怠惰ナル神々 (殻太刀)
しおりを挟む

邂逅

よかったら、読んでね


序章

昔々、太古の国々が統一されておらず、戦争を繰り返している時代。ある1柱(ひとり)がその地に降り立った。そしてその1柱は言った

「我は全知全能にして雷禍を纏う神、ゼウス!!!」

人々はゼウスを恐れ崇めた。時代と共に信仰は薄れ、いつしか史実は空想の物語となった。

その物語によると、ゼウスは人々に更なる知恵を授け、天に帰って行ったという。

物語の時代から数千年。再び狂った歯車が動き出す。時計は秒針を止め、砂は地に落ちきった。巡り廻りて円環の理へと………

 

バアル「朝ですよ!朝ですよご主人様っ!朝なんで起きて下さい!」

凛太「んんっおはよう、バアル」

春の暖かい陽光が部屋に差し込む。

バアル「おはようじゃありませんよ、もう8時ですよ、学校に遅刻しますよ?」

そういうとバアルは蜘蛛の手をブンブンと振る。

凛太「危ないだろ、学校に行く準備するから退いてくれ」

洗面所に行って顔を洗い、寝癖を直しながら歯磨きをする。その間ずっとバアルが話掛けてくる。

バアル「ご主人様って朝に弱いんですね、我が主ながら恥ずかしい」

凛太「しふぁはないふぁろ」

バアル「何って言ってるか解りませんよ」

そうこうしている内に身支度が終わる。

凛太「行くぞ、バアル」

そう言ってバアルに手を伸ばす。すると、バアルは手から肩に登っていく。

バアル「出発進行~♪」

俺は駐輪場に停めてある自転車で登校している。

バアル「風が気持ちいいですね~」

凛太「…そうだな」

息を切らせながら自転車をこぎ続ける。

学校に着く頃には既に遅刻していた。

 

一章、王の代償

「辻本、辻本凛太ァー、あいつ今日も遅刻か?」

先生らしき人物がそう呟いた瞬間に教室のドアが引きずる様な音を立てて開かれる。

「はぁはぁ、せ、セーフ」息を切らせながら教室に飛び込む。

先生「…残念だったな、ギリギリアウトだ」

凛太「そ、そんなぁ…」

先生「まぁ、いいから席に座れ」

促されるまま窓際の自分の椅子に座る。

凛太「なんでこんな事に…」

一人でそう溢す。

バアル「それは御主人様が朝に起きないからでしょ」

バアルが少し睨む様に見てくる。

はぁー。とため息を吐く。

この蜘蛛の胴体を持った生き物はバアル。

彼の有名な「ソロモン王」に使えた悪魔の一柱(ひとり)で元豊穣の神で今は地獄の第一の王と呼ばれている蜘蛛の胴体を持ち人に知恵を授けてくれるらしい。

 

 

俺とこいつの出会いは最悪だった。

下校している時に突然、目の前に現れた。そして

バアル『汝は選ばれた』蜘蛛の胴体を持ち家位の大きさの生き物が厳粛な声色で俺にそう言った。

凛太『…』俺は言葉を失った。数秒後に悲鳴を上げるのは当然だった。

~数分後~

バアル『あのー落ち着いて貰っていいですか?』

呆れた様に遠い目で俺を見る。

凛太『お前は誰だ?そもそも生き物なのか?俺になんの様だ?』

バアル『そんなに同時に質問されては困ります。』

バアル『一つずつ回答していきましょう。』

バアル『まず、私はバアルと申します。私は地獄の第一の王と呼ばれています。貴方は選ばれました。』

凛太『だいたい…解った。夢だな。それも悪い夢。』

バアル『夢じゃないですよ!頬つねりましょうか?』

凛太『別につねらなくていい。で、選ばれたって何に選ばれたの?俺は懸賞なんて出した覚えはないんだが?』

バアル『おおっと、そうでしたね、貴方はソロモン王に選ばれました。』

凛太『は?』

バアル『ですから、ソロモン王』

凛太『嘘つくならもうちょっとマシな嘘吐けよ、ソロモン王なんて架空の…』

バアル『今の人間は知らないのですね、やはり文献になると、どうしても架空の物語にされてしまう。しかし、ソロモン王は存在します。現に使役されていた私が目の前に居るでしょう』

凛太『え、着ぐるみじゃないの?』

バアル『失礼な!』

バアルは怒りながら蜘蛛の手をピョコピョコ動かす。

凛太『仮に選ばれたとしてもならないよ、面倒そうだし』

バアル『えぇ!?なれば72柱の悪魔を使役し放題なんですよ!?』

凛太『話長そうだし、もう帰るわ、じゃ』

そういって凛太は自転車を漕ぎ帰路に着いた。

 

バアル『で?ソロモン王になります?』

凛太『なんでお前、俺の肩に引っ付いてんだよ』

バアル『そりゃあ、将来的にご主人様になるんですから、とっとと覚悟を決めて王になっちゃってください☆』

凛太『なっちゃってください☆じゃねぇよ、そもそもなるにしてもどうやってなるんだよ』

バアル『それはこれを一度付けるだけです!』

そういうとバアルは俺に向かってシンプルなデザインで金の指輪を見せてくる。

凛太『なんだこりゃ?』

バアル『それはソロモンの金環(ゆびわ)です。それを指輪を指に嵌めてこう言って下さい。我はソロモン、悪魔を束ねる王なり、って言えば契約完了です』

凛太『ふーん。』

バアル『ちゃちゃっとなっちゃいましょう!ソロモン王に』

凛太『嫌だ、俺は平穏に暮らしたいから。』

バアル『えっ…ちょっ』

凛太『じゃあな、バアル、悪く思うなよ』

凛太は自転車を止めてバアルを掴み茂みに向かって投げた

バアル『ふぁぁぁー!?わぷっ!』 

凛太は全速力で自転車を漕いで自宅まで逃げた。

数日後

バアル『やっとみつけましたよ!この前は酷いことをしてくれましたね!』

凛太『げっ…』

バアル『げっ…じゃないですよ!あのあと大変だったんですよ!猫に追いかけ回されたりして!』

凛太『忙しいからまたな!』

バアル『せ、せめて指輪を手にとってそれから決めてくれませんか?もしそれでもダメなら諦めますから!』

凛太『仕方ないなぁ…どうせしないがもう付きまとわれないならそれに越したことはない。』

バアルからソロモンの金環を受けとる。

凛太『うーん、はい、返すよ。契約はしない』

バアル『貴方、指輪受けとりましたよね?それで契約は成立してます。』

凛太『は?ふざけんな!』

指輪を投げ捨てた。…が

投げたはずの指輪が戻ってきて俺の中指に嵌まる。外そうとしても外れない。そして、ソロモンの悪魔達の詳細な情報が流れ込んでくる。

バアル『これからよろしく御願いしますね。御主人様♪』

凛太『嫌だぁぁぁああー!!!』

 

と、こんな感じに俺は72柱の悪魔を束ねる王となった。

ちなみに一般的にバアル達の姿は人に見えないらしい。

今、バアルは俺の命令で体が蜘蛛位の大きさになっている。

席に座ると少しして授業が始まる。

俺が窓から外を見ていると隣の席に座っている親友の岡部大希が声を掛けてくる。

大希「お前、今日も遅刻したのか?」

凛太「仕方ないだろ、朝に弱いんだよ。」

大希「でも夏と秋は早いじゃん?」

凛太「春眠暁を覚えずって言うだろ?冬は寒いから布団から出たくない。」

大希「なるほどな」

軽い雑談を交わす。春の暖かい風が教室内に吹き込む。

凛太「ふぁぁ、眠っむ」

大希「おいおい、遅刻した上に授業中に寝るのは流石に不味いぞ?」

先生「おい、辻本と岡部、うるさいぞ静かにしろ!」

大希「す、すいません」

凛太「…Zzz」

先生「おい、辻本何寝てんだ」

先生が片手に持っていた教科書で軽く頭を叩く。ペシッとかそんな感じの擬音が似合う様に軽い一撃だった。

凛太「… Zzz」

先生「駄目だこりゃ、誰か辻本が起きたらノート見せてやってくれ。」

先生が諦めた様にため息を吐く。

 

 

そんなこんなで退屈な授業が終わり放課後になった。

バアル「御主人様~」

バアルが少し高いトーンで話掛けてくる。

凛太「何だよ?」

バアル「私が御主人様に使えてから何も起こってませんよね」

凛太「あぁ、そうだな。まぁ面倒なことがないならそれでいいじゃないか」

バアル「んー、本来こんな暇な事ないはずなんですが…」

凛太「あったとしても絶対、ロクなことに成らないだろ。余計な事に首を突っ込みたくないからな。」

バアルの溜め息が風に掻き消される。

風は止むことなく吹き荒れる。可笑しいと思いつつ帰路を歩き始める。すると、3mほど前だろうか、黒いローブの様な物を羽織った人が血塗れの人を抱えている

(な、なんだあいつ…殺人鬼か?)

黒ローブが腕を上げ何かを呟くと風が吹き荒れ、血塗れの人が見えなくなる。

黒ローブ「誰だ!!!」

凛太(血塗れの人は何処に…やべっ、見つかった)

黒ローブ「おい、パズズあいつは神持ちか?」

すると、ライオンの頭と腕、鷲の脚、背中に4枚の鳥の翼とサソリの尾を持った生き物が現れる。

パズズ「ああん?あぁそうだぜ、あいつは神持ちだ」

凛太(余計な事を…)

凛太「な、なぁ、俺に戦う気はない、だから戦闘は止めないか?」

黒ローブ「なんだよ腰抜けの甘ちゃんかよ?せっかく、人をぶっ殺せるのに、殺し合わない奴がいるかっての」

黒ローブが腕を振り下ろすと同時に突風が巻き起こる。重い衝撃と共に俺は軽々と吹き飛ばされる。

凛太(よし、逃げよう。)

即決だった。腰抜けと思われてもいい、腑抜けだと思われてもいい、今は逃げる事が最優先だった。

凛太「バアルっ!バアル!!いないのか!?」

先ほどの風で吹き飛ばされたのかバアルの姿も返事も聞こえない。

凛太「ソロモンの名において命ずる、悪魔侯爵アモン、その権能以て焼き穿て。」

焔の渦が出来上がり、一匹の赤銅色の狼が現れる。

アモン「主よ、ようやくバアル様以外にも召喚するつもりになられましたか!ソロモン王の悪魔でも最強と名高い戦闘能力の…」

凛太「肩書きとかいいから早く」

少し焦りながら急かす。

アモン「仰せの通りに<灼熱の災禍>」アモンの口から1mくらいの赤い紅い球体が吐き出される。黒ローブの発生させた突風とぶつかり視界が一気に燃え上がり朱に染まる。

凛太「ぐっ…」

熱風と衝撃波が体を襲う。

視界が元に戻ってくる。

黒ローブ「…なんだ、今のは?」

黒ローブのローブが焼け焦げ全身が見える様になった。

ローブ男「けっ、そいつがお前の従者か?俺のとは相性が悪りぃなぁ」

凛太「なぁ、戦うのを止めないか?」

ローブ男「…答えはノーだ!お前を殺すまで、やめねぇ。やれ、パズズ」

男の目は血走っておりやはり会話で説得できそうにない。

パズズ「<貫き穿つ風槍>」

パズズと呼ばれた生物が右指全てに風の槍を作りだす。

パズズ「死ね」

無機質な言葉と共に風の槍が解き放たれ俺を殺す為に殺到する。

凛太「アモン!」

アモン「解ってますよ<炎下の舞踏>」

シュゴッという空気が焼ける音と共に炎で出来た人の様なモノが出来る、俺を守る様に自ら風の槍に刺されにゆく。当然、爆発した様に燃え上がる。

ローブ男「チッ、キリがねぇ」

凛太「なぁ、お前そういや、血塗れの人を抱えていたよな、お前が殺したのか?」

戦闘から気を反らす様に冷や汗をかきながら問いかける。

ローブ男「まだ、殺してねぇよ」

ローブ男はケラケラと笑う。

ローブ男「見られたのは想定外だったが、次で殺す」

男とパズズから濃厚な殺気が漏れ出す。

凛太「ソロモンの名において命ずる、悪魔侯爵シャックスその権能以て全てを盗め」

薄い青色の鳥が、シルクハットと杖を持って現れる。

シャックス「私に盗めぬモノなどありません主よ、どうぞお使い下さい。」

凛太「シャックス、あの男とパズズの全感覚を盗め」

シャックス「はい、仰せの通りに」

シャックスが間髪開けずに飛び出していく。

ローブ男「どうした?あの狼の姿が見えないが、諦めて死ぬのか?精々苦しまなくていいようにしてやるよ。さぁ、パズズ殺…?あがっ目が見えねぇ、音も聞こえねぇ、どこだ?どこだっ!?俺は何処にいるんだ!?」

男が全感覚を奪われ今、自身がどうなっているか解らずに喚き散らす。パズズも同様に色んな方向に風の槍を撃ち放すが全感覚が盗まれているので風の槍は壁や地面に当たると霧散していった。

凛太「シャックス、逃げるぞ!」

シャックスは頷きその場を後にする。

走って逃げながらシャックスに尋ねる。

凛太「シャックス、全感覚を盗んで要られる時間はどのくらいなんだ?」

シャックス「凡そ1分程度です。但し一つの感覚のみなら10分以上持つでしょう。」

凛太「そうか、また頼む」

シャックス「はい、では」

シャックスの姿が金の粒子となり消えていく。

凛太「そういやバアルはどうしたんだ?」

家についてから考えるか。

~数分後~

凛太「ソロモンの名において命ずる、王バアルよその権能以て我に知恵を授けよ。」

蜘蛛の胴体を持つ見知った悪魔を呼び出す。

バアル「ご主人様♪たまには召還されるのもいいですね♪」

凛太「おい、たまには召還されるのもいいですね♪じゃない。お前召還するまで何処に居てた?」

バアル「突然の突風に吹き飛ばされて木に引っ掛かってました☆でも、召還してくれるって信じてましたよ?」

凛太「はぁ…なんで呼び出したんだろ」

割りと本気で後悔しつつ、バアルに問いかける。

凛太「なぁ、バアル。神持ち同士の戦闘は珍しいモノなのか?」

バアル「ん~?そんなことは有りませんよ?」

凛太「そ、そうなのか?」

バアル「今も何処かで起こってると思いますよ、ホラ、ニュース見てくださいよ。」

凛太「失踪事件…もしかして黒いローブを羽織ってた奴か?」

バアル「かもしれませんねぇ、さぁ!ご主人様っ解決しましょう!」バアルがここぞとばかりにビシッと蜘蛛の指?を俺に向ける。

凛太「…そうだな、解決するか。面倒だが」

バアル「ふぁっ!?ご主人様どうしたんですか!いつも乗り気じゃないのに!」

凛太「なんだよ、悪いか?一度誘拐現場に居合わせたのに、助けないのは人としてどうかとも思うし、それにこれで解決出来たら誘拐された人達も見つかるだろ?」

バアル「もぉ~素直じゃないですねぇご主人様は♪」

バアルが嬉しそうに凛太の肩を叩く。

凛太「うるせぇ」

バアルの返しに素っ気なく返す。

バアル「で、どうやって見つけて殺すんですか?」

凛太「殺さない、無力化する。」

バアル「えー血が見れると思ったのになぁ…」

凛太「しょんぼりしても駄目だ。相手も人なんだから」

バアル「作戦とかあるんですか?」

殺さないと聞いて少しつまらなさそうに聞かれる。

凛太「ある。まず、あいつは俺の制服から高校の場所を知っただろうし明日にでも攻めてくるだろう、それを返り討ちにする。」

バアル「成る程、でも来なかったらどうするんですか?」

凛太「簡単だ、ヴィネの権能(ちから)を借りるんだよ。」

バアル「それなら行けますね」

それから数十分作戦を練り、明日に備えた。

バアル「ご主人様、明日は早く起きて下さいね。」

凛太「へいへい」

そうして少し早めに就寝した。




まだまだへたくそな文ですが、ここまで読んでいただきありがとうございます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。