一瞬の隙を、紅桜は逃さない。焦りで大雑把になっていた所を狙い、ハイセの腹を切り裂いた。

 

「がっ」

「おっと。これは勝負がついたねぇ。出血で死ぬか、ここで楽になるか?好きな方を選びなよ」

「さっき、ここからが本番みたいなことを言ってましたよね。僕もここからが本番です……よ?」

 

 ハイセの眼が、血のように赫くなる。また、水流のような攻撃が荒々しい暴力のように変わって来ているのだ。

 

 似蔵は、焦りを感じ始めていた。これは、ちょっとまずいんじゃないかねぇ。紅桜といえども……。ならば……。

 

 似蔵が紅桜でハイセを弾き飛ばす。難なく着地したハイセではあるが、相手の今までにない攻撃に、警戒を強める。

 

「愉しい、いい時間だったよ。けれど、そろそろ終わりにしようかねぇ。赫いの」

「あなたの負けって意味ならいいですよ」

 

 双方の間に静かな時間が流れる。先程までの戦闘が嘘かのように静まっていた。

 砲弾が船に直撃した瞬間、双方が刀を斬り結び、そのまますれ違った。

 

 似蔵が跪く。紅桜の右手側を抱えて、うめき声をあげた。紅桜がダメージを受けたのか、時々スパークが生じている。

 

 反対にハイセは立ってはいるが、再度腹を大きく切断されている。このままだと本当に死んでしまう可能性があるため、一度、この場所から離れた。

 

「おい!!大丈夫か!?紅桜がここまでのダメージを!?一体誰が……!?」

「おそらく、とっておきの刀とやらかねぇ。紅とは違うが、禍々しさと儚さが共存しているような赫だったよ」

「とにかく!!少し紅桜を見よう!!侵食も進んでいるようだしな!!」

「よろしく頼むよ」

 

 

ーー別船内ーー

 

 かなりの深手を負ってしまった。紅桜という刀、赫子なしだとここまでとは……。人間ではないと隠しておけるのも時間の問題かもしれないな。お腹の傷はそろそろ再生が終わりそうだし、少し休もう……。

 

 

ーー船頭ーー

 

 刀を鞘に戻す高杉。珍妙な生物を斬り、子供2人を視認した。

 

「おいおい、ここはいつからコスプレ会場になったんだ?ガキが来ていい所でもねぇぞ」

「ガキではない。桂だ」

 

 声とともに高杉が刀を構えたが、桂の攻撃が早く、高杉の腹に、一文字の傷が生じた。

 




生きてたんですね!


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刀と思い出

紅桜も、そろそろ終演に近づいて来ました……。


 

 原付に乗って移動する銀時と鉄子。船が墜ちていく様子を眺めながら、現地へと急ぐ。

 

 「おいおい、ありゃすでにおっぱじまってるんじゃないの?」

「成長した紅桜は戦艦10艦分の戦力と同等とされている。あんな船じゃ戦うこともままならないね」

「戦艦10艦って……。想像つかねぇよ」

「お○ぱいがミサイルのお母さん1000人分の戦力だ。」

「それはお母さんじゃねぇよ!!」

 

 鉄子は運転しながら後ろにいる銀時に刀を渡す。

 

「これを」

「これは……」

「私が打った刀だ。木刀では紅桜に太刀打ちできない」

「刀は良いよ。この鍔の装飾なにこれ?うん」

 

 失言直前の銀時が、地面に落とされる。鉄子は心外だという表情で答えた。

 

「うんこじゃない!これはとぐろを巻いた龍だ!」

「俺がうんこ言う前にうんこって言ったよね?それもう自分でうんこって認めちゃってるよね!?」

 

 う○こ論争をしている最中に、下の方から声が聞こえる。

 

「エリザベスさん!船の準備完了しました!」

「ですが、大丈夫でしょうか?既にこちらは3艦墜とされていますし、この船はまともな武器もありませんぜ」

「それに、桂さんだって……」

[あの船から懐かしい感じがするんだ]

 

 エリザベスの変わらない筈の表情に、可能性を感じた攘夷志士達は希望を溢れさせる。

 

「ってことは……!」

「今すぐ船へ向かいましょう!」

 

 そんな会話をこっそりと聞いていた2人がいた。

 

 

 

ーー船内ーー

 

 膝をつく高杉に、駆け寄るまた子と、エリザベス?から現れた人物に武市は驚いた。

 

「晋助様!」

「ほぉ、これは意外な人とお会いする」

 

 驚いていたのは、武市だけではなかった。

 

「桂さん!」

「この世に未練があってな。蘇って来たのさ。かつての仲間に斬られたとあっては、死んでも死にきれぬというもの。だろう?高杉」

「ククククッ。仲間ねぇ。まだそう思ってくれていたとは。ありがた迷惑な話だ」

 

 高杉が立ち上がる。斬られた腹には、教科書のような物があり、それが致命傷を防いでいたことが明らかになった。

 

「まだそんなものを持っていたとは。お互い馬鹿らしい」

 

 桂も同じ教科書を手に取る。手にあった教科書も同じように斬られ、血が滲んでいた。

 

「クッ。お前もそれのおかげで紅桜から守られたってことか。思い出は大切にするもんだねぇ」

「いいや、貴様の無能な部下のおかげさ。よほど興奮していたのだろう、生死もろくに確認せず、髪だけ斬っていったわ。対した人斬りだ」

「逃げ回るだけじゃなく、死んだふりまで上手くなったらしい。で、わざわざ復讐しに来たのかい?奴を差し向けたのが俺だと?」

「奴がお前の差し金だろうと、独断だろうと関係ない。ただ、お前がやろうとしていることを黙って見過ごすわけにもいくまい」

 

 船が爆発する。武市やまた子が驚いており、特に爆発した場所が大問題であった。

 

「貴様の野望、海に消えてもらおう。江戸の夜明けを見るまでは死ねんのでな」

 

 紅桜工場が桂によって爆破された。その爆発と共に高杉一派の増援がやってくる。同時に、神楽の拘束を斬り、神楽を解放した。

 また、思いもよらない人物が爆発にノッて現れた。

 

「アイタタタ。髪が余計パーマに……」

「「「ハイセ!」くん!」」

 




ここで、銀時以外合流しました!!


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宇宙一馬鹿な侍

原作のクライマックスに入っていきます〜


 

 休んでいる時に、後ろから爆発が迫ってくるのだから驚いて逃げるよね。でも、皆と合流出来たし、桂さんが生きてるなんてびっくりだ。

 

「おお、ハイセくん。もしかして、俺を探しに来てくれたのか!?ようこそ、ここが君の攘夷志士アカデミッ」

「オラァ!テメェ!!心配かけさせやがって!!連絡の一つくらいよこさないアルか!?」

「桂さん、生きて会えて良かったです」

 

 桂さん安定の攘夷志士勧誘のあとに、神楽ちゃんにぶん殴られている。桂さんは何かしたのだろうか。

 

「てめぇ、いつからエリザベスの中入ってやがった?いつから僕たち騙してたんだぁ!?」

「落ち着け、リーダー、新八君。これには理由があってな。敵が俺一人を狙っていると思ったから、潜伏して情報を探っていたんだ。死んでいる方が都合が良くてな」

 

 感動の再開かと思っていたが、他の二人はかなり怒っている様子だ。とりあえず、落ち着かせないといけないと思い、会話を続ける。

 

「まぁまぁ、桂さんも悪気があったわけじゃないと思うし……。ね、こうやって敵の武器を爆破してくれたんだから、さ。落ち着こう二人共」

「流石、ハイセくん!!その志、その冷静さ。ハイセくん、君は攘夷志士になれッ」

「ハイセ君が許しても僕たちは許しませんからね!というか、いつまでヒ○アカネタ!?」

「おう、ヅラ。てめぇはこの神楽が直々にぶちのめす。アルアルアルアルアルアルアルアル!アル!!

:Re」

 

 敵と共に桂さんが吹き飛んでいく。すごいなぁ、ギャグだとこんな簡単に敵吹き飛んでいくんだ。しかも、桂さんピンピンしてるし……。

 

「うぅ……。ほら、見て。敵が今にも襲ってきそうだよ。もうこれ以上は……」

「「うるせぇー!!」」

「アァァァァァ……!」

 

 竜巻の様に桂さんを振り回し、包囲していた敵の三分の一ぐらいがやられている。そろそろ、この感じ、慣れないとなぁ。

 

「あれ、船が……」

 

 また子が何か言っているが、あまり聞こえない。後ろを見ている様だったので、後ろを見てみると、船が、こちらに接近していた。そして、そのまま乗っている船に激突する。

 

 船からエリザベス達、桂一派が降りてくる。

 

「エリザベス!お前達……!」

「すみません!桂さん!勝手に兵を動かすなと言われておきながら……」

「桂さんが生きてるかもなんて思ったら……。」

[いてもたっても]

「いられなくて……!」

 

 高杉らはこの隙に、船内へと逃げていく。桂は追いかけようとするが、想像以上に敵が多く動けていない。

 

「桂さん、行ってください。ここは僕達が引き受けます。ストーリー的にこういう感じ多いだろうから、早く先に行ってください!!」

「桂さん!高杉の野郎にげんこつしてやってください!!」

「おお、わかった。結構ハイセくんもこういう感じ慣れてきたみたいで、俺としても良かったよ。ありがとう、先にいかせてもらう。お前達も、ここは任せたぞ」

 

 桂さんを先に向かわせる。桂さんを追うように神楽ちゃんと新八くんも走っていった。

 

「ハイセ!万事屋で集合アル!」

「ハイセくん!また、万事屋で!」

 

 去り際に約束を投げかけながら、二人の姿も見えなくなっていった。

 少し、嬉しいような懐かしいような想いを覚えながら、包囲している浪人達と向き合う。

 

「ここは、戦闘描写なんてないですからね!」

 

 

 

ーーー船内ーーー

 

「ハイセくん。やはり君のような逸材は攘夷志士になるべき……!貴様ら……」

 

 立ちふさがるは、また子と、武市。総帥への道を阻むように、銃と刀を桂たちに向ける。

 

「フェミニストといえども怒る事だってあります。綿密に立てた計画を邪魔されたときなどは特に……」

 

「行けよ、ヅラ。ここは私達に任せるネ」

「早く行けよ、コノヤロー」

「駄目だ!お前たちに、何かあったら、銀時に合わせる顔がない!!」

 

 桂はそう伝えるが、彼らの意思は硬かった。

 

「ヅラー、私定春の餌1年分と酢昆布1年分ネ」

「僕は、お通ちゃんのCD100枚と、ハーゲンダ○ツ100……、やっぱ200で。」

「やっぱり、酢昆布10年分ある」

「しかし……!」

「うるせぇ!そのヘンテコな髪見せて笑ってもらえ!!」

 

 これ以上は、梃子でも動かないと分かった桂は高杉のもとへと走っていく。

 

 その様子を見た武市は、神楽と新八に問いかける。

 

「この船の中であなた達だけが異質です。真選組のような政府の犬でもなければ、桂一派でもない様子。本当に、貴方たちは一体……」

「アンタ達は何者っすか!?一体誰の回し者っスか!」

 

 

ーー船上屋根ーー

 

 先程のハイセとの闘いで紅桜共に疲弊し、村田に診てもらっていた似蔵。そんな男に近づいてくる男がいる。似蔵が気づくと、その銀髪の男は、フザけた笑みを見せながら手を降る。

 

 

ーーー船内ーーー

 

 2人がフザけた笑みを浮かべ、こう叫ぶ。

「「宇宙一馬鹿な侍だ!コノヤロー!!」」

 

 

 

ーーー船外ーーー

 

「うわぁ、なんか良いタイミング逃した気がする……」

 

 特に苦戦もしていないが、とても残念な表情を浮かべて呟くハイセの姿があったとか、なかったとか。

 




詰め込み過ぎたかもしれません。
初、2000文字行きました……。


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白と紅

クライマックスに近づいて来ました……。


「この……光は……」

 

 似蔵は一瞬、目を疑った。目は見えていないが、代わりに人の光を見ることができる似蔵。そんな似蔵だが、この場では見えないはずの光を見て、少し驚き、すぐ平常心に戻った。

 

 銀時が刀を抜く。とぐろを巻いた真剣は、光を反射し、銀色に輝いた。

 

 双方がニヤリと笑みをこぼし、刹那の間に、鎬を削っていた。

 

「人が一仕事した後に、無粋な輩が転がりこんできたと思ったら、アンタも来るとはね!火事場泥棒にでも来たかい!?そんな体で何ができる!?自分が何してるか分からなくなるぐらい、おかしくなっちまったか?」

「そういうアンタも調子悪そうだぜ。どうした、顔色悪いぜ?腹でも下したか?」

「腹、壊してるのはアンタの方だろう?」

 

 似蔵の手が、銀時の腹に直撃する。痛みとショックに襲われた銀時は、攻撃と共に似蔵をはじき飛ばした。

 

「あらあら、血が出てるよ」

「おいおい、どーした。血が出てるぜ」

 

 自分の手についた血をイジりながら、挑発する似蔵だったが、手を斬られ、出血したことから、自分も斬られていたことに気づく。

 

 似蔵は、自分の手を少しの間見つめ、高笑いしながら銀時へ向けて走っていった。

 

 

ーーー船内ーーー

 

 桂が高杉一派の攘夷志士を斬り捨てる。人数は攘夷志士の方が多かったが、少しの人数差なら全く問題がないようだ。

 

 刀の血振りを行い、鞘へ戻す。目線は、堂々と手すりに腰を下ろす高杉へ向いていた。

 

「ヅラ、あれ見ろ。銀時が来てる。紅桜とやろうってつもりみたいよ。ククッ、相変わらず馬鹿だな。生身で戦艦とヤッてるようなもんだぜ」

 

 桂が視線を上へと向ける。船の屋根上では、銀時と似蔵が戦闘をしているが、似蔵と紅桜に、銀時が苦戦しているのが見て取れる。

 

「もはや人の動きではないな。紅桜の伝達指令に身体が悲鳴をあげている。あの男死ぬぞ。お前も知っていたはずだ。紅桜を使えばどうなるか。仲間だろ、なんとも思わんのか」

「ありゃ、あいつが望んだことだ。それで死ぬならあいつも本望だろうよ」

 

 

 

ーーー戦闘から少し離れた屋根上ーーー

 

 

「本望だと?」

「その通りだ!!あの男はな、正しく刀になることを望んでいた!!高杉というかがり火を守るために、また闇に戻るくらいなら火に飛び入り、その光を増長させるのも厭わん男だ!!光に目を焼かれ、もはやそれ以外見えん!!なんと哀れで愚かな男か!!しかし!!そんな善も悪も超えたところに美がある!!一振りの刀と同じく、そこには美がある!!」

 

鉄子と鉄矢の会話は続いている。

 

 

ーーー船内ーーー

 

 

 高杉が自分の刀を眺め、言葉を発する。

 

「刀は斬る、刀匠は打つ。侍は……なんだろうな。まぁ、なんにせよ、1つの目的のために存在するものは、強くしなやかで美しいそうだ。コイツのようにな。ククッ、単純な連中だろ?だが嫌いじゃねぇよ。おれも、一本の道しかみえちゃいねぇ。そのあぜ道に、仲間が転がろうが誰が転がろうが構えゃしねぇ」

 

 

ーーー鉄子と鉄矢ーーー

 

 

「あれのどこが美しい?あんなのが兄者の作りたかったものなのか?もうやめてくれ。兄者の刀で、血が流れるのをもう見たくない!」

「ならば、なぜあの男を此処に連れてきた!!わざわざ死にに来させたようなものじゃないか!!まさか、おまえの打ったナマクラで、私の紅桜に勝てると!?」

 

 激しい音と衝撃で、どちらかが壁に衝突したのだと分かった。鉄矢は、紅桜の強さを疑ってはいなかったが、衝突の煙が晴れた時、壁にもたれていたのは、紅桜。口から血を流す似蔵の姿があった。

 




土日に書こうと思ってたんですが、気付いたら月曜日、今はもう火曜日ですね。時間、過ぎるのが早く感じます。


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白夜叉と紅桜

 

(ぬぉっ!!馬鹿な……。紅桜と対等!いや!それ以上の力でやり合っているだと!?そんなはずは……!何者かの襲撃による紅桜の損傷や、紅桜の侵食によって体力が落ちている似蔵殿といっても、今までの戦闘データを経て、紅桜の能力は向上しているはず!まさか……あの男、紅桜を超える速度で成長、いやあれは極限の命のやり取りの中で、体の中に眠る闘いの記憶が蘇ったのか……)

 

 鉄矢がそう思ってしまってもしょうがないほどに、紅桜と銀時は死闘を繰り広げていた。

 

 銀時は紅桜と、何百という回数の刀を交え、切り傷を負い、重症ながら闘いを重ねるごとに、全盛期、またはそれ以上とも言えるほどの実力を発揮していた。

 

 似蔵が紅桜を振るう。直撃コースの軌道であったが、手応えがない。ふと、紅桜の剣先を見ると、銀時が刀身の上で、紅桜の右腕に刀を突き刺していた。

 

「ウウッ!」

 

(あれが……白夜叉!!)

 

 

 似蔵は、銀時の光に苛立ちを覚えていた。重症を負わせたはずだ。木刀を折り、刀を突き刺した相手に今では、刀を突き刺されている。

 

(消えねぇ。何度消そうとしても、目障りな光が消えねぇ!)

 

 そんな似蔵の怒りに呼応するように、紅桜が増幅を始める。蹲り、うめき声をあげる似蔵の肩が、蠢くように増大し、体をも巻き込むように、今まで以上に巨大化していく。その様子を見て銀時は更に警戒を強めた。

 

 

 

ーーー船内ーーー

 

 ロリコン(武市)とアイドルオタク(新八)が鍔迫り合っている。双方、実戦経験がほぼゼロであるため、ちょうど良い勝負になっていた。

 

「ほぉ、道場剣術は一通りこなしているようですが、真剣での戦闘はど素人のようですねぇ。震えてらっしゃいますよぉ?」

「これは、あれだ!!酔剣といって……酔いの震えを利用し、振動によって斬撃を強化する剣術だ!!」

「なるほど、それっぽいことを仰る……。私の剣は、志村剣といって、ひとみばあさんの震えとヒゲダンスのリズムを利用してアイーンする……そんな感じです」

「結局アイーンしてるだけじゃねーか!それに、志村けんのネタある程度並べてるだけ!全然強くないよ!その志村剣!!」

「いや、私は戦闘タイプじゃなくて、知能タイプだから。バリバリ前線出て戦うんじゃなくて、参謀だからさ。頭使うのが仕事なんだよ。戦闘はそこのイノシシ女とかに任せてるし」

 

 双方とも手が震えながら会話を続ける。しかし、同じ場にいる女達は男たちと違い、軟弱ではなかった。

 

「先輩!実戦はやらなければ、こっちがやられるっす!実践あるのみっすよ!!」

 

 神楽に2丁拳銃を斉射しつつ、新八にも威嚇射撃を行う。しかし、神楽は夜兎の身体機能を使い、銃弾を全て回避していた。

 

 神楽が、足元の銃撃を避けるため、高く跳び上がる。また子はその瞬間を待っていた。

 

「これを避けられるっすか!?」

 

 3発の銃弾が神楽に命中したのか。それぞれ当たった反応を確認したため、勝ったと思ったのだが、それは神楽の笑顔によって覆された。

 

 両手に一発ずつ、歯で一発の銃弾を防ぎ、素早くまた子の足を払い、上を取った。

 

「さんざん、わたしにタマをブチ込んでくれたアルね。死なない程度にぶん殴ってやるヨ……わたしをヤロウなんて百年早いネ小娘ぇ!!!」

 

 また子が顔を背ける。同時に天井が落ちた。

 

 落ちてきたのは紅桜。ほぼからくりの化物のようになった似蔵の右腕はほぼからくりの管となっており、その右腕には銀時が掴まれていた。ケーブルに縛られている銀時は血を流し、意識を失っていた。

 




紅桜ってよく考えたらめちゃ強いですよね……。


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侵食

 

「銀さん!!」

「銀ちゃん!!」

「何なんスか!?ありゃあ!!」

「似蔵……さん?」

 

 なぜか似蔵は、味方であるはずの武市を一撃で吹き飛ばす。壁に叩きつけられた武市は、血を吐き、気絶した。

 

「先輩!!おい似蔵!!貴様乱心したっスか!?」

 

 その返答には、うなり声しか返ってこなかった。その様子から、似蔵には意識がないのだと、また子は察する。

 

「意識が……。まさか紅桜の……。嫌な予感が的中したっス!止まれ似蔵!!」

 

 似蔵に向けて銃撃するまた子。銃弾は全て命中したが、似蔵に侵食した紅桜による影響だろうか、生身の部分も銃弾が効いていないように見える。

 銃撃を意にも介さない似蔵は、空いた左腕をまた子に伸ばし、壁に叩きつけた。

 

 

「完全に紅桜に侵食されたようだ!!自我さえない仁蔵殿の体は、全身これ剣と化した!!もはや白夜叉といえど、あれは止められない!あれこそ、紅桜の真の姿、あれこそ究極の剣!!1つの理念の元、余分なものを捨て去ったものだけが手に入れる力!!つまらぬ事に囚われるお前達に、止められる訳が無い!!」

 

 邪魔者を排除した似蔵は、今度こそ厄介な光を消そうと銀時を持ち上げる。

 

「銀さん!!」

「ギンちゃん!!」

「ウァァ、消えない。目障りな光が消えなァァァァァい!!」

 

 似蔵が右手側を刀にし、振り下ろそうとした瞬間。鉄子が飛び降り、似蔵の腕を突き刺した。

 

「鉄子!!」

「死なせない!こいつは死なせない!これ以上その剣で、人は死なせない!」

「うあぁァァァ!!」

 

 似蔵は、鉄子目掛けて刀を振り下ろすが、神楽が蹴りを入れることでそれを阻止する。

 

「アチャア!」

 

 蹴りを入れ、即座に着地する神楽。間髪入れずに、似蔵へ攻撃を仕掛ける。

 

「デカブツゥ!そのモジャモジャを!!」

 

 似蔵の脚を刈り転ばせる。その間に、新八が鉄子とは反対の腕を突き刺す。

 

「離せぇぇ!!」

 

 首には神楽、右腕と左腕にそれぞれ新八と鉄子がいるが、お構いなしに似蔵は暴れている。

 

(なぜだ。鉄子、なぜ理解しようとしない。私は紅桜のために全てを捧げた。人生に、節度さえも捨てて。私には紅桜しかない。それを失えば私には何もないのだ!そう、全てを捨てたのはあの日からだった……)

 

 鉄矢は、過去を思い出していた。一心不乱に鉄を打ち、少しでも早く父に追いつこうと考えていた日。たまたま、鉄子に語りかける父の声を聞いてしまったのだ。

「鉄子、お前は鍛冶の腕は滅茶苦茶だが、鉄矢に持ってないものを持ってる。野郎も気付いてくれるといいんだが」

 

 その日から、鉄矢は父を超えるため全てを投げ売ってでも鉄を打った。そうして彼は、紅桜を造り上げるにまで到ったのだ。

 

 鉄矢が見物している間に、全員が紅桜から振り降ろされていた。そして、落ちて動けなくなっていた鉄子を標的とし、紅桜が攻撃を加えようとする。

 

 その瞬間、鉄矢は鉄子の前に立っていた。全てを捨てたと思っていたが、それでも体は動いてしまっていた。

 

 紅桜が振り下ろされた。鉄矢は鉄子を押し飛ばし、覚悟を決めたが、一向に斬撃が来ない。目を開けると、白黒頭の青年が紅桜の刃を防いでいた。

 

「怪我はありませんか?」

「あ、あぁ」

「そうですか。なら、良かったです。こんどこそ、間に合ったみたいだ」

 

 そこには、佐々木琲世(かねきけん)が立っていた。

 

 




鉄矢生存でいきます。


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銀色の空

ハイセの存在により、鉄矢生存ルートです。


(この刀は……。なんだ……?紅桜と同様……、それ以上の禍々しさ、血の、いや命のような……?)

 

「助かった!!貴殿は……その刀はいったい!?」

「この場が済んだらお話しますよ。とりあえず、今は……」

 

 この化物をなんとかしないと。先程闘った時より一回り大きくなっている。それに、身体は管で囲まれ、両腕も管が束なり、胴体より太くなっている。機械仕掛けの赫者みたいに見えた。あちらもこちらも、大きくなってパワーアップは一緒のようだ。

 

「ええと、とにかくその女性を連れて少し離れて!ここは、僕が……」

 

 化物のような似蔵と、やられかけていた男性に意識が取られていて、血を流し気絶している銀時に今気づいた。

 

「銀さん!!あんな怪我で……」

 

 ただでさえ、重症だったはずなのに、その怪我で再度紅桜と闘うなんて……。喰種とは違い、再生能力もないのに、よくここまでやるな。怒りと感心が同時に起こる複雑な感情だ。

 

 それに、周りを見渡すと、新八くんや、神楽ちゃんもいる。目に見えた怪我はしていないようだが、この状態の紅桜と相対していたら、いつかは大怪我、最悪の場合、命を落としかねない。

 

「神楽ちゃん!新八くん!銀さんを頼む!!」

 

 銀時が捕らえられているケーブルを切断する。一撃では完全に切断できなかったため、一撃の威力を利用し、二連撃を行う。合計三連撃によるユキムラの攻撃だ。

 

 紅桜から解放した銀さんを、新八くんと神楽ちゃんが安全な場所へ移動させる。また先程の男女も気になる。神楽ちゃんと新八くんのどちらかに任せよう。

 

「新八くん!神楽ちゃん!どちらか、あの二人を頼む!!」

「はい!神楽ちゃんは、銀さんを!!僕は、あの二人の方に!」

「一丁前に指示すんなヨ!眼鏡ェ!!銀ちゃんはわたしが守るネ!」

 

 奇跡的に紅桜は、こちらだけを標的としているようだ。少し相手をして分かったことは、現在の紅桜はあまり強くない。パワーはあるが、スピードや知性のない攻撃は、避けてくださいと言わんばかりだ。

 

 

 

 ハイセと紅桜の闘いは圧倒的なものであった。スピードと、似蔵の意識が無くなった紅桜では直線的な攻撃や、力任せの攻撃が多い。そういった攻撃をハイセはスレスレで躱し、的確に攻撃を与えている。

 

 新八はその闘いを眺めていた。鉄矢と鉄子を背に庇いながら、ただ視線は目前の闘いに固定されていた。

 

(最近、争い事はあんまりなくて、ハイセくんの強さは知らなかったけど、これほどなのか……。キレイな水流のような攻撃と、たまに見える荒々しい力のような攻撃……。僕は震えながら戦っていたけど、彼は銀さん並みの強さなんじゃないか)

 

 考え事をしていた新八は、周りの状況を把握できていなかった。そのため、紅桜が、なぜか新八を狙って攻撃したことに気づくはずもなかった。

 

「新八くん!!」

 

 ハイセが新八の前に躍り出る。ユキムラで防御は出来たが、咄嗟のことだったこともあり、踏ん張りが効かず、吹き飛ばされてしまう。

 

 新八は目の前の光景がゆっくりに見えていた。自分を庇ったハイセは吹き飛ばされ、目の前には紅桜が刀を振り下ろそうとしている。

 

 (もっとお通ちゃんのイベント参加しとけばよかったなぁ)と考えていると、似蔵の顔面が斬り裂かれ、うめき声をあげながら跪いた。

 

 新八の前には、靡く銀髪。白夜叉と呼ばれている男、坂田銀時が刀を持ち立っていたのだった。

 

 




紅桜も終わりに近づいています……。


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余計なもの

 

「銀さん!!」

「銀ちゃん!!」

「良かったです、銀さん。まだ動けるみたいで安心しました」

「やっぱり、ここは銀魂の主人公、この坂田銀時が動かねぇとな」

 

 銀時は軽口を叩いているが、少しふらついていることから、限界状態にあることが分かった。しかし、今、この男に早く帰ろうだなんて言っても聞く耳を持たないだろうと考え、何かあったらすぐにサポート出来る姿勢を取る。

 

 

「鉄子。俺は剣以外の余計なものを捨てたと思っていた。家族も節度も捨て、人生を全て捧げて剣を造っていたつもりだった。けれど、あの時、お前を捨てられなんだ。中途半端だったのだな。生半可な覚悟で究極の剣を造ろうだなんて」

「兄さん……」

「余計なものなんかじゃねぇよ。余計なものなんてひとつもねぇ。全てを捨てて究極の剣を造る?違うね。てめぇは面倒くせぇだけじゃねぇか。色んなモン背負って、悩んで、生きていく覚悟がねぇやつが職人だなんだ語ってんじゃねぇ」

 

 銀時は鉄子に打ってもらった刀を構え、鉄矢に宣言する。

 

「てめぇが言った余計なものってのがどれほどの力を持ってるか、そしててめぇの妹が魂込めて打ち込んだたこの刀の切れ味!とくとその目ン玉に焼き付けな!!」

 

 似蔵が叫びながら走り出す。銀時も合わせて構え、双方が刀を振るって交差した。

 

 折れた刀身が落ちて突き刺さる。それを見た鉄矢は父から言われた言葉を思い出した。

 

「俺たちが造ってるのは武器だ。だからといって、槌を振るうのを止められない。おまんま食いっぱぐれちまうからな。だからこそ、打って打って打ち続けろ。鉄だけじゃない、自分の魂もだ。優しく清廉な人間になれ。そうすれば、ちっとはマトモに扱う奴が増えてくるだろうよ。なぁ、鉄子。お前はどんな剣が打ちたい?」

「守る剣……」

 

 

 銀時の折れた刀身がひび割れ崩れていった。それと同時に似蔵を侵食していた紅桜の管も消失していく。

 

 消失する時、紅桜は雪のように儚く、天へ昇っていくようであった。

 

 

「まぶしすぎていけねぇや……」

 

 似蔵は言葉を発して倒れた。一連を見ていた鉄矢は鉄子に声を掛ける。

 

「守る剣か。お前らしいな、鉄子。私はまだまだ打ち方が足りなかったらしい……。お前は良い鍛冶屋になれ。私はこの惨事を引き起こした当事者の1人、このまま出頭しよう」

「兄者、そんな……」

 

 その会話に琲世が、口をはさんだ。

 

「あの、すみません。お兄さんですか?お名前分からないんであれなんですけど、これの話聞かないで捕まっちゃっていいんです?ねぇ、銀さん」

「あぁ、紅桜を作ったのは大罪だ。だが、妹の想いや、てめぇが捨てた余計なもんの大切さ、その身に沁みて分かっただろ?それに、からくりについても知ってることだし、人手が足りなそうで、厄介モンでも歓迎しそうな所を知ってる。そこ行ってみろよ。駄目なら今度は嘘じゃなく、ちゃんと万事屋に依頼しに来な。依頼金はたんまり持ってな」 

「あぁ!!すまない……。恩に着る……」

 

 鉄矢は涙を流し、泣いていた鉄子へ顔を向ける。

 

「鍛冶屋は任せたぞ。鉄子、お前がこれからも剣を、そして魂を打ち続けてくれ。お前はもう、あんなに立派な剣を打ったのだから」

「兄者……」

 

 鍛冶屋の兄妹は、泣きながら抱擁を交わした。

 




こんな未来もあっていいと思いました。


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それぞれの想い

クライマックスに近い!!うおおお……。


 

「高杉、俺はお前が嫌いだ、昔も今もな。だが、仲間だと思っている。昔も今もだ。いつから違った、俺たちの道は……」

「何を言ってやがる。確かに俺たちは、最初は同じだったかもしれねぇ。しかし3人てんでバラバラの方を向いていたじゃあねぇか。俺ぁ、昔も今も変わっちゃいねぇのさ」

 

 高杉は、斬られ血が付着した教科書を手にしながら、桂に向けて言葉を発した。

 

 

ーーー甲板ーーー

 

「なんだったんだ……あいつは……」

 

 そこには、大勢の攘夷志士が倒れ伏していた。数的不利にあった桂一派ではなく、ほとんどが高杉一派であった。倒れている者達は、命に別状はないが戦闘不能の状態にされていた。

 

 しかし、桂一派も無傷ではない。ある程度けが人もいるため、けが人の移送や、高杉一派を一纏めにしておくなど、撤退準備を整えていた。

 

「おーい!けが人は運び終えたぞ!」

「よぉし!あとは、桂さんを待つだけだな!」

[万事屋もな]

「おっと、エリザベスさん、失礼しました!しかし、あの白黒頭の坊主は何なんです?多対一を難なくこなして、気付いたらどっか行っちまってるし……。桂さんと一緒に攘夷活動でもしてたんですか?」

[違う。少し前、万事屋に加入したルーキーだ。しかし、この感じだとただのルーキーじゃないな]

「と言いますと?」

[いや、わからんな。実戦経験のある青年ってところじゃないか?]

「そうですか!エリザベスさんでもわからないんですね……」

 

 桂一派がゆっくりと撤退準備をしていると、不思議と船に影が被さった。

 各々が上を見上げると、そこには大きな艦があった。艦はそのまま上空から接近し、高杉一派の船に横付けした。

 

「大きいぞ!!あの船はなんだ!?」

「援軍か!?いや違う?」

「なんでこんな所に!?あれは宇宙海賊春雨だ!!」

[撤退準備急げ!桂さん達と合流次第、すぐに撤退だ!!]

 

 

 

ーーー船のどこかーーー

 

「ヅラ、俺はお前らが国のために闘ったあの時から、国のためなんかに闘っちゃいねぇ。考えてもみろ。その握った剣の使い方、侍としての生き方を教えてくれたのは誰だ?紛れもねぇ、松陽先生だろう。俺は先生を奪ったこの国を許さねぇ。なぁ、ヅラ。お前はどうしてこの世界を享受し、のうのうと生きていられる?俺ぁ、許せねぇ。なら、この世界に、先生を奪った奴に喧嘩を売るしかあるめぇよ」

「高杉、俺も何度この国を更地に変えてやろうと思ったことか……。だが、1番恨んでいるあいつが耐えているんだ。俺たちに何ができる……。それに、この国には大事なものが出来すぎた。俺には壊せん」

 

 高杉は動かず何も言わない。

 

「なぁ、高杉。今のお前は抜いた刀を鞘へ戻す機を失い暴れている獣にしか見えない。それに、この江戸に、ただ住んでいる人をも殺しかねない貴様のやり方は黙って見てられぬ。他に方法があるはずだ。犠牲を出さずに、この国を変える。きっと松陽先生もそれを」

「イッヒッヒッヒッヒ」

 

 桂の言葉は、下衆な笑い声によって遮られた。

 



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宇宙海賊春雨

クライマックス直前!!


 

「桂だ」

「本当に桂か?こんな髪だっけか?」

「ひっこんでな。桂は俺の獲物だぜ」

 

 桂は声の方向に振り向き、いつでも刀を抜けるように構える。

 

「天人?」

「ヅラ、聞いたぜ。お前さん、銀時と一緒にあの春雨相手にやらかしたみたいじゃねぇか。俺はねぇ、連中と手を組んで、後ろ盾を得られねぇか苦心してたんだが、お前達の首を手土産に上手く事が運びそうだ」

「高杉ィ!」

「言ったはずだ。俺はただ壊すだけだ、この腐った世界を」

 

 

 

ーーー甲板ーーー

 

 春雨の艦から橋が延び、そこから天人達がぞろぞろと船に乗り込んでくる。

 

「なぜ春雨がここに!?」

[しるか]

「すごい数だ、こちらの倍はいるぞ!」

「けが人と警備以外はこちらの援護を!!」

「時代錯誤のサムライごときが」

「お前ら、サムライという先の時代の敗北者だからと言って油断するなよ」

 

 戦闘中の天人による一言に、桂一派の1人、鄙見衛輔(ひけんえいすけ)は堪忍袋の緒が切れた。

 

「ハァ……ハァ……取り消せよ、今の言葉!」

「お?なんだ?一丁前に反抗しやがって。お前らサムライが以前、大敗したのは事実じゃねえか。敗北者どもが!」

「よせ!のるな!えーすけ!」

[えーすけ]

「やめろ!えーすけ!落ち着いて闘わなくては、勝てるものも勝てない!!」

 

「俺たちは国のために、未来のために、守るために闘った!それを敗北者等とバカにされて、我慢なんか出来るものか!」

「うるせぇ!敗北ザムライ!」

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 衛輔は、勇敢に天人に立ち向う。しかし、体格差が大きい天人にあっけなく吹き飛ばされてしまった。

 

「えーすけぇ!!」

 

 

 

ーーー春雨艦ーーー

 

 男が2人、さらに激しい戦場となった甲板を眺めている。片方は天人、もう一人は高杉一派の河上万斉であった。

 

「我らは、桂と件の侍の首がもらえると聞いて……。万斉殿、聞いてる?ねぇ、聞いてんの?」

「あぁ、もちろん。聞いているでござるよ。これね、江戸でイチオシの寺門」

「そっちの話じゃねぇよ!なんで、この人が交渉人なんだ!?」

「心配いりません。大方、桂が連れてきた雑魚でござろう。直ぐに方がつきますよ」

 

 

 

ーーー甲板ーーー

 

 船内へと侵入していた天人が、吹き飛ばされた。また、天人が飛んできた方から、銀時一派が現れる。

 新八が銀時に肩を貸し、琲世は村田兄妹の護衛、そして先頭には神楽がいた。

 

「どけどけ!」

「万事屋銀ちゃんがお通りだ!」

「銀さん、大丈夫ですか?」

「おう、大丈夫だ。イテテテ、しっかし、元気良いなぁ、お前たちは」

 

 天人達が、銀時の姿を確認する。その天人たちの中には、銀時を既に知っている者もいた。

 

「あれは!?あんときの侍!」

「白髪頭だ!間違いねぇ!」

 

 それと同時に、桂が天人を斬り伏せて、甲板に姿を現す。

 

「どけ!俺は今虫の居所が悪いんだ」

「桂さん!!」

 

 圧倒的数の差で、桂や銀時たちは天人に囲まれる。自然とそれぞれの背中を守るように、円陣のような体制で、天人と向き合う。

 

「おいおい、どうしたヅラ。その髪は、失恋でもしたか?」

「黙れ、イメチェンだ。貴様こそ、そのなりはどうした?爆撃でもくらったか?」

「うるせぇな、黙れよ。イメチェンだ」

「どんなイメチェンだ」

「桂さん!ご指示を!」

「退くぞ。今、後方に船が来ている。それに乗れ。」

「しかし、けが人たちが……」

「そこは僕にまかせてください。怪我人の方達が移動できるようにそちらを重点的に援護します」

「ありがとう、ハイセくん。流石は攘夷志士だ。その間の時間稼ぎは俺たちに任せろ」

「そうだぞ、ハイセ。お前ん所に一人も天人が来ないかも知れねぇな。」

「よし!分かったな、お前達。撤退だ!!」

 



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バクチ·ダンサー

紅桜篇フィナーレ!
バクチ·ダンサーを聞いてほしいですね!


「させるかぁ!」

 

 その叫びと共に、天人達が一斉に襲ってくる。しかし、桂は悠々と敵を斬り伏せ、銀時は敵の刀を奪い、敵を斬る。別方向から来た敵は、琲世によって既に斬られていた。

 

「退路は俺たちが守る!」

「行け!」

「銀さん!」 

「皆さんの援護は僕がします!2人が殿を務めてくれている間に!」

「でも……エリー!離すね!銀ちゃーん!」

 

 エリザベスが、新八と神楽を抱え、船へと走る。琲世が進行方向にいる敵を斬り伏せながら、桂一派が撤退を開始し、すぐに見えなくなった。

 

 桂と銀時が構える。天人のリーダー格が号令を出す。その号令が闘い開始の合図となった。桂と銀時、天人達が、走り出す。

 

 桂と銀時が、天人を斬り伏せていく。桂は一本の刀で敵を斬るのに対し、銀時は、都度武器を奪いながら戦闘を行う。短刀で斬り、気づけば敵の刀で斬り伏せ、薙刀で斬り捨てる。

 双方とも無双のような状態で天人を斬り伏せ、他の者達が、撤退する時間を稼いでいる。

 

 琲世は、撤退する皆を援護しながらその様子を見ていた。

 

 2人とも本当に強い。ちゃらんぽらんに見えてもやる時はやる男なんだ。桂さんも攘夷志士の勧誘をする変な人という印象が強かったけど、強さは本物だということがよく分かった。本当に強いな。

 

 琲世は前を向き、再度援護に戻り天人を斬り伏せた。

 

 

 

 小さい天人3人が素早く桂に近づき、曲芸のような軽やかさで高く跳び上がる。そのまま、降下して攻撃を繰り出そうとしていたが、その直後に銀時が、一体の顔を蹴飛ばし、二体目には薙刀を突き刺していた。

 

 最後に残った一体は桂を攻撃することを辞め、仲間を攻撃した銀時に狙いをつける。しかし、降下した直後、銀時の刀に斬られ、命を落とす。同時に、顔を蹴られたが生きていた天人も、流れるように斬られてしまった。

 

 

 

 桂の前には、桂より一回りも大きい天人が立ちふさがる。天人は手に持った大きな棍棒を振り下ろすが、桂に避けられてしまい、両足を大きく斬られる。

 

 その拍子に膝をついた天人が最後目にしたのは、こちらに刀を振るう、狂乱の貴公子の姿だった。

 

 

 

 

 艦の上で、桂と銀時の大立ち回りを見ている万斉は、改めて、彼らの強さを認識する。

 

「あれが、坂田銀時と桂小太郎。強い。可能なら1手仕合てもらいたいな」

 

 

 

 

 銀時と桂は天人と闘いながら、言葉を交わす。

 

「銀時!」

「あぁ!?」

「世の中というのは、中々思い通りにいかぬものだな!国どころか、友一人変えることもままならぬわ!」

「ヅラ!お前に友達なんていたのか!?」

「斬り殺されたいのか!貴様は!!」

 

 天人のリーダー格の一人が銀時に襲い掛かる。暗器を投げつけるが、銀時は天人を盾にしながら、暗器を躱していく。

 

 リーダー格が銀時に近づき、二刀の短刀で斬り掛かる。鎬を削りあうが、銀時がフェイントで刀を上段で構えた。リーダー格は、防御のため短刀を上で交差させるが、銀時に武器を脚で飛ばされてしまう。

 

 リーダー格は、呆気なく斬られてしまった。天人達に動揺が走る。しかし、宇宙海賊春雨。数秒のうちに戦意を取り戻し武器を構え直した。

 

 桂と銀時は、互いに背中を合わせる。双方とも肩で息をしており、消耗しているのが見て取れた。

 

「銀時!!」

「あぁん!?」

「お前は変わってくれるなよ。お前を斬るには骨がいりそうだ。まっぴら御免被る」

「ヅラ!お前が変わっちまった時は、真っ先に叩っ斬ってやらぁ」

 

 2人が、刀を艦の上部へ向ける。そこには、高杉が煙管をふかしていた。

 

「高杉ぃ!」

「そういう事だ!」

「俺たち、次会った時は仲間もクソも関係ねぇ!」

「「全力でてめぇ(貴様)をぶった斬る!!」」

「精々街でばったり会わねぇよう、気を付けるこった!!」

 

 銀時と桂は刀を投げ捨て、船から飛び降りた。

 

 




もうちょっとだけ続くんじゃ。


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僕たちの季節

紅桜篇完結!


 

 桂と銀時が落ちていく。すぐに銀時は桂にしがみついた。桂はいつの間に用意していたのか、パラシュートを開く。

 

「フハハハ!さぁらばぁ〜!」

「逃げたぞ!撃ち落とせ!!」

 

 春雨は、桂達を逃さないよう、大砲を撃ち続けるが、中々当たらない。

 

 銀時たちは、爆風に揺られながら、空中をゆっくりと降下していた。

 

「用意周到なこって。ルパンかお前は」

「ルパンじゃない、ヅラだ。あ、間違えた。桂だ。伊達に真選組の追跡を躱してきた訳ではない。しかし、まさか奴もまだ、こいつを持っていたとはな」

 

 桂が、斬られ血の付いた教科書を出す。空中降下と、爆風により教科書のページが風で捲れそうになる。

 

「始まりは皆同じだった。だのに、随分と遠くへ離れてしまったものだなぁ」

 

 桂と銀時が、艦を見上げる。降下しているため、既に艦とは距離が離れていた。

 

「銀時、お前も覚えているか。こいつを」

「あぁ。ラーメンこぼして捨てた」

 

 

 

 

ーーー琲世ーーー

 

 既に、船からは大分離れた場所まで来た。この世界に来てから初めて強敵と闘ったけど、赫子無し、クインケだけだと、負けないけど勝てもしない状況だ。

 

 やはり、赫子が無いと決定打に欠けるな。実際のところ、赫子を使えば紅桜に勝てただろう。しかし、それは似蔵が弱っていた状態なら勝てるということで。

 

 銀さんが相手した、まだ本調子だった似蔵と紅桜に勝てたかどうかは……。正直、記憶が戻り、この世界で目覚めてからは、赫子を使っていないため、自分の限界がまだ分かっていないのが正直な所かな。

 

 昔みたいに、暴走することはないと思うけど、それでも暴走する可能性はある。あとで、誰もいない所で軽く確かめてみた方が良いかもしれない。

 

 今回の闘いより、手強い相手がいたとするなら。僕は人外だとバレてしまってもいいから、“全力”で闘わなくちゃいけない。銀さんや新八くん、神楽ちゃんに怪我や辛い思いはさせたくない。過去の僕のようにはなって欲しくない……。

 

 墜ちていく船と、何処かへ飛んでいく艦を眺めながら、僕は決意した。

 

 

 

 

ーーー真選組ーーー

 

 真選組が港に着いた時には、既に船が墜ちていくところであった。明らかに決着がついた後であるのが分かる。

 

「こりゃ、もう終わっちまったか?」

「そうですねぇ。近藤さん。俺ら出番無しでさぁ」

「クソッ!山崎!徹底的に調べろ。てかなんでミントン持ってんだテメェ。切腹してぇのか?」

「はい!了解しました!切腹はしたくありません!これは、ミントンしてる時に、緊急招集入ったんです!!」

「ハァ。ふくちょーがそんなだから、新訳紅桜参考の筈なのに出番が全く無いんでぇ。クサレマヨラーが」

「ハァ!?んでもかんでもオレのせいにすんじゃねーよ!ドグサレサディスト!!」

「落ち着け、トシ·総悟。しょうがないだろう。新訳での俺たちの出番って基本的に説明パートだけだったんだから。正直、俺たち本格的に絡ませるなら、実写の時みたいな展開にしないと。そしたら、高杉と万事屋やりあっちゃうでしょ?そのバトルはまだとっておかないとさ」

「近藤さん……。それ言っちゃおしまいでさぁ」

「俺も同意だな。だが、次の外伝真選組血風録で活躍間違いなしだから気にすんな。」

「副長。それ嘘予告なんで、ないです。嘘なんで」

「うるせぇ。早くこの騒動について調べてこい」

「分かりました!んだよもー、オチがつかないからって俺に強くあたってさ!」

 

 

 

 

 

 

 お妙が外を眺めている。きっと帰ってくる、彼らの姿を待っているのだろう。そんな時、視界の端にお気に入りである自分の傘の柄が見えた。

 

 そちらに視線を向けると、傘を指した神楽と、銀時に肩を貸す新八、それを微笑みながら見ている琲世の姿があった。

 

 お妙が手を降ると、それぞれが、お妙に手を振り返した。

 

 水溜まりに反射する太陽がギラギラと輝いていた。

 

 




【紅桜篇完結!!】

映画を見つつ、書いていたため、少しテンポが遅かったかもしれません。
そのため、今後長篇は、一旦全部見てから、つらつら書いていくことにします。
この先、セリフや流れが異なることがあると思いますので、ご了承ください。

ひとまず、紅桜篇完結!!
次は、長篇まで、後日談とかちらほら書いていこうかなと思います。
みなさん、ここまでお付き合い頂いて、本当にありがとうございます!!
これからも、よろしくお願いします!!


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幕間
監察山崎 1


一応、長篇ではないです。


 

 ある飯屋で、真選組の制服を着た2人が飯を食べている。ここだけ聞くと、普通に真選組の隊士が飯を食べているだけかと思うが、この2人は一般の隊士ではなかった。

 

 1人は監察の山崎。この山崎は、あの鬼の副長土方十四郎から直々に命を受け、監察を行う密偵のような隊士である。

 

 対するもうひとりはそう、あの土方十四郎だ。攘夷志士に対しての遠慮の無さと、鬼気迫る姿勢から、鬼の副長と呼ばれている。

 

 そんな2人が、普通の飯屋で何を話しているのか。それは、先日の騒動についてであった。

 

 彼らが通報を受け、緊急出動した時には全て終わってしまっていたあの騒動。攘夷志士達が関係していると噂が流れているが、土方はこの騒動を山崎に徹底的に調べさせていたのだった。

 

「で、なにがあったんだ?あの騒動は」

「はい、あれは攘夷志士達による争いでした。それに、その攘夷志士というのが、あの高杉と桂の様です」

「そいつは、ビッグネームだな。桂はちらほら姿を見せては、逃げていく神出鬼没な野郎だ。それに、あの高杉か……」

「はい、高杉が動いていたみたいですね。それに、妖刀紅桜も関係していたらしく」

「妖刀か。紅桜は、結構な名刀と聞いたことがある。作成者も関係者も死んだと、しかし、剣を持つってことはいつでも死ぬ可能性があるってことだ。作成者も病気か何かだろうし、眉唾ものだろうな」

 

 土方は、机に届いた丼に、大量にマヨネーズを掛け、それを食している。沖田や銀時が見たら、犬のエサと一蹴しそうな代物だ。

 

 そんなゲテモノを食す副長をそのままに、山崎は話を続ける。

 

「過激派の高杉は、紅桜とからくりを組み合わせ、対艦兵器として運用を考えていたようです。それを阻止しようとした穏健派である桂との衝突、これが今回の騒動ですね」

「高杉率いる鬼殺……鬼兵隊は、参謀の武市に、人斬り万斉、人斬り似蔵、それに紅い弾丸来島……。それに比べて桂の方は有力な配下はいなかったような……」

「それが、桂一派とは異なる、強力な助っ人がいたとか、銀髪の侍、チャイナ服の少女、眼鏡の少年、白黒頭の少年……」

「万事屋か。あいつらは以前にも、桂と既知の仲のようだし、今の所黒ではないが、過去はわからん。もし、元攘夷志士なら俺達の敵だ」

「しかし、旦那は……」

 

 真選組と少なくない関わりがある万事屋を疑うことに少し否定的な山崎であるが、土方は攘夷志士の可能性があるなら徹底的に調査を行うつもりであった。

 

「山崎、奴ら万事屋を探れ。それに、新しく入った奴は、桂の野郎にえらく気に入られているとかいないとか。しかも、うちの近藤さんとまで面識がある」

「張り込みですか?」

「そうだな。もし、黒とわかれば俺達にすぐ伝えろ。厳しいようなら斬れ。分かったか?」

「分かりました。斬るのは難しいんで、伝えますね」

「そんなに控えめ?もっと貪欲さを出せよ山崎。だから、お前はジミー山崎、地味ー山崎なんだよ」

「わざわざ地味を言い直さなくていいでしょ!?分かりました。しっかり調査します!」

 

 山崎は飯屋から出る。これからしばらく張り込み生活になることを考えると少し憂鬱になった。

 

 攘夷志士かどうか伝える、もしくは斬る。そういう命令を受けていたが、山崎は、銀時を斬る気は無かった。なぜなら、坂田銀時は、あの土方十四郎に勝った(正しくは刀を折って戦闘不能にした)からである。

 

「副長が勝てない相手に俺が勝てるわけないっつの」

 

 愚痴をこぼすが、命令に背かない山崎は、そのまま万事屋の方面へ歩いていった。

 

 




もう少ししたら、長篇に入ります。


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監察山崎 2

この頃は、ミントンでしたね。


 

 真選組監察の山崎は、副長の土方からある命令を下されていた。その命令とは、万事屋の調査である。

 

 高杉一派と桂一派が激しく争った際に、桂側へ助太刀していたという万事屋。以前、桂と万事屋の銀時が顔見知りの様に接していた事もあり、万事屋の坂田銀時が、攘夷志士である可能性が浮上していた。

 

 しかし、真選組と少なからず交流がある万事屋ということと、いつもの坂田銀時は、まるでダメなオッサン、略してマダオのような男である。それに、実力はあの鬼の副長、土方にも劣らない強者なのだ。

 

 そんな、坂田銀時を最悪斬れという命令に、山崎は内心反感を抱いていた。

 

 しかし、命令を断るという大胆不敵な行為を山崎が出来るはずもなく、現在、万事屋を監視している状況なのであった。

 

「しかし、万事屋の旦那が攘夷志士の可能性か……。旦那にそんなやる気があったのかな?」

 

 

 

 万事屋観察○日目

 

 万事屋を観察して○日目、局長の姉御があの江戸名家の柳生家に嫁ぐ事になったみたい。そして、局長は訳あってゴリラと婚約することになり……。

 なんやかんやで、万事屋と局長·副長·沖田隊長の7人で柳生家と戦闘形式の試合をすることになったらしい。

 なんでも、姉御を懸けた試合になっていたようだ。

結果は局長達の勝利。最後は万事屋の新八君が良いところを持っていたようだ。

 

 柳生家のこともあり、局長の結婚も姉御が解消してくれて、局長の片想いはまだまだ続くみたいだ。

 

 

 万事屋観察✕日目

 

 万事屋を観察して✕日目。最近はからくり家政婦が流行っており、万事屋もからくり家政婦で一悶着あったみたいだ。確かに、先日はからくり家政婦が暴走したようで、今日はその姿を一切見ていない。

 

 そして、万事屋の下のスナックお登勢に新しい人物が雇われていた。名前はたま。あのスナックにしては綺麗な人なので、少し心配もしたが、箒から炎を出したりしていたので、戦闘力も悪くないのだと理解した。

 

 

 

 

ーーー真選組屯所ーーー

 

「報告は以上です。引き続き観察を行いますか?」

「あぁ、もういい。まだ尻尾は掴めないか」

「もう、副長。疑いすぎじゃないですか?もともと旧知の仲だっただけかもしれませんよ」

「なら、攘夷志士である桂と関係があることを隠さないのがわからねぇ。俺らと桂は犬猿の仲、敵同士だ。そんな俺らの前で堂々と関係性を見せる間抜けか?あいつが……。いや、意外と間抜けだったな。よし、なら今後は切り替えて、万事屋から桂や攘夷志士の情報を探るか。そっちのほうがやりやすいだろうしな」

「分かりました!そういえば、そろそろじゃないですか?」

「何が?」

「ほら、ミツバさん!近日中に江戸に来るとか!挨拶しないんですか?」

「仕事だ。そんな暇はねぇ」

「そうですか。それにしても、沖田隊長のお姉さんですよね。どんな人なんでしょう?」

「知るか!早く業務に戻れよ」

「そんな怒らなくたって……。分かりました。業務に戻ります。」

 

 

 山崎が部屋から出ていった。それを視界の端で確認し、土方は煙草に火を点ける。

 

 土方は、煙草の煙をただ眺めていた。




よし!ミツバ篇いきますか!!


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ミツバ篇


ミツバ篇で〜す!


 

 土方が歩いている。既に日は落ち、周りには人の気すらない。そんな中、唐突に土方が後ろから刀で刺される。土方は、振り向き黒装束の男を目にした後、倒れてしまった。

 

「おい、起きろ。朝だぞ」

「あれぇ?土方さん、死んだはずじゃ?」

「馬鹿野郎、誰が死ぬか。寝ぼけてねぇでさっさと顔洗え。客だぞ」

「客……?」

 

 

 

 真選組屯所の一室では、近藤の笑い声が響いていた。

 

「そうか、それはめでたい。式にはぜひ真選組総出で出席させてもらうよ」

「でも、正直諦めてたのよ。この歳でこんな身体だから誰ももらってくれないって……。感謝しなきゃね」

「いやいや、ミツバ殿は昔と変わらんよ。キレイでおしとやかで賢いって総悟もよく話しているよ、自慢の姉だとね」

「もう、おだてても何も出ないわよ」

 

 近藤とミツバ、双方の笑い声が響く部屋を、真選組隊士が何人か覗いていた。

 

「誰だ?あのべっぴんさん」

「チクショー、お妙さんという者がありながら」

「お前ら知らないの?あの人沖田隊長の姉上様だよ。名前はミツバさん」

「よく激辛の食い物送ってくる……、アレ辛くて食えねーんだよ」

「あんなおしとやかで、物静かそうな人が沖田隊長の姉上?似ても似つかねぇな」

「そりゃそうだよ。世の中バランス良く出来てんの。姉弟の片方がしっかりしてりゃ、こっちの片方はちゃらんぽらんなの」

 

 

 その瞬間、爆音と共に近藤達のいる部屋のふすまと隊士達が吹き飛んだ。

 

 しかし、近藤は意に介さず、爆破させた張本人に挨拶している。

 

「おーう、やっと来たか、総悟」

「まぁ、相変わらずにぎやかですね」

「すんません。コイツ片づけたら行きやすんで」

 

 総悟が、山崎の首を掴み、刀の切っ先も首に突き付けている。山崎がヤラれる前に、ミツバから静止の声が掛かった。

 

「ダメよ、そーちゃん。お友達に乱暴しちゃ」

 

 総悟は、ミツバの方をギロリと睨んで

 

「ごめんなさいおねーちゃん!!」

「えええええええ!!」

 

 すぐさまミツバに土下座をした総悟。そんな隊長の姿を見て、山崎は驚き、しばらく口が空いていた。

 

「ワハハハ!総悟は相変わらずミツバ殿には頭があがらんようだな!」

「姉上、お久しぶりでござんす。遠路はるばる江戸までご足労ご苦労様でした」

「だれ?」

「まぁまぁ、姉弟水入らず。邪魔立ては野暮だぜ。おい総悟、今日は休んでいいぞ。ミツバ殿に江戸のまちを案内してやれ」

「ありがとうございます!!ささっ姉上!」

 

 礼を言うと、総悟はすぐに準備をして、ミツバを連れて屯所から飛び出て行ってしまった。

 

 

 また、爆発の音を聞き、真選組屯所で稽古の仕事をしていた琲世も近藤達へ近づいてくる。

 

「近藤さん!今の音は!?」

「局長……。あれは?」

「おお、ハイセくん。すれ違いだったね。ちょうどさっきまで総悟の姉がいたんだよ」

「そうだったんですね。やけに訓練場の人が少ないと思ったら……。分かりました。ありがとうございます。もし機会があれば一度お会いしてみたいですね」

「おう!俺からも伝えておこう!」

 

 汗をタオルで拭いながら、訓練場へと戻っていく琲世。琲世の姿が見えなくなったとき、もう一度山崎が声を掛ける。

 

「局長!ミツバさんと沖田隊長って……」

「あぁ、アイツは早くに両親を亡くし、ずっとミツバ殿が親代わりだったんだ。総悟にとっちゃお袋も同然だな。それに、今日くらいはいいだろう。男には、鎧の紐を解く場所が必要なんだ。あんな感じでな。それに、アイツはいつも弱みをみせず、片意地張って生きてるからな。そういうのはなおさら大事なんだ」

「わかりました……。今日の沖田さんは見なかったことにします」

 

 

 




ミツバ篇突入!!


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辛いもの

続き〜


 

「姉上もついに結婚ですか!そのために江戸へ?」

「ええ。しばらくは江戸にいるし、結婚後はずっと江戸だから、そーちゃんにすぐ会えるわ」

「そうなんですね!僕、とっても嬉しいっス!」

 

 飲食店にて、談笑をする姉弟。そんな2人の近くには、野次馬がいた。

 

「僕だって!プププ……」

 

 その野次馬は、真選組隊士の山崎と原田であった。山崎に至っては、今日の沖田を忘れると言いながら、堂々と観察を行っている。

 

「でも、僕心配です。武州とは違って、江戸の空気は汚いですから……。姉上の肺に障るかもしれません。ほら、見てください、あの排気ガスを」

 

 沖田は、窓の外へ指をさし、ミツバの視線を店内の外へ向けた。

 

 瞬間、山崎達へバズーカを叩き込む。その速さは、向かいに座るミツバが、沖田の行動に気づけずにいるほどだ。

 

 ほどなくして、店内が煙臭い事に気付き、ミツバが嫌な顔をする。

 

「やだ。なにこれ、臭い」

「そうなんです、姉上。江戸はこういう町なんですよ」

「そういえば、そーちゃん。江戸に来てから友達は出来た?いつも近藤さんみたいな年上の人達が周りにいるから。上手くやれてるの?」

「嫌な奴はいるし、しんどいけどなんとかやってます。それに……」

 

 沖田は周りを見渡し、丁度いい所にいた銀時を捕まえた。

 

「僕の親友の坂田くん」

 

 銀時は沖田の頭を掴み、机に叩きつける。

 

「あら、そーちゃん」

「そして、親友は突然去っていくものだ」

「すみません。チョコレートパフェ3つください」

 

 先程までとは打って変わって、銀時はミツバと沖田がいる席に座り、談笑を始めた。

 

「ハハハ、いやー、もうこいつは親友とかそんなんじゃなくて、弟って感じです!なー、総一郎くん」

「総悟でさぁ。」

「あら、そーちゃん。やっぱり年上の方じゃない」

「いえ、大丈夫っす、姉上。この人は年上でも、頭は中2ぐらいなんで」

「おいおい、そんな青春真っ盛りの中二病ではないよ、夜神総一郎くん」

「違いまさぁ」

 

 ミツバは沖田と仲良く話をする、銀時の姿をみて、何かお礼をしようと考えた。

 

「いやー、やっぱり持つべきものは親友だね。夜神月くん」

「もう、総の字すらなくなっちまったぁ。似てんのは頭だけでさぁ」

「うんうん、イカレ具合とかそっくしだもんね。新世界の神になっちゃう感じだよねー!」

「そういう旦那こそ、知能を究極に下げたLでさぁ。甘いものが大好きなようで」

「おいおい、そりゃねぇーぜ。そーちゃん。それなら、そいつぁただのコミュ障糖分野郎じゃねぇか」

「坂田さん。パフェは好きですか?」

「おお、いきなり。はい、好きですよ。弟くんのも食べちゃいました」

「それなら良かった!仲良くしてくださってるお礼に、パフェのとっても美味しい食べ方をぜひ教えてさしあげますね」

 

 そう言うと、ミツバは、パフェにタバスコを掛け始めた。ボトル一本を使ってしまい、そのまま空の容器を机に置く。

 

「おーい!お前の姉さんとんでもないよ!ご褒美パフェを罰ゲームゲテモノ料理にしちゃったよ!?」

「え……。もしかして、実は甘いモノお好きじゃない?」

「え?それは甘いモノとは言いませんよ!?」

「うっ……」

 

 ミツバが咳き込み始める。

 

「すみません。私、肺を患っていまして」

「え、そんなん食ってるからじゃないの?刺激で内蔵ズタズタじゃない?」

「ううっ……。食べていただけないんですか?」

「旦那、姉上の願いを」

 

 沖田は刀を抜き、銀時の首に添える。

 

「わ、分かった分かった。水取ってくれ」

「ウバァッ!!」

 

 ミツバが口から赤い液体を吐き出す。大量の量であり、体調も優れない様子だ。

 

「チクショウ!水も飲むなってか!!」

 

 銀時は覚悟を決め、タバスコパフェをかき込む。少しして、口から火を噴き出す。そんな銀時には目をくれず、沖田はミツバを抱きかかえる。

 

「だぁー!辛すぎる!!」

「大丈夫ですか!?姉上!?」

「大丈夫よ。タバスコ噴き出しちゃっただけだから」

 

 




沖田がかわいい。


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あの人

 

 場所は港。コンテナの上で張り込みをしている土方が、煎餅を食べている。しかし、せんべいの辛さに思わず、噴き出してしまった。

 

「何じゃあぁ、これぇぇ、水ぅ……」

「差し入れです。沖田隊長の姉上様からの激辛せんべいです」

「テメェ、山崎ナメてんのか。てか、なんでアフロ?」

「怒らないでください。怒るならミツバ殿に」

 

 沖田バズーカにより、髪型がアフロになっている山崎が大量のせんべいを入れたボウルを持ちながらそう伝える。

 

「それより、副長。どうしてミツバ殿に会われなかったのですか?局長から聞きましたよ?副長は、局長や沖田隊長と真選組前から武州での友人だったと。不審船の調査なんて、俺に任せて会えばよかったのに」

 

 土方は、懐から煙草を取り出し、火を点ける。

 

「最近の攘夷浪士達がテロ行為に用いる武器が、以前とはモノが違ってきている。廃刀令が下り、剣を失った奴らが民間から銃器や最新武器を手に入れるのは簡単なことじゃねぇ。幕府側から横流しされていることは間違いねぇんだ」

「副長。ミツバ殿と何かありましたか。」

「あぁ、何かある。間違いねぇ」

「焼け木杭に火が付いて〜みたいな」

「そうだな、火が付いたらとんでもねぇことに……、っておい!違ぇからな!ころすぞ!というかお前何でアフロ!?ホントになんで!?ころすぞおい!」

 

 ミツバと闇取引で話の食い違いが起きていることに気付き、あからさまに動揺する土方。しかし、山崎は意に介さず話を続ける。

 

「ミツバ殿、結婚するらしいですよ」

「だっ、だから関係ねぇって言ってるだろ!アフロ!おいアフロ!!何でアフロなの?おいこら!ふざけんなよ、マジころすぞアフロ!?おい!」

「相手は貿易庁みたいで、玉の輿ですなぁ〜」

「知るかよ、なんだですなぁ〜って、みたいって。監察ぶりやがって、いちいち腹立つなこいつ。ふざけんなよ」

 

 土方は、動揺を隠すため、せんべいを貪るが、あまりの辛さに再度噴き出した。それと同時に山崎が何かを発見したのだった。

 

 

 

 場面は変わり、沖田達は、ミツバの婚約者の屋敷まで来ていた。

 

「今日は、楽しかったです!姉上!でも、きょうぐらい屯所に泊まっていけばいいのに、わざわざ婚約者の屋敷で泊まるなんて」

「ごめんね、そうちゃん。今日は色々とやらなきゃいけないことがあるから。坂田さんも、本日は色々とお付き合いくださってありがとうございました」

「あぁ、気にすんな」

「では、姉上ここで。先に入ってください」

「うん、またねそうちゃん」

 

 ミツバが扉を少し押すが、手を離す。また沖田達の方を振り向いた。

 

「あの、そうちゃん、あの人は……」

「あの野郎には会わせねぇぜ。あいつは、今朝方も挨拶もせず、さっさと仕事で出てっちまった。薄情な野郎でぇ」

 

 沖田は、途端に態度が変わり、屯所の方へ歩いていく。

 

「仕事。相変わらずみたいね」

「おいおい、勝手に巻き込んどいて勝手に帰っちまった」

「ごめんなさい、わがままな子で。私のせいなんです。早くに両親を亡くしたあの子を、寂しくさせないように、甘やかして育てたから。身勝手で頑固で負けず嫌いで。そんなだからいつも一人ぼっちでお友達もいなかった。近藤さんに会わなければ今頃どうなってたか。今でも少し心配なんです。あの子はしっかりやれてるのかなって。本当はあなたもお友達じゃないんでしょ?」

「あいつがしっかりしてるかって?してるわけないでしょ?Sに目覚めたり、仕事サボったり、不祥事起こしたり、Sに目覚めたり。ホントろくでもないですよ、あのクソガキ。どんな教育されたんだか。友達だって選ばなきゃいけねーよ?俺みたいな奴とつるんでるんだから。ろくなことにならないですよ?お宅の子」

 

 ミツバは少し呆気にとられていたが、すぐに微笑んだ。

 

「おかしなひと。でも、通りであの子が懐くはずだわ。なんとなく、あの人に似てるもの」

「あぁ?似てる?」

 

 近くでパトカーが停まり、ドアが開く。

 

「おい、お前ら。こんな時間に何してる?この屋敷は……」

 

 声を掛けたのは土方であった。しかし、誰に声を掛けたのかは、近づくまでわからなかった。顔が見える距離まで近づき、その人物がミツバであることに気づくと、驚いて声が止まってしまう。ミツバも同様で、会えないと思っていた人との遭遇で固まってしまった。

 

「十四郎さん……」

 

 ミツバが名前を呟いた後、すぐに発作が起きて、そのまま倒れてしまう。土方は手を伸ばすも、身体を支える、いや、触れることが出来なかった。

 

 銀時は倒れたミツバに近づき、肩を軽く叩いて声を掛ける。同様に山崎もミツバを心配し近寄った。

 

「ミツバ殿!?」

「おい!おい!大丈夫か!?」

 

 




主人公が出てきません。


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転海屋

主人公が…


 

 布団で横になっているミツバを、医者が診療している。今の所は、安定しているようで、少し苦しそうな表情で眠っている。

 

「見た目では分からなかったし、見えないようにしていたのかもしれないですけど、思ったより状態は良くないみたいで……。旦那はどうしてミツバ殿と一緒に?」

「成り行き。こちとらパフェを地獄の激辛パフェにされたり溜まったもんじゃねぇぜ。お前はどうしてここに?」

「成り行きです。」

「そうか。ただ、そちらさんは成り行きって感じじゃなさそうだな。」

 

 銀時は大福を食べながら、神妙な面持ちをして煙草を吸う土方に問いかけた。

 

「何がいいてぇ。」

「ツラみただけでぶっ倒れちまったんだ。お宅ら以前何かあったんじゃないの?」

「お前らには関係ねェ。」

「ププー、そうですね。男と女の関係に他人が首突っ込むのは野暮ですねぇ〜。」

「ダメですよ、旦那。ああ見えて副長ウブなんだから。」

 

 銀時と山崎は、物静かな土方をこれでもかと揶揄っている。そんな2人に対して、土方は我慢の限界が来ていた。

 

「関係ねぇって言ってるだろぉがぁ!?大体てめぇ何でここにいるんだ!!」

「落ち着いてください、副長!隣には病人がいるんですよ!?」

「うるせぇ!それに、お前いつまでアフロなんだよ!?ギャグなんだから髪戻せって!!」

 

 刀を振り下ろそうとする土方を、全力で抑える山崎。その間銀時は鼻をほじっていた。 

 

 喧騒の中、部屋の扉が開いた。この屋敷の主がそこにはいた。

 

「皆さん、なんのお構いもせずに申し訳ありません。倒れたミツバをこの屋敷まで運んでくださったとか。お礼申し上げます。私は、貿易の転海屋を営んでおります、蔵場当馬と申します。」

「ミツバ殿の旦那になる方ですよ。」

 

 険しい表情をしている土方に、耳打ちする山崎。しかし、以前として険しさは変わることは無かった。

 

「身体に障る故、あまり出歩くなと申したのですが、うちのミツバがとんだご迷惑を……。おや、その制服は真選組の方ですか。ということは、ミツバの弟さんのご友人」

「友達なんかじゃねーですよ。」

 

 ふらりと沖田が現れる。蔵場の言葉を遮り、土方を睨みながら会話を続ける。

 

「これは土方さん。こんな所で奇遇だなぁ。どのツラさげて姉上に会いに来れたんでぇ。」

「沖田さん!違うんです!俺達はここに」

 

 言葉の続きは、土方が山崎の顔面に蹴りを入れたことで流れてしまった。

 

「邪魔したな。」

 

 山崎の襟を掴み、そのまま部屋を出る土方。山崎は痛みを訴えながら、土方に問いかける。

 

「いいんですか!?土方さん!!」

 

 土方達は、ミツバがいる部屋を通り過ぎる。目が覚めていたのか、外を眺めていたミツバと土方の視線が合った。

 

 

 




主人公はしばらく出ないかもです!


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武州

 

 それは、真選組がまだ江戸に来ておらず、真選組とも呼ばれていない時期であった。

 

 真選組の中核を担う、近藤·土方·沖田は武州にて同じ道場で剣を学んでおり、沖田に至ってはまだ一桁の年頃である。

 

 

 ミツバが家事を一段落させ、部屋に視線を移すと、稽古に向かうはずの沖田が横になっていた。

 

「あら、そうちゃん。お稽古はどうしたの?いつもは勝手に早起きして道場に行くのに」

「姉上。最近、嫌なヤツが来たんです。僕より後輩の癖して、敬語を使わないし、態度も生意気なんです。僕はしばらく道場には行きたくありません」

「そうちゃん……」

 

 ミツバが心配していると、外から足音が聞こえた。振り返ると、長髪を後ろで結んでいる土方が立っていた。

 

「沖田先輩、稽古の時間っす」

 

 嫌なヤツの声に反応したのか。沖田は体を起こし、声の主を睨みつけた。

 

「てめぇ!なんで人ん家に勝手に来てんだよ!」

 

 沖田は、睨みつけるだけでは納得がいかないのか、文句を言い、土方にぐるぐるパンチで近づいていく。しかし、年の差もあり、体もリーチも大きい土方には何もできずに頭を掴まれてしまった。

 

「近藤さんに連れてこいって頼まれたっす」

「このっ!離せよ!」

「さ、一緒に行きましょうか。先輩」

「イテテテテ!これが先輩に対する態度かよ!」

 

 土方は、沖田の襟を掴み、引きずりながら道場の方へ歩いていった。

 

 その様子がなんとも可笑しく、ミツバは笑ってしまう。土方も棒読みの敬語等、慣れないことをしたため、少し恥ずかしがっていたのだった。

 

 

 これが、ミツバと土方のはじめての出会いだった。

 

 

 また、近藤が土方や沖田姉弟を連れ、蕎麦屋で食事をした時のこと。

 

 

 みんなで、カウンター横一列に並び、蕎麦屋で蕎麦を食す。沖田と近藤は、普通に蕎麦を食べるが、ミツバの蕎麦は、異常であった。

 

 蕎麦の色とは思えない煉獄、赤の山がそこにはあった。しかし、まだ足りないのか、唐辛子を振り続けている。

 

 唐辛子の瓶を使い果たし、四本の瓶が殻になった時、思わず近藤が声を上げる。

 

「ミツバ殿!こんなに唐辛子を使って!!何回言ったら分かるの!?身体に障るって!!もートシ!お前からも……」

 

 近藤は、土方に助けを求めるが、味覚に関して土方に頼るのは失策だと気づいたのは後になってからだった。

 

 土方は蕎麦にマヨネーズを掛けていた。傍から見ると大きいソフトクリームを作っているかのようだ。綺麗に一本巻き終えた時、満足気な表情を浮かべていた。

 

「トシィィィ!?え!?お前!?何やってんの?マジで何やってんのぉ!?」

「味のIT革命やー」

「何食ってんの!?その感想も何!?意味わからないんだけど!」

 

 そのよく分からない感想にミツバも不思議と笑みを溢してしまう。土方が蕎麦を啜るのを見て、自分も蕎麦を啜り、味の感想を言った。

 

「味覚のソウルソサエティやー」

「え、ミツバ殿に関しては本当に分からない!死神!?死神代行なの!?辛くて死神界見えちゃってるの!?」

 

 武州の蕎麦屋には、近藤のツッコミとボケ味覚、それを恨めしそうに眺める沖田の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 




小説で回想って難しいですね。
他の人の物を改めて見直してみようと思いました。


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土方と沖田姉弟

 

 屋敷から病院へ運ばれたミツバは、看護師から厳重注意を受けていた。

 

「まーた、ミツバさんはこんなもの食べて!刺激になるんだから!こういうのは食べないでくださいね!」

「はい、すみません」

 

 看護師と入れ違いで現れたのは銀時であった。懐から激辛菓子をミツバへ手渡しする。

 

「依頼の品だよ」

「うわぁ。万事屋さん、本当になんでもやってくれるんですね」

「万事屋だからな」

「お礼はこのお菓子でお願いします」

「激辛買って、激辛貰うのか。激辛トレードだな。お前もいるか?」

「いえ!俺はあんぱんあるんで、大丈夫です!あ……」

「分かってるから出てこい」

 

 銀時が、ベッド下の人物へ蹴りを入れる。不審者の正体は山崎であった。

 

 

 

 

 

 訓練場で1人、竹刀を振るう土方。修練に励む姿は鬼気迫るものがあり、鬼の副長の名にそぐわない物であった。

 

「精が出ますね、土方さん。俺にご指導いただいても?」

 

 修練中の土方へ声を掛けたのは、沖田であった。土方は拒否せず、すぐに、2人で打ち合う形となる。

 

「聞きましたぜ。山崎使って姉上の周りを探らせてるとか?」

「あぁ。そうだ」

「姉上に、どうしてそこまでするんでぇ?」

「あぁ。お前の姉上に何かしたい訳じゃない。狙いは転海屋蔵場だ。俺と山崎で不審船調査をしていた時に、奴の影を掴んだ。調査を進めていた時に、お前らと鉢合わせたんだ。ほぼ確定で、奴は攘夷浪士に武器を密売している。幕府の貿易を担う1人が敵に上質な武器を提供しているんだ。お前の姉の旦那は俺達の敵なんだ」

「アンタって人は……!貿易、商売してるんでさぁ。そういう後ろめたい事もしなきゃなんねぇでしょうよ!」

「確かに、商売だからそういうグレーなこともしなきゃいけないかもしれん。しかし、真選組という立場である以上、俺達は江戸に危害が加わる可能性があるなら黙って見てる訳にはいかねぇ」

「姉上……。もう長くねぇんです。せめて残りの時ぐらい幸せを感じていてほしいんです。ガキだった俺を育ててたから……!楽しいことなんて……。それに、姉上の結婚がここまで遅れたのは、きっと土方さんを……」

「……。明日の夜に逮捕予定だ。準備しておけ」

「土方ァァァァ!!ウァァァァァァ!!」

 

 頑なに逮捕を諦めない土方に、姉の幸せを願う沖田の堪忍袋の緒が切れた。

 本気で頭を取りに行くが、激昂した沖田を土方は一蹴する。

 

 結果は沖田が倒れ、土方は立っていた。沖田は倒れながら、土方の背中を見ている。

 

(気に入らねぇ。本当に気に入らねぇ。あんたはひょっこり現れて、俺の好きなものを横から掻っ攫っちまうんだ。そのくせあのときには……)

 

 それは、近藤たちが江戸へ旅立つ1日前。ミツバは土方と2人で話をしていた。

 

「ねぇ、もう皆は行ってしまうの?」

「あぁ。俺達は江戸で立派な侍になるんだ」

「そう……」

「……」

「お願い!私も連れて行って。近藤さんや皆、それにそうちゃんと近くにいたい。……十四郎さんのそばにいたい……!」

「「知らねーよ、知ったこっちゃねえんだよお前のことなんか」」

 

 あの日、小さい頃に聞いた言葉と、背中が重なる。姉上はどんな気持ちでこの言葉を聞いていたのだろうか。沖田の体は衝撃で動かなかったが、顔だけは前を向いて、土方の背中を睨みつけていた。

 




そろそろ、このミツバ篇もおわりですねぇ。


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幸せ

 

 銀時と山崎が、屋上での話を終えた。その後、山崎は仕事に戻ったため、銀時1人でミツバの病室に戻ることとなる。

 

「あら、銀さん……。山崎さんと何を話していたんですか?」

「それはあれだよ。男の子同士で話すことなんていったらあれよ。ボーイズトーク知ってる?」

「幾つになっても男の子なのね。あの人達もそう。男の子同士で集まって、つるんで悪巧みしてる時が1番楽しそうで、女の子が入り込む余地なんてなかった。みんな私を置いて行ってしまったわ。……振り向きもしないで」

「こんないい女をほっぽって行っちまうとはヒドイ連中だねぇ」

「そうでしょう。だから私は、めいっぱい幸せになってあの人達を見返すの。こんな年まで1人で、身体のことでもそーちゃんには心配をかけたから……。幸せにならなきゃね」

 

 

 銀時は、ミツバの話を聞いていた時、山崎の話を思い出した。

 

「旦那、これからの話は秘密でお願いします。現在、真選組でも知っている人物は副長と俺だけなんです。くれぐれも内密にお願いします」

「え?なら言わなくていいよ。秘密とか内密とかじゃなくて、1番好きな密は檀蜜なんだよね」

「ちょっと!!今、そっちの蜜じゃないから!?甘くない方の密だから!どっちかってーと三密とかのボケにして!!……まぁいいです。先日お会いしたミツバ殿の旦那、転海屋の蔵場は攘夷浪士と黒いつながりがあるんです」

「おいおい……」

 

 病室に咳の音が響く。銀時が目を向けると、ミツバはヒドく咳き込んでいた。

 

「おいおい、大丈夫かよ、もう休んだほうがいいって。体に障るぞ」

「ケホ……ゲホゲホ……。大丈夫です。もう少し……もうちょっと誰かとお話……」

 

 ミツバが咳き込むと、少量の血が掛け布団に落ちた。医療は素人の銀時でも、ミツバの症状が悪化していることは一目瞭然だった。

 

「オイ!!ナースコールを……」

 

 

 

 

 

 

 真選組屯所では近藤と沖田、そして琲世が話をしていた。

 

「いやー、今日もありがとう。ハイセくん。君が来てくれてから、あいつらも剣の練度が高まったような感じがするよ、また予定日によろしく頼む」

「いえいえ、こちらこそありがとうございます。契約で万事屋に依頼ということになってますから、これも仕事です」

「さっさん、前から疑問だったんだがどうしてそんなに強いんでぇ?俺達みたいに戦う仕事だったのかぃ?」

「僕は、前に危険人物を取り締まる仕事をしててね。特に僕の上司……。上司の上司かな?がとてもじゃないけど勝てる未来が見えないぐらいの強い人でさ、その人によく一対一で稽古をつけてもらってたんだ。そのおかげかな」

「へェ〜。そんな強い人がいるんで。ぜひとも一戦してみてぇ」

「……そうだね。その機会があればそういうのも良いかもしれないけど、その人尋常じゃないくらい仕事量あるから、なかなか時間が取れないかな。ごめんね」

「大丈夫でさぁ。代わりにさっさんに試合してもらうことにしますよ。俺が勝っちまうかもだけど」

「おいおい、総悟〜。あんまり言ってやるな。ハイセ君だって稽古の依頼で仕事をしてるんだ。なぁ、ハイセ君。君も真選組に入らないか?万事屋は良い連中だが金があまり良くないと新八君から聞いている。それに、君が真選組ならば、今下宿しているお妙さん家へ行く正当な理由が……」

「もう、お妙さんが理由じゃないですか。真選組に興味がないと言えば嘘になりますし、万事屋にお金がないのも事実です。ですが、僕は万事屋、銀さんや新八君、神楽ちゃんと一緒に働きたいと思ったから万事屋にいるんです。でも、こうして真選組にも依頼で来れますので」

「……。そうだな。それならまた依頼で来てくれ!いつかまた、真選組加入について話をしよう」

「近藤さんもしつこい人でさぁ。さっさん、許してやってくれぇ。こうなるとしばらくはしつこいから」

「別に怒ってないですよ。近藤さん、伊達にストーカーってわけじゃないってことですね」

「俺はストーカーじゃないよ!?パトロールだから!!重点的にお妙さんの家をパトロールしているだけだから!!江戸の治安を守ってるの!!」

 

 

 3人で談笑している所に、疲労困憊の男がやってきた。

 

「すみません!沖田ミツバさんのご家族·ご関係者の方はいらっしゃいますか!?」

「俺が弟でさぁ」

「ミツバさんがの容態が悪化しています……。急いで病院に来て頂けますか?」

 

 




そろそろ……


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くま

そろそろ……ですね……


 

 

 土方は山崎と共に、以前張り込みをしていた港へ来ていた。

 なぜなら、本日転海屋蔵場を捕える予定なのである。

 

「急に容態が悪化したって……医者が、家族の者はそれ相応の覚悟はしておけと……。副長、行ってあげてください。こんな時に、よりにもよってミツバ殿の婚約者をしょっぴこうなんて……」

「……」

「あまりに酷ですよ。沖田隊長やミツバ殿の気持ちも考えてあげてください。確かに、副長は間違ってはいない。攘夷浪士に質の高い武器が渡れば、俺達の死ぬ可能性が上がります。でも、今やるべきことはこんなことじゃないはずです。土方さん……。アンタのいるべき場所はここじゃないでしょ」

「フン……。俺が薄情だと?そうでもねぇさ。てめーの嫁さんが死にかけてるのに、こんな所でこっそりと商売にいそしんでる旦那もいるんだからよぉ……!」

 

 土方は鬼気迫る表情で、密取引が行われている倉庫を睨みつける。あまりの気迫に、山崎は少し鳥肌がたっていた。

 

「ひ……土方さ……」

「おい、山崎。お前この件他言しちゃいめーな?」

「は、はい」

「知ってんのは隊内で俺とお前だけと」

「……。はい」

「んじゃ、引き続きこの件は極秘だ。頼んだぞ」

「副長、アンタまさか……。副長!!!」

 

 

 

 

 ミツバのいる病院には、沖田と近藤、銀時そして琲世がいた。ミツバが危篤とのことで、沖田達は駆けつけたのだ。

 

「総悟、もう休め。全く寝てないだろ。さっき仮眠取ってきたから、俺と代われ」

「くま」

 

 沖田は自分の目を指差し、そう一言告げる。確かに、仮眠をとったという近藤の目には大きなくまがあった。

 

「メイクだコレは」

「お二人とも本当に休んだほうがいいです。張りつめて寝てもいないし……。倒れちゃいますよ?」

「大丈夫でさぁ、さっさん。俺たちゃ真夜中の任務なんかザラにあるんで。問題ねぇんでぇ。さっさんも、少し休んできたらどうだい?ほら、そこの旦那みたいに」

 

 銀時はソファーで大きなイビキをたてている。近藤もそれをみて

 

「いいなアイツは、能天気で。つーかなんでいるの。まぁ、そういうことだ。ハイセくん少し休んでくるといい。それに、今は総悟と2人で話したいんだ」

「分かりました。外の空気を吸ってきます。二人共、本当に休んでくださいよ?しばらくしたら戻ってきますから」

 

 琲世はちらりと銀時に視線を向けて、前を向き歩きはじめた。病院の廊下から琲世の影が見えなくなることを確認した近藤は、沖田に対して話を始める。

 

「ハイセくんには、少し席を外してもらった。こういう真選組のゴタゴタ話を聞いてもらうのは恥ずかしいからな。さっそくだが、総悟。トシと派手にやり合ったらしいな、珍しいじゃあねーか。お前が負けるなんて」

「……今は野郎の話は止めてくだせぇ」

「詳しくは分からんが、またやっても同じ結果になるだろうな」

「やめろって言ってるんでぇ!!」

 

 沖田が叫ぶ。我慢していたものが、近藤の言葉によって溢れ出したのだ。

 

「なんだってんだ、どいつもこいつも二言目にはトシ、トシって。肝心の野郎はどーしたぃ、姉上がこんなんだってのに姿も見せねぇ。……昔振った女がどうなろうと知ったこっちゃねーってか?さすがにモテる男は違うときた」

「……やっぱりお前疲れてるみてーだ。寝ろ。」

「……。軽蔑しましたか」

「寝ろ」

「邪魔ですかい?俺は。土方さんと違って」

 

 近藤が沖田の胸ぐらを掴む。その時、走る足音が聞こえてきた。次に山崎の大声が耳に届く。

 

「ハァ、ハァ。局長!!局長ォォォ!!!……大変なんです!!副長がァァァ!!」

 

 




そろそろ終わるんじゃ


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惚れた女

 

「御用改めである!神妙にお縄につけ!」

「真選組だぁ!」

「くそっ!政府の犬に嗅ぎつかれたか!」

「蔵場さん!あんた、警察はなんとかできるんじゃなかったのか!?」

 

 蔵場は突然現れた真選組に動揺していたが、土方以外の真選組の姿が見えないことを知ると、落ち着き、周りの攘夷浪士に声を掛ける。

 

「皆さん、落ち着いてください。確かに、真選組に勘付かれはしました。しかし、相手をよく見てください」

「攘夷浪士なら、知らない奴の方が少ない!あの真選組、鬼の副長だろう!」

「そうですが、他の真選組は?他に真選組の姿を見たものは?いないでしょう。おそらくですが、人員を動かせなかったため、1人で強行突破しようとしたのではないでしょうか?」

「確かに……。それなら、数で囲めば勝てる!!」

「オオオ!」

「ならば、早速遠距離から……」

 

 勢いだつ攘夷浪士達を、蔵場はたしなめる。

 

「まぁまぁ、そう急がなくても。それに、少し話したいことがあるんです」

 

 

 土方は、見張りの何人かを斬り捨て、蔵場がいると倉庫へたどり着いた。

 

「おや、先日お見かけしましたね。土方さん。私をしょっぴくおつもりですか?せっかく真選組の縁者と婚約し、真選組が動きづらいようにしたのに」

「それが結婚の目的か。愛はねぇってか……」

「いえ、愛はありますよ。商人は使える道具を愛します。しかし、その道具もそろそろ使えなくなってしまうじゃありませんか!道具として使えなければあのような欠陥品、必要ありませんよ。外道だと見下しますか?」

「外道とは思わねぇよ。おれは、今にも死にそうな女の旦那を斬ろうってんだ。似たようなもんだろ」

「それにしても、役人さんの考えることはわからない。なぜたった一人で敵地へ来たんです?」

「……。俺はな、剣を振り回して、敵と殺しあわなきゃなんねぇ。だから、一緒にはなれなかった」

「……?」

「あいつにはどこかで安定した仕事してる奴と結婚して、子供産んだり家庭を作ったり、ふつうに暮らしてほしいだけ。俺ぁただ、惚れた女には幸せになって欲しいだけだ」

「なるほど、やはり役人さんの考えていることは良く分かりません」

 

 土方が剣を構え、倉庫の2階にいる蔵場を睨む。敵は多く、銃火器を所持した攘夷浪士が20~40人程はいるが、人数不利など知ったことかと言わんばかりに、土方は走った。

 

 

 

 

 ミツバがいる病院では、山崎が近藤たちに状況を説明していた。

 

「ミツバ殿の旦那が、攘夷浪士と違法な取引を行っていることを確認し、現在副長1人で、取引現場で作戦行動を開始しています!相手は銃火器を持つ攘夷浪士、人数は30~40人程です!」

「馬鹿野郎ー!なぜ俺達にそのことを伝えなかった!?」

「はい!副長から他言無用の命を受けていたこと、それに、真選組隊長の縁者から攘夷浪士との繋がりが発覚すれば、沖田隊長の真選組での立場を無くすことを考慮し……」

 

 近藤は、山崎の言葉を遮り、叫ぶ。

 

「バカヤローが!!そんなことが起きたとして、総悟を責める奴が真選組にいるかよ!?そんなことは局長の俺が認めないし、させない!!山崎!急いで、トシの元へ行くぞ!!」

「はい!局長、了解しました!」

 

 山崎が走って、通路から遠ざかっていく。近藤は、数歩進み、沖田の方へ振り返り、声を掛ける。

 

「総悟、お前はここにいろ。ミツバ殿のそばにいてやれ。それに今のお前は着いてきたら死ぬだろうからな」

 

 



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分かってた

 

「俺たちを信じろってか?待ってくだせぇ、近藤さん。俺はヤツに借りを作るのだけは御免被る。それに、俺はあんた達とは違って、てめぇの事しか考えてねぇ。だから、信じるとかなんだとか、仕事でもどこか溝を感じてた……。いや、そもそも、俺なんか邪魔だってこと……」

 

 近藤が、話し途中に沖田を殴る。沖田は銀時がいるソファーまで飛ばされてしまった。

 

「……ったく、俺には手厳しいや、近藤さん」

「いや、それはお前がガキだからだ。トシが同じことを言ったら、同じようにあいつをぶん殴ってたよ。俺たちはそういう関係(なか)だろう?誰かが曲がっちまったら、他の二人がぶん殴って正す。そうして真っ直ぐ生きてこれた筈だ。それは昔も、今も変わらねぇよ。総悟、俺は、お前が勝手に掘った小せぇ溝なんざ、飛び越して何度でも殴りに行ってやる。俺たちは幸運だぜ。そういう奴ぁ、人生でもそう出会えるもんじゃねぇ。そんな悪友を、二人も得たんだ……。だから、俺が曲がっちまったときは、お前が殴りに来てくれよ」

「……」

「近藤さん!!副長が!!」

「あ!そうだ!早くトシの所行かねぇと!他の奴には伝えたか!?」

「いいえ!まだ伝えられていません!ですが、病院の外にいたハイセさんにはお伝えしました!」

「え!?なんでハイセくん!?あの子真選組って訳じゃないからね!?屯所にも、依頼で来てくれてるだけだから!!……そんなことより、早く屯所に連絡!!可能な限りの戦力でトシのとこに行くぞ!!」

「はい!局長!!」

 

 近藤と山崎が、病室から遠ざかる。沖田はソファーに項垂れながら、ぽつりと言葉をこぼした。

 

「惚れてたんです。冷たくつっぱねられても、本気で惚れてたからこんな齢まで独り身だった。ようやく吹っ切って婚約までしたのに、またあいつだ。姉上の邪魔を何度もしやがる、ひでぇ奴でぇ。……分かってまさぁ、姉上がひでぇ奴を好きになることなんてないことぐらい。本当は分かってた、いつ死ぬかわからない身の上で姉上と一緒にはならなかったことぐらい。分かってた、野郎が姉上の幸せを想って拒絶してたことぐらい。分かってた、奴が姉上の幸せを本気で想ってることぐらい。分かってたんですよ、俺ぁ。でも、気に入らねぇよ、奴は。気に入らねぇ野郎のままで、十分なんでぇ。……。旦那、長い話聞いてくれてありがとうございます。野郎には大事なもん色々と持っていかれたが、行かなきゃならねぇ。近藤さんには死ぬって言われたんで、これが最後かもしれないんでさぁ。地蔵にでも全て話しておきたかったのさ」

「その大事なもんに、あいつも入っちまってんだろ」

 

 思いもよらぬ返事が聞こえ、沖田が振り返る。イビキをかいていたはずの銀時が目を開いてた。

 

「フワァ……あぁ、よく寝たぜ。目ぇ覚ましにちょっくら行くとするか〜」

「旦那、くま」

「て○しんに殴られた」

 

 沖田が、ミツバの病室から離れていく。

(姉上。俺は、幸せモンでさぁ。長ぇ人生の中でも珍しい、そんな悪友が3人も出来ちまった)

 



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仕事と私

 

 

 土方が敵の攘夷浪士を斬りつける。既に20人そこらは斬り捨てているが、一向に数が減ることはない。寧ろ増援で人数が多くなっている程だ。

 

 そのため、土方は一度距離を取り、コンテナの後ろに隠れ、懐からジャスタウェイ爆弾を手に取る。

 

 土方がただ隠れたと思い込んだ攘夷浪士は警戒せずコンテナへ近づいたため、土方が放り込んだジャスタウェイで爆発に巻き込まれてしまった。

 

(クソ、これでもまだうじゃうじゃと……)

 

 土方が刀を構え、数人斬り伏せる。その間に、コンテナ上にいた攘夷浪士から銃撃を受け、脚に一発被弾してしまった。

 

 土方は近くにいた敵の銃器を奪い乱射する。敵が動揺している隙に、別のコンテナまで避難していた。

 

「蔵場さん!鬼が隠れましたよ!」

「また、奇襲攻撃を行われる可能性があります。警戒して、囲むようにすれば問題ありません」

「分かりました!お前ら!手分けして探すぞ!絶対に一人になるなよ!」

 

 

 攘夷浪士も馬鹿ではないようだ。最低3人組ほどでまとまって行動し、他の浪士達と連携しつつ土方を探している。

 

 脚を負傷したため、各個撃破を目論んでいた土方であったが、攘夷浪士の連携を見て、覚悟を決めた。

 

「うおおおおおおお!!」

 

 土方に近づいていた3人組の一人を斬り、その流れでもう一人も斬り捨てる。そして、土方に気づいた3人組の1人から銃器を奪い、そのまま鉛玉を体にプレゼントした。

 

「いたぞ!北の方角!電灯から4個手前のコンテナだ!!」

「チッ!」

 

 土方はこちらに迫る敵を斬り伏せ、撃ち抜くが、弾倉の弾が尽きたため、銃器を敵に投げつけた。10人ほど斬り捨てたが、脚を負傷していることもあり、周りを囲まれてしまった。

 

 

「正直、驚きましたよ。鬼の副長の名は伊達ではありませんでしたね。この人数と武器相手に一人でここまで良くやりました」

「真選組は我々攘夷志士の天敵。早めにトドメを」

「わかりました。しかし、あなたは本当に一人でしたね。理由は分かりませんが、やはりお役人の考えていることは分からない。みなさん、もういいですよ」

 

 土方にロケットランチャーの弾が迫る。その後爆発が生じ、黒煙で土方の姿が見えなくなった。

 

「やったか!?」

「おい、それは……」

 

 煙が晴れると、そこには真選組副長だけではなく、面妖な刀を構えた白黒頭の青年が立っていた。

 

「土方さん!大丈夫……じゃないみたいですね。もう少しで真選組の方も来ます」

「ハ……ハイセ!なんでお前が!?」

「優秀な監察に頼まれたもので」

「クソっ山崎の野郎!……助かった、礼を言う」

「奥で休んでてください、ちょっと休憩したらまた戦えます?」

「俺を誰だと思ってる?俺は真選組副長、土方十四郎だ。少し息を整えてくるから、その間だけ頼むぜ」

「任せてください」

 

「誰だ!?」

「んー、名乗っていいのかな?多分大丈夫!万事屋銀ちゃん、佐々木琲世だ!」

 

 船の上では特に名乗ったり出来なくて、タイミングを逃したのを強く感じていたため、この場で名乗ってみた。けれども、相手はやはり僕のこと、万事屋銀ちゃんのこともよく分かってなかったみたいで。

 

「この数に勝てるとでも!?」

「元から一人で勝つ気はないよ」

 

 数人を死なない程度に斬り伏せ、コンテナに身を隠す。そこから、ジャンプして囲みの裏へ回って敵を叩いていく。

 

「なんだこいつは!?」

「どっかの天人だろ!身体能力が桁違いだ!!」

「後ろだぁブァ」

「なんだとぉ!?ギャ」

 

 今回は一撃離脱のような形式で戦う。喰種の再生能力を使いたくないし、数はいるけど、強い相手がいるわけでもない。土方さんや真選組の援護を待とう。

 

 10人以上斬っていると、別の所で爆発音と戦闘音が聞こえてきた。真選組が到着したのだろう。これで一安心だ。僕はコンテナ上へ跳躍し、全体の様子を見回す。

 

 ふと、港から1台の車が出ていくのが見えた。攘夷志士達が逃げたのだろうか?それは真選組に任せようと思う。

 

 一度、土方さんの様子を確認しようとしたら、姿が見当たらない。まさかと思い、もう一度車の方に視線を向けると、車の上から、刀を突き刺す土方さんがそこにいた。

 




そろそろおわりますね……


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辛ぇ

 

「トシィィィィ!!!」

 

 近藤は、敵の車に剣を突き刺している傷だらけの土方に叫ぶ。土方がなぜ、一人でここまで来たのか、沖田を遠ざけたのか。同郷で、同じ道を歩んできた者として、近藤はその答えを知っていた。

 

 (バカヤローが。総悟を隊から追い出そうなんて奴、真選組(オレたち)の中にいるかよ。仲間だろうが……。なんでも一人で背負い込みやがって、憎まれ役も進んでうけ負うつもりか。俺ぁ知ってんだぞトシ。お前がミツバ殿を……)

 

 

 土方が車に追いつく少し前、蔵場はすぐさま逃げる判断をしていた。しかし、現在の状況を考えると逃げられる可能性は少なく、逃げられたとしてもいつかは捕まってしまう。詰みに近い状況であった。

 

「とんだ誤算です。やはり、野蛮な猿と手を組もうなどと無理な話でしたか。病院へ向かいなさい、あの女死にかけらしいが人質ぐらいには……」

 

 その時、蔵場の肩に剣が突き刺さる。蔵場は痛みで叫びながら視線を上げると、脚を負傷していた筈の土方が目に入った。

 

「貴様ァァ!!おい、振り落とせ!!早く撃ち殺せ!!」

 

 蔵場の指示に従い、部下が拳銃を土方に向ける。そのまま発砲しようとした瞬間、銀時が現れ、洞爺湖で部下を叩き落とした。

 

「っ、てめぇ!!」

「安心しな、せんべえ買いに来ただけさ。てめーらで届けてやりな。その方があいつも喜ぶだろ。」

 

 銀時がタイヤに洞爺湖を突き刺し、車の進行方向を変える。その先には刀を持った沖田の姿があった。

 

 沖田の目と、土方の目が合う。沖田の覚悟が伝わったのか。土方は、銀時とは反対のタイヤに刀を突き刺し、車の速度を落とす。

 

『私を置いていくんだもの。浮気なんてしちゃダメよ、きっと自分の道を貫いてくださいね。……きっと、きっとよ』

 

 沖田が刀を上段で構え、車に、刀を振り下ろした。

車は綺麗に真っ二つとなり、少し進んで爆発する。沖田はそれをどこか悲しそうに眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミツバの病室で、沖田とミツバが話している。既にミツバは危篤状態で、家族以外の者は病室には入れないようになっていた。 

 

「姉上、ごめんなさい。俺ぁ、ろくでもない弟だ。結局、姉上の幸せを奪ってきたのは……俺。ごめんなさい。ごめ……」

 

 息も絶え絶えなミツバが、沖田の顔に手を添える。

 

「そーちゃん……いいの。よく頑張ったわね。立派に……なった。本当に……強くなった。」

「……姉上。強くなんかねぇ……。僕ぁ、俺ぁ……」

「振り返っちゃダメ。わき見もしないで前だけ見て歩いていく……あなた達の背中を見るのが好きだった。ぶっきらぼうで不器用で……でも優しいあなた達が大好きだった。だから……だから私とっても幸せだった。あなた達のような素敵な人達と出会えて。あなたみたいな素敵な弟がいて……。そーちゃん、あなたは……私……の……自慢……の弟よ……」

 

 ミツバの手がだらりと垂れ下がる。沖田はその手を抱え、冷たさと一緒に泣いた。

 

 

 

 その頃、屋上では土方が激辛せんべえを食べていた。いつものように噴き出すことはない。ただせんべえをバリバリと頬張る。あまりの辛さからか、手元には涙が零れ落ちる。

 

「チキショー、(から)すぎて涙出てきやがった……」

 

 屋上には、銀時の姿もあった。銀時はその声を聞きながら、せんべえをひと噛じりする。

 

(かれ)ぇ」

 

 

 

ーー琲世視点ーー

 

 真選組が港を鎮圧し、病院へ向かうときには既に一時間以上が経過していた。僕や銀さんも病院へ向かったが、真選組の面々は、病院の医師からなにやら説明を受け、全員が暗い表情をしていた。

 

 恐らくはそういうことなのだろう。僕には何もすることが出来なかった。

 




ミツバ篇終わりになります。
病気に対して、喰種もただの人間同様、何もできないですね。
この先、また少し小話挟んだら長篇行きます。


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幕間2
万事屋の日常(佐々木琲世)


 

 

 万事屋銀ちゃんの一員、佐々木琲世の1日に密着する。まず琲世は6時に起床し、体力強化のために30分のランニングを行う。喰種は身体能力が普通の人間より高いため、通りすがりの人からは、非常に速いペースで走っているように見える。

 

 ランニングの後は、ユキムラで素振りか筋力トレーニング、もしくは読書をする。基本、この3択である。

 

 今日は読書を選択した琲世。まず、シャワーを浴び、汗を洗い流す。それからコーヒーを用意し、眼鏡を掛けてゆっくりとモーニング読書を嗜む。

 

 1時間ほど読書をした琲世は、準備を済ませ急いで家を出た。未だに琲世は、新八の道場に居候させてもらっている。その代わりに、家賃として給料のいくらかをお妙さんに渡している状態だ。

 

 琲世が来るまでは、給料が未払いであることが多かった万事屋銀ちゃん。しかし、琲世が来たことで仕事の量が増え、その分依頼料も増えることとなった。その筆頭として挙げられるのが、真選組の稽古依頼である。

 

 もともとは、お妙の家に突然住むようになった怪しい男(琲世)を監視するために始まったこの依頼。最初こそ雑用が主な業務であったが、柳生家での1件により銀時並びに琲世の強さが判明。近藤は真選組の戦闘力底上げを目的に、二人に稽古依頼を出したのだ。

 

 しかし、銀時は漫画を用いての稽古や、真選組隊士のお金で甘菓子購入、さらには稽古依頼の時間中に真選組隊士を良いように使い走り、自分はいつも通りダラけていることが副長の土方に発覚。

 

 依頼から2日目でまさかの契約破棄へと至ったのである。それと比べ、琲世の稽古は真面目かつ隊士達の評判も良い。

 

 それに、琲世の稽古依頼から真選組の検挙率、事件解決率は、じわじわと上がっていったのであった。

 

 そんなこともあって、今でも万事屋への稽古依頼は継続しており、今日も琲世は稽古依頼のため真選組屯所へ向かっていた。

 

 琲世が真選組屯所へ着くと、なにやら屯所内がザワついている。どうしたのか琲世が隊士達に聞いてみると、なにやら副長の刀が折れてしまったという。

 

 刀が折れるとこうも騒ぎになるのかと不思議に思ったが、土方はここ最近よく刀を壊しがちのため、刀の新調が多いようだ。その中の一本は、銀時が叩き折ったものもあるらしく……。

 

 自分の上司はなんてことをしているのだろうかと思い、訓練場へ足を運ぶ。そこには、竹刀を交える近藤と土方の姿があった。

 

「近藤さん、土方さんおはようございます、お二人共朝早いですね」

「おはようハイセくん!真選組たるもの、早寝早起きなど、己を律していないと肝心なときに動けないものだからな!」

「おう、ハイセ。お前も依頼時間より1時間早えぞ。ったく、あいつにもこういう姿勢を見習って貰いてぇんだけどなぁ……」

「そうなんですね。あ、それと総悟くんなら食堂の方にいたらしいですよ。朝ごはんですかね?」

 

 

 

 真選組隊士から話を聞いた際、総悟くんの話も聞いた。あんなことがあってすぐだ。立ち直るのに時間が多少掛かっても仕方ないことだろう。

 

 

「ったく……。実力はあるからもっと稽古すりゃ……」

「まぁまぁ、トシよ。あいつは、そろそろ立ち直れるだろうさ」

「近藤さん……」

 

 二人もまだ引きずっているようだ。外には出さないようにしているけれど、時たま神妙な雰囲気が漏れる。

 

「近藤さん、土方さん。今は依頼時間外ですが、またいいですか?」

「もちろんいいぞ!まずは俺と手合わせしようか!それでいいかな!?ハイセくん、トシ!」

「俺はもちろん、近藤さんとハイセが良ければ」

「僕も問題ありません。よろしくお願いします!」

 

 僕は、依頼時間前にこうして近藤さんや土方さん、極稀に総悟くんともこうして稽古をさせてもらっている。

 

 有馬さんの感覚的な戦闘とは異なり、真選組の3人は武術を基に、刀を振るっている。赫子をなるべく使用したくない僕にとって、ユキムラをより上手く扱うには、彼らと手合わせするのが1番だと考えた。

 

「では、いくぞ!」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 琲世と近藤、そして土方との手合わせが終わり、依頼時間になると、稽古依頼を行う。こうして、佐々木琲世の1日は過ぎていくのであった。

 

 

 

 




結構投げやりですかね……。
正直、幕間なので……。
ちゃんと書くときが来れば、書こうとは思ってます。


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あるクノイチの日常

 

 

 猿飛あやめは、くの一である。元お庭番衆の優秀な忍であったが、ある男と出会い人生が一変したのだ。

 

 そんな彼女は朝からある建物に侵入し、その男の様子を眺めていた。

 

(あぁ~~銀さん!!なんて男前なのかしら!!○毛のような髪に寝癖が付いてる!!)

 

 そう、男の名前は坂田銀時。銀髪天パの侍であった。

 

 万事屋には、もう一人住人がいる。それは天人の少女、神楽だ。赤いチャイナ服を纏い、年がら年中傘をさしている。

 

 その正体は、宇宙最強と謳われる民族の1つ。夜兎族であった。かといって、彼女はこの星を侵略しようなどという気は毛頭なく、流れるようにこの星、このかぶき町にたどり着いたのである。

 

 

 

 意中の男が少女と暮らしていることを、くの一は全く気にしていなかった。なぜなら、その男は少女のことを1ミリも恋愛対象に入れていないからである。

 

 そのことを忍として、なにより女として分かっていた猿飛は、その事実に臆することなく、万事屋へ侵入し、銀時をノゾいていたのだった。

 

「キャー!!今日も銀さんはかっこいいー!!」

 

「おおっと!こんなところにストーカーが!!」

 

 銀時は屋根裏に洞爺湖を投擲する。血しぶきと共に、猿飛が屋根裏から現れた。

 

「やっぱり、銀さんは私と相性が良いわね!これからも末永くよろしくね♡」

 

「おいおい、この忍なんなんだよ!頭に木刀刺しながら意味わからないこと口走ってるよ!お前と相性が良いのは俺じゃなくて突き刺さってるその木刀だろーが!!」

 

「つまり、私はあなたの所有物ってことね!キャー!!」

 

「誰かー!!お医者さん連れてきてー!!頭というより脳専門のお医者さんをー!!」

 

「朝からギャーギャーうっさいネ!こっちはすやすやタイムアル!!」

 

「トリニティ!!」

 

 押入れのふすまが吹き飛び、銀時に直撃する。押入れから現れたのは、もう一人の住人、神楽であった。

 

「あれ?さっちゃん。おはようアル」

 

「おはよう、神楽ちゃん」

 

「え?なんでそんなに普通なの?当たり前のように挨拶してるの?」

 

「さっちゃんはよく万事屋来るネ。たまにお菓子もくれるし」

 

「お前、それ餌付けだよ。すでに馬が射られてるじゃねーか!食欲たっぷりマキ○オーが!!」

 

「何言ってるネ!馬は馬でも、マキ○オーじゃなく、今ノッてる○娘ヨ!ズキュンドキュン走り出すネ!!」

 

「うるせぇぇぇぇ!!お前みてぇなゲロイン馬○にはいねぇんだよ!!立派なヒロインになってから発言しやがれ!!」

 

「お前がうるせぇぇぇぇ!!私は銀魂、ひいてはこの小説でもヒロインアル!!主人公じゃない奴がピーピー言ってるネ」

 

 主人公じゃない、この言葉が刺さったのか机に頭を伏せる銀時。しかし、数秒後吹っ切れたのだろうか。思い切り顔を上げる。

 

「つまり、銀魂のヤバヒロインから離れ、結野アナと結ばれる世界線ってことか!!こんなに嬉しいことはない……」

 

「アルファもベータも、どんな世界線でも結野アナとは結ばれないアル。お前が結ばれるのはマダオの○つのあなネ」

 

「やめてー!!原作やアニメでは過ちを犯してるけど、ここではまだ犯してないから!!過ちはもう、繰り返させない!!」

 

 銀時が何度も、頭を机に叩きつける。顔が血だらけになっている銀時に猿飛が声を掛けた。

 

「銀さん。ここに来た本題を話して良いかしら。他のお庭番衆が掴んだ情報なのだけど、最近真選組副長の様子がおかしいらしいの。それに、そのタイミングで真選組参謀の台頭……。真選組の不穏は、江戸の平和を脅かす可能性があるわ。銀さんは何か知ってる?」

 

「いや、詳しくはしらねぇ。だが、真選組には万事屋1の働き者が付いてる。なにかあれば、あいつから連絡が来るさ」

 

「ハイセくん……。彼は、万事屋に来る前の情報が一切掴めていないわ。無いとは思うけど、万が一のために、警戒はしておいてね」

 

「ハイセはそんな野郎じゃねぇよ。付き合いも長くなってきたから分かる。あいつはそんなタマじゃねぇ。それに、俺を狙いに来たってんなら、万事屋前で堂々と寝るなんてアホ晒さねぇよ」

 

「そう……。とにかく、真選組の動向が不穏だわ。警戒しておいて」

 

 刹那の内に、猿飛の姿が消える。

 

 銀時は、窓から外を眺めて一言呟いた。

 

「あの副長がねぇ……」

 



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真選組動乱篇
妖刀購入


CoDが楽しくて…


 

 

「……。これもそろそろ限界か?」

 

 土方は自分の刀を見てそう呟く。というのも、銀時に折られ、柳生家との勝負で折られて、刀を2回変えている。

 それに直近では、車のホイールに刀を突き刺し、速度を落とす荒業を行ったことにより、3本目の刀も折れはしないにしろボロボロなのであった。

 

「行くか」

 

 土方はそう言い、真選組屯所を後にした。

 

 

 

 江戸の中心から少し外れた下町風情溢れる所に、刀屋があった。そこには、普通の刀から曰く付きのものまでレパートリーが多く、なにより全体的に値段が安い。

 

 土方はここ最近の刀の交換により、経費を多く使用しており、非常に後ろめたさがあった。そのため、今回は刀を自費で購入しようとしていた。

 

「なぁ、店主さんよ。オススメの刀はないかい?」

 

「んー、そうだね。オススメではないけど、この刀はどーだい?」

 

「なんで、オススメって言ってんのに、オススメ紹介しねぇの!?なぁ、なんで!?俺なんかした?してないよね?」

 

「あー、ええとね。これは妖刀なんだ。見たところよく戦ってそうな雰囲気もあったし、普通の刀よりこういう方が良いかなと思ってね」

 

「ほぉ〜、妖刀ね……。おれは妖刀なんて信じちゃいねぇが、どんな妖刀なんだい?」

 

「これはね、何十年、いや何百年前の足利幕府、時の将軍に関係していたむらまちゃという武将さんが所持していた刀で、この刀を持つと性格が変わっちまうみたいなんだ」

 

「……。性格が変わる……ね。おし、その刀貰ってくよ。妖刀、どんな感じか試してみようじゃねぇの」

 

「毎度あり。このむらまちゃ、売れずに困ってたんだよ。アンタが買ってくれてよかった。返品は対応しないからね!!」

 

「おー、わかったよ。(所詮、妖刀なんて眉唾ものだしな)んじゃ、代金ここ置いてくぜ」

 

「ありがとうございました〜」

 

 土方は、妖刀と曰く付きである、むらまちゃを購入し、屯所へ戻っていった。

 

 しかし、道中で攘夷浪士の群れと鉢合わせてしまう。

 

「貴様……。あの真選組鬼の副長、土方とお見受けする。さぁ、我らといざ!!」

 

 土方は、攘夷浪士達をジロリと睨みつけ、一言告げる。

 

「なるほど、お前らは俺が誰だか分かってて喧嘩売ってんのか。なら買うぜ?そのとおり、俺は鬼の副長、土方十四朗だ!!」

 

 その謳い文句とは反対に、土方の体は土下座をしていた。攘夷浪士たちも、想像していた展開と異なっていたため、数秒止まっていたが、直ぐに状況を理解し動き出す。

 

「おいおい、鬼の副長が土下座してるぜ?」

 

「こんなやつ切るのもダセェよ」

 

「土下座してるし、ボコボコにしとくか!」

 

 土方は自分の体と心が噛み合わないのに驚いた。自分は攘夷浪士と斬り結ぶつもりだったが、体は土下座をし、言葉では思ってもない事を発言している。今の自分はどうなってしまったのか。

 

 土方は蹴られ、踏まれながらただ考えることしかできなかった。

 

「ほんと、この通りです!許してください!!」

 

「はっは!!命乞いしてるぞ!こいつ!!何が鬼の副長だよ!!」

 

「そうっスね!ほんと、何が鬼なんだか!!命だけは!!」

 

「やる気が失せたわ。このような俗物、天誅の資格なし。このままではただの弱い者いじめよ」

 

「そのとおりだ。もう、帰るか」

 

「そうだな」

 

 土方は攘夷浪士が、帰っていくのを土下座の姿勢で感じ取るしか出来なかった。自分の言うことを聞かない体に、ただ苛立ちが募っていくばかりであった。

 

 



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真選組の参謀

長らくお待たせしました…


 

 

「それでは、朝礼をはじめる…」

 真選組屯所内の会議室で、毎日の朝礼が行われている。しかし、発言した近藤は焦っている様子を隠しきれていない。

 

 その様子を真選組隊士達は眺め、声を潜めて会話をしている。

 

「おい、局長のあれって…」

 

「あぁ、ほとんど皆察してる。あの人がいねぇ」

 

「朝礼に遅刻なんて、局中法度で切腹モノだぞ」

 

「副長〜…ヤバいですよ〜!」

 

「皆さん、静粛に。顔が見えない人もいますが、関係ありません。近藤局長、朝礼を開始しても?」

 

 発言の主は最近この江戸に戻ってきた、真選組参謀。名前は伊東鴨太郎。

 

「確かに、伊東さんの言うとおりで。早く始めちまいましょう。前髪V字なんてどうでもいいんでぇ」

 

「伊東先生に総悟まで…しかし、トシが遅刻なんて…何かあったのかも」

 

 伊東と沖田からの言葉を、思わず否定してしまう近藤。

 

 そんな中、会議室の扉が開いた。

 

「お待たせしました、総悟さん!ありましたよ!ジャンプ!近くのコンビニに無かったので、少し遠くまで行ってきました!」

 

「……」

 

「「副長!?!?」」

 

「おい!トシ!!何してるんだ!既に朝礼の時間は…」

 

「あーあ、ダメじゃないですか。土方副長〜。朝礼に遅れたら局長法度で切腹ですよ?介錯はオレに任せてくだせぇ。苦しむ暇も与えねぇんで」

 

「まぁまぁ、沖田隊長。今までの副長の活躍を考えると今回の件は不問にしても」

 

「……、そうですかい」

 

「あー、すまん!皆、今日は朝礼なしだ!特に共有事項はない!解散!」

 

 今までのゴタゴタを無かったことにするように、急いで朝礼を終了させる近藤。今までの土方からは有りえないような立ち振る舞いを目の当たりにし、隊士達はザワつきながらも職務に戻っていった。

 

 会議室には、近藤と土方だけが残り、土方に対して近藤は問いかける。

 

「なぁ、トシ。お前最近おかしいぞ。この前の会議中の着信や、以前には攘夷浪士にタコ殴りにされてたって……」

 

「……」

 

「本当に大丈夫か?トシ……」

 

「近藤さん……俺はまたこんなことを……本当にすまねぇ」

 

 土方はそう言い残し、会議室から走り去って行った。その後ろ姿を近藤はただ眺めていることしか出来なかった。

 

 

 

 遅刻騒動から数日経ち、真選組屯所にて、伊東鴨太郎の参謀着任祝いが行われていた。

 

「いやー、めでたいですな!伊東先生!これからも、よろしくおねがいします!ささっどうぞどうぞ」

 

「近藤局長自ら…ありがたく頂きます」

 

 近藤からお酌してもらい、その酒を飲む伊東。置いたおちょこには酒が少し残っていた。

 

「すみません、局長。すこし風に当たってきても?」

 

「ああ、もちろん!」

 

 宴会室から出て、渡り廊下を歩く伊東。渡り廊下の柱に背を向ける土方が、そこにはいた。

 

 タバコを吸い、煙を空へ吹きかける。そのままの状態で、土方は話しはじめた。

 

「なぁ、お前に聞きたいことがあるんだ」

 

「奇遇だね、僕もあるんだ」

 

「お前、俺のこと嫌いだろ?」

「君、僕のこと嫌いだろ?」

 

「君は、僕が気に入らないはずだ。新参者である僕がスピード出世して、近藤さんにも気に入られている。古参であり副長である君は、君自身の立場が危ぶまれることから、僕の存在は目障りでしかないだろう」

 

「それはアンタもだ。さっさと出世したいのに古くからどっかり座ってる立場の俺が目障りでしょうがねぇだろうよ」

 

「ははは……それは邪推だ、土方くん」

 

「そうかそうか、それならお互いに誤解が解けて良かったな」

 

「目障りなんて……」

 

「そんな可愛いもんじゃねぇ……」

 

「「いずれ殺してやるよ……!!」」

 

 

 

 




これからゆっくり書き始めます…

大変お待たせしました…


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参謀との邂逅

エタりつつあります。
本当に不定期なので、ふらっと寄って見て頂けたらと思います〜。


 

 

 

 琲世は、真選組の雰囲気がおかしいことに気づいていた。いつもの様な締まりが無く、しかし安心できる訳では無い、むしろ隊員達の警戒心は高まっている様な、そんな異質な空気がそこにはあった。

 

 なぜ、この様な雰囲気なのか、近くにいる隊員に聞いてみた。

 

「ねぇ、最近真選組って雰囲気おかしくない?」

 

 真選組の隊員は、ため息をつきながら答える。

 

「ハイセさんも分かりますか?こりゃ、本当にマズイかもなぁ……。」

 

「どういうこと?最近、土方さん見ないし、僕もあまり呼ばれないようになったし、何かあったの?」

 

「そう、その副長が最近謹慎されてるんです。最近、あの人は切腹処分くらうような事を平気でポンポンするから……。いつもの副長ならそんな失態犯さないんですけどね……。」

 

「最近、僕が指南で呼ばれないのもそういうゴタゴタがあったからなのかな」

 

「いや、それだけじゃないと思います。きっと奴が裏でうご……」

 

 

 隊員と話をしていると、後ろから一人の男がやってきた。真選組の制服を着ているので、真選組の一員なのだろう。その人にも話を聞こうとした時、その男が口を開いた。

 

「以前に契約していた指南役の人間といえど、部外者に内部事情を赤裸々に話すのは感心しないな。鬼と言われるあの副長も、我らと同じ人間だったという事だよ」

 

「すみません。あなたのことを存じ上げなくて……。面識ありましたか?もしあったら申し訳ないです」

 

 その男は意外そうな表情をして、すぐに話し始める。

 

「大丈夫。私と君は面識がないよ。私は伊東鴨太郎。君が来ていないタイミングで真選組にきたのさ。君のことは近藤さんから話を聞いてるよ、佐々木くん。実力を見込まれ、真選組隊員の指南役を依頼されたとか。その実力、ぜひとも拝見したいものだ」

 

「あはは……。それは嬉しいですね。伊東さんですか、よろしくお願いします。でも最近は指南の依頼もあまり無かったので、何か事情でもあるのかと……。それで今ちょうど話を聞いていたんですよ」

 

 伊東は顎に手を添え、少し考え込むような様子を見せる。数秒経ったあと、すぐに前を向き、真選組隊員へ声を掛けた。

 

「指南役であろうとなんだろうと、真選組ではない外部の人間であるのはわかるな?あまり組の事情をベラベラと話すものじゃない。もしこれが私じゃなくあの副長ならば、最悪切腹を命じられたかもしれないね。私はそんな命令はしないが、事によっては参謀の立場ゆえ、君に何かしらの処分を下すことになる可能性だってあるんだ。わかったなら、稽古に励んで来るといい」

 

「はい!!」

 

 返事をした後、隊員はすぐに稽古場へと戻ってしまった。それを一瞥した伊東は、僕の方へ顔を向ける。

 

「佐々木……、ハイセくんだったね。どうだい、少し話をしないか?一隊員なら話せない様な事も、僕ならある程度は喋ることができるんだ。ちょうど応接間が空いているだろうし、よかったらそこで」

 

「分かりました。お話を伺いましょう」

 

 真選組に何が起きているのか。なぜ鬼の副長土方十四郎が謹慎処分を受けているのか。分からない僕は、この参謀を名乗る伊東から話を聞くしかない。伊東に着いていくように、僕は真選組屯所の応接間へと向かった。

 

 




何千文字も書くのって結構難しい……。
千文字書いたら満足しちゃうや……


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君の名は

ひっさびさ〜


 

 伊東に応接間へと案内された琲世。指南役として諸々を決める話し合いで使ったモノとは別の部屋であった。

 

「まぁ、そこに座ってくれたまえ。なぁ君、お客様に茶を」

 

 近くにいた隊士に声を掛け、色々と用意してくれるようだ。

 

「はい、失礼します」

 

「了解しました!」

 

 二人は机を挟んで向き合う様に座り、そこには暫く静寂があった。

 

「失礼いたします!お待たせいたしました、お茶と茶菓子をお持ちしました。どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

「ご苦労様、下がっていいよ」

 

「了解しました、失礼します!」

 

 伊東は、真選組隊士を下がらせると、お茶を少し啜り、口を開いた。

 

「僕はまどろっこしいことがあまり好きではなくてね、単刀直入に結論から言おう。指南役を辞めてほしいんだ」

 

 正直なところ、僕は結構驚いた。聞いたこともなかった真選組参謀から、突然の指南役クビ宣言。真選組指南役は契約期間が長く、契約料も良かったため、万事屋の大きな収入になっていた。それが、突然無くなるなんて……。何かバイト探さないとなぁ。

 

「お話は分かりました。出来れば理由を聞いてもよろしいですか?」

 

 僕はお茶を一口飲んで、渇きつつあった口内を潤す。

 

「君の不手際ということではないんだ。完全にこちら側の問題だよ。土方副長の不祥事等で内部はゴタゴタって所なんだ。そのため、まずは一度真選組の金銭周りを見直そうと思ってね。内部事情が安定したらまた指南役を依頼するかもしれない、こんな感じかな」

 

 確かに、真選組での土方さんの存在は大きい。鬼の副長と言われ、規律を重んじる立派な侍だ。マヨネーズが大好きなのは少量のお茶目ポイントかな。

 とにかく、その副長が訳あっていないのは大きい。

近藤さんとこの伊東参謀がなんとか建て直してるって

形なのかもしれないな。

 

「そうだったんですね。ちなみに近藤さんはなんと?」

 

「ああ、局長から金銭周りの整理整頓は一任されていてね、安定してきたら契約すると話したら了承していたよ」

 

「そうですか……。わかりました、ありがとうございます。お茶とお茶菓子美味しかったです。それでは」

 

 僕は立ち上がり、応接間を出る。そのまま真選組屯所を後にした。

 伊東鴨太郎参謀……。真選組にはいなかった勉強出来そうなタイプだったな。

 

 

 

 

「おい」

 

「はい、何でしょうか」

 

「あの琲世とかいう者……。本当にただの一般人なのか?あの明晰さや佇まい、只者ではないだろうに」

 

「はい、聞いたところによりますと、紅桜事件やあの桂と関係が疑われている万事屋銀ちゃんに所属している人間だとか」

 

「……。素性は?」

 

「以前、副長が監察を使って調査していたらしいですが、全く不明だと」

 

「あの紅桜に桂か……。万が一にも僕の真選組に絡まれると面倒だな。実行日には、あの方から援護を依頼しておこう」

 

「あの方とは……?」

 

「いいんだ、こっちの話だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、シリアスはもういいのか?久しぶりなんだからもっと神妙さ出しとかないと、読者も納得しないよ」

 

「別にいいアルよ、どうせまた何ヶ月か更新しないナマケモノ作者ネ。電車の待ち時間に寝ないで執筆出来た時点で百万点ヨ」

 

「あー、はいはいそうかいそうかい。俺たちはネタメインだからメタも何でも有りってか。……。そういえばツッコミがねぇな、ぱっつぁんは?」

 

「久しぶりの更新で忘れたアルか?今日シンパチはテレビの生放送に出演するヨ、時間的にはもうやってるネ!さっそく見るアル!!」

 

 

『徹底討論!アイドルオタク対ニジゲンオタク!!皆様、司会の鮭です。今回は江戸から選りすぐりのアイドルと2次元のオタクに集まってもらいました』

 

『いいですか!?オタクはオタクでもそこの2次元オタクと僕たちを一緒にしないで欲しいですね!!僕たちはアイドルが好きなんだ!!そのアイドルは実在していて、その子を応援しているだけなんです!!第一、2次元オタク達が好きなモノは、実在してない!!実在しないものに熱を上げてるなんて2次元オタクは想像力が豊かですよ、ホント!!』

 

『おっと、挨拶も無しにいきなり始まりました。まずはアイドルオタクからの先制だ!!』

 

『うーん、ちょっといいかな。実在してないっていう点はその通りなんだけど、そこって何か問題ある?何かを愛し応援するっていう姿勢、そこに関しては全く一緒だよね』

 

『僕たちのアイドルは実在してる!!君たちの好きなキャラは実在してない!!有りもしないものに熱を上げるなんて!!』

 

『んー。可哀想だから言いたくなかったんだけども、そこも踏まえて同じようなものだよね。実在ってそんなに重要なのかな。君たちはアイドルを応援するけれどアイドルが誰かと付き合ったとき、まるで自分は好かれてたみたいに怒ったり悲しんだりするけれど、それっておかしいよね?別に付き合える訳でもないのにさ』

 

『なんだと!?そんなこと分からないだろ!?』

 

『あー、そっかそっか。付き合えるかもって思ってるから実在に拘ってたんだ。ほぼ100%無理だよ。アイドルと付き合えるアイドルオタクなんて、それこそ実在しないだろうね。仮にいたとしてもステータスが君たちと違いすぎるだろうし、IT社長の〜とかって言葉が付くよね。うんうん、そう考えると、僕たちと君たちって似た者同士だと思うけど、さっきから君はさんざん僕たちを口撃してる点やアイドル本人にも口撃する所を見ると、凶暴性は君たちの方が上かもね』

 

 

『なんだとぉ!?』

 

『野郎、ぶっ殺してやる!』

 

『おおっと、乱闘です!乱闘が開始されました!!』

 

 

 新八と2次元オタクが破茶滅茶に争っている。早口でよく喋っていたサングラスを掛けているオタクは、どこか見たことがある前髪をしていた。

 




電車で1時間座れなかったので更新しました(怒)


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その名はトッシー

そぉいそぉい


 

「ん?おい、神楽。あのV字前髪なんか見覚えない?」

 

「V字前髪なんて腐るほどいるネ。それに、こんなオタクのV字前髪に心当たりはないヨ」

 

「だよね?俺もオタクには心当たりないんだよなぁ……。なんかこー、鬼の!!ってイメージなんだよなぁ」

 

 

 生放送されているテレビ番組では、相変わらず新八とニジゲンオタクが乱闘を繰り広げていた。乱闘のさ中、ニジゲンオタクのサングラスが頭から外れる。

 

「あっ……。この顔は……鬼の……」

 

 万事屋銀ちゃんと腐れ縁があり、この番組になんて出演しないはずである、変わり果てた鬼の副長の姿があった。

 

 

 

 

 

 

「んで、お前はなんでオタクなんてやってんだよ」

 

「ほぉ〜、改めて見ると和と未来の融合、アナログとデジタルが合わさっておりますなぁ。江戸と宇宙人、あ、ここでは天人でござったな、失礼。いやー、それにしても皆さん服装が似合いますな。特に、神楽氏。失礼だが写真を撮影してもよろしいか?その美貌とチャイナドレスは美少女アニメに出てくる美少女と言っても過言ではないよ。それに何といっても神楽氏の声だよ、かわいい系で、少しキャンキャンと高い響きがある……。例えるならそう、ツンデレ!!ツンデレが似合うでござる!!!少し、セリフを述べてくれると……」

 

「おいいいいいい!!!うるせぇよ!!!いつまで喋ってるんだ!!!それに神楽も乗り気になんな!!アホが調子づくだろーが……。ったく、なんでこーなってんだ?新八分かるか?」

 

「いえ、あまり良く分からないんです。ただ土方さん?だと思ったので……」

 

「銀さん、僕が万事屋まで来ないかって提案しました。最近、真選組がきな臭いですし、謹慎中である土方さんからでも話が聞ければと思ったのですが……」

 

「まー、こりゃ無理そうだよな。俺らもストーカーくノ一からちょっと話は聞いてるが、こりゃ一体全体なんなんだろうな?おい、話できるかおまえ?」

 

 土方は震えた手でタバコを咥える。紫煙を吐くと、彼の目つきが変わった。

 

「万事屋、依頼だ。ハイセは薄々気づいてたかもしれんが、最近どーも俺を排除したい奴がチョロチョロしててな。それに加えてこの始末……。俺がオレである時間も少しずつ短くなってきている。今じゃタバコを吸ったときや一部しか意識が取り戻せねぇ。それもこれもヤツのせいか……。それとも……くそっ!刀も抜けやしねぇ」

 

「んで、依頼ってのはなんだ?鬼の副長さんよ」

 

「俺のかわりに、真選組を頼む……。くそダセェが今はこうしてお前らに頼むので精一杯だ。近藤さんや総悟……、山崎や隊士のみんな……真選組を、護ってくれ」

 

 

 土方からの依頼は、鬼の副長不在の真選組を護ることだった。




仕事がキチィんじゃあ……


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久しいな!!!

 

 

「お前らしくねぇな、鬼の副長さんよ。俺らにお前らの真選組を護れってか。それはよ、お前がやるべきことなんじゃねぇか?」

 

「俺だってそうしてぇさ。だが、今はこの刀すら抜けねぇんだ……。オタクが俺の身体を乗っ取ってる間は、俺は何にもできねぇ……頼む。」

 

あまりにも真剣な面持ちでこちらを見る土方に、銀時はそれ以上言及出来なかった。

 

「そうかいそうかい。そのオタクになっちまう要因というか理由はわかってんのか?分かりゃそれ省きゃいいだろ?」

 

「あぁ、元凶はかt……。ゴホッゴホッ、ケムいでござる、それに臭い……」

 

 どうやら土方からトッシーに戻ってしまったようだ。自分で吸っていた筈のタバコを灰皿にすて、咳き込んでいる。

 

「新八、神楽、ハイセ。元凶は『かt』らしいが、何かわかるか?」

 

「んー、平仮名一文字だと……。それに合計何文字かも分からないんですから」

 

「分かる訳ないネ、シンパチとハイセが分からないならもう無理アル」

 

「……。知ってそうな人達に聞き込みしてみませんか?源外さんや鉄子さん、お妙さんや西郷さんも何か知ってるかもしれないですよ」

 

 銀時は頭を掻き、重い腰を上げた。

 

「ハイセの案しかねぇから、それで行ってみよう。俺はババァから話を聞く。後はそれぞれ好きに聞いてきてくれ」

 

「分かりました!それなら僕は鉄子さんの所に行きます!」

 

「しゃあねーナ、ならこのワタシが青髭化物の所に行ってくるアル。ハイセ、源外のジイサンの所行けヨ」

 

「うん、分かった」

 

「おし、お前ら行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「源外さん、おじゃまします、いきなりオタクになる状況に聞き覚えはありませんか?」

 

「おお、ハイの字。ん?いきなりオタクになる?俺はそんなのわからねぇな。おい鉄!!お前何か知ってるか!?」

 

「んー、一応もしかしたらというのはある!!!それは紅桜とはまた違う妖刀の話だ!!!その名は『むらましゃ』と言い、その刀で斬殺された引き篭もりの怨念が籠もっていると聞く!!!その刀を使い続けると魂を吸われてしまう!!!魂を吸われてしまった結果、所持者はオタクの様になってしまったと考えれば可能性はあるぞ!!!」

 

「お久しぶりですね、鉄矢さん」

 

「……。」

 

「お久しぶりです!!!鉄矢さん!!!」

 

「おお!!!久しいな!!!ハイセ殿!!!その節は本当に感謝している!!!」

 

「いえいえ!!!お互いに健康で良かったです!!!お話!!!ありがとう!!!ございました!!!」

 

「こちらこそ!!!またいつか、貴殿のくいんけ?を見せてほしい!!!あれは鉄子には難しいだろう!それにこの部類のモノはあまり触れさせたくないからな!!!」

 

 耳は痛いし、少し耳鳴りがしているが代わりにいい情報を手に入れた。

 それにしても、クインケは触れさせたくない……か。確かに、このユキムラ含め、クインケは喰種の赫包という器官を材料に作られたもので、簡単に言えば命を使った武器とも言える。そう考えるとクインケは、紅桜よりも禍々しくおぞましい武器であることに間違いはない。

 その禍々しさに、一目で気付いた鉄矢さんは流石というべきだろうか……。

 

 

 



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曇天

仕事さぁ…



 

 

 土方がトッシーとなった要因を探す万事屋と同じタイミングで、真選組監察の山崎は、伊東鴨太郎の黒い噂の調査を行っていた。真選組屯所で伊東とその部下の話を盗み聞いている。

 

「土方の謹慎と沖田の協力。これで、あとは近藤だけ……。もう真選組局長が眼前ですね!伊東さん!」

 

「ふふ……。そう逸るなよ。土方の失墜に沖田が協力したのは正直想定外だった。奴らは同郷同門のよしみ、てっきり土方派かと思っていたが、結構率先して土方を陥れてくれたな……」

 

 この会話を聞いた山崎は急いで真選組屯所から飛び出していく。しかし、その場から離れる際、音を立ててしまったのだった。

 

「何奴!?」

 

「大方、土方派の誰かだろう。君、今後はこういう話は静かに、そして周りを確認してからするんだよ」

 

「土方派!?ならば直ぐに始末しなければ!!情報があちらに漏れれば……」

 

「おいおい、そんな怖い顔をするなよ。落ち着き給え。そんな状況でなぜ、僕がこんなに落ち着いていると思う?」

 

「……。もしや何かしら策を……?」

 

「ふふ……話が早い、その通りさ。そして、先程の曲者も運が悪いものだ……。彼が援軍として来ているタイミングだからな。行こうか、その曲者の所へ」

 

「は……はい」

 

 

 

 山崎は駆けていた。真選組参謀による真選組の乗っ取り。そして副長や局長の失墜、最悪の場合は双方の……。最悪の事態を防ぐため、山崎は止まらない。

 

「このことを伝えるんだ……。副長、局長、沖田隊長……。俺が真選組を護るんだ!」

 

「それは立派な心構えでござるな。しかし、そうはさせないでござるよ」

 

 山崎は後ろを振り返ろうとした瞬間、胸の違和感を覚え、そちらを見る。違和感の正体は体を貫く刀であった。

 

「お……お前は、人斬り万斉……。伊東、敵と通じていたのか……」

 

 後方から伊東と部下が歩いてくる。

 

「ふふ……。ただ敵を斬るだけではいけないな。我々は手を組み、より良い未来を創っていく。あの副長の時代は終わったんだよ。これからは僕の真選組だ」

 

「そのために……鬼兵隊と……」

 

「そうさ。君の監察としての力も欲しかった所ではあるが、土方派なのはいただけないな」

 

「土方……副長は……戻ってくる」

 

「借りに彼が戻った時、既に帰る場所はないだろうさ。河上くん、後は任せるよ」

 

「……了解でござる」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 万事屋の聞き込みによって、トッシーが妖刀の影響から発生したモノだと発覚した。銀時はトッシーと刀を見比べ、呆れた表情で、

 

「むらましゃね……。フザけた妖刀だな」

 

「この刀はむらましゃというでござるか、坂田氏!」

 

「んだよ、坂田氏って……。まぁ、ゴリラ局長に伝えれば謹慎もとけんじゃね?ゴリラにこのこと伝えて俺たちの仕事は終わり!!でいい?」

 

「そうネ、ゴリラに伝えて、後は真選組に任せるヨ!」

 

「そんな人任せな……。あの土方さんに真選組を頼まれたんですよ?もっとちゃんとしましょうよ……」

 

「僕も、新八くんの意見に賛成です。最近の真選組は不穏だし、参謀の伊東さんのことも考えると……」

 

 琲世と新八の慎重な案に、銀時と神楽は面倒くさい表情を隠さない。土方・トッシーをどうするか考えているちょうどそのタイミングで、真選組の車両がやってきた。

 

「土方副長!大変です。山崎さんが何者かに殺害されました!!今すぐ来てください!」

 

 それは真選組の異変を知らせるものであった。

 

 




呪術廻戦ものも書きたくなってきた…
銀魂は継続しつつ、そっちも書いてみようかな…
ヒロアカは……うん。


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狙われた副長

仕事さぁ…


 

 突然の訃報、それは山崎が何者かによって殺害されたというものであった。

 

 しかし、銀時と琲世は真選組隊士の雰囲気に違和感を覚えていた。

 

「え……。いきなり何……知らないよ、そんなこと……」

 

「さぁ、行きましょう!」

 

「「山崎の所へ」」

 

 真選組隊士達が、トッシーに向かって刀を振り下ろした。トッシーは目をつむったが、一向に刀で斬られる感触はない。あったのは、体を引っ張られる感覚だけであった。

 銀時がトッシー、琲世は新八を、それぞれ後ろへ引っぱっていたのだ。神楽は殺気には感づかなかったが、夜兎族の反射と運動神経で咄嗟に後ろへと走る。

 

「逃がすな!追え!」

 

「土方を亡き者に!」

 

 

 銀時達は、身を躱した後、真選組隊士が乗っているパトカーを奪取。そのまま逃走を開始した。

 

「おいおい、鬼の副長さんよ。お前いつからそんなに恨まれるようになったんだ?っていうか、山崎がやられたのか?マジで真選組はどうなってやがんだ……」

 

「反土方派というべきでしょうか?そのような派閥が動き出したのかもしれません。そうなると近藤さんもあぶないかも」

 

しばらくすると、パトカーの無線から声が流れてきた。

 

「こちら15番、作戦通り近藤は護衛もつけずに列車にっている。真選組隊士募集のため遠征という、実際は逆方向列車はしばらく停まることはないだろう。それに、近藤の周りは全員伊東派で固めてある。合図次第ですぐに地獄行きさ。そちらの土方暗殺についてだが、他隊士に見つかるなよ?あくまで攘夷浪士の犯行だと思わせるんだ。そうでないと真選組が真っ二つだからな。最悪の場合、真選組内での戦争になっちまう……」

 

 

 真選組無線を聞き、

 

「ちょっとちょっと……ヤバいんじゃないですか!土方さんの暗殺って!!オタクになってる場合じゃないですって!!真選組が……」

 

「そんなに叫ばなくても聞こえてる……。わかるんだ。そろそろ完全に意識を持っていかれるだろう……。このオタクに今の真選組をどうにか出来ると思えねぇ。っは、情けねぇ……、鬼の副長と言われてる奴がこのザマたぁ……。なぁ、俺からの最後の依頼だ。俺の、俺たちの真選組を護ってくれ……」

 

 いつの間にか、人格が交代していた土方。しかし、それも束の間、すぐにトッシーへともどってしまった。

 

「大変そうでござるな」

 

「「お前が大変なんだよ!!」」

 

 

 真選組局長と副長の暗殺、参謀による真選組乗っ取りの計画をラジオで聞ききながら琲世は考えていた。

 

 

 近藤さんはそう簡単に死なないだろうとは思うけど、あの伊東が人数有利なだけで計画を実行するとは考えにくい……。まだ何か裏があるんじゃないか?しかし、その何かが全く分からない……。

 

「なぁ、ハイセ。まだ何かあると思うか?」

 

「一度だけ話しましたが、真選組に今までいなかった、武力以上に知力が優れている印象でした。土方さんが不在で、近藤さんの周りを伊東派で固めただけで、こんな大それたことをやるとは思えません……。考え過ぎかもしれませんが」

 

「まぁ、お前がそんな考え込むんだ。相手は伊東だけって決めつけない方がいいな」

 

そういって、銀時は真選組の車両無線を取る。

 

「現在、ゴ……近藤局長が暗殺されるという情報を掴んだ!局長は現在、遠征のため列車に乗っている最中らしい!詳しい場所などはお前らで調べろ!急げ!時間がない!」

 

 銀時はそう伝えると、無線を切った。

 

「へっ、味方は多いほうがいいだろ?」

 

「これで、敵にも情報が漏れてること、無線から車両を特定することで、僕らの場所もバレるでしょうが、悪くない」

 

 二人はニヤリと笑うと、前を向いた。銀時は運転しつつ他の3人へ告げる。

 

「真選組を護るっていう依頼を受けちまったろ?正直厄介そうではあるが、あの鬼から頭を下げられちまったからな。奴らの真選組を俺達万事屋で護る!行くぞオメーら!!」

 

「「「おう!!」」」

 



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御旗

おーえすおーえす


 

 銀時ら万事屋が近藤の下へ急いでいる頃、当の本人近藤は、列車内で伊東と話をしていた。

 

「懐かしいな。武州は旅立った以降、帰ってきてないんだよ。久しぶりに帰れるのか……。武州は俺やトシ、総悟の故郷なんだよ」

 

「そうか、君たちは故郷が一緒だからこそ、そこまで強い絆で結ばれていたんだね。それにしても、君には驚かされるよ。君のように清廉、純粋な人は初めてだ。だからこそ君の元には色々と集まってくるのだろう。君の真っ白な御旗に、他の隊士達の色が混ざっていく。だけど、私は真っ黒なんだ。どんな御旗もいずれ自分の黒に染め上げてしまう」

 

 その言葉を聞いて、他の隊士達が一斉に立ち上がり、近藤へ刀を向ける。しかし、そんな状態でも全く焦らないどころか、大きく高笑いする近藤。

 

「ハッハッハッハッ!俺らの旗が真っ白だって?面白いことを言うなぁ先生。良いとこ縮れ毛塗れのふんどしってとこだ。それに、奴らに色なんて洒落たモノはない。んー、言うならば垢だな。御旗なんて大層な事を言っちゃあいるが、結局は汚ねぇ布ッキレよ。そこに、どんどん垢が溜まっちまう。気づくとその垢はどんなに洗っても取れなくなっちまうんだ。俺たちの、真選組の御旗はそんなんだよ。それに、あいつらは理屈じゃなく感情で動くこともある。先生にゃあ手に負えねぇよ」

 

 

 話が終わると同時に、列車の扉が開き、沖田がやってきた。しかし、沖田の様子は尋常ではない。

 

「何してんだ、てめぇ」

 

「沖田君、君の持ち場はそこじゃないはずだよ。持ち場に戻りたまえ」

 

「何してんだって聞いてんだクソ野郎」

 

 伊東が声を掛けても、沖田は聞く耳を持たない。伊東の部下が沖田に直接注意をするため、肩に触れる。

 

「沖田隊長!先生に対して口が悪いですよ!」

 

「手を離せ」

 

「は?」

 

 刹那、伊東の部下が宙に舞った。気づくと沖田は抜刀している。部下が斬られていないため、峰打ちで弾き飛ばしたのだろう。

 

「その人から手を離せって言ってんだ!!」

 

「そうか、やはり君は土方派だったか。我々の元に近づきその動向を探るため、土方を謹慎まで追い込む芝居まで行うとは」

 

「芝居じゃねぇよ、俺が欲しかったのは副長の座だけだ。だから邪魔者を消した」

 

「では、良いではないか。私が局長になったあと、君は副長に任命しよう」

 

「ふざけるな、ヤツの次はお前だ、伊東。俺の大将はヤツでもお前でもない。俺の大将はたった一人だけだ。いいからそこをどけ!その人の隣は俺の席だ!!」

 

 伊東を利用し土方を謹慎に追い込み、次は伊東を消そうとする沖田に対し、伊東は笑う。

 

「ハッハッハ!とんだ性悪だな。土方を消すために僕を利用し、次は僕の番ってことか。良いじゃないか、僕も同意見だ」

 

 伊東は、沖田の後ろに忍ばせておいた伏兵を使おうとするが、その前に沖田がスイッチを押す。すると、列車内で爆発が起こり、列車内を停電と大きな揺れが襲った。

 




そーいそーい


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最後の教え

お久しぶりです…
人生がゴチャゴチャしてたので大分書けてなかったです…




 

 

 伊東派だと思われていた沖田の裏切り、そして後方からの爆発によって、視界が煙に染まり伊東派の真選組隊士は近藤を見失う。

 

「伊東さん、近藤が見当たりません!それに沖田も!!」

 

「まぁ、落ち着きなよ。この列車から途中下車しようとするほど彼らは馬鹿じゃない。後方からの爆発ということを考えると、きっと近藤達は前の車両に移動していると考えられる」

 

「流石、伊東さん!それでは早速、奴らを消しに……」

 

「待て待て、この列車に乗っているのは全員僕の志に賛同してくれている者ばかりだ。いくら近藤と沖田といえど、数には勝てないだろうさ。それに、もう少しで……まぁ、つまりは焦らなくてもいいという事さ。彼らの寿命のロウソクは風前の灯火なのだから」

 

 

 爆発と煙のごたついた状況を利用し、前方の車両に移動した沖田と近藤。

 

「総悟、ありがとう。危ない所だった……」

 

「いや、まだ危険ってのには変わりねぇです。この列車には伊東に従う連中しか乗ってねぇんで。近藤さんを慕ってるヤツらは屯所で待機命令を喰らってるはずでさぁ」

 

「そうか……。このような状況、全ては真選組局長の俺が招いた結果だ。トシの局中法度破りの数々もせん……伊東の策略だったのかもしれないな。今さらではあるが、トシの助言にも耳を貸し、こういった状況を防ぐような対策を考えるべきだった……」

 

「……」

 

「この人数差……中々に厳しいものがあるか……って何をしているんだ!総悟!!」

 

 驚いた近藤が目にしたのは、沖田が車両の連結部分を切り離した光景だった。

 

「土方を追い出す為とはいえ、俺が伊東の策?に乗ったのは事実。近藤さん、アンタはここで死んじゃならねぇ。俺が時間を稼ぐから」

 

 前方車両にいる近藤と、後方の車両に飛び乗った沖田。二人の距離はだんだんと離れていく。

 

「バカ野郎!!いくらお前だからといって、この人数相手に1人では……!!総悟ぉぉ!!!」

 

 鼻水を流し、滝のような涙を流す近藤。その姿を沖田は振り向かずに車両内へと進んでいった。

 

 

 

 

 伊東の話をそのまま鵜呑みに、ゆっくりと前方車両へ進んでいく隊士達。その前に、鬼気迫った雰囲気の沖田が現れる。数秒、その雰囲気に気圧された隊士達。1人対多数、その圧倒的有利な状況をまるで意にもしない沖田にその場の隊士達は圧倒されていた。

 

「ふぅん……。まぁ、見知った顔もいるが、お前ら死ぬ覚悟は出来てんだろうな?真選組局中法度第21条、敵と内通せし者、これを罰する。真選組一番隊隊長として、てめぇらに俺からの最後の教えをくれてやらぁ……。圧倒的な実力差の敵と相対した時、数に頼るのが一番だ。呼吸を合わせろ。心身共に気を練り、最も充実した瞬間に……、一斉に斬りかかれ!!」

 

 沖田の言葉に合わせ、隊士達が一斉に刀を振り上げた。

 

 

 

 時間としては数分も経っていない。しかし、車両内には先程まで生きていた隊士達と、返り血を浴びた無傷の沖田がそこにいた。

 

 沖田は、頬に付いた返り血を舌で舐めたあと、元同士に教えの最後を告げる。

 

 

「そして……、死んじまいなぁ」

 

 

 




久しぶりの投稿です…


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襲来!速攻!その名は…

 

 先頭列車から切り離され、少しずつ走行速度が落ちている事を悟った伊東。そして、先程の喧騒と静寂。このことから、前方に向かった隊士はほぼ全滅したと想定した。

 

 この人数差を返り討ちか……、流石沖田君。真選組最強の1人と言われているだけある……。しかし、彼も人の子、多少ダメージや疲労は溜まっているだろう。

 

 

 そう、伊東が考えていると前方から返り血を浴びてはいるが、特に目立った傷もない沖田が歩いてきた。

 

 

「流石だよ、沖田君。あの人数差にほぼ無傷とは……」

 

「伊東……。この状況なら1分も掛からずお前を斬れる。最後だ、何か言い残すことはあるか?」

 

「最後だなんて、さみしいことを言うね。確かに、僕だけならもうやられてしまうかもしれないね。だけれど、僕がそんな打つ手なしの状況に陥ると思ったのかい?」

 

「はぁ?時間稼ぎのつもりか?もう斬って……いや、この音はまさか……」

 

 沖田が耳にしたのは、車のエンジン音。それも数台などではない。何十台もの車両群が列車に追いつこうとしていた。

 

「そう、そのまさかさ。敵の敵は味方と言うだろう?」

 

「攘夷浪士、それに過激派か!」

 

「合っているよ。正式には鬼兵隊と言うようだ」

 

 沖田はその名を聞き、ある危険な攘夷浪士を思い浮かべた。

 

「来ているのか、あの高杉が!」

 

「いや、彼は忙しい……。しかし、強力な助っ人を寄越してくれた。それこそ、君たちの監察もお世話になったようだよ?」

 

「山崎……。もう、話さなくていい。お前もさっきの連中の所に送ってやらぁ」

 

 既に殺気を隠しもしていない沖田。伊東は背筋に寒気が走った。

 

「怖いなぁ、沖田君。そんなに怒らなくてもいいじゃないか……まぁもう関係ないけれど。それじゃあ、後は任せたよ」

 

 そう言うと列車から降りた伊東。扉の前にはバイクが追走しており、その後部座席に着席したようだ。

 

「逃げ足だけは速いもんでさぁ。……前方車両との距離は……急がなくちゃ、近藤さん……!」

 

 

 

 

 速度を緩めた列車に車両群が追いついた。荒んだ攘夷浪士達が車からバズーカやマシンガンを放つが、列車に当てる気はないのか、弾丸は見当外れの場所へ飛んでいく。

 

 

 しかし、列車に近づいていたのは攘夷浪士だけではなかった。見覚えのある真選組の車両、それもボロボロになった状態ではあるが、攘夷浪士達の後方に接近していた。

 

 そして、ボロボロ車の後方からは、屯所で待機していた筈の真選組隊士達が車で追走していた。

 

「攘夷浪士!?」

 

「伊東が裏切ったってだけじゃなく、攘夷浪士、しかも過激派と手を組んでやがった!!」

 

 真選組が真っ二つに割れたこの状況。銀時の無線を聞いて、局長を救いに来た隊士達だが、予想外の状況に動揺を隠せていなかった。

 

「おい、ふくちょーさんよ。こんな状況で局長もあのドSもいない状況だ。お前が発破をかけねぇとじゃねぇのか?」

 

「そんな、拙者には無理だって坂田氏……。あんなに怖そうな人たちがたくさんいて、銃やランチャーまである。命がいくらあっても足りないでござるよ……」

 

「鬼の副長がそんなタマかよ……。護りたいって気持ちはそんなもんなのか!?ちょっと妖刀でオタクになったからって……!お前の護るべきものはそのちんけな安全だけか!あの鬼が俺達に頭下げたのはなんだったんだ!!」

 

 銀時が怯えたトッシーの胸ぐらをつかむ。言葉の熱量と比例し、トッシーは前後に揺れ何か覚悟を決めたように俯いた顔を上げる。

 

 そして、無線を手に取った。

 

 

「今、真選組局長近藤勲は暗殺されようとしている!謀反人は伊東鴨太郎!!攘夷浪士と手を組み、真選組を乗っ取ろうとしている!!現在、真選組一番隊隊長沖田総悟が単身、戦闘中だ!!ぼ……俺は仲間一人に戦わせる軟弱者の組織、その副長になってたつもりはねぇぜ。いいか、俺達の真選組は俺達で護る!!俺達の頭はてめぇ自身で護るんだ……せ、ぼ、おれの名前は、土方十四朗なりぃ!!!」

 

 その名乗りは、真選組隊士達の心を強く動かした。

 




むむむ……


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