ちょっとクズな直哉くん (いかのシオカラ)
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ちょっとクズな直哉くん

こんな直哉くんがいたらなあって話です
どっちかっていうと糸目とか狐目に近いイメージ


昔からずっと思っていた。

禪院という家において自分は歪である。

なにが作用したかなどは今となってはどうでもいい。

それに...こっちのほうが面白い。

 

...

.....

.......

 

直哉と甚爾

 

「なあ甚爾くん」

 

「...なんだ」

 

うだるような暑さの今日。

縁側でだらける僕と、スイカを貪る野獣のような男『禪院甚爾』

 

「面白いこと言って」

 

「お前...それ何度目だ?退屈なら本でも読んどけ」

 

「ここにある本なんてカスみたいな呪術のあれこれぐらいしか載ってない暇人のための本やん」

 

「...仮にも御三家の人間が言っていいセリフじゃねえだろそれ」

 

「だってそうやん、おもんないし。どうせきっしょい禪院のやつが書きよったんやろ」

 

「ここがお前の屋敷でよかったよ」

 

しばしの沈黙。

五月蠅いセミと増していく熱さ。

そんな中不意に口が動いた。

言いたかった。でもなかなか勇気が出なかった。

言えば自覚してしまいそうで...嫌だった。

 

「ほんまに出ていくん?」

 

「んあ?」

 

「結婚してここ出る言う話、ほんまなん?」

 

「...ああ」

 

「なんで?」

 

「しゃーねえだろ、向こうは一般家庭なんだぞ。こっちの世界に引き込むわけにはいかねえんだ」

 

「知ってる」

 

「そうかい」

 

「僕も」

 

「ダメだ」

 

「...なんで」

 

「これから生まれてくる才のねえ奴には、てめえみたいなやつが必要だ。だから俺のとこに来るなんてのは許さねえ」

 

「...寂しいわ、ほんま。僕の家やったらいつでも帰ってきてええで」

 

「...」

 

一回りも二回りも大きな手が僕の頭を包み込む。

彼が本気を出せば、子供の頭なんて卵みたいに潰せるだろう。

でも、その手はただひたすらに優しかった。

髪がぐしゃぐしゃと音をたて、かき回される。

消え入りそうな声で彼はそっと一言。

 

「ありがとな、直哉」

 

悲しくない。自分にそう言い聞かせたが、

頬を伝い口へと運ばれる塩辛さが僕にこの想いを実感させた

 

あれから十と数年

小さかった背丈も彼に負けないほど大きくなり、掌だって彼と比べても見劣りしないだろう。

黒装束を身にまとい、目の前の無機質な石造りに花を添える。

 

「結局、帰ってこんかったね」

 

赤の花を添えたときに、そんな言葉が出たかもしれない

 

-直哉と双子-

 

日常に特に大きな変化はない。そんなある日、叔父の娘に会うことになった。

名前を真希と真依。双子で、一人は天与呪縛によって呪力が一般人程度しかないらしい。

屋敷の中を適当にうろうろしていた時、たまたま出会うことができた。

一度は面と向かって話をしてみたかったので、これ幸いと声をかけたが、どうやら母親もつれていたらしい。

自分しては話がややこしくなりそうで、できれば3人が良かったが...仕方ない。

 

「君らが真希ちゃんに真依ちゃん?ごっつかわええね、お人形さんみたいやわ」

 

「あ、ありがとうございます。ほら、二人とも」

 

フイっと二人とも僕から目を逸らしてしまう。

だんだんと青くなる母親の顔。

まあ、顔色を窺ってヘコヘコされるよりこっちのほうがよっぽどいい。

 

「なっはっはっはっは、僕フラれてもうたか、ほうかほうか。ええよ、ここにおるカスどもみたいに、人の顔見るよりそっちほうが僕は好きや」

 

「は、はあ」

 

「うん、カスどもが絡んできよったら僕のとこにおいで。そいつボコボコにしたるわ。ああ、僕の屋敷でもええで。お菓子も漫画もゲームもぎょーさん揃えとる、きっと飽きひんわ」

 

双子の姉妹が不思議そうな顔で僕を見つめてくる。

激怒されるとでも思ったのだろうか。まあ、ここにいる人間ならやりかねないだろう。

ゆっくりと腰を下ろし、繋がれた双子の手を包み込む。

彼ほどではないけれど、自分の手もなかなか大きくなったものだ。

気が付いた時には不思議と視線が真希ちゃんの方へと向いてしまっていた。

 

「せっかくの双子の姉妹や。仲良うやりや。...この手、放したアカンで」

 

それだけ言い残し、自分の屋敷へと帰っていく。

懐かしい影を瞼の裏側に感じながら。

 

 

あれから数週間。

漫画で暇な時間を潰している最中、不意に玄関の戸が叩かれる。

今日は女中なんかが皆休みで出払っているので、屋敷には自分しかいない。

仕方がないので、重い腰を起こし玄関へと向かい戸を開けた。

 

「あいあい、どちら様」

 

気だるげにあけた先には、いつぞやの双子と繋がれた手がそこにあった。

思わず表情が緩む。

 

「いらっしゃい、ゆっくりしていきや」

 

寂しい屋敷の玄関に、仲良く並べられた小さい二足の草履がそこにはあった。

 

-直哉と双子 その弐-

 

近くのコンビニで乾電池を購入し、屋敷に帰った時、なにやら騒々しい喧騒が聞こえたので、足早に向かう。

すると真希ちゃんが禪院の人間に何やら腕を掴まれていた。

 

「逃げるな猿が!お前、直哉様の屋敷で何をしていた!」

 

「だからさっきも...!」

 

「つくならもう少しマシな嘘をつけ!直哉様が...!」

 

「僕がどうかしたん?」

 

「ああ、直哉様。ちょうどいいところに。猿がなにやら直哉様のお屋敷でウロチョロしていたもので...ひっ捕らえていたところです」

 

額に青筋がビキビキと浮かんでくるの感じる。

 

「ほーん。ほーか。...手放せやドブカスが」

 

「えっ?はっ?」

 

「聞こえんかったか?手放せ言うたんじゃボケ。この子らにはちゃんと俺から入ってええ言うたし、中で好きにしてええいうた。...んで、君は?なんで俺の屋敷の敷地内入ってんの?許可した覚えないけど」

 

怒気をはらんだ声で、ゆっくりと聞き漏らしがないように伝える。

 

「わかったらはよ去ねや、殺すぞボケ」

 

負け惜しみなのか、キッと真希ちゃんをにらみつけ男はその場を去る。

最後までダサいやつだ。

 

「真希ちゃん大丈夫?なんもされてへん?」

 

「別に何も。腕掴まれただけ」

 

「ほーかい。すまんな、今日は誰も屋敷におらんし僕のさっきまで買い物いっとったし...。悪いことは言わんからなるべく屋敷の中おり」

 

「真依が、アイスを食べたいっていうから...」

 

「あれま、もう冷凍庫になかったんかいな」

 

以前に冷凍庫のアイスがなくなった際には、女中や屋敷の人間に頼めばいいと二人に伝えていたことを思い出す。

 

「...ほんで、屋敷に誰もおらんし僕を探してたと」

 

「だいたいそう」

 

「ふっふーん、こんなこともあろうかと、ちゃんと買ってきたで、アイス。ほんまは僕が食べよう思うてたけど、特別な」

 

「あ、ありがとう」

 

ぎこちないお礼。これでも最初よりは随分と自然になったものである

 

「なはは、」

 

...

.....

.......

 

「なんてことがあってなあ」

 

石造りの階段、上段に座った僕。

下段に座った真希ちゃんの同級生にそんな昔話をする。

 

「へえー、真希のやつにもそんな可愛い時期があったんだな」

 

「しゃけ」

 

「そ、そうだったんですか。あはは」

 

「なんや乙骨くん、反応が微妙やなあ」

 

「直哉、後ろ後ろ」

 

同級生3人が僕の背中に視線を向ける。

少し嫌な予感。ゆっくり後ろに首を向けると...

 

「直哉ぁぁぁぁぁああ!!」

 

屠坐魔を振りかぶった真希ちゃんがいた。

やべ、そう思い急いで術式を発動。

亜音速でグラウンドを逃げ回る。

 

「逃げるなア!卑怯者オ!」

 

見てるか、甚爾くん。

僕、今めっちゃおもろいわ。

やからまだそっちには行かんで。

せいぜいそっちで羨ましがっとき。

 



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ちょっとクズな直哉くん 2

ちょっとキャラの性格違ったらごめんね


-直哉と五条-

 

呪術高専東京校との代表戦。

僕は京都校の一年として参加した。

そもそも禪院の人間としては高専に入学するメリットはないに等しいのだが...

 

「直哉、準備できたか?」

 

「はいなー、いきましょかー」

 

直哉としてはあんな家にいるよりこっちのほうが断然楽しい。

京都校の面々は自分を禪院の人間としてではなく直哉として扱ってくれる。

それが自分としては何よりもうれしい。

 

...

.....

.......

 

スタートの合図が鳴らされる。

生徒たちが一斉に動き出し、静かだった森に複数名の足音が響き渡る。

緊張のせいか心臓の鼓動が早くなり、気分が高揚する。

しかし、そんな自分とは違い先輩たちの気分は最底辺まで沈んでいた。

それもそのはず、向こうにはあの五条悟がいる。

僕と同じ御三家の人間にして現特級術師。

五条が生まれたせいで呪霊の強さも以前より増したとのこと。

六眼の持主で無下限呪術の使い手。

御三家の人間のパイプを使って情報を得たが...うん強すぎる。

それにプラスして同じく現特級呪師の夏油傑。

呪霊を操る呪霊躁術の使い手。

一般家庭の出だと聞いているがどんな確率でこんな人間が生まれるんだろうか。

情報をまとめてみたが...

ハッキリ言って勝てる気がしない。

でも

 

「皆、勝てとは言わん。適当にケガしないように」

 

「届かなくもない」

 

「ん?直哉。何か言ったか?」

 

「ああ、届かなくもないのかなあって言っただけですよ」

 

「届く?誰に?」

 

「...五条以外任せてええ?つってもできるんは時間稼ぎですけど」

 

「おい、正気か?」

 

「届かなくもない言うたやないですか。何事もチャレンジです。失敗したらみんなで笑うてください」

 

「...わかった、信じるぞ」

 

皆から別れ一人、別行動をとる。

術式を展開し。亜音速で五条を探す。

思ったよりもすぐに出会うことができた。

一瞬目が合う。その瞬間、感じたことがないような悪寒と昂ぶりを感じ、

思わず笑みがこぼれてしまった。

 

「んあ、一人だけ別行動?」

 

「どうも、お初にお目にかかります。禪院直哉です。直線のほうの直に」

 

っと自己紹介をしている途中、五条くんが食い気味に

 

「いい、そんなん。御三家の人間でもどうせ雑魚だし、名前なんて覚えとく価値ないし」

 

「なはは、手厳しいなあ五条くん。でも僕はちょっと時間稼ぐだけやしお喋りでも...」

 

瞬間、悪寒がしたので術式を発動。右に回避。

自分がいた場所に大きな穴が開いている。

 

「くどい。とっととやられろ」

 

「ほうか、じゃあ...やりましょか」

 

五条との戦闘が開始される。

とはいってもこちらとしては回避するので手一杯。

なんとか攻撃したとして攻撃を無限に阻まれる。

亜音速で移動してくるのに追いついてくるなんて、化け物以上だな。

 

「鬼やな、ほんま」

 

「なんか言ったか?」

 

「天使みたいにかわいい言うたんです」

 

「きっしょ、とっとと死ねや」

 

「殺すんは反則ですよー」

 

「黙れ」

 

「...こっちもやられっぱなしなんで、そろそろ反撃させてもらいます!」

 

術式をフルで発動。

しかし向こうはと言えば

 

「は、無駄無駄」

 

と棒立状態。しかし、そんな表情も次の瞬間には崩れることになる。

服の内に忍ばせておいたあるものを発動。

拳が五条君にクリーンヒット。

吹っ飛ばされたがすぐに体制を立て直した。

どうやらこの程度で倒れてくれる特級ではないらしい。

しかし、精神的にはかなり動揺を誘えた。

 

「が、あ。てめえ、その縄!」

 

「これ、術式を乱す黒縄。こっそり発動させてもらいました。いやー、これ手に入れるの大変でしたわ。家の力フルパワーでなんとかかんとか」

 

「この狐が!」

 

今までのプライドに傷をつけられたのか、ビキビキと額に青筋を浮かび上がらせ、身の毛もよだつような殺気がぶつけられる。

 

「狐で結構。でもまあ、ちゃんと届きましたね」

 

「はあ!?」

 

「ああ、こっちの話です。それじゃあ、逃げる!!」

 

「おい待て!」

 

術式を発動し亜音速で逃げ、たまに縄で術式を乱す。

満身も満身。ボロボロになりながらもなんとか終了までの時間を稼いだ。

もうすっかり黒縄も二の腕ほどの長さしか残っていない。

時間にして15分。

結果は...

 

『勝者、京都校!』

 

こっちの勝利だった。

特級が2人相手にいて勝利。

ははっと乾いた笑いが漏れる。

もはや腕さえ上がらない。

 

「細い糸やったけど、何とか掴めたな」

 

術式を解き、肩の力を抜く。

さて、僕も戻ろう。

そう思った瞬間、体が吹き飛ばされる。

呪力での攻撃をモロにくらい、後ろにあった木に勢いよく背中を打ち付ける。

こんなことをしてきた相手は間違いなく

 

「五条くん、もう団体戦は終わったで。おっちょこちょいやなあ」

 

「黙れ、逃げ回っている途中、散々煽ってきやがって。このまま帰れると思うなよ」

 

はて、記憶にないな。せいぜい『クソグラサン』や『白髪畑』と言っただけだが。

しかしこのままだとまずいな

 

「...頭に血上りすぎです。もう少し冷静に」

 

もう一度悪寒。なんとか腕でガードしたが今度も大きく吹き飛ばされる。

こっちはもうそんなに暴れる元気が残っていないというのに...まったく。

薄れゆく意識の中、夏油くんらしき人物が五条くんを止めに入る。

よかった、これで安心だ。ゆっくり目を閉じ、そのまま意識を遠のかせた。

 

結局僕が起きたのはその2日後。代表戦が終わった後だった。

個人戦では負けたことで今年は引き分け。

個人でもよい結果を残せなかったことを謝られたが、こっちとしては皆に大きな怪我がなくてよかった。

ちなみに試合外での一方的な戦闘ということで五条くんは停学になった。

とはいっても任務や五条家の介入もあり3日程度で済んだらしい。

部屋を去ろうとする先輩に一言。

 

「ちゃんと届きましたよ、言うても一瞬ですけど」

 

もっとも、そのしばらく後、自分の手がたった一人の大親友に届かなかったことを僕は知らなかった。

 

...

.....

......

 

「ナオヤンすっげー!」

 

「ほんとすげえよな、あいつ」

 

東京校で虎杖くんの様子を見に来たが...なにやら2年生と1年生が恥ずかしい話をしていた。

どうしよう、ここで『みんなどうしたん?』っと行ったものなら、全員からそれについての話を聞かれそうだ。

正直自分としては恥ずかしいことこの上ない。

特に虎杖くんが僕の真似をして『届きそうにない』とか言ったところから。

よし、このまま何もなかったことにして帰ろうそうしよう。

後ろに下がろうとした瞬間

 

「おーいみんなー、ここに直哉くんがいまーす!」

 

「んな、五条くん!?いつの間に」

 

後ろから肩をがっしりつかまれ

 

「話に夢中になりすぎ。最初からいたよ」

 

ドドドドドと大きな足音ともに

 

「おい直哉!話聞かせろよ!」

 

「俺ももっと聞きたい!」

 

「俺も。今後の参考になりそうなんで」

 

「しゃけ」

 

拝啓、天国の甚爾くん。僕はすっごく帰りたいです

 

 

-直哉と東堂-

 

京都校のOBとして皆がどんなことをしているかの監督、もとい真依ちゃんをからかいに京都校に赴いた際。

 

「2年東堂葵、ケツとタッパが大きい女がタイプです!!」

 

なにやら奇妙な人間と出会った。

こんな人間と学びをともにしている真依ちゃんが心配になってくる。

しかし、男として返さないわけにはいくまい。

 

「禪院直哉、茶髪で微褐色の女がタイプです!」

 

「ほう、なかなかいい癖だ。親友とはいかないが好敵手()と呼ぶに相応しい」

 

やはり学長に相談して停学にしたほうが良いのではないだろうか。

九十九さんからは仲良くしてほしいといわれたが。

結局あの後、ボコボコの殴り合いになり学長に僕も叱られた。なんでなん?

 

...

.....

.......

 

「ねえ硝子、やっぱりちょっと焼いて茶髪に染めたほうがいいかしら?」

 

「歌姫、何言ってるの?」

 

 





プロフィール

禪院直哉 27歳
階級:一級
術式:投射呪法
好きなもの:娯楽(全般)、ジャンクフード、アイス(全般)
嫌いなもの:禪院家、渋い食べ物、蟲
身長:大体180ぐらい
特技:料理(特に鍋)、スマホゲーム

領域:あり

-周囲からの評価(1~5段階で)-


虎杖 5
「優しいし、色々教えてくれた。ぶっちゃけ五条先生より先生してる」

恵 4
「手放し...ってほどではないが尊敬できる。たまにある悪ふざけがイヤ」

野薔薇 3
「真希さんが尊敬してるし、話を聞く限りすごい人。でもなんか信用できない目」

憂太 4
「入学の時に五条先生の頼みとは言え、呪術のあれこれを教えてくれた」

パンダ 5
「ノリがいいし好き」

棘 5
「しゃけ」

真希 5
「アホだろあいつ」

悟 5
「御三家の人間なのに面倒じゃなくていい。敵だとクソ」

ここから京都校をちょっとだけ

真依 5
「訊いたら撃つわよ」

東堂 5
「俺の好敵手に相応しい」

歌姫 5
「ねえ、直哉くん。ちょっとだけ染めたんだけど...」


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3話

-直哉くんと虎杖くん-

 

春の暖かさが体をぽかぽかとあたためる今日この頃。

恵くんの様子を見に東京に訪れていた。

入学早々、同級生を亡くしてしまったとのこと。

優しい恵くんのことだ。心に大きな傷を負ってしまったことだろう。

っと、思い携帯がブルブルと振動。

着信画面を見てみると『アホグラサン』の文字が。

...面倒ごとの予感。

しかし、このまま無視し電池切れてたーなんて言えるものでもない。

はあっとため息をつき、電話にでる。

 

「もしもし、禪院直哉です」

 

『ああ、直哉。今東京いるんだって。暇でしょ?高専の地下室までよろー。あとついでに今週のジャンプもお願いねー』

 

嵐のように向こうが告げたいことだけ、通話が終了。

僕は五条くんの着信名を『クソ目隠し』に変更した。

 

...

.....

.......

 

地下室の重たい扉を開け、扉の少し先にいた白髪にジャンプをぶん投げる。

 

「ジャンプ一冊、へいおまち」

 

「直哉ー、ジャンプは投げものじゃないよ」

 

「知っとるわ。...んで、今日はどないしたん?また面倒ごと?」

 

「うん、今までの頼み事より一番面倒。直哉くんには...ほれほれ」

 

五条くんが指をさした場所には、まだ幼さの残る少年。

 

「どうも初めまして!虎杖悠仁です!好きなタイプはジェニファー・ローレンスです!」

 

死んだはずの宿儺の器。虎杖悠仁がいた。

...だいたいのことは把握することができた。

 

「虎杖悠仁は死んだいう風に聞いたんやけど...まさか偽造したん?」

 

「んー、まあちょっと違うけどだいたいそう。一応言っとくけど、死んでも他言無用ね」

 

心の底からの大きなため息。

 

「...ほんまにエグイことしよるねキミ」

 

「僕もそう思うよ。それでキミにお願いがあるんだけど...悠仁の指導をお願いしたいんだ。僕よりも直哉のほうが適任だと思ってね。なーに心配せずとも、きっとすぐに悠仁のこと気に入るよ」

 

頭の上から大量のトンカチが一斉に落ちてきたような気分である。

 

...

.....

.......

 

結局五条くんはあのあとすぐに『任務があるからー』と出て行ってしまった。

部屋に残されたのは僕と虎杖悠仁くんの二人。

 

「あのーナオヤン」

 

「ナオヤン?」

 

「いや、禪院直哉だからナオヤンでいいのかなって?」

 

まずいな、このタイプはなかなか接してこなかった。

今まで接してきた年下のタイプでも極めて珍しい。

こんなときに七海くんでもいてくれれば話をうまくまとめられるんだが...

 

「あー、ええよ。それで。ほな改めまして自己紹介ね。禪院直哉、27歳。一級術師です。好きなもんは...アイスやね」

 

「そっか、よろしく!」

 

「うん、元気があってええね。それで、五条くんからどんなこと教えてもらった?」

 

「えっと、ジュリョクとコントロールの仕方。つってもジュリョクもふわっとした感じだけど」

 

「ほーん、それでその握っとる人形は夜蛾さんが作ったやつ?それで練習しとったと」

 

「そう!」

 

だいたい一から説明しなおしたほうがよさそうだな。

 

 

-直哉と悠仁の呪術教室-

 

「ほんじゃ始めていくで」

 

「おなしゃす!」

 

「まずはおさらいから。呪力が人間のマイナス、ようは負の感情から来とるって言うのは知っとる?」

 

用意されたホワイトボードに、黒の文字を書き込んでいく。

こういうのはあらかじめプリントを作ったほうがいいんだろうが、残念ながらそんな時間はない。

 

「知ってる!」

 

「ほんで、その漏れ出た呪力から呪霊ができる。やから術師は呪霊を生み出すことはない。呪霊を祓うには呪力での攻撃が必要やし、術者を殺すのにも呪力での攻撃が必要」

 

「先生、なんで人間に対しても呪力が必要なの?」

 

「下手に肉体の呪力が多かったりすると、そのまま呪いに転じてまうからやね。過去にあった事例では、とある術者が交通事故で死んで、呪いになってもうたことがあんねん」

 

「へー」

 

 

-直哉と悠仁の呪術教室2-

 

「ほんなら呪力の大体の説明は終わったし、術式の話に行こか」

 

「いえーい、待ってました」

 

「とはいっても虎杖くんには、術式はない。やから恵くんみたいな派手なことはできへんねん」

 

「なぬ!」

 

「でも、絡め手でチマチマ来られるよりもまっすぐに来られたほうが難しい。サンジやウヴォーギンみたいなもんやね」

 

「おお、かっけえ!」

 

少年漫画は履修しているみたいだ。よかった。

 

「そんで話を戻して、術式は術者が元来からもっとるもん。やから余程の例外がない限り後天的に術を授かることはない」

 

「...ナオヤンはどんな術式持ってるの?」

 

「僕のは...虎杖くんちょっと動いてみて」

 

「おっけ、わか」

 

動こうとした瞬間、虎杖くんの肩に触れる。

見事に1秒間見事にフリーズ、そしてすぐに動き出した。

 

「えっ、今止まった?」

 

「それだけやない。この部屋やとできへんけど、頑張ったら亜音速で動けんねん。その術式の名を投射呪法。効果は1秒を24分割することで自分の視界を画角とし、あらかじめ画角内で作った動きをトレースすることができる」

 

「すっげえ、いいなあ!」

 

ここまでまっすぐな瞳で褒められると少し照れくさくなってしまう。

っと、ここでこの説明をしておかなくては。

 

「では虎杖くん。ここで今の会話。呪詛師や対話が可能な呪霊に出会ったら注意すべき点があります。それは何でしょうか!」

 

「え、今の会話で?えっとー...」

 

「ヒントは呪力の時に説明した縛りの話」

 

「ああ!俺に術式の話をした!!」

 

「ピンポーン、大正解。術者が術式の開示をしたときは要注意。開示によって呪力や効果を底上げできんねん」

 

「なるほどー」

 

「まあ、術式を見た時点で詰み、なんてもんもあったりするから状況に因りけりやけどね」

 

「うげ、そんなんもあんのかよ」

 

「...よし。術式の話の深堀は明日以降にやるとして。今日の講義の最後の説明。反転術式について」

 

「ハンテンジュツシキ?」

 

「そう。マイナス×マイナスで呪力をプラスの力にできる。回復に使ったりが一般的やね」

 

「ほえー」

 

「こればっかりは才能がないとどうにもならんけど...虎杖くんでも習得できる可能性はある」

 

「マジで!?」

 

「うん。あくまで可能性ね。ちなみに反転術式はプラスの力、せやからマイナスの呪霊には効果がバツグン」

 

「う、うん?」

 

「薬草みたいなもんや。僕らが使うたら回復。モンスターに使うたらダメージ。そんな感じ」

 

「ああ、なるほど」

 

「じゃあこれでざっくりとした術式の説明は終わるけど、なんか質問ある?」

 

「ない!!」

 

「ほんなら、あれこれ考えるよりも体動かして覚えよか」

 

「体を動かす?」

 

「僕と組手。武道場は借りとるし、そこ使おか。僕の術式の本領も見せたいし、なにより虎杖くんの実力も見ときたい」

 

「...わかった、行こう!」

 

 

-直哉と悠仁の呪術教室3-

 

地面に息を切らしながら床に倒れ伏す虎杖くん。

最後に一発くらった右腕が少し痛む。

 

「すごいパワーやね、虎杖くん。これなら今の準2級が相手でも全然務まるよ」

 

「マジ?ナオヤンが凄すぎて想像つかないんだけど?」

 

「最後らへんは僕の動きにもついてこれてたし。呪力のコントロールもばっちりできとる」

 

「そっか...よかったー」

 

少しの沈黙。破ったのは僕だった。

 

「不躾なこと聞いてごめんな。なんで宿儺の指食うたん?」

 

「え?いや、あんときはそうしないと伏黒を助けられなかったし...それに」

 

「それに?」

 

「そん時たまたま爺ちゃん死んじゃって、正しい死ってなにか考えてさ」

 

「ほーかい。虎杖くんはあれやね...ごっつええ子やね」

 

「えっ?」

 

倒れ伏した虎杖くんの髪の毛をぐしゃぐしゃとかき分け、

 

「ほんまに辛うなったら、僕のとこ逃げておいで。ちゃんと力なるから」

 

「そっか。ありがとナオヤン。ねえ、ナオヤンはさ、なんで術師になったの?」

 

「うーん、お家柄かな。あとは...誰にも言うたアカンで。約束してん」

 

「約束?誰と?」

 

「僕の親友。小さいころに僕が君を守ったるっていう約束。まあ、果たせんかったけど」

 

「それって...」

 

「ご想像の通り。やからまあ...せめて近場の人間だけは死んでも守れる人間になったるわボケ...ってな」

 

「...そっか」

 

「...よし!ほんなら新しい生徒もできたとこやし、風呂入って寿司の出前でもとろか!」

 

「よっしゃ!ナオヤン太っ腹ー!」

 

「なっはっはっはっは」

 

 

-直哉くんと虎杖くん2-

 

あれから数週間後。

虎杖くんが任務にあたったとのことで、嫌な予感もしたので追跡。

案の定、七海くんが未確認の特級と遭遇。

僕としてはこのまま隠密行動を続けたかったが、学校が帳に包まれてしまった。

なんとかギリギリのところで滑り込み、潜入。

罠などがないかを探知し、虎杖くんのもとへと向かう。

校庭を恐る恐る調査していたところ、校舎から大きな音が。

術式を発動し全力ダッシュ。

 

「順平ってさ、君が愚かだって思う人間より、よっぽど」

 

「やめろー!!」

 

呪霊が術式を発動しようとした瞬間。0.0001秒。

窓を突き破り、呪霊を蹴り飛ばし、吉野順平を救い出す。

 

「遅れたで虎杖くん」

 

「ナオヤン!任務には俺とナナミンがあたってるって聞いてたけど!」

 

「かわいいかわいい生徒のためや。無給の休日出勤なんのその!!」

 

「ナオヤン...」

 

「ああ、それと吉野くん。君のお母さん生きとるで。何言われたか知らんけど、今高専で預かっとる」

 

「でも現場には破れた衣服と血液が...」

 

「それに関しては申し訳ない。ギリギリやったもんで右腕の先だけやられてもうた。あとで僕のこといくらでも殴ってくれてええ。そん代わりここはちょっと協力してもらっていい?」

 

「は、はい!!」

 

目の前の学校の壁にめり込んだ呪霊にありったけの怒りをぶつける。

 

「オイコラボケ、こんクソ呪霊が。よう好き勝手やってくれよったのう。とっととくたばれや!」

 

「いいぜ、来いよ!」

 

「悠仁!俺が死んでもカバーしたる!気張れよ!」

 

「応!」

 

 

-直哉くんと順平くん-

 

結局あの真人とかいうツギハギは取り逃がしてしまった。

途中で七海くんと合流しみんなで総攻撃を仕掛けたが、ダメージはなし。

唯一悠仁の攻撃だけが有効打だった。

っと、順平くんのお母さんと順平が高専の会議室へと到着した。

ぼそぼそと隣で座している五条くんに話しかける。

 

「なあ、今日順平くんが入学するかどうか決めるって話やろ?なんで僕呼ばれたん?」

 

「今回順平がほとんどお咎めなしなのはキミと僕の根回しによるものだし。七海は今は任務でいないし。向こうの親御さんと吉野くんからの希望」

 

「えー、なんかプレッシャー」

 

「静粛に。では吉野くん。君が出した結論を教えてもらえるだろうか」

 

奥に鎮座した学長が低い声を唸らせる。

 

「僕は...高専に入学します」

 

「それはなぜか」

 

「たまたま目覚めてしまった力とはいえ、僕はこの力に対しての責任を取りたいんです。今度こそ、自分の手で誰かを守れるようになりたいんです!」

 

...自然と口が開いていた。

 

「順平くん」

 

「は、はい!」

 

「落ち着いて聞いてほしいねん。16人。これがなんの数字かわかる?」

 

「...わかりません」

 

「もともと高専におって、死んだ僕の先輩後輩同級生の数」

 

「...」

 

「ほんまにいつ死ぬかわからへん。なんなら隣におる最強くんも明日には死んどるかもしらん。そんな世界や」

 

順平がそっとうつむく。

 

「やから、僕もスパルタ教育で行くけどええか?」

 

「え...?」

 

「夜蛾さん、ええよな?」

 

「悟ならともかく。直哉、お前なら安心して任せられるだろう。頼んだぞ」

 

「任されたわ。ほんで順平くん、どないする?」

 

「...!お願いします!!」

 

こうして、僕の生徒が一人増えた。

 

...

.....

.......

 

 

この日、僕はとある人物に電話していた。その相手は...

 

「どうも、歌姫先輩。ごめんなさいね急に電話して」

 

「い、いやそんな、全然大丈夫よ!...何の話からしましょうか...あ、そうそう最近物流が!」

 

「いやいや、どないしたんですか急に。...歌姫先輩って生徒に配るプリントとかってどうしてます?」

 

「プリ...ン...ト?」

 

「もしかしてあんまり作ってないですか?」

 

「あー、えー、そのー、ごめん...いやでも親戚とかからかき集めてるから!ほんと任せて!」

 

「いや無理せんでも」

 

「全然無理とかじゃないよ!よーし、ちょっと集めてくるかなー、それじゃ、あとで写メで送るから!!」

 

ピッと通話が途切れる。

うん、まあもらえるのはうれしいが...あの人も変人なんだなあ...。

 

 




なんか直哉が脳内で腐女子が喜びそうなキャラになってしまう。
なんで?
ちなみに元カノは3人。
全員向こうが体調不良を訴えて別れた。なんでやろね。


-評価-

順平 5
「厳しいけど、要所はちゃんと教えてくれる。あと頼りがいもある」

七海 3
「人として当然のことをしてくれるので文句なし。関りは少ないけど」

夜蛾 4
「高専の教員にならないか?」

歌姫 5
「直哉くん、ありったけをかき集めてきた!」


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4話

-直哉くんと乙骨くん-

 

五条くんからの頼まれごとで、とある生徒に知識と戦い方を叩き込んでほしいと頼まれたので、東京校に訪れている今日この頃。

石造りの階段を降り、グラウンドへ。

パンダと真希ちゃんがやいのやいのやっているのを眺める白髪の少年。

この子だろうか。

 

「どうも、みんな元気そうやね。五条くんの頼みで生徒を鍛えてくれ言われて来たけど...キミが乙骨くん?」

 

白髪の少年が首を横に振り

 

「おかか」

 

「おかか?」

 

「おう、直哉。今真希が...」

 

「フン!」

 

ボゴっと音がなり、穂先がない棒でパンダの顎をかちあげる。

ピヨピヨと頭の上でヒヨコが飛んでいるパンダの上に真希ちゃんがのしかかり、

 

「そいつは狗巻棘。呪言使いだから語彙に限りがあんだ。んで、乙骨は...」

 

真希ちゃんが横のベンチで寝込んでいる黒髪の少年を指さす。

 

「なるほど...ごめんね狗巻くん」

 

「ツナ」

 

気にすんな、という意味だろうか。

ベンチで寝込んでいる少年にゆっくり近づき

 

「もしもーし、乙骨くんー?」

 

「うえっ!は、はい!」

 

乙骨くんが顔に敷いたタオルをはぎ取り、こっちに視線を向ける。

 

「どうも、乙骨くん。はじめまして禪院直哉です。五条くんにキミを鍛えるように言われて来ました。これから数日、よろしゅうね」

 

「よ、よろしくお願いします...」

 

 

-直哉くんと夏油くん-

 

僕が乙骨くんへの指導を始めて数日。

巨大な鳥型の呪霊に乗って夏油くんが高専に訪れた。

曰く、乙骨くんを仲間に引き入れたいとかなんとか、非術師の人間は猿だとか。

しかし、真希ちゃんのことを猿だと言ったことは聞き逃せない。

僕の十八番のマッハパンチで攻撃。が、呪霊でガードされた。

 

「危ないじゃないか、直哉」

 

「夏油くん、さすがにちょっと聞き逃せへんで。...昔はそんなん言わんかったのに、悲しいでほんま」

 

「こちらもそちらも変化しているということさ」

 

僕に顔を少し近づけ、

 

「今夜の19時、昔なじみの店でキミを待つ」

 

ボソボソと小さい声で耳打ちをする。

次の瞬間にはバックステップで仲間と呪霊のもとまで移動し

京都でハロウィンで百鬼夜行を行い人間を殺すことを僕たちに明かし、呪霊で飛んで行ってしまった。

 

...

.....

.......

 

「傑がそんなことを?」

 

「...今日の19時。五条くんはどう睨む?」

 

「傑の性格上、罠の可能性は低いだろうし、単純に話がしたいだけだろうね」

 

「一応、付近の地域にはおってくれる?なんかあった時は連絡するし」

 

「つーか、そうでもしとかないと馬鹿ですって言ってるようなもんでしょ」

 

「...なじみの店か」

 

「心当たりは?」

 

「1個だけ。昔僕がたまに東京に来てた時あったやん?そん時に夏油くんとよう行っとったラーメン屋があんのよ。...でも店主はもう老人で一昨年には店閉めてもうたし...」

 

「...そこに賭けようか。ひとまず、今日は体を休めておいて。最悪戦闘になるかもだから」

 

「ほかの人間への連絡は...せんほうがええ?」

 

「しないほうがいいと思う。余計話が拗れそうなのがチラホラ。あと、向こうの手の内がわかっていない以上、下手に人も動かせないし」

 

「了解、じゃあ、また連絡するわ」

 

...

.....

.......

 

 

約束の時間の19時の五分前。

僕と夏油くんの昔なじみの店の前に到着。

 

「明かりが...ついとる」

 

どうやら当たっていたようだ。

ボロボロになった小汚い、だが少し懐かしい暖簾をくぐり、ガラガラと店の戸を開ける。

 

「いらっしゃい、直哉くん」

 

「どうだい大将、当たってただろ?直哉は時間に厳しいからね。ほらほら座った座った」

 

「お、おう」

 

急ごしらえで作られたようなカウンターの席をトントンと叩く、

袈裟姿ではなく、私服姿の夏油くん。

思わず懐かしい気分にあり、足取りがぎこちなくなる。

 

「大将にお願いしてね。今日のこの時間だけ、一夜限り、貸し切りでの復活さ。やっぱりキミと話をするってなるとここじゃないとね」

 

「へいお待ち、直哉くん...いつものだよ!」

 

「あ、ああ。どうも」

 

僕がいつも頼んでいた醤油ラーメン特盛味玉ネギ増し。

学生時代から一昨日まで、何も変わっていない一杯。

しかし、夏油くんが非術師の人間に頼み事を...。

隣の席に座っている夏油くんがボソッと耳打ちする。

 

「実はここの大将、術師の家系でね。ぼんやりではあるが呪霊が見えるんだ。呪力のコントロールも自然にできている」

 

「んな!?」

 

ここ数週間で一番の衝撃である。

 

「ほら、早く食べなよ。麺、伸びるよ?」

 

「そういや、前にサングラスをつけた子と三人で来た時、直哉くんサングラスの子が約束の時間に遅れたとかですっごい説教してたねー」

 

「そうそう。おかげで終わるころには悟と直哉の麺ビロビロになっててさー」

 

「ちょ、それは五条くんが『ごめーん、元カノの話がうざったくて適当に聞いてたら遅刻した』とか言うから」

 

「悟のことだから諦めればいいのに、直哉ってば、ほんと」

 

「ほな、それ言うんやったら夏油くんも...!」

 

「おーおー、店が懐かしい雰囲気になったもんだねー」

 

...

.....

.......

 

ラーメンを啜り、気が付いた時には空になった器、氷が溶け切ったピッチャー。

不思議と思い出話に花が開いてしまっていた。

ゲラゲラと笑いあったかと思えば、少し真面目な顔になり

 

「直哉、キミにはあるお願い事をしてもらいたい」

 

「...本題かいな」

 

「ああ。...百鬼夜行の日、高専で乙骨憂太を捕えておいてほしい」

 

「やっぱり本命は別におったんか。最初からおかしい思たわ。夏油くんの呪霊の数を考えてみても、今日本におる1級や特級やらでやられてまうやろうしな」

 

「さすがに勘づいていたか。なら...お願いできるかい?」

 

「なあ、夏油くん。何がキミをそうさせんの?やっぱり...10年ぐらい前のこと?」

 

「それもあるだろうね。だが、気づいたんだ。猿がいなくなれば、僕たちは平和に過ごせる。おかしいと思わないかい?今の社会はキミたちによって成り立っているといっても過言ではない。しかし、社会ではどうだ?英雄として知られることもなければ、誰からも感謝されない。歴史の陰に埋もれて死んでいくだけ。そんなことが許されるか?だから変えるんだ、世界を」

 

「...夏油くんが言いたいことは大体わかった。共感もできる。...でもやっぱり無理やわ。僕の大切やった人、大切な人は夏油くんが言いよる猿の中におる。やったら僕はその子ら守るために戦わなアカン」

 

「やはり、君はまっすぐだ。憧れるよ」

 

「...夏油くん、なんで僕を頼ってくれんかったん?僕では足りんかった?僕は...友達ではなかったん?」

 

「友達さ。だから言えないこともある。だから、曲げられないこともある。そういうもんだよ」

 

夏油くんが時計を見る

 

「おっと、もうこんな時間だ。心惜しいが、これから金蔓、いいや金猿と会わなくてはいけなくてね」

 

夏油くんが腕を差し出してくる。

握手だろうか。差し出された手を握り返す。

 

「キミと友であれて、本当によかったよ」

 

それだけ言い残し、店を去っていった。

外で大きな羽の音が聞こえる。

懐かしい思い出がすべて崩れ去ったような気がして

自然と肩が震え、空の器に水滴が落ちる。

大将が最後に出してくれたもう一杯が塩辛くて仕方なかった。

 

 

-直哉くんと夏油くん2-

 

ハロウィン当日。

京都で呪霊の大軍を迎え撃つ五条くんとは逆に高専にいる僕。

やることは1つ。

 

「やはりこうなってしまったかい直哉、僕は悲しいよ」

 

「ああ、俺もや。...キミは俺の手が届かへんところまでいってもうた。やからその魂ごと、こっちに引き戻す!」

 

「いい目だ。だが、こちらにも計画があってね。だから、ここはこいつに任せるとしよう。特級仮想怨霊 化身玉藻前。とこれはサービスだ。ではね」

 

「特級が一体に一級クラスが...十体」

 

だがこれは夏油くん側にとっては大きなパワーダウンである。

 

「どけや、クソカスども。俺は向こうにいかなアカンねん!」

 

ゲラゲラと笑う呪霊たち。

術式はとっくの前に発動中。

一体一体をマッハで潰していく。

投射呪法を発動させながら反転術式も使用することで

激痛は必至だが普段の数倍の速さで動ける。

ミスったら即死級のデンジャラスゲームだが、時間が惜しい。

時間にして3秒足らずで一級を殲滅。

呼吸を切らしながら、特級を睨みつける。

 

「お前も...ぶち殺したる!」

 

今度は領域を発動するために印を組もうとするが

 

「領域...ぬお!」

 

慌てて回避。

投射呪法で距離を取り、発動させようとしても

 

「...こんの!」

 

火の玉を用いた遠距離攻撃や爪での近距離。

果てには岩石飛ばしなどやりたい放題である。

ここは領域を諦めて、直接の殴りにいく。

何発も攻撃を当てるが、大きなダメージはない。

 

「耐久力もあんのかい、クソが」

 

吐き捨て、攻撃を当て続ける。

すると、

 

「ねえりゃあい!」

 

と放った一発が黒い閃光を放ち、特級の体を大きく軋ませる。

瞬間、脳が覚醒。

このまま追い打ち!

体がボロボロになりながらも、ありったけの呪力で術式と反転術式を発動。

今は...マッハ2!

 

「rrrrrrrらあ!!」

 

マッハ移動でのとどめの一撃。

もう一度放たれる黒閃。

ボロボロと崩れだす特級の体。

完全に消え去ったのを確認し、急いで夏油くんのもとへ向かう。

 

...

.....

.......

 

移動した頃には、全てが終わってしまっていた。

五条くんに夏油くんのことを問いただすと

首を横に振る

 

「...ごめん、夏油くん」

 

有言不実行が僕の特技らしい

 

 

-直哉くんと夏油くん3-

 

百鬼夜行は無事収束。

夏油傑のたくらみは無事潰えた。

僕としては、報告にあった未成年の二人をどうにかしたいが...

夏油一派の足取りは一名を除き掴めずにいた。

そんなある日。

 

「直哉くん、郵便受けになんか入ってたわよ」

 

「ん?ありがとう真依ちゃん。っていうかおったんやね」

 

茶色い封筒を受け取り中身を開ける。

そこには手紙が入っており、

 

『禪院 直哉様

この度は当店を長らくご利用いただきありがとうございました。

 息子の修行がようやっと終了したため、近々、店を開きます。

 ぜひお越しください。』

 

っと書かれていた。

手紙と同封されていたチラシをみると、開店日は今日。

 

「...なあ真依ちゃん、今から東京行かへん?」

 

「は?東京?なんで?」

 

「ええから、ええから」

 

「...わかったから、どこに行くかだけ」

 

「歌姫先輩も誘おうかな?」

 

「話聞け!」

 

...

.....

.......

 

「どや、うまかったやろ」

 

「確かに美味しかったけど...まさかこれだけのために東京に?」

 

「なんや、観光でもしてくか?案内すんで」

 

「いや、そんな直哉くんデートだなんてそんな...」

 

「え、3人ちゃうの?」

 

「この人が暴走してるだけよ」

 

「はい!私TDL行きたい!!」

 

「うわ、急に帰ってきた」

 

「なはは、ほな行こか。大将、お勘定」

 

「はーい」

 

店に張られたチラシに目が行く。

今度は東京高専の1年生たちでも連れて行こう。

 

 




玉藻前は、呪霊の力で若干耐久盛られてます。
夏油も時間稼ぎ用に用意したので。

-評価-

夏油 5
「友達」

メロンパン 2
「厄介だな」

歌姫 5
「そのぬい、絶対部屋に飾ってね。ほんと大丈夫やつだし(?)」

-みんなの呼び方-

ナオヤン
虎杖

好敵手
東堂

直哉
五条 夏油 夜蛾 パンダ 真希

直哉くん
家入 歌姫 真依 七海

直哉さん
乙骨 伏黒 野薔薇 順平


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5話

-直哉くんと虎杖くん-

 

二人で組手を行っていたある日

 

「虎杖くんはあれやね。拳が速すぎて呪力が遅れてやってくるね」

 

「え?どゆこと?」

 

「そのまんま。呪力コントロールがまだ上手くできてないから、2回衝撃が生まれてる。一度は拳、二度目は呪力って感じで」

 

「へえ、それって駄目なこと?」

 

「うーん、一概にどうとは言えへんかも。並の相手やったら混乱するかもしれんけど、並を越える相手やったらすぐに対応されるね」

 

「それって悪いことじゃ...」

 

「なはは。まあ考え方次第やけど...今のうちに直しとこか。じゃないととびっきりの超奥義が難しいかもしれんし」

 

「超奥義!?」

 

「そう。その名も黒閃。打撃・呪力2つの到達誤差を0.000001秒以内におさめたときに発動。空間はゆがんで呪力が黒く光る」

 

「なにそれー!俺も使えるんでしょ、教えて!」

 

「教えることはできへんかな。0.000001秒以内ってのが難しすぎて、狙って出すんがほぼ不可能なんよ」

 

水をのどに流し込み、一息。虎杖くんに向き直る

 

「でも、そのステージには連れてったげる。まずは打撃と呪力をあわせることからはじめよか」

 

「押忍!お願いシャス!」

 

 

-直哉くんと交流戦-

 

未確認の自らを真人と名乗った特級との遭遇からはや数週間。

約束の交流戦。

ちょっとばかし久しぶりの京都のメンバーとの再会だ。

っとその前に、学長へあいさつに行こう。

扉の前で三輪ちゃんが見張りを行っている。

 

「どうも、三輪ちゃん。学長おる?」

 

「あ、直哉さん。はい、いらっしゃいますよ...ただ今は...」

 

「あー、バチバチ?なら後にしよか」

 

なんてことを話していたら、ガラっと戸をあけ、五条くんが出てきた。

 

「いいよ、もう終わったし」

 

三輪ちゃんがそわそわしながら五条くんにゆっくり近づいていく。

そういえばこの子、五条くんのファンだったな。

さっさと挨拶をしとこう。

 

「どうも、学長。お元気そうでなによりです」

 

「...直哉か。そちらも息災そうだな。...はあ」

 

「僕が言うのもなんですが心中お察しいたします」

 

学長がため息をつくのも仕方がない。

交流戦で虎杖が生きていて急遽参加します。

なんて、僕なら禿げ上がっているだろう。

あれ?これ黙ってた僕もぶん殴られるんじゃないだろうか。

ここは早めに謝ろう、そうしよう。

 

「すみません、学長。虎杖くんのこと」

 

「ああ、そういえばお前が虎杖を指導したんだったな。構わん。どうせ五条からの無茶ぶりだろう」

 

「はは。大体そんな感じです」

 

「...今年の交流戦はお前と冥冥が監督役だったな」

 

「ええ。未確認の特級にここしばらくの異変のこともありますからね。僕自ら志願させていただきました。一応言っとくと五条くんとは繋がってませんよ」

 

「...お前と話していると安心するよ。普段は...」

 

「ああ、葵のことですか」

 

「まあ、そんなとこだ」

 

「それで、学長。虎杖くんのことです」

 

「宿儺の器がどうかしたのか?」

 

「僕は...虎杖くんや未確認の特級がどうも繋がっているようにしか思えんのです」

 

「というと?」

 

「宿儺の指。最初どこにあった思います?百葉箱ですよ。不自然が過ぎる。なんかの罠かもしれません」

 

「...」

 

「...ぶっちゃけ聞くんですけど、虎杖くん暗殺しようとしてますよね?ちょっと待ってほしいんです」

 

「お見通しか。しかし、いくら直哉からの頼みであったとしてもそれは聞けんな」

 

「なはは、そりゃそうですね。ほんなら今の会話はなかったことにしといてください。僕もこのことは誰にも伝えません」

 

「お前もなかなか難しい位置にいるんだな」

 

「あなたほどやないですよ」

 

...

.....

.......

 

五条くんが交流戦の合図を行いスタート。

生徒たちが一斉に動き出す。

 

「さすがに人数と戦力的に、順平は見学ね」

 

「やっぱり、力不足ですよね...」

 

「いやいや、順平くんもよう頑張ったよ。あのスパルタについてこれただけで十分やわ」

 

へこんでいる順平くんの背中に手を当て

 

「ま、叩き込めることは全部叩き込んだし。来年は絶対参加しよな」

 

「はい!」

 

「なっはっは」

 

「京都の子たちも寂しがってたし、直哉くんも暇があればあの子たちを見てほしいんだけど...」

 

隣に座っている歌姫先生が聞いてくる。

確かに、もう教えることもほぼないし、術式でぱっぱと移動できるし、そろそろ京都に戻ろう。

あんまりこちらに居すぎて、僕がいるのが当たり前になるのもよくないだろう。

 

「そうですね。そろそろ京都戻りますわ。どうせ術式ですぐ移動できるし」

 

「そっか、ありがとね。ふへへ」

 

「歌姫キッモ」

 

「あ”」

 

「いや、なんつー声出してるんですか」

 

 

-直哉くんと交流戦2-

 

交流戦も中盤に差し掛かったころ、三輪ちゃんが狗巻くんの呪言で眠ってしまった。

両者が再起不能と判断。急いで現場に向かい、お姫様だっこ。

 

「ぐーすか寝よってからに...」

 

よっこいしょと抱え鬱蒼とした森を抜ける。

っが、ここで異変に気付く。

 

「帳..?」

 

突如、ドゴンと嫌な音。

たしか向こうは川辺だったか。

確かに先ほどからやけに大きな音がしていると思ったが...

いささかゆっくりしすぎたな。

術式を発動し、急いで向かう。

森を抜け、川辺に言った瞬間、特級が真希ちゃんに攻撃をしようとしていた。

 

「しゃい!」

 

顔面に飛び蹴り。

特級を吹き飛ばす。

 

「直哉...?」

 

「はいはい、直哉やでー。立てそう?」

 

「ああ、なんとか。恵、いけるか?」

 

横に倒れていた恵くんがよろよろと立ち上がる。

 

「なんとか。種をなんとかギリギリで躱したので」

 

っと突如、大きく水しぶきが上がり

 

「「ナオヤン(好敵手)!」」

 

最高の助っ人が来た。

 

「葵に虎杖くん。...なはは。ほんならあいつぶっとばそか!真希ちゃん、三輪ちゃんのことお願いね」

 

真希ちゃんに三輪ちゃんを任せ、特級に向き直る。

 

「まて、好敵手。...ブラザー、お前がやつになにをされようと黒閃を放たない限り、一切手を出さん。好敵手も、それでいいか?」

 

「...虎杖くん」

 

「やらせてくれ、ナオヤン!」

 

「わかった。行ってこい悠仁!」

 

「応!」

 

背中をバシッと叩き、悠仁が特級に視線を向ける。

静寂が流れ...悠仁が動き出す。

拳が放たれた瞬間、空間がゆがみ呪力が黒く光る!

特級が木でガードするが、それごと腕を吹き飛ばす。

 

「なっはっは。さすがやね」

 

「Congratulation、ブラザー。お前はお今、呪力の味を知ることができた。三秒前の未熟なシェフはもういない。別次元の自分に成ったのだ」

 

「...ありがとう二人とも」

 

「礼は、勝ってからにしとき」

 

「そうだぞブラザー。さあ、調理を始めようか!」

 

術式を発動し、特級に攻撃を始める。

とはいっても、大体は悠仁や葵のカバー。

3人ともパワーは並みの術師よりも数段上のため、どんどん追い込まれていく特級。

たまらず大きな樹木を形成する。

上まで移動しみんなで総攻撃。

しかし、呪力で形成された木だったため、消し去られてしまった。

空中で落ちていく3人。

落下中でも鋭い蔓でこちらを貫こうとしてくる。

たまらず

 

「「「ブラザー」」」

 

っと声が重なる。

足を合わせ、空中の攻撃を回避。そのまま墜落。

木をクッションにしたので軽傷で済んだ。

 

「ブラザー、いけるか!」

 

「無問題!」

 

「まだまだ!」

 

「上々!」

 

地面へと降りてくる特級。

 

「これより、俺の術式を解禁する。お前たちに言えることはただ一つ。俺を信じろ、そして止まるな!」

 

「オッケー二つね」

 

特級に向かって走り出す3人。

っが、葵が足を掴まれそのまま遠くに投げ飛ばされる。

その先には樹木で作った針山。

しかし、葵の術式は...

目の前まで迫っていた特級と葵が入れ替わり、悠仁の拳が葵へ。

 

「うおー、東堂!?」

 

「葵の術式は場所を入れ替えることができんねん」

 

「そう、その名も不義遊戯。ちなみに...」

 

「手を叩くことが発動条件だ!」

 

それぞれの場所が入れ替わりながら、攻撃を続ける。

僕の術式でのスピードでの攪乱。不義遊戯での入れ替えで攪乱。

そしてそれぞれの膂力がどんどん相手を追い詰めていく。

3人の攻撃、コンビネーション、

 

「楽しい!」

 

最高に楽しい。

鼓動がバクバクと高鳴り、脳が歓喜の声を上げる。

そんな中でもう一度、黒閃を発動させる悠仁。

脳が覚醒状態に入るため、黒閃を撃ったあとは黒閃が出やすくなるのだ。

速度をあげ、マッハまで到達する。

そんななかで悠仁が3回連続で黒閃を発動させる。

次も出す。そんな予感がしたため、それに合わせ俺の最高の一撃を食らわせる。

顔面にマッハでの一撃。

放ったパンチは黒く光り、悠仁とサンドイッチする形で深々と突き刺さった。

自然と口から笑い声が漏れた。

 

「なはは」

 

力を失ったかのように倒れ、そのまま消えていく特級。

俺たちの勝ちだ。

 

...

.....

.......

 

あれからしばらくしての交流会、続き。

本当は個人戦になるはずが、五条くんの策略で野球に変更。

現在はみんなで野球を行っているが...

メカ丸不在のため、僕が代わりにピッチャーを行うことに。

すごく気恥しい。

 

「直哉くーん、こっちむいてー!」

 

「ははは...」

 

どこから用意したのか歌姫先輩が一眼レフで写真を撮る。

 

「おーい、直哉ー、はよ投げろー」

 

「はいはーい」

 

まあ、なにはともあれ。

生徒たちが全員無事でよかった。

 

...

.....

.......

 

「ねえ、三輪。聞きたいことがあるんだけど」

 

「はい」

 

ドゴっ!壁に突き刺さる右腕。

 

「ヒイ!せ、先生!」

 

「...直哉くんのお姫様だっこどうだった?」

 

「...」

 

「...」

 

「あんまり覚えてないんですけど...結構がっしりしてて...よかったです」

 

「いいなー」

 

 




三輪は直哉のことは特になんとも思ってないです。
直哉は三輪のことを可哀そうな年下の女の子と思ってます。

高専の生徒は、直哉がよく練習つくので若干レベルアップしてます。

-評価-

楽巌寺 5
「よく生徒たちを見てくれている。高専に来ないか?」

メカ丸 2
「うざい」

加茂 3
「気がよくて話がしやすい」

西宮 3
「メカ丸や東堂に頼みごとをするときの仲介人その2」

三輪 4
「任務で一緒になったら、ご飯に連れてってくれる。良い人」

歌姫 5
「いたた、足くじいちゃったー。ど、どうしよっかなー。待って直哉くん!」

追記
ちょいクズ直哉についての質問があれば感想欄に書いて欲しいです。ていうかそっちの方が直哉が動き出してくれるのでありがたい...


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ちょっとした番外編

 

-直哉くんとアルバイト-

 

家入さんの知り合いのバイトに入ることになりました。

他人事とかそういうのではなく、先日酔った時に約束を取り付けてしまっていた。

べろべろで判断力も最底辺まで減退していたので仕方がない。

話しによれば乙骨くんたちも一緒とのことなので、気楽にやろう。

更衣室で衣服を着替え、途中で合流した4人と一緒に説明を受ける。

 

「接客は丁寧にやってくれれば細かいところはいいよー。よろしくねー」

 

店長は用事があるとのことなので、とっとと店を出て行ってしまった。

制服姿に着替えたパンダが話しかけてくる。

 

「...つーかなんで直哉がバイトなんてやってんだよ。一級だしだいぶ稼いでんだろ?」

 

「いやー、酔ってるときに家入さんから店手伝えいう電話きてね。二つ返事で受けてもうてん」

 

「意外ですね。あんまりお酒飲んでるイメージないです」

 

「いや、こいつ案外ストレス発散で飲むぞ。特にフラれた時とか。もしかして今回も」

 

「やめて真希ちゃん。ほんまに痛いから」

 

「高菜ー」

 

「そうだぞ真希。直哉は...その...あれだし」

 

「あれってなんやねん!せめてフォローせえや!」

 

「まあまあ」

 

店の入り口につけられら鈴がカラカラと音を立てる。

 

「いらっしゃい」

 

「ラッシャアセエエ!!!!」

 

「ラーメン屋か!」

 

「お、歌姫」

 

「なんであんたらがここに、って直哉くん!?」

 

「あい、どうも。先輩、何をお探しですか」

 

「ちょ、ちょっと待ってね!」

 

歌姫先輩が急いで店の外に出ていき、少ししたかと思えば戻ってきた。

 

「ど、どうも」

 

「今なんで出てったんだ」

 

「よく見ろ、前髪が若干整ったぞ」

 

「ようわかったな」

 

「そ、それで、直哉くんたちはどうして、ここに?」

 

「実はかくかくしかじか」

 

「へー、やっぱビットコインって買ったほうがいいのね」

 

「どんな会話したら、そういう返しなるんですか!」

 

「歌姫先生は?」

 

「せっかく東京来たからね。硝子にもらったクーポン使っちゃおうと思って」

 

「東京には任務で来はったんですか?」

 

「そう」

 

「お疲れ様です」

 

「お疲れ様です、ほんま」

 

「いい子ね、キミたち...」

 

 

-直哉と閑話-

 

「五条くん、カメラに向かってポーズ決めて。何してんの?」

 

「ん?ファンサ。直哉もやる?」

 

「やるか!?」

 

 

-直哉くんとアルバイト-

 

化粧品の棚を凝視する歌姫先輩

 

「歌姫ー。こんなちまちま何個も買わずに高くていいやつ一個買ったほうがよくないか?」

 

「女のスキンケア舐めんなよ」

 

カゴに入れていた美容オイル5800円を手に取り

 

「例えばこれ。若いころは美容オイルとかベタつくしいらなくない(笑)って思ってたけど、これが最近は肌になじむの。加齢と含水率は反比例すんのよ...」

 

「ミイラも同じ」

 

「そこ同じにすな!」

 

「あとこれだけは覚えときなさい...」

 

続くんかい

 

「年齢はデコルテに出る」

 

「デコルテって?」

 

「知らねーのか。ラピュタに出てくるあれだ」

 

「それはゴリアテや、一文字しかあっとらん!せやなくて首から胸元までのこと。でも歌姫先輩、いうほど30越えてるようには見えませんよ」

 

「え”、ほんと!?よーし、この店で一番高いやつよこしなさい!タワーすっぞ!」

 

「できるか!つーかホストじゃねえか!」

 

「そんなことより鱧の湯引きの話をしよう」

 

「ここコスメショップだよな?」

 

「最近この子ら、料理にハマっとるんですよ。僕も作ったり食べさしてもらったりしてます」

 

「な、手料理!うらやま...じゃなくて、料理できるの?」

 

「僕もこの子らも結構できますよ。少なくとも魚捌くぐらいやったら」

 

歌姫先輩がスマホで通話をしだす

 

「硝子?あれ届いた?...そーそーふるさと納税の!ノリで頼んでたけどどうしようって言ってたやつ。直哉くんたち捌けるって...マジマジ!」

 

先輩が通話を終了させ、こちらに視線を向ける

 

「今夜はクエよ」

 

「知らねーよ」

 

「あれ?もしかして捌くこと前提に話してました?」

 

「大丈夫!料理と洗い物だけしてくれればいいから!」

 

「全部やないですか!」

 

「じゃ、私は酒とか買って帰るから!今夜は硝子のとこ集合ね!何飲む!」

 

「「「コーラ」」」

 

「ビールで」

 

「おっけい!なんか食いたいもんあったら硝子に連絡しといて!直哉くんはともかく、アンタらはどうせ安時給でしょ、奢るわよ!」

 

「そういえば俺たちの時給っていくらだ?」

 

パンダが店長と通話しだす。

この空間、いよいよ収拾つかなくなってきたな。

 

「あ、店長俺たちの時給って...そう、600円...」

 

「おい最低賃金」(2017は958円)

 

「世知辛いぜえ」

 

「おかか」

 

「...バイト終わったらデパート行こか。僕が好きなもんなんでも買うたる」

 

「しゃけー!」

 

「マジで!さすが直哉、顔と金だけは持ってんな!」

 

「ぶっ飛ばすぞパンダ。それで、結局だれがクエ捌くん?」

 

視線が一斉に僕のほうに向く

 

「なんですか?」

 

「前にみんなでクエ鍋の動画見たんだよ。それで直哉魚捌けるし鍋得意だし、作ってもらおうぜって」

 

「...明日労基いこかな」

 

今夜はクエ鍋でした。

 




直哉が魚を捌けるのは、料理男子はモテるとのことなので練習しました。
とくに効果はありませんでした。

-評価-

硝子 3
「いい子。割といろいろ助かってる」

歌姫 5
「直哉くん、彼女と別れたんだって?」


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