ONE PIECEの世界に転生した一般タコ魚人 (タマネギ日光浴)
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原作開始39年前、転生する

読み専でしたが、一歩踏み出してみることにしました。


ONE PIECEの世界に転生した。

 

その事実に気づいたのは弟が生まれてからだ。

 

弟の名前ははっちゃん。タコの魚人だ。

 

そしてこのおれ、なっちゃんもタコの魚人なのである。

 

魚人や人魚の子には珍しいことにおれと弟は瓜二つだった。

普通は例えばタコの魚人の親からサメの人魚が生まれたり等と、血が繋がっていても容姿は変わるらしいので、親も驚いていた。

 

ただ、弟が将来的に明るい陽キャになるのに対し、おれは3才児にして既に死んだ魚の目をしているとよく言われるような陰キャなタコだが。

 

とにかく、今までは異世界の化け物一族にでも転生してしまったのかと思っていたが、産まれた弟もタコの魚人で、はっちゃんという名前、そして住んでいる場所が魚人島とくれば、これはONE PIECEの世界に違いないだろう。

 

やったぜ!

 

せっかくONE PIECEの世界に来たのだから冒険がしたい。

聖地巡礼ともいう。

だが、そのためには力がいるだろう。

その点おれは運がいい。

魚人は人間より10倍の筋力がある。

そして、おれは腕が6本もあるタコの魚人だ。

原作のはっちゃんのように六刀流ができるだろう。

つまり剣が1本の普通の人間の剣士より60倍強いということだ!

 

勝ったな(確信)。

 

とりあえず、筋トレと、そこら辺のサンゴを折って木刀に見立てて素振りでもするか。

 

 

 

 

月日が経つのは早いものでおれは8才になった。

はっちゃんは5才だ。

おれたち兄弟は同じ容姿(目付き以外)をしているからか、とても仲がいい。

サンゴ刀をぶんぶん振り回すおれの後ろをとことこついてくるはっちゃんが可愛くてしょうがない。

6本の腕のアドバンテージを活かしたなでなでを極めたおれは、はっちゃんをネコ可愛がりならぬタコ可愛がりしている。

 

転生当初は6本の腕という感覚に馴れずもて余していた腕も、素振りとなでなでにより大分スムーズに動かせるようになった。

そろそろより強くなるために剣術でも習いたいが、中々そんな機会というか、余裕がない。

 

それというのも両親が人間の奴隷狩りにあい、生き別れてしまったからだ。

両親が逃がしてくれたからおれたち兄弟は助かったが、孤児になってしまったので治安最悪の魚人街に住むしかなくなってしまったのだ。

当然剣術の道場になんて通ってる場合じゃない。

なんとか弟を食わせてやらなければならないのだ。

おれは6本の腕をフル活用して雑用や肉体労働を行い少ないお金を稼いでいた。

そこでイキったサメの小僧(同い年)などの孤児仲間達と身を寄せあい、なんとか飢えをしのぎながら生きていた。

 

 

 

 

そうして必死に生活していたら2年が経過していた。

 

そんな日々の中でも暇があれば修行を欠かさなかったおれは、子供ながらにして大人顔負けの戦闘能力を手にしていた。

伊達に7年間サンゴ刀をぶんぶん振り回していたわけではないのだ。

とはいえ訓練された兵士には勝てないが。

 

他にも筋トレが効果的だったように思える。

原作のゾロが数トンの重りで筋トレしていたシーンが印象に残っていたので、とにかく重そうな物を持ち上げて筋トレしていた。

 

このONE PIECE世界では空気にプロテインでも入っているのか(ここは海中だが)、鍛えれば鍛えるだけ筋力を手に入れられた。

 

そうして筋力がつくと、子供の割に力持ちとしてちょっとだけ有名になり、重い物を運ぶ割りのいい仕事にありつけるようになった。身体も鍛えられて一石二鳥だ。

 

だが、有名になるのも良いことばかりではなく、たまにゴロツキ共から金目当てで襲われることもあった。

 

まあ、そんな時は返り討ちにして逆に財布をいただけば臨時収入ゲットだし、実戦経験もできるしでこれまた一石二鳥だったが。

 

ただ、そうしている内に生意気だといって不良どもが絡んでくるようになったのはダルいけどね。

 

一匹倒したら名前が売れてどんどん新たな不良が絡みにくる。

 

ヤンキー漫画かよ!

やめてくれよおれは冒険がしたくて鍛えてるだけなのに。

 

最終的には、頭角を現していたアホサメとの決闘にも勝利したことで、興味が湧いたのか出張ってきた元締めのジンベエの兄貴とも手合わせすることになった。

勝てはしなかったが、6本の腕を巧みに使ったサンゴ六刀流により善戦することができ、ジンベエの兄貴に気に入れられ、この騒動は一段落した。

 

なんやかんや戦いの経験を積めたし、周りからも一目置かれ、今後の課題も見えてきたので悪くない結果になったと思う。

 

そもそも六刀流のメリットは手数の多さだ。

しかしデメリットも多い。

 

例えば二刀流の話だが、片手の筋力じゃあ相手の一撃に押し負けたり、剣を振るう速度が両手の剣に比べてどうしても落ちたりする。

かの宮本武蔵も二刀流を用いる理由に、「太刀を片手にて取りならはせん為なり」と書き残している。

つまり二天一流は、二刀を用いて戦う技術そのものを追求しているのではなく、片手で刀を扱う訓練のために二刀を用いるのだということだ。

 

おれの場合は人間の10倍の筋力をもつ魚人ということで、片手でも剣を扱えるとは思う(いまだサンゴ刀しか握ったことはないが)。

しかし、同じ魚人で正式な魚人空手の道場で学んでいるジンベエ兄貴の一撃を防ぐことはできなかった。

 

ここから導き出されるおれの課題とは、すばり筋肉だ。

 

筋肉。やはりこれが全てを解決する。

 

現実だったら筋力に限界があるが、ここはONE PIECE世界。

どこまでも鍛えられるはずだ。

 

今後は6本の腕それぞれの筋トレを重視し、かつ素早く片手で剣を振るえるようになる必要がある。

 

将来的にはジンベエ兄貴の正拳を片手で受け止められるのが理想だ。

 

そうすることができたら、六刀流の防御を破れるものはそうそういなくなるだろう。

 

 

 

 

この頃になると、生活にも多少の余裕ができて、あまり構ってやれなかったはっちゃんと遊びに出かける余裕もできた。

そうした交流の中で、将来の夢を聞いたら、たこやき屋さんになることらしい。

 

いい夢だ。

 

しかも、その夢のために料理を学びたいと言ってきた。

どうやらおれがこの世界を冒険したいという夢のためにずっと努力をしている姿をみて、自分も何かをやりたいと感じたそうだ。

 

ええ子や…

 

そうと聞けば、おれはこの2年まじめに働いて得た信頼と伝手を使って、美味しい食事処の厨房の仕事を手に入れた。

 

悪い遊びばかりしているアホサメと違っておれはこの辺では信頼されているのだ。

 

とはいえ、まだ遊び盛りの7才のはっちゃんに働かせるのはおれが嫌だ。

そこでおれが厨房で働き、得た料理の知識をはっちゃんに伝授するという方向でいくことにした。

 

前世では料理なんてしたことはなかったが、思いどおりに動かせるようになった6本の腕によって、すぐさま即戦力となった。

 

さすが6本腕!

 

もちろん、この仕事を紹介してくれたタイガー大兄貴には感謝だな。

 

ありがたいぜ。

 

 

 

 

そうこうしていたら1年が過ぎた。

この1年真面目に働いたおれは店主夫妻から信頼を得た。

そのためご厚意で、直接はっちゃんに料理の指導をしてくれるようになった。

ついでにはっちゃんも厨房に出るようになった。

 

本当は働かせるつもりはなかったのだが、はっちゃんは才能があったようで、おれより料理の覚えがよく、実践で腕を磨きたいとずーっと言われて、ついに説得されてしまったのだ。

 

いつの間にかあんなに頑固になって…

誰に似たんだか。

 

店主夫妻は自分達の子供が中々出来ないようで、はっちゃんを実の子のように可愛がってくれているのが救いか。

 

それに、はっちゃんの友達らが食事に来るようになって店は賑やかになった。

 

これはおれにはできなかったことだ(白目)

 

 

 

 

さて、半年が経ちはっちゃんが仕事にも慣れてきた頃、2人で久しぶりに遊びに出掛けた。

この半年は、はっちゃんは同じ年頃の友達と遊びにいく暇もなくよく頑張っていた。

そのご褒美だ。

 

美味しいものを食べたり、そうすると金を持ってるガキ共だと目をつけて襲ってきたゴロツキを返り討ちにしたり、目一杯泳いで競争したり、楽しい1日を過ごした。

 

そうしてそろそろ帰ろうかという時に、はっちゃんが溺れている人を見つけた。

正直両親のこともあり、若干人間不信になっていたおれだが、流石に死にそうな人を見捨てるわけにもいかない。

はっちゃんの教育にも悪いので、さくっと泳いで助けることにした。

 

こんな時、6本の腕は非常に便利だ。

溺れて暴れる人をしっかりホールドできるし、その上で泳ぐことにも腕を回せる。

 

6本腕最強!

 

さて、助かった安心からか意識を失ってしまったこの人を拠点まで運んで介抱するか。

 

 

 

 

………目を覚ました男の自己紹介を聞いてビックリ、なんと未来の海賊王の右腕、シルバーズ・レイリーだった!

うおおおお!まじか!本物のレイリー!?やっば♥️

 

大・興・奮!

 

 

さて、見苦しい所を見せたが、仕方がない。

だって若かりし頃のレイリーだもの。

カッコよすぎるんじゃあ~。

 

閑話休題。

 

レイリーが命の恩人だとおれたち兄弟に非常に感謝している。

 

何かしてほしいことはないかと聞かれた。

 

………これってめちゃくちゃチャンスなのでは?

もしかして海賊王の船に乗れる…?

 

しかし、そうするとまだ8才のはっちゃんは厳しい航海についてこれないだろうから、置いていくことになる。

流石にそれはできない。

悩んでいると、はっちゃんが発破をかけてくれた。

 

なっちゃんはずっといつか冒険に出たいと言っていただろうと。

そのいつかって今さ!と。

いままでは自分の夢に協力してくれたから今度は自分が応援する番だと。

 

おれは泣いた。

 

両親がいなくなってからずっと張りつめていたものが一気に決壊したようだった。

 

はっちゃんも泣いていた。

 

2人で抱き合っておんおん泣いた。

 

 

スッキリしたおれは黙って見守ってくれていたレイリーに弟子入りを志願した。

 

そして船に乗せてくれと。

 

レイリーはただ一言、覚悟はあるのかと問うた。

 

おれが応、とこたえると、にわかにレイリーから凄まじいプレッシャーが放たれた。

ジンベエ兄貴の正拳にも勝るとも劣らないその衝撃に、おれはついガクッと膝をついてしまったが、負けるもんかと必死に足に力を込めた。

 

そうしてどのくらい時間が経っただろうか。

いや、おそらく数秒の出来事だったに違いない。

 

レイリーからの圧力がふっと消えると、ニッコリ笑ってこう言った。

 

ロジャー海賊団に歓迎する、と。

 

おれは歓喜した。

 

 

 

その後、レイリー、いや師匠を探しにきたロジャー海賊団に紹介してもらった。

 

ロジャー船長は師匠の命の恩人だということで賛成してくれたし、お祝いだといって宴を始めた。

 

そこで先輩方に挨拶周りをしにいこうとしたが、巨人やそもそも人間自体こんなにたくさん見たのは今世ではじめてであり、少し人見知りしていた。

 

一方で、はっちゃんは持ち前の陽キャっぷりを発揮しており、人間達にも臆せず武勇伝を聞き回って楽しそうにしていた。

 

さっきも思ったが、あいつは成長したな。

 

おれも負けていられない。

 

改めて先輩達との親交を深めに行った。

 

魚人の先輩がいて親しく話してくれたり、赤鼻に絡まれたり(どうやら年齢が下でも船員としてはキャリアが長いから敬えとのこと)、宴会中なのにロジャー船長に決闘を挑んだおれより少し年上の少年がいたり(無論返り討ちにあっていたが、今まで見たことないレベルの戦いの応酬で見応えがあった)、ワイワイ楽しく過ごした。

 

 

そんな楽しい一時もすぐに終わり、数日滞在したロジャー海賊団が補給を済ませたら、ついに旅立ちの時がきた。

 

その間、おれは職場へ急に辞める不義理を詫びに行き、そこで店主夫妻に、はっちゃんのことを任せたり(店主夫妻は跡継ぎができたとして喜んで引き受けてくれた)、タイガーの大兄貴やジンベエの兄貴に挨拶に行き、はっちゃんのことを気にかけてやってくれるよう頼んだ。

 

ついでにアホサメがはっちゃんを悪い道に連れていかないように、きっちりぼこぼこにして上下関係をはっきりさせておいた。

 

これでも原作のようにはっちゃんに手を出すようならタダじゃおかねぇ。

 

あいつはおれの真似をして素振りこそしていたものの、本来戦闘する気性じゃないし、海賊だって似合わない。

今や立派な夢があるのだから、アホサメに付き合ってやる暇なんてないのだ。

 

 

そうして最後に、はっちゃんと次に合うときはお互いの夢を叶えた時だと約束して、おれは旅立った。

 

離れていく魚人島を見ながらおれは感傷に浸っていた。

 

いろいろなことがあった。

 

苦しいことや辛いことも多かったけど、やっぱりここはおれの故郷だ。

 

色とりどりの魚やサンゴ、そして魚人に人魚たち。

 

なにより6本の手をはち切れんばかりに振っているはっちゃん。

 

この素敵な光景を目に焼き付け、おれは今日冒険に巣立つのだ。

 

 

 

 

 

꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂

 

なっちゃん:6本腕を信仰しているアホの子。必要最低限しか喋らない寡黙キャラとして周りから認識されているが、本当はただの人見知りオタク。ただ冒険はしたいのでアウトドア系陰キャである。実は原作知識が魚人島編までしかないので未知のロジャー海賊団の冒険にわくわくしている。死んだ魚のような目は少しマシになったが、まだ目付きは悪い。

 

はっちゃん:立派なたこやき王におれはなる!

 

店主夫妻:寡黙だが仕事に誠実ななっちゃんのことも我が子のように思っている。彼が心配しないように、はっちゃんの事は任せておけと胸を張って笑顔で見送った。

 

フィッシャー・タイガー:義理固い弟分だと思っている。会うたびに食事屋の仕事を紹介したことを感謝してくるので、実は何度も店に足を運んでいる。

 

ジンベエ:義理固い弟分だと思っている。なっちゃんの六刀流の防御力に苦戦したが、土壇場で成長し正拳で打ち破る。とはいえ、武術を学ぶものとして、素振りと喧嘩だけの我流剣術を力任せでしか突破できなかったことを反省し、より修行に明け暮れるようになる。

 

アーロン:同じ年齢なのでライバル視している。いつかやり返すためにダサいと思っていた修行を始めた。

 

シルバーズ・レイリー:手加減したとはいえ覇王色の覇気に耐えたので見所があると感じている。

 

ゴール・D・ロジャー:レイリーの命を助けてくれたことに感謝しているが、それよりも冒険をしたいという目を気に入った。常人には腐った目にしか見えないのに流石は未来の海賊王である。




シルバーズ・レイリーがはっちゃんに助けられたのが20年以上前と言っていたので、本作のように28年前でもセーフだと独自解釈しています。


それと本作は、本文最後に꧁⍤⃝꧂で区切って各キャラについての補足情報などを載せるスタイルです。ご留意ください。

꧁⍤⃝꧂:作者お気に入りの顔文字。なお、脚が10本だからタコじゃないじゃなイカ!という回答に対する答えは持ち合わせていない。好きだから無理やり使っているだけである(開き直り)。


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原作開始28年前(11才)、冒険のはじまり

いざ自分で文章を書いてみると、毎日投稿している方々の凄さを実感します。
ましてや、尾田先生はなんて凄まじいのでしょう。
皆さん尊敬します。


晴れてロジャー海賊団の一員となったおれだが、扱いとしては船員見習いという一番の下っ端だ。

 

大海原の航海にはたくさんの仕事や雑務がある。

 

例えば舵輪を回して操船や海図を使って針路決定。

これはギャバン先輩がよくやっている。

 

おれは魚人だから波の流れには敏感だし、前世でも今世でも初めての航海なので、船を動かすこと自体に興味がある。

 

まだまだ新入りだからここの仕事には関われないがいつか教えを乞いたいものだ。

 

 

他には360度周囲の見張り。

これは大事な役割なので皆でローテーションを組んでやっている。

 

ただ夜間の担当になって1人で不寝番をする時はちょっと退屈だ。

 

とはいえ、おれは新入りだから他の仲間と一緒に組まされることが多く、いろんな武勇伝や冒険譚を聞いたり、仕事や修行のアドバイスをもらえる貴重な時間でもあった。

 

 

他には毎時ごとの気象観測だ。

 

とはいえ、新世界の海は常識が通用しない。

晴れたと思ったらすぐ嵐になって、かと思えば雪が降り、しまいには雷が鳴り響く。

 

それでもしっかり目的地に向かって進むことができるのは流石海賊王のクルーだが、それにはこうしたこまめな気象観測が欠かせないようだ。

 

とりあえず、気象の判断や予測は経験豊富な船員に任せるとして、おれは雑用係として気象を紙に記録していた。

 

紙を余分にもらえたので、ついでに航海に関して学んだことやその日に起きたことを書いた航海日誌もつくっている。

 

せっかくだから、船員たちにサインをもらっておこうかな。

 

 

ここまではあまり役に立っていないおれだが、明確に貢献できる仕事がある。

 

それは船内全員分の食事の調理だ。

 

もちろん正式なシェフはいるので調理補助なのだが、持ち前の6本腕と1年半厨房で鍛えた腕前を存分に発揮し、即戦力として歓迎された。

 

というか40人くらいいる食事をシェフ1人で作ってたんか…

 

それも原作のサンジみたいに食料の管理や献立もこなしているようだ。

 

食材の準備から下ごしらえ、配膳、片付けから皿洗いまで、揺れる船の厨房での作業は意外と重労働だ。

 

そこにクルーの栄養管理、食材の仕入れ、食料消費スケジュールの管理が加わる。

 

しかも船員はロジャー船長を含め大食漢ばかりだ。

 

これはキツイ。

 

まあ今は大海賊時代も始まっていなくて海賊になる人材も限られているし、そもそも海賊になるような人に料理の心得があるやつは中々いないようだ。

 

そんな中おれの存在はシェフにとても喜ばれた。

 

 

さて、栄養管理といえば、史実では大航海時代にはビタミン不足が深刻だったとテレビで見た覚えがある。

ビタミンが不足すると色んな病気を引き起こすので、特に壊血病といった難病に悩まされていたらしい。

 

そんな中おれたちの食糧事情だが、たどり着いた島で補給をしても、食糧の内訳は、塩漬けの肉、塩漬けの魚、ビスケット、乾燥した豆、チーズ、たまねぎ、酒、酢、水などが主なのだが、航海に出ると新鮮な野菜、果物の類はわずか数日で消費してしまうし、後は保存のきく塩づけの肉類、ビスケットだけに頼るしかなくなってくる。

 

原作でルフィがよくつまみ食いをしていたが、あれはわりとシャレにならないのだ。

サンジが鍵付き冷蔵庫を待望していたのも納得である。

 

 

そこで釣りなどでいかに魚を現地調達できるかが大事になってくるわけだが、そこには魚人であるサンベル先輩の活躍があった。

 

サンベル先輩は一度海に潜ると三叉槍を自在に操り海王類さえ仕留めてくる。

おれも魚人ということで手伝いに行くのだが、先輩の泳ぐスピードが早すぎてついていくのがやっとだ。

食べられる海の幸の見分け方も素早く的確で、勉強になることばかりだ。

 

先輩からしても、仕留めた獲物や収穫した貝や海藻などを運ぶ荷物持ちができたことで、より多くの食料を獲ってこれると喜んでいた。

 

魚人は1船に1人必要だな(確信)。

 

 

他の雑用としては甲板みがきなど清掃がある。

 

これも大事なことだ。

 

海の上では病気一つが命取り、狭い船の中で感染症が蔓延すれば航海が困難になる。

 

実際原作のブルックの海賊団はそれで大打撃を受けた。

 

清潔を保つ習慣を身に付けるのは良いことだ。

 

意外だったのはヤシの実(っぽい果実)を半分に割ってタワシの代わりにすることだ。

断面がごわごわして確かにタワシのようだ。

 

すげぇな、ヤシの実(っぽい果実)。

 

 

最後に船内巡検と人員確認もおれの仕事だ。

 

といってもこれはおれが勝手に始めたことだ。

 

暇があれば船内を巡って何か手伝う事はないかとクルー達と交流することにしたのだ。

 

これははっちゃんを見習って積極的に人と関わろうと決めたからだ。

 

ロジャー海賊団の仲間達はみんな気のいい人達で、いろんな人と仲良くできたし顔を知ってもらうことができた。

中には馴れ合わないといった態度の少年などの例外もいたが。

 

そうした中で自然と船内の情報が集まるようになって、それがいち早く船の故障に気づいたり、海に落ちた船員を助けることにも繋がった。

 

特に、海軍や海賊相手に海上戦をした後の迅速な人数確認は大事だった。

 

人知れず海に落とされて溺れているクルーがいれば、いの一番におれが助けた。

 

泳ぎではサンベル先輩の方が上だが、先輩は主戦力の1人なので手が空いてないことが多い。

その点おれは6本も手があるので、問題ない。

特に能力者からは溺れた際に頼りにされていた。

 

 

 

 

そうしてロジャー海賊団に馴染んでいる内に1年が経過した。

 

この1年は初めての経験だらけで必死だったがとても充実していた。

 

雷の降り注ぐ島、見たことのない巨大なジャングル、前世でもみないような不思議な動植物。

 

そこはまさに見たことのない世界だった。

感じたことのない暑さ。寒さ。

珍妙な植物。人間。

そしてロジャー船長をはじめとしたクルーの圧倒的な強さ。

おれの知らない世界が広がっていた。

 

 

 

さて、昔からの夢だった冒険ができてたいへん満足なおれではあるが、ひとつだけ不満もあった。

 

それは師匠があまり修行をみてくれないことだ。

 

もちろん師匠は副船長なので多忙だから仕方ないことはわかっている。

自由奔放なロジャー船長に加えて個性的なクルーのお守りをするのもたいへんそうだ。

 

だが、まがりなりにも弟子入りしたのにこの1年で教わったのは身体の鍛え方だけだ。

 

それはそれで以前より効果的に筋力をつけれるようになったのでありがたいが、覇気はまだ教えてもらっていない。

 

しょうがないのでこの1年は身体造りに精を出していた。

 

 

そんなある日、いつも通り筋トレをしていると師匠が現れてこう言った。

 

そろそろ本格的な修行を行う、と。

 

どうやら船に乗ったときは11才の子供でまだ身体が出来上がっていなかったから、キツイ修行は避けていたようだ。

 

本当はもう数年は身体造りをさせる予定だったが、魚人島時代よりも肉や大型魚類など栄養のあるものをたくさん食べられたことや、師匠特製の筋トレメニューを割り増しで行っていたことなどが功を奏し、予想以上に身体が仕上がってきたとのこと。

 

流石師匠!慧眼だぜ(熱い手のひら×6返し)

 

 

なんにせよ、これでさらに強くなれるのは嬉しい。

 

冒険は楽しいが、見習いなので戦闘では後ろで待機していたり、初上陸の島でもすぐに探検できるのは一定の実力がある人達だけだったりと、強さがないと自由に行動するのも難しいのだ。

 

 

そんなわけで師匠の手が空けばちょくちょく修行をつけてもらえるようになった。

 

その内容はスパルタで、実戦形式の組み手では何度もボコボコにされた。

 

覇気は使っていないようだが、おれの6本腕の攻めは全ていなされ、逆に鉄壁と自負していた守りも簡単に突破された。

 

これがジンベエ兄貴のようにパワーで押されたならば、より身体を鍛えるだけで済むのだが、師匠は剣の技術だけでおれの六刀流を攻略したのだ。

 

師匠曰く、おれの剣は剛剣というには力任せが過ぎるとのこと。

 

6本も腕があるから途切れない攻めや固い守りを無理やり実現出来ているだけで、まだまだ動きに無駄や粗が多く、格上相手には通用しないそうだ。

 

単純な筋力でいえば、9年以上鍛えた魚人のおれは中々のレベルだから、ここからは技量を伸ばすべきだと言われた。

 

そのパワーと手数に技量が加われば鬼に金棒だと。

 

おれが不甲斐ないせいで、6本腕のポテンシャルを発揮できないのは情けない。

 

師匠の修行方法はおれの六刀流に隙があればすぐさま木刀を打ち込んでくるというもので、めちゃくちゃ痛いし骨折はおろか重傷を負うこともあったが、なんとか食らいついていった。

 

 

師匠の他に参考にさせてもらったのはギャバン先輩だ。

 

先輩は斧を用いた二刀流で、とても強い。

その攻めの動きや両腕を使う際の身体の動かし方はとても参考になる。

 

師匠が試合の場を用意してくれたので胸を借りるつもりで挑んだが、案の定全く歯が立たなかった。

 

それでも二刀流のコツを教えてもらったり、いろいろ目にかけてもらえるようになったからありがたい。

 

 

 

 

そしてまた1年が過ぎ、13才になった。

 

この1年で成長したおれは戦闘でも役に立てるようになった。

 

まず六刀流は攻防ともに隙がなくなり、一対一では無類の強さを発揮した。

筋トレも欠かさなかったからか、よりガタイもよくなり、パワーが増した。

 

おかげで海軍本部の中佐を一騎打ちで倒すことができたし、懸賞金数百万ベリー程度の賞金首なら複数相手でも倒せた。

大佐や数千万ベリークラスの相手は荷が重かったが、師匠達にボコボコにされ続けたことで一番鍛えられた六刀流の防御力で時間を稼ぐことくらいはできた。

 

特に海戦ではサンベル先輩と一緒に海を泳いで敵船に先駆けたり、船底に穴を空けたりと活躍できた。

 

船大工とも仲良くなっていたおれは船の構造にもある程度詳しくなっており、敵船の急所を狙うことができるようになったのだ。

 

もちろん、溺れた味方がいたらすぐさま助けたし、逆に海に放り出された敵を捕まえて捕虜にすることもあった。

 

 

 

それに戦闘以外の仕事でもおれは成長した。

 

厨房では、調理補助から副料理長になった(とはいえ、もとからシェフと二人だけだが)。

食材の下ごしらえだけでなく調理も少しずつ任せてもらえるようになったのだ。

特にサンベル先輩と一緒に狩ってきた魚類の解体と調理には磨きがかかった。

 

他にもギャバン先輩と仲良くなったことで、海図や操舵のことも教わるようになった。

 

また、時にはケンカしたクルーを仲裁したり、6本腕の素晴らしさを仲間に説いたり、赤鼻先輩の宝さがしに付き合ったりした(なお成功することはなかった)。

 

 

 

そうしておれは順風満帆な冒険生活を過ごしていたが、世の中全てがうまくいくわけではない。

 

ロジャー船長が不治の病にかかってしまったのだ。

 

 

 

 

 

꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂

 

なっちゃん:昔からの夢だった冒険にテンションMAX。こいつは普段は大人しいのに修学旅行だけやたら積極性を発揮するタイプの陰キャである。周囲からは目付きは悪いが真面目な働き者だと好意的に思われるくらいにはコミュ力が向上した。

 

なっちゃんの航海日誌:将来的にお宝間違いなしのブツ。世界初の世界一周を達成する海賊団の航海記録に加え、なっちゃんが学んだ様々なノウハウや練習で書いたちょっとした海図も載っている。なお本人はその価値を理解していない。

 

シルバーズ・レイリー:ぶっちゃけまだ子供なのであまり真剣に鍛えるつもりはなかった。しかし、1年で新世界の厳しい航海に慣れ、クルー達との仲も良好で、仕事もよくこなすことに驚いた。気を利かせたクルー達(魚人とかシェフとか)に裏で頼まれたこともあって本格的に鍛えることにした。技量を身に付けさせると共に身体をいじめ抜くことで、根性や気力も育てようとしている。どれも覇気につながる一歩である。なっちゃんは気づいていないが。なお、教えたことを愚直に守り吸収していくなっちゃんへの修行が思いの外楽しく、つい熱が入りすぎて重症を負わせてしまった時には、流石に反省したし、他のクルーからもブーイングされた。なっちゃんは気にしてないが。

 

スコッパー・ギャバン:斧を使う二刀流のクルー。レイリーに頼まれて手合わせしてみたが、まだ荒削りであるものの二刀流にも通ずる所のある六刀流に魅力を感じた。また、何度打ちのめしても立ち上がってくる根性を気に入った。聞けば海図や操舵にも興味があるとのことで、そこも教えてあげると殊の外尊敬されたので嬉しい。堅物だがかわいい弟分ができた気分である。

 

サンベル:魚人の後輩ができて実は一番嬉しがっている人。海に潜ることで、海賊団において重要な食料調達の仕事をしている。なっちゃんにもそのノウハウを伝授している。その中でなっちゃんが一部の魚類と会話できることを知り驚いた。魚人でも海の生物と会話できるのは珍しいからだ。その能力を活かせば海の情報をそこに住んでいる海の生物から集められるので、より海の幸を集められると考え、正式になっちゃんを後継者にしようとしている。

 

シェフ:地獄のワンオペをこなし続けてきた猛者。料理の心得がある人材がきて一番歓迎している人。正式になっちゃんを後継者にしようとしている。

 

赤鼻先輩:雑用を押し付けても文句を言わないし、唯一自分を雑に扱わない存在なのでなっちゃんのことを舎弟だと思ってる。




ロジャー海賊団は30から50人くらいの規模感とのことで、まだおでんやその家族家臣らが加入していない時期なので、40人くらいかなと独自解釈しています。また、スコッパー・ギャバンは海図や操舵に関わっているというのも原作のコマから勝手に推測しただけです。サンベルについてはただ、魚人でかつ漁業にも用いられる三叉槍を持っているという情報だけから膨らませた妄想です。シェフはロジャー海賊団が宴をよく行う都合上もう少し人数がいてもいいのかもしれませんが、彼がよっぽど凄腕だったということでここはひとつ勘弁してください。
なっちゃんの海の生物と話せる能力ですが、これは原作の扉絵連載で、はっちゃんが金魚姫などと会話していると解釈できそうな描写があったので、なっちゃんも同じ能力をもっているということにしました。


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原作開始26年前(13才)、ロジャー海賊団の節目

ONE PIECE FILM REDを観てきました。ご時世がら、映画館に足を運んだのは3年ぶりでしたが、行ってよかったです。昨今はスマホで映画を観ることに慣れてしまいましたが、この作品は大スクリーンと音響がよく映える内容となっておりますので、今のうちに劇場で観ることをおすすめします。


ロジャー船長が不治の病になった。

 

クルーにとってまさに青天の霹靂だった。

なにせ何の兆候もなかったからだ。

ロジャー船長はいつも通りに冒険を楽しんでいたし、その強さに陰りもなかった。

 

原作を知っていたおれでさえも、ロジャー船長は絶対不変の存在のように感じていたから驚いた。

何をしても死にそうにないこの人が病気で亡くなるとは、知識として知っていても信じられない。

 

皆もはじめは何かの冗談だと思っていたくらいだ。

 

たが、船医の顔を見ればウソではないことがわかった。

 

 

ロジャー船長はおれ達クルーに弱みを見せたがらないが、それにしたって限度があるだろう。

 

笑いながら、

 

すまん、不治の病にかかっちまった

 

と言われても質の悪いジョークにしか聞こえなかった。

 

しかし、笑顔とは裏腹に額に脂汗をかいている船長の姿はおれ達に否応なしに事の重大さを知らしめた。

 

 

それから症状が悪化していくロジャー船長。

 

船医も色々手を尽くしていたが歯が立たないようだ。

 

おれ達は新世界中の情報を集めて名医という名医をあたったがどれもうまくいかない。

 

そんな時に双子岬にいるクロッカスという男が凄腕だという噂を手に入れた。

 

既に万策尽きていたおれ達は一縷の望みをかけて双子岬に向け、グランドラインを逆走することを決めた。

 

 

しかし、新世界から双子岬に行くのは容易ではない。

 

 

そもそも東西南北の4つ海からレッドラインを目指し、リヴァース・マウンテンに入ると双子岬にたどり着き、そこからグランドラインが始まる。

 

そしてグランドラインを進み、またレッドラインに行き着くと船をコーティングして魚人島を経由し新世界の航路に出ることができる。

 

つまり、新世界から双子岬に逆走するにはまず魚人島を目指すわけだ。

 

そこで困るのが、コーティングについてだ。

 

基本的にコーティングはシャボンディ諸島のヤルキマン・マングローブから分泌される特殊樹液によるシャボン玉を利用する。

また魚人島でもコーティングは可能だ。

 

しかし、逆走するので新世界側でコーティング用のシャボン玉を出すヤルキマン・マングローブを探さなければならない。

 

それにコーティング職人も探す必要がある。

 

魚人島には職人がいるので、最悪おれとサンベル先輩で先行して連れてくることはできる。

 

しかし、それでは時間がかかってしまうだろう。

 

噂のクロッカスでもダメだった時のために、何より誰にも癒せぬ病で苦しむ船長のために一刻も早くたどり着きたい。

 

それならばどのくらいかかるかもわからないこのルートではだめだ。

 

そもそも今いる位置から魚人島まで戻るのも大変なのだ。

 

魚人島のエターナルポースを持っている訳ではないからだ。

 

 

そこでおれたちはリスクのある賭けに出た。

 

それはカームベルトを通り、北の海か西の海に出てからリヴァース・マウンテンを目指すというものだ。

 

このルートならばわざわざ世界を半周以上も逆走する必要もない。

 

いち早く新世界やグランドラインから脱するので天候などに左右されずに航海も進めるだろう。

 

しかし、何よりカームベルトを無事に通過するという大きなハードルがある。

 

カームベルトには大型の海王類がうじゃうじゃいる。

 

運が良ければ見つからないが、オーロ・ジャクソン号は大型の船だ。

 

まず襲われるだろう。

 

数匹くらいならこの船の戦力なら問題ないが、カームベルトを抜けるまで何十匹にも常に襲われ続けたらどうなるかわからない。

 

そして、もう1つの問題として、カームベルト(凪の海域)はその名前の通り、無風地帯ということだ。

 

海賊船は基本的に帆船で、エンジンやモーターがあるわけではない。

 

つまり風がないと進まないのだ。

 

帆の向きなどを工夫することで、逆風でも進むことができるので、航路を逆走することならば何とかなるのだが、流石に無風だとどうしようもない。

 

人力で漕いでいくしかないのだ。

 

 

しかし、おれたちには勝算があった。

 

なぜならここに2人も力持ちの魚人がいるからだ。

 

おれとサンベル先輩ならこのオーロ・ジャクソン号を引っ張ることができる。

 

2人いるので交代交代で船を引くこともできるし、1人が索敵して海王類がいないルートに船を先導することもできるはずだ。

 

 

というわけで、おれたちはカームベルトを抜けるルートを取ることにした。

 

何よりロジャー船長の、そっちの方が面白そうだ、という一言が決め手になった。

 

全くこの人はいつでも楽しむことに対して自由が過ぎる。

 

そんな船長のためにおれたちは力をひとつに合わせた。

 

そしてついに双子岬にたどり着いたのだ。

 

 

 

 

噂のクロッカスは丸メガネをかけ、バンダナをつけた、筋骨隆々の男だった。

 

とうてい医者のようには見えなかったが、ロジャー船長を見ると一目で容態を看破し、少しの診察で病名まで言い当てた。

 

しかし、そんな彼でもこの病気は治せないようだった。

 

クルーは落ち込んだが、当のロジャー船長本人はクロッカスのおかげで大分楽になったと喜んでいた。

 

これでまだ冒険ができる、と。

 

クロッカスだけがロジャーの病の苦しみを和らげる腕を持っていたのだ。

 

クロッカス、いやクロッカスさんは探している海賊団がいるとのことで、その捜索に協力するという条件で船医としてロジャー海賊団に加入した。

 

クロッカスさんのおかげで余命幾ばくもない中でも、ロジャー船長はベッドで寝たきりにならずに済み、再び冒険できるようになったのだ。

 

皆彼には感謝している。

 

ロジャー船長の飲酒を諌められる唯一の人材だしな。

 

 

 

こうしてロジャー海賊団は再びゼロからグランドラインで航海を始めることになった。

 

おれからしたら、初めての海だし、原作で知っている場所もあって嬉しい。

 

一番最初の夢である聖地巡礼が図らずも叶った形だ。

 

とはいえ、ロジャー船長は以前通ったのとは違う航路を進もうとしたし、そもそも原作のルフィ達の航路とは異なっていたので、知っている島にはそれほど行けなかった。

 

例外はウォーターセブンくらいだ。

 

カームベルトを越えるなど無茶をしたせいで船にも相応のダメージがあったので、船の作り主であるトムさんに修理してもらったのだ。

 

思えばカームベルトを無事に抜けれたのは、海王類の突進をも耐え抜いてくれたオーロ・ジャクソン号のおかげであり、ひいてはトムさんのおかげだ。

 

お礼を言っておいた。

 

いつかまたグランドラインに来て本当の聖地巡礼をしたいものだ。

 

 

 

唐突だが、ロジャー海賊団にはバレットという男がいる。

 

おれより4つ年上の17才だが、その強さは本物で、最近ではロジャー船長の後継者という意味で鬼の跡目と呼ばれつつある。

 

これは、うちの海賊団が医者を探し回っていたことから何かを掴んだ海軍が揺さぶりのためにその通り名を広めているのではないか、とおれは推測している。

 

何の根拠もないのだが。

 

しかし、少なくとも海軍はうちの海賊団の誰かが病気にかかったことは掴んでいるだろう。

 

グランドラインでは、海軍と遭遇しても直接仕掛けてくることはなく、遠巻きから監視ばかりされていた。

 

それが、まるで何かの秘密を探ってきているように感じたのだ。

 

…まあ、そんなことは考えても仕方ない。

 

バレットの話に戻るが、彼は頻繁にロジャー船長に決闘を仕掛ていたのだが、船長の病気が発覚してからは控えていた。

 

代わりに師匠にふっかけていたが。

 

師匠もバレットの不安や焦りを感じていたからか、はたまた自分のストレス解消のためか、バレットと長く打ち合うように応じていた。

 

赤鼻先輩はそれをみてバレットが師匠とタメを張る化物だとビビっていたが、流石に師匠の方が上だと思う。

 

最近そういう人の強さの判別がつくようになってきたのだ。

 

 

とにかく、ロジャー船長の苦痛が和らぎ、自分からバレットに、もう勝負はいいのか、と問いかけたことで、この2人の決闘は再開したのだ。

 

おれからしても高レベルの覇気の戦いは参考になるし、師匠の手が空くようになったおかげで、止まっていたおれの修行も再開するようになって嬉しい。

 

もちろん筋トレは継続していたのだが、やはり師匠との打ち合いが一番成長に繋がっている。

 

 

 

 

そうこうしている内にいつの間にか日が経っていたようでおれは14才になっていた。

 

成長期なのか、成長痛が辛いときもあったが、おかげで原作のはっちゃんくらいの身長にはなれた。

 

具体的にいうと220cmだ。

 

だがまだまだ足りない。

 

目標は3m超えだ!

 

そうすればジンベエ兄貴と物理的にも肩を並べることができる。

 

最近シェフがおれのために身体造り用の秘伝の調理方法を使ってくれているので夢ではないだろう。

 

食べると力が湧いてくるこの料理は、まるで噂で聞くカマバッカ王国の攻めの料理みたいだ。

 

…もしかしてシェフ、ニューカマー説?

 

そういえば、おれに対して妙に優しいような…

 

と、とにかくこれで大人に近い身体が手に入った。

 

おかげでパワーも増したし、数千万ベリーの海賊を倒すことができた。

 

しかし、5千万ベリーを超えるとちらほら能力者も増えて手こずってしまう。

 

カームベルトでも結局海王類を単独で倒すことはできなかった。

 

まだまだ鍛えなければならない。

 

 

そう思っていたら、師匠がついに覇気を教えてくれることになった。

 

やったぜ。

 

ルフィが魚人島で覇王色の覇気で5万人を倒したシーンは今でも覚えている。

あんなカッコいいことができるようになるなんてわくわくするぜ。

 

 

…そう思っていたが、どうやらおれには覇王色の覇気はないだろう、と告げられた。

 

ガーン。わりとショックである。

 

ま、まあ、覇王色なんて雑魚狩りにしか使えないし、べ、別になくたっていいんだからね!(精一杯の強がり)

 

 

とにかく、まずは武装色と見聞色の習得からだ。

 

これがまた難しい。

 

疑わないこと、それが覇気の強さになる。

 

そう言われたが、前世では存在しないファンタジー要素であるし、今世でも覇気よ出ろ~と念じたことはあれど、うんともすんともいわなかった。

 

そう思っていると、師匠に6本腕は信じられないのか、と聞かれた。 

 

そんなわけないと即答した。

 

6本腕は強さのみならず利便性においても最高なのだと。

 

すると、また問われた。

 

しかし、腕に覇気を纏えないということは6本腕を信じていないということではないのかね、と。

 

ガーン。衝撃が走った。

 

そうだ。おれには他に何も自慢できるようなモノはないが、6本腕があった。

しからば、疑う余地などなかったのだ。

 

そうしておれは武装色の覇気を習得した。

 

とはいえ、まだかろうじて腕に纏わせられるだけで、黒く硬化することはできないが。

 

 

一方で見聞色の覇気の習得は難航した。

 

しかし、希望はある。

 

師匠によると、おれはカームベルトで必死に船を運んでいる時に、無意識に離れた海王類を察知して避けて進む時があったそうだ。

 

また何か必死になれるきっかけがあればすぐに感覚を掴めるはずだと師匠は言ってくれた。

 

 

 

そんなある日、赤鼻先輩が戦利品のバラバラの実を食べた。

 

どうやら本人的には食べる振りをして後で売りさばこうとしていたようだが、シャンクスのせいで誤って飲み込んでしまったらしい。

 

そうはならんだろ。

 

相変わらず見てて面白い人だ。

 

先輩ではあるが、おれより年下で、はっちゃんより1歳しか変わらないので弟みたいなものだ。

 

仕事的にもおれはそろそろただの見習いから、食料調達係兼、コック兼、気象記録係兼、操舵主見習い兼、準戦闘員といった感じで出世している。

 

やはりこの年代の2歳差は大きいな。

 

 

そうして赤鼻先輩にほっこりしている内におれたちは再び新世界に入った。

 

途中魚人島には着いたが、一晩はっちゃんと語り合ったらすぐさま出発した。

 

ロジャー船長の時間をあまり使わせるわけにはいかないからだ。

 

それでも久しぶりに会ったはっちゃんは可愛くて最高だった。

 

店主夫妻も元気そうで、ついに子宝にも恵まれたようなので、奥さんは子育てに集中しているようだ。

 

その分はっちゃんはこれまで以上に仕事を任され、今や副店長みたいなものらしい。

 

おれと一緒だなと笑い合った。

 

別れにはお互いのレシピを交換した。

 

また次に会う時が楽しみである。

 

 

 

こうして再び戻ってきた新世界では、おれたちを待ち構えている奴らがいた。

 

それは金獅子海賊団の大親分のシキとその海賊艦隊である。

 

どうやらシキは船長を勧誘しに来たようだ。

 

なにやらおれと組めば世界を支配できるとかなんとか。

 

まるで魔王だな。

 

もちろんロジャー船長は勇者のごとく断った。

 

支配なんて自由を愛するロジャー船長が興味を持つはずないのに、相手は勧誘が下手だな。

 

こうして交渉決裂したおれたちと金獅子海賊団の戦争が始まった。

 

おれたちが1隻に対して、敵は大勢の艦隊だ。

 

いくらロジャー海賊団が精鋭揃いでもさすがに多勢に無勢だった。

 

おれは六刀流を使っていたが、あまりの敵の多さにペース配分を見誤り、すぐ刃こぼれしてしまい、覚えたての武装色の覇気を使ったパンチで応戦する他なかった。

 

もっと剣の技量があればそんなことにはならなかっただろうし、もっというならば剣に覇気を纏わせられたり、硬化できたらよかっただろう。

 

しかし、この時のおれにはこんな不恰好な戦いしかできなかった。

 

今までも冒険の中で命の危機はあったが、初めてロジャー海賊団自体の絶対絶命のピンチに冷静ではなかったのかもしれない。

 

荒れ狂うひどい嵐のせいで海に潜れず、相手の船を攻撃することもままならなかったので、この戦いでおれは本当に役に立たなかった。

 

しかし、そんな絶体絶命かと思われたロジャー海賊団を救ったのはその嵐だった。

 

荒れ狂う海がシキに牙を剥いたのだ。

 

シキの艦隊を半数程沈め、シキの頭には舵輪が刺さった。

 

そうはならんだろ。

 

とにかくチャンスだ。

 

おれたちは戦場を離れた。

 

のちにこの戦いはエッド・ウォーの海戦と呼ばれたそうだ。

 

 

 

この戦いで自分の未熟を痛感したおれはさらに修行に励むようになった。

 

幸いにも死線をくぐり抜けたことで見聞色の覇気に目覚めることができたが、全く足りない。

 

忙しい師匠だけではなく、ギャバン先輩やサンベル先輩にも協力してもらった。

 

あのおっかないバレットにも勝負を挑んだ。

 

あわや殺されるかと思うくらいボコボコにされたが。

 

その甲斐があってまた覇気が強まった。

 

やはり実戦の極限状態や過酷な訓練こそが覇気を伸ばす近道のようだ。

 

 

そんな日々を過ごしているとバレットがロジャー海賊団から離脱した。

 

どうやら最後の決闘をロジャー船長に挑み、善戦したが返り討ちにあったことで独立を決めたようだ。

 

あんな無愛想な奴でもいないと寂しいが、せっかくの仲間の一人立ちだ。

 

おれたちは笑顔で見送った。

 

 

 

 

 

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なっちゃん:ロジャー船長が心配で必死だったので、ブルック関連のことをすっかり忘れている。やはりアホである。

身長は220cmとなり、見た目は原作のはっちゃんの目つきを悪くして筋肉マシマシにした感じ。脚も鍛えているのではっちゃんより全身ムキムキである。いずれは301cmのジンベエ並みの身長を目指している。

覇王色の覇気がないことにショックを受けているが、前世が一般日本人で今世も一般タコ魚人なんだから残当である。

原作知識クソザコの主人公は知らないが、覇王色を纏えない時点で最強にはなれないだろう。しかし覇王色のコントロールに割くリソースを他の修行に回せるのだから問題ないだろう、たぶん(適当)。

 

クロッカス:ブルックも所属するルンバー海賊団を探すために船に乗ることを決めた。その内原作を思い出したなっちゃんからそれとなく魔の三角地帯(フロリアントライアングル)の情報提供があるだろう。…たぶん。

 

海軍:急にロジャー海賊団が新世界から足取りが消えたと思ったらグランドラインに姿を表してビックリ。

前半の海の海兵では勝ち目がないので、うかつに手を出さないように監視に徹するよう指示している。

 

シェフ:後継者に秘伝のレシピを伝授させるために、まずはその料理の効果を身をもって実感させる。ただそれだけなのにニューカマー疑惑をかけられた。かわいそうである。

 

サンベル:カームベルト横断は流石に肝を冷やした。しかし、船長のことだからまた同じようなことがあるかもしれないので、なっちゃんの泳ぐ力をもっと鍛えることに決めた。

 

ギャバン:カームベルト突破で航海における魚人のアドバンテージを再認識した。そのため、なっちゃんに操舵や海図などの航海に関する知識を本格的に教えることを考え始めた。

 

シルバーズ・レイリー:最近弟子に師匠面するクルーが増えてきて内心危機感を感じている。

ーーー本当の師匠は私だぞ。

そのため覇気を解禁した。元々下地はあったが、6本腕の信仰心で武装色をすぐものにしたことには驚いている。というかドン引きである。

 

バレット:ロジャーの強さの根幹を探るため海賊団に入ったが、それは仲間との絆という自分の信念とは相容れないものだった。そのロジャーも仲間を守るために全力を出せない時があるということを気づき、仲間を信じない自らの信念に確信を得ている。しかし、長い船旅を共にしてきたので仲間意識が多少芽生えており、戦闘の際仲間を守らなければという意識になったこともある。これが自分の孤高の信念と葛藤を生んでいた。しまいには、昔だったら敗者を皆殺しにしてきたはずなのに、勝負を挑んできたタコにトドメをさすことをためらってしまったことで自分の揺らぎを自覚し、焦りからかロジャー船長に最後の決闘を挑んだ。

 

ロジャー船長:…いよいよ最後の冒険の時が来たようだ。




今回は独自解釈が多めです。
クロッカスさんに会いに行くのにカームベルトを通ったことや、バレットの強さなどです。
前者については力自慢の魚人が2人もいたからできた選択肢だということで勘弁してください。
後者については、映画でバギーが言ったようにレイリーと互角だとすると、流石にこの後でルーキーのクロコダイルと決着がつかないことに違和感を感じるので、このような塩梅にしました。


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原作開始24年前(15才)、ロジャー海賊団最後の航海

最近映画の影響もあるのか、ONE PIECE二次創作が盛り上がってきている気がします。うれしいです。


バレットが海賊団を去ってから、1年が経過した。

 

15才になったおれは心身ともに成長し、そこそこ強くなったと思う。

 

武装色の覇気を剣に纏わせることができるようになったし、腕だけなら黒く硬化させられるようにもなった。

見聞色はまだ意識しても半々の確率でしか発動しないが。

 

どうやらおれは武装色が得意なタイプらしい。

 

しかし、師匠の教育方針はどの色も満遍なく鍛えていくようだ。

 

新世界の見聞色の使い手には、相手の感情を読み取ったり、未来を先読みする猛者がいるらしい。

それに対抗するためには見聞色もある程度は使えないと話にならないようだ。

 

…マジ?

 

新世界ってそんなに魔境なのか。

 

以前の航海ではおれのレベルが低すぎたせいで全然わからなかった。

 

これからも修行あるのみだな。

 

ただ、覇気の修行に入ってから師匠のスパルタ具合がどんどん過激になっており、いまや真剣で打ち合うので生傷が絶えない。

 

おれの身体がもてばいいのだが。

 

 

そんな風に、とある上陸した島で師匠と修行をしていると、どこから嗅ぎ付けてきたのか海軍が襲ってきた。

 

中将を含めた海軍将校が複数いたが、ロジャー船長には物足りなかったようだ。

 

おれも大佐レベルなら問題なく倒せたことで成長を実感した。

 

やはり覇気のアドバンテージは大きい。

 

これなら准将以上にも通じると思うが、強そうな敵は船長達が率先して倒しに行ってしまうため中々経験をつめないな。

 

 

そう思っていたことがフラグだったのか、海軍とはまた別の巨大な勢力が島に上陸したことを感知した。

 

いや、まじで強大な気配だな。

 

見聞色が比較的得意でないおれでもはっきりと感じ取れるくらいヤバイ奴らが近づいて来ている。

 

その内の1人が先陣をきって襲いかかってきた。

 

なんだアレは……‥。

 

和服……侍か?

 

ロジャー船長は先ほどまでとは異なり、嬉しそうに迎え撃っていた。

 

そのすぐ後に相手のリーダーがやってきて、ようやく何者なのかがわかった。

 

白ひげ海賊団だ。

 

そのままなだれ込むように白ひげ海賊団との交戦が始まった。

 

この戦闘は今までにないくらい長期戦となり、三日三晩続いた。

 

 

おれはエッドウォーでの反省もあり、継続戦闘能力を鍛えてきた。

 

具体的にいうならば、スタミナ向上とより剣に負担のかからない振り方だ。

 

昔よりはるかに増したおれの馬鹿力で考えなしに剣を振るっていたらすぐに剣がダメになる。

 

武装色で剣を硬化するにしても、体力を消費するので常にというわけにはいかない。

 

そこで師匠や剣士のクルーの太刀筋から見て学び、地道に素振りで剣のフォームを改善してきたのだ。

 

 

これまでの修行では、動きの無駄や隙をなくすことで、6本腕の効率的かつ効果的な運用という側面で六刀流を鍛えていた。

 

それがそれぞれの腕1本による剣技の洗練という次の段階に入ったのだ。

 

おかげで、おれはこの長い戦闘でも最後まで戦い抜くことができた。

 

ただ、また別の課題も明らかになった。

 

おれが相手をした敵の中でダイヤモンドの身体の奴がいたのだが、それを切ることができなかったのだ。

 

向こうもおれの堅牢な六刀流の防御を突破することができずにいたので膠着状態に陥った。

 

おれにも何か攻撃の決め手となる必殺技が必要だと痛感した。

 

基本的なおれの戦法としては、六本腕の手数を活かして攻めまくるか、守りに徹して相手の攻撃を受け止め、あるいは受け流して隙を作るの2パターンだ。

 

いずれにせよ特に奥義のような特別な技はない。

 

一撃に頼るよりも流れるような連続攻撃に重きを置いてきたからだ。

 

だがそれでは単純に固い相手には通用しないことがわかった。

 

これを解決するにはより強い武装色の覇気と筋肉が必要だ。

 

つまりやることはいつも通りの鍛練だな。

 

 

 

3日の戦闘でも決着がつかなかったので戦闘はおひらきとなった。

 

そしておれたちは宴を始めた。

 

お互いの宝や食糧を戦利品として差し出す姿は、ただのプレゼント交換会のようだ。

 

3日も争っていたのに今では仲良く騒いでいるのは不思議な気分だ。

 

おれもダイヤモンドの奴とお互いを称えあい、仲良くなった。

 

他にも白ひげ海賊団のシェフとレシピを交換しあったりして親交を深めた。

サッチというらしい。

 

また、見習いだというのに一際戦闘で目立っていたマルコという少年とも気があった。

 

そして、一番気になっていた和服の侍はなんと、家族ごとおれたちの船に乗ることになったようだ。

 

どうやら原作のロビンのように古代文字が読めるため、ロジャー船長が白ひげに頼み込んで1年だけ借り受けたらしい。

 

光月おでん、か。

 

あのギャバン先輩と互角に打ち合っていたし、なにより二刀流の使い手だ。

 

ぜひ手合わせしてみたいな。

 

そうしておでんとその細君、赤子を乗せて出航したら、他にもおでんの家臣だというネコとイヌがついてきていた。

 

そうはならんだろ。

 

てか動物系の能力者ではなく、こういう種族なのか。

 

しかも14才とはおれより1つ年下か。

 

よし、はじめての年下の新入りだ。

 

可愛がってやろう。

 

思う存分もふもふした。

 

煙たがられた。

 

(´・◎・`)ショボーン

 

 

 

それからおでんはすぐさまおれたち海賊団に馴染んだ。

 

その持ち前の強さと明るさと破天荒さはおれたちにとってもいい刺激となった。

 

おでん(料理名の方)の腕も抜群で、ジャヤのモックタウンで振る舞ってくれたそれはとてもおいしかった。

 

しっかりレシピは覚えたぜ。

 

 

細君のトキさんは素敵な人だし、赤子のモモの助はかわいいし、皆でお世話した。

 

特におれは、はっちゃんや魚人街のみなし児達の世話で赤子の扱いには慣れているからな。

 

意外だったのは他の古株のクルー達も赤子に手慣れている様子だったことだ。

 

それでも、おれの6本腕はだっこの安定感が違うし、抱き上げながら他の腕であやしたり、ミルクを作ったり作業もできる。

 

6本腕最強!

 

とはいえ、一番安心できるのはトキさんの腕の中のようだったが。

 

さすがお母さんだぜ。

 

…おれの母親は今どうしているだろうか。

両親ともに生きてくれていたらいいのだが。

 

 

 

さて、ロジャー船長によると古代文字が読める人材が手に入ったことで、ポーネグリフを巡る旅に出るそうだ。

 

そのために、またグランドラインから航海を始めるらしい。

 

今度はそこまで急ぎではなかったので、普通に魚人島を経由する逆走ルートをとることにした。

 

どうやら、前回の反省を踏まえて、去年シャボンディ諸島でコーティングしてもらった際に師匠がその技術を見て盗んだそうだ。

加えて、新世界側でシャボン玉文化がある島の目星もつけているらしい。

 

いや、師匠が有能すぎる。

 

これが伝説の海賊団の副船長か。

 

 

そんなわけで、魚人島だが今回はコーティングした島で充分な補給ができていたので、そのまま上陸せずに通過した。

 

遠くから見聞色の覇気で、魚人街にいるはっちゃんが元気なことだけは確認できたからよかった。

 

 

 

そうして戻ってきたグランドライン。

 

まず最初に目指すポーネグリフには船長に心当たりがあるようだ。

 

それでやってきたのは、なんとジャヤ島だった。

 

ということはもちろん行き先は空島だ。

 

全員死ぬ可能性もあるノックアップストリームで空島へ向かうのだ。

 

赤鼻先輩がずっとビビりっぱなしで面白かった。

 

キャッキャと笑っているモモの助を見習ってほしい。

 

 

無事に空島スカイピアにつくと、そこは夢のような光景だった。

 

一面の雲の海。

見たことない服装、食事、建物、そして文化。

 

特にダイアルは興味深い。

 

空島のお金はもっていなかったが、あらかじめ持ってきていた地上の土や石と交換でいくつか手に入った。

 

今日のおれは我ながら冴えているぜ。

 

 

その後、神という名の国長であるガン・フォールの協力もあり、黄金郷ジャヤにも足を踏み入れることができた。

 

そこで目当てのポーネグリフをみつけた。

 

早速おでんに読んでもらったようだ。

 

その後ロジャー船長はおでんにお願いして、黄金の大鐘楼の横に古代文字で一文を残してもらっていた。

 

 

これが原作のあのシーンに繋がるのか…

 

一ファンとして感無量だ。

 

 

 

空島から戻ったおれたちは、水の都ウォーターセブンにも立ち寄った。

 

空島から落下した際に船が傷ついたからだ。

 

いや、上空1万mから落ちても全壊しないのはさすがなのだが。

 

数年ぶりに会ったトムさんは元気そうでよかった。

 

 

…それとあれはフランキーか?

 

このショタがあんな変態になるなんて時間とは恐ろしいものだ。

 

 

 

次の目的地は魚人島だ。

 

またかよ、って感じだが、空島のポーネグリフが指し示していたのが魚人島で、その在処にもロジャー船長は心当たりがあるらしい。

 

その道中でおでんやイヌアラシたちからも、自分たちの国にも赤い石碑があるという驚きの証言があった。

 

これで、以前に船長達がビッグ・マムから奪った写しと、魚人島、そして先程おでんたちが話したワノ国、ゾウにそれぞれ存在する赤い石碑で4つが揃う。

 

いよいよ最後の島への道筋が現実味を増し、ロジャー船長は子供のように大喜びした。

 

 

 

シャボンディ諸島でコーティングして再度魚人島へ向かう途中、海底で何者かの声を聞いたおでんとロジャー船長。

 

海の生物と会話できるおれでも聞こえなかったが、いったい何者の声なのか。

 

…やめてくれ、おれはホラーが苦手なんだ。

 

 

 

魚人島リュウグウ王国の門まで着くと、そこには厳重な警備があった。

 

国王のネプチューンまで出てきておれたちに武器を突きつけてきた。

 

どうやら門が壊される予言があったようで、警戒しているみたいだ。

 

ロジャー船長はネプチューン国王と知り合いのようで、誤解だと弁明していた。

 

実際、ほどなくして大人しいはずの海王類が門を破壊したので、おれたちへの疑いは晴れた。

 

国王から冤罪の詫びもかねて、2つのポーネグリフまで案内してもらった。

 

その情報と国王の証言と、シャーリーの予言を照らし合わせると、10年後国王の子供に海王類と会話ができる人魚姫が生まれ、それが古代兵器のポセイドンかもしれないことが判明した。

 

 

…最近、おでんが航海に加わってからどんどん重大な情報が集まってきているように感じる。

 

クロッカスさんによると、船長の余命もあと1年だというし、この楽しい冒険の日々が加速度的に終わりへと向かっているようだ。

 

しかし!

そうだとしてもおれにできることは最後まで自由を楽しむことだけだ。

 

この冒険に悔いだけは残してはならない。

 

不思議とそう感じた。

 

 

 

そのあとは新世界に入りまた様々な冒険があった。

 

雷の降り注ぐライジン島に上陸したり、とある島でポーネグリフを発見したりだ。

 

トキさんが第二子を産むというめでたい出来事もあった。

 

 

しかしそんな時、事件が起こった。

 

ワノ国近海でトキさんが倒れたのだ。

 

トキさんの念願だったワノ国が目前となり、長年の航海による疲弊と悲願の成就による安堵から体調を崩してしまったのだ。

 

船医のクロッカスさんからもこれ以上の航海は危険だと診断され、ワノ国に到着次第船を降りることを勧められた。

 

彼女の身を案じたおでんも共に船を降りようとしたが、トキさんは夫の夢を尊重し、こんなところで断念するようなら離縁を申し出ます、とまで言い放った。

 

あっぱれだ。

 

結局、トキさんと子供達、彼女らの連れ添いと同心たちへの仲介役としてイヌアラシ、ネコマムシが下船した。

 

仲良くなった仲間と別れるのはいつだって寂しいが、これもまた冒険なのだろう。

 

ワノ国ではロードポーネグリフを写したら数時間で出航した。

 

 

 

幻の島ゾウに上陸した。

 

なんだここは。

 

もふもふ天国か…?

 

フフフ…10数年ぶりにわたくしの6本腕の奥義、NADENADEを発動するときがきたようですね。

 

さて、まずは手始めに、あそこにいるうさぎのもふもふさんからいかせてもらいましょうか。

 

……

………

 

その後、おれはこの楽園から出禁をくらった。

 

おかしい、同意の上でしかヤってないのに…

 

 

 

ここは、いわゆるファンタジー世界における獣人のような見た目のミンク族達が集った国家、モコモ公国である。

 

ロジャー船長達は、この国のまとめ役であるひつギスカン公爵にイヌネコからの手紙を渡して、無事にロードポーネグリフを見せてもらったようだ。

 

これで最後の島への条件が揃った。

 

後は冒険に出るだけだ!

 

 

…だからお願いだ、ロジャー船長。

 

笑っていないでおれをこの牢屋から出してくれ!

 

 

 

 

そして年が明け、ついに最後の島への航海が始まった。

 

 

しかし、最後の島への航海を前に赤鼻先輩が高熱を出してしまった。

 

それを看病するために赤髪先輩も航海を断念した。

 

 

………おれは悩んでいた。

 

なんやかんや船で一番仲良くしていたのは、同年代で同じ見習いだったこの2人だ。

 

それなのにおれだけ抜け駆けをするなんてしたくない。

 

しかし、ワンピースが目の前にあるかもしれないのに、それを見逃すだなんて、前世でこの世界のファンだった身としては耐えられない。

 

いったいどうしたらいいんだ…。

 

 

そう葛藤していると、息も絶え絶えで寝込んでいた赤鼻先輩が起き上がりこう言った。

 

バカやろう、おれ様は天下無敵のバギー様だぞ。

 

舎弟のお前に心配される筋合いはない。

 

さっさとハデにお宝さがしに行きやがれ!

 

 

…やれやれ。

 

弟分にそこまで言われちゃあ、しょうがない。

 

おれは残ることにした。

 

それが一番悔いが残らないと思ったからだ。

 

それに、おれが冒険で得たお宝はどうやらここにあるみたいだしな。 

 

 

 

そうしてバギーをシャンクスとともに看病していると(というかおれがいないとお粥ひとつ作れないのにどうやって看病するつもりだったんだ)、ロジャー船長達が最後の冒険から帰ってきた。

 

 

話によると、最後の島へ上陸し、莫大な宝を発見したそうだ。

 

そこで世界の全てを知った船長達は大笑いしたらしい。

 

なんせ最後の島に「ラフテル」と名付けるくらいだからな。

 

 

 

こうしてグランドラインを全制覇したロジャー船長は海賊王と呼ばれるようになった。

 

 

 

 

 

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なっちゃん:はっちゃんの感知だけ見聞色がずば抜けているブラコン。

もふもふに対して異様に手×6が早い。

なんだコイツ、変態か。

実は身長もすくすくと伸びており、鍛え上げたその筋力は、ロジャー海賊団の中でも上位に入る。ただし覇気の習熟はまだまだであるので総合的に見たら中堅くらいの実力だろう。

 

師匠:武装色の覇気の伸びがいいのは、6本腕を疑わないアホさも然ることながら、教えを乞うた相手を完全に信じきっていることの影響も大きいと考察している。

11才で船に乗った時からここまで強くなるとは思っていなかった。

それにここまで変態だとも思っていなかった。

モコモ公国で1人でふらふらと何処かへ行ったと思ったらまさかなでなでのせいで捕まっていたとは。

正直ドン引きである。

 

ミンク族:実はなっちゃんはその証言の通り、もふもふをなでなでする際はきちんと同意をとっていた。

そのため、セクハラなど法を犯して捕まったわけではない。

そのなでなでの幸福感があまりにも強すぎたために、骨抜きにされたもふもふ達が気絶してしまうことが相次いでしまったのだ。

彼は男も女も見境なくなでなでの魔力で籠絡していった。

そしてその毒牙がついに国一番のもふもふであるひつギスカン公爵にまで及び、残った家臣達から、このままでは国が崩壊すると判断され、御用となった。

要するにミンク族にとって、危険人物だったので隔離されたのだ。

まさに過ぎたるは猶及ばざるが如しである。

 

バギー:ーーー…あんなに言ったのに、このハデばかやろうめ。

 

シャンクス:ーーー頼れる兄貴がいたらこんな感じなのかもな。

↑色々醜態も見ているのに器が大きいやつである。

 

ロジャー船長:ーーー最後の航海も仲間達のおかげで楽しい冒険になった。もはや悔いはない。




今回は割りと原作沿いです。
あとモコモ公国のみなさん、うちのなっちゃんが迷惑をかけてごめんなさい。
それと、誤字報告をしてくださる方々のおかげで非常に助かっています。
ありがとうございます。


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原作開始23年前(16才)、ロジャー海賊団解散

いつの間にか日間ランキングに載っていたようです。

読んでくださるだけでもありがたいのに、お気に入りや評価や感想をくれた方々には一層の感謝を申し上げます。

今回は繋ぎ回なので短いですが、なっちゃんがプロットに全くない動きを始めたので困っています。

とりあえず、原作改編タグが必要になってしまいました。


ロジャー海賊団がグランドラインを制覇したというニュースは瞬く間に世界を駆け抜けた。

 

海軍はおれたちを許すものかと執拗に狙ってきたし、血の気の多い海賊達も財宝を目当てに襲撃してきた。

 

この時期が今までで一番戦い尽くしだったように思う。

多くの実戦経験を積むことができた。

 

船長は余命幾ばくもないとは思えないほど強く、笑いながら全てを蹴散らしていった。

あのガープやセンゴクでさえおれたちを捕まえることはできなかった。

 

おれは一度ガープのゲンコツをくらい死にかけたが。

 

…ちゃんと活躍もした。

 

武装色の覇気で硬化できるようになった六刀流で准将を倒すことができたのだ。

 

まあ、その後調子に乗ったからワンパンされたのだが。

 

それにしても英雄の一撃は他とは次元が違った。

 

あれが筋肉と覇気だけでたどり着ける境地だというならば、目指しがいがある。

 

おれも今度山を使う(物理)修行をしてみよう。

 

目標はガープに匹敵する一撃を全ての腕で放てるようになることだ。

 

おれの理想が見えてきた気がする。

 

 

 

そうして全ての追っ手を振り切って落ち着いた頃、ついに終わりの時がやってきた。

 

ロジャー海賊団解散の日だ。

 

解散を宣言をしたロジャー船長は一番に船を降りた。

 

 

その際ロジャー船長に、

 

楽しかったぜ。

 

お前を船に乗せてよかった。

 

と言われた。

 

 

おれたちはもちろん笑って別れた。

 

 

涙など流さなかった。

 

本当だ。

 

男の別れに涙は似合わないからだ。

 

 

終わりがあってこその冒険。

 

楽しかった。

 

まさにこの冒険は奇跡だった。

 

 

 

その後は一人一人クルーが船を降りていった。

 

シェフには秘伝のレシピを伝授された。

 

気象記録の仕事繋がりで仲良くなっていた航海士には、これまでの航海の海図の写しをもらった。

 

ギャバン先輩には操舵の心得と二刀流の奥義を見せてもらった。

 

サンベル先輩とは海中戦の手合わせを行った。

地上戦ではほぼ互角に近くなっていたが、海の中では全く歯が立たなかった。

先輩からは、魚人ならば海の中でこそ最強であれ、と薫陶を受けた。

 

そして、師匠からは修行の集大成として、最後の立ち会い…いや、真剣勝負の決闘をした。

 

丸1日続いた決闘で、おれは今まで学んできた持てる限りの全てをぶつけた。

師匠が基本的に受けの姿勢であったおかげでもあるが、攻め続けてついに一太刀入れることができた。

 

最後は師匠の本気の一撃でおれの意識は途絶えた。

 

目が覚めた時にはもう師匠はいなかった。

 

…今までありがとうございました。師匠。

 

 

 

 

おれは今後どうするか迷っていたが、ふとクロッカスさんと目が合った時、重要なことを思い出した。

 

ブルックが魔の三角地帯(フロリアン・トライアングル)の海域に囚われていることだ。

 

おれは風の噂ということにして、ルンバー海賊団の消息がフロリアン・トライアングルで絶たれたという情報をクロッカスさんに伝えた。

 

ここまでの航海で地道に聞き込みをして、ルンバー海賊団の全滅を知っていたクロッカスさんは、まさか生き残りがいるとは思っていないようだが、それでも遺品のひとつでも見つかるならと、双子岬に帰るついでに寄ることに決めたようだ。

 

おれもクロッカスさんをそそのかした手前、護衛もかねてついていくことにした。

 

実際あの海域は謎が多い。

 

これでクロッカスさんまで帰らぬ人になってしまったらおれは自分を許せなくなる。

 

そしてなにより、ブルックがこれから20年以上も1人で彷徨うのは見過ごせない。

 

既に30年近くは孤独で過ごしているのだ。

 

今まですっかり忘れていて何だが、やらない善よりやる偽善だ。

 

おれにとっては既に原作よりも、今世の方が重要になっているし、クロッカスさんがロジャー船長にしてくれた恩を返すならばここしかないだろう。

 

そんなわけで、おれとクロッカスさんは一緒に船を降りた。

 

 

そして、フロリアン・トライアングルを捜索すること半月、ルンバー海賊団の幽霊船を見つけた。

 

師匠との死闘で見聞色の覇気が成長していなかったらもっと時間がかかったかもしれない。

 

 

その船には鼻唄を歌うガイコツが乗っていた。

 

クロッカスさんは、一目見て正体に気がついたようで、信じられないという顔をしていた。(後から聞いた所によると、頭のアフロではなく骨格で判別したらしい。そこまでいったら名医という名の化物だな)

 

ブルックは久しぶりに人に出会ったと喜んでいたが、すぐにクロッカスさんに気づき、声をあげて驚いていた。

 

その後2人が泣きながらハグをしているのを後方腕組み×3しながら見ていた。

 

 

ブルックはルンバー海賊団の全滅後、1人だけヨミヨミの実の能力で蘇ったが、身体が白骨になっているし、船の舵が壊れてこの海域から抜け出せないし、散々な目に合っていたようだ。

 

助けに来たおれたちにとても感謝していた。

 

特にわざわざ航海に出てまで探しに来てくれたクロッカスさんに対して男泣きしてお礼を言っていた。

 

珍しくクロッカスさんが照れていたな。

 

 

 

そして、おれたちはブルックを連れて双子岬に帰った。

 

つまり、ラブーンとブルックの再会がここに叶ったのだ。

 

 

それはそれはすごい咆哮だった。

 

また、その涙は滝のようだった。

 

そして、その抱擁はブルックにとっては山が突進してきたようなものだった。

 

ブ、ブルックー!大丈夫か、お前!

 

身体の軽さも相まって、めちゃくちゃ吹っ飛んだぞ。

 

ラブーンからしたら昔みたいに抱っこして欲しかったのかもしれないけど、もうお前は巨体なんだ、諦めてくれ。

 

だ、だがおれたちには化物並みの名医がいる。

 

その後、何とかクロッカスさんによる、牛乳治療でブルックの命の危機は救われた…。

 

って牛乳かよ!

でも的確!

流石名医だな。

 

 

 

その後、ブルックからルンバー海賊団の冒険が語られた。

その最期と、託されたトーンダイアルの演奏も聞いた。

ラブーンも今度は静かに耳を傾けていた。

 

 

 

さて、お祝いのご馳走も作ったし、おれの役目はここで終わりだな。

 

この宴が終わったらまた冒険に出るか。

 

せっかくグランドラインに来たわけだしな。

 

ガープのように山修行もやってみよう。

 

 

しかし、これでついに原作をぶっこわしてしまったな。

 

まあ、未来のことは未来のおれとルフィに任せよう。

 

今はただ、この素敵な宴を楽しんでいたい。

 

 

 

 

そして1年が過ぎ、世間は大ニュースに騒いでいた。

 

海賊王ゴールド・ロジャーが逮捕されたらしいぞ、と。

 

処刑は東の海のローグタウンで行われるらしい。

 

おれは急いで東の海へ向けて泳ぎだした。

 

 

 

 

 

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なっちゃん:覇気を学んで2年だが、元々の素養があったことと、圧倒的な実戦経験、くぐってきた修羅場の数により急成長して、一端の使い手になれた。

まだ武装色の内部破壊や成った黒刀、見聞色の未来視などのステージには上がれていないが、基礎的なものは身に付けている。

剣技でも師匠との打ち合いの中で新たな境地に足を踏み入れた。

 

なにより、原作改編という禁忌に手×6を伸ばした。

 

転生したばかりの彼だったら、原作は神聖なものとして、このような行動は取らなかっただろう。

 

しかし、もはや既に彼は前世の何某の転生者ではなく、この世界に生きる一般タコ魚人のなっちゃんなのだ。

 

思えば、ワンピースの正体を確かめることを断念して今世の情を優先した時から、遅かれ早かれこうなることは決まっていたのかもしれない。

 

 

…とはいえ、こちらとしては急にプロットに全くない行動をとられて困惑である。

 

 

 

師匠:受けの姿勢でも手加減は一切していなかったので、隙があれば倒すつもりだった。しかし、不肖の弟子は丸1日の間、隙を作らず攻め続けてきた。そして1日が経ち、ついにスタミナが切れたのか動きが止まりかけた瞬間に反撃をしたのだが、それは弟子の仕掛けた罠だった。

今まで弟子はフェイントが苦手で、虚実でいうと、実の剣しか使ってこなかった。

しかし、ここ一番で師匠に一太刀浴びせるために、土壇場で虚の剣を使ったのだ。

勿論その一撃は鍛えてきた実の剣に比べて付け焼き刃に過ぎなかったが、丸1日の布石と、師匠としてその成長に目を瞠った隙をうまく突く形となり一太刀が入った。

それは致命傷とはいかずとも、傷跡が残る程の一撃であった。

見事。

最後の一撃は弟子への称賛をこめて、殺す気で放たれた。

本気の覇王色を纏う一撃だ。

しかし、弟子はこれを気絶ですむ程度に相殺した。

とっさに6本の腕を受け流す役割と受け止める役割に分けて防御したからだ。

受け止めきれない衝撃をうまく逃したのだ。

剣は全て折れ、気絶したが、格上の本気の一撃で命を落とさなかったのだ。

 

ーーーもう教えることはない。また会おう。

 

 

クロッカス:1人でも生き残りをラブーンの所に連れ帰れて安堵している。改めて、ロジャー海賊団についていって正解だったと思っている。

 

ブルック:正直夢なんじゃないかと疑っている。

それくらい幸せを感じている。

 

ラブーンとの約束通り、冒険に出掛けたいのだが、見た目のせいもあってか中々仲間になってくれる海賊団が見つからない。

逆に襲ってきて、ラブーンを売りさばこうとしてくる奴らも多い。

とはいえ、グランドラインに入りたてのひよっこに負けることはないが。

仕方ないのでラブーンの頭に乗せてもらって近海を冒険している。

その内、良い出会いがあるとなっちゃんに言われたこともあって、ゆっくりとラブーンとの仲を深めながら楽しんで旅をしている。

 

 

…流石に船がないと遠洋には行けないはずなので、近海の冒険が落ち着いたら双子岬を拠点にして仲間探しをするだろう。そうしたら、その内(23年後)に良い出会いがあるはずだ。というか、あってくれ(願望)。




ついに独自解釈だけでなく、原作改編してしまいました。
しかし、所詮は素人書き手なので、書きたいように書くことしかできません。
それでもいいならば、今後のなっちゃんの人生を応援してやってください。


ちなみに今回の話のプロットは、以下の通りでした。


原作開始23年前、新世界編開始25年前、16才
ロジャー海賊団、ラフテルへ。
海賊王になる。
海賊団解散。


ここから、勝手にブルックを助けに行くなっちゃんよ…


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原作開始22年前(17才)、大海賊時代の幕開け

本作を想定以上の人に見てもらえて嬉しいです。

たくさんのお気に入りや感想や評価、ありがとうございます。

誤字報告も助かっております。

どうやら漢字変換をミスることが多いようで、すいません。

あとジンベエさんのことをジンベイ表記にしていたことは自分でもビックリでした。

うちの本棚のONE PIECEは飾りのようです。

ジンベエさん、ごめんなさい。



ロジャー船長が海賊団を解散して1年。

 

久しぶりに見るロジャー船長は病魔に侵されているとは思えないほど堂々としている。

 

処刑台を登っていくその姿はまるで凱旋する王様のようだ。

 

 

処刑台に上がると、そのまま静かに自身の処刑を待ち構えていたが、群衆の一人から“ひとつなぎの大秘宝”について問われると、笑いながらあの名台詞を放った。

 

処刑人たちはロジャーの発言を制止しようと慌てて刑を執行した。

 

 

 

おれの中には原作の名場面に立ち会えたというような喜びはなかった。

 

 

もっとロジャー船長には生きていてほしかった。

 

自分の子供を抱き上げてほしかった。

 

何よりまだまだ冒険を続けていたかった。

 

 

さよならだ、ロジャー船長。

 

今までありがとうございました。

 

 

…ロジャー船長の生き様はこの目にしっかりと焼き付けた。

 

男の生き様は死に様で決まる。

 

ロジャー船長の残り僅かであった命の火は、世界に燃え広がる業火となった。

 

大海賊時代の始まりである。 

 

 

 

船長の最期を見送った後、バギーとシャンクスに出会った。

 

2人ともおれを勧誘してきた。

 

とても心惹かれたのだが断った。

 

 

これから大勢の海賊がグランドラインに雪崩れ込んでくる。

 

そして新世界に入るためにいずれは魚人島を通るだろう。

 

このままでは、はっちゃんもいるおれの故郷が荒らされてしまう。

 

それを見過ごすわけにはいかない。

 

 

おれは魚人島へ帰郷することにした。

 

 

 

 

おれが泳いで魚人島へたどりついた時にはもう海賊達が押し寄せつつあった。

 

既に何人かの魚人と人魚が海賊に捕まって売り飛ばされたようだ。

 

…許せん。

 

リュウグウ王国の方は国王の海神ネプチューンがいるし、その第一子のフカボシ王子が生まれたということで、厳重な警備がされているので大丈夫だろう。

 

ジンベエ兄貴が兵士になっているみたいだしな。

 

 

問題は国からの守りがない魚人街だ。

 

魚人街は元々、みなし児を育てるためにリュウグウ王国が作った孤児院のような区画であった。

 

しかし、すぐさま管理しきれなくなり、無法者が集まって治安が悪化。

 

国王がネプチューンに代わった今でもこの状況は改善していない。

 

無法者が大半の魚人街とはいえ、そうでないものもいる。

 

はっちゃんや店主夫妻なんかがそうだし、そうした人が暮らす比較的治安のいい地域がある。

 

それは元締めのタイガー大兄貴のシマでもある。

 

そうした場所を守るためにもおれがなんとかしなければならない。

 

とりあえず、久しぶりにはっちゃんをハグしに行ったら、店主夫妻やタイガー大兄貴に挨拶に行こう。

 

 

 

14才のはっちゃんは多少成長していたが、まだまだかわいらしい子供だった。

 

しかし、中身はより成長していたようで、お店の跡継ぎとして立派なコックになっていた。

 

おれははっちゃんに無事を喜ばれ、これまでの土産話を披露した。 

 

その日はお互いが鍛えた腕×12を振るってご馳走を作り、宴を行った。

 

店主家族も呼んで楽しい夜を過ごした。

 

なお、店主夫妻の生まれた子供は娘だったようで、3才のかわいい盛りである。

 

その内看板娘になるのだろうか。

 

そんな未来のためにもここを守り抜かなければならないな。

 

 

 

次の日、おれはタイガーの大兄貴の所へ向かった。

 

大兄貴はそれまで冒険に出ていたようだが、ロジャー処刑のニュースを聞いて、おれのように魚人島を案じて一足早く帰ってきていた。

 

そこで魚人街防衛のための話し合いを行った。

 

基本的に、魚人街の若い不良やアウトロー共は大兄貴が指揮を取れる(といってもガチガチな統制ができるわけではないが)。

 

とりあえず、非戦闘員には迂闊に外を出歩かないことと、戦闘員でも1人にはならないことを守らせることにした。

 

大兄貴に従わない無法者も多いが、奴らもその内気づくだろう。

 

大海賊時代において、後ろ楯のない魚人と人魚がどれ程人間に狙われるのか。

 

 

おれの役割は、魚人街のパトロールだ。

 

定期的に非戦闘員の安否を確認したり、見かけた海賊を斬っていく。

 

余計な恨みを買いたくないので殺しはしないが、腕の一本や二本は覚悟してもらおう。

 

 

 

こうして一応の迎撃体制を構築したが、程なくして有象無象の海賊達が押し寄せてきた。

 

おれは来る日も来る日も戦った。

 

基本的に覇気も知らないような新世界ルーキーばかりなので、一対一で負けることはなかったが、あまりに多勢に無勢すぎた。

 

如何におれに常人以上のスタミナがあれど、この広い魚人街を守るには手が足らなかった。

 

6本腕として不甲斐ない。

 

街に住む無法者達も、ひっきりなしにやってきて略奪や人攫いをしてこようとする人間達に危機感を感じたようで、大兄貴の傘下に入っていった。

 

しかし、人数比でいえば焼け石に水で、むしろ洪水のように湧いて出てくる人間達に、日に日に押されていった。

 

このままではいつ犠牲者が出るかもわからないな…

 

 

一方でリュウグウ王国の方もただではすまなかった。

 

こちらは魚人街よりも若い女性の人魚が多くいるためか、よりしつこく人間達に狙われていた。

 

海神ネプチューンやジンベエ兄貴が奮闘しているようだが、あまり余裕はなさそうだ。

 

当然魚人街に援軍はやって来ない。

 

 

 

そんないつ決壊するかもわからない日々が続いた。

 

おれの情報が人間達に出回ったのか、おれを避けて住人を拐おうとしたり、逆におれを倒して名を上げようとする奴らが増えてきた。

 

前者は見聞色の覇気で見つければ実力は大したことが無いが、常に魚人街の範囲を警戒するのは難しい。

 

後者の場合は相応の実力者が多く、能力者も混ざっているので気が抜けない。

 

覇気が使えなくても動物系はタフだし、超人系は初見殺しの能力者がいてやっかいだ。

 

むしろ自然系の方がやり易いくらいだった。

 

その上でおれの戦闘中に出し抜こうとしてくる奴らに関しては何とかタイガー大兄貴が抑えてくれていた。

 

 

 

そして、その日は6日ぶりの睡眠を6時間とっていた。

 

タイガー大兄貴達も大分疲弊していた。

 

その隙を突かれて、はっちゃんが捕まってしまったのだ。

 

 

店主夫妻の証言によると、海賊に攫われそうになった人魚の娘の身代わりとなったみたいだ。

 

どうやらタコの魚人だから、おれへの人質になると考えたらしい。

 

普通だったら魚人は親族でも似ないのだが、おれたちの場合は大正解だ。

 

夫妻から預かったメッセージによると、はっちゃんを返してほしくば、1人でやってこいとのことだ。

 

おれを倒せば街の人魚や魚人は拐い放題だとでも考えたのだろう。

 

…上等だ。

 

こんなに怒りを覚えたのは生まれて初めてだ。

 

 

約束の場所に行くと、そこには千人を超える海賊達がいた。

 

どうやらおれのために急遽同盟を組んでかき集めたようだ。

 

はっちゃんは身体を痛め付けられた上で檻に入れられていた。

 

 

プッツンと何かがキレる音がした。

 

 

一人斬る。

 

二人斬る。

 

三人斬る。

 

斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、きる、きる、きる、きる、きる、きる、きる、きる、きる、きる、きる、キル、キル、キル、キル、キル、キル、キル、キル、キル、キル、キル、KILL。

 

気がツケば辺り一面ガ血の海にナッていた。

 

残りノ人間達はいつの間にかイナクなっていタ。

 

幸イはっちゃんは無事ダったので、おレはヨロこんだ。

 

檻をKILL。

 

これデ救出デきたノで、二人で魚人街二帰った。

 

 

 

街ハ破壊されテいた。

 

 

 

切り捨てラれた魚人。

 

檻に捕まッた人魚。

 

 

 

ココハ地獄ダ。

 

 

オレハ鬼ト化シタ。

 

 

KILL、KILL、KILL、KILL、KILL、KILL、KILL、KILL、KILL、KILL、KILL、KILL、KILL、KILL、KILL、KILL…………………………………………………

 

 

 

 

その後、逃げれた同胞から助けを求められて救助にやってきたネプチューン達によって、魚人街の住人は一度リュウグウ王国に避難したそうだ。

 

街の被害の割りには犠牲者は少なかったそうだ。

 

それでも行方不明の人は存在した。

 

 

 

おれは街の中で大きな山の上に寝そべっていたらしい。

 

そんな所で寝落ちしてしまうなんて。

 

やはり、睡眠不足はよくないな。

 

記憶が曖昧だ。

 

だが、この感情だけは残っている。

 

奴隷狩りは絶対に許さない。

 

絶対にだ。

 

 

 

その後も海賊達はひっきりなしにやってきた。

 

ただ、魚人島に上陸せず、何かを避けるように先へと先へと進む海賊団も少なくなかった。

 

そうした中で、久しぶりに懐かしい大きな気配を感じた。

 

白ひげだ。

 

彼は後ろ楯がなく、海賊達に狙われ放題の魚人島の現状に目を向けると、ここを白ひげ海賊団のなわばりにすると宣言した。

 

すると人間達の襲撃はピタリと止んだ。

 

中にはバカな奴がちょっかいをかけてくることもあったが、その話を聞いた白ひげ海賊団が、徹底的に落とし前をつけたので、そのようなことは次第に減っていった。

 

おれ達は白ひげに絶大な恩を受けた。

 

いつかは何倍にもして返さないといけないな。

 

 

 

 

おれは魚人や人魚をよく守ったとして国王ネプチューンに勲章を与えようかと言われたが、そんなことより魚人街の復興を頼んだ。

 

あれでもおれの育った故郷だからな。

 

 

しばらくは魚人島を見守ったが、問題はなさそうだった。

 

流石ロジャー海賊団無き後、世間で最強だと噂される白ひげ海賊団の名の力だ。

 

魚人街の復興もある程度終わり、はっちゃんや無事だった店主家族の店が再開できたのも見届けたので、タイガー大兄貴やジンベエ兄貴に後を任せて、おれは白ひげ海賊団に改めてお礼に行くことにした。

 

もちろん、国王ネプチューンにも報告して、正式なお礼状と国一番の酒とお菓子を持たせてもらった。

 

 

 

白ひげ海賊団に泳いで近づいていくと、その周りにいた傘下の海賊団に止められた。

 

おれは事情を説明したが、おれの顔を見たその船長は聞く耳を持たなかった。

 

何故邪魔されるのか、おれは困惑したが、様子を伺いに来たマルコに教えてもらった。

 

この傘下の海賊団の船長はその昔ロジャー海賊団に仲間を全滅させられ、今もなお恨みを持っているのだと。

 

…なるほど。

 

ロジャー船長は仲間を侮辱した奴らには容赦がなかったし、そうでなくても強すぎるので数多の海賊団を壊滅させてきた。

 

顔を知っているということは、おれも戦ったことがある海賊団なのだろうが、その生き残りと言われても心当たりが多すぎて正直ピンと来ない。

 

しかし、そういった事情があるならば仕方ない。

 

おれは剣を仕舞い、その男、スクアードとやらに語りかけた。

 

 

おれを恨むのはいいが、お前が白ひげ海賊団に救われたように、おれたち魚人島も救われた。

 

そのせめてもの感謝の気持ちを伝えるまでは、おれも引くことができない。

 

お前の恨みは全部受け止めてやるからかかってこい。

 

さあ、ケンカを始めようぜ。

 

 

そうしておれは剣を使わず殴りあった。

 

奴は普通に大剣を使ってきたが。

 

おい!そこは素手で殴り合う場面だろ!

 

まあ、武装色で硬化した身体で全て受け止めてやったが。

 

おれはあえて一発も避けなかったが、相手の意地も中々のものだった。

 

おれの一撃を何度食らって倒れても、その度に立ち上がってきた。

 

面白い。

 

ぶっちゃけ弱いが、その執念は見事だ。

 

 

おれたちのケンカはいつの間にか見物していた白ひげ海賊団に囃し立てられながらも一晩続いた。

 

 

その後半日が経ち、気絶から目が覚めたスクアードにおれの渾身の料理を振る舞った。

 

流石のコイツも毒気を抜かれたのか、素直に食べて美味しいと言ってくれた。

 

そうだろう。

 

美味いメシは誰が作ろうと良いものだ。

 

細かいことなんてどうでもよくなるだろう。

 

 

少しは鬱憤が晴れたようなので、おれはスクアードに白ひげに会っていいか尋ねた。

 

彼は呆れたように、気絶していた間に会いにいかなかったのか、と呟き、好きにしろとおれにいい放った。

 

 

さて、これで筋は通したので、扉の外で様子を窺っていた白ひげ、いや、オヤジさんに挨拶を行った。

 

そして、お礼状とお酒とお菓子を渡し、改めて魚人島一同の感謝を伝えると、その場で宴が始まった。

 

 

おれは久しぶりに会ったマルコやジョズ、サッチと親交を暖め、スクアードとも少しだけだが会話をした。

 

 

そして、オヤジさんにこう言われた。

 

昨日のケンカは愉快で見事だった。

 

おめえが良ければおれの息子にならねぇか。

 

 

 

 

 

꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂

 

なっちゃん:鬼となった。

 

有象無象の海賊:魚人島にはやベー悪魔がいるそうだ。

 

魚人街に救助に行ったネプチューン軍一般兵士:おびただしい死体の山の上で眠るその姿は、まさにこの世のものとは思えなかった。

 

国王ネプチューン:人が本気になった姿ってものは、他人から見たら怖いものなのだと知っている。

故に姿はどうあれ、多くの国民を守ってくれた彼に感謝している。

 

白ひげ:家族になっても癒えぬバカ息子の心を少しでも解してくれたことに感謝した。




実はなっちゃんが原作よりも抵抗した結果、本来手を取り合わない海賊達が同盟を結んでしまい、魚人街が燃やされるまでの被害となってしまいました。
それでも原作よりは人的被害は少ないです。


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原作開始22年前(17才)、白ひげ海賊団特別部隊

今回は繋ぎ回なので短めですが、あとがきに説明の必要性を感じた一部感想返信を載せています。

それと、前話で魚人街が「燃えた」と描写しましたが、魚人街は海中ですので「破壊された」という表現に変更しました。

ストーリーの流れは変わっていません。


皆様のおかげで日間ランキング一位を達成できました。

応援ありがとうございます。


誤字報告もありがとうございました。


白ひげのオヤジさんに勧誘された。

 

光栄だ。

 

大恩あるこの人に少しずつでも恩を返していきたい。

 

とはいえ、1つ条件というか、お願いをした。

 

魚人島が再び狙われた時のためにも、1人で自由に行動できるようにしておきたい。

 

そのため、各隊に囚われず好きに行動できる権利をもらった。

 

名目としては、特別伝令部隊(1人)といった所か。

 

白ひげ海賊団の船は複数あるし、傘下の海賊団が後ろをついてくることも多い。

 

魚人であるおれは海を自由に行き来できるので、連絡係としては便利だろう。

 

白ひげ海賊団の潤滑油となるのがおれの役目だ。

 

…ライバルは電伝虫だな。

 

ま、まあおれは物資や人を運ぶこともできるし、戦闘もこなせるから下位互換ではないはずだ。

 

それにこれはあくまで名目であるし、おれの本当の狙いとしては、自由に厨房に出入りしたり、航海士の仕事を見物することなので問題ない。

 

下手に役割を固定されてしまうより、おれは色々な事に手を出したいのだ。

 

そうでもしないと、6本もあるので手が余ってしまう。

 

 

こうしておれは白ひげ海賊団の一員となった。

 

 

と、その前に一度魚人島へ戻り、無事にお礼状と感謝の品を渡せたことを国王ネプチューンに報告した。

 

ジンベエ兄貴からは、白ひげのオヤジさんのお役に立てるように、と激励をもらった。

 

復興しつつある魚人街の皆も、これはめでたいと喜んでくれた。

 

元々は無法者の集まりであったが、この非常事態を協力して乗り越えたことで、連帯感と仲間意識が生まれたようだ。

 

足を洗ってタイガーの大兄貴の子分になったやつも多い。

 

タイガーの大兄貴もしばらくは冒険よりも魚人街を取りまとめることに集中するようだ。

 

おれだけ航海に行くことを申し訳なく思ったが、大兄貴は笑いながら、そんなことは気にせず行ってこい、と背中を押してくれた。

 

はっちゃんや店主夫妻にも暫しの別れを告げ、おれは再び冒険に出た。

 

はっちゃんは、次に会うときはおれも少しは強くなっているぞ、と意気込んでいたので、おすすめの修行方法を教えておいた。

 

 

余談だが、アホサメとも鉢合った。

 

魚人街防衛にも積極的に力を尽くしていたようだし、一応幼なじみでもあるので、一言声をかけようとしたのだが、向こうから避けられてしまった。

 

…おれ何かやったか?

 

まだ昔ぼこぼこにしたことを根に持っているのかな。

 

 

 

 

その後、オヤジさんにもらったビブルカードを頼りに白ひげ海賊団に合流した頃にはおれは18才になっていた。

 

 

白ひげ海賊団はラフテルやワンピースを狙っているわけではなく、オヤジさんの気のむくままに冒険をしているようだった。

 

例えるなら、周りが全国大会を目指して活動している部活動ばかりなのに対して、ゆるーい同好会のような雰囲気だ。

 

これはこれで楽しい。

 

白ひげ海賊団は家族のようなアットホームな職場です。

 

 

それでいて、当代で最強と目される海賊団なのだから、周囲は堪ったものではないだろう。

 

実際にオヤジさんの首を獲って名を上げようとする輩は絶えない。

 

大抵はオヤジさんが出るまでもないのだが、たまに活きがいい奴らがいた。

 

クロコダイルなんかはその筆頭だ。 

 

しかし、以前あのバレットと争って決着が付かなかったそうだが、そこまでの強さは感じなかった。

 

バレットが知略で嵌められたか、あるいはスナスナの能力は厄介なので仕留めきれずに逃してしまったのだろうな。

 

とはいえ、まだまだ大海賊時代以前の大物海賊達も残っているし、何よりロジャーの首の次は白ひげだと言わんばかりに攻めてくる海軍の精鋭達は厄介であった。

 

時には隊長が倒されることもあったが、オヤジさんはそんな相手をも軽々と粉砕した。

 

まさにロジャー船長を彷彿とさせる圧倒的な力だ。

 

試しにおれと戦ってもらったのが、おれの攻撃は全て予見されているように避けられ、逆にオヤジさんの一撃はおれの六刀流の防御を貫いた。

 

これ程の一撃を受けたのは師匠との最後の立ち会い以来だ。

 

それでも以前に比べて気絶することはなかったし、剣を折られることもなかった。

 

おれも成長しているのかもしれない。

 

 

オヤジさんにどうしたらそこまで強い一撃を放てるのか聞いてみた。

 

そこで驚愕の事実を知った。

 

オヤジさんやロジャー船長や師匠は、武装色だけでなく、覇王色の覇気をも纏った一撃を放てるそうだ。

 

…Qrnz*1マジカヨ。

 

覇王色って雑魚狩り専用じゃなかったのか…。

 

膝をついてガックリと落ち込んだおれを見かねたのか、武装色にも次の段階があることを教えてくれた。

 

それは外に纏う覇気と、内部破壊だ。

 

まず前者だが、身体の中を取り巻く不必要な覇気を流すことによって、直接触れずに対象を弾き飛ばすことができるそうだ。

 

そういえば師匠もそんなことをやっていたな。

 

あれってただ武装色で硬化しているだけではなかったのか。

 

…教えてくれてもいいじゃないか。

 

まあ、手本があるのに見て盗めなかったおれも未熟だったな。

 

次に後者だが、さらにもう一段上の段階に達したことにより、覇気は敵や物体の内部に到達し、内部(体内)から破壊することができるそうだ。

 

…何それ怖い。

 

 

でも、これで希望が持てた。

 

覇王色を持たない一般タコ魚人でも鍛えればまだまだ先があるってことだ。

 

その日から、おれは仲間達にも協力してもらってより一層の修行に励んだ。

 

 

おれはそんな風にマルコやジョズと覇気の修行をしたり、厨房でサッチと料理対決をしたり、魚人のナミュールと泳ぎで競争したり、ビスタに剣術の指導を受けたり、充実した日々を過ごしていた。

 

しかし、そんな平和なおれ達とは異なり、世間では色んな事件が起こっていた。

 

例えばバレット(22歳)がバスターコールをかけられて、捕縛された。

そのままインペルダウンに投獄されたようだ。

 

…そこまで深く関わりがなかったとはいえ、かつての仲間が捕まるのはいい気がしないな。

 

バスターコールか。

 

いずれそれくらいは跳ね除けられる実力を身に付けたいな。

 

 

他にも聞き逃せないニュースが耳に入ってきた。

 

ワノ国で百獣海賊団とゲッコー海賊団の戦争が勃発し、カイドウ(36才)がモリア(27才)を破ったそうだ。

 

…モリアといえばあの王下七武海になる男だよな。

 

そしてカイドウはいずれは四皇になるはずだ。

 

そんな大物二人がぶつかり合うなんて、ワノ国もただではすまなかっただろうし、あのおでんが黙っていないだろう。

 

それなのに、おでんについての情報がない。

 

鎖国国家だから情報が外に出てこないのは仕方ないにしても、心配だ。

 

そうオヤジさんに伝えて、ワノ国に行こうと提案したのだが、ちょうどタイミングが悪かった。

 

白ひげ海賊団はビッグ・マム海賊団と小競り合いをしている最中だったのだ。

 

その発端は、白ひげ海賊団が保護した島にある。

 

オヤジさんは、家族と共に冒険ができれば満足といったお方だが、その冒険の傍らで、魚人島にしてくれたように、力の無い島を縄張りにして保護する活動をしていた。

 

その内の1つがお菓子の名産地で、ビッグ・マムに目を付けられてしまったのだ。

 

そのため、お互いが島を巡って争い膠着状態に陥り、下手に船を動かせない状態であった。

 

おれにとっても、自衛力の無い島の保護といえば他人事ではない。

 

おでんのことは心配だが、死んでも死にそうにないし、大丈夫だろう。

 

トキさんや子供達もおでんなら守れるはずだ。

 

それより目の前のか弱き島を守る方が今のおれにとっては重要だ。

 

 

 

 

そうして月日が流れ、ようやくビッグ・マム海賊団が諦めた頃にはおれは19才になっていた。

 

いや、執念深すぎる。

 

何度か戦ったビッグ・マムの子供達は癖のある能力者が多く厄介だったので、もうやり合いたくないな。

 

 

さて、そうしてまたおれたちは出航し、冒険をしたり、弱い島を保護したりしていた。

 

 

そんな時に入ってきたのが、オハラにバスターコールがかけられたニュースだ。

 

…そうか、この時期だったのか。

 

ロビンちゃんを保護しようにも手がかりがないし、ここ新世界から西の海までは流石に遠すぎる。

 

おれには無事を祈ることしかできない。

 

 

他にも一大事件があった。

 

シキがインペルダウンを脱獄したのだ。

 

このニュースは白ひげに会いに来たシキ本人から聞かされた。

 

その際、一合打ち合った。

 

どうやらおれの顔を覚えていたようで、ロジャー船長を守れなかったくせにのうのうと生きてることがムカついたそうだ。

 

当時は見習いレベルだったのにその顔まで覚えているなんて、ロジャー海賊団の事を好きすぎるだろ。

 

おれはロジャー船長が不治の病にかかっていたこと、船長はおそらく自首したであろうことを伝えた。

 

シキはショックを受けたようだ。

 

それでも、すぐさま立ち直ったのは流石だ。

 

数年囚われていたことと、両足を切り飛ばして脱獄してきた関係で、大分弱っているようだが、その状況でなお次を見据えて悪巧みを止めないその姿は、ロジャー船長世代の大海賊の名に恥じぬ姿だった。

 

 

 

 

 

꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂

 

なっちゃん:この度白ひげ海賊団の特別部隊長(1人)になった。

本業は連絡員だが、白ひげ海賊団のあらゆる仕事場に出没し、学びながら手伝っている。

特にコック達からは貴重な即戦力として頼りにされている。

航海士達にとっても、新世界の海図や気象の知識を交換してくれたり、海の生物から情報を集めてくれたりするので助かっている。

最近は、傷だらけのはっちゃんのことがトラウマになったのか、自分でも応急処置くらいはできるようになろうと船医の所にも顔を出している。

美味しいデザートを対価に知識を得ているようだ。

 

白ひげ:おでんのことは多少気になるが、自分の弟分なんだから問題ないと思っている。

 

マルコ:修行仲間。好物のパイナップルを使ったデザートを作ってくれるので、船医としての知識を教えることもある。

 

ジョズ:修行仲間。最近、外に纏う覇気を覚えたなっちゃんにダイアモンドの身体を斬られたので焦りを感じている。

 

サッチ:コック仲間。なっちゃんはレシピの引き出しが多く、張り合いがある。一度の作業量では分が悪いが、味付けや調理の丁寧さでは負けないと思っている。

 

ナミュール:魚人仲間。なっちゃんが地上戦に比べると、海中戦がまだまだなっていないことを勿体無いと感じている。とりあえず、泳ぎの競争という形で鍛えている。

 

ビッグ・マム:ーーー白ひげ海賊団は許さねぇ。

*1
ガックリしたポーズを表す。Qが頭とタコの口、rとnが胴体(3対の腕)、zが脚を表すアスキーアート




感想で来た質問に対して、皆さんにも共有した方がいいものがありましたので、その概要をまとめました。
読まなくても問題ないので、読み飛ばしてもらっても構いません。
また、感想欄をご覧になっている人にとっては重複する内容となっております。
ご了承ください。



Q.ブルックがグランドライン一周の約束を諦め逆走してラブーン会いに行ったことが解釈違い。筆者はどう解釈しているのか。


A.本作のブルックが置かれた状況において、原作とは異なる要素がいくつかあります。

①グランドラインを冒険中で、かつ自身を仲間に誘ってくれる信頼できる海賊団がいない
②心配をかけた親友(クロッカス)が命の危険がある航海に出てまで探しに来てくれた

その上で、ルンバー海賊団から、もしも生き返ったらラブーンに渡すという約束で最期の演奏を託されているわけです。

確かに男が一度交わした約束を果たせないことをブルックは恥と思うかもしれません。

それでも、「男が一度必ず帰ると言った」上で、「ラブーンにトーンダイアルを渡す」という約束までしたのです。

また、①の要素がなく、グランドラインを一周できると確信できるような信頼できる仲間もいません。

そんな中で②の要素もあるのです。

ここまでしてくれたクロッカスを放っておいてまたグランドライン一周を目指して一人で当てのない冒険に出るというのは、それこそ約束を果たせないことを何より厭うくらい義理堅いブルックらしくないのではないでしょうか。

と、いうのが私の解釈です。



Q.魚人島が被害を受ける原因となった大海賊時代という元凶を作ったロジャー船長に恨みはないのか?
原作で知っていたのだから大海賊時代を止めようとは考えなかったのか?


A.恨みはないですが、なっちゃんがロジャー船長に抱く思いは複雑なのです。

当初はぶっちゃけ原作の舞台装置に過ぎないと思っていました。

魚人島編までの原作知識に詳しい描写がそこまで無かったので、それは仕方ない面があるでしょう。

本作でも船に乗った辺りはロジャー船長との絡みはあまり独白されていません。

それだけ彼という存在に現実感がなかったのでしょう。

しかし、実際に生身で冒険に出てみるとロジャー船長のカリスマを否応なしに体感します。

この人とならば、どこまででも行けるという絶対な信頼感。

そのようなある種信仰的な思いも芽生えたのでしょう(なにせ思い込みだけで6本腕を信仰するような主人公なので)。

今度は畏れ多くて絡むことがありませんでしたが、クロッカスさんに対して、ロジャー船長の苦痛を和らげてくれた恩義をあれほどまでに感じていたのは、そうしたロジャー船長への心の変化があったのかもしれません。

そんななっちゃんにとって、尊敬するロジャー船長の最期の大一番を妨害するなんて考えもしませんでした。

その点では、まさに指摘してくださった通りです。

後先なんて深く考えず、その場の感情で行動する。

昔に見たマンガの流れよりも目の前の現実を優先する。

なっちゃんはまさに脳筋なのです。

また、それはそれとして原作知識をちゃっかり活用するずる賢い部分もあります。



Q.六話で正気を失ったような表現の後に、「記憶が曖昧」だとあるが、一人称の説明口調だから普通に記憶があるように感じてしまう。自分で自分を客観視できているのではないか。


A.そのような感想を抱くのは実は正解なんです(感想に正解も不正解もないとは重々承知ですが、ここでは筆者の意図したという意味で正解です)。

ロジャー海賊団にいてなっちゃんが人を殺める描写はありませんでしたね。

ロジャー海賊団がカタギ以外には容赦がないのはスクアードの件をとっても明らかなのに、です。

それでもなっちゃんが不殺でこれたのは、前世の倫理観が残っていたということと、本人が弱かったこと、周りのクルーが強くて頼りになったということなど、様々な理由があります。

簡単にいえば、周りに甘えていたのですね。

そんななっちゃんが1人になり、プッツンしてついに人を手にかけてしまいました。

いつかその日がくると覚悟していただろうとはいえ、それまでの疲労もあり、精神には相当な負荷がかかっていたでしょう。

忘れたくても忘れられません。

ですが、やはり忘れたいのです。

本文はなっちゃんの心の声を描写しているという側面があります。

そこで記憶が曖昧だ、と言っているということは、そういうことにしておきたいと、自分に言い聞かせているのではないでしょうか。



Q.魚人島に行くまでに海底を通らないといけないから、魚人島に近づいてきた海賊船のシャボン割りまくる方が効率的なのでは?シャボン割るだけで船の人員は水圧で死ぬだろうし、能力者はさらにアウトだろうから、島に入らせない海中防御線を築いた方が早いのでは?

A.その戦法は有効でしょうね。

ただ、なっちゃんが魚人街に帰還した時点ではもう既に海賊が押し寄せてきていました。

海中に防衛ラインを引く前から市街地戦が始まっているようなもので、そこからさらに手が足りなくなる程たくさんの敵が雪崩れ込んできました。

さすがのなっちゃんでも市街地に入ってきた敵を追い返すして戦線維持することが精一杯で、防衛線の構築まではできませんでした。

ネプチューン国王には今後の防衛計画を見直してもらいたいですね。


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原作開始15年前(24才)~、タイヨウの海賊団

アンケートありがとうございます。
締め切りさせてもらいました。
最終的に、ナシの人が600人を越える大人数でしたので、ONE PIECE FILM REDのキャラは登場させない方向でいきます。
元から映画を見る前にプロットを作っていたので、今後のストーリーに影響することはありませんが、その登場を期待していた方々には申し訳ありません。
もしかしたら、本編終了後に、IFの番外編として書くかもしれませんね。
その場合はタグや前書きなので注意喚起を必ず行いますので、とりあえず、本作の本編が終了するまでは、映画のネタバレを気にすることなくお楽しみください。

それと皆様のおかげで週間ランキングの1位も飾ることができました。

本当にありがとうございます。

毎度のことながら、誤字報告も助かっております。

気軽にご感想ください。


シキと邂逅したあの日から5年の月日が経過した。

 

おれは久しぶりに魚人島へ帰郷していた。

 

魚人街はすっかり復興していた。

むしろ、一度破壊されて国の手が入ったことにより治安も良くなっていた。

 

とはいえ、スリや盗みは蔓延っているし、みなし児の数は未だに減らないようだ。

 

白ひげのナワバリだから大々的に攻め入ってくる海賊団はいないが、迂闊に外に出た人魚が誘拐されたり、気性の荒い魚人が海賊と諍いを起こしたり等は珍しくない。

 

そうして親を失った子供が最後にたどり着くのが魚人街だ。

 

 

…この現状を変えたいのだが、おれにはいい方法が思い付かない。

 

とりあえず、今日の所は恒例のはっちゃんや店主夫妻との宴だな。

 

 

21才になったはっちゃんはもうすっかり大人の身体になっていた。

 

おれが教えたトレーニングメニューをこなしてきただけあって、原作よりもガタイが良いくらいだ。

 

とはいえ、通っている剣の道場では中々勝てない相手がいるようだが。

 

まあ、はっちゃんの本業はコックなのだから本職の剣士に負けるのは仕方ない。

 

重要なのは命を守る術を手に入れることだ。

 

その点、はっちゃん用六刀流特訓メニューは守りの型を中心に組んでいる。

 

墨を吐いて目眩ましもできるので、生存能力ではその剣士にも負けないかもしれないな。

 

そういえば、おれもたまに魚人島へ立ち寄った際などに、はっちゃんにコツを教わり墨を吐けるようになった。

 

これが意外と戦闘に役に立った。

 

目眩ましだけでなく、墨を口の中に貯めて、それを覇気で固めて放つことで、暗器のようにも使えるのだ。

 

この威力はけっこうバカにならないもので、そこらのピストルよりもはるかに破壊力がある。

 

何より相手からしたらノーモーションで放たれることになるので、意表を突ける。

 

また、はっちゃんに吸盤の使い方もレクチャーしてもらった。

 

おかげで、吸盤を利用したサブミッションの技をいくつか開発できた。

 

おれの吸盤と6本腕からなる拘束は、実験台になったジョズのパワーでも抜け出せないものだった。

 

拘束した後は関節技をかけてもいいし、海に引きずり込んでもいい。

 

中々凶悪な攻撃方法になったと思う。

 

 

このように、前世になかった身体能力を使うことに関しては、はっちゃんの方が優れていた。

 

流石おれの弟だな。

 

そんな自慢の弟との宴は楽しかった。

 

おれはここ数年の冒険を語った。

 

 

大海賊時代が始まって7年。

 

急な海賊の増加により蹂躙されていた島々の多くは、白ひげ海賊団のナワバリになった。

 

おれも特に人攫いをしているような輩がいたら容赦しなかった。

 

勿論そんな活動をしていると、海賊達からも疎まれるし、名を上げるために挑んでくる海賊団もたくさんいたので、大なり小なり戦闘が絶えなかった。

 

おれは身軽な特別部隊(1人)なことを活用して、各隊の危ない所のフォローに回ったり、ナミュールと一緒に敵船を海中から破壊しに行ったりと我ながら大活躍だった。

 

その分、おれが一対一で強い敵と戦う機会がなくなってしまったが、そこは修行と模擬戦でカバーしているので、少しは強くなっていると思う。

 

特にナミュールにはおれの海中戦闘の習熟に随分とお世話になった。

 

地上とは力の入れ方が全く異なるし、何より海中では剣を使わない戦闘方法が必要になるからだ。

 

なにせ、剣は海に浸けたら錆びる。

 

水には必ず酸素が溶け込んでいるので、船に乗る剣士は剣に油を塗って水分が届かなくすることで錆を抑える。

 

しかし油は劣化するし、海水は普通の水よりも錆を促進する成分が多量に含まれているみたいで、より早く錆びてしまう。

 

つまり、海中戦闘では極力剣を使わない方がいいのだ。

 

道理で、魚人達が空手や柔術などの素手での格闘術を磨くわけである。

 

そういえば、海中戦を得意としたサンベル先輩のエモノは、三叉槍という漁業にも使われるようなシロモノだったな。

 

そのような理由があり、今までのおれは剣士として海中戦闘能力を磨くことはあまり優先していなかったのだが、せっかくナミュールが協力的だったので、頑張ってみることにしたのだ。

 

具体的には、とにかく泳ぐスピードを上げて、その勢いで突進することの練習をたくさん行った。

 

突進こそが魚人の海中戦の基本にして奥義だ。

 

かつてサンベル先輩もそれで大型の海王類の土手っ腹に大穴を空けていたしな。

 

他には海中で自由自在に立体的な動きをできるように鍛えた。

 

これも中々難しく、高速で縦横無尽に動いていると、自分の作った波の流れが次第に邪魔になってくるのだ。

 

ナミュールというお手本がいなかったらどうなっていたことやら。

 

 

 

そんな話をした一方、はっちゃんの近況も聞いてみた。

 

はっちゃんは最近モテ期が来ているそうだ。

 

持ち前の明るさと鍛えた身体、そして去年から店の後を継いだことで出てきた威厳と風格が、ワイルドな男を好む女性に人気なのだとか。(これは元店主の奥さんから聞いた。)

 

はっちゃんもちやほやされるのは満更でもないらしく、よくこっそりデザート等をサービスしてあげているらしい。

 

店主夫妻は、はっちゃんに店を任せたとはいえ、まだ厨房にも入っているし、仕事も手伝っている。

 

いい年なんだから休めばいいのに、働いていないと落ち着かないんだとか。

 

人魚の娘さんも10才になっていて、看板娘として常連にも親しまれているようだ。

 

はっちゃんのことを実の兄のように慕っているみたいだ。

 

はっちゃんの後ろを付いて回って、ハチにぃと呼ぶその姿は愛らしい。

 

昔のはっちゃんを思い出すな。

 

ちなみにおれはナナおじちゃんと呼ばれている。

 

…おじちゃんか。

 

おれはまだ20代なんだけどな…。

 

 

オヤジさんの船は一家団欒って感じで居心地が良いのだが、ここは実家のような安心感があるな。

 

本当にこの店主夫妻を紹介してくれたタイガーの大兄貴には頭が上がらないな。

 

 

その後も色々な話で盛り上がり、おれが白ひげ海賊団で磨いた宴会芸用の演奏も披露して宴もたけなわになった頃、話題は魚人島の最新のニュースに移った。

 

どうやら、オトヒメ王妃が翌年の世界会議にて魚人の地上への移住の意思を示すための署名運動を始めたそうだ。

 

 

…そういえば、そんな出来事もあったかな。

 

もう原作を最後に読んだのは24年以上は前か。

 

この後何が起こるんだっけな。

 

オトヒメ王妃が亡くなることはかろうじて覚えているので、それはなんとか防ぎたい。

 

かつて魚人街を復興するのにも尽力してくれた恩があるからな。

 

そうして、皆に見送られて再び白ひげ海賊団に戻った。

 

タイガーの大兄貴に挨拶したかったが、ここ何年かは冒険に出て帰ってきてないそうだ。

 

 

そして、1年が過ぎた。

 

おれは25才になった。

 

魚人島のはっちゃんからの手紙によると(白ひげ海賊団に入ったおかげで補給地用のナワバリに手紙を出せば、いずれは手元まで届くようになったのだ)、数年ぶりにフィッシャー・タイガーが魚人島へ帰還したそうだ。

 

他にもしらほしという姫が生誕したらしい。

 

…そういえば、かつてのシャーリーの予言から10年だ。

 

もしかしたら、その姫がポセイドンなのかもしれないな。

 

ロジャー船長が会えなかった存在だし、一目会ってみたいな。

 

…でも最近、子供に怖がられることが多いんだよな。

 

どうにか好印象をもってもらいたい。

 

あくまで宴会芸として軽く触っていた程度の楽器の腕をもっと磨こうかな。

 

とりあえず、子守唄系の曲を練習するか。

 

音楽家の仲間に色々教えてもらおう。

 

 

 

 

26才になった。

 

おれは相変わらず白ひげ海賊団で楽しい航海を続けていたのだが、おれにとって重大なニュースが耳に入ってきた。

 

フィッシャー・タイガーが、レッドラインの大陸を素手でよじ登って聖地マリージョアに乗り込んで暴れ回り、世界貴族の奴隷を人種を区別することなく解放したのだ。

 

さすが、大兄貴だ。

すげぇや。

 

しかしこれから先、かんかんに怒った天竜人によって大兄貴は海軍から執拗に狙われるだろう。

 

見過ごすわけにはいかないな。

 

 

おれは不義理を承知でオヤジさんに船を降りることを伝えた。

 

白ひげ海賊団と縁を切らないままにタイガー大兄貴を助けに行ったら、海軍に今回の事件の裏に白ひげ海賊団がいると勘違いされるかもしれない。

 

それは避けなければならないからだ。

 

この9年間で、おれも海軍の中で白ひげ海賊団の要注意人物と見なされているようだからな。

 

オヤジさんは、しばらく無言で圧をかけてきたが、おれが既に覚悟を決めていることを悟り、好きにしろ、と一言放った。

 

おれはオヤジさん、いやオヤジに今までの感謝を述べた。

 

 

息子にしてくれてありがとう、と。

 

 

そして、クルー達に惜しまれつつも簡単に別れを告げ、いざ出発しようとした時、オヤジが言った。

 

 

船を降りてもおれの息子には変わらねぇ。

 

元気でやんな。

 

 

おれはもちろん涙なんか流さなかった。

 

男が親から一人立ちしようってんだ。

 

涙は似合わない。

 

 

 

 

おれはタイガーの大兄貴に合流した。

 

そこで嬉しいニュースがあった。

 

なんとおれとはっちゃんの生き別れた両親が奴隷から解放されて戻ってきていたのだ!

 

どうやら、人攫いに捕まった後、各地を奴隷として転々とし、そのしまいには数年前にそれぞれ別ルートで世界貴族の奴隷になったようだ。

 

魚人の父親は天竜人の椅子として、人魚の母親は水槽で見世物になっていたようだ。

 

タイガーの大兄貴のおかげでなんとか逃げてこれたが、精神的にとても衰弱していた上に、身体のケガや欠損、病気もあった。

 

許せねぇ。

 

 

おれは白ひげ海賊団で学んだ治療の腕を活かしてなんとか2人の一命を取り留めた。

 

また、はっちゃんは介護食や身体に良い料理を作ってあげていた。

 

父親は足を、母親は腕を失くしていたが、今後は、はっちゃんが介護してくれるらしい。

 

店主家族も協力してくれるようだ。

 

ありがてぇ。

 

おれははっちゃんの分まで大恩あるタイガー大兄貴の助けになることを誓った。

 

 

 

タイガー大兄貴を船長に、元奴隷の魚人達と大兄貴を慕う者達が集まったタイヨウの海賊団が発足した。

 

天竜人が大兄貴の命と奴隷を取り返しに狙ってくることに対抗するためだ。

 

父母のように航海に耐えられない者達以外は船に乗った。

 

ネプチューン軍で兵士をやっていたジンベエ(31才)やアホサメ達荒くれ者も加入した。

 

勿論おれもタイガー大兄貴のためにタイヨウの海賊団に加入した。

 

一応、白ひげ海賊団を抜けてタイヨウの海賊団に入ったことはニュースクーを通して世界経済新聞社に伝えておいた。

 

これでオヤジに迷惑がかかることはないだろう。

 

こうして元奴隷の区別がつかないように、身体にタイヨウのシンボルの焼印を入れたおれ達は、海へと出航した。

 

 

 

 

 

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なっちゃん:身長が3メートルを越えて筋肉もガチガチで腕が6本もある。まさに阿修羅のようだ。

それで子供に好かれようというのは無理がある。

よほどおじちゃん発言にショックを受けたのか。

白ひげ海賊団での長年の航海で様々なスキルを身に付けたようだ。

 

白ひげ:本当はイヤだったが、なっちゃんの覚悟を汲んだ。

実はなっちゃんが頼んだならば、フィッシャー・タイガーを保護して世界政府と全面戦争することも視野に入れていた。

しかし、その事にうすうす感づいたのか、なっちゃんは白ひげの迷惑にならないように自分で背負うことを選んだ。

 

マルコ:ーーーおれには止められねぇよい。

 

白ひげ海賊団員達:常に努力して何でもできるようになっていったなっちゃんをとても慕っている。

危ない所を助けられたクルーは多いし、仕事でも頼りになる。

常に新しいことに挑戦して修行している姿は、大きな目標や競争がなくあまり自己研鑽に励むような環境ではない白ひげ海賊団にとって良い刺激であった。

まさに皆の兄貴分のような存在だった。

 

はっちゃん:両親と再開できて嬉しい。

タイヨウの海賊団に乗ってタイガーの助けになりたかったが、なっちゃんを安心させるためにも、自分が両親を世界貴族に見つからないように匿いながら介護していくことを決意した。

 

世界経済新聞社:ーーーこりゃ大スクープだ。

かつて魚人島の悪魔とも称され、白ひげ海賊団に潜んでいた怪物が表に出てくるなんて。



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原作開始13年前(26才)~、英雄フィッシャー・タイガー

毎度のことながら、誤字報告助かっております。
毎日更新することの大変さを思い知りました。

気軽に感想ください。



おれはタイガー大兄貴のためにタイヨウの海賊団に加入した。

 

船長のタイガー大兄貴以外は明確な上下関係がある訳では無いが、ジンベエ兄貴と船医のアラディンさんは元ネプチューン軍の兵士ということもあって、タイガー大兄貴と並んで一目置かれている。

 

実質幹部のようなものだ。

 

またアホサメやマクロも自前の手下を連れてきており発言力があった。

 

おれは憎い人間の下に付いていたとして、最初は腫れ物のような扱いをされていた。

 

まあ、美味しい料理を振る舞っている内にわだかまりも解けたのだが。

 

魚人は海について感覚的に詳しい上に、冒険の経験が豊富なタイガー大兄貴や、操舵の得意なジンベエ兄貴がいたので、航海で困ることはそうそうなかった。

 

船の軽い修理や点検くらいなら白ひげ海賊団で船大工の仕事も手伝っていたおれなら可能なことだしな。

 

船医としてもおれより凄腕のアラディンさんがいた。

 

何より、海上戦において魚人の集団に勝てる者はいない。

 

おれたちの航海は順調であった。

 

 

おれたちは海賊団と名乗っているが、結成の経緯が行き場のない脱走した魚人や人魚奴隷達の受け皿であったため、海賊行為もそれほど行わなかった。

 

自分達は野蛮な人間達とは違う、というタイガー大兄貴の信念から不殺を貫いていたのだ。

 

おれは人間自体に恨みがあるわけではないが、人攫いや奴隷を使っている奴らは許せない。

 

そうした相手についついやりすぎてしまうことがあった。

 

ジンベエ兄貴が止めてくれるおかげで命を奪うまではいかなかったが。

 

アーロンを筆頭に構成員の一部は、不殺を手ぬるいと言っていたが、タイガー大兄貴はその意見に耳を貸すことはなかった。

 

おれも次第にその気持ちと覚悟を汲み、自分の感情を優先してやりすぎることはなくなっていった。

 

 

海軍はひっきりなしにやってきたが、おれたちは毎回軍艦を破壊してやって返り討ちにしてきた。

 

一応一隻は残すようにしているので、溺れて全滅することはないだろう。

 

頑張って救助するんだな。

 

その間に時間も稼げるしな。

 

 

こうして海軍を撃退している内に、海上戦において右に出るものナシ、とおれたちの名はどんどん売れていった。

 

世間的には魚人海賊団と呼ばれることもあるが、おれら自身は一貫してタイヨウの海賊団と名乗っている。

 

太陽は暗い海の底に住む魚人達にとっての憧れだからだ。

 

しかし、その事が何かの逆鱗に触れたのか、一時期世界政府直属のCPが頻繁に暗殺にやってくることもあった。

 

なぜタイヨウの海賊団と名乗っているのかを執拗に詰問してきたり、タイヨウについて何か知っているなら吐けと言ってきたり、あれは何だったのだろうか。

 

しばらくしたら、おれやジンベエ兄貴にぶっ飛ばされ続けて諦めたのか、やって来なくなったが。

 

他にも有名になったおれたちを倒して名を挙げようとする輩が後を絶たなかった。

 

まあ、今さらグランドライン前半の海で苦戦するようなおれではない。

 

それでも中には光る原石のような奴や、磨けば厄介になりそうな能力者はいた。

 

おれやタイガー大兄貴やジンベエ兄貴以外の船員にはキツい相手もいたが、そんな奴らも船を壊されたらどうしようもない。

 

おれらが敵の主力と戦っている間にあまり戦闘が得意でない船員達が相手の船底を攻撃する。

 

これが必勝法というものだ。

 

 

そうしていると人間達も馬鹿ではないので、情報網を引いている海軍はおれたちの航路を推定して先回りして、補給に寄るであろう島で待ち伏せしてくるようになった。

 

その場合もおれが先行して上陸すれば見聞色で見破れるし、なんなら全員そのまま倒してしまうこともあった。

 

おれはタイヨウの海賊団でも珍しい地上の方が強いタイプの魚人だからな。

 

中には少将もいたが、もう鍛えて12年以上になるおれの武装色と、白ひげ海賊団で花剣のビスタといった剣士達と切磋琢磨して磨いた六刀流に敵う程ではなかった。

 

 

 

 

そうして航海を始めて1年も経過すると、おれたちにも余裕ができてきた。

 

元奴隷で衰弱していたクルー等も船医のアラディンさんのケアやおれの栄養のある料理のおかげもあってすっかり元気になっていた。

 

…今はまだいいが、元々この海賊団は逃亡者として始まっている。

 

そのため、終わりがみえないし、航海の目標もない。

 

未だに海軍の追跡は必死で、心休まる時も少ない。

 

こんな状況では素直に冒険を楽しむこともできない。

 

これではその内にリタイアしたがる船員が増えるだろう。

 

こうした懸念をタイガー大兄貴も感じていたのか、時には未開の島に赴き冒険を楽しむことがあった。

 

それがいいガス抜きになったように思う。

 

せっかく航海に出てるんだから、冒険を楽しんでもらいたい。

 

その間の海軍の追っ手などは、おれが引き付けておいた。

 

これも船員の心のケアだと思えばさしたる苦労でもない。

 

これでも医者の心得があるからな。

 

 

 

個人的に嬉しいニュースもあった。

 

ロジャー海賊団の恩人であるトムさんが、海列車を完成させたのだ。

 

おお、やったなトムさん。

 

夢を叶えたんだ!

 

流石だぜ。

 

 

新聞によると、海賊王の船を造った罪で処刑される所を10年の執行猶予を与えられて、海列車の開発をしていたらしい。

これで海列車が問題なければ、処刑の罪はその功績と相殺されるそうだ。

 

…しかし、たしか原作でトムさんは亡くなっていたはず。

 

細かい流れは忘れたが、確か裁判でハメられたんだっけか。

 

オーロ・ジャクソン号は偉大な船だった。

 

その恩人を死なすわけにはいかない。

 

おれはエニエス・ロビーやウォーター・セブンのニュースに目を光らせておくことにした。

 

 

 

また、1年が経過し、おれは28才になった。

 

ちなみにアホサメも同い年である。

 

2年も同じ船に乗っていれば避けられていてもそこそこ関わることがある。

 

どうやら、おれは恐れられているようだ。

 

…何故?

 

まあいいや。

 

他にもマクロ一味などおれにビビっている船員はいるが、大多数の船員とは仲良しだからな。

 

やっぱり胃袋を掴んでいるのはでかいな。

 

怪我人には応急処置をしてやることがあるし、たまの贅沢で酒盛りをする時は楽器(私物の持ち込み)を弾いて盛り上げたりしてるので、好感度は上々だろう。

 

おかげで、色々学ぶこともあった。

 

戦闘力でいえば正直差がありすぎるわけだが、それでも魚人達が使う様々な技は見るだけで参考になったし、教わることもあった。

 

例えば泳ぎ方1つとっても、おれより遅い奴でもフォームはキレイだったりといった感じだ。

 

おれの泳ぎ方は力任せが10割だからな。

 

魚人は体格や体型がそれぞれ違うので、自分の身体に合った最適な泳ぎ方を自分1人で模索しなければならないのが辛いところだ。

 

他にも学ぶことはあった。

 

それもはっちゃんの幼なじみ達にだ。

 

まず1人目はチュウというキスの魚人だ。

 

彼は水鉄砲という水分を口から発射して攻撃する技術をもっている。

 

おれの場合は墨だが、飛ばす時の口の中の形や呼吸方法を工夫することで、まだまだ強化できるとお墨付きをもらった。

 

練習あるのみだな。

 

2人目はクロオビといった。

 

彼は二刀流を使う傍ら、魚人空手も修めている。

 

おれから剣術を教える代わりに魚人空手の基礎を教わった。

 

 

魚人空手の基本にして真髄は、周囲一帯の水の制圧、だそうだ。

 

水中や水面などは勿論、大気中や物質内に存在するあらゆる水を利用する、とのこと。

 

…全くわからん。

 

水中で威力が落ちないのもそれが理由らしい。

 

また、ジンベエ兄貴クラスの実力者になると、例えば大気中の水に振動や衝撃を伝える事で触れずに敵を倒す、といった芸当さえ可能となるそうだ。 

 

確かにそんな光景を見たことあるな。

 

あれはそういう原理だったのか。

 

 

おれは魚人空手の水を制圧するという感覚がうまく掴めず苦戦したのだが、クロオビの教えはわかりやすかったため、1年かけてようやくその基礎を修めることができた。

 

途中ジンベエ兄貴にもコツを教わりに行ったのだが、あまり効果がなかった。

 

理論の教え方は理路整然としてわかりやすいのだが、肝心の実践になると、出来ない人の何がわからないのかわからない、といった天才タイプだったのだ。

 

一方でクロオビ、いやクロオビ先生(年下)は努力タイプだったので、不出来なおれにも寄り添って根気よく教えてくれた。

 

ありがとう、先生。

 

この恩は忘れないぜ。

 

 

おれは魚人空手の技術をどうにか六刀流の剣術に活かせないか研究(修行)をはじめた。

 

 

 

そしてまた時が経ち、おれやアホサメが29才になった頃、とある島でコアラという少女を預かった。

 

どうやら3年前にタイガー大兄貴が解放した奴隷達の中の1人らしく、故郷のフールシャウト島まで連れていくことになったのだ。

 

船に乗った当初は、奴隷の生き方が体に染み付いていた為に、怯えながらも常に笑顔を絶やさずにいるという異常な状態だった。

 

しかし、タイガー大兄貴がコアラの背中にあった天竜人の烙印を太陽のシンボルに変え、おれたちは天竜人とは違うと叱咤して以降は、徐々に子供らしい本来の感情を取り戻しつつある。

 

よかった。

 

子供が笑うことは良いことだが、それは怒ったり泣いたりできる中での笑いだ。

 

決して強制されるべきものじゃない。

 

天竜人、許すまじ。

 

…っと少し殺気が漏れたせいでコアラを怖がらせてしまった。

 

ここはおれ特製のデザートと演奏で機嫌をとるしかないな。

 

子供からは好かれたい。

 

なにせまだ20代のお兄さんだからな!

 

 

 

その後、無事にフールシャウト島にたどり着いた。

 

しかし、これは何か嫌なカンジがするな。

 

そう思って見聞色で島を探っても強者の気配はない。

 

…勘違いか?

 

それでも心配だったおれはコアラを見送りに行くタイガー大兄貴に付いていくことにした。

 

コアラを無事に送り届けて、さあ帰ろうかとしたその時、途轍もない強者の気配が超高速でこちらへ向かってくるのを感知した。

 

なんだ取り越し苦労か、と安堵していたおれは咄嗟の反応が遅れ、タイガー大兄貴への攻撃を許してしまった。

 

タイガー大兄貴の身体に穴が空いてしまった。

 

ようやくその下手人に反撃できたおれはその姿を見て驚いた。

 

…こいつは未来の大将黄猿だ。

 

ボルサリーノ中将と名乗ったその男はおれに降伏を呼び掛けてきた。

 

どうやらおれを警戒して、おれの見聞色の感知範囲外から、光の速さで襲撃してきたようだ。

 

しかもその狙いがおれではなく、タイガー大兄貴だったために反応が遅れてしまった。

 

…確かにこの男の言うように降伏の交換条件として重傷を負ったタイガー大兄貴の手当てを望むことは現状の最適解なのかもしれない。

 

それでも、おれはもっといい答えを知っている。

 

それは今ここでこの男を斬ることだ。

 

 

ーーー六刀流、奥義、蛸足鬼剣

 

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

おれがタイガー大兄貴を担いで船に戻ると、ボルサリーノ中将の部下の部隊が襲撃してきた所だった。

 

その部隊のリーダー、ストロベリー少将はおれ達がいち早く戻ってきたことに驚愕していた。

 

早く助けに行かないとそっちの中将も出血多量で死んじゃうかもな。

 

おれの脅しが効いたのか、はたまたぐったりしたタイガー大兄貴を見て最低限の仕事は果たしたと判断したのか、すぐさま撤退していった。

 

おれもすぐさまタイガー大兄貴をアラディンさんに診てもらった。

 

おれの応急処置による止血がよかったのか、何とか一命は取り留めた。

 

まさか、覇気で固めた墨でケガの穴を一時的にでも塞げると思いもよらなかった。

 

墨に物質を弾く武装色を纏わせたことが、止血の役割になったらしい。

 

もちろんおれの墨は液体なので、すぐ出血に押し流されてしまうが、少なくとも、アラディンさんの治療が間に合うくらいには、止血に役立ったようだ。

 

しかし、アラディンさんによると、血を流しすぎた後遺症で、もう航海に耐えることはできないかもしれないらしい。

 

後日、半身が痺れる後遺症が残ったタイガー大兄貴は海賊団を引退することを告げた。

 

ただ、引退といっても生きてる限りは海軍や世界政府に狙われるだろう。

 

そうおれたちが頭を悩ませていると、船員から報告があった。

 

どうやらアホサメが1人で勝手に密告したであろうフールシャウト島に復讐に行ったのだ。

 

よほど、敬愛する大兄貴が人間の裏切りによって半身不随にされたことが頭にきたらしい。

 

怪我人のタイガー大兄貴を乗せたまま戻るわけにも行かないおれたちは、アホサメが無事に戻ってくることを願った。

 

しかし、その願いも虚しく、アホサメは捕まったようだ。

 

だが、あいつはただでは転ばなかった。

 

逮捕された先でタイガー大兄貴が人間達に輸血を断られたせいで死んだと証言したようだ。

 

世界経済新聞でも魚人海賊団の船長が死んだと喧伝している。

 

…もう戦えない身体になった大兄貴のためにそんな嘘をつくとは考えたな。

 

やるじゃないか、アーロン。

 

 

おれたちはタイガー大兄貴を魚人街に匿った後、世間の目を逸らすために、ジンベエ兄貴を二代目船長として派手にアピールしながら暴れまわった。

 

 

 

 

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なっちゃん:医者の心得といっても、正式に学んだわけではないので、病気などには対処のしようがない。一方で外傷への治療に対しては熟練の腕×6をもっている。

昔は必殺技がないことで頭を悩ませていたが、白ひげ海賊団での空白期間中にどうやら色々開発していたようだ。

その詳細はいずれ語られるだろう。

 

アーロン:自分とは異なり人への恨みを晴らすための圧倒的な力をもっているなっちゃんに複雑な思いがある。

同じ年ということもあって劣等感を感じている一方で、魚人街でのことを英雄視している面もある。

 

マクロー:種族に関係なく人攫いにぶちギレるやベー奴を間近で見ているので、もう人攫いをすることからは足を洗おうとこっそり決意した。

 

ジンベエ:二代目船長の座はタイガーを救ったなっちゃんに相応しいと思っているが、当の本人から年功序列だと言われたため仕方なくその座に就いた。

 

タイガー:何とか生存したが後遺症が残った。アーロンのことは残念だが、2人も後を任せられる人材がいるので心配はしていない。

人間に奴隷にされていた過去を暴露して、その恨みが消えないせいで助かる命なのに人間の血を拒み死んでしまうなんて残酷なことにならなくて済んだ人。

その闇はこれからも抱えていかなければならないが、生きていれば良いこともあるだろう。




原作死亡キャラ生存タグを追加しました。

魚人を主人公にすると決めた際に最初に思い描いたシーンをようやく描くことができました。

この物語はある意味ここを目指してスタートしました。 

無事にタイガー生存ルートまでたどり着けてよかったです。

とはいえ、なっちゃんの物語はもう少し続きます。

最後までお楽しみください。


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原作開始9年前(30才)~、魚人島と魚人街

今回でなっちゃんの物語は10話となりました。
実は、はじめは今話の内容までは1話の短編にしようと思っていたのですよね。
そんなわけである意味なっちゃんの冒険はここで一区切りつきます。
ぜひお楽しみください。


ジンベエ兄貴が船長を継いでからも、おれたちの快進撃は続いた。

 

タイガー大兄貴の意志を継いで、不殺は徹底した。

 

タイガー大兄貴のことが悔しかったのか、皆少しでも強くなろうと努力し始めた。

 

自分の種族に誇りを持つことはいいことだが、それが過信や油断に繋がることがある。

 

特にタイガー大兄貴の一件があるまでは航海も順調だったので、楽観的な雰囲気も漂いつつあった。

 

その中でも、おれは修行を欠かさなかったし、ジンベエ兄貴は魚人空手の型を日課にしていた。

 

今はもう居ないがあのアーロンさえもこっそりと鍛練していた。

 

それが、今では皆で競い合うように修行している。

 

善い哉、善い哉。

 

おれも負けてられないな。

 

最近は魚人空手や魚人柔術で水を飛ばす技を剣で再現できないか、研究(修行)している。

 

最終的には、ジンベエ兄貴みたいな衝撃波を剣で放てるようになることが目標だ。

 

適正の問題なのか、おれは飛ぶ斬撃を習得出来ていないのでぜひともマスターしたい。

 

 

 

 

そして1年が経った頃、ジンベエ兄貴に王下七武海への勧誘がきた。

 

世界政府の狗になることに反対する船員もいたが、ジンベエ兄貴はアラディンさん等の元々航海に乗り気ではなかったクルー達の為にも、この提案を受けることにした。

 

これでジンベエ兄貴の部下でいる限り、元奴隷でも海軍に襲われることがなくなったので、魚人島へ帰ることができるようになった。

 

タイガー大兄貴が奴隷を解放してからもう4年か。

 

よくこれまでの航海に耐え忍んできたな。

 

結局死人は1人も出なかったことだし、おれ達の勝ちだな。

 

ざまあみろ、世界政府。

 

 

 

また、ジンベエ兄貴の王下七武海入りは、恩赦によるアーロンの釈放に繋がった。

 

アーロンは元の海賊アーロン一味に戻ることを宣言して、反人間の気質が強い船員と共に独立した。

 

おれはカタギには手を出すなよ、と警告をした。

 

アーロンは、大兄貴の意志だから人殺しはしないが、刃向かう奴らには二度と立ち向かおうとは考えられないように魚人の恐怖を教えてやる、と息巻いていた。

 

うん、それならばヨシ。

 

おれも別に良い奴って訳ではないので、タイガー大兄貴の意志さえ守るならば問題ない。

 

ただ、仲良くなったチュウやクロオビがアーロンについていってしまったのは残念だ。

 

せっかくこの1年で鍛えまくってあげたのに。

 

というか、ずっと檻に入れられていたアーロンより、現状ではあの2人の方が強そうだな。

 

まあ、アーロンもまたこっそり修行でもするんだろうが。

 

別に皆の前で堂々と鍛えればいいのに。

 

魚人を至高の種族だなんだと謳っている手前、地道な特訓をしている姿を部下に見せたくないんだろうけど。

 

 

そして、残ったおれたちは拠点を魚人島へ移した。

 

皆にとっても待望の帰郷だ。

 

 

国王ネプチューンやオトヒメ王妃からも歓迎された。

 

国民にとってもおれたちは魚人や人魚の希望の星で、ちやほやされた。

 

普通に嬉しい。

 

1年ぶりにタイガー大兄貴にも会った。

 

後遺症を除いたケガはすっかり治っており、今では魚人街の相談役みたいなことをしているようだ。

 

ここに住む人々はタイガー大兄貴に恩と信頼があるので、世界政府にバレる心配はなさそうだ。

 

 

そしておれたちはタイガー大兄貴の前に勢揃いし、ジンベエ兄貴がタイヨウの海賊団の航海の終了を宣言した。

 

これで元奴隷の船員らは、タイガー大兄貴の支えになりたいと船を降りた。

 

任せたぜ。

 

 

残ったおれたちは、これからはこの魚人街を拠点として、王下七武海の努めを果たすことになる。

 

王下七武海には、ノルマがあるのだ。

 

王下七武海は、未開の地及び対海賊限定の略奪行為が特別に許される、敵船拿捕許可状を所持しているのだが、その収穫の何割かを世界政府に納付することが義務づけられている。

 

そうして海賊を狩ることで抑止力となることを期待されている。 

 

その見返りとして、政府からの指名手配を取り下げられ、それまでの懸賞金も抹消されるのだ。

 

まあ、ここ魚人島は新世界へ向かう海賊達が必ず通る場所だし、獲物には事欠かないな。

 

 

問題はおれの得物だ。

 

ここは海中なので剣を使うと錆びてしまう。

 

どうにか錆びない剣を探さないといけないな。

 

…最悪、子供の頃のようにサンゴを使うか?

 

今のおれならなまくらでも斬ることはできるし、武装色を纏えば強度も問題ない。

 

できるかわからないが、頑張ったらサンゴが黒刀に成らないだろうか。

 

とりあえず、魚人島のサンゴが丘で丈夫そうないいサンゴがないか漁ってみるか。

 

 

 

 

そうして海賊達を狩りまくっていたら、1年が平和に過ぎた。

 

国王ネプチューンにも協力してもらって、近海で最も丈夫で特別なサンゴを国一番の研ぎ師に研いでもらうことで、子供の頃とは桁違いに上質なサンゴ刀を手に入れた。

 

そもそも魚人島では空気や燃料は貴重なものなので、鍛冶職人がいない。

 

鍛冶の熱に耐えられる魚人や人魚も中々いないしな。

 

必然的に魚人の筋力を存分に使って海の鉱石等を加工する研ぎ師が一番の武器職人でもあるのだ。

 

そんな研ぎ師のトップでも加工に苦労する程固いサンゴで作られたサンゴ刀は最高の出来だった。

 

ちなみにおれも製作に少し関わった。

 

というのも、No.1研ぎ師でもその特殊なサンゴを削ることができる道具を持っていなかったのだ。

 

そのため、まず研ぎ師の道具づくりのために奔走することになったのだ。

 

結局は深海に住むとある大型海王類の頑丈な牙を加工することで、そのサンゴすら削ることができる道具が完成したのだ。

 

おれの身勝手で海王類を狩るのも何だったので、牙だけ貰おうとしたのだが、当然暴れられたので、これがまた大変だった。

 

ここで剣が錆びても仕方ないとして六刀流を使わなければ、牙だけ手に入れることはできなかっただろう。

 

そんなこんなで、6本も注文したこともあり、製作依頼から完成までに1年もかかってしまった。

 

後はおれの手×6に馴染ませるだけだな。

 

一本につき1t以上もあるので、これを使いこなせればおれは更に強くなれるだろう。

 

 

 

そうしてサンゴ刀が完成した頃に、聞き逃せないニュースが入ってきた。

 

トムさんの再審が行われるというものだ。

 

海列車完成から4年、近隣の島との線路開通に加え、エニエス・ロビーへの線路も完成させたトムに対して再審が行われることが決まったのだ。

 

新聞には、その功績で海賊王の船を造った罪は帳消しとなるだろう、と書いてあったが、おれはそうはならないことを覚えている。

 

急いでウォーター・セブンまで泳いだ。

 

 

 

危ない所だった。

 

トムさんは今にも処刑される所であった。

 

やはり、深海の魚人島にいると世間のニュースが入ってくるのが遅くなるな。

 

予め頼んでおいたとはいえ、いち早くトムさん関連のニュースを伝えてくれた国王ネプチューンには感謝だな。

 

おかげで間一髪トムさんを救出することが出来た。

 

ちょうど見聞色によって、トムさんをエニエス・ロビーに連行する海列車を見つけられたので、そこで拉致させてもらった。

 

一応覆面をしていったし、6本腕も隠して普通の人間(3メートル超)を装ったから、おれの犯行だとバレてないはず。

 

…バレてないといいなぁ。

 

 

トムさんは意識を失っていたので、目を覚ました時とても驚いていた。

 

どうやら麻酔銃で眠らされていたようだ。

 

事情を聞くと、フランキーの造った船を利用されて司法船襲撃の罪を被せられ、その罪を相殺するために海列車の功績を当てたため、海賊王の船を造った罪だけが残り処刑が決定されたようだ。

 

トムさんには、処刑を受けるためにエニエス・ロビーまで連れていってくれと頼まれた。

 

いくら恩人の頼みでもそれは聞けない。

 

そもそもおれは海賊という悪者だからな。

 

自由にやらせてもらうぜ。

 

 

おれは問答無用でトムさんを魚人島まで連れ帰った。

 

流石にそこまでされては、トムさんも諦めざるを得なかったようだ。

 

トムさんは今後、弟のデンさんに匿われる手筈となっている。

 

おれを恨んでくれても構わないが、再会を喜ぶこの2人を見ていたら、助けられてよかったと改めて感じた。

 

 

数日経過して、竜宮城に呼び出されたおれはニュースクーの新聞を渡された。

 

どうやら、フランキーの罪はしっかりとトムさんの海列車の功績と相殺されており、不問とされていた。

 

トムさんが心配しているようにウォーター・セブンに迷惑がかかることはなさそうでよかった。

 

代わりに、トムさんには逃亡の罪が加って、懸賞金が懸けられてしまった。

 

 

一応、事前に国王ネプチューンには、もしもの時はトムさんを連れ帰ることを話してあったが、もうこのような危ない橋は渡るなよと釘を刺された。

 

確かに一歩間違えたらジンベエ兄貴や魚人島の立場さえ悪くなっていたかもしれない。

 

そこは肝に銘じておかなければ。

 

これでまた国王に借りができたな。

 

 

 

話は変わるが、国王によるとおれがトムさんを助けに行っている間に魚人島では大きな事件が発生したそうだ。

 

それはなんとあの憎き天竜人が流れ着いたらしい。

 

その名前はミョスガルド聖といい、オトヒメ王妃は横柄な態度の彼をも助けてあげたそうだ。

 

天竜人に恨みを持つ元奴隷からの引き金から身を呈して庇うことまでしたという。

 

…おれがいたら自分を抑えられたか分からないな。

 

 

今はオトヒメ王妃が天竜人を送りに聖地マリージョアまで同行しているそうだ。

 

もうそろそろ一週間になるらしい。

 

おれを呼んだのは、いざという時にオトヒメ王妃を救出に行ってほしいと頼むためでもあったようだ。

 

もちろん快諾した。

 

 

 

しかし、程なくしてオトヒメ王妃は帰ってきた。

 

それも世界貴族の署名への同意書という、魚人島の希望の光を携えてだ。

 

…まったく、あの人には敵わないな。

 

流石国王が惚れた女だ。

 

 

その後、オトヒメ王妃の魚人や人魚の地上移住希望の署名活動は大きく前進した。

 

かつては、未来を捨てて今苦しむ同族の奴隷達を救い出した英雄フィッシャー・タイガーの影響で署名は集まらなかった。

 

アーロンによりタイガー大兄貴が死んだという噂が広がったことで(タイガー大兄貴が生存していることは国王、王妃、元タイヨウの海賊団、一部の魚人街の住民しか知らない)、当時5年以上かけて集めた署名を全て取り消されるなんてこともあった。

 

おれも他人事ではないので、申し訳無く思っている。

 

そのオトヒメ王妃がついに報われる時がやってきたのだ。

 

よかった。

 

しかし、どうやらそれを邪魔する奴らがいるようだ。

 

おれはタイガーの大兄貴がボルサリーノに狙われて以来、おれ以外への殺気にも反応できるように見聞色を磨いてきた。

 

それが今反応したのだ。

 

おれはオトヒメ王妃に銃を向けていた奴を見つけるとすぐさま制圧した。

 

そいつはホーディ・ジョーンズという名の兵士だった。

 

人間を忌み嫌う彼は目障りなオトヒメ王妃を撃ち殺して人間に罪を擦り付けようとしたそうだ。

 

許せん。

 

その腐った性根を叩き直してやる。

 

おれはその腐りサメ(21)とそれに賛同している仲間達を調教、もとい矯正することにした。

 

どうやら実際に人間達に何かされたわけでもないのにここまでの恨みを持つなんて教育とは恐ろしいものだな。

 

しかし、修行して自分の強さを探求していればすぐにそんな空虚な思いなんてどうでもよくなるはずだ。

 

とりあえず、最初は軽めに24時間組手から始めるか。

 

 

 

そうしていると、また国王ネプチューンから相談を受けた。

 

どうやらポセイドン疑惑のあるシラホシ姫が、バンダー・デッケンというロリコンに狙われているらしい。

 

最初はラブレターが届いていたのだが、断ったことによりそれは脅迫状へと変わり、今では様々な武器が姫を狙って飛んできているそうだ。

 

これはさては悪魔の実の能力だな。

 

おれは武器が飛んでくる方向を捜索し、そのロリコンをすぐに見つけた。

 

おれの見聞色と泳ぎの速度を見誤ったな。

 

国王に、こいつも罰としておれの修行輪廻に組み込んでほしいと言われた。 

それは別に構わないのだが、…罰?

 

まあいいか。

 

とりあえず、このロリコン野郎は厳しめにしごいていこう。

 

 

 

そうして罪人達の心身を鍛えていたら、フカボシ王子、リュウボシ王子、マンボシ王子から、自分達も鍛えてほしいと頼まれた。

 

どうやら、敬愛する母や可愛い妹を守るために、もっと強くなる必要を感じたようだ。

 

国王はとても反対したが、オトヒメ王妃が子供達の決意を尊重し、国王を宥めたため、おれが修行をつけることとなった。

 

王子達は才能があり、努力する動機もあるのでみるみる強くなっていった。

 

当然、王子達は腐りサメ共やロリコン野郎に対して隔意があったが、それもまた競争させることで修行が捗るので問題はなかった。

 

 

 

そうして一気に増えた弟子や調教中の野郎達の相手をしていたら、タイガー大兄貴からも頼みごとをされた。

 

どうやら、タイガー大兄貴が元クルー等の自分を慕う人達に協力してもらって、魚人街の無法者どもを締め、見事魚人街の統一を果たしたそうだ。

 

それで治安も良くなったので、そもそも魚人街が出来た理由であるみなし児達の養護施設としての機能を復活させたいそうだ。

 

そのために、おれに国王に渡りをつけてほしいとのことだ。

 

勿論OKだ。

 

それにしても流石大兄貴だ。

 

おれには考えもつかないことをやってくれるぜ。

 

 

その後、ネプチューン王やオトヒメ王妃の協力もあり、もともと魚人街の前身であった孤児院を復活させることができた。

 

院長先生は顔を隠して名前を変えたタイガー大兄貴である。

 

他にもオトヒメ王妃の願いで、魚人と人魚と人間の関係を考えさせるためにも学校の設立が成された。

 

おれも正式に道場を開いた。

 

といっても六刀流は誰にでもできるというわけではないので、おれと一緒に修行できる修練場といった感じだが。

 

腐りサメ一同やロリコン野郎は内弟子としてこき使ってやることにした。

 

王子達は竜宮城での英才教育もあるので通いだ。

 

他にもかつて魚人街を守ったおれに憧れる奴、ナワバリにしてくれている白ひげ海賊団に入りたい奴、外の世界に興味があるので身体を鍛えたい奴など、順調に弟子が増えていった。

 

一応それぞれの目的に合わせた修行内容を考えているが、最低限覇気を覚えさせるまでは免許皆伝はあげられないな。

 

なにせある意味おれの師匠の孫弟子になるわけだし、半端な育て方をしたら師匠に面目ない。

 

 

こうして魚人街は新しいスタートを切ったわけだが、タイガー大兄貴とは別に新しい魚人街の顔となる代表を決める必要があるそうだ。

 

そしてそれはおれが相応しいと。

 

おれはタイガー大兄貴が統一したのだからそんな資格はないと断ったが、そもそも大々的におれが生存していることをばらすわけにはいかない、と言われ納得してしまった。

 

こうしておれは新しい魚人街の代表となった。

 

もうこうなればやけくそだと、おれは、魚人街をにゅー魚人街という名前に改めさせた。

 

タイガー大兄貴やジンベエ兄貴、国王ファミリーに門下生達、そしてなにより、両親とはっちゃんと店主家族がとても喜んで祝福してくれた。

 

素直に嬉しい。

 

 

 

 

こうして色々紆余曲折があり、おれは魚人街出身の一般タコ魚人のなっちゃん改め、にゅー魚人街代表のなっちゃんとなった。

 

偉くなると忙しくなり、時が経つのが早く感じるもので、いつの間にか2年が経過して33才になっていた。

 

おれの道場を巣立った門下生も増えてきて、新しい世代も育ちつつある今、魚人島は強い国家になりつつある。

 

その分、世界会議での影響力も増しているはずだ。

 

そう今年は聖地マリージョアにて世界会議がある年だ。

 

オトヒメ王妃の念願の年である。

 

 

 

 

 

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なっちゃん:にゅー魚人街のボスとなった。まだ貧しい街をなんとかするために、新しい雇用を創出しようと、ない頭をひねったりしている。そうした頑張りは住民にも伝わっているようだ。

魚人島本島に住む人々も、はじめは魚人街は無法者の集まりというイメージがついていたので、魚人街に住む人々を信頼していなかったが、ジンベエと並ぶ伝説の男であるなっちゃんが代表になったことで徐々に信用していくようになっていった。

もちろん、それにはにゅー魚人街の人材が改めてしっかりとした教育を施されたことも関係する。

 

マクロ一味:人攫いに戻る気がないので、独立しなかった。

長年の航海を共にして、なっちゃんが意外と脳筋でアホな面があることを知ったので、付いていけばウマイ汁を吸えるんじゃないかという打算もある。

そんな打算が通用するかは定かではないが、なっちゃんに付いていけば実際に美味い料理を食べられることは間違いない。

 

世界政府:実は、トムを助ける動機があり、なおかつ走る海列車に追い付き、中にいた海兵を蹴散らして誘拐を成立させてしまうなんてことが可能な人物に目星が付いている。

しかし、証拠がないことと、もし本当にその人物であったならば迂闊に手を出したらただでは済まないことを懸念し、不問としている。

 

アーロン(31才):ココヤシ村を含むコノミ諸島を支配下にする。ベルメールがアーロンに反抗したが、命までは取らなかった。その後、ナミ(10才)を脅して測量士としてアーロン海賊団に参加させた。

 

ホーディと仲間達:地獄の日々の幕開け。恐怖の修行バカにより、他に何も考えられないくらい修行漬けにされる。今までのプライドや自信が粉々にされ、次第に修行バカに誉められることこそが最上と感じるようになってしまう。

バカは自覚がないが、もはやガチの洗脳である。

オトヒメ王妃を狙われてキレていた国王ネプチューンだが、その恐ろしい状況をみて、溜飲を下げたようだ。

まるで毒(洗脳修行)をもって毒(洗脳教育)を制すようじゃもん、と後に語った。




いつも感想ありがとうございます。
自分にはない視点からこの物語を見ている方々がいて、面白いなと思います。
時には意見を参考にさせてもらっています。
また気軽に感想してください。

誤字報告も助かっています。
ホントに確認しているはずなのに中々減らせません。
携帯で書いているせいかもしれませんね(ツールへの熱い責任転嫁)。

本当はここで完結させてもいいのですが、もう少し書きたいことができましたのでお付き合いください。


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原作開始6年前(33才)、世界会議

誤字報告助かってます。

感想もたくさんいただけて嬉しい限りです。

他にも、最近映画の影響があるのか、ONE PIECE二次創作が盛り上がってきている気がして嬉しいです。


今年は世界会議(レヴェリー)が開催される年だ。

 

世界会議とは、聖地マリージョアにて4年に一度開催される1週間にも及ぶ大規模な会議である。

 

会議の参加権を持つのは170にも及ぶ世界政府加盟国の国王達であり、毎回代表の50か国が出席する。

 

王たちは巨大な円卓を囲み、世界中の種々の案件について討論する。

 

そこでオトヒメ王妃は魚人や人魚の地上への移住希望を提案するつもりなのだ。

 

会議の流れだが、まずはじめに各国の王たちは2つある赤い港(レッドポート)のポンドラを利用してマリージョアまで移動する。

 

そして会議が行われるパンゲア城の内部にある虚の玉座の前で独裁をしないという誓いを立ててから、会議に臨むらしい。

 

その誓いにどれだけ意味があるんだかな。

 

世界会議では世界各国の王族が一ヶ所に集まるため、様々な騒動が発生する。

 

お互い国家の利害関係も背景にあるのだからある意味当たり前の話なのだが、かつて人権がなく、未だに差別意識を持たれているおれ達にとっては他人事ではすまない。

 

おれは正直地上移住にそこまで興味がないので、とにかく国王ネプチューンとオトヒメ王妃には無事に帰ってきてほしい。

 

そこは護衛にやってきた海軍があのガープ中将だったので、少しは安心できるが。

 

…しかし、ガープ中将はおれのことを知っているようだな。

 

どうやら昔おれをワンパンしたことはすっかり忘れているみたいだが、おれの経歴から少し警戒心を持っているようだ。

 

おれにとってあの一撃は今でも忘れられない理想の一撃だ。

 

今から思えばあれは武装色の覇気だけのはずなのに、師匠の(おそらく)覇王色込みの一撃に匹敵する威力だった。

 

あれ以来ガープ中将の一撃の威力を追求して修行してきたが、今のおれはどのくらい近づけたのか、気になるな。

 

おれは失礼を承知でガープ中将に手合わせを頼んだ。

 

ガープ中将は笑ってOKしてくれたが、国王ネプチューンに魚人島を破壊する気かと怒られた。

 

そこで一手だけ打ち合うことになった。

 

…結果は引き分けだった。

 

本人によると全盛期より大分パワーが落ちているそうなので、まだまだおれには先があるようだ。

 

その後ガープ中将、いやガープさんとは意気投合したのだが、程なくして国王達の護衛として聖地マリージョアへと旅立った。

 

ガープさんが付いているならば、武力的に脅かされることはないだろう。

 

後はなんとか政治的にも無事に済んでほしいな。

 

 

 

ちなみにおれは世界会議の間は留守番だ。

 

そもそも世界会議の開催期間中は、海軍も聖地マリージョアや近海の警護、王族の護衛等に駆り出されるため、残された国の防衛の方が問題になることが多い。

 

実際にこの時期は世界各国で海賊や犯罪者の事件が急増する。

 

そのため、おれはにゅー魚人街を、ジンベエ兄貴は魚人島本島を守る手筈になっている。

 

王子達は、両親がいない間の国は自分達が守ってみせる、とやる気満々だ。

 

王子達は才能があるので、この2年で覇気の基礎は習得することができた。

 

まだまだ安定して発動させることはできないようだが、戦闘能力の方もしっかりと鍛えているので、そこら辺の有象無象の海賊相手ならば問題ないだろう。

 

むしろ実戦経験を積むいい機会かもしれない。

 

流石のオトヒメ王妃も息子達をおれやジンベエ兄貴の海賊狩りに同行させるのは渋るのだ。

 

というわけで鬼の居ぬ間に戦闘だ。

 

おれは王子達を連れていつもより活気がある海賊達を狩りに行った。

 

あ、もちろん腐りサメ一行やロリコン野郎は強制参加な。

 

 

 

そうして過ごしていたら無事に国王達が帰ってきた。

 

王子達は留守中にこんなに海賊を倒せたと嬉しそうに報告していた。

 

やべっ。

 

口止めするのを忘れていた。

 

おれは国王夫妻に叱られた。

 

 

閑話休題。

 

世界会議の結果だが、まず特筆することとして、革命家ドラゴンの危険性を確認したようだ。

 

そういえば新聞でも世界最悪の犯罪者と呼ばれつつあると見たな。

 

それで、肝心のオトヒメ王妃による地上移住許可申請なのだが…。

 

残念ながら過半数の賛同を得られなかったそうだ。

 

魚人や人魚への嫌悪感を隠しきれない王族が大多数だったのだ。

 

ネフェルタリ・コブラ(42才)といった少数の例外だけが賛成してくれたらしい。

 

これでオトヒメ王妃の夢は閉ざされた…

 

と思いきや、天竜人の書状を出したら状況が一変し、一気に賛成が過半数を越え可決されたようだ。

 

これで魚人族や人魚族は正式に地上へ住む権利を手にしたことになる。

 

 

世界政府が魚人島との交友を発表してから200年。

 

それは、リュウグウ王国が世界政府の加盟国になり、リュウグウ王国が世界会議に出席するようになってからの年月でもある。

 

そして今年、ついに長年の悲願である地上の日の当たる所に住みたいという願いが叶えられることになったのだ。

 

 

オトヒメ王妃は泣きながら喜んでいた。

 

よかったなオトヒメ王妃。

 

その後、魚人島とにゅー魚人街合同で盛大なお祝いの宴を開いた。

 

国中がこの大ニュースとオトヒメ王妃が成し遂げた偉業を歓迎し、讃えたのだ。

 

 

はっちゃんもたこ焼き屋の屋台を出しており、それは瞬く間に行列となり完売したそうだ。

 

流石おれの弟だな。

 

リュウグウ王国のお祭り騒ぎは1週間も続いた。

 

 

 

さて、お祭りが終わったら現実が待っている。

 

世界会議で地上移住への権利を手に入れたわけだが、だからといって何の準備もなしにすぐ移住できるわけではない。

 

そもそも地上にリュウグウ王国が持つ国土がないので、現状では住むところがない。

 

そうした困難を見越して、各国の王族達は賛成したのかもしれないな。

 

とはいえ、やりようはある。

 

1つは、友好な国や島へ移住させてもらう方法だ。

 

しかし、リュウグウ王国は地上の国とそこまで国交があるわけではない。

 

まずは友好国を作る所から始めなければならない。

 

幸いにして、その当てはある。

 

今回の世界会議で魚人族や人魚族に嫌悪感を示さなかった国々がはっきりした。

 

その比較的友好的な国々と接触し、貿易条約等を結ぶのだ。

 

魚人島にはクリミナルという世界でも流行りそうなファッションブランドや、めちゃくちゃ美味しいお菓子工房、そして地上の人では中々手に入らない海の資源がある。

 

これらを目玉商品に売り出していけば、色好い返事を聞かせてくれる国もあるだろう。

 

他の方法としては、誰の国土でもない無人島を見つけることだ。

 

これは見つかれば話が早いが、捜索にはグランドラインを航海できる実力が求められる。

 

特に新世界側は穴場であるが、危険も相応なので、より力が必要になってくるだろう。

 

最後の方法として、白ひげ海賊団にナワバリを紹介してもらうという手もある。

 

正直これが一番有力であろう。

 

 

…と、いうのが全てフカボシ王子達からの受け売りだ。

 

リュウボシ王子やマンボシ王子と一緒になって、これ程の国の政策を考えたらしい。

 

…英才教育ってすげぇや。

 

いや、これは勿論教育の成果でもあるのだろうが、何より王子達がオトヒメ王妃の成功を疑わず、留守番中に修行が終わってヘトヘトになった後も、夜遅くまで議論を交わしてきた努力と熱意によるものだ。

 

どうやらこの国の未来は明るいようだな。

 

 

後日、おれは正式にリュウグウ王国の使者として、白ひげ海賊団と渡りをつける役割を任命された。

 

にゅー魚人街を留守にするのは少し不安だが、タイガー大兄貴もいるし大丈夫だろう。

 

道場も、腐れサメとロリコン野郎と愉快な仲間達がそこそこまともになってきたから、まあ、大丈夫だろう。

 

しっかりとおれがいない間のトレーニングメニューを言いつけておいたしな。

  

 

 

 

久しぶりに会ったオヤジは点滴に繋がれていた。

 

ええ!?何があったんだ。

 

マルコに聞いてみると、どうやら年齢が年齢なので時折心臓に発作が起きるらしい。

 

それでもすぐに点滴を外してしまうそうだ。

 

おれが心配そうな顔をしていると、オヤジに叱られてしまった。

 

息子に心配される程落ちぶれちゃあいない、と。

 

おれはその心意気を汲み、本題に入ることにした。

 

 

 

オヤジはナワバリの紹介を快く請け負ってくれた。

 

中でも魚人や人魚等に抵抗感が少ない島々を選定してくれるそうだ。

 

ありがたいぜ。

 

また恩ができてしまったな。

 

 

その日は勿論宴を行った。

 

おれが白ひげ海賊団を抜けた後のお互いの身の上話を肴に、話題が尽きることはなかった。

 

楽しい夜だった。

 

ああ、やっぱりおれにとってこの海賊団も故郷みたいなものなんだな。

 

 

 

こうしてこの年を境に、徐々に魚人族と人魚族が地上で暮らす姿を見られるようになっていった。

 

その背景には、フカボシ王子達の案が成功して、リュウグウ王国が貿易国家として存在感を増してきたことや、いくつかの無人島を発見し領土として確保したことが挙げられる。

 

そして特筆するべきこととして、それまで交流のなかった白ひげ海賊団のナワバリの島々が、魚人や人魚で構成された行商団体によって有機的に繋がったことが挙げられる。

 

この行商団体は商品や人を素早く安全に運ぶと評判で、とても儲かっていた。

 

何せ手を出せば白ひげの逆鱗に触れるかもしれない上、そもそもその行商団体の護衛達が皆覇気を使う凄腕の集団だったからだ。

 

…うん、おれの門下生達だ。

 

おれの門下生で免許皆伝を与えた者達の中には外海に出て冒険がしたいという一派がいた。

 

それらが冒険して無人島を発見したり、行商団体の護衛になったりしたのだ。

 

 

このことにより、リュウグウ王国は一躍経済的にも強い国家となっていったのだ。

 

 

 

 

余談だが、おれが34才になった頃、アイスバーグ(33才)によってガレーラカンパニーが発足され、ウォーター・セブンが発展する兆しがあるというニュースを聞いた。

 

トムさんはこれをとても喜んでいた。

 

トムさんはおれが無理やり連れてきてしまったわけだが、なんやかんや弟のデンさんと一緒に海の森を調査したり、沈没船を趣味で修理したり、コーティング技術を身に付けたりと自由にやっていた。

 

流石トムさんだよ。

 

 

 

 

また1年が経ち、シャンクス(33才)が四皇になったというニュースが入ってきた。

 

中々やるな。

 

おれも負けてられないな。

 

最近は強者と戦えていないので、ここらで初心を思い出して自分を鍛えぬいてみるかな。

 

まずはガープさんにこの前教えてもらった山を使う修行を試してみよう。

 

 

 

 

さらに1年が過ぎ、ジンベエ兄貴が火傷だらけで魚人島へ帰還したことに驚いた。

 

どうやら火拳のエースと決闘したらしい。

 

中々の覇気だったそうだ。

 

今はオヤジに敗北して、白ひげ海賊団に乗せられているらしい。

 

何でも100回オヤジに挑んで勝てなかったら諦めるとのことで、連日のようにオヤジを襲撃しては返り討ちにあっているらしい。

 

何だそれ面白いな。

 

会いに行ってみるか。

 

 

おれが会ったときにはエースはもう背中に白ひげ海賊団のマークを刻んで立派な息子になっていた。

 

どうやら100回うんぬんはサッチが意図的に流した噂だったようだが、エース自身が挑戦している内に、オヤジを心の底では認めるようになっていったらしい。

 

100回目の挑戦にして初めてオヤジのグラグラの実の能力を引きずり出した所で、エースの踏ん切りがついたらしい。

 

親子の盃を交わしたようだ。

 

熱いね。

 

おれも話を聞いているだけで身体を動かしたくなってきた。

 

よし、エースよ。元だが、白ひげ海賊団の先輩として一丁指導をつけてやろう。

 

 

エースは何度おれにボコボコにされても立ち上がってきた。

 

確かにこの根性と跳ねっ返りの強さはオヤジが気に入るわけだ。

 

おれも気に入ったぜ。

 

さあ、何時間でも何日でも戦い合おうぜ。

 

 

 

 

 

そしてまた1年が経過し、おれが39才になった頃、アーロンが東の海でルーキーに倒されたというニュースが入ってきた。

 

そうか…

 

ついに原作が始まったのか。

 

ルフィはロジャー船長が待ち望んでいた人物なのか。

 

いずれ見極めさせてもらおう。

 

 

 

 

 

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なっちゃん:門下生やにゅー魚人街にできた学校の卒業生が代表の仕事を補佐してくれるようになったので、割りと自由がきくようになった。

ただしその自由時間は大抵修行に当ててしまう。

 

白ひげ:久しぶりの息子に会えてニッコリ。

新しい息子ができてニッコリ。

 

アーロン編:サンジと強化クロオビの死闘。

強化チュウに勇気を振り絞って立ち向かうウソップ。

ルフィと強化アーロンの激闘。

はっちゃんがいない分手隙なゾロ(ミホークにより重傷&剣が一本の状態)の働きが勝敗の鍵を握ったであろう。




エースの描写は、公式スピンオフの「ONE PIECE episode A(エース)」を参考にしました。



質問返しのコーナー。
Q.なっちゃんの名前の由来は?

A.はっちゃんがハチ(8)というアダ名で呼ばれているので、仮にその兄貴がいたらナナ(7)だろうからなっちゃんだな、という割りと安直な考えからきています。



Q.1話で、はっちゃんを「海賊だって似合わない」と評しているけど、原作のはっちゃんは割りとしっかり海賊でしたよね?

A.なっちゃんにとっては3才下に生まれたかわいい弟です。
両親と生き別れてからは、親代わりでもあります。
どうしても贔屓目が入ってしまうのでしょう。
はっちゃんも、自分を育てるために働いてくれたり、暇さえあれば夢のために鍛えているなっちゃんの姿を見て育たなければ、自分もたこ焼き屋さんになる夢のために努力しようとは思わなかったでしょうし、もしそうなっていなかったら同年代のアーロンやチュウやクロオビと悪さをしながら過ごしていたでしょう。


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原作開始(39才)、シャボンディ諸島

いつもながら誤字報告ありがとうございます。
感想も増えてきて嬉しいですね。

今回は途中から三人称に挑戦してみました。


アーロンが捕まったというニュースは人間との融和を教育方針に掲げているにゅー魚人街にとっていいニュースとして広まった。

 

魚人島出身の魚人が外で悪事を働けば、ここ数年のリュウグウ王国が積み重ねてきた信頼と努力が踏みにじられることになるからな。

 

それはわかるが、おれやジンベエ兄貴、そしてかつて子供時代に一緒に遊んだような記憶しかないはっちゃんにとっては、中々複雑な思いだ。

 

チュウやクロオビ先生も捕まってしまっただろうからな。

 

ちなみに腐れサメ共に感想を聞いてみたら、今ではアーロンや人間への憎しみは興味がないとのこと。

 

…こいつら、年を経る毎におれを見る目が狂信者みたいになってきて怖いんだよな。

 

おれの行動を基本全肯定してくるし。

 

まあ今ではおれが不在の間の師範代として、道場を任せられるくらいにはなったから便利ではあるのだが。

 

ま、まあこれ以上はおれの精神衛生上考えないことにしよう。

 

 

最近はおれの門下生も続々と覇気の基礎習得課程を終えて免許皆伝を受けている。

 

望むものはそのまま道場の師範代となるのだが、おれの道場の卒業生はリュウグウ王国中で引く手数多だから色んな場所で各々活躍しているようだ。

 

おれがやっているのは直接的な戦闘能力の向上というよりかは、如何に自分を鍛えることができるかを追及するという精神修練の要素が強い。

 

免許皆伝も、覇気を習得するだけでなく、自分で自分に必要な修行を考えて実行できるようになっているかが基準となる。

 

このように特に礼儀作法なんかは教えていないのだが、卒業生達は強くて礼儀正しいと評判だ。

 

それは礼儀というより自分を律する術を知っているだけなんだけどな。

 

そんなわけでおれの道場はリュウグウ王国でも有名で、その門を叩く人や子供を通わせようとする親は後を絶たない。

 

その分、リタイアする人も多いけどね。

 

だからこそおれの道場の卒業には一定のステータスがあるのかもしれないな。

 

 

王子達もおれの道場を卒業した。

 

今のところおれの弟子達の中では最強クラスだな。

 

国王ネプチューンもそろそろ68才で年も年だからか、王子達に少しずつ仕事を引き継いでいるようだ。

 

 

…おれも跡継ぎを考えないといけないのかなぁ。

 

そもそもおれは修行が恋人みたいなものだからな。

 

実の子供はいないが、それこそ弟子達は子供のようなものだし、彼らの中の誰かに道場は継いでもらうかな。

 

にゅー魚人街の代表の方は、フカボシ王子が王になったら、リュウボシかマンボシに譲ればいいだろう。

 

そうすればかつての魚人街のように、魚人島本島から手の届かない見捨てられた土地にならずに済むだろうからな。

 

そういえば、跡継ぎといえばはっちゃんはどうするのだろうか。

 

はっちゃんはその料理の腕前で、にゅー魚人街でも一番美味しいと評判の店の店主になっている。

 

弟子も何人かとっているようだ。

 

いずれは引退するのかもしれないな。

 

最近は弟子に店を任せて伝説のたこ焼きのレシピを探しに行っているようだしな。

 

それはそうと、はっちゃんはいい加減店主夫妻の娘さんのアプローチに気がつかないのだろうか。

 

確かに赤ん坊の頃から知っているし、はっちゃんとは11才の差がある。

 

とはいえ、もう25才と36才なのだからそこまで問題はないだろう。

 

一緒に店を切り盛りしている姿はもはや熟練夫婦の域でお似合いなのにな。

 

誰に似たんだか、鈍感なやつだ。

 

 

そんな風に考えて日々を過ごしていたら、また麦わらのニュースが入ってきた。

 

クロコダイルを倒してアラバスタを救ってくれたことには感謝だ。

 

アラバスタはリュウグウ王国の友好国で、細々と貿易もしているのだが、如何せん魚人や人魚にとってあの国は暑すぎるので、近寄りがたいんだよな。

 

他にもエニエス・ロビー襲撃のニュースでは、フランキーが元気そうなことを確認できたトムさんが喜んでいた。

 

ブルックも無事に麦わらの一味になったようで、改めて懸賞金をかけられていた。

 

もう何年も前にソウルキングとして音楽活動で名前を馳せていた時期があることからか、世間では海賊になってショックを受けたとの声もあるらしい。

 

一方で、ソウルキング様には何か深い考えがあるのだ、と主張するファン達もいるようだ。

 

どこも狂信的な信者はいるものだな。

 

ラブーンも懸賞金が付けられていたが、元気そうでよかった。

 

 

そんな麦わらの一味は王下七武海のモリアをも倒したらしい。

 

ということは、そろそろ航路的にシャボンディ諸島に付く頃合いか。

 

はっちゃんからも手紙が届き、無事にレシピを見つけて、旅で出会った人魚のケイミーと地上でたこ焼き屋を開いているようだし、師匠もいる。

 

 

おれも行ってみるか。

 

 

 

 

天竜人、許すまじ。

 

どうやら、人攫いに拐われたケイミーを助けるために、はっちゃんと麦わらの一味が協力して探していたらしい。

 

そこでヒューマンショップのオークションで売られているケイミーを発見し、正攻法で買い取ろうとしたのだが、貴重な人魚に即決で10億を出した天竜人の圧倒的な資産力により敗北。

 

その後ルフィが駆けつけ、はっちゃんを拳銃で撃った天竜人のアホをぶっ飛ばしてくれたようだ。

 

幸いはっちゃんにはおれが最低限の護身として見聞色を仕込んであるので、怪我はなかったようだが、おれの弟に銃を放つとは許せないな。

 

 

ちょうど今、麦わらの一味の船のコーティング作業をしている師匠から以上の事の推移を聞いた所だ。

 

一味は師匠の作業が終わる3日後までやり過ごすためにここを出ていったようだが、たった今上陸してきた懐かしい強者の気配を鑑みると、そう上手くいくとは思えないな。

 

…よし、弟の借りだ。

 

あいつの相手はおれがしてやろう。 

 

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

その日、海軍大将黄猿はシャボンディ諸島に任務で赴いていた。

 

標的は天竜人に危害を加えた事件を起こした主犯である麦わらのルフィだ。

 

今はそのついでにこの島に集っていた億越えのルーキー達を相手にしていた所だ。

 

「どいつもこいつも億を超えるような輩らは、化物じみていてコワイねぇ~。」

 

そう嘯きつつも超新星達を一蹴していく黄猿。

 

そんな彼に、部下から麦わらの一味が見つかったという報告が入った。

 

黄猿がルフィ達の場所へと八咫鏡(やたのかがみ)で向かおうとした時、それを遮った男がいた。

 

「おォ~っとっとォ。危ないねぇ。」

 

「ニュ~。久しぶりだな、ボルサリーノ。元気にしてたか?」

 

その人物は黄猿と同じで3mを超える身長を持ち、何より6本の腕に六刀の黒刀を構えていた。

 

「お前さんの顔を見るまではよかったんだけどねぇ。まったく、古傷が疼いてしょうがないよぉ。

…お前さんが出る幕かい?

立場ってもんがあるでしょうに。」

 

「なに、ちょっと弟が世話になってな。

ここはおれの顔に免じて1日だけ時間をくれないかい?

おれもジンベエ兄貴の許可も無しに世界政府と敵対したいわけではないんだ。」

 

なっちゃんがそう頼むと、黄猿は少し考えてからこう言った。

 

「…こちらとしても、あんたを敵に回すとなると、色んな覚悟を決めにゃあいかんので…。

半日だけなら諦めるよぉ。

その間、わっしは観光でもしてようかねぇ。」

 

「おっ、いいね。助かるよ。お詫びにおれが案内してやるよ。」

 

この後めちゃくちゃ観光した。

 

 

 

 

その後、黄猿は部下から、王下七武海のバーソロミュー・くまが麦わらの一味をバラバラに何処かへ飛ばしたとの報告を受けた。

 

「ん~、困ったねぇ。

これもあんたの狙い通りかい?

なっちゃんよぉ。」

 

「ニュ~、まさかくまに限ってそんなことをする奴だとは…、夢にも思わなかったぜ。ま、災難だったな、ボルちゃん。」

 

「ウソをつけ~~~。」

 

こうして2人は和やかに別れた。

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

おれは作戦(くま任せ)が上手くいったことにホッとした。

 

結果は変わらないのかもしれないが、これではっちゃんの借りは少し返せただろう。

 

もしかしたら、大将さえ抑えておけば原作主人公ならばなんとかするのかもしれないと期待をしていたが、流石に無理だったようだな。

 

半日近くもっただけでも頑張った方か。

 

 

さて、それにしても、おれもそろそろ本格的に考えないといけないな。

 

世界政府を敵に回していいのかどうかを。

 

 

改めて整理すると、おれの立場はにゅー魚人街の代表だが、それ以前に王下七武海ジンベエの配下である。

 

その恩恵があるからこそ、不逮捕権が与えられており、こうして一国の重要なポストに就いていられる。

 

仮におれが世界政府と決定的な敵対をしたら、リュウグウ王国に迷惑がかかるだろう。

 

その悪影響はアーロンが東の海で事件を起こしたことによる風評被害の比ではないはずだ。

 

しかし、既にジンベエ兄貴が世界政府の白ひげ海賊団と戦えという要請を断っている。

 

おれがこうしてシャボンディ諸島に来る直前にも再三命令が来ていたし、これ以上断れば投獄するとの通達もあった。

 

今頃はもしかしたら捕まっているかもしれないな。

 

そうなればおれが自重する必要はないな。

 

 

では、おれ自身はどうしたいと考えているかだが、勿論オヤジの力になりたい。

 

しかし、そのためにも国王達にはしっかり説明をして筋を通さねばならないだろう。

 

どの道白ひげ海賊団が敗北したら、ナワバリも荒らされるであろうし、そうなればリュウグウ王国もただでは済まない。

 

リュウグウ王国はなんとかなっても、せっかく築いた地上の友好的な白ひげ海賊団ナワバリ経済圏が荒らされることは確実だ。

 

そのため、国として表立って積極的に白ひげ海賊団を支援するのはマズイにしても、何かしら裏で協力する必要性はあるはずだ。

 

とにかく、今は魚人島に戻って、国王と相談しなければな。

 

 

 

おれがリュウグウ王国に戻ると、既にジンベエ兄貴は捕まって連行された後だった。

 

また、国王ネプチューンは白ひげ海賊団にコーティング職人の斡旋を頼まれ、凄腕のトムさんを秘密裏に派遣したようだ。

 

どうやら裏から白ひげ海賊団を支援する事はもう決めてあったらしい。

 

食糧と隠れ場所も提供しているようだ。

 

国王によると、白ひげ海賊団には恩があるし、おれのオヤジなのだから協力するのは当たり前だ、とのこと。

 

王妃や子供達もうんうんと頷いていた。

 

 

…なんだ、悩んでいたのはおればっかりか。

 

やはり慣れないことはするもんじゃないな。

 

よし、行くか。

 

親孝行の時間だ。

 

 

 

 

 

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黄猿:白ひげ海賊団との戦争が控えているため、なっちゃんと諍いを起こすことを避けた。

また、仮になっちゃんを手を掛けると、実力を付けつつある魚人島を完全に敵に回すことにもなる。

それくらいならば、半日を犠牲にする方がマシだと判断した。

どうせそのくらいのハンデでは、ルーキーが光の速度の自分から逃げられることはないと考えていた。

また、そもそも自分が半日待っている間に、部下やパシフィスタが任務を達成すると信頼していた面もある。

 

ちなみになっちゃんとの観光はふつーに楽しかったらしい。

 

 

 

なっちゃん:修行していたら、いつの間かサンゴ刀六刀全てが黒刀に成っていた。

今回はルフィ達がくまにバラバラに飛ばされることを、余程印象に残っていたのか珍しく覚えていたため、黄猿の初動だけ抑えることにした。

 

黄猿には観光案内してあげた。

実は数年前に師匠がシャボンディ諸島にいるという情報を聞き、再会している。それ以来暇があれば手合わせを願いに行っているのだが、放浪している師匠を探している内に島に詳しくなっていったのだ。

 

観光中に黄猿の好物がみそラーメンだと知ったので、シャッキーに厨房を借りてご馳走してあげたらとても喜ばれた。料理人冥利に尽きるぜ、とか思っている。

 

自覚はないが、これって賄賂なのでは?

 

 

師匠:久しぶりに再会した時は、随分たくましく成長したなっちゃんに驚きつつも歓迎していたが、昔にも増して修行修行と煩いのでその内逃げるようになった。

ただ、それもなっちゃんにとっては、気配を殺している師匠を広いシャボンディ諸島の中から探すのは見聞色のいい修行になるな!と思っているので、むしろより積極的に追いかけ回されることになり逆効果である。

 

信じて送り出した弟子がまさか修行が恋人な変態になっているとは不憫な男である。

まあ、昔は昔でモフモフに目がない変態ではあったが。



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原作開始(39才)、頂上戦争勃発

なっちゃんの物語もクライマックスが見えてきました。

いつも誤字報告助かっております。

感想も楽しく拝見しているので、気軽にいただけると嬉しいです。


白ひげ海賊団は今、船のコーティング作業の終了を待っている所だ。

 

コーティングはそれなりに時間が掛かる。

 

サニー号の大きさでも3日必要なので、モビー・ディック号含め四隻の大型船の作業は、いくら凄腕のトムさんといえど時間が必要だ。

 

そこで戦争のための準備をしているオヤジに、おれも出ると伝えたら、久しぶりに叱られてしまった。

 

一人立ちした息子に気を使って貰う程落ちぶれてない、とのことだ。

 

…懐かしいな、この感じ。

 

やっぱりオヤジの叱責は身も心も引き締まるな。

 

よし、気合いが入ったし、一応の報告はしたから、後は自由にやらせてもらおう。

 

おれはもう白ひげ海賊団ではないので、オヤジの言うことを聞く必要はないからな。

 

 

 

さて、それじゃあ、この先おれはどう動けばいいか考えるとするか。

 

まず最初に、もう39年以上も前の前世で見たONE PIECEで覚えていることはそう多くない。

 

それでも印象に残っているシーンと忘れていない知識はある。

 

それはルフィ達が監獄から抜け出して戦争に駆けつける所と、エースとオヤジが死んでしまうということだ。

 

どうやってルフィがインペルダウンに侵入して脱獄してきたのかは覚えていないが、おそらく政府に連行されてしまったジンベエ兄貴はそこで、ルフィと合流することになるんだろうな。

 

おれはオヤジやエースを助けることを決めたし、ジンベエ兄貴もそう思っているだろう。

 

しかし、王下七武海である兄貴の配下としては、おれの一存で世界政府に敵対するわけにはいかない。

 

いくらリュウグウ王国からのOKサインがあるからといって、一国の要職に就いている人物がいきなり世界政府に敵対するよりは、ジンベエ兄貴が七武海脱退を宣言した後にその部下として戦うといった流れの方が、リュウグウ王国への悪印象は薄れるだろう。

 

とにかく、おれも一度ジンベエ兄貴に合流したいな。

 

とりあえず、インペルダウンまで行ってルフィが脱獄してくるのを待ってみるか。

 

 

…昔のおれだったら何も考えずに、とにかくオヤジに付いていったんだろうが、長年街の代表として仕事をしている内にこうして事前に色々考える癖が付いてしまったな。

 

おれも年を取ったもんだ。

 

そりゃあ、オヤジがあそこまで老衰するのも仕方ないだろう。

 

先ほど会った時に見た点滴と薬の数、そして身体の衰えは深刻であった。

 

これでも医者の心得があるんだ。

 

一目みれば大体のことは察せる。

 

改めて、おれが頑張らないといけないようだな。

 

 

 

 

海中を進んで正義の門も潜り抜けると、インペルダウン入口の湾内に着いた。

 

軍艦をなるべく避けたのと、強い海流があって泳ぎにくかったので、想像以上に時間が掛かってしまった。

 

どうやら、エースの護送は済んでしまったようだ。

 

ワンチャン機会があればここでエースを奪還することも考えていたが…。

 

一応それに備えて持ってきたシャボンを利用した酸素ボンベはもう必要なさそうだな。

 

これを使えばエースを海に引きずり込んで逃げることが出来るので、一番手っ取り早かったのだが。

 

まあ、過ぎたものは仕方ない。

 

どうせエースは大将を使った厳重な警備に守られていただろう。

 

そうだとすればおれ一人では流石に荷が重い。

 

 

 

そう考えていたら、入口が慌ただしくなってきたのを、海中から察知した。

 

そこで海上に出てみると、ちょうどジンベエ兄貴が海軍の軍艦を襲っている所だった。

 

兄貴はおれをみて驚いていたが、すぐに気を取り直して状況を教えてくれた。

 

麦わら達がマゼランを抑えている内に海軍の軍艦を掻っ払おうという算段のようだ。

 

 

よし、こんな時にいい技をおれは持っている。

 

おれはサンゴ黒刀を抜き、軍艦に乗る海兵へ向けて技を放った。

 

 

サンゴ六刀流 五ノ型 魚人剣術百人斬

 

 

…これで軍艦に乗る海兵を100人は斬ったかな。

 

この技は一言でいうならば、見えない飛ぶ斬撃だ。

 

正確には、魚人空手を参考にしておれが開発した、水中や大気中の水に斬撃を伝える技だ。

 

これはミホークやゾロの飛ぶ斬撃とは異なり目に見えない上に、魚人空手のように大気中の水分を衝撃波として伝わっていき、それに触れたものに斬撃を与えるので防御が困難だ。

 

我ながら細かい理屈はよくわからないが、使ってる感覚的にはそんな感じだ。

 

欠点としては射程距離がそこまで長くないことだが、このように一度にたくさん斬る場合には役に立つ。

 

ただでさえ、おれには覇王色がなくて雑魚狩りが手間だからな。

 

この技は重宝している。

 

ちなみにこの魚人剣術はおれが道場で興した流派でもあるので、門下生は軒並み使える。

 

素手の奴には普通に魚人空手を教えているがな。

 

とはいえ、他のサンゴ六刀流の型と違い、タコ魚人でなくとも習得することができるので、おれの弟子達は普段剣を使わない奴らもこぞって練習していたな。

 

そんなにおれと一緒の技を使いたいのかね。

 

全くかわいい奴らだぜ。

 

 

閑話休題。

 

とにかく、これで軍艦は確保できたな。

 

おれが軍艦に乗り込むと、辺りは砂だらけだった。

 

…ん?なんか汚くね?

 

するとその砂が一纏まりになってなんと人の姿へと変わった。

 

なんだ、クロコダイルか。

 

…もしかしておれが海兵と一緒に斬っちゃった感じ?

 

平謝りしておいた。

 

彼の部下にも悪いことしたな。

 

手当てしてやるから許してくれ。

 

あ、よく見たら真っ二つのバ/ギーもいるじゃん。

 

よっ、久しぶりー。

 

 

 

 

その後はルフィ達と合流したり、その友達のおかげで正義の門が開いて脱出できたり、海軍の通信に出たルフィが宣戦布告したり、バギーが崇められたりしていた。

 

ルフィからは、お前は誰だ、と聞かれたが、ただの兄貴だと答えておいた。

 

ジンベエ兄貴には、国王ネプチューンからリュウグウ王国を気にせず好きにするように言われたことを伝え、王下七武海の脱退覚悟でオヤジを助ける決意を共有した。

 

クロコダイルはおれのことは無視するスタンスのようだ。

 

だからごめんて。

 

バギーとは楽しく会話していたら、バギーの子分がキラキラした目でこちらを見ていた。

 

それを見て顔を青くしたり赤くしたりするバギー。

 

やっぱり赤鼻先輩はおもしれー男だな。

 

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

その日、海軍と白ひげ海賊団が戦争を始めた。

 

白ひげは捕まった息子エースを助けるため。

 

世界政府は海賊王ゴールド・ロジャーの血筋を絶やすため。

 

お互い退けぬ理由がある両陣営共に全戦力をぶつけて戦いに挑んだ。

 

海軍本部側は、中将以上の階級を持つ者全員と世界中の海を守る猛者合計10万人と軍艦50隻に王下七武海、更に開発中のパシフィスタ軍団までも導入された。

 

白ひげ海賊団側は、船員は約1600名が16の部隊に分かれており、さらに新世界で名を馳せる43の海賊団を傘下に持ち、白ひげ海賊団本隊と傘下を合わせれば総5万人の兵力を誇った。

 

両者がぶつかり合い一時間が経った頃、戦場を左右するきっかけが空から降ってきた。

 

 

「だからおめーはやりすぎだってんだよ!!」

 

「こいつのまばたきのせいだ」

 

「ヴァターシのせいにする気!?クロコぉ」

 

「ニュ~~~。いい眺めだ」

 

「どーでもいいけどこれ死ぬぞ!!下は氷はってんだぞ~~!!!」

 

「おい。何だあれは…空から何か降ってくる!!」

 

騒然となる戦場。

 

「あああああああ…あ!おれゴムだから大丈夫だ!!!」

 

こうして麦わらのルフィとその一行が戦場へと降り立った。

 

「助けに来たぞ~~~!!!エース~~~~~!!………!!!やっと会えた!!!」

 

「ニュ~~~。腕(×6)が鳴るぜ。」

 

 

 

 

 

꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂

 

なっちゃん:勘違いしているが、エースのインペルダウンからマリンフォードまでの護送は、最高でも中将レベルしかいなかったので、一番のチャンスだった。

とはいえ、なっちゃんも跡継ぎ指名やはっちゃんに別れを告げる等の身辺整理を済ませてから魚人島を出発したので、時系列的に間に合わないのは仕方ない。立場があると背負うものが多いので、どうしても腰が重たくなってしまうのだ。

 

ルフィ:なっちゃんが誰だかよくわかっていないが、とりあえず味方ならいいと思っている。その名前には、そこはかとなく聞き覚えがあるような気がしている。

 

ジンベエ:態々自分に許可を取りに来るとは堅物すぎると思っている一方で頼りにも感じている。

 

バギー:例え幼なじみが四皇になっていても態度を変えずに付き合えることができる友達の鑑。今回は久しぶりに会ったくせに、なっちゃんを舎弟として自分を助けに来てくれたと勘違いしている。なっちゃんも敢えてその誤解を解くつもりはないようだ。

 

海軍:空からやベー奴らが降ってきてびっくり

 

白ひげ:ーーーあのバカ息子が。



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原作開始(39才)、マリンフォード頂上戦争

今話は今までよりも倍ほどの文章量なのでご注意ください。


その集団は突如空より現れた。

 

20年以上脱獄を許していないインペルダウンにあろうことか侵入し、多くの囚人を解放した主犯、麦わらのルフィ。

 

その共犯者、道化のバギー。

 

それを慕う囚人達。

 

革命軍の幹部イワンコフ。

 

ニューカマー達。

 

旧七武海のクロコダイル。

 

現七武海のジンベエ。

 

そしてその配下、なっちゃん。

 

総勢200人を超えるその異様な面子に戦場は騒然となった。

 

 

「こんなに早くまた会えるとはねェ~。」

 

黄猿は呟いた。

 

 

 

「ーーそれが貴様の答えだなジンベエ!!!」

 

海軍元帥センゴクはジンベエに問いかけた。

 

 

「そうじゃ、わしゃあ七武海はやめる!!!」

 

「ニュ~、ということでおれもジンベエ兄貴の側に付くんでよろしくな~。」

 

ジンベエとその部下は答えた。

 

 

「……!!ジンベエが世界政府の要請を拒否した時から覚悟はしていたが、厄介な奴が敵に回ったもんだ…。ガープよ、以前話していたことは本当なんだな!?」

 

「ああ……。もう何年も前の話じゃ。わしと奴の一撃は互角じゃったが……、わしの腕は二本しかないがあやつは六本。全力で戦えば、苦労したじゃろうな。ましてや、当時は成っていなかったあの6本の黒刀……。どうやら研鑽を怠ってはいないようじゃな。」

 

「……なんで少し嬉しそうなんだ、ガープ。」

 

「センゴク。こりゃあ、わしらもタダじゃあ済まんぞ」

 

 

 

麦わらのルフィが来てから戦場はよりカオスになった。

 

とにかく一直線で兄を助けたい麦わらのルフィ。

 

白ひげの首を取ろうとするクロコダイル。

 

白ひげと一時手を結んだ道化のバギー。

 

海軍は何やら裏で作戦の準備を進めている。

 

白ひげ海賊団は攻め込む部隊と白ひげを守る部隊に別れていた。

 

傘下の海賊達も白ひげの指示で広場への侵入よりも周りの軍艦を襲い始め、中将達と激戦を繰り広げている。

 

 

そんな中、エースは叫んだ。

 

「来るな!!ルフィ~~~~!!!」

 

エースは、自分には自分の冒険と仲間がいるから、弟に助けられる筋合いはないと主張した。

 

「帰れよルフィ!!!!なぜ来たんだ!!!」

 

エースは自分の失態で起こったこの戦争に弟を巻き込みたくなかったのだ。

 

 

「おれは弟だ!!!!」

 

しかし、ルフィにとってそんなことは知ったことではなかった。

 

 

「わからず屋が……」

 

エースは呟いた。

 

 

「ニュ~、いい弟じゃねぇか、エースよ。特に頑固な所なんかそっくりだな。」

 

なっちゃんは独りごちた。

 

 

 

ルフィが世界最悪の犯罪者ドラゴンの実の息子ということが明かされたこともあり、これより戦場はルフィを台風の目として更に荒れていくことになる。

 

 

 

クロコダイルは白ひげの首を狙い、3番隊隊長のジョズと戦っていた。

 

そこへ乱入してきたドフラミンゴの勧誘も蹴り、独自の道を貫く。

 

一方でルフィは世界最強の剣士ミホークに狙われていたが、5番隊隊長花剣のビスタによる援護で事なきを得ていた。

 

 

「ニュ~、あれが鷹の目ミホークか。一剣士として戦ってみたいぜ。」

 

「だったらこんな所で油売ってないで、行きゃあいいじゃねェか。このアホンダラァ。」

 

「いやいや。エース救出はルフィがやってくれるから、おれはオヤジを守らないとな。」

 

「グララララ。おれを守る?随分生意気な事言うじゃねェか。それにあんな小僧に期待しすぎじゃねェのか。」

 

「いやぁ、あいつは海賊王になる男だからな。これくらいやって貰わないと。それでなくてもいい弟だ。おれは頑張っている弟を応援するタイプのタコだからな。」

 

そんな風に親子で会話していると、戦況が動いた。

 

世界政府の秘密兵器、パシフィスタの軍団が後方から現れたのだ。

 

パシフィスタは七武海くまをモデルとした人造人間で、その頑丈さとレーザー攻撃は新世界の海賊達でも苦戦する程であった。

 

海軍は映像電伝虫の通信を切り、世間から情報を隠蔽してから次の作戦に移行するつもりのようだったが、それはバギーによって阻害されていた。

 

流石キャプテン・バギーである。

 

 

 

そうしてにわかに戦場が活気づいた頃、白ひげに近づく1人の男がいた。

 

彼の名はスクアード。

 

白ひげ海賊団傘下の大渦蜘蛛海賊団船長だ。

 

スクアードはいきなり白ひげの頬をぶん殴った。 

 

一瞬戦場の時が止まった。

 

そして、彼は吼えた。

 

「こんな茶番劇止めちまえよ!!!」

 

なんと彼は白ひげが海軍と取引をしており、エースと白ひげ海賊団の命の保証の代わりに、傘下の43の海賊団を売り払ったと言うのだ。

 

「おれ達ァ、罠にかけられていたんだよォ!!!」

 

海賊王に恨みを持つ彼は、エースがその息子であることを知らせなかった白ひげに、裏切られたと感じているようだった。

 

そこを海軍に付け込まれて騙されたのだ。

 

 

 

白ひげ海賊団が動揺している内に海軍は着々と作戦を進めていた。

 

最後の伝電虫を持つバギーは青雉により氷づけにされた。

 

これで作戦決行に障害はなくなったようだ。

 

 

 

「みっともねェじゃねェか!!!白ひげェ!!!おれはそんな弱ェ男に敗けたつもりはねェぞ!!!」

 

仲間から不意打ちをくらい、膝をついた白ひげに対して、クロコダイルも吼えた。

 

クロコダイルにとって、白ひげは一種の憧れだったのかもしれない。

 

 

 

「グラララ、いいパンチを放つようになったじゃねェか、スクアードよ。しかし、他人に唆されて親をぶん殴るとは……。とんでもねェバカ息子だ!!

 

バカな息子をーーーそれでも愛そう」

 

白ひげはバカ息子を抱きしめた。

 

それだけでスクアードは自分が間違っていたことを察したようだ。

 

 

「お前がロジャーをどれ程恨んでいるか……それは痛い程知ってらァ…ーーーだがスクアード。親の罪を子に晴らすなんて滑稽だ…。エースがおめェに何をした…!?仲良くやんな…。エースだけが特別じゃねェ…。みんなおれの家族だぜ…。」

 

 

白ひげは後方で壁となっていた氷山を砕いた。

 

これで傘下の海賊団達は退路が確保され、いつでも逃げられるようになった。

 

 

「海賊なら!!!信じるものはてめェで決めろォ!!!!」

 

 

こうして白ひげへの疑念は払拭され、白ひげ海賊団と傘下の海賊団達はより一丸となった。

 

 

 

「……それよりおめェ、スクアードの事わかっていて放置しやがったな。」

 

「ニュ~~~。何せ、悪い未来が見えなかったからな!!いいモン見させて貰ったぜ、オヤジ。」

 

なっちゃんはサムズアップ×6した。

 

 

「全く、お前もバカ息子だよ。」

 

白ひげはそう呟くと、戦場に響き渡る声で言った。

 

「おれと共に来る者は、命を捨ててついてこい!!!」

 

ついに世界最強の男が動き出す…!

 

「行くぞォ~~~~!!!!」

 

「構えろォ!!!暴れ出すぞ!!!世界最強の男がァ!!!!」

 

 

 

その力は絶大であった。

 

島を海ごと傾け、巨人族の海軍中将さえも軽くあしらった。

 

 

しかし、海軍の作戦を止めることは叶わなかった。

 

湾内を閉じ込めるように包囲壁が立ち上がり、白ひげ海賊団は袋の鼠となってしまった。

 

その包囲壁は白ひげの一発にも耐える特別製であり、脱出は困難であった。

 

そして、逃げ場を失った白ひげ海賊団へとマグマの塊が雨のように降り注いだ。

 

赤犬の『流星火山』だ。

 

 

「こりゃあマズイ。

 

『サンゴ六刀流 一ノ型 六刀の円舞曲 並びに 五ノ型 魚人剣術 五百人斬』

 

……ニュ~。なんとか合わせ技でマグマの塊は全部斬ったが……、破片で足場の氷が溶かされちまったな。不覚だぜ。」

 

「グラララ、モビー・ディック号が無事なだけ上出来だ……。ジョズ、切り札を使うぞ。」

 

 

ちょうどその時、マグマの熱気に当てられたのか、倒れていたリトル・オーズJrが目を覚ましていた。

 

オーズJrがいる場所は彼の流した血液により包囲壁が作動していなかった。

 

ここに勝機を見出だした白ひげは、海中に隠していたもう一隻の船を使い、オーズJrの協力もあって、ついに処刑台のあるオリス広場へ侵入することに成功したのだ。

 

 

 

こうして白ひげが広場に入れたのは、先駆けした麦わらのルフィが敵の注意を引き付けていたからという面があった。

 

しかし、ジンベエの手で、よりによって三大将の前に飛び出すことになったルフィはボロボロにされていた。

 

他にもクロコダイルが処刑を阻止してくれたおかげという面もあった。

 

 

「ニュ~。なんだクロコダイル。おれらの味方をしてくれるのか。」

 

「………………。」

 

「いや、無視すんなよ!」

 

 

より接近した海軍と海賊達の戦闘は激化の一途を辿った。

 

白ひげが海軍を薙刀の一振で吹き飛ばしていると、それを邪魔してくる男がいた。

 

「『アイスBALL』!!!

 

あらら…ダメかァ。振動は凍らねェなァ。どーも…」

 

一度凍らされたかに見えた白ひげと刺されたかに思われた青雉。

 

2人の攻防は互角であった。

 

そこを3番隊隊長のジョズが白ひげを援護し、青雉と相対した。

 

ルフィも暴れ回っていたが、身体に限界が来た所を中将達と黄猿にボコボコにされていた。

 

白ひげは次に赤犬と相対していた。

 

七武海も好き勝手しており、また湾頭にいた傘下の海賊達も合流しつつあった。

 

なっちゃんはミホークと戦っていた。

 

 

「ニュ~。おれはオヤジを守りてェんだ。邪魔しないでくれ。世界最強の剣士よ。」

 

「フッ。ならばなぜ笑っている?」

 

「何、おれも男の子だってことさ。シャンクスのライバルよ。その最強の称号、試させてもらうぞ。

 

『サンゴ六刀流 一ノ型 六刀の円舞曲』」

 

なっちゃんの6本の腕から繰り出される流れるような斬撃をミホークは捌いていった。

 

その余波だけで近づいた者は斬られていった。

 

「おい、お前ら!!なっちゃんとミホークには近づくなよい。……あれはもう嵐みたいなもんだな。」

 

と一番隊隊長マルコは船員に忠告した。

 

 

 

まさに混戦状態であった。

 

そんな中、マルコが直接空から処刑台を目指し、ガープに阻止された。

 

伝説の海兵の参戦に怖じ気づく船員達を鼓舞する白ひげ。

 

しかし、赤犬と戦闘中の白ひげに、持病の心臓の発作が起きてしまう。

 

そんな白ひげの心配をした隙をつかれ、まずマルコが黄猿のレーザーに打たれた。

 

次に青雉と戦っていたジョズもよそ見の隙に半身を凍らされた。

 

そして、隙を晒した白ひげが赤犬のマグマのパンチを食らいそうになったその時、颯爽と駆けつけた男によりそれは防がれた。

 

なっちゃんだ。

 

「ニュ~~~。マジで危ねェ。なんとか間に合ってよかった~。」

 

「…魚人島の悪魔か……!!今の一撃を防いだくらいで、気を抜くのはちと早いんじゃあ、ありゃせんか……? 

『犬噛紅蓮』」

 

「『サンゴ六刀流 二ノ型 蛸壺の構え』」

 

赤犬の腕から流れ出すマグマが犬の形となり、なっちゃんに喰らいつこうとした。

 

しかし、なっちゃんが仁王立ちで上段中段下段全てに黒刀を構えると、まるでバリアーが張られているかのようにその犬は弾かれた。

 

「この構えは、おれの剣の届く範囲全てに対する絶対防御だ。オヤジには指一本触れさせねェぜ。……そしてお前の次のセリフは『ア~~~うっとおしいのォ……』という!」

 

「ア~~~うっとおしいのォ……

……!!成る程、ここはもうお前のテリトリーってわけかい。

……全く、鷹の目は何をしとるんじゃあ。先程までこいつを抑えていたじゃろうに。」

 

「ニュ~、ミホークならすぐに決着しそうになかったんで、撒かせてもらったよ。…まさかおれ程の剣士がいきなり墨を吐いて目眩ましして逃亡するとは思わなかったようだな。」

 

「……おどれには剣士のプライドっちゅうもんはないんかい。所詮は汚い海賊じゃのう。」

 

「おれの誇りは家族と仲間だけだぜ。最初から強さは夢である冒険の手段に過ぎなかった…。……だからおれは助けられればいいのさ。オヤジをな。」

 

「グラララ、ちょっとフラついただけで心配性な奴だ。…それよりそのまま赤犬を抑えておけよ。すぐに他の大将がやって来るぞ…。」

 

 

 

白ひげ達の戦況が目まぐるしく変わる中、戦場ではまた1つ変化が起きていた。

 

 

「ウォォオォオォオォオォオォ!!!」

 

ルフィに本日二度目のテンション・ホルモンが施されたのだ。

 

イワンコフの援護もあり、再度エースへ向かって進むルフィ。

 

途中ハンコックがパシフィスタの妨害をした場面もあった。

 

また、マルコが黄猿とオニグモ中将の連携により海楼石を嵌められてしまう。

 

ジョズも完全に青雉に凍らされてしまった。

 

これで勢いづいた海軍が白ひげへと殺到した。

 

しかし、白ひげは海軍の精鋭集団をものともしない。

 

 

「おれァ、白ひげだァア!!!!」

 

吹き飛ぶ海軍。

 

(((か……怪物!!!)))

 

「……おれが死ぬ事……。それが何を意味するか…、おれァ知ってる……!!!……だったらおめェ…息子達の明るい未来を見届けねェとおれァ死ぬ訳にはいかねェじゃねェか…!!!」

 

 

「何だ!?コイツら白ひげの後ろに構えて!!」

 

そして白ひげの誇りである逃げ傷のない背中を守る隊長達。

 

「いや、ここはおれがいるからお前らはエース助けに行ってこいよ。」

 

赤犬と青雉を『二ノ型 蛸壺の構え』で牽制するなっちゃん。

 

とはいえ、流石に大将2人相手だと足止めが精一杯のようで、その他大勢の海兵達を抑えるためにも隊長達は必要だ。

 

 

そんな時、センゴクの号令により無情にも処刑が遂行されそうになってしまう。

 

と、その時だった。

 

 

「やめろォ~~~~~~~~!!!!」

 

ルフィにより覇王色の覇気が発せられた。

 

幾ばくかの海兵と処刑人が気絶したのだ。

 

これを受けて海軍は未来の有害因子として、より麦わらのルフィを危険視した。

 

そして白ひげは未来の明るい希望として、麦わらのルフィに期待した。

 

 

「麦わらのルフィを全力で援護しろォ!!!!」

 

 

ルフィを狙う海軍を妨害し、処刑台までルフィを送り届けようとする白ひげ海賊団と傘下の新世界の海賊達。

 

クロコダイルさえもミホークを抑えている。

 

白ひげはいつでもルフィを倒しに行ける黄猿を妨害している。

 

またジンベエはルフィを援護に行った隊長達の代わりに白ひげを支えている。

 

 

「ジンベエ…何してやがる…。おれはエースの弟を助けろと言ったぞ…。」

 

「わしは白ひげ海賊団じゃない。あんたの言うことを聞く義理はない。」

 

「へッ、アホンダラァ…。」

 

「ニュ~。おれも船長の意向ならば仕方ないよなァ~。」

 

「…お前さん、今までわしのことを船長なんて呼んだこと無かろうに…。」

 

「………アホンダラァ。」

 

 

 

そしてガープをもぶっ飛ばしたルフィがついに処刑台にたどり着いた。

 

しかし、白ひげの隙をついて放たれた黄猿のレーザーによりハンコックから貰った鍵を破壊されてしまった。

 

センゴクも能力を使い、絶体絶命のピンチになってしまう。

 

そこでまさかの処刑人に成りすましていたMr.3のおかげで鍵を作ることが出来た。

 

センゴクの攻撃をなんとか防いだルフィは、ついにエースを解放したのだ!

 

 

 

絶対不可能な願いを兄への思いだけを胸に愚直に進むことで叶えてしまった麦わらのルフィ。

 

弟の助けの手を掴んだエース。

 

ゴムゴムの実とメラメラの実の無敵の兄弟コンビ攻撃が海軍に炸裂した。

 

 

そんな時、スクアードが外輪で船を動かし広場まで上がってきた。

 

特攻隊として決死の殿を務めるつもりだ。

 

しかし、白ひげは片手で船を止め、スクアードを諌めた。

 

「今から伝えるのは………!!最後の船長命令だ……!!!よォく聞け……白ひげ海賊団!!!

 

お前らとおれはここで別れる!!!!全員!!必ず生きて!!!無事、新世界へ帰還しろ!!!

 

行けェ!!!!野郎共ォ~~~~!!!」

 

 

白ひげを1人残していくことに踏ん切りがつかない船員達。

 

しかし、白ひげやその覚悟を汲んだ者達から発破され、ひとりまたひとりと逃走を決意する。

 

エースも白ひげに感謝を示し、おれがオヤジで良かったか、という問いに、当たり前だ!!!と答えた。

 

 

 

エースという人質がいなくなり、遠慮なく全力を海軍に向けることができるようになった白ひげ。

 

その力はマリンフォードを沈めるかの勢いであった。

 

奮闘する白ひげに群がる海兵達と、逃げる白ひげ海賊団達を追撃する海兵達。

 

 

なっちゃんはどちらを優先するか迷っていた。

 

おそらく、このままでは白ひげが死ぬ。

 

しかし、エースが誰かに殺られることも覚えているので捨て置けない。

 

究極の二択であった。

 

そして、なっちゃんはーーー…………

 

 

 

白ひげ海賊団を追いかける海軍の攻撃は熾烈を極めた。

 

特に三大将の相手が大変であった。

 

 

「本気で逃げられると思うちょるんか………!!めでたいのう。」

 

赤犬の執拗な攻撃が白ひげ海賊団の背後を襲う。

 

白ひげ海賊団達は1人でも生き残ろうと必死に逃げていた。

 

なんとか船を反転させ、あるいは軍艦を奪い、いざそれに集まろうとした時、赤犬の渾身の煽りが飛んで来た。

 

「敗北者じゃけぇ…!!!」

 

それに乗ってしまったエースは無謀にも赤犬に立ち向かい、手痛い反撃を食らってしまった。

 

赤犬は次に麦わらのルフィに狙いをつけた。

 

限界が来ていたルフィは赤犬の攻撃を避けることができない。

 

そしてその赤犬の拳がルフィに当たらんとした時、エースは身を呈して弟を庇った。

 

そしてエースは身体に大穴が空き致命傷を負った………………かに思えた。

 

 

その一撃はなっちゃんが守っていた。

 

 

「ニュ~~~。嫌な未来が見えたんでな。こっちに来てよかったぜ。」

 

「……このタコがァ。何度も邪魔しおってからに……!!」

 

「悪いが、オヤジの面倒も見なけりゃならんのでな。速攻で行かせて貰うぜ。

 

『サンゴ六刀流 六ノ型 奥義 蛸足鬼剣』」

 

その瞬間、なっちゃんの6本の腕が黒く変色し、それぞれの腕が放てる最強の一撃が赤犬を襲った。

 

 

 

見聞色を極めた自然系の能力者は、相手の攻撃に合わせて流動する身体をコントロールすることで、覇気の攻撃でも躱すことができる。

 

そのため、大将レベルの自然系の能力者にダメージを与えるには、武装色の覇気は勿論、より高度な見聞色で上回るか、あるいは不意を突くしかない。

 

しかし、なっちゃんが編み出したこの奥義はそのどちらでもない。

 

6本の腕を活かした同時攻撃。

 

それぞれの腕から放たれる最強の一撃は、見聞色でも見切れない速度を誇る。

 

それが6つの方向から同時に襲いかかるのだ。

 

ひと度この技の間合いに入ってしまえば、避ける術はない。

 

 

 

赤犬は両手足と首、心臓を同時に斬られた。

 

しかし、赤犬も高レベルの能力者である。

 

かろうじて急所を断たれることは避けたようだ。

 

それでも、あれではもうしばらく戦闘不能であろう、となっちゃんは判断した。

 

一方でなっちゃんの方もタダでは済んでいなかった。

 

この奥義は腕への負担が大きく、覇気もまた大量に消費する。

 

かつてのなっちゃんであれば日に一度しか使えなかった。

 

今でも少しの間腕がシビレ、六刀流の型も一部使えなくなってしまう。

 

覇気も硬化や気配察知等の基本は使えるが、内部破壊や未来予知などの応用技はしばらく使用不可となる。

 

これだけのリスクを負ってでも赤犬を排除するべきだとなっちゃんは考えたのだ。

 

 

 

なっちゃんはこれ以上エースが余計な事をしないように、かろうじて無事だったモビー・ディック号の上へとぶっ飛ばした。

 

「痛てェ!いきなり何すんだァ、なっちゃん。………いや、助けてくれてありがとう。おかげでルフィも救われた。」

 

「ニュ~。これでも怒っているんだぜ、エース。

この海で!…弱い奴に自由はねェ……。オヤジをバカにされてもお前の強さじゃあ、撤回させることもできやしないのさ。悔しかったらもっと修行せい。修行を。

………ジンベエ兄貴、エースが勝手に船を降りないよう物理的に押さえ付けておいてくれ。」

 

「あいわかった。それでお前さんはどうするんじゃ。」

 

「あいにく、おれにはもう一仕事あるんでね……。先に出ていてくれ。すぐに追い付く。」

 

 

 

なっちゃん達がやり取りをしている間も白ひげは暴れていた。

 

バカ息子がやっと自分なんて老いぼれではなく、未来を助けに行ったおかげで、後顧の憂いがなくなったのだ。

 

白ひげの発揮する力はここに来て、最高潮となっていた。

 

しかし、そのご機嫌状態も長くは続かなかった。

 

黒ひげが現れたのだ。

 

白ひげは仲間殺しの大罪を犯したティーチだけは息子とは呼べないと言い、その過信と軽率さの隙を突いて大ダメージを与えた。

 

しかし、黒ひげとその仲間達によって反撃にあってしまう。

 

白ひげに未だ致命傷はないが、元々寿命が近く薬で騙し騙し延命していた所に、これだけ全力で能力を行使したので、その身体には相当な負担が掛かっている。

 

このままでは黒ひげ達になぶり殺されてしまうだろう。

 

海軍も海賊同士が潰し合うならばと裏で着々と包囲網を敷きながら静観している。

 

また、急いで船に乗り込もうとしている白ひげ海賊団を攻撃している部隊も多い。

 

まさに絶体絶命のピンチの白ひげに涙し、足を止めてしまう白ひげ海賊団の船員達。

 

隊長達はそれをなんとか叱咤して船に乗り込ませ、出航しようとしている。

 

海軍も青雉と黄猿を中心に、奪われた軍艦もろとも破壊する勢いで追撃している。

 

 

「ん~~~。ようやく会えたねェ、なっちゃん。そろそろリベンジさせてもらうよォ。」

 

「悪りィ、ボルちゃん。今付き合ってる暇がねェんだ。遊ぶのはまた今度にしようぜ。………マルコォ!黄猿は任せたぜ!」

 

なっちゃんは、Mr.3を回収することで海楼石の手錠を外すことができたマルコに黄猿の相手を丸投げした。

 

「オ~~~。つれないねェ。……仕方ないねェ。暇になったんで、白ひげ海賊団でも壊滅させておくとするよォ。」

 

「……させないよい!黄猿…、暇ならおれのリベンジに付き合ってくれよい。」

 

「おォ~っとっとォ。危ないねェ。」

 

 

 

黄猿を振り切ったなっちゃんは白ひげの所へ向かった。

 

白ひげは凶悪なレベル6の脱獄囚を含む黒ひげの一味全員を相手に苦戦していた。

 

 

「『サンゴ六刀流 七ノ型 奥義 一刀阿修羅 並びに 五ノ型 奥義 魚人剣術 千人斬』」

 

そこへなっちゃんの奥義が炸裂した。 

6本の腕を1つに束ねるようにして放たれた強力な一撃は海軍の包囲網を蹴散らし黒ひげ一味に大ダメージを与えた。

 

しかし、先ほどの六ノ型の反動や、遠距離攻撃をするために五ノ型を併用した影響もあり、本来の技よりも威力が下がっていた。

 

そのため、黒ひげ一味はすぐに復活してくるだろう。

 

 

「オヤジィ!今のうちだ。逃げようぜ。……サッチの仇を討てないのは癪だが、もう目的は達成したんだ。後は逃げるが勝ちだぜ。」

 

「グラララ。逃げるだって?馬鹿を言うんじゃねェ!!このおれの海賊人生に一切の逃げ傷はない……!息子の仇を目の前にしてむざむざ逃げ恥を晒せるかァ!!お前こそさっさと行きやがれこのバカ息子が………!!!」

 

「ニュ~~~。正直そう言われるのはわかっていたぜ。…ここで問答する時間が惜しい。とっておきを使わせてもらう。素直に逃げないオヤジが悪いんだからな!」

 

「おめェ、何を……。

……!!アホンダラァ……!こりゃ海楼石か……!」

 

なっちゃんは、マルコに使われていた海楼石の手錠をこっそり持ってきていたのだ。

 

勿論手錠として使うには白ひげの腕はでかすぎて嵌められないのだが、片手首に手錠全体を使って巻き付けた上で輪っか同士を嵌めれば、むしろ白ひげの腕の太さも相まって、アクセサリーのように装着することができる。

 

海楼石は触れてればいいのでこれで問題ない。

 

 

「そうだよ。海楼石だ。流石に効くだろう。

そしておれはわからず屋なオヤジを誘拐することをここに宣言する!!!」

 

そしてなっちゃんは力が抜けた白ひげを担ぎ上げ、とっとこ海へと走り出した。

 

 

 

「…………!!逃がすなァ。白ひげは今無力化されている。千歳一遇のチャンスだ。全軍、追えェ!!!追撃している部隊も反転して挟み撃ちにしろォ!!」

 

センゴクが号令を発した。

 

 

「ゼハハハハ。面白ェ奴だ。……だが逃がすと思うかァ!このおれの宝をよォ……!!」

 

黒ひげも追いかける。

 

引き寄せる能力があるので逃亡する際の一番の脅威だ。

 

それは白ひげとの戦闘を見ていたなっちゃんもわかっているため、遠くから『五ノ型 魚人剣術』で牽制している。

 

白ひげを両手で担いでいても、残り4本も手が空いている。

 

やはり6本腕は最高だな、となっちゃんは自画自賛した。

 

その自慢の腕が、一番嫌っている誘拐にも役に立つとは皮肉ではあるが。

 

 

 

なっちゃんの障害は後方だけではない。

 

もう海へと船を出している白ひげ海賊団を追撃している海兵達が、一部反転して前方に待ち構えているのだ。

 

幸い、黄猿は空中でマルコが抑えており、青雉も海を先回りして正義の門の前で白ひげ海賊団を食い止めているのでここにはいない。

 

ここが勝機だと見たなっちゃんは、前方から放たれる砲弾や銃撃を気にすることなく突っ込んだ。

 

なんとか4本腕でも切り抜けたが、今度は十を超える中将達が襲いかかってきた。

 

流石に手が足りず、分が悪いように思われたが、なっちゃんにはこのような手一杯の時のための技もあった。

 

「『サンゴ六刀流 三ノ型 蛸墨鉄砲』」

 

 

「ええ~~!!六刀流の技なのに刀使ってないじゃん!!!」

 

一般海兵がツッコんだ。

 

 

これは口に含んだ墨を覇気で硬化して放出する技だ。

 

その威力は、魚人空手の真髄である水の制圧を修得した今となっては、昔のものとは比べ物にならない程だ。

 

 

「ニュ~~。これでも手が足りねェ。……そうだ!…オヤジィ。今からオヤジは刀だ!!!……ひらめいた。名前は名刀…『髯嵐』」

 

「このアホンダラァ…!さっさと錠を解いておれを放しやがれ……!!」

 

 

ノーモーションで使える『三ノ型 蛸墨鉄砲』と、新たに得た刀も合わせた六刀流で、なんとか中将の猛攻を防ぐなっちゃん。

 

しかし、流石に無傷とはいかないようで、ようやく包囲を突破した時にはその身体は傷だらけであった。

 

一応、新しい刀には傷がつかないように気をつかっていたので仕方がない。

 

また、まだ未来予知も使えない状態というのも影響は大きい。

 

このまま何もしなければ出血多量で死んでしまうだろう。

 

 

そして、あと一歩で海に出れるというその瞬間、赤犬が立ち塞がった。

 

 

「ニュ~~。タフだな赤犬。もう立っているのでやっとだろうに。」

 

「…ハァ…ハァ……。わしが逃がさん言うたらーーーもう生きる事ァ諦めんかい。バカタレが…。」

 

「押し通る…!!」

 

「好きにせい!!!

『冥狗』」

 

 

なっちゃんはあえて反撃せず海へ出ることを優先した。

 

背中を貫かれるなっちゃん。

 

しかし新品の刀だけは絶対に守った。

 

海へ入るとすぐさまなっちゃんは深く深くへと潜っていった。

 

 

 

「ゼハハ、ガープゥ、お前が邪魔するからオヤジに逃げられちまったじゃねェか。……どう落とし前つけてくれるんだァ!!」

 

「黙れ、黒ひげ。そもそも海賊であるお前さんを見逃す義理はない。」

 

 

 

「セ、センゴク元帥!白ひげとなっちゃんが逃亡しましたァ!!」

 

「わかっておる。……全軍、落ち着けェ!!!魚人の奴はともかく、白ひげは能力者の人間!その内呼吸のために海上に上がってくる。そこを狙うのだ!!

そして、その場所はおそらく、正義の門の前で青雉により足止めさせられている白ひげ海賊団達の所になるだろう!

さあ、お前達も早く軍艦に乗り込んで奴らを追いかけろ!!そうすれば海に浸けられ弱った白ひげも出てくるぞ!エースや麦わらのルフィ共々絶対に逃がすなァ!!!」

 

 

 

こうして海軍は慌てて正義の門へと向かったが、一足遅かった。

 

 

正義の門を背中に海賊達を逃がさないように海を凍らせ死守していた青雉であったが、突如後ろの正義の門が開き、覇王色の覇気で動きを止められた。

 

「なんだァ!?」

 

 

また、空中でマルコと戦っていた黄猿もある男に銃を向けられ制止させられた。

 

「……おォ~っとっとォ。ベン・ベックマン~~~…!!」

 

 

白ひげ海賊団の船員が言った。

 

「何でここに……!!四皇がいるんだよ…!!!

赤髪のシャンクスだァ!!!」

 

 

 

「この戦争を終わらせに来た!!!」

 

 

 

 

その頃なっちゃんはセンゴクの予想に反し、海上に上がることなく海を進んでいた。

 

では海中で呼吸のできない白ひげはどうしているのか。

 

その答えはシャボンを利用した酸素ボンベにある。

 

そう、護送中のエースを助けるために必要になるかもしれないと念のため用意していたあの酸素ボンベだ。

 

 

「グララララ、随分準備がいいじゃねェか。昔のガキだったお前とは思えないな。」

 

「ニュ~~~。なんだ、オヤジ。もう怒ってないのかい?」

 

「へッ、ここまでされちゃあ今更おれが怒った所で、もうどうしようもねェだろうが。」

 

「ま、おれもオヤジと別れてから長年一国の街の代表をやってたんだ。そりゃあ大人にもなるさ。」

 

「とはいえ、ここまでおれの言うことを聞きやがらねェバカ息子は初めてだ。ゲンコツ一発で勘弁してやらァ。」

 

「根に持ってるッ!!

 

……おれのオヤジは白ひげだが、海賊を学んだのはロジャー船長からだからな。そりゃ自由にもなるさ。

 

………………おれが息子でよかったか?オヤジ……。」

 

「グララララ……、当たり前だ……!!!

 

我が自慢の息子よ……!!」

 

 

 

 

こうしてマリンフォード頂上戦争は終結した。

 

 

 

 

 

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なっちゃん:知識で白ひげとエースが死ぬことだけは知っているが、細かいことは何も覚えていない。故に白ひげ絶対守るマンと化した。

何気にミホークに白ひげから引き離されていた時が一番気が気でなかった。

常に白ひげの様子を見聞色で窺っていたので、いち早く心臓の発作という不調に気付き駆けつけた。

最後の方で背中を赤犬に貫通させられているが、原作のジンベエも平気だったのでおそらく大丈夫だろう。

余談だが、白ひげ海賊団傘下の船長にタコの魚人がいたので気になっている。

 

 

ミホーク:赤髪以来の同格の剣士相手に内心テンション爆上げだったが、冷や水ならぬ冷や墨をかけられて萎えた。ちなみに三ノ型ではなく、本当にただの墨である。

この戦争ではなっちゃんが自分に集中してくれることはないと悟り、後は適当に流しながら七武海としての義務を遂行している。後日、お互い全力が出せる状況で決闘を申し込もうと画策している。

 

 

スクアード:白ひげに裏切られたと思いつつも、刺すことは考えなかった。

それは白ひげがロジャー海賊団の元クルーでも船に乗せる男であることを知っていたからであり、かつてのなっちゃんとのケンカで恨みが少しは晴らされていたので恨みより白ひげへの恩が勝ったからでもある。

とはいえ、エースが仇の息子ということを事前に一言でも教えてくれなかった白ひげに怒りを覚えたので、ケンカすることにした。

いや、この状況で親子ケンカなんかしている場合かよ、と思うがバカな息子なので仕方がないのかもしれない。

それに、また再びなっちゃんにケンカで借りを返す時のために、長年鍛えていた拳の威力は、不意を突かれた白ひげが膝を地面に突いてしまうくらいには威力があった。

 

 

クロコダイル:シャバに出てウキウキと白ひげにちょっかいをかけていたが、思ったよりも弱っているその姿に複雑な思いをした。

 

 

白ひげ海賊団古参クルー:実はなっちゃんがいた時からいる古参のクルーは、その修行癖が少し伝染しており、原作よりも多少は強化されている。マルコが終盤に黄猿を長いこと抑えていられた要因でもある。

とはいえ、百獣海賊団のように過酷な競争がなく、ビッグ・マムのように理不尽な無茶振りもないので、船員達が強くなり続けることはない。

もしもなっちゃんが白ひげ海賊団にいたままであったら、もしかしたら白ひげのワンマンではなく、船員も含めて最強の海賊団になっていたかもしれない。

 

 

ルフィ:エースと同じ船に乗った所で安心して、張り詰めていた気が解れ、ついに気絶した。その身体は限界を超えていたが、この後駆けつけたローに治療されて事なきを得た。

 

 

エース:実は正義の門の前で他の隊長達と一緒に青雉と戦っていた。全く頑固で懲りない奴である。それでもそのおかげもあってか青雉による犠牲者は抑えられた。ジョズも炎で解凍し、一命を取り留めている。

 

青雉:終盤1人で白ひげ海賊団とその傘下の海賊団を食い止めていた化物。

能力者のくせに海上戦闘が強すぎる。

船が氷で止められていたので、いかにエースがいようと、あのまま赤髪が来なかったら足止めされて海軍と挟み撃ちにされて海賊達が全滅していた可能性は高い。

 

 

シャンクス:世界政府へのスタンスが謎な人。

(これから原作で情報が明らかになっていくことによって、原作とは異なり明らかに世界政府側が劣勢なこの状況で、戦争を終結させたことに矛盾が生じるのではないかと作者は震えている。

まあ、その場合は遠くから見聞色で奮闘するなっちゃんを見ていて、それで絆されたというご都合解釈で勘弁してほしい)

 

 

 

 

 

『サンゴ六刀流』一覧

 

『一ノ型 六刀の円舞曲』:6本腕による流れるような連続攻撃。上下左右から迫る隙の一切ない斬撃を防ぎ続けることができない者は、たちまち細切れにされてしまうだろう。はっちゃん命名。

 

『二ノ型 蛸壺の構え』:阿修羅のような不動の構えで、剣の届く範囲に侵入したモノにカウンターを決める。その範囲内に限りより精度の高い未来予知を使うことができ、相手の攻撃を防御や受け流しで撃墜する様は、まるでバリアーがあるように見える。他作品で例えるなら制空圏である。はっちゃん命名。

 

『三ノ型 蛸墨鉄砲』:口に含んだ墨を放出する技。魚人空手で得た水の制圧の心得と覇気により、貫通力だけならば黄猿のレーザーに次ぐ威力を持つ。ただしノーモーションで放てるという利点がある一方で、射程や爆発力など劣っている面も多い。

 

『四ノ型 爪楊枝』:魚人の海中戦闘の基本にして奥義である突進力を用いた突き技。なっちゃんの技の中で最速の一撃であり、海の中で助走をつければつける程速度と威力が上がる。地上でも一応使うことはできるが劣化する。実は赤犬の白ひげへの攻撃を防ぐ時に使用していた。

 

『五ノ型 魚人剣術』:魚人空手を参考にした、大気中の水分を通して伝わる見えない斬撃。百人斬が魚人空手でいう千枚瓦に相当する。他の型と併用できるが、その場合は威力が下がってしまう。三ノ型も近距離しか威力が持続しないことを考えれば、なっちゃん唯一の遠距離攻撃方法である。

 

『六ノ型 奥義 蛸足鬼剣』:6本の腕それぞれで出来る最強の一撃を同時に放つ技。1つの腕による斬撃でさえ、全盛期のガープのゲンコツに迫るかという一撃なので(39才時点)、それを同時に6つ受けて無事で済む者はいない。ただし、武装色の内部破壊と見聞色の未来予知と六刀流と筋肉、全てをフル活用した技であるので、使うと相応に消耗する。

 

『七ノ型 奥義 一刀阿修羅』:6本の腕を1つに束ねるようにして放つ強力な一撃。なっちゃんが昔から求めていた強力な必殺技の答え。他の型とは異なり隙は大きいが、放つことができれば一番威力の高い技である。五ノ型と併用することで、威力は下がるが、巨大で見えない斬撃を伝える衝撃波を放つことができる。




今までは勢いで書いてましたが、初めて壁にぶつかりました。多数のキャラを扱わなければならない頂上戦争を描くのは想像以上に大変でした。改めて尾田先生はスゴいと実感しました。

さて、もう描きたい事を今の実力で精一杯やりきったので、これでなっちゃんの物語は一端終了とさせていただきます。

エピローグを投稿するかは明日の私の筆が乗るかどうか次第でしょう。

少しの期間でしたが、リアルタイムで評価や感想、誤字報告をいただきながら執筆するのはライブ感があって、とても楽しかったです。
皆さんに育てられながら、こうして書き終えることができました。

ありがとうございました。

ランキングにも載ってくれたのは読み専として望外の喜びでしたね。

初心者の私でもこうして物語を紡げるのは、ひとえにONE PIECEとい作品の骨格がしっかりしており、その世界に住む人々に深みがあり、とても魅力的だからでしょう。

拙作を見て、少しでも原作を読み返してくれたり、二次創作をしてみようと思ってくれたならば幸いです。


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エピローグ

完結です。


あれから戦場を離脱したおれとオヤジは無事に仲間達と合流していた。

 

皆も到底無事とは言いがたい姿だったが、なんとか命は拾えたようだ。

 

……やはりあのビリビリした覇王色はシャンクスだったか。

 

借りができちまったな。

 

おれはオヤジを主治医でもあるマルコに預けて、自分の処置をすることにした。

 

…赤犬の野郎。おれの身体に穴を空けやがって。マジで痛ェ。

 

それでも内臓の重要な器官は無事なようで、なんとか生きながらえている。

 

丈夫な魚人に産んでくれた両親に感謝だな。

 

それでも血を流しすぎたな…。

 

中将達も伊達ではなかったからな。

 

おれは仲間から献血してもらい、事なきを得た。

 

ちなみに胸の穴はルフィを処置していたトラファルガー・ローに塞いでもらえた。

 

これも借り1つだな。

 

 

 

何日か経ち、おれたちはそのままナワバリの島まで逃亡に成功した。

 

ちなみにクロコダイルは島につくと即座に部下と共に去っていった。

 

その頃には頂上戦争で世界政府が敗北したニュースは世界中に伝わっていた。

 

……これから海軍は大変だな。

 

まあ、ガープさんやボルちゃんもいるし大丈夫だろう。

 

今回はボルちゃんに付き合ってあげられなかったから、今度また味噌ラーメンでもご馳走してあげよう。

 

 

 

「グララララ、お前らよくやったな………!!エースは取り返した!……おれはアホンダラのせいでむざむざと生き恥を晒しちまっているが……。

今回の戦争はおれ達の勝利だァ!!!」

 

オヤジの宣言により宴が始まった。

 

オヤジの言う通り、おれたちは目標を達成し勝利したといっていいだろう。

 

しかし、そのために犠牲が0だった訳ではない。

 

オーズJrをはじめ、命を落とした者もいる。

 

それでもおれたちは騒いだ。

 

それが白ひげ海賊団流の弔いだからだ。

 

男の別れだ。

 

涙を流す者などいないに決まっている。

 

笑って元気に騒ぐ事で、先に逝った奴らにおれたちは大丈夫だとアピールするのだ。

 

 

 

おれたちが宴をしていると、ニュースクーが新しい新聞を運んできた。

 

それによると、海軍はセンゴクが責任を取り元帥の座を退くそうだ。  

 

新しい元帥はまだ決まっていないようだが、それでも早急に世間へ謝罪を示したかったのだろう。

 

 

……これは世界が荒れるかもな。

 

海軍は腐っている部分もあるが、治安維持として世界に必要な組織だ。

 

それが海賊に敗北し、組織も弱体化しているとなれば、無法者達が活気付くだろう。

 

海賊が活発化すれば魚人島にも影響するので勘弁してほしいな。

 

もうおれはにゅー魚人街の代表には戻れないしな。

 

なぜなら新聞に、おれとジンベエ兄貴の懸賞金が復活したことが載せられていたからだ。

 

それも大幅に額を更新されてしまった。

 

これでおれたちは改めてお尋ね者になってしまった訳だ。

 

 

他にも白ひげ海賊団の面々や、傘下の海賊達も皆懸賞金が上昇している。

 

脱獄囚組は、特にバギー、クロコダイル、ルフィが大きく更新されていた。

 

懸賞金を見て驚くバギーの顔は傑作だった。

 

ルフィも喜んでエースに自慢していた。

 

エースは散っていった仲間達を悔やんで黄昏ていたが、騒がしいルフィのおかげで少しは元気が出たようだ。

 

ほっこりするぜ。

 

やっぱり助けられてよかったよ。

 

 

 

こうして宴もたけなわになった頃、オヤジがとんでもないことを言い出した。

 

 

「グラララ、今日限りでおれは白ひげ海賊団を降りる!!」

 

 

おれたちは驚愕した。

 

 

マルコによると、戦争での無理が祟って、もう冒険に出られるような身体ではないそうだ。

 

特に能力の過剰使用が心臓に負担をかけたそうだ。

 

 

……マルコはあえて言わなかったが、オヤジはおれがエースを助けている間に黒ひげ一味の猛攻撃を受けていたな。

 

それも影響しているだろう。

 

黒ひげ……サッチの仇でもある。絶対に許せん。

 

 

船員達は必死に考え直すよう訴えたが、オヤジは頑として己を曲げない。

 

自分はもう明るい未来を見届けたから未練はない、センゴクも引退した事だしロートルは船を降りるべきだと主張している。

 

皆も頭ではわかっているんだろうが、感情が追い付いていないようだ。

 

 

結局、オヤジは海賊を引退することになった。

 

おれたちは盛大に宴を盛り上げた。

 

普段静かに酒を嗜む白ひげも、この日ばかりは珍しく昔話をする等口数が多く、家族との団欒を楽しんでいた。

 

この日のことをおれは一生忘れないだろう。

 

 

 

 

そして、おれたちは解散した。

 

傘下の海賊団達は新世界へと帰還していった。

 

ルフィはローの海賊船である潜水艦に乗せてもらって女ヶ島まで行くそうだ。

 

革命軍幹部含むニューカマー達も帰っていった。

 

オヤジは、一部の古参のクルーによって故郷の村まで送られることになった。

 

いよいよオヤジに何かあれば、主治医として連れ添うマルコから連絡が届く手筈だ。

 

 

隊長達も多くが出払うことになるので、残された白ひげ海賊団は、なぜかおれが船長代理として率いて、ナワバリに睨みを効かせることになってしまった。

 

……どうしてこうなった。

 

その説明には少し時を戻さなければならない。

 

 

宴が終了に近づいた頃、誰が白ひげ海賊団の後を継ぐのか話題になったのだ。

 

おれは二番隊の隊長であるエースを推薦したのだが、当の本人が固辞した。

 

今回の戦争は自分の失態が元凶なので、示しがつかないとのことだ。

 

いずれは誰にも負けないくらい強くなって、おれに船長の座を懸けた決闘を挑むとまで宣言された。

 

いやいや、おれも断っているんだが……。

 

支えてやるし今継げよ。

 

 

もう既にオヤジについていく事が決まっていたマルコや古参の隊長達からは、お前なら任せられると言われた。

 

「何、ずっとやれという訳じゃないんだよい。ただ、おれや隊長達が戻るまでちょっとの間、面倒を見てやってほしいだけさ。」

 

「ニュ~。そんなこと言って、医者のお前は勿論、他の隊長達もオヤジを送り届けただけで早々離れるつもりもないだろうに……。」

 

「グララララ。こいつらがお前が良いって言ってるんだ。うだうだ言ってねェでやりゃあいいじゃねェか。

どうせ他に行く当てもないんだろう?」

 

「ニュ~~。ジンベエ兄貴ィ。おれはタイヨウの海賊団の大事な部下だよなァ。スカウトされてるんだから助けてくれよ~。」 

 

「うむ。お前さんをタイヨウの海賊団から追放する!今後は好きに生きるんじゃな。」

 

「ええ~~ッ!!少しは引き留めてくれよ!」

 

「そもそも何でそんなに拒むんじゃ。元々白ひげ海賊団だったんじゃから別によかろうに。」

 

「いや、白ひげ海賊団に戻ることはいいけど、流石に船長代理は……。荷が重いっていうか……。」

 

その後、白ひげ海賊団のクルー達や傘下の海賊団達までもがおれを説得しだしたので、ついに根負けして頷いてしまったのだ。

 

 

なんでこんなに好感度が高いんだ、おれ。

 

古参のクルー以外はおれと初対面の奴も多いってのに。

 

 

ただ、おれも無条件で船長代理を引き受けた訳ではない。

 

とりあえず2年間という期限を設けたのだ。

 

2年したらルフィも冒険を再開するだろうし、そうすればこの世界は良くも悪くも変革を遂げるだろう。

 

その新しい冒険の最初の物語の場となる魚人島で、おれは改めて麦わらの一味に会ってみたい。

 

前世からのファンとしても、元ロジャー海賊団として船長の後継を見定めるためにも、エースの兄貴分として弟の弟を故郷で歓迎するためにも、そして何よりおれの好奇心のためにもだ。

 

 

この世界に生まれて39年。

 

もういい年だが、おれの好奇心と冒険心は留まる所を知らない。

 

そしてこの世界には、おれの知らない世界がまだまだたくさん待っているのだろう。

 

この世界に生まれることができて本当に良かった。

 

おれを生んでくれてありがとう。

 

 

 

 

 

꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂

 

なっちゃん:39才。懸賞金16億6666万ベリー。

なお、白ひげ海賊団船長代理の情報が流れたら10億くらいプラスされるかもしれない。

覇王色もなく悪魔の実の能力もない、一般タコ魚人に生まれたが、不断の努力と師匠達と環境に恵まれた結果、強さを身に付けた。

強く頼まれると嫌とは言えない性格。

ただし、尊敬するオヤジ相手でも譲れないことには我を通す芯を持っている。

基本姿勢は命を大事に、常在修行、冒険心の三本柱である。

魚人という本来ならば海で一番自由であるハズの種族で、なおかつロジャー船長から自由を愛する心を受け継いだ男なので、自由を奪われる事への忌避感が強い。

そのため奴隷は勿論、殺生も好きではない。

とはいえ、やるときはやる男である。

 

 

 

はっちゃん:36才。シャボンディ諸島で頂上戦争を一喜一憂しながら見守っていた。兄の活躍に、流石はおれの兄貴だ!と鼻高々である。

ちなみに店主夫妻の娘の人魚(25)のアプローチがついに実り、新婚ほやほやである。

 

 

 

店主夫妻:店は娘夫婦に任せて隠居生活を送っている。しかし、暇なので最近は近所の子供や女性相手に料理教室を開いている。

 

 

 

店主夫妻の娘:鈍感なはっちゃんには真っ向勝負するしかないと悟り、見事に彼を射止めた。その影響ではっちゃんに対してのみ、とてもドスケb…積極的な人魚になってしまった。

 

 

 

2人の実の両親:長年の奴隷生活で心身共に疲労しており、身体の欠損があるので、はっちゃん達によって介護生活をしている。

その献身的な介護のおかげか、最近では元気が出てきたようで、はっちゃんのお店で簡単な手伝いをすることもある。

子供達が立派になってとても喜んでいる。

ただ、上の兄に浮いた話がないことを心配している。

 

 

 

ネプチューン夫妻:フカボシ王子へ仕事を引き継ぎ、国王と王妃の役目から退いた。息子達にお妃がいないのが気がかりだが、安心して2人で半隠居生活を送っている。

 

 

 

フカボシ:国王となった。ただし、まだ若いのでネプチューンが相談役として付いている。忙しい国務の中でも修行は欠かしていないので、リュウグウ王国最高戦力の一人である。

 

 

 

リュウボシ:にゅー魚人街の代表をなっちゃんから引き継いだ。陽気な性格で見た目もなっちゃんよりも親しみやすいので、住民からの評判は上々である。

タイガーや元タイヨウの海賊団の面子にも一定の敬意を払って接している。

道場も後述する人物と共になっちゃんの後を継いでいる。

リュウグウ王国最高戦力の一人である。

 

 

 

マンボシ:リュウグウ王国兵士のトップのポストに就いている。それは、なっちゃんの道場の卒業生のみで構成された騎士団の団長である。3人の中で一番合法的に修行の時間を確保できるので、今後国一番の実力者になるのは彼かもしれない。

リュウグウ王国最高戦力の一人である。

 

 

 

タイガー:にゅー魚人街で孤児院の院長をしている。心の底には闇を抱えているのかもしれないが、少なくとも現状は、無垢な子供達に囲まれて幸せそうに暮らしている。

 

 

 

ホーディ・ジョーンズ:魚人こそが至高の種族→なっちゃんこそが至高のお方、という風に、原作とは一番かけ離れた存在になってしまった男。

リュウグウ王国最高戦力の一人である。

その愉快な仲間達も概ね同じ感じなのだが、ダイオウイカの魚人であるイカロス・ムッヒだけは、8本腕でありなっちゃんの六刀流を再現できるかもしれない存在なので嫉妬されている。

ちなみにヒョウゾウはこの中にはいない。そもそも原作では雇われの協力者的立ち位置であったのでジョーンズの昔からの仲間ではなかったからだ。今では彼は自分の事を魚人No.1剣士とは到底名乗れないだろう。

 

 

 

バンダー・デッケン九世:かつては人の下にはつかないと考えていたが、やベー奴の怒りを買ってしまったせいでその鼻っ柱を叩き直された。先祖の悲願のためにポセイドン疑惑のあるシラホシに対して脅迫まがいの求婚を行っていただけなので、ガチのロリコンというわけではない。とはいえ多少ロリコンの気があるのは確かであるが。

地味にジョーンズ達とは異なり、なっちゃんを畏れてはいても崇拝まではしておらず、比較的常識人な一面があったため、リュウボシと共に、なっちゃんに道場の後継者として指名された。

それ以来ジョーンズ達からの視線が辛くて胃痛がしている。

加えて妹を付け狙ったロリコン野郎として、同じ後継者であるリュウボシからの視線も痛い。

また人の上に立ててよかったね。

 

 

 

ワダツミ:現在23才。なっちゃんの道場で修行中。実力的には卒業してもいいのだが、あまりに頭が弱い部分があるので特例的に保留されている。子供達と一緒に学校に通って勉強している。その進みは遅いが着実に賢くなっている。

 

 

 

アラディン:タイヨウの海賊団の船医。原作ではビッグ・マムの29女でシュモクザメの半人魚のシャーロット・プラリネの未来の夫だが、本作の未来では果たしてどうなるのか……。ある意味本作の最大の被害者かもしれない。

一応、魚人島のお菓子を欲するであろうビッグ・マムとナワバリ&故郷を戦場にしたくないなっちゃんの間で何かしらの取引が成されれば、ワンチャン政略結婚が成されるかもしれないが……。

当然なっちゃんにその辺の原作知識は残っていないため、2人の運命力に期待するしかない。

 

 

 

ルフィ:どうにか仲間に暗号を伝え、レイリーと修行中。

なっちゃんやローには感謝している。

 

 

 

白ひげ海賊団:自分達では諦めるしかなかった白ひげの命を救ってくれたことでなっちゃんに対する好感度が天元突破している。

船長代理としてのなっちゃんには、オヤジの代わりというよりは、頼れる皆の兄貴分といった形で親しみを持っている。ただ、息をするように修行しているので一部のクルーがそれに感化されつつある。

 

 

 

白ひげ:戦争での無理が祟り、体調が悪化したので船長の座から退き故郷へと帰った。

もしかしたら余命は半年もないかもしれない。

おそらくその最期の時は、ベットの上でたくさんの家族に囲まれた中で往生するだろう。

その海賊人生に悔いはない。




終わる終わる詐欺をしましたが、今度こそ本当に終わりです。
前話にてもう完走した感想は述べましたし、この作品の制作裏話は活動報告に投稿したので、ここでは1つだけ。

皆様のおかげで楽しい2週間を過ごすことができました。
本当にありがとうございました。


【2022/9/8追記】
良ければ短編を書いたのでご覧下さい。
ただし、映画ONE PIECE FILM REDのネタバレ注意です。
『ウタウタの実の前任者』
https://syosetu.org/novel/297177/1.html


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