お前ウマ娘なら誰でもいいのか (もふもふニキ)
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お前女帝なら良いのか

ジャスタウェイ実装されないので初投稿です


4月、それは新学期、社会人一年生、大学デビュー、いろんな『初めて』が始まる季節。桜は満開になり、花は咲き誇り。爽やかな風が流れるそんな時期───

 

「難問ッッ!!!!」

 

なのだが、そんな春うららかな天候とか。周りの喧騒とは真逆の声が学園長室に響き渡る。「日本ウマ娘トレーニングセンター学園」───通称、トレセンの理事長である秋川やよいが頭を抱えながら唸り声を上げている。

 

そこにはとあるウマ娘のプロフィールが載っている書類が握られていた

 

ウマ娘──『ウマソウル』と呼ばれる別世界の魂、そして名前を受け継いで走る存在。ウマ娘は走り続ける運命がある、いや宿命というべきだろうか?走らないとストレスが溜まる、気性が荒くなる。というような症状がある。大なり小なり差はあるが、すべてのウマ娘に起こる現象だと言われている。

 

だがそのウマ娘にはそのような症状が見られていない…レースが嫌いというわけではない、というよりは──

 

「ウェェェェェェイ!!!!!」

 

──ゴールドシップ、トレセン学園きっての問題児。知恵が斜め上を行き過ぎてマイナスになっているウマ娘。損「だけ」する嘘はつかないが。面白さや若干でも有用性があるようないたずらなら躊躇なくやらかすのだ。

 

彼女がトレセンに入学(スニーキングミッション)したときはそれはそれは大変になる…と思われたのだが。

 

「朝から馬鹿やってないで登校登校」

 

「ぐぇぇぇ!?!?!?」

 

そんなバ鹿の首根っこを掴んでズルズルと引きずっていくウマ娘がいる、鹿毛の髪を揺らしながらそこまで大きくない身長でゴールドシップを引きずっていくのだから大したものだ。そう思いながらやよいは一枚の紙を見る。

 

 

 

そこには彼女の名前が乗っていた

 

 

 

 

 

 

 

──ジャスタウェイ、後に最強の名前を冠するウマ娘だ

 

 

 

「朝から疲れた……」

 

登校するや否やセグウェイに乗って爆走してるバ鹿を捕獲し、首根っこを掴みながら教室へ向かう…前に生徒会室に向かう。

 

「離せー!離せー!!!ゴルシちゃんをどうするつもりだ!!」

 

「お縄につかせるつもり」

 

「そりゃないぜジャスタ!生徒会室にはこわーいこわーいまm「ほう?誰が魔物だ?」ひえっ」

 

ゴルシと漫才をしていると、背後から冷たい声が聞こえて壊れたブリキみたいな動きをしつつ振り返るゴルシ

 

「出たーーーー!!!!」

 

「人を怪物あつかいするな馬鹿者!!」

 

「ぐぇっ」

 

オーバーリアクションするゴルシの後頭部にゲンコツが落ちる。流石に痛いものは痛いのかのたうち回る、毎度毎度だが学習しないのか?ジャスタウェイは訝しんだ

 

「おはよう御座います、エアグルーヴさん」

 

「あぁ、おはようジャスタウェイ…相変わらず大変そうだな…」

 

「いえ、エアグルーヴさんほどでは…」

 

「そうか…そういえば、花壇の手入れの手伝い。助かった」

 

「あれはゴルシが爆走した余波でめちゃくちゃになったお詫びですので…」

 

ゲンコツを見舞ったのはエアグルーヴさん、生徒会の一人でよくゴルシを追いかけ回しては説教をしてる。見かけや態度はちょっとおっかないから近寄りがたい人だけど。悪い人ではないと私は知っている。

 

「ともかく、こいつは引き渡しますね」

 

「ちょっ!?」

 

「あぁ…と言っても。今回は私が指導するわけではない」

 

その言葉にゴルシは一瞬希望を見出す。相手がエアグルーヴでなければどうにかなる、そう思っていた時期がゴルシちゃんにもありました。

 

「指導相手はたづなさんだ」

 

「」

 

哀れゴルシ、思わず合掌してしまった。たづなさんは温厚な見た目してるけど怖いんだよね…そんなことを思っていると

 

「恐くはありませんよ?」

 

「ひえ…」

 

私の背後からヌッと出てきてそういうのはトレセン学園秘書のたづなさん。忍者より偲んでる気がする、そう思っているといつの間にかゴルシを縄で縛っている。これにはエアグルーヴさんも顔を若干引きつらせている。

 

「では失礼します〜」

 

「ハナセー!ハナセー!シニタクナーイ!」

 

「「はぁ……」」

 

まあゴルシだから大丈夫だろう…と思いつつ二人を見送るとどうしようもない疲労感に襲われる。思わずため息をつくと、エアグルーヴさんのため息と重なった。お互いがお互いの顔を見ると苦笑し合う。

 

「生徒会室に寄っていけ、茶の一杯でも淹れてやる」

 

「それではご相伴に預かって…ああそうそう、お茶請けにいいお菓子持ってきましたよ」

 

「相変わらず真面目だな。たまには施しを素直に受け取れ」

 

エアグルーヴとさんと並んで生徒会室に向かう途中でそんな話をしながら歩いていく。

 

エアグルーヴsaid

 

このウマ娘とは不思議な関わり方から始まった。

 

始まりは…もうかなり前の出来事になる、やはりというべきだろうか、ゴールドシップの件だ。トレセン学園きっての問題児。禁止されたことはしないが、逆を言えば禁止しないことは何でもするのがあやつだ。

 

その対処に困っていたときだった、確かあれは…今日と同じ朝だったな

 

 

「待て!待たないかゴールドシップ!」

 

「待てと言われて待つのはワン公だけだぜエアグルーヴ!!!」

 

 

いつも通り…いつも通りになっているのが頭がいたいことだが、ゴールドシップと追跡劇を繰り広げていたときだ。

 

「相変わらず足は早い…!」

 

「そりゃゴルシちゃんに不可能は──ぐふぇ!?」

 

また逃げられそうになり、廊下の曲がり角に消えたゴールドシップを追いかけようとするとくぐもった声が聞こえた。

 

「はい捕まえた、鬼ごっこは公園でやろうって言われなかった?ゴルシ」

 

「ゴルゴル星では目と目が有ったらポケハンバトルの開始なんだよ!!」

 

「じゃあ私とポケハンバトルする?ん?」

 

そんな声を聞いて曲がり角を曲がると…

 

「ま、待て待て待て!!!極ってる!!極ってる!!」

 

「極めてんのよ」

 

「嬉しくない!!!」

 

栗毛のウマ娘がゴールドシップにチョークスリーパーをかけていた、素人目でもわかるぐらい見事なチョークスリーパーだった。

 

「ぎ、ギブギブ…!!え、エアグルーヴ!!助けてくれぇぇ!!!」

 

「あ、あぁ…」

 

助けを求められたので助けに入れば、その栗毛のウマ娘がニヤリと笑った。

 

「それじゃあ、たっぷり怒られてね?」

 

「あっ…」

 

 

────ゴールドシップお説教中──

 

数分後、虫の息になったゴールドシップを保健室に収容した、ほとんどさっきのウマ娘のチョークスリーパーのダメージだと思うのだが…保健室の先生は『ああ、またか』と何回かあることだと言っていた。

 

それにしても、あのウマ娘は一体誰だったのだろうか?ゴールドシップを説教してる間にいつの間にかいなくなっていた。気になったので調べてみればすぐに情報が…あまり出てこなかった。

 

記録にあったのが、名前と。ゴールドシップのストッパー役ということとぐらいだった。彼女──ジャスタウェイもなかなかに謎の多い生徒であるということは間違いないようだ。

 

それはそれとして後で礼を言っておかなければな、そう思いつつ授業を受けて昼時。再会はすぐだった。

 

ベンチに座って日向ぼっこ…だろうか、両手を膝の上に載せながらうつらうつらとしている。そんな彼女に視線を送っていると…

 

『おや?先程の…失礼、名前を伺ってませんでしたね。私はジャスタウェイ、お名前を伺っても』

 

と言いつつ寝ぼけて焦点が定まっていない視線を向けながら軽く挨拶をしてくる。ゴールドシップの同室と記載されていたのでどういう変人かと思っていれば、礼儀正しさに驚くばかりだ。

 

『睡眠の妨げをしてしまってすまない。エアグルーヴだ』

 

『エアグルーヴさんですね、よろしくおねがいします』

 

どうやら此方の事はあまり詳しく知らないらしい。だが、彼女には致し方ない理由がある、大目に見よう。

 

『なんと言いますか、ええと…ゴールドシップがご迷惑をおかけして大変申し訳なく思っている所存でして…』

 

『だ、大丈夫だ…その、なんだ。困り事があるなら。力になるぞ?』

 

焦点が定まるどころかうつろな目をしてくるジャスタウェイに思わずエアグルーヴは言葉をつまらせながらこう思った。

 

 

ああ、此方側(苦労人)なんだな…と

 

そんな事があって頻繁に顔を合わせることはないが、それなりに仲がいいと言える関係にはなっている。すっかり生徒会室にも馴染んでおり、たまにブライアンの偏食を治す手伝いをしているようだ。ほんの少しずつだが改善の兆しがあるとビワハヤヒデが喜んでいたのは記憶に新しい。

 

「それにしても、エアグルーヴさんは相変わらずですね、何時もおっかない顔してて」

 

ジャスタウェイが手慣れた様子で紅茶を入れつつそう呟く、端から聞けば悪口のように聞こえるが。ジャスタウェイのそれは心配を垣間見せている、最初に出会ったあと。私の評判を聞いてちょくちょく遊びにくるようになったのだ。

 

理由を聞いてみれば

 

『「女帝」というのであれば、配下と交流を深めないと駄目ですよ?』

 

いつからお前は配下になったんだというツッコミを入れる暇もなく、色々な場所に連れ回された。何故か一般生徒が多くいる場所で話をしたり、レースの考え事をいてるとカフェテリアに連れられたりした。ジャスタウェイがなぜそんな事をしたかというと…私についてるイメージの払拭が目的だったらしい。自分で言うのも何だが、あまり人好きされるような性格はしていないと思う。常に自分を律さねば他人にあれこれ言うこともできない。その考えからかついつい人にキツく当たる癖があるがどうにも治らないんだ。

 

『エアグルーヴさんゲームセンターいきますよー』

 

私はそれでもあまり気にしないのだが、どうやらジャスタウェイがそれを気に入らなかったらしい。柄にもなくゲームセンターに連れて行かれたときは…だいぶ恥ずかしい思いをしてしまった。そういうものに疎いのは自覚していたが、UFOキャッチャーに大分つぎ込んでしまった時は恥ずかしさでどうにかなりそうだったのを覚えている。

 

そういうことをしばらく続けていると。段々と一般生徒からの相談や、声をかけられることが増えていった。親しみ云々の前に残念さが影響していないだろうか等心配もあったが。すっかり定着したカフェテリアでの昼食でジャスタウェイが

 

『ようやく皆さんがエアグルーヴさんも役ただのお年頃のウマ娘と言うことを理解してもらえたようで何よりです。』

 

等と嬉しそうに尻尾を揺らしながら話しているのは今でも覚えている、続けて後も言われた。

 

『女帝らしくあれ、その志を否定するつもりは当然ありません。だけどエアグルーヴさんは聖人君主でもないんですから、少しぐらい。力を抜くのも大事ですし、弱さを見せないとウマ娘も、人間も本当の意味で心を通わせることも出来ませんから』

 

『…確かに、弱さを見せることは大事なのだろう。だが私は女帝だ、不甲斐ないところを見せるわけにもいくまい。先を走るものとして』

 

「はぁー……」

 

何故か溜め息をつかれた、なんだその顔は…そう思っていると頼んでいた紅茶が届きお互いに口をつけて仕切り直す。先に口を開いたのはジャスタウェイの方だった

 

『エアグルーヴさん、本気でそれ言ってます?不甲斐ない云々』

 

『そうだが…』

 

そういうとさらにため息をつかれる。何かおかしなことを言っただろうか、ため息をやめてスプーンでカップをかき混ぜながらジャスタウェイが続ける。

 

『それなはら心配ありませんから、エアグルーヴさんですから』

 

『一体何なんだその根拠は…』

 

等というジャスタウェイに額に指を当てて今度はため息をつく、そうするとなぜかジャスタウェイがクスクス笑って目を細めながらどこか嬉しそうな顔をしている。

 

『エアグルーヴさんは他の子をちゃんと()()()()としてみているからですよ』

 

『それは…普通のことではないのか?』

 

『いいえ、違いますね。普通ではないんですこれが』

 

『…そうなのか?』

 

『ええ、基本的に強いウマ娘の人…だけじゃないですね、実績のあるトレーナーもそうです。そういう人たちはレースに出て勝つことが当然…それは他のウマ娘を()()()()()としてしか見ていないんです。言ってしまえば、ただの()()()()()()()()()()()とも言えるんです。重賞だろうとOPだろうと、()()()()()()()()()()()()()、エアグルーヴさんはそうじゃないでしょう?』

 

『それはそうだろう、レースに出ているウマ娘は皆夢を賭けて走っている。中には違う場合もあるだろうが…ただ、走ったことが。努力したことが無駄だとは口が裂けても言うことは出来ない、』

 

『そうですね。エアグルーヴさんはそういう人ですから、ちょっと回りくどくなってしまいましたが…私は、エアグルーヴさんが周りにそういう人達とは違う、ということを知ってほしかったので』

 

『お前…』

 

なんてことはなさそうに言うジャスタウェイに少し、言葉が詰まる。お人好しにも程がある、さして利益にも、下手をすればライバルが増えるかもしれなというのに。そう思った私は思わず口から言葉をこぼしていた。

 

『…何故そこまでする?』

 

『何故って…それはですね』

 

ジャスタウェイは首を傾げつつ、さも当然というように言葉を続ける

 

『好きだからですけど?』

 

『………と、いうと?』

 

思わず吹き出すという醜態を晒してしまうとところだった。危ない…いや、ウマ娘同士での恋愛云々という話ではあるまい。おそらく違うはずだ。なんとか言葉を出して発言を促せば

 

『エアグルーヴさんは厳しいですけどそれは期待からくるものと、それまで努力してきた過程を認めた上でのことだと思いますから。人に認められるということは嬉しいですし相手がエアグルーヴさんですから。それもあります、あとは…そうですね、なんだかんだいってやさしいところでしょうか?小言は言ったりしますけど手伝ってくれて、最後まで放り出さずに根気よく。そういう人も少ないですから、そこも高評価のポイントの一つでしょうか?…あとは、そんな感じでも虫が苦手で。でもてんとう虫だけは大丈夫なところだとか、誕生日とかお祝いごとがあると時間を取ってくれ───『わかった、分かったらからもうやめろ…!』えー、此処からが本番なんですけど』

 

ぶーぶーとブーイングしてくるジャスタウェイにキッと視線を送れば。周りからクスクスと笑い声が聞こえてくる、ええい羞恥心を煽るな…!!!

 

『とまあ、そういうわけで。友人が『こわ…近づかないでおこう』されてるところなんて見られたくないジャスタウェイでした』

 

──なんてことがあった。その後色々あって女帝にふさわしい栄光を掴み取ることが出来た。ジャスタウェイはジャスタウェイで何やらやることがあると言っていてともに走ることは叶わなかったが、度々レースに勝ったあとはよく祝勝会に参加してくれていた。

 

その後生徒会に入る際、誘ったのだが断られた…別に寂しいというわけでもないが。

 

「そういえば、()()()()()。今年の新入生の調子どう?押しつぶされそうな子とかいない?」

 

「まだ今の所見かけてはいないが、徐々に増えてくるだろう。門限やぶりを横行させるわけにも行かない」

 

…ジャスタウェイは二人きりの時はあだ名で呼んでくるようにいつしかなった。理由としては

 

『友人同士なんだからもっと気安く呼び合いたい』

 

ということらしい、私は普通に呼ぶことにした(その際凄く抗議されたが)、あまりそういうのは似合わないのだから仕方ないだろう。呼びたくないわけではないのだが

 

「そっか…エアちゃん、ちょっと眠そうだね。少し寝たら?」

 

などと言いつついつの間にか脇を持たれてソファーに連れられていた。こういう時は無抵抗のほうがいい、一度抵抗したときのジャスタウェイは…なかなかに怖かった。

 

「…不甲斐ないな」

 

「たまにはいいと思うよ?」

 

…そう、だな。たまにはこういうのも良いだろう…そう思っていると。いつの間にか眠りに落ちていた、なんとなくだが。ジャスタウェイの側は落ち着きやすい、雰囲気…のせいなのだろうか。願わくば、もう少し…自然に、接することが出来るように努力しよう…

 

 

 

その時は……まあ、あだ名で呼ぶのも悪くないだろう

 

 

 

 




続かない


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お前女帝なら良いのか EX

書き忘れたのがあったので初投稿です


「エアちゃんゲームセンター行かない?」

 

「ゲームセンター…?」

 

ジャスタウェイが放課後で人もまばらになったカフェテリアで休んでいたエアグルーヴに声をかける。唐突すぎる誘いに思わずオウム返ししながら反芻する

 

「しかし。今日はトレーニングが「たわけさんなら今日は来ないよ?」…何だと?」

 

「なんかね、エアちゃんのトレーナーさん。たづなさんにひっ捕らえられてましたよ?なんでも『女帝とか言われてるけど可愛いところもあるんだッ!!!』とかいってエアちゃん布教しようと本作ってそれを売ろうとしていたとかなんとか」

 

「あのたわけめ…!!!」

 

すごい気迫でしたーなんて朗らかに言うジャスタウェイに対してエアグルーヴは心底頭が痛そうにしている。それもそうだろう、いきなりトレーナーが『私の愛馬が!!!』なんて言い出したら『どうした急に』と言わざる負えない。

 

ちなみにだが、たわけとたづなさんの鬼ごっこを見てとあるトレーナーが『閃いた!』とかいってとあるウマ娘のトレーニングに使われたとかなんとか。これまた関係のない話ではあるがたわけさんことエアグルーヴのトレーナーは女性である。ジャスタウェイとも仲がいいため彼女としてはジャスタウェイと契約もしたいらしい。

 

「……だが生徒会の「生徒会の仕事もないよ?」…何故だ」

 

「ルドルフ会長がテイオーちゃんと遊びに出かけちゃったから。なのでエアちゃんは私と遊びに行くしかないというわけです。ユア・コピー?」

 

「はぁ…仕方がない。行くとするか…ところで最後のやつは何だ?」

 

「マヤちゃんから教えてもらった。ブライアンさんがめんどくさいときに私におしつけてくるから」

 

「………」

 

などと言ってるうちにゲームセンターにたどり着く。最近はあまり来れなくなっていたためちょっとウキウキした様子のジャスタウェイにエアグルーヴもため息はつくものの嫌がってはいないようだ、緩めの雰囲気のジャスタウェイと堅苦しい雰囲気のエアグルーヴの空気感はいい感じに混ざり合っている。この二人が何のゲームをやっているかというと……

 

「エアちゃん相変わらず上手だねぇ」

 

「一通りダンスは仕込まれているからな」

 

 

ダンスゲーム「ウマ・ダンス・エボリューション」、略してUDEである。タイミングよく流れてくる音符に合わせて足元にあるパネルを踏むというものだ。これはウマ娘用でヒトミミ用は『ヒューマン・ダンス・エボリューション』である。ウマ娘用と違うところは、此方は長押しメインであり、UDEは瞬発力、HDEはタイミングが重要なゲームとなっている。ちなみにハイスコアランキングで不動の一位を確率いているという噂のウマ娘は激マブなチャンネーらしい。

 

「足も温まってきたし、一緒にやろっか」

 

「いいだろう」

 

UDE、対戦もできるが二人がやってるのはもっぱら協力プレイである。片方が間違えるともう片方に音符が増える仕様であり、コンビネーションが問われるのだが…シングル戦はギロッポンでシースーなチャンネーではあるが。ダブルプレイではこの二人だったりする、次点でジャスタウェイとゴールドシップなのだが、ゴールドシップが途中で飽きるのでどうしても勝てないのが玉に瑕

 

一通り遊び終われば、ぱかプチが入荷されているかを確認するのだが…

 

「ねえねえエアちゃんエアちゃん、エアちゃんのぱかぷちあるよ!!!」

 

「分かった分かった…はぁ…」

 

ハイテンションになってるジャスタウェイに若干振り回されつつも、自分のぱかぷちに反応してくれるのはやぶさかではないのか。ほんの少し尻尾が揺れている。

 

「さあ取るぞ……集中力…ポジションセンス…良バ…ホークアイ…地固め…!!」

 

「なんなんだその呪文は…」

 

ナムナム〜!!と両手をすり合わせつつ、何かを言い始めたジャスタウェイにエアグルーヴが困惑の表情をしつつ見守っている。

 

『中距離……青空……うっ頭が…』

 

『誰かー!!誰か担架運んできてー!!!』

 

とどこかで誰かが倒れたらしいのだが今の二人には聞こえていないようだ。

 

まずは一回目

 

「うっ……」

 

「惜しかったな、あと少しだった」

 

ぐぬぬと唸りながらジャスタウェイがレバーを握りしめつつ、エアグルーヴが慰める。エアグルーヴのぱかぷちと複数のぱかぷちが一緒に取れたのだが最後の最後で落下してしまう

 

「あと二回…えいや…ぐぬぅ」

 

「……ふむ」

 

このクレーンゲーム、1回終わると再配置+速度アップ+商品交換がされる謎の仕様がある。実はこれにエアグルーヴが大苦戦してお財布が空になり最後はジャスタウェイがしっかり獲得したことがある(そのぱかプチはちゃんとエアグルーヴに渡した)

 

「あと一回…これは!」

 

「通常サイズとは違うか…大物だな」

 

たまに混ぜられている大きいぱかプチ、丁度良くエアグルーヴのものであり、最後の賭けと言わんばかりにジャスタウェイは精神統一を図る

 

「私は『エアグルーヴを見守る会:レジェンド会員』とゴールドシップの魂を掛ける」

 

「勝手にゴールドシップの魂を…待て、さっきなんと言った?」

 

「ファイヤー!!!」

 

サラッと流した言葉に聞き捨てならないものを覚えつつもジャスタウェイはそれをスルー、結果はというと

 

「今日の勝利の女神はエアちゃんぱかプチにチュゥをしたね!!」

 

「…おめでとう」

 

嬉しそうに尻尾を振りまくっているジャスタウェイにまんざらでもなさそうな顔でエアグルーヴがほめてやる。大事そうに抱えていると…何処からか誰かが泣いている声が聞こえる。

 

──エアグルーヴside

 

「エアちゃん、あそこあそこ」

 

泣いた声が聞こえた方に行くと、ウマ娘の子供が大声で泣いている。親とはぐれてしまったのだろうか?その子の側に近寄って見れば。周りのことも見えてないぐらいに泣きじゃくってしまっているため。係員も困り顔だ

 

「お嬢ちゃん、どうしたのかな?お母さんとはぐれちゃった?」

 

ジャスタウェイがその子に視線を合わせるように屈んで事情を聞き出す。こういう手合のことはジャスタウェイが得意らしい。私が係員と視線を合わせれば、此処はジャスタウェイに任せたほうが良いと感じてくれたのか、そっとそばを離れる。

 

「ちがう…」

 

その子がようやく泣き止んでボソボソと事情を話してくれた。どうやらクレーンゲームで手に入れたぱかプチを無くしてしまったらしい。詳しく聞くと、トイレに行っている最中に近くの椅子に置いてたら無くなっていた…盗られたのだろうな。ぱかプチはあれで意外と入手が大変だ

 

「そっかそっか、どのぱかプチだった?」

 

「鹿毛のお姉ちゃんの、持ってるのの、小さいの…」

 

「エアグルーヴさんのぱかプチかぁ」

 

私のぱかプチか…子供にとってはぬいぐるみなのだろうが、ウマ娘の子供にとっては憧れも自然と混ざるという。それをなくすのは…少々堪えるだろう。

 

「…じゃあ、このエアグルーヴさんのおっきいぱかプチ。お嬢ちゃんにあげる!」

 

「いいの?…でも、おかあさんが「ひとのものとったらダメだよ」っていってた…」

 

一瞬子供が明るい顔をしたが、また気落ちしてしまう。人から物をもらうのと。盗るのは違うのだが…そんなことを思っていれば、ジャスタウェイが此方を手招きしてくる。

 

「私は大丈夫、ほら。本物のエアグルーヴさんと一緒だから」

 

「ふぇ…えあぐるーうさんだ!」

 

ジャスタウェイが私を指させばやっと子供が笑顔になりつつ、きゃっきゃと嬉しそうに喜んでいる。これで一安心か、と思いつつ再度ジャスタウェイがその子に視線を戻す。

 

「だから、私は大丈夫。このぱかプチ、もらってくれるかな?」

 

「…うん、ありがとうっ!」

 

ジャスタウェイが私のぱかプチをその子に渡せば、そのまま親御さんを探しつつ無事合流させて一件落着…となったのは良いのだが。

 

「良いのか?あれで」

 

「良くないよー、あの子のぱかプチ誰かが盗っちゃったんだしさ」

 

帰り道にジャスタウェイに話をふると、彼女はうーと唸りながら顎に指を当てて考え込む。

 

「それもそうだが…」

 

「あぁ…エアちゃんのぱかぷち?また取ればいいから。あ、そうそう。これはあげる。これは私のぱかプチ、何でかもう作られてるからあげるよ」

 

「…良いのか?」

 

「勿論」

 

自分のぱかプチは要らないからね。などと言いながらだから大丈夫だよーなんて言いつつ軽い足取りで前へと歩くジャスタウェイが振り向くと

 

「エアちゃんのぱかプチがなくても、エアちゃんとお話できれば私は寂しくないから大丈夫〜」

 

そう言いつつジャスタウェイはそのまま帰っていく、そこに残されていたのは。

 

ジャスタウェイのぱかプチを大事そうに抱えているエアグルーヴだけだった。夕日が差し込んでいる為顔が赤く見えるが…はてさて。それが本当に夕日のせいなのかはジャスタウェイのぱかプチしかしらない




(エアグルーヴの追加のお話は後は多分)無いです

試しにサイレンススズカ書いてみたけどクソデカ感情抱えた危険物になったのでお蔵入りですはい






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異次元の逃亡者じゃダメですか?

スズカ爆弾の前編なので初投稿です

あとめんどくさいので匿名投稿辞めました。お久しぶりの人はお久しぶり、初めましての人は初めまして。生き我ェ!の人は残念だったな、トリックだよ



※史実要素がちょっと混ざります。ちょっと見て拒否反応起こしたら素直に閉じてください


「ふんふふーん…おんや?」

 

いつも通りの朝のルーティーン(ゴルシを捕縛して頓定につき出す)のを終えた後、ちょっと早く来てしまったのでお散歩していると見覚えのある赤みが強い栗毛を発見。そーっと近づいて近づいて…

 

「ス~ズ~カ~?」

 

「……!?」

はい確保、ジタバタ暴れても無駄ですよ無駄。スズカさん華奢なので捕まえやすいんですよね~、ゴルシに比べれば全然全然。ほら、大人しくなった

 

「オーバーワークは駄目だって言いましたよね〜?」

 

「…ごめんなさい」

 

「良くできました、早めにシャワー浴びて行きましょう」

 

スズカさんを確保したままシャワールームに放り込む、当然逃げないように外で監視すること数分

 

「…終わったわ」

 

「それじゃあ、行きましょう」

 

そのままスズカさんの手を握りながら歩いていく、彼女は手を離すとすぐに何処かに行ってしまうので仕方ない処置である、とはいえスズカも嫌がってないのでセーフですセーフ。

 

まあ

 

「………」

 

ほんとは彼女の方が離してくれないんですけどね実際は。

 

スズカとは実はトレセンで一番古い知り合い何ですよね。最初の彼女はまあ走ることしか考えてなくて、それ以外全く興味無くて。周りから煙たがられていたんですよね。そう言うのを見てると私としてはちょーっと勿体ないなーとか思ってたんです。走ってるときの彼女、とっても素敵な笑顔してたんです。そういうのがもっとみたいなって思ってちょっかいかけてたら仲良くなれました、まあ…色々有りましたけどね。いい思い出ですよ今は

 

 

いつも通り授業を受けて、お昼過ごしての放課後。

 

私はレース場…ではなく補修室に居ます。え?私の成績?高等部トップクラスですがなにか?流石に生徒会メンバーとか、ビワハヤヒデさんとかあの辺りには負けちゃいますけど。あの人には負けてませんよーだ、それだけはやだ。

 

ゴルシ?…あれは例外例外 。数学で違う数式使って解いてるのに正解する理外の生き物ですし?

 

とまあ補修受けてるのはスズカな訳ですはい。この子ようやくレース以外に興味は持つようになったんだけど、勉強は相変わらず苦手みたい。そこで暇してる私が教えてる、スズカは補修が終わる。私は足りない単位を貰えると言う寸法なのだわ

 

「スズカ、ペン止まってる」

 

「あっ…ごめんなさい…」

 

上の空のスズカを現実世界に引き戻すと、居心地悪そうに視線を反らしつつも。カリカリとペンを走らせ始める、ちなみにどれだけ居心地悪そうにしても、気まずそうにしても一度エンカウントしてしまえばRPGよろしく後ろに…ではなく。必ず「右側」に陣取るのだ、そこ左じゃないんかいと私は密かにツッコみを入れてから

 

『気まずいなら会うの辞めよっか?』

 

と言ったら

 

『……!!!……!!!』

 

無言かつものすごい形相で後を追っかけて来たのでもう言えないのである。あれは怖かったよ…反省反省

 

「スズカは相変わらず勉強は苦手みたいだね」

 

「が、頑張って…ます…よ?」

 

「知ってる知ってる。だからそんな捨てられそうな子犬みたいな顔は止めて?ね?」

 

勉強は一朝一夕じゃどうにもなんないから別に仕方ないと思いつつも、スズカにそういうと確実にいまみたいなのになる。耳はぺたんとなるわ尻尾は垂れるわ顔をうつむかせるわで…いや虐めたいわけじゃないんだけど。どうしてもこうなってしまう。

 

「ゆっくりでいいよゆっくりで」

 

そう言いつつスズカが問題を解いているところを見ていく、なんともまあ…悲惨といえば悲惨だ。ほんとに走るの好きなんだなって思う。

 

それからみっちり1時間以上かけてようやく補修を終えるとすっかり日は落ちていて。トレーニングを出来るような状況ではなくなった、本来のスズカならそんなことお構いなしに走り込みとかするんだけど…最近、此処しばらくは行っていない。

 

「スズカ、帰りますよー?」

 

「ん…」

 

身支度して部屋に戻ろうとするとスズカが私の制服の袖を掴んで離さない。あー…いつものやつが始まったか。まあ仕方ないか、原因は私にもあるんだしさ。現在スズカにはルームメイトというものがいない、本当だったら一人部屋は殆ど無いんだけど。スズカの元ルームメイトは随分前に学園をやめてしまった。

 

んで、ちょっかいかけまくってた私がこうして定期的にスズカの部屋に寝泊まりしているのだ。他意はないよ?というかスズカにいっつもいっつも引き釣りこまれていくんだけどね……まあ私の場合。それでも問題はないんだけどね

 

「……」

 

クイクイって服の袖を引っ張って早く行こうと催促してくる、はいはい分かってますよーだ。いつものあれでしょ?あれ、私もあんまり人前じゃやりたくないんだけど。人もいないからいいっか。スズカに背を向けて屈むとぽふっと背中に抱きついてくる。そのまま立ち上がればおんぶの格好と相成る

 

「よっと…落ちないでね?」

 

返事はないが、首に緩く巻かれていた腕を動かして了承の合図を送ってくる。もともと口数がすくないこではあるけど。私と一緒の時は余計に口数が減る、それはもうオグリ先輩が食事をしている時のカフェテリアの在庫ぐらい減る。

 

そのままこっそりとスズカの部屋に入る、荷物を下ろしてスズカも下ろすんだけど…

 

「……離れるの、嫌」

 

ぽふっと抱きつきながら頬擦りしてくる。最初に見た時は何事かと思ったけど、スズカはホントのホントは寂しがり屋で、とっても甘えん坊みたいなようで。打ち解けた直後はずーっとこんな感じだった、学校にもろくに出ずに部屋で二人っきり。あの時私は栗毛ぐるいじゃなくて良かったなって心底思いました

 

多分、もしかしたらだけど。そうだった場合もう戻れないぐらいの関係にはなってたと思う。私もあんまり他に興味を抱くタイプでは本当はないんだ。あくまでも社会で生きてくためにそうなってるだけであって、ゴルシとつるめるってのが多分そういうことなんだと思う。アイツはすぐにドッカ行っちゃうけど。

 

だけどスズカはそうじゃない、多分…私がずっと一緒に居よっか?とか言ったらそれが最後になると思う。走るのは続けるだろうけどそれ以外は本当に何もしない。ずーっと部屋に閉じこもって私と過ごすような感じになってたと思う。

 

まあそれはそれとして

 

「……ふふ」

 

幸せそうなスズカを見るのは、嫌いではないしむしろ好きな方でもある。だってスズカかわいいんだもん、なかなか懐かないけど。一回懐いたらずーっとひっついてくる感じ。今も尻尾揺らして耳を前後にうごかしている。落ち着いてるんだなってのがよく分かる、それが自分が理由だってなれば…まあ、ね?そりゃ甘やかしたくもなるのかなーってなっちゃうわけでして

 

「よしよし。相変わらずスズカは甘えん坊さんですねー?」

 

「んぅ……」

 

ぽふぽふと頭を撫で回してあげると、お返しっていう風に手に目を細めながら頭を擦り付けてくる。控えめに言って最高なのだが、残念ながら同じウマ娘だ。これで私が男のトレーナーだったら警察に自首しに行く、絶対手を出しそうで嫌なので隔離…スズカなら追いかけてきてどっかに連れ去られる可能性あるから駄目かもしれない。

 

そんな私にお構いなしにスズカはあちこちに自分の体を擦り付けたあと、膝上に陣取ってぎゅ~ってしてくる。スズカ、そういうこと私以外にそういうことしたらダメだよ?襲われちゃうからさ

 

「ジャス…ジャス…()、ジャスから離れたくない」

 

実はスズカ、密かに僕っ娘だったらしい。というよりは甘えん坊スズカモードだと僕っ娘になるという方が正しいんだろうか?僕っ娘は他にもテイオーちゃんとかいるけど。あっちとは違う。

 

「はいはい、今は一緒にいてあげますからねー」

 

「ずっとがいいっ」

今度は駄々っ子のようにぷくーって顔をふくらませる。ほんとに感情豊かなスズカを見れて嬉しい気持ちと。もっと他のことも交流してほしい気持ちがないまぜになって複雑な笑みをうかべざるおえなくなってしまう。まあぶーたれてもちょっと撫で回してあげればにぱーって笑顔になるのでちょろいのだ。ちょろかわである

 

「スズカ〜、そろそろご飯食べたいんだけど…」

 

「や!」

 

「や!じゃないよスズカ……」

 

そろそろ腹も空いたのでなんか作ろうとしてもスズカがどいてくれない。体格的にはそこまで差がないんだけど、甘えん坊スズカは力の加減が疎かになるのであんまり派手に動くととんでもないことになりかねないのが怖いところではある。仕方ないので手の届く範囲であったパンで軽く済ませるとしよう、ムグムグと一緒にパンを食べ終わると、とうとう甘えん坊スズカが本気になってくる頃合いだ

 

「〜♪」

 

いつの間にかベッドの方に連れられて添い寝してくるスズカは上機嫌そうに密着してくる、なんかいい匂いがしてくるけど耐えろ。耐えるんだジャスタウェイ、此処で本能スピードしてしまうと今後の人生がアオハル大爆発してしまぅ!!なんてことをジャスタウェイは思いながら甘えん坊スズカの攻撃を耐え凌ぐ

 

(まあ、いっか…しあわせそうだし。スズカは可愛いしさ)

 

なんて思いながら部屋の電気を消して、スズカを緩く抱きしめる。当然スズカも抱きつくし何なら足まで絡めつけてきて全身密着モードになってくる。スズカあざとい…なんて思いつつも受け入れて撫で回してやる。

 

「スズカ」

 

「…?」

 

名前を呼んであげると擦りつけていた顔を上げて首を傾げる。これでも大分殺傷能力が高いのだがなんとか耐える。ちゃんと言ってあげないとこの子はいつまでもこうしてしまうのだ

 

「何処にも行かないので、寝ますよ?」

 

そう言うと、軽く頷いて、私の胸に顔を埋めながらスズカは眠りに落ちていた。寝ている間も時折私の名前を呼んでいる辺りなんだかむず痒い。そう思いつつも私も寝るかな…そう思っているとすぐにジャスタウェイも眠りに落ちる

 

「んー……ん?」

 

なんだか体が重いなーとか考えていて、目を開ければ…まあ案の定スズカが私に乗っかりながらすやすやと寝ている。休みの日だからってぐーたらしすぎるのも良くないからなぁ…起きよう

 

「スズカ、朝ですよ」

 

ゆっくりと肩を優しく揺すってみる。効果がない、仕方ないのでそのまま体を起こしてスズカを抱きかかえながらウマホでも弄ってるかな…

 

スズカはしばらくしてからようやく起きた。甘えん坊スズカモードが終わってたのか、顔を真赤にしてジタバタ暴れ始めたので撫で回して落ち着かせた。

 

──サイレンスズカsaid

 

走るのが好きだ、ターフを駆け抜ける。ひたすらにそれが好きだった…それ以外にはあまり興味がなくて、周りに合わせるのも苦手だった

 

──どうして周りの人に合わせなきゃいけないんだろう?

──どうして遅く走らないといけないの?

周りの人は足並みを揃えるためとか、協調性を身につけるため、そんなことを口々に言う。確かにそれもあるのかもしれない。だけど…だけど私にはそれがどうしても出来なかった。どう頑張ってもダメだった。

 

──だって気持ちよく走れないから。早く走れるのにそれを抑えなきゃいけない

──だって周りが煩わしいから、足が遅いくせに

今考えるともう少しどうにかならなかったかな、なんて思うけれど。多分無理だったと思う

 

そんなことをしていれば気がつくと周りに誰もいなくなっていた、ルームメイトすらいなくなっていたのにも気が付かなかったのは良くなかったってそのとき思った、そうした時ふとした感情が湧き上がってきた

 

──このままじゃいけない、なんとかしないと

──このままじゃ寂しい、一人ぼっちは嫌

そう思っていても気づいたときには手遅れだった、染み付いた習慣はトレはしないし。一度染み付いた感情はどうやっても取り払うことは出来ない、どれだけ頑張っても私にかてない。そんな奴と関わろうとすることが出来る人間性は私も含めて周りにいるわけがなかった。

 

模擬レースに出ても、走り込みをしていてもちっとも楽しくなかった。前はあんなに恋い焦がれていた先頭の景色すらも今は灰色がかって霞んだ景色になっていた

 

──それでも先頭の景色は譲らない、譲れない

──それでも先頭の景色は寂しい、誰かがいてほしい

我ながらおかしいと思う、嫌ならやめれば良いんだけどそれも出来ることが出来ないのが私なんだろうと思う。

 

外に出るのも億劫になり、段々と外に出ることも少なくなってきた。誰かが様子を見に来てくれてた気がするけど。それも覚えていない。

 

独りになって何時も行っていた河川敷に腰を掛けて時間をつぶす、学園に留まっていると誰かの笑い声が聞こえてきて辛くなるばかりだった。そんな時、不意に出会ったのがジャスタウェイさんだった

 

『こんな時間にどうしましたか?』

 

『………誰、でしょうか?独りに…なりたいんです』

貴女もすぐに居なくなるんでしょう

『そうでしたか』

 

声をかけてくれた貴女につっけどんな態度を取ってしまう自分がとてもとても嫌になってくる。そんなことを思っていると貴女が隣に腰掛けてきた。

 

それからしばらく無言の時間が続く。その時貴女は慰めも突き放すこともしてこなかった、ただただ隣に座って黙っている

 

さらに時が進んで星が見えるぐらいには互いに無言だった。その無言に私のほうが居心地が悪くなってきたのでその場を離れてしまう。

 

あの人、何がしたかったのかは分からないけれど…仕方ない

 

その次の日から河川敷にその時間になるとあの人が座っていた。それがわかると自然と足がそこに向いている私が居た

 

(今日も、居るかしら…)

(今日も寂しくないかしら…)

河川敷に行くといつもどおり彼女が居た、今日はスケッチブックを持っている。一定の距離を開けて今日も無言で過ごす…けど今日はスケッチブックを開く音と、鉛筆の音が聞こえてくる

 

その音が心地いいと思いつつ目を閉じる、眠気がゆっくり来て。そのまま眠りについてしまう

 

──温かい日差し、何もない草原自由に走り回っていい場所

──寒空の下、誰も居ない寂しい場所

昔はあったけど今はもうない物。あの頃はただただ走ってるだけで楽しかった──今はもう違う。走るのが苦しい、辛い

いつかまた、こんな風に自由に走り回れるかしら…そう思いながら思い切り走ってみる──そんな日は来ないと思いながら

───もう一度、何も考えずに走ってみようかな

──またそうなったらいいないいなって僕は思った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




(エアちゃんとのストーリーの関係性は今の所)無いです

後編は気が向いたときに編集して投げます


所で史実寄りの甘えん坊僕っ子スズカに需要はありますか?有るんだったら別個で書くかもしれないけどハーメルン作者は大体後回しにします


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