ガールズ&パンツァーイェーガー (Valid Bear)
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第一章 少女達と戦車?
第1話 始まり


 梅雨も明け、まさに夏真っ盛りなある日。

 

 一人の少女が道を行く。

 

 風に飛ばされぬよう帽子を押さえ、美しい黒髪を靡かせながら、新たに出来たばかりの道を行く。

 

 ……いや、道自体は前から存在していた。

 ほとんど獣道だろこれといった様相を呈しており、彼女は気付いていなかったが。

 それがちゃんと整備された事で、少し通ってみようと思ったのである。

 

 そして道半ば。

 ある事に気付いた彼女は、周囲に人が居ない事を確認し──

 

「あーもーなんなのこの道!!めちゃくちゃ坂なんだけど!?」

 

 思いの丈をぶちまけた。

 

 

1話 憧れた少女


 

 さっさと帰ってエアコンの効いた部屋でアイスを食べるべく彼女が選んだこの道だが……。

 実は起伏が激しく、結構タフな道になっている。

 地図上ではかなりの近道であるように見えたが、実は大した時短にはならないのである。

 それに気づいた彼女は結構ショックを受けた。

 普段被っている猫を被らず叫んでしまう程に。

 

 戻るかと言う考えが浮かぶが、ここまで来たら進んだ方が速いと前に進む。

 ここを抜けた先にはバイト先であるカフェがある。

 出費は痛いが、そこまで辿り着けば日が傾くまで涼む事も出来るだろう。

 

 流石に自宅まで帰る気力は無い少女であった。

 

 

 

 

 

「お邪魔しまーす。渡辺さんいつもの、……ってあれ?」

 

 無事にバイト先まで辿り着いた少女はいつもの(メロンソーダ)を注文しようとしたが、カウンターの中に店主の姿は無かった。

 店内を見渡すと、テレビ前のテーブル席に大量のお菓子やら何やらを用意してくつろいでいる店主の姿が。

 

「……なにしてんです?店ほったらかしにして」

「あら、優香ちゃん。こんな時間に珍しいわねぇー。一緒に見てく?」

 

 そう言うと店主はテレビを指で示す。

 その画面には小高い丘と──

 

「見るって何を」

 

ギャィィイン!!

 

「ひえッ!?」

「あはは、優香ちゃん怯えすぎでしょー」

「びっくりしただけです!……何ですか?これ」

 

 それを登る茶色い何かが映されていた。

 先ほどの音はそれに何かが当たった事で出たらしい。

 

「戦車道って知らない?」

「知らないです」

「戦車は?」

「知ってます」

「その戦車に乗って戦うスポーツよ」

 

 戦車って言うとこう、キャタピラが付いてて、その上に回るのが載っていて……、とそこまで考えた少女は画面に目を戻す。

 

「……戦車なのこれ?」

 

 それは戦車と言うよりも動く巨大な凸だった。

 

「あー、うん。まぁ一言に戦車って言っても色々あるのよ。これはヤークトティーガーって戦車ね」

「へぇ……」

 

 よく見てみると、画面に映っているのはまさに戦車と言った形をしている物から、戦車らしくない物、またサイズも大小様々である。

 少数の戦車が山頂に陣取り、それを多くの戦車が囲むように迫っていた。

 

「えぇと……、立て籠ってるのは6台だけ?他は囲む側みたいだけど」

「あ、戦車は輌って数えるの。1輌だけ単独行動してるけど、それで全部だね」

「え、それだけ?見た感じ囲む側15輌ぐらい居るんだけど。30分でそんなに差付くんだ」

「最初から8対20だよ?」

「なにその不平等っぷり」

「20輌の方は一昨年まで9連覇してた学校で、8輌の方は今年戦車道を復活させた学校ね」

「更に酷かった!?」

「でも少ない車両での逆転劇が起こるのがフラッグ戦よ。現に大洗はここまで勝ち上がって来たしね」

 

 聞けば少数側の方こと大洗女子学園は、学園の廃校を阻止するべくこの大会への参加を決めたのだとか。

 廃校云々ってそう簡単に覆るのか?と思ったが、よく考えてみれば負ければその可能性すら消えるのだと気付いた。

 その先でどう転ぼうが、ここは負けられない戦いという訳だ。

 

 

 

 その後も大洗チームのピンチは続いた。

 川でエンストし、バカでかい戦車に蹂躙され、遅れていた敵本隊も合流し、残り1輌まで追い詰められ。

 

 しかし、その全てを跳ね返して見せたのである。

 

『黒森峰フラッグ車、行動不能!よって、大洗女子学園の勝利!!』

 

「凄い……」

 

 少女が気付いた時には、既に試合は終わっていた。

 フラッグ車同士の一騎討ち。

 この結果で全てが決まる戦い。

 

 それを制したのは大洗女子学園であった。

 

 すっかり炭酸の抜けたメロンソーダを口に運ぶ。

 勿体ない事をしたと思ったが、こればかりは仕方ない。

 飲むのを忘れるほどに見入っていたのだから。

 

「はいこれ、サービスね」

 

 見かねた店主が新しい物を持ってきてくれた。

 

「ありがとうございます」

「それにしてもずいぶんと気に入ったみたいじゃない?」

「一緒にやりません?」

「んー、私はもういいかな。若人は若人で楽しみなされ」

「若人って……。まだ30行ってないでしょうが……」

 

 

 

 

 

 戦車道の存在を知らなかったとは言え、少女にも戦車が1人で動かせない事ぐらいは分かる。

 そこで、戦車を動かすためのメンバーを集めるべく活動を開始したのだが。

 

「なんで誰も捕まらないのよ!」

 

 帰ってくる答えは芳しくない物ばかりだった。

 

「あんな試合見せられたら誰だってやりたくなると思ったのに……」

 

 素晴らしい試合だったのは確かである。

 

 だが少女は気付いていない。

 戦車道自体がマイナーな競技であり、そもそも見ている人数自体がそこまで多くない事。

 

 そしてメンバーを集めても足りない物がある事に。

 

「ふぁ……、ぁふぅ。なんか眠くなってきた。寝よ……」

 

 普段運動をしないのに長い坂など登ったらこうもなろう。

 実に夜9時の出来事である。

 

 

 

「やばい」

 

 だが、早く寝る=早く起きるではない。

 

「やばいやばいやばい!完ッ全に寝過ごした!!」

 

 目を覚ました少女の目の前には『私は仕事しましたよ』と言わんばかりにアラーム画面を表示しているスマートフォン。

 その時計は遅刻するかしないかギリギリの時間を示していた。

 大急ぎで最低限の身だしなみを整え、はたと気付く。

 

「あれ?今日って日曜日じゃない?なんでアラーム鳴ってんの」

 

 昨日は土曜日だった筈。

 試しにテレビを点けてみるが、流れているのは毎朝見てから行っている占いであった。

 日曜日なら良く分からない討論が流れている筈である。

 

「まさか……、丸一日ずっと寝てた……?」

 

 そのまさかである。

 

「ってマズい遅刻する!!」

 

 

 

 ギリギリながらもどうにかバスに間に合い、丸一日放置していた通話アプリを確認する。

 どうやら昨日はテーマパークに行った子がおり、その話題で持ちきりだったらしい。

 羨ましい限りである。

 

「ん?」

 

 その前まで遡っていくと、同級生の一人から少し気になる情報が寄せられていた。

 

「戦車道経験者が、うちのクラスに……?」

 

 

 

 

 

 ──これは、大洗女子学園の戦車道に魅せられた少女たちが、戦車道を全力で楽しむだけの物語である。




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第2話 出会い

 夕陽が差し込む格納庫。

 

 ここ1年は見ていないが、それでも忘れる事の無い、見慣れた景色。

 そこに居る皆の表情が、また「あの日」の夢だと物語っている。

 

 強い選手も居なければ重戦車すら無い、更に言えば練習時間も短い弱小チーム。

 そんなチームと戦ってくれる数少ない相手との練習試合を終えたあとのミーティング。

 いつもと何も変わらない筈だった。

 

「今回は残念だったけど、あと1歩まで追い詰められた。動きも良くなって来てるし、このまま練習を続けていればいつか絶対勝てるように──」

 

 でも。

 

 その日だけは違かった。

 

「いい加減にしてよ!」

「……え?」

「アンタの指揮が下手だから負けたんでしょうが!!アタシ達のせいにしないでもらえる!?」

 

 反論を試みようとし……、口が止まる。

 確かに自分達のチームは実力不足だ。

 今回も、言ってしまえばたまたま相手の作戦がこちらの狙いに嵌まっただけであり、その実力には天と地ほどの差がある。

 

 ……だが、もしこのチームの指揮を執るのが彼女だったら?

 

 もっとちゃんとした試合になっていただろう。

 

 もしかしたらそのまま勝ってしまうのでは?なんて考えすら浮かぶほどだ。

 

 自分はそこまで出来ない。

 そう考えてしまったら、もう何も言い返せなかった。

 

 

2話 諦めた少女


 

「あの、鴻上さん?」

 

 放課後。

 1人読書に没頭できる貴重な時間なのだが、たまにそれが出来ない日もある。

 例えばずっと教室で話している子がいたり、何かで使うために教室を空けなければならなかったり等々。

 だが、まさか自分に話しかけてくる子がいるとは思わなかった。

 

「なんでしょうか?」

 

 目を上げてみれば、そこに居たのはまさに自分とは住む世界が違う人物であった。

 容姿端麗、頭脳明晰……かどうかは知らないが、お嬢様然とした彼女は、その活発さを含めて結構な人気者である。

 そんな彼女がいったい何の用だろうか。

 

「戦車道やってたって本当?」

 

 誰から聞いたんだ……?

 少し考え、答えを返す。

 

「お断りします」

 

「なら私と一緒に戦車道を……、って嘘ぉ!?」

「素の性格出ちゃってるよ」

 

 名前が同じだけの別人という可能性もあるのに、私が戦車道をやっていたという事は確実な情報として話を進めていた。

 となると知り合いか。

 友人は大体地元の高校に進学していたのだが。

 

 それはともかく。

 確か高校の戦車道大会の決勝はこの時期だったはず。

 大方それに魅せられて戦車道をやってみたくなったのだろう。

 

「あんなのは二度と御免かな」

 

 だが、その道は長く険しいものである。

 目の前にいる彼女が飽きる事無くそれに立ち向かえるとは思えなかった。

 

「そっか……」

 

 とはいえ、そんなに落ち込まれると罪悪感が凄いのだが。

 彼女をここまで駆り立てるとは……、いったいどんな試合だったのか。

 

「見たのは決勝戦?それとも3位決定戦?」

「え?決勝だと思うけど」

「わかった」

 

 少し興味が湧いてしまった。

 鞄からノートPCを取り出し、スマホ経由でネットに繋ぐ。

 確か大会の中継映像は、戦車道連盟のホームページのそれなりに深い所から見れた筈である。

 

「ん、あった」

 

 結構な間見ていなかったし、場所が変わっていたりそもそも無かったらどうしようと思ったが、要らぬ心配だったようだ。

 なんだったらページが増えてすらいなかった。

 連盟はもう少し宣伝に力を入れるべきだと思うが、今は好都合。

 すぐに目的のページに辿り着き、映像を──

 

「ん?」

「……どしたの?」

 

 開こうとした所で手が止まる。

 そこには試合の詳細が書かれているのだが……。

 

 片方が黒森峰なのは予想どおりとして、その相手は……、大洗女子学園?

 

 聞いた事の無い学校だ。

 今までにも、大会に出て来なかった学校が快進撃を見せたことはあった。

 だがそれも、ある程度の質の戦車を定数まで揃えた上での話である。

 

 それなのにこの学園はなんだ……?

 

 ポルシェティーガーやIV号はまだ良い。

 他も一級品とは言えないがそれに通用する、といったレベルの戦車だ。

 

 だが何だ八九式って。

 千波単学園でも最近は九五式や九七式を使っていたと思うのだが?

 

 しかも決勝以外にポルシェティーガーの名前は無いし、準決勝に到ってはその状態でプラウダと当たっていた。

 良く勝てたな……。

 昨年のプラウダの勝利は実力によるものではないという評価をされる事もある。

 だが、たとえ運が回ってきたとしても、実力が無ければ勝利は掴み取れない。

 

 それをたった6輌で破ったというのだ。

 正直、この時点でかなりワクワクしている。

 

「まぁ、とりあえず見てみようかな」

 

 試合を見れば快進撃の理由も自ずと分かるだろう。

 

 

 

 

 

「……なるほどね」

 

 試合の映像が終わり、表彰式の映像に切り替わる。

 大洗は動きがいいのは勿論、純粋に良いチームだった。

 最初こそその機転そのものに驚かされたが、それが出来る人物に気付き、確信してからは、それに付いて行けるチームの結束の固さに驚かされた。

 そして今、予想通りの人物が優勝旗を受け取っていた。

 

「ね?凄かったでしょ?」

「……これは確かに凄いかも」

「なら一緒に」

「なんでそうなるの」

 

 ……まぁ、火が点いたのは事実だが。

 戦車道をやろうにも、1つ足りないものがある。

 

「そもそもメンバーが集まったとして──」

 

「戦車はどうするの?」

 

「あ」

 

 考えていなかったらしい。

 

 ……まぁ確かに戦車が無くとも出来ることはある。

 座学とか、その心構えを学んだりだとか、体力を付けたりだとか。

 たが、やはり戦車道は戦車に乗ってこそである。

 

「……買えば良いんじゃ」

 

 正 気 か こ の 子 。

 

「高いよ?」

「そうなの?幾らぐらい?」

「こんなのでも○○万ぐらいする」

「え?」

 

 ……まぁ普通は戦車の値段なんて知らないか。

 試しにアンツィオのC.V.33の値段を教えてみたら見事に固まった。

 

「あと戦車は燃費悪いから燃料費も洒落にならないし、当然弾も高いよ」

「ひえぇ……」

 

 その他にも定期的なパーツ交換やらなんやらの維持費や、試合をすれば修理にもお金がかかる。

 淑女の嗜みと言うが、実際お嬢様でなければ個人でやるのは無理だ。

 戦車道の競技人口が少ないのはこの辺りも影響しているのだろう。

 

 

 

 

 

「あれ?珍しい組み合わせだねぇ。なに話してるの?」

 

 どうやら結構な時間が経っていたらしい。

 うんうん頭を捻っているのを眺めていると、先生に声を掛けられた。

 最終下校時刻である。

 

「戦車道をやりたくなった彼女が話しかけてきたのですが、戦車をどうするか考えていなかったみたいで……」

「あらら。まぁ戦車って思いの外高いからねぇ……」

 

 連盟や国も補助金を出したり頑張ってはいるが、期待したほどの効果は得られていないらしい。

 そんなことを考えていると、先生からとんでもない発言が飛び出した。

 

「どうする?うちので良ければ貸せるけど。ドライバー、燃料、整備他諸々込みで」

「へ?」

 

 今何て言った?

 うちので良ければ貸せる?

 

「戦車持ってたんですか?」

「うん。まぁ営業用に魔改造されたのが1輌だけだけど」

 

 営業とはいったい。

 それはともかく、断る理由が無くなってしまった。

 

「戦車確保できたよ?」

「……分かりました。3人居れば最低限の練習は可能でしょうし、お言葉に甘えさせていただきます」

「やった!早く行こ!」

「行くって何処に」

「……?戦車のところに決まってるでしょ?」

「もうそろそろ6時だから日を改めたほうが良いですよ」

「うえ!?もうそんな時間!?そしたら放課後に教室集合で!!また明日!!」

 

 そう言うと彼女は鞄を掴み、廊下をダッシュしていった。

 

「私、先生なんだけどなぁ……」

 

 そして先生が目に見えて落ち込んでいた。




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第3話 戦車登場

拡大解釈(という名の独自設定)てんこ盛り回
……まぁ役人さんもやってましたから許してくださいませ


「ほわぁぁあ」

「何か凄い声出たけど」

 

 放課後。

 先生の案内の下、巨大な格納庫へと辿り着いた私達を待っていたのは──

 

3話 戦……、車?


 

「すごい!戦車だ!でっかい!!」

 

 これぞまさに戦車!

 

 ……といった風貌をしたアメリカ製の自走砲だった。

 

 これ、使えるのだろうか?

 整備は完璧に見えるが、問題はそこではない。

 

「M18の90ミリ仕様か。確かに良い車輌だけど、オープントップじゃ……」

 

 オープントップの車輌で戦車道連盟の審査を通った例は無かった気がする。

 それらに共通する回答は「安全性の観点から」である。

 上が開いていれば乗員保護の特殊カーボンも張れないし、道理である。

 まぁキューポラから上半身を出していたり、操縦手がハッチを開けて視界を確保していたりと、線引きの意味は無い気もするが。

 

「なんかコイツも蓋してあれば平気らしいね。なんなら後付けの砲手席と自動装填装置を積んでても蹴られないらしい。改造されたカール自走臼砲が協議中になってたぞ」

 

 反応を期待しての発言ではなかったが、背後から答えが返ってきた。

 振り返ると、そこにはライダースジャケットに身を包んだ高校生が立っていた。

 

「カールが協議中ならまぁ平気かもね。……それで、あなたは?」

「三木真琴。母さんから今格納庫に行けば戦車道ができるって言われたから来た。機関科だから普段は会わないけど、私もここの1年だよ」

 

 どうやら彼女が先生の言うドライバーらしい。

 

「私は普通科1年の鴻上葵。よろしく」

「あ、私は関優香!服飾科の1年!よろしくね、真琴ちゃん!!」

「うん、よろしく。どうする?今週は夕方から当直だから動かせないが、もう少し見てくか?」

「やった!」

 

 ……なるほど。

 学園艦は常に航海しているが、それを運航しているのは教官に指導を受けた学生達だ。

 当然、生活サイクルがすれ違う事もあるだろう。

 土日はこちらが合わせれば済むが、平日はそうも行かない。

 

「安心してくれ。来週からは午前中にしてもらうからな」

「大丈夫なの?」

「あぁ。そもそも本来が午前で、今週は頼まれて代わっただけだしな。空き時間にコイツを動かすのも含めていつも通りだよ」

「なら良かった」

 

 巻き込んだ事で無理をさせるのは……、と思ったが、どうやら問題なかったらしい。

 真琴はそのまま当直に向かうらしく、奥からバイクを引っ張り出してきた。

 

「何か必要なものとかある?」

「必要な物か……」

 

 まぁ色々とあるが、まずは──

 

「……改造点をまとめたファイルとか見れたら嬉しいかな」

「あ、それならあそこの机のファイルがそうだから好きに見てて。持ち出しても平気だから。帰る時は母さんに声かけてそのまま帰っちゃって。それじゃ!」

 

 真琴はそれだけ言うと──

 

「わかった。ありが──、行っちゃった」

 

 礼をいう間もなく行ってしまった。

 そろそろ5時だし、結構ギリギリだったのかもしれない。

 とりあえず、教えてもらった机を確認し──

 周囲に別の机がないか確認する。

 

「机の上って……、まさかこれ?」

 

 教えられた机の上にあったファイルは、今まで見たことの無い分厚さを誇っていた。

 

 

 

 

 

 目を通していては夜になるので、お言葉に甘えて持ち帰り、家で内容を確認する。

 まさか全部じゃないだろうと思っていたら、信じられないことにそのまさかであった。

 なるほど、これは確かに魔改造である。

 丁寧な事に目次もあったが、その目次だけで10ページ以上とは。

 それにしても。

 

「エンジンとか足回りの量よ。なにこの数……」

 

 全体のおよそ半分。

 総数が総数なだけに、その半分でも相当な数になる。

 エンジンのレギュレーションは結構キツめだと思っていたが、意外とやれる事は多いらしい。

 

「……いや、だからこそか」

 

 使える技術の制限が厳しいからこそ、少しでも性能が上がる技術を片っ端から投入したのだろう。

 それに。

 

 戦車道において、試作車輌という「拡張性」は時に、長く戦場を支えたという「信頼性」を圧倒する。

 

 特に終戦に間に合わなかったと言うのは、戦争の観点から言えば無駄なのだろうが、戦車道で見ると、その国の最新鋭の技術が多数使えるという事に他ならない。

 さすがに当時の開発者が載せるつもりがなかった、あるいは知らなかった物は載せられないが、それ以外に関しては採用が検討されたとかのレベルでも搭載が認められている。

 当時搭載予定であった部材同士であれば自由に組み合わせる事が許されている戦車道のルール上、当時は考えられていなかったが、後に主流となった組み合わせで搭載する事さえ可能という訳だ。

 

 ……というのを知識として知ってはいるのだが。

 正直私がこの辺りを見ても、何が何やらといった感じである。

 

 とりあえず、使われているパーツのメーカーと、後ろの方に挟んである性能表から、どれもこれも最高級品だという事は分かった。

 と言うかこの数のパーツ換装ともなると、例えジャンクだったとしても相当するだろうに、すべてが1つのメーカーで統一され、当然ジャンクパーツなど使われていなかった。

 それどころか城島重工と言えば国内屈指の精度と、それに見合ったお値段を誇る超高級店である。

 いくらかかったのかを考えたら頭が痛くなりそうだ。

 

「練習するにしても下手に壊せないな、これは……。ん?」

 

 そして、練習の事を考えたら1つ、疑問が浮かんだ。

 

「そういえば、いつもどこで動かしてるんだろう?」




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第4話 初練習

「ん?どこで乗ってるかって?この下だよ」

「はい?」

 

4話 訓練


 

 土曜日。

 どこで練習しているのか訊ねたところ、思いもよらない答えが返ってきた。

 どうやら格納庫奥の扉がエレベーターになっているらしい。

 曰く、艦内にある『格納庫』と呼ばれる倉庫スペースの半分ほどを借り受けているのだとか。

 50Mほどの高さにある天井のライトが点灯すると、そこにはちょっと狭い大自然が広がっていた。

 奥の方には市街地も見える。

 さしずめミニ演習場と言ったところか。

 

「紛らわしいから、ここの呼び方は『演習場』で行こう」

「はいよ」

 

 格納庫というのは、改設計の元となった空母時代の場所からの呼称らしいが、戦車の格納庫なのかこちらなのか、分からなくなる可能性がある。

 

「……それにしても葵ちゃん随分気合入ってるね?」

「え?」

「だって髪束ねてるし、眼鏡じゃなくてコンタクトだし」

 

 あぁ、なるほど。

 

「戦車の中だと髪は邪魔だし、眼鏡はふとした拍子に割れたら危ないからね。気合が入ってるのも間違いないけど」

「……普段からそうしてれば良いのに、勿体無い」

「……何が?」

「なんでもない」

「そう……。それじゃ、総員搭乗」

 

 担当はあらかじめ決めてある。

 真琴が操縦手、優香が砲手、残りの装填手と車長が私である。

 今回は通信する必要が無いため、通信手は無しだ。

 

「どうする?」

 

 逆に言えば、決めてあるのは担当だけだ。

 大体やりたい事が決まっている以外は、基本的に行き当たりばったりである。

 地図を見て、的の向きと位置から大体の射点を決め、一番高低差が少なく狙いやすい組み合わせを選ぶ。

 そして、そこまでのルートは人によって時間が大きく変わるものを選び、真琴に伝える。

 

「H4からA2経由でC1まで移動、これを全開で。まずこの車体の性能と真琴の腕を知りたい」

「りょーかい」

「優香はそことここ掴んで踏ん張って」

「ここ?」

「そこ。……よし、戦車前進」

 

 

 結論から言えば、何もかもが予想の範疇を大きく凌駕していた。

 M18は登坂能力から察するに、相当な馬力を有している。

 と言うか、平地と大差無い速度で急坂を駆け上るんじゃない。

 そして真琴も、履帯が空転する直前まで使い切る、TCS顔負けの操縦技術を見せた。

 林の中もほとんど減速せずにすり抜けるし、これなら行けるかと思って出した急な停止の指示にも瞬時に応えてくれた。

 ……これに慣れると、他の戦車に乗る時にもその感覚で指示を出してしまいそうである。

 

「C1に着いた訳だが、どこに止まれば良い?」

「……右前方の丘の茂みに」

「りょーかい」

 

 予定のポイントに着いた為、射点を決め、車体を隠す。

 まぁ狙ってくる敵が居るわけではないが、次にやるのが砲撃訓練であるため、私のスタイルから一番機会が多いであろう茂みからの砲撃を想定しての事である。

 

「お疲れ様」

「全開でって言われたからかっ飛ばしたけど、二人とも大丈夫だった?」

「私は慣れてるから平気だけど、優香は──」

「怖かった……。でも大丈夫!てか途中からは結構楽しかった!!」

「「ほぉう?」」

「なんか二人とも悪い顔してるんだけど!?」

 

 なに、帰りが少しばかり絶叫アトラクションになるだけである。

 

 茶番はさておき、装填手席へと移動する。

 

「葵ちゃん。操作は分かったけど、当てるのにコツとかある?」

「数撃ちゃ当たる」

「嘘でしょ!?」

「まぁちょっと意味は違うけど。よっぽどじゃない限り、何回も撃ってるうちにコツが掴めて当たるようになる」

「あぁ、なるほどね」

 

 ……それにしても重いな。

 90ミリでこれでは、マウスの120ミリとかだと持ち上げるのも大変そうである。

 

「よし、装填完了。試しにあそこの的を狙って撃って」

「分かった!」

 

 イキイキしてるなぁ……。

 

「……この辺かな」

「え?」

 

 ッドン!

 

 撃ったし。

 もう狙い付けたのか……。

 優香の手によって放たれた1発目の砲弾は、その軌道を僅かに逸らし──

 

 的の支柱を直撃した。

 

「……これは驚いたな。普通1発目はもっと外れるんだけど」

 

 しかも左右の狙いはドンピシャと来た。

 流石の一言である。

 

「……ごめん。感心してるところ申し訳ないんだけどさ。私狙ったの隣の的……」

「あ、そうだったのか。それでも初撃にしては十分高精度だ。……装填完了。いつでもどうぞ」

 

 そして2発目。

 今度は大きく外れて、結構奥の地面に着弾した。

 

「いや、なんでそんな上行くのよ!?」

 

 ……実は、何発も撃つ際の最初の数発には、ちょっとした落とし穴が潜んでいるのだ。

 落とし穴と言うか、単純に砲身の歪みの問題である。

 自重で垂れていたり、熱膨張で戻ったり、同じく熱で垂れたり。

 短砲身ならまだしも、長砲身だとそれが顕著になる。

 

「2発目と3発目の感覚も覚えておいて。弾道変わるから。あとは少し移動してから撃った時の感覚も違ってくる」

「……本当に数撃たないと当たるようにはならなそうだね」

「試合ではどっちも全速で動いてるなんて事もある」

「ひえぇ……」

 

 

 その後、場所を変えては砲撃という流れを繰り返しているうちに暑くなってきた為、練習を終了する。

 

「え~?もう終わり~?」

「うん……。熱中症になったら大変だし、それに──」

 

 そろそろ昼食を摂らないと、午後の座学の時間がなくなってしまう。

 

 車内に優香の悲鳴が響くのだった。




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第二章 対 黒森峰女学園戦
第5話 新メンバー


「東富士演習場行きたい」

「……唐突だね」

 

 夏休みも折り返しを過ぎ、秋の気配が近付いてきた、そんなある日の事

 突然、優香からそんな要望が出された。

 

5話 チームメイト


 

 東富士演習場。

 自衛隊の総火演や、高校戦車道全国大会の決勝が行われる、日本の戦車乗りにとっての聖地とも呼べる場所。

 

「土日は一般向けに開放されてるんでしょ?行ってみようよ!」

 

 そこは毎週末、戦車の練習用に開放されており、各校が練習に勤しんでいる。

 だが。

 

「良いけど……、危ないよ?」

「危ない、ってなんで?カーボンは?」

「何か揉めてるなぁって思ったら急に戦車を使った喧嘩……、もとい練習試合が始まったりする。その時練習中だと巻き込まれる」

「えぇ……」

 

 戦車道とは血気盛んな乙女を育てる武道では無かったはずなのだが。

 それはともかく。

 

「現状だと装填中に周り警戒できないから、少なくとも1人、出来れば2人欲しいかな」

 

 敵が迫っていても移動しないM18など、ただの対戦車砲である。

 装甲が厚いならまだしも、M18に関して言えばもはや紙だし。

 現状、巻き込まれたらひとたまりもないだろう。

 

「そっか……」

 

 と、言うわけで。

 

「真琴、確保よろしく」

「はいよ」

「へ?きゃぁぁああ!?」

 

 お菓子片手にやってきた真琴に頼んで、格納庫の入口からこちらを覗いていた不審者を連行してもらう。

 

「何でここにいるの?夏帆」

 

 彼女は東雲夏帆。

 中学時代の同級生で、今はその学園の高等部に通っている筈の友人だった。

 久し振りの再会なのだが──

 

「ん?葵ちゃんに変な虫が付かないか心配で編入してきた」

 

 ──ちょくちょくこういう事を言ってくるのだけは苦手だ。

 暑いのに身体中鳥肌だらけである。

 

「……心配だったのは本当だよ?戦車道やめてから葵ちゃん抜け殻みたいになってたし」

「いや、抜け殻ってほどじゃないでしょ。……そこもなるほどって顔しないで?」

 

 閑話休題。

 

「まぁ編入してきたならちょうどいいや。確かタンカスロンやってたっていってたよね。今ちょっと人数足りないんだけど、戦車乗ってみる?」

「乗る」

「よし」

 

 装填手も確保できたし、これならなんとかなりそうである。

 

「真琴って公道乗れる免許持ってる?」

「いや、私有地でしか乗るつもりなかったから、まだ持ってないぞ」

「……まだ?」

「一緒に始めてから通い始めたけど、早くても来月だな」

「なるほど」

 

 となると、どこかに輸送を頼むか私が操縦していくかの二択か。

 ……正直どっちも厳しそうである。

 輸送を頼むと言っても、戦車を運べるクラスとなると金額がえらい事になるし、操縦出来る免許はあれど、このじゃじゃ馬を乗りこなすのはまず無理だ。

 

「と言うかそもそも私達が公道乗れなくても平気じゃないか?うち輸送車あるし、それに載っけて行けば」

「……あるの?」

「そりゃここ以外で試験することもあるし、大規模整備は本社の方でやってるしな」

「待て」

 

 何となく分かったわ。

 やたらと高級パーツばかり使われている事。

 先生の営業用発言。

 そして今の本社の方でという台詞。

 

「もしかして、城島重工って……」

「じいちゃんの会社だけど……。あれ?言ってなかったっけ?」

「……聞いてない」

 

 要するにこのM18は『うちのパーツを使えばここまで出来ますよ』という宣伝のための魔改造車だった、と。

 

「え?なに?城島重工って」

「高いけど高性能な戦車部品売ってるところ」

「……?戦車って高いんじゃなかったっけ?そこから更に?」

「そう」

「???」

 

 この間パーツの値段を調べたら、このM18、戦車が数輌買えるほどの値段が掛かっていた。

 だが、そういう事なら納得である。

 

 

 

「それじゃお嬢、アタシは寝てるんで、帰る時には叩き起こしてください」

「人前でお嬢はやめろって言ってるだろ……」

 

 土曜日の朝。

 M18の整備士さんの運転する輸送車に揺られる事数時間。

 富士演習場に到着した。

 ここから必要書類を提出したり、改装点の確認を受けたりして、ようやく演習場内に乗り込むことが出来る。

 

「次の方、こちらへどうぞ」

 

 書類に関しては何度か来ているので問題はない。

 問題があるとすれば──

 

「えっ?これ全部、ですか?」

「はい」

 

 魔改造による確認資料の多さだろう。

 例の分厚いファイルを渡して確認してもらう。

 

「ん?M18 城島スペシャル……。あぁ、城島重工さんの。えぇと、前回から変わったのは……、砲塔が屋根付きになったぐらいですね。カーボンもちゃんと張ってあるようですし、これでしたら問題ないのでどうぞお通りください」

「え?」

 

 あっさり終わった。

 聞いてみれば、個人所有の戦車は魔改造がされた車輌も多く、その中でも安全面に問題が無かった車輌は改装点をまとめた資料を保存してあるらしい。

 その後、資料と車輌の改装点に相違がないかの確認を受け、待機区域に乗り込んだ。

 待機区域には多種多様な戦車が並び、その多くにはその車輌の属する学校の校章が描かれている。

 その中には──

 

「ねぇ葵ちゃん、これってこの間の決勝のチームじゃない?」

「うん、黒森峰女学園だね」

 

 今年の全国戦車道選手権の準優勝校も含まれていた。

 ゲートを通った順番から、私達はその隣にM18を止め、各自降車する。

 

「確か黒森峰も艦内に演習場が──」

「ん?鴻上か?」

 

 そして、黒森峰の生徒から声を掛けられた。




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第6話 模擬戦開始 ☆

 何もペイントされていない戦車はここでは少数派だ。

 当然注目を集める。

 そして私は、車輌の周囲の安全を確認するためにキューポラから身を乗り出していた。

 知り合いに見付かったとしても、それは当然だろう。

 

6話 Lack of ability


 

「やっぱりそうだ。元気だった?」

「えぇ、それなりには。秋名さんも?」

「もちろん」

 

 富士演習場で出会った黒森峰の生徒。

 彼女はかつてのチームメイトであり、自分が戦車道をやめた後、隊長としてチームを引っ張っていたらしい。

 それだけであれば後輩とも言えるのだが……。

 

「それにしても、まさか戦車に乗った鴻上さんと会えるとは思わなかったな。私に全部押し付けてやめていったから、2度と戦車には関わらないつもりだとばかり」

 

 ……話してるこっちがハラハラする。

 まぁこの子の場合、言葉の選び方が悪いだけで悪意はないし、気が付けば訂正──

 

「何よそれ!?喧嘩売っモゴ」

「ちょっ、ストップストップ!!」

 

 ──する前に優香が爆発してしまった。

 真琴も抑えてくれているが、時既に遅し。

 

「いや、そんなつもりは無いんだけど……」

「大声出して、いったい何の騒ぎよ?」

 

 あれだけ大声を出してしまっては誰でも見に来る。

 自分が副隊長を務めるチームの戦車のそばとなれば尚更だろう。

 

「昔のチームメイトが居たので、少し話を。少し会話が食い違ってしまいましたが」

「少し?その割に相手は結構頭に来てるみたいだけど」

 

 そこに現れたのは亜麻色の髪と碧い瞳を持つ少女──

 逸見エリカその人だった。

 いや、いずれにせよ此方の早とちりが原因だし、助けなくては。

 

「あー、大丈夫ですよ。言葉の選び方が悪くて余計な一言になっただけなので」

 

 私がそう言うとエリカさんはこちらを見てから視線を戻し──

 盛大にため息を吐いた。

 

「またなの?」

 

 ……もしかしてこの子は黒森峰でもちょくちょく勘違いされてるのか。

 

「何でこう思ったそばから口に出しちゃうかな」

「その、ごめんなさい」

「それで損するの秋名さんでしょうに」

 

 良くこれであのメンバーを纏められたな。

 宮路さん辺りが早々にぶちギレそうなものだが……。

 

「まぁ何にせよ、うちのメンバーが迷惑掛けたわね」

「いえいえ、馴れてますから」

「そう?なら良かった」

 

 

 

「ほら、あと10分で私達の番よ。早く準備しなさい」

「その事で少し話が」

「……何よ」

「彼女達は1輌しか居ないらしいので、私達と模擬戦などをしては如何かと思いまして。1輌だけでは出来る事も限られるでしょうし」

「相手の都合次第ね」

 

 まぁ、好都合ではある。

 黒森峰女学園と直接やり合える機会なんてそうそう無い。

 

 だが。

 

「正直に言って、アンフェアだと思いますよ?」

「もちろんこっちから何輌かそっちに回すわよ?1対1も両方に相当な腕がないと試合にならないし」

「あ、いえ。うちの車輌はM18はM18でも、スーパーヘルキャット仕様の魔改造車ですからね……。パンターとは相性最悪かと」

「……あ、そっちなのね」

 

 まぁ確かに多対一も普通ならフェアではないが。

 ヒットエンドランを徹底すれば常に一方的に砲撃できるというのも大概である。

 上手い隊長なら裏をかいたり後の先を取ったりで対応出来るだろうが、30キロ以上もの速度差を埋めるには相当な 早 さ が必要になる。

 

「それを覆せる相手なら例え1対1でも私達の負けでしょうし、覆せないなら1対1じゃ話になりません」

「まぁそうね……。指揮がこの子だとしたら何輌ぐらい耐える自信ある?」

 

 エリカさんはそう言うと秋名さんを指し示す。

 指名された秋名さんは面白いほどに動揺していた。

 

「私ですか!?」

「と言うか一緒にやっていたので……。ほぼ確実なのは2輌ですかね」

「鴻上さんまで!!」

 

 ……まぁこればかりは口を出す訳にも行くまい。

 指揮が出来るだけの素質と実力があるのは確かだし。

 

「3輌はどう?」

「ここ1年間でどれだけ腕を上げたか、そして私の腕がどれだけ鈍ってるか。……まぁやってみない事には」

 

 ここに居るのはパンター3輌にティーガーⅡ1輌だし、そういう意味でも丁度良いだろう。

 下手なことを言って少し離れた所に待機している本隊に出てこられても困るし。

 マウスとかたった1輌でどないせーと。

 

「そっちがそれで良いって言うなら最初はそれで。ただ、あまりにもバランスが悪いようなら私も出るわよ。弱い方に付く第3勢力って感じかしら」

「勝っても負けても嫌なんですけど」

 

 負けるのはもちろん嫌だし、パンター部隊に勝ったとして報酬は正真正銘の重戦車、ティーガーⅡ(しかも黒森峰の副隊長指揮車)からの砲弾である。

 正直な話どっちも面d……、気が重い。

 

 

 

 まぁどうせなら楽しい方を選ぶだけの事なのだが。

 

「さぁて、どう出てくる?」

 

 結局申し出を受け、戦闘を開始してから30分。

 そこらに生えてた草で擬装も済ませ、接近してくるであろうパンターを索敵中である。

 相手の開始地点からの距離を考えると、早ければそろそろ姿が見えて来る頃だ。

 

「……いや、見付けた。1時の方向」

 

 まだ姿は見えないが、丘向こうに土煙が見えた。

 飛ばしすぎなのか、それとも1輌では無いのか。

 結構な大きさの土煙が上がっている。

 少しすると、隊列を組む3輌のパンターが現れた。

 流石は黒森峰、綺麗な隊列である。

 ……だが。

 

「これなら思う存分逃げ回れるな」

 

 1輌でも別に動いていれば常にその位置を考えながら行動しなければならなかったが、3輌まとまって居るならその必要は無い。

 逃げた先に敵が居ないと分かっているというのは、非常に楽なものである。

 戦術的にも、心理的にも。

 

「それじゃあまず1発。先頭の1輌狙ってみようか」

「……え?この距離から?」

「うん。いつもこの距離撃って当ててるでしょ」

「それ動かない的相手なんだけど!?」

「相手の動きはそこまで速くないから予想しやすいし、何より的の10倍はデカイから平気平気」

 

 無風とは言え、あのサイズの的に初弾から当てる腕を持ちながら何を言っているのか。

 最近では学園艦から離れて牽かれる的に対する命中率も上がってきているし、砲手としては間違いなく一流だ。

 そもそも、外したとしても何度も待ち伏せを繰り返す間に修正出来るだろうし。

 

「そんなもんかなぁ」

「そんなもんだって。……砲撃準備。目標、先頭のパンター」

「ふぅん……、砲撃準備完了。いつでもどうぞ」

「撃てッ」

 

 指令を出してから気付いたが、この車輌では初の対戦車砲撃である。

 轟音と共に放たれた一発目の砲弾は──

 

 重力に導かれるがままに、パンターの左側面へと吸い込まれていった。




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第7話 Hellcat ☆

 戦車道の大会では低速の偵察機等が飛行し、審判や中継等に重要な役目を果たしている。

 だが、模擬戦の1戦1戦まで飛ばす訳にはいかず、そもそも急に決まったこの戦闘には手配が間に合わない。

 ではこのプロジェクターに映されている映像は何で撮られたものなのか。

 答えは簡単。

 黒森峰女学園の戦車道チームが所有する、空撮用のドローンによるものである。

 チームメイトが操縦するドローンからの映像を見ながら、エリカはかなりの衝撃を受けていた。

 最初こそ、元の車輌が高性能である以上、魔改造したとしてもそれほど化けはしないだろう、と考えていた。

 戦車道のレギュレーションで技術レベルが指定されているのだから、当然と言えば当然の考えである。

 だが、蓋を開けてみればまるで別物だった。

 機動力だけを見れば、現代戦車を含めたとしてもアレに敵う戦車は居ないのでは無かろうか。

 それに──

 

「初弾命中……!」

 

 1発目からしっかり当てる砲手の腕もだが、そこで欲張らずに場所を移した車長の判断も流石の一言である。

 残ったパンターが砲撃体勢に入る頃には既に稜線の向こうに隠れていた。

 1発でも当たれば終わるような装甲しか持たない以上、砲撃される機会を極限まで減らそうという訳だろう。

 パンター隊も射点に向かうが、そこに辿り着く僅か3分足らずの間に回り込まれている。

 足の速さを活かした行動を取るM18に対して、パンター隊は60キロにも満たない速度を完全に持て余しているように見えた。

 だが──

 

「ほう、どちらも中々やるじゃないか」

 

 隣にいる隊長の感想は、パンターを動かす彼女達をも認める物だった。

 

「どちらも、ですか?」

「あぁ。M18の動きは勿論、秋名の方も指揮をする際の勘所を良く押さえている。経験者であっても無茶な指示を僚車に出したりする事はあるからな」

「なるほど……」

 

 確かにパンターの動き自体にはある程度余裕が見てとれる。

 でも押されていますよね?という視線を感じ取ったのか、隊長は「……まぁ、作戦選択は少し間違えたかも知れないがな」と付け足した。

 今のパンター部隊の動きは後の先を制す動きであり、パンターとの相性は良い。

 だが、それはあくまで相手よりこちらの方が、走攻守のいずれかで優る場合に限った話だ。

 速度では大きな差があり、砲撃はどちらも当たれば貫けるが射程で劣る今回の戦闘に適しているとは言えない。

 M18の2度目の砲撃は運良く外れたが、このままではジリ貧。

 遠からず決着が付くだろう。

 

「ちょっと早めに出ますね。あまり遅いと相手を待たせる事になりそうですし」

「あぁ、その方が良いだろう」

「……何か言いたげですね、隊長?」

「なぁエリカ、本当に私は出たら駄目なのか?凄く楽しそうなのだが……」

「まだ言ってるんですか。まぁ、思ったよりも腕は確かなようですし、一応聞くだけ聞いてみますが……」

 

 

 答えは一言「ムリ」だった。

 隊長はヘコんだ。

 

7話 Hellcat


 

「ごめん、外した!!」

「大丈夫。弾が尽きるまでに当てれば良い」

 

 本当に弾が尽きるまで外されると、その後のティーガー戦で使える弾がトレーラーにある10発しか無くなり、結構気を使う事になるのだが。

 あくまで言葉のあやである。

 それにしても。

 

「何でこう、悪手ばっかり取ってくかなぁ……」

 

 互いの位置が分かっていない序盤ならまだしも、今の状況であんなに散開したら大体は各個撃破されるだけだろうに。

 最初であれば各個撃破されたとしても、相手の位置情報という点で多少優位に立てるが、既にある程度の位置が割れている現状ではほとんど意味がない。

 こちらの位置が分からなくなっているとは考え難いし、1輌が気を引いている間に背後を取るにしてはこちらとの距離が近すぎる。

 

「まぁこっちとしてはやりやすいんだけど」

 

 再び目の前に現れたパンターへ砲撃し……、今度はちゃんと仕留める。

 あと1輌もこの調子で仕留めてしまえばこちらの勝利なのだが……。

 

「──正直、物足りないよねぇ?」

 

 もしこの台詞を、去年突っ掛かってきた彼女が聞いていたなら「そういう所が隊長失格だって言ってんの!」と叫ばれていた事だろう。

 私とて、パンターに勝つにはヒットアンドアウェイを続けるのが正解だと言うのは重々理解している。

 

 ──だが、それではどちらも楽しくない。

 

 林に入ってからのパンターは速度がかなり下がっていて、最早普段の練習と変わらない。

 相手にとっても一方的に撃たれるというのは結構なストレスだろう。

 それに相手の動く気配が無い以上、こちらが待ち伏せしても我慢競べになるだけだ。

 そうなれば不利なのはこちらである。

 先程隊長の参戦は断らせて貰ったが、それを聞いてきたという事は恐らくだが、あと10分もすればティーガーⅡが加わると見て間違いないだろう。

 そうなれば対処が非常に難しくなってしまう。

 出来ればその前にパンターは片付けておきたい所だ。

 幸い、ある程度までであれば位置を絞り込む事は出来る。

 2輌目を撃破するまでに聞こえていた音と、最後に確認した位置、そして林の中でのパンターの速度。

 これらから推測出来る範囲内で待ち伏せに適した地形……、は無いから、適したように見える地形となると……。

 

「……ここ、かな?マップBのD2」

 

 1ヶ所、ある事はあった。

 確かに普通の戦車であればそのポイントの目の前を通る可能性は高いだろう。

 ──普通の戦車であれば。

 

「真琴?」

「どうした」

「ちょっと無茶頼みたいんだけど、良い?」

 

 だが、このM18の速力とガチガチに固めた足回りがあれば普通は行かないルートを通る事も出来るかもしれない。

 

「……性能的に可能ならやってやるさ。何がしたい?」

 

 聞いてみるとそんな頼もしい答えが帰ってきた。

 それなら試してもらおうかな。

 

「荷重を少し後ろに移しながら5メートルの崖から全速ジャンプ。行けそう?」

「水平じゃなくて良いなら簡単だが……、良いのか?着地後に隙が出来ると思うが」

「敵の注意は正面向いてるだろうから大丈夫だと思う。水平に飛ぶの失敗して鼻から地面に突っ込んだらマズイし。優香は砲塔後ろ回しといて。跳んだ後すぐ撃てるように」

「「分かった」」

「それじゃ、行こうか」

「ねぇ葵ちゃん私は?私は何か無いの?」

「……頭ぶつけないように気を付けてて」

 

 

 

「……来たみたいだな」

 

 坂の下でM18を待つ事5分。

 このフィールドに居るのは自分以外は2輌のみ。

 こちらに猛スピードで近付いてくる独特なエンジン音を聞き間違えようもない。

 この坂は崖を一部切り崩して昇降が出来るように作られており、左右は崖に挟まれている。

 また、崖は長く続いており、ここ以外から降りるには相当遠回りをしなくてはならない。

 ティーガーⅡが迫っている現状、M18は確実にここを降りてくると踏んでいたが、予想通りこちらに向かってきている。

 

「それにしても随分と飛ばしているな。音で丸分かりなんだが……」

 

 やはり1年のブランクは腕を維持するには長過ぎたのだろうか。

 以前なら気付かないうちに裏を取られたり、逆に音で誘い込まれたりが日常茶飯事だったのだが、今のM18の動きからはそんな気配は感じられなかった。

 かなり近付いている今もこちらにまっすぐ突き進んで……。

 

 ……待て。

 

 目の前の坂を下るなら、そろそろ真横から聴こえるのはおかしい距離なのではないか?

 

「……ッ!後退!!」

 

 だが、それよりも早く。

 何 か が木漏れ日を遮り、砲声と衝撃がパンターを襲う。

 少し遅れて側面から聞こえた砲声とは異なる轟音、その発生源に目を向けた少女は、思わず動きを止めた。

 

「……嘘だろおい」

 

 視線の先には若干バウンドしながら着地し、こちらに砲を向け続けるM18の姿があった。

 その砲身からは薄く煙がたなびいている。

 

「崖から飛んで空中で砲撃とか、それはもう戦車の動きじゃないだろ……」

 

 かつて共に戦った少女が駆るそれは、パンターに白旗が上がったのを確認すると、再び猛スピードで森の中を駆け抜けていった。




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第8話 決着 ☆

「……見つけた!少し右にアンテナが見えてる!」

「オーケー、こっちでも確認した。……3、2、1、今ッ!!」

 

 車体が崖に飛び込む直前、急加速のGが身体を襲う。

 その加速でM18の前方が持ち上げられ、そのまま空中に躍り出る。

 視界がパンターで満たされ──

 砲声が鳴り響いた。

 

8話 決着


 

「え?」

 

 気のせいでなければ今、目の前でパンターに大穴が空いたような……。

 着地後確認してみると、確かに白旗が揚がっていた。

 

 ……確かに『跳んだ後すぐ』って言ったけども。

 まさか空中でぶっ放すとは。

 まぁ撃破は出来たし、結果オーライである。

 

「優香、ナイスショット」

「真琴ちゃんが良い角度で跳んでくれたからね」

「まさか空中で撃つとは思わなかったけど」

「え?」

 

 ……いや、呆気に取られたのはこちらなのだが。

 だが、まだ戦闘は終わっていない。

 

「真琴、足回りの様子は?」

「音、振動共に異常無し。まぁ大丈夫なんじゃないか?」

「やるねぇ。それじゃラスボス戦と洒落込もうか。多分もう出てきてる筈だから……、BF5経由のBE8で後ろ取れるかな」

 

 今まで戦っていたパンターを見ていると忘れそうになるが、相手は高校戦車道の王者、黒森峰である。

 その副隊長ともなれば今までのような簡単な手には引っ掛かってくれないだろう。

 かと言って主砲戦距離での砲撃戦など論外である。

 砲火力に差が無い以上、装甲の厚さが重要になってくるが、はっきり言ってM18の装甲は紙切れだ。

 それに対し、ティーガーⅡの正面装甲は傾斜無しでも150mm、傾斜を含めると200mmを超える厚さを誇る。

 設計思想を全否定する事にはなるが、はっきり言って中~長距離では話にならない。

 もしかしたら本当に真正面を高所から撃てば貫ける事もあるかもしれないが、斜めを向かれたら最後、こちらの弾は一切通らなくなる。

 ……さすがに砲身に直撃させるなんて神業は期待するだけ無駄だろう。

 大洗のⅣ号やプラウダのIS-2ならやりかねないが。

 それはさておき、正面からの遠距離砲撃には意味がない。

 ではどうするか。

 1つが、距離を取って気付かれないように回り込む事。

 だが──

 

「左回避!!」

「ッ!!」

 

 あと少しで射点に着くというタイミングで、左で何かが動くのが見えた。

 咄嗟に回避を指示し、車体が急減速しながら旋回する。

 それとほぼ同時に、横合いから88ミリが撃ち込まれた。

 ギリギリで回避が間に合い、砲塔のすぐ右を砲弾が貫いていく。

 もし地面がもう少し滑りやすかったら直撃していただろう。

 何はともあれ、砲撃が飛んできたという事は、こちらの動きは筒抜けだったという事である。

 距離を取って再び回り込むのは……、恐らく無駄だろう。

 こちらの想定を上回る索敵能力を見せられた以上、別の形で機動力を活かした方がM18にとっては有利である。

 

「懐に潜り込む!全速前進!」

 

 ……まぁ、指揮官としては不甲斐ない限りだが。

 

 

 

「今のを避ける、か。やってくれるじゃない」

 

 今の一撃は、並の相手なら反応できないだろうタイミングで、照準も完璧な一撃だった。

 だが、練習でも週に一度あるかないかのそれを放つ瞬間、M18の車長と目が合ったのを感じ……、結果、ギリギリで交わされてしまった。

 あの短時間で、状況に適した行動を選び、回避まで成功させる。

 仮にあのM18に搭乗したとしても、それが出来る車長が黒森峰にどれだけ居るのか。

 ティーガーⅡの車内で、エリカは気合いを入れ直した。

 相手は回避した勢いをそのままに、こちらに突っ込んで来ている。

 足が遅いティーガーⅡでM18相手の格闘戦をするのなら、ただ集中するだけでは追い付かない。

 相手の足を少しでも鈍らせておく必要がある。

 

「榴弾で足回りを狙いなさい!外れてもダメージは入るはずよ!!」

 

 だが、その前に相手からお返しの砲弾が飛ばされてくる。

 その弾は弾道が低く、直撃コースからは外れていた。

 

(外した?)

 

 予想通り、砲撃はティーガーⅡを掠める事無く手前の地表に着弾する。

 そして、地面が爆発した。

 

「ッ!?」

 

 地中に潜り込んだ榴弾が爆発したのだろう。

 乾燥した土が巻き上げられ、一時的に視界が遮られる。

 

「土煙を被ったぐらいじゃ壊れない!突っ切るわよ!」

 

 砲撃で煙を散らす事も考えたが、今はそれほど意味がないと結論付ける。

 仮に今この煙を散らせたところで、相手の次弾でまた視界が覆われるだけである。

 それなら素直に移動して抜けた方が、駆引きの時間が短くなる分こちらにとってプラスになる。

 エリカは自分に駆け引きの才は無いと考えていた。

 もっとも、比較対象は強豪校の隊長クラスなのだが。

 榴弾のままではこちらの装甲を貫く事が出来ない以上、仕掛けて来る時には徹甲弾を装填しているタイミングが必ず訪れる。

 そのタイミングであれば、視界を取り戻す事も可能だろう。

 徹甲弾ではあれほどの土煙を上げる事は出来ないし、榴弾に再装填するとも思えない。

 そしてそれは──

 

「右!」

 

 音の聴こえる角度が変わったこのタイミング以外にあり得ない。

 足回りに負担をかける事になるが、ティーガーⅡに出せる限界ギリギリの急旋回をかけさせる。

 煙を抜けた先には、至近距離でこちらの横を取ろうとしているM18の姿があった。

 

 

 

 榴弾の土煙で目眩ましをしながら突っ込み、全速力で横を取りに行ったのだが。

 待っていたのはこちらに旋回しつつある砲口だった。

 

「……ッ!?右旋回!!」

 

 こちらの向かう先に照準が合わされているという事は、見えてから反応した訳ではなく、完全に読まれていたという事だろう。

 この早さで副隊長とは、あの隊長はどれだけの早さを身に付けているのか。

 懐に切り込む事で、相手の射線はなんとか避けるが、避けられたのは射線のみだった。

 旋回時、戦車の重心は少なからず前方に移動し、後部のグリップが低下する。

 機動力の高いM18ではそれが顕著であり、あまりにも高速で旋回しようとすると車体後部が外に振られてしまう。

 真琴はそれを逆に利用し、高速域ではドリフトするようにM18を回していたのだが……。

 榴弾で吹き飛ばした土が薄く積もっており、想定よりも外に滑ってしまう。

 そして膨らんだ先には──

 ティーガーⅡの巨体が待ち受けていた。

 

「……マズいッ!衝撃に備えて!!」

 

 叫んだ直後、激しい衝撃が車内を襲う。

 数十トン単位の物同士がほぼ最高速で激突したのだ。

 更にはティーガーⅡとM18には実に3倍近い重量差がある。

 いくらかは車体が回転して逃げたとはいえ、残ったエネルギーだけでもM18を吹き飛ばすほどであった。

 弾き飛ばされたM18は、千切れた履帯や転輪を散乱させつつ回転しながらも、慣性に従い滑っていく。

 そして正面にはティーガーⅡの横腹が見えていた。

 飛びながらでもパンターを射抜いた砲手がその隙を見逃すはずもない。

 

「行け……ッ!」

 

 静止するのを待たずに放たれた砲弾は、狙いを逸れてなおティーガーⅡの横腹に叩き込まれ──

 

 M18とティーガーⅡの双方から白旗が揚がった。




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第9話 昼食会にて

 昼下がり。

 黒森峰の主力の練習も見学させてもらい、練度の高さを目の当たりにした所で昼食に誘われた。

 

「真琴ちゃんこっちこっち!このソーセージも美味しいよ!!」

「あ、あぁ……」

 

 そして向かった先には、山盛りのドイツ料理が所狭しとテーブル上に並んでいた。

 優香がはしゃぐのも分かる。

 ヴルスト美味しかったし。

 でも確かこの間帰りに買い食いした時「ダイエット中だ」と言っていた気がしたのだが、大丈夫なのだろうか。

 それ以外にもノンアルコールビールやパン、……肉じゃが?

 

「楽しんでくれてるかしら?……その顔を見れば聞くまでも無いわね」

「あ、逸見さん」

 

 肉じゃがのような何かを小皿に取っていると、黒森峰の副隊長から声を掛けられた。

 ……凄いな。

 6枚もハンバーグプレート持つ人とか初めて見た。

 

「エリカで良いわよ。それで今、少し時間良いかしら?」

「あの、私はいつでも大丈夫なので一旦そのプレートを置いてきては……。危ないですよ」

「そうさせてもらうわ。今回はあくまで橋渡し役だし。……それでは隊長、私はこの辺りで」

「あぁ。すまなかったな」

 

 大量のハンバーグを持って優香達の方へ向かうエリカさんを見送り、視線を戻す。

 そこには何故かこちらに強大なプレッシャーを放ってくる黒森峰女学園の隊長、西住まほがいた。

 

9話 昼食会にて


 

 ……いや、試合中かと思うほどの圧をぶつけられる心当たりは無いのだが。

 確かに参戦の申し入れは断ったけども。

 現にエリカさんのティーガーIIにはやられた訳だし。

 ……どうしたものか。

 

「そんなに張り詰めてたらせっかくのご飯が勿体無いですよ。これでも食べます?」

 

 とりあえずよそっていた肉じゃがを差し出してみた。

 原因が分からない以上、これで収まるとも思えないが……。

 

「……ふむ。私とエリカの両方が知らなかったのが信じられんレベルの胆力だな」

 

 収めてくれた。

 もしかして、試されていたのだろうか。

 

「私は黒森峰の隊長を勤めている西住まほだ。試すような真似をしてすまなかった」

 

 本当に試されていたらしい。

 買い被りすぎである。

 

「私はM18の車長の鴻上葵です。こちらこそ手合わせの申し入れを断ってしまい、申し訳ありませんでした」

「なに、次の機会に受けてくれればそれでいい。……それにしても君はなかなか面白い戦い方をするんだな」

「面白い、ですか?」

 

 変とか奇天烈とか言われた事ならあるが、面白いと言われた事は無かったな。

 

「最初は射程の差を活かす動きだったが、途中からはそれを捨てて接近戦に切り替えただろう?既に位置は特定していて、狙撃で片を付ける事も可能だったというのに」

「あぁ、そういう事でしたか。それは単純に時間が無かったからですよ。ティーガーIIが出てくる前にパンターは倒しておきたかったので、確実に仕留められる距離に突っ込んだんです」

 

 射程ギリギリで2輌狩れたのは純粋に「運が良かったから」と言うのが大きいだろうし、ティーガーIIが迫っている状況では確実に行きたかったのだ。

 

「坂を待ち構えられてるのは分かったので、上から飛んで真横に出ようとしたのですが、まさか空中でぶっ放すとは思いませんでしたよ。確かに飛んだら撃ってとは言いましたけど……」

「……まぁ普通は着地してから撃つだろうな。君以外に経験者は?」

「装填手がタンカスロンを、操縦手が実家の手伝いをしてたぐらいですね」

 

 あの2人に関しては到底素人とは言えないのが現状である。

 しかし……、タンカスロンでは10トン以下の戦車しか使えなかった筈だが、なぜ夏帆は90ミリの装填があんなに早いのだろうか。

 最初片手で装填しだした時は目を疑った。

 

「砲手は素人という事か」

「はい。……そういえば黒森峰って砲撃用のシミュレーターってあります?」

「ん?ある事はあるが……、それがどうかしたのか」

「1ヶ月で新品のトリガーが壊れました」

「……それはあれだけの腕を持つのも頷けるな」

 

 いったいどれだけ撃てば1ヶ月でトリガーを接触不良にまで追い込めるのか。

 普通は最低でも半年はもつ筈なのだが。

 

「全く、何故こうもドイツ行きが決まった途端、国内に気になる事が次々出てくるのか……」

「そんなもんですよ」

 

 その後も少し他愛ない話をしたところで、エリカさんが枚数の減ったハンバーグプレート両手に戻ってくる。

 優香達の方を見ると、ハンバーグを食べながら秋名さんと何やら盛り上がっていた。

 今朝の出会いが出会いだっただけに一瞬「大丈夫かな?」と不安になったが、どうやら心配は無用のようである。

 ……どちらかと言えば、心配するべきは自分の方だろう。

 エリカさんの手には3枚のハンバーグプレート。

 そしてここには私、まほさん、エリカさんの3人がいる。

 それが意味する事は──

 

「鴻上さん、隊長。ハンバーグをどうぞ」

「ありがとう、エリカ。エリカの作るハンバーグは絶品だ。鴻上さんも食べてみるといい」

 

 このままでは黒森峰の隊長、副隊長と3人でのランチタイムである、という事だ。

 

 少し離れた所でこちらをニヤニヤと見ている4人に視線で助けを求めるが、声に出さず「が・ん・ば・れ」と言ってきた。

 険悪どころか全員息ぴったりである。

 

 

 連絡先を交換し、まほさんは黒森峰の保有する飛行船の中に入っていった。

 ……まさか黒森峰の隊長と連絡先を交換する事になるとは。

 人生何があるか分からないものである。

 

 それはさておき、別れ際に「出来るだけ早くM18を動かせるようにしておいてくれ」と言われたのだが……。

 ドイツに行く前に蹴散らして行く宣言だろうか。

 まぁ、急ごうが急ぐまいが3日ぐらいかかるだろうし、別に気にしないでも平気か。

 

 

 

 

 

 その1週間後の事である。

 

 ──知らない番号から謎の詩が届けられたのは。




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第三章 対 大学選抜戦
第10話 秋の歌


「知らない番号から謎の詩が届いたんですけど、まほさん何か知りませんか?」

『ダージリンは君にも暗号文で送ったのか……』

 

10話 秋の歌


 

『前置きは省かせてもらうとして……、大洗が廃校の危機に瀕しているのは知っているな?』

「はい。全国大会で優勝すれば撤回されると聞いていましたが。……まさか?」

『そのまさかだ。学園艦管理局は所詮は口約束だと白を切ったらしい。しかも8月末に早めるというオマケ付きでな』

 

 いやいや……。

 

「中々えげつない事しますねぇ……」

 

 高校生が道を切り拓いたというのに、それを言葉ひとつで無かった事にするとは。

 そういうのは大人同士でやっていて欲しいものだ。

 

『そこで大洗の生徒会長が連盟の会長や私の母を巻き込んで取り付けてきた条件が、大学選抜チームに勝てば廃校は撤回する、それだけだった』

「それだけ、ですか」

『あぁ。車輌数の上限も、戦闘形式さえも未指定だ。だがこれは予想できる』

「上限30輌の殲滅戦、でしょうね」

『恐らくな』

 

 国が推進しているプロリーグのルールだが、相手にとっては理由付けがしやすく、大洗にとっては厳しいルールである為、今回選ばれる可能性は高いだろう。

 

 黒森峰の20輌相手にもフラッグ車しか残らなかったというのに、今度の相手は大学選抜で、しかも30輌。

 黒森峰より練度も車輌数も上の相手に殲滅戦を挑んで勝てる可能性は低いだろう。

 ……だが。

 

「ただ、条件には『大洗女子学園の戦車道チームが』という文言も存在しない、と。突くとしたらそこでしょうか?」

『理解が早くて助かる。一応短期転校の手続きはしておく事になっているがな。試合は来週末なんだが……、来てくれるか?』

 

 大洗の戦車道チームと言い張って、それがダメでもそもそもチームは指定されてないと言い張れる訳だ。

 よく考えられているような、考えられていないような。

 

「まぁM18の整備は終わってますし、うちの学園はまだ夏休みに入ったばかりなので、時間自体はあるんですけど、少し移動が難しい状態でして」

『……今その艦はどこにいるんだ?』

「沖縄に寄港中です……」

 

 夏休みに南国でバカンスというのはこの学園の理事長のこだわりらしいが、今回ばかりは裏目に出てしまったか。

 まぁ他校の廃校に首を突っ込む物好きがいるなんて想定できるわけもないが。

 

『少し待っていてくれ。どこか輸送機を動かせないか確認してみる』

「分かりました。私も皆に参加するか確認しておきます」

『頼む。それでは5分後にこちらから掛け直す』

 

 ……さて。

 来週末は皆で合宿をする予定だったのだが、合宿を提案した時は何故か怯えた様子だったし、試合になったとしても文句は出ないだろう。

 だが念の為、グループチャットに書き込んでおく。

 そして、書き込んでからわずか数秒で優香から『行く』と返事が書き込まれた。

 まぁ大洗の奮戦から戦車道始めた訳だし当然か。

 少し遅れ、真琴と夏帆の二人からも同じ返事が帰ってくる。

 書き込んでから僅か10秒。

 満場一致で参戦する事が決定したのだった。

 本当に聞くまでもなかったな……。

 

 

 

 大学選抜の情報を調べているとあっという間に5分が経過し、まほさんから電話がかかってきた。

 

『各校に確認したところ、サンダースが飛ばせるそうだ。そちらはどうだ?』

「満場一致で参戦する事に決まりました。どこに向かえば?」

『金曜日の昼頃に沖縄空港まで来れるか?』

「分かりました」

 

 まほさんとの通話を終え、皆に連絡を回しておく。

 それに呼応するように真琴から城島重工が魔改造した車輌の一覧が届いた。

 大学選抜の車輌の多くは載っていなかったが、それでも1輌。

 ……いや、2輌か。

 

「T28にT92仕様の側部履帯を追加、ボタン1つでパージ可能に、ねぇ……」

 

 正直な話、ワンタッチで外せるようにする理由が分からないのだけれども、この際それはどうでもいい。

 問題はこっちだ。

 

「カール自走臼砲に操縦室を追加、自動装填装置を搭載する事で戦車道で使用可能に、か。ただでさえ厄介なのが揃ってるってのに……」

 

 その依頼者は大学選抜ではなく──

 

「辻 廉太。同姓同名の別人とは考えにくいな」

 

 学園艦教育局局長の名前であった。

 その依頼日時は大洗が1回戦に勝利した直後の事である。

 もし優勝されたら大人の策略こと屁理屈で圧し通り、それでも粘るようなら大学選抜をぶつける事をその時点で考えていたという訳だ。

 どうやら彼は本気で大洗を廃校にしたいらしい。

 ……まぁ、それなのに本人が依頼するとか詰めが甘過ぎるけれども。

 何と言うか。

 

「実際には全然頭を回していないみたいだな。口約束だと言い張ってみたり、試合の条件に関してもそうだ。最悪二大流派の家元、師範代を連れてきて大学選抜を破っても満たされる文面だし」

 

 流石にそれは人として駄目だろうが、公務員の書く誓約書としては赤点もいいとこである。

 現に他校の参戦を許してしまっている。

 彼がもう少し頭の回る人物だったら大洗の廃校は不可避なものになっていたかもしれない。

 

 ……そもそも普通なら口約束すらしないだろうしな。




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第11話 学園十色

「Hey!そこのM18ー!あなた達がまほの言う『面白い助っ人』かしらー!?」

「面白いかは知らないけどどうぞよろしくー!……しかし、輸送機ってスーパーギャラクシーだったのか」

 

 金曜日。

 沖縄空港に向かった私達を迎えたのは、側面にサンダースの校章が描かれたC5Mスーパーギャラクシーだった。

 ヘリか何かだと思ったらまさかの超大型輸送機登場である。

 さすがサンダース、金持ってるなぁ……。

 

11話 学園十色


 

「私はケイ!こっちはアリサでパイロットがナオミね!今回はヨロシク!」

「M18車長の鴻上葵です。お手数を──」

「No problem!!大した距離じゃないからね!」

 

 さすがアメリカ風の学校なだけあって、隊長さんのテンションも高いなぁ……。

 なにも校風に引っ張られる必要は無い気もするが。

 

「そういえばランチは済ませてある?色々あるけど」

「色々、と言いますと?」

「ハンバーガーにチーズバーガー、ポテトにコーラもあるわよ」

 

 バーガーショップかここは。

 

「それ、絶対優香に言わないでくださいね。太ったら私達までダイエットに巻き込まれるので」

 

 昼食会で食べ過ぎたのを消費する為に何故か私達までビリーズブートキャンプをやらされたばかりである。

 何故そんな古いものをと思ったが、当時流行しただけの事はあり、結構キツかった。

 正直二度とやりたくない。

 

「そう?そしたら着くまでゆっくりくつろいでて。色々見ててくれても構わないわよ」

「ありがとうございます」

 

 ……あんな食生活なのにケイさんスタイル良いんだし、優香はケイさんに弟子入りすれば良いのでは無かろうか。

 

 その後、持って来ていたサンドイッチを食べたり、ケイさんから渡された今回の試合会場の地図を頭に叩き込んだりしていると、それそろ着陸するから近くのシートに座っていてくれと言われた。

 流石はジャンボジェット、日本縦断も一瞬である。

 ナオミさんは着陸も完璧にこなし、エプロンに駐機する。

 そして機体が固定されたのを確認して、私達とM18は北の大地に降り立った。

 

 

 

 

 

 ただ着いたからと言って、すぐに試合会場へ向かう訳ではなく。

 この空港で1晩を明かした後、戦車で試合会場まで走っていくらしい。

 黒森峰の飛行船しか見えないが、恐らく他校は鉄道で来たり海路で来たりしているのだろう。

 聞けば大洗の車輌を含めて30輌になるように、合計22輌で殴り込むらしいし。

 どんな戦車軍団が出来上がるのかちょっと楽しみである。

 

「アオイー!!ちょっとこっち来てもらえるー!?」

 

 そんな事を考えていたらケイさんに呼ばれた。

 そちらに目をやると何故か大洗の制服を着たサンダースの面々がいた。

 

「その制服は一体?」

「『ほら、今私達って大洗の生徒じゃない?それなのに元居た学校のタンクジャケットを着てるのは変じゃない?』って言って、ダージリンが用意してくれたの!もちろん貴女達の分もあるわよ!」

 

 ……それは多分ダージリンさんが着てみたかっただけな気がするのだが、まぁ言わなくても良い事だろう。

 私も着てみたいし。

 

「えっと、カホがS、マコトがM、ユウカがLでアオイがLLね!ハイ!」

「そのサイズ情報はいったいどこから?」

「ン?一緒に入ってた紙に書いてあったわよ?」

 

 ……ダージリンさんとは会った事は無い筈なのだが、何故服のサイズまでバレているのか。

 優香と私ではパッと見た体型がほとんど変わらないのに、ちゃんとサイズを変えてくれる気の利きっぷりがむしろ怖かった。

 

 翌朝。

 ケイさんの「お姉ちゃんが1番に駆け付けなきゃ」との一声で黒森峰が先発し、私達とサンダースは少し時間を置いてから出発する事となった。

 試合開始時刻に合わせ、移動を開始する。

 聞けば黒森峰、サンダース以外にも、聖グロリアーナとプラウダを初めとする各校が海路や陸路で会場まで移動中らしい。

 高校戦車道における4強とも呼ばれる各校が、今年の王者大洗女子と肩を並べて戦う事になる。

 

 なんだかとんでもない所に足を踏み入れつつある気がするのだが、気のせいだろうか。

 ……まぁ今更か。

 

 

 

 

 

 市街地を抜け、試合会場となる演習場に到着。

 普段ならここで結構長い検査が入るのだが、今回は非常にスムーズだった。

 うちみたいな魔改造車が少ないのもあるだろうが……、これは推測だが、今回の増援には戦車道連盟も1枚噛んでいるのだろう。

 最低限の確認を受け、演習場内へと乗り入れる。

 検査中にはプラウダと聖グロリアーナ、そしてCV33を載せたトラックも到着、検査を受けていた。

 ピザの校章となると……、やはりアンツィオか。

 見た事がある顔ぶれがトラックから豆戦車を降ろしていた。

 確か全国大会の2回戦ではP40を使っていた筈なのだが、今回は出せなかったのだろうか。

 

「アリサ!ナオミ!行くわよ!GO!AHEAD!!」

「「YES!MA'AM!!」」

 

 サンダースの3輌が移動を開始したので、とりあえずそれに付いていく。

 一応アメリカの車輌だし、違和感なく、……違和感はあるな。

 他が全部シャーマンのバリエーションだし。




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第12話 ミッションブリーフィング

 大学選抜チームとの試合が決まった時は「厳しい戦いになるが、私達のチームワークと西住殿の指揮があればきっと勝てる」と思っていた。

 例え相手が島田流家元の娘であっても、私達は西住殿のお姉さんが指揮する黒森峰にも勝ったのだから、と。

 だが、試合会場で私達に突き付けられたのは、車輌上限30輌での殲滅戦。

 たった8輌だけで30輌を殲滅しなければ、私達の学園が廃艦になる、そんな戦い。

 そんな状況でも西住殿と会長が笑っていられたのは、やはり上に立つ者の素質からなのだろう。

 西住殿の笑顔には硬さが見えたが、それすらすぐには出来なかった私は、どれだけ弱かったのだろうか。

 こういう時に隊長を支えてこそのチームメイトだろうに。

 試合会場の視察に行った西住殿をあんこうチームの皆で迎えに行き、彼女の相談に乗る。

 ……と言っても戦術面ではあまり役には立てなかったが、それでも話しているうちに西住殿の表情から硬さは消えていった。

 

 そして、翌朝。

 

 試合開始直前にやって来たのは、黒森峰やサンダース等、今まで戦ってきた学校の精鋭達だった。

 どうやら……、今までの戦いも無駄では無かったらしい。

 

12話 ミッションブリーフィング


 

 大洗と合流した私達は、制服からタンクジャケットに着替えたり、車輌の最終点検をしたりと、各々試合に向けての準備を進めていた。

 まぁタンクジャケットを持っていない私達は制服をそのまま着させて貰うのだが、他校はいつもの格好に着替えていた。

 毎度の事ながら、試合前はやる事が山積みである。

 それに加えて各校の隊長、副隊長は作戦会議を行うらしい。

 らしいと言うか、何故かまほさんに連行され私も参加する事になった。

 周囲に居るのは高校選抜と言われても信じるであろうメンツである。

 有名人だらけでこう……、自分の場違い感が凄い。

 

 だが、萎縮してばかりもいられない。

 まほさんの妹、みほさんの作戦説明が続く。

 

「──ですが、この作戦には明確な弱点が存在します。高地を取る選択肢は相手にとっても想定の及ぶ範囲である事。そして、相手はそれに簡単に対処できる手を持っているという事です。恐らく頂上確保と同時にカールの砲撃を受ける物と思われます」

 

 でしょうね。

 高地に照準を合わせておけば、あとは敵が勝手にその中に収まってくれるのだ。

 ピンチはチャンスとは良く言うが、それは逆も言える。

 戦闘の要衝には罠が張られやすい。

 今回はカールが罠の役割を果たしていると言うわけだ。

 

「そこで、重戦車を集めた中央部隊で高地を確保する動きを見せる事でカールの砲撃を誘発。砲撃されなかった場合はそのまま敵へ砲撃開始、カールが撃って来た場合は射点を見極め、両翼のどちらか近い方から一個小隊をカールの撃破に向かわせます。同時に中央部隊は頂上を放棄、小隊を派遣した中隊との合流を図ります。以上が本作戦の概要です」

 

 なるほど。

 重戦車を撃破されるリスクよりも、正攻法で来られた時の対応を重視したのか。

 だが……、何と言うか。

 みほさんは被害を最小限に留めつつ敵を翻弄するようなイメージがあったため、少し意外ではある。*1

 

「車輌は10輌ずつの中隊編成とします。基本編成は中央が黒森峰とプラウダ、左翼がサンダースと千波単、右翼が聖グロリアーナ、アンツィオ、継続、大洗で、中央にⅢ突とポルシェティーガー、左翼にM3を加えます。カールに向かう小隊の編成は中隊長に一任します。ここまでで何か質問はありますか?」

 

 ……呼ばれなかったな。

 まぁ、数から考えるに左側だろう。

 となると、サンダースの生徒だと思われたのかな。

 ……しかし大洗の眼鏡の人、書くの速いな。

 みほさん校名しか言わなかったのに、車輌名と数までちゃんと書いてる。

 

「では、この通り、3個中隊の編成で行きたいと思います」

「OK!」

「中隊長は?」

「それぞれ、お姉ちゃ……、西住まほ選手、ケイさん、それから私で」

 

 まぁ、妥当だろうな。

 左側の中で最も隊長としての経験が豊富なのはケイさんだろうし、右側に関しては今回は大洗の戦いだし。

 中央の場合はどちらも隊長としての腕は確かだが……、今回は言うなれば中間管理職。

 姉妹の方が意志疎通はしやすいだろう。

 だが、カチューシャさんはそうは思わなかったらしい。

 

「西側ばかりじゃない……」

「ご不満?」

「隊長、やりたいんですか?」

「私がやらなくてどうするのよ!!……ヒッ!?ま、まぁ、今度で良いけど……」

 

 ……まぁ、まほさんの一睨みで引き下がってしまったが。

 

「カチューシャさんは副隊長をお願いします」

「あ、そう!?仕方ないわね!やってあげるわ!!」

 

 みほさんの一言で機嫌を取り戻した。

 かわいい。

 

 

 

 

 

 その後、部隊名と作戦名を決め、打ち合わせは終了。

 あとは試合の開始時刻を待つのみである。

 それにしても。

 

「……大洗の存続を賭けての大学選抜戦、か。相手はやりにくいだろうな、これ……」

 

 相手側じゃなくて良かった。

 私だったらまず間違いなく集中出来ないだろう。

 その事実を伝えていなかったとしても、それを知っている人達から色々言われそうだし、勝った後に知ったらショックを受ける選手もいるだろう。

 あの人本当に性格悪いな。

 まぁ、こちらが勝てばその辺りも大丈夫だろうが。

 

『試合開始!』

 

 全く、負けられない理由が多すぎる。

*1
作者の頭ではこれが限界だとも言う




作者の頭の中

1. カールが出ると分かったら、カールの索敵が最優先で間違いないよな
2. 動き知ってるの抜きにしても、居るとしたら両翼の森の中だよな
3. そういや弾道解析して射点割り出すレーダーあったよな
4. 砲弾の位置は分からずともあんだけ馬鹿デカいマズルフラッシュなら結構遠くから見えるんじゃ?
5. 遠くを見るなら高い所。……あっ。
6. まぁ、大まかな動きは原作と近い動きの方が破綻しないかも……?



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第13話 開戦 ☆

 試合開始から30分。

 早ければ、交戦を挟んだとしても敵主力の背後を取れていたであろう時間帯。

 だが。

 

『すみません!パーシング撃破されました!』

「もう2輌目が……!?」

 

 アズミ中隊は未だに敵部隊を突破出来ず、敵主力とは程遠い場所に釘付けにされていた。

 

「……っ!後退!」

 

 こちらはその時抑えるべき相手に砲撃を集中させていたのに対し、敵は砲撃タイミングや目標を揃える様子も無かった。

 だが、今は確実にこちらが圧されていた。

 

(本当にあのM18がイヤらしいったらないわね)

 

 交戦開始直後に飛び出したかと思えば、足場の悪い森の中だと言うのに、行進間射撃でこちらのパーシングを撃破。

 単独で側面に回ったそちらに火力を集中させると、今度は敵集団の中にいるファイアフライの17ポンド砲弾が飛んでくる。

 普段であれば足の速さを活かして距離を取り、仕切り直す所だが、M18の速力はパーシングのそれとは比較にならないし、更には最低限の減速だけで森の木々を綺麗にすり抜けてくる。

 敵集団との速力差はあるが、M18に進行方向を砲撃されるし、こちらはM18にも砲撃を割かなければならないしで、その差は無いも同然になっている。

 

「……まるで蛇みたいね」

 

 下がろうとする敵の足に絡み付き、徹底抗戦を強いる、そんな戦い方。

 今まで戦ったどの流派とも異なる戦いを見せる相手に、アズミは攻める糸口を見出だせずにいた。

 

13話 開戦


 

 各中隊が敵と接触、交戦中に、ひまわりからみほに向けて通信が発せられた。

 

『大隊長へ、こちらひまわり。グリッドD2、ダム湖跡周辺から砲煙を確認した。木が邪魔で車輌そのものは目視できないが、恐らくカールで間違いないだろう』

「Great!」

 

 それは、作戦通りカールの居場所を特定したという報告だった。

 

(ダム湖跡はたんぽぽ側だし、私達から小隊を出す可能性は低いかしら?)

 

『分かりました。たんぽぽからダム湖跡にどんぐり小隊を派遣します。あさがお側はどのような状況ですか?』

「こっちはまだ結構余裕あるわよ?パーシング1輌、……いや、2輌撃破、被撃破は無し!」

『それでは、ひまわりはたんぽぽとの合流を。あさがおはそのまま交戦中の敵集団に対して足止めをお願いします』

『了解』

「OK!」

 

(それにしてもまぁ……、まほはいったい何処からこんな子達連れてきたのかしらね?西住流とも違うみたいだけど)

 

 

 

 

 

 同時刻。

 大学選抜側でも通信が交わされていた。

 湿地側の敵に動きがあった為、大隊長へ指示を求めると同時に、警戒を促す内容だった。

 

『──恐らく隊長車狙いかと』

「陽動……、いや、違うな」

 

 少女は考え。

 

(2度目の砲撃直後に敵は高地を放棄、湿地に向かい、同時に湿地の敵集団が小隊を出した。これは……)

 

 1つの結論に至る。

 

「敵小隊の狙いはカールだ。2度の砲撃で射点を特定されたのだろう」

『どうしますか?』

「今から移動を開始してもあの鈍足では大して意味がない。カールは砲撃を続行。メグミ中隊は追撃を中断し、アズミ中隊の後退支援に入れ。撃破する事は考えなくて良い。速やかに合流し、湿地に向かえ。全中隊で合流した敵集団を撃滅する。ルミ、他二人が着くまで持ちこたえられるな?」

『……数で押されない限りはなんとかなると思いますが、あまり遅いと少し厳しいですね』

「カールの砲撃と……、メグミ。T28は先に湿地に向かわせろ。T28も足が遅いしな」

『了解です。隊長は?』

「私はそうだな……、相手の狙いがどちらだったとしても討てるようにしよう」

『『『了解!』』』

 

 

 

 

 

(ん?)

 

 交戦開始から10分ほど。

 何故か敵から私達への警戒が解かれた。

 それと同時に、それまでここから距離を取ろうとしていた敵部隊が一斉に加速。

 あさがお本隊との距離を一気に詰める。

 

「やられたな」

 

 私達は味方に誤射する可能性から一時的に砲撃が出来なくなる。

 味方と言えど、昨日今日会ったばかりの相手の動きを読みきれる自信はない。

 そして敵は砲撃しながらあさがお本隊に突入し──

 

 その勢いを落とす事無く、向こう側へとすり抜けた。

 その僅かな時間でパーシングを撃破したナオミさんは流石の一言である。

 だがその直後、綺麗に揃った光が少し離れた森の奥に閃いた。

 

「千波単!全力で前に突っ込んで!!」

『へ?り、了解!』

 

 千波単の戦車は、すれ違った直後から旋回するべく減速を開始しており。

 足止めとして敵味方の間を遮るように放たれた砲撃が、千波単の車輌を襲う。

 

『うぐぉ!?』

 

 凄い声が聞こえたが、大丈夫だろうか。

 

『名倉車、敵の奇襲により撃破されました!突撃前に退く事になろうとは……!』

Sh○t!!

「……相手はこのまま下がるつもりみたいですね」

 

 ケイさんから汚い言葉が出たのは聞かなかった事にしておこう。

 敵の砲撃の数は、パッと数えただけで7発。

 恐らく先程から交戦していたのと同じ8輌編成の部隊だろう。

 だが、私達があさがお本隊と合流する段になっても次弾は飛んでこなかった。

 この部隊で13輌の相手はいくらなんでも厳しいものがあった為、ラッキーである。

 

「マズイわね」

 

 だが、ケイさんはそうは思わなかったらしい。

 

「マズイ、ですか?」

「たんぽぽとひまわりの方に向かったとすると、少なくとも21輌を14輌で相手する事になる」

 

 それは確かにマズイわ。

 ケイさんは大隊長車との無線を開くとみほさんに忠告する。

 

『確かにここで迎撃するのは得策ではありませんね。相手がそう来るなら、こちらもチームワークを活かして戦いましょう』

『……即席チームでチームワーク?』

『即席でもチームはチームだ。どうする』

『少し早いですが遊園地跡に移動し、相手を分散させて各個撃破を狙います。こちらは分散しないように気を付けてください』

 

 その時だった。

 

『あー、ごめん西住ちゃん。作戦会議中悪いんだけどさー。やられちゃった。チョビ子と継続ちゃんは何とか逃げれたみたいだけど、ヘッツァーと八九式が撃破されて、カールは健在。ほんとごめん……』

 

 カールへ向かっていたどんぐり小隊から通信が入ったのは。

 

 

 

 

 

県立大洗女子学園
Ⅳ号戦車H型16T34/85
ティーガーⅠ17IS-2
チャーチルMk.Ⅶ18KV-2
ポルシェティーガー19Ⅲ号突撃砲F型
三式中戦車(チヌ)20ヘッツァー
ルノーB1 bis21M4シャーマン
八九式中戦車甲型22M4A1シャーマン
マチルダⅡMk.Ⅲ/Ⅳ   23ファイアフライ
クルセイダーMk.Ⅲ24M3リー
10CV33型快速戦車25M18スーパーヘルキャット
11BT-42突撃砲26九七式中戦車(新砲塔)
12ティーガーⅡ27九七式中戦車(新砲塔)
13パンターG型28九七式中戦車
14パンターG型29九七式中戦車
15T34/8530九五式軽戦車
残存車輛数24輌

 

 

大学選抜チーム
A41センチュリオン    16M26パーシング     
M26パーシング□17M26パーシング
M26パーシング△18M26パーシング
M26パーシング◇19M26パーシング
T28重戦車20M24チャーフィー
カール自走臼砲21M26パーシング
M26パーシング22M26パーシング
M26パーシング23M26パーシング
M26パーシング24M26パーシング
10M24チャーフィー25M26パーシング
11M26パーシング26M26パーシング
12M26パーシング27M26パーシング
13M26パーシング28M26パーシング
14M26パーシング29M26パーシング
15M26パーシング30M24チャーフィー
残存車輛数27輌




……5輌の小規模戦闘から60輌の大規模戦闘に一気に行くんじゃなくて、もう1戦書いて慣れてからにすればよかった。
数が多すぎて、書いてて何が何処に居るか分からなくなってくる……。

って事は読む側も分からないのでは?

という事で。
劇場版を分かりやすくするために名も知らぬガルパンおじさんによって作られた『時系列別劇場版撃破リスト』みたいな物を、拙作でも用意するかどうかのアンケートを追加しました。
そのリストが分からなければ、歴史の教科書の『地図+凸』のやつを戦車に置き換えた物をイメージしていただければ。


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第14話 狂い始めた歯車 ☆

 ダム湖跡から少し離れた密林。

 そこに停まる1輌の戦車の中で会話が交わされていた。

 

「それにしても彼女達は面白い事を考えるね」

「そう?」

「そうさ。……普通に飛び移れるんだから、わざわざ八九式の上に載せる必要は無いだろう?」

「それならなんで言わなかったのよ」

 

 何故言わなかったのか。

 答えは簡単。

 

「……戦車で戦車を投げられるのか、気にならない?」

「……気になる」

 

 ただの知的好奇心からである。

 

「なら無事に投げられるように、私達も精々働くとしようか。……行くぞ」

 

 少女はそう言うと、車内に持ち込んでいた弦楽器(カンテレ)を手に取り、爪弾き始めた。

 

14話 狂い始めた歯車


 

 今回杏から任されたのは、まず護衛の注意を引き、可能であれば撃破する事。

 空を飛び、パーシングを1輌瞬殺して見せた事で、最低限の目標は達成しただろう。

 だが。

 

「やるからには最高の結果を出すよ」

 

 この程度で最高と誇る事は出来まい。

 ちらと橋の上に目をやると、セモヴェンテを乗せた八九式が突撃を開始した所だった。

 パーシングは2輌とも下に降りている以上、カールは自分で八九式に対処するしかない。

 当然、カールによる直射が放たれる。

 だが、照準が合うのを待たずに放たれた砲撃は、八九式にもセモヴェンテにも当たる事無く、その奥に続く橋に当たり──

 

「ミッコ、行けるね」

「……どうにか!」

「ちょ!?」

 

 崩落を始めた橋の瓦礫を全速力ですり抜ける。

 あとは相手が車幅を意識していなかったり、変に躊躇ったりすれば……。

 

「よし」

「よしじゃないよ!?危ないなぁもう!!」

 

 その巨体は瞬く間に瓦礫に挟まれる。

 しかも砲身に瓦礫が直撃し、撃破も出来た。

 今日の運はまだ良い方だったらしい。

 

「さて、セモヴェンテは……」

 

 残り1輌を翻弄しつつそちらに目を向けると、そこにはひっくり返ったセモヴェンテと、その手前で横に避けている八九式、その横を駆けるヘッツァー。

 

 そして、5輌目の敵の姿があった。

 

 警告を発する間もなくヘッツァーが空中に飛び出し。

 5輌目から放たれた76.2mm砲弾がヘッツァーを直撃した。

 そのまま流れるように止まっていた八九式へと砲撃。

 こちらからも白旗が上がる。

 

「アキ、右」

「もう狙ってる!」

「ミッコ、少し手を出して逃げ回ったら退くよ。もし追ってくるようなら相手するけど、今はその必要を感じないからね。そうだろう?杏」

『そのとーり。出来ればもうちょっと西住ちゃんの事助けて欲しいからね~』

 

 突如として現れた5輌目、敵の大隊長車であるセンチュリオンに向けて砲撃。

 当然、指揮系統を狙われた敵の火力はこちらに集中するが、そのまま少しの時間注意を引き付ける。

 実は()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、そうしないのは──

 

「千代美、セモヴェンテはどうだい?」

 

 偵察の要を失わない為である。

 

『おかげでなんとか逃げれたけど千代美って呼ぶな!!』

「よし、ミッコ、退くよ」

 

 

 

 

 

「退いた、か」

 

 2輌がかりの砲撃をことごとく回避してのけたBT42が崖の向こうに消えるのを見ながら、センチュリオンの車長、島田愛里寿は、橋の上を見る。

 そこにひっくり返っていたセモヴェンテも、いつの間にか姿を消していた。

 BT42がこちらの注意を引いている間に立て直したらしい。

 

(失敗した。その交戦で脅威じゃなくても、逃げられたら厄介だったのに)

 

 普通の戦車であれば、ひっくり返っていれば戦闘不能になっているものだが、人力で元に戻して再び参戦できるのは豆戦車ならでは。

 そしてその本領は小さな車体を活かした索敵にある。

 

『追撃しますか?』

「いや、どうせ追い付けないなら回り道をせずに本隊と合流した方が良い。カールは……、すまないがそのまま砲撃を頼む」

『了解です。……まぁ、移動しようったって橋がなくちゃ動けませんからね』

 

 

 

 

 

「そうですか。センチュリオンが……」

 

 ミカさんからの報告を聞きながら、次の手を考える。

 

(なんとか湿地で袋叩きになる事は避けられた。今残ってる敵はミカさん達が2輌撃破、あさがおが3輌撃破で25輌。最後に確認されたのは湿地に9、密林に13、ダム湖に3。湿地と密林の部隊は私達が下がってもそのまま合流したらしいから、距離的にしばらく大部隊の襲撃はない。となるとやっぱり怖いのは──)

 

 そこまで考えた所で、遠方から聞こえてきた砲撃音によって現実に引き戻される。

 

「各車散開!」

 

 皆さすがの練度で、突然の指示にもすぐさま反応してくれる。

 だが。

 

『いったぁ!?』

『……っ!!』

『アリサ!ナオミ!』

 

 アリサさんのM4A1と、ナオミさんのファイアフライが着弾の衝撃で吹き飛んだ。

 

 着弾地点に近かったM4A1はひっくり返った衝撃で。

 ファイアフライは飛ばされた後、不運にも砲身から着地、砲身が折れてしまった事で、それぞれ白旗が上がる。

 

「2輌とも怪我は!?」

『私に双眼鏡が当たっただけだから大丈夫よ!ナオミも平気でしょ!?』

『あぁ。ファイアフライは全員無事だ』

『そういうことだから試合に集中しなさい!勝たなきゃ承知しないわよ!!』

「……わかりました!」

 

 撃破された車輌の乗員の無事を確認した後、手元のノートに目を向ける。

 そこにはカールが砲撃した回数が記されていた。

 自動装填機構の装弾数は10+1発らしいので、残りは3発か。

 

「これがあと3回も……」

 

 一撃で複数輌を撃破しうる砲撃をあと3発も凌がなくてはならない。

 更には味方の戦意も低下しないように気にかけて……。

 つくづく厄介な車輌である。

 

「カールの残弾はあと僅かです!そのまま味方車輌に付かず離れずの距離を保ってください!」

 

 気落ちさせないように言葉を選び、味方を鼓舞する。

 直後、ずっと誰かと話していたケイさんから、衝撃の言葉が飛び出した。

 

『……その心配はいらないみたいよ?』

「え?」

 

『偵察に出てたアオイが、ちょっとカール討ってくるって』

 

「……はい?」

 

 ケイさんから突然飛び出した爆弾発言。

 それがあまりに軽い口調で言われた事もあり、多少混乱してしまった。

 

(え?うつって撃つの方?それとも討つの方?……いやそうじゃなくて!)

 

 どちらにせよそこから導かれる意味は変わらない。

 

「マズイですよ西住殿……!センチュリオンは1輌でなんとかなる相手では……!」

 

 たった1輌のM18でカールとその護衛に仕掛けるという事だ。

 その護衛にはセンチュリオンも含まれており、どう考えてもマズイ。

 

『……いや、大丈夫なんじゃないか?』

『……ですね』

「なっ……、お姉ちゃんまで!?」

 

 ケイさんにとどまらず、お姉ちゃんにエリカさんまで何を言い出すのか。

 

『歳上相手だろうと無理な物は無理とはっきり言う奴だ。センチュリオンの相手をするつもりは無いのか、或いは……、取るに足らない相手だと考えているか』

「流石にそれは無いと思うけど……」

 

 もしそれが慢心と言えない程の実力者なら、優香里さんが知らない事はないだろう。

 ……ん?

 

「待って?お姉ちゃんって葵さんと知り合いだったの?」

『……そう言えば言っていなかったか。少し前に富士でな』

 

 それってもしかして。

 

「野良試合でパンター3輌とティーガーⅡ相手に大立回りをしたM18が居たらしいって優香里さんが大興奮してたんだけど、もしかして黒森峰と葵さん達だったの?」

『……あぁ。私の参加は拒否されたがな』

『まだ言ってるんですか……。結果として私と相討ちでしたし、ちょうど良かったと思いますが』

「相討ち」

『エリカが出た結果としてはそうだったかもしれないが、私が出たら変わっていただろうし、何より強い相手との戦いはそこまでの経過が楽しいんじゃないか』

「強い相手」

『次は受けると言ってくれた訳ですし、より強くなった彼女達と戦えると考えれば良いのでは?』

『……確かにそれはそうかもしれないな』

 

 エリカさんと相討ちに持ち込み、お姉ちゃんに強いと言わしめるような選手が自信をもって『やる』と言っているのであれば、それを止める理由はない。

 

「……分かりました。葵さん、よろしくお願いします」

『了解』

「遊園地跡に到着後、損傷している車輌は中央広場に移動して修理をお願いします。レオぽんさんチームはそのサポートに回ってください」

『こちらM18、カール撃破しました。これより遊園地跡に移動します』

「分かりました。……え?」

 

 はやっ……。

 

 

 

 

 

県立大洗女子学園
Ⅳ号戦車H型16T34/85
ティーガーⅠ17IS-2
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三式中戦車(チヌ)20ヘッツァー
ルノーB1 bis21M4シャーマン
八九式中戦車甲型22M4A1シャーマン
マチルダⅡMk.Ⅲ/Ⅳ   23ファイアフライ
クルセイダーMk.Ⅲ24M3リー
10CV33型快速戦車25M18スーパーヘルキャット
11BT-42突撃砲26九七式中戦車(新砲塔)
12ティーガーⅡ27九七式中戦車(新砲塔)
13パンターG型28九七式中戦車
14パンターG型29九七式中戦車
15T34/8530九五式軽戦車
残存車輛数22輌

 

 

大学選抜チーム
A41センチュリオン    16M26パーシング     
M26パーシング□17M26パーシング
M26パーシング△18M26パーシング
M26パーシング◇19M26パーシング
T28重戦車20M24チャーフィー
カール自走臼砲21M26パーシング
M26パーシング22M26パーシング
M26パーシング23M26パーシング
M26パーシング24M26パーシング
10M24チャーフィー25M26パーシング
11M26パーシング26M26パーシング
12M26パーシング27M26パーシング
13M26パーシング28M26パーシング
14M26パーシング29M26パーシング
15M26パーシング30M24チャーフィー
残存車輛数24輌




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第15話 決戦の地へ ☆

「いつもの的と比べても、サイズは2倍、距離は半分、風は無し、と。これぐらい余裕でしょ?」

「もちろん」

 

 みほさんから許可が出た時点で、既に配置は済んでいる。

 逃走経路が整っていて、なおかつ木々が姿を隠してくれる、狙撃をするのならこれ以上無い絶好のポイント。

 それでいて許される誤差はいつも撃っている的の10倍以上。

 そんな状況でうちの砲手が外す筈もない。

 砲撃を放つと同時に、砲弾の行く末を見る事もせず遁走を開始。

 数秒後、カールの居た方向から轟音が聞こえてきた。

 

「よし、それじゃ林の中突っ切ろうか」

「了解」

「え?道あるのに使わないの!?」

「うん。鬼さんに見付かるかもしれないから」

 

 逃走経路が整っているという事は相手にも読まれやすいという事でもある。

 もしセンチュリオンに見られていた場合、最短ルートは読まれるだろうし、経路的にこちらが全速で突っ切ったとしても相手の待ち伏せにあう。

 林の中を突っ切れば敵に近付く事が無い為、足の遅いセンチュリオンに捕捉される可能性は無い。

 わざわざ逃走経路が整っている場所を選んだのは、逃げるためというよりは、相手が待ち伏せで時間を浪費してくれればというだけの事だ。

 

「一言で言うなら……、急がば回れってね」

 

 

 

 

 

「……何かしら。お株を奪われた気がするわ」

 

15話 決戦の地へ


 

 遊園地跡に移動した主力部隊は既に修理可能な車輌の修理を終え、各門に配置完了したらしい。

 今は迫る敵主力を待ち構えていると言った所か。

 どちらかと言えば入り組んだ地形の方が好きなので、出来れば一刻も早く園内に入りたいのだが……。

 

「交戦は必至。平野は苦手なんだけど……」

 

 敵の車輌自体は稜線に隠れていて見えないが、遊園地跡の手前に巨大な土煙が立ち上っている。

 さぞかし大量の戦車が蠢いている事だろう。

 あれだけの豪雨の後だ。

 あの規模の土煙を立てるには、思いっきり飛ばしていたとしても、30輌を優に越える数の戦車が必要になる。

 もちろんそんな大量の戦車がこの試合に出ている筈もない。

 

「となれば煙幕かな。砲撃されるのを嫌ったか、或いは……」

 

 丘の頂上手前でM18を止め、降車。

 皆には待っていて貰い、遊園地跡を視界に収める。

 パーシングが遊園地の裏側に消えていったのはその時だった。

 

「……やっぱり囮か。正門に残ってるのは4輌だけで、守りの主戦力は黒森峰とプラウダか。過剰だな」

 

 そうと分かれば一気に仕留めるだけの事である。

 M18に戻り、無線を開く。

 

「大隊長へ、こちらM18。遊園地跡を視認。正門に残っているのはパーシング3輌とチャーフィー1輌のみ。他は裏側に回った模様。どうしますか?」

 

 直後、アンチョビさんからも無線が入る。

 

『こちらアンチョビ!東通用門にT28を確認!他にもパーシングが複数!こりゃ間違いなくこっちが本命だ!』

『正門の敵への対処はお姉ちゃんの判断に任せます。手が空いている車輌は東通用門に向かってください。私達も東通用門に向かいます!』

『了解した。エリカと葵の2輌以外は東通用門に向かえ。正門は我々で何とかする』

 

 3対4か。

 結構ギリギリまで削ったなぁ……。

 

「どうします?」

『M18で背後から強襲。敵が混乱している間に一気に仕留めるぞ。私が右、エリカは左だ』

 

 まほさんが担当する側にはパーシングとチャーフィー。

 エリカさんが担当する側にはパーシングが2輌。

 これはつまり──

 

「優香。私達のターゲットは右手前側のパーシング。撃破後は左のチャーフィーに変更。まほさんとエリカさんもこれで問題ありませんか?」

 

 こういう事だろう。

 

『あぁ。タイミングはそちらに任せる』

「了解しました。優香、砲撃開始」

 

 

 

 

 

 交戦開始から1分。

 突如として敵からの砲撃が減少した。

 

「ん?なんか大人しくなった」

「囮だってバレたんじゃない?」

「まだ別れてから全然時間経ってないけど……」

 

 その直後。

 右翼のパーシングから白旗が上がる。

 

「後方より敵襲!」

 

 その声に、残った3輌が反応する。

 敵はたったの1輌のみ。

 だが。

 

「狙いが……!」

 

 動きが読めない。

 

「……ッ!?マズイ!!」

 

 そして気付いた時には。

 

 () () () () () () () () () () () () ()

 

 ティーガー2輌の接近に気付き、そちらに砲を向けようとするが、その前に至近距離から88ミリの砲撃を受けたパーシング達から白旗が上がる。

 

「正門が開いた!園内に──」

 

 唯一残ったチャーフィーが園内への侵入を試みるが、それも後方からの砲撃を受けて沈黙し。

 

 交戦開始から僅か15秒足らずで、正門囮チームは全滅した。

 

 

 

 

 

県立大洗女子学園
Ⅳ号戦車H型16T34/85
ティーガーⅠ17IS-2
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ルノーB1 bis21M4シャーマン
八九式中戦車甲型22M4A1シャーマン
マチルダⅡMk.Ⅲ/Ⅳ   23ファイアフライ
クルセイダーMk.Ⅲ24M3リー
10CV33型快速戦車25M18スーパーヘルキャット
11BT-42突撃砲26九七式中戦車(新砲塔)
12ティーガーⅡ27九七式中戦車(新砲塔)
13パンターG型28九七式中戦車
14パンターG型29九七式中戦車
15T34/8530九五式軽戦車
残存車輛数22輌

 

 

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M26パーシング△18M26パーシング
M26パーシング◇19M26パーシング
T28重戦車20M24チャーフィー
カール自走臼砲21M26パーシング
M26パーシング22M26パーシング
M26パーシング23M26パーシング
M26パーシング24M26パーシング
10M24チャーフィー25M26パーシング
11M26パーシング26M26パーシング
12M26パーシング27M26パーシング
13M26パーシング28M26パーシング
14M26パーシング29M26パーシング
15M26パーシング30M24チャーフィー
残存車輛数20輌




ちなみにトラさんは牙ではなく爪で獲物を抑え込むそうです(語感が良いので牙にしちゃいましたが)

あとストックが尽きたので次回は少し時間が開きます。
楽に書けているのでそこまで時間はかからないとは思いますが。

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第16話 裏門の攻防 ☆

 東通用門。

 最も狭く、大部隊の進攻には適さないと思われた、3つある入り口の内の1つ。

 その場所は今──

 

 その試合の行方を左右する、どちらにとっても譲れない主戦場となっていた。

 

「どんなに撃っても正面は抜けないわ!いっそ入らせて横から撃つべきよ!」

「履帯ぐらいなら切れるんじゃないかしら?」

「今切っても後続が他に行くだけでしょ!」

「……それもそうね。全車、1ブロック後退」

 

 

 

 

 

「そのまま前進」

 

 だが、一進一退とは行かず、砲撃をものともせずに進むT28に対し、大洗側は有効な手を打てずにいた。

 プラウダが来た事でパワーバランスがいくらか傾くかに思われたが、T28はその砲弾さえも弾いてのけた。

 敵にプレッシャーを与えつつその動きを見極める為に、ゆっくりと進む。

 

「……ここまで一方的だとなんか申し訳なくなるね」

「まぁ、こっちの砲撃も一切当たってないみたいだけど」

「いやあんな変な動きするのを見切るのは無理だって」

「良く避けるねぇ……。もう通路抜けるし、そこから先は他の車輌も狙えるかな。囮に付き合う必要は無いし」

 

 砲塔の無いT28では、細い通路を進みながら狙える角度に限りがある。

 それは向こうも承知の事で、クルセイダー以外は射角に入ってくれなかった。

 だが、通路を抜けてしまえば車体ごと敵に向く事が出来る。

 

「目標、右前方のIS2。あの火力は厄介だし、ここで退場して貰おっか」

 

 通路から顔を出し、IS2を目標に定め──

 

「あ、これマズイかも」

 

 ──照準に収める前に、敵の斉射がT28を襲った。

 

16話 裏門の攻防


 

 通用門に集まった殆どの車輌による履帯への一斉射。

 それはT28の足を止めるには十分な物だった。

 

「アンチョビ!どうかしら?」

『どうって何が』

「全部!」

『通用門は崩れて、下敷きになったチャーフィーから白旗が揚がってる!あと巻き込まれなかった3輌は西裏門に向かってるぞ!これで足りたか!?』

「十分よ!」

 

 また、それと同時にKV2を始めとする大口径砲組が通用門上部を砲撃。

 通用門が崩落し、その瓦礫によって簡易的なバリケードが築かれた。

 前後を障害物に挟まれた車列は、立ち往生を余儀無くされてしまう。

 

「瓦礫の重なり方によってはすぐ抜けられちゃうから、それまでに出来るだけ撃破するわよ!撃ちまくりなさい!」

 

 大学選抜チームの車列に、容赦のない砲撃が加えられる。

 

 

 

 

 

 だが。

 

「まぁ、運が良かったかな。脱いで進むよ!」

「車長、はしたないです」

 

 1本履帯が切れたからと言って、動けなくなるとは限らない。

 

 

 

 

 

「T28が!」

「動いても修理が面倒になるだけ……、って脱皮するの!?」

 

 進行方向側の障害物に仕立て上げられていたT28が、左右の履帯をその場に残し、前進を再開。

 道が、拓かれる。

 

「全車後退──」

 

「──パーシングが雪崩れ込んでくるわよ」

 

 

 

 

 

 同時刻。

 西裏門から園内に進攻した部隊にも被害が発生した。

 履帯を切られた車輌が1輌、そして撃破された車輌が 2 輌 。

 うち1輌を撃破したのは九七式中戦車。

 新砲塔搭載型とは言え、明らかにスペックに劣る戦車による主力戦車の撃破。

 

「高校生と思って甘く見てたわね。この間の社会人チームよりもよっぽど強いじゃない」

『それにさっきの千波単だけど、1つ1つの動きは他と比べても遜色無いレベルだったわよ?あれ、無闇に突撃するのをやめれば結構強いんじゃないの?』

 

 その衝撃は、大学選抜チームの意識を切り替えるには十分な物だった。

 

「……腕が良くとも、砲の貫通力自体は変わらないわ。急所へのラッキーパンチはともかく、至近距離からの砲撃を食らわないように立ち回るしか無いんじゃないかしら」

『ま、結局はそれしかないか。──中隊各車、警戒を厳に。少しの違和感であっても見逃すな』

 

 

 

 

 

 一方、そのスペックに劣る戦車こと千波単学園の戦車達は、装いを新たに敵を待ち構えていた。

 

「なんか『カバになりきるんだ』って言ってるんだけど……、バレるよねあれ?アヒルだし」

 

 カバの横にアヒルが並んでいる様は中々に面白いものがあるのだが、それに気付く様子は見られない。

 それを見て「大丈夫かこいつら?」と思うのも仕方の無い事だろう。

 行動を共にしていた彼女の発言も、普通に考えれば当然の事だ。

 

「アヒルだからバレるという訳じゃない」

 

 だが、どうやら一緒に乗っている車長の考えは違うらしかった。

 

「バレる時はどんな時か、それが肝心なんだ」

 

 ──戦場に、カンテレの音色が鳴り響く。

 

 

 

 

 

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12ティーガーⅡ27九七式中戦車(新砲塔)
13パンターG型28九七式中戦車
14パンターG型29九七式中戦車
15T34/8530九五式軽戦車
残存車輛数22輌

 

 

大学選抜チーム
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M26パーシング□17M26パーシング
M26パーシング△18M26パーシング
M26パーシング◇19M26パーシング
T28重戦車20M24チャーフィー
カール自走臼砲21M26パーシング
M26パーシング22M26パーシング
M26パーシング23M26パーシング
M26パーシング24M26パーシング
10M24チャーフィー25M26パーシング
11M26パーシング26M26パーシング
12M26パーシング27M26パーシング
13M26パーシング28M26パーシング
14M26パーシング29M26パーシング
15M26パーシング30M24チャーフィー
残存車輛数17輌




シーン毎に「この状況ならこうするかなー」って考えはあれど、キャラが好き勝手動くからどんどん原作ルートから逸れて行く(好き勝手やらせてるの誰だろう)

さくっと『妙子式2』https://picrew.me/image_maker/516657 にてキャラクターデザイン作成しました。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=289012&uid=239948

そしてメインの戦闘機動ならび全体の部隊の動きに関して、図示する事に決定しました。


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第17話 単身では渡れずとも ☆

 ソ連との戦闘で鹵穫したBT-7をフィンランドが魔改造した車輌、BT42。

 この車輌には、他の戦車ではあまり見られない機能がある。

 

『10時の方向よりBT42が接近中!』

「砲撃開始。……何だ?」

「──履帯が、無い?」

 

 履帯を外し転輪を車輪として用いる事で、悪路踏破性を犠牲にして機動力を跳ね上げる、真のクリスティ式。

 その機動力は、戦車道で使用可能な車輌の中ではトップクラスとなる。

 

『速い……ッ!!』

「気を付けろ!奴は既にパーシングを3輌食っている!!普通の戦車だと思うな!!」

 

 その機動力にそれを駆る者達の技量も加わり、今のBT42は大学選抜チームにとって明確な脅威となっていた。

 

 ──それこそ、撃破するために全神経を集中させる程に。

 

17話 単身では渡れずとも


 

 敵の注意を一身に集めているBT42だが、その乗員はそんな状況にあっても平然としていた。

 ミカはこの状況に飛び込ませた張本人として、当然こうなる事は想定しており。

 ミッコは『ここが腕の魅せ所!』と、ハンドルを握る手に力を込め。

 そしてアキは、ミカの一見無茶に見える指示と、それに応えるミッコの腕を信じていた。

 

 とは言え、さすがにこれは文句の一言も言いたくなるという物。

 

「ねぇミカ、やっぱり千波単のみんなに合わせた方が良かったんじゃないの?」

「そうかもしれないね」

「そこは否定してよ……」

 

 そしてさらっと流されるまでが彼女達のお約束である。

 

「でも現にアヒルさん達はバレていないだろう?」

「それはそうだけど……」

 

 あれほど簡単にバレそうな擬装を施された千波単の戦車達だったが、ミカの言う通り、未だに発見された様子はない。

 

 ミカが打った手は至極単純。

 アヒルが敵の視界に入る直前にBT42で強襲、注意を引き付ける事で、警戒に割く余裕を無くしてしまえという物である。

 

 どこから来るかと警戒させてはいけない以上、得意とする神出鬼没な動きを封じられた上で、5輌ものパーシングを相手取る必要がある。

 また、仕掛けるのが早すぎては冷静になる時間を与え、遅すぎても仕掛ける前にアヒルが視界に入ってしまう。

 そんな綱渡りじみた作戦だったが、なんとかパーシングを千波単の目の前に引きずり出す事に成功した。

 

「出番だよ、アヒルさん達」

『承りました!全車輌、突撃!!』

 

 

 

 

 

「……っ!?しまった!!」

 

 アヒルに擬装して、敵が至近に迫ったら突撃する、至極単純な作戦。

 突撃する段になればさすがにパーシングも気付き、砲塔をそちらに向けようとするが……。

 もしそれで突撃の足が鈍っていれば、迎撃されていただろう。

 

 ──だが、突撃しているのは千波単学園である。

 その程度の事で足が鈍る筈もない。

 

 砲身が向ききる前にその懐に飛び込み、砲撃を叩き込む。

 ゼロ距離から立て続けに砲塔基部に砲撃を食らっては、いくらパーシングと言えどもひとたまりもない。

 不運にも千波単のキルレンジに踏み込んでしまったパーシングから白旗が上がった。

 

 

 

 

 

 時に、大学選抜のメンバーは、その多くが高校で戦車道をやって来た者達である。

 したがって各高校の改善点というのも当然理解していた。

 例えば黒森峰は突発的な事への対処が鈍く、聖グロリアーナはOGの干渉から車輌の更新が進んでおらず、サンダースは稼働性を重んじるあまりシャーマンで固めがち等々。

 では、千波単はと言うと……。

 

 突撃の速さは中々の物であるが、その反面、逃げるのは非常に遅いというのが挙げられる。

 

 西裏門では敵の車体のほとんどが水中でろくに狙えなかった事もあり、取り逃がしてしまった。

 だがこの状況であれば、逃げられる前に余裕を持って仕留められる。

 

 ──筈だった。

 

「なっ……」

 

 しかし、千波単の戦車はその全てが足を止める事無く後退していく。

 それは以前の千波単学園、それこそ少し前のエキシビションマッチの頃からは考えられない事であった。

 

「追撃を……ッ!?」

 

 当然ながら追撃に移ろうとするも、BT42からの砲撃がそれを許さない。

 足回りを狙われ、回避機動を余儀なくされる。

 

「あぁもう!厄介な!」

 

 そうこうしているうちに千波単の戦車は建物の裏へと消えていった。

 

 

 

 

 

「ねぇミカ。あの子達に何を吹き込んだの?」

「そうだね、強いて言うなら愛好者としての心構えかな?」

「心構え?」

「好きなものを使い捨てる人は居ないだろう?」

 

 

 

 

 

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マチルダⅡMk.Ⅲ/Ⅳ   23ファイアフライ
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11BT-42突撃砲26九七式中戦車(新砲塔)
12ティーガーⅡ27九七式中戦車(新砲塔)
13パンターG型28九七式中戦車
14パンターG型29九七式中戦車
15T34/8530九五式軽戦車
残存車輛数22輌

 

 

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A41センチュリオン    16M26パーシング     
M26パーシング□17M26パーシング
M26パーシング△18M26パーシング
M26パーシング◇19M26パーシング
T28重戦車20M24チャーフィー
カール自走臼砲21M26パーシング
M26パーシング22M26パーシング
M26パーシング23M26パーシング
M26パーシング24M26パーシング
10M24チャーフィー25M26パーシング
11M26パーシング26M26パーシング
12M26パーシング27M26パーシング
13M26パーシング28M26パーシング
14M26パーシング29M26パーシング
15M26パーシング30M24チャーフィー
残存車輛数16輌




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第18話 穴を穿つのは ☆

 ティーガー2輌が東通用門の救援に向かった後も、私達はセンチュリオンの警戒として正門に残されたのだが。

 

 気付いたら味方が敵に包囲されていた。

 

18話 穴を穿つのは


 

『包囲されていないのは私達とアンツィオ、そして西門部隊だけか。どうする、みほ』

 

 それも東通用門に向かった全車輌が。

 パーシングを立て続けに撃破して調子付いた所を誘導されたらしい。

 いや何してるの……。

 特にプラウダなんて包囲殲滅が十八番なんだから真っ先に気付かなきゃダメでしょうに。

 

『突撃して楔を打ち込む他に無いかと!』

『……それは厳しいですね。こちらは釘付けにされていますし、そちらの火力では離脱出来るだけの大穴は開けられないものと思われます』

 

 大学選抜側はちゃんと外への警戒にも数を割いており、西さんから上がった突撃案は却下された。

 ……だが。

 

『それはどうだろう?』

 

 一部……、と言うかミカさんから逆の意見も上がる。

 

『と言うと?』

『そこにいるM18なら、その釘を振り切るぐらい造作もないだろう?』

 

 んな無茶な。

 

「……まぁ、1輌程度であればどうとでもしてみせますが、それを抜けた先にある網を食い破るのはムリですよ。大学選抜の残存車輌のほとんどが居るわけですし」

 

 実際に外側に警戒を割いているのは数輌だろうが、数輌であっても開けた場所で近距離となると正直かなり厳しい。

 もっと密集しているならまだしも、今は野外音楽堂を囲むために分散している。

 あれでは敵を盾とするのは難しいだろう。

 再び身を隠そうにも遮蔽物が少なく、離れており、それもまた難しい。

 ……ん?

 

「離れて……、か」

『どうかしたのか?』

「うちの車輌の取り柄は速い足だけじゃなかったのを思い出しまして。どこからなら射線が通せるかな、と」

『それなら観覧車のある丘の上から、……あれはM3か?』

「はい?」

 

 少し移動して高台を視界に収めると、確かにM3が単独行動をしていた。

 そして観覧車の方に向き直ったかと思うと──

 

 撃った。

 

 ちょうど軸を撃ち抜かれた観覧車は重力に従って落下。

 轟音を響かせながら逃げるM3に迫る。

 

「いやさすがに観覧車に潰されちゃカーボンも持たないでしょ!?」

 

 そのままM3を捉えるかと思われたが、引き付けてから避けたため無事回避。

 観覧車はそのまま野外音楽堂へと転がっていく。

 ……別に意思を持って追ってきてる訳じゃないんだから、あそこまで引き付けなくても良かったんじゃ?

 心臓に悪い。

 そんな事を考えていると、観覧車は大学選抜の車輌を退避させながら野外音楽堂へと突撃する。

 

『観覧車先輩に続いて、突撃ぃーッ!!』

 

 いや君らも突っ込むんかい。

 

『各車砲撃を!敵の追撃を阻止してください!』

 

 しかし──

 

「観覧車……、あのスピードじゃ途中で止まりませんか?」

 

 パンジャンドラムと化した観覧車だが、本来の物とは異なり、推進力は無く、余計な物も付いている。

 それには最早バンカーを抜けるだけのスピードは残されていないように見えた。

 

『問題ないわ!止まりそうなら砲撃で吹っ飛ばすだけの事よ!ノンナ!!』

『はい』

「はい?」

 

 そうして放たれたIS2からの砲撃は、狙いを違える事無く観覧車を直撃。

 加速した観覧車は段差を登りきり、包囲された東通用門組を先導していった。

 

「……凄いな。優香、負けてられないよね?」

「……え?」

「目標、T28側面!叩き込め!!」

「えぇ!?」

「ほら早くしないと逃げられちゃうよ」

 

 今、T28は追撃する為に此方に横っ腹を見せている。

 更にそのお腹に抱えていた履帯と言う名の増加装甲は既に取り除かれている。

 これだけのお膳立てをされて撃たなければ90ミリが泣く。

 

「あぁもう!!」

 

 優香のやけくそとも取れる声と共に砲弾が放たれる。

 

「弾かれた!?」

 

 T28は動きを止めるだけで、白旗が上がる様子は見られない。

 だが……、動きが止まったのは好都合。

 追撃を中止して此方に向き直ろうとするT28であったが、此方の装填が終わる方が早い。

 

「目標変更。T28の砲身を狙って」

 

 そして放たれた砲弾は……。

 

「いよっし!」

「ナイスショット」

 

 T28の砲身をねじ曲げ。

 直後、発射されたT28の砲弾が曲がった砲身の中で爆発。

 砲身をへし折る事に成功したのだった。

 BT42もビックリの短砲身となったT28に火力が期待できる筈もない。

 無力化に成功したと言っても問題ないだろう。

 ……まぁ殲滅戦である以上、撃破しておくに越した事は無いのだが。

 

「この距離じゃ抜けなかったし、後でゼロ距離射撃でもしてみようかな」

 

 とりあえず今は放っておく。

 目標をM26に変更し、砲撃を加えていく。

 そうすれば遮蔽物に隠れてもいないのに此方に車体を向けて──

 

「あら不思議、っと」

 

 包囲され、遁走していた筈の車輌群から砲撃を食らう事になる。

 幸いにも高火力組にはその意図が伝わったらしく、瞬く間に5輌ほどのM26が蹴散らされた。

 数輌だけを私達への抑えとして残しておけばよかったものを、やっぱり突発的な二正面作戦なんてやるもんじゃないね。

 

「これで残りは11輌ですかね。大隊長や中隊長が残っているのは厄介ですけど」

『限界か』

「えぇ。ようやくですが対応し始めましたね。──さすがに潮時かと」

『それではここからは予定通りに。敵の分散と各個撃破、それから先程のような罠に誘い込まれないよう心掛けてください』

 

 

 

 

 

県立大洗女子学園
Ⅳ号戦車H型16T34/85
ティーガーⅠ17IS-2
チャーチルMk.Ⅶ18KV-2
ポルシェティーガー19Ⅲ号突撃砲F型
三式中戦車(チヌ)20ヘッツァー
ルノーB1 bis21M4シャーマン
八九式中戦車甲型22M4A1シャーマン
マチルダⅡMk.Ⅲ/Ⅳ   23ファイアフライ
クルセイダーMk.Ⅲ24M3リー
10CV33型快速戦車25M18スーパーヘルキャット
11BT-42突撃砲26九七式中戦車(新砲塔)
12ティーガーⅡ27九七式中戦車(新砲塔)
13パンターG型28九七式中戦車
14パンターG型29九七式中戦車
15T34/8530九五式軽戦車
残存車輛数22輌

 

 

大学選抜チーム
A41センチュリオン    16M26パーシング     
M26パーシング□17M26パーシング
M26パーシング△18M26パーシング
M26パーシング◇19M26パーシング
T28重戦車20M24チャーフィー
カール自走臼砲21M26パーシング
M26パーシング22M26パーシング
M26パーシング23M26パーシング
M26パーシング24M26パーシング
10M24チャーフィー25M26パーシング
11M26パーシング26M26パーシング
12M26パーシング27M26パーシング
13M26パーシング28M26パーシング
14M26パーシング29M26パーシング
15M26パーシング30M24チャーフィー
残存車輛数11輌




……表作るの難しいデース

末尾の撃破状況を箇条書きから戦車道のパブリックビューイング風な表にしてみました(今までのも含めて)

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第19話 鬼、出陣 ☆

「……思ったよりも戦力が削られるスピードが早いな」

 

 遊園地の跡地から少し離れた丘の上。

 味方から入る戦況報告を聞きながら、センチュリオンの車長、島田愛里寿は介入タイミングを測っていた。

 戦車道で使うべく、継戦能力を削ってまで限界までチューンアップされたセンチュリオンは、その性質上、タイミングが早過ぎては車輌にガタが来てしまう。

 だがそれで1輌のみで相手をする事になっては本末転倒である。

 

「隊長?」

「少し早いが……、出るぞ。まずは──」

 

19話 鬼、出陣


 

 やはり大学選抜は大洗チームの狙いを把握しているのか、中々ばらけてはくれなかった。

 T28は落伍したが、それを除いて殆どの車輌が一団となってこちらの戦力をじわりじわりと削ってきている。

 だがこちらも黙ってヤられている訳にはいかない。

 と言うか本来こちらが攻勢に出ている筈なのだが、車輌性能と技量の差から消極的になっていた。

 それでも数に2倍近い差があるという事もあり、少しずつ撃破を重ねていたのだが……。

 はぐれたまま合流出来ずに居たM3からの報告が優位と断言出来なくしていた。

 

『こちらウサギさんチーム!すみません!チャーフィー撃破しましたが此方も撃破されました!センチュリオンが遊園地跡に向かっています!気を付けてください!!』

 

 敵の中でも他とは一線を隔す戦力の投入。

 その情報だけであっても、押せ押せのムードの漂っていた大洗チームの勢いを削ぐには十分であった。

 そしてその数分後、にわかには信じがたい勢いで撃破報告が入り始める。

 残っている敵車輌はセンチュリオンとパーシング3輌の計4輌のみ。

 

「何をどうしたら3分で14輌も持って行けるのよバケモノでしょ大学生」

 

 しかし、そこまで削るまでに要した此方の戦力は14輌。

 7輌撃破するのに14輌も撃破、或いは修理待ちにされていては到底持たない。

 私達の他に残っているのは千波単とBT42、そして西住姉妹。

 足回りと電気系統がイカれて修理中のティーガーⅡを含めても9輌だけである。

 そして残念だが、損傷状態を聞いた限り、ティーガーⅡの修理は間に合うまい。

 となると8輌。

 そして千波単の車輌の火力では残った敵を撃破出来ない……、とまでは言うまいが、撃破可能な状況に持ち込めないだろう。

 

『千波単4輌行動不能!面目ありません……!』

 

 と言うかたった今不可能になった。

 

『私達も撃破されました。センチュリオンの現在地は西駐車場付近。それとミカから御武運を、と』

 

 ん?西部って確か……。

 

「……フル加速!」

 

 若干アスファルトを抉りながらも、そのパワーはM18を一気にトップスピードまで加速させる。

 立て看板を吹き飛ばしはしたが、悪い予感は的中する物で。

 お土産屋さんの影から飛び出した直後、後ろで地面が吹き飛ばされた。

 

「あっぶな……」

 

 継続高校からの忠告が無かったら当たっていただろう。

 感謝してもしきれない。

 

 飛び出した先には、隠れられるような遮蔽物も、滑るような悪路もない、まっ更なアスファルト。

 そしてその端にセンチュリオンが待ち構えていた。

 

「こちらM18。西駐車場にてセンチュリオンと遭遇、交戦中。Ⅳ号とティーガーの状況はいかがです?」

『こちらあんこう。敵中隊長車を捜索中。いつでも向かえますがどうしますか?』

『ティーガーも同じだ。何分持たせられる』

 

 何分と聞かれても。

 貴女方の決勝みたいな事は出来ないんですけど。

 全力で集中すれば避けられるかな……。

 

「5分以上は私の集中力が持たないです」

『了解した。すぐに向かう』

『あんこうは距離が離れているので結構ギリギリになりそうです。到着まで何とか持ちこたえてください』

「分かりました。今から突っ込みます。無線に返す余裕は無さそうなのでご容赦を」

 

 ……さてと。

 

「島田流家元の娘にして飛び級大学生、か。普通にやってたら勝てない相手だけど、この位置なら……」

 

 

 

 

 

(……これは、うん。アズミが苦戦する訳だ。本当に良く周りを見てる)

 

 突如として最高速で駐車場に突撃して来たかと思えば、BT42の影で何事か言葉を交わした後、ヘッドセットを外した彼女。

 私との戦いに必要無い雑音をシャットアウトしたのだと気付いた時には、M18の突撃が開始されていた。

 すかさず砲撃を加えるが、いずれも軽くいなされる。

 それもそのはず、こちらは相手の背に居る千波単の車輌とBT42に当たらないよう、どうしても狙いが甘くなる。

 的確にこちらの狙いを誘導し、それを読んだ上で回避されるとあっては、いかに大学で最優秀の砲手であっても当てるのは至難の技だ。

 それならばと交戦軸をずらしても、その回避能力に変化は見られなかった。

 

(となると……、狙いを誘導するよりも読む力が抜けているのか?厄介だな)

 

 そして、その砲撃精度もまた然り。

 あれだけの速度で動きながらも、こちらの未来位置を的確に射抜いてくる。

 必然的に双方動きながらの砲撃戦を強いられる事になる。

 そして機動力でも相手に分があった。

 こちらに食らい付き、ちょこまかと動き回るM18は、狙いを定めた次の瞬間には別の方向に逃げている。

 操縦席からは死角になる位置であっても。

 そしてその不可解な回避の動きに遅れずに付いていく砲塔。

 それはまるで電子制御されているかのようであり……。

 

(いや、違うな。たまに砲塔が先に動いたり、角度が合わなかったりしてる。……そのおかげで当たってないのはちょっと気に入らないけど)

 

 そして、ひとつの可能性に思い到る。

 

(もしかして、全部車長が細かく指示を出してる……?)

 

 そうして相手の車長に目を向けてみると、確かにヘッドセットは無かったが、喉元を押さえながら常に細かく指示を出していた。

 それはやはり乗員への指示で間違いないだろう。

 

(となると、車長さえ欺いてしまえば上下の連携は瓦解するか)

 

 ならばとフェイントで揺さぶりをかけるが、急な加減速も、タイミングをずらした砲撃も、あえてフェイント抜きで放った砲撃すら交わされるに到り、その方針では勝てないと結論付ける。

 

(ティーガーⅡとの戦いでは激突した衝撃で白旗が揚がったと聞くが……、並走しているこの状況ではな)

 

 愛里寿の駆るセンチュリオンは、完全に相手のフィールドに踏み入ってしまっていた。

 

 だが、戦場に残っている戦車も2輌だけでは無かった。

 

「うげ……」

 

 中隊長車3輌による連携は、隊長を任される私をも追い詰める事がある。

 交戦域に侵入してくる3輌のM26を見たM18の車長は、今まで崩さなかった表情を崩し、とても苦い顔を見せるのだった。

 

 

 

 

 

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マチルダⅡMk.Ⅲ/Ⅳ   23ファイアフライ
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第20話 迫撃!トリプル・パーシング☆☆☆

「ここからだと……、あと1分と言った所か」

 

 M18との通信が途絶してから既に4分が経過していた。

 到着する頃には5分を過ぎてしまう事だろう。

 落ちた橋とそれを塞ぐT28によって回り道を強いられた事で、余計な時間を取られていた。

 妹と合流出来たのは不幸中の幸いと言えるだろうが、それはつまり到着はギリギリになるという事でもある。

 

「まぁ、何も言ってこないという事は無事なんだろうが……」

 

 そうこうしている内に、駐車場が見えてきた。

 もう既に約束の時間は過ぎている。

 しかも聞こえてくる砲撃音は2つだけではなく、少なくとも3つ以上。

 

「……まさか中隊長車まで居るのか?」

 

 敵の砲撃を警戒しつつ、建物の角から様子を伺う。

 そこに広がっていたのは、まさに衝撃的な光景だった。

 

20話 迫撃!トリプル・パーシング


 

 センチュリオンとの戦いをドッグファイトに持ち込んだまでは良かったが、これは完全に予想外だった。

 このタイミングで中隊長車3輌が揃い踏みとは。

 

(どうするかな。もう少し遅ければ西住さん達含めて3対4に持ち込めたのに)

 

 だが、まだティーガーもⅣ号も到着していない今、無い物ねだりをしていても仕方ない。

 

(……まぁ、やるだけやってみようかな。やらなきゃやられるだけだし)

 

「前に出るふりをした後に本当に前に出て一気に左ターン。中隊長車の方に仕掛けるよ」

 

 センチュリオンは確かに強いが、多少強引な手を使えば時間を稼ぐぐらいは出来る。

 例えば──

 

「……よし、撃ってこない」

「……ッ」

 

 味方へ誤射する可能性を許容できる人はごく僅かだろう。

 まぁ私も撃たないし、武道としてもそれで正しいのだが。

 人によっては味方に当たろうがお構い無しに撃ってくる人もいるから、ある種の賭けだった。

 少しばかり申し訳なく思いつつも、中隊長車の方に集中する。

 

「1輌目は向かって左の履帯を。2輌目は多分右に飛び出すからその側面に。直後砲塔を後ろに向けて3輌目の背面を」

「それじゃ真ん中を抜ければ良いか?」

「それでよろしく。……撃て」

 

 指示を出して後方を確認するが、やはりセンチュリオンから砲撃が飛んでくる様子は無かった。

 軸をずらそうと横に移動を始めていたが、それだけの時間があれば十分だ。

 放たれた砲弾が、狙い通り先頭のパーシングの履帯を切断する。

 さすがに履帯を切られた程度であれば撃破までは行かないが、全速力で走っているパーシングの進路をねじ曲げる事には成功する。

 向かって左に逸れながら急停車する先頭の車輌に対して、2輌目が取った行動は──

 

「よし、そのまま」

 

 予想通り、反対側に避けながら飛び出してきた。

 その横っ腹に砲撃を叩き込み、センチュリオンと3輌目の様子を伺う。

 センチュリオンは……、あの位置なら彼女達に任せておけば大丈夫だろう。

 問題はパーシングの3輌目。

 3輌目は2輌目の直後に控えており──

 今にもこちらを撃たんと主砲を向けつつあった。

 

「砲塔そのまま!合図で急制動を!」

「え!?」

「分かった」

「……今ッ!」

 

 急遽予定を変更し、砲塔の向きを変えず、その射界に収まる直前で急制動をかける。

 キューポラから身を乗り出していた私は慣性に耐えつつ──

 

 敵の車輌がM18の車体を捉えるのを待たずに砲撃を放つのを確認した。

 振動が落ち着いてからすぐさま装填を済ませ、目の前で後退しようとしているパーシングに向けて砲撃。

 

「左バック、信地旋回」

 

 白旗が上がるのを確認しつつ、あえて超信地旋回ではなく、信地旋回で1輌目に向き直る。

 

「危なかったな……」

 

 半分ほど向き直ったタイミングで、ほんの半秒前まで自分たちの車体があった場所をパーシングの砲弾が通過していった。

 そのまま向き直った先には、砲塔をこちらに向けた1輌目のパーシングの姿が。

 もう少し余裕があるかと思っていたのだが、かなりギリギリのタイミングになってしまった。

 やはり動き続けるのは正義。

 

「撃て」

 

 旋回と装填を終え、残った1輌目に砲撃を叩き込む。

 ……まぁ、ロクに動けないパーシング相手では外す方が難しいだろう。

 予定とはだいぶ違ったが、パーシング3輌は撃破出来た。

 

「……さて、それじゃセンチュリオンの相手に戻るとしようか」

 

 最後に確認した際、センチュリオンは駐車場に現れたティーガー、そしてⅣ号との交戦に入りつつあった。

 そこまでお膳立てされて撃破されましたじゃみっともないし、本当に撃破できて良かった……。

 

 

 

 

 

「な……」

 

 大学選抜はその名の通り、各大学の精鋭が集められている。

 その中でも中隊長を任せられている3人は、当然その世代のトップクラスの選手という事になる。

 そしてその彼女達が愛里寿に挑むべく磨き抜いたのが、3輌で相手に当たるバリエーション豊かな連携攻撃。

 彼女達がバミューダアタックと呼んでいるそれは、時に愛里寿を追い詰める程であり、先程は大洗チームの多くの車輌を瞬く間に行動不能に陥らせている。

 もし破られるとすれば西住流のどちらか、或いは複数輌相手に仕掛けた時ぐらいだろうと考えていた。

 

「こうも呆気なく破られるなんて……」

 

 しかしあのM18は、単独でありながら、20秒にも満たない僅かな時間で3輌全てを行動不能にして見せた。

 何か特別な技術を使われた訳ではない。

 砲撃による誘導、緩急で敵のタイミングをずらす、足を止めずに動き続ける。

 いずれも大学選抜の選手なら、程度の差はあれど息をするように出来る事だ。

 ただ、その精度と、早さ。

 そしてそれに応えられるだけの車輌性能。

 これらが組み合わさる事で、異常なまでの強さを発揮していた。

 

(読み合いに強いのかと思ったけど、違った)

 

(読み合いで負けても、それを無理やりカバー出来るんだ)

 

 今までの交戦の様子を見る限り、1対1でもまだ有利なのは間違いない。

 だが、既にティーガーとⅣ号との交戦に入っている以上、M18との1対1に持ち込む事は難しいだろう。

 ならばまずは──

 

「こっちを先に片付ける!」

 

 

 

 

 

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14M26パーシング29M26パーシング
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分かる人には分かるサブタイトル

どんな決着になるのか自分でも分からんとです(沼ってるとも言う)

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第21話 決戦☆

「……私達が交ざって良いものなのかな、これ」

 

 元は60輌もの戦車が入り交じる大規模戦闘だったこの戦いも、残っている車輌は5輌を残すのみとなっていた。

 大規模な試合がここまで拮抗するのは珍しい。

 ましてや二大流派の後継者達による決戦を目の前で見られる機会など、これから何度ある事か。

 スマホを取り出したい衝動を抑えながら、戦闘の様子を窺う。

 

21話 決戦


 

 多数で1輌を相手に仕掛ける場合、相当息が合っていないとかえって邪魔になる事が多い。

 2輌ならぶっつけ本番でもどうとでもなるが、3輌以上ともなればいきなり合わせられるかは相性次第になる。

 

 そこで私は、まず西住姉妹のタイミングに合わせられるかを確認し、もし可能なようであれば交ざろうと思っていたのだが……。

 その戦闘は予想とは大きく異なる形で推移していた。

 

 ……かかる時間に差はあれど、彼女達なら私達が交ざらなくともセンチュリオンを仕留め切れると踏んでいたのだが。

 

 センチュリオンは、高校最高クラスの練度を持つであろう2輌を相手にしながら、それでなお互角以上の戦いぶりを見せていた。

 

 車輌性能や車長の指揮の素晴らしさは言うまでもないが……、それだけではどちらが勝つか分からないとまではならないだろう。

 ただでさえ高性能な車輌を魔改造したM18ならまだしも、センチュリオンとティーガー、Ⅳ号ではそこまで圧倒的な性能差とは言えまい。

 その証拠に、車輌の動きはこちらの2輌も負けてはいない。

 ……だが。

 

(何だろう、若干隙がある?)

 

 問題はこちら側2輌の連携にあった。

 

 ぱっと見た感じでは、タイミング自体は非常に噛み合っているように見える。

 しかし……、連携と連携が全く繋がっていなかった。

 例えるなら、音が跳んだレコードのような。

 以前見た時は相手の動きに合わせて、まさに阿吽の呼吸と呼ぶに相応しい攻めを見せていたのだが、今は往なされる度に手で意志疎通を図っている。

 そして、その隙に体勢を立て直され……、という事が何度か繰り返されていた。

 

 その様子を見て、1つのインタビューを思い出し、驚愕する。

 

「……そっか。戦車道が嫌になって転校したって事は、姉妹で肩を並べて戦うのも去年の大会以来なのか……。良くジェスチャーだけで連携取れるな」

 

 もしかしたら姉妹で言葉を交わす事すらしていなかったかもしれないと考えると、その連携の精度は流石の一言だった。

 しかし、センチュリオンに立て直す余裕を与えているのもまた、事実。

 

(……なら、その隙を埋めるのが私達の仕事かな)

 

「砲撃用意」

 

 センチュリオンと1対1で戦った時は、こちらの砲撃が相手を捉える事は無かった。

 動きが読みにくい上に、なんとか読みきったとしても攻めに転じるには遅く、見逃してしまうような有り様だった。

 だが、センチュリオンがティーガーとⅣ号の動きを読んでいる今なら。

 

 2輌の動きを読めれば、センチュリオンがどう動くかも自ずと見えてくる筈である。

 

(……今回Ⅳ号は脚を奪うための囮。ティーガーが本命か。あの位置なら……)

 

「砲塔右20度。……撃て」

 

 全力で頭を使い、センチュリオンの来るであろう場所に砲撃を加える。

 姉妹の動きの予想は当たり、センチュリオンの車長が考える最適解にも辿り着いたのだが……、肝心の指示が遅れてしまった。

 M18は、トップスピードでは無いとは言え、並の戦車よりも速いスピードで移動中だった。

 僅かな遅れでも、砲撃位置はかなりズレる事になる。

 

「……ッ!?」

「やっぱりハズレたかぁ……。夏帆!」

「まっかせて!」

 

 放たれた砲弾はセンチュリオンを捉える事はなく、その正面を通過していった。

 驚いたようだったし、間違いなく意表は突けたのに勿体ない事したな……。

 しかし注意を引く事には成功したようで、センチュリオンが進路を変更。

 正面から向き合う形となる。

 装填をしては撃つを繰り返しながらギリギリまで接近し、超至近距離での砲撃戦に突入する。

 だが、やはりM18の速度をもってしても圧され始める。

 

「でも時間は稼げて……ヤバい!」

 

 結果として。

 センチュリオンの動きに反応しきれず、砲の正面に飛び出してしまった。

 いくら真琴とM18の反応が良くとも、この至近距離では避けようがない。

 まさに、絶体絶命。

 

 嫌と言うほど聞いたセンチュリオンの砲声が鳴り響く。

 

(……え?)

 

 だが、その衝撃は予想に比べて非常に小さな物だった。

 

 目を開ける。

 

 そこにあったのは、車体を捉えない角度に逸らされたセンチュリオンの砲身と。

 

 ──それを押し退けるように交差しているこちらの砲身だった。

 

「「え?」」

 

 ……もしかして、砲身で砲身を押し退けた?

 んな剣道じゃないんだから……。

 真正面で島田さんも呆気に取られて──

 

『避けろ鴻上!』

「退避ッ!」

 

 西住さんからの指示が飛んだ直後、砲撃音が鳴り響いた。

 ティーガーから放たれたそれは、戦車はもちろん、建物や地形に当たる事も無く。

 

「空砲?」

 

 その風圧で眼前の戦車を弾き飛ばす。

 88ミリ砲の後押しを受けたⅣ号が、M18に匹敵する速度でセンチュリオンに肉薄する。

 センチュリオンも迫るⅣ号へ砲撃するが……。

 砲弾はⅣ号の履帯を切断するも、撃破するには至らない。

 

 Ⅳ号は慣性に従いそのままセンチュリオンに激突、零距離射撃を叩き込み。

 双方から白旗が上がった。

 

 

 

 

 

県立大洗女子学園
Ⅳ号戦車H型16T34/85
ティーガーⅠ17IS-2
チャーチルMk.Ⅶ18KV-2
ポルシェティーガー19Ⅲ号突撃砲F型
三式中戦車(チヌ)20ヘッツァー
ルノーB1 bis21M4シャーマン
八九式中戦車甲型22M4A1シャーマン
マチルダⅡMk.Ⅲ/Ⅳ   23ファイアフライ
クルセイダーMk.Ⅲ24M3リー
10CV33型快速戦車25M18スーパーヘルキャット
11BT-42突撃砲26九七式中戦車(新砲塔)
12ティーガーⅡ(修理中)27九七式中戦車(新砲塔)
13パンターG型28九七式中戦車
14パンターG型29九七式中戦車
15T34/8530九五式軽戦車
残存車輛数3輌

 

 

大学選抜チーム
A41センチュリオン    16M26パーシング     
M26パーシング□17M26パーシング
M26パーシング△18M26パーシング
M26パーシング◇19M26パーシング
T28重戦車20M24チャーフィー
カール自走臼砲21M26パーシング
M26パーシング22M26パーシング
M26パーシング23M26パーシング
M26パーシング24M26パーシング
10M24チャーフィー25M26パーシング
11M26パーシング26M26パーシング
12M26パーシング27M26パーシング
13M26パーシング28M26パーシング
14M26パーシング29M26パーシング
15M26パーシング30M24チャーフィー
残存車輛数0輌




大学選抜戦、決着。

……最終回はまだざっくりとしか決まってないんですよね。
どうしよう。

ちなみに最終回以降も細かい話は上がるかもしれません(最終回とは)

1/20 最後の表、大洗側を変更し忘れていたので修正。

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