こんなドラクエ世界は知らんかった (ドM饅頭)
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第1話 こんな日常は続かない

 


 

 

 この世界に転生? 転移? 結構複雑な経緯を経てやって来た時から7年になる。

 自分自身じゃ覚えていないのだが、俺は2歳児くらいの体格の時に保護された里の一角に倒れているのを発見されて、そこの里の人々に保護される形で一緒に住まわせてもらっている。

 

 里の老夫婦の元で育てられていて、色んな事も教わりながら過ごしている内に分かったのは、ここはドラクエ世界だと言う事だ。

 しかも前世でプレイしたことのない可能性も高い世界だ。

 

 

「はぁ…… 勇者ローシュとか聞いたことない……」

 

 

 神の民の里は空中に浮かぶ群島都市と言った趣のある場所で、それぞれの大きさが1Km四方の島と不思議な連絡用の床で繋がっているのは、ドラクエ4の天空の塔の上昇や下降をする床みたいな感じで動いている。

 

 

「おーい!アリシアー!」

 

「……?」

 

 

 アリシア、そう呼ばれたのは今の俺の名前である。

 前世は男だった自分が何の因果か、今の世では女に生まれていて前世では慣れ親しんだ股間のブツともおさらばしてしまっているのが悲しい。

 

 まあ、そんなことは置いておくとして、今の俺の名前を呼びながらこちらへと向かってくるのは、この里に住む少年で一見するとドラゴンボールのナメック星人に似ているような微妙な風貌をしている。

 これは彼に限った話ではなく里に住む神の民と呼ばれる人々全員が同じような容姿をしている事から、鳥山デザインの世界に来ているのだと理解させられるが俺の容姿はと言うと、普通の人間の子供と言える姿かたちであるが決定的に違う点があったりするが後で良いだろう。

 

 

「どうしたの?」

 

「おばさんが呼んでたよ、少し用があるってさ」

 

「ありがと、じゃあ行ってくるね」

 

「あっ、待ってよ僕も一緒に行くよ!」

 

 

 ベンチに座って足をぷーらぷらとさせていた自分の元に、やって来た少年は自分を育ての母が呼んでいると伝えて来てくれたので、近くを通りかかったから丁度良くお使いを頼まれたのだろう。

 一緒に行くと言った彼と共に歩き始めて、連絡用の床へと向かっていく。

 

 

「それにしてもアリシアのソレって本当に不思議だよね、寝る時とか不便じゃない?」

 

「まあ、確かに変わってるけど寝る時とかは収納できるから、特に不便は感じないねぇ」

 

 

 連絡用の床に乗りそれがゆっくりと動き出す中で、彼が俺の背中についているソレをじっと見ながら言ってくる。

 今の自分の背中についているものが普通の人間とは全く違う点であるのだ、それが天使の羽と言うべきものが付いていてドラクエシリーズでいう所の天空城に住む天空人そのものとしか言いようがない。

 その上に特徴的な青い髪に幼い女児であるというのに人並外れて優れた容姿を持つ、という情報を総合しても天空人と言えるのだが、長い時を生き続ける神の民と言える彼らでも俺の姿を見たことがないと言っていたし、神話の時代より生きる長老も同じように言っていたことから、このドラクエ世界には居ないか認知されていないのだろうと判断できた。

 

 

「それにしてもお母さんは何の用だろう?」

 

「ちょっと頼みたいことがあるって言ってたよ」

 

「そっか」

 

 

 羽は自分の意思一つで動いて羽ばたくことなどが出来るが空は飛べないけど、風呂に入る時や寝る時には邪魔にならないようにも出来るので、少し変わった付属物と思えば特に不便らしいものを感じることは少なかった。

 

 

 その後、俺は育ての母と言える人の元に行き要件を頼まれて里の中を歩いて行って、他の人々に暖かい言葉をかけてもらったり応対して貰ったりしていた。

 何気ない日常、転生してハードモードになりそうだった人生に、こんなにありふれていた幸せと穏やかな日常に包まれていることが恵まれていることは分かっていた。

 だけど、何時までも続くと思っていたものが理不尽に奪われ、あっという間に崩壊することを理解なんてしていなかった。

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――― みんな、しんだ

 

 

 数か月前のあの日の事はよく思い出せる。

 突然空が真っ黒になり禍々しい気配と力に満ちていく中で、恐怖を感じた俺は聖なる種火が祭られている聖堂の中に入り震える体を自分で抱きしめていたら、突然大きな音と振動に襲われて破壊音と悲鳴が辺りに木霊していった。

 

 どれほどの時間が経っただろうか? 全ての振動と破壊音が収まったから外へと出た自分の目の前にあったのは、聖なる種火が収められた聖堂のある浮島以外が全て無くなっているという光景だった。

 

 

 当時、なぜ自分が聖なる種火の聖堂に逃げ込めたのか、それは聖堂周辺の掃除と草むしりの係となっていたからであり、もうすぐ終わるからと言うことで何時も付き合いのある少年が里の大人たちに終了を伝えに他の島に言った時に、あの破壊に包まれていた。

 

 

「……」

 

 

 あれから数か月、独り言すら言う事もなく黙々と日常ルーチンと言える聖堂周辺の掃除や、聖なる種火の祭壇周辺の清掃も行いながら聖堂の近くにある居住するために必要な設備がある小屋で寝泊まりする日々。

 そこには食料品が多く備蓄されている上に聖堂の周辺の一部は小さな畑になっている区画もあったので、それらの食料を頼りにしつつ衣服も何故か今の体にピッタリなサイズが幾つもあったので、それを洗濯の魔法を用いて着まわしている感じだ。

 

 もしも俺の作業の進行が遅ければ、最低でも彼だけでも助けられたかもしれない、あの禍々しい気配を感じた時に皆を呼んでいれば誰か助かった人がいたかもしれない。

 

 

「…… ッく、ぅ……っ」

 

 

 あの日の事を思い出し、もしもを考えると涙が浮かんでしゃくり上げる声も出てきそうになるのを堪える。

 何一つ行動できずに、あんな判断をしてしまったのは自分だから泣いてはいけないし、そんな資格もない。

 

 

 だから、我慢して一人で【聖なる種火】と【生命の大樹の苗】を今代の勇者が来るまで守り続けていかないといけない、俺が転生してここに来た時に一緒に持ってきたと言われた一つの鎧も守ること、それを支えに一人となった日常を過ごしていく。

 みんながいなくなって独りとなった事を自身への罰であると考えながら。

 

 

 




 この主人公はドラクエのプレイ経験は7(PS版)までとなっております。
 8からはプレイしたいと考えていましたが、仕事が忙しくてプレイできずにこの世界に来ちゃったと言う状態です。

 そんでこの小説には私が考察とかした独自の設定や、表現が出てきますしある装備も出てきます。
 この装備が出てこないのはちゃんと理由があるんじゃ!と言うのは感想欄にて指摘してもらえたらありがたいです……


malice様より頂いたファンアートです。
https://syosetu.org/?mode=img_view&uid=401923&imgid=100112

勇者御一行と出会った時の彼女のようです。
ウルノーガの所為で一人ぼっちになりレイ〇目となったロリの姿を見た彼らの心境は如何ほどか……

malice様より頂いたファンアート2枚目です!
https://syosetu.org/?mode=img_view&uid=401923&imgid=100111

まだ平和な時を生きていたTSロリ娘の姿です。
笑顔が尊いですわぁ……


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第2話 勇者現る

 このTSロリの姿と言うか着ている服はドラクエ7のフォズ様の色違いというか、帽子がなくて色は白と青が基調となった感じのものを想像してください。
 もちろん衣装の細部に違いはありますし、目元も少々ツリ目な感じだったりします。


 

 

 聖地ラムダにて力を発揮した天空のフルートを使い、神の乗り物であるケトスを入手したイレブン一行は空中を飛行し次の目的地を探していた。

 

 

「にしてもウルノーガを倒す武器を探す、か……」

 

「フム、あの勇者の剣に匹敵する武器をどう手に入れたものか」

 

「空を飛べるようになったから、とりあえず行けるところに行ってみましょうか!アタシ達も見落としてる所があるかもだしね」

 

 

 青髪を逆立ててワイルドな雰囲気を醸し出す青年である【カミュ】の言葉、これに同調するように難しい表情を浮かべながら一行の中で老人と呼べる人物の【ロウ】が答え、芸人と呼べる恰好をした【シルビア】が全員を鼓舞するように声を張り上げる。

 空飛ぶ鯨と呼べる背の上で次の行き先を話し合う彼らは、魔王ウルノーガに敗れ希望となるはずであった勇者の為の剣を奪われた上に、生命の大樹と呼ばれる世界にとって一番重要な存在まで破壊されて世界中で多数の人が死に、彼らの大事な仲間まで犠牲となったことから打倒魔王ウルノーガへの意気込みは強かった。

 

 

「ん? あの浮いている島は……」

 

「見たこともない建物があるわね…… ねぇ行ってみましょう!」

 

「ああ!」

 

 

 立派な口ひげを生やし貫禄に溢れる男性である【グレイグ】が、一つの天空に浮かぶ島を見つけると妖艶な美女という印象を与える女性【マルティナ】が指をさし、次の目的地としてリーダーであるイレブンと呼ばれた少年へと進言する。

 それを聞いた彼は大きく頷いて返事を返すと、ケトスに指示を出して一路その島へと突き進んでいくのだった。

 

 

 

 

 ケトスの背に乗りグレイグが気が付いた天空に浮かぶ島に上陸したイレブンたち、彼らは無惨に破壊された箇所が幾つか見える島の様子を見て痛まし気に顔を伏せる。

 

 

「ここは……」

 

「このような場所があったことも驚きじゃが、やはりウルノーガによる破壊の影響は出ておるか……」

 

 

 往時は全く違ったであろう建造物の姿や島の端の様子を見ながら、彼らは何が出て来ても良いように警戒を緩めずに進んで行く。

 島の主要な通路と呼べる場所は破壊を免れたのか綺麗な姿を残していて、中心部と呼べる場所も同様に綺麗に原型を留めている上に誰かが今も居住している様子が伺えた。

 

 

「…… おい、そこに隠れている奴、出て来い」

 

 

 全員で周囲を警戒しながら島の探索を続ける彼らは、誰かが居住していると思われる小屋の近くにこじんまりとした畑があることを確認していて、更には小屋からは何かを燃やすような不思議な煙に似た蒸気が出ていることも目視している。

 これらの事から誰かがいることを理解はしていたが今まで感じなかった気配が現れたことから、カミュは目を鋭くさせて近くに存在している大きな木へと低い声で命令する口調で声をかける。

 

 

「……」

 

「お、女の子!?」

 

「そ、それにあの羽……」

 

「まぁ……」

 

 

 木の陰から出てきたのは一人の女児と言える年齢の女の子であり、敵意がないことを示すのか軽く両手を上げながら出てきていた。

 イレブン一行の全員が驚愕の声を漏らしていたが、それは誰かがいるのは予想していたものの予想外な存在が出てきたために動揺が広がったためだ。

 

 出てきた存在が幼い女の子であったこともそうだが、一番彼らを驚愕させたのは彼女の背中には真っ白で美しい羽があることもであった。

 

 

「あの、貴女は……?」

 

「わたし、は、ここに住んでたの、だけど何か月か前に急に空が禍々しくなって…… みんな、しんじゃった」

 

『ッ!』

 

 

 深く昏い真っ黒な瞳、絶望と諦観を凝縮したその色を見たイレブンたちは彼女の様子と、ここで起こったことを予想は出来たものの金色の短髪の女性である【セーニャ】の問いかけを聞いた彼女は、ガラス玉の様な瞳と禄に変化しない表情のまま自分以外の者に起こったことを伝える。

 これを聞いた瞬間に全員の表情には驚愕と言う感情が浮かび、更には小さな女の子が簡単に死という言葉を言ったこと、それに悲し気な表情となっていく。

 

 

「…… その人の紋章……」

 

「…… これ?」

 

「うん…… 勇者の紋章…… こっちにきて」

 

「あ、おい!!」

 

 

 ガラス玉の様な瞳と仮面の如きと言うほど表情に変化もない、そんな女の子がイレブンを指さして左手の甲にある紋章を確認すると、彼は女の子が良く見えるように彼女の目線に合う位置に紋章を向けて確認させる。

 それをしげしげと見ていた女の子は何かを納得するように頷くと、踵を返して歩き始めていくが、カミュは何も説明せずにスタスタと歩き始める女の子を呼び止めようとするが、彼女は気にすることなく歩いて行くので彼らは全員で顔を見合わせると無言で彼女について行った。

 

 

「この中」

 

「えっと、この中に何があるのかしら?」

 

「勇者様なら分かる…… ついて来て」

 

 

 聖堂と言える建造物の扉の前に来た女の子は特に力を入れた様子もないのに、扉はゆっくりと軽い動きで開いて行き先ほどと変わらない様子で進んで行た。

 マルティナは彼女を怖がらせない様にしているのか、優しく柔らかい声色で問いかけるものの彼女の返答には勇者であるイレブンが付いてくれば分かるというものだけであるので、彼らは顔を見合わせながらもついて行く。

 

 

「…… ここ」

 

「ここは……」

 

「あの火、なんて凄い神聖な力……」

 

 

 建物の中にあったもう一つの扉を開けた先にあったのは、巨大な炎の姿で彼らはその光景に圧倒されるものの、そこに圧縮されている力を感じてセーニャは畏敬の念に近い声を漏らす。

 

 

「勇者さま、火に向けて手をかざして」

 

「手を?」

 

「そうすれば聖なる種火は貴方が持ち運ぶのに過不足ない姿になる」

 

 

 炎の姿に圧倒されるイレブンは袖を引っ張られたので視線を向ければ、彼女は炎を指させてイレブンに対して指示を出してくる。

 それを聞いたイレブンは半信半疑と言った様子となりながらも、左手を炎に向けて翳した瞬間、炎は急激に動き出して一つの器の中に吸い込まれていき手のひらに収まるほどの器の中へと納まった。

 

 

「勇者様なら、あの大樹の苗の記憶を読み取れる…… 貴方たちが求める物の道しるべもそこに……」

 

「あ、ああ……」

 

 

 次に彼女が指さしたのは聖なる種火と呼ばれた炎の周囲にあった3つの苗であり、静かで綺麗な声に導かれるようにイレブンは苗に触れていく。

 そうして触れていくイレブンの姿を感情が浮かばない瞳で女の子はジッと見つめるのだった。

 

 




 イレブン御一行の前に現れた時のTSロリ娘はレイ〇目状態です。
 しかもウルノーガの被害者で、幼い子供の口から自分以外死んだとハッキリとなんの感情も載せずに言われたイレブン御一行の心境やいかに。


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第3話 色々と説明とか

 天空のぱふぱふ……台詞の種類が手が込み過ぎてて笑えるけど笑えないという酷い状況。
 ただ、ああいうおふざけに杉田さんがいないのが気になる…… やり過ぎて除けられたのか?


 

 

 

 勇者たちを聖なる種火の所に招いたのだけど、どうして彼が勇者だと分かったのかと言えば神の里では勇者の紋章についての詳細な情報があったからで、左手の甲に特徴的な紋章が浮かぶことや本人を目にすれば神聖な空気を身にまとっていることなど、これらの情報を長老を含めた里の大人たちから聞いていたからに他ならない。

 神の乗り物であり空中を渡るケトスや勇者の紋章を持ち、その波動と言えるものが伝わってきたことで勇者だと判断できたのだが、久しぶりに声を発したことで上手く喋れていないためにぶっきらぼうな言い方になったのは勘弁してほしい。

 

 

「……」

 

 

 俺の目の前で大樹の苗に触れて記録の一部がこちらにも流れ込んでくるのだが、一つずつ確認する毎に勇者の剣を新たに造ると言っていたことから、前世で読んだことのある漫画のロトの紋章やプレイしたゲームであるドラクエ3の様に敵の手に勇者の剣が堕ちているか、それとも破壊されてしまったために新たな剣を求めているのだろう。

 流れ込んできた記録の情報は勇者ローシュが希少金属と言えるオリハルコンを、確か長老がガイアのハンマー言っていた巨大な金槌の様な道具で特殊な精錬場で鍛えると言うものだった。

 

 

「…… なぁ、おチビ「アリシア」え?」

 

「私の名前、アリシア」

 

「ああ、お前の名前か良い名前だな、こっちもわりぃな俺はカミュってんだ、よろしくな?」

 

「…… ん」

 

 

 全ての記録を読み終えた勇者御一行は、俺の方を見て気遣うような様子となりながら、ワイルド系のイケメンと言える男性が遠慮がちに口を開いたのだが、ここにきてようやく自己紹介をしていなかったのを思い出した。

 なのでおチビと言った彼の言葉を遮る形になるが簡単に自己紹介をさせてもらうと、イケメン男性ことカミュも自分が自己紹介をしていなかったことを思い出したのか、名前を言いながら小さい身長の俺に目線を合わせるようにしゃがんでニカッと微笑みかけてくる。

 

 それを聞いて頷くものの、数か月ほとんどしゃべることがなかった上に対人接触も皆無だったからか、コミュ障になっているのは間違いない。

 この後は他の面々の名前も聞いたのだが、自己紹介をしていなかったことが分かった時から何故彼らは余計に辛いというか、妙に悲しそうなのかが気にはなるがスルーしよう。

 

 

「それじゃ、改めて聞くけどアリシアちゃん」

 

「ん?」

 

「貴女はあの記録にあった物の事とか知ってることはなぁい?」

 

 

 派手な格好をした旅芸人と名乗ったシルビアという男性が優しく微笑みながら、こちらへと問いかけてくる。

 他の面々も知りたいことがあるだろうに俺の見た目がいたいけな幼女であるからか、無理矢理に聞き出すような真似はせず全員が優し気な微笑みを浮かべてゆっくりと話をさせよう、そんな優しさに満ちた様子だ。

 

 

「多分、最初に勇者ローシュが持ってた鉱石はオリハルコン……」

 

「お、オリハルコンだって!伝説上にしか存在しない鉱石が本当にあったのか!?」

 

「もぅ、カミュちゃんったらぁ、そんなに大声を出したらアリシアちゃんがビックリしちゃうでしょ?」

 

「うっ、わ、わりぃアリシア……」

 

 

 神代の希少金属であるオリハルコン、その名前を出した瞬間にカミュが大声を出したので思わずビクッと体を震わせてしまったが、シルビアがメッと窘めるようにカミュを叱っていて、すぐさまこちらに向けて彼が謝罪してきたので、気にするなと言う意思を込めて顔を横に振って続きを話していく。

 

 

「オリハルコンがある場所は、天空の古戦場っていう場所、ケトスでしか辿り着けないから気を付けて」

 

「天空の古戦場…… オリハルコンが実在していたのならば、過去に争いが起こっていても不思議ではない、か……」

 

「そう、過去に神の民の里の者と魔なる物との激しい戦いが起こったって長老が言ってたから、強力な魔物の巣窟になってると思うから気を付けて」

 

「やはり、そのような希少金属があるとなれば酷い争いは避けられんか……」

 

 

 天空の古戦場、まるでどこかのゲームに出てきそうなネームの地名だが、以前に長老から聞いたオリハルコンを巡る戦いの模様は冗談抜きに悲惨そのものと言って良くて、現在でも普通に浮かんでいるのが奇跡的と言って良いほどの戦いだった。

 激しい戦いが起こっていたことを聞いた勇者御一行の中の最年長のロウと名乗った老人が、厳しい表情を浮かべながら現在の天空の古戦場が置かれている状況を考えているようだ。

 

 事実、長老が言うには今の天空の古戦場は強力な魔物の巣窟となっており、量も少なくなったオリハルコンを採掘しに行くような場所ではないと言っていたのだが、ぱふぱふを生業とする妙な女があの当時から住み着いているとか訳の分からんことも言っていたのだが、この辺は老人のお茶目な冗談だろうし伝えなくても良いだろう。

 

 

 

 

 

 そうしてオリハルコンの事を伝えてから、彼らは与えられた情報を吟味している様子を見せていたが、情報の咀嚼が終わったのか金色の髪を短く切りそろえた女性であるセーニャが俺の目線に合わせるようにしゃがんでくる。

 

 

「あの、次に映ったハンマーの事とかアリシアちゃんは分かりますか?」

 

「あれは多分、ガイアのハンマーって呼ばれるオリハルコンを鍛えるための専用の金槌だと思う」

 

「なるほど、神の希少金属と言えるオリハルコンを鍛えるには専用のハンマーでなくてはならないか……」

 

 

 セーニャの問いかけにガイアのハンマーと呼ばれる道具の事で、長老から話を聞いた時にはオリハルコンと言う神の金属を鍛えるのに専用のハンマーと製錬場がいると聞いて納得したのは当然だ。

 確か漫画のロトの紋章でも新たな王者の剣を作る際に専用のハンマーと製錬を行う場が出てきたので、それと同様と考えれば納得できるのだけど、ゲームのドラクエ3の鍛冶師は何故オリハルコンを加工できたのかと言う疑問が浮かんだが、無視することにしたのも記憶に新しい。

 

 ただハンマーの事を聞いて立派なおひげを蓄えたクマみたいな大男の男性であるグレイグが、情報を飲み込みながら何かを聞きたそうにチラチラとこっちを見ているのだが、自身の容姿が強面の大男であることから幼女を怖がらせて情報が得られなくなると思って話しかけるのを躊躇しているのかもしれない。

 

 

「それにあの城門はサマディー王国のものだったし、あそこに保管されてるのか?」

 

「先代勇者ローシュの頃ならそう、今も変わらずにサマディーにあるのかは分からない」

 

「いや、名前も分からない状況だったんだ十分すぎるぜ、サンキューなアリシア!」

 

「……ん……」

 

 

 先代勇者ローシュの頃には、既にサマディーの国宝となっていたと長老から聞いたけど、今もその国にあるとは思えないしむしろ今までの間に財政難などがあれば売り払っていてもおかしくはないし。

 だが完全な手探り状態だったころからはマシになったという状態なので、嬉しそうにカミュがお礼を言って俺の頭を優しく撫でてくるのだが、子供の頭を撫で慣れている様子なので彼には妹か弟でも居たのかもしれない。

 

 

 そうしてあともう一つの製錬のための施設は俺自身もまだよく聞いていない状態だったが、ホムラの何とかという単語は覚えていたことで彼らには何らかの心当たりがあるようで答えに辿り着いたのはホッとした。

 さて、彼が勇者であるというのならばもう一つ伝えるというか渡すべきものがあるので、気合を入れると彼らに声をかけるために顔を上げるのだった。

 

 




 この小説だと原作とは違ってオリハルコンを知っているオリ主であるので、この辺の説明がまとめて行われて、スムーズになっちゃいました。

 後、ドラクエ11をやってて思うのは街中にいるバニーちゃんたちの格好ですねぇ……
 大樹崩壊後のマルティナのアレコレの時の格好だと、問題があったのかミニスカでしかも割と激しく動くという状態は、逆にエロくね?と思います。
 特に大樹崩壊後のブチャラオ村での事件解決直後とか、近づいて少しカメラをローアングルにすると簡単に……って感じですわ


 ですが、一番個人的に気になるのは天空の古戦場にいる、あのバンジーぱふぱふを主導するバニーちゃんですかねぇ……
 姿かたちは人だけど間違いなく人間じゃないよねって思いますわ……
 


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第4話 なんで鎧は動かなかったんですか?

 

 

 

 勇者である彼に渡さないといけない物、自分と共に神の民の里に来た物を渡せば魔王を倒す手助けになるのは間違いない。

 

 

「あのっ」

 

「どうしたの?」

 

「勇者であるあなたに、渡さないといけない物があります」

 

「渡す物……」

 

 

 自分が声をかけたのと同時に全員が一斉にこちらを振り向いたので、その圧が掛かって少し言葉が詰まってしまうものの勇者は微笑みを浮かべて続きを優しく促してくれたので、何とか続きを話せたのだがコミュ障になっていることは何とかしないといけない。

 ただ彼らが去ってしまうと再び一人となるので、彼らに頼んで人のいる場所に連れて行ってもらうか、自分自身の力で地上に降りる訓練をいずれはしないといけないだろう、丁度良い事に羽があるんだし。

 

 

「こっちへ」

 

『……』

 

 

 この聖なる種火のある祭壇には下の階があり、まるでカップのような形の上に聖なる種火や大樹の苗などが存在している。

 部屋に入って右手には下へと降る階段があって、これは俺が来てから共に来ていた物を保管するために新設されたのだが、新しく作られたのは階段だけではない。

 

 

「これ、は……」

 

「なんて神々しい……」

 

「あの紋章、それにあふれ出てくる力……」

 

「勇者の剣の紋章に似ていますし、これほどの力を出す鎧が……」

 

 

 階段を下りる毎に見えてくる一つのある武具の姿、このロトゼタシアという世界の名前である先頭の二文字ロトの名をいずれは冠することになる。

 そんな名前の前身となる鎧が持ち主となる存在を迎えるように、神聖な光の中に佇み静かに己を着用する勇者の到着を待っていた。

 

 

「これは光の鎧、勇者が使うため生み出された神聖な物」

 

「ひかりの、よろい……」

 

 

 佇んでいる光の鎧を呆然と見つめる勇者は己の左手にある紋章が輝いていること、これに気が付くと手を鎧に向けて翳しながら俺の説明を聞きながら呆然とした様子を見せている。

 もしも魔王がこの世界にあんなことをしたと言う事ならば、この存在に気が付けば間違いなくここを襲撃するし長老の話が確かならば、間違いなく聖なる種火を含めた物を消滅させようといずれはやってくるかもしれない。

 

 

「……?」

 

「一度だけ鎧は光ったけど、ナニも反応しないわねぇ……」

 

「いえ、まるでその時じゃないって鎧が言っているような気がするわ」

 

「どうして……?」

 

 

 光り輝いていたのだが、すぐに光は収まって鎧は先ほどと同じように台座の上に佇んでいる。

 先ほどの反応から絶対に勇者の為の鎧であり、彼が着て戦うために作られたし俺がここに来た時にいっしょに来たのも今日と言う日に、勇者の手に渡すためなのは間違いないのに何故鎧は彼の元に行かなかったのかが分からない。

 

 呆然としているシルビアとマルティナの言葉に、俺も呆けた声を漏らしてしまうのは当然だ。

 

 

「間違いなく勇者が着る鎧なのじゃろう、じゃが……」

 

「まるで鎧に意思があるかのようですな……」

 

「勇者の剣を手に入れるのが先ってことかね」

 

 

 ロウが顎に手を当てながら険しい表情をしていっていることに、グレイグも同調していたがカミュの方は少しだけ気を取り直したのか軽い調子で言っているのが印象的だ。

 その後の鎧はうんともすんとも言わなくなったことで、これ以上ここにいてもしょうがないということになり外に出ることになった。

 

 

 

 

 そうして外に出たら既に夕暮れになって来ていて、彼らは再びケトスに乗って旅立とうとしていたので一晩泊まって行けと言って残留してもらう。

 久しぶりに過ごす誰かとの団らんは楽しいし食事も一緒に食べてくれる人がいると、こんなに美味しいのだと言う事を再確認させられてしまった。

 

 

「ねーえ、アリシアちゃん」

 

「?」

 

「貴女はこれからどうするの?」

 

「えっと、このまま光の鎧と聖なる種火を守ると思う……」

 

「そう……」

 

 

 昨日作った肉じゃが風の煮物の残りに材料を足してから皆さんに振舞ったのだが、それを美味しいと言って全て平らげてくれたのは嬉しかった。

 ただ食事が終わってお茶の時間として皆さんに薬草茶を出して、色々と話をしていたら優しくも真剣な表情となったシルビアから、これからの事について聞かれたがやることなど決まっている光の鎧と聖なる種火を守る為に留まるだけだ。

 

 

「じゃあ、光の鎧をイレブンが手に入れた後はどうするんだ?」

 

「…… それでも聖なる種火を守らないといけないし、ここにいるかな……」

 

「魔王の手先に襲われないとも限らんのじゃが、おぬしに戦う術はあるのかの?」

 

「だいじょうぶ、呪文とか色々と使えて戦えるから」

 

 

 彼らの言いたいことは分かる子供一人でこんなところに残ることを良しとしていないのだろう、だが、彼らは魔王を倒すという目的のために行動していることから付いて来いとも言えない。

 だけどたった一人で残っていてもしもの事があればと考えてしまうのだ、特に今は魔王が復活したのは間違いないし空を飛ぶ魔物たちも大きく活発化していて、何時ここの事が魔王たちに気が付かれるのかもわからないのだ。

 

 だからこそだろうロウが俺に対して戦う術について聞いてくるが、これでもイオナズンなどの上級の呪文だけじゃなくてライデインも使えるというバリバリの魔法使いタイプでもあるから、一応戦うには問題はないのだが実戦経験がないので力加減を間違える可能性はあるので機会を見て修練はしておいた方が良いだろう。

 

 

「しかしのぅ……」

 

「アリシアさん、勇者の剣を手に入れていなくてもたまに立ち寄っても大丈夫でしょうか?」

 

「良いよ、わたしは基本的に暇してるから」

 

 

 それに幼い子供がたった一人で寂しい場所にいること、これも良しとしない人たちなのだろう。

 全員が俺がここに残ることについて理解は出来ても納得していないのが丸分かりだからだ、やはり勇者とその仲間たちらしく底抜けのお人よしと言える優しい人たちだ、だからこそ彼らが頼みとするであろう防具である光の鎧を守らないといけないと思うのに気合が入る。

 

 だが基本的に暇してると言った瞬間に、全員が何かを決意したような表情となっているし悲壮感を若干漂わせているのは、まあ幼女が孤独であることを良しとしているという状況は普通に考えたら健全ではないし、まともな大人ならばなんとかしようと考えるのは普通でもあると思う。

 なので今の自分に出来るのは彼らの不安を取り除くことと思いながら、それからの時間は皆さんが歩んできた冒険の話を幼女らしい態度でせがんで聞かせてもらうのだった。

 

 

 あ、やっぱ世界中を旅して回って来た人たちの話は凄く面白くて、一度では全然聞くことが出来なかったので再び来てと約束を取り付けられたのは幸運でした。

 

 




 鎧が全く動かなかった理由ですが、勇者の剣の材料は揃ってないし本当に造れるか分からないので、鎧の意思が勇者イレブンを試した感じです。

 ドラクエ11をやっていて思ったのは、ロトの剣そのものな勇者の剣だけじゃなくて勇者の盾に、更には王者の剣まであるのに、なんで光の鎧がないんだ!オォン!? と言う事でした。
 何か設定や理由があるんでしょうかね……?


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第5話 何かが動き始めた、そんな気がする

 注意!!

 今回の話はTSロリ娘がリョナ的な意味で酷い目にあうシーンがあります!
 なので苦手な方は最後の方へスルー推奨ですぞ。


 

 

 

 

 勇者との最初の邂逅から1か月近くが経つ、あれからの彼らの冒険は順調なようで1週間ほど前に来たときなどガイアのハンマーを手に入れたと嬉しそうに報告してくれた。

 週1程度で様子を見に来てくれるのはありがたいのだが、ダンジョンを無理して突破していないかとかが気になる、特に天空の古戦場など長老の言葉を考えるとかなり厳しいダンジョンだったはずだし。

 

 

「ふんふ~ん♪」

 

 

 ただ長老から聞いた通り天空の古戦場にはぱふぱふを生業にする妙な女がいたそうだ、ただバンジージャンプをさせられたとは言っていたもののぱふぱふとは何ぞや? と幼女ボディで聞いてみても皆が温かくはぐらかしたのは当然だろう。

 最近は彼らがやってくるのが楽しみになっていて、そろそろ来るだろうというのが何となく分かるのでついつい鼻歌を歌ってしまうのはご愛敬だ、何しろ今日か明日中には来そうな気配と言うか予感めいたモノがあるし。

 

 ちなみに光の鎧は相変わらず勇者であるイレブンに反応することはなく、そのままの状態で今も太陽の神殿の中に佇んでいて周辺を掃除したりしている。

 

 

「よっと、そろそろお茶にしようかな……」

 

 

 神殿周辺の草刈りをバギの呪文を応用してザックザクと刈った後にブチブチと草も毟っていく、これらは一か所に集めて発酵させたら良い肥料になるので後で畑に蒔いて有効利用する。

 こんな雲より高い上空にあるというのに普通に雑草は生えてくるし、野菜も育つのでロトゼタシアに生きる植物という奴は本当に逞しいと思う。

 

 動物性たんぱく質については全く心配はいらなかったりする、この神殿を囲むように流れのある泉があって、その水の中には魚たちが泳いでいるのだから釣りをして捌いた後に干して保存がきくようにしていた。

 俺にこの辺を仕込んでくれた育ての親や里の大人たちには感謝しかない、何しろ現代日本で生きていたがこういった知識を得ようとすることはなく、料理の知識が多少あった程度なのだからもしも仕込まれる前に今の状況になったのならばゾっとしてしまう。

 

 

「さて、今日はどうしようかな……」

 

「失礼、そこのお嬢さん」

 

「……っ!」

 

「私の事が分かるか、ならば単刀直入に要件を言わせてもらおう」

 

 

 夕飯は魚を焼いて今朝にまとめて焼いたパンでいいか、そんなことを考えながら泉の水で手を洗った後に手を拭いて小屋の方へと歩き始めた瞬間、今まで存在しなかった気配が急に湧いて背筋に寒気が走り体が一瞬硬直するほどの邪悪な気配と言うべきものを感じた。

 それと同時に弾かれるように振り向けば、何らかの法衣を身にまとった人とは思えない肌の色をして耳も尖っている明らかに人ではないモノ、そんな存在がそこにいた。

 

 

「ここにある物、勇者の為の物を渡してもらおうか」

 

「っ、やっぱりっ!それが狙い!!」

 

「その通りだ、忌々しい神聖な力を感じて来てみれば勇者の剣にも匹敵するモノの気配があるではないか!!」

 

「渡すもんか!あれは絶対に勇者様に使ってもらわないといけないんだ!!」

 

 

 いずれは来ただろう魔族、それを確認して奴の目的が光の鎧だと知った俺は急いで戦闘態勢へと移行する。

 懐に入れていたビー玉くらいの大きさの球に魔力を通すと、それが一気に俺の顔と同じ大きさになっていく、これは戦闘時に使う武器で前世でのガンダ〇と言う作品に出てきたファンネルの様な使い方が出来る武器だ。

 非力な自分ではこういう武器でないと対抗が出来ないからか、里の大人たちが作ってくれた渾身の一作なのだ。

 

 

「ほぉ、この魔軍司令ホメロスを見て引かぬか!!その身の程知らずを思い知りながら死ぬが良い!」

 

「絶対に渡さない!それにここも守るんだ!!」

 

 

 そうして始まる戦い。

 分かっていた、実力差には大きな開きがあって敵わないことくらいは、だけど何もせずに渡せないしこんな奴に捕まるのだって嫌だ、そう考えていたことを頭から追い出した俺はオーブを向かわせながら呪文の詠唱も同時に開始していた。

 

 

 

 

 

 

 

 この日、イレブンたちは遂に全ての材料が揃い勇者の剣を打つ場も見つけた。

 そのまま剣を打とうとしたのだがセーニャが【胸騒ぎがする、嫌な予感が消えない】と、言っていたことによりケトスに乗り込み一路アリシアのいる神の民の里を目指していた。

 

 

「それにしてもセーニャ、その嫌な予感ってのは?」

 

「分からないんです…… ただ命の大樹のことが起こる前の日に感じていたザワザワする感覚が消えてくれなくて……」

 

「その感覚は当たっている場合が多い、直感に従うことも重要だろう」

 

「そうじゃな、あの娘に何事も起こっておらねば良いが……」

 

 

 飛翔しているケトスの背の上でカミュは真剣な表情でセーニャに問いかけ、彼女は不安と緊張に包まれた様子で神の民の里がある方向を見つめている。

 それとほぼ同様のものを感じ始めたのか、グレイグとロウも不安と緊張を感じている表情となりながら睨むように針路を見ていた。

 

 

「本当に何もないなら一番なのよ、ね……」

 

「ええ…… 本当に、あの子に何もなければいいんだけど……」

 

「それに嫌な雲ね、悪い予感しかしないわ……」

 

 

 シルビアの言葉にマルティナも同調しつつも進路上を見ており、周囲の様子が今までと違い黒く禍々しさも含んだものへと変わっていることから、セーニャが感じたものは全員の中で確信へと変わっていた。

 何か良くないことが神の民が住まう里で起こっている、と。

 

 

「そろそろ見えるはずじゃが……」

 

「見えた!っ!?」

 

「あれは!?」

 

「ケトス!!速度を上げてくれ!!」

 

 

 ケトスの速度を上げて更に近づいて見えてきたアリシアが住んでいる浮島は、所々から煙が上がり更には何かが起きているのか閃光と爆炎も確認できるという有様だった。

 これを見た瞬間、イレブンはケトスに速度を上げて島に接近するように指示を出して一気に彼らはアリシアの元へと向かっていく。

 

 どうか無事であってくれ、そう全員が願いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから戦闘の時間はどれくらいだったのだろうか、体感では数時間になりそうだけど絶対にどんなに経っていても20分は経過していないのは明らかだ。

 

 

「は、ぁはぁ……っ」

 

「良くやったと言いたいが、この小娘がぁっ!!」

 

「あぐっ!!」

 

 

 俺の体には切り傷や打撲と言った怪我が刻まれて、背中の羽も自分が出した血で赤く汚れてしまっている。

 着ている服も魔法と物理の防御に優れた物だったのだけど、無惨にビリビリになっていて戦闘の激しさを物語る材料の一つとなってしまっていた。

 

 

 あの時から始まった戦闘はほとんどの抵抗が無駄に終わり逃げ回りながら、戦いとも呼べない無様な醜態を晒しながらも呪文を叩きこんだりぶんしんの特技を駆使してオーブを3方向から撃ち込んだりもしたが、全てが簡単に防がれるか無効化されて俺に呪文や杖に体術で攻撃が仕掛けられたら己の体は木の葉のように舞い、地面をボールみたいに跳ね飛ばされながらも体勢を立て直して戦いを継続させた。

 一矢報いて何とか奴の顔に傷を入れられたけど、それが却って逆鱗に触れたのか気の済むまでサンドバッグのようななぶり殺しの目に合う羽目になってしまっていた。

 

 

「この私の顔に傷をつけるとは…… 万死に値する!!」

 

「あ゛ぅっ!」

 

「ふんっ、この醜い羽などこうしてくれる!!」

 

「あ゛っぎっぃぃ!!」

 

 

 地面に倒れ伏す俺の背中を踏みつけたホメロスと名乗った男は、羽を掴むと力を思い切り込めていく。

 羽からメキメキと軋む音に激痛が走り、自分の口から勝手に呻き声が漏れていった。

 

 

「ア゛アッア゛ア゛ア゛ア゛アァ!!!」

 

「この翼は自慢だろう!? 折ってやったから感謝するのだなぁ!!」

 

「ァッ!ギィッ!!」

 

 

 激痛が行き過ぎて自分の口からは幼い子供が出した物とは思えない絶叫が出てくる。

 翼の骨を折られ、すぐさま軽々と体を持ち上げられて近くの壁に投げられて体が叩きつけられる。それと同時に右手から鈍く何かが折れる音が響いて来て、あぁ右手折れちゃった、と考える冷静な自分がいることも驚かされた。

 

 ズルズルと地面に落ちて行き目の前にやってくるホメロスを視線にとらえて、自分が死ぬと悟っても死ぬことへの恐怖より、勇者が渡さないといけない鎧を守れなかったことへの悔しさで涙が出てくる。

 

 

「ごべっゲブッ!ゆぅし…… よ、ろ…… まもゲボッゲホッ!!」

 

「フンっ、今更この私に歯向かった後悔で涙を流すか、死んでもらうぞ神聖な空気を身にまとった忌々しい小娘が!!」

 

「ホメロォォォォォス!!!」

 

「なっ、なに!?」

 

 

 涙が流れ勇者に向けて謝罪の言葉を血を吐きながら言っていると、何を勘違いしたのかホメロスは自身に仇名したことに対する後悔だと思ったらしいが、それを訂正する気力もなかった。

 

 杖を振りかぶり先端の鋭い方で俺の体を貫こうとした瞬間、大地が揺れたと思うほどの凄まじい咆哮が辺りに響き渡りグレイグが両手持ちの剣を振りかぶりながら接近してくる。

 その姿が現れたのが予想外だったのかホメロスは動揺して動きを止めた瞬間、奴にグレイグの一撃が入りホメロスはピンボールの様に跳ね飛ばされて行った。

 

 

「アリシアちゃん!!しっかり!アリシアちゃん!」

 

「セーニャ!!爺ちゃん!アリシアの治療を頼む!!」

 

「はい!!なんて、なんて酷い……!」

 

「任せておくのじゃ!イレブン!こちらに奴を近寄せるでないぞ!!このような幼子になんと惨いことを……!」

 

 

 もう体は動かなくて短い息を繰り返していた時に、シルビアの焦った声が俺の耳に届いてイレブンが指示を出す声も聞こえてきた。

 それと同時にセーニャとロウの気配が来たと思ったら、温かい光に包まれた瞬間とっくに限界を超えていた俺の意識は闇に閉ざされてしまった。

 

 




 アリシアは弱いのかと思われますが、ゲーム的に言えば弱くはありません、即戦力となる強さを持っています。
 むしろ強いレベルではありますが、今回は相手が悪すぎました。

 ホメロスの強さはこの時点だと最強格と言って良い強さですし、このロリには実戦経験と言う重要な物が抜け落ちていましたので、こうなりました。


 ちなみにこのシーンがゲームにあった場合、悲惨な展開になる選択があったりします。
 火山にて勇者の剣を作るあの場を聖なる種火を使って呼び出した時に、そのまま剣を打つかアリシアの様子を見に行くかの選択肢があり様子を見に行けばこの話の様になります。
 もしそのまま剣を打つ選択肢を取ると…… アリシアはしんで光の鎧はホメロスに持ち去られてウルノーガの手に渡るという最悪な展開に……

 トラウマ鬱展開そのものになっちまいますな……


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第6話 ホメロスと言う男

 

 

 グレイグによりホメロスはアリシアの近くから吹き飛ばされ、空中で体を回転させて体勢を立て直すと着地して周囲の状況を確認するように視線を回していた。

 

 

「ここまで…… ここまで堕ちていたか!ホメロス!!」

 

「ふんっ、あの娘は大人しく勇者の武具を渡していれば痛い目に合わずに済んだものを…… 身の程というものを知らぬ小娘に道理を躾けていただけさ」

 

「ふっざけんじゃねぇぞっ!テメェ!!」

 

「落ち着きなさい!カミュ!!」

 

 

 怒りが頂点に達して凄まじい形相となったグレイグはホメロスを睨みつけて、鋭い声と共に気迫を叩きつけている。

 それを涼し気に流したホメロスは自身に回復の術を掛けつつ、嘲笑を浮かべながらアリシアに対して行った仕打ちを正当化する言葉を発した瞬間、短剣を両手に持ったカミュは激高して体勢を低くして走ろうとするがマルティナの静止により踏みとどまっていた。

 

 ぐったりと地面に倒れ伏すアリシアの所では、セーニャとロウの二人が必死の形相で回復魔法を唱えて治療に当たっていて、彼らの表情からアリシアの容態が予断を許さぬものであることが窺えるのが、カミュやグレイグの怒りに火を注いでいた。

 

 

「アリシアちゃんの容態はどう? ロウちゃん」

 

「出血は何とか止まったが、内の臓まで影響が及んでおる、治療に専念したいから奴を絶対に近づけんでくれぃ!」

 

「了解、アタシも頭に来てるんだからね、絶対に近づけさせないわ」

 

「もっと、もっと私がしっかりと皆さんに進言していたら……!」

 

 

 剣を両手に持ち正眼に構えていつもの飄々とした口調こそ崩していないものの、表情は鋭く怒りと冷徹さを持ってホメロスを睨みつけるシルビアは、アリシアの治療の進行具合を聞くのだが治療を開始しているというのに死相が浮かんだ顔のまま変化がないために、予断を許さない状況だというのはシルビアにも判断が出来ていた。

 そのシルビアの問いかけを聞いたロウは冷静ではあるものの、静かな怒りと焦りを滲ませながらも目の前で失われようとしている幼い命を救うために全力を尽くしており、セーニャも己の不甲斐なさに歯がゆさを感じつつも全力で治癒魔法をかけてアリシアの治療に全力を挙げている。

 

 

「フンッ、グレイグよ前に俺に敗れ去ったお前に何を救えるというのだ?」

 

「俺一人で何かを救えるなどと驕ってはいない!!ここには仲間が皆がいる!彼らと己を信ずるのみ!!」

 

 

 嘲笑、哄笑、そのどちらとも言えないような不快感が前面にくる笑い声をだすホメロスの言葉に、グレイグは一瞬だけ眉をしかめるものの持っている権を握り直して構えも新たにして、ホメロスへと宣言するように言葉を叩きつける。

 

 

「クククッ、よもやここまで早く私にとって都合の良い展開が来るとは思わなかったぞ?」

 

「何が言いたいんだ!?」

 

「今まで確認すらされていなかった新たな勇者の武具を入手し、ウルノーガ様に盾突く愚か者共の始末まで出来るのだ!都合が良いと言う以外に何がある!!」

 

「やはり、あれを求めてアリシアを害したというのね!」

 

 

 体を震わせて己がすでに勝利して主の元へと凱旋するのが決定していると言わんばかりに、発した言葉にカミュは激怒しつつも自分が一人で突っ込んでも勝てる相手ではないと、頭の中の冷静な部分が警告を発していることから何とか踏みとどまっており、マルティナもアリシアが無惨と言う言葉をどれだけ足しても足らないほどに害された理由を察して新たに怒りを覚えていた。

 

 

「光の鎧、とか言ったか? あの小娘を痛めつけている時に思わずアレが漏らしたがなぁ」

 

「ああ、そうだ、俺が使うべきだったが力不足で未だに鎧に認められていないから使えない鎧だ」

 

「ハハハッ!!鎧に認められないから使えないだと!? ここまで滑稽で道化と言えるものがあるか!!勇者よ!」

 

「認めさせるさ!あの鎧に相応しい使い手となると!!

 

 

 敢えてグレイグたちの怒りを誘うための言い方をしているのか、アリシアを痛めつけている時の一部始終を語ったホメロスだが、全員が特に反応を示すことなく自身を睨みつけて怒りのボルテージだけは上がりながら、冷静さを失っていないという厄介な状況になっていることに舌打ちをする。

 だが、今代の勇者であるイレブンでも鎧に認められておらず扱うことが出来ないという情報を聞き、嘲笑と共に挑発と言える言葉を叩きつけるのだが、勇者は特に堪えた様子はなく逆に鎧に自分を認めさせると言い切り彼の澄んだ瞳に見据えられて不快感に包まれるのだった。

 

 

「今の時点で鎧に認められていないというのならば、勇者として失格と同義だな!情けないなぁ勇者よ!!」

 

「あぁ、そうだな、ちいせぇガキを痛めつけて良い気になっているうちに、俺達に囲まれてるヘタレ野郎よりはマシだぜ!!

 

「フンッ、私の美しい顔に傷をつけた代償を思い知らせただけだが、それが理解できないようだな」

 

「納得もそうだけど理解したくもないわね、特に貴方の様な人の事なんて、ね」

 

 

 嘲笑と共に言葉を叩きつけるが、勇者一行に何も変化がない処かホメロス自身を挑発するような言葉へと変わっていくことに、苛立ちをホメロスは浮かべながらも言い返したのだが、二刀の心得のスキルを取得しているシルビアが腰に差す二振りの片手剣を抜き放ちながら言った言葉と気迫は仲間である勇者たちも後ずさりしそうになるものだった。

 

 

「ようやくアリシアちゃんは心の底からの笑顔を見せてくれる所だった、それを奪ったお前の罪は重いと思いなさい? ホメロス」

 

「何を訳の分からないことを…… 笑顔などとくだらな「黙れ!!」ッ!!?」

 

「お前たちによって人々から笑顔が奪われたのだ!!罪のない民が再び安心して暮らし当たり前の日常を送るため、戦うだけだ!」

 

「下らん…… くだらんくだらんくだらん!!!何が笑顔だ!何が安心して暮らせる日常だ!!そんなものなどあるはずがなかろう!!」

 

「それを作るために俺たちは努力していたはずだ!!ホメロス!!」

 

 

 そうして始まる戦いは激しいものとなるが、戦いの最中に光の鎧が自立して動いてイレブンの元に駆け付けて彼の体へと自分から纏っていき、ホメロスとの戦いは勇者の防具が手に入り更にはそれの性能による効果により優位に戦いは進められたのだが、火力の不足によってホメロスに逃げられるという状況になってしまったのは彼らにとっても不本意な結果に終わってしまった。

 戦いの最中に幾度となくグレイグはホメロスへと自身の思いの丈をぶつけるが、それらが友人であったホメロスへと届くことはなく、虚しく終わってしまった。

 

 




 ちなみに光の鎧がイレブンへと装着された光景は、ロトの紋章でジャガンがロトの鎧を召喚したシーンでの自動で鎧が動いて飛んでいき身にまとっていく状況です。

 ただドラクエ11をやっていて疑問だったのは、ウルノーガはなぜ聖なる種火が存在している神の民の里の最後の区画を破壊しなかったのかと言う事と
 天空の古戦場をそのままにしていたのかと言う事ですね。

 ウルノーガの正体が勇者の仲間だった男ですので、これらは全て知っていたはずなのになぜ何もしなかったのかが、分からないんですよね……
 預言者の彼にその辺が吸い取られていたとか、そういう事情がありそうではありますが、プレイしていて本当に疑問でした。

 ですがニズゼルファの復活を阻止したことから、かつての記憶を保持していたのは間違いないので、余計に私の中で混乱は広がってしまっていたりします……


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第7話 リハビリが大変そう……

 注意、☆の部分から他者の視点に切り替わります。
 こういう注意書きをしないといけない己の力量不足が歯痒いですわ。


 

 

 あれから、どうなったんだろう。

 ホメロスと名乗った男にトドメを刺されかけた瞬間に、グレイグや勇者様達が現れて助けてくれたのは覚えている。

 その直後に自分を守るように4人の人が囲んでくれて、すぐさま回復魔法が掛けられたのか温かくて心地よい何かに包まれてすぐに意識を失ったから分からない。

 

 

「……っ、ぅ?」

 

 

 閉じた瞼に当たる光から太陽が登っているのは間違いなくて、体を動かそうとしても言う事を聞いてくれない。

 何とか力を込めて目をゆっくりと開いて行くと、自分が寝かされているのはいつものベッドの上で翼と腕はちゃんと治療してもらえたのか、あらぬ方向に曲がっていた翼の骨はちゃんと矯正されていた。

 

 ただ翼のある人の寝かせ方が分からなかったというか戸惑った様子が幾つかあったけど、ベッドの傍ではシルビアがウトウトとしていて、どうやら勇者様達が交代で看病をしてくれていた様子だった。

 

 

「ぁ、ぅぁ……」

 

「っ、アリシアちゃんっ、良かった!起きてくれたわぁっ」

 

 

 どうやら彼は寝るつもりはなかったのにウトウトとしてしまったようで、慌てた様子で起床して俺の様子を確認すると目が開いているのを見て、涙ぐみながら安心した様子で優しく声をかけて来てくれる。

 

 

「はい、アリシアちゃんお水をゆっくりと飲ませるわね、大丈夫かしら?」

 

「…… ぅ」

 

 

 すぐに口内が乾いていて俺が喋ることが出来ないということに気が付いたのか、シルビアは近くにおいてある水差しからお椀に水を注ぐと小さなスプーンで水を掬い、優しく唇を濡らしてから確認しつつゆっくりと少しずつ口の中に入れてくれる。

 それを何度か繰り返してくれて口の中が完全に潤って、喋ることが出来る程度には回復出来た。

 

 

「あの、ぁれからどうなって……?」

 

「貴女をギリギリの所で助けることが出来たの、アリシアちゃんが頑張ってくれたおかげで光の鎧も無事よ」

 

「良かった……」

 

「本当に光の鎧を身にまとったイレブンちゃんが凄くて、ホメロスも撤退するしかなかったんだから!」

 

 

 一番気になるのは自分が意識を失ってからの事だ。

 ゆっくりと俺の治療をしてくれたということは奴を退けることが出来たのだろうけど、光の鎧がどうなったのかが一番気になっているので、彼もそこを俺が聞きたいことは分っていたようで優しく話してくれた。

 

 彼の口ぶりからすると勇者様は光の鎧に認められて身にまとい戦ったのだろう、自分の使命だと思っていたことの一つが無事に完遂出来たことにホッとしてしまう。

 

 

「…… あぅ……」

 

「アリシアちゃん、あんなに酷いケガをしていたから、今はゆっくりとおやすみなさい」

 

「ぅん」

 

 

 安心した瞬間に強い眠気が来てしまったために瞼が閉じていくが、シルビアはそんな俺を優しく見つめると大事なものを扱うような手つきで頭を撫でてくれた。

 それと同時に自分の意識は抗いようもない眠気に包まれて、夢の世界に旅立ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 あの戦いから3日、この間ずっと眠り続けていたアリシアちゃんが起きてくれたけれど、アタシが居眠りをしてしまったために彼女を余計に苦しめてしまったと思うと心が重くなる。

 だけどアタシが飲ませていくお水を安心した様子で飲んでくれる様子を見たら、少しだけ救われたような、そんな不思議な気分になった。

 

 魔王ウルノーガの手によって世界が闇に覆われて、みんなを笑顔にしたいと思ってパレードもしていたけれど、アリシアちゃんはたった一人で空に浮かぶ重要な施設を守っていたことと、他の建物が全壊していることからも彼女の身内も犠牲になったのは間違いないし、アリシアちゃんと初めて出会った時の言葉でも察せられることだった。

 

 

「あの、シルビアさま……」

 

「セーニャちゃん、だめじゃないの昨日は全然寝ていなかったんでしょ?」

 

「確かに昨日までは寝れていませんでしたけど、今はシルビアさまが変わってくれたおかげで眠れました」

 

「もう、貴女ったら……」

 

 

 静かに扉が開いてセーニャちゃんが音をなるべく立てない様に室内に入ってくると、ぐっすりと寝ているアリシアちゃんをおこさない様にするためか小声で話しかけてくる。

 アタシがアリシアちゃんの看病を変わってから10時間が経つか経たないか、その位の時間しか経過していないのにセーニャちゃんが看病を変わろうとしていることに、心配になるけれど見た限りだと目はハッキリとしているし体にふらついた様子もないので、無理をしていると判断できる様子はない。

 だけどセーニャちゃんは普段からため込みやすい気質だと分かっているので、よく観察していかないとと思っていた。

 

 

「それに、マルティナ様がアリシアちゃんの衣服で気になることを言っていたので……」

 

「どういうことなの?」

 

「あの、アリシアちゃんの服があと2着くらいしかなかったんです、それに下着も少なすぎて……」

 

「こんなに可愛い女の子なのに、下着だけじゃなくてお洋服も不足していたなんて……」

 

 

 セーニャちゃんからの言葉を聞いたアタシは、後悔と同時に自分自身への酷い怒りに包まれる。

 今までアリシアちゃんと会っていた時に彼女が着ていた衣服にほとんど変化がなかったこと、これに気が付けたはずなのにアリシアちゃんが笑顔を浮かべてくれたことが嬉しくて、気にしていなかった自分が許せなかったし許せないとも思えた。

 アリシアちゃんは今までにアタシが出会った人たちの中でも、一番綺麗で将来が楽しみと言える女の子なのに、そんな彼女がおしゃれを気にしていない状況をアタシが気が付けていなかったのは愚かとしか言いようがない。

 

 彼女が起きて体調が戻ったら、まずはアリスちゃんやパレードの皆に頼んでアリシアちゃんが綺麗になるための色んなことの手はずを整えないと!と考えながら、セーニャちゃんと一緒に看病をしながらアリシアちゃんのおしゃれ計画を練っていく。

 

 ちなみに、この計画にはセーニャちゃんだけじゃなくてマルティナちゃんもノってくれたので、色んな街を巡ってアリシアちゃんに似合う衣装を探すと決めることが出来たのは良かった。

 グレイグも年頃の女の子が着飾ることも知らないと聞いて、悲し気な表情を浮かべていたけど、同時にアタシを含めた女性陣にアリシアちゃんが満足するコーディネートをしてほしいと言って軍資金を渡してくれたから、アタシとセーニャちゃんにマルティナちゃんが張り切るのは無理もない事だと思ってほしい。

 

 

 ちなみにカミュちゃんが呆れていたので、アタシの持っている衣装の中で一番可愛くて彼に似合いそうな服を着せたりする一幕もあったけど、割愛せざるを得ないのが悲しいわねぇ。

 

 

 




 なぜシルビア視点だったのかと言えば、私自身が彼の事が気に入っているからです。
 ドラクエ11は仲間キャラの全員が魅力的過ぎて、今回の話しで誰の視点にするか凄い迷いました……

 当初はセーニャの予定でしたが、上手く表現できていないと思った上に、シルビア視点の話がすっと浮かんできたので、形にした次第です。


 なお、次回以降においてこのTSロリは女性陣から着せ替え人形みたいな目にあいます(ネタバレ)


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第8話 服とか下着とか物理は困る

 今回の幼女の言葉足らずで、ある人物にとんでもねぇ誤解が……


 

 

 

 

 最初に目が覚めた次の日、マルティナが看病をしてくれている時に目が覚めたら、久しぶりに食事を摂る人の胃に優しいパン粥を作ってもらっていて、それを食べた後にセーニャも部屋に入ってから色々と診察してくれた。

 

 

「…… うん、異常のある場所はないみたいですね」

 

「ありがとセーニャさん」

 

「当然のことをしたまでですよ、アリシアちゃん」

 

 

 ベッドの上で上半身を起こしたら、自分の体は服と言うか簡単なシャツの様なものになっていることに気が付いたけど、今は体の調子を探るのが一番と思いながら腕や足に加えて羽もセーニャの指示に従ってゆっくりと動かして確かめていく。

 そうして分かったのは回復呪文のすばらしさというか、若々しいというかちんまい己の体の治癒力の凄さと言うものだった。

 

 厳しいリハビリを乗り越えないといけないだろうと思っていたのに、そんなのほとんど関係なく動いたので本当に良かったと思う。

 

 

「ところでアリシア」

 

「?」

 

「失礼だけど貴女の服を確認させてもらったのだけど、その、あの2着しかないの?」

 

「うん、本当はお母さんや里の大人が作ってくれた服がもっとあったけど、里が堕ちてからは3つの服を洗濯しながら着回してた」

 

 

 診察の様子をずっと見守っていたマルティナが改まった様子で聞いてきたので、何事かと思い身構えてしまったら服の事だったので拍子抜けしてしまった。

 そりゃ育ての親と言える母や里の大人たちが心を込めて作ってくれた服がなくなったのは悲しいが、この太陽の神殿の管理を担当する人が住む小屋に幼女となった俺が着れそうな服が幾つかあったので、それを着回している次第である。

 

 

「そう…… 後は下着も確認させてもらったのだけど、同じように失ったの?」

 

「うん、だけど特に不便は感じてないかな、下着はホメロスに服と一緒にビリビリにされたから困るけど……」

 

「…… それなら私たちと一緒にソルティコっていう街に行かない? シルビアが良いお店を知ってるみたいなの」

 

 

 服に関しては、まだ2着あるから洗濯をしていけば何とかなると思いたいが下着に関しては残りが1着となったのは痛恨だ。

 何しろホメロスとの戦いの時に奴が放った攻撃呪文を防御したら服の方は耐えられたけど、下着は耐えられずに消し飛んだのだから困ってしまう事態になったのだが、だけど何故だろうかホメロスとの戦いの際の下着の行方を話した瞬間、部屋の内外の空気が凍った気がする。

 

 

「だけど、わたし、お金ないよ?」

 

「良いのよ、私達が貴女にしてあげたいことなの、女の子なんだから可愛いお洋服とか着ても罰は当たらないの」

 

「そうですよ、アリシアちゃんはすっごく可愛いんですから、選び甲斐があります!」

 

 

 ウィンクをしながら妖艶さの中に子供っぽさを持っているという、今の自分の性別が男でショタであれば絶対に性癖が歪んだであろう笑顔を浮かべるマルティナと、ふんすっと張り切った様子で言っているセーニャという二人を見て、自身が持っているお金と言う切実な問題を告げるのだが、二人とも確保はしているらしく気にするなと言っていた。

 だけど気にしてしまうのは前世で一応は社会人であった性と言うものなのか、むむむ、と考えてしまうが衣服や下着はもう誤魔化しようがないし足りないのも事実なので、彼女達の言葉に甘えるしかなかった。

 

 

「じゃあ、えっと、お世話になります……」

 

「ええ、任せなさい!絶対に貴女を可愛くコーディネートするからっ」

 

「はい!シルビア様も張り切っていますわ!」

 

「あぅぅ…… お手柔らかにお願いします……」

 

 

 女性の欲求と言うものは種族を選ばないのか、マルティナとセーニャの二人は俺が服のコーディネートをお願いしたら、彼女達は凄まじく目を輝かせて嫌な予感を抱かせるほどの勢いで言っていたので、体を縮こませながら言うのが限界だったのは当然だ。

 だって、怖いし…… この世界で俺を育ててくれたお母さんたちも衣服類に関しては怖くなる時があったが、やはり女性が着飾る欲求と言うのは何時でも変わらないと言う事なんだろう。

 

 

 ただ、今の体は美幼女と言えるので綺麗に着飾ったらどうなるのか、それが楽しみなのはもちろんあるのだが神の民が住まう里以外の所に行けるし他の町や村がどうなっているのか、それを確かめる機会でもあるので俺も楽しみだった。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 

 シルビアやマルティナ姫様にセーニャ殿達から部屋の外でアリシアとの会話を聞いていてほしい、そう我々男たちに言われてから、全員が会話の聞こえる位置に居たのだが俺は怒りと失望だけでなく嘆きにも包まれていた。

 

 

「落ち着くのじゃ、グレイグよ……」

 

「ロウ様…… うろたえてしまい、申し訳ございません」

 

「気にしなくともよい、良き友でありライバルであったホメロスの凋落に怒りが隠せぬのだろう?」

 

「はい…… まさか、奴は童女に性的暴行を働く様な卑劣な輩になり果てていたとは……!」

 

 

 あの時、アリシアを殺そうとしていたホメロスに切りかかったという俺の認識は間違っていたのかもしれない、あれから更にアリシアの抵抗する力を奪った所で性的な暴行を加えて、彼女の尊厳を踏みにじろうとしていた可能性が出てきたのだ。

 俺はホメロスを親友でありライバルと認めていたが、そんな男の凋落と失墜を目の当たりにして、もはや奴が人間に戻れる可能性は存在しないと言う事を思い知らされた。

 

 だからこそ、俺の手でホメロスは決着を付けねばならぬと考えていたが、ロウ様には俺の様な若輩者の事など御見通しなのだろう、優しくも厳しい態度で俺が今以上の視野狭窄に陥らない様にお声をかけて下さっているのがありがたかった。

 

 

「あの時、グレイグが大声を出して接近しなかったら、胸糞ワリィもの見せられていた可能性あったってことかよ……!」

 

「許せないわね、あの男…… アリシアちゃんをあれだけ痛めつけるに飽き足らず……!」

 

「……っ」

 

 

 だが何とか冷静となれたのは、俺以上の怒りを出しているカミュやシルビアにイレブンたちのおかげだった。

 特にイレブンは言葉も出ないほどの怒りで激昂しているようで、表情にはホメロスへの侮蔑と怒りと言った感情が渦巻いているのが分かる。

 

 カミュなど妹がいたからか幼い女の子に性的な暴行をしそうになっていたホメロスへと、分かり易い嫌悪感と怒りを見せており、これが自分に向けられたものでないにも拘らず彼の気迫に後ずさりしそうになることからも、怒りのほどがうかがえた。

 

 

「して、ホメロスのことはどうするつもりじゃ? グレイグ」

 

「決まっております、奴がこれ以上堕ちる可能性があるならば、奴を手にかけてでも止めるまでです!!」

 

「うむ、ワシも協力しよう、奴には思う所が大量にあるのでな」

 

「はい、心強いお言葉、ありがとうございます!」

 

 

 ロウ様も普段のおふざけになられている雰囲気はみじんもなく、ユグノアという王国の前国王であらせられた頃の威厳と風格を身にまとわせて俺へと問いかけてくる。

 既に決意の固まっていた俺はロウ様に対して言葉を返しながらも、ホメロスが道を誤ったことの悲しさを胸に抱きつつ打倒を決意するしかない現状に悲しさを抱くしかなかった。

 

 俺の親友であり光でもあった男、ホメロス、デルカダールの知将とまで呼ばれた誇り高く気高い男は、もうどこにもいないのだと分からされたのだから。

 

 




 まさかのホメロス幼女への性的暴行容疑ですが、最近になって改めて各シリーズの小説やCDシアターを確認したのですが、呪文を防御したら下着が消し飛んだとかの表現はなかったんですよね……
 だから誤解したという経緯になりますが、公式がこの辺を描写するわけにはいかないということで描写していないだけかもしれません。
 ですが、TSロリ娘の言葉足らずで余計な誤解が出来上がっております……


 ただ、光の鎧が11に出てこなかった理由が最近はなんとなく理解できたかもしれません。
 何しろ初代ドラクエやドラクエ3に出てきた光の鎧(ロトの鎧)が強力すぎるからですね、これらの時代から更に遡って原典と言えてより強力であったと考えると出てこないのも当たり前かもしれません……

 次の投稿辺りで今作の光の鎧の耐性を含めた設定を出そうと思います、初代ドラクエとかで出てきた耐性を含めて考えると公式チート以外の何物でもない状態ですし……


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第9話 空飛ぶ乗り物は楽しい!

 

 

 

 あれから翌日、体が普通に動けるようになった俺は勇者たちによって連れ出されて、ケトスへと乗せられてから一路ソルティコの街へと向かっていた。

 

 

「空、飛んでる!!凄い凄い!!」

 

「はしゃぐのも良いけど、そっちには危ないから行かないようにね?」

 

「はーい!!」

 

「羽持ってるのに飛べねぇってのも不思議なもんだな……」

 

 

 空飛ぶクジラなケトスは天空の民の間でも伝承に語られる存在なのだが、コレに乗った経験があるのは長老を含めた過去の勇者と一緒に活躍した天空の民くらいなので、ついついはしゃいでしまいぴょんぴょんと体を跳ねさせてしまう。

 そんな俺の様子を全員が微笑ましそうに見ているが、シルビアは端っこに行かない様に優しくも厳しく見守ってくれているが、ケトスの方も何やらヒヤヒヤとしている様子なので自重した方が良いかな。

 

 こんな感じに過ごしているのだがカミュは不思議そうな顔をして、俺の背中についている羽を見て飛べないことに疑問を抱いている様子なのだが、羽ばたき方も分からんのに飛べるわけなかろう!とツッコミを入れたくなる。

 何しろ意識して動かそうと思えば確かに羽は大きく広がるし、羽ばたきみたいな動きも出来るけど、これらを無意識にやれるかと言えば無理なのだから仕方がない。

 

 

「羽があるから飛べるかもって思って建物から飛び降りたことあるけど、地面に落ちて痛い思いしただけだし」

 

「や、やっちまったのかお前……」

 

「もぅ、そういう無茶は駄目よ? 貴女はちゃんと淑女として学んでいけば絶対に綺麗になるから、私が保証する」

 

「マルティナ様の言う通りです、アリシアちゃん、そういう練習はちゃんと安全を確保してからしましょうね?」

 

「あぃ……」

 

 

 だが過去の己は、翼があれば空も飛べるはずだ!と考えた結果、神の里の建物の建物の一つの屋根から飛び降りて、地面にべしゃぁっ!と叩きつけられた経験を持っていたりする。

 これを言ったらカミュはドン引きした様子になり、マルティナは呆れた様子を見せつつも窘めてくれて、セーニャは練習を否定しなかったのだが安全を確保しろと言ってきたので、まさしくその通りであると思うほかに無い。

 

 あの時にお母さんを含めた里の皆が大騒ぎになって、回復呪文をかけて治療してくれたり大人たちからの大説教大会が開催したのだから、温かくも懐かしい記憶となって少しだけ鼻の奥がツンとなってしまう。

 あんなに温かくて優しかった皆がもういない、その現実が辛いけど勇者様達と出会えたことにも絶対に意味があるのだと思いたいし、みんなから教えてもらったことを彼らに伝えないといけない。

 

 

「じゃが、練習をしようと言う気概や良し、ワシらは翼の扱い方は分からぬが他の事ならば教えてやれるでな、アリシアや無茶はするでないぞ?」

 

「はい!」

 

 

 これらの言葉を聞いて、ロウは俺が昔から無茶をしやすい性格だと察したのか難しい表情をしつつも、優しい微笑みを浮かべながら言っている彼の言葉を聞くと長老に色々と言われた時みたいに背筋をピンと張ってしまう。

 力のある言葉を言えるという時点で、ロウはどこかの国で重鎮とかかなり重要なポストにいた経験があるのかもしれない。

 

 そんな風に思わされる威厳と威風に満ちた言葉と彼の表情だった。

 

 

「うむ、良い返事だ、アイツを相手に立ち向かったのは光の鎧を守るためとはいえど無謀だったが、君が頑張ったからこそ守られたものがあること、これを誇りなさい」

 

「誇っていいの?」

 

「ああ、俺が光の鎧を身にまとえたのもアリシアがギリギリまで頑張ってくれたおかげだ、だから感謝しているよ」

 

「……っ、ぅ?」

 

 

 俺の目線に合わせてグレイグがしゃがんで優しく微笑みながら、誇っても良いことを言ってくれたのだが、俺自身としては強力な呪文を幾つも習得していながらもホメロス相手にはほとんど通じずに、逃げ回りながら時間を稼ぐ事しか出来なかったし、撃退も出来なかったことを恥じていた。

 だけど、グレイグの言葉と今も光の鎧を身にまとう勇者様の言葉を聞いて、私のしたことは無駄にならずにちゃんと次に繋がったんだと思えるのは十分だった。

 

 じわり、と浮かんでくる涙を手でぬぐおうとしたら、優しい微笑みを浮かべたシルビアがハンカチで優しくぬぐってくれているけど、彼は泣きかけた私に何も言わずにハンカチをポケットに入れる。

 

 

「さぁ!そろそろソルティコの街に着くわよ!アリシアちゃんのお洋服に関してもパレード隊の皆に伝えてあるから!張り切っていくわよ!!」

 

「はい!!」

 

「ええ!!任せておいて!!」

 

 

 そうして気を取り直すように言ったシルビアの言葉に、今までのシリアスで重苦しい空気が全て霧散する光景が物理的に見えた気がしたが、これは私の気のせいと言って良いようでマルティナとセーニャの二人が張り切って目を輝かせている状況から、自分が今から着せ替え人形になるのは明白と言える事実が待っていた。

 

 

「まぁ、お前はこれから大変だろうが、頑張れよ」

 

「…… 頑張りたくない……」

 

「女子は着飾ってこそ華となる、おぬしは今でも綺麗な華であるが、それをより昇華させることができるのじゃ、この老骨は楽しみにしておるぞ」

 

「うぅ……」

 

 

 逃げられない。

 そう思うのには十分だったが、衣服や下着は全然足りないという物理面から自分の選択の余地が消えているのだが、実際の所は楽しみでもあるのだ。

 

 今のロリといえる状態でも美少女であると言い切れる素敵な外見をしているので、人間が住む街のおしゃれな衣服を身にまとったら、どれほどの美少女となるのかを確認できるのが本当に楽しみではあるのだけど、セーニャを含めた3名の空気と言うか、テンションがおかしすぎて楽しみよりも恐怖が勝ってしまうのは当然としか言いようがない。

 

 そうしてソルティコの街に一番近い位置にケトスを停止させてから降りると、()は転生してから初めてロトゼタシアの大地と言える空中に浮かぶ大地ではない場所、そこに足を付けて足で踏みつけるように大地の感触を味わったのはご愛敬だ。

 なにしろ転生してから10年近くの間、空中に浮かぶ里で暮らしていたのだから地に根付いたところと言うのが新鮮になってしまっていたのは、前世のことのほとんどを忘れてしまっているのだろうか? と考えるのには十分だった。

 

 




今回の話のついでに私が妄想し捏造したドラクエ11仕様の光の鎧のステを下に載せます。

こんな鎧を勇者は身にまとっている状態です。




光の鎧
守備力:155

特性
全属性ダメージ50%軽減
戦闘中HP&MP20自動回復
呪文封印100%回避
混乱、魅了、睡眠、一回休み、50%の確率で回避
呪い20%の確率で回避
ダメージ床無効

これでも光の鎧&ロトの鎧からの性能を考えると控えめになるだろうというのが、ガチで恐ろしいと思っちゃいますわ……
なにしろ初代ドラクエだとあれほど長い時代に渡って放置され、更には碌な整備もされてないのにあの性能なんですから……


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第10話 お母さんたちよりはマシだった……

 ちょっと遅れました。


 

 

 少しだけ疲れた。

 

 

「アリシアちゃんには、これも良いんじゃないでしょうか?」

 

「そうねぇ、悪くはないんだけど、こっちの清楚さを押し出したスカートとブラウスも良いと思うわよ?」

 

「あら、アリシアにはこういったちょっと冒険した感じのミニスカートも良いんじゃないかしら?」

 

 

 少しだけ疲れたという表現なのは、彼女達は私を無理矢理ひん剥いて着替えさせるということはしないのである。

 あくまで似合うであろう服を議論しているだけで、私に押し付けて無理矢理着替えさせるということがないだけマシと言うものなのだ、ただあの時に運悪く室内に留まっていた彼はお母さんたちによって室外に叩きだされていたので、そういうのがないだけ良いのだ。

 

 今の私の姿はセーニャが前に選んだ服である青いプリーツスカートに白いセーターに似た服を着ているが、下着はちゃんと新しいのを付けているので安心してほしい。

 

 

「にしてお前、そんなに疲れたような様子がないな」

 

「うむ、あんなにシルビアたちが張り切っておるし、他のパレードの皆もテンションが高かったのじゃが、アリシアは平然としておるのぉ……」

 

「平気、セーニャたちは私を脱がして着せ替え人形にしないから、お母さんたちは私を無理矢理脱がしてきたから……」

 

「苦労、していたのだが…… そなたも……」

 

 

 今の服はセーニャが選んだ物で更には自分で着替えたので、疲れたというのは彼女達の議論が落ち着くまで待つくらいなので、特にへでもないのだが他の男性陣にとってはそうでもないのだろう。

 何しろカミュが言ったことに応えたら、勇者様を含めた全員がドン引きした様子でお母さんたちの行動を聞いていた。

 

 セーニャたちは自分たちが選んだ服の議論が進まないと知ったら、こっちに選択を迫るものの無理強いするわけでもないし、ましてや無理矢理ひん剥いて着替えさせるわけでもないので正直な感想を言ったのだが特にグレイグが感慨深そうに言っていた。

 

 

「じゃあ、アリシアちゃん!!アタシとセーニャちゃんにマルティナちゃんが選んだ服のどれが良いかしら!?」

 

「気になります!!アリシアちゃん」

 

「私も気になるわ、アリシア」

 

「ぅ、ぅぇぇぇ……」

 

 

 議論が全く進まなくなったのか、こっちの意見を聞くというより迫ることにしたようだ。

 危機を察知した男性陣はさっと私の傍からいなくなると、それと同時に自分たちが選んだ衣装を持った3人に迫られる。

 

 まずセーニャは今着ているものとは違うノースリーブと言う感じのワンピースで、シルビアは白いプリーツスカートにフリルのついたブラウスに加えて可愛い白いリボンも持っているし、マルティナに至っては紺色のタイトミニなスカートと黒いプリーツスカートのミニを持っている

 

 

「えっと、シルビアの選んでくれたブラウスとマルティナの選んでくれたスカートを組み合わせて着てみたい」

 

「あらっ、それも良いわね!」

 

「そこは盲点だったわぁ!!」

 

「じゃあ、アクセサリーも選んだ方が良いですねっ」

 

 

 何となくミニスカートも穿いてみたいと思ったので、シルビアが選んでくれたブラウスと組み合わせて着てみようと伝えたら二人ともが大喜びしていた。

 前世はおとこだったこともありミニスカートなんて穿いた事なんてないし、この世界でお母さんが作ってくれた服は大抵がロングスカートタイプのワンピースとかばかりだったのだ、何でも女の子が足を出すのははしたないという意識があったようで、神の民の里では露出を控える衣装が中心だった。

 

 そうしてセーニャがアクセサリーも張り切って用意をしていくと、シルビアとマルティナも協力していくので彼女達が選んだ衣装を持って試着室へと入っていく。

 

 

「よっと……」

 

 

 試着室に入った後、ブラウスを脱いでスカートも降ろしてから改めて己の体を眺める。

 あの時につけられた傷は綺麗に無くなり、今の体は約10歳児程度の女の子そのものであるが、胸が既に膨らみ始めていたので胸元はジュニアブラっぽいのでおおわれていた。

 

 むむむ、と、後ろを向いたりして色々と確認するように動いた後で、まずはブラウスを着ていくが羽を収納してからなのは当然だ。

 じゃないと羽の位置から通していかないといけなくなるし、メンドイのだ。

 

 

「アリシア、着替えは終わったかしら?」

 

「もうちょっとだから、待って」

 

「分かったわ、ゆっくりで良いからね」

 

「うん」

 

 

 ブラウスを着てから羽を展開していくが、一体どうやってこの服を作ったのかが気にはなる。

 シルビア曰くパレード隊の皆が頑張ったと言っていたが、有翼人の衣服を本人を見ることもなく違和感なく本人が着られるものを作るって凄くないか? と、思って感心していたらマルティナから声を掛けられた。

 

 ボケーっと考えていたので、ハッとなってしまうが慌てて外へと出て下半身丸出しで彼女達の前に出るという愚は犯さず、黒のプリーツスカート(ミニ)を穿いておかしい所がないかどうかくるっと回って確認してからカーテンを開ける。

 

 

「へぇ…… やっぱり元が良いと何を着ても映えるわね、着せ替えのし甲斐があるわ!」

 

「あ~ん、アリシアちゃんとってもプリティ~!じゃあ、このリボンで髪も結ってみましょう?」

 

「やっぱりアリシアちゃんが可愛いですし、そのお羽がいいポイントですね!」

 

「んぅ」

 

 

 姿を見せたわたしを見た3人はと言うと目を輝かせながら、マルティナは大量に積まれている衣装の着せ替えが待っていることを示唆する言葉を言い放つ、シルビアも目を輝かせながら赤いリボンを持って髪を結ぼうと言ってくれる。

 実は今の髪は自然に流しているだけなので、何も結んだりとかしておらずシルビアの提案は願ったりかなったりだし、今までお母さんに結んでもらってきていたために自分での結び方も分からなかったのだ。

 

 セーニャに至っては羽を優しい手つきだが、いきなり触って来たのでついつい変な声が出てしまうのはご愛敬だ。

 

 

「じゃあ、髪型はどうする? アタシはおさげみたいにするとか良いんじゃないかって思うのだけど」

 

「シルビアはそう考えたのね、私はサイドテールも良いと思うわ、セーニャはどう?」

 

「私ですか? そうですねぇ…… 色々としてみたいですっ!」

 

「ピッ!!」

 

 

 この姿を見た後に真剣な表情となったシルビアが、髪型の討論を開始し始めるけど、マルティナまでは特に何も感じなかったというのにセーニャが放った言葉からは、背筋にゾゾゾっとナニかが走りランランと目を輝かせる彼女の姿に嫌な予感が膨らんでいく。

 ま、まさか……? そう思っていたら。

 

 

「じゃあ、色んな髪型を試しましょう!!行くわよ!!」

 

「ええ!!任せて頂戴!!」

 

「アリシアちゃん!!色んな髪型を覚えて頑張りましょう!!」

 

「 」

 

 

 い、嫌な予感が的中した!? そう言わざるを得ない光景が降臨した。

 ひゃぁっ!もう我慢出来ねぇ!そう言わんばかりに表情を輝かせてマルティナとセーニャだけでなく、シルビアも張り切った様子でこちらを見ているから、ヤベェと思ってしまうのだけどいつの間にか他の男性陣は室内から姿を消しており、助けなど期待できない状況を端的に理解させられるのは当然だった。

 

 その後は、女性陣によっておしゃれとは何かとか今の自分がどれだけ勿体ないことをしているのかとか、そういうのも含めてレクチャーが行われたとだけは言っておくけど薄情な勇者様達には一言物申したい所である。

 

 




 勇者の剣を作りに行かなくて良いのん? というツッコミが来そうですがちゃんと作りに行きますし、このロリも見届けますぞ。

 天空魔城にも同行しますし、この小説ならではと言う感じの要素を出せていけたら、そう考えながら書いております。


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番外編 エロガキの賛歌

 ミニスカートを穿いて、それをヒラヒラさせてアリシアが歩いている。
 そう思ったら、ビンッ!!と来て書いちゃった回であります。


 

 

 その少年が見たこともないほどに美しく、更には特徴的な翼を持つ少女を目に捉えたのは偶然というほかに無い。

 命の大樹が堕ちて世界が闇に包まれていって、少年たちの生活も激変したのは当然だ、今まで笑いあっていた人が居なくなり騎士の修業をしていた青年の姿が見えなくなり、街の外にいる魔物の強さが増したと言う事で大人たちから活気が消えたこと、これらに多感な時期である少年も変化を感じ取っていた。

 

 そんな少年がとった行動は己自身が道化となり、色んな馬鹿馬鹿しい行動をとるという事だった。

 まあ道化となったといっても同世代の女の子達のスカートを捲るという手段に訴えたのは、男の子と言う事だったのだろうが、彼の動き自体は街中の活気の向上にある意味では貢献していて、少しだけ賑やかさを取り戻していた。

 

 

 そんな中で領主であるジエーゴの息子である、シルビアと名乗った人物が預けたパレード隊と呼ばれている人間たちによって、街中が本当の意味での活気にあふれていく中で少年は何時しか女子のスカートを捲ることは無くなっていたのだが、ミニのプリーツスカートを穿いて、それをヒラヒラとさせながら歩く少女を見た瞬間、男のいいや、オスと言うものの本能が彼に心の底からの欲求を齎す。

 

 

 即ち、彼女のスカートを捲って(楽園)を見たい!!と。

 

 

 今までに観光業を生業としている街で多数の観光客を見て来た彼でも、見たことがないほどの美少女であり、真っ白で美しい翼まで持つという特徴まで持つ少女を見て彼は、パレード隊が来てから封印していた本能を開放し行動することを決意する。

 

 

 

 

 まず彼が行ったことは彼女に隙があるかどうかであったのだが、少し観察しただけで彼は街に住む同年代の少女たちよりも件の女の子は隙だらけだと分かったのだが、同行している二人の女性たちに隙はなく少年の様な悪ガキが近づいたりしない様にするためか、掌中の珠に接するように大切にしていることから、彼女達のどちらか特に金髪の女性じゃない黒髪の女性がいる時は危ないと察していた。

 何しろ黒髪の女性は未熟な少年であっても分かるほどに鍛え上げられた体をしているが、しなやかで艶やかと言うそれを伺わせないような体躯をしているため、彼は黒髪の女性が彼女の近くにいる時は絶対に出来ないと悟っていたが、かといって金髪の女性であっても油断は出来ぬ、そう判断させられる。

 

 何しろ彼女は素人でも分かるほどの魔力量を持つ杖を持っており、更には街の子供がこけた時にベホイミを簡単に唱えたことからも、回復呪文に習熟していると判断できたし呪文に長けた者は攻撃の呪文もいくつか習得しているということ、この事実を観光業と言う事業を生業としている街に住んでいる彼は知っていた、

 

 

 だが、そんなことを考えていたら、成人した金髪と黒髪の女性たちが何かを言ってから女の子から離れていくと、彼女は広場の端っこに歩いて行って通行人の邪魔にならない位置に行くと、今までに聞いたことがないほどの綺麗な声で鼻歌を歌いながら待機する姿勢を見せる。

 一瞬だけ鼻歌を奏でている少女に見惚れるが少年は己の本能を思い出し、自身の体を叱咤する!!

 

 

  今だ!!と。

 

 

 そう少年は判断して行動する。

 

 

 彼は体勢を低くして両足を最小限の動きで動かしながら大地を這うように疾駆する。

 さながらその動きはメタルスライムの如き素早さと動きで、鼻歌を歌いながらのんびりとしている女の子へと迫っていく、動きは最低限に尚且つ素早さと器用さは最大限に!!そう考えながら走る彼の素早さはメタルスライム並となり、シュッ!と動く右手ははぐれメタルが逃げる時と同レベルの速さで動く!!

 

 

「…… ふぇ?」

 

 

 女の子がこちらに気が付いたが、もう遅い!!少年(クソガキ)の右手は少女のスカートを捲りあげて、その中に隠された下着を公衆の面前(と思われるが実際は彼だけに見えるように晒すため)に晒そうと動いた。

 だが、その少年の右手の動きの前に鉄の盾が差し込まれる。

 

 

「ぐぅっぅぅぅっぉぉぉっぉっ」

 

「…… ?」

 

 

 その鉄の盾にぶつかった瞬間、ごぉぉぉんっ!!と言う音が自身の右手の指から鳴り響いて声にならない声が漏れるものの、彼は気丈にもくぐもった悲鳴を漏らすにとどめていた。

 不思議そうな様子で振り返っている女の子はコテンと首をかしげてぱちくりと目を瞬かせるのだが、自分を囲んでいる全ての状況の訳が分からないだけなのだろう。

 

 

「よっ、迎えに来たぜ、アリシア」

 

「…… なんでカミュが?」

 

「あー まあ、色々さ」

 

 

 そうして迎えに来るのはワイルドな笑みを浮かべたイケメン男性で、彼は少年の前に差し出された鉄の盾を持っていることから、少年の動きを阻止したのは彼だというのは分かったのだが、少年(クソガキ)は察してしまう。

 今までにスカートめくりと言う日課をしてきた己の経験と、更には修羅場が周囲の全てが己を囲み逃がさない様にしているということを。

 

 

「えっと、凄い音がしてたし痛そうけど…… 大丈夫? ベホマするよ?」

 

「い、いいよっ!!」

 

 

 パレード隊と呼ばれるオネェ集団から自分が目を付けられているのは分かっていたし、領主であるジエーゴからも逃げ足を含めた素早さ関係で才能が有り過ぎだ、と、評された才能は少女のスカートを捲る瞬間にも発揮されていた。

 何しろ、指の骨を折らずに筋を少し痛める程度のダメージに抑えていたのだから、彼の才覚が窺えると言うものだろう。

 

 

「あっ、行っちゃった……」

 

「ほっとけ、じゃあ、行くぞアリシア」

 

「うん……」

 

 

 このまま今の場所にいても妙なことになると察した少年は、すぐさま立ち去るが少女もカミュと呼ばれた青年に手を引かれて移動していく。

 その中で少年は己の未熟さを自覚しつつ、更に覚悟する、乗り越えるべき壁を乗り越えるのだ!と。

 




 ちなみにこのTSロリはベホマだけでなくベホマズンも使えますし、他の超高等呪文も使えるロリです。
 なんでホメロスに負けたのかと言えば前衛がいなかったのが大きいです、これが大きく影響を与えてしまい負けるけっかになりました。


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第11話 魔王による被害

 何気なくドラクエ11をやり直していますが、やっぱ時を遡る前のグレイグの方が人間味があって良いなと思っちゃいます。
 ドゥルダ郷のイベントでエロ本を見つけて大喜びしたり、後の会話であの当時のロウが動き出した瞬間は、ホラーそのものだよぉ(´;ω;`)と言っていたりと微笑ましいですし。
 それにシルビアの正体に気が付いた時の反応も爆笑ものでしたわ。

 いや、ベロニカに会いたいのは分かるんですよね…… でも…… と迷いが出てきますね……


 

 

 服の着せ替え大会は終わり、私はカミュに連れられてソルティコの街を歩く。

 その途中で何故か私に向かって走って来た男の子が居て、右手を差し出してきた所をカミュが阻止したのだが、彼は一体何をしたかったのかは分からない。

 

 

「ねぇ、カミュ、どこに行くの?」

 

「一旦、お前をジエーゴっていうこの街の領主の所に連れて行くんだ」

 

「なんで?」

 

「そこで話すさ、他の連中も先に行ってるしな、ちゃんと付いて来いよ?」

 

「うん……」

 

 

 先ほどの少年はどうやらパレード隊と呼ばれるオネェ集団と大立ち回りを演じているようで、街の人がお祭り騒ぎみたいに笑顔で囃し立てているのをしり目に、カミュに手を引かれて歩きながら質問する。

 それに答える彼の言葉としては、どうやらこの街の領主であるジエーゴの所に私を連れて行くというもので、領主さまにご挨拶というのなら、なんで最初にしなかったのだろう? そう思うけど考えてみたら街に来た時の服とかを考えると、そうもいかない感じだったのだろうか。

 

 まあ今の格好もミニのプリーツスカートという正装というには遠い装いなのだが、彼らが問題ないと判断したのならば従っても良いだろう。

 

 

「カミュちゃん、アリシアちゃんと合流できたのね」

 

「おう、今から案内している所だぜ」

 

「良かったわ、パパにアリシアちゃんを紹介しないといけないから」

 

「ああ…… よて…… ここにあず」

「そうよ…… あそ…… きけ……せ……」

 

 

 歩いていたらシルビアが声をかけて来て、自然な様子で合流するが彼らの間で私を領主の元に連れて行くのは決まっていたのだろう。

 だったらせめて一言位事前に欲しかったと思うが、なぜかカミュとシルビアが内緒話を始めるので途切れ途切れにしか聞こえないが、私自身としては神の民の里に留まる選択じゃなくて彼らについて行きたいという思いが芽生え始めていた。

 

 そりゃあんなに痛い思いをしたし自分の実力不足を痛感させられたが、ホメロスとの戦いの最中に彼が魔王軍が神の民の里を襲ったと言っていた。

 だからお母さんたちを殺したのが魔王ウルノーガの軍勢だと分かって、仇を討ちたいと思うし自分の中で何かが囁いているんだ、勇者たちについて行かなかったら絶対に後悔してしまう、と。

 

 

「あの、シルビア、カミュ、今二人に聞いてほしいことがあるの」

 

「なんだ?」

 

「どうしたの?」

 

「私も貴方達についていき「ダメだ!!」っ!」

 

 

 そのことを言わないといけないと思って、二人に伝えようとしたらカミュが大声を出して私の言葉を遮り、シルビアは優しい微笑みを浮かべていながらも曲げてはくれなさそうな表情になった。

 彼らに反対されるのは予想通りだし、むしろこんな幼女が付いて行きたいと言って付いて来いお前も仲間だとか、そんなのを普通に言えるような人間の方が問題だ。

 

 

「お前!!あんな大怪我したってのに、まだ分かってねぇのか!?」

 

「アリシアちゃん…… どうしてそう思ったの……?」

 

 

 怒髪冠を衝く、その諺が似合っている様子で激怒しているカミュを手で制したシルビアは私の目線に合わせてしゃがみ、優しい表情と声ではあるが誤魔化しだとかおふざけを一切許さない、そう言わんばかりの気迫に満ちた表情で問いかけてきた。

 歴戦の戦士ともいえるシルビアの視線には、物理的な圧力すら籠っていたが私も彼らに同行したいと思うようになったのは、思い付きとかじゃないことを分かってもらうためにも彼の目を見つめて答えていく。

 

 

「神の民の里、ここを滅ぼしたのが魔王軍だってハッキリと分かったから」

 

「アリシアちゃん……」

 

「だから、お母さんたちの仇を討ちたい!!ここで行動しない方が後悔する!!」

 

 

 シルビアの目を正面から見据えて言った言葉、コレを聞いたシルビアとカミュの表情には悲しさと言う感情が強く浮かび上がっていた。

 幼い少女が言うには過酷すぎる一言であったのもそうだけど、やはり魔王軍に神の民の里が滅ぼされていたということを改めて私が知ってしまったのを、彼らは悲しんでいるのだろうというのも分かる。

 

 だけどホメロスの言葉を聞いて、あんなに優しかった皆を殺したのが魔王軍だと完全に分かった上に、私は戦える力があったにも関わらず皆を守ろうとせずに逃げて、恐れ戦いていたことも許せなかった。

 

 

「…… アリシア……」

 

「アリシアちゃん…… これについてはアタシ達じゃ決められないわ…… 皆にも話すけど、良い?」

 

「うん」

 

「悔しいよな、悲しいよな…… 今までの当たり前が奪われちまうってよ……」

 

 

 動機を聞いてからずっと悲しい表情をしていたカミュが、抑えきれない感情を乗せて私の名前を呼んだと同時に、シルビアはいつも通りの調子を維持していながらも違う様子で言った言葉、これで彼らにとっても魔王によって幸せを崩された人々は大勢いるし旅をしてきた中で見てきたのだということが分かる。

 それに彼らの表情と言うか様子も少し違うので、勇者様たちの御一行も誰か大事な人を失ったのだということも分かった。

 

 そうして私は二人に連れられて、一路、領主さまであるジエーゴさんの所に向かう。

 普通に考えれば幼女が何を生意気で馬鹿なことを言っているのだと思うのだけど、二人は真剣に私に向き合ってくれたことに嬉しさを感じていたのは確かだった。

 

 




 果たしてロリは着いて行くことを了承してもらえるのか、この辺も次回になりますが、次の更新でロリが習得している呪文とかを大公開したいと思います。

 後、パレード隊の皆の描写がなかったのは、私の腕では彼らを描写しきる自信がなかったからであります……


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第12話 領主さまの迫力はすごい……

 

 

 今の私はホムラの里と呼ばれる場所を出て、完全な戦闘装備を身に纏ってホムスビ山と呼ばれる場所へと走っていた。

 なぜここにいるのかと言えば、ソルティコの街でジエーゴと呼ばれる領主さまの所に連れて行かれた時にさかのぼる。

 

 

 

 

 ジエーゴさまの屋敷に連れてこられた私は皆について行きたいと、勇者様達に話したのだが全員から反対された上にグレイグやマルティナはカミュみたいに怒りながら、私を制止しようとして来ていた。

 その二人を抑えて話を聞く体制に持って行ってくれたのはロウとセーニャの二人で、カミュとシルビアは私達の様子を見ている様子だったけど、心情的にはグレイグやマルティナと同じなのか彼らを止める動きはなくて迷っているのが窺えた。

 

 

「なぜ、お主がワシらについて行きたいのか、それは理解した…… だが……」

 

「家族の仇を討ちたい、それを私は否定することは出来ません、ですが……」

 

「母親の仇討ち、か……」

 

「アリシア……」

 

 

 神の民の里を滅ぼしたのが魔王軍の邪竜軍王ガリンガだということ、お母さんたちを里の皆を殺したのが魔王ウルノーガの手の物だと分かったから、だから彼らと共に行って仇を討ちたいと言ったら全員が悲しそうというか、悲痛な表情となっていたから勇者様達も大切な誰かを亡くしたのは分かった。

 

 

「ハァ…… それで、お前さんは母親の仇を討つためにゴリアテたちについて行きたいって訳か?」

 

「…… はい」

 

「この!!バカモンがぁ!!」

 

「っ!!?」

 

 

 この話をしていたいのが領主であるジエーゴさまのお部屋でしていたこともあって、彼は全ての話を最初から聞いていた。

 それを腕組みをして難しいというか険しい表情を浮かべて聞いていたのだけど、大きくはないけど室内にハッキリと木霊した溜息で私たち全員の意識が彼へと向いたのと同時に、ジエーゴさまは確認するように問いかけてくるが私はしっかりと頷いて答える。

 

 その瞬間にジエーゴさまからビリビリとした迫力と、威厳のある怒声が響き渡ると同時に私の背筋はピンっ!と張って彼に正面から向かい合う形となっていた。

 

 

「お前さんが生きているのは、その母親や里の皆が命を懸けてくれたからだということがなぜ分からん!!」

 

「分かっていま「分かっている訳、ねぇだろうがぁ!!」ひぅっ!」

 

「分かっていたら、仇を打ちたい、そんなことを軽く考えて決断するモノか!!」

 

「軽く考えてなんかない!!」

 

「なにぃ?」

 

 

 多分だけど、ジエーゴさまは敢えて厳しくも辛い言葉を重ねて、私を止めるために悪者になってくれているのだろう。

 他の皆が一歩下がった様子で私達のやり取りを見ていることから、私と仲が良い彼らでは言えないことをジエーゴさまが敢えて辛辣な言葉を浴びせて、いるのだと分かったけど私にだって引き下がれないものはある。

 

 

「血の繋がらない私を、里の皆は優しくてあったかく見守りながら育ててくれた!なのに……!なのに私は……!!」

 

「その考えの全てがお前の独りよがりな考えだと何故分からんか!? 実際にお前は負けたのだろう」

 

「…… それ、は……っ」

 

「それとも何か? 都合よく自分を守ってくれない者がいないから負けたと、そう言い訳をするのか!!」

 

 

 優しい微笑みを浮かべて私を見守り抱きしめてくれたお母さんや、時に優しいけれど悪さとかをした時には厳しくなる里の人たちや、里に住む心を浄化された魔物と言える人達を思い出すと冷静ではいられなくて声を荒げてしまう。

 皆が殺された時に私が何をしていたのか、強い呪文や特技を使えるのに恐怖に慄いて震え、隠れてやり過ごすという卑怯すぎる決断をしてしまったのだ、更には魔王軍の一人であるホメロスに痛打を与えながらも敗北した事実、これらが私に黒い影を落としてしまっていた。

 

 確かに私は強力な呪文を取得しているけど、近接戦闘の心得がなかったためにホメロスから良いようにやられたのは事実だった。

 だからジエーゴさまの言葉に反論が出来ないでいてしまっていた。

 

 

「ジエーゴ殿、ここはワシの顔に免じてアリシアの覚悟を試す場を整えさせてくれんかのう」

 

「そうよ、パパ…… 頭ごなしに否定するばかりじゃ、アリシアちゃんは納得できないわ」

 

「お前ら…… ハァァァ…… それで、どうするつもりだ?」

 

 

 思いばかりが先行してしまって感情的になってしまい、涙が浮かんできて視界がじわっとぼやけてしまうけど、何かを思案している様子を浮かべていたロウがジエーゴを窘めるように言葉をかけ、シルビアも微笑みを浮かべながらもしっかりとした様子でジエーゴ様に言葉をかけていた。

 

 彼らの様子を見て私に対する何らかのことをするというか、試験みたいなことをするのが分かったのか、呆れ果てた様子と言うか私を心配そうに見つめながらもロウとシルビアに問いかけるジエーゴさまの様子は、幼女である私を心配するものが見えていることからも彼も私が戦うことになること、これを良しとする人ではないのだろう。

 

 

「実は、ワシらは強力な武器を作る場所を見つけたのでな」

 

「そこにアリシアちゃんが条件を満たして辿り着けば、連れて行こうって考えたの」

 

「ふざけるな!ロウ!ゴリアテ!!こんな子供になんて危険なことをお前たちはしようとしている!!」

 

「だからこそだ、ジエーゴ殿、この程度の事も乗り越えられないようではワシらの旅についてくることなど出来ん」

 

 

 ロウが言った強力な武器を作る場所と言うのは、かつて勇者ローシュが勇者の剣を作った場所の事だろうということは分かった。

 だけど、そこに辿り着くことがなぜ試練となるのかは分からないのだが、ジエーゴ様は反対なのか彼らが言った言葉を聞いて余計に酷く激昂していたがロウは動じることなく、更には冷徹と言うべき冷たい響きと共に言い放って私が行こうとしている道、これがどれほどの険しさを持っているのかを理解させられる。

 

 

 

 そうして私の試練は開始された。

 私はお母さんたちの仇を討ちたい、そう考える中で自分の実力が通じるのか否かが不安だったけど、やらないとお母さんたちの仇を討とうとしなかったことを後悔する。

 そのことを胸に私は走り出していた。

 

 




 ちなみに番外編でエロガキよりスカートを捲られそうになったこと、これにアリシアは気が付いていません。
 なぜなら神の民の里では、そういうことをする子供はいなかった上に、彼女(彼)
がスカートめくりという行為を忘れているからであります。

 なのでアリシアはガチでエロガキがナニをしようとしていたのか、コレに全く見当がついていないのです。


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第13話 自分がしなくちゃいけないこと

 お待たせして申し訳ありません…… ドラクエ11をやり直した後にSFC版ドラクエ3をやってたら夢中になってしまったんです……
 おにぃさん許して!何でもしないから!!と言ってしまいたい状況です……


 アリシアはゲーム中でも最高峰の呪文を使いこなしますが、実戦経験が全くないためにホメロスにボロ負けしてます。

 更には普通の魔物たちにも色々と動きが硬いために、反撃を許したりしてます。


 

 

「そこっ!イオラッ!!」

 

『ギィィィッ!!』

 

 

 走りながら周囲を見渡して問題ないと判断した私は、爆裂呪文のイオラを唱えて目の前の魔物を爆殺させたのと同時にホムスビ山地の、硬くてゴツゴツとした大地を踏みしめて小さな両足を動かしていく。

 スカラとバイキルトを駆使し体を強化して、両手で構えられる私用のサイズなどに造られたはぐれメタルの槍を手にして魔物に切りつけても、10歳児の体格が災いしてか魔物に痛打を与えられないが、だからこそ呪文を駆使しないと私は道を進めないので、戦い方を考えながら必死で走っていた。

 

 

『ゴアァァァッ!』

 

「っ、ふぅぅ…… ライ、デイン!!!」

 

『ギィィィィッ!!』

 

「いまだ!!メラガイアー!!」

 

 

 ヒノノギ火山に入ろうかと言う地点でギガンテスに気づかれて、奴はこちらへと一気に向かってくる。

 その手に持つこん棒が私に振るわれるけれど、これをギリギリで回避したのと時を合わせて息を整えながら、体勢を整えてライデインを唱えると電撃がギガンテスが持つ特徴的な一つ目を貫いて絶叫を上げて仰け反った瞬間に、メラガイアーを唱えてとどめを刺す。

 

 目を電撃で焼かれた上に全身をメラガイアーの巨大な炎で炙られたギガンテスは、ゆっくりと大きな音を立てて倒れて二度と動くことはなかった。

 

 

「はぁ…… はっはぁ…… っぅ」

 

 

 正直に言えば神の民の里にも魔物がいたけど彼らは浄化されて共存できていたから、魔物を殺すことに抵抗感がないというわけではない。

 それに他の魔物たちと違ってギガンテスは人型をしていたためか、余計に抵抗感があったために必要以上の力がこもってしまったために戦闘が終わった時には、槍を杖みたいにして体を預けて酷く息を乱してしまっていた。

 

 だけど、こんな処で立ち止まっていられないしボヤボヤとしていたら勇者様達に置いて行かれると思ったら、自然と両足に力が入って火山へと突き進む力になっていく。

 

 

「絶対に、私も……!」

 

 

 勇者様達について行って皆の仇を討つんだ!と、そう考えていても、何故だかは分からないがコレだけは実際に口にしてはいけないと思えた。

 ジエーゴ様の前だと自然とお母さんたちの仇を討ちたいと言えたけど、あの時に自分がとった行動を考えるとそれらを口にして良い権利は自分に存在してなどいないと、心の中で分かっていたからだろう。

 

 あの日、私は里が襲われたという事実に恐怖して隠れてお母さんたちが殺されていた状況でも、自分の身を守るためだけに集中してしまったのだ。

 幼い子供が取れる最善の行動をしたと他の人は言うだろうけど、私は隠れてしまった自分が許せそうにないし許したくもなかった。

 

 

「ケジメだけは付けないといけないんだ!!」

 

 

 強力な呪文を使いこなせるくせに何一つ出来なかったこと、これらのケジメを付けるためにも勇者様達に同行して魔王ウルノーガ打倒の手助けができるくらいの事はしないといけない。

 この力は魔王を打倒するため、それを行うためにもあるのだと考えながら立ち上がり、ヒノノギ火山の禁足地と呼ばれる火事場へ向かうために走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 アリシアの小さな影が走り出したのを見つめているのは、シルビアにカミュとグレイグの3人で彼らは少しだけ驚いた様子なのと同時に、納得と言う感情を顔に浮かべていた。

 

 

「あんだけ強力な呪文を使えてもホメロスの野郎には手も足も出なかったのか……」

 

「ホメロスとの戦いが初陣だと言っていたからな、しょうがないだろう、奴は呪文を中心に戦う者との戦い方も心得ているからな」

 

「だろうな、俺たちが着くまでアリシアが生きてたのはあの野郎が遊んでたからだろうし……」

 

「そうね、今も体が硬すぎるわ…… 余計な力が入り過ぎちゃってる……」

 

 

 アリシアが操る強力な呪文を見たカミュは複雑な色の声を漏らすものの、グレイグの指摘に納得と同時に理解も示していた。

 ホメロスは勇者一行に出し抜かれることもあったものの、元は巨大な王国の軍師であり現場にも出て戦う将軍と言える男性だったのだから、本来の彼の実力が発揮されれば強力な呪文を使えるだけの小娘と言えるアリシアは蹂躙されるだけだということ、これに思い至ったのだった。

 

 アリシアに実戦経験が大きく不足しているということ、これは目の前の現実が示していて彼女の動きはぎこちない上に、振るっている槍の使い方も力が入り過ぎて大振りとなり易く魔物に反撃を許しているのだ。

 これを見ていたシルビアは思わずと言った様子で走り出そうとするものの、カミュとグレイグの視線に制止されていた。

 

 

「分かっているだろうが、アリシアが完全に行動不能になるまで我らは彼女に助太刀は出来ん」

 

「えぇ…… 分かっている、分かっているのよ…… グレイグ」

 

「気持ちは分かるさ、シルビア、アリシアは危なっかしいからな……」

 

 

 彼らとて本来ならば彼女の元に駆け寄りたい、援護をしたいと思っている。

 だが、それは出来ないのだ。

 

 

「あともう少し、その距離を一人で走れるなら、魔王の城の中でも戦えるかもしれない…… そうよね」

 

「ああ、俺たちが援護を何時でも出来る訳じゃないし、自分の身は自分で守って貰わなくちゃならねぇ」

 

「そう言う事だ、我らに付いてくるということは激戦に身を投じると言う事だ」

 

 

 そう、今から彼らが乗り込もうというのは魔王の居城であり最も危険な場所なのだ。

 そんな場所に戦うことなど出来ない幼い子供を一緒に連れて行けないし、彼らは連れて行く気もなかった。

 

 だが、今の状況に誰も理解と納得をしていないのは明白で、グレイグは両手を握りしめており力が入り過ぎているのかギシギシと音が鳴っており、カミュも悔し気に顔を歪ませてアリシアが戦う姿をじっと見つめている。

 本当ならば2人もシルビアと同じくアリシアの元に駆け付けたいのだが、自分たちが今から向かう場所の事と彼女が付いて来ようとしている事実を考えて、敢えて心を鬼にして見守る外に無い状況だった。

 

 

「だけど、あんな高等呪文を教えていた存在が居たってことよね……」

 

「ああ、俺も見たことがない呪文を放っているしイレブンだけが使える呪文も唱えているな」

 

「神の民の里には、どんな技術が眠っていたのかしらね……」

 

 

 走るアリシアを追いかけながらも、彼らは彼女が使う高等呪文と言える強力な魔法に舌を巻きながら、彼女にこれほどの力を仕込んだ神の民の里が持っていた技術力などを考えていた。

 

 




 ちなみに、この下にアリシアが使う呪文やら装備とかの情報を載せます。

 ベロニカが生きていたら、彼女をひっ捕まえて呪文を聞き出そうとするのが良く分かるラインナップであります。
 なお、仲間になると言ってもNPCとしての扱いなので、11仕様だとかなり役に立ちそうな感じとなっております。




アリシア
種族:天空の??

装備
右手:神秘のオーブ
左手:水鏡の盾
頭:おうごんのティアラ
体:みずのはごろも
アクセ1:スーパーリング
アクセ2:エルフのお守り

スキルパネル
オーブ

魔導
天空人

習得呪文

ベホマズン
リベホマラー
ザオリーマ
メラガイアー
ギラグレイド
バギマ
バギクロス
マヒャデドス
イオラ
イオナズン
イオグランデ
ライデイン

 リベホマラーは私の考えた呪文で、原作には登場しません。
 唱えると味方全体にターン終了時にHP120の自動回復を付与と言う、ぶっ壊れ呪文であります。

 こんなロリが仲間になってほしかった。そんな欲望を抱きながら考えた設定です……


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