仮面ライダーナスカ (ボルメテウスさん)
しおりを挟む

Nとの出会い/謎の男子高生は仮面ライダー? Part1

夕日が照らす中で、少年は空を見つめる。

その手には手紙があり、握り絞めながら、空を見つめる。

そんな空を見つめる少年に対して、何かがゆっくりと地面に落ちる。

「これは」

疑問に思い、俺はゆっくりと拾う。

それは、機械である事は分かり、何かの機械だと思われる。

「それはナスカメモリ。
あなたが探し求める物を見つける為に、おそらく必要になる物」

聞こえた声と共に、見つめると、黒いロングコートを着込んでいる上に、全身を包帯、帽子、サングラス、手袋で覆っており、素顔を確認することはできない。

「誰だ?」

「さぁ、けど、今は時間はないわ」

「何を言っているんだ」

「生き残り、取り戻したいならば、これを使いなさい」

その言葉と共に、女性はその手に持っていた何かをこちらに投げる。

同時に、近くのビルからこちらに飛びながら、近づいてきた。

「なっ、怪物!?」

それに驚きを隠せずにいる間にも、怪物だと思われる存在は少年の存在に気づいたように見つめる。

「ベルトにメモリを入れて、横に倒しなさい」

「何を言ってっおい!!」

そうしていると共に、女性は姿を消した。

既に困惑しており、未だに何が起きているのか分からない。

「けど、爺ちゃんの心残りが何なのか知るまではっ、死ねない!!」

その言葉と共に、少年は手に持ったメモリを自然と押す。

その時の動作はまるで何もかも知っているように自然に、ベルトにメモリを入れる。

それと共に吹き溢れるのは風だった。

「なっ、まさかっ!!」

怪人は、それと共に風の中から現れた姿を見て、驚きを隠せなかった。

「ナスカがっ仮面ライダーにっ!?」


 よく風が吹き、風都タワー以外にも街のあちこちに大小問わず風車や風見鶏があり、街の電力はそうした光景の一端をなす風車による風力発電がかなりのウエイトを占めている。

 

 海や山といった自然に恵まれた都市。

 

 私、ヒサメは、家庭の事情で、最近になってこの都市、風都に引っ越す事になった。

 

 引っ越す当初は大きな不安があったけど、引っ越した後、その不安はさらに大きくなった。

 

 それは、この街でおきる怪事件の多さである。

 

 普通ならば、都市伝説レベルの話の怪物が、この街ではよく起きている。

 

 その怪物によって引き起こされる事件の数々は、ビルを溶かし、人が死ぬのはよくある事らしい。

 

「それにして、やっぱり怪しい」

 

 そう言いながら、私はとある人物を見つめる。

 

 それは、私の転校先にいる男子生徒であり、私の隣にいる男子である影。

 

 本名、弾空寺影は怪しい影がちらほら見る。

 

 学校で、持ち込んでくるガジェットと言うのか、そんなゴテゴテした古い機械を鞄に多く持ち歩いている。

 

 さらには目には隈ができており、時折、ぶつぶつと話している。

 

 そんな怪しさの塊のような人物である影を見張る為に、私はその後を追う。

 

「それにしても、まさかヒサメさんが、彼を追うとは」

 

「そういう花村さんは、なんで一緒にいるの」

 

 そう言いながら、私が彼を追っている所を同じクラスメイトである花村ひとし君が後ろから一緒に来ていた。

 

「君のような美人をあんな男に危ない目に遭わせない為さ」

 

「危ないって」

 

 確かに怪しい見た目をしているが、それでも危ないというのは言い過ぎではないだろうか。

 

「いいや、あいつは、本当に危ない。

 

 あいつのせいで、多くの人が病院送りになったから」

 

「そんな、けど、学校ではそんな噂は」

 

「誰もあいつのせいだとしか考えていないからね。

 

 何よりも、俺の親友はあいつのせいでっ」

 

 そう花村君は言ってくれる。

 

 彼の言う通りなら、彼が何かしている事は確かなようだ。

 

 けど、その何をしているかが分からない。

 

 その事を探りつつ、彼に接触するしかないだろう。

 

 しかし、どうしようかと考えている内に、彼は路地裏に入っていった。

 

 そこは、あまり人気のない場所だった。

 

「……ここは?」

 

 少し怖くなってきた。

 

 もし、ここに誰かがいたとしたらどうしようと思いつつも、勇気を出して進む事にした。

 

 しばらく歩くと、人影が見えてきた。

 

 それは影だった。

 

 慌てて、私達は隠れるが

 

「隠れても無駄だ。

 

 お前達の姿はさっきから分かっているんだよ」

 

 そう言った瞬間、彼は、私達を見ていた。

 

「それで、俺が怪しいとか言っていたけど、えっと、転校生だったヒサメだったか?」

 

「私の名前をっなんでっ」

 

「別にどうでも良いだろ」

 

 そう言いながら、影は私を睨みつけるように見た。

 

 まるで、全てを知っているような目つきであった。

 

 だが、ここで怯むわけにはいかない。

 

 なぜならば、この男は危険な存在だから。

 

 その事を伝えないとと思い、私は口を開く。

 

 すると、それを遮るように影が話し始める。

 

「悪いけど、そこにいる彼氏さんか? 

 

 もしも、彼氏だったら、悪いけど、病院送りにさせて貰うぜ」

 

「彼氏じゃないわよ! 

 

 それに、病院送りにするって、どういう事なのよ!!」

 

「別に病院送りにしたい訳じゃない。

 

 ただし、それを大人しく渡さなかった場合だけどな」

 

「それって、彼の友達を同じ目に遭わせたという事!!」

 

 そう言いながら、私は思わず睨み付ける。

 

 まさか、こんな奴が犯人なんて思ってもいなかったからだ。

 

 だが、彼は私の視線を無視して、こちらへと歩いてきた。

 

 私は身構えて、警戒をする。

 

 だけど

 

「まぁ、ここまで行けば良いか」

 

【アンブレラ】

 

「えっ」

 

 聞こえた声、それと共に花村君の姿が変わる。

 

 彼は、その姿が人間の姿から傘の様なマントを纏ったコウモリに似た怪物へと変わっていた。

 

 驚きを隠せない中で、そのまま花村君は、唐傘に仕込んでいる刀で私の首元に押さえつける。

 

「さぁ、影。

 

 この転校生が首をはねられたくなかったら、大人しくしろ」

 

 そう、私の首には刃が当てられている。

 

 この状況で、私が下手に動こうものならば、間違いなく殺されてしまう。

 

 そう考えた時だった。

 

「……別に良いよ」

 

「えっ」

 

「なにっ!?」

 

 影は、まるでどうでも良いように答える。

 

 それには、私も花村君も驚いてしまう。

 

 何故なら、このままでは私が殺されるかもしれない状況なのに、平然としていたから。

 

 私の命なんて、どうでも良いような影の視線に私は戸惑ってしまう。

 

 そして、そんな私の気持ちを無視するかのように、影はスマホを弄っていた。

 

「おい、てめぇ、本当に良いのかよっ、この女の命がどうなってもっ!!」

 

「別に、だってよ」

 

 そうしながら、影はそのまま手に持ったスマホをこちらに見せる。

 

「準備はとっくに出来ているんだから」

 

 それは、私を人質にしている花村君の後ろ姿だった。

 

 疑問に思った花村君が後ろを振り向いた瞬間、強烈な光が花村君を襲う。

 

「ぎゃあぁぁ!?」

 

 強烈な光に驚きを隠せない花村君に対して、影はすぐに走り出し、そのまま花村君を蹴り上げる。

 

「たく、こういうのは、あんまり得意じゃないというのに」

 

 そう言いながら、倒れそうになる私に対して、影君は

 

「さっさと片付けるか」

 

「痛っ!」

 

 特に受け止めようとしなかった。

 

 その事で、思わず尻餅をついてしまう。

 

「ちょっと、さっきのは普通、受け止める所でしょ!」

 

 そう言いながら、私は思わず影に怒鳴る。

 

「なんだよ、助けたのに、なんだよその態度は」

 

 そう言いながら、影は面倒くさそうな表情をしていた。

 

 その様子に呆れながらも、先程の行動について考える。

 

 あの時は、咄嵯の事だったとはいえ、あんな風に簡単に人質に取られてしまった自分が情けなく感じていた。

 

 確かに、この男は危険な存在だ。

 

 しかし、それでももう少し、どうにかできたのではないかと思ってしまったのだ。

 

 だが、それよりも、今はやるべき事がある。

 

「とにかく、早く逃げよう! 

 

 まさか、花村君が怪物だなんて」

 

「あぁ、あいつはドーパントだ。

 

 怪物と言ったら、怪物だけど」

 

 そう、私はすぐに走ろうとしたけど、影は至って冷静な態度で見つめる。

 

「どーぱんと?」

 

 まるで聞いた事のない単語に、私は思わず首を傾げる。

 

「『ドーパント』という名前には、肉体に"地球の記憶"をドーピングした者という意味が込められている」

 

「ドーピング!? 

 

 それに地球の記憶って、なんで、そんな事を知っているのっ!?」

 

「まぁ、俺も広い意味ではドーパントだからな」

 

 それと共に、影の言葉に困惑している間にも、懐から取り出したのは、青く塗装されている何かだった。

 

 どこか、見覚えのあるそれに疑問に思いながら、ゆっくりとそのまま腰に巻くと、まるで特撮作品に出てくるように、青いベルトが巻かれる。

 

 そう、驚いている間にも、影が取り出したのは一本のUSBメモリだった。

 

【ナスカ】

 

 聞こえた音声は、先程花村君がドーパントに変わる前に聞こえた音と同じ物であり、そのままそれは青いベルトに挿入された。

 

「変身」

 

【ナスカ】

 

 それと共に舞い上がるのは青色の風。

 

 その風が影を包み込むと共に、その姿が変わっていく。

 

 首元には腰まで届くだろうオレンジ色のマフラーが二つに青いバイザー。

 

 それらが身に纏いながら、多少の変化の違いはあるが、私は思わず言ってしまう。

 

「仮面ライダー」

 

 それは、風都に引っ越す前に聞いた事のある噂。

 

 街を襲う怪物が人々の前に現れる時、同時に2色に分かれた戦士が現れ、人々を助ける。

 

 その存在の名を仮面ライダー。

 

「俺は、そんな仮面ライダーと呼ばれる程の存在じゃない。

 

 けど、あえて名乗るならば、ナスカ。

 

 ガイアメモリを盗むナスカだ」

 

 そう、影は呟くと共に、花村君に目を向ける。

 

「さぁ、お前のメモリ、頂くぜ」




暗い研究室で、一人の老人がパソコンを見つめていた。
キーボードに指を走らせると、画面の中で無数の文字列が躍る。その動きをじっと見つめながら、老人は唇を引き結んだ。
「やはり、このままでは危険か」
ぽつりと呟く。老人は手を止めてしばらく考え込み、やがて意を決したように立ち上がった。椅子の背もたれに掛けてあった白衣を羽織り、部屋を出る。そのまま地下の研究室へ向かうと、部屋の奥に設置された装置の前に立った。
老人がスイッチを入れると、共にそこに保管された2つのカプセルを見つめる。
「それが、最後のベルトなんだね」
そんな老人に話しかける声が響く。
「特別な人間ではなくても、悪魔を操る事ができるこの時代において、本当にこれは必要な物かね」
そう、老人は後ろに話しかけてきた少女に振り返りながら言う。
「これからの戦いで、普通のデビルサマナーだけでは対抗できない。
だからこそ、現存するベルトで、最も強力なベルトが必要だからね」
そう少女は老人が手にしているベルトを見つめる。
「そうか、だが、忘れるな。
このベルトは、使いこなさければ変身者を殺す。
そして、悪人が使えば、世界を滅亡させる危険な力だ」
「終焉に挑むんだ。
それぐらい、必要な事だよ」
少女の言葉に、老人は再び前を向いた。
老人の目の前には、2つのカプセルがある。
1つは、機械的なパイプのラインが特徴的なベルト。
もう1つのカプセルにはクリアオレンジの本体にはタラバガニとワニの意匠があるスタンプ。
「それで、適合者はいるのか?」
「あぁ、既にね。
それじゃ、これは預からせて貰うよ」
そう言いながら少女はカプセルからベルトとスタンプを手にすると、そのまま部屋から出ていく。
「皮肉な話だよ。
最後のベルトが、最後の希望になるなんてね。
そうだろ」
そう、老人、ジョージ・狩崎は呟く。

と言う事で、この作品と共に一緒に連載する作品で主役ライダーは『仮面ライダーキマイラ』です。
映画本編でも、TTFCでも結構散々な扱いをしていたキマイラですが、個人的にはもっと活躍を見てみたい仮面ライダーという事で、書きました。
同時に終焉に立ち向かうという事で、ソウルハッカーズ2を原作に、書かせて貰います。
ゲームと同時に進めながらなので、少し話が遅れてしまう事があるかもしれませんが、応戦よろしくお願いします。
同時に仮面ライダーキマイラに関する活動報告も行っていきます。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=285008&uid=45956
皆様、これからもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Nとの出会い/謎の男子高生は仮面ライダー? Part2

 その見た目を一言で表すとしたら、人の形をした絵であった。

 

 

 

 青いボディに様々な絵が刻み込まれており、その数はヒサメが見ている限りでも26はあるだろう。

 

 先程までクラスメイトである花村が変身した怪物を思わせる容姿のアンブレラ・ドーパントと比べても、噂に聞く仮面ライダーの姿に似て、安心感が確かにあった。

 

「さてっと、やるとするか」

 

 そんな仮面ライダーナスカに変身した影は気怠い言葉と共に、その腰にある武器を手にする。

 

 武器は、まるで影の意志に合わせるように細長い剣へと変わる。

 

 その剣も合わさって、その姿はまさしく騎士を思わせる姿だった。

 

「どうやら、失敗に終わったけど、人質がいる変わらない!!」

 

 その叫び声と共に、アンブレラ・ドーパントは、その手に持つ傘から垂直な刀を取り出し、すぐに影に向かって襲い掛かる。

 

 背中には傘を思わせるマントを広げながら、宙を舞いながら、真っ直ぐと襲い掛かる。

 

「お前を相手にこいつを守るのは十分だよ」

 

 影はその言葉を言う通り、手に持った剣で、花村の攻撃を防ぐ。

 

 全身の力を込めるように突撃した花村の一撃に対して、影は、軽々と受け止めて、そのまま前へと吹き飛ばす。

 

 狭い路地裏の中で、影はそのまま後ろにいるヒサメを守るように前に出る。

 

「おい、それ以上、前に出るなよ。

 

 守るのは意外と面倒なんだから」

 

「なっ」

 

 影の言葉に思わずむっとしてしまうが、そうしている間にも、花村はその手に持つ刀で再び突っ込んでく。

 

 そして、それを影は再び同じように軽くあしらう。

 

「さすがは、ナスカメモリというだけあるなっ! 

 

 メモリのランクだけならば、確かにこのアンブレラよりも! 

 

 だけどっ、未だに十分に使いこなせていないようだな!!」

 

 はぁはぁと息を荒げながらも、花村は叫びながら、突っ込む。

 

 だが、影は特に気にした様子もなく、ただ冷静に攻撃を捌いている。

 

 ただそれだけなのに、なぜか、花村の方が焦ったような表情を浮かべている。

 

 まさに実力差がありすぎるのだ。

 

 ただそれでも花村は諦めずに立ち向かう。

 

「影、大丈夫なの」

 

「こっちは仕事の準備があるんだ。

 

 だから、さっさと終わらせる」

 

 その言葉と共に花村を蹴り上げると共にベルトを一旦締める。

 

 それと共に影は自身の身体の一部を触る。

 

【ハチドリ!】

 

 それと共に再びベルトを開く。

 

 同時に背中から生えたのは、光の羽が大きく羽ばたく。

 

 羽ばたく事によって、風が舞う。

 

 ただの突風に思えるが、それは違った。

 

 ただの風のはずなのに、花村の動きを止める。

 

 まさに、嵐の中に放り込まれたかのように、その動きが鈍くなる。

 

 ただでさえ、圧倒的な力の差があった。だが、今はそれよりも更に大きく開いた。まるで、巨大な獣に睨まれた小動物のように、その瞳は恐怖で揺れていた。

 

 まさに絶望。

 

「どうなっているんだっ、なんで、ナスカにっ」

 

「これもナスカの力だよ。

 

 まぁ、お前に言う必要はないな」

 

 そう影は言いながら、そのまま真っ直ぐと花村へと突っ込む。

 

 ただそれだけで、花村の手からは刀が離れる。

 

 ただの体当たりだけで、完全に無防備になった花村に影は、その拳を叩きつける。

 

 みぞおちに拳が入る。ただの拳でしかないのにも関わらず、まるで大砲でも喰らったかのような衝撃。

 

 肺の中の空気が全て吐き出され、一瞬意識を失う。

 

 その間にも、影は次々と拳を花村に打ち付けていく。

 

「ぐぅ、がああぁあぁ!!!」

 

 そのまま花村を宙に浮かばせる。

 

 同時にドライバーに装填されているナスカメモリを腰にあるメモリスロットに装填する。

 

【ナスカ! マキシマムドライブ!】

 

 鳴り響く音声と共に、その脚には先程まで、背中に身に纏っていたハチドリの模様は今度は脚へと纏う。

 

 同時に巨大なハチドリの頭を模したエネルギー体が花村に向かって、放つ。

 

 真正面から直撃し、花村の体は吹き飛ばされ、そのまま地面へと叩き落とされる。

 

 それと共に、花村の身体からガイアメモリが吐き出される。

 

「アンブレラ、まぁそこそこだったけど、やはりあのメモリじゃないからな」

 

 そう言いながら、影はそのままベルトからナスカメモリを取り出し、仮面ライダーの変身を解除させる。

 

「まさか、影君が仮面ライダーだったなんて」

 

「別に仮面ライダーじゃない。

 

 というよりも、ヒサメだったけ? 

 

 この事はすぐに忘れろ、良いな」

 

『まったく、影はもう少しレディの扱いを考えたまえ。

 

 君がメモリ関連で関わらせないようにしていると分かるがね』

 

「えっと、そこにいるのは一体」

 

 そうヒサメが影の隣に何時の間にかいた男性に思わず目を見開く。

 

 上品なスーツを身に纏い、首元にはスカーフ。

 

 首には白地に赤い丸の模様が描いてあるスカーフをまいている。

 

「こいつが見えるのか」

 

「えっ、うっうん」

 

 そう言うと、影は少し髪をかく。

 

「どうやら、分からない事ばかりだな。

 

 とりあえず、俺の家に来い」

 

「えっ!」

 

 その言葉に思わずヒサメは顔を赤くする。

 

「んっ?」

 

 ヒサメが顔を赤くした事に、影は首を傾げる。

 

『影、そういうのはもうちょっと雰囲気を考えたまえ」

 

「どういう意味だ?」

 

 男の言葉に対して、影は首を傾げる。

 

 すると男はため息を吐く。

 

 その様子にさらに影は疑問符を浮かべる。

 

 そんな二人のやり取りを見て、ますますヒサメの顔は赤くなる。

 

 そのままゆっくりと歩き始める。ヒサメも恥ずかしそうにしながらも。




仮面ライダーナスカ
ナスカメモリを使って、影がロストドライバーで変身した姿。
基本的な戦闘能力はナスカ・ドーパントと変わりなく、専用武器であるナスカ・ブレード。
だが、ロストドライバーによって、引き出されたナスカメモリの力によって、身体に無数の絵が刻み込まれている。
これは、ナスカの地上絵が描かれている。
その地上絵を触れる事によって、一時的に他のメモリへと書き換える事ができる。
書き換える事ができる能力は26個ある。
ただし、これには4つの弱点があり、⑴1度に使える能力は1つだけ⑵能力使用後、10分は他の能力を使えない⑶1度の戦闘に3つ以上、別のメモリへと書き換えると、1日は仮面ライダーに変身はできない⑷限界以上を使用した場合、毒素で身体が崩壊する。

仮面ライダーナスカの能力に関しては、こちらのURLで募集しています。
皆様の応募、お待ちしています。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=285106&uid=45956


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Mの初仕事/デパートの殺人鬼Patt1

「こんにちは、全国、100万の婿に愛と勇気を与える園咲霧彦です」

 

 そう言いながら、ソファに座りながら、目の前にいるヒサメに対して挨拶していた。

 

「あの、一体何を」

 

「あぁ、すまないね。

 

 久し振りにこうしてまともに話せるから舞い上がっていたからね。

 

 ほら、影君は結構生意気だからね」

 

「聞こえているぞ」

 

 そう言いながら、影は目の前にあるガジェットを弄りながら、霧彦に反応するように言っていた。

 

「それで、そのあなたは一体誰なんですか?」

 

「えっ、さっき言ったじゃないか、園崎霧彦だって」

 

「いや、それは分かりますけど、その、もしかして」

 

「あぁ、幽霊だよ」

 

「そんな簡単に言いますか!」

 

 霧彦のあっさりとした解答にヒサメは思わず叫んでしまう。

 

「こいつは俺の持つナスカメモリの前の所持者だ」

 

「まぁね」

 

「という事は、もしかしてそのナスカメモリって、危険なんじゃ」

 

「まぁ、危険だけど、今はベルトを通して使っているから、問題はないな。

 

 それにこいつの死因はまったく関係ないからね」

 

「えっと、ベルト? 

 

 ごめん、少し混乱している」

 

「まったく影君。

 

 彼女はこれまでガイアメモリとは関係ない生活を送っていたんだ。

 

 いきなりそんな事を言っても困るだろ」

 

「そのガイアメモリと関わりない奴が、お前の姿が見えている事が問題なんだろ」

 

 そうしながら、影はそのままヒサメを見つめていた。

 

「えっと、なに」

 

「お前、実はガイアメモリを持っていたりしていないよな」

 

「だから、私は本当にそのガイアメモリというの知らないの!!」

 

「ふぅん」

 

 そう言いながらも、影が怪しむように睨むのは変わらなかった。

 

「まぁ、影が怪しむのも無理はないけどね。

 

 けど、彼女はそこまで悪人じゃないし、君だって、彼女の事を監視していたから、分かるだろ」

 

「……まぁな」

 

 霧彦の言葉に多少不満を持ちながら、納得するように影はそのまま座る。

 

「あの、それで、貴方達は一体何者なんですか? 

 

 仮面ライダーだと思っていたんですけど」

 

「俺は、あの人達のような立派な存在じゃないよ」

 

「という事は、やっぱり知っているんだ」

 

 影の言葉を聞いて、少し納得するように呟くヒサメ。

 

「まぁね。

 

 この町では有名な噂の仮面ライダー、影君が使っているドライバーも仮面ライダーが使用するベルトと構造は同じだからね」

 

「それじゃ、やっぱり影だって、仮面ライダーじゃない」

 

「違う。

 

 あの人達は誰かを守る為に戦っている。

 

 俺は、俺の目的の為に変身している。

 

 だから、間違っても仮面ライダーなんて立派な存在じゃない」

 

 そう呟く。

 

「はぁ、まったく、影君は結構意地をはるねぇ」

 

「ふん」

 

 そのまま黙ってしまう影を見て、霧彦は苦笑いを浮かべてしまう。

 

「それで、その、影はなんで仮面ライダーになっているの?」

 

「仮面ライダーじゃない、泥棒だ」

 

 そう、影はあくまでも泥棒だと強調するかのように言う。

 

 そんな影を見ながら、霧彦は笑みを浮かべた。

 

(相変わらず、頑固だね)

 

 そんな風に思いながらも、霧彦はその言葉を口にしなかった。

 

 だが、その時だった。

 

 ピンポーンとインターホンが鳴る音が聞こえてきた。

 

 その音を聞いた瞬間、ヒサメは首を傾げた。

 

「……来たか」

 

 そう影は見つめた先には、何時の間にか一人の女性がいた。

 

 常に黒いロングコートを着込んでいる上に、全身を包帯、帽子、サングラス、手袋で覆っており、素顔を確認することはできない。

 

 長い髪と体つき、声から成人女性とわかるが、それ以外はまるで分からなかった。

 

「えっと」

 

「そこのお嬢さんは誰かしら、影」

 

「ナスカに取り憑いている亡霊が見える奴だ。

 

 一応、ガイアメモリを使っていると疑っているがね」

 

「……」

 

「えっと」

 

 そうしている、ヒサメをゆっくりと女性が見る。

 

 そして、そのままヒサメに近づくと、女性はじっと見つめる。

 

 いきなりの行動にヒサメは驚く。

 

「……メモリを使った形跡はまるでないわね。

 

 あえて言うならば、おそらくはとても強力なメモリに適正があると考えても良いわね」

 

「強力な、それって、もしかしてZか」

 

「Z?」

 

 影は勢いよく女性に近づく。

 

「それは分からないわ。

 

 何よりも、あなたが探すZとは限らないわ」

 

「そうかよ」

 

 女性の答えを聞きながら、影は舌打ちをする。

 

「あの、Zって、一体どういう意味なんですか?」

 

 そう、ヒサメは霧彦に近づき、話しかける。

 

「ガイアメモリは主に英単語で表しており、影が使うのはNASCAの場合はNが頭が目立つ」

 

「それじゃ、影が探しているのは」

 

「あぁ、Zのメモリだ」

 

「Zって、どんなメモリなの」

 

「それは、私にも分からない。

 

 けど、私が知る限りのZのメモリではない事は確かなようだ」

 

「えっと、私が知る限りって、霧彦さんって、メモリに詳しいんですか?」

 

 ヒサメは驚いたように霧彦を見る。

 

「まぁ、多少の知識はあるかな」

 

「元メモリの売人だからな」

 

「えっ!!」

 

 影からの一言に、ヒサメは思わず霧彦を二度見してしまう。

 

 その視線を受けながら、霧彦は苦笑いを浮かべてしまう。

 

「そいつは元々メモリの売人だった。

 

 けど、自分の奥さんに殺されてしまったらしい」

 

「その時に丁度メモリが彼の元に落ちてね。

 

 それが、僕達の出会いだからね」

 

 そう霧彦は言いながら笑う。

 

 そんな二人の会話を聞きながら、ヒサメは思う。

 

(……この人達の関係って、本当に不思議だよね)

 

 ヒサメには二人がどのような関係なのか良く分かっていなかった。

 

 ただ分かるのは二人ともお互いに気を許していると言う事だけだ。

 

 だが、それ以上深く関わろうとしない感じだ。

 

「それで依頼は」

 

「モチメモリよ」

 

「……モチ?」

 

 その単語を聞いて、ヒサメは首を傾げる。

 

 そんなヒサメを無視して、影はため息をつく。

 

「おいおい、まさかそんな巫山戯たメモリを」

 

「巫山戯ていないわ。

 

 これは馬鹿にできないメモリよ。

 

 既に犠牲者も多く出ているわ」

 

 女性は静かに答える。

 

 それを見て、影はまたもや舌打ちをした。

 

 どうやら、あまり気に入らない様子だ。

 

「まったく、仕方ない。

 

 とりあえず、やるしかないようだな」

 

 その言葉と共にスマホを見つめる。

 

「さて、行くとするか」

 

 その言葉と共に影はゆっくりと歩き出す。

 

「……あなたは、あの子の助けにはならないの」

 

「えっ、それは、けど、私なんかが、助けになりますかね?」

 

「さぁ、それはあなた次第よ」

 

 その言葉と共に、ベルトとメモリだった。

 

「これは?」

 

「センチピードベルトと、そのギジメモリよ」

 

「えっと、これは」

 

「センチピードベルトは様々な状況に応じた使い方ができるわ。

 

 それは影も持っているけど、影を助けれるか、どうかはあなた次第よ」

 

 そう言って、女性は立ち去る。

 

 その背中を見ながら、ヒサメは首を傾げた。

 

 そのままヒサメは、渡された二つのアイテムを握りしめる。

 

「影、私も行くわ!!」

 

「あぁ、なんでだよ!! 

 

 お前はまるで関係ないだろ!!」

 

 突然のヒサメの言葉に影は叫ぶ。

 

 そんな影を見て、ヒサメは微笑む。

 

「借りを返さないと、私が済まないの、とにかく行くわよ!!」

 

「あぁ、お前、引っ張るな!!」

 

 そのまま二人はその場から消えていく。

 

 その様子を見て、霧彦は苦笑いを浮かべながら、ついていく。

 

「それで、どこに行くの?」

 

「ターゲットがいると思われるのはデパート。

 

 そのデパートにメモリ保有者は隠れている」

 

 そう言いながらも、影達はデパートに向かっていく。

 

「それで、デパートに行って、どうするつもりなの?」

 

「とりあえずは、情報収集だ」

 

 




仮面ライダーナスカ 怪盗七つのメモリガジェット

⑴スネークウォッチ(応募者:ktakumi)
時計
使用目的:ダクトの中を這って進んで情報収集をする。
⑵レディバグフォン(応募者:ktakumi)
スマホ
使用目的:、あらゆる電子ドアやロッカーなどの錠を開けたり、解錠することも可能。
⑶バタフライウォッチャー(応募者:黒崎 好太郎)
双眼鏡
使用目的:ライブモードでは、特殊な粒子を散布し、周辺機器(監視カメラやセンサー、その他のガジェットまで)の性能を一時的に狂わせることができる。
⑷オウルショット(応募者:烈 勇志)
カメラ
使用目的:デジタルカメラ型メモリガジェット。
『オウル(梟)』の疑似メモリでカメラから梟型のライブモードに変形。
大体の機能は『W』が使用している『バットショット』と同じだが、怪盗の仕事をすることを考えられている事からステルス機能があり、『ナスカ』の変身者はその機能を利用してメモリを盗む場所の状況などを調査する際に使用されることが多い。
⑸カメレオポインター(応募者:人見知り)
ボールペン
使用目的:レーザーポインター兼ワイヤーアンカーとして使用ができる。
⑹センチピードベルト(応募者:はっぴーでぃすとぴあ)
ベルト
使用目的:ベルト型メモリガジェット、メインカラーはマルーンで装着者の着こなしを邪魔しない配色。
ベルトとしては生体認証と電磁ロックにより装着者のウエストのサイズに合わせながら運動性を妨げない自動装着・アジャスト機能を搭載、最大10メートルまで伸縮する。
また認証を課した人間にしか脱着ができないので拘束具としても使用可能であり身体的負荷を最小限に抑えた理想的な拘束を実現。
ライブモードとしてはベルトのバックル部分が頭部となったムカデ型のメカとして活動、形状を生かして狭い場所や垂直な壁での活動に向いている。
電磁ロックの端子部分がムカデのキバを模しておりスタンガンやその他電子機器の機能を麻痺させるウイルスプログラムを流すことが可能である。
⑺バットサングラス
サングラス
使用目的:装着する事で、虹彩認証や、サングラスから出るマイクを通して声態認証を解除する事ができる。
怪盗としてのマスクにも活動する時に着用する。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Mの初仕事/デパートの殺人鬼Patt2

今更ながら、報告ですが、作者はミステリーは今回がある意味初めてです。
だから、本当に雑な推理になりますが、申し訳ございません。


 デパートで起きた事件についてを影とヒサメは調べていた。

 

 デパートで起きた事件、それは店内にいる客が喉を詰まらせて、窒息する事件だった。

 

 事件が起きたフロアにおいて、窒息事件があったフロアには和菓子で有名なチェーン店、ファミレス、携帯ショップ、文房具屋で並んでいた。

 

 突然の事件もあり、現在はデパート内には客が入れない状況になっており、警察関係者が多くいた。

 

 そんなデパート内で、影とヒサメはゆっくりと見ていた。

 

「うぅ、やっぱり狭いよぉ」

 

「悪いけど、怪盗の仕事を手伝うと言った以上は、文句を言うなよ」

 

 そう、後ろから来ているヒサメに影は言いながら、ゆっくりと店内を見ていた。

 

 デパートに潜入する前からある程度の情報は揃えているが、それでも、目的のモチメモリの持ち主の特定を行うには、やはり現場での情報が不可欠だった。

 

「だけど、どうやって、こんな事件を? 

 

 そもそもモチメモリだっけ? 

 

 名前からしてモチ・ドーパントだって分かるけど、どうやって窒息事件を?」

 

「まぁ予想になるけど、単純に餅を被害者に食べさせたんじゃないの?」

 

「えっ、そんな単純に?」

 

「あぁ、だけど、餅を操れるならば、これ程恐ろしい方法はないぜ」

 

「恐ろしい?」

 

「餅が膨らむ原理は、加熱すると、中に残っている水分と反応し、でんぷんの分子の状態が変化し、ねばりのあるやわらかいものになる。

 

 また、中の水分が加熱によって水蒸気となり、 水が水蒸気になるとものすごく体積が増えるのでそれに耐えられなくなり、風船のように膨らむ」

 

「へぇ、餅が膨らむ理由はそういう。

 

 けど、それとどういう?」

 

「その膨らむ温度を、モチ・ドーパントが自在に操れる訳だよ。

 

 だから、人間の口の中に入ったら、その体温で一気に膨らむ感じだな」

 

「ひぃ」

 

 ヒサメの顔が青ざめる。確かに恐ろしい能力だと影も思う。

 

 この能力は、モチ・ドーパントにとって何気ないものだろう。しかし、人間が口にすればどうなるか想像もしたくない事態が起きることは容易にわかる。

 

 おそらくは、被害者の喉に入り込んだ時点で、爆発的に膨れ、そのまま窒息する。

 

 それが、この事件の正体であると影は考えていた。

 

 犯人の目的は分からない。だが、モチ・ドーパントの能力を使ったということは確かであった。

 

「問題は、その犯人なんだけどなぁ」

 

 そう言いながら、現在、取り調べを受けている人物達を見つめる。

 

 当日働いていたメンバーの中で、アリバイのない人物である4人。

 

 まずはチェーン店の店長の小西慶已さん。

 

 年齢は四十代後半といったところだろうか。背が高く体格の良い男性だった。顔色が悪く、ひどく疲れているようだった。

 

 彼は事件当時、店の奥にある厨房にいたらしい。従業員からは、彼が奥に行く姿を見たという証言が取れていた。

 

 つまり、犯行時刻には彼は現場にはいなかったのだ。

 

 その時にモチ・ドーパントに変身していたと考えられる。

 

 次にはファミレスの店員である木崎光彦さん。

 

 三十歳前後の男性だった。身長は高く、百八十センチはあるように見えた。髪は長く、それをポニーテールにしてまとめており、女性にも見えるような容姿をしていた。

 

 彼は事件当日、レジカウンターの裏に隠れて休憩を取っていたらしい。従業員の証言によると、彼の姿を他のバイト仲間が目撃している。

 

 そして携帯ショップの加賀美ミミさん。

 

 20代半ばの女性であり、仕事は真面目で接客態度も良く、職場やお客様からも評判は良い。

 

 彼女もまた、事件当日は店の奥の事務室にいたらしい。同僚達が彼女の姿を見ている。

 

 最後に文房具屋の店主の佐藤重夫さん。

 

 五十代のおじさんだった。白髪交じりの頭をしており、丸眼鏡をかけた優しい印象の男性だった。

 

 彼も事件当時は店の奥で商品を整理していたという。同僚の証言では、彼が奥に行った所を誰も見ていないようだ。

 

 以上の四名が容疑者として警察で事情聴取されている。

 

「それにしても、この4人の中で一番怪しいのは、やっぱり小西さんだよね」

 

 ヒサメの意見としては厨房という場所故に、モチを入れるのが一番簡単だという理由だった。

 

 確かに、小西さんの容疑が強い。

 

 しかし

 

「ドーパントというのは、いわば何でもありの怪物だからな。

 

 厨房にいただけで怪しいというのも変だしな」

 

 ドーパントは怪人と呼ばれる存在だ。普通の人間にはできないことをする。

 

 今回の事件の犯行時間を考えると、モチを操って被害者の口の中に入れればいい。それで事件はできる。

 

 わざわざ厨房にいる必要はない。

 

「うぅ、それにしても、なんだかベタベタしているよぉ」

 

「そんなのに気にして、んっ、ベタベタ?」

 

 ヒサメの言葉が気になった影はカメラを取り出す。

 

「それって、確かあの時の」

 

「オウルショットだ。

 

 あとは」

 

 それと共に影はそのまま時計にメモリを挿入する。

 

【スネーク】

 

 その音声と共に時計は蛇のように変形する。

 

「えっ、蛇!?」

 

「スネークウォッチ。

 

 ダクトの中を這って進んで情報収集してくれる奴だ」

 

 

 

「そんなのがあるんだったら、なんで最初から使わなかったの!」

 

「五月蠅い、現場で見ないと分からない事もあるだろ」

 

 影がそう言うと、そのまま、スネークウォッチは動き出す。

 

 そのまま、ゆっくりと移動し、店内を進んでいく。

 

 スネークウォッチが動くと同時に、影はオウルショットを通して見つめる。

 

「やっぱりか。

 

 まさか偶然とはいえ、見つける事ができるとはな」

 

「偶然って、まさかこれって」

 

「モチ・ドーパントも、このダクトを通ったんだ」

 

 それと共に、スネークウォッチが調べた結果が、レディバグフォンに送信される。

 

「モチ・ドーパントが通ったのは、真っ直ぐと一本道」

 

 その箇所を見る限りでは、全ての容疑者が通れ、尚且つ、どのタイミングでも犯行が可能だと影は考える。

 

 だが

 

「……これは」

 

 それと共にダクトの中で気になる事が一つ。

 

 モチ・ドーパントが残したと思われる僅かな香り。

 

 それは甘い香りであり、食べ物とはまた違った匂いに影はその匂いを知らない。

 

「ヒサメ、これは分かるか?」

 

「えっ、うん。

 

 これは、確か、友達と一緒に。

 

 あれ、それって」

 

「あぁ、どうやらビンゴのようだ」

 

 そうしている間にも、俺はオウルショットを通して、一カ所だけ、モチの量が一番多い場所を見つめる。

 

「今回の獲物は決まりだな」




その日、デパートでの取り調べを終えた一人の人物は帰り道を歩いていた。
「はぁ、まったく、本当に嫌になる。
せっかく気分良く、能力が使えたのに」
そう呟きながら、手に持ったメモリを目にする。
「まぁ、良いか。
あの時はコックローチとか、メガネウラとかそういうのばっかりだから、思わず選んだけど、なかなに良いじゃない」
【モチ】
その笑みと共に、うっとりとするようにメモリを見つめる。
だが、そんな人物の元に何かが投げられた。
「なに?」
それが気になり、見つめる。
『【モチ・ドーパント】殿
【今夜】に貴殿の【モチ・メモリ】を頂く。
私には如何なる策も通用しない。
【怪盗ナスカ】』
「ナスカ?」
それと共に突風が吹く。
同時にその人物の目の前には、一人の人物がいた。
全身を黒いコートに包まれ、まるで蝙蝠を思わせるマスクを付けている男がいた。
「予告する、あんたのお宝、頂くぜ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Mの初仕事/デパートの殺人鬼Patt3

本編とはあまり関係ない仮面ライダーナスカ情報。
仮面ライダーナスカのモデルは仮面ライダーWであるのと同時に、もう一つのイメージとして、仮面ライダーV3の要素が入っています。
ナスカの地上絵の能力が26個と4個の弱点といのを無理矢理入れたのもそれですが、一番の理由は、仮面ライダーWが1号や2号をモデルにしているならば、3人目の仮面ライダーはV3をイメージさせるのが良いのではという勝手な思いで、書かせて貰いました。


「えっと、お宝って、一体何のことでしょうか?」

 

 そう言いながら、目の前にいる人物は、まるで自身が無関係だと、言わんばかりに見つめる。

 

「別に間違いだったら、間違いで、それでも構いません。

 

 しかし、あのデパートでメモリを持っているのは、少なくとも、あなたで間違いないでしょう」

 

「メモリって、さっきから何を根拠に言っているんですか!」

 

 そう、俺に向けて、睨み付ける。

 

「それでは、少し長話をしましょう。

 

 あぁ、ついでにこの場は我々以外が通らないようにしているので、連絡は諦めてください。

 

 何よりも、あなたにはその気はないでしょうが」

 

 そう呟きながら、ゆっくりと目を向ける。

 

「あのデパートで起きた事件において、重要なのは犯人の、つまりはモチ・ドーパントの変身者が誰なのかが分かる手掛かり。

 

 それだけで十分だった。

 

 なんだって、モチは変幻自在に形を変える事ができますからね、変身する一瞬の隙さえあれば、誰でもできる。

 

 その中で、モチ・ドーパントが犯行を行ったと思われるダフト。

 

 そこに重大な手掛かりがありました」

 

「手掛かり?」

 

「えぇ、香りです。

 

 とても甘い」

 

「香り? 

 

 それだったら、普通に料理の料理に」

 

「甘いと言っても、それは料理の甘さではない。

 

 その甘さはいわゆる香水の類いです」

 

「香水が、なんで」

 

「ドーパントとは、ガイアメモリによって肉体を怪物に変化させるアイテムです。

 

 肉体は強化されると言っても、人間の要素も大きく関わっていく。

 

 その中でもモチ・ドーパントは身体をモチに変える。

 

 そのモチには微量ながら、あなたが使っていた香水が混ざっていた」

 

「まさか、それだけで」

 

「この香水は男性はあまり人気はなく、反対に女性が人気高い事で有名なブランドだ。

 

 私の友人も、その事を話してくれた」

 

「それは」

 

「えぇ、確かに根拠するには弱いかもしれない。

 

 もしかしたら、偶然通ったかもしれない。

 

 けど、この香水がダクト内で広がっており、それがモチから香り、何よりもモチの接触が一番多い部分の出口があなたの店ならば、疑うには十分だ。

 

 そして、どうやら当たりみたいだな」

 

 同時に俺は真っ直ぐと、既に隠し持っていたメモリを差し、モチ・ドーパントへと姿を変えていた。

 

「どうやら、そこまでバレていた以上は、殺すしかないようだな!」

 

 その言葉と共にモチ・ドーパントは腕を巨大な拳の形に変えると共に、俺に向かって放つ。

 

 放たれた一撃を、俺は瞬時に避けると共に、その腰にロストドライバーを巻くと共に、ナスカメモリを取り出す。

 

「さぁって、本性が出た以上は容赦はしないぜ」

 

『油断は大敵だよ、影君』

 

【ナスカ】

 

「分かっているよ、変身!」

 

 俺はその言葉と共に、瞬時に腰にあるロストドライバーにナスカメモリを挿入し、そのまま変身する。

 

 ナスカへと変身すると共に、俺が考えるべきは、タイミングだった。

 

「仮面ライダーだった訳か、だったら余計に倒さないとなぁ!!」

 

 その言葉と共にモチ・ドーパントはその腕を大きく広げると共に、そのまま多数の腕を形成して、俺に向かって放っていた。

 

 その攻撃に対して、俺はその攻撃を避けていく。

 

『モチは結構厄介だね。

 

 スイーツと比べたら、モチ単独に特化している分、その能力をかなり使えるようだな』

 

「そうだな」

 

 そう、俺の隣にいる霧彦の声を聞きながら、襲い掛かってくるモチ・ドーパントの攻撃を避けていく。

 

 そうして、避けた後ろにあった壁がモチの腕が当たると同時に、壁が大きくへこみ始めていた。

 

(やっぱり威力は高い)

 

 モチの能力を考えれば、攻撃力が高い事は予想できていたが、それでも想像以上に高い事に驚きを覚える。

 

『だが、君ならば、既に勝てるだろ』

 

「勿論だよ」

 

 俺はその声と共に、モチ・ドーパントの動きを見切り始める。

 

 今までの戦いの経験で分かる事がある。

 

 相手はこちらが攻撃をする瞬間を狙おうとするが、逆に言えば、その攻撃を当てるために腕を伸ばす必要がある。

 

 だからこそ、俺はモチ・ドーパントの攻撃が、真っ直ぐと揃う瞬間を狙う。

 

「そこだな」

 

【トカゲ!】

 

 同時に俺の身体から蜥蜴の絵が身体から浮かび上がると共に、手に持ったナスカ・ブレードが纏う。

 

 それと共にナスカ・ブレードはリザード・ランサーへと変形する。

 

 そして、リザード・ランサーにカメレオポインターを装填し、同時にナスカメモリを挿入する。

 

【トカゲ! マキシマムドライブ!】

 

 鳴り響く音声と共に、リザード・ランサーの槍先が伸びた餅の腕を絡みつく。

 

 同時に槍先を中心に、モチ・ドーパントはまるで綿飴を作るように絡まれていき、身動きが取れなくなっていた。

 

 それと同時に、俺はリザード・ランサーに巻き込んだモチ・ドーパントの胴体ごと、リザード・ランサーを横に振るう。

 

 それによって、モチ・ドーパントは一つの塊になり、それに向けて、リザード・ランサーを投げる。

 

「アアアァァァァ!!」

 

 リザード・ランサーの一撃を受けて、モチ・ドーパントは悲鳴を上げながら、そのままメモリブレイクする。

 

「ふぅ、まったく、やりにくい相手だったぜ」

 

『君はそういう所があるね』

 

「うるせぇ、とにかく、確かにメモリは頂いたぜ」

 

 それと共に、破壊されたメモリを手に取る。

 

「確かに頂いたぜ、モチメモリを。

 

 なぁ、加賀美ミミさん」

 

 そう、俺は、メモリの所有者に向けて言う。




「それで、既に彼女はメモリを盗られていた訳か」
「あぁ、現場で戦闘した後はある。
佐藤さんからの情報を会わせても、おそらくは今回のドーパントだと思っていたが、一足遅かったようだ」
そう言いながら、黒い帽子にスーツ姿の青年が、電話先の相手と話しながら言う。
「それで、その時の僅かな証言でやはり出てきたんだね、ナスカが」
「・・・あぁ、けど、本当に霧彦なのか」
「それは分からない。
けど、君も知っているだろ、彼が既にこの世にいない事も。
何よりも、なぜ彼がメモリを破壊するんだ?」
「それは分かっているけど、分かっているけどさ」
「・・・とにかく、今は依頼に集中するべきだろ」
「あぁ、そうだな、照井の奴の鼻を明かす為にもな」
電話先にいる相手から聞いた言葉と共に、思い出したように走り出す。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

還ってきたT /怪盗は何を狙うか

「トライセラトップス?」

その単語を聞くと、ヒサメは思わず疑問に思い、首を傾げる。

「それが、今回のターゲットだと言うけど、なんでそれを狙うの?」

「簡単に言うと、これまでのメモリ所有者に比べても異常としか言えないな」

「異常?」

『あぁ、トライヤラトップスは主に恐竜のメモリだ。
だが、本来の恐竜からかなり異常なメモリなんだ』

「どういう事なんでか、霧彦さん?」

『本来ならば、恐竜などを含めて、巨大な身体になるには周りにある物を利用する事が可能になる。
だけど、トライセラトップスは、自身のみで巨大化する事ができるんだ』

「それって、結構やばいの?」

『メモリ単体なのか、それとも適合している問題なのか分からないが、これまで単体で巨大化できるのはアノマロカリスぐらいだけど、あれはあくまでも昆虫だからね』

「恐竜で、それを行えるんだったら、かなりやばい。
そして、そのまま成長し続ければ」

「街に大きな被害がっ!!」

「まぁ、そうなるな。
それに、たぶん、このメモリを手に入れる理由は」

「んっ?」

「なんでもない。
とりあえず、既にメモリ所有者の候補者は知っている」

「候補者?
それって一体」

「警察」


 トライセラトップス・ドーパントから逃げる阿久津。

 

 俺はそのまま、奴よりも先回りするように歩く。

 

「なっ、お前は」

 

「本当は、トライセラトップスに用があるけど、それ以上にお前からも聞きたい事があるからな」

 

 そう言いながら、俺はゆっくりと近づく。

 

 阿久津はこちらの方を向くと、驚いたように睨んでいる。

 

「貴様は一体っ」

 

「俺は、ただの怪盗だよ。

 

 悪いけど、てめぇには聞きたい事があるからな、ここで大人しく捕まって貰うぜ」

 

 そう言いながら、俺は腰に巻いているセンチピードベルトを、そのまま阿久津に向けて、投げる。

 

 阿久津はそれが、何なのか分からず困惑している様子だったが、センチポードベルトはそのまま阿久津の身体に巻き付き、拘束する。

 

「さぁて、それじゃ、このまま【リザード】なに?」

 

『影、すぐにその場から離れろ!』

 

 隣にいる霧彦の言葉を聞くと共に、俺はすぐに離れる。

 

 同時に阿久津はその手に隠し持っていたガイアメモリを刺していたのか、その姿は既にドーパントへと変わっていた。

 

「あいつは」

 

『リザード。

 

 メモリとしての質はそれ程高くないだろう』

 

 それと共に見つめた先にいたリザード・ドーパントは確かにその名の通りの姿だった。

 

 蜥蜴を思わせる頭をしていながら、手足は人間のように器用に立っていた。

 

 さらには、標準装備として持っているのか、右腕には剣、左手には盾を持っている。

 

 その姿から、まるで伝説に出てくるようなリザードマンを連想させる姿に、思わずため息をつく。

 

「さっさと片付けるとするか」

 

 その言葉と共に、俺は懐に入れていたロストドライバーとナスカメモリを取り出す。

 

 ロストドライバーはそのまま俺の腰に巻き、同時にナスカメモリを起動させる。

 

【ナスカ】

 

「なっ、ナスカメモリっ、それにそのベルトっ! 

 

 まさか、お前は、仮面ライダーなのかっ!」

 

「いいや、俺はただのナスカだ」

 

 その言葉と共に、俺はすぐにロストドライバーにナスカメモリを挿入すると共に、そのまま開く。

 

 それによって、俺は変身する事ができる。

 

「ぐっ、幾ら、変身したからと言って、勝てると思うなぁ!!」

 

 その叫びと共に阿久津はその手に持った剣を構えると共に、真っ直ぐと襲い掛かる。

 

 それに対して、俺は腰にあるナスカブレードを手に持ち、そのまま構える。

 

 力任せでの一撃が襲い掛かるのに対して、俺はその攻撃をナスカブレードで受け流し、そのまま蹴り上げる。

 

「ぐっ!」

 

 怯んだ阿久津は唸りながら、そのまま尻尾を振り払う。

 

 蜥蜴の力を宿している事もあって、その尻尾はまるで鞭のようなしなりを持っていて、まともに喰らう訳にもいかない。

 

 それを後ろに飛んで避けると共に、一気に接近する。

 

「ふんっ!」

 

 だが、そんな隙だらけの動きに対して、阿久津も反応する。

 

 片手に持つ盾を前に出す事で、防ごうとする。

 

 だが、俺は攻撃をあえてせず、反対にその盾を踏み台にして、跳び上がる。

 

「なっ!?」

 

 阿久津は驚きを隠せない様子で声を上げるが、もう遅い。

 

 既に俺は空中に浮かび上がり、そのまま後ろに回ると共にナスカブレードをそのまま振るう。

 

 それと同時に刃から放たれた衝撃波によって、阿久津は吹き飛ばされる。

 

「くそぉおおおっ!!!」

 

 怒り狂ったように雄たけびを上げながら、起き上がった阿久津は再び剣を構えて走りだす。

 

 先ほどと同じように、真っすぐと向かってくる事に、今度は俺の方から近づく。

 

 そして、お互いの距離がなくなった瞬間、俺は思いっきり殴り飛ばす。

 

「ぐあっ!」

 

 悲鳴を上げて、地面を転がる阿久津を見ながら、俺はナスカメモリを抜き取り、腰にあるメモリスロットに装填する。

 

【ナスカ】

 

 そうして、俺はメモリスロットを押す。

 

【マキシマムドライブ!】

 

 その音声と共に、右足に青いエネルギーを纏い、俺はそのまま回し蹴りを行うように阿久津に足を向ける。

 

「くらえぇえええっ!!!」

 

 それに対抗するかのように、阿久津は右手の剣をまっすぐと振り下ろす。

 

 だが、その剣はぽっきりと折れ、阿久津の身体に俺の蹴りは直撃し、そのまま吹き飛ばした。

 

「あああぁあああああっ!!!」

 

 断末魔の叫びと共に、リザード・ドーパントとなった阿久津はそのまま地面に倒れる。

 

 それと同時に、俺の足元には割れたガイアメモリが落ちていた。

 

「さてっと、話して貰うぞ。

 

 まぁ、話した後にはちゃんと警察の元に「キシャアアァァ!!」うわっと!?」

 

 そう阿久津に近づこうとした瞬間、聞こえた。

 

 それと共に、俺に襲い掛かったのは、まるで虎を思わせるドーパントだった。

 

「こいつはっ」

 

『スミドロン!? 

 

 まさかっ、ミックかっ!』

 

「誰だよ、それはっ」

 

 俺は思わず叫びながら、スミドロン・ドーパントはその鋭い爪の一撃を次々と襲い掛かる。

 

 その動きはまるで獣を思わせる動きには対応できず、ただ回避する事しかできない。

 

「ちぃっ」

 

 舌打ちをしながら、どうにか距離を取る。

 

 このままでは、勝つ事ができない。

 

『今の君では、ミックには勝てないっ! 

 

 逃げるしかないっ!』

 

「逃げるとしても、どうやって逃げるかだな」

 

 俺はそう言いながら、スミドロン・ドーパントからの攻撃をかわす。

 

 どうやら、阿久津よりも厄介なのはこいつらしい。

 

 あの阿久津を倒した後に、俺を狙うとは、中々良い性格をしているようだ。

 

 さすがに、この状態のまま戦うのは難しいだろう。

 

「こういう時は、これだな」

 

 俺はその言葉と共にすぐにナスカメモリへと手を伸ばす。

 

【スパイダー】

 

 ナスカメモリから鳴り響く音声と共に、左腕にナスカのクモの絵を模した武器、スパイダークローにナスカブレードが変形する。

 

 スパイダークローを構えると共に、スミドロン・ドーパントが襲いかかってくる。

 

 それに対して、俺は横に跳ぶと同時に、その背中を斬りつける。

 

 しかし、スミドロン・ドーパントはその攻撃を瞬時に避ける。

 

 同時に今度はスミドロン・ドーパントの方が、俺の背中に回って、攻撃を仕掛けてくる。

 

「だけど、俺の狙いはそっちじゃないんだよな」

 

 その言葉と共にスパイダークローから飛び出た糸はそのまま俺の前に真っ直ぐと伸び、近くの壁へとくっつく。

 

 それと共にまるでワイヤーアクションを行うように、そのまま上へ飛ぶ。

 

 だが、その先には天井があるだけだ。

 

 普通ならば、それで終わりだ。

 

 だが、今は違う。

 

 そのまま勢いよく、スパイダークローで壁に張り付いたまま、さらに上へと向かう。

 

 それに気づいたのか、スミドロン・ドーパントも追いかけるように跳び上がる。

 

 だが、もう遅い。

 

 すでに俺は天井まで辿り着き、そこから跳び上がりながら、そのままスミドロン・ドーパントから逃げていく。

 

「さて、これから、どうするかだな」

 

 そうしながら、俺は次の行動に関して、考える。




「こいつはっ」

何か聞こえ、踏み込んだ帽子を被った青年がすぐに駆けつける。

周りには影が戦闘した後が残っており、何が起きているのか、分からず困惑している。

その中で、足下に何か落ちているのに気づく。

「これはメモリ?
まさか、この事件は」

同時に周りにある戦闘跡を見ていく。

「以前のモチ・ドーパントと同じ。
まさか、この事件、ナスカも関わっているのか」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

還ってきたT /怪盗は探偵に何を明かす

仮面ライダーナスカで、詳しい時系列が不明という事もあり、簡単な解説を入れさせて貰います。
本編の仮面ライダーナスカは、仮面ライダーWの本編で言う所の21話からが本格的に関わります。
ナスカのビキンズナイトは18話における霧彦の死亡時と同時期であり、その後、アクセルが登場して、21話までの時系列と同時期にナスカが怪盗として活動を始めた時期と重なっています。


 そこは、海の近くにあるスナック、キャサリン。

 

 そのキャサリン近くのボートにて、俺はその男を捕らえていた。

 

「まったく、危ない事をする獲物だな」

 

「っ」

 

 俺の声を聞き、トライセラトップス・ドーパントはすぐに振り返る。

 

 同時に、俺は足下に拘束している阿久津を見せながら、そう言い放つ。

 

「あの姿、確かにナスカ」

 

「だけど、あのベルトは、色は違うがロストドライバー」

 

「つまりは、仮面ライダー」

 

 そう言いながら、トライセラトップス・ドーパント以外にも、Wとアクセルの2人はこちらを見て、驚愕の声を出していた。

 

「どうして、そいつがっ」

 

「こいつがボートで逃げ出す前に捕らえていた。

 

 そして、あんたの正体を確かめる為にも、ボートを操作させて、そのまま攻撃させた。

 

 単純な手だろ。

 

 まぁ、もしもの時の保険は必要なかったようだから安心したよ」

 

 そう言いながら、俺の元に帰ってきたオウルショットとバタフライウォッチャーを手元に戻すと共に言う。

 

「どうやら、私の復讐は終わっていないようね」

 

「止めるんだ、溝口さん! 

 

 そんな事をしても!」

 

「悪いけど、この男を殺さない限り、私の復讐は終わらない」

 

【トライセラトップス】

 

 その音声が鳴り響くと共に、そのまま彼女は自身にガイアメモリを刺し、そのままトライセラトップス・ドーパント

 

 へと姿を変える。

 

「悪いけど、こいつは大事な情報源なんだ。

 

 ガイアメモリの流通ルートのな」

 

「お前、それが目的で」

 

「まぁな、俺は屑だからな。

 

 自分の目的の為だったら、利用できるのはなんでも利用する」

 

 そう言いながら、俺もまたナスカブレードを構える。

 

『翔太郎、どうする?』

 

「これ以上、彼女に罪を重ねさせる訳にはいかない、行くぞ、フィリップ!」

 

 同時に、Wもまた、トライセラトップス・ドーパントへと銃口を向ける。

 

 既にWはルナトリガーへと姿が変わっている為に、その銃弾は変幻自在に動きながら、トライセラトップス・ドーパントへと当たる。

 

 だが、その装甲は僅かに火花が散る程度で、大したダメージにはなっていない。

 

 しかし、注意を引くには十分であり、それを見たトライセラトップス・ドーパントはこちらに向けて拳を振りかざしてくる。

 

 それをナスカブレードで受け流しながら、俺は腰にある尻尾で薙ぎ払う。

 

「なっ、なんだ、あれはっ」

 

「以前のナスカじゃない」

 

 そう驚いている間にも、トライセラトップス・ドーパントが吹き飛ばされた先には湖があり、俺はすぐにそこに飛び込む。

 

【ホエール! マキシマムドライブ!】

 

 鳴り響く音声と共にジャンプをして縦回転しながら鯨の尻尾を思いっきりトライセラトップス・ドーパントに叩き込む。

 

 それにより、そのトライセラトップス・ドーパントは一気に宙へと浮かび上がり、そのままメモリブレイクされる。

 

「メモリ、確かに頂戴した」

 

 そのまま、俺はトライセラトップスメモリを手元に回収する。

 

 だが

 

「待て、貴様を逃がすとでも思っているのか」

 

 そう言いながら、目の前で、アクセルがその手に持つ剣を構える。

 

「悪いが、俺はお前と戦うつもりはない。

 

 本当だったら、そこにいる阿久津からメモリの情報を手に入れたかったが、あんたらを相手に逃げられそうにないからな」

 

「だからどうした。

 

 どちらにしても、貴様には聞かないといけない事がある」

 

「やれやれ、アクセル全開過ぎるんだよ、あんたはぁ!」

 

 同時に俺は手に持っていたナスカブレードでアクセルの手に持つエンジンブレードと激突する。

 

 それによって生まれた衝撃により、周囲に突風が生まれる。

 

 そして、俺達は互いに一歩も譲らずに鍔迫り合いをする。

 

「おいっ照井、止めろ! 

 

 ナスカのお前もっ、こんな所で戦ったら、被害がどうなるのか、分かっているのか!」

 

「俺に質問するなぁ!」

 

 同時にアクセルはそのまま俺に攻撃を仕掛けてくる。

 

 これまでアクセルの事についてはある程度調べているつもりだったが、以外と対処が難しい。

 

 照井竜と最も相性の良いアクセルメモリ一本の力と特性を極限まで活かした戦い方もあって、俺がこれまで戦ってきた誰よりも厄介な相手だ。

 

 そんな事を考えながらも、俺は必死にアクセルの攻撃を避けていく。

 

 しかし、このままだといずれ限界が来る事は目に見えていた。

 

(くそっ、どうすればいい)

 

 そんな時であった。

 

【ヒートメタル!】

 

「いい加減、落ち着けっ照井!」

 

 それと共に、俺の前に現れたWが、アクセルの攻撃を止めてくれた。

 

「邪魔をするな、左!」

 

「てめぇこそ、まだこいつが悪人だとは限らないだろ!」

 

『翔太郎、それは少し甘すぎないかい?』

 

「分かっているよ、けどな。

 

 ナスカを使っているこいつが、どうしてもあいつと重なる。

 

 何よりも、今は街の為に戦ってくれたこいつを信じたいんだ」

 

「っ」

 

 その甘すぎる言葉を聞いて、俺は言葉を失った。

 

 だけど

 

「……感謝します。

 

 けど、すいません、俺は自分の為に戦っています」

 

「自分の為だと? 

 

 それは一体何なんだ」

 

「Zのメモリ。

 

 俺は、そのメモリを探す事。

 

 それが、今の俺の全てです」

 

『全く、目的あまり話してはいけないよ』

 

 そう、俺が話していると共に、同時に横に何時の間にか霧彦が立っていた。

 

「お前っ霧彦っ」

 

『どういう事だ? 

 

 一体何が』

 

 霧彦の姿を見て、Wは驚きを隠せなかった。

 

 だが、それとは別に照井は怪しむように見つめる。

 

「こいつは?」

 

「……かつて、メモリを街を売って、街を泣かした奴だ。

 

 だが、同時にこの街の若い命を助ける為に、その命を散らした男だ。

 

 だけど、なぜ、お前が」

 

『君も既に知っているだろう。

 

 私は死んだ。

 

 そして、どういう訳か私はナスカメモリへと宿っている』

 

『幸さんと同じ』

 

 その事にWのもう片方は驚きを隠せない様子だった。

 

『だからこそ、頼みがある。

 

 彼はここまで彼と一緒に行動していた。

 

 だからこそ、信じて欲しい』

 

「その言葉を信じられると思っているのか」

 

 そう、アクセルはこちらに未だに剣を向けていた。

 

 この状況、おそらくはどれだけやっても、覆す事はできない。

 

「……ならば、一つ条件がある」

 

「条件?」

 

「これからも、俺の怪盗行為を、どうか許して欲しい。

 

 俺は絶対にこの街を泣かせない。

 

 貴方達のような仮面ライダーではなく偽物だけど」

 

『それを信用できるとでも?』

 

「ごもっとも、だからこそ」

 

 同時に、俺はすぐにロストドライバーに手を伸ばす。

 

 瞬時にアクセルは構えるが、俺はそのままロストドライバーからナスカメモリを取り出す。

 

 それに合わせるように、俺の変身は解除される。

 

「お前、まさか!」

 

『翔太郎?』

 

 同時に、俺の正体を見て、驚きを隠せない様子だった。

 

「久し振りですね、翔太郎さん」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決闘のW/譲れない反逆の意志

「それで、フィリップ、何か分かったのか?」
そう言いながら、目の前にいる翔太郎さんは俺が持っていたナスカメモリとロストドライバーを解析するように見つめる人物、フィリップさんに尋ねる。
どうやら、彼は仮面ライダーになる時の相棒らしく、天才的な頭脳を持っているらしい。
「ふむ、これは実に興味深い。
このナスカメモリはどうやら僕達の持つメモリと非情に似ているらしい。
おそらくだが、元々組織が持っていたナスカメモリを改良したと思われる。
そして、このロストドライバーだが、これはむしろ君の方が詳しいかもしれない」
「俺の方が?
どういう事だ?」
そう言いながら、翔太郎さんは思わず突っ込む。
「これは鳴海荘吉が持っていたロストドライバーを修理・改良した物だ」
「どういう事だよ、それは!」
「鳴海荘吉?」
その言葉に俺は思わず首を傾げる。
『聞いた事がある。
ミュージアムが本格的にメモリを売り始めた頃に、敵対していた仮面ライダー。
その仮面ライダーの正体が、鳴海荘吉だとは聞いた事はある』
「俺が知らないだけで、ずっと前に仮面ライダーが」
それには俺も思わず驚きを隠せなかった。
そうしている間にも、俺の横にいる女性は霧彦を見ようとする。
「本当にここにその霧彦っていう人がいるの?
私、全然見えないけど」
「亜樹子には、やっぱり見えないのか?」
そう翔太郎さんは確認するように言った人物は、どうやらこの鳴海探偵事務所の所長である鳴海亜樹子さんだ。
「全然」
「どうやら、そこにいる霧彦は僕達を始め、メモリの使用者にしか見えないらしい。
実際に照井竜にも見えていたとなれば、そう考えるのが妥当だろう。
実に興味深い!」
そうしながら、フィリップさんはそのまま霧彦の方へと見つめる。
「とにかく、お前がナスカというのは分かった。
だけど、これ以上、怪盗活動なんていう危ない真似をするな」
そう翔太郎さんは俺に言う。
「それは、無理です。
俺は爺さんが残したZを追う為にも、仮面ライダーを続けなきゃいけないんです」
「だったら、俺がそれをやってやる。
高校生のお前が、そんな無茶をするもんじゃない」
その言葉に俺は思わずむっとしてしまう。
「翔太郎君、さっきから結構親しげだけど、どういう関係なの、この子とは?」
「あぁ、まぁなんだ。
昔から遊び相手をしていた弟みたいなもんだ」
「俺は、その、姉や侍女の人以外は仲が悪かったんだ」
「んっ、侍女?」
「禅空寺家で、風都海岸付近の地主一族。
現在はZENONリゾートの創設者として有名だね」
「それって、超大金持ち!!」
「・・・その話は止めてくれ。
俺はあの家とは関わりを持ちたくないんだ」
そう俺はその話を遮った。
「あのクソ親父も、姉さん以外の兄姉は金の事しか目に無かった。
爺ちゃんの大事にしていたのを全部潰して、あんなのを建てて」
「おいおい、そこまで言わなくても」
「別に、今更建った物に対して文句はないよ。
それはそこで大切な思い出を作った人に対する侮辱になる。
けど、それでも爺ちゃんが財産だと言った自然を壊したのは、どうも」
そう俺がそこまで言うと、少し固まった様子が見えた。
「お前が言いたい事も覚悟は分かった。
けどな、それでも高校生であるお前に、これ以上は怪盗行為を続けさせる訳にはいかねぇ」
同時にロストドライバーとナスカメモリを俺に渡す。
「だったら、どうするつもりだ」
「決闘だ。
どうせ、ここで俺が何度も言おうと、諦めるつもりはないんだろ。
だったら、白黒はっきりさせた方が良いだろ」
「・・・あぁ、やってやるよ!!」


 翔太郎さん達に連れられてのは、風都からそれ程遠くない採掘所だ。

 

 現在、俺が所有している数少ない土地の一つであり、普段は誰も通らない。

 

 施設を建造しようにも、様々な条件があって、不向きという事もあって、入らない弟に渡された場所だ。

 

 だが、こうして、誰の目も気にせず戦える場所という事もあって、これから行う戦いには丁度良い。

 

「覚悟はできているようだな、影」

 

『ジョーカー』

 

 鳴り響く音声に合わせるように、その腰には俺の持つロストドライバーとは違うWの文字が目立つドライバーだった。

 

『サイクロン』

 

 同時にドライバーに装填された緑色のメモリと共に、翔太郎さんはそのまま自身の持っているジョーカーメモリを挿入する。

 

「変身」

 

『サイクロンジョーカー』

 

 その音声が鳴り響くと共に翔太郎さんの姿はWへと変わる。

 

 身体の右半身がメタリックな緑、左半身はマットな黒。

 

 ほぼ人体に即したシンプルなプロポーションをしているが、複眼状の巨大な目とV時型の銀の触覚、そして右肩から伸びた銀色のマフラーが特徴的だ。

 

 それこそが、俺が仮面ライダーとして活動する前から、この街を守ってきたヒーロー、仮面ライダーW。

 

 その仮面ライダーWはそのまま俺の方へと構える。

 

「お前に、覚悟があるなら、俺を認めさせてみろ」

 

 同時に、俺もまた覚悟を決めるようにロストドライバーを腰に巻く。

 

『ナスカ』

 

 鳴り響く音は、これまで以上に覚悟を問われるものだった。

 

 それでも俺は、覚悟を決め、ロストドライバーに装填する。

 

 同時に、俺の姿もまた、ナスカへと変わる。

 

 それを見た翔太郎さんもまた構える。

 

 その構えから既に分かるが、これまで戦ってきた誰よりも強い相手だという事が彼らから流れる風で感じ取れた。

 

 そんな強者を前にしてなお、不思議と恐怖はない。

 

 ただ、この人に認めなければ、前に進めない。

 

 そして、戦いが始まった。

 

 最初に動いたのは翔太郎さんだ。

 

 俺もそれを追おうとするが、彼は既に目の前にいた。

 

「っ!」

 

 瞬時に俺は両手を構えて、防御を行うが、そこから繰り出される攻撃に驚かされた。

 

 疾風を思わせる速さと巧みな技による攻撃。

 

 それらは、俺の防御を簡単に崩し、更に俺を吹き飛ばすほどの威力を持っていた。

 

 しかし、それはあくまでも一撃のみ。

 

 すぐに体勢を整えれば、追撃が来るかと思ったが、来なかった。

 

 どうやらこちらの力を測るつもりらしい。

 

『彼らが変身する仮面ライダーWは二つのメモリを使う事で、二つの特性を同時に使用できる。

 

 しかも、どの組み合わせもなかなかに強力だ』

 

「あぁ、それは今、受けて、はっきり分かる」

 

 未だに痺れが取れない腕と共に、改めて見つめる。

 

 サイクロンという名前からして、既に風の記憶というのは分かっていたが、ジョーカーという単語には何なのか分からなかった。

 

 しかし、先程の攻防で格闘能力を飛躍的に上げる事ができると予想はできる。

 

 だが、それが分かっても、対処は難しい。

 

 疾風のような速さで繰り出す格闘はシンプルだからこそ厄介であり、また力の強さも相まって防ぐだけで精一杯だった。

 

 ならば、こちらも同じ力で対抗するまで。

 

 そう思った瞬間、俺は再び駆け出す。

 

 今度はこちらから仕掛けるためではなく、あくまで相手の出方を見るためだ。

 

 しかし、やはりというべきか、翔太郎さんの速度は俺を上回っており、気付けば俺の首元に手刀が迫っていた。

 

 咄嵯に首を曲げる事によって回避するが、彼の手刀は止まらない。

 

 だが、俺は瞬時に腰にあるナスカブレードで斬りつける。

 

 刃による斬撃に対して、翔太郎さんはそれをバックステップする事で避けた。

 

 そのまま俺は追撃を行おうとしたが

 

『サイクロントリガー!』

 

 聞こえた音声と共に、Wの姿はマッドな黒からクリアな青へと変わり、片手に持った銃を真っ直ぐと俺に向けていた。

 

「っ!?」

 

 驚きを隠せない俺に対して、そのまま引き金を引く。

 

 そこから銃口から放たれる風の弾丸が、まるでマシンガンのような速さで俺に襲い掛かる。

 

 一発一発が軽いが、速い。

 

 それ故に、全てを避ける事はできず、被弾してしまう。

 

 ダメージ自体は大した事はないが、衝撃だけは大きい。

 

 吹き飛ばされた俺は地面に転がりながらも何とか起き上がるが、既にWの姿はなかった。

 

「どこにっ!」

 

『ルナメタル!』

 

 聞こえた音と共に、既に瞬く間に接近していたWはそのまま手に持った棒状の武器をそのまま薙ぎ払う。

 

 薙ぎ払われた棒をなんとか避けるが、鞭のような動きをしたソレは俺の身体を叩く。

 

 痛みはあるが、そこまでではない。

 

 だが、次の攻撃を避ける事はできなかった。

 

『ヒートメタル!』

 

 鳴り響く音と共に叩き込まれた一撃は重く、地面を削りながら後退させられる。

 

「その程度か、お前の覚悟は」

 

 そう翔太郎さんから問いかけられる。

 

 ここまで、反撃する事すらできない。

 

 これが、これまで風都を守ってきた仮面ライダーの実力か……!  

 

 それでも、まだ倒れるわけにはいかない。

 

 ここで倒れてしまったら、何もかも終わってしまう気がするからだ。

 

 だから、負けられないんだ。

 

 たとえ相手がどんなに強くても、俺はまだ立ち上がれている。

 

 ならば、ここから先は俺の意地の問題だ。

 

「まだだ、俺はまだ諦めるつもりはない!」

 

『それは違うぞ、影』

 

 だが、そんな俺の言葉を否定するように霧彦が言う。

 

「どう違うんだ」

 

『全く違うぞ。

 

 君の覚悟を聞いた時から、既に私自身も君と共に戦う事を決めていた。

 

 だからこそ、そこは私達と言うべきだろ』

 

「……まったく、悪党の癖に臭い事を言うぜ」

 

 そう霧彦の言葉に対して、思わず笑みを浮かべる。

 

 だが

 

「けど、屑の相棒には悪党が丁度良いかもしれないな」

 

 俺はゆっくりと立ち上がる。

 

 同時に、ロストドライバーからナスカメモリに手を重ねる。

 

「何か覚悟はできているようだな」

 

「えぇ、ここからは、俺達の覚悟を見せる時ですから」

 

『ナスカ! レベルアップ!』

 

 通常、ナスカメモリを能力を使用する時に別のメモリへと書き換える事ができる。

 

 だが、これは裏技みたいな能力であり、能力を書き換えた先がナスカメモリならば、その能力を上げる事ができる。

 

 これを使えば、ナスカドーパントのようにレベルを上げる事に、その力を引き出す事ができるが、身体に追いつく事が出来なければ、生前の霧彦のように死を待ち受けるだけである。

 

 それでも

 

『翔太郎、これは』

 

「あぁ、覚悟を決めて、受けないといけないようだな」

 

『サイクロンジョーカー!』

 

 向こうの翔太郎さんとフィリップさんが、再びサイクロンジョーカーへと姿を変える。

 

 同時に俺自身もレベル2へと変わり、ゆっくりと構える。

 

「行きますよ!」

 

「来い!!」

 

 翔太郎さんの叫びと共に、俺は超加速で瞬く間に間合いを詰めて、ナスカブレードを振り下ろす。

 

 それをWはギリギリで避けて、蹴りを繰り出してくる。

 

 それを俺は左腕で受け止めると、そのまま右手で拳を放つ。

 

 しかし、それは受け止められ、そのまま振り払われてしまう。

 

 体勢が崩れた瞬間を狙って、Wはそのまま蹴りを繰り出す。

 

 何とか防御を行うが、衝撃までは殺しきれず、後ろに吹き飛ばされた。

 

 しかし、それだけでは終わらず、追撃を仕掛けるようにこちらに走り出す。

 

 俺はそれに対抗するべく、ナスカブレードを捨て、身軽になると共に蹴り上げる。

 

 互いに武器を持たない状態での攻撃であり、ぶつかり合った。

 

 そのまま俺は何度も、連続で殴りかかる。

 

 互いの攻撃を全て受け、全てを防いでいく。

 

「「『『はああああぁぁぁぁ!!!!」」』』

 

 意地と意地のぶつかり合い。

 

 俺達は互いを倒すために、全力で拳を振るう。

 

 一撃一撃に込められた思いは強く、そして重い。

 

 だが、俺とWの身体能力は互角。

 

 つまり、このまま戦い続ければ、体力が尽きるのは俺の方だろう。

 

 それでも、負けるわけにはいかない。

 

 ここで負けたら、俺は自分の意地を通す事ができない。

 

『ナスカ! マキシマムドライブ!』

 

『ジョーカー! マキシマムドライブ!』

 

 互いに自身の腰にあるマキシマムスロットにメモリをセットする。

 

 同時に俺の脚には青いエネルギー、Wの脚には紫色のエネルギーを纏った。

 

 俺は地面を踏み砕きながら駆け出し、Wも同じように駆け出した。

 

 互いのスピードはほぼ同等。

 

「『ジョーカーエクストリーム!』」

 

 Wの必殺技であるキックが俺に向かって放たれる。

 

 それに対して、俺も同じ様に必殺の一撃を放った。

 

 互いの必殺技がぶつかり合い、周囲に衝撃波が撒き散らされる。

 

 拮抗しているように見えるが、徐々にだが俺の足が押されていく。

 

 だが、この一撃だけは譲れない。

 

 例え相手が強くても、今度こそ自分自身の決意を貫く為に。

 

 だから、絶対に負けない! 

 

「「『『はああぁあぁぁぁぁ!!』』」」俺達の声と同時に、更に力を込めた。

 

 その声に応えるように、少しずつではあるが、確実にWの足を押し上げていく。

 

 そして、遂に…………! 

 

 ──―バキンッ!! 鈍い音が鳴り響き、俺は吹き飛ばされる。

 

「あぁ、くそっ」

 

 変身が解け、地面を転がる。

 

 やはり、俺の実力じゃ、風都を守り続けてきた相手に勝てるわけがなかったか。

 

 悔しいな。

 

 ここまでやって、結局何もできなかったなんて。

 

 だけど、不思議と後悔はない。

 

「まったく、ここまで無茶をするなんてな」

 

 そう言いながら、翔太郎さんもまた、変身を解除した。

 

「勝負は、俺の負けですかね」

 

「そうだな、お前は俺に負けた。

 

 けど、それだけだ」

 

 その言葉と共に翔太郎さんは俺の方へと手を伸ばす。

 

「お前の覚悟、確かに認めたぜ」

 

「翔太郎さん」

 

 その手を握り、握手を交わす。

 

 どうやら、認めてもらえた事に、俺は少し恥ずかしい。

 

「お前が怪盗で、誰かを泣かした時には容赦はしない。

 

 けど、これからお前は怪盗として、そして仮面ライダーとして誰かの悲しみを盗め。

 

 それは誓えるか」

 

「だけど、俺は俺自身の目的の為に」

 

「別に良いんじゃないか、何かを目的にして、戦うのは。

 

 その最中、誰かの涙を拭えるならば、もうお前は仮面ライダーだ」

 

 そう、俺に向けて言う。

 

「相変わらずハーフボイルドだね、君は」

 

『あぁ、どうやら私が思っていた以上にな』

 

「お前ら、揶揄うんじゃねぇよ!」

 

 そう翔太郎さんの言葉に反応するようにフィリップさんも霧彦は揶揄う。

 

 それに対して、翔太郎さんは思わず反応してしまうが、その光景に俺は思わず笑う。

 

「誰かの為に戦うか。

 

 どうやら、仮面ライダーは多忙で、仕方ないようだな」

 

「けど、やりがいはあるだろ」

 

 そう翔太郎さんの言葉に俺は小さく笑みを浮かべた。

 

 そして、ゆっくりと立ち上がる。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Sの行方/熱い謎

「俺達に依頼の手伝いですか?」

 

 その言葉と共に、その日、翔太郎さんからの呼び出しに応えて、探偵事務所に訪れていた。

 

 怪盗として、仮面ライダーとして活動を行っていた。

 

 そんな中での、翔太郎さんからの提案に、疑問を思い、首を傾げる。

 

「いや、俺、一応怪盗ですけど、探偵の手伝いって、何をすれば良いんですか?」

 

「それが、結構厄介な所があるんだよ」

 

「実はね、ストーカーをどうにかして欲しいっていう依頼なの」

 

 そう言いながら、亜樹子さんから、依頼の事について聞いた。

 

 依頼者は棗椰子祥子さん。

 

 どうやら、その娘である棗椰子あやさんが最近ストーカーされているらしく、そのストーカーに関する被害があるらしい。

 

 警察でも対処をしているらしいが、未だに解決できないらしい。

 

「そこで、俺達の所に依頼が来たんだけど、探偵側だけでは未だに謎が多いからな」

 

「そこで怪盗ですか。

 

 まぁ、一応はプライベートな部分は守りますが、あまり期待しないくださいよ」

 

「あぁ、悪いな」

 

 そう言いながら、俺は今回の依頼を受ける事になった。

 

 しかし

 

「フィリップさん、結構興奮しすぎじゃないですか?」

 

「あぁ、それは、本当にすまん」

 

 そう言いながら、フィリップさんの様子を見る。

 

 そこには、俺が連れてきた相棒であるヒサメを観察するように見ていた。

 

「ふむ、こうして症状を確認しても、ガイアメモリを使用した形跡もない。

 

 それなのに、確かにメモリ使用者と同じ状態がある。

 

 これはゾクゾクするねぇ!!」

 

「ねっねぇ!! 

 

 カゲっ! この人、なんとかできないの!!」

 

 そう叫びながら、こちらに助けを求めているヒサメ。

 

 現在、フィリップさんは、ヒサメの謎を探る為に色々と行っている。

 

「……ヒサメ」

 

「なっなによ」

 

「ガンバ!」

 

「カゲェ!!」

 

 俺はこれまでにない笑みを浮かべながら、そのまま向き直る。

 

「良いのかよ、お前の彼女だろ?」

 

「いや、彼女じゃないですよ」

 

 そうしながら、翔太郎さんは心配そうに言うが、今はそれよりも依頼だ。

 

「あぁ、仕方ないわね。

 

 とりあえず、私はフィリップ君がさすがに倫理的にやばくならないように見張っているから、翔太郎君と影君は依頼、よろしくね!」

 

「あぁ、分かった」

 

「了解しました」

 

 その言葉と共に、俺達はすぐに依頼主の所へと向かった。

 

 依頼主がいるマンションで、翔太郎さんは依頼主の部屋の中で。俺はそのままマンションの屋上で夜の闇に紛れながら、見張っていた。

 

 周りの景色に関しても、暗視機能で見張っていた。

 

「にしても、まさか怪盗が、こんな事をするとはな。

 

 まったく、未だに分からない事ばかりだな」

 

 そう呟いている間にも、何か人影が見えた。

 

 見ると、そこには怪しい影が見えたが

 

「あれは、もしかして?」

 

 俺は気になり、翔太郎さんにすぐに連絡する。

 

「怪しい影が見えました。

 

 もしかしたら、ストーカーの可能性があります」

 

「分かった、お前はそのまま見張っていてくれ」

 

「了解って!」

 

 そう連絡している内に、奴が懐から取り出した。

 

 すぐにズームして、見ると、それは見覚えがあるようで、よく分からない物だった。

 

 やがて、奴はそのまま自身の腕にそれを刺すと共に、姿は大きく変わった。

 

 頭に大きな電子レンジが目立つメカメカしいドーパントがいた。

 

「まさか、ドーパントかよ!」

 

『ナスカ』

 

 その音声と共に、俺はすぐにロストドライバーに腰に巻くと共に、ナスカメモリを起動させる。

 

「変身!」

 

 俺はそのまま仮面ライダーへと変身すると共に、壁を踏み台に、そのままドーパントへと向かって跳ぶ。

 

 ドーパントはすぐに俺の事を気づいたようで、身体をそのまま防御に入る。

 

「なんだか巫山戯た見た目。

 

 けど、厄介な奴かもな」

 

 これまで戦ってきたドーパントの多くは動物系統や自然現象などを能力としてメモリに納めている。

 

 理由は単純で、その方が動きやすいからだ。

 

 生物という事で、人間でも動ける範囲で強化される事も、自然現象で変幻自在に形が変える事ができる。

 

 その為、動きはとても行いやすい。

 

 だが、機械となると、少し話は変わる。

 

 機械は、その最も強い強みを活かせる反面、それ以外はあまり使う事ができない。

 

 もしも、ドーパントとして機械で優秀な部類で言うと、翔太郎さん達の持つメモリの一つであるトリガーのような戦う事を前提にしたメモリが強いだろう。

 

「けど、こいつは、見た目からしても分かるな!」

 

『オーブンドーパント。

 

 体内の熱を自在に操る事ができる。

 

 そう考えても、厄介とは言えるが』

 

 その言葉と共にオーブンドーパントの腕が徐々に赤くなっている。

 

 それはオーブンドーパント自身の熱が腕に溜まっている証拠であり、そのまま俺に向かって殴ってくる。

 

 すぐに避けると、後ろにあった壁を簡単に燃やした。

 

『影、接近戦は危険だ』

 

「分かっている」

 

 それと共に、俺はロストドライバーを、再度メモリへと伸ばす。

 

『イグアナ』

 

 その音声と共に、右肩にナスカのイグアナを模した小型ガトリング砲を装着する。

 

 同時に襲い掛かってくるオーブンドーパントに対して、次々と銃弾を放っていく。

 

 放たれた弾丸に対して、オーブンドーパントは、その鋼鉄の身体で受け止める。

 

 そうしている間に、俺はロストドライバーに装填されているナスカメモリを取り出し、そのままナスカブレードに装填する。

 

『イグアナマキシマムドライブ』

 

 鳴り響く音声と共に、ナスカブレードに小型ガトリング砲が合わさり、まるでミサイルランチャーを思わせる形へと変わる。

 

 そのままミサイルランチャーはそのままオーブンドーパントへと向かおうとした。

 

 だが

 

「えっなに!?」

 

 そうしていると、俺が放ったミサイルは、正反対に襲い掛かる。

 

 俺はすぐに避ける。

 

「何が起きたんだ?」

 

 疑問に思っている間にも、オーブンドーパントは姿を消していた。

 

「……何が起きたんだ、今のは?」




ふと思いついた短編SSです。

コロシアムは終わった。
学級裁判は終わった。
フィクションの世界は終わった。
それなのに、この状況は一体何なんだ。
フィクションが終わった後のフィクションの世界というべきなのか。
そう思いながら、僕、最原終一は周りを見渡す。
『ダンガンロンパシリーズ』というフィクション作品が流行し、僕達は、コロシアイを現実の人間で再現する究極のリアルフィクションを製作していた。

そして、そのコロシアイを止める為に、僕達は、終わらせたはずだった。
「おめでとうございます!今日からあなたは仮面ライダーです!」
そう、どこからともなく現れた女性は、その手に持っている箱をこちらに見せた。
「まさか、チームダンガンロンパのっ」
「チームダンガンロンパ、あぁ、白銀様が望んだこの世界ですね」
「望んだ?
まさか、これもフィクションとでも言うの?」
「フィクション、そうですね。
以前の世界では、確かにフィクションでしたね、この世界は」
「以前だって?」
その言葉に僕達は驚きを隠せなかった。
「白銀様は前回のデザイアグランプリの優勝者。
そして、彼女が望んだのは、ダンガンロンパが続いた世界です。
よって、現在の状況は彼女が優勝した結果となっています」
「何を巫山戯た事を、それもフィクションなのか?」
「それを決めるのは、あなた方だけです。
どうしますか、参加しますか、デザイアグランプリに?」
そう、僕、春川さん、夢野さんを見渡す。
僕達の目的は一つだったはずだ。
あのふざけたゲームを終わらせる事だ。
だけど、 僕は目の前の女性を見る。
彼女が、ダンガンロンパを終わらせた事に対して、次の手段として選んだのが、これなのだろう。
それは、確かに正しいかもしれない。
「僕達は、もうコロシアイには参加しない」
「そうですか、それは残念です」
彼女は本当に残念そうな顔をして、それから言った。
僕達の物語は終わっていると。
だから、これはただの遊びだと。
しかし、彼女の顔は真剣そのもので、嘘をついているようにも見えなかった。
僕達が知らない間に、何かが起きていたのだ。
いや、今は
「もしかしたら、あなたの望みが叶うかもしれないのに」
「っ、どういう事っ!」
「春川さん!」
その一言に反応する春川さんを慌てて止める。
その表情は険しく、睨み付けるようだった。
「勝ち残った者は「デザ神」の称号と共に《理想の世界をかなえる権利》が得られる。
それが、このゲーム、デザイアグランプルのルールですから」
「デザイアグランプル」
「コロシアイじゃないのか?」
「ある意味、同じですね。
謎の敵・ジャマトの脅威から街の平和を守ることを目的としており、ジャマトから人々を守る。

そして、最後の1人になり、デザ神になれば、叶えられます」
「またっ殺し合いみたいじゃないのっ、そんなの、参加する訳ないでしょ!!」
その言葉と共に春川さんは女性へと詰め寄る。
「・・・それで、この世界を今度こそ終わらせるのか」
「最原、どういうつもり!!」
それと共に、春川さんが詰め寄る。
「これが、もしもチームダンガンロンパの罠だとしても、僕らはその先に行かなきゃいけないんだよ」
「だからって」
「それにさ、こんなチャンス二度と来ないだろうし」
そう言って、僕はその箱を見る。
どうやら、箱は一つだけだった。
箱を開くと、そこには狐を思わせるマークのIDと非情に簡素なアイテムだった。
「僕は、コロシアイゲームを無くす。
その為に、戦うよ」
「おめでとうございます!今日からあなたは仮面ライダーです」

その、女性の明るい声からは考えられない程に不気味な感触に、確かに覚えはあった。
僕達が、あのコロシアイ学園に参加した時によく似た状況に。
まるで心臓を掴むような感覚、しかし、それは一瞬の出来事であり、すぐに収まった。
そして、僕の手には一つのベルトが握られていた。
それが、本当に、ダンガンロンパを倒す為の物語。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Sの行方/謎の怪電波

「っ!」
自身のマキシマムドライブによって放たれたミサイルに対して、俺はマシンガンですぐに撃つ。
ミサイルの強度はそれ程ない為、ミサイルの爆風は俺に襲い掛かりながら、そのまま後ろに下がる。
「あっぐっ、俺はあぁ」
「今のは一体何が起きたんだ!」
そうしながら、俺はナスカブレードを地面に刺しながら、すぐにオーブンドーパントの方を睨む。
しかし、既にそこにはオーブンドーパントの姿はなかった。
見れば、オーブンドーパントの変身は解除されていた。
それと共に僅かに見えたのは、普通のメモリよりも薄いガイアメモリだった。
「くそっ、待て!!」
それと共に、俺はすぐに追いかけた。
しかし、その姿は見えなかった。
「逃がしたか」
その言葉と共に、俺はナスカメモリを取ると共に変身を解除する。
「霧彦、今、何が起きたんだ?」
『分からない。
オーブンドーパントの能力なのか?』
その言葉に、首を傾げている。


「それで、ストーカーというのには、心当たりがあるのか?」

 

「えっえぇ」

 

 翔太郎さんはそう言いながら、今回の護衛対象である棗椰子あやさんからストーカーに関する情報を聞いていた。

 

 読者モデルをしているおっとりした黒縁メガネに毛先を緩くウェーブさせた茶髪の女性。

 

 最近人気が出始めたのだが何を勘違いしたのか自分を守ると息巻いている高校生の青年にストーカーされておりそれが目下の悩みの種だった。

 

「それで、そのストーカーに心当たりは?」

 

「ありますけど……でもそれはないと思いますよ? だって私あの人にあったことありませんし」

 

 そう言いながら、不安なのか、スカートの上に手を置く。

 

 強く握り締めており、それが何か強い思いがあったのか。

 

「んっ?」

 

「会ったことはないが知っているってか?」

 

「はい」

 

 翔太郎さんの問いに対して棗さんははっきりと答える。

 

「その、私のクラスメイトで、いつも私のことを気にかけてくれてたんですけどちょっと過保護過ぎかなぁとは思ってました」

 

 確かに彼女の言う通りかもしれない。自分の友達にストーカーがいるなんて思いたくもないことだ。しかし、現実に起こっている以上何かしらの手立てを取らなければならない。

 

「その人の連絡先はわかるか?」

 

「いえ、その、あまり関わり合いになりたくないなって思ってたから」

 

「じゃあどうやってそいつの情報を集めます?」

 

「とにかく、聞き込みだな。

 

 ここは、俺に任せて、悪いけど、お前は事務所に行って、フィリップに検索を頼んでくれないか?」

 

「分かりました」

 

 僕はすぐに探偵事務所に向かうことにした。

 

 探偵事務所に着くと、そこにはくたくたになっているヒサメがいた。

 

「おーい、ヒサメ。

 

 大丈夫か」

 

「影に見捨てられてから、大変だったのよ!!」

 

 そう言ったヒサメの視線を追うと、フィリップさんは頷いている様子だった。

 

「君からの提供通り、やはりメモリを使用した形式はない。

 

 その事を含めても、おそらくは今後も調査は必要だろうね」

 

 そうフィリップさんは告げる。どうやらかなり難航しているようだ。

 

「まぁ、いいわ。

 

 それよりもフィリップさんに教えて欲しいメモリの情報があるんです」

 

「メモリの情報? 

 

 それは一体なんだい?」

 

 そう、俺に尋ねてきた。

 

「えっと、メモリの名前はオーブン」

 

「オーブン。

 

 熱した空気または壁面などから発する赤外線によって食品を加熱し、焼いて、または乾燥を行う閉じた空間の調理器具の記憶だね。

 

 君の情報を聞く限りでも、鋼鉄の身体と共に自身の身体に熱をため込む事ができる。

 

 聞いた限りでもヒートメタルによく似ているな」

 

「俺も確かに思いました。

 

 けど、問題なのは、そこじゃないんですよ」

 

「というと?」

 

「その、俺が放ったミサイルを操ったんです」

 

「ミサイルを操るだって!?」

 

 その事にフィリップさんも驚きを隠せなかった。

 

「オーブンはあくまでも自身の体内の熱を操る事ができる程度の能力しか持ち合わせていないはずだ。

 

 それなのになぜ?」

 

「分からないですけど、多分その能力はオーブンだけではないと思うんです」

 

「ふむ、確かにその可能性はあるかもしれないな。

 

 もし仮にそうだとしても、どうやって」

 

 俺はそう言いながら、疑問に思う。

 

「それにしても、オーブンねぇ、私の家にある家具も最近は壊れかけちゃったから、新しいのを買いたいのよねぇ」

 

「へぇ、どんなのですか?」

 

「う~ん、最近はなんか携帯で操作したら自動的にやってくるみたいなのがあるらしいよ」

 

「えぇ、そんな事が」

 

「携帯で操作」

 

 そこで、俺はふと思った。

 

 あの時のミサイルの動作。

 

「……霧彦、聞きたい事がある」

 

『僕にかい?』

 

「ある意味、お前だからこそ確かめられる事だ。

 

 メモリの開発って、一体どうなっていたんだ?」

 

『そうだね。

 

 確か、新しい種類を作る事ができなくて、難航していたとは聞いていた。

 

 しかし、僕が知る限りではオーブンは確かにあったが、それが何か?』

 

「フィリップさん。

 

 もしも、仮にメモリが一つだけど、一つじゃなかったら、どうなりますか?」

 

「一つじゃない?」

 

 その言葉を聞いたフィリップさんは少し考え始める。

 

「まさか、いや、なるほど。

 

 これまでにないタイプだったから、考えた事はなかったけど、なるほど!」

 

 その言葉にフィリップさんは興奮し始める。

 

「問題は、どこにいたかだ」

 

「それは恐らく」

 

 俺は確信を持って言う。

 

「まさしく演技と言えるでしょうね」

 

 俺はそのまま笑みを浮かべる。




「はぁはぁ」
そこに、1人の男が歩いていた。
身体はコートを身に纏っていた。
真っ直ぐと、まるで夜道が見えるように、堂々と歩いていた。
そして、その道中で、誰もその姿を見つかる事はなかった。
はずだった
『ドーパント殿
明朝に貴殿のガイアメモリを頂く。
私には如何なる策も通用しない。
【怪盗ナスカ】』
それを見た瞬間、驚きを隠せなかった様子を見せる。
「っ」
「なぜっと、疑問に思うかね?
けど、僕としても、まさかこんなメモリがあるとは思わなかったよ、棗椰子あやさん」
「っ」
それと共に、その声をかけられた相手、棗椰子あやさんは後ろを振り向く。
そこにはフィリップが立っていた。
「なっ何の事を言っているんですかっ」
「君の持つ、そのメモリが何よりも証拠じゃない?」
それと共に、彼女の手に握り締められているのは、ガイアメモリだった。
「どうして、私だと」
「あのストーカー君の動きはどうも戦い慣れていると聞いた。
それこそ、周りが見えるような動きだとね。
翔太郎からその事を聞いて、少し疑問に思って、バットショットからそのデータを見た」
「そっそれが何だって言うんですか」
「それは視界があまりにも狭いはずのオーブンドーパントからは考えられない程に正確な動き。
何よりも、ミサイルが突然、軌道を変えた事に疑問が大きくなってね。
よって、僕達が考えた推理は、電波を使い操った真犯人がいるとね」
そうフィリップはそのまま彼女に問いかける。
「さて、他に反論は?」
「・・・えぇ、本当、嫌になるくらい正解だわ。
本当だったら、彼と結ばれるように仕込みたかったのに、お母さんったら、本当に入らない事をしてくれたわ」
それと共に彼女が取り出したのはガイアメモリだった。
しかし、その大きさは通常のガイアメモリよりも薄かった。
『マイクロウェーブ』
それと共に、そのまま窓へと飛び出した。
「まっ」
そうしていると共に、フィリップが見つめた先には、既にオーブンドーパントに変身させられた少年があやを受け止めていた。
「こうなったら、ここで目撃者を消すしかないわよね」
それと共に、少年の身体からメモリを取り出す。
そして、そのメモリを、自身のメモリが、まるで磁石のように合わさる。
『マイクロウェーブオーブン』
一つへと合わさったメモリが音声が鳴り響くと共に、あやはそのまま身体に差し込む。
それと共に、姿が変わったのは、オーブンドーパントだった。
しかし、僅かな変化が見え、それがマイクロウェーブオーブンドーパントの姿だった。
「さてさて、今回は結構面倒な事件でしたね。
ですが、今夜はあなたのメモリ、確かに頂く」
『ナスカ』
それと共に影もまた、ロストドライバーを腰に巻き、その手に持ったナスカメモリを取り出す。
「探偵と怪盗のコラボだからね、楽しみにしておけよ」
『ファング』『ジョーカー』
それに合わせるように、影の近くにはフィリップもまた起動させる。
それと共に、仮面ライダーナスカと仮面ライダーWが、その姿を現す。
「予告する、あんたのお宝、頂くぜ」
「『さぁ、お前の罪を数えろ!』」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Sの行方/炎上なる終わり

マイクロウェーブオーブン・ドーパントはドーパントの中でも強い部類に入るドーパントである。

 

マイクロウェーブオーブン、即ち電子レンジ同様にマイクロ波加熱を行う事により一切熱源の存在しない場所で人間が爆発させるという事が可能。

 

通常マイクロ波は視認できない都合上使用する本人をして精密な使い方はできておらず、本人のみならず手にしていたペットボトルなんかが内部から爆発するという事態となっている。

 

そして、オーブン、つまりは機械の身体を持ち、熱を自在に操る事ができる為に、近接戦闘でも強い。

 

遠近共に攻撃手段を持ち、高い防御力を持つマイクロウェーブオーブン・ドーパントは並みの存在では勝てない。

 

だからこそ

 

「はぁ」

 

「きゃぁ!」

 

そんなマイクロウェーブオーブン・ドーパントを圧倒するWはまさに怪物だった。

 

しかし、それこそ当然の事だ。

 

この程度の敵ならば今までも散々戦ってきたのだ。

 

Wの戦闘経験は既に一般人レベルを超えている。

 

故に今更苦戦などしない。

 

今、Wが変身している姿はファングジョーカーと呼ばれるWの9番目のフォームである。

 

他のフォームを凌ぐ高い格闘能力を持ち、闘争心を剥き出しにした野獣のような戦い方をする。

 

その野獣のような感覚により、マイクロウェーブオーブン・ドーパントの放つ見えない攻撃を的確に避けると共に一気に間合いを詰め、鋭い蹴りを放つ。

 

蹴りを受けたマイクロウェーブオーブン・ドーパントは後ろに吹っ飛び倒れる。

 

しかし、その隙を狙いWは再び駆け寄ると再び蹴撃を食らわせる。

 

マイクロウェーブオーブンの体が地面に倒れ込んだ所に更に追撃を仕掛ける。

 

起き上がるよりも先に拳を突き立てようと試みるが、マイクロウェーブオーブンが腕を振るう事で避けられてしまう。

 

だが、それでも構わず連続で攻撃を仕掛ける。

 

しかし、流石にそう何度も同じ様に上手く行く筈もなく、今度は腕で防御されてしまう。

 

だが、それは想定内だ。

 

ガードされた所で即座に反撃してくる事は予測済みであり、逆にカウンターを狙っていたのだ。

 

マイクロウェーブオーブンの腕を弾き、そのまま殴りかかる。

 

「まさか、ここまでとはな」

 

そう言いながら、影はその戦いを様子見しながら言う。

 

事前に、フィリップから言われた事態に備え、彼は変身した状態のままで見守っていた。

 

だが、ファングジョーカーによる圧倒的な戦いに自身の援護が必要なのかと思える程であった。

 

それ程までに圧倒的だ。

 

何より、フィリップは言っていた。

 

自分や影のように、戦い方を知っている訳ではない、だから、自分のやり方を見せる、と。

 

確かに、この場における最適解はこの戦い方であろう。

 

相手が接近戦を挑んでくるタイプである以上、こちらも接近戦に持ち込むしかない。

 

「こうなったら」

 

マイクロウェーブオーブン・ドーパントはその言葉と共に自らの体内に存在するメモリを排出させる。

 

マイクロウェーブオーブン、その力はマイクロ波を利用した熱の操作。体内のエネルギーを燃やした炎を纏い、Wに向かっていく。

 

それに対してWは身構える事無く、マイクロウェーブオーブンドーパントを見据える。

 

マイクロウェーブオーブンドーパントの全身には無数の炎が浮かび上がっている。

 

「どうせ、このまま終わるならば、全て巻き添えにしてやるわ」

 

「まさか、自爆っ!」

 

マイクロウェーブオーブン・ドーパントが何を行おうとしたのか、それを瞬時に理解したフィリップだったが、遅かった。

 

既にマイクロウェーブオーブンドーパントは全身の熱を一気に上げていく。

 

その姿はまさに爆弾のようであり、マイクロウェーブオーブンドーパントを中心にして周囲に爆発が起きようとしていた。

 

「悪いけど、それも既に予測済みだよ」

 

そう、フィリップは笑みを浮かべていた。

 

『ファング!マキシマムドライブ!』

 

同時にWはその腰にあるファングメモリの尻尾部分のレバーを3回押す。

 

それと共に、Wのマキシマムセイバーを形成させる。

 

「君を爆散する前に瞬時に倒す」

 

「無駄だよ、この距離ではっ」

 

『トライアングル!マキシマムドライブ!』

 

その音声が鳴り響くと共に、マイクロウェーブオーブンドーパントの目の前に三角形の紋章が現れる。

 

それはWの前にも現れていた。

 

「さてっと、行くぜ!!」

 

それは待機していたナスカも同じだった。

 

2人はそのまま目の前にある三角形の紋章に向かって、飛び込む。

 

「「「トライアングルファングストライザー!!」」」

 

3人の言葉が鳴り響き、三角形の紋章に驚きを隠せなかったマイクロウェーブオーブンドーパントは、すぐに爆発させようとした。

 

だが、それよりも早く、紋章から瞬間移動したWとナスカのダブルマキマムドライブが、マイクロウェーブオーブンドーパントを蹴り飛ばす。

 

「そんなっ私の恋がああぁぁ」

 

それと共にマイクロウェーブオーブンドーパントの叫び声だけが、空しく響いた。




今回の事件はいわゆる自作自演という部分が大きかった。
配信者である彼女の目的。
それは自身をストーカーとして操っていた男性と結ばれる事だった。
二つに分ける事ができるマイクロウェーブメモリは接続しているオーブンのメモリの持ち主を操る事ができる恐ろしいメモリだった。
だからこそ、彼女はオーブンのメモリを差した彼を操り、自分と相思相愛にさせようと企んでいた。
だが、それが怪盗に阻まれるとは、思いもしなかっただろう。
この事件をきっかけに彼女の活動は残念ながら終わってしまった。
今後、彼女には多くの不幸が訪れるだろうが、しかし、まだ彼女は若い。
罪を償って、今度こそ本当の意味で笑顔にする配信をして欲しい。

「なんというか、翔太郎さんって、タイプライターで書くんですね」
「まぁな、これこそ、ハードボイルドだからな。
というよりも、影、お前はその」
「まぁ、パソコンが結構便利ですからね」
「私よりも詳しくて、本当に頼もしいよ。
ねぇ、怪盗を止めたら、こっちで本格的に仕事をしない?」
「卒業後、進路がなかったら、お願いします」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

唇にL/その歌に気絶し

その日、俺達はいつも情報源である板野友美と河西智美の二人からの依頼だった。
どうやら、視聴者参加型のオーディション番組に出演したらしいが、その対戦相手とされるジミー中田に負けたらしい。
それが、不正である可能性が高い為、その調査を行って欲しいと。
最初は、何かの冗談だと思っていた。
「影っしっかりとしてぇ!!」
この状況になるまでは。
これまで、幾度もの戦いを乗り越えたはずの俺だったが、その歌を聴いた瞬間、倒れてしまった。
ヒサメに引きづられる形で、その場から離れたが
「しっ死ぬ」
まさか、ここで怪盗として生き残る為に培ってきた聴力を、ここまで恨めしく思うとは。
『ぁっあっあぁ』
それはどうやら霧彦も同じなのか、幽霊であるはずなのに、死にかけていた。
やがて、歌から少し離れた所で、なんとか会話できるまで、回復する。
「おい、影、無事か」
「むりです」
「だよねぇ」
そう言いながら、俺達と共に脱出した翔太郎さんと亜樹子さんも言う。
「確かに、あの殺人ソングで合格したならば、番組の不正を疑うのは当たり前だな。
けど、ジミーがメモリを使用していないだろうな」
「それは、また、なんで?」
「ここまで目立っている霧彦に対して、あいつは何も言わなかったからな」
そうして、俺はふと見上げる。
そこには、空中にいるはずなのに、水死体のように気絶している霧彦さんの姿だった。
「あぁ、確かに、これを見ても、あの態度だったからね」
「えっっと、私には見えないけど、そんなにやばい状態なの?」
「「「やばい、本当にやばい」」」
俺達はそう言いながら、水死体状態の霧彦を見つめる。


 その日、俺達はフーティックアイドルの会場に来ていた。

 

 そこで行われている殺人ソングを聴きながら、俺達は必死に耐えていた。

 

「あぁ、もぅ、こんなの絶対に嫌なのに。

 

 というよりも、なんでまじで、この歌を評価しているんだよ大貫さぁん」

 

 そう涙目になりながら、俺は審査員の1人を思いっきりと見つめる。

 

「影、知っている人なの?」

 

「知っているも何も! 

 

 伝説のアニソンシンガーだぞ!! 

 

 あの人がいなければ、これまでのアニソンがないという程のレジェンドだぜ!!」

 

『影君は結構オタクだからね』

 

 そう言いながら、俺の横に優雅に座っている霧彦がいた。

 

「あれ、霧彦さん。

 

 さっきまでいなかったのに、どこに?」

 

『幽霊というのは、とても便利だ。

 

 身体は簡単にすり抜ける事ができるから、彼が歌を歌った瞬間、すぐに下に移動した。

 

 テレビの撮影もあって、防音は完璧だったからね』

 

「うわぁ」

 

「悪人が」

 

 俺はそう言いながら、周りを見つめる。

 

「……」

 

 そうしていると、ふと、怪しい影が見える。

 

「霧彦」

 

『あぁ、どうやらそのようだね』

 

 同時に、盛り上がる会場の中で、ゆっくりと離れる。

 

「おい、まさかフィリップ」

 

「そうだよ、僕達は二人で一人の仮面シンガーだ!」

 

「なっ何を言っているんだ! 

 

 おい、影って!?」

 

 そう俺に話しかけようとしたが、その時には既にいない。

 

「影は、どこに」

 

「怪しい影が見えたから、離れるって」

 

「影ぇ!!!」

 

 翔太郎さんには悪いが、ここはすぐにでも向かわないと。

 

 そう俺が向かって行くと、見覚えのある顔が。

 

「お前は」

 

「あんたは、アクセルの」

 

 そこには、丁度、仮面ライダーアクセルこと照井竜がいた。

 

 以前の戦い以来、会っていないが、翔太郎さん達のように、俺達は仲は良いとは言えない。

 

「電波塔の道化師を追って、ここまで来たが、お前もか?」

 

「翔太郎さんの手伝いですよ。

 

 そういうあんたは、仕事で?」

 

「あぁ、そうだ。

 

 だが、怪盗の手を借りるつもりはない」

 

「そうですか。

 

 まぁ、どちらにしても、俺は怪しい奴を捕らえないといけないからね」

 

 そう、必要最低限の情報だけを交換するように、歩く。

 

 その態度は、ある意味、翔太郎さんが憧れるハードボイルドに近い人物像だけど、今は好きになれない。

 

「とりあえず、近道しますか?」

 

「あぁ、そうさせてもらう」

 

 その言葉と共に、俺は周りに人影がいないのか確認すると共に、カメレオポインターでそのまま照明裏まで来る。

 

 同時に、それが明らかにドーパントだというのが分かる。

 

「電波塔の道化師とかいう化け物は貴様か」

 

 その言葉と共に、俺達は同時に出てくる。

 

「誰だ、君達は」

 

「質問をしているのは、俺だ」

 

『アクセル』

 

 それと共に照井はそのままアクセルメモリを取り出す。

 

 同時に俺もまたナスカメモリを取り出す。

 

『ナスカ』

 

「変……身!」

 

「変身」

 

 同時に俺は仮面ライダーナスカに、照井は仮面ライダーアクセルへと変身する。

 

『あの姿、まさか、あのメモリか』

 

「何か知っているのか、霧彦?」

 

 そう、俺が疑問に思うよりも先に、照井は既に動き出していた。

 

 その手に持ったエンジンブレードで真っ直ぐとドーパントに向かって、走り出す。

 

 ドーパントは照井に対して、すぐに背中を見せて逃げ出した。

 

 人間を遙かに超える身体能力を持つドーパントだが、仮面ライダーへと変身した照井に対しては防戦一方の様子が見て、分かる。

 

 その証拠というべきか、ドーパントの攻撃は全て空を切り続けているからだ。

 

 それはまるで、照井の方が圧倒的優位にいるような光景であった。

 

 しかし、それでも逃げ続けるドーパント。

 

「何があるんだ?」

 

『その通りだ! 

 

 あのドーパントのメモリは』

 

 それに違和感を覚えていると、横から強烈な突進が襲い掛かる。

 

 俺はすぐにナスカブレードを構えながら、その攻撃を耐える。

 

「悪いが、彼は私の大事な客だからね」

 

『ホーンかっ!』

 

 それと共にメモリの正体をすぐに看破した霧彦からの情報を聞く。

 

「ホーン? 

 

 角の記憶か?」

 

『あぁ、頭と肩に牛のような鋭い角が生えた二足歩行の牛の姿をしており、動きは遅いが正面の直線移動限定で目で追えない程の高速移動能力を持ち、角が生えた肩によるショルダータックルが主な攻撃方法を持つ。

 

 巨体が高速移動で突っ込んでくるので並大抵の手段では止められないが一度高速移動をすると壁に激突するまで自分でも止められない為、正面に居なければ簡単に躱せる弱点がある』

 

「それは、こうして戦ってみて、よく分かる!」

 

 そう、目の前にいるホーン・ドーパントの攻撃は霧彦からの情報通りだ。

 

 先程のドーパントと比べても、その身体能力はかなり高い。

 

 なによりも、この狭いテレビ局で壁の向こうに人がいる状況で、攻撃を避ければ、その先にいる人を巻き込んでしまう。

 

 だからこそ、簡単に攻撃を避ける事ができない。そんな状況での戦いは、非常にやり辛いものであった。

 

 しかし、それでも戦いを続けていくうちに少しずつ相手の行動パターンが見えてくる。

 

 そして

 

「霧彦、後ろの壁には」

 

『問題ない』

 

 後ろの壁の先を幽霊だからこそ、見る事ができる。

 

「だったら」

 

『アストロノート』

 

 それと共に、俺が発動した能力。

 

 同時に迫ってきた突進攻撃だが、無重力となった事で、その勢いで壁は破壊する。

 

 だが

 

「なっ足が、つかない!!」

 

 ホーン・ドーパントは無重力になった事で、足に力を入れる事ができない様子。

 

 それと共に、俺はナスカメモリをメモリスロットにセットする。

 

『アストロノートマキシマムドライブ!』

 

 同時に俺の右腕にロケットを模したエネルギーを纏い、そのままホーン・ドーパントに一気に接近し渾身の一撃を向かう。

 

「突撃対決行こうぜ、ドーパント!!」

 

 その言葉と共に放たれた拳がホーンの腹部に命中し、吹き飛ばす。

 

 それと同時に変身を解除して床に降り立つと同時に、霧彦からの報告が入る。

 

『倒したようだね』

 

 そう言われ、俺は変身を解くと、倒れているホーンを見る。

 

 完全に意識を失っているようだ。

 

「さてっと、こいつから」

 

 そうして、俺が近づこうとした時だった。

 

 ホーンの使用者は、その場で爆散した。

 

「今のはっ」

 

『ミュージアムがよく行う手だね。

 

 情報源を絶つ為にね』

 

「本当に厄介だな。

 

 とにかく、照井の所へ行くか」

 

 そう、渋々、俺は向かって行く。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

唇にL/嘘が暴かれた時

『ライアー。

 

 それがあのドーパントのメモリの正体だ』

 

 あれから、照井さんと合流した俺達は霧彦からの情報を伝える。

 

「ライアー? 

 

 つまり、それは嘘という事?」

 

「あぁ、だから、それを自信満々に見せたのか」

 

 それと共に、事務所で見せたガイアメモリだと思い込んでいた酢昆布を照井さんはそのまま叩きつけた。

 

「くそ、してやられた!」

 

「だけど、これで分かったぜ。

 

 なんでジミーの奴が勝ち抜く事ができたのか。

 

 審査員は、ライアードーパントに嘘の針を打ち込まれたからだったのか」

 

「けど、問題は他にもある。

 

 それは」

 

「あぁ、メモリの所有者だな」

 

『ライアーメモリは、私が死んだ後に売られたからね。

 

 さすがに正体は誰なのかも分からない。

 

 だが、本当にあのメモリを使いこなせる人物がいるとは』

 

「それ程なのか?」

 

『嘘を思い込ませるというのは、使いこなすにもかなりのテクニックがいる。

 

 何よりもライアードーパント自身の身体能力はマスカレードと変わらないからね』

 

「それは、あの時の戦闘で分かった」

 

 実際に、俺達から見ても、アクセルとライアードーパントが圧倒していたのは、目に見えて分かった。

 

「未だにドーパントの正体は分からないか」

 

「だとしても、手掛かりはある。

 

 影、お前は他に手掛かりがないか、探してくれないか。

 

 俺も、もう少し探してみるわ」

 

「了解しました」

 

 そう言いながら、翔太郎さんは、そのまま出て行った。

 

 そう、見送った後、フィリップさんが俺に近づいた。

 

「影、単刀直入に言うが、君は既に何か気づいているんじゃないのか?」

 

「正直に言うと、未だに正解か、どうか分かりません。

 

 何よりも疑問なのは、ライアーの奴がジミーを合格させるのに、何か得になるのかですけど」

 

 あの酷い歌声をわざわざ合格させるのに理由が分からない。

 

「という事で、俺は少しジミーを見張ってみます。

 

 ドーパントじゃないとしても、何か手掛かりがあるかもしれないので」

 

「あぁ、頼めるかい?」

 

 俺はそのままフィリップさんに言われると共に、そのまま事務所から出て行く。

 

 事務所から出た俺がまずは、ジミーの尾行だった。

 

 奴自身、特に人から隠れるという行動をしている訳ではなく、相変わらずギターを背負っている。

 

 そんな中で

 

「んっ、これは?」

 

 ふと、彼が何かに落ちているのに気づいたようだ。

 

 遠くで見えにくいのもあって、バタフライウォッチャーで見つめる。

 

『何が見えた』

 

「工場跡でサインが欲しい? 

 

 なんで、そんな手紙が」

 

 そうしていると共に、ジミーは、そのまま工場跡へと向かった。

 

「なんで、工場跡なんかに?」

 

『……ライアーのメモリと適合している奴だ。

 

 もしも、そんな奴だと、考えたらっ』

 

「あぁ、こういう屑な考え、俺にも分かったぞ!」

 

 同時にすぐに俺は走り出した。

 

 建物と建物の間を走りながら、すぐに工場跡に向かって走り出す。

 

 そのまま向かった先の工場で奇妙な光が僅かだが見えた。

 

「霧彦? 

 

 何が見える?」

 

『あれは、Wとアクセル!? 

 

 それにっライアードーパント!!』

 

「なるほどっ、最低の野郎だなぁ!!」

 

『ナスカ』

 

 それと共に、俺はすぐにロストドライバーを腰に巻くと共にナスカメモリを挿入する。

 

「変身!」

 

 俺は仮面ライダーナスカへと変身すると共に、そのまま着地する。

 

 だが

 

「無理に決まっているでしょ! 

 

 どれだけ彼を見ていると思っているの! 

 

 あの子はね、信じられないぐらい才能がないんだから!!」

 

 それは、まさに最悪のタイミングだった。

 

 ライアードーパントを倒そうとした翔太郎さんを倒すのを止めた女性。

 

 それは、俺達が路上ライブを行っている時に応援していた女性だった。

 

「遅かったっ」

 

『影、どういう事なんだ?』

 

「ジミーを尾行していたら、謎の手紙が彼の元に届いていたんだ。

 

 何があると思っていたけど」

 

「あいつはここで金の受け取りをしていた。

 

 つまり、あいつは始めから、これを狙ってっ」

 

 同時にライアードーパントの狙いに気づき、怒りを隠せない様子だった

 

 ライアードーパントはそのままジミーを追い込むように、囁く。

 

「ジミー君!!」

 

「あっ待て!!」

 

 女性はすぐにジミーの元へと急ぐ。

 

 それに対して、翔太郎さん達はすぐに彼女を追った。

 

 しかし

 

「今だな、《赤い仮面ライダーと青い仮面ライダーはドーパントだ》!」

 

「あっ」

 

 すぐにライアードーパントの口から出た棘は、そのまま翔太郎に刺される。

 

「うっ、あぁ」

 

 そうして、翔太郎さんは一旦、動きを止めると共に、その銃口は俺達に向けていた。

 

 それと共に銃弾は真っ直ぐと俺達に当たる。

 

「なっ、止めろ! 

 

 奴の嘘に惑わせるな!」

 

『翔太郎、ドーパントが何か言っているよ?』

 

「なに、これでも喰らいな!」

 

 それと共に、翔太郎さん達はさらに追い打ちをするように攻撃を放つ。

 

「ぐっ、これは!」

 

 宙と飛ぶ弾丸は軌道を変幻自在に変え、俺達に襲い掛かる。

 

「翔太郎さんっ! 

 

 くそっ」

 

「ちっ、影っ! 

 

 お前はドーパントの方をなんとかしろ!! 

 

 こいつらは俺が止める!!」

 

「あぁ!!」

 

 照井さんからの言葉を聞くと共に、俺はすぐに向かおうとした。

 

「おっと、ならば。

 

《青い仮面ライダーはドーパントだ》っと」

 

「んっ?」

 

 そうしていると、今度は亜樹子さんの方へと当てられた。

 

「おぉ、まさかこんな近くにいたとは!!」

 

「ちょっ、亜樹子さん!!」

 

 そうしていると、亜樹子さんはそのまま俺に襲い掛かってきた。

 

「さすがに亜樹子さんを傷つける訳にはいかない!!」

 

 そう俺は悩んでいる間にも、ライアードーパントは既に逃げていた。

 

「楽しませて貰ったよぉ」

 

 その声と共に、ライアードーパントは完全に姿を消した。

 

「んっ、あれ?」

 

「あれれ?」

 

 やがて、彼らはすぐに攻撃を止めた。

 

「これは?」

 

「照井?」

 

「あれ、影君?」

 

「元に戻りましたか」

 

『なるほど、ライアードーパントの能力の範囲はそれ程広くないらしい』

 

「そう考えると、納得かもしれない」

 

 もしも、ライアードーパントの能力の範囲が広く、継続的だったら、わざわざテレビ局で嘘を打ち込む必要はない。

 

「わぁ、ごめんね!!」

 

「それは、別に大丈夫です。

 

 けど、今は」

 

 そうしていると共に俺達が見たのは自分の合格がドーパントによって作られた事、そしてそれがファンである女性が行った事だと分かりショックを受けるジミー。

 

 そして、そんなジミーにその事を知られて放心している女性。

 

「本当に、これまでとは違って、嫌な事件になるよ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

14話

影達が保護する形になった今回の事件の関係者である墨田ゆきほさん。
彼女は、何の楽しみも見つけられずに生きていたある日、雪の街角で必死に歌うジミー中田から笑顔を向けられた事で、人生が一変した事を語る。
彼にとってはファンサービスだったかもしれないが、墨田さんにとっては、それが生きる喜びになっていた。
「私、間違っていたのかな」
そう、自責の念と共に、落ち込んでいた。
その事について、翔太郎さんはすぐに何かを言おうとしたが、影がそれを止めた。
「影」
「あぁ、こういうのは、多分あいつの方が向いているかもしれないっす」
「・・・」
その言葉と共に翔太郎さんは私を見る。
それと共に、翔太郎さんもまた頷くと。
「俺は、ジミーを探す。
影は、ライアーの対策を頼めるか?」
「えぇ」
そう、影もまた、すぐにフィリップさんの元へと向かった。
「・・・私も、正直、なんで今、影の手伝いをしているのか分かりません。
あの時、偶然助けられた事がきっかけかもしれません。
今やっている事も、影にとっては邪魔かもしれないから、墨田さんの気持ちも分かります」
「ヒサメちゃん。
それは、もしかして」
「だから、墨田さん。
もう一回、ジミーさんに会いましょう。
そうじゃないと、あなたも、墨田さんもきっと後悔します!」
そう私は、今言える事を伝える。


 風都ラジオ局。

 

 そこには若菜のファンでごった返していた。

 

「皆、聞いた? 若菜姫が電波塔の道化師と会うって話」

 

 ファンの一人と思われる少年が、ほかのファンにそう言っていると、コソコソと人影が現れる

 

「何処のどいつだ? 俺の名を語って若菜姫と会おうって言うのは……」

 

 それこそが、ライアー・ドーパントの変身者である事は、遠くで確認する限りでも分かる。

 

「あ! 若菜姫だ!」

 

 そう言ってる間に、少年の言葉にファン達は車に乗り込もうとしている若菜に精いっぱい応援の言葉を贈る。

 

 若菜は黒服の二人組に車の中に乗せられてもなお、ファン達に手を振っている。

 

「下がってください」

 

「もう出発しますので」

 

【LIAR】

 

 それを見た、沢田はメモリを起動させると共に、そのままライアー・ドーパントになる。

 

 そうして若菜を乗せた車を尾行して、若菜が車から降りるとコッソリと後をつけた。

 

 すると若菜はとある舞台会場に足を運んでいた。

 

 すると舞台袖から

 

「ハロー! 若菜姫! 電波塔の道化師だよん!」

 

『なんだあのアホみたいな恰好は?』

 

 ライアーの言うとおり、

 

 その自称電波塔の道化師は、どうみてもアホじゃないかと言いたくなるような格好だ。

 

 ピエロ云々も敵わないくらいの間抜け極まる服装とメイクだ。

 

 しかも歩く度にギャグ漫画みたいな足音までする始末。

 

「叶えたい、夢は、なにかな? 教えてよ~!」

 

 自称電波塔の道化師に、若菜は少し口元を笑わせる。

 

「ポエムも書いてあげるよ! ……いまいち、街の皆には、評判悪いんだけどね」

 

『こ、この野郎……!』

 

 それは明らかに自分のことをバカにされ、ライアーは腹を煮えくりかえらせる。

 

「詩集も出てるんだ。全ッ然売れなかったけどね」

 

『いい加減にしろ! あんなもんでもな、一生懸命書いたんだよ! 若菜姫、聞いてくれ。俺が、俺が本物の……うわ!』

 

 偽物に対して苛立ちを隠しきれずにライアー・ドーパントは直に反論に向かうが、その時彼にスポットライトが浴びせられた。

 

「ハッ! よく来たな……嘘つき野郎」

 

 自称電波塔の道化師は、被り物を脱いで首を回すと、被り物をライアーに投げつけた。

 

 メイクをふき取り、翔太郎さんは正体を見せた。

 

 そして、もう一つのスポットライトが照らす先には、黒服を着た上にグラサンと眼鏡をかけて変装していた照井と亜樹子さんがいた。

 

『貴様ら、まさか罠を?』

 

「その通り。お前がうっかり園咲若菜のリスナーである証拠を残したお蔭だ、ライアー・ドーパント。……いや、沢田さちお!」

 

「嘘つきも意外に騙されやすいってことかな」

 

『そんな罠に、若菜姫が協力を? ……若菜姫! 貴様ァ……!』

 

 ライアーは怒って若菜に襲いかかろうとするも、

 

 だが

 

『スネーク』

 

 若菜姫の腕の時計から鳴り響く音声と共に、ライアー・ドーパントに向かって、衝撃が襲う。

 

 同時に、その変装が解かれると共に、そこにはヒサメがいた。

 

「だっ誰だ、お前は!!」

 

「私は、怪盗の助手。

 

 悪いけど、今回はあなたのメモリを盗らせて貰うわ」

 

「いかがでしたか? 

 

 化かされた気分は」

 

 その言葉と共に、ようやく俺の出番とばかりにスポットライトに当てられる。

 

『クソー! 貴様ら許さん!』

 

「許せねえのはこっちのほうだ! ……少しは騙される方の気持も知りやがれ。行くぜ、フィリップ、影、照井」

 

「応よ」

 

「あんたのお宝、頂くぜ」

 

 4人はドライバーを装着してメモリを構える。

 

『CYCLONE』『JOKER』

 

『ACCEL』

 

『NASCA』

 

「「「「変身」」」」」

 

 その音声が鳴り響くと共に、俺達は瞬時に仮面ライダーへと変身する。

 

 それと共に、俺達はそのまま屋上へと逃げていくライアー・ドーパントを追いかけながら、迫っていく。

 

 身体的スペックは、圧倒的にこちらが有利なのは変わりないが、口から吐き出される針には当たらないように注意をしなければならない為、なかなか近づく事ができない。

 

「影! 照井! 手筈通り、いけるか!」

 

「勿論です!!」

 

「俺に質問するな」

 

 その言葉と共に、瞬時に照井が接近する。

 

 瞬発的な加速で、ライアー・ドーパントへと接近し、僅かだが針を吐き出すのを止める。そして

 

『METAL』

 

『CYCLONEMETAL』

 

 同時にWの姿はサイクロンメタルに。

 

 それと共に各々のメモリガジェットを武器に装着する。

 

『BUTTERFLY』『SPIDER』

 

 その音声と共に、俺はナスカブレードをそのまま薙ぎ払うと共に鱗粉がライアー・ドーパントの視界を覆う。

 

「なっ、目がっ」

 

「今だっと!」

 

 その言葉と共に翔太郎さんはメタルシャフトを薙ぎ払うと共に、ライアー・ドーパントの一番厄介な口を閉ざす。

 

「どうだ? ジミーの怒りの分も、叩きつけてやる!」

 

 それと共に翔太郎さんも

 

「こうなったら……無敵の必殺技!!」

 

 ライアーの発言に俺達は身構える。

 

 だが

 

「嘘だよ~ん」

 

 同時に、その手に持っていた武器から無数の針を放っていく。

 

「全く。……世話が焼ける」

 

 アクセルはバイクフォームに変形して落下していくWを背中に乗せた。

 

 さらにはその状態でビルの外壁であるにも関わらず、グングンと直進していく。

 

「なっ」

 

「こっちを忘れるなよ」

 

『parrot! MAXIMUMDRIVE!』

 

 鳴り響く音声と共に、俺はその手にあるナスカブレードを真っ直ぐとライアー・ドーパントに向ける。

 

「《ライダーキックするのは若菜姫だ》と!!」

 

 俺はそのままナスカブレードを真っ直ぐとライアー・ドーパントを突く。

 

「えっ若菜姫!? 

 

 わぁ、若菜姫!!」

 

「そのまま間抜けに倒されろ!!」

 

『JOKERMAXIMUMDRIVE!』

 

 その音声と共に、翔太郎さん達も構える。

 

「『ジョーカーエクストリーム』」

 

 2人はそのまま同時に真っ直ぐとライアー・ドーパントにライダーキックを食らわす。

 

 それによって、吹き飛ばされたライアードーパントは吹き飛ばされ、そのままメモリブレイクされる。

 

 それと共にメモリブレイクされたメモリを回収する。

 

「お前のメモリ、確かに頂いた」

 

 




ジミーはゆきほさんと同じ工場で、一緒に働き始めたらしい。
歌を続けているのかどうかは、まだ聞いていないが。
取り合えず奴は笑顔だ。
「それにしても、翔太郎さん、話題ですね」
「その事は言うな」
そう言いながら、影が取り出した雑誌に思わず頭を掻いてしまう。
――幻の超デュオ 仮面シンガーは誰だ!?――
そう写真が載っており、クイーンとエリザベスのCDデビューに関する記事は下部の目立ちにくいところに載っている。
「影!
こうなったら、私達も参加しようよ」
「はぁ!!」
そうしていると、何やらヒサメちゃんが言ってきた。
「嫌だよ!!
なんで、俺がそんな事をやらないといけないんだよ!!」
「だって、この前のジミーさんのライブで感動して!!」
「お前、まだライアーにやられたんじゃないのか」
そう言いながら、影は呆れた様子でいた。
あのフューディックアイドルで、ヒサメちゃんが何が見たのかについては、今は聞かないでおこう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Dの依頼者/恐怖のマンション

その日の依頼は本当に奇妙だとしか言えなかった。
普段ならば、ガイアメモリの被害者達が訪ねてくるこの事務所で依頼を受け、俺達がそれを解決する。
中には、真犯人自身がガイアメモリの所持者というパターンもあったが、本当にそれがこれまでのパターンだった。
だからこそ、探偵事務所にいた全員が、その日尋ねてきた依頼人を見て、驚きを隠せなかった。
ここまで来る為に、着込んでいたのか、身体を覆う程のコートに、帽子など、この季節では怪しすぎる格好。
その格好を着た人物達は俺達に依頼があると聞いて、いたが。
「実は、俺達を」
「この姿にした奴を探して欲しいんです!!」
「この姿?
それって、どういう事なんだ?」
どうも言っている事が分からず、翔太郎さんは呟く。
それと共に、2人は意を決したように、そのままコートを脱ぎ捨てる。
その姿には俺達は驚きを隠せなかった。
それは仕方ない事だった。
確かに人型を保っているが、全身に防護服を纏ったような凹凸のない体つきで口元が防塵マスクの様な形状をしている。
そして、もう1人は額に渦巻を象った前立てが付いており、胴体部がドラム式洗濯機で形成されている。
それは明らかに
「「「どっドーパント!!」
まさか、ドーパント自身が依頼に来るとは、夢にも思わなかった。


 依頼人であるドーパントの変身者は風都の商店街で掃除代行と衣服のクリーニングを営んでいる店の店長とその弟。

 

 クリーニング担当の店長洗満さんと掃除代行を務める弟洗清弘さん。

 

 店の名前は「洗クリーニング」。

 

 親子三代続けてきた地域密着型のお店で、最近評判が上がって客数が伸びてきたという。

 

 だが、見てみる限りだと、メモリの力を使った可能性があると考えていたが、話を聞いていると、どうやら違うようだ。

 

「実は、数週間前から今までにないぐらいに仕事ができるようになったんです」

 

「最初は、努力を怠らずにやったから、ついにやれるようになったんだぁと思ったんです。だけど」

 

「昨日、何か音が聞こえたと思ったら、急に身体が光り始めて、気づいたら、この身体に」

 

「本当なのか?」

 

 とても信じられない内容に俺も翔太郎さんも思わず疑いの目を向けていた。

 

「ふむ、興味深い」

 

「フィリップさん!?」

 

 そうしていると、普段はあまり表に出ないはずのフィリップさんが現れた。

 

 その事に俺達は驚きを隠せずにいたが、どうしたんだ? 

 

「この反応からして、まさか過剰適合者だと考えて良いだろ」

 

「過剰適合者?」

 

 あまり聞いた事ない言葉で、俺達は思わず首を傾げる。

 

『時たま現れるガイアメモリとの相性度が異常なまでに高い体質の人間の事だ。

 

 彼らの姿から考えてもクリーンとウォッシュだろう』

 

「あれ、あなたって確か霧彦さん!!」

 

「えっ、えぇ、確か亡くなったんじゃあ!!」

 

『やぁ、久し振りだね。

 

 それにしても、まさか知り合いだとは、思わなかったよ』

 

「過剰適合者か。

 

 だとしたら、翔太郎。

 

 彼らをメモリブレイクするのは危険だ」

 

「どういう事なんだ?」

 

「過剰適合者のメモリを破壊すれば、その所有者も死んでしまう。

 

 これは恐ろしく相性の良いからね」

 

「なんだってっ」

 

 これまではメモリブレイクを行えば、ガイアメモリを破壊する事ができた。

 

 しかし、今回の相手に対して、それを行えば、確実に死んでしまう。

 

「どうすれば」

 

「それに関しては既に対策済みだ。

 

 明日には、無事に解決できる」

 

「それはっ本当ですか!」

 

「良かったぁ、この姿じゃ、仕事なんて、できないからぁ」

 

「だけど、別の問題があるよ!」

 

「あぁ、洗さん。

 

 何か違和感を感じた事はないか? 

 

 例えば、こう、気絶したり、変な痛みがあったり」

 

「痛み? 

 

 あぁ、そう言えば、あの時!」

 

「あの時?」

 

「数週間前、配達であるマンションに行ったんです。

 

 その時に、急に、痛みが走って」

 

「その時からだったよな」

 

 どうやら、そのマンションで間違いないようだ。

 

「それで、そのマンションって?」

 

「エクスペリオンマンション」

 

「あぁ、あの話題の」

 

 なんでも様々な新機能を実験的に行う事で、家賃が安い事で有名なマンションだ。

 

 入居者には何か条件があるらしいが、その詳細は未だに不明だ。

 

「とにかく、そのマンションを調べる必要があるな、行くぞ」

 

「あぁ」

 

 翔太郎さんの言葉を合図に、俺達はすぐに向かった。

 

 さすがに依頼人である2人を連れていく訳にはいかなかったので、事務所で待って貰っている。

 

 俺と翔太郎さんはそのまま目的地であるマンションに到着する。

 

 最近できたばっかりという事もあってか、外装はかなり綺麗になっている。

 

 俺はエントランスに入り、エレベーターに乗って最上階まで向かう。

 

 洗さん達の言うように、本当に値段が安く、普通の一戸建てぐらいの料金で借りられると聞く。

 

 確かに、これだけ安ければ、試す価値はあるかもしれない。

 

 そうしながら、俺達は各々の道具を使いながら、マンションで怪しい所がないか探す。

 

「それにしても、本当に凄いな」

 

「あら、こんな所で見ない子ね」

 

「うわっと」

 

 そう、振り返ると、そこにいたのは派手なドレスを身に纏っている女性だった。年齢は二十代前半といったところだろうか? かなり美人なので、つい見惚れてしまう。

 

 そんな俺の様子を見てか、女性はクスリと笑みを浮かべる。

 

 そして、ゆっくりとこちらに向かってくる。

 

 俺は慌てて距離を取る。

 

「あら、いきなりどうかしたのかしら?」

 

「いや、ちょっと」

 

 ここに来て、まさか陰キャぼっちスキルが発動するとは思わなかった。

 

 俺は何とか誤魔化そうとするが、上手く言葉が出てこなかった。

 

 そんな様子を女性はクスッと笑う。

 

 なんだか少し恥ずかしくなってきた。

 

 だが、ふと、見えた物に、すぐに表情が変わる。

 

「お前、ガイアメモリを」

 

「ふふっ、さすがに察しが良いわね」

 

 その言葉と共に、女性が取り出したのはガイアメモリ。

 

『クイーン』

 

 そのまま女性は、そのガイアメモリを身体に差し込む。

 

 同時に物語に登場する女王様のような恰好をした目の部分しかない仮面を被ったドーパントへと変わった。

 

『クイーンドーパント! 

 

 単体では厄介だが、周りにいる者を支配する事ができる! 

 

 影!』

 

「あぁ!」

 

 霧彦の声と共に、俺はすぐにナスカメモリを取りだし、仮面ライダーナスカへと変身する。

 

 俺はすぐにナスカブレードを取り出すが

 

『影、すぐに横へと飛べ!』

 

 その声が聞こえると共に、俺はすぐに飛び出る。

 

 同時にナスカのマフラーを近くにある配水管へと伸ばしながら、すぐに上の階へと向かう。

 

 それと共に見ると、そこには騎士を思わせるドーパントがいた。

 

 しかも、一体だけではない。

 

 マンションの下にはラット、ウィッチ、スタッグなど数々のドーパントがいた。

 

『LUNAJOKER』

 

 その音声は下からであり、どうやら翔太郎さんも異常を感じて、すぐに俺と同じように飛び出していた。

 

「おい、これは一体何が起きているんだ!?」

 

『ここまでの数のドーパントが揃うなど、あり得ない』

 

「これじゃ、まるで、ドーパントマンションじゃないかよ」

 

 俺は思わず呟きながらも、すぐに迫るドーパント達と戦う。

 

 この数を相手にするのは危険だ。

 

 俺達はすぐにそのまま屋上へと向かう。

 

『LUNAMETAL』

 

 それと共に、出入り口をメタルシャフトで閉ざす。

 

「おい、どういう事だよ、これは」

 

『もしかして、罠だったのか』

 

「洗さん達が、填めた?」

 

『いや、あの時の2人を調べたが、過剰適合者なのは間違いない。

 

 彼らが嘘はついていない。

 

 そこから考えれば』

 

「あの2人を過剰適合者だと知って、わざとやったという事か!」

 

 その事に怒りを燃やす翔太郎さん。

 

「さて、どうする? 

 

 さすがに数の差が圧倒的すぎる」

 

『その事だが、翔太郎。

 

 今のままでは確かに無理だが、明日の朝まで辛抱だ』

 

「明日の朝? 

 

 どういう事だ?」

 

『元々、荒兄弟の為の手だった。

 

 だけど、この状況を逆転できるかもしれない』

 

「あれか」

 

 その言葉に俺も思い出したように呟く。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

16話

「うぅ、探偵さん達は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だよ、翔太郎君達だったら、きっと「失礼する」えっ竜君!」
それと共に、事務所に訪れたのは、照井だった。
それを見て、すぐに慌てた。
「あっ、竜君、これはね」
「事情は既にフィリップから聞いている。
洗兄弟が被害者という事もな。
同時に、現在、危機的状況でもある」
「危機的状況?」
「君達がドーパントになったと思われるマンション。
あそこはドーパント達の巣窟だった」
「そっそんな」
「けど、どうしたら」
「待つんだ」
「待つって」
「約束の時間に」


 住人のほとんどがドーパント。

 

 その驚異的な状況に陥りながら、俺と翔太郎さんはそのままマンションの屋上に来ていた。

 

 屋上の、ただ一つの出入り口を閉ざしながら、状況を再び確認していた。

 

『敵であるドーパントの数は未だに不明。

 

 さらには、メモリの種類のバラバラだ。

 

 よって、このまま現状僕達では倒す事は不可能だ』

 

 そう、翔太郎さんの右側に憑依しているフィリップさんが改めて、現在の状況を確認する。

 

 ドーパント達が何時、攻め込んでも可笑しくない状況ではあるが、それでも冷静に戦う為には必要な情報だ。

 

「改めて聞くと、絶望的な状況だな」

 

 それに対して翔太郎さんは言う。

 

 扉の奥からはドーパント達が攻め込もうと、ドンドンッと音が聞こえる。

 

 それはすぐにでもドーパント達が迫ってくる証拠だった。

 

『あぁ、だが、この状況を打開する方法として、影。

 

 君のあのマキシマムドライブが必要になる』

 

「本当だったら、洗さん達に使うつもりだったけど」

 

『その点は既に照井に連絡済みだ。

 

 彼がここまで連れてくる。

 

 ただし、ドーパント達が迫る中では危険な為、彼がここに護衛で来れるのは、分かっているね』

 

「あぁ、承知しています」

 

「その間、お前はマキシマムは使えないか」

 

『あぁ、そして、時間としては、5時間だ。

 

 ある意味、これまでにない戦いになる』

 

「あぁ、けど、やるしかないですよね」

 

 俺がそう言うと、翔太郎さんとフィリップさんは頷く。

 

 それと共に、見つめた先のドアが大きな音と共に開かれる。

 

 それは開戦の合図であり、俺達は構える。

 

『CYCLONETRIGGER』

 

 同時に翔太郎さん達は瞬時にメモリを入れ替え、サイクロントリガーへと姿を変える。

 

 それと共に、その手に持つトリガーマグナムは流れ込んでくるドーパント達に向かって、弾丸を放っていく。

 

 連射性に優れた弾丸でドーパント達に牽制していく。一方で俺は、トリガーマグナムを構えて狙いを定める。

 

 狙う先はドーパント達の先頭集団。

 

 トリガーを引くと同時に放たれていく無数の弾丸。

 

 それが一気に襲い掛かるように放たれていき、ドーパント達を撃ち抜いていく。

 

 それにより、ドーパント達が倒れる中、更に次の標的を狙い撃つ。

 

 しかし、その数はどんどん増えていっていた。

 

「さて、牽制は十分だ!」

 

『CYCLONEMETAL』

 

 だが、それは既に彼らは分かっていた。

 

 先程の牽制の弾丸によって、多少崩れたドーパント達の中へと、そのままサイクロンメタルへと姿を変え、突っ込む。

 

 同時にその手に持ったメタルシャフトを振り回す。

 

 それによって、彼らを中心に嵐が吹き荒れるようにドーパント達を吹き飛ばしていった。

 

 だが、それで終わりではない。

 

『HEATMETAL』

 

 その嵐は炎の渦となって、ドーパント達を包み込み、吹き飛ばす。

 

 それと共に

 

『HEATTRIGGER』

 

『HEATMAXIMUMDRIVE!』

 

 鳴り響く音声と共に、その手に持ったトリガーマグナムの銃口に炎が集束されていく。

 

 それをトリガーを引きながら放つ。

 

 撃ち出された炎は巨大な炎柱となり、ドーパント達を飲み込んだ。

 

 それにより、ドーパント達は全て倒れていく。

 

 だが

 

『翔太郎っ!』

 

「ぐっ」

 

 だが、ドーパント達の中にいる一体であるジェリーフィッシュ・ドーパントが触手が翔太郎さんの腕を絡め取る。

 

 それによって、動きを止められてしまう。

 

 同時に他のドーパント達も彼に近づき始めていた。

 

 だが

 

「はぁ!」

 

 俺は瞬時にナスカブレードで触手を切り裂く。

 

 それに合わせて、翔太郎さんは襲い掛かっていたジェリーフィッシュ・ドーパントをトリガーマグナムの弾丸で吹き飛ばす。

 

「助かったぜ、影」

 

「マキシマムは使えなくても、これぐらいはできるからな」

 

 それと共に、俺達はすぐに背中合わせになりながら、目の前を取り囲んでいるドーパント達を睨み付ける。

 

 それに合わせるかのように、俺の目の前にスケアクロウ・ドーパントが鎌を、翔太郎さん達の前にPIRATES・ドーパントの左腕のフック型鉤爪が襲い掛かる。

 

 俺はナスカブレードで鎌を受け止める。

 

 そして

 

『LUNAMETAL』

 

 翔太郎さんは、変幻自在に姿を変える事ができるメタルシャフトで鉤爪を打ち払い、その腹を蹴り飛ばした。

 

 それと同時に ガキィン! と鉤爪でメタルシャフトで激しくぶつかり合う。

 

 だが、それも一瞬だけ。

 

 すぐに互いに弾かれる。

 

「影、裏技で決めるぞ!」

 

「えぇ!」

 

『CYCLONEJOKER』

 

 それと共に、俺はナスカメモリを取り出す。

 

『GIANT』

 

 そのまま、ナスカメモリを俺ではなく、翔太郎さんに渡す。

 

 そのまま受け止めたナスカメモリをそのままメモリスロットに挿入する。

 

『GIANT! MAXIMUMDRIVE!』

 

 通常、能力を変化させれば、それだけで大きな負担がある。

 

 その為、俺が能力の入れ替える限界は制限はあった。

 

 しかし、それはあくまでも俺自身が使用した場合である。

 

 俺のマキシマムスロットでも、ナスカブレードでもない。

 

 他の仮面ライダーが使えば、その問題は解決できる。

 

 それと共に、俺達は風に包まれた。

 

 同時にその風は人の形へと形成される。

 

 そうして誕生した風の魔神となる。

 

「さて、これでどれぐらい稼げるか」

 

『それは、僕達にも分からない。

 

 けど、どうやらやるしかないようだね』

 

 そうして、俺達はゆっくりと見る。

 

 未だに襲い掛かるドーパント達に対して、未だに長い戦いは続く。




「・・・妙ね」
そう言いながら、クイーン・ドーパントはその様子を見た。
始めはドーパント達を仮面ライダー達に攻め込ませていた。
数の暴力で、仮面ライダー達を追い込んでいる。
ここに集まっているドーパント達のメモリは主に失敗作や実験品ばかり。
通常のドーパントとは、どこか問題ある存在ばかりである。
だがらこそ、一体一体は仮面ライダー達には敵わない。
しかし、それをここまで数で攻め込めば、勝てるはずだった。
「偶然で掴んだチャンスを逃す訳にはいかない。
けど、何を狙っているの?」
未だに決着はつかないが、勝負が見えているはずの戦い。
しかし、仮面ライダー達は諦める様子はない。
それが、クイーン・ドーパントには不気味だった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Dの依頼者/恐怖のが消える日の出

「ふむ、なるほど。
あれらが仮面ライダーですか。
まさか、こうして現れるとは思いませんでしたよ。
しかし、残念ですね。
これ程のメモリを実験できる所は他になかったので。
まぁ良いでしょ。
既に次の目星はついている。
インジブルの彼女の様子を見ないとね」


 マンションの屋上で、俺とWの3人で迫り来るドーパント軍団と戦っていた。

 

 既に戦いを始めて、5時間近く経っていた。

 

 これまで、それ程長く戦った経験はなかった。

 

 その為、俺達の身体はボロボロ。

 

 体力も限界に近かった。

 

 それでも、俺達は諦めるつもりは毛頭なかった。

 

「はぁ、はぁ、キリがないな」

 

 俺は思わず弱音を吐いてしまう。

 

 だが、そんな事ではダメだ。

 

 そう自分に言い聞かせ、ナスカブレードを握る手に力を込める。

 

「おいおい、諦めるつもりか、影」

 

 そうしながら、翔太郎さんが声をかける。

 

「そんなつもりはありませんよ」

 

 それと共に、俺は自分の考えを口にする。

 

「でも、この数相手じゃ流石に厳しいですね」

 

 実際、俺達はかなり追い詰められていた。

 

 俺の言葉に、翔太郎さんは笑みを浮かべる。

 

「だろうな。だけど、そろそろ時間だろ」

 

 その言葉と共に見つめた先には、僅かな光が見える。

 

 それが俺達の勝利が近づきつつある。

 

「あら、仮面ライダー達はまだ諦めないの?」

 

 その言葉と共に、ドーパント達のリーダー格だと思われるクイーン・ドーパントだった。その姿はまるで女王蜂のような姿をしていた。

 

 クイーンは余裕そうな表情を浮かべながら言う。

 

「もう無理でしょう? 大人しく投降しなさい」

 

 それに対して、俺達は笑みを浮かべて答える。

 

「確かにこの状況だと、どう考えても俺達が不利な状況です。だからと言って、簡単に諦めるほど柔じゃないんですよね」

 

 俺がそう言うと、クイーンは眉間にシワを寄せた。

 

 そして、鋭い目つきで言う。

 

「それはどういう意味かしら?」

 

 その問いに、俺はニヤリと笑う。

 

「まだ勝負は終わっていないってことですよ」

 

 その瞬間、その光が見える。

 

「逆転? 

 

 まさか、この朝日だとでも言うのかしら?」

 

 そう、それは朝日だ。

 

 だが

 

「あぁ、これが逆転の一手だ」

 

『sundial』

 

「日時計? 

 

 そんなのが、何の役に」

 

『MAXIMUMDRIVE!』

 

 その音声と共に俺の身体を中心に強烈な光を放つ。

 

 それは、その場にいた全ての者達に降り注いだ。

 

「それで、何がっ」

 

 そう、クイーン・ドーパントは呟く。

 

 しかし、その変化にすぐに気づく。

 

 それはドーパントに変身していたはずの自身の身体が何時の間にか人間の姿へと戻っていた。

 

 それは、他のドーパント達も同様だった。

 

「おっおぉ!! 

 

 元に戻っている!!」

 

「兄さん!」

 

 それはマンションの下にいた洗兄弟も同様だった。

 

「照井竜!」

 

「あぁ、洗さん」

 

「えっと、これですよね!」

 

 その言葉と共に、洗さん達から受け取ったメモリをすぐに破壊する。

 

「なっ」

 

「この状態は太陽が出ている間に、マキシマムドライブを発動する事で、自分と相手を変身前の状態に戻させる。太陽が沈むか能力を解除するまで、再変身できない。

 

 つまりはメモリの能力を一時的に止める能力だ」

 

「まぁ、条件もあって使いにくいけどね」

 

「だが、これで十分に戦えるな」

 

 それと共に俺達は構える。

 

「ぐっ、だとしても、この数を相手に勝てる訳ないだろ」

 

「どうだろうね」

 

 その言葉と共に俺達はすぐにメモリガジェットを取り出す。

 

 それと共に、メモリガジェット達をライブモードに変える。

 

「なっなにをきゃぁ!」

 

 そうして、クイーン・ドーパントに変身していた奴の周りにいる元ドーパント達に攻撃を仕掛ける。

 

 この何時間も戦っていた事で、俺達だけではなく、ドーパント達自身も体力の限界だった。

 

 そこにメモリガジェット達の攻撃、そして

 

「さて、ここからは、俺の仕事だな」

 

 そう、照井さんも近づく。

 

 ここまで、待機していた事もあって、照井の体力は未だ余裕がある。

 

 疲労困憊のドーパント達に対して、メモリガジェット達の援護を受けた照井は無謀だった。

 

「こんな所でっ私はっ」

 

「さて、そこまでだぜ、レディ」

 

「あんたのメモリ、確かに頂くぜ」

 

 そう俺は彼女達を捕らえる。

 

 こうして、マンションに潜んでいたドーパント達を捕らえる事に成功する。




「ドーパント達が潜んでいたマンションの事件は無事に解決した。
住人の多くは組織には関係なく、ほとんどが過剰適合者だったらしい。
その事もあってか、あの時にマキシマムドライブで、メモリブレイクを行わないで良かった」
「それにしても、未だに謎が多いマンションだった」
「そりゃ、組織に関わっているからだろ」
「あぁ、だが、あそこまで過剰適合者を集められたんだ?」
「メモリに詳しい人物が関わっていたとしか言えないな」
「詳しい人物?」
「例えば、医者とか」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Dが見ていた/医者からの誘い

 その日の探偵事務所で、俺達は目の前にある物に驚きを隠せなかった。

 

【DENDEN】

 

 フィリップさんは特殊ゴーグルと橙色のギジメモリを挿入すると、特殊スコープはカタツムツリ型ライブモードに変形してテーブルで這ったりする。

 

「わぁー可愛い♪ ね、名前なんて言うの?」

 

「デンデンセンサーさ」

 

 亜樹子に尋ねられると、作った当人が答える。

 

「なにができんだ? このカタツムリ」

 

「見張りや敵の探索だ」

 

 フィリップがデンデンセンサーのスイッチを押すと、口の部分から赤外線が照射される。

 

「あらゆる光の波長、変動をキャッチできるから、もし誰か通り掛かると……」

 

 デンデンセンサーは周囲を見渡すかのような動きをした。

 

「……こう反応する。……あれ?」

 

「誰もいねえじゃん」

 

 デンデンセンサーが赤外線を照射した方向には誰の姿も見えない。

 

「バットサングラスと似ていますね」

 

 その言葉と共に、俺が取り出したのは怪盗道具を取り出す。

 

「おそらく、君の道具と、これを送った人物は同一人物だろう。

 

 それにしてもさっきの反応は」

 

 そう俺達が話している間にも翔太郎さんがドアの近くにまでいくと、

 

「キャアッ!」

 

 翔太郎さんが誰かとぶつかったかと思うと、若い女性の短い悲鳴。

 

 そして、透明状態から姿をあらわしたのは。

 

「あ……ごめんさい」

 

「あ、昨日の美人マジシャン!」

 

「昨日の?」

 

「昨日、探偵事務所の皆と竜君で食事に行ったの。

 

 2人は別の用意があって、来れなかった時にね」

 

「私達は丁度、テストがありましたからね」

 

 そうしている間にも翔太郎さんの方を見ると、そのマジシャンに翔太郎はだらしない笑顔になる。

 

 

 

「なにデレデレしてんの! 早く立って!!」

 

 そこへ亜樹子がスリッパで翔太郎を叩いた。

 

「それにしても流石マジシャン。……今のマジック、どうやったんだい?」

 

 翔太郎が半ばカッコつけて聞くと、

 

「違うんです。あの、マジックじゃなくて……」

 

 そう女性はそういうと上着を脱ぎ始め、翔太郎さんが少し目線を釘付けにしていると、亜樹子さんにスリッパでたたかれたりしたが……。

 

「その……私……本当に消えるんです」

 

 リリィは二の腕の裏に刻まれた生体コネクタを見せた。

 

「「「ドーパントッ!?」」」

 

 探偵事務所の面々が叫ぶ中、俺達はコネクタをみつめていた。

 

 依頼人であるリリィ白金の話をよく聞く事にした。

 

「私、どうしても、脱出マジックが上手くできなくて……。そんな時、透明になれるメモリを手に入れて、これだっ! って思ったんです」

 

 リリィさんの使用しているのはインビジブルメモリのようだ。

 

「でも……消えたり出たりが自分の意思じゃできなくなってきて。……メモリも、抜けなくなっちゃたんです」

 

「メモリが身体から出ない?」

 

 翔太郎さんがそういうと、リリィさんは少し辛そうな表情を垣間見せる。

 

「……それで、この事務所の噂を聞いて」

 

「はぁー、すっかりうちもガイアメモリ駆け込み寺ね」

 

 亜樹子さんがそういった瞬間、リリィはいきなり透明になる。

 

「消えましたね」

 

 そういうと、フィリップさんはデンデンセンサーのギジメモリを抜きとってガジェットモードの特殊ゴーグルにした。

 

 そしてそれを通して透明になったリリィさんの姿を視認する。

 

「おかしいな。本来なら挿した瞬間に超人形態に変身する筈だ。姿を消す能力を発揮するのはその後だよ」

 

「今まで色々なメモリを見てきたが、こんな奇妙な故障バグを抱えたガイアメモリは初めてだ」

 

「それに超人形態ではない? 

 

 それって、過剰適合者」

 

 それは先日のドーパント・マンションでの出来事を考えると危険すぎる。

 

「そんな! 御願いします! 私を元に戻してください! ……早く……早く元に戻らないと」

 

「メモリの製造過程を突き止めないと……やっぱり黒服を着た組織の売人から買ったのかい?」

 

 フィリップさんがそう問うと、リリィさんは首を横にふる。

 

「いいえ。貰ったんです」

 

 また透明になった。

 

「ん~、物腰の、柔らかい感じの人でした。悩んでる私のところに現れて……」

 

「売人じゃない。……謎の紳士……」

 

「その男を探し出すしか、手は無さそうだな」

 

 すると翔太郎さんは立ち上がり、

 

「ま、安心しな。俺は困ってる街の人間を、見捨てたりしない」

 

 それでこそ、翔太郎さんらしい。

 

「にしても、紳士か」

 

「心当たりがあるのか?」

 

「いいえ、ただ、もしかしたらこの前の事件と大きな関係があると思いましてね」

 

「お前もそう思うか?」

 

 過剰適合者をここまで集めた事を考えても、あの時のドーパント達には何かあると思う。

 

 だが、その前にやるべき事があるだろう。

 

「とりあえず、調査を行うか」

 

 俺達はリリィ白金にメモリを渡した男の詳細を追った。

 

 年齢四十代前後の紳士で、ステッキのような細長い傘を持ち歩いていたらしい。

 

 そうして、俺達が調査を行っている時だった。

 

 別の所で調査を行っていた翔太郎さんから連絡が来た。

 

 俺達はすぐに連絡が来た場所に向かった。

 

 そこにいたのは

 

「なっ」

 

 信じられない光景だった。

 

 Wに変身していた翔太郎さんとアクセルに変身している照井さん。

 

 その2人を相手に、圧倒しているドーパント。

 

 体色は白が主体。後頭部に髷、肩と首回りにかけて風神の風袋のようなドーパント。

 

 

 

「っ!」

 

『ナスカ』

 

 鳴り響く音声と共に、俺は仮面ライダーへと変身すると共に、ドーパントの前に立つ。

 

『HAND! MAXIMUMDRIVE!』

 

 鳴り響く音声と共に、俺は巨大化したエネルギーの拳で、目の前にいるドーパントを殴り飛ばす。

 

「ほぅ、これは知らないガイアメモリ。

 

 という事は、君がナスカメモリの仮面ライダーか」

 

「誰だ、お前は」

 

 そう言いながら、俺は目の前にいるドーパントを睨み付ける。

 

「くくっ、私は井坂深紅郎。

 

 私としては、君に素晴らしい提案をしたくてね」

 

「提案だと?」

 

 俺はそう言いながら、目の前にいるドーパント、井坂を睨み付ける。

 

「君は、今すぐに、そのドライバーを捨てるべきだ」

 

「なんだと?」

 

「何を言っているんだ、お前は?」

 

 伊坂の提案に対して、俺も翔太郎さんも思わず叫んでしまう。

 

「ナスカメモリは非常に興味深い。

 

 ドライバーで毒素を薄めている状態でも、ナスカメモリを通して様々な力を引き出している。

 

 非常に勿体ない! 

 

 私ならば、君の可能性を広げる事ができる」

 

「巫山戯るな、誰がそんな事を」

 

「目的の為に手段を選んでいる場合ですか? 

 

 君は、強くなりたいと思っているのではないのでしょうか?」

 

 そう、伊坂は言った瞬間に、彼は腰に差していた刀を抜き放つ。

 

 そして、伊坂はそのままこちらに向かって走り出すと同時に、刀を振り下ろす。

 

 それを、俺達3人は回避すると共に、それぞれの武器を構える。

 

 しかし、次の瞬間には俺達の周囲に白い煙が立ち込める。

 

「しまった!」

 

「仕方ない。

 

 今日は別のお客様がいるからね。

 

 君の勧誘はまた、今度にしよう」

 

 そう、伊坂はその姿を消していた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Dが見ていた/限界を超えてしまい

伊坂が逃げてしまった後、再び俺達は奴の手掛かりを探る為に集まっていた。
しかし、探偵事務所で、照井さんはかなり焦っていた。
伊坂があの人が長年探していた仇の相手だという事も分かり、さらに加速していた。
その焦りと共に、照井さんはそのまま出て行く。
翔太郎さんも、それを追いかけるように出て行く。
そんな2人を追いかけようとしたが
「影」
そう、俺に話しかけたのはフィリップさんだった。
「どうしたんですか」
「君に聞きたい事がある。
君は、あの伊坂の言葉に従うつもりはあるのか?」
それは、まさに確認だった。
あの状況での心配だろう。
「正直に言えば、翔太郎さん達に会う前だったら、やっていたかもしれません。
けど」
「けど」
俺はそれと共に、今でも思い出したのは、あの決闘だった。
「翔太郎さんとフィリップさん。
2人と戦い、決意できました。
2人のような仮面ライダーになりたい。
今まで、言えなかった仮面ライダーという名を名乗る事を許してくれた事が。
だからこそ、今の俺はあいつの言葉に従うつもりはありません」
そう、フィリップさんに、俺は伝える。
「・・・そうか、それは良かった。
それにしても、不思議だ。
僕が誰かを導くなんてね」
「そうなんですか?」
「僕も翔太郎も未だに偉大な男の背中を追っているだけだ。
そんな僕達にもね」
そう笑みを浮かべたフィリップさんに対して、俺もまた頷く。
「だったら、俺も追っていかないといけませんね。
フィリップさん」


『止めろ翔太郎! 

 

 ツインマキシマムは危険だ!!』

 

 聞こえるフィリップさんの叫び声。

 

 それが何を意味するのか、すぐに察した俺はすぐに走る。

 

『そんな事をしたら、君の身体は! 

 

 影を待つんだ! 

 

 彼との同時のツインならばきっと!』

 

「もぅ、手はこれしかないんだ!」

 

 そんなフィリップさんの叫び声を遮るように、翔太郎さんはメモリスロットにヒートメモリを挿入する。

 

『MAXIMUMDRIVE! MAXIMUMDRIVE!』

 

 まるで、壊れたように、音が何度も鳴り響く。

 

 その度に、翔太郎さんの身体はまるで炎のように燃え上がる。

 

 その光景に、俺は必死に手を伸ばす。

 

「翔太郎さん!!」

 

 未だに遠い光景に、俺はナスカメモリをドライバーに挿入する。

 

 仮面ライダーへと変身し、真っ直ぐと向かう。

 

 しかし、無情にも、翔太郎さんの引き金と共に真っ直ぐと伊坂に激突する。

 

 巨大な火炎弾は、そのまま伊坂を包み込む。

 

 同時に翔太郎さんの変身は解除される。

 

 その身体は明らかにボロボロであり、俺は思わず呆然としてしまった。

 

 だが

 

「はははぁ」

 

 伊坂の身体は、まるで無傷だった。

 

 それと共に、俺の中の怒りが爆発した。

 

「伊坂ああぁぁ!!!」

 

『影っ!』

 

 俺はすぐにナスカメモリを引き抜き、再度ドライバーに装填する。

 

『ナスカ! レベルアップ!』

 

 その音声が鳴り響くと共に、俺はレベル2へと変わる。

 

 そのまま超加速で、そのまま伊坂に向けて、ナスカブレードを振り下ろす。

 

 それに対して、伊坂は軽々と受け止める。

 

「ほぅ、ナスカではないですか。

 

 未だに、その姿のままですか。

 

 まったく、早くドライバーを「黙れええぇぇ!」むっ」

 

『レベルアップ!』

 

 鳴り響く音声と、俺の身体が、先程の翔太郎さんの放った炎のように燃え上がる。

 

 同時に、その身体は赤く染め上がっていく。

 

「おっおぉ!! 

 

 まさか、レベルアップをするとは! 

 

 もしや、先程の仮面ライダーが倒された怒りですか! 

 

 良いですねぇ、実に興味深い!!」

 

「黙れええぇぇ!!」

 

 激情に任せるように、俺はそのまま薙ぎ払う。

 

 これまでに感じた事のない力に対して、興味を持つように伊坂は俺の手を掴む。

 

 だが、それがより俺の怒りを爆発させる。

 

 ナスカブレードを更に振り回す。

 

 それと同時に、周囲の大地にはヒビが入る。

 

 まるで、火山のような激しい熱気に満ち溢れている。

 

 それは周囲に広がるほど、更に燃え上がる。

 

 それに気がついたかのように、伊坂は後ろへ跳躍すると共に、こちらに向かって、吹雪を放つ。

 

 ウェザー・ドーパントの天気を操る能力に似たような攻撃だ。

 

 その吹雪に対し、俺は左手から光弾を放ち、相殺させる。

 

 その衝撃によって、爆風が生じる中、伊坂は両手を広げる。

 

 その掌からは雷が真っ直ぐと、放たれる。

 

 同時に俺は、その足下に落ちていたガイアメモリに目を向ける。

 

「翔太郎さん! 

 

 借ります!!」

 

 俺はすぐにそのガイアメモリを取りだし、すぐにメモリスロットに挿入する。

 

『よせっ、影!!』

 

 霧彦の声が聞こえたが、既に止まる事はできない。

 

『ジョーカー! MAXIMUMDRIVE!』

 

 鳴り響く音声と共に、俺の脚には紫色のオーラーと赤いオーラーが入り交じる。

 

 俺は、そのまま真っ直ぐと伊坂に向かって、走り出す。

 

 その身体には雷が帯電していた。

 

 だが、俺はそれを気にする事なく、伊坂へ向かって蹴り飛ばす。

 

 同時に、伊坂の雷撃は、その勢いのまま、俺に向かってくる。

 

 しかし、それを俺は右腕を盾にして防ぐ。

 

 同時に、その電撃を受け止めると同時に、俺の腕も焼け焦げる。

 

 だが、そんな事は気にしない。

 

 その痛みを、怒りでかき消しながら、伊坂に向かって蹴り飛ばす。

 

「ぐっがああぁぁ!!」

 

 二つのメモリが合わさった力が伊坂を捉える。

 

 その衝撃により、伊坂は吹き飛ばされる。

 

 そして、俺は追撃するために、一気に駆ける。

 

「ここまでの力を持つとはねぇ。

 

 興味は尽きない。

 

 けど、これ以上は君の命が保てない」

 

 そうしながら、伊坂はそのまま自分の周りに霧を出す。

 

「待てぇ!!」

 

「君が真にナスカメモリを使うのを、楽しみにしているよ」

 

 その言葉を残し、霧と共に姿を消す。

 

 後を追う前に、俺は地面に膝をつく。

 

 腕を見ると、皮膚が剥がれ落ち、肉が見え始める。

 

 痛みも相当なものとなる。

 

 同時に、俺はゆっくりと倒れ込む。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

20話

影は、ウェザー・ドーパントこと伊坂との戦いによって、身体はボロボロの状態だった。
現在、影は彼のアジトであるベットの上でその身体を回復させる為に寝ていた。
だが、そこに1人の人物が訪れていた。
それは、影にとっては協力者というべき人物であるシュラウドだった。
彼女は、そのまま影の部屋にある窓を開く。
それと共に、窓から入って来たのは、小さな狼だった。
その狼は、そのまま影の眠るベットへと近づき、そのまま自身で変形させる。
その形はまさにガイアメモリだった。
まるで、Wが使用するファングメモリのように。
メモリは、そのまま影のベルトに既に装着されているロストドライバーに吸い込まれるように、挿入される。
「ぐっ」
同時に、影の姿は変わる。
一瞬、仮面ライダーのような姿へと変わる。
それと共に窓から僅かな光が注がれる。
その姿はまさに黒い獣のようだった。


 マジックショー当日。遠くからステージを見守る照井の前に、フィリップが現れる。

 

 何かを言おうとする照井だが、いきなりフィリップは照井を殴りつける。

 

 かつて翔太郎が教えた「仲直りの儀式」だ。

 

 フィリップは手を差し伸べ、それを握りしめる照井。

 

 改めて和解した二人は、リリィを救うための作戦を練る。

 

 ショーが始まるとすぐに、リリィのメモリを奪おうと井坂が姿を現す。

 

 ウェザー・ドーパントになり、照井を挑発する。

 

「お前などの相手をしている暇はない……。俺はリリィを救いに行く!」

 

 しかし復讐よりもリリィを救うことを優先する照井。

 

 それと共に

 

「仮面ライダーのはしくれだから」

 

 その言葉に嬉しさを隠せないフィリップ。

 

 だが、そんな事を気にするはずもなく、伊坂はそのまま雷を放とうとした時だった。

 

 伊坂の前に現れたのは巨大な砲台だった。

 

 それが何なのか、分からない照井達だったが、そのまままるでロボットのように変形すると共に、伊坂に襲い掛かる。

 

「あれは一体」

 

「今は、それよりもリリィ白銀の元に」

 

 それが何なのか、正体が分からない。

 

 それでも、フィリップ達の今の目的はリリィの救出だった。

 

 伊坂が謎のロボットによって、足止めしている間に、リリィの元へ向かう照井たち。

 

 一方リリィは無事にショーを成功させるも、その体に限界が訪れていた。

 

 照井はそのままアクセルに変身する。

 

 同時にその手にはアクセルの武器であるエンジンブレードを取り出す。

 

『エレキトリック』

 

 その音声と共に既にインジブル・ドーパントとなっているリリィを一閃。

 

 その電撃を受けながら、リリィは悲鳴を出す暇もなく、そのまま倒れてしまう。

 

「リリィ!」

 

 それには、彼女の祖父であるフランクも驚きを隠せなかった

 

 それと共にリリィは死んだことにより、インビジブルのメモリも排出される。

 

 驚くフランクだが、すぐに照井はそのままエンジンブレードをリリィの心臓だと思われる箇所に近づける。

 

 同時に電気ショックでリリィを蘇生するアクセル。

 

「なっ、どういう事なんだ!」

 

「逆転の発想さ。

 

 生きたままメモリを取り出せないならば、一度心臓を止め、メモリに「持ち主が死んだ」と認識させればいい」

 

 それこそがフィリップの見つけた、たった一つの「リリィを救う方法」だった。

 

 メモリを破壊されて目論みが外れると共に。

 

「許さんぞ、仮面ライダー共!」

 

「許さないのは、俺も同じだ!」

 

 それと共に、照井はそのままエンジンブレードを構え、伊坂に応戦する。

 

 だが、元々Wと協力しても、圧倒された相手。

 

 照井1人だけでは敵わなかった。

 

 そうして、倒れた照井に対して、伊坂はそのまま怒りのまま電撃の鞭を振るう。

 

 だが

 

「キシャアアァァ」

 

 鳴り響く獣を思わせる声。

 

 同時に電撃の鞭を防いだのはファングメモリだった。

 

「行くよ、相棒!」

 

『ファング』

 

 それと共に、ファングメモリが手元にフィリップは起動させる。

 

「ああ……フィリップ!」

 

 

 

『ジョーカー』

 

 それに合わせるように、事務所で休んでいた翔太郎もまた、ジョーカーメモリを起動させる

 

「「変身!」」

 

 

 

『ファングジョーカー』

 

 鳴り響く音声。

 

 それと共に、フィルップは仮面ライダーWへと変身する。

 

 ファングジョーカーの特徴である獣を思わせる咆哮と共に、そのまま伊坂に向かって飛び込む。

 

「貴様ぁ! 邪魔をするな!」

 

 伊坂はそのまま腕から雷を放つ。

 

 その一撃に対して、Wはそのまま野生の直感というべき動きで避けると共に腕から生えた刃、アームセイバーで切りかかる。

 

 だが、それを何とか防ぐと同時に、ウェザーは空中へ飛ぶ。

 

 その瞬間だった。

 

 Wの前に降り立つ者がいた。

 

 それはアクセルの姿であり、彼はそのままエンジンブレードを構える。

 

『ジェット』

 

 鳴り響く音声と共にエンジンブレードの切っ先から高速のエネルギー弾を伊坂に向けて放つ。

 

 その攻撃を防ぐも、今度は背後からのWが回り込み、そのまま切り込む。

 

「無駄な事を!」

 

 それと共に伊坂は先程の電気の鞭を伸ばし、剣のように変えて、受け止める。

 

「ぐっ」

 

 以前の戦いと比べても、確かな連携で伊坂を追い込む事ができた。

 

 しかし、Wとアクセルの2人の仮面ライダーを相手にも伊坂1人のドーパントを追い込む事ができない。

 

 その時だった。

 

「真打ち、登場だな!」

 

『ナスカ』

 

 鳴り響く音声。

 

 それと共に現れたのは3人目の仮面ライダーナスカだった。

 

「影、君は、大丈夫なのか?」

 

「それが、起きたら、なんだか怪我が治っていて」

 

 自身でも不思議なのか、影は首を傾げていた。

 

 それでも

 

「今は、あいつを倒す事に集中しましょう」

 

「そうだな」

 

 その言葉と共に、3人はそのまま伊坂に目を向ける。

 

「仮面ライダーが3人ですか。

 

 だけど、その程度で、果たして、勝てるか」

 

 それと共に、伊坂はそのまま、両手から台風を作り出す。

 

 伊坂を中心に作り出された台風は周囲の物を吹き飛ばしていく。

 

 その中で、伊坂は叫ぶ。

 

 そして同時に暴風を生み出し、周囲にまき散らす。

 

 その勢いによって吹き飛ばされそうになるが、W達は何とか耐えた。

 

 そんな中で、ウェザーは手を振りかざし、そこから竜巻を発生させる。

 

「影、アクセル。

 

 マキシマムで決めるよ、いけるか」

 

 それに合わせるように、照井はそのままアクセルドライバーに手を伸ばす。

 

『アクセル! MAXIMUMDRIVE!』

 

『そうこなくちゃな』

 

『ファング! MAXIMUMDRIVE!』

 

『ナスカ! MAXIMUMDRIVE!』

 

 照井の無言の同意に答えるように、Wも、影もまたマキシマムドライブを発動させる準備を行う。

 

『良いか、タイミングを合わせて、ライダートリプルマキシマムだ』

 

「えっ、俺もか」

 

「君もだ」

 

 それに合わせるように、照井の身体は炎が。

 

 Wの右足には青いオーラが。

 

 そして、影の右足には同じく青いオーラが。

 

 3人の仮面ライダーは、まさに目の前に迫っている伊坂に向かって、飛び込む。

 

 それはまるで、巨大な砲弾の様に。

 

 真っ直ぐと放たれた3人のライダーキックは、襲い掛かる嵐を全て吹き飛ばす。

 

 それこそが、決着の一撃となった。




「それにしても、影。
本当に回復しているとは」
そう言いながら、俺の身体をフィリップさんが見る。
「これって、一体どういう事なんですか?」
「分からない。
ガイアメモリの力の影響で負った傷やダメージは通常の医学では治療ができず、基本的には本人の自然治癒や回復力に頼るしかない」
「それって、俺がその自然治癒が異常と言う事?」
「だったら、普通、怪我したらすぐに治ると思うけど」
「これも、ナスカメモリの影響なのか?」
そう疑問に思いながら、俺達は話していく。
「もしくは、全く別の。
メモリの力なのか?」
その疑問に対して、答える者は誰もいなかった。
この場には。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Vとの戦い/探偵達から託された物

「グッがアァアァァ!!」
風都の夜。
誰もが静まりかえっている中で、とある崖。
そこで2人の異形が戦っていた。
1人はまるで骸骨を思わせる存在。
腰には赤いLの文字に見えるベルトに、頭には帽子を被っている。
もう1人は、まるで吸血鬼を思わせる存在であった。
その中で、吸血鬼は骸骨に向けて、睨む。
「俺の食事をよくもっよくもっ!!」
「これ以上、お前に渡す食事はない」
それと共に、骸骨の呟きと共に、その手には銃が握られていた。
『SCULL!MAXIMUMDRIVE!』
鳴り響く音声と共に、真っ直ぐと吸血鬼に向けていた。
吸血鬼は、それを目の前にしながらも、真っ直ぐと、骸骨に向かって襲い掛かる。
同時に狙いを定めると共に、その引き金を引く。
「がああぁぁぁ!!」
弾丸は吸血鬼を射貫き、海へと落ちていく。
その光景を見ながら、骸骨は静かに立ち去る。


 俺こと影は、現在のほとんどを翔太郎さん達と一緒に探偵活動に勤しんでいた。

 

 それは、彼らと共に行動すれば、自身の目的にも近づくと感じていたからだ。

 

 怪盗活動は、現在ではあまりほとんど行わなくなっていたが、その日は違った。

 

 翔太郎さん達は、悪夢から来るドーパントに関する事件を追っていた。

 

 そして、俺はその間、別の事件を追う事になっていた。

 

 それは、丁度、シュラウドからの依頼であり、怪盗である俺だからこそ調べられる事件でもあった。

 

「それにしても、こいつが本当に人間の仕業なのかよ」

 

 そう言いながら、事件の調査を行う前に、翔太郎さん達と相談していた。

 

 彼らはこれから一時間もしない内に、悪夢に関する事件を調べる為、それ程時間をかけて相談する事はできない。それでも、俺がこれから行う怪盗活動を行う前に彼らに相談をする必要がある。

 

「確かにこれは興味深いね。

 

 これまで、僕達はドーパントという不可思議の塊のような事件に関わってきたが、まさかこのよう事件があるとはね」

 

 そう言いながら、渡された写真を見つめながら、フィリップさんは笑みを浮かべる。

 

「うぅ、これから悪夢の調査なのに、こんなの見たら、怖くて眠れないわよぉ」

 

 それは亜樹子所長も同じだった。

 

「影君、これ本当に本物なの! 

 

 なんかの映画とかではなくって?」

 

 そう俺に話しかけてきた亜樹子所長は、その手に馴染み深いスリッパに『嘘だと言ってよ!』と書かれていた。

 

「まぁ確かに信じられない内容ですか、マジらしいですよ」

 

 そう言いながら、俺は改めて、写真を見る。

 

 その写真には、一つの干物があった。

 

 身体は完全に乾燥されており、骨と皮だけの状態。

 

 発見される前の状況を考えても、おそらくは数分もかからなかったらしい。

 

 なのに、身体の水分は隅々まで吸い取られていた。

 

 そして、その水分が抜き取られたと思われる箇所。

 

 そこには二つの小さな穴が、首元に。

 

「こいつが、本当に人間の死体なのかよ」

 

 そう、その干物の正体は、人間だった。

 

 全ての臓器は完全に水分を無くしており、ミイラのような状態となっている。

 

「それで、フィリップさん。

 

 この状況から、何か分かりますか?」

 

「あぁ、さすがにね」

 

 そう笑みを浮かべながら、フィリップさんは既に星の本棚で検索を終えていたのか、本を軽く閉じる。

 

「体内の水分をここまで一瞬で吸い取る事ができるメモリ。

 

 それこそ、候補は無数にある。

 

 だが、ここまでヒントがあればね」

 

「まぁ、確かに。

 

 俺でもさすがに、これを見たらな」

 

 そう言いながら、首元にある僅かな小さな二つの穴。

 

 その二つの穴から考察できるメモリの正体は

 

「ヴァンパイア。

 

 それが、おそらくドーパントの正体だろ」

 

「う゛ぁっヴァンパイアって、よく漫画や小説に出てくるあの!」

 

 そう、ヒサメは怯えたように言う。

 

「そして、このヴァンパイア。

 

 実は、過去にも似たような事件を引き起こしている」

 

「なんだって?」

 

 それは、俺も驚きを隠せなかった。

 

「これは、見せた方が早いかもしれないね」

 

 そう言い、フィリップさんが向かった先には、鳴海探偵事務所にある数多くの事件が収められたファイルだった。

 

 そのファイルの一つには、ある事件が書かれていた。

 

「吸血鬼事件?」

 

 まさに、これから調査を行うとした事件が、そのまま記載されていた。

 

「血液を飲み尽くされ、失血した幼い女の子の遺体が次々と見つかった?」

 

「そんな事件が本当に」

 

「既にその犯人も分かっている。

 

 ルゴシ=カマラス。

 

 異食症と呼ばれる病気にかかっており、女性の血液を食べる事に嗜好性を感じる男だったらしい」

 

「異食症?」

 

「簡単に言うと、時々バラエティ番組で時々出てくる土や鉄を食べるびっくり人間の事だよ。

 

 ただ、さすがに一瞬で血をここまで吸い上げる事など、理論上は不可能であった事もあり、警察は手を出せなかった」

 

「けど、ここに載っているという事はおやっさんは」

 

「あぁ、彼は鳴海荘吉と戦い、負けた」

 

 そうして、そのまま話を続ける。

 

「ヴァンパイア・ドーパントは調べただけでも、かなり強いドーパントだ。

 

 おそらくは井坂のウェザー・ドーパントと比べても強い事は間違いないだろ」

 

「そんな相手におやっさんは勝てたのか」

 

「いや、ギリギリだったと思う。

 

 ヴァンパイアは、その強力な力を発揮する代わりに、常に脱水症状が起きているような状態だ。

 

 だからこそ、ヴァンパイア・ドーパントはその能力の全てを吸血を行う為に発揮する」

 

「実際に、吸血すれば、一発で死にますからね」

 

 そう写真に映し出された死体を見る限り、間違いないだろ。

 

「だが、鳴海荘吉が変身する仮面ライダースカル。

 

 このスカルは体液を吸い取るといった「軟部組織を狙った攻撃」や「相手が生物であることを狙った攻撃」への耐性が極めて高い。

 

 だからこそ、ヴァンパイア・ドーパントと非常に相性が良く、追い詰める事はできた。

 

 だが」

 

「逃げられたのか」

 

 その言葉に対して、フィリップさんは頷く。

 

「メモリブレイクを行う直前に、おそらくは逃げられた。

 

 もしくは、ヴァンパイアの伝説にあるように、霧のように消えた。

 

 どちらにしても、真相を確かめる術は、その当時にはなかった。

 

 だけど」

 

「こうして、今は再開されている」

 

 そう、悪夢のような事件の再開に、俺達はため息をつくしかなかった。

 

 とはいえ、そこでフィリップさんは立ち上がる。

 

 そして、棚からファイルを取り出してきた。

 

「とりあえず、これで分かっただろう? これがこの事件の詳細だ。

 

 そして、これから起きるだろう事件を防ぐ事ができるのは。

 

 探偵である僕達でも。警察である照井竜でもない」

 

「悲劇を盗む事ができるか、怪盗」

 

 そう言いながら、2人から問われる。

 

「えぇ、盗んでやりますよ。

 

 5年前の大先輩の失敗をもね」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Vとの戦い/吸血鬼の証明

 俺は、まずは屋敷の中に入る前に確認する事にした。

 

 周囲に人影がないかどうかを。

 

 まぁ、いたらどうするかという話ではあるが。

 

 そうしながら、俺はヴァンパイア・ドーパントの変身者であるルコシが所有していた屋敷。

 

 現在は、シェアハウスという形で4人の住人が、ここに住んでいる。

 

 彼らの中に、ルゴシが変装した人物がいる可能性は高い。

 

 とはいえ、その全員を調べるには時間が足りない。

 

 だからこそ、俺達は別れて調べる事にした。

 

 そう言いながら、俺は改めて、このシェアハウスに住む人物を調べる。

 

 1人目。

 

 名前は、紅音里緒奈(あかねりおな)。

 

 年齢は19歳。

 

 職業は、大学生でイラストレーター志望。

 

 趣味で小説を書いているらしい。

 

 2人目。

 

 名前は、三波朱美(みなみあけみ)。

 

 年齢は20歳でOLをしている。

 

 3人目。

 

 名前は、空越 ルーカス(からごしるーかす)。

 

 年齢21歳のフリーターで小説家を目指している。

 

 4人目。

 

 名前は、水無月彩夏(みなづきあやか)。

 

 年齢18歳の高校生で漫画家志望。

 

 ちなみに漫画のタイトルは『白銀の戦乙女』という物らしい。

 

 さて、そんな感じで調査を進めながら、各々の部屋の状況を調べていく。

 

 事前に調べていたルゴシの容姿は老人をイメージしていた。

 

 しかし、それはあくまでも表で見せる顔である。

 

 荘吉さんの情報から考えても、ヴァンパイア・ドーパントの力で、肉体年齢が若返りを行う事も可能だと分かる。

 

 だからこそ、今、注目すべきは、この中で誰が怪しいのか。

 

 僅かな情報を見逃してはいけない。

 

「そもそも、シェアハウスにした理由は何だ?」

 

 荘吉さんの話では、このシェアハウスはルゴシが購入した物であるとの事だった。

 

 そうなると、彼が自分の名義で買ったマンションに4人で住んでいる事になる。

 

 つまり、それだけ家賃が高くなりそうだ。

 

 それなのに、何故、シェアハウスという形式を選んだ? 

 

  考えられる可能性としては、ヴァンパイア・ドーパントとしての餌だろう。

 

 ヴァンパイア・ドーパントの力の維持には生きた人間の血液が必要だ。

 

 それを考慮しても、複数の人間が住んでおり、監視が行いやすいシェアハウス形式の方が都合が良いと考えたのかもしれない。

 

 他にも色々と理由があるかもしれないが、今の所は分からない。

 

 ただ言える事は、ここにいる誰かがルゴシの正体であり、そして、5年前の事件を起こした犯人だという事だ。

 

 だからこそ、俺は慎重に行動しなければならない。

 

「だからこそ、多少の違和感でも良い。

 

 それが、確実な手掛かりじゃなくても良い。

 

 何か」

 

 そうしながら、俺はゆっくりと確かめるように。

 

「ねぇ、影」

 

「ヒサメ」

 

 やがて、俺と合流したヒサメ。

 

「何か分かったのか?」

 

「全然。

 

 4人共、怪しい所はなかった」

 

「だとしたら、他に」

 

 そうして、俺が悩んでいる時だった。

 

「ねぇ、影」

 

「どうしたんだ?」

 

「ヴァンパイアって、姿を変えられるんだよね。

 

 それって、長く続けると、どうなるのかな?」

 

「さぁな。

 

 けど、以前、鳴海荘吉さんに関する事件で、ダミーというドーパントがいたらしい

 

 。

 

 能力は様々な人間の姿を変えられる。

 

 だけど、長く変装を続けると思考や趣向が変化した相手に寄る副作用があるって、フィリップさんから聞いたけど」

 

「それって、ヴァンパイアも同じなのかな?」

 

「さぁな。

 

 でも、見た目が大きく変わる以上、別の何かを目印に」

 

 そう考えて、俺はその目印について考える。

 

 それと共に、4人の中でルゴシとの共通点は。

 

「そういう事だったか」

 

「どういう事?」

 

「見つけたんだよ、ルゴシが姿を変えた奴をな」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Vとの戦い/限界を超えて

 シェアハウスの一室。

 

 そこにいる住人が、集まっていた。

 

「ねぇ、これって、本当なのかなぁ?」

 

「分からないよ、けど、一体なんだろう?」

 

 そうしながら、見たのは怪盗の予告状だった。

 

 そこに書かれていたのは、『5年越しの骸骨男の遺品を頂き参上する』

 

「5年越しって、一体」

 

「それに骸骨男って」

 

 そう、その事場で騒いでいると。

 

「さて、その骸骨男に関して、説明しましょう」

 

 その言葉と共に、シェアハウスの部屋が暗くなる。

 

 それに驚いている間にも、現れたのは、怪盗姿の俺である。

 

「えっ、ほっ本当にっ!」

 

「なっ何よ、骸骨男って」

 

「そこから、まず話しましょう」

 

 そう、ゆっくりと、俺は5年前に起きたヴァンパイア・ドーパントの犯行と、その最後。「そっそれが本当だとしても、本当にいるのかよ」

 

「いますよ。

 

 吸血鬼という奴は、姿を大きく変えます。

 

 ですが、姿を変えるというのには大きなメリットもある。

 

 その対象に、人格を乗っ取られる可能性がある」

 

「だっだからなんなのよ」

 

「だからこそ、姿を変える前に、名前の中に自身の名前を入れたんです。

 

 ルゴシ=カマラスのね」

 

「ルゴシ≡カラマス? 

 

 だけど、そんな名前を」

 

「いますよ」」

 

 その言葉と共に、俺はある人物に指を差す。

 

「空越ルーカス。

 

 あなただよ」

 

 そう、俺は見つめる。

 

「おっ俺がっ? 

 

 一体何を」

 

「いやいや、結構単純ですよ

 

 空とるを入れ変えれば」

 

「えっとルゴシカラカス。

 

 あっルゴシが」

 

「そっそんなの偶然じゃ」

 

「へぇ、だったら、あんたの持つメモリがないか、確かめさせて貰うぜ」

 

 そう言うと共に、奴は怯んだ。

 

「ちっ!!!」

 

 その言葉と共にルゴシは、懐からヴァンパイアメモリを取り出す。

 

『ヴァンパイア』

 

 それと共に、奴はそのままヴァンパイア・ドーパントへと姿を変わる。

 

 俺はすぐにナスカへと変身し、その手にはナスカブレードを構える。

 

 対して、ヴァンパイアドーパントもまた、自身の手には身の丈はあるだろう槍を構える。

 

 瞬時に接近した俺はそのままナスカブレードを振るう。

 

 それに対して、ヴァンパイアドーパントは槍を回して防ぐ。

 

 そこから互いに弾かれ合うと、俺はナスカブレードを投擲する。

 

 だが、ヴァンパイアドーパントはそれをあっさりと弾き、槍で俺を突き刺そうとする。

 

 その攻撃に対して、俺はギリギリで避ける事に。

 

 だが、その際に足を踏み外してしまい、地面へと倒れてしまう。

 

 そんな俺に追撃を掛ける様に、ヴァンパイアドーパントが襲い掛かってくる。

 

 慌てて俺は地面を転がるように、攻撃をかわす。

 

 ヴァンパイアドーパントの攻撃は、まるで大降りな槍の突き。

 

 だが、それは恐ろしいほど速くて、避けるだけでも精一杯だ。

 

 だけど、それでも少しずつ反撃できる機会を見つける事が出来た。

 

 そこで俺は地面を蹴り上げるように立ち上がると、そのまま一気に距離を詰める。

 

 そしてナスカブレードを拾い、薙ぎ払う様に振るう。

 

 しかし、そこにはヴァンパイアドーパントの姿はなかった。

 

「なっ、ぐっ!」

 

 驚くのも束の間、無数の蝙蝠に変わっていたヴァンパイアドーパントが一斉に攻撃を仕掛けてくる。

 

 その攻撃によって俺は全身を切り刻まれるが、すぐさま体勢を整えて反撃に転じる。

 

 だが、相手も俺の狙いが分かっていたのか、直ぐに姿を戻し、今度は槍による連続突きを放ってくる。

 

 しかもその攻撃は鋭く、とてもではないが防げる物ではない。

 

 どうにか俺はナスカブレードを盾にして防ごうとするが、勢いに押されてしまい、吹っ飛ばされてしまう。

 

 なんとか空中で体勢を整える事はできたが、既にダメージは大きく、身体がふらつく。

 

「やはり、スカル程の強敵ではないな」

 

 そう馬鹿にするように、俺を見つめる。

 

「既に奴が死んでいる以上は、また好きに活動できるな。

 

 くくっ、久しぶりに堂々と血を吸えると思うとっ」

 

 そうヴァンパイアドーパントは下衆な笑みを浮かべながら言う。

 

 すると次の瞬間、何かを感じたのか、一瞬だけ動きを止める。

 

 だが、その隙を逃すはずもなく、俺はナスカブレードを構え、跳躍して斬りかかる。

 

 その攻撃に対して、ヴァンパイアドーパントは再び姿を消した。

 

 おそらくまた先程の様に姿を変えたのだろう。

 

 ゆっくりとナスカブレードを構えながら、襲い掛かる奴を待ち構える。

 

 すると、再び姿を現したと思った瞬間、俺に向かって飛び込んで来た。

 

 それに合わせて、俺は剣を振り下ろす。

 

 だが、それは奴の持つ槍だけであり、俺の一撃は空を切る。

 

 すぐに背後へと振り向くと、そこにも槍を構えた奴がいた。

 

 どうやら完全に挟み撃ちの形で仕掛けてきたようだ。

 

 咄嵯の判断として、俺は地面に剣を叩きつけると砂埃を巻き起こし、視界を奪う。

 

 それによってヴァンパイアドーパントの攻撃を僅かに逸らす事ができた。

 

 とはいえ、あくまで僅かな時間稼ぎにしかならず、すぐに槍での連撃を放つ。

 

 それを俺は避けきる事はできないと判断し、あえて攻撃を受け流す。

 

 それにより致命的なダメージを受けることはなかったが、傷を負うことは避けられなかった。

 

「ならば、賭けるしかないな」

 

 俺はその言葉と共にロストドライバーに手を伸ばす。

 

『ナスカ! レベル! レベルアップ!』

 

 それは、以前、翔太郎さんが倒れた時に行ったレベル3。

 

 それ以降は使う事ができずにいた。

 

 だが

 

「この時に使えないと何の意味もないんだよ!!」

 

 その言葉と共に、俺を中心に熱風が吹き溢れる。

 

「なっ」

 

 奴はそれに驚いているが、そうしている間にも、その装甲が徐々に変わっていく。

 

 空を思わせる青色は、夕焼けを思わせる赤へと姿に。

 

『これが、私でも到達できなかったレベル3』

 

 そう、霧彦が言うが、そうしている間に、俺は構える。

 

「色が変わった所で」

 

 そう、ヴァンパイア・ドーパントは、その身体を霧に変える。

 

 だが

 

「超高速」

 

 その一言と共に、マフラーはまるで翼のように変わり、一瞬でヴァンパイア・ドーパントに接近する。

 

 それと共に、霧へと変わる前にナスカブレードで切り裂く。

 

「なっ」

 

 驚きを隠せない様子を見せるヴァンパイア・ドーパント。

 

 だが、それを逃さないように追撃を加える。

 

 しかし、流石に奴もただではやられず、反撃を行う。

 

 鋭い爪による一撃。

 

 それは、確かに俺の命を狙うには十分な物だった。

 

 だが

 

「無駄だ」

 

 その声と共に、俺はその攻撃を避ける。

 

 レベル3へと到達した事によって、全ての感覚が極限まで強化されている。

 

 それによって、ヴァンパイア・ドーパントの動きは全て見切る事はできる。

 

 更に、ナスカメモリの効果により、身体能力の強化も可能となっている。

 

 つまり、今の俺はヴァンパイア相手であっても遅れを取ることはないということだ。

 

 そして、そのまま連続で攻撃を仕掛ける。

 

 まずはナスカブレードを振るい、その腕を切り落とす。

 

 同時に蹴りを放ち、その胴体を吹き飛ばす。

 

「これで、決める」

 

『ナスカ! MAXIMUMDRIVE!』

 

 俺は同時にナスカブレードにナスカメモリを挿入し、構える。

 

 同時にナスカブレードからは巨大なエネルギー刃が放たれる。

 

 それに対して、ヴァンパイア・ドーパントはすぐに霧となって、逃げようとした。

 

 だが、それよりも早く、一撃は、ヴァンパイア・ドーパントを切り裂く。

 

「くっ、こんな所でっ!」

 

 それと共にヴァンパイア・ドーパントは、爆散する。

 

 同時に、変身者であるルゴシは、そのまま気絶する。

 

「影、大丈夫っ!」

 

 そう、戦いが終わると共に、ヒサメが寄り添ってくる。

 

 けど

 

「ちょっと、無理しすぎたかも」

 

 同時に俺も変身が解除され、そのまま倒れてしまう。

 

『「影っ!」』

 

 ヒサメと霧彦の声を聞きながら、俺は意識を失った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

風が呼ぶB/始まる究極への

 ヴァンパイアの事件から数日が経った。

 

 鳴海探偵事務所には何時もの賑やかさを取り戻しつつあったが、最近、フィリップさんの様子が可笑しい。

 

 ナイトメア・ドーパントとの戦いの際に、何かが起きたらしい。

 

 翔太郎さん達も、フィリップさんの身に何が起きたのか、知らない様子だった。

 

 それでも、事務所の皆はフィリップさんが話してくれるまで待つつもりでいた。

 

 それは、俺も同じく変わらなかった。

 

 だが、そんな時、ある人物が訪れた。

 

 鳴海探偵事務所に入ってきた依頼人。

 

 黒いスーツを身に纏い、思いっきりヤクザを思わせるその人物に、亜樹子所長は思わず「強面おじちゃん!」と驚きを隠せなかった。

 

 そのまま翔太郎さんの背中に隠れ、そのまま押し出した。

 

「なんだ、地上げに来た業者か? 

 

 とっと、帰りなぁ!!」

 

 押された事に、少し驚いた様子だった翔太郎さんだったが、すぐに強気な態度で、そのままその人に言うが

 

「あっ痛ぁ!」

 

 無言で、その人はデコピンで翔太郎さんを黙らせた。

 

「鳴海荘吉の旦那はいるか? 

 

 俺は尾藤勇、旦那に世話になった。

 

 務所から出たら、会いに来るように言われたんだが」

 

「それって」

 

 それは既に無くなった荘吉さんの知人という事になるだろう。

 

「……おやっさんは……」

 

「父は……父は、死にました」

 

 壮吉の死んだビギンズナイトのこともあり、話すことを躊躇う翔太郎に代わって、亜樹子所長が話す。

 

「亡くなったのか? 鳴海の旦那が」

 

「不慮の事故で」

 

 それを聞くと、尾藤は椅子に座りこんでしまう。

 

「い、今は娘の私と、この弟子の翔太郎君が探偵やってます! なにか父に依頼でも?」

 

「いや……調べモノをしてくれていると面会の時にいっていた。それが俺への出所祝いだと……」

 

 尾藤の話を聞き、亜樹子所長は戸棚からファイルを引っ張り出してみるも、尾藤に関わる捜査記録は明記されていなかった。

 

「そうか、悪かったな」

 

 そう言い、尾藤は事務所からでていこうとするも、翔太郎は壮吉の弟子として役に立ちたいと申し出る。

 

 だけど……。

 

「半人前に用はねぇよ」

 

「ガ──ーン……会ったばっかりなのにー!」

 

 デコピンされてショックな翔太郎さん。

 

「翔太郎さん! 

 

 尾藤さん、行ってしまいますよ!」

 

「あっあぁ、そうだなっ! 

 

 待ってくれ!!」

 

 そうしている間にも、翔太郎さんは、そのまま出て行った。

 

「ふぅ、それじゃ、俺も」

 

「影は休む! 

 

 この前のレベル3の怪我はまだ完全に治っていないでしょ」

 

「うぅ」

 

 そう、ヒサメに言われて、俺は思わず黙ってしまう。

 

「少しでも休んでいないと、駄目だからね。

 

 それじゃ、私が代わりに手伝いに行くから」

 

 そう、ヒサメはそのまま出て行ってしまった。

 

「まったく」

 

 そう、未だに痛む身体を休むように再び座る。

 

 すると、フィリップさんがこちらに近づく。

 

「君に、話がある」

 

「??」

 

 フィリップさんからの話がある? 

 

 それは一体、なんだろうか。

 

「あとで、ガレージで頼めるかい。

 

 その、皆がいる前では」

 

「えっえぇ」

 

 これまでにない雰囲気に、俺は疑問に思う。

 

 だが、そんな疑問に思いながらも、他のメンバー達と共に話を行っていく。

 

 そうしている間にも、事件は大きく動いていく。

 

 尾藤さんは、元々弟分であるマルの罪を被り、出頭したらしい。

 

 そして、今、現在起きている「野獣人間」の犯人がマルであった。

 

 マルと戦っていた翔太郎さん達だったが、向こうの状況はどうやらいつものような戦いが行えてないらしい。

 

 一体、どういう事なんだ? 

 

 そんな疑問に思いながらも、変身が解除したのか、フィリップさんが立ち上がる。

 

「感じる。やはり、新しい力が宿っている」

 

「新しい力? 

 

 それって、一体どういう事なんですか?」

 

 俺はそう、フィリップさんに問いかける。

 

 だが、そうしていると共にライブモードのデンデンセンサーが何者かの侵入を察知した。

 

 すると、リボルギャリーの発進口で幾層にも造られたハッチが開いた。

 

「シュラウド!」

 

 はいってきた人物に驚く。

 

 それは、俺も知っている人物だった。

 

「どうしてここが?」

 

「貴方より、ずっと以前からここを知っているもの」

 

 フィリップの質問にシュラウドとは冷静に答える。

 

「来人、貴方はもうすぐ進化する、エクストリームメモリを使って。でも、そこに到達できる真のパートナーは……左翔太郎ではない」

 

「翔太郎ではもう……僕のパワーについてこれない……?」

 

 シュラウドに翔太郎と別れるようにと言われた訳を理解したフィリップは、半ば絶望感をあじあわされた。

 

「ちょっと、待てよ! 

 

 シュラウド、さっきから、何を言っているんだ?」

 

 未だに状況を飲み込めない俺は思わず、割って入ってしまう。

 

 それと共にシュラウドもまた、俺を見る。

 

「あなたも、ナスカの力は少しずつ覚醒しているようね」

 

「それは、一体」

 

「常人ならば到達する事ができないレベル3。

 

 それを使える以上、その先にも到達できる」

 

「どういう事だよ」

 

「テラーと戦うのが、エクストリームならば、あなたはその障害を全て振り払う獣となる。

 

 それを進める為に必要なのが、ナスカなのだから」

 

「だからっ、どういう」

 

 そう、聞き終える前に、シュラウドは、その姿を消した。

 

 結局、彼女が何を言いたかったのか、分からなかった。

 

 それでも、今のフィリップさんの様子から、何かが起きるのだけは確実だ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

風が呼ぶB/分裂の危険性

 シュラウドからの突然の知らせに、俺達は呆然していた。

 

 シュラウドが言った、フィリップさんの真の相棒が翔太郎さんではない言葉。

 

 それが、フィリップさんにとっては、大きなショックを受けていた。

 

 そう、既に翔太郎さんが、目的の木彫りの熊があるとされる別荘へと向かっていた。

 

「……影、君はどう思う、さっきの言葉は」

 

「それって、翔太郎さんが真の相棒じゃないという事ですか?」

 

「あぁ、実際に僕はさっきの戦いの時、彼は僕の力について来れなかった。

 

 このままWとして戦うには」

 

「フィリップさん。

 

 確かに、Wとしては翔太郎さんは力不足かもしれません。

 

 だけど」

 

 そう俺が言い終える前に、翔太郎さんから連絡が来た。

 

 それは、木彫りの熊を狙って、なぜかウェザー・ドーパントが襲ってきた事だった。

 

「話は、後にしよう」

 

「フィリップさんっ!」

 

 そうしている間に、フィリップさんはリボルギャリーを操作する。

 

 それと共に、瞬く間に俺達は翔太郎さん達の元へと辿り着く。

 

 辿り着いた先で、既にウェザー・ドーパントが翔太郎さんに襲い掛かろうとした。

 

 だが、俺達が乗っていたリボルギャリーが、ウェザー・ドーパントの雷を防ぐ。

 

「おい、フィリップ! 

 

 なんで、すぐに「選択肢はファングジョーカーしかない」なに?」

 

 フィリップは、そう焦るように言う。

 

「僕の身体をベースにするしか」

 

 そう、フィリップさんは翔太郎さんと一緒に戦える可能性に縋るようにファングメモリを取り出す。

 

「はぁ? 

 

 よく分からないけど、やるぞ」

 

 言葉の意味に困惑する翔太郎さんだが、すぐに承諾するように構える。

 

「「変身」」

 

 同時に、ファングジョーカーへと変身する。

 

 これまでと変わらないファングジョーカーへと変わると同時にウェザー・ドーパントに向かって、

 

 走り出す。そして、そのままウェザーの放つ電撃を避ける。

 

 その瞬間、翔太郎さん達の顔が苦痛に歪む。

 

「ぐっ、ファングジョーカーでもっ制御がっ」

 

 それは、ファング側の、フィリップさんから溢れ出る力を制御できず、苦しんでいるようだった。

 

「こうなったら、マキシマムで反撃だ!」

 

「左右のバランスでは、ダメだ!?」

 

 二人は、そう話しながらも攻撃を続ける。

 

 そして、なんとかウェザーを倒す事が出来た。

 

 その後、フィリップさんは倒れ込むように地面に座り込んだ。

 

「はぁ、はぁ、やるしかないのかっ」

 

『ファング! MAXIMUMDRIVE!』

 

 その音声が鳴り響くと同時に、翔太郎さん達は必殺の一撃をそのままウェザー・ドーパントに放とうと構えた。

 

 しかし、その必殺の一撃は、放つ前にバランスを大きく崩れ、変身が解除される。

 

「なっぐっ、変身が維持できないっ」

 

 そう、翔太郎さんはすぐに気絶から立ち上がる。

 

「フィリップっ、すぐに変身をっ!」

 

 そう、翔太郎さんはジョーカーメモリを取りだし、構える。

 

 だが、それに対して、フィリップさんは悲しそうに首を横に振る。

 

 それが、何を意味しているのか、分からなかった。

 

「ぐっこうなったらっ」

 

『影っ! 無茶だっ、今の君の身体ではっ』

 

「やるしかないだろっ!」

 

『ナスカ! レベルアップ!』

 

 同時に俺はすぐに仮面ライダーへと変身する。

 

 それと共に、一気にレベル3へと変わると共に、ナスカブレードを真っ直ぐとウェザー・ドーパントに振り下ろす。

 

「ほぅ、次は君が相手か」

 

「はああぁぁぁ!!!」

 

 ウェザー・ドーパントは、俺に対して余裕の笑みを浮かべながら、その攻撃を受け止める。

 

 だが、そこで俺は無意識にだが、ナスカの能力を発動する。

 

『PELICAN』

 

 鳴り響くと共に、左腕にペリカンの頭を模した武器「ペリカンアーム」を召喚し、そのまま嘴部分で殴る。

 

「おっと、これは意外と痛いな」

 

 しかし、ウェザー・ドーパント達は俺の攻撃を受けると大きく後ろに下がる。

 

 同時にウェザー・ドーパントはその身体から無数の雷を周囲に撒き散らす。

 

『MONKEY』

 

 すると、俺の腰から伸縮自在の尻尾が伸び、周囲の雷を防ぐ。

 

 それと同時に、俺はウェザーへと接近して、そのまま殴りかかる。

 

「ふんっ!」

 

 ウェザーは、腕を振るう事で風を発生させて、その勢いで俺を吹き飛ばす。

 

「なにっ、能力を複数使用するだと」

 

『どういう事だっ、複数の能力を同時に使用できるなんて』

 

「俺にも分からないっだがっ!」

 

 これぐらい無茶しないと、目の前にいるウェザー・ドーパントを倒す事はできない。

 

「影っ」

 

「照井っさんっ」

 

 後ろを見ると、既にアクセルに変身している照井さんがいた。

 

 同時に、その手に持つエンジンブレードをウェザー・ドーパントに追撃する。

 

「やるぞっ!」

 

「えぇ!」

 

 その言葉と共に俺と照井さんはそのままウェザーへと斬りかかり続ける。

 

 一方で、ウェザーの方も俺たちの攻撃を避ける為に動き回る。

 

 その中で

 

「照井竜!」

 

 同時に聞こえた声と共に、照井さんに投げ渡されたのは、サイクロンメモリだった。

 

「えっ」

 

 それに、俺達は困惑した。

 

 だが照井さんは迷っている場合ではないと感じ、瞬時にサイクロンメモリをエンジンブレードに装填する。

 

『サイクロン! MAXIMUMDRIVE!』

 

 同時に風の刃を纏ったエンジンブレードをウェザー・ドーパントに向けて、振り払う。

 

 その一撃は、これまで劣勢だった俺達を逆転させるには十分な力だった。

 

「これはっなんていう力っだがっ!」

 

 照井さんは驚きながらも、エンジンブレードを振り払い続けていく。

 

 一方、ウェザーは風によって吹き飛ばされるが、すぐに体勢を立て直す。

 

 そして、右手を掲げると同時に、巨大な竜巻を発生させる。

 

 それは先程までとは比べ物にならない程の強力なものだった。

 

 だが

 

『PELICAN! MAXIMUMDRIVE!』

 

『MONKEY! MAXIMUMDRIVE!』

 

 俺は鳴り響く音声と共に、全身に纏っていたエネルギーをナスカブレードに纏う。

 

 同時に襲い掛かる巨大な竜巻を真っ二つに切り裂く。

 

「なっ」

 

「照井さんっ!」

 

「あぁ!!」

 

 照井さんは、そのままエンジンブレードの風の刃を、ウェザー・ドーパントを切り裂く。

 

 それにより、ウェザーは膝をつくが、まだ諦めていないのか、こちらを睨みつけている。

 

「ぐっ、ここは退散しますか」

 

 その言葉と共にウェザー・ドーパントは、そのまま姿を消した。

 

 戦闘が終わり、同時に俺は変身は強制的に解除される。

 

「ふぅ、はぁっ、ぐっ」

 

 戦いによってできた疲労に、息切れを起こしてしまう。

 

 すると照井さんが俺に向かって近づいてくる。

 

「大丈夫か?」

 

 そう言いながら、心配そうな顔で見つめてくる。

 

 そんな様子に少し戸惑いつつも、何とか言葉を返す。

 

「えぇ、なんとか」

 

 とはいえ、さすがに体力の限界だ。

 

 もう一歩も動けないほどに。

 

 だけど、それよりも俺が気になったのは翔太郎さんとフィリップさんの方だった。

 

 2人は、もぅ、仮面ライダーにならないのか。




「これは、レベル3。
いや、既にレベル4には達しているか。
やはり、メモリの適合率は高いようね」
そう言いながら、シュラウドは、まるで先程の戦いが見えたように頷く。
「ならば、もうすぐあのメモリを手に入れるでしょう。
しかし、そうなると気になるのは、あの子ね」
シュラウドがそれと共に思い出すのはヒサメの存在だった。
「彼女自身もメモリに引き寄せられている。
もしかしたら」
そう言いながら、取り出したのは、翔太郎達と同じWドライバー。
「セカンドプランは、もしもの時にね」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

風が呼ぶB/究極の誕生と運命の分岐点

以前の戦いに比べても、身体の痛みは確実に減っている。
それは、俺自身がナスカメモリを使いこなせているのが繋がっているのか。
それとも、過剰適合によって、その毒素が俺の身体に染みこんでいるのか。
「ぐっ」
そんな疑問を余所に、未だに身体が熱い。
先程の井坂との戦いの最中で、これまで決して使う事ができなかった複数の能力を同時に使用。
それによって、俺自身も信じられない程の力が確かにあった。
けど、それと同時にこれまでとは比べものにならない程の闘争本能を刺激する。


「今の翔太郎の力は弱すぎる。

 

 だが、君はサイクロンの力に耐え切れた。

 

 どうだろう」

 

 そう、雨の中で聞こえた。

 

 それを問いかけているのはフィリップさんであり、その相手は照井さんだ。

 

 もしも、その提案を受けたら。

 

 俺はそう思いながら、急いで、向かう。

 

 間に合って欲しい。

 

 そんな気持ちを焦りを生んだ。

 

 だが

 

「フィリップ、つまらない質問をするな。

 

 俺は1人であいつらを追う」

 

 そう、照井さんは、フィリップさんの提案を拒んだ。

 

「ちょ、フィリップ「フィリップさん」えっ」

 

「最初に言います。

 

 すいません」

 

「何をぐっ」

 

 そう、フィリップさんが俺に対して疑問に思う前に、頬を殴る。

 

 突然の事で、その場にいた全員が驚きを隠せなかった。

 

「あんたは、何をやっているだっ」

 

 そう、俺はこの事件の間に溜め込んだ何かを吐き出すように叫んでしまう。

 

「何をだと? 

 

 君も分かっているはずだ」

 

 同時にフィリップさんは冷静そうに立ち上がる。

 

 それはシュラウドが言った言葉だろう。

 

「翔太郎ではもう僕のパワーについてこれない? 

 

 それは君も分かっているはずだ、彼はWとして戦うにはあまりにも力不足だ。

 

 君も言ったはずだ」

 

「確かにそうですね。

 

 もしかしたら、翔太郎さんは、Wとして戦うのは力不足です」

 

「影っ」

 

 俺の言葉は、フィリップさんの言葉を肯定していた。

 

 その事にヒサメも亜樹子所長も驚きで目を見開いていた。

 

「だけど! 

 

 あんたらはもぅ、Wじゃないっ」

 

「僕達がWじゃない?」

 

「あぁ、確かに完全な力を発揮するWじゃない。

 

 だけど、翔太郎さんとフィリップさん。

 

 2人が合わさった事で誕生したのはWなんかじゃない」

 

 俺は同時に、その手に持ったロストドライバーをフィリップさんに見せる。

 

「俺を、最初に仮面ライダーとして認めてくれた。

 

 あんたらは既に誰かが作ったWじゃない。

 

 翔太郎さんと共に街の人々を守ってきた仮面ライダー。

 

 それがあんただろ」

 

「仮面ライダー」

 

 そう、その一言にフィリップさん。

 

 同時にふと、手元にあった木彫りの熊から紙が落ちる。

 

「これは」

 

「Nobody's Perfect」

 

 そう、鳴海荘吉からのメッセージが書かれていた。

 

「そうだ。

 

 僕達は、2人で1人の仮面ライダーだ。

 

 鳴海荘吉の意志を受け継いだ、僕達は戦闘マシンであってはいけない」

 

 同時にフィリップさんもまた大事な事が分かったように悲痛な表情をする。

 

「すまない、君にも無茶をさせた」

 

「へへっ、それだけ聞ければ十分です。

 

 それに、もしかしたら」

 

「影?」

 

 それと共に、俺はナスカメモリを見る。

 

「行ってください。

 

 翔太郎さんの、相棒の所に」

 

「あぁ」

 

 その言葉を聞き取ると共に、フィリップさんは、翔太郎さんの所に向かう。

 

 未だにWとしての変身が解決した訳ではない。

 

 だが、仮面ライダーWとしての、コンビが確実に復活する。

 

 それは、俺に確かな確信があった。




「まさか、フィリップと翔太郎によるエクストリームが誕生するとは」
そう言いながら、シュラウドは、先程までの戦闘を思い出しながら言う。
当初、フィリップの力が強くなった事によって、シュラウドの思惑通り、照井竜とWになろうとした。
それは、確かにあと少しまでだった。
だが、自身が生み出した3人目の仮面ライダーである影の説得によって、フィリップは再び翔太郎とコンビを組んだ。
だが、このまま続ければ、いずれ照井竜とWになる。
そう考えていたはずだった。
だが、それが一番の想定外の出来事が待ち受けていた。
翔太郎とフィリップの2人がエクストリームへと到達した。
翔太郎とのWでは、決して到達できないはずの。
「どうやら、セカンドプランを考える必要があるわね」
同時に取り出したのは翔太郎達が使用するWドライバー。
「獣では、獣では、決して恐怖には抗えない。
ならば、あの子にはこれを使って貰うしかないわね」
そして、そこにはメモリが一つ。
同時に、そのメモリを鳴らす。
『ウェザー』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Zを継ぐ者/始まりの依頼

 鳴海探偵事務所の前にいる人影。

 

 黒いスーツを身に纏っており、その目にはサングラスをつけている。

 

「えっと、あの人達は一体」

 

 そのスーツの人影を見て、疑問に思ったヒサメは首を傾げながら見つめる。

 

「まさか」

 

 僅かに、そのスーツを身に纏っている人物に見覚えがありながら、俺はそのまま鳴海探偵事務所へと向かう。

 

「悪いが、今は関係者以外、立ち入り禁止だ」

 

「いや、その、私はこの事務所で働いておりまして」

 

 SPだと思われる人物は、こちらを睨み付けるように、見つめる。

 

 それには、ヒサメは少しビビっている様子が見えるが、俺はSPを反対に見つめる。

 

「悪いけど、ここにいるの、たぶん姉ちゃんだろ」

 

「姉ちゃん? 

 

 あっ、あなたは」

 

 その内、もう1人が俺の方を見ると、驚いたように目を開く。

 

「影様!?」

 

 すると、SPは何やら驚いた様子で、俺を見つめた

 

「えっ、影様?」

 

 さすがに俺が様付けで呼ばれた事に、ヒサメは驚きを隠せない様子だった。

 

 そんなヒサメを余所に俺はそのまま事務所の中へと入っていく。

 

 そこには見覚えの初老の女性と、白いドレスを身に纏った女性がいた。

 

 それに相対するように、フィリップさんと亜樹子所長がいた。

 

「あっおはよう、影君!」

 

「影、様?」

 

 すると、初老の女性は俺を見て、驚きを隠せない様子だった。

 

「影」

 

「その、久し振りだな、姉ちゃん」

 

 そう言いながら、俺は少し気まずくなりながら、瞳を逸らす。

 

「まさか、あなたがここにいるとはね。

 

 まぁ良いわ、ここにいるんだったら、丁度良いわ。

 

 あなたにも大きく関係しているのだから」

 

「俺に?」

 

 そう疑問に思いながら、首を傾げる。

 

「お爺様が蘇ったの」

 

「はっ」

 

 その一言に俺は驚きを隠せずに、目を見開く。

 

「お爺ちゃんが?」

 

 そう、ヒサメは俺の様子を見ながら、首を傾げる。

 

 そうしながら、渡されたのは写真。

 

 そこに刻み込まれているのは、引き裂かれた壁に打ち付けられたZENONリゾートの旗。

 

 そこに書かれている文字を俺は見る。

 

『我、墓場よりよみがえりし、堕落の一族、制裁を受けよ。弾空寺義蔵』

 

 そう、禍々しく強い筆文字だった。

 

「凄くお爺様の字に似ているそうです」

 

「……」

 

 同時に俺は思わず、歯軋りしてしまう。

 

 そして、それを見ていた亜樹子所長は何か思う事があったのか、口を開く。

 

「その、影君?」

 

「……姉ちゃん、その依頼、俺も協力するよ」

 

 拳を強く握りしめ、俺は覚悟を決める。

 

 この事件は、おそらく、いや間違いなくZのガイアメモリが関係している。

 

「そう、それってあなたが家から出て行った訳に、関係しているのかしら」

 

 すると、瞳を鋭くさせ、俺を見つめる。

 

 その様子には、この場にいる全員が息を飲む程の雰囲気を出していた。

 

 俺はそのまま、懐にいつも入れている紙を取り出す。

 

 その紙に刻み込まれているのは

 

『Zの小箱を探せ。そして闇を暴け』

 

「この文字は、お爺様の」

 

「Z? 

 

 これって、影が探していた」

 

「あぁ」

 

 それを確認して、その場にいた一同は驚きを隠せない様子だった。

 

「Zって、一体?」

 

「最初は分からなかった。

 

 けど、調査していく内に、分かったんだ」

 

 俺はヒサメの方を見る。

 

「何時か分からないけど、この弾空寺に眠るとされる遺産の一つだと思うよ」

 

 弾空寺の財宝である小箱。

 

 それは、おそらくはガイアメモリだろう。

 

 それを察したのか、フィリップさんも、亜樹子所長は頷く。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Zを継ぐ者/蘇りし祖父

「うわぁ、凄い」

 

 そう言いながら、ヒサメは目の前にある光景を見つめながら、口に出す。

 

 眼前には、海岸線と共に、その両端に巨大なZENONホテルとシーサイド遊園地、その他の様々な施設が多く見られる。

 

「ここが、影の実家なの?」

 

「まぁ、そうなるな」

 

 俺はそう言いながら、大きく変わってしまった景色に対して、空しさを感じていた。

 

 ここにいる多くの人は確かに思い出に残る光景が広がり、素晴らしいと思うかもしれない。

 

 けど、それを作り出す為に、爺ちゃんが残し続けた自然を破壊し、作り上げられたそれを、俺はただの金儲けの為の道具にしか見えなかった。

 

「影?」

 

「とりあえず、フィリップさんと合流しよう。

 

 いや、今は翔太郎さんと言った方が良いな」

 

 そう言いながら、俺はそのままフィリップさん達と合流する為に彼らがいるだろう場所に向かった。

 

 しばらく歩き続けると見えたのは、フィリップさんと話している人物を見つめる。

 

「あの人は?」

 

 その人物に対して、疑問に思ったように首を傾げるヒサメを余所に、俺はそのままフィリップさんと話している人物に近づく。

 

「相変わらず、背と同じぐらいに人を馬鹿にする事が趣味なんですかねぇ、お兄様」

 

「……貴様は」

 

 そう、俺の存在に気づいた兄である禅空寺俊英は苛つきを隠せない様子で、俺を見ていた。

 

「まったく、未成年であるお前にも、土地の権利を与えるとはな。

 

 爺さんも面倒な事をしてくれる」

 

「あんたらのような奴だと、爺さんも心配だったんだろうな。

 

 翔太郎さん、亜樹子さん。

 

 とりあえず、施設の案内は俺がしますので、こちらに」

 

「……あぁ、よろしく頼むよ」

 

 そう、あいつとの会話を少しでも早く終わらせたい気持ちと共にすぐに2人を連れて、その場から去って行った。

 

 そして

 

「なんっっやねん、あのチビイケエン! 感じ悪っ!!」

 

「でしょ! 

 

 やっぱり亜希子所長は分かってくれますかぁ!」

 

 あいつから離れると共に、亜樹子所長の叫びに思わず賛同してしまう。

 

「……影、君は家族の事をあまり話したくなかったのは」

 

「えぇ、そうです。

 

 あの兄を始めとして、香澄姉さんとあずささん以外は、金儲けの事しか考えないようなどうしようもない奴です」

 

 同時に思い浮かべるのは、親父を始めとした奴らが行った爺さんが残した自然を壊してのビジネス。

 

 それが嫌で、俺はこの家から飛び出してしまった。

 

「ならば、君はこの事件で、Zのメモリを探し出して、どうするつもりだい?」

 

 それは、俺がZのガイアメモリを見つけ出して、どうするのか。

 

 その確認を行うように、聞く。

 

「……正直に言って、翔太郎さん達と出会う前だったら、多少の罪悪感があっても、この地のリゾート地をぶっ壊すつもりでした」

 

「そんなの、可能なの」

 

「犯罪者が作った遊園地なんて、誰も嫌でしょ。

 

 けど」

 

 同時に俺は翔太郎さん達と共に事件を追い、多くの人達との関わりを思い出す。

 

「俺がそれをやったら、結局はあいつらと同じ事。

 

 そんな事、爺さんが望む訳ない」

 

「それじゃ」

 

「あぁ、Zのメモリを見つけ出して、闇を暴く。

 

 それで、誰もが、本当に綺麗な思い出を作れる場所にする」

 

 そう言いながら、俺は今はある光景を見つめる。

 

 既に自然の多くは確かに無くなっている。

 

 けど、確かに自然は残っており、それは俺と香澄姉さんが守った大切な存在が残っているという事だ。

 

 だから──ー

 

「その為にも、絶対にZのメモリを手に入れないとな」

 

 その言葉と共に、目の前には既に屋敷が見えた。

 

「それじゃ、案内しますね」

 

 そう言うと、屋敷の中へと向かっていった。

 

 そこは先程までいた別荘よりも遥かに大きい部屋が広がっていた。

 

 そこには高級そうな家具が置かれており、まるでここだけ別世界のようだった。

 

 未だに変わらない光景を見ながら、俺はそのまま屋敷を案内していく。

 

 代わり映えしない光景に、ゆっくりと見つめながら、ふと何か聞こえた。

 

 何かが屋敷にぶつかった音だ。

 

 同時に、屋敷の壁を破壊した正体が見える。

 

「えっくっ車ぁ!!」

 

 それは黒塗りのベンツ。

 

 空を飛ぶ事など、常識では考えられない。

 

 ならば、それを行ったのは。

 

「ドーパントっ!」

 

 同時に俺はベンツを投げたと思われるドーパントを探る。

 

 すると、そこには怪しい影が見えた。

 

 俺はすぐに飛び出し、その影の元へと向かった。

 

「待てっ!!」

 

 黒い影はこちらの存在に気づいたのか、すぐに逃げ出した。

 

 俺はすぐに追いかけながら、その腰にロストドライバーを巻く。

 

「待てっお前が爺さんなのかっ!」

 

 そう俺は問いかけるように黒い影に叫ぶ。

 

 やがて、人影が見えない場所まで来ると、振り返る。

 

「質問に答えよう。我が名は禅空寺義蔵。

 

 大自然からの使者だ」

 

「本当に、爺さんなのかっ」

 

 俺は思わず、問いかける。

 

「その通りだ。

 

 影よ、貴様には警告する。

 

 これ以上、我の邪魔をするな」

 

「邪魔って、なんだよ! 

 

 こんな事をして、他の人を巻き込んだらどうするんだ!」

 

「それも警告を無視した結果だ。

 

 お前は、我が使命を理解できるはずだ」

 

「っあぁ、理解できるよ。

 

 あんたのやっている事も間違いじゃないかもしれない。

 

 けど!」

 

 俺は同時にナスカメモリを取り出す。

 

「あんたに、これ以上人殺しをさせない!」

 

『ナスカ』

 

「変身!」

 

 俺はそれと共に仮面ライダーへと変身すると共に、手に持ったナスカブレードの刀身を爺さんに向ける。

 

「仮面ライダーだとっ」

 

 それに爺さんは少なくとも驚きを隠せなかった。

 

 だが、そんな動揺を見逃さず、俺は瞬時に近づく。

 

 ナスカブレードを真っ直ぐと爺さんに向けて、切り裂く。

 

 だが、爺さんの腕から巨大な爪が生える。

 

「なっ」

 

 驚きを隠せない中で、俺達はそのまま火花を散らす。

 

 そのままナスカブレードと爪による攻防を繰り広げる。

 

 力の差は歴然だった。

 

 こちらは刃渡り10数センチ程度の剣に対して、相手はその倍近い長さを持つ腕を持っているのだ。

 

 この差を覆す事は出来ない。

 

 俺はすぐに後ろに下がるが、それに対して、爺さんはその腕を変化させる。

 

 弾力性に富んだ触手へと変え、それを鞭のように振るってくる。

 

 どうにか避けようとするが、その攻撃速度が速く対応しきれない。

 

 仕方なく防ごうとするも、こちらの攻撃速度よりも早く、次々と体を打たれていく。

 

 そして、一度大きく飛ばされると地面を転がった。

 

 痛みで悶えている間も無く、再び振られるその攻撃をかろうじて避ける事が出来た。

 

 しかし、起き上がろうとする前に、今度は両手が変化を始める。

 

 まるでムカデのような無数の足に変化すると、それで地面を掴みながら移動を開始する。

 

 その姿はまさしく百足のようだ。

 

 しかも、それが高速で動く為、接近する事さえ難しいだろう。

 

「影よ」

 

「なんだよ」

 

「もしも、貴様が我を止めたければ、この地の闇を暴け。

 

 そして、その時には、このZOOをお前に渡そう」

 

「ZOOっ!」

 

 まさか、爺さんが変身しているのが、俺が探し続けたZのメモリ。

 

 だけど

 

「なんで、そんな事を」

 

 そんな疑問の声を余所に、爺さんはそのまま消えていった。

 

「闇を暴け。

 

 結局は、そこに辿り着くのか」

 

 そう言いながら、俺はゆっくりと爺さんが消えた先を見つめる。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Zを継ぐ者/その天気は一体

 ズードーパントからの言葉を聞き、俺はこのZENONリゾートに関する情報を集めていた。

 

 既にズードーパントの情報と共に探っていった。

 

 以前から、この地で住み慣れている事もあって、俺は他の客とは違う目線で物事を見る事が出来ていた。

 

 まずはズードーパントの狙いだ。

 

 祖父の亡霊と言うだけあって、この地の自然を欲するのかと思えばそうではないらしい。

 

 そう、俺は様々な情報を探っていく。

 

 そうしていく内で、違和感があった。

 

「どうしたの、影?」

 

「少しな」

 

 それは、とある小山。

 

 この場所は、以前から遊んでいた事もあったので、その様子はよく知っている。

 

 だが、今では、一角が異常に枯れている。

 

 それが、どうしても気になる。

 

「とにかく、調べないといけない」

 

 そう、俺とヒサメはその場所へと向かった。

 

 目的地の森林を見てみると、幼少期に遊んでいた森とは思えない程に荒れ果てた印象を受ける。

 

 そして、やはり何かがおかしい。

 

 まるで森の生命力を奪うような何かが蔓延っているようにも見えるのだ。

 

(とりあえず、調べてみるか)

 

 ここで悩んでいても仕方がない。

 

 何かがあるなら調査しなくてはならないだろう。

 

 そう思っていた時だった。

 

「おいおい、まさかここにターゲットがいるとはな」

 

「っ!」

 

 聞こえた声、それと共に振り向くと、そこには怪しい影が一人。

 

 赤い目と胸部の円形以外は特にディティールが無い真っ黒な体をした存在が。

 

 

 

「ドーパント!」

 

 俺はすぐにその正体が分かり、その手にナスカメモリを取り出す。

 

『ナスカ』

 

「変身!」

 

 俺はすぐに仮面ライダーへと変身し、その手にナスカブレードを手に取る。

 

 同時に目の前にいるドーパントに向けて、振り下ろす。

 

「おいおい、慌てるなよなぁ」

 

 そう、その手でナスカブレードを受け止める。

 

 同時にナスカブレードを通して、俺の身体から力が抜ける感覚がする。

 

「っ!」

 

 瞬時に危険だと感じ、俺は後ろに下がる。

 

 だが、それよりも早く、俺の身体に奴が触れようとする。

 

「ぐっ!」

 

『フラミンゴ! MAXIMUMDRIVE!』

 

 それよりも早く、俺はすぐにフラミンゴの能力を発動させ、そのまま後ろへと大きく下がろうとする。

 

 だが、奴の手がフラミンゴの翼に触れると共に、俺は地面へと大きく叩きつけられる。

 

『影っ! まさか、ゼロ・ドーパントっ』

 

「ゼロ?」

 

『触れたもののエネルギーを瞬間的に0にする能力を持つドーパントだ。

 

 まさかっ、組織から』

 

「どうやら、噂は本当のようだな。

 

 けど、関係ないな、ここでお前を倒せばなぁ!」

 

 そう、黒い影、ゼロ・ドーパントが俺を蹴り上げる。

 

 既に奴の能力で、こちらの力はほとんど出ない。

 

「影っ!」

 

 そう、ヒサメが声を出す。

 

「来るなっ!」

 

「だけどっ」

 

「おいおい、こんな所にいるとは、悪いお嬢さんだな」

 

 そう、ゼロ・ドーパントがヒサメの方へと近づこうとした。

 

「止めろっ」

 

 そう、俺が止めようとしたが、身体がまるで言う事を聞かない。

 

 このままじゃ、ヒサメが。

 

 そう思った次の瞬間だった。

 

 ヒサメの足下にはドライバーとメモリがあった。

 

 その形は俺が持つロストドライバーと似ているが、設置箇所が正反対だった。

 

 見ると、ヒサメに向けて投げた人物は、シュラウドだった。

 

「ヒサメ、そのメモリを使いなさい」

 

「えっ」

 

「死にたくなければね」

 

 そう、シュラウドの言葉を受けて、ヒサメはそのまま腰にドライバーを巻く。

 

『ウェザー』

 

「「っ!」」

 

 その聞こえた音声と共に、俺達は驚きを隠せなかった。

 

 だが、ヒサメは覚悟を決めたように、ドライバーにウェザーメモリを挿入する。

 

「へっ変身!」

 

『ウェザー』

 

 その音声と共にヒサメの姿は変わる。

 

 基本的には、俺達のようなシンプルなボディだが、様々な天気を思わせるコートを身に纏っている。

 

 それこそが、ヒサメが変身した姿だった。

 

「これは」

 

「仮面ライダー」

 

「ウェザー」

 

 その姿に驚きを隠せなかった。

 

「ウェザーっだとしてもっ!」

 

 そう言い、ゼロ・ドーパントは襲い掛かる。

 

 それに対して、ヒサメは軽く手を振るう。

 

 それだけで、吹雪が放たれ、ゼロ・ドーパントの動きを止める。

 

 そして、そのまま上空に飛び上がると、雨雲が発生し、そこから雷鳴と共に巨大な落雷が発生する。

 

 それに直撃し、ゼロ・ドーパントは、その力を受け止める。

 

「強い」

 

 それを見ていた俺の口から思わず漏れる。

 

 単純にウェザーメモリの力もあるが、その相性がヒサメと良い。

 

 もしかしたら、単純な力だけならば井坂よりも強いかもしれない。

 

「このままでは任務に支障が出るな!」

 

 同時にゼロ・ドーパントはそのまま闇の中へと消えていく。

 

「これって、一体」

 

「ふむ、やはりこちらに反応していたのか」

 

 そう言いながら、シュラウドはヒサメに近づく。

 

「おい、これは一体どういう事だよ」

 

 近づいてきたシュラウドに対して、俺は睨み付けるように言う。

 

「どうやら彼女は私が持っていたウェザー。

 

 そのウェザーと共鳴し、高めていたようね」

 

「つまり、全部、あんたの手の平だった訳か」

 

 少し前のエクストリームの一件もあり、俺自身は少しシュラウドに対して敵意があった。

 

「いいえ、元々ウェザーに関しては予想外よ。

 

 あなたを強化するのは別にする予定だったから。

 

 けど」

 

 そう言い、ヒサメを見る。

 

「これで新たなWの条件には良いわね」

 

「新たな」

 

「W」

 

 そう言い、シュラウドはヒサメが今、腰に装着しているドライバーに指を差す。

 

「そのドライバーはWドライバーを開発する際に作り出したロストユニット。

 

 Wドライバーとは違い、ロストドライバーに接続して、擬似的なWドライバーにする事ができる」

 

「つまりは、Wドライバーの片割れか。

 

 という事は」

 

 そう言い、シュラウドは俺達を指を向ける。

 

「ナスカとウェザー。

 

 その二つの力を得たWとなりなさい。

 

 影とヒサメ」

 

 そう俺達に言う。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Zを継ぐ者/森の涙

「俺と、ヒサメがWにだと」

 

 その言葉を告げたシュラウドの一言に、俺は驚きを隠せなかった。

 

「ナスカとウェザー。

 

 その二つのメモリの力の強さは、貴方達も知っているはずよね」

 

「それは」

 

 実際に、俺自身もナスカを力をこれまで使っていたからこそ、その力の強さも分かる。

 

 そして、ウェザーは、ドーパントとして実際に相対して、戦ったからこそ分かる。

 

「それで、なんで俺達をWにしようとするんだ」

 

「簡単よ。

 

 今のフィリップは左翔太郎に拘り過ぎている。それが、この先どれだけ足を引っ張るか分からないわ。

 

 それなら、代わりの存在も必要になる」

 

 そう言って笑うシュラウドだった。

 

「だからこそ、俺とヒサメを」

 

 だからと言って、俺は

 

「何を迷っているの」

 

「それは」

 

 ヒサメが一緒に戦う事に迷いがある。

 

 何よりも

 

「ウェザーの力を使うのはっ」

 

 それが、あの井坂が使った能力と同じものだと分かったらなおさらだ。

 

「今は迷っていられない状況よ。

 

 これからミュージアムとの戦いが始まる以上、私達は戦力が必要なのよ」

 

 そうだとしても、俺は

 

「いずれ、あなたから求めるはずよ。

 

 ウェザーとヒサメの力を」

 

 そう言いながら、シュラウドはその姿を消した。

 

「影」

 

 そう、心配そうにヒサメは俺に話しかける。だが、それも当然の話だろう。

 

 いくら今の状況でも、俺自身の身の危険を考えるならば、受け入れるしかない。

 

 けれど、それでも俺は

 

(まだ、答えなんて)

 

 どうすればいいのか分からず、立ち尽くすしかなかった。

 

「とにかく、今は、ズードーパントが何を伝えるのか、調べよう」

 

 そう、俺は言った。

 

 結局、シュラウドの言うとおりなのかもしれない。

 

 そう、俺は森を見つめる。

 

「お爺ちゃんの名前を使っていたけど、あの人はこの土地で悪い事をしようと、考えていたのかなぁ?」

 

「……いや、俺は、違うと思う」

 

 爺さんの名前を使っていた。

 

 その行動は、確かに過激だ。

 

 だけど、同時に確かにこの自然を愛した人間である事は間違いないはずだ。

 

 何よりも、これまで建物の大きな被害はあった。

 

 だが、人が死んだという報告はなく、本当に自然を守ろうという気持ちがあった事が伺える。

 

 そんな人間がどうして。

 

「……もしかしてだけど」

 

 同時に、俺は、そのままレディバグフォンでフィリップさんに連絡する。

 

 そこから気になった事を質問する。

 

「なるほど。

 

 だとしたら、ズードーパントの考えは正しいかもしれない」

 

 それと共に、この地で起きている出来事に、俺は怒りに震えた。

 

「くそっ」

 

 それと共に、俺は怒りを隠せなかった。

 

「影っ」

 

「俺は、こんな事を許せないっ! 

 

 まさか、この森でっ、そんな最悪の事をっ!」

 

 俺はそう言いながら、枯れた森を見つめる。

 

 その光景は、俺には、森が泣いているように見えた。

 

「でも、影」

 

「あぁ」

 

 このまま、ウェザーの力を使って良いとは、とても思わない。

 

「あなたは、やはり変わらなかったな」

 

「っ!」

 

 聞こえた声。

 

 それは森の中の暗闇でその影は見えなかった。

 

 だが、その手元には、まるで狼を思わせるロボットがいた。

 

 それは、フィリップさんの持つファングメモリと似た姿だった。

 

「まさか、お前は」

 

「……先程の話は既に聞いていました。

 

 だからこそ、これを」

 

 その言葉と共に、なんとズーメモリが俺達の元に来た。

 

「えっ」

 

 困惑しながら、俺はズーメモリを見つめる。

 

 そのメモリ部分は、俺や翔太郎さん達が使っていたメモリと同じ物だ。

 

「これは」

 

「先程の女性が、あなたに渡す為にと。

 

 本来のズーメモリは既に」

 

「……もしも、あなたが俺の予想通りの人物ならば。

 

 自首をしてくれるか」

 

 そう、俺は呟いた。

 

 だが、返ってきた返事。

 

「えぇ、勿論。

 

 だからこそ」

 

「分かっている。

 

 俺も、この森の涙を拭いたい」

 

 そう、翔太郎さんの気持ちが確かに感じ取った。

 

 同時に、そのズーメモリは、そのままヒサメの肩に懐くように座る。

 

「ヒサメ、そいつを頼めるか」

 

「うん」

 

 その言葉と共に、俺の言葉にヒサメも頷く。

 

 同時に、この事件が終わりへと向かって行く。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Zを継ぐ者/大自然の使者

今回の話で初登場するナスカの強化形態に関する募集を行っています。
皆様の応募、お待ちしています。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=288456&uid=45956


 その屋敷に、事件の当事者が全員集まっていた。

 

 そこには、俺を含めた禅空寺全員と、ホテルの従業員が集まっていた。

 

 その中で、フィリップさんの推理が行われた。

 

 既に内容も、犯人自身も告白されており、俺は衝撃を受けなかった。

 

「あなたの目的はわかった。

 

 だから、これ以上はやめて、自首をしてくれ。

 

 弓岡あずささん」

 

 だが、その悲しさに、そのままフードを深く被ってしまった。

 

 それに対して、ヒサメは俺の手を自然と握ってくれた。

 

「弓岡が、なぜそんな」

 

「君を守る為だ」

 

 同時に警察が同時に彼女に対して、警戒する。

 

「待ってくれ、今回の事件はどちらも争う必要はない。

 

 なぜならば、既に彼女の目的は達成させられた。

 

 そして、ズードーパントは2度と現れない」

 

「なっ、どういう事だっ!」

 

 その言葉と共に一番に飛び出したのはクソ兄貴だった。

 

「あのズーメモリの本来の持ち主はあなたでした。

 

 けど、そのメモリを使用する前に、あずささんに奪われた。

 

 そうですね」

 

「さすがに、先程の反応で、言い訳は逃れないだろうがな」

 

 同時にクソ兄貴はしまったと顔をしかめる。

 

「同時にこの土地が真っ黒だというのも分かったからな」

 

「それは、どういう事なんだよ、探偵助手?」

 

 そう、俺に問いかけてきた。

 

「俺はこの森で生まれ育った。

 

 だからこそ、一部で異常に森が枯れている事を調査して分かったんだ。

 

 そして、ドーパントに襲われた。

 

 その時に、あずささんが助けてくれた」

 

 実際にあの時、あずささんが近くにいた事も考えると、この事件の真相を解き明かす為に行動してくれたんだろう。

 

「そうして、調べた結果。

 

 この土地は組織に関与している事が分かった」

 

 同時に俺はクソ兄貴達を見つめる。

 

「てめぇらは、この森を壊しただけじゃない。

 

 多くの人々を笑顔にできる場所を、自分の我欲で汚した」

 

「どうやら、この事件は終わりを迎えそうだな」

 

 そう言いながら、照井さんはそのままクソ兄貴達を逮捕しようとした時だった。

 

「こうなったらっ!」

 

 同時に、その場にいた全員があずささんに向かって行く。

 

 おそらく、この中で一番人質になりやすい人物としてだろう。

 

 だが、それよりも前に俺は奴らの前に出る。

 

「貴様っ邪魔だ!!」

 

 同時にその場にいた全員が一斉にドーパントへと変わっていく。

 

「宿泊客の避難を!」

 

「はっはいっ!」

 

 照井さんの叫び声と同時に、すぐにその場にいた刑事達が避難していく。

 

 そして、ドーパントの内の一体が、ヒサメに襲い掛かろうとした。

 

 だが、その時だった。

 

 ドーパントの一体を吹き飛ばす影が一つ。

 

 その影は、そのままヒサメの肩に乗る。

 

「なっなっ、それはっ」

 

「ズーメモリ! 

 

 なんで、ズーメモリはっもぅ」

 

「誰がズーメモリを破壊したと言った? 

 

 僕は、ズードーパントはもう出ないと言っただけだ」

 

 同時に俺とヒサメはその腰にベルトを巻く。

 

 俺のロストドライバーに、合体するようにドライバーが実体化する。

 

『ナスカ』『ズー』

 

 鳴り響く音声と共に、ヒサメは自分のドライバーにズーメモリをセットする。

 

 同時にフィリップさんのように気絶し、俺はそのまま受け止める。

 

「お前のようなドーパントから、人々の平和を守る為に」

 

「大自然がつかわした正義の戦士」

 

「「それが俺(私)達仮面ライダーだ、変身!!」」

 

『ナスカ・ズー』

 

 その音声が鳴り響くと共に、俺の姿は変わる。

 

 これまで、何度も変身を行ってきた仮面ライダーとしての姿。

 

 そのナスカとしての、基本的な姿は変わらなかった。

 

 だが、身体の各部にはまるで動物を思わせる牙のパーツが生えている。

 

 だが、確かにこの姿こそ、俺の新たなズーの力だ。

 

「貴様のような出来損ないがっ、よくもズーを!!」

 

『ビースト』

 

 その音声と共に、クソ兄貴はビーストメモリをそのまま自分の身体に挿入する。

 

 同時に、その姿はビースト・ドーパントへと変わる。

 

『あれって、ビースト・ドーパント! 

 

 それって』

 

『あぁ、先日、翔太郎達が倒したのと同じドーパントだね。

 

 しかも、あれは新型だ。

 

 おそらくは、翔太郎達と戦ったビーストよりも強い可能性はある』

 

「それで」

 

 そう、ヒサメと霧彦は言う。

 

「このズーにはな、爺さんの自然を愛する気持ち、弓岡さんからの思いが詰まっている。

 

 何よりもヒサメと霧彦が一緒にいるこのナスカが負ける訳ないだろ」

 

 その言葉と共に、俺は手に持ったナスカブレードを構える。

 

「貴様アアァァ!!」

 

 同時にビースト・ドーパントとなったクソ兄貴は俺に襲い掛かる。

 

 すさまじい腕力と巨大な爪が俺に降りかかる。

 

 しかし、その攻撃に対して、俺はナスカブレードを軽く構える。

 

 それだけで、ビースト・ドーパントの攻撃を軽く受け止める。

 

「なっ!」

 

「凄いな、これがズーか」

 

『ナスカのこれまでレベルアップした力も十全に使える上に、理性も十分にある』

 

「グルルルルッ!」

 

 そう叫びながら、クソ兄貴は、まさにビーストと言わんばかりに攻撃を続けてくる。

 

 だが、それを全てナスカブレードだけで防いでいく。

 

 そして、

 

「どうやら、お前にも少しだけ話してやるよ」

 

「ガアッ!?」

 

 そう言って、俺はナスカブレードで反撃を行う。

 

 高い身体能力を活かした剣戟によって、ビースト・ドーパントの腕を斬り上げる。

 

 それと同時に、さらに蹴りを放ち、腹部を破壊する。

 

「グガッ」

 

 そのまま吹き飛ばされたビースト・ドーパントに更に追撃を加えようと刃を向ける。

 

 しかし、そこに、別のドーパントからの攻撃が襲い掛かってくる。

 

「こいつらも厄介だな」

 

『ズー・ドーパントは確か、他の動物の力を引き出す事ができたけど』

 

「この形は、ファングと同じ。

 

 だったら」

 

 俺はそう言い、ズーメモリにあるスイッチを押す。

 

 すると

 

『ウルフ!』

 

 その音声が鳴り響くと同時に、ナスカの能力を使用した時のように透明なアーマーが現れる。

 

 そのまま俺の身体にある牙のパーツに装着される。

 

 緑色の狼を思わせる牙や爪。

 

 それはまさにオオカミと呼ぶべき姿になった。

 

「っ」

 

 その姿へと、変化すると同時に、襲い掛かってきた他のドーパント達に接近する。

 

 そのスピードは凄まじく、超高速を越える速さで動く。

 

 それにより、襲いかかった連中は全て吹き飛んでいく。

 

 爪による一撃は、一撃でドーパントをメモリブレイクする程の威力だった。

 

「貴様アアァァ!」

 

 そんな声と共に、クソ兄貴が再び俺に向かってくる。

 

 空からは別のドーパント達が襲い掛かってくる。

 

『バード』

 

 その音声と共に、迫っていたドーパントに向かって、俺が身に纏っていたアーマーが飛ぶ。

 

 同時に新たな赤い鳥を思わせるアーマーが装着される。

 

 翼のような羽を持ちながらも鋭いくちばしを持ったマスクを持つ戦士となる。

 

 そのまま空中に浮かび上がると、一気に加速していく。

 

 その速度は先ほどまでの比ではないレベルであり、まるで弾丸の如く飛び続ける。

 

 そのまま他のドーパント達を吹き飛ばしていく。

 

 だが、先程のウルフと比べたら攻撃力は低いのが分かる。

 

 だからこそ、一撃では倒さない。何度も攻撃し、そのたびに確実にダメージを与えていく。

 

 徐々に弱っていくドーパント達に向かい合う。

 

『ズー! MAXIMUMDRIVE!』

 

 鳴り響く音声と共に、俺の身体は巨大な赤い鳥となって、真っ直ぐとドーパント達を瞬く間にメモリブレイクする。

 

「貴様っ、俺の力をっよくもぉ!!」

 

「お前の力じゃない。

 

 これは、この森を守る力だ!」

 

『ウルフ!』

 

 その音声と共に、再び俺は再度、ウルフのアーマーを身に纏い、そのままビースト・ドーパントの爪とぶつかり合う。

 

 火花を散らしながら、互いの爪による攻防が繰り広げられた。

 

 そして、互いに距離を取るように離れると、拳を構える。

 

「俺達の一族の発展を考えず、無意味に生きるお前に、その力は相応しくない!」

 

「自分の私利私欲の為に、爺さんや親父の命を奪ったお前に、そんな事を言う資格なんて、ねぇよ!!」

 

 同時に俺の身に纏っていたアーマーが、再度飛び散る。

 

 それによって、クソ兄貴は後ろへと下がる。

 

 それと同時だった。

 

『ズー! MAXIMUMDRIVE!』

 

 同時に俺の身体に百獣の力を宿るように、その脚に纏う。そのまま一足跳びで奴の元へと向かう。

 

 その速度は通常よりも遥かに速くなっており、まるで瞬間移動したかのような速度で俺は移動する。

 

 蹴りつけた地面は大きくへこむような破壊力が込められていた。

 

 それを受けた事で、奴はそのまま倒れ込む。

 

 同時に、そのビーストメモリも爆散する。

 

「終わったよ、爺さん」

 

 そう、俺は爺さんに告げるように言う。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Zを継ぐ者/影の協力者

 俺のZを巡る事件は終わりを迎えた。

 

 爺さんが残したとされる遺言。

 

 あれは爺さんが死ぬ前から、既にガイアメモリの存在を知っていたからだ。

 

 それは、シュラウドに大きく関係した事が、本人から語られた。

 

「あなたのお爺さんは、私の知り合いだったわ。

 

 ガイアメモリの研究を行った際に必要な材料などは全て、あの山から採れたわ」

 

「それじゃ、あんたも森を汚染したのか?」

 

「最低限の被害のみよ。

 

 何よりも、あなたのお爺さんから許可された場所のみに」

 

 その言葉に俺はとりあえず頷く。

 

「それじゃ、これまでの多くのガジェットやメモリも」

 

「えぇ、あそこで作らせて貰ったわ。

 

 材料を手に入れる手段が少なかった私が活動できるのも、あの人のおかげだから」

 

 シュラウドから語られるその言葉に、嘘偽りはなかった。

 

「という事は、あんたは俺が最初からナスカに適合すると知っていたのか」

 

 同時に俺は思わずシュラウドを見つめた。

 

「えぇ、その通りよ。

 

 あなたは既に覚えていないけど、幼い頃。

 

 あなたと私は会っているわ」

 

 その事は、思わず言葉を失った。

 

「なんというか、少し驚きを隠せない。

 

 という事は、あの遺言も、あんたが?」

 

「えぇ、あなたのお爺さんが死ぬ前の願いを叶える形でね。

 

 近い内に、組織がこの森を狙ったのも目に見えていたから」

 

 シュラウドはどこか遠くを見ながらそう答えた。

 

 そんなシュラウドの様子に、俺は疑問を抱く。

 

「さっきから気になっていたんだが、どうしてそこまでして拘るんだ? 

 

  組織の狙いもこの森だとしたら、尚更だろ?」

 

 そして、俺の言葉にシュラウドは冷たい表情でこちらを見る。

 

 まるで、何かを悟ったかのような様子で。

 

「ここは、私にとっても思い出深い場所でもあるからよ。

 

 あの子達と一緒に過ごした思い出の場所でもあるから」

 

「あんたも、ここに来ていたのか」

 

 そんな意外な事実を聞きながら、俺は改めてシュラウドを眺める。

 

 未だに、その顔は包帯で巻かれており、どのような考えをしているのか分からない。

 

 だが、彼女が組織と戦う理由は、その言葉の中にあるだろう。

 

「とりあえず、あんたの事は分からない。

 

 けど、その言葉が本当だから、信じられるよ」

 

 これまでも、俺の事を助けてくれた。

 

 それが彼女が何かを狙っての行動だとしても、だ。

 

 それだけは、確かな事なのだから。

 

 そんなやり取りを終えた後、俺は風都へと戻る事にした。

 

 振り返れば、既にシュラウドの姿はまるで霧のように消えていた。

 

「おーい、影!」

 

 そう、見つめていると、聞こえた声。

 

 見れば、その先には、ヒサメがいた。

 

 その肩には、ズーメモリが乗っていた。

 

「こいつ、すっかりとヒサメに懐いているな」

 

「うん、この子、結構可愛いしね」

 

 そう言いながら、ヒサメの言う事をすっかりと懐いている様子だった。

 

「それにしても、結局、これどうしよう」

 

「んっ?」

 

 それは、ウェザーメモリだ。

 

 一応は俺達ライダーが使うのと同じく毒素が抜けている。

 

「とりあえず、帰ったら、翔太郎さん達にも相談しておこう。

 

 このウェザーメモリはあまりにも危険だ」

 

「うん」

 

 そう、俺達は風都へと帰る事にした。




「弾空寺家に纏わる事件は終わりを迎えた。
今、あるZENONリゾートは観光会社に売却された。
これ以上は施設の増加をしないのを条件に。
それによって、影の長い間の呪縛は完全に解放された。
だが、影はこれからの道は、怪盗のままだろう。
街の涙を拭う仮面ライダーとして、俺達と共に」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

33話

 煙草。

 

 現代においては、吸う人は少なくなりながらも、未だに根強く愛されている嗜好品である。

 

 その昔は、一日に何箱も消費していた物だが、ここ数年はとんと縁遠くなってしまった。

 

 その理由としては、喫煙所が減り、喫煙者に厳しい世の中になったことや、健康志向の高まりなどがあげられるだろう。

 

 今回、俺が翔太郎さんを通して受けた依頼は、そんな煙草に関係する物だった。

 

「この会社で次々と奇妙な死亡事件が多発しているのか?」

 

「そうみたい」

 

 そう言いながら、既にヒサメが受け取っていた資料を見ながら言う。

 

「被害者は全員、肺が黒く染まっていて、それらは煙草による中毒症状だとか」

 

 今回の仕事の依頼者は、この会社の社長。

 

 まさにブラック企業を絵に描いたような人物であり、この現象のせいで利益が出ない事もあってか、早期解決を依頼してきた。

 

「だけど、それって、本当に何かの事件か? 

 

 ただ単に、その会社がブラック企業過ぎるのが問題じゃないのか?」

 

 既にフィリップさんに調べて貰った限りでも、一人でこなすには無茶どころではないレベルで膨大過ぎる仕事量・サービス残業は当たり前・週休0日も日常茶飯事・有給の使用すら許されない・上司の身勝手極まりない独断で事前予告すらなしに給料カットもされるなど、ブラック企業という言葉では生温いレベルで待遇、労働環境共に劣悪。

 

 そんな状況下において、社員たちの不満が爆発しても不思議は無いように思うのだけれど、どうにもこうにも不思議なことに、これらの事件はただの社員の怠慢が原因というわけでも無かったりする。

 

「それで言うと、犯人の候補はあまりにも多すぎるだろ。

 

 だって、こんな企業に不満を持たない奴がいない方が可笑しいからな」

 

「それは、確かにそうかもしれないけどさ」

 

 俺の言葉に対して、ヒサメは困ったような表情を浮かべる。

 

 そうして、少しだけ考える素振りを見せた後、彼女は言葉を続けた。

 

「でも、どちらにしても、この事件を早く解決しないと、ブラック企業をどうにかする前に人が死んでしまうから」

 

「まぁ、そうだけどな」

 

 その言葉と共に、俺達はすぐにこの企業に関する情報を調べ始める。そこで分かった事は、ある意味で非常にわかりやすいものだった。

 

 まず、この企業のトップの男は、いわゆるサイコパスであり、自分が気に入らない相手はすぐにクビにする上に、部下に対しても当然のように酷使するタイプらしい。

 

 また、会社側としては、この男が犯罪行為に手を出している可能性についても疑っているようで、警察に相談したこともあるようだが、証拠不十分で捜査を打ち切る結果に終わっている。

 

 しかし、逆に言えば、それ程までにヤバい人物であるにもかかわらず、警察ですら捜査しない程の異常者であるにも関わらず、なぜ会社は存続しているのかと言えば、金を持っているからだ。

 

 そもそも、この男の父親は、この企業の先代の社長であり、つまりは御曹司であったわけなのだが、彼もまたかなりのワンマン野郎だったらしく、自分の父親が死んだ後に跡を継いだ息子は自分の思うようにならない人物は全て切り捨てたそうだ。

 

 そして、現在の社長の代になり、今度は自分に逆らう者を徹底的に排除し始め、現在に至るとのこと。

 

 ちなみにだが、この男自身は全くと言っていいほど悪事を行っていないのである。むしろ、会社の人間の方が酷いことをしているとかいう話だった。

 

 正直言って、ここまで聞く限りじゃあ、もう逮捕なりなんなりされてしかるべきレベルのクズっぷりだと思う。

 

「それが今回の依頼で明らかになれば、良いけど」

 

「お前か、この会社に不利益を齎す奴は」

 

「あぁ?」

 

 聞こえた声。

 

 それと共に振り向くと、そこには先程まで調べていた男がいた。

 

「何の事でしょうか?」

 

「既に貴様の事は知っている。

 

 どうやら、俺の会社を潰す気だろうな」

 

「それが、世のため、人の為だったらな」

 

「ならば、貴様をここで殺す!」

 

『バーバリアン!』

 

 同時に男が取り出したのは、メモリだった。

 

 そのまま、男は自分の身体に、そのメモリを突き刺すと、姿が変わる。

 

 筋骨隆々とした原始人を思わせ、左腕は野太い棍棒の様になっているドーパントだった。

 

 

 

「おいおいっマジかよっ」

 

 まさか、目的のドーパントではなかったとはいえ、あの社長が既にメモリを持っていたとはな。

 

『あのバーバリアンはパワーにかなり優れている。

 

 油断するな』

 

「分かっているよ」『ナスカ』

 

 同時に、俺もまたナスカメモリを取りだし、そのままロストドライバーに装填する。

 

「変身!」

 

 その音声と共に、俺は仮面ライダーへと変身する。

 

「ガアアァァァ!!」

 

 同時にバーバリアン・ドーパントは俺に向かって、その左腕を振り下ろす。

 

 その勢いは凄まじく、俺はすぐに避ける事を選択した。

 

「いぃ!?」

 

 その選択肢はどうやら、正解だったようだ。

 

 左腕の一撃は、地面を簡単に砕き割った。

 

 ただでさえ、コンクリートの床なのにだ。

 

 下手したらこれって下手すりゃ建物ごと崩壊する。

 

 しかも、この様子だと、力だけでなくスピードもそこそこあるようで、腕を振り下ろして終わったかと思った瞬間には、またこちらに接近してきていた。

 

「っとぉ!」

 

 接近してくると同時に繰り出される右拳。

 

 それを紙一重で避けつつ、反撃を試みる。

 

 とりあえず、相手の動きさえ見切れば、こっちにも攻撃を当てることは可能だからだ。

 

 そんなわけで、俺の繰り出した拳は見事にドーパントの顔に当たるのだが──

 

「嘘だろ!?」

 

 全く効いてない! それどころか、逆にダメージを負ったような感覚がある。

 

 どういう理屈なのか分からないが、とにかく威力の高いパンチって感じだろうか? 

 

(だったら、これでどうだ?)

 

 このままではジリ貧だと思い、今度はこちらから攻撃を仕掛けることにする。

 

 まずは手刀による突きだが、それはあっさりと防がれてしまう。

 

「けど、おかげで、こいつを倒す方法は分かったっ! 

 

 ヒサメ!」

 

「まったく、少し荒いんじゃないの」

 

「仕方ないだろ。

 

 お前はまだ戦闘慣れしていないんだから」

 

 実際に、俺達があの形態になるには、互いの連携が必要不可欠だ。

 

 Wとなっている翔太郎さんとフィリップさんでも、完全に息のあった動きができるまでかなりの年月が必要だ。

 

 そんな俺達がいきなり2人で1人で戦っても、勝てない。

 

 だからこそ、始めの戦闘は俺が様子見し、必要だったらヒサメと変身する。

 

 それが、基本的な流れになった。

 

 同時にヒサメもまたリバース・ロストドライバーを腰に巻く。

 

「ズーちゃん、お願いね!」

 

『ズー』

 

 同時にズーメモリがそのままメモリへと変形させ、そのままリバース・ロストドライバーに装填する。

 

 それと共にリバース・ロストドライバーは俺のロストドライバーと合体し、Wドライバーへと変わる。

 

『ナスカズー!』

 

 その音声と共に、俺はナスカズーへと変身する。

 

 そして、俺はそのままズーメモリのスイッチを押す。

 

『ラビット!』

 

 その音声が鳴り響くと同時に、俺の周りにウサギを思わせるアーマーが現れる。

 

 そのまま、俺はアーマーを身に纏うと共に、そのまま真っ直ぐとバーバリアン・ドーパントに向かって行く。

 

 バーバリアン・ドーパントはそのまま腕を振り下ろす。

 

 だが、その攻撃を簡単に避ける事ができる。

 

「よっと!」

 

 ラビットの能力により、ビルを軽々と飛び越える程の脚力で避け、ウサギ並の聴力でその攻撃を先読みするように避ける事ができる。

 

 それによって、バーバリアン・ドーパントのボディに攻撃を与えていく。

 

 しかし、その攻撃は、まるで金属でも殴っているかのように弾かれる。

 

 それでも、何とか隙を見つけて蹴りも放つ。

 

 何度も、同じ箇所を殴りつけていると、少しずつではあるがダメージが入っているのか、バーバリアンのボディの一部が歪む。

 

 恐らくは、これが弱点なのだろう。

 

 そのまま、蹴り続けても、痛みはまるで何も感じていない様子だった。

 

「これで決めるぜ!」

 

『ライノス!』

 

 俺はそのままラビットのアーマーをパージさせると共にライノスのアーマーを身に纏う。

 

 かなりの頑強さと剛力を誇り、頭部の一角が特徴的なアーマーを身に纏う。

 

 

 

「「さぁ、お前のメモリ、頂くぜ!!」」

 

『ライノス! MAXIMUMDRIVE!』

 

 同時に、その頭部の一角を構えながら、真っ直ぐと高速に、バーバリアン・ドーパントに突っ込む。

 

 それはラビットによる連撃によって、歪んだ箇所に向かって。

 

 そのまま、俺の一撃によって、バーバリアンの体が吹き飛ばされた。

 

 それと同時に、爆発を引き起こし、爆炎が上がる。

 

 そして、吹き飛んだ先にいたのは、バーバリアン・ドーパントはメモリブレイクする。

 

「ふぅ、さて、とりあえず、こいつを警察にって」

 

 そう俺達が言っていると、バーバリアン・ドーパントに変身していた男の身体に煙りが吸い込まれていた。

 

「影っ」

 

「まさかっもぅ本命が来たのかよっ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

34話

 バーバリアン・ドーパントに変身していた社長は、殺されてしまった。

 

 俺達の前に現れた謎の煙が、そのまま社長の身体に潜り込むと共に、その肺を瞬く間に黒くさせ、死亡させた。

 

 すぐに追いかけようとしたが、煙は素早く逃げていった為に捕まえる事ができないまま、謎の煙を見失ってしまった。

 

 とりあえず、警察に任せ、俺達は怪しい人物を探し始める事にした。

 

「そう言っても、怪しい奴が多すぎるよ」

 

「まぁ、それはそうだろうな。

 

 なんだって、あの社長は相当恨まれていたみたいだからな」

 

 どうやら、あの煙の正体は何かしらの形で恨みを持っていた者がドーパントとなった。

 

 俺はそのまま会社内の社員を見つめていく。

 

 目の隈が酷く、ヨレヨレのスーツとボサボサの髪、死んだ魚の目をした30代の男性である佐島八郎。

 

 大学卒業後、既に勤務は2ヶ月でありながら、ミスが多い青年である柘植浩一。

 

 仕事を日常的にサボってSNSやスマホゲーばかりする中年男性である田上孝太郎。

 

 社内での会話が少なく、同僚から嫌われている女性で今宮早苗。

 

「たぶんだけど、この4人かな」

 

「どうして、そう思うの?」

 

「直感としか、言えないな。

 

 だけど、おそらく間違いないと思う」

 

 根拠というか、直感でしかない。

 

「けど、誰が?」

 

 その言葉に、俺は観察していく。

 

 佐島八郎は、その身体から体臭が特徴的な事以外にも、よく咳き込む事が多い。

 

 柘植浩一は、苛つく事がよくあるのか、舌打ちも多くて仕事態度が悪かった。

 

 田上はスマホゲームをよくしていて、暇さえあればネットサーフィンをしているようなタイプだ。

 

 今宮早苗に関しては、あまり話さないものの、その視線は常に下を向いていて、たまにブツブツと言っている姿も目撃されているらしい。

 

 全員が全員とは言わないが、それでも疑わしい。

 

「けど、本当に分かるの?」

 

「調べている限りは、全員は酒も煙草もしていないようだね。

 

 あまりのブラック企業ぶりで、できないそうだし」

 

「……」

 

 そう、ヒサメの言葉を聞きながら、俺は再び今回のドーパントの特徴を思い浮かべる。

 

 肺が黒く染まっていて、それらは煙草による中毒症状。

 

 そこから、今回のドーパントのメモリの正体は『シガレット』

 

 つまりは煙草のドーパントだ。

 

 そして、バーバリアン・ドーパントの社長を殺す為に、煙となって、身体の中に潜入して、そのまま殺した。

 

「それが、鍵になるかもしれない」

 

 その身体を煙に変えたという事は、通常以上に煙草による影響が大きい。

 

「影、何か、分かったの」

 

「あぁ、ドーパントの正体がな」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

35話

 その日の会社は社長が死んだという事で大きく騒いでいた。

 

 そうして、帰宅時間がようやく0時になった頃、俺はその目的の人物に近づく。

 

「社長が死んで、明日から環境が変わる。

 

 そんな顔をしていますが、悪いけど、ここで止めて貰いますよ」

 

「っ!」

 

 その言葉に、俺の目の前にその人物は振り向く。

 

「夜まで仕事はお疲れ様です。

 

 だけど、悪いけど、今夜、あんたからそのメモリを頂くぜ、佐藤さん」

 

 それと共に、俺は目の前にいるシガレット・メモリの所有者である佐藤さんに言う。

 

「なんの事だ? 

 

 それにメモリって、何の事だ?」

 

「このブラック企業に勤めてから数年。

 

 あんたは酒も煙草もしていなかった。

 

 だが、その身体から体臭が特徴的な事以外にも、よく咳き込む事が多い」

 

「あんなブラック企業に勤めていたら、シャワーを浴びれないし、風邪も引くさ」

 

「そうかもな。

 

 けど、これらの特徴は煙草を吸う人によく出てくる特徴だ。

 

 あのブラック企業では、それを吸う程の余裕がある奴はそういない。

 

 そして、シガレットメモリは、毒素が薄い代わりに、煙草のような中毒性を引き起こす」

 

 それと共に、俺はゆっくりと詰め寄る。

 

「あんたの特徴は、それに当て填まる。

 

 何よりも、疲れすぎて、メモリが見えているぜ」

 

 その言葉にドキッとしたのか、一瞬、胸ポケットに触れる。

 

「どうやら、正解のようだな」

 

「ちっ、少し仕事をやりすぎたか」

 

「一応聞くけど、なんであんな事をしたんだ」

 

「上司が憎かった。

 

 だからこそ、このメモリを手に入れた。

 

 だけど、このメモリではあいつの使った姿には敵わなかった。

 

 諦めずに何度も変身し、機会をうかがった。

 

 そして」

 

「俺がタイミング悪く、倒したから」

 

 それは、いわゆる俺が起こしてしまった事件でもある。

 

「あぁ、君には感謝している。

 

 だけど、こうなった以上、君にも居なくなって貰わないといけないねぇ、怪盗さん!!」

 

 目の前にいる佐島さんもまた、隠していたシガレット・メモリを取りだし、そのまま自身に突き刺す。

 

 そうする事によって、その見た目は葉タバコ、紙巻きタバコを生やした緑色の鳥型のドーパントへと変わる。

 

「ふぅふぅ、ここで死ねぇっ!!」

 

 叫び声と共に、そのシガレット・ドーパントはその口から煙を吐き出す。

 

 吐き出された煙と共に、まるでその煙と一体化するようにシガレット・ドーパントはその姿を消した。

 

 同時に、俺もまたナスカメモリを取り出す。

 

「変身」

 

『ナスカ』

 

 その音声と共に、俺は仮面ライダーへと変身する。

 

 俺はそのまま手にナスカブレードを構える。

 

 囲まれるように、煙に対して、俺は警戒する。

 

 そんな俺を見てか、佐島さんが叫ぶ。

 

「ふははははは!! この煙で僕を見失う! お前の負けだぁっ!!」

 

 その言葉の通り、確かに、煙に包まれた空間の中では相手の姿が見えない。

 

 そして、その煙の中に紛れて、再び現れたシガレット・ドーパント。

 

 攻撃事態は、あまりダメージは受けなかった。

 

 しかし、このままではじり貧になる可能性もあるため、どうしたものかと考える。

 

(煙の中だから、音を頼りにしても、どこにいるのかわからない)

 

 とりあえず、相手の位置を探るためにも、手当たり次第に斬撃を振るう。

 

 だが、煙に覆われた中で、音だけが頼りのため、命中率はかなり低い。

 

(このままじゃあ、ラチが明かないな)

 

 このままでは先にこちらの方が体力の限界を迎える可能性すらある。

 

 何か打開策が必要だ。

 

(どうにかして、敵の居場所を知る方法があればいいんだけどな)

 

 とはいえ、煙の中で戦うなんて経験は一度もないため、対処法なども思いつかない。

 

 そうしながら、周りに目を向けていく。

 

 煙は僅かな変化を見せて、その場に留まり続けている。

 

 そんな中でも、煙の動きを察知しようとしてみるのだが、やはり感覚的な事なのでわかるはずもなかった。

 

 仕方ない、とばかりに、俺はナスカブレードを構えながら、前へと飛び込む。

 

 地面を踏み込み、煙の外にまで出てみれば、そこには既にシガレット・ドーパントの姿はなかった。

 

「本当にこれは厄介だな」

 

 煙と一体化した事によって、気配を感じなくなった事には少しだけ焦りを覚えた。

 

 ただでさえ煙による視界の悪さに加えて、動き回られるとなるとかなりやり辛い。

 

「煙と一体化。

 

 確かに視界は悪い。

 

 だけど」

 

「既に攻略は分かっているよ」

 

 その言葉と共に、ヒサメもまたドライバーを巻いた。

 

 それを合図に、すぐに俺の姿が変わる。

 

『ナスカズー』

 

 その音声と共に、俺は姿が変わる。

 

『オウル!』

 

 その音声と共に、俺に梟を模したアーマーを身に纏う。

 

 まるで、梟を思わせるフードを身に纏いながら、周りを見つめる。

 

 視力が極限まで強化され、煙で覆われた世界の中でも、はっきりと見えている事に安心感を覚える。

 

 さらに言えば、相手の位置がしっかりと把握できていた。

 

 煙の中から突如として現れようとしていたシガレットドーパントに向けて、俺はそのままズーメモリのスイッチを押す。

 

『オウル! マキシマムドライブ!』

 

 同時にその手には羽を模した弓が現れる。

 

 その矛先は真っ直ぐと実体化したシガレット・ドーパントに向けて弦を引く。

 

 そのエネルギーの矢を真っ直ぐとシガレット・ドーパントを貫く。

 

 一撃を受け、シガレット・ドーパントは絶叫と共に、その場で倒れる。

 

 同時にその身体からメモリが吐き出される。

 

 そうして、戦いを終えた。

 

「影、今回、結局最後まで」

 

「あぁ、未だに終わっていないからな」

 

 今回の事件において、確かにシガレット・ドーパントを倒す事ができた。

 

 だが、彼をここまで追い詰めたのは、このブラック企業で間違いないだろう。

 

「これで、この環境はどうにかなるのかなぁ」

 

「かもしれないな。

 

 けど」

 

 結局はまた現れるだろう。

 

 メモリという、分かりやすい形だからこそ、こうして俺達は対峙できた。

 

 けど、世の中、ガイアメモリなどなくても、簡単に混沌に落ちてしまう。

 

 会社の社長が自分の欲の為にメモリに手を出したように。

 

 佐島さんが、会社の皆の為にメモリに手を出したように。

 

 善悪関係なく、欲望のままに動けば、どんな場所にだって落ちてしまう。

 

 だからこそ、こんな事件、これからもずっと起こり続けるだろう。

 

「やるせないなぁ」

 

 そう言いながら、俺は空を見上げる事しかできなかった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Yの悲劇/妹

「奇妙なマーク?」

 

その日は、久し振りの鳴海探偵事務所での一日だった。

 

昨日までは、ブラック企業に関する事件の疲れを取るように眠っていた為、鳴海探偵事務所に来ていた。

 

そんな中で、照井さんから出された写真には、まるで8という数字を思わせる入れ墨があった。

 

「あぁ、フィリップの知識を借りようと思ってな。

そう言えば、お前には確かナスカの亡霊がいるんだったな」

 

『それは私の事かな?

まぁ、確かに亡霊と言ったら、亡霊だが』

 

そう言いながら、霧彦はそう照井の前に来ていた。

 

実体がない事もあり、その写真を見る為に、近づく。

 

すると、何やら驚いた顔で、その写真を見た。

 

『驚いた。

まさか、このメモリを使う人物が出てくるとは』

 

「知っているのか?」

 

どうやら、霧彦自身も心当たりがあったのか、目を見開きながら驚いてた。

 

『あぁ、これはイエスタディの刻印だ』

 

「イエスタディ?

それって、つまり、昨日という意味?」

 

『あぁ、かなりトリッキーな能力でね。

刻印を打ち込まれた者は24時間前の行動を繰り返させる事ができる。

攻撃を行った直後には、あまり意味はないが、翌日になって、任意に発動させれば、その能力は実に厄介だ』

 

「なるほど、被害者は全員、そのイエスタディの刻印を打ち込まれていた訳か」

 

「刻印?

聞きたい事が一つある」

 

『なんだい?』

 

「そのイエスタディ・ドーパントはもしかして砂時計を思わせる何かがあるのか」

 

『あぁ、それはっ、まさかっ!!』

 

同時にその嫌な予感がした。

 

それと同時だった。

 

「失くしたきのうを探すのも、探偵の仕事ですよ!どうぞ」

 

それは、丁度、奥の椅子に座っていたはずの翔太郎さんが突然立ち上がっていた。

 

その光景に俺達は同時にその嫌な予感が的中した事に気づく。

 

「フィリップさん。

もしかして、昨日、そのイエスタディ・ドーパントと戦ったんですよね」

 

「あぁ、もしも、僕の予想が正しければっ危険だ!!」

 

同時に俺達はすぐに翔太郎さんの元へと走って行った。

 

既に翔太郎さんがどこに向かっていたのか、分かっていた俺達は、先回りするように向かった。

 

「ここで昨日、ドーパントと戦った」

 

『あぁ、だからこそ、ここで彼を止める。

それができる能力も既にっ、危ないっ!』

 

「っ!」

 

霧彦の声に反応し、俺は瞬時にその場を避ける。

 

同時に襲い掛かってきたのは砂時計を思われるマークによる光弾だった。

 

すぐにロストドライバーを腰に巻きながら、俺はナスカメモリを取り出す。

 

「まさか、すぐにイエスタディ・ドーパントが出てくるとはな」

 

『影、気をつけろ。

イエスタディの刻印が刻まれば、厄介だ』

 

「分かっている、変身!」

 

『ナスカ』

 

俺は霧彦からの忠告を受けると共に、ナスカへと変身する。

 

それと共に、ナスカブレードを手に持ちながら、真っ直ぐとイエスタディ・ドーパントに向かって走り出す。

 

イエスタディ・ドーパントは先程と同様に光弾を放っていく。

 

その攻撃に対して、俺は時には避け、時にはナスカブレードで切り払いながら、真っ直ぐと進む。

 

その最中に。

 

『影っ避けろ!!』

 

「っ!」

 

霧彦の声に切り払おうとした光弾をその場で避ける。

 

「まさか、さっきのは」

 

『あぁ、イエスタディの刻印だ。

あれに触れれば、終わりだ』

 

「厄介だ」

 

イエスタディの刻印だけで行えば、それに注意して、避ける事に専念していた。

 

だが、通常の攻撃である光弾を混ぜる事によって、俺に切り払いという選択肢を与えた。

 

同時に、それによって簡単にイエスタディの刻印を刻み込ませる事ができるチャンスもある。

 

「こうしている間にもっ時間がないのにっ!」

 

俺はそう言っていると

 

「変身!」

 

「なっ!」

 

聞こえた声。

 

同時に見れば、ビルの屋上から真っ直ぐ降りている翔太郎さんの姿見えた。

 

地上に降り立つと共にWへと変身しており、その動きはまるで何かと戦っているようだった。

 

「ぐっ!」

 

すぐにでも止めに行きたかったが、目の前にいるイエスタディ・ドーパントがそれを許さない。

 

苦虫を噛みながら、どうするべきか迷っていた時だった。

 

「影っ!」

 

「っ!」

 

聞こえた声、それと共に、イエスタディ・ドーパントに向かって、一つの人影が襲う。

 

その声に聞き覚えのあった俺は思わず笑みを浮かべる。

 

「照井さんっ」

 

「こいつは俺に任せろ!

既にフィリップから話は聞いている!」

 

「頼みました!」

 

頼もしさと共に、俺はすぐに翔太郎さんの元へと向かう。

 

既にホールに入っており、そこには壇上で演説を行っていた園崎冴子の姿があった。

 

『冴子?

まさかっ、これが狙いでっ』

 

霧彦が何か言っているようだが、すぐにでも止めないといけない。

 

俺はそのままナスカメモリへと手を伸ばす。

 

『リャマ』

 

同時に俺はリャマへと変換すると共に、背中にタンク、リャマリカバーを背負う。

 

『リャマ!MAXIMUMDRIVE!』

 

同時に俺はそのまま走り出す。

 

『影っ、そこから真っ直ぐだ!』

 

既に昨日の戦いを覚えているフィリップさんからの声と共に、俺はそのまま必殺技を放っている最中のWに向かって、両脚による一撃を与える。

 

「ぐっ!!

ここはっ、俺は一体?」

 

『ようやく気がついたかい、翔太郎』

 

「ふぅ、なんとかなった」

 

このリャマは、メモリの中でもかなり珍しい回復能力が備わっている。

 

自身や自身が触れた相手を回復させる事が可能であり、その能力を使い、イエスタディの刻印に向けて、過剰にエネルギーを送り込んだ。

 

「影?

ここは一体?」

 

『翔太郎、それよりも外に出よう。

どうやら、今回の一件、僕達だけではなく、ナスカにも大きな関わりがある』

 

「俺達にも?」

 

その言葉に疑問に思いながら、そのままフィリップさんに促されるように、そのまま外に出る。

 

「おそらく、イエスタディ・ドーパントは今回の暗殺を目的に昨日依頼を行った」

 

「昨日の依頼?

まさか、夕子さんが!!」

 

どうやら、昨日の依頼から既にこの襲撃の計画が行われいたらしい。

 

ある意味用意周到と言うべきだろう。

 

『あぁ、だが、正確にはその名前は彼女の本名じゃない』

 

「どういう事なんだ?」

 

そう言いながら、そこにはアクセルと戦うイエスタディ・ドーパントの姿があった。

 

そうして、俺達が辿り着いたタイミングに合わせてか、イエスタディ・ドーパントは、その変身を解除させた。

 

『いや、違う。彼女の本名は須藤雪絵、須藤霧彦の実の妹だ。僕達には園咲霧彦といったほうがわかりやすいかもしれないが』

 

『雪絵が、ドーパントだって!?』

 

それは、俺は勿論、霧彦にとっても、ショックを隠せない事実だった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Yの悲劇/復讐

『雪絵っ』

 

イエスタディ・ドーパントの正体が、霧彦の妹である雪絵。

 

その事を誰よりもショックを受けていたのは、他でもない霧彦だった。

 

「まさか、こうして兄さんの亡霊と出会う事になるなんてね」

 

『なぜ、ガイアメモリに手を出したんだ!

お前は、海外で研究を行っていたはず』

 

「さぁね。

けど、間抜けな兄さんに変わって、ミュージアムの幹部になる。

そう言ったら、どうなの」

 

『馬鹿な事を言うんじゃないっ』

 

「馬鹿な事?

自分の奥さんに殺された事が、馬鹿じゃないと言えるの」

 

そう言った雪絵さんは一瞬、どこか悲痛そうな表情をした。

 

だが、すぐにそれを隠すように霧彦を馬鹿にするように笑みを浮かぶ。

 

「私は兄さんとは違う。

この力で、ミュージアムの幹部に成り上がる」

 

その言葉を最後に、雪絵さんはそのまま姿を消した。

 

その後を追うとしたが、既にそこには彼女の姿はなかった。

 

やがて、俺達は鳴海探偵事務所に戻ると共に、そこにいた翔太郎さんと霧彦は同じように悲痛そうな表情で落ち込んでいた。

 

「まさか、霧彦の妹が敵として出てくるとはな。

ある意味、予想外の敵だったな」

 

「しかし、ここまで厄介な敵だとは。

これからどうすれば」

 

『雪絵がっ、間違った道に進んだのは、私のせいだ』

 

「霧彦」

 

そう言いながら、霧彦はまるで後悔をするように地面を大きく叩く。

 

『街の為に。

そう信じて行った結果、街を傷つけ、さらには妹をあそこまでにした。

全て、私がっ私がっ』

 

そこには、何時ものような霧彦の姿はなかった。

 

「・・・イエスタディの刻印。

あれに刻まれた彼らはなぜ狙われたんだ?」

 

「えっ、それって、どういう?」

 

「もしも、イエスタディ・ドーパントの能力の実験だけかもしれない。

だけど、もしも、何か繋がりがあれば」

 

「・・・そう言えば、奴らは全員、強引な地上げで有名な社長だ。

だが、それに何が関係が?」

 

『もしかして。

その地上げを行うとした場所は』

 

「確か、南地区の保育園だが」

 

『私と雪絵が通っていた想い出の場所だ』

 

「それって」

 

「あぁ」

 

その場にいた全員が、何か分かったようにすぐに走り出し、向かった。

 

そこには丁度、園長がおり、彼女から事情を聞く事ができた。

 

それは強引な地上げによって、立ち退きを迫られていたが、地上げ屋達が昏睡状態になった事で、その話は無くなったらしい。

「手段は決して許してはいけない。

けど、ただイエスタディ・ドーパントの能力の実験と言うには、偶然過ぎる」

 

「・・・翔太郎さん」

 

その話を終えた後、しばらく雪絵さんが来る事を考えた俺達はそのまま待つ事にした。

 

なのだが。

 

「あぁ、もぅ、ひっつくなぁ!!」

 

「ちょっと、影!

少しは遊んであげなさいよ」

 

なぜか俺達が子供達の世話をする事になった。

 

普段は、こういうのに慣れていない事もあって、俺の身体を遊び場にしてくる奴らが多い。

 

翔太郎さんはこういう子供の相手が上手い様子が見られ、ヒサメも結構上手くやっているのに、なんで俺だけ。

 

そう、考えていると、園長が誰か来て、嬉しそうな笑みを浮かべて近づいた。

 

その人物は、間違いなく、俺達が待っていた人物だった。

 

しばらく、雪絵さんと園長は話した後、何か思い出したように、そのまま園長先生は保育園の中に入った。

 

そのタイミングで、俺達はそのまま挨拶しながら、本題から入っていった。

 

「………イエスタデイで不動産屋を襲ったのは…、ここを護るためだったんだな」

「そうね」

 

雪絵は無愛想に返事する。

 

「雪絵さん。やっぱり、過去にこだわってるんだろ?」

 

「…勝手にそう思うといいわ」

 

そう、俺の言葉に雪絵はそういって帰ろうとする。

 

「待てよ」

 

二人が追おうとすると、

 

「雪絵ちゃん」

 

園長がでてきてなにかを渡そうとするも、雪絵は構わずいってしまう。

 

「これって……」

 

園長が手に持つ画用紙は、かつて幼い頃に描いた”雪絵と霧彦の絵”だった。

 

『雪絵は、やはり変わっていなかった。

だけど、なんで』

 

「まさかっ」

 

その時、俺は最悪な想像ができた。

 

それは、俺達の身近にあまりにも多すぎた。

 

「翔太郎さんっ、雪絵さんを止めるんだ!

あの人がやろうとしている事が分かった!」

 

「なに?」

 

「あの人はっ最初から幹部になるつもりはない!

始めから、霧彦のっ仇を取るつもりだったんだ!」

 

「復讐っくそっ!」

 

同時に翔太郎さんも理解すると共に走り出す。

 

だが、すぐに追いつく事ができなかった。

 

「どこにっ」

 

『この周辺は、雪絵もよく知っている。

ここは、私達にとっては庭の中でも特に知っている場所だっ』

 

「風都を知り尽くしているつもりだったけど、ぐっ」

 

「翔太郎さんっ急がないと」

 

「あぁ、幾ら何でも危険過ぎるっ」

 

その言葉と共に、俺達は彼女を助ける為に再び走り始める。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Yの悲劇/家族

あれから、ずっと雪絵さんを探し続けた。

 

しかし、その姿を見つける事ができず、翌日。

 

俺はとある場所に来ていた。

 

「ここは?」

 

『雪絵とよく一緒に遊んだ公園だ。

ここからだったら、もしかしたら』

 

そう言っていると、まるで偶然のように。

 

そこには確かに雪絵さんがいた。

 

その雪絵さんの手に持った。

 

一点だけ血の滴が落とされたようなボロボロのスカーフを見せる。

 

「それは……」

 

「わからない?兄さんのスカーフ…。私が婚約祝いであげたもの。…面白い偶然ね。この街についた時に出迎えてくれた…。まるで私に助けを求めるように」

 

雪絵の声は語るにつれてどんどん悲痛な色をのせていく。

 

「私は許さない…絶対に許さない!兄さんを殺した貴女をね……!!」

 

「えっ?」

 

その言葉に俺は思わず、首を傾げる。

 

俺達郎に向かってこのような台詞を吐いた雪絵。

 

ついでに使うべき字も違っている。いや。

 

「まさかっ」

 

『冴子っ」

 

理解すると共に、それは確かに見えた。

 

「さあ、永遠に昨日という監獄に囚われるがイイ!園咲冴子!!」

 

【YESTERDAY】

 

同時に、イエスタディ・ドーパントに姿が変わり、首筋にイエスタディの刻印があった。

 

「まさか、こうして出てくるとはねぇ」

 

『井坂っ!

貴様っ!!』

 

「ナスカの力を十全に引き出せなかった亡霊には興味はありません。

今、私の興味は、君ですからねぇ」

 

そう、笑みを浮かべながら、俺を見る。

 

「これまで誰も引き出せなかったナスカメモリの性能を出し、さらにはズーという珍しいメモリを使う事ができる。

そんな人物、私が放っておく訳ないでしょ」

 

「まさか、雪絵さんをその為の餌にっ」

 

「えぇ、彼女を救いたければ、頑張る事ですねぇ。

最も、私にその力を見せてからですが」

 

『ウェザー』

 

その音声と共に井坂はウェザードーパントへと変わる。

 

こんな時に。

 

『アクセル』

 

「変身!!」

 

「これは、照井さん!」

 

同時に飛び出したのは、照井さんだった。

 

「お前達は、彼女を助けろ!」

 

「照井さん!」

 

「こいつは俺の仇だっ!

何よりも、妹を助けろ!」

 

その言葉に、どこか迫力があった。

 

そうしている間に、イエスタディ・ドーパントとなって、昨日と同じ行動をしている雪絵さん。

 

それに対して、霧彦は。

 

『影、雪絵を。

妹を助ける為に、力を貸してくれ』

 

そう、霧彦が俺に向けて言う。

 

その顔は確かな決意が見え、その言葉に対して。

 

「断る訳ないだろ。

 

相棒の願いを」

 

俺はそう不敵な笑みを浮かべながら、ナスカメモリを取り出す。

 

「行くぜ、霧彦」

 

『あぁ』

 

『ナスカ』

 

ナスカメモリを起動させると共に、腰にロストドライバーを装着すると共に、そのままナスカメモリを装填する。

 

「『変身!』」

 

その言葉と共に、俺は仮面ライダーナスカへと変身する。

 

同時に、今は暴走しているイエスタディ・ドーパントは、その手から無数の光弾を真っ直ぐと俺に向けて放っていく。

 

その攻撃に対して、俺は手に持ったナスカブレードでその光弾を切り裂く。

 

しかし、その光弾は地面や周囲の木々に当たり爆発し、衝撃によって周囲の土煙を吹き飛ばす。

 

だが、俺はその攻撃を避けながら、イエスタディ・ドーパントに向かって走り出す。

 

そして、イエスタディ・ドーパントの手が届くギリギリの場所まで近づくと同時に、その場で跳躍すると一気に剣を振り下ろす。

 

当然のように、イエスタデイはその攻撃を防御するように腕を前に出し、受けようとするのだが──その瞬間、俺は右足を鋭く振り上げる。

 

その一撃に吹き飛ばされて、一瞬だけ、動きを止める。

 

「今の内にっ!」

 

俺がそう、すぐにナスカメモリに手を伸ばそうとした時だった。

 

俺の身体は、目を覆う程の蝶に覆われた。

 

「これはっ」

 

『スワローテイルっ!組織からの刺客かっ!!』

 

スワローテイル。

 

その単語はあまり知らないが、どうやらこの戦力を見る限り、おそらくは蝶だろ。

 

『影っ、気をつけろ!

 

奴はっ』

 

アゲハ蝶は分裂したときであり360°を包囲し一斉に風刃が俺に襲い掛かる。

 

咄嵯に避けようと身体を動かすも、完全包囲した風の刃を全て避ける事は出来ず、頬を切りつけられてしまう。

 

さらにそこから追い打ちを掛けるように、俺腹部を蹴り飛ばしてくる。

 

思わず苦悶の声を上げる中、イエスタディの攻撃が飛んでくる。

 

「すぐにでも助けなきゃいけないのにっ」

 

「だったら、それは俺達の役目だな」

 

『あぁ』

 

聞こえた声。

 

それと共に、アゲハ蝶達は突然吹いた風によって、吹き飛ばす。

 

「翔太郎さん!井坂の奴はっ」

 

「照井がなんとかしてくれている。

 

お前はその間に彼女を救え!」

 

『CYCLONE!METAL!』

 

同時に、翔太郎さんはそのままサイクロンメタルとなって、その手に持ったメタルシャフトで、全ての蝶を吹き飛ばしていく。

 

同時に俺はナスカメモリをそのまま手に取る。

 

『FAMILY!』

 

鳴り響く音声と共に、俺はそのままナスカブレードに装填する。

 

通常、このメモリは役に立たない。

 

ドーパントに変身するほとんどは、そのメモリの強い毒素で効果は出ない。

 

だけど、今回は違う。

 

何よりも、妹である雪絵さんを、兄である霧彦の思いが集まっている。

 

俺はそのまま真っ直ぐとイエスタディ・ドーパントに向けて、ナスカブレードを振り下ろす。

 

振り下ろされた一撃によって、イエスタディ・ドーパントの身体からイエスタディ・メモリが飛び出る。

 

『雪絵!』

 

そう、霧彦と共に抱き寄せる。

 

「兄さん、私」

 

『良いんだ、今はゆっくりと休んで』

 

その言葉と共に、雪絵さんはゆっくりと目を瞑る。

 

「影っ」

 

「あぁ、なんとかなった。

 

だから、ヒサメ!」

 

「あぁ」

 

同時にヒサメはそのままズーメモリを取り出す。

 

「「変身!」」

 

『ナスカズー!』

 

その音声と共に、俺達はナスカズーへと変わる。

 

同時に見つめた先には、スワローテイル・ドーパントを一カ所に集めている翔太郎さんの姿が見える。

 

それと共に、分裂したら不利なのか、禍々しい蝶を思わせるドーパントへと変わる。

 

「一気に決めるぜ」

 

『タイガー!』

 

その音声が鳴り響くと共に、俺の身体は虎を思わせるアーマーを身に纏う。

 

『タイガー!MAXIMUMDRIVE!』

 

その音声と共に、俺は両手に纏った虎の爪を構える。

 

それと共に、スワローテイル・ドーパントに向けて、俺は一気に駆け出す。

 

向かってくる俺に対して、気づかず、そのまま一気にメモリブレイクする。

 

「影、雪絵さんは」

 

「決着ついた!

 

後は!」

 

その言葉を聞くと同時に、照井さんが危機的状況になっているのに気づく。

 

「影っ」

 

「あぁ」

 

『エレファント!』

 

その音声と同時にタイガーアーマーはパージされ、灰色の像を思わせるアーマーを身に纏う。

 

同時に、左肩には象を思わせるシールドが装着する。

 

俺はそのまま肩にあるシールドから伸びている鼻を、そのまま井坂の身体を縛り付ける。

 

「なっこれは!」

 

「これは、まさか影!

 

だったら、今は!」

 

『アクセル!MAXIMUMDRIVE!』

 

鳴り響く音声と共にボロボロな状態ながらも、照井さんは立ち上がる。

 

そのまま、その身体を炎に纏いながら、井坂に向かって、蹴り上げる。

 

「まさか、ここまで厄介だとは。

 

だが」

 

しかし、違和感があった。

 

そこには井坂の姿はなかった。

 

「何が?」

 

『おそらくは蜃気楼だろう。

 

まさか、ここで逃がすとは』

 

「ぐっ、せっかくのチャンスがっ」

 

そう言いながら、照井さんは悔しそうに地面を叩く。

 

「すいません、俺が」

 

「そんな、言葉、今は意味は無い!

 

何よりもっ俺に力が足りないだけだ!」

 

そう叫びながら、照井さんの叫びは空しく響いた。




「事件は無事に解決した。
雪絵さんは、イエスタディ・メモリの後遺症で今は病院に入院している。
その入院先は、風都から離れた場所だった。
組織に深く関わっている事もあって、組織が手の届かない所に。
彼女が、風都に戻ってくるのは何時になるか分からない。
だけど、彼女が風都に戻ってくるのは、組織との戦いが決着がついた時だろう」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Rの彼方/偶然の一致

その日の依頼は、ある意味、偶然の一致であった。

 

数日前、俺の爺さんの昔の生徒だった人物が殺害された。

 

島本浩二と呼ばれる男は、大の鳥好きであり、昔、爺さんが管理していた森にいる鳥を見る為によく遊びに来ていたらしい。

 

当時から、親父はあまり森に関心はなく、そうした自然に興味のある若者を歓迎していた爺さんにとっては、大事な生徒の1人だった。

 

それが、先日、謎の死亡を遂げた。

 

そう、姉からの電話を受けた俺は、その事件を調査する為に行動していた。

 

だが、事件当時の現場を調べても、天候を調べても、謎が多すぎた。

 

天気予報でも、記録でも風都には雨が降っていないにも関わらず、浩二さんが死亡した場所は当日は突然の大雨で襲われた。

 

そして、その遺体は雷で打たれて、亡くなっていた。

 

「幾ら何でも、偶然が重なりすぎて、可笑しい。

だけど、あいつならば」

 

「それって、もしかして」

 

事件の事について調べていた俺達が辿り着いた結論は、犯人である。

 

いや、むしろ奴以外に考えられない。

 

「井坂の奴で間違いないと思うが」

 

「けど、あいつが何の目的もなく、殺すのかな?」

 

「あぁ、あいつは最低な犯罪者であるのは変わりない。

けど、同時に恐ろしく高い知能もある。

そんな奴が、何の目的もなく、こんな派手な殺しをするのか?」

 

井坂の持つウェザーは、実際に万能な能力だ。

 

天候を操る事ができれば、様々な事を行う事ができる。

 

だから、このように簡単に殺人した証拠を残すような事はしない。

 

「目的があるとしたら、現場にいた娘さんが関係していると思うけど」

 

そうしながら、俺達は現場に向かって、走っていた。

 

風都野鳥園の裏に、今はいるという情報を聞いた俺達はすぐに向かった。

 

だが、そこで見えたのは、激しい雨だった。

 

「雨?

まさかっ」

 

「間に合わないとっ!

悪いが頼めるか!」

 

「了解!」

 

俺はそう言い、すぐにヒサメに目を向ける。

 

『ナスカ!』『ズー!』

 

「変身!」

 

『ナスカズー!』

 

俺達はすぐにナスカズーへと変身する。

 

『チーター』

 

同時に俺達は瞬時にチーターアーマーを身に纏うと同時に走り出す。

 

すると、目の前には目的の人物である島本凪さんがいた。

 

そして、彼女の腕を掴んでいるのは、間違いなく井坂が変身するウェザー・ドーパント。

 

その周りには大量の雨によって身動きが取れない翔太郎さんと、雷雲に覆われている照井さんの2人だった。

 

「君の心が恐怖の感情に呑まれば、呑まれる程、コネクタは成長する」

 

「気色悪い言葉を言っているんじゃねぇよ!」

 

「っ!」

 

俺はそのまま加速しながら、井坂に向かって、蹴り上げた。

 

すぐに井坂は俺の蹴りを躱すが

 

『カメレオン』

 

鳴り響く音声と共に、俺はチーターアーマーをパージする。

 

それによって、井坂は一瞬、動きを止める。

 

同時にカメレオンアーマーを身に纏った俺は右腕と一体化している鞭、カメレオンウィップで井坂を捕らえている凪さんを助け出す。

 

「まさか、ナスカ。

君が来るとはね。

丁度良い、どれほどの力か、少し確かめてみますか」

 

同時に井坂はその手に雷の鞭を手にし、振り下ろした。

 

雷の鞭に対抗し、カメレオンウィップで払いのけていく。

 

それと共に、見るとそこには冷気が溜めているのが分かる。

 

「やばいっ!」

 

『トータス!MAXIMUMDRIVE!』

 

俺はその攻撃に危機感を覚えると同時に、トータスアーマーへと変わる。

 

同時に凪さんと倒れている亜希子所長の前に出ると同時に両手にある甲羅の盾を構える。

 

それによって、両腕の盾をエネルギーで巨大化し、その攻撃を防ぐ。

 

「ぐっ」

 

「そこは攻めないといけませんよ」

 

「ぐっ」

 

だが、それと共に、俺の横にいた井坂に殴り飛ばされる。

 

トータスアーマーの特徴でもある両手にある甲羅の盾以外は防御力は低い為、ダメージはかなりきつい。

 

「まったく、せっかくの素質に素晴らしいメモリがあるのに。

君達の、その無駄な正義感が弱くしている。

本当に残念だ」

 

「それは違うぜ」

 

『エクストリーム』

 

しかし、その井坂の声を否定するように、雨によって捕らわれていた翔太郎さん達はサイクロンジョーカーエクストリームへと変わる。

 

「人を守る為に戦うそいつは十分強い。

お前なんかよりもな」

 

そう翔太郎さんはそのまま構える。

 

「今の君達を相手にするのは少々部が悪い。

私はここで失礼するよ」

 

その言葉と共に、その姿は煙と共に消えていった。

 

「助かったぜ、影。

それにしても、なんでここに?」

 

「俺が調べていた知り合いの死を調べたら、彼女が」

 

「そうだったのか。

だとしたら、偶然にしてはな」

 

「あぁ」

 

その奇妙な偶然なのか、それとも運命なのか。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

40話

「ケツァルコアトルスメモリ。
それが、井坂の目的」
「け、ケツ…あ、アル?」
「古代アステカ文明で、蛇の神と崇められた、史上最大の飛行生物」
ホワイトボードには、そのケツァルコアトルスの絵や細かい情報が忠実に描かれている。
「島本凪は、そのメモリの過剰適合者だ。翔太郎、インビジブルメモリの事件を憶えてるだろ?
井坂は過剰適合者である、リリィ白金の身体にメモリを埋め、そのパワーを最大限に増幅しようとした。最後にはメモリを奪い、自分が使用するために」
その事件も、今でも覚えている。
「凪ちゃんも、リリィと同じだってのか?」
「でも、今回違うのは、井坂はまだ彼女にガイアメモリを挿してはいない。その理由は…」
同時に俺達が思い出したのは、あの戦いで井坂が放った一言。
『君の心が恐怖の感情に呑まれれば呑まれるほど、コネクタはより早く成長する』
「コネクタが完成するのを待ってる、ってことか」
「となると、奴らはコネクタ完成の為に、これからも彼女に付き纏って恐怖や絶望を徹底的に……植え付ける気でいるのか」
「それって、凪さんのお父さんみたいに」
「たった、それだけでっ」
メモリの為に、人を殺すだけではなく、親を目の前で殺して、それを恐怖させる事が目的なんて。
「これが、人間のする事なのかっ」
俺のその一言と共に照井さんは鉄柱を殴った。
そして、無言でガレージと事務所からでていく。
「何所いくの?竜君!」
亜樹子は心配になって、照井を追い掛けた。
「だったら、俺達がやるべき事は」
「凪さんの護衛だ」
「あぁ、凪さんの安全の為にも。
そして、もしも、井坂の計画通りになったら」
恐ろしい出来事が待ち受けている。


 俺達は凪さんの護衛の為に、彼女が今、いる所に向かった。

 

 ふと、翔太郎さんは近くにいた鳥を見ると、そのまま凪さんに尋ねた。

 

「猩々朱鷺のヘンリー君。ホントは、マングローブの林のなかなんかで大きな群れをつくる鳥」

 

 凪は分かり易く説明した。

 

「へ~、やっぱ詳しいんだな」

 

「お父さん飼育員だったの。だから私も、自然と鳥が好きになった」

 

「そっか」

 

 翔太郎は短く返事すると、凪のいるコーナーの入口に歩く。

 

 見れば、この周辺には僅かだが、爺さんが残した森に生えていた木々が確かに見えた。

 

「もしかして、この木々って、近くの」

 

 俺は気になり、聞いてみる。

 

「えぇ、あの山は本当だったら日本でも生えないような植物がありまして。

 

 お父さんはあそこの土地の所有している人と昔から仲が良く。

 

 その縁で、こうして別けて貰えたんです」

 

「そうですか」

 

 それは自然に嬉しくなった。

 

 今でも、こうして爺さんの自然が受け継がれている。

 

 だからこそ、凪さんを守らないといけない。

 

 守れなかったあの人の分まで」

 

「ねえ、あの人、どうして私を守ろうとしたの?」

 

 それと共に、凪さんが思い出したのは、おそらくは照井さんの事だろう。

 

「彼もまた井坂深紅郎ウェザー・ドーパントによって、家族を殺された」

 

 ヒサメがそういうと、凪さんは「え?」と疑問の声を出す。

 

「だから、同じ境遇にある貴様を見捨てることができんのだろう」

 

「そんな、勝手に重ねられても困るよ。もしそれで死んじゃったら」

 

「奴は死なない。守るべき者がいる限り、男はどこまでも強くなれる」

 

「それもまた、あの人が遺した言葉か?」

 

「まあな」

 

 凪は照井から受け取ったアクセサリーを手に持つ。

 

『お守りだ。とても良く効くぞ』

 

 照井のことを思い出し、凪はアクセサリーを握りしめる。

 

 その時、園内の鳥達が一斉に騒ぎ始めた。

 

「これは」

 

「まさかっ」

 

 同時に俺達が見つめた先に立っていたのは井坂だった。

 

「おはよう。昨日はよく眠れましたか?」

 

「ふざけんな!」

 

「こんな所で、何をするつもりだ」

 

「そうですね。その娘がどんな異形となるかを」

 

 井坂はケツァコアトルスメモリに似た、基盤剥き出しのメモリをとりだす。

 

「複製した、御試し品ですがね」

 

【QUETZALCOATLUS】

 

 ガイアウィスパーが鳴ると同時に投げられた複製コピーメモリは近くにいたオウムの身体に挿され、その姿形を大きく変貌させる。

 

「拙いな」

 

「逃げろ!」

 

 そういっても時既に遅し。

 

 オウムはケツァコアトルス・ドーパントとしての巨体を誇っていた。

 

 ケツァコアトルス・ドーパントは空へ飛翔すると、一旦低空飛行して凪の身体を足の爪でガッチリ掴みながら飛行する。

 

「イヤ! 降ろして!!」

 

「しまった!」

 

 同時に俺はすぐにこの状況を打開する為に動き出す。

 

「翔太郎さん、ヒサメの事、お願いします!」

 

「あぁ、行ってこい」

 

『ナスカ』『ズー』

 

「「変身!」」

 

 同時に俺達はナスカズーへと変身する。

 

『バット』

 

 同時に俺はバットの力を宿すと共に、背中に翼を生やし、そのまま真っ直ぐとケツァコアトルス・ドーパントに向かって、飛ぶ。

 

 ケツァコアトルス・ドーパントはすぐにこちらの存在を確認すると同時に、俺に向かって、次々とその翼をこちらに向けて放っていく。

 

 それに対して、俺は片手に装備しているバットソードでその攻撃を切り払いながら、そのままケツァコアトルス・ドーパントに捕らえられている凪さんに近づく。

 

『ベア』

 

「はあぁぁぁぁ!!」

 

 同時にバットアーマーをパージさせ、ベアアーマーを装着する。

 

 そのまま、両腕に熊の頭部を模したガントレットでケツァコアトルス・ドーパントを思いっきり殴る。

 

「きゃああぁぁぁ!!」

 

 それによって、ケツァコアトルス・ドーパントは凪さんから手を離す。

 

 俺達はそのまま彼女を抱えながら、地面へと降りる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「はいっ」

 

「すぐに終わらせますから!」

 

 同時に俺はこちらに向かってくるケツァコアトルス・ドーパントに目を向ける。

 

『ジラフ! MAXIMUMDRIVE!』

 

 それと共に、俺達はジラフアーマーを身に纏う。

 

 キリンの長い首をモチーフにしたパイルバンカーのような武装『ジラフパイル』に電撃を身に纏い、その狙いをケツァコアトルス・ドーパントに向ける。

 

「今、解放してやるからな!」

 

 俺はそのままその電撃の槍をケツァコアトルス・ドーパントを貫く。

 

 それによって、ドーパントとなっていたオウムを受け止める。

 

『影、そのオウムは』

 

「あぁ、無事のようだ。

 

 けど、すぐに動物病院に連れて行かないと」

 

 ドーパントがメモリブレイクされれば、そのほとんどが病院に行かなければならない程の重傷になる。

 

 それが、メモリを使った犯罪者ならばともかく、このオウムは井坂の完全な被害者だ。

 

「凪さんもっ」

 

 そう俺が言おうとした時、衝撃が襲い掛かる。

 

 それは、井坂の奴だった。

 

「井坂っ」

 

「さすがに仮面ライダーの相手をしている場合じゃないのでね。

 

 それでは、また」

 

 その言葉と共に、井坂の姿を消した。

 

「翔太郎さん」

 

「悪いっ、ヒサメちゃんが狙われて、守った隙に」

 

「いいえ、元々っ俺の責任です」

 

『今はそれよりも島本凪の救出を最優先しよう』

 

 それと共に、俺達はそのままヒサメの元へと向かう。

 

「ヒサメ、大丈夫か?」

 

「うん、なんとっ」

 

 そうしていると、ヒサメは目を見開いて驚く。

 

「どうしたんだ?」

 

「ないの」

 

「何がだ?」

 

「ウェザーメモリがっないの」

 

「っ」

 

 その言葉に、俺達は驚きを隠せなかった。

 

「まさか、あの時の衝撃でっ」

 

「自衛用に持たせていたのが、裏目に出たか。

 

 幸い、あれはベルトがなければ使えない」

 

「だけど、井坂はあのウェザーメモリをどうするつもりだ」




「先生、これは」

「彼らが持っていた私と同じメモリですよ。
まさか、このような物まであるとはね」

「それをどうするつもりなんですか?」

「私も長年メモリに携わっていたからね。
少し、このメモリに興味がありましてね」

「興味?」

「えぇ、このメモリは仮面ライダー達がドライバー使用を前提に作られています。
その為、毒素は極限まで無くしています。
それは、つまり、私がとある筋で手に入れた物の実験には丁度良いのでね」

その言葉と共に、井坂の近くには外見は全体的に丸みを帯びたドライバーだった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Rの彼方/復讐の終焉

凪さんが攫われた。

 

それに対応するように、俺達鳴海探偵事務所のメンバーはすぐに動き始めた。

 

井坂が、何を企んでいるのか、未だに分からない以上、俺達にできるのは、目撃情報だけだった。

 

「くっそっ、どこに行けば」

 

俺は思わず、悔しがりながら、地面に落ちているゴミを思わず蹴ってしまう。

 

こうしている間にも、凪さんの身が危険な状況なのに。

 

そう、俺が悩んでいると、レディバグフォンから着信音が聞こえる。

 

見ると、そこには地図があり、その送り主は。

 

「シュラウド。

なんで、奴が」

 

そう、疑問に思いながらも、俺はすぐに翔太郎さんにその場所のデータを各々の携帯に送り、すぐに向かう。

 

凪さんが捕らわれている以上、猶予は少ない。

 

急ぎ向かった先には、手足を縛られている凪さんがおり、そこには井坂と相対するように照井さんがいた。

 

「照井さん」

 

既に戦いが始まっているが、その状況は劣勢の一言だった。

 

通常のアクセルでも、井坂に勝てる事ができなかった。

 

そんな状況で、勝てるのか。

 

そんな思いとは裏腹に、照井さんはその手に持ったエンジンブレードを投げ捨てた。

 

疑問に思っている間にも、照井さんが取り出したのは。

 

「なんだ、あれは」

 

それは、これまで見た事のないアイテムだった。

 

手元を見れば、メモリがあるのは分かるが、その上にはまるで巨大なストップウォッチを思わせる物があった。

 

そこから考えても、俺とヒサメが使うズーメモリや、翔太郎さん達のファングメモリやエクストリームメモリともまた違ったメモリかもしれない。

 

『トライアル』

 

鳴り響く音声。

 

それと共に、トライアルと鳴り響いた音と共に、照井さんはそのままベルトにトライアルメモリを挿入する。

 

すると、照井さんのアクセルは赤から黄色に。

 

黄色から青に変わると共に、その容姿を大きく変える。

 

これまでのアクセルがエンジンを積み込んだモンスターマシンを思わせるバイクならば、今の照井さんの姿は、スピードを出す為にパワーを犠牲にした姿。

 

それが、その姿の感想だった。

 

「ほぅ、新しいメモリを手に入れたか」

 

そう、井坂はその手から雷を放った。

 

これまでだったら、それを避ける事はできなかった攻撃。

 

だが、照井さんはなんと、軽々と避けた。

 

それだけではなく、そのまま井坂に突っ込むと共に殴った。

 

「なるほど、確かに速い。

だが!」

 

同時に井坂はその手から雷雲を出し、照井さんの周りを囲む。

 

「どんなに素晴らしいメモリでも使う奴が虫けらでは意味はない!」

 

その叫び声と共に、雷雲から無数の雷が襲い掛かる。

 

しかし、その攻撃を、なんと残像を残す程の速さで避け、雷雲から抜け出す。

 

「マジかよ。

怪盗の俺よりも速いって」

 

俺は思わず笑みを浮かべる。

 

今の照井さんならば、井坂に勝てる。

 

「見せてやろう。

トライアルの力を」

 

そう、トライアルメモリを取り出す。

 

だが

 

「駄目だよ竜君!

本当は10秒の壁を抜いていないないのよ!!」

 

亜樹子所長は悲痛な叫びが響く。

 

「10秒、それって、どういう」

 

「マキシマムを使うには、10秒以内にマキシマムを決めないと行けないの。

それを、まだ竜君は」

 

「それじゃ、このままじゃっ」

 

それを聞いて、亜樹子所長もヒサメも心配そうに見つめる。

 

けど

 

「それは、大丈夫じゃないか」

 

「何を言っているの、影!」

 

「今の照井さんは、ただの復讐鬼じゃない。

かつて守れなかった人を守る為に。

戦う仮面ライダー」

 

「あぁ、だからこそ、奴は超えれるさ」

 

俺の言葉に翔太郎さんもフィリップさんも頷く。

 

同時に照井さんはその手にあるトライアルメモリのスイッチを押す。

 

それと共に、俺達は照井さんを目で追う事も難しい程の速度で走り出していた。

 

既に残像を残す程のスピードであり、井坂の攻撃を軽々と避け、すぐに懐に飛び込む。

 

「なっ」

 

同時に井坂を連続キックをT字状に浴びせる。

 

それは、照井さんのキックだけで残像を作り出し、井坂にT字の光が見える程に。

 

『トライアルMAXIMUMDRIVE!』

 

同時に宙に浮かんでいたトライアルメモリを手に取り、そのままスイッチを押す。

 

「9、8秒。

それがお前の絶望までのタイムだ」

 

「がああぁぁ!!」

 

同時に井坂はメモリブレイクされ、そのまま倒れる。

 

同時に、井坂が使っていたウェザーメモリは完全にブレイクされる。

 

「照井さんが勝った」

 

「当たり前だ」

 

今の、目の前にいるあの人は。

 

俺達が初めて出会った頃の復讐の化身じゃない。

 

「やったね、あとはっ」

 

そう思った時、ヒサメは短い悲鳴を上げる。

 

見ると、井坂の身体のあらゆる箇所にメモリのコネクトが出てきた。

 

「あれは一体」

 

「メモリの過剰使用のツケが来たんだ」

 

「メモリに心酔し、最後にはメモリによって死ぬ。

ある意味、自業自得かもな」

 

俺はそう言いながらも、井坂に近づく。

 

「おい、ヒサメが持っていたウェザーメモリはどこに持っている」

 

「くくっ、さぁな。

だが、その内、お前達の前に再び現れるだろうなぁ。

新たなウェザーが」

 

その言葉を最後に、井坂は完全にその身体を灰となって、この世界から消えた。




『凪さんの笑顔を取り戻した。
照井さんも復讐を終えた。
井坂はこの街から消えた。
こうして見れば、全ての出来事は平和に解決したように見える。
だけど、未だに行方が分からないウェザーメモリ。
普通ならば、ドライバーなしで使用する事は決してできないメモリだから、安心している。
しかし、俺はどうしても嫌な予感しかしなかった。
翔太郎さんとフィリップが、荘吉さんの意思を継いだように。
俺が翔太郎さんに憧れたように。
あの井坂に憧れ、意思を引き継ぐ者が現れるかもしれないと。
今は、その不安が当たらない事だけを祈るしかない』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

42話

その事件は、フィリップさんにとって、大きな転機となったんだろう。

 

それを、未だに俺達は知らなかった。

 

しかし、先日の依頼で受けた依頼人について聞く為に、俺達は翔太郎さんの指示でウォッチマンの所に来ていた。

 

「それで、調査の結果は?」

 

「翔ちゃんの直感、的中だったよ。

かなりやばかったよ」

 

「その、本当に」

 

「あぁ、翔ちゃんにもよろしく伝えといて」

 

「了解、それじゃ」

 

「さぁって、今日のグルメブログのネタ、何に」

 

そう俺達はウォッチマンと別れようとした時だった。

 

「ぎゃあぁ!!」

 

聞こえた悲鳴、振り返ると、そこには黒いゴスロリを身に纏った女がいた。

 

その足下には、ウォッチマンが鼻血を出しながら、こちらに助けを求めていた。

 

「へっヘルプミー!」

 

「ウォッチマンさん!」

 

「てめぇ、何をしているんだ」

 

同時に俺はそのまま近づこうとする。

 

『待て影!あの女はっまさか!!』

 

「えっ?」

 

「へぇ」

 

同時に霧彦が厳しい表情で、ゴスロリの女を見る。

 

それと共に、向こうも霧彦の姿を確認すると、笑みを浮かべる。

 

『ミュージアムの処刑人だ。

なぜ、こいつがここに』

 

「へぇ、少し食べてみようか」

 

「ぎゃあぁあl!」

 

同時にウォッチマンが、ゴスロリの女の靴に仕組まれていたスタンガンによって、気絶すると共に、その手にはガイアメモリを手に持っていた。

 

『ホッパー』

 

鳴り響く音声と共にゴスロリの女はそのまま、自身に突き刺すと共に、その姿をホッパードーパントへと姿を変える。

 

「ヒサメ、ウォッチマンを頼む」

 

「うん!」

 

『ナスカ』

 

「変身!」

 

俺はそれと共に仮面ライダーへと変身すると同時に、瞬時にホッパードーパントに斬りかかる。

 

ホッパードーパントは、俺の斬撃に対して、そのまま後ろに跳び上がり、避ける。

 

同時に着地した壁を足場に、襲い掛かる。

 

すぐに俺はその攻撃を受け流すも、すぐに背中から蹴り上げる。

 

「ちっ」

 

周りが壁という地形を利用し、その素早い攻撃に俺は目を追えない。

 

『奴はこれまで多くの人を殺してきた。

その実力はかなり高いぞ』

 

「分かっているよ、悪いけど、ヒサメ!」

 

「聞こえている。

今は無事に隠れたから」

 

「だったら、行くぜ!」

 

俺はそのままヒサメに合図をすると共に。

 

「「変身」」

 

『ナスカズー』『パンゴリン』

 

俺達はすぐにナスカズーへと変身すると同時に、選択したのは、パンゴリンだった。

 

背中には、硬く鋭い刃の様な鱗が覆われ、そのままホッパードーパントが襲い掛かる。

 

しかし、その刃がホッパードーパントにダメージを与える。

 

「ちっ」

 

「よっしっ行くって」

 

そう、俺達がすぐに向かおうとした次の瞬間。

 

眼前に迫って来るのは巨大な塊が転がってくる。

 

「なっ嘘だろ!?」

 

俺はすぐにその場で避ける。

 

すぐに目を向けると、そこにはホッパードーパント以外にも、虫のドーパントが立っていた。

 

同時に、すぐにその場から消えていった。

 

「逃げられたか」

 

『しかし、まさか組織の処刑人が現れたという事は』

 

「間違いなく、あの依頼人に何かあるようだな」

 

翔太郎さんの直感が当たった事に対して、頷きながら、俺達はすぐに翔太郎さんの元へと戻る事にした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

43話

翔太郎さんに言われ、調べた人物である山城さん。

 

彼は10年前、組織であるミュージアムに誘拐されていた。

 

そこで彼は立派な研究施設、潤沢な予算、それらが全て用意された環境に魅入られて、自らの意思で家族を捨てた。

 

そんな彼がもう1度、家族に会いたいという事で、俺達は依頼を受けた。

 

だが、俺はそんな事よりも、彼が話したフィリップさんの記憶を消したという話が大きかった。

 

これまで、記憶が無く、苦しんでいたフィリップさんにとっては、まさに自分自身を知る為の手掛かりだった。

 

その事で、フィリップさんは動揺を隠せず、一日を寝ずに過ごしていたらしい。

 

そして、今、フィリップさんの元に来た電話。

 

それは、園崎若菜から一緒に街から逃げて欲しいという願いだった。

 

フィリップさんにとって、これまで若菜さんはまさに憧れの人物だった。

 

同時に何度も会っている内に魅了されている様子もあった。

 

そんな彼女から、逃げて欲しいという悲痛な叫び。

 

それを、どうすれば良いのか、フィリップさんは悩んでいた。

 

「影君からも何か言えないの?」

 

「俺からは、なんとも。

けど、フィリップさん。

もしかしたらの話で良いですか」

 

「何かな?」

 

ふと、俺はとある疑問点を思い出す。

 

過去に、フィリップさんから聞いた何気ない彼らとの会話。

 

「フィリップさんと若菜さんって、出会った頃から、結構仲が良かったんですよね」

 

「あぁ、僕としては、若菜さんの力になりたい」

 

「けど、若菜姫は園崎家なんだよ」

 

「えぇ、けど、園崎家には確か、長男がいたはずなんでしたよね。

その弟と一緒にいた時は、なぜか気持ちが落ち着いたとか」

 

「・・・影、それってもしかして」

 

翔太郎さんは、ここまでの話の流れで直感なのか、理解したように見つめる。

 

「えっえっ、どういう事?

話の流れが分からない。

ヒサメちゃん、分かる!?」

 

「私も分からなくて」

 

そう、亜樹子所長も、ヒサメも困惑している。

 

正直に言えば、俺自身もこの話が憶測に過ぎない。

 

それでも、もしも当たっていれば。

 

『・・・長男。

確かに僕が婿入りした時に、昔弟がいたって、冴子から聞いた。

その弟の名前は、来人だと』

 

「っ!?」

 

同時にフィリップさんが転げ落ちるように驚いた。

 

「どうしたんだ」

 

「過去に、アームズの事件の時に僕の事をそう呼んだ女性がいた。

もしも、その言葉を信じるならば」

 

「フィリップは園崎家の長男」

 

それは、ある意味恐ろしい事実だった。

 

これまで戦ってきた組織の中心にいる存在。

 

その園崎の家系がいる事に。

 

何よりも動揺が隠せないのは、フィリップさん自身だった。

 

「それじゃ、若菜さんは、僕の姉さん」

 

「本当の家族なの。

だとしても、このまま」

 

亜樹子所長はそれまでの話を聴き、頭を混乱していた。

 

いや、むしろこの場にいる全員が同じだろう。

 

「・・・フィリップさんは、若菜さんに対して、どう思います」

 

「・・・彼女は本当は優しい人だと思う。

あの時、電話越しで助けを求めた声も嘘ではなかった。

だから、僕は」

 

それは、ある意味、翔太郎さんとフィリップさんの、仮面ライダーを終わりを意味している。

 

それを聞いて、俺は少し寂しい思いをする。

 

けど

 

「家族はいなくなったら、きっと後悔します。

誰よりも大切な家族ならば尚更」

 

「俺も、家族はもういない。

だから、フィリップ、お前が後悔しない事に、俺は何も言わない」

 

「影、翔太郎」

 

この別れは、俺はむしろ良いかもしれない。

 

力を求めての別れではない。

 

フィリップさんはフィリップさんの新しい戦いの為に、向かう。

 

「任せてください。

この鳴海探偵事務所の仮面ライダーは俺がいますから」

 

「影は調子に乗りすぎ。

だけど、フィリップさんに心配かけないように私達も頑張りますから」

 

「私は、正直今でもまだ反対だけど、フィリップ君が本当に望むならば」

 

そう、俺達はフィリップさんの背中を押すように進める。

 

「皆っ、ありがとう。

僕にはっ背中を押してくれる家族がいる。

だからこそ、僕は行くよ」

 

それが、フィリップさんの決意でもあった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

44話

フィリップさんが、若菜さんの所へと向かった同時刻。

 

照井さんから突然の連絡を受けた。

 

それは、今回の事件で最も大きな関係者である山城博士が、ミュージアムからの刺客に襲われたという報告だった。

 

俺達はすぐに、山城さんがその際に逃げ出したという情報を聞いた。

 

「ねぇ、影。

今、どこに向かっているの?」

 

「もしも、この混乱に乗じて、逃げるとしたら、あの人の目的は一つしかないだろ」

 

そう言いながら、俺は手元にある情報を元にとある場所に辿り着く。

 

そこは住宅街の一つである一軒家。

 

そこには確かに山城という名前があった。

 

それと共に、見えたのは、その家の前で隠れている山城博士の姿だった。

 

だが、その背後にいる存在に気づいていない様子だった。

 

俺はすぐに懐にあるカメレオポインターを取りだし、そいつに向けて、ワイヤーを放つ。

 

放たれたワイヤーによって、その動きを妨害する。

 

同時にそのままワイヤーを無理矢理引き寄せ、そのまま蹴り上げる。

 

それによって、家に入るタイミングの彼らには見えなかった。

 

「今のは」

 

「博士、さっさと逃げろ」

 

「君は」

 

「あんたがここにいると、家族にも被害が出る。

それは、分かっているだろ」

 

俺の一言に対して、山城博士は少し考えたが、同時に頷いた。

 

それとタイミングを合わせるように、照井さんが既にアクセルに変身している状態で、駆けつけた。

 

そこには別の刺客だと思われる人物と戦っている最中だった。

 

「影、山城は」

 

「ヒサメが避難させています。

あとは」

 

「市民がいない場所まで行くぞ」

 

『ナスカ』

 

俺は同時にナスカメモリを取りだし、ロストドライバーに装填する。

 

「変身!」

 

『ナスカ』

 

同時に俺は仮面ライダーナスカへと変身する。

 

それに合わせるように、照井さんもまたドライバーを持って、そのままバイクモードになると同時に、俺を背中に乗せる。

 

そして、俺の首元にあるマフラーを伸ばし、二人の刺客を拘束すると共に、走り出した。

 

走り出して、辿り着いた森の中に入ると共に、俺達はそのまま構える。

 

「邪魔」「ここで潰す」

 

『ホッパー』『スカラベ』

 

その音声と共に、目の前にいる二人はそのままホッパードーパントとスカラベドーパントへと変わる。

 

それに合わせて、俺も照井さんも同時に構える。

 

前回の戦いで、既にホッパードーパントの能力を知っていた。

 

しかし、そのスカラベドーパントとのコンビネーションは俺達の想像を遙かに超えていた。

 

「これはっ」

 

そう言いながら、俺と照井さんは背中合わせにしながら、睨み付ける。

 

スカラベ・ドーパントによって作り出された巨大な土の塊。

 

それが、俺達の周りを囲みながら、縦横無尽に走り抜ける。

 

少しでもタイミングを間違えれば、その土の塊に押し潰される。

 

だが、ホッパードーパントは、まるでその位置が分かるように、その土の塊を足場に、次々と俺達に攻撃を仕掛ける。

 

攻撃と防御において、これ程厄介な組み合わせに、苦戦を強いられている。

 

「何か、攻略は」

 

「ズーになれれば、なんとかできると思いますが」

 

そう俺が言うと共に、タイミング良く、ドライバーが現れる。

 

「それで、作戦は」

 

「正面突破ですね。

協力してくれますか?」

 

「何をするつもりか分からないが、良いだろ」

 

『ナスカズー』

 

同時に俺達はナスカズーへと変身する。

 

そして、そのままズーメモリからあるアーマーを選択する。

 

『ゴート』

 

鳴り響く音声と共に、黄土のアーマーのゴートアーマーを身に纏う。

 

「照井さん、俺の脚を掴んでください」

 

「んっ、そういう事か!」

 

同時に俺の言葉を察した照井さんはその姿を再びバイクモードへと変わる。

 

それに合わせて、俺は照井さんの肩に重ねるように脚を置く。

 

「何それ?」

 

ホッパードーパントの変身者は何やら、疑問に思っているようだが、それはすぐに分かるだろう。

 

照井さんは、そのままアクセルドライバーのパワースロットルを捻る。

 

それによって、一気に加速する。

 

本来ならば、ゴートアーマーだけでも強烈な衝撃波を与える事ができる。

 

それが、アクセルの加速が合わさる事によって、その破壊力は

 

「なっ、正面からっきゃぁ!!」

 

簡単に土の塊を砕く事ができる。

 

砕かれ、地面に落ちるホッパードーパントと、その後ろにいたスカラベ・ドーパント。

 

「影、ヒサメ、合わせろ!!」

 

「あぁ!」「分かりました!」

 

『ゴート!MAXIMUMDRIVE!』『アクセル!MAXIMUMDRIVE!』

 

合わさる二つの音声と共に、俺達は真っ直ぐと倒れている2体のドーパントに向かって突っ込む。

 

加速し、驚異的な破壊力を誇るその一撃は、容易く2体のドーパントを撃破した。

 

同時にメモリを破壊された事を確認すると共に、そのまま俺達はそのまま、二人を見る。

 

既にメモリブレイクされており、メモリはバラバラになっていた。

 

しかし、変身者だと思われる刺客はその場から跳び上がる。

 

「待てっ」

 

俺はすぐに向かおうとした。

 

だが、同時に現れた謎のドーパントによって、斬り裂かれ、消滅してしまった。

 

まるで、自分から消されるような動きで。

 

「口封じかっ」

 

照井さんはそのまま、構えようとしたが、既にそのドーパントは姿を消した。

 

一連のあまりの動きに俺達は何もする事ができなかった。

 

それを思い知るのは、それからすぐ後の出来事だった。




『結果的に言えば、フィリップさんは事務所に残っていた。
若菜さんと共に街を出て行くはずだったが、彼女は直前でミュージアムのボスだと思われる存在に攫われてしまった。
すぐに、フィリップさんも助けようと動いたが、取り囲むドーパント達によって、道を塞がれてしまう。
必死に助けようとし、フィリップさんに手を伸ばす若菜さん。
だが、その手は届く事はなかった。
そして、検索する彼の元に届いた若菜さんからの電話。
無事だと喜んだのも束の間。
それは、彼女が本格的にミュージアムで働く宣言だった。
彼女の身に何が起きたのか、それは俺達は分からなかった。
しかし、その時は確かに恐怖していた若菜さんをそこまで変えてしまった何かが
ミュージアムにはおそらくはあるだろう。
それは家族を捨てた山城さんも同じである。
彼は家族とは会う事はなかった。
いや、自分から会えないと思ったのだろう。
ミュージアムの刺客が、自分と関わったせいで犠牲になってしまう。
その恐怖で、彼はこの街から去る事にした。
彼と家族が再会するかどうか、それは俺達が決める事ではない。
ただ、今回の事件に鍵って言えば。
ドーパントを倒しても解決したとは言えず、誰もが不幸となったとしか言えない。
そんな事件であった事で、俺達の胸には深く刻み込まれた。』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

45話

衝撃の真実を知ったフィリップさん。

 

あれから、鳴海探偵事務所の雰囲気は、かなり悪かった。

 

言いたい事を溜め込む様子は、俺達にも伝わり、少し気まずい様子だった。

 

そんな時、俺達の元に訪れたのは、奇妙な依頼だった。

 

俺たちは依頼人・虹村あいの勤めるシネコンに行った。

 

映画館「CINEMA T-ジョイ風都」

 

そこが、俺達の今回の依頼された場所である。

 

その中で、あいさんそっくりな女の子が出てくる映画がかかる。

 

一度始まったら、終わるまで出られないらしいの。

 

だからこそ、俺達はその依頼の為に調査しようとするが。

 

「許可できません」

 

映画館のマネージャーはきっぱりと調査を拒否する。

 

「いいじゃないですか、調査ぐらい」

 

「他のお客様へのご迷惑ですから。お引取りください」

 

そう言い、映画館のマネージャーは一切通さない様子。

 

「だぁーうわっっ!?」

 

するとこちらでは、一人の青年が数多くのダンボール箱を落してしまった。

 

「あーもう先輩。パンフ運ぶ時は誰かに声かけてって言いましたよね」

 

「………」

 

「また黙り?信じらんない」

 

後輩にすらうだつが上がらない。

 

「川相君!」

 

「っ、虹村さん!」

 

そこへ来た依頼人・虹村が川相に近寄る。

 

「私も運んであげるから。さっ立って!」

 

「………」

 

その様子と共に、亜樹子所長は何やら興味を示した様子は、興味津々だった。

 

「君、あいさんの同僚?アワアワしちゃって、大丈夫?」

 

手でハート型をつくったりしておちょくる亜樹子。

 

川相はスケッチブックにマジックペンでこう書く。

 

――問題ない――

 

「ってどんだけ人見知りやねんあんた!?しかも字小っさ!」

 

「なるほど、分かるぜ。

他人とは目を合わせられないからな」

 

「影は、学校では陰キャだからね」

 

「ぐはぁ!」

 

それは俺にもダメージを受けた。

 

俺、結構依頼で色んな人と話したつもりだけどな。

 

それと共に、向こうの川相さんと目が合う。

 

なんだか、同じ波長を感じた気がした。

 

同時に無言のまま近づき、握手をした。

 

「これは、一体」

 

「陰キャ同士のシンパシー」

 

何を言っているのか分からないがとりあえずは何も言わない。

 

その後、川合さんはそのまま仕事へと戻っていった。

 

「頑張ってください。

さて、どうすか」

 

そう俺が悩んでいた。

 

「ねぇねぇ、影君ならば、こういう場合の潜入とか、簡単に行えるよねぇ」

 

「まぁ余裕ッス。

怪盗ならば、これぐらい楽勝ですから」

 

「影、そういう事で技術を使わない。

亜樹子所長も!」

 

「「はっはい」」

 

ヒサメからの注意を受け、俺と亜樹子所長は思わず返事してしまった。

 

だけど、本格的にどうすれば。

 

「おい、亜樹子、オイ!」

 

「ん?」

 

翔太朗が興奮気味に亜樹子を呼ぶ。

 

その理由は、

 

「見てぇ、風の左平次MOVIE…それも3Dだと!!亜樹子、これ見よう、コレ」

 

それは、丁度、翔太郎さんが嵌まっている時代劇の映画だ。

 

「こんな時に何を言っているんだ」

 

そう、亜樹子所長の天下のスリッパによる突っ込みが入る。

 

だけど、これは。

 

「良いかもしれない」

 

俺は思わず、笑みを浮かべる。

 

「どういう事?」

 

「あのマネージャーは映画を見れば、問題ないと言っていた。

だったら、映画を見れば良いんですよ!」

 

「けど、問題の劇場はどこに」

 

「左平次3D…!飛び出して来い、左平次・GO!!…ん、おい亜樹子。これどう見ても3Dじゃねーよな?」

 

「確かに、画面がセピアで一世代前レベルの映画だな」

 

上映されている映画はどう見ても時代劇とは程遠く、画面には黒マントを羽織った女性が映っている。

 

「これよ!これが謎の映画よ!」

 

「まさか、偶然、この映画に」

 

「ジェシカの彷徨と恍惚:傷だらけの乙女は何故西へ行ったのか:漂流編。……タイトル長ッ」

 

それに、翔太郎は思わず叫んでしまう。

 

 

「どこへ行く?ジェシカ」

「どこへ行く…?」

「彼方へ。私の道を……切り拓く」

 

カカシと天使に尋ねられ、答えるジェシカの姿。

 

「独り善がりなムードだ。駄作のオーラが出まくってるぜ。じゃあな」

 

「始まり方はあれだけど。

まだ、情報はないけど」

 

そう言いながら、俺はそのまま映画の内容を見ていく。

 

「もう7時間と19分だ。こりゃ拷問だぜ」

 

そうして、映画を見ていくと共に、翔太郎さんは呟く。

 

確かに7時間なんて、映画制作上かなり掟破りな気がする。

 

どんなに長くても3・4時間以内に纏めなければ、客が飽きるであろう。

 

「でも結構惹き込まれるところはあるよ」

 

「あぁ、制作者の拘りという感じだな。

よく、ディレクターズカット版みたいな感じ。

けど、なんというか寂しい感じもするな」

 

そう、俺は思わず呟いていく。

 

すると、ジェシカが崖の上で赤い弾を大きく光り輝かせる場面になり、一筋の光が真っ直ぐ伸びていく。

 

「お、遂にきたかクライマックス!」

 

――未完――

 

俺達はコケた。

 

「…こんなに長いのに未完かよ」

 

「アッタマ来た・・・!おい!責任者でてこい!」

 

『ッ!』

 

翔太朗の叫びに客席の陰に隠れていた異形がビクっとした。

 

「テメーか。このクズ映画を作ったのは」

 

「で、出たー!ドーパント!!」

 

特徴という特徴は白くて大きくて簡素な頭くらいしかないドーパントは立ち上がり、塞がっている出口の前にジャンプしたというか飛び降りた。

 

『あイッテテ!』

 

腰を打って情けない声を出していたが。

 

ドーパントは右腕と同化しているミキサーを壁に押し当てると、壁はどんどん形を変え、観葉植物となって逃げた。

 

「あれは、まさか」

 

そうしながら、俺達もすぐに飛び出した。

 

外に飛び出せば、既にドーパントの姿はない。

 

周りを見ても、その姿は確認できない。

 

すると、翔太郎さんから電話があった。

 

「翔太郎さん!」

 

「影、ドーパントの正体はジーンだ。

奴は遺伝子操作に長けた特殊能力を持ち、コイル状の右手で有機物の遺伝子を組み換え別の物体に変化させてしまう」

 

「なるほど、つまり、さっきの映画は」

 

それと共に俺は納得すると同時に、周りを見る。

 

その中では明らかに先程まで運動していたと思われるマネージャーがいた。

 

だが、俺の視線の先にはもう1人のマネージャーがいた。

 

という事は。

 

「変装するならば、もう少し、バレない方が良いぜ」

 

俺はそう、偽物のマネージャーに話しかけた。

 

それに驚いたマネージャー、いや、ジーン・ドーパントはすぐに飛び出していった。

 

同時にジーンは逃げ惑う人々をよそに、ポップコーンの入った器になにかを入れて遺伝子操作を行い、大量のマキビシを地面に投げた。

 

「うわっと、結構面倒だな!」

 

そうしながら、俺達が辿り着いたのは屋上だった。

 

だが、その戦いははっきり言えば、すぐに終わった。

 

屋上にて、翔太郎さんはジーン・ドーパントを圧倒する。

 

ジーンは他のドーパントにはない稀有な能力を有するが、代わりに白兵戦能力はマスカレイド・ドーパント並でしかなかった。

 

そうして、翔太郎さんはジーンドーパントを尻を引っぱたくと、メモリが自動的に排出された。

 

ジーン・ドーパントの正体、川相さんはジーンメモリを回収しようとするも、亜樹子所長によって取り上げられた。

 

「君だったのね犯人は。没収!!」

 

「か、返せ・・・!」

 

「そんな、川相くんが・・・怪物?」

 

ジーン・ドーパントの正体を目の当たりにした虹村さんもショックを隠せない。

 

「上映館のナンバーをすり替えて、使われていない試写室に誘いこみ、出口を塞いで自分の自主制作映画を見せていたんだな」

 

「ある意味、才能かもしれない」

 

「それじゃあ、映画のあいさんは・・・」

『そう。彼が自分を組み替えて演じてたのさ』

「えぇー!?それじゃあの映画・・・監督も撮影も主演女優も・・・全部君一人ってこと?」

「どういうこと川相くん?」

 

聞かれた川相も、小さな声で間をもたせられるかどうかすらも怪しい台詞を吐くので精一杯だ。

 

「引っ込み思案にも程があるよ!!そんなの、あいさん本人に頼めばよかったじゃん!」

 

「まあ取りあえず、後は照井の仕事だ」

 

『そうだね。メモリに心を奪われた人間には、もうなにを言っても無駄だ』

 

Wは川相を立たせた。

 

というよりも、フィリップさんは、どこか寂しそうだった。

 

だからこそ、かもしれない。

 

「待って、私に考えがあるの。だから警察につれていくのは待って!」

 

亜樹子所長が提案したのは。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

46話

――カンッ――

 

撮影が始まり、カメラには何だかクワガタ虫を模した鎧と大剣を纏うあいと、その前に立つ二人の存在がいた。

 

「どこへ行く?ジェシカ」

「どこ行くんすか?」

 

カカシ役の照井さんと天使役の真倉刑事。

 

「彼方へ!!私の道を、切りぃ拓く!!」

 

やたらと大剣を振り回し、最後に要らぬポーズをとるジェシカ。

 

「・・・カット・・・」

「監督は腹から声出すぅー!!」

 

声が小さいことを亜樹子に指摘された川相さんだが、

 

「・・・カット・・・!」

 

頑張ってもこの程度だった。

 

「あのさ、なんで俺こーんなことしてんの!?」

 

ハープを鳴らしながら真倉刑事が問う。

 

「は~い。ボクも暇そうにみえて、暇じゃ、ないんだけどな~」

「おい亜樹子。これはどういうつもり――――」

 

「亜樹子プロデューサー!もしくは、可愛らしく亜樹Pと呼ぶように♪」

 

亜樹Pはスリッパで翔太朗とウォッチャマンを叩き、本格的な意思表示をする。

 

「「「「「「「「「亜樹P???」」」」」」」」」

 

それを聞いた俺達は呆れ果てた。

 

「これは、映画作りを通して、透君の社会復帰を促すの。彼センスは良いと思うんだよねぇ。だから皆で未完の映画を完成させて、ガイアメモリの魔力に打ち勝つ心をつくって上げるの」

 

そう言った所長の視線は自然とフィリップさんに向けられた。

 

今回の映画作りの目的は確かにあの人の社会復帰も入れているが、若菜さんの一件で落ち込むフィリップさんの再起を促す為でもある。

 

口には出していないが、ここまで積極的な動きを見れば、自然と頷ける。、

 

「この映画でか?」

 

照井さんの持つ台本には”聖戦士・ジェシカ 改訂版”と書かれていた。

 

「聖戦士・ジェシカ?」

「ヒロイックファンタジーの決定版よ。無駄なシーンは全部省いて、理想の映画尺、90分に纏め直したわ」

 

すると川相さんも筆談にて。

 

――問題ない。内容はとても良くなっている――

 

「でしょでしょ!あいちゃん本人にも出てもらって!・・・アクション!」

 

向こう側から迷彩服着てショットガンを構えるあい。

 

「ギャグ!」

 

と思ったら今度は一昔のおっさんコスプレ。

 

「お色気も二倍増しよ」

 

次は胸元が大きく開いた白のワンピース姿。

 

「待って!!」

 

そこへ亜樹Pが待ったをかける。

 

「実はこの映画撮影、”ラブラブMOVIE大作戦”でもあるのよ!!」

 

「らぶらぶ?」

 

翔太朗が台本を落した。

 

「「「「「「「「「ラブラブMOVIE大作戦???」」」」」」」」」

 

「今はロクに人と話せない透君だけど、憧れのあいちゃんと一緒に映画を作れば・・・!」

 

その言葉と共に所長の恋愛関係の話を行っている。

 

まさか、そちらが本命なのか。

 

「そんなの上手くいく訳ないだろ。

そうだろ、ヒサメ」

 

「えっ、そっそうだねぇ」

 

それと共にヒサメはなぜか目を泳がす。

 

まさか、本気で上手くいくと考えているのか?

 

「ヒサメちゃんのプランもちゃんと考えているからね」

「しょ所長っ!何を言っているんですか!?」

 

何やら、二人が騒がしいが、とりあえずは今は映画の撮影を優先するべき。

 

「まぁ、それにしても」

 

俺はゆっくりと台本を読み返す。

 

「雰囲気、一気に変わってしまったな。

前のも結構好きだったのに」

 

「っ!」

 

その言葉に、川相さんが反応した。

 

もしかしたら、川相さんがやりたかった映画は。

 

そうして、考えている間にも、事態は大きく変わった。

 

映画の進行事態は、特に問題なかった。

 

しかし、その最中で現れたのは、若菜さん。

 

いや、若菜さんが変身したクレイドール・ドーパントだった。

 

「若菜さん、いや姉さん。

無事だったんですね」

 

 

「えぇ、問題ないわ。

むしろ、ライト、あなたがこちらに戻ってきなさい」

 

「っやはり」

 

その若菜さんの言葉に、フィリップさんは言葉を詰まらせる。

 

「力尽くでも、彼女を止めるぞ」

 

「あぁ」

 

それと共に左さんの言葉を聞いて、フィリップさんはそのままWへと変身する。

 

Wへと変身した2人と若菜さんとの戦い。

 

それは圧倒的に翔太郎さん達の優勢のまま進んでいた。

 

メモリのランクもそうだが、エクストリームに達した2人を相手に、若菜さんが勝てるはずはなかった。

 

「姉さん。

すぐにでも、解放する」

 

同時にフィリップさんも、メモリブレイクを行おうとした時だった。

 

「アッハハハハ!・・・ハハハ!」

 

崖の上で笑う冴子。

 

「園崎冴子!」

 

「何時の間に?」

 

そこには、まさか幹部がもう1人いたとは。

 

だが、その雰囲気は助けに来たという感じではなかった。

 

「無様ね。貴方をいたぶりに来たのに拍子抜け。そんな力でよく自分自身がミュージアムだなってぬかしたものだわ」

 

『なんですって・・・!』

 

そう、若菜さんを馬鹿にするように言う。

 

これは一体。

 

「今見せてあげる。姉の意地を」

 

同時に取り出したのは

 

「あれは、ヒサメの持っていたウェザーメモリ」

 

「それに、なんだ、あのドライバーは!」

 

「井坂先生が残してくれた力。

それを、今、見せてあげるわ」

 

『ウェザー』

 

同時に彼女はその腰にドライバーを巻くと共に、そのままウェザーメモリをドライバーに入れる。

 

そうする事によって、その姿をウェザー・ドーパントへと姿を変える。

 

外見上は大きな変化はない。

 

だが、なぜだ。

 

背筋を凍るような感覚は。

 

「まずは、これね」

 

『ガス』

 

それは、ガイアメモリだった。

 

既にウェザーメモリを使っているはずなのに、なぜ?

 

そう疑問に思っている間にも、ウェザー・ドーパントはドライバーのもう片方にメモリを入れる。

 

それと共にウェザー・ドーパントの左腕は大きく変化し、まるでガスを思わせる煙だった。

 

煙はそのまま翔太郎さん達に向かって、放たれる。

 

その煙の中から、無数の雷が、縦横無尽に襲い掛かる。

 

「これはっ一体っ」

 

「これまでのウェザーとは違う」

 

「翔太郎さん!」

 

俺はすぐにナスカメモリを取りだし、そのままロストドライバーに装填する。

 

『ナスカ』「変身!」

 

俺はすぐに仮面ライダーに変身すると共に、その手に持ったナスカブレードを一直線に構える。

 

「ふっ」『ビートル』

 

だが、すぐにウェザー・ドーパントは新たなメモリをそのままドライバーに入れる。

 

それによって、その腕はカブトムシを思わせる一本の剣となり、攻撃を受け止める。

 

「これはっ」

 

「これが新型ドライバーの力よ。

別のメモリを空きスロットに追加挿入することで、短時間に限るが身体を部分的に変化させ別の能力を使用することができる。

あなたと霧彦とは違い、何度でも使えるけどね!」

 

『冴子』

 

それには霧彦は暗い顔をする。

 

同時にその剣に稲妻が走り、俺をそのまま吹き飛ばす。

 

「ぐっ」

 

「これはっやばいっ」

 

ウェザー・ドーパントは、天気に関する能力という事で、それだけでも万能に近い。

 

それに、あの新型ドライバーによって、他のメモリの力と組み合わせる事ができる。

 

それは、間違いなく、これまで戦った、どのドーパントよりも強敵だ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

47話

ウェザー・ドーパントとの戦いは、途中で終わりを迎えた。

 

プロデューサー亜樹子による川相さんの映画作りに、意外な妨害者が現れたが、結局は若菜さんの目的は未だに分からない。

 

そして、それでもあいつはまだ、諦めていなかった。

 

「どうしたんですか、亜樹子所長?」

 

「よくもう一度見る気になったな。そのクッソ長い映画」

 

「それが役立つとは思えんぞ」

 

所長が見ていたのは透の勢作した映画だった。

 

「なにか透君の心の中が掴めると思ったんだけどな・・・。間違いないのは、ジェシカが透君の理想の女性だってこと」

 

「でもあいさんに惚れてるわけじゃねーんだろ?」

 

「うぅーん、わっかんないよ。またジーンが無いとダメだって言い出すし、このままじゃ透君、変われないよ」

 

そう言いながら、悩むように所長は頭を抱える。

 

「そう言えば、影って、結構川合さんと気が合っているように見えたけど」

 

「それは、本当なの!」

 

そう、亜樹子所長は立ち上がった。

 

「あぁ、いや。

俺が分かるのは映画のコンセプトだけですから。

あとは、たぶん、人と話すのが苦手だから、頼みづらいのもあると思います」

 

「人に頼るのが、そんなに難しいの?」

 

「人によっては、そうかもしれないです。

俺も、恥ずかしいというか、失敗されて怒られたらと思ったら、言葉が上手く出ないので」

 

「そっか。

だけど、私は諦めるつもりはない!!

さぁ、再開よ!!」

 

それと共に、再び映画作りが再開された。

 

だが、その最中は、多くのトラブルがあった。

 

未だに大きな声を出す事ができない川合さん。

 

そして

 

「絶望が俺のゴールだ」

 

その一言と共に、逃げ出した照井さん。

 

普段ならば、考えられない程に素早く逃げ出した。

 

そうした、数々の出来事が、この映画撮影で起きた。

 

「これで、心が変える事ができるのか」

 

「フィリップさんは、不安なんですか?」

 

そう言いながら、フィリップさんに俺は質問する。

 

「・・・メモリの毒素は恐ろしい。

姉さん達のあの姿を見たら、僕は」

 

「確かにそうかもしれません。

けど、俺はそれとは別に、もしかしたらという可能性を信じたいです」

 

「甘い考えだよ、それは」

 

「だとしても、信じてみたいんです。

信じたいんです。

川合さんが、弓岡さんと同じだって、信じたいから」

 

そう行った、フィリップさんもまた、同じ事をかが得たのか、少し俯いていた。

 

そんな時、映画の撮影中だが、所長達が姿を消した事に気づく。

 

それに疑問に思っていると

 

「ハアハアハア・・・!!」

 

川相さんが荒息しながら駆けてくる。

 

「川相くん!」

 

「透・・・亜樹Pはどうした?」

 

そう聞かれて筆記をしようにも、そのスケッチブックがなかった。

 

それに戸惑いを隠せない様子。

 

「ひょっとして所長になにかあったのか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「黙ってる場合じゃないでしょ!ハッキリ言いなさいよ。川相君!川相君!」

 

それは、これまで人と話すのが苦手だった川相さんにとっては、難しかった。

 

だが

 

「ダァァァ!!好い加減にしてよ虹村さん!イメージが違うんだよ!君は、君は元気良すぎなんだよ!ジェシカはもっとこう、ダークなイメージなんだよ」

 

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」

 

川相さんの豹変ぶりに皆は黙り込む。

 

「・・・・・・言えた。やっと本人に」

 

「そんなことなの?私に言いたかったことって?」

 

「うん、言えなかった。勝手に姿使って、ゴメン」

 

川相さんは虹村さんに頭を下げた。

 

「川相透が変わった。いや、アキちゃんが変えた?」

 

フィリップも驚きを禁じえない。

 

「そうだ、亜樹Pが危ないんだ!」

 

「えっ?!」

 

その言葉と共に、俺達は驚きを隠せなかった。

 

「とりあえず、急いで助けに行くぞ!」

 

その翔太郎さんの言葉をきっかけに、俺達もまたすぐに向かった。

 

そこで目にしたのは、若菜さんだった。

 

しかし、その様子は、これまでよりも異質だった。

 

「若菜さん」

 

「そう言えば、亜樹子さんはっいた!」

 

その言葉と共に、箱に突っ込んでいる状態の亜樹子所長を見つめる。

 

ヒサメはすぐに亜樹子所長を助け出した。

 

「フィリップ君、大変だよ!若菜姫が、透君になにかさせて、グニュ!ピカーンって!!」

 

すると、緑色の光は収まっていく。

 

「そうか。ジーンの能力を使って、クレイドールに新しい力を加えたのか」

 

『その通り。今、完全に馴染んだわ』

 

「だったら、すぐに止めるぜ。

行くぜ、皆」

 

「ヒサメ、始めから、ズーで行くぞ!」

 

「分かった!」

 

同時に俺達5人は同時に仮面ライダーへと変身した。

 

見た目に大きな変化が見られないクレイドール・ドーパント。

 

だが、その戦闘能力は大きく、強くなっている。

 

「確かに強くなってる」

 

『押し切るしかない』

 

「よし、いくぞ」

 

『エクストリーム』

 

同時に、翔太郎さん達はすぐにエクストリームへと変身する。

 

「今度こそメモリブレイクだ」

 

『プリズム・MAXIMUM DRIVE』

 

鳴り響く音声と共に、翔太郎さん達はその手に持った剣を真っ直ぐと、クレイドール・ドーパントに放つ。

 

これまで数々の再生能力を見せたクレイドール・ドーパントだが、エクストリームによる解析で、それも既に無意味なはず。

 

放たれた一撃は交わり、X字型となって直撃し、それでクレイドール・ドーパントは粉々になった。

 

しかし。

 

「メモリが出ないだって?」

 

驚きを隠せないフィリップさん。

 

「ふふっ、残念ね、ライト。

私、変わったの。

お姉様もそこで見ていなさい」

 

同時にクレイドール・ドーパントの身体が真っ二つに割れる。

 

それは、まるで翔太郎さんのエクストリームと似た現象。

 

「エクストリーム!!」

 

そして、クレイドールの表面はドンドンドンドン剥がれていき、遂には一気にその姿を劇的に変化させて、3・4mを楽勝で越えた体躯を誇った上、不気味な女の顔と遮光土器のような下半身をした姿になった。

 

「まさか、クレイドールエクストリームっ」

 

それに俺達が驚いている間にも、クレイドール・ドーパントエクストリームが攻撃を仕掛けてくる。

 

姿が大きく変わると共に、自由自在に伸びる触手と破壊光弾。

 

どれもこれも以前とは比べ物にならないものになっている。

 

だが、それよりも最後の一撃を行う為に、巨大な光を集めていた。

 

「このままではっ!

照井竜!亜樹子ちゃんと川相の2人をここに!

影とヒサメは一緒に!」

 

「了解しました!」

 

『トータス!MAXIMUMDRIVE!』

 

それと共に、照井さんはそのまま亜樹子所長と川合さんを連れて、俺達の元に。

 

そして、俺はそのままトータスアーマーを身に纏うと同時に翔太郎さん達のMAXIMUMDRIVEを会わせる。

 

俺達によるツインマキシマムだが、これまでにない完全防御のマキシマムドライブで耐える。

 

「ぐっぐぅぅ!!」

 

その威力を完全に殺す事はできなかった。

 

それでも、2人を守る事には成功した。

 

同時にその光景に満足したようにクレイドール・ドーパントエクストリームはその姿を消した。

 

「防御力重視にしても、これとは」

 

「相当、やばいですよ」

 

これまで以上にやばい強敵に俺達は戦慄を覚えていた。

 

しかし、それでも生き残る事ができ、俺達はほっと息を吐く。

 

同時に川合さんがこちらを見る。

 

その手にはジーンメモリだった。

 

そして、それを俺達に向けていた。

 

「川合さん」

 

「もう要らない。

仲間がいるし」

 

それを聞いて、俺は思わず笑みを浮かべる。

 

「あぁ、そうっすね」

 

その言葉と共にジーンメモリを完全に砕いた。

 

結局、今回の戦いで俺達は新たに現れたウェザー・ドーパントにも、クレイドール・ドーパントエクストリームにも勝てなかった。

 

しかし、川合さんを。

 

メモリから克服させる事ができた。

 

それは、きっと、何よりも俺達の勝利だろう。

 

それが、フィリップさんの笑みが意味をしていたから。




「ここ風都に侵入した凶悪なグループが飛行機を襲撃。
その際、AからZまでの次世代メモリが風都に散らばったわ」

大晦日、特別編。

「次世代メモリ」

「このメモリには、これまでのガイアメモリでは発言する事ができなかった数々のメモリも試験的に運用されているわ。
もしも、全てが奴らの手に渡れば、世界は終わりよ」

未知のT2ガイアメモリによって、風都は、世界は滅亡の危機に瀕した。

「さぁ、来るが良い!
異なる世界の、同士よ!!」

未曾有の危機に、影は、ヒサメは、翔太郎は、フィリップは。

風都の仮面ライダーが立ち上がる時、奇跡が起きる。

「どうやら、逆転の手は、俺の手元にあるようだぜ」

仮面ライダーW&ナスカ FOREVER AtoZ 運命のガイアメモリwithハーメルン・ノベルティック・ライダーズ

2022年12月26日から公開予定


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

48話

刃野幹夫と俺の関係は意外にも、結構長い。

 

その理由としては、俺が怪盗として、活動を始めた頃に遡る。

 

その日の初めてのメモリを手に入れ、未だに怪盗としての技術はあまりなかった頃、偶然だが、刃野さんに見つかってしまった。

 

容姿が仮面ライダーに似ていたが、まるで泥棒のように見える行動からして、俺をすぐに逮捕するように動いた。

 

メモリとの関係というよりも、彼自身は善良な警察官という事で、俺は特に気にせずに逃げていた。

 

しかし、以外にもこの人物はかなりしつこかった。

 

というよりも、あの人は見た目とは裏腹に、かなりのやり手であり、建物の間に逃げる俺に対して、結構しつこく追ってきた。

 

しかし、その反面、かなりの騙されやすく、まるでコメディでもやるようによく罠に引っかかっている。

 

その様子を見ていた霧彦からはよく「トムとジェリー」や「ルパン三世と銭形刑事」という表現をされていた。

 

今は、こうして鳴海探偵事務所で働いており、怪盗行為は少なくなっていたが、要注意人物として、俺の中ではピックアップされていた。

 

されていたのだが。

 

「頼むよ、俺の無実を証明してくれよ!」

 

まさか、彼自身が逮捕されるとは思わなかった。

 

事件の内容からしても、雨の夜、突然抱きついてきた謎の女に、宝石の窃盗犯に仕立て上げられたらしい。

 

その真犯人を見つける為に、俺達は行動する事になった。

 

「それにしても、影は意外と積極的なんだな」

 

「ある意味、俺が道を外さなかったのは、犯人に対して殺意を向ける前に、あの人が来てくれたおかげかもしれませんからね。

あの人、騙されやすいけど、どこか不思議と悪い気はしなかった」

 

「それが、あの人のおかげだ。

ある意味、お前が道を外さなかったのは、刃さんのおかげかもしれないな」

 

「かもしれませんね」

 

そういう意味では、怪盗時代の借りを返す意味でも、この事件を解決しないといけない。

 

そう話をしていた時だった。

 

「メリークリスマース!!」

 

「うわ!?」

 

サンタちゃんの登場に俺は驚きの声を出してしまった。

 

「おぉサンタちゃん。例の噂について、なにかわかったか?」

 

「うん。襲われた七人の女性は全員モデル。しかも同じクラブのメンバー。ただの偶然とは思えない思えなーい!」

 

「確かにな。んで、そのクラブの名前は?」

 

サンタはプラカードをだした。

 

「BLUE TOPAZ」

 

「よし、行くぜ皆」

 

翔太朗さんは仕切りながらそこへ向った。

 

BLUE TOPAZ 。

 

そこには選ばれた美男美女が次々と足を運んでいた。

 

そこで、裏でもしかしたら目的の女と繋がっている可能性がある為、正面は翔太郎さん達が、俺達は裏から密かに侵入する事にした。

 

クラブの上から眺めていると、その噂通り、多くの人が踊っており、その光景はある意味、俺には苦手意識があった。

 

「影って、こういう所は苦手なんだよね」

 

「うるせぇ、こういう所は嫌なんだよたく」

 

そう俺が言っている間にも海上で変化が起きた。

 

見れば、目的の人物だと思われる女性が亜樹子所長に対して、2・3発ほど食らわせ、そのまま踏みつけた。

 

この状況には他の客も騒ぎ出す。

 

女は亜樹子に、自分がしているダイヤの指輪を見せつけこういった。

 

「ダイヤの価値ってわかる?」

 

「えーと……値段?」

 

亜希子所長は恐る恐る言うが、女は

 

「美しく、そして傷つかない。この私みたいにね」

 

その言葉と共に亜樹子所長から離れる。

 

「…私は美しい物が好き。皆ダイヤになって、この私を飾るといい」

 

階段の中盤にまで登ると、そこで店中の明かりが十数秒ほど消えた。

 

そして、一つのスポットライトだけがいち早く回復する。

 

しかし、その光が照らし出したのは…。

 

「「「「「「キャアアアアアア!!!!」」」」」」

 

女性達は騒ぎ出す。

 

照らされたのは、全身が宝石で構築されたドーパントなのだから。

 

「ドーパント!」

『ッ!』

 

ドーパントは右手からガスのようなものを放出し、女性達に浴びせた。

 

翔太朗さん達が回避している間に、ドーパントは店中の人間の殆どをダイヤモンドに変えていく。

 

だが、その光景を見て、俺達は驚きを隠せなかった。

 

「どういう事なんだ」

 

それは騒ぎの中で、天井からバットサングラスで見ていたからこそ、分かった事実。

 

あの女性がドーパントに変身したと思われた直前に、別の場所からドーパントが現れた。

 

同時に、あの女性はすぐにその場から離れた。

 

この事から分かるが、刃野さんに冤罪をかけたのは間違いなくあの女性である。

 

しかし、その女性もまたあのドーパントに操られている可能性がある。

 

俺はすぐに飛びだそうとしたが、稲妻が襲い掛かる。

 

「なっ」

 

見れば、そこには逆立った髪のような突起がある頭を持ち、背中には昆虫の上翅のようなものがある存在がいた。

 

天井から落ちる中で、俺はすぐにナスカメモリを取りだし、そのまま構える。

 

「変身!」

 

同時に俺は仮面ライダーナスカへと変身すると同時に、落ちてくるヒサメを受け止める。

 

「きゃっ!」

 

「重っ!」

 

「ちょっ影っどういう事!」

 

俺が思わず呟いてしまった一言が聞こえたのか、ヒサメは叫んでしまう。

 

「仕方ないだろ!

落ちてきたのを受け止めると、そうなるんだから!」

 

「だからって、女の子相手に、それはどうなの!」

 

「あぁ、お前ら!

こんな状況で喧嘩するな!!」

 

既にWに変身していた翔太郎さんからの言葉に俺達はすぐに喧嘩を止め、そのまま正面にいる敵を見る。

 

「あのドーパント、見た目からして」

 

『あぁ、ジュエルで間違いないだろう。

そして、あっちのドーパントはっ』

 

同時に、翔太郎さんと背中合わせにしながら、見つめる。

 

先程の姿すら一瞬でしか見えなかった。

 

おそらく、超加速をした状態でも追いつけるかどうか怪しい。

 

「まさか、世界で最も硬いダイヤと人間では追いつけない雷。

この二つのドーパントが一気に来るとは」

 

「まさか、噂の仮面ライダーがこの程度とはね。

それじゃね」

 

「待て、奴らを始末するのが契約のはずだ」

 

「こいつら程度だったら何時でも倒せるでしょ。

悪いけど、私はもう疲れたわ」

 

そうジュエル・ドーパントはそのまま立ち去っていった。

 

「これは、見逃されたと言うべきだな」

 

『あぁ、あのまま戦っていたら、おそらくは勝てないだろう。

奴らに勝つには、対策が必要だ』

 

それと共に、翔太郎さん達も変身を解除する。

 

「そう言えば、翔太郎さん。

上から見て、少し気になる事が」

 

「気になる事?」

 

「あのドーパント、変身する直前に女性と入れ替わっていました。

おそらく、ドーパントと女性は同一人物じゃないと思います」

 

「なんだって?」

 

「それだと、わざわざドーパントのふりをしているという事?

なんで、そんな必要が?」

 

メモリがあるならば、それを自分で使えば良い。

 

なのに、わざわざそんな面倒な真似をするという事は何か訳がある。

 

「これが思った以上に探りが必要だな」

 

翔太郎さんの一言に同意するように、俺もまた呟く。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

49話

ジュエル・ドーパントの事件に関して、調べる為に、俺達はより詳しい状況を知る必要があった。

 

あの時、刃さんを襲った犯人は、おそらく間違いなく、あの時亜樹子さんを襲った人物で間違いないだろう。

 

しかし、その人物とジュエル・ドーパントが同一人物だとは考えにくい。

 

その中での情報が一つ。

 

城島泪。

 

それが、今回のジュエル・ドーパントに関する大きな関わりのある人物である。

 

あの瞬間、ジュエル・ドーパントの現場にいた超人気モデルの上杉誠から、その話を聞いた。

 

どうやら、上杉さん、城島以外にももう1人、智という人物がいたらしい。

 

三人は、親友でした。

 

だが、一ヶ月前、突然智が上杉さんにこう言った。

 

「泪を愛していると」

 

二人はお似合いだと思い、上杉さんは智の気持ちを泪に伝えました。

 

でも泪は智ではなく、上杉を好きだと言いました。

 

彼はこの友情を壊したくなくて、城島さんには

 

「君とは付き合えないよ」

 

そう言った。

 

それが彼女を傷つけ、ジュエル・ドーパントへとなった。

 

それが、彼から聞いた話だった。

 

「だからこそ、怪しい」

 

翔太郎さんとは別行動を取った俺達は、すぐに調べ始めた。

 

それは、一ヶ月前から始まった女性達の行方不明事件。

 

その際に、必ず現れる城島さんの姿。

 

それは、刃さんを襲った同一人物である事が分かり、彼女の出現と共に確かに行方不明が起きていた。

 

だからこそ、そこまで目立った行動をする意味が分からなかった。

 

メモリ犯罪者の多くは、自身がメモリの所有者である事、ドーパントである事を隠す。

 

そうしなければ人間の姿の時に、危機的状況に陥ってしまう。

 

これまでの多くのドーパント達がそれに該当しており、犯行を行う際に正体が知られたら、犯行が行いにくい。

 

だけど、今回の事件では、なぜかその目撃情報が多い。

 

「ヒサメとしては、怪しいのは、誰だと思う?」

 

「やっぱり、3人の中で未だに行方不明になっている武田さんかな?

 

もしかしたら、上杉さんに対して嫉妬で行動したかも」

 

「なるほどね……じゃあ、次は、その辺りを調べてみようか」

 

「そうだな」

 

そんな会話をしながら、俺は考えていた。

 

城島さんの狙いは一体何なのか。

 

なぜ彼女は、こんなにも目立つような行動を取るのか。

 

考えられるとしたら、それは人質を取られた。

 

「・・・上杉さんが人質?いや、それはないか……」

 

上杉さんの行動はむしろ自由だ。

 

命が狙われているとは考えられないし、もし人質なら警戒するはずだ。

 

「むしろ、反対なのか」

 

これらの証言。

 

よく考えれば、その時の上杉さんからしか聞いていない。

 

これまで、目立っていた彼女の行動と共に、俺達はそれを信じていた。

 

それと共に、丁度電話がかかってきた。

 

その連絡先は、翔太郎さんだった。

 

「翔太郎さん」

 

「そっちは調べる事ができたか?」

 

「なんとか。

でも、なんというか、変なんですよね。

あまりにも目立ちすぎているというか」

 

「あぁ、だからこそ、お前達には別の事を調べて欲しい」

 

「別の事ですか?」

 

「あぁ、おそらくだが、彼女の命が危ない」

 

それは、確かな翔太郎さんの直感だろう。

 

「それで、俺達は」

 

「次の動きを読む為に、侵入してくれないか?

俺達で、時間稼ぎをしておく」

 

「探偵なのに、泥棒みたいな真似ですね」

 

「お前達は怪盗だろ」

 

「確かに。

了解しました」

 

同時に俺はそのまま電話を切る。

 

「影、さっきのって」

 

「あぁ、少し盗みに行くぞ。

まぁ、情報をだけどな」

 

その言葉と共に、俺達はある情報を探る為に向かう事にした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

50話

 一隻の豪華客船。

 

 そこにあの男がいた。

 

「良い風ですね。ご旅行ですか?」

 

「探偵さん方……どうしてここに?」

 

 そう、それは上杉さんだった。

 

「貴方にどうしても言いたいことがあって、ここに参りました」

 

 俺がそう答え、そのまま後ろに立つ。

 

「あなたが、ドーパントだと言うことをね」

 

「ちょっと待って! ドーパントは事故で死んじゃったあの悪女じゃ?」

 

「違いますよ亜樹子さん。真犯人は、上杉誠です」

 

「そんなの有り得ない! だってこの眼でみたじゃない.あの女はドーパントに変身する瞬間を!」

 

「トリックさ」

 

「それも極々簡単な」

 

 亜樹子所長がが騒いでいると、フィリップさんの声がした。

 

「フィリップ君も乗ってたの?」

 

「あぁ、僕達が目撃したのは鏡に映った城島泪」

 

「鏡……?」

 

「正確には、ダイヤの微粒子によって形成されたミラー状のシールド。城島泪の変身の瞬間、本物の彼女は何所かに死角に立ち、変身ポーズをとった」

 

 俺達が別行動している間の行動を説明するように言う。

 

「待ってくれ。何で彼女がそんなことを?」

 

「脅迫していたのでしょう? 姑息な手段を使って」

 

「どうやって?」

 

「それは本人に聞いたほうが早いからな」

 

 同時に俺達はそのまま、目を向ける。

 

「えぇぇ!?」

 

 城島泪がいた。

 

 それには亜樹子所長も驚きで声を出していた。

 

「生きてたんだ」

 

 上杉は無関心じみた態度をとる。

 

「何故約束を破ったの? 全部言うとおりにしたでしょ! 貴方が女性を宝石に変える度、わざと現場で目撃されたし、悪女だって演じてきた!」

 

「あれ、演技だったっていうの?」

 

 なにも知らない亜樹子は驚かされるばかりだ。

 

「そう。泪の印象が悪くなればなるほど、対照的に彼女を救いたいと主張する上杉さんの誠実さが際立ちます。全部彼が仕組んだことだったんですよ」

 

「あぁーあーあーあーあーあーあー! 全部バレちまてるのか。だったらもう…………」

 

 上杉はギプスを取り外し、首筋にボイスチェンジャーをあてて、

 

『芝居する必要もねぇなぁ』

 

 エコーのかかった泪さんの声で話した。

 

 ドーパントになった時はこの手段を用いていたのだ。

 

「上杉……返してよ、智を返して!! こいつが宝石に変えたのよ。私が智のこと好きだって知ったから……! 親友なのに……! 私達の幸せ、喜んでくれると思ったのに……」

 

 皆の視線は上杉がしているダイヤの指輪にむく。

 

「じゃあ、あの指輪が……!」

 

「武田智さん」

 

 亜樹子所長は驚き、ヒサメは軽蔑の眼差しで上杉を見る。

 

「泪…………君はさぁ、僕のこと好きだったんだろ? だから僕が子供たちの風車壊した時、庇ってくれたんだろ?」

 

「仲間として好きだった。でも、次第にあんたが怖くなった。好きなもの全部壊したくなる、あんたのその性格が!」

 

「僕はね、完璧主義者なんだよ。愛せば愛すだけ、その不完全さが目に付く。それが次第に我慢できなくなる、全部消してしまいたくなる。お前のこともそうさ、泪」

 

 上杉はどんどん自分の本性を曝け出す。

 

「トンデモねぇ奴だな。そろそろ観念しな」

 

「僕を捕まえるの? ……だったら、これもう要らねーなぁ」

 

 上杉は指輪を外す。

 

「上杉、お願い! 智を返して!!」

 

「……断る」

 

 上杉は指輪を投げ捨てようとするが。

 

「まぁ、完璧主義を気取っているお前には、それが偽物かどうかも分からないけどな」

 

「なに」

 

 それと共に、俺は既に手元にある宝石を見せつける。

 

「それはっ、まさかっ」

 

 驚きを隠せないまま、上杉はすぐに宝石を見る。

 

「偽物だとっ」

 

「お前の行動は最初から怪しかったからな。

 

 お前の家に潜入して、この豪華客船のチケットの予約を見つける事ができた。

 

 そして、お前が寝ている間に、これを盗らせてもらった」

 

「上杉。

 

 これで、2度目だな。

 

 俺からも、影からも殺しを阻止されたのは」

 

 そう、爆弾が爆発したとき、泪を助け出したのも照井さんだったのだ。

 

 翔太郎さん達もまた、上杉の陰謀の全てを承知し、準備を怠らなかった。

 

「左たちに証人となってもらい、彼女の死で事件を幕引きとしたかったんだろうが、残念だったな」

 

「何時から気付いてた?」

 

「きっかけは泪さんの言葉だった。

 

 なにを騙しているのか? ……俺は風見埠頭で確信した。お前が彼女を殺そうとしたことでな」

 

 そう言うと、呆れたようにそのまま言葉を吐き出す。

 

「あーあ。他の街に行って、また女たちを思う存分ダイヤに変えるつもりだったのに」

 

 上杉はジュエルメモリを起動させる。

 

『JWELE』

 

 左手に挿し、ジュエル・ドーパントとなる。

 

『皆まとめて消えてもらうしかないね。

 

 おい、手伝え!』

 

『LIGHTNING』

 

 聞こえた声、同時にこちらに向かって、襲い掛かろうとした光。

 

 それに対して、俺はすぐにナスカメモリを取り出す。

 

「こいつは俺に任せてください!」

 

「頼んだぜ!」

 

 仮面ライダーへと変身した俺はその手にナスカブレードを手に取ると同時に走りながら、目の前にいるライトニング・ドーパントから距離を取る。

 

 しかし、ライトニング・ドーパントの速さは、俺が想定していたよりも早く、接近する。

 

「ぐっ」

 

 なんとか、ライトニング・ドーパントからの攻撃を受け止めるように、俺はナスカブレードでその攻撃を受け止める。

 

 しかし、ナスカブレード越しでも分かる加速によってできた拳の威力は俺の想像以上だった。

 

「だったらっ」

 

 その光速移動に対抗する為に瞬時に超加速を発動する。

 

 先程よりも早く動く事ができるようになり、そのまま後ろに下がる。

 

 しかし、それでも未だにライトニング・ドーパントの速さには追いつけない。

 

「だけどな」

 

 俺はそのままライトニング・ドーパントにとある場所へと向かう為に走る。

 

 こちらの動きが読まれないように、不規則な動きをする。

 

 その間も、襲い掛かるライトニング・ドーパントの攻撃をナスカブレードで受け流していく。

 

 ナスカブレードにはライトニング・ドーパントの電撃が伝わり、俺の腕に痺れが来る。

 

 だけど、ここで怯むわけにはいかない。

 

「ここだっ!」

 

 そして、その背に船からすぐに海が飛び出せそうな場所まで来た。

 

「どうやら、追い詰める事ができたようだなぁ」

 

 そう、ライトニング・ドーパントが俺に向けて言う。

 

 そんなライトニング・ドーパントに対して、俺は不敵に笑みを浮かべる。

 

「そうだな……だが、お前はここまでだ」

 

「あ?」

 

 同時に俺は既に、マフラーをライトニング・ドーパントで拘束していた。

 

 そして、そのまま俺は海へと投げる。

 

「何を」

 

「ここでだよ!」

 

 同時に俺は瞬時にナスカズーへと変身し、そのままライトニング・ドーパントを海中へと叩き込む。

 

「なにをっ」

 

 同時にライトニング・ドーパントは自分の変化に気づく。

 

 その身体に蓄積されていた電力が強制的に四方八方へと流れ出している。

 

「なっ」

 

「電気は海水に通電しやすいんだよ」

 

 俺はナスカブレードを構えて、そのまま一気に駆け出す。

 

 それと同時に水中の中で放電が起こり、ライトニング・ドーパントの全身を襲う。

 

「くそぉおおお!!」

 

 だが、ライトニング・ドーパントは未だに残っている電力を使い、襲い掛かろうとする。

 

 だが

 

『ペンギン』

 

 その音声と共に、俺はその身にペンギン・アーマーを身に纏う。

 

 先程までのライトニング・ドーパントと比べても、その雷による攻撃は遅く、避ける事は容易かった。

 

 それに加えて、今の俺はペンギン・アーマーを身に纏っている為、水中での動きはこちらが一歩上だ。

 

 その為、攻撃を避ける事も反撃する事も難しくはなかった。

 

「なっ!?」

 

 俺の予想外な行動に驚いたのか、ライトニング・ドーパントは戸惑っている。

 

 そんな隙だらけの相手に、俺が容赦するはずもなく、そのままズーメモリに手を伸ばす。

 

『ペンギン! MAXIMUMDRIVE!』

 

 同時に、俺の身体を回転する。

 

 それは巨大な渦巻きを作り出す。

 

 そして、そのまま真っ直ぐとライトニング・ドーパントに向かって、その脚を向ける。

 

「はあああぁぁ!!!」

 

「ぐっ!!」

 

 そのままライトニング・ドーパントを海上へと吹き飛ばすように、ライダーキックを喰らわせる。

 

 それにより、ライトニング・ドーパントは勢いよく水上へと投げ出される。

 

 それと共に、メモリは完全にブレイクされる。

 

 そうして、ライトニング・ドーパントの変身者である知的な女性がいた。

 

 




『今回の事件は無事に解決する事ができた。
ジュエル・ドーパントこと上杉は翔太郎さんによって倒された。
ライトニング・ドーパントは、どうやら上杉さんのマネージャーだったらしい。
上杉さんに利用され、奴隷のような扱いを受けていたらしい。
あの時の契約も、脅迫された写真を一つ処分する約束らしい。
今回の事件で、彼女も逮捕されてしまったが、それでもあのまま上杉の奴隷として過ごすよりも良かったかもしれない』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

51話

 その日、俺達は照井さんのお土産である饅頭の味を堪能していた。

 

 夏限定という事で、物珍しさもあったが、その風味を堪能していた。

 

 いや、どちらかと言うとヒサメが凄い量の饅頭を食べているのだが、それを気にしている場合じゃないか。

 

 だが、そんな俺達の静かなおやつを打ち破るように、入って来たのは2人の女性だった。

 

 入って来た1人はそのままこの事務所の人だと思ったのか、照井さんに近づくと。

 

「お願いです! みゆを! みゆを助けて下さい!」

 

「いや、この事務所の責任者は俺ですけど」

 

 そう翔太郎さんが前に出てくるが、そんな翔太郎さんを突き飛ばし、代わりに亜樹子所長が前に出る。

 

「みゆさんというのは」

 

「私の娘なんですけど。

 

 私のただ一つの宝物なんですけど

 

 そう、心配そうにしていると、彼女の後ろにいるご老人が泣いている。

 

 それに気づいた翔太郎さんはそのままご老人に近づいた。

 

「おぉっとお婆ちゃん。

 

 お孫さんが心配なんですね」

 

 そう言ったが。

 

「私、お婆ちゃんじゃないもんっ!」

 

 そう、翔太郎さんを突き飛ばしたご老人はそのまま依頼人に抱きついた。

 

「ママ、帰ろうよ」

 

 そう、ご老人はまるで子供が親に甘えるように抱き締める。

 

 それに対して、彼女は拒否する事なく抱き締めた。

 

「ママ?」

 

 そうフィリップさんも、その言葉に驚きを隠せなかった。

 

「娘のみゆです」

 

 そう、そのご老人こそ、助けて欲しいと言っていた娘のみゆちゃんなのか。

 

 それには、事務所にいる全員が驚きの声しか出せなかった。

 

「みゆは今年で10歳です。

 

 それが、たった一晩でお婆ちゃんに」

 

 それは、俺達は驚きを隠せなかった。

 

 これまで、多くのメモリの事件に関わってきたが、まさかここまで人間の身体を変える事ができるメモリがあるなんて。

 

『そんな、まさか。

 

 これ程の能力があるメモリなど』

 

 すると、霧彦は何か驚いた様子で見つめていた。

 

 その様子を見た翔太郎さん達も情報があると睨み、俺とフィリップさんはそのまま離れた。

 

 この場にいる依頼人親子の対応を任せ、すぐに他に人が来ない場所へと来る。

 

「何か、心当たりがあるのか、霧彦」

 

『心当たりと言ったら良いのか分からないが、人体をここまで影響を持つメモリは私は知らない。

 

 だが』

 

「だが?」

 

『ここまで影響のあるメモリと似たメモリは知っている』

 

「それは一体」

 

『テラー。

 

 ミュージアムのボスである園咲琉兵衛が持つメモリだ』

 

「ミュージアムのボスと同じメモリっ」

 

 それには、俺もフィリップさんも驚きを隠せなかった。

 

「という事は、まさか組織に関係して」

 

『それはない。

 

 メモリのデータを得る為とはいえ、そこまで強力なメモリを商品にするのは考えられない。

 

 ましてやミュージアムに所属していたとして、なぜわざわざ子供を狙うような奴に』

 

 そう、霧彦は未だに泣いているゆのちゃんに心配そうに見る。

 

「とにかく、この現象が起こせるメモリに関係しているのは間違いない」

 

 それと共に、丁度、話が終わった翔太郎さんがこちらに来る。

 

「フィリップ、何か分かったか?」

 

「僅かな情報だけだ。

 

 霧彦も、商品としての心当たりはないそうだ」

 

「どういう事だ。

 

 組織が関わっていない可能性があるという事なのか? 

 

 とにかく、探りを入れないといけない。

 

 影、一緒に来れるか」

 

 そう翔太郎さんは俺に尋ねてくる。

 

「勿論です」

 

 同時に俺もまた頷き、そして事務所を出た。

 

 俺達が向かった先は、馴染みのある情報屋であるウォッチマンの所だ。

 

「たぶん、それは老けさせ屋だね」

 

「老けさせ屋?」

 

 それに俺と翔太郎さんは首を傾げる。

 

「巷の噂じゃ、老けさせ屋って言う占い師に恨んでいる相手の名前を言うと、翌日には老けさせるらしいよ」

 

 その言葉と共に見せた画面には、若いホストを思わせる格好をしたご老人だった。

 

 おそらくは、老けさせ屋によって、老けさせられた被害者だろ。

 

「それで、その老けさせ屋はどこに行けば会えるんだ」

 

「それは、分からない」

 

「分からないのか」

 

 そう、俺達が肩を落とす。

 

「だけど、見分ける方法はある」

 

「おぉ」

 

 ウォッチマンの一言に俺達はそのまま頷く。

 

「老人は海をなんて言う? らまる」

 

 ウォッチマンはそのまま合い言葉を高々に言う。

 

「「らまる?」」

 

 それに対して、俺と翔太郎さんは首を傾げながら言う。

 

「とりあえず、これで探すしかないな。

 

 影、ここからは別々で探していくぞ。

 

 風都の占い師を片っ端から探していくぞ」

 

 それと共に翔太郎さんはバイクに乗り込む。

 

「分かりました」

 

 俺はそれに答えて、その場を離れた。

 

 それからしばらく経った後、俺は一つの占い店を見つけた。

 

 看板には「占い館・フォーチュン」と書かれている。

 

「ここかな」

 

 そう思いつつ、中に入るとそこはいかにも占いをしている部屋といった感じの場所であった。

 

 しかし、そこには誰もおらず、机の上に水晶玉が置かれていた。

 

「あれ、間違えたか?」

 

 そう思っていると背後にある扉が開く音が聞こえてきた。

 

「あら、いらっしゃいましたわね」

 

「あなたは……」

 

 そこに現れたのは白髪の女性であり、どこかのお嬢様のような雰囲気を持つ女性だった。

 

「申し遅れました。私の名前は桐原麗子と言います」

 

「えっと、どうしてここに来たんですか?」

 

 その問い掛けに対して彼女は微笑みを浮かべる。

 

 とりあえず、あの合い言葉で聞いてみようか。

 

「あの老人は海をなんて言う?」

 

 そう、俺はゆっくりと問いかける。

 

「はて、なんでしょうか、それは」

 

 そう、俺の言葉に対して、彼女は不思議そうな表情をする。

 

「いえ、なんでもありません。

 

 それよりも占ってほしい事があるのですけどいいですか?」

 

 俺はすぐに誤魔化すと彼女に質問する。

 

「構いませんよ。

 

 ただ、少しだけ待っていてください」

 

 そう言って、彼女は奥の部屋へと入っていく。

 

 外れだと思い、俺は次の占い屋へと行こうと思った時だった。

 

『リベンジ』

 

「っ!」

 

 鳴り響いたガイアメモリ特有の音が聞こえると同時に、俺は後ろに倒れるようにその腰にロストドライバーを巻き、ナスカメモリを取り出す。

 

「変身っ!」

 

 その音声と共に、俺は仮面ライダーナスカへと変身し、その手にナスカブレードを手に後ろへと下がる。

 

 同時に俺が先程までいた机は潰れており、身体にはシンプルな装甲を身に纏ったドーパントがいた。

 

「まさか、ドーパントとは」

 

「ここまですぐに気づくとは。

 

 さすがにここまで長い間、組織と渡り合った仮面ライダーだけありますね」

 

 その口調から、先程の桐原さんで間違いないだろう。

 

「まさか、組織からの刺客か」

 

「そのナスカメモリはゴールドメモリですからね。

 

 奪取が、我々の仕事ですから」

 

 なるほど、これまで依頼とは関係ない組織からの刺客はナスカメモリを狙って来た訳か。

 

 だとしたら、余計に渡す訳にはいかない。

 

 俺はナスカブレードをゆっくりと構えながら、目の前にいるドーパントの特徴を探るように、そのメモリの能力も分からない。

 

 だからこそ、俺はそのまま真っ直ぐとナスカブレードを真っ直ぐと斬りかかる。

 

 その攻撃に対して、腕で僅かに軌道をずらし、避けたドーパントは拳を放つ。

 

 それを受け止めると、力比べになる前に蹴りを放ち距離を取る。

 

「ぐっ」

 

 俺はそれと共にダメージを感じる。

 

 それは先程のドーパントから防御した拳による物だけではなく、僅かに腕に斬れたような痛み。

 

 そして、腹部にある痛み。

 

 それらは先程まで俺が放った攻撃と同じ箇所だ。

 

「おいおい、まさか」

 

「えぇ、その通りです。

 

 私がが受けたダメージを攻撃してきた者にも与える事ができます」

 

「それって、つまり」

 

 俺が与えたダメージをそのまま俺に返ってくる。

 

 攻撃をすればする程、こちらがダメージを受けてしまい、もしも必殺技で倒す事ができなければ、こっちの負けとなる。

 

 厄介な能力を持っている。

 

 だが、それでもやる事に変わりはない。

 

「行くぞ」

 

「どうぞ、来てください」

 

 そうして、再び攻撃を仕掛ける為に走り出す。

 

 それに対してドーパントもまた同じように向かってくる。

 

 互いの攻撃が届く範囲に入ると。

 

「よっと」

 

「なに?」

 

 俺はその攻撃から避けるように、奥の部屋に行く。

 

 同時にそのまま俺は占い館から逃げる。

 

 さすがにこのまま戦えれば、危険だ。

 

 ならば、情報を揃えてから対応する。

 

 そんな事を考えていると、ドーパントは追いかけてくる様子はなく、ただ立ち尽くしていた。

 

「ふぅー」

 

 とりあえず、逃げ切った事で一息つく。

 

 しかし、これからどうするか。

 

 そう考えていると、亜樹子所長から電話が来た。

 

「はい、もしもし」

 

「あっ影君! 

 

 大変だよ! 

 

 翔太郎君が、お爺ちゃんになっちゃった!!」

 

 電話の先にいるだろう亜樹子所長の慌てた声と共に、聞いた内容。

 

 それは驚きを隠せない内容であった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

52話

そんな考えを余所に探偵事務所を開く音が聞こえる。

 

見ると、それは先日の依頼者の子供であるみゆちゃんだった。

 

「・・・あら、みゆちゃん、そのお婆ちゃんは?」

 

その隣にいた子供はお婆ちゃんが身に纏うにはあまりにも似合わない格好をしていた。

 

だが、それが何を意味するのか、

 

その質問をした亜樹子所長を含めて、全員が嫌な予感がする。

 

「もしかして」

 

「久美ちゃん」

 

それと共に、驚きを隠せなかった。

 

「また、老けさせ屋の仕業」

 

「それじゃ、復讐を頼んだのは」

 

「私のママっ!久美ちゃんのママ、絶対に許さないって言っていたからっ」

 

その言葉と共に、みゆちゃんも久美ちゃんも泣き始めた。

 

それには、俺達は思わず顔を下に向けさせてしまった。

 

ただ、1人だけ違い。

 

「あぁ、二人共、可愛そうにのぉ」

 

彼女達を慰めるように寄り添った。

 

『こんな事がっ母親がする事なのかっ』

 

そして、その中で2人の子供達に届かない事もあり、霧彦は俺達の心の声を代弁した。

 

「ママが今っみゆちゃんのママの所に行ってっ」

 

「それって」

 

それと共に何か嫌な予感と共に向かった。

 

そこは彼女達が所属している児童劇団「風の子」だった。

 

その建物の中では、2人の母親が言い争っている。

 

「貴女が久美をあんなめに遭わせたのね!?」

 

「そうよ。どう?大切な娘を赤ちゃんにされた気分は?」

 

すがりつく光子さんに、まるで別人にような冷たい態度で良枝さんは言い切る。

 

「酷いわっ!!」

 

光子は泣き崩れた。

 

「良枝さん!いくら悔しくても、復讐は・・・」

 

「あんたに何がわかるのよ!?」

 

良枝さんは止めに入った亜樹子所長を突き飛ばす。

 

「先に仕掛けたのはこの女よ!やり返して当然でしょ!!」

 

「う、う、うぅぅ・・・」

 

「ふざけんじゃないわよ!!泣いて済む問題だと思ってんの!?なに泣いてんのよ!」

 

その言い争うに、むしろ俺達が我慢できない中で

 

「好い加減にしろ!!!!」

 

突然聞こえた男の声。

 

その大きすぎる声に、場の空気がシーンとする。

 

見ると、そこには多少ボロボロな格好をした照井さんがいた。

 

「あんた、自分がなにやったかわかってるのか?」

 

「私はただ、娘のために・・・」

 

「違う。あんたはただ自分の憎しみをぶつけただけだ。

見てみろ、子供達を」

 

照井さんが指差す方向には、

 

「・・・・・・ママ」

 

「・・・・・・みゆ」

 

老人となったみゆちゃんの、悲しげな表情。

 

「愚かだ、あんたは」

 

「刑事さん、許してやってください!」

 

そこへ劇団の責任者である大倉さんがでてくる。

 

「親の子供に対する愛は、理屈ではないんです。全ては、愛なんです。だから、許してやってください」

 

大倉さんは深々と頭を下げる。

 

それを見て自分の過ちに気付いた良枝さんと光子さんは、半泣き状態の我が子を必死になって抱き締めた。

 

「愛」

 

その言葉に照井さんは何かを思ったのか、強く俯く。

 

『・・・影、リベンジ・ドーパントはおそらくは私達を狙ってくる。

ならば、どちらにしても翔太郎を元に戻す必要がある。

ならば、オールド・ドーパントを倒すのを先決しよう』

 

「だな、霧彦」

 

『なんだい?』

 

「お前、少し嬉しそうな顔をしているな」

 

そう、見てみると、なぜか笑みを浮かべていた。

 

『私は、愚かな大人達を消す事には何の躊躇もなかった。

だけど、あの人のように罪を許し、やり直せるような人。

そんな存在を、どこか忘れていた』

 

「そうだな」

 

おそらくは、この場で照井さんが来なくても、あの大蔵さんがなんとかしてくれたかもしれない。

 

『この街の風は、きっとそんな優しさを心に届けてくれる。

その風が来るまで、どんな人間も守りたい。

改めて、そう思った』

 

「だな。

それに」

 

「それに?」

 

俺は同時に息を吸う。

 

「リベンジ・ドーパントを倒す方法は思いついた」

 

『本当なのかい?

それは一体』

 

「かなり無茶だぜ。

ヒサメ、一緒にやってくれるか?」

 

「なに、かなり危険なの?」

 

「あぁ、とびっきりな。

けど、付き合ってくれるよな」

 

俺がそう言うと

 

「良いわ。

付き合ってあげる。

なんだって、私はいいや」

 

『この場合は私達だね』

 

「『影の相棒だからね』」

 

そう言ってくれた霧彦とヒサメの言葉を受け止め、同時に頷く。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

53話

老人となった翔太郎さん。

 

確かに、その身体は衰えていたかもしれない。

 

だが、その身に宿る情熱は衰える事はなかった。

 

みゆちゃん達を慰めた後、翔太郎さんはその脚で既に老けさせ屋を見つける為に行動をしていた。

 

俺達が彼女達を母親の元へと送り、照井さん達が用事があると言って、別れた後。

 

合流した翔太郎さんは既に老けさせ屋の元へと来ていた。

 

「おい、俺に勝てると思ってんの?」

 

「勝てる、さぁ、お前の罪を数えるんじゃ」

 

そう言い、翔太郎さんはそのまま、その手に持った杖で老けさせ屋に戦いを挑む。

 

老けさせ屋は、突然の事で驚きを隠せず、その杖による攻撃を受け止めるだけだった。

 

「強いじゃん!!」

 

「まだまだ、若いもんには負けんぞ」

 

そう、翔太郎さんが言っていると。

 

「調子に乗るなよ!!」『オールド』

 

しかし、既に老けさせ屋もまたオールド・メモリを取りだし、その身体に突き刺す。

 

それによって、奴は瞬く間にオールド・ドーパントへと姿を変える。

 

「スペシャルコース、50年追加だ。

これであの世行きだ」

 

そう脅している奴から庇うように、俺はそのまま前に出る。

 

それと共にナスカメモリを取り出す。

 

そして、そのタイミングに合わせるようにバイクが近づく音。

 

見れば、それは照井さんとフィリップさんの2人だった。

 

「竜君!」

 

「待たせたな」

 

「あぁ」『アクセル』

 

「行きますよ」『ナスカ』

 

俺もそれに合わせるように、ナスカメモリをそのままロストドライバーに装填し、構える。

 

「「変身!」」

 

同時に俺と照井さんはそのままオールド・ドーパントに接近する。

 

オールド・ドーパントはその能力は確かに脅威的だが、それ以外の能力ははっきり言えば普通のドーパントと比べても低い方だ。

 

奴はすぐに攻撃を行う為に、その泥のようなエネルギーを放とうとする。

 

だが、その効果が効かない照井さんが前に出て、封じると共に、俺が追撃するように斬り裂く。

 

「うわっと、お前ら、2人で攻めるとは、卑怯だぞ!!」

 

「人々を老人にするお前に言われたくない!!」

 

瞬きにも満たない連携での斬撃に対して、オールド・ドーパントは叫ぶが、そんな事、関係なく攻撃を続ける。

 

それと共に、俺達が同時にオールド・ドーパントに向けて、蹴り上げようとした時だった。

 

「ふふっ」

 

「「なっ」」

 

聞こえた声と共にオールド・ドーパントの前に出てきたのは、リベンジ・ドーパントだった。

 

奴がまるでオールド・ドーパントの盾になるように前に出る事で、俺達が同時に行った蹴りがそのままリベンジ・ドーパントに当たる。

 

それと共に襲撃はそのまま俺達に跳ね返ってしまう。

 

「嘘っここで!!」

 

「助かったぜ、まさか、来てくれるとはな」

 

「あなたを護衛していれば、ナスカが来る。

ならば、来て、当然じゃないですか」

 

そう、リベンジ・ドーパントは笑みを浮かべながら、前に出る。

 

「あぁ、だからこそ、助かったよ」

 

同時に既にWへと変身していたフィリップさんの声が聞こえる。

 

見れば、その姿は既にエクストリームへと変わっていた。

 

「Wですか。

例え、あなたが参戦した所で、状況は変わりません。

むしろ、その老人となった相方がいる状態の貴方達では」

 

「仮面ライダーである僕達4人が力を合わせれば、勝てない敵などいない。

そして、このエクストリームの真骨頂は瞬時の解析力。

それによって、既に勝利への方程式は検索済みだ」

 

「なんですって?」

 

その言葉に首を傾げるリベンジ・ドーパントだが、フィリップさんはそのままメモリを投げる。

 

「影!」

 

「なるほど、そういう事ですか!!

照井さん!!ヒサメ!!」

 

それと共に俺達が目を合わせる。

 

仮面越しだが、既にフィリップさんの作戦は理解した。

 

それと共に、既にヒサメもまた変身ができる状態へとなっていた。

 

『ナスカズー!』『エレファント!』

 

同時に俺達はエレファント・アーマーを身に纏う。

 

「盾を持った所でぇ!!」

 

そう、オールド・ドーパントはそのまま地面に手を当て、こちらに向けて放つ。

 

それに触れれば、普通ならば瞬く間に老化してしまう。

 

だが、すぐに照井さんがその攻撃を防いだ。

 

それによって、その泥を完全に防いだ。

 

「ふふっ、だから、何が『ルナ!マキシマムドライブ!」えっ」

 

俺は腰にあるメモリスロットにルナメモリをセットしていた。

 

同時に、その手に持っていた象の鼻を思わせる剣は、これまで以上に変幻自在に動くと共に、そのままリベンジ・ドーパントの身体を拘束する。

 

「何をっ」

 

一体、何をするのか、疑問に思うリベンジ・ドーパントだが、その答えはすぐに分かった様子だった。

 

ダメージのないように、そのまま俺はオールド・ドーパントに向けて、投げる。

 

「なっなにをぐわぁっ」

 

「きゃぁっ」

 

2体のドーパントはそのまま身体がぶつかる。

 

それによって、声が出るが、同時にその身体にも変化が起きる。

 

「なっこれはっ」

 

「あっあぁ」

 

ドーパントの姿故に変化は分からない。

 

しかし、その声は確かに老人へと変わっているのが分かる。

 

「リベンジ・ドーパントはその攻撃を跳ね返す事ができる。

老化による現象もまたダメージと認識されるか、疑問だったが、こうして確かめる事ができたようだね」

 

そのフィリップさんの言葉通り、オールド・ドーパントの老化能力で、リベンジ・ドーパントの身体を瞬く間に老人へと変える。

 

同時にリベンジ・ドーパントの反撃能力によって、オールド・ドーパントの身体もまた老人へと変わっている。

 

「これでとどめだ」

 

同時に、照井さんもまたトライアルメモリを取りだし、そのままアクセルトライアルへと変身する。

 

『チーター!MAXIMUMDRIVE!』

 

同時に俺達もまたチーターアーマーへと変身する。

 

既にスタートダッシュを行えるように構えていた為、アクセルトライアルへと変身している照井さんと同時に走り出す。

 

「「あっあぁ」」

 

超高速で駆け抜けながら対象へ向けて飛び蹴りを照井さんと同時に放つ。

 

『トライアル!MAXIMUMDRIVE!』

 

「3秒。

それが、お前達の」

 

「「絶望までのカウントダウンだ」」

 

「「がああぁぁ!!」」

 

その言葉と共に2人のドーパントは絶叫と共に、爆散する。

 

同時に2人のメモリは砕け散った。

 

「凄い、倒せた!

けど、あれ、影君にダメージはないの?」

 

「リベンジ・ドーパントは対象1人1人に受けた分のダメージを跳ね返す。

だが、それには自身が誰にダメージを受けたのかを認識する必要がある。

オールドで老人となった事で、認知機能を下げ、同時に最高速度で必殺技を放つ事ができるチーターで倒す。

それが、最適解だからね」

 

「えっと、つまり」

 

「気づいた時には倒されていたという訳だ」

 

「翔太郎さん、元に戻ったんですね!!」

 

「まぁ、なんとかな。

いやぁ、にしても身体がなかなか、硬いっ」

 

そう、翔太郎さんはそのまま未だに老人化の影響が出ていた。

 

それと共に見えたのはシュラウドだった。

 

なぜ、彼女がなぜ、見ていたのか。

 

疑問に思ったが、その目には以前の復讐だけを目指していた彼女からは考えられない程だった。

 

おそらくは、照井さんが別れていたのか。

 

「そうか」

 

同時に俺は自然と笑みを浮かべる。




次週、AtoZ編開幕

特別編の次回活躍するメモリは『ナスカ』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

AtoZ 運命のガイアメモリwithハーメルン・ノベルティック・ライダーズ
AtoZ-01


 その日、俺達は学校も休みであり、翔太郎さん達から休みを貰ったという事もあって、風都名物のバイキングへと向かった。

 

 ここでは休日になると多くの市民が集まっているが、俺達がここに来た理由としては。

 

「あぁ、どれも美味しかった」

 

「お前って、本当によく食べるよな」

 

 そう俺は思わず言ってしまう。

 

 既にヒサメによって大量の料理を食べており、周りからは大食いタレントと間違われているかもしれない。

 

 実際にその手のスカウトがあったらしいのは、ここだけの話だ。

 

「それにしても、なんだか、凄い雨だよね」

 

「本当、酷い雨だよ」

 

 せっかくの休みという事で、ヒサメは残念そうに呟く。

 

 まぁ、元々家で遊ぶ事が多い俺からしたら、どちらでも良かったのだが、傘を持ってきていないので、少し不便なのは不便だ。

 

 そう思っていた時だった。

 

「あれ?」

 

「どうしたんだ?」

 

「影、あれっ」

 

 何か気になった様子で、ヒサメは空に指を向ける。

 

 そこに何があるのかと気になって、思わず目を向ける。

 

 雨で、視界はよく分からない。

 

「何もないよなぁ?」

 

 ヒサメが指を向けた場所には何もない。

 

 ないはずなのに、なぜか俺も視線を外せなかった。

 

 同時に、その箇所に大きな爆発が起きる。

 

「なっ」

 

 音は聞こえない。

 

 それ程までに遠いし、他の市民も気づかない。

 

 だが、確かに起きたその爆発と共に、何かがこちらに降り注ぐ。

 

 それも真っ直ぐと俺達に向けて。

 

「ヒサメ!」

 

「うっうん!」

 

 俺達はすぐにその場から離れる。

 

 同時に先程まで俺達二人がいた場所には何かが突き刺さった。

 

「一体何が起きているんだ」

 

「なんだこれは?」

 

 さすがに地面を突き刺す程の何かに気になったのは一人の青年が近づく。

 

 すると、青年の近くに落ちていたそれは、そのまま真っ直ぐと青年の身体に突き刺す。

 

「なっなんだっこれっああぁ」

 

「なっ」

 

 その何かの正体は俺達にとっては見慣れた物、ガイアメモリだった。

 

 だが、それはあまりにも見慣れすぎた物だった。

 

「本当に、どうなっているんだ」

 

 俺の目の前に立っている存在。

 

 それは、本来だったらいないはずのナスカ・ドーパントだった。

 

 ナスカメモリ自体は俺の手元にある以上、その生成を行うのは、組織は難しいはずだ。

 

 何よりも、先程まで道案内してくれた人は確実に一般人であり、その人物がなぜドーパントに変身したのか、未だに分からない。

 

「それでも、これ以上、被害を出す訳にはいかない」『ナスカ』

 

 俺はそのままロストドライバーを腰に巻くと共に、ナスカメモリを起動させ、そのままスロットにセットする。

 

「変身!」『ナスカ』

 

 音声が鳴り響くと共に、俺の身体は風が舞い上がると共に、その姿を仮面ライダーナスカへと変身する。

 

「ガアァァァ!!」

 

 それと共に理性のない叫びと共に、目の前にいるナスカ・ドーパントはその手に持ったナスカブレードを真っ直ぐとこちらに向かって、振り下ろす。

 

 それに対して、俺もまたその手に持ったナスカブレードで受け止める。

 

「なっこいつ!」

 

 こちらに対しての真っ直ぐな一撃。

 

 それを受け止めた俺がまず感じたのは、圧倒的な力。

 

 俺と同じナスカメモリを使っているはずなのに、その性能は明らかに向こうのナスカ・ドーパントの方が上だ。

 

「だけど、性能だけだ!」

 

 その言葉と共に、俺はナスカブレードを僅かに動かして相手の攻撃を流すと共に、一気に懐に入り込む。

 

 そして、そのまま拳を叩き込もうとする。

 

「なっ!?」

 

 次の瞬間、俺の身体は吹き飛ばされる。

 

 後ろに吹き飛ばされながら、そのまま前を見る。

 

 そこに立っていたのは、ウェザー・ドーパントだった。

 

 目の前にいるナスカ・ドーパントだけではなく、まさか倒したはずのウェザー・ドーパントまで蘇るとは。

 

「くそ! 一体どうして……」

 

 そう言いながらも、俺はウェザー・ドーパントとナスカ・ドーパントの2体を見る。

 

 どちらも理性もなく、獣だと思わせるドーパントだ。

 

「だけど、負ける訳にはいかないよな」

 

 そう、俺は自分を震い立てさせるように笑みを浮かべながら、その手にナスカブレードを構える。

 

『影、確かに彼らの力は仮面ライダーナスカ以上だ。

 

 しかし、向こうは知性のない獣。

 

 これまで幾度もドーパントと戦い、打ち破った経験のある君ならば勝てるさ』

 

「あぁ、行くぜ!」

 

 同時に俺はそのまま走り出す。

 

 それに合わせるかのようにウェザー・ドーパントも動き出し、ナスカ・ドーパントもまたこちらに向かって駆け出した。

 

 2対1という不利な状況だが、それでも俺は戦うしかない。

 

「うぉりゃああ!!」

 

 ウェザー・ドーパントの動きに合わせて、俺は蹴りを放つ。

 

 それと同時にウェザー・ドーパントもまたこちらに向かって電撃を放つ。

 

 しかし、俺はその攻撃を近くにいるナスカ・ドーパントに向けて、首にあるマフラーで拘束する。

 

 同時にナスカ・ドーパントをこちらに引き寄せる勢いで電撃を避け、そのままナスカ・ドーパントを蹴り上げる。

 

「ガアァァァ!!」

 

 その蹴りを受けてナスカ・ドーパントは大きく吹き飛ぶ。

 

 しかし、その間にウェザー・ドーパントは俺の方に接近していた。

 

「よっと」

 

 俺はその攻撃をそのまま飛び上がると同時に、ロストドライバーにあるナスカメモリを取りだし、ナスカブレードにセットする。

 

『ナスカ! MAXIMUMDRIVE!』

 

 鳴り響く音声と共に、真っ直ぐとウェザー・ドーパントに向けて、ナスカブレードを振り下ろす。

 

 その一撃を受けたウェザー・ドーパントはそのまま真っ二つに斬られ、そのまま爆散する。

 

 それと共に、俺はナスカブレードを取りだし、腰にあるマキシマムスロットに挿入する。

 

『ナスカ! MAXIMUMDRIVE!』

 

 それと共に、俺の脚にナスカのエネルギーを纏うと共に、そのライダーキックを真っ直ぐと、残りのナスカ・ドーパントに向かって放つ。

 

 それに対して、ナスカ・ドーパントは再び立ち上がり、腕を前に出してガードしようとするが、俺の攻撃はその防御ごと貫き、そのままナスカ・ドーパントを吹き飛ばす。

 

 それにより、再び地面に倒れたナスカ・ドーパントを見ながら、俺は変身を解く。

 

「ふぅ……なんとかなったか」

 

 正直言って、かなり危なかったと思う。

 

「さて、メモリはって」

 

 見てみると、そこにあったナスカメモリは破壊されていなかった。

 

 しかも、ウェザー・ドーパントが使っていたと思われるウェザーメモリがあった。

 

 しかし、そのメモリは俺達が使うメモリと似た形状だった。

 

「一体、この街で何が起きているんだ」




「それで、目的のメモリは手に入れたのか」

「あぁ、この通りな」

それと共に仮面ライダーエターナルが手に持っていたのは一本のメモリだった。

『P』という文字が刻まれたそのメモリは、他のメモリとは違う異質な気配を感じた。

「さぁ、地獄の始まりだ」

そのメモリを、エターナルは迷いなく、マキシマムスロットに挿入し、発動させる。

『Parallel!MAXIMUMDRIVE!』

その音声が何を意味するのか。

今の彼らはまだ知らない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

AtoZ-02

ナスカ・ドーパントとウェザー・ドーパントについてを知る為に俺はすぐに鳴海探偵事務所へと向かった。

 

そこにはいつものメンバーだけではなく、何やら見覚えのない人物がいた。

 

「あの、翔太郎さん。

 

そちらの方は」

 

「マリア・S・クランベリー。国際特務調査機関員よ」

 

「国際特務調査機関員?

 

なんで、そんな人がここに?」

 

「これと大きく関係しているわ」

 

そう言い机の上にある物に指を向ける。

 

俺とヒサメも、そちらを向くと、そこにあったのはガイアメモリだった。

 

しかも、俺達の使うメモリと特徴がよく似ている。

 

「これは一体」

 

「T2ガイアメモリ。

 

TYPE2ガイアメモリであり、次世代メモリというのは伊達ではなく、旧来のガイアメモリではメモリを使うために必要なコネクタ手術をしなくても使用でき、従来のメモリに対しメモリブレイクできるマキシマムドライブでT2ドーパントを撃破したとしてもメモリブレイクされることはなく、そのまま排出される」

 

「だから、あの時」

 

同時に俺が思い出したのは、あのドーパント達を倒した時にすぐにメモリが排出された理由になっとくすうr。

 

「その際、輸送機を襲撃し、AtoZ=26本が街中にバラ撒かれてしまったの」

 

それを聞き、亜樹子所長は青ざめる。

 

「じゃあ、何も知らない街の人たちが、これ拾ってドーパントになってたってこと?」

 

実際に俺の目の前でそれが起きたので、確かにその可能性は高い

 

「それで、そんな事をした奴らは一体」

 

「私が追っていたのはこの7人よ。大道克己とその部下6名」

 

写真つきの資料を皆はまじまじと見つめる。

 

「各国で傭兵として活動し、甚大な被害をもたらしている犯罪者達。7人は皆、強靭な肉体と常人離れした身体能力をもっている。そしてそれぞれの特殊技能によって狙ったターゲットを確実に仕留める。言ってみれば戦闘のプロフェッショナルね。彼らの行くところは全て地獄にな・・・恐らくこの風都も」

 

その言葉に、俺は。

 

「翔太郎さん、言わずともわかるな」

 

「当然だな。あんな奴らに街の平和を踏みにじられてたまるかよ」

 

答えは決まった。

 

そうして、俺達は街に散らばり、まだ人体に挿入されていないメモリを捜索し、少しずつだが順調に成果を伸ばしていた。

 

「じゃーん!高校生ルートで見つけちゃいましたぁ!」

 

そして、現在。

 

風都イレギュラーズのクイーン&エリザベス。

 

彼女達は風都の学生達に随分顔が利くらしく、この短時間で三本のT2を回収してみせたのだ。

 

[人とメモリは惹かれあうっていうから、何か意味があるのかもしれないね」

 

亜樹子所長はそういっていたが、正にその通りであろう。

 

「・・・・・・・・・」

 

【QUEEN】

 

「あ、クイーンお前!メモリをパクろうとしたな!」

 

クイーンが隠し持っていたT2クイーンメモリは、クイーンの体と反応し合い、今にも体に挿されようとしている。

 

「メモリと呼び合ってる!」

 

「とりあえず、取り上げるか」

 

そうして、もみ合っている間にも、クイーンメモリはそのまま吹き飛ばされる。

 

その先にはバイクに誇った女性がそれを取る。

 

「おっと、そこの美人。

 

悪いけど、そのメモリ、こっちに。

 

冷たい」

 

そう、彼女の手を触れた瞬間、瞬きと言っても良い程の動きで翔太朗を吹き飛ばす。

 

「翔太朗さんっ、あいつはっ」

 

そう、俺は再び見つめた先。

 

その女性の正体にすぐに気づく。

 

「翔太朗さんっ、あいつ大道の仲間の一人ですよっ」

 

「あぁ、体質が合わないっぽい。

 

私の運命のメモリはやっぱり最初に出会ったこの子のようね」

 

そう、彼女が手にしたのは。

 

『HEAT』

 

「ヒート、Wと同じメモリまで」

 

その事に驚いている間にも、目の前にいる女性はそのままメモリを自分の身体に吸い込まれる。

 

それと共に、その身体は徐々に変わり、人間の身体から赤い炎のドーパントを思わせる姿へと変わった。

 

「ふっ」

 

それと共に、ヒート・ドーパントはそのままバイクに乗ったまま、その場を去っていった。

 

「くそ、フィリップ!影!」

 

「あぁ」

 

それと共に、俺達は瞬時に仮面ライダーに変身する。

 

そのまま、翔太朗さんはバイクに乗り、走る。

 

「さて、俺達もって!」

 

そう言おうと走ろうとした時だった。

 

「悪いが、ここから先には行かせない」

 

「っ」

 

聞こえた声。

 

それと共に振り返ると、先程の奴と同じ服を身に纏っている奴だった。

 

白髪に褐色の男性であり、まるでアラビアの男性を思わせる人物だった。

 

「お前は」

 

「俺はシディ。

 

悪いが、お前をここで足止めさせてもらう」

 

『ファング』

 

「っ」

 

その音声が聞こえると同時に、シディと名乗った男はその手に持ったメモリをそのまま身体に突き刺す。

 

それと共に、その身体は全身が白い牙で形成した獣を思わせるドーパントだった。

 

「ファング・ドーパント」

 

「はあああぁぁあ!!」

 

そのファング・ドーパントに対して、驚きを隠せない間に、その腕から生えた牙と共に、俺に向かって、襲い掛かる。

 

俺はすぐにナスカブレードを出現させて、それを防ぐ。

 

だが、その一撃は非常に重く、防いだはずの刃が大きく弾かれる。

 

そして、ファング・ドーパントはそのまま空中に飛び上がりながら、蹴りを放つ。

 

それを何とかガードするが、衝撃を殺しきれずに大きく吹き飛ばされる。

 

俺はすぐ近くの柱に、マフラーで勢いを殺す事で激突する事は無かったが、かなりのダメージを負ってしまう。

 

それに思わず舌打ちをする。

 

(強い)

 

はっきり言って、今の今まで戦った敵の中で一番かもしれない。

 

それだけの強さを感じた。

 

そんな事を考えていると、再び拳を振りかぶってくる。

 

それに対してナスカブレードを構える。

 

「おいおい、時間が掛かりすぎだろ」

 

『アクセル』

 

「っ」

 

聞こえた音と共に、襲い掛かる影。

 

そこに現れたのは、まさにバイクだった。

 

「さっきの音からして、まさかアクセル・ドーパントかよっ」

 

そこに現れたのは、まさかのアクセル・ドーパントだった。

 

ファング・ドーパントとアクセル・ドーパントに挟まれる形となり、非常にマズイ状況となった。

 

そんな中でアクセル・ドーパントはバイクの姿のまま、こちらを見下ろしている。

 

それは余裕を感じさせる姿であり、明らかに俺の事など眼中に無いといった感じである。

 

そんな様子に対し、苛立ちを覚えるが今は目の前の状況の方が重要である。

 

正直な所、このまま戦っていても、勝てる見込みはない。どうにか隙を見つけて逃げる必要がある。

 

だが、どうすればいい?

 

そう考えている時だった。

 

俺の目の前に何かが迫る。

 

「あれはっ」

 

見ると、そこにはバイクだった。

 

翔太朗さん達が使っているバイクと似た物だった。

 

ただ、カラーリングは俺の変身するナスカに合わせた青いカラーに黄色いラインが入っている。

 

「これはっよく分からないけどっ」

 

それが俺に向けた物だというのはよく分かった。

 

同時に俺はそのままバイクに跨り、ハンドルを握る。

 

すると、俺の意志に応えるようにエンジンがかかり、動き出す。

 

そのままアクセルを踏み込むと、加速していく。

 

それと同時にファング・ドーパントの攻撃を避けていく。

 

アクセル・ドーパントは、その様子を見て少し驚いたような表情を浮かべていた。

 

「この俺に、スピード勝負で勝てると思うのか!」

 

同時に俺に向かって、拳を振り下ろす。

 

その攻撃に対して、俺はハンドルを切りながら避けていき、更にハンドルを強く握る。

 

それにより、更に加速していき、一気にファング・ドーパントへと接近し、そして通り過ぎる。

 

その際に刃を振るうが、それをファング・ドーパントはギリギリの所で避ける。

 

「なっ」

 

「とりあえず、この場は逃げる。

 

怪盗としても、情報を持ち帰るのも先決だからな」

 

そのまま俺はその場から走り去る。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

AtoZ-03

無事にファング・ドーパントとアクセル・ドーパントから逃げる事ができた俺達はそのまま探偵事務所で合流する事ができた。

 

そこから、俺達は奴らの正体を探る事にした。

 

既にフィリップさんの検索が終わった所であり、敵の正体も既に分かった。

 

「ネバー?」

 

「そうだ。大道達はNECRO-OVER・・・通称NEVERネバーと呼ばれる存在だ。特殊な薬品やクローニング技術によって死者の蘇生を行い、刀剣や銃弾を用いて急所を貫かれてもすぐさま回復するタフさを備え、死体であるが故に運動能力のリミッターも外れている」

 

そのままフィリップさんはページに浮かんでくる文章を読み上げる。

 

「かつてはミュージアムのガイアメモリとで競争を行ったが、貧弱で普通な人間だろうとメモリ一本で手軽にドーパントになれるというガイアメモリの特性に比べ、NEVERは一人を強化蘇生するのにも手間がかかるという点とドーパント程の実力を出せなかったが故に敗退したらしい。

しかし彼らはプロジェクトが凍結されたあとも、世界中で実践と調整を繰り返して来た」

 

「それって、つまり奴らはゾンビ軍団という訳か」

 

まさか、ゲームに出てきそうな奴が現実に現れるとは。

 

それには俺達も驚きを隠せなかった。

 

そうしていると、フィリップさんに連絡が来た。

 

その内容は、マリアさんからの連絡のようだった。

 

「すぐに風都タワー建設予定地に行こう」

 

それと共に俺達はそこに向かった。

 

風都タワー開発予定地。

 

集められたメモリを持ってきた一同は、人気が全くないここにきていた。

 

そこには、マリアさんがいた。

 

「マリアさん!」

 

それと共に、彼女がいた事にフィリップさんは少し嬉しそうな顔をした。

 

だが、それもすぐに警戒の色に変わった。

 

それは、NEVERのリーダーである大道克己がいた

 

「お前は・・・!」

 

「大道克己・・・!」

 

「よぉ!・・・兄弟」

 

「「「「「「「「「・・・・・・???」」」」」」」」」

 

一同は克己の言葉に首を傾げる。

 

「お前のことだよ、フィリップ。運命的に誕生した科学の怪物。俺たちは同じ・・・化物だ」

 

どうやら、こちらの事情に関してもある程度知っている様子だった。

 

「フィリップは化物じゃねぇ。死人のお前らと一緒にすんな」

 

翔太朗は静かなれど怒気を燃やして反論する。

 

「調べたのか、ならば見せてやろう、死人の力を」

 

同時に取り出したのはガイアメモリだった。

 

「お前もっドーパントに」

 

「違う、俺は仮面ライダーだ」

 

それと共に、奴が持っていたのは俺と同じロストドライバーだった。

 

『エターナル』

 

そのまま腰に巻いたロストドライバーに向けて、そのままエターナルメモリをセットする。

 

「変身」

 

その言葉と共に変身した。

 

白いボディをしていて、仮面にはEの字を横倒しにしたような触覚と∞を描くような黄色の複眼。

 

上半身と右上腕と左太腿にスロット付きのコンバットベルトを装備し、青いグローブといういでたち。そして黒いマントを身に纏っている。

 

「仮面ライダーエターナル」

 

「エターナル、永遠」

 

その単語の意味を知ると共に、俺達は警戒する。

 

目の前にいる存在は、間違いなくこれまで戦ってきた誰よりも強い。

 

その名乗りを聞き、

 

「ふざけんなよ!仮面ライダーはこの街の人達の希望だ。戦争屋が名乗っていい名前じゃねぇ!」

 

翔太朗は静かに怒りの感情をたぎらせる。

 

「翔太郎、僕が行くよ」

 

それはフィリップさんも同じだった。

 

同時にフィリップさんの手元にはファングメモリが現れる。

 

『ファング』

 

「「変身!」」

 

その言葉と共に、フィリップさんはそのままWに、ファングジョーカーへと変身する。

 

同時に真っ直ぐと、エターナルの元へと突っ込む。

 

「さて、せっかく仮面ライダーがここにいるんだ。

少し試運転をするか」

 

同時にエターナルが取り出したのは、見た事のないガイアメモリだった。

 

『パラレル!MAXIMUMDRIVE!』

 

そのまま横にあるメモリスロットに挿入すると同時に、エターナルの背後に現れたのは銀色の壁だった。

 

それが何を意味するのか、疑問に思っていると、そこから現れたのは大道と同じジャケットを身に纏っていた二人だった。

 

「あれは」

 

「さぁ、行くぞ、異なる世界の仲間達よ」

 

同時に、エターナルが取り出したのは二つのメモリだった。

 

それをそのまま二人に向けて、真っ直ぐと投げる。

 

『ドラグーン』『ナイト』

 

その音声が鳴り響くと共に、そいつらの姿が大きく変わる。

 

一人はまるで怪人体は鳥や蜥蜴のような外見をしており、表皮は骨のような鱗で覆われており、その手には両端に鋭利な刃を持つ双刃の特殊な薙刀を持つ。

 

もう一人はまさしく騎士を思わせる鎧に剣と盾を持ち、構える。

 

「パラレル、もしかしてっパラレルワールドにいたネバーっ!」

 

「なっ」

 

それに驚きを隠せない間にも、二人のドーパントはそのままWへと迫る。

 

「影!」

 

「了解です!」

 

俺と照井さんは同時に仮面ライダーへと変身し、各々がドーパントと戦う為に向かう。

 

「はああぁぁ!!」

 

俺はその手に持つナスカブレードを真っ直ぐと、ドラグーン・ドーパントに向けて斬りかかる。

 

それに対して、ドラグーン・ドーパントは俺の斬撃を受け流す。

 

そして、まるで流れるように目から光弾を放つ。「くっ!」

 

俺は咄嵯に横に転がり、光弾を回避する。

 

しかし、光弾はそのまま後ろの壁へと着弾し、爆発を起こす。

 

だが、今の俺にはそんな事を気にしている余裕はない。

 

今すぐにでも目の前にいる敵を倒して、翔太郎さんに参戦しないといけない。

 

すると、ドラグーン・ドーパントは薙刀を構えて突進してくる。

 

どうやら、俺が攻撃した隙を突いて倒すつもりらしい。

 

だが、そう簡単に倒される訳にもいかない。

 

俺は迫り来る薙刀に対して、ナスカブレードを構える。

 

だが、ドラグーン・ドーパントは、その人型の姿からまるで伝説に出てくるようなドラゴンの姿へと変身する。

 

そして、その姿のまま炎を吐きながら襲い掛かってくる。

 

俺は咄嵯に横に飛び、なんとか回避する。

 

だが、その瞬間にドラグーン・ドーパントは一瞬にして人間体に戻り、そのまま薙刀を振るう。

 

俺は咄嵯に後ろに飛んで避けるが、薙刀の先端部分が肩に触れる。

 

「うわっと!」

 

俺は思わず声を上げる。

 

肩からは血が流れ出し、痛みを感じる。

 

しかし、それでも俺はすぐに立ち上がり、ナスカブレードを構え直す。

 

ここで止まるわけには行かない。

 

俺はこの先に進まなければいけないんだ。

 

すると、今度はドラグーン・ドーパントの方からこちらに向かって走り出す。

 

俺はそれに対してナスカブレードを振り下ろす。

 

だが、ドラグーン・ドーパントはそれを軽々と避けてみせる。

 

「なっ!?」

 

俺は驚きの声を上げてしまう。

 

まさか避けられるとは思わなかったからだ。

 

すると、ドラグーン・ドーパントは薙刀を横に振るって攻撃を仕掛けてくる。

 

俺はそれを何とか受け止めるが、力の差がありすぎるのか吹き飛ばされる。

 

「ぐっ」

 

横を見れば、同じくナイト・ドーパントと戦っている照井さんが吹き飛ばされていた。

 

見ると、騎士を思わせる盾で照井さんのエンジンブレードを受け流し、カウンターを決めている。

 

「まさか、ここまでとはっ」

 

照井さんも負けじとエンジンブレードを振るうが、そのタイミングを合わせて、盾で受け流して逆にダメージを与える。

 

照井さんはそのダメージに耐えられず膝をつく。

 

このままではまずい。

 

そう思った時だった。

 

「なるほど、なかなかに使える。

 

ならば、あとは」

 

そう思った時、翔太郎さん達が戦っているエターナルが手に持つ武器を、そのまま自身のメモリをセットした。

 

『エターナル!MAXIMUMDRIVE!』

 

「なっぐぅ」

 

その音声と共に、俺達の身体に変化が起きた。

 

それは俺の変身が強制的に解除された。

 

「これは、まさか」

 

『エターナルメモリの力っ』

 

「僕達のメモリが、機能を無力化されている・・・」

 

「こんなマキシマムがあるなんて・・・」

 

「俺のメモリは特別でね。

 

エターナルレクイエムは一度発動すれば、T2以前のガイアメモリは作動不能――永遠にな」

 

それが、何を意味するのか、すぐに理解できた。

 

「T2を纏めて持ってるのは、お前だな」

 

「ッ!逃げろ亜樹子!!」

 

同時に既に隠れていた他のNEVERのメンバーが亜希子所長に銃口が向けられ、絶体絶命となっていた。

 

ここからは間に合わない。

 

そう思っていた時。

 

『CYCLONE』

 

聞こえた音、それと共になんとマリアさんがメモリを自身に挿入した。

 

それと共に現れたのは、風を思わせるドーパント、サイクロン・ドーパントだった。

 

「まさか、マリアさんが」

 

『・・・・・・・・・』

 

サイクロン・ドーパントは亜樹子所長からT2メモリが入ったバッグをとって変身をとく。

 

「まっ待って」

 

そう、ヒサメがすぐに向かい、鞄に手を触れる。

 

しかし、それはすぐに振り払われる。

 

「克己、もういいわ。メモリはほぼ集まった」

 

「そうだな、では、帰るとしよう」

 

エターナルは気をよくしたのか、素直に耳を傾ける。

 

「マリアさんが、そんな・・・」

 

「これが現実よ、坊や」

 

マリアさんはそういうと、あのオルゴールをフィリップに手渡していった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

AtoZ-04

翌日。

 

俺達は林の中にいた。兎にも角にも体を休める為に。

 

「ダメだ・・・反応しないままだ」

 

そう、俺達は何度もメモリが作動させる為に押す。

 

「敵の手にメモリがある限り、変身はおろか、まともに戦うことさえできない」

 

「まさか、ヒサメがあの時に盗っていたとは」

 

そう言いながら、ヒサメの懐から取り出したのは2本のメモリ。

 

それは

 

「ナスカとウェザー。

まさか、あの状況でか」

 

それはマリアさんの鞄に触れた一瞬。

 

その一瞬の動作で、ヒサメはそのバックからメモリを盗み出した。

 

「まさか、奴のメモリが頼りになるとは、皮肉だな」

 

照井さんもまた、井坂が使用していたウェザーメモリを頼りにする事に対して、複雑な思いを秘めていた。

 

同時にそのビートルフォンの液晶に移ったTVを見つめる。

 

そこにはエターナルと7体のドーパントが映っていた。

 

『風都市民諸君に告ぐ。俺は仮面ライダーエターナル。ガイアメモリに命運を握られた、哀れな箱庭の住人達を、解放するものだ』

 

エターナルは高々に宣言した。

 

そしてエターナルメモリを引き抜いて変身を解除する。

 

『この最新型ガイアメモリと、巨大光線兵器・エクスビッカーを我々は所有している』

 

風都中のテレビ画面にエクスビッカーが映し出された。

 

「あれって、まるでWの」

 

「エクストリームが使っている武器に似ている」

 

『もはや如何なる武力も干渉できない。この風都タワーを拠点に、我々は、風都を自由の楽園へと変える!』

 

克己の演説には熱が篭り始めた。

 

『ところで市民諸君。この街にあと3本、我々が望むガイアメモリが残っている。それが揃えば、我々の戦力は完全無欠だ。見つけたら、風都タワーまで持参してくれ。該当者には、報酬金として十億出そう。我々の同志として迎えて安全も保障する。――以上だ』

 

その言葉と共に、放送が終わる。

 

「3本の内、2本は既にこちらの手にある。

だとしたら、その1本、それが逆転の鍵になるかもしれないな」

 

「でも見つけ出すのは難しいよ。今の放送で街はきっと大騒ぎだ。

それより、別の方法を「フィリップ、まさかあのサイクロンの女と会いに行くつもりか」

 

「っ」

 

翔太郎さんの言葉を聞くと共に、フィリップさんは一瞬、固まる。

 

「駄目だよ、フィリップ君!

あの人は、私達を利用して、メモリを集めたんだよ」

 

「しかし、彼女が僕を助けてくれたのも事実だ!

それに正しい心がまだ残ってるかもしれないか、Wとアクセルのメモリを作った人が悪じゃないと信じたいんだ!」

 

フィリップは声を張り上げる。

 

「まさかあの女がシュラウド本人だと?」

 

「・・・・・・あぁ」

 

フィリップは静かに頷いた。

 

「落ち着けよ、相棒。

証拠がなければ意味はないだろ。

女に甘いハーフボイルドは俺だけで十分だ、冷静になれよ」

 

そう翔太郎さんは言う。

 

だが

 

「相棒でも、立ち入って欲しくない事があるって言ったよね、翔太郎」

 

そう、次の瞬間、フィリップさんはそのまま翔太郎さんは殴る。

 

「僕らしいってなんだ!?自分自身のことさえわからないのに・・・君になにがわかる!?

僕の・・・それがわかるのは・・・僕の・・・僕の・・・・・・本当の親だけだ」

 

その言葉と共にフィリップさんはそのまま森の中へと消えていった。

 

「フィリップ」

 

その出来事に、翔太郎さんは呆然としていた。

 

「危ないっ」

 

同時に、照井さんの叫び声。

 

それと共に襲い掛かったのは、斬撃だった。

 

見れば、そこにいたのは、ファング・ドーパントの姿だった。

 

「やはり、ここにいたか」

 

「お前は、シディ。

なんでここに」

 

「大道が見逃した場所を聞いた。

悪いが、NEVERの仲間達の為に、ここで始末させて貰う」

 

「NEVERの仲間達って、その為に、罪のない人々に危害を加えるのか」

 

その言葉を聞くと、僅かにファング・ドーパントは動きを止める。

 

だが

 

「確かに俺の行いは間違っているかもしれない。

それでも、この命を救ってくれた大道の為に、この命を使う」

 

「どうやら、話し合いは無理そうだな」

 

ファング・ドーパントを相手に、ナスカ一人でどこまで対抗できるか分からない。

 

「ヒサメ、さっそくで悪いが」『ナスカ』

 

「分かっているよ」『ウェザー』

 

俺の言葉に合わせるように、ヒサメもまたドライバーを腰に巻く。

 

「「変身」」

 

その言葉を合図に、俺達はそのまま仮面ライダーへと変身する。

 

普段は二人で一人となって戦うが、こうして二人で並んで戦うのは初めてだ。

 

「まだ二人の仮面ライダーか。

だが!!」

 

それと共に、ファング・ドーパントは身体から無数の刃を生やすと共に、俺達に向けて投げる。

 

無数の刃のブーメランが襲い掛かるが、ヒサメは周囲に氷の壁を作り出す。

 

同時に俺はその氷の壁を踏み台にして、真っ直ぐとファング・ドーパントに向けて、ナスカブレードで斬り上げる。

 

「ぐっ」

 

ファング・ドーパントはすぐに腕に刃を生やして、その攻撃を受け止める。

 

だが、以前とは反対に、こちらが押す形でファング・ドーパントを吹き飛ばす。

 

「何っ」

 

それと共に、俺の前にヒサメが作り出した氷の壁を踏み台にする。

 

「ぐっ」

 

同時にヒサメもまた自分の腕に氷の刃を作り出す。

 

それと共に、ヒサメは台風で加速していく。

 

「これはっ」

 

俺とヒサメ。

 

互いの動きが分かり、ファング・ドーパントに攻撃を仕掛けていく。

 

「ヒサメ!」

 

「えぇ!!」

 

『ナスカ!MAXIMUMDRIVE!』

 

『ウェザー!MAXIMUMDRIVE!』

 

その音声と共に、ナスカブレードに、ヒサメは氷の刃を巨大化させ、真っ直ぐとファング・ドーパントに突っ込む。

 

「シディ!」

 

「っ」

 

聞こえた声。

 

それと共にファング・ドーパントを助けたのは、アクセル・ドーパントだった。

 

そのままアクセル・ドーパントと共にその場を去った。

 

「なんとか、なったの?」

 

「うん」

 

そう言いながら、そのまま疲れるように座り込む。

 

「だけど、これだったら」

 

「あぁ」

 

俺とヒサメはそのまま頷くように、見つめ合う。

 

「だけど、NEVERの奴らはどうするの」

 

「あぁ」

 

パラレルメモリによって、別の世界にいるNEVERのメンバーを呼び出す。

 

これはかなり厄介だ。

 

「・・・いや、もしかしたら」

 

「影?」

 

「いや、少しな。

ある意味、賭けになるかもしれない」

 

未だに体験した事のないNEVERに対抗する為には。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

AtoZ-05

風都タワーが占拠され、最後のメモリを探していた俺達。

 

その間、なんとフィリップさんがNEVERに捕まってしまう。

 

あの時のフィリップさんの様子から考えても、おそらくはマリアさんを説得しようと考えていたかもしれない。

 

だが、それが裏目に出てしまった。

 

すぐにでもフィリップさんを助けに行かないといけないが、俺とヒサメだけでは助ける事ができるか、怪しい。

 

だからこそ、最後のメモリを探していた。

 

しかし、今、そのメモリを探す理由は、無くなった。

 

「まさか、最後のメモリがそれだったとは」

 

その言葉と共に、俺は翔太郎さんが持つ最後のメモリ、ジョーカーを見つめる。

 

「正直言って、この状況で突っ込むのは賭けに近いからな。

目の前のこれを見たらな」

 

そこには既に大道によって呼び出された他の世界から呼び出したNEVERのメンバーが多く存在していた。

 

パラレルワールドに繋ぐ事ができるそのメモリによって、呼び出されたNEVERのメンバーは直接戦ったからこそ、どれほど強敵なのかも分かる。

 

だからと言って、諦める訳にはいかない。

 

「それじゃ、行くとするか」

 

そう、翔太郎さんはそのまま自分のバイクに乗る。

 

既に、この風都を救う為に、俺達4人しか、今はいない。

 

だからこそ、真っ直ぐと俺達はそのままバイクで真っ直ぐと風都タワーに向かって走る。

 

同時に見れば、既に多くのメモリを持って、駆け込んでいる市民が見られる。

 

「行くぜ、変身!」

 

翔太郎さん達の声に合わせるように、俺もヒサメもまた仮面ライダーへと変身する。

 

「まさか、仮面ライダー。

私が、愛してあげる」

 

同時に、NEVERのメンバーの1人がルナ・ドーパントへと変身する。

 

それと共に、ルナの能力を使い、マスカレイド・ドーパントの幻影を次々と作り出す。

 

「それじゃ、頼むぜ、ヒサメ!」

 

「分かっている!」

 

その言葉と共にヒサメは手を前に翳すと共に、俺達を包み込むように、霧が出てくる。

 

「何これ、何これ!?

前が見えない、きゃぁ!」

 

それと共に霧によって、完全に視界を封じられたNEVERはそのままパニックを起こす。

 

「これで、数の理はなんとかなる!」

 

そして、照井さんもまたバイクから降りると同時に、その目にはデンデンセンサーを漬けていた。

 

それによって、霧の中でも見る事ができ、混乱するマスカレイド・ドーパント達を倒していく。

 

「影っ、この場は私がなんとかするから、あなたは」

 

「あぁ、翔太郎さん!」

 

「そうだな、ヒサメ、頼んだぞ!!」

 

同時に俺と翔太郎さんはそのまま真っ直ぐと風都タワーの中へと入り込む。

 

風都タワー内部に入り込むと共に、鉄の棒が襲い掛かる。

 

俺はすぐにナスカブレードで受け止め、それを斬り裂く。

 

「次はてめぇか」

 

そう言いながら、NEVERの男はそのまま構える。

 

「行くぜ、マッチョマン」

 

『METAL』

 

それと共にNEVERの男が取り出したのは、メタルだった。

 

これまで幾度となく共に戦ってきたメモリという事で、未だに混乱はあるが、それでも戦う意思は変わらない。

 

そのまま。メタル・ドーパントは真っ直ぐと俺に襲い掛かる。

 

手に持った鉄の棒はまさにメタルを使った時のWを思わせる戦い方であり、振り払う一撃一撃が重い。

 

「よっと、影、なんだか調子が良いなぁ」

 

「まぁね、けど、本調子じゃないですよ!!」

 

確かにT2メモリの性能は良いが、それだけだ。

 

エターナルのメモリの効果でナスカの機能が止まるのと同時に、霧彦のあいつの声も聞こえなくなった。

 

「なるほどな、確かに!

相棒がいないと、どうも調子が出ない!

だから」

 

「はい、早く助けましょう!!」

 

『ジョーカー!MAXIMUMDRIVE!』『ナスカ!MAXIMUMDRIVE!』

 

俺と翔太郎さん。

 

同時にメモリスロットに、各々のメモリをセットすると共に構える。

 

「「ライダーパンチ」」

 

翔太郎さんの声に合わせるように俺もまた言うと同時に、こちらに向かって、再び振り下ろしてくるメタル・ドーパント。

 

それに対して、俺達は真っ直ぐとその胴体に向けて、拳を放つ。

 

それによって、メタル・ドーパントはそのまま吹き飛ばされる。

 

「行くぞ、影!!」

 

「あぁ!!」

 

既に連戦。

 

その疲れは未だに完全に取れていないが、すぐにフィリップさんを助けなければいけない。

 

重い身体を引きずりながらも、フィリップさんが捕らわれているだろう部屋に辿り着く。

 

「ふむ、最後の3本のメモリか。

その中でも、最も必要だった1本が既にそこにあったとは」

 

「てめぇ、フィリップに何を!!」

 

『エターナル』

 

そう、翔太郎さんが言っている間にも、既に奴は大道は仮面ライダーエターナルへと変身していた。

 

Wの最強の姿であるエクストリームでも勝てなかった相手。

 

それでも、勝てる保証はない。

 

「それでも!!」

 

同時に俺と翔太郎さんは真っ直ぐと、エターナルに向かって、走り出す。

 

それに対して、エターナルはまるで余裕を見せるように、マントを翻す。

 

大道が仮面ライダーエターナルへと変身した。

 

Wが、1度は戦い、敗北した相手。

 

それに対して、俺と翔太郎さんで勝てるかどうか分からない。

 

それでも、風都を守る為に。

 

「行くぜ!」

 

「あぁ」

 

翔太郎さんの言葉を聞くと同時に、俺もまたナスカブレードを構える。

 

それに対して、エターナルは余裕の態度を崩さないまま、そのままゆっくりと近づく。

 

「はああぁ!!」

 

同時に翔太郎さんの拳が真っ直ぐとエターナルへと向けて、放たれる。

 

しかし、エターナルはそれを軽々と受け流す。

 

それに合わせるように、俺はナスカブレードをそのままエターナルに向けて、斬りかかる。

 

だが、その身に纏ったマントがまるで意思を持つように、エターナルはその斬撃を受け流す。

 

「なっ!?」

 

「どうした?この程度か?」

 

驚く声を上げる俺に対して、エターナルは不敵な態度を見せる。

 

強い。

 

そう感じながらも、諦めるつもりはなかった。

 

「はぁぁ!!」

 

それと共に宙へと飛んだ翔太郎さんはそのままエターナルに向けて、蹴りかかる。

 

「ふん……無駄だ」

 

対して、エターナルは余裕を見せながら、その攻撃を受け止める。

 

「まだまだ!!」

 

そして、それと同時に今度は俺の方から攻撃を仕掛けるが、それもまた受け止められてしまう。

 

「くそ!やっぱりダメなのかよ!?」

 

「諦めるな!!」

 

思わず弱音を吐いてしまった俺に対して、翔太郎さんが叫ぶ。

 

「はぁぁ!!オラァ!!」

 

それに合わせて、翔太郎さんは再び殴り掛かる。

 

それに対して、エターナルも同じように拳を放つ。

 

「うぉら!!」

 

そして、互いの拳がぶつかり合う。

 

その衝撃によって、互いに吹き飛ばされるもすぐに体勢を立て直す。

 

「ふぅ……なかなかやるじゃないか」

 

「そりゃどーも……」

 

エターナルの言葉に、翔太郎さんは言う。

 

「だが、無駄だ」

 

それと共にエターナルはT2メモリを腰にあるメモリスロットに入れていた。

 

『ユニコーン!MAXIMUMDRIVE!』

 

「翔太郎さん!」

 

俺は叫ぶが、翔太郎さんに向かって、エターナルの必殺の一撃が叩き込まれる。

 

吹き飛ばされた翔太郎さんのベルトからジョーカーメモリが外れる。

 

同時に、エターナルの手元にはジョーカーメモリが落ちた。

 

「AtoZ。

 

これで、全てのメモリが揃った」

 

同時にエターナルはまるで俺の事は眼中がないように、そのままエターナルはフィリップさんの背後にあるプリズムビッカーにメモリを入れる。

 

『ゾーン!MAXIMUMDRIVE!』

 

その音声が鳴り響くと共に、俺のベルトに挿入されているナスカメモリが飛ぶ。

 

同時に、T2メモリが全て、装置に突き刺さる。

 

26本のガイアメモリの増幅器にされていたフィリップさんには凄まじい負荷がかかり、悲鳴は、エクスビッカーが発する光のように、天まで届く勢いだ。

 

そんなことを無視して、大道は中継カメラを作動させて再び風都のTVジャックをする。

 

「風都の諸君、朗報だ。これから街に光が満ちる時・・・諸君らは、死ぬ。

エクスビッカーのある此処風都はその光は降り注ぐだろう。

だが安心しろ、エクスビッカーの光が、諸君らの肉体を変質させ、俺たちと同じ、不死身の怪物へと変えてくれるだろう」

 

そして、大道は笑みを浮かべる。

 

「さあ市民諸君、地獄を楽しみな・・・!」

 

その一言を皮切りに、風都は混乱と恐怖が入り交ざる。

 

「それが貴様の本当の目的とはな・・・!」

 

まさに恐怖の計画であった。

 

しかし、それだけではなかった。

 

「克己・・・助けて・・・可笑しいんだ。身体が維持できない・・・」

 

「あの人は」

 

そこには、確か、ヒートメモリを使っていたNEVERのメンバーの1人。

 

「俺がジョーカーメモリを見つけた時に襲って、メモリブレイクした。

だが、これは一体」

 

それには、翔太郎さんもまた疑問に感じた。

 

「NEVERとはいえ、マキシマムを受ければ塵となる。

お前らの代わりなんてこれから幾らでも造れる」

 

大道は、その余りにも冷たすぎる言葉と共に、その女性を突き飛ばす。

 

「おいっ」

 

敵だった女性。

 

だが、それでも彼女の死に対して、翔太郎さんは必死に呼ぶ。

 

だが、既に、彼女の死は覆る事はできなかった。

 

「フハハハハハハハ!!いい気分だ!もう実験台の化物は、俺だけじゃない!皆俺と同じ、生ける死者になれ!!」

 

それと共に、空を見上げる。

 

大道の、その狂気染みた笑みを浮かべる。

 

しかし、それはすぐに途切れた。

 

「なに?」

 

それはエクスビッカーからだった。

 

「こんな奴らに風都は破壊させないっ!」

 

「まさかっこいつっ発射プログラムをっ」

 

それは、まさに装置の一部となっているフィリップさんの行動だった。

 

「貴様ぁ!!」

 

「影!!」

 

「はい!」

 

俺と翔太郎さんはすぐにフィリップさんの行動を助ける為に、すぐに大道へと飛びかかる。

 

奴自身、生身での戦闘能力は高く、簡単に吹き飛ばされる。

 

それと共に大道はそのままエクスビッカーのスイッチを強く押す。

 

それによって、さらに強い光を放つ。

 

このままでは。

 

だが、そんな大道を止める人物が現れた。

 

「止めて克己!!」

 

マリアさんの予定外の行動に不覚を取り、あるものを身体に打ち込まれた。

 

「マリアさん・・・・・・」

 

それにはフィリップさんも驚きを隠せなかった。

 

「なにを・・・?まさか、細胞分解酵素を・・・!?」

 

どうやら、それはNEVERにとって脅威ともいえる薬品の投与によって、大道の身体には異常なまでに血管が浮かび始める。

 

「俺のっ俺の邪魔をするなぁ!!」

 

同時に、マリアさんに向けて、拳銃を取りだし、放つ。

 

放たれた銃弾に対して、マリアさんは避ける事なく、そのまま倒れる。

 

「マリアさんっ!!」

 

フィリップは叫ぶ。

 

同時にエクスビッカーから放たれた光と共に、T2メモリが散り散りになる。

 

『どうやら、彼がやってくれたようだね』

 

「その声は」

 

聞こえた声。

 

同時に見れば、そこには霧彦がいた。

 

それが意味をするのは。

 

「メモリが蘇ったのか」

 

それは喜びであるが、同時に、この状況を作り出してくれた人物のおかげでもあった。

 

その人物に翔太郎さんとフィリップは寄り添う。

 

最後の、彼女の言葉。

 

それをしっかりと聞くように。

 

「お前は、あいつの事を友だって言うけど、この悪魔の所業を見ても、そう言えるのか。

シディ」

 

俺はそう言いながら、既に部屋の前にいただろう人物を見る。

 

「NEVERは記憶を徐々に薄れる。

奴は、それによって、本来の優しさが無くなった。

それでも、友だと言ってくれた奴の為に、俺達は戦う」

 

「それは違うぞ」

 

同時に俺は睨む。

 

「友達が間違っていたんだったら、ぶん殴っても止める。

それが、本当の友達だ。

お前はただ、それをやる勇気がなかっただけだ」

 

「お前に、何が分かる!

何よりも、この状況をどうするつもりだ」

 

それと共に画面に映ったのは、様々な所にいるドーパント達の姿。

 

それは、おそらくはT2ガイアメモリで変身したNEVERのメンバーだ。

 

その中には、既にアクセルメモリを使えるようになった照井さんが、目の前にいるアクセル・ドーパントと対峙していた。

 

「既にお前達が使っていたメモリも、こちらが手にしている。

この圧倒的な数のドーパントを相手に、お前達だけで、どう戦う」

 

「おい、シディ。

お前も、傭兵だと言うんだったら、俺の事をちゃんと調べておけよ」

 

同時に俺はそのまま仮面ライダーへと変身する。

 

「どういう意味だ」

 

「俺がこの状況を、打開するお宝を手にしていないと思っているのか」

 

『パラレル』

 

同時に鳴り響く音声。

 

「パラレルメモリっ、まさか!!」

 

「お前達がNEVER、不死身の軍団だったら、こっちは仮面ライダー軍団で相手するよ。

という事で、ある意味頼むぜ、本当に!!」

 

『パラレル!MAXIMUMDRIVE!』

 

鳴り響く音声。

 

それと共に、街で暴れるドーパント達の前に、銀色のオーロラが現れる。

 

それはまるでカーテンを思わせる物であり、その中から次々と人影が現れる。

 

「お前達っ」

 

ドラゴンの記憶を宿らせたドラグーン・ドーパントは、目の前現れた赤い鋼鉄の装甲を身に纏った戦士が。

 

「一体っ」

 

グラビテーション、重力の記憶を持つグラビテーション・ドーパントの目の前には金色の5本の角を持つ戦士が。

 

「何者」

 

騎士の記憶、ナイト・ドーパントの目の前には紫色が特徴的な2人の機械の戦士が。

 

「なんだっ」

 

祝福の記憶を持つ、ブレッシング・ドーパントの目の前には灰色の戦士が。

 

銀色のオーロラを通って、現れる。

 

「「「「仮面ライダーだ」」」」

 

同時に、ドーパントに宣言するように、その戦いが始まろうとする。




今作で、ゲストとして登場した仮面ライダーに関しては、こちらの作品で登場した方々となっています。
https://syosetu.org/novel/290753/
これからも、よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

AtoZ-06

【仮面ライダーマーベル】

 

赤い機械の鎧を身に纏った仮面ライダーマーベル。

 

 彼が、この世界に訪れると共に、目の前にいたのはドラゴンの記憶が宿るドラグーン・ドーパントと戦う事になった。

 

 ドラグーン・ドーパントはその口から炎を真っ直ぐとマーベルに向かって、放っていく。

 

 それに対して、マーベルは、その手を真っ直ぐとドラグーン・ドーパントに向けて、ガントレットの掌からリバルサー・レイを放った。

 

 それによって、炎と光がぶつかり合い爆発が起こる。

 

 爆風や爆煙に包まれていく中で、マーベルは拳を構えて、一気に距離を詰めようとする。

 

「……ッ!?」

 

 だが、そこで彼は気付いた。

 

 自分が立っている場所が地面ではなく空中だという事に。

 

 空中でも、マーベルは特に問題なく戦える。

 

 だが、問題にしているのは。

 

「まさか、人がこんなにいるとは」

 

 その下には風都の市民が多くいた。

 

 下手に攻撃をすれば、市民に被害がある。

 

 そして、ドラグーン・ドーパントの攻撃を避ける事ができない。

 

「ならばっ!」

 

 同時にドラグーン・ドーパントに向かって突っ込む。

 

 その攻撃に対して、ドラグーン・ドーパントは再びマーベルへと向かって火球を放つ。

 

 だが、マーベルはそれをガントレットの手甲部分で弾き飛ばす。

 

 被害を出さないように、注意しながら。

 

「はああぁぁ」

 

 それと共に、マーベルは両腕のサブマシンガンと両肩の武装から秒間何十発もの弾丸とグレネード弾をドラグーン・ドーパントに狙いを絞って撃ち込んでいく。

 

 対して、ドラグーン・ドーパントは全てのグレネード弾を弾丸を燃やすように炎を吐き出す事で防ぐ。

 

 それによって、煙で覆われる。

 

 しかし、そのまま至近距離までマーベルが接近する。

 

「さて、これでも喰らえ」

 

 同時にマーベルは胸部のリアクターに光を集め、真っ直ぐとドラグーン・ドーパントへと向ける。

 

「アルティメットユニビーム!!!」

 

 叫び声と共に、マーベルから、巨大な光の奔流が放たれた。

 

 それは一直線にドラグーン・ドーパントへと向かう。

 

「がああぁぁ!! 

 

 空に一本の光に、吸い込まれたドラグーン・ドーパントはそのまま吹き飛ばされる。

 

「さて、一体、ここはどこなんだ?」

 

 

 

【滅&チェイサー】

 

「ふんっ」

 

 目の前で、何が起きているのか、分からない滅とチェイサー。

 

 だが、似た経験をしている2人は、目の前にいるナイト・ドーパントと戦っていた。

 

 ナイト・ドーパントは、その手に持つ盾で、チェイサーの持つシンゴウアックスからの攻撃を剣で受け止める。

 

 その隙間を狙うように、滅はアタッシュアローを真っ直ぐとナイト・ドーパントに向けて、矢を放つ。

 

 しかし、その手に持つ盾で、矢を受け止め、そして弾き飛ばす。

 

 それを見たチェイサーは、一瞬にして判断すると、素早く行動に移った。

 

 まず、背中のタイヤ型装備であるホイーラーダイナミクスを回転させて、ナイト・ドーパントへと突進を仕掛けたのだ。

 

 だが、それは読まれていたようで、すぐに対応されてしまう。

 

 ナイト・ドーパントも同じように、その手に持つ武器を剣から槍へと変える。チェイサーの突撃に対して、槍を使って迎え撃つ。

 

 ぶつかり合う金属音と共に、お互いの力をぶつけ合いながら、鍔迫り合いのように押し合っている。

 

 その間に、滅は一度、距離を取ると、今度はアタッシュアローを構えて、連続で矢を放った。

 

 しかし、それも全て防がれてしまう。

 

 だが、それも少しずつ変わっていた。

 

「何?」

 

 それは僅かな違和感だった。

 

 先程まで完全に防ぐ事ができた攻撃が徐々に当たり始めた。

 

 その事にナイト・ドーパントは疑問に感じた。

 

 それはやがて、予感は確かに的中した。

 

「まさか」

 

 それは徐々に、ナイト・ドーパントの行動パターンがチェイサーと滅が読んでいた。

 

 最初は偶然だと思ったが、それが何度も続き、そして確信に至る。

 

 ナイト・ドーパントの盾には、小さな穴が空いていた。

 

 それに気づいた瞬間、ナイト・ドーパントは急いでその場から離れる。

 

 だが

 

「悪いが、ここで終わらせる」

 

「あぁ」

 

『スティングディストピア』『ヒッサツ! フルスロットォル!』

 

 その音声と共に滅の脚から蠍の尻尾がナイト・ドーパントを拘束する。

 

 そして、そのまま滅とチェイサーの元へと引き寄せる。

 

 それと共に、紫色のエネルギーが集った脚を真っ直ぐとナイト・ドーパントにライダーキックを放つ。

 

「ぐっ」

 

 ナイト・ドーパントはすぐに盾を構えて、そのライダーキックを防ごうとした。

 

 だが、2人のライダーキックを防ぐ事ができず、そのままナイト・ドーパントは吹き飛ばされる。

 

「がはああぁ!!」

 

 それによって、ナイト・ドーパントは爆散した。

 

 それが戦いの決着となった。

 

 

 

【灰色のアッシュ】

 

 灰色の怪人であるアッシュ。

 

 それと相対するのは、祝福の記憶を宿るドーパント、ブレッシング・ドーパントと相対する。

 

「ここは、俺が知っている風都とは違う?」

 

 そう、アッシュは首を傾げる。

 

「お前が誰だが分からないが、私達の邪魔をするならば」

 

 アッシュの疑問の声を無視するように、ブレッシング・ドーパントはそのままゆっくりと近づく。

 

 その動作に対して、アッシュも一歩前に足を踏み出す。

 

 そして、二人は互いの拳をぶつけ合う。

 

 互いに拳を突き出し合い、そのままぶつかり合うと両者は後ろに吹き飛ばされた。

 

 吹き飛んだ両者であるが、アッシュはすぐに立ち上がる。

 

 一方でブレッシング・ドーパントの方はダメージがあるのか膝をつく。

 

「結構力はあるようね。

 

 だけど」

 

 その言葉を呟くと共に、ブレッシング・ドーパントのダメージが受けた部分が光る。

 

「私は祝福されている。

 

 どんなダメージもね」

 

 そう笑みを浮かべながら、ブレッシング・ドーパントは手を振るう。

 

 すると、先ほどまであった傷跡が消えていた。

 

「NEVERとして元々備わっていた不死と、ブレッシングの祝福。

 

 それが合わさる事によって、まさしく不死」

 

「なるほど、だったら、単純な事だな」

 

 その言葉を呟きながら、アッシュは再び走り出した。

 

 それを見たブレッシング・ドーパントもまた、動き始める。

 

 そして再び両者の拳がぶつかる。

 

 今度はお互いに後ろへと吹き飛ぶ事はなかった。

 

 それは、アッシュがブレッシング・ドーパントを掴んでいたからだ。

 

「なに?」

 

「祝福しても、NEVERとかで回復しても。

 

 それが治る前に叩くだけだ」

 

 その言葉と共に、アッシュは先程と同じ箇所を何度も殴る。

 

 それは単純な攻撃ではあるが、確実にダメージを与える。

 

「くっ、このっ!」

 

 そのダメージを回復させながら、なんとかアッシュの腕を振りほどこうとする。

 

 しかし、相手の方が力が上なのか振り払う事が出来ない。

 

「これで終わりだ」

 

 そう言って、アッシュは最後の一撃を放つために腕を引く。

 

 それに反応するように、ブレッシング・ドーパントも抵抗しようとするが、間に合わない。

 

 まるで灰色のエネルギーが纏うように、蹴り上げる。

 

 その一撃は確かに必殺だった。

 

「があぁぁ!!」

 

 そして、ブレッシング・ドーパントはその攻撃を耐えきる事ができなかった。

 

 それは二つの回復力を持ってしても。

 

「あっあぁ」

 

 

 

【マリス・フライングバットレス】

 

「さて、ここがどこかなのか、分からない。

 

 だが」

 

 そう、そのライダー、サウザーはこの状況は未だに何が起きているのか分からずに首を傾げる。

 

 しかし、そんなサウザーに対して、その存在を見つめる。

 

 身体は緑色の不気味な雰囲気を漂わせるドーパント、グラビテーション・ドーパントはゆっくりとサウザーに近づく。

 

「ここにいる人々を守る為に、戦わないといけないようだ」

 

 その言葉と共にサウザーは刺突に特化した槍に、剣の刃先を組み合わせたような見た目の武器であるサウザンドジャッカーを構える。

 

 それに対して、グラビテーション・ドーパントはサウザーに向けて、重力波を放つ。

 

「なるほど、重力を操るか」

 

 その攻撃にサウザーは呟くと同時にサウザンドジャッカーで切り払うように切り裂き、攻撃を相殺する。

 

 そして、グラビテーション・ドーパントの攻撃を防いだ後に、サウザーはその武器を振るう。

 

「ふっ!」

 

 鋭く息を吹き出す声と共に振るわれたサウザンドジャッカーから斬撃が放たれ、それを喰らったグラビテーション・ドーパントは大きく吹き飛ばされる。

 

 しかし、それと共にサウザンドジャッカーに変化が起きる。

 

 そのサウザンドジャッカーは表裏を裏返しになっていた。

 

「まさか、重力を操るとは、ここまでとは」

 

 その言葉と共にサウザーは瞬時にサウザンドジャッカーを捨てる。

 

 それと共にサウザンドジャッカーは完全に使い物にならない。

 

「手に触れるだけでも危ないか」

 

 サウザーはそのまま構える。

 

 だが、そうしている間にも、グラビテーション・ドーパントは重力を操作し、瞬く間にサウザーへ腕を振れようとする。

 

 触れるだけでも死は確実。

 

 だからこそ、サウザーはその攻撃を冷静に避ける。

 

 しかし、その瞬間、グラビテーション・ドーパントの腕が大きく変化し、まるで触手のように伸びる。

 

 それは鞭のように伸び、そのままサウザーへと襲い掛かる。

 

「はっ! ぐっ」

 

 攻撃を避けながら、サウザーはグラビテーション・ドーパントの攻撃を避ける。

 

「くそっ、厄介な奴だ」

 

 サウザーは毒づくも、その間にもグラビテーション・ドーパントの猛攻が続く。

 

「だが、その脅威となるのは、その腕だ」

 

『two powerful hornsAbility!』

 

 その音声が鳴り響くと共に、そのグラビテーション・ドーパントの手に向けて、二つの角を貫く。

 

 そのまま、グラビテーション・ドーパントは地面に腕が釘刺しになる。

 

「っ!」

 

「さて、これで終わりだ」

 

『サウザンドデストラクション!』

 

 それと共に、腰にあるベルトに手を伸ばす。

 

 そして、そのままグラビテーション・ドーパントに向けて、エネルギーを右足に集め跳び蹴りを放ち、更に踏み込むように連続キックを叩き込む。

 

 それにより、グラビテーション・ドーパントは爆散する。

 

「……さて、まさかここは、別の世界なのか?」

 

 そんな疑問と共に、周りを見渡す。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

AtoZ-07

あけましておめでとうございます!
去年は多くの人に応援して頂き、本当にありがとうございます。
今年も、様々な小説を書いていきますので、応援お願いします。
そして、今回の話は、影達の出番はなく、照井の戦いです。


「どうやら、仲間達がやってくれたようだ」

 

 そう言いながら、照井は自分の手元にあるアクセルメモリを確認する。

 

 エターナルメモリの能力によって、無効化されていたアクセルメモリがまるで命を吹き返したように起動したのを確認する。

 

「まさか、大道が、いや、あいつがそんな簡単にやられるはずがない!!」

 

 そう言いながら、NEVERのメンバーの1人であり、照井と同じ種類であるアクセルメモリを持つ男だった。

 

「だったら、すぐにあいつの元へと行く!!」『アクセル』

 

 その叫び声と共に、そのNEVERの1人である男はそのままアクセルメモリをそのまま自分の身体に押し刺す。

 

 それによって、その男の身体はドーパントへと変わっていく。

 

 アクセル、つまりは加速の記憶を宿すガイアメモリの力を引き出したその姿は一言で言えば、バイク人間だ。

 

 身体の各部には様々なバイクのパーツが張り付いており、まるで加速する為だけに作られた身体。

 

 そう表現するべき存在、アクセル・ドーパントが現れる。

 

「悪いが、お前を左達の元へは行かせない」『アクセル』

 

 その姿を見た照井もまた、自身のアクセルメモリを起動させる。

 

 そのまま腰に装着したアクセルドライバーに装填すると共に

 

「変……身!」

 

 その言葉と共に、照井の姿もまた仮面ライダーアクセルへと変わる。

 

 二つのアクセルメモリを使った、仮面ライダーとドーパント。

 

 その戦いの火蓋は、今

 

「さあ……振り切るぜ!」「イグニッション! レッドゾーン!!」

 

 切って落とされる。

 

 まず、動いたのは照井だった。

 

 その手に持つエンジンブレードと共に真っ直ぐとアクセル・ドーパントに向かって突く。

 

 だが、アクセル・ドーパントは瞬時にその攻撃を避ける。

 

 同時に行ったのは

 

「オラオラオラ! オレはパンチも音速を超えるぜ!!」

 

 ラッシュだった。

 

 目にも止まらないパンチが連続して繰り出される。

 

 それを照井は何とか避け続ける。

 

「この俺の攻撃を避けただと?」

 

 驚きの声を上げると同時に、アクセル・ドーパントは拳を止める。

 

「中々やるじゃねえか。なら今度はこっちから行くぞ!」

 

 そう言うと共に、アクセル・ドーパントは再び動き出す。

 

 それに対して、照井もまた冷静に見つめる。

 

「確かにお前のスピードは俺よりも速い」

 

 実際、照井が使うメモリよりも、アクセル・ドーパントが使用するメモリの方が性能は確かに上だった。

 

 だが

 

「加速するのは一瞬で良い」

 

 その一言と共に、照井はその言葉と共に攻撃を仕掛けてきたアクセル・ドーパントに対して、回し蹴りを放つ。

 

「がっ!」

 

 アクセル・ドーパントはその攻撃をまともに喰らい、吹き飛ばされた。

 

「なっ何がっ!」

 

「ふぅ」

 

 照井はそのままレバーを何度も引くことで、照井の身体に炎が、エネルギーがゆっくりと灯していく。

 

「俺はっ俺はあぁぁあ!!」

 

 アクセル・ドーパントはそのまま真っ直ぐと、照井に向かって突撃を行う。

 

 それに対し、照井は無言のまま、右側のレバーを回す。

 

『アクセル! MAXIMUMDRIVE!』

 

「お前の技、真似させて貰う!!」

 

 同時にアクセル・ドーパントの顔面にスロットルを吹かした勢いの高速パンチを何発も叩き込み、空中に打ち上げる。

 

 それに対して、アクセル・ドーパントは何も反応する事ができなかった。

 

 それと共に前方へ跳び、後ろ回し蹴りをアクセル・ドーパントに繰り出す。

 

「あっあぁ、なかなかにっ良い速さだぁ」

 

 その一撃を食らい、満足に呟きと共に、アクセル・ドーパントは地面に倒れる。

 

 それと共に、その身体からメモリがアクセルメモリが弾かれる。

 

 それと同時に、アクセル・ドーパントの身体は徐々に変化していき、その姿を人間の姿へと変えていく。

 

「ぐっ、くそぉ……」

 

 アクセル・ドーパントであった男は倒れながらも悔しそうな声を出す。

 

「さてっ」

 

 そうしていると共に、後ろからの視線を感じる。

 

 そこには、トリガードーパントが既にこちらに銃口を構えていた。

 

「まだ、終わりそうにないな!」

 

 その言葉と共に、戦いが再開される。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

AtoZ-08

 翔太郎さんとフィリップさんは大道を追っていた。

 

 その間、俺は、目の前にいるシディこと、ファング・ドーパントと戦っていた。

 

「はあぁぁ!!」

 

 元々、翔太郎さん達が使用するメモリの中でも一際強力なメモリであるファングメモリ。

 

 その能力を最大限に発揮されている。

 

「だからこそっ、本当に厄介だ!!」

 

 ファング・ドーパントは、その腕には鋭い刃で俺に向かって、襲い掛かる。

 

 俺はそれに対して、その手にあるナスカブレードで受け流す。そして、そのままの勢いを利用して、カウンターを放つ。

 

 しかし、それは、簡単に受け止められてしまう。

 

「くっ」

 

「お前1人で、俺に勝てるかっ!」

 

「あぁ、だからこそ!」

 

『ナスカズー!』

 

 その音声が鳴り響くと共に、俺は瞬時にナスカズーへと変わる。

 

 そして

 

『ジラフ』

 

 その音声が鳴り響くと同時に右腕にはキリンを思わせる巨大なパイルバンカーで出来た武器が出現する。

 

 それを見た瞬間、ファング・ドーパントは距離を取る。

 

『カメレオン』

 

 しかし、それに対して、パイルバンカーを思いっきり投げ飛ばすと同時にカメレオンウィップでそのままファング・ドーパントの脚に巻き付き、そのまま引き寄せる。

 

 同時に蹴り飛ばす。

 

「ぐっ」

 

「これでっ」

 

 例え、向こうがメモリの性能は高くても。

 

「ならば!!」

 

 同時にシディが手に取ったのは

 

「なっエクストリームっ」

 

「ぐっ!!」

 

 それを自分の身体に押し刺す。

 

 それと共に、ファング・ドーパントの身体は大きく変化する。

 

 巨大な白い骨の獣の怪物へと変わり、真っ直ぐと襲い掛かる。

 

「そんなのっありかよっ!」

 

 そう言いながら、ファング・ドーパントは襲い掛かる。

 

 その力は先程よりも強くなっており、まともに食らえば、確実にやられるだろう。

 

 しかし、だからといって、ここで諦めれば、そこで終わりなのだ。

 

「だったら、影!」

 

「なんだ?」

 

 それと共にヒサメの声に首を傾げる。

 

「あれをやるしかないよ!」

 

「あれって、1度もやった事ないんだぞ!」

 

 これまで行った事のない方法。

 

「だけどっ、今はそれしかない! 

 

 そうでしょ!」

 

 そう、ヒサメは言う。

 

「……あぁ、そうだな。

 

 だったら、少しやるしかないな!!」

 

 その言葉と共に俺はすぐに走り出す。

 

『チーター』

 

 俺はそのままチーターアーマーを身に纏うと共に、真っ直ぐと走りながらファング・ドーパントエクストリームに向かう。

 

 その動きを既に見えた様子で俺に向けて、攻撃を仕掛ける。

 

「よっと!」

 

 そのままファング・ドーパントエクストリームの腹部へと潜り込む。

 

 俺は瞬時にアーマーを分離させる。

 

 その脚のアーマーは壁に突き刺さる。

 

「まだまだぁ!!」

 

『バット!』

 

 俺は次にバットアーマーを身に纏い、空を飛ぶ。

 

 それによって、腹部を殴る。

 

「ぐっまだぁ!」

 

 ファング・ドーパントエクストリームは、そのまま俺に向かって爪を振り下ろす。

 

 だが、それと共に

 

『トータス!』

 

 トータスアーマーを身に纏い、左腕で受け止める。

 

「もう、お前に勝ち目はない!」

 

「勝ち目だったら、あるさ。

 

 仕掛けは十分にな!」

 

『ウルフ!』

 

 その音声と共に、ウルフアーマーを身に纏う。

 

 そして

 

『ズー! MAXIMUMDRIVE!』

 

 鳴り響く音声。

 

 そして、その音声と共に、これまで散らばっていたアーマーが真っ直ぐと俺の元に集っていく。

 

「なにっ!」

 

 それはファング・ドーパントエクストリームを吹き飛ばす。

 

 同時にこれまで壁などに突き刺さったアーマーが集っていく。

 

 チーターアーマーの脚、トータスアーマーの左腕の盾、ジラフアーマーの右腕のパイルバンカー、バットアーマーの翼。

 

 そして、それらを司るようにウルフアーマーが胴体とマスクとなる。

 

 これこそ、ズーメモリを最大限に発揮した姿。

 

「名付けて、仮面ライダーナスカズー・マキシマム!」

 

 この姿は、本当にフルパワーで発揮した姿。

 

 ズーメモリの複数の動物のメモリを使う能力もあり、様々な戦いに対応できる。

 

 だけど

 

「ぐっ、やっぱり身体の負荷は大きいな。

 

 けど、これで対抗できるな!!」

 

 その言葉と共に、俺は真っ直ぐとファング・ドーパントエクストリームに向かっていく。

 

 それを見て、ファング・ドーパントエクストリームも動き出す。

 

 互いに高速移動しながら、攻撃をぶつけ合う。

 

 俺の攻撃をドーパントは受け止める。

 

 それに対して、ドーパントは攻撃を繰り出す。

 

 だが、それを俺は受け流す。

 

 そのまま、カウンターとして、パイルバンカーを叩き込む。

 

 しかし、それはドーパントに避けられた。

 

「お前がそこまで大道の為に戦うのは、少しばかり分かる! 

 

 けどな、ダチを止める為に、少しでも動きやがれ!!」

 

「お前に何が分かる!」

 

「分かるかよ! 

 

 けどな、これ以上、お前に罪を重ねさせないよ!!」

 

 その言葉と共に、風都タワーから飛び出しながら、真っ直ぐとファング・ドーパントエクストリームに向けて構える。

 

『ズー! MAXIMUMDRIVE!』

 

 その音声と共に、俺達はズーのエネルギーを身に纏いながら、真っ直ぐとファング・ドーパントエクストリームに向かって、飛び蹴りを喰らわせる。

 

 それと同時に、ファング・ドーパントエクストリームも攻撃を仕掛けてくる。

 

「はああぁぁ!!」

 

 お互いの攻撃をぶつけ合いながら、地面に叩きつけられる。

 

 そして、地面で転がりながらも体勢を整えて、お互いに睨み合う。

 

「はぁはぁ」

 

 だが、それと共に同時に変身が解除される。

 

「ふぅ、どうやら、ここまでのようだな」

 

 その言葉と共に、シディの身体は崩壊する。

 

 それは、NEVERの死の瞬間だった。

 

「どうやら、ここまでのようだな」

 

「そうだな」

 

 そう言いながら、俺達は互いに見つめ合う。

 

「……俺はただ臆病になっていただけかもな。

 

 記憶を無くして、見捨てられるのを」

 

「見捨てられるのは、確かに嫌かもしれないな。

 

 だけど、それでもな」

 

「あぁ、分かっているさ。

 

 最後にそれを知れて良かった」

 

 その言葉と共にシディは笑みを浮かべる。

 

「もしも、お前達と一緒にいられたら。

 

 そんな事を考えてしまったよ」

 

「イケメン枠かよ」

 

「イケメン? 

 

 それは一体どういう事だ?」

 

「天然かよ」

 

 そう俺は思わず言ってしまう。

 

 それに苦笑するように、シディもまた笑みを浮かべる。

 

「あぁ、本当に、穏やかに」

 

 その言葉を最後にシディは塵となった。

 

「あとは、頼みましたよ」

 

 それを見届けた後、真っ直ぐと、俺は風都タワーで行われるWとエターナルの戦いを見届ける。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

AtoZ-09

風都タワーで行われているWとエターナルの激闘。

 

それは、遠くから見ている俺達でも分かる程に、かなりの激戦だ。

 

翔太郎さんとフィリップさんの二人は、次々とメモリを入れ替えて、その攻撃の手を読ませないように行う。

 

今回の戦いを通してなのか、二人の絆はさらに強くなり、そして、エターナルを追い詰めていく。

 

しかし、エターナルは、最後の手を使った。

 

『ゾーン!MAXIMUMDRIVE!』

 

それと共に、全てのT2メモリが一気にエターナルの元へと集まった。

 

同時に、その身体に纏うオーラははっきりと言ったら異常だ。

 

「あれが、本当に、一人の人間で扱えるのかよっ」

 

それは、先程まで俺達が行ったズーマキシマムとは比較にならない程のオーラだった。

 

風都の全てを震わせる程の迫力があり、実際に、俺達はその場で動けない程だ。

 

そう考えている間にも、エターナルは風都タワーのシンボルの風車に乗る。

 

「メモリの数が違う…終わりだぁ!」

 

一撃で風都タワーを一刀両断にするほどの威力を持つ。

 

同時に、その一撃に吹き飛ばされた二人はそのまま地面へと落ちていく。

 

まさに、絶体絶命の状況。

 

それを遠くから見守っていた風都の皆は、

 

 

「仮面ライダー!!」

 

亜希子所長の叫び声をきっかけに次々とこの街の希望の名を呼び始めた。

 

 

「仮面ライダー!!」

「仮面ライダー!!」

「仮面ライダー!!」

「仮面ライダー!!」

「仮面ライダー!!」

「仮面ライダー!!」

「頑張って仮面ライダー!!」

「頑張れ仮面ライダー!!」

「仮面ライダー!!」

 

 

街中の到る所で人々の声援は衰えを知らずに増していく。

 

「これは」

 

同時に、霧彦は何かに気づいた。

 

それは、少し小さな変化だ。

 

だが、それは、確かな物だった。

 

その瞬間、街に変化が起こった。

 

始めこそはいつもと変わり映えがなかったが、それは少しずつ、そして段々と大きく変わっていく。

 

街中の風車という風車が全て、突然街に吹き荒び始めた大きくて強い風に激しい回転を始めたのだ。

 

「これは」

 

「どうやら、この街の風は、私達の想像以上の力があるようだ」

 

その霧彦の言葉に俺達は首を頷く。

 

その言葉に合わせるように、wの姿も大きく変わる。

 

「みんな!風だ・・・風都の風が・・・!!」

 

「僕たちに、力を!」

 

Wは中央部分が黄金へと変色し、背中からは風車を模した三対の大翅が生えた姿となり。

 

それは、確かにエターナルと似ていた。

 

一人の人間ではとても出せるような力ではない。

 

しかし、それは、一人だけではなかった。

 

翔太郎さんとフィリップ。

 

それに亜樹子所長に、照井さんに俺達。

 

そして、次元を越えた仮面ライダー達。

 

何よりも風都の街の人々が。

 

全ての人々の力を一つに集めた力。

 

背中の三対の大翅と大翼で大空を飛翔し、ただひたすらに上を目指す。

 

「小賢しいマネを!」

 

それに対し、エターナルは、身体に纏っていたオーラを全て攻撃エネルギーに転換して

 

巨大な一個のエネルギーの塊として打ち撃ちだしたのだ!

 

しかし、Wは華麗に降り注ぐ瓦礫を避けながら飛行し、さらには落下途中の巨大風車をも踏み台にしてジャンプすることでより勢いのある飛翔を行う。

 

「ならば、ここは!!」

 

俺は同時にナスカメモリを取り出す。

 

「もう一仕事だぜ!」

 

『ナスカ!MAXIMUMDRIVE!』『スティングディストピア』『ヒッサツ! フルスロットォル!』『サウザンドデストラクション!』

 

鳴り響く音声と共に、風都に降りようとしていたエネルギーに向かって、俺達は飛ぶ。

 

風都に襲い掛かろうとしていたエネルギーの塊を、俺と平行世界の仮面ライダー達と共に蹴り飛ばす。

 

『はああぁぁぁぁ!!!』

 

既にパラレルメモリの効力が切れそうになっているのか、少しずつ平行世界の仮面ライダー達が消えていく。

 

それでも、俺達はそのまま真っ直ぐと、エネルギーの塊を消し飛ばす。

 

そして、それは同時にエターナルが倒された瞬間でもあった。

 

「ふぅ」

 

身体に来る疲労と共に、見つめた。

 

風都を震撼させた時間。

 

それは俺が疲労で目を細めると共に、終わりを告げた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

AtoZ-09

エターナルを率いるNEVERとの激戦の夜。

 

俺達は、空に浮かび上がる花火を、鳴海探偵事務所のメンバーと一緒に見ていた。

 

亜樹子所長とヒサメは何時の間にか着物を身に纏っており、夜空に浮かぶ花火を見ていた。

 

「なんというか、あんな戦いがあった夜とは思えない程だな」

 

NEVERとの戦いによって、風都の市民の死傷者は奇跡的にだが、いなかった。

 

風都タワーを制圧した時でも、NEVERのメンバーが警備を行っていた人達を殺さなかったのは、後の証言によれば、シディが止めてくれたおかげだと判明した。

 

「あの、シディという人。

本当はとっても良い人なんだと、私は思う」

 

「友情は確かに強い力を生む。

だけど、それは時として誤った道へと進ませる」

 

友達の為だったら、どんな困難にも立ち向かえる。

 

王道漫画などでよく見かける台詞だが、それは同時に友情の為だったら、どんな残酷な事もできる。

 

大道から見放される事を恐れたシディは、彼の為に自分の心情を無視し、NEVERとして最後まで戦った。

 

だが、その中でも、彼の良心が訴えたのか。

 

死傷者を出さないように尽力したのが、その証拠だ。

 

「影は、これからどうするの?」

 

「どうするって?」

 

「もう、来年には、私達、高校卒業するよ。

その時、影は、怪盗は」

 

「・・・どうなんだろうな」

 

俺は確かに怪盗として今も鳴海探偵事務所で働いている。

 

探偵の視点だけでは分からない事も、怪盗だからこそ救える手があると。

 

だからと言って、このまま続けても良いのか、分からない。

 

「とりあえず、就職先が困った時には、鳴海探偵事務所って考えているけどな。

ヒサメはどうなんだ?」

 

「私は」

 

そう言ったヒサメは空を見上げていた。

 

「・・・分からない。

けど、もしも鳴海探偵事務所に就職したとしても、これまで通りかどうかなんて」

 

「そうだな、当たり前だけど、友情がどんな風に変わるのかなんて、分からない。

けど、確かにここにある絆はあるんじゃないの」

 

こうして、賑やかな雰囲気は、今の俺にとっては、本当の家族のようだった。

 

「俺は、本当に、この風都で、鳴海探偵事務所に入れて良かったよ」

 

「そうだね。

私も、この雰囲気は好き。

けど、私は、影と、恋人として一緒にいたい

 

そう、ヒサメは何かぽつりっと何か呟いた気がする。

 

しかし、花火が打ち上がった音と共に、それが聞こえなかった。

 

「なんか言ったか?」

 

「っなんでもない!!」

 

俺が尋ねると、ヒサメは急に顔を赤くした。

 

なんだ、あいつは?

 

「まったく、影、少しは乙女心を勉強しないとね」

 

「一体どういう意味なんだよ」

 

霧彦の奴が何やら言っているようだけど、未だに分からない。




これにて、AtoZ編は終了となりました。
年末年始企画に付き合って頂き、ありがとうございました。
そして、AtoZ編が終わりは、同時にW本編のラストまで一直線。
これからも、応援、お願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

64話

 エターナルによる風都タワーによる占拠した事件からそれ程、時間は経っていない。

 

 未だに、その街に深い傷は残っているが、それでも、俺達の日常は続いていく。

 

 それと同時に、既に分かっていた事だった。

 

 ミュージアムと、組織との本格的な決戦が、既に目の前にある事が。

 

 その依頼は何時ものように突然だった。

 

 それは、博物館の学芸員と名乗る女性、轟響子さんからの依頼だった。

 

 彼女の依頼は恩人である博物館の館長である園崎琉兵衛が発掘現場で無くした大切な物『イーヴィルテイル』と呼ばれている物を見つけて欲しいという依頼。

 

 その依頼内容を聞いた俺達は一つのチャンスだと思えた。

 

 これまで、実体を掴む事ができなかった組織を僅かでも知る事ができる。

 

 依頼という形で悪いが、それは変わらなかった。

 

 さっそく、その発掘現場へと向かった俺達は、すぐに探し始めた。

 

「それにしても、イーヴィルテイル? 

 

 悪魔の尻尾って言うけど、一体何だろう」

 

「さぁな、ガイアメモリなんていう物を作り出した組織のリーダーだからな。

 

 本物の悪魔の尻尾と言われても、なんだか納得できるけどな」

 

「怖い事言わないでよ」

 

 実際には、悪魔よりも恐ろしい人物だと思う。

 

 しかし、それでも今、重要なのは、イーヴィルテイルを見つける事だ。

 

 無くした物、つまりはお宝を探す事に関しては、怪盗として、数々の仕事を行ってきた俺達が得意だ。

 

 その為、翔太郎さん達とは別行動を取りながら、俺達は探す。

 

 そして、ついに見つけた。

 

「あった! これじゃないですか?」

 

「ああ、確かにこれはイーヴィルテイルだね」

 

 発見した物は、古びた箱だ。

 

 その特徴から考えても、おそらくは依頼品であるイーヴィルテイルに違いない。

 

 だが、その時、俺は気付いた。

 

 この場には、もう一人誰かがいる事に。

 

 そう思い振り返ると、そこに立っていたのは。

 

「シャアアァァ!!」

 

「あいつはっ幹部!!」

 

 そこに立っていたのは、スミロドン・ドーパント。

 

 以前、照井さんと共に見た幹部の1人だ。

 

 よく考えれば、敵のボスが探しているのを、幹部が探さない訳がない。

 

「どうする、影?」

 

「そんなの、勿論」

 

 同時に俺はバタフライウォッチャーで一瞬だけ、奴の視界を奪う。

 

「逃げるに決まっているだろ!」

 

『ナスカズー!』『チーター!』

 

 俺はその言葉と共に、瞬時にナスカズーへと変身する。

 

 この状況で幹部と戦っても良いが、何よりもイーヴィルテイルの謎を解くのが最優先だ。

 

 何よりも、この状況で幹部が出てきた以上、これがそれ程大事な物なのはすぐに分かる。

 

 ならば、俺達の今、やるべき事は、これを命懸けで持ち帰る事。

 

 気絶したヒサメを抱き抱えた俺は、そのまますぐに走り出した。

 

 その背後にいた巨大な影に気づかないまま。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

65話

イーヴィルテイルを無事に持ち帰る事ができた俺達。

 

「ガイアインパクト・・・か。組織の最終計画に違いない。そしてそれには、その小箱が必要」

 

それと共に俺達は、敵の最終的な計画を知る事ができた。

 

これまで、後手に回っていたが、ついにこちらから攻める事ができる。

 

「開けてみよう。

鍵だったら」

 

そう、俺は懐か鍵を開ける為の道具を取り出そうとした。

 

「ダメ!乱暴に扱わないで!大事な資料だったらどうするの!?」

 

などと言い、その箱を自分の元に抱き寄せる。

 

「・・・・・・響子さん。園咲琉兵衛は、この街に悪のメモリをばら撒く張本人です」

 

「あぁ、そうだ。そのためなら家族さえ切り捨てる悪魔なんだ!」

 

そう、感情のまま言う翔太朗さんだが、その言葉がフィリップに向けていた事に気付く。

 

「すまん・・・つい・・・」

 

「いいんだ翔太朗。僕も、その事実を受け入れるべきだった。さっき、ちゃんと本を読んでいれば・・・」

 

「フィリップ・・・?」

 

「僕は読めるようになっていたんだ、自分の本を。でも、読めなかった。何故か、怖くて・・・」

 

その言葉に俺達は何も言えなかった、

 

記憶喪失だったフィリップさんにとって、その記憶はこれまで何よりも欲していた記憶だ。

 

しかし、今、様々な恐怖が目の前にある中で、それはフィリップさんから見ても、まさにパンドラの箱に等しい。

 

「無理もねえ・それだけお前には重い一冊なんだ」

 

翔太朗がそう言い、慰める。

 

その言葉に、その場にいた全員は同意するように頷く。

 

だが、既にその姿はなかった。

 

「もう、いない!!」

 

「くそっ、すぐに追うぞ」

 

そう言い翔太郎さん達はすぐに走り出した。

 

「これまでの行動を考えても、あの人はたぶんっ!」

 

同時に俺は彼女のこれまでの行動を思い出すと共に、おそらく向かっただろう場所へと走る。

 

そこは風都博物館。

 

響子さんの勤務先であり、ミュージアムの首領・園咲琉兵衛が持つ拠点の一つである。

 

響子さんは、琉兵衛に対して疑問をぶつける場面だった。

 

「館長、お聴きしたいことがあります。・・・貴方は――」

 

「見たまえ轟君。この地球で絶滅した生物は数知れない」

 

琉兵衛は無理やり話をズラし始めた。

 

いや、いきなり本題にはいってるのやもしれない。

 

「人類もこのままいけばその例外ではないだろう。だが、人類が未来永劫地球の種となる夢がとうとう叶う。地球と一つになるのだ!ハハハハハハハハ!」

 

そう、彼は自分の言葉だけ言い終えると共に、そのままゆっくりと響子さんの方へ向く。

 

「・・・・・・・・・」

 

「その箱は、その為に必要なんだ。さぁ、渡しなさい」

 

「渡しちゃダメだ響子さん!」

 

そこへ翔太朗さん達が乱入する。

 

「やぁここで会うのは二度目だね、左翔太朗君。そっちの君達は文音――否、シュラウドの操り人形君達か」

 

「黙れ!そう簡単にはお前の思い通りにはさせんぞ!」

 

「そうだ。この街の涙は俺たちが拭う」

 

その言葉と共に、構える。

 

だが、翔太郎さんの様子が僅かに変化した。

 

「翔太郎さん?」

 

「わ、わからない・・・急に心が、凍えるような」

 

そう、その場で怯えている様子だった。

 

「左君は私がミュージアムの頭目と知って尚その核心に触れようとしなかった。違うかね?」

 

「・・・・・・・・・」

 

翔太朗さんに返す言葉は無い。

 

「君の体は、私への恐怖で無意識に、我が屋敷との接触をさけていたのだ」

 

「恐怖?

まさかっ」

 

「そう、テラーだ。

さすがは弾空寺君の孫だね。

君には、私も注目していたんだけどね」

 

「なに?」

 

そう、俺に目を向ける。

 

「ズーメモリ。

あれは元々、君に渡す予定のメモリだった。

数々の事件を通して、絶望と恐怖。

それらが合わさった事によって、君はこの組織の新たな幹部になる予定だった」

 

「俺がだと?」

 

それはさすがに予想はできなかった。

 

「だが、その中で予想外だったのは、ナスカメモリへの適合率の高さだ。

ナスカメモリには、ナスカの地上絵を始めとした様々な動物の絵が刻み込まれていた。

ズーメモリと似た点がそれだったのか、君はおそらくはこれまでにない適合者だったんだろう。

だから、シュラウドはそれに目をつけた」

 

「つまり、俺の行動は始めからあんたの手の平の上という事か」

 

「そうだね。

正直に言えば、最初の一ヶ月は。

シュラウドは復讐の目を向けていたからね。

だからこそ、君の相棒は想定外だった」

 

「ヒサメ」

 

俺は思わず、その名前を呟く。

 

「彼女との出会いは偶然だった。

しかし、その偶然が君の心を人間に戻し、そして彼らへと近づけた。

データを取るという意味で、それ以上はできなかったのは残念だがね」

 

「これまで、俺の前に突然現れた奴らは全部」

 

「君が、どこまでメモリを最大限発揮できるのかを見る為だ。

だが、ガイアインパクトが行われる以上、もう既に必要はない。

ミック」

 

『キシャーーー!!』

 

「ヒャッ!」

 

スミロドン・ドーパントは響子さんを追いかけ始めた。

 

「いかん!」

 

『アクセル』

 

同時に照井さんはそのまま彼女を助ける為に向かう。

 

「翔太郎さんはっ、照井さんの元にっ」

 

「影っお前はっ」

 

「俺はここで時間稼ぎしますっ」

 

ヒサメを読んで、ナスカズーで対抗するべきかもしれないが、それは無理かもしれない。

 

テラーがどこまで凶悪な能力か分からない以上はできない。

 

「最後に君の性能を少し見させて貰うか」『テラー』

 

「っ」『ナスカ』

 

俺はすぐにナスカメモリを取りだし、そのまま変身する。

 

それと共に、俺は真っ直ぐとテラー・ドーパントへと変身した園咲琉兵衛に近づく。

 

『影っ、その泥に触れてはいけない!

直接、ダメージが来る!』

 

「分かったっ」

 

俺はすぐにマフラーを翼のようにすると共に、真っ直ぐと飛び、ナスカブレードを振り上げる。

 

それに対して、軽く受け止める。

 

「残留思念というべきか。

なるほど、精神体だが、また君に会えるとは思わなかったよ、霧彦君」

 

『義父さん。

私は、この街、風都を守る為に、あなたに立ち向かう!!』

 

「それは結構だ。

だが、それはできない相談だ」

 

その言葉と共に、その泥は俺ではなく、なんと霧彦に向けて放たれた。

 

「なっ」

 

『がああぁぁぁぁ!!!』

 

「ガイアメモリは未だに不思議だ。

まさか、死者の魂をこうして納めるとは。

だが、それ故に、私の攻撃は君にとっては天敵のようだ」

 

そう、まるで軽く握り絞めるように、霧彦を握り潰した。

 

「霧彦っなっ!!」

 

同時に、俺の変身は解除された。

 

何が起きたか、分からない間に、俺はそのまま吹き飛ばされる。

 

「何がっ」

 

『どうやら、霧彦君は既にメモリの一部となっていた。

その為、彼を殺せば、必然的にメモリの機能は失われる。

つまりは、君はもう仮面ライダーに変身できない』

 

「それでは、私はもう行かなければならないのでね。

失礼するよ」

 

その言葉と共にテラー・ドーパントは、その場で姿を消した。

 

「霧彦っ霧彦!!!」

 

そう、俺は、これまで多くの戦いを乗り越えてきた相棒の名前を叫ぶ。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

66話

完全敗北。

 

そうとしか言えない状況だった。

 

Wである翔太郎さんはテラーの恐怖によって、動きたくても動けない状況になっている。

 

アクセルである照井さんは、テラーが放ったテラードラゴンによって、その身体はボロボロとなり、今も危機的状況は続いている。

 

そして、ナスカである俺は、自分の力であるナスカメモリを使用する事ができなくなった。

 

既に鳴海探偵事務所は崩壊の危機だった。

 

どうしようもなく、反撃する事はできなかった。

 

「ズーで、戦う事はできないの?」

 

「ズー単体で使うのは、無茶だ。

あれは、ある意味、ナスカメモリが制御しているからこそ、十全に使える。

今、それを単体では」

 

何も出来ない。

 

そして、何よりも、今、翔太郎さんの心に突き刺さっているのは、相棒であるフィリップさんは既に死んでいるという事。

 

亜樹子所長から聞いた話だと、フィリップさんは既に死んでいた。

 

しかし、今の彼は地球の記憶によって、実体を持って、復活する事ができた。

 

だが、そんな彼も、もうすぐ死んでしまう。

 

その状況の中で、俺達は何もできないのか。

 

悩んでいる時だった。

 

事務所を開く音が聞こえる。

 

見ると、そこには依頼者である響子さんがいた。

 

「響子さん!」

 

そこへ、袋を手に、汗ビッショリになって、響子が事務所に訪れる。

 

「箱の中身よ!・・・evil tail」

 

「園咲家から、持って来ちゃったの?

どんだけ行動力あんのよ。という事は、ガイアインパクトとやらは阻止した?」

 

亜樹子所長の言葉に首を横に振る響子さん。

 

「勘違いだったみたい」

 

響子はテーブルを叩く。

 

「だって、それが何かの役に立つとは思えないもの!!」

 

亜樹子は試しにと、袋の中にあるイーヴィルテイルを確認した。

 

「翔太朗君、見て」

 

そして、それを翔太朗さんに見せる。

 

「これは・・・?」

 

「どういう意味だろうね?」

 

イーヴィルテイルの正体。

それは余りにも、悪の組織の計画とは無縁としか思えず、しかしながらも園咲家にとっては宝物となりえる代物だった。

 

「だけど、もしもこれが重要な物だとしたら」

 

同時に、俺が思考の海の中に入っている間にも、翔太郎さんに電話がかかっていた。

 

それは、フィリップさんからの通話であり、その電話の先で、何かを伝えた。

 

それが、意味をするのは何か、俺は自然と分かった。

 

同時に未だに恐怖に支配されているはずの翔太郎さんは、身体をなんとか動かす。

 

「行くぞ」

 

その一言だけ聞くと、俺達はすぐに飛び出す。

 

「それで、どうするんですか?」

 

「決まっている。

相棒達を救う。

この状況は、確かに絶望的だ。

だが、逆転の一手にもなる」

 

その言葉と共に、俺達が辿り着いた所。

 

そこは、まさにガイアインパクトが行われている場面だった。

 

「そうはさせない」

 

俺はそう叫ぶと共に、こちらを見る。

 

そこには既に地球の記憶と一体化しようとしているクレイドール・ドーパントエクストリームと園崎琉兵衛はこちらを見る。

 

「邪魔をする気?」

 

「あぁ、そうだ!」

 

翔太朗さんは活力満ちた声で返事する。

 

「ハハハハ!よく私の前に立てたな左君」

 

「なに、簡単なことだ、こいつの謎を知りたかっただけさ」

 

翔太朗さんは一本の古びた刷毛をとりだす。

 

「イーヴィルテイル!?」

 

琉兵衛は確認のため、小箱を開ける。

 

「何時の間に・・・?返せ!私の家族だ!」

 

「家族?これが家族だっていうの?」

 

亜樹子所長の呆れた表情とは裏腹に、翔太朗さんは刷毛の取っ手に書かれた文字。

 

園咲家の人間の名前が書かれたそれをまじまじと見る。

 

「あなたはは今迄目的を果たす為、家族との絆さえ切り捨ててきた。しかしながら、内心ではそんな自分の豹変に恐れたんだ。其れ故に全てが幸せだった頃の象徴であるこのハケを使って、己自身の本音さえも欺き続けた」

 

メモリの毒。

 

それによって、自分自身で理解していながらも、止められなかった。

 

だからこそ、その代用のように、これを使った。

 

「さあ、それを寄越せ。もはや、どんな抵抗も無駄だ」

 

『TERROR』

 

その言葉と共に、奴は、テラー・ドーパントへと変わる。

 

本来だったら、俺達には逆転はできないだろう。

 

だが

 

「この状況こそが」「逆転の時だ」

 

『JOKER』

 

同時に鳴り響く音声。

 

それは、翔太郎さんの持つジョーカーメモリであり、それをWドライバーに装填する。

 

琉兵衛からしたら、無駄な足掻きだと笑うだろう。

 

だが、それは僅かな間だった。

 

『うっ・・・お、お父様』

 

「どうした、若菜!」

 

若菜さんの変化に戸惑いを隠せない様子。

 

『シュラウドが託してくれた、最後の逆襲策のお陰だ

Wの変身システムは知ってるはずだ?僕の意識をメモリに載せて、翔太朗達に飛ばした』

 

そう、Wへと変身したフィリップさんが、テラー・ドーパントに説明する。

 

「そんなことをすれば、若菜はメインプログラムを喪失した状態になる!」

 

「そして」

 

俺はそのままナスカメモリを投げる。

 

それはまるでブーメランのように、真っ直ぐとクレイドール・ドーパントエクストリームへと向かう。

 

同時に、その光に当てられたナスカメモリは光を取り込むと共に、俺の手元へと戻る

 

それと共に

 

『ナスカ』

 

鳴り響く音声。

 

同時に、俺の隣には

 

『まったく、無茶をするね、君は』

 

「なっ、霧彦君だとっ!」

 

俺の隣に、霧彦が立っていた。

 

『霧彦はナスカメモリの一部となっている。

ならば、そのデータを補うように入れば、彼自身も蘇り、再びナスカメモリを使う事ができる』

 

「ある意味、あんたのおかげで怪盗として、もう一度戦える」

 

「なるほどね」

 

そう言いながら、後ろから聞こえた声に振り向くと、そこにはウェザー・ドーパントが立っていた。

 

『お姉様っあの時、確かにっ』

 

「先生が教えてくれた霧による幻覚よ。

けど、これだったら、私にもその力を手に入りそうね」

 

「悪いけど、あんたにも、この力を渡さない」

 

「退きなさい、過去の亡霊」

 

『悪いが、君を止める。

例え、元嫁だとしても、この街を守る為に、止める』

 

「亡霊如きが生意気な」『ウェザー』

 

「翔太郎さん、フィリップさん、そっちは頼みます」

 

「あぁ、派手にかませ」

 

そう、翔太郎さんはテラー・ドーパントに。

 

俺は目の前にいるウェザー・ドーパントに。

 

園崎家での最後の戦いが今、まさに始まる。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

67話

ナスカメモリの力を取り戻した俺は、そのまま目の前にいるウェザー・ドーパントに変身している園咲冴子と戦いを行っていく。

 

ウェザー・ドーパントがその手に持つ万能チェーン武器「ウェザーマイン」から雷の刃を作り出していた。

 

そんな雷の刃と、俺の持つナスカブレードが火花を散らす。そして、戦いの中で、ウェザー・ドーパントは口を開いた。

 

「あなたもしつこい人ですね……どうしてそこまでして戦おうとするのかしら!!」

 

そう言い、その雷の刃を俺に向けて振るってくる。

 

それを俺は、ギリギリのところで避けた。だが、その一撃だけで地面が大きく割れてしまう。

 

それを見た俺は、冷や汗を流しながら呟いた。

 

ウェザー・ドーパントの攻撃力は、他のドーパントと比べても高い方だ。

 

しかも、今のウェザー・ドーパントには、これまで見た事のない新型ドライバーを使っている為、その力はかつてのウェザー・ドーパントと比べてもかなり高い。

 

だが

 

「俺の相棒が、あんたを止めたいと願っている!

 

俺が尊敬する人達が、あんた達家族を止める為に戦っている!!」

 

そう、俺はナスカブレードに込める力をさらに強くする。

 

「だから、俺は、戦う!!」

 

それと共に、俺はナスカブレードで押し返す。それに驚いた表情を浮かべるウェザー・ドーパント。

 

そして、その隙を逃すことなく、俺はナスカブレードを振り下ろした。

 

ウェザー・ドーパントはそれを防ごうとするが、間に合わない。

 

そのまま、ウェザー・ドーパントは地面に叩きつけられた。

 

「このまま、終わる訳にはいかない!」

 

『マグニファインググラス』

 

その音声が鳴ると共にウェザー・ドーパントは、その身体の一部を凸レンズへと変える。

 

それと共に、そのレンズから真っ直ぐと、俺に向かって熱光線を放つ。

 

天気を操る事ができるウェザー・ドーパントは太陽光を自身で作り出す事ができ、そこから熱光線を放つ事も簡単に行える。

 

そういう意味では、相性は良いだろ。

 

だが

 

「負けられるかよ!!」『ズー!』『コモドドラゴン』

 

その音声が鳴り響くと同時に、俺達はナスカズーへと変身し、その身体にコモドドラゴンアーマーを身に纏う。

 

右腕にコモドドラゴンの頭部を模した籠手を装着し、襲い掛かる熱光線を籠手から放たれる炎で打ち消した。

 

それと同時に、俺は右手を大きく振りかざす。すると、ウェザー・ドーパントはその動きに合わせて吹き飛ばされていく。

 

そして、その勢いのまま、壁に激突していった。

 

その様子を見ながら、俺はすぐに突っ込む。

 

『ラビット』『オウル』『タイガー』

 

瞬時に、俺はラビットアーマーを脚に、オウルをボディに、タイガーを左腕に装着し、ナスカズーマキシマムへと変身する。

 

「さぁ、お前の罪を数えろ!!」

 

『ズーMAXIMUMDRIVE!』

 

叫び声と共に、俺達は真っ直ぐとウェザー・ドーパントに接近する。

 

「ぐっ」

 

ウェザー・ドーパントはすぐに、その力を全て集結したような台風を真っ直ぐと放つ。

 

しかし、同時にラビットの跳躍力で跳び、オウルの翼で俺は真っ直ぐとウェザー・ドーパントの懐に潜る。

 

それと共に両腕にある力を籠め、コモドドラゴンとタイガーの力を込めたライダーパンチを真っ直ぐと放つ。

 

その一撃によって、ウェザー・ドーパントは吹き飛び、地面を転がっていく。

 

「がぁ」

 

それによって、ドライバーは破壊され、それと共にウェザーメモリは破壊される。

 

「それじゃ、連れて行くとする」

 

そう、俺は彼女に近づこうとした。

 

「すみませんが、彼女を連れて行く訳にはいきません」

 

そう言って、現れたのは、白いスーツの男だった。

 

そんな人物は、これまで見た事ない。

 

「誰だ、お前は?」

 

「私ですか?

 

私は加頭順です。

 

まぁ、今は彼女を連れて行くだけですから」

 

「おい、待て!!」

 

俺達はすぐに追うとした。

 

だが。

 

「あなたは逆らいませんよね、ヒサメ」

 

「っ!」

 

聞こえた声、それと共に、俺達の、正確には、ヒサメの身体が止まる。

 

その震えは、まるで翔太郎さんがテラーメモリの恐怖に犯されていた時と似ている。

 

「財団でのメモリの被検体。

 

そして、この街での実験で観察してましたが、まさかここまでとは」

 

「お前っ一体何をっ」

 

「それでは、私はこれで」

 

その言葉と共に、奴は、その場から姿を消した。

 

何が起きているのか分からない。

 

困惑を余所に、家は燃えていた。

 

「ヒサメ、さっきの話は一体っ」

 

そう俺が問いかけようとしたが、すぐに変身が解除された。

 

そして、その日から、ヒサメは、俺達の前から姿を消した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

68話

組織との戦いは確かに終わった。

 

だが、それは俺の相棒であるヒサメの行方不明になってしまった。

 

一つの戦いに決着がついたと思った瞬間の事件。

 

それには予想外な事もあり、俺はすぐに彼女を探し始めた。

 

だが

 

「ヒサメの奴、手掛かり一つすらない」

 

その言葉と共に、俺はヒサメが住んでいたと思われる家に訪れる。

 

それは、あまりにも生活感はなく、本当に住んでいたのか疑問に思う程に簡素だった。

 

あるのはシンプルな机にベット。

 

それ以外は、俺達鳴海探偵事務所の面々と過ごした想い出がある程度だった。

 

『・・・ヒサメちゃんの事、以前から余り知らなかった。

無意識に信頼していたのか分からない。

それでも、これを見たら、彼女は一体』

 

「分からない。

けど、あいつは俺の大切な仲間なんだ」

 

「仲間ですか。

まさか、あの実験体をそんな事を言うとはね」

 

聞こえた声。

 

振り向くと、そこに立っていたのは白いスーツを身に纏っていた女性だった。

 

「お前は」

 

「初めましてだったな。

私は一応はあの実験体、あぁ君の言う所のヒサメの親代わりのような存在であるネオン・ウルスランドだ」

 

そう、自己紹介してくるが、まるで生きた人の気配がしない。

 

目の前にいる奴は、本当に人間なのか、疑いたくなる。

 

『影っ、目の前にいる人物に警戒しろ。

あいつは財団Xからの使者だ』

 

「財団X?」

 

「その事も知っていましたか。

いえ、それも報告にあったガイアメモリの亡霊からの情報でしょうか」

 

そう言いながら、こちらを見る。

 

『財団Xとは、ミュージアムに資金提供をしていた組織だ。

その組織も、私も知らず、ミュージアムよりも危険な組織だ』

 

「マジかよ」

 

大本であるミュージアムを倒したと思ったら、それ以上の組織があるなんて。

 

だけど、今、ヒサメの手掛かりがあるのは、目の前にいる奴だけだ。

 

「お前、ヒサメを実験体って言ってたよな。

どういう訳なんだ」

 

「彼女、ヒサメは我々が管理する超能力兵士、クオークスの実験サンプルとして回収した少女だ」

 

「クオークス?」

 

これまた聞いた事のない単語に俺は首を傾げる。

 

「彼女は、そのクオークスの中でも特殊な個体であり、氷結能力と電撃能力を持っている。

その事からも、財団は様々な能力があるこの風都での実践データを得る為に彼女をここに連れてきました」

 

「氷結に、電撃」

 

そう言えば、ヒサメがウェザーを使っていた時にはこの二つをよく使っていた。

 

もしかしたら、それに引かれたから、ウェザーの適合者だったのかもしれない。

 

「けど、なんで学生に」

 

「実験体のバイタルの安定の為。

だが、まさか仮面ライダーと接触するとは予想外でした。

同時に、貴方達を通して得たデータは今後の役に立つと判断し、そのまま貴方達と行動させるように許可しました」

 

「なるほどねぇ」

 

思えば、高校生だとしたら可笑しすぎる箇所は多々あった。

 

けどな。

 

「なんで、今頃になって」

 

「私の部下、加賀が新たな計画を立案し、その護衛として彼女を任命しました。

その為です」

 

「護衛って、なんでそんな事をあんたが教えるんだ」

 

「さぁ、私の中にあった僅かな良心がそうさせたんでしょう」

 

とても、そうは見えなかった。

 

けど、その情報は多分嘘じゃないだろう。

 

何よりも今は、ヒサメを取り戻す事が最優先だ。

 

「悪いが、ヒサメは取り戻す。

もう、あんた達の好きにはさせない」

 

「ご自由に。

既に彼女から得られるデータはありません。

ですが、果たして、あなたに彼女を取り戻せるか。

興味深く、見させて貰いますよ」

 

その言葉を最後に、俺はすぐにヒサメの部屋から飛び出す。

 

今、俺ができる事は分からない。

 

それでも、俺は彼女を助ける為に、向かうしかない。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

69話

予約投稿に失敗していたので、再度投稿させて貰います。
申し訳ございませんでした。


俺達は、奴から渡された情報を元に、とある場所に辿り着く。

 

そこは風都から離れた研究所。

 

そこに、俺は訪れていた。

 

「ここに、ヒサメが」

 

そう、俺は、真っ直ぐと向かっていた。

 

「お前、影か」

 

「えっ?」

 

聞こえた声に、俺は思わず振り向く。

 

そこにいたのは翔太郎さんだった。

 

「お前、今までどこにいたんだ」

 

「今まで、ずっとヒサメを探していました。

どこにも、手掛かりがなく、ようやく、ここにいると分かって」

 

「お前、ずっとヒサメちゃんを」

 

「どういう事ですか。

俺は今まで、どれぐらい」

 

「・・・ミュージアムが、組織が壊滅してから、既に何日も経った。

お前達がいなくなった事もあり、ずっと探していた。

その最中で、園崎若菜が、ここに捕らわれている情報を聞いた。

彼女を、フィリップのお姉さんを取り戻す為に、ここに来た」

 

「そうだったんですか。

すいません、今まで勝手にやって。

だけど、ヒサメを、取り戻すまで」

 

「まったく、お前、そんなボロボロな状態で」

 

「例えボロボロだろうと、関係ないですよ」

 

俺はそう言う。

 

「自暴自棄でもないです。

俺は、今まで自分の事ばっかり見ていた。

爺さんの夢を取り戻す事、翔太郎さん達の為に動いていた。

けど、俺があいつの為にやった事なんて、何にも無い」

 

「そんな事ないぞ。

お前がいたから、ヒサメちゃんは笑顔だったんだぞ」

 

「そうだとしても、俺は、あいつの為に」

 

「はぁ、まったく」

 

そう呆れている間にも、俺達を出迎えるように現れたのはヒサメだった。

 

だが、その格好は財団Xを思わせる格好をしていた。

 

「ヒサメちゃん、君は」

 

「ごめんなさい。

翔太郎さん、影、本当の事を言えず」

 

「本当の事って」

 

「私、財団のスパイとしてここに来たの。

メモリの事は本当に知らなかった。

けど「そういうのは良いんだよ」っ」

 

そう、ヒサメは俺達に贖罪の言葉を贈ろうとした。

 

けど、俺は、そんなのは関係ない。

 

「ヒサメ、お前、それは本当にお前のやりたい事なのか」

 

「どういう意味よ」

 

「俺は自分の為にこれまで動いていた。

そして、これまでお前は、自分のやりたい事はやっていなかったんだろ」

 

そう、俺が言うと共に。

 

「影に」

 

同時にヒサメは、その腰にベルトを巻く。

 

これまで、幾度も使っていたベルト。

 

だが、それを単体で使うという意味は。

 

『ズー』

 

「私の何が分かるの!!」

 

同時にヒサメは、ズーメモリで変身する。

 

まさか、こうして、目の前で再び対峙する事になるとはな。

 

「すいません。

翔太郎さん、俺」

 

「行ってやれ。

相棒なんだろ」

 

そう翔太郎さんの言葉を聞いて、俺は、その手にナスカメモリを取り出す。

 

「さぁ、喧嘩しようぜ、ヒサメ!」




いよいよ、仮面ライダーナスカも終盤となりました。
そこで、今回、この場を借りて、次回作の予告をさせて貰います。

「なんだ、これ?」
そう言いながら、乾巧は困惑を隠せなかった。
自分のバックを間違えて、持っていた真理から自分のバックを取り返そうとした。
だが、その真理はオルフェノクからベルトを狙われるように、襲われる。
事情も分からず、困惑する乾巧だが、そんな彼に対して、彼女は驚きの行動に出た。
彼女は、その手に持ったケースから取り出した機械造りのベルト。
その中央に、手に持った私をベルトに装填した。
それと共に乾巧の姿は変わった。
銀色と、夜の闇をも照らす赤い線が特徴的な戦士、仮面ライダー555へと姿を変えた。
『なるほど、極めて珍しい。
まさか、ここまでの素質があるとは』
私は、そう乾巧を、変身するのと同時に感じたデータを見て、理解した。
彼ならば、託せるだろう。
「なんだよ、これは」
『落ち着きたまえ、乾巧。
君が戦わなければ、君達は死んでしまう』
「あぁ、誰だよ、お前は!!」
そう、あらぬ方向に目を向けながら、叫ぶ。
性格に関しては、今後知っていくが、今は関係ない。
「あんた、誰に話しているの」
「聞こえないのか?
お前、どこにいるんだ!」
『その話はあとだ。
それよりも、今は目の前にいるスティングフィッシュオルフェノクとの戦闘に集中したまえ。
戦闘能力は、今の私達相手ならば、問題がない相手だがね』
「私達って、お前はどこにいるんだよ!!」
そう、言いながら、乾巧はそのまま目の前に迫ってくるスティングフィッシュオルフェノクに向かって、蹴り上げる。
元々の戦闘能力が高い事もあり、仮面ライダー555へと変身した事によって、その身体能力だけで並のオルフェノクよりも強い力を持っているようだ。
『さっき言った通りだ。
君には私の力が宿っている。
今のままでも、十分に戦う事は出来るはずだ』
そう言って、私は言う。
「あぁ、そうかよ。
だったら、さっさと片付けるよ!」
その言葉と共に、まるで不良を思わせる戦い方で、そのままスティングフィッシュオルフェノクと戦う。
そして、その戦い方は確かにオルフェノクに対して有効であり、その動きを止める事が出来た。
それと共に瞬く間にスティングフィッシュオルフェノクを倒す事ができた。
「さて、さっさと現れろ!!
どこにいやがるんだ!!」
「ちょっと、あんた、さっきから誰と話しているのよ」
そう、乾巧が誰もいない場所で叫ぶから、園田真理が疑問に思って尋ねる。
「お前、聞こえないのか、さっきから変な声がして」
「変な声って、どこにも聞こえないわよ、そんなの」
『変な声とは失礼だな。
それに、私は先程から、ずっと君のすぐ近くにいるぞ』
「近くだと?
どこにいるんだよ」
まぁ、初見では分かりにくいだろう。
それと共に、私はすぐに動き出した。
カチャリという音と共に、私はそのまま飛び出す。
それに対して、2人は驚きを隠せない様子だった。
同時に私はそのまま2人に向く。
『こうして、面と向かって会話をするのは初めてだな。
私の名はファイズ。
君達と良き隣人であり、パートナーとなる為に作られた存在だ』
そう、私は自己紹介をする。
「・・・携帯が喋った」
「・・・携帯に手足が生えた」
『何かね、そんなに不思議に思うかね?』

という事で、次回作は主人公はファイズフォンへと憑依した存在です。
モデルはファイズフォンはケータイ捜査官7です。
次回作もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

70話

互いに仮面ライダーへと変身した。

 

それと共に始まった戦いは、これまでにない激戦だった。

 

ナスカは、その手に持つナスカブレードを構える。

 

それは、まるで歴戦の剣客を思わせながら、何時でも素早く動けるように。

 

それと共に襲い掛かったのはズーからの攻撃だった。

 

その身体の一部をまるでカメレオンを思わせる顔の籠手を出す。

 

同時に、その籠手から繰り出されるのは、鞭だった。

 

真っ直ぐと、ナスカに向けて、襲い掛かる。

 

それに対して、ナスカはその攻撃をひらりと避ける。そして、そのまま、ズーに対して斬りかかる。

 

しかし、それをズーは避けて、また、鞭で攻撃してくる。

 

「なかなかやるな」

 

そう言いながらも、ナスカは、自分の持つナスカブレードを構え直して、また、ズーに向かって斬りかかった。

 

だが、ズーもまた、同じように回避し、今度は背中から翼を生やす。

 

まさしく鷹を思わせるような羽ばたきを見せ、空中に浮かび上がった。

 

それを見て、ナスカも空を飛ぶためにマフラーを伸ばす。

 

お互いに空中戦になった。

 

ズーはそのまま空中を縦横無尽に飛び回りながら、攻撃を仕掛けてくる。

 

対して、ナスカも負けじと、空を駆け抜け、時には、地面を走り抜ける。

 

そんな激しい攻防が続いた。

 

「はあぁぁ!!」

 

それと共にズーが次に腕を変化させたのはキリンのような籠手。

 

その狙いは真っ直ぐと、ナスカへと襲い掛かる。

 

鋭く撃たれるキリンの槍は、まるで弾丸のように早い一撃だった。

 

しかし、ナスカはそれを紙一重でかわす。

 

「ふっ……!」

 

そのまま、ズーに向かって、ナスカブレードを振り下ろす。

 

その攻撃に対して、ズーもまた、腕を変化させる。

 

それは亀の甲羅を模した盾。

 

ガキィィン!! 甲高い音が響く。

 

互いの武器がぶつかり合う音だ。

 

そのまま、ズーは真っ直ぐと蹴り上げる。

 

ナスカはそのまま地面へと落ちるように飛ばされた。

 

だが、ナスカはすぐに体勢を立て直す。

 

そして、すぐにマフラーを伸ばして、ズーを攻撃する。

 

「はあっ!」

 

しかし、その攻撃をズーは避ける。

 

すると、その隙を狙ってズーは再び飛び上がり、ナスカに攻撃しようとする。

 

それに対して、ナスカはマフラーを伸ばして、ズーを捕まえようとする。

 

だが、その攻撃に対して、ズーは体をひねり、尻尾を使って、ナスカの攻撃を避けた。

 

「くそっ!なんて動きをするんだ……」

 

ナスカはその行動に思わず舌打ちをした。

 

そして、ズーが再び攻撃しようとしてくるのに対して、今度はナスカが剣を振るう。

 

「ふんっ!!」

 

しかし、ズーもそれに反応して、籠手で防ぐ。

 

互いに一歩も引かない攻防戦が続く。

 

そんな中で、ズーは腕を再び変化させた。

 

それはカメレオンの舌を思わせる鞭。

 

それがしなりを上げて、ナスカを襲う。

 

「くっ……」

 

ナスカはそれを避けるものの、ズーは次々と鞭を放ってくる。

 

それを全て避けきるのは無理な話である。

 

だからといって、ズーをこのまま放置しておけば、いずれこちらが不利になるだろう。

 

そこでナスカは剣を構えて、ズーに向けて突撃した。

 

「はあぁぁぁ!!!」

 

ナスカはそう叫びながら、ズーに迫る。

 

それに対して、ズーもまた、ナスカに向かって走り出した。

 

「……」

 

両者が近づき、お互いの武器が届く距離になった瞬間、両者は同時に動いた。

 

「ふぅんっ!!」

 

まず最初に仕掛けたのはズーだった。

 

ズーは腕を変化させると、カメレオンの舌を思わせる鞭を放ったのだ。

 

その鞭による攻撃に対して、ナスカはそれを横に飛んで回避する。

 

しかし、それだけでは終わらなかった。

 

なんとその鞭は伸びてきたのだ。

 

しかもその長さは通常の数倍はある。

 

そのため、避けることができなかったナスカはそのまま攻撃を受けてしまう。

 

その結果として、ナスカは大きく吹き飛ばされてしまった。

 

「ぐうっ……!」

 

その衝撃によってナスカは倒れ込んでしまう。

 

そんな彼に対して、ズーはさらなる攻撃を仕掛けようとしてきた。

 

それに対して、ナスカはすぐに起き上がって、剣を構える。

 

「これで、終わらせる」

 

その言葉と共に、ロストドライバーに装填されているメモリをメモリスロットにセットする。

 

『ナスカ!MAXIMUMDRIVE!』

 

「そうだね、終わらせよう」

 

『ズー!MAXIMUMDRIVE!』

 

互いに全てを終わらせるように、構える。

 

そして同時に駆け出した。

 

ズーの拳が真っ直ぐと向かう。

 

そして、ナスカもまた、その手にある剣を構える。

 

ゆっくりと迫る中で。

 

ナスカは。

 

「ふっ」

 

笑った。

 

それは、どういう意味なのか、ズーは、ヒサメは分からなかった。

 

だが、その意味が分かった。

 

必殺の拳は、確かにナスカに届いた。

 

身体を貫き、腹部を貫通させた。

 

だが、それに対して、ヒサメはまるで傷はなかった。

 

困惑を余所に、ヒサメはようやく彼が何をしたのか分かる。

 

「影、何を」

 

「別に。

 

それに言っただろ、俺は殺し合いじゃない。

 

喧嘩だって、結構ガチだったけどな」

 

それは、影がヒサメを抱き締めていた。

 

その事に困惑を隠せなかった。

 

「なんでっ、私は、財団に怖がって、影を、皆を裏切ったのに」

 

「裏切った奴が、そんな顔をするかよ。

 

何よりも、お前、俺に殺されるつもりだっただろ」

 

「っ」

 

その影の一言に、ヒサメは驚きを隠せなかった。

 

「最初から、知っていたの」

 

「相棒だ。

 

それぐらい分かって当然だろ。

 

何よりも、お前を放っておける訳ないだろ」

 

そう言いながら、影はゆっくりと倒れる。

 

瀕死の状態だった。

 

このままでは、影は死んでしまう。

 

手先から、温もりが消えかけているのが分かる。

 

「やだよ、私っ、そんな」

 

「あぁ、気にするな。

これは、俺が勝手にやった事だ。

別に、お前が気にする必要はないよ」

 

「気にするに決まっているでしょ、馬鹿っ!」

 

「あぁ、かもな。

けどさ、ヒサメ」

 

そう影はゆっくりと抱き締める。

 

「俺は、お前と一緒に過ごせて、結構楽しかったぜ」

 

「影っ馬鹿っ馬鹿っ大馬鹿!」

 

抱き締めてくる力が弱まっていく。

 

死んでしまう。

 

それが分かっても、止められない。

 

自分が犯してしまった罪に、ヒサメは涙が止まらない。

 

「じゃあな、相棒」

 

「影っ」

 

その言葉と共に、その日、影は死んだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

71話

フィリップは若菜姫を助けて、その魂を天へと昇った。

 

影は、ヒサメちゃんを助ける為に、その身を犠牲に旅だった。

 

お前達がいなくなってから、ようやく風都タワーも再建された。

 

だけど、俺はお前達に会わせる顔はない。

 

若菜姫は、あの事件をきっかけで、まさかあんな事になるとは思わなかった。

 

そして、ヒサメちゃんは、あれから未だに罪の意識を引きずっている。

 

彼女自身が悪い訳ではない。

 

しかし、その事を、彼女自身が許さなかった。

 

「本当、奇妙なもんだよな。

フィリップも、影も」

 

あの戦いの後、俺がヒサメちゃんを迎えに行った時、彼女は気絶した。

 

戦いに疲れたのか、それとも泣き疲れたのか。

 

分かった事は、彼女の周りにある血の量。

 

彼女自身の傷から出た物ではないと考えたら、それは確実に致命傷だという事は、俺でも簡単に分かった。

 

「家に、用か?」

 

そんな日常が続く中でも、未だに事件は続く。

 

「青山晶君、12歳。

姉の青山唯の行方を捜して欲しいのね」

 

「はい、あの」

 

そう、依頼人である晶は、すぐに俺の後ろにいるヒサメちゃんに目を向ける。

 

「彼女は?」

 

「あぁ、俺達の事務所の一人だ。

気にしないでくれ」

 

「そう、ですか」

 

そう言いながらも、晶が気になるのは、無理はない。

 

今のヒサメちゃんは、未だに心の傷が癒えていない。

 

その身体には、影が愛用していたフードを着ており、夏にも関わらず、深々と被っている。

 

そして、フードの隙間からはみ出ている髪は、既にボサボサで手入れもされていない。

 

それでも、ここまで回復するのに1年はかかった。

 

1年前、それこそ、彼女は自分から死のうとしていた。

 

それぐらいに精神的に壊れていた。

 

しかし、そんな彼女を支えたのは、影の形見であるナスカメモリだ。

 

「それじゃ、俺達は調査を行う。

ヒサメちゃんは、その組織で怪しい所がないか、探ってくれ」

 

「・・・分かりました」

 

そう、ふらふらとしながら、立ち上がり、事務所から出て行った。

 

その様子は、まるで幽霊を思わせる動きであった。

 

「大丈夫なんですか、彼女は?」

 

「心配するな。

あれでも、腕は確かなんだから」

 

元々、財団が兵士にする為に鍛えている為か、常人以上の身体能力を誇り、影と共に活動してきた事もあって、怪盗としての技術は未だに残っている。

 

だが、例え、そんな力があったとしても、彼女自身の心は未だに癒えない。

 

このままでは、駄目だと分かっている。

 

だけど。

 

「それでもな」

 

彼女の気持ちに、俺は自分のように分かってしまう。

 

本当に、もう一人の自分のような存在。

 

それがいなくなった事に。

 

「お前の力が欲しいよ、フィリップ」




それは、どこかの場所。

既に廃棄されたと思われる場所。

そこには一つのベット。

その上には死体があった。

死体は、今はもう動かなかった。

しかし、ゆっくりと、何かが注ぎ込まれていた。

そして、それを調整するように機械の目は観察していた。

既に1年。

同時に、死体の髪の一部は赤く染まる。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

72話

風都にある、よくある日常の事件は終わりを告げる。

 

ミュージアム壊滅後から1年後、数人の若者たちが「エナジー」と呼ばれるカリスマを中心に結成した新たなるガイアメモリ販売組織EXE。自称“ミュージアムを継ぐ者”。

 

聞こえはいいが、その実態は元々、当話の依頼者である青山晶の姉・青山唯が偶然発見したガイアメモリが裏ルートで高値で取引されていることを知り知人だった遠藤士郎を中心とする風都の不良達が今まで流通していたガイアメモリをかき集めて金儲けする事に目覚めて結成したというただの悪質なストリートギャング集団である。

 

その存在は、今では珍しくなく、ミュージアムが崩壊し、既に製造されていたガイアメモリが流出した後の風都では散発的に発生しており、新たな問題となっている。

 

「本当に、どうしてこんなに多いんだろう」

 

そう、ヒサメは呟きながら、言う。

 

影が命懸けで戦った。

 

そんな影に救われた命。

 

せめて、影が守りたかった風都を守る。

 

それだけが、今のヒサメを、生きる屍として動かしていた。

 

虚ろな目と共に活動していく中で、翔太郎達の姿を見る。

 

青山姉弟は、翔太郎達の活躍によって、笑顔を取り戻せた。

 

彼らがいれば、自分はいらない。

 

それでも、動かなければならない。

 

そう考えている時だった。

 

翔太郎達の前に来た人物。

 

その人物が取り出したのは。

 

「あれって、ガイアメモリっ」『エナジー』

 

その言葉と共に、その人物は、姿を変える。

 

メモリの音声から考えても、今回の依頼の目的であるEXEのボスだろう。

 

奴の左腕のレールガンが、真っ直ぐと翔太郎に狙おうとしていた。

 

「翔太郎さんっ!!」

 

すぐに向かおうとした。

 

だが、その攻撃は。

 

「ふんっ」

 

「がはっ、なっなんだっ!」

 

突然、現れた何者かによって、阻止された。

 

見ると、そこにいたのは、黒い怪盗衣装を身に纏っている。

 

見覚えのある衣装に、ヒサメは驚きを隠せない。

 

しかし、その衣装を身に纏っている人物を見間違う事はなかった。

 

容姿は、髪の毛の一部が赤く染まっている以外は、変わっていない。

 

「嘘、影、なんで」

 

それは、間違いなく、影だった。

 

その事に、ヒサメは驚きを隠せなかった。

 

「お前、影なのか」

 

「お久しぶりです、翔太郎さん、皆さん。

俺達、ただ今、戻ってきました」

 

「おれたち?」

 

「僕の事だよ、翔太郎」

 

そう言いながら、翔太郎の前に現れたのはエクストリームメモリ。

 

かつての最終決戦で、消えたはずのエクストリームメモリから出た声。

 

同時に、そこから現れた存在。

 

それは、まさしく影と同時に消えたはずの、フィリップさんだった。

 

「フィリップっ、なんでお前達が」

 

「1年前、僕は若菜姉さんに。

影は母さんによって、助けられたんだ」

 

「母さん、それって、シュラウドが?」

 

そう、疑問に思った翔太郎さんは尋ねる。

 

「あぁ、かつて父さんを倒す為の一つとして、母さんもまたNEVERの存在に着目していたんだ。

死者である事で、精神系の攻撃が効かない事でね。

そこで、母さんもまたとあるルートで手に入れた人体蘇生酵素を研究していた」

 

「そんな事が」

 

「本職の研究職ではない母さんだけど、鳴海荘吉が変身していた仮面ライダースカル。

その性質は、奇妙だが、NEVERと似ていた。

それに着目して、研究を進めた結果、NEVERが使用していた物よりも優れた物になった。

最も、その頃には既に戦いが終わりそうな頃だった為、使われずに済んだ」

 

「おやっさんが」

 

「あぁ、鳴海荘吉が、長年戦い続けた。

それが、影を助けてくれたんだ」

 

「だけど、俺がその薬に完全に馴染むまでには1年もかかりましたよ」

 

「下手にすれば、NEVERと同じ状態になるからね。

慎重に薬を調整を行いながら、今日、ようやく生き返る事ができたんだ」

 

「まぁ、そのせいで、NEVERのような身体能力もないですし、少し痛みを感じにくいだけでっと」

 

そう、影が言っている間に、私は、そのまま抱きつく。

 

「影っ私っ私っ」

 

「お前が謝る事じゃないよ。

それに、あれは俺が勝手にやった事だよ」

 

「それでもっ」

 

「あぁ、だったらよ。

ヒサメ」

 

そう、影は私に言う。

 

「これからも、俺と一緒にこの街を守ってくれ。

それが、その、俺からの願いだからよ」

 

「っうん」

 

そう、頷く私。

 

1年前に失った物。

 

それが、全て戻ってきた。

 

そんな気持ちで、私は思わず笑みを浮かべる。

 

「お前らっ!!」

 

「んっ?」

 

そう、話していると、私達は声がした方向を見る。

 

「俺を忘れるなぁ!!」

 

「おっと、忘れていた。

まったく、さっさと片付けないとな」『ジョーカー』

 

「そうだね、翔太郎。

影も、久し振りに一緒にやるかい?」『サイクロン』

 

「えぇ、お供って、メモリって、そう言えば、どこに」

 

「私がずっと持っていたんだから、はい、ベルトも」

 

「おっサンキュー」『ナスカ』

 

『まったく、君は相変わらずのようだね』

 

そう軽口を叩きながら、私は、その光景を見る。

 

「「「変身」」」

 

それと共に、この街に再び風が舞い上がる。

 

1年ぶりに現れたWとナスカ。

 

二人の仮面ライダーが、その姿が現れる。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

73話

「さぁ、久し振りに行くぜ」

 

 その言葉と共に、俺は1年ぶりに手に持つナスカブレードを構えながら、目の前にいるエナジー・ドーパントに向かって、斬りかかる。

 

 エナジー・ドーパントは、その右腕から放ってくるエネルギー弾は向かって行く。

 

 だが、俺は、その手に持つナスカブレードで切り捨てながら、そのまま蹴り上げる。

 

「なっなっ、うわぁっ」

 

 それらの攻撃に対して、エナジー・ドーパントは慌てる様子。

 

「おらぁ」

 

 同時に、エナジー・ドーパントに対して、蹴り上げる翔太郎さん達。

 

 その様子を見るに、1年ぶりの2人での変身という事もあってか、かなりテンションが高い様子が見られる。

 

「あっ影っ!」

 

「んっ、うわっと」

 

 ヒサメの声に気づき、俺は正面を見ると、襲い掛かってくる影。

 

 見ると、まるで全身が刃物を思わせるドーパントが、その場で、俺に向かって襲い掛かってくる。

 

「あいつは、逃亡したEXEの」

 

「エッジか、助かった!」

 

 どうやら、今回の事件の構成員の1人だったらしい。

 

 だけど

 

「だったら、ヒサメ」

 

「うんっ」

 

『ズー』

 

 同時にヒサメもまたズーメモリを起動させて、そのままドライバーに装填する。

 

『ナスカズー!』

 

 鳴り響く音声と共に、俺は久し振りのナスカズーへと変身し、襲い掛かるエッジ・ドーパントを蹴り飛ばす。

 

「なっぐぅ」

 

「さぁ、行くぜ!」

 

 同時に俺は手に持ったナスカブレードを逆手に持ち、そのまま獣を思わせる動作と共に、駆け寄る。

 

 エッジ・ドーパントは、その全身がまるで刃物を思わせる身体だ。

 

 だが、今の俺には関係ない。

 

 何故なら……

 

「お前の攻撃はもう見切ったんだよぉ!!」

 

 そう叫びながら、俺は、そのままナスカブレードを振り下ろす。

 

 そして、それを受けたエッジ・ドーパントは、そのまま地面に倒れ込む。

 

 同時に俺は、すぐに次の行動に移る。

 

 まるで、野生の動物を思わせる動きと共に、俺はその場から真っ直ぐと、エッジ・ドーパントを斬る。

 

「ぐっ、これ以上はっ」

 

「「これで決まりだ」」

 

『ズー! マキシマムドライブ!』

 

 鳴り響く音声と共に、俺は手に持っていたナスカブレードを投げ捨て、そのまま構える。

 

 まるで獣が、獲物を狙うように構え、そのまま真っ直ぐと飛び上がる。

 

 同時に真っ直ぐとエッジ・ドーパントに向けて、跳び蹴りを喰らわせる。

 

 それと同時に、周囲に爆発が起きる。

 

「うわぁあああああ!!!!」

 

 その声と共に、エッジ・ドーパントはそのまま吹き飛ばされて倒れる。

 

 同時に、メモリはブレイクされる。

 

「さてっと、それじゃ、ヒサメ、霧彦。

 

 久し振りに言うぞ」

 

「えっ、私も」

 

『私もか』

 

「お前ら、なんか酷くないか」

 

 俺の言葉に対して、2人がなぜか冷たい。

 

「ふふっ、冗談だよ」

 

『正直に言うと、あんまり言っていないが、確かにこの言葉はらしいと言えばらしいからね』

 

「だったら、言うぞ」

 

 その言葉と共に、エッジ・ドーパントに変身していた奴に向けて言う。

 

「「『それじゃ、アドゥ』」」




今回の話をもって、仮面ライダーナスカ、完結しました。
ここまでの、応援、本当にありがとうございました。
影達の戦いに関しては、これからも続く形であり、もしかしたら、またどこかで活躍を見る事ができると思います。
そして、今作の完結と共に、新たな仮面ライダーも登場します。
こちらは以前、宣伝していた仮面ライダー555ではなく、別の仮面ライダーを原作にした小説です。
555に関しては、明日、公開予定となっています。
こちらの方も、ぜひお願いします。
https://syosetu.org/novel/307904/


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。