アロナ「エーペックスレジェンズ……ですか?」 (クラウディ)
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アロナ「エーペックスレジェンズ……ですか?」






ブルアカ始めたら書きたくなったやつ。







『エーペックス……?』

「そ。『APEX』。APEXっていうのを簡単に言えば、3人で1チームを組み『ドロップシップ』っていう目的地まで移動する飛行船から戦場に降りて、そこに配置されてる武器を拾って参加者同士殺し合うっていう、お偉いさんたちが考えたゲーム。僕が先生になる前は、そんなゲームに参加してたんだ」

 

ここは広大な学園都市『キヴォトス』の一角に存在する連邦捜査部『シャーレ』の部室。

そこの中央には様々な書類が整理して置かれており、その隣には大きなモニターがあった。そして、その奥には事務机がある。そこには一人の男性が座っていた。

彼はシャーレの代表であり、このキヴォトスで活動する先生でもある「岸辺ガクト」である。

そんな彼は、専用の台にタブレットをおいて、画面に映る少女――「アロナ」にとあることを話していた。

 

『そ、そんなゲームがあるんですか……!? え、えっと、少し調べてみます……! た、確かにあります! これですか!?』

 

と、アロナは驚きながら、いったん目を閉じて何かを考えこむ仕草を見せ、しばらくすると勢いよく目を開けて虚空に検索結果を見せる。

そこには、赤い下地に白い文字で書かれた『APEX』のロゴのようなものがあった。

 

「うん、それだね。いやぁ懐かしいなぁ~。僕が引退したのが、もうかれこれ6年前ぐらいになるのか……」

『あ、あの、先生? こ、これは一体どういうことなんでしょうか……?』

「ああ、ごめんごめん。ちゃんとした説明がまだだったね。APEXっていうのは――」

 

 

 

――『APEX』。

 

 

 

ガクトが言うには、「殺し合いのゲーム」。

なぜ、ガクトは先生という身でありながらそのような経歴を持つのか? そもそもその印象が悪くなりそうな事情をなぜガクトが話したのか?

それは数日前にさかのぼる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ここはキヴォトスの運営を任されている「連邦生徒会」のレセプションルーム。

そこに、数名の男女が集まっていた。

 

「ちょっと待って! 代行! 見つけた、待ってたわよ! 連邦生徒会長を呼んできて! ……うん? 隣の大人の方は?」

 

ライトパープルのロングヘアーをツーサイドアップに結び、OLを思わせるスーツの上に白いコートの上着を肩だけ着崩した状態で重ね着したコーディネートをしている。瞳の色も髪と同じだが、瞳孔は赤い……そんな少女。

 

「主席行政官。お待ちしておりました」

 

1人はブラックのロングヘア―をストレートに伸ばし、身にまとうものは黒いセーラー服だがロングスカートに大きくスリットの入った大胆な服装をしている。その姿はどこか大人びていて妖艶な雰囲気を放っている。

そしてひときわ目を引くのが背中から生える黒い羽だ。

 

「連邦生徒会長が会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています」

 

1人は薄い銅のような髪を2つに分けて半ばから束ね、「風紀」と書かれた腕章のついた服を着ている。そして眼鏡をかけた姿ときりっとした言葉遣いからまじめな性格だとうかがえた。

 

「あぁ……面倒な人たちに捕まってしまいましたね」

 

1人はそんな彼女らを見て面倒だと言わんばかりにため息をつく女性。彼女はロングストレートの黒髪で、白いコートを着たまさしくエリートといった雰囲気を漂わせていた。

 

「え? 彼女たち面倒なの『リン』さん?」

 

そんな彼女らを見ながら白いコートの女性――「七神(なながみ)リン」の言葉に反応する男。彼はスーツの上にダウンコートを着るという、少々季節外れとも思える格好をしていた。

 

「いえ、大丈夫ですよ『ガクト』先生。ただ、こちらの方で少々問題が発生していまして……」

「ちょっと! 色々と言いたいことはあるけど、まずその人は誰なのよ! 説明しなさいよ!」

「……ハァ……分かりましたよ。だからそう叫ばないでください」

 

心底うっとうしそうに顔をしかめるリンは、詰め寄る少女――「早瀬(はやせ)ユウカ」や黒髪の少女――「羽川(はねかわ)ハスミ」、真面目そうな少女――「火宮(ひのみや)チナツ」や、わきに控えていた少女――「守月(もりづき)スズミ」に説明する。

 

「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」

「……え!?」

「……!!」

「やはりあの噂は……」

「な……!?」」

「……へぇ……」

 

驚く少女らに対して、淡々と説明を続けるリン。

しかし、先生――「岸辺ガクト」だけは違った。

ガクトはその話を聞いて、少し面白さを感じているような笑みを表情を浮かべる。

自分がまたこうして面白そうな出来事に巻き込まれるとは思ってもいなかった。

それもこれも、この目の前にいる人物たちが関係している。

面白くならないわけがない。

 

「結論から言うと「サンクトゥムタワー」の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。認証を迂回できる方法を探していましたが……先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした」

「それでは、今は方法があるということですか、主席行政官?」

 

ハスミの問いかけに、リンは静かにうなずく。

 

「はい」

 

そしてリンは、ガクトに手を差し向けて続きを告げた。

 

「この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」

「!?」

「!」

「この方が?」

「なるほどねぇ……」

 

ガクトは、少女たちの視線を受けて、ゆっくりと口を開く。

さて、どうしたものか。

このまま放っておくこともできるが……。……面白い。

ガクトは内心でほくそえみながら、その話に乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「――んせい! 先生!」

「ん、すまないね。少し考えていた」

「これから『シャーレ』奪還のために突入するんですよ! それも先生が指揮しながら! しっかりしてくださいね!」

 

それから十数分後。

ガクトたちは、これから活動するための目的地であるシャーレ本部の建物の前にいた。

しかし、彼らの視線の先にはリンが連絡していた相手――「由良木(ゆらぎ)モモカ」が報告したとおり、武装した生徒たちが周囲を警戒しているため、容易に突破はできなさそうだ。

 

「くっそぉ……! あいつら好き勝手撃ってきやがってぇ……!」

「あそこまで脱走してるとは……矯正局は何をやっているのでしょうか……」

「知りません。それより、戦闘準備を整えましょう。先生は安全な場所にて待機していてください」

「そうですね。先生は私たちと違って流れ弾だけでも致命傷です」

 

そんな会話をする4人を見て、ガクトは感心する。

彼女達は全員がこの年に住んでいるということもあって、それなりの強さを持っているようだ。この状況に対応できそうなほど全員の練度はしっかりとある。

しかし……

 

(あれだけの人数だ。無傷……はさすがに無理だとしても、彼女らだけで突破はできなくはないが、少々時間はかかるし、被害もそれなりに出るだろう。なら……)

 

そんなことを考えながら、ガクトは行動に移そうとしている四人に提案する。

 

「少し提案があるんだけどいいかな?」

「? いいですけど、どんなのですか?」

「僕も出るよ」

「「「「!?」」」」

 

――『保護対象である先生も出る』。

 

そんな突拍子もない提案にその場にいた四人は声を出さなかったものの非常に驚いた様子だった。

 

「これでもそれなりの修羅場はくぐってきてる方でね。流石に今は『シールド』が無いから皆みたいに前線には立てないけど、チナツ君と同じく後方支援を行うよ」

「ちょ!? 正気ですか先生!? 私たちは特殊な服を着ているからまだ大丈夫なだけで、普通に痛いんですよ!? そんなのを保護服も着ていない先生が流れ弾にでも当たったら!?」

「大丈夫大丈夫。そもそも彼らが持つ銃器の種類や戦闘力を見る限り、僕の知っている武器や知り合いには遠く及ばない。せいぜいおもちゃだよ。それに、生身でも弾丸をもらったことはあるからさ」

「それでも……!」

 

なお食い下がるユウカにガクトは諭すように言う。

 

「大丈夫……信じて」

「ッ! ……分かりました。絶対に当たらないでくださいね!」

 

一瞬、顔を赤らめたユウカは納得してくれたのか、それ以上は何も言わなかった。

他の三人も同じ気持ちなのか、何も反論はしなかった。

そんな中、チナツだけはガクトの発言の意図に気づいているようだったが、あえて何も言わずに黙っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「さぁ不良たち! おとなしくお縄につきなさい!」

「くっ! 怯むんじゃねぇ! ありったけをばらまいてやれ!」

 

そしてユウカたちは、武装した生徒たちの集団に攻撃を仕掛けた。

まずは、ユウカが先陣を切って相手の攻撃をひきつける。

真正面から弾丸の雨にさらされてしまうが、ユウカはそれでもかまうことなく相手に弾丸をばらまいていく。

 

そんなユウカだけに注目していると……

 

「ぐあっ!」

「ぐえっ!」

「命中、次に移ります」

「いい感じです」

 

後方に構えたハスミやスズミが隙だらけになった胴体に命中させていく。

 

「ひ、ひぃ!」

「あ! 待ちなさい!」

 

次第に数が減らされていくことに恐怖したのか、脱獄した生徒の一人が逃げようとする。

そして、それを追いかけようとしたユウカ達の――

 

――はるか後方から……

 

バシュンッ!!

「ぐがっ!」

 

一発の弾丸が飛翔し、その背中に食らいついた。

ユウカは慌てて振り返り、後ろを確認するが、そこには誰もいない。

しかし、その犯人は、すぐに見つかった。

 

「先生!」

『いい感じだよユウカ君。そのまま前線で相手の注意をひきつけて。ハスミ君とスズミ君、君たちは障害物に隠れつつ前進。あまり先行しすぎないように。大丈夫、君たちの腕は確かだ。チナツ君、君はまだ待機。負傷者が出たら救援物資を送って。指示はこちらで出す』

「はい!」

「了解です」

「わかりました」

『承知しました』

 

装着したインカムから優しく声をかけつつ指示を出すガクトだ。

 

実はガクトは、先ほどまで四人の戦闘を見ていたが、やはり彼女たちの戦闘スタイルでは、どうしても負傷者が出る可能性があった。

そこで、ガクトは先生として彼女たちにアドバイスを送ることにしたのだ。

その結果が、今の状況である。

ガクトは、四人に攻撃の指示を出しつつも、自身は建物の屋上で持参していたボルトアクション式のスナイパーライフル――「センチネル」を構えて、援護射撃や逃走を図ったものの処理を担当していた。

 

「先生って、そんなことできたんですか!?」

『ん~、前職がこういうのを使ったちょっと危ない遊び(ゲーム)の参加者でね。それで覚えていたんだ』

「な、なるほど……」

『まあ、とりあえず、全力でサポートするから、このまま頑張っていこう』

「はい!」

 

そうして、ガクトの狙撃による支援もあり、ユウカ達の活躍もあって、脱獄犯たちは次々に制圧されていくのであった……。

だが、

 

『気を付けてください、巡行戦車です……!』

「クルセイダー1型……! 私の学園の制式戦車と同じ型です」

「不法に流通されたものに違いないわ! PMCに流れたのを不良たちが買い入れたのかも!」

『つまり……?』

「ガラクタってことです! 行きます!」

 

威勢よく先程までと同じように前進するユウカ。

そして接近するユウカに反応した戦車がその砲口を無慈悲にもむける。

このままではユウカは間違いなく大けがを負うだろう。

しかし、

 

『ハスミ君、アーマーピアッシング弾』

「了解です」

 

――バッキィンッ!!

 

ガクトの指示によって放たれたハスミの狙撃が戦車の装甲を食い破って内部に侵入する。

それによって破壊された箇所に重要な回路でもあったのか動きが鈍くなった戦車にガクトが追加で銃撃を加える。

しかも、先ほどまでとは違い、センチネルには青いエネルギーがまとわりついていた。

 

『予備で持ってたセルがここで役立つか……とりあえず、壊れろ』

 

――バウォンッ!!

 

空気を圧縮し、それが解き放たれたかのような独特な発砲音とともにエネルギーを纏った弾丸が発射される。

そして、それは見事に戦車のエンジン部分を貫き、そして――

 

――ドゴォンッ!!

 

戦車を爆発炎上させた。

その光景を見て、ユウカ達は驚きを隠せないでいた。

 

――まさか、あの先生がこれほどの実力を持っていたなんて……。

 

そうして、シャーレ奪還は遂行されたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『と、いうわけがあったのだよ』

 

 

 

「HAHAHA! 随分と面白いことになってるじゃねぇかアミーゴ!? なんだなんだ! いきなり引退するとか言ってた割にはまた別の遊び場でも見つけたのかよ!」

 

 

 

『う~ん……実はそこら辺の記憶が無くてねぇ……気づいた時には先生としてキヴォトスに来てたんだよ』

 

 

 

「ま、アンタのやることはそこにあるんだろ? ならやって来いよな! あ、たまに遊びに行ってやるからな~!!」

 

 

 

『あははっ……その時はエナジードリンクでも用意しておくよ――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――オクタン』









人物紹介

name:「岸辺ガクト」
age:推定30
birthplace:地球
Where He live:学園都市キヴォトス内連邦調査部「シャーレ」
work:先生


APEX Legends

name:「ワイズマン」

Passive Skills:アップグレーダー(レプリケーターでクラフトを行う際、通常よりも強化のされた状態のアイテムを作成・強化可能)

Tactical Abilities:ワークショップ(レプリケーターがなくとも、その場でアイテムを一つだけ作成可能。クールタイム60秒)

Ultimate:デリバリー(レプリケーターを呼び出す。クールタイム150秒)






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レジェンド:ワイズマン






とりあえず勢いがいいので今のうちに書いていく。







「――と、いうことがあって、来て早々だが隠す必要はないんじゃないかと思ってね」

『な、なるほど……』

 

時間と場所は戻って、現在ガクトとアロナのいるシャーレに戻る。

そこで、ガクトはこれまでの経緯を話していた。

アロナは、ガクトの話を真剣に聞いており、その顔色は少し青ざめているように思えた。

 

(そりゃそうだよね。私だって、身近な人があんなクソッたれなゲームに参加して、人を殺しているようなことがあったら絶対トラウマになる)

 

そんなことを思いながら、改めて目の前の少女を見る。

先程までの青ざめた顔色は変わってないが、それでも、彼女なりに受け入れようとしてくれていることはわかる。

だから、ガクトは言う。

自分の気持ちを、正直に、まっすぐに。

それは、彼女の心の負担にならないよう配慮したうえで、だ。

 

「話を続けても大丈夫かいアロナ?」

『は、はい! ご心配なく! 先生とともにあると決めた以上、どんなことでも受けいれます!』

「うん、ありがとう。それじゃあ続きだけど……まずは何から話そうか……」

『あ! それでしたら、先生のプレイヤー名を教えてください! 先程、エーペックスについて調べたとき、皆さん偽名を名乗ってました! ブラッドハウンドさんとか、ライフラインさんとか……』

「そうだね。なら話そうか。僕のAPEXでの名前は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――『ワイズマン』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「APEXの歴史において、結構有名な『リスポーンシステム』を開発し、APEX最高の称号――『プレデター』の一人になった男だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『おはようございます、先生!』

「ああ、おはようアロナ。今日も元気だね」

『はい! 先生を支えていく私が暗い顔をしていてはダメですから!』

「ふふっ、頼もしい限りだ」

 

キヴォトスにある連邦調査部「シャーレ」の一室。

そこにガクトとアロナはいた。

そして、二人は他愛のない会話を続ける。

そんな時に、アロナが思い出したかのようにはっと声を上げた。

 

『あ! そういえば、先生がここにきてちょうど十日ほどですね!』

「ん? あぁ、そういえばそうだったね。僕としてはあっという間すぎてつい昨日の出来事のように感じるよ」

『それだけ充実した日々を送っているということですよね?』

「あぁ、そうだとも。君たちと一緒に学園を守っていくうちに、僕の中の何かが満たされていっているのを感じるよ。それに、こうして誰かと食事をするのは久しぶりでね?」

『えへへ……それもそうなんですが、先生宛にお手紙が届いています!』

「僕宛に手紙……? また問題の解決のために手を貸してくれってことかい?」

 

そう言ってガクトは、アロナの映っているタブレット――『シッテムの箱』を操作し、手紙の内容を確認する。

そこにはこう書かれていた。

 

『連邦捜査部の先生へ

こんにちは。私はアビドス高等学校の奥空(おくそら)アヤネと申します。

今回どうしても先生にお願いしたことがありまして、こうしてお手紙を書きました。

単刀直入に言いますと、今、私たちの学校は追い詰められています。

それも、地域の暴力組織によってです』

「……ふむ」

 

――これは思っていたよりも深刻な問題かもしれないな……。

その文面を見て、ガクトは内心でつぶやく。

そして次の文章に移る。

 

『こうなってしまった事情は、かなり複雑ですが……。

どうやら私たちの学校の校舎が狙われているようです。

今はどうにか食い止めていますが、そろそろ弾薬などの補給が底をついてしまいます……。

このままでは、暴力組織に学校を占領されてしまいそうな状況です』

「……ふむふむ」

 

情報をかみ砕くように、ガクトは相槌を打つ。

――確かに、ここ最近のキヴォトスは治安が悪くなっていると聞く。

その原因の一つとして、自身がここに配属された原因でもある連邦生徒会長が行方不明になってしまったことが大きいだろう。

その影響もあって、今まではおとなしくしていたような不良たちが、自分たちの縄張りを広げるために行動を始めたのだとガクトは推測する。

ここ最近、彼が先生として解決にあたった問題の多くは不良たちの鎮圧だった。

しかし、今までの経験などによりそれらの問題は、力を持った子供が騒ぎを起こした程度の認識だったのだが、今回の件は、もう少し大きな話になりそうだなとガクトは感じた。

 

『それで、今回先生にお願いできればと思いました。

先生、どうかわたしたちの力になっていただけませんか?』

「なるほど……」

 

タブレットを操作し、メール欄を閉じて大きくため息を吐くガクト。

その顔にはどこか呆れた様子が伺えた。

そんな彼と一緒に手紙を見ていたアロナは考え込むような声を出す。

 

『うーん……アビドス高等学校ですか……』

「ん? 知っているのかいアロナ?」

『はい。昔はとても大きい自治区でしたけど、気候の変化で街が厳しい状況になっていると聞きました』

「とても大きい? それはどのくらいなんだい?」

『はい! どれほど大きいのかというと、街のど真ん中で道に迷って遭難する人がいるくらいだそうです!』

「……さすがに冗談だよね?」

『あ、あはは……私もネットの掲示板に書き込まれていた噂しか知らないので……さすがにあり得ませんよね……街のど真ん中で遭難だなんて……』

 

そう言うアロナの声色は、どこか乾いていた。

おそらくは本当にあった出来事なのだろうと察しつつ、ガクトはその話題に触れることはなかった。

それよりも、彼の頭の中には別のことが浮かんでいたからだ。

 

(アビドス高等学校、か……今まで行ったことがなかったな……)

 

――アビドス高等学校。

キヴォトスの存在する『元』最大勢力を誇る高校だったはずだ。

ガクトは書類を整理していた時に各学校のことも少しだが記憶していた。

 

『アリウス分校』『ヴァルキューレ警察学校』『ゲヘナ学園』『山海経高級中学校』『トリニティ総合学園』『百鬼夜行連合学院』『ミレニアムサイエンススクール』『レッドウィンター連邦学園』『SRT特殊学園』『連邦生徒会』……

 

そして……『アビドス高等学校』。

 

かつてのアビドスは数千人の生徒が通い、キヴォトスの中でも最大の学校だった。

だが、自治区の砂漠化の影響により経営が悪化し、相当な状態になっていたはず……。

そこで、彼はとある結論に至る。

 

(この問題で苦しんでいる人がいるのなら……僕――いや、『私』の出番だね)

 

そう覚悟を決めたガクトは席を立ち、自身の愛銃『センチネル』や高威力のリボルバー『ウィングマン』、物資構築の材料を詰めたバックパックを背負い、部屋を出て行こうとする。

そんな彼にアロナは声をかける。

 

『先生、頑張ってきてください!』

「ああ。行ってくるよ」

 

そうして、ガクトはアロナに見送られながらアビドス高等学校へ向けて出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後……。

 

「……だ、誰か……水を……食料をぉ……」

 

アロナが言っていた通りに遭難したのであった。

 

まずこうなって原因として、数日前のガクトが慢心していたのが大きいだろう。

「経営が困難とはいえ、さすがに街ではあるんだからレストランやコンビニくらいはあるだろう」と……。

そんな考えを裏切るように、どこもかしこも閉店もしくは無期限の休業(実質閉店)していたのだ。

まずここでつまずいた。出発する前のガクトは電子通貨の入ったカードを持っており、盗難にあわなければ食料が尽きることはないと思っていたため、アビドスに持っていこうとしていたバックパックの中には武器とそんな武器の材料および、アビドスから救援要請を出した生徒たちのための物資となるものしか詰めていなかった。これで先ず初日からガクトは水や食料が切れてしまった。

次に、地図である。

ガクトはここ最近になってキヴォトスに来たばかりであり、まずキヴォトスの全体図すら把握しきれていない。

そんなもんだから、キヴォトスの中にあるアビドスの地理を全く知らなかったのである。

そのため、目的地までどうやって行けばいいか分からなかったのであった。

このダブルプッシュにより、ガクトは街中で遭難するという無様な結果になった。

しかし、ガクトはすぐに切り替えて行動する。

 

――ならば、アビドスの生徒に聞けばいいじゃないか。

 

そう思い立ったガクトは、早速行動に移す……ものの、周囲の住宅にすら人の気配はない。

これでどうやって生徒を探せばいいのだ。

 

「くぅっ……! まさか僕の死因が銃殺ではなく空腹だとはね……! もしこれで死んだ場合、リスポーンするとどうなるのか調べてみたいところだが……! そんなことも言ってられない……! 早く行かなければ……!」

 

と、焦り始めるガクト。

だが、そこで彼の視界にあるものが映った。

 

「……ん?」

「き、君は……」

 

セミロングの銀髪に頭部に生えるイヌ科のような耳。

水色の瞳ではあるが、瞳孔の色が左右で違うという『オッドアイ』を持つミステリアスな雰囲気を醸し出している少女。

そんな彼女は今までにも出会ってきた少女たちが着ているような制服を身にまとっていた。

 

「…………あの……大丈夫?」

 

彼女がロードバイクから降り、手で押しながら近づいてきてこちらを見下ろしている。

そして、こちらの安否を確認してきた。

どうやら今まで相手にしてきたような不良生徒たちのようではないと推測される。

だとしたら……そう思ったガクトは口を開いた。

 

「す、すまないね……実は救援要請の手紙をもらったんだが、だいぶ予定が狂ってしまってね……数日前から行倒れていたのだよ」

「! 救援要請って、もしかしてシャーレの顧問先生ですか……!?」

「うん、こんな間抜けな状態で出会うことになったけど、その反応からして、君が件のアビドス生徒か……地獄に仏とはまさにこのこと……」

 

ガクトは安堵の表情を浮かべつつ、彼女に手を差し伸べる。

そんな彼に対し、彼女はどこか恥ずかしそうな様子を見せながら手を取る。

そして、二人は握手を交わした。

盛大に腹の音を上げたガクトがいたのだが……。

 

「……えっと、とりあえず何かいりますか?」

「す、すまないね……助かるよ……」

「えっと……これしかなかったので、どうぞ。えっとコップは……!?」

「ん? 飲んではだめだったかね?」

「……ううん、何でもない。……気にしないで」

「? まぁ、何はともあれありがとう。君には命を救われたよ」

 

ガクトはアビドス生徒に礼を言うと彼女が渡してきたエナジードリンクに口を付け一気に飲み干す。

その様子を見た少女は顔を赤らめ慌てながらもどうにか平静を保ち、言葉を続けた。

 

「え、えぇと……それじゃあ、まずは自己紹介から。私はアビドス高等学校所属の「砂狼(すなおおかみ)シロコ」です。よろしくお願いします、先生」

「よろしく頼むよシロコ君。僕は岸辺ガクト。シャーレから来た者だ」

 

こうして、ガクトはシロコとの邂逅を果たすのであった。









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