仮面ライダーアナザーディケイド 〜Journey through the another decade〜 (スワンプボーイ)
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第1話 ライダー大戦 ふたたび

 

またあの夢だ。

 

何度も繰り返し見る夢。

 

その夢はいつも同じ場面から始まる。

 

あたりは人里離れた岩肌が剥き出した採石場。

 

そこでは異形の姿をした怪人たちが相対していた。

 

拳を振るい、蹴りを喰らわせ、バイクでぶつかり合って。

 

至る所で土煙が生まれては、爆炎が上がっていた。

 

怪人たちはそれぞれ変わった力を使っている。

 

あるものは自身の倍以上となる兵器や生き物を従わせ、またあるものはあらゆる姿の怪人に変わり蹂躙して。

 

でもその動きは知性の無い動物のそれとは違うのがわかる。

 

我々が日頃抱く感情のひとつである哀しみ。

 

それがとてつもなく大きく膨れ上がれ、背負わせてしまっているのかのごとく、彼らは我武者羅に戦っていた。

 

なぜそんなことをしているんだろう。

 

皆、根っこの部分が同じはずなのに。

 

まるで彼らのことをかつてから知ってるかのような、そんな感情に苛まれる。

 

当然そんな事実など無い。けれどそんな思いが溢れて止まらない。

 

直接心に来るようにさまざまな思考と感情が流れ込んでくる。

 

彼らは互いを拒絶している。

 

自らしか存在が許されないのだと、そんな受け入れ難い事実を受け止めて。

 

哀しみに打ちひしがれる中、続けられる戦いに怪人たちの数はバタバタと減っていく。

 

目の前に繰り広げられる惨状。このままでは自分の身にも危険が及ぶのも時間の問題だ。

 

この場から逃げないと。そう思ってるのにどうして。

 

足が動かない。

 

いつもならここで目が覚めていた。

 

それなのにここ最近は。

 

続きを見る日が多くなっていた。

 

今日はどうなんだ。目覚めるのか、それともこのまま続きを見せられるのか。

 

くそ。目が覚める気配はない。

 

今日はは、どうやら後者の方だ。

 

引き続き最前席で見せられる怪人たちの戦い。

 

あれほどまでいた怪人たちも、数えられるくらいまで数を減らしてしまった。

 

残りは9体。

 

果てしなく続くと思われた戦い。

 

もうすぐ終焉を迎えるのか。

 

そんな折に。

 

やつは現れた。

 

それぞれを傷つけ合いながら込められた悲しみの感情は

 

そのたった1人が現れたことによって9体の戦意は1点に向けられる。

 

蠱毒の如く研ぎ澄まされて出来上がった極上の哀しみと怒り。

 

現れたソレは他の怪人と同様、見たこともなければ名前だってわからない。

 

そのはずなのに。

 

その怪人だけは。

 

悪魔のようなそいつは。

 

口が、喉が、ひとりでに動き出しはっきりと彼の名を叫んでしまうんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………『ディケイド』…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝のニュースが予報した晴天などどこにも見当たらない、そんな重々しい雲が漂っている午後1時。

 

 

(原因はわからずか…)

 

 

とある森林公園のベンチに座る1人の青年は、診断書に書かれた結果を読んで天を仰いでいた。彼の名前はー角田(かどた)ツカサ。程よく伸びた茶色の髪に色の白い細やかな肌。クリクリした目をして端正な顔立ちをしているが、それに反するようなどこか人を寄せ付けないオーラを併せ持っている。この日はそのオーラが普段よりも増して磨きがかかっていた。不機嫌か。いや苛立ち。それとも焦りか。どれも当てはまるがそれだけが正解ではない。そうさせられるほどの原因。それはここ最近ツカサを悩ませるある悪夢だった。

 

 

「せーのっ…うわ!」

 

ツカサ「うわあ!!!」

 

 

ツカサの背中が押しだされ、跳ねるように立ち上がった。それを見て腹を抱えて笑う大学生が2人。期待通りのリアクションを見て満足したのか、いつも以上に笑いが込み上げてくる。彼らはリョウタとカンナ。2人ともツカサの高校時代からの友人だ。

 

 

ツカサ「なんだおまえらかよ…」

 

リョウタ「くくくっ。待たせて悪いな。それにしてもお前どんだけ気抜いてたんだよ」

 

カンナ「全く驚きすぎだって!どうしたよ予備校生?そんな浮かない顔をして。さては受験勉強のやりすぎか?ん?」

 

ツカサ「…別にそんなんじゃねぇよ」

 

 

露骨な先輩風を吹かせるカンナはツカサの肩に肘を乗せると、ツカサはそれを嫌そうに振り払う。リョウタとカンナの肩に下げられたバックにはそれぞれ進学した大学の刺繍が入っていた。どうやら2人とも学校説明会終わりに来たようだった。

 

 

リョウタ「お…おい、カンナ、いくらなんでもそこに触れるのは少し…」

 

カンナ「え?」

 

ツカサ「なんだよ。気遣ってんのか?」

 

リョウタ「え?別にまあ…あれ?ツカサが持ってるそれ、なに?」

 

カンナ「もしかしてツカサが前言ってた、あの?」

 

 

リョウタのいそいそとした様子で変えてきた話題に今度はツカサが狼狽する羽目になった。持っていた診断書に触れられたことで、ツカサは慌てるとそれを背中に隠した。

 

 

ツカサ「あ?いや、別に。そんなことより腹減ったわ。全くどんだけ待たせるんだっての。早く飯行……」

 

 

ツカサがオロオロと立ち上がったそのとき。それはいた。

物陰から今にでも襲ってきそうな殺意ある視線向けて。

嘘だ。

ツカサの身体と思考が固まって動かない。

こんなところに居るはずがない。だってそれは夢の中でしか見なかった、怪人の中のひとりだったから。

 

 

リョウタ「おいツカサ。どうした?」

 

 

よほど不自然に見えたのか、リョウタがツカサに心配そうな声をかける。その声に我に帰ったツカサは努めて冷静を装うとその場から離れるように走り出した。

 

 

ツカサ「…あ?あ、腹?腹の調子が朝からよく無くてよ!ぶり返したから今日帰るわ!また今度埋め合わせさせてくれ!じゃあ!」

 

カンナ「ちょっと!ツカサ⁉︎」

 

リョウタ「おいどうしたんたよ!おい!…ったく。行っちゃったじゃないか。お前のその不謹慎な発言、いい加減治せよな」

 

カンナ「な、なによ。そんな不機嫌になることじゃないでしょ」

 

リョウタ「あのな…とりあえず今日のところは深入りしないで、また改めてだな…」

 

 

ツカサが去ってしまったそのベンチからリョウタとカンナも泣く泣く後にする。あたりは誰もいなくなってしまう。先ほどの不自然なツカサのリアクション。あれはいったいなんだったのだろうか。何かから逃げるような反応をしていたようだが。ツカサが見ていた方向には誰もいない。閑散とした森林公園のベンチ付近。普段よりもましてその閑散とした様子には哀愁が漂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

リョウタとカンナと別れ、ひとりになったツカサ。雑踏の中、周りに気を張り巡らせて帰路についている。キョロキョロと辺りを伺う彼は何かを感じていた。それは先ほどから襲ってくる怪人たちの気配。

 

 

ツカサ「なんで。なんでだよ…」

 

 

ツカサの視界には先ほどからいろいろな怪人たちの姿が入ってきていた。

 

緑と黒の顔をしたやつに、白くてイカみたいな顔したもの。それに青と赤の顔をしたやつとその種類はさまざま。

 

なんで他の人は気にもしないのだろう。まさか見えているは俺だけなのか?そんなバカな。こんなに…こんなにはっきり見えるというのに。

 

もう只事ではなくなった。そう判断したツカサはせかせかと動かしていた足を止めると行き先を自宅からある喫茶店と変える。その喫茶店はツカサがアルバイトしてあるところでもあった。喫茶店は喫茶店でもすこし変わった喫茶店なのだが。何が変わっているかというと通常の形態とは違い、写真館の業務も兼ねているところだ。そんな写真家とオーナーという2つの顔を持つ店長が経営している喫茶店。その店長にはツカサがアルバイトとして働く以前から良くしてくれていた人だった。都市伝説が好きで自分の店にも置いてしまうほどオタクな店長。今回の悪夢に関してだって、そんな店長の紹介で繋げてくれた人に診てもらったのだ。

 

 

ツカサ「怖い話は普段聞かない。心霊スポットなんて行ったことない。なのになんでこんなオカルト現象に悩まされる⁉︎」

 

 

このような事態は当然初めてだったツカサ。素人が思いつきそうな解決方法など効果があるはずもないと頭を抱えていた時に店長の趣味を思い出したのだ。自分のぶっ飛んだ話を冷やかすことなく親身に聞いてくれた店長は自分のツテをたどって紹介してくれたのが、さっき公園で読んだ結果を届けてくれた霊能者だった。その内容は先述したように、その道では実力があると言わしめた霊能者でさえ、悪夢の原因は突き止めれなかった。

 

半泣きになりながらも駆け足で向かった末ようやく喫茶店に到着する。特徴的な重々しい木彫の扉に手をかける。その扉に掲げられるのは『写真館 ヒカリスタジオ』と彫られた看板。扉を開くのに合わせてカラカラと音がたった

 

 

???「おろ。ツカサくんじゃないか。今日は出勤する日か?」

 

ツカサ「あ…こんにちは。いえ、今日は別件で」

 

 

中に入ると、背が低くておしゃれなお爺さんがひとり、コーヒーを嗜んでいた。このお爺さんはうちの店の常連客であるイシバシさん。ツカサがこの店で働くキッカケとなった、朗らかなお爺さんだ。カウンターに座っていたイシバシさんだが、店にはそのイシバシさん以外の姿が見えなかった。

 

 

ツカサ「イシバシさん…店長はいまどちらに?」

 

イシバシ「ああ。レンジくんなら…」

 

 

そこだよ、とカウンターの奥にある事務所の方を指差す。するとそこから暖簾をくぐるひとつのシルエットが現れた。黒くてもじゃもじゃのくせっ毛を揺らしながらでてくる中年の男の人。この人がツカサ勤めるこのカフェの店長だ。

 

 

店長「いらっしゃいませー…あ!ツカサくんじゃないか!あれ?今日シフト入ってたっけ?」

 

ツカサ「いえ、そうじゃなくて。実は前ご相談した件で…」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

店長「ん〜なるほどねぇ」

 

 

店内には夕方の時間を彩る報道番組が流れていた。堅苦しい面持ちでアナウンサーが伝えているのはこの近所で建物が不可思議に消えたというなんとも奇妙なニュースだった。そんなニュースもツカサの耳には右から左へ。カウンターに座ったツカサの前に店長こだわりのホットミルクが出される。この店で初めて飲んだ思い入れのあるホットミルク。それをしばらく見つめるとツカサはゆっくりと小さく口に運んだ。

 

 

店長「まさか現実世界にまで出てくるとはね〜」

 

ツカサ「はい。自分もびっくりして何が何だか」

 

 

今まで悩まされている悪夢のことはすでに店長に話している。そしてたった先まで起こった出来事をツカサはありのまま店長に伝えた。

 

 

店長「今は?まだ感じる?」

 

ツカサ「…いや。ここに入ってからは何も感じないです」

 

店長「そう…」

 

 

しばし訪れた僅かな沈黙。そんな雰囲気に割って入ったのは隣で聞き耳を立てていたイシバシさんだった。

 

 

イシバシ「どうしたんのツカサくん。何かあったのかい?」

 

 

俯くツカサの様子を見ながらイシバシさんは店長に問いかける。店長もまたツカサの様子を窺うと腕を組んでイシバシの問いに応えた。

 

 

店長「ディケイド…」

 

イシバシ「んぁ?でぃ…なんだって?」

 

店長「ディケイドですよディケイド。ここ最近ツカサくんがみる夢に出てくる悪魔の名前です。ツカサくん今、悪夢に悩まされてるみたいなんです」

 

イシバシ「へえ。悪魔のでる悪夢かい」

 

店長「そうです。初めて聞きましたよそんな悪魔の名前」

 

イシバシ「おろろ。レンジくんでも聞いたことがないのかい。それはなかなか珍しいじゃないか」

 

 

イシバシさんはそう言って店長の趣味全開の店内を大きく見回した。

 

 

店長「へへ。まあ。それにしても悔しいな〜。この道22年、都市伝説やUMAというホラー関連は総なめにしたと思ってたのに。そんな僕でも知らないなんて。あの彼でも正体が突き止められないとなれば、他の仲間のツテを伝って、色々なアプローチをかけて真相に辿り着くしか…」

 

ツカサ「いや店長。もう大丈夫です。こんなぶっ飛んだ話、店長が親身になってくれただけで十分なんで。時間が経てばきっと解決すると思うし」

 

イシバシ「はっはっは。そんな落ち込むことはないよツカサくん。レンジくんの人脈は侮ることなかれ。私もね、ずっと連れ添った家内が亡くなったときに起こった不可解な現象に悩まされたもんだよ。それをレンジくんに相談した時にさ、その道の先生を紹介してくれてね?おかげでその真実に迫ることができて解決したわけだから。ツカサくんを悩ませる悪夢もきっと解決できるよ…おや?」

 

 

ツカサに向けていた視線をイシバシさんは店の外に向ける。先程まで穏やかだった天気が薄黒い雲に覆われている。それに強い風が吹いているのか、木彫の淵で囲まれた窓をカタカタの震わせていた。

 

 

イシバシ「おやなんと。今日天気が崩れるってニュースで言ってたっけか」

 

店長「いや、確か言ってなかった気が。それにしてもなんとも不安を煽る雲ですね」

 

 

店内の窓から見える一面に広がる重々しい天気。すると右から左へ。今度はたくさんの人が声を上げながら走り去る姿が見えた。店の中のためため何を言っているかまではわからないが、その様子と表情から、何やらとんでもないことが起こっている。そんなことが頭によぎるような状況だった。

 

 

店長「何やら外が騒がしいですね」

 

イシバシ「ちょっと外見てくるよ」

 

 

重い扉が開かれる。そこから広がる外の様子は、なんとも言えない状態が広がっていた。

 

 

店長「うお!これは」

 

イシバシ「すごい風がつよいな…ん?なんだあれは!」

 

 

当たり前の日常はある日突然崩れ去る。どんよりした天気の中、はるか先に見える高層ビルのその上空。

何と言えば良いのだろうか。例えるなら透明なカーテンだろうか。とても巨大で禍々しいそのオーロラカーテンが高層ビルの真上に地面と並行した形で存在していた。それはどうやらゆっくりと下降しているみたいだった。じわじわと近づくとビルの頭を飲み込んでしまう。そして。

 

 

ツカサ「⁉︎」

 

イシバシ「…!いったいなんだあれは…!」

 

 

下降したオーロラカーテンはビルを飲み込むとその姿を消してしまった。それはこれから起こる惨状の幕開けでもあった。ビルが消えるとまた別のビルの上にもオーロラカーテンが現れ、全てを飲み込んでしまっていた。次々と変えてゆく高層ビルたち。不可思議な現象はそれだけでは終わらない。1番最初にビルを飲み込んだオーロラカーテン。そこから出来た空間の裂け目から得体の知れない怪物たちが空中を這うようにして現れたのだ。

 

 

テレビ『繰り返しお知らせ致します!17:26頃、突如上空に現れた裂け目から無数の怪物が出現しました!怪物の出現は今現在も確認されており、透明なカーテンは大きなビルを飲み込んで消えてしまったことがカメラが捉えています!消えてしまったビル。原因は現在専門家が調査中とのことですが、こちらに入ってくる情報でも町中に甚大な被害をもたらしていることが確認されています!うっ!スタジオの方でも凄まじい揺れを確認できます…!皆さん避難にはくれぐれも気をつけていただいて行動して…うわぁ!』

 

 

ツカサ「何が…どうなってるんだ」

 

 

店内のテレビからはアナウンサーの悲痛な叫びがのった実況が伝わってくる。ここだけじゃない。地域一帯の…いや。この世界全体でこの現象が起きているようだった。

 

 

ツカサ「リョウタ…カンナ…みんな…」

 

店長「マズイですよ…僕たちも早く避難しないと!」

 

ツカサ「あ!危ない!」

 

イシバシ「⁉︎」

 

 

空を舞う無数の大型の怪物。その中の1体がこちらに向かって突っ込んできていた。ツカサの咄嗟の判断でイシバシさんの身体を押し出すと、怪物はツカサたちの間を通り過ぎる。地上スレスレで滑空すると空中へ大きく旋回した。攻撃を躱されたことで怒ったのだろうか。耳を覆いたくなるほどの大きな奇声をあげている。先ほどよりも近くで見える怪物の全貌。その姿はかつて地球に存在していたとされる古代生物、『ケツァルコアトル』の姿と酷似していた。

 

 

店長「イシバシさん!怪我は⁉︎」

 

イシバシ「大丈夫だ…。ツカサくんのおかげでなんとか…」

 

ツカサ「そ、そんな…」

 

店長「ん?どうしたんだい…?」

 

 

腰を抜かしていた店長が震えながら立ち上がり、困惑しているツカサの元へ歩み寄る。ツカサは驚愕した表情で空中にドアを叩くような動きを見せていた。その様は側から見ればパントマイムのそれであるが実際のところはそうではないようだった。

 

 

ツカサ「なんだよこれ…」

 

店長「何?何があったの?」

 

ツカサ「店長…ここに見えない壁が…」

 

 

ツカサと店長がいるサイドとイシバシがいるサイドの丁度その間。なんとそこを見えない壁のようなものに隔てられていた。よく目を凝らしていると壁は空間が歪んだように波打っている。ツカサたちはこれから知ることになる。この壁はビルに出現した時に出てきたあのオーロラカーテンと同じだということを。

 

 

店長「イシバシさん!後ろ!」

 

ツカサ「マズイです!怪物が!」

 

 

先ほど襲ってきた怪物は次なる標的を定めていた。それはオーロラカーテンの先にいるイシバシさん。ツカサと店長はオーロラカーテンを叩きつけまだ気づいていないイシバシさんへ声をかける。しかし彼らのメッセージはイシバシさんに届かない。さっきまで届いていたはずの声でさえイシバシさんは気づいていないようだった。怪物とイシバシさんを交互に見る。どうにか気づいてくれ。今から逃げればまだ間に合うから。

 

 

ツカサ「イシバシさん!」

 

店長「イシバシさん!」

 

 

ホバリングしていた怪物が動き出した。イシバシさんめがけ突進を始める。あれほど離れていた距離がみるみるうちに縮まってゆく。そして目の前まで迫ったとき。イシバシさんは気づいた。自らの身に危険が迫っていたことに。怪物の嘴がイシバシさんの身体を貫こうとしたその瞬間、先程までびくともしなかったオーロラカーテンが動き出した。ツカサと店長の身体を通過する。するとどういうことだろうか。さっきまでカフェの前に居たはずの2人が全く別の場所に移動していたのだ。

 

 

「うわぁー!」

 

「きゃー!」

 

 

移動してきたのはツカサたちがいた森林公園。どんよりとした雲に覆われ突風が吹き荒れる中、たくさんの人々が悲鳴をあげて逃げ惑っていた。

 

 

ツカサ「これはいったい…」

 

店長「なんでこんなところに⁉︎イシバシさん!イシバシさーん!」

 

 

店長の声は風にかき消され街中に溶けてなくなる。誰1人にも届かない悲痛の声。そんな彼らに追い打ちをかけるかのように事態は更に悪い方向へ進展していった。人々が逃げ惑っていた。その要因が目の前に現れたのである。次々と人が居なくなる森林公園にオーロラカーテンが出現した。そこからなんと異形の姿形をした怪人たちが現れた。その姿は多種多様。

 

 

ボロボロの包帯が巻かれた黒い色したミイラの怪人。

 

槍を持った石のような身体をした怪人。

 

そして身体が全身機械のアンドロイド。

 

 

わかるだけでもこれだけいる。そんな見た目が異なる怪人たちだがその全てが同一の意思を持ったようにツカサと店長の元へ近づいて来るのだ。

その数、無数。

夥しい数の怪人が呻き声をあげ迫ってくる。

 

 

「うわあー!」

 

「ぎゃあー!」

 

 

空を舞う怪物は地上に向け攻撃をしている。建造物は骨組みがむき出しになり、至る所から火の粉が飛んでいる。地上に蔓延る怪人たちは次々と人々を襲い、その儚い命がひとつ、またひとつと失われてゆく。ツカサと店長を囲む周りには地面に横たわる屍の数が着々と増えていった。

 

 

店長「もう、終わりだ…」

 

ツカサ「…」

 

 

休む間も与えぬ程の衝撃を浴び続けたツカサたち。つい数時間前まで見慣れていた日常が跡形もなく崩れ去っていく。その現実にこの短時間で心身ともに消耗していた。大きく開けた広場で見せつけられる360°からの惨劇。並の人間なら平常心でいられるのはとても難しい物だった。

 

 

店長「こんな、こんなあっけなくやって来るのか…。こんなもんなのか!世界の、終わりっていうのは…」

 

 

怒りか。悲しみか。嘆きか。店長は膝から優れ落ち、拳を地面に叩きつけ項垂れる。そばに立つツカサは呆然と立ち尽くしてしまっていた。そのツカサの目の前に骸骨のような頭をした怪人が立っている。不気味な頭に反して身体は人間で言うタキシードのような服装のように見えて、それが返って気味悪さを助長させる。怪人の手には男の人が掴まれていた。首を掴み持ち上げる。苦しみながらもがいていた身体もすぐさま動かなくなると、それはゴミのように投げ捨てられた。

 

また横たわる屍がひとつ。気づけば広場からはツカサと店長を除き、誰も居なくなってしまっていた。広場に居る怪人たちは残りのツカサ達に狙いを定め迫っていく。その時だった。ツカサ以外の時間が止まり皆フリーズしたように動かなくなった。何事か。そんな思考を巡らせる間を与えずさらなる展開が広がった。

 

 

 

ブオオオオン‼︎‼︎

 

 

 

オーロラカーテンから1台のバイクが現れた。宙を舞ったバイクは怪人の群れへ突っ込むとツカサたちに群がる怪人たちを一蹴する。マゼンタ色をこれでもかとあしらえたデザインが目を惹いたバイクはツカサの前に停まると運転していた人物がゆっくりと降車する。

 

 

???「ここに居ましたか」

 

 

体格からして成人の女性か。声も籠っているがだいぶ大人びている声色だ。スラっとしたそのシルエットの女はヘルメットを外すとツカサの前までやってきた。

 

 

???「ようやく見つけましたよ。ディケイド」

 

ツカサ「な…その名前…」

 

???「自己紹介は後でしましょう。今はそんな余裕ありませんから。とにかくこれを」

 

 

未だ動かない怪人たちの群れを背にツカサとコンタクトを続ける女。女は懐に手を伸ばすと見たことない形をした代物を2つ出してツカサに見せた。ひとつは弁当箱のように見える白い箱。そしてもうひとつはバイクと同じ、マゼンタ色したバックルのようなものだった。

 

 

???「これはバックルとライドブッカーです。見たことあるでしょう?」

 

ツカサ「アンタ、いきなり何を言って…」

 

 

女が言葉を紡ごうと口を開こうとしたとき、一部の怪人がフリーズから抜け出したのか、奇声をあげて襲ってきた。ツカサの背面を狙う怪人に女はスムーズ動きでアイテムを手渡すとツカサ守るように前へ出た。そして腕を回して怪人に向けて突き出す。すると女の腕の動きに合わせてオーロラカーテンが出現した。そのオーロラカーテンは怪人の元へ静かに動きだすと怪人を飲みこみ、その姿を跡形もなく消してしまった。

 

 

ツカサ「今何を…」

 

???「私は貴方より歳上ですので。言葉に気をつけてください」

 

 

はあはあと息を荒らげて女は悪態をつくと再び白い箱とマゼンタのバックルを差し出してきた。

 

 

???「さあディケイド。早くそのバックルを手に取り、変身するのです」

 

ツカサ「あんた。いったいなんなんだ」

 

???「…その生意気な態度は、この状況に免じて目を瞑りましょう。私もいつまでもこうして力を使えるわけではない。早くこの怪人たちを…」

 

 

ツカサは女から手渡されたライドブッカーとバックルを見つめた。改めて見ても初めて見る形をした代物…だったはず。そのはずだった。しかしツカサの第六感か何故かそうじゃないと訴えている。

 

これ、見たことあるのでは。

だとしたら、いったいどこで。

どこだっだろうか。ツカサは荒々しく押し寄せてくる記憶の波に襲われる。頭がズキズキとした衝撃が駆け巡った。その中でツカサの頭にひとつの映像が浮かび上がった。それはある山奥の採石場の風景。そこで複数人の怪人を相手に立ち向かう1体の悪魔の姿を。

 

 

ツカサ「こ…これは…」

 

???「もう…これ以上は持ちません…早く…!」

 

 

ツカサの目が大きく見開かれる。そして右手に持つマゼンタのバックルの方を勢いよく腹に打ち付けた。ベルトが展開してでたホルダーに左手に持っていたライドブッカーを納めると、それを開き1枚のカードを取り出した。カードにはあの悪魔の顔の絵が施されている。ツカサは覚悟を決めると、前方にカードを突き出して素早くバックルへと挿入した。

 

 

ツカサ「変身!」

 

 

身体の奥から湧き上がる得体の知れない不安を跳ね返すように、ツカサの咆哮がその広場に響き渡った。

 

 

『KAMEN RIDE!DECADE!』

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

発せられた音声と共に現れた沢山のカードのオーラを浴びるとツカサの姿がマゼンタの戦士へと変わった。それは近頃ツカサを悩まされている夢で見たあの悪魔と同じ姿。名前を仮面ライダーアナザーディケイド。それがこの悪魔の…仮面ライダーの名前。

 

 

???「はぁ。漸く…どうにかひとつ役割を果たせました…」

 

Aディケイド「でぃああああああ!!」

 

 

女は身体から力が抜けると片膝立ちに座り込んでしまった。それと同時に止まっていた時空が動き出す。

Aディケイドとなったツカサは己を奮い立たせるように吠えると、襲ってくる怪人たちに向かって走り出した。知性を感じられない怪人を複数相手にするAディケイドはラグビーでスクラムを組むが如く怪人を押し出すと数あるうちのひとつのオーロラカーテンに飛び込んだ。

 

 

???「ですが…まだ終わりではない。すぐに彼の後を追いかけなければ…」

 

 

女は停めていたバイクに跨るとツカサの隣にいた男の方を一瞥した。男はAディケイドが入って行ったオーロラカーテンを見て呆けている。男の周りが安全であると判断した女はふらつく身体に鞭打ってオーロラカーテンへと突っ込んで行った。

 

 

オーロラカーテンからAディケイドが出てきた先は崩壊した高層ビルの中だった。ここも大型の怪物の攻撃で柱は何本か折れ、辺りは瓦礫で埋め尽くされた荒れ果てた場所と化していた。怪人たちを突き飛ばしAディケイドは周りを見る。どうやら、ここに人の気配は無さそうだ。

 

 

Aディケイド「よし…」

 

 

Aディケイドは改めて怪人を見据える。広場で見た怪人たちは様々な姿形をしていたが、今目の前にいる怪人はすべて機械のような身体をしていた。頭は蜘蛛や蝙蝠のような意匠を思わせる見た目をしている。

 

 

Aディケイド「よくも街をめちゃめちゃにしてくれたな」

 

 

Aディケイドが駆け出した数十秒後。彼が出てきた同じオーロラカーテンからバイクに乗って女が出てきた。ヘルメットを取りバイクから降りると女は戦いの場から距離をとってその様子を伺った。

 

 

???「あれはロイミュード。1vs5ですか…あまり良い状況とは言い難い」

 

Aディケイド「はあ…はあ…くそ。数が多い…」

 

???「全て下級ロイミュードとはいえ、この場を乗り切れるでしょうか…」

 

 

喧嘩は愚か運動すらあまりしていない彼にとって異形の怪人を相手にすることなどそのハードルはとても高いものだった。そんなツカサに容赦ない猛攻を浴びせる下級ロイミュードたち。そのうちの1体がAディケイドの身体を吹っ飛ばすと独特なモーション見せ、衝撃波のようなものを飛ばした。すると。

 

 

???「あ!これは…」

 

Aディケイド「身体が…動かねぇ…」

 

???「これは重加速現象…ディケイド!」

 

 

女は叫びAディケイドを呼ぶ。Aディケイドは重くなった身体を時間をかけて動かすと、そこには同じく身体が動かなくなっていた女がいた。

 

 

???「相手はロイミュードという怪人です!ライドブッカーから『ドライブ』のカードを取り出してください!」

 

A「え?なんだよそれ!うっ…!」

 

 

自由に動けないことを良いことに更なる攻撃を加える下級ロイミュードたち。Aディケイドはどうにか攻撃を躱し後方へ後退ると、無我夢中でライドバッカーに手を伸ばし1枚のカードを取り出した。

 

 

Aディケイド「ドライブ…これか?」

 

 

カードを見ると最初に取り出した『DECADE』と同様に仮面ライダーの姿が描かれていた。

 

 

Aディケイド「これも、夢で見たあの…」

 

 

Aディケイドは頭によぎった邪念を振り払うとバックルを展開して取り出したカードを挿入した。

 

 

『KAMEN RIDE!DRIVE!』

 

 

バックルがカードを読み込むと、Aディケイドの姿はマゼンタ色の姿のそれから、赤い色を基調とした仮面ライダーへと姿を変えた。

 

 

Aディケイドドライブ「お…身体が…」

 

???「それで身体が自由に動きます。その隙に反撃を!」

 

 

女の言う通りドライブの姿になったことで確かに身体の自由が戻っていた。下級ロイミュードたちはツカサの変わった様子に、慌てて重加速現象を起こす衝撃波を再び繰り出した。

 

 

Aディケイドドライブ「すげぇ。どうってことないぜ」

 

 

重加速の中をものともせず突き進み、下級ロイミュードたちの目の前まで迫ると滑らかな動きで攻撃を加える。事態をうまく掴めないのか下級ロイミュードがあっけなく地に伏した。これならいける。そう思ったAディケイドドライブは更に追撃すべくライドブッカーからカードを取り出し、装填した。

 

 

『ATTACK RIDE!MAX FLARE!』

 

 

カードの能力により胸元のタイヤが炎を纏うタイヤに変わる。マックスフレアにタイヤコーカンしたAディケイドドライブは、タイヤ供給される炎のエネルギーを纏い下級ロイミュードたちへ渾身の連続パンチを叩き込んだ。絶大なダメージを受けた下級ロイミュードたちは耐えきれず倒れると5体が一斉に爆散した。

 

 

Aディケイドドライブ「はあ…はあ…やったぞ」

 

 

素早い身体遣いに乱れた息を整えているといきなりバックルが展開し、挿入したカードが射出した。慌てて手に取ってカードを見てみると先ほど見た時とは違いライダーの画の部分が色が抜けたようにモノクロになっていた。

 

 

Aディケイド「これは…?」

 

 

ドライブの姿が解け、再びディケイドの姿となるツカサ。そのツカサの元に重加速現象から解放された女がゆっくりとした足取りでやって来た。

 

 

Aディケイド「アンタ、着いてきていたのか」

 

???「よくやりましたねディケイド。初変身からの初出陣。戦いぶりは及第点ギリギリといったところですか。出来たら今以上に安定した試合運びをしてもらえるとありがたいのですが」

 

Aディケイド「そんなこと出来たらやっている」

 

???「ではそうなってもらう様に腕を上げてもらわなくては。次、行きますよ」

 

Aディケイド「なに?」

 

 

ひとときの静かさを取り戻せた所にオーロラカーテンが2人を飲み込んだ。大型複合施設の中に出てきたようだが、どういうわけかアスファルトに不思議な植物が巻きついて生い茂り、繁殖が著しく進んでいた。

 

 

Aディケイド「なんだここ。どうしてこんなに植物が」

 

???「これはヘルヘイムの森の植物…。なるほど。どうやらここにはインベスがいるみたいです。相手が相手だけに早く人々を彼らから守らないとこのままでは皆インベスへと姿が変わってしまう恐れが…」

 

Aディケイド「ん?」

 

 

「きゃー!」

 

「うわー!」

 

 

2人の前に叫び声をあげてこちらに走ってくる人々の姿が見える。人々が2人の横を通り抜けるとらその後ろから白くて頭の大きい怪人の姿が確認できた。

 

 

Aディケイド「あれがインベスか」

 

???「インベス相手には鎧武の力です。ディケイド、鎧武のライダーカードを使ってください」

 

Aディケイド「そのディケイドっていうのやめろ」

 

 

『KAMEN RIDE!GAIM!』

 

 

ライドブッカーから新しく取り出したカードを素早くバックルへと装填するとツカサの姿はフルーツの鎧武者の姿へと変わった。AディケイドからAディケイド鎧武となったツカサはオレンジをスマイルカットしたような武器『大橙丸』を携え、初級インベス軍団へ突っ込んで行く。

 

 

Aディケイド鎧武「フッ!おら!」

 

 

大橙丸を振り回してダメージを与えるAディケイド鎧武。なんとも破天荒な型ながらもその刃は着実に初級インベスへダメージを与えてゆく。

 

 

???「流石ディケイド。僅かな時間でみるみる成長している」

 

 

通路を塞ぐほどいた初級インバスが瞬く間に数を減らしてゆく。順調に撃破していくAディケイド鎧武だが、戦いというのはそう簡単に甘くはなかった。目の前の初級インバスの数を減らしていた一方、吹き抜けとなっている2階の通路から更に初級インバスの姿を見せたのだ。

 

 

Aディケイド鎧武「くそ。どれだけいるんだよ!」

 

 

目の前の初級インベスの完全撃破まであと僅か。その次に2階にいる初級インベスのところへ向かわなければ。

 

 

「ぎゃあー!」

 

「助けてー!」

 

 

初級インベスを撃破し終えたころ、2階フロアの奥の方から誰かの逃げる叫び声が聞こえる。その声はどこか聞き覚えのある声だった。やがて姿を見せた2つのシルエット。それはツカサの友人であるリョウタとカンナのものだった。

 

 

Aディケイド鎧武「リョウタとカンナ⁉︎なんであんなところに!」

 

 

端まで追いやられ逃げ場を失ってしまったようだ。こちらからは2人の追い込まれた背中が見える。このままでは2人がやられてしまう。しかしこんな時に限って2階へ向かうエスカレーターが近くに見つからない。

何か手立てはないのか。ツカサはライドブッカーからカードを数枚取り出し見る。どれでもいい。何かあそこにすぐ行けるような、そんなカードがあれば。

 

 

Aディケイド鎧武「これなら行けるか…!」

 

 

『ATTACK RIDE!DANDE LINER!』

 

 

選んだ1枚のカードをバックルに装填してみる。だがどういうわけかツカサの身体に変化はなかった。

 

 

Aディケイド鎧武「なんだよ!なんもないのか!」

 

 

 

どごぉん…。

 

どこか遠くで壁をぶち抜いたような轟音が聞こえた。音のした方を見ていると土煙の中から、なんと空中を浮遊するスノーモービルのような乗り物が現れた。

 

 

Aディケイド鎧武「お!当たりか!」

 

???「ディケイド!あなた何を!」

 

 

発生した土煙に顔を覆う女の叫びを無視し、現れた乗り物…ダンデライナーに搭乗したAディケイド鎧武。不慣れな運転捌きで上昇すると2人に群がるインベスに飛び掛かった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

カンナ「ううっ…ううっ…」

 

リョウタ「大丈夫だカンナ…。1人じゃない…」

 

 

インベスに追い込まれ、逃げ場を失ったリョウタとカンナ。恐怖のあまり涙で顔がぐちゃぐちゃになるカンナをリョウタが寄り添って宥めている。2人で遅めの昼飯を食べ終わった後に帰宅しているとあのビルの崩壊…『滅びの現象』に見舞われた。襲いかかってくる怪人たちから逃げ延び、紆余曲折あってここに逃げ込んできた訳なのだが。逃げ続けるのももはやこれまでのようだった。

 

絶体絶命のピンチに2人が死を覚悟したそのとき。背後からそれは現れた。オレンジのような鎧を纏いオレンジのような刀を手にした武者。その怪人はインバスの群れに飛び掛かると乱雑に刀を振り回し、切りつけた。

 

 

Aディケイド鎧武「てぃや!おら!」

 

 

自身の背後に無防備の人がいる。それも日頃からよく知れた友人だという条件が手伝ってか、ツカサの戦闘スキルが著しく向上していく。無駄や隙があった立ち回りが洗練されてゆく。そして1階で相対したインベス軍団とそれほど変わらない数の相手をなんとツカサは半分近くの時間だけで全滅させてしまった。

 

 

Aディケイド鎧武「はぁ…はぁ…」

 

 

獅子奮迅の戦いを見せたAディケイド鎧武。その姿を最善席で見ていたリョウタとカンナ。命の危機に脅かされていた2人だったが無事助かったようだ。

 

 

Aディケイド鎧武「2人とも大丈夫か!」

 

 

我に帰り2人の無事を確認するツカサ。そのあまりにも凄い剣幕と先程の出来事に情報が処理しきれていないのか、2人はフリーズしたように動かなかった。

 

 

Aディケイド鎧武「よかった…よかった無事で」

 

 

2人に大きな傷がないことを確認できるとツカサ大きく息を吐き出して安堵した。そして再び2人の元へ歩み寄ろうとした瞬間。建物内に女の子の叫び声が響いた。

 

 

カンナ「きゃあ!」

 

Aディケイド鎧武「どうしたカンナ!大丈夫か!」

 

カンナ「やめて!来ないで!」

 

リョウタ「や、やめろ!それ以上近づくな…!」

 

Aディケイド鎧武「は?おい。何を言って…」

 

 

2人の謎の行動にツカサは理解ができなかった。しかしその後すぐに悟った。カンナを守るようにリョウタ前に塞がっている。まるでこちらに敵意を示すように。それはつまり彼らがツカサに対して拒絶反応を示していること意味していた。

 

 

???「どうやら既に片付いてしまったようですね。…!」

 

 

2階にやってきた女は目撃した。Aディケイド鎧武の2人の若い男女に差し伸ばした手が行き場を失っている様を。女はすぐに理解した。彼らの、命をかけて救った相手を見る目が、ロイミュードやインベスたちを見る目と同じであるということに。

 

 

???「ディケイド」

 

Aディケイド鎧武「…!」

 

???「片付きましたか?」

 

 

女は近づいてAディケイド鎧武の肩に手を置くとリョウタとカンナにアイコンタクトを送る。誰かは分からない人間を見て安堵した顔をすると異形の姿をした友を前に逃げるようにしてその場から去っていった。ヨロヨロとツカサが立ち上がる。バックルから挿入したカードが勢いよく射出したが何も反応がなかった。仮面の中でツカサは射出したカードと同じような白い顔をしていたことなんて誰も気づかないだろう。

 

 

???「あの2人はお友達ですか?」

 

Aディケイド「……。」

 

???「…滅びの現象はまだ続いています。次の場所へ参りますよ」

 

 

女は地面に落ちたライダーカードを拾うとダンデライナーから姿が戻ったマゼンタのバイク…マシンネオディケイダーに跨った。そしてオーロラカーテンを出現させると未だ微動だにしないAディケイドと共にゆっくり近づいてくるそれに身を委ねた。

 

 

続いてやってきた場所は闇夜に雨が降り続くビル街の裏路地。そこは今まで連れて行かれた場所の中で1番惨たらしいところであった。襲われた人たちを怪人たちが連れ込んだのだろうか。行き止まりとなっている一画に屍の山が築かれている。轟く雷鳴で瞬間的に写る山の全貌はとても直視出来たものではなかった。悲しみに打ちひしがれていたツカサだったが流石にその惨状を目にして我を取り戻したようだ。

 

 

Aディケイド「これは…酷すぎる」

 

???「今度の敵はいったいなんでしょう」

 

 

屍の山に注意が向けられる女の背後に暗闇から魔の手が忍び寄った。気配を消して伸びたその手に慌てて反応するもあまりにも素早い攻撃に女は地に伏してしまった。

 

 

Aディケイド「おい!大丈夫か!」

 

 

雷が落ちる音が連続的に聞こえてくる。暗闇に潜んでいた敵だったが、僅かな明かりで雨で滴った身体を認識できる。相手の身体には星座のような模様が散りばめられていた。その周りを俊敏に動き回る全身真っ黒の怪人が。

 

 

???「くそ。やられた…」

 

Aディケイド「あの星座と…忍者みたいなやつはなんだ」

 

???「あれはゾディアーツです。アストロスイッチでコズミックエナジーのチャネルを開き、そのエネルギーをマテリアライズしてニュークリーチャーへ変貌する…」

 

Aディケイド「…もういい。大体わかった。要は倒しゃあいいってことだろ」

 

 

正面にはゾディアーツ。後ろには屍の山。この挟み撃ちで狭いフィールド。おまけに夜で視界は雨というかなりこちらが不利な状況であるのは間違いないだろう。

 

 

???「…。まあそうです。ゾディアーツにはフォーゼの力が有効です」

 

Aディケイド「さっきから思ってるんだけどその説明さ。もうちょっとわかりやすく言ってくれよ。知らない言葉ポンポン出されてもわかんねえって」

 

 

女の身体を抱き抱えて起こすツカサの軽口に女の冷たい視線が向けられる。気まずい雰囲気に耐えられなくなったツカサは咳払いをして立ち上がった。

 

 

Aディケイド「…別になんでもねぇよ」

 

 

『KAMEN RIDE!FOURZE!』

 

 

カードを装填するとツカサの頭上から煌びやかなエネルギーが降り注いだ。そのエネルギーがツカサの身体を覆うと白い宇宙服を連想させる姿に変わる。名を仮面ライダーAディケイドフォーゼ。背中のジェットパックユニットとスラストマニューバーを駆使し浮上すると、相手のリズムを乱して攻撃を図る。不規則な動きと機動力で上手く負荷を掛けられているものの、暗いフィールドが災いしてかイマイチ決定力にかける。

 

 

Aディケイドフォーゼ「ちっ。このままじゃ埒があかねぇ」

 

???「フォーゼには40近くの種類のサブウェポンが備わっています。それらをうまく活用してみてください」

 

Aディケイドフォーゼ「うまく活用してって言われてもな…!」

 

 

何があるかなんてわからないし、ましてや有効打があるとは限らないではないか。そう心の内で悪態を吐きつつライドブッカーからカードを取り出すとやけになって装填した。

 

 

『ATTACK RIDE!FLASH!』

 

 

Aディケイドフォーゼ「フラッシュ?いいんじゃないか?」

 

 

Aディケイドフォーゼの右腕に電球を模したモジュールが現れた。

光を照らし敵の姿を探る。するといとも簡単にダスタードの姿を見つけられた。ツカサはここぞとばかりに距離を詰め一撃をお見舞いする。

 

 

Aディケイドフォーゼ「いいぞ。もっと他には無いのか?」

 

 

『ATTACK RIDE!HOPPING!』

 

 

次なるカードを取り出してバックルに装填する。すると今度は左足にピンク色したホッピングが現れた。

 

 

Aディケイドフォーゼ「ん?なんだバネか?…うわぁ!」

 

 

現れたホッピングは勝手に縮んでしまい飛び跳ねた。跳ねたホッピングは動き始めると止まることを知らず四方八方に跳ね回る。

 

 

Aディケイドフォーゼ「くそ!止まれ!」

 

 

ホッピングの効果で不規則を超えて予想もつかない動きとなるも、これが功を制し辺りに潜むダスタードの場所がフラッシュによって炙り出される。ツカサはコントロールすることを断念すると飛び跳ねる勢いで攻撃を仕掛けることにした。苦戦しつつダスタードに狙いを定めて飛び跳ねる。戦い方を変えてから1体、また1体と撃破してゆき、それから程無くして最後の1体の撃破に成功した。

 

 

Aディケイドフォーゼ「ふぅ…これが逆転の発想って奴だ」

 

???「まったく。もう少し静かに戦えませんか」

 

 

モジュールが消えて自由になったAディケイドフォーゼの元へ隠れて見ていた女がやってきた。戦いに一区切りがつくと案の定カードが射出しその姿はAディケイドに戻ってしまった。

 

 

Aディケイド「アンタどこにいたんだ?」

 

???「そこです。こんなところで上に下にピョンピョンと…。巻き添え喰らうなんて御免ですから」

 

Aディケイド「そこってあの山の中か…?」

 

 

女が指差す先には初めに見た屍の山。確かに狭いところで隠れるところはないとはいえ、そこに飛び込むのは中々勇気がいると思うが…。

 

 

Aディケイド「…?」

 

???「どうしました?あなたも飛び込みたくなりましたか?」

 

Aディケイド「まさか…」

 

 

女が身を潜めていた屍の山を見つめるツカサ。その視線の先には山の中に埋まっていたひとつの屍を捉えていた。最初見た時にはわからなかったが、その屍は見覚えのある人物だった。

 

 

Aディケイド「イシバシさん…?そんな…」

 

 

その男の屍はツカサも良く知るイシバシさんだった。仰向けになって口を大きく開いている。その顔はとても恐ろしい最期だったのか、苦悶の表情を浮かべていた。胴体部分は埋もれて見えないが、恐らくあの鳥の怪物に襲われた事が致命傷になっているのだろう。

 

 

Aディケイド「ゔゔっ…。ゔゔっ…」

 

 

ツカサは涙を流して崩れ落ちた。それもこんな異常な状況で。接客のセの字もままならなかった時から良くしてくれたお客さん。無愛想で人付き合いに難があるツカサを懐深いイシバシさんはとても可愛がってくれた。

 

 

『ツカサくんまた来たよ〜。いつものコーヒーセットお願いね』

 

『どうした?なんか今日元気ないじゃないか。…そっか。城南大落ちちゃったんだ』

 

『もうここで働いて半年か〜。なんだか店員姿もサマになってきたんじゃないか?入ってきたばかりの頃から知ってる身としてはなんだか鼻が高いよ。ハッハッハ』

 

 

もうイシバシさんの笑った顔を見ることは出来ないんだ。せっかく戦う力を手に入れたと言うのに。今までやってきた事は全部意味なかったのか。

 

 

???「災難が続きますね。ただの知り合いではないようですが。しかしあまり泣きすぎると仮面の中が大変なことになりますよ」

 

 

ツカサの後ろに立つ女は近づくことも寄り添うこともなくただ冷淡に呟いた。

 

 

Aディケイド「…黙れ」

 

???「親しい人の死を経験するのは初めてですか?」

 

Aディケイド「……。」

 

???「生きていく上で人の死というのは避けられない出来事です。誰もが親や友人、恋人など親しい人の死を乗り越えて強くなる。人はそうして強くなるのです。貴方もこれでより強くなりましたね」

 

???「黙れ!」

 

 

ツカサ立ち上がると勢いよく女の胸ぐらに掴み掛かった。

 

 

???「…ちょっと。やめてもらえます?その姿で殴られたら、流石の私でも死んでしまいます」

 

Aディケイド「そうしてみるのも悪くない。お前とはバックルを受け取ってからの長い付き合いだ。今ならそれで強くなれる気がする」

 

 

怒気を孕んだ声でツカサの拳にさらに力が込められる。余裕のある表情をしていた女だったが、徐々に首元が苦しくなっていくことで笑みが少しずつ消えていく。

 

 

???「…でも良いのですか?こんなことをしている間も、その広場には今でもあなたの帰りを待ってる人が居るのでは?」

 

Aディケイド「はっ!そうだ。店長…!」

 

???「早くしないと彼の身に危険が迫ってしまうかも。ここはどこなんでしょう。辿り着くのにいったいどれほどの時間がかかるのでしょうね」

 

Aディケイド「何が言いたい?」

 

???「私が力を使えばすぐに戻れますが…。それでもあなたは強くなるためにここで私を殺しますか?」

 

 

ツカサはゆっくりと力を緩めると女から手を離した。女は乱れた首元を整えると腕を伸ばしてオーロラカーテンを出現させる。

 

 

???「では戻りましょうかディケイド。滅びの現象も一時的に止んでいるようです。それに疲れたでしょうからしっかり休んでくださいね。…あなたにはまだまだ戦ってもらわなくてはなりませんから」

 

 

ツカサはオーロラカーテンが出現すると女を無視して先に入っていった。女はそれを見て鼻で笑うと少し遅れてその中へ進んでいった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

日が暮れて街灯が着き始めた森林公園の広場には変わらず沢山の屍が転がっていた。そんな中で店長は崩壊した公衆トイレの中に1人隠れていた。ツカサを最後に見た微か記憶を辿る。異形の姿に変わったツカサが迫り来る怪人一帯を押しのけるとこちらを見る女と一緒にその姿を消した。確信はなかったが、ただツカサがここに帰ってくるのを信じてじっと動かず待っていた。どれくらい待っただろうか。四角となっている広場の方から誰かがいる音がした。飛び出して見るとそこにはオーロラカーテンが現れ、2人の人物が出てきた。

 

 

店長「⁉︎ ツカサくん⁉︎」

 

 

広場の中央に店長が駆け寄る。しかしそこにはツカサの姿はなく、ツカサと一緒に消えた髪の短い女の子とかなり背丈のある緑色の目をした怪人が立っていた。

 

 

店長「うわぁ!」

 

Aディケイド「あっ…」

 

 

自分を店長と呼ぶマゼンタ色をした怪人がヘソのあたりのバックルを横に開くとその姿が人の姿に変わった。そこには店長がずっと待っていた、角田ツカサの姿が。最初こそ驚いた店長でもツカサが無事という安堵のあまり目に大きな涙を浮かべるとツカサを思いっきり抱き寄せた。

 

 

店長「よかったよ…ツカサくん。無事で…!どこも怪我はない?」

 

ツカサ「はい。俺はなんとも…」

 

店長「嘘つけ。ボロボロじゃないか!もう…なんでこんなになるまで。それになんでこんなにびちょびちょなのよ…」

 

ツカサ「へへ…。実はいろいろありまして…」

 

店長「ちょっとツカサくん⁉︎」

 

 

ツカサは店長の無事を確認できて安心したのか、突然身体中の力が抜けて倒れ込んだ。腕の中で気を失ったツカサをおぶると、店長はそばで立っていた女に向けて頭を下げた。

 

 

店長「ありがとうございます。君がツカサくんを助けてくれたんですね」

 

???「ええ。でも私も彼に助けてもらいました」

 

店長「そうか…。ツカサくんが」

 

???「……。」

 

店長「迷惑かけてなかったですか?彼こう見えて人付き合いに不器用なところあるから」

 

???「いや…特に」

 

 

女はこれまでのツカサの生意気な態度が脳裏に駆け巡ったが口には出さないことにした。

 

 

店長「彼に代わって礼を言わせてください。あの、よかったらうちの店に寄って行ってくれませんか。僕喫茶店営んでて。彼を助けてくれたお礼をさせてください」

 

???「いや別にそこまでしてもらわなくても」

 

店長「いいんです。いいんです。命の恩人ですから。それに…彼のあの姿についても聞きたいですし」

 

???「……。」

 

 

店長はニッコリとした笑顔を女に向けて頷くと『写真館 ヒカリスタジオ』へと歩き出した。女は店長の後ろ姿を見て上げていた口角を下げてた。びちょびちょでぐったりしているツカサを軽々しく連れていた。女は店長の姿を見て評価をガラリと変えたようだ。

 

 

???「最初は気が弱くて鈍臭い奴かと思っていたが…なかなか食えない男のようだな」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ヒカリスタジオへと戻ってきた3人。店長の意気揚々とした発言で無事戻ってきたわけだが。

 

 

???「……。」

 

店長「はははっ。そうだよね。この状況なんだし、うちに被害があっても不思議じゃないか…」

 

 

ヒカリスタジオは滅びの現象による怪物たちの侵攻によるためか店の至る所に被害のあとが見受けられた。

 

 

店長「でもまぁここじゃなんだし…。中入ってよ」

 

 

扉に手を掛け煙っぽくなった店内へ入る店長。女も少し間を空けるとゆっくりと中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ツカサ「…。」

 

 

永らく眠ってしまっていたのだろうか。気を失っていたツカサの意識が戻る。目を覚ますと見慣れた天井が広がっていることに気づいた。いつのまにひかりスタジオの休憩室にいなんて。窓から見える外の世界は夜も更けているため、もしかしたらだいぶ時間が経っているのかもしれない。部屋から出ると表には店長と、カウンター席に女が座っていた。女はツカサと目が合ったが、コーヒーを啜り声をかけてくる事はしなかった。

 

 

店長「あっ。ツカサくん」

 

ツカサ「すみません店長。俺…店長に話したいことが…」

 

店長「いいよいいよ全然。店の中は見ての通りボロボロになってるけど、これは用意できたからさ。話より先にまずはこれ」

 

 

店長はツカサの話を遮って白いカップを持ってきた。ツカサは受け取って見てみると、そこにはツカサのお気に入りのホットミルクが注がれていた。

 

 

店長「ほら。飲んで。話しはその後で」

 

ツカサ「…ありがとうございます」

 

 

ツカサはカウンター席まで回ると女の隣の席へと座った。

 

 

店長「ちょっとツカサくん?」

 

ツカサ「店長。すみません。俺、店長に話したいことと同じくらいコイツに聞きたいことががたくさんあるんです」

 

店長「でも…」

 

 

まだ休んでいた方が良いのでは。そう心配する店長だったがツカサは満身創痍ながらも食い下がる様子は見せなかった。そんなツカサを見て店長は小夜に出していた空いたコーヒーカップに新しく注ぐと休憩室の方へと去っていった。

 

 

ツカサ「それじゃあ…話してくれるか。アンタは誰で…『ディケイド』とは何なんだ。そして今何が起こっている?わかるように説明してくれ」

 

 

女は店長が注いだ煎れたてのコーヒーを口に運ぶとそっとソーサーの上へ置いた。

 

 

小夜「私の名前は門矢小夜。あなたの方の住むこの世界とは別の世界からやってきました」

 

ツカサ「別の世界?」

 

小夜「えぇ。ちなみにあなたが先程まで戦った怪人たちも当然ですが別の世界からやってきた存在です」

 

ツカサ「……。」

 

小夜「疑わないんですか?この話」

 

ツカサ「信じるに足る証拠はもうこの目で見てきた。アイツらはアンタの世界から連れてきたのか?」

 

小夜「いえ。彼らもまたそれぞれ別の世界の存在です。移動した先々でそれぞれ別の力を使うよう言ったのは、その怪人と同様の世界にいる仮面ライダーの力をぶつけることが相手にとって有効だからです」

 

ツカサ「仮面ライダーだと?」

 

小夜「ええ。9つの世界に存在する救世主の名前です」

 

 

小夜が指をスナップするとツカサの意識がほんのり遠のいていった。そして再び意識がはっきりするとあたりの景色が一変していた。催眠術にでも掛かったのか、プラネタリウムのように360°宇宙空間が広がっている。宙に浮くように佇むツカサの目の前には同じく宙に浮くように立つ小夜の姿があった。

 

 

小夜『見えますか。あれが』

 

 

小夜が指す方。そこには9つもの地球がぶつかりそうな程近い距離で存在していた。

 

 

ツカサ『あれはなんだ、地球に見えるが…』

 

小夜『ええ。地球です』

 

ツカサ『そんな。なんで9つも地球が』

 

小夜『あれから…更に9つの世界が生まれ、新たなる9人の仮面ライダーが誕生しました』

 

ツカサ『ちょっと待て。いきなりなんだ?』

 

 

少し様子のおかしくなった小夜だがツカサの言葉を気に止めずに続ける。

 

 

小夜『それらは独立した別々の物語。しかし物語は融合し、そのために世界はひとつになろうとしています。やがて全ての世界は消滅してしまいます』

 

ツカサ『いい加減にしろ。言ってるだろ。わかるように説明してくれと』

 

小夜『ディケイド。あなたは9つの世界を旅しなければなりません。それが世界を救う…たった一つの方法です』

 

 

ツカサの頭にイメージが流れ込んでくる。それは夢で見たあの景色と全く同じもの。石切場でツカサが変身した物と同じディケイドの目の前に9つもの正体不明のシルエットがこちらを見ている。手元にあるライダーカードにもイメージ同様9人の姿が無くなったカードがある。もしかしたらこれが9つの世界に居る仮面ライダーという存在か。

 

 

ツカサ『世界を旅することがこの世界を守ることになる…。なるほど。この世界に何が起きててどう解決するかはわかった。でも…どうしてそれが俺なんだ』

 

小夜『それは…あなた"も"世界を破壊する存在だからです。創造は破壊からしか生まれませんからね。残念ながら』

 

 

小夜の言葉を最後にツカサは再び意識が遠のく感覚を覚える。そして再び意識がはっきりしてくるとヒカリスタジオのカウンター席に戻ってきていた。

 

 

小夜「理解してもらえましたか?」

 

ツカサ「まだ話は終わっていない。アンタのことと『ディケイド』のことがなんなのか、まだ何もわかっていない。俺は夢で見てたんだ。この『ディケイド』という存在を何度も何度も!」

 

 

興奮したツカサはふらついて倒れ込むとカウンター席の椅子が音を立てて転がった。大きな音を聞いて奥から飛び出してきた店長に身体を支えられツカサは立ち上がると小夜に対して思いっきり睨みつけた。

 

 

小夜「私が何者であるかはどうだっていい。『ディケイド』がなんなのかはこれから始まる旅の中でわかることでしょう」

 

ツカサ「何…だと…」

 

店長「ツカサくん。今日はもう休もう。まだ体力だって回復しきれてないし…雨に打たれた身体を早く温めないと風邪ひいちゃう」

 

小夜「それはいい考えです。私もこの店長の好意に甘えさせていただきました。とてもいい湯でしたよ。アナタもぜひそうした方がいい」

 

ツカサ「はぁ…はぁ…店長、俺…お風呂借ります…」

 

 

ツカサはふらつきながら壁を伝って歩き出すと奥の部屋へと消えていった。店の中には小夜と店長の2人きり。店長は倒れたカウンター席を立て直していると席に座ってコーヒーを飲んでいる小夜に向かって声をかけた。

 

 

店長「小夜さん。私もその旅に同行しますよ。今みたいにツカサくんが倒れてしまったら、介抱する人が必要ですから」

 

小夜「別に。好きになさってください。仮にあなたにその気が無くとも、この『ヒカリスタジオ』のオーナーであるあなたは断ることなどできませんがね」

 

店長「…ではもう夜も遅いので失礼します。カップは飲み終わったらシンクの中に水を入れて置いておいて下さい。では」

 

 

一度も小夜を見る事なく会話を終えると店長は店の2階へと消えていった。小夜もまた店長の方を見ることはせず、只々ゆっくりと入れられたコーヒーを飲んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

時刻はツカサ達がヒカリスタジオにたどり着く数十分前。ツカサがAディケイドフォーゼとなりダスタードたちと戦っているそのころ。その様子をビルの屋上から傘をさして眺めている1人の男がいた。

 

 

???「ああ…すごい。あっという間だ」

 

 

揚々のない喋り方でダスタードを撃破したAディケイドフォーゼに称賛の拍手を送る。男は独特な白い民族衣装のような服装を身に纏い、柵を越えて何十メートルと高いところから脚を下ろして座っている。

 

 

???「ちがうちがう。感心するのはそこじゃない。えーっと、あれは確かディケイドだよな。うーん…」

 

 

男はなにやら少し考える素振りを見せて、持っていた書物に視線を落とした。何が書かれているのかわからないがびっしりと内容が書き綴れられたその分厚い本を閉じると、ゆっくり立ち上がり背後に出現したオーロラカーテンに向けて歩き出した。

 

 

???「なんてあの方に伝えようかな。まあ、別にこの世界に生まれても他の時間に影響ないだろうけど…万が一のこともあるしな。少し様子を窺っておいたほうがいいかな」

 

 

男はオーロラカーンの前で一度立ち止まる。そして今一度Aディケイドを見下ろすと再び歩き出した。

 

 

???「あの女のことも念頭に入れとかないと。あーあまったく。仕事増やさないでくれよ」

 

 

オーロラカーテンの中へ進んで消えると男の笑い声と共にそれは消滅した。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

小夜「おはようございます。よく眠れましたか?」

 

ツカサ「…ああ」

 

 

明くる日。表の店内に出てきたツカサと小夜。2人とも昨日は大雨に長時間打たれていたが特に風邪の症状も出ることなく元気に回復したようだった。

 

 

小夜「では早速、別の世界へ参るとしましょう」

 

ツカサ「ちょっと待て。そういや別の世界の移動ってどうやるんだよ。もしかしてアンタの場所を移動する力で行くのか?」

 

小夜「…着いてきて下さい」

 

 

小夜はそう言うと何故か店の奥の方へと消えていった。慌ててツカサが付いていくと小夜はカフェ専用の部屋からでて行き、その隣の写真館の撮影ブースの部屋に入って行った。

 

 

ツカサ「おい。どうしてこの部屋に?」

 

小夜「では参りますよ。世界を救う旅の始まり。さて。第一に訪れる世界はいったいどんな所なんでしょうか」

 

ツカサ「なんだよ。ここで何かやろうってのか!」

 

 

小夜は腕を伸ばして目を瞑ると動かなくなった。微かに振動したような感覚を覚える。しかしひとりでに部屋の背景ロールに降りたことだけを除けば、特に特段変わったことは起こらなかった。

 

 

ツカサ「お…おい。早くしろ。部屋がドバーンって飛ぶなら早めに言えよ」

 

小夜「着きました」

 

ツカサ「は?嘘だろ?」

 

小夜「なんで嘘をつく理由がありますか。外に出て見てご覧なさい」

 

 

ツカサは半信半疑になりながら部屋の外へと出ていく。撮影部屋の中央にてひとりでに下がった背景ロール。そこには普段の撮影の時とは違う別の背景ロールが下げられていた。店長は今起きてきたのか寝癖で更に渦巻く紙を引っ提げて撮影室の前を通った。

 

 

店長「あれ…おはよう…朝早いね。おお…?」

 

 

眠い目を擦りながら入ってきた店長。メガネをかけてない裸眼でもぼんやりと見慣れない物があることに気付いたようだ。初めて見るその背景ロールは店の所有物ではなかった。普段の撮影で使うバックスクリーンとはまるで違う。その背景ロールにはでっかく空へと伸びる電波塔とその周りを飛び交うカラフルなUSBメモリが描かれていた。

 

 

店長「なんだ…これ…」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

???「フッ!オラァ!」

 

???「ぐっ…バカな…。この力は地球の本棚(ほしのほんだな)には存在しない記憶のはず…。それなのに…その力に適合した私がお前如きに負けることなどあっていいはずが無い…!」

 

???「『お前如き』だ? そのセリフ、俺がたった1人に見えてるようにしか聞こえないぜ」

 

???「なんだと?」

 

???『ショウタロウだけじゃない。私もいる!』

 

???「それだけじゃない。風が!街が!地球が!…この地球(ほし)に刻まれた全ての記憶が俺たちの中にある!お前のような強大な悪でも平和願う人々の力で打ち砕く!それが…』

 

???「それが…仮面ライダーだとでも言うのか! …ふざけるな。私は認めない…認めてたまるかぁ!」

 

???『いくよショウタロウ!これが最後だ。決めるならここしかない!』

 

???「ああ、いくぞ!最後の…」

 

???『ええ…最後の!』

 

 

 

 

 

『JOKER!MAXIMUM DRIVE!』

 

 

 

 

『XTREME!MAXIMUM DRIVE!』

 

 

 

 

 

???&???「ダブルジョーカーエクストリーム!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回。仮面ライダーアナザーディケイド。



「私立探偵…森谷アキコ?」

「ガイアメモリにドーパント…。どうやらここは『W』の世界のようです」

「仮面ライダーに最も近い男か。なんだかゾクゾクしてきたな」

「存分に成果を発揮してくれよ。仮面ライダーの片割れよ」




第2話 Wの世界/ようこそ。清き風吹くこの街へ


すべてを破壊し、すべてを繋げ。





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第2話 Wの世界/ようこそ。清き風吹くこの街へ

 

 

ツカサ「マジかよ」

 

小夜「どうです?初めて別の世界に来た感想は?」

 

ツカサ「……。アンタの早着替えに驚いた」

 

 

レトロな街並みに一際目立つ巨大風車の建物。ここから離れた距離にあるであろうその建物は存在感を遺憾無く発揮していた。その姿は背景ロールの絵にあった電波塔と同じ。ヒカリスタジオの外観も本来の姿より古風な出立ちに変わっていた。そんな数々の驚きをも凌駕したのが中から出てきた小夜の服装。

 

 

ツカサ「それ外套(がいとう)だよな」

 

小夜「インバネスコートです」

 

ツカサ「その前後にツバのついてるキャップは?」

 

小夜「ディアストーカーハット」

 

ツカサ「じゃあ口に咥えているパイプは?」

 

小夜「フーッ……。これはシャボン玉です」

 

ツカサ「なんじゃそりゃ!!!!」

 

 

いったいいつ着替えたのか、小夜の服装は白が基調の特徴的な服装からガラッと変わり小説やアニメでよく見る典型的な探偵の服装になっていた。

 

 

小夜「それだけではありません。これを見て下さい」

 

 

そう言って小夜は懐から名刺を取り出す。その名刺にはこう書かれていた。

 

 

ツカサ「『敏腕私立探偵…森谷(もりや)アキコ』?」

 

小夜「名前も違います。どうやらこれがこの世界での私の役割のようです」

 

ツカサ「役割?なんだよそれ」

 

 

窓に反射する自分の姿を小夜は体を揺らしながら見ている。その姿はまるで試着室で着た服と自分の相性を確認するように。

 

 

小夜「いままで訪れた世界でもこうして役割を与えられていました。『ここで誰と会い、何を成すのか』。この世界では…『探偵となって仮面ライダーを探せ』ってことですね」

 

ツカサ「へー…ん?ちょっと待てよ。ということはアンタ、行く先々で何をするのか知らなかったんじゃないだろうな…」

 

 

小夜はツカサと目を合わせる。そしてじっと見つめ合うと小夜は口角をニィっと上げた。悪魔のようなその笑顔。それは探偵というよりも探偵の宿敵がする悪役の顔のようだった。

 

 

ツカサ「はぁ…。旅の内容といいガイドといい、とんでもないツアーに引っかかったな…ん?」

 

小夜「……?」

 

店長「んー。んー。繋がらないなぁ」

 

 

頭を抱えていたツカサの元へラジオを手にした店長が出てきた。ラジオを宙でウロウロさせていて、何かを探している様子。

 

 

ツカサ「店長?どうしたんですか」

 

店長「いやぁね。店のテレビが映らなかったからさ、ラジオでニュース聞けるかと思って奥から取り出したんだけど。全然繋がらなくて」

 

ツカサ「随分古いラジオですね。しかもデザインも店長の趣味全開」

 

 

ラジオのつまみを何度もいじる店長。するとばちばちと鳴るノイズの中に女の人の声が聞こえてきた。少しずつノイズが取り除かれチューニングが合わせてゆく。すると意気揚々と話すラジオDJの声がクリアに聞こえてきた。

 

 

女DJ『白南風(しろはえ)ワカナの【healing Wave】!本日もここ風都スカイタワーから生放送でお送りしております。続いてはお便りの紹介のコーナーとなりま〜す。こちらのコーナーでも引き続きゲストの佐川ソウキチさんにお付き合いいただきます!』

 

ソウキチ『よろしくお願いします』

 

 

店長「お!つながった!」

 

 

店長はラジオがつながったことがとても嬉しいようだ。

子供のように跳ねて喜んでいる。

そんな店長の様子に微笑みながら、ツカサは既にラジオに耳を傾けていた小夜に倣いこの世界がどんな世界なのか手がかり探るため傾聴を始めた。

 

 

ワカナ『本日のテーマは『忘れられない存在、時間、思い出』。番組ではまだまだお便り募集してますのでどしどしお待ちしてます。では参りましょう〜まずはこちら。ラジオネーム【北風小僧の将太朗】さん。ありがと〜。【私には今でも忘れられない存在がいます。それは仮面ライダーです】』

 

 

ツカサ「…!」

 

小夜「…。」

 

店長「あっ!今仮面ライダーって言ったよね⁉︎」

 

 

ワカナ『【長く続いた戦いも終わり、ガイアメモリの脅威に終止符が打たれ、ようやく待ち望んだ平和がやってきました。しかしそれは同時に仮面ライダーの存在が必要なくなってしまったとも言えます】』

 

 

店長「ほらやっぱり!仮面ライダーって言った!」

 

ツカサ&小夜「シーッ!黙って!」

 

 

ワカナ『【ドーパントから平和を守ってくれた仮面ライダーはこの街の希望です。幾度となく僕達を助けてくれたと言うのにお礼の一言も言えていません。もう仮面ライダーはこのまま現れないのでしょうか。出来ることならまた会いたい。ワカナさんはどう思われますか?】…とのことです。なるほどね〜。私も仮面ライダーに助けられたことあるから、もうその姿を見ることが無くなると思うとやっぱり哀しくなるな……………」

 

 

店長「あれ?あれれ?聞こえなくなっちゃったよ」

 

 

チューニングして調子の良かった店長のラジオが再び聞こえなくなってしまった。酷くなったノイズに手こずりながらも店長があの手この手で回復を試みようとする後ろで小夜がぼそっと独り言のように呟いた。

 

 

小夜「なるほど。『ガイアメモリ』に『ドーパント』。どうやらここは『仮面ライダーW』の世界のようですね」

 

ツカサ「すごいな。今のでわかったのか」

 

小夜「ええ。これから巡る世界の知識ついてはある程度頭に入れてありますから」

 

ツカサ「……。」

 

小夜「なんです?ずっとこちらを見て」

 

ツカサ「いやなにも。ただ、あまりにも慣れた動きだったからな。いったいどれほどの世界を旅してきたんだろうと思って」

 

小夜「フッ。また私の詮索ですか?」

 

ツカサ「ああ。アンタの正体が見えない以上信用も信頼も出来たもんじゃない。そういう意味ではあの怪人たちと同様に警戒している」

 

小夜「ふふっ。なるほど。私は私の役割のため。あなたは自分の世界を救うため。利害関係が一致してるからこそついてきていると」

 

ツカサ「ああ。そういうことだ」

 

小夜「ほんと、子供のくせに生意気なんですから。これからの長旅。アナタとはいい関係が築けそうだ」

 

ツカサ「同感だ。これからはいつでも声をかけて来てもいいぞ」

 

 

にこやかな顔で交わされる会話。されど両者その目に輝きは全くない。

お互い腹の底を探ろうと意識を尖らせている。そんなばちばちと交わされる目線を小夜の方からふらっと外すと、彼女は何処かへ吸い寄せられるように足を動かし始めた。ツカサの真後ろ。吸い寄せられた先にはなんて事のない町のイベントや広告が集う掲示板があった。

 

 

小夜「……。」

 

ツカサ「あっ。これって」

 

小夜「先ほどラジオで言ってた『風都スカイタワー』の夏祭りのお知らせですね」

 

 

掲示板に貼られた広告の中には先ほどラジオで出てきた『風都スカイタワー』のチラシがあった。今週末に予定されている風都スカイタワーで開かれる夏祭りイベント。その広告の端っこにはこれまた先ほど名前が出てきた『佐川ソウキチ』という探偵の名前もあった。

 

 

ツカサ「『ガイアメモリ犯罪に特化した凄腕私立探偵。その実力はあの仮面ライダーの活躍に一役買ったと言わしめるほどのモノ!』だってよ。おいおいマジかよ。この強面のおっさんそんなすげーのか」

 

小夜「取り敢えずここに向かって見ましょうか。この世界で何をするのか。それがわかれば仮面ライダーに会えるかもしれませんしね」

 

 

小夜は掲示板から離れると、いったいどこから持って来たのかわからないマシンネオディケイダーに近づいていく。ヘルメットを取り出しエンジンをかけるとマシンネオディケイダーは豪快な排気音を轟かせた。

 

 

ツカサ「おい。どこ行くんだよ。夏祭りは今週末なんだろ。今行っても誰も居ねぇって」

 

小夜「ちゃんとラジオを聞いてなかったんですか。あの番組は生放送。そして収録先は風都スカイタワー。今から向かえばまだ間に合うかもしれません」

 

ツカサ「うるせーな。そんなん気づいてたに決まってるだろ」

 

 

ツカサは不貞腐れた様子を見せながら、小夜に新たなヘルメットを要求して受け取ったヘルメットを被り始めた。

 

 

ツカサ「現状仮面ライダーに最も近い男か。なんだかゾクゾクしてきたな」

 

小夜「無駄口叩かずしっかり捕まってて下さい。振り落とされても知りませんよ」

 

店長「あれ。2人共どこか行くの?」

 

 

ずっとラジオの調整と格闘していた店長がどこかへ向かおうとする2人に気付き声をかけてきた。発進しようとしたマシンネオディケイダーに近づく店長に後ろに乗ったツカサが行き先を告げた。

 

 

ツカサ「早速今から仮面ライダーを探してきます。俺は俺に与えられた使命を全うするため頑張ってきますんで。じゃあ」

 

 

後ろに人を乗せてもなお、マシンネオディケイダーは十分な排気音を轟かせていた。とてつもない馬力を誇るマシンネオディケイダーは小夜とツカサを乗せると軽々と発進していった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ドーム状に広がる密閉空間。

そこには壁一面に取り付けられたモニターと精密機械が天井まで迫るほど設置されていた。

窓はなくドアもない光の届かない部屋。

唯一ある出入り口は中央にあるエレベーターだけ。そのエレベーターから1人、サングラスをかけた人物が降りてきた。

 

 

???「どうだ。"X bicker"の開発状況は」

 

 

部屋中のモニターと精密機械を前に約20名程の研究員が黙々と作業を行っている中、その中のリーダーと思われる1人の男がエレベーターから降りてきた人物を出迎えた。

 

 

リーダーの男「おお先生。わざわざ御足労頂きありがとうございます。計画は順調に進んでいます。現在最終段階に入りましたので彼女(・・)とシステムを同期しインストールすれば、後は実行するのみです」

 

先生「…おお。そうか」

 

 

先生と呼ばれた人物はサングラスを外して中央エレベーターの裏へと進んでゆく。

そこには花束のような形状をした装置が組み立てられていて、そこから伸びる大量の導線は部屋にある大量のモニターと精密機械へとつながっていた。そしてその装置にはキリストの磔刑(たっけい)のごとく括られた未成年の女の子が意識を失った状態で張り付けられていた。

 

 

先生「存分に成果を発揮してくれよ。仮面ライダーの片割れよ…」

 

 

進めている計画が順調に事を運んでいることを確認した先生は、サングラスをかけると研究員たちが待つ正面へと戻ってきた。

 

 

リーダーの男「如何でしたか?」

 

 

下へ向かうエレベーターを呼び出しながら、先生は白衣の研究員の問いかけに対して背中を向けて答えた。

 

 

先生「ああ。あれなら皆から崇められる天の使いとして見えるだろう。大衆の注意を惹きつけ計画を実行する。実に楽しみだ」

 

リーダーの男「ありがとうございます。この後はどちらへ?」

 

先生「野暮用をな。こちらも最終段階に入る前に今一度悩みの種を精算しておこうと思ってね」

 

リーダーの男「それは以前仰っていた…仮面ライダーのもう片割れの完全抹消でしょうか」

 

先生「……。」

 

 

研究員は黙ったままの先生に対して更なる進言を行う。

 

 

リーダーの男「お言葉ですが先生。奴が生存している可能性は無いのではないでしょうか?我々は皆あの“聖戦”をここから見届けていましたが、あらゆる可能性を加味しても宇宙(あそこ)から生還する確率はどれも1%以下で…」

 

先生「だが、私の元に奴の死亡が確認された報告は届いていない。それはすなわち奴が完全に死んだとは言えないだろう。『99%の確率で死んでいるから納得しろ』と?そんな数字で私が満足するとでも言うのか」

 

リーダーの男「そんな、滅相もございません。ただ仮に生きていたとしても、仮面ライダーの片割れはここにいる。我々の手の中にある以上変身は出来ないのだから、奴は何も……ヴッ⁉︎」

 

 

のうのうと語る研究員の喉元を先生の腕が掴んで持ち上げた。十分離れていた間合いを振り向いただけで詰めてきたその瞬時の行動に、他の研究員たちからの驚きの声が漏れる。

 

 

リーダーの男「先生…ナ…何ヲ…!」

 

先生「あまり失望させないでくれたまえ。私はね。人を見る目には自身があるんだ。君の卓越した頭脳と忠誠心の深さを私がここまで育てて上げたというのに…今の発言はいただけない。大きくなったその力を自分の力だと勘違いしているのかな?」

 

リーダーの男「ソ…ソンナトンデモナイ……!」

 

先生「ならば自身の立場を改めて見つめ直し励みなさい。忘れてはいないだろ?我れらの主人の敗北を。手の込んだ計画を悉く潰され、日に日に力をつけてゆく仮面ライダーに対して主人はどうしていた?慢心していたな。彼らすら手に余る地球の記憶を手に入れたことで。負けるはずないと鷹を括ってしまったんだ。その結果どうだ?主人は敗れた。負けたのだ!だから私は決して侮らない。例え1人でも、変身できなくても。奴がこの世から居なくなったとわかるまで。私は決して手を抜かない。わかってくれたかな?」

 

リーダーの男「ハイ…何モ…ゴザイマセン…。ゴホ!ゴホッ!」

 

先生「それはよかった。君が賢い人間でほんとよかったよ」

 

 

持ち上げた身体から手を離すと研究員は崩れ落ちながらえずいた。そんな様子を非常に冷めた目で見下ろしていると、呼んでいたエレベーターが到着した。

先生は中に入ってボタンを押す。

彼を見送る研究員たちが全員忠誠の証を示す。

扉が閉まり、彼の姿が見えなくなるまで研究員たちは誰1人崩すことなく忠誠の証を示していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回。仮面ライダーアナザーディケイド。


「仮面ライダーW。この街の悪から平和を守った仮面ライダーです」

「またドーパントか。まだ残りがいやがったとは」

「お二人さんこの街の人じゃないね」

「善良な市民を代表して告ぐ。今すぐ無駄な抵抗をやめて武装を解きなさい」

「ちょっとちょっと。どうなってるんだよ!」



第3話 Wの世界/話題を攫うダブルを探せ


すべてを破壊し、すべてを繋げ。


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第3話 Wの世界/話題を攫うダブルを探せ

 

 

ツカサ「ここが風都スカイタワーか。間近で見るとすげー迫力だな」

 

小夜「いつまでそうして突っ立ってるんです。早く行きますよ」

 

 

他の建造物をも類さない唯一無二の高さとデザインを誇る電波塔件観光名所。風都スカイタワー。

その存在感を十二分に味わったツカサと小夜が建物内に入るとそこは多くの利用客でごった返していた。

入館料を支払い中に入ると、とある一点のブースに人が集中しているのが見えた。その部屋の壁面には『RADIO BOOTH』と書かれている。

綺麗で気品のある女性DJと仏頂面でやり取りを行う堅物そうな男。

言うまでもなくそこではラジオの公開収録が行われていた。

 

 

ツカサ「番組はまだ終わっていないようだな」

 

小夜「どうやら案内板を見る感じ、番組が終わるのはだいぶ先のようですね」

 

ツカサ「そんなの待ってられるか。他に手掛かりがないか探しに行くぞ」

 

 

有無を言わさない姿勢でツカサは風都スカイタワーを後にしようとする。しかしそんなツカサの様子にびくともしない小夜を見てツカサは苛立ちをあらわにした。

 

 

ツカサ「なにのんびりしてるんだ。急げって言ったのそっちだろ」

 

小夜「いったい何を焦っているんです?現在この世界に『滅びの現象』は現れていません。つまり、まだ急を要する事態に陥っていないと言うことです。余り事を急ぎすぎては事態は暗転してしまいますよ」

 

ツカサ「あんたこそなに悠長なこと言ってるんだ。アンタ見てたよなその目で。俺らの世界が怪人にメチャクチャされていたのを。俺は自分の世界を救うためにアンタの話にノッてここにいるんだ。ひとりでも少ない犠牲で早く問題を解決しなければ意味ないんだよ」

 

小夜「なるほど。そういうことですか」

 

ツカサ「あ?どういうことだ」

 

小夜「こうしている間にもあなたの世界が滅びへと向かっていると思われているようですが、問題はありません。私共が旅を終えるまで、私の仲間達がアナタの世界を生きながらえさせています。あの時アナタに見せたような…チカラを用いたりしたりね」

 

ツカサ「なに?」

 

小夜「というわけで、少しリラックスしていきませんか。ずっと糸が張り詰めていては、いざという時切れてしまいますからね。ほらこの上。展望フロアにもこの街のヒーローを取り扱うブースがあるようですよ。行きましょう」

 

ツカサ「……。」

 

 

中に入ってすぐ目に入った中央エレベーターは展望フロアへと直通となっていた。小夜は煮え切らない表情を浮かべるツカサに特に声をかけることなく先を進む。そしてエレベーターに乗ることおよそ30秒ほど。この世界の街を一望できる展望フロアへと到着した。

 

 

小夜「まあ。意外と良い眺めですね」

 

 

地上から相当高い位置にあるにも関わらず中々広めのスペースを誇る展望フロア。街を見下ろしてみている観光客の他少し足を進めると仮面ライダーであろうキャラクターの特大パネルがあしらえた『仮面ライダー特集』なるブースが存在した。

 

 

ツカサ「これがアンタの言うこの世界の仮面ライダーか」

 

小夜「ええ。仮面ライダーW。この街の悪から平和を守った仮面ライダーです」

 

ツカサ「へぇ。このハンブンコ怪人みたいなのがねえ」

 

???「はっはっはっ。ハンブンコ怪人とは。中々斬新なセンスをお持ちですな」

 

 

キャスター付き有孔ボードで作られたお手製仮面ライダーブースの掲示物を見ていると、首からスタッフの証明書を下げた白髪混じりの老齢の男が声をかけてきた。

 

 

中野「いや失礼。私はこの風都スカイタワーのスタッフの中野というものです。皆がキラキラとした眼差しで展示物を見ていた中でふとお二人のやりとりが風に乗って聞こえてきましてね。お宅の彼氏さんのセンスに思わず吹き出してしまいました」

 

ツカサ「いや。別にコイツとはそういう関係じゃない」

 

 

後ろに腕を組みガバガバと笑いながら話す中野。その人当たりの良さと笑うと目がなくなる笑顔は初対面の人間の緊張をもほぐす、不思議な力があった。

 

 

中野「お二人さんこの街の人じゃないね。観光客?」

 

小夜「…えぇ。まあ、そんなところです」

 

中野「やっぱりねぇ。そうだろうと思ったよ」

 

 

中野は笑いながら『そうでなければ街のヒーローをそんな風に呼ばないからね』と付け加えた。

 

 

中野「何か調べ物かな?探偵さん」

 

ツカサ「おぉ…。」

 

小夜「そんな構えないでください。この街で有名な仮面ライダーを一目でも見ようとやってきたのです。ですがどうやらもう居ないようですね。ラジオでも拝聴しましたが、役目を終えた仮面ライダーはどこかへ姿を消してしまったのだとか」

 

中野「えぇ。ほんとうにどこへ行ったのやら。街の平和のシンボルが居なくなってしまうとはの人々が不安に襲われてしまうと言うのに」

 

小夜「ですが、平和だからこそ姿を消して良かったのではと言う声も聞きました。平和を脅かす悪が居なければそもそも必要なかった存在なのですから」

 

中野「ほお…お嬢ちゃん。中々独特な感性をお持ちですね」

 

小夜「お嬢ちゃんはやめてください。私は立派な大人の女性ですよ」

 

 

和気藹々とした雰囲気の中にどこかどんよりとした雰囲気が交わったような感覚を覚える。

その正体が何なのかツカサは分からなかったが、これ以上ここにいるのが気まずく感じ、中野への挨拶をそこそこに小夜を連れこの場から無理矢理離れていった。

 

 

ツカサ「おいおい。何言ってんだお前。仮面ライダーはこの街の人たちの希望なんだぞ?あの掲示物見てただろうが。ああいう人たちにヒーローを貶すような言葉をかけるなんてバカか?」

 

小夜「そうでしょうか。少なくともあの中野という男はそうは思ってないと思いますよ」

 

ツカサ「は?何を根拠に」

 

小夜「ただの私の印象です」

 

ツカサ「お前な…」

 

小夜「私が仮面ライダーの不在に対して肯定的な発言をした時、どこかあの男の目に力が宿ったように感じたのです。それはどこか『同志を見つけた』というような…そういう類のもの」

 

ツカサ「おい。本当なのかそれ」

 

小夜「本当も何にもこれは私の印象の話にすぎません。それよりも私は先程からこちらをずっとつけてくる男の存在が気になります」

 

ツカサ「⁉︎」

 

 

下へ行くエレベーターを待つ中、後ろを振り向こうとするツカサを小夜が落ち着いた様子で制した。

 

 

小夜「振り向いてはダメです。私たちがあちらの存在に気づいたことがバレてしまいます」

 

ツカサ「いったいいつから」

 

小夜「ブースであのスタッフと話している時からです」

 

ツカサ「でもなんで後を着けて…」

 

小夜「分かりません。もうすぐエレベーターが来ます。気づかないふりをしてやり過ごしてください」

 

 

観光客に紛れてツカサと小夜は中に入る。

観光客たちの楽しそうな会話に包まれながらエレベーターは1階フロアに到着する。

ツカサと小夜をつけていた男は乗り込んだ順番的に2人の目の前にいる。そして男は先に降りると他の観光客の姿に紛れて姿を眩ましてしまった。

 

 

ツカサ「おい。どっか行っちまったぞ」

 

小夜「そのようですね」

 

ツカサ「ほんとに後つけられてたのか?」

 

小夜「そうだと思ったのですが」

 

ツカサ「……。」

 

 

 

 

キャーーー!

 

 

 

 

 

ツカサ&小夜「⁉︎」

 

 

ラジオブースの方から悲鳴が聞こえた。

そこには1人の男が奇妙なアイテムを持って奇声を発している姿があった。

観光客が男の周りを後ずさっている。

恐怖のあまり場は混乱に陥ってパニック状態と化していた。

 

 

ワカナ「キャーー!」

 

ソウキチ「白南風さん!下がって!」

 

発狂している男「ワカナ姫〜なんで逃げるのぉ〜?俺が幸せにするって言っただろぉぉぉぉぉ!」

 

 

ガイアメモリ『VIOLENCE』

 

 

男が握っていたガイアメモリからガイアウィスパーが轟くと男は自分の身体に突き刺した。

男の姿が禍々しい姿へと変わる。

筋骨隆々とした姿の怪物。

バイオレンスドーパントが現れた。

ただなるぬ事態にツカサと小夜の身体が動き始める。

 

 

小夜「ディケイド!」

 

ツカサ「ああ!」

 

 

ツカサは懐からネオディケイドライバーを取り出して腰に巻いた。

出現したライドブッカーからカードを取り出すとバックルに装填する。

そして。

 

 

ツカサ「変身!」

 

 

『KAMEN RIDE!DECADE!』

 

 

仮面ライダーアナザーディケイドに変身したツカサはパニックに陥る観客をかき分けて、今まさに白南風ワカナに飛びかかろうとしたバイオレンスドーパントに向かってる強烈なタックルを繰り出した。

 

 

バイオレンスドーパント「ぐわぁ⁉︎」

 

ソウキチ「……!」

 

Aディケイド「お前ドーパントだな。さっき上で勉強してきたばっかだ」

 

 

ワカナの前に立ち塞がったソウキチよりも先に先手を打ったAディケイド。パンチや蹴りを乱打し、風都スカイタワーの外へと追いやる。

ワカナの身を案じつつもソウキチは、突然現れた存在に驚きを隠せなかった。彼の他に、ツカサと小夜の後をつけていた若い男も変身したAディケイドの姿を目で追っていた。そして、騒ぎを掻きつけて1階へやってきた中野も。

 

 

Aディケイド「はっ。ここならまだ暴れられても大丈夫だろう」

 

バイオレンスドーパント「な、なんだお前は!この俺の前に立ちはだかるとは…失せろぉ!」

 

 

バイオレンスドーパントの豪快な大振り攻撃は戦闘に慣れていないツカサですらも難なく避けられるものだった。軽快な身のこなしで次々と降りかかる攻撃を躱しきると反撃のパンチと回し蹴りをお見舞いした。

 

 

小夜「……。」

 

 

『ATTACK RIDE!SLASH!』

 

 

バイオレンスドーパント「ぐわぁ!!」

 

 

小夜 (まだドライバーを手にして間もないと言うのに。少しずつ、だが確実に適応していってる。私のサポートも無しにその場そのタイミングで適切なカードの選択を行っていることからも…これは思ったより早い成長が見込まれますね…)

 

 

百発百中。Aディケイドの斬撃は全てバイオレンスドーパントにヒットした。

度重なるダメージに相手の身体が遂に地に伏せる。

小夜をはじめ、この戦いを見守っていた観光客が皆『謎のドーパント』が勝つ。

そう確信するくらいAディケイドは圧倒していた。

 

 

Aディケイド「パッと見た感じアンタあのラジオDJの熱烈なファンか?とてもじゃないが誉められたアプローチには見えなかったがな」

 

バイオレンスドーパント「黙れ黙れ黙れ!なんでどいつもこいつも邪魔をする⁉︎オレがワカナ姫を幸せにするんだぁぁ!」

 

 

もはや捨て身とも取れる攻撃を仕掛けてくるバイオレンスドーパント。こちらに無鉄砲に突っ込んでくる相手に対し、Aディケイドは冷静な態度でライドブッカーからカードを取り出すとバックルへと装填した。

 

 

『FINAL ATTACK RIDE!DE・DE・DE・DECADE!』

 

 

バイオレンスドーパント「ぐあぁぁぃぁぁぁあ!」

 

 

Aディケイドが繰り出したライダーキックはバイオレンスドーパント目掛けて盛大にヒットした。

相手が今までで1番の断末魔の悲鳴を上げるとその身体はゆっくり倒れて…爆散した。

 

 

Aディケイド「ふぅ。これで一件落着か」

 

小夜「……。ん?」

 

Aディケイド「なんだ。手際がいいな。警察のお出ましか」

 

 

ガイアメモリが砕け散り、男が元の姿に戻った頃。

誰かがこの騒ぎを通報したのか、サイレンを轟かせて複数台の警察車両が風都スカイタワーの目の前に停まった。

意識が朦朧とする男へ駆け寄った警官たちが男の容体を確認して救急車両へと運搬する。

そして残りの警官たちはSATと共にAディケイドへ一斉に振り返るとゾロゾロと近づいてきた。

 

 

Aディケイド「なんだガイアメモリ犯罪の解決への礼か?参ったな。感謝状を送られるほど大したことはしてないんだが…」

 

 

Aディケイドもまた警官へ歩み寄ろうとした時。

警官とSAT達が一斉に拳銃をAディケイドに向けて構えた。

そして現場の長とみられるスキンヘッドの渋い顔した男が拡声器を使いAディケイドへ声をかける。

 

 

Aディケイド「……。え?」

 

倉野「私は超常犯罪捜査課の倉野だ。善良な市民を代表して告ぐ。今すぐ無駄な抵抗をやめて武装を解きなさい。こちらの要望に応じない場合は強行手段を取ることもやむを得ない。我々は平和的解決を望むため手荒な真似はしたくない。繰り返す。今すぐ無駄な抵抗をやめて…」

 

ツカサ「ちょっとちょっと。どうなってるんだよ!」

 

小夜「……?」

 

 

変身を解いたツカサは倉野の支持に従い、両腕を後頭部に組みながら地面に頭をつける。そして一斉に警官たちに取り押さえられると警察車両へ連行されてしまった。

まるで台風が過ぎ去ったような静かさが訪れる風都スカイタワー前。

場が騒然としている中小夜は息を殺していると、現場確認を行なっている警察関係者の中で先ほどの倉野と名乗った男がソウキチのもとへ近づいていった。

 

 

倉野「ご協力に感謝します。善良市民どの」

 

ソウキチ「なにが善良市民どのだ。大袈裟に敬礼なんかしやがって」

 

 

2人のやりとりを物陰から見ていた小夜は確信した。

警察に通報したのはあの佐川ソウキチという男だと言うことを。

そしての雰囲気からしてどうやらただの刑事といち一般人ではないということも。

 

 

倉野「またドーパントか。敵の大ボスは仮面ライダーが倒したんだし、おかげでゆっくりできると思ったんだがな。まだ残りがいやがったとは」

 

ソウキチ「お前が来てくれたおかげで事態は大きくなることなく収拾がついた。感謝する」

 

倉野「なに。新しい警視が来るまでの間だけだ。上も敵の本腰を叩いたことでガイアメモリ犯罪は減少する見込みだと睨んでいることから、ウチの課ももうすぐ人事異動がはじまる。要は規模の縮小だな。そうなったら今回みたいにすぐ駆けつけてやることが出来なくなるかもしれねぇ。上が入知恵してる新しい警視殿はきっと俊敏に動いてくれないだろうからな」

 

ソウキチ「そうか。今回の件でその"上”が考え直してくれればいいけどな。それと、この彼女なんだが。外傷は見られないが先ほどのドーパントに襲われた被害者だ。念の為そっちで見てもらえないか?」

 

倉野「わかった。部下たちに手配させる。それと例の"件"だが…ちょっと付き合え」

 

小夜「……?」

 

ソウキチ「…あぁ。わかった」

 

 

白南風ワカナを連れてソウキチと倉野がこの場を後にした。

1人になった小夜はソウキチたちの後を追おうと足を進めようとした時だった。

誰かに肩を掴まれ、動きを止められた。

腕の正体は展望フロアでみた怪しげなあの若い男だった。

 

 

小夜「……。」

 

若い男「おい。少しいいか?」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

???「はい。今日はここまでです」

 

???「えーっ。パイント〜続き見せてよ〜」

 

パイント「これ以上ここに居てはあの方に怒られてしまいますよ。続きはまた今度」

 

 

ツカサが警察に連れていかれる様を、プロジェクターの如く泉に反射した映像で見ていた人物が2人。

そこは井戸とも取れる形をした洞窟のような所で色白の青年ととても幼い幼女がツカサたちの動向を見ていた。

 

 

???「やだ〜!もっと見たい〜!仮面ライダーの歴史を勉強する為に必要なんだもん!」

 

パイント「こういうときだけ都合の良い物言いを…。いけない方ですね」

 

 

パイントと呼ばれた青年は不貞腐れてしまった幼女の手を引き、洞窟を後にしようと歩き出した。

 

 

???「………。」

 

パイント「どうしましたお嬢様。何か考え事ですか?」

 

???「んー…。でぃけいど達があの世界でやることってなんなのかな〜って考えてた。普通に仮面ライダーに会うだけで良いのかな?」

 

 

幼い子がディケイドが訪れる先々の使命について考えを馳せている。

それを知って青年はとても不気味な笑顔を浮かべた。

 

 

パイント「いい質問ですね。お嬢様が思考を深めて下さって私はとても感慨深いです。先ほどの疑問ですが、当然それだけではいけません。仮面ライダーと出会って何を為すか。そこがポイントです」

 

???「何言ってるかわからない!もっとわかりやすく言って!」

 

パイント「おやおや。お嬢様にはまだ少々難しかったみたいですねぇ…」

 

 

仮面ライダーの歴史を学んでいるといった幼い女の子。

その幼女の側を歩くこの青年はいったい何なのか。

答えのわからない謎が浮かび上がる中、2人は洞窟からでて地平線の彼方まで歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 






次回。仮面ライダーアナザーディケイド。


「どうだ?身元は割れたか?」

『俺はドーパントじゃねぇ!!!』

「俺は佐川ショウタロウ。職業は学生だ」

「俺は認めねぇ。ヤツが仮面ライダーだなんてな」

「アンタに依頼をしたい。内容はこの子の奪還だ。」

「レモーラ?」

「あんたら仮面ライダーを探してるんだろ?俺は知っているぞ。仮面ライダーがどこにいるのか」



第4話 Wの世界/飛んで火に入る風の虫


すべてを破壊し、すべてを繋げ。




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第4話 Wの世界/飛んで火に入る風の虫

 

 

倉野「すまん遅くなった。」

 

???「倉野さん。一体どこへ行ってたんですか」

 

倉野「ちょっと野暮用があってな。それでどうだ真刃(ほんば)。身元は割れたか?」

 

真刃「いえ…それが」

 

 

風都署内のとある取調室の一室。

現在ツカサは風都署の刑事から取調べを受けていた。

ここにきてからどれくらい時間が経ったのだろうか。

事態は一進一退を繰り返し、難航している様子。

それもそのはず。

 

 

真刃「あの角田ツカサと名乗る人物ですが、自分の名前は名乗るこそすれど、他に言ってることがめちゃくちゃでして…」

 

倉野「めちゃくちゃ?」

 

真刃「はい。何でも『俺は別の世界からやってきた人間だ』とかなんとか宣ってて」

 

倉野「はあ…。そう言う類の相手ね…」

 

 

倉野の視線の先にはマジックミラー越しに映るツカサの姿があった。

ここに来て何度も同じ説明をされたのにも関わらず、まるで初めて物事を話すかのような元気の良さで身振り手振りを使い、自分の身の潔白を証明している。

時折、『俺はドーパントじゃねぇ!』という叫び声が聞こえてくる。

 

 

真刃「ガイアメモリを使った痕跡はありませんでした。今取調べにて得られた情報を元に、現在身元の確認を急がせてます。あと、ガイアメモリこそ有りませんでしたが、このような奇妙なものを持っていて…」

 

 

そう倉野の部下が取り出したのは証拠品を収めるときに使う収集キット。

その中にはネオディケイドライバーのバックルが入っていた。

 

 

倉野「こりゃなんだ。ピンクの…おもちゃか何かか?」

 

真刃「それもわかっていません。過去の犯罪データから該当するものがあるかどうか調べています」

 

倉野「こりゃ骨が折れそうだな。『ドーパントと思われる怪物がドーパントを退治してる』なんて通報があって行ってみたら、退治した当人はドーパントじゃないなんて。こんな事例は前代未聞だ」

 

真刃「私情のもつれから当事者同士のいざこざにガイアメモリが用いられた例は過去にありましたが、今回はその特徴とは一致しないんですよね。それどころかガイアメモリはおろか、相手との接点もない。今回彼が行った行為は言うなれば、ガイアメモリ犯罪から市民を守った正義の行動。まるで仮面ライダーと同じことをしたみたいで…」

 

倉野「…なに?」

 

真刃「倉野警部補⁉︎なにを⁉︎」

 

 

部下の何気なく漏らした発言に倉野はかなりの怒りを見せて胸ぐらを掴んだ。

 

 

倉野「お前は今までいったいなにをしてきたんだ?俺たちはあの仮面ライダーと一緒に協力してガイアメモリ犯罪撲滅に日々尽力してきたんだろうが。こんなやつがあの仮面ライダーと同等だと?笑わせるな!」

 

真刃「申し訳ありません!別にそれ程強い意味があった訳では…」

 

倉野「…くっ。すまない」

 

 

同業者としてか、仲間意識があるからか。

ツカサのことを仮面ライダーと同一視されることを非常に嫌う様子を見せた倉野。

 

 

倉野「俺は認めねえ。ヤツが仮面ライダーだなんてな」

 

 

このツカサの執拗な取り調べはまだまだ続くことになる。

そう思われていた。

しかし、ひょんなことから取り調べは唐突に終わりを迎える。

ツカサが解放されたのはそれから1時間後のことであった。

 

 

 

一方その頃小夜は。

風都スカイタワーで声を掛けてきた男と共に、『写真館 ヒカリスタジオ』へとやってきていた。

ただならぬ雰囲気を纏い1人帰ってきた小夜の隣に、見知らぬ男が居たのを見て、店長は漠然とした何かを察すると特に深入りをせず迎え入れた。

大人しく席に座った小夜に対して落ち着かない様子を見せる男。

終始店をキョロキョロしている。

そこに2人が注文したドリンクが到着した。

小夜はブラックコーヒー。

男にはホットミルクが届いた。

 

 

男「こんなところに喫茶店があるなんて知らなかったな」

 

店長「うち、こう見えて喫茶店だけじゃなくて、写真館もやってるんですよ。もし良かったらそちらも見ていってください。なんか撮影の機会がありましたら、ぜひ!」

 

小夜「……。」

 

 

こんな状況でも店の宣伝を欠かさない店長を見てすかさず小夜は睨みつけた。

凍てつく視線を喰らい店長がわかりやすく肩をすくめると、カウンターの奥へと消えていく。

店内では再び復旧したであろう店長の私物ラジオから元気いい声をした番組が流れていた。

 

 

小夜「それで名前は?」

 

ショウタロウ「ああ。俺は佐川ショウタロウ。職業は学生。先ほどはいきなり声をかけてしまいすまなかった」

 

小夜「いえ別に。私はこういうものです」

 

小夜は誇らしげな顔で懐から名刺を取り出すとショウタロウの目の前に差し出した。

 

 

ショウタロウ「『私立探偵 森谷アキコ』…。探偵だったのか」

 

小夜「ええ。『敏腕の』私立探偵ですよ」

 

ショウタロウ「へぇ。随分若くて幼い探偵なんだな。なるほど…これなら話が早い…」

 

 

小夜はショウタロウの言葉に2点ほど引っかかって、込み上がる感情を落ち着かせて辛抱した。

そしてより引っかかった『話が早い』と言う発言について追及することにする。

 

 

小夜「話が早いとはどういう意味です?私たちに近づいたことが何か関係があるのですか」

 

ショウタロウ「ああそうだ。探偵なら尚都合がいいから」

 

小夜「……?」

 

ショウタロウ「あんたら仮面ライダーを探してるんだろ?俺は知っているぞ。仮面ライダーがどこにいるのか」

 

小夜「え?それは本当ですか?」

 

ショウタロウ「その情報を成功報酬として調査の依頼を頼みたい。探偵のアンタなら自分の畑で欲しい情報が手に入る。これほど美味しい話はないだろ?」

 

 

突如舞い降りた仮面ライダーの手がかりを掴むチャンス。

小夜からしたら願ってもない機会だが。

どうしてこの男がそんな事を言ってきたのか。

小夜は依頼の内容を聞いてから内容を飲むか決めることにした。

 

 

小夜「街の人間も知らない仮面ライダーの居場所をいち大学生が知ってるとは思えませんが…こちらも手詰まりですからね。あの強面の探偵に話を聞こうと思ってましたが…まぁとりあえず話だけでも伺いましょう」

 

ショウタロウ「ふっ。話が早くて助かる」

 

 

ショウタロウが少し誇るような表情を浮かべると今度は彼が懐へ手を伸ばした。

取り出したのはかなりゴツゴツとした形の青色のカメラ。

撮り溜められてたフォルダを開き小夜に写真を見せてくる。

そこにはショウタロウの他、白髪混じりの男と一緒に派手な髪色をした10代前半と思われる女の子の姿が映っていた。

 

 

ショウタロウ「依頼したいのはこの子の奪還だ。」

 

小夜「奪還?」

 

ショウタロウ「ああ。この女の子。名前はレモーラ。うるさくて生意気で自信家で鼻につく奴だけど。好奇心旺盛で可愛げのある天真爛漫な子なんだ。そんなレモーラがつい1週間くらい前に拐われた」

 

小夜「なんと。それはまた大事件ですね」

 

ショウタロウ「拐ったヤツもどこにいるかも目処がついてる。拐ったのは中野 嘉夫(なかの よしお)。アンタが話してた風都スカイタワーで話した受付スタッフ。証拠の写真もこれだけある。レモーラが居るのは風都スカイタワーのどこか。入場料払って探して見たがどこにも居なかった。おそらく関係者しか入れない部屋のどこかに必ずいるはずだ」

 

 

澱みなく淡々と。

意外にも多くの情報が手に入ってる概要を無駄のない語りで続けるショウタロウ。

その中でどこか焦りのようなものを感じた小夜。

ただその違和感はあまりにも小さなものだったため、小夜は特に留めることなく流した。

 

 

小夜「概要は把握しました。ですが、どうしてそこまで情報を掴んでて助けを求める先が私なんです?私からこんなこというのも変ですが、どこの誰かもわからない探偵よりも、仮面ライダーとともにドーパント犯罪に尽力した警察の方々の方が公的権力もあるし、多いに信頼できるのでは?」

 

ショウタロウ「いや。警察には頼らない。というより頼れない。理由は言わない」

 

小夜「……。」

 

ショウタロウ「頼む。俺に協力してくれ。アンタの他アンタと一緒にいたあの男の力も借りたい。というより本命はそっちだ。敵の懐に潜りこむにはそれ相応の対策が必要だからな。丸腰で行っては一筋縄じゃ行かない」

 

 

ショウタロウは立ち上がると小夜へ深々と頭を下げる。

『ツカサの力を借りたい』。

ショウタロウが風都スカイタワーでツカサとドーパント対峙していた姿を見ているため、間違いなく借りたい力はディケイドとしてのもののはず。

ということはこちらに仇をなす存在にドーパントが絡んでくる可能性があるということ。

中野という男がまさかそんな人物だと思わなかったが、これだけの証拠を見せられるとな。

唯一警察ではなく小夜に頼む点どうも腑に落ちないが。

さて。

小夜はこれまでの話を聞いてどんな決断を行うのか。

 

 

小夜「良いでしょう。乗り掛かった船という言葉があります。貴方の想い人を助け出したあかつきには、必ず仮面ライダーの居場所を教えてもらいますからね」

 

ショウタロウ「本当か!助かる。感謝する…!」

 

小夜「ですが肝心の彼がいない。貴方も見ていたからわかるかと思いますが、彼は今警察に居ます。そこから連れ出すのは中々容易じゃないですよ」

 

ショウタロウ「その点は心配いらない。こう見えて俺警察には顔が効くんだ。『超常犯罪捜査課』とあればなおさらな」

 

小夜「ほう。あなた…ただの大学生じゃなさそうですね」

 

 

意気揚々と話すショウタロウへ発破をかける小夜。

そんな小夜の言動を肯定も否定もせずに、ショウタロウは向き直って

微笑んだ。

 

ショウタロウ「俺もあなたに一言。俺とレモーラはそんな関係じゃない。俺にとってレモーラは…大切な相棒だ」

 

小夜「相棒…ですか」

 

 

2人は席を立つと勘定を終えて店をでた。

そしてショウタロウが黒と緑を基調としたデザインのバイクに跨ると、小夜もまた彼の後を追うにマシンネオディケイダーに跨りバイクを走らせた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

リーダーの男「先生どうされたんです!どうして急に計画の実行を早めるなんて…」

 

先生「やむを得ない事態に陥った!まさかここまでやって来て…あの悪魔が姿を現すとは…!」

 

 

風都スカイタワーのある隠れ部屋の中。

大人数の構成員を束ね、大掛かりな計画の舵を取るほどの腕っぷしを持つ総統ともあろう人物がまるで子供のように慌てふためいている。

今までで石橋を叩いて渡って来た男がこのような姿を見るのは始めてのことだった。

 

 

リーダーの男「悪魔とはなんです⁉︎ それに計画の実行はまだできる段階ではないのは先生が1番ご存じのはず…!」

 

先生「やらねば…やらねばならぬのだ…!今すぐこの少女(端末)を媒体にしてガイアインパクトを遂行する!」

 

リーダーの男「先生!一度落ち着かれては⁉︎先生!先生!…中野先生!」

 

 

音も灯りを通さない密閉された部屋の中で、中野の部下の声がこだまする。

緻密に練り上げた装置と計画をこの段階で無理やり稼働させようとするほどの焦りを見せるとは、中野が恐れている悪魔とはいったいどういう存在なのか。

中野の指示で多数の研究員が動き回る中、"X bicker"に括りつけられた少女『レモーラ』が微かに意識を吹き返す。

 

 

レモーラ「ショウタロウ…助けて…ショウタロウ…」

 

 

朦朧とする意識の中、誰にも届かない悲痛の叫びが真っ白になった口から溢れる。

騒然とした現場からは殺伐とした雰囲気の中、時間が流れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回。仮面ライダーアナザーディケイド。


「風都スカイタワー?」

「ええ。ここで彼に恩返しする。そういう約束なんですが…」

「アンタらにはただレモーラを助け出してくれる手助けさえしてくれれば充分だ」

「中野先生…」

「こんなところで再会しようとなるとはな」

「レモーラ…待ってろ…今すぐに」

「おい待て!ショウタロウ!」


第5話 Wの世界/その男、焦燥につき


すべてを破壊し、すべてを繋げ。




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第5話 Wの世界/その男、焦燥につき

 

 

 

風都署内。受付前。

ツカサを迎えに来た小夜とショウタロウは彼の姿が現れるまで受付で今か今かと待っているところだった。

 

 

小夜「……。」

 

ショウタロウ「どうしたんですかアキコさん。ソワソワして」

 

小夜「あの時彼を連れて行った『超常犯罪捜査課』の倉野という刑事と顔見知りだったんですね。口ぶりからしてあなたがお世話になったという訳ではなさそうですが…どういう関係ですか?」

 

ショウタロウ「簡単にいうなら父親と顔見知りだ。高校時代の同級生って言ってたかな。今でも職業柄付き合いがあって、それこそガイアメモリ犯罪ではしょっちゅう顔を合わせてたらしい」

 

小夜「父親…?」

 

ショウタロウ「ああ。俺の父親もアンタと同じ探偵なんだ。名前は佐川ソウキチ。あの時風都スカイタワーでラジオをしていた、ガイアメモリ犯罪に特化した探偵だよ。俺はそのソウキチの息子なんだ」

 

 

ショウタロウの発言に小夜のジト目が開かれる。

小夜とツカサがコンタクトを取ろうとした佐川ソウキチに息子がいたとは。

そしてその息子が目の前にいる佐川ショウタロウだなんて。

奇妙な偶然に驚きつつも小夜はこの所業のカラクリに気付き納得した様な顔をした。

 

 

小夜「なるほど。それでこんな所業が」

 

ショウタロウ「こんな手荒な真似は初めてだがな」

 

小夜「となると、益々謎が浮かび上がりますね。どうしてガイアメモリ犯罪のスペシャリストである父親よりもこの私に助けを乞いたのか。そしてどうして彼の…ディケイドの力を借りたいと言ったのか」

 

 

そう小夜が『彼の』という言葉に合わせて指した目線の先。

奥から見えるのは、婦警に連れられとぼとぼとした足取りでやってくるツカサの姿が。

ショウタロウは小夜を見向きもせず、じっとこちらにやってくるツカサを見ていた。

 

 

ショウタロウ「ディケイド?」

 

小夜「あそこで見ていましたよね。彼が変身した姿を」

 

ショウタロウ「ああ。あれか」

 

 

ショウタロウはどこか物思いにふけると我に返り小夜を見つめた。

 

 

ショウタロウ「余計な詮索はしなくていい。アンタらにはただレモーラを助け出してくれる手助けさえしてくれれば充分だ」

 

小夜「……。」

 

 

ツカサがやってくると同時にショウタロウとの会話に一区切りつく。婦警に連れてこられ解放されたツカサは無表情のまま小夜とお互いを視線で交わした。

 

 

ツカサ「いきなりこんな所連れてかれて根も葉もないこと言われて…気が狂うかと思った」

 

小夜「だいぶやつれたようですね。あなたにはいいクスリになったんじゃないですか」

 

 

紆余曲折あったがツカサと小夜がやっと合流した。

そしてツカサがショウタロウの存在に気づくとショウタロウの方から軽く頭を下げる。

 

 

ツカサ「この男前は誰?」

 

小夜「それは移動しながらお教えします。たいぶ時間を食わされましたから」

 

ショウタロウ「だな。もうすぐ閉館時間になる。急がないと」

 

ツカサ「はっ?おい。ちょっ……」

 

 

まだ何か言いたげなツカサをよそに2人は駆け足で外へと向かう。

2人の背中を追いかけながら、ツカサはどこか呼吸の合う2人に複雑な心情を抱きながら小夜から渡されたヘルメットを被る。

そして小夜とツカサがマシンネオディケイダーに、ショウタロウは自前の黒と緑を基調としたバイクに跨ると薄暗くなった風都の街並みを颯爽と駆け出していった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ツカサ「風都スカイタワー?またここか」

 

小夜「ええ。ここで彼に恩返しする。そういう約束なんですが…」

 

 

閉館時間はとっくに過ぎていたのか、照明は落ちていた。昼間の賑やかだった時間が嘘のように辺りは静寂に包まれていた。

 

 

ツカサ「どうすんだよ。ショ・ウ・タ・ロ・ウくん。もう遅いから明日来て…」

 

ショウタロウ「ん…?ちょっと待て」

 

 

ツカサの言葉を制してショウタロウが視線を向けるその先に。

正面の入り口ではなく、裏の従業員用の通用口から出入りする怪しげな男たちの姿があった。

 

 

ツカサ「おい。なんだあれ」

 

ショウタロウ「明日なんて待ってられるか…今すぐにでもレモーラを…!」

 

小夜「ちょっと、ショウタロウくん…!」

 

ツカサ「アイツ勝手に中に!俺達も行くぞ!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

風都スカイタワーの隠し部屋。

研究員たちが血眼になって業務に勤しんでいる中、1人の研究員が貧乏ゆすりを起こして座る中野の元へ報告を行った。

 

 

中野「どうした⁉︎ 完成はまだか⁉︎」

 

「ご安心を!もう間も無く"X bicker"は完成します。ですが先ほどネズミが何匹かここに潜り込んできたようで…」

 

 

研究員が差し出したタブレットには館内に至る所に仕掛けられてる監視カメラの映像が映し出されていた。

そしてその中のひとつに非常階段を使って登るツカサと小夜とショウタロウの姿が写っている。

 

 

中野「かまわん!お前がどうにかしろ!それよりも早く"X bicker"の完成を急げ!」

 

「…わかりました。中野先生」

 

 

タブレットを閉じ立ち上がった研究員。

研究員は懐から中野から与えられたガイアメモリを取り出すと忍び込んだ害虫駆除に向かい歩き出す。

何かに恐怖し、ずっと怯えている総統。

その彼に先程の研究員の姿はみじんも映っていなかった。

ツカサ達に向かった研究員も夜通し作業にあたる研究員も不安な目を中野に向ける。

いつもと様子が違うボスを見て研究員たちの間に疑心の念が蔓延り始めていた。

 

一方そのころ。

非常階段を使って最上階を目指すショウタロウとツカサたち。

ツカサと小夜は今、先を駆け上がるショウタロウの後を追いかけていた。

 

 

ショウタロウ「レモーラ…待ってろ…今すぐに」

 

ツカサ「おい待て!ショウタロウ!」

 

研究員「ここから先は通さないぞ。仮面ライダー」

 

ショウタロウ&ツカサ&小夜「…⁉︎」

 

 

高さ20m付近まで辿り着いて、第一展望フロアへ辿り着いたとき。

3人の前に夥しい数の研究員たちが立ちはだかった。

その1番前に立つは中野に指示を受けた研究員。

彼ら全員の手には皆禍々しい形をしたガイアメモリが握られていた。

 

 

『MASQUERRADE』

 

 

研究員たちがガイアメモリのガイアウィスパーを轟かして自身の身体に突き刺す。

するとその姿が異形な骸骨の姿に変わった。

上から下から。

非常階段という狭いところに複数のマスカレイドドーパントがわいて現れた。

 

 

小夜「…!」

 

ツカサ「…!あぶねぇ!」

 

 

小夜に向かって1体のマスカレイドドーパントが襲いかかった。

それに対して小夜は腕を突き出し反撃しようとする素振りを見せるが、何も起きない。

事態を見ていたツカサがすんでのところで小夜を自身の方へ引き寄せると僅かな差で相手の襲撃が空を切った。

 

 

ツカサ「何してんだ。やるならやるで派手にぶっ飛ばせよ」

 

小夜「…?」

 

 

困惑した顔をしていたのはむしろ小夜の方だった。

焦点の定まらない小夜を背中に匿い、戦場と化した非常階段でツカサは懐からネオディケイドライバーを取り出して自身の腹に打ちつけた。

 

 

『KAMEN RIDE』

 

 

出現したベルトから垂れ下がるライドブッカー。

そこからツカサは巧みにカードを抜き取るとバックルへと装填した。

 

 

ツカサ「変身!」

 

 

『DECADE ! 』

 

 

マスカレイドドーパント「⁉︎」

 

 

小夜へ追撃を試みようとしていたマスカレイドドーパントへAディケイドの拳が炸裂する。

初めて見る異形の相手に黒い骸骨たちがひるむ。

ショウタロウの方は一応大丈夫そうだ。

奇妙な昆虫の形をしたおもちゃを起動させて応戦している。

それどころかそのおもちゃに負けないほどの肉弾戦を繰り広げていた。

よし。まずはコイツ。

目の前にいる相手に集中することにしよう。

 

 

Aディケイド「ちょうどいい。こちとらいろいろなところへ連れまわされて鬱憤が溜まってたところなんだ。相手してもらうぞ」

 

 

Aディケイドが距離を詰めると瞬く間にマスカレイドドーパントが蹴散らされて行った。それはまるで詰将棋の如く。

非常階段にいっぱいにいた個体数もあっという間に数を減らしていった。

 

 

Aディケイド「はぁはぁ。よし。あとはお前だけだ」

 

マスカレイドドーパント「これだけの数を一掃するなんて…。オマエはいったい…!」

 

Aディケイド「おい!それ以上その先を言うな!同じ文言を警察署で何十回、何百回も…反吐が出そうだ…!」

 

 

『ATTACK RIDE ! BLAST !』

 

 

ライドブッカーを手に取るとガンモードに変え、アタックライドの力で強化された弾丸が放った。

弾丸はマスカレイドドーパントに全命中。

そして。

 

 

マスカレイドドーパント「うあああ!」

 

 

悲痛の叫びをあげてマスカレイドドーパントは倒れると小さく爆散した。

 

 

Aディケイド「はあ…。ああむしゃくしゃする!おい先を急ぐぞ!」

 

小夜「……。」

 

ショウタロウ「お、おう…」

 

 

ほぼ同時刻。風都スカイタワー正面入り口前。

闇に潜み、サイレンは鳴らさずも赤ランプを煌々と照らしながら数十台の警察車両がやってきた。

先導していた車両からは渋い顔をした坊主頭の男が部下を引き連れてやってくる。

その隣にはトレンチコートに身を包んだ険しい顔つきをした男もいた。

 

 

倉野「悪いなソウキチ。こんな時間に付き合わせて」

 

ソウキチ「出来ればお前から連絡なんてもらいたくなかったんだがな。だがこうして呼ばれたという事は…」

 

倉野「ああ。お前が掴んだネタがアタリだったということだ」

 

ソウキチ「そうか…」

 

 

ソウキチと倉野の表情に陰りが見られる。

2人は同じ記憶の干渉に浸っていた。

高校時代からの旧友が共に過ごした淡い時間。

勉学に励み、青春を謳歌し、恋をしてはと何をするにも楽しかった時間。

そこではかけがえのない仲間との出会いのほかに、人として尊敬出来る1人の教師との出会いもあった。

当時荒れていたソウキチと倉野に愛想をつかせることなく真摯に向き合ってくれた担任の先生。今でも思い返せば、ふわっと恩師の言葉が心に染み渡って行く。

 

 

「佐川!倉野!また警察の世話になりやがって!…全くお前らってやつは」

 

 

事の経緯は倉野がソウキチに話を持ちかけたことが始まりだった。

解体したミュージアムの残党を追いかけるも中々足取りが掴めず、困窮していた時。

藁にも縋る思いで旧友が営む探偵事務所の扉を叩いた。

そして調査報告として落ち合ったのがついこの前の風都スカイタワーでの出来事の後。

調査をするにあたって、ソウキチでも『違っていて欲しい』と思うような情報に困惑を隠せなかったが、手渡した情報を元に倉野が調べ上げたところ、確たる証拠が出たのだった。

 

 

ソウキチ&倉野「……。」

 

ソウキチ「中野先生…。定年退職して穏やかに過ごされてるのかと思ったら」

 

倉野「こんなところで再会しようとなるとはな」

 

ソウキチ「フッ。当時から簡単にくたばる様なタマじゃなさそうだったし。不思議じゃないが」

 

倉野「あんときは俺らが先生にお世話になったからな…今度は俺らが道を外した先生を正してあげないと」

 

ソウキチ「ああ。しっかり恩返ししなきゃな…⁉︎」

 

倉野「⁉︎」

 

 

突入を試みようとしていた時。

第一展望台で小さな爆発が起きた。

それはツカサが仕留めたマスカレイドドーパントが爆散したもの。

体制を整えていた警察官たちに緊迫した瞬間が訪れた。

倉野の指示のもと突入部隊が先導して中へと入っていく。

相手は元ミュージアムの幹部とその幹部を慕う構成員たち。

ガイアメモリを使った反撃がある事も想定して気を引き締めるよう、無線を通して現場の警察関係者全員に激を飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回。仮面ライダーアナザーディケイド。


「これが完成した"X bicker"…」

「もしかしたら中野は計画の最終段階に入ったのかもしれない…」

「君のことは前々から聞いていたよディケイド。この街を蝕む悪魔の存在だとね」

「諦めてたまるか!必ずレモーラを救いだす!」

「あとはガイアインパクトを待つのみだ!この腐った世界が生まれ変わるのを待ち侘びるがいい!」

『UNICORN』



第6話 Wの世界/相棒復活


すべてを破壊し、すべてを繋げ。



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第6話 Wの世界/相棒復活

 

 

 

階段を駆け上がりながら絶えることなく迫り来るマスカレイドドーパントたち。

それらを全て流れるように捌き切るAディケイドだったが、そんな最中先ほどから地震かと思わされるほど激しい揺れが風都スカイタワーを襲っている。

 

 

Aディケイド「くそ!埒が開かねぇなこの数!」

 

小夜「中野らしい人物はどこを探してもいない。あとはもう観光客が入れない最上階のフロアしか」

 

ショウタロウ「だったらもうそこしかない!さっきからタワーがすごい揺れてるのも気になる。もしかしたら中野は計画の最終段階に入ったのかもしれない…」

 

Aディケイド「はあ?おいなんだよそれ。聞いてないぞ!」

 

ショウタロウ「向かいながら説明する!急ぐぞ」

 

 

ツカサ達が目指す場所。

最上階のフロアでは。

完成した"X bicker"を恍惚とした表情で見上げている中野の姿があった。

その手には起動スイッチなるボタンが握られている。

中野が昔から最終目的として掲げたガイアインパクトなる計画を作動させるためのスイッチ。

あとはもう押すだけとなった今。

全てが無に帰る前にと、その最後の暇として完成したX bickerをじっと噛み締めるように見つめていた。

 

 

中野「惚れ惚れするね。完成体の"X bicker"は」

 

レモーラ「…。」

 

中野「仮面ライダーの片割れよ。君には散々苦汁を舐めさせられたね。幾度と交戦して苦しめてきた相手がこうしてあっさりとしたお別れとなるなんて込み上げるものがあるよ。レモーラよ。君は今から生まれ変わって"X bicker"の制御プログラムとなるんだ。街のため…いや。地球のために。その身を捧げて頑張っておくれ」

 

 

別れを惜しむ言葉を並べ、中野は手に持っていたスイッチを押す。

その表情は出てきた言葉と裏腹に喜びと希望に満ち溢れていた。

中野の押したスイッチに反応してレモーラの身体は緑色に発光すると姿が消えて"X bicker"へ吸い込まれる。

まるで命が吹き込まれた人形のように。

血となり肉を得た“X bicker"は中野の思いに応えるように稼働した。

 

 

中野「おお!ようやく完成した"X bicker"…!仮面ライダーの片割れ!今こその身に宿した力を解放し、この地にガイアインパクトを…」

 

???「相変わらず精が出てますね。こんな陳腐な計画のために」

 

中野「お、お前は!パイント!」

 

 

中野の感動に水を刺すようにフラっと青年が現れる。

白を基調とした独特な民族衣装を身に纏う青年。

どこから現れたのか青年は地上600m以上の高さにあるこの閉鎖フロアに姿を現した。

 

 

パイント「ご無沙汰してます。中野慶夫。ほお…これが貴方がずっと待ち望んでいた"X bicker"ですか。なんだか思ったよりチープな装置ですね」

 

中野「小僧…。いったいどこから現れた」

 

パイント「そんなことより。仮面ライダーが来ているのに、貴方は行かなくてよろしいのですか?ここの雛鳥は可哀想なくらいなまでに親鳥に従順だ。先ほどまで忙しく働いていた研究員もこうして全て出払ってしまいましたし」

 

中野「親鳥と雛鳥?アイツらとはそんな生易しい関係じゃない。ここの研究員たちはこの手で"X bicker"を創設するために募り、手塩にかけて育てた働きアリたちだ。その役目を終え用無しとなった今、最後は時間稼ぎくらい役立ってもらわんと」

 

パイント「なんと。長年信じて着いて来た"生徒たち"をこうもあっさり切り捨てるとは…。これが"洗脳"の怖さですか」

 

中野「"X bicker"を起動させれば計画は達成される。小僧がせっかくくれた"プレゼント"も使う出番はなくなるだろうよ」

 

パイント「そうだといいですね……おや。お客さんみたいですね」

 

 

パイントが中野の発言にニヒルな笑顔を見せると奥の階段から誰かが駆け上がる足音が聞こえた。聞こえる数からして3人。

それはいうまでもなくツカサとショウタロウ、そして小夜のものだった。

 

 

ショウタロウ「中野!お前の悪事もそこまでだ!」

 

中野「まさか。あの数のマスカレイドを倒してやってくるとは。そうか。後ろにいる彼が…」

 

ツカサ「よお、じいさん。俺のこと覚えてたのか」

 

中野「あの時のお嬢ちゃんもこんなところまでやってきて。なるほど。邪魔をしに来たのか。…はあ。最近の若い者はどうも反発的なやつが多い。どうして先人たちの経験や知恵を無下にするんだ…。昔は元気に溢れ従順に生きようとする子たちで溢れていたのに」

 

小夜「どいつもコイツも私の理想をわかってくれない…」

 

ツカサ「…あ?」

 

小夜「とでも言いたげな顔をしていたので。中野が」

 

 

中野は三度X bickerを見上げる。

ツカサたちの3倍近くはあろう高さがある装置に近づく彼を3人はじっと見つめる。

ただ1人佇む中野。

先程まで中野と話していたパイントという青年はいつのまにか姿を消していたようだった。

 

 

中野「久しぶりだね仮面ライダー。この装置が見えるかい?」

 

ツカサ「…?」

 

ショウタロウ「あれは…"X bicker"」

 

小夜「それってショウタロウくんが言ってた、ガイアインパクトを起こすための稼働装置じゃ…」

 

 

ライトグリーン色で煌々と輝くX bickerに、ショウタロウが勢いよく装置へと近づく。

装置の中央には人ひとりいたであろう窪みがあった。

しかしそこには誰も居ない。

先程まで縛り付けられていたレモーラの姿はなかった。

驚愕しているショウタロウに中野は何もすることなくただじっと見ている。

 

 

ショウタロウ「おい!レモーラはどこだ!どこにやった!」

 

中野「立派な機動装置だろう。お前が我々の首領を倒してから、私はずっとこの"X bicker"の完成のために身を注いできた。亡き主人がずっと望んでいたガイアインパクトの遂行の為に毎日毎日…。散々邪魔され阻止されて…随分遠回りさせられたねぇ?仮面ライダー?」

 

ショウタロウ「この光…まさかそんな。聞こえるかレモーラ!返事しろ!」

 

ツカサ「ちょっと待て。さっきからなんなんだ?仮面ライダー仮面ライダーって」

 

小夜「……。」

 

 

中野のショウタロウに語る口ぶりはまるで長い時間死闘を繰り広げてきた因縁の相手同士の会話の仕方だった。

この世界にやってきたばかりのツカサや小夜じゃ到底話せるような内容と関係性じゃない。

となると。

小夜の頭にある可能性が浮かび上がった。

この風都スカイタワーでも展示していた仮面ライダーの情報にも特徴は合致する。

 

 

中野「おや。その様子はまさか何も知らずにのこのこついて来たのかい?なら教えてあげるよ観光客のお二方。そこにいる彼と彼女はね。この街で過剰なまでにもてはやされてる我々の天敵。仮面ライダーなんだよ」

 

ツカサ「なに⁉︎ 嘘だろ⁉︎」

 

小夜「なるほど…。彼と出会ってから出てきた不可思議な点と点が線で結ばれました。ここのスタッフとして出会ったあなたも。先ほど出会った研究員がこちらに向かって仮面ライダーと呼んだのも。全てここにいる佐川ショウタロウに向けて発した言葉だったんだ」

 

ショウタロウ「……。」

 

中野「『君』にはだいぶお世話になったね。いや、『君たち』にか…。見えるね?心臓の鼓動のように息をする"X bicker"が。君の大切な相棒は今、我が組織ミュージアムの最終目的達成の為に"X bicker"の一部となった!」

 

小夜「そんな…それじゃあもう」

 

中野「少々計画が狂ったが、無事実行できた今、変身できない仮面ライダーなど怖くない。ましてやそこにいる悪魔も尚のこと…」

 

ツカサ「…?なに?悪魔だと?」

 

中野「君のことは前々から聞いていたよディケイド。仮面ライダーWにも負けずとも劣らない悪魔のような厄介な存在がこの街にやってくるとね。君がこのタイミングで現れてほんとよかった。あともう少し早く来ていたら…それ以上は考えたくない」

 

 

中野はショウタロウから目を離すとそのするどい目でツカサを睨みつけた。

そして胸ポケットへ手を伸ばすとターコイズカラーのガイアメモリを取り出す。

 

 

ショウタロウ「それは」

 

中野「かつて君たちに破壊された私のガイアメモリ…あの小僧を通して再び手に入れる事になるとは思わなかったよ。まさかまた使うときが来るとな。…結局あの小僧の想定通りか…」

 

 

『UNICORN』

 

 

中野はガイアウィスパーを轟かせると、ガイアメモリを身体に刺した。

一角獣のような禍々しい異形の姿をした怪物。

ユニコーンドーパント。

それが今姿を変えた中野の状態の名前。

 

 

ユニコーンドーパント「あとはガイアインパクトを待つのみだ!人工衛星から降り注がれる地球の膨大なデータで、この腐った世界が生まれ変わるのを待ち侘びるがいい!その瞬間を迎えるまではこの私が手出しはさせん!」

 

小夜「なるほど。まんまショウタロウくんが言ってたとおりの計画ですね。そのガイアインパクトなるモノを実行させる訳にはいけません。ディケイド!」

 

ツカサ「ああ!」

 

 

ツカサはバックルを取り出すと勢いよく腹に打ちつけた。

 

 

ショウタロウ「諦めてたまるか。まだX bickerとレモーラは完全に一体化していない。どうにかして救いだすから…ツカサ!時間稼ぎ頼むぞ!」

 

ツカサ「あいよ」

 

ユニコーンドーパント「なんだと?そんなこと易々とさせてたまるか」

 

ツカサ「まてよ一角獣。お前の相手は俺だ」

 

 

拡張したベルトが伸びてその胴に巻き付くと、出現したライドブッカーからカードを取り出す。

そして。

 

 

ツカサ「変身!」

 

 

『KAMEN RIDE ! DECADE ! 』

 

 

カードをバックルに素早く装填するとツカサの姿は仮面ライダーアナザーディケイドへと変わった。

勢いよく駆け出したAディケイドは力を込めた右手の拳をユニコーンドーパントへ振りかざす。

左手、右手と交互に繰り出すも相手軽快なバックステップにより躱されてしまう。

 

 

ユニコーンドーパント「ほう。なかなか良い身のこなしだ…だが私の相手ではない!」

 

Aディケイド「ぐっ…!うわぁ!」

 

 

Aディケイドがユニコーンドーパントを引き付けている間にショウタロウは"X bicker"の前で懐から特徴的な形をしたドライバーを取り出した。ツカサの如くヘソしたあたりに打ち付けるとベルトが伸長し、腰に巻き付いた。

 

 

小夜「それが仮面ライダーのベルトですか。中々カッコいいデザインをしてますね」

 

ショウタロウ「…怒らないのか。俺が仮面ライダーだってこと隠してたの」

 

小夜「その件は後で彼と一緒に責任を取って頂きます。それよりも今はこの機械に吸い込まれてる貴方の相棒を救出しないと」

 

ショウタロウ「…。ああ!だな」

 

小夜「それで。どうやって救い出すんです?あの男レモーラさんの身体はデータ化して取り込まれたと言ってました。そう簡単にうまくいかないのでは…」

 

ショウタロウ「そこは俺にひとつ考えがある。だがこの方法で100%成功する確証はない。だが、必ず…アイツなら応えてくれるはずだ」

 

小夜「……?」

 

ショウタロウ「俺は約束したんだ。レモーラを最初に会ったときに。街を泣かす悪党を…ドーパントを全部駆逐するってな!」

 

 

疑問の表情を浮かべる小夜を尻目に、ショウタロウは懐からガイアメモリを取り出した。それは中野が持っていた物とは違う、澱みない純正のガイアメモリ。

 

 

『JOKER』

 

 

ショウタロウの腰に巻かれる2本のガイアメモリを装填するスロットが露出したダブルドライバー。

その左側。

金色の端子が輝くスロットへジョーカーメモリを装填した。

 

 

ショウタロウ「さあ来い…相棒!」

 

ユニコーンドーパント「貴様!何を…!」

 

Aディケイド「行け!ショウタロウ!」

 

 

荒ぶるユニコーンドーパントの身体を押さえつけるAディケイドの声がこだまする。

順調に稼働していたX bickerに変化が訪れた。

ライトグリーン色の光に包まれていたX bickerがバチバチと弾けるようにスパークし始めた。

そして。

ダブルドライバーのもう片方。

空いている銀色の端子があしらわれたスロットへサイクロンメモリが装填された。

 

 

ユニコーンドーパント「そんなバカな!完璧に作られた私のX bickerに欠陥などぉお!…そんなバカなことあってたまるかぁぁぁぁあ!」

 

ショウタロウ「変身…!」

 

『CYCLONE!JOKER!』

 

 

スロットが展開し、ショウタロウの身体が『地球の記憶(ほしのきおく)』に包まれる。

その姿はこの街の平和をドーパントから守り続けた戦士。

街の人々から愛される仮面ライダーWへと変身を遂げた。

 

 

 






次回。仮面ライダーアナザーディケイド。

「あれが、仮面ライダーW…」

「悠長に戦ってる時間がなくなったみたいだな」

「貴様を倒してもう一度 X bickerを起動させる!」

『FINAL FORM RIDE ! DA・DA・DA・W !』

「通りすがりの仮面ライダーだ!それだけ覚えておけ!」


第7話 Wの世界/悪魔との相乗り


すべてを破壊し、すべてを繋げ。


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第7話 Wの世界/悪魔との相乗り

 

 

小夜「……!」

 

Aディケイド「あれが、仮面ライダーW…」

 

 

ショウタロウの機転が功を制し、街のヒーローが再誕した。

身体の縦中央からセパレートされた緑と黒のボディ。

仮面ライダーW/サイクロンジョーカーが現れた。

 

 

W(レモーラ)『私を呼び戻すなんてやるじゃんショウタロウ!』

 

W(ショウタロウ)「ああ…相変わらず能天気だなお前は」

 

W(レモーラ)『でもどうして?どうして…』

 

小夜「どうして変身が…?どういうカラクリなのか。レモーラさんは今どういう…」

 

 

サイクロンメモリと一緒に戻ってきたレモーラの声と重なるように小夜の疑問の声が上がった。

レモーラは、目の前の(というよりひとつになった)ショウタロウの存在に驚きを隠せない様子だったが、ショウタロウはそんなレモーラの反応には返さず、後者の小夜の疑問にだけ答えた。

 

 

W(ショウタロウ)「Wの変身システムをちょっと応用してな。レモーラの意識をサイクロンメモリに乗せて呼び寄せた」

 

小夜「訳がわかりませんが…良いのですか?そんな事をしたら、精巧に稼働していたX bickerはメインプログラムを喪失して…」

 

W(ショウタロウ)「ああ。バグを起こして大惨事になる」

 

 

メインプログラムとして機能するはずだったレモーラを失い、X bickerは不協和音を奏で、過剰な光の明滅を繰り返し始めた。

完璧に起動していたX bickerが徐々に機能を低下させていく。

 

 

小夜「そんな。これほどの巨大なシステムがバグを起こしたら、いったいどうなるか…」

 

W(ショウタロウ)「質疑応答はここまで。そろそろ向かわないとあっちがやばそうだからな。アキコさんの質問は後で受け付ける。それと…レモーラが今言いおうとしたことも後でしっかり応えるから」

 

W(レモーラ)『うん…わかった』

 

ユニコーンドーピント「うがぁぁぁあ!やってくれたなぁ貴様らぁ!」

 

 

憤激しているユニコーンドーパントにAディケイドはなんとか食らいついていた。

それまで蹂躙していたAディケイドも他の敵とは違うパワーに全く歯が立たない。

注意を惹きつけ攻撃を織りなしていたが、それも厳しくなってきたころ。

吹っ飛んで転がるAディケイドの元に。

ようやく。

復活した仮面ライダーが合流した。

 

 

Aディケイド「よお。いい格好してんな。やけに遅かったんじゃねぇの?」

 

W(ショウタロウ)「おい。それが警察署から救ってもらった恩人への態度か?」

 

Aディケイド「何言ってんだ。これでおあいこだろ」

 

W(ショウタロウ)「嘘でしょ。悪魔かお前は」

 

W(レモーラ)『私レモーラ!よろしくね。ウチのショウタロウ迷惑かけなかった?この子カタブツで人付き合いが苦手な子だから不安で…。普段ならレモーラが見てあげてるんだけど最近一緒に居なかったからさ…」

 

W(ショウタロウ)「おいレモーラ!こんなときになに言ってんだ!」

 

W(レモーラ)『てか、キミ何者? 地球(ほし)の本棚で検索したのに全くヒットしなかったんだけど…』

 

W(ショウタロウ)「また始まった…好奇心の暴走が。こうなったらもう止まらない…」

 

Aディケイド「…おいお前ら。夫婦漫才なら他でやれ」

 

小夜「ちょっと3人とも!目の前の敵に集中して!」

 

W(レモーラ)「おっといけない!忘れてた!」

 

ユニコーンドーパント「貴様ら何をごちゃごちゃと…!ただではすまさん!私の崇高な計画を台無しにしおってぇえ!」

 

 

怒りに染まるユニコーンドーパントが咆哮を上げて2人(3人)の前に立ち塞がる。物陰に隠れる小夜に発破をかけられWがAディケイドの手を掴み立ち上げる。体制が整った2人の仮面ライダーは1体のドーパントに向かい、拳を構え…走りだした。

 

 

Aディケイド「久々の前線復帰に足引っ張るんじゃないぞ」

 

W(ショウタロウ)「そういうアンタこそ、素人だからって張り切りすぎるなよ」

 

ユニコーンドーパント「貴様を倒してもう一度 X bickerを起動させる!我がミュージアムの崇高なる目的のために!」

 

 

ひとりでは歯が立たなかった強敵に2人がかりで立ち向かうAディケイドとW。

2人から繰り出される拳と蹴りの応酬では先程とは違い確実にユニコーンドーパントを追い詰めていた。

 

 

Aディケイド「くそ。やっぱ早くて強い。だが!」

 

W(ショウタロウ)「ああ。このまま押し込めば勝てる!」

 

 

先ほどから風都スカイタワーを猛烈な揺れが襲っている。

振動だけで言えばこのフロアに向かう時に襲った揺れもあったが、これは明らかに質が異なるもの。

原因は風都スカイタワーの支えとなる柱に交わるように造られたX bickerだった。

このタワーを発動装置にするため、タワーを構成するありとあらゆる柱に、その『根』が張り巡らされているため、タワー全体が悲鳴を上げていたのだ。

メインプログラムを失い制御が効かなくなった起動装置は蓄えたエネルギーを放つ行方を失い、タワーは崩壊の危機に陥っていた。

 

 

Aディケイド「なんだよこの揺れは!」

 

W(レモーラ)『私が中途半端に抜けたせいで…X bickerが暴走し始めた。今のX bickerは言うなれば手綱を手放した競走馬のようなもの。このまま放っておいたらX bickerは爆発し、風都スカイタワーのみならず…街全体が火の海に包まれる…!』

 

ユニコーンドーパント「そんなことはさせん!その前にお前をもう一度X bickerにぶち込む!」

 

Aディケイド「悠長に戦ってる時間がなくなったみたいだな。急いでアイツをぶっ倒すぞ!」

 

倉野「中野慶夫!そこまでだ!」

 

 

揺らぐ風都スカイタワーの関係者専用の螺旋階段から、警察と複数の特殊部隊が現れた。それはショウタロウたちにゆかりのある顔ぶれ

 

 

 

W(ショウタロウ)「あれは…」

 

W(レモーラ)『来てくれたね。私たちの仲間が。それにソウキチのおじさんも』

 

真刃「どうしてドーパントの姿に?あのドーパントは前に仮面ライダーが倒したはず」

 

ソウキチ「どうするんだよリーダー。そっちの計画じゃ"生身である"先生を取り押さえる算段だっただろ」

 

倉野「計画に変わりはない。…中野慶夫!無駄な抵抗はやめろ!貴方はもう完全に包囲されている。今すぐ身体からガイアメモリを抜き取り降伏しろ!」

 

 

 

 

涙を流してユニコーンドーパントに倉野は訴えていた。

そんな様子を戦いながら聞くツカサと物陰に隠れて聞く小夜。

研究員以外にもこのドーパントのことを先生と呼ぶ人間がいることにツカサと小夜は少し引っ掛かりなるものを覚えた。

 

 

ユニコーンドーパント「何故だ…何故だ何故だ!もうすぐ目的が達成できるというのにどうして皆邪魔をする!私が育て、導いてきた恩を忘れて無能の分際が威張り散らかし罵る!だから私が道を指し示すのに!どうして真っ当に育ってくれない!どうして目の前に立ち塞がる!」

 

 

計画が頓挫し、復活した仮面ライダーと悪魔が手を組んだことで劣勢に立たせられるユニコーンドーパント。

先ほどの洗練された動きとは異なり、ただ闇雲に突っ込んで殴り込んでくる。

そんな動きをツカサはソウキチと倉野の姿を捉えながら受け止めた。

 

 

Aディケイド「だいの大人が泣いて訴えるなんて…滑稽だね」

 

W(ショウタロウ)「なに?」

 

Aディケイド「だが、もっと笑えるのはアンタの方だ。中野先生殿」

 

ユニコーンドーパント「なんだと⁉︎」

 

Aディケイド「見てる感じアンタ教職者か何かか?何があったか知らねえが、自分の指導した人たちが教えた通りに動かなかったらワーワーギャーギャー喚きやがって」

 

ユニコーンドーパント「貴様…ガキの分際で何がわかる!」

 

Aディケイド「ああ!ガキだから分かる。これまでずっと先生や大人たちから学んで成長してきた立場だからな。アンタが言ってるのは指導でも躾でもなんでもない。ただのエゴの押し付けだ!」

 

倉野「……。」

 

Aディケイド「人間は学習する生き物だ。だけど、文字の読み書きだけで全て理解するそんなできた生き物じゃない。学習を通して自分頭と身体をつかって、体験して、失敗や成功を繰り返して吸収する。それが自信となり糧となる。そうして人は成長し、個性が出来上がるんだ。アンタが言ってることはただ自分が抱く感性を押し付けて暴れる迷惑で偏屈な害悪老人野郎なんだよ!知ってるか?日本にはこんな言葉がある。『可愛い子には旅をさせよ』って面白い言葉がな」

 

ユニコーンドーパント「ガキが…!何者なんだ貴様!」

 

Aディケイド「…!またか…。俺は今日あと何回名前を聞かれるんだ…!」

 

 

ユニコーンドーパントに説教とも取れるツカサの主張をぶつけた直後。

警察署で念仏のように何度も何度も聞かされたこのセリフをここでも吐かれた。

細かく自分のことを名乗っても名乗っても、埒があかないことに嫌気がさしていたツカサ。この瞬間、ツカサはとうとう自分のことを名乗るのをあきらめた。

 

 

Aディケイド「通りすがりの仮面ライダーだ!それだけ覚えておけ!」

 

 

 

そう言い放つとAディケイドとユニコーンドーパントの攻防が再び始まった。

AディケイドとWの気持ちが共鳴した瞬間。

この時ライドブッカーに内包されているWのカードに力が蘇るのを小夜は感じ取った。

そんな様を離れたところで見ていた突入部隊の面々たち。

その後方で指示をとるソウキチと倉野。

そして倉野の部下である真刃にも当然ツカサの訴えが耳に届いていた。

 

 

真刃「倉野さん…あのピンクのドーパントは」

 

倉野「ああ。こんな場面2度も見せられちゃあな。お前の言う通り奴も立派な仮面ライダーなんだろうよ」

 

真刃「…はい」

 

倉野「…計画変更だ。全班の隊員たちに告ぐ!我々は今から意識不明の組織の構成員たちを全員タワーから運び出すことにする!仮面ライダー"たち"の戦いの邪魔にならないよう、この場からすぐさま撤退だ!全員心してかかれ!」

 

真刃「倉野さん………!」

 

倉野「俺たちの恩師を救うのは仮面ライダーがやってくれる。そこからが俺たちの仕事だ。俺たちは俺たちで今出来る最上限のことをしよう。なっ。ソウキチ」

 

ソウキチ「…ああ。ここまで通ってきた道には寝ていた構成員はざっと数えて40〜50人。…ふう。楽勝だな」

 

 

風都署の警察官たちからの手厚い援護を受けながらAディケイドとWはユニコーンドーパントに攻撃を仕掛ける。

タワーの倒壊が迫る中ユニコーンドーパントを地に伏せる決定打が見つからない3人。

じわじわとタイムリミットが迫ってきている。

 

 

Aディケイド「ぐっ…!」

 

W(ショウタロウ)「うわっ…!」

 

W(レモーラ)『やばいよショウタロウ!このままじゃ!』

 

Aディケイド「くそ…なんこう一発逆転できる切り札はねぇのか!」

 

小夜「ディケイド!ライドブッカーからカードを!今の貴方ならWの力が使えます!」

 

Aディケイド「え…?」

 

 

小夜に言われた通りAディケイドがライドブッカーを開くと3枚のカードが力を纏って射出した。

 

 

Aディケイド「これは…」

 

W(レモーラ)『どうやら持っていたようだね。切り札ってやつ』

 

W(ショウタロウ)「それで?それ使うとどうなるの。俺たちの力がどうのこうのって」

 

Aディケイド「おい。そんな簡単にノっかっていいのか?怖くないのか。悪魔が使う力だぞ」

 

W(ショウタロウ)「うお。懐かしいな。そのセリフ。なあレモーラ」

 

W(レモーラ)『ふふっ。大丈夫だよディケイド。悪魔と相乗りする勇気。私たちはあるから』

 

ユニコーンドーパント「これで最後だ仮面ライダー!次で息の根を止める…!」

 

 

カードの力をAディケイドは直感的に理解していた。

自分を揶揄してまで自分をも知らない力を使おうとすることに無意識にストップをかけていたのかもしれない。

でもそれをショウタロウとレモーラは受け入れてくれた。

悪魔と呼ばれた自分のことを。

ディケイドの力を授けた門矢小夜のことは全て知ってるわけではない。

この力がどんな物なのかはっきりとはわからない。

でも今はこの2人の受け入れてくれたことに応えようと思えた。

ツカサの中でリョウタとカンナの姿がだぶる。

この2人を思うなら俺がすることはひとつ。

 

 

Aディケイド「わかった。何が起きても吠え面かくなよ」

 

 

Aディケイドはマゼンタ色のバックルを展開するとカードを勢いよく挿入した。

そして。

 

 

『FINAL FORM RIDE ! DA・DA・DA・W !』

 

 

バックルが読み込んだカードの力でWの姿に変化が訪れた。

AディケイドがWの身体に手を差し伸べるとその身体が中央から別れる。

2つの色に分かれていたWが1色に変わる。

そして、1つしかなかったWの身体が『セントラルパーテーション』から2つに別れた。

 

 

 






次回。仮面ライダーアナザーディケイド。


「これがWとディケイドの力…」

「次でとどめだ」

「ああ。だが…」

「この揺れ相当大きいぞ…。急いでここから脱出しなきゃ」

「ダメだよ。今私がX bickerから完全に離れたら、街は…」

「だめだそんなこと!他に方法はあるはずだ!」

「さよなら。ショウタロウ」


第8話 Wの世界/ウィンドタウン・ブルース


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第8話 Wの世界/ウィンドタウン・ブルース

 

 

ユニコーンドーパント「なに⁉︎身体が2つに分かれただと⁉︎」

 

サイクロンサイクロン「すごいこれ…。私だけで変身してるの?」

 

ジョーカージョーカー「これがWとディケイドの力…」

 

Aディケイド「1人でダメなら2人。2人でダメなら3人でってことか。行くぞショウタロウ。レモーラ!」

 

小夜「……。」

 

 

Aディケイドのファイナルファームライド(以下、FFR)の力でWはサイクロンサイクロンとジョーカージョーカーへと変わった。これで戦況は3vs1。ひとつの的への3人の攻撃の応酬は乱れのない連携攻撃で織り成してゆく。

止まらない連携攻撃にユニコーンドーパントは自身の能力を使う暇もなく追い詰められる。

Aディケイドの"切り札"はユニコーンドーパントに対して圧倒的な効果を発揮した。

そして遂にユニコーンドーパントの身体が地に伏した。

 

 

ユニコーンドーパント「まだだ…まだあきらめんぞ…」」

 

ジョーカージョーカー「次でとどめだ」

 

 

『FINAL ATTACK RIDE ! DA・DA・DA・W !』

 

 

Aディケイドの新たなカードの効果で力を纏った3人の仮面ライダーが一斉に飛び立った。高い吹き抜けのあるフロアにて相当な高さを誇るジャンプから、ユニコーンドーパントに3人によるライダーキック『ディケイドエクストリーム』が炸裂した。

 

 

ユニコーンドーパント「ぐぁぁあああ!」

 

 

三位一体のライダーキックになす術もなくユニコーンドーパントは身体からスパークを起こして…爆散した。

 

 

中野「ううっ…ううっ……」

 

Aディケイド「よし。やったな」

 

W(ショウタロウ)「ああ。だが…」

 

小夜「X bickerの方が間に合いませんでした。風都スカイタワーが崩壊する…」

 

 

ユニコーンドーパントの撃破に時間を大いに取られてしまったツカサたち。

Wの姿に戻ったショウタロウから雲行きの怪しい声色が溢れた。

ずっと懸念していた瞬間がついに訪れてしまったのだ。

X bickerによる暴走に手をつけることが間に合わず、風都スカイタワーは振動による負荷に耐えきれずに少しずつ音を立てて崩壊をし始めた。

 

 

Aディケイド「この揺れ相当大きいぞ…。急いでここから脱出しなきゃ」

 

小夜「それが…」

 

 

小夜の曇る表情が気になりAディケイドとWが彼女の元へ駆け寄ると、目の前ではここまで登ってきていた非常階段が今まさに目の前で倒壊していく瞬間だった。

 

 

Aディケイド「くそ!これじゃここから出られない!」

 

W(ショウタロウ)「脱出の手立てなら他にある。レモーラが作ったユニットを使えば、俺のバイクをカスタムしてここから脱出できる」

 

Aディケイド「ほんとか!」

 

W(ショウタロウ)「ああ。自慢の愛車だ」

 

 

Wは両手でぽちぽちとクワガタ虫のような形を思わせる特殊な携帯電話を取り出して操作すると、しばらくして空中をホバリングする羽のついたショウタロウのバイクがやってきた。

 

 

小夜「あれが、そうですね」

 

Aディケイド「残る問題は今隣でぐつぐつと身を滾らせているX bickerだな。このまま放っておいたらこの街があっという間に消えちまう。オマエずっとあの機械触ってたろ。何かわかったのか?」

 

 

戦闘中ずっとX bickerを操作していた小夜。

システムの強制シャットダウンを実行するため、あらゆる機能にアクセスしていた。

そんな小夜にツカサは解決案を期待したのだが、残念ながら小夜の顔は横に張るばかりだった。

 

 

小夜「様々なアプローチからアクセスを試みましたが…制御は全くできませんでした」

 

Aディケイド「ちっ。だったら無理やりにでも壊して止めて…」

 

小夜「ダメです!そんなことしたらレモーラさんが!」

 

W(ショウタロウ)「なんだよ。なら早くレモーラの身体取り返してX bicker止めれば…」

 

 

ツカサとショウタロウがどうにかレモーラを救出してX bickerを止めようと画策する中、小夜と当人であるレモーラは何故か手を動かさなかった。

 

 

W(ショウタロウ)「何ぐずぐずしてるんだよ!早くレモーラを!」

 

W(レモーラ)『それが出来ないんだよショウタロウ。今私がX bickerから完全に離れたら、起動装置はメインプログラムを喪失し、暴走する』

 

小夜「未だにどうにか暴走せずにいるのも、不完全ながらメインプログラムが残ってるからなんです。だからここから完全にレモーラさんを取り出せば、レモーラさんは無事でも街が…」

 

W(ショウタロウ)「それって…なんだ。つまりどういうことだ?」

 

W(レモーラ)『私が同期してしまった時点でもう手遅れなんだ。だからここは私を置いて…皆は逃げて」

 

W(ショウタロウ)「何バカなこと言ってる!…そんなことあるわけないだろ!」

 

W(レモーラ)『……。』

 

W(ショウタロウ)「絶対!絶対連れて帰る!…レモーラも救って、街も救うんだよ!」

 

 

これまでずっと街を救ってきた街のヒーローにあまりにも辛い現実が待ち構えていた。

相棒を救うのか、街を救うのか。

2つに1つ。

どちらか一方を選んでもどちらかを必ず失ってしまう。

愛する相棒か。

愛する街か。

 

 

W(ショウタロウ)「そんなの…あってたまるか。まだ助けられる方法を探そう。そうだ。この装置を作ったやつに聞けば良い!あそこに伸びてる中野を叩き起こして吐き出させればまだ…」

 

W(レモーラ)『ショウタロウ…』

 

小夜「ショウタロウくん。両方を救う手は他にないんです。それはこの装置と一体化してしまったレモーラさんが1番よくわかってる…」

 

W(ショウタロウ)「どけ!今から連れて来てやる!あのクソジジイよくも!」

 

 

何とか形を保っている風都スカイタワーの中でショウタロウの悲痛な叫びがこだまする。

そんな中でもメキメキと悲鳴をあげる風都スカイタワー。

徐々にだが確実にカウントダウンは迫っている。

 

 

W(レモーラ)『ディケイド。さっきのカード使って』

 

 

小夜とレモーラに身体を抑えられてるWから左目が赤く明滅した。

 

 

Aディケイド「いいのか。レモーラ」

 

W(レモーラ)『大丈夫だよ。私こう見えて結構大人なんだからね。可愛くてスタイル良くて頭もいいからさ。周りから天使って呼ばれてたんだよ?ふふっ。…ってそんなこと今はどうでもいいか』

 

Aディケイド「………。」

 

W(レモーラ)『なに貴方まで悲しそうな顔してるの?私平気だよ。この街を…ううん。この地球を消させたりはしない。今まで何度もこの街の危機が訪れてきたけど、その度に私たちは守って来た。けど今回は違うみたい。この地球(ほし)を護るのは仮面ライダー(ショウタロウと私)じゃない。この私、天使の使命だ』

 

W(ショウタロウ)「おい!」

 

W(レモーラ)『今からもう一度メインプログラムとなってひとつになる。チャージされたエネルギーをこの街に絶対に落とさせない』

 

 

幼い天真爛漫な子だと聞いていたのに。

その少女から発せられてるとは思えないほどその決意は固く揺るぎそうになかった。

寧ろ少女より大人であるはずのショウタロウの方が相棒との別れを受け入れられないようだった。

 

 

W(ショウタロウ)「何言ってるんだ!そんなことは…」

 

W(レモーラ)『お別れだよ。ショウタロウ』

 

W(ショウタロウ)「ダメだ!」

 

W(レモーラ)『大丈夫だって!私が居なくなってもこの地球がなくならない限りずっと私とショウタロウは相棒だから!」

 

W(ショウタロウ)「ダメと言ったらダメだ!レモーラとまた一緒に過ごす!離れてしまってたからわかったんだ!そのために俺は…」

 

W(レモーラ)『ディケイド!』

 

Aディケイド「……わかった」

 

 

覚悟を決めたレモーラになおも反対の意思を示し続けるショウタロウのそばでツカサは絞り出すような声を出してレモーラの気持ちに応えた。

 

 

『FINAL FORM RIDE ! DA・DA・DA・W !』

 

 

サイクロンサイクロン「さよなら。ショウタロウ」

 

ジョーカージョーカー「レモーラ!レモーラァァ!!」

 

 

半ば強引にレモーラをショウタロウから切り離したAディケイド。

レモーラがショウタロウを突き飛ばすとAディケイドと小夜はが外でホバリングして待機していたハードタービュラーに中野と共に飛び乗った。

X bickerの椅子に座るレモーラにサイクロンサイクロンが同化した次の瞬間。

ツカサたちがいたそのフロアが瓦礫の雨に覆い尽くされた。

そしてメインプログラムを取り戻したX bickerは瞬く間にライトグリーンの光に包まれる。

闇夜に聳え立つ形を失いつつあった風都スカイタワーが建物諸共光に包み込まれると、街全域を光が照らし出し、はるか上空に目掛けて蓄えられたエネルギーが放射された。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

???「えー!」

 

パイント「ほぉ。これはこれは」

 

 

光る泉に映し出されるツカサとショウタロウたちの戦いの模様を眺める大小の影が2つ。

何枚も重ね着した特徴的なデザインの白装束を身に纏う色白な青年と少女だった。

 

 

少女「どうしてどうして⁉︎レモーラが犠牲になってハッピーエンド?この世界はこれで救われたけど…仮面ライダー居なくなっちゃったじゃん!」

 

パイント「まさかこの世界でディケイドが為すことがこういうことだったとは。私も驚きを隠せませんね」

 

少女「確かにただ会うだけじゃダメって言ってたけど…まさか仮面ライダーが死んじゃうなんて」

 

 

泉に映る映像が消え、洞窟内が暗くなる。

パイントが少女に施す『教育』は今回はこれで終わりなのか、2人は映像の途切れた泉を見届けると帰路につくため歩き始めた。

 

 

少女「ねぇパイント〜」

 

パイント「なんでしょうお嬢様」

 

少女「ずっと泉から見て勉強して思ったんだけど、あそこでずっと見るの飽きちゃった。私も『外』に出て直接見たい!」

 

パイント「何をおっしゃいますか。お嬢様にはまだ早いですよ。第一、万が一許可が下りたとしてもヤード様が許してくれるはずがありません」

 

少女「なんでー!最近だってパイントどっか行ってたじゃん!私だってヤードやパイントみたいに外に行きたい!行きたい!」

 

 

あからさまな不貞腐れ顔をする少女。

一度損ねたら最後、『神殿』に帰るまで機嫌を治すことはなかった。

パイントの努力虚しく少女は繋いでいた手を彼から振り解くと自分の部屋へ向かって閉じこもってしまった。

 

 

パイント「やれやれ。年頃のお嬢様のご機嫌をとるのは一苦労ですね」

 

???「数いる教育者から選ばれたパイントさんでも、お嬢さんの奔放さには手を焼いているみたいだね」

 

パイント「おや。噂をすれば」

 

 

少女が消えていった方向と正反対の方向から右手に分厚い本を抱えたパイントよりも背の低い青年がのっぺりとした抑揚のない口調で声をかけてきた。

彼の名はヤード。先ほど少女とパイントのやりとりの中で名前が出てきた、同じ『組織』のメンバーである。

 

 

ヤード「へ?なに噂?」

 

パイント「いえいえ。こちらの話です。あれ?ヤード。どちらか出掛けてらしたんですか」

 

ヤード「まあ…そんなところですね。仕事の最中移動してたらちょっと嫌な気配を感じてね。寄ってみたらその世界にディケイドが生まれる瞬間に出くわしちゃってさ。ほら。君も知ってるだろ?」

 

パイント「ええまあ。お嬢様の教育の一環でさっきまで泉で彼の様子を見ていましたから」

 

ヤード「そのことをつい先ほど『あの方』に報告してきたんだ。骨が折れるよ。こっちはこっちで片付いてない仕事が山積みなのに」

 

パイント「そうですか。君たちが所属する分野の仕事はまだ当分落ち着くことはなさそうですね。あの方が自由に動けるようになるまではまだ肩の荷が下りそうにないですね」

 

ヤード「そう言う君も自分自身の役目の重さに頭を抱えているようだけど。そこら辺はお互い様なのかな」

 

 

ヤードは話を終えるとそれじゃあと片手を上げてその場を後にしようとした。

しかしそれをパイントの方が呼び止める。

 

 

パイント「ヤード」

 

ヤード「なんです?パイント」

 

パイント「ダメ元で聞くんですが、教育の一環としてお嬢様を『外』に連れ出すのは…」

 

ヤード「ダメ。絶対ダメですから」

 

パイント「まぁ…そうですよね」

 

 

今度こそその場を後にしようとするヤードの背中を見届け、パイントはため息をつき天を仰ぐ。

そして大きく息を吸い込むと何やら意を決したような顔つきに変わった。

 

 

パイント「今はダメでもディケイドの旅はまだ始まったばかり。教育が進めば否が応でも『外』に出る機会はやってくる。その時までお嬢様が今のように従順であれば良いのですが」

 

 

その場に1人になったパイントはこれからの展開を憂いてその姿を消した。

ツカサと小夜の旅を観察し続ける彼らと、ツカサたちとは別で何やら動きを見せるヤード。

皆が共に共通した白装束を身に纏っていることから組織的な団体を形成していることが伺える。

そしてその組織の長と思われる存在の示唆。

今はまだ接点はない2人。

しかしそう遠くない未来でパイントとツカサは邂逅する。

未だ全貌が見えない彼らの目的はいったいなんなのか。

それはこれからのツカサたちの旅の中で明らかになるかもしれない。

 

 

 

 

 






次回。仮面ライダーアナザーディケイド。

「もう終わったんだな」

「ええ。この世界での我々の役目は完了しました」

「実は俺…街を出ようと思ってな」

「ちょ、おい。どこいくんだよ…ん?」

「…あれ?ここどこだ?」


第9話 Wの世界/この街に門出の花束を


すべてを破壊し、すべてを繋げ。



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第9話 Wの世界/この街に門出の花束を

 

 

翌日。

ライチタイムで客が入り乱れるヒカリスタジオにて。

ツカサはというと、未だ寝ぼけた顔をしたままで店のメニューである『日替わりランチセット』であるトーストをカウンター席に座りゆっくり頬張り味わっていた。

そののっそりとした力のない動きからして、昨日起きた怒涛の戦いの疲れがまだ抜けきれていない様子。

のどかなランチタイムが過ぎてゆく店内には昨日の出来事が特報としてテレビに映し出されていた。

 

 

店長「ありがとうございます!またお越しください〜」

 

小夜「ディケイド。なに腑抜けた顔をしているんですか。これを見てください」

 

ツカサ「んー…?」

 

 

そんなツカサの元に小夜が差し出してきたのは今日刊行された風都の新聞記事。

そこには昨日の出来事が表紙一面に大々的に取り上げられていた。

まず1番に目に飛び込んでくるのは、熱光線を浴びて燃え尽きた姿となった風都スカイタワーの変わり果てた写真。

そして見出しには『街の平和を守る仮面ライダー。再び現る⁉︎』と書かれており、その下記には事細かな詳細が載っていた。

 

 

ツカサ「へー。大人気じゃないか。ショウタロウのやつ」

 

小夜「ええ。新聞だけでなく、テレビもラジオもこの話題で持ちきりです。大まかな内容はほとんど一緒でしたね。我々に襲いかかってきた構成員たちは無事全員避難の上拘束。そして脱出直後、下で待機していた警察たちに身柄を渡した中野慶夫も搬送された病院で意識を取り戻し、無事そのまま逮捕されたようです」

 

ツカサ「やるな。ショウタロウの親父さんの友達」

 

小夜「流石仮面ライダーと共に街を守ってきた人物といったところですね。意識を失った中野とショウタロウくんを抱えた貴方の姿を見てもとても無駄のない動きで仕事をしていましたから。まあ別のところでは今週末に予定していた夏祭りの開催中止を憂う声もあったりなかったりするようで」

 

ツカサ「はっ。幸せな嘆きだな。レモーラの犠牲がなければ、夏祭りどころかこの街そのものが無くなっていたってのに」

 

小夜「真実を知るのは、いつだって渦中にいた者だけですよ。全貌を知らない部外者は、外に漏れた不確定な情報を得て好き勝手文句を垂れてくる。それまで戦っていた者たちの気持ちなどお構いなしにね。それとも感傷的になってるのは、出会って間もない人物である彼らにシンパシーを感じたからですか?思えばショウタロウくんとあの少女はとどここなくアナタのお友達に似ている気がします。異形な姿に変わってまで救ったのに見捨てられた哀れな貴方のお友達にね」

 

ツカサ「別に気にしてない。リョウタやカンナが…俺のたった2人だけの友達が無事ならそれで」

 

 

小夜の言葉にツカサはどれほど響いたのか。

ただまっすぐ前を見つめるツカサに小夜は心情をうまく汲み取れなかった。

ツカサはそれ以上反応することはなく、黙って残りのトーストをホットミルクで流し込むとほのタイミングで小夜はすっとカウンター席から立ち上がった。

 

 

小夜「ともかく、この世界での我々の役目は完了しました。残り旅する世界はあと8つ。まだまだ旅は始まったばかりです」

 

ツカサ「ちょ、おい。どこいくんだよ…ん?」

 

店長「いらっしゃいませ…おや。君は」

 

 

インバネスコートを羽織った小夜が奥の部屋に消えていくちょうど同じタイミングでヒカリスタジオの扉から眩しい光が注ぎ込まれる。

入店してきたのは1つのシルエット。

空いている席には目もくれず、カウンター席で話に花を咲かせていたツカサと小夜を見つけると2人のもとへ近寄った。

 

 

ショウタロウ「こんにちは店長。すみませんこれ。昨日ご馳走になったホットミルクの代金です」

 

ツカサ「なんだショウタロウじゃないか」

 

 

店の扉を開けて目を真っ赤にしたショウタロウが店にやってきた。

あれから一晩中泣き明かしたのだろうか。

そう思ってしまうほどその目は赤くなっていた。

それよりも目を引くのがショウタロウの持つ手荷物。

昨日小夜とともにやって来た時は軽装だったのに、今日の格好はまるで相当な長旅に出かけるような荷物量をしていた。

ショウタロウが出した代金を受け取った店長は来店した彼を満面の笑みで迎え入れる。

そしてメニューを聞いて注文を伺うと、ショウタロウの元にホットミルクが到着した。

ツカサの隣に座ったショウタロウは店長にお礼を言うと目の前に出されたホットミルクを手に持ち、ゆっくりとその口へ運んだ。

 

 

ツカサ「何しにきたんだよ。それに何だその重装備」

 

ショウタロウ「ああこれか。実は俺…街を出ようと思ってな」

 

ツカサ「なに?この街を?」

 

ショウタロウ「ああ。俺は今までレモーラと一緒にこの街をドーパントからずっと守り続けてきた。それも昨日でようやく終わりを迎えた。平和を脅かす組織も完全に壊滅したことだし、仮面ライダーの役目はもう必要無くなったからもう俺がこの街にいる必要が無くなったからな」

 

ツカサ「……。」

 

ショウタロウ「フッ。というのは建前だ。本音を言えばこの町にいたら何処にいてもアイツを思い出しちまう。それぐらい思い出に溢れる俺の大好きな街だからここは。それにどうしても耐えられそうにないんだ」

 

 

悲しい目をしながらショウタロウは笑う。

レモーラとの思い出が詰まった街。

側から見たら女と離れただけで大袈裟な。

と、思われるかもしれない。

だが、ことの全てを見ていたツカサには彼の心情が等身大で伝わるほどの説得力を感じ取っていた。

未だにカップから湯気が出るホットミルクをショウタロウは手に取ると、また一口ゆっくりと口へと運んだ。

 

 

ショウタロウ「お前には世話になったからな。街を出る前に別れの挨拶をしとこうと思って。ツカサ。今回の件、改めて本当にありがとう」

 

 

ショウタロウの頭が深々と下げられる。

その様子からは出会ったばかりの威圧的な態度は感じられなかった。

レモーラの1件で一応の決着がついたことで張り詰めた糸が緩んだためか。

こちらが普段の彼の姿なのか、ショウタロウは物腰の柔らかい表情と口調をしていた。

 

 

ツカサ「礼なんて要らない。俺は俺で必要なことをしたまでだ。でもわざわざこの街を離れるなんてな。あの頑固そうな親父さんは何て言ったんだ?愛しの息子が街を出るなんて聞いたら流石に泣いて悲しんだりするんじゃないのか」

 

ショウタロウ「いや。親父には言ってない」

 

ツカサ「え。言ってないの?」

 

ショウタロウ「ああ。なんならうちの親父は早く自立しろってうるさかったから寧ろウェルカムって感じだろうな。けどずっと世話になってた…クラさんには挨拶してきた」

 

 

ショウタロウがヒカリスタジオを訪れる遡る事数時間前。

まだ朝の通勤ラッシュが続いていた頃。

いつもより遅めの出勤によりアパートから欠伸をしながら出て来たのは未だ疲れが抜けきれない倉野だった。

よれたYシャツを身につけ肩にスーツを乗せて出る。

無精髭を蓄え、覇気のない顔をした倉野が自分の部屋のポストを何気なく見てみると、そこには溢れんばかりの広告の中に紛れた、見慣れない手紙と小包が入っていた。

 

 

倉野「なんだこれ」

 

 

『クラさんへ。 佐川ショウタロウ』

 

 

見慣れた筆跡によく知る友人の息子の名前。

今まで一度もショウタロウから手紙などよこしてこなかった。

初めての出来事にただならぬ不安に駆られた倉野は乱雑に封を切って中身を確認した。

そこには仮面ライダーとして世話になった事。

そしてこの街を離れることにした旨を綴る内容が便箋3枚に渡って事細かく記されていた。

 

 

倉野「そうか…街を出るのか。てか、結局最後の最後まで親父に『仮面ライダー』だったこと言ってねえのかよ。なんだかんだ反発しててもアイツにそっくりだなショウナロウは」

 

 

ショウタロウを揶揄する言葉を吐きながらも、ふっと笑みが溢れる倉野。

その心情は充分にショウタロウを思う気持ちに溢れていた。

レモーラを失った事は当然倉野の元にも入ってきている。

彼女もまたショウタロウと共に街の平和を守り続けてきた仮面ライダーであり仲間の1人。

ショウタロウ程でなくても倉野も同じように彼女の訃報には胸を痛めていた。

気を抜くと改めて襲いかかってくる悲しみや不安を取り祓うように、手紙の他にあった小包の中身を確認しようとした。

するとそこには。

 

 

倉野「これは…ショウタロウが使ってるタイプと同じ、純正のガイアメモリじゃねえか」

 

 

クリアな色合いとスマートな形をした純正のガイアメモリ。

淡い黄色をしたそのガイアメモリの他にトリガーマグナムと同型の銃も収められている。

驚きのあまり目を奪われていると、小包に一緒に入っていた手紙にはこんな内容が綴られてた。

 

 

『最後に。プレゼントを贈ります。ミュージアムも完全に壊滅し、街にばら撒かれたガイアメモリもだいぶ数を減らしてきました。けれどドーパントによる超常犯罪はまだ完全に払拭出来たとは言いきれません。仮面ライダーに変身出来なくなりこの街を出ることを決めた僕に代わり、街に万が一脅威がやってきた時はこれを使ってください。超常犯罪を解決するクラさんの手立てになればと思い、贈ります。

 

超常犯罪捜査課 倉野キリヒコ様へ

 

仮面ライダーW 佐川ショウタロウより』

 

 

倉野「俺がお前に代わって街の平和を守れだと?ガキのくせにずいぶんと大きな口を叩くじゃねぇか。大人を舐めやがって。…ったく仕方ねえな。街のヒーローに後を託されたからには、しっかりその役目を全うしないとな。ああだけどその前に今日は異動してくる新しい上司をお迎えしなきゃならんし……うわぁちょっ!」

 

 

これからの予定とショウタロウから託された願いに思いを馳せていると油断した右手からガイアメモリが抜け落ちて落としそうになる。

 

 

倉野「あぶねぇ。いきなりこれに傷つけるところだったぜ」

 

 

慌てて掴んで事なきを得る。

無事掴み直したガイアメモリからはガイアウィスパーが静かに鳴り響いた。

 

 

『NASCA』

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

ツカサ「おう。そうか」

 

 

ランチタイムのピークを過ぎ、気づけば喫茶店にはショウタロウ以外の客は居なくなっていた。

ショウタロウに出されたホットミルクも時間が経ちすっかり温くなってる。

 

 

ショウタロウ「そんなドライな反応はないだろ。出会ってまだ日が浅いとは言え、共に協力して敵を倒した仲間じゃないか」

 

ツカサ「誰が仲間だ。そんなものになったつもりはない」

 

ショウタロウ「そんな言い方ないだろ。お前どんだけ捻くれてんだよ。あーわかった。あれだろ。どうせおまえ友達いないんだろ」

 

ツカサ「うるさいロリコン。とっとと出ていけ」

 

ショウタロウ「なんだその悪魔のようなツレない対応は。こっちはようやく腹割って話せる友達見つけたと思ったのに…あれ。そういえば…」

 

 

ツカサとの長い言い合いの中でショウタロウは自分の発言にふと何か思い返すようなそぶりを見せた。

思い返すショウタロウに対してツカサは小さな違和感を覚えた。

 

 

ツカサ「ん?なんだよ」

 

ショウタロウ「いや。なんでもない。ともかく礼を言いたかったんだ。ツカサとツカサを引き合わせてくれたアキコさんにも」

 

ツカサ「アキコ?」

 

ショウタロウ「ああ。警察に連れて行かれてツカサと直接コンタクトを取れなくなったときにアキコさんに声をかけたんだ。レモーラの危機に周りが見えなくなっていたとはいえアキコさんにはだいぶ失礼なことをしてしまったからな。お礼と一緒に謝りたいと思って」

 

ツカサ「アキコ…アキコ…。あ、そっか。アイツこの世界じゃその名前になってたんだっけ」

 

ショウタロウ「?」

 

ツカサ「すまないショウタロウ。アイツの名前、本当は『森谷アキコ』じゃないんだ。そして俺らももうすぐこの街を出る。だからアイツには俺から言っとくよ」

 

ショウタロウ「え、うん。…は?え?どういうこと?」

 

店長「いやーやっとお昼の営業に区切りが着いたよ。ちょっと休憩しようかな?良かったら2人もどう?ツカサくんたちが出てる間時間があったからさ。ちょっとこの街を観光してたんだよ。そしたら『風花饅頭』っていう街の名物を見つけてね…」

 

 

店内に3人だけとなったヒカリスタジオ。

ショウタロウからの執拗な質問責めと店長からのグルメうんちくが錯綜する中、ツカサはなんとも言えないモヤモヤした違和感を感じとっていた。

そして気づく。

いつの間にかここから小夜の姿が居なくなっていたことに。

 

 

店長「そしたらその店の店主と意気投合しちゃってさ。よかったらうちの娘貰ってくれないか?なんて言われちゃって!僕もうどうしていいか困っちゃって…」

 

ツカサ「店長!あの女どこ行きました⁉︎」

 

店長「えっびっくりした。もしかして小夜ちゃんのこと?小夜ちゃんならずっと前に奥の部屋に戻って行ったけど?」

 

ショウタロウ「おい!さっきから聞いてるだろ。どういう意味だって。おいツカサ!」

 

 

ショウタロウにいっさい耳を貸すことはせず、ツカサは荒ただしく立ち上がると店の奥へと消えていってしまった。

 

 

店長「あらら…ツカサくん行っちゃったね」

 

ショウタロウ「……。」

 

店長「あっ…。えっと、ショウタロウくん?よかったら饅頭食べるかい?」

 

ショウタロウ「はい。いただきます…」

 

 

血相を変えて駆け出したツカサ。

向かう先は写真スタジオである母屋にある撮影室。

そこはツカサたちをこの世界へ連れてきた小夜がいた、風都スカイタワーにガイアメモリが飛び交う背景ロールが垂れ下がった部屋である。

広い建物内を駆けて撮影室のドアを開けるとそこにはツカサの予想通り小夜の姿があった。

 

 

ツカサ「やっぱりここに居た!」

 

小夜「………。」

 

 

Wの世界へ移動してきた様に小夜は肩幅程度に両足を広げ、目を閉じて右腕を前に突き出していた。

ツカサも小夜が今何をしようとしているのかすぐに気づいたようで、すぐ様部屋の中は飛び込むとがっちりとして全く微動だにしない小夜の腕を掴んだ。

 

 

小夜「………。」

 

ツカサ「待ってくれ!今ショウタロウが店に来てるからまだ…!」

 

小夜「着きました」

 

 

あれほどビクともしなかった小夜の腕がばたっとゆっくり降ろされた。

片膝をつき傅くような姿勢であるツカサを小夜は見下ろしていると、ツカサの背後にあった背景ロールが新しい物に張り変わる。

 

 

小夜「…なんですか。人の腕を掴んで」

 

ツカサ「間に合わなかったか…」

 

 

垂れ下がった背景ロールには暗雲の中聳え立つ禍々しい塔が映っていた。

他の建物よりも注目を引くデザインをしており、その塔の至る所に赤い光のラインが光っていた。

そして塔のてっぺんには、ブラックホールと思われる黒い渦が描かれていてそに吸い込まれるように宙には様々な色合いのボトルが飛び交っていた。

 

 

ツカサ「これは…」

 

小夜「今度はいったいどんな世界なんでしょう」

 

 

一方その頃。

店内に残されたショウタロウは店長と一緒に話に花を咲かせていた。

おかわりしたホットミルクも飲み干し、いただいた饅頭も食べ終わると、ショウタロウは手荷物をまとめて席をたった。

 

 

店長「ショウタロウくん!君のようなまっすぐな男は居ない!僕も仕事柄いろんな人と出会ってきたけど、絶対に忘れないよ!」

 

ショウタロウ「俺もです。レンジさんのような人情に深くてアツい人。クラさん以外で初めて会いました」

 

 

会計を終えてアツい握手を交わした2人。

ニッコニコの熱い笑顔を向け合うショウタロウと店長だったが、店長のことをレンジと読んでるあたり、どうやらこの短い時間の中で相当仲良くなったようだ…。

 

 

ショウタロウ「それじゃあレンジさん失礼します」

 

店長「最後だというのにほんとごめんね。ツカサくんと小夜ちゃんにはちゃんと言っとくから」

 

 

あれほど目の周りを明かした顔が晴れやかになっている。

心機一転。ショウタロウは自らの新しい門出に第一歩を踏み出して店の扉を開いた。

が、しかし。

 

 

ショウタロウ「…あれ?」

 

店長「あらま。これは…」

 

 

そこには見慣れた町の商店街ではなく、どこか重々しい空気が漂う、閑散とした古めかしい街並みが広がっていた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

???「こちら『BUILD-N/C』。土屋隊全291名エリアC4に到着。現在北都の軍勢を324体確認。内"ビルド"は3体。他はガーディアンと歩兵隊で構成されています。偵察隊からの情報からどうやらここで間違いないようです」

 

???「了解。では本部の指示通り特攻せよ」

 

???「…了解」

 

???「隊長。いよいよ始まるんですね」

 

???「なに弛んだ顔をしている。意志をしっかり持て。集中しろ」

 

???「う、うっす」

 

???「おい土屋。あまり新人をいびってやるな。コイツは俺たちと違って素人上がりなんだから」

 

???「わかっています。ですがそんな甘いこと言ってられません。私と小田桐は『ビルド』なんです。『兵器』としてこの国の命運を背負っている。そのためにも我々が率先してその役目をしっかり全うしないと」

 

???「…ああ。わかってるさ。ここではお前が総隊長だからな。ちゃんと指示に従うよ。こっちの歩兵部隊の指揮は任せとけ。お前らが最前線でその力を発揮できるようをこちらも使命を全うする。あんな派手な格好し続けてたら兵器とはいえ暑苦しいだろうからな」

 

???「ありがとうございます武田さん。ガーディアンの相手は貴方の部隊に任せます。けど命を落とす危険があるのは私たちと一緒です。無茶はしないでください」

 

???「馬鹿野郎。誰に向かって言ってんだ。俺は現在軍で1番の戦績を納めるスーパースターを育てた元総隊長だぞ。まさかこんな老兵まで戦場に駆り出されるとは思わなかったがな。隠居して家内と共に新しい人生を始めてたというのに。全く新しく総理大臣になった布袋タイザンとかいう男は戦況を読む力がまだなってないの」

 

???「まったく。武田隊長には頭が上がらないです」

 

???「おら。また気を抜くと隊長と呼ぶ。今はお前が隊長だろ」

 

???「土屋隊長。そろそろです」

 

???「おっ。合図が来たぞ隊長さん。それじゃあいきますか。お国の為に」

 

???「えぇ…お国の為に。東都特務兵器部隊土屋隊諸君!我々はこれより戦地に突入する。心してかかれぇ!」

 

???「「「「おおおおお!」」」

 

???「小田桐!準備はいいな? 行くぞ!」

 

???「うっす!」

 

 

『NINJA!COMIC!』

 

『DRAGON ! LOCK ! 』

 

 

???「「特攻!」」

 

 

『NINNIN-COMIC!』

 

『KEY-DRAGON ! 』

 

 

???「いいか。相手は3体に対してこちらは2体だ。『ビルド』の殲滅は我々にしか出来ない。1番に叩くぞ」

 

???「うっす!」

 

 

『4コマ忍法刀!』

 

 

???「フッ…!ハッ…!」

 

???「はぁ…はぁ…。ぐわぁ!」

 

???「ガーディアン相手に遅れをとるな!標的は目の前だ『BUILD-D/L』。私に続け!」

 

???「はぁ…はぁ…。うっす…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回。仮面ライダーアナザーディケイド。


「『ビルドシステム』?なんだそれは?」

「簡単に言えば人間をつかった軍事兵器です」

「お待ちしておりました山口ミソラ様!」

「俺は認めない。この軍事兵器が仮面ライダーだなんて」


第10話 仮面のソルジャー


すべてを破壊し、すべてを繋げ。


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