殺し屋殺しは英雄になる (アノニム)
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プロローグ

初投稿です。
駄文にお付き合い下さい。


「殺し屋『アノニム』、君に暗殺をお願いしたい」

 

おそらくはそれなりに高いであろうスーツを着込み、眼力だけで人を殺せそうな男、烏間(からすま) 惟臣(ただおみ)は目の前にいる少年に言う。

 

「帰れオッサン、てか何で極東の島国から俺の所まで来てんだよ」

 

ここは東欧のとある国、少年の疑問は当然だ。

眠たげな目を開かずに煙草の煙を吐き出しながら答える少年、殺し屋『アノニム』。

 

「君の事は殺し屋屋ロヴロから推薦を受けた。非常に将来有望な殺し屋だと聞いている」

 

「クソ……よりによって師匠(ハゲジジイ)かよ」

 

アノニムは眉を顰め師匠であるロヴロの顔を思い浮かべると、吐き気がしそうだと言わんばかりに舌を出した。

烏間はそんな少年を観察し、自身がロヴロより聞いた情報と頭の中で照らし合わせる。

 

(殺し屋『アノニム』———これまでに殺害した人数は21人、他の殺し屋とは違い、そのどれもが手練れの軍人、傭兵、さらには殺し屋も含まれていると言っていたな)

 

そんな彼に付けられた別名は『殺し屋殺し』

 

「で? どんなやつを殺せばいいんだよ、烏間1等陸佐」

 

煙草を素手で握り潰し、組んでいる足を組み替えながら問いかける。

 

「! 驚いたな、よく調べている…」

 

「当たり前だろ? なんならてめーの体の黒子の数まで知ってるぜ〜?」

 

「………」

 

「冗談だ、笑えよ烏間」

 

烏間の表情筋が少しだけ動いた事に満足すると、アノニムはコーヒーを啜る。

そして、烏間は依頼内容について話し始めた。

 

「暗殺対象はマッハ20で動く超生物だ」

 

「は?」

 

「君には中学生になってもらい、そこの生徒達と協力して奴を殺してもらう。報酬は100億だ」

 

「……あぁ?」

 

さすがのアノニムも聞き間違いだろうと思い聞き返すが、烏間は至って真面目な顔だった。

 

「マッハ20で動く? 何言ってんだお前」

 

「本当だ。奴の移動速度は時速2000kmを超える。つまり秒速にして約540mという事になる」

 

「ふっざけんじゃねぇぞ!! 人間じゃねェ!!」

 

あまりの驚きについ声が大きくなるアノニム。

 

「そう言うのもわかっている。 だが奴は現に存在しているんだ」

 

「信じられるか!」

 

「では実際に見てみるか? 今から丁度3分後にこの国に奴が来る予定になっている。

君にはそれを見て判断して欲しい」

 

烏間は懐から時計を取り出し時間を確認すると、再びアノニムを見る。

 

「どうする? 見に行くか? 行かないのか?」

 

「……チッ、わーったよ。見せてくれんだろ? その化け物とやらをよぉ」

 

アノニムは烏間の言葉に乗せられるようにして椅子から立ち上がると、そのまま部屋から出て行った。

 

「ふぅ、これでようやく次の段階に進む事ができる……しかし、殺し屋殺しか…彼なら奴を殺せるか…?」

 

一人残された烏間は呟くように言葉を漏らすと、自身もまた部屋を出て行く。

彼らが向かった先は、近くの公園である。

 

***

 

「まさか本当に来るなんてなァ〜」

 

烏間との約束通り、彼はマッハ20で移動する超生物の姿を見ていた。

 

「ヌルフフフフ、君がロヴロさんが言っていた殺し屋ですか」

 

「確かに……マッハ20ってのは嘘じゃないみたいだな。 俺の攻撃を初見で躱したのはあんたが初めてだよ」

 

そう言った彼の瞳は、目の前の異常な生物を観察するように…殺気を込めていた。

 

「とてもいい殺気です。 まあ、躱さなくても、そのナイフと銃じゃあ先生は傷ひとつ付きませんけどね」

 

「あ? そりゃあ一体どういう事だ?」

 

アノニムは怪訝な顔をしながら、烏間を睨む。

まさかいきなり攻撃をするとは思っていなかった烏丸は頭を抱えながら、懐から通常の物とは違うナイフと銃を取り出した。

 

「奴を殺すには、この防衛省が開発した『対先生用武器』じゃないと傷ひとつつかんぞ」

 

「へぇ〜、こんなもんがね〜? おい超生物、名前は?」

 

「殺せんせー…是非そう呼んでください。」

 

「マッハ20で殺せないから殺せんせーってか? ハッ…ダセェ名前だなぁ」

 

「にゅやっ!? 可愛い生徒が付けてくれた名前で先生も結構気に入ってるんですよ!?」

 

鼻で笑いニヤニヤと笑うアノニム。

自分も結構気に入っている名前を馬鹿にされ焦りながらも言葉を返す殺せんせー。

2人は意外と早く打ち解けた様に見える。

 

「ところで君のお名前は?」

 

「あ? 殺し屋に名乗らせるとか正気かよ」

 

「いいじゃないですか、減るものでもないんですし! それに転校してくるという事は君は私の生徒なんですから! 名前ぐらい知っておかないと!」

 

「はっ、俺は依頼を受けるとは一言も言ってねーよ」

 

「ええ!? で、でもせめて名前くらい…」

 

「……アノニムだ…それでいい」

 

馬鹿馬鹿しいと思いながらコードネームを名乗る。

 

「それは殺し屋としての名でしょう。あなたの名前を教えて下さい」

 

「ハッ…知るかよ。親の顔も知らねーってのに名前なんざ……裏の世界じゃあ珍しい事じゃねーだろ」

 

目を閉じながら、多少苛立ち気味に答える。

 

「はわわわわわ…ご、ごめんなさいアノニム君…!先生ったらつい……いや、だってそんな重い事情とは知らず、ただ恥ずかしがってるだけだと思って…」

 

「鬱陶しいわ!! 何で俺が悪いみたいになったんだ!!!」

 

殺せんせーは顔を青くしながら膝をついたと思ったら、急に三角座りのようにして、一本の触手で地面にのの字を書いていた。

 

その態度を見て更に苛立ちが増すアノニム。こんな奴が自分の攻撃をいとも簡単に躱したのが余計に苛立つのだ。

 

「……ッたく、俺はもう帰るぜ」

 

「にゅやっ!? ちょ、ちょっと待って下さい!! まだ来たばっかりじゃないですか!」

 

「うるっっっっっっっっっせェんだよ!!! テメーがマッハ20で動く所さえ見られればこっちは良かったんだ!!」

 

「でも、折角の機会ですし中学生になってみんなと勉強しましょうよ!」

 

アノニムの怒りにも怯まず、笑顔を浮かべながら言う殺せんせー。

 

「はぁ? 何言ってんだお前」

 

「私こう見えても、ちゃんと先生なんですよ? だから勉強教えますよ?」

 

「ふざけんな。殺し屋が学校なんか行ってたまるか」

 

呆れた様に言い放つアノニムだが、殺せんせーは諦めない。

 

「ほら!! 確か、ロヴロさんの紹介じゃないですか!いいんですかね〜彼の紹介を断っても」

 

「ちっ…人の弱みにつけ込みやがって」

 

「ヌルフフフフ、殺し屋殺しのアノニム君……これで君も私の生徒の仲間入りです」

 

「ふざけた顔しやがって…まあいい、依頼…受けてやるよ。ハゲジジイの紹介ってのは癪だがな。俺があんたを殺してやるよ」

 

「ヌルフフフ、殺せるといいですね〜卒業までに」

 

こうして、暗殺者アノニムはE組の生徒となる。

この時の彼は思いもしなかった。

自分の力を持ってしても殺せない超生物とE組の存在によって、自分が変わっていく事になるとは……。

 




キャラ掴むのって難しいですね、烏間先生どっか行っちゃってるし。
頑張って続けていきます。


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一時間目 転入前の時間

殺せんせーが犯罪をしてしまいます。
駄文にお付き合い下さい


アノニムの朝は早い、就寝時間は平均2時過ぎだというのに、毎朝4時に風呂場で目覚める。目覚めた後はランニング10kmを軽く流し、その額には汗が少し滲んでいる。そして、ランニングで少し熱くなった体を冷たいシャワーで冷ます、彼はこの時間が好きなのだ。

 

 アノニムは冷たいシャワーを浴びながら目を閉じ、少し前にあった超生物との出会いを思い返す。本気では無かった(・・・・・・・・)とはいえ、そこらの殺し屋や傭兵ならば一撃でやられているであろうというのに、いとも簡単にいなされた自分の攻撃。

 

 

「ハッ……面白えな」

 

思わず笑みを浮かべてしまう。しかしそれは嘲笑でも自嘲でもない、純粋に嬉しさからくるものだ。

 

(マッハ20、確かに速いが……本気でいけばマッハ20といえど、あれなら殺れるな……久しぶりに楽しくなりそうだ)

 

自らを殺せんせーと名乗ったふざけた顔をした超生物を思い浮かべながら、そう考えた。

彼はシャワーを止め、風呂から出る。そして、まだ新品であろうバスローブに身を包み、タオルで頭を拭き、シャワーの後に必ず飲むコーヒーでも淹れるかと考えながらリビングへ向かう。

 

しかし、家具はそれなりにあるが、まだ質素と言っても過言ではない、日本へ来て新しく借りた家のリビングには絶対にいるはずのないものがいた(・・・・・・・・・・・・)

 

「ヌルフフフフ、朝は意外と早いんですね〜アノニム君」

 

暗殺対象(ターゲット)がいた。

しかもコーヒーを淹れ、勝手に冷蔵庫から出したであろうスイーツを丁寧にテーブルに並べている。

あたかも自分の家の如く寛いでいるタコ、しかしながらここは——

 

 

 

「——-俺の家!!!俺のコーヒー!そしてそれは俺のケーキだ!!!」

 

 

 

「おや?これは失礼しました」

 

そう言いながら全く悪びれる様子もなく、皿に乗ったケーキを差し出してくる。どう見てもタコの方に1ホールがほぼ丸々残っているが……。

 

「おい……」

 

「さあ、遠慮なさらず先生が淹れたコーヒーと一緒に食べてください!」

 

「…………」

 

結局、勧められるがままに食べた。

コーヒーの味は中々良かった。

 

 

***

 

「で? 何しに来やがったタコ」

 

アノニムはケーキとコーヒーを堪能した後、追加でおかわりを淹れて貰ったコーヒーを飲みながら、自分の家に不法侵入した超生物を睨む。

 

「いやぁー実はね。ふぅー、今日から、ふぅー、転校、ふぅー」

 

「早く飲め!!」

 

 いったいいつまでコーヒーを冷まし続ける気だ。まだそれ一杯目で一口も飲んでないだろ…。そして砂糖を大量に入れていて、コーヒーの表面から砂糖の山が見える。そして、すっかり冷めたコーヒーだった物を飲み干すと殺せんせーは口を開く。

 

「アノニム君は今日が転入初日なので先生、張り切って迎えに来ちゃいました!」

 

「黙れ、不法侵入者」

 

タコに大ダメージが入ったようだ。

 

「にゅやっ!ひ、酷い!誤解ですよ!まるで先生を犯罪者みたいに言って!」

 

「誤解もロッカイもねーよ、クソタコ。大体どうやって入ったんだよ…」

 

「それはですねぇ〜、アノニム君が寝坊しないように起こすための寝起きドッキリの準備をしてここに向かっていたら、ランニングをしている君が見えてしまい。先生、アノニム君が家の扉を開けた瞬間に、隙間からスーッと…」

 

「余計タチが悪いわ!!!ゴキブリじゃねーか!!」

 

「そ、そんなことありませんよ!?ほら、こんなにも可愛らしいじゃないですか!!」

 

そう言うと殺せんせーは自分の触手の一本を伸ばして見せる。

ヌルヌルと動かすその姿にアノニムは不快度が増す。

 

「どこがだよ……うぜぇな、もう帰れよ」

 

「いいえ、帰りませんよ! 私と一緒に登校しましょうよ!ね!」

 

「ったく……心配しなくてもちゃんと時間通りに行くからさ、帰れ、マジで」

 

「むぅ、しょうがないですねぇ〜。E組の皆さんに紹介する前に、先生方と挨拶をと思ったんですが」

 

「あんたと前に会った烏間……後はあいつだろ、いらねーよ」

 

「そう言えばロヴロさんが師匠でしたね……という事は姉弟子になるんですか。あのおっp……姉弟子、いいですね〜ヌルフフフフ」

 

「うるせえエロタコ!!今すぐ帰らねーと、この手榴弾で粉々に殺すぞ!!!」

 

 

と、一悶着あったが殺せんせーは鼻歌を歌いながら帰って行った。

やっと一息つけると、ソファーに座り込んだアノニムは残りのコーヒーを飲み干した。

 

「クソタコめ、覚悟してろよ……それにしても、あいつが教師ねぇ…」

 

 

何か思う事があるのか、アノニムは殺せんせーが飛び去った窓の方に目を向ける。

 

「まぁ、いいか。さて………どう殺してやろう」

 

その目はとても冷たく、鋭く、そして闇を纏っていた。

 

 

***

 

「ねえ渚、聞いた? 新しい転校生の話!」

 

学校へ行く途中であろうか、制服を着た小柄な少女が、小動物のような少年に話しかける。

 

「茅野。うん、この時期に来るって事は——」

 

「——-殺し屋だよなー。変な奴じゃなきゃいいけどさ」

 

頭の後ろで手を組みながら渚の言葉に繋げる杉野。

これまでE組に転校してきた生徒2人の前例がある事から彼は微妙な顔をしていた。

 

「あはは……確かロヴロさんの紹介って聞いたけど」

 

「そうなの!? じゃあ、ビッチ先生も知ってるのかな?」

 

「どうだろーな? 俺は普通の人だったら、なんでもいいけど!」

 

「殺し屋の時点で普通の人では無いと思うんだけど……」

 

「それもそうだな!ははは!」

 

「そういえば、私こんな事も聞いたよ。その転校生の異名!」

 

「へえ、何て呼ばれてるんだ?」

 

渚と杉野は茅野の方へと視線を向け、彼女の言葉の続きを待つ。

 

 

 

「殺し屋殺し!」

 

彼女、茅野カエデはとてもいい笑顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 




暗殺教室って何回見返しても面白いんですよね。


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